◎0997六ろく要よう鈔しょう第一だいいち

 

〇 総説

【1】 ◎まさにこの文もんを釈しゃくすに、 おほきに分わかちて二にとなす。 第一だいいちに題目だいもくを釈しゃくし、 第だい二ににまさしく文もんを解げす。

◎将ニニ↠釈↢此ノ文ヲ↡、大ニ分テ為ス↠二ト。▽第一ニ釈シ↢題目ヲ↡、▽第二ニ正ク解ス↠文ヲ。

一 釈題目

初はじめの中なかにまた二に。 まづ題目だいもくを釈しゃくし、 次つぎに撰号せんごうを解げす。

-△初ノ中ニ又二。▽先ヅ釈シ↢題目ヲ↡、▽次ニ解ス↢撰号ヲ↡。

一 Ⅰ 釈題

【2】 まづ題だいを釈しゃくする中なかに十じゅう一いち字じの内うち、 *初はじめの一いち字じと後のちの三さん字じとは能のう釈しゃくの詞ことば、 *中ちゅう間げんの七しち字じは所しょ釈しゃくの法ほうなり。

△先釈スル↠題ヲ中ニ十一字ノ内、初ノ之一字ト与 トハ↢後ノ三字↡能釈之詞、中間ノ七字ハ所釈之法ナリ。

初はじめに 「顕けん」 といふは、 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「呼こ典てんの切せつ、 明みょう著ちょなり。」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「虚こ典てんの切せつ、 明みょうなり。」

-初ニ言↠「▲顕ト」者、¬広韻¼云、「呼典ノ切、明著ナリアラハス。」¬玉篇¼云、「虚典ノ切、明也。」

「浄じょう土ど」 といふは、 弥陀みだの報ほう土ど、 浄じょう土どの言ことば十方じっぽうに亘わたるといへども、 意こころは西方さいほうにあり。 諸仏しょぶつの*刹せつに超こえてもつとも精しょうたるがゆゑに。

-言↢「▲浄土ト」↡者、弥陀ノ報土、浄土之言雖 ヘドモ↠亘ト↢十方ニ↡、意ハ在リ↢西方ニ↡。超テ↢諸仏ノ刹ニ↡最モ為タルガ↠精故ニ。

「真実しんじつ」 といふは、 これ*仮け*権ごんに対たいす。

-言↢「▲真実ト」↡者、是対ス↢仮権ニ↡。

「教きょう行ぎょう証しょう」 とは、 いはゆる次ついでのごとく、 所しょ依え・所しょ修しゅ・所得しょとくの法ほうなり。 *霊れい芝しの ¬*弥陀みだ経きょうの義ぎ疏しょ¼ にいはく、 「大覚だいかく世せ尊そん一代いちだいの教きょう、 大だい小しょう殊ことなりといへども、 教きょう理り行ぎょう果かを出いでず。 教きょうによりて理りを顕あらわし、 理りによりて行ぎょうを起おこし、 行ぎょうによりて果かを克はたす。 四し法ほうにこれを収おさむるに、 鮮すこしきも尽つくさざることなし。」 以上 教きょう行ぎょう証しょうと教きょう理り行ぎょう果かと、 その義ぎおほきに同おなじ。 中なかにおいて、 教きょう行ぎょうの二に種しゅはまつたく同おなじ。 理りはこれ教きょうに摂せっす。 かの ¬義ぎ疏しょ¼ (元照阿弥陀経義疏) にいはく、 「理りはすなはち教きょうの体たい」 と。 すなはちその義ぎなり。 証しょうはすなはち果かなり。 果かに近遠ごんおんあり、 近ごん果かは往おう生じょう、 遠おん果かは成じょう仏ぶつ。 証しょうに分極ぶんごくあり、 分ぶん証しょうは往おう生じょう、 究く竟きょうは成じょう仏ぶつ、 その義ぎ同おなじなり。

-「▲教行証ト」者、所謂如ク↠次ノ、所依・所修・所得ノ法也。霊芝ノ¬弥陀経ノ義疏ニ¼云ク、「大覚世尊一代之教、大小雖↠殊ナリト、不↠出↢教理行果ヲ↡。因テ↠教ニ顕シ↠理ヲ、依テ↠理ニ起シ↠行ヲ、由テ↠行ニ克スハタス↠果ヲ。四法ニ収ニ↠之ヲ、鮮スコシキモ無シ↠不コト↠尽サ。」 已上 教行証ト与 ト ↢教理行果↡、其ノ義大ニ同ジ。於テ↠中ニ、教行ノ二種ハ全ク同ジ。理ハ是 レ摂ス↠教ニ。彼ノ¬義疏ニ¼云ク、「理ハ即教ノ体ト」。即其ノ義也。証ハ即果也。果ニ有↢近遠↡、近果ハ往生、遠果ハ成仏。証ニ有↢分極↡、分証ハ往生、究竟ハ成仏、其ノ義同ジ也。

「文類もんるい」 といふは、 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「文もんは*無分の切せつ、 文もん章じょうなり。 また美びなり、 善ぜんなり、 兆ちょうなり。」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「*亡文の切せつ、 文もん章じょうなり。」 「類るい」 とは、 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「力りき遂すいの切せつ、 等とうなり。」 種類しゅるいあひ似にたるなり。 その教きょう行ぎょう証しょうを明あかすところの文もんを類聚るいじゅするがゆゑなり。

-言「▲文類0998ト」者、¬広韻ニ¼云ク、「文無分切、文章也。又美也、善也、兆シルシ也。」¬玉篇ニ¼云ク、「亡*文切、文章也。」「類ト」者、¬広韻ニ¼云ク、「力遂シヰ切、等也。」種類相似タルナリ。類↧聚スルガ所ノ↠明↢其ノ教行証ヲ↡之文ヲ↥故也。

「序じょ」 とは、 いはゆる次し・由ゆ・述じゅつの義ぎ、 いまは述じゅつ序じょなり。

-「▲序ト」者、所謂次・由・述ノ義、今ハ述序也。

一 Ⅱ 釈撰号

【3】 次つぎに撰号せんごうを釈しゃくす。

△次ニ釈↢撰号ヲ↡。

「愚ぐ禿とく」 といふは、 「愚ぐ」 はこれ惷しょうなり。 智ちに対たいし賢けんに対たいす。 聖しょう人にんの徳とくは智ちなり、 賢けんなり。 実じつには愚ぐ惷しょうにあらず。 いま愚ぐといふは、 これ卑ひ謙けんの詞ことば、 「禿とく」 は称しょうして姓しょうとす。 第だい六巻ろっかん (化身土巻) の奥おくの流る通ずうの文もんにいはく、 「真しん宗しゅう興こう隆りゅうの大たい祖そ*源空げんくう法ほっ師し、 ならびに門もん徒と数す輩はい、 罪ざい科かを考かんがへず、 猥みだりがはしく死し罪ざいに坐つみす。 あるいは僧そう儀ぎを改あらためて姓名しょうみょうを賜たまひ遠おん流るに処しょす。 予よはその一いちなり。 しかればすでに*僧そうにあらず俗ぞくにあらず。 このゆゑに禿とくの字じをもつて姓しょうとす。」 以上 これその義ぎなり。

-言↢「▲愚禿ト」↡者、「愚ハ」是惷シヨウヲロカナリ也。対シ↠智ニ対ス↠賢ニ。聖人之徳ハ智也、賢也。実ニハ非ズ↢愚*惷ニ↡。今言↠愚ト者、是卑謙ノ詞、「禿ハ」称シテ為↠姓ト。第六巻ノ奥ノ流通ノ文ニ云ク、「▲真宗興隆ノ大祖源空法師門徒数輩、不↠考↢罪科ヲ↡、猥ク坐ツミス↢死罪ニ↡。或ハ改テ↢僧儀ヲ↡賜ヒ↢姓名ヲ↡処ス↢遠流ニ↡。豫ハ其ノ一也。爾レ者已ニ非ズ↠僧ニ非ズ↠俗ニ。是ノ故ニ以↢禿ノ字ヲ↡為↠姓ト。」 已上 是其ノ義也。

「釈しゃく」 は沙門しゃもんの姓しょう。 ¬*増一ぞういつ阿あ含ごん経ぎょう¼ (巻二一苦楽品意) にいはく、 「四河しが海うみに入いりてまた河かわの名ななし、 四し姓しょう沙門しゃもんとなりてみな釈しゃく種しゅと称しょうす。」 以上 ¬*四し分ぶん律りつ¼ (巻三六意) にいはく、 「四河しが海うみに入いりてまた河かわの名ななし、 四し姓しょう家いえを出いでて同おなじく釈しゃく氏しと称しょうす。」 以上 これによりて晋しん朝ちょう弥み天てんの*道安どうあん、 釈しゃくをもつて姓しょうとなして永ながく後代こうだいに伝つたふ。 ¬*高僧こうそう伝でん¼ の中なかにくはしくこの事じを判はんぜり。 このゆゑにいま 「愚ぐ禿とく釈しゃく」 とらいふ。

-「▲釈ハ」沙門ノ姓。¬増一阿含経ニ¼云ク、「四河入テ↠海ニ無シ↢復河ノ名↡、四姓為テ↢沙門ト↡皆称ス↢釈種ト↡。」 已上 ¬四分律ニ¼云ク、「四河入テ↠海ニ無シ↢復河ノ名↡、四姓出デヽ↠家ヲ同ク称ス↢釈氏ト↡。」 已上 依↠之晋朝弥天ノ道安、以テ↠釈ヲ為シテ↠姓ト永ク伝フ↢後代ニ↡。¬高僧伝ノ¼中ニ委ク判ゼリ↢此ノ事ヲ↡。是ノ故ニ今云↢「愚禿釈ト」等↡。

「親鸞しんらん」 といふは、 これその諱いみななり。 俗ぞく姓しょうは藤原ふじわら勘か解げの相しょう公のきみ、 有国ありくにの卿きょうの後のち、 皇太こうたい后ご宮ぐうの大進だいしん*有範ありのりの息男そくなんなり。 昔むかし山門さんもん青しょう蓮れんの門跡もんぜきにして、 その名な範宴はんねん少しょう納な言ごんの公きみ、 後のちに真門しんもん黒谷くろだにの門もん下かに入いりて、 その名な綽しゃく空くう、 仮け実じつあひ兼かぬ。 ▼しかるに*聖しょう徳とく太たい子しの告ごう命みょうによりて、 改あらためて善信ぜんしんとのたまふ。 厳ごん師し諾だくあり、 これを仮け号ごうとなして、 後のちに実じつ名みょうを称しょうす。 その実じつ名みょうとは、 いま載のするところこれなり。 その徳とく行ぎょう等とう、 つぶさに別伝べつでんのごとし。

-言↢「▲親鸞ト」↡者、是其ノ諱也。俗姓ハ藤原勘解相公、有国ノ卿ノ後、皇太后宮ノ大進有範ノ之息男也。昔於シテ↢山門青蓮ノ門跡ニ↡、其ノ名範宴少納言ノ公、後ニ入テ↢真門黒谷ノ門下ニ↡、其ノ名綽空、仮実相兼ヌ。而ニ依テ↢聖徳太子ノ告命ニ↡、改テ曰ノタマフ↢善信ト↡。*厳師有リ↠諾、為シテ↢之0999ヲ仮号ト↡、後ニ称ス↢実名ヲ↡。其ノ実名ト者、今所↠載是ナリ。其ノ徳行等、具ニ如シ↢別伝ノ↡。

