0452◎観経0538正宗分散善義 巻第四
*沙門*善導集記
一 正宗分
Ⅰ 総明大綱
ⅰ 総標【総説】
a 総標大宗
【1】 ◎^これより以下は、 次に*三輩*散善一門の義を解す。
◎従0759リ↠此已下ハ、▲次ニ解ス↢三輩散善一門之義ヲ↡。
一 Ⅰ ⅰ b 別弁因行
^この義のなかにつきてすなはちその二あり。 一には*三福を明かしてもつて*正因となす。 二には*九品を明かしてもつて*正行となす。
~就テ↢此ノ義ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ二↡。一ニハ明テ↢三福ヲ↡以テ為ス↢正因ト↡。二ニハ明テ↢九品ヲ↡以テ為ス↢正行ト↡。
一 Ⅰ ⅱ 別釈
a 広明三福正因【三福】
イ 牒
^いま三福といふは、
~今言フ↢三福ト↡者、
一 Ⅰ ⅱ a ロ 釈
(一)明行体不同
・世福
^▲第一の福はすなはちこれ*世俗の*善根なり。 曽よりこのかたいまだ*仏法を聞かず、 ただおのづから*孝養・*仁・義・礼・智・信を行ず。 ゆゑに世俗の善と名づく。
~第一ノ福ハ即チ是世俗ノ善根ナリ。曽ヨリ来タ未ダ↠聞カ↢仏法ヲ↡、但自ラ行ズ↢孝養・仁・義・礼・智・信ヲ↡。故ニ名ク↢世俗ノ善ト↡也。
・戒福
^▲第二の福はこれを*戒善と名づく。 この戒のなかにつきてすなはち人・天・*声聞・*菩薩等の*戒あり。 そのなかにあるいは*具受・不具受あり、 あるいは*具持・不具持あり。 ただよく*回向すればことごとく*往生 を得。
~第二ノ福者此ヲ名ク↢戒善ト↡。就テ↢此ノ戒ノ中ニ↡即チ有リ↢人・天・声聞・菩薩等ノ戒↡。其ノ中ニ或ハ有リ↢具受・不具受↡、或ハ有リ↢具持・不具持↡。但能ク廻向レバ尽ク得↢往生ヲ↡。
・行福
^▲第三の福を 名づけて*行善となす。 これはこれ*大乗心を発せる*凡夫、 みづからよく*行を行じ、 兼ねて有縁を勧めて悪を捨て心を持たしめて、 *回して*浄土に生ず。
~第三ノ福ヲ者名テ為ス↢行善ト↡。此ハ是発ル↢大乗心ヲ↡凡夫、自ラ能ク行ジ↠行ヲ、兼テ勧テ↢有縁ヲ↡捨テ↠悪ヲ持シメテ↠心ヲ、廻テ生ズ↢浄土ニ↡。
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)弁受法単複
^またこの三福のなかにつきて、 あるいは一人 ひとへに*世福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人 ひとへ0453に戒福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人ひとへに行福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。
~又就テ↢此ノ三福之中ニ↡、或ハ有リ↧一人単ニ行テ↢世福ヲ↡廻テ亦得ル↞生コトヲ。或ハ有リ↧一人単ニ行テ↢戒福ヲ↡廻テ亦得ル↞生コトヲ。或ハ有リ↧一人単ニ行テ↢行福ヲ↡廻テ亦得ル↞生コトヲ。
^あるいは一人上の二福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは一人下の二福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。
~或ハ有リ↧一人行テ↢上ノ二福ヲ↡廻テ亦得ル↞生コトヲ。或ハ有リ↧一人行テ↢下ノ二福ヲ↡廻テ亦得ル↞生コトヲ。
^あるいは一人つぶさに三福を行じて、 回してまた生ずることを得るあり。 あるいは人等ありて、 三福ともに行ぜざるものをすなはち*十悪・*邪見・*闡0539提の人と名づく。
~或ハ有リ↧一人具ニ行テ↢三福ヲ↡廻テ亦得ル↞生コトヲ。或ハ有テ↢人等↡、三福倶ニ不ル↠行ゼ者ヲ即チ名ク↢十悪・邪0760見・闡提ノ人ト↡也。
一 Ⅰ ⅱ b 略指九品正行
^九品といふは、 文に至りてまさに弁ずべし、 知るべし。 いま略して三福差別の義 意を*料簡しをはりぬ。
~言フ↢九品ト↡者、至テ↠文ニ当ニシ↠弁ズ、応シ↠知ル。今略テ料↢簡シ三福差別ノ義意ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ 別釈文義
ⅰ【上輩観】
a 総料簡【文前料簡】
イ 標
【2】 ^十四に*上輩観の行善の文前につきて、 ▽総じて料簡してすなはち▼十一門となす。
▲十四ニ就テ↢上輩観ノ行善ノ文前ニ↡、総テ料簡テ即チ為ス↢十一門ト↡。
一 Ⅱ ⅰ a ロ 釈
(一)列科目
・告命
^一には総じて*告命を明かす。
~一ニ者総テ明ス↢告命ヲ↡。
・弁定其位
^二にはその位を弁定す。
~二ニ者弁↢定ス其ノ位ヲ↡。
・総挙有縁
^三には▼総じて*有縁の類を挙ぐ。
~三ニ者総テ挙グ↢有縁之類ヲ↡。
・三心正因
^四には▼*三心を弁定してもつて正因となす。
~四ニ者弁↢定テ三心ヲ↡以テ為ス↢正因ト↡。
・簡機堪不
^五にはまさしく*機の堪と不堪とを簡ぶことを明かす。
~五ニ者正ク明ス↠簡コトヲ↣機ノ堪ト与ヲ↢不堪↡。
・受法不同
^▽六にはまさしく受法の不同を明かす。
~六ニ者正ク明ス↢受法ノ不同ヲ↡。
・時節延促
^▽七にはまさしく修業の時節に*延促異なることあることを明かす。
~七ニ者正ク明ス↢修業ノ時節ニ延促有コトヲ↟異コトヲ。
・回行願生
^▽八には所修の行を回して、 弥陀仏国に生ぜんと願ずることを明かす。
~八ニ者明ス↧廻テ↢所修ノ行ヲ↡願コトヲ↞生ムト↢弥陀仏国ニ↡。
・迎接去時
^▽九には▼命終の時に臨みて聖来りて*迎接したまふ不同と、 *去時の遅疾とを明かす。
~九ニ者明ス↧臨テ↢命終ノ時ニ↡聖来テ迎接タマフ不同ト、去時ノ遅疾トヲ↥。
・華開遅疾
^▽十にはかしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
~十ニ者明ス↢到テ↠彼ニ華開ル遅疾ノ不同ヲ↡。
・開後得益
^▽十一には華開以後の得益に異なることあることを明か0454す。
~十一ニ者明ス↢華開已後ノ得益ニ有コトヲ↟異コト。
一 Ⅱ ⅰ a ロ (二)例結余品
(Ⅰ)正例結
^▼いまこの十一門の義は、 九品の文に約対するに、 一々の品のなかにつきてみなこの十一あり。 すなはち*一百番の義となす。 またこの十一門の義は、 上輩の文 前につきて、 総じて料簡するもまた得たり。 あるいは中・下輩の文 前につきて、 おのおの料簡するもまた得たり。
~今此ノ十一門ノ義者、約↢対ルニ九品之文ニ↡、就テ↢一一ノ品ノ中ニ↡皆有リ↢此ノ十一↡。即チ為ス↢一百番ノ義ト↡也。又此ノ十一門ノ義ハ、就テ↢上輩ノ文前ニ↡総テ料簡ルモ亦得タリ。或ハ就テ↢中・下輩ノ文前ニ↡、各ノ料簡ルモ亦得タリ。
一 Ⅱ ⅰ a ロ (二)(Ⅱ)弁具欠
^また*この義もし文をもつて来し勘ふれば、 すなはち具・不具あり。 *隠顕ありといへども、 もしその道理によらばことごとくみなあるべし。 この因縁のためのゆゑに、 すべからく広開して顕出すべし。 依行するものをして解りやすく識りやすからしめんと欲す。
~又此ノ義若シ以テ↠文ヲ来シ勘フレバ者、即チ有リ↢具・不具↡。雖モ↠有ト↢隠顕↡、若シ拠バ↢其ノ道理ニ↡悉ク皆合シ↠有ル。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ、須クシ↢広開テ顕出ス↡。欲ス↠令メムト↢依行ル者ヲシテ易ク↠解リ易カラ↟識リ也。
一 Ⅱ ⅰ a ハ 結
^上来 十一門の不同ありといへども、 広く上輩三品の義 意を料簡しをはりぬ。
~上来雖モ↠有ト↢十一門ノ不同↡、広ク料↢簡シ上輩三品ノ義意ヲ↡竟ヌ。△
一 Ⅱ ⅰ b 別解釈
イ 正釈
(一)上上品【上品上生釈】
(Ⅰ)総標
【3】 ^次下に▼先づ*上品上生の位のなかにつきて、 また*先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその十二あり。
▲次下ニ先ヅ就テ↢上品上生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ十二↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)別釈
(ⅰ)告命
^▼一に ▲「仏0540告阿難」 より以下はすなはちならべて二の意を標す。
一ニ従リ↢「仏0761告阿難」↡已下ハ即チ双テ標ス↢二ノ意ヲ↡。
^◆一には告命を明かす。
▲一ニハ明ス↢告命ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)弁成其位
^▲二にはその位を弁定することを明かす。 これすなはち*大乗を修学する上善の凡夫人なり。
▲二ニハ明ス↣弁↢定コトヲ其ノ位ヲ↡。此即チ修↢学ル大乗ヲ↡上善ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅲ)総挙有縁
^◆三に ▲「若有衆生」 より下 「即便往生」 に至るこのかたは、 まさしく総じて*有生の類を挙ぐることを明かす。 すなはちその四あり。
三ニ従リ↢「若有衆生」↡下至ル↢「即便往生ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↣総テ挙コトヲ↢有生之類ヲ↡。即チ有リ↢其ノ四↡。
・能信人
^▲一には能信の人を明かす。
▲一ニハ明ス↢能信之人ヲ↡。
・求願往生
^▲二には往生を求願することを明かす。
▲二ニハ明ス↣求↢願コトヲ往生ヲ↡。
・発心
^▲三には*発心の多少を明かす。
▲三ニハ明ス↢発心ノ多少ヲ↡。
・得生益
^▲四には*得生の益を明かす。
▲四ニハ明ス↢得生之益ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)三心正因
(a)牒文総科
^◆四に ▲「何等0455為三」 より下 「必生彼国」 に至るこのかたは、 まさしく三心を弁定してもつて正因となすことを明かす。 すなはちその二あり。
四ニ従リ↢「何等為三」↡下至ル↢「必生彼国ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↧*弁↢定テ三心ヲ↡以テ為コトヲ↦正因ト↥。即チ有リ↢其ノ二↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)別釈文句
(イ)釈自徴
^◆一には*世尊、 *機に随ひて益を顕したまふこと*意密にして知りがたし、 仏のみづから問ひみづから徴したまふにあらずは、 解を得るに由なきことを明かす。
~一ニハ明ス↧世尊随テ↠機ニ顕タマフコト↠益ヲ意密ニシテ難シ↠知リ、非ズハ↢仏ノ自ラ問ヒ自ラ徴タマフニ↡、無キコトヲ↞由↠得ルニ↠解ヲ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)釈如来答数
[一]総示
^◆二には如来 (釈尊) 還りてみづから前の三心の数を答へたまふことを明かす。
~二ニハ明ス↣如来還テ自ラ答タマフコトヲ↢前ノ三心之数ヲ↡。△
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二]別釈
[Ⅰ]広釈三心体相
[ⅰ]【至誠心釈】
[a]牒文
【4】 ^▼¬経¼ (観経) にのたまはく、 「▲一には*↓至↓誠心」 と。
▲¬経ニ¼云ク、「一ニ者至誠心ト」。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b]釈義
[イ]釈名
^▼「↑至」 とは真なり、 「↑誠」 とは実なり。
~「至ト」者真ナリ、「誠ト」者実ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]解義
ª一º就利他直釈
ªⅠº略示勧誡
ªⅰº勧他力
^▼一切*衆生の*身口意業 所修の*解行、 *かならずすべからく*真実心のうちになすべきことを明かさんと欲す。
~欲ス↠明ムト↣一切衆生ノ身口意業所修ノ解行、必ズ須クキコトヲ↢真実心ノ中ニ作ス↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª一ºªⅠºªⅱº誡自力
^▼外に*賢善精進の相を現じ、 内に*虚仮を懐くことを得ざれ。
~不レ↠得↧外ニ現ジ↢賢善精進之相ヲ↡内ニ懐コトヲ↦虚仮ヲ↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª一ºªⅡº広弁機法
ªⅰº明機不実
ªaº正明機相
^◆*貪瞋・邪偽・奸詐百端にして、 *悪性侵めがたく、 事*蛇蝎に同じきは、 ▼*三業を起すといへども名づけて*雑毒の善となし、 また虚仮の行と名づく。 真実の業と名づけず。
~貪瞋・邪偽・奸詐百端ニシテ、悪性難ク↠侵メ、事同キハ↢蛇蝎ニ↡、雖モ↠起スト↢三業ヲ↡名テ為シ↢雑毒之善ト↡、亦名ク↢虚仮之行ト↡。不↠名ケ↢真実ノ業ト↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅰºªbº重斥自力
^▼もしかくのごとき*安心・*起行をなすものは、 たとひ▼身心を苦励して、 ▼*日夜十二時 急に*走り急になすこと、 *頭燃を救ふがごとくするものも、 すべて雑毒の善と名づく。 ▼この雑毒の行を回して、 かの仏の浄土に生ずることを求めんと欲せ ば、 これかならず不可なり。
~若シ作ス↢如キ↠此ノ安心・起行ヲ↡者ハ、縦使ヒ苦↢励テ身心ヲ↡、日夜十二時急ニ走リ急ニ作コト、如クスル↠灸フガ↢頭燃ヲ↡者モ、衆テ名ク↢雑毒之善ト↡。欲バ↧廻テ↢此ノ雑毒之行ヲ↡求メムト↞生コトヲ↢彼ノ仏ノ浄土ニ↡者、此必ズ不可也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱº顕法真実
^◆なにをもつてのゆゑに。 ▼まさしくかの*阿弥陀仏*因中に菩薩の行を行じたまひし時、 すなはち*一念0456一*刹那に至るまでも、 三業の所修、 みなこれ真実心のうちになしたまひ、 ▼*おほよそ*施為・趣求したまふところ、 またみな↓真実なるによりてなり。
~何ヲ以ノ故ニ。正ク由テナリ↧彼ノ阿弥陀仏因中ニ行タマヒシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、乃チ至マデモ↢一念一刹那ニ↡、三業ノ所修、皆是真実心ノ中ニ作タマヒ、凡ソ所↢施為趣求タマフ↡、亦皆真実ナルニ↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª二º分二利重弁
ªⅠº標列
^▼また↑真実に二種あり。 一0541には↓*自利 真実、 二には*利他 真実なり。
~又真実ニ有リ↢二種↡。一ニ者自利0762真実、二ニ者利他真実ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª二ºªⅡº随釈
ªⅰº明自利真実
ªaº明厭離真実
^▼↑自利真実といふは、 また二種あり。
~言フ↢自利真実ト↡者、復有リ↢二種↡。
・聖道厭離
^◆ 一には▼真実心のうちに、 自他の諸悪および*穢国等を*制捨して、 *行住坐臥に一切の菩薩の諸悪を制捨したまふに同じく、 われもまたかくのごとくならんと想ふなり。
~一ニ者真実心ノ中ニ、制↢捨テ自他ノ諸悪及ビ穢国等ヲ↡、行住坐臥ニ想フ↧同ク↣一切ノ菩薩ノ制↢捨タマフニ諸悪ヲ↡、我モ亦如クナラムト↞是ノ也。
・聖道欣求
^◆二には真実心のうちに、 自他 *凡聖等の善を勤修す。
~二ニ者真実心ノ中ニ、懃↢修ス自他凡聖等ノ善ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅰºªbº明欣求真実
・口業
^◆真実心のうちの*口業に、 かの阿弥陀仏および*依正二報を*讃歎す 。 また真実心のうちの口業に、 *三界・*六道等の自他の*依正二報の苦悪の事を*毀厭す。 また一切衆生の三業所為の善を讃歎す。 ▼もし善業にあらずは、 つつしみてこれを遠ざかれ、 また*随喜せざれ。
~真実心ノ中ノ口業ニ、讃↢歎ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ口業ニ、毀↢厭ス三界・六道等ノ自他ノ依正二報ノ苦悪之事ヲ↡。亦讃↢歎ス一切衆生ノ三業所為ノ善ヲ↡。若シ非ズハ↢善業ニ↡者、敬ミテ而遠カレ↠之ヲ、亦不レ↢随喜セ↡也。
・身業
^◆また真実心のうちの*身業に、 *合掌し*礼敬して、 *四事等をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を*供養す。 また真実心のうちの身業に、 この*生死三界等の自他の依正二報を軽慢し厭捨す。
~又真実心ノ中ノ身業ニ、合掌シ礼敬テ、四事等ヲモテ供↢養ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ身業ニ、軽↢慢シ厭↣捨ス此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。
・意業
^◆また真実心のうちの*意業に、 かの阿弥陀仏および依正二報を思想し*観察し*憶念して、 目の前に現ずるがごとくす 。 また真実心のうちの意業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽賎し厭捨す。
~又真実心ノ中ノ意業ニ、思↢想シ観↣察シ憶↤念テ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡、如クス↠現ルガ↢目ノ前ニ↡。又真実心ノ中ノ意業ニ、軽↢賎シ厭↣捨ス此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª二ºªⅱº明利他真実
ªaº別明
^▼*不善の三業0457は、 かならずすべからく真実心のうちに捨つべし。 *またもし▼善の三業を起さば、 かならずすべからく真実心のうちになすべし。
~不善ノ三業ハ、必ズ須クシ↢真実心ノ中ニ捨ツ↡。又若シ起バ↢善ノ三業ヲ↡者、必ズ須クシ↢真実心ノ中ニ作ス↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]ª二ºªⅱºªbº総結
^◆*内外明闇を簡ばず、 みなすべからく真実なるべし。
~不↠簡バ↢内外明闇ヲ↡、皆須クシ↢真実ナル↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][c]結名
^◆ゆゑに至誠心と名づく。
~故ニ名ク↢「至誠心ト」↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]【深心釈】
[a]牒文
【5】 ^「▲二には*深心」 と。
~「二ニ者深心ト」。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b]釈義
[イ]釈名義
[ロ]明信相
ª一º深信機法【二種深信】
ªⅠº標数
^◆「深心」 といふはすなはちこれ深く信ずる心なり。 また二種あり。
~言フ「深心ト」↡者即チ是深ク信ル之心也。亦有リ↢二種↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª一ºªⅡº列釈
ªⅰº明信機
^▼一には▼決定して深く、 自身は現にこれ▼*罪悪生死の凡夫 、 *曠劫よりこのかたつねに没しつねに*流転して、 ▼*出離の*縁あることなしと信ず。
~一ニ者決定テ深ク信ズ↢自身ハ現ニ是罪悪生死ノ凡夫、曠劫ヨリ已来タ常ニ没シ常ニ流転テ、無シト↟有コト↢出離之縁↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱº明信法
^▼二には▼決定して深く、 かの▼阿弥陀仏の、 ▼*四十八願は衆生を*摂受0542したまふこと、 疑なく慮りなくかの*願力に乗じてさだめて往生を得と信ず。
~二ニ者決定テ深ク信ズ↧彼ノ阿弥陀仏ノ四十八願ハ摂↢受タマフコト衆生ヲ↡、無ク↠疑無ク↠慮0763リ乗テ↢彼ノ願力ニ↡定テ得ト↦往生ヲ↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª二º深信観経
【6】 ^▼また決定して深く、 釈迦仏、 この ¬*観経¼ の三福・九品・*定散二善を説きて、 かの仏の依正二報を証讃して、 人をして欣慕せしめたまふと信ず。
~又決定テ深ク信ズ↧釈迦仏説テ↢此ノ¬観経ノ¼三福・九品・定散二善ヲ↡、証↢讃テ彼ノ仏ノ依正二報ヲ↡、使タマフト↦人ヲシテ欣慕セ↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª三º深信小経
^▼また決定して深く、 ¬*弥陀経¼ のなかに、 *十方*恒沙の諸仏、 一切の凡夫 決定して生ずることを得と証勧したまふと信ず。
~又決定テ深ク信ズ↣¬弥陀経ノ¼中ニ、十方恒沙ノ諸仏証↢勧タマフト一切ノ凡夫決定テ得ト↟生コトヲ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª四º唯信仏語
^▼また深信とは、 仰ぎ願はくは、 一切の行者等、 一心にただ*仏語を信じて身命を顧みず、 決定して依行し、 ▼仏の捨てしめたまふをばすなはち捨て、 ▼仏の行ぜしめたまふをばすなはち行じ、 ▼仏の去らしめたまふ処をばすなはち去る。 ▼これを仏教に随順し、 ▼仏意に随順すと名づけ、 ▼これを*仏願に随順すと名づく。 ▼これを*真の仏弟子と名づく。
~又深信ト者、仰ギ願クハ、一切ノ行者等、一心ニ唯信テ↢仏語ヲ↡不↠顧ミ↢身命ヲ↡、決定テ依行シ、仏ノ遣タマフヲ↠捨テ者即チ捨テ、仏ノ遣タマフヲ↠行ゼ者即チ行ジ、仏ノ遣タマフヲ↠去ラ処ヲバ即チ去ル。是ヲ名ケ↧随↢順シ仏教ニ↡随↦順スト仏意ニ↥、是ヲ名ク↣随↢順スト仏願ニ↡。是ヲ名ク↢真ノ仏弟子ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五º依観経信
ªⅠº総標信得
^◆また一切の行者ただ0458よくこの ¬経¼ (観経) によりて深く信じて行ずるものは、 かならず衆生を誤たず。
~又一切ノ行者但能ク依テ↢此ノ¬経ニ¼↡深ク信テ行ル者ハ、必ズ不↠悞タ↢衆生ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五ºªⅡº別顕可信
ªⅰº略示
^◆なにをもつてのゆゑに。 仏はこれ*大悲を満足したまへる人なるがゆゑなり、 *実語したまふがゆゑなり。
~何ヲ以ノ故ニ。仏ハ是満↢足タマヘル大悲ヲ↡人ナルガ故ナリ、実語タマフガ故ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五ºªⅡºªⅱº広顕
ªaº挍説人分満
^◆仏を除きて以還は、 *智行いまだ満たず。 その*学地にありて、 *正習の二障ありていまだ 除こらざるによりて、 *果願いまだ円かならず。
~除テ↠仏ヲ已還ハ、智行未ダ↠満タ。在テ↢其ノ学地ニ↡、由テ↧有テ↢正習ノ二障↡未ダルニ↞除ラ、果願未ダ↠円カナラ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五ºªⅡºªⅱºªbº挍教語虚実
ªイº明因説必要果証
^◆これらの凡聖はたとひ諸仏の教意を*測量すれども、 いまだ決了することあたはず。 *平章することありといへども、 かならずすべからく仏証を請じて定となすべし。 ▼もし仏意に称へば すなはち*印可して、 「*如是如是」 とのたまふ。 ▼もし仏意に可はざれば、 すなはち 「なんぢらが所説この義不如是」 とのたまふ。
~此等ノ凡聖ハ縦使ヒ測↢量ドモ諸仏ノ教意ヲ↡、未ダ↠能ハ↢決了コト↡。雖モ↠有ト↢平章コト↡、要ズ須クシ↧請テ↢仏証ヲ↡為ス↞定ト也。若シ称バ↢仏意ニ↡、即チ印可テ言フ↢如是如是ト↡。若シ不レバ↠可ハ↢仏意ニ↡者、即チ言フ↢汝等ガ所説是ノ義不如是ト↡。
