1164◎六ろく要よう鈔しょう第だい四し

 

二 Ⅱ ⅳ 証

【1】 ◎△当巻とうかん大門だいもん第だい四しに証しょうを明あかす。

◎当巻大門第四ニ明ス↠証ヲ。

中なかにおいて四しあり。 一いちは題目だいもく、 二には標ひょう挙こ、 二に段だん▲前さきのごとし。 ▽三さんは正釈しょうしゃく、 文もんの初はじめより ¬論ろんの註ちゅう¼ に第だい五ごの功く徳どくの相そうを判はんずるところの釈しゃくを引ひきて、 註ちゅうに 「以い上じょう鈔出しょうしゅつ」 という文もんに至いたるまでこれを正釈しょうしゃくとなす。 四しは総結そうけつ、 「爾に者しゃ」 以下いげ巻かんの終おわりに至いたるまで、 これその文もんなり。

-於テ↠中ニ有リ↠四。一者▽題目、二者▽標挙、二段如シ↠前ノ。三者正釈、自↢文ノ之初↡至マデ↩引テ↧¬論ノ註ニ¼所ノ↠判ズル↢第五ノ功徳ノ相ヲ↡釈ヲ↥註ニ云フ↢「已上鈔出ト」↡之文ニ↨是ヲ為ス↢正釈ト↡。四者▽総結、「爾者」已下至マデ↢巻ノ之終ニ↡、是 レ其ノ文也。

二 Ⅱ ⅳ a 題目

【2】 一いちに題目だいもくに二にを分わかつこと、 前さきに準じゅんじて知しるべし。 真実しんじつの信しんによりて真実しんじつの証しょうを得う。 信しん証しょう次ついでありて三さん四し数かずを成じょうず。

一ニ△題目ニ分コト↠二ヲ、准ジテ↠▲前ニ応シ↠知ル。依テ↢真実ノ信ニ↡得ウ↢真実ノ証ヲ↡。信証有テ↠次三四成ズ↠数ヲ。

二 Ⅱ ⅳ b 標挙

【3】 二にに標ひょう挙こといふは、 題だいの次つぎの一いち行ぎょう、 第だい十じゅう一いちの願がん、 これすなはち 「必ひっ至し滅めつ度どの願がん」、 また住じゅ正定しょうじょう聚じゅの願がんといふ。

二ニ言↢△標挙ト↡者、題ノ次ノ一行、第十一ノ願、是則「必至滅度之願」、亦云フ↢住正定聚之願ト↡。

その下しもの註ちゅうに 「↓難なん思議じぎ往おう生じょう」 といふ意こころは、 ¬法ほう事じ讃さん¼ の中なかに釈しゃくするところの三種さんしゅ往おう生じょうの中なかのその一いちの名ななり。 三種さんしゅの内うちこれを真実しんじつとなす。 難なん思議じぎ往おう生じょうの益やくによりて得うるところの証しょう、 これを 「無む上じょう涅ね槃はんの果か」 となす。

其ノ下之註ニ言フ↢「▲難思議往生ト」↡意者、▲¬法事讃ノ¼中ニ所ノ↠釈スル三種往生ノ之中ノ其ノ一ノ名也。三種ノ之内為ス↢之ヲ真実ト↡。依テ↢難思議往生之益ニ↡所ノ↠得ル之証、是ヲ為ス↢「▲无上涅槃ノ之果ト」↡。

問とふ。 いま挙あぐるところの外ほかの二に種しゅいかん。

-問。今所ノ↠挙ル外ノ二種云何。

答こたふ。 第六だいろっ巻かんにあり、 下しもを待まつべし。

-答。在リ↢▲第六巻ニ↡、可↠待↠下ヲ也。

問とふ。 この往おう生じょうを嘆たんじて 「↑難なん思議じぎ」 といふ、 その意こころいかん。

-問。嘆ジテ↢此ノ往生ヲ↡云フ↢「難思議ト」↡、其ノ意如何。

答こたふ。 仏ぶつを不可ふか思議しぎ光仏こうぶつと号とうす。 かの誓願せいがんに帰きして往おう生じょうを得うるがゆゑに往おう生じょうの徳とくを指さして 「難なん思議じぎ」 といふ。 これすなはち罪悪ざいあく生しょう死じの凡ぼん夫ぶ、 無有むう出しゅつ離り之し縁えんの下機げき、 ひとへに仏力ぶつりきによりて報ほう法ぼう高こう妙みょうの浄じょう土どに入いることを得う。 さらに凡心ぼんしんの思し度たくするところにあらず、 さらに口く言ごんの及およぶべきところにあらず。 このゆゑに嘆たんじて 「難なん思議じぎ」 といふなり。

-答。仏ヲ号ス↢不可思議光仏ト↡。帰シテ↢彼ノ誓願ニ↡得ガ↢往生ヲ↡故ニ指シテ↢往生ノ徳ヲ↡云フ↢「難思議ト」↡。是則罪悪生死ノ凡夫、無有出離之縁ノ下機、偏ニ由テ↢仏力ニ↡得ウ↠入コトヲ↢報法高妙ノ浄土ニ↡。更1165ニ非ズ↣凡心ノ之所ニ↢思度スル↡、更ニ非ズ↢口言ノ之所ニ↟可↠及。是ノ故ニ嘆ジテ言↢「難思議ト」↡也。

二 Ⅱ ⅳ c 正釈

【4】 △正釈しょうしゃくの中なかに就つきて、 文もんを分わかちて二にとなす。 ▽文もんの初はじめより 「報応ほうおう化け種々しゅじゅ身しん也や」 に至いたるまでは、 総そうじて大たい意いを標ひょうす。 ▽「必ひっ至し」 以下いげはまさしく諸文しょもんを引ひきかねてわたくしの釈しゃくを加くわふ。

就テ↢正釈ノ中ニ↡、分テ↠文ヲ為ス↠二ト。自↢文之初↡至マデハ↢「報応化種種身也ニ」↡、総ジテ標ス↢大意ヲ↡。「必至」以下ハ正ク引キ↢諸文ヲ↡兼テ加フ↢私ノ釈ヲ↡。

二 Ⅱ ⅳ c イ 総標

【5】 △まづ総そう標ひょうの中なかに就つきて、

先ヅ就テ↢総標ノ中ニ↡、

「謹顕きんけん」 とらは、 まさしく当巻とうかん所しょ立りゅうの名なを標ひょうす。

-「▲謹顕ト」等者、正ク標ス↢当巻所立之名ヲ↡。

「利他りた」 とらは、 これ証しょう道どうをさす。 あるいは初しょ地じ以い上じょうを指さし、 あるいは八はち地じ以い上じょう乃ない至し等覚とうがく補ふ処しょを指さす。 これすなはち衆しゅ生じょう生しょうずる者ものみなこれ阿鞞あび跋ばっ致ち。 仏ぶつの大願だいがん業力ごうりきによりて得うるところの希奇けきの益やくなり。

-「▲利他ト」等者、是 レ指ス↢証道ヲ↡。或ハ指シ↢初地已上ヲ↡、或ハ指ス↢八地已上乃至等覚補処ヲ↡。是則衆生生ズル者皆是 レ阿鞞跋致。由テ↢仏ノ大願業力ニ↡所ノ↠得ル希奇ノ益也。

「無む上じょう」 とらは、 これ妙みょう覚がく無む上じょうの位くらいを指さす。 かならず補ふ処しょに至いたりて窮ぐう極ごくすべきところの妙みょう果かなり。

-「▲无上ト」等者、是 レ指ス↢妙覚无上ノ之位ヲ↡。必至テ↢補処ニ↡所ノ↠可↢窮極ス↡之妙果也。

「即そく時じ」 とらは、

-「▲即時ト」等者、

問とふ。 当願とうがんの意こころ、 不ふ退たいの位くらいを得うることは往おう生じょうの後のちに約やくす。 かの土どの徳とくなるがゆゑに。 しかるにいまのごとくは、 現げん生しょうに約やくするか、 その意こころいかん。

-問。当願ノ之意、得コトハ↢不退ノ位ヲ↡約ス↢往生ノ後ニ↡。彼ノ土ノ徳ナルガ故ニ。而ニ如ク↠今ノ者、約スル↢現生ニ↡哉、其ノ意如何。

答こたふ。 ▽これに隠顕おんけん・傍ぼう正しょう等とうの意こころあり。 もし顕けん正しょうによらば生しょう後ごの益やくに約やくす、 もし隠傍おんぼうによらば現げん生しょうの益やくに約やくす。

-答。此ニ有リ↢隠顕・傍正等ノ意↡。若シ拠ラバ↢顕正ニ↡約ス↢生後ノ益ニ↡、若シ依ラバ↢隠傍ニ↡約ス↢現生ノ益ニ↡。

これによりてあるいは (大経巻下) 「▲即得そくとく往おう生じょう住じゅ不ふ退転たいてん」 といひ、 あるいは 「皆悉かいしつ到とう彼ひ国こく自致じち不ふ退転たいてん」 といふ、 おのおの料りょう簡けんあり。

-依テ↠之ニ或ハ云ヒ↢「即得往生住不退転ト」↡、或ハ云フ↢「▲皆悉到彼国自致不退転ト」↡、各有リ↢料簡↡。

このゆゑに ¬十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼ (巻五易行品) にもしは 「即そく入にゅう必ひつ定じょう」 といひ、 もしは 「欲よく於お此し身しん」 といふ、 みな即そく時じに約やくす、 これ現げん生しょうの意こころなり。

-是ノ故ニ¬十住毘婆沙論ニ¼若ハ云ヒ↢「▲即入必定ト」↡、若ハ云フ↢「▲欲於此身ト」↡。皆約ス↢即時ニ↡、是 レ現生ノ意ナリ。

これらの義ぎによりてこの釈しゃくあるなり。 この義ぎつぶさに▲第だい二に巻かんの新本しんぽんの中なかに載のせたり、 よろしくかの解げを見みるべし。

-依テ↢此等ノ義ニ↡有↢此ノ釈↡也。此ノ義具ニ載タリ↢第二巻ノ新本ノ之中ニ↡、宜ク↠見ル↢彼ノ解ヲ↡。

二 Ⅱ ⅳ c ロ 正引

【6】 △次つぎに正しょう引いんの中なかに、 まづ彼此ひし両経りょうきょうの五ご文もんを出いだす。

次ニ正引ノ中ニ、先ヅ出ス↢彼此両経ノ五文ヲ↡。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ 願文

【7】 初はじめにまさしき願文がんもん。

初1166ニ▲正キ願文。

問とふ。 当願とうがんの大たい意いいかん。

-問。当願ノ大意云何。

答こたふ。 因いん位に所見しょけんの諸しょ土どの中なかに、 あるいは仏道ぶつどう修しゅ行ぎょうを致いたすといへども退たいして邪聚じゃじゅに入いるあり、 あるいは退たいせずしてすみやかに菩ぼ提だいを得うるあり。 法蔵ほうぞうかの退たい堕だの類るいを憫愍びんみんして、 かの類るいをして正定しょうじょう聚じゅに住じゅうせしめて、 つひに涅ね槃はんの妙みょう理りを証しょうせしめんがためのゆゑに、 この願がんを発おこしたまふなり。

-答。因位所見ノ諸土ノ之中ニ、或ハ有リ↧雖ヘ↠致スト↢仏道修行ヲ↡退テ入ル↦邪聚ニ↥、或ハ有リ↣不シテ↠退セ速ニ得ル↢菩提ヲ↡。法蔵憫↢愍シテ彼ノ退堕ノ類ヲ↡、為ノ↧令 シメテ↣彼ノ類ヲシテ住セ↢正定聚ニ↡、終ニ証セシメンガ↦涅槃之妙理ヲ↥故ニ、発シタマフ↢此ノ願ヲ↡也。

問とふ。 定じょう聚じゅ・滅めつ度どはこれ二に益やくか、 また一益いちやくか。

-問。▲定聚・滅度ハ是 レ二益歟、又一益歟。

答こたふ。 これ二に益やくなり。 定じょう聚じゅといふは、 これ不ふ退たいに当あたる、 滅めつ度どといふは、 これ涅ね槃はんを指さす。

-答。是 レ二益也。言↢定聚ト↡者是 レ当ル↢不退ニ↡、言↢滅度ト↡者是 レ指ス↢涅槃ヲ↡。

問とふ。 定じょう聚じゅ・滅めつ度ど、 いづれをか願がんの体たいとする。

-問。▲定聚・滅度、何ヲカ為スル↢願ノ体ト↡。

答こたふ。 諸しょ師しの意こころ、 多おおく不ふ退たいをもつてその願がんの体たいとす。 いはゆる寂じゃくは (大経義記巻中) 「令住りょうじゅう定じょう聚じゅ」 といひ、 法ほう位い師しは (大経義疏) 「願がん住じゅう定じょう聚じゅ」 といひ、 玄一げんいち師しは (大経記巻上意) 「住じゅう定じょう聚じゅの願がん」 といひ、 静照じょうしょう (四十八願釈意)・真源しんげんはともに 「住じゅう必ひつ定じょう聚じゅの願がん」 と名なづく。

-答。諸師ノ之意、多ク以テ↢不退ヲ↡為ス↢其ノ願ノ体ト↡。所謂寂ハ云ヒ↢「令住定聚ト」↡、法位師ハ云ヒ↢「願住定聚ト」↡、玄一師ハ云ヒ↢「住定聚ノ願ト」↡、静照・真源ハ共ニ名ク↢「住必定聚ノ之願ト」↡。

ただしかの御ご廟びょう (九品往生義)・智ち光こう (無量寿経論釈巻二) の二に徳とくはならびに 「住じゅう正定しょうじょう聚じゅ必ひっ至し菩ぼ提だいの願がん」 といふ、 これ両りょう益やくを挙あぐ、 この名なのごときは、 なにをもつて所願しょがんの体たいとなすといふことを定さだめがたし。 もし初益しょやくに約やくせば不ふ退たいたるべし、 もし究く竟きょうに約やくせば滅めつ度どたるべし。

-但シ彼ノ御廟・智光ノ二徳ハ並ニ云フ↢「住正定聚必至菩提ノ之願ト」↡、是 レ挙グ↢両益ヲ↡。如↢此ノ名ノ↡者、難シ↠定メ↣以テ↠何ヲ為スト云コトヲ↢所願ノ之体ト↡。若シ約セバ↢初益ニ↡可シ↠為タル↢不退↡、若シ約セバ↢究竟ニ↡可シ↠為↢滅度↡。

いまこの集しゅうの意こころ、 その終じゅう益やくに就つきて名なを立たてらるるか。

-今此ノ集ノ意、就テ↢其ノ終益ニ↡被↠立↠名ヲ歟。

問とふ。 「滅めつ度ど」 といふは、 大だい小しょう二に乗じょう所しょ証しょうの理り、 ともにこの名なを得う、 いまいづれを指さすや。

-問。言↢「▲滅度ト」↡者、大小二乗所証ノ之理、共ニ得↢此ノ名ヲ↡。今指↠何ヲ耶。

答こたふ。 大だい乗じょうの滅めつ度どなること、 文もん↓理りともに明あきらかなり。 その文もんといふは、 ▲次下つぎしもに引ひくところの ¬如来にょらい会え¼ の文もん、 その説せつ分ぶん明みょうなり。

-答。大乗ノ滅度ナルコト、文理共ニ明ナリ。言↢其ノ文↡者、次 ギ下ニ所ノ↠引ク¬如来会ノ¼文、其説分明ナリ。

また ¬大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ (巻上) に説ときて 「令りょう得とく仏道ぶつどう」 といひ、 「大だい涅ね槃はん」 といひ、 「取しゅ菩ぼ提だい」 といひ、 「得とく仏道ぶつどう」 といふ。

-又¬大阿弥陀経ニ¼説テ云ヒ↢「▲令得仏道ト」↡、云ヒ↢「▲大涅槃ト」↡、云ヒ↢「▲取菩提ト」↡、云フ↢「▲得仏道ト」↡。

その↑理りといふは、 弥陀みだの教きょう文もんは大だい乗じょう真実しんじつ終しゅう窮ぐの極説ごくせつ、 了りょう義ぎ教きょうなり。 極楽ごくらくは畢ひっ竟きょう成じょう仏ぶつの道どう路ろ、 すなはちこれ大だい乗じょう善根ぜんごん界かいなり。 あに小乗しょうじょう灰け断だんの滅めつ度どを得えんや。 まさに知しるべし、 その証しょうひとへに大だい乗じょうにありといふことを。

-言↢其ノ理ト↡者、弥陀ノ教文ハ大乗真実終窮ノ極説、了義教也。極楽ハ畢竟成仏ノ道路、即是大乗善根1167界也。豈得ンヤ↢小乗灰断ノ滅度ヲ↡。当↠知ル、其ノ証偏ニ在ト云コトヲ↢大乗ニ↡。

問とふ。 所しょ立りゅうのごときは、 往おう生じょうの後のち得うるところの益やく、 浄じょう土どの徳とくなり。 しからばいふところの現げん生しょう即そく時じ不ふ退たいの義ぎ、 相そう違いいかん。

-問。如↢所立ノ↡者、往生ノ之後所ノ↠得之益ハ、浄土ノ徳也。然ラバ者所ノ↠言現生即時不退ノ之義、相違如何。

答こたふ。 あに前さきに言いはずや、 △不ふ退たいの益やくにおいてその隠顕おんけん・傍ぼう正しょうの意こころありと。 処々しょしょの料りょう簡けんその意こころみな同おなじ。 また滅めつ度どの益やくは、 生しょう後ご究く竟きょうの益やくたるべきこと、 混乱こんらんすべからず。

-答。豈不ズヤ↢前ニ言ハ↡、於テ↢不退ノ益ニ↡有リト↢其ノ隠顕・傍正ノ之意↡。処処ノ料簡、其ノ意皆同ジ。又滅度ノ益、可コト↠為↢生後究竟ノ之益↡、不↠可↢混乱ス↡。

問とふ。 生しょう後ごの益やくに約やくして不ふ退たいを論ろんぜば、 その位くらいいかん。

-問。約シテ↢生後ノ益ニ↡論ゼ↢不退ヲ↡者、其ノ位如何。

答こたふ。 常じょう途ずの所談しょだんは三さん不ふ退たいにあらず、 これ処しょ不ふ退たいなり。 ゆゑに ¬要よう集しゅう¼ (巻下) に判はんじて 「処しょ不ふ退たい」 といふ。 また ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ (巻六) にいはく、 「初しょ往おう生じょうの時ときすなはち不ふ退たいと名なづくることは、 これ処しょ不ふ退たいに約やくす。」 以上

-答。常途ノ所談ハ非ズ↢三不退ニ↡、是 レ処不退ナリ。故ニ¬要集ニ¼判ジテ云フ↢「▲処不退ト」↡。又¬群疑論ニ¼云ク、「初往生ノ時即名クルコト↢不退ト↡者、是 レ約ス↢処不退ニ↡。」 已上

ただし下しもに本論ほんろんを引ひく意こころのごときは、 初益しょやくはこれ行ぎょう不ふ退たい、 後のちは念ねん不ふ退たいなりといふべし。 いふところの未み証浄しょうじょう心しんの菩ぼ薩さつは初しょ地じ以い上じょう、 上じょう地じの菩ぼ薩さつはこれ八はち地じ以い上じょうを指さすがゆゑなり。 集しゅう主しゅの意こころ、 真実しんじつの証しょうを立たつること、 その位くらい深高じんこうなり。 この義ぎに叶かなふか。

-但シ如↧▲下ニ引ク↢本論ヲ↡意ノ↥者、可シ↠云↢初益ハ是 レ行不退、後ハ念不退ナリト↡。所ノ↠言未証浄心ノ菩薩ハ初地已上、上地ノ菩薩ハ是指ガ↢八地已上ヲ↡故也。集主ノ之意、立コト↢真実ノ証ヲ↡、其ノ位深高ナリ。叶フ↢此ノ義ニ↡歟。

問とふ。 「不ふ住じゅう」 とらは、 「不ふ」 の言ごんはこれ定じょう聚じゅを指さす。 その義ぎ滅めつ度どに被かぶらしむといひがたきや。

-問。「▲不住ト」等者、「不ノ」之言者是 レ指ス↢定聚ヲ↡。其ノ義難↠云↠被カウブラシムト↢滅度ニ↡耶。

答こたふ。 不ふの言ごんは必ひっ至し滅めつ度どに流至るしす。 初はじめ定じょう聚じゅに住じゅうしてつひに成じょう仏ぶつするがゆゑに。

-答。不ノ言ハ流↢至ス必至滅度ニ↡。初メ住シテ↢定聚ニ↡終ニ成仏スルガ故ニ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・『如来会』願文

【8】 次つぎに ¬如来にょらい会え¼ の文もん。

次ニ▲¬如来会ノ¼文。

「決けつ定じょう」 といふは正定しょうじょう聚じゅなり。 「成じょう等覚とうがく」 とはこれ必ひっ至し滅めつ度どの意こころを顕あらわす。 大だい乗じょうの滅めつ度ど、 この文もん灼しゃく然ねんなり。 ¬正しょう信しん偈げ¼ (行巻) の中なかに 「成じょう等覚とうがく証しょう大だい涅ね槃はん」 といふ、 この文もんの意こころなり。

-言↢「▲決定ト」↡者正定聚也。「▲成等覚ト」者是 レ顕ス↢必至滅度之意ヲ↡。大乗ノ滅度、此ノ文*灼然ナリ。¬正信偈ノ¼中ニ云フ↢「▲成等覚証大涅槃ト」↡、此ノ文ノ意也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ 願成就二文

【9】 次つぎに願がん成じょう就じゅの文もん、 ¬大だい経きょう¼ の下げ巻かん最初さいしょの文もんなり。

次1168ニ▲願成就ノ文、¬大経ノ¼下巻最初ノ文也。

問とふ。 三聚さんじゅの相そう、 その位くらいいかん。

-問。三聚ノ之相、其ノ位如何。

答こたふ。 三さん定じょう聚じゅの義ぎ、 諸しょ説せつ不ふ同どうなり。

-答。三定聚ノ義、諸説不同ナリ。

もし小乗しょうじょうによらば ¬倶く舎しゃ論ろん¼ (玄奘訳巻一〇世品) にいはく、 「正しょうと邪じゃと不ふ定じょうとの聚じゅは、 聖しょうと無む間けんを造つくると余よとなり。」 以上本頌 ¬頌じゅ疏しょ¼ (円暉頌疏巻一〇意) に釈しゃくしていはく、 「上かみの句くは標ひょうし、 下しもの句くは釈しゃくす。 いはくもろもろの聖しょう人にんを正性しょうしょう定じょう聚じゅと名なづく。 五ご無む間けんを造つくる者ものを邪じゃ定じょう聚じゅと名なづく、 余よはすなはち無む間けんの外ほかの余よの凡ぼん夫ぶなり。」 以上

-若シ依ラバ↢小乗ニ↡¬倶舎論ニ¼云ク、「正ト邪ト不定トノ聚ハ、聖ト造ルト↢无間ヲ↡余トナリ。」 已上本頌 ¬頌疏ニ¼釈シテ云ク、「上ノ句ハ標シ、下ノ句ハ釈ス。謂ク諸ノ聖人ヲ名ク↢正性定聚ト↡。造ル↢五无間ヲ↡者ヲ名ク↢邪定聚ト↡。余ハ即无間ノ外ノ余ノ凡夫也。」 已上

もし大だい乗じょうによらば ¬釈しゃく摩訶まか衍えん論ろん¼ (巻一意) の説せつのごときは、 その三種さんしゅあり。 「一いちは十信じっしんの前まえを邪じゃ定じょう聚じゅと名なづく、 業ごう果か報ほう等とうを信しんぜざるがゆゑに。 三賢さんげん・十じっ聖しょうを正定しょうじょう聚じゅと名なづく、 不ふ退たいの位くらいなるがゆゑに。 十信じっしんを不ふ定じょう聚じゅと名なづく、 あるいは進しんあるいは退たい、 いまだ決けつ定じょうせざるがゆゑに。 二には十信じっしんの前まえならびに十信じっしんを邪じゃ定じょうと名なづく。 大覚だいかくの果かを正定しょうじょうと名なづく。 三賢さんげん・十じっ聖しょうを不ふ定じょうと名なづく。 三さんは十信じっしんの前まえを邪じゃ定じょうと名なづく。 十じっ聖しょうを正定しょうじょうと名なづく。 十信じっしん・三賢さんげんを不ふ定じょうと名なづく。」 以上

-若シ依ラバ↢大乗ニ↡如↢¬釈摩訶衍論ノ¼説ノ↡者有リ↢其ノ*三種。「一者十信ノ前ヲ名ク↢邪定聚ト↡、不ガ↠信ゼ↢業果報等ヲ↡故ニ。三賢・十聖ヲ名ク↢正定聚ト↡、不退ノ位ナルガ故ニ。十信ヲ名ク↢不定聚ト↡、或ハ進或ハ退、未ダガ↢決定セ↡故ニ。二者十信ノ前并ニ十信ヲ名ク↢邪定ト↡。大覚ノ果ヲ名ク↢正定ト↡。三賢・十聖ヲ名ク↢不定ト↡。*三者十信ノ前ヲ名ク↢邪定ト↡。十聖ヲ名ク↢正定ト↡。十信・三賢ヲ名ク↢不定ト↡。」 已上

随したがひて諸しょ師しまた異解いげあり。 しばらく憬きょう興ごう師し (述文賛巻下) 諸しょ師しの解げを破はして、 自義じぎを述のべて (述文賛・下) いはく、 「いますなはち余よ教きょうに説とくところの三さん乗じょうは、 みなこれ穢土えどにこの三さん乗じょうあるがゆゑに、 もし浄じょう土どに生しょうじぬれば凡ぼん聖しょうを問とはず。 定さだめて涅ね槃はんに向むかひ、 定さだめて善ぜん行ぎょうに趣おもむき、 定さだめて善道ぜんどうに生しょうじ、 定さだめて六ろく度どを行ぎょうじ、 定さだめて解げ脱だつを得う。 ゆゑにただ正定しょうじょう聚じゅありてしかも余よの二になきなり。」 以上

-随而諸師又有リ↢異解↡。且ク憬興師破シテ↢諸師ノ解ヲ↡、述テ↢自義ヲ↡云ク、「今即余教ニ所ノ↠説ク三乗ハ、皆是 レ穢土ニ有ガ↢此ノ三乗↡故ニ、若シ生ジヌレバ↢浄土ニ↡不↠問↢凡聖ヲ↡。定テ向ヒ↢涅槃ニ↡、定テ趣キ↢善行ニ↡、定テ生ジ↢善道ニ↡、定テ行ジ↢六度ヲ↡、定テ得ウ↢解脱ヲ↡。故ニ唯有テ↢正定聚↡而モ无↢余ノ二↡也。」 已上

この釈しゃくのごときは位くらいを定じょう判はんせず、 ただかの土どの不ふ退たいの徳とくを嘆たんず。 処しょ不ふ退たいの義ぎ趣しゅに叶かなふか。 たとひ三さん不ふ退たい等とうを得うといふとも、 これまた仏力ぶつりき、 すなはち処しょ不ふ退たいの勝しょう徳とくなるがゆゑに違いするところなきか。

-如↢此ノ釈ノ↡者不↣定↢判セ位ヲ↡、只嘆ズ↢彼ノ土ノ不退ノ之徳ヲ↡。叶フ↢処不退ノ之義趣ニ↡歟。縦令ヒ雖フ↠得ト↢三不退等ヲ↡、是 レ又仏力、即処不退ノ之勝徳ナルガ故ニ无↠所↠違スル歟。

【10】次つぎに「又う言ごん彼ひ仏ぶつ」 とらいふは、 上じょう巻かんの文もんなり。

次1169ニ云↢「▲又言彼仏ト」等↡者、上巻ノ文也。

上かみに新しん生しょう旧きゅう住じゅうの報ほう勝しょうを明あかす分ぶん科かの文もんの中なかに、 その新しん生しょうにおいてまた正しょう依えを分わかつ。 しかるにいまの文もんは、 初はじめ 「彼ひ仏ぶつ」 より 「洹おん之し道どう」 に至いたるまで、 依え報ほう勝しょうを明あかす結文けつもんなり。

-上ニ明ス↢▲新生旧住ノ報勝ヲ↡分科ノ文ノ中ニ、於テ↢其ノ新生ニ↡又分ツ↢正依ヲ↡。而ニ今ノ文者、初自↢「▲彼仏」↡至マデ↢「洹之道ニ」↡、明ス↢依報勝ヲ↡之結文也。

