0182
標挙
0374*無量寿仏▼観経の意なり
▼*至心発願の願 ▼*邪定聚の機 ▼*双樹林下往生
*阿弥陀経の意なり
▼*至心回向の願 ▼*不定聚の機 ▼*難思往生
題号
0375◎▼顕浄土▼方便▼化身土文類 六
▼*愚禿釈*親鸞集
一 門内の方便を明かす
Ⅰ 正しく方便を明かす
ⅰ 総じて身土を指す【総釈】
a 牒
【1】 ◎^▼つつしんで*化身土を顕さば、
◎謹0183デ顕サ↢化身土ヲ↡者、
一 Ⅰ ⅰ b 指
イ 仏を指す
^▽仏は ¬無量寿仏観経¼ の説のごとし、 ▲*真身観の仏これなり。
仏者如シ↢¬无量寿仏観経ノ¼説ノ↡、真身観ノ仏是也。
一 Ⅰ ⅰ b ロ 土を指す
^▽土は *¬*観経¼ の浄土これなり。 ▼また ¬*菩薩処胎経¼ 等の説のごとし、 すなはち*懈慢界これなり。 ▼また ¬*大無量寿経¼ の説のごとし、 すなはち▽*疑城胎宮これなり。
土者¬観経ノ¼浄土是也。復如シ↢¬菩薩処胎経¼等ノ説ノ↡、即チ懈オコタリ 慢アナドル界是也。亦如シ↢¬大无量寿経ノ¼説ノ↡、即チ疑城胎宮是也。
一 Ⅰ ⅱ 別して二願を釈す
a 第十九願を釈す【要門釈】
イ 直明【説意出願】
(一)施権の意を明かす
(Ⅰ)所被を明かす
【2】 ^しかるに*濁世の*群萌、 *穢悪の含識、 いまし*九十五種の邪道を出でて、 *半満・権実の法門に入るといへども、 真なるものははなはだもつて難く、 実なるものははなはだもつて希なり。 *偽なるものははなはだもつて多く、 虚なるものははなはだもつて滋し。
然ニ濁世ノ群萌、穢悪ノ含識、乃シ出テ↢九十五種之邪道ヲ↡、雖モ↠入ルト↢半満・権実之法門ニ↡、真ナル者ハ甚ダ以テ難ク、実ナル者ハ甚ダ以テ希ナリ。偽ナル者ハ甚ダ以テ多ク、虚ナル者ハ甚ダ以テ滋シ。
一 Ⅰ ⅱ a イ (一)(Ⅱ)正しく施権を明かす
^ここをもつて*釈迦牟尼仏、 *福徳蔵を顕説して*群生海を誘引し、 *阿弥陀如来、 本*誓願を発してあまねく*諸有海を化したまふ。
是ヲ以テ釈迦牟尼仏、顕↢説テ福徳蔵ヲ↡誘↢引シ群生海ヲ↡、阿弥陀如来、本発テ↢誓願ヲ↡普ク化タマフ↢諸有海ヲ↡。
一 Ⅰ ⅱ a イ (二)悲願の目を示す
(Ⅰ)行に約す
^▼すでにして*悲願います。 ▼*修諸功徳の願 (第十九願) と名づく、
既ニ而有ス↢悲願↡。名ク↢修諸功徳之願ト↡、
一 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)行信の益を明かす
^また▼臨終現前の願と名づく、 また▼現前導生の願と名づく、 また▼来迎引0376接の願と名づく、
復名ク↢臨終現前之願ト↡、復名ク↢現前導生之願ト↡、復名ク↢来迎引接之願ト↡、
一 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)信に約す
^また▼*至心発願の願と名づくべきなり。▼
亦可キ↠名ク↢至心発願之願ト↡也。
一 Ⅰ ⅱ a ロ 引文
(一)直ちに諸行往生を顕して誘引の願意を示す
(Ⅰ)能入の因を明かす
(ⅰ)因願を出す
(a)¬大経¼
【3】 ^▼ここをもつて ¬*大経¼ (上) の願 (第十九願) にのたまはく、
是ヲ以テ¬大経ノ¼願ニ言ク、
^「▲たとひわれ仏を得たらんに、 *十方の*衆生、 ▼*菩提心を発し、 ▼*もろもろの功徳を修し、 ▼心を至し*発願してわが国に生ぜんと欲はん。 寿終の時に臨んで、 ▼たとひ▼大衆と*囲繞してその人の前に現ぜずは、 *正覚を取らじ」 と。
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、発シ↢菩提心ヲ↡、修シ↢諸ノ功徳ヲ↡、至シ↠心ヲ発願テ欲ハム↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡。臨デ↢寿終ノ時ニ↡、仮令ヒ不↧与↢大衆↡囲遶テ現ゼ↦其ノ人ノ前ニ↥者、不ト↠取ラ↢正0184覚ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)¬悲華経¼
【4】 ^▼¬*悲華経¼ の 「*大施品」 にのたまはく、
¬悲華経ノ¼大施品ニ言ク、
^「▼願はくは、 われ*阿耨多羅三藐三菩提を成りをはらんに、 その余の無量無辺*阿僧祇の諸仏世界の所有の衆生、 もし*阿耨多羅三藐三菩提心を発し、 もろもろの*善根を修して、 わが界に生ぜんと欲はんもの、 *臨終の時、 われまさに大衆と囲繞して、 その人の前に現ずべし。 その人、 われを見て、 すなはちわが前にして心に歓喜を得ん。 われを見るをもつてのゆゑに、 もろもろの障礙を離れてすなはち身を捨ててわが界に来生せしめん」 と。 以上
「願クハ我成リ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡已ムニ、其ノ余ノ无量无辺阿僧祇ノ諸仏世界ノ所有ノ衆生、若シ発シ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡、修テ↢諸ノ善根ヲ↡、欲ハム↠生ゼムト↢我ガ界ニ↡者、臨終之時、我当ニシ↧与↢大衆↡囲繞テ現ズ↦其ノ人ノ前ニ↥。其ノ人見テ↠我ヲ、即チ於テ↢我ガ前ニ↡得ム↢心ニ歓喜ヲ↡。以ノ↠見ルヲ↠我ヲ故ニ、離テ↢諸ノ障閡ヲ↡、即便チ捨テヽ↠身ヲ来↢生シメムト我ガ界ニ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)成就を指す
【5】 ^▼この願 (第十九願) 成就の文は、 すなはち*三輩の文これなり、 ▼¬観経¼ の*定散*九品の文これなり。
此ノ願成就ノ文者、即チ三輩ノ文是也、¬観経ノ¼定散九品之文是也。
一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)所入の土を明かす
(ⅰ)¬大経¼
【6】 ^▼また ¬大経¼ (上) にのたまはく、
又¬大経ニ¼言ク、
^「▲また*無量寿仏のその*道場樹は、 ▼高さ四0377百万里なり、 その本周囲五十*由旬なり、 枝葉四に布きて二十万里なり。 一切の衆宝自然に合成せり。 ▼*月光摩尼・*持海輪宝の衆宝の王たるをもつて、 これを荘厳せり。 ▼乃至
「又无量寿仏ノ其ノ道場樹ハ、高サ四百万里ナリ、其ノ本周囲五十由旬ナリ、枝葉四ニ布テ二十万里ナリ。一切ノ衆宝自然ニ合成セリ。以テ↢月光摩尼・持海輪宝ノ衆宝之王タルヲ↡而荘↢厳リ之ヲ↡。 乃至
^▲*阿難、 もしかの国の*人天、 この樹を見るものは*三法忍を得ん。 一つには*音響忍、 二つには*柔順忍、 三つには*無生法忍なり。 ◆これみな無量寿仏の*威神力のゆゑに、 *本願力のゆゑに、 *満足願のゆゑに、 *明了願のゆゑに、 *堅固願のゆゑに、 *究竟願のゆゑなりと。 ▼乃至
阿難、若シ彼ノ国ノ人天見ル↢此ノ樹ヲ↡者ハ得ム↢*三法忍ヲ↡。一ニ者音響忍、二ニ者柔順忍、三ニ者无生法忍ナリ。此皆无量寿仏ノ威神力ノ故ニ、本願力ノ故ニ、満足願ノ故ニ、明了願ノ故ニ、堅固願ノ故ニ、究竟願ノ故ナリト。 乃至
^▲また*講堂・▼*精舎・*宮殿・楼観、 みな*七宝をもつて*荘厳し、 自然に▼化成せり。 ▼また真珠・*明月摩尼▼衆宝をもつて、 もつて*交露とす、 その上に覆蓋せり。
又講堂・精舎・宮殿・楼観、皆七宝ヲモテ荘厳シ、自然ニ化成セリ。復以テ↢真珠・明月摩尼衆宝ヲ↡、以テ為↢交露ト↡、覆↢蓋セリ其ノ上ニ↡。
^◆内外左右にもろもろの浴池あり。 ▼十由旬、 あるいは二十・三十、 乃至百千由旬なり。 *縦広深浅、 ▼おのおのみな*一等なり。 ◆*八功徳水、 *湛然として盈満せり、 ▼清浄香潔にして味はひ*甘露のごとし」 と。
内外左右ニ有リ↢諸ノ浴池↡。十由旬、或ハ二十、三十、乃0185至百千由旬ナリ。縦広深浅、各ノ皆一等ナリ。八功徳水、湛然トシテ盈満セリ、清浄香潔ニシテ味如シト↢甘露ノ↡。」
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)真仮の得失を対弁して廃立の仏意を示す
(Ⅰ)経説
(ⅰ)¬大経¼
【7】 ^▼またのたまはく (大経・下)、
又*言ク、
^「ª▲それ*胎生のものは、 処するところの宮殿、 ▼あるいは百由旬、 あるいは五百由旬なり。 おのおのそのなかにして、 もろもろの快楽を受くること*忉利天上のごとし。 またみな自然なりº と。
「其レ胎生ノ者ハ、所ノ↠処ル宮殿、或ハ百由旬、或ハ五百由旬ナリ。各ノ於テ↢其ノ中ニ↡、受コト↢諸ノ快楽ヲ↡如シ↢忉利天上ノ↡。亦皆自然ナリト。
^◆その時に、 慈氏菩薩 (*弥勒)、 仏にまうしてまうさく、 ª*世尊、 なんの因なんの縁あつてか、 かの国の人民、 胎生・*化生なるº と。
爾ノ時ニ慈氏菩薩白テ↠仏ニ言ク、世尊、何ノ因何ノ縁アテカ彼ノ国ノ人民、胎生・化生ナルト。
^◆仏、 慈氏に告げたまはく、 ªもし衆生ありて、 疑0378惑の心をもつてもろもろの功徳を修して、 かの国に生ぜんと願ぜん。 ▼*仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・無等無倫最上勝智を了らずして、 この諸智において疑惑して信ぜず。 しかも、 なほ*罪福を信じて、 *善本を修習して、 その国に生ぜんと願ぜん。
仏告タマハク↢慈氏ニ↡、若シ有テ↢衆生↡、以テ↢疑惑ノ心ヲ↡修テ↢諸ノ功徳ヲ↡、願ム↠生ムト↢彼ノ国ニ↡。不シテ↠了ラ↢仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・无等无倫最上勝智ヲ↡、於テ↢此ノ諸智ニ↡疑惑テ不↠信ゼ。然モ猶信テ↢罪福ヲ↡、修↢習テ善本ヲ↡、願ム↠生ムト↢其ノ国ニ↡。
^◆このもろもろの衆生、 かの宮殿に生じて、 寿五百歳、 つねに仏を見たてまつらず、 経法を聞かず、 *菩薩・*声聞聖衆を見ず。 ◆このゆゑにかの国土にはこれを胎生といふ。 ▼乃至
此ノ諸ノ衆生、生テ↢彼ノ宮殿ニ↡、寿五百歳、常ニ不↠見マツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↢経法ヲ↡、不↠見↢菩薩・声聞聖衆ヲ↡。是ノ故ニ彼ノ国土ニハ
謂フ↢之ヲ胎生ト↡。 乃至
^▲弥勒まさに知るべし、 ▼かの化生のものは智慧勝れたるがゆゑに。 その胎生のものはみな智慧なきなりº と。 乃至
弥勒当ニシ↠知ル、彼ノ化生ノ者ハ智慧勝タルガ故ニ。其ノ胎生ノ者ハ皆无キナリト↢智慧↡。 乃至
^▲仏、 弥勒に告げたまはく、 ªたとへば*転輪聖王のごとし。 七宝の牢獄あり。 種々に荘厳し*床帳を張設し、 もろもろの*繒幡を懸けたらん。 もしもろもろの小王子、 罪を王に得たらん、 すなはちかの獄のうちに内れて、 繋ぐに*金鎖をもつてせんº と。 乃至
仏告タマハク↢弥勒ニ↡、譬バ如シ↢転輪聖王ノ↡。有ム↢七宝ノ牢獄↡。種種ニ荘厳シ張↢設シ床帳ヲ↡、懸タラム↢諸ノ繒幡ヲ↡。若シ諸ノ小王子、得タラム↢罪ヲ於王ニ↡、輒チ内テ↢彼ノ獄ノ中ニ↡、繋グニ以テセムト↢金鎖ヲ↡。 乃至
^▲仏、 弥勒に告げたまはく、 ▼ªこのもろもろの衆生、 またまたかくのごとし。 仏智を疑惑するをもつてのゆゑに、 ▼かの胎宮に生れん。 乃至
仏告タマハク↢弥勒ニ↡、此ノ諸ノ衆生、亦復如シ↠是ノ。以ノ↣疑↢惑ルヲ仏智ヲ↡故ニ生ム↢彼ノ胎宮ニ↡。 乃至
^▲もしこの衆生、 その*本の罪を識りて、 深くみづから*悔責してかの処を離るることを求めん。 乃至
若シ此ノ衆生、識テ↢其ノ本ノ罪ヲ↡、深ク自ラ悔責テ求ム↠離コトヲ↢彼ノ処ヲ↡。 乃至
^▲弥勒まさに知るべし、 それ菩薩ありて疑惑を生ぜば、 ▼大利を失すとすº」 と。 以上抄出
弥勒当ニシ↠知ル、其レ有テ↢菩薩↡生ゼ↢疑惑ヲ↡者、為ト↠失スト↢大利ヲ↡。」 已上抄出
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)¬如来会¼
【8】 ^▼¬*如来会¼ (下) にのたまはく、
¬如0186来会ニ¼言ク、
^▲「仏、 弥勒に告げたまはく、 ªもし衆生ありて0379、 *疑悔に随ひて善根を積集して、 仏智・*普遍智・不思議智・*無等智・*威徳智・*広大智を希求せん。 みづからの善根において信を生ずることあたはず。 ◆この因縁をもつて、 五百歳において宮殿のうちに住せん。 乃至
「仏告タマハク↢弥勒ニ↡、若シ有テ↢衆生↡、随テ↢於疑悔ニ↡積↢集テ善根ヲ↡、希↢求ム仏智・普徧智・不思議智・无等智・威徳智・広大智ヲ↡。於テ↢自ノ善根ニ↡不↠能ハ↠生コト↠信ヲ。以テ↢此ノ因縁ヲ↡、於↢五百歳ニ↡住ム↢宮殿ノ中ニ↡。 乃至
^▲阿逸多 (弥勒)、 ▼なんぢ*殊勝智のものを観ずるに、 かれは広慧の力によるがゆゑに、 *かの蓮華のなかに化生することを受けて*結跏趺坐せん。 なんぢ▼*下劣の輩を観ずるに、 乃至 もろもろの功徳を修習することあたはず。 ゆゑに*因なくして無量寿仏に奉事せん。 このもろもろの人等は、 みな昔の縁、 疑悔をなして致すところなればなりº と。 乃至
阿逸多、汝観ズルニ↢殊勝智ノ者ヲ↡、彼ハ因ガ↢広慧ノ力ニ↡故ニ、受テ↣彼ノ化↢生コトヲ▼於導華ノ中ニ↡結跏趺座セム。汝観ズルニ↢下劣之輩ヲ↡、 乃至 不↠能ハ↣修↢習コト諸ノ功徳ヲ↡。故ニ無シテ↠因奉↢事ム无量寿仏ニ↡。是ノ諸ノ人等ハ、皆為テ↢昔ノ縁疑悔ヲ↡所ナレバナリト↠致ス。 乃至
^▲仏、 弥勒に告げたまはく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 もし疑悔に随ひて、 もろもろの善根を種ゑて、 仏智乃至広大智を希求することあらん。 みづからの善根において信を生ずることあたはず。 仏の名を聞くによりて*信心を起すがゆゑに、 かの国に生ずといへども、 蓮華のうちにして出現することを得ず。 かれらの衆生、 *華胎のうちに処すること、 なほ園苑宮殿の想のごとしº」 と。 抄要
仏告タマハク↢弥勒ニ↡、如シ↠是ノ如シ↠是ノ。若シ有ム↧随テ↢於疑悔ニ↡、種テ↢諸ノ善根ヲ↡、希↦求コト仏智乃至広大智ヲ↥。於テ↢自ノ善根ニ↡不↠能ハ↠生コト↠信ヲ。由テ↠聞クニ↢仏ノ名ヲ↡起スガ↢信心ヲ↡故ニ雖モ↠生ズト↢彼ノ国ニ↡、於テ↢蓮華ノ中ニ↡不↠得↢出現コトヲ↡。彼等ノ衆生処コト↢華胎ノ中ニ↡、猶如シト↢園苑宮殿之想ノ↡。」 抄要
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)¬大経¼
【9】 ^▼¬大経¼ (下) にのたまはく、
¬大経ニ¼言ク、
^「▲もろもろの*小行の菩薩、 および*少功徳を修習するもの、 *称計すべからず。 みなまさに往生すべし」 と。
「諸ノ少行ノ菩薩、及ビ修↢習ル少功徳ヲ↡者、不↠可ラ↢称計ス↡。皆当ニシト↢往生ス↡。」
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅳ)¬如来会¼
【10】^▼またのたまはく (如来会・下)、
又*言ク、
^▲「いはんや、 余の菩薩、 少善根によりて0380、 かの国に生ずるもの、 称計すべからず」 と。 以上
「況ヤ余ノ菩薩、由テ↢少善根ニ↡、生ル↢彼ノ国ニ↡者、不ト↠可ラ↢称計ス↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)師釈
(ⅰ)終南
(a)「定善義」(正しく終南を引く)
【11】^▼光明寺 (*善導) の釈 (*定善義) にいはく、
光明寺ノ釈ニ云ク、
^「▲華に含みていまだ出でず。 あるいは▼*辺界に生じ、 あるいは▼*宮胎に堕せん」 と。 以上
「含テ↠華ニ未ダ↠出デ。或ハ生ジ↢辺界ニ↡、或ハ堕ムト↢宮胎ニ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)憬興¬述文賛¼(更に他師を挙げて助証す)
【12】^▼*憬興師のいはく (*述文賛)、
憬興師ノ云ク、
^「▼仏智を疑ふによりて、 かの国に生れて、 *辺地にありといへども、 *聖化の事を被らず。 もし胎生せば、 よろしくこれを重く捨つべし」 と。 以上
「由テ↠疑フニ↢仏智ヲ↡、雖モ↧生レ↢彼ノ国ニ↡而在リト↦辺地ニ↥、不↠被ラ↢聖化ノ事ヲ↡。若シ胎生セバ、宜クシト↢之ヲ重ク捨ツ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)横川
(a)¬往生要集¼
【13】^▼首楞厳院 (*源信) の ¬*要集¼ (下) に、 ▼感禅師 (*懐感) の釈 (*群疑論) を引きていはく、
首楞厳院ノ¬要集ニ¼引テ↢感*禅師ノ釈ヲ↡云ク、
^「▲問ふ。 ▼¬*菩薩処胎経¼ の*第二に説かく、 ª^西方この*閻浮提を去ること十二億*那由他に懈慢界あり。 ▼乃至 ▲意を発せる衆生、 *阿弥陀仏国に生ぜんと欲ふもの、 みな深く懈慢国土に着して、 前進んで阿弥陀仏国に生ずることあたはず。 億千万の衆、 時に一人ありて、 よく阿弥陀仏国に生ずº と云々。 ^◆この ¬経¼ をもつて*准難するに、 生ずることを得べしやと。
「問フ。¬菩薩処胎経ノ¼第二ニ説カク、西方去コト↢此0187ノ閻浮提ヲ↡十二億那由他ニ有リ↢懈*慢界↡。 乃至 発セル↠意ヲ衆生欲フ↠生ムト↢阿弥陀仏国ニ↡者、皆深ク著テ↢懈慢国土ニ↡、不↠能ハ↣前進デ生コト↢阿弥陀仏国ニ↡。億千万ノ衆、時ニ有テ↢一人↡、能ク生ズト↢阿弥陀仏国ニ↡云云。以テ↢此ノ¬経ヲ¼↡准難ルニ、可シヤト↠得↠生コトヲ。
^◆答ふ。 ¬群疑論¼ に善導和尚の▼*前の文を引きて、 この難を釈して、 また▼みづから*助成していはく、 ª^この ¬経¼ の下の文にいはく、 «なにをもつてのゆゑに、 みな懈慢によりて*執心牢固ならず» と。
答フ。¬群疑論ニ¼引キ↢善導和尚ノ前ノ文ヲ↡而釈テ↢此ノ難ヲ↡、又自ラ助成テ云ク、此ノ¬経ノ¼下ノ文ニ*言ク、何ヲ以ノ故ニ皆由テ↢懈慢ニ↡執心不ト↢牢固ナラ↡。
^◆ここに知んぬ、 *雑修のものは執心不牢の0381人とす。 ゆゑに懈慢国に生ず。 もし雑修せずして、 もつぱらこの業を行ぜば、 これすなはち執心牢固にして、 さだめて*極楽国に生ぜん。 ▼乃至
是ニ知ヌ、雑修之者ハ為↢執心不牢之人ト↡。故ニ生ズ↢懈慢国ニ↡*也。若シ不シテ↢雑修セ↡専ラ行バ↢此ノ業ヲ↡、此即チ執心牢固ニシテ、定テ生ム↢極楽国ニ↡。 乃至
^◆また*報の浄土に生ずるものはきはめて少なし。 *化の浄土のなかに生ずるものは少なからず。 ゆゑに ¬経¼ の別説、 実に相違せざるなりº」 と。 以上略抄
又報ノ浄土ニ生ル者ハ極テ少シ。化ノ浄土ノ中ニ生ル者ハ不↠少カラ。故ニ経ノ別説、実ニ不ル↢相違セ↡也ト。」 已上略抄
一 Ⅰ ⅱ a ハ 勧誡
【14】^▼しかれば、 それ楞厳の和尚 (源信) の解義を案ずるに、 ▲*念仏証拠門 (往生要集・下) のなかに、 第十八の願は▼*別願のなかの別願なりと顕開したまへり。 ▼¬観経¼ の定散の諸機は、 極重悪人、 ただ弥陀を称せよと勧励したまへるなり。 濁世の*道俗、 よくみづからおのれが*能を思量せよとなり、 知るべし。
爾レ者夫レ按ルニ↢楞厳ノ和尚ノ解義ヲ↡、念仏証拠門ノ中ニ第十八ノ願者顕↢開タマヘリ別願ノ中之別願ナリト↡。¬観経ノ¼定散ノ諸機者勧↢励タマヘル極重悪人、唯称ヨト弥陀ヲ↡也。濁世ノ道俗、善ク自ラ思↢量ヨト己ガ能ヲ↡也、応シ↠知ル。
一 Ⅰ ⅱ b 二経の隠顕を釈す
イ 観経の三心を釈す【観経隠顕】
(一)問
【15】^▼問ふ。 ¬*大本¼ (大経) の*三心と ¬観経¼ の*三心と一異いかんぞや。
問フ。¬大本ノ¼三心ト与↢¬観経ノ¼三心↡一異云何ゾヤ。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)答
(Ⅰ)正釈
(ⅰ)例を作りて略釈す
(a)立例
(イ)標挙
^答ふ。 ▼釈家 (善導) の意によりて ¬無量寿仏観経¼ を案ずれば、 ▼*↓顕↓彰隠密の義あり。
答フ。依テ↢釈家之意ニ↡按レ↢¬无量寿仏観経ヲ¼↡者有リ↢顕彰隠カクス密ノカクス義↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)解釈
[一]顕を釈す
^▽↑顕といふは、 すなはち定散諸善を顕し、 *三輩・三心を開く。 しかるに*二善・*三福は*報土の真因にあらず。 諸機の三心は、 *自利各別にして*利他の*一心にあらず。 如来の*異の方便、 *欣慕浄土の善根なり。 これはこの経 (観経) の意なり。 すなはちこれ顕の義なり。
言フ↠顕ト者、即チ顕シ↢定散諸善ヲ↡開ク↢三輩・三心ヲ↡。然ニ二善・三福ハ非ズ↢報土ノ真因ニ↡。諸機ノ三心ハ、自利各別ニ而非ズ↢利他ノ一心ニ↡。如来ノ異ノ方便、忻ネガヒ 慕シタフ浄土ノ善根ナリ。是ハ此ノ¬経¼之意ナリ。即チ是顕ノ義也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]彰を釈す
^▽↑彰といふは、 如来の*弘0382願を彰し、 利他通入の一心を*演暢す。 ▼達多 (*提婆達多)・闍世 (*阿闍世) の悪逆によりて、 ▲*釈迦微笑の素懐を彰す。 ▲*韋提別選の正意によりて、 弥陀大悲の本願を開闡す。 これすなはちこの経 (観経) の隠彰の義なり。
言フ↠彰トアラハス者0188、彰シ↢如来ノ弘願ヲ↡演ノベ↢暢ノブス利他通入ノ一心ヲ↡。縁テ↢達多・闍世ノ悪逆ニ↡、彰ス↢釈迦微スコシキ笑ヱムノ素モト懐ヲオモヒ↡。因テ↢韋提別選ノ正意ニ↡、開↢闡スヒラク弥陀大悲ノ本願ヲ↡。斯乃チ此ノ¬経ノ¼隠カクス彰ノ義也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ハ)釈例(¬観経¼「序分」九文、「正宗分」四文、計十三文)
^ここをもつて ¬経¼ (観経) には、 「▲教我観於清浄業処」 といへり。 「*清浄業処」 といふは、 すなはちこれ*本願成就の報土なり。
是ヲ以テ¬経ニハ¼言リ↢「教我観於清浄業処ト」↡。言フ↢清浄業処ト↡者、則チ是本願成就ノ報土也。
^「▲教我*思惟」 といふは、 すなはち*方便なり。
言フ↢教我思惟トオモフ↡者、即チ方便也。
^「▲教我*正受」 といふは、 すなはち*金剛の*真心なり。
言フ↢教我正受ト↡者、即チ金剛ノ真心也。
^「▲諦観彼国*浄業成者」 といへり、 本願成就の*尽十方無礙光如来を観知すべしとなり。
言リ↢「諦観彼国浄業成者ト」↡、応シト↣観↢知ス本願成就ノ尽十方无光如来ヲ↡也。
^「▲広説衆譬」 といへり、 すなはち十三観これなり。
言リ↢「広説衆譬ト」↡、則チ十三観是也。
^「▲汝是*凡夫心想羸劣」 といへり、 すなはちこれ悪人*往生の*機たることを彰すなり。
言リ↢「汝是凡夫心想羸オトリ劣ト」↡、則チ是彰ス↠為コトヲ↢悪人往生ノ機↡也。
^「▲諸仏如来有異方便」 といへり、 すなはちこれ定散諸善は方便の教たることを顕すなり。
言リ↢「諸仏如来有異方便ト」↡、則チ是定散諸善ハ顕ス↠為コトヲ↢方便之教↡也。
^「▲以仏力故見彼国土」 といへり、 これすなはち*他力の意を顕すなり。
言リ↢「以仏力故見彼国土ト」↡、斯乃チ顕ス↢他力之意ヲ↡也。
^「▲若仏滅後諸衆生等」 といへり、 すなはちこれ未来の衆生、 往生の*正機たることを顕すなり。
言リ↢「若仏滅後諸衆生等ト」↡、即チ是未来ノ衆生、顕ス↠為コトヲ↢往生ノ正機↡也。
^「▲若有合者名為粗想」 といへり、 これ定観成じがたきことを顕すなり。
言リ↢「若有合者名為麁想ト」↡、是顕ス↢定観難キコトヲ↟成ジ也。
^「▲於現身中得念仏三昧」 といへり、 すなはちこれ定観成就の益は、 *念仏三昧を獲るをもつて観の益とす0383ることを顕す。 すなはち*観門をもつて方便の教とせるなり。
言リ↢「於現身中得念仏三昧ト」↡、即チ是顕ス↧定観成就之益ハ タスク 、以テ↠獲ルヲ↢念仏三昧ヲ↡為コトヲ↦観ノ益ト↥。即チ以テ↢観門ヲ↡為ル↢方便之教ト↡也。
^「▲発三種心即便往生」 といへり。 また 「▲復有三種衆生当得往生」 といへり。 ▼これらの文によるに、 三輩について、 *三種の三心あり、 また*二種の往生あり。
言リ↢「発三種心即便往生ト」↡。又言リ↢「復有三種衆生当得往生ト」↡。依ルニ↢此等ノ文ニ↡、就テ↢三輩ニ↡有リ↢三種ノ三心↡、復有リ↢二種ノ往生↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ニ)結成
^▼まことに知んぬ、 これいましこの ¬経¼ (観経) に顕彰隠密の義あることを。
良ニ知ヌ此乃シ此ノ¬経ニ¼有コトヲ↢顕彰隠蜜之義↡。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)正答
^▼二経 (大経・観経) の三心、 まさに一異を談ぜんとす、 よく思量すべきなり。 ¬大経¼・¬観経¼、 顕の義によれば異なり、 彰の義によれば一なり、 知るべし。
二経ノ三心、将ニ↠談ムト↢一0189異ヲ↡、応キ↢善ク思量ス↡也。¬大経¼・¬観経¼依バ↢顕ノ義ニ↡異ナリ、依バ↢彰ノ義ニ↡一也、可シ↠知ル。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)釈を挙げて広弁す
(a)引文
(イ)「玄義分」二文
・序題門
【16】^▼しかれば、 光明寺の和尚 (善導) のいはく (*玄義分)、
爾レ者光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲しかるに*娑婆の*化主 (釈尊)、 その請によるがゆゑに、 すなはち広く浄土の*要門を開く。 *安楽の能人 (阿弥陀仏) は*別意の*弘願を顕彰す。
「然ニ娑婆ノ化主、因ルガ↢其ノ請ニ↡故ニ、即チ広ク開ク↢浄土之要門ヲ↡。安楽ノ能人ノ顕↢彰ス別意之弘願ヲ↡。
^◆その要門とはすなはちこの ¬観経¼ の定散二門これなり。 定はすなはち*慮りを息めてもつて心を凝らす。 散はすなはち悪を廃してもつて善を修す。 この二行を回して往生を求願せよとなり。
其レ要門ト者即チ此ノ¬観経ノ¼定散二門是也。定ハ即チ息テ↠慮ヲ以テ凝ス↠心ヲ。散ハ即チ廃テ↠悪ヲ以テ修ス↠善ヲ。回テ↢此ノ二行ヲ↡求↢願ヨト往生ヲ↡也。
^◆弘願といふは ¬大経¼ の説のごとし」 といへり。
言フ↢弘願ト↡者如シトイヘリ↢¬大経ノ¼説ノ↡。」
・宗旨門
【17】^▼またいはく (玄義分)、
又云ク、
^「▲いまこの ¬観経¼ はすなはち▼*観仏三昧をもつて▼*宗とす、 また▼*念仏三昧をもつて宗とす。 ▼一心に*回願して浄土に往生するを0384体とす。
「今此ノ¬観経ハ¼即チ以テ↢観仏三昧ヲ↡為↠宗ト、亦以テ↢念仏三昧ヲ↡為↠宗ト。一心ニ回願テ往↢生ルヲ浄土ニ↡為ト↠体ト。
^◆教の*大小といふは、 ◆問うていはく、 この経は▼*二蔵のなかには、 いづれの蔵にか摂する、 ▼*二教のなかには、 いづれの教にか収むるやと。
言フ↢教之大少ト↡者、問テ曰ク、此ノ¬経ハ¼二蔵之中ニハ何ノ蔵ニカ摂ル、二教之中ニハ何ノ教ニカ収ルヤト。
^◆答へていはく、 いまこの ¬観経¼ は*菩薩蔵に収む。 *頓教の摂なり」 と。
答テ曰ク、今此ノ¬観経ハ¼菩薩蔵ニ収ム。頓教ノ摂ナリト。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)「序分義」二文
・証信序
【18】^▼またいはく (*序分義)、
又云ク、
^「▲また ª*如是º といふは、 すなはちこれは法を指す、 *定散両門なり。 ª是º はすなはち▼定むる辞なり。 ▼機、 行ずればかならず益す。 これは如来の所説の言、 *錯謬なきことを明かす。 ゆゑに如是と名づく。
「又言フ↢如是ト↡者、即チ此ハ指ス↠法ヲ、定散両門也。是ハ即チ定ル辞ナリ。機、行レバ必ズ益ス。此ハ明ス↣如来ノ所説ノ言无コトヲ↢錯謬↡。故ニ名ク↢如是ト↡。
^◆また ª如º といふは▼衆生の意のごとしとなり。 心の*所楽に随ひて仏すなはちこれを度したまふ。 *機教相応せるをまた称して ª是º とす。 ゆゑに如是といふ。
又言フ↠如ト者如シト↢衆生ノ意ノ↡也。随テ↢心ノ所楽ニ↡仏即チ度タマフ↠之ヲ。機教相応ルヲ復称テ為↠是ト。故ニ言フ↢如是ト↡。
^◆また如是といふは、 如来の所説を明かさんと欲す。 *漸を説くことは漸のごとし、 *頓を説くことは頓のごとし。 *相を説くことは相のごとし、 *空を説くことは空のごとし。
又言フ↢如是ト↡者、欲ス↠明ムト↢如来ノ所説ヲ↡。説コトハ↠漸ヲ如シ↠漸ノ、説コトハ↠頓ヲ如シ↠頓ノ。説コトハ↠相ヲ如シ↠相ノ、説コトハ↠空ヲ如シ↠空ノ。
^◆*人法を説くこと人法のごとし、 *天法を説くこと天法のごとし。 *小を説くこと小のごとし、 *大を説くこと大のごとし。
説コト↢人法ヲ↡如シ↢人法ノ↡、説コト↢天法ヲ↡如シ↢天法ノ↡。説コト↠小ヲ如シ↠小ノ、説コト↠大ヲ如シ↠大ノ。
^◆凡を説くこと凡のごとし、 聖を説くこと聖のごとし。 *因を説くこと因のごとし、 *果を説くこと果のごとし。
説コト↠凡ヲ如シ↠凡ノ、説コト↠聖ヲ如シ↠聖ノ。説コト↠因ヲ如シ↠因ノ、説コト↠果ヲ如シ↠果ノ。
^◆*苦を説くこと苦のごとし、 *楽を説くこと楽のごとし。 遠を説くこと遠のごとし、 近を説くこと近のごとし。
説コト↠苦ヲ如シ↠苦ノ、説コト↠楽ヲ如シ↠楽ノ。説コト↠遠ヲ如シ↠遠ノ、説コト↠近ヲ如シ↠近ノ。
^◆同を説くこと同のごとし、 別を説0385くこと別のごとし。 浄を説くこと浄のごとし、 穢を説くこと穢のごとし。
説コト↠同ヲ如0190シ↠同ノ、説コト↠別ヲ如シ↠別ノ。説コト↠浄ヲ如シ↠浄ノ、説コト↠穢ヲ如シ↠穢ノ。
