1065◎六要ろくよう鈔しょう第だい二に 新末しんまつ

 

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『述文賛』十文

【36】◎次つぎに*憬きょう興ごうの釈しゃくは ¬大だい経きょう¼ の疏しょの文もんなり。

◎▲次ニ憬興ノ釈ハ¬大経ノ¼疏ノ文ナリ。

かの疏しょを名なづけて ¬*無む量りょう寿じゅ経きょう連れん義ぎ述じゅつ文もん賛さん¼ といふ。 分わかちて三巻さんかんとなす、 上じょう中ちゅう下げなり。 いまの所引しょいんは中ちゅう巻かんの文もんなり。 三段さんだんの中なかに正宗しょうしゅう分ぶん 名なづけて問答もんどう広説こうせつ分ぶんといふ において六ろくの文段もんだんあり、 その中なかにいま 「如来にょらい広説こうせつ」 といふは第六だいろくの文段もんだんなり。

-彼ノ疏ヲ名テ曰フ↢¬無量寿経*連義述文賛ト¼↡。分テ為ス↢三巻ト↡、上中下也。今ノ所引者中巻ノ文也。三段ノ之中ニ於テ↢正宗分ニ↡ 名テ曰フ↢問答広説分ト↡ 有リ↢六ノ文段↡、其ノ中ニ今言ハ↢「▲如来広説ト」↡第六ノ文段ナリ。

初はじめに如来にょらい浄じょう土どの因いん果が いまは 「因いん」 の字じなし脱落だつらくせしむるか を説とくは上じょう巻かんの所説しょせつ、 後のちに衆しゅ生じょう往おう生じょうの因いん果がを顕あらわすは下げ巻かんの所説しょせつなり。

-初ニ説クハ↢▲如来浄土ノ因果ヲ↡ 今ハ無シ↢「因ノ」字↡令ル↢脱落セ↡歟 上巻ノ所説、後ニ顕スハ↢▲衆生往生ノ因果ヲ↡下巻ノ所説ナリ。

【37】次つぎに ¬悲華ひけ経きょう¼・¬宝ほう積しゃく¼ の二に文もん、 いまだこれを勘かんがへ得えず。

次ニ▲¬悲花経¼・▲¬宝積ノ¼二文、未 ズ ダ↣勘ヘ↢得之ヲ↡。

【38】「またいはく福ふく智ち二に厳ごん」 とらは、 同おなじき巻かん (述文賛巻中) の文もんなり。

「▲又云ク福智二厳ト」等者、同キ巻ノ文也。

これ ¬経きょう¼ (大経巻上) の ▲「恭く敬ぎょう三宝さんぼう」 より 「功く徳どく成じょう就じゅ」 の文もんに至いたるまでを解げする釈しゃくなり。 かのつぶさなる文もん (述文賛巻中) にいはく、 「恭く敬ぎょう三宝さんぼうはすなはち福ふくの方便ほうべん、 奉事ぶじ師し長ちょうはすなはち智ちの方便ほうべん。」 以下いげ所引しょいんのごとし 仏ぶつの所しょ行ぎょうの外ほかに衆しゅ生じょうの行ぎょうなし、 如来にょらいの回え向こう成じょう就じゅの義ぎなり。

-是 レ解スル↧自リ↢¬経ノ¼「恭敬三宝」↡至マデヲ↦于「功徳成就ノ」之文ニ↥釈也。彼ノ具ナル文ニ云ク、「恭敬三宝ハ即福ノ方便、奉事師長者則智ノ方便。」 以下如シ↢所引ノ↡ 仏ノ所行ノ外ニ無シ↢衆生ノ行↡、如来ノ廻向成就ノ義也。

【39】「またいはく籍じゃく久く遠おん因いん」 等とうの文もん、 追おひてこれを勘かんがふべし。

「▲又云ク籍久遠因」等ノ文、追テ可↠勘↠之ヲ。

【40】次つぎに 「人にん聖しょう国こく妙みょう」 とらいふは、 これ下げ巻かんの文もんなり。

次ニ言↢「▲人聖国妙ト」等↡者、是 レ下巻ノ文ナリ。

次つぎ上かみの文もん (述文賛巻下) にいはく、 「¬経きょう¼ にいはく、 何が不ふ力りき為い善ぜんより昇しょう道どう無む窮ぐ極ごくに至いたるまでは、 述じゅつしていはく、 第だい二ににまさしく往おう生じょうを勧すすむるに二にあり。 これ初はじめに直勧じきかん往おう生じょうなり。 何が不ふ力りき為い善ぜんとは、 往おう生じょうの因いんを修しゅすることを勧すすむ。 力りきとは。」 「人にん聖しょう」 より 「願がん生しょう」 に至いたるまでの十じゅう二字にじ所引しょいんのごとし

-次上ノ文ニ云ク、「¬経¼曰、▲何不力為善ヨリ至↢昇道无窮極ニ▲↡者、述シテ云ク、第二ニ正ク勧ニ↢往生ヲ↡有リ↠二。此レ初ニ直勧往生也。何1066不力為善ト者、勧ム↠修スルコトヲ↢往生ノ之因ヲ↡。力ト者。」 自↢「人聖」↡至↢「願生ニ」↡十二字▲如↢所引ノ↡

次下つぎしもの文もんにいはく、 「故又こう力りきとは力励りきれい、 念道ねんどう之し自じ然ねんとは所得しょとくの利りを修しゅすれば。」 「因善いんぜん」 より 「自じ然ねん」 に至いたるまでの十じゅう二字にじ所引しょいんのごとし。 ただし自じ然ねんの上かみに 「念ねん」 の字じあり

-次下ノ文ニ云ク、「故又力ト者力励、▲念道之自然ト者修スレバ↢所得之利ヲ↡。」 自↢「因善」↡至マデノ↢「自然ニ」↡十二字▲如↢所引ノ↡但「自然ノ」上ニ有↢「念ノ」字↡

また次下つぎしもにいはく、 「ただよく道どうを念ねんじ徳とくを行ぎょうずれば。」 「不ふ簡けん」 より 「上じょう下げ」 に至いたるまでの十じゅう四字しじ所引しょいんのごとし。 ただし 「著じゃく」 の下しもに 「於お」 の字じあり。 

-又次下云、「唯 ヾ能ク念ジ↠道ヲ行ズレ↠徳ヲ者。」 自↢「不簡」↡至マデノ↢「上下ニ」↡十四字▲如↢所引ノ↡但「著ノ」下ニ有↢「於ノ」字↡

また次下つぎしもにいはく、 「念ねんの字じ長じょう読どくしてここに流至るしするがゆゑに。」 以上

-又次下ニ云、「念ノ字長読シテ流↢至スルガ此ニ↡故。」 已上

【41】「又う云うん易い往おう而に無む」 とらは、

「▲又云易往而无ト」等者、

次上つぎかみの文もん (述文賛巻下) にいはく、 「¬経きょう¼ にいはく、 易い往おう而に無む人にんより寿じゅ楽らく無有むう極ごく▲に至いたるまでは、 述じゅつしていはく、 この後のち傷しょう歎たん重じゅう勧かんなり。 因いんを修しゅすればすなはち往ゆく、 ゆゑに易い往おうなり。 人ひと因いんを修しゅすることなければ往おう生じょうする者もの尠すくなし、 ゆゑに無む人にんなり。 因いんを修しゅすれば来らい生しょうす、 つひに違い逆ぎゃくせず。 すなはち前さきの易い往おうなり。 正しょう習じゅう纏蓋てんがい、 自じ然ねんにこれがために牽けん傅ぷして往ゆかず、 ゆゑに自じ然ねんの牽ひくところなり、 すなはち無む人にんなり。 あるが説とく、 因満いんまん果か熟じゅく功く用ゆうを仮からず、 自じ然ねんに招しょう致ちす、 ゆゑに自じ然ねんの牽ひくところなり、 義ぎまた可かなり。」

-次上文ニ云、「¬経¼曰、▲易往而无人ヨリ至↢寿楽无有極ニ↡者、述シテ云ク、此ノ後傷歎重勧也。▲修スレバ↠因ヲ即往ク、故ニ易往ナリ。▲无レバ↢人修スルコト↟因ヲ往生スル者尠スクナシ、故ニ无人ナリ。▲修スレバ↠因ヲ来生ス、終ニ不↢違逆セ↡。即前ノ易往也。正習纏蓋、自然ニ為ニ↠之ガ牽傅シテ不↠往カ、故ニ自然ノ所ナリ↠牽、即无人也。有ガ説ク、因満果熟不↠仮↢功用ヲ↡自然ニ招致ス、故ニ自然ノ所ナリ↠牽ク、義亦可也。」

上かみの二に文もん、 句く数しゅ・字じ数しゅほぼ増減ぞうげんあり、 これ取しゅ意いか。 前ぜん後ごを達たっせんがためさらにいまこれを引ひく。

-上之二文、句数・字数粗有↢増減↡、是 レ取意歟。為↠達↢前後↡更ニ今引↠之。

【42】「又う云うん本願ほんがん力りき故こ」 とらは、 上じょう巻かんの文もんなり。

「▲又云本願力故ト」等者、上巻ノ文也。

これまた文言もんごんいささか参しん差しあり。 正釈しょうしゃくを知しらんがためにまた本文ほんもんを出いだす。 (述文賛巻中) 「¬経きょう¼ にいはく、 本願ほんがん力りき故こより究く竟きょう願がん故こに至いたるまでは、 述じゅつしていはく、 後のちに願力がんりき獲ぎゃく利りなり。 本願ほんがんとは、 すなはち往ゆくこと誓願せいがんの力ちからなり。 他た方ほうの菩ぼ薩さつ名なを聞ききて忍にんを得う。 おそらくはまた自土じどなるがゆゑに、 願がんとして欠かくことなきがゆゑに満足まんぞく、 これを求もとむるに虚むなしからざるがゆゑに明了みょうりょう、 縁えんとして壊えすることあたはざるがゆゑに堅けん固ご、 願がんとしてかならず遂すい果かするがゆゑに究く竟きょうなり。 この願力がんりきによりてかの土どに生しょうずる者ものは、 みな↓三忍さんにんを得う。」 以上 これ*道どう場じょう樹じゅを見みてみな三忍さんにんを見みるゆゑんを明あかす。

-是又文言聊有リ↢参差↡。為ニ↠知ンガ↢正釈ヲ↡亦出ス↢本文ヲ↡。「¬経¼曰、▲本願力故ヨリ至マデ↢究竟願故ニ↡者、述シテ云ク、後ニ願力獲利也。本願ト者、▲即往コト誓願ノ之力ナリ。他方ノ菩薩聞テ↠名ヲ得↠忍ヲ。恐クハ亦自土ナルガ故ニ、▲願トシテ无ガ↠缼コト故ニ満足、▲求ニ↠之ヲ不ガ↠虚カラ故ニ明了、▲縁トシテ不ガ↠能↠壊スルコト故ニ堅固、願トシテ▲必遂果スルガ故ニ究竟ナリ。由1067テ↢此ノ願力ニ↡生ズル↢彼ノ土ニ↡者ハ、皆得↢三忍ヲ↡。」 已上 是 レ明↫所↪以ヲ見テ↢道場樹ヲ↡皆見ル↩三忍ヲ↨。

↑三忍さんにんといふは、 ¬経きょう¼ (大経巻上) にいはく、 「一いっ者しゃ音響おんこう忍にん、 二に者しゃ柔順にゅうじゅん忍にん、 三さん者しゃ無む生しょう法ぼう忍にん。」 以上 この三忍さんにんの義ぎ、 諸しょ師し異解いげす。 興ごう師し (述文賛巻中) これを破はして自義じぎを出いだしていはく、 「樹じゅの音おん声じょうを尋たずぬるに、 風かぜに従じゅうしてあり、 有うにして実じつにあらず、 ゆゑに音響おんこう忍にんを得う。 柔にゅうとは乖け角かくなき義ぎ、 順じゅんとは空くうに違いせざる義ぎ。 境きょうを悟ごするに性しょうなし、 有うに違いせずしてしかも空くうに順じゅんずるがゆゑに柔順にゅうじゅん忍にんといふ。 諸法しょほうを観かんずるに生しょう四句しくを絶たつ、 ゆゑに無む生しょう忍にんといふ。」 以上

-言↢三忍ト↡者、¬経ニ¼云ク、「▲一者音響忍、二者柔順忍、三者无生法忍。」 已上 此ノ三忍ノ義、諸師異解ス。興師破シテ↠之ヲ出シテ↢自義ヲ↡云ク、「尋ニ↢樹ノ音声ヲ↡、従シテ↠風而有リ、有ニシテ而非ズ↠実ニ、故ニ得↢音響忍ヲ↡。柔ト者无キ↢乖角↡義、順ト者不↠違セ↠空ニ義。悟スルニ↠境ヲ無シ↠性、不シテ↠違セ↢於有ニ↡而モ順ズルガ↠空ニ故ニ云フ↢柔順忍ト↡。観ズルニ↢於諸法ヲ↡生絶ツ↢四句ヲ↡、故ニ云フ↢无生忍ト↡。」 已上

問とふ。 所引しょいんの 「本願ほんがん力りき故こ」 の句くの上かみに、 まづ 「威い神じん力りき故こ」 の句くあり。 なんぞこれを略りゃくするや。

-問。所引ノ「本願力故ノ」句ノ上ニ、先ヅ有リ↢「▲威神力故ノ」之句↡。何ゾ略スル↠之ヲ耶。

答こたふ。 興ごうかの句くをもつて判はんじて別べっ科かとなす、 すなはち名なづけてこれを神力じんりき得忍とくにんとなす。 いまことに本願ほんがんの利り益やくを顕あらわさんと欲ほっす、 このゆゑにかれを略りゃくしてこれを引ひくらくのみ。

-答。興以テ↢彼ノ句ヲ↡判ジテ為ス↢別科ト↡、即名テ為ス↢之ヲ神力得忍ト↡。今殊ニ欲ス↠顕サント↢本願ノ利益ヲ↡、是ノ故ニ略シテ↠彼ヲ引ラク↠之ヲ而已。

【43】「またいはく総そうじてこれをいはば」 とらは、 これ下げ巻かんの文もんなり。

「▲又云ク総ジテ而言ハヾト↠之ヲ」等者、是 レ下巻ノ文。

次上つぎかみの文もん (述文賛巻下) にいはく、 「¬経きょう¼ にいはく、 東方とうぼう恒沙ごうじゃより亦やく復ぶ如にょ是ぜに至いたるまでは、 述じゅつしていはく、 これ後のちに勝聖しょうしょう共ぐ生しょうなり。」 以下いげ所引しょいんのごとし

-次上ノ文ニ云、「¬経ニ¼曰ク、▲東方恒沙ヨリ至ルマデ↢亦復如是ニ↡者、述シテ云ク、是 レ後ニ勝聖共生也。」 ▲以下如↢所引↡

【44】「またいはく既き言ごん於此おし」 とらは、 同おなじき巻かんの文もんなり。

「▲又云ク既言於此ト」等者、同キ巻ノ文也。

これ経きょう (大経巻下) に 「阿あ難なん仏ぶつにまうさく、 かの二に菩ぼ薩さつ、 その号ないかんぞ。 仏ぶつののたまはく、 一いちをば観かん世ぜ音おんと名なづけ、 二にをば大だい勢せい至しと名なづく。 この二に菩ぼ薩さつこの国こく土どにして菩ぼ薩さつの行ぎょうを修しゅして、 命終みょうじゅう転てん化けしてかの仏国ぶっこくに生しょうず」 といへる文もんを解げする釈しゃくなり。

-是 レ解スル↩¬経ニ¼云ヘル↧「▲阿難白サク↠仏ニ、彼ノ二菩薩、其ノ号云何ゾ。◆仏ノ言ハク、一ヲバ名ケ↢観世音ト↡、二ヲバ名ク↢大勢至ト↡。是ノ二菩薩於シテ↢比ノ国土ニ↡修シテ↢菩薩ノ行ヲ↡、命終転化シテ生ズト↦彼ノ仏国ニ↥」之文ヲ↨釈也。

「無む諍じょう王おう」 とは弥陀みだ如来にょらい、 「宝海ほうかい梵ぼん士じ」 は釈しゃ迦か仏ぶつなり。

-「▲無諍王ト」者弥陀如来、「▲宝海梵士ハ」釈迦仏也。

【45】「またいはく聞仏もんぶつ威い徳とく」 とらは、 いまだこれを勘かんがへ得えず。

「▲又1068云ク聞仏威徳ト」等者、未ダ↣勘↢得之ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『楽邦文類』文

【46】次つぎに 「*楽邦らくほう文類もんるい」 とらいふは、 この ¬書しょ¼ 四し明めい石しゃく芝しの沙門しゃもん*宗暁しゅうぎょう編へん次しす。 部ぶ帙ちつ五ご巻かん、 その第だい二に巻かん、 総管そうかん*張ちょう掄りん蓮社れんしゃを結むすぶ普ふ勧かんの文もんなり。 かの文もん一いち十じゅう八はち行ぎょう余よの中なか、 いまの所引しょいんわづかに四し行ぎょう余よ。

次ニ言↢「▲楽邦文類ト」等↡者、此ノ¬書¼四明石芝ノ沙門宗暁編次ス。部帙五巻、其ノ第二巻、総管張掄結ブ↢蓮社ヲ↡普勧ノ文也。彼ノ文一十八行余ノ中、今ノ之所引纔ニ四行余。

「俛仰めんごう」 といふは、 「俛めん」 はこれ俯ふ俛めん、 低てい頭ずの義ぎなり。 「仰ごう」 はこれ偃仰えんごう、 上うえに向むかふ称しょうなり。

-言↢「▲俛仰ト」↡者、「俛ハ」是俯俛低頭ノ義也。「仰ハ」是偃仰、向フ↠上ニ称也。

「呼こ吸きゅう」 といふは、 「呼こ」 は喚かん、 「吸きゅう」 は引いん、 けだしこれ外げ内ない出入しゅつにゅうの息いきなり。

-言↢「▲呼吸ト」↡者、「呼ハ」喚、「吸ハ」引、蓋シ是外内出入ノ息也。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『山陰釈』文

【47】次つぎに山陰さんいんの釈しゃく。 「山陰さんいん」 といふは越えつの地ちの名な、 「*慶文けいぶん」 といふは号ごうして慈じ恵けい法ほっ師しといふこれなり。 釈しゃくの意こころ見みつべし。

▲次ニ山陰ノ釈。言↢「山陰ト」↡者越ノ地ノ之名、言↢「慶文ト」↡者号シテ云↢慈*恵法師ト↡是也。釈ノ意可↠見。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 元照釈七文

【48】次つぎに*元がん照じょうの釈しゃく。

▲次ニ元照ノ釈。

¬*観かん経ぎょうの義ぎ疏しょ¼ おほきに分わかちて二にとなす。 まづ義ぎ門もんを列つらねて総そう意いを知しらしめ、 しかして後のち経きょうに入いりて文もんを分わかちて分ぶん釈しゃくす。 初はじめの中なかに四しあり。 初はじめには教きょう興こうの来らい致ち、 二にには接しょう教きょうの分斉ぶんさい、 三さんには宗しゅう旨しを弁べん定じょうす、 四しには異い同どうを料りょう簡けんす。 その第だい四しの門もんにまた*五ごある中なかに、 五ごに濫伝らんでんを指さすの下もとの釈しゃくなり。

-¬観経ノ義疏¼大ニ分テ為ス↠二ト。先ヅ列ネテ↢義門ヲ↡令メ↠知ラ↢総意ヲ↡、然シテ後入テ↠経ニ分テ↠文ヲ分釈ス。初ノ中ニ有リ↠四。初ニハ教興ノ来致、二ニハ*接教ノ分斉、三ニハ弁↢定ス宗旨ヲ↡、四ニハ料↢簡ス異同ヲ↡。其ノ第四ノ門ニ又有ル↠*二中ニ、五ニ指ス↢濫伝ヲ↡之下ノ釈也。

▽濫伝らんでんを指さすとは、 多おおく有う人にんの謬びゅう解げ疑ぎ惑わくを挙あげて、 自じ障しょう障しょう他たの過とがあることを示しめして、 その悲ひ憐れんを述のぶる結けっ釈しゃくなり。 二に巻かんの中なかに上じょう巻かんの文もんならくのみ。

-指ト↢濫伝ヲ↡者、多ク挙テ↢有人ノ謬解疑惑ヲ↡、示シテ↠有コトヲ↢自障々他ノ之過↡、述ル↢其ノ悲憐ヲ↡之結釈也。二巻ノ之中ニ上巻ノ文耳ナラクノミ。

【49】次つぎの所引しょいんの文もん、 同おなじき次上つぎかみの段だんに、 四しに魔ま説せつを解げする下もとの釈しゃくなり。

▲次ノ所引ノ文、同キ次上ノ段ニ四ニ解スル↢魔説ヲ↡之下ノ釈也。

当段とうだんの初はじめ (元照観経義疏巻上) にいはく、 「四しに魔ま説せつを解げす。 あるいはいはく、 西方さいほうの浄じょう業ごうを修しゅする臨りん終じゅうの感相かんそうみなこれ魔まなりとは、 これいまだ教きょう典てんを披ひらかず修しゅう持じを楽ねがはざるによりて、 喜よろこびて邪言じゃごんをもつて他たの正しょう信しんを障さふ。 害がいをなすこと浅あさからず、 ゆゑにすべからくこれを弁べんずべし。

-当段ノ初ニ云、「四ニ解ス↢魔説ヲ↡。或ハ謂ク、修スル↢西方ノ浄業ヲ↡臨終ノ感相皆是 レ魔ナリト者、斯レ由テ↧未 ズ ダ↠披↢教典ヲ↡不ニ↞楽↢修1069持ヲ↡、喜テ以テ↢邪言ヲ↡障フ↢他ノ正信ヲ↡。為ナスコト↠害ヲ不↠浅カラ、故ニ須ク↠弁ズ↠之ヲ。

しばらく↓魔まに四し種しゅあり、 一いちには五ご陰おん魔ま、 二にには煩悩ぼんのう魔ま、 三さんには死魔しま、 四しには天てん魔ま。 上かみの三さん魔まはこれなんぢが身心しんしん、 ただ天てん魔まのみありてこれ外ほかより来きたるらくのみ。 いづくんぞ己こ魔まを畏おそれずしてただ外魔げまを疑うたがふことを得えんや。 いはんや魔まは欲界よくかいの天てんに居こす。 すなはちこれ大権だいごん悪あくを退しりぞけ善ぜんを進すすむるに大だい功く行ぎょうあり。 まさにこれを勤すすむべし。

-且ク魔ニ有↢四種↡。一ニハ五陰魔、二ニハ煩悩魔、三ニハ死魔、四ニハ天魔。上ノ三魔ハ是 レ汝ガ身心、唯有テ↢天魔ノミ↡是 レ外ヨリ来ルラク耳ノミ。安ゾ得↧不シテ↠畏レ↢己魔ヲ↡但疑コトヲ↦外魔ヲ↥乎。況ヤ魔ハ居ス↢欲界ノ天ニ↡。乃是 レ大権退ケ↠悪ヲ進ムルニ↠善ヲ有リ↢大功行↡。方ニ可シ↠勤ム↠之ヲ。

凡ぼん夫ぶの修道しゅどう、 内心ないしん正ただしからざれば、 かならず魔ま擾にょうに遭あふ。 もし心こころ真実しんじつならば魔まよくなすことなけん。 ここに知しんぬ、 魔まはなんぢが心こころよりす、 他たの致いたすところにあらず。 世よの妖よう冶や媚み惑わくするがごとき、 人ひとの端心たんじん正しょう色しきなるにおいてはかならず近ちかづくことあたはず。 情こころをほしいままにして顧こ眄めんすれば定さだめて惑まどはすところに遭あふ。 いま衆説しゅせつを引ひきてもつて群ぐん疑ぎを絶たたん。