「述じゅつ」 とは、 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「食じき聿いつの切せつ、 著ちょ述じゅつなり。」 ¬説文せつもん¼ 「循じゅんなり、 また作さなり。」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「視じ律りつの切せつ、 循じゅんなり。」 以上 上かみの訓くんの中なかにおいて作さの義ぎによらず、 しばらく循じゅんの義ぎによる。 ゆゑに作さといはず、 これ卑ひ謙けんの義ぎ。 ¬*論ろん語ご¼ の第だい四し述じゅつ而じの篇へんにいはく、 「子しののたまはく、 述じゅつして作させず、 信しんじて古いにしえを好このむ、 ひそかにわれを老彭ろうほうに比ひす。」 ¬註ちゅう¼ (論語集解) にいはく、 「包ほう氏しがいはく、 老彭ろうほうは殷いんの賢けん大たい夫ふなり、 好このみて古いにしえの事じを述のぶ、 われ老彭ろうほうのごとし、 ただしこれを述のぶらくのみなり。」 以上 同どう ¬疏しょ¼ (論語集解) にいはく、 「述じゅつ而じとは孔こう子しの行教ぎょうきょうを明あかす。 ただし尭ぎょう舜しゅんを述のぶ。 みづから老彭ろうほうに比ひして制作せいさくせざるものなり。」 以上

-「▲述ト」者、¬広韻¼云ク、「食聿ヰツ切、著述也。」¬説文¼「循ジユンシタガフ也、又作也。」¬玉篇ニ¼云、「視律切、循也。」 已上 於テ↢上ノ訓ノ中ニ↡不↠依↢作ノ義ニ↡、且ク依ル↢循ノ義ニ↡。故ニ不↠云↠作ト、是卑謙ノ義。¬論語ノ¼第四述而ノ篇ニ云ク、「子ノ曰ク、述テ而不↠作セ、信ジテ而好ム↠古ヲ、窃ニ比ス↢我ヲ於老彭ニ↡。」¬註ニ¼云ク、「包氏ガ曰ク、老彭ハ殷ノ賢大夫也、好テ述ブ↢古ノ事ヲ↡、我レ若シ↢老彭ノ↡矣、但シ述ラクノミ↠之耳也。」 已上 同¬疏ニ¼云ク、「述而ト者明ス↢孔子ノ行教ヲ↡。但シ述ブ↢尭舜ヲ↡。自ミ 比シテ↢老彭ニ↡而不↢制作セ↡者也。」 已上

二 正解文

【4】 △第だい二ににまさしく文もんを解げせば、 経きょう論ろん釈しゃく義ぎの常つねの例れいに準じゅん依えして、 文もんを分わかちて三さんとす。 ▽一いちには序じょ、 すなはち序分じょぶん。 ▽二にには標ひょう列れつより下しも第六だいろくの末まつに ¬論ろん語ご¼ の文もんを引ひくに至いたるまでは、 これ正宗しょうしゅう分ぶん。 ▽三さんには 「竊ひつ以い」 より下しも、 終おわり巻かんを尽つくすに至いたるまでは*流る通ずう分ぶんなり。

第二ニ正ク解セバ↠文ヲ、准↢依シテ経論釈義ノ常ノ例ニ↡、分テ↠文ヲ為↠三ト。一ニハ序、即序分。▲二ニハ自↢標列↡下至マデハ↣第六ノ末ニ引ニ↢¬論語ノ¼文ヲ↡▲、是正宗分。三ニハ自↢「▲窃以」↡下、終至マデハ↠尽スニ↠巻ヲ流通分也。

二 Ⅰ 序文

【5】 第一だいいちに序分じょぶんの中なかにおいて、 文もんを分わかちて五ごとなす。

△第一ニ於テ↢序分ノ中ニ↡、分テ↠文ヲ為ス↠五ト。

一いちに文もんの初はじめより下しも 「恵え日にち」 といふに至いたるまでは、 略りゃくして弥陀みだ広大こうだいの利り益やくを標ひょうす。

-一従↢▽文ノ初↡下至マデハ↠言フニ↢「恵日ト▲」↡、略シテ標ス↢弥陀広大ノ利益ヲ↡。

二にに 「然ねん則そく」 より下しも 「闡提せんだい」 といふに至いたるまでは、 まづ ¬*観かん経ぎょう¼ によりて教きょう興こうの由よしを明あかし、 ほぼ済凡さいぼん救苦くくの大だい悲ひを述のぶ。

-▽二従↢「▲然則」↡下至デハ↠言ニ↢「闡提ト▲」↡、先依テ↢¬観経ニ¼↡明シ↢教興ノ由ヲ↡、粗述ブ↢済凡救苦ノ大悲ヲ↡。

三さんに 「故こ知ち」 より下しも 「崇そう斯し信しん」 に至いたるまでは、 重かさねて名みょう号ごう希奇ききの勝しょう徳とくを挙あげて、 ことに下機げき易い往おうの巨こ益やくを勧すすむ。

-▽三従↢「▲故知」↡下至デハ↢「崇斯信ニ▲」↡、重テ挙テ↢名号希奇ノ勝徳ヲ↡、特ニ勧ム↢下機易往ノ巨益ヲ↡。

▽四しに 「噫おく弘ぐ誓ぜい」 より 「莫まく遅ち慮りょ」 に至いたるまでは、 その聞法もんぼう宿習しゅくじゅうの縁えんを顕あらわして人ひとをして随ずい喜きせしめ、 その未み来らい*流る転てんの報ほうを悲かなしみてかたく疑ぎ慮りょを誡いましむ。

-四従↢「▲噫弘誓」↡至マデハ↢「莫遅慮ニ▲」↡、顕シテ↢其ノ聞法宿習之縁ヲ↡令 シメ↢人1000ヲシテ随喜セ↡、悲テ↢其ノ未来流転之報ヲ↡堅ク誡ム↢疑慮ヲ↡。

五ごに 「愚ぐ禿とく」 より下しもは、 三国さんごく伝来でんらいの師し訓くんを受うくることを悦よろこびて、 聞もん持じするところの実じつあることを演のぶらくのみ。

-▽五従↢「▲愚禿」↡下ハ、悦テ↠受コトヲ↢三国伝来ノ師訓ヲ↡、演ラク↧所↢聞持↡之有コトヲ↞実耳ノミ。

二 Ⅰ ⅰ 略標弥陀広大利益

【6】 △初はじめの文もんの中なかに就つきて、 「竊ひつ以い」 といふは、 発端ほったんの言ことば。 「難なん思じの弘ぐ誓ぜい」 「無礙むげの光こう明みょう」 は弥陀みだの徳とくを讃さんず。 ともにこれ十じゅう二に光こう仏ぶつの中なかの名な。 言ことばを綺いろへてこれを嘆たんず。

就テ↢初ノ文ノ中ニ↡、言↢「▲窃以ト」↡者、発端之言。「▲難思ノ弘誓」「▲无ノ光明ハ」讃ズ↢弥陀ノ徳ヲ↡。共ニ是 レ十二光仏ノ中ノ名、綺ヘテ↠言ヲ嘆ズ↠之ヲ。

「難なん度ど海かい」 とはこれ生しょう死じ海かい、 ¬*十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼ (巻五易行品) にいはく、 「かの八道はちどうの船ふねに乗じょうじて、 よく難なん度ど海かいを度どす。」 以上 これ弥陀みだの利り益やくを讃さんずる文もんなり。 ゆゑにこの言ことばを用もちゐる。

-「▲難度海ト」者是生死海、¬十住毘婆沙論ニ¼云ク、「▲乗ジテ↢彼ノ八道ノ船ニ↡、能ク度ス↢難度海ヲ↡。」 已上 是 レ讃ズル↢弥陀ノ利益ヲ↡文也。故ニ用ル↢此ノ言ヲ↡。

「無む明みょう」 といふは、 もし天台てんだいによらばこれに通別つうべつあり。 通惑つうわくといふは、 これ界内かいないの惑わく、 三毒さんどくの中なかの痴ち煩悩ぼんのうなり。 別惑べつわくといふは、 貪とん瞋じん痴ちに合がっして名なづけて通惑つうわくとなし、 塵沙じんじゃと無む明みょうとこの二に種しゅの惑わくを名なづけて別惑べつわくとす。

-言↢「▲無明ト」↡者、若シ依ラバ↢天臺ニ↡此ニ有↢通別↡。言↢通惑ト↡者、是 レ界内ノ惑、三毒之中ノ痴煩悩也。言↢別惑ト↡者、合シテ↢貪*嗔痴ニ↡名テ為シ↢通惑ト↡、塵沙ト无明ト此ノ二種ノ惑ヲ名テ為↢別惑ト↡。

「恵え日にち」 といふは、 仏ぶっ恵ての明みょう朗ろうなる、 これを日光にっこうに譬たとふ。

-言↢「▲*恵日ト」↡者、仏恵ノ明朗ナル、譬フ↢之ヲ日光ニ↡。

¬大だい経きょう¼ の下げにいはく、 「慧え日にち世せ間けんを照てらし、 生しょう死じの雲くもを消しょう除じょす。」 以上

-¬大経ノ¼下ニ云ク、「▲恵日照↢世間ヲ↡、消↢除ス生死ノ雲ヲ↡。」 已上

*憬きょう興ごうの釈しゃく (*述文賛巻下) にいはく、 「慧え日にちとは、 喩たとえに随したがふる名ななり。 惑わくと業ごうと苦くとの三さん、 よく真空しんくうおよび智ちの日月にちがつを覆おおふ、 すなはち雲くもの虚こ空くうの日月にちがつを覆おおふに同おなじ、 ゆゑに生しょう死じ雲うんといふ。 仏ぶっ智ち真しんに達たっして、 よく自他じたの惑わく業ごっ苦くの障さわりを除のぞく、 ゆゑに慧え日にちといふ。 物ものの解さとりを生しょうぜしむるゆゑに、 照しょう世せ間けんといふ。」 以上

-憬興ノ釈ニ云ク、「恵日ト者、随ル↠喩ニ之名ナリ。惑ト業ト苦トノ三、能ク覆フ↢真空及ビ智ノ日月ヲ↡、即同ジ↣雲ノ覆ニ↢虚空ノ日月ヲ↡、故ニ云↢生死雲ト↡。仏智達シテ↠真ニ、能ク除ク↢自他ノ惑業苦ノ障ヲ↡、故ニ云フ↢恵日ト↡。令↠生ゼ↢物ノ解ヲ↡故ニ、云↢照世間ト↡。」 已上

¬*浄じょう土ど論ろん¼ にいはく、 「仏ぶっ慧て明浄みょうじょうの日ひ、 世よの痴ち闇あん冥みょうを除のぞく。」 以上

-¬浄土論ニ¼云ク、「▲仏恵明浄ノ日、除ク↢世ノ痴闇冥ヲ↡。」 已上

鸞らん師しの註ちゅう (*論註巻上) にいはく、 「この二句にくを荘しょう厳ごん光こう明みょう功く徳どく成じょう就じゅと名なづく。 乃至 願がんじてのたまはく、 わが国こく土どをして所しょ有うの光こう明みょう、 よく痴ち闇あんを除のぞきて仏ぶつの智慧ちえに入いれ、 *無記むきの事じをなさざらしめん。 またいはく、 安楽あんらく国こく土どの光こう明みょうは如来にょらいの智慧ちえの報ほうより起おこるがゆゑに、 よく世せ間けんの冥みょうを除のぞく。」 以上

-鸞師ノ¬註ニ¼云ク、「▲此ノ二句ヲ名ク↢荘厳光明功徳成就ト↡。 乃至 ▲願ジテ言ハク、使↧シメン我ガ国土ヲシテ所有ノ光明、能ク除テ↢痴闇ヲ↡入レ↢仏ノ智恵ニ↡、不ラ↞為ナサ↢無記之事ヲ↡。◆亦云ク、安楽国土ノ光明ハ従リ↢如来ノ智恵ノ報↡起ルガ故ニ、能1001ク除ク↢世間ノ冥ヲ↡。」 已上