^◆一切の法を説くこと千差万別なり。 如来の観知、 *歴々了然として、 心に随ひて行を起して、 おのおの益すること同じからず。 *業果法然としてすべて錯失なし、 また称して ª是º とす。 ゆゑに如是といふ」 と。
説コト↢一切ノ法ヲ↡千差万別ナリ。如来ノ観知、歴歴了然トシテ、随テ↠心ニ起テ↠行ヲ、各ノ益コト不↠同カラ。業果法然トシテ衆テ无シ↢錯失↡、又称テ為↠是ト。故ニ言フト↢如是ト↡。」
・散善顕行縁
【19】^▼またいはく (序分義)、
又云ク、
^「▲ª欲生彼国者º より下 ª名為浄業º に至るまでこのかたは、 まさしく*三福の行を勧修することを明かす。
「従リ↢欲生彼国者↡下至マデ↢名為浄業ニ↡已来タハ正ク明ス↣勧↢修コトヲ三福之行ヲ↡。
^◆これは一切衆生の▼機に二種あることを明かす。 一つには定、 二つには散なり。 もし定行によれば、 すなはち生を摂するに尽きず。 これをもつて如来方便して▼三福を顕開して、 もつて散動の根機に応じたまへり」 と。
此ハ明ス↣一切衆生ノ機ニ有コトヲ↢二種↡。一ニ者定、二ニ者散ナリ。若シ依バ↢定行ニ↡、即チ摂ルニ↠生ヲ不↠尽キ。是ヲ以テ如来方便テ顕↢開テ三福ヲ↡、以テ応タマヘリト↢散動ノ根機ニ↡。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ハ)「散善義」
・上上品釈
【20】^▼またいはく (*散善義)、
又云ク、
^「▲また真実に二種あり。 一つには*自利真実、 二つには*利他真実なり。
「又真実ニ有リ↢二種↡。一ニ者自利真実、二ニ者利他真実ナリ。
^◆自利真実といふは、 また二種あり。
言フ↢自利真実ト↡者、復有リ↢二種↡。
^◆一つには、 *真実心のうちに自他の諸悪および穢国等を制捨して、 *行住坐臥に、 一切菩薩の諸悪を制捨するに同じく、 われもまたかくのごとくせんと想ふ。
一ニ者真実心ノ中ニ制↢作テ自他ノ諸悪及ビ穢国等ヲ↡、行住坐臥ニ、想フ↧同ク↣一切菩薩ノ制↢捨ルニ諸悪ヲ↡、我モ亦如クセムト↞是ノ也。
^◆二つには、 真実心のうちに自他・*凡聖等の善を勤修す。
二ニ者真実心ノ中ニ懃↢修ス自他凡聖等ノ善ヲ↡。
^◆真実心のうちの*口業に、 かの阿弥陀仏および*依正二報を讃嘆す。 また真実心のうちの口業に、 *三界*六道等の自他の*依正0386二報の苦悪の事を毀厭す。 また一切衆生の三業所為の善を讃嘆す。 もし善業にあらずは、 つつしんでこれを遠ざかれ、 また*随喜せざれとなり。
真実心ノ中ノ口業ニ讃↢嘆ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ口業ニ毀↢厭ス三界六道等ノ自他ノ依正ノ二報ノ苦悪之事ヲ↡。亦讃↢嘆ス一切衆生ノ三業所為ノ善ヲ↡。若シ非ズ↢善業ニ↡者、敬ム而遠カレ↠之ヲ、亦不レト↢随喜セ↡也。
^◆また真実心のうちの*身業に、 合掌し礼敬し、 *四事等をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を供養す。 また真実心のうちの身業に、 この*生死三界等の自他の依正二報を軽慢し厭捨す。
又真実心ノ中ノ身業ニ、合掌シ礼敬シ、四事等ヲモテ供↢養ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ身業ニ軽↢慢シ厭↣捨ス此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。
^◆また真実心のうちの*意業に、 かの阿弥陀仏および依正二報を思想し観0387察し憶念して、 目の前に現ぜるがごとくす。 また真実心のうちの意業に、 この生死三界等の自他の依正二報を軽賎し厭捨すと。 ▼乃至
又真実0191心ノ中ノ意業ニ思↢想シ観↣察シ憶↤念テ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡、如クス↠現ゼルガ↢目ノ前ニ↡。又真実心ノ中ノ意業ニ軽↢賎シ厭↣捨スト此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。 乃至
^▲また決定して、 釈迦仏、 この ¬観経¼ に*三福*九品・*定散二善を説きて、 かの仏の依正二報を証讃して人をして欣慕せしむと深信すと。 ▼乃至
又決定テ深↧信スト釈迦仏説テ↢此ノ¬観経ニ¼三福九品・定散二善ヲ↡、証↢賛テ彼ノ仏ノ依正二報ヲ↡使ムト↦人ヲシテ忻慕セ↥。 乃至
^▲*また深心の深信とは、 決定して*自心を建立して、 教に順じて修行し、 永く*疑錯を除きて、 一切の*別解・別行・*異学・異見・異執のために*退失傾動せられざるなりと。 ▼乃至
又深心ノ深信ト者、決定テ建↢立テ自心ヲ↡、順テ↠教ニ修行シ、永ク除テ↢疑錯ヲ↡、不ル↧為ニ↢一切ノ別解・別行・異学・異見・異執之↡所レ↦退失傾動セ↥也ト。 乃至
^▲次に*行について信を立てば、 しかるに行に二種あり。 一つには*正行、 二つには*雑行なり。
次ニ就テ↠行ニ立テ↠信ヲ者、然ニ行ニ有リ↢二種↡。一ニ者正行、二ニ者雑行ナリ。
^◆正行といふは、 もつぱら往生経の行によりて行ずるものは、 これを正行と名づく。
言フ↢正行ト↡者、専ラ依テ↢往生経ノ行ニ↡行ル者ハ、是ヲ名ク↢正行ト↡。
^◆なにものかこれや。 一心にもつぱらこの ¬観経¼・¬*弥陀経¼・¬*無量寿経¼ 等を読誦する。 一心にかの国の*二報荘厳を専注し思想し観察し憶念する。 もし礼せばすなはち一心にもつぱらかの仏を礼する。 もし口に称せばすなはち一心にもつぱらかの仏を称せよ。 もし讃嘆供養せばすなはち一心にもつぱら讃嘆供養する。 これを名づけて正とす。▼
何者カ是也。一心ニ専ラ読↢誦ル此ノ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬无量寿経¼等ヲ↡。一心ニ専↢注シ思↣想シ観↤察シ憶↯念ル彼ノ国ノ二報荘厳ヲ↡。若シ礼バ即チ一心ニ専ラ礼スル↢彼ノ仏ヲ↡。若シ口ニ称バ即チ一心ニ専ラ称ヨ↢彼ノ仏ヲ↡。若シ讃嘆供養バ即チ一心ニ専ラ讃嘆供養スル。是ヲ名テ為ト↠正ト。
^◆またこの正のなかについて、 また二種あり。
又就テ↢此ノ正ノ中ニ↡、復有リ↢二種↡。
^▼一つには、 一心に弥陀の*名号を専念して、 行住坐臥に時節の久近を問はず、 念々に捨てざるものは、 これを*正定の業と名づく、 かの仏願に順ずるがゆゑに。
一ニ者一心ニ専↢念テ弥陀ノ名号ヲ↡、行住坐臥ニ不↠問ハ↢時節ノ久近ヲ↡、念念ニ不ル↠捨テ者ハ、是ヲ名ク↢正定之業ト↡、順ルガ↢彼ノ仏願ニ↡故ニ。
^◆もし礼誦等によるは、 すなはち名づけて*助業とす。
若シ依ルヲ↢礼誦等ニ↡、即チ名テ為↢助業ト↡。
^◆この正助二行を除きて以外の自余の諸善は、 ことごとく*雑行と名づく。▼ ^◆もし前の正助二行を修するは、 心つねに親近し、 憶念断えず、 名づけて無間とす。 もし後の雑行を行ずるは、 すなはち心つねに間断す。 回向して生ずることを得べしといへども、▼ すべて*疎雑の行と名づくるなり。
除テ↢此ノ正助二行ヲ↡已外ノ自余ノ諸善ハ、悉ク名ク↢雑行ト↡。若シ修ルハ↢前ノ正助二行ヲ↡、心常ニ親近シ、憶念不↠断ヘ、名テ為↢无間ト↡也。若シ行ルハ↢後ノ雑行ヲ↡、即チ心常ニ間断ス。雖モ↠可シト↢回向テ得↟生コトヲ、衆テ名クル↢疎雑之行ト↡也。
^◆ゆゑに*深心と名づく。
故ニ名0192クト↢深心ト↡。
^◆三つには*回向発願心。
三ニ者回向発願心。
^◆回向発願心といふは、 ▼過去および今生の身口意業に修するところの*世・出世の善根、 および他の一切の凡聖の身口意業に修するところの世・出世の善根を随喜して、 この自他所修の善根をもつて、 ことごとくみな真実の深信の心のうちに回向して、 かの国に生ぜんと願ず。 ゆゑに回向発願心と名づくるなり」 と。
言フ↢回向発願心ト↡者、過去及以ビ今生ノ身口意業ニ所ノ↠修ル世・出世ノ善根、及ビ随↢喜テ他ノ一切ノ凡聖ノ身口意業ニ所ノ↠修ル世・出世ノ善根ヲ↡、以テ↢此ノ自他所修ノ善根ヲ↡、悉ク皆真実ノ深信ノ心ノ中ニ回向テ、願ズ↠生ムト↢彼ノ国ニ↡。故ニ名クル↢回向発願心ト↡也。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ニ)「序分義」二文
・定善
【038821】^▼またいはく (序分義)、
又云ク、
^「▲*定善は*観を示す縁なり」 と。
「定善ハ示ス↠観ヲ縁ナリト。」
・散善
【22】^またいはく (序分義)、
又云ク、
^「▲*散善は*行を顕す縁なり」 と。
「散善ハ顕ス↠行ヲ縁ナリト。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ホ)「散善義」
・結嘆
【23】^▼またいはく (散善義)、
又云ク、
^「▲浄土の要逢ひがたし」 と。 文 抄出
「浄土之要難シト↠逢ヒ」*文 抄出
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ヘ)¬礼讃¼二文
・前序
【24】^▼またいはく (*礼讃)、
又云ク、
^「▲¬観経¼ の説のごとし。 まづ三心を具してかならず往生を得。 なんらをか三つとする。
「如シ↢¬観経ノ¼説ノ↡。先ヅ具テ↢三心ヲ↡必ズ得↢往生ヲ↡。何等ヲカ為ル↠三ト。
^◆一つには*至誠心。 いはゆる身業にかの仏を礼拝す、 口業にかの仏を讃嘆し*称揚す、 意業にかの仏を専念し観察す。 おほよそ三業を起すに、 かならず真実を須ゐるがゆゑに至誠心と名づく。 ▼乃至
一ニ者至誠心。所ル↠謂ハ身業ニ礼↢拝ス彼ノ仏ヲ↡、口業ニ讃↢嘆シ称↣揚ス彼ノ仏ヲ↡、意業ニ専↢念シ観↣察ス彼ノ仏ヲ↡。凡ソ起スニ↢三業ヲ↡、必ズ須ルガ↢真実ヲ↡故ニ名クト↢至誠心ト↡。 乃至
^▲三つには回向発願心。 所作の一切の善根、 ことごとくみな回して往生を願ず、 ゆゑに回向発願心と名づく。
三ニ者回向発願心。所作ノ一切ノ善根、悉ク皆回テ願ズ↢往生ヲ↡、故ニ名ク↢回向発願心ト↡。
^◆この三心を具してかならず生ずることを得るなり。 もし一心少けぬればすなはち生ずることを得ず。 ¬観経¼ につぶさに説くがごとし、 知るべしと。 ▼乃至
具テ↢此ノ三心ヲ↡必ズ得ル↠生コトヲ也。若シ少ヌレバ↢一心↡即チ不↠得↠生コトヲ。如シ↢¬観経ニ¼具ニ説クガ↡、応シト↠知ル。 乃至
^▲また菩薩は▼すでに生死を勉れて、 ▼所作の善法回して*仏果を求む、 すなはちこれ自利なり。 ▼衆生を教化して*未来際を尽す、 すなはちこれ利他なり。 ▼しかるに今の時の衆生、 ことごとく*煩悩のために*繋縛せられて、 いまだ*悪道生死等の苦を勉れず。 縁に随ひて行を起して、 一切の善根つぶさにすみやかに回して0389、 阿弥陀仏国に往生せんと願ぜん。 ▼かの国に到りをはりて、 さらに畏るるところなけん。 上のごときの*四修、 *自然任運にして、 自利利他具足せざることなしと、 知るべし」 と。
又菩薩ハ已ニ勉テ↢生死ヲ↡、所作ノ善法回テ求ム↢仏果ヲ↡、即チ是自利ナリ。教↢化テ衆生ヲ↡尽ス↢未来際ヲ↡、即チ是利他ナリ。然ニ今ノ時ノ衆生、悉ク為ニ↢煩悩ノ↡繋縛ラレテ、未ダ↠勉レ↢悪道生死等ノ苦ヲ↡。随テ↠縁ニ起テ↠行ヲ、一切ノ善根具ニ速ニ回テ、願0193ゼム↣往↢生ムト阿弥陀仏国ニ↡。到リ↢彼ノ国ニ↡已テ、更ニ无ケム↠所↠畏ルヽ。如キノ↠上ノ四修、自然任運ニシテ、自利利他无シト↠不コト↢具足セ↡、応シト↠知ル。」
・前序
【25】^▼またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲もし*専を捨てて*雑業を修せんとするものは、 百は時に希に一二を得、 千は時に希に五三を得。
「若シ欲スル↣捨テヽ↠専ヲ修ムト↢雑業ヲ↡者ハ、百ハ時ニ希ニ得↢一二ヲ↡、千ハ時ニ希ニ得↢五三ヲ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに、 ▼いまし*雑縁乱動す、 正念を失するによるがゆゑに、 仏の本願と相応せざるがゆゑに、 教と相違せるがゆゑに、 仏語に順ぜざるがゆゑに、 ▼*係念相続せざるがゆゑに、 ▼*憶想間断するがゆゑに、 回願慇重真実ならざるがゆゑに、 *貪・瞋・諸見の煩悩来り間断するがゆゑに、 ▼*慚愧・*懴悔の心あることなきがゆゑに。
何ヲ以ノ故ニ。乃シ由ルガ↣雑縁乱動ス、失ルニ↢正念ヲ↡故ニ、与↢仏ノ本願↡不ルガ↢相応セ↡故ニ、与↠教相違ルガ故ニ、不ルガ↠順ゼ↢仏語ニ↡故ニ、係念不ルガ↢相続セ↡故ニ、憶想間断ルガ故ニ、回願不ルガ↢慇重真実ナラ↡故ニ、貪・瞋・諸見ノ煩悩来リ間断ルガ故ニ、無キガ↠有コト↢慚愧・懴悔ノ心↡故ニ。
^◆懴悔に三品あり。 ▼乃至
懴悔ニ有リ↢三品↡。 乃至
^▲上・中・下なり。
上・中・下ナリ。
^◆上品の懴悔とは、 身の毛孔のうちより血を流し、 眼のうちより血出すをば上品の懴悔と名づく。
上品ノ懴悔ト者、身ノ毛孔ノ中ヨリ血ヲ流シ、眼ノ中ヨリ血出スヲ者名ク↢上品ノ懴悔ト↡。
^◆中品の懴悔とは、 *遍身に熱き汗毛孔より出づ、 眼のうちより血の流るるをば中品の懴悔と名づく。
中品ノ懴悔ト者、徧身ニ熱キ汗従リ↢毛孔↡出ヅ、眼ノ中ヨリ血ノ流ルヽ者名ク↢中品ノ懴悔ト↡。
^◆下品の懴悔とは、 遍身徹り熱く、 眼のうちより涙出づるをば下品の懴悔と名づく。
下品ノ懴悔ト者、徧身徹リ熱ク、眼ノ中ヨリ涙出ルヲ者名ク↢下品ノ懴悔ト↡。
^◆これらの三品、 差別ありといへども、 これ▼久しく*解脱分の善根を種ゑたる人なり。 今生に0390法を敬ひ、 人を重くし、 *身命を惜しまず、 乃至小罪ももし懴すれば、 すなはちよく心髄に徹りて、 ▼よくかくのごとく懴すれば、 久近を問はず、 所有の重障みなたちまちに滅尽せしむることを致す。
此等ノ三品、雖モ↠有リト↢差別↡、是久ク種タル↢解脱分ノ善根ヲ↡人ナリ。致ス↠使コトヲ↧今生ニ敬ヒ↠法ヲ重クシ↠人ヲ、不↠惜マ↢身命ヲ↡、乃至小罪モ若シ懴レバ即チ能ク徹テ↢心髄ニ↡、能ク如ク↠此ノ懴レ者、不↠問ハ↢久近ヲ↡、所有ノ重障皆頓ニ滅尽セ↥。
^◆もしかくのごとくせざれば、 たとひ日夜十二時、 急に走むれども、 つひにこれ益なし。 *差うてなさざるものは◆知んぬべし。 流涙・流血等にあたはずといへども、 ただよく*真心徹到するものは、 すなはち上と同じ」 と。 以上
若シ不レバ↠如クセ↠此ノ、縦使ヒ日夜十二時、急ニ走ドモ終ニ是無シ↠益。差テ不ル↠作サ者ハ応シト↠知ヌ。雖モ↠不ト↠能ハ↢流涙・流血等ニ↡、但能ク真心徹到ル者ハ、即チ与↠上同ジト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ト)¬観念法門¼
・護念縁
【26】^▼またいはく (*観念法門)、
又云ク、
^「▲すべて*余の雑業の行者を照摂すと論ぜず」 と。
「総テ不ト↠論ゼ↣照↢摂スト余ノ雑業ノ行者ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(チ)¬法事讃¼
・転経分
【27】^▼またいはく (*法事讃・下)、
又0194云ク、
^「▲如来*五濁に出現して、 ▼宜しきに随ひて方便して*群萌を化したまふ。 ▼あるいは*多聞にして*得度すと説き、 ▼あるいは少しき解りて*三明を証すと説く。
「如来出↢現テ於五濁ニ↡ | 随テ↠宜キニ方便テ化タマフ↢群萌ヲ↡ |
或ハ説キ↢多聞ニ而得度スト↡ | 或ハ説ク↣少キ解テ証スト↢三明ヲ↡ |
^◆あるいは*福慧ならべて障を除くと教へ、 ▼あるいは*禅念して坐して思量せよと教ふ。 ▼種々の法門みな*解脱す」 と。
或ハ教ヘ↢福恵双テ除クト↟障ヲ | 或ハ教フ↢禅念テ座テ思量ヨト↡ |
種種ノ法門皆解脱スト」 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(リ)¬般舟讃¼二文
・正讃
【28】^▼またいはく (*般舟讃)、
又云ク、
^「▲万劫▼功を修せんことまことに続きがたし。 一時に煩悩百たび千たび間はる。
もし娑婆にして▼*法忍を証せんことを待たば、 ▼六道にして*恒沙の劫にもいまだ期あらじ。
「万劫修ムコト↠功ヲ実ニ難シ↠続キ | 一時ニ煩悩百タビ千タビ間ル |
若シ待バ↣娑婆ニシテ証ムコトヲ↢法忍ヲ↡ | 六道ニシテ恒沙ノ劫ニモ未 ジ ダ↠期アラ |
^▲門々不同なるを漸教と名づく。 万0391劫▼苦行して▼無生を証す。
*畢命を期としてもつぱら念仏すべし。 ▼*須臾に命断ゆれば、 仏迎へ将てまします。
門門不同ナルヲ名ク↢漸教ト↡ | 万劫苦行テ証ス↢无生ヲ↡ |
畢命ヲ為テ↠期ト専ラ念仏ベシ | 須臾ニ命断フレバ、仏迎ヘ将テマシマス |
^◆*一食の時なほ間あり、 いかんが万劫貪瞋せざらん。
▼貪瞋は人天を受くる路を障ふ。 *三悪・四趣のうちに身を安んず」 と。 抄要
一食之時尚有リ↠間 | 如何ガ万劫不ラム↢貪瞋セ↡ |
貪瞋ハ障フ↧受ル↢人天ヲ↡路ヲ↥ | 三悪・四趣ノ内ニ安ズト↠身ヲ」 抄要 |
・定散倶回
【29】^▼またいはく (般舟讃)、
又云ク、
^「▲*定散ともに回して*宝国に入れ。 すなはちこれ如来の異の方便なり。
◆*韋提はすなはちこれ女人の相、 *貪瞋具足の*凡夫の位なり」 と。 以上
「定散倶ニ回テ入レ↢宝国ニ↡ | 即チ是如来ノ異ノ方便ナリ |
韋提ハ即チ是女人ノ相 | 貪瞋具足ノ凡夫ノ位ナリト」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ヌ)¬論註¼
・真実功徳釈
【30】^▼¬*論の註¼ (上) にいはく、
¬論ノ註ニ¼曰ク、
^「▲二種の功徳相あり。 一つには*有漏の心より生じて*法性に順ぜず。 いはゆる凡夫、 人天の諸善、 人天の果報、 もしは因、 もしは果、 みなこれ*顛倒す、 みなこれ虚偽なり。 ゆゑに▼不実の功徳と名づく」 と。 以上
「有リ↢二種ノ功徳相↡。一ニ者従リ↢有漏ノ心↡生テ不↠順ゼ↢法性ニ↡。所ル↠謂ハ凡夫、人天ノ諸善、人天ノ果報、若ハ因若ハ果、皆是顛倒ス、皆是虚偽ナリ。故ニ名クト↢不実ノ功徳ト↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ル)¬安楽集¼二文
・化前の経意
【31】^▼¬*安楽集¼ (上) にいはく、
¬安楽集ニ¼云ク、
^「▲¬*大集経¼ の ª月蔵分º を引きていはく、 ª^▼わが*末法の時のなかに、 億々の衆生、 行を起し道を修せんに、 ▼いまだ一人も得るものあらじº と。
「引テ↢¬大集経ノ¼月蔵分ヲ↡言ク、我ガ末法ノ時ノ中ニ億億ノ衆生、起シ↠行ヲ修セムニ↠道ヲ、未ダト↠有ラ↢一人モ得ル者↡。
^◆当今は末法なり。 この五濁悪世には、 ▼ただ浄土の一門ありて、 通入すべき路なり」 と。
当今ハ末法ナリ。是ノ五濁悪世ニハ、唯有テ↢浄土ノ一門↡可キ↢通入0195ス↡路ナリト。」
・末法
【32】^▼またいはく (安楽集・下)、
又云ク、
^「▲いまだ一万劫を満たざるこのかたは、 つね0392にいまだ*火宅を勉れず、 顛倒墜堕するがゆゑに。 おのおの功を用ゐることは至りて重く、 獲る報は偽なり」 と。 以上
「未ダル↠満タ↢一万劫ヲ↡已来タハ恒ニ未ダ↠勉レ↢火宅ヲ↡、顛倒墜堕ルガ故ニ。各ノ用↠功ハ至テ重ク、※獲ル報ハ偽也ト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)釈義
(イ)通じて三経を判ず
【33】^▼しかるに、 いま ¬大本¼ (大経) によるに、 真実・方便の*願を超発す。 また ▼¬観経¼ には、 方便・真実の*教を顕彰す。 ▼¬小本¼ (小経) には、 ただ*真門を開きて方便の善なし。 ここをもつて*三経の*真実は、 *選択本願を宗とするなり。 また三経の方便は、 すなはちこれもろもろの善根を修するを要とするなり。
然ニ今拠ルニ↢¬大本ニ¼↡、超↢発ス真実・方便之願ヲ↡。亦¬観経ニハ¼顕↢*彰ス方便・真実之教ヲ↡。¬小本ニハ¼唯開テ↢真門ヲ↡無シ↢方便之善↡。是ヲ以テ三経ノ真実ハ、選択本願ヲ為ル↠宗ト也。復三経ノ方便ハ、即チ是修ルヲ↢諸ノ善根ヲ↡為ル↠要ト也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)別して観経を釈す
[一]今経に就きて釈す
[Ⅰ]仏願を挙げて法義を標す
^▼これによりて△方便の願 (第十九願) を案ずるに、 *仮あり*真あり、 また行あり信あり。 ▽願とはすなはちこれ*臨終現前の願なり。 ▽行とはすなはちこれ修諸功徳の善なり。 ▽信とはすなはちこれ至心・発願・欲生の心なり。
依テ↠此ニ按ルニ↢方便之願ヲ↡、有リ↠仮有リ↠真、亦有リ↠行有リ↠信。願ト者即チ是臨終現前之願也。行ト者即チ是修諸功徳之善也。信ト者即チ是至心・発願・欲生之心也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]開説に真仮有るを示す
[ⅰ]方便を明かす
^この願の行信によりて、 浄土の要門、 方便*権仮を顕開す。
依テ↢此ノ願之行信ニ↡、顕↢開ス浄土之要門、方便権仮ヲ↡。
^この要門より*正・助・雑の三行を出せり。 この正助のなかについて、 *専修あり*雑修あり。 ▽機について二種あり。 一つには*定機、 二つには*散機なり。
従リ↢此ノ要門↡出セリ↢正・助・ タスク 雑ノ三行ヲ↡。就テ↢此ノ正助ノ中ニ↡、有リ↢専修↡有リ↢雑修↡。就テ↠機ニハタモノ有リ↢二種↡。一ニ者定機、二ニ者散機也。
^また*二種の三心あり。 また*二種の▽往生あり。
又有リ↢二種ノ三心↡。亦有リ↢二種ノ往生↡。
^二種の三心とは、 一つには定の三心、 二つには散の三心なり。 定散の心はすなはち自利各別の心なり。
二種ノ三心ト者、一ニ者定ノ三心、二ニ者散ノ三心ナリ。定散ノ心者即チ自利各別ノ心也。
^二種の往0393生とは、 一つには*即往生、 二つには*便往生なり。 便往生とはすなはちこれ*胎生辺地、 *双樹林下の往生なり。 即往生とはすなはちこれ報土化生なり。
二種ノ往生ト者、一ニ者即往生、二ニ者便タヨリ往生ナリ。便往生ト者即チ是胎生辺地、双ナラブ樹林下ノ往生也。即往生ト者即チ是報土化生也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ]真実を明かす
^またこの ¬経¼ (観経) に真実あり。 これすなはち金剛の真心を開きて、 *摂取不捨を顕さんと欲す。 しかれば、 濁世*能化の釈迦*善逝、 至心信楽の願心を宣説したまふ。 報土の真因は*信楽を正とするがゆゑなり。
亦此ノ¬経ニ¼有リ↢真実↡。斯乃チ開テ↢金剛ノ真心ヲ↡、欲ス↠顕ムト↢摂取不0196捨ヲ↡。然レ者濁世能化ノ釈迦善逝、ユク サル宣ノベ↢説タマフ至心信楽コノミネガフ之願心ヲ↡。報土ノ真因ハ信楽ヲ為ルガ↠正ト故也。
^ここをもつて ¬大経¼ には 「▲信楽」 とのたまへり、 如来の誓願、 疑蓋雑はることなきがゆゑに信とのたまへるなり。 ¬観経¼ には 「▲深心」 と説けり、 諸機の浅信に対せるがゆゑに深とのたまへるなり。 ¬*小本¼ (小経) には 「▲一心」 とのたまへり、 二行雑はることなきがゆゑに一とのたまへるなり。 また一心について深あり浅あり。 深とは利他真実の心これなり、 浅とは定散自利の心これなり。▼
是ヲ以テ¬大経ニハ¼言リ↢「信楽ト」↡、如来ノ誓願、疑蓋フタ无キガ↠雑コト故ニ言ル↠信ト也。¬観経ニハ¼説リ↢「深心ト」↡、対ルガムカフ ↢諸機ノ浅信ニ↡故ニ言ル↠深ト也。¬小本ニハ¼言リ↢「一心ト」↡、二行無キガ↠雑コト故ニ言ル↠一ト也。復就テ↢一心ニ↡有リ↠深有リ↠浅。深ト者利他真実之心是也、浅ト者定散自利之心是也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]一代に就きて釈す
[Ⅰ]釈を挙げて意を述ぶ
[ⅰ]引文
【34】^宗師 (善導) の意によるに、 「^▲心によりて勝行を起せり。 ↓門八万四千に↓余れり。 *漸頓すなはちおのおの所宜に称へり。 縁に随ふものすなはちみな解脱を蒙る」 (玄義分) といへり。
依ルニ↢宗師ノ意ニ↡、云リ↧「依テ↠心ニ起セリ↢於勝行ヲ↡、門余レリ↢八万四千ニ↡、漸頓則チ各ノ称ヒテ↢所宜ニヨロシ↡、随フ↠縁ニ者則チ皆蒙ルト↦解脱ヲ↥。」
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]難易・権実の意を述ぶ
^▼しかるに常没の*凡愚、 *定心修しがたし、 ▼*息慮凝心のゆゑに。 *散心行じがたし、 ▼*廃悪修善のゆゑに。 こ0394こをもつて▼*立相住心なほ成じがたきがゆゑに、 「^▲たとひ千年の寿を尽すとも、 *法眼いまだかつて開けず」 (定善義) といへり。
然ニ常没ノ凡愚、定心難シ↠修シ、息ヤメテ 慮オモンパカリ凝コラス心ノ故ニ。散心難シ↠行ジ、廃ステヽ悪修善ノ故ニ。是ヲ以テ立相住心尚難キガ↠成ジ故ニ言リ↧「縦ヒ尽トモ↢千年ノ寿ヲ↡、法眼未ダト↦曽テ開ケ↥。」
^いかにいはんや、 ▼*無相離念まことに獲がたし。 ゆゑに、 「^▲如来はるかに*末代罪濁の凡夫を知ろしめして、 相を立て心を住すとも、 なほ得ることあたはじと。 いかにいはんや、 相を離れて事を求めば、 *術通なき人の空に居て舎を立てんがごときなり」 (定善義) といへり。
何ニ況ヤ无相離念誠ニ難シ↠獲。故ニ言リ↩「如来懸ニ知ス↢末代罪濁ノ凡夫ヲ↡、立↠相住↠心、尚不ト↠能ハ↠得コト、何ニ況ヤ離レ↠相ヲ而求メ↠事ヲ者、如↧似无キ↢術通↡人ノ居テ↠空ニ立ムガ↞舎イヱヲ也ト。」↨
・門釈
^▼「門余」 といふは、 「↑門」 はすなはち八万四千の*仮門なり、 「↑余」 はすなはち▼本願*一乗海なり。
言フ↢門余ト↡者、門者即チ八万四千ノ仮門也、余者則チ本願一乗海也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]詳らかに法相を判ず
[ⅰ]聖道門を明かす
【35】^▼おほよそ*一代の教について、 この界のうちにして*入聖得果するを*聖道門と名づく、 *難行道といへり。 この門のなかについて、 *大・小、 *漸・頓、 *一乗・*二乗・*三乗、 *権・実、 *顕・密、 ▼*竪出・*竪超あり。 すなはちこれ*自力、 *利他教化地、 方便権門の道路なり。
凡ソ就テ↢一代ノ教ニ↡、於テ↢此ノ界ノ中ニ↡入聖得果ルヲ名ク↢聖道門ト↡、云リ↢難行道ト↡。就テ↢此ノ門ノ中ニ↡、有リ↢大・小、漸・頓、一乗・二乗・三乗、権・実、顕・密、竪タトサマ出・竪超↡。則チ是自力利0197他教化地、方便権門之道路也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]浄土門を明かす
^*安養*浄刹にして*入聖証果するを*浄土門と名づく、 *易行道といへり。 この門のなかについて、 ▼↓*横出・↓*横超、 ↓*仮・↓*真、 *↓漸・↓頓、 *↓助↓正・↓*雑行、 ↓*雑修・↓*専修あるなり。
於テ↢安養浄刹ニ↡入聖証果ルヲ名ク↢浄土門ト↡、云リ↢易行道ト↡。就テ↢此ノ門ノ中ニ↡、有ル↢横出・横超、仮・真、漸・頓、助正・雑行、雑修・専修↡也。
・正助雑釈
^↑正とは*五種の正行なり。 ↑助とは名号を除きて以外の*五種これなり。 ↑雑行とは、 ↓正助を除きて以外をことごとく雑行と名づく。 これすなはち↑横出・↑漸0395教、 定散・三福、 三輩・九品、 自力↑仮門なり。
正ト者五種ノ正行也。助ト者除テ↢名号ヲ↡已外ノ*五種是也。雑行ト者、除テ↢正助ヲ↡已外ヲ悉ク名ク↢雑行ト↡。此乃チ横出・漸教、定散・三福、三輩・九品、自力仮門也。
・横超釈
^↑横超とは、 本願を*憶念して自力の心を離る、 これを横超他力と名づくるなり。 これすなはち▼専のなかの専、 ↑頓のなかの頓、 ↑真のなかの真、 乗のなかの一乗なり。 これすなはち*真宗なり。 ▲すでに真実行のなかに顕しをはんぬ。
横超ト者、憶↢念テ本願ヲ↡離ル↢自力之心ヲ↡、*是ヲ名クル↢横超他力ト↡也。斯即チ専ノ中之専、頓ノ中之頓、真ノ中之真、乗ノ中之一乗ナリ。斯乃チ真宗也。已ニ顕シ↢真実行之中ニ↡畢ヌ。
・雑行釈
【36】^▼それ*雑行*雑修、 その言一つにして、 その意これ異なり。 雑の言において万行を摂入す。 *五正行に対して五種の雑行あり。 雑の言は、 人・天・菩薩等の*解行、 雑せるがゆゑに雑といへり。 もとより往生の因種にあらず、 *回心回向の善なり。 ゆゑに浄土の雑行といふなり。
夫雑行雑修、其ノ言一ニ而其ノ意惟異ナリ。於テ↢雑之言ニ↡摂↢入ス万行ヲ↡。対テ↢*五正行ニ↡有リ↢五種ノ雑行↡。雑ノ言ハ、人・天・菩薩等ノ解行、雑セルガ故ニ曰リ↠雑ト。自リ↠本非ズ↢往生ノ因種ニ↡、廻心回向之善ナリ。故ニ曰フ↢浄土之雑行ト↡也。
^▼また雑行について、 ↓専行あり↓専心あり、 また↓雑行あり↓*雑心あり。
復就テ↢雑行ニ↡、有リ↢専行↡有リ↢専心↡、復有リ↢雑行↡有リ↢雑心↡。
・専
^↑専行とはもつぱら一善を修す、 ゆゑに専行といふ。 ↑専心とは回向をもつぱらにするがゆゑに専心といへり。
専行ト者専ラ修ス↢一善ヲ↡、故ニ曰フ↢専行ト↡。専心ト者専ニスルガ↢回向ヲ↡故ニ曰リ↢専心ト↡。
・雑
^雑行雑心とは、 諸善兼行するがゆゑに↑雑行といふ、 *定散心雑するがゆゑに↑雑心といふなり。
雑行雑心ト者諸善兼カネテ行ルガ故ニ曰フ↢雑行ト↡、定散心雑ルガ故ニ曰フ↢雑心ト↡也。
・正助釈
^また↑正・助について↑↓専修あり↑↓雑修あり。 この雑修について専心あり雑心あり。
亦就テ↢正・助ニ↡有リ↢専修↡有リ↢雑修↡。就テ↢此ノ雑修ニ↡有リ↢専心↡有リ↢雑心↡。