-凡夫ノ修道、内心不レバ↠正カラ、必遭アフ↢魔擾ニ↡。若シ心真実ナラバ魔无ケン↢能ク為ナスコト↡。是ニ知ヌ、魔ハ自ス↢汝ガ心↡、非ズ↢他ノ所ニ↟致ス。如キ↢世ノ妖エウ冶ヤ媚コ*惑スルガ↡、於テハ↢人ノ端心正色ナルニ↡必不↠能ハ↠近コト。縦ニシテ↠情ヲ顧コ眄メンスレバ定テ遭アフ↠所ニ↠惑ハス。今引テ↢衆説ヲ↡以テ絶タヽン↢群疑ヲ↡。

一いちにいはく、 大だい光こう明みょうの中なかには決きめて魔事まじなし。 なほし白びゃく昼ちゅうに奸盗かんとうの成じょうじがたきがごとし。

-一ニ云ク、大光明ノ中ニハ決メテ無シ↢魔事↡。猶シ如シ↢白昼ニ奸盗ノ難キガ↟成ジ。

一いちにいはく、 此土しどの観心かんしんはかへりて本陰ほんいんを観かんずれば多おおく魔事まじを発おこす。 いま弥陀みだの果か徳とく真実しんじつの境きょう界がいを観かんずるがゆゑに魔事まじなし。

-一ニ云ク、此土ノ観心ハ反テ観ズレバ↢本陰ヲ↡多ク発ス↢魔事ヲ↡。今観ズルガ↢弥陀ノ果徳真実ノ境界ヲ↡故ニ无シ↢魔事↡。

一いちにいはく、 念仏ねんぶつの人ひとはみな一切いっさい諸仏しょぶつのために護ご念ねんせらる。 すでに仏ぶつのために護まもらる、 いづくんぞ魔まあることを得えん。

-一ニ云ク、念仏ノ之人ハ皆為ニ↢一切諸仏ノ↡之所ル↢護念セ↡。既ニ為ニ↠仏ノ護ラル、安ゾ得ン↠有コトヲ↠魔。

一いちにいはく、 浄じょう業ごうを修しゅする人ひとかならず魔まを発おこせば、 仏ぶつすべからく指し破はすべし。 般若はんにゃ・楞りょう厳ごん等とうのごとし。 仏ぶつもし指おしへずは、 すなはち衆しゅ生じょうを誤あやまりて魔ま網もうに堕だせしめん。」 いまの所引しょいんこの次つぎなり

-一ニ云ク、修スル↢浄業ヲ↡人必発セ↠魔ヲ者、仏須クシ↢指破ス↡。如シ↢般若・楞厳等ノ↡。仏若シ不ハ↠指、則誤テ↢衆生ヲ↡堕セシメン↢於魔網ニ↡。」 今ノ所引此ノ次也

また所引しょいんの外ほか、 次下つぎしもの文もんにいはく、 「また ¬楞りょう厳ごん¼ にいはく、 禅ぜん定じょう心しんの中なかに盧る舎しゃ那なを見みる。 天てんの光台こうだいに踞こして十じゅう仏ぶつ囲い遶にょうする等とう。 これを心魂しんこん霊りょう悟ごと名なづく。 所染しょぜんの心光しんこう研けん明みょうにしてもろもろの世せ界かいを照てらすに、 しばらくかくのごとくなることを得え聖証しょうしょうとするにあらず。 ↓資し中ちゅうの疏しょにいはく、 もし念仏ねんぶつ三昧ざんまいを修しゅすれば、 この境きょう現前げんぜんす。 修しゅ多羅たらと合がっするを名なづけて正しょう相そうとなす。 もし余よ観かんを修しゅするは、 たとひ仏ぶつ形ぎょうを見みれどもまた正しょうとせず、 心しん境きょう相応そうおうせざるをもつてのゆゑに。 いはんや真如しんにょを観かんずるに諸相しょそうを取とらず、 しかも所しょ著じゃくあらん、 あに魔まにあらずや。 資し中ちゅうの棟判とうはんきはめて精しょう当とうとなす。 よりてつぶさに前さきの諸説しょせつを引ひきて、 永ながく疑ぎ障しょうを除のぞく。」 以上

-又所引ノ外、次下ノ文ニ云ク、「又¬楞厳ニ¼云ク、禅定心ノ中ニ見ル↢盧舎那ヲ↡。踞シテ↢天ノ光台ニ↡十仏囲遶スル等。此ヲ名ク↢心魂霊悟ト↡。所染ノ心光*研明ニシテ照ニ↢諸ノ世界ヲ↡、暫ク得↠如ナルコトヲ↠是ノ非ズ↠為スルニ↢聖証ト↡。資中ノ疏ニ曰ク、若シ修スレバ↢念仏三昧ヲ↡、斯ノ境現前ス。与↢修多羅↡合スルヲ名テ為ス↢正相ト↡。若シ修スルハ↢余観ヲ↡、設ヒ見レドモ↢仏形ヲ↡亦不↠為↠正ト、以ノ↣心境不ルヲ↢相応セ↡故ニ。況ヤ観ズルニ↢真如1070ヲ↡不↠取↢諸相ヲ↡、而モ有ラン↢所著↡、豈非↠魔ニ耶。資中ノ棟判極メテ為ス↢精当ト↡。仍テ具ニ引テ↢前ノ諸説ヲ↡、永ク除ク↢疑障ヲ↡。」 已上

一段いちだんの中なかに、 文もんの前ぜん後ごを見みて信しん解げせしめんがためにつぶさに引ひくところなり。

-一段ノ之中ニ、見テ↢文ノ前後ヲ↡為ニ↠令ンガ↢信解セ↡具ニ所↠引也。

まさしき引文いんもんの中なかに、 「正しょう信しん法門ほうもん」 は山陰さんいんの所造しょぞうの*浄じょう土ど文もんの中なかに、 正しょう信しん・浄行じょうぎょうの二に門もんを顕けん明みょうす。 その中なかにいま正しょう信しんの下もとの釈しゃくを引ひく。 このゆゑに号ごうして 「正しょう信しん法門ほうもん」 といふ。

-正キ引文ノ中ニ、「▲正信法門ハ」山陰ノ所造ノ浄土ノ文ノ中ニ、顕↢明ス正信・浄行ノ二門ヲ↡。其ノ中ニ今引ク↢正信ノ下ノ釈ヲ↡。是ノ故ニ号シテ曰フ↢「正信法門ト」↡。

問答もんどうの中なかに問といの意こころ見みやすし。

-問答之中ニ▲問ノ意易↠見。

答こたえの中なかに 「有依うえ首しゅ楞りょう厳ごん」 とは、 かの ¬経きょう¼ の第だい九くに、 広ひろく魔事まじを弁べんずる。 みな自じ心しんの入定にゅうじょう精しょう研けんに約やくす。

-答ノ中ニ「▲有依首楞厳ト」者、彼ノ¬経ノ¼第九ニ、広ク弁ズル↢*魔事ヲ↡。皆約ス↢自心ノ入定精研ニ↡。

「*摩訶まか衍論えんろん」 は*馬め鳴みょう菩ぼ薩さつの造ぞうするところなり。 通つうじて一代いちだい大だい乗じょうの教きょうを申のぶ。

-「▲摩訶衍論ハ」馬鳴菩薩ノ之所↠造スル也。通ジテ申ノブ↢一代大乗之教ヲ↡。

「*止し観かん論ろん」 とは、 すなはち*天台てんだいの説せつ、 かの第だい八巻はちかんにまた魔事まじを弁べんず。

-「▲止観論ト」者、即天臺ノ説、彼ノ第八巻ニ又弁ズ↢魔事ヲ↡。

「時魅じみ」 といふは、 天てん魔まの所しょ化け、 わたくしに所引しょいんの前ぜん後ごの文もんにおいて、 まづ前さきの文もんの中なかにその↑四魔しまに就つきて対たい治じを出いださば、 ¬大だい集じゅう¼ にこれを出いだす。 集諦じったいを断だんじて煩悩ぼんのう魔まを降こうし、 苦く諦たいを知しりて陰おん魔まを降こうし、 道諦どうたいを修しゅして天てん魔まを降こうし、 滅諦めったいを証しょうして死魔しまを降こうす。 この外ほかの対たい治じ、 諸典しょてんの訓おしふるところ、 その文もんこれ繁しげし、 つぶさに述のぶるに及およばず。

-言↢「▲時魅ト」↡者、天魔ノ所化、於テ↢私所引ノ前後ノ之文ニ↡、先ヅ前ノ文ノ中ニ就テ↢其ノ四魔ニ↡出サ↢対治ヲ↡者、¬大集ニ¼出ス↠之ヲ。断ジテ↢集諦ヲ↡降シ↢煩悩魔ヲ↡、知テ↢苦諦ヲ↡降シ↢陰魔ヲ↡、修シテ↢道諦ヲ↡降↢天魔ヲ↡、証シテ↢滅諦ヲ↡降ス↢死魔ヲ↡。此ノ外ノ対治、諸典ノ所↠訓フル、其ノ文是 レ繁シ、不↠及↢具ニ述ルニ↡。

後のちの文もんの中なかに、 ↑資し中ちゅうといふは、 これ蜀しょくの地ちの名な、 弘ぐ允じょう法ほっ師しかの蜀しょくの地ちに居こす。 ゆゑにこの名なを称しょうす。 疏しょ十巻じっかんを作つくりて ¬楞りょう厳ごん経ぎょう¼ を解げす。 当文とうもん魔ま境きょう以下いげの註ちゅう解げ、 ほぼ*戒かい度どの ¬正しょう観かん記き¼ の意こころによりて大概たいがいこれを記しるす。 くはしくはかの文もんのごとし。

-後ノ文ノ之中ニ、言↢資中ト↡者、是 レ蜀ノ地ノ名、弘允ジヨウ法師居ス↢彼ノ蜀ノ地ニ↡。故ニ称ス↢此ノ名ヲ↡。作テ↢疏十巻ヲ↡解ス↢¬楞厳経ヲ¼↡。当文魔境以下ノ註解、粗 ヾ依テ↢戒度ノ¬正観記ノ¼意ニ↡大概記ス↠之ヲ。委ハ如シ↢彼ノ文ノ↡。

【50】次つぎにまた同おなじき師しの ¬*小経しょうきょうの疏しょ¼ の文もん、 序じょの初はじめの文もんなり。

▲次ニ又同キ師ノ¬小経ノ疏ノ¼文、序ノ初ノ文也。

「一いち乗じょう極ごく唱しょう終しゅう帰き」 とらは、 念仏ねんぶつ一いち乗じょう頓とん教ぎょうの極談ごくだん、 ひとへに西方さいほうを勧すすむること置おきて論ろんぜず。 また 「一いち乗じょう」 の言ことばはもと ¬法ほっ華け¼ に被かぶらしむ、 「薬王やくおう」 の流る通ずう、 終おわりに安楽あんらくを勧すすむ。 彼此ひし一いちに帰きす、 ゆゑに 「咸げん指し」 といふ。

-「▲一乗極唱終帰ト」等者、念仏一乗頓教ノ極談、偏ニ勧コト↢西方ヲ↡置テ而不↠論ゼ。又「一乗ノ」言ハ本モト被シム↢¬法花ニ¼↡、「薬王ノ」流通、終ニ勧1071ム↢安楽ヲ↡。彼此帰ス↠一ニ、故ニ云フ↢「▲咸指ト」↡。

「内ない外げ」 とらは、 すなはち両りょう異いを分わかつ。 内財ないざいといふは、 七種しちしゅの聖しょう財ざい等とうの類たぐいなり。 外げ財ざいといふは、 七宝しっぽう・衣え服ぶく等とうの類たぐいなり。 かの聖しょう財ざいを施せする、 これを法ほう施せといふ。 その世せ財ざいを施せする、 これを財ざい施せといふ。

-「▲内外ト」等者、則分ツ↢両異ヲ↡。言↢内財ト↡者、七種ノ聖財等ノ之類也。言↢外財ト↡者、七宝・衣服等ノ之類也。施スル↢彼ノ聖財ヲ↡、謂フ↢之ヲ法施ト↡。施スル↢其ノ世財ヲ↡、言フ↢之ヲ財施ト↡。

「機与きよ」 とらは、 「与よ」 と 「興こう」 と異いあり。 愚ぐ按あんするに 「興こう」 の字じ文体もんたいに協かなふか。

-「▲機与ト」等者、「与ト」「興ト」有リ↠異。愚按「興ノ」字*協↢文体ニ↡歟。

【51】次つぎの文もん、 同おなじき ¬疏しょ¼ の正宗しょうしゅうの文もんなり。

▲次ノ文、同キ¬疏ノ¼正宗ノ文也。

かの科か釈しゃく (元照小経義疏) にいはく、 「第だい二にに正宗しょうしゅう分ぶん、 おほきに三段さんだんを分わかつ。 初はじめより倶会くえ一処いっしょに至いたるまでは、 まづ二に報ほう荘しょう厳ごんを讃さんじて欣ごん慕ぼを生しょうぜしむ。 二にに不可ふか以い少しょうの下しもは、 まさしく専念せんねん持じ名みょうを示しめして修しゅ行ぎょうの法ほうを教おしふ。 三さんに如にょ我が今者こんじゃの下しもは、 後のちに諸仏しょぶつの同讃どうさんを引ひきて勧信かんしん受じゅ持じせしむ。」 以上

-彼ノ科釈ニ云ク、「第二ニ正宗分、大ニ分ツ↢三段ヲ↡。従↠▲初至マデハ↢倶会一処ニ↡、先ヅ讃ジテ↢二報荘厳ヲ↡令シム↠生ゼ↢欣慕ヲ↡。二ニ▲不可以少ノ下ハ、正ク示シテ↢専念持名ヲ↡教フ↢修行ノ法ヲ↡。三ニ▲如我今者ノ下ハ、後ニ引テ↢諸仏ノ同讃ヲ↡勧信受持セシム。」 已上

第だい二にの科かにおいてまた分わかちて三さんとなす。 文もんにいはく、 「第だい二ににまさしく行ぎょう法ほうを示しめすに三段さんだんを分わかつ。 初はじめより彼ひ国こくに至いたるまでは余よ善ぜんの不ふ生しょうを簡えらぶ、 若にゃく有うの下しもは二ににまさしく修法しゅほうを示しめす、 我が見けんの下しもは三さんに結けっして勧かんの意こころを顕あらわす。」 以上

-於テ↢第二ノ科ニ↡又分テ為ス↠三ト。文ニ云ク、「第二ニ正ク示ニ↢行法ヲ↡分ツ↢三段ヲ↡。▲初ヨリ至マデハ↢彼国ニ↡簡ブ↢余善ノ不生ヲ↡、▲若有ノ下ハ二ニ正ク示ス↢修法ヲ↡、▲我見ノ下ハ三ニ結シテ顕ス↢勧ノ意ヲ↡。」 已上

また第だい二にの子し段だんにおいて三さんあり。 文もんにいはく、 「二にが中なかに三さんを分わかつ。 初はじめより不ふ乱らんに至いたるまでは専念せんねん持じ名みょう、 其ご人にんの下しもは臨りん終じゅう感かん聖しょう、 是ぜ人にんの下しもは三さんに正念しょうねん往おう生じょうなり。」 以上

-又於テ↢第二ノ子段ニ↡有リ↠三。文ニ云ク、「二ガ中ニ分ツ↠三ヲ。▲初ヨリ至マデハ↢不乱ニ↡専念持名、▲其人ノ下ハ臨終感聖、▲是人ノ下ハ三ニ正念往生ナリ。」 已上

しかるに初はじめに専念せんねん持じ名みょうの下しもに三さんの問答もんどうあり。 いまの所引しょいんは第三だいさんの答こたえなり。

-而ニ初ニ専念持名ノ之下ニ有リ↢三ノ問答↡。今ノ所引者第三ノ答也。

その問といの言ことばにいはく、 「四字しじの名みょう号ごう凡ぼん下げ常つねに聞きく、 いかなる勝しょう能のうありてか衆善しゅぜんに超ちょう過がせる。」 以上

-其ノ問ノ言ニ曰、「四字ノ名号凡下常ニ聞ク、有テカ↢何ナル勝能↡超↢過セル衆善ニ↡。」 已上

所引しょいんの中なかに、 答こたえの言ことば初はじめを略りゃくす。 いまわたくしに引ひき加くわふ、 その詞ことばにいはく、 「答こたふ。 仏身ぶっしん相そうにあらず果か徳とく深高じんこうなり。 嘉か名みょうを立たつるにあらずは妙みょう体たいを彰あらわすことなけん。 十方じっぽう三さん世ぜみな異い名みょうあり。」 以下いげ所引しょいんのごとし

-所引ノ之中ニ、答ノ言略ス↠初ヲ。今私ニ引加フ、其ノ詞ニ云ク、「答。仏身非ズ↠相ニ果徳深高ナリ。不ズハ↠立ニ↢嘉名ヲ↡莫ケン↠彰コト↢妙体ヲ↡。十方三世皆有リ↢異名↡。」 以下▲如シ↢所引ノ↡

所引しょいんの文もんの次つぎに ¬*華け厳ごん経ぎょう¼ ならびに ¬*薬やく師し経きょう¼ および ¬瞻察せんさつ経きょう¼ を引ひきて仏ぶつの功く徳どくを歎たんず。 ただしかの ¬経きょう¼ の説せつ、 諸仏しょぶつの名なにわたる。 よりて結文けつもんにいはく、 「諸しょ余よの仏ぶつ名みょう、 聞もん持じなほしかり、 いはんやわが弥陀みだ本誓ほんぜいあるをや。」 以上

-所引ノ文ノ次ニ引テ↢¬*花厳経¼并ニ¬薬師経¼及ビ¬瞻察経ヲ¼↡*歎ズ↢仏ノ功徳ヲ↡。但シ彼ノ¬経ノ¼説、亘ル↢諸仏ノ名ニ↡。仍テ結文ニ云ク、「諸余1072ノ仏名、聞持尚爾リ、況ヤ我ガ弥陀有↢本誓↡乎。」 已上

【52】次つぎに 「又う云うん正しょう念ねん」 とらいふは、 △上かみにいふところの小しょう子し段だんの中なかに第だい三段さんだんなり。

次ニ言↢「▲又云正念ト」等↡者、上ニ所ノ↠言フ之小子段ノ中ニ第三段也。

「正しょう念ねん」 といふは、 これすなはち ¬経きょう¼ (小経) の 「是ぜ人にん終しゅう時じ心しん不ぷ顛倒てんどう」 等とうの句くを指さすなり。

-言↢「▲正念ト」↡者、是則指↢¬経ノ¼「▲是人終時心不顛倒」等ノ之句ヲ↡也。

「下しもの文もん」 といふは、 これ結顕けつけん勧かん意いの文もんを指さす、 すなはちこれ 「我が見けん是利ぜり」 (小経) 以下いげの意こころなり。

-言↢「▲下ノ文ト」↡者、是 レ指↢結顕勧意之文ヲ↡、即是 レ「▲我見是利」以下ノ意也。

【53】次つぎに 「*慈じ雲うん法ほっ師しのいはく」 といふは、 元がん照じょうの ¬観かん経ぎょうの義ぎ疏しょ¼ にこれを引ひく。

次ニ言↢「▲慈雲法師ノ云ト」↡者、元照ノ¬観経ノ義疏ニ¼引ク↠之ヲ。

かの ¬義ぎ疏しょ¼ の上じょうに、 △上かみに引ひくところの濫伝らんでんを指さす文もん。 「すなはちこれ往おう生じょうの因種いんしゅ」 といふところの次下つぎしもの釈しゃくなり。 所引しょいんの慈じ雲うん法ほっ師しの釈しゃくは、 ¬大だい弥陀みだ懴さん¼ の序じょの文もんなり。

-彼ノ¬義疏ノ¼上ニ、上ニ所ノ↠引之指ス↢濫伝ヲ↡文。所ノ↠云↢「即是 レ往生ノ因種ト」↡次下ノ釈也。所引ノ慈雲法師ノ釈者、¬大弥陀懴ノ¼序ノ文也。

「以い上じょう五ご門もん」 とは、 前さきに二にに古こ今こんの廃はい立りゅうを弁べんずる中なかにまた五ごありといふこれなり。 五ごとは、 いはゆる一いちには福観ふくかんを明あかし、 二にには定じょう散さんを弁べんじ、 三さんには地位じいを示しめし、 四しには魔ま説せつを解げし、 五ごには濫伝らんでんを指さす。 いふところの五ご門もん篇目へんもくかくのごとし。

-「▲已上五門ト」者、前ニ云↧二ニ弁ズル↢古今ノ*廃立ヲ↡之中ニ又有ト↞五是ナリ。五ト者、所謂一ニハ明シ↢福観ヲ↡、二ニハ弁ジ↢定散ヲ↡、三示シ↢地位ヲ↡、四解シ↢魔説ヲ↡、五ニハ指ス↢濫伝ヲ↡。所ノ↠言五門篇目如シ↠斯ノ。

「くはしく釈しゃく文もんにあり」 とは、 入にゅう文もん別べっ釈しゃくを指さす。 そもそも 「時じ称しょう」 より下しもに除のぞくところの詞ことば一いち十じゅう三さん字じあり。 いはくその言ことばに (元照観経義疏巻上) いはく、 「西域さいいきの人ひと性しょう剛ごう直ちょくにして嗜し欲よく寡すくなし、 よく三蔵さんぞうに通つうず。」 以上

-「▲委ク在リ↢釈文ニ↡」者、指ス↢入文別釈ヲ↡。抑「時称ヨリ」下ニ有リ↢所ノ↠除ク詞一十三字↡。謂ク其ノ言ニ云ク、「▲西域ノ人性剛直ニシテ寡スクナシ↢嗜欲↡、善ク通ズ↢三蔵ニ↡。」 已上

また 「京きょう邑おうに建はじめ」 といふ。 本文ほんもん 「建けん」 の字じ 「達たつ」 となす、 異い本ほんあるか。 愚ぐ按あんするに 「達たつ」 の字じその言ことば便べんあり。

-又云↢「▲建ハジメト↢于京邑ニ↡」。本文「建ノ」字為ス↠「達ト」、有↢異本↡歟。愚按「達ノ」字其ノ言有リ↠便。

「*文帝ぶんてい」 といふは、 宋そうの第三だいさんの帝みかど、 元げん嘉かの主しゅなり。 かの時じ称しょうにおいて深ふかく歎たん異にを加くわふ。 崇そう重じゅうならびなし。

-言↢「▲文帝ト」者、宋ノ第三ノ帝、元嘉ノ主也。於テ↢彼ノ時称ニ↡深ク加↢歎異ヲ↡。崇重無シ↠双。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 慈雲・大智両釈文

【54】次つぎに慈じ雲うん・*大だい智ち両りょう師しの解げ釈しゃく、 ともにこれ一言いちごんおのおのもつて見みやすし。

次ニ▲慈雲・▲大智両師ノ解釈、共ニ是 レ一言各以テ易シ↠見。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『正観記』文

【55】次つぎに戒かい度どの釈しゃく、 ¬*正しょう観かん記き¼ の文もん。

▲次ニ戒度ノ釈、¬正観記ノ¼文。

これ元がん照じょうの ¬義ぎ疏しょ¼ を釈しゃくする典てんなり。 いま下げ品ぼん上生じょうしょうを釈しゃくする中なかに、 ならべて経きょう題だい仏ぶつ名みょうの徳とくを解げする中なかに、 いまの所引しょいんは仏ぶつ号ごうを嘆たんずる釈しゃくなり。