「次於しお」 とらは、 「泥洹ないおん」 は梵音ぼんおん、 また涅ね槃はんといふ。 すなはちこれ滅めつ度ど。 「↓次し」 とは近ごんなり、 これかの土ど涅ね槃はんの道どうに近ちかきことをいふ。

-「▲次於ト」等者、「▲泥洹ハ」梵音、又言フ↢涅槃ト↡。乃チ是 レ滅度。「次ト」者近也、是 レ言フ↣彼ノ土近コトヲ↢涅槃ノ道ニ↡。

問とふ。 ¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にいはく、 「極楽ごくらく無為むい涅ね槃はん界がい。」 以上 すなはちその当体とうたい涅ね槃はん界がいなり、 なんぞ↑次ちかしといふや。

-問。¬法事讃ニ¼云ク、「▲極楽无為涅槃界。」 已上 即其ノ当体涅槃界也、何ゾ云↠次ト耶。

答こたふ。 弥陀みだの妙みょう果かは無む上じょう涅ね槃はん、 極楽ごくらくはすなはちまた大だい涅ね槃はん界がい第一だいいち義ぎ諦たい妙境みょうきょう界がい相そうなること、 理り在ざい絶言ぜつごんなり。 いま次ちかしといふは、 その新しん生しょうの菩ぼ薩さつに約やくして嘆たんずるがゆゑに、 しばらく次ちかしといふなり。

-答。弥陀ノ妙果ハ無上涅槃、極楽ハ即又大涅槃界第一義諦妙境界相ナルコト、理在絶言ナリ。今云↠次ト者、約シテ↢其ノ新生ノ菩薩ニ↡嘆ズルガ故ニ、且ク云↠次ト也。

「其ご諸しょ」 とらは、 旧住きゅうじゅう勝しょうを明あかすにまた二に報ほうを分わかつ。 その中なかにいまの所引しょいんは正しょう報ぼう勝しょうを明あかす初はじめの文もんなり。

-「▲其諸ト」等者、明ニ↢旧住勝ヲ↡又分ツ↢二報ヲ↡。其ノ中ニ今ノ之所引ハ明ス↢正報勝ヲ↡之初ノ文也。

「智慧ちえ高こう明みょう」 はこれ内徳ないとくを嘆たんず。 第だい二に十じゅう九くの得とく弁才べんざい智ちの願がん成じょう就じゅするがゆゑに。

-「▲智恵高明ハ」是 レ嘆ズ↢内徳ヲ↡。▲第二十九ノ得弁才智ノ願成就スルガ故ニ。

「神通じんずう洞達どうだつ」 は同おなじくこれ内徳ないとく六通ろくつうの願がん、 願がん成じょう就じゅするがゆゑなり。

-「▲神通洞達ハ」同ク是 レ内徳六通ノ願、願成就スルガ故也。

「咸同げんどう」 とらは、 これ外げ相そうを讃たんず。 第だい四しの無有むう好醜こうしゅの願がん成じょう就じゅするがゆゑなり。

-「▲咸同ト」等者、是 レ讃ズ↢外相ヲ↡。第四ノ▲无有好醜ノ之願成就スルガ故也。

「但因たんいん」 とらは、 義ぎ寂じゃく師し (大経義記巻中) のいはく、 「因いん順じゅん余よ方ほうにその二義にぎあり。 一いちには本業ほんごうに随したがふ。 いはく往おう生じょうする者もの、 あるいは人業にんごうを資しして生しょうずるあり、 あるいは天業てんごうを資しして生しょうずるあり。 かしこに生しょうずる時とき異い状じょうなしといへども、 本業ほんごうに因いん順じゅんして人天にんでんの名なあり。 二にには居こ処しょによる。 いはくかの土どの中なかに、 あるいは地じによりて居こするあり、 あるいは空くうにありて居こするあり。 かしこの果か報ほうに異い状じょうなしといへども、 その所在しょざいの処ところに随したがひて人天にんでんの名なあり。」 以上

-「▲但因ト」等者、義寂師ノ云、「因順余方ニ有リ↢其ノ二義↡。一ニハ随フ↢本業ニ↡。謂ク往生スル者、或ハ有リ↧資シテ↢人業ヲ↡生ズル↥、或ハ有リ↧資シテ↢天業ヲ↡生ズル↥。雖ヘ↢生ズル↠彼ニ時无ト異状↡、因↢順シテ本業ニ↡有リ↢人天ノ名↡。二ニハ因ル↢居処ニ↡。謂ク彼ノ土ノ中ニ、或ハ有リ↢依テ↠地ニ居スル↡、或ハ有リ↢在テ↠空ニ居スル↡。雖ヘ↣彼ノ果報ニ无↢異状↡、随テ↢其ノ所在ノ処ニ↡有リ↢人天ノ名↡。」 已上

「顔げん貌みょう」 以下いげは穢土えどに超こえたることを明あかす。 所引しょいんの文もんの次つぎに (大経巻上) 「仏告ぶつごう」 といふ下しもは、 比ひ校きょう顕けん勝しょうしてその超こえたることを明あかすなり。

-「▲顔貌」以下ハ明ス↠超タルコトヲ↢穢土ニ↡。所引ノ文ノ次ニ云↢「▲仏告ト」↡下ハ、比校顕勝シテ明↢其ノ超1170タルコトヲ↡也。

「非ひ天てん」 とらは、 上かみに因いん順じゅんして天人てんにんの名なありと説ときて、 まづ実じつにあらざることを標ひょうし、 いままさしくその実体じったいなきことを顕説けんぜつす。

-「▲非天ト」等者、上ニ説テ↣因順シテ有ト↢天人ノ名↡先ヅ標シ↠非コトヲ↠実ニ、今正ク顕↣説ス无コトヲ↢其ノ実体↡。

わたくしに文もんの意こころを案あんずるに、 これ初しょ生しょうの時とき、 聖しょう凡ぼん別べつなりといへども、 仏力ぶつりきによるがゆゑに、 すなはち上じょう位いに至いたりぬれば同おなじく真しん理りに達たっすることを顕けん彰しょうせんと欲ほっす。 このゆゑに下しもに 「皆受かいじゅ」 とら説とくなり。

-私ニ案ズルニ↢文ノ意ヲ↡、是 レ欲↫顕↪彰セント初生ノ之時、聖凡雖ヘ↠別ナリト、依ガ↢仏力ニ↡故ニ、即至ヌレバ↢上位ニ↡同ク達スルコトヲ↩真理ニ↨。是ノ故ニ下ニ説↢「▲皆受ト」等↡也。

「自じ然ねん虚無こむ之し身しん」 とらは、

-「▲自然虚无之身ト」等者、

嘉か祥じょう師し (大経義疏) のいはく、 「神通じんずう至いたらざるところなきをもってのゆゑに無む極ごくの体たいなり。 光影こうようのごときなるがゆゑに虚無こむの身しんなり。」 以上

-嘉祥師ノ云、「以ノ↢神通无キヲ↟所↠不↠至故ニ无極ノ之体ナリ。如ナルガ↢光影ノ↡故ニ虚无ノ之身ナリ。」 已上

義ぎ寂じゃく師し (大経義記巻中) のいはく、 「胎蔵たいぞうの生しょう育いくするところにあらざるがゆゑに自じ然ねんなり。 飲食おんじきの長ちょう養ようするところにあらざるがゆゑに虚無こむなり。 老ろう死しの損没そんもつするところにあらざるがゆゑに無む極ごくなり。 乃至 またすなはちこの身しん成じょう仏ぶつに至いたるがゆゑに。」 以上

-義寂師ノ云、「非ガ↣胎蔵ノ所ニ↢生育スル↡故ニ自然ナリ。非ガ↣飲食ノ所ニ↢長養スル↡故ニ虚无ナリ。非ガ↣老死ノ所ニ↢損没スル↡故ニ无極ナリ。 乃至 又即此ノ身至ガ↢成仏ニ↡故ニ。」 已上

憬きょう興ごう師し (述文賛巻中) のいはく、 「虚無こむ無む極ごくとは、 無む障しょうのゆゑに、 希有けうのゆゑに、 その次し第だいのごとし。 すなはち求ぐ那羅なら延えん力りきの願がんの報ほうなり。」 以上

-憬興師ノ云、「虚无无極ト者、无障ノ故ニ、希有ノ故ニ、如シ↢其ノ次第ノ↡。即求那羅延力ノ願ノ之報也。」 已上

玄一げんいち師し (大経記巻上) のいはく、 「虚無こむといふは横おうに障しょう礙げなきがゆゑに。 無む極ごくというは縦しゅに衰退すいたいなきがゆゑに。」 以上

-玄一師ノ云、「言↢虚无ト↡者横ニ无ガ↢障↡故ニ。言↢无極ト↡者縦ニ无ガ↢衰退↡故ニ。」 已上

諸しょ師しの料りょう簡けん、 おのおの一いち理りあり。 わたくしに潤色にんしきしていはく、

-諸師ノ料簡、各有リ↢一理↡。私ニ潤色シテ云ク、

「自じ然ねん」 といふは浄じょう土どの徳とくたり。 ¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にいはく、 「仏ぶつに従したがひて逍しょう遙ようして自じ然ねんに帰きす。 自じ然ねんはすなはちこれ弥陀みだの国くになり。」 以上

-言↢「自然ト」↡者為タリ↢浄土ノ徳↡。¬法事讃ニ¼云ク、「▲従テ↠仏ニ逍遙シテ帰ス↢自然ニ↡。自然ハ即是 レ弥陀ノ国ナリ。」 已上

「虚無こむ」 はまたこれ浄じょう土どの楽らくなり。 ¬般舟はんじゅ讃さん¼ にいはく、 「ひとたび到いたりぬればすなはち清しょう虚この楽らくを受うく。 清しょう虚こはすなはちこれ涅ね槃はんの因いんなり。」 以上 虚無こむと清しょう虚ことその義ぎ似じ同どうせり。

-「虚無ハ」又是 レ浄土ノ楽也。¬般舟讃ニ¼云ク、「▲一タビ到ヌレバ即受ク↢清虚ノ楽ヲ↡。清虚ハ即是 レ涅槃ノ因ナリ。」 已上 虚无ト清虚ト其ノ義似同セリ。

「無む極ごく」 といふは、 これ昇しょう道どう無む窮ぐうの義ぎに順じゅんず。 この ¬経きょう¼ (大経) の下げに説ときていはく、 「昇しょう道どう無む窮極ぐうごく」。 また寿じゅ命みょう無む窮ぐうの義ぎを顕あらわす。 同おなじき次下つぎしも (大経) に説ときていはく、 「▲寿楽じゅらく無有むう極ごく」。

-言↢「無極ト」↡者、是 レ順ズ↢昇道无窮ノ之義ニ↡。此ノ¬経ノ¼下ニ説テ言ク、「▲昇道无窮極」。又顕ス↢寿命无窮ノ之義ヲ↡。同キ次下ニ説テ云ク、「寿楽无有極」。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・『如来会』願成就文

【11】次つぎに ¬如来にょらい会え¼ の願がん成じょう就じゅの文もん、 その意こころ見みつべし。

次ニ▲¬如来会ノ¼願成就ノ文、其ノ意可シ↠見ツ。

また ¬平びょう等覚どうがく¼ (巻三) にいはく、 「無む量りょう清浄しょうじょう仏国ぶっこくに生しょうずる者ものは、 それしかして後のちにみなまさに阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつを得うべし。」 以上 ▲¬大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ の説せつこれに同おなじ。

-又¬平等覚ニ¼云、「▲生ズル↢无量清浄仏国1171ニ↡者 ノハ、其 レ然シテ後ニ皆当ニ↠得↢阿惟越致ノ菩薩ヲ↡。」 已上 ¬大阿弥陀経ノ¼説同ジ↠之ニ。

また ¬荘しょう厳ごん経きょう¼ (巻中) にいはく、 「もし善ぜん男なん子し・善ぜん女人にょにんありて、 もしはすでに生しょうじ、 もしはまさに生しょうぜん。 この人ひと決けつ定じょうして阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを証しょうす。 意こころにおいていかん。 かの仏刹ぶっせつの中なかには三種さんしゅの失しつなし。 一いちには心しんに虚こ妄もうなし。 二にには位いに退転たいてんなし。 三さんには善ぜんに唐捐とうえんなることなし。」 以上

-又¬荘厳経ニ¼云ク、「▲若シ有テ↢善男子・善女人↡、若ハ已ニ生ジ、若ハ当ニ生ゼン。是ノ人決定シテ証ス↢於阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。於テ↠意ニ云何。彼ノ仏刹ノ中ニハ无シ↢三種ノ失↡。一ニハ心ニ無シ↢虚妄↡。二ニハ位ニ无シ↢退転↡。三ニハ善无シ↢唐捐ナルコト↡。」 已上

いまこの二に文もん所引しょいんにあらずといへども、 周しゅう覧らんに備そなへんがためにわたくしに載のするところなり。

-今此ノ二文雖ヘ↠非ト↢所引ニ↡、為ニ↠備ヘンガ↢周覧ニ↡私ニ所↠載也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・『浄土論』五文

【12】次つぎに ¬浄じょう土ど論ろん¼、 これに五ご文もんあり。

次ニ▲¬浄土論¼、此有リ↢五文↡。

第一だいいちの文もんは、 国こく土どの荘しょう厳ごん十じゅう七種しちしゅの中なかにその第だい十じゅう一いちの荘しょう厳ごんなり。 いま 「声しょう」 といふは音おん声じょうに関あずからず、 これ名みょう字じなり。

-▲第一ノ文者、国土ノ荘厳十七種ノ中ニ其ノ第十一ノ之荘厳也。今言↢「声ト」↡者不↠関カラ↢音声↡、是 レ名字也。

「経きょう言ごん」 といふは、

-言↢「▲経言ト」↡者、

問とふ。 なんの経きょうを指さすぞや。

-問。指スゾ↢何レノ経ヲ↡耶。

答こたふ。 ¬覚かく経きょう¼ を指さすなり。 かの ¬経きょう¼ に (平等覚経巻一) いはく、 「十じゅう七しちに、 われ作さ仏ぶつせん時とき、 わが名みょう字じをして八方はっぽう上じょう下げ無む数しゅの仏国ぶっこくに聞きかしめて、 諸仏しょぶつおのおの弟子でし衆しゅの中なかにおいて、 わが功く徳どく・国こく土どの善ぜんを歎たんぜん。 諸天しょてん人民にんみん・蝡動ねんどうの類たぐいわが名みょう字じを聞ききて、 みなことごとく踊ゆ躍やくして、 わが国くにに来らい生しょうせん。 しからずはわれ作さ仏ぶつせじ。」 以上

-答。指ス↢¬覚経ヲ¼↡也。彼ノ¬経ニ¼云、「▲十七ニ、我 レ作仏セン時、令 シメテ↣我ガ名字ヲシテ聞カ↢八方上下无数ノ仏国ニ↡、諸仏各於シテ↢弟子衆ノ中ニ↡、歎ゼン↢我ガ功徳・国土ノ之善ヲ↡。諸天人民・蝡動ノ之類聞テ↢我ガ名字ヲ↡、皆悉ク踊躍シテ、来↢生セン我ガ国ニ↡。不↠爾者我 レ不ジ↢作仏セ↡。」 已上

問とふ。 かの ¬覚かく経きょう¼ にすなはち正定しょうじょう聚じゅに入いるといはず、 いま ¬註ちゅう¼ になんぞこれを加くわふる。

-問。彼ノ¬覚経ニ¼不↠云↣▲即入ト↢正定聚ニ↡、今¬註ニ¼何ゾ加フル↠之ヲ。

答こたふ。 経きょう文もんに隠かくれたりといへども、 その義ぎ必然ひつねんなり。 来らい生しょう我が国こくといふ、 すなはち入にゅう正定しょうじょう聚じゅなり。 正定しょうじょうの言ことばに就つきていまこれを引ひかる。

-答。経文ニ雖ヘ↠隠タリト、其ノ義必然ナリ。云フ↢来生我国ト↡、即入正定聚也。就テ↢正定ノ言ニ↡今被ル↠引↠之ヲ。

【13】第だい二にの文もんは、 同おなじき第だい十じゅう二にの荘しょう厳ごんなり。

▲第二ノ文者、同キ第十二ノ之荘厳也。

「不異ふい不ふ滅めつ」・「不ふ散さん不ふ失しつ」 は住じゅう持じの徳とく、 これまた不ふ退たいの義ぎに相そう順じゅんするがゆゑにこれを引用いんようせらる。

-「▲不異不滅」・「▲不散不失ハ」住持ノ之徳、是 レ又相↢順スルガ不退ノ義ニ↡故ニ被ル↣引↢用セ之ヲ↡。

「不ふ朽きゅう薬やく」 とは、 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の説せつ、 随ずい義ぎ転用てんようなり。

-「▲不朽薬ト」者、¬華厳経ノ¼説、随義転用ナリ。

【14】第三だいさんの文もんは、 同おなじき第だい十じゅう三さんの荘しょう厳ごんなり。

▲第1172三ノ文者、同キ第十三ノ之荘厳也。

「莫まく非ひ」 とらは、

-「▲莫非ト」等者、

問とふ。 極楽ごくらくの中なかにおいて胎たい生しょう・化け生しょう差別しゃべつ分ぶん明みょうなり、 なんぞかくのごとく釈しゃくする。

-問。於テ↢極楽ノ中ニ↡胎生・化生差別分明ナリ、何ゾ如ク↠此ノ釈スル。

答こたふ。 かの胎たい生しょうとは、 すなはちこれ化土けど、 疑ぎ惑わく仏ぶっ智ちの行ぎょう者じゃの所しょ生しょう。 この化け生しょうとは、 すなはちこれ報ほう土ど、 明みょう信しん仏ぶっ智ちの行ぎょう者じゃの所しょ生しょうなり。 いまの釈しゃくもつとも真実しんじつの証しょうを明あかす要文ようもんたるか。

-答。彼ノ胎生ト者、即是 レ化土、疑惑仏智ノ行者ノ所生。此ノ化生ト者、即是 レ報土、明信仏智ノ行者ノ所生ナリ。今ノ釈最為ル↧明ス↢真実ノ証ヲ↡之要文↥歟。

「同一とういつ」 とらは、 第だい二に巻かんのわたくしの御おん釈しゃくの中なかにおいて、 この詞ことばを載のせらる。 よりてその下しも▲新末しんまつの鈔しょうの中なかにおいて、 ほぼ愚解ぐげを加くわふ。 かの鈔しょうを見みるべし。

-「▲同一ト」等者、於テ↢▲第二巻ノ私ノ御釈ノ中ニ↡、被ル↠載セ↢此ノ詞ヲ↡。仍テ於テ↢其ノ下シタ新末ノ鈔ノ中ニ↡、粗加フ↢愚解ヲ↡。可シ↠見ル↢彼ノ鈔ヲ↡。

【15】第だい四しの文もんは、 同おなじき第だい十じゅう六ろくの大だい義ぎ門もん功く徳どく成じょう就じゅの文もんなり。

▲第四ノ文者、同キ第十六ノ大義門功徳成就ノ文也。

「本則ほんそく」 とらは、 これに二義にぎあり。

-「▲本則ト」等者、此ニ有リ↢二義↡。

一いちにいはく、 かの二に乗じょうおよび女人にょにん諸根しょこん不具ふぐ等とうの三類さんるいにおいて、 おのおの名みょう体たいあり。 このゆゑにかの体三たいさん・名みょう三さんを挙あげてこれを 「三三さんざん」 といふ。 「一いち二に」 といふは体たいと名みょうとなり。

-一ニ云、於テ↢彼ノ二乗及以ビ女人諸根不具等ノ之三類ニ↡各有リ↢名体↡。是ノ故ニ挙テ↢彼ノ体三・名三ヲ↡言フ↢之ヲ「三三ト」↡。言↢「一二ト」↡者体ト与 ト ↠名也。

↓二ににいはく、 「三三さんざん」 といふはこれ九く品ぼんを指さす。 「一いち二に」 といふは遇ぐう大だい・遇ぐう小しょう・遇悪ぞうあく、 九く品ぼんの差別しゃべつを説とくといへども、 実じつには一品いっぽん・二に品ほんの殊しゅなし。 いかにいはんや実じつに九く品ぼんの差しゃあらんや。

-二ニ云ク、言↢「三三ト」↡者是 レ指ス↢九品ヲ↡。言↢「一二ト」↡者雖ヘ↠説クト↢遇大・遇小・遇悪、九品ノ差別ヲ↡、実ニハ无シ↢一品・二品之殊↡。何况実ニ有ンヤ↢九品ノ差↡。

問とふ。 九く品ぼんの説相せっそう、 経きょう文もん分ぶん明みょうなり。 なんぞ殊しゅなからん。

-問。九品ノ説相、経文分明ナリ。何ゾ无ラン↠殊乎。

答こたふ。 九く品ぼんは機きにありて浄じょう土どに関あずからず。 また九く品ぼんを説とくはこれ化土けどの相そう、 実じっ報ぽう土どにおいてはさらにその差しゃなし。 実じつに地じ前ぜんの位くらいあるべからざるがゆゑに、 この義ぎ下しもの第六だいろっ巻かんの料りょう簡けんを俟まつべからくのみ。

-答。九品ハ在テ↠機ニ不↠関カラ↢浄土ニ↡。又説クハ↢九品ヲ↡是 レ化土ノ相、於テハ↢実報土ニ↡更ニ无シ↢其ノ差↡。実ニ不ガ↠可↠有↢地前ノ位↡故ニ、此ノ義可ラク↠俟マツ↢下ノ第六巻ノ料簡ヲ↡而已。

問とふ。 いまこの荘しょう厳ごん功く徳どくの文もん、 本論ほんろんの偈げ以下いげ ¬註ちゅう¼ の初はじめを除のぞく。 なんの意こころかあるや。

-問。今此ノ荘厳功徳ノ之文、除ク↢本論ノ偈以下¬註ノ¼初ヲ↡。有↢何ノ意カ↡耶。

答こたふ。 上かみの所引しょいんの眷属けんぞく成じょう就じゅにおいて、 かの浄じょう土どの正しょう覚がく浄じょう華け、 純じゅん一いつ化け生しょう、 報ほう土どの相そうを明あかす。 ここに数す箇この荘しょう厳ごん功く徳どくを除のぞき、 当とう荘しょう厳ごん功く徳どく成じょう就じゅを引ひきてしかも文もんの初はじめを略りゃくすることは、 まさしく本則ほんそく三三さんざん之し品ほん、 今こん無む一いち二に之し殊しゅの土どの相そうをもつて、 ただちに正しょう覚がく浄じょう華けの化け生しょうするところの報ほう土どの相そうに次つぐ。 これ土どに九く品ぼんなきことを顕あらわさんがためなり。 もしこの義ぎによらば、 上かみの二義にぎの中なかに↑後のちの一いち義ぎをもつて集しゅう主しゅの本ほん意いとすべきなり。

-答。於テ↢▲上ノ所引ノ眷属成就ニ↡、明ス↢彼ノ浄土ノ正覚浄*華、純一化生、報土ノ之相ヲ↡。爰ニ除キ↢数箇ノ荘厳功徳ヲ↡、引テ↢当1173荘厳功徳成就ヲ↡而モ略スルコトハ↢文ノ初ヲ↡、正ク以テ↢本則三三之品、今无一二之殊ノ土ノ相ヲ↡、直ニ次グ↧正覚浄華ノ之所ノ↢化生スル↡報土ノ之相ニ↥。是 レ為↠顕ンガ↣土ニ无コトヲ↢九品↡也。若シ依ラバ↢此ノ義ニ↡、上ノ二義ノ中ニ以テ↢後ノ一義ヲ↡可↠為↢集主ノ之本意ト↡也。

「淄し澠じょう」 といふは、 二に水すいの名ななり。

-言↢「▲淄澠ト」↡者、二水ノ名也。

【16】第だい五ごの文もんは、 同おなじき荘しょう厳ごんの中なかの初はじめの荘しょう厳ごんなり。

▲第五ノ文者、同キ荘厳ノ中ノ初ノ荘厳也。

「観かん」 とは観察かんざつ、 「彼ひ」 とは極楽ごくらく世せ界かい、 「相そう」 とはかの清浄しょうじょう相そう、 「勝しょう過が」 とらは三界さんがいの所しょ摂しょうにあらざることを明あかす。 ¬註ちゅう¼ (論註巻上) にこれを釈しゃくして 「抑亦おくやく近言ごんごん」 なりといふ、 これその高こう妙みょうの土どたることを顕あらわすなり。

-「▲観ト」者観察、「彼ト」者極楽世界、「相ト」者彼ノ清浄ノ相、「勝過ト」等者明ス↠非コトヲ↢三界之所*摂ニ↡也。¬註ニ¼釈シテ↠之ヲ云フ↢「▲抑亦近言ナリト」↡、是 レ顕ス↣其ノ為タルコトヲ↢高妙ノ土↡也。

問とふ。 なんぞいま逆ぎゃく次じにこれを引用いんようするや。

-問。何ゾ今逆次ニ引↢用スル之ヲ↡耶。

答こたふ。 いまこの 「清浄しょうじょう」 はこれその総相そうそうなり。 このゆゑに本論ほんろんは総そうより別べつを開かいす。 しかるに簡要かんようを抜ぬきて引用いんようする時とき、 いま総相そうそうをもつて鈔出しょうしゅつするところの別相べっそうを結けっするか。

-答。今此ノ「▲清浄ハ」是 レ其ノ総相ナリ。是ノ故ニ本論ハ自↠総開ス↠別ヲ。而ニ抜テ↢簡要ヲ↡引用スル之時、今以テ↢総相ヲ↡結スル↧所ノ↢鈔出スル↡之別相ヲ↥歟。

「有う凡ぼん」 とらは、 いふこころは凡ぼん夫ぶの類たぐい断惑だんわくせずといへども、 仏力ぶつりきによるがゆゑに往おう生じょうを得うとなり。 また往おう生じょうを得うればすなはち無む生しょうなるがゆゑに、 すなはち煩悩ぼんのう即そく菩ぼ提だい等とうの甚深じんじんの証しょう悟ごに契かなふ。 かの土どの徳とくなるがゆゑに。

-「▲有凡ト」等者、言イフ心ハ凡夫ノ類雖ヘ↠不ト↢断惑セ↡、由ガ↢仏力ニ↡故ニ得ウト↢往生ヲ↡也。又得レバ↢往生ヲ↡即无生ナルガ故ニ、即契フ↢煩悩即菩提等ノ甚深ノ証悟ニ↡。彼ノ土ノ徳ナルガ故ニ。

「涅ね槃はん分ぶん」 とはいまだ極ごく位いに至いたらず、 ゆゑに 「分ぶん」 といふなり。

-「▲涅槃分ト」者未 ズ ダ↠至↢極位ニ↡、故ニ云↠「分」也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・『安楽集』文

【17】次つぎに ¬安楽あんらく集しゅう¼ は下げ巻かんの文もんなり。 第八だいはち大門だいもんに三番さんばんある中なかの第だい二にに弥陀みだ・釈しゃ迦か二に仏ぶつ比ひ校きょうの段だん、 末まつ後ごの文もんなり。

次ニ▲¬安楽集ハ¼下巻ノ文也。第八大門ニ有ル↢三番↡中ノ第二ニ弥陀・釈迦二仏比校ノ之段、末後ノ文也。

文もんの意こころ見みやすし。 所引しょいんの ¬経きょう¼ の讃さんは ¬讃さん阿あ弥陀みだ仏ぶつ偈げ¼ の文もんなり。 いまの八はっ句く、 上かみの所引しょいんの正しょう報ぼう勝しょうの文もんによる。 上かみに ¬経きょう¼ の意こころを解げす、 讃さんの意こころまつたく同おなじ。

-文ノ意易シ↠見。所引ノ¬経ノ¼讃ハ¬讃阿弥陀仏偈ノ¼之文也。今之八句、依ル↢▲上ノ所引ノ正報勝ノ文ニ↡。上ニ解ス↢¬経ノ¼意ヲ↡、讃ノ意全ク同ジ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・「玄義分」文

【18】次つぎに大だい師しの釈しゃく、 所引しょいんに二にあり。 その初はじめの文もんは ¬観かん経ぎょう¼ の 「玄げん義ぎ」 序題じょだい門もんの釈しゃくなり。