^↑専修について二種あり。 一つにはただ仏名を称す、 二つには▼五専あり。 この行業について↓専心あり↓雑心あり。 五専とは、 一つには専礼、 二つには専読、 三つには専観、 四つには専称、 五0396つには専讃嘆なり。 これを五専修と名づく。 専修、 その言一つにして、 その意これ異なり。 すなはちこれ定専修なり、 また散専修なり。
就テ↢専修ニ↡有リ↢二種↡。一ニ者唯称ス↢仏名ヲ↡、二ニ者有リ↢五専↡。就テ↢此ノ行業ニ↡有リ↢専心↡0198有リ↢雑心↡。五専ト者、一ニハ専礼、二ニハ専読、三ニハ専観、四ニハ専*名、五ニハ専讃嘆ナリ。是ヲ名ク↢五ノ専修ト↡。専修其ノ言一ニ而其ノ意惟異ナリ。即チ是定専修ナリ、復散専修也。
^↑専心とは、 五正行をもつぱらにして、 二心なきがゆゑに専心といふ。 すなはちこれ定専心なり、 またこれ散専心なり。
専心ト者、専ニ↢五正行ヲ↡而無キガ↢二心↡故ニ曰フ↢専心ト↡。即チ是定専心ナリ、復是散専心也。
^↑雑修とは、 助正兼行するがゆゑに雑修といふ。
雑修ト者、助正兼行ルガ故ニ曰フ↢雑修ト↡。
^↑雑心とは、 定散の心雑するがゆゑに雑心といふなり、 知るべし。
雑心ト者、定散ノ心雑ルガ故ニ曰フ↢雑心ト↡也、応シ↠知ル。
・諸師釈
^おほよそ浄土の一切諸行において、 綽和尚 (*道綽) は 「▲万行」 (安楽集・下) といひ、 導和尚 (善導) は 「▲雑行」 (散善義) と称す。 感禅師 (懐感) は 「▲諸行」 (群疑論) といへり。 信和尚 (源信) は感師により、 空聖人 (源空) は▲導和尚によりたまふ。
凡ソ於テ↢浄土ノ一切諸行ニ↡、綽和尚ハ云ヒ↢「万行ト」↡、*導和尚ハ称ス↢「雑行ト」↡。感禅師ハ云リ↢「諸行ト」↡。信和尚ハ依リ↢感師ニ↡。空聖人ハ依タマフ↢導和尚ニ↡也。
^*経家によりて師釈を披くに、 雑行のなかの雑行雑心・雑行専心・専行雑心あり。 また正行のなかの専修専心・専修雑心・雑修雑心は、 これみな*辺地・*胎宮・*懈慢界の業因なり。 ゆゑに極楽に生ずといへども*三宝を見たてまつらず。 ▼*仏心の光明、 余の雑業の行者を照摂せざるなり。
拠テ↢経家ニ↡披クニ↢師釈ヲ↡、雑行之中ノ雑行雑心・雑行専心・専行雑心ナリ。亦正行之中ノ専修専心・専修雑心・雑修雑心ハ、此皆辺地・胎宮・懈慢界ノ業因ナリ。故ニ雖モ↠生ズト↢極楽ニ↡不↠見マツラ↢三宝ヲ↡。仏心ノ光明、不ル↣照↢摂セ余ノ雑業ノ行者ヲ↡也。
^◆*仮令の誓願 (第十九願) まことに由あるかな。 *仮門の教、 *欣慕の釈、 これいよいよあきらかなり。
仮令之誓願良ニ有ル↠由哉。仮門之教、忻ネガイ 慕シタフ之釈、是弥ヨ明カ也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)正答
^二経の三心、 顕の義によれば異なり、 彰の義によれば一なり。
二経之三心、依バ↢顕之義ニ↡異也、依バ↢彰内ニアラハス之義ニ↡一也。
一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)結答
^▼三心一異の0397義、 答へをはんぬ。▼
三心一異之義、答ヘ竟ヌト。
一 Ⅰ ⅱ b ロ 小経の一心を釈す【小経隠顕】
(一)問
【37】^▼また問ふ。 ¬大本¼ (大経) と ¬観経¼ の*三心と、 ¬小本¼ (小経) の*一心と、 一異いかんぞや。
又問フ。¬大本ト¼¬観経ノ¼三心ト、与↢¬小本ノ¼一心↡、一異云何ゾヤ。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)答
(Ⅰ)正釈
(ⅰ)正弁
(a)隠顕有ることを明かす
^答ふ。 ▼いま方便*真門の誓願について、 行あり信あり。 また*真実あり*方便あり。
答フ。今就テ↢方便真門0199ノ誓願ニ↡、有リ↠行有リ↠信。亦有リ↢真実↡有リ↢方便↡。
^△願とはすなはち*植諸徳本の願これなり。 △行とはこれに二種あり。 一つには*善本、 二つには*徳本なり。
願ト者即チ*植ウヽル諸徳本之願是也。行ト者此ニ有リ↢二種↡。一ニ者善本、二ニ者徳本也。
^△信とはすなはち至心・回向・欲生の心これなり。 二十願なり ^△機について定あり散あり。
信ト者即チ至心・回向・欲生之心*是也。*廿願也 就テ↠機有リ↠定有リ↠散。
^△往生とはこれ*難思往生これなり。 ^△仏とはすなはち*化身なり。 ^△土とはすなはち*疑城胎宮これなり。
往生ト者此難思往生是也。仏ト者即チ化身ナリ。土ト者即チ疑城ミヤコ胎宮是也。
・標挙
^¬観経¼ に*准知するに、 ▼この ¬経¼ (小経) にまた*↓顕↓彰隠密の義あるべし。
准↢ナズラウ知ルニ¬観経ニ¼↡、此ノ¬経ニ¼亦応シ↠有ル↢顕彰隠密之義↡。
・顕義
^△↑顕といふは、 ▼*経家は一切諸行の少善を*嫌貶して、 善本徳本の真門を開示し、 自利の一心を励まして難思の往生を勧む。
言フ↠顕ト者、経家ハ嫌↢キラフ 貶テオトシム一切諸行ノ少善ヲ↡、開↢示シ善本徳本ノ真門ヲ↡、励シテ↢自利ノ一心ヲ↡勧ム↢難思ノ往生ヲ↡。
^ここをもつて ¬経¼ (小経) には 「▲*多善根・多功徳・多福徳因縁」 と説き、 釈 (法事讃・下) には 「^▲九品ともに回して*不退を得よ」 といへり。 あるいは 「▲*無過念仏往*西方三念五念仏*来迎」 (法事讃・意) といへり。
是ヲ以テ¬経ニハ¼説キ↢「多善根・多功徳・多福徳因縁ト」↡、¬釈ニハ¼云リ↣「九品倶ニ回テ得ヨト↢不退ヲ↡。」或ハ云リ↢
^これはこれ、 この ¬経¼ (小経) の顕の義を示すなり。 これすなはち真門のなかの方便なり。
此ハ*是此ノ¬経ノ¼示ス↢顕ノ義ヲ↡也。此乃チ真門ノ中之方便也。
・彰義
^△↑彰といふは、 真0398実*難信の法を彰す。 これすなはち*不可思議の*願海を*光闡して、 *無礙の*大信心海に帰せしめんと欲す。
言フ↠彰ト者彰ス↢真実難信之法ヲ↡。斯乃チ光↢闡テヒラク不可思議ノ願海ヲ↡、欲ス↠令ムト↠帰セ↢*无ノ大信心海ニ↡。
^まことに勧め、 すでに恒沙の勧めなれば、 信もまた*恒沙の信なり。 ゆゑに甚難といへるなり。 釈 (法事讃・下) に、 「^▲ただちに弥陀の*弘誓重なれるをもつて、 凡夫念ずればすなはち生ぜしむることを致す」 といへり。
良ニ勧メ既ニ恒沙ノ勧メナレバ、信モ亦恒沙ノ信ナリ。故ニ言ル↢甚ハナハダ難ト↡也。¬釈ニ¼云リ↧
「直ニ為テ↢弥陀ノ弘誓重レルニ↡ | 致スト↞使コトヲ↢凡夫念レバ即チ生ゼ↡」 |
^これはこれ、 *隠彰の義を開くなり。
斯ハ是開ク↢隠彰ノ義ヲ↡也。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)別して実義を弁ず
・執持一心釈
^▼¬経¼ (小経) に 「▲執持」 とのたまへり。 また 「▲一心」 とのたまへり。 ^「執」 の言は心*堅牢にして移転せざることを彰すなり。 「持」 の言は不散不失に名づくるなり。 ^「一」 の言は無二に名づくるの言なり。 「心」 の言は真実に名づくるなり。
¬経ニ¼言リ↢「執持ト」↡。亦言リ↢「一心ト」↡。執ノ言ハ彰ス↣心堅牢ニカタクカタシ而不コトヲ↢移転セウツリウツル↡也。持ノ言ハ名クル↢不散不失ニ↡也。一之言者名クル↢无二ニ↡之言也。心之言者名クル↢真実ニ↡也。
・無問自説経
^▼この ¬経¼ (小経) は大乗*修多羅のなかの*無問自説経なり。 しかれば如来、 世に興出したまふゆゑは、 恒沙の諸仏の証護の正意、 ただこれにあるなり。
斯ノ¬経ハ¼大乗修多羅ノ中之无問自説経也。爾レ者如来所↣以ハ興↢出タマフ於0200世ニ↡、恒沙ノ諸仏ノ証護ノマモル正意、唯在ル↠斯ニ也。
・列祖弘伝
^▼ここをもつて*四依弘経の大士、 *三朝浄土の宗師、 真宗念仏を開きて、 濁世の邪偽を導く。
是ヲ以テ四依弘経ノ大士、三朝浄土ノ宗師、開テ↢真宗念仏ヲ↡導ク↢濁世ノ邪偽ヲ↡。
・三経大綱
^▼三経の大綱、 顕彰隠密の義ありといへども、 信心を彰して能入とす。 ゆゑに経のはじめに 「*如是」 と称す。
三経ノ大綱ツナ、雖モ↠有リト↢顕彰隠蜜之義↡、彰テ↢信心ヲ↡為↢能入ト↡。故ニ経ノ始ニ称ス↢「如是ト」↡。
^「如是」 の義はすなはちよく信ずる相なり。 いま三経を案ずるに、 みなもつて金剛の真心を最要とせり。 真心はすなはちこれ大信心なり。 大信心は希有・最勝0399・真妙・清浄なり。 なにをもつてのゆゑに、 ▼大信心海ははなはだもつて入りがたし、 仏力より発起するがゆゑに。 ▼真実の*楽邦はなはだもつて往き易し、 願力によりてすなはち生ずるがゆゑなり。
如是之義ハ則チ善ク信ル相也。今按ルニ↢三経ヲ↡、皆以テ金剛ノ真心ヲ為リ↢最要ト↡。真心ハ即チ是大信心ナリ。大信心ハ希有・最勝・真妙・清浄ナリ。何ヲ以ノ故ニ。大信心海ハ甚ダ以テ叵ハ反シ↠入リ、従リ↢仏力↡発起ルガ故ニ。真実ノ楽邦クニ甚ダ以テ易シ↠往キ、籍テ↢願力ニ↡即チ生ズルガ故ナリ。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)結成
^いままさに一心一異の義を談ぜんとす、 まさにこの意なるべしと。
今将ニ↠談ムト↢一心一異ノ義ヲ↡、当ニシト此ノ意ナル↡也。
一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)結答
^三経一心の義、 答へをはんぬ。
三経一心之義、答ヘ竟ヌ。
一 Ⅰ ⅱ c 第二十願を釈す【真門釈】
イ 略して勧発す【説意出願】
【38】^▼それ濁世の*道俗、 すみやかに円修至徳の*真門に入りて、 *難思往生を願ふべし。
夫レ濁世ノ道俗、応シ↧速ニ入テ↢円修至徳ノ真門ニ↡、願フ↦難思往生ヲ↥。
一 Ⅰ ⅱ c ロ 正しく義を明かす
(一)直釈
・真門行信
^真門の方便につきて、 ↓*善本あり↓*徳本あり。 また定↓専心あり、 また散専心あり、 また定散↓雑心あり。
就テ↢真門之方便ニ↡、有リ↢善本↡有リ↢徳本↡。復有リ↢定専心↡、復有リ↢散専心↡、復有リ↢定散雑心↡。
^↑雑心とは、 大小・凡聖・一切善悪、 おのおの*助正間雑の心をもつて名号を称念す。 まことに*教は頓にして根は漸機なり。 行は専にして心は間雑す。 ゆゑに雑心といふなり。
雑心ト者、大小・凡聖・一切善悪、各ノ以テ↢助正間雑ノ心ヲ↡称↢念ス名号ヲ↡。良ニ教者頓ニ而根者漸機ナリ。行者専ニ而心者間雑ス。故ニ曰フ↢雑心ト↡也。
^▼定散の↑専心とは、 *罪福を信ずる心をもつて*本願力を願求す、 これを自力の専心と名づくるなり。
定散之専心ト者、以テ↧信ル↢罪福ヲ↡心ヲ↥願↢求ス本願力ヲ↡、是ヲ名クル↢自力之専心ト↡也。
^↑善本とは如来の*嘉名なり。 この嘉名は万善円備せり、 一切善法の本なり。 ゆゑに善本といふなり。
善本ト者如来ノ嘉ヨシ名ナリ。此ノ嘉名者万善円備セリ、ソナハル ツブサナリ一切善法之本ナリ。故ニ曰フ↢善本ト↡也。
^↑徳本とは如来の*徳号なり。 この徳号は*一声称念するに、 至徳成満し衆禍みな転ず、 十方三世の徳号の本なり。 ゆゑに徳本といふなり。
徳本ト者如来ノ徳号ナリ。此ノ徳号者一声称念ルニ、至徳成満シ衆 禍ワザワイ皆転ズ、十方三世0201ノ徳号之本ナリ。故ニ曰フ↢徳本ト↡也。
・二尊能化
^しかればすなはち、 *釈迦牟尼仏は、 *功徳蔵を開演して、 十方濁世を勧化したまふ。 阿弥陀如来はもと*果遂の誓 こ0400の果遂の願とは二十願なり を発して、 *諸有の群生海を悲引したまへり。
然バ則チ釈迦牟尼仏ハ、開↢演テ功徳蔵ヲ↡、勧↢化タマフメグム 十方濁世ヲ↡。阿弥陀如来ハ本発テ↢果遂ハタシトゲム之誓ヲ↡ *此ノ果遂之願ト者廿願也 悲↢引タマヘリ諸有ノ群生海ヲ↡。
・出願
^▼すでにして悲願います。 ▼植諸徳本の願と名づく、 また▼係念定生の願と名づく、 また▼不果遂者の願と名づく、 また▼*至心回向の願と名づくべきなり。▼
既ニ而有ス↢悲願↡。名ク↢植ウヽル諸徳本之願ト↡、復名ク↢係カク念定生之願ト↡、復名ク↢不果遂者之願ト↡、亦可キ↠名ク↢至心回向之願ト↡也。
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)引文
(Ⅰ)通じて上釈を成ず
(ⅰ)正証
(a)引経
(イ)因願成就を示す
[一]¬大経¼三文
・第二十願文
【39】^▼ここをもつて ¬大経¼ (上) の願 (第二十願) にのたまはく、
是ヲ以テ¬*大経ノ¼願ニ言ク、
^「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 ▼わが名号を聞きて、 念をわが国に係けて、 *もろもろの徳本を植ゑて、 心を至し回向してわが国に生ぜんと欲はん。 ▼*果遂せずは正覚を取らじ」 と。
「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、聞テ↢我ガ名号ヲ↡、係テ↢念ヲ我ガ国ニ↡、*植テ↢諸ノ徳本ヲ↡、至シ↠心ヲ回向テ欲ハム↠生ムト↢我ガ国ニ↡。不↢果遂セハタシトゲ ↡者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
・胎生得失
【40】^▼またのたまはく (大経・下)、
又言ク、
^「▲この*諸智において疑惑して信ぜず、 しかるになほ罪福を信じて、 善本を修習して、 その国に生ぜんと願ぜん。 ◆このもろもろの衆生、 かの宮殿に生ず」 と。
「於テ↢此ノ諸智ニ↡疑惑テ不↠信ゼ、然ニ猶信テ↢罪福ヲ↡、修↢習テ善本ヲ↡、願ム↠生ムト↢其ノ国ニ↡。此ノ諸ノ衆生、生ズト↢彼ノ宮殿ニ↡。」
・果遂の益
【41】^▼またのたまはく (大経・下)、
又言ク、
^「▲もしひと善本なければ、 この経を聞くことを得ず。 清浄に*戒を有てるもの、 いまし*正法を聞くことを獲ん」 と。 以上
「若シ人无レバ↢善本↡ | 不↠得↠聞コトヲ↢此ノ経ヲ↡ |
清浄ニ有ル↠戒ヲ者 | 乃シ獲ムト↠聞コトヲ↢正法ヲ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(イ)[二]¬如来会¼
【42】^▼¬*無量寿如来会¼ (上) にのたまはく、
¬無量寿如来会ニ¼言ク、
^「▲もしわれ成仏せんに、 無量国のなかの所有の衆生、 わが名を説かんを聞きて、 もつておのれが善根として極楽に回向せん。 ▼もし生れずは、 *菩提を取らじ」 と。 以上
「*若シ我成仏ムニ、无量国ノ中ノ所有ノ衆生、聞テ↠説ムヲ↢我ガ名ヲ↡、以テ己ガ善根トシテ回↢向ム極楽ニ↡。若シ不↠生レ者、不ト↠取ラ↢菩提ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(イ)[三]¬平等覚経¼
【040143】^▼¬*平等覚経¼ (二) にのたまはく、
¬平等覚経ニ¼言ク、
^「▲この功徳あるにあらざる人は、 この経の名を聞くことを得ず。 ただ清浄に戒を有てるもの、 いまし還りてこの正法を聞く。
「非ル↠有ルニ↢是ノ功徳↡人ハ | 不↠得↠聞コトヲ↢是ノ経ノ名ヲ↡ |
唯有ル↢清浄ニ戒ヲ↡者 | 乃シ還テ聞ク↢斯ノ正法ヲ↡ |
^▲悪と*憍慢と*蔽と*懈怠とは、 もつて*この法を信ずること難し。 *宿世の時に仏を見たてまつれるもの、 楽みて世尊の教を*聴聞せん。
悪ト憍オゴル慢トアナドル蔽トオホフ 懈オコタ怠トハオコタル | 難シ↣以テ信コト↢於此ノ法ヲ↡ |
宿世ノ時ニ見マツレル↠仏ヲ者 | 楽テ聴↢ユリテキク聞ム信ジテキク世尊ノ教ヲ↡ |
^▲人の命希に得べし。 仏は世にましませどもはなはだ値ひがたし。 *信慧ありて致るべからず。 もし*聞見せば精進して求めよ」 と。 以上
人之命希ニ可シ↠得 | 仏ハ在セドモ↠世ニ甚ダ難シ↠値ヒ |
有テ↢信*慧↡不↠可ラ↠*致ル | 若0202シ聞見セバ精進テモンハラコノム求ヨト」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)随自真実を示す
[一]¬観経¼
【44】^▼¬観経¼ にのたまはく、
¬観経ニ¼言ク、
^「▲仏、 阿難に告げたまはく、 ª*なんぢよくこの語を持て。 この語を持てといふは、 すなはちこれ無量寿仏の名を持てとなりº」 と。 以上
「仏告タマハク↢阿難ニ↡、汝好ク持テ↢是ノ語ヲ↡。持テトイフ↢是ノ語ヲ↡者、即チ是持テトナリト↢无量寿仏ノ名ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ハ)真門の教相を示す
[一]¬小経¼
【45】^▼¬阿弥陀経¼ にのたまはく、
¬阿弥陀経ニ¼言ク、
^「▲*少善根福徳の因縁をもつて、 かの国に生ずることを得べからず。 ◆阿弥陀仏を説くを聞きて、 *名号を執持せよ」 と。 以上
「不↠可ラ↧以テ↢少善根福徳ノ因縁ヲ↡、得↞生コトヲ↢彼ノ国ニ↡。聞テ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡執トリ↢持ヨト名号ヲ↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)引釈
(イ)「定善義」
【46】^▼光明寺の和尚 (善導) のいはく (定善義)、
光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲自余の衆行、 これ善と名づくといへども、 もし念仏に比ぶれば、 まつたく*比校にあらざるなり。 このゆゑに、 諸経のなかに処々に広く念仏の*功能を讃めたり。
「自余ノ衆行雖モ↠名クト↢是善ト↡、若シ比レ↢念仏ニ↡者、全ク非ル↢比ナラブ校ニ↡タクラブ也。是ノ故ニ諸経ノ中ニ処処ニ広ク讃タリ↢念仏ノ功能ヲ↡。
^◆¬無量寿経¼ の四十八願のなかのごとき、 ただ弥陀の名号を専念して生ずることを得と明かす。
如キ↢¬无量寿経ノ¼四十八願ノ中ノ↡、唯明ス↧専↢念テ弥陀ノ名号ヲ↡得ト↞生コトヲ。
^◆また ¬弥陀経¼ のなかのごとし、 一日七日弥陀の名号を専念して生ずる0402ことを得と。 ^また十方恒沙の諸仏の*証誠虚しからざるなり。
又如シ↢¬弥陀経ノ¼中ノ↡、一日七日専↢念テ弥陀ノ名号ヲ↡得ト↠生コトヲ。又十方恒沙ノ諸仏ノ証成不ル↠虚カラ也。
^◆またこの ¬経¼ (観経) の定散の文のなかに、 ただ名号を専念して生ずることを得と標す。
又此ノ¬経ノ¼定散ノ文ノ中ニ、唯標ス↧専↢念テ名号ヲ↡得ト↞生コトヲ。
^◆この例一つにあらざるなり。 広く念仏三昧を顕しをはんぬ」 と。
此ノ例非ル↠一ニ也。広ク顕シ↢念仏三昧ヲ↡竟ヌト。」
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)「散善義」三文
【47】^▼またいはく (散善義)、
*又云ク、
^「▲また決定して、 ¬弥陀経¼ のなかに、 十方恒沙の諸仏、 一切凡夫を証勧して、 決定して生ずることを得と深信せよと。 ▼乃至
「又決定テ深↧信ヨト¬弥陀経ノ¼中ニ、十方恒沙ノ諸仏、証↢勧テ一切凡夫ヲ↡、決定テ得ト↞生コトヲ。 乃至
^▲諸仏は言行あひ違失したまはず。 ◆たとひ釈迦一切凡夫を指勧して、 この一身を尽して専念専修して、 捨命以後さだめてかの国に生るるといふは、 すなはち十方の諸仏ことごとくみな同じく讃め、 同じく勧め、 同じく証したまふ。 なにをもつてのゆゑに、 *同体の大悲のゆゑに。 一仏の所化はすなはちこれ一切仏の化なり、 一切仏の化はすなはちこれ一仏の所化なり。
諸仏ハ言行不↢相ヒ違失タマハ↡。縦令ヒ釈迦指テ勧テ↢一切凡夫ヲ↡、尽テ↢此ノ一身ヲ↡専念専修テ、捨命已後定テ生ルヽトイフ↢彼ノ国ニ↡者、即チ十方ノ諸仏悉ク皆同ク賛メ同ク勧メ同ク証タマフ。何ヲ以ノ故ニ。同体ノ大悲ノ故ニ。一仏ノ所化ハ即チ是一切仏ノ化ナリ、一切仏ノ化ハ即0203チ是一仏ノ所化ナリ。
^◆すなはち ¬弥陀経¼ のなかに説かく、 ▼乃至 ▲ªまた一切凡夫を勧めて、 一日七日、 一心にして弥陀の名号を専念すれば、 さだめて往生を得んº と。
即チ¬弥陀経ノ¼中ニ説カク、 乃至 又勧テ↢一切凡夫ヲ↡、一日七日、一心ニシテ専↢念レバ弥陀ノ名号ヲ↡、定テ得ムト↢往生ヲ↡。
^◆次下の文 (小経・意) にいはく、 ª^十方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 同じく釈迦を讃めたまはく、 よく五濁悪時・悪世界・*悪衆生・悪煩悩・悪邪無信の盛んなるときにおいて、 弥陀の名号を指讃して衆生を勧励して称念せしむれば、 かならず往生を得º と。 ^すなは0403ちその証なり。
次下ノ文ニ云ク、十方ニ各ノ有シテ↢恒河沙等ノ諸仏↡、同ク賛タマハク↢釈迦ヲ↡、能ク於テ↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪煩悩・悪邪无信ノ盛ナル時ニ↡、指↢賛テ弥陀ノ名号ヲ↡勧↢励テ衆生ヲ↡称念シムレバ必ズ得ト↢往生ヲ↡。即チ其ノ証也。
^◆また十方仏等、 衆生の釈迦一仏の所説を信ぜざらんことを恐畏れて、 すなはちともに同心同時におのおの*舌相を出して、 あまねく*三千世界に覆ひて誠実の言を説きたまはく、 ª^なんだち衆生、 みなこの釈迦の所説・所讃・所証を信ずべし。 一切の凡夫、 罪福の多少、 時節の久近を問はず、 ただよく上百年を尽し、 下一日七日に至るまで、 一心に弥陀の名号を専念すれば、 さだめて往生を得ること、 かならず疑なきなりº と。
又十方仏等、恐↢畏テ衆生ノ不ラムコトヲ↟信ゼ↢釈迦一仏ノ所説ヲ↡、即チ共ニ同心同時ニ各ノ出テ↢舌相ヲ↡、徧ク覆テ↢三千世界ニ↡説タマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等衆生、皆応シ↠信ズ↢是ノ釈迦ノ所説・所讃・所証ヲ↡。一切ノ凡夫、不↠問ハ↢罪福ノ多少、時節ノ久近ヲ↡、但能ク上尽シ↢百年ヲ↡、下至マデ↢一日七日ニ↡、一心ニ専↢念レバ弥陀ノ名号ヲ↡、定テ得コト↢往生ヲ↡必ズ无キ↠疑也ト。
^◆このゆゑに一仏の所説は、 一切仏同じくその事を証誠したまふなり。 ◆これを*人に就いて信を立つと名づくるなり」 と。 抄要
是ノ故ニ一仏ノ所説ハ、一切仏同ク証↢成タマフ其ノ事ヲ↡也。此ヲ名クル↢就テ↠人ニ立ツト↟信ヲ也ト。 抄要
【48】^▼またいはく (散善義)、
又云ク、
^「▲しかるに仏願の意を望むには、 ただ*正念を勧め、 名を称せしむ。 往生の義疾きことは、 ▼*雑散の業には同じからず。 ▼この経および諸部のなかに処々に広く嘆ずるがごときは、 勧めて名を称せしむるを、 まさに*要益とせんとするなり、 知るべし」 と。
「然ニ望ニ↢仏願ノ意ヲ↡者、唯勧メ↢正念ヲ↡称シム↠名ヲ。往生ノ義疾コトハ不↠同カラ↢雑散之業ニハ↡。如キハ↢此ノ経及ビ諸部ノ中ニ処処ニ広ク嘆ルガ↡、勧テ令ルヲ↠称セ↠名ヲ将ニル↠為ムト↢要益ト↡也、応シト↠知ル。」
【49】^▼またいはく (散善義)、
又云ク、
^「▲ª*仏告阿難汝好持是語º より以下は、 まさしく弥陀の名号を*付嘱して、 *遐代に*流通することを明かす。 上よりこのかた定散両門の益を説くといへども、 仏の本願の意を望まんには、 衆生をして一向に0404もつぱら弥陀仏の名を称するにあり」 と。
「従リ↢仏告阿難汝好持是語↡已下ハ、正ク明ス↧付↢嘱テ弥陀ノ名号ヲ↡、流↦通コトヲ於遐代ニ↥。上ヨリ来タ雖モ↠説クト↢定散両門之益ヲ↡、望マムニハ↢仏ノ本願ノ意ヲ↡、在リト↣衆生ヲシテ一向ニ専ラ称ルニ↢弥陀仏ノ名ヲ↡。」
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)¬法事讃¼三文
【50】^▼またいはく (法事讃・下)、
又0204云ク、
^「▲極楽は*無為涅槃の界なり。 *随縁の雑善おそらくは生じがたし。 ゆゑに如来 (釈尊) *要法を選びて、 教へて弥陀を念ぜしめてもつぱらにしてまたもつぱらならしめたまへり」 と。
「極楽ハ无為涅槃ノ界ナリ | 随縁ノ雑善恐クハ難シ↠生ジ |
故ニ使タマヘリト↧如来選テ↢要法ヲ↡ | 教テ念シメテ↢弥陀ヲ↡専ラニシテ復専ナラ↥」 |
【51】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲*劫尽きなんと欲する時、 五濁盛んなり。 衆生*邪見にしてはなはだ信じがたし。 もつぱらにしてもつぱらなれと指授して*西路に帰せしめしに、 他のために破壊せられて還りて故のごとし。
「劫欲ル↠尽ムト時五濁盛ナリ | 衆生邪見ニシテ甚ダ難シ↠信ジ |
専ニシテ専ナレト指授テ帰シメシニ↢西路ニ↡ | 為ニ↠他ノ破壊レテ還テ如シ↠故ノ |
^*曠劫よりこのかたつねにかくのごとし。 これ今生にはじめてみづから悟るにあらず。 まさしくよき*強縁に遇はざるによりて、 *輪廻して得度しがたからしむることを致す」 と。
曠劫ヨリ已来タ常ニ如シ↠此ノ | 非ズ↢是今生ニ始テ自ラ悟ルニ↡ |
正ク由テ↠不ルニ↠遇ハ↢好キ強縁ニ↡ | 致スト↠使コトヲ↣輪回テ難カラ↢得度シ↡」 |
【52】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲種々の法門みな解脱すれども、 念仏して西方に往くに過ぎたるはなし。 上*一形を尽し、 *十念・三念・五念に至るまで、 仏*来迎したまふ。 △ただちに弥陀の弘誓重なれるをもつて、 凡夫念ずればすなはち生ぜしむることを致す」 と。
「種種ノ法門皆解脱レドモ | 無シ↠過タルハ↣念仏シテ往クニ↢西方ニ↡ |
上尽シ↢一形ヲ↡至マデ↢十念・ | 三念・五念ニ↡仏来迎タマフ |
直ニ為テ↢弥陀ノ弘誓重レルヲ↡ | 致スト↠使コトヲ↢凡夫念レバ即チ生ゼ↡」 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ニ)¬般舟讃¼
【53】^▼またいはく (般舟讃)、
又云ク、
^「▲一切如来方便を設けたまふこと、 また今日の釈迦尊に同じ。 ◆機に随ひて法を説くにみな益を蒙る。 ▼おのおの悟解を得て真門0405に入れと。 ▼乃至
「一切如来設タマフコト↢方便ヲ↡ | 亦同ジ↢今日ノ釈迦尊ニ↡ |
随テ↠機ニ説クニ↠法ヲ皆蒙ル↠益ヲ | 各ノ得テ↢悟解ヲ↡入レト↢真門ニ↡ 乃至 |
^▲仏教多門にして*八万四なり。 まさしく衆生の機不同なるがためなり。 安身常住の処を覓めんと欲はば、 まづ要行を求めて真門に入れ」 と。
仏教多門ニシテ八万四ナリ | 正ク為ナリ↢衆生ノ機不同ナルガ↡ |
欲ハバ↠覓ムト↢安身常住ノ処ヲ↡ | 先ヅ求テ↢要行ヲ↡入レト↢真門ニ↡」 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ホ)¬礼讃¼
【54】^▼またいはく、 *智昇師の ¬*礼懴儀¼ の文にいはく、 光明寺 (善導) の ¬礼讃¼ なり
又云ク *智昇師ノ¬礼懴儀ノ¼文ニ云ク、光明寺ノ¬礼賛¼也
^「▲それこのごろ、 みづから諸方の道俗を見聞するに、 *解行不同にして*専雑、 異あり。 ただ意をもつぱらにしてなさしむれば、 十はすなはち十ながら生ず。 雑を修するは至心ならざれば、 ▼*千がなかに一もなし」 と。 以上
「爾レ比日、自ラ見↢聞ルニ諸方ノ道俗ヲ↡、解行不同ニシテ専*修ニ有リ↠異。但使ムレ↢専ニシテ↠意ヲ作サ↡者、十ハ即チ十ナガラ生ズ。修ルハ↠雑ヲ不レ↢至心ナラ↡者、千ガ中ニ无シト↠一モ。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)追釈
(a)元照¬阿弥陀経義疏¼
【55】^▼*元照律師の ¬*弥陀経の義疏¼ にいはく、
元照律師ノ¬弥陀経ノ義疏ニ¼云ク、
^「如来、 持名の功勝れたることを明かさんと欲す。 まづ余善を貶して*少善根とす。 いはゆる*布施・*持戒・立寺・造像・*礼誦・座禅・*懴念・苦行、 一切福業、 もし正信なければ、 回向願求するにみな少善とす。 往生の因にあらず。 もしこの経によりて名号を執持せば、 決定して往生せん。 すなはち知んぬ、 称名はこれ多善根・多福徳なりと。
「如来欲ス↠明ムト↢持名ノ功勝レタルコトヲ↡。先ヅ貶テ↢余善ヲ↡為↢少善根ト↡。所ル↠謂ハ布施・持戒・立寺・造像・礼誦・座禅・懴念・苦行、一切福業、若シ无0205レバ↢正信↡、回向願求ルニ皆為↢少善ト↡。非ズ↢往生ノ因ニ↡。若シ依テ↢此ノ経ニ↡執↢持バ名号ヲ↡、決定テ往生ム。即チ知ヌ、称名ハ是多善根・多福徳也ト。
^昔この解をなしし、 人なほ遅疑しき。 近く*襄陽の▼石碑の経の本文を得て、 理冥符せり。 はじめて深信を懐く。 かれにいはく、 ^ª善男子・善女人、 阿弥陀仏を説くを聞きて、 一心にして乱れず、 名号を専▼称せよ。 称名をもつてのゆゑに、 諸罪消滅す。 すなはちこれ▼多功徳・多善根・▼多福徳因縁なりº」 と。 以上
昔作シヽ↢此ノ解ヲ↡、人尚遅疑シキ。近ク得テ↢襄陽ノ石碑ノ経ノ本文ヲ↡、理冥符セリ。始テ懐ク↢深信ヲ↡。彼ニ云ク、善男子・善女人、聞テ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、一心ニシテ不↠乱レ、専↢称ヨ名号ヲ↡。以ノ↢称名ヲ↡故ニ諸罪消滅ス。即チ是多功徳・多善根・多福徳因縁ナリト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)孤山¬阿弥陀経義疏¼
【040656】^▼*孤山の ¬疏¼ (*阿弥陀経義疏) にいはく、
孤山ノ¬疏ニ¼云ク、
^「▼ª執持名号º とは、 ª執º はいはく執受なり、 ª持º はいはく住持なり。 信力のゆゑに執受心にあり、 念力のゆゑに住持して忘れず」 と。 以上