-是 レ釈スル↢元照ノ¬義疏ヲ¼↡典也。今釈スル↢下品上生ヲ↡之中ニ、並1073ベテ解スル↢経題仏名ノ徳ヲ↡中ニ、今ノ所引者嘆ズル↢仏号ヲ↡釈ナリ。

所引しょいんの文もんの上かみに題だいを嘆たんずる釈しゃく (正観記巻下) にいはく、 「遇縁ぐうえんの中なかに題号だいごう思おもひがたしとは、 けだし経きょうの中なかの所詮しょせん実相じっそうの妙みょう理りにあらざることなきによりて、 首題しゅだいひとたび挙あぐるに経きょう意いまつたく彰あらわる。」 所引しょいんの文もんはこの次つぎなり

所引ノ文ノ上ニ嘆ズル↠題ヲ釈ニ云ク、「遇縁ノ中ニ題号難シト↠思者、蓋シ由テ↢経ノ中ノ所詮无ニ↟非コト↢実相ノ妙理ニ↡、首題一タビ挙ルニ経ノ意全ク彰ハル。」 ▼所引ノ文此ノ次也

問とふ。 いまこの文もんは、 これ本書ほんしょのいづれの文もん句くを釈しゃくするぞや。

-問。今此ノ文者、是釈スルゾ↢本書ノ何ノ文句ヲ↡耶。

答こたふ。 本書ほんしょ、 元がん照じょうの ¬義ぎ疏しょ¼ の下げ (観経義疏意) にいはく、 「臨りん終じゅう遇縁ぐうえんの中なかに、 知ち識しきの開導かいどうに二にあり。 初はじめに聞法もんぼう除業じょごう、 二にに称名しょうみょう滅罪めつざい。 経きょう題だい仏号ぶつごう功く力りき思おもひがたし、 滅罪めつざいの劫数こうしゅ文もんの中なかに趣わずかに挙あぐ。」 以上 本末ほんまつの文もんを校きょうしてその益やくを知しるべし。

-答。本書、元照ノ¬義疏ノ¼下ニ云ク、「臨終遇縁ノ中ニ、知識ノ開導ニ有リ↠二。初ニ聞法除業、二ニ称名滅罪。経題仏号功力難シ↠思ヒ、滅罪ノ劫数文ノ中ニ趣ワヅカニ挙グ。」 已上 校シテ↢本末ノ文ヲ↡可シ↠知↢其ノ益ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 用欽釈二文

【56】次つぎに*用欽ようきん師し、 二にの釈しゃく見みつべし。

▲次ニ用欽師、二ノ釈可シ↠見。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『観経疏』文

【57】次つぎに*嘉か祥じょうの釈しゃくは ¬観かん経ぎょうの疏しょ¼ の釈しゃく、

▲次ニ嘉祥ノ釈ハ¬観経ノ疏ノ¼釈、

滅罪めつざいの勝しょう益やくその理り分ぶん明みょうなり。 このゆゑに禅林ぜんりんの古こ徳とくの十じゅう因いん、 衆罪しゅざい消しょう滅めつの段だんにこれを引ひく、 その意こころ覚さとりやすし。

-滅罪ノ勝益其ノ理分明ナリ。是ノ故ニ禅林ノ古徳ノ十因、衆罪消滅ノ之段ニ引ク↠之ヲ、其ノ意易↠覚。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『大経義疏』文

【58】次つぎに*法ほう位いの釈しゃく、 ¬*大だい経きょうの義ぎ疏しょ¼ の上じょう巻かんの釈しゃくなり。

▲次ニ法位ノ釈、¬大経ノ義疏ノ¼上巻ノ釈也。

かの ¬疏しょ¼ の釈しゃく文もんに、 その四し門もんあり。 一いちには弥陀みだ仏ぶつ土どの是化ぜけ・非化ひけを明あかし、 二にには往おう生じょうの者ものの得とく不ふ得とくあることを明あかし、 三さんには修因しゅいんに事じあり理りあることを明あかし、 四しには文もんを開ひらきて解げ釈しゃくす。 この中なかにいまの文もんは第だい三門さんもんの下もとに、 その多た重じゅうの問答もんどうある内うち、 一いっ箇かの答こたえなり。

-彼ノ¬疏ノ¼釈文ニ、有リ↢其ノ四門↡。一ニハ明↢弥陀仏土ノ是化・非化ヲ↡、二ニハ明シ↣往生ノ者 ノヽ有コトヲ↢得不得↡、三ニハ明シ↢修因ニ有↠事有コトヲ↟理、四ニハ開テ↠文ヲ解釈ス。此ノ中ニ今ノ文ハ第三門ノ下ニ、有ル↢其ノ多重ノ問答↡之内、一箇ノ答也。

その問といの言ことば (法位大経義疏巻上) にいはく、 「問とひていはく、 仏ぶつ名みょうなんの神験じんげんありてか、 名みなを称しょうするにすなはち罪つみを滅めっして往おう生じょうすることを得うる。」 以上 「答曰とうわつ」 の下しもにいまの引文いんもんあり。

-其ノ問ノ言ニ云ク、「問テ曰、仏名有テカ↢何ノ神験↡、称スルニ↠名ヲ即得ル↢滅シテ↠罪ヲ往生スルコトヲ↡。」 已上 「答曰ノ」之下ニ有リ↢▼今ノ引文↡。

また次下つぎしもにいはく、 「もし疑ぎ惑わくして信しんぜざれども、 しかも罪福ざいふくを信しんじ善本ぜんぽんを修しゅ習じゅうしてその国くにに生しょうぜんと願がんずるによりて、 なほ往おう生じょうを得うるを名なづけて*胎たい生しょうといふ。 いはんやいま決けつ定じょう信しん楽ぎょうして仏ぶつの名みょう号ごうを称しょうすること十じゅう念ねん相続そうぞくせん、 かしこに生しょうぜんこと疑うたがはず。」 以上

-又次下ニ云ク、「若シ疑惑シテ不レドモ↠信ゼ、然モ由テ↧信ジ↢罪福ヲ↡修↢習シテ善本ヲ↡願ズルニ↞生1074ゼント↢其ノ国ニ↡、尚得ルヲ↢往生ヲ↡名テ曰フ↢胎生ト↡。況ヤ今決定信楽シテ称スルコト↢仏ノ名号ヲ↡十念相続セン、生ゼンコト↠彼ニ不↠疑也。」 已上

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 飛錫釈文

【59】次つぎに*飛ひ錫しゃくの釈しゃく、 一いっ句く解げしやすし。

▲次ニ飛錫ノ釈、一句易シ↠解シ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『要集』四文

【60】次つぎに ¬*要よう集しゅう¼ の文もん。

▲次ニ¬要集ノ¼文。

十じゅう門もんの中なかに、 下げ巻かんの大門だいもん第八だいはち念仏ねんぶつ証しょう拠こ門もんの下もとに略りゃくして十じゅう文もんを出いだす。 いまその中なかにおいて挙あぐるところ、 第三だいさん・第だい四し・第だい五ごの文もんなり。

-十門ノ之中ニ、下巻ノ大門第八念仏証拠門ノ下ニ略シテ出ス↢十文ヲ↡。今於テ↢其ノ中ニ↡所↠挙、第三・第四・第五ノ文也。

問とふ。 たとひ後のちの文もんを略りゃくすとも、 もつとも初はじめを出いだすべし。 なんぞ第一だいいちを略りゃくする。

-問。縦ヒ略ストモ↢後ノ文ヲ↡尤モ可シ↠出ス↠初ヲ。何ゾ略スル↢第一ヲ↡。

答こたふ。 ¬*占察せんざつ経きょう¼ の文もんはもつぱら観察かんざつ所得しょとくの益やくを説とく。 いま称しょう念ねんをもつて本ほん意いとするがゆゑにこれを標ひょうせざるか。

-答。▲¬占察経ノ¼文ハ専説ク↢観察所得ノ之益ヲ↡。今以テ↢称念ヲ↡為スルガ↢本意ト↡故ニ不↠標セ↠之ヲ歟。

問とふ。 しからばなんぞ三さん四しの字じを標ひょうするや。

-問。然者何ゾ標スル↢三四ノ字ヲ↡耶。

答こたふ。 ことさらにその初はじめを略りゃくして整しょう足そくせざることを示しめし、 後のちにまたこれを標ひょうして還かえりて初はじめの文もん第一だいいいちとなすことを示しめすか。

-答。故コ ニ略シテ↢其ノ初ヲ↡示シ↠不コトヲ↢整足セ↡、後ニ亦標シテ↠之ヲ還テ示↣初ノ文為コトヲ↢第一↡歟。

【61】次つぎに上じょう巻かんの文もん。、

▲次ニ上巻ノ文。

大門だいもん第だい四し正修しょうしゅう念仏ねんぶつの下もとに五ご念ねん門もんを明あかす中なかに、 初はじめの礼拝らいはい門もんの解げ釈しゃくなり。

-大門第四正修念仏ノ之下ニ明ス↢五念門ヲ↡之中ニ、初ノ礼拝門ノ之解釈也。

【62】次つぎの文もんは、

▲次ノ文ハ、

第三だいさん作さ願がん門もん (往生要集・上) の下もとに菩ぼ提だい心しんを明あかすにまた三門さんもんあり。 一いちには行ぎょう相そうを明あかし、 二にには利り益やくを明あかし、 三さんには料りょう簡けんなり。 いまの釈しゃくはその利り益やくを明あかす文もんの中なかなり。

-第三作願門ノ下ニ明スニ↢菩提心ヲ↡又有リ↢三門↡。一ニハ明シ↢行相ヲ↡、二ニハ明シ↢利益ヲ↡、三ニハ料簡也。今ノ釈ハ明ス↢其ノ利益ヲ↡之文ノ中也。

所引しょいんの上かみに 「譬ひ如にょ」 (要集巻上) の字じあり、 また所引しょいんの文もんの次下つぎしもの釈しゃくにいはく、 「菩ぼ提だいの花はなもまたかくのごとし。 一日いちにち薫くんずるところの功く徳どくの香薫こうくん、 十方じっぽうの仏所ぶっしょに徹てっす。 声しょう聞もん・縁覚えんがく無漏むろ智ちをもつてもろもろの功く徳どくを薫くんずること、 百ひゃく千劫せんこうにおいてすとも、 及およぶことあたはざるところなり。」 以上

-所引ノ之上ニ有リ↢「▲譬如ノ」字↡、又所引ノ文ノ次下ノ釈ニ云ク、「▲*菩提ノ*花モ亦復如シ↠是ノ。一日所ノ↠薫ズル功徳ノ香薫、徹ス↢十方ノ仏所ニ↡。声聞・縁覚以テ↢无漏智ヲ↡薫ズルコト↢諸ノ功徳ヲ↡、於ストモ↢百千劫ニ↡、所ナリ↠不↠能↠及。」 已上

また前ぜん後ごにおいて多おおくの譬喩ひゆあり。 くはしく載のすることあたはず。

-又於1075テ↢前後ニ↡有リ↢多ノ譬喩↡。不↠能↢委ク載ルコト↡。

【63】次つぎの文もんは、

▲次ノ文ハ、

下げ巻かんの大門だいもん第だい十じゅう問答もんどう料りょう簡けんに略りゃくして十じゅう事じあり。 その中なかの第だい五ごの臨りん終じゅうの念相ねんそうに他た力りきの益やくを明あかし往おう生じょうの利りを顕あらわすに、 あるいは書典しょてんを引ひきあるいは料りょう簡けんを加くわへて種々しゅじゅの譬たとえを載のするに、 集しゅう主しゅ先徳せんどくみづから十じゅう喩ゆを加くわふ。 いまその中なかにおいて三さんを出いだすところなり。

-下巻ノ大門第十問答料簡ニ略シテ有リ↢十事↡。其ノ中ノ第五ノ臨終ノ念相ニ明シ↢他力ノ益ヲ↡顕ニ↢往生ノ利ヲ↡、或ハ引キ↢書典ヲ↡或ハ加ヘテ↢料簡ヲ↡載ルニ↢種々ノ譬ヲ↡、集主先徳自ミ 加フ↢十喩ヲ↡。今於テ↢其ノ中ニ↡所↠出↠三ヲ也。

「石せき汁じゅう」 は第三だいさん、 「忍辱にんにく」 は第だい五ご、 「尸利しり」 は*第七だいしちなり。 ある本ほんには 「尸し」 をもつて 「月がつ」 となす、 錯あやまりなり。

-「▲石汁ハ」第三、「▲忍辱ハ」第五、「▲尸利ハ」第七ナリ。或本ニハ以テ↠「尸ヲ」為↠「月ト」。錯也。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『選択集』文

【64】次つぎに ¬選せん択じゃく¼ の文もん。

▲次ニ¬選択ノ¼文。

初はじめの文もんは題だいの後のち文もんの前さきの要よう義ぎ、 後のちの文もんは流る通ずう一いち部ぶの総結そうけつなり。 正しょう雑ぞう分別ふんべつ、 正しょう助じょ決判けっぱん、 往おう生じょうの安心あんじん二に文もん最要さいようなり。

-▲初ノ文ハ題ノ後文ノ前ノ要義、▲後ノ文ハ流通一部ノ総結ナリ。正雑分別、正助決判、往生ノ安心二文最要ナリ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ○ 私釈(此集本意)

【65】次つぎにわたくしの御おん釈しゃく。

▲次ニ私ノ御釈。

「是ぜ非ひ凡ぼん夫ぶ自じ力りき」 とらは、 ¬経きょう¼ (大経巻上) には 「令りょう諸しょ衆しゅ生じょう功く徳どく成じょう就じゅ」 といひ、 ¬釈しゃく¼ (玄義分) には 「阿あ弥陀みだ仏ぶつ者しゃ即ぞく是ぜ其ご行ぎょう」 といふ。 念仏ねんぶつはただこれ弥陀みだの功く徳どく、 さらに凡ぼん夫ぶ有漏うろの行ぎょうにあらず、 ゆゑに機きの功こうを借からずして往おう生じょうの益やくを得う、 ひとへにこれ自じ然ねん不可ふか思議しぎなり。 この集しゅうの本ほん意い、 この深じん旨しなり。

-「▲是非凡夫自力ト」等者、¬経ニハ¼云ヒ↢「▲令諸衆生功徳成就ト」↡、¬釈ニハ¼云フ↢「▲阿弥陀仏者即是其行ト」↡。念仏ハ只是弥陀ノ功徳、更ニ非ズ↢凡夫有漏ノ行ニ↡、故ニ不シテ↠借↢機ノ功ヲ↡得↢往生ノ益ヲ↡、偏ニ是 レ自然不可思議ナリ。此ノ集ノ本意、此ノ深旨也。

所引しょいんの ¬論ろんの註ちゅう¼、 荘しょう厳ごん眷属けんぞく功く徳どく成じょう就じゅを釈しゃくするところの文もんなり。

-▲所引ノ¬論ノ註¼、所ノ↠釈スル↢荘厳眷属功徳成就ヲ↡文也。

問とふ。 胎たい生しょう辺へん地じはこれ化け生しょうにあらず。 なんによりてか総そうじて 「莫まく非ひ化け生しょう」 (論註巻下意) といふ。

-問。胎生辺地ハ是 レ非ズ↢化生ニ↡。何ナ 因テカ総ジテ云↢「▲莫非化生ト」↡。

答こたふ。 胎たい生しょう辺へん地じは報ほう土どの相そうにあらず。 いま (論註巻下) 「正しょう覚がく華け化け生しょう」 といふはまさしく報ほう土どの相そうなり。

-答。胎生辺地ハ非ズ↢報土ノ相ニ↡。今言↢「▲正覚*花化生ト」↡者、正ク報土ノ相ナリ。

「同一どういつ」 とらは、 一いち義ぎにいはく、 かの土どの相そうを釈しゃくす、 この土どの行ぎょうにあらず。

「▲同一ト」等者、一義ニ云ク、釈ス↢彼ノ土ノ相ヲ↡、非ズ↢此ノ土ノ行ニ↡。

ゆゑに ¬智ち論ろん¼ (大智度論巻二一初品) にいはく、 「無む量りょう寿じゅ仏ぶつの国くには、 人ひと生しょうじて自じ然ねんによく念仏ねんぶつす。」 また ¬小経しょうきょう¼ にいはく、 「みなことごとく仏ぶつを念ねんず。」

-故ニ¬智論ニ¼云ク、「无量寿仏ノ国ハ、人生ジテ自然ニ能ク念仏ス。」又¬小経ニ¼云1076ク、「▲皆悉念ズ↠仏ヲ。」

いまの義ぎはしからず、 かしこにして念仏ねんぶつすることはあへて争あらそふところにあらず。 経きょう説せつ論判ろんぱん分ぶん明みょうの上うえ、 華け台だい端たん座ざ念ねん弥陀みだの釈しゃく、 またもつて炳然へいねんなり。

-今ノ義ハ不↠然ラ、於シテ↠彼ニ念仏スルコトハ非ズ↢敢テ所ニ↟争フ。経説論判分明之上、*花台端座念弥陀ノ釈、亦以炳然ナリ。

ただしいまの文もんは此土しどの行ぎょうを指さす、 しかるゆえんは、 当とう句くの次上つぎかみの文もん (論註巻下) にいはく、 「おほよそこの雑ざっ生しょうの世せ界かいは、 もしは胎たいもしは卵らん、 もしは湿しつもしは化け、 眷属けんぞくそこばくにして苦く楽らく万品まんぼんなり。 雑業ぞうごうをもつてのゆゑに。」 以上

-但シ今ノ文者指ス↢此土ノ行ヲ↡。所↢以然↡者、当句ノ次上ノ文ニ云ク、「▲凡ソ是ノ雑生ノ世界ハ、若ハ胎若ハ卵、若ハ湿若ハ化、眷属若干ニシテ苦楽万品ナリ。以ノ↢雑業ヲ↡故ニ。」 已上

この釈しゃくの意こころ、 雑ざっ生しょうの世せ界かいは能のう生しょうの苦く因いん、 雑業ぞうごう異ことなるがゆゑに四し生しょう同おなじからず。 安楽あんらく国こく土どは念仏ねんぶつの一いち行ぎょう正しょう因いんたるがゆゑに純じゅん一いつに化け生しょうす。 これをもつてこれを思おもふに、 浄じょう穢え相対そうたいして因いん果が必然ひつねんなるを 「無む別道べつどう」 といふ。

-此ノ釈ノ之意、雑生ノ世界ハ能生ノ苦因、雑業異ナルガ故ニ四生不↠同カラ。安楽国土ハ念仏ノ一行為ガ↢正因↡故ニ純一ニ化生ス。以テ↠之ヲ思ニ↠之ヲ、浄穢相対シテ因果必然ナルヲ言フ↢「▲无別道ト」↡。

また次下つぎしも (論註巻下) にいはく、 「遠とおく通つうずればかの四し海かいの内うちみな兄きょう弟だいとなすなり。」 以上 かの ¬論ろん語ご¼ の言ことばにこの妙みょう談だんあり。 四し海かいといふは、 浄じょう土どの相そうにあらず。 閻えん浮ぶの同どう行ぎょう同一どういつの仏ぶっ子し、 その相親そうしんを勧すすめてこれを兄きょう弟だいと称しょうす。 かねて来らい生しょう倶会くえ一処いっしょの親厚しんこうたるべきことを標ひょうすらくのみ。

-又次下ニ云ク、「▲遠ク通ズレバ夫カノ四海ノ之内皆為ス↢兄弟ト↡也。」 已上 彼ノ¬論語ノ¼言ニ有リ↢此ノ妙談↡。言↢四海ト↡者、非ズ↢浄土ノ相ニ↡。閻浮ノ同行同一ノ仏子、勧テ↢其ノ相親ヲ↡称ス↢之ヲ兄弟ト↡。兼テ標スラク↠可コトヲ↠為↢来生倶会一処ノ親厚↡而已。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ○ 私釈(行信利益)

【66】またわたくしの御釈おんしゃく。 「獲ぎゃく真しん」 とらは、

又私ノ御釈。「▲獲真ト」等者、

問とふ。 釈しゃく義ぎのごときは、 ただちに信心しんじん獲ぎゃく得とくの行ぎょう者じゃ初しょ地じを得うといふか。 しかればこの事じ信しんじがたし、 いかん。

-問。如↢釈義ノ↡者、直ニ云↣信心獲得ノ行者得ト↢初地ヲ↡歟。然者斯ノ事難シ↠信ジ、如何。

答こたふ。 薄はく地じの凡ぼん夫ぶ、 三界さんがいの見けん思し一毫いちごうを伏ぶくせず。 たとひ念仏ねんぶつを行ぎょうずともあに無む明みょうを断だんじて聖しょう位いに登のぼらんや。 もしその位くらいを対たいせば天てんと地ちとに超こえたり。 異い生しょう断だん無む明みょうの人ひと彼此ひしあひ斉ひとしといふにはあらず。 初しょ地じ・初しょ果か、 大だい小しょう異ことなりといへども聖しょう位いこれ同おなじ。 しかるに初しょ果かの人ひとはたとひ悪業あくごうを造つくれども来報らいほうを招まねかず。 念仏ねんぶつの行ぎょう者じゃいまだ煩悩ぼんのうを断だんぜず罪業ざいごうを侵おかすといへども、 信心しんじん発得ほっとくすれば摂取せっしゅ不ふ捨しゃの利り益やくに関あずかるをもつて、 横おうに三界さんがいを超こえて頓とんに輪りん回ねを絶たつ。 その義ぎ同おなじきをもつていまこの釈しゃくを儲もうく。

-答。薄地ノ凡夫、三界ノ見思不ズ↠伏セ↢一毫ヲ↡。縦ヒ行ズトモ↢念仏ヲ↡豈断ジテ↢无明ヲ↡登↢聖位ニ↡耶。若シ対セバ↢其ノ位ヲ↡超タリ↢天ト与 トニ↟地。非ズ↠謂ニハ↢異生断无明ノ人彼此相斉シト↡。初地・初果、大小雖ヘ↠異ナリト聖位是 レ同ジ。而ニ初果ノ人ハ縦ヒ造レドモ↢悪業ヲ↡不↠招↢来報ヲ↡。念仏ノ行者未ダ↠断ゼ↢煩悩ヲ↡雖ヘ↠侵スト↢罪業ヲ↡、信心発得スレバ以テ↠関ルヲ↢摂取不捨ノ利1077益ニ↡、横ニ超テ↢三界ヲ↡頓ニ絶ツ↢輪廻ヲ↡。以テ↢其ノ義同キヲ↡今儲ク↢此ノ釈ヲ↡。

すなはち 「即そく時じ入にゅう必ひつ定じょう」 (十住論巻五易行品) の文もんを引ひき、 また 「入にゅう正定しょうじょう聚じゅ」 (論註巻上意) の釈しゃくを引ひく、 その意こころここにあり。 「即そく」 の言ことばは頓とんの義ぎ、 命みょう後ごを待またず、 ひそかに信心しんじん開発かいほつの時じ分ぶんに正定しょうじょう聚じゅに入いることを顕あらわす。 顕けんに浄じょう土どの不ふ退たいなるべしといへども、 退たい堕だせざるをもつて、 隠おんに現げん生しょうにその益やくあるべきことを表あらわす。 三さん不ふ退たいならびに処しょ不ふ退たいにあらず、 ただこれ▲蒙もう光触こうそく者しゃ心しん不ふ退たいの不ふ思議しぎを顕あらわすところならくのみ。 今こん家げの料りょう簡けんもつぱらこの意こころを存ぞんず。 処々しょしょの解げ釈しゃくこの義ぎ勢せいをもつてこれを解げ了りょうすべし。