次1174ニ▲大師ノ釈、所引ニ有リ↠二。其ノ初ノ文者¬観経ノ¼「玄義」序題門ノ釈ナリ。

初はじめ 「弘ぐ願がん」 より終おわり 「縁えん也や」 に至いたるまで、 第だい二に巻かんの鈔しょう新本しんぽんの解げのごとし。

-初自↢「▲弘願」↡終リ至マデ↢「縁也ニ」↡、如シ↢▲第二巻ノ鈔新本ノ解ノ↡。

「又う仏ぶつ密みつ意い」 とは、 二に尊そんの意こころを含がんす。

-「▲又仏密意ト」者、含ス↢二尊ノ意ヲ↡。

もし弥陀みだに約やくせばこれ如来にょらいの智慧ちえの深広じんこうなることを顕あらわす。 ¬大だい経きょう¼ (巻下) に説とくがごとし。 「如来にょらいの智慧ちえ海かいは、 深広じんこうにして涯底がいたいなし、 二に乗じょうの測はかるところにあらず、 ただ仏ぶつのみ独ひとり明了みょうりょうなり。」 以上

-若シ約セバ↢弥陀ニ↡是 レ顕ス↢如来ノ智恵ノ深広ナルコトヲ↡。如シ↢¬大経ニ¼説ガ↡。「▲如来ノ智恵海ハ、深広ニシテ无シ↢涯底↡、二乗非ズ↠所ニ↠測ル、唯仏ノミ独明了ナリ。」 已上

もし釈しゃ迦かに約やくせばこれ一代いちだい出しゅっ世せの大だい事じを顕あらわす。 その大だい事じとは、 衆しゅ生じょうをして極楽ごくらくに往おう生じょうせしめて、 仏ぶつの知ち見けんに入いりてすなはち法ほっ性しょうの常じょう楽らくを証しょうせしめんがためなり。

-若シ約セバ↢釈迦ニ↡是 レ顕ス↢一代出世ノ大事ヲ↡。其ノ大事ト者、為ナリ↧令 シメテ↣衆生ヲシテ往↢生セ極楽ニ↡、入テ↢仏ノ知見ニ↡即証セシメンガ↦法性ノ之常楽ヲ↥也。

「教きょう門もん難なん暁ぎょう」 とは八万はちまんの諸しょ教きょう、 教行きょうぎょうまちまちに分わかれて、 出しゅつ要ようを求もとむる類たぐいおのおのこれを行ぎょうぜんと欲ほっするに、 権実ごんじつ・浅深じんせん・難なん易い・堪かん否ひ、 凡ぼん夫ぶこれによりて迷まよいやすく解げしがたし。 もし解げ了りょうせずは、 おそらくはたやすく真実しんじつの信心しんじんを生しょうじがたし。

-「▲教門難暁ト」者八万ノ諸教、教行区ニ分テ、求ル↢出要ヲ↡類各欲スルニ↠行ゼント↠之ヲ、権実・浅深・難易・堪否、凡夫依テ↠之ニ易ク↠迷ヒ難シ↠解シ。若シ不ズハ↢解了セ↡、恐ハ難シ↣輒ク生ジ↢真実ノ信心ヲ↡。

「三賢さんげん」 とらは、 闚うかがはざるに二にあり。 一いちには人にんに約やくす。 下げ人にんは上じょう人にんの智ちを測はからず。 二にには理りに約やくす。 「唯仏ゆいぶつ与よ仏ぶつ乃能ないのう究く尽じん」 (法華経巻一方便品) といふがごときのゆゑなり。

「▲三賢ト」等者、弗ルニ↠闚ガハ有リ↠二。一者約ス↠人ニ。下人ハ不↠測↢上人ノ之智ヲ↡。二者約ス↠理ニ。如ノ↠云ガ↢「唯仏与仏乃能究尽ト」↡故也。

▲「況きょう我が」 とらは、 その内ない証しょうをいふに仏ぶつ地じに居こすといへども、 凡惑ぼんわくに示じ同どうして下機げきを引導いんどうする卑ひ言ごんなり。

-「况我ト」等者、謂イフニ↢其ノ内証ヲ↡雖ヘ↠居スト↢仏地ニ↡、示↢同シテ凡惑ニ↡引↢導スル下機ヲ↡之卑言也。

「信しん外げ」 といふは、 これに二義にぎあり。

-言↢「▲信外ト」↡者、此ニ有リ↢二義↡。

一いちにはこれ十信じっしん外げ凡ぼんの位くらいを指さすがゆゑにこれを信しん外げといふ。 「軽きょう毛もう」 といふは ¬仁王にんのう経きょう¼ 等とうに十信じっしんを指さすがゆゑに。

-一ニハ是 レ指ガ↢十信外凡ノ位ヲ↡故ニ言フ↢之ヲ信外ト↡。言↢「▲軽毛ト」↡者¬仁王経¼等ニ指ガ↢十信ヲ↡故ニ。

二ににはこれ十信じっしん以外いげの凡ぼん位いを指さす。 謙けん下げの言ことばを述のぶるにさらに道どう位いに入いるといふべからず、 ゆゑに信しん外げの言ことばまたこの義ぎに順じゅんず。 軽きょう毛もうの譬たとえ信しん外げに通つうずといはんに、 あながちに咎とがなきか。 十信じっしんの位くらいはなほし軽きょう毛もうのごとし、 いはんや信しん外げをや。

-二ニハ是 レ指ス↢十信以外ノ凡位ヲ↡。述スル↢謙下ノ言ヲ↡更ニ不↠可↠云↠入ト↢道位ニ↡、故ニ信外之言又順ズ↢此ノ義ニ↡。軽毛之譬云ンニ↠通ズト↢信外ニ↡、強ニ无↠咎歟。十信ノ之位猶シ如シ↢軽毛ノ↡、况ヤ信外哉。

「唯ゆい可か」 とらは、 「勤心ごんしん」 は安心あんじん、 「奉ぶ法ほう」 は起き行ぎょう、 「畢ひつ命みょう為期いご」 は四し修しゅの中なかに長じょう時じ修しゅを挙あげて余よの三修さんしゅを摂せっす。

-「▲唯可ト」等者、「▲勤心ハ」安心、「▲奉法ハ」起行、「▲畢命為期ハ」四修ノ之中ニ挙テ↢長*時修ヲ↡摂ス↢余ノ三修1175ヲ↡。

「捨身しゃしん」 とらは、 往おう生じょうの益やくを明あかす。 「即そく証しょう」 とらは、 すなはち証しょう理りを顕あらわす。 「法ほっ性しょう」 といふはこれすなはち真如しんにょ、 またこれ実相じっそうなり。

-「▲捨身ト」等者、明ス↢往生ノ益ヲ↡。「▲即証ト」等者、即顕ス↢証理ヲ↡。言↢「▲法性ト」↡者是 レ則真如、亦是実相ナリ。

「常じょう楽らく」 といふは、 「常じょう」 はすなはちこれ無む量りょう寿じゅの体たい、 「楽らく」 はすなはちこれ安楽あんらくの義ぎ、 すなはちまた法ほっ性しょうなり。 聖しょう道どう・浄じょう土ど二に門もん殊ことなりといへども、 得脱とくだつの道どうともにこの理りを証しょうす。 しかるに聖しょう道どう門もんはこの土どの中なかにおいて即身そくしんにこれを悟さとる。 浄じょう土どの教おしえは仏ぶつ願力がんりきによりてかの土どに生しょうじて後のちこの証さとりを得うるなり。

-言↢「▲常楽ト」↡者、「常」者即是无量寿ノ体、「楽」者即是安楽ノ之義、即又法性ナリ。聖道・浄土二門雖ヘ↠殊也ト、得脱之道共ニ証ス↢此ノ理ヲ↡。而ニ聖道門ハ於シテ↢此ノ土ノ中ニ↡即身ニ悟ル↠之ヲ。浄土ノ之教ハ依テ↢仏願力ニ↡生ジテ↢彼ノ土ニ↡後得↢此ノ証ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・「定善義」文

【19】▲次つぎに*三首さんしゅの讃さん、 「定じょう善ぜん義ぎ」 の中なかの水観すいかんの讃さんなり。

次ニ三首ノ讃、「定善義ノ」中ノ水観ノ讃也。

「▲寂静じゃくじょう」 といふは浄じょう土どの徳とくなり。 ¬大だい経きょう¼ の上じょうにいはく、 「その心しん寂静じゃくじょうにして志こころざし著じゃくするところなし。」 以上 かれは法蔵ほうぞう発心ほっしんの相そうを嘆たんじ、 これは浄じょう土ど無む動どうの徳とくを讃さんず。 依え正しょう異ことなりといへども、 その義ぎこれ同おなじ。

-言↢「寂静ト」↡者浄土ノ徳也。¬大経ノ¼上ニ云、「▲其ノ心寂静ニシテ志无シ↠所↠著スル。」 已上 彼ハ嘆ジ↢法蔵発心之相ヲ↡、此ハ讃ズ↢浄土无動ノ之徳ヲ↡。依正雖↠異也ト、其ノ義是 レ同ジ。

「無為むい」 といふは ¬大だい経きょう¼ (巻下) には説ときて 「無為むい自じ然ねん」 といひ、 ¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) には釈しゃくして 「極楽ごくらく無為むい」 といふ。 すなはちこれ造ぞう作さなき義ぎなり。 「楽みやこ」 はこれ苦くに対たいす、 すなはちこれ極楽ごくらくなり。

-言↢「▲無為ト」↡者¬大経ニハ¼説テ云ヒ↢「▲无為自然ト」↡、¬法事讃ニハ¼釈シテ云フ↢「▲極楽无為ト」↡、即是 レ无↢造作↡義ナリ。「▲楽ハ」是 レ対ス↠苦ニ、即是 レ極楽ナリ。

「畢ひっ竟きょう逍しょう遙よう」 は同おなじくこれ快け楽らく無む窮ぐうの義ぎなり。

-「▲畢竟逍遙ハ」同ク是 レ快楽无窮ノ義也。

「離有りう」 とらは、 第一だいいち義ぎ諦たい妙みょう境きょう界がい相そう、 殊しゅ妙みょうの浄じょう土ど。 第一だいいち義ぎとはすなはちこれ中ちゅう道どうなり。 ゆゑに二に辺へんを離はなる。

-「▲離有ト」等者、第一義諦妙境界相、殊妙ノ浄土。第一義ト者即是中道ナリ。故ニ離ル↢二辺ヲ↡。

「大だい悲ひ」 とらは、 ¬大だい経きょう¼ (巻下) にあるいは 「其ご大だい悲ひ者しゃ深遠じんのん微み妙みょう」 といひ、 あるいはまた説ときて 「広こう若にゃく虚こ空くう大だい慈じ等とう故こ」 といふ。 抜ばっ苦く与よ楽らくその意こころいささか異ことなれども、 ともにこれ利り物もつ。 利り物もつの心しん、 彼此ひし平びょう等どうなり。 この義ぎによるがゆゑにこれを 「無む殊しゅ」 といふ。 いまいふところはこれ内ない証しょうの徳とくなり。

-「▲大悲ト」等者、¬大経ニ¼或ハ云ヒ↢「▲其大悲者深遠微妙ト」↡、或ハ又説テ云フ↢「▲広若虚空大慈等故ト」↡。抜苦与楽其ノ意聊異ナレドモ、共ニ是 レ利物。利物ノ之心、彼此平等ナリ。依ガ↢此ノ義ニ↡故ニ言フ↢之ヲ「▲無殊ト」↡。今所↠言者是 レ内証ノ徳ナリ。

「或現わくげん」 とらは、 外げ用ゆうの徳とくを明あかす。 「神通じんずう」 といふはこれ身業しんごうに約やくす。 「説法せっぽう」 といふはこれ口く業ごうに約やくす。 「相好そうごう」 といふはまた身業しんごうに約やくす。

-「▲或現ト」等者、明ス↢外用ノ徳ヲ↡。言↢「▲神通ト」↡者是 レ約ス↢身業ニ↡。言↢「▲説法ト」↡者是 レ約ス↢口業ニ↡。言↢「▲相好ト」↡者又約ス↢身業ニ↡。

「入にゅう無余むよ」 とはこれ涅ね槃はんに約やくす、 すなはち必ひっ至し滅めつ度どの益やくを明あかすらくのみ。

-「▲入無余ト」者是 レ約ス↢涅槃ニ↡、即明1176スラク↢必至滅度ノ益ヲ↡耳。

「変現へんげん」 とらは、 これ本国ほんごくの菩ぼ薩さつ衆しゅ等とう、 他た方ほう界かいに往ゆきてみな変現へんげん随ずい意いの化儀けぎを設もうけ、 すなはち群ぐん生じょうに被かぶらしめて滅罪めつざいの益やくを与あたふることを明あかす。

-「▲変現ト」等者、是 レ明ス↧本国ノ菩薩衆等、往テ↢他方界ニ↡皆設ケ↢変現随意ノ化儀ヲ↡、*即被シメテ↢群生ニ↡与コトヲ↦滅罪ノ益ヲ↥。

「帰き去きょ」 とらは、 これ証しょう得とく住おう生じょうの義ぎに約やくす。 かの法界ほっかい身しんは本来ほんらい本覚ほんがく、 十劫じっこうは機きに被かぶらしむ。 これ実じつ成じょうにあらず。 所しょ帰きの衆しゅ生じょう、 凡迷ぼんめいさらに始し覚かく本覚ほんがくに冥みょうずる理りを知しらずといへども、 しかもこれに契当かいとうするは如来にょらいの力ちからなり。

-「▲帰去ト」等者、是 レ約ス↢証得住生ノ之義ニ↡。彼ノ法界身ハ本来本覚、十劫ハ被シム↠機ニ。是 レ非ズ↢実成ニ↡。所帰ノ衆生、凡迷更ニ雖ヘ↠不ト↠知↧始覚冥ズル↢本覚ニ↡理ヲ↥、而モ契↢当スルハ之ニ↡如来ノ力也。

余よ処しょの解げ釈しゃくに、 あるいは (礼讃) 「努ぬ力りき翻迷ほんめい還げん本ほん家げ」 といひ、 あるいは (般舟讃) 「元来がんらい是ぜ我が法王ほうおう家け」 といふみなこの意こころなり。

-余処ノ解釈ニ、或ハ云ヒ↢「▲努力翻迷還本家ト」↡、或ハ云フ↢「▲元来是我法王家ト」↡皆此ノ意也。

「魔ま郷きょう」 といふは、 これ娑しゃ婆ば界かい、 四魔しま嬈にょう乱らんして常つねに仏道ぶつどうを障さふ。 しかるに念仏ねんぶつの人ひと他た力りきによるがゆゑに、 魔ま礙さわりをなさず。 礙さわりをなさざるがゆゑに浄じょう土どに往おう生じょうす。 浄じょう土どには魔まなし、 ゆゑに仏道ぶつどうを成じょうず、 ゆゑにこの魔ま郷きょうを厭いとふべしと勧すすむるなり。

-言↢「▲魔郷ト」↡者、是 レ娑婆界、四魔嬈乱シテ常ニ障フ↢仏道ヲ↡。而ニ念仏ノ人由ガ↢他力ニ↡故ニ、魔不↠為サ↠ヲ。不ガ↠為ナサ↠ヲ故ニ往↢生ス浄土ニ↡。浄土ニハ无シ↠魔、故ニ成↢仏道ヲ↡、故ニ勧ムル↠可ト↠厭↢此ノ魔郷ヲ↡也。

「唯聞ゆいもん」 とらは、

-「▲唯聞ト」等者、

問とふ。 六道ろくどうの中なかにおいて、 欲界よくかいの六天ろくてん苦く楽らくなほ交まじわる。 いはんや上じょう二に界かいにはさらに憂苦うくなし。 二に禅ぜんは喜き受じゅ、 三禅さんぜんは楽受らくじゅ、 これらなんぞ愁しゅう歎たんありといはんや。

-問。於テ↢六道ノ中ニ↡、欲界ノ六天苦楽猶交ハル。況ヤ上二界ニハ更ニ无シ↢憂苦↡。二禅ハ喜受、三禅ハ楽受、此等何ゾ言ハン↠有ト↢愁歎↡耶。

答こたふ。 楽らくありといふといへども、 これ実じつの楽らくにあらず。 当巻とうかん 「定じょう善ぜん義ぎ」 の下げにいはく、 「三界さんがいの苦く楽らくといふは、 苦くはすなはち三さん途ず・八はっ苦く等とう、 楽らくはすなはち人天にんでん五ご欲よく・放逸ほういつ・繋け縛ばく等とうの楽らくなり。 これ楽らくといふといへども、 しかもこれ大だい苦くなり。 畢ひっ竟きょうじて一念いちねん真実しんじつの楽らくあることなし。」 以上 浄じょう穢え相対そうたいするに三界さんがいの中なかの楽らくは実じつの楽らくにあらざるがゆゑに、 愁しゅう歎たんといふなり。

-答。雖ヘ↠言ト↠有ト↠楽、是 レ非ズ↢実ノ楽ニ↡。当巻ノ 「定善義」 下ニ云ク、「▲言↢三界ノ苦楽ト↡者、苦ハ則三途・八苦等、楽ハ則人天五欲・放逸・繋縛等ノ楽ナリ。雖ヘ↠言フト↢是 レ楽ト↡、然モ是 レ大苦ナリ。畢竟ジテ无シ↠有コト↢一念真実ノ楽↡也。」 已上 浄穢相対スルニ三界ノ中ノ楽ハ非ガ↢実ノ楽ニ↡故ニ、云↢愁歎ト↡也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ○ 私釈

【20】「夫ふ案あん」 以下いげ 「披ひ論ろん註ちゅう」 に至いたるまではわたくしの御おん釈しゃくなり。 これ回え向こうを明あかす。

「▲夫案」以下至マデハ↢「披論註ニ▲」↡私ノ御釈也。是明ス↢廻向ヲ↡。

中なかにおいて初はじめより 「応おう知ち」 といふに至いたるまでは略りゃくして往相おうそうを結けっす。

-於テ↠中ニ自↠初至マデハ↠云ニ↢「応知ト▲」↡略シテ結ス↢往相ヲ↡。

「二に言ごん」 といふ下しも 「之し願がん也や」 に至いたるまでは、 総そうじて還相げんそうを標ひょうす。

-云↢「▲二言ト」↡下至マデハ↢「之願也ニ」↡、総ジテ標ス↢還相ヲ↡。

「顕けん註ちゅう論ろん」 の下しも 「披ひ論ちゅう註ろん」 に至いたるまでは、 まづ所引しょいんを標ひょうし、 次つぎにまさしく文もんを出いだす。 文もんに三段さんだんあり、 ¬論ろん¼ と ¬註ちゅう¼ となり。

-「▲顕註論ノ」下至マデハ↢「披論註1177ニ」↡、先ヅ標シ↢所引ヲ↡、次ニ正ク出ス↠文ヲ。文ニ有リ↢三段↡、¬論ト¼与 ト ↢¬註¼↡也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・『浄土論』文

【21】初はじめの文もんは利り行ぎょう満足まんぞくの章しょうの文もん。

▲初ノ文ハ利行満足ノ章ノ文。

第三だいさん巻かんの本ほんにこの論文ろんもんを引ひき、 第だい二に巻かんの奥おくに註釈しゅうしゃくを引ひかる、 かの註釈ちゅうしゃくにおいて▲推すい義ぎを載のせ訖おわりぬ。

-▲第三巻ノ本ニ引キ↢此ノ論文ヲ↡、▲第二巻ノ奥ニ被ル↠引↢註釈ヲ↡。於テ↢彼ノ註釈ニ↡載↢推義ヲ↡訖ヌ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・『論註』文
            ・ 起観生信章(還相回向)

【22】次つぎの文もんは、 第だい二にの起き観かん生しょう信しん章しょうの中なかの回え向こう門もんの下もとに二に種しゅを分わかつ中なかの、 還相げんそう回え向こうの註ちゅう釈しゃくなり。

▲次ノ之文者、第二ノ起観生信ノ章ノ中ノ廻向門ノ下ニ分ツ↢二種ヲ↡中ノ、還相廻向ノ之註釈也。

「奢しゃ摩他また」 とはここに翻ほんじて止しといふ。 「毘婆びば舎しゃ那な」 ここには翻ほんじて観かんといふ。 「方便ほうべん力りき」 とはすなはち回え向こうなり。

-「▲奢摩他ト」者此ニハ翻ジテ云フ↠止ト。「▲毘婆舎那」此ニハ翻ジテ云フ↠観ト。「▲方便力ト」者即廻向也。

ゆゑに下しもの善ぜん巧ぎょう摂せっ化け章しょうの中なかに巧ぎょう方便ほうべん回え向こうを釈しゃくする文もん (論註巻下) にいはく、 「その身みを後あとにして身みを先さきにするをもつてのゆゑに巧ぎょう方便ほうべんと名なづく。 この中なかに方便ほうべんといふは、 いはく作さ願がんして一切いっさい衆しゅ生じょうを摂取せっしゅして、 ともに同おなじくかの安楽あんらく仏国ぶっこくに生しょうぜしむ。 かの仏国ぶっこくはすなはちこれ畢ひっ竟きょう成じょう仏ぶつの道どう路ろ、 無む上じょうの方便ほうべんなり。」 以上

-故ニ下ノ善巧摂化ノ章ノ中ニ釈スル↢巧方便廻向ヲ↡文ニ云ク、「▲以ノ↧後ニシテ↢其ノ身ヲ↡而身ヲ先サキニスルヲ↥故ニ名ク↢巧方便ト↡。◆此ノ中ニ言↢方便ト↡者、謂ク作願シテ摂↢取シテ一切衆生ヲ↡、共ニ同ク生ゼシム↢彼ノ安楽仏国ニ↡。彼ノ仏国ハ即是畢竟成仏ノ道路、无上ノ方便也。」 已上

「稠ちゅう林りん」 といふは、 「稠ちゅう」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「直留ちょくりゅうの切せつ、 密みつなり。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「直ちょく由ゆうの切せつ、 穊きなり、 多たなり。」 「林りん」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「力金りききん切せつ、 平びょう土どに叢木そうもくあり。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「力尋りきじんの切せつ、 地じ上じょうに叢木そうもくあり。」 ゆゑに 「稠ちゅう林りん」 は、 善悪ぜんあくをいはず、 繋け多たの義ぎに喩たとふ。 ¬十じゅう地じ論ろん¼ (巻一一) にいはく、 「稠ちゅう林りんとは衆しゅ多たの義ぎなるがゆゑに、 難なん知ちの義ぎなるがゆゑに。」 以上

-言↢「▲稠林ト」↡者、「稠」¬玉篇ニ¼云、「直留ノ切、密也。」¬広韻ニ¼云、「直由ノ切、*穊也、多也。」「林」¬玉篇ニ¼云、「力金切、平土ニ有リ↢叢木↡。」¬広韻ニ¼云、「力尋ノ切、地上ニ有リ↢叢木↡。」故ニ「稠林」者、不↠謂↢善悪ヲ↡喩フ↢繋多ノ義ニ↡。¬十地論ニ¼云ク、「稠林ト者衆多ノ義ナルガ故ニ、難知ノ義ナルガ故ニ。」 已上

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 観行体相章
              ・ 観仏

【23】後のちの文もんは、 第三だいさんの観かん行ぎょう体相たいそうに依え正しょう二に十じゅう九句くくの荘しょう厳ごん成じょう就じゅを明あかすに就つきて、 如来にょらい八種はっしゅの功く徳どくの中なかの第八だいはちの荘しょう厳ごん功く徳どく成じょう就じゅに三段さんだんある内うち、 いまの文もんは第三だいさんにまさしく住じゅう持じの行ぎょう相そうを釈しゃくする以下いげ第だい十重じゅうじゅうの利り行ぎょう満足まんぞくの章しょうの中なかに、 別べっして近等ごんとうの五ご門もんに約やくして、 礼拝らいはい等とうの五ご念門ねんもんに配はいするに至いたるまで、 しかしながらこれを引ひかる。

▲後ノ之文者、第三ノ観行体相ニ就テ↠明スニ↢依正二十九句ノ荘厳成就ヲ↡、如来八種ノ功徳ノ之中ノ第八ノ荘厳功徳成就ニ有ル↢三段↡内、今ノ文ハ第三ニ正ク釈スル↢住持ノ行相ヲ↡以下至マデ↧第十重ノ利行満足ノ章ノ中ニ、別シテ約シテ↢近等ノ五門ニ↡、配スルニ↦礼拝等ノ之五1178念門ニ↥、併被ル↠引↠之ヲ。

【24】この文もんの意こころは、 極楽ごくらくに生しょうずる者もの、 みな八はち地じに登のぼりてすなはち法身ほっしん寂じゃく滅めつの極ごく理りを証しょうす。 この義ぎをなさば、 十信じっしん・三賢さんげんの位くらいを得うといひ、 また九く品ぼん差別しゃべつの相そうある。 みなこれ仮け説せつ、 ただこれ機きに約やくす。 平びょう等どう法身ほっしんの証しょう悟ごに契かなふをもつて真実しんじつの証しょうとなす。 この文もんを引ひかるるはこの意こころを顕あらわさんがためなり。 よくこの意こころを得えてこの文もんを見みるべし。

▲此ノ文ノ意者、生ズル↢極楽ニ↡者、皆登テ↢八地ニ↡即証ス↢法身寂滅ノ極理ヲ↡。為↢此ノ義↡者、云ヒ↠得ト↢十信・三賢ノ之位ヲ↡、又有ル↢九品差別ノ之相↡。皆是 レ仮説、只是 レ約ス↠機ニ。以テ↠契カナフヲ↢平等法身ノ証悟ニ↡為ス↢真実ノ証ト↡。被ルヽハ↠引↢此ノ文ヲ↡為ナリ↠顕ンガ↢此ノ意ヲ↡。能ク得テ↢此ノ意ヲ↡可シ↠見ル↢此ノ文ヲ↡。

問とふ。 極楽ごくらくの生しょう位いは七しち地じ以い還げんの位くらいに関あずからざるや。

-問。極楽ノ生位ハ不↠関↢七地已還ノ位ニ↡耶。

答こたふ。 ↓無む生しょう忍にんを得うることその位くらい不ふ同どうなり。 あるいは初しょ地じに約やくしあるいは八はち地じに約やくす。 もし初しょ地じ得忍とくにんの説せつによらば、 広ひろく七しち地じ以い還げんに通つうずといふべし。 いま深じん位いに就つきてまづ八はち地じによる。

-答。得コト↢无生忍ヲ↡其ノ位不同ナリ。或ハ約シ↢初地ニ↡或ハ約ス↢八地ニ↡。若シ依ラバ↢初地得忍ノ之説ニ↡、可シ↠云↣広ク通ズト↢七地已還ニ↡。今就テ↢深位ニ↡先ヅ拠ル↢八地ニ↡。

「未み証しょう」 とらは、

-「▲未証ト」等者、

問とふ。 ¬起き信しん論ろん¼ (真諦訳意) にいはく、 「証しょう法身ほっしんとは、 浄じょう心しん地じより乃ない至し菩ぼ薩さつ究く竟きょう地じなり。」 以上 かの ¬論ろん¼ の意こころによるに、 浄じょう心しん地じとはこれ初しょ地じを指さす、 究く竟きょう地じとはこれ十じゅう地じを指さす。 しかればなんぞ七しち地じ以い還げんをもつて、 名なづけて未み証しょう浄じょう心しんの菩ぼ薩さつとす。

-問。¬起信論ニ¼云、「証法身ト者、従↢浄心地↡乃至菩薩究竟地ナリ。」 已上 依ルニ↢彼ノ¬論ノ¼意ニ↡、浄心地ト者是 レ指ス↢初地ヲ↡、究竟地ト者是 レ指ス↢十地ヲ↡。然者何ゾ以テ↢七地已還ヲ↡、名テ為↢未証浄心ノ菩薩ト↡。

答こたふ。 これ↑前さきに述のぶるがごとし。 いはく真如しんにょを証しょうすること初しょ地じ・八はち地じその説せつあひ分わかれたり。 かの ¬論ろん¼ の意こころを思おもふに、 浄じょう心しんの名なを立たつること証しょう真如しんにょに約やくす。 いま 「未み証しょう」 といふは有う↓作さ心しんに約やくす。 すなはち功く用ゆう無む功く用ゆうといふこれなり。