「執持名号ト者、執ハ謂ク執受ナリ、持ハ謂ク住持ナリ。信力ノ故ニ執受在リ↠心ニ、念力ノ故ニ住持テ不ト↠忘レ。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)別して真実を詳らかにす
(ⅰ)経説
(a)¬大経¼
【57】^▼¬大本¼ (大経・下) にのたまはく、
¬大本ニ¼言ク、
^「▲如来の*興世、 ▼値ひがたく見たてまつりがたし。 ▼諸仏の*経道、 ▼得がたく聞きがたし。 ▼菩薩の*勝法、 諸*波羅蜜、 聞くことを得ることまた難し。 ▼*善知識に遇ひ、 法を聞きよく行ずること、 これまた難しとす。 ◆もしこの経を聞きて信楽受持すること、 ▼難のなかの難、 これに過ぎて難きはなけん。
「如来ノ興世、難ク↠値ヒ難シ↠見マツリ。諸仏ノ経道、難ク↠得難シ↠聞キ。菩薩ノ勝法、諸波羅蜜、得コト↠聞コトヲ亦難シ。*遇ヒ↢善知識ニ↡、聞キ↠法ヲ能ク行コト、此亦為↠難シト。若シ聞テ↢*斯ノ経ヲ↡信楽受持コト、難ノ中之難无ケム↢過テ↠此ニ難キハ↡。
^◆このゆゑにわが法かくのごとくなしき、 かくのごとく説く、 かくのごとく教ふ。 まさに▼信順して法のごとく修行すべし」 と。 以上
是ノ故ニ我ガ法如ク↠是ノ作シキ、如ク↠是ノ説ク、如ク↠是ノ教フ。応シト↢当ニ信順テ如ク↠法ノ修行ス↡。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)¬涅槃経¼(正因の義を詳らかにす)
・迦葉品(1)
【58】^▼¬*涅槃経¼ (*迦葉品) にのたまはく、
¬涅槃経ニ¼言ク、
^「▼経のなかに説くがごとし。 ▼一切の*梵行の因は善知識なり。 一切梵行の因無量なりといへども、 善知識を説けばすなはちすでに*摂尽しぬ。 わが所説のごとし、 一切の悪行は邪見なり。 一切悪行の因無量なりといへども、 もし邪見を説けばすなはちすでに摂尽しぬ。 あるいは説かく、 *阿耨多羅三藐三菩提は*信心を因とす。 これ菩提の因また無量なりといへども、 もし信心を説けばすなはちすでに摂尽しぬ」 と。
「如シ↢経ノ中ニ説クガ↡。一切ノ梵行ノ因ハ善知識ナリ。一切梵行ノ因雖モ↢无量ナリト↡、説バ↢善知識ヲ↡則チ已ニ摂尽ヌ。如シ↢我ガ所説ノ↡、一切ノ悪行ハ邪見ナリ。一切悪行ノ因雖モ↢无量ナリト↡、若シ説バ↢邪見ヲ↡則チ已ニ摂尽ヌ。或ハ説カク、阿耨多羅三藐三菩提ハ信心ヲ為0206↠因ト。是菩提ノ因雖モ↢復无量ナリト↡、若シ説バ↢信心ヲ↡則チ已ニ摂尽ヌト。」
・迦葉品(2)
【040759】^▼またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、
又言ク、
^「善男子、 信に二種あり。 一つには*信、 二つには*求なり。 かくのごときの人、 また信ありといへども、 推求にあたはざる、 このゆゑに名づけて*信不具足とす。
「善男子、信ニ有リ↢二種↡。一ニ者信、二ニ者求ナリ。如キノ↠是ノ之人、雖モ↢復有リト↟信不ル↠能ハ↢推求ニ↡、是ノ故ニ名テ為↢信不具足ト↡。
^▲信にまた二種あり。 一つには*聞より生ず、 二つには*思より生ず。 この人の信心、 聞よりして生じて思より生ぜざる、 このゆゑに名づけて信不具足とす。
信ニ復有リ↢二種↡。一ニハ従リ↠聞生ズ、二ニハ従リ↠思生ズ。是ノ人ノ信心、従リ↠聞而生テ不ル↢従リ↠思生ゼ↡、是ノ故ニ名テ為↢信不具足ト↡。
^▲また二種あり。 一つには*道あることを信ず、 二つには*得者を信ず。 この人の信心、 ただ道あることを信じて、 すべて得道の人あることを信ぜず、 これを名づけて信不具足とす。
復有リ↢二種↡。一ニハ信ズ↠有コトヲ↠道、二ニハ信ズ↢得者ヲ↡。是ノ人ノ信心、唯信テ↠有コトヲ↠道、都テ不↠信ゼ↠有コトヲ↢得道之人↡、是ヲ名テ為↢信不具足ト↡。
^また二種あり。 一つには信正、 二つには信邪なり。 *因果あり、 *仏法僧ありといはん、 これを信正と名づく。 因果なく、 *三宝の性異なりといひて、 もろもろの邪語、 *富蘭那等を信ずる、 これを信邪と名づく。 この人、 仏法僧宝を信ずといへども、 *三宝同一の性相を信ぜず。 因果を信ずといへども得者を信ぜず。 このゆゑに名づけて信不具足とす。 この人、 不具足信を成就すと。 乃至
復有リ↢二種↡。一ニ者信正、二ニ者信邪ナリ。言ム↧有リ↢因果↡有リト↦仏法僧↥、是ヲ名ク↢信正ト↡。言テ↠无シト↢因果↡三宝ノ性異リト↡、信ル↢諸ノ邪語、富闌那等ヲ↡、是ヲ名ク↢信邪ト↡。是ノ人雖モ↠信ズト↢仏法僧宝ヲ↡、不↠信ゼ↢三宝同一ノ性相ヲ↡。雖モ↠信ズト↢因果ヲ↡不↠信ゼ↢得者ヲ↡。是ノ故ニ名テ為↢信不具足ト↡。是ノ人成↢就スト不具足信ヲ↡。 乃至
^善男子、 四つの善事あり、 悪果を獲得せん。 なんらをか四つとする。
善男子、有リ↢四ノ善事↡、獲↢得ム悪果ヲ↡。何等ヲカ為ル↠四ト。
^一つには*勝他のためのゆゑに経典を読誦す。
一ニ者為ノ↢勝他ノ↡故ニ読↢誦ス経典ヲ↡。
^二つには*利養のためのゆゑに禁戒を受持せん。
二ニ者為ノ↢利*養ノ↡故ニ受↢持ム禁戒ヲ↡。
^三つには*他属のためのゆゑにして布施を行ぜん。
三ニ者為ノ↢他属ノ↡故ニ而行ム↢布施ヲ↡。
^四つには*非想非非想処のためのゆゑに*繋念思0408惟せん。
四ニ者為ノ↢非想非非想処ノ↡故ニ繋念思惟ム。
^この四つの善事、 悪果報を得ん。 もし人かくのごときの四事を修習せん、 ▼これを、 没して没しをはりて還りて出づ、 出でをはりて還りて没すと名づく。 なんがゆゑぞ没と名づくる、 *三有を楽ふがゆゑに。 なんがゆゑぞ出と名づくる、 *明を見るをもつてのゆゑに。 明はすなはちこれ*戒・施・定を聞くなり。 なにをもつてのゆゑに還りて出没するや。 邪見を増長し憍慢を生ずるがゆゑに。
是ノ四ノ善事得ム↢悪果報ヲ↡。若シ人修↢習ム如キノ↠是ノ四事ヲ↡、是ヲ名ク↢没テ没シ已テ還テ出ヅ、出デ已テ還テ没スト↡。何ガ故ゾ名クル↠没ト、楽フガ↢三有ヲ↡故ニ。何ガ故ゾ名クル↠出ト、以ノ↠見ルヲ↠明ヲ故ニ。明者即チ是聞クナリ↢戒・施・定ヲ↡。何ヲ以ノ故ニ還テ出没ルヤ、増↢長シ邪見ヲ↡生ルガ↢憍慢ヲ↡故ニ。
^このゆゑに、 われ経のなかにおいて*偈を説かく、
是ノ故ニ我於テ↢経ノ中ニ↡説カク↠偈ヲ、
^ªもし衆生ありて、 諸有を楽んで、 有のために善悪の業を造作する。 この人は涅槃道を迷失するなり。 これを*暫出還復没と名づく。
0207若シ有テ↢衆生↡楽デ↢諸有ヲ↡ | 為ニ↠有ノ造↢作ル善悪ノ業ヲ↡ |
是ノ人ハ迷↢失ルナリ涅槃道ヲ↡ | 是ヲ名ク↢蹔出還復没ト↡ |
^黒闇生死海を行じて、 解脱を得といへども、 煩悩を雑するは、 この人還りて悪果報を受く。 これを暫出還復没と名づくº と。
行ジテ↢於黒闇生死海ヲ↡ | 雖モ↠得ト↢解脱ヲ↡雑ルハ↢煩悩ヲ↡ |
是ノ人還テ受ク↢悪果報ヲ↡ | 是ヲ名クト↢蹔出還復没ト↡ |
^如来にすなはち二種の*涅槃あり。 一つには*有為、 二つには*無為なり。 有為涅槃は*常楽我浄なし、 無為涅槃は常楽我浄あり。
如来ニ則チ有リ↢二種ノ涅槃↡。一ニ者有為、二ニ者无為ナリ。有為涅槃ハ无↢常ナリ、*楽我浄ハ↡无為涅槃ナリ有↢常楽我浄↡。
^この人深くこの*二種の戒ともに善果ありと信ず。 このゆゑに名づけて戒不具足となす。 この人は信・戒の二事を具せず、 所修の多聞もまた不具足なり。
有テ↢常人↡深ク信ム↣是ノ二種ノ戒倶ニ有リト↢因果↡、是ノ故ニ名テ為↠戒ト、戒不具足、是ノ人ハ不↠具セ↢信・戒ノ二事ヲ↡、所楽多聞ニシテ亦不具足ナリ。
^▲いかなるをか名づけて*聞不具足とする。 如来の所説は*十二部経なり、 ただ六部を信じていまだ六部を信ぜず。 このゆゑに名づけて聞不具足とす。
云何ヲカ名テ為ル↢聞不具足ト↡。如来ノ所説ハ十二部経ナリ、唯信テ↢六部ヲ↡未ダ↠信ゼ↢六部ヲ↡。是ノ故ニ名テ為↢聞不具足ト↡。
^またこの六部の経を受持すといへども、 *読誦に0409あたはずして他のために解説するは、 利益するところなけん。 このゆゑに名づけて聞不具足とす。
雖モ↣復受↢持スト是ノ六部ノ経ヲ↡、不シテ↠能ハ↢読誦ニ↡為ニ↠他ノ解*説ルハ、无ケム↠所↢利益ル↡。是ノ故ニ名テ為↢聞不具足ト↡。
^またこの六部の経を受けをはりて、 論議のためのゆゑに、 勝他のためのゆゑに、 利養のためのゆゑに、 *諸有のためのゆゑに、 *持読誦説せん。 このゆゑに名づけて聞不具足とす」 と。 略抄
又復受ケ↢是ノ六部ノ経ヲ↡已テ、為ノ↢論議ノ↡故ニ、為ノ↢勝他ノ↡故ニ、為ノ↢利養ノ↡故ニ、為ノ↢諸有ノ↡故ニ、持読誦説ム。是ノ故ニ名テ為ト↢聞不具足ト↡。」 略抄
・徳王品
【60】^▼またのたまはく (涅槃経・*徳王品)、
又言ク、
^「▼善男子、 ▼第一真実の善知識は、 いはゆる菩薩・諸仏なり。 ^世尊、 なにをもつてのゆゑに、 ^つねに三種の*善調御をもつてのゆゑなり。 なんらをか三つとする。 一つには*畢竟軟語、 二つには*畢竟呵責、 三つには*軟語呵責なり。 この義をもつてのゆゑに、 菩薩・諸仏はすなはちこれ真実の善知識なり。
「善男子、第一真実ノ善知識者、所ル↠謂ハ菩薩・諸仏ナリ。世尊、何ヲ以ノ故ニ。常ニ以ノ↢三種ノ善調御ヲ↡故ナリ。何等ヲカ為ル↠三ト。一ニ者畢竟軟語、二ニ者畢竟呵責、三ニ者軟語呵責ナリ。以ノ↢是ノ義ヲ↡故ニ菩薩・諸仏ハ即チ是真実ノ善知識也。
^また次に善男子、 仏および菩薩を大医とするがゆゑに、 善知識と名づく。 なにをもつてのゆゑに、 病を知りて薬を知る、 病に応じて薬を授くるがゆゑに。 たとへば良医の善き*八種の術のごとし。 まづ病相を観ず。 相に三種あり。 なんらをか三つとする。 いはく風・熱・水なり。 *風病の人にはこれに*蘇油を授く。 *熱病の人にはこれに*石蜜を授く。 *水病の人にはこれに*薑湯を授く。 病根を知るをもつて薬を授くるに、 差ゆることを得。 ゆゑに良医と名づく。
復次0208ニ善男子、仏及ビ菩薩ヲ為ルガ↢大医ト↡故ニ名ク↢善知識ト↡。何ヲ以ノ故ニ。知テ↠病ヲ知ル↠薬ヲ、応テ↠病ニ授ルガ↠薬ヲ故ニ。譬バ如シ↢良医ノ善キ八種ノ術ノ↡。先ヅ観ズ↢病相ヲ↡。相ニ有リ↢三種↡。何等ヲカ為ル↠三ト。謂ク風・熱・水ナリ。風病之人ニハ授ク↢之ニ蘇油ヲ↡。熱病*之人ニハ授ク↢之ニ石蜜ヲ↡。水病之人ニハ授ク↢之ニ薑湯ヲ↡。以テ↠知ルヲ↢病根ヲ↡授ルニ↠薬ヲ、得↠差スルコトヲ。故ニ名ク↢良医ト↡。
^仏および菩薩もまたまたかくのごとし。 もろもろの凡夫の0410病を知るに三種あり。 一つには*貪欲、 二つには*瞋恚、 三つには*愚痴なり。 貪欲の病には教へて*骨相を観ぜしむ。 瞋恚の病には慈悲の相を観ぜしむ。 愚痴の病には*十二縁相を観ぜしむ。 この義をもつてのゆゑに▼諸仏・菩薩を善知識と名づく。
仏及ビ菩薩モ亦復如シ↠是ノ。知ルニ↢諸ノ凡夫ノ病ヲ↡有リ↢三種↡。一ニ者貪欲、二ニ者瞋恚、三ニ者愚痴ナリ。貪欲ノ病ニ者教テ観シム↢骨相ヲ↡。瞋恚ノ病ニ者観シム↢慈悲ノ相ヲ↡。愚痴ノ病ニ者観シム↢十二*縁相ヲ↡。以ノ↢是ノ義ヲ↡故ニ諸仏・菩薩ヲ名ク↢善知識ト↡。
^◆善男子、 たとへば船師のよく人を度するがゆゑに大船師と名づくるがごとし。 諸仏・菩薩もまたまたかくのごとし。 もろもろの衆生をして生死の大海を度す。 この義をもつてのゆゑに善知識と名づく」 と。 抄出
善男子、譬バ如シ↣船師ノ善ク度スルガ↠人ヲ故ニ名クルガ↢大船師ト↡。諸仏・菩薩モ亦復如シ↠是ノ。度ス↢諸ノ衆生ヲシテ生死ノ大海ヲ↡。以ノ↢是ノ義ヲ↡故ニ名クト↢善知識ト↡。」 抄出
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(c)¬華厳経¼(前を結び後を生ず)
・入法界品(1)
【61】^▼¬*華厳経¼ (*入法界品・唐訳) にのたまはく、
¬華厳経ニ¼言ク、
^「▼なんぢ善知識を念ずるに、 われを生める、 父母のごとし。 われを養ふ、 乳母のごとし。 *菩提分を増長す、
「汝念ルニ↢善知識ヲ↡ | 生ル↠我ヲ如シ↢父母ノ↡ |
養フ↠我ヲ如シ↢乳母ノ↡ | 増↢長ス菩*提分ヲ↡ |
^衆の疾を医療するがごとし。 天の甘露を灑ぐがごとし。 日の正道を示すがごとし。 月の浄輪を転ずるがごとし」 と。
如シ↣医↢療ルガ衆ノ疾ヲ↡ | 如シ↣天ノ灑グガ↢甘露ヲ↡ |
如シ↣日ノ示スガ↢正道ヲ↡ | 如シト↣月ノ転ルガ↢浄輪ヲ↡」 |
・入法界品(2)
【62】^▼またのたまはく (華厳経・入法界品・唐訳)、
又言ク、
^「如来大慈悲、 世間に出現して、 あまねくもろもろの衆生のために、 *無上法輪を転じたまふ。
「如来大慈悲 | 出↢現テ於世間ニ↡ |
普ク為ニ↢諸ノ衆生ノ↡ | 転タマフ↢无上法輪ヲ↡ |
^如来無数劫に勤苦せしことは衆生のためなり。 いかんぞもろもろの世間、 よく▼大師の恩を報ぜん」 と。 以上
如来无数劫ニ | 勤苦セシコトハ為ナリ↢衆生ノ↡ |
云何ゾ諸ノ世間 | 能ク報ムト↢大師ノ恩ヲ↡」 已上 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)師釈(仏恩を明かして報謝を勧む)
(a)¬般舟讃¼
【63】^▼光明寺の和尚 (善導) のいはく (般舟讃)、
光明寺ノ和尚ノ云ク、
^「▲ただ恨むらくは、 衆0411生の疑ふまじきを疑ふことを。 ▼浄土対面してあひ▼忤はず。 ▼弥陀の摂と不摂とを論ずることなかれ。 意専心にして回すると回せざるとにあり。
「唯恨ラクハ衆生ノ疑コトヲ↠不キヲ↠疑フ | 浄土対面シテ不↢相ヒ忤ハ↡ |
莫レ↠論コト↢弥陀ノ摂ト不摂トヲ↡ | 意在リ↢専心ニシテ回スルト不ルトニ↟回セ |
^▲あるいはいはく、 今より仏果に至るまで、 長劫に▼仏を讃めて慈恩を報ぜん。 ▼弥陀の弘誓の力を蒙らずは、 いづれの時いづれの劫にか娑婆を出でん、
或ハ道ク従リ↠今至マデ↢仏果ニ↡ | 長劫ニ讃テ↠仏ヲ報ム↢慈恩ヲ↡ |
0209不ハ↠蒙ラ↢弥陀ノ弘誓ノ力ヲ↡ | 何ノ時何ノ劫ニカ出ム↢娑婆ヲ↡ |
^▲いかんしてか今日*宝国に至ることを期せん。 まことにこれ*娑婆▼本師の力なり。 もし*本師知識の勧めにあらずは、 弥陀の浄土いかんしてか入らん。
何シテカ期セム↣今日至コトヲ↢宝国ニ↡ | 実ニ是娑婆本師ノ力ナリ |
若シ非ズハ↢本師知識ノ勧メニ↡ | 弥陀ノ浄土云何シテカ入ム |
^◆浄土に生ずることを得て慈恩を報ぜよ」 と。
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)¬礼讃¼
【64】^▼またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲仏の世にはなはだ値ひがたし。 ▼人信慧あること難し。 たまたま希有の法を聞くこと、 これまたもつとも難しとす。
「仏ノ世ニハ甚ダ難シ↠値ヒ | 人有コト↢信慧↡難シ |
遇マ聞コト↢希有ノ法ヲ↡ | 此復最モ為↠難シト |
^▲*みづから信じ、 人を教へて信ぜしむること、 難きなかにうたたまた難し。 ▼大悲弘く 弘の字、 *智昇法師の ¬*懴儀¼ の文なり あまねく化するは、 まことに仏恩を報ずるになる」 と。
自ラ信ジ教テ↠人ヲ信シムルコト | 難ノ中ニ転タ更難シ |
大悲弘ク普ク化ルハ | 真ニ成ルト↠報ルニ↢仏恩ヲ↡」 |
*弘ノ字 知昇法師ノ¬懴儀ノ¼文也 |
一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)¬法事讃¼二文
【65】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲*帰去来、 ▼*他郷には停まるべからず。 仏に従ひて▼*本家に帰せよ。 *本国に還りぬれば、 ▼一切の*行願自然に成ず。
「帰去来 | 他郷ニハ不↠可ラ↠停ル |
従テ↠仏ニ帰ヨ↢本家ニ↡還ヌレバ↢本国ニ↡ | 一切ノ行願自然ニ成ズ |
^▲悲喜交はり流る。 深くみづから度るに、 釈迦仏の開悟によらずは、 弥陀の*名願いづ0412れの時にか聞かん。 仏の慈恩を荷なひても、 実に報じがたし」 と。
悲喜交リ流ル深ク自ラ度ルニ | 不ハ↠因ラ↢釈迦仏ノ開悟ニ↡ |
弥陀ノ名願何ノ時ニカ聞ム | 荷ヒテモ↢仏ノ慈恩ヲ↡実ニ難シト↠報ジ」 |
【66】^▼またいはく (法事讃・下)、
又云ク、
^「▲*十方*六道、 同じくこれ*輪廻して際なし、 *循々として*愛波に沈みて苦海に沈む。 ◆仏道人身得がたくしていますでに得たり。 浄土聞きがたくしていますでに聞けり。 信心発しがたくしていますでに発せり」 と。 以上
「十方六道、同ク此輪回テ无シ↠際、循循トシテ沈ミ↢愛波ニ↡而沈ム↢苦海ニ↡。仏道人身難クシテ↠得今已ニ得タリ。浄土難クシテ↠聞キ今已ニ聞リ。信心難クシテ↠発シ今已ニ発セリト。」 已上
一 Ⅰ ⅱ c ロ (三)結誡
・真門四失
【67】^▼まことに知んぬ、 専修にして*雑心なるものは*大慶喜心を獲ず。 ゆゑに宗師 (善導) は、 「^▲かの仏恩を念報することなし。 *業行をなすといへども心に*軽慢を生ず。 つねに*名利と相応するがゆゑに、 *人我おのづから覆ひて*同行・*善知識に親近せざるがゆゑに、 楽みて雑縁に近づきて往生の正行を*自障障他するがゆゑに」 (礼讃) といへり。
真ニ知ヌ専修ニ而雑心ナル者ハ不↠獲↢大慶喜心ヲ↡。故ニ宗師ハ云リ↧「無シ↣念↢報コト彼ノ仏恩ヲ↡、雖モ↠作スト↢業行ヲ↡心ニ生ズ↢軽慢ヲ↡、常ニ与↢名利↡相応ルガ故ニ、人我自ラ覆テ不ルガ↣親↢近セ同行・善知識ニ↡故ニ、楽テ近キテ↢雑縁ニ↡自↢*障障↣他スルガ往生ノ正行ヲ↡故ニト」↥。
・悲嘆述懐
^▲悲しきかな、 *垢障の凡愚、 *無際よりこのかた助正間雑し、 定散心雑するがゆゑに、 出離その期なし。 みづから流転輪廻を度るに、 *微塵劫を超過すれども、 仏願力に帰しがたく、 大信海に入りがたし。 まことに*傷嗟すべし、 深く悲歎すべし。
悲キ哉、垢障ノ凡愚、自↢従リ无際↡已来タ助正間雑シ、定散心雑ルガ故ニ出離无シ↢其ノ期↡。自ラ度ルニ↢流転輪回ヲ↡、超↢過ドモ微塵劫ヲ↡、叵ク↠帰シ↢仏願力ニ↡、叵シ↠入リ↢*大信海ニ↡。良ニ可シ↢傷嗟スナゲキナゲク↡、深ク可シ↢悲0210歎スナゲク↡。
・自力念仏の失
^おほよそ▼*大小聖人・一切善人、 本願の嘉号をもつておのれが善根とするがゆゑに、 信を生ずることあたはず、 仏智を了らず0413。 *かの因を建立せることを了知することあたはざるゆゑに、 *報土に入ることなきなり。
凡ソ大小聖人・一切善人、以テ↢本願ノ嘉ヨシ号ヲ↡為ルガ↢己ガ善根ト↡故ニ不↠能ハ↠生コト↠信ヲ、不↠了ラ↢仏智ヲ↡。不ル↠能ハ↤了↣知コト建↢立セルコトヲ彼ノ因ヲ↡故ニ无キ↠入コト↢報土ニ↡也。
一 Ⅱ 自喜を申べて結す
ⅰ 所得の法を明かす【三願転入】
【68】^ここをもつて愚禿釈の鸞、 *論主の解義を仰ぎ、 *宗師の勧化によりて、 ▼久しく▼*万行諸善の仮門を出でて、 永く▼*双樹林下の往生を離る。 ▼*善本徳本の真門に回入して、 ひとへに*難思往生の心を発しき。
是ヲ以テ愚禿釈ノ鸞、仰ギ↢論主ノ解義ヲ↡、依テ↢宗師ノ勧化ニ↡、久ク出テ↢万行諸善之仮門ヲ↡、永ク離ル↢双樹林下之往生ヲ↡。回↢入テ善本徳本ノ真門ニ↡、偏ニ発シキ↢難思往生之心ヲ↡。
^しかるにいまことに方便の真門を出でて、 ▼*選択の願海に*転入せり。 すみやかに難思往生の心を離れて、 *難思議往生を遂げんと欲す。 ▼*果遂の誓 (第二十願)、 まことに由あるかな。
然ニ*今*特ヒトリニ出テ↢方便ノ真門ヲ↡転↢入セリ選択ノ願海ニ↡。速ニ離テ↢難思往生ノ心ヲ↡欲フ↠遂ムト↢難思 議ハカラフ往生ヲ↡。果遂之誓、良ニ有ル↠由哉。
一 Ⅱ ⅱ 所得を伝ふることを明かす
^ここに久しく願海に入りて、 深く仏恩を知れり。 至徳を報謝せんがために、 真宗の簡要を摭うて、 恒常に不可思議の徳海を称念す。 いよいよこれを喜愛し、 ことにこれを頂戴するなり。
爰ニ久ク入テ↢願海ニ↡深ク知レリ↢仏恩ヲ↡。為ニ↣報↢謝ノムクフ至徳ヲ↡、摭テ↢真宗ノ簡要ヲ↡恒常ニ称↢念ス不可思議ノ徳海ヲ↡。弥ヨ喜↢愛シ斯ヲ↡、特ニ頂↢戴ル斯ヲ↡也。
一 Ⅱ ⅲ 去就の所を示す【結説総勧】
a 法義の通塞を明かす
【69】^▼まことに知んぬ、 聖道の諸教は、 *在世・正法のためにして、 まつたく*像末・*法滅の時機にあらず。 すでに時を失し機に乖けるなり。
信ニ知ヌ聖道ノ諸教ハ、為ニ↢在世・正法ノ↡而全ク非ズ↢像末・法滅之時機ニ↡。已ニ失シ↠時ヲ乖ケル↠機ニ也。
^*浄土真宗は、 在世・正法、 像末・法滅、 濁悪の群萌、 斉しく悲引したまふをや。
浄土真宗者、在世・正法、像末・法滅、濁悪ノ群萌、斉ク悲引タマフヲ也。
一 Ⅱ ⅲ b 説人の是非を明かす
【70】^ここをもつて▼経家によりて師釈を披きたるに、 「▲説人の差別を弁ぜば、 ◆おほよそ諸経の起説、 五種に過ぎず。 一つには仏説、 二つには*聖弟子0414説、 三つには*天仙説、 四つには*鬼神説、 五つには*変化説なり」 (玄義分) と。 ▼しかれば、 四種の所説は信用にたらず。 この三経はすなはち大聖 (釈尊) の自説なり。
是ヲ以テ拠テ↢経家ニ↡披タルニ↢師釈ヲ↡、「※*弁ゼワキマウ↢説人ノ差別ヲ↡者、凡ソ諸経ノ起説不↠過ギ↢五種ニ↡。一ニ者仏説、二ニ者聖弟子説、三ニ者天仙説、四ニ者鬼神説、五ニ者変化説ナリト。」爾レ者四種ノ所説ハ不↠足ラ↢信用ニ↡。斯ノ三経者則チ大聖ノ自説也。
一 Ⅱ ⅲ c 所依の正不を明かす(¬大智度論¼)
【71】^▼¬大論¼ (*大智度論) に*四依を釈していはく、
¬大論ニ¼釈テ↢四依ヲ↡云ク、
^「*涅槃に入りなんとせし時、 もろもろの比丘に語りたまはく、 ª今日より*↓法に依りて*人に依らざるべし、 ↓*義に依りて*語に依らざるべし、 ↓*智に依りて*識に依らざるべし、 ↓*了義経に依りて*不了義に依らざるべし。
「欲シ↠入ナムト↢涅槃ニ↡時、語タマハク↢諸ノ比丘ニ↡、従リ↢今日↡応シ↢依テ↠法ニ不ル↟依0211ラ↠人ニ、応シ↢依テ↠義ニ不ル↟依ラ↠語ニ、応シ↢依テ↠智ニ不ル↟依ラ↠識ニ、応シト↧依テ↢了義経ニ↡不ル↞依ラ↢不了義ニ↡。
^↑法に依るとは、 法に*十二部あり、 この法に随ふべし、 人に随ふべからず。
依ト↠法ニ者、法ニ有リ↢十二部↡、応シ↠随フ↢此ノ法ニ↡、不↠応ラ↠随フ↠人ニ。
^↑義に依るとは、 義のなかに好悪・罪福・虚実を諍ふことなし、 ゆゑに語はすでに義を得たり、 義は語にあらざるなり。 ▼人*指をもつて*月を指ふ、 もつてわれを示教す、 指を看視して月を視ざるがごとし。 人語りていはん、 «われ指をもつて月を指ふ、 なんぢをしてこれを知らしむ、 なんぢなんぞ指を看て、 しかうして月を視ざるや» と。 これまたかくのごとし。 語は義の指とす、 語は義にあらざるなり。 これをもつてのゆゑに、 語に依るべからず。
依↠義ト者、義ノ中ニ无シ↠諍コト↢好悪・罪福・虚実ヲ↡、故ニ語ハ已ニ得タリ↠義ヲ、義ハ非ル↠語ニ也。如シ↧人以テ↠指ヲ指フ↠月ヲ以テ示↢教ス我ヲ↡、看↢視シ指ヲ↡而不ルガ↞視↠月ヲ。人語テ言ム、我以テ↠指ヲ指フ↠月ヲ令ム↢汝ヲシテ知ラ↟之ヲ、汝何ゾ看テ↠指ヲ而テ不ルヤト↠*視↠月ヲ。此亦如シ↠是ノ。語ハ為↢義ノ指ト↡、語ハ非ル↠義ニ也。以ノ↠此ヲ故ニ、不↠応ラ↠依ル↠語ニ。
^↑智に依るとは、 智はよく善悪を*籌量し分別す。 識はつねに楽を求む、 *正要に入らず。 このゆゑに識に依るべからずといへり。
依↠智ト者、智ハ能ク籌↢量シ分↣別ス善悪ヲ↡。識ハ常ニ求ム↠楽ヲ、不↠入ラ↢正要ニ↡。是ノ故ニ言リ↢不↠応↠依↠識ト↡。
^↑了義経に依るとは、 ▼一切智人い0415ます、 仏第一なり。 一切諸経書のなかに仏法第一なり。 ▼一切衆のなかに*比丘僧第一なりº と。
依↢了義経↡ト者、有ス↢一切智人↡仏第一ナリ。一切諸経書ノ中ニ仏法第一ナリ。一切衆ノ中ニ比丘僧第一ナリ。
^無仏世の衆生を、 仏これを重罪としたまへり、 見仏の善根を種ゑざる人なり」 と。 以上
无仏世ノ衆生ヲ、仏為タマヘリ↢此ヲ重罪ト↡、不ル↠種ヘ↢見仏ノ善根ヲ↡人ナリト。」 已上
【72】^▼しかれば、 *末代の道俗、 よく四依を知りて法を修すべきなりと。
爾レ者末代ノ道俗、善ク可キ↧知リテ↢四依ヲ↡修ス↞法ヲ也ト。
二 門外の仮偽を簡ぶ
Ⅰ 総標
【73】^▼しかるに正真の教意によつて*古徳の伝説を披く。 聖道・浄土の真仮を顕開して、 ▽邪偽*異執の外教を教誡す。
然ニ拠テ↢正真ノ教意ニ↡披ク↢古徳ノ伝ツタウ説ヲ↡。顕↢開テ聖道・浄土ノ真仮ヲ↡、教↢誡スイマシム邪 偽イツワル異執ノ外教ヲ↡。
二 Ⅱ 別弁
ⅰ 真仮を弁ず【聖道釈】
a 聖浄二門の通塞を分別す【二門通塞】
イ 略示
^▽如来涅槃の時代を*勘決して正像末法の*旨際を開示す。
勘↢カンガフ決テサダム如来涅槃之時代ヲ↡開↢示ス正像末法ノ旨ムネ際キワヲ↡。
二 Ⅱ ⅰ a ロ 引文
(一)¬安楽集¼四文
・第五大門
【74】^▼ここをもつて*玄中寺の綽和尚 (道綽) のいはく (安楽集・下)、
是ヲ以テ玄忠寺ノ綽和尚ノ云ク、
^「▲しかるに修道の身、 相続して絶えずして、 ▼一万劫を経てはじめて▼*不退の位を証す。 ▼当今の凡夫は現に*信想軽毛と名づく、 また*仮名といへり、 また*不定聚と名づく、 また*外の凡夫と名づく。 いまだ*火宅を出でず。
「然ニ修道之身、相続テ不シテ↠絶エ、逕テ↢一万劫ヲ↡始テ証ス↢不退ノ位ヲ↡。当今ノ凡夫ハ現ニ名ク↢信想軽毛ト↡。亦曰リ↢仮名ト↡、亦名ク↢不定聚ト↡、亦名ク↢外ノ凡夫ト↡。未ダ↠出デ↢火宅ヲ↡。
^◆なにをもつて知ることを得んと、 ¬*菩薩瓔珞経¼ によりて、 つぶさに*入道行位を弁ずるに、 *法爾なるがゆゑに難行道と名づく」 と。
何ヲ以テ得ムト↠知コトヲ、拠テ↢¬菩薩瓔珞経ニ¼↡、具ニ*弁ルニ↢入道行位ヲ↡、法爾ナルガ故0212ニ名クト↢難行道ト↡。」
・第一大門
【75】^またいはく (安楽集・上)、
又云ク、
^「▲*教興の所由を明かして、 *時に約し機に被らしめて浄土に▼勧帰することあらば、 ▲もし機と教と時と乖けば、 修しがたく入0416りがたし。
「有ラ↧明テ↢教興ノ所由ヲ↡、約シ↠時ニ被シメテ↠機ニ勧↦帰コト浄土ニ↥者、若シ機ト教ト時ト乖バ、難ク↠修シ難シ↠入リ。
^▲¬*正法念経¼ にいはく、
¬正法念経ニ¼云ク、
^ª行者一心に道を求めん時、 つねにまさに時と方便とを観察すべし。 もし時を得ざれば方便なし。 これを名づけて失とす、 利と名づけず。
行者一心ニ求メム↠道ヲ時 | 常ニ当ニシ↣観↢察ス時ト方便トヲ↡ |
若シ不レバ↠得↠時ヲ無シ↢方便↡ | 是ヲ名テ為↠失ト不↠名ケ↠利ト |
^◆いかんとならば、
何トナラ者
湿へる木を攅りてもつて火を求めんに、 火得べからず、 時にあらざるがゆゑに。 もし乾れたる薪を折りてもつて水を覓めんに、 水得べからず、 智なきがごときのゆゑにº と。
如キノ↧攅テ↢湿ヘル木ヲ↡以テ求メムニ↠火ヲ | 火不↠可ラ↠得非ルガ↠時ニ故ニ |
若シ折テ↢乾タル薪ヲ↡以テ覓メムニ↠水ヲ | 水不↠可ラ↠得無キガ↞智故ニト |
^◆¬*大集の月蔵経¼ にのたまはく (大集経)、 ª^▽仏*滅度の後の第一の五百年には、 わがもろもろの弟子、 *慧を学ぶこと堅固なることを得ん。 ◆第二の五百年には*定を学ぶこと堅固なることを得ん。 ◆第三の五百年には*多聞・*読誦を学ぶこと堅固なることを得ん。 ◆第四の五百年には塔寺を造立し、 福を修し、 *懴悔すること堅固なることを得ん。 ◆第五の五百年には*白法隠滞して多く*諍訟あらん、 微しき*善法ありて堅固なることを得んº と。
¬大集ノ月蔵経ニ¼云ク、仏滅度ノ後ノ第一ノ五百年ニハ我ガ諸ノ弟子、学コト↠慧ヲ得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第二ノ五百年ニハ学コト↠定ヲ得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第三ノ五百年ニハ学コト↢多聞・読誦ヲ↡得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第四ノ五百年ニハ造↢立シ塔寺ヲ↡修シ↠福ヲ、懴悔コト得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第五ノ五百年ニハ白法隠滞テ多ク有ム↢諍訟↡、微キ有テ↢善法↡得ム↢堅固ナルコトヲ↡。
^▲今の時の衆生を計るに、 ▼すなはち仏、 世を去りたまひて後の第四の五百年に当れり。 まさしくこれ懴悔し、 福を修し、 仏の名号を称すべき時のものなり。 一念阿弥陀仏を称するに、 すなはちよく八十億劫の生死の罪を除却せん。 一念すでにしかなり。 いはんや常念に修するは、 すなはちこれつねに懴悔する人なり」 と。
計ルニ↢今ノ時ノ衆生ヲ↡、即チ当レリ↢仏去タマヒテ↠世ヲ後ノ第四ノ五百年ニ↡。正ク是懴悔シ修シ↠福ヲ、応キ↠称ス↢仏ノ名号ヲ↡時ノ者ナリ。一念称ルニ↢阿弥陀仏ヲ↡、即チ能ク除↢却ム八十億劫ノ生死之罪ヲ↡。一念既ニ爾ナリ。況ヤ修ルハ↢常念ニ↡、即チ是恒ニ懴悔ル人也ト。」
・第六大門
【041776】^▼またいはく (安楽集・下)、
又云ク、
^「▲経の*住滅を弁ぜば、 いはく、 *釈迦牟尼仏一代、 *正法五百年、 *像法一千年、 *末法一万年には、 衆生減じ尽き、 諸経ことごとく滅せん。 如来、 痛焼の衆生を悲哀して、 *特に▼此の経を留めて止住せんこと百年ならん」 と。
「*弁ゼ↢経ノ住滅ヲ↡者、謂ク釈迦牟尼仏一代、正法五百年、像法一千年、末法一万年ニハ、衆生減ジ尽キ、諸経悉ク滅ム。如来悲↢哀テ痛焼ノ衆生ヲ↡、特ニ留テ↢此ノ経ヲ↡止住ムコト百年ナラムト。」
・第三大門