-則引キ↢「▲即時入必定ノ」文ヲ↡、又引ク↢「▲入正定聚」之釈ヲ↡、其ノ意在リ↠斯ニ。「即ノ」言ハ頓ノ義、不↠待↢命後ヲ↡、潜ニ顕ス↣信心開発ノ時分ニ入コトヲ↢正定聚ニ↡。顕ニ雖ヘ↠可ト↠為ル↢浄土ノ不退↡、以テ↠不ルヲ↢退堕セ↡隠ニ表ス↢現生ニ可コトヲ↟有↢其ノ益↡。非ズ↢三不退ニ処不退ニ↡、唯是所ナラク↠顕ス↢▲蒙光触者心不退之不思議ヲ↡耳ノミ。今家ノ料簡専ラ存ズ↢此ノ意ヲ↡。処々ノ解釈以テ↢此ノ義勢ヲ↡可シ↣解↢了ス之ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『大経』流通分文(行一念義)

【67】次つぎに ¬大だい経きょう¼ の流る通ずう分ぶんの初はじめに、 かの如来にょらいの名みょう号ごうの徳とくを明あかす文もんなり。 このゆゑにこれをもつて行ぎょうの一念いちねんとなす。

▲次ニ¬大*経ノ¼流通分ノ初ニ、明ス↢彼ノ如来ノ名号ノ徳ヲ↡文ナリ。是ノ故ニ以テ↠之ヲ為ス↢行ノ一念ト↡。

問とふ。 いまこの文もんをもつて起き行ぎょうといひがたし。 すでに 「歓かん喜ぎ踊ゆ躍やく」 の言ことばあり、 よろしく安心あんじんに属ぞくすべし。 随したがひてかの異い訳やくの経きょう等とうを見みるに、 安心あんじんの趣おもむきその説せつ分ぶん明みょうなり、 いかん。

-問。今以テ↢此ノ文ヲ↡難シ↠謂ヒ↢起行ト↡。既ニ有リ↢「▲歓喜踊躍ノ」之言↡、宜ク↠属ス↢安心ニ↡。随テ而見ニ↢彼ノ▲異訳ノ経等ヲ↡、安心ノ之趣其ノ説分明ナリ、如何。

答こたふ。 行ぎょうは信しんを離はなれず、 信しんは行ぎょうを離はなれず。 いまの文もんの意こころ、 信しん行ぎょうあひ備そなへてたがいにもつて通用つうようす、 あながちに違い害がいせず。 もしこの意こころを得えば、 異い訳やくの経きょう説せつ、 また相そう違いにあらず。 ただし起き行ぎょうに属ぞくするその理りなほ明あきらかなり。 これによりて*黒谷くろだにの ¬大だい経きょうの釈しゃく¼ にいはく、 「▲上かみ機き縁えんに逗とうじてかつがつ助念じょねん往おう生じょうおよび諸行しょぎょう往おう生じょうの旨むねを明あかすといへども、 本願ほんがんに準じゅんずるがゆゑに流る通ずう分ぶんに至いたりて初はじめて諸しょ行ぎょうを廃はいしてただ念仏ねんぶつに帰きせしむ。」 以上 この講こう釈しゃくをもつてもつとも指し南なんとなす。

-答。行ハ不↠離レ↠信ヲ、信ハ不↠離レ↠行ヲ。今ノ文ノ之意、信行相備テ、互ニ以テ通用ス、強ニ不↢違害セ↡。若シ得エバ↢此ノ意ヲ↡、異訳ノ経説、又非ズ↢相違ニ↡。但シ属スル↢起行ニ↡其ノ理猶明ナリ。依テ↠之ニ黒谷ノ¬大経ノ釈ニ¼云、「上逗ジテ↢機縁ニ↡且カツガツ雖ヘ↠明スト↢助念往生及ビ諸行往生ノ之旨ヲ↡、準ズルガ↢本願ニ↡故ニ至テ↢流通分ニ↡初テ*廃シテ↢諸行ヲ↡帰セシム↢但念仏ニ↡。」 已上 以テ↢此ノ講釈ヲ↡尤モ為ス↢指南ト↡。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 智昇釈文

【68】次つぎに*智ち昇しょうの釈しゃくは、 宗しゅう家けの大たい師し ¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ 前序ぜんじょの釈しゃくなり。

▲次ニ智昇ノ釈ハ、宗家ノ大師¬往生礼讃¼前序ノ釈也。

その中なかに「善根ぜんごん薄はく少しょう」 とらは、

-其ノ中ニ「▲善根薄少ト」等者、

問とふ。 ¬疏しょ¼ (散善義) には 「無有むう出しゅつ離り之し縁えん」 といひて、 さらに一いち分ぶんの善種ぜんしゅありといはず。 いま薄はく少しょうなりといへどもその善ぜんあることを顕あらわす。 相そう違いいかん。

-問1078。¬疏ニハ¼云テ↢「▲无有出離之縁ト」↡、更ニ不↠云↠有ト↢一分ノ善種↡。今雖ヘ↢薄少也ト↡顕ス↠有コトヲ↢其ノ善↡。相違云何。

答こたふ。 天台てんだいの釈しゃく (法華文句記巻七下 釈薬草喩品) にいはく、 「衆しゅ生じょう無始むしよりつねに三道さんどうに居こす、 中なかにおいてたれか一毫いちごうの種類しゅるいなからん。」 以上 しかるに善ぜんありといへどもいまだ輪りん回ねを絶たたず。 これすなはち煩悩ぼんのう賊害ぞくがいのゆゑなり。 このゆゑにいまの釈しゃく、 善根ぜんごんありと示しめして、 しかも自じ力りき薄はく少しょうの善根ぜんごん生しょう死じを截きらざることを顕あらわす。 ¬疏しょ¼ の釈しゃくはまさしく生しょう死じを出いでざる辺へんに約やくし、 また諸善しょぜん不ふ成じょうの義ぎに就つきて、 ただち (散善義) に 「無有むう出しゅつ離り之し縁えん」 という。

-答。天臺ノ釈ニ云ク、「衆生无始ヨリ恒ニ居ス↢三道ニ↡、於テ↠中ニ誰カ无ラン↢一毫ノ種類↡。」 已上 而ニ雖ヘ↠有ト↠善未ダ↠絶↢輪廻ヲ↡。是 レ則煩悩賊害ノ故也。是ノ故ニ今ノ釈、示シテ↠有ト↢善根↡、而モ顕ス↢自力薄少ノ善根不コトヲ↟截ラ↢生死ヲ↡。¬疏ノ¼釈ハ正ク約シ↧不↠出↢生死ヲ↡之辺ニ↥、亦就テ↢諸善不成ノ之義ニ↡、直ニ云フ↢「無有出離之縁ト」↡。

「及称ぎゅうしょう」 等とうとは、 十じっ声しょう・一いっ声しょう、 ¬礼讃らいさん¼ を守まもるべし。

-「▲及称ト」等者、十声・一声、可↠守↢¬礼讃ヲ¼↡。

「十じっ声しょう聞もん」 とは、 おそらくはこれ展転てんでん、 書写しょしゃの誤あやまりか。

-「▲十声聞ト」者、恐ハ是 レ展転、書写ノ誤歟。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ○ 私釈

【69】わたくしの釈しゃく見みつべし。

▲私ノ釈可シ↠見ツ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『安楽集』十念文

【70】¬安楽あんらく集しゅう¼ の文もん。

▲¬安楽集ノ¼文。

第だい二に大門だいもんにその三番さんばんの料りょう簡けんある中なか、 第三だいさんに広ひろく問答もんどうを施ほどこす下もとに、 その重々じゅうじゅうある中なかの釈しゃくなり。 まづは念ねんを積つみ思おもいを凝こらすをもつて要ようとなして、 数かずを記きすることを用もちゐず。 後のちにはその数かずを記きすること始し行ぎょうの人ひとに約やくす、 久く行ぎょうはしからず。

-第二大門ニ有ル↢其ノ三番ノ料簡↡之中、第三ニ広ク施ス↢問答ヲ↡之下ニ、有ル↢其ノ重々↡之中ノ釈也。先ハ以テ↢積ミ↠念ヲ凝スヲ↟思ヲ為シテ↠要ト、不↠用ヰ↠記スルコトヲ↠数ヲ。後ニハ記スルコト↢其ノ数ヲ↡約ス↢始行ノ人ニ↡、久行ハ不↠然。

「又う云うん」 といふは、 別べつの引文いんもんにあらず、 本書ほんしょかくのごとし。 先せん後ご義ぎにおいていささか異い趣しゅを存ぞんず、 ゆゑにこの言ことばあり。

-言↢「▲又云ト」↡者、非↢別ノ引文ニ↡、本書如シ↠此ノ。先後於テ↠義ニ聊存ズ↢異趣ヲ↡、故ニ有リ↢此ノ言↡。

二 Ⅱ ⅱ d 総結

【71】「斯し乃ない」 以下いげ二に行ぎょう余よはこれ総結そうけつなり。

「△斯乃」以下二行余者是 レ総結也。

二 Ⅱ ⅱ e 重釈

【72】「言ごん他た力りき」 の下しもはこれ重釈じゅうしゃくなり。

「△言他力ノ」下ハ是 レ重釈也。

二 Ⅱ ⅱ e ・『論註』文

「論曰ろんわつ」 といふは、 ¬浄じょう土ど論ろん¼ なり。 ただし論文ろんもんにあらず、 これ註釈ちゅうしゃくなり。

-言↢「▲論曰ト」↡者、¬浄土論¼也。但シ非ズ↢論文ニ↡、是註釈也。

問とふ。 なんぞ註釈ちゅうしゃくを載のせて 「論曰ろんわつ」 といふや。

-問。何ゾ載テ↢註釈ヲ↡言↢「論曰ト」↡耶。

答こたふ。 もしは論ろんもしは釈しゃく、 これを指さして経きょうと称しょうする、 大だい師しの解げ釈しゃくすでにその例れいあり。 いはゆる ¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ の前序ぜんじょに ¬観かん経ぎょう義ぎ¼ を指さして 「¬観かん経ぎょう¼ に説とく」 といふ。 また 「玄げん義ぎ分ぶん」 の道どう理り破はの中なかの鵝が鴨おうの譬喩ひゆ、 ¬智ち論ろん¼ の説せつをもつて 「経きょうに説とくがごとし」 といふ。 いま註釈ちゅうしゃくをもつてただちに 「論曰ろんわつ」 といふその過とがなきか。

-答。若ハ論若ハ釈、指シテ↠之ヲ称スル↠経ト、大師ノ解釈已ニ有リ↢其1079ノ例↡。所謂¬往生礼讃ノ¼前序ニ指シテ↢¬観経義ヲ¼↡云フ↢「▲¬観経ニ¼説クト」↡。又「玄義分ノ」道理破ノ中ノ鵝鴨ノ譬喩、以テ↢¬智論ノ¼説ヲ↡云フ↠「▲如シト↢¬経ニ¼説クガ↡」。今以テ↢註釈ヲ↡直ニ云フ↢「論曰ト」↡无↢其ノ過↡歟。

▼かの ¬論ろん¼ の利り行ぎょう満足まんぞくの章しょうの中なかに五ご種しゅの門もんあり。 その第だい五ご門もんの解げ釈しゃくなり。

-彼ノ¬論ノ¼利行満足ノ章ノ中ニ有リ↢五種ノ門↡。其ノ第五門ノ之解釈也。

本論ほんろん (浄土論) の文もんにいはく、 「出しゅつ第だい五ご門もんとは、 大だい慈悲じひをもつて一切いっさい苦く悩のうの衆しゅ生じょうを観察かんざつす。 応おう化げ身しんを示しめして、 生しょう死じの園その煩悩ぼんのうの林はやしの中なかに回え入にゅうして、 神通じんずうに遊戯ゆげし教きょう化け地じに至いたる。 本願ほんがん力りきの回え向こうをもつてのゆゑに。 これを出しゅつ第だい五ご門もんと名なづく。」 以上論文

-本論ノ文ニ云、「▲出第五門ト者、以テ↢大慈悲ヲ↡観↢察ス一切苦悩ノ衆生ヲ↡。示シテ↢応化身ヲ↡、廻↢入シテ生死ノ園煩悩ノ林ノ中ニ↡、遊↢戯シ神通ニ↡至ル↢教化地ニ↡。▲以ノ↢本願力ノ廻向ヲ↡故ニ。是ヲ名ク↢出第五門ト↡。」 已上論文

「応おう化げ身しんを示しめすとは、 ¬法華ほけ経きょう¼ の普ふ門もん示じ現げんの類たぐいのごときなり。 遊戯ゆげに二義にぎあり。 一いちには自じ在ざいの義ぎ。 菩ぼ薩さつの衆しゅ生じょうを度どすること、 たとへば獅子ししの鹿しかを搏うつがごとし。 所しょ為い難かたからざること遊戯ゆげするがごとし。 二にには度どするに所しょ度どの義ぎなし。 菩ぼ薩さつ衆しゅ生じょうは畢ひっ竟きょうじて所しょ有うなしと観かんず。 無む量りょうの衆しゅ生じょうを度どすといへども、 実じつには一いち衆しゅ生じょうとして滅めつ度どを得うる者ものなし。 衆しゅ生じょうを度どすと示しめすこと遊戯ゆげするがごとし。」 以い上じょう ¬註ちゅう¼ (論註巻下) の文もん、 次下つぎしもの所引しょいん当とう章しょうを尽つくす

-「▲示スト↢応化身ヲ↡者、如↢¬法*花経ノ¼普門示現ノ之類ノ↡也。◆遊戯ニ有リ↢二義↡。一者自在ノ義。菩薩ノ度スルコト↢衆生ヲ↡、譬バ如シ↢獅子ノ搏ガ↟鹿ヲ。所為不コト↠難カラ如↢似シ遊戯スルガ↡。二者度スルニ无シ↢所度ノ義↡。菩薩観ズ↣衆生ハ畢竟ジテ无ト↢所有↡。雖ヘ↠度スト↢无量ノ衆生ヲ↡実ニハ无シ↧一衆生トシテ得ル↢滅度ヲ↡者↥。示スコト↠度スト↢衆生ヲ↡如↢似シ遊戯スルガ↡。」 已上¬註ノ¼文、次下ノ所引尽ス↢当章ヲ↡

「本願ほんがん力りき」 とは、

-「▲本願力ト」者、

問とふ。 これ如来にょらいの本願ほんがん力りきを指さすか、 はた行ぎょう者じゃの本願ほんがん力りきを指さすか。

-問。是指↢如来ノ本願力ヲ↡歟、将ハタ指↢行者ノ本願力ヲ↡歟。

答こたふ。 顕説けんぜつにはまづ行ぎょう者じゃの願力がんりきを指さす。 しかりといへども自利じり利他りた成じょう就じゅ、 ひとへに如来にょらいの本願ほんがん力りきによるがゆゑに、 功こうを推おして本もとに帰きすればただこれ仏力ぶつりきなり。 下しもの文もんに判はんずるところ、 他利たりと利他りたと分別ふんべつ解げ釈しゃくす。 これを思し択ちゃくすべし。 これをもつてこれをいふに、 隠説おんぜつには仏ぶつの本願ほんがん力りきといふべし。

-答。顕説ニハ先ヅ指ス↢行者ノ願力ヲ↡。雖ヘ↠然ト自利々他成就、偏ニ依ガ↢如来ノ本願力ニ↡故ニ、推シテ↠功ヲ帰スレバ↠本ニ只是仏力ナリ。下ノ文ニ所↠判ズル、他利ト々他ト分別解釈ス。可シ↣思↢*択ス之ヲ↡。以テ↠之ヲ言↠之ヲ、隠説ニハ可シ↠言↢仏ノ本願力ト↡。

かくのごときの義ぎ趣しゅ、 ▲第だい一巻いっかんに二に種しゅの回え向こうを解げすとしてくはしく料りょう簡けんし畢おわわりぬ。

-如ノ↠此ノ義趣、第一巻ニ解ストシテ↢二種ノ回向ヲ↡委ク料簡シ畢ヌ。

下しもの解げ釈しゃく (論註巻下) に 「もしは因いんもしは果か、 一いち事じとして利他りたにあたはざることあることなし」 といふ。 しかるに利他たりの言ことばは仏ぶつの功く徳どくに約やくす。 ゆゑにいふところの本願ほんがん力りきとは、 その功こうひとへに仏ぶつの本願ほんがん力りきたり。 これをもつて本文ほんもん行ぎょう者じゃの願力がんりきたりといへども、 その本ほん意いに約やくすれば仏ぶつの本願ほんがん力りきなり。 第だい十じゅう八願はちがんの成じょう就じゅの文もん、 至し心しん回え向こうの料りょう簡けん等とう、 みなこの意こころなり。 今こん家げの解げ釈しゃく、 おほきにこの意こころを得えて、 よろしく仰ぎょう信しんすべきなり。

-下ノ解釈ニ云フ↢「▲若ハ因若ハ果、无ト↟有コト↢一事トシテ不コト↟能↢利他ニ↡。」而ニ利他ノ言ハ約ス↢仏ノ功徳ニ↡。故ニ所1080ノ↠言フ之本願力ト者、其ノ功偏ニ為タリ↢仏ノ本願力↡。是ヲ以テ本文雖ヘ↠為タリト↢行者ノ願力↡、約スレバ↢其ノ本意ニ↡仏ノ本願力ナリ。第十八ノ願ノ之成就ノ文、至心廻向ノ之料簡等、皆此ノ意也。今家ノ解釈、大ニ得テ↢此ノ意ヲ↡、宜ベキク↢仰信ス↡也。

「経きょうにいはく十方じっぽう無礙むげ」 とらは、 その経名きょうみょうといひ、 そのつぶさなる文もんといひ、 下しもの所引しょいんのごとし。

-「▲経ニ言十方无ト」等者、云ヒ↢其ノ経名ト↡、云ヒ↢其ノ具ナル文ト↡、如シ↢▲下ノ所引ノ↡。

「然覈ねんかく」 とらは、 解げ釈しゃくの意こころ▲第一だいいちの鈔しょうのごとし。 所引しょいんの願文がんもん、 初はじめは第だい十じゅう八はち、 次つぎは第だい十じゅう一いち、 後のちは二に十じゅう二に。

-「▲然覈ト」等者、解釈之意如シ↢第一ノ鈔ノ↡。所引ノ願文、初ハ第十八、次ハ第十一、後ハ二十二。

第だい十じゅう八はちの願がんは往おう生じょうの事じを証しょうす、 これすなはち往相おうそう回え向こうの意こころ。

-▲第十八ノ願ハ証ス↢往生ノ事ヲ↡、是則往相廻向之意。

第だい十じゅう一いちの願がんはかの土どに生しょうずるとかしこにして行ぎょうを起おこすと、 この二にの自利じりを証しょうす。

-▲第十一ノ願ハ証ス↧生ズルト↢彼ノ土ニ↡於シテ↠彼ニ起スト↠行ヲ、此ノ二ノ自利ヲ↥。

二に十じゅう二にの願がんはかの土どに生しょうじて利他りたの行ぎょうを立りゅうすることを証しょうす、 これすなはち還相げんそう回え向こうの義ぎなり。 かくのごときの自利じり利他りた成じょう就じゅ、 みなこれ如来にょらいの本願ほんがん力りきなり。

-▲二十二ノ願ハ証ス↧生ジテ↢彼ノ土ニ↡立スルコトヲ↦利他ノ行ヲ↥、是 レ則還相廻向ノ之義ナリ。如ノ↠是ノ自利々他成就、皆是 レ如来ノ本願力也。

二 Ⅱ ⅱ e ・『観経義疏』文

【73】次つぎに元がん照じょうの釈しゃく。

▲次ニ元照ノ釈。

¬観かん経ぎょうの義ぎ疏しょ¼ にまづ義ぎ門もんを列れっして総そう意いを示しめす中なかに、 初はじめに教きょう興こうを明あかすにまたその二にあり。 一いちには総そうじて一代いちだいの教きょう興こうを明あかし、 二にには別べっして今こん経ぎょうの教きょう興こうを叙じょす。 いまの文もんはその初はじめなり。

-¬観経ノ義疏ニ¼先ヅ列シテ↢義門ヲ↡示ス↢総意ヲ↡中ニ、初ニ明スニ↢教興ヲ↡又有リ↢其ノ二↡。一ニハ総ジテ明シ↢一代ノ教興ヲ↡、二別シテ叙ス↢今経ノ教興ヲ↡。今ノ文ハ其ノ初ナリ。

所引しょいんの文もんの次下つぎしもの釈しゃく (元照観経義疏巻上) にいはく、 「あきらかに諸法しょしょうを達たっして、 しかして後のち大だい乗じょうの意こころを発おこし、 菩ぼ提だいの道どうを修しゅして上じょう求ぐ下化げけし、 究く竟きょうして成じょう仏ぶつす。 智慧ちえをもつてのゆゑに生しょう死じに住じゅうせず、 慈悲じひをもつてのゆゑに涅ね槃はんに住じゅうせず。 微み塵じん刹せつを歴へて生しょうを示しめし滅めつを唱となへ、 法ほうを説とき生しょうを度どす。 衆しゅ生じょう尽つくることなければ行ぎょう願がん身しん土どまた尽つくることあることなし。」 以上

-所引ノ之文ノ次下ノ釈ニ云、「洞ニ達シテ↢諸法ヲ↡、然シテ後発シ↢大乗ノ意ヲ↡、修シテ↢菩提ノ道ヲ↡上求下化シ、究竟シテ成仏ス。以ノ↢智恵ヲ↡故ニ不↠住セ↢生死ニ↡、以ノ↢慈悲ヲ↡故ニ不↠住セ↢涅槃ニ↡。歴テ↢微塵刹ヲ↡示シ↠生ヲ唱ヘ↠滅ヲ、説キ↠法ヲ度ス↠生ヲ。衆生无ケレバ↠尽コト行願身土亦无シ↠有↠尽コト。」 已上

二 Ⅱ ⅱ e ○ 私釈(己心領解)

【74】次つぎにわたくしの御おん釈しゃく。 これ己こ心しん中ちゅう領りょう解げの深じん義ぎを顕あらわす、 ことに信受しんじゅすべし。

▲次ニ私ノ御釈。是 レ顕ス↢己心中領解ノ深義ヲ↡、特ニ応シ↢信受ス↡。

二 Ⅱ ⅱ e ・『涅槃経』文

【75】次つぎに ¬*涅ね槃はん経ぎょう¼ の文もん。 所引しょいんに四しあり。

▲次1081ニ¬涅槃経ノ¼文。所引ニ有リ↠四。

問とふ。 これらの経きょう文もん弥陀みだ如来にょらいの功く徳どくを説とかず。 なんぞこれを引ひくや。

-問。此等ノ経文不↠説↢弥陀如来ノ功徳ヲ↡。何ゾ引↠之ヲ耶。

答こたふ。 一往いちおうはまことにしかり、 ただし深じん意いあり。 一代いちだいの教きょう文もん、 隠顕おんけん殊ことなりといへども、 しかしながら弥陀みだ済凡さいぼんの利り生しょうを説とく。 この意こころを得うる時とき、 諸文しょもん違いすることなし。 これをもつてこれをいふに、 あるいは 「一道いちどう」 といひ、 あるいは 「一実いちじつ」 といひ、 あるいは 「一いち乗じょう」 といふ。 ひそかに念仏ねんぶつ一いち乗じょうの理りを顕あらわし、 ほぼ浄じょう土ど一実いちじつの義ぎを明あかし、 遙はるかに清しょう閑げん一道いちどうの利りを説とく。 弥陀みだの妙みょう果かを号ごうして無む上じょう涅ね槃はんといふ。 念仏ねんぶつはすなはちこれ涅ね槃はんの門もんなり、 涅ね槃はんの誠じょう説せつあにもつて弥陀みだの利り生しょうを存ぞんぜざらんや。