-答。是 レ如シ↢前ニ述ルガ↡。謂ク証スルコト↢真如ヲ↡初地・八地其ノ説相 ヒ分タリ。思フニ↢彼ノ¬論ノ¼意ヲ↡、立コト↢浄心ノ名ヲ↡約ス↢証真如ニ↡。今言ハ↢「未証ト」↡約ス↢有作心ニ↡。即云↢功用・无功用ト↡是ナリ。

問とふ。 初しょ地じ以い上じょうの菩ぼ薩さつはすでに無む分別ふんべつ智ちを得う、 なんぞ 「↑作さ心しん」 といふ。

-問。初地已上ノ菩薩ハ已ニ得ウ↢无分別智ヲ↡、何ゾ云フ↢「▲作心ト」↡。

答こたふ。 これに分極ぶんごくあり。 かれすでに無む分別ふんべつ智ちを得うといへども、 もしなほ八はち地じ以い上じょうに相望そうもうすれば、 これ作意さいなり。 またある義ぎにいはく、 法相ほっそうの意こころによれば、 七しち地じ以い還げん第六だいろく識しきにおいて有漏うろ・無漏むろ雑ぞう起きせしむるがゆゑに、 もしその有漏うろ現げん起きの時とき、 なほかならず作意さい分別ふんべつあるべし。 このゆゑに判はんじて非ひ不作ふさ意いといふ。

-答。此ニ有リ↢分極↡。彼 レ已ニ雖ヘ↠得ト↢无分別智ヲ↡、若シ猶相↢望スレバ八地已上ニ↡、是 レ作意也。又或義ニ云、依レバ↢法相ノ意ニ↡、七地已還於テ↢第六識ニ↡有漏・無漏令ガ↢雑起セ↡故ニ、若シ其ノ有漏現起之時、猶必可シ↠有↢作意分別↡。是ノ故1179ニ判ジテ云フ↢非不作意ト↡。

「身等しんとう」 といふは、 これ相好そうごう荘しょう厳ごん等とうを指さす。 「法等ほうとう」 といふは所説しょせつを指さす。

-言↢「▲身等」↡者、是 レ指ス↢相好荘厳等ヲ↡也。言↢「▲法等ト」↡者指↢所説ヲ↡也。

「龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつ婆ば薮そ般ばん頭ず菩ぼ薩さつ」 とらは、

-「▲龍樹菩薩婆薮般頭菩薩ト」等者、

問とふ。 天親てんじんは賢けん位い、 龍りゅう樹じゅは聖しょう位い、 彼此ひしなんぞ同おなじからん。

-問。天親ハ賢位、龍樹ハ聖位、彼此何ゾ同カラン。

答こたふ。 地じ上じょう・地じ前ぜんの不ふ同どうありといへども、 分ぶんに所得しょとくあり。 このゆゑに類同るいどうす。 これをもつて撲揚ぼくよう (成唯識論樞要巻上) 天親てんじんを讃さんじていはく、 「位くらい明みょう徳とくに居こし、 道どう極ごく喜きに隣となる。」 以上 また ¬弘ぐ決けつ¼ (止観巻五上) にいはく、 「天親てんじん・龍りゅう樹じゅ内鑑ないかん冷然れいねんなり。」 以上 あるいは隣近りんごんにより、 あるいは内鑑ないかんによりて一双いっそうとなすなり。

-答。雖ヘ↠有ト↢地上・地前ノ不同↡、分ニ有リ↢所得↡。是ノ故ニ類同ス。是ヲ以テ撲揚讃ジテ↢天親ヲ↡云ク、「位居シ↢明徳ニ↡、道隣ル↢極喜ニ↡。」 已上 又¬弘決ニ¼云、「天親・龍樹内鑑冷然ナリ。」 已上 或ハ依リ↢隣近ニ↡、或ハ依テ↢内鑑ニ↡為↢一双ト↡也。

問とふ。 地じ上じょうの菩ぼ薩さつ、 極楽ごくらくに生しょうぜんと願がんずるその義ぎ思おもひがたし。 しかるゆゑは、 浄じょう穢えの差別しゃべつは心しんの染ぜん浄じょうにあり。 境きょうにおいて本来ほんらい染ぜん浄じょうの差しゃなし。 初しょ地じ以い上じょうすでに無む明みょうを断だんじて分ぶんに我が性しょうを顕あらわし、 身み報ほう土どに居こして任連にんうんにおのづから報仏ほうぶつの説法せっぽうを聞きく。 所見しょけんの境きょう界がい報ほう土どの儀ぎ式しきなり、 なんぞさらにかの浄じょう土どに生しょうぜんことを願がんぜんや。 ゆゑに ¬探玄たんげん記き¼ (巻三) にいはく、 「十住じゅうじゅう已去いこ不ふ退たいの菩ぼ薩さつの所しょ住じゅうを名なづけて浄じょう土どとなす。」 以上 地じ前ぜんなほしかり、 地じ上じょうなにを願がんぜん。

-問。地上ノ菩薩、願ズル↠生ゼント↢極楽ニ↡其ノ義難シ↠思ヒ。所↢以然ル↡者、浄穢ノ差別ハ在リ↢心ノ染浄ニ↡。於テ↠境ニ本来无シ↢染浄ノ差↡。初地已上既ニ断ジテ↢無明ヲ↡分ニ顕シ↢我性ヲ↡、身居シテ↢報土ニ↡任連ニ自ヲ 聞ク↢報仏ノ説法ヲ↡。所見ノ境界報土ノ儀式ナリ、何ゾ更ニ願ゼン↠生ゼンコトヲ↢彼ノ浄土ニ↡耶。故ニ¬探玄記ニ¼云、「十住已去不退ノ菩薩ノ所住ヲ名テ為ス↢浄土ト↡。」 已上 地前猶爾リ、地上何ヲ願ゼン。

答こたふ。 多たの義ぎありといへども、 しばらく一いち義ぎを出いだす。 生しょう身じん得忍とくにんは依え身しんを捨すてて他た方ほうの浄じょう土どに生しょうぜんと願がんずるをもつてのゆゑなり。 これさらに凡ぼん夫ぶの願がん生しょうのごとくにはあらざるがゆゑに。 ¬大論だいろん¼ (大智度論巻二七初品) にいはく、 「もし無む生しょう法忍ぼうにんを得えつれば、 一切いっさいの結けっ使ちを断だんじて、 死しする時ときこの肉身にくしんを捨すつ。」 以上 ¬涅ね槃はんの疏しょ¼ (天台維摩略疏巻一釈仏国品) にいはく、 「分段ぶんだんの質ぜつ礙げは、 煩悩ぼんのう尽つくといへども、 かならずすべからく報ほうを捨すつべし。」 以上 けだしこの義ぎなり。

-答。雖ヘ↠有ト↢多義↡、且ク出ス↢一義ヲ↡。生身得忍ハ以ノ↧捨テヽ↢依身ヲ↡願ズルヲ↞生ゼント↢他方ノ浄土ニ↡故也。是 レ更ニ非ガ↠如クニハ↢凡夫ノ願生ノ↡故ニ。¬大論ニ¼云、「若シ得ツレバ↢无生法忍ヲ↡、断ジテ↢一切ノ結使ヲ↡、死スル時捨ツ↢是ノ肉身ヲ↡。」 已上 ¬涅槃ノ疏ニ¼云、「分段ノ質礙ハ、煩悩雖ヘ↠尽ト、必須クシ↠捨ツ↠報ヲ」。 已上 蓋シ此ノ義也。

「菩ぼ薩さつ於お七しち地じ中ちゅう」 とらは、

-「▲菩薩於七地中ト」等者、

問とふ。 「大だい寂じゃく滅めつ」 とは、 これなんの義ぎや。

-問。「▲大寂滅ト」者、是 レ何ノ義乎。

答こたふ。 実相じっそうの理地りじには一塵いちじんをも立たてず。 もしこの位くらいに至いたりぬればその悟さとり窮ぐう極ごくす。 この義ぎによるがゆゑに 「大だい寂じゃく滅めつ」 といふ。

-答。実相ノ理地ニハ不↠立↢一塵ヲモ↡。若シ至ヌレバ↢此ノ位ニ↡其ノ悟窮極ス。由ガ↢此ノ義ニ↡故ニ云↢「大寂滅1180ト」↡。

問とふ。 一切いっさいの菩ぼ薩さつ、 みな七しち地じにおいて寂じゃく滅めつを証しょうするや。

-問。一切ノ菩薩、皆於テ↢七地ニ↡証↢寂滅ヲ↡耶。

答こたふ。 もし証しょう理りの至し極ごくに約やくせば、 みなしかるべきなり。

-答。若シ約セ↢証理ノ之至極ニ↡者、皆可↠然也。

問とふ。 この位くらいの中なかにおいて諸仏しょぶつおよび衆しゅ生じょうを見みざる、 なんのゆゑかある。

-問。於テ↢此ノ位ノ中ニ↡▲不ル↠見↢諸仏及以衆生ヲ↡、有↢何ノ故カ↡耶。

答こたふ。 無む生しょうの極ごく理りに住じゅうするをもつてのゆゑに、 上じょう求ぐ下化げけの相そうを見みざるなり。 ただしこの義ぎは根本こんぽん智ちに約やくす。 もしこれ後ご得とく智ちの辺へんに約やくせしめば、 上じょう求ぐ下化げけの相そうあるべし。

-答。以ノ↠住スルヲ↢无生ノ極理ニ↡之故ニ、不↠見↢上求下化ノ相ヲ↡也。但シ此ノ義者約ス↢根本智ニ↡。若シ是 レ令メバ↠約セ↢後得智ノ辺ニ↡、可↠有↢上求下化ノ相↡也。

問とふ。 たとひ穢土えどの修しゅ行ぎょう得道とくどうなりといふとも、 第七だいしち地じにおいてかならず諸仏しょぶつの加か勧かん力りきを蒙こうぶらば、 なんぞ往おう生じょう安楽あんらくの徳とくとせんや。

-問。縦ヒ雖フ↢穢土ノ修行得道ナリト↡、於テ↢第七地ニ↡必ズ蒙ラ↢▲諸仏ノ加勧力ヲ↡者、何ゾ為↢往生安楽ノ徳↡乎。

答こたふ。 穢土えどの修しゅ行ぎょうは加か勧かんを蒙こうぶるといへども、 もと浄じょう土どに居こしてその加か勧かんを蒙こうぶるは、 その徳とくなほもつて殊しゅ勝しょうなるがゆゑなり。

-答。穢土ノ修行ハ雖ヘ↠蒙ト↢加勧ヲ↡、本居シテ↢浄土ニ↡蒙ルハ↢其ノ加勧ヲ↡、其ノ徳猶以テ殊勝ナルガ故也。

問とふ。 七しち地じ以い上じょうのもろもろの菩ぼ薩さつ等とう、 さらに極楽ごくらくに生しょうぜんことを願がんずべからざるや。

-問。七地已上ノ諸ノ菩薩等、更ニ不↠可↠願ズ↠生ゼンコトヲ↢極楽ニ↡耶。

答こたふ。 常じょう途ずの義ぎに任にんぜばその義ぎを許ゆるさず。 しかるゆゑは、 七しち地じ以い還げんは、 悲ひ増ぞうの菩ぼ薩さつ他たを利り益さくせんがため慈悲じひ心しんをもつて分段ぶんだんの身しんを受うく。 このゆゑになほ極楽ごくらくを願がんずることあるべし。 八はち地じ以い上じょうは、 たとひ悲ひ増ぞうの菩ぼ薩さつたりといへどもかならず変易へんやくを得う。 ゆゑに極楽ごくらくに生しょうぜんと願がんずべからざるか。

-答。任ゼバ↢常途ノ義ニ↡不↠許サ↢其ノ義ヲ↡。所↢以然↡者、七地已還ハ、悲増ノ菩薩為ニ↣利↢益センガ他ヲ↡以テ↢慈悲心ヲ↡受ク↢分段ノ身ヲ↡。是ノ故ニ可シ↠有↣猶願ズルコト↢極楽ヲ↡。八地已上ハ、縦令ヒ雖ヘ↠為ト↢悲増ノ菩薩↡必得ウ↢変易ヲ↡。故ニ不↠可↠願ズ↠生ゼント↢極楽ニ↡歟。

ただし短たん解げを加くわふ、 なほ極楽ごくらくに生しょうぜんと願がんずる義ぎあるべし。 いはゆる極楽ごくらくは諸仏しょぶつの本ほん家げ、 いづれの仏ぶつ・菩ぼ薩さつかしかも生しょうずることを求もとめざらん。 このゆゑに ¬九く品ぼん往おう生じょう経きょう¼ にいはく、 「無む量りょう寿じゅ仏ぶつまた九く品ぼん浄じょう域いきの三さん摩地まじは、 すなはちこれ諸仏しょぶつの境きょう界がい、 如来にょらいの所しょ居ご。 三さん世ぜの諸仏しょぶつここより正しょう覚がくを成じょうず。」 以上 普ふ賢げん・文殊もんじゅ等とうの大だい菩ぼ薩さつ、 往おう生じょうを願がんずるはすなはちこのゆゑなり。 集しゅう主しゅの深じん意いこの義ぎあるか。

-但シ加フ↢短解ヲ↡、可シ↠有ル↧猶願ズル↠生ゼント↢極楽ニ↡義↥。所謂極楽ハ諸仏ノ本家、何レノ仏・菩薩カ而モ不ラン↠求メ↠生ズルコトヲ。是ノ故ニ¬九品往生経ニ¼云、「无量寿仏亦九品浄域ノ三摩地ハ、即是 レ諸仏ノ境界、如来ノ所居。三世ノ諸仏従↠此成ズ↢正覚ヲ↡。」 已上 普賢・文殊等ノ大菩薩、願ズル↢往生ヲ↡者即此ノ故也。集主ノ深意有↢此ノ義↡歟。

「復次ぶじ」 とらは、

-「▲復次ト」等者、

問とふ。 二に十じゅう二に願がんを引ひく、 その要よういかん。

-問。引ク↢廿二ノ願ヲ↡、其ノ要如何。

答こたふ。 初しょ地じ以い上じょう七しち地じ以い還げん、 極楽ごくらくに生しょうぜんことを願がんずる二にの要ようあるべし。 いはく一いちには第七だいしち地じにして実際じっさいを証しょうする難なんを免まぬかれんがため、 二にには諸しょ位い速疾そくしつ超ちょう越おつのため。 その中なかに超ちょう越おつの益やくを顕あらわさんがために当願とうがんを引ひくなり。

-答。初地已上七地已還、願ズル↠生ゼンコトヲ↢極楽ニ↡可シ↠有↢二ノ要↡。謂1181ク一ニハ為 メ↠免レンガ↧於シテ↢第七地ニ↡証スル↢実際ヲ↡難ヲ↥、二ニハ為 メ↢諸位速疾超越ノ↡。其ノ中ニ為ニ↠顕サンガ↢超越ノ之益ヲ↡引ク↢当願ヲ↡也。

問とふ。 願がんの意こころいかん。

-問。願ノ意如何。

答こたふ。 諸仏しょぶつの土どの中なかに、 あるいはことごとく十じゅう地じの階かい位いを経へて一いちより二にに至いたり乃ない至し九くより十じゅうに至いたる土どあり、 あるいは超昇ちょうしょうしてただちに等覚とうがくに登のぼりすみやかに補ふ処しょに至いたるあり。 如来にょらいの因いん中ちゅうにかの諸しょ土どを見みて選せん択じゃくの時とき、 もろもろの菩ぼ薩さつ十じゅう地じの修しゅ行ぎょう劫数こうしゅを経歴きょうりゃくすることを愍あわれみて、 諸しょ位いを超ちょう越おつしてすみやかに補ふ処しょに至いたる願がんを発ほっ起きしたまふ。 ただし除のぞくところは、 利他りたの願がんありてしばらく自じ在ざいの利り生しょうを施ほどこすのみ。 ただ意い楽ぎょうに任にんず、 さらに願力がんりき偏かたよりあるにあらざるなり。

-答。諸仏ノ土ノ中ニ、或ハ有リ↧悉ク経テ↢十地ノ階位ヲ↡自↠一至リ↠二ニ乃至自↠九至ル↠十ニ之土↥、或ハ有リ↧超昇シテ直チニ登リ↢等覚ニ↡速ニ至ル↦補処ニ↥。如来ノ因中ニ見テ↢彼ノ諸土ヲ↡選択ノ之時、愍テ↣諸ノ菩薩十地ノ修行経↢歴スルコトヲ劫数ヲ↡、発↧起シタマフ超↢越シテ諸位ヲ↡速ニ至ル↢補処ニ↡之願ヲ↥。但シ所↠除者、有テ↢利他ノ願↡暫ク施ス↢自在ノ利生ヲ↡而已。只任ズ↢意楽ニ↡、更ニ非ズ↢願力之有ニ↟偏也。

「言ごん十じゅう地じ階かい次じ」 とらいふは、

-言↢「▲言十地階次ト」等↡者、

▽問とふ。 ¬起き信しん論ろん¼ (真諦訳) の大たい意いを案あんずるがごときは、 怯こう弱にゃくの機きのために超証ちょうしょうの義ぎを示しめし、 懈け慢まんの機きのために歴りゃく劫こうの義ぎを示しめす。 この義ぎ趣しゅを説ときてまさしく決判けっぱんしていはく、 「超ちょう過かの法ほうあることなきがゆゑに、 七しち地じの菩ぼ薩さつみな三さん阿あ僧そう祇ぎ劫こうを経ふるをもつてなり。」 以上 この説せつのごときは、 超証ちょうしょうは方便ほうべん、 経りゃく劫こうは実じつ義ぎなり。 しかるにいまの釈しゃくの意こころ、 たちまちにもつて矛む盾じゅんせり、 いかん。

-問。如↠案ズルガ↢¬起信論ノ¼大意ヲ↡者、為ニ↢怯弱ノ機ノ↡示シ↢超証ノ義ヲ↡、為ニ↢懈慢ノ機ノ↡示ス↢歴劫ノ義ヲ↡。説テ↢此ノ義趣ヲ↡正ク決判シテ云ク、「无ガ↠有コト↢超過ノ法↡故ニ、以ナリ↣七地ノ菩薩皆逕ルヲ↢三阿僧祇劫ヲ↡。」 已上 如↢此ノ説ノ↡者、超証ハ方便、経劫ハ実義ナリ。而ニ今ノ釈ノ意、忽ニ以テ鉾盾セリ、如何。

答こたふ。 ¬起き信しん論ろん¼ の意こころ、 判はんずるところ実じつにしかり。 常じょう途ずの性しょう相そうまたもつてこれ同おなじ。 ただし性宗しょうしゅうのごときは多おおく超証ちょうしょうを許ゆるす。 各別かくべつの宗しゅう旨し異い論ろんすべからず。 いかにいはんやいまの釈しゃくの判はんずるところ、 穢土えどの超証ちょうしょうに亘わたらず。 十じゅう地じの階かい次じはただこれ釈しゃ迦か一代いちだいの化け道どうなり。 これに対たいしてもつぱら浄じょう土どの超証ちょうしょう、 他た力りきの願がん意いを述のぶ。 超証ちょうしょうの義ぎにおいて許ゆるすと許ゆるさざると諍あらそいをなすに及およばず、 相そう違いにあらざるか。

-答。¬起信論ノ¼意、所↠判ズル実ニ爾リ。常途ノ性相又以テ是 レ同ジ。但シ如↢性宗ノ↡者多ク許ス↢超証ヲ↡。各別ノ宗旨不↠可ラ↢異論ス↡。何ニ況ヤ今ノ釈ノ所↠判ズル、不↠亘ラ↢穢土ノ超証ニ↡。十地ノ階次ハ只是 レ釈迦一代ノ化道ナリ。対シテ↠之ニ専述ブ↢浄土ノ超証、他力ノ願意ヲ↡。於テ↢超証ノ義ニ↡許ト与 ト ↠不ル↠許不↠及↠成ニ↠諍ヲ、非↢相違ニ↡歟。

「五ご種しゅ不ふ思議しぎ中ちゅう」 とらは、 註ちゅう (論註巻下) の当とう章しょうの中なかに、 上かみに挙あぐるところの国こく土ど体相たいそうの下もとの釈しゃくにいはく、 「諸しょ経きょうに統すべていふに五ご種しゅの不可ふか思議しぎあり。 一いちは衆しゅ生じょう多た少しょう不可ふか思議しぎ、 二には業力ごうりき不可ふか思議しぎ、 三さんは竜りゅう力りき不可ふか思議しぎ、 四しは禅ぜん定じょう力りき不可ふか思議しぎ、 五ごは仏法ぶっぽう力りき不可ふか思議しぎなり。」 以上

-「▲五種不思議中ト」等者、¬註ノ¼当章ノ中ニ、上ニ所ノ↠挙ル之国土体相ノ之下ノ釈ニ云、「▲諸経ニ統テ言ニ有リ↢五種ノ不可思議↡。一者衆1182生多少不可思議、二者業力不可思議、三者竜力不可思議、四者禅定力不可思議、五者仏法力不可思議。」 已上

「譬ひ如にょ」 とらは ¬大論だいろん¼ の十じゅう (大智度論初品) にいはく、 「譬たとへば樹きあり好堅こうけんと名なづく、 この樹き地じ中ちゅうにあること百ひゃく歳さい、 枝し葉ようは具ぐ足そくして一日いちにちに出生しゅっしょうするに高たかさ百丈ひゃくじょうなるがごとし。 この樹き出いでをはりて大樹だいじゅを求もとめてもつてその身みを蔭かくさんと欲ほっす。 この時ときに林はやしの中なかに神じんありて好堅こうけんに語かたりていはく、 世よの中なかになんぢより大だいなる者ものなし、 諸樹しょじゅみなまさになんぢが蔭かげの中なかにあるべし。 仏ぶつもまたかくのごとし。 無む量りょう阿あ僧そう祗ぎ劫こうに菩ぼ薩さつ地じの中なかにありて生しょうず。 一日いちにち菩ぼ提だい樹じゅ下げにおいて金剛こんごう座ざに処しょす。 実じつに一切いっさいの諸法しょほうの相そうを知しりて仏道ぶつどうを成じょうずることを得う。」 以上

-「▲譬如ト」等者¬大論ノ¼十ニ云、「譬バ如シ↧有リ↠樹名ク↢好堅ト↡、是ノ樹在コト↢地中ニ↡百歳、枝葉ハ具足シテ一日ニ出生スルニ高サ百丈ナルガ↥。是ノ樹出已テ欲ス↧求テ↢大樹ヲ↡以テ蔭カクサント↦其ノ身ヲ↥。是ノ時ニ林ノ中ニ有テ↠神語テ↢好堅ニ↡言ク、世ノ中ニ无シ↢大ナル↠汝ヨリ者↡、諸樹皆当ニ↠在ル↢汝ガ蔭ノ中ニ↡。仏モ亦如シ↠是ノ。无量阿僧祗劫ニ在テ↢菩薩地ノ中ニ↡生ズ。一日於テ↢菩提樹下ニ↡金剛座ニ処ス。実ニ知テ↢一切ノ諸法ノ相ヲ↡得↠成ズルコトヲ↢仏道ヲ↡。」 已上

天台てんだい (法華文句一〇釈随喜品) のいはく、 「好堅こうけん地じに処しょして芽めすでに百ひゃく囲い。」 以上 百ひゃく囲いと百ひゃく歳さいと彼此ひし相そう違い異い、 説せつあるか、 すべからく和会わえすべからず。

-天臺ノ云ク、「好堅処シテ↠地ニ芽已ニ百囲。」 已上 百囲ト百歳ト彼此相違、有↢異説↡歟、不↠須 ベ クカラ↢和会ス↡。

またある説せつにいはく、 「この樹き梵言ぼんごんには諾瞿だく陀だといふ、 また梵言ぼんごんには尼拘にく律りつ陀たといふ。 ここには無む節せつといふ、 すなはち好堅こうけんなり。 あるいはまたこの樹きを翻ほんじて楊よう柳りゅうとなす。」 云々

-又或ル説ニ云ク、「此ノ樹梵言ニハ曰フ↢諾ダ瞿ク陀ダト↡、亦梵言ニハ云フ↢尼拘律陀ト↡。此ニハ云↢无節ト↡、即好堅也。或ハ又此ノ樹ヲ翻ジテ為ス↢楊柳ト↡。」 云云

この譬喩ひゆの意こころ、 松まつの生長しょうちょうすること一日いちにちに一寸いっすんなるをもつて、 一いち地じよりその一いち地じに至いたるに比ひす。 好堅こうけん樹じゅの一日いちにちに百丈ひゃくじょうなるをもつてかの浄じょう土どの超証ちょうしょうの義ぎに況きょうするなり。

-此ノ譬喩ノ意、以テ↢松ノ生長スルコト一日ニ一寸ナルヲ↡、比ス↧自↢一地↡至ニ↦其ノ一地ニ↥。以テ↢好堅樹ノ一日ニ百丈ナルヲ↡況スル↢彼ノ浄土ノ超証ノ義ニ↡也。

「有う人にん」 とらは、 いま頓とん悟ご即そく証しょうの例れいを引ひきて、 かの超ちょう越おつ速疾そくしつの益やくを助たすく。

-「▲有人ト」等者、今引テ↢頓悟即証ノ之例ヲ↡、助ク↢彼ノ超越速疾ノ益ヲ↡也。

問とふ。 上かみには十じゅう地じ階かい次じの施せ設せつを指さして、 釈しゃく尊そん一代いちだいの化け道どうたりといふ。 いまは一いっ聴ちょう終朝しゅうちょうの証しょうを挙あげて、 釈しゃ迦か仏ぶつ化け道どうの益やくとなす。 なんぞ相そう違いせるや。

-問。▲上ニハ指シテ↢十地階次ノ施設ヲ↡、言フ↠為ト↢釈尊一代ノ化道↡。▲今ハ挙テ↢一聴終朝ノ之証ヲ↡、為ス↢釈迦仏化道ノ之益ト↡。何ゾ相違スル耶。

答こたふ。 漸頓ぜんどん・空くう有う・半満はんまん・権実ごんじつ・随ずい他た随ずい自じ、 みな釈しゃ迦か一仏いちぶつの設せつ化けにあり。 ただし閻えん浮ぶの一いちの化け道どうといふは、 かの説せつの中なかの十じゅう地じの階かい次じ、 その一いち途ず随ずい宜ぎの説せつたることを顕あらわす。 彼此ひし機きに随したがひておのおの教きょう益やくを蒙こうぶる、 みな相そう違いせず。

-答。漸頓・空有・半満・権実・随他随自、皆在リ↢釈迦一仏ノ設化ニ↡。但シ言↢閻浮ノ一ノ化道ト↡者、顕ス↣彼ノ説ノ中ノ十1183地ノ階次、為コトヲ↢其ノ一途随宜之説↡。彼此随テ↠機ニ各蒙ル↢教益ヲ↡、皆不↢相違セ↡。

【25】「略りゃく説せつ」 とらは、 これ結文けつもんなり。

「▲略説ト」等者、是 レ結文也。

問とふ。 「次し第だい成じょう就じゅ応おう知ち」 とらは、 自利じり利他りたの次し第だいを指さすとやせん、 いかん。

-問。「▲次第成就応知ト」等者、為セン↠指トヤ↢自利利他ノ次第ヲ↡、如何。

答こたふ。 これ如来にょらい八種はっしゅの功く徳どくの生しょう起き次し第だいを明あかす。 ただしその八種はっしゅ、 かの法体ほったいを論ろんずるに、 しかしながら自利じり利他りたの功く徳どくとなること置おきて論ろんぜず。 しかりといへどもいままさしくいふところの次し第だいは二利にりに関あずからず、 ただ八種はっしゅの功く徳どくの生しょう起きを明あかす。 生しょう起きの次し第だいつぶさに註釈ちゅうしゃくに見みえたり。

-答。是 レ明ス↢如来八種ノ功徳ノ生起次第ヲ↡。但シ其ノ八種、論ズルニ↢彼ノ法体ヲ↡、併為タルコト↢自利利他ノ功徳↡置テ而不↠論ゼ。雖↠然ト今正ク所ノ↠言次第ハ不↠関カラ↢二利ニ↡、只明ス↢八種ノ功徳ノ生起ヲ↡。生起ノ次第▲具ニ見タリ↢註釈ニ↡。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ・ 観菩薩