^▼印せざるはすなはち*無記・無利・無益の語に同ず。 ▼仏の印可したまふは、 すなはち仏の正教に随順す。 ▼もし仏のあらゆる言説なれば、 ▼すなはちこれ*正教・正義・正行・正解・正業・正智なり。
~不ル↠印セ者即チ同ズ↢無記・無利・無益之語ニ↡。仏ノ印可タマフ者即チ随↢順ス仏之正教ニ↡。若シ仏ノ所有ル言説ナレバ、即チ是正教・正義・正行・正解・正業・正智ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五ºªⅡºªⅱºªbºªロº明果説必不要因証
^◆もしは多、 もしは少、 すべて菩薩・人・天等に問ひて、 その是非を定めざれ。 ▼もし仏の所説なれば、 すなはちこれ*了教なり。 ▼菩薩等の説はことごとく不了教と名づく、 知るべし。
~若ハ多若ハ少、衆テ不レ↧問テ↢菩薩・人・天等ニ↡、定メ↦其ノ是非ヲ↥也。若シ仏ノ所説ナレバ即チ是了教ナリ。菩薩等ノ説ハ尽ク名ク↢不了教ト↡也、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª五ºªⅢº結示勧誡
^◆このゆゑにいまの時、 仰ぎて一切有縁の往生人等を勧む。 ただ0543深く仏語を信じて*専注奉行すべし。 菩薩等の*不相応の教を信用して、 もつて疑礙をなし 、 *惑を抱きてみ0459づから迷ひ 、 往生の大益を廃失すべからず。▼
~是ノ故ニ今ノ時、仰テ勧ム↢一切有縁ノ往生人等ヲ↡。唯可シ↧深ク信テ↢仏0764語ヲ↡専注奉行ス↥。不↠可ラ↧信↢用テ菩薩等ノ不相応ノ教ヲ↡、以テ為シ↢疑礙ヲ↡、抱テ↠惑ヲ自ラ迷ヒ、廃↦失ス往生之大益ヲ↥也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六º建立自心
ªⅠº略示
【7】 ^▼また深心は 「深き信なり」 といふは、 決定して自心を建立して、 教に順じて修行し 、 永く疑錯を除きて、 一切の▼*別解・別行・▼*異学・異見・異執のために、 退失し*傾動せられざるなり。
~又深心ハ深キ信ナリトイフ者、決定テ建↢立テ自心ヲ↡、順テ↠教ニ修行シ、永ク除テ↢疑錯ヲ↡、不ル↧為ニ↢一切ノ別解・別行・異学・異見・異執ノ↡之所レ↦退失シ傾動セ↥也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡº広説
ªⅰº問
^▼問ひていはく、 凡夫は智浅く 、 *惑障処すること深し。 もし▼*解行不同の人多く経論を引きて来りてあひ妨難し、 証して 「一切の罪障の凡夫往生を得ず」 といふに逢はば、 いかんがかの難を*対治して、 信心を成就して、 決定してただちに進みて、 *怯退を生ぜざらんや。
~問テ曰ク、凡夫ハ智浅ク、惑障処コト深シ。若シ逢バ↧解行不同ノ人多ク引テ↢経論ヲ↡来テ相ヒ妨難シ、証テ云フニ↦一切ノ罪障ノ凡夫不ト↞得↢往生ヲ↡者、云何ガ対↢治テ彼ノ難ヲ↡、成↢就テ信心ヲ↡、決定テ直ニ進テ、不ラム↠生ゼ↢怯退ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡºªⅱº答
ªaº明就人立信【四重破人】
ªイº正明
ˆ一ˇ凡夫
^◆答へていはく、 もし人ありて多く経論を引きて証して 「生ぜず」 といはば、 行者すなはち報へていへ。 「なんぢ経論をもつて来し証して ª生ぜずº といふといへども、 わが意のごときは決定してなんぢが破を受けず。
~答テ曰ク、若シ有テ↠人多ク引テ↢経論ヲ↡証テ云ハバ↠不ト↠生ゼ者、行者即チ報テ云ヘ。仁者雖モ↧将テ↢経論ヲ↡来シ証テ噵フト↞不ト↠生ゼ、如キ↢我ガ意ノ↡者決定テ不↠受ケ↢汝ガ破ヲ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに。 しかるにわれまた、 これかのもろもろの経論を信ぜざるにはあらず。 ことごとくみな仰信す。
~何ヲ以ノ故ニ。然ニ我亦、不ズ↢是不ルニハ↟信ゼ↢彼ノ諸ノ経論ヲ↡。尽ク皆仰信ス。
^◆しかるに仏かの経を説きたまふ時は、 ▼*処別・時別・*対機別・利益別なり。 またかの経を説きたまふ時は、 すなはち ¬観経¼・¬弥陀経¼ 等を説きたまふ時にあらず。 しかるに仏の説教は*機に備ふ、 時また不同なり。
~然ニ仏説タマフ↢彼ノ経ヲ↡時ハ、処別・時別・対機別・利益別ナリ。又説タマフ↢彼ノ経ヲ↡時ハ、即チ非ズ↧説タマフ↢¬観経¼・¬弥陀経¼等ヲ↡時ニ↥。然ニ仏ノ説教ハ備フ↠機ニ、時亦不同ナリ。
^◆かれ すなはち通じて人・天・菩薩の解行を説く。 い0460ま ¬観経¼ の定散二善を説きたまふことは、 ただ韋提および仏 滅後の*五濁・*五苦等の一切 凡夫のために、 証して ª生ずることを得º とのたまふ。
~彼即チ通テ説ク↢人・天・菩薩之解行ヲ↡。今説タマフコトハ↢¬観経ノ¼定散二善ヲ↡、唯為ニ↢韋提及ビ仏滅後ノ五濁・五苦等ノ一切凡夫ノ↡、証テ言フ↠得ト↠生コトヲ。
^◆この因縁のために、 われいま一心にこの仏教によりて決定して奉行す。 たとひなんぢら百千万億ありて ª生ぜずº といふとも、 ただわが▼往生の信心を増長し成就せん」 と。
~為ニ↢此ノ因縁ノ↡、我今一心ニ依テ↢此ノ仏教ニ↡決定テ奉行ス。縦使ヒ汝等百千万億アリテ噵トモ↠不ト↠生ゼ者、唯増↢長シ成↣就ムト我ガ往生ノ信心ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡºªⅱºªaºªイºˆ二ˇ賢聖
^◆また行者さらに向かひて説きていへ。 「なんぢよく聴け、 われいまなんぢがためにさらに決定の信 相を説かん。
~又行者更ニ向テ説テ言ヘ。仁者善ク聴ケ、我今為ニ↠汝ガ更ニ説ム↢決定ノ信相ヲ↡。
^◆たとひ*地前の菩薩・*羅漢・*辟支等、 もし0544は一、 もしは多、 乃至、 十方に*遍満して、 みな経論を引きて証して ª生ぜずº といふとも、 ◆われまたいまだ一念の疑心を起さず。 ただわが▼清浄の信心を増長し成就せん。
~縦使ヒ地前ノ菩薩・羅漢・辟支等、若ハ一若ハ多、乃至0765遍↢満テ十方ニ↡、皆引テ↢経論ヲ↡証テ言トモ↠不ト↠生ゼ者、我亦未ダ↠起サ↢一念ノ疑心ヲ↡。唯増↢長シ成↣就ム我ガ清浄ノ信心ヲ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに。 仏語は決定成就の了義にして、 一切のために破壊せられざるによるがゆゑなり」 と。
~何ヲ以ノ故ニ。由ルガ↫仏語ハ決定成就ノ了義ニシテ、不ルニ↪為ニ↢一切ノ↡所レ↩破壊セ↨故ナリト。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡºªⅱºªaºªイºˆ三ˇ地上
^◆また行者よく聴け。 ◆たとひ*初地以上十地以来、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に遍満して、 異口同音にみないはく、 「釈迦仏、 弥陀を指讃し、 三界・六道を*毀呰し、 衆生を勧励し 、 ª専心に念仏し、 ▼および余善を修すれば、 この一身を畢へて後必定してかの国に生ずº といふは、 これかならず虚妄なり、 依信すべからず」 と。
~又行者善ク聴ケ。縦使ヒ初地已上十地已来、若ハ一若ハ多、乃至遍↢満テ十方ニ↡、異口同音ニ皆云ク、釈迦仏指↢讃シ弥陀ヲ↡、毀↢呰シ三界・六道ヲ↡、勧↢励シ衆生ヲ↡、専心ニ念仏シ、及ビ修レバ↢余善ヲ↡、畢テ↢此ノ一身ヲ↡後必定テ生ズトイフ↢彼ノ国ニ↡者、此必ズ虚妄ナリ、不↠可ラ↢依信ス↡也。
^◆われこれらの所説を聞くといへども、 また一念の疑心を生ぜず。 ただわが決定▼上上の信心を増0461長し成就せん。
~我雖モ↠聞クト↢此等ノ所説ヲ↡、亦不↠生ゼ↢一念ノ疑心ヲ↡。唯増↢長シ成↣就ム我ガ決定上上ノ信心ヲ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに。 ▼すなはち仏語は真実*決了の義なるによるがゆゑなり。 仏はこれ実知・実解・実見・実証にして、 これ疑惑心 中の語にあらざるがゆゑなり。 ▼また一切の菩薩の異見・異解のために破壊せられず。 もし実にこれ菩薩ならば、 すべて仏教に違せじ。
~何ヲ以ノ故ニ。乃チ由ルガ↢仏語ハ真実決了ノ義ナルニ↡故ナリ。仏ハ是実知・実解・実見・実証ニシテ、非ルガ↢是疑惑心中ノ語ニ↡故ナリ。又不↧為ニ↢一切ノ菩薩ノ異見・異解ノ↡之所レ↦破壊セ↥。若シ実ニ是菩薩ナラバ者、衆テ不↠違セ↢仏教ニ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡºªⅱºªaºªイºˆ四ˇ報化
ˆⅠˇ標
^◆またこの事を置く、 行者まさに知るべし。
~又置ク↢此ノ事ヲ↡、行者当ニシ↠知ル。
~ ˆ四ˇˆⅡˇ釈
ˆⅰˇ出離破
^◆たとひ化仏・*報仏、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に遍満して、 おのおの 光を輝かし、 舌を吐きてあまねく十方に覆ひて、 一々に説きてのたまはく、 「釈迦の所説に、 あひ讃めて一切の凡夫を勧発して、 ª専心に念仏し、 および余善を修して、 *回願すればかの浄土に生ずることを得º といふは、 これはこれ虚妄なり、 さだめてこの事なし」 と。
~縦使ヒ化仏・報仏、若ハ一若ハ多、乃至遍↢満テ十方ニ↡、各各輝カシ↠光ヲ、吐テ↠舌ヲ遍ク覆テ↢十方ニ↡、一一ニ説テ言ク、釈迦ノ所説ニ、相ヒ讃テ勧↢発テ一切ノ凡夫ヲ↡、専心ニ念仏シ、及ビ修テ↢余善ヲ↡廻願レバ得トイフ↠生コトヲ↢彼ノ浄土ニ↡者、此ハ是虚妄ナリ、定テ無シト↢此ノ事↡也。
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇ明不受
ˆaˇ総示
^◆われこれらの諸仏の所説を聞くといへども、 ▼*畢竟じて、 一念疑退の心を起してかの仏 国に生ずることを得ざることを畏れず。
~我雖モ↠聞クト↢此等ノ諸仏ノ所説ヲ↡、畢竟テ、不↧起テ↢一念疑退之心ヲ↡畏レ↞不コトヲ↠得↠生コトヲ↢彼ノ仏国ニ↡也。
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇˆbˇ別明
ˆイˇ徴
ˆロˇ釈
(一)立理
(Ⅰ)明仏々平等
^◆なにをもつてのゆゑに。 一仏は一切仏なり、 あらゆる知見・解行・証悟・果位・大悲、 等同にして少しき 差別もなし。
~何ヲ以ノ故ニ。一仏ハ一切仏ナリ、所有ル知見・解行・証悟・果位・大悲、等同ニシテ無シ↢少シキ差別モ↡。
^◆このゆゑに一仏の制0545したまふところは、 すなはち一切仏同じく制したまふ。 前仏、 殺生・十悪等の罪を制断したまひ、 畢竟じて犯さず行ぜざるをば、 すなはち*十善・*十行にして*六度の義に随順すと名づけたまふがごとき、 もし後仏、 出世したまふことあらんに、 あ0462に前の十善を改めて十悪を行ぜしめたまふべけんや。
~是ノ故ニ一仏ノ所ハ↠制タマフ、即チ一切0766仏同ク制タマフ。如↫似キ前仏制↢断タマヒ殺生・十悪等ノ罪ヲ↡、畢竟テ不↠犯サ不ルヲバ↠行ゼ者、即チ名タマフ↪十善・十行ニシテ随↩順スト六度之義ニ↨、若シ有ラムニ↢後仏出世タマフコト↡、豈ニ可ケム↧改テ↢前ノ十善ヲ↡令タマフ↞行ゼ↢十悪ヲ↡也。
^◆この道理をもつて*推験するに、 あきらかに知りぬ、▼ ▼諸仏の言行はあひ違失せざることを。
~以テ↢此ノ道理ヲ↡推験ルニ、明ニ知ヌ、諸仏ノ言行ハ不コトヲ↢相ヒ違失セ↡。
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇˆbˇˆロˇ(一)(Ⅱ)示二仏同勧
^◆たとひ▼釈迦一切の凡夫を指勧して、 「▼この一身を尽すまで専念 専修すれば、 捨命以後さだめてかの国に生ず」 とのたまはば、 ▼すなはち十方の諸仏ことごとくみな同じく讃め、 同じく勧め、 同じく証したまはん。 なにをもつてのゆゑに。 *同体の大悲なるがゆゑなり。 ▼一仏の*所化は、 すなはちこれ一切仏の化なり。 一切仏の化は、 すなはちこれ一仏の所化なり。
~縦令ヒ釈迦指↢勧テ一切ノ凡夫ヲ↡、尽マデ↢此ノ一身ヲ↡専念専修レバ、捨命已後定テ生ストノタマハバ↢彼ノ国ニ↡者、即チ十方ノ諸仏悉ク皆同ク讃メ、同ク勧メ、同ク証タマハム。何ヲ以ノ故ニ。同体ノ大悲ナルガ故ナリ。一仏ノ所化ハ即チ是一切仏ノ化ナリ。一切仏ノ化ハ即チ是一仏ノ所化ナリ。
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇˆbˇˆロˇ(二)引証
(Ⅰ)正引
(ⅰ)依正荘厳分
^◆すなはち ¬弥陀経¼ のなかに説きたまふ。 ▼釈迦*極楽の種々の*荘厳を讃歎し、
~即チ¬弥陀経ノ¼中ニ説タマフ。釈迦讃↢歎シ極楽ノ種種ノ荘厳ヲ↡、
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇˆbˇˆロˇ(二)(Ⅰ)(ⅱ)往生行相分
^▲また 「一切の凡夫、 一日七日、 ▼一心にもつぱら弥陀の*名号を念ずれば、 ▲さだめて往生を得」 (意) と勧めたまひ、
~又勧タマヒ↧一切ノ凡夫一日七日一心ニ専ラ念レバ↢弥陀ノ名号ヲ↡、定テ得ト↦往生ヲ↥、
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇˆbˇˆロˇ(二)(Ⅰ)(ⅲ)互相讃徳分
^◆次下の文に (小経・意)、 「▲十方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 同じく釈迦よく五濁悪時、 悪世界、 悪衆生、 悪見、 悪煩悩、 悪邪、 無信の盛りなる時において、 弥陀の名号を指讃して、 ª衆生 称念すればかならず往生を得º と勧励したまふを讃じたまふ」 とのたまふは、 すなはちその証なり。
~次下ノ文ニ、云フハ↱十方ニ各ノ有シテ↢恒河沙等ノ諸仏↡、同ク讃タマフト↫釈迦能ク於テ↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪見・悪煩悩・悪邪・無信ノ盛ナル時ニ↡、指↢讃テ弥陀ノ名号ヲ↡、勧↪励タマフヲ衆生称念レバ必ズ得ト↩往生ヲ↨、即チ其ノ証也。
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇˆbˇˆロˇ(二)(Ⅰ)(ⅳ)諸仏証誠分
^▼また十方の仏等、 衆生の釈迦一仏の所説を信ぜざることを恐畏れて、 すなはちともに同心同時に、 おのおの*舌相を出してあまねく*三千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまふ。 「▼なんぢら衆生0463、 みなこの釈迦の所説・所讃・所証を信ずべし。 一切の凡夫、 罪福の多少、 *時節の久近を問はず、 ただよく上百年を尽し、 下一日七日に至るまで、 一心にもつぱら弥陀の名号を念ずれば、 さだめて往生を得ること、 かならず疑なし」 と。
~又十方ノ仏等、恐↢畏テ衆生ノ不コトヲ↟信ゼ↢釈迦一仏ノ所説ヲ↡、即チ共ニ同心同時ニ各ノ出テ↢舌相ヲ↡遍ク覆テ↢三千世界ニ↡、説タマフ↢誠実ノ言ヲ↡。汝等衆生皆応シ↠信ズ↢是ノ釈迦ノ所説・所讃・所証ヲ↡。一切ノ凡夫不↠問ハ↢罪福ノ多少、時節ノ久近ヲ↡、但能ク上尽シ↢百年ヲ↡下至マデ↢一日七日ニ↡、一心ニ専ラ↢念レバ弥陀ノ名号ヲ↡、定テ得コト↢往生ヲ↡必ズ無シト↠疑也。
~ ˆ四ˇˆⅡˇˆⅱˇˆbˇˆロˇ(二)(Ⅱ)結証
^◆このゆゑに▼一仏の所説は、 すなはち一切 仏同じくその事を*証誠したまふ。
~是ノ故ニ一仏ノ所説ハ、即チ一切仏同ク証↢誠タマフ其ノ事0767ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡºªⅱºªaºªロº結名【就人立信】
^▼これ0546を*人に就きて信を立つと名づく。▼
~此ヲ名ク↢就テ↠人ニ立ツト↟信ヲ也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡºªⅱºªbº【就行立信】
ªイº標目
ªロº正明【正雑二行】
ˆ一ˇ標列
【8】 ^▼次に▼*行に就きて信を立つといふは、 しかるに行に二種あり。 一には↓*正行、 二には↓*雑行なり。
~次ニ就テ↠行ニ立ツトイフ↠信ヲ者、然ニ行ニ有リ↢二種↡。一ニ者正行、二ニ者雑行ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][b][ロ]ª六ºªⅡºªⅱºªbºªロºˆ二ˇ随釈
~ ˆⅠˇ明行相
ˆⅰˇ正行
ˆaˇ総示
^◆↑正行といふは、 もつぱら*往生 経の行によりて行ずるは、 これを正行と名づく。
~言フ↢正行ト↡者、専ラ依テ↢往生経ノ行ニ↡行ル者、是ヲ名ク↢正行ト↡。
~ ˆ二ˇˆⅠˇˆⅰˇˆbˇ別顕
ˆイˇ開
^▼何者かこれなるや。 ▼一心にもつぱらこの ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬*無量寿経¼ 等を*読誦し、 一心に専注してかの国の*二報荘厳を思想し観察し憶念し、 もし礼するにはすなはち一心にもつぱらかの仏を 礼し、 もし口に称するにはすなはち一心にもつぱらかの仏を称し、 もし*讃歎供養するにはすなはち一心にもつぱら讃歎 供養す、 これを名づけて正となす。
~何者カ是ナル也。一心ニ専ラ読↢誦シ此ノ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬無量寿経¼等ヲ↡、一心ニ専注テ思↢想シ観↣察シ憶↤念シ彼ノ国ノ二報荘厳ヲ↡、若シ礼ルニハ即チ一心ニ専ラ礼シ↢彼ノ仏ヲ↡、若シ口ニ称ルニハ即チ一心ニ専ラ称シ↢彼ノ仏ヲ↡、若シ讃歎供養ルニハ即チ一心ニ専ラ讃歎供養ス、是ヲ名テ為ス↠正ト。
~ ˆ二ˇˆⅠˇˆⅰˇˆbˇˆロˇ合【正助二業】
(一)標
^▼またこの正のなかにつきてまた二種あり。
~又就テ↢此ノ正ノ中ニ↡復有リ↢二種↡。
~ ˆ二ˇˆⅠˇˆⅰˇˆbˇˆロˇ(二)釈
(Ⅰ)明正業
^▼一には▼一心にもつぱら弥陀の名号を念じて、 行住坐臥に▼時節の久近を問はず念々に捨てざるは、 これを*正定の業と名づく、 かの仏の願に順ずるがゆゑなり。
~一ニ者一心ニ専ラ念テ↢弥陀ノ名号ヲ↡、行住坐臥ニ不↠問ハ↢時節ノ久近ヲ↡念念ニ不ル↠捨テ者、是ヲ名ク↢正定之業ト↡、順ルガ↢彼ノ仏願ニ↡故ナリ。
~ ˆ二ˇˆⅠˇˆⅰˇˆbˇˆロˇ(二)(Ⅱ)指助業
^▼もし*礼誦等によるを すなはち名づけて*助業となす。
~若シ依ルヲ↢礼誦等ニ↡即チ名テ為ス↢助業ト↡。
~ ˆ二ˇˆⅠˇˆⅱˇ雑行
^▼こ0464の正助二行を除きて以外の自余の諸善はことごとく▼↑雑行と名づく。
~除テ↢此ノ正助二行ヲ↡已外ノ自余ノ諸善ハ悉ク名ク↢雑行ト↡。
~ ˆ二ˇˆⅡˇ判得失
^◆もし前の正助二行を修すれば、 心つねに ˆ阿弥陀仏にˇ 親近して▼憶念 断えず、 名づけて*無間となす。 もし後の雑行を行ずれば、 すなはち▼心つねに*間断す、 ▼回向して生ずることを得べしといへども、 ▼すべて疎雑の行と名づく。
~若シ修レバ↢前ノ正助二行ヲ↡、心常ニ親近テ憶念不↠断エ、名テ為ス↢無間ト↡也。若シ行レバ↢後ノ雑行ヲ↡、即チ心常ニ間断ス、雖モ↠可シト↢廻向テ得↟生コトヲ、衆テ名ク↢疎雑之行ト↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ][c]結名
^◆ゆゑに深心と名づく。
~故ニ名ク↢「深心ト」↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ]【回向発願心釈】
[a]牒文
【9】 ^▲「三には*回向発願心」 と。
~「三ニ者廻向発願心ト」。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b]釈義
[イ]明自利廻願
^◆「回向発願心」 といふは、 ▼過去および今生の身口意業 所修の*世・出世の善根と、 および他の一切 *凡聖の身口意業 所修の世・出世の善根を*随喜せると、 この自他の所修の善根をもつて、 ことごとくみな▼真実の深信の心 中に回向して、 かの国に生ぜんと願ず。 ゆゑに回向発願心と名づく。
~言フ↢「廻向発願心ト」↡者、過去及以ビ今生ノ身口意業所修ノ世・出世ノ善根ト、及ビ随↢喜ルト他ノ一切凡聖ノ身口意業ノ所修ノ世・出世ノ善根ヲ↡、以テ↢此ノ自他ノ所修ノ善根ヲ↡悉ク皆真実ノ深信ノ心中ニ廻向テ願ズ↠生ムト↢彼ノ国ニ↡。故ニ名ク↢「廻向発願心ト」↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]明利他廻願
ª一º約往相
ªⅠº略示
^▼また回向発願して生ぜんと願ずるものは、 *かならずすべからく決定真実心のうちに回向し願じて、 ▼*得生の想をなすべし。
~又廻向発願テ願ル↠生ムト者ハ必ズ須クシ↣決定真実心ノ中ニ廻向シ願テ、作ス↢得生ノ想ヲ↡。
^▼この心深信せること金剛のごとくなるによりて、 ▼一切0547の異見・異学・別解・別行の人等のために動乱破壊せられず。 ただこれ決定して一心に捉りて、 正直に進み、 かの人の語を聞きて、 すなはち進退 あり 、 心に*怯弱を生ずることを得ざれ。 *回顧すれば*道より落ちて、 すなはち往生の大益を失するなり。
~此ノ心深信コト由0768テ↠若クナルニ↢金剛ノ↡、不↧為ニ↢一切ノ異見・異学・別解・別行ノ人等ノ↡之所レ↦動乱破壊セ↥。唯是決定テ一心ニ*捉テ正直ニ進ミ、不レ↠得↧聞テ↢彼ノ人ノ語ヲ↡即チ有リ↢進退↡、心ニ生コトヲ↦怯弱ヲ↥。廻顧レバ落テ↠道ヨリ、即チ失ル↢往生之大益ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡº広説
ªⅰº法説
ªaº問
【10】^▼問ひていはく、 もし解行不同の邪雑 人等ありて、 来りてあひ惑乱し、 ある0465いは種々の疑難を説きて、 「往生を得ず」 といひ、 あるいはいはく、 「▼なんぢら衆生、 曠劫よりこのかたおよび今生の身口意業に、 一切凡聖の身の上においてつぶさに▼十悪・*五逆・*四重・*謗法・闡提・破戒・破見等の罪を造りて、 いまだ除尽することあたはず。 しかるにこれらの罪は三界の悪道に*繋属す。 いかんぞ一生の修福の念仏をもつてすなはちかの*無漏*無生の国に入りて、 永く*不退の位を証悟することを得んや」 と。
~問テ曰ク、若シ有テ↢解行不同ノ邪雑人等↡、来テ相ヒ惑乱シ、或ハ説テ↢種種ノ疑難ヲ↡、噵ヒ↠不ト↠得↢往生ヲ↡、或ハ云ク、汝等衆生曠劫ヨリ已来タ及以ビ今生ノ身口意業ニ、於テ↢一切凡聖ノ身ノ上ニ↡具ニ造テ↢十悪・五逆・四重・謗法・闡提・破戒・破見等ノ罪ヲ↡、未ダ↠能ハ↢除尽コト↡。然ニ此等之罪ハ繋↢属ス三界ノ悪道ニ↡。云何ゾ一生ノ修福ノ念仏ヲモテ即チ入テ↢彼ノ無漏無生之国ニ↡、永ク得ム↣証↢悟コトヲ不退ノ位ヲ↡也ト。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅰºªbº答
ªイº明教行非一
^◆答へていはく、 諸仏の教行、 数*塵沙に越えたり。 *稟識の機縁、 情に随ひて一にあらず。
~答テ曰ク、諸仏ノ教行、数越タリ↢塵沙ニ↡。稟識ノ機縁随テ↠情ニ非ズ↠一ニ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅰºªbºªロº明教益多門
^▼たとへば世間の人の眼に見るべく信ずべきがごときは、 明 よく闇を破し、 空よく有を含み、 地よく*載養し、 水よく*生潤し、 火よく*成壊するがごときなり。 かくのごとき等の事をことごとく*待対の法と名づく。 すなはち目に見るべし、 千差万別なり。 いかにいはんや仏法不思議の力、 あに種々の益なからんや。
~譬バ如キ↢世間ノ人ノ眼ニ可ク↠見ル可キガ↟信ズ者、如キナリ↢明能ク破シ↠闇ヲ、空能ク含ミ↠有ヲ、地能ク載養シ、水能ク生潤シ、火能ク成壊ルガ↡。如キ↠此ノ等ノ事ヲ悉ク名ク↢待対之法ト↡。即チ目ニ可シ↠見ル、千差万別ナリ。何ニ況ヤ仏法不思議之力、豈ニ無ラム↢種種ノ益↡也。
^▼随ひて一門を出づれば、 すなはち一煩悩の門を出づ。 ▼随ひて一門に入れば、 すなはち一解脱智慧の門に入る。