-答。一往ハ誠ニ然リ、但シ有↢深意↡。一代ノ教文、隠顕雖ヘ↠殊也ト、併ラ説ク↢弥陀済凡ノ利生ヲ↡。得ル↢此ノ意ヲ↡時、諸文无シ↠違ヰスルコト。以テ↠之ヲ言ニ↠之ヲ、或ハ云ヒ↢「▲一道ト」↡、或ハ云ヒ↢「▲一実ト」↡、或ハ云フ↢「▲一乗ト」↡。潜ニ顕シ↢念仏一乗之理ヲ↡、粗明シ↢浄土一実之義ヲ↡、遙ニ説ク↢清閑一道ノ之利ヲ↡。弥陀ノ妙果ヲ号シテ曰フ↢无上涅槃ト↡。念仏ハ即是 レ涅槃ノ門ナリ、涅槃ノ誠説豈以テ不ンヤ↠存ゼ↢弥陀ノ利生ヲ↡。

¬二に教きょう論ろん¼ (巻上)にいはく、 「諸しょ経きょう論ろんの中なかに往々おうおうにこの義ぎあり。 しかりといへども文もんは執しゅう見けんに随したがひて隠かくれ、 義ぎは機き根こんに逐したがひて現げんず。」 以上

-¬二教論ニ¼云ク、「諸経論ノ中ニ往々ニ有リ↢斯ノ義↡。雖ヘ↠然リト文ハ随テ↢執見ニ↡隠レ、義ハ逐テ↢機根ニ↡現ズ。」 已上

念仏ねんぶつ醍だい醐ごの文もんなしといへども、 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ にいはく、 「もし念仏ねんぶつ三昧ざんまい醍だい醐ごの薬くすりにあらずは、 五ご逆ぎゃく深じん重じゅうの病やまいはなはだ治ちしがたしとなす。」 以上

-雖ヘ↠无ト↢念仏醍醐ノ之文↡、¬選択集ニ¼云ク、「▲若シ非↢念仏三昧醍醐之薬ニ↡者、五逆深重ノ病甚為ス↠難ト↠治シ。」 已上

いはんや念仏ねんぶつにおいてまさしく一いち乗じょう一道いちどう等とうの釈しゃくあり。 これらの説せつをもつて和会わえ由ゆえあり、 引いん証しょうの智解ちげ仰あおいで信受しんじゅすべし。

-況ヤ於テ↢念仏ニ↡正ク有↢一乗一道等ノ釈↡。以テ↢此等ノ説ヲ↡和会有リ↠由、引証ノ智解仰テ可シ↢信受ス↡。

二 Ⅱ ⅱ e ・『華厳経』文

【76】次つぎに ¬*華け厳ごん¼ の文もん。 ¬六ろく十じゅう華け厳ごん¼ 「*明みょう難なん品ぼん」 の文もんなり。

▲次ニ¬*華厳ノ¼文。¬六十華厳¼「*明難品ノ」文ナリ。

問とふ。 この文もん上かみに引ひく。 なんぞ重かさねて引ひくや。

-問。此ノ文▲上ニ引ク、何ゾ重テ引耶。

答こたふ。 上かみには ¬論ろんの註ちゅう¼ を引ひく。 かの ¬註ちゅう¼ に引ひくがゆゑに、 ¬註ちゅう¼ の文もんを載のするによりてこの文もんを除のぞかず。 いまはことさらにこれを引ひきてつぶさに前ぜん後ごを出いだす、 ゆゑに繁はん重じゅうにあらず。

-答。上ニハ引ク↢¬論ノ註ヲ¼↡。彼ノ¬註ニ¼引ガ故ニ、依テ↠載スルニ↢¬註ノ¼文ヲ↡不↠除↢此ノ文ヲ↡。今ハ故コ ニ引テ↠之ヲ具ニ出ス↢前後ヲ↡、故ニ非ズ↢繁重ニ↡。

所引しょいんの下しも (晋訳華厳経巻五明難品) にいはく、 「衆しゅ生じょうの本ほん行ぎょうに随したがひて無む上じょう菩ぼ提だいを求もとむ。 仏刹ぶっせつおよび衆しゅ会え説法せっぽうことごとく同おなじからず。」 以上

-所引ノ下ニ云ク、「随テ↢衆生ノ本行ニ↡求ム↢無上菩提ヲ↡。仏刹及ビ衆会説法悉ク不↠同カラ。」 已上

二 Ⅱ ⅱ e ○ 私釈

【77】次つぎにわたくしの御おん釈しゃく。 「爾に者しゃ」 とらは、 上かみの文等もんとうを結けっして弥陀みだの徳とくを標ひょうす。 領りょう解げの意こころなり。

▲次ニ私ノ御釈。「爾者ト」等者、結シテ↢上ノ文等ヲ↡標ス↢弥陀ノ徳ヲ↡。領解ノ意也。

「不ふ宿しゅく二に乗じょう雑善ぞうぜん」 とらは、 ¬論ろんの註ちゅう¼ の言ことばを借かりてほぼ仏ぶっ智ち純じゅん浄じょうの功く徳どくを述のぶ。 ¬論ろんの註ちゅう¼ の文言もんごん、 下しもの所引しょいんに見みえたり。

-「▲不宿二乗雑1082善ト」等者、借テ↢¬論ノ註ノ¼言ヲ↡粗述ブ↢仏智純浄ノ功徳ヲ↡。¬論ノ註ノ¼文言、見タリ↢▲下ノ所引ニ↡。

二 Ⅱ ⅱ e ・『大経』三十偈文

【78】次つぎに ¬大だい経きょう¼ の文もんは三さん十じゅう偈げの説せつ。

▲次ニ¬大経ノ¼文ハ三十偈ノ説。

釈しゃ迦かの讃嘆さんだんに三さんの文段もんだんあり。 その中なかの第だい二に仏ぶっ智ち難なん思じにまた二に文もんあり、 これ初はじめの二に衆しゅ不ふ測しきの文もんなり。

-釈迦ノ讃嘆ニ有リ↢三ノ文段↡。其ノ中ノ第二仏智難思ニ又有↢二文↡、是 レ初ノ二衆不測ノ文也。

「声しょう聞もん」 とらは、 これすなはち法説ほうせつ。 「譬ひ如にょ」 以下いげは喩たとえを説ときてこれを弁わきまふ。

-「▲声聞ト」等者、是 レ則法説。「▲譬如」以下ハ説テ↠喩ヲ*辨フ↠之ヲ。

「二に乗じょう」 とらは、

-「▲二乗ト」等者、

問とふ。 上かみの文もんには説ときて 「菩ぼ薩さつ莫まく窮ぐ」 といひ、 いまは 「二に乗じょう」 といふ。 この文もんのごときは菩ぼ薩さつを除のぞくか。 なんぞ相そう違いせるや。

-問。上ノ文ニハ説テ云ヒ↢「▲菩薩莫窮ト」↡、今ハ云フ↢「二乗ト」↡。如↢此ノ文ノ↡者除↢菩薩ヲ↡歟。何ゾ相違セル耶。

答こたふ。 これに二義にぎあり。 一いち義ぎにいはく、 上かみの声しょう聞もん・菩ぼ薩さつの二に衆しゅを指さしてこれを二に乗じょうといふ。 辟びゃく支し仏ぶつとは声しょう聞もん衆しゅに属ぞくす。 三さん乗じょうの衆しゅみな測はからざるがゆゑに。 一いち義ぎにいはく、 上かみには菩ぼ薩さつを挙あげて縁覚えんがくを挙あげず、 いまは支し仏ぶつを出いだして菩ぼ薩さつを挙あげず。 影よう略りゃく互ご顕けんして三さん乗じょう不ふ測しきの義ぎ趣しゅを顕あらわすところなり。

-答。此ニ有リ↢二義↡。一義ニ云ク、指シテ↢上ノ声聞・菩薩ノ二衆ヲ↡謂フ↢之ヲ二乗ト↡。辟支仏ト者属ス↢声聞衆ニ↡。三乗ノ之衆皆不ルガ↠測ラ故ニ。一義ニ云、上ニハ挙テ↢菩薩ヲ↡不↠挙↢縁覚ヲ↡、今ハ出シテ↢支仏ヲ↡不↠挙↢菩薩ヲ↡。影略互顕シテ所↠顕↢三乗不測ノ之義趣ヲ↡也。

浄じょう影ようの ¬疏しょ¼ (大経義疏巻下) にいはく、 「初はじめに七しち句くの文もんあり。 もろもろの声しょう聞もん・菩ぼ薩さつの不ふ測しきを明あかす。」 以上 これ初はじめの義ぎに順じゅんず。 上かみに 「声しょう聞もん菩ぼ薩さつ」 の二に衆しゅといひて、 下しもに 「二に乗じょう」 と結けっす。 文言もんごん・道どう理りあひ叶かなふものか。

-浄影ノ¬疏ニ¼云、「初ニ有リ↢七句ノ之文↡。明ス↢諸ノ声聞・菩薩ノ不測ヲ↡。」 已上 是 レ順ズ↢初ノ義ニ↡。上ニ言テ↢「声聞菩薩ノ」二衆ト↡、下ニ結ス↢「二乗ト」↡。文言・道理相叶者乎。

二 Ⅱ ⅱ e ・『浄土論』文

【79】次つぎに ¬浄じょう土ど論ろん¼ の文もん。

▲次ニ¬浄土論ノ¼文。

問とふ。 この文もん上かみに引ひく、 なんぞ重かさねて出いだすや。

-問。此ノ文▲引ク↠上ニ、何ゾ重テ出ス耶。

答こたふ。 ▲すでに前さきに述のぶるがごとし。 この書しょただこれ要文ようもん集しゅうなり。 繁はん重じゅうを痛いたまず、 要ようによりてこれを引ひく。 その旨むね上かみに載のせたり。 そのうへ、 上かみの文もんはひとへに ¬論ろん¼ の文もんを載のす、 いまは ¬註ちゅう¼ の言ことばを加くわふ。 差別しゃべつなきにあらず。

-答。如シ↢已ニ前ニ述ルガ↡。此ノ書只是 レ要文集也。不↠痛↢繁重ヲ↡、依テ↠要ニ引ク↠之ヲ。其ノ旨載タリ↠上ニ。其ノ上、上ノ文ハ偏ニ載ス↢¬論ノ¼文ヲ↡、今ハ加フ↢¬註ノ¼言ヲ↡。非ズ↠无ニ↢差別↡。

「又う曰わつ」 とらは、 荘しょう厳ごん衆しゅ功く徳どく成じょう就じゅの文もんなり。

-「▲又曰ト」等者、荘厳衆功徳成就ノ文也。

「不ふ宿しゅく」 とらは、 如来にょらい清浄しょうじょう智ち海かいの中なかに、 二に乗じょうの雑善ぞうぜんを雑ぞうせざる意こころなり。

-「▲不宿ト」等者、如来清浄智海ノ之中ニ、不↠雑セ↢二乗ノ雑善ヲ↡之意也。

「中ちゅう下げ」 といふは、 三さん乗じょうの中なかに縁覚えんがくを中ちゅうとなし声しょう聞もんを下げとなす。

-言↢「▲中下ト」↡者、三乗ノ之中ニ縁覚ヲ為シ↠中ト声聞ヲ為↠下ト。

「死し骸がい」 といふは、 本文ほんもんには 「尸し」 を用もちゐる、 いまは 「骸がい」 の字じたり。 異い本ほんあるか。 ¬智度ちど論ろん¼ に海うみに八種はっしゅの不ふ思議しぎあることを明あかす中なかに、 死尸ししを宿やどさざる、 その一いちの徳とくなり。 このゆゑにこれを喩たとふ。

-言↢「▲死骸ト」↡者、本文ニハ用ル↠「▲尸ヲ」、今ハ為タリ↢「骸ノ」字↡。有↢異本↡歟1083。¬智度論ニ¼明ス↣海ニ有コトヲ↢八種ノ不思議↡中ニ、不ル↠宿サ↢死尸ヲ↡其ノ一ノ徳也。是ノ故ニ喩フ↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅱ e ・「玄義分」文

【80】「光こう明みょう師し」 とは、 京けい師し大だい師し寺てらに就つきて名なを立たつ。 二に文もんの中なかに、 初はじめは ¬観かん経ぎょう義ぎ¼ 「玄げん義ぎ分ぶん」 の初はじめの勧衆かんしゅ偈げの文もんなり。

「▲光明師ト」者、京師大師就テ↠寺ニ立ツ↠名ヲ。二文ノ之中ニ、初ハ¬観経義¼「玄義分ノ」初ノ勧衆偈ノ文ナリ。

「菩ぼ薩さつ蔵ぞう」 とは、 二に蔵ぞう教きょうの意こころ、 声しょう聞もん蔵ぞうに対たいす。 「頓とん教ぎょう」 といふは、 これ漸ぜん教ぎょうに対たいす。 「一いち乗じょう海かい」 とは、 これ三さん乗じょうに対たいす。 これ ¬観かん経ぎょう¼ に就つきてしばらくこの義ぎを判はんず。 総そうじてこれをいはば三さん部ぶに亘わたるべし。

-「▲菩薩蔵ト」者、二蔵教ノ意、対ス↢声聞蔵ニ↡。言↢「▲頓教ト」↡者、是 レ対ス↢漸教ニ↡。「▲一乗海ト」者、是 レ対ス↢三乗ニ↡。是 レ就テ↢¬観経ニ¼↡且ク判ズ↢此ノ義ヲ↡。総ジテ而言イハヾ↠之ヲ可シ↠亘ル↢三部ニ↡。

二 Ⅱ ⅱ e ・『般舟讃』文

【81】次つぎに「又う云うん」 とは、 ¬般舟はんじゅ讃さん¼ の文もん。

次ニ「▲又云ト」者、¬般舟讃ノ¼文。

「瓔珞ようらく」 とらは、 この経きょう二に巻かん、 菩ぼ薩さつの修しゅ入にゅう五ご十じゅう二位にい歴りゃく劫こうの修しゅ行ぎょう整しょう足そくしてこれを明あかす。 天台てんだい (釈籤巻一〇) のいはく、 「¬瓔珞ようらく¼ はひとへに別門べつもんを存ぞんず。」 以上 かの ¬経きょう¼ には頓漸とんぜんの二に門もんを説とくといへども、 その本ほん意いに随したがへてかくのごとくこれを判はんず。

-「▲瓔珞ト」等者、此ノ¬経¼二巻、菩薩ノ修入五十二位歴劫ノ修行整足シテ明ス↠之ヲ。天臺ノ云ク、「¬瓔珞ハ¼偏ニ存ズ↢別門ヲ↡。」 已上 彼ノ¬経ニ¼雖ヘ↠説ト↢頓漸ノ二門ヲ↡、随ヘテ↢其ノ本意ニ↡如ク↠此ノ判ズ↠之ヲ。

「証しょう不ふ退たい」 とは、 これ処しょ不ふ退たいおよび三さん不ふ退たい、 これ始し終じゅうに約やくす。

-「▲証不退ト」者、是処不退及ビ三不退、是 レ約ス↢始終ニ↡。

「菩ぼ提だい蔵ぞう」 とは、 四し乗じょうの意こころによりて仏ぶつ乗じょうを指さすなり。 また異い本ほんありて 「菩ぼ薩さつ蔵ぞう」 といふ、 おのおの違い失しつなし。

-「▲菩提蔵ト」者、依テ↢四乗ノ意ニ↡指ス↢仏乗ヲ↡也。又有テ↢異本↡云フ↢「菩薩蔵ト」↡、各无シ↢違失↡。

二 Ⅱ ⅱ e ・『楽邦文類』文

【82】次つぎに ¬楽邦らくほう文類もんるい¼ の釈しゃくは第だい四し巻かんの文もんなり。

▲次ニ¬楽邦文類ノ¼釈ハ第四巻ノ文ナリ。

「宗釈しゅうしゃく」 といふは、 釈しゃくの字じおそらくは誤あやまりなり。 この書しょの作主さくしゅ宗暁しゅうぎょうの詞ことばなり。

-言↢「▲宗釈ト」↡者、「釈ノ」字恐ハ誤ナリ。此ノ書ノ作主宗暁ノ詞也。

「真しん理り」 とらは、

-「▲真理ト」等者、

問とふ。 真しん理りの言ことば理り法ほうを指さすか。 なんぞ念仏ねんぶつを嘆たんじてこの文もんを引ひくや。

-問。真理ノ之言指↢理法ヲ↡歟。何ゾ嘆ジテ↢念仏ヲ↡引↢此ノ文ヲ↡耶。

答こたふ。 いまの所引しょいんは姑蘇こその法雲ほううんの ¬宝珠ほうじゅ集しゅう¼ の意こころによりて、 命終みょうじゅうに僧そうを請しょうじてまさしく念仏ねんぶつの感応かんのうを得うることを明あかす篇へん章しょうを載のせて後のち、 宗暁しゅうぎょう記きするところの十行じゅうぎょう余よの中なか最初さいしょの詞ことばなり。 念仏ねんぶつの徳とくを嘆たんずることなんの疑うたがいかあるや。

-答。今ノ所引ハ依テ↢姑蘇ノ法雲ノ¬宝珠集ノ¼意ニ↡、載テ↧明ス↣命終ニ請ジテ↠僧ヲ正ク得コトヲ↢念仏ノ感応ヲ↡篇章ヲ↥之後、宗暁所ノ↠記スル十行余ノ中最初ノ詞也。嘆ズルコト↢念仏ノ徳ヲ↡有↢何ノ疑カ↡耶。

「還丹かんたん」 といふは、 これ薬くすりの名ななり。 弥陀みだの法ほうをもつてこの良りょう薬やくに喩たとふ。

-言↢「▲丹ト」↡者、是 レ薬ノ名也。以テ↢弥陀ノ法ヲ↡喩フ↢此ノ良薬ニ↡。

すなはち所引しょいんの次下つぎしもの釈しゃく (楽邦文類巻四) にいはく、 「弥陀みだの教きょう観かん、 まことに鉄くろがねを点てんじて金こがねと成なす妙みょう薬やくなり。 かの仏ぶつ塵点じんでん劫ごうよりこのかた修しゅ行ぎょうして、 身みを成じょうじ国くにを成じょうじ、 四し十じゅう八願はちがんを発おこしてつひによく克こっ果かす。 威い徳とく光こう明みょう不可ふか思議しぎなり。」 以上

-即所引ノ之次下ノ釈ニ云、「弥1084陀ノ教観、真ニ点ジテ↠鉄ヲ成ス↠金ト之妙薬也。彼ノ仏自↢塵点劫↡来修行シテ、成ジ↠身ヲ成ジ↠国ヲ、発シテ↢四十八願ヲ↡終ニ能ク克果ス。威徳光明不可思議ナリ。」 已上

いふところの真しん理りの文言もんごん諍あらそひなく、 これ弥陀みだ如来にょらいの功く徳どく名みょう号ごうを指さす。 すなはちこれ三身さんしん・三諦さんたい・三徳さんどくの秘ひ蔵ぞう功く徳どくなるがゆゑなり。

-所ノ↠言真理ノ文言无ク↠諍、是 レ指ス↢弥陀如来ノ功徳名号ヲ↡。則是 レ三身・三諦・三徳ノ秘蔵功徳ナルガ故也。

二 Ⅱ ⅱ e ○ 私釈

【83】次つぎにわたくしの御おん釈しゃく。

▲次ニ私ノ御釈。

「然ねん就しゅう」 とらは、 その機き教きょうに就つきておのおの相対そうたいあり。 これ経きょう論ろん・師し釈しゃくの意こころによりて、 ほぼ料りょう簡けんを加くわふるにこの比ひ校きょうあり。 教きょうに四し十じゅう八対はちたいの文もんあり、 機きに一いち十じゅう一対いちたいの義ぎあり。 広ひろく論ろんぜばなほしまた多たの義ぎあるべし。

-「然就ト」等者、就テ↢其ノ機教ニ↡各有リ↢相対↡。是 レ依テ↢経論・師釈ノ之意ニ↡、粗加ルニ↢料簡ヲ↡有リ↢此ノ比挍↡。▲教ニ有リ↢四十八対ノ之文↡、▲機ニ有リ↢一十一対之義↡。広ク論ゼバ猶亦可シ↠有↢多ノ義↡。

「悲ひ願がん」 とらは、 その譬喩ひゆをもつて仏ぶつの誓願せいがん不ふ思議しぎの徳とくを顕あらわす。 これに二に十じゅう八はっ句くの譬たとえあり、 その文もん解げしつべし。

-「▲悲願ト」等者、以テ↢其ノ譬喩ヲ↡顕ス↢仏ノ誓願不思議ノ徳ヲ↡。此ニ有リ↢二十八句ノ之譬↡、其ノ文可シ↠解シツ。

「宗しゅう師しの釈しゃくを披ひらきたるにのたまはく」 とらいふは、

-言↧「▲披タルニ↢宗師ノ釈ヲ↡言クト」等↥者、

問とふ。 浄じょう土ど宗しゅうにおいて宗しゅう師しと称しょうするは導どう和か尚しょうなり。 いま鸞らん師しをもつて宗しゅう師しの号ごうを載のする、 常じょう途ずの義ぎに違いせり、 いかん。

-問。於テ↢浄土宗ニ↡称↢宗師ト↡者導和尚也。今以テ↢鸞師ヲ↡載スル↢宗師ノ号ヲ↡、違セリ↢常途ノ義ニ↡、如何。

答こたふ。 導どう大だい師しをもつて一いっ宗しゅうの師しとすること、 さらに異い論ろんなし。 しかるに五祖ごそことごとくこれ祖師そし、 みなその釈しゃくを用もちゐる。 おのおの宗しゅう師しと称しょうせん、 なんの違い失しつかあらん。

-答。以テ↢導大師ヲ↡為スルコト↢一宗ノ師ト↡、更ニ无シ↢異論↡。然而五祖悉ク是祖師、皆用ル↢其ノ釈ヲ↡。各称セン↢宗師ト↡、有ラン↢何ノ違失カ↡。

いまの釈しゃくは ¬註ちゅう¼ の上じょうにかの本論ほんろんの 「世せ尊そん我が一心いっしん」 (浄土論) の句くを解げする下しもの釈しゃく、 かの天親てんじんわが教きょう主しゅ釈しゃく尊そんに告つぐる文もんなり。 これ稟ほん教ぎょうその事じ軽かろからず、 ひとへに師し承じょうをもっぱらにして自じ由ゆすべからざることを明あかす。 堅かたくこれを守まもるべし。

-今ノ釈ハ¬註ノ¼上ニ解スル↢彼ノ本論ノ「世尊我一心ノ」句ヲ↡之下ノ釈、彼ノ天親告ル↢我ガ教主釈尊ニ↡文也。是 レ明ス↧稟教其ノ事不↠軽カラ、偏ニ専ニシテ↢師承ヲ↡不ルコトヲ↞可ラ↢自由ス↡。堅ク可シ↠守↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ 正信偈