これらみな朗日ろうにちの光こう照しょうに寄よせて弥陀みだの智ち光こうを称しょう揚ようする文もんなり。

-此等皆寄セテ↢朗日ノ光照ニ↡称↢揚スル弥陀ノ智光ヲ↡文也。

また大だい師し ¬観かん経ぎょう¼ の 「唯願ゆいがん仏日ぶつにち」 の文もんを釈しゃくして (序分義) いはく、 「仏日ぶつにちといふは、 法ほう・喩ゆならべて標ひょうす。 たとへば日ひ出いでて衆闇しゅあんことごとく除のぞこるがごとし、 仏ぶっ智ち光ひかりを輝かがやかせば無む明みょうの夜よる日にち朗ろうなり。」 以上

-又大師釈シテ↢¬観経ノ¼「唯願仏日ノ」文ヲ↡云ク、「▲言↢仏日ト↡者、法・喩双ベテ標ス也。譬バ如シ↢日出デヽ衆闇尽ク除ルガ↡、仏智輝カ セバ↠光ヲ无明之夜日朗ナリ。」 已上

*浄じょう影よう師し同おなじき経きょう文もんを釈しゃくして (観経義疏巻本) いはく、 「仏ぶつよく衆しゅ生じょうの痴ち闇あんを破壊はえす、 日ひの昏やみを除のぞくがごとし、 ゆゑに仏日ぶつにちといふ。」 以上

-浄影師釈シテ↢同キ経文ヲ↡云ク、「仏能ク破↢壊ス衆生ノ痴闇ヲ↡、如シ↢日ノ除クガ↟昏ヲ、故ニ曰↢仏日ト↡。」 已上

いまいふところは、 これ釈しゃ迦かを指さす。 二に仏ぶつ異ことなりといへども、 仏徳ぶっとくの比ひ況きょうその義ぎあひ同おなじ。

-今所↠言者、是 レ指ス↢釈迦ヲ↡。二仏雖ヘ↠異ナリト、仏徳ノ比況其ノ義相同ジ。

二 Ⅰ ⅱ 先依観経明教興由

【7】 二ににまづ ¬観かん経ぎょう¼ によりて教きょう興こうの由よしを明あかす中なかに、 「浄じょう邦ほう」 といふは、 これ浄じょう国こくを指さす、 もしくは楽邦らくほうといふ、 すなはち極楽ごくらくなり。

△二ニ先ヅ依テ↢¬観経ニ¼↡明ス↢教興ノ由ヲ↡中ニ、言↢「▲浄邦ト」↡者、是 レ指ス↢浄国ヲ↡、若ハ云フ↢楽邦ト↡、即極楽也。

「調じょう達だつ」 といふは、 *提だい婆ば達だっ多た、 ともにこれ梵言ぼんごん、 ここには天熱てんねつといふ。

-言↢「▲調達ト」↡者、提婆達多、共ニ是 レ梵言、此ニハ云↢天熱ト↡。

「闍じゃ世せ」 といふは、 すなはち*阿あ闍じゃ世せ、 「序分じょぶん義ぎ」 にいはく、 「阿あ闍じゃ世せとはすなはちこれ西国さいこくの正しょう音おん、 この地ちには往翻おうほんして未み生しょう怨おんと名なづけ、 また折せっ指しと名なづく。」 以上

-言↢「▲闍世ト」↡者、即阿闍世、「序分義ニ」云ク、「▲阿闍世ト者乃是 レ西国ノ正音、此ノ地ニハ往翻シテ名ケ↢未生怨ト↡、亦名ク↢折指ト↡。」 已上

「逆ぎゃく害がいを興おこす」 とは、 ¬経きょう¼ (観経) にいはく、 「ひとりの太たい子しあり、 阿あ闍じゃ世せと名なづく。 調じょう達だつ悪あく友うの教おしえに随ずい順じゅんして、 父ちちの王おう*頻びん婆ば沙しゃ羅らを収執しゅうしゅうして、 幽閉ゆうへいして七しち重じゅうの室しつの内うちに置おく。」 以上 *序分じょぶんの七縁しちえん、 解げ釈しゃく繁はん多たなり。 つぶさに引ひくに遑いとまあらず、 ことごとくかの文もんに譲ゆずる。

-「▲興↢逆害ヲ↡」者、¬経ニ¼云ク、「▲有リ↢一ノ太子↡、名ク↢阿闍世ト↡。随↢順シテ調達悪友之教ニ↡、◆収↢執シテ父ノ王頻婆沙羅ヲ↡、幽閉シテ置ク↢於七重ノ室ノ内ニ↡。」 已上 序分ノ七縁、解釈繁多ナリ。不↠遑アラ↢具ニ引ニ↡、悉ク譲ル↢彼ノ文ニ↡。

「浄じょう業ごう」 といふは、 これ念仏ねんぶつなり。

-言↢「▲浄業ト」↡者、是 レ念仏也。

問とふ。 ¬観かん経ぎょう¼ にいはく、 「なんぢまさに繋け念ねんしてあきらかにかの国くにを観かんずべし、 浄じょう業ごう成じょうずる者ものなり。」 以上

-問。¬観経¼云ク、「▲汝当ニシ↣繋念シテ諦ニ観ズ↢彼ノ国ヲ↡、浄業成ズル者ナリ。」 已上

大だい師し釈しゃくして (序分義) いはく、 「汝にょ当とう繋け念ねんといふ以下いげは、 まさしく凡惑ぼんわく障さわり深ふかくして心しん多おおく散動さんどうす、 もしたちまちに攀縁へんえんを捨すてずは、 浄じょう境きょう現げんずることを得うるに由よしなきことを明あかす。 これすなはちまさしく安心あんじん住行じゅうぎょうを教おしふ。 もしこの法ほうによるをば名なづけて浄じょう業ごう成じょうずとなすなり。」 以上

-大師釈シテ云ク、「▲言↢汝当繋念ト↡已下ハ、正ク明ス↧凡惑障深シテ心多ク散動ス、若シ不ズハ↣頓ニ捨↢攀縁ヲ↡、浄境无コトヲ↞由↠得ニ↠現コトヲ。此レ即正ク教フ↢安心住行ヲ↡。若依ルヲバ↢此ノ法ニ↡名テ為↢浄業成ズト↡也。」 已上

これ観門かんもんを指さしてもつて浄じょう業ごうとなす。

-是 レ指シテ↢観門ヲ↡以テ為ス↢浄1002業ト↡。

また同どう ¬経きょう¼ (観経) にいはく、 「また未み来らい世せの一切いっさいの*凡ぼん夫ぶの浄じょう業ごうを修しゅせんと欲おもはん者ものをして西方さいほう極楽ごくらく国こく土どに生しょうずることを得えしめん。 かの国くにに生しょうぜんと欲おもはん者ものは、 まさに*三福さんぷくを修しゅすべし。 乃至 かくのごときの三さん事じを名なづけて浄じょう業ごうとなす。 乃至 この三種さんしゅの業ごうは、 過去かこ・未み来らい・現在げんざいの三さん世ぜの諸仏しょぶつの浄じょう業ごうの正しょう因いんなり。」 以上

-又同¬経ニ¼云ク、「▲亦*令ン↧未来世ノ一切ノ凡夫ノ欲ハン↠修セント↢浄業ヲ↡者ヲシテ得↞生コトヲ↢西方極楽国土ニ↡。◆欲ハン↠生ゼント↢彼ノ国ニ↡者 ノハ、当ニシ↠修ス↢三福ヲ↡。 乃至 ▲如ノ↠此ノ三事ヲ名テ為ス↢浄業ト↡。 乃至 ▲此ノ三種ノ業ハ、過去・未来・現在ノ三世ノ諸仏ノ浄業ノ正因ナリ。」 已上

これ三福さんぷくを指さして、 もつて浄じょう業ごうとなす。

-是指シテ↢三福ヲ↡、以テ為ス↢浄業ト↡。

また同どう ¬経きょう¼ (観経) にいはく、 「未み来らい世せの一切いっさいの衆しゅ生じょうの煩悩ぼんのうの賊ぞくのために害がいせられん者もののために、 ▽清浄しょうじょうの業ごうを説とかん。」 以上

-又同¬経ニ¼云ク、「▲為ニ↧未来世ノ一切ノ衆生ノ為ニ↢煩悩ノ賊ノ↡之所レン↠害セ者 ノヽ↥、説ン↢清浄ノ業ヲ↡。」 已上

釈しゃく (序分義) にいはく、 「説せつ清浄しょうじょう業ごうといふは、 これ如来にょらい衆しゅ生じょうの罪つみを見みそなはすをもつてのゆゑに、 ために懴さん悔げの方ほうを説ときたまふことを明あかし、 相続そうぞくをして断除だんじょせしめて、 畢ひっ竟きょうじて永ながく清浄しょうじょうならしめんと欲ほっす。」 以上

-¬釈¼云、「▲言↢説清浄業ト↡者、此レ明↧如来以テノ↠見スヲ↢衆生ノ罪ヲ↡故ニ、為ニ説タマフコトヲ↦懴悔之方ヲ↥、欲ス↧令シメテ↢相続ヲシテ断除セ↡、畢竟ジテ永ク令ント↦清浄ナラ↥。」 已上

これらの経釈きょうしゃく、 あるいは定じょう観かんに約やくし、 あるいは散善さんぜんに約やくし、 あるいは懴さん悔げに約やくして、 浄じょう業ごうの名なを立たつ。 なんぞ念仏ねんぶつといはんや。

-此等ノ経釈、或ハ約シ↢定観ニ↡、或ハ約シ↢散善ニ↡、或ハ約シテ↢懴悔ニ↡、立ツ↢浄業ノ名ヲ↡。何ゾ云ンヤ↢念仏ト↡。

答こたふ。 これにおいて一往いちおう・再往さいおう、 顕説けんぜつ・隠説おんぜつ、 随ずい他た・随ずい自じ等とうの差別しゃべつあるべし。 いはく浄じょう業ごうの名な、 もろもろの善法ぜんぽうにおいて遮しゃするところなしといへども、 もし定じょう散さん・懴さん悔げの方ほう等とうに約やくするは、 一往いちおう・顕説けんぜつ・随ずい他意たい語ごなり、 出いだし難なんずるところの諸文しょもんこれなり。 もし念仏ねんぶつをもつて清浄しょうじょう業ごうと名なづくるは、 再往さいおう・隠説おんぜつ・随ずい自意じい語ごなり。

-答。於テ↠此ニ可↠有↢一往・再往、顕説・隠説、随他・随自等之差別↡。謂ク浄業ノ名、於テ↢諸ノ善法ニ↡雖↠無ト↠所↠遮スル、若シ約スルハ↢定散・懴悔ノ方等ニ↡、一往・顕説・随他意語ナリ、所ノ↢出シ難ズル↡之諸文是也。若シ以テ↢念仏ヲ↡名ルハ↢清浄業ト↡、再往・隠説・随自意語ナリ。

すなはち 「△説せつ清浄しょうじょう業ごう」 (観経) の経きょう文もんを釈しゃくするに、 二に重じゅうの釈しゃくあり。 初しょ重じゅうの釈しゃくは、 問端もんたんに備そなふる懴さん悔げの文もんこれなり。

-即釈ニ↢「説清浄業ノ」経文ヲ↡、有リ↢二重ノ釈↡。初重ノ釈者、備ル↢問端ニ↡之△懴悔ノ文ノ是ナリ。

二に重じゅうの釈しゃく (序分義) にいはく、 「また清浄しょうじょうといふは、 下しもの観門かんもんによりて専心せんしんに念仏ねんぶつして、 想おもいを西方さいほうに注とどめて、 念々ねんねんに罪つみ除のぞこるゆゑに清浄しょうじょうなり。」 以上 これ随ずい自意じいなり、 知しるゆゑんは、 これかの ¬経きょう¼ の持じ名みょうの附ふ属ぞくならびに大だい師し 「雖説すいせつ定じょう散さん意い在ざい専せん称しょう」 (散善義意) と釈しゃくしたまふ文もんの意こころによるらくのみ。