~随テ出レバ↢一門ヲ↡者、即チ出ヅ↢一煩悩ノ門ヲ↡也。随テ入レバ↢一門ニ↡者、即チ入ル↢一解脱智慧ノ門ニ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅰºªbºªハº明随縁起行
^◆これがために縁に随ひて行を起して、 おのおの解脱を求めよ。
~為ニ↠此ガ随テ↠縁ニ起テ↠行ヲ、各ノ求ヨ↢解脱ヲ↡。
^▼なんぢ、 なにをもつてかすなはち*有縁の要行にあらざる をもつてわれを障惑するや。 ▼しかるにわが所愛は、 すなはちこれわが有縁の行なり。 すなはちなんぢが所求にあらず。 ▼なんぢ0466が所愛は、 すなはちこれなんぢが有縁の行なり。 またわが所求にあらず。 このゆゑにおのおの*所楽に随ひてその行を修すれば、 かならず疾く解脱を得。
~汝何ヲ以カ乃チ将テ↠非ルヲ↢有縁之要行ニ↡障↢惑ルヤ於我ヲ↡。然ニ我ガ之所愛ハ、即チ是我ガ有縁之行ナリ。即チ非ズ↢汝ガ所求ニ↡。汝ガ之所愛ハ、即チ是汝ガ有縁之行ナリ。亦非ズ↢我ガ所求ニ↡。是ノ故ニ各ノ随テ↢所楽ニ↡而修レバ↢其ノ行ヲ↡者、必ズ疾0769ク得↢解脱ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅰºªbºªニº明解行旨異
^▼行0548者まさに知るべし。 もし*解を学せんと欲せば、 *凡より*聖に至り、 すなはち仏果に至るまで、 一切礙なくみな学することを得ん。 ▼もし行を学せんと欲せば、 かならず有縁の法によれ。 少しき功労を用ゐるに多く益を得ればなり。
~行者当ニシ↠知ル。若シ欲バ↠学ムト↠解ヲ、従リ↠凡至リ↠聖ニ、乃チ至マデ↢仏果ニ↡、一切無ク↠礙皆得ム↠学コトヲ也。若シ欲バ↠学ムト↠行ヲ者、必ズ藉レ↢有縁之法ニ↡。少シク用ルニ↢功労ヲ↡多ク得レバ↠益ヲ也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱº譬説【二河譬】
ªaº正説
ªイº標意
【11】^▼また一切の往生人等にまうさく、 いまさらに行者のために▼一の譬喩を説きて、 信心を守護して、 もつて外邪異見の難を防がん。 何者かこれなるや。
~又白ク↢一切ノ往生人等ニ↡、今更ニ為ニ↢行者ノ↡説テ↢一ノ譬喩ヲ↡、守↢護テ信心ヲ↡以テ防ム↢外邪異見之難ヲ↡。何者カ是ナル也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱºªaºªロº立譬
ˆ一ˇ略喩機法
^▲たとへば、 人ありて西に向かひて百千の里を行かんと欲するがごとし。 忽然として*中路に二の河あるを見る。 ↓一にはこれ火の河、 南にあり。 二にはこれ水の河、 北にあり。 二河おのおの闊さ百歩、 おのおの深くして底なし。 南北 辺なし。
~譬バ如シ↤有テ↠人欲ルガ↣向テ↠西ニ行ムト↢百千之里ヲ↡。忽然トシテ中路ニ見ル↠有ルヲ↢二ノ河↡。一ニハ是火ノ河、在リ↠南ニ。二ニハ是水ノ河、在リ↠北ニ。二河各ノ闊サ百歩、各ノ深クシテ無シ↠底。南北無シ↠辺。
^▲↓まさしく水火の中間に一の白道あり。 闊さ四五寸ばかりなるべし。 ▼この道↓東の岸より↓西の岸に至るに、 また長さ百歩、 ↓その水の波浪交はり過ぎて道を湿し、 ↓その火炎また来りて道を焼く。 ▼水火あひ交はりて、 つねにして休息することなし。
~正ク水火ノ中間ニ有リ↢一ノ白道↡。可シ↢闊サ四五寸許ナル↡。此ノ道従リ↢東ノ岸↡至ルニ↢西ノ岸ニ↡、亦長サ百歩、其ノ水ノ波浪交リ過テ湿シ↠道ヲ、其ノ火焔亦来テ焼ク↠道ヲ。水火相ヒ交テ常ニシテ無シ↢休息コト↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱºªaºªロºˆ二ˇ広喩信相
~ ˆⅠˇ喩願生心発
^◆この人すでに↓*空曠のはるかなる処に至るに、 さらに人物なし。 ↓多く群賊・悪獣 ありて、 この人の単独なるを見て、 競ひ来りて殺さんと欲す。 この人死 を怖れて0467ただちに走りて西に向かふに、
~此ノ人既ニ至ルニ↢空曠ノ迥ナル処ニ↡、更ニ無シ↢人物↡。多ク有テ↢群賊・悪獣↡、見テ↢此ノ人ノ単独ナルヲ↡、競ヒ来テ欲ス↠殺ムト。此ノ人怖テ↠死ヲ直ニ走テ向フニ↠西ニ、
~ ˆ二ˇˆⅡˇ喩顧機疑法
^◆忽然としてこの大河を見て、 すなはちみづから念言す。 「この河は南北に*辺畔を見ず。 中間に一の白道を見るも、 きはめてこれ狭小なり。 二の岸あひ去ること近しといへども、 なにによりてか行くべき。 今日さだめて死すること疑はず。
~忽然トシテ見テ↢此ノ大河ヲ↡、即チ自ラ念言ス。此ノ河ハ南北ニ不↠見↢辺畔ヲ↡。中間ニ見ルモ↢一ノ白道ヲ↡、極テ是狭小ナリ。二ノ岸相ヒ去コト雖モ↠近シト、何ニ由テカ可キ↠行ク。今日定テ死コト不↠疑ハ。
~ ˆ二ˇˆⅢˇ喩苦慮出要
^◆まさしく到り回らんと欲すれば、 群賊・悪獣*漸々に来り逼む。 まさしく南北に避り走らんと欲すれば、 悪獣・毒虫競ひ来りてわれに向かふ。 まさしく西に向かひて道を尋ねて去かんと欲すれば、 またおそらくはこの水火の二河に堕せん」 と。 時に当りて*惶怖することまたいふべからず。
~正ク欲レバ↢到リ廻ムト↡、群賊・悪獣漸漸ニ来リ逼ム。正ク欲レバ↢南北ニ避リ走ムト↡、悪獣・毒虫競ヒ来テ向フ↠我ニ。正ク欲レバ↢向テ↠西ニ尋テ↠道ヲ而去カムト↡、復恐ハ堕ムト↢此ノ水火ノ二河ニ↡。当テ↠時ニ惶怖コト不↢復可ラ↟言フ。
~ ˆ二ˇˆⅣˇ喩機熟分位
^◆すなはちみづから思念す。 「われいま回らばまた死せん。 住まらばまた死せん。 去かばまた死せん。 一種として死を勉れずは、 ↓われ*むしろこの道を尋ねて前に向かひて去かん。 すでにこの道あり。 かならず度るべし」 と。
~即チ自ラ思念ス。我今廻バ亦死ム。住バ亦死ム。去バ亦死ム。一種トシテ不↠勉レ↠死ヲ者、我寧ロ尋テ↢此ノ道ヲ↡向テ↠前ニ而去ム。既ニ有リ↢此ノ道↡。必ズ応↢可ト度ル↡。
~ ˆ二ˇˆⅤˇ喩聞名信喜
ˆⅰˇ喩釈迦教命
^◆この念をなす時、 ↓東の岸にたちまち0549人の勧むる声を聞く。 「なんぢ、 ただ決定してこの道を尋ねて行け、 かならず死の難なからん。 もし住まらば、 すなはち死せん」 と。
~作ス↢此ノ念ヲ↡時、東ノ岸ニ忽0770チ聞ク↢人ノ勧ル声ヲ↡。仁者但決定テ尋テ↢此ノ道ヲ↡行ケ、必ズ無ラム↢死ノ難↡。若シ住バ、即チ死ムト。
~ ˆ二ˇˆⅤˇˆⅱˇ喩弥陀願意
^▼↓また西の岸の上に人ありて喚ばひていはく、 「なんぢ*一心 正念にしてただちに来れ。 われよくなんぢを護らん。 すべて水火の難に堕することを畏れざれ」 と。
~又西ノ岸ノ上ニ有テ↠人喚バヒテ言ク、汝一心正念ニシテ直ニ来レ。我能ク護ム↠汝ヲ。衆テ不レト↠畏レ↠堕コトヲ↢於水火之難ニ↡。
~ ˆ二ˇˆⅤˇˆⅲˇ喩行者聞信
^◆この人すでにここに遣はし、 かしこに喚ばふを聞きて、 すなは0468ちみづから 身心を正当にして、 決定して道を尋ねてただちに進みて、 *疑怯退心を生ぜず。
~此ノ人既ニ聞テ↢此ニ遣シ彼ニ喚バフヲ↡、即チ自ラ正↢当ニシテ身心ヲ↡、決定テ尋テ↠道ヲ直ニ進テ、不↠生ゼ↢疑怯退心ヲ↡。
~ ˆ二ˇˆⅤˇˆⅳˇ喩不受他破
^◆↓あるいは行くこと一分二分するに、 東の岸に群賊等喚ばひていはく、 「なんぢ、 回り来れ。 この道嶮悪にして過ぐることを得ず。 かならず死すること 疑はず。 われらすべて悪心をもつてあひ向かふことなし」 と。 この人喚ばふ声を聞くといへどもまた回顧せず。 一心にただちに進みて▼道を念じて行けば、
~或ハ行コト一分二分スルニ、東ノ岸ニ群賊等喚バヒテ言ク、仁者廻リ来レ。此ノ道嶮悪ニシテ不↠得↠過コトヲ。必ズ死コト不↠疑ハ。我等衆テ無シト↢悪心ヲモテ相ヒ向コト↡。此ノ人雖モ↠聞クト↢喚フ声ヲ↡亦不↢廻顧セ↡。一心ニ直ニ進テ念テ↠道ヲ而行バ、
~ ˆ二ˇˆⅥˇ喩即得往生
^◆↓*須臾にすなはち西の岸に到りて、 永くもろもろの難を離る。 *善友あひ見えて▼慶楽すること已むことなし。
~須臾ニ即チ到テ↢西ノ岸ニ↡、永ク離ル↢諸ノ難ヲ↡。善友相ヒ見エテ慶楽コト無シ↠已ムコト。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱºªaºªロºˆ三ˇ結喩
^◆これはこれ喩へなり。
~此ハ是喩也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱºªaºªハº合法
ˆ一ˇ標
^◆次に喩へを合せば、
~次ニ合バ↠喩ヲ者、
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱºªaºªハºˆ二ˇ合
ˆⅠˇ別
・東岸
^◆「↑東の岸」 といふは、 すなはちこの*娑婆の*火宅に喩ふ。
~言フ↢東ノ岸ト↡者、即チ喩フ↢此ノ娑婆之火宅ニ↡也。
・西岸
^◆「↑西の岸」 といふは、 すなはち極楽の宝国に喩ふ。
~言フ↢西ノ岸ト↡者、即チ喩フ↢極楽ノ宝国ニ↡也。
・賊獣
^▼「↑群賊・悪獣詐り親しむ」 といふは、 すなはち衆生の*六根・*六識・*六塵・*五陰・*四大に喩ふ。
~言フ↢群賊・悪獣詐リ親ムト↡者、即チ喩フ↢衆生ノ六根・六識・六塵・五陰・四大ニ↡也。
・空沢
^▼「↑無人*空迥の沢」 といふは、 すなはち▼つねに悪友に随ひて真の*善知識に値はざるに喩ふ。
~言フ↢無人空迥ノ沢ト↡者、即チ喩フ↧常ニ随テ↢悪友ニ↡不ルニ↞値ハ↢真ノ善知識ニ↡也。
・二河
^▼「↑水火 二河」 といふは、 すなはち衆生の*貪愛は水のごとく、 *瞋憎は火のごとくなるに喩ふ。
~言フ↢水火二河ト↡者、即チ喩フ↢衆生ノ貪愛ハ如ク↠水ノ、瞋憎ハ如クナルニ↟火ノ也。
・白道
^▼「↑中間の白道四五寸」 といふは、 すなはち▼衆生の▼貪瞋煩悩のなかに、 ▼よく清浄の*願往生 心を生ずるに喩ふ。 すなはち貪瞋強きによるがゆゑに、 すなはち水火のごとしと喩ふ。 善心*微なるがゆゑに、 白道のごとしと喩ふ。
~言フ↢中間ノ白道四五寸ト↡者、即チ喩フ↣衆生ノ貪瞋煩悩ノ中ニ能ク生ルニ↢清浄ノ願往生心ヲ↡也。乃チ由ルガ↢貪瞋強キニ↡故ニ即チ喩フ↠如シト↢水火ノ↡。善心微ナルガ故ニ喩フ↠如シト↢白道ノ↡。
・水波
^◆また0469 「↑水波つねに道を湿す」 といふは、 すなはち*愛心つねに起りて、 よく善心を染汚するに喩ふ。
~又水波常ニ湿ストイフ↠道ヲ者、即チ喩フ↣愛心常ニ起テ能ク染↢汚ルニ善心ヲ↡也。
・火炎
^◆また 「↑火炎つねに道を焼く」 といふは、 すなはち*瞋嫌の心よく功徳の法財を焼くに喩ふ。
~又火焔常ニ焼クトイフ↠道ヲ者、即チ喩フ↣瞋嫌之心能ク焼クニ↢功徳之法財ヲ↡也。
・向西
^◆「↑人道の上を行きてただちに西に向かふ」 といふは、 すなはち▼もろもろの*行業を回してただちに西方に向かふに喩ふ。
~言フ↧人行テ↢道ノ上ヲ↡直ニ向フト↞西ニ者、即チ喩フ↧廻テ↢諸ノ行業ヲ↡直ニ向フニ↦西方ニ↥也。
・勧遣
^◆「↑東0550の岸に人の声の勧め遣はすを聞きて、 道を尋ねてただちに西に進む」 といふは、 すなはち釈迦すでに滅したまひて、 後の人見たてまつらざれども、 なほ教法ありて尋ぬべきに喩ふ。 すなはちこれを声のごとしと喩ふ。
~言フ↧東ノ岸0771ニ聞テ↢人ノ声ノ勧メ遣スヲ↡、尋テ↠道ヲ直ニ西ニ進ムト↥者、即チ喩フ↧釈迦已ニ滅タマヒテ、後ノ人不ドモ↠見タマフヲ、由有テ↢教法↡可キニ↞尋ヌ。即チ喩フ↢之ヲ如シト↟声ノ也。
・喚回
^▼「↑あるいは行くこと一分二分するに群賊等喚ばひ回す」 といふは、 すなはち別解・別行・▼悪見人等*妄りに*見解を説きてたがひにあひ惑乱し、 およびみづから罪を造りて退失するに喩ふ。
~言フ↢或ハ行コト一分二分ルニ群賊等喚ヒ廻ト↡者、即チ喩フ↧別解・別行・悪見人等妄ニ説テ↢見解ヲ↡迭相ニ惑乱シ、及ビ自ラ造テ↠罪ヲ退失ルニ↥也。
・喚言
^◆「↑西の岸の上に人ありて喚ばふ」 といふは、 すなはち弥陀の願 意に喩ふ。
~言フ↢西ノ岸ノ上ニ有テ↠人喚フト↡者、即チ喩フ↢弥陀ノ願意ニ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱºªaºªハºˆ二ˇˆⅡˇ通
^◆「↑須臾に西の岸に到りて善友あひ見えて喜ぶ」 といふは、 すなはち衆生久しく生死に沈みて、 曠劫より輪廻し 、 迷倒して*みづから纏ひて、 解脱するに由なし。 ▼仰ぎて釈迦*発遣して指して西方に 向かはしめたまふことを蒙り、 ▼また弥陀 悲心をもつて*招喚したまふによりて、 ▼いま二尊 (釈尊・阿弥陀仏) の意に信順して、 水火の二河を顧みず、 ▼念々に遺るることなく、 かの願力の道に乗じて、 捨命以後0470かの国に生ずることを得て、 仏とあひ見えて慶喜することなんぞ極まらんといふに喩ふ。
~言フ↧須臾ニ到テ↢西ノ岸ニ↡善友相ヒ見エテ喜ブト↥者、即チ喩フ↧衆生久ク沈テ↢生死ニ↡、曠劫ヨリ淪廻シ、迷倒テ自ラ纏テ、無シ↠由↢解脱ルニ↡、仰テ蒙リ↣釈迦発遣テ指テ向シメタマフコトヲ↢西方ニ↡、又藉テ↢弥陀悲心ヲモテ招喚タマフニ↡、今信↢順テ二尊之意ニ↡、不↠顧ミ↢水火ノ二河ヲ↡、念念ニ無ク↠遺コト、乗テ↢彼ノ願力之道ニ↡、捨命已後得テ↠生コトヲ↢彼ノ国ニ↡、与↠仏相ヒ見エテ慶喜コト何ゾ極ラムトイフニ↥也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡºªⅱºªbº結勧
【12】^◆また一切の行者、 行住坐臥に三業の所修、 昼夜 時節を問ふことなく、 ▼つねにこの解をなしつねにこの想をなすがゆゑに、 回向発願心と名づく。
~又一切ノ行者、行住坐臥ニ三業ノ所修、無ク↠問コト↢昼夜時節ヲ↡、常ニ作シ↢此ノ解ヲ↡常ニ作スガ↢此ノ想ヲ↡故ニ、名ク↢「廻向発願心ト」↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅲ][b][ロ]ª二º約還相
^▼また 「回向」 といふは、 かの国に生じをはりて、 還りて大悲を起して、 生死に*回入して衆生を教化するをまた 回向と名づく。
~又言フ↢廻向ト↡者、生ジ↢彼ノ国ニ↡已テ、還テ起テ↢大悲ヲ↡、廻↢入テ生死ニ↡教↢化ルヲ衆生ヲ↡亦名ク↢廻向ト↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]略解必生彼国【三心結釈】
【13】^▲三心すでに具すれば、 ▼*行として成ぜざるはなし。 *願行すでに成じて、 もし生ぜずは、 この処あることなからん。 ◆またこの三心はまた通じて定善の義を摂す、 知るべし。
~三心既ニ具レバ、無シ↢行トシテ不ルハ↟成ゼ。願行既ニ成テ、若シ不ハ↠生ゼ者、無ラム↠有コト↢是ノ処↡也。又此ノ三心ハ亦通テ摂ス↢定善之義ヲ↡、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅴ)簡機堪不
【14】^五に ▲「復有三種衆生」 より以下は、 まさしく機のよく法を奉け、 教によりて修行するに堪へたるを*簡ぶことを明かす。
五ニ従リ↢「復有三種衆生」↡已下ハ、▲正ク明ス↠簡コトヲ↣機ノ堪タルヲ↢能ク奉ケ↠法ヲ、依テ↠教ニ修行ルニ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)受法不同
(a)総標
^六に ▲「何等為三」 より下 「六念」 に至るこのかたは、 まさしく受法の不同を明かす。 すなはちその三あり。
六ニ従リ↢「何等為三」↡下至ル↢「六念ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢受法ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ三↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)別釈
(イ)明不殺具戒
[一]明慈心不殺
[Ⅰ]標
^▲一には慈心 不殺を明かす。
▲一ニハ明ス↢慈心不殺ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[一][Ⅱ]釈
[ⅰ]明殺業
[a]標
[b]列
^しかるに殺業に多種あり。 あるいは口殺あり、 あるいは身殺あり、 あるいは心殺あり。
▲然ニ殺業ニ有リ↢多種↡。或ハ有リ↢口殺↡、或ハ有リ↢身殺↡、或ハ有リ↢心殺↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅰ][c]釈
^「口0551殺」 といふは、 処分許可するを名づけて口殺となす。 「身殺」 といふは、 身手等を動かし指授するを名づけて身殺とな0471す。 「心殺」 といふは、 方便を思念して*計校する等を名づけて心殺となす。
~言フ↢口殺ト↡者0772、処分許可ルヲ名テ為ス↢口殺ト↡。言フ↢身殺ト↡者、動シ↢身手等ヲ↡指授ルヲ名テ為ス↢身殺ト↡。言フ↢心殺ト↡者、思↢念テ方便ヲ↡計校ル等ヲ名テ為ス↢心殺ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅰ][d]結
^もし殺業を論ぜば*四生を簡ばず、 みなよく罪を招きて浄土に生ずることを障ふ。
~若シ論バ↢殺業ヲ↡不↠簡バ↢四生ヲ↡、皆能ク招テ↠罪ヲ障フ↠生コトヲ↢浄土ニ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ]明不殺
[a]総標
^ただ一切の生命において慈心を起すは、 すなはちこれ一切衆生に寿命安楽を施す。
~但於テ↢一切ノ生命ニ↡起ス↢於慈心ヲ↡者、即チ是施ス↢一切衆生ニ寿命安楽ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b]別釈
^またこれ最上勝妙の戒なり。 これすなはち上の初福 (世福) の第三の句に 「▲慈心不殺」 といへるに合す。 すなはち止・行の二善あり。 みづから殺せざるがゆゑに止善と名づく。 他 を教へて殺せざらしむるがゆゑに行善と名づく。 自他はじめて断ずるを止善と名づけ、 畢竟じて永く除くを行善と名づく。
~亦是最上勝妙ノ戒也。此即チ合ス↣上ノ初福ノ第三ノ句ニ云ルニ↢「慈心不殺ト」↡也。即チ有リ↢止・行ノ二善↡。自ラ不ルガ↠殺セ故ニ名ク↢止善ト↡。教テ↠他ヲ不シムルガ↠殺セ故ニ名ク↢行善ト↡。自他初テ断ルヲ名ケ↢止善ト↡、畢竟テ永ク除クヲ名ク↢行善ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][c]結示
^止・*持の二善ありといへども、 総じて*慈下の行を結成す。
~雖モ↠有ト↢止・持ノ二善↡、総テ結↢成ス慈下ノ行ヲ↡也。△
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[二]釈具足戒行
[Ⅰ]標牒
[Ⅱ]解釈
[ⅰ]標示
^「▲具諸戒行」 といふは、 もし人・天・二乗の器に約すれば すなはち*小戒と名づけ、 もし*大心大行の人に約すれば、 すなはち菩薩戒と名づく。
▲言フ↢「具諸戒行ト」↡者、若シ約レバ↢人・天・二乗之器ニ↡、即チ名ケ↢小戒ト↡、若シ約レバ↢大心大行之人ニ↡、即チ名ク↢菩薩戒ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]別指
^この戒もし位をもつて約すれば、 これ上輩三位のものに当れり、 すなはち菩薩戒と名づく。 まさしく人位定まれるによるがゆゑに自然に転成す。 すなはち上の第二福 (戒福) の▲戒分の善根に合す。
~此ノ戒若シ以テ↠位ヲ約レバ者、当レリ↢此上輩三位ノ者ニ↡、即チ名ク↢菩薩戒ト↡。正ク由ルガ↢人位定レルニ↡故ニ自然ニ転成ス。即チ合ス↢上ノ第二福ノ戒分ノ善根ニ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ロ)明読誦大乗
[一]標牒
^▲二には読誦大乗を明かす。
▲二ニハ明サバ↢「読誦大乗ヲ」↡者、
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ロ)[二]解釈
[Ⅰ]総標
^これ衆生の*性習不同にして、 法を執ることおのおの異なることを明かす。
~此明ス↢衆生ノ性習不同ニシテ、執コト↠法ヲ各ノ異コトヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]別釈
^前の第一の人は、 ただ慈を修し、 戒を持つをもつて能となす。 次に第二の人は、 ただ読誦大乗をもつて是となす。 しかるに戒はすな0472はちよく*五乗・*三仏の機を持ち、 法はすなはち*三賢・*十地万行の智慧を*薫成す。
~前ノ第一ノ人ハ、但用テ↢修シ↠慈ヲ、持ツヲ↟戒ヲ為ス↠能ト。次ニ第二ノ人ハ、唯将テ↢読誦大乗ヲ↡為ス↠是ト。然ニ戒ハ即チ能ク持チ↢五乗・三仏之機ヲ↡、法ハ即チ薫↢成ス三賢・十地万行之智慧ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ロ)[二][Ⅲ]結示
^もし徳用をもつて来し比校せば、 おのおの一の能あり。
~若シ以テ↢徳用ヲ↡来シ比校バ者、各ノ有リ↢一ノ能↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ロ)[三]結貼
^すなはち上の第三 福 (行福) の第三の句に 「▲読誦大乗」 といへるに合す。
~即チ合ス↣上ノ第三福ノ第三ノ句ニ云ルニ↢「読誦大乗ト」↡也。△
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ハ)釈修行六念
[一]標牒
^▲三には*修行六念を明かす。
▲三ニハ明サバ↢「修行六念ヲ」↡者、
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ハ)[二]解釈
[Ⅰ]総明
^いはゆる仏・法・僧を念じ、 戒・捨・天等を念ず。 これまた通じて上の第三 福の大乗の意義に合す。
~所謂ル念ジ↢仏・法・僧ヲ↡、念ズ↢戒・捨・天等ヲ↡。此亦通テ合ス↢上ノ第三福ノ大乗之意義ニ↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ハ)[二][Ⅱ]別釈
[ⅰ]釈念仏
^「念仏」 といふ0552は、 すなはち▼もつぱら阿弥陀仏の口業の功徳、 身業の功徳、 意業の功徳を念ず。 一切の諸仏もまたかくのごとし。
~言フ↢念0773仏ト↡者、即チ専ラ念ズ↢阿弥陀仏ノ口業ノ功徳・身業ノ功徳・意業ノ功徳ヲ↡。一切ノ諸仏モ亦如シ↠是ノ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅱ]釈念法僧
^また一心にもつぱら諸仏所証の法ならびにもろもろの眷属の菩薩僧を念じ、
~又一心ニ専ラ念ジ↢諸仏所証之法并ニ諸ノ眷属ノ菩薩僧ヲ↡、
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅲ]釈念戒捨
^また諸仏の戒を念じ、 および過去の諸仏、 現在の菩薩等の、 なしがたきをよくなし、 捨てがたきをよく捨て、 内に捨て外に捨て、 内外に捨つるを念ず。 これらの菩薩ただ法を念ぜんと欲して*身財を惜しまず。 行者等すでにこの事を念知せば、 すなはちすべからくつねに仰ぎて*前賢・後聖を学し、 身命を捨つる意を なすべし。
~又念ジ↢諸仏之戒ヲ↡、及ビ念ズ↢過去ノ諸仏、現在ノ菩薩等ノ、難キヲ↠作シ能ク作シ、難キヲ↠捨テ能ク捨テ、内ニ捨テ外ニ捨テ、内外ニ捨ルヲ↡。此等ノ菩薩但欲テ↠念ムト↠法ヲ不↠惜マ↢身財ヲ↡。行者等既ニ念↢知バ此ノ事ヲ↡、即チ須クシ↧常ニ作ス↦仰テ学シ↢前賢・後聖ヲ↡、捨ツル↢身命ヲ↡意ヲ↥也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅳ]釈念天
[a]明所念境
^また 「念天」 とはすなはちこれ*最後身十地の菩薩なり。 これらは難行の行すでに過ぎ、 *三祇の劫すでに超え、 万徳の行すでに成じ、 *潅頂の位すでに証せり。