【77】^またいはく (安楽集・上)、
又0213云ク、
^「▲¬大集経¼ にのたまはく、 ª^▼わが末法の時のなかの億々の衆生、 行を起し道を修せんに、 いまだ一人も得るものあらじº と。
「¬大集経ニ¼云ク、我ガ末法ノ時ノ中ノ億億ノ衆生、起シ↠行ヲ修ムニ↠道ヲ、未 ジ ダト↠有ラ↢一人モ得ル者↡。
^◆当今は末法にしてこれ*五濁悪世なり。 ただ浄土の一門のみありて通入すべき路なり」 と。 以上
当今ハ末法ニシテ是五濁悪世ナリ。唯有テ↢浄土ノ一門ノミ↡可キ↢通入ス↡路ナリト。」 已上
二 Ⅱ ⅰ b 末法弘化の宗軌を顕示す【三時開遮】
イ 上を承けて道俗を誡む
【78】^▼しかれば、 穢悪濁世の群生、 末代の旨際を知らず、 僧尼の威儀を毀る。 今の時の*道俗、 おのれが分を思量せよ。
爾レ者穢悪濁世ノ群生、不↠知ラ↢末代ノ旨際ヲ↡、毀ル↢僧尼ノ威儀ヲ↡。今ノ時ノ道俗思↢量ヨ己ガ分ヲ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ 弘化の宗軌を顕す
(一)先づ末法の年時を定む
【79】^*三時の教を案ずれば、 △*如来般涅槃の時代を勘ふるに、 *周の第五の主、 *穆王*五十三年壬申に当れり。 その壬申より▼わが*元仁元年 元仁とは*後堀川院、 諱茂仁の聖代なり 甲申に至るまで、 *二千一百七十三歳なり。 また ¬*賢劫経¼・¬*仁王経¼・¬*涅槃¼ 等の説によるに、 ▼すでにもつて末法に入りて*六百七十三歳なり。
按レ↢三時ノ教ヲ↡者、勘ニカンガフ↢如来般涅槃ノ時代ヲ↡、当レリ↢周ノ第五ノ主穆王五十一年壬申ニ↡。従リ↢其ノ壬申↡至マデ↢我ガ元仁元年 *元仁ト者後堀河院*諱*茂仁ノ聖代也 甲申ニ↡、二千一百八十三歳也。又依ルニ↢¬賢劫経¼・¬仁王経¼・¬涅槃¼等ノ説ニ↡、已ニ以テ入テ↢末法ニ↡六百八十三歳也。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)¬末法燈明記¼を引きて正しく顕す
【041880】^▼¬*末法灯明記¼ *最澄の製作 を披閲するにいはく、
披↢閲ルニ¬末法灯明記ヲ¼↡ 最澄ノ製作 曰ク、
^「それ*一如に範衛してもつて化を流すものは*法王、 ^*四海に光宅してもつて風を垂るるものは*仁王なり。 ^しかればすなはち、 仁王・法王、 たがひに顕れて*物を開し、 *真諦・俗諦たがひによりて教を弘む。 このゆゑに*玄籍*宇内に盈ち、 *嘉猷天下に溢てり。
「夫レ範↢衛テ一如ニ↡以テ流ス↠化ヲ者ハ法王、光↢宅テ四海ニ↡以テ乗ル↠風ニ者ハ仁王ナリ。然バ則チ仁王・法王互ニ顕レ而開シ↠物ヲ、真諦・俗諦遞ニ因リ而弘ム↠教ヲ。所以玄籍盈チ↢宇内ニ↡、嘉猶溢リ↢天下ニ↡。
^ここに愚僧等率して*天網に容り、 俯して*厳科を仰ぐ。 いまだ*寧処に遑あらず。
爰ニ愚僧等率テ容リ↢天網ニ↡、俯テ仰グ↢厳科ヲ↡。未ダ↠遑アラ↢寧処ニ↡。
^しかるに法に三時あり、 人また*三品なり。 *化制の旨、 時によりて興替す。 毀讃の文、 人に逐つて取捨す。 それ*三古の運、 *減衰同じからず。 *後五の機、 慧悟また異なり。 あに一途によつて済はんや、 一理について整さんや。
然ニ法ニ有リ↢三時↡、人亦三品ナリ。化制之旨依テ↠時ニ興讃ス。毀讃之文遂テ↠人ニ取捨ス。夫三石之運、減衰不↠同カラ。後五之機、慧悟又異ナリ。豈ニ拠テ↢一途ニ↡済ムヤ、就テ↢一理ニ↡整ム乎。
^ゆゑに正像末の旨際を詳らかにして、 試みに*破持僧の事を彰さん。 ▼なかにおいて三あり。 ▽初めには正像末を決す。 ▽次に破持僧の事を定む。 ▽後に教を挙げて比例す。
故ニ詳ニシテ↢正像末之旨際ヲ↡、試ニ彰ム↢破持僧之事ヲ↡。於テ↠中ニ有0214リ↠三。初ニハ決ス正像末ヲ↡。次ニ定ム↢破持僧ノ事ヲ↡。後ニ挙テ↠教ヲ比例ス。
^△初めに正像末を決するに、 諸説を出すこと同じからず。 しばらく一説を述せん。
初ニ決ルニ↢正像末ヲ↡、出コト↢諸説ヲ↡不↠同カラ。且ク述セム↢一説ヲ↡。
^▼大乗*基、 ¬▼賢劫経¼ を引きていはく、 ª^仏涅槃の後、 正法五百年、 像法一千年ならん。 ▼この千五百年の後、 釈迦の法滅尽せんº と。 ^末法をいはず。 ▼余の所説に准ふるに、 ▼尼、 ▼*八敬に順はずして懈怠なるがゆゑに、 法更増せず。 ゆゑに▼かれによらず。
大乗基ニ、引テ↢¬賢劫経ヲ¼↡言ク、仏涅槃ノ後、正法五百年、像法一千年ナラム。此ノ千五百年ノ後、釈迦ノ法滅尽ムト。不↠言ハ↢末法ヲ↡。准フルニ↢余ノ所説ニ↡、尼不↠順ハ↢八敬ニ↡而懈怠ナルガ故ニ法不↢更増セ↡。故ニ不↠依ラ↠彼ニ。
^▼また ¬涅槃経¼ に、 ª^末法のなかにおいて十二万の*大0419菩薩衆ましまして、 法を持ちて滅せずº と。 ^これは▼上位によるがゆゑに▼また同じからず。
又¬涅槃経ニ¼、於テ↢末法ノ中ニ↡有シテ↢十二万ノ大菩薩衆↡、持チテ↠法ヲ不ト↠滅セ。此ハ拠ルガ↢上位ニ↡故ニ亦不↠同カラ。
^▼問ふ。 もししからば、 千五百年のうちの行事いかんぞや。
問フ。若シ爾ラ者千五百年之内ノ行事云何ゾヤ。
^答ふ。 ¬*大術経¼ によるに、 ª^仏涅槃の後の初めの五百年には、 ▼*大迦葉等の*七賢聖僧、 次第に正法を持ちて滅せず、 五百年の後、 正法滅尽せんと。
答フ。依ルニ↢¬大術経ニ¼↡、仏涅槃ノ後ノ初ノ五百年ニハ、大迦葉等ノ七賢聖僧、次第ニ持テ↢正法ヲ↡不↠滅セ、五百年ノ後、正法滅尽ムト。
^▼六百年に至りて後、 *九十五種の外道競ひ起らん。 *馬鳴世に出でてもろもろの外道を伏せん。
至テ↢六百年ニ↡後、九十五種ノ外道競ヒ起ム、馬鳴出テ↠世ニ伏ム↢諸ノ外道ヲ↡。
^▼七百年のうちに、 *龍樹世に出でて邪見の幡を摧かん。
七百年ノ中ニ、龍樹出テ↠世ニ摧ム↢邪見ノ幢ヲ↡。
^八百年において、 比丘*縦逸にして、 わづかに一二*道果を得るものあらん。
於テ↢八百年ニ↡、比丘縦逸ニシテ、僅ニ一二有ム↠得モノ↢道果ヲ↡。
^九百年に至りて、 奴を比丘とし、 婢を尼とせん。
至テ↢九百年ニ↡、奴ヲ為↢比丘ト↡、婢ヲ為ム↠尼ト。
^▼一千年のうちに、 *不浄観を聞かん、 瞋恚して欲せじ。
一千年ノ中ニ、開ム↢不浄観ヲ↡、瞋恚テ不↠欲セ。
^千一百年に、 *僧尼嫁娶せん、 僧*毘尼を毀謗せん。
千一百年ニ、僧尼 嫁ムコトリ 娶ムヨメトリ、毀↢謗ム僧毘尼ヲ↡。
^千二百年に、 諸僧尼等ともに子息あらん。
千二百年ニ、諸僧尼等倶ニ有ム↢子息↡。
^▼千三百年に、 *袈裟変じて白からん。
千三百年ニ、袈裟変テ白カラム。
^千四百年に、 *四部の弟子みな猟師のごとし、 三宝物を売らん。
千四百年ニ、四部ノ弟子皆如シ↢猟師ノ↡、売ム↢三宝物ヲ↡。
^▼ここにいはく、 千五百年に▼*拘睒弥国にふたりの僧ありて、 たがひに是非を起してつひに殺害せん、 よつて教法竜宮に蔵まるなりº と。
爰ニ曰ク、千五百年ニ睒弥国ニ有テ↢二ノ僧↡、互ニ起テ↢是非ヲ↡遂ニ殺害ム、仍テ教法蔵ル↢於竜宮ニ↡也ト。
^¬涅槃¼ の十八および ¬仁王¼ 等にまたこの文あり。
¬涅槃ノ¼十八及ビ¬仁王¼等ニ復有リ↢此ノ文↡。
^これらの経文に準ふるに、 千五百年の後、 *戒・*定・*慧あることなき0420なり。
準フルニ↢此等ノ経文ニ↡、千五百年ノ後、無キ↠有コト↢戒・定・慧↡也。
^▼ゆゑに ¬大集経¼ の五十一にいはく、 ª^△わが滅度の後、 初めの五百年には、 もろもろの比丘等わが正法において*解脱堅固ならん。 初めに聖果を得るを名づけて解脱とす。 次の五百年には、 *禅定堅固ならん。 次の五百年には、 *多聞堅固ならん。 次の五百年には、 *造寺堅固ならん。 後の五百年には、 *闘諍堅固ならん、 *白法隠没せんº と云々。
故ニ¬大0215集経ノ¼五十一ニ言ク、我ガ滅度ノ後、初ノ五百年ニハ、諸ノ比丘等於テ↢我ガ正法ニ↡解脱堅固ナラム。 初ニ得ルヲ↢聖果ヲ↡名テ為↢解脱ト↡。 次ノ五百年ニハ、禅定堅固ナラム。次ノ五百年ニハ、多聞堅固ナラム。次ノ五百年ニハ、造寺堅固ナラム。後ノ五百年ニハ、闘諍堅固ナラム。白法隠没ムト云云。
^この意、 初めの三分の五百年は、 次いでのごとく戒・定・慧の三法、 堅固に住することを得ん。 すなはち上に引くところの正法五百年、 像法一千の二時これなり。 ^造寺以後は、 ならびにこれ末法なり。
此ノ意、初ノ三*分ノ五百年ハ、如ク↠*次デノ戒・定・慧ノ三法、堅固ニ得ム↠住コトヲ。即チ上ニ所ノ↠引ク正法五百年、像法一千ノ二時是也。造寺已後ハ、並ニ是末法ナリ。
^ゆゑに▼基の ¬*般若会の釈¼ にいはく、 ª^正法五百年、 像法一千年、 この千五百年の後、 正法滅尽せんº と。 ^ゆゑに知んぬ、 以後はこれ末法に属す。
故ニ基ノ¬般若会ノ釈ニ¼云ク、正法五百年、像法一千年、此ノ千五百年ノ後之正法滅尽ムト。故ニ知ヌ已後ハ是属ス↢末法ニ↡。
^▼問ふ。 もししからば、 今の世は、 まさしくいづれの時にか当れるや。
問フ。若シ爾ラ者今ノ世ハ、正ク当ルヤ↢何ノ時ニカ↡。
^答ふ。 滅後の年代多説ありといへども、 しばらく両説を挙ぐ。
答フ。滅後ノ年代雖モ↠有リト↢多説↡、且ク挙グ↢両説ヲ↡。
^一つには*法上師等、 ¬*周異¼ の説によりていはく、 ^仏、 第五の主、 *穆王満五十三年壬申に当りて入滅したまふと。 ^もしこの説によらば、 その壬申よりわが*延暦二十年辛巳に至るまで、 一千七百五十歳なり。
一ニハ法上師等、依テ↢¬周異ノ¼説ニ↡言ク、仏当テ↢*第五ノ主穆王満五十一年壬申ニ↡入滅タマフト。若シ依バ↢此ノ説ニ↡、従リ↢其ノ壬申↡至マデ↢我ガ延暦二十年辛巳ニ↡、一千七百五十歳ナリト。
^二つには*費長房等、 魯の ¬*春秋¼ によらば、 ^仏、 周の第二十の主、 *匡王班四年壬子に当りて入滅したまふ。 ^も0421しこの説によらば、 その壬子よりわが延暦二十年辛巳に至るまで、 一千四百十歳なり。
二ニハ費長房等、依バ↢魯ノ¬春秋ニ¼↡、仏当テ↢周ノ第二十ノ主匡王班四年壬子ニ↡入滅タマフ。若シ依バ↢此ノ説ニ↡、従リ↢其ノ壬子↡至マデ↢我ガ延暦二十年辛巳ニ↡、一千四百十歳ナリ。
^ゆゑに今の時のごときは、 これ像法最末の時なり。 かの時の行事すでに末法に同ぜり。
故ニ如キハ↢今ノ時ノ↡、*是像法最末ノ時也。彼ノ時ノ行事既ニ同ゼリ↢末法ニ↡。
^しかればすなはち、 ▼末法のなかにおいては、 ただ言教のみありて行証なけん。 もし戒法あらば破戒あるべし。 すでに戒法なし、 いづれの戒を破せんによりてか破戒あらんや。 破戒なほなし。 いかにいはんや持戒をや。 ▼ゆゑに ¬大集¼ にいはく、 ª^仏涅槃の後、 無戒州に満たんº と云々。
然バ則チ於テハ↢末法ノ中ニ↡、但有リ↢言教ノミ↡而無ケム↢行証↡。若シ有バ↢*戒法↡可シ↠有ル↢破戒↡。既ニ無シ↢戒法↡、由テカ↠破ムニ↢何ノ戒ヲ↡而有ムヤ↢破戒↡。*破戒尚無シ。何ニ況ヤ持戒ヲヤ。故ニ¬大集ニ¼云ク、仏涅槃ノ後、無戒満ムト↠州ニ云云。
^△問ふ。 諸経律のなかに、 広く破戒を制して衆に入ることを聴さず。 破戒なほしかなり。 いかにいはんや無戒をや。 しかるにいま重ねて末法を論ずるに、 戒なし。 ▼あに瘡なくして、 みづからもつて傷まんや。
問フ。諸経律ノ中ニ、広ク制テ↢破0216戒ヲ↡不↠聴サ↠入コトヲ↠衆ニ。破戒尚爾ナリ。何ニ況ヤ無戒ヲヤト。而ニ今重テ論ルニ↢末法ヲ↡、無シ↠戒。豈ニ無クシテ↠瘡自ラ以テ傷ム哉ト。
^▼答ふ。 この理しからず。 正像末法の所有の行事、 広く諸経に載せたり。 内外の道俗たれか*披諷せざらん。 あに自身の*邪活を貪求して、 持国の正法を隠蔽せんや。
答フ。此ノ理不↠然ラ。正像末法ノ所有ノ行事、広ク載タリ↢諸経ニ↡。内外ノ道俗誰カ不ラム↢披諷セ↡。豈ニ貪↢求テ自身ノ邪活ヲ↡、隠↢蔽ム持国之正法ヲ↡乎。
^ただし、 いま論ずるところの末法には、 ただ*名字の比丘のみあらん。 この名字を世の真宝とせん。 *福田なからんや。 ▲たとひ末法のなかに持戒あらば、 すでにこれ怪異なり、 市に虎あらんがごとし。 これたれか信ずべきや。
但シ今所ノ↠論ル末法ニハ、唯有ム↢名字ノ比丘ノミ↡。此ノ名字ヲ為ム↢世ノ真*宝ト↡。無ラムヤ↢福田↡。設ヒ末法ノ中ニ有ラ↢持戒↡者、既ニ是怪異ナリ、如シ↢市ニ有ムガ↟虎。此誰カ可キヤ↠信ズ。
^▼問ふ。 正像末の事、 すでに衆経に見えたり。 末法の名字を世の真宝とせんこ0422とは、 聖典に出でたりや。
問フ。正像末ノ事、已ニ見タリ↢衆経ニ↡。末法ノ名字ヲ為ムコトハ↢世ノ真宝ト↡、出タリヤ↢聖典ニ↡。
^▼答ふ。 ¬大集¼ の第九にいはく、 ª^たとへば真金を*無価の宝とするがごとし。 もし真金なくは、 銀を無価の宝とす。 もし銀なくは、 鍮石・偽宝を無価とす。 もし偽宝なくは、 赤白銅・鉄・白鑞・鉛・錫を無価とす。
答フ。¬大集ノ¼第九ニ云ク、譬バ如シ↣真金ヲ為ルガ↢無価ノ宝ト↡。若シ無ク↢真金↡者、銀ヲ為↢無価ノ宝ト↡。若シ無ク↠銀者、鍮石・偽宝ヲ為↢無価ト↡。若シ無クハ↢偽宝↡、赤白銅・鉄・白錫・鉛・錫ヲ為↢無価ト↡。
^▽かくのごとき一切世間の宝なれども、 仏法無価なり。 もし仏宝ましまさずは、 *縁覚無上なり。 もし縁覚なくは、 *羅漢無上なり。 もし羅漢なくは、 余の賢聖衆もつて無上なり。
如キ↠是ノ一切世間ノ宝ナレドモ仏法無価ナリ。若シ無サズ↢仏宝↡者、縁覚無上ナリ。若シ無クハ↢縁覚↡、羅漢無上ナリ。若シ無クハ↢羅漢↡、余ノ賢聖衆以テ無上ナリ。
^もし余の賢聖衆なくは、 *得定の凡夫もつて無上とす。 もし得定の凡夫なくは、 浄持戒をもつて無上とす。 もし浄持戒なくは、 *漏戒の比丘をもつて無上とす。
若シ無クハ↢余ノ賢聖衆↡、得定ノ凡夫以テ為↢無上ト↡。若シ無クハ↢得定ノ凡夫↡、浄持戒ヲ以テ為↢無上ト↡。若シ無クハ↢浄持戒↡、漏戒ノ比丘ヲ以テ為↢無上ト↡。
^もし漏戒なくは、 *剃除鬚髪して身に袈裟を着たる名字の比丘を無上の宝とす。
若シ無クハ↢漏戒↡、剃除鬚髪テ身ニ著タル↢袈裟ヲ↡名字ノ比丘ヲ為↢無上ノ宝ト↡。
^余の*九十五種の異道に比するに、 もつとも第一とす。 世の供を受くべし、 物のための初めの福田なり。 なにをもつてのゆゑに、 よく身を破る衆生、 怖畏するところなるがゆゑに。 *護持養育して、 この人を安置することあらんは、 久しからずして*忍地を得んº と。 以上経文
比スルニ↢余ノ九十五種ノ異道ニ↡、最モ為↢第一ト↡。応シ↠受ク↢世ノ供ヲ↡、為ノ↠物ノ初ノ福田ナリ。何ヲ以ノ故ニ。破ル↢能ク身ヲ↡衆生、所ナルガ↢怖畏ル↡故ニ。有ムハ↣護持シ養育テ安↢置コト是ノ人ヲ↡不シテ↠久カラ得ムト↢忍地ヲ↡。 已上経文
^この文のなかに八重の無価あり。 いはゆる如来、 縁覚・声聞および*前三果、 得定の凡夫、 持戒・破戒・無戒名字、 それ次いでのごとし、 名づけて正像末の時の無価の宝とするなり。 初めの四つ0423は正法時、 次の三つは像法時、 後の一つは末法時なり。 これによりてあきらかに知んぬ、 破戒・無戒ことごとくこれ真宝なり。
此ノ文ノ中ニ有リ↢八重ノ無価↡。所ル↠謂ハ如来像、縁覚・声聞及ビ前三果、得0217定ノ凡夫、持戒・破戒・無戒名字、如シ↢其レ次デノ↡、名テ為ル↢正像末之時ノ無価ノ宝ト↡也。初ノ四ハ正法時、次ノ三ハ像法時、後ノ一ハ末法時ナリ。由テ↠此ニ明ニ知ヌ破戒・無戒咸ク是真宝ナリ。
^▼問ふ。 伏して前の文を観るに、 破戒名字、 真宝ならざることなし。 なんがゆゑぞ ¬涅槃¼ と ¬大集経¼ に、 ª^国王・大臣、 破戒の僧を供すれば、 国に*三災起り、 つひに*地獄に生ずº と。 ^破戒なほしかなり。 いかにいはんや無戒をや。 しかるに如来、 一つの破戒において、 あるいは毀り、 あるいは讃む。 あに一聖の説に*両判の失あるをや。
問フ。伏テ観ルニ↢前ノ文ヲ↡、破戒名字、莫シ↠不コト↢真宝ナラ↡。何ガ故ゾ¬涅槃ト¼¬大集経ニ¼、国王・大臣、供レバ↢破戒ノ僧ヲ↡、国ニ起リ↢三災↡、遂ニ生ズト↢地獄ニ↡。破戒尚爾ナリ。何ニ況ヤ無戒ヲヤ。而爾ニ如来於テ↢一ツノ破戒ニ↡、或ハ毀リ或ハ讃ム。豈ニ一聖之説ニ有ルヲヤ↢両判之失↡。
^▼答ふ。 この理しからず。 ¬涅槃¼ 等の経に、 しばらく正法の破戒を制す、 像・末代の比丘にはあらず。 その名同じといへども、 時に異あり。 時に随ひて*制許す。 これ大聖 (釈尊) の旨なり。 ゆゑに世尊において両判の失ましまさず。
答フ。此ノ理不↠然ラ。¬涅槃¼等ノ経ニ、且ク制ス↢正法之破戒ヲ↡、非ズ↢像・末代之比丘ニハ↡。其ノ名雖モ↠同ジト、而時ニ有リ↠異。随テ↠時ニ制許ス。是大聖ノ旨破ナリ。於テ↢世尊ニ↡無サズ↢両判ノ失↡。
^▼問ふ。 もししからばなにをもつてか知らん、 ¬涅槃¼ 等の経は、 ただ正法所有の破戒を制止して、 像末の僧にあらずとは。
問フ。若シ爾ラバ以カ↠何ヲ知ム、¬涅槃¼等ノ経ハ、但制↢止テ正法所有ノ破戒ヲ↡、非ズトハ↢像末ノ僧ニ↡。
^▼答ふ。 △引くところの ¬大集¼ 所説の*八重の真宝のごとし、 これその証なり。 みな時に当りて無価となすゆゑに。
答フ。如シ↢所ノ↠引ク¬大集¼所説ノ八重ノ真宝ノ↡、是其ノ証也。皆為ス↢当テ↠時ニ無価ト↡故ニ。
^▼ただし正法の時の破戒比丘は、 清浄衆を穢す。 ゆゑに仏固く禁制して衆に入れず。
但シ正法ノ時ノ破戒比丘ハ、穢ス↢清浄衆ヲ↡。故ニ仏固ク禁制テ不↠入レ↠衆ニ。
^しかるゆゑは、 ¬涅槃¼ の第三にのた0424まはく、 ª^如来いま無上の正法をもつて、 諸王・大臣・宰相・比丘・比丘尼に付嘱したまへり。 ▼乃至 破戒あつて正法を毀るものは、 王および大臣、 *四部の衆、 まさに*苦治すべし。 かくのごときの王臣等、 無量の功徳を得ん。 ▼乃至 これわが弟子なり、 真の声聞なり。 福を得ること無量ならんº と。 ▼乃至
所↢以然ル↡者、¬涅槃ノ¼第三ニ云ク、如来今以テ↢无上ノ正法ヲ↡、付↢嘱タマヘリ諸王・大臣・宰相・比丘・比丘尼ニ↡。 乃至 有テ↢破戒↡毀ラ↢正法ヲ↡者、王及ビ大臣、四部ノ衆、応シ↢当ニ苦治ス↡。如キノ↠是ノ王臣等、得ム↢无量ノ功徳ヲ↡。 乃至 是我ガ弟子ナリ、真ノ声聞也。得コト↠福ヲ无量ナラムト。 乃至
^▼かくのごときの制文の法、 往々衆多なり。 みなこれ正法に明かすところの制文なり。 像末の教にあらず。
如キノ↠是ノ制文ノ法、往往衆多ナリ。皆是正法ニ所↠明ス之制文ナリ。非ズ↢像末ノ教ニ↡。
^しかるゆゑは、 像季・末法には正法を行ぜざれば、 法として毀るべきなし。 なにをか毀法と名づけん。 戒として破すべきなし。 たれをか破戒と名づけん。 ▼またそのとき大王、 行として護るべきなし。 なにによりてか三災を出し、 および戒慧を失せんや。 また像末には証果の人なし。 いかんぞ*二聖に聴護せらるることを明かさん。
所↢以然ル↡者、像季・末法ニハ不レバ↠行ゼ↢正法ヲ↡、無シ↢法トシテ可キ↟毀ル。何ヲカ名ム↢毀法ト↡。無シ↢戒トシテ可0218キ↟破ス。誰ヲカ名ム↢破戒ト↡。又其ノ時大王無シ↢行ト而可キ↟護ル。由テカ↠何ニ出シ↢三災ヲ↡、及ビ於失ムヤ↢戒慧ヲ↡。又像末ニハ無シ↢証果ノ人↡。如何ゾ*明ム↠被コトヲ↣聴↢護セ二聖ニ↡。
^ゆゑに知んぬ、 上の所説はみな正法の世に持戒あるときに約して、 破戒あるがゆゑなり。
故ニ知ヌ上ノ所説ハ皆約テ↧正法ノ世ニ有ル↢持戒↡時ニ↥、有ルガ↢破戒↡故ナリ。
^▼次に像法千年のうちに、 初めの五百年には持戒やうやく減じ、 破戒やうやく増せん。 戒行ありといへども証果なし。
次ニ像法千年ノ中ニ、初ノ五百年ニハ持戒漸ク減ジ、破戒漸ク増セム。雖モ↠有リト↢戒行↡而無シ↢証果↡。
^ゆゑに ¬涅槃¼ の七にのたまはく、 ª^*迦葉菩薩、 仏にまうしてまうさく、 «世尊、 仏の所説のごときは*四種の魔あり。 もし魔の所説および仏の所説、 われまさにいかんしてか分別することを得べ0425き。 もろもろの衆生ありて魔行に随逐せん。 また仏説に随順することあらば、 かくのごときらの輩、 またいかんが知らん» と。
故ニ¬涅槃ノ¼七ニ云ク、迦葉菩薩白テ↠仏ニ言ク、世尊、如キハ↢仏ノ所説ノ↡有リ↢四種ノ魔↡。若シ魔ノ所説及ビ仏ノ所説、我当ニキ↣云何ン而カ得↢分別コトヲ↡。有テ↢諸ノ衆生↡随↢逐ム魔行ニ↡。復有ラ↣随↢順コト仏説ニ↡者、如キ↠是ノ等ノ輩復云何ンガ知ムト。
^仏、 迦葉に告げたまはく、 «われ涅槃して七百歳の後に、 これ*魔波旬やうやく起りて、 まさにしきりにわが正法を壊すべし。 たとへば猟師の身に法衣を服せんがごとし。 魔波旬もまたまたかくのごとし。 比丘像・比丘尼像・*優婆塞・*優婆夷像とならんこと、 またまたかくのごとしと。 ▼乃至
仏告タマハク↢迦葉ニ↡、我涅槃テ七百歳ノ後ニ、是レ魔波旬漸ク起テ、当ニシ↣頻ニ壊ス↢我ガ之正法ヲ↡。譬バ如シ↣猟師ノ身ニ服ムガ↢法衣ヲ↡。魔波旬モ亦復如シ↠是ノ。作ムコト↢比丘像・比丘尼像・優婆塞・優婆夷像ト↡、亦復如シト↠是ノ。 乃至
^"もろもろの比丘、 ▼奴婢・僕使、 牛・羊・象・馬、 乃至、 銅鉄釜鍑、 大小銅盤、 所須のものを受畜し、 耕田・種植、 販売・市易して、 穀米を儲くることを聴すと。 かくのごときの衆事、 仏、 大悲のゆゑに衆生を憐愍してみな畜ふることを聴さん" と。 かくのごときの経律は、 ことごとくこれ魔説なり»º と云々。
聴スト↧諸ノ比丘、受↢畜シ奴婢・僕使、牛・羊・象・馬、乃至銅鉄釜錫、大小銅盤、所須之物ヲ↡、耕田・種植、販売・市易テ、儲コトヲ↦穀米ヲ↥。如キノ↠是ノ衆事、仏大悲ノ故ニ憐↢愍テ衆生ヲ↡皆聴サムト↠畜コトヲ。如キノ↠是ノ経律ハ、悉ク是魔説ナリト云云。
^すでに ª七百歳の後に波旬やうやく起らんº といへり。 ゆゑに知んぬ、 かの時の比丘、 やうやく▼*八不浄物を貪畜せんと。 この妄説をなさん、 すなはちこれ魔の流なり。 これらの経のなかにあきらかに年代を指して、 つぶさに行事を説けり。 さらに疑ふべからず。 それ一文を挙ぐ、 余みな準知せよ。
既ニ云リ↢七百歳ノ後ニ波旬漸ク起ムト↡。故ニ知ヌ彼ノ時ノ比丘、漸ク貪↢畜ムト八不浄物ヲ↡。作ム↢此ノ妄説ヲ↡、即チ是魔ノ流トモガラ也。此等ノ経ノ中ニ明ニ指テ↢年代ヲ↡、具ニ説リ↢行事ヲ↡。不↠可ラ↢更ニ疑フ↡。其レ挙グ↢一文ヲ↡、余皆準知ヨ。
^▼次に像法の後半ばは持戒減少し、 破戒巨多ならん。 ゆゑに ¬涅槃¼ の六にの0426たまはく、 ▼乃至
次ニ像法ノ後半ハ持戒減少シ、破戒巨多ナラム。故ニ¬涅槃ノ¼六ニ云ク、 乃至
^▼また ¬*十輪¼ にのたまはく、 ª^もしわが法によりて出家して悪行を造作せん。 これ*沙門にあらずしてみづから沙門と称し、 また*梵行にあらずしてみづから梵行と称せん。
又¬十輪ニ¼言ク、若シ依0219テ↢我ガ法ニ↡出家テ造↢作ム悪行ヲ↡。此非ズシテ↢沙門ニ↡自ラ称シ↢沙門ト↡、亦非ズシテ↢梵行ニ↡自ラ称ム↢梵行ト↡。
^かくのごときの比丘、 よく一切天・竜・*夜叉、 一切善法功徳の*伏蔵を開示して、 衆生の善知識とならん。 少欲知足ならずといへども、 剃除鬚髪して、 法服を被着せん。 この因縁をもつてのゆゑに、 よく衆生のために善根を増長せん。 もろもろの天・人において*善道を開示せん。 乃至
如キノ↠是ノ比丘、能ク開↢示テ一切天・竜・夜叉、一切善法功徳ノ伏蔵ヲ↡、為ラム↢衆生ノ善知識ト↡。雖モ↠不ト↢少欲知足ナラ↡、剃除鬚髪テ、被↢著ム法服ヲ↡。以ノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ能ク為ニ↢衆生ノ↡増↢長ム善根ヲ↡。於テ↢諸ノ天・人ニ↡開↢示ム善道ヲ↡。乃至
^破戒の比丘、 これ死せる人なりといへども、 しかも戒の余才、 *牛黄のごとし。 これ死するものといへども、 人ことさらにこれを取る。 また*麝香の後に*用あるがごとしº と云々。
破戒ノ比丘雖モ↢是死セル人ナリト↡、而モ戒ノ余才如シ↢牛黄ノ↡。此雖モ↠死ルモノト、而人故ニ取ル↠之ヲ。亦如シト↢麝香ノ後ニ有ルガ↟用云云。
^すでに ª*迦羅林のなかに一つの*鎮頭迦樹ありº といへり。 これは像運すでに衰へて、 破戒濁世にわづかに一二持戒の比丘あらんに喩ふるなり。
既ニ云リ↣迦羅林ノ中ニ有リト↢一ノ鎮頭迦樹↡。此ハ喩ルナリト↣像運已ニ衰テ、破戒濁世僅ニ有ムニ↢一二持戒ノ比丘↡。
^▼またいはく、 ª破戒の比丘、 これ死せる人なりといへども、 なほ麝香の死して用あるがごとし、 衆生の善知識となるº と。 あきらかに知んぬ、 このときやうやく破戒を許して世の福田とす。 △前の ¬大集¼ に同じ。
又云ク、破戒ノ比丘、雖モ↢是死セル人ナリト↡、猶如シ↢麝香ノ死シ而有ルガ↟用、為ルト↢衆生ノ善知識ト↡。明ニ知ヌ此ノ時漸ク許テ↢破戒ヲ↡為↢世ノ福田ト↡。同ジト↢前ノ¬大集ニ¼↡。
^次に像季の後は、 まつたくこれ戒なし。 仏、 時運を知ろしめして、 末俗を済はんがために名字の僧を讃めて世の福田としたまへり。
次ニ像季ノ後ハ、全ク是無シ↠戒。仏知シテ↢時運ヲ↡、為ニ↠済ムガ↢末俗ヲ↡讃テ↢名字ノ僧ヲ↡為タマヘリト↢世ノ福田ト↡。
^▼また ¬大集¼ の五十二0427にのたまはく、 ª^もし後の末世に、 わが法のなかにおいて鬚髪を剃除し、 身に袈裟を着たらん名字の比丘、 もし*檀越ありて捨施供養をせば、 無量の福を得んº と。
又¬大集ノ¼五十二ニ云ク、若シ後ノ末世ニ、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡剃↢除鬚髪シ↡、身ニ著タラム↢袈裟ヲ↡名字ノ比丘、若シ有テ↢壇越↡捨バ↢於供養ヲ↡、得ムト↢無量ノ福ヲ↡。
^▼また ¬*賢愚経¼ にのたまはく、 ª^もし檀越、 将来末世に法尽きんとせんに垂んとして、 まさしく妻を蓄へ、 子を侠ましめん四人以上の名字の僧衆、 まさに礼敬せんこと、 *舎利弗・*大目連等のごとくすべしº と。
又¬賢愚経ニ¼言ク、若シ壇越、将来末世ニ法乗欲ムニ↠尽ムト、正ク使メム↢蓄ヘ↠妻ヲ侠マ↟子ヲ四人以上ノ名字ノ僧衆、応シト↣当ニ礼敬ムコト如クス↢舎利弗・大目連等ノ↡。
^▼*またのたまはく、 ª^もし破戒を打罵し、 身に袈裟を着たるを知ることなからん、 罪は万億の仏身より血を出すに同じからん。 もし衆生ありて、 わが法のために剃除鬚髪し袈裟を被服せんは、 たとひ戒を持たずとも、 かれらはことごとくすでに*涅槃の印のために印せらるるなりº と。 ▼乃至
又云ク、若シ打↢罵シ破戒ヲ↡、無ラム↠知コト↣身ニ著タルヲ↢袈裟ヲ↡、罪ハ同カラムト↠出スニ↢万億ノ仏身ヨリ血ヲ↡。若シ有テ↢衆生↡、為ニ↢我ガ法ノ↡剃除鬚髪シ、被↢服ムハ袈裟ヲ↡、設ヒ不トモ↠持タ↠戒ヲ、彼等ハ悉ク已ニ涅槃ノ為ニ↢印之↡所ル↠印セ也ト。 乃至
^▼¬*大悲経¼ にのたまはく、 ª^仏、 阿難に告げたまはく、 «将来世において法滅尽せんと欲せん時、 まさに比丘・比丘尼ありて、 わが法のなかにおいて出家を得たらんもの、 おのれが手に児の臂を牽きて、 ともに遊行してかの酒家より酒家に至らん。 わが法のなかにおいて*非梵行をなさん。 かれら酒の因縁たりといへども、 この*賢劫のなかにおいて、 まさに千仏ましまして興出したまはんに、 わが弟子となるべし。
¬大0220悲経ニ¼云ク、仏告タマハク↢阿難ニ↡、於テ↢将来世ニ↡法欲セム↢滅尽ムト↡時、当ニ有テ↢比丘・比丘尼↡、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡得タラムモノ↢出家ヲ↡、己ガ手ニ牽キ↢児ノ臂ヲ↡而共ニ遊行テ彼ノ酒家ヨリ至ム↢酒家ニ↡。於テ↢我ガ法ノ中ニ↡作サム↢非梵行ヲ↡。彼等雖モ↠為リト↢酒ノ因縁↡、於テ↢此ノ賢劫ノ中ニ↡、当ニシト↧有シテ↢千仏↡興出タマハムニ、我ガ為ル↦弟子ト↥。
^次に後に*弥勒まさにわが処を補ぐべし。 乃至最後*盧至如来まで、 かくのごとき次第になんぢまさに知0428るべし、
次ニ後ニ弥勒当ニシ↠補グ↢我ガ所ヲ↡。乃至最後盧至如来マデ、如キ↠是ノ次第ニ汝応シ↢当ニ知ル↡、
^阿難わが法のなかにおいて、 ただ性のみこれ沙門にして沙門の行を汚し、 みづから沙門と称せん、 形は沙門に似て尚しく袈裟を被着することあらしめんは、 賢劫において弥勒を首として乃至盧至如来まで、 かのもろもろの沙門、 かくのごときの仏の所にして、 *無余涅槃において次第に涅槃に入ることを得ん。 遺余あることなけん。
阿難、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡、但使メム↫性ハ是沙門ノ汚↢沙門行ニシテ↡自ラ称ム↢沙門ト↡、形ハ似テ↢沙門ニ↡尚ク有ラ↪被↩著コト袈裟ヲ↨者、於テ↢賢劫ニ↡弥勒ヲ為テ↠首ト乃至盧至如来マデ、彼ノ諸ノ沙門、如キノ↠是ノ仏ノ所ニシテ、於テ↢无余涅槃ニ↡次第ニ得ム↠入コトヲ↢涅槃ニ↡。無ケム↠有コト↢遺余↡。
^なにをもつてのゆゑに、 かくのごとき一切沙門のなかに、 乃至一たび仏の名を称し、 ひとたび信を生ぜんもの、 所作の功徳つひに虚設ならじ。 われ仏智をもつて法界を測知するがゆゑなり»º と云々。 ▼乃至
何ヲ以ノ故ニ。如来一切沙門ノ中ニ、乃至一タビ称シ↢仏ノ名ヲ↡、一タビ生ム↠信ヲ者、所作ノ功徳終ニ不↢虚設ナラ↡。我以テ↢仏智ヲ↡惻↢知ルガ法界ヲ↡故ナリト云云。 乃至
^これらの諸経に、 みな年代を指して将来末世の名字の比丘を世の尊師とす。 もし正法の時の制文をもつて、 末法世の名字の僧を制せんは、 教機あひ乖き、 *人法合せず。 これによりて ¬*律¼ にいはく、 ª^非制を制するは、 すなはち*三明を断ず。 記説するところこれ罪ありº と。
此等ノ諸経ニ、皆指テ↢年代ヲ↡将来末世ノ名字ノ比丘ヲ為ト↢世ノ*尊師ト↡。若シ以テ↢正法ノ時ノ制文ヲ↡、而制セ↢末法世ノ名字ノ僧ヲ↡者、教機相ヒ乖キ、人法不↠合セ。由テ↠此ニ¬律ニ¼云ク、制ル↢非制ヲ↡者、則チ断ズ↢三明ヲ↡。所↢記説ル↡是有リト↠罪。