【26】観察かんざつ菩ぼ薩さつ荘しょう厳ごんの中なかに、 論文ろんもんに三さんあり。 一いちに 「云うん何が」 の下しもは章しょう目もくを牒でっすることを標ひょうす、 ▽二にに 「観かん彼ぴ」 の下しもは四し種しゅの荘しょう厳ごん功く徳どくあることを標ひょうす、 ▽三さんに 「何が者しゃ」 の下しもはまさしく四し種しゅの荘しょう厳ごんを釈しゃくす。

▲観察菩薩荘厳ノ之中ニ、論文ニ有リ↠三。一ニ「▲云何ノ」下ハ標ス↠牒スルコトヲ↢章目ヲ↡、二ニ「▲観彼ノ」下ハ標ス↠有コトヲ↢四種ノ荘厳功徳↡、三ニ「▲何者ノ」下ハ正ク釈ス↢四種ノ荘厳ヲ↡。

△二にに ¬註ちゅう¼ の中なかに 「真如しんにょ」 とらは、

-二ニ¬註ノ¼之中ニ、「▲真如ト」等者、

¬大だい乗じょう止し観かん¼ (巻一) にいはく、 「問とふていはく、 いかんぞこの心しんを名なづけて真如しんにょとする。 答こたへていはく、 一切いっさいの諸法しょほうはこの心しんによりてあり、 心しんをもつて体たいとなす。 諸法しょほうに望のぞむるに法ほうはことごとく虚こ妄もうなり、 有うすなはち有うにあらず。 この虚こ偽ぎの法ほうに対たいするがゆゑに、 よりて真しんとなす。 また諸法しょほう実じつに有うにあらずといへども、 ただし虚こ妄もうの因縁いんねんをもつてしかも生しょう滅めつの相そうあり。 しかもかの虚こ法ほう生しょうずる時ときこの心しん生しょうぜず、 諸法しょほう滅めっする時ときこの心しん滅めっせず、 生しょうぜざるがゆゑに増ぞうせず。 減げんぜざるがゆゑに滅めっせず、 不ふ生しょう不ふ滅めつ・不ふ増ぞう不ふ減げんなるをもつてのゆゑに、 これを名なづけて真しんとなす。 三さん世ぜの諸仏しょぶつおよび衆しゅ生じょう、 同おなじくこの一いちの浄じょう心しんをもつて体たいとなす。 凡ぼん聖しょうの諸法しょほうおのづから差別しゃべつ異い相そうあれども、 しかもこの真心しんしん異いなく相そうなし、 ゆゑに名なづけて如にょとなす。」 以上

-¬大乗止観ニ¼云、「問曰、云何ゾ名テ↢此ノ心ヲ↡為スル↢真如ト↡。答テ曰ク、一切ノ諸法ハ依テ↢此ノ心ニ↡有リ、以テ↠心ヲ為ス↠体ト。望ルニ↢於諸法ニ↡法ハ悉ク虚妄ナリ、有即非ズ↠有ニ。対スルガ↢此ノ虚偽ノ法ニ↡故ニ、因テ為ス↠真ト。又復諸法雖ヘ↢実ニ非ズト↟有ニ、但シ以テ↢虚妄ノ因縁ヲ↡而モ有リ↢生滅ノ之相↡。然モ彼ノ虚法生ズル時此ノ心不↠生ゼ、諸法滅スル時此ノ心不↠滅セ。不ルガ↠生ゼ故ニ不↠増セ、不ルガ↠減ゼ故ニ不↠滅セ、以ノ↢不生不滅・不増不減ナルヲ↡故ニ、名テ↠之ヲ為ス↠真ト。三世ノ諸仏及以衆生、同ク以テ↢此ノ一ノ浄心ヲ↡為ス↠体ト。凡聖ノ諸法自ヲ 有レドモ↢差別異相↡、而モ此ノ真心无ク↠異无シ↠相、故ニ名テ為ス↠如ト。」 已上

また天台てんだい (金剛錍) のいはく、 「万法まんぽうはこれ真如しんにょなり、 不ふ変へんによるがゆゑに。 真如しんにょはこれ万法まんぽうなり、 随縁ずいえんによるがゆゑに。」 以上

-又天臺ノ云ク、「万法ハ是 レ真如ナリ、由ガ↢不変ニ↡故ニ。真如ハ是万法ナリ、由ガ↢随縁ニ↡故ニ。」 已上1184

「真如しんにょは諸法しょほうの正しょう体たい」 といふに就つきて二にの意こころあるべし。

-就テ↠言ニ↢「▲真如ハ諸法ノ正体ト」↡可シ↠有↢二ノ意↡。

一いちには諸法しょほうはみなこれ虚こ妄もうの相そう、 真如しんにょの一法いっぽうただこれ真実しんじつなり。 その 「真如しんにょ」 とは、 これ心しんの一法いっぽうなり。 もしこの義ぎによらば、 いふこころは諸法しょほうの中なかにただこの一いち真しんなり、 これ正しょう体たいなり。 上かみに挙あぐるところの ¬大だい乗じょう止し観かん¼ この意こころに叶かなふか。

-一ニハ諸法ハ皆是 レ虚妄ノ之相、真如ノ一法唯是 レ真実ナリ。其ノ「真如ト」者、是心ノ一法ナリ。若シ依ラバ↢此ノ義ニ↡、言イフ心ハ諸法ノ中ニ唯此ノ一真ナリ、是 レ正体也。上ニ所ノ↠挙ル之¬大乗止観¼叶↢此ノ意ニ↡歟。

二にには真如しんにょの体相たいそう一心いっしんに限かぎらず、 森しん羅らの万ばん像しょう、 三千さんぜんの諸法しょほう、 真如しんにょにあらざることなし。 その相望そうもうに就つきて随縁ずいえん・不ふ変へんの異いありといへども、 色心しきしんの諸法しょほう真如しんにょにあらざることなし。 もしこの義ぎによらば、 諸法しょほうことごとくこれ真如しんにょの正しょう体たいなり。 このゆゑに釈しゃくして諸法しょほうの正しょう体たいといふ。 天台てんだいの正しょう意いこの義ぎに合がっすべし。

-二ニハ真如ノ体相不↠限↢一心ニ↡、森羅ノ万像、三千ノ諸法、莫シ↠非コト↢真如ニ↡。就テ↢其ノ相望ニ↡雖ヘ↠有ト↢随縁・不変ノ之異↡、色心ノ諸法莫シ↠非コト↢真如ニ↡。若シ依ラバ↢此ノ義ニ↡、諸法悉ク是 レ真如ノ正体ナリ。是ノ故ニ釈シテ云フ↢諸法ノ正体ト↡。天臺ノ正意可シ↠合↢此ノ義ニ↡。

「不ふ行ぎょう」 とらは、 無む分別ふんべつの相そう、 真如しんにょに相応そうおうして修しゅ行ぎょうするところなるがゆゑに。 「不ふ行ぎょう」 といふはこれ体如たいにょに約やくす、 その正しょう体たいにおいて情執じょうしゅうを離はなるるがゆゑに。 「而に行ぎょう」 といふは正しょう修しゅ行ぎょうに約やくす、 その所しょ行ぎょうにおいて作意さいなきがゆゑに。

-「▲不行ト」等者、无分別ノ相、相↢応シテ真如ニ↡所ナルガ↢修行スル↡故ニ。言↢「不行ト」↡者是 レ約ス↢体如ニ↡、於テ↢其ノ正体ニ↡離ルヽガ↢情執ヲ↡故ニ。言↢「▲而行ト」↡者約ス↢正修行ニ↡、於テ↢其ノ所行ニ↡无ガ↢作意↡故ニ。

△三さんに正釈しょうしゃくの中なかに、 功く徳どく荘しょう厳ごん四し種しゅなるがゆゑに、 文もんに四し段だんあり。 文もんを省しょうしてこれをいはば、 ▽一いちには不ふ動どう遍へん至し供く仏ぶつ化け生しょう、 ▽二にには一念いちねん遍へん至し利り益やく群ぐん生じょう、 ▽三さんには一切いっさい世せ界かい讃嘆さんだん諸仏しょぶつ、 ▽四しには無む三宝さんぼう処しょ住じゅう持じ荘しょう厳ごんなり。

-三ニ正釈ノ中ニ、功徳荘厳為ガ↢四種↡故ニ、文ニ有リ↢四段↡。省シテ↠文ヲ言イハヾ↠之ヲ、一ニハ不動遍至供仏化生、二ニハ一念遍至利益群生、三ニハ一切世界讃嘆諸仏、四ニハ无三宝処住持荘厳ナリ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ・ a 不動遍至供仏化生

△第一だいいち段だんの中なかに 「無垢むく輪りん」 とは、

-第一段ノ中ニ「▲無垢輪ト」者、

問とふ。 いまの註釈ちゅうしゃく、 初はじめは八はち地じ以い上じょうの所しょ行ぎょうに約やくし、 後のちには仏ぶつ地じに約やくす。 一いっ師しの所しょ釈しゃく、 一いっ科かの中なかにおいてなんぞたちまちに相そう違いせる。 また智ち光こう (無量寿経論釈巻五) のいはく、 「初しょ地じ以い上じょうの菩ぼ薩さつ、 またよくこの法輪ほうりんをもつて一切いっさいを開導かいどうす。」 以上 かたがたもつていぶかし。 なかんづくにすでに 「仏ぶつ地じの功く徳どく」 といひて初しょ地じ・八はち地じ以い上じょうといはず。 因いん位にの中なかにおいてなんぞこれを転てんずるや。

-問。今ノ註釈、初ハ約シ↢▲八地已上ノ所行ニ↡、後ニハ約ス↢▲仏地ニ↡。一師ノ所釈、於テ↢一科ノ中ニ↡何ゾ忽ニ相違セル。又智光ノ云、「初地以上ノ菩薩、亦能ク以テ↢此ノ法輪ヲ↡開↢導ス一切ヲ↡。」 已上 旁以テ未審カシ。就ニ↠中既ニ言テ↢「▲仏地ノ功徳ト」↡不↠謂↢初地・八地已上ト↡。於テ↢因位ノ中ニ↡何ゾ転ズル↠之ヲ耶。

答こたふ。 ↓すでに 「無垢むく」 といふ。 いまの釈しゃくの意こころ仏ぶつの功く徳どくに属ぞくする、 その義ぎしかるべし。 しかりといへどもあるいは八はち地じ以い上じょうといひ、 あるいは初しょ地じといふ。 おのおの分転ぶんてんに約やくす、 ともに違いするところなし。 次つぎに因いん位にの中なかに転てんずべからずといふに至いたりては、 究く竟きょうにあらざればこれ難かたしとせず、 その上かみ仏ぶつの加か力りきを蒙こうぶるがゆゑなり。

-答。既ニ云フ↢「無垢ト」↡。今ノ釈ノ之意属スル↢仏ノ功徳ニ↡、其ノ義可シ↠然ル。雖ヘ↠然1185ト或ハ云ヒ↢八地以上ト↡、或ハ云フ↢初地ト↡。各約ス↢分転ニ↡、共ニ无シ↠所↠違スル。次ニ至テ↣于云ニ↢因位ノ之中ニ不ズト↟可ラ↠転ズ者、非↢究竟ニ↡者是 レ不↠為セ↠難シト、其ノ上蒙ルガ↢仏ノ加力ヲ↡故也。

「淤お泥でい華け」 とは、

-「▲淤泥華ト」者、

問とふ。 なんの華はなを指さすや。

-問。指↢何ノ華ヲ↡乎。

答こたふ。 「淤お」 といふは濁じょく、 「泥でい」 といふは水すい、 濁じょく水すいに生なる華はなはこれ蓮れん華げなり。 淤お泥でいこれを衆しゅ生じょうの煩悩ぼんのうに譬たとへ、 華けを仏ぶっ性しょうに譬たとふ。 あるいはまた淤お泥でいこれを性しょう徳とくに喩たとへ、 華けを修徳しゅとくに喩たとふ。 「経きょう言ごん」 といふは、 ¬維ゆい摩ま経きょう¼ なり。

-答。言↠「淤ト」者濁、言↠「泥ト」者水、生ナル↢濁水ニ↡華ハ是 レ蓮華也。淤泥譬ヘ↢之ヲ衆生ノ煩悩ニ↡、華ヲ譬フ↢仏性ニ↡。或ハ又淤泥喩ヘ↢之ヲ性徳ニ↡、華ヲ喩フ↢修徳ニ↡。云↢「▲経言ト」↡者、¬維摩経¼也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ・ b 一念遍至利益群生

△第だい二に段だんの中なかに、 「無垢むく光こう」 とは、 輪りんと光こうと異ことなりといへども、 無垢むくの義ぎ同おなじ。 ↑上かみに準じゅんじて知しるべし。

-第二段ノ中ニ、「▲無垢光ト」者、輪ト光ト雖ヘ↠異也ト、无垢ノ義同ジ。准ジテ↠上ニ応シ↠知。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ・ c 一切世界讃嘆諸仏

△第三だいさん段だんの中なかに、 「肇じょう公こう言ごん」 とは、

-第三段ノ中ニ、「▲肇公言ト」者、

問とふ。 これたれびとを指さし、 いづれの書しょを指さすや。

-問。是 レ指シ↢誰人ヲ、↡指↢何レノ書ヲ↡乎。

答こたふ。 羅ら什じゅう三蔵さんぞうにその四子ししあり、 おのおの英傑ようけつたり。 世よこれを称しょうして生しょう・肇じょう・融ゆう・叡えいといふ、 生しょうとは道どう生しょう、 肇じょうとは僧そう肇じょう、 融ゆうとは道融どうゆう、 叡えいとは僧叡そうえいなり。 いま 「肇じょう公こう」 とはすなはち僧そう肇じょうなり。 この人ひと論ろんを造つくる、 これを ¬肇じょう論ろん¼ といふ。 ¬維ゆい摩ま経きょう¼ によりて記きするところの書しょなり。 かの論ろんの序じょ (註維摩巻一) にいはく、 「それ聖しょう智ち無知むちにして万品まんぼんともに照てらす。」 次つぎ法身ほっしんの下しもいまの所引しょいんのごとし この釈しゃくの意こころ、 三論さんろんの宗しゅう旨し、 甚深じんじんの義理ぎり、 たやすく述のぶるに及およばず。 詞ことば幽玄ゆうげんなりといへども総そうじてこれを言いはば、 これすなはち不ふ行ぎょう而に行ぎょうの意こころなり。

-答。羅什三蔵ニ有リ↢其ノ四子↡、各為タリ↢英傑↡。世称シテ↠之ヲ言↢生・肇・融・叡ト↡。生ト者道生、肇ト者僧肇、融ト者道融、叡ト者僧叡ナリ。今「肇公ト」者即僧肇也。此ノ人造ル↠論ヲ、曰フ↢之ヲ¬肇論ト¼↡。依テ↢¬維摩経ニ¼↡所ノ↠記スル書也。彼ノ¬論ノ¼序ニ云ク、「夫聖智无知ニシテ而万品倶ニ照ス。」 次法身ノ下如シ↢今ノ所引ノ↡ 此ノ釈ノ之意、三論ノ宗旨、甚深ノ義理、不↠及↢輒ク述ルニ↡。詞雖ヘ↢幽玄ナリト↡総ジテ而言ハヾ↠之ヲ、是 レ則不行而行ノ意也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ・ d 無三宝処住持荘厳

△第だい四し段だんの中なかに、 「上じょう三さん句く雖言すいごん」 とらいふは、 これ当段とうだんの利り益やく周しゅう備びせることを述のぶ。 その意こころ ¬註ちゅう¼ に見みえたり、 さらに述のぶるにあたはず。 しかるになほほぼその意こころを解げす。 「上かみの三さん句く」 は有う仏ぶつの国くににおいて遍へん至しの徳とくを挙あぐ。 いまだ無む仏ぶつ世せ界かいの利り益やくを顕あらわさず、 いまこの句くに至いたりて仏法ぶっぽう功く徳どくの宝たからなき処ところの住じゅう持じの行ぎょう相そうを彰あらわす。 このゆゑに利り物もつここにして円満えんまんし、 功く徳どくここにして具ぐ足そくすらくのみ。

-第四段ノ中ニ、言↢「▲上三句雖言ト」等↡者、此 レ述ブ↢当段ノ利益周備セルコトヲ↡。其ノ意見タリ↠¬註ニ¼、不↠能↢更ニ述ルニ↡。然而猶粗解ス↢其ノ意ヲ↡。「上ノ三句」者於テ↢有仏ノ国ニ↡挙グ↢遍至ノ徳ヲ↡。未ダ↠顕サ↢无仏世界ノ利益ヲ↡、今至テ↢此ノ句ニ↡彰ス↧无↢仏法功徳ノ宝↡処ノ住持ノ行相ヲ↥。是ノ故ニ利物於シテ↠此ニ円満シ、功徳於シテ↠此ニ具足スラク而已。

問とふ。 三段さんだんの句く数しゅ、 おのおの一いち四句しく偈げあるゆゑに十じゅう二句にくなり。 なんぞ三さん句くといふ。 初はじめの標ひょうに準じゅんぜば四し種しゅといふべし。 もし章しょう段だんによらば三さん章しょう・三段さんだん等とうといふべきか、 いかん。

-問1186。三段ノ句数、各有ガ↢一四句偈↡之故ニ十二句也。何ゾ云↢三句ト↡。准ゼ↢初ノ標ニ↡者可シ↠云↢四種ト↡。若シ依ラバ↢章段ニ↡可↠云↢三章・三段等ト↡歟、如何。

答こたふ。 ¬唯識ゆいしき論ろん¼ (成唯識論巻二) にいはく、 「名なは自じ性しょうを詮せんし、 句くは差別しゃべつを詮せんす。」 以上 差別しゃべつの義ぎに就つきて、 句くといふに過とがなし。 すなはち下しもの釈しゃくの中なかの国こく土どの荘しょう厳ごんを 「十じゅう七しち句く」 といひ、 如来にょらいの荘しょう厳ごんを称しょうして 「八はっ句く」 といひ、 菩ぼ薩さつの荘しょう厳ごんをまた 「四句しく」 といふ、 みなこの意こころなり。 外げ典てんの中なかにおいてまたその例れいあり。 いはく絶ぜっ句く四し韻いん等とうの作さくをもつて、 一首いっしゅたりといへども一いっ句くの詩しと称となふる、 これ常つねの事ことなり。 準じゅん拠きょすべきか。

-答。¬唯識論ニ¼云、「名ハ*詮シ↢自性ヲ↡、句ハ詮ス↢差別ヲ↡。」 已上 就テ↢差別ノ義ニ↡、云ニ↠句ト无シ↠過。即下ノ釈ノ中ノ国土ノ荘厳ヲ云ヒ↢「十七句ト」↡、如来ノ荘厳ヲ称シテ曰ヒ↢「八句ト」↡、菩薩ノ荘厳ヲ又云フ↢「四句ト」↡、皆此ノ意也。於テ↢外典ノ中ニ↡又有リ↢其ノ例↡。謂ク以テ↢絶句四韻等ノ作ヲ↡、雖ヘ↠為タリト↢一首↡称スル↢一句ノ詩ト↡、是 レ常ノ事也。可キ↢准拠ス↡歟。

「便べん是ぜ」 とらは、 無む三宝さんぼう処しょの利り益やく、 もし欠かけば法身ほっしん不ふ遍へん上じょう善ぜん不具ふぐの過とがあるべきことを明あかさんと欲ほっする意こころなり。

-「▲便是ト」等者、无三宝処ノ利益、若シ闕ケバ欲スル↠明ント↠可コトヲ↠有ル↢法身不遍上善不具之過↡意也。

「上じょう善ぜん」 といふは、 諸しょ大だい菩ぼ薩さつ所得しょとくの善法ぜんぽう功く徳どく等とうなり。

-言↢「▲上善ト」↡者、諸大菩薩所得ノ善法功徳等也。

智ち光こうの ¬疏しょ¼ (無量寿経論釈巻五) に当とう章しょうの意こころを釈しゃくしていはく、 「しかももろもろの大だい菩ぼ薩さつ、 あまねく十方じっぽう無む量りょう世せ界かいの、 もしは三宝さんぼうある処ところ、 もしは三宝さんぼうなき処ところにおいて五ご種しゅの生しょうを受うけて、 その所応しょおうに随したがひて有う情じょうを救く済さいし仏法ぶっぽうを修しゅせしむ。 この中なかにしばらく無む三宝さんぼう処しょに就つきて、 菩ぼ薩さつ生しょうを受うけて法ほうを示しめして行ぎょうぜしむ。」 以上

-智光ノ¬疏ニ¼釈シテ↢当章ノ意ヲ↡云ク、「然モ諸ノ大菩薩、普ク於テ↧十方无量世界ノ、若ハ有ル↢三宝↡処、若ハ无キ↢三宝↡処ニ↥受テ↢五種ノ生ヲ↡、随テ↢其ノ所応ニ↡救↢済シ有情ヲ↡令シム↠修セ↢仏法ヲ↡。此ノ中ニ且ク就テ↢无三宝処ニ↡、菩薩受テ↠生ヲ示シテ↠法ヲ令シム↠行ゼ。」 已上

五ご種しゅの生しょうとは、 一いちには除災じょさい生しょう、 二にには随類ずいるい生しょう、 三さんには大勢だいせい生しょう、 四しには増ぞう上じょう生しょう、 五ごには最さい勝しょう生しょうなり。 同おなじき ¬疏しょ¼ にこれを列つらぬ。 つぶさに解げ釈しゃくすといへども繁しげきによりてこれを略りゃくす。 もし知しらんと欲ほっせばかの ¬疏しょ¼ を見みるべし。

-五種ノ生ト者、一ニハ除災生、二ニハ随類生、三ニハ大勢生、四ニハ増上生、五ニハ最勝生ナリ。同キ¬疏ニ¼烈ヌ↠之ヲ。具ニ雖ヘ↢解釈スト↡、依テ↠繁ニ略ス↠之ヲ。若シ欲↠知ント者可シ↠見↢彼ノ¬疏ヲ¼↡。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 浄入願心章

【27】浄入じょうにゅう願心がんしんの章しょうの中なかに二にあり。

▲浄入願心ノ章ノ中ニ有リ↠二。

一いちに ¬註ちゅう¼ の中なかに 「以下いげ」 といふよりこのかた二に十じゅう字じは、 前さきを結けっして後のちを生しょうじ、 また章しょう目もくを牒でっす。

-一ニ¬註ノ¼中ニ自↠言↢「已下ト」↡已来二十字者、結シテ↠前ヲ生ジ↠後ヲ、又牒ス↢章目ヲ↡。

二にに 「又う向説こうせつ」 の下しもはこれ正釈しょうしゃくなり。 これに五ご段だんあり、 いまこれその初はじめなり。

-二ニ「▲又向説ノ」下ハ是 レ正釈也。此ニ有リ↢五段↡、今是 レ其ノ初ナリ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅰ 第一段

この第一だいいち段だん、 まさしくこれ浄入じょうにゅう願心がんしんの義ぎなり。 当段とうだんの文もん、 第三だいさん巻かんの本ほんにこれを引用いんようせらる。 よりてかの下もとにして章しょう目もくの意こころを解げし、 ほぼ大たい意いを述のぶ。 ゆゑにいまこれを略りゃくす。

-此ノ第一段1187、正ク是 レ浄入願心ノ義也。当段ノ之文、▲第三巻ノ本ニ被ル↣引↢用セ之ヲ↡。仍テ於シテ↢▲彼ノ下ニ↡解シ↢章目ノ意ヲ↡、粗述ブ↢大意ヲ↡。故ニ今略ス↠之ヲ。

「因いん浄じょう」 とらは、 これ外げ道どう所しょ執しゅうの妄もう計けを破はす。 「無む因いん」 といふは、 五ご見けんの中なかにおいて、 これ邪見じゃけんを指さす。 「他た因いん有う」 とは戒禁かいごん取しゅなり。

-「▲因浄ト」等者、是 レ破ス↢外道所執ノ妄計ヲ↡。言↢「▲无因ト」↡者、於テ↢五見ノ中ニ↡、是 レ指ス↢邪見ヲ↡。「▲他因有ト」者、戒禁取也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅱ 第二段

【28】「略りゃく説せつ」 以下いげは第だい二に段だんなり。

「▲略説」以下ハ第二段也。

「入にゅう一いち」 とらは、 合がっして依え正しょう二に十じゅう九句くくの荘しょう厳ごん成じょう就じゅをもつて、 みなことごとく一いっ法ぽっ句くの中なかに摂入しょうにゅうす。 「一法いっぽっ句く」 とは、 「一法いっぽう」 の二字にじは所詮しょせんの法体ほったい、 「句く」 の一いち字じは能詮のうせんの名みょう字じ。 かの三種さんしゅをもつて一法いっぽっ句くに入いる、 これをもつて名なとなす。

-「▲入一ト」等者、合シテ以テ↢依正二十九句ノ荘厳成就ヲ↡、皆悉ク摂↢入ス一法句ノ中ニ↡「。一法句ト」者、「一法ノ」二字ハ所詮ノ法体、「句ノ」一字者能詮ノ名字。以テ↢彼ノ三種ヲ↡入ル↢一法句ニ↡、以テ↠之ヲ為ス↠名ト。

智ち光こうの疏しょ (無量寿経論釈巻五) にいはく、 「第だい四しに浄入じょうにゅう願心がんしん、 すなはち二にを分わかつ。 一いちには因いん果が相そう成じょう、 二にには入にゅう一法いっぽっ句くなり。」 以上 この釈しゃくの意こころ、 以下いげの三段さんだんを当段とうだんに摂せっするか。

-智光ノ¬疏ニ¼云、「第四ニ浄入願心、即分ツ↠二ヲ。一ニハ因果相成、二ニハ入一法句ナリ。」 已上 此ノ釈ノ之意、以下ノ三段ヲ摂スル↢当段ニ↡歟。

「一者いっしゃ法ほっ性しょう法身ほっしん二に者しゃ方便ほうべん法身ほっしん」 とらは、

-「▲一者法性法身二者方便法身ト」等者、

問とふ。 いずれの経きょう論ろんによりて二に身しんを立たつるや。

-問。依テ↢何レノ経論ニ↡立↢二身ヲ↡乎。

答こたふ。 ¬智度ちど論ろん¼ (巻三四初品) にいはく、 「一いちには法ほっ性しょう生しょう身じんの仏ぶつ、 二にには随ずい衆しゅ生じょう優う劣れつ現げん化けの仏ぶつ。 法ほっ性しょう生しょう身じんの仏ぶつのためのゆゑに、 乃ない至し名なを聞ききて得とく度どすと説とく。 衆しゅ生じょう現身げんしんの仏ぶつのためのゆゑに、 仏ぶつとともに住じゅうすといへども業ごう因縁いんねんに随したがひて地じ獄ごくに堕だする者ものありと説とく。 法ほっ性しょう生しょう身じんの仏ぶつは、 事じとして弁べんぜざることなく、 願がんとして満まんぜざることなし。」 以上

-答。¬智度論ニ¼云、「一者法性生身ノ仏、二随衆生優劣現化ノ仏。為ノ↢法性生身ノ仏ノ↡故ニ、説ク↢乃至聞テ↠名ヲ得度スト↡。為ノ↢衆生現身ノ仏ノ↡故ニ、説ク↧雖ヘ↢共ニ↠仏ト住スト↡随テ↢業因縁ニ↡有リト↦*堕スル↢地獄ニ↡者 ノ↥。法性生身ノ仏者、无ク↢事トシテ不コト↟弁ゼ、无シ↢願トシテ不コト↟満ゼ。」 已上

智ち光こうの ¬疏しょ¼ (無量寿経論釈巻二) にいはく、 「龍猛りゅうみょう二に種しゅの仏ぶつを説とく。 一いちには法ほっ性しょう生しょう身じんの仏ぶつ、 二にには随ずい衆しゅ生じょう現身げんしんの仏ぶつ、 すなはち本ほん迹しゃくをもつて二に法身ほっしんとなす。 法ほっ性しょう法身ほっしんによりて方便ほうべん法身ほっしんを出いだす、 すなはち本もとをもつて迹あとを垂たる。 方便ほうべん法身ほっしんによりて法ほっ性しょう法身ほっしんを出いだす、 すなはち迹あとをもつて本もとを顕あらわす。 この二に法身ほっしんは異いにして分わかつべからず、 一いちにして同どうずべからず。」 以上 この疏しょの中なかに、 龍猛りゅうみょう言ごんとは上かみの ¬論ろん¼ を指さすか。