~又念天ト者、即チ是最後身十地之菩薩ナリ。此等ハ難行之行已ニ過ギ、三祇之劫已ニ超エ、万徳之行已ニ成ジ、潅頂之位已ニ証リ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅵ)(b)(ハ)[二][Ⅱ][ⅳ][b]示能念意
^行者等すでに念知しをはりなば、 すなはちみづから思念すべし。 ▼わが身は*無際よりこのかた、 他とともに同時に願を発して悪を断じ、 菩薩の道を行じ0473き。 他はことごとく身命を惜しまず。 道を行じ位を進みて、 因円かに果熟して、 聖を証せるもの*大地微塵に踰えたり。 しかるにわれら凡夫、 すなはち今日に至るまで、 *虚然として流浪す。 煩悩悪障は転々してますます多く、 *福慧は微微たること、 *重昏を対して明鏡に臨むがごとし。 たちまちにこの事を*思忖するに、 心 驚きて悲歎するに勝へざるものをや。
~行者等既ニ念知シ已ナバ、即チ自ラ思念ベシ。我ガ身ハ無際ヨリ已来タ、共ニ↠他ト同時ニ発テ↠願ヲ断ジ↠悪ヲ、行ジキ↢菩薩ノ道ヲ↡。他ハ尽ク不↠惜マ↢身命ヲ↡。行ジ↠道ヲ進テ↠位ヲ、因円カニ果熟テ、証ル↠聖ヲ者踰タリ↢於大地微塵ニ↡。然ニ我等凡夫、乃チ至マデ↢今日ニ↡、虚然トシテ流浪ス。煩悩悪障ハ転転テ増マス多ク、福慧ハ微微ナルコト、若シ↧対テ↢重昏ヲ↡之臨ムガ↦明鏡ニ↥也。忽ニ思↢忖ルニ此ノ事ヲ↡、不ル↠勝ヘ↢心驚テ悲歎ルニ↡者ヲ哉。△
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅶ)廻行願生
^七に ▲「回向発願」 より以下は、 まさしくおのおの 前の所修の業を回して、 所求の処に向かふことを明かす。
七ニ従リ↢「廻向発願」↡已下ハ、▲正ク明ス↧各各廻テ↢前ノ所修之業ヲ↡、向コトヲ↦所求ノ処ニ↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅷ)修時延促
(a)標科目
^八に ▲「具此功徳」 より以下は、 まさしく修行の*時節の延促を明かす。
八ニ従リ↢「具此功徳」↡已下ハ、▲正ク明ス↢修行ノ時節ノ延促ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅷ)(b)釈文句
(イ)正明修時延促
^▼上*一形を尽し、 ▼下一日・一時・一念等に至る。 あるいは一念・十念より一時・一日・一形に至る。 大意は、 ▼一たび*発心して以後、 ▼誓ひてこの生を畢るまで退転あることなし。 ただ浄土をもつて期となす。
~上尽シ↢一形ヲ↡下至ル↢一日・一時・一念等ニ↡。或ハ従リ↢一念・十念↡至ル↢一時・一日・一形ニ↡。大意者、一タビ発心テ已後、誓テ畢マデ↢此ノ生ヲ↡無シ↠有コト↢退転↡。唯以テ↢浄土ヲ↡為ス↠期ト。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅷ)(b)(ロ)釈具此功徳
^また 「▲具此0553功徳」 といふは、 あるいは一人にして*上の二を具し、 あるいは一人にして*下の二を具し、 あるいは一人にして三種ことごとく具す。 あるいは人ありて三種分なきを 、 名づけて*人の皮を着たる畜生となす、 人と名づくるにあらず。
▲又言フ↢「具此功徳ト」↡者0774、或ハ一人ニシテ具シ↢上ノ二ヲ↡、或ハ一人ニシテ具シ↢下ノ二ヲ↡、或ハ一人ニシテ三種尽ク具ス。或ハ有テ↠人三種無キヲ↠分者、名テ作ス↧著タル↢人ノ皮ヲ↡畜生ト↥、非ズ↠名ルニ↠人ト也。
^また具三・不具三を問はず、 回すればことごとく往生を得、 知るべし。
~又不↠問ハ↢具三・不具三ヲ↡、廻レバ尽ク得↢往生ヲ↡、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅸ)迎接不同
(a)総標大科
(b)別分文句
(イ)標数
^九に 「▲生彼国時」 より下 「往生彼国▲」 に至るこのかたは、 まさしく命終の時に臨みて聖来りて迎接したまふ不同と、 去時の0474遅疾とを明かす。 すなはちその十一あり。
九ニ従リ↢「生彼国時」↡下至ル↢「往生彼国ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↧臨テ↢命終ノ時ニ↡聖来テ迎接タマフ不同ト、去時ノ遅疾トヲ↥。即チ有リ↢其ノ十一↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅸ)(b)(ロ)別列
・標所帰国
^▲一には*所帰の国を標定することを明かす。
▲一ニハ明ス↣標↢定コトヲ所帰之国ヲ↡。
・重顕其行
^▲二にはかさねてその行を顕して、 決定*精勤のものを指し出すことを明かす。 またこれ功徳の強弱を*校量す。
▲二ニハ明ス↧重テ顕テ↢其ノ行ヲ↡、指シ↦出コトヲ決定精懃ノ者ヲ↥。亦是校↢量ス功徳ノ強弱ヲ↡。
・弥陀自来
^▲三には弥陀*化主の身みづから来赴したまふことを明かす。
▲三ニハ明ス↢弥陀化主ノ身自ラ来赴タマフコトヲ↡。
・大衆皆従
^▲四には 「観音」 より以下は、 さらに無数の大衆等みな弥陀に従ひて行者を来迎することを顕すことを明かす。
▲四ニハ明ス↫「観音ヨリ」已下ハ、更ニ顕コトヲ↪無数ノ大衆等皆従テ↢弥陀ニ↡来↩迎コトヲ行者ヲ↨。
・宝宮随衆
^▲五には宝宮、 衆に随ふことを明かす。
▲五ニハ明ス↢宝宮随コトヲ↟衆ニ。
・観音勢志
^▲六にはかさねて*観音・*勢至ともに金台を執りて、 行者の前に至ることを明かす。
▲六ニハ明ス↧重テ観音・勢志共ニ執テ↢金台ヲ↡、至コトヲ↦行者ノ前ニ↥。
・光照行者
^▲七には弥陀光を放ちて行者の身を照らしたまふことを明かす。
▲七ニハ明ス↣弥陀放テ↠光ヲ照タマフコトヲ↢行者之身ヲ↡。
・同時接手
^▲八には仏すでに光を舒べて照らし、 およびすなはち化仏等と同時に手を接したまふことを明かす。
▲八ニハ明ス↧仏既ニ舒テ↠光ヲ照シ、及ビ即チ与↢化仏等↡同時ニ接タマフコトヲ↞手ヲ。
・同声讃勧
^▲九にはすでに接して台に昇らしめて、 観音等同声に行者の心を讃勧したまふことを明かす。
▲九ニハ明ス↣既ニ接テ昇シメテ↠台ニ、観音等同声ニ讃↢勧タマフコトヲ行者之心ヲ↡。
・自見乗台
^▲十にはみづから見れば台に乗じ、 仏に従ふことを明かす。
▲十ニハ明ス↢自ラ見レバ乗ジ↠台ニ従コトヲ↟仏ニ。
・去時遅疾
^▲十一にはまさしく去時の遅疾を明かす。
▲十一ニハ正ク明ス↢去時ノ遅疾ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅹ)無華合障
^十に ▲「生彼国」 より以下は、 まさしく金台かしこに到りて、 さらに華合の障なきことを明かす。
十ニ従リ↢「生彼国」↡已下ハ、▲正ク明ス↣金台到テ↠彼ニ、更ニ無キコトヲ↢華合之障↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅺ)到彼得益
(a)標大科
^十一に ▲「見仏色身」 より下 「*陀羅尼門」 に至るこのかたは、 まさしく金台到りて後の得益の不同 を明かす。 すなはちその三あり。
十一ニ従リ↢「見仏色身」↡下至ル↢「陀羅尼門ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢金台到テ後ノ得益ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ三↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅺ)(b)釈文句
・得無生忍
^▲一にははじめて妙法を聞きてすなはち*無生を悟る。
▲一ニ者初テ聞テ↢妙法ヲ↡即チ悟ル↢無生ヲ↡。
・次第授記
^▲二には須臾に*歴事して次第に*授記せらる。
▲二ニ者須臾ニ歴事テ次第ニ授記ラル。
・更証聞持
^▲三には*本国・*他方に0475してさらに聞持の*二益を証す。
▲三ニ者本国他方ニシテ更ニ証ス↢聞持ノ二益ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)(ⅻ)総結
^十二に ▲「是名」 より以下は、 総じて結す。
十二ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅲ)結示
^上来十二句の不同ありといへども、 広く上品上生の義を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢十二句ノ不同↡、広ク解シ↢上品上生ノ義ヲ↡竟0775ヌ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)上中品【上品中生釈】
(Ⅰ)総標
【15】^次0554に*上品中生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその八あり。
▲次ニ就テ↢上品中生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ八↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)別釈
(ⅰ)総標位名
^一に ▲「上品中生者」 より以下は、 総じて位の名を挙ぐ。 すなはちこれ大乗次善の凡夫人なり。
一ニ従リ↢「上品中生者」↡已下ハ、▲総テ挙グ↢位ノ名ヲ↡。即チ是大乗次善ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)廻業指西
^二に ▲「不必受持」 より下 「生彼国」 に至るこのかたは、 まさしく△第六・△第七・△第八門のなかの、 所修の業を回して、 西方を定め指すことを明かす。 すなはちその四あり。
二ニ従リ↢「不必受持」↡下至ル↢「生彼国ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↧第六・第七・第八門ノ中ノ廻テ↢所修ノ業ヲ↡、定メ↦指コトヲ西方ヲ↥。即チ有リ↢其ノ四↡。
・受法不定
^▲一には受法不定にして、 あるいは読誦を得、 読誦を得ざることを明かす。
▲一ニハ明ス↧受法不定ニシテ、或ハ得↢読誦ヲ↡、不コトヲ↞得↢読誦ヲ↡。
・善解空義
^▲二には▼よく大乗の*空の義を解することを明かす。 あるいは諸法は一切みな空にして*生死・*無為もまた空なり。 *凡聖・明闇もまた空なり。 *世間の*六道、 *出世間の*三賢・*十聖等、 もしその*体性に望むれば畢竟じて不二なりと聴聞す。 この説を聞くといへども、 その心坦然として疑滞を生ぜず。
▲二ニハ明ス↣善ク解コトヲ↢大乗ノ空ノ義ヲ↡。或ハ聴↧聞ス諸法ハ一切皆空ニシテ生死無為モ亦空ナリ、凡聖明闇モ亦空ナリ、世間ノ六道、出世間ノ三賢・十聖等、若シ望レバ↢其ノ体性ニ↡畢竟テ不二ナリト↥。雖モ↠聞クト↢此ノ説ヲ↡、其ノ心坦然トシテ不↠生ゼ↢疑滞ヲ↡也。
・深信因果
^▲三には▼深く*世・出世の苦楽二種の因果を信じ、 これらの因果およびもろもろの道理に*疑謗を生ぜざることを明かす。 もし疑謗を生ずれば、 すなはち福行を成ぜず。 世間の果報すらなほ得べからず、 いかにいはんや浄土に生ずることを得んや。 これすなはち第三 福 (行福) の▲第二・▲第三0476の句に合す。
▲三ニハ明ス↧深ク信ジ↢世・出世ノ苦楽二種ノ因果ヲ↡、此等ノ因果及ビ諸ノ道理ニ不コトヲ↞生ゼ↢疑謗ヲ↡。若シ生レバ↢疑謗ヲ↡、即チ不↠成ゼ↢福行ヲ↡。世間ノ果報尚不↠可ラ↠得、何ニ況ヤ得ムヤ↠生コトヲ↢浄土ニ↡。此即チ合ス↢第三福ノ第二・第三ノ句ニ↡也。
・標指所帰
^▲四には前の所業を回して、 *所帰を標指することを明かす。
▲四ニハ明ス↧廻テ↢前ノ所業ヲ↡、標↦指コトヲ所帰ヲ↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅲ)主伴来応
^三に ▲「行此行者」 より下 「迎接汝」 に至るこのかたは、 まさしく弥陀、 もろもろの聖衆と台を持して来応したまふことを明かす。 すなはちその五あり。
三ニ従リ↢「行此行者」↡下至ル↢「迎接汝ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↧弥陀与↢諸ノ聖衆↡、持テ↠台ヲ来応タマフコトヲ↥。即チ有リ↢其ノ五↡。
・命延不久
^▲一には行者の*命延久しからざることを明かす。
▲一ニハ明ス↢行者ノ命延不コトヲ↟久カラ。
・主伴自来
^▲二には弥陀、 衆とみづから来りたまふことを明かす。
▲二ニハ明ス↢弥陀与↠衆自ラ来タマフコトヲ↡。
・持台至前
^▲三には侍者台を持して行者の前に至ることを明かす。
▲三ニハ明ス↣侍者持テ↠台ヲ至コトヲ↢行者ノ前ニ↡。
・同声讃歎
^▲四には仏、 聖衆と同声に讃歎して、 ˆ行者のˇ *本所修の業を述べたまふことを明かす。
▲四ニハ明ス↧仏与↢聖衆↡同声ニ讃歎テ、述タマフコトヲ↦本所修之業ヲ↥。
・我来迎汝
^▲五には仏、 行者の疑を懐くことを恐れたまふがゆゑに、 「われ来りてなんぢを迎ふ」 とのたまふことを明かす。
▲五ニハ明ス↧仏恐タマフガ↢行者ノ懐コトヲ↟疑ヲ故ニ、言フコトヲ↦我来テ迎フト↞汝ヲ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅳ)去時遅速
^四に ▲「与千化仏」 より下 「七宝池中」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 衆聖の授手と、 去時の遅疾とを明かす。 すなはちその五あり。
四ニ従リ↢「与千化仏0776」↡下至ル↢「七宝池中ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第九門ノ中ノ衆聖ノ授手ト、去時ノ遅疾トヲ↡。即チ有リ↢其ノ五↡。
・報化授手
^▲一には弥0555陀、 千の化仏と同時に授手したまふことを明かす。
▲一ニハ明ス↧弥陀与↢千ノ化仏↡同時ニ授手タマフコトヲ↥。
・自見坐台
^▲二には行者すでに授手を蒙りてすなはちみづから身を見れば、 すでに身*紫金の台に坐することを明かす。
▲二ニハ明ス↧行者既ニ蒙テ↢授手ヲ↡即チ自ラ見バ↠身ヲ、已ニ身坐コトヲ↦紫金之台ニ↥。
・合掌仰讃
^▲三にはすでにみづから台に坐することを見て、 合掌して仰ぎて弥陀等の衆を讃ずることを明かす。
▲三ニハ明ス↣既ニ自ラ見テ↠坐コトヲ↠台ニ、合掌テ仰テ讃コトヲ↢弥陀等ノ衆ヲ↡。
・去時遅疾
^▲四にはまさしく去時の遅疾を明かす。
▲四ニハ明ス↢正ク去時ノ遅疾ヲ↡。
・住宝池内
^▲五にはかしこに到りて宝池のうちに止住することを明かす。
▲五ニハ明ス↣到テ↠彼ニ止↢住コトヲ宝池之内ニ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅴ)華開時節
^五に ▲「此紫金台」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時0477節の不同を明かす。
五ニ従リ↢「此紫金台」↡已下ハ、▲正ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華開ル時節ノ不同ヲ↡。
^行強きによるがゆゑに、 上上はすなはち▲金剛台を得。 行劣なるによるがゆゑに、 上中はすなはち紫金台を得。 ˆ浄土にˇ 生じて宝池にありて宿を経て開くるがごとし。
~由ルガ↢行強キニ↡故ニ、上上ハ即チ得↢金剛台ヲ↡。由ルガ↢行劣ナルニ↡故ニ、上中ハ即チ得↢紫金台ヲ↡。生テ在テ↢宝池ニ↡逕テ↠宿ヲ如シ↠開ルガ也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅵ)開後得益
^六に ▲「仏及菩薩倶時放光」 より下 「得不退転」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその五あり。
六ニ従リ↢「仏及菩薩倶時放光」↡下至ル↢「得不退転ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ五↡。
・仏光照身
^▲一には仏光、 身を照らすことを明かす。
▲一ニハ明ス↢仏光照コトヲ↟身ヲ。
・目即チ開明
^▲二には行者すでに体を照らすことを蒙りて、 目すなはち開明なることを明かす。
▲二ニハ明ス↢行者既ニ蒙テ↠照コトヲ↠体ヲ、目即チ開明ナルコトヲ↡。
・所習還聞
^▲三には人中にして習へるところ、 かしこに到りて衆声の彰すところとなり、 またその法を聞くことを明かす。
▲三ニハ明ス↣人中ニシテ所↠習ル、到テ↠彼ニ衆声ノ所トナリ↠彰ス、還タ聞コトヲ↢其ノ法ヲ↡。
・開眼聞法
^▲四にはすでに眼開けて法を聞くことを得て、 すなはち金台より下り 、 親しく仏辺に到りて、 歌揚して徳を讃ずることを明かす。
▲四ニハ明ス↧既ニ得テ↢眼開テ聞コトヲ↟法ヲ、即チ下リ↢金台ヨリ↡、親ク到テ↢仏辺ニ↡、歌揚テ讃コトヲ↞徳ヲ。
・逕時得忍
^▲五には時を経ること↓七日にして、 すなはち無生を得ることを明かす。
▲五ニハ明ス↣逕コト↠時ヲ七日ニシテ、即チ得コトヲ↢無生ヲ↡。
^「↑七日」 といふは、 ▼おそらくはこの間の七日なり、 かの国の七日を指すにあらず。 この間に七日を経るは、 かの処にはすなはちこれ一念須臾のあひだなり、 知るべし。
▲言フ↢「七日ト」↡者、恐ハ此ノ間ノ七日ナリ、不ズ↠指スニ↢彼ノ国ノ七日ヲ↡也。此ノ間ニ逕ル↢於七日ヲ↡者、彼ノ処ニハ即チ是一念須臾ノ間也、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅶ)他方得益
^七に ▲「応時即能飛至十方」 より下 「現前授記」 に至るこのかたは、 まさしく*他方の得益を明かす。 すなはちその五あり。
七ニ従リ↢「応時即能飛至十方」↡下至ル↢「現前授記ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢他方ノ得益ヲ↡。即チ有リ↢其ノ五↡。
・身至十方
^▲一には身十方に至ることを明かす。
▲一ニハ明ス↣身至コトヲ↢十方ニ↡。
・歴供諸仏
^▲二には一々に諸仏を*歴供することを明かす。
▲二ニハ明ス↣一一ニ歴↢供コトヲ諸仏ヲ↡。
・修多三昧
^▲三には多くの*三昧を修することを明0478かす。
▲三ニハ明ス↠修コトヲ↢多クノ三昧ヲ↡。
・延時得忍
^▲四には*延時の得忍を明かす。
▲四ニハ明ス↢延時ノ得忍ヲ↡。
・現蒙授記
^▲五には一々の仏辺にして現に授記を蒙ることを明かす。
▲五ニハ明ス↣一一ノ仏0777辺ニシテ現ニ蒙コトヲ↢授記ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅷ)総結
^八に ▲「是名」 より以下は、 総じて結す。
八ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅲ)結示
^上来八句の不同ありといへども、 広く上品中生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢八句ノ不同↡、広ク解シ↢上品中生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)上下品【上品下生釈】
(Ⅰ)総標
【16】^次に*上品下生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその八あり。
▲次ニ就テ↢上品下生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ八↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)別釈
(ⅰ)総挙位名
^一に ▲「上品下生者」 より以下は、 総じて位の名を挙ぐ。 すなはちこれ大乗下善の凡夫人なり。
一ニ従リ↢「上品下生者」↡已下ハ、▲総テ挙グ↢位ノ名ヲ↡。即チ是大乗下善ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)受法不同
^二に ▲「亦信因果」 より下 「無上道心」 に至るこのかたは、 まさしく△第六門のなかの、 受法の不同を明かす。 すなはちその三あり。
二ニ従リ↢「亦信因果」↡下至ル↢「無上道心ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第六門ノ中ノ受法ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ三↡。
・因果不定
^▲一には所信の因果不定なることを明かす。
▲一ニハ明ス↢所信ノ因果不定ナルコトヲ↡。
^あるいは信じ信ぜず。 ゆゑに名づけて 「亦」 となす。 あるいはまた△前の ˆ上品中生のˇ 深信に同じかるべし。
~或ハ信ジ不↠信ゼ。故ニ名テ為ス↠亦ト。或ハ可シ↣亦同カル↢前ノ深信ニ↡也。
^また信ずといへども深からず。 善心しばしば退し、 悪法しばしば起る。 これすなはち深く苦楽の因果を信ぜざるによりてなり。 もし深く生死の苦を信ずるものは、 *罪業畢竟じてかさねて犯さず。 もし深く浄土無為の楽を信ずるものは、 善心一たび発りて永く退失することなし。
~又雖モ↠信ズト不↠深カラ。善心数バ退シ、悪法数バ起ル。此乃チ由テ↠不ルニ↣深ク信ゼ↢苦楽ノ因果ヲ↡也。若シ深ク信ル↢生死ノ苦ヲ↡者ハ、罪業畢竟テ不↢重テ犯サ↡。若シ深ク信ル↢浄土無為ノ楽ヲ↡者ハ、善心一タビ発テ永ク無シ↢退失コト↡也。△
・不謗大乗
^▲二には信間断すといへども、 一切の大乗において疑謗することを得ざることを明かす。 もし疑謗を起さば、 たとひ千仏身を繞りたまふとも、 救ふべきに由なし。
▲二ニハ明ス↧信雖モ↢間断スト↡、於テ↢一切ノ大乗ニ↡不コトヲ↞得↢疑謗コトヲ↡。若シ起バ↢疑謗ヲ↡者、縦使ヒ千仏遶タマフトモ↠身ヲ、無シ↠由↠可キニ↠救フ也。
・諸善無功
^▲三には以上の諸善また功な0479きに似たることを明かす。 ▼ただ一念を発して苦を厭ひ 、 ▼諸仏の境界に生じ 、 すみやかに菩薩の大悲の願行を満てて、 生死に還り入りて、 あまねく衆生を度せんと楽ふ 。 ゆゑに*発菩提心と名づく。 この義△第三 福 (行福) のなかにすでに明かしをはりぬ。
▲三ニハ明ス↣已上ノ諸善似タルコトヲ↢亦無キニ↟功。唯発テ↢一念ヲ↡厭ヒ↠苦ヲ、楽フ↧生ジ↢諸仏ノ境界ニ↡、速ニ満テ↢菩薩ノ大悲ノ願行ヲ↡、還リ↢入テ生死ニ↡、普ク度ムト↦衆生ヲ↥。故ニ名ク↢発菩提心ト↡也。此ノ義第三福ノ中ニ已ニ明シ竟ヌ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)(ⅲ)廻行願生
^三に 「▲以此功徳」 より以下は、 まさしく△第八門のなかの、 前の正行を回して、 所求の処に向かふことを明かす。
三ニ従リ↢「以此功徳」↡已下ハ、▲正ク明ス↧第八門ノ中ノ廻テ↢前ノ正行ヲ↡向コトヲ↦所求ノ処ニ↥。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)(ⅳ)聖来迎接
^四に ▲「行者命欲終時」 より下 「七宝池中」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 *臨終に聖来りて迎接したまふと、 去時の遅疾とを明かす。 すなはちその九あり。
四ニ従リ↢「行者命欲終時」↡下至ル↢「七宝池中ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第九門ノ中ノ臨終ニ聖来テ迎接タマフト、去時ノ遅疾トヲ↡。即0778チ有リ↢其ノ九↡。
・命延不久
^▲一には命延久しからざることを明かす。
▲一ニハ明ス↢命延不コトヲ↟久カラ。
・主伴来応
^▲二には弥陀、 もろもろの聖衆と*金華を持して来応したまふことを明かす。
▲二ニハ明ス↧弥陀与↢諸ノ聖衆↡持テ↢金華ヲ↡来応タマフコトヲ↥。