^この上に経を引きて配当しをはんぬ。
此ノ上ニ引テ↠経ヲ配当シ已訖ヌ。
^△後に教を挙げて比例せば、 末法法爾として正法毀壊し、 *三業記なし。 *四儀乖くことあらん。 ▼しばらく ¬*像法決疑経¼ にのたまふがごとし。 乃至 ^▼また ¬*遺教経¼ にのたまはく、 乃至 ^▼また ¬*法行経¼ にのたまはく、 乃至 ^▼¬*鹿子母経¼ にのたまはく、 乃至 ^▼また ¬*仁王経¼ にのたまはく、 乃至」 と。 以上略抄
後ニ挙テ↠教ヲ比例セ者、末法法爾トシテ正法毀壊シ、三業無シ↠記。四儀有ム↠乖コト。且ク如シト↢¬像法決疑経ニ¼云フガ、 乃至 又¬遺教経ニ¼云ク、 乃至 又¬法行経ニ¼云ク、 乃至 ¬鹿子母経ニ¼云ク、 乃至 又¬仁王経ニ¼云フガ↡ト。 乃至」 已上略*抄
0221
*顕浄土方便化身土文類*六 愚禿釈親鸞集
二 Ⅱ ⅱ 真偽を弁ず【外教釈】
a 標牒【勘決邪偽】
【042981】^▼それもろもろの修多羅によつて、 ▼真偽を*勘決して、 △外教邪偽の異執を教誡せば、
*夫レ拠テ↢諸ノ修多羅ニ↡、勘↢決テ真偽ヲ↡、教↢誡セ外教邪偽ノ異執ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅱ b 引文
イ 経
(一)¬涅槃経¼(仏に帰依する者は余の諸天神に帰依せざることを明かす)
【82】^▼¬涅槃経¼ (如来性品) にのたまはく、
¬涅槃経ニ¼言ク、
^「仏に*帰依せば、 ▼つひにまたその余のもろもろの天神に帰依せざれ」 と。 略出
「帰↢依セ於↟仏者、終ニ不レト↣更帰↢依セ其ノ余ノ諸ノ天神ニ↡。」 略出
二 Ⅱ ⅱ b イ (二)¬般舟三昧経¼(涅槃に入れば則ち密に弥陀の三昧を結して以て一代の真正と為すことを成ず)
【83】^▼¬*般舟三昧経¼ にのたまはく、
¬般舟三昧経ニ¼言ク、
^「▼*優婆夷、 この▼三昧を聞きて学ばんと欲せんものは、 乃至 みづから▼仏に*帰命し、 法に帰命し、 *比丘僧に帰命せよ。 余道に事ふることを得ざれ、 天を拝することを得ざれ、 ▼*鬼神を祠ることを得ざれ、 ▼吉良日を視ることを得ざれ」 となり。 以上
「優婆夷聞テ↢是ノ三昧ヲ↡欲ム↠学ムト者ハ、 乃至 自ラ帰↢命シ仏ニ↡、帰↢命シ法ニ↡帰↢命ヨ比丘僧ニ↡。不レ↠得↠事コトヲ↢余道ニ↡、不レ↠得↠拝コトヲ↠於↠天、不レ↠得↠祠コトヲ↢鬼神ヲ↡、不レトナリ↠得↠視コトヲ↢吉良日ヲ↡。」 已上
【84】^▼またのたまはく (般舟三昧経)、
又言ク、
^「優婆夷、 三昧を学ばんと欲せば、 乃至 天を拝し神を祠祀することを得ざれ」 となり。 略出
「優婆夷欲バ↠学ムト↢三昧ヲ↡ 乃至 不レトナリ↠得↣拝シ↠天ヲ祠↢祀コトヲ神ヲ↡。」 略出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)¬大集経¼
(Ⅰ)日蔵
(ⅰ)「魔王波旬星宿品」(総じて天等の体を示す)
【85】^▼¬*大乗大方等日蔵経¼ ▼巻第八 「魔王波旬星宿品」 第八の二にのたまはく (大集経)、
¬大乗大方等日蔵経¼巻第八「魔王波旬星宿品」第八之二ニ言ク、
^「▼ªその時に、 *佉盧虱、 天衆に告げていはまく、 «このもろもろの月等、 おのおの*主あり。 なんぢ四種の衆生を救済すべし。 なにものをか四つとする。 地上の人、 諸竜、 *夜叉、 乃至*蝎等を救く。 かくのごときの類、 みなことごとくこれを救けん。 われもろもろの衆生を安楽するをもつてのゆゑ0430に、 *星宿を布置す。 おのおの*分部乃至*摸呼羅の時等あり。 またみなつぶさに説かん。 その国土方面の処に随ひて、 所作の事業、 随順し増長せん» と。
「爾ノ時ニ佉盧虱告テ↢天衆ニ↡言マク、是ノ諸ノ月等、各ノ有リ↢主↡。汝可シ↣救↢済ス四種ノ衆生ヲ↡。何者ヲカ為↠四ト。救ケム↢地上ノ人・諸竜・夜叉乃至蝎等ヲ↡。如キ↠斯ノ之類、皆悉ク救ケム↠之ヲ。我以ノ↣安↢楽ルヲ諸ノ衆生ヲ↡故ニ、布↢置ス星宿ヲ↡。各ノ有リ↢分部乃至模呼羅ノ時等↡。亦皆具ニ説ム。随テ↢其ノ国土方面之処ニ↡、所作ノ事業、随順シ増長ムト。
^佉盧虱、 大衆の前にして掌を合せて説きていはまく、 «かくのごとき日月・年時、 大小星宿を安置す。 なにものをか名づけて六時ありとするや。 正月・二月を暄暖時と名づく。 三月・四月を種作時と名づく。 五月・六月は求降雨時なり。 七月・八月は物欲熟時なり。 九月・十月は寒涼の時なり。 十有一月、 合して十二月は大雪の時なり。 これ十二月を分つて六時とす。
佉盧虱於テ↢大衆ノ前0222ニ↡合テ↠掌ヲ説テ言マク、如キ↠是ノ安↢置ス日月・年時、大小星宿ヲ↡。何者ヲカ名テ為ル↢有六時ト↡也。正月・二月ヲ名ク↢*暖時ト↡。三月・四月ヲ名ク↢種作時ト↡。五月・六月ハ求降雨時ナリ。七月・八月ハ物欲熟時ナリ。九月・十月ハ寒*涼之時ナリ。十*有一月、合テ十二月ハ大雪之時ナリ。是レ十二月ヲ分テ為↢六時ト↡。
^また大星宿その数八つあり。 いはゆる*歳星・*熒惑・*鎮星・*太白・*辰星・日・月・*荷羅睺星なり。 また*小星宿二十八あり。 いはゆる昴より胃に至るまでの諸宿これなり。 われかくのごとき次第安置をなす、 その法を説きをはんぬ。 なんだち、 みなすべからくまた見、 また聞くべし。 一切大衆、 意においていかん。 わが置くところの法、 その事是なりやいなや。 二十八宿および*八大星の所行の諸業、 なんぢ喜楽するやいなや。 是とやせん、 非とやせん。 よろしくおのおの宣説すべし» と。
又大星宿其ノ数有リ↠八。所ル↠謂ハ歳星・熒惑・鎮星・太白・辰星・日・月・荷羅睺星ナリ。又小星宿有リ↢二十八↡。所ル↠謂ハ従リ↠昴至マデノ↠胃ニ諸宿是也。我作ス↢如キ↠是ノ次第安置ヲ↡、説キ↢其ノ法ヲ↡已ヌ。汝等皆須クシ↢亦見亦聞ク↡。一切大衆於テ↠意云何ン。我ガ所ノ↠置ク法、其ノ事是レ不ズ↢。二十八宿及ビ八大星ノ所行ノ*諸業ニ↡、汝ガ喜楽ハ不ズ↢。為ニ↠是ノ為ニセ↟非ノ、宜クシト↢各ノ宣説ス↡。
^その時に一切天人・仙人・阿修羅・竜および*緊那羅等、 みなことごとく掌を合せて、 ことごとくこの言をなさく、 «いま大仙のごときは、 天0431人のあひだにおいてもつとも尊重とす。 乃至諸竜および阿修羅、 よく勝れたるものなけん。 智慧・慈悲もつとも第一とす。 無量劫において忘れず、 一切衆生を憐愍するがゆゑに、 福報を獲、 誓願満ちをはりて功徳海のごとし。 よく過去・現在・当来の一切諸事、 天人のあひだを知るに、 かくのごときの智慧のものあることなし。 かくのごときの*法用、 日夜・刹那および*迦羅時、 大小星宿、 *月半・*月満・*年満の法用、 さらに衆生よくこの法をなすことなけん。 みなことごとく随喜しわれらを安楽にす。 善いかな大徳、 衆生を安穏す» と。
爾ノ時ニ一切天人・仙人・阿修羅・竜及ビ緊那羅等、皆悉ク合テ↠掌ヲ、咸ク作ク↢是ノ言ヲ↡、如キハ↢今大仙ノ↡、於テ↢天人ノ間ニ↡最モ為↢尊重ト↡。乃至諸竜及ビ阿修羅、無ケム↢能ク勝タル者↡。智慧・慈悲最モ為↢*第一ト↡。於テ↢無量劫ニ↡不↠忘レ、憐↢愍ルガ一切衆生ヲ↡故ニ獲↢福報ヲ↡、誓願満チ已テ功徳如シ↠海ノ。能ク知ルニ↢過去・現在・当来ノ一切諸事、天人之間ヲ↡、無シ↠有コト↢如キノ↠是ノ智慧之者↡。如キノ↠是ノ法用、日夜・刹那及ビ迦羅時、大小星宿、月半・月満・年満ノ法用、更ニ無ケム↣衆生能ク作コト↢是ノ法ヲ↡。皆悉ク随喜シ安楽ナラム。我等、善イ哉大徳、安↢*穏スト衆生ヲ↡。
^このとき佉盧虱仙人、 またこの言をなさく、 «この十二月一年始終、 かくのごとく方便す。 大小星等、 刹那の時法、 みなすでに説きをはんぬ。▼
是ノ時佉盧虱仙人、復0223作ク↢是ノ言ヲ↡、此ノ十二月一年始終、如キ↠此ノ方便ス。大小星等、刹那ノ時法、皆已ニ説キ竟ヌ。
^▼またまた*四天大王を*須弥山の四方面所に安置す、 おのおの一王を置く。 このもろもろの方所にして、 おのおの衆生を領す。 北方の天王を*毘沙門と名づく。 これその界のうちに多く*夜叉あり。 南方の天王を*毘留荼倶と名づく。 これその界のうちに多く*鳩槃荼あり。 西方の天王を*毘留博叉と名づく。 これその界のうちに多く諸*竜あり。 東方の天王を*題頭隷と名づく。 これその界のうちに*乾闥婆多し。
又復安↣置ス四天大王ヲ於↢須弥山ノ四方面所↡、各ノ置ク↢一王ヲ↡。是ノ諸ノ方所ニシテ、各ノ領ス↢衆生ヲ↡。北方ノ天王ヲ名ク↢毘沙門ト↡。是其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢夜叉↡。南方ノ天王ヲ名ク↢毘留荼ト↡。倶ニ是其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢鳩槃荼↡。西方ノ天王ヲ名ク↢毘留博叉ト↡。是其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢諸竜↡。東方ノ天王ヲ名ク↢題頭隷ト↡。是其ノ界ノ内ニ多シ↢乾闥婆↡。
^*四方四維みなことごとく一切*洲渚およびもろもろの*城邑を擁護す。 また鬼0432神を置いてこれを守護せしむ» と。
四方四維皆悉ク擁↢護ス一切洲渚及ビ諸ノ城邑ヲ↡。亦置↢鬼神ヲ↡而守↢護シムト之ヲ↡。
^その時に、 *佉盧虱仙人、 諸天・竜・夜叉・阿修羅・緊那羅・*摩睺羅伽、 人・*非人等、 一切大衆において、 みな «善いかな» と称して、 歓喜無量なることをなす。 この時に、 天・竜・夜叉・阿修羅等、 日夜に佉盧虱を供養す。▼
爾ノ時ニ佉盧虱仙人、為ス↧於テ↢諸天・竜・夜叉・阿修羅・緊那羅・摩睺羅伽・人・非人等一切大衆ニ↡、皆称テ↢善イ哉ト↡歓喜無量ナルコトヲ↥。是ノ時ニ天・竜・夜叉・阿修羅等、日夜ニ供↢養ス佉盧虱ヲ↡。
^▼次にまた後に無量世を過ぎて、 また仙人あらん、 伽力伽と名づく。 世に出現して、 またさらに別して、 もろもろの星宿、 小大月の法、 時節要略を説き置かんº と。
次ニ復於↠後過テ↢無量世ヲ↡、更有ム↢仙人↡、名ケム↢伽力*伽ト↡。出↢現テ於世ニ↡、復更ニ別テ、説キ↢置ムト諸ノ星宿、小大月ノ法、時節要略ヲ↡。
^その時に、 諸竜、 *佉羅氐山聖人の住処にありて、 *光味仙人を尊重し*恭敬せん、 その竜力を尽してこれを供養せん」 と。 以上抄出
爾ノ時ニ諸竜、在テ↢佉羅坻山聖人ノ住処ニ↡、尊↢重シ恭↣敬ム光味仙人ヲ↡、尽シ↢其レ竜力ヲ↡而供↢養ムト之ヲ↡。」 已上抄出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅰ)(ⅱ)「念仏三昧品」(一心に帰仏して天神等を拝せざるの相を顕し、魔の害を加へざるはただこの行者のみなることを示す)
【86】^▼¬*日蔵経¼ 巻第九 「念仏三昧品」 第十にのたまはく (大集経)、
¬*日蔵経¼巻第九「*念仏三昧品ノ」第十ニ*言ク、
^「▼その時に、 *波旬、 この偈を説きをはるに、 ▼かの衆のなかにひとりの魔女あり、 名づけて*離暗とす。 この魔女は、 曽過去においてもろもろの徳本を植ゑたりき。
「爾ノ時ニ波旬説キ↢是ノ偈ヲ↡已ルニ、彼ノ衆之中ニ有リ↢一ノ魔女↡、名テ為↢離暗ト↡。此ノ魔女者、曽於テ↢過去ニ↡植タリキ↢衆ノ徳本ヲ↡。
^この説をなしていはまく、 ª沙門*瞿曇は名づけて福徳と称す。 もし衆生ありて、 仏の名を聞くことを得て一心に帰依せん、 一切の諸魔、 かの衆生において悪を加ふることあたはず。 いかにいはんや仏を見たてまつり、 親り法を聞かん人、 種々に方便し慧解深広ならん。 乃至 たとひ千万億の一切魔軍、 つひに須臾も0433害をなすことを得ることあたはず。 ▼如来いま涅槃道を開きたまへり。 女、 かしこに往きて仏に帰依せんと欲すº と。
作テ↢是ノ説ヲ↡言マク、沙門瞿曇ハ名テ称ス↢福徳ト↡。若シ有テ↢衆生↡、得テ↠聞コトヲ↢仏ノ名ヲ↡一心ニ帰依ム、一切ノ諸魔0224、於テ↢彼ノ衆生ニ↡不↠能ハ↠加コト↠悪ヲ。何ニ況ヤ見マツリ↠仏ヲ、親聞ム↠法ヲ人、種種ニ方便シ慧解深広ナラム。 乃至 設ヒ千万億ノ一切魔軍、終ニ不↠能ハ↠得コト↢須臾モ為スコトヲ↟害ヲ。如来今者開タマヘリ↢涅槃道ヲ↡。女欲フト↣往テ↠彼ニ帰↢依ムト於↟仏。
^すなはちその父のためにして偈を説きていはまく、 ▼乃至 ª^▼三世の諸仏の法を修学して、 一切の苦の衆生を*度脱せん。 よく諸法において自在を得、 当来に願はくはわれ還りて仏のごとくならんº と。
即チ為ニ↢其ノ父ノ↡而説テ↠偈ヲ言マク、 乃至
修↢学テ三世ノ諸仏ノ法ヲ↡ | 度↢脱ム一切ノ苦ノ衆生ヲ↡ |
善ク於テ↢諸法ニ↡得↢自在ヲ↡ | 当来ニ願クハ我還テ如クナラムト↠仏ノ |
^▼その時に、 離暗、 この偈を説きをはるに、 父の王宮のうちの五百の魔女、 姉妹眷属、 一切みな菩提の心を発せしむ。
爾ノ時ニ離暗説キ↢是ノ偈ヲ↡已ルニ、父ノ王宮ノ中ノ五百ノ魔女、姉妹眷属、一切皆発シム↢菩提之心ヲ↡。
^▼この時に、 魔王、 その宮のうちの五百の諸女、 みな仏に帰して菩提心を発せしむるを見るに、 大きに瞋忿・怖畏・憂愁を益すと。 乃至
是ノ時ニ魔王見ルニ↧其ノ宮ノ中ノ五百ノ諸女、皆帰テ↢於仏ニ↡発シムルヲ↦菩提心ヲ↥、益スト↢大ニ瞋忿・怖畏・憂愁ヲ↡。 乃至
^▼この時に、 五百のもろもろの魔女等、 また波旬のためにして偈を説きていはまく、
是ノ時ニ五百ノ諸ノ魔女等、更為ニ↢波旬ノ↡而説テ↠偈ヲ言マク、
^ª▼もし衆生ありて、 仏に帰すれば、 かの人、 千億の魔に畏れず。 いかにいはんや生死の流を度せんと欲ふ。 *無為涅槃の岸に到らん。
若シ有テ↢衆生↡帰スレ↠仏ニ者 | 彼ノ人不↠畏レ↢千億ノ魔ニ↡ |
何ニ況ヤ欲フ↠度ムト↢生死ノ流ヲ↡ | 到ム↠於↢無為涅槃ノ岸↡ |
^もしよく一香華をもつて、 三宝仏法僧に持散することありて、 堅固勇猛の心を発さん。 一切の衆魔、 壊することあたはじ。 乃至
若シ有テ↧能ク以テ↢一香華ヲ↡ | 持↦散コト三宝仏法僧ニ↥ |
発ム↢於堅固勇猛ノ心ヲ↡ | 一切ノ衆魔不↠能ハ↠壊コト 乃至
|
^▼われら過去の無量の悪、 一切また滅して余あることなけん。 至誠専心に仏に帰したてまつりをはらば、 さだめて*阿耨菩提の果を得んº と。
我等過去ノ無量ノ悪 | 一切亦滅テ無ケム↠有コト↠余 |
至誠専心ニ帰マツリ↠仏ニ已バ | 決テ得ムト↢阿耨菩提ノ果ヲ↡ |
^▼その時に、 魔王、 この偈を聞きをはりて、 大きに瞋恚・怖畏を倍して、 心を煎0434がし、 憔悴・憂愁して、 独り宮のうちに坐す。
爾0225ノ時ニ魔王聞キ↢是ノ偈ヲ↡已テ、倍テ↢大ニ瞋恚・怖畏ヲ↡、煎シ↠心ヲ憔悴憂愁テ、独リ坐ス↢宮ノ内ニ↡。
^▼この時に、 *光味菩薩摩訶薩、 仏の説法を聞きて、 一切衆生ことごとく*攀縁を離れ、 *四梵行を得しむと。 乃至
是ノ時ニ光味菩薩摩訶薩、聞テ↢仏ノ説法ヲ↡、一切衆生尽ク離レ↢攀縁ヲ↡、得シムト↢四梵行ヲ↡。 乃至
^▼ª浄く洗浴し、 *鮮潔の衣を着て、 菜食*長斎して、 辛く臭きものを*噉することなかるべし。 寂静処にして、 道場を荘厳して正念結跏し、 あるいは行じ、 あるいは坐して、 仏の身相を念じて乱心せしむることなかれ。 さらに他縁し、 その余の事を念ずることなかれ。 あるいは一日夜、 あるいは七日夜、 余の業をなさざれ。 至心念仏すれば、 乃至仏を見たてまつる。 ▲小念は小を見たてまつり、 大念は大を見たてまつる。 乃至無量の念は仏の色身無量無辺なるを見たてまつらんº」 と。 略抄
応シ↧浄ク洗浴シ、著テ↢鮮潔ノ衣ヲ↡、菜食長斉テ、勿ル↞噉コト↢辛ク臭キモノヲ↡。於テ↢寂静処ニ↡、荘↢厳テ道場ヲ↡正念結跏シ、或ハ行ジ或ハ坐テ、念テ↢仏ノ身相ヲ↡無レ↠使コト↢乱心セ↡。更ニ莫レ↣他縁シ念コト↢其ノ余ノ事ヲ↡。或ハ一日夜、或ハ七日夜、不レ↠作サ↢余ノ業ヲ↡。至心念仏レバ、乃至見マツル↠仏ヲ。小念ハ見マツリ↠小ヲ、大念ハ見マツル↠大ヲ。乃至無量ノ念者見マツラムト↢仏ノ色身無量無辺ナルヲ↡。」 略抄
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅰ)(ⅲ)「護塔品」(魔王と諸眷属との仏法に帰することを明かす)
【87】^▼¬日蔵経¼ の巻第十 「護塔品」 第十三にのたまはく (大集経)、
¬日蔵経ノ¼巻第十「護塔品」第十三ニ言ク、
^「▼時に魔*波旬、 その眷属八十億衆と、 前後に*囲繞して仏所に往至せしむ。 到りをはりて、 *接足して世尊を頂礼したてまつる。
「時ニ魔波旬与↢其ノ眷属八十億衆↡、前後ニ囲遶テ往↢至シム仏所ニ↡。到リ已テ接足テ頂↢礼マツル世尊ヲ↡。
^かくのごときの偈を説かく、 乃至
説カク↢如キノ↠是ノ偈ヲ↡、 乃至
^ª▼三世の諸仏の大慈悲、 わが礼を受けたまへ、 一切の殃を懴せしむ。 法・僧二宝もまたまたしかなり。 至心帰依したてまつるに異あることなし。
三世ノ諸仏ノ大慈悲 | 受タマヘ↢我ガ礼ヲ↡懴シム↢一切ノ殃ヲ↡ |
法・僧二宝モ亦復然ナリ | 至心帰依タマヘルニ无シ↠有コト↠異 |
^願はくは、 われ今日世の*導師を供養し恭敬し尊重したてまつるところなり。 もろもろの悪0435は永く尽してまた生ぜじ。 寿を尽すまで如来の法に帰依せんº と。
願クハ我今日所ナリ↯供↢養シ | 恭↣敬シ尊↤重タマヘル世ノ導師ヲ↡ |
諸ノ悪ハ永ク尽シテ不↢復生ゼ↡ | 尽マデ↠寿ヲ帰↢依ムト如来ノ法ニ↡ |
^▼時に魔波旬、 この偈を説きをはりて、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 如来われおよびもろもろの衆生において、 平等無二の心にしてつねに歓喜し、 慈悲*含忍せんº と。
時ニ魔波旬、説キ↢是ノ偈ヲ↡已テ、白テ↠仏ニ言ク、世尊、如来於テ↢我及ビ諸ノ衆生ニ↡、平等無二ノ心ニシテ常ニ歓喜シ、慈悲含忍ムト。
^▼仏ののたまはく、 ªかくのごとしº と。
仏ノ言ク、如シト↠是ノ。
^▼時に魔波旬大きに歓喜を生じて、 清浄の心を発す。 重ねて仏前にして接足頂礼し、 *右に繞ること三帀して恭敬合掌して、 却きて一面に住して、 世尊を*瞻仰したてまつるに、 心に*厭足なし」 と。 以上抄出
時ニ魔波旬生テ↢大ニ歓喜ヲ↡、発ス↢清浄ノ心ヲ↡。重テ於0226テ↢仏前ニ↡接足頂礼シ、右ニ遶コト三帀テ恭敬合掌テ、却テ住テ↢一面ニ↡、瞻↢仰マツルニ世尊ヲ↡、心ニ無シト↢厭足↡。」 已上抄出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)月藏
(ⅰ)「諸悪鬼神得敬信品」(人の仏に帰して益を得ることを説きて、鬼神をして之を聞きて帰仏得益せしむ)
【88】^▼¬*大方等大集月蔵経¼ ▼巻第五 「諸悪鬼神得敬信品」 第八の上にのたまはく (大集経)、
¬大方等大集月蔵経¼巻第五「諸悪鬼神得敬信品」第八ノ上ニ*言ク、
^「▼もろもろの*仁者、 かの邪見を遠離する因縁において、 十種の功徳を獲ん。 なんらをか十とする。
「諸ノ仁者、於テ↧彼ノ遠↢離ル邪見ヲ↡因縁ニ↥、獲ム↢十種ノ功徳ヲ↡。何等ヲカ為ル↠十ト。
^▼一つには心性柔善にして伴侶賢良ならん。
一ニ者心性*柔*善ニシテ伴侶賢良ナラム。
^二つには*業報、 乃至奪命あることを信じて、 もろもろの悪を起さず。
二ニ者信テ↠有コトヲ↢業報乃至奪命↡、不↠起サ↢諸ノ悪ヲ↡。
^三つには三宝を帰敬して天神を信ぜず。
三ニ者帰↢敬テ三宝ヲ↡不↠信ゼ↢天神ヲ↡。
^四つには*正見を得て歳次日月の吉凶を択ばず。
四ニ者得テ↢於正見ヲ↡不↠択バ↢歳次日月ノ吉凶ヲ↡。
^五つにはつねに人天に生じてもろもろの悪道を離る。
五ニ者常ニ生テ↢人天ニ↡離ル↢諸ノ悪道ヲ↡。
^六つには賢善の心あきらかなることを得、 人讃誉せしむ。
六ニ者得↢賢善ノ心明ナルコトヲ↡人讃誉シム。
^七つには世俗を棄ててつねに*聖道を求めん。
七ニ者棄テヽ↠於↢世俗↡常ニ求メム↢聖道ヲ↡。
^八つには*断・常見を離れて*因縁の法を信ず。
八ニ者離テ↢断・常見ヲ↡信ズ↢因縁ノ法ヲ↡。
^九つにはつねに正信0436・正行・正発心の人とともにあひ会まり遇はん。
九ニ者常ニ与↢正信・正行・正発心ノ人↡共ニ相ヒ会リ遇ム。
^十には善道に生ずることを得しむ。
十ニ者得シム↠生コトヲ↢善道ニ↡。
^▼この邪見を遠離する善根をもつて、 *阿耨多羅三藐三菩提に回向せん、 この人すみやかに*六波羅蜜を満ぜん、 善浄仏土にして正覚を成らん。 菩提を得をはりて、 かの仏土にして、 功徳・智慧・一切善根、 衆生を荘厳せん。 その国に来生して天神を信ぜず、 悪道の畏れを離れて、 かしこにして命終して還りて善道に生ぜん」 と。 略抄
以テ↧是ノ遠↢離ル邪見ヲ↡善根ヲ↥、廻↢向ム阿耨多羅三藐三菩提ニ↡、是ノ人速ニ満ム↢六波羅蜜ヲ↡、於↢善浄仏土↡而成ム↢正覚ヲ↡。得↢菩提ヲ↡已テ、於テ↢彼ノ仏土ニ↡、功徳・智慧・一切善根、荘↢厳ム衆生ヲ↡。来↢生テ其ノ国ニ↡不↠信ゼ↢天神ヲ↡、離テ↢悪道ノ畏ヲ↡、於テ↠彼ニ命終テ還テ生ムト↢善道ニ↡。」 略抄
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)「諸悪鬼神得敬信品」(邪悪を信ずる者は悪報を得ることを明かす)
【89】^▼¬月蔵経¼ 巻第六 「諸悪鬼神得敬信品」 第八の下にのたまはく (大集経)、
¬月蔵経¼巻第六「諸悪鬼神得敬信品ノ」第八ノ下ニ言ク、
^「▼仏の出世はなはだ難し。 法・僧もまたまた難し。 衆生の浄信難し。 諸難を離るることまた難し。
「仏ノ出世甚ダ難シ | 法・僧モ亦復難シ |
衆生ノ浄信難シ | 離コト↢諸難ヲ↡亦難シ |
^衆生を*哀愍すること難し。 *知足第一に難し。 正法を聞くことを得ること難し。 よく修すること第一に難し。
0227哀↢愍コト衆生ヲ↡難シ | 知足第一ニ難シ |
得コト↠聞コトヲ↢正法ヲ↡難シ | 能ク修コト第一ニ難シ |
^難きを知ることを得て平等なれば、 世においてつねに楽を受く。 この*十平等処は、 智者つねにすみやかに知らん。 乃至
※得テ↠知コトヲ↠難キヲ平等ナレバ | 於テ↠世ニ常ニ受ク↠楽ヲ |
此ノ十平等処ハ | 智者常ニ速ニ知ムト 乃至 |
^▼その時に、 世尊、 かのもろもろの悪鬼神衆のなかにして法を説きたまふ時に、 ªかのもろもろの悪鬼神衆のなかにして、 かの悪鬼神は、 むかし仏法において決定の信をなせりしかども、 かれ後の時において*悪知識に近づきて心に他の過0437を見る。 この因縁をもつて悪鬼神に生るº」 と。 略出
爾ノ時ニ世尊於テ↢彼ノ諸ノ悪鬼神衆ノ中ニ↡説タマフ↠法ヲ時ニ、於テ↢彼ノ諸ノ悪鬼神衆ノ中ニ↡、彼ノ悪鬼神ハ、昔於テ↢仏法ニ↡作セリシカドモ↢決定ノ信ヲ↡、彼於テ↢後ノ時ニ↡近テ↢悪知識ニ↡心ニ見ル↢他ノ過ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡生ルト↢悪鬼神ニ↡。」 略 *出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅲ)「諸天王護持品」(諸天神等に帰依せずと雖も自ら擁護有ることを顕すに在り)
【90】^▼¬大方等大集経¼ 巻第六 「月蔵分」 のなかに 「諸天王護持品」 第九にのたまはく (大集経)、
¬大方等大集経¼*巻第六「月蔵分ノ」中ニ「諸天王護持品」第九ニ*言ク、
^「▼その時に、 世尊、 世間を示すがゆゑに、 *娑婆世界の主、 *大梵天王に問うてのたまはく、 ªこの*四天下に、 これたれかよく護持養育をなすº と。
「爾ノ時ニ世尊示スガ↢世間ニ↡故ニ問テ↢娑婆世界ノ主大梵天王ニ↡言マク、此ノ四天下ニ、是誰カ能ク作スト↢護持養育ヲ↡。
^▼時に娑婆世界の主、 大梵天王かくのごときの言をなさく、 ª▼*大徳婆伽婆、 *兜率陀天王、 無量百千の兜率陀天子とともに*北鬱単越を護持し養育せしむ。
時ニ娑婆世界ノ主大梵天王作ク↢如キノ↠是ノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、兜率陀天王、共ニ↢無量百千ノ兜率陀天子ト↡護↢持シ養↣育シム*北鬱単越ヲ↡。
^*他化自在天王、 無量百千の他化自在天子とともに*東弗婆提を護持し養育せしむ。
他化自在天王、共ニ↢無量百千ノ他化自在天子ト↡護↢持シ養↣育シム東弗婆提ヲ↡。
^*化楽天王、 無量百千の化楽天子とともに*南閻浮提を護持し養育せしむ。
化楽天王、共ニ↢無量百千ノ化楽天子ト↡護↢持シ養↣育シム南閻浮提ヲ↡。
^*須夜摩天王、 無量百千の須夜摩天子とともに*西瞿陀尼を護持し養育せしむ。
須夜摩天王、共ニ↢無量百千ノ須夜摩天子ト↡護↢持シ養↣育シム西瞿陀尼ヲ↡。
^▼大徳婆伽婆、 *毘沙門天王、 無量百千の諸*夜叉衆とともに北鬱単越を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、毘沙門天王、共ニ↢無量百千ノ諸夜叉衆ト↡護↢持シ養↣育シム北鬱単越ヲ↡。
^*提頭頼天王、 無量百千の*乾闥婆衆とともに東弗婆提を護持し養育せしむ。
提頭頼天王、共ニ↢無量百千ノ乾闥婆衆ト↡護↢持シ養↣育シム東弗婆提ヲ↡。
^*毘楼勒天王、 無量百千の*鳩槃荼衆とともに南閻浮提を護持し養育せしむ。
毘楼勒天王、共ニ↢無量百0228千ノ鳩槃荼衆ト↡護↢持シ養↣育シム南閻浮提ヲ↡。
^*毘楼博叉天王、 無量百千の竜衆とともに西瞿陀尼を護持し養育せしむ。
毘楼博叉天王、共ニ↢無量百千ノ竜衆ト↡護↢持シ養↣育シム西瞿陀尼ヲ↡。
^▼大徳婆伽婆、 *天仙七宿・*三曜・*三天童女、 北鬱単越を護持し養育せしむ。 か0438の天仙七宿は虚・危・室・壁・奎・婁・胃なり。 三曜は*鎮星・*歳星・*熒惑星なり。 三天童女は鳩槃・弥那・迷沙なり。
大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育シム北鬱単越ヲ↡。彼ノ天仙七宿者虚・危・室・壁・奎・婁・胃ナリ。三曜者鎮星・歳星・熒惑星ナリ。三天童女者鳩槃・弥那・迷沙ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに虚・危・室の三宿はこれ鎮星の*土境なり、 鳩槃はこれ*辰なり。 壁・奎の二宿はこれ歳星の土境なり、 弥那はこれ辰なり。 婁・胃の二宿はこれ熒惑の土境なり、 迷沙はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ虚・危・室ノ三宿ハ是鎮星ノ土境ナリ、鳩槃ハ是辰ナリ。壁・奎ノ二宿ハ是歳星ノ土境ナリ、弥那ハ是辰ナリ。婁・胃ノ二宿ハ是熒惑ノ土境ナリ、迷沙ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、 北鬱単越を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、如キ↠是ノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育シム北鬱単越ヲ↡。
^大徳婆伽婆、 天仙七宿・三曜・三天童女、 東弗婆提を護持し養育せしむ。 かの天仙七宿は昴・畢・觜・参・井・鬼・柳なり。 三曜は*太白星・*歳星・月なり。 三天童女は毘利沙・弥偸那・羯迦迦なり。
大徳婆伽*婆、天仙七宿・三曜・三天童*女、護↢持シ養↣育シム東弗婆提ヲ↡。彼ノ天仙七宿者昴・畢・觜・参・井・鬼・柳ナリ。三曜者太白星・歳星・月ナリ。三天童女者毘利沙・弥偸那・羯迦迦ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに、 昴・畢の二宿はこれ太白の土境なり、 毘利沙はこれ辰なり。 觜・参・井の三宿はこれ歳星の土境なり、 弥偸那はこれ辰なり。 鬼・柳の二宿はこれ月の土境なり、 羯迦迦はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、昴・畢ノ二宿ハ是太白ノ土境ナリ、毘利沙ハ是辰ナリ。觜・参・井ノ三宿ハ是歳星ノ土境ナリ、弥偸那ハ是辰ナリ。鬼・柳ノ二宿ハ是月ノ土境ナリ、羯迦迦ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、 東弗婆提を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、如キ↠是ノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育シム東弗婆提ヲ↡。
^大徳婆伽婆、 天仙七宿・三曜・三天童女、 南閻浮提を護持し養育せしむ。 かの天仙七宿は星・張・翼・軫・角・亢・氐なり。 三曜は日・*辰星・*太白星なり0439。 三天童女は訶・迦若・兜羅なり。