-二重ノ釈ニ云ク、「▲又言↢清浄ト↡者、依テ↢下ノ観門ニ↡専心ニ念仏シテ、注メテ↢想ヲ西方ニ↡、念々ニ罪除ル故ニ清浄也。」 已上 是 レ随自意ナリ、所↢以知↡者、是 レ依ルラク↧彼ノ¬経ノ¼▲持名ノ附属ニ大師釈シタマフ↢「▲雖説定散意在専称ト」↡之文ノ意ニ↥耳ノミ。

「釈しゃ迦か」 といふは、 今日こんにちの教きょう主しゅ、 度ど沃おく焦しょうといふ。

-言↢「▲釈迦ト」↡者、今日ノ教主、云フ↢度沃焦ト↡。

「韋い提だい」 といふは、 夫ぶ人にんの名な、 ここには思し惟ゆいといふ。

-言↢「▲韋提ト」↡者、夫人1003之名、此ニハ云フ↢思惟ト↡。

「安あん養にょうを選えらぶ」 とは、 ¬経きょう¼ (観経) にいはく、 「時ときに韋い提だい希け仏ぶつにまうしてまうさく、 世せ尊そん、 このもろもろの仏ぶつ土ど、 また清浄しょうじょうにしてみな光こう明みょうありといへども、 われいま極楽ごくらく世せ界かいの阿あ弥陀みだ仏ぶつの所みもとに生しょうぜんと楽ねがふ。」 以上

-「▲選↢安養ヲ↡」者、¬経ニ¼云ク、「▲時ニ韋提希白シテ↠仏ニ言ク、世尊、是ノ諸ノ仏土、雖↣復清浄ニシテ皆有ト↢光明↡、◆我今楽フ↠生ゼント↢極楽世界ノ阿弥陀仏ノ所ニ↡。」 已上

釈しゃく (序分義) にいはく、 「時じ韋い提だい白びゃく仏ぶつより下しも皆かい有う光こう明みょうに至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん総そうじて所見しょけんを領りょうして、 仏恩ぶっとんを感かん荷がすることを明あかす。 これ夫ぶ人にん総そうじて十方じっぽうの仏国ぶっこくを見みるに、 ならびにみな精しょう華けなれども、 極楽ごくらくの荘しょう厳ごんに比ひせんと欲ほっするに、 まつたく比ひ況きょうにあらず、 ゆゑに我が今こん楽生ぎょうしょう安楽あんらく国こくといふを明あかす。 乃至 我が今こん楽生ぎょうしょう弥陀みだより以下いげは、 まさしく夫ぶ人にん別べっして所しょ求ぐを選えらぶことを明あかす。 これ弥陀みだの本国ほんごく四し十じゅう八願はちがんなり、 願々がんがんみな増ぞう上じょうの勝しょう因いんを発おこす。 乃至 諸しょ余よの経きょう典てんに▽勧すすむる処ところいよいよ多おおし、 衆しゅ聖しょう心こころを斉ひとしくしてみな同おなじく指し讃さんす、 この因縁いんねんありて、 ▽如来にょらいひそかに夫ぶ人にんを遣つかはして別べっして選えらばしむることを致いたすことを明あかす。」 以上

-¬釈ニ¼*曰ク、「▲従↢時韋提白仏↡下至↢皆有光明↡已来ハ、正ク明ス↧夫人総ジテ領シテ↢所見ヲ↡、感↦荷スルコトヲ仏恩ヲ↥。◆此レ明ス↧夫人総ジテ見ニ↢十方ノ仏国ヲ↡、並ニ皆精華ナレドモ、欲スルニ↠比セント↢極楽ノ荘厳ニ↡、全ク非ズ↢比況ニ↡、故ニ云フヲ↦我今楽生安楽国ト↥也。 乃至 ▲従↢我今楽生弥陀↡已下ハ、正ク明ス↣夫人別シテ選ブコトヲ↢所求ヲ↡。◆此レ明ス↧弥陀ノ本国四十八願ナリ、◆願願皆発ス↢増上ノ勝因ヲ↡。 乃至 ▲諸余ノ経典ニ勧処弥多シ、衆聖*斉シテ↠心ヲ皆同ク指讃ス、◆有テ↢此ノ因縁↡、致コトヲ↞使ルコトヲ↧如来密ニ遣シテ↢夫人ヲ↡別シテ選バ↥也。」 已上

問とふ。 夫ぶ人にんの別選べっせんはただみづから選えらぶべし。 いま△致使ちし如来にょらい密遣みっけん夫ぶ人にんといふ、 その意こころいかん。

-▼問。夫人ノ別選ハ只可シ↢自ミ 選↡。今云フ↢致使如来密遣夫人ト↡、其ノ意如何。

答こたふ。 これに二義にぎあり。 一いち義ぎにいはく、 韋い提だいは凡ぼん夫ぶ、 心想しんそう羸劣るいれつなり。 おそらくはこれ諸しょ土どの勝しょう劣れつを弁わきまへがたからんことを、 このゆゑに如来にょらいひそかに神力じんりきを加くわへて選取せんしゅせしむるなり。 一いち義ぎにいはく、 在ざい世せは多おおく権ごん、 分極ぶんごく凡ぼん聖しょうたがひに主伴しゅばんとなして、 おのおの仏ぶっ化けを助たすく。 *能のう化け・*所しょ化け同おなじくともに済凡さいぼんの教おしえを発ほっ起きす。 これすなはち未み来らいの実じっ機きを度どせんがためなり。

-答。此ニ有↢二義↡。一義ニ云ク、韋提ハ凡夫、心想羸劣ナリ。恐ハ是 レ難ンコトヲ↠辨ヘ↢諸土ノ勝劣ヲ↡、是ノ故ニ如来密ニ加ヘテ↢神力ヲ↡令ル↢選取↡也。一義ニ云ク、在世ハ多ク権、分極凡聖互ニ為シテ↢主伴ト↡、各助ク↢仏化ヲ↡。能化・所化同ク共ニ発↢起ス済凡之教ヲ↡。是 レ則為ナリ↠度センガ↢未来ノ実機ヲ↡。

¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にいはく、 「仏ぶつ・声しょう聞もん・菩ぼ薩さつ衆しゅと同おなじく舎しゃ衛えに遊あそび祇ぎ園おんに住じゅうす。」 以上

-¬法事讃ニ¼云ク、「▲与↢仏・声聞・菩薩衆↡同ク遊ビ↢舎衛ニ↡住ス↢祇園ニ↡。」 已上

仏ぶつ与よといはず、 すでに与よ仏ぶつといふ。 能所のうじょ同心どうしんその意こころ知しりぬべし。 密みつに二義にぎあり。 もし初はじめの義ぎに約やくせば、 如来にょらいひそかにその神力じんりきを加かするがゆゑに、 ただちに夫ぶ人にんをしてひそかに上かみの 「△勧処かんしょ弥多みた皆同かいどう指し讃さん通別つうべつの因縁いんねん」 を領りょう解げせしむ。 しかもいまだ顕説けんぜつせず。 ゆゑに説ときて密みつとなす。 もし後のちの義ぎに約やくせば、 如来にょらい・韋い提だいともに因縁いんねんを知しる、 しばらく衆しゅ会えに望のぞめてこれを密みつとなすなり。

-不↠云ハ↢仏与ト↡、已ニ云フ↢与仏ト↡。能所同心其ノ意可シ↠知ル。密ニ有↢二義↡。若シ約セバ↢初ノ義ニ↡、如来冥ニ加スルガ↢其ノ神力ヲ↡故ニ、直ニ令ム↧夫人ヲシテ密ニ領↦解セ上ノ勧処弥多皆同指1004讃通別ノ因縁ヲ↥。然モ未ダ↢顕説セ↡、故ニ説テ為ス↠密ト。若シ約セバ↢後ノ義ニ↡、如来韋提共ニ知ル↢因縁ヲ↡、且ク望メテ↢衆会ニ↡是レヲ為↠密ト也。

*「権ごん化けの仁にん」 とは、 もし初はじめの義ぎによらば仏ぶつを指さす、 すなはちこれ世せ雄おう。 上下かみしも殊ことなりといへどもこれ別べつにあらず。 もし後のちの義ぎによらば、 通つうじて調じょう達だつ・闍じゃ世せ・韋い提だいを指さす、 発ほっ起き衆しゅなり。

-「▲権化ノ仁ト」者、若シ依ラ↢初ノ義ニ↡者指ス↠仏ヲ、即是世雄。上下雖ドモ↠殊ト是 レ非ズ↠別ニ也。若シ拠ラ↢後ノ義ニ↡者、通ジテ指ス↢調達・闍世・韋提ヲ↡、発起衆也。

「群萌ぐんもう」 といふは、 これ衆しゅ生じょうの名な、 衆しゅ生じょうの心しん中ちゅうに仏種ぶっしゅあるがゆゑに、 法潤ほうにんを蒙こうぶる類るい仏道ぶつどうの芽めを生しょうず。 この理りあまねく一切いっさい衆しゅ生じょうに通つうず、 ゆゑに 「群萌ぐんもう」 といふ。

-言↢「▲群萌ト」↡者、是 レ衆生ノ名、衆生ノ心中ニ有ガ↢仏種↡故ニ、蒙ル↢法潤ヲ↡類生ズ↢仏道ノ芽ヲ↡。此ノ理普ク通ズ↢一切衆生ニ↡、故ニ云↢「群萌ト」↡。

¬大だい経きょう¼ 上じょうにいはく、 「群萌ぐんもうを拯すくひて恵めぐむに真実しんじつの利りをもつてせんと欲おぼしてなり。」 以上

-¬大経¼上ニ云、「▲欲シテナリ↧拯テ↢群萌ヲ↡恵ニ以セント↦真実之利ヲ↥。」 已上

¬玄げん義ぎ¼ (玄義分) にいはく、 「甘かん露ろを灑そそぎて群萌ぐんもうを潤うるおす。」 以上

-¬玄義ニ¼云ク、「▲灑テ↢甘露ヲ↡潤ス↢於群萌ヲ↡。」 已上

「世せ雄おう」 といふは、 これ世せ尊そんの名な、 また雄ゆう猛みょうといふ。

-言↢「▲世雄ト」↡者、是 レ世尊ノ名、又云フ↢雄猛ト↡。

「逆ぎゃく謗ほう」 とらは、 重じゅう悪あくの機きを挙あぐ。 「逆ぎゃく」 はいはく五ご逆ぎゃく 第三だいさんの末まつにあり、 「謗ほう」 はいはく謗法ほうぼう 同上。

-「▲逆謗ト」等ラ者、挙グ↢重悪ノ機ヲ↡。「逆ハ」謂ク五逆 在リ↢▲第三ノ末ニ↡、「謗ハ」謂ク謗法。 同上

「闡提せんだい」 といふは、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻二六徳王品、 南本巻二四徳王品) にいはく、 「一闡いっせんは信しんと名なづく、 提だいは不具ふぐに名なづく。 信しん具ぐせざるがゆゑに一闡いっせん提だいと名なづく。」 以上 つぶさには一闡いっせん提だいといふ、 いま略りゃくして闡提せんだいといふ。 かの 「玄げん義ぎ」 (玄義分) に 「謗法ほうぼうと無む信しん」 といふ、 無む信しんこれなり。 無む信しんといふは、 仏法ぶっぽうを聞きくといへどもすべて信謗しんぼうなし。 これをもつてこれを謂おもふに謗法ほうぼうなほ重おもし。