【84】次つぎに 「※正しょう信しん偈げ」 百ひゃく二に十じっ句く、 行ぎょう数しゅ六ろく十じゅう。 これ三さん朝ちょう高こう祖その解げ釈しゃくによりて、 ほぼ一いっ宗しゅう大綱たいこうの要よう義ぎを述のぶ。

▲次ニ○「正信偈」百二十句、行数六十。是 レ依テ↢三朝高祖ノ解釈ニ↡、粗述ブ↢一宗大綱ノ要義ヲ↡。

▽偈げの初はじめの句くより 「無過むか斯し」 に至いたるまで四し十じゅう四句しく二に十じゅう二に行ぎょうは、 これ ¬大だい経きょう¼ の意こころ。

-◇自↢偈ノ初ノ句↡至マデ↢「無過斯ニ」↡四十四句二十二行ハ、是 レ¬大経ノ¼意。

「印いん度ど」 以下いげ四句しく二に行ぎょうは、 総そうじて三さん朝ちょうの祖師そし同おなじく浄じょう土どの教きょうを顕あらわす意こころを標ひょうす。

-◇「印度1085」以下四句二行ハ、総ジテ標ス↧三朝ノ祖師同ク顕ス↢浄土ノ教ヲ↡意ヲ↥。

▽「釈しゃ迦か」 以下いげ一いち十じゅう二句にく六ろく行ぎょうの文もんはこれ龍りゅう樹じゅの讃さん、 その初はじめの四句しくは ¬楞りょう伽が経きょう¼ による、 次つぎの八はっ句くはこれ ¬十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼ による。

-◇「釈迦」以下一十二句六行ノ之文ハ是龍樹ノ讃、其ノ初ノ四句ハ依ル↢¬楞伽経ニ¼↡、次ノ之八句ハ是 レ依ル↢¬十住毘婆沙論ニ¼↡。

▽次つぎの十じゅう二句にく六ろく行ぎょうの文もんはこれ天親てんじんの讃さん、 ¬浄じょう土ど論ろん¼ による。

-◇次ノ十二句六行ノ之文ハ是 レ天親ノ讃、依ル↢¬浄土論ニ¼↡。

▽次つぎの十じゅう二句にく六ろく行ぎょうの文もんはこれ鸞らん師しの讃さん、 ¬論ろん註ちゅう¼ の意こころによる。

-◇次ノ十二句六行ノ之文ハ是 レ鸞師ノ讃、依ル↢¬論ノ註ノ¼意ニ↡。

▽次つぎの八はっ句く四し行ぎょうの文もんはこれ綽しゃく公こうの讃さん、 ¬安楽あんらく集しゅう¼ による。

-◇次ノ之八句四行ノ之文ハ是 レ綽公ノ讃、依ル↢¬安楽集ニ¼↡。

▽次つぎの八はっ句く四し行ぎょうの文もんはこれ大だい師しの讃さん。

-◇次ノ之八句四行ノ之文ハ是 レ大師ノ讃。

▽次つぎの八はっ句く四し行ぎょうの文もんはこれ恵え心しんの讃さん、 ¬要よう集しゅう¼ の意こころによる。

-◇次ノ之八句四行之ノ文ハ是 レ恵心ノ讃、依ル↢¬要集ノ¼意ニ↡。

▽次つぎの八はっ句く四し行ぎょうの文もんは空くう聖しょう人にんの讃さん、 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ による。

-◇次ノ之八句四行ノ之文ハ空聖人ノ讃、依ル↢¬選択集ニ¼↡。

▽次つぎの四句しくはこれ総結そうけつなり。

-◇次ノ之四句ハ是 レ総結也。

問とふ。 「正しょう信しん偈げ」 とは、 これなんの義ぎぞや。

-◇問。「▲正信偈ト」者、是 レ何ノ義ゾヤ乎。

答こたふ。 ▼「正しょう」 とは傍ぼうに対たいし邪じゃに対たいし雑ぞうに対たいす。 「信しん」 とは疑ぎに対たいす、 いまはこれ行ぎょうに対たいす。 所しょ行ぎょうの法ほうに就つきて能信のうしんの名なを挙あぐ。

-◇答。「正ト」者対シ↠傍ニ対シ↠邪ニ対ス↠雑ニ。「信ト」者対ス↠疑ニ、今ハ是 レ対ス↠行ニ。就テ↢所行ノ法ニ↡挙グ↢能信ノ名ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (一)¬大経¼ 意

【85】△¬大だい経きょう¼ の意こころの中なかに、

◇¬大経ノ¼意ノ中ニ、

「帰き命みょう」 以下いげの一いち行ぎょう二句にくは、 まづ寿じゅ命みょう・光こう明みょうの尊号そんごうを挙あげて帰き命みょうの体たいとなす。

-◇「▲帰命」*以下ノ一行二句ハ、先ヅ挙テ↢寿命・光明ノ尊号ヲ↡為ス↢帰命ノ体ト↡。

「法蔵ほうぞう」 以下いげの三さん行ぎょう半はんは、 これ法蔵ほうぞうの発心ほっしん・見けん土ど・思し惟ゆい等とうの相そうを明あかす。

-◇「▲法蔵」以下ノ三行半者、是 レ明ス↢法蔵ノ発心・見土・思惟等ノ相ヲ↡。

¬経きょう¼ (大経巻上) にいはく、 「国くにを棄すて王おうを捐すてて行ぎょうじて沙門しゃもんとなる、 号ごうして*法蔵ほうぞうといふ。 高才こうざい勇哲ゆうてつにして、 世よと超ちょう異いせり。 *世せ自じ在ざい王おう如来にょらいの所みもとに詣もうづ。 乃至 ここに世せ自じ在ざい王おう仏ぶつ、 すなはちために広ひろく二に百ひゃく一いち十じゅう億おくの諸仏しょぶつの刹せつ土どの天人てんにんの善悪ぜんあく、 国こく土どの麁そ妙みょうを説ときて、 その心願しんがんに応おうじてことごとく現げんじてこれを与あたへたまふ。 時ときにかの比丘びく、 仏ぶつの所説しょせつの厳ごん浄じょうの国こく土どを聞きき、 みなことごとく覩と見けんして無む上じょう殊しゅ勝しょうの願がんを超ちょう発ほつす。

-◇¬経ニ¼云ク、「▲棄ステ↠国ヲ捐テヽ↠王ヲ行ジテ作ル↢抄門ト↡、号シテ曰フ↢法蔵ト↡。高才勇哲ニシテ、与↠世超異セリ。◆詣マフヅ↢世自在王如来ノ所ミモトニ↡。 乃至 ▲於是ニ世自在王仏、則為ニ広ク説テ↢二百一十億ノ諸仏ノ刹土ノ天人ノ之善悪、国土ノ之麁妙ヲ↡、応ジテ↢其ノ心願ニ↡悉ク現ジテ与タマフ↠之ヲ。◆時ニ彼ノ比丘、聞キヽ↢仏ノ所説ノ厳浄ノ国土ヲ↡、皆悉ク覩見シテ◆超↢発ス无上殊勝ノ之願ヲ↡。

その心しん寂静じゃくじょうにして志こころざし所しょ著じゃくなし。 一切いっさい世せ間けんによく及およぶ者ものなし。 五ご劫こうを具ぐ足そくして、 荘しょう厳ごん仏国ぶっこくの清浄しょうじょうの行ぎょうを思し惟ゆいし摂取せっしゅす。」 以上

-◆其ノ心寂静ニシテ志无シ↢所著↡。一切世1086間ニ无シ↢能ク及者↡。◆具↢足シテ五劫ヲ↡、思↢惟シ摂↣取ス荘厳仏国ノ清浄之行ヲ↡。」 已上

「重じゅう誓せい名声みょうしょう」 の一いっ句くは、 三誓さんせい偈げの中なかの第三だいさん行ぎょうの意こころ、 すなはち (大経巻上) 「我が至し成じょう仏道ぶつどう」 とらいへる一いち行ぎょうすなはちこれなり。 第だい十じゅう七しちの願がん成じょう就じゅの意こころなり。

-◇「▲重誓名声ノ」之一句者、三誓ノ偈ノ中ノ第三行ノ意、即云ヘル↢▲「我至成仏道ト」等↡一行即是ナリ。第十七ノ願成就ノ意也。

「普ふ放ほう」 以下いげの三さん行ぎょう六ろっ句くは、 つぶさに十じゅう二に光仏こうぶつの名なを挙あげてその利り益やくを嘆たんず。 一々いちいちの勝しょう徳とく第だい五ご巻かんの中なかに興ごうの釈しゃくを引ひかる、 よろしくかの釈しゃくを見みるべし。

-◇「▲普放」以下ノ三行六句ハ、具ニ挙テ↢十二光仏ノ之名ヲ↡嘆ズ↢其ノ利益ヲ↡。一々ノ勝徳▲第五巻ノ中ニ被ル↠引↢興ノ釈ヲ↡、宜クシ↠見↢彼ノ釈ヲ↡。

「塵刹じんせつ」 といふは、 ¬経きょう¼ (大経巻上) にいはく、 「いまし東方とうぼう恒沙ごうじゃの仏刹ぶっせつを照てらす、 南西なんざい北方ほっぽう・四し維ゆい・上じょう下げもまたまたかくのごとし。」 以上 すでに十方じっぽうを照てらす、 微み塵じん刹せつ土どなんぞ遺ゆい余よあらん。 これをもつていまの讃さんに 「照しょう塵刹じんせつ」 といふ。

-◇言↢「▲塵刹ト」↡者、¬経ニ¼云ク、「▲乃シ照ス↢東方恒沙ノ仏刹ヲ↡、南西北方・四維・上下モ亦復如シ↠是ノ。」 已上 既ニ照ス↢十方ヲ↡、微塵刹土何ゾ有ラン↢遺余↡。是以テ今ノ讃ニ云フ↢「照塵刹ト」↡。

「本願ほんがん名みょう号ごう」 の一いっ句くは十じゅう七しちの願がんの意こころ。 「至し心しん信しん楽ぎょう」 の三さん句くは十じゅう一いち願がんの意こころなり。

-◇「▲本願名号ノ」之一句者十*七ノ願ノ意。◇「▲至心信楽ノ」之*三句者十一ノ願ノ意。

「如来にょらい」 以下いげの二に行ぎょう四句しくは、 これ如来にょらい出しゅっ世せの本懐ほんがいを示しめして、 如来にょらいの実じつ語ごを信受しんじゅすべきことを勧すすむ。 その本懐ほんがいの義ぎ、 ▲第だい一巻いっかんに ¬経きょう¼ (大経巻上) の 「如来にょらい以い無む蓋がい大だい悲ひ」 の文もんを引ひく下もとにおいて、 大概たいがいこれを解げす。

-◇「▲如来」以下ノ二行四句ハ、是 レ示シテ↢如来出世ノ本懐ヲ↡、勧ム↠応コトヲ↣信↢受ス如来ノ実語ヲ↡。其ノ本懐ノ義、於テ↧第一巻ニ引ク↢¬経ノ¼「如来以無蓋大悲ノ」之文ヲ↡下ニ↥、大概解ス↠之ヲ。

「能発のうほつ」 以下いげの二に行ぎょう四句しくは、 これ煩悩ぼんのう罪ざい障しょうの凡ぼん夫ぶ、 ただ一念いちねん真実しんじつの信心しんじんをもつてその証しょう益とくを得うることを明あかす。

-◇「▲能発」以下ノ二行四句ハ、是 レ明ス↧煩悩罪障ノ凡夫、唯 ヾ以テ↢一念真実ノ信心ヲ↡得コトヲ↦其ノ証益ヲ↥。

「能発のうほつ」 とらは、 信心しんじんの相そうを明あかす。 「喜き」 はいはく歓かん喜ぎ、 「愛あい」 はいはく愛あい楽ぎょう、 これすなはち信しん楽ぎょうなり。

-◇「▲能発ト」等者、明ス↢信心ノ相ヲ↡。「喜ハ」謂ク歓喜、「愛ハ」謂ク愛楽、是 レ則信楽ナリ。

「不ふ断だん」 とらは、 ¬論ろんの註ちゅう¼ の下げにいはく、 「荘しょう厳ごん清浄しょうじょう功く徳どく成じょう就じゅは、 偈げに観かん彼ぴ世せ界かい相そう勝しょう過が三界さんがい道どうといふがゆゑに。 これいかんが不ふ思議しぎなる。 凡ぼん夫ぶ人にんの煩悩ぼんのう成じょう就じゅせるありてまたかの浄じょう土どに生しょうずることを得う、 三界さんがいの繋け業ごう、 畢ひっ竟きょうじて牽ひかず。 すなはちこれ煩悩ぼんのうを断だんぜずして↓涅ね槃はんの分ぶんを得うるなり。 いづくんぞ思議しぎすべき。」 以上

-◇「▲不断ト」等者、¬論ノ註ノ¼下ニ云、「▲荘厳清浄功徳成就ト者、偈ニ言ガ↢観彼世界相勝過三界道ト↡故ニ。◆此レ云何ガ不思議ナル。有テ↢凡夫人ノ煩悩成就セル↡亦得ウ↠生ズルコトヲ↢彼ノ浄土ニ↡、三界ノ繋業、畢竟ジテ不↠牽カ。則是不シテ↠断ゼ↢煩悩ヲ↡得ルナリ↢涅槃ノ分ヲ↡。焉ゾ可キ↢思議ス↡。」 已上

問とふ。 いまの ¬註ちゅう¼ (論註巻下) の釈しゃくには 「↑涅ね槃はんの分ぶんを得う」 といふ。 いま 「分ぶん」 といはず、 いかん。

◇問。今ノ¬註1087ノ¼釈ニハ云フ↠「得ト↢涅槃ノ分ヲ↡。」今不↠云↠「分ト」、如何。

答こたふ。 「分ぶん」 は初しょ生しょうに約やくす。 もし究く竟きょうに約やくせばよろしくこの字じを略りゃくすべし。 あるいはまた七言しちごんの字じ数しゅを調ととのへんがためにこれを除のぞくに失しつなし。

-◇答。「分ハ」約ス↢初生ニ↡。若シ約セバ↢究竟ニ↡宜クシ↠略ス↢此字ヲ↡。或ハ又為ニ↠調ヘンガ↢七言ノ字数ヲ↡除ニ↠之ヲ無シ↠失。

「凡ぼん聖しょう」 とらは、 これ善悪ぜんあくの諸しょ機き殊ことなりといへども、 ひとしく仏願ぶつがんに乗じょうじて同おなじく報ほう土どに生しょうじぬれば、 その差別しゃべつなきことを顕あらわす。

-◇「▲凡聖ト」等者、是 レ顕ス↧善悪ノ諸機雖↠殊ナリト、斉ク乗ジテ↢仏願ニ↡同ク生ジヌレバ↢報土ニ↡、无コトヲ↦其ノ差別↥。

¬論ろんの註ちゅう¼ の上じょうに、 荘しょう厳ごん性しょう功く徳どく成じょう就じゅを解げすとして、 性しょうの字じを釈しゃくしていはく、 「また性しょうといふはこれ必然ひつねんの義ぎ、 不ふ改がいの義ぎなり。 海かい性しょうの一いち味みにして、 衆しゅ流る入いりぬればかならず一いち味みとなりて海水かいすいかれに随したがひて改あらたまらざるがごとし。」 以上

-◇¬論ノ註ノ¼上ニ、解ストシテ↢荘厳性功徳成就ヲ↡、釈シテ↢性ノ字ヲ↡云ク、「▲又言ハ↠性ト是 レ必然ノ義、不改ノ義ナリ。如シ↧海性ノ一味ニシテ、衆流入ヌレバ者必為テ↢一味ト↡海水不ルガ↦随テ↠彼ニ改マラ↥也。」 已上

「摂取せっしゅ」 以下いげの三さん行ぎょう六ろっ句くは、 これ弥陀みだ光こう摂しょうの益やくを明あかす。 貪瞋とんじん障しょう蔽へいしてこれを見みずといへども、 大だい悲ひ倦うまず、 摂しょう護ご止やむことなくして、 心しん不ふ退たいを得えてかならず往おう生じょうを得う。

-◇「▲摂取」以下ノ三行六句ハ、是 レ明ス↢弥陀光摂ノ之益ヲ↡。貪嗔障蔽シテ雖↠不ト↠見↠之ヲ、大悲不↠倦、摂護无シテ↠止コト、得テ↢心不退ヲ↡必得↢往生ヲ↡。

¬論ろんの註ちゅう¼ の上じょうにいはく、 「問とふていはく、 もし無礙むげ光こう如来にょらいの光こう明みょう無む量りょうにして、 十方じっぽうの国こく土どを照てらすに障しょう礙げするところなしといはば、 この間けんの衆しゅ生じょうなにをもつてか光こう照しょうを蒙こうぶらざる。 光ひかりに照てらさざるところあらば、 あに礙げあるにあらずや。 ◆答こたへていはく、 礙げは衆しゅ生じょうに属ぞくす、 光ひかりの礙げにはあらず。 たとへば日光にっこう四し天てん下げにあまねけれどもしかも盲者もうじゃ見みざるがごとし。 日光にっこうのあまねからざるにはあらず。」 以上

-¬論ノ註ノ¼上ニ云、「▲間テ曰、若シ言イハ↧无光如来ノ光明无量ニシテ、照ニ↢十方ノ国土ヲ↡无ト↞所↢障スル↡者、此ノ間ノ衆生何ナ 以テカ不ル↠蒙ラ↢光照ヲ↡。光ニ有ラバ↠所↠不ル↠照サ、豈非↠有ニ↠耶。◆答曰、ハ属ス↢衆生ニ↡。非ズ↢光ノニハ↡也。譬バ如シ↧日光周ア ケレドモ↢四天下ニ↡而モ盲者ハ不ルガ↞見。非ズ↢日光ノ不ニハ↟周カラ也。」 已上

元がん照じょうの ¬弥陀みだ経きょうの義ぎ疏しょ¼ にいはく、 「まさに知しるべし、 わがともがら仏光ぶっこうの中なかに処しょしてすべて知ち覚かくせず、 仏光ぶっこうは常つねに摂せっしてあきらむるに厭えん棄きすることなし。 なほし盲人もうにんの日輪にちりんの下もとに居こせるがごとし。 また溷かわや虫むしの楽このみて穢え処しょにあるがごとし。 膺むねを撫うつてみづから責せむ、 実じつに悲ひ痛つうすべし。」 以上

-◇元照ノ¬弥陀経ノ義疏ニ¼云、「当↠知、我ガ輩処シテ↢仏光ノ中ニ↡都テ不↢知覚セ↡、仏光ハ常ニ摂シテ略アキラムルニ无シ↢厭棄スルコト↡。猶シ如シ↣盲人ノ居セルガ↢日輪ノ下ニ↡。又如シ↣溷虫ノ楽テ在ルガ↢穢処ニ↡。撫ウテ↠膺ムネヲ自ミ 責ム、実ニ可シ↢悲痛ス↡。」 已上

三毒さんどくに覆おおはれて仏光ぶっこうを見みざること、 義ぎ盲人もうにんの日光にっこうを見みざるに同おなじ。

-◇三毒ニ所レテ↠覆不コト↠見↢仏光ヲ↡、義同ジ↢盲人ノ不ニ↟見↢日光ヲ↡。

「獲ぎゃく信しん」 以下いげの三さん行ぎょう六ろっ句くは、 これ念仏ねんぶつ真実しんじつの行ぎょう者じゃの信心しんじんの勝しょう利りを顕あらわす。 「聞法もんぼう不ふ忘もう見けん敬きょう大だい慶きょう」 (大経巻下意) は三さん十じゅう偈げの文もん、 当巻とうかんの初はじめにこれを引用いんようせらる。 ゆゑに釈しゃくを出いださず。 聞法もんぼうの本ほん意いは信心しんじんを発おこすにあり、 ゆゑに 「獲ぎゃく信しん」 といふ。

-◇「▲獲信」以下ノ三行六句ハ、是 レ顕ス↢念仏真実ノ行者ノ信心ノ勝利ヲ↡。「▲聞法不忘見敬大慶ハ」三十偈ノ文、▲当巻ノ之初ニ被ル↣引↢用セ之ヲ↡。故ニ不↠出サ↠釈ヲ。聞法ノ本意1088ハ在リ↠発ニ↢信心ヲ↡、故ニ云↢「獲信ト」↡。

「即横そくおう」 とらは、 「必得ひっとく超ちょう絶ぜつ去こ」 (大経巻下) 等とうの文もんの意こころなり。 「五ご悪趣あくしゅ」 とは、 これ五ご道どうなり。

-◇「▲即横ト」等者、「▲必得超絶去」等ノ文ノ意ナリ。「▲五悪趣ト」者、是 レ五道也。

浄じょう影よう師し (大経義疏巻下) のいはく、 「いまこれ弥陀みだの浄じょう刹せつに約対やくたいして、 娑しゃ婆ばの五ご道どうひとしく悪趣あくしゅと名なづく。 地じ獄ごく・鬼き・畜ちくは純じゅん悪あくの所向しょこう、 名なづけて悪趣あくしゅとなす。 娑しゃ婆ばの人天にんでんは雑業ぞうごうの所向しょこう、 また悪趣あくしゅと名なづく。 もしこの方ほうの修しゅ習じゅう断除だんじょによらば、 まづ見惑けんわくを断だんじて三さん途ずの因いんを離はなれ三さん途ずの果かを滅めっす。 後のちに修惑しゅわくを断だんじて人天にんでんの因いんを離はなれ人天にんでんの果かを絶たつ。 漸ぜん次じの断除だんじょなれば横截おうぜつと名なづけず。 もし弥陀みだの浄じょう土どに往おう生じょうすることを得うれば、 娑しゃ婆ばの五ご道どう一いち時じに頓とんに捨すつ、 ゆゑに横截おうぜつと名なづく。」 以上

-◇浄影師ノ云ク、「今此レ約↢対シテ弥陀ノ浄刹ニ↡、娑婆ノ五道ヲ斉ク名ク↢悪趣ト↡。地獄・鬼・畜ハ純悪ノ所向、名テ為ス↢悪趣ト↡。娑婆ノ人天ハ雑業ノ所向、亦名ク↢悪趣ト↡。若シ依ラバ↢此ノ方ノ修習断除ニ↡、先ヅ断ジテ↢見惑ヲ↡離レ↢三*途ノ因ヲ↡滅ス↢三*途ノ果ヲ↡。後ニ断ジテ↢修惑ヲ↡離レ↢人天ノ因ヲ↡絶ツ↢人天ノ果ヲ↡。漸次ノ断除ナレバ不↠名ケ↢横截ト↡。若シ得レバ↣往↢生コトヲ弥陀ノ浄土ニ↡、娑婆ノ五道一時ニ頓ニ捨ツ、故ニ名ク↢横截ト↡。」 已上

義ぎ寂じゃく師し (大乗義記巻下) のいはく、 「もし穢土えどに就つきては、 下しもの三さんを悪あくとし人天にんでんを善ぜんとす。 いま浄じょう土どに対たいしては、 五ごをみな悪あくと名なづく。 ひとたび往おう生じょうを得えぬれば五ご道どう頓とんに去すつ、 ゆゑに横截おうぜつといふ。」 以上

-◇義寂師ノ云ク、「若シ就テハ↢穢土ニ↡、下ノ三ヲ為シ↠悪ト人天ヲ為ス↠善ト。今対シテハ↢浄土ニ↡、五ヲ皆名ク↠悪ト。一タビ得ヌレバ↢往生ヲ↡五道頓ニ去スツ、故ニ云↢横截ト↡。」 已上