・報化授手
^▲三には化仏同時に授手したまふことを明かす。
▲三ニハ明ス↢化仏同時ニ授手タマフコトヲ↡。
・同声等讃
^▲四には聖衆同声に等しく讃ずることを明かす。
▲四ニハ明ス↢聖衆同声ニ等ク讃コトヲ↡。
・罪滅発心
^▲五には行者の罪滅するがゆゑに 「清浄」 といひ、 ˆ行者のˇ *本所修を述ぶるがゆゑに0557 「発無上道心」 といふことを明かす。
▲五ニハ明ス↧行者ノ罪滅ルガ故ニ云ヒ↢清浄ト↡、述ルガ↢本所修ヲ↡故ニ云コトヲ↦発無上道心ト↥。
・我来迎汝
^▲六には行者*霊儀を覩るといへども、 疑心ありて 往生を得ざることを恐る。 このゆゑに聖衆同声に告げて、 「われ来りてなんぢを迎ふ」 といふことを明かす。
▲六ニハ明ス↧行者雖モ↠覩ルト↢霊儀ヲ↡、疑心アリテ恐ル↠不コトヲ↠得↢往生ヲ↡、是ノ故ニ聖衆同声ニ告テ、言コトヲ↦我来テ迎フト↞汝ヲ。
・自見坐台
^▲七にはすでに告げを蒙り、 およびすなはち自身を見るに、 すでに金華の上に坐して、 *篭々として合することを明かす。
▲七ニハ明ス↧既ニ蒙リ↠告ヲ、及ビ即チ見ルニ↢自身ヲ↡、已ニ坐テ↢金華之上ニ↡、篭篭トシテ而合コトヲ↥。
・一念即生
^▲八には仏身の後に随ひて0480、 一念にすなはち生ずることを明かす。
▲八ニハ明ス↧随テ↢仏身ノ後ニ↡、一念ニ即チ生コトヲ↥。
・在宝池中
^▲九にはかしこに到りて宝池のなかにあることを明かす。
▲九ニハ明ス↣到テ↠彼ニ在コトヲ↢宝池ノ中ニ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)(ⅴ)華開不同
^五に ▲「一日一夜」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時節の不同を明かす。
五ニ従リ↢「一日一夜」↡已下ハ、▲正ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華開ル時節ノ不同ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)(ⅵ)開後得益
^六に ▲「七日之中」 より下 「皆演妙法」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。
六ニ従リ↢「七日之中」↡下至ル↢「皆演妙法ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ノ不同ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)(ⅶ)他方得益
^七に ▲「遊歴十方」 より下 「住歓喜地」 に至るこのかたは、 まさしく*他方の得益を明かす、 また*後益と名づく。
七ニ従リ↢「遊歴十方」↡下至ル↢「住歓喜地ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢他方ノ得益ヲ↡、亦名ク↢後益ト↡也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅱ)(ⅷ)総結
^八に ▲「是名」 より以下は、 総じて結す。
八ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)(Ⅲ)結示
^上来八句の不同ありといへども、 広く上品下生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢八句ノ不同↡、広ク解シ↢上品下生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅰ b ロ 結讃【上輩総讃】
(一)正讃
【17】^¬讃¼ にいはく (*礼讃)、
▲¬讃ニ¼云ク、
^「▼上輩は*上行上根の人なり。 浄土に生ずることを求めて*貪瞋を断ず。
行の差別につきて三品を分つ。 *五門相続して*三因を助く。
「上輩ハ上行上根ノ人ナリ | 求テ↠生コトヲ↢浄土ニ↡断ズ↢貪瞋ヲ↡ |
就テ↢行ノ差別ニ↡分ツ↢三品ヲ↡ | 五門相続テ助ク↢三因ヲ↡ |
^一日七日もつぱら精進して、 *畢命に台に乗じて*六塵を出づ。
慶ばしきかな、 逢ひがたくしていま遇ふことを得たり。 永く*無為法性の身を証せん」 と。
一日七日専ラ精進テ | 畢命ニ乗テ↠台ニ出ヅ↢六塵ヲ↡ |
慶シキ哉難クシテ↠逢ヒ今得タリ↠遇コトヲ | 永ク証ムト↢無為法性ノ身ヲ↡」 |
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)総結
^上来*三位の不同ありといへども、 総じて上輩一門の義を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢三位ノ不同↡、総テ解シ↢上輩一門之義ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅱ【中輩観】
a【文前料簡】
【18】^十五に*中輩観の行善の文 前につきて、 △総じて料簡してすなはち十一門とな0481す。
▲十0779五ニ就テ↢中輩観ノ行善ノ文前ニ↡、総テ料簡テ即チ為ス↢十一門ト↡。
・告命
^一には総じて告命を明かす。
一ニ者総テ明ス↢告命ヲ↡。
・弁定其位
^二にはまさしくその位を弁定することを明かす。
二ニ者正ク明ス↣弁↢定コトヲ其ノ位ヲ↡。
・総挙有縁
^三にはまさしく総じて有縁の類を挙ぐることを明かす。
三ニ者正ク明ス↣総テ挙コトヲ↢有縁之類ヲ↡。
・弁定三心
^四にはまさしく三心を弁定してもつて0558正因となすことを明かす。
四ニ者正ク明ス↧弁↢定テ三心ヲ↡以テ為コトヲ↦正因ト↥。
・簡機堪不
^▽五にはまさしく機の堪と不堪とを簡ぶことを明かす。
五ニ者正ク明ス↠簡コトヲ↣機ノ堪ト与ヲ↢不堪↡。
・受法不同
^▽六にはまさしく受法の不同を明かす。
六ニ者正ク明ス↢*受法ノ不同ヲ↡。
・時節延促
^▽七にはまさしく修業の時節に延促異なることあることを明かす。
七ニ者正ク明ス↢修業ノ時節ニ延促有コトヲ↟異コト。
・廻行願生
^▽八にはまさしく所修の行を回して、 弥陀仏国に生ぜんと願ずることを明かす。
八ニ者正ク明ス↧廻テ↢所修ノ行ヲ↡、願コトヲ↞生ムト↢弥陀仏国ニ↡。
・迎接去時
^▽九にはまさしく命終の時に臨みて聖来りて迎接したまふ不同と、 去時の遅疾とを明かす。
九ニ者正ク明ス↧臨テ↢命終ノ時ニ↡聖来テ迎接タマフ不同ト、去時ノ遅疾トヲ↥。
・華開遅疾
^▽十にはまさしくかしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
十ニ者正ク明ス↢到テ↠彼ニ華開ル遅疾ノ不同ヲ↡。
・開後得益
^▽十一にはまさしく華開以後の得益に異なることあることを明かす。
十一ニ者正ク明ス↢華開已後ノ得益ニ有コトヲ↟異コト。
^上来十一門の不同ありといへども、 広く中輩三品を料簡しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢十一門ノ不同↡、広ク料↢簡シ中輩三品ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅱ b 正釈
イ 中上品【中品上生釈】
(一)総標
【19】^次に*中品上生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその八あり。
▲次ニ就テ↢中品上生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ八↡。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)別釈
(Ⅰ)告命
^一に ▲「仏告阿難」 より以下は、 総じて告命を明かす。
一ニ従リ↢「仏告阿難」↡已下ハ、▲総テ明ス↢告命ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)弁定其位
^二に ▲「中品上生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 すなはちこれ小乗根性の上善の凡夫人なり。
二ニ従リ↢「中品上生者」↡、▲正ク明ス↣弁↢定コトヲ其ノ位ヲ↡。即チ是小乗根性ノ上善ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅲ)受法不同
^三に ▲「若有衆生」 より下 「無衆過患」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 受法の不同を明かす。 す0482なはちその四あり。
三ニ従リ↢「若有衆生」↡下至ル↢「無衆過患ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第五・第六門ノ中ノ受法ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ四↡。
・簡機堪不
^▲一には機の堪と不堪とを簡ぶことを明かす。
▲一ニハ明ス↠簡コトヲ↣機ノ堪ト与ヲ↢不堪↡。
・受持小乗
^▲二には小乗の*斎戒等を受持することを明かす。
▲二ニハ明ス↣受↢持コトヲ小乗ノ斎戒等ヲ↡。
・小戒不消
^▲三には▼*小戒の力微にして五逆の罪を消さざることを明かす。
▲三ニハ明ス↧小戒ノ力微ニシテ不コトヲ↞消サ↢五逆之罪ヲ↡。
・余改悔
^▲四には小戒等を持ちて犯すことあることを得ずといへども、 もし*余あらば、 つねにすべからく*改悔してかならず清浄ならしむべきことを明かす。
▲四ニハ明ス↫雖モ↧持テ↢小戒等ヲ↡不ト↞得↠有コトヲ↠犯コト、設有バ↢余↡、恒ニ須クキコトヲ↪改悔テ必ズ令ム↩清浄ナラ↨。
^これすなはち▲上の第二の*戒善の福に合す。 しかるに修戒の時は、 あるいはこれ終身、 あるいは一年・一月・一日・一夜・一時等なり。 この時また不定なり。 大意はみな畢命を期となして毀犯することを得ず。
~此即チ合ス↢上ノ第二ノ戒善之福ニ↡也。然ニ修戒ノ時ハ、或ハ是終身、或ハ一年・一月・一日・一夜・一時等0780ナリ。此ノ時亦不定ナリ。大意ハ皆畢命ヲ為テ↠期ト不↠得↢毀犯コトヲ↡也。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)廻行願生
^四に ▲「以此善根回向」 より以下は、 まさしく△第八門のなかの、 所修の業を回して 所求の処に向かふことを明かす。
四ニ従リ↢「以此善根廻向」↡已下ハ、▲正ク明ス↧第八門ノ中ノ廻テ↢所修ノ業ヲ↡、向コトヲ↦所求ノ処ニ↥。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅴ)迎接去時
^五に ▲「臨命終時」 より下0559 「極楽世界」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 終時に聖来りて迎接したまふ不同と、 去時の遅疾とを明かす。 すなはちその六あり。
五ニ従リ↢「臨命終時」↡下至ル↢「極楽世界ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第九門ノ中ノ終時ニ聖来テ迎接タマフ不同ト、去時ノ遅疾トヲ↡。即チ有リ↢其ノ六↡。
・命延不久
^▲一には命延久しからざることを明かす。
▲一ニハ明ス↢命延不コトヲ↟久カラ。
・無有菩薩
^▲二には弥陀、 比丘衆と来りて、 菩薩あることなきことを明かす。 これ小乗の根性なるによりて、 また小根の衆を感ぜり。
▲二ニハ明ス↧弥陀与↢比丘衆↡来テ、無キコトヲ↞有コト↢菩薩↡。由テ↢是小乗ノ根性ナルニ↡、還タ感ゼリ↢小根之衆ヲ↡也。
・光照行者
^▲三には仏、 金光を放ちて行者の身を照らしたまふことを明かす。
▲三ニハ明ス↧仏放テ↢金光ヲ↡照タマフコトヲ↦行者ノ身ヲ↥。
・讃離衆苦
^▲四には仏、 ために法を説き、 また出家は多 衆の苦、 種々の俗縁・家業・王官・*長征・遠防等を離るることを讃ずることを明かす。 「な0483んぢいま出家して*四輩に仰がれ、 万事憂へず。 *迥然として自在にして、 *去住 障なし。 これがために*道業を修することを得」 と。 このゆゑに讃じて 「▲ 衆苦を離る」 とのたまふ。
▲四ニハ明ス↤仏為ニ説キ↠法ヲ、又讃コトヲ↣出家ハ離ルルコトヲ↢多衆ノ苦、種種ノ俗縁・家業・王官ノ長征遠防等ヲ↡。汝今出家テ仰ガレ↢於四輩ニ↡、万事不↠憂ヘ。迥然トシテ自在ニシテ、去住無シ↠障。為ニ↠此ガ得ト↠修コトヲ↢道業ヲ↡。是ノ故ニ讃テ云フ↠離ルト↢衆苦ヲ↡也。
・自見坐台
^▲五には行者すでに見聞しをはりて欣喜に勝へず。 すなはちみづから身を見れば すでに*華台に坐し、 頭を低れて仏を礼することを明かす。
▲五ニハ明ス↧行者既ニ見聞シ已テ不↠勝ヘ↢欣憙ニ↡、即チ自ラ見レバ↠身ヲ已ニ坐シ↢華台ニ↡、低テ↠頭ヲ礼コトヲ↞仏ヲ。
・挙頭在彼
^▲六には行者頭を低るること ここにありて、 頭を挙げをはればかの国にあることを明かす。
▲六ニハ明ス↧行者低コト↠頭ヲ在テ↠此ニ、挙ゲ↠頭ヲ已レバ在コトヲ↦彼ノ国ニ↥也。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅵ)華開遅速
^六に ▲「蓮華尋開」 よりは、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
六ニ従リ↢「蓮華尋開」↡者、▲正ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華開ル遅疾ノ不同ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅶ)開後得益
^七に ▲「当華敷時」 より下 「八解脱」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその三あり。
七ニ従リ↢「当華敷時」↡下至ル↢「八解脱ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ三↡。
・華開
^▲一には宝華たちまち発くることを明かす。 これ戒行精強なるによるがゆゑなり。
▲一ニハ明ス↢宝華尋発コトヲ↡。此由ルガ↢戒行精強ナルニ↡故也。
・聞法
^▲二には法音同じく*四諦の徳を讃ずることを明かす。
▲二ニハ明ス↣法音同ク讃コトヲ↢四諦之徳ヲ↡。
・獲果
^▲三にはかしこに到りて四諦を説くを聞きて、 すなはち*羅漢の果を獲ることを明かす。
▲三ニハ明ス↧到テ↠彼ニ聞テ↠説クヲ↢四諦ヲ↡、即チ獲コトヲ↦羅漢之果ヲ↥。
・釈義
^「▲羅漢」 といふは、 ここには無生といひ、 また*無着といふ。 因亡ずるがゆゑに無生なり。 果喪するがゆゑに無着なり。
▲言フ↢「羅漢ト」↡者、此ニハ云ヒ↢無生ト↡、亦云フ↢無著ト↡。因亡ルガ故ニ無生ナリ。果喪ルガ故ニ無著ナリ。
^「▲三明」 といふは、 宿命明・天眼明・漏尽明なり。
~言フ↢「三明ト」↡者、宿命0781明・天眼明・漏尽明也。
^「▲八解脱」 といふは、 *内有色外観色は一の解脱なり。 *内無色外観色は二の解脱なり。 *不浄相は三の解脱なり。 *四空とおよび*滅尽と総じて0484八を成ず。
~言フ↢「八解脱ト」↡者、内有色外観色ハ一ノ解脱ナリ。内無色外観色ハ二ノ解脱ナリ。不浄相ハ三ノ解脱ナリ。四空ト及ビ滅尽ト総テ成ズ↠八ヲ也。△
一 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅷ)総結
^八に ▲「是0560名」 より以下は、 総じて結す。
八ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅱ b イ(三)結示
^上来八句の不同ありといへども、 広く中品上生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢八句ノ不同↡、広ク解シ↢中品上生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅱ b ロ 中中品【中品中生釈】
(一)総標
【20】^次に*中品中生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその七あり。
▲次ニ就テ↢中品中生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ七↡。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)別釈
(Ⅰ)弁位
^一に ▲「中品中生者」 よりは、 総じて行の名を挙げてその位を弁定す。 すなはちこれ小乗下善の凡夫人なり。
一ニ従リハ↢「中品中生者」↡、▲総テ挙テ↢行ノ名ヲ↡弁↢定ス其ノ位ヲ↡。即チ是小乗下善ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)機法
^二に ▲「若有衆生」 より下 「威儀無欠」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△六・△七門のなかの、 簡機・時分・受法等の不同を明かす。 すなはちその三あり。
二ニ従リ↢「若有衆生」↡下至ル↢「威儀無欠ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第五・六・七門ノ中ノ簡機・時分・受法等ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ三↡。
・持八戒斎
^▲一には*八戒斎を受持することを明かす。
▲一ニハ明ス↣受↢持コトヲ八戒斎ヲ↡。
・持沙弥戒
^▲二には*沙弥戒を受持することを明かす。
▲二ニハ明ス↣受↢持コトヲ沙弥戒ヲ↡。
・持具足戒
^▲三には*具足戒を受持することを明かす。
▲三ニハ明ス↣受↢持コトヲ具足戒ヲ↡。
^この三品の戒はみな同じく一日一夜なり。 清浄にして犯すことなく、 すなはち軽罪に至るまでも、 極重の過を犯すがごとくし、 三業の*威儀に失あらしめず。 これすなはち上の▲第二の福 (戒福) に合す、 知るべし。
~此ノ三品ノ戒ハ皆同ク一日一夜ナリ。清浄ニシテ無ク↠犯コト、乃チ至マデモ↢軽罪ニ↡、如クシ↠犯スガ↢極重之過ヲ↡、三業ノ威儀ニ不↠令メ↠有ラ↠失也。此即チ合ス↢上ノ第二ノ福ニ↡、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)廻向
^三に ▲「以此功徳」 より以下は、 まさしく所修の業を回して、 所求の処に向かふことを明かす。
三ニ従リ↢「以此功徳」↡已下ハ、▲正ク明ス↧廻テ↢所修ノ業ヲ↡、向コトヲ↦所求ノ処ニ↥。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)迎接
^四に ▲「戒香熏修」 より下 「七宝池中」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 行者の*終時に聖来りて迎接したまふと、 去時の遅疾とを明かす。 すなはちその八あり。
四ニ従リ↢「戒香熏修」↡下至ル↢「七宝池中ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第九門ノ中ノ行者ノ終時ニ聖来テ迎接タマフト、去時ノ遅疾トヲ↡。即チ有リ↢其ノ八↡。
・命延不久
^▲一には命延久しからざることを明かす。
▲一ニハ明ス↢命延不コトヲ↟久カラ。
・与諸比丘
^▲二には弥0485陀、 もろもろの比丘衆と来りたまふことを明かす。
▲二ニハ明ス↧弥陀与↢諸ノ比丘衆↡来タマフコトヲ↥。
・光照行者
^▲三には仏、 金光を放ちて行者の身を照らしたまふことを明かす。
▲三ニハ明ス↧仏放テ↢金光ヲ↡照タマフコトヲ↦行者ノ身ヲ↥。
・持華来現
^▲四には比丘、 華を持して来現することを明かす。
▲四ニハ明ス↢比丘持テ↠華ヲ来現コトヲ↡。
・行者聞讃
^▲五には行者みづから空声等の讃を見聞することを明かす。
▲五ニハ明ス↣行者自ラ見↢聞コトヲ空声等ノ讃ヲ↡。
・深信仏語
^▲六には仏讃じて、 「なんぢ深く仏語を信じ、 随順して疑ふことなし。 ゆゑに来りてなんぢを迎ふ」 とのたまふことを明かす。
▲六ニハ明ス↧仏讃テ、言フコトヲ↦汝深ク信ジ↢仏語ヲ↡、随順テ無シ↠疑コト、故ニ来テ迎フト↞汝ヲ。
・坐華華合
^▲七にはすでに仏讃を蒙りてすなはち見るに、 みづから*華座に坐す。 坐しをはれば、 華合することを明かす。
▲七ニハ明ス↧既ニ蒙テ↢仏0782讃ヲ↡即チ見ルニ、自ラ坐ス↢華座ニ↡、坐シ已レバ、華合コトヲ↥。
・入西宝池
^▲八には華すでに合しをはりて、 すなはち西方宝池のうちに入ることを明かす。
▲八ニハ明ス↣華既ニ合シ已テ、即チ入コトヲ↢西方宝池之内ニ↡。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)華開
^五に ▲「経於七日」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時節の不同を明かす。
五ニ従リ↢「経於七日」↡已下ハ、▲正ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華開ル時節ノ不同ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)得益
^六に ▲「華既敷已」 より下0561 「成羅漢」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその四あり。
六ニ従リ↢「華既敷已」↡下至ル↢「成羅漢ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ四↡。
・華開見仏
^▲一には華開けて仏を見たてまつることを明かす。
▲一ニハ明ス↢華開ケテ見マツルコトヲ↟仏ヲ。
・合掌讃仏
^▲二には合掌して仏を讃ずることを明かす。
▲二ニハ明ス↢合掌テ讃コトヲ↟仏ヲ。
・聞法得果
^▲三には法を聞きて*初果を得ることを明かす。
▲三ニハ明ス↣聞テ↠法ヲ得コトヲ↢於初果ヲ↡。
・逕時得成
^▲四には半劫を経をはりてまさに羅漢となることを明かす。
▲四ニハ明ス↧経↢半劫ヲ↡已テ方ニ成コトヲ↦羅漢ト↥。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)総結
^七に ▲「是名」 より以下は、 総じて結す。
七ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅱ b ロ (三)結示
^上来七句の不同ありといへども、 広く中品中生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢七句ノ不同↡、広ク解シ↢中品中生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅱ b ハ 中下品【中品下生釈】
(一)総標
【21】^次に*中品下生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 す0486なはちその七あり。
▲次ニ就テ↢中品下生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ七↡。
一 Ⅱ ⅱ b ハ (二)別釈
(Ⅰ)弁位
^一に ▲「中品下生」 より以下は、 まさしく総じて行の名を挙げて、 その位を弁定することを明かす。 すなはちこれ*世善上福の凡夫人なり。
一ニ従リ↢「中品下生」↡已下ハ、▲正ク明ス↧総テ挙テ↢行ノ名ヲ↡弁↦定コトヲ其ノ位ヲ↥。即チ是世善上福ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)機法