-智光ノ¬疏ニ¼云、「龍猛説ク↢二種ノ仏ヲ↡。一ニハ法性生身ノ仏、二ニハ随衆生現身ノ仏、即以テ↢本迹ヲ↡為ス↢二法身ト↡。由テ↢法性法身ニ↡出ス↢方便法身ヲ↡、即以テ↠本ヲ垂ル↠迹ヲ。由テ↢方便法身ニ↡出ス↢法性法身ヲ↡、即以テ↠迹ヲ顕ス↠本ヲ。此ノ二法身ハ異ニシテ而不↠可↠分ツ、一1188ニシテ而不↠可↠同ズ。」 已上 此ノ疏ノ之中ニ、龍猛言ト者指↢上ノ¬論ヲ¼↡歟。

問とふ。 「生しょう」 といひ 「出しゅつ」 といふ、 なんの別べつありや。

-問。云ヒ↠「▲生ト」云フ↠「▲出ト」、有↢何ノ別↡耶。

答こたふ。 「生しょう」 といふは起き、 「出しゅつ」 とは顕けんなり。

-答。言↠「生」者起、「出ト」者顕也。

「是故ぜこ広こう略りゃく相そう入にゅう 乃至 不ふ能のう自利じり利他りた」 とは、 法ほっ性しょう法身ほっしんはこれ自利じりの徳とく、 方便ほうべん法身ほっしんは利他りたの徳とくなり。

-「▲是故広略相入 乃至 ◆不能自利利他ト」者、法性法身ハ是 レ自利ノ徳、方便法身ハ利他ノ徳也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅲ 第三段

【29】「一法いっぽっ句く」 の下しもはこれ第だい三段さんだん、 一法いっぽっ句くを釈しゃくす。

「▲一法句ノ」下ハ是 レ第三段、釈ス↢一法句ヲ↡。

「三さん句く展転てんでん相そう入にゅう」 とらは、

-「▲三句展転相入ト」等者、

問とふ。 「真実しんじつ智慧ちえ無為むい法身ほっしん」 は、 これ一法いっぽうたりや、 別法べっぽうたりや。

-問。「▲真実智恵无為法身ハ」、是 レ為タリヤ↢一法↡、為↢別法↡耶。

答こたふ。 相そう宗しゅうの意こころによらばこれ別法べっぽうたり。 能のう証しょうの智ち、 所しょ証しょうの理り、 各別かくべつたるがゆゑに。 性宗しょうしゅうの意こころによらばこれ一法いっぽうたり。 理智りち不二ふにの極談ごくだんなるがゆゑに。 いま鸞らん師しはこれ性宗しょうしゅうなるがゆゑに、 いまの釈しゃく述のぶるところ、 真実しんじつ智慧ちえすなはちこれ無為むい法身ほっしんの義ぎなり。

-答。依ラバ↢相宗ノ意ニ↡是 レ為タリ↢別法↡。能証ノ之智、所証ノ之理、為ガ↢各別↡故ニ。依ラバ↢性宗ノ意ニ↡是 レ為タリ↢一法↡。理智不二ノ之極談ダンナルガ故。今鸞師者是性宗ナルガ故ニ、今ノ釈所↠述ル、真実智恵即是无為法身ノ義也。

おほよそ当段とうだんの意こころ、 甚深じんじんの義ぎ趣しゅ、 愚ぐ鈍どんの領りょう解げたやすくもつて及およびがたし、 しづかに宗しゅう旨しを伺うかがひて料りょう簡けんを加くわふべし。 その大たい意いを謂おもふに、 すでに 「百ひゃっ非ぴの喩たとへざるところ」 といふ、 このゆゑに千せん是ぜも顕あらわさざるところなり。

-凡ソ当段ノ意、甚深ノ義趣、愚鈍ノ領解輒ク以テ難シ↠及ビ、閑ニ伺テ↢宗旨ヲ↡可シ↠加フ↢料簡ヲ↡。謂ニ↢其ノ大意ヲ↡、已ニ云フ↢「▲百非之所ト↟不ル↠喩」。是ノ故ニ千是モ所↠不ル↠顕サ也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅳ 第四段

【30】「此し清しょう」 已下いげはこれ第だい四し段だん、 上かみの一法いっぽっ句くを開かいして二に種しゅとなす。 その文もん見みつべし。

「▲此清」已下ハ是 レ第四段、上ノ一法句ヲ開シテ為ス↢二種ト↡。其ノ文可シ↠見ツ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅴ 第五段

【31】「何が等とう」 とらは、 これ第だい五ご段だん、 その二に種しゅの相そうを開かい出しゅつすることを釈しゃくす。

「▲何等ト」等者、是 レ第五段、釈ス↣其ノ開↢出スルコトヲ二種ノ之相ヲ↡。

「如にょ是ぜ」 とらは、 当段とうだんの中なかに、 初はじめには二に種しゅを開かいし、 いまはその二に種しゅを還かえりてまた一法いっぽっ句くに摂しょう入にゅうするなり。

-「▲如是ト」等者、当段ノ之中ニ、初ニハ開シ↢二種ヲ↡、今ハ其ノ二種ヲ還テ又摂↢入スル一法句ニ↡也。

「衆しゅ生じょう為い別報べっぽう之し体たい」 とは、 「別報べっぽう」 は正しょう報ぼうただみづから受用じゅゆうして他たは受用じゅゆうせず、 ゆゑに 「別報べっぽう」 とはこれ不共ふぐなり。 「国こく土ど為い共ぐう法ほう之し用ゆう」 とは、 依え報ほうは自他じたともに受用じゅゆうするがゆゑに、 これを 「共ぐう法ほう」 といふ。

-「▲衆生為別報之体ト」者、「別報ハ」正報唯自ミ 受用シテ他ハ不ズ↢受用↡、故ニ「別報ト」者是不共也。「▲国土為共法之用ト」者、依報ハ自他共ニ受用スルガ故ニ、言フ↢之ヲ「共法ト」↡。

問とふ。 ▽衆しゅ生じょうを 「体たい」 といひ、 器き界かいを 「用ゆう」 といふ、 その意こころいかん。

-問。衆生ヲ云ヒ↠「▲体ト」、器界ヲ云フ↠「▲用ト」、其1189ノ意如何。

答こたふ。 衆しゅ生じょうの報ほうによりて所しょ居ごの土どを感かんず。 この義ぎをもつてのゆゑに 「体たい」 はこれ衆しゅ生じょう、 「用ゆう」 は器き界かいなり。

-答。依テ↢衆生ノ報ニ↡感ズ↢所居ノ土ヲ↡。以ノ↢此ノ義ヲ↡故ニ「体ハ」是 レ衆生、「用ハ」器界也。

問とふ。 この別報べっぽう・共法ぐうほうの中なかに就つきていくばくの種しゅかあるや。

-問。就テ↢此ノ別報・共法ノ之中ニ↡有↢幾ノ種カ↡耶。

答こたふ。 四しの不ふ同どうあり。 その四しといふは、 別報べっぽうに二にあり。 一いちには不共ふぐの中なかの不共ふぐ、 いはく眼等げんとうの根こんのごとき、 ただこれ自じ識しきに依え用ようして他たの受用じゅゆうするところにあらざるがゆゑに、 まつたく不共ふぐとなす。 二にには不共ふぐの中なかの共ぐう、 扶ふ根こんの四し塵じんのごとき、 他たまた受用じゅゆうするがゆゑに、 また手てをもつて摩ま触そくするがごとき、 かくのごときの事じ、 これを共法ぐうほうとなす。 共法ぐうほうにまた二に。 一いちには共ぐうの中なかの共ぐう、 いはゆる山せん河が・大だい地じ等とうこれなり。 鬼き畜ちく・人天にんでんおなじく受用じゅゆうするがゆゑに、 共ぐうの中なかの共ぐうといふ。 二にには共ぐうの中なかの不共ふぐ、 いはゆる田宅でんたく・舎宅しゃたく・衣え服ぶく・資具しぐ、 かくのごときの類たぐい共法ぐうほうたりといへども、 自じ身しんの外ほか他た共ぐうせざるなり。

-答。有リ↢四ノ不同↡。言↢其ノ四ト↡者、別報ニ有リ↠二。一ニハ不共ノ中ノ不共、謂ク如キ↢眼等ノ根ノ↡、唯是 レ自識ニ依用シテ非ガ↣他ノ所ニ↢受用スル↡故ニ、全ク為ス↢不共ト↡。二ニハ不共ノ中ノ之共、如キ↢扶根ノ四塵ノ↡、他亦受用スルガ故ニ、又如キ↢以テ↠手ヲ摩触スルガ↡、如ノ↠此ノ之事、為ス↢之ヲ共法ト↡。共法ニ又二。一ニハ共ノ中ノ之共、所謂山河・大地等是ナリ。鬼畜・人天同ク受用スルガ故ニ、云フ↢共ノ中ノ共ト↡。二ニハ共ノ中ノ不共、所謂田宅・舎宅・衣服・資具、如ノ↠此ノ之類雖ヘ↠為タリト↢共法↡、自身ノ之外他不ル↠共セ也。

「諸法しょほう心しん成じょう無余むよ境きょう界がい」 といふは、 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ (意) にいはく、 「三界さんがいはただ一心いっしんなり、 心しんの外ほかに別法べっぽうなし。」 以上 また ¬起き信しん論ろん¼ に多おおくこの意こころあり、 その論文ろんもん等とう▲第だい二にの新本しんほんならびに△当巻とうかんの鈔しょうの上かみに引ひくところなり。

-言↢「▲諸法心成无余境界ト」↡者、¬花厳経ニ¼云、「三界ハ唯一心ナリ、心ノ外ニ无シ↢別法↡。」 已上 又¬起信論ニ¼多ク有リ↢此ノ意↡、其ノ論文等所↠引↢第二ノ新本ニ当巻ノ鈔ノ上ニ↡也。

問とふ。 「器きとは用ゆうなり」 とは、 体用たいゆうの義ぎか、 受用じゅゆうの義ぎか。

-問。「▲器ト者用ナリト」者、体用ノ義歟、受用ノ義歟。

答こたふ。 受用じゅゆうの義ぎなり。

-答。受用ノ義也。

問とふ。 △上かみに衆しゅ生じょうおよび国こく土どに対たいしてその体用たいゆうを判はんず。 かれに準じゅんじてこれを思おもふに体用たいゆうの義ぎたるべきものか。

-問。上ニ対シテ↢衆生及以国土ニ↡判ズ↢其ノ体用ヲ↡。准ジテ↠彼ニ思ニ↠此ヲ可↠為↢体用ノ之義↡者耶。

答こたふ。 上かみに体用たいゆうを判はんずることは異い論ろんに及およばず、 いまの釈しゃくはしからず。 下しもの細さい釈しゃくにいはく、 「清浄しょうじょう↓衆しゅ生じょうの受用じゅゆうするところなり、 ゆゑに名なづけて器きとす。」 以上 受用じゅゆうの義ぎたることもつとも分ぶん明みょうなり。

-答。上ニ判ズルコトハ↢体用ヲ↡不↠及↢異論ニ↡、今ノ釈ハ不↠爾。下ノ細釈ニ云ク、「▲清浄衆生ノ之所ナリ↢受用スル↡、故ニ名テ為ス↠器ト。」 已上 為コト↢受用ノ義↡尤分明也。

問とふ。 いふところの受用じゅゆう、 衆しゅ生じょうと器きと、 なにをか能所のうじょとする、 判属はんぞくいかん。

-問。所ノ↠言受用、衆生ト与 ト ↠器、何ヲカ為スル↢能所ト↡、判属如何。

答こたふ。 器きは所しょ受用じゅゆう、 清浄しょうじょう衆しゅ生じょうは能のう受用じゅゆうなり。

-答。器ハ所受用、清浄衆生ハ能受用也。

問とふ。 下しもの譬喩ひゆを見みるに、 器きはこれ能受のうじゅ、 人にんは所受しょじゅか。 いはく食じきは人にんのごとし、 器きはこれ国こく土ど。 国こく土どと人にんとをもつて次ついでのごとく能のう所受しょじゅに配当はいとうせば、 道どう理りに叶かなふか。

-問。見ニ↢▲下ノ譬喩ヲ↡、器ハ是能受、人ハ所受歟1190。謂ク食ハ如シ↠人ノ、器ハ是 レ国土。以テ↢国土ト人トヲ↡、如ク↠次ノ配↢当セ能所受ニ↡者、叶↢道理ニ↡耶。

答こたふ。 釈しゃくに 「↑衆しゅ生じょうの受用じゅゆうするところ」 といふ、 人にんを能受のうじゅとすること、 その理り諍あらそいなし。 ただしいまの譬たとえは、 あながちに能受のうじゅ・所受しょじゅを分別ふんべつするにあらず、 ただ人にん器きともに浄じょうと称しょうすることを得うる義ぎを顕あらわすらくのみ。

-答。釈ニ云フ↣「衆生之所ト↢受用スル↡」、人ヲ為スルコト↢能受ト↡、其ノ理无シ↠諍。但シ今ノ譬者、非ズ↣強ニ分↢別スルニ能受・所受ヲ↡、只顕スラク↢人器共ニ得ル↠称スルコトヲ↠浄ト之義ヲ↡而已。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 善巧摂化章

【32】善ぜん巧ぎょう摂せっ化けの章しょうの中なかに二にあり。

▲善巧摂化ノ章ノ中ニ有リ↠二。

初はじめに章しょう目もくを標ひょうす。 章しょう目もくを解げせば、 「善ぜん巧ぎょう」 といふはこれ方便ほうべんなり。 この義ぎ ¬摩訶まか止し観かん¼ を見みるべし。 方便ほうべんといふは下しもの註釈ちゅうしゃくのごとし。 「摂せっ化け」 といふは、 「摂せつ」 は摂しょう受じゅの義ぎ、 「化け」 は化け導どうなり。 これすなはち衆しゅ生じょうを摂せっ化け利り益やくするに巧ぎょう方便ほうべん回え向こうの善ぜんをもつてするなり。

-初ニ標ス↢章目ヲ↡。解セ↢章目ヲ↡者、言↢「善巧ト」↡者是 レ方便也。此ノ義可シ↠見ル↢¬摩訶止観ヲ¼↡。言↢方便ト↡者如シ↢▲下ノ註釈ノ↡。言↢「摂化ト」↡者、「摂ハ」摂受ノ義、「化ハ」化導也。是則摂↢化利↣益スルニ衆生ヲ↡以スル↢巧方便廻向ノ善ヲ↡也。

問とふ。 摂せっ化けといふに就つきて、 能のう摂しょう・所しょ摂しょうあるべきや。

-問。就テ↠言ニ↢摂化ト↡、可↠有↢能摂・所摂↡乎。

答こたふ。 広こう略りゃく止し観かんの修しゅ行ぎょうは能のう摂しょう、 この功く徳どくをもつて衆しゅ生じょうに施せするは所しょ摂しょうの義ぎなり。

-答。広略止観ノ修行ハ能摂、以テ↢此ノ功徳ヲ↡施スルハ↢衆生ニ↡者所摂ノ義也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅰ 第一段

【33】「如にょ是ぜ」 以下いげは、 これ正釈しょうしゃくなり。 これに四し段だんあり、 第だい一段いちだんには止し観かん相そう順じゅんして柔にゅう軟なん心しんを成じょうずることを明あかす。

「▲如*是」以下ハ、是 レ正釈也。此ニ有リ↢四段↡、第一段ニハ明ス↣止観相順シテ成ズルコトヲ↢柔軟心ヲ↡。

「柔にゅう軟なん心しん」 とは、 いまの ¬註ちゅう¼ の意こころを見みるに随ずい順じゅんの義ぎなり。 智ち光こうの ¬疏しょ¼ (無量寿経論釈巻五) にいはく、 「柔にゅう軟なん心しんとは、 いはく不二ふに心しん。 広こう略りゃく止し観かん相そう順じゅん修しゅ行ぎょうして不二ふに心しんを成じょうず。」 以上 まつたくいまの釈しゃくに同おなじ。

-「▲柔軟心ト」者、見ニ↢今ノ¬註ノ¼意ヲ↡随順ノ義也。智光ノ¬疏ニ¼云、「柔軟心ト者、謂ク不二心。広略止観相順修行シテ成ズ↢不二心ヲ↡。」 已上 全ク同ジ↢今ノ釈ニ↡。

「不二ふに心しん」 とは、 止し観かんの二に法ほう相そう離りせざる心しん、 これすなはち相応そうおう、 その義ぎすなはちこれ柔にゅう軟なん心しんなり。

-「▲不二心ト」者、止観ノ二法不ル↢相離セ↡心、此 レ乃相応、其ノ義即是柔軟心也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅱ 第二段

【34】「如実にょじつ知ち」 の下しもは第だい二に段だんなり。 これ広こう略りゃくみな実相じっそうなることを明あかす。

-「▲如実知ノ」下ハ第二段也。是 レ明ス↢広略皆実相ナルコトヲ↡也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅲ 第三段

【35】「如にょ是ぜ成じょう」 の下しもは第三だいさん段だんなり。 当段とうだんにまさしく巧ぎょう方便ほうべん回え向こうを成じょうずる意こころを明あかす。

「▲如是成ノ」下ハ第三段也。当段ニ正ク明ス↧成ズル↢巧方便廻向ヲ↡之意ヲ↥。

「知ち衆しゅ生じょう虚こ妄もう則そく生しょう真実しんじつ慈悲じひ也や」 といふは、 これ巧ぎょう方便ほうべんの慈悲じひ心しん、 すなはちこれ下化げけ衆しゅ生じょうの心しんなり。

-言↢「▲知衆生虚1191妄則生真実慈悲也ト」↡者、是 レ巧方便ノ之慈悲心、即是下化衆生ノ心也。

次下つぎしもの釈しゃくにいはく、 「知ち真実しんじつ法身ほっしん」 とらは、 上じょう求ぐ菩ぼ提だい、 「帰依きえ」 といふはすなはち智慧ちえなり。

-次下ノ釈ニ云ク、「▲知真実法身ト」等者、上求菩提、言↢「▲帰依ト」↡者即智恵也。

「慈悲じひ 乃至 在ざい下げ」 とは、 下しもの障しょう菩ぼ提だい門もんの中なかの智慧ちえ・慈悲じひおよび方便ほうべんを指さすなり。

-「▲慈悲 乃至 在下ト」者、指↢▲下ノ障菩提門ノ之中ノ智恵・慈悲及ビ方便ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅳ 第四段

【36】「何が者しゃ」 以下いげは、 当段とうだんに重かさねてくわしく巧ぎょう方便ほうべん回え向こうの義ぎを明あかす。

「▲何者」以下ハ、当段ニ重テ委ク明ス↢巧方便廻向ノ之義ヲ↡。

「案あん王舎おうしゃ城じょう所説しょせつ」 とらは、 始はじめこの文もんより 「向こう仏道ぶつどう」 に至いたるまで、 第三だいさん巻かんの本ほんにこれを引ひき載のせらる。 このゆゑにかの旧きゅう本ほんの鈔しょうの中なかにおいて、 ほぼこの事じを記きす。 よりていまこれを略りゃくす。 ただしあひ残のこるところいささかこれを述のぶべし。

-「▲案王舎城所説ト」等者、始自↢此ノ文↡至マデ↢「向仏道ニ▲」↡、▲第三巻ノ本ニ被ル↣引↢載之ヲ↡。是ノ故ニ於テ↢彼ノ▲旧本ノ鈔ノ中ニ↡、粗記ス↢此ノ事ヲ↡。仍今略ス↠之ヲ。但シ所↢相残ル↡聊可シ↠述ブ↠之ヲ。

問とふ。 五ご念ねん門もんの中なかに列れっするところの回え向こうといまの回え向こうと、 同どう異いいかん。

-問。五念門ノ中ニ所ノ↠列ヌル廻向ト与 ト ↢今ノ廻向↡、同異如何。

答こたふ。 その義ぎこれ同おなじ、 回え向こうの意い楽ぎょう、 替かわるべからざるがゆゑに。

-答。其ノ義是 レ同ジ。廻向ノ意楽、不ガ↠可↠替ル故ニ。

問とふ。 五ご念ねん門もんは所しょ回えの行ぎょう体たい、 いまの回え向こうは能のう回えの心しんなり。 能所のうしょすでに異いなり、 なんぞ同おなじといふや。

-問。五念門者所廻ノ行体、今ノ廻向者能廻ノ心也。能所已ニ異ナリ、何ゾ云↠同ジト耶。

答こたふ。 五ご念ねん門もんの中なかに、 前まえの四し門もんはこれ所しょ回え向こう、 第だい五ご門もんは能のう回え向こうなり。 能所のうしょ合論ごうろんしてこれを五ご念ねんと名なづく。 彼此ひしの回え向こうその心しん同どうなり。

-答。五念門ノ中ニ、前ノ四門者是所廻向、第五門者能廻向也。能所合論シテ名ク↢之ヲ五念ト↡。彼此ノ廻向其ノ心同也。

問とふ。 ¬観かん経ぎょう¼ 所説しょせつの三心さんしんの第三だいさんといまの回え向こうと、 同どう異いいかん。

-問。¬観経¼所説ノ三心ノ第三ト与 ト ↢今ノ廻向↡、同異如何。

答こたふ。 この同どう異いにおいては、 重々じゅうじゅう義ぎあり。 まづ第三だいさんの心しんにその三さん重じゅうあり。 中なかにおいて初はじめの二にはこれに同どうずべからず、 かれは自利じりなるがゆゑに。 後のちの一いちは同どうずべし、 かれは利他りたに約やくす。 いまの回え向こうまた利他りたに約やくするがゆゑに。 またたとひ第だい三さん重じゅうの心しんたりといへども、 さらに同どうずべからず。 ¬観かん経ぎょう¼ の三心さんしんは、 定じょう散さん諸しょ機き各別かくべつにして発おこすところの自じ力りきの心しんなり。 いまの回え向こうは、 如来にょらい利他りたの回え向こう心しんなり。 もしこの義ぎに約やくせばおほきにもつて異いなりとなす。 ただしまたかの ¬観かん経ぎょう¼ の三心さんしん、 ¬大だい経きょう¼ の三信さんしん和会わえしてつひに一心いっしんとなるに約やくする時とき、 この三信さんしんは如来にょらい発ほっ起き他た力りきの大信だいしんなり。 この義ぎ辺へんに約やくすればまた同どうなりとなすなり。

-答。於↢此ノ同異ニ↡者、重重有リ↠義。先ヅ第三ノ心ニ有リ↢▲其ノ三重↡。於テ↠中ニ初ノ二ハ不↠可ラ↠同ズ↠之ニ、彼ハ自利ナルガ故ニ。後ノ一ハ可シ↠同ズ、彼ハ約ス↢利他ニ↡。今ノ廻向又約スルガ↢利他ニ↡故ニ。又縦ヒ雖フ↠為リト↢第三重ノ心↡、更ニ不↠可↠同ズ。¬観経ノ¼三心ハ、定散諸機各別ニシテ所ノ↠発ス自力ノ心也。今ノ廻向者、如来利他ノ廻向心也。若シ約セバ↢此ノ義ニ↡大ニ以テ為ス↠異也ト。但シ又約スル↣彼1192ノ¬観経ノ¼三心、¬大経ノ¼三信和会シテ終ニ成ナルニ↢一心ト↡之時、此ノ三信者如来発起他力ノ大信也。約スレバ↢此ノ義辺ニ↡又為ス↠同也ト也。

「譬ひ如にょ」 とらは、 利他りたを欲ほっすればまづ自利じりを得うるがこれしからしむるに喩たとふるなり。

-「▲譬如ト」等者、喩フ↧欲スレバ↢利他ヲ↡先ヅ得ルガ↢自利ヲ↡之令ルニ↞然ラ也。

「擿ちゃく」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「雉ち戟きゃくの切せつ、 擿ちゃく投とうなり、 棄きなり。」 以上 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「擲ちゃく直ちょく炙しゃくの切せつ、 投とうなり、 掻そうなり、 振しんなり。 擿ちゃく ¬説文せつもん¼ 上かみに同おなじ。」 以上

-「▲擿」¬玉篇¼云、「雉戟ノ切、擿投也、棄也。」 已上 ¬広韻¼云、「擲直炙ノ切、*投也、掻也、振也。*擿¬説文¼上ニ同ジ。」 已上

「摘たく」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「多た革かくの切せつ、 拓たく果か樹じゅ実じつ。」 以上 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「陟ちき革かく切せつ、 手取しゅしゅなり、 また他た歴りゃくの切せつ。」 以上

-「摘」¬玉篇ニ¼云、「多革ノ切、拓果樹実。」 已上 ¬広韻ニ¼云、「陟革切、手取也、又他歴切。」 已上

ある本ほん両りょう所しょともに 「擿ちゃく」 の字じを用もちゐる。 あるいは上かみ 「擿ちゃく」 下しも 「摘たく」 なる本ほんあり。 「擿ちゃく」・「摘たく」 の両りょう字じ通用つうようするに咎とがなし。 ただし上かみの 「擿ちゃく」 において、 本書ほんしょ多た本ほん 「聴ちょう念ねん反はん」 と記きす、 みなもつて不ふ審しん。 この反はんのごときは去こ声しょうの五ご十じゅう五ご・六ろく、 艶えん・𣕊てんの韻いんにあるべし。 しかるにかの韻いんにおいてさらにこの字じなし、 恐おそらくは後のちの人ひと誤あやまりてこの反はんを載のするか。 勘かんがへ載のするところの字じ書しょの反はん、 指し南なんとするに足たれり。 後ご賢けんよろしくこの愚意ぐいを決けっすべきなり。

-或本両所共ニ用ル↢「擿ノ」字ヲ↡。或ハ有リ↢上「擿」下「摘ナル」之本↡。「擿」・「摘ノ」両字通用スルニ无シ↠咎。但シ於テ↢上ノ「擿ニ」↡、本書多本記↢「▲聴念反」↡、皆以不審。如↢此ノ反ノ↡者可シ↠在↢去声ノ五十五・六、艶・𣕊ノ韻ニ↡。而ニ於テ↢彼ノ韻ニ↡更ニ无シ↢此ノ字↡、恐ハ後ノ人誤テ載↢此ノ反ヲ↡歟。所ノ↢勘ヘ載スル↡之字書ノ之反、足レリ↠為スルニ↢指南ト↡。後賢宜クキ↠决ス↢此ノ愚意ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 障菩提門章

【37】障しょう菩ぼ提だい門もんの章しょうの中なかに二にあり、 初はじめに章しょう目もくを標ひょうす。

▲障菩提門ノ章ノ中ニ有リ↠二、初ニ標ス↢章目ヲ↡。

問とふ。 この章しょう目もくにおいてその義ぎ思おもひがたし。 十重じゅうじゅうの解義げぎみなこれ修道しゅどうなり、 なんぞ菩ぼ提だい門もんを障しょう礙げすることを立たつるや。

-問。於テ↢此ノ章目ニ↡其ノ義難シ↠思ヒ。十重ノ解義皆是 レ修道ナリ、何ゾ立ル↣障↢スルコトヲ菩提門ヲ↡耶。

答こたふ。 意こころは障しょう菩ぼ提だい門もんを遠おん離りすといふ。 このゆゑに初はじめに十重じゅうじゅうを列つらぬるに名なづけて離り菩ぼ提だい障しょうといふ、 いままた下しもに総別そうべつの解げ釈しゃくを設もうくるにみな 「遠おん離り」 といふ、 前ぜん後ごの釈しゃくをもつてその相そう違いを顕あらわす。 いま文もんの略りゃくせるなり。

-答。意ハ云フ↣遠↢離スト障菩提門ヲ↡。是ノ故ニ初ニ列ヌルニハ↢十重ヲ↡名テ云フ↢▲離菩提障ト↡。今又下ニ設ルニ↢総別ノ解釈ヲ↡皆云フ↢「▲遠離ト」↡、以テ↢前後ノ釈ヲ↡顕ス↢其ノ相違ヲ↡。今文ノ略セル也。

【38】「菩ぼ薩さつ」 以下いげはこれ正釈しょうしゃくなり。 これに四し段だんあり、 初はじめの三段さんだんは三門さんもんによりて三さん障しょうを離はなるる義ぎを明あかす。 いはく智慧ちえ・慈悲じひ・方便ほうべんによりて、 次ついでのごとく貪とん著じゃく自じ身しん・無む安あん衆しゅ生じょう・供く敬ぎょう自じ身しんを遠おん離りす。 後のちの一段いちだんは、 これ総結そうけつなり。