言↢「▲闡提ト」↡者、¬涅槃経ニ¼云ク、「一闡ハ名ク↠信ト、提ハ名ク↢不具ニ↡。信不ガ↠具セ故ニ名ク↢一闡提ト↡。」 已上 具ニハ云↢一闡提ト↡、今略シテ云フ↢闡提ト↡。彼ノ「玄義ニ」云フ↣「▲謗法ト与↢无信↡」、无信是也。言↢无信ト↡者、雖ヘ↠聞ト↢仏法ヲ↡都テ无シ↢信謗↡。以テ↠之ヲ謂ニ↠之ヲ謗法猶重シ。

二 Ⅰ ⅲ 重挙名号希奇勝徳

【8】 三さんに重かさねて名みょう号ごうの勝しょう徳とくを挙あぐる文もんの中なかに、

△三ニ重テ挙ル↢名号ノ勝徳ヲ↡文ノ中ニ、

「円えん融にゅう」 といふは、 これ隔きゃく歴りゃくに対たいす。 すなはちこれ円満えんまん融通ゆうずうの義ぎなり。 この阿あ弥陀みだの三さん字じは、 すなはちこれ空くう・仮け・中ちゅうの三諦さんたいの理りなるがゆゑに、 名なづけて 「円えん融にゅう至し徳とくの嘉か号ごう」 といふ。

-言↢「▲円融ト」↡者、是 レ対ス↢隔歴ニ↡。乃是円満融通之義ナリ。此ノ阿弥陀ノ三字ハ、即是 レ為ルガ↢空・仮・中ノ三諦ノ理↡故ニ、名テ曰↢「円融至徳嘉号ト」↡。

「↓難信なんしん↓金剛こんごうの信しん楽ぎょう」 とらは、 他た力りき真実しんじつ信心しんじんの相そうなり。

-「▲難信金剛ノ信楽ト」等ラ者、他力真実信心ノ相也。

「↑難信なんしん」 といふは、 ¬大だい経きょう¼ の下げにいはく、 「憍きょう慢まんと弊へいと懈け怠だいとは、 もつてこの法ほうを信しんじがたし。」 以上 またいはく、 「人ひと信しん慧ねあること難かたし。」 以上 またいはく、 「もしこの経きょうを聞きて信しん楽ぎょう受じゅ持じすること、 難なんが中なかの難なんなり、 これに過すぎて難なんはなし。」 以上 ¬小経しょうきょう¼ にいはく、 「一切いっさい世せ間けんのために、 この難信なんしんの法ほうを説とく、 これを甚難じんなんとなす。」 以上

-言↢「難信ト」↡者、¬大経ノ¼下云ク、「▲憍慢ト弊ト懈怠トハ、難シ↣以テ信ジ↢此ノ法ヲ↡。」 已上 又1005云ク、「▲人有コト↢信慧↡難シ。」 已上 又云ク、「▲若シ聞テ↢斯ノ経ヲ↡信楽受持コト、難ガ中ノ之難ナリ、無シ↢過テ↠此ニ難ハ↡。」 已上 ¬小経ニ¼云ク、「▲為ニ↢一切世間ノ↡、説ク↢此ノ難信ノ之法ヲ↡、是ヲ為ス↢甚難ト↡。」 已上

「↑金剛こんごう」 といふは、 他た力りきの信しん楽ぎょう堅けん固ごにして動どうぜざること喩たとえを金剛こんごうに仮かる、 これ不壊ふえの義ぎなり。

-言↢「金剛ト」↡者、他力ノ信楽堅固ニシテ不ルコト↠動ゼ仮ル↢喩ヲ金剛ニ↡、是 レ不壊ノ義ナリ。

問とふ。 金剛こんごうの体たいにおいていくばくの徳とくかあるや。

-問。於テ↢金剛ノ体ニ↡有↢幾ノ徳カ↡耶。

答こたふ。 梁りょうの ¬摂しょう論ろん¼ (真諦訳摂論釈巻一三) にいはく、 「四義しぎあるがゆゑに金剛こんごうをもつて三さん摩ま提だいに譬たとふ。 一いちにはよく煩悩ぼんのうの山やまを破はす、 二ににはよく無余むよの功く徳どくを引いんす、 三さんには堅実けんじつにして破壊はえすべからず、 四しには用ゆう利りにしてよく智慧ちえをして一切いっさいの法ほうを通達つうだつして無礙むげならしむ。」 以上 いまこの文もんによる。

-答。梁ノ¬摂論ニ¼云ク、「有ガ↢四義↡故ニ以テ↢金剛ヲ↡譬↢三摩提ニ↡。一ニハ能ク破ス↢煩悩ノ山ヲ↡、二ニハ能ク引ス↢无余ノ功徳ヲ↡、三ニハ堅実ニシテ不↠可↢破壊ス↡、四ニハ用利ニシテ能ク令 シム↧智慧ヲシテ通↢達シテ一切ノ法ヲ↡无礙ナラ↥。」 已上 今依ル↢此ノ文ニ↡。

「疑うたがいを除のぞく」 といふは、 よく煩悩ぼんのうを破はす、 用ゆう利りなるは通達つうだつ無礙むげの徳とくなり。

-言↠「▲除ト↠疑ヲ」者、能ク破ス↢煩悩ヲ↡、用利ナルハ通達无礙ノ徳也。

「徳とくを獲えしむ」 といふは、 よく功く徳どくを引いんす、 堅実けんじつの義ぎなり。

-言↠「▲獲シムト↠徳ヲ」者、能ク引ス↢功徳ヲ↡、堅実ノ義也。

¬金剛こんごう頂経ちょうきょうの疏しょ¼ (巻一) にいはく、 「金剛こんごうとは、 これ堅けん固ご・利り用ゆうの二義にぎ、 すなはち喩たとえの名ななり。 堅けん固ごをばもつて実相じっそうに譬たとふ、 不ふ思議しぎ秘ひ密みつの理り、 常じょう在ざい不壊ふえなり。 利り用ゆうをばもつて如来にょらいの智ち用ゆうに喩たとふ、 惑わく障しょうを摧ざい破はして証しょう極ごくを顕あらわす。」 以上

-¬金剛頂経ノ疏ニ¼云ク、「金剛ト者、是 レ堅固・利用ノ二義、即喩ノ名也。堅固ヲバ以テ譬フ↢実相ニ↡、不思議秘密之理、常在不壊也。利用ヲバ以テ喩フ↢如来ノ智用ニ↡、摧↢破シテ惑障ヲ↡顕ス↢証極ヲ↡。」 已上

堅けん固ごによるがゆゑに如来にょらい真実しんじつの功く徳どくを獲ぎゃく得とくす、 利り用ゆうによるがゆゑに疑ぎ網もう所しょ覆ふの迷まよいを除じょ却きゃくす。

-由ガ↢堅固ニ↡故ニ獲↢得ス如来真実ノ功徳ヲ↡、由ガ↢利用ニ↡故ニ除↢却ス疑網所覆ノ迷ヲ↡也。

また (金剛頂経疏巻一) いはく、 「世せ間けんの金剛こんごうに三さん種しゅの義ぎあり。 一不可ふか壊え、 二宝ほう中ちゅうの宝ほう、 三戦せん具ぐ中ちゅうの勝しょう。」 以上

-又云ク、「世間ノ金剛ニ有リ↢三種ノ義↡。一不可壊、二宝中之宝、三戦具中勝。」 已上

また ¬梵網ぼんもうの古こ迹しゃく¼ の上じょうにいはく、 「金こがねの中なかの精しょう牢ろうを名なづけて金剛こんごうといふ。」 以上

-又¬梵網ノ古迹ノ¼上ニ云ク、「金ノ中ノ精牢ヲ名テ曰フ↢金剛ト↡。」 已上

これらの文もんをもつて、 まさに金剛こんごう堅けん固ごの義ぎを知しるべし。

-以テ↢此等ノ文ヲ↡、応↠知↢金剛堅固之義ヲ↡。

問とふ。 出いだすところの諸文しょもん、 みな仏ぶっ果かの功く徳どくをもつてかの金剛こんごうに譬たとふ。 いま凡ぼん夫ぶ浅せん位いの信しん楽ぎょうに譬たとふ。 なんぞたやすくこれに比ひせん。

-問。所ノ↠出ス諸文、皆以テ↢仏果ノ功徳ヲ↡譬↢彼ノ金剛ニ↡。今譬フ↢凡夫浅位ノ信楽ニ↡。何ゾ輒ク比セン↠之ニ。

答こたふ。 凡ぼん夫ぶ所発しょほつの信心しんじんに似にたりといへども、 この心しん如来にょらい選せん択じゃくの願心がんしんより発ほっ起きす。 このゆゑにまつたく凡ぼん夫ぶ浅せん位い、 自じ力りきの信しんにあらざるがゆゑに、 あるいは清浄しょうじょうといひ、 あるいは真実しんじつといふ。

答。雖↠似タリト↢凡夫所発ノ信心ニ↡、此ノ心発↢起ス如来選択ノ願心ヨリ↡。是ノ故ニ全1006ク非ガ↢凡夫浅位、自力ノ信ニ↡故ニ、或ハ云ヒ↢清浄ト↡、或ハ云フ↢真実ト↡。

ゆゑに 「玄げん義ぎ」 (玄義分) にいはく、 「ともに金剛こんごうの志こころざしを発おこせば、 横よこさまに四流しるを超ちょう断だんす。」 以上

故ニ「玄義ニ」云ク、「▲共ニ発セバ↢金剛ノ志ヲ↡、横ニ超↢断ス四流ヲ↡。」 已上

「散さん善ぜん義ぎ」 にいはく、 「この心しん深ふかく信しんぜることなほし金剛こんごうのごとし。」 以上

-「散善義ニ」云ク、「▲此ノ心深ク信ゼルコト由シ若シ↢金剛ノ↡。」 已上

師し釈しゃくすでにしかり、 いまの釈しゃく失しつなし。

-師釈既ニ爾リ、今ノ釈无シ↠失。

「捷径せつけい」 といふは、 速疾そくしつの道どうなり。 ¬宋韻そういん¼ にいはく、 「捷しょう、 疾しつ葉ようの切せつ、 獲ぎゃくなり、 次しなり、 疾しつなり、 剋こくなり、 勝しょうなり、 成じょうなり。 ¬説文せつもん¼、 猟りょうなり、 軍ぐんの獲ぎゃく得とくなり。」 ¬*楽邦らくほう文類もんるい¼ (第二章) にいはく、 「総官そうかん*張ちょう掄りんがいはく、 八万はちまん四し千せんの法門ほうもん、 この捷径せつけいにしくなし。」 以い上じょう第だい二に巻かんにこれを引ひく

-言↢「▲捷径ト」↡者、速疾ノ道也。¬宋韻¼云、「*捷セフ疾葉切、獲也、次也、疾也、剋也、勝也、成也。¬説文¼、猟也、軍ノ獲得也。」¬楽邦文類ニ¼云ク、「▲綜官張掄ガ云ク、八万四千ノ法門、无シ↠如↢是ノ之捷径ニ↡。」 已上第二巻引↠之