^二に ▲「若有善男子」 より下 「行世仁慈」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 簡機・受法の不同を明かす。 すなはちその四あり。
二ニ従リ↢「若有善男子」↡下至ル↢「行世仁慈ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第五・第六門ノ中ノ簡機・授法ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ四↡。
・簡機
^▲一には簡機を明かす。
▲一ニハ明ス↢簡機ヲ↡。
・孝養奉順
^▲二には▼父母に孝養し、 *六親に奉順することを明かす。 すなはち上の初福 (世福) の▲第一・▲第二の句に合す。
▲二ニハ明ス↧孝↢養シ父母ニ↡、奉↦順コトヲ六親ニ↥。即チ合ス↢上ノ初福ノ第一・第二ノ句ニ↡。
・性調柔善
^▲三にはこの人、 性調ほり柔善にして自他を簡ばず、 *物の苦に遭へるを見て慈敬を起すことを明かす。
~三ニハ明ス↧此ノ人性調ホリ柔善ニシテ不↠簡バ↢自他ヲ↡、見テ↢物ノ遭ルヲ↟苦ニ起コトヲ↦於慈敬ヲ↥。
・不聞仏法
^四にはまさしくこの品の人かつて仏法を見聞せず、 また*悕求することを解らず、 ただみづから孝養を行ずることを明かす、 知るべし。
~四ニハ正ク明ス↧此ノ品之人不↣曽テ見↢聞セ仏法ヲ↡、亦不↠解ラ↢悕求コトヲ↡、但自ラ行コトヲ↦孝養ヲ↥也、応シ↠知ル。△
一 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)遇法
^三に ▲「此人命欲終時」 より下 「四十八願」 に至るこのかたは、 まさしく△第八門のなかの、 臨終に仏法に遇逢ふ時節の*分斉を明かす。
三ニ従リ↢「此人命欲終時」↡下至ル↢「四十八願ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↧第八門ノ中ノ臨終ニ遇↢逢フ仏法ニ↡時節ノ分斉ヲ↥。
一 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)得生
^四に ▲「聞此事已」 より下 「極楽世界」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 得生の益と去時の遅疾とを明かす。
四ニ従リ↢「聞此事已」↡下至ル↢「極楽世0783界ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第九門ノ中ノ得生之益ト、去時ノ遅疾トヲ↡也。
一 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)開不
^五に ▲「生経七日」 よりは、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華の開と不開とを異となすことを明かす。
五ニ従リ↢「生経七日ト」↡者、▲正ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華ノ開ト不開トヲ為スコトヲ↟異ト。
一 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅵ)得益
^六に ▲「遇観世音」 より下0562 「成羅漢」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益の不同を明かす。 すなはちその三あり。
六ニ従リ↢「遇観世音」↡下至ル↢「成羅漢ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ノ不同ヲ↡。即チ有リ↢其ノ三↡。
・逕時得遇
^▲一0487には時を経て以後、 観音・大勢に遇ひたてまつることを得ることを明かす。
▲一ニハ明ス↢逕テ↠時ヲ已後、得コトヲ↟遇マツルコトヲ↢観音・大勢ニ↡。
・逢聖聞法
^▲二にはすでに二聖 (観音・勢至) に逢ひたてまつりて、 妙法を聞くことを得ることを明かす。
▲二ニハ明ス↧既ニ逢マツリテ↢二聖ニ↡、得コトヲ↞聞コトヲ↢妙法ヲ↡。
・逕時得成
^▲三には一小劫を経て以後、 はじめて羅漢を悟ることを明かす。
▲三ニハ明ス↧逕テ↢一小劫ヲ↡已後、始テ悟コトヲ↦羅漢ヲ↥也。
一 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅶ)総結
^七に ▲「是名」 より以下は、 総じて結す。
七ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅱ b ハ (三)結示
^上来七句の不同ありといへども、 広く中品下生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢七句ノ不同↡、広ク解シ↢中品下生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅱ c 結讃【中輩総讃】
【22】^¬讃¼ にいはく (礼讃)、
▲¬讃ニ¼云ク、
^「▼中輩は*中行中根の人なり。 一日の斎戒をもつて金蓮に処す。
父母に孝養せるを教へて回向せしめ、 ために西方快楽の因と説く。
「中輩ハ中行中根ノ人ナリ | 一日ノ斎戒ヲモテ処ス↢金蓮ニ↡ |
孝↢養ルヲ父母ニ↡教テ廻向シメ | 為ニ説ク↢西方快楽ノ因ヲ↡ |
^仏、 声聞衆と来り 取りて、 ただちに弥陀の華座の辺に到る。
百宝の華に篭りて七日を経。 三品の蓮開けて*小真を証す」 と。
仏与↢声聞衆↡来リ取テ | 直ニ到ル↢弥陀ノ華座ノ辺ニ↡ |
百宝ノ華ニ篭テ経↢七日ヲ↡ | 三品ノ蓮開テ証スト↢小真ヲ↡」 |
一 Ⅱ ⅱ d 総結
^上来三位の不同ありといへども、 総じて中輩一門の義を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢三位ノ不同↡、総テ解シ↢中輩一門之義ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅲ【下輩観】
a【文前料簡】
【23】^十六に*下輩観の善悪二行の文 前につきて、 △料簡してすなはち十一門となす。
▲十六ニ就テ↢下輩観ノ善悪二行ノ文前ニ↡、料簡テ即チ為ス↢十一門ト↡。
・告命
^一には総じて告命を明かす。
一ニ者総テ明ス↢告命ヲ↡。
・弁定其位
^二にはその位を弁定す。
二ニ者弁↢定ス其ノ位ヲ↡。
・総挙有縁
^三には総じて有縁の生類を挙ぐ。
三ニ者総テ挙グ↢有縁ノ生類ヲ↡。
・弁定三心
^四には三心を弁定してもつて正因となす。
四ニ者弁↢定テ三心ヲ↡以テ為ス↢正因ト↡。
・簡機堪不
^▽五には機の堪と不堪とを簡ぶ。
五ニ者簡ブ↣機ノ堪ト与ヲ↢不堪↡。
・受法不同
^▽六には苦楽の二法を受くる不同を明かす。
六ニ者明ス↧受ル↢苦楽ノ二法ヲ↡不同ヲ↥。
・時節延促
^七には修業の時節に延促異な0488ることあることを明かす。
七ニ者明ス↢修業ノ時節ニ延促有コトヲ↟異コト。
・廻行願生
^八には所修の行を回して、 所求の処に向かふことを明かす。
八ニ者明ス↧廻テ↢所修ノ行ヲ↡向コトヲ↦所求ノ処ニ↥。
・迎接去時
^▽九には臨終の時聖来りて迎接したまふ不同と、 去時の遅疾とを明かす。
九ニ者明ス↢臨終ノ時聖来テ迎接タマフ不同0784ト、去時ノ遅疾トヲ↡。
・華開遅疾
^▽十にはかしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
十ニ者明ス↢到テ↠彼ニ華開ル遅疾ノ不同ヲ↡。
・開後得益
^▽十一には華開以後の得益に異なることあることを明かす。
十一ニ者明ス↢華開已後ノ得益ニ有コトヲ↟異コト。
^上来十一門の不同ありといへども、 総じて下輩の三位を料簡しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢十一門ノ不同↡、総テ料↢簡シ下輩ノ三位ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅲ b 正釈
イ 下上品【下品上生釈】
(一)総標
【24】^次0563に*下品上生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその九あり。
▲次ニ就テ↢下品上生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ九↡。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)別釈
(Ⅰ)告命
^一に ▲「仏告阿難」 より以下は、 まさしく告命を明かす。
一ニ従リ↢「仏告阿難」↡已下ハ、▲正ク明ス↢告命↡。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅱ)弁位
^二に ▲「下品上生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 ▼すなはちこれ十悪を造る軽罪の凡夫人なり。
二ニ従リハ↢「下品上生者」↡、▲正ク明ス↣弁↢定コトヲ其ノ位ヲ↡。即チ是造ル↢十悪ヲ↡軽罪ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅲ)簡機
^三に ▲「或有衆生」 より下 「無有慚愧」 に至るこのかたは、 まさしく△第五門のなかの、 簡機に、 一生以来の造悪の軽重の相を挙出することを明かす。 すなはちその五あり。
三ニ従リ↢「或有衆生」↡下至ル↢「無有慚愧ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↣第五門ノ中ノ簡機ニ、挙↢出コトヲ一生已来ノ造悪ノ軽重之相ヲ↡。即チ有リ↢其ノ五↡。
・総挙悪機
^▲一には総じて造悪の機を挙ぐることを明かす。
▲一ニハ明ス↣総テ挙コトヲ↢造悪之機ヲ↡。
・造作衆悪
^▲二には衆悪を造作することを明かす。
▲二ニハ明ス↣造↢作コトヲ衆悪ヲ↡。
・不謗大乗
^▲三には衆罪を作るといへども、 もろもろの大乗において誹謗を生ぜざることを明かす。
▲三ニハ明ス↧雖モ↠作ルト↢衆罪ヲ↡、於テ↢諸ノ大乗ニ↡不コトヲ↞生ゼ↢誹謗ヲ↡。
・重牒悪人
^▲四にはかさねて造悪の人を*牒して、 智者の類にあらざることを明かす。
▲四ニハ明ス↧重テ牒テ↢造悪之人ヲ↡、非コトヲ↦智者之類ニ↥也。
・造悪無愧
^▲五にはこれらの愚人衆罪を造るといへども、 総じて*愧心を生ぜざることを明かす。
▲五ニハ明ス↧此等ノ愚人雖モ↠造ルト↢衆罪ヲ↡、総テ不コトヲ↠生ゼ↦愧心ヲ↥。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅳ)遇法
^四に ▲「命0489欲終時」 より下 「生死之罪」 に至るこのかたは、 まさしく造悪の人等臨終に善に遇ひて法を聞くことを明かす。 すなはちその六あり。
四ニ従リ↢「命欲終時」↡下至ル↢「生死之罪ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢造悪ノ人等臨終ニ遇テ↠善ニ聞コトヲ↟法ヲ。即チ有リ↢其ノ六↡。
・命延不久
^▲一には命延久しからざることを明かす。
▲一ニハ明ス↢命延不コトヲ↟久カラ。
・忽遇知識
^▲二にはたちまちに*往生の善知識に遇ふことを明かす。
▲二ニハ明ス↣忽ニ遇コトヲ↢往生ノ善知識ニ↡。
・為讃衆経
^▲三には善人、 ために衆経を讃ずることを明かす。
▲三ニハ明ス↣善人、為ニ讃コトヲ↢衆経ヲ↡。
・聞経功力
^▲四にはすでに経を聞く功力、 罪を除くこと千劫なることを明かす。
▲四ニハ明ス↢已ニ聞ク↠経ヲ功力、除コト↠罪ヲ千劫ナルコトヲ↡。
・教称名号
^▲五には智者教を転じて、 弥陀の号を称念せしむることを明かす。
▲五ニハ明ス↣智者転テ↠教ヲ、称↢念シムルコトヲ弥陀之号ヲ↡。
・称名除罪
^▲六には弥陀の名を称するをもつてのゆゑに、 罪を除くこと五百万劫なることを明かす。
▲六ニハ明ス↧以ノ↠称ルヲ↢弥陀ノ名ヲ↡故ニ、除コト↠罪ヲ五百万劫ナルコトヲ↥。
・料簡
【25】^▼問ひていはく、 なんがゆゑぞ、 経を聞くこと*十二部なるには、 ただ罪を除くこと千劫、 仏を称すること一声するには、 すなはち罪を除くこと五百万劫なる は、 なんの意ぞや。
▲問テ曰ク、何ガ故ゾ、聞コト↠経ヲ十二部ナルニハ、但除コト↠罪ヲ千劫、称コト↠仏ヲ一声スルニハ、即チ除コト↠罪ヲ五百万劫ナル者、何ノ意ゾ也。
^◆答へていはく、 造罪の人障重くして、 加ふるに死苦の来り逼むるをもつてす。 善人多経を説くといへども、 *餐受の心浮散す。 心散ずるによるがゆゑに、 罪を除くことやや軽し。 また仏名はこれ一なれば、 すなはちよく散を摂してもつて心を住む。 また教へて正念に名を称せしむ。 *心重きによるがゆゑに、 すなはちよく罪を除くこと多劫なり。
~答テ曰ク、造罪之人障重クシテ、加ルニ以テス↢死苦ノ来リ逼ルヲ↡。善人雖モ↠説クト↢多経ヲ↡、餐0785受之心浮散ス。由ルガ↢心散ルニ↡故ニ、除コト↠罪ヲ稍軽シ。又仏名ハ是一ナレバ、即チ能ク摂テ↠散ヲ以テ住ム↠心ヲ。復教テ令ム↢正念ニ称セ↟名ヲ。由ルガ↢心重キニ↡故ニ、即チ能ク除コト↠罪ヲ多劫也。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅴ)来迎
【26】^五に ▲「爾時彼仏」 より下0564 「生宝池中」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門0490のなかの、 終時の*化衆の来迎と、 去時の遅疾とを明かす。 すなはちその六あり。
五ニ従リ↢「爾時彼仏」↡下至ル↢「生宝池中ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第九門ノ中ノ終時ノ化衆ノ来迎ト、去時ノ遅疾トヲ↡。即チ有リ↢其ノ六↡。
・遣化来現
^▲一には行者まさしく名を称する時、 かの弥陀すなはち化衆を遣はして声に応じて来現せしめたまふことを明かす。
▲一ニハ明ス↧行者正ク称ル↠名ヲ時、彼ノ弥陀即チ遣テ↢化衆ヲ↡応テ↠声ニ来現シメタマフコトヲ↥。
・同讃行人
^▲二には化衆すでに身現じてすなはち同じく行人を讃じたまふことを明かす。
▲二ニハ明ス↣化衆既已ニ身現テ即チ同ク讃タマフコトヲ↢行人ヲ↡。
・但述称功
^▲三には▼所聞の*化讃、 ただ称仏の功を述べて、 「われ来りてなんぢを迎ふ」 とのたまひて*聞経の事を論ぜざることを明かす。
▲三ニハ明ス↧所聞ノ化讃但述テ↢称仏之功ヲ↡、「我来テ迎フトノタマヒテ↠汝ヲ」不コトヲ↞論ゼ↢聞経之事ヲ↡。
^▼しかるに仏の願 意に望むれば、 ただ勧めて正念に名を称せしむ。 往生の義、 疾きこと*雑散の業に 同じからず。 この ¬経¼ (観経) および*諸部のなかのごとき、 処々に広く歎じて、 勧めて名を称せしむ。 まさに*要益となすなり、 知るべし。
▲然ニ望レバ↢仏ノ願意ニ↡者、唯勧テ正念ニ称シム↠名ヲ。往生ノ義疾キコト不↠同カラ↢雑散之業ニ↡。如キ↢此ノ¬経¼及ビ諸部ノ中ノ↡、処処ニ広ク歎テ、勧テ令ム↠称セ↠名ヲ。将ニ為ス↢要益ト↡也、応シ↠知ル。
・光明遍室
^▲四にはすでに化衆の告げを蒙り、 およびすなはち光明の室に遍するを見ることを明かす。
▲四ニハ明ス↧既ニ蒙リ↢化衆ノ告ヲ↡、及ビ即チ見コトヲ↦光明ノ遍ルヲ↞室ニ。
・報命尋終
^▲五にはすでに光 照を蒙りて、 *報命すなはち終ることを明かす。
▲五ニハ明ス↧既ニ蒙テ↢光照ヲ↡、報命尋チ終コトヲ↥。
・乗華生池
^▲六には華に乗じ、 仏に従ひて宝池のなかに生ずることを明かす。
▲六ニハ明ス↣乗ジ↠華ニ、従テ↠仏ニ生コトヲ↢宝池ノ中ニ↡。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅵ)華開
^六に ▲「経七日」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる遅疾の不同を明かす。
六ニ従リ↢「経七日」↡已下ハ、▲正ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華開ル遅疾ノ不同ヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅶ)得益
^七に ▲「当華敷時」 より下 「得入初地」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益に異なることあることを明かす。 すなはちその五あり。
七ニ従リ↢「当華敷時」↡下至ル↢「得入初地ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ニ有コトヲ↟異コト。即チ有リ↢其ノ五↡。
・二尊放光
^▲一には観音等先づ*神光を放つことを明かす。
▲一ニハ明ス↣観音等先ヅ放コトヲ↢神光ヲ↡。
・聖赴華側
^▲二には ˆ観音等のˇ 身、 行者0491の宝華の側に赴くことを明かす。
▲二ニハ明ス↣身赴コトヲ↢行者ノ宝華之側ニ↡。
・為説宿教
^▲三にはために前生所聞の教を説くことを明かす。
▲三ニハ明ス↣為ニ説コトヲ↢前生所聞之教ヲ↡。
・領解発心
^▲四には行者聞きをはりて領解し発心することを明かす。
▲四ニハ明ス↢行者聞キ已テ領解シ発心コトヲ↡。
・逕時得証
^▲五には遠く多劫を経て、 *百法の位に証臨することを明かす。
▲五ニハ明ス↧遠ク逕テ↢多劫ヲ↡、証↦臨コトヲ百法之位ニ↥也。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅷ)総結
^八に ▲「是名」 より以下は、 総じて結す。
八ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅲ b イ (二)(Ⅸ)挙益
^九に ▲「得聞仏名」 より以下は、 かさねて行者の益を挙ぐ。 ただ念仏のみ独り往生を得るにあらず。 ▼法・僧通念するもまた去くことを得。
九ニ従リ↢「得聞仏名」↡已下ハ、▲重テ挙グ↢行者0786之益ヲ↡。非ズ↣但念仏ノミ独リ得ルニ↢往生ヲ↡。法・僧通念ルモ亦得↠去クコトヲ也。
一 Ⅱ ⅲ b イ (三)結示
^上来九句の不同ありといへども、 広く下品上生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢九句ノ不同↡、広ク解シ↢下品上生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅲ b ロ 下中品【下品中生釈】
(一)総標
【27】^次0565に*下品中生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその七あり。
▲次ニ就テ↢下品中生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ七↡。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (二)別釈
(Ⅰ)総明告命
^一に ▲「仏告阿難」 より以下は、 総じて告命を明かす。
一ニ従リ↢「仏告阿難」↡已下ハ、▲総テ明ス↢告命ヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)弁定其位
^二に ▲「下品中生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 すなはちこれ破戒次罪の凡夫人なり。
二ニ従リハ↢「下品中生者」↡、▲正ク明ス↣弁↢定コトヲ其ノ位ヲ↡。即チ是破戒次罪ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (二)(Ⅲ)簡機
^三に ▲「或有衆生」 より下 「応堕地獄」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 簡機と造業とを明かす。 すなはちその七あり。
三ニ従リ↢「或有衆生」↡下至ル↢「応堕地獄ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第五・第六門ノ中ノ簡機ト造業トヲ↡。即チ有リ↢其ノ七↡。
・総挙悪機
^▲一には総じて造悪の機を挙ぐることを明かす。
▲一ニハ明ス↣総テ挙コトヲ↢造悪之機ヲ↡。
・多犯諸戒
^▲二には多く諸戒を犯すことを明かす。
▲二ニハ明ス↣多ク犯コトヲ↢諸戒ヲ↡。
・偸盗僧物
^▲三には*僧物を*偸盗することを明かす。
▲三ニハ明ス↣偸↢盗コトヲ僧物ヲ↡。
・邪命説法
^▲四には*邪命説法を明かす。
▲四ニハ明ス↢邪命説法ヲ↡。
・総無愧心
^▲五には総じて*愧心なきことを明かす。
▲五ニハ明ス↣総テ無キコトヲ↢愧心↡。
・兼造衆罪
^▲六には 衆罪を兼ね造り 、 内には心に悪を発し、 外にはすなはち身口に悪をなすことを明かす。 すでに自身不善な0492れば、 また見るものみな憎む。 ゆゑに 「もろもろの悪心をもつてみづから荘厳す」 といふ。
▲六ニハ明ス↧兼ネ↢造リ衆罪ヲ↡、内ニハ心ニ発シ↠悪ヲ、外ニハ即チ身口ニ為コトヲ↞悪ヲ。既ニ自身不善ナレバ、又見ル者皆憎ム。故ニ云フ↢諸ノ悪心ヲモテ自ラ荘厳スト↡也。
・定入地獄
^▲七にはこの罪状を験むるに、 さだめて地獄に入るべきことを明かす。
▲七ニハ明ス↧験ルニ↢斯ノ罪状ヲ↡、定テ入ベキコトヲ↦地獄ニ↥。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (二)(Ⅳ)善悪来迎
^四に ▲「命欲終時」 より下 「即得往生」 に至るこのかたは、 まさしく△第九門のなかの、 終時の*善悪来迎することを明かす。 すなはちその九あり。
四ニ従リ↢「命欲終時」↡下至ル↢「即得往生ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第九門ノ中ノ終時ノ善悪来迎コトヲ↡。即チ有リ↢其ノ九↡。
・命延不久
^▲一には罪人の命延久しからざることを明かす。
▲一ニハ明ス↢罪人ノ命延不コトヲ↟久カラ。
・獄火来現
^▲二には獄火 来現することを明かす。
▲二ニハ明ス↢獄火来現コトヲ↡。
・遇善知識
^▲三にはまさしく火現ずる時、 善知識に遇ふことを明かす。
▲三ニハ明ス↣正ク火現ズル時、遇コトヲ↢善知識ニ↡。
・為説弥陀
^▲四には善人、 ために弥陀の功徳を説くことを明かす。
▲四ニハ明ス↣善人為ニ説コトヲ↢弥陀ノ功徳ヲ↡。
・除罪多劫
^▲五には▼罪人すでに弥陀の名号を聞きて、 すなはち罪を除くこと多劫なることを明かす。
▲五ニハ明ス↧罪人既ニ聞テ↢弥陀ノ名号ヲ↡、即チ除コト↠罪ヲ多劫ナルコトヲ↥。
・火変為風
^▲六にはすでに罪滅を蒙りて、 火変じて風となることを明かす。
▲六ニハ明ス↧既ニ蒙テ↢罪滅ヲ↡、火変テ為コトヲ↞風ト。
・天華来応
^▲七には天華風に随ひて来応して、 目の前に羅列することを明かす。
▲七ニハ明ス↣天華随テ↠風ニ来応テ、羅↢列コトヲ目ノ前ニ↡。
・化衆来迎
^▲八には*化衆来迎することを明かす。
▲八ニハ明ス↢化衆来迎コトヲ↡。
・去時遅疾
^▲九には去時の遅疾を明かす。
▲九ニハ明ス↢去時ノ遅疾ヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (二)(Ⅴ)華開不同
^五に ▲「七宝池中」 より下 「六劫」 に至るこのかたは、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる時節の不同を明かす。
五ニ従リ↢「七宝池中」↡下至ル↢「六劫ニ」↡已来タハ、▲正0787ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華開ル時節ノ不同ヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (二)(Ⅵ)開後得益