大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育シム南閻浮提ヲ↡。彼ノ天仙七宿者星・張・翼・軫・角・亢・氐ナリ。三曜者日・辰星・太白0229星ナリ。三天童女者*訶・迦若・兜羅ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに、 星・張・翼はこれ日の土境なり、 訶はこれ辰なり。 軫・角の二宿はこれ辰星の土境なり、 迦若はこれ辰なり。 亢・氐の二宿はこれ太白の土境なり、 兜羅はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、星・張・翼ハ是日ノ土境、訶ハ是辰ナリ。軫・角ノ二宿ハ是辰星ノ土境ナリ、迦若ハ是辰ナリ。亢・氐ノ二宿ハ是太白ノ土境ナリ、兜羅ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごとき天仙七宿・三曜・三天童女、 南閻浮提を護持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、如キ↠是ノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育シム南閻浮提ヲ↡。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿・三曜・三天童女、 西瞿陀尼を護持し養育せしむ。 かの天仙七宿は房・心・尾・箕・斗・牛・女なり。 三曜は*熒惑星・*歳星・*鎮星なり。 三天童女は毘離支迦・檀婆・摩伽羅なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿・三曜・三天童*女、護↢持シ養↣育シム西瞿陀尼ヲ↡。彼ノ天仙七宿者房・心・尾・箕・斗・牛・女ナリ。三曜者熒惑星・歳星・鎮星ナリ。三天童女者毘離支迦・檀婆・摩伽羅ナリ。
^大徳婆伽婆、 かの天仙七宿のなかに、 房・心の二宿はこれ熒惑の土境なり、 毘離支迦はこれ辰なり。 尾・箕・斗の三宿はこれ歳星の土境なり、 檀婆はこれ辰なり。 牛・女の二宿はこれ鎮星の土境なり、 摩伽羅はこれ辰なり。
大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、房・心ノ二宿ハ是熒惑ノ土境ナリ、毘利支迦ハ是辰ナリ。尾・箕・斗ノ三宿ハ是歳星ノ土境ナリ、*檀*婆ハ是辰ナリ。牛・女ノ二宿ハ是鎮星ノ土境ナリ、摩伽羅ハ是辰ナリ。
^大徳婆伽婆、 かくのごときの天仙七宿・三曜・三天童女、 西瞿陀尼を護持し養育せしむ。▼
大徳婆伽婆、如キ↠是ノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育シム西瞿陀尼ヲ↡。
^▼大徳婆伽婆、 この*四天下に南閻浮提はもつとも殊勝なりとす。 なにをもつてのゆゑに、 閻浮提の人は勇健聡慧にして、 *梵行、 仏に相応す。 婆伽婆、 なかにおいて*出世したまふ。 このゆゑに*四大天王、 ここに倍増してこの閻浮提を護0440持し養育せしむ。
大徳婆伽婆、此ノ四天下ニ南閻浮提ハ最モ為↢殊勝ナリト↡。何ヲ以ノ故ニ。閻浮提ノ*人ハ*勇健聡慧ニシテ、梵行相↢応ス仏ニ↡。婆伽婆於テ↠中ニ出世タマフ。是ノ故ニ四大天王、於↠此倍増テ護↢持シ養↣育シム此ノ閻浮提ヲ↡。
^▼*十六の大国あり。 いはく、 鴦伽摩伽陀国・傍伽摩伽陀国・阿槃多国・支提国なり。 この四つの大国は、 毘沙門天王、 夜叉衆と囲繞して護持し養育せしむ。
有リ↢十六ノ大国↡。謂ク、鴦伽摩伽陀国・傍伽摩伽陀国・阿槃多国・支提国ナリ。此ノ四ノ大国ハ、毘沙門天王、与↢夜叉衆↡囲遶テ護持シ養育シム。
^迦尸国・都薩羅国・婆蹉国・摩羅国、 この四つの大国は、 提頭頼天王、 乾闥婆衆と囲繞して護持し養育せしむ。
迦尸国・都薩羅国・婆蹉国・摩羅国、此ノ四ノ大国ハ、提頭頼0230天王、与↢乾闥婆衆↡囲遶テ護持シ養育シム。
^鳩羅婆国・毘時国・槃遮羅国・疎那国、 この四つの大国は、 毘楼勒叉天王、 鳩槃荼衆と囲繞して護持し養育せしむ。
鳩羅婆国・毘時国・槃遮羅国・疎那国、此ノ四ノ大国ハ、毘楼勒叉天王、与↢鳩槃荼衆↡囲遶テ護持シ養育シム。
^阿湿婆国・蘇摩国・蘇羅国・甘満闍国、 この四つの大国は、 毘楼博叉天王、 もろもろの竜衆と囲繞して護持し養育せしむ。
阿湿婆国・蘇摩国・蘇羅国・甘満闍国、此ノ四ノ大国ハ、毘楼博叉天王、与↢諸ノ竜衆↡囲遶テ護持シ養育シム。
^▼大徳婆伽婆、 過去の天仙この四天下を護持し養育せしがゆゑに、 またみなかくのごとき分布安置せしむ。
大徳婆伽婆、過去ノ天仙護↢持シ養↣育シガ此ノ四天下ヲ↡故ニ、亦皆如キ↠是ノ分布安置シム。
^後においてその国土、 城邑・村落・塔寺・園林・樹下・*塚間・山谷・曠野・河泉・*陂泊、 乃至、 海中宝洲・*天祠に随ひて、 かの*卵生・胎生・湿生・化生において、 もろもろの*竜・*夜叉・*羅刹・*餓鬼・*毘舎遮・*富単那・*迦富単那等、 かのなかに生じて、 かの処に還住して、 繋属するところなし、 他の教を受けず。
於テ↠後ニ随テ↢其ノ国土、城邑・村落・塔寺・園林・樹下・塚間・山谷・曠野・河泉・陂泊、乃至、海中宝洲・天祠ニ↡、於テ↢彼ノ卵生・胎生・湿生・化生ニ↡、諸ノ竜・夜叉・羅刹・餓鬼・毘舎遮・富単那・迦富単那等、生テ↠於↢彼ノ中↡、還↢*住テ彼ノ処ニ↡、無シ↠所↢繋属ル↡、不↠受ケ↢*他ノ教ヲ↡。
^このゆゑに願はくは仏、 この閻浮提の一切国土において、 かのもろもろの鬼神、 分布安置したまへ。 護持のためのゆゑに、 一切のもろもろの衆生を護らんがためのゆゑに。 われらこの説において随0441喜せんと欲ふº と。▼
是ノ故ニ願クハ仏、於テ↢此ノ閻浮提ノ一切国土ニ↡、彼ノ諸ノ鬼神、分布安置テ、為ノ↢護持ノ↡故ニ為ノ↠護ムガ↢一切ノ諸ノ衆生ヲ↡故ニ。我等於テ↢此ノ説ニ↡欲フト↢随喜ムト↡。
^▼仏ののたまはく、 ªかくのごとし、 *大梵、 なんぢが所説のごとしº と。 ^▼その時に、 世尊重ねてこの義を明かさんと欲しめして、 偈を説きてのたまはく、
仏ノ言ク、如キ↠是ノ大梵、如シト↢汝ガ所説ノ↡。爾ノ時ニ世尊欲シメ↣重テ明ムト↢此ノ義ヲ↡而説テ↠偈ヲ言ク、
^▼ª世間に示現するがゆゑに、 導師、 梵王に問はまく、 «この四天下において、 たれか護持し養育せん» と。 ^かくのごとき*天師梵、 «諸天王を首として、 *兜率・*他化天・*化楽・*須夜摩、
示↢現ルガ世間ニ↡故ニ | 導師問マク↢梵王ニ↡ |
於テ↢此ノ四天下ニ↡ | 誰カ護持シ養育ムト |
如キ↠是ノ天師梵 | 諸天王ヲ為テ↠首ト |
兜率・他化天 | 化楽・須夜摩 |
^よくかくのごとき四天下を、 護持し養育せしむ。 四王および眷属、 またまたよく護持せしむ。 ^二十八宿等、 および十二辰・十二天童女、 四天下を護持せしむ» と。
能ク護↢持シ養↣育シム | 如キ↠此ノ四天下ヲ↡ |
四王及ビ眷属 | 亦復能ク護持シム |
0231二十八宿等 | 及以ビ十二辰 |
十二天童女 | 護↢持シムト四天下ヲ↡ |
^その所生の処に随ひて、 竜・鬼・羅刹等、他の教を受けずは、 かしこにおいて還つて護をなさしむ。 ^天神等差別して、 願はくは仏分布せしめたまへ。 衆生を憐愍せんがゆゑに、 正法の灯を*熾然ならしむº と。▼
随テ↢其ノ所生ノ処ニ↡ | 竜・鬼・羅刹等 |
不↠受ケ↢他ノ教ヲ↡者 | 還テ↠於テ↠彼ニ作シム↠護ヲ |
天神等差別テ | 願ジテ仏令タマヘリ↢分布セ↡ |
憐↢愍ムガ衆生ヲ↡故ニ | 熾↢然ナラシムト正法ノ灯ヲ↡ |
^▼その時に、 仏、 *月蔵菩薩摩訶薩に告げてのたまはく、 ª▼*了知清浄士よ、 この*賢劫の初め人寿四万歳の時、 *鳩留孫仏、 世に出興したまひき。 かの仏、 無量*阿僧祇億*那由他百千の衆生のために*生死に回して、 *正法輪を輪転せしむ。 追うて悪道に回して、 善道および解脱の果を安置せしむ。
爾ノ時ニ仏告テ↢月蔵菩薩摩訶薩ニ↡言ク、了↢知ルニ清浄*士ヲ↡、此ノ賢劫ノ初メ人寿四万歳ノ時、鳩留孫仏出↢興タマヒキ於世ニ↡。彼ノ仏為ニ↢無量阿僧祇億那由他百千ノ衆*生ノ↡廻テ↢生死ニ↡、輪↢転シム正法輪ヲ↡。追テ廻テ↢悪道ニ↡、安↢置シム善道及ビ解脱ノ果ヲ↡。
^かの仏、 この四大天下をもつて、 娑婆世界の主、 大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須0442夜摩天王等に付嘱せしむ。 護持のゆゑに、 養育のゆゑに、 衆生を憐愍するがゆゑに、 三宝の種をして断絶せざらしめんがゆゑに、 熾然ならんがゆゑに、 *地の精気、 *衆生の精気、 *正法の精気、 久しく住せしめ増長せんがゆゑに、 もろもろの衆生をして*三悪道を休息せしめんがゆゑに、 *三善道に趣向せんがゆゑに、 四天下をもつて大梵およびもろもろの天王に付嘱せしむ。
彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱シム娑婆世界ノ*主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王等ニ↡。護持ノ故ニ、養育ノ故ニ、*憐ムガ↢愍*他ノ衆生ヲ↡故ニ、令ムガ↣三宝ノ種ヲシテ不ラ↢断絶セ↡故ニ、熾然ナラムガ故ニ、地ノ精気、衆生ノ精気、正法ノ精気、久ク住シメ増長ムガ故ニ、令ムガ↣諸ノ衆生ヲシテ休↢息セ三悪道ヲ↡故ニ、趣↢向ムガ三善道ニ↡故ニ、以テ↢四天下ヲ↡付↢嘱シム大梵及ビ諸ノ天王ニ↡。
^かくのごとき漸次に*劫尽き、 もろもろの天人尽き、 一切の善業*白法尽滅して、 大悪もろもろの煩悩溺を増長せん。
如キ↠是ノ漸次ニ劫尽キ、諸ノ天人尽キ、一切ノ善業白法尽滅テ、増↢長ム大悪諸ノ煩悩溺ヲ↡。
^人寿三万歳の時、 *拘那含牟尼仏、 世に出興したまはん。 かの仏、 この四大天下をもつて、 娑婆世界の主、 大梵天王・他化自在天王、 乃至、 四大天王、 およびもろもろの眷属に付嘱したまふ。 護持養育のゆゑに、 乃至一切衆生をして三悪道を休息して三善道に趣向せしめんがゆゑに、 この四天下をもつて大梵および諸天王に付嘱したまへり。
人寿三万歳ノ時、拘那含牟尼仏、出↢興タマハム於↟世。彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱タマフ娑婆世界ノ主大梵天王・他化自在天王乃至四大天王、及ビ諸ノ眷属ニ↡。護持養育ノ故ニ乃至令ムガ↧一切衆生ヲシテ休↢息テ三悪道ヲ↡趣↦向セ三善0232道ニ↥故ニ、以テ↢此ノ四天下ヲ↡付↢嘱タマフ大梵及ビ諸天王ニ↡。
^かくのごとき次第に劫尽き、 もろもろの天人尽き、 白法また尽きて、 大悪もろもろの煩悩溺を増長せん。
如キ↠是ノ次第ニ劫尽キ、諸ノ天人尽キ、白法亦尽テ、増↢長ム大悪諸ノ煩悩溺ヲ↡。
^人寿二万歳の時、 *迦葉如来、 世に出興したまふ。 かの仏、 この四大天下をもつて、 娑婆世界の主、 大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・*憍尸迦帝釈・四天王等、 およびもろも0443ろの眷属に付嘱したまへり。 護持養育のゆゑに、 乃至一切衆生をして三悪道を休息せしめ、 三善道に趣向せしめんがゆゑに。 かの迦葉仏、 この四天下をもつて、 大梵・四天王等に付嘱し、 およびもろもろの天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿等に付したまへり。 護持のゆゑに、 養育のゆゑに。
人寿二万歳ノ時、迦葉如来出↢興タマフ於世ニ↡。彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱タマヘリ娑婆世界ノ主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・憍尸迦帝釈・四天王等、及ビ諸ノ眷属ニ↡。護持養育ノ故ニ、乃至令ムガ↧一切衆生ヲシテ休↢息シメ三悪道ヲ↡趣↦向セ三善道ニ↥故ニ。彼ノ迦葉仏以テ↢此ノ四天下ヲ↡、付↢嘱シ大梵・四天王等ニ↡、及ビ付タマヘリ↢諸ノ天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿等ニ↡。護持ノ故ニ、養育ノ故ニ。
^了知清浄士よ、 かくのごとき次第に、 いま劫濁・煩悩濁・衆生濁・大悪煩悩濁・闘諍悪世の時、 人寿百歳に至りて、 一切の白法尽き、 一切の諸悪闇翳ならん。 世間はたとへば海水の一味にして*大鹹なるがごとし、 大煩悩の味はひ世に遍満せん。 集会の悪党、 手に髑髏を執り、 血をその掌に塗らん、 ともにあひ殺害せん。
了↢知ルニ清浄*士ヲ↡、如キ↠是ノ次第ニ、至マデ↢今劫濁・煩悩濁・衆生濁・大悪煩悩濁・闘諍悪世ノ時、人寿百歳ニ↡、一切ノ白法尽キ、一切ノ諸悪闇翳ナラム。世間ハ譬バ如シ↢海水ノ一味ニシテ大鹹ナルガ↡、大煩悩ノ味遍↢満ム於世ニ↡。集会ノ悪党、手ニ執リ↢髑髏ヲ↡、血ヲ塗ム↢其ノ掌ニ↡、共ニ相ヒ殺害ム。
^かくのごときの悪の衆生のなかに、 われいま*菩提樹下に出世してはじめて正覚を成れり。 *提謂・波利もろもろの商人の食を受けて、 かれらがためのゆゑに、 この閻浮提をもつて天・竜・乾闥婆・鳩槃荼・夜叉等に分布せしむ。 護持養育のゆゑに。
如キノ↠是ノ悪ノ衆生ノ中ニ、我今出↢世テ菩提樹下ニ↡初テ成レリ↢正覚ヲ↡。※受テ↢*提謂ヒトナリ波利ヒトナリノ諸ノ商人ノ食ヲ↡為ノ↢彼等ガ↡故ニ以テ↢此ノ閻浮提ヲ↡分↢布シム天・竜・乾闥婆・鳩槃荼・夜叉等ニ↡。護持養育ノ故ニ。
^これをもつて大集十方所有の仏土、 一切無余の菩薩摩訶薩等、 ことごとくここに来集せん。 乃至この娑婆仏土において、 その処の百億の日月、 百億の四天下、 百億の四大海、 百億の*鉄囲山・大鉄囲山、 百億の*須弥山、 百億の*四阿0444修羅城、 百億の四大天王、 百億の*三十三天、 乃至百億の*非想非非想処、 かくのごときの数を略せり。 娑婆仏土、 われこの処にして仏事をなす。
以テ↠是ヲ大集十方所有ノ仏土、一切無余ノ菩薩摩訶薩等、悉ク来↢集ム此ニ↡。乃至於テ↢此ノ娑婆仏土ニ↡、其ノ処ノ百億ノ日月、百億ノ四天下、百億ノ四大海、百億ノ鉄0233囲山・大鉄囲山、百億ノ須弥山、百億ノ四阿修羅城、百億ノ四大天王、百億ノ三十三天、乃至百億ノ非想非非想処、如キノ↠是ノ略セリ↠数ヲ。娑婆ノ仏土、我於↢是ノ処↡而作ス↢仏事ヲ↡。
^乃至娑婆仏土の所有のもろもろの梵天王およびもろもろの眷属、 魔天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・帝釈天王・四大天王・阿修羅王・竜王・夜叉王・羅刹王・*乾闥婆王・緊那羅王・迦楼羅王・摩睺羅伽王・鳩槃荼王・餓鬼王・毘舎遮王・富単那王・迦富単那王等において、 ことごとくまさに眷属としてここに大集せり。 法を聞かんためのゆゑに。
乃至於テ↢娑婆仏土ノ所有ノ諸ノ梵天王及ビ諸ノ眷属、魔天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・帝釈天王・四大天王・阿修羅王・竜王・夜叉王・羅刹王・乾闥婆王・緊那羅王・迦楼羅王・摩睺羅伽王・鳩槃荼王・餓鬼王・毘舎遮王・富単那王・迦富単那王等ニ↡、悉ク将ニテ↢眷属ト↡於↠此大集セリ。為ノ↠聞ム↠法ヲ故ニ。
^乃至ここに娑婆仏土の所有のもろもろの菩薩摩訶薩等およびもろもろの声聞、 一切余なく、 ことごとくここに来集せり。 聞法のためのゆゑに。 われいまこの所集の大衆のために甚深の仏法を顕示せしむ。 また世間を護らんがためのゆゑに、 この閻浮提所集の鬼神をもつて分布安置す。 護持養育すべしº と。▼
乃至於↠此娑婆仏土ノ所有ノ諸ノ菩薩摩訶薩等及ビ諸ノ声聞、一切無ク↠余悉ク来↢集セリ此ニ↡。為ノ↢聞法ノ↡故ニ。我今為ニ↢此ノ所集ノ大衆ノ↡顕↢示シム甚深ノ仏法ヲ↡。復為ノ↠護ムガ↢世間ヲ↡故ニ以テ↢此ノ閻浮提所集ノ鬼神ヲ↡分布安置ス。護持養育スベシト。
^▼その時に、 世尊、 また娑婆世界の主、 大梵天王に問うてのたまはく、 ▼ª過去の諸仏、 この四大天下をもつて、 かつてたれに付嘱して護持養育をなさしめたまふぞº と。
爾ノ時ニ世尊復問テ↢娑婆世界ノ主大梵天王ニ↡言ク、過去ノ諸仏、以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、曽テ付↢嘱テ誰ニ↡令タマフゾト↠作サ↢護持養育ヲ↡。
^▼時に娑婆世界の主、 大梵天王まうさく、 ª▼過去の諸仏、 この四天下をもつて、 かつてわれおよび*憍尸迦に付嘱したまへりき。 護持することをなさ0445しめたまふ。 ▼しかるにわれ失ありて、 おのれが名および帝釈の名を彰さず、 ただ諸余の天王および宿・曜・辰を称せしむ、 護持養育すべしº と。
時ニ娑婆世界ノ主大梵天王言ク、過去ノ諸仏、以テ↢此ノ四天下ヲ↡、曽テ付↢嘱タマヘリキ我及ビ憍尸迦ニ↡。令メタマフ↠作サ↢護持コトヲ↡。而我有ヤ↠失不ヤ、彰ス↢己ガ名及ビ帝釈ノ名ヲ↡、但称シム↢諸余ノ天王及ビ宿・曜・辰ヲ↡、護持養育スベシト。
^その時に、 娑婆世界の主、 大梵天王および憍尸迦帝釈、 *仏足を頂礼してこの言をなさく、 ª大徳婆伽婆、 *大徳修伽陀、 われいま過を謝すべし。 われ小児のごとくして愚痴無智にして、 如来の前にして*みづから称名せざらんや。
爾ノ時ニ娑婆世界ノ主大梵天王及ビ憍尸迦帝釈0234、頂↢礼シ仏足ヲ↡而作ク↢是ノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、大徳修伽陀、我今謝ベシ↠過ヲ。我如クシテ↢小児ノ↡愚痴無智ニシテ、於テ↢如来ノ前↡不ラムヤ↢自ラ称名セ↡。
^大徳婆伽婆、 やや願はくは*容恕したまへ。 大徳修伽陀、 やや願はくは容恕したまへ。 諸来の大衆、 また願はくは容恕したまへ。▼
大徳婆伽婆、唯願クハ容恕タマヘ。大徳修伽陀、唯願クハ容恕タマヘ。諸来ノ大衆、亦願クハ容恕タマヘ。
^▼われ境界において言説教令す。 自在の処を得て護持養育すべし。 乃至もろもろの衆生をして善道に趣かしめんがゆゑに。
我於テ↢境界ニ↡言説教令ス。得テ↢自在ノ処ヲ↡護持養育スベシ。乃至令メムガ↣諸ノ衆生ヲシテ趣カ↢善道ニ↡故ニ。
^われら曽鳩留孫仏のみもとにして、 すでに教勅を受けたまはりて、 乃至三宝の種をしてすでに熾然ならしむ。
我等曽於テ↢鳩留孫仏ノミモトニ↡、已ニ受タマハリテ↢教勅ヲ↡、乃至令ム↣三宝ノ種ヲシテ已ニ作ラ↢熾然↡。
拘那含牟尼仏、 迦葉仏の所にして、 われ教勅を受けたまはりしこと、 またかくのごとし。 三宝の種においてすでにねんごろにして熾然ならしむ。 ^地の精気、 衆生の精気、 *正法の味はひ醍醐の精気、 久しく住して増長せしむるがゆゑに。
拘那含牟尼仏・迦葉仏ノ所ニシテ、我受タマハリシコト↢教勅ヲ↡、亦如シ↠是ノ。於テ↢三宝ノ種ニ↡已ニ勤ニシテ熾然ナラシム。地ノ精気、衆生ノ精気、正法ノ味醍醐ノ精気、久ク住シテ増長シムルガ故ニ。
またわがごときも、 いま世尊の所にして、 教勅を頂受し、 おのれが境界において、 言説教令す。
亦如キモ↠我ガ今於テ↢世尊ノ所ニ↡、※頂↢受シ教勅テ↡於テ↢己ガ境界ニ↡、言説教令ス。
^自在の処を得て、 一切闘諍・飢饉を休息せしめ、 乃至三宝の種断絶せざらしむるがゆゑ0446に、 三種の精気久しく住して増長せしむるがゆゑに、 悪行の衆生を*遮障して行法の衆生を護養するがゆゑに、 衆生をして三悪道を休息せしめ、 三善道に趣向するがゆゑに、 仏法をして久しく住せんことを得しめんがためのゆゑに、 ねんごろに護持をなすº と。▼
得テ↢自在ノ処ヲ↡、休↢息シメ一切闘諍・飢饉ヲ↡、乃至令ルガ↣三宝ノ種不ラ↢断絶セ↡故ニ、三種ノ精気久ク住テ増長シムルガ故ニ、遮↣障テ悪行ノ衆生ヲ↡護↢養ルガ行法ノ衆生ヲ↡故ニ、休↢息シメ衆生ヲシテ三悪道ヲ↡、趣↢向ルガ三善道ニ↡故ニ、為ノ↠令メムガ↣仏法ヲシテ得↢久ク住ムコトヲ↡故ニ、勤ニ作スト↢護持ヲ↡。
^▼仏ののたまはく、 ª善いかな善いかな、 *妙丈夫、 なんぢかくのごとくなるべしº と。
仏ノ言ク、善イ哉善イ哉、妙丈夫、汝応シト↠如クナル↠是ノ。
^▼その時に、 仏、 百億の大梵天王に告げてのたまはく、 ª所有の行法、 法に住し法に順じて悪を厭捨せんものは、 いまことごとくなんだちが手のうちに付嘱す。 なんだち*賢首、 百億の四天下各々の境界において言説教令す。
爾ノ時ニ仏告テ↢百億ノ大梵天王ニ↡言ク、所有ノ行法住シ↠法ニ順テ↠法ニ厭↢捨ム悪ヲ↡者ハ、※*今悉ク付↢嘱ス汝等ガ手ノ中ニ↡。汝等賢首、於テ↢百億ノ四天下各各ノ境界ニ↡言説教令ス。
^自在の処を得て、 所有の衆生、 弊悪・*粗獷・悩害、 他において*慈愍あることなし。 後世の畏れを観ぜずして、 *刹利心および婆羅門・毘舎・首陀の心を触悩せん、 乃至畜生の心を触悩せん。 かくのごとき殺生をなす因縁乃至邪見をなす因縁、 その所作に随ひて非時の風雨あらん。 乃至地の精気、 衆生の精気、 正法の精気、 損減の因縁をなさしめば、 なんぢ*遮止して善法に住せしむべし。
得テ↢自在ノ処ヲ↡、所有ノ衆生、弊悪・麁獷・悩害、於テ↠他ニ無シ↠有コト↢慈愍↡。不シテ↠観ゼ↢後世ノ畏ヲ↡、触↢悩ム刹利心及ビ婆羅門・毘舎・首0235陀ノ心ヲ↡、乃至触↢悩ム畜生ノ心ヲ↡。如キ↠是ノ作ス↢殺生ヲ↡因縁乃至作ス↢邪見ヲ↡因縁、随テ↢其ノ所作ニ↡非時ノ風雨アラム、乃至令メ↣地ノ精気、衆生ノ精気、正法ノ精気、作サ↢損減ノ因縁ヲ↡者、汝応シ↢遮止テ令ム↟住セ↢善法ニ↡。
^もし衆生ありて、 善を得んと欲はんもの、 法を得んと欲はんもの、 生死の彼岸に度せんと欲はんもの、 *檀婆羅蜜を修行することあらんところのもの、 乃至、 般0447若波羅蜜を修行せんもの、 所有の行法、 法に住せん衆生、 および行法のために事を営まんもの、 かのもろもろの衆生、 なんだちまさに護持養育すべし。
若シ有テ↢衆生↡、欲ハム↠得ムト↠善ヲ者、欲ハム↠得ムト↠法ヲ者、欲ハム↠度ムト↢生死ノ彼岸ニ↡者、所ノ↠有ム↣修↢行コト檀波羅蜜ヲ↡者、乃至修↢行ム般若波羅蜜ヲ↡者、所有ノ行法住ム↠法ニ衆生、及ビ為ニ↢行法ノ↡営マム↠事ヲ者、彼ノ諸ノ衆生、汝等応シ↢当ニ護持養育ス↡。
^もし衆生ありて、 受持し読誦して、 他のために演説し、 種々に経論を解説せん。 なんだちまさに*かのもろもろの衆生と*念持方便して*堅固力を得べし。 所聞に入りて忘れず、 諸法の相を智信して生死を離れしめ、 *八聖道を修して*三昧の根、 相応せん。
若シ有テ↢衆生↡、受持シ読誦テ、為ニ↠他ノ演説シ、種種ニ解↢説ム経論ヲ↡。汝等当ニシ↧与↢彼ノ諸ノ衆生↡念持方便テ得↦堅固力ヲ↥。入テ↢所聞ニ↡不↠忘レ、智↢信テ諸法ノ相ヲ↡令メ↠離レ↢生死ヲ↡、修テ↢八聖道ヲ↡三昧ノ根相応ム。
^もし衆生ありて、 なんぢが境界において法に住せん。 *奢摩他・*毘婆舎那、 次第方便してもろもろの*三昧と相応して、 ねんごろに*三種の菩提を修習せんと求めんもの、 なんだちまさに*遮護し摂受して、 ねんごろに*捨施をなして、 乏少せしむることなかるべし。
若シ有テ↢衆生↡、於テ↢汝ガ境界ニ↡住ム↠法ニ、奢摩他・毘婆舎那、次第方便テ与↢諸ノ三昧↡相応テ、勤ニ求メム↣修↢習ムト三種ノ菩提ヲ↡者、汝等応シ↧当ニ遮護シ摂受テ、勤ニ作テ↢捨施ヲ↡、勿ル↞令コト↢乏少セ↡。
^もし衆生ありて、 その飲食・衣服・臥具を施し、 病患の因縁に湯薬を施せんもの、 なんだちまさにかの施主をして五利増長せしむべし。 なんらをか五つとする。 一つには寿増長せん、 二つには財増長せん、 三つには楽増長せん、 四つには善行増長せん、 五つには慧増長するなり。
若シ有テ↢衆生↡、施シ↢其ノ飲食・衣服・臥具ヲ↡、病患ノ因縁ニ施ム↢湯薬ヲ↡者、汝等応シ↣当ニ令ム↢彼ノ施主ヲシテ五利増長セ↡。何等ヲカ為ル↠五ト。一ニ者寿増長ム、二ニ者財増長ム、三ニ者楽増長ム、四ニ者善行増長ム、五ニ者慧増長ルナリ。
^なんだち長夜に利益安楽を得ん。 この因縁をもつて、 なんだちよく六波羅蜜を満てん、 久しからずして*一切種智を成ずることを得んº と。▼
汝等長夜ニ得ム↢利益安楽ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡、汝等能ク満ム↢六波羅蜜ヲ↡、不シテ↠久カラ得ム↠成コトヲ↢一切種智ヲ↡。
^0448▼時に娑婆世界の主、 大梵天王を首として、 百億のもろもろの梵天王とともに、 ことごとくこの言をなさく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 大徳婆伽婆、 われらおのおのにおのれが境界、 弊悪・*粗獷・悩害において、 他において慈愍の心なく、 後世の畏れを観ぜざらん。 乃至われまさに遮障し、 かの施主のために*五事を増長すべしº と。
時ニ娑婆世界ノ主大梵天王ヲ為テ↠首ト、共ニ↢百億ノ諸ノ梵天王ト↡、咸ク作ク↢是ノ言ヲ↡、如シ↠是ノ如0236シ↠是ノ。大徳婆伽婆、我等各各ニ於テ↢己ガ境界、弊悪・麁獷・悩害ニ↡、於テ↠他ニ無ク↢慈愍ノ心↡、不ラム↠観ゼ↢後世ノ畏ヲ↡、乃至我当ニシト↧遮障シ与↢彼ノ施主↡増↦長ス五事ヲ↥。
^▼仏ののたまはく、 ª善いかな善いかな、 なんぢかくのごとくなるべしº と。
仏ノ言ク、善イ哉善イ哉、汝応シト↠如クナル↠是ノ。
^▼その時に、 また一切の菩薩摩訶薩、 一切の諸大声聞、 一切の天・竜、 乃至一切の人・非人等ありて、 讃めてまうさく、 ª善いかな善いかな、 *大雄猛士、 なんだちかくのごとき法久しく住することを得、 もろもろの衆生をして悪道を離るることを得、 すみやかに善道に趣かしめんº と。
爾ノ時ニ復有テ↢一切ノ菩薩摩訶薩、一切ノ諸大声聞、一切ノ天・竜、乃至一切人・非人等↡、讃テ言ク、善イ哉善イ哉、大雄猛士、汝等如キ↠是ノ法得↢久ク住コトヲ↡、令メムト↧諸ノ衆生ヲシテ得↠離コトヲ↢悪道ヲ↡、速ニ趣カ↦善道ニ↥。
^▼その時に、 世尊重ねてこの義を明かさんと欲しめして、 偈を説きてのたまはく、
爾ノ時ニ世尊欲シメシ↣重テ明カナラムト↢此ノ義ヲ↡而説テ↠偈ヲ言ク、
^▼ªわれ、 月蔵に告げていはく、 この賢劫の初めに入りて、 *鳩留仏、 梵等に四天下を付嘱したまふ。
我告テ↢月蔵ニ↡言ク | 入テ↢此ノ賢劫ノ初ニ↡ |
鳩*留仏付↢嘱タマフ | 梵等ニ四天下ヲ↡ |
^諸悪を遮障するがゆゑに、 正法の眼を熾然ならしむ。 もろもろの悪事を捨離し、 行法のものを護持し、
遮↢障ルガ諸悪ヲ↡故ニ | 熾↢然ナラシム正法ノ眼ヲ↡ |
捨↢離シ諸ノ悪事ヲ↡ | 護↢持シ行法ノ者ヲ↡ |
^三宝の種を断たず、 *三精気を増長し、 もろもろの*悪趣を休息し、 もろもろの善道に向かへしむ。
不↠断タ↢三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長シ三精気ヲ↡ |
休↢息シ諸ノ悪趣ヲ↡ | 令ム↠向ヘ↢諸ノ善道ニ↡ |
^拘那含牟尼、 また大梵王、 他化・化楽天、 乃至四天王に嘱したまふ。
拘那含牟尼 | 復嘱タマフ↢大梵王 |
他化・化楽天 | 乃至四天王ニ↡ |
^次後に迦葉仏、 ま0449た梵天王、 化楽等の四天、 帝釈・*護世王、
次後ニ迦葉仏 | 復嘱タマフ↢梵天王 |
化楽等ノ四天 | 帝釈・護世王 |
^過去のもろもろの天仙に嘱したまふ。 もろもろの世間のためのゆゑに、 もろもろの*曜宿を安置して、 護持し養育せしめたまへり。
過去ノ諸ノ天仙ニ↡ | 為ノ↢諸ノ世間ノ↡故ニ |
安↢置テ諸ノ曜宿ヲ↡ | 令タマヘリ↢護持シ養育セ↡ |
^濁悪世に至りて、 白法尽滅せん時、 われ*独覚無上にして、 人民を安置し護らん。
至テ↠於↢濁悪世↡ | 白法尽滅ム時 |
我独覚無上ニシテ | 安↢置シ護ム↣人民ヲ↡ |
^いま大衆の前にして、 しばしばわれを悩乱せん。 まさに説法を*捨つべし。 われを置つて護持せしめよ。
今於テ↢大衆ノ前ニ↡ | 数数悩↢乱ム我ヲ↡ |
応シ↣当ニ捨ツ↢説法ヲ↡ | 置テ↠我ヲ令ヨ↢護持セ↡ |
^十方のもろもろの菩薩、 一切ことごとく来集せん。 天王もまたこの娑婆仏国土に来らしめん。
0237十方ノ諸ノ菩薩 | 一切悉ク来集ム |
天王モ亦来シメム↢此ノ | 娑婆仏国土ニ↡ |
^われ大梵王に問はく、 «たれか昔護持せしもの» と。 帝釈・大梵天、 余の天王を指示す。
我問ク↢大梵王ニ↡ | 誰カ昔護持セル者ト |
帝釈・大梵天 | 指↢示ス余ノ天王ヲ↡ |
^時に釈・梵王、 過を導師に謝していはまく、 «われら王の処を所として、 一切の悪を遮障し
於時ニ釈・梵王 | 謝テ↢過ヲ導師ニ↡言マク |
我等所トニシテ↢王ノ処ノ↡ | 遮↢障シ一切ノ悪ヲ↡ |
^三宝の種を熾然ならしめ、 三精気を増長せん。 諸悪の朋を遮障して、 善の朋党を護持せしむ»º」 と。 以上抄出
熾↢然ナラシメ三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長ム三精気ヲ↡ |
遮↢障テ諸悪ノ朋ヲ↡ | 護↢持シムト善ノ朋党ヲ↡」 已上抄出
|
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅳ)「諸魔得敬信品」(護持の誓いを発すべきを明かす)
【91】^▼¬月蔵経¼ 巻第七 「諸魔得敬信品」 第十にのたまはく (大集経)、
¬月蔵経¼巻第七「諸魔得敬信品」第十ニ*言ク、
^「▼その時に、 また百億の諸魔あり。 ともに同時に座よりして起ちて、 合掌して仏に向かひたてまつりて、 仏足を頂礼して仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 われらまたまさに大勇猛を発して仏の正法を護持し養育して、 三宝の種を熾然ならしめて、 久しく世間に住せしむ。 いま地の精気、 衆生の精気、 法の精気、 み0450なことごとく増長せしむべし。 もし世尊、 声聞弟子ありて、 法に住し法に順じて三業相応して修行せば、 われらみなことごとく護持し養育して、 一切の*所須乏しきところなからしめんº と。 乃至
「爾ノ時ニ復有リ↢百億ノ諸魔↡。倶共ニ同時ニ従リ↠座而起テ、合掌テ向マツリテ↠仏ニ、頂↢礼シ仏足ヲ↡而白テ↠仏ニ言ク、世尊、我等亦当ニシ↧発テ↢大勇猛ヲ↡護↢持シ養↣育テ仏之正法ヲ↡、熾↢*然ナラシメテ三宝ノ種ヲ↡、久ク住シム↢於世間ニ↡、今地ノ精気タマシイ、衆生ノ精気、法ノ精気、皆悉ク増長シム↥。若シ有テ↢世尊、声聞弟子↡、住シ↠法ニ順テ↠法ニ三業相応シ而修行セ者、我等皆悉ク護持シ養育テ、一切ノ所須令メムト↠无ラ↠所↠乏キ。 乃至