「如来にょらいの発遣はっけん」 とは、 これ釈しゃく尊そんの指し授じゅ。

-「▲如来ノ発遣ト」者、是 レ釈尊ノ指授。

「最さい勝しょうの直道じきどう」 とは、 これ弥陀みだの願力がんりき。

-「▲最勝ノ直道ト」者、是弥陀ノ願力。

「散善さんぜん義ぎ」 *二河にがの譬喩ひゆにいはく、 「仰あおぎて釈しゃ迦かの発遣はっけんして指ゆびさして西方さいほうに向むかへたまふことを蒙こうぶり、 また弥陀みだの悲ひ心しん招しょう換かんしたまふによりて、 いま二に尊そんの意こころに信しん順じゅんして、 水すい火かの二河にがを顧かえりみず、 念々ねんねんに遺わするることなくかの願力がんりきの道どうに乗じょうじて、 捨しゃ命みょう以後いごかの国くにに生しょうずることを得えて、 仏ぶつとあひ見まみえて慶きょう喜きすることなんぞ極きわまらん。」 以上

-「散善義」二河ノ譬喩ニ云ク、「▲仰テ蒙ブリ↣釈迦ノ発遣シテ指シテ向ヘタマフコトヲ↢西方ニ↡、又藉テ↢弥陀ノ悲心招換シタマフニ↡、今信↢順シテ二尊之意ニ↡、不↠顧↢水火ノ二河ヲ↡、念々ニ无ク↠遺ワスルヽコト、乗ジテ↢彼ノ願力之道ニ↡、捨命已後得テ↠生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡、与↠仏相 ヒ見テ慶喜コト何ゾ極ラム也。」 已上

二 Ⅰ ⅳ 顕其聞法宿習之縁

【9】四しに聞法もんぼうの縁えんを顕あらわして、 人ひとをして随ずい喜きせしめ、 および疑ぎ慮りょを誡いましむるの文もん見みやすし。

-△四ニ顕シテ↢聞法ノ縁ヲ↡、令メ↢人ヲシテ随喜セ↡、及ビ誡ル↢疑慮ヲ↡之文易シ↠見。

「真言しんごん」 といふは、 陀羅だら尼ににあらず。 別べっしては真しん宗しゅう誠じょう言ごんの理りにより、 総そうじては仏ぶつ語ご誠じょう実じつの義ぎによりて真言しんごんといふなり。

-言↢「▲真言ト」↡者、非ズ↢陀羅尼ニ↡。別シテハ由リ↢真宗誠言之理ニ↡、総ジテハ依テ↢仏語誠実之義ニ↡曰↢真言ト↡也。

問とふ。 言いふところの義ぎ、 例れい証しょうありや。

-問。所ノ↠言之義、有↢例証↡乎。

答ふ。 ¬安楽あんらく集しゅう¼ の上じょうにいはく、 「真言しんごんを採集さいしゅして、 往益おうやくを助じょ成じょうす。」 以上 また ¬*五会ごえ讃さん¼ (巻本) にいはく、 「これはこれ釈しゃ迦か三さん世ぜの諸仏しょぶつ誠じょう諦たいの真言しんごんなり、 もつて信しん敬きょうをなすに足たれり、 依え行ぎょうすべしと。」 これその例れいなり。

-答。¬安楽集ノ¼上ニ云ク、「▲採↢集シテ真言ヲ↡、助↢成ス往益ヲ↡。」 已上 又¬五会讃ニ¼云ク、「此ハ是 レ釈迦三世ノ諸仏誠諦ノ真言ナリ、足レリ↣以テ為ナスニ↢信敬ヲ↡、可シト↢依行ス↡。」是 レ其ノ例也。

二 Ⅰ ⅴ 悦受三国伝来師訓

【10】五ごに師し訓くんを受うくることを悦よろこびて聞もん持じを述のぶる中なかに、 「西蕃せいばん」 といふは、 これ西天さいてんなり、 まさしくは 「天竺てんじく」 といふ。 「西さい」 は震旦しんたんに対たいす、 すなはちこれ 「月げっ支し」、 「支し」 にはまた氏しを用もちゐる。

△五1007ニ悦テ↠受コトヲ↢師訓ヲ↡述ル↢聞持ヲ↡中ニ、言↢「▲西蕃ト」↡者、是 レ西天也、正ハ云フ↢天竺ト↡。「西ハ」対ス↢震旦ニ↡、即是「月支」、「支ニハ」又用ル↠氏ヲ。

「東とう夏か」 といふは、 すなはちこれ*震旦しんたん。 「東とう」 は天竺てんじくに対たいす、 「夏か」 は中ちゅう国ごくの名な。 「夏か」 ¬宋韻そういん¼ にいはく、 「大だいなり、 また諸しょ。」 「夏か」 一いち (説文) にいはく、 「中ちゅう国ごくの人ひと。」 以上

-言↢「▲東夏ト」↡者、即是震旦。「東ハ」対ス↢天竺ニ↡、「夏ハ」中国ノ名。「夏」¬宋韻¼云、「大也、又諸。」「夏」一ニ曰ク、「中国之人。」 已上

「真しん宗しゅう」 といふは、 ▽下しもに至いたりてつまびらかにすべし。

言↢「▲真宗ト」↡者、至テ↠下ニ可シ↠詳ニス。

二 Ⅱ 正宗分

【11】△第だい二にに正宗しょうしゅう中ちゅうにおいて、 巻かんを分わかちて六ろくとなす。 ▽教きょう・▽行ぎょう・▽信しん・▽証しょう・▽真しん・化け仏ぶつ土ど、 一いちより六ろくに至いたるまで次ついでのごとくこれを明あかす。

-第二ニ於テ↢正宗ノ中ニ↡、分テ↠巻ヲ為ス↠六ト。教・行・信・証・真・▽化仏土、従↠一至マデ↠六ニ如ク↠次ノ明ス↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅰ 教

【12】△当巻とうかん大文だいもん第一だいいちに教きょうを明あかす。 中なかにおいて五ごとなす。

-当巻大文第一ニ明ス↠教ヲ。於テ↠中ニ為ス↠五ト。

一いちは標ひょう列れつ、 次し第だい文もんのごとし。 ▽二には題目だいもく。 三さんは標ひょう挙こ、 題だいの後のちの一いち行ぎょうなり。 ▽四しは正釈しょうしゃく、 文もんの初はじめより下しも興ごうの釈しゃくを引ひくに至いたる。 五ごは総結そうけつ、 「爾に者しゃ」 以下いげこれその文もんなり。

-▽一者標列、次第如シ↠文ノ。二者題目。▽三者標挙、題ノ後ノ一行ナリ。四者正釈、自リ↢文ノ初↡下至ル↠引ニ↢興ノ釈ヲ↡。▽五者総結、「▲爾者」以下是 レ其ノ文也。

二 Ⅱ ⅰ a 標列

【13】初はじめ標ひょう列れつに就つきて。

-△初就テ↢標列ニ↡。

問とふ。 題目だいもくの標ひょうするところ、 教きょう行ぎょう証しょうにあり。 三さんの外ほかにさらに信しんと真仏しんぶつ土どとおよび化け身しん土どとを加くわふ。 首題しゅだいの中なかにおいてこれらを摂せっしがたし。 しかれば題だいにおいて未み尽じんの過とがあり、 いかん。

-問。題目ノ所↠標スル、在リ↢教行証ニ↡。三ノ外ニ更ニ加フ↢信ト真仏土ト及ビ化身土トヲ↡。於テ↢首題ノ中ニ↡難シ↠摂シ↢此等ヲ↡。然者於テ↠題ニ有リ↢未尽ノ過↡、如何。

答こたふ。 教きょう行ぎょう証しょうの三さんは常じょう途ずの教きょう相そうなり、 信しんと真しんと化けとの土どは今こん師しの加くわふるところなり。 常つねの教きょう相そうに任まかせてその三さんを標ひょうすといへども、 最要さいようたるによりて、 いま後のちの三さんを加くわふ。 ただし題だいに余よを摂せっしがたしといふに至いたりては、 行ぎょうの中なかに信しんを摂せっし、 証しょうの中なかに広ひろく真しん・化け仏ぶつ土どを摂せっす。 しかるゆゑんは、 行ぎょうは所しょ行ぎょうの法ほう、 信しんはこれ能信のうしんなり。

-答。教行証ノ三ハ常途ノ教相ナリ、信ト真ト化トノ土ハ今師ノ所ナリ↠加ル。任テ↢常ノ教相ニ↡雖ヘドモ↠標スト↢其ノ三ヲ↡、依テ↠為ニ↢最要↡、今加フ↢後ノ三ヲ↡。但至テ↠云ニ↢題ニ難シト↟摂シ↠余ヲ者、行ノ中ニ*摂シ↠信ヲ、証ノ中ニ広ク摂ス↢真・化仏土ヲ↡。所↢以然ル↡者、行ハ所行ノ法、信ハ是能信ナリ。

ゆゑに 「玄げん義ぎ」 (玄義分) にいはく、 「南無なもといふはすなはちこれ帰き命みょう、 またこれ発願ほつがん回え向こうの義ぎなり。 阿あ弥陀みだ仏ぶつといふはすなはちこれその行ぎょうなり。 この義ぎをもつてのゆゑにかならず往おう生じょうを得う。」 以上

-故ニ「玄義ニ」云ク、「▲言↢南无ト↡者即是帰命、亦是発1008願廻向之義ナリ。言↢阿弥陀仏ト↡者即是其ノ行ナリ。以ノ↢斯ノ義ヲ↡故ニ必得↢往生↡。」 已上

信しん行ぎょう離はなれず、 機き法ほうこれ一いちなり。 この義ぎによるがゆゑに、 信しんをもつて行ぎょうに摂せっす。 証しょうにおいて往おう生じょう成じょう仏ぶつ・分ぶん証しょう究く竟きょう、 遠近おんごんの差別しゃべつありといへども、 まづ往おう生じょうをもつてその近ごん果かとなす。 これすなはち証しょうなり。 しかるに往おう生じょうの後のち見みるところの身しん土ど、 解げ行ぎょうの異ことなるによりて真しん化けありといへども、 総そうじて証しょうの中なかに摂せっす。 このゆゑにしばらく相そう摂しょうの義ぎ門もんによるに、 題目だいもくの中なかにおいて未み尽じんの失しつなし。

-信行不↠離レ、機法是 レ一ナリ。由ガ↢此ノ義ニ↡故ニ、以テ↠信ヲ摂ス↠行ニ。於テ↠証ニ雖へ↠有ト↢往生成仏・分証究竟、遠近ノ差別↡、先ヅ以テ↢往生ヲ↡為ス↢其ノ近果ト↡。是則証也。然ニ往生ノ後所ノ↠見身土、依テ↢解行ノ異ニ↡雖↠有ト↢真化↡、総ジテ摂ス↢証ノ中ニ↡。是ノ故ニ且ク依ニ↢相摂ノ義門ニ↡、於テ↢題目ノ中ニ↡无シ↢未尽ノ失↡。

二 Ⅱ ⅰ b 題目

【14】二にに題目だいもくを明あかす中なかに、 また分わかちて二にとす。 初はじめにまさしく題だいを明あかし、 次つぎに撰号せんごうを釈しゃくす。

△二ニ明ス↢題目ヲ↡中ニ、又分テ為↠二ト。▽初ニ正ク明シ↠題ヲ、▽次ニ釈ス↢撰号ヲ↡。

二 Ⅱ ⅰ b イ 題

【15】初はじめに題だいを明あかす中なかに、

△初ニ明ス↠題ヲ中ニ、

問とふ。 首題しゅだい上かみにあり、 なんぞ重かさねて挙あぐるや。

-問。▲首題在リ↠上ニ、何ゾ重テ挙ルヤ邪。

答こたふ。 上かみの首題しゅだいは一いち部ぶの総そう称しょうなり。 このゆゑに整しょう足そくして 「教きょう行ぎょう証しょう」 といふ。 すなはち通つうじて 「序じょ」 を加くわふ。 いまの題額だいがくは当巻とうかんの別号べつごうなり。 ゆゑに行証ぎょうしょうを略りゃくし、 ただ 「教きょう」 の字じを置おきて、 序じょを除のぞき 「一いち」 を加くわふ。 このゆゑに重かさねて題だいする、 もつとも義ぎ趣しゅを得えたり。