-「▲菩薩」以下ハ是 レ正釈也。此ニ有リ↢四段↡、初ノ三段者、明ス↧依テ↢三門ニ↡離ルヽ↢三障ヲ↡義ヲ↥。謂ク依1193テ↢智恵・慈悲・方便ニ↡、如ク↠次ノ遠↢離ス貪著自身・无安衆生・供敬自身ヲ↡。後ノ一段者、是 レ総結也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅰ 第一段

【39】第だい一段いちだんの中なかに、

▲第一段ノ中ニ、

「知ち進しん」 とらは、 俗諦ぞくたいの法ほうにおいて善悪ぜんあくを分別ふんべつして、 進しんを願がんじ退たいを恐おそれて自じ心しんを守まもるなり。 「進しん」 は仏道ぶつどうに進すすむ、 「退たい」 は退たい堕だなり。 いふところの 「智ち」 とは、 世せ俗ぞく智ちなり。

-「▲知進ト」等者、於テ↢俗諦ノ法ニ↡分↢別シテ善悪ヲ↡、願ジ↠進ヲ恐テ↠退ヲ守↢自心ヲ↡也。「進ハ」進ム↢仏道ニ↡、「退ハ」退堕也。所ノ↠言「智ト」者、世俗智也。

問とふ。 空くう無我むがを知しる、 もつとも智ちといふべし、 いかん。

-問。▲知ル↢空无我ヲ↡、尤可シ↠云智ト、如何。

答こたふ。 法門ほうもんの配当はいとうかならずしも一いち準じゅんならず、 おのおの一いち義ぎによる。 また体たいに約やくすれば一いちなり、 その義ぎ違いせず。

-答。法門ノ配当不↢必シモ一准ナラ↡、各依ル↢一義ニ↡。又約スレバ↠体ニ一ナリ、其ノ義不↠違セ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅱ 第二段

【40】第だい二に段だんの中なかに、

▲第二段ノ中ニ、

「抜ばっ苦く」 とらは、

-「▲抜苦ト」等者、

問とふ。 ¬倶く舎しゃ論ろん¼ (玄奘訳巻二九定品) にいはく、 「慈悲じひは無む瞋しんの性しょう 乃至 この行ぎょう相そう次ついでのごとく、 与よ楽らくとおよび抜ばっ苦くとなり。」 以上 いまと相そう違いいかん。

-問。¬倶舎論ニ¼云、「慈悲ハ无嗔ノ性 乃至 此ノ行相如ク↠次ノ、与楽ト及ビ抜苦トナリ。」 已上 与↠今相違如何。

答こたふ。 毘び曇どんの義ぎはしかなり、 常つねにこの説せつによる。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻一五梵行品 南本巻一四梵行品) にいはく、 「もろもろの衆しゅ生じょうのために無む利り養ようを除のぞく、 これを大だい慈じと名なづく、 ゆゑに衆しゅ生じょうに無む量りょうの利り楽らくを与あたふ、 これを大だい悲ひと名なづく。」 以上 この ¬経きょう¼ の所説しょせつはいまの註釈ちゅうしゃくに順じゅんず、 彼是ひぜ異い説せつ和会わえに及およばず。

-答。毘曇ノ義ハ然ナリ、常ニ依ル↢此ノ説ニ↡。¬涅槃経ニ¼云ク、「為ニ↢諸ノ衆生ノ↡除ク↢无利*養ヲ↡、是ヲ名ク↢大慈ト↡。故ニ与フ↢衆生ニ无量ノ利楽ヲ↡、是ヲ名ク↢大悲ト↡。」 已上 此ノ¬経ノ¼所説ハ順ズ↢今ノ註釈ニ↡、彼是異説不↠及和会ニ↡。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅲ 第三段

【41】第だい三門さんもんの中なかに、

▲第三門ノ中ニ、

「正しょう直じき」 といふは、 怨親おんしん尊そん卑ぴの相そうを見みず、 あまねく一切いっさいにおいて総そうじて平びょう等どう憐愍れんみんの想そうを起おこす。 「外げ己こ」 といふは、 「外げ」 とは後のちなり、 「己こ」 とは自じなり。 外己げこといふに対たいして内ない他たの義ぎあり、 内ないとは前さきなり。

-言↢「▲正直ト」↡者、不↠見↢怨親尊卑ノ之相ヲ↡、普ク於テ↢一切ニ↡総ジテ起ス↢平等憐愍ノ之想ヲ↡。言↢「▲外己ト」↡者、「外ト」者後也、「己ト」者自也。対シテ↠言ニ↢外己ト↡有リ↢内他ノ義↡、内ト者前也。

問とふ。 この門もんの中なかにすでに 「憐愍れんみん一切いっさい衆しゅ生じょう」 といふ、 すなはち慈悲じひか。 しからば二に、 三さんの両りょう門もん、 なんの別べつかあるや。

-問。此ノ門ノ之中ニ既ニ云フ↢「▲憐愍一切衆生ト」↡、即慈悲歟。然ラ者二、三ノ両門、有↢何ノ別カ↡耶。

答こたふ。 上かみの門もんはこれ抜ばっ苦く与よ楽らくに約やくす、 これすなはち所しょ作さなり。 いまの門もんにはただ憐愍れんみん衆しゅ生じょうといふ、 これ能のう作さの心しん。 これをもつて異いとなす。 おほよそ三門さんもん差別しゃべつの義ぎをいはば、 初はじめは智慧ちえによりて自じ楽らくを求もとめず、 次つぎは慈悲じひによりて抜ばっ苦く与よ楽らくす、 後のちは方便ほうべんによりて一切いっさいを憐愍れんみんして自じ供く敬ぎょうを離はなる。 また三門さんもんをもつてその自利じり利他りたの辺へんに約やくせば、 第一だいいちは自利じり、 第だい二には利他りた、 第だい三門さんもんは並ならべて自他じたに約やくす。 「憐愍れんみん」 とらいふはこれ利他りたの義ぎ、 「遠おん離り」 とらはこれ自利じりなり。 これわたくしの領りょう解げなり、 先達せんだついまだ談だんぜず。 定さだめて誤あやまりあるか、 後ご賢けんよろしく定さだむべし。

-答。上ノ門ハ是 レ約ス↢抜苦与楽ニ↡、是 レ則所作ナリ。今ノ門ニハ只云フ↢憐愍衆生ト↡、是 レ能作ノ心。以テ↠之ヲ為ス↠異ト。凡ソ言イハ↢三門差別ノ義ヲ↡者、初ハ依テ↢智恵ニ↡不↠求1194↢自楽ヲ↡、次ハ依テ↢慈悲ニ↡抜苦与楽ス、後ハ依テ↢方便ニ↡憐↢愍シテ一切ヲ↡離ル↢自供敬ヲ↡。又以テ↢三門ヲ↡約セ↢其ノ自利利他ノ辺ニ↡者、第一ハ自利、第二ハ利他、第三門者並ベテ約ス↢自他ニ↡。言ハ↢「憐愍ト」等↡是 レ利他ノ義、「▲遠離ト」等者是 レ自利也。是私ノ領解ナリ、先達未ダ↠談。定テ有↠*誤歟、後賢宜クシ↠定ム。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 順菩提門章

【42】順じゅん菩ぼ提だい門もんの章しょうの中なかに二にあり、

▲順菩提門ノ章ノ中ニ有リ↠二、

初はじめに章しょう目もくを標ひょうす。 その章しょう目もくの意こころ、 次上つぎかみの門もんに翻ほんじてその意こころを得うべし。 いはゆる上かみの門もんは離り菩ぼ提だい障しょう、 いまの門もんはすなはち順じゅん菩ぼ提だいの意こころを顕あらわす。 上下かみしも相そう対たいしてその意こころ見みつべし。

-初ニ標ス↢章目ヲ↡。其ノ章目ノ意、翻ジテ↢次上ノ門ニ↡可シ↠得↢其ノ意ヲ↡。所謂上ノ門ハ離菩提障、今ノ門ハ即顕ス↢順菩提ノ意ヲ↡。上下相対シテ其ノ意可シ↠見ツ。

【43】次つぎに 「菩ぼ薩さつ」 の下しもは、 これ正釈しょうしゃくなり。 これに四し段だんあり。 初はじめの三段さんだんは初はじめの三段さんだんに対たいし、 後のちの一段いちだんは後のちの一段いちだんに対たいして、 その意こころを得うべし。

次ニ「▲菩薩ノ」下ハ、是 レ正釈也。此ニ有リ↢四段↡。初ノ三段者対シ↢初ノ三段ニ↡、後ノ一段者対シテ↢後ノ一段ニ↡、可シ↠得↢其ノ意ヲ↡。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 名義摂対章

【44】名みょう義ぎ摂対せったいの章しょうの中なかに二にあり。

▲名義摂対ノ章ノ中ニ有リ↠二。

初はじめに章しょう目もくを標ひょうす。 章しょう目もくを釈しゃくせば、 「名みょう」 とは上かみに列つらぬるところの智慧ちえ・慈悲じひ・方便ほうべんの三種さんしゅの名なを指さす。 「義ぎ」 とはすなはちかの三種さんしゅ所しょ具ぐの義ぎ。 また名みょうは能詮のうせん、 義ぎは所詮しょせんなり。 「摂対せったい」 といふは、 「摂せつ」 は相そう摂しょう、 「対たい」 は相対そうたい、 上下かみしもを相対そうたいしてこれを相そう摂しょうす。 その摂対せったいとは、 すなはち論文ろんもん (浄土論) に三種さんしゅの門もんをもつて 「般若はんにゃを摂取せっしゅす、 般若はんにゃ方便ほうべんを摂取せっしゅす」 といふこれなり。

-初ニ標ス↢章目ヲ↡。釈セ↢章目ヲ↡者、「名ト」者指ス↢上ニ所ノ↠烈ヌル智恵・慈悲・方便三種之名ヲ↡。「義ト」者即彼ノ三種所具ノ之義。又名ハ能詮、義ハ所詮也。言↢「摂対ト」↡者、「摂」者相摂、「対」者相対、相↢対シテ上下ヲ↡而相↢摂之ヲ↡。其ノ摂対ト者、即論文ニ曰フ↧以テ↢三種ノ門ヲ↡「▲摂↢取ス般若ヲ↡、般若摂↦取スト方便ヲ↥」是也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅰ 第一段

【45】「向説こうせつ智慧ちえ慈悲じひ」 等とうの下しもは、 これ正釈しょうしゃくなり。 これに三段さんだんあり、 いまはその初はじめなり。

「▲向説智恵慈悲」等ノ下ハ、是 レ正釈也。此ニ有リ↢三段↡、今ハ其ノ初也。

「向説こうせつ」 といふは、 上かみの離り菩ぼ提だい障しょうの章しょうを指さすなり。 この中なかの意こころは、 智慧ちえ等とうの三さん、 般若はんにゃを摂取せっしゅし、 般若はんにゃ、 方便ほうべんを摂取せっしゅする義ぎを明あかす。

-言↢「向説ト」↡者、指↢▲上ノ離菩提障ノ章ヲ↡也。此ノ中ノ意ハ、明↧智恵等ノ三摂↢取シ般若ヲ↡、般若摂↢取スル方便1195ヲ↡義ヲ↥也。

「般若はんにゃとらは達如たつにょの慧え」 とはすなはちこれ実じっ智ち、 「方便ほうべん」 といふはこれ権ごん智ちなり。

-「▲般若ト等者達如ノ慧ト」者即是実智、言↢「▲方便ト」↡者是権智也。

問とふ。 般若はんにゃといふは三種さんしゅの外ほかか。

-問。言↢般若ト↡者三種ノ外歟。

答こたふ。 三種さんしゅの内うちなり。 いはく智慧ちえの中なかにその実じっ智ちを取とる、 これすなはち慧えなり。

-答。三種ノ内也。謂ク智恵ノ中ニ取ル↢其ノ実智ヲ↡、是則恵也。

問とふ。 いふところの 「般若はんにゃ」 三種さんしゅの内うちならば、 なんぞ相そう摂しょうを論ろんぜん。

-問。所ノ↠言「般若」三種ノ内ナラバ者、何ゾ論ゼン↢相摂ヲ↡。

答こたふ。 上かみは権ごん智ちに約やくす。 これ世せ俗ぞく智ち、 すなはちこれ能のう摂しょう。 下しもの般若はんにゃはこれ実じっ智ちに約やくす。 すなはち真諦しんたい智ち、 これ所しょ摂しょうなり。

-答。上ハ約ス↢権智ニ↡。是 レ世俗智、即是能摂。下ノ般若者是 レ約ス↢実智ニ↡。即真諦智、是所摂也。

問とふ。 なんぞ所しょ摂しょうの中なかに慈悲じひを挙あげざる。

-問。何ゾ所摂ノ中ニ不ル↠挙ゲ↢慈悲ヲ↡。

答こたふ。 方便ほうべんに摂せっするなり。

-答。摂スル↢方便ニ↡也。

「達如たつにょ」 とらは、 以下いげ註釈ちゅうしゃくの大たい意いは、 これ権ごん実じつ二智にちたがひにあひ離りせず、 寂じゃく滅めつ省しょう機きともにあひ妨さまたげず、 動どう静じょう失しっせずして功く力りき自じ然ねんなることを明あかす。

-「▲達如ト」等者、已下註釈ノ大意ハ、此 レ明ス↧権実二智互ニ不↢相離セ↡、寂滅省機共ニ不↢相 ヒ妨ゲ↡、動静不シテ↠失セ功力自然ナルコトヲ↥。

そもそも 「衆しゅ機き」 の下しも 「之智しち」 の上かみに、 ある本ほん載のせて 「省しょう機き」 の二字にじあり。 文言もんごん・義理ぎり、 ともに備そなはつてよろしきか。 一々いちいちの文もん義ぎ、 四し論ろんの幽ゆう旨し、 たやすく解げするに及およばず、 有智うちの人ひと文もんに滞とどまらざらんか。

-抑「衆機ノ」下「之智ノ」之上ニ、或本載テ有リ↢「▲省機ノ」二字↡。文言・義理、共ニ備ハテ宜シキ歟。一々ノ文義、四論ノ幽旨、不↠及↢輒ク解スルニ↡、有智ノ之人不ラン↠滞↠文ニ歟。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅱ 第二段

【46】「向説こうせつ遠おん離り我が心しん」 以下いげは、 第だい二に段だんなり。

「▲向説遠離我心」已下ハ、第二段也。

「向説こうせつ」 といふは、 同おなじく離り菩ぼ提だい障しょうの章しょうを指さすなり。 この中なかの意こころは、 上かみの遠おん離りの心しんを挙あげて、 この三種さんしゅ菩ぼ提だいの障しょう礙げを離はなるることを明あかすものなり。

-言↢「向説ト」↡者、同ク指↢離菩提障ノ章ヲ↡也。此ノ中ノ意ハ、明↧挙テ↢上ノ遠離ノ之心ヲ↡、此ノ三種離ルヽコトヲ↦菩提ノ之障ヲ↥者也。

障しょう礙げを明あかす中なかに、 「五ご黒こく」 とらは、 「黒こく」 はこれ悪業あくごう、 すなはち五ご悪あくなり。 このゆゑにあるいは 「五ご悪あく」 といふ本ほんあり。 五ご悪あくといふは五ご戒かいを持たもたず、 「十じゅう悪あく」 といふは十じゅう善ぜんに翻ほんするなり。

-明ス↢障ヲ↡中ニ、「▲五黒ト」等者、「黒ハ」是 レ悪業、即五悪也。是ノ故ニ或ハ有リ↧言フ↢「五悪ト」↡本↥。言↢五悪ト↡者不↠持↢五戒ヲ↡、言↢「▲十悪ト」↡者翻スル↢十善ニ↡也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅲ 第三段

【47】「向説こうせつ無む染ぜん清浄しょうじょう」 以下いげは、 第だい三段さんだんなり。

-「▲向説無染清浄」以下ハ、第三段也。

「向説こうせつ」 といふは、 これ順じゅん菩ぼ提だい門もんの章しょうを指さす。 当段とうだんの意こころは、 かの門もんの中なかの三種さんしゅの心しんを挙あげて、 一いちの妙みょう楽らく勝しょう真しん心しんを成じょうずるなり。

言↢「向説ト」↡者、是 レ指ス↢▲順菩提門ノ之章ヲ↡。当段ノ之意ハ、挙テ↢彼ノ門ノ中ノ三種ノ之心ヲ↡、成ズル↢一ノ妙楽勝真心ヲ↡也。

「楽らく有う」 とらは、

「▲楽有ト」等者、

問とふ。 「五ご識しき所しょ生しょうの楽らく」 とは、 欲よく・色界しきかいの中なかにはいづれぞや。

-問1196。「▲五識所生ノ楽ト」者、欲・色界ノ中ニハ何ゾ耶。

答こたふ。 いまの註釈ちゅうしゃくの意こころ、 欲界よくかいの楽らくなり。

-答。今ノ註釈ノ意、欲界ノ楽也。

問とふ。 楽らくに外げ内ないを分わかつ、 その義ぎいかん。

-問。楽ニ分ツ↢外内ヲ↡、其ノ義如何。

答こたふ。 「外げ楽らく」 といふは、 かの前さきの五ご識しき相応そうおうの楽らくは外げ境きょうを縁えんじて生しょうず。 このゆゑに称しょうして外げ門もん転てんといふ。 「内楽ないらく」 といふは、 これはこれ意い識しき所しょ生しょうの楽らくなるがゆゑに外げより生しょうぜず。 このゆゑに号ごうして内門ないもん転てんといふ。

-答。言↢「▲外楽ト」↡者、彼ノ前五識相応ノ之楽ハ縁ジテ↢外境ヲ↡生ズ。是ノ故ニ称シテ云↢外門転ト↡也。言↢「▲内楽ト」↡者、此ハ是 レ意識所生ノ楽ナルガ故ニ不↢従↠外生ゼ↡。是ノ故ニ号シテ曰↢内門転ト↡也。

問とふ。 欲界よくかいの中なかにおいて、 また意い識しき相応そうおうの楽らくあり、 すなはちこれ喜き受じゅなり。 なんぞこれを挙あげざる。

-*問。於テ↢欲界ノ中ニ↡、又有リ↢意識相応ノ之楽↡、即是喜受ナリ。何ゾ不ル↠挙ゲ↠之ヲ。

答こたふ。 外げ門もん転てんをもつて外げ楽らくとするがゆゑに、 かの内門ないもん転てんをばこれを加くわへず。

-答。以テ↢外門転ヲ↡為スルガ↢外楽ト↡故ニ、彼ノ内門転ヲバ不↠加↠之ヲ也。

問とふ。 かの義ぎのごとくならば、 下しもの 「内楽ないらく」 の中なかになんぞこれを摂せっせざる。

-問。如ナラ↢此ノ義ノ↡者、下ノ「内楽ノ」中ニ何ゾ不ル↠摂セ↠之ヲ。

答こたふ。 内楽あいらくは定じょうに約やくす。 これ散さんなるをもつてのゆゑに内ないの摂せつにあらず。

-答。内楽ハ約ス↠定ニ。此 レ以ノ↠散ナルヲ故ニ非↢内ノ摂ニ↡也。

問とふ。 これなほ思おもひがたし。 三楽さんらくの中なかに楽らくを尽つくさざる過とがあり、 すべからく四し楽らくといひて別べつにこれを立たつべきか。

-問。是 レ猶難シ↠思ヒ。有リ↢三楽ノ中ニ不ル↠尽↠楽ヲ過↡、須 ベ クキ ↧言テ↢四楽ト↡別ニ立ツ↞之ヲ歟。

答こたふ。 欲界よくかいの意い識しき相応そうおうの楽らくは、 五ご受じゅの辺へんに約やくすればこれ喜き受じゅなり。 すでにこれ喜きといふ、 楽らくの中なかに摂せっせざる、 これなんの過とがかあらん。

-答。欲界ノ意識相応ノ楽者、約スレバ↢五受ノ辺ニ↡是 レ喜受也。既ニ是 レ云フ↠喜ト、不ル↠摂セ↢楽ノ中ニ↡、是 レ有ラン↢何ノ過カ↡。

問とふ。 いまの所しょ立りゅうのごとくならば、 五ご受じゅに約やくせばただ第三だいさん定じょうの心悦しんえつを楽らくと名なづく、 余よ処しょはみな喜きなり。 この義ぎ ¬唯識ゆいしき¼・¬倶く舎しゃ¼ 等とうの意こころ、 ともにもつて違いせず。 いまなんの義ぎによりてか、 初しょ・二に・三禅さんぜんを総そうじて楽らくと称しょうするや。

-問。如ナラバ↢今ノ所立ノ↡、約セ↢五受ニ↡者只第三定ノ心悦ヲ名ク↠楽ト、余処ハ皆喜ナリ。此ノ義¬唯識¼・¬倶舎¼等ノ意、共ニ以テ不↠違セ。今依テカ↢何ノ義ニ↡、初・二・三禅ヲ総ジテ称スル↠楽ト耶。

答こたふ。 五ご受じゅの辺へんによらばまことに所難しょなんのごとし。 もし三受さんじゅによれば身心しんしんを分わかたず、 総そうじて苦く楽らくといふ。 いまの註釈ちゅうしゃく三受さんじゅによるがゆゑに、 総そうじてこれを楽らくといふ。 あへて違いすることなからくのみ。

-答。依ラバ↢五受ノ辺ニ↡誠ニ如シ↢所難ノ↡。若シ依レバ↢三受ニ↡不↠分↢身心ヲ↡、総ジテ云フ↢苦楽ト↡。今之註釈依ガ↢三受ニ↡故ニ、総ジテ言フ↢之ヲ楽ト↡。敢テ無ラク↠違スルコト耳。

問とふ。 この三楽さんらくにおいて、 いかんが定じょう散さん、 世せ間けんおよび出しゅっ世せ間けん、 ならびに漏ろと無漏むろとらの義ぎを分別ふんべつするや。

-問。於テ↢此ノ三楽ニ↡、云何ガ分↧別スル定散、世間及ビ出世間、并ニ漏ト与 ト ↢无漏↡等ノ之義ヲ↥耶。

答こたふ。 定じょう散さんに約やくせば、 初はじめの一いちはただ散さん、 次つぎの二にはこれ定じょう、 ただし第三だいさんの楽らくはまた散さんに通つうずることあり。 法ほうを聞ききて歓かん喜ぎし仏ぶつの功く徳どくを愛あいする分別ふんべつ等とう、 これ散さんなるがゆゑなり。 世せ出しゅっ世せとは、 初はじめの一いちは世せ間けん、 次つぎの一いちはこれ世せ間けん・出しゅっ世せに通つうず。 外げ道どうの所得しょとくはこれ世せ間けん禅ぜん、 聖しょう者じゃの所得しょとくは出しゅっ世せ間けんなり。 後のちの一いちは出しゅっ世せなり。 漏ろ・無漏むろとは、 初はじめの一いちは有漏うろ、 かの前ぜん五ご識しきは因いん位に一向いっこう有漏うろなるがゆゑなり。 次つぎの一いちはこれ漏ろと無漏むろとに通つうず。 いはゆる外げ道どうおよび凡ぼん夫ぶ等とうはこれ有漏うろなり、 聖しょう者じゃの所得しょとくはこれ無漏むろなり。 後のちの一いちの楽らくは、 所縁しょえんの法ほうに約やくすれば一向いっこう無漏むろ、 能縁のうえんの機きに約やくすればまた有漏うろに通つうず、 地じ前ぜんの機き等とう有漏うろなるがゆゑなり。

-答。約↢定散↡者、初ノ一ハ唯散、次ノ二ハ是定、但シ第三ノ楽ハ又有リ↠通ズルコト↠散ニ。聞テ↠法ヲ歓喜シ愛スル↢仏ノ功徳ヲ↡之分別等、是 レ散ナルガ故也。世出世ト者1197、初ノ一ハ世間、次ノ一ハ是 レ通ズ↢世間・出世ニ↡。外道ノ所得ハ是 レ世間禅、聖者ノ所得ハ出世間也。後ノ一ハ出世ナリ。漏・无漏ト者、初ノ一ハ有漏、彼ノ前五識ハ因位一向有漏ナルガ故也。次ノ一ハ是 レ通ズ↣漏ト与 トニ↢无漏↡。所謂外道及ビ凡夫等ハ是 レ有漏也、聖者ノ所得ハ是 レ无漏也。後ノ一ノ楽者、約スレバ↢所縁ノ法ニ↡一向无漏、約スレバ↢能縁ノ機ニ↡又通ズ↢有漏ニ↡、地前ノ機等有漏ナルガ故也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 願事成就章

【48】願がん事じ成じょう就じゅの章しょうの中なかに二にあり、

▲願事成就ノ章ノ中ニ有リ↠二、

初はじめに章しょう目もくを標ひょうす。 その章しょう目もくとは、 「願がん」 はすなはちこれ論文ろんもんに列つらぬるところの智慧ちえ心しん等とうの四し種しゅの心しん、 これ菩ぼ提だい心しん。 「事じ」 はすなはちこれ五ご念ねん門もんの行ぎょう。 ▽この願がん行ぎょうによりてかの土どに生しょうずることを得うる、 これを 「成じょう就じゅ」 といふ。 これはこれ自じ行ぎょう成じょう就じゅの相そうなり。

-初ニ標ス↢章目ヲ↡。其ノ章目ト者、「願」者乃是 レ論文ニ所ノ↠烈ヌル智恵心等ノ四種ノ之心、是 レ菩提心。「事」者乃是五念門ノ行。依テ↢此ノ願行ニ↡得ル↠生ズルコトヲ↢彼ノ土ニ↡、言フ↢之ヲ「成就ト」↡。此ハ是 レ自行成就ノ相也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅰ 第一段

【49】次つぎに 「如にょ是ぜ」 の下しもは、 これ正釈しょうしゃくなり。 これに二に段だんあり、 いまはその初はじめなり。

次ニ「▲如是ノ」下ハ、是 レ正釈也。此ニ有リ↢二段↡、今ハ其ノ初也。

当段とうだんの意こころは智ち等とうの四し心しん清浄しょうじょうの土どに生しょうずることを明あかす。

-当段ノ意ハ明ス↣智等ノ四心生ズルコトヲ↢清浄ノ土ニ↡。

「智慧ちえ心しん」 とは、 障しょう菩ぼ提だい門もんの章しょうの中なかにいふところの権ごん実じつ二智にち。 「方便ほうべん心しん」 とは、 同おなじき第だい三門さんもんの正しょう直じき・外己げこの心しんこれなり。 「無む障しょう心しん」 とは、 すなはち三さんの遠おん離りの心しんこれなり。 「勝しょう真しん心しん」 とは、 これ名みょう義ぎ摂対せったい章しょうの中なかにいふところの 「妙みょう楽らく勝しょう真しん心しん」 を指さす。

-「▲智恵心ト」者、障菩提門ノ章ノ中ニ所ノ↠言▲権▲実二智。「▲方便心ト」者、同キ第三門ノ▲正直・外己ノ之心是也。「▲无障心ト」者、即▲三ノ遠離ノ之心是也。「▲勝真心ト」者、是 レ指↢名義摂対ノ章ノ中ニ所ノ↠言「▲妙楽勝真心ヲ」↡也。

「非是ひぜ」 とらは、 これ非ひ因いんを斥きらふ。 もしこれを決けっせずは、 義ぎ戒取かいしゅに当あたる。 これかの弥陀みだの願力がんりきによりて浄じょう土どに往おう生じょうす、 願がんによらずして生しょうずることを得うるにあらざることを明あかすなり。

-「▲非是ト」等者、是斥フ↢非因ヲ↡。若シ不ズハ↠決セ↠之ヲ、義当ル↢戒取ニ↡。是 レ明ス↧依テ↢彼ノ弥陀ノ願力ニ↡往↢生ス浄土ニ↡、非コトヲ↦不シテ↠由ラ↠願ニ而得ルニ↞生ズルコトヲ也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅱ 第二段