「弥陀みだ」 以下いげの二に行ぎょう四句しくは、 これ信受しんじゅのはなはだ難かたきことを明あかして遇ぐう法ほうの要益ようやくを識しき知ちせしめんと欲ほっす。

-◇「▲弥陀」以下ノ二行四句ハ、是 レ明シテ↢信受ノ甚ハダ難コトヲ↡欲ス↠令ント↣識↢知セ遇法ノ要益ヲ↡。

「信しん楽ぎょう」 といふは、

-◇言↢「▲信楽ト」↡者、

光こうの ¬記き¼ (倶舎論記巻四) に釈しゃくしていはく、 「信しんに二に種しゅあり。 一いちには忍許にんきょの相そう、 あるいは信しん可かと名なづく。 名な異いにして義ぎ同おなじ。 二にには欲よく楽ぎょうの相そう、 あるいは信しん楽ぎょうと名なづけ、 あるいは信愛しんあいと名なづく。 名な異いにして義ぎ同おなじ。」 以上

-光ノ¬記ニ¼釈シテ云ク、「信ニ有リ↢二種↡。一忍許ノ相、或ハ名ク↢信可ト↡。名異ニシテ義同ジ。二ニハ欲楽ノ相、或ハ名ケ↢信楽ト↡、或ハ名ク↢信愛ト↡。名異ニシテ義同ジ。」 已上

¬百ひゃっ法ぽう論ろんの疏しょ¼ (巻上) にいはく、 「いかなるをか信しんとする。 実じつの徳能とくのうにおいて、 深忍じんにん楽ぎょう欲よくして心しん浄じょうなるを性しょうとなす。 不ふ信しんを対たい治じして善ぜんを楽ねがふを業ごうとなす。」 以上

-◇¬百法論ノ疏ニ¼云ク、「*何ナルヲカ為スル↠信ト。於テ↢実ノ徳能ニ↡、深忍楽欲シテ心浄ナルヲ為ス↠性ト。対↢治シテ不信ヲ↡楽フヲ↠善ヲ為ス↠業ト。」 已上

¬唯識ゆいしき論ろん¼ (成唯識論巻六) にいはく、 「忍にんはいはく勝しょう解げ、 これすなはち信しんの因いん。 楽ぎょう欲よくはいはく欲よく、 すなはちこれ信しんの果かなり。」 以上

-◇¬唯識論ニ¼云ク、「忍ハ謂ク勝解、此レ即信ノ因。楽欲ハ謂ク欲、即是 レ信ノ果ナリ。」 已上

これらの文もんによるに、 信しんに二義にぎあり。 いはゆる忍許にんきょと愛あい楽ぎょうとこれなり。 いま 「信しん楽ぎょう」 とはすなはちこの二にの意こころなり。

-◇依ニ↢此等ノ文ニ↡、信ニ有リ↢二義↡。所謂忍許ト愛楽ト是也。今「信楽ト」者即此ノ二ノ意ナリ。

「受じゅ持じ」 といふは、 義ぎ寂じゃく師し (大経義記巻下) のいはく、 「受じゅとは心しんの領りょう納のうをなすがゆゑに。 持じとは記きを得えて忘わすれざるがゆゑに。」 以上

-◇言↢「▲受持ト」↡者、義寂師ノ云、「受ト者作ナスガ↢心ノ領納ヲ↡故ニ。持ト者得テ↠記ヲ不ルガ↠忘レ故ニ。」 已上1089

「難なん中ちゅう」 とらは、

-◇「▲難中ト」等者、

¬経きょう¼ (大経巻下) にいはく、 「もしこの経きょうを聞ききて信しん楽ぎょう受じゅ持じすること、 難なんの中なかの難なんなり。 この難なんに過すぎたるはなし。」 以上

-¬経ニ¼云、「▲若シ聞テ↢斯ノ経ヲ↡信楽受持スルコト、難ノ中ノ之難ナリ。無シ↠過タルハ↢斯ノ難ニ↡。」 已上

浄じょう影よう師し (大経義疏巻下) のいはく、 「↓前さきの三さんに約対やくたいしてこの ¬経きょう¼ の中なかの修学しゅがくのもつとも難かたきことを明あかす。 余義よぎ余よ法ほうは処々しょしょによろしく説とくべし。 浄じょう土どを開顕かいけんして人ひとをして往おう生じょうせしむる、 ひとりこの一いっ経きょうなり。 これをもつとも難かたしとなす。」 以上

-◇浄影師ノ云ク、「約↢対シテ前ノ三ニ↡明ス↢此ノ¬経ノ¼中ノ修学ノ最モ難コトヲ↡。余義余法ハ処々ニ宜クシ↠説ク。開↢顕シテ浄土ヲ↡教ル↢人ヲシテ往生セ↡、独此ノ一経ナリ。為ス↢是ヲ最モ難シト↡。」 已上

↑前三ぜんさんといふは、 諸仏しょぶつの経きょう道どう、 菩ぼ薩さつの勝しょう法ぼう、 聞法もんぼう能のう行ぎょう、 これみな難かたしとなす。 三さんに対たいするにいまの ¬経きょう¼ 第一だいいちに難かたし。

-◇言↢前三ト↡者、諸仏ノ経道、菩薩ノ勝法、聞法能行、是 レ皆為ス↠難シト。対スルニ↠三ニ今ノ¬経¼第一ニ難シ也。

問とふ。 この ¬経きょう¼ を持たもつ人ひと、 善悪ぜんあくの二機にきさらに選えらぶところなし。 なんぞ 「邪見じゃけん憍きょう慢まん」 とらいふや。

-◇問。持ツ↢此ノ¬経ヲ¼↡人、善悪ノ二機更ニ无シ↠所↠選。何ゾ云↢「▲邪見憍慢ト」等↡耶。

答こたふ。 念仏ねんぶつの機き広ひろく善悪ぜんあくに亘わたること置おきて論ろんぜず。 しかりといへどももつぱら障重しょうじゅう根鈍こんどんをもつて正しょう機きとするがゆゑに、 まづ悪人あくにんに約やくす。 善人ぜんにんを除のぞくにはあらず。

-◇答。念仏ノ之機広ク亘コト↢善悪ニ↡置テ而不↠論ゼ。雖↠然ト専以テ↢障重根*鈍ヲ↡為スルガ↢正機ト↡故ニ、先ヅ約ス↢悪人ニ↡。非ズ↠除ニハ↢善人ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (二)三朝祖師同顕浄土教意

【86】「印いん度ど」 以下いげの二に行ぎょう四句しくは、 総そうじて三さん朝ちょうの高僧こうそう弘ぐ教きょう利り生しょうの本心ほんしんを明あかす。

◇「△印度」以下ノ二行四句ハ、総ジテ明ス↢三朝ノ高僧弘教利生ノ本心ヲ↡。

「顕大けんだい」 とらは、 これ釈しゃく尊そん発遣はっけんの聖しょう意いを顕あらわす。 「明みょう如にょ」 とらは、 これ弥陀みだ済さい度どの仏願ぶつがんを示しめす。

-◇「▲顕大ト」等者、是 レ顕ス↢釈尊発遣ノ聖意ヲ↡。◇「▲明如ト」等者、是 レ示ス↢弥陀済度ノ仏願ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (三)龍樹讃

【87】△龍りゅう樹じゅの讃さんの中なかに、

龍樹ノ讃ノ中ニ、

「釈しゃ迦か」 以下いげの三さん行ぎょう六ろっ句くは、 これ釈しゃく尊そん未み来らい記きの説せつを明あかす。

-◇「▲釈迦」以下ノ三行六句ハ、是 レ明ス↢釈尊未来記ノ説ヲ↡。

¬*楞りょう伽が経きょう¼ (魏訳巻九総品意) にいはく、 「わが乗じょう↓内ない証しょうの智ち、 ↓妄覚もうがく境きょう界がいにあらず。 如来にょらい滅めつ世せの後のち、 たれか持たもちてわがために説とかん。 未み来らいにまさに人ひとあるべし。 南天なんてん国ごくの中なかにおいて、 大徳だいとくの此丘びくありて龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつと名なづけん。 よく有無うむの見けんを破はして、 人ひとのために↓わが乗じょう大だい乗じょう無む上じょうの法ほうを説とき、 初しょ歓かん喜ぎ地じに住じゅうして安楽あんらく国こくに往おう生じょうせん。」 以上

-◇¬楞伽経ニ¼云、「我ガ乗内証ノ智、*妄覚非ズ↢境界ニ↡。如来滅世ノ後、誰カ持テ為ニ↠我ガ説ン。未来ニ当ニ↠有↠人。於テ↢南天国ノ中ニ↡、有テ↢大徳ノ此丘↡名ケン↢龍樹菩薩ト↡。能ク破シテ↢有無ノ見ヲ↡、為ニ↠人ノ説キ↢我ガ乗大乗無上ノ法ヲ↡、住シテ↢初歓喜地ニ↡往↢生セン安楽国ニ↡。」 已上

この経きょう文もんの意こころ、 真言しんごんの行ぎょう人にんは秘ひ教きょうに約やくすと謂おもへり。 真しん宗しゅうの学者がくしゃは念仏ねんぶつに被かぶらしむとす。

-◇此ノ経文ノ意、真言ノ行人ハ謂オモヘリ↠約スト↢秘教ニ↡。真宗ノ学者ハ為ス↠被カ シムト↢念仏ニ↡。

「↑内ない証しょう智ち」 とは、 弥陀みだの五智ごち。 ↑妄覚もうがくとらは、 声しょう聞もん・菩ぼ薩さつ如来にょらいの智慧ちえ海かいを測はからざるなり。

-◇内証智ト者、弥陀ノ五智。◇妄覚ト等者、声聞1090・菩薩不ル↠測↢如来ノ智恵海ヲ↡也。

↑わが乗じょう大だい乗じょう無む上じょう法ほうとは念仏ねんぶつ三昧ざんまいなり。 龍りゅう樹じゅの ¬論ろん¼ の中なかに、 多おおく弥陀みだを讃さんじて稽首けいしゅ礼拝らいはいす。 ゆゑに真門しんもんを指さしてみづからわが乗じょうといふ。

-◇我乗大乗無上法ト者念仏三昧ナリ。龍樹ノ¬論ノ¼中ニ、多ク讃テ↢弥陀ヲ↡稽首礼拝ス。故ニ指シテ↢真門ヲ↡自ミ 云フ↢我乗ト↡。

いま 「大だい乗じょう無む上じょう法ほう」 といふは、 すなはちこれ念仏ねんぶつなり。 仏ぶつ名みょう号ごうをもつて説ときて大だい利りとなし、 また無む上じょうの功く徳どくといふがゆゑなり。 なかんづくにすでに安楽あんらくの往おう生じょうを説とく。 このゆゑに釈しゃく尊そん未み来らい記きの文もん、 龍りゅう樹じゅの出しゅっ世せ、 もつぱら弥陀みだの教きょうを弘ぐ通ずうせんがためなり。

-◇今言↢「▲大乗無上法ト」↡者、即是 レ念仏ナリ。仏以テ↢名号ヲ↡説テ為シ↢大利ト↡、又言フガ↢无上ノ功徳ト↡故也。就ニ↠中既ニ説ク↢安楽ノ往生ヲ↡。是ノ故ニ釈尊未来記ノ文、龍樹ノ出世、専ラ為↣弘↢通センガ弥陀ノ教ヲ↡也。

「顕けん示じ」 以下いげの一いち行ぎょう二句にくは、 判はんじて難なん易い二に道どうの得失とくしつを示しめす。 その文もんもと ¬十住じゅうじゅう婆ば沙しゃ¼ に出いでたり。 つぶさなる文もん引ひきて当巻とうかんの初はじめにあるのみ。

-◇「▲顕示」以下ノ一行二句ハ、判ジテ示ス↢難易二道ノ得失ヲ↡。其ノ文源出タリ↢¬十住婆沙ニ¼↡。具ナル文引テ在↢▲当巻ノ初ニ↡耳。

「憶念おくねん」 とらは、 すなはち上かみに引ひくところの 「人にん能念のうねん是ぜ仏ぶつ」 (十住論巻五易行品) 等とうの文もんの意こころなり。

-◇「▲憶念ト」等者、即所ノ↢上ニ引↡「▲人能念是仏」等ノ文ノ意也。

「唯能ゆいのう」 以下いげの一いち行ぎょう二句にくは、 総結そうけつの釈しゃくなり。 易い行ぎょうの法ほうに遇あひて、 出しゅつ離り心しんにあり、 他た力りきの仏恩ぶっとんを報謝ほうしゃすべきことを勧すすむ。

-◇「▲唯能」以下ノ一行二句ハ、総結ノ釈也。遇テ↢易行ノ法ニ↡出離在リ↠心ニ、勧ム↠応コトヲ↣報↢謝ス他力ノ仏恩ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (四)天親讃

【88】△天親てんじんの讃さんの中なかに、

天親ノ讃ノ中ニ、

初はじめの二句にくは、 造論ぞうろんの事じを標ひょうして帰き命みょうの意こころを述のぶ。

-◇▲初ノ之二句ハ、標シテ↢造論ノ事ヲ↡述ブ↢帰命ノ意ヲ↡。

「依え修しゅ」 以下いげの二に行ぎょう四句しくは、 これ所しょ依え真実しんじつの義ぎを明あかし、 また横おう超ちょう他た力りきの益やくを顕あらわす。

-◇「▲依修」以下ノ二行四句ハ、是 レ明シ↢所依真実ノ之義ヲ↡、又顕ス↢横超他力ノ之益ヲ↡。

¬論ろん¼ の中なかに横おう超ちょうの言ことばなしといへども、 三さん経ぎょう一論いちろん所説しょせつの法門ほうもん法体ほったい同おなじきがゆゑに、 かの経きょう (大経巻下) の中なかにあるいは 「超ちょう絶ぜつ」 といひ、 あるいは 横截おうぜつ」 といふによりて、 いま 「横おう超ちょう」 といふ。

-◇¬論ノ¼中ニ雖↠无ト↢横超ノ之言↡、三経一論所説ノ法門法体同ジキガ故ニ、依テ↧彼ノ¬経ノ¼中ニ或ハ云ヒ↢「▲超絶ト」↡、或ハ云ニ↦「「▲横截ト」↥、今云フ↢「横超ト」↡。

また大だい師しの釈しゃく (玄義分) にこの名みょう目もくあり、 ゆゑに 「横おう超ちょう大だい誓願せいがん」 といふなり。

-◇又大師ノ釈ニ有リ↢▲此ノ名目↡、故ニ云フ↢「▲横超大誓願ト」↡也。

「彰しょう一心いっしん」 とは、 「我が一心いっしん」 (浄土論) を指さす。 論主ろんじゅの一心いっしん、 行ぎょう者じゃの一心いっしん、 その心しん同おなじかるべし。 このゆゑに釈しゃくして 「為度いど群ぐん生じょう」 といふ。

-◇「▲彰一心ト」者、指ス↢「▲我一心ヲ」↡。論主ノ一心、行者ノ一心、其ノ心可シ↠同カル。是ノ故ニ釈シテ云フ↢「▲為度群生ト」↡。

「帰き入にゅう」 以下いげの三さん行ぎょう六ろっ句くは、 ¬論ろん¼ の五ご門もんの中なかの第だい二に・第三だいさん・第だい五ごの門もんの意こころなり。

-◇「▲帰入」以下ノ三行六句ハ、¬論ノ¼五門ノ中ノ第二・第三・第五ノ門ノ意ナリ。

¬論ろんの註ちゅう¼ の下げにいはく、 「入にゅう第だい二に門もんとは、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを讃嘆さんだんして、 名みょう義ぎに随ずい順じゅんして如来にょらいの名みなを称しょうし、 如来にょらいの光こう明みょう智ち相そうによりて修しゅ行ぎょうするをもつてのゆゑに、 大だい会え衆しゅの数かずに入いることを得う。 これを第だい二に門もんと名なづく。 如来にょらいの名みょう義ぎによりて讃嘆さんだんす。 これ第だい二にの功く徳どくの相そうなり。 入にゅう第だい三門さんもんとは、 一心いっしんに専念せんねんしてかしこに生しょうぜんと作さ願がんして、 奢しゃ摩他また寂静じゃくじょう三昧ざんまいの行ぎょうを修しゅするをもつてのゆゑに、 蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かいに入いることを得う、 これを入にゅう第だい三門さんもんと名なづく。 寂静じゃくじょう止しを修しゅせんがためのゆゑに、 一心いっしんにかの国くにに生しょうぜんと願がんず。 これ第三だいさんの功く徳どくの相そうなり。 乃至 出しゅつ第だい五ご門もんとは。」 この重釈じゅうしゃくの始はじめに ¬註ちゅう¼ の文もんを引ひく下しもに載のするところの論ろん文もん

-◇¬論ノ註1091ノ¼下ニ云ク、「▲入第二門ト者、以ノ↧讃↢嘆シテ阿弥陀仏ヲ↡、随↢順シテ名義ニ↡称シ↢如来ノ名ヲ↡、依テ↢如来ノ光明智相ニ↡修行スルヲ↥故ニ、得ウ↠入コトヲ↢大会衆ノ数ニ↡。是ヲ名ク↢第二門ト↡。◆依テ↢如来ノ名義ニ↡讃嘆ス。是 レ第二ノ功徳ノ相ナリ。◆入第三門ト者、以ノ↧一心ニ専念シテ作↢願シテ生ゼント↟彼ニ、修スルヲ↦奢摩他寂静三昧ノ行ヲ↥故ニ、得ウ↠入コトヲ↢蓮*花蔵世界ニ↡。是ヲ名ク↢入第三門ト↡。◆為ノ↠修センガ↢寂静止ヲ↡故ニ、一心ニ願ズ↠生ゼント↢彼ノ国ニ↡。是 レ第三ノ功徳ノ相ナリ。 乃至 ▲出第五門ト者。」 此ノ▲重釈ノ始ニ引ク↢¬註ノ¼文ヲ↡下ニ所ノ↠載スル論文

「必ひつ獲ぎゃく入にゅう大だい会え衆しゅ数しゅ」 とは第だい二に門もんの益やく、 「得とく至し↓蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かい」 とは第だい三門さんもんの益やく、 「遊ゆう煩悩ぼんのう林りん現げん神通じんずう」 とは第だい五ご門もんの益やくなり。 いま第一だいいち・第だい四しの両りょう門もんを除のぞく。

-◇「▲必獲入大会衆数ト」者第二門ノ益、◇「▲得至蓮*花蔵世界ト」者第三門ノ益、◇「▲遊煩悩林現神通ト」者第五門ノ益ナリ。今除ク↢第一・第四ノ両門ヲ↡。

問とふ。 五ご門もんの中なかにこの三門さんもんを挙あぐる、 なんの意こころかあるや。

-◇問。五門ノ之中ニ挙ル↢此ノ三門ヲ↡、有↢何ノ意カ↡耶。

答こたふ。 第だい二に門もんは、 これ讃嘆さんだん門もんなり。 その讃嘆さんだんとは、 名みょう義ぎに随ずい順じゅんして如来みょらいの名みなを称しょうする、 これ肝要かんようなるがゆゑに。 第だい三門さんもんとは、 その益やく蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かいなるがゆゑに、 勝しょう益やくたるに就つきていまことさらにこれを出いだす。 入にゅうの四し門もんの中なかに最要さいようたるをもつてこの二に門もんを挙あぐ。 第だい五ご門もんは、 これ出しゅつの功く徳どく、 還相げんそうの回え向こう、 利り益やく衆しゅ生じょうの至し極ごくなるがゆゑに。 これらの義ぎによりてこの三門さんもんを出いだす。

-◇答。第二門者、是 レ讃嘆門ナリ。其ノ讃嘆ト者、随↢順シテ名義ニ↡称スル↢如来ノ名ヲ↡、是 レ肝要ナルガ故ニ。第三門ト者、其ノ益蓮花蔵世界ナルガ故ニ、就テ↠為ニ↢勝益↡今故ニ出ス↠之ヲ。入ノ四門ノ中ニ以テ↠為ヲ↢最要↡挙グ↢此ノ二門↡。第五門者、是 レ出ノ功徳、還相ノ廻向、利益衆生ノ之至極ナルガ故ニ。依テ↢是等ノ義ニ↡出ス↢此ノ三門ヲ↡。

問とふ。 「↑蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かい」 とは、 これいづれの土どや。

-◇問。「蓮*華蔵世界ト」者、是 レ何ノ土哉。

答こたふ。 智ち光こうの ¬疏しょ¼ (無量寿経論釈巻五) にいはく、 「盧る舎しゃ那な仏ぶつ蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かいに坐ましますといふがごとし。 いま蓮れん華げ蔵そう世せ界かいといふは、 無む量りょう寿じゅ仏ぶつ所しょ居ごの住じゅう処しょ。 この世せ界かいに準じゅんずるに、 義ぎに随したがへて名なとなす。 すなはちこれ修しゅ行ぎょう安心あんじんの宅たくなり。」 以上

-◇答。智光ノ¬疏ニ¼云ク、「如シ↠言ガ↣盧舎那仏坐スト↢蓮*花蔵世界ニ↡。今言↢蓮*花蔵世界ト↡者、无量寿仏所居ノ住処。准ズルニ↢此ノ世界ニ↡、随ヘテ↠義ニ為ス↠名ト。即是 レ修行安心ノ之宅ナリ。」 已上

この文もんのごときは、 極楽ごくらくと華け蔵ぞうとこれ一いち土どなり。

-◇如↢此ノ文ノ↡者、極楽ト*花蔵ト是 レ一土也。

問とふ。 華け厳ごん世せ界かいは純じゅん菩ぼ薩さつの居こ、 極楽ごくらく国こく土どは五ご乗じょう通つう入にゅうす。 なんぞ一いち土どならんや。

-◇問。*華厳世界ハ純1092菩薩ノ居、極楽国土ハ五乗通入ス。何ゾ一土ナランヤ哉。

答こたふ。 分わかちて両りょう土どとすることはしばらく機き見けんに随したがふ、 その深じん旨しに達たっすれば各別かくべつの土どにあらず。 随したがひてすなはち極楽ごくらくは大だい乗じょう善根ぜんごん清浄しょうじょうの土どなるがゆゑに、 実じつに二に乗じょう・三さん乗じょうの異いなし。 これによりて ¬智ち論ろん¼ (大智度論巻三八往生品) に判はんじて 「一いち乗じょう清浄しょうじょう無む量りょう寿じゅ世せ界かい」 といひ、 いまの ¬論ろん¼ (浄土論) には説ときて 「蓮れん華げ蔵ぞう界かい」 といふ。 名な異いにして義ぎ同おなじきこと、 その理り知しんぬべし。

-◇答。分テ為スルコトハ↢両土ト↡且ク随コト↢機見ニ↡、達スレバ↢其ノ深旨ニ↡非ズ↢各別ノ土ニ↡。随テ則極楽ハ大乗善根清浄ノ土ナルガ故ニ、実ニ无シ↢二乗・三乗ノ之異↡。依テ↠之ニ¬智論ニハ¼判ジテ云ヒ↢「一乗清浄無量寿世界ト」↡、今ノ¬論ニハ¼説テ云↢「蓮*華蔵界ト」↡。名異ニシテ義同ジキコト、其ノ理応シ↠知ヌ。

「即そく証しょう」 とらは、 寂静じゃくじょう三昧ざんまい所しょ入にゅうの土どなるがゆゑに、 真如しんにょ法ほっ性しょうの証しょうを得うるなり。

-◇「▲即証ト」等者、寂静三昧所入ノ之土ナルガ故ニ、得ル↢真如法性ノ証ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (五)鸞師讃