^六に ▲「蓮華乃敷」 より下 「発無上道心」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益に異なることあることを明かす。 すなはちその三あり。
六ニ従リ↢「蓮華乃敷」↡下至ル↢「発無上道心ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ニ有コトヲ↟異コト。即チ有リ↢其ノ三↡。
・華開安慰
^▲一には華すでに0566開けをはりて、 観音等*梵声をもつて安慰することを明かす。
▲一ニハ明ス↢華既ニ開ケ已テ、観音等梵声ヲモテ安慰コトヲ↡。
・為説妙典
^▲二にはために甚深の妙典を説0493くことを明かす。
▲二ニハ明ス↣為ニ説コトヲ↢甚深ノ妙典ヲ↡。
・領解発心
^▲三には行者領解し、 発心することを明かす。
▲三ニハ明ス↢行者領解シ発心コトヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (二)(Ⅶ)総結
^七に ▲「是名」 より以下は、 総じて結す。
七ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅲ b ロ (三)結示
^上来七句の不同ありといへども、 広く下品中生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢七句ノ不同↡、広ク解シ↢下品中生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅲ b ハ 下下品【下品下生釈】
(一)総標
【28】^次に*下品下生の位のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁じ、 後に結す。 すなはちその七あり。
▲次ニ就テ↢下品下生ノ位ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ジ、後ニ結ス。即チ有リ↢其ノ七↡。
一 Ⅱ ⅲ b ハ (二)別釈
(Ⅰ)告命
^一に ▲「仏告阿難」 より以下は、 総じて告命を明かす。
一ニ従リ↢「仏告阿難」↡已下ハ、▲総テ明ス↢告命ヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ハ (二)(Ⅱ)弁位
^二に ▲「下品下生者」 よりは、 まさしくその位を弁定することを明かす。 すなはちこれつぶさに五逆等を造れる重罪の凡夫人なり。
二ニ従リ↢「下品下生者」↡、▲正ク明ス↣弁↢定コトヲ其ノ位ヲ↡。即チ是具ニ造レル↢五逆等ヲ↡重罪ノ凡夫人也。
一 Ⅱ ⅲ b ハ (二)(Ⅲ)簡機造悪
^三に ▲「或有衆生」 より下 「受苦無窮」 に至るこのかたは、 まさしく△第五・△第六門のなかの、 簡機と造悪の軽重の相とを明かす。 すなはちその七あり。
三ニ従リ↢「或有衆生」↡下至ル↢「受苦無窮ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第五・第六門ノ中ノ簡機ト造悪トノ軽重之相トヲ↡。即チ有リ↢其ノ七↡。
・明造悪機
^▲一には造悪の機を明かす。
▲一ニハ明ス↢造悪之機ヲ↡。
・挙不善名
^▲二には総じて不善の名を挙ぐることを明かす。
▲二ニハ明ス↣総テ挙コトヲ↢不善之名ヲ↡。
・簡罪軽重
^▲三には罪の軽重を簡ぶことを明かす。
▲三ニハ明ス↠簡コトヲ↢罪ノ軽重ヲ↡。
・総結衆悪
^▲四には総じて衆悪を 結して、 智人の業にあらずといふことを明かす。
▲四ニハ明ス↧総テ結テ↢衆悪ヲ↡、非ズトイフコトヲ↦智人之業ニ↥。
・造悪既多
^▲五には悪を造ることすでに多ければ、 罪また軽きにあらざることを明かす。
▲五ニハ明ス↢造コト↠悪ヲ既ニ多ケレバ、罪亦非コトヲ↟軽キニ。
・果報必苦
^▲六には業としてその報を受けざるはあらず、 因としてその果を受けざるはあらず。 因業すでにこれ楽にあらず、 果報いづくんぞよく苦ならざらんといふことを明かす。
▲六ニハ明ス↧非ズ↢業トシテ不ルハ↟受ケ↢其ノ報ヲ↡、非ズ↢因トシテ不ルハ↟受ケ↢其ノ果ヲ↡、因業既ニ非ズ↢是楽ニ↡、果報*烏ンゾ能ク不ラムトイフコトヲ↞苦ナラ也。
・酬報未窮
^▲七には造悪の因すでに具して、 *酬報の劫いまだ窮まらざることを明かす。
▲七ニハ明ス↢造悪之因既ニ具テ、酬報之劫未ダルコトヲ↟窮ラ。
・料簡
【049429】^▼問ひていはく、 四十八願のなかの ˆ第十八願のˇ ごときは、 ▲ただ五逆と*誹謗正法とを除きて、 往生を得しめず。 いまこの ¬観経¼ の下品下生のなかには、 謗法を*簡びて五逆を摂せるは、 なんの意かあるや。
▲問テ曰ク、如キハ↢四十八願ノ中ノ↡、唯除テ↢五逆ト誹謗正法トヲ↡、不↠得シメ↢往生ヲ↡。今此ノ¬観経ノ¼下品下生ノ中ニハ、簡テ↢謗法ヲ↡摂ル↢五逆ヲ↡者、有ル↢何ノ意カ↡也。
【抑止門釈】
^◆答へていはく、 この義仰ぎて*抑止門のなかにつきて解せん。
~答テ曰ク、此0788ノ義仰テ就テ↢抑止門ノ中ニ↡解ム。
・抑止門釈 ・本願
^◆四十八願のなかの ˆ第十八願のˇ ごとき、 謗法と五逆とを除くことは、 しかるにこの二業その障極重なり。 衆生もし造ればただちに*阿鼻に入り 、 *歴劫周慞して出づべきに由なし。 ただ如来それ0567この二の過を造ることを恐れて、 方便して止めて 「往生を得ず」 とのたまへり。 またこれ摂せざるにはあらず。
~如キ↢四十八願ノ中ノ↡、除コト↢謗法ト五逆トヲ↡者、然ニ此之二業其ノ障極重ナリ。衆生若シ造バ直ニ入リ↢阿鼻ニ↡、歴劫周慞テ無シ↠由↠可キニ↠出ヅ。但如来恐テ↣其レ造コトヲ↢斯ノ二ノ過ヲ↡、方便テ止テ言ヘリ↠不ト↠得↢往生ヲ↡。亦不ズ↢是不ルニハ↟摂セ也。
・抑止門釈 ・今経
^◆また下品下生のなかに、 五逆を取りて謗法を除くは、 それ五逆はすでに作れり、 捨てて流転せしむべからず。 還りて大悲を発して*摂取して往生せしむ。 しかるに謗法の罪はいまだ為らず。 また止めて 「もし謗法を起さば、 すなはち生ずることを得ず」 とのたまふ。 これは未造業につきて解す。 もし造らば、 還りて摂して生ずることを得しめん。
~又下品下生ノ中ニ、取テ↢五逆ヲ↡除ク↢謗法ヲ↡者、其五逆ハ已ニ作レリ。不↠可ラ↣捨テテ令ム↢流転セ↡。還テ発テ↢大悲ヲ↡摂取テ往生シム。然ニ謗法之罪ハ未ダ↠為ラ。又止テ言フ↧若シ起バ↢謗法ヲ↡、即チ不ト↞得↠生コトヲ。此ハ就テ↢未造業ニ↡而解ス也。若シ造バ、還テ摂テ得シメム↠生コトヲ。
^◆かしこに生ずることを得といへども、 華合して多劫を経。 これらの罪人華のうちにある時、 三種の障あり。 一には仏およびもろもろの聖衆を見ることを得ず。 二には正法を聴聞することを得ず。 三には*歴事供養することを得ず。
~雖モ↠得ト↠生コトヲ↠彼ニ、華合テ逕↢於多劫ヲ↡。此等ノ罪人在ル↢華ノ内ニ↡時、有リ↢三種ノ障↡。一ニ者不↠得↠見コトヲ↢仏及ビ諸ノ聖衆ヲ↡。二ニ者不↠得↣聴↢聞コトヲ正法ヲ↡。三ニ者不↠得↢歴事供養コトヲ↡。
^◆これを除きて以外はさらにもろ0495もろの苦なし。 *経にのたまはく、 「なほ比丘の*三禅に入れる楽のごとし」 と、 知るべし。 華のなかにありて多劫開けずといへども、 阿鼻地獄のなかにして、 長時永劫にもろもろの苦痛を受くるに勝れざるべけんや。 この義抑止門につきて解しをはりぬ。
~除テ↠此ヲ已外ハ更ニ無シ↢諸ノ苦↡。¬経ニ¼云ク、「猶如シト↧比丘ノ入レル↢三禅ニ↡之楽ノ↥也、」応シ↠知ル。雖モ↧在テ↢華ノ中ニ↡多劫不ト↞開ケ、可ケム↠不ル↠勝レ↣阿鼻地獄之中ニシテ、長時永劫ニ受ルニ↢諸ノ苦痛ヲ↡也。此ノ義就テ↢抑止門ニ↡解シ竟ヌ。△
一 Ⅱ ⅲ b ハ (二)(Ⅳ)念仏利益
【30】^四に ▲「如此愚人」 より下 「*生死之罪」 に至るこのかたは、 まさしく法を聞き仏を念じて、 *現益を蒙ることを得ることを明かす。 すなはちその十あり。
四ニ従リ↢「如此愚人」↡下至ル↢「生死之罪ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢聞キ↠法ヲ念テ↠仏ヲ得コトヲ↟蒙コトヲ↢現益ヲ↡。即チ有リ↢其ノ十↡。
・重牒悪人
^▲一にはかさねて造悪の人を牒することを明かす。
▲一ニハ明ス↣重テ牒コトヲ↢造悪之人ヲ↡。
・命延不久
^▲二には命延久しからざることを明かす。
▲二ニハ明ス↢命延不コトヲ↟久カラ。
・遇善知識
^▲三には臨終に善知識に遇ふことを明かす。
▲三ニハ明ス↣臨終ニ遇コトヲ↢善知識ニ↡。
・教令念仏
^▲四には*善人安慰して教へて仏を念ぜしむることを明かす。
▲四ニハ明ス↢善人安慰テ教テ令コトヲ↟念ゼ↠仏ヲ。
・死苦来逼
^▲五には罪人死苦来り逼めて、 仏名を念ずることを得るに由なきことを明かす。
▲五ニハ明ス↢罪人死苦来リ逼テ、無キコトヲ↟由↠得ルニ↠念コトヲ↢仏名ヲ↡。
【転教口称】
^▲六には善友苦しみて*失念すと知りて、 教を転じて口に弥陀の名号を称せしむることを明かす。
▲六ニハ明ス↧善友知テ↢苦ミテ失念スト↡、転テ↠教ヲ口ニ称シムルコトヲ↦弥陀ノ名号ヲ↥。
・称名無間
^▲七には念数の多少、 声々間なきことを明かす。
▲七ニハ明ス↢念数ノ多少、声声無キコトヲ↟間。
・除罪多劫
^▲八には罪を除くこと多劫なることを明かす。
▲八ニハ明ス↢除コト↠罪ヲ多0789劫ナルコトヲ↡。
・臨終正念
^▲九には臨終正念にしてすなはち*金華来応することあることを明かす。
▲九ニハ明ス↣臨終正念ニシテ即チ有コトヲ↢金華来応コト↡。
・直到極楽
^▲十には去時の遅疾、 ただちに*所帰の国に到ることを明かす。
▲十ニハ明ス↣去時ノ遅疾、直ニ到コトヲ↢所帰之国ニ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ハ (二)(Ⅴ)華開不同
^五に ▲「於蓮華中満十二劫」 より以下は、 まさしく△第十門のなかの、 かしこに到りて華開くる遅疾の不0568同を明かす。
五ニ従リ↢「於蓮華中満十二劫」↡已下ハ、▲正ク明ス↢第十門ノ中ノ到テ↠彼ニ華開ル遅疾ノ不同ヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ハ (二)(Ⅵ)開後得益
^六0496に ▲「観音大勢」 より下 「発菩提心」 に至るこのかたは、 まさしく△第十一門のなかの、 華開以後の得益に異なることあることを明かす。 すなはちその三あり。
六ニ従リ↢「観音大勢」↡下至ル↢「発菩提心ニ」↡已来タハ、▲正ク明ス↢第十一門ノ中ノ華開已後ノ得益ニ有コトヲ↟異コト。即チ有リ↢其ノ三↡。
・為宣妙法
^▲一には二聖 (観音・勢至)、 ために甚深の妙法を宣べたまふことを明かす。
▲一ニハ明ス↣二聖、為ニ宣タマフコトヲ↢甚深ノ妙法ヲ↡。
・除罪歓喜
^▲二には罪を除きて歓喜することを明かす。
▲二ニハ明ス↢除テ↠罪ヲ歓喜コトヲ↡。
・後発勝心
^▲三には後に*勝心を発すことを明かす。
▲三ニハ明ス↣後ニ発コトヲ↢勝心ヲ↡。
一 Ⅱ ⅲ b ハ (二)(Ⅶ)総結
^七に 「▲是名」 より以下は、 総じて結す。
七ニ従リ↢「是名」↡已下ハ、▲総テ結ス。
一 Ⅱ ⅲ b ハ (三)結示
^上来七句の不同ありといへども、 広く下品下生を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢七句ノ不同↡、広ク解シ↢下品下生ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅱ ⅲ c 結讃【下輩総讃】
【31】^¬讃¼ にいはく (礼讃)、
▲¬讃ニ¼云ク、
^「▼下輩は*下行下根の人なり。 十悪・五逆等の貪瞋と、
四重と*偸僧と*謗正法と、 いまだかつて*慚愧して前のを悔いず。
「下輩ハ下行下根ノ人ナリ | 十悪・五逆等ノ貪瞋ト |
|
四重ト偸僧ト謗正法ト | 未ダ↣曽テ慚愧テ悔イ↢前ノヲ↡ |
^終時に苦 相、 雲のごとくに集まり、 地獄の猛火罪人の前にあり。
たちまちに往生の善知識の、 急に勧めてもつぱらかの仏の名を称せしむるに遇ふ。
終時ニ苦相如クニ↠雲ノ集リ | 地獄ノ猛火罪人ノ前ニアリ |
忽ニ遇フ↣往生ノ善知識ノ | 急ニ勧テ専ラ称シムルニ↢彼ノ仏ノ名ヲ↡ |
^化仏・菩薩声を尋ねて到りたまふ。 一念心を傾くれば宝蓮に入る。
*三華障重くして多劫に開く。 時にはじめて菩提の因を発す」 と。
化仏・菩薩尋テ↠声ヲ到タマフ | 一念傾レバ↠心ヲ入ル↢宝蓮ニ↡ |
三華障重クシテ開ク↢多劫ニ↡ | 于↠時始テ発スト↢菩提ノ因ヲ↡」 |
一 Ⅱ ⅲ d 総結
^上来三位の不同ありといへども、 総じて下輩一門の義を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢三位ノ不同↡、総テ解シ↢下輩一門之義ヲ↡竟ヌ。
一 Ⅲ 並結二善
【049732】^前には十三観を明かしてもつて 「定善」 となす。 すなはちこれ*韋提の致請にして、 如来 (釈尊) すでに答へたまふ。 後には三福・九品を明かして、 名づけて 「散善」 となす。 これ仏 (釈尊) の自説なり。 定散両門 ありて異なることありといへども、 総じて*正宗分を解しをはりぬ。
▲前ニハ明テ↢十三観ヲ↡以テ為ス↢定善ト↡。即チ是韋提ノ致請ニシテ、如来已ニ答タマフ。後ニハ明テ↢三福・九品ヲ↡、名テ為ス↢散善ト↡。是仏ノ自説ナリ。雖モ↧有テ↢定散両門↡有リト↞異コト、総テ解シ↢正宗分ヲ↡竟ヌ。
二【得益分】
Ⅰ 総標
Ⅱ 別釈
ⅰ 標数
【33】^三に△*得益分のなかにつきて、 また先づ挙げ、 次に弁ず。 すなはちその七あり。
▲三ニ就テ↢得益分ノ中ニ↡、亦先ヅ挙ゲ、次ニ弁ズ。即チ有リ↢其ノ七↡。
二 Ⅱ ⅱ 随釈
a 牒前文
^初めに 「▲説是語」 といふは、 まさしく総じて前の文を牒して後の得益の相を生ずることを明かす。
初ニ言フ↢「説是語ト」↡者、▲正ク明ス↧総0790テ牒テ↢前ノ文ヲ↡生コトヲ↦後ノ得益之相ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ b 明能聞人
^二に ▲「韋提」 より以下は、 まさしくよく法を聞く人を明かす。
二ニ従リ↢「韋提」↡已下ハ、▲正ク明ス↢能ク聞ク↠法ヲ人ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ c 光台見土
^三に ▲「応時即見極楽」 より以下は、 まさしく夫人等 ▲上の光台のなかにおいて極楽の相を見ることを明かす。
三ニ従リ↢「応時即見極楽」↡已下ハ、▲正ク明ス↧夫人等於テ↢上ノ光台ノ中ニ↡見コトヲ↦極楽之相ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ d 七観得益
^四0569に ▲「得見仏身及二菩薩」 より以下は、 まさしく夫人▲第七観 (華座観) の初めにおいて無量寿仏を見たてまつりし時、 すなはち*無生の益を得ることを明かす。
四ニ従リ↢「得見仏身及二菩薩」↡已下ハ、▲正ク明ス↧夫人於テ↢第七観ノ初ニ↡見マツリシ↢無量寿仏ヲ↡時、即チ得コトヲ↦無生之益ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ e 侍女発心
^五に ▲「侍女」 より以下は、 まさしくこの勝相を覩て、 おのおの*無上の心を発して浄土に生ぜんと求むることを明かす。
五ニ従リ↢「侍女」↡已下ハ、▲正ク明ス↧覩テ↢斯ノ勝相ヲ↡、各ノ発テ↢無上之心ヲ↡求コトヲ↞生ムト↢浄土ニ↡。
二 Ⅱ ⅱ f 蒙記獲定
^六に ▲「世尊悉記」 より以下は、 まさしく侍女*尊記を蒙ることを得て、 みなかの国に生じてすなはち*現前三昧を獲ることを明かす。
六ニ従リ↢「世尊悉記」↡已下ハ、▲正ク明ス↧侍女得テ↠蒙コトヲ↢尊記ヲ↡、皆生テ↢彼ノ国ニ↡即チ獲コトヲ↦現前三昧ヲ↥。
二 Ⅱ ⅱ g 諸天発心
イ 総標
^七に ▲「無量諸天」 より以下は、 まさしく▲前の*厭苦の縁のなかに、 *釈・梵・*護世の諸天等 、 仏 (釈尊) に従ひ0498て王宮にして空に臨みて法を聴くことを明かす。
七ニ従リ↢「無量諸天」↡已下ハ、▲正ク明ス↢前ノ厭苦ノ縁ノ中ニ、釈・梵・護世ノ諸天等、従テ↠仏ニ王宮ニシテ臨テ↠空ニ聴コトヲ↟法ヲ。
二 Ⅱ ⅱ g ロ 別釈
(一)挙例見聞
^あるいは釈迦 *毫光の転変を見、 あるいは弥陀金色の霊儀を見、 あるいは九品往生の殊異を聞き、 あるいは*定散両門ともに摂することを聞き、 あるいは善悪の行斉しく帰することを聞き、 あるいは西方浄土、 目に対して遠きにあらざることを聞き、 あるいは一生専精に志を決すれば永く生死と流を分つことを聞く。
~或ハ見↢釈迦毫光ノ転変ヲ↡、或ハ見↢弥陀金色ノ霊儀ヲ↡、或ハ聞キ↢九品往生ノ殊異ヲ↡、或ハ聞キ↢定散両門倶ニ摂コトヲ↡、或ハ聞キ↢善悪之行斉ク帰コトヲ↡、或ハ聞キ↢西方浄土対テ↠目ニ非コトヲ↟遠キニ、或ハ聞ク↧一生専精ニ決レバ↠志ヲ永ク与↢生死↡分コトヲ↞流ヲ。
二 Ⅱ ⅱ g ロ (二)結示得益
^これらの諸天すでに如来 (釈尊) の広く*希奇の益を説きたまふを聞きて、 おのおの無上の心を発す 。 これすなはち仏はこれ聖中の極なり。 語を発したまへば経となり、 *凡惑の類*餐を蒙る。 よくこれを聞くものをして益を獲しむ。
~此等ノ諸天既ニ聞テ↣如来ノ広ク説タマフヲ↢希奇之益ヲ↡、各ノ発ス↢無上之心ヲ↡。斯乃チ仏ハ是聖中之極ナリ。発タマヘバ↠語ヲ成リ↠経ト、凡惑之類蒙ル↠餐ヲ。能ク使ム↢聞クモノヲシテ↠之ヲ獲↟益ヲ。△
二 Ⅲ 結示
^上来七句の不同ありといへども、 広く得益分を解しをはりぬ。
上来雖モ↠有ト↢七句ノ不同↡、広ク解シ↢得益分ヲ↡竟ヌ。
三【流通分】
Ⅰ 弁二分開合
【34】^四に次に▲*流通分を明かす。 なかに二あり。 一には*王宮の流通を明かす。 二には*耆闍の流通を明かす。
▲四ニ次ニ明ス↢流通分ヲ↡。於テ↠中ニ有リ↠二。一ニハ明ス↢王宮ノ流通ヲ↡。二ニハ明ス↢耆闍ノ流通ヲ↡。
三 Ⅱ 約開釈文
^いま先づ王宮の流通分のなかにつきてすなはちその七あり。
▲今先ヅ就テ↢王宮ノ流通分ノ中ニ↡、即チ有リ↢其ノ七↡。
三 Ⅱ ⅰ 請発由
^一に ▲「爾時阿難」 より以下は、 まさしく請発の由を明かす。
▲一ニ従リ↢「爾時阿難」↡已下ハ、正ク明ス↢請発之0791由ヲ↡。
三 Ⅱ ⅱ 経名得益
^二に ▲「仏告阿難」 より以下は、 まさしく如来 *依正を双べ標し 、 もつて経の名を立て、 またよく経によりて行を起せば、 *三障の雲おのづから巻くことを明かして、 前の初めの問の 「▲云何名此経」 の一句に答ふ。
▲二ニ従リ↢「仏告阿難」↡已下ハ、正ク明ス↧如来ノ双ベ↢標シ依正ヲ↡、以テ立テ↢経ノ名ヲ↡、又能ク依テ↠経ニ起バ↠行ヲ、三障之雲自ラ巻コトヲ↥、答フ↢前ノ初ノ問ノ「云何名此経ノ」一句ニ↡。
三 Ⅱ ⅲ 答前後問
^三に ▲「汝0570当受持」 より以下は、 前の0499後の問の 「▲云何受持」 の一句に答ふ。
▲三ニ従リ↢「汝当受持」↡已下ハ、答フ↢前ノ後ノ問ノ「云何受持ノ」一句ニ↡。
三 Ⅱ ⅳ 比挍顕勝
^四に ▲「行此三昧者」 より下 「何況憶念」 に至るこのかたは、 まさしく*比校 *顕勝して、 人を勧めて奉行せしむることを明かす。 すなはちその四あり。
▲四ニ従リ↢「行此三昧者」↡下至ル↢「何況憶念ニ」↡已来タハ、正ク明ス↢比校顕勝テ、勧テ↠人ヲ奉行シムルコトヲ↡。即チ有リ↢其ノ四↡。
・標定善
^▲一には総じて定善を標してもつて三昧の名を立つることを明かす。
▲一ニハ明ス↧総テ標テ↢定善ヲ↡以テ立コトヲ↦三昧之名ヲ↥。
・見三身
^▲二には観によりて修行して、 すなはち三身を見る益を明かす。
▲二ニハ明ス↧依テ↠観ニ修行テ、即チ見ル↢三身ヲ↡之益ヲ↥。
・能行機
^▲三にはかさねてよく教を行ずる 機を拳ぐることを明かす。
▲三ニハ明ス↣重テ挙コトヲ↢能ク行ル↠教ヲ之機ヲ↡。
・勧帰依
^▲四にはまさしく比校 顕勝して、 ただ *三身の号を聞くすらなほ多劫の*罪を滅す、 いかにいはんや正念に帰依して証を獲ざらんやといふことを明かす。
▲四ニハ正ク明ス↧比校顕勝テ、但聞クスラ↢三身之号ヲ↡尚滅ス↢多劫ノ罪ヲ↡、何ニ況ヤ正念ニ帰依テ而不ラムヤトイフコトヲ↞獲↠証ヲ也。
三 Ⅱ ⅴ 念仏超絶
^五に ▲「若念仏者」 より下 「生諸仏家」 に至るこのかたは、 まさしく▼念仏三昧の*功能超絶して、 実に*雑善をもつて比類となすことを得るにあらざることを顕す。 すなはちその五あり。
五ニ従リ↢「若念仏者」↡下至ル↢「生諸仏家ニ」↡已来タハ、▲正ク顕ス↣念仏三昧ノ功能超絶テ、実ニ非コトヲ↢雑善ヲモテ得ルニ↟為スコトヲ↢比類ト↡。即チ有リ↢其ノ五↡。
・専念弥陀
^▲一にはもつぱら弥陀仏の名を念ずることを明かす。
▲一ニハ明ス↣専ラ念コトヲ↢弥陀仏ノ名ヲ↡。
・讃能念人
^▲二には能念の人を指讃することを明かす。
▲二ニハ明ス↣指↢讃コトヲ能念之人ヲ↡。
・喩分陀利
^▲三にはもしよく相続して念仏するものは、 この人 はなはだ*希有なりとなす、 さらに物としてもつてこれに方ぶべきなし。 ゆゑに*分陀利を引きて喩へとなすことを明かす。
▲三ニハ明ス↧若シ能ク相続テ念仏ル者ハ、此ノ人甚ダ為ス↢希有ナリト↡、更ニ無シ↣物トシテ可キ↢以テ方ブ↟之ニ、故ニ引テ↢分陀利ヲ↡為コトヲ↞喩ト。
・喩分陀利 【五種嘉誉】
^▼「分陀利」 といふは、 人中の好華と名づけ、 また希有華と名づけ、 また人中の上上華と名づけ、 また人中の妙好華と名づく。 この華相伝して*蔡華と名づくるこれなり。 ▼もし念仏するものは、 すなは0500ちこれ▼人中の好人なり、 人中の*妙好人なり、 人中の上上人なり、 人中の希有人なり、 人中の最勝人なり。
▲言フ↢「分陀利ト」↡者、名ケ↢人中ノ好華ト↡、亦名ケ↢希有華ト↡、亦名ケ↢人中ノ上上華ト↡、亦名ク↢人中ノ妙好華ト↡。此ノ華相伝テ名ル↢蔡華ト↡是ナリ。若シ念仏ル者ハ、即チ是人中ノ好人ナリ、人中ノ妙好人ナリ、人中ノ上上人ナリ、人中ノ希有人ナリ、人中ノ最勝人也。
・二尊常随
^▲四には▼もつぱら弥陀の名を念ずるものは、 すなはち観音・勢至つねに随ひて*影護したまふこと、 また*親友*知識のごとくなることを明かす。
▲四ニハ明ス↧専ラ念ル↢弥陀ノ名ヲ↡者ハ、即チ観音・勢至常ニ随テ影護タマフコト、亦如クナルコトヲ↦親友知識ノ↥也。
・当益
^▲五には今生にすでにこの益を蒙りて、 捨命してすなはち*諸仏の家に入ることを明かす。 すなはち浄土これなり。 かしこに到りて、 長時に法を聞き、 歴事供養して、 *因円かに果満ず。 道場の座、 あにはるかならんや。
▲五ニハ明ス↧今生ニ既ニ蒙テ↢此ノ益ヲ↡、捨命テ即0792チ入コトヲ↦諸仏之家ニ↥。即チ浄土是也。到テ↠彼ニ、長時ニ聞キ↠法ヲ、歴事供養テ、因円カニ果満ズ。道場之座、豈ニ賖ナラムヤ。
三 Ⅱ ⅵ 付属流通【付属釈】
^六に ▲「仏告阿難汝好持是語」 より以下は、 まさしく弥陀0571の名号を付属して、 *遐代に流通せしめたまふことを明かす。 ▼上来定散両門の益を説くといへども、 ▼*仏の本願に望むるに、 意、 衆生をして▼一向にもつぱら弥陀仏の名を 称せしむるにあり。
六ニ従リ↢「仏告阿難汝好持是語」↡已下ハ、▲正ク明ス↧付↢属テ弥陀ノ名号ヲ↡、流↦通シメタマフコトヲ於遐代ニ↥。上来雖モ↠説クト↢定散両門之益ヲ↡、望ルニ↢仏ノ本願ニ↡、意在リ↣衆生ヲシテ一向ニ専ラ称シムルニ↢弥陀仏ノ名ヲ↡。
三 Ⅱ ⅶ 遇餐意躍
^七に ▲「仏説此語時」 より以下は、 まさしく*能請・能伝等の、 いまだ聞かざるところを聞き、 いまだ見ざるところを見、 たまたま*甘露を餐して、 *喜躍してもつてみづから勝ふることなきことを明かす。
七ニ従リ↢「仏説此語時」↡已下ハ、▲正ク明ス↧能請能伝等ノ、聞キ↠所ヲ↠未ダル↠聞カ、見↠所ヲ↠未ダル↠見、遇マ餐テ↢甘露ヲ↡、憙躍テ無キコトヲ↦以テ自ラ勝コト↥也。