-答。上ノ首題者一部ノ総称ナリ。是ノ故ニ整足シテ云↢「教行証ト」↡。即通ジテ加フ↠「序ヲ」。今ノ題額者、当巻ノ別号ナリ。故ニ略シ↢行証ヲ↡、▼唯置テ↢「▲教ノ」字ヲ↡、除キ↠序ヲ加フ↠「▲一ヲ」。是ノ故ニ重テ題スル、最モ得タリ↢義趣ヲ↡。

問とふ。 教きょうはただ当巻とうかん、 さらに余よあることなし。 なんぞ 「一いち」 といふや。

問。教ハ唯当巻、更ニ无シ↠有コト↠余。何ゾ云↠「一ト」乎。

答こたふ。 六巻ろっかんの中なかにおいてその初はじめに居こするがゆゑに、 これを称しょうして一いちとなす。 いはゆる 「真実しんじつ教きょう」 はすなはちこれ第一だいいち、 乃ない至し 「顕けん化け身しん土ど」 はすなはちこれ第六だいろくなり。 これすなはち大だい師し ¬観かん経ぎょう義ぎ¼ の釈しゃくの首題しゅだいの次し第だい、 よろしく例れい証しょうとなすべし。 「玄げん義ぎ分ぶん巻かん第一だいいち」 乃ない至し 「散善さんぜん義ぎ巻かん第だい四し」 といひて、 巻々かんかんあひ換かわつて、 おのおのその題だいを異ことにするがごとし。

-答。於テ↢六巻ノ中ニ↡居スルガ↢其ノ初ニ↡故ニ、称シテ↠之ヲ為ス↠一ト。所謂「真実教ハ」即是 レ第一、乃至「顕化身土ハ」即是第六ナリ。是則大師¬観経義ノ¼釈ノ首題ノ次第、宜クシ↠為ス↢例証ト↡。如シ↧云テ↢「▲玄義分巻第一」乃至「▲散善義巻第四ト」↡、巻々相換カハテ、各異ニスルガ↦其ノ題ヲ↥。

二 Ⅱ ⅰ b ロ 撰号

【16】次つぎに撰号せんごうの中なかに、

△次ニ撰号ノ中ニ、

問とふ。 題だい名みょうは重かさねて挙あぐることその義ぎしかるべし。 重かさねて撰号せんごうを安あんずるなんの要ようかあるや。

-問。題名ハ重テ挙ルコト其ノ義可シ↠然。重テ安ズル↢撰号ヲ↡有↢何ノ要カ↡耶。

答こたふ。 これ総別そうべつの差しゃなり。 序じょの前まえの撰号せんごうは総そうじて一いち部ぶに被かぶらしむ、 いまは当巻とうかんにおいて別べっしてこれを安あんず。 これ慇懃おんごんの義ぎ、 重かさねて置おくに過とがなし。 また異い本ほんあり、 序じょの前まえにこれなし。

-答。是 レ総別1009ノ差ナリ。序ノ前ノ撰号ハ総ジテ被カ シム↢一部ニ↡、今ハ於テ↢当巻ニ↡別シテ而安ズ↠之ヲ。是 レ慇懃ノ義、重テ置ニ無シ↠過。又有リ↢異本↡、序ノ前ニ無シ↠之レ。

問とふ。 上かみには 「述じゅつ」 の字じを置おき、 いまはあらためて 「集しゅう」 となす。 両りょう所しょの不ふ同どう、 なんの由ゆえかあるや。

問。上ニハ置キ↢「▲述ノ」字ヲ↡、今ハ改テ為ス↠「▲集ト」。両所ノ不同有↢何ノ由カ↡乎。

答こたふ。 上かみに 「述じゅつ」 といふは、 序じょは意こころを述のぶるがゆゑに。 いま 「集しゅう」 といふは、 多おおく文もんを集あつむるがゆゑに。

-答。上ニ言↠「述ト」者、序ハ述ルガ↠意ヲ故ニ。今言↠「集ト」者、多ク集ルガ↠文ヲ故ニ。

二 Ⅱ ⅰ c 標挙

【17】次つぎに標ひょう挙こに就つきて、

△次ニ就テ↢標挙ニ↡、

問とふ。 上かみの標ひょう列れつの中なかに、 「真実しんじつ教きょう」 と載のする、 その義ぎ足たりぬべし。 いま重かさねてこれを挙あぐる、 あに繁はん重じゅうにあらずや。

-問。上ノ標列ノ中ニ、載スル↢「▲真実教ト」↡、其ノ義可シ↠足ヌ。今▲重テ挙ル↠之ヲ、豈非ズヤ↢繁重ニ↡。

答こたふ。 上かみの標ひょう列れつは、 広ひろく一いち部ぶに通つうず。 いまの標ひょう挙こは、 限かぎりて当巻とうかんにあり。 いはんや標ひょう列れつの中なかに真実しんじつ教きょうの名みょう目もくありといへども、 いまだ教きょう体たいを顕あらわさず。 いま経名きょうみょうを挙あげてその教きょう体たいを明あかす。 総別そうべつの異いあり、 さらに繁はん重じゅうにあらず。  経名きょうみょう等とうの事じ、 ▽下しもに至いたりてつまびらかにすべし。

-答。上ノ標列者、広ク通ズ↢一部ニ↡。今ノ標挙者、限テ在リ↢当巻ニ↡。況ヤ標列ノ中ニ雖↠有ト↢真実教ノ之名目↡、未ダ↠顕サ↢教体ヲ↡。今挙テ↢経名ヲ↡明ス↢其ノ教体ヲ↡。有リ↢総別ノ異↡、更ニ非ズ↢繁重ニ↡。 経名等ノ事、至テ↠下ニ可シ↠詳ニス。

二 Ⅱ ⅰ d 正釈

【18】△四しに正釈しょうしゃくの中なかに就つきて、 文もんを分わかちて三さんとす。 ▽文もんの初はじめより下しも 「経きょう体たい也や」 に至いたるまでは、 総そうじて教きょう旨しを標ひょうす。 次つぎに 「何以がい」 とらは、 これ徴ちょう問もんの言ことば。 ▽「大だい無む」 以下いげはこれまさしく文もんを引ひく。

-四ニ就↢正釈ノ中ニ↡、分テ↠文ヲ為↠三ト。自↢文ノ初↡下至マデハ↢「経体也ニ▲」↡、総ジテ標ス↢教旨ヲ↡。▽次ニ「▲何以ト」等者、是 レ徴問ノ言。「▲大无」以下ハ是 レ正ク引ク↠文ヲ。

二 Ⅱ ⅰ d イ 総標

【19】△総そう標ひょうの中なかに就つきて、 文もんの初はじめより 「是ぜ也や」 に至いたるまでは略りゃくして標ひょうす。 「斯し経きょう」 より下しも 「実じつ之利しり」 に至いたるまでは略りゃくして大たい意いを叙じょす。 ▽「是以ぜい」 より下しもは経きょうの宗しゅう体たいを明あかす。

就テ↢総標ノ中ニ↡、自↢▽文ノ初↡至マデハ↢「是也ニ▲」↡略シテ標ス。▽自↢「▲斯経」↡下至マデハ↢「実之利ニ▲」↡略シテ叙ス↢大意ヲ↡。自↢「▲是以」↡下ハ明↢経ノ宗体ヲ↡。

二 Ⅱ ⅰ d イ (一)略標

【20】初はじめに略標りゃくひょうの中なかに、 「謹按きんあん」 といふは発端ほったんの言ことば。 「浄じょう土ど」 とらは、 まづ宗しゅうの名なを標ひょうして、 所説しょせつの真しんなることを顕あらわす。

△初ニ略標ノ中ニ、言↢「▲謹按ト」↡者発端之言。「▲浄土ト」等者、先ヅ標シテ↢宗ノ名ヲ↡、顕ス↢所説ノ真ナルコトヲ↡。

「真しん宗しゅう」 といふは、 すなはち浄じょう土ど宗しゅうなり。 ¬散善さんぜん義ぎ¼ にいはく、 「真しん宗しゅう遇あひがたし。」 以上 ¬五会ごえ讃さん¼ (巻本) にいはく、 「念仏ねんぶつ成じょう仏ぶつはこれ真しん宗しゅうなり。」 以上

-言↢「▲真宗ト」↡者、即浄土宗也。¬散善義ニ¼云ク、「▲真宗叵↠遇。」 已上 ¬五会讃ニ¼云ク、「▲念仏成仏ハ是 レ真宗ナリ。」 已上

問とふ。 ¬五会ごえ讃さん¼ (巻本) の中なかに、 ¬*大だい般若はんにゃ経きょう¼ によりて六根ろっこんを離はなるる讃さんを作つくるにいはく、 「色しき性しょう本来ほんらいより障しょう礙げなし、 来らいなく去こなきはこれ真しん宗しゅうなり。」 以上 声性しょうしょう・香こう性しょう・味み性しょう・触そく性しょう・法ほう性しょう、 みな同おなじ。 これ般若はんにゃをもつて真しん宗しゅうと名なづくるか。

-問。¬五会讃ノ¼中ニ、依↢¬大般若経ニ¼↡作ルニ↧離ルヽ↢六根ヲ↡讃ヲ↥云1010ク、「色性本来ヨリ无シ↢障↡、无↠来无キハ↠去是 レ真宗ナリ。」 已上 声性・香性・味性・触性・法性、皆同ジ。是 レ以テ↢般若ヲ↡名ル↢真宗ト↡歟。

また耆ぎ闍しゃ法ほっ師し六ろく宗しゅうを立たつる時とき、 一いちには ¬*毘び曇どん¼ をもつて因縁いんねん宗しゅうと名なづく、 二にには ¬*成じょう実じつ¼ をもつて仮け名みょう宗しゅうと名なづく、 三さんには ¬*大品だいぼん¼ および同おなじき ¬*大論だいろん¼ をもつて誑相おうそう宗しゅうと名なづく、 四しには ¬*涅ね槃はん¼ ならびに ¬*華け厳ごん経ぎょう¼ をもつて常住じょうじゅう宗しゅうと名なづく、 五ごには ¬*法ほっ華け¼ をもつて名なづけて真しん宗しゅうという、 六ろくには ¬*大だい集じゅう¼ をもつて名なづけて円えん宗しゅうといふ。 この義ぎのごとくならば、 真しん宗しゅうの名な、 まさしく ¬法ほっ華け¼ にあり。 なんぞ浄教じょうきょうに限かぎりて独ひとり真しん宗しゅうと名なづくる。

-又耆闍法師立ル↢六宗ヲ↡時、一ニハ以テ↢¬毘曇ヲ¼↡名ク↢因縁宗ト↡、二ニハ以テ↢¬成実ヲ¼↡名ク↢仮名宗ト↡、三ニハ以テ↢¬大品¼及ビ同キ¬大論ヲ¼↡名ク↢誑相宗ト↡、四ニハ以テ↢¬涅槃¼ニ¬華厳経ヲ¼↡名ク↢常住宗ト↡、五ニハ以テ↢¬法*花ヲ¼↡名テ曰フ↢真宗ト↡、六ニハ以テ↢¬大集ヲ¼↡名テ曰フ↢円宗ト↡。如ナラ↢此ノ義ノ↡者、真宗之名、正ク在リ↢¬法*花ニ¼↡。何ゾ限テ↢浄教ニ↡独名ル↢真宗ト↡。