^▼ªこの娑婆界にして、 初め賢劫に入りし時、 *拘楼孫如来、 すでに四天を^帝釈・梵天王に嘱せしめて、 護持し養育せしむ。 三宝の種を熾然ならしめ、 三精気を増長せしめたまひき。
於テ↢此ノ娑婆界ニ↡ | 初メ入シ↢賢劫ニ↡時 |
拘楼孫如来 | 已ニ嘱シメテ↢於四*天ヲ |
帝釈・梵天王ニ↡ | 護持シ令ム↢養育セ↡ |
熾↢燃ナラシメ三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長シメタマヒキ三精気ヲ↡ |
^拘那含牟尼、 また四天下を梵・釈・諸天王に嘱して、 護持し養育せしむ。 ^迦葉もまたかくのごとし、 すでに四天下を梵・釈・護世王に嘱して、 行法のひとを護持せしめき。
拘那含牟尼 | 亦嘱テ↢四天下ヲ |
梵・釈・諸天王ニ↡ | 護持シ令ム↢養育セ↡ |
迦葉モ亦如シ↠是ノ | 已ニ嘱テ↢四天下ヲ |
梵・釈・護世王ニ↡ | 護↢持シメキ行法ノ者ヲ↡ |
^過去の諸仙衆、 および諸天仙、 星辰もろもろの宿曜、 また嘱し分布せしめき。 ^われ五濁世に出でて、 もろもろの魔の怨を降伏して、 大集会をなして、 仏の正法を顕現せしむ。 乃至
過去ノ諸仙衆 | 及以ビ諸天仙 |
星辰諸ノ宿曜 | 亦嘱シ令キ↢分布セ↡ |
0238我出テ↢五濁世ニ↡ | 降↢伏シ諸ノ魔ノ怨ヲ↡ |
而作テ↢大集会ヲ↡ | 顕↢現シム仏ノ正法ヲ↡ 乃至 |
^▼一切の諸天衆、 ことごとくともに仏にまうしてまうさく、 «われら王の処を所にして、 みな正法を護持し、 ^三宝の種を熾然ならしめ、 三精気を増長せしめん。 もろもろの病疫、 飢饉および闘諍を息めしめん»º」 と。 乃至略出
一切ノ諸天衆 | 咸ク共ニ白テ↠仏ニ言ク |
我等所ニシテ↢王ノ処ノ↡ | 皆護↢持シ正法ヲ↡ |
熾↢燃ナラシメ三宝ノ種ヲ↡ | 増↢長シメムト三精気ヲ↡ |
令メムト↠息メ↢諸ノ病疫 | 飢饉及ビ闘諍ヲ↡」 乃至略*出 |
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅴ)「提頭頼大王護持品」(四王の護持を誓ふことを明かす)
【92】^▼「提頭頼天王護持品」 にのたまはく (大集経)、
「提頭頼天王護持品ニ」云ク、
^「▼仏ののたまはく、 ª*日天子・*月天子、 なんぢわが法において護持し養育せば、 なんぢ長寿にしてもろ0451もろの衰患なからしめんº と。
「仏ノ言ク日天子・月天子、汝於テ↢我ガ法ニ↡護持シ養育バ、令メムト↣汝長寿ニシテ无ラ↢諸ノ衰患↡。
^▼その時に、 また百億の提頭頼天王、 百億の毘楼勒叉天王、 百億の毘楼博叉天王、 百億の毘沙門天王あり。 かれら同時に、 および眷属と座よりして起ちて、 衣服を整理し、 合掌し敬礼して、 かくのごときの言をなさく、 ª大徳婆伽婆、 われらおのおのおのれが天下にして、 ねんごろに仏法を護持し養育することをなさん。 三宝の種、 熾然として久しく住し、 三種の精気みなことごとく増長せしめんº と。 乃至
爾ノ時ニ復有リ↢百億ノ提頭頼天王、百億ノ毘楼勒叉天王、百億ノ毘楼博叉天王、百億ノ毘沙門天王↡。彼等同時ニ、及ビ与↢眷属↡従リ↠座而起テ、整↢ツクロフ 理シツクロフ衣服ヲ↡、合掌シ敬礼テ、作ク↢如キノ↠是ノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、我等各各於テ↢己ガ天下ニ↡、懃ニ作ム↤護↢持シ養↣育コトヲ仏法ヲ↡。令メムト↢三宝ノ種タネ熾*然トシテ久ク住シ、三種ノ精気皆悉ク増長セ↡。 乃至
^ªわれいままた上首毘沙門天王と同心に、 この閻浮提と北方との諸仏の法を護持すº」 と。 以上略出
我今亦与↢上首毘沙門天王↡同心ニ護↢持スト此ノ閻浮提ト北方トノ諸仏ノ法ヲ↡。 已上略出
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅵ)「忍辱品」(仏法を護持せば福報無量なることを明かし、帰仏者を損悩せば則ち堕獄の重罪を得ることを明かす)
【93】^▼¬月蔵経¼ 巻第八 「忍辱品」 第十六にのたまはく (大集経)、
¬*月蔵経¼巻第八「忍*辱品」*第十六ニ*言ク、
^「▼仏ののたまはく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 なんぢがいふところのごとし。
「仏ノ言ク、如シ↠是ノ如シ↠是ノ。如シ↢汝ガ所ノ↟言フ。
^▼*もしおのれが苦を厭ひ楽を求むるを愛することあらん、 まさに諸仏の正法を護持すべし。 これよりまさに無量の福報を得べし。
若シ有ム↠愛コト↢己ガ厭ヒ↠苦ヲ求ルヲ↟楽ヲ、応シ↣当ニ護↢持ス諸仏ノ正法ヲ↡。従リ↠此当ニシ↠得↢無量ノ福報ヲ↡。
^▼もし衆生ありて、 わがために出家し、 鬚髪を剃除して袈裟を被服せん。 たとひ戒を持たざらん、 かれらことごとくすでに涅槃の印のために印せらるるなり。
若シ有テ↢衆生↡、為ニ↠我ガ出家シ、剃↢除テ鬚髪ヲ↡被↢服ム袈裟ヲ↡。設ヒ不ラム↠持タ↠戒ヲ、彼等悉ク已ニ為ニ↢涅槃ノ印之↡所ルヽ↠印セ也。
^▼もしまた出家して戒を持たざらんもの、 非法をもつてして悩乱をなし、 *罵辱し*毀呰せん、 *手をもつて刀杖*打縛し、 *斫截することあらん。
若シ復出家テ不ラム↠持タ↠戒ヲ者、有ム↧以テ↢非法ヲ↡而作シ↢悩乱ヲ↡、罵辱シ毀0239呰ム、以テ↠手ヲ刀杖打縛シ斫截コト↥。
^もし衣鉢を奪ひ、 および種々の*資生の具を0452奪はんもの、 この人すなはち三世の諸仏の真実の*報身を壊するなり。 すなはち一切天人の眼目を排ふなり。 この人、 諸仏所有の正法三宝の種を隠没せんと欲ふがためのゆゑに、 *もろもろの天人をして利益を得ざらしむ。 地獄に堕せんゆゑに、 三悪道増長し盈満をなすなりº」 と。 以上
若シ奪ヒ↢衣鉢ヲ↡、及ビ奪ム↢種種ノ資生ノ具ヲ↡者、是ノ人ハ則チ壊ルナリ↢三世ノ諸仏ノ真実ノ報身ヲ↡。則チ排フナリ↢一切天人ノ眼目ヲ↡。是ノ人為ノ↠欲フガ↣隠↢没ムト諸仏所有ノ正法三宝ノ種ヲ↡故ニ、令ム↢諸ノ天人ヲシテ不ラ↟得↢利益ヲ↡。堕ム↢地獄ニ↡故ニ、為スナリト↢三悪道増長シ盈満ヲ↡。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅶ)「忍辱品」(諸天善鬼神の仏弟子を擁護することを明かす)
^▼(大集経) ^「その時に、 また一切の天・竜乃至一切の迦富単那・人・非人等ありて、 みなことごとく合掌してかくのごときの言をなさく、 ªわれら、 仏の一切声聞弟子、 乃至もしまた禁戒を持たざれども、 鬚髪を剃除し袈裟を片に着んものにおいて、 師長の想をなさん。 護持養育してもろもろの所須を与へて乏少なからしめん。
*又言ク、「爾ノ時ニ復有テ↢一切ノ天・竜、乃至一切ノ迦富単那・人・非人等↡、皆悉ク合掌テ作ク↢如キノ↠是ノ言ヲ↡、我等於テ↧仏ノ一切声聞弟子、乃至若シ復不ドモ↠持タ↢禁戒ヲ↡、剃↢除シ鬚髪ヲ↡著ム↢袈裟ヲ片ニ↡者ニ↥、作ム↢師長ノ想ヲ↡。護持養育テ与テ↢諸ノ所須ヲ↡令メム↠無ラ↢乏少↡。
^もし余の天・竜乃至迦富単那等、 その悩乱をなし、 乃至悪心をして眼をもつてこれを視ば、 われらことごとくともに、 かの天・竜・富単那等所有の諸相欠減し醜陋ならしめん。 かれをしてまたわれらとともに住し、 ともに食を与ふることを得ざらしめん。 またまた同処にして戯笑を得じ。 かくのごとく*擯罰せんº」 と。 以上
若シ余ノ天・竜乃至迦富単那等、作シ↢其ノ悩乱ヲ↡、乃至悪心ヲシテ以テ↠眼ヲ視バ↠之ヲ、我等悉ク共ニ令メム↢彼ノ天・竜・富単那等、所有ノ諸相欠減シ醜陋ナラ↡。令メム↣彼ヲシテ不ラ↢復得↟与コトヲ↢我等ト共ニ住シ共ニ食ヲ↡。亦復不↠得↢同処ニシテ戯笑ヲ↡。如ク↠是ノ擯罰セムト。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (四)¬華厳経¼(諸文を総括して非法の行を誡む)
【94】^▼またのたまはく (華厳経・十地品・晋訳)、
*又言ク、
^「占相を離れて正見を修習せしめ、 決定して深く罪福の*因縁を信ずべし」 と。 抄出
「離テ↠於↢占相↡修↢習シメ正見ヲ↡、決定テ深ク信ベシト↢罪福ノ因縁ヲ↡。」 抄出
二 Ⅱ ⅱ b イ (五)¬首楞厳経¼(鬼神に近づくべからざることを示す)
【045395】^▼¬*首楞厳経¼ にのたまはく、
¬首楞厳経ニ¼言ク、
^「かれらの*諸魔、 かのもろもろの*鬼神、 かれらの*群邪、 また徒衆ありて、 *おのおのみづからいはん。 無上道を成りて、 わが滅度の後、 末法のなかに、 この魔民多からん、 この鬼神多からん、 この妖邪多からん。 世間に熾盛にして、 善知識となつてもろもろの衆生をして*愛見の坑に落さしめん。 菩提の路を失し、 *詃惑無識にして、 おそらくは心を失せしめん。 *所過の処に、 その家耗散して、 愛見の魔となりて如来の種を失せん」 と。 以上
「彼等ノ諸魔、彼ノ諸ノ鬼神、彼等ノ群邪、亦有テ↢徒衆↡、各各自ラ謂ム。成テ↢无上道ヲ↡、我ガ滅度ノ後末法之中ニ、多ラム↢此ノ魔民↡、多ラム↢此ノ鬼神↡、多ラム↢此ノ妖邪↡。熾↢盛ニシテ世間ニ↡、為テ↢善知識ト↡令メム↣諸ノ衆生ヲシテ落サ↢愛見ノ坑ニ↡。失シ↢菩提ノ路ヲ↡、詃惑無識ニシテ、恐0240クハ令メム↠失セ↠心ヲ。所過之処ニ、其ノ家*耗散テ、成テ↢愛見ノ魔ト↡失ムト↢如来ノ種ヲ↡。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (六)¬潅頂経¼(三十六神の守護を明かして鬼神を祀ることの非なるを示す)
【96】^▼¬*潅頂経¼ にのたまはく、
¬潅頂経ニ¼言ク、
^「▼*三十六部の神王、 万億恒沙の鬼神を眷属として、 相を陰し*番に代りて、 ▼*三帰を受くるひとを護る」 と。 以上
「三十六部ノ神王、万億恒沙ノ鬼神ヲ為テ↢眷属ト↡、陰シ↠相ヲ番ニ代テ、護ルト↧受ル↢三帰ヲ↡者ヲ↥。」
二 Ⅱ ⅱ b イ (七)¬地蔵十輪経¼二文(外道に帰することを遠離すべきことを明かし、邪神を祭る者は罪を得ることを明かす)
【97】^▼¬*地蔵十輪経¼ にのたまはく、
¬地蔵十輪経ニ¼言ク、
^「つぶさにまさしく帰依して、 一切の*妄執吉凶を遠離せんものは、 つひに邪神・外道に帰依せざれ」 と。 以上
「具ニ正ク帰依テ、遠↢離ムモノハ一切ノ妄執吉凶ヲ↡、終ニ不レト↣帰↢依セ邪神・外*道ニ↡。」 已上
【98】^またのたまはく (十輪経)、
又言ク、
^「あるいは種々に、 もしは少もしは多、 吉凶の相を執して、 鬼神を祭りて、 乃至 極重の大罪悪業を生じ、 *無間罪に近づく。 かくのごときの人、 もしいまだかくのごときの大罪悪業を懴悔し除滅せずは、 出家しておよび*具戒を受けしめざらんも、 もしは出家してあるいは具戒を受けしめんも、 すなはち罪を得ん」 と。 以上
「或ハ執テ↢種種ニ若ハ少若ハ多、吉凶之相ヲ↡、祭テ↢鬼神ヲ↡、 乃至 而生ジ↢極重ノ大罪悪業ヲ↡、近ヅク↢无間罪ニ↡。如キ↠是ノ之人、若シ未ダハ↤懴↢悔シ除↣滅セ如キノ↠是ノ大罪悪業ヲ↡、不ラムモ↠令メ↣出家テ及ビ受テ↢具戒ヲ↡、若ハ令メムモ↣出家テ或ハ受ケ↢具戒ヲ↡、即便チ得ムト↠罪ヲ。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (八)¬福徳三昧経¼・¬薬師経¼初文(余道・余天を拝せざることを記す)
【045499】^▼¬*集一切福徳三昧経¼ の中にのたまはく、
¬集一切福徳三昧経ノ¼中ニ言ク、
^「*余乗に向かはざれ、 余天を礼せざれ」 と。 以上
「不レ↠向ハ↢余乗ニ↡不レト↠礼セ↢余天ヲ↡。」 已上
【100】^▼¬*本願薬師経¼ にのたまはく、
¬本願薬師経ニ¼言ク、
^「▼もし浄信の善男子・善女人等ありて、 乃至*尽形までに余天に事へざれ」 と。
「若シ有テ↢浄信ノ善男子・善女人等↡、乃至尽形マデニ不レト↠事ヘ↢余天ニ↡。」
二 Ⅱ ⅱ b イ (九)¬薬師経¼(外道の妄説を信ずれば現当の重罪を得ることを明かす)
【101】^▼またのたまはく (本願薬師経)、
又言ク、
^「▼また世間の邪魔・外道、 *妖の師の妄説を信じて、 禍福すなはち生ぜん。 おそらくはややもすれば心みづから正しからず、 卜問して禍を覓め、 種々の衆生を殺さん。 神明に解奏し、 もろもろの*魍魎を呼ばうて、 福祐を請乞し、 延年を冀はんとするに、 つひに得ることあたはず。 愚痴迷惑して邪を信じ、 倒見してつひに横死せしめ、 地獄に入りて出期あることなけん。 ▼乃至
「又信テ↢世間ノ邪魔・外道・妖之師ノ妄説ヲ↡、禍福便チ生ム。恐クハ動バ心不↢自ラ正カラ↡、卜問テ覓メ↠禍ヲ、殺ム↢種種ノ衆生ヲ↡。解↢奏シ神明ニ↡、呼フテ↢諸ノ魍魎ヲ↡、請↢乞シ福祐ヲ↡、欲ルニ↠冀ムト↢延年ヲ↡、終ニ不↠能ハ↠得コト。愚痴迷惑テ信ジ↠邪ヲ、倒見テ遂ニ令メ↢横死セ↡、入テ↢於地獄ニ↡無ケム↠有コト↢出期↡。 乃至
^▼八つには、 横に毒薬・*厭祷・呪咀し、 *起屍鬼等のために中害せらる」 と。 以上抄出
八ニ者横ニ為ニ↢毒薬・厭祷・呪咀シ、起屍鬼等之↡所ルト↢中害セ↡。」 *抄出已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (十)¬菩薩戒経¼(鬼神を礼すべからざるの意を彰す)
【102】^▼¬*菩薩戒経¼ にのたまはく、
¬菩0241薩戒経ニ¼言ク、
^「出家の人の法は、 国王に向かひて礼拝せず、 父母に向かひて礼拝せず、 *六親に務へず、 鬼神を礼せず」 と。 以上
「出家ノ人ノ法ハ、不↧向テ↢国王ニ↡礼拝セ↥、不↧向テ↢父母ニ↡礼拝セ↥、六親ニ不↠務ヘ、鬼神ヲ不ト↠礼セ。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b イ (士)¬仏本行集経¼(捨邪帰正はすべからく三迦葉の如くなるべきことを示す)
【103】^▼¬*仏本行集経¼ *闍那崛多の訳 の第四十二巻 「優婆斯那品」 にのたまはく、
¬仏本行集経ノ¼ *闍那崛多ノ訳 第四十二巻ニ「優婆斯那品ニ」*言ク、
^「その時に、 かの▼*三迦葉兄弟にひとりの*外甥、 *螺髻梵志あり。 その梵志0455を優婆斯那と名づく。 乃至
「爾ノ時ニ彼ノ三迦葉兄弟ニ有リ↢一ノ外甥 *甥字 螺髻梵志↡。其ノ梵志ヲ名ク↢優婆斯那ト↡。 乃至
^つねに二百五十の螺髻梵志弟子とともに仙道を修学しき。 かれその*舅迦葉三人を聞くに、 もろもろの弟子、 かの*大沙門の辺に往詣して、 阿舅鬚髪を剃除し、 袈裟衣を着ると。 見をはりて、 舅に向かひて偈を説きていはく、
恒ニ共ニ↢二百五十ノ螺髻梵志弟子ト↡修↢学キ仙道ヲ↡。彼聞クニ↢其ノ舅 *舅字 迦葉三人ヲ↡、諸ノ弟子、往↢詣テ於彼ノ大沙門ノ辺ニ↡、阿舅剃↢除シ鬚髪ヲ↡、著ルト↢袈裟衣ヲ↡。見已テ向ヒ↠舅ニ而説テ↠偈ヲ言ク、
^ª舅等虚しく火を祀ること百年、 またまた空しくかの苦行を修しき。 今日同じくこの法を捨つること、 なほ蛇の故き皮を脱ぐがごとくするをやº と。
舅等虚ク祀コト↠火ヲ百年 | 亦復空ク修キ↢彼ノ苦行ヲ↡ |
今日同ク捨コト↢於此ノ法ヲ↡ | 猶如クスルヲヤ↣蛇ノ脱グガ↢於故キ皮ヲ↡ |
^その時に、 かの舅迦葉三人、 同じくともに偈をもつて、 その外甥、 優婆斯那に報じてかくのごときの言をなさく、
爾ノ時ニ彼ノ舅迦葉三人、同ク共ニ以テ↠偈ヲ、報テ↢其ノ外甥優婆斯那ニ↡作ク↢如キノ↠是ノ言ヲ↡、
^ªわれら昔、 空しく火神を祀りて、 またまたいたづらに苦行を修しき。 われら今日この法を捨つること、 まことに蛇の故き皮を脱ぐがごとくすº」 と。 抄出
我等昔空ク祀テ↢火神ヲ↡ | 亦復徒ニ修キ↢於苦行ヲ↡ |
我等今日捨コト↢此ノ法ヲ↡ | 実ニ如クスト↣蛇ノ脱グガ↢於故キ皮ヲ↡」 抄出
|
二 Ⅱ ⅱ b ロ 論
(一)馬鳴¬起信論¼(他の緇徒の魔の為に誑惑せられて出離を失することを誡む)
【104】^▼¬*起信論¼ にいはく、
¬起信論ニ¼曰ク、
^「あるいは衆生ありて、 善根力なければ、 すなはち諸魔・外道・鬼神のために*誑惑せらる。 もしは坐中にして形を現じて恐怖せしむ、 あるいは端正の男女等の相を現ず。 まさに唯心の境界を念ずべし、 すなはち滅してつひに悩をなさず。
「或ハ有テ↢衆生↡、無レバ↢善根力↡、則チ為ニ↢諸魔・外道・鬼神ノ↡所ル↢誑惑セ↡。若ハ於テ↢座中ニ↡現テ↠形ヲ恐怖シム、或ハ現ズ↢端正ノ男女等ノ相ヲ↡。当ニシ↠念ズ↢唯心ノ境界ヲ↡、則チ滅テ終ニ不↠為サ↠悩ヲ。
^あるいは天像・菩薩像を現じ、 また如来像の相好具足せるをなして、 もしは*陀羅尼を説き、 もしは布施・持戒・忍辱・精進0456・禅定・智慧を説き、 あるいは平等、 空・無相・無願、 無怨無親、 無因無果、 畢竟空寂、 これ真の涅槃なりと説かん。
或ハ現ジ↢天像・菩薩像ヲ↡、亦作テ↢如来像ノ相好具足セルヲ↡、若ハ説キ↢陀羅尼ヲ↡、若ハ説0242キ↢布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧ヲ↡、或ハ説ム↢平等、空・无相・無願、無怨*無親、無因無果、畢竟空寂、是真ノ涅槃ナリト↡。
^あるいは人をして宿命過去の事を知らしめ、 また未来の事を知る。 *他心智を得、 弁才無礙ならしむ。 よく衆生をして世間の*名利の事に貪着せしむ。
或ハ令メ↣人ヲシテ知ラ↢宿命過去之事ヲ↡、亦知ル↢未来之事ヲ↡。得↢他心智ヲ↡、弁才無ナラシム。能ク令ム↣衆生ヲシテ貪↢著セ世間ノ名利之事ニ↡。
^また人をしてしばしば瞋り、 しばしば喜ばしめ、 *性無常の准ひならしむ。 あるいは多く慈愛し、 多く睡り、 宿ること多く、 多く病す、 その心懈怠なり。
又令ム↧使メ↢人ヲシテ数バ瞋リ数バ喜バ↡、性无常ノ准ナラ↥。或ハ多ク慈愛シ、多ク睡リ、多ク↠宿ル、多ク病ス。其ノ心懈怠ナリ。
^あるいはにはかに精進を起して、 後にはすなはち休廃す。 不信を生じて疑多く、 慮り多し。
或ハ率ニ起テ↢精進ヲ↡、後ニハ便チ休廃ス。生テ↢於不信ヲ↡多ク↠疑多シ↠慮。
^あるいはもとの勝行を捨てて、 さらに雑業を修せしめ、 もしは世事に着せしめ、 種々に*牽纏せらる。
或ハ捨テ↢本ノ勝行ヲ↡、更ニ修シメ↢雑業ヲ↡、若ハ著シメ↢世事ニ↡、種種ニ牽纏ラル。
^またよく人をしてもろもろの三昧の少分相似せるを得しむ。 みなこれ外道の所得なり、 真の三昧にあらず。
亦能ク使ム↣人ヲシテ得↢諸ノ三昧ノ少分相似セルヲ↡。皆是外道ノ所得ナリ、非ズ↢真ノ三昧ニ↡。
^あるいはまた人をして、 もしは一日、 もしは二日、 もしは三日、 乃至七日、 定中に住して自然の香味飲食を得しむ。 *身心適悦して、 飢ゑず渇かず、 人をして*愛着せしむ。
或ハ復令ム↧人ヲシテ若ハ一日、若ハ二日、若ハ三日、乃至七日、住テ↢於定中ニ↡得↦自然ノ香美飲食ヲ↥。身心適悦テ、不↠飢ヱ不↠渇カ、使ム↢人ヲシテ愛著セ↡。
^あるいはまた人をして食に*分斉なからしむ、 たちまち多く、 たちまち少なくして、 顔色変異す。
或ハ亦令ム↣人ヲシテ食ニ無ラ↢分斉↡。乍チ多ク乍チ少クシテ、顔色変異ス。
^この義をもつてのゆゑに、 行者つねに智慧をして観察して、 この心をして邪網に堕せしむることなかるべし。 まさにつとめて正念にして、 取らず着せずして、 すなは0457ちよくこのもろもろの業障を遠離すべし。 知るべし、 外道の所有の三昧は、 みな*見愛我慢の心を離れず、 世間の*名利恭敬に貪着するがゆゑなり」 と。 以上
以ノ↢是ノ義ヲ↡故ニ行者常ニ応シ↢智慧ヲシテ観察テ、勿ル↟令コト↣此ノ心ヲシテ堕セ↢於邪網ニ↡。当ニシ↣勤テ正念ニシテ、不↠取ラ不シテ↠著セ、則チ能ク遠↢離ス是ノ諸ノ業障ヲ↡。応シ↠知ル外道ノ所有ノ三昧ハ、皆不↠離レ↢見愛我慢之心ヲ↡。貪↢著ルガ世間ノ名利恭敬ニ↡故ナリト。」 已上
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)法琳¬弁正論¼一三文(一を以て諸を例し人をして自余の道は此に類することを知らしむ)
【105】^¬▼*弁正論¼ *法琳の撰 にいはく、
¬弁正論ニ¼ 法琳ノ撰 曰ク、
^「▼*十喩九箴篇、 答す、 ▼*李道士、 ▼十異▼九迷。
十喩九箴篇、答ス。李道士十異九述。
^*外の▼一異にいはく、 ª^*太上老君は、 *神を*玄妙玉女に託して、 左腋を割きて生れたり。 釈迦牟尼は、 胎を*摩耶夫人に寄せて、 右脇を開きて出でたりº と。 乃至
外ノ一異ニ曰ク、
太子老君ハ託テ↢神ヲ玄妙玉女ニ↡、割キ↢左腋ヲ↡而生タリ。
釈0243迦牟尼ハ、寄テ↢胎ヲ摩*邪夫人ニ↡、開キ↢右脇ヲ↡而出タリト。 乃至
^*内の▼一喩にいはく、 ª老君は常に逆ひ、 牧女に託して左より出づ。 世尊は化に順ひて、 聖母によりて右より出でたまふº と。
内ノ一喩ニ曰ク、
老君ハ逆ヒ↠常ニ、託キ↢牧女ニ↡而左ヨリ出ヅ。
世尊ハ順テ↠化ニ、因リ↢聖母ニ↡而右ヨリ出タマフト。
^*開士のいはく、 ª▼慮景裕・戴詵・韋処玄等が*解五千文、 および梁の元帝・▼周弘政等が*考義類を案ずるにいはく、 ▼太上に四つあり、 いはく*三皇および*尭・舜これなり。
開士ノ曰ク、案ルニ↢慮景裕・戴詵・韋処玄等ガ解五千文、及ビ梁ノ元帝・周弘政等ガ老義類ヲ↡云ク、太上ニ有リ↠四、謂ク三皇及ビ尭・舜是也。
^いふこころは、 上古にこの大徳の君あり、 万民の上に臨めり。 ゆゑに太上といふなり。 *郭荘がいはく、 «時にこれを賢とするところのものを君とす。 *材、 世に称せられざるものを臣とす» と。
言ハ上古ニ有リ↢此ノ大徳之君↡、臨リ↢万民ノ上ニ↡。故ニ云フ↢太上ト↡也。郭荘ガ云ク、時ニ之ヲ所ノ↠賢トスル者ヲ為↠君ト。材不ル↠称セラレ↠世ニ者ヲ為ト↠臣ト。
^老子、 帝にあらず、 皇にあらず、 四種の限りにあらず。 いづれの典拠ありてか、 たやすく太上と称するや。
老子非ズ↠帝ニ非ズ↠皇ニ、不↠在ラ↢四種之限ニ↡。有テカ↢何ノ典拠↡、輒ク称ル↢太上ト↡邪。
^道家が ¬*玄妙¼ および ¬中台¼・¬朱韜玉扎¼ 等の経、 ならびに ¬出塞記¼ を0458検ふるにいはく、 老はこれ李母が生めるところ、 玄妙玉女ありといはず。 すでに正説にあらず、 もつとも仮の謬談なり。
撿ルニ↢道家ガ¬玄妙¼及ビ¬中胎¼・¬朱韜王礼¼等ノ経、并ニ¬出塞記ヲ¼↡云ク、老ハ是李母ガ所↠生ル、不↠云ハ↠有リト↢玄妙玉女↡。既ニ非ズ↢正説ニ↡、尤モ仮ノ謬談也。
^¬*仙人玉録¼ にいはく、 «^仙人は妻なし、 玉女は夫なし。 女形を受けたりといへども、 つひに産せず» と。 ^もしこの瑞あらば、 まことに嘉とすべしといふ。 いづれぞせん、 ¬*史記¼ にも文なし、 ¬*周書¼ に載せず。 虚を求めて実を責めば、 矯盲のものの言を信ずるならくのみと。
¬仙人玉録ニ¼云ク、仙人ハ無シ↠妻、玉女ハ無シ↠夫。雖モ↠受タリト↢女形ヲ↡、畢竟ニ不↠産セ。若シ有バ↢茲ノ瑞↡、誠ニ曰フ↠可シト↠嘉トス。何ゾ為ム、¬史記ニモ¼無シ↠文、¬周書ニ¼不↠載セ。求テ↠虚ヲ責バ↠実ヲ、信ル↢矯盲ノ者之言ヲ↡耳ト。
^¬*礼¼ にいはく、 «^官を退きて位なきものは左遷す» と。
¬礼ニ¼云ク、退テ↠官ヲ無キ↠位者左遷スト。
^¬*論語¼ にいはく、 «^*左衽は礼にあらざるなり» と。
¬論語ニ¼云ク、左衽者非ル↠礼ニ也ト。
^もし左をもつて右に勝るとせんは、 道士行道するに、 なんぞ左に旋らずして右に還つて転るや。 国の詔書にみないはく、 «右のごとし» と。 ならびに天の常に順ふなり。 º と。 ▼乃至
若シ以テ↠左ヲ勝トセム↠右ニ者、道上行道ルニ、何ゾ不↢左ニ旋ラ↡而還テ↠右ニ転ル邪。国之詔書ニ皆云ク、如シト↠右ノ。並ニ順フ↢天之常ニ↡也ト。 乃至
^外の▼四異にいはく、 ª^老君は*文王の日、 *隆周の宗師たり。 釈迦は*荘王の時、 *罽賓の教主たりº と。
外0244ノ四異ニ曰ク、
老君ハ文王之*日、為リ↢隆周之宗師↡。
釈迦ハ荘王之時、為リト↢罽賓之教主↡。
^内の▼四喩にいはく、 ª▼*伯陽は職小臣に処り、 かたじけなく▼*蔵吏に充れり。 文王の日にあらず、 また隆周の師にあらず。 牟尼は、 位太子に居して、 身特尊を証したまへり。 *昭王の盛年に当れり、 閻浮の教主たりº と。 乃至
内ノ四喩ニ曰ク、
伯楊ハ職処リ↢小臣ニ↡、忝ク充レリ↢蔵吏ニ↡。不↠*在ラ↢文王之*日ニ↡、亦非ズ↢隆周之師ニ↡。
牟尼ハ位居テ↢太子ニ↡、身証タマヘリ↢特尊ヲ↡。当レリ↢*昭王之盛年ニ↡、為リト↢閻浮ノ教主↡。 乃至
^外の▼六異にいはく、 ª^老君は世に降して、 始め*周文の日より*孔丘の時に訖れり0459。 釈迦ははじめて*浄飯の家に下生して、 わが荘王の世に当れりº と。
外ノ六異ニ曰ク、
老君ハ降シテ↠世ニ、始メ自リ↢周文之日↡訖レリ↢于孔丘之時ニ↡。
釈迦ハ下↢生テ肇テ於浄飯之家ニ↡、当レリト↢我ガ荘王之世ニ↡。
^内の▼六喩にいはく、 ª▼*迦葉は▼*桓王丁卯の歳に生れて、 ▼*景王壬午の年に終る。 孔丘の時に訖ふといへども、 ▼*姫昌の世に出でず。 *調御は▼*昭王甲寅の年に誕じて、 ▼**穆王壬申の歳に終る。 これ浄飯の*胤たり。 もと▼荘王の前に出でたまへりº と。
内ノ六喩ニ曰ク、
迦葉ハ生テ↢桓王丁卯之歳ニ↡、終フ↢景王壬午之年ニ↡。雖モ↠訖フト↢孔丘之時ニ↡、不↠出デ↢姫昌之世ニ↡。
調御ハ誕ジテ↢昭王甲寅之年ニ↡、終フ↢穆王壬申之歳ニ↡。是為リ↢浄飯之胤↡。本出タマヘリト↢荘王之前ニ↡。
^開士のいはく、 ª孔子、 周に至りて、 *老耼を見て礼を問ふ。 ここに ¬史記¼ につぶさに顕る。 文王の師たること、 すなはち典証なし。 周の末に出でたり、 そのこと尋ぬべし。 周の初めにありしごときは史文に載せずº と。 ▼乃至
開0245士ノ曰ク、孔子至テ↠周ニ、見↢老耼ヲ、而問フ↠礼ヲ。焉ニ¬史記ニ¼具ニ顕ル。為ルコト↢文王ノ師↡、則チ無シ↢典証↡。出タリ↢於周ノ末ニ↡、其ノ事可シ↠尋ヌ↢。周ノ初ニ↡。史文ニ不↠載セ。 乃至
^外の▼七異にいはく、 ª^老君はじめて周の代に生れて、 晩に*流沙に適く。 始終を測らず、 方所を知ることなし。 釈迦は西国 (印度) に生じて、 かの*提河に終りぬ。 弟子胸を搥ち、 *群胡大きに叫ぶº と。
外ノ七異ニ曰ク、
老君初テ生テ↢周ノ代ニ↡、晩ニ適ク↢流沙ニ↡。不↠測ラ↢始終ヲ↡、莫シ↠知コト↢方所ヲ↡。
釈迦ハ生ジテ↢於西国ニ↡、終リヌ↢彼ノ提河ニ↡。弟子捉チ タヽク ↠胸ヲ、群胡大ニ叫ブト。
^内の▼七喩にいはく、 ª老子は頼郷に生れて、 槐里に葬らる。 *秦佚の弔に詳らかにす。 責め*遁天の形にあり。 *瞿曇はかの王宮に出でて、 この*鵠樹に隠れたまふ。 *漢明の世に伝はりて、 ひそかに*蘭台の書にましますº と。
内ノ七喩ニ曰ク、
老子ハ生テ↢於頼郷ニ↡、葬ラル↢於槐里ニ↡。詳ニス↠乎↢秦佚之弔↡。責在リ↢遁天之形ニ↡。
瞿曇ハ出テ↢彼ノ王宮ニ↡、隠タマフ↢慈ノ鵠樹ニ↡。伝リテ↢乎漢明之世ニ↡、秘ニ在スト↢蘭台之書ニ↡。
^開士のいはく、 ª¬*荘子¼ の内篇にいはく、 «^老耼死して秦佚弔ふ。 ここに三たび号んで出づ。 弟子怪しんで問ふ。 "*夫子の徒にあらざるか" と。 ^秦佚いはく0460、 "向にわれ入りて少きものを見るに、 これを哭す、 その父を哭するがごとく、 老者これを哭す、 その子を哭するがごとし。 古はこれを遁天の形といふ。 始めはおもへらく、 その人なりと、 しかるにいま非なり"» と。
開士ノ曰ク、¬荘子ノ¼内篇ニ云ク、老耼死テ秦佚弔フ。焉ニ三タビ号ム而出ヅ。弟子怪デ問フ。非ル↢夫子之徒ニ↡歟ト。秦佚曰ク、向ニ吾入テ見ニ↢少オサナキ者ヲ↡、哭ナクス↠之ヲ如ク↠哭ルガ↢其ノ父ヲ↡、老者哭ス↠之ヲ如シ↠哭ルガ↢其ノ子ヲ↡。古者※謂フ↢之ヲ遁天之形ト↡。始ハ以為其ノ人也ト、而ニ今非也ト。
^遁は隠なり、 天は免縛なり、 形は身なり。 いふこころは、 始め老子をもつて*免縛形の仙とす、 いますなはち非なり。 ああ、 その諂曲して人の情を取る。 ゆゑに死を免れず。 わが友にあらずº と。 ▼乃至
遁者隠也、天者免縛也、形者身也。言ハ始メ以テ↢老子ヲ↡為↢免縛形之仙ト↡、今則チ非也。嗟其ノ諂レル典取ル↢人之情ヲ↡。故ニ不↠免レ↠死ヲ。非ズト↢我ガ友ニ↡。 乃至
^▼内の十喩、 答す、 外の十異。
内ノ十喩答ス外ノ十異。
^▼外は生より左右異なる一。 ▼内は生より勝劣あり。
外0246ハ従リ↠生左右異ル一。内ハ従リ↠生有リ↢勝劣↡。
^▼内に喩していはく、 ª左衽はすなはち*戎狄の尊むところ、 *右命は中華の尚むところとす。
内ニ喩テ曰ク、左衽ハ則チ 戎ニシノエビス 狄ノキタノエビス所↠尊ム、右命ハ為↢中華ノ所ト↟尚ム。
^ゆゑに ¬*春秋¼ にいはく、 «^*冢卿は命なし、 *介卿はこれあり、 *また左にあらざるや» と。
故ニ¬春秋ニ¼云ク、冢卿ハ無シ↠命、介卿ハ有リ↠之、不ザル↢亦左ニ↡乎ト。
^¬史記¼ にいはく、 «^▼*藺相如は功大きにして、 位*廉頗が右にあり、 ˆ廉頗ˇ これを恥づ» と。
¬史記ニ¼云ク、藺相如ハ功大キニシテ、位在リ↢*麁頗ガ右ニ↡、恥ヅ↠之ヲ。
^またいはく、 «^*張儀相、 秦を右にして魏を左にす。 *犀首相、 ▼韓を右にして魏を左にす» と。 ^けだしいはく、 便りならざるなり。
又云ク、張儀相右ニ↠秦ヲ而左ニス↠魏ヲ。犀首相右ニ↠緯ヲ而左ニス↠魏ヲ。蓋ニ云ク、不ル↠便ナラ也。
^¬礼¼ にいはく、 «^*左道乱群をばこれを殺す» と。 ^あに右は優りて左は劣れるにあらずや。
¬礼ニ¼云ク、左道乱群ヲバ殺スト↠之ヲ。豈ニ非ズ↢右ハ優リ而左ハ劣ルニ↡也。
^*皇甫謐が ¬*高士