三 Ⅲ 結王宮流通分
^上来七句の不同ありといへども、 広く王宮の流通分を解しをはりぬ。
~上来雖モ↠有ト↢七句ノ不同↡、広ク解シ↢王宮ノ流通分ヲ↡竟ヌ。
四 耆闍分【耆闍会】
【35】^五に*耆闍会のなかにつきて、 またその三あり。
▲五ニ就テ↢耆闍会ノ中ニ↡、亦有リ↢其ノ三↡。
四 Ⅰ 序分
^一に ▲「爾時世尊」 より以下は、 耆闍の序分を明かす。
一ニ従リ↢「爾時世尊」↡已下ハ、▲明ス↢耆闍ノ序分ヲ↡。
四 Ⅱ 正宗分
^二に ▲「爾時阿難」 より以下は、 耆闍の正宗分を明0501かす。
二ニ従リ↢「爾時阿難」↡已下ハ、▲明ス↢耆闍ノ正宗分ヲ↡。
四 Ⅲ 流通分
^三に ▲「無量諸天」 より以下は、 耆闍の流通分を明かす。
三ニ従リ↢「無量諸天」↡已下ハ、▲明ス↢耆闍ノ流通分ヲ↡。
^上来三義の不同ありといへども、 総じて耆闍分を明かしをはりぬ。
~上来雖モ↠有ト↢三義ノ不同↡、総テ明シ↢耆闍分ヲ↡竟ヌ。
○結科【総結】
・序分
【36】^△初めに ▲「如是我聞」 より下 「云何見極楽世界」▲ に至るこのかたは、 序分を明かす。
▲初ニ従リ↢「如是我聞」↡下至ル↢「云何見極楽世界ニ」↡已来タハ、明ス↢序分ヲ↡。
・正宗分
^二に▲日観より下下品下生▲に至るこのかたは、 正宗分を明かす。
~二ニ従リ↢日観↡下至ル↢下品下生ニ↡已来タハ、明ス↢正宗分ヲ↡。
・得益分
^三に ▲「説是語時」 より下 「諸天発心」▲ に至るこのかたは、 *得益分を明かす。
~三ニ従リ↢「説是語時」↡下至ル↢「諸天発心ニ」↡已来タハ、明ス↢得益分ヲ↡。
・流通分
^四に ▲「爾時阿難」 より下 「韋提等歓喜」▲ に至るこのかたは、 王宮の流通分を明かす。
~四ニ従リ↢「爾時阿難」↡下至ル↢韋提等歓喜ニ↡已来タハ、明ス↢王宮ノ流通分ヲ↡。
・耆闍分
^五に ▲「爾時世尊」 より下 「作礼而退」▲ に至るこのかたは、 総じて耆闍分を明かす。
~五ニ従リ↢「爾時世尊」↡下至ル↢「作礼而退ニ」↡已来タハ、総テ明ス↢耆闍分ヲ↡。
^上来五分の不同ありといへども、 総じて ¬観経¼ 一部の文義を解しをはりぬ。
~上来*雖モ↠有ト↢五分ノ不同↡、総テ解シ↢¬観経¼一部ノ文義ヲ↡竟ヌ。△
○【結嘆】
【37】^ひそかにおもんみれば、 ▼真宗遇ひがたく、 ▼浄土の要逢ひがたし。
▲窃0793ニ以レバ、真宗叵ク↠遇ヒ、浄土之要難シ↠逢ヒ。
^ˆ釈尊はˇ *五趣をして斉しく 生ぜしめんと欲す。 ここをもつて勧めて後代に聞かしむ。 ただ 如来の*神力*転変無方なり。 *隠顕機に随ひて王宮にひそかに化す。 ここにおいて耆闍の聖衆、 小智0572疑を懐く。 仏 (釈尊)、 後に山 (*耆闍崛山) に還りたまふに、 委況を闚はず。
~欲ス↠使メムト↢五趣ヲシテ斉ク生ゼ↡。是ヲ以テ勧テ聞シム↢於後代ニ↡。但如来ノ神力転変無方ナリ。隠顕随テ↠機ニ王宮ニ密ニ化ス。於テ↠是ニ耆闍ノ聖衆、小智懐ク↠疑ヲ。仏後ニ還タマフニ↠山ニ、弗↠闚ハ↢委況ヲ↡。
^時に阿難、 ために王宮の化、 定散両門を宣ぶ。 異衆これによりて同じく聞きて、 奉行して頂戴せざるはなし。
~於テ↠時ニ阿難、為ニ宣ブ↢王宮之化、定散両門ヲ↡。異衆因テ↠此ニ同ク聞テ、莫シ↠不ルハ↢奉行テ而頂戴セ↡。△
◎後序【後跋】
【050238】^▼敬ひて一切有縁の*知識等にまうす。 ▲余はすでにこれ生死の凡夫なり。 智慧浅短なり。 しかるに仏教*幽微なれば、 あへてたやすく異解を生ぜず。 つひにすなはち心を標し願を結して、 *霊験を請求す。 まさに心を造すべし。 *尽虚空遍法界の一切の三宝、 釈迦牟尼仏・阿弥陀仏・観音・勢至、 かの土のもろもろの菩薩大海衆および一切の荘厳相等に南無し帰命したてまつる。
▲敬テ白ス↢一切有縁ノ知識等ニ↡。餘ハ既ニ是生死ノ凡夫ナリ。智慧浅短ナリ。然ニ仏教幽微ナレバ、不↣敢テ輒ク生ゼ↢異解ヲ↡。遂ニ即チ標シ↠心ヲ結テ↠願ヲ、請↢求ス霊験ヲ↡。方ニ可シ↠造ス↠心ヲ。南↢無シ帰↣命マツル尽虚空遍法界ノ一切ノ三宝、釈迦牟尼仏・阿弥陀仏・観音・勢至、彼ノ土ノ諸ノ菩薩大海衆及ビ一切ノ荘厳相等ニ↡。
^▼某、 いまこの ¬観経¼ の要義を出して、 *古今を楷定せんと欲す。 もし三世の諸仏・釈迦仏・阿弥陀仏等の大悲の願意に称はば、 願はくは夢のうちにおいて、 上の所願のごとき一切の境界の諸相を見ることを得しめたまへ。 仏像の前において願を結しをはりて、 *日別に ¬阿弥陀経¼ を誦すること三遍、 阿弥陀仏 を念ずること三万遍、 心を至して発願す。
~某今欲ス↧出テ↢此ノ¬観経ノ¼要義ヲ↡、楷↦定ムト古今ヲ↥。若シ称バ↢三世ノ諸仏・釈迦仏・阿弥陀仏等ノ大悲ノ願意ニ↡者、願クハ於テ↢夢ノ中ニ↡、得シメタマヘ↠見コトヲ↧如キ↢上ノ所願ノ↡一切ノ境界ノ諸相ヲ↥。於テ↢仏像ノ前ニ↡結シ↠願ヲ已テ、日別ニ誦コト↢¬阿弥陀経ヲ¼↡三*遍、念コト↢阿弥陀仏ヲ↡三万*遍、至シテ↠心ヲ発願ス。
^◆すなはち当夜において西方の空中 に、 上のごとき 諸相の境界ことごとくみな顕現するを見る。 雑色の宝山百重千重なり。 種々の光明、 下、 地を照らすに、 地、 金色のごとし。 なかに諸仏・菩薩ましまして、 あるいは坐し、 あるいは立し、 あるいは語し、 あるいは黙す。 あるいは身手を動じ、 あるいは住して動ぜざるものあり。 すでにこの相を見て、 合掌して立ちて観ず。 やや久しくしてすなはち覚めぬ。 覚めをはりて*欣喜に勝へず。
~即チ於テ↢当夜ニ↡、見ル↢西方ノ空中ニ、如キ↠上ノ諸相ノ境界悉ク皆顕現ルヲ↡。雑色ノ宝山百重千重ナリ。種種ノ光明、下、照スニ↢於地ヲ↡、地如シ↢金色ノ↡。中ニ有シテ↢諸仏・菩薩↡、或ハ坐シ或ハ立シ、或ハ語シ或ハ黙ス。或ハ動ジ↢身手ヲ↡、或ハ住テ不ル↠動ゼ者アリ。既ニ見テ↢此ノ相ヲ↡合掌テ立チテ観ズ。量久クシテ乃チ覚ヌ。覚メ已テ不↠勝ヘ↢欣喜ニ↡。
^◆すなはち ˆこ0503の観経のˇ *義門を条録す。 これより以後、 毎夜の夢のうちにつねに一の僧ありて、 来りて*玄義の科文を指授す。 すでに了りて、 さらにまた見えず。
~於ニ即チ条↢録ス義門0794ヲ↡。自リ↠此已後、毎夜ノ夢ノ中ニ常ニ有テ↢一ノ僧↡而来テ指↢授ス*玄義ノ科文ヲ↡。既ニ了リテ、更ニ不↢復見エ↡。
^◆後の時に*脱本しをはりて、 またさらに心を至して七日を要期して、 日別に ¬阿弥陀経¼ を誦すること十遍、 阿0573弥陀仏を念ずること三万遍、 *初夜・後夜にかの仏の国土の荘厳等の相を観想して、 誠心に帰命することもつぱら上の法のごとくす。
~後ノ時ニ脱本シ竟已テ、復更ニ至シテ↠心ヲ要↢期テ七日ヲ↡、日別ニ誦コト↢¬阿弥陀経ヲ¼↡十*遍、念コト↢阿弥陀仏ヲ↡三万*遍、初夜・後夜ニ観↢想テ彼ノ仏ノ国土ノ荘厳等ノ相ヲ↡、誠心ニ帰命コト一ラ如クス↢上ノ法ノ↡。
^◆当夜にすなはち見らく、 *三具の磑輪、 道の辺に独り転ず。 たちまちに一人ありて、 白き駱駝に乗りて前に来りて見えて勧む 。 「師まさにつとめて決定して往生すべし、 退転をなすことなかれ。 この界は穢悪にして苦多し。 労しく*貪楽せざれ」 と。 答へていはく、 「大きに賢者の*好心の視誨を蒙れり。 某、 畢命を期となして、 あへて*懈慢の心を生ぜず」 と。 云々
~当夜ニ即チ見ラク、三具ノ磑輪、道ノ辺ニ独リ転ズ。忽ニ有テ↢一人↡、乗テ↢白キ駱駝ニ↡来テ↠前ニ見テ勧ム。師当ニシ↢努力決定テ往生ス↡、莫レ↠作コト↢退転ヲ↡。此ノ界ハ穢悪ニシテ多シ↠苦。不レト↢労ク貪楽セ↡。答テ言ク、大ニ蒙レリ↢賢者ノ好心ノ視誨ヲ↡。某畢命ヲ為テ↠期ト、不ト↣敢テ生ゼ↢於懈慢之心ヲ↡。云云
^▲第二夜に見らく、 阿弥陀仏の身は真金 色にして、 七宝 樹の下 、 金蓮華の上にましまして坐したまへり。 十僧囲繞して、 またおのおの一の宝樹の下に坐せり。 仏樹の上に すなはち天衣ありて、 挂り繞れり。 面を正しくし西に向かへて、 合掌して坐して観ず。
~第二夜ニ見ラク、阿弥陀仏ノ身ハ真金色ニシテ、在シテ↢七宝樹ノ下、金蓮華ノ上ニ↡坐タマヘリ。十僧囲遶テ、亦各ノ坐セリ↢一ノ宝樹ノ下ニ↡。仏樹ノ上ニ乃チ有テ↢天衣↡、挂リ繞レリ。正クシ↠面ヲ向テ↠西ニ、合掌テ坐テ観ズ。
^◆第三夜に見らく、 両の*幢杆きはめて大きに高く顕れて、 幡懸りて五色なり。 道路縦横にして、 人観ること礙なし。
~第三夜ニ見ラク、両ノ幢杆極テ大ニ高ク顕テ、幡懸テ五色ナリ。道路縦横ニシテ、人観コト無シ↠礙。
^◆すでにこの相を得をはりて、 すなはち休止して七日に至ら0504ず。
~既ニ得↢此ノ相ヲ↡已テ、即便チ休止テ不↠至ラ↢七日ニ↡。
^◆上来のあらゆる*霊相は、 本心、 *物のためにして己身のためにせず。 すでにこの相を蒙れり。 あへて*隠蔵せず、 *つつしみてもつて 義の後に申べ呈して、 聞くことを末代に被らしむ。 願はくは*含霊のこれを聞くものをして信を生ぜしめ 、 *有識の覩るものをして西に帰せしめん。
~上来ノ所有ル霊相者、本心為ニシテ↠物ノ不↠為ニセ↢己身ノ↡。既ニ蒙レリ↢此ノ相ヲ↡。不↢敢テ隠蔵セ↡、謹ミテ以テ申ベ↢呈テ義ノ後ニ↡、被シム↢聞コトヲ於*末代ニ↡。願クハ使メム↢含霊ノ聞クモノヲシテ↠之ヲ生シメ↠信ヲ、有識ノ覩ル者ヲシテ西ニ帰セ↡。
^◆この功徳をもつて衆生に*回施す。 ことごとく*菩提心を発して、 慈心をもつてあひ向かひ、 仏眼をもつてあひ看、 菩提まで眷属として真の善知識となりて、 同じく浄国に帰し 、 ともに仏道を成ぜん。
~以テ↢此ノ功徳ヲ↡廻↢施ス衆生ニ↡。悉ク発テ↢菩提心ヲ↡、慈心ヲモテ相ヒ向ヒ、仏眼ヲモテ相ヒ看、菩提マデ眷属トシテ作テ↢真ノ善知識ト↡、同ク帰シ↢浄国ニ↡、共ニ成ゼム↢仏道ヲ↡。
^◆この義すでに証を請ひて定めをはりぬ。 ▼一句一字加減すべからず。 写さんと欲するものは、 もつぱら経法のごとくすべし、 知るべし。
~此ノ義已ニ請テ↠証ヲ定メ竟ヌ。一句一字不↠可ラ↢加減ス↡。欲ル↠写ムト者ハ、一ラ如クスベシ↢経法ノ↡、応シ↠知ル。△
観0574経正宗分散善義 巻第四
延書の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし返点については本派本願寺蔵版によるか。 なお、 宗祖加点本と対校し、 相違箇所を赤の点下線(クリックで内容表示)、 減語句を青の点下線で示している。
仁義礼智信 儒教に説く五種の倫理徳目。
五常のこと。
具受不具受 五戒のすべてを受けることと、 その一部分を受けること。
具持不具持 戒のすべてをたもつことと、 その一部分をたもつこと。
この義… 十一門の義は、 九品それぞれの文についてみると、 すべてそろっているものと、 そろっていないものとがあるということ。
隠顕 文の表に顕れたものと裏に隠れたもの。 善導大師の隠顕は、 ともに真実の説意で、 親鸞聖人が 「化身土文類」 でいわれるような真仮 (真実・方便) を分別する意味ではない。
先づ挙げ… まず九品各位の名を挙げ、 次にその相を述べ、 終りに文を結ぶ。善導大師は九品のすべてにこの三科があるとする。
有生の類 往生を得る機類。
発心 至誠心・深心・回向発願心の三心をおこすこと。
かならず…得ざれ 親鸞聖人は 「かならず真実心のうちになしたまへるを須ゐんことを明かさんと欲ふ。外に賢善精進の相を現ずることを得ざれ、 内に虚仮を懐いて」 (信文類訓) と読まれた。
貪瞋邪偽奸詐百端 むさぼり、 いかり、 よこしまな心、 いつわりの心が無数にあり、 絶えず起ること。
走り 親鸞聖人は 「走め」 (信文類訓) と読まれた。
おほよそ…真実なるに 親鸞聖人は 「おほよそ施したまふところ趣求をなす。 またみな真実なり」 (信文類訓) と読み、 如来の回施された真実をもちい (受領し) て、 浄土を趣求 (願生) するという意味に転じられた。
施為趣求 衆生に施しを行う利他 (施為) と、 さとりを求める自利 (趣求) のこと。
制捨 とどめ捨て去ること。
不善の…捨つべし 親鸞聖人は 「不善の三業はかならず真実心のうちに捨てたまへるを須ゐよ」 (信文類訓) と読まれた。
またもし善の…名づく 親鸞聖人は 「またもし善の三業を起さば、 かならず真実心のうちになしたまへるを須ゐて、 内外明闇を簡ばず、 みな真実を須ゐるがゆゑに至誠心と名づく」 (信文類訓) と読まれた。
内外明闇 内心と外相、 智明と愚闇のこと。
縁 てがかり。
平章 道理を正しく明らかにすること。
如是如是 そのとおりそのとおり。
専注奉行 心を専一にして行 (念仏) を修すること。
不相応の教 仏の意にかなわない教え。
処別 場所が異なっていること。
対機別 教えの対象となる人の資質や能力が異なっていること。
機に備ふ 教えの対象となる人の資質や能力にあわせる。
地前の菩薩 初地の位以前の菩薩。 菩薩五十二位の修道階位のうち
十地の階位以前の
十信・
十住・
十行・
十回向の四十位を指していう。 →
菩薩
初地以上十地以来 第一
歓喜地から第十
法雲地までの十地の菩薩。 →
菩薩
決了 決定了解の略。 真実をはっきりと了解して不確かなことが少しもないこと。
所化 教化されるところ。
舌相を出して 仏の説くところが虚妄でないという証誠の意を示す。
時節の久近 時間の長短。
往生経 ¬大経¼ ¬観経¼ ¬小経¼ を指す。
礼誦等 五正行のうちの称名以外の
行業。
読誦・
観察・
礼拝・
讃嘆供養の
助業をいう。
世出世の善根 世間の善 (
世福) と出世間の善 (
戒福・
行福) のこと。 →
三福
かならず…想をなすべし 親鸞聖人は 「かならず決定して真実心のうちに回向したまへる願を須ゐて得生の想をなせ」 (信文類訓) と読まれた。
得生の想 かならず浄土に往生できるという想い。
道より落ちて 白道より退転して。 「道に落ちて」 と読めば、 悪道に落ちるという意になる。
稟識 心のはたらきを有するもの。 有情、 衆生に同じ。
待対の法 相対してはたらくもの。
有縁の要行 自分の素質能力にかなった肝要な方法。
解 学解のこと。 仏教の学問的理解。
凡・聖 凡夫、 聖者。
空曠のはるかなる処 なにもなくてどこまでも広がっている場所。
むしろ 原漢文は 「寧」 の字。 親鸞聖人は 「やすく」 (信文類訓) と読まれた。
空迥の沢 広々とした野原のこと。
微 かすか。
妄りに…喩ふ 親鸞聖人は 「妄りに見解をもってたがひにあひ惑乱し、 およびみづから罪を造りて退失すと説くに喩ふるなり」 (信文類訓) と読まれた。
みづから纏ひて 自らの業に縛りつけられて。 迷っての意。
簡ぶ 区別する。
持 行善のこと。
慈下の行 下を慈しむ行為。
小戒 小乗の戒。
大心大行 大乗の心、 大乗の行。
性習 習慣によってできた性質。
三仏 法身・報身・応身のこと。
薫成 香気を移すように、 他のものにその性質を移し付けること。
身財 身命と財産。
前賢後聖 前世 (過去) の賢者や後世 (未来) の尊い聖者・菩薩たち。
三祇の劫 三大阿僧祇劫のこと。 菩薩が修行して仏になるまでに経なければならないというきわめて長い時間をいう。
潅頂の位 菩薩の第十地の位。 菩薩が第十地に入るとき、 諸仏がその頂に甘露 (香水) を潅いで法王の職を授けるしるしとするところから潅頂という。
大地微塵 大地を微塵 (物質の最小単位) にくだいたほどの数という意。
重昏 暗闇。
思忖 思いはかること。
時節の延促 時間の長短。
上の二 慈心不殺と読誦大乗。
下の二 読誦大乗と修行六念。
所帰の国を… 帰するところの浄土を定めること。
凡聖明闇 凡夫と聖者、 智者と愚者のこと。
体性 本性。
所帰 西方の浄土のこと。
本所修の業 往生する以前に修めた善根功徳。
他方の得益 極楽以外の世界で得る利益のこと。
延時の得忍 後の時に無生法忍を得ることを指す。
本所修 本所修の業のこと。 往生する以前に修めた善根功徳。
霊儀 (仏聖者来迎の) 尊いありさま。
後益 往生後に得る利益。
上行上根の人 高度の行を修める
根機のすぐれた人。
無為法性の身 すべての限定を超えたさとりの身。
。
小戒 小乗の戒。
余 他の罪や過ち。
長征遠防 遠方へ出征することや、 遠国へ防備に赴くこと。
迥然 (俗事に) はるかに遠ざかっていること。
去住 ゆくもとどまるもの意。
道業 仏道の行業。
内有色外観色 内身の貪りを除くために、 外界の不浄を観じ内身の貪りの心を離れる禅定。 八解脱の第一。
内無色外観色 内身への貪りはないが、 さらに外界の不浄を観じて、 貪りの心を捨てることを一層堅固にする禅定。 八解脱の第二。
不浄相 不浄相を除いて浄色を観じ、 貪りの心を離れる禅定で、 普通は浄解脱という。 八解脱の第三。
四空 無色界の四種の禅定。 空無辺処定・識無辺処定・無所有処定・非想非非想処定のこと。
滅尽 滅尽定。 心のはたらきをすべて滅し尽した禅定。
中行中根の人 中度の行を修める
根機の中程度の人。
小真 小乗のさとり。
愧心 罪や過ちを恥じる心。
往生の善知識 往生浄土を勧める
善知識。 以下の善人・智者もこれに同じ。
心重きによるがゆゑに 心が落ち着き、 統一されているので。
化衆 化仏・化菩薩衆。
化讃 化仏の讃嘆。
諸部 ¬大経¼ ¬小経¼ およびその他諸々の大乗経を指す。
要益 肝要にして有益なことの意。
報命 寿命のこと。
善悪来迎 下品中生者は臨終に地獄の苦相が現れ、 次いで聖者の来迎があるので、 善 (楽) 悪 (苦) 来迎という。
梵声 きよらかな音声。
酬報の劫… 悪業の報いを受ける時がきわまりないこと。
簡びて 区別して。
抑止門 抑止はおさえとどめること。 謗法・五逆は重罪であるから、 衆生がこれを犯さないようにおさえとどめて説かれた法門。
歴劫周慞 幾劫にもわたって苦しみうろたえること。
経にのたまはく ¬悲華経¼ ¬涅槃経¼ ¬報恩経¼ および ¬観仏経¼ からの取意の文とみられる。
生死之罪 実際にはもう二文あとの「極楽世界」。
現益 現前に受ける利益。
失念 正念を失うこと。
所帰の国 西方浄土を指す。
勝心 菩提心のこと。
下行下根の人 悪を行う根機の劣った人。 →
根機
韋提の致請 韋提希の懇請のこと。
得益分 その経の教えによって利益を得ることを示す部分。
尊記 釈尊による往生の保証。
厭苦の縁 序文の発起序の一段。 韋提希が苦悩の穢土を厭う因縁。
毫光 白毫より放たれる光明。
希奇の益 すぐれた利益。
餐を蒙る (教えを) 受け入れる。
王宮の流通 仏が王舎城宮で阿難と韋提希のために説法した会座での付属のこと。
耆闍の流通 阿難が耆闍崛山の大衆のために再説した会座での付属のこと。
三身の号 弥陀・観音・勢至の名のこと。
希有 きわめてまれであること。
諸仏の家 阿弥陀仏の浄土のこと。
因円かに果満ず 成仏の因果が満足する。
仏の本願に望むるに意 「仏の本願の意を望まんには」 と読む説もある。 この場合の 「意」 は本願に属すが、 本文の場合は釈尊の意となる。
能請能伝 法を請うものと、 法を伝えるもの。 ここでは、 能請は韋提希、 能伝は阿難を指す。
喜躍 踊りあがるほど喜ぶこと。
耆闍会 耆闍分。 阿難が耆闍崛山の大衆のために王宮での説法を再説した会座。
得益分 その経の教えによって利益を得ることを示す部分。
転変無方 自由自在で定まりのないこと。
隠顕 ここでは、 人に応じて仏のすがたが隠れたり現れたりするという意。
知識 ここでは同行、 法友の意。
霊験 不可思議なしるし。
欣喜 深くよろこぶこと。
義門 ¬観経¼ の法義を明らかに領解するための教義の分類のこと。
玄義の科文 奥深い教義についての科文、 科段のこと。 また 「玄義・科文」 と読んで、 「玄義分」 と 「文義分」 (序分義・定善義・散善義) のこととする説もある。
脱本しをはりて 脱稿して。 書きおえて。
初夜後夜 初夜は午後八時頃、 後夜は午前四時頃。 両者をあわせて、夜を通じてというほどの意。
三具の磑輪 三つの石臼。 釈尊の転法輪の相 (三転法輪)、 定散・念仏・来迎の三、 弥陀の身口意の三業、 至誠心・深心・回向発願心の三心などに当てる説がある。
貪楽 むさぼりねがうこと。
好心の視誨 好意のこもった教え。 好意ある教訓。
懈慢 懈怠心 (なまけ心) や憍慢心 (あなどり)。
幢杆 はたざお。
霊相 不思議な様相。
つつしみて… (上の霊相のことは) 謹んで ¬観経疏¼ の末尾に書き添えて、 末代の者にまで聞かせたい。
底本は◎高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本。 Ⓐ大谷大学蔵鎌倉時代刊本、 Ⓑ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓒ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 ª全部対校º 辯→Ⓒ辨
弁→Ⓒ辨
捉→Ⓒ投
受→Ⓒ授
烏→Ⓒ焉
雖→◎難
遍→Ⓒ徧
玄→Ⓐ言
末→Ⓐ未
ヲバ
中
スルコト
バ
廻
ノ
アリ、
類
異
生レ
ニ
広ク開キ顕シテ出ス
セム
スル
者
修スル所
シタマヒシヲ須ヰム
ズルコトヲ得ザレ
ケレバナリ
シ
事
。
ス
、
ザルナリ
サバ
走メ
シテ
ナ
求生セ
ム
者ハ
乃至
シニヨリテナリ。
施シタマフ所趣求ヲ為ス
シ、
ベシ
ザル
敬
ルナリ
テタマヘルヲ須ヰ、
シタマヘルヲ須ヰテ、
ヲ須ヰルガ
深信ノ
ナリ
常没
常
オモテ
コトヲ
ヲ証勧シタマフ、
イデ
依リ行ジテ
ク
レバ
満足大悲ノ
ルニ由リ
果願
ズ。
ザルコト、
ト
ヒヌレ
汝等
カクノゴトクナラズ
同ジ
所有ノ
ハ
ハズ
テ
処
妨ムデ
ハム
モ
諸
仰テ信ズ
ヒシ
教ヲ説タマフコト
同ジカラズ
汝
ハバ
ジ
ナルニ由
生ル
ノタマフコト
フ
ラムト
フガゴトク
犯セ
ト名ヅク、
マシマシテ
世ニ出テ
ズ
指シ勧メ
命ヲ捨テヽ
フハ
ヲ勧メテ
専念ス
説ク。
云ク
・
ヲ勧励シテ
讃メ
ラム
テ、
ニ依テ
ヲ
者
ス。
専
専念シ
者ヲ
バ
ルハ
断ゼ
願生ト
者
深ク信
捉
ムデ
失ウコトヲ得ザレト
等
ツ
ルトハ
ムベシ
乃
行
欲ハ
無礙ニ
得ベシ
ルベシ
譬喩
ヲ見レバ
リ
火河
水河
交マジハル過シ
火ノ炎
ノミ
セムコト
直
ラク、
漸漸
去ラ
堕チムコトヲ
当時ノ
ルトモ
住ストモ
去トモ
ザレバ
去ナム
東岸
仁者
住セ
遣リ
正ク
ニ当テ
ナリ、
シテ、
回リ顧ミ
ヌ。
レテ、
水ノ波
廻ラ
遣ル
クニ喩フ。
トナリ
指シ
ル
無レバ
命ヲ捨テヽ
廻テ
入
名テ
イフ
ケ
堪能ヲ簡ビ
殺セザルコト
思念方便
ク、
初ノ
ニ不殺
サバ、
執シテ
持戒
ハ、
ヲ念ナリ。
アリ
内
シナ
仰学スルコトヲ
ムデ
増多ニ
ニ勝ヘズシテ
セ
乗台ヲ見テ
益ヲ得ルコト
ナルコト
ト云
ク。
ヲ明ス
皆
ヲ聴聞ス。
ズルヲ明ス
持
不久
ブル
カン
故
手ヲ授ケ
手ヲ授クル
己身
去ル時
益ヲ得ルコト
還テ
開眼ヲ得
キ
ヲ経テ
サ
歴テ供
時ヲ延ベテ忍ヲ得ルコト
コトヲ発ス
手ヲ授クル
述ス
恐クハ
生レムト
ケタ
犯
設ヒ
ヲ離ルヽコトヲ讃ズルコトヲ明ス
仰シテ
離
云
身ハ
セリ
低頭ス
尋イデ
一
成ル
犯スル
失
終ル時
ヒ
ト、
コトヲ見ル、
レバ
性調柔ニシテ善ク
遇ヒ逢フ
華開
ウル
機ヲ簡ブ
重牒
転ジテ教ヘ
多クノ
住セシ
述シ
云、
マムニハ
同ゼ
ルヲ
将テ
尋デスナハチ
仏独ヲ念テ
去ル
兼テ
諸悪心自荘厳
総
ザルコトヲ明ス
報ヲ酬ウル
ケル
極メテ重シ
劫ヲ歴テ
ス、
止
止
得シム
念ヲ失ス
転ジテ教ヘ
ニ遇ハン
スルニ、
請ヲ致シテ
空
決志シテ
コトヲ明ス
スニ
ヲ成ズレバ
由
双ベテ
問
勝ヲ顕シ
コトヲ挙グル
勝ヲ顕スコトヲ明ス。
名
専念弥陀仏名
指シ讃ズ
仏ヲ念ズ
ノ意ヲ
マムニハ
スルニ遇ウ
遇
是ヲ
闚
ズト云コト
造心ス
南無シテ
彼
欲フ
ン
結ビ
三遍
三万遍
ヲ見ル
観ル
科文
ルニ
本ヲ脱セムコトヲ。
竟已ニ
誠ズ
マタ
見
ラク
努力
ヌ
ニ在シテ
申ベ呈ス、
ヲモテ
聞カ被
ヲシテ
ルナリ。
成ラム
欲ハム