【89】△鸞らん師しの釈しゃくの中なかに、

鸞師ノ釈ノ中ニ、

初はじめの二句にくは朝ちょうの崇そう重じゅうを明あかしてその行ぎょう徳とくを示しめす。

-◇▲初ノ之二句ハ、明シテ↢朝ノ崇重ヲ↡示ス↢其ノ行徳ヲ↡。

迦か才ざいの ¬浄じょう土ど論ろん¼ (巻下) にいはく、 「▲沙門しゃもん曇鸞どんらん法ほっ師しは并へい州しゅう汶水ぶんすいの人ひとなり。 魏ぎの末すえ高斉こうせいの初はじめになほ在あり、 神じん智ち高遠こうおんにして三国さんごくに知ち聞もんせらる。 ほがらかに衆しゅ経きょうを暁さとりて独ひとり人にん外げに出いでたり。 梁りょう国こくの天てん子し*蕭そう王おう、 つねに北きたに向むかひて鸞らん菩ぼ薩さつと礼らいす。 ▽¬往おう生じょう論ろん¼ を註ちゅう解げして裁さいして両りょう巻かんをなす。」 以上

-◇迦才ノ¬浄土論ニ¼云、「沙門曇鸞法師者并州汶水人也。魏ノ末高斉ノ之初ニ猶在リ、神智高遠ニシテ三国ニ知聞セラル。洞カニ暁サトテ↢衆経ヲ↡独出タリ↢人外ニ↡。梁国ノ天子蕭王、恒ニ向テ↠北ニ礼ス↢鸞菩薩ト↡。註↢解シテ¬往生論ヲ¼↡、裁シテ成ス↢両巻ヲ↡。」 已上

「三蔵さんぞう」 以下いげの一いち行ぎょう二句にくは、 まづ今こん師し帰き法ほうの行状ぎょうじょうを明あかす。

-◇「▲三蔵」以下ノ一行二句ハ、先ヅ明ス↢今師帰法ノ行状ヲ↡。

¬新しん修しゅう往おう生じょう伝でん¼ にいはく、 「▲初はじめ鸞らん好このみて術じゅつ学がくをなす。 *陶とう隠居いんきょ長ちょう生せいの法ほうを得えたりと聞ききて、 千せん里りにこれに就つく。 陶とう仙せん経ぎょう十巻じっかんをもつて鸞らんに授さずく。 鸞らん躍然やくねんとしてみづから得えたり。 神仙しんせんの術じゅつそれ必然ひつねんなりとおもへらく。 ◆後のちに洛らく下げに還かえりて*菩ぼ提だい留支るしに遇あふ。 意こころにすこぶるこれを得えたり。 支しに問とふていはく、 仏道ぶつどうに長ちょう生せいを得うることあるや、 つぶさによく老ろうを却しりぞけて不死ふしをなすや。 支し笑わらひて対こたへていはく、 長ちょう生せい不死ふしはわが仏道ぶつどうなり。 旋かえつて ¬観かん無む量りょう寿じゅ経きょう¼ をもつてこれを授さずけていはく、 なんぢこれを誦じゅすべし。 すなはち三界さんがいにまた生しょうずることなし、 六道ろくどうに往ゆく*ところなし。 乃至 これわが金仙こんせん氏しの長ちょう生せいなり、 乃至 鸞らんその語ごを承うけてしばしば深信じんしんを起おこす。 つひに所学しょがくの仙せん経ぎょうを焚やきてしかも観かん経ぎょうをもつぱらにす。」 以上

-◇¬新修往生伝ニ¼云ク、「初鸞好テ為ナス↢術学ヲ↡。聞テ↣陶隠居得タリト↢長生ノ法ヲ↡、千里ニ就ク↠之ニ。陶以テ↢仙経十巻ヲ↡授ク↠鸞ニ。鸞躍然トシテ自得タリ。以↢為オモヘラク オモヘリ 神仙之術其必然ナリト↡也。後ニ還テ↢洛下ニ↡遇フ↢菩提留支ニ↡。意ニ頗得タリ↠之ヲ。問テ↠支ニ曰、仏道ニ有↠得コト↢長生ヲ↡*乎、具ニ能ク却ゾキテ↠老ヲ為↢不死ヲ↡乎。*支笑テ而対テ曰、長生不死ハ吾ガ仏道也。旋カヘテ以テ↢¬観无量寿経ヲ¼↡授テ↠之ヲ曰、汝可シ↠*誦ス↠此ヲ。則三界ニ无シ↢復生ズルコト↡、六道ニ无シ↠*↠往ク。 乃至 此レ吾ガ金仙氏ノ之1093長生也、乃至 鸞承テ↢其ノ語ヲ↡驟シバシバ起ス↢深信ヲ↡。遂ニ焚テ↢所学ノ仙経ヲ↡而モ専ニス↢観経ヲ↡。」 已上

「天親てんじん」 以下いげの四し行ぎょう八はっ句くは、 ¬論ろんの註ちゅう¼ の意こころによりてほぼその意こころを述のぶ。

-◇「▲天親」以下ノ四行八句ハ、依テ↢¬論ノ註ノ¼意ニ↡粗述ブ↢其ノ意ヲ↡。

「論ろん註ちゅう解げ」 とは、 △上かみに引ひくところの迦か才ざい師しの釈しゃくに見みえたり。

-◇「▲論註解ト」者、見タリ↢上ニ所ノ↠引ク迦才師ノ釈ニ↡。

「惑染わくぜん」 とらは、

-◇「▲惑染ト」等者、

問とふ。 生しょう死じすなはちこれ涅ね槃はんの証しょうは、 深じん悟ごの機きに約やくす。 惑染わくぜんの凡ぼん夫ぶ、 たとひ信心しんじんを発おこすとも、 いかでかその証しょうを得えんん。 随したがひていまの教きょうには無む相そう離り念ねんの義ぎを明あかさず。 煩悩ぼんのう・菩ぼ提だい不二ふにの悟さとり、 なにをもつてかこれに関あずからん。

-◇問。生死即是 レ涅槃ノ証者、約ス↢深悟ノ機ニ↡。惑染ノ凡夫、縦ヒ発ストモ↢信心ヲ↡、争デカ得ン↢其ノ証ヲ↡。随テ而今ノ教ニハ不↠明サ↢无相離念ノ之義ヲ↡。煩悩・菩提不二ノ之悟、何ヲ以テカ関カラン↠之ニ。

答こたふ。 凡ぼん夫ぶただちにこの理りを証しょうすといふにはあらず。 しかるにいまの名みょう号ごうは万徳まんどくの所しょ帰き、 仏ぶっ果かの功く徳どくなり。 能信のうしんの信心しんじんまた他た力りきより起おこる、 さらに凡ぼん夫ぶ自じ力りきの心しん行ぎょうにあらず。 このゆゑに信しんを発おこしてその名みょう号ごうを称しょうすれば、 不ふ断だん煩悩ぼんのうの悪あく機きたりといへども、 法ほうの功く能のうによりてこの理りを備そなふるなり。

-◇答。非ズ↠云ニハ↣凡夫直ニ証スト↢此ノ理ヲ↡。而ニ今ノ名号ハ万徳ノ所帰、仏果ノ功徳ナリ。能信ノ々心又起ル↢他力ヨリ↡、更ニ非ズ↢凡夫自力ノ心行ニ↡。是ノ故ニ発シテ↠信ヲ称スレバ↢其ノ名号ヲ↡、雖↠為ト↢不断煩悩ノ悪機↡、依テ↢法ノ功能ニ↡備ル↢此ノ理ヲ↡也。

「必ひっ至し」 とらは、 かの土どに生しょうじをはりぬれば、 広ひろく衆しゅ生じょうを利りするに自じ在ざいを得うるなり。

-◇「▲必至ト」等者、生ジ↢彼ノ土ニ↡已ヌレバ、広ク利スルニ↢衆生ヲ↡得↢自在ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (六)綽公讃

【90】△次つぎに綽しゃく公こうの讃さん、 ¬安楽あんらく集しゅう¼ によりてその義ぎ趣しゅを演のぶ。

◇次ニ綽公ノ讃、依テ↢¬安楽集ニ¼↡演ブ↢其ノ義趣ヲ↡。

「道どう綽しゃく」 とらは、 かの ¬集しゅう¼ の上じょう巻かん第三だいさん大門だいもんに五ご番ばんある中なかの第だい五ごの文段もんだんに、 ¬月蔵がつぞう経きょう¼ を引ひきて聖しょう道どう門もん末法まっぽうの修しゅ行ぎょう得道とくどう成じょうじがたきことを証しょうするに、 結けっして 「唯ゆい有う浄じょう土ど一門いちもん可か通つう入にゅう路ろ」 といふ。 以上

-◇「▲道綽ト」等者、彼ノ¬集ノ¼上巻第三大門ニ有ル↢五番↡中ノ第五ノ文段ニ、引テ↢¬月蔵経ヲ¼↡証スルニ↢聖道門末法ノ修行得道難コトヲ↟成ジ、結シテ云フ↢「▲唯有浄土一門可通入路ト」↡。 已上

かの ¬経きょう¼ の説せつ、 この釈しゃくのつぶさなる文もん、 第六だいろくの本ほんにあり。

-彼ノ¬経ノ¼之説、此ノ釈ノ具ナル文、在リ↢▲第六ノ本ニ↡。

「万善まんぜん」 とらは、 同おなじき釈しゃくの中なかに、 あるいは (安楽集巻上) 「一切いっさい衆しゅ生じょうすべてみづから量はからず」 といひ、 あるいは 「しかるに持たもち得うる者ものははなはだ希まれなり」 といふ。 これ自じ力りきの修しゅ行ぎょうを貶へんする義ぎなり。

-◇「▲万善ト」等者、同キ釈ノ之中ニ、或ハ云ヒ↣「▲一切衆生都テ不ズト↢自量ラ↡」、或ハ云フ↢「▲然ニ持得ル者 ノハ甚希ナリト」↡。是 レ*貶スル↢自力ノ修行ヲ↡義也。

「円満えんまん」 とらは、 同おなじき釈しゃくの中なかに、 あるいは (安楽集巻上) 「ここをもつて諸仏しょぶつの大だい慈じ勧すすめて浄じょう土どに帰きせしめたまふ」 といひ、 あるいは 「なんぞ思し量りょうせずしてすべて去こ心しんなきや」 といふ。 これ専せん称しょう念仏ねんぶつを勧すすむる義ぎなり。

-◇「▲円満ト」等者、同キ釈ノ之中ニ、或ハ云ヒ↣「▲是ヲ以モテ諸仏ノ大慈勧テ帰セシメタマフト↢浄土ニ↡」、或ハ云フ↧「▲何ゾ不シテ↢思量セ↡都テ无キ↢去心↡也ヤト」↥。是1094 レ勧ムル↢専称念仏ヲ↡義也。

「三さん不ぷ」 とらは、 かの ¬集しゅう¼ の大門だいもん第だい二にの章しょうに三番さんばんある中なかの第三だいさんに、 広ひろく問答もんどうを施ほどこして疑ぎ情じょうを釈しゃく去こする下もとの釈しゃくなり。

-◇「▲三不ト」等者、彼ノ¬集ノ¼大門第二ノ之章ニ有ル↢三番↡中ノ第三ニ、広ク施シテ↢問答ヲ↡釈↢去スル疑情ヲ↡下ノ釈ナリ。

その文もん大たい略りゃく ¬論ろんの註ちゅう¼ と同おなじ。 しかるにかの ¬註ちゅう¼ の釈しゃく第三だいさんの本ほんにあり、 その解げを待まつべし。

-◇其文大略与↢¬論ノ註¼↡同ジ。而ニ彼ノ¬註ノ¼釈在リ↢▲第三ノ本ニ↡、可シ↠待ツ↢其ノ解ヲ↡。

「一いっ生しょう」 とらは、 上かみ (安楽集巻上) に 「△唯ゆい有う浄じょう土ど」 とらいふ同どう章しょう (安楽集巻上) にいはく、 「たとひ一いっ生しょう悪あくを造つくれども、 ただよく意こころを繋かけて専せん精しょうに常つねによく念仏ねんぶつすれば、 一切いっさいの諸しょ障しょう自じ然ねんに消しょう除じょして、 定さだめて往おう生じょうを得う。」 以上 この文もんの意こころなり。

-◇「▲一生ト」等者、上ニ云フ↢「唯有浄土ト」等↡之同章ニ云ク、「▲縦令ヒ一生造レドモ↠悪ヲ、但 ヾ能ク繋テ↠意ヲ専精ニ常ニ能ク念仏スレバ、一切ノ諸障自然ニ消除シテ、定テ得↢往生ヲ↡。」 已上 此ノ文ノ意也。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (七)大師讃

【91】△大だい師しの讃さん。

◇大師ノ讃。

「善導ぜんどう」 とらは、 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ の意こころ、 諸しょ師し多おおしといへども独ひとり今こん師しによる。 けだし仏ぶっ証しょうを請こひて古こ今こんを楷かい定じょうし、 あきらかに別べっ意ち弘ぐ願がんの正しょう旨しを顕あらわすゆゑなり。 これによりてあるいは弥陀みだの化け身しんといひ、 あるいは経きょう文もんを勘かんがへてただちに教きょう主しゅ釈しゃく尊そんの再誕さいたんといふ。 さらに余師よしに準じゅんずべからざるものなり。

-◇「▲善導ト」等者、¬選択集ノ¼意、諸師雖↠多シト▲独依ル↢今師ニ↡。蓋シ請テ↢仏証ヲ↡楷↢定シ古今ヲ↡、明ニ顕ス↢別意弘願ノ正旨ヲ↡故也。依テ↠之ニ或ハ云ヒ↢弥陀ノ化身ト↡、或ハ勘テ↢経文ヲ↡直ニ云フ↢教主釈尊ノ再誕ト↡。更不ル↠可ラ↠准ス↢余師ニ↡者也。

「矜哀こうあい」 とらは、 所しょ被ひの機きあまねく善悪ぜんあくを兼かぬることを明あかす。 「定じょう散さん」 といふは、 ただこれ簡けん機き、 その受法じゅほうにあらず。 ゆゑに造ぞう逆ぎゃく・造悪ぞうあくの衆しゅ生じょうに対たいして、 定じょうと散さんとを挙あげてもつて善ぜん機きとなす。

-◇「▲矜哀ト」等者、明ス↣所被ノ機普ク兼コトヲ↢善悪ヲ↡。◇言↢「定散ト」↡者、只是簡機、非ズ↢其ノ受法ニ↡。故ニ対シテ↢造逆・造悪ノ衆生ニ↡、挙テ↢定ト与 トヲ↟散以テ為ス↢善機ト↡。

「光こう明みょう」 とらは、 上かみに引ひくところの ¬礼讃らいさん¼ の前序ぜんじょの釈しゃくの意こころなり。

-◇「▲光明ト」等者、▲上ニ所ノ↠引ク之¬礼讃ノ¼前序ノ釈ノ之意也。

「行ぎょう者じゃ」 とらは、 菩ぼ薩さつ等覚とうがくの後ご心しんを指さすにあらず、 ただ一心いっしん念仏ねんぶつの行ぎょう者じゃ一念いちねん慶きょう喜き金剛こんごうの信心しんじんを明あかす。

-◇「▲行者ト」等者、非ズ↠指ニ↢菩薩等覚ノ後心ヲ↡、只明ス↢一心念仏ノ行者一念慶喜金剛ノ信心ヲ↡。

「与よ韋い提だい」 とは 「序分じょぶん義ぎ」 の意こころ。 かの釈しゃく第だい三巻さんかんの末まつに載のせらる、 よりて下しもに譲ゆずるべし。 「▲三忍さんにん」 といふは喜きと悟ごと信しんとなり。

-◇「▲与韋提ト」者「序分義ノ」意。彼ノ釈被ル↠載↢▲第三巻ノ末ニ↡、仍テ可シ↠譲ル↠下ニ。◇言↢「▲三忍ト」↡者喜ト悟ト信ト也。

「即そく証しょう」 とらは、 *¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ の前序ぜんじょ (玄義分) の釈しゃくに 「捨しゃ此し穢え身しん即そく証しょう」 とらいへる意こころなり。

-◇「▲即証ト」等者、¬往生礼讃ノ¼前序ノ釈ニ云ヘル↢「▲捨此穢身即証ト」等↡意ナリ。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (八)恵心讃

【92】△楞りょう厳ごんの讃さんの中なかに、

楞1095厳ノ讃ノ中ニ、

初はじめの二句にくは、 諸しょ教きょうの中なかに選えらびて安あん養にょうに帰きし、 ひとへに西方さいほうを勧すすむることを標ひょうす。

-◇▲初ノ二句者、標ス↧諸教ノ中ニ選テ帰シ↢安養ニ↡、偏ニ勧コトヲ↦西方ヲ↥。

「専雑せんぞう」 以下いげの三さん行ぎょう六ろっ句くは、 別べっして ¬要よう集しゅう¼ によりてその義ぎ趣しゅを弁べんず。

-◇「▲専雑」以下ノ三行六句ハ、別シテ依テ↢¬要集ニ¼↡弁ズ↢其ノ義趣ヲ↡。

「専雑せんぞう」 とらは、 かの ¬集しゅう¼ の下げの未まつに ▲¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ の問答もんどうを引ひく中なかに、 雑修ざっしゅの人ひとは執しゅう心しん不ふ牢ろうにして懈け慢まん国こくに生しょうじ、 専せん行ぎょうの人ひとは執しゅう心しん牢ろう固こにして極楽ごくらく国こくに生しょうずることを明あかす。 これ専雑せんぞう二に修しゅの得失とくしつを判はんじ、 また報ほう化け二土にどの得失とくしつを弁べん立りゅうするところの文もんなり。

-◇「専雑ト」等者、彼¬集ノ¼下ノ未ニ引ク↢▲¬群疑論ノ¼問答ヲ↡之中ニ、明ス↧雑修ノ人ハ執心不牢ニシテ生ジ↢懈慢国ニ↡、専行ノ之人ハ執心牢固ニシテ生ズルコトヲ↦極楽国ニ↥。是 レ判ジ↢専雑二修ノ得失ヲ↡、又所ノ↣弁↢立スル報化二土ノ得失ヲ↡文也。

「極ごく重じゅう」 とらは、 同おなじき ¬集しゅう¼ の下げの本ほん、 大門だいもん第八だいはち念仏ねんぶつ証しょう拠こ門もんの中なかに十じゅう文もんを出いだす内うち、 四しに ¬観かん経ぎょう¼ によりて出いだし釈しゃくするところの 「極ごく重じゅう悪人あくにん無む他た」 以下いげ四し言ごん四句しくの要文ようもんの意こころなり。

-◇「▲極重ト」等者、同キ¬集ノ¼下ノ本、大門第八念仏証拠門ノ中ニ出ス↢十文ヲ↡内、四ニ依テ↢¬観経ニ¼↡所ノ↢出シ釈スル↡之「▲極重悪人无他」以下四言四句ノ要文ノ意也。

「我が亦やく」 とらは、 同おなじき ¬集しゅう¼ の上じょうの末まつ、 大門だいもん第だい四し正しょう修しゅ念仏ねんぶつの章しょう段だんの中なかに五ご門もんある内うち、 中ちゅうの末まつ第だい四しに観察かんざつ門もんを明あかす。 中なかにおいて三さんあり。 一いちには別相べっそう観かん、 二にには総相そうそう観かん、 三さんには雑ぞう略りゃく観かんなり。 その雑ぞう略りゃく観かんにかの ¬観かん経ぎょう¼ の 「一々いちいち光こう明みょう遍へん照じょう」 等とうの文もんを引ひきて、 その下もとに釈しゃくするところの 「我が亦やく在ざい彼ひ摂取せっしゅ」 以下いげの四し言ごん六ろっ句く二に十じゅう四字しじの文もんの意こころなり。

-◇「▲我亦ト」等者、同キ¬集ノ¼上ノ末、大門第四正修念仏ノ章段ノ之中ニ有ル↢五門↡内、中ノ末第四ニ明ス↢観察門ヲ↡。於テ↠中ニ有リ↠三。一ニハ別相観、二ニハ総相観、三ニハ雑略観ナリ。其ノ雑略観ニ引テ↢彼ノ¬観経ノ¼「一一光明遍照」等ノ文ヲ↡、其ノ下ニ所ノ↠釈スル「▲我亦在彼摂取」以下四言六句二十四字ノ之文ノ意也。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (九)源空讃

【93】△次つぎに黒谷くろだにの讃さん。

次ニ黒谷ノ讃。

初はじめの二句にくは総そうじて智解ちげ悲ひ心しんの二に徳とくを称しょうし、 次つぎの二句にくは別べっして片へん州しゅう弘ぐ通ずうの巨こ益やくを嘆たんず。

-◇▲初ノ之二句ハ総ジテ称シ↢智解悲心ノ二徳ヲ↡、◇▲次ノ之二句ハ別シテ嘆ズ↢片州弘通ノ巨益ヲ↡。

「還来げんらい」 以下いげの二に行ぎょう四句しくは、 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ に就つきて釈しゃく義ぎの要ようを挙あぐ。 いはゆる 「当とう知ち生しょう死じ」 以下いげ二に十じゅう言ごんの意こころなり。

-◇「▲還来」以下ノ二行四句ハ、就テ↢¬選択集ニ¼↡挙グ↢釈義ノ要ヲ↡。所謂「▲当知生死」以下二十言ノ意ナリ。

二 Ⅱ ⅱ e ◎ (十)総結

【94】「弘ぐ経きょう」 以下いげの二に行ぎょう四句しくは、 総そうじて諸しょ祖そ拯じょう済さいの徳とくを結けっして、 彼ひ等とうの説せつを依え信しんすべきことを勧すすむらくのみ。

◇「▲弘経」以下ノ二行四句ハ、総ジテ結シテ↢諸祖拯済ノ之徳ヲ↡、勧ムラク↠可コトヲ↣依↢信ス彼等ノ説ヲ↡耳。

 

六ろく1096要よう鈔しょう第だい二に 新末しんまつ

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
五 底本には二とある。 異本によって訂正。
第七 ¬要集¼ では 「第八」 となっている。
ところ 底本 「」 は義未詳。 ¬聖教全書¼ 「所」 にしたがって読み下す。
往生礼讃 引用の文は ¬礼讃¼ にはなく、 ¬玄義分¼ に見える。
底本は◎本派本願寺蔵明徳三年慈観上人書写本。 Ⓐ本派本願寺蔵文安四年空覚書写本、 Ⓑ興正派興正寺蔵蓮如上人書写本 と対校。
花→Ⓐ華
則→Ⓐ即
連 Ⓐ連字或本通字也此本宜歟此鈔以後見被本と上欄註記
恵→Ⓐ雲
接→Ⓐ摂
二→Ⓐ「五歟」と右傍註記
惑→Ⓐ「惑歟」と上欄註記
研 左Ⓐミガク
魔→Ⓑ広
協→◎ⒶⒷ脇
歎→Ⓐ嘆
廃→Ⓑ癈
菩提→Ⓐ発心(「菩提[応安三閏三三見出前本定誤歟]」と右傍註記)
経→Ⓐ経[文]
廃→◎ⒶⒷ癈
択→Ⓑ訳
華→Ⓑ花
明難→◎ⒶⒷ難明
辨→Ⓐ弁
已→Ⓐ以
七→Ⓐ八
三→◎ⒶⒷ一
途→Ⓐ塗
途→Ⓑ塗
何→Ⓐ[云]何
鈍→Ⓐ銀
妄→Ⓐ忘
華→Ⓑ花
乎→Ⓑ矢
支→Ⓑ友
誦→Ⓑ通
 左Ⓑネガフ
貶 左Ⓐヲトシム