【50】次つぎに 「是ぜ名みょう」 の下しもは、 上かみの四し心しん五ご念ねんの法門ほうもんに随ずい順じゅんすることを明あかすらくのみ。

次1198ニ「▲是名ノ」下ハ、明スラク↣上ノ四心随↢順スルコトヲ五念ノ法門ニ↡而已。

「出しゅつ没もつ」 とらは、 これに二義にぎあり。 一いちにいはく、 入出にゅうしゅつの門もんなり。 これ四し門もんに入いりてしかも一門いちもんに出いづる、 自利じり・利他りた自じ在ざいの義ぎなり。 二ににいはく、 得とく生しょうの後のち入出にゅうしゅつ意こころに随したがひて、 化他けたの行ぎょう任運にんうん自じ在ざいなるなり。 かならずしも入出にゅうしゅつ二に門もんの意こころならず。

-「▲出没ト」等者、此ニ有リ↢二義↡。一ニ云、入出ノ門也。是 レ入テ↢四門ニ↡而モ出ル↢一門ニ↡、自利々他自在ノ義也。二ニ云、得生ノ之後入出随テ↠意ニ、化他ノ之行任運自在ナルナリ。不↢必シモ入出二門ノ意ナラ↡也。

「身業しんごう」 とらは、 三業さんごうの配当はいとうその文もん見みやすし。 「智ち業ごう」 といふは観察かんざつして常照じょうしょうす、 智慧ちえ力りきなるがゆゑにこれを 「智ち業ごう」 といふ。 「方便ほうべん智ち業ごう回え向こう也や」 とは、 「方便ほうべん」 といふはこれ巧ぎょう方便ほうべん回え向こうの義ぎなるがゆゑに、 かくのごとく釈しゃくするなり。

-「▲身業ト」等者、三業ノ配当其ノ文易シ↠見。言↢「▲智業ト」↡者観察シテ常ニ照ス、智恵力ナルガ故ニ言フ↢之ヲ「智業ト」↡。「▲方便智業廻向也ト」者、言↢「方便ト」↡者是 レ巧方便廻向ノ義ナルガ故ニ、如ク↠此ノ釈スル也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ 利行満足章

【51】利り行ぎょう満足まんぞくの章しょうの中なかに二にあり。

▲利行満足ノ章ノ中ニ有リ↠二。

一いちに章しょう目もくを標ひょうすとは、 章しょう目もく顕著けんちょにして義理ぎり灼しゃく然ねんなり。 いはゆる自利じり利他りたの行ぎょう満足まんぞくして、 すみやかに仏ぶっ果かを証しょうする義ぎなり。 一いち部ぶの玄げん旨しここにして窮極ぐうごくし、 五ご門もんの所しょ期ごいま円満えんまんするなり。

-一ニ標スト↢章目ヲ↡者、章目顕著ニシテ義理灼然ナリ。所謂自利々他ノ之行満足シテ、速ニ証スル↢仏果ヲ↡義也。一部ノ玄旨於シテ↠此ニ窮極シ、五門ノ所期今円満スル也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅰ 第一段

【52】正釈しょうしゃくの中なかに文もんを分わかちて五ととなす。 しかもその中なかにおいて、

正釈ノ之中ニ分テ↠文ヲ為ス↠五ト。而モ於テ↢其ノ中ニ↡、

一いちに 「復ぶ有五うご」 の下しも 「称しょう園林おんりん遊戯ゆげ地じ門もん」 に至いたるまでは、 総そうじて五ご門もんを挙あげてその行ぎょう相そうを明あかす。

-一ニ「▲復有五ノ」下至マデハ↢「称園林遊戯地門ニ」↡、総ジテ挙テ↢五門ヲ↡明ス↢其ノ行相ヲ↡。

二にに 「此五しご種しゅ」 の下しも 「出しゅつ功く徳どく」 に至いたるまでは、 略りゃくして入出にゅうしゅつ功く徳どくの相そうを標ひょうす。

-二ニ「▲此五種ノ」下至マデハ↢「出功徳ニ」↡、略シテ標ス↢入出功徳之相ヲ↡。

三さんに 「此し入出にゅうしゅつ」 より所引しょいん 「第だい五ご功く徳どく相そう」 を尽つくすに至いたるまでは、 礼らい等とう五ご念ねんの因いんによりてかの近等ごんとう五ご門もんの益やくを得うることを明あかす。

-三ニ自↢「▲此入出」↡至マデハ↠尽スニ↢所引ヲ↡、 「第五功徳相」 明ス↧依テ↢礼等五念ノ之因ニ↡得コトヲ↦彼ノ近等五門ノ之益ヲ↥。

問とふ。 本書ほんしょの文もん五科ごかの内うち、 後のちの二に段だんその説せついかん。

-問。本書ノ之文五科ノ之内、後ノ之二段其ノ説如何。

答こたふ。 四しに「菩ぼ薩さつ入にゅう」 (論註巻下) の下しも 「之利しり也や」 に至いたるまでは、 入出にゅうしゅつの門もんに約やくして自利じり・利他りたの二に益やくを分別ふんべつす。

-答。四ニ「▲菩薩入ノ」下至マデハ↢「之利也ニ▲」↡、約シテ↢入出ノ門ニ↡分↢別ス自利々他ノ二益ヲ↡。

五ごに「菩ぼ薩さつ如にょ」 (論註巻下) の下しも 「局きょく分ぶん也や」 に至いたるまではこれ五ご念ねんの行ぎょうによるをもつてのゆゑに、 二利にり成じょう就じゅしてつひに阿あ耨のく菩ぼ提だいの果かを得うることを明あかす。

-五ニ「▲菩薩如ノ」下1199至マデハ↢「局分也ニ▲」↡、此 レ明↧以ノ↠依ルヲ↢五念ノ行ニ↡故ニ、二利成就シテ終ニ得コトヲ↦阿耨菩提ノ果ヲ↥也。

問とふ。 一いっ章しょう中ちゅうにおいてその除のぞくところある、 なんの由ゆえある。

-問。於テ↢一章ノ中ニ↡有ル↢其ノ所↟除ク、有↢何ノ由↡乎。

答こたふ。 かくのごとくの本文ほんもんいまだかならずしもことごとく引ひかず、 要ようによりて除取じょしゅする。 あながちに別べつの由ゆえなし。 なかんづくにいまの文もん第だい二に巻かんにおいてこれを引用いんようするがゆゑに、 いま略りゃくせらるか。

-答。如ノ↠此ノ本文未ダ↢必シモ悉ク引↡、依テ↠要ニ除取スル。強ニ无シ↢別ノ由↡。就ニ↠中今ノ文於テ↢▲第二巻ニ↡引↢用スルガ之ヲ↡故ニ、今被↠略セ歟。

問とふ。 初しょ科かの中なかに、 「安心あんじんの宅たく」、 「所しょ居ごの屋おく宇う」 といふ、 「宅たく」 「屋おく」 の別べついかん。

-問。初科ノ之中ニ、云フ↢「▲安心ノ宅」、「▲所居ノ屋宇ト」↡、「宅」「屋ノ」之別如何。

答こたふ。 「宅たく」 ¬廣韻こういん¼ にいはく、 「瑒とう伯はくの切せつ、 居こなり。 ¬説文せつもん¼ 託たくなり、 人ひとの投託とうたくするところなり。 ¬釈名しゃくみょう¼ 宅たくは択たくなり、 吉処きっしょを択えらびてこれを営えいするなり。」 「屋おく」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「於お鹿ろくの切せつ、 舎しゃなり、 また王屋おうおく山せんの名な。 ¬広韻こういん¼ にいはく、 烏う谷こくの切せつ、 舎しゃなり、 具ぐなり。 ¬淮じゅん南なん子し¼ にいはく、 舜しゅん牆かきを築つきて屋おくを茨ふく。 ¬風俗ふうぞく通つう¼ にいはく、 屋おくは止しなり。」 この字じ訓くんをもつてほぼ愚ぐ推すいを加くわふるに、 その初しょ後ごに就つきていささか配当はいとうするか。 いはゆる 「宅たく」 の字じをば投とうといひ託たくといふ、 初はじめて至いたる義ぎに叶かなふ。 「屋おく」 の字じをば具ぐといふ、 すなはちこれ具ぐ足そく、 止しはすなはち止し住じゅう。 両りょう字じの義ぎを案あんずるに、 始し終じゅうの義ぎなり。

-答。「宅」¬廣韻ニ¼云ク、「瑒タウ伯ノ切、居也。¬説文¼託タクツク也、人ノ所↢投託スル イタリツク  ↡也。¬釈名¼宅ハ択タクエラブ也、択テ↢吉処ヲ↡而営スルイトナム ↠之ヲ也。」「屋」¬玉篇ニ¼云、「於鹿ノ切、舎也、又王屋山ノ名。¬広韻ニ¼云、烏谷切、舎也、具也。¬淮南子ニ¼曰、舜築テ↠牆ヲ茨フク↠屋ヲ。¬風俗通ニ¼曰、屋ハ止也。」以テ↢此ノ字訓ヲ↡粗加ルニ↢愚推ヲ↡、就テ↢其ノ初後ニ↡聊配当スル歟。所*謂「宅ノ」字ヲバ言ヒ↠投ト云フ↠託ト、叶フ↢初テ至ル義ニ↡。「屋ノ」字ヲバ云フ↠具ト、乃是 レ具足、止ハ即止住。案ズルニ↢両字ノ義ヲ↡、始終ノ義也。

問とふ。 礼拝らいはい等とうをもつて次ついでのごとくかならず近等ごんとうの五ご門もん転てん入にゅうの因いんとするか。 またその次し第だいかならずしもしかるべからず、 ただ五ご念ねんによりて五ご門もんを得うるか。

-問。以テ↢礼拝等ヲ↡如ク↠次ノ必為スル↢近等ノ五門転入ノ因ト↡歟。又其ノ次第不↠可↢必シモ然ル↡、只依テ↢五念ニ↡得↢五門ヲ↡歟。

答こたふ。 これ浅深せんじんに約やくして一往いちおう判属はんぞくす。 総そうじて娑しゃ婆ばにして修しゅするところの五ご念ねんは浄じょう土どの生しょう因いんなり。 その生しょう因いんはひとへにこれ無礙むげ光こうに帰き命みょうするがゆゑに一心いっしんに念仏ねんぶつするなり。 仏ぶつの本願ほんがん力りきはまさしき生しょう因いんなり。 浄じょう土どに生しょうじて後のち五ご門もんに転てん入にゅうす。 また堅しゅの義ぎに約やくせば、 その次し第だいの如ごとし。 もし横おうの義ぎに約やくせば、 この五ご門もんの益やく同どう時じに獲ぎゃく得とくし一念いちねんに具ぐ足そくす。 自じ然ねんの証しょう悟ご、 推おして知しんぬべし。

-答。此 レ約シテ↢浅深ニ↡一往判属ス。総ジテ於シテ↢娑婆ニ↡所ノ↠修スル五念ハ浄土ノ生因ナリ。其ノ生因ト者偏ニ是 レ帰↢命スルガ無光ニ↡故ニ一心ニ念仏スルナリ。仏ノ本願力ハ正シキ生因也。生ジテ↢浄土ニ↡後転↢入ス五門ニ↡。又約セバ↢*竪ノ義ニ↡、如シ↢其ノ次第ノ↡。若シ約セバ↢横ノ義ニ↡、此ノ五門ノ益同時ニ獲得シ一念ニ具足ス。自然ノ証悟、推シテ而可シ↠知ヌ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅱ 第二段

【53】第だい二には配はい釈しゃく。

▲第1200二ハ配釈。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅲ 第三段

【54】第だい三段さんだんの中なかに、

▲第三段ノ中ニ、

問とふ。 「得とく入にゅう蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かい」 とはこれなんの土どや。

-問。「▲得入蓮*華蔵世界ト」者是 レ何ノ土耶。

答こたふ。 極楽ごくらくを指さす。 ¬秘ひ蔵ぞう記き¼ にいはく、 「華け蔵ぞうと極楽ごくらくと名な異いにして処ところ一いちなり。」 取意

-答。指↢極楽ヲ↡也。¬秘蔵記ニ¼云ク、「華蔵ト極楽ト名異ニシテ処一ナリ。」 取意

問とふ。 初はじめの近門ごんもんの中なかに、 あるいは 「初はじめて浄じょう土どに至いたる」 といひ、 あるいは 「安楽あんらくに生しょうずることを得う」 といふ、 これ極楽ごくらくなり。 次つぎに大だい会え衆しゅ門もんに入いりて後のち、 いま蓮れん華げ蔵ぞう界かいに入いることを得うる、 なんぞ同処どうしょならん。

-問。初ノ近門ノ中ニ、或ハ云ヒ↣「▲初テ至ルト↢浄土ニ↡」、或ハ云フ↠「▲得ト↠生ズルコトヲ↢安楽ニ↡」、是 レ極楽也。次ニ入テ↢大会衆門ニ↡之後、今得ル↠入コトヲ↢之蓮花蔵界↡、何ゾ同処ナラン乎。

答こたふ。 智ち光こうの ¬疏しょ¼ (無量寿経論釈巻五) にいはく、 「無む量りょう寿じゅ仏ぶつ所しょ居ごの住じゅう処しょ、 この世せ界かいに準じゅんずるに義ぎに随したがへて名なとなす。」 已上

答。智光ノ¬疏ニ¼云、「无量寿仏所居ノ住処、准ズルニ↢此ノ世界ニ↡随ヘテ↠義ニ為ス↠名ト。」 已上

極楽ごくらく・華け蔵ぞうこれ同処どうしょなりといへども、 その浅深せんじんに約やくしてその名なを換かふるか。 当巻とうかんの中なかに真実しんじつの証しょうを明あかすがゆゑに、 薄はく地じ底てい下げ初しょ生しょうの凡ぼん夫ぶ、 仏ぶつ願力がんりきによりてすなはち地じ上じょうに登のぼり、 すみやかに八はち地じ以い上じょうの位くらいに進すすみてみな寂じゃく滅めつ平びょう等どうの法ほうを得う。 この義ぎ真実しんじつ甚深じんじんなるがゆゑに、 この義ぎ辺へんに約やくしてことさらに蓮れん華げ蔵ぞう界かいに入いることを得うといふ。 これすなはち蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かいとは盧る舎しゃ那な仏ぶつ所しょ居ごの処ところ、 報身ほうじんの土どなるがゆゑに、 真しん証しょうを顕あらわさんがためにことさらにこの名なを標ひょうす。

-極楽・*華蔵雖ヘ↢是 レ同処ナリト↡、約シテ↢其ノ浅深ニ↡換カフル↢其ノ名ヲ↡歟。当巻ノ中ニ明スガ↢真実ノ証ヲ↡故ニ、薄地底下初生ノ凡夫、由テ↢仏願力ニ↡即登リ↢地上ニ↡、速ニ進テ↢八地已上ノ之位ニ↡皆得ウ↢寂滅平等ノ之法ヲ↡。此ノ義真実甚深ナルガ之故ニ、約シテ↢此ノ義辺ニ↡故ニ云↠得ト↠入コトヲ↢蓮華蔵界ニ↡。是則蓮*花蔵世界ト者盧舎那仏所居ノ之処、報身ノ土ナルガ故ニ、為ニ↠顕ンガ↢真証ヲ↡故ニ標ス↢此ノ名ヲ↡。

ただし近門ごんもん・宅門たくもんその差しゃありといふに至いたりては、 極楽ごくらく浄じょう土どの名なを動どうぜずして、 すなはちまた華け蔵ぞう界かいの号ごうあるべし。 天台てんだい (法華文句記巻九下釈寿量品) のいふがごとし。 「あに伽耶がやを離はなれて別べつに常寂じょうじゃくを求もとめんや、 寂じゃっ光こうの外ほかに別べつに娑しゃ婆ばあるにあらず。」 以上

-但シ至↤于云ニ↣近門・宅門有ト↢其ノ差↡者、不シテ↠動ゼ↢極楽浄土ノ之名ヲ↡、即復可↠有↢花蔵界ノ号↡。如シ↢天臺ノ云ガ↡。「豈離テ↢伽耶ヲ↡別ニ求ンヤ↢常寂ヲ↡、非ズ↣寂光ノ外ニ別ニ有ルニ↢娑婆↡。」 已上

かの解げ釈しゃくに準じゅんじて深ふかくこれを思おもふべし。

-准ジテ↢彼ノ解釈ニ↡深ク可シ↠思フ↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅳ 第四段

【55】同おなじき第だい四し段だんに、

同キ▲第四段ニ、

「類るい事じ起き行ぎょう願取がんしゅ仏ぶつ土ど味み」 とは、 これに二義にぎあり。

-「▲類事起行願取仏土味ト」者、此ニ有リ↢二義↡。

↓一いちには浄じょう土どに約やくして解げす。 浄じょう仏国ぶっこく土ど成じょう就じゅ衆しゅ生じょうの起き行ぎょう等とう、 種類しゅるい無む量りょうなり、 かしこにしてことごとくその法ほう味みを受うく。

-一ニハ約シテ↢浄土ニ↡解ス。浄仏国土成就衆生ノ之起行等、種類无量ナリ、於シテ↠彼ニ悉ク受↢其ノ法味ヲ↡也。

二にには穢土えどに約やくして解げす。 これ託たく事じ観かんなり。 託たく事じ観かんとは、 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ (晋訳巻六浄行品) にいはく、 「菩ぼ薩さつ家いえにありてはまさに願がんずべし、 衆しゅ生じょう家け難なんを捨しゃ離りして空法くうほうの中なかに入いらんと。 父母ぶもに孝きょう養ようしてはまさに願がんずべし、 衆しゅ生じょう一切いっさい護ご養ようして永ながく大安だいあんを得えんと。 乃至 もし楼閣ろうかくに上のぼりてはまさに願がんずべし、 衆しゅ生じょう仏ぶつの法堂ほうどうに昇のぼりて微み妙みょうの法ほうを得えんと。 もし聚じゅ会えにありてはまさに願がんずべし、 衆しゅ生じょう究く竟きょう解げ脱だつして如来にょらいの処ところに到いたらんと。」 以上

-二ニハ約シテ↢穢土1201ニ↡解ス。是 レ託事観ナリ。託事観ト者、¬花厳経ニ¼云、「菩薩*在テハ↠家ニ当ニ↠願ズ、衆生捨↢離シテ家難ヲ↡入ラント↢空法ノ中ニ↡。孝↢養シテハ父母ニ↡当ニ↠願ズ、衆生一切護養シテ永ク得ント↢大安ヲ↡。 乃至 若シ上テハ↢楼閣ニ↡当ニ↠願ズ、衆生昇テ↢仏ノ法堂ニ↡得ント↢微妙ノ法ヲ↡。若シ在テハ↢聚会ニ↡当ニシ↠願ズ、衆生究竟解脱シテ到ント↢如来ノ処ニ↡。」 已上

¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ にまたこの義ぎあり。 かの中ちゅう巻かんにいはく、 「問とふ。 凡ぼん夫ぶの行ぎょう人にん物ものを逐おひて意こころ移うつる。 なんぞ常つねに念仏ねんぶつの心しんを起おこすことを得えんや。 答こたふ。 かれもし直じき爾にに念仏ねんぶつすることあたはずは、 事々じじに寄よせてその心しんを勧発かんぽつすべし。 いはく遊戯ゆげ・談だん笑しょうの時ときには願がんぜよ、 極楽ごくらく界かいの宝ほう池ち宝林ほうりんの中なかにして、 天人てんにん聖しょう衆じゅとかくのごとく娯ご楽らくせんと。 もし憂苦うくの時ときは願がんぜよ、 衆しゅ生じょうとともに苦くを離はなれて極楽ごくらくに生しょうぜんと。 もし尊徳そんとくに対たいしてはまさに願がんずべし、 極楽ごくらくに生しょうじてかくのごとく世せ尊そんに奉つかまつらんと。 もし卑ひ賎せんを見みてはまさに願がんずべし、 極楽ごくらくに生しょうじて孤こ独どくの類るいを利り楽らくせんと。」 以上

-¬往生要集ニ¼又有リ↢此ノ義↡。彼ノ中巻ニ云ク、「▲問。凡夫ノ行人逐テ↠物ヲ意移ル。何ゾ常ニ得ンヤ↠起コトヲ↢念仏ノ之心ヲ↡。◆答。彼 レ若シ不ハ↠能↢直爾ニ念仏スルコト↡、応シ↧寄セテ↢事々ニ↡勧↦発ス其ノ心ヲ↥。◆謂ク遊戯・*談笑ノ時ニハ願ゼヨ、於シテ↢極楽界ノ宝池宝林ノ中ニ↡、与ト↢天人聖衆↡如ク↠是ノ娯楽セント。若シ憂苦ノ時ハ願ゼヨ、共ニ↢衆生ト↡離テ↠苦ヲ生ゼント↢極楽ニ↡。若シ対シテハ↢尊徳ニ↡当ニシ↠願ズ、生ジテ↢極楽ニ↡如ク↠是ノ奉ラント↢世尊ニ↡。若シ見テハ↢卑賎ヲ↡当ニ↠願ズ、生ジテ↢極楽ニ↡利↢楽セント孤独ノ類ヲ↡。」 已上

わたくしに両りょう義ぎを案あんずるに、 ↑前さきの義ぎを親したしとなす。 論文ろんもんすでに (浄土論) 「得到とくとう彼ひ処しょ受用じゅゆう種々しゅじゅ法ほう味み楽らく」 といふ。 文言もんごん争あらそいなくかの土どの益やくたること、 △上かみにすでに述のぶるがごとし。 五ご念ねんはこれこの土どの修因しゅいんたり、 五ご門もんはかしこにして得うるところの果かなり。

-私ニ案ズルニ↢両義ヲ↡、前ノ義ヲ為ス↠親シト。論文ニ既ニ云フ↢「▲得到彼処受用種々法味楽ト」↡。文言無ク↠争ヒ為コト↢彼ノ土ノ益↡、如シ↢上ニ已ニ述ルガ↡。五念ハ是 レ為タリ↢此ノ土ノ修因↡、五門ハ於シテ↠彼ニ所ノ↠得果也。

問とふ。 かしこにして五ご念ねんを修しゅ行ぎょうすることを許ゆるす義ぎあるべからずや。

-問。不↠可↠有↧許ス↣於シテ↠彼ニ修↢行スルコトヲ五念ヲ↡義↥耶。

答こたふ。 かしこにおいてまたつぶさに五ご念ねんを修しゅ行ぎょうする義ぎあるべきなり。 一切いっさいの菩ぼ薩さつ初しょ発ほっ意ちより仏ぶっ果かを成じょうずるに至いたるまで、 みなことごとく五ご念ねんの修しゅ行ぎょうにあらざることなきゆゑなり。

-答。可↠有↧於シテ↠彼ニ亦具ニ修↢行スル五念ヲ↡義↥也。一切ノ菩薩自↢初発意↡至マデ↠成ズルニ↢仏果ヲ↡、皆悉ク莫キ↠非コト↢五念ノ修行ニ↡故也。

二 Ⅱ ⅳ c ロ ・ ・ ⅴ 第五段

【56】同おなじき第だい五ご段だんに、

同キ▲第五段ニ、

「如にょ法ほっ華け」 とは、 これ観音かんのんの随ずい類るい示じ現げん、 応おう機き化度けどの利り生しょうを指さすなり。 これすなはち身みを現げんずることは三さん十じゅう三さんを挙あげ、 ために法ほうを説とくことは十じゅう九く種しゅを標ひょうす。 この菩ぼ薩さつは極楽ごくらくの上じょう首しゅ蓮れん花げ部ぶの尊そん、 利り益やく広大こうだいにして慈悲じひ倫ともがらに超こえたり。 このゆゑにこれを出いだして応おう化げ身しんの本ほん拠ことすらくのみ。

-「▲如法華ト」者、是 レ指↢観音ノ随類示現、応機化度ノ之利生ヲ↡也。是 レ則現ズルコトハ↠身ヲ挙ゲ↢三十三ヲ↡、為ニ説コト↠法ヲ者標ス↢十九種ヲ↡。此ノ菩薩者極楽ノ上首蓮花1202部ノ尊、利益広大ニシテ慈悲超タリ↠倫ニ。是ノ故ニ出シテ↠之ヲ為スラク↢応化身ノ之本拠ト↡耳。

「師子しし」 とらは、 「師子しし」 は猛もう獣じゅう、 「鹿しか」 は小獣しょうじゅう、 これを搏うつこともつとも易やすし。 ゆゑに菩ぼ薩さつ衆しゅ生じょうを済さい度どするその自じ在ざい神通じんずう力りきを得うるに譬たとふるなり。 「搏はく」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「補ほ洛らくの切せつ、 手てに撃うつ。」 ¬広韻こういん¼ これに同おなじ。

-「▲師子ト」等者、「師子ハ」猛獣、「鹿」者小獣、搏コト↠之ヲ最モ易シ。故ニ譬↧菩薩済↢度スル衆生ヲ↡得ルニ↦其ノ自在神通力ヲ↥也。「搏」¬玉篇ニ¼云、「補洛ノ切、手ニ撃ウツ也。」¬広韻¼同ジ↠之ニ。

「譬ひ如にょ阿あ修しゅ」 とらは、 かの琴きん自じ然ねんに音こえを発ほっする徳とく、 天てんの宝幢ほうどうに同おなじ。 かれに準じゅんじてよろしく知しるべし。

-「▲譬如阿修ト」等者、彼ノ琴自然ニ発スル↠音之徳、同ジ↢天ノ宝幢ニ↡。准ジテ↠彼ニ宜クシ↠知ル。

¬観かん経ぎょう¼ にいはく、 「また楽がっ器きの虚こ空くうに懸処けんしょするあり、 天てんの宝幢ほうどうのごとし。 鼓うたざるにおのづから鳴なる。」 以上

-¬観経ニ¼云、「▲又有リ↣楽器ノ懸↢処スル虚空ニ↡、如シ↢天ノ宝幢ノ↡。不ルニ↠鼓ウタ自ヲ 鳴ナル。」 已上

¬疏しょ¼ の 「定じょう善ぜん義ぎ」 にこの文もんを釈しゃくしていはく、 「楼ろう外げの荘しょう厳ごん、 宝楽ほうがく空くうに飛とびて、 声こえ法ほう響くを流ながす。 昼ちゅう夜や六ろく時じに天てんの宝幢ほうどうのごとし、 思おもいなくして自事じじを成じょうず。」 以上

-¬疏ノ¼「定善義ニ」釈シテ↢此ノ文ヲ↡云ク、「▲楼外ノ荘厳、宝楽飛テ↠空ニ、声流ス↢法響ヲ↡。*昼夜六時ニ如シ↢天ノ宝幢ノ↡、無シテ↠思成ズ↢自事ヲ↡也。」 已上

五ご趣しゅと立たつる時とき、 修しゅ羅らの中なか勝しょうたる者ものを天てんに摂せっし、 劣れつなる者ものを鬼きに摂せっす。 ゆゑに準じゅん知ちすべし。

-立ル↢五趣ト↡*時、修羅ノ之中勝タル者ヲ摂シ↠天ニ、劣ナル者ヲ摂ス↠鬼ニ。故ニ可シ↢准知ス↡。

二 Ⅱ ⅳ d 総結

【57】「爾に者しゃ」 以下いげは、 わたくしの御おん釈しゃくなり。 これを総結そうけつとなす。 その意こころ見みつべし。

「△爾者」已下ハ、私ノ御釈也。是ヲ為ス↢総結ト↡。其ノ意可シ↠見ツ。

 

六ろく要よう鈔しょう第だい四し 全ぜん

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
三 本文まま。 「二」 の間違いか。
底本は◎本派本願寺蔵明徳三年慈観上人書写本。 Ⓐ本派本願寺蔵文安四年空覚書写本、 Ⓑ興正派興正寺蔵蓮如上人書写本 と対校。
花→Ⓐ華
則→Ⓐ即
花→Ⓐ華
則→Ⓐ即
灼→Ⓐ炳
三→◎ⒶⒷ二
華→Ⓐ花
摂→Ⓐ接
時→Ⓑ侍
即→Ⓐ皆
穊→◎稠
詮→Ⓐ除
堕→Ⓑ随
是→◎来(「是歟」と左傍註記)
投→Ⓐ扶
擿→◎摘
養→Ⓐ<益
誤→◎Ⓑ設
問→Ⓑ門
謂→Ⓑ請
竪→ⒶⒷ堅(Ⓐ「誤歟」と左傍註記し、 さらに「竪歟」と上欄註記)
華→Ⓐ花
在→Ⓑ有
談笑→Ⓐ讃嘆
昼→Ⓑ尽
時→Ⓑ侍