答こたふ。 六根ろっこんを離はなるる讃さん、 ¬般若はんにゃ¼ によるといへども、 すでにこれ ¬浄じょう土ど五会ごえ讃さん¼ の文もんなり。 これすなはち浄じょう土どの法ほっ性しょう常じょう楽らく、 畢ひっ竟きょう無む生しょう甚深じんじんの理り、 ひそかに般若はんにゃ無む相そうの空くう理りに契かなふ。 ゆゑに真しん宗しゅうの名な、 かならずしも般若はんにゃならず。 これ浄じょう土どに被かぶらしむ。 次つぎに耆ぎ闍しゃ法ほっ師しの立りゅう名みょうに至いたりては、 法ほっ華けと弥陀みだと、 内ない証しょう同体どうたいなり。 かれは為い聖しょうの教きょう、 これは為い凡ぼんの教きょう。 所しょ被ひの機き、 聖しょう凡ぼん殊ことなりといへども、 所説しょせつの法ほう、 ともにこれ一いち乗じょう、 真しん宗しゅうの称しょう、 彼此ひしひそかに通つうず。 これはこれ*今こん家げ不共ふぐの別べっ意ちなり。 総そうじてこれをいはば、 広ひろく仏ぶっ教きょうにおいて真しん宗しゅうの名なを立たつること、 また遮しゃするところにあらず。

-答。離ルヽ↢六根ヲ↡讃、雖ヘ↠依ルト↢¬般若ニ¼↡、既ニ是 レ¬浄土五会讃ノ¼文ナリ。是 レ則浄土ノ法性常楽、畢竟无生甚深ノ之理、冥ニ契フ↢般若无相ノ空理ニ↡。故ニ真宗ノ名、不↢必シモ般若ナラ↡。是 レ被シム↢浄土ニ↡。次ニ至テハ↢耆闍法師ノ立名ニ↡、法*花ト弥陀ト、内証同体ナリ。彼ハ為聖ノ教、此ハ為凡ノ教。所被ノ之機、聖凡雖↠殊ナリト、所説之法、共ニ是 レ一乗、真宗之称、彼此密ニ通ズ。此ハ是今家不共ノ別意ナリ。総ジテ而言ハヾ↠之ヲ、広ク於テ↢仏教ニ↡立ルコト↢真宗ノ名ヲ↡、又非ズ↠所ニ↠遮スル。

圭峰けいほうの ¬盂蘭うら盆ぼん経ぎょうの疏しょ¼ (巻上) にいはく、 「まことに真しん宗しゅうによりていまだ至いたらず、 周しゅう孔こうしばらく心しんを繋かけしむ。」 以上 霊れい芝しの同おなじき ¬新しん記き¼ (盂蘭盆経疏新記巻上) にこれを釈しゃくしていはく、 「真しん宗しゅうはすなはち仏ぶっ教きょうなり。」 以上

-圭峯ノ¬盂蘭盆経ノ疏ニ¼云ク、「良ニ由テ↢真宗↡未ダ↠至ラ、周孔且ク使ム↠繋ケ↠心ヲ。」 已上 霊芝ノ同キ¬新記ニ¼釈シテ↠之ヲ云ク、「真宗ハ即仏教ナリ。」 已上

この義ぎ辺へんによれば、 ¬五会ごえ¼ と六ろく宗しゅう所しょ立りゅうの名なと、 また限かぎるところなし。 通別つうべつの両りょう意い、 ならびにこれを存ぞんずべし。

-依レバ↢此ノ義辺ニ↡、¬五会ト¼六宗所立之名ト、又无シ↠所↠限ル。通別ノ両意、並ニ可シ↠存ズ↠之ヲ。

ただし真しん宗しゅうの名な、 念仏ねんぶつ門もんにおいて、 ことにその理りあり。 ¬大だい経きょう¼ (巻上) には説ときて 「真実しんじつ之し利り」 となし、 ¬小経しょうきょう¼ にはまた 「説せつ誠じょう実じつ言ごん」 といふ。 一代いちだいの教きょうの中なかに、 実じつに凡ぼん夫ぶ出しゅつ離りの要道ようどうたり。 真実しんじつの宗しゅう旨し、 その義ぎ知しるべし。

-但シ真宗ノ名、於テ↢念仏門ニ↡、殊ニ有リ↢其ノ理↡。¬大経ニハ¼説テ為シ↢「▲真実之利ト」↡、¬小経ニハ¼亦云フ↢「▲説誠実言ト」↡。一代ノ教ノ中ニ、実1011ニ為タリ↢凡夫出離ノ要道↡。真実ノ宗旨、其ノ義応↠知。

「二に種しゅの回え向こう」 ありとらいふは、 ¬論ろんの註ちゅう¼ より出いでたり。

-言↧有ト↢「▲二種ノ廻向」↡等↥者、出タリ↠自↢¬論ノ註¼↡。

かの ¬註ちゅう¼ の下げ巻かんに解義げぎ分ぶんを明あかすとして十重じゅうじゅうを立たつる中なかの、 第だい二にの起き観かん生しょう信しんの章しょう門もんに本論ほんろんの文もんを引ひきていはく、 「いかなるか回え向こう、 一切いっさい苦く悩のうの衆しゅ生じょうを捨すてずして、 心しんにつねに作さ願がんすらく。 回え向こうを首しゅとなして、 大だい悲ひ心しんを成じょう就じゅすることを得えたまへるがゆゑに。」 以上

-彼ノ¬註ノ¼下巻ニ明ストシテ↢解義分ヲ↡立ル↢十重ヲ↡中ニ、第二ノ起観生信ノ章門ニ引テ↢本論ノ文ヲ↡云ク、「▲云何ナルカ廻向、不シテ↠捨↢一切苦悩ノ衆生ヲ↡、心ニ常ニ作願スラク。廻向ヲ為シテ↠首ト、得タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ大悲心ヲ↡故ニ。」 已上

¬註ちゅう¼ (論註巻下) にいはく、 「回え向こうに二に種しゅの相そうあり。 一いちには往相おうそう、 二にには還相げんそう。 往相おうそうとは、 おのれが功く徳どくをもつて 一切いっさい衆しゅ生じょうに回施えせして作さ願がんすらく、 ともにかの阿あ弥陀みだ如来にょらいの安楽あんらく浄じょう土どに往おう生じょうせしめんと。 還相げんそうとは、 かの国くにに生しょうじをはりて、 奢しゃ摩他また・毘婆びば舎しゃ那な・方便ほうべん力りき成じょう就じゅすることを得えて生しょう死じの*稠ちゅう林りんに回え入にゅうして一切いっさい衆しゅ生じょうを教きょう化けして、 ともに仏道ぶつどうに向むかへしむるなり。 もしは往おうもしは還げん、 みな衆しゅ生じょうを抜ぬきて生しょう死じ海かいを渡どさんがたり。 このゆゑに回え向こう為い首しゅ成じょう就じゅ大だい悲ひ心しん故こといへり」 。 以上

-¬註ニ¼云ク、「▲廻向ニ有リ↢二種ノ相↡。一者往相、二者還相。◆往相ト者、以テ↢己ガ功徳ヲ↡廻↢施シテ一切衆生ニ↡作願スラク、共ニ往↢生セシメント彼阿弥陀如来ノ安楽浄土ニ↡。◆還相ト者、生ジ↢彼ノ国ニ↡已テ、得テ↢奢摩他・毘婆舎那・方便力成就スルコトヲ↡、廻↢入シテ生死ノ稠林ニ↡教↢化シテ一切衆生ヲ↡、共ニ向ヘシムルナリ↢仏道ニ↡。◆若ハ往若ハ還、皆為タリ↧抜テ↢衆生ヲ↡渡サンガ↦生死海ヲ↥。是ノ故ニ言↢廻向為首成就大悲心故ト↡。」 已上

▼問とふ。 いふところの 「回え向こう」 は、 これ衆しゅ生じょう所修しょしゅの回え向こうたりや、 はた如来にょらい所しょ作さの回え向こうたりや。

-問。所ノ↠言「廻向ハ」、是 レ為タリヤ↢衆生所修ノ廻向↡、将ハタ為タリヤ↢如来所作ノ廻向↡。

答こたふ。 五ご念ねん門もんの行ぎょうは、 もとこれ衆しゅ生じょう所修しょしゅの行ぎょうなり。 しかるにその本もとを尋たずぬれば、 ▼ひとへに仏力ぶつりきをもつて増ぞう上じょう縁えんとなして成じょう就じゅするところなるがゆゑに、 実じつをもつてしかも論ろんずれば、 諸仏しょぶつ菩ぼ薩さつみな五ご念ねんをもつて菩ぼ提だいを得うるがゆゑに、 弥陀みだの正しょう覚がくすなはち五ご念ねんを修しゅしてすみやかに成じょう就じゅすることを得えたまへり。 しかるに五ご門もんの中なかに、 この回え向こうの行ぎょうは、 往おう生じょうの後のち、 出しゅつの功く徳どくとなして大だい悲ひを成じょう就じゅして生しょう死じ海かいを度どす。 仏ぶつの本願ほんがん力りきをその本ほんとするがゆゑに、 功こうを仏ぶつに推ゆずれば、 剋こくするところただ仏ぶつの回え向こうたり。

-答。五念門ノ行ハ、本是 レ衆生所修ノ行也。而ニ尋レバ↢其ノ本ヲ↡、偏ニ以テ↢仏力ヲ↡為シテ↢増上縁ト↡所ナルガ↢成就スル↡故ニ、以テ↠実ヲ而モ論ズレバ、諸仏菩薩皆以テ↢五念ヲ↡得ルガ↢菩提ヲ↡故ニ、弥陀ノ正覚即修シテ↢五念ヲ↡速ニ得タマヘリ↢成就コトヲ↡。然ニ五門ノ中ニ、此ノ廻向ノ行ハ、往生ノ之後、為シテ↢出ノ功徳ト↡成↢就シテ大悲ヲ↡度ス↢生死海ヲ↡。仏ノ本願力ヲ為スルガ↢其ノ本ト↡故ニ、推ユヅレバ↢功ヲ於仏ニ↡、所↠剋スル唯為タリ↢仏ノ廻向↡也。

問とふ。 所しょ立りゅうの義ぎ、 その証しょうあるや。

-問。所立ノ之義、有↢其ノ証↡耶。

答こたふ。 同おなじき解義げぎ分ぶんの第だい十じゅう利り行ぎょう満足まんぞくの章しょう (論註巻下) にいはく、 「また五ご種しゅの門もんあり漸ぜん次じに五ご種しゅの功く徳どくを成じょう就じゅす、 乃至 出しゅつ第だい五ご門もんとは、 大だい慈悲じひをもつて一切いっさい苦く悩のうの衆しゅ生じょうを観察かんざつして、 応おう化げ身しんを示しめし、 生しょう死じの園その、 煩悩ぼんのうの林はやしの中なかに回え入にゅうして、 神通じんずうに遊戯ゆげして教きょう化け地じに至いたる。 本願ほんがん力りきの回え向こうをもつてのゆゑに。 これを出しゅつ第だい五ご門もんと名なづく。 乃至 菩ぼ薩さつかくのごとく五ご門もんの行ぎょうを修しゅして自利じり利他りたして、 すみやかに阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを成じょう就じゅすることを得うるがゆゑに。」 以上

-答。同キ解義分ノ第十利行満足ノ章ニ云ク、「▲復有リ↢五種ノ門↡漸次ニ成↢就1012ス五種ノ功徳ヲ↡、 乃至 ▲出第五門ト者、以テ↢大慈悲ヲ↡観↢察シテ一切苦悩ノ衆生ヲ↡、示シ↢応化身ヲ↡、廻↢入シテ生死ノ園、煩悩ノ林ノ中ニ↡、遊↢戯シテ神通ニ↡至ル↢教化地ニ↡。以ノ↢本願力ノ廻向ヲ↡故ニ。是ヲ名↢出第五門ト↡。 乃至 ▲菩薩如ク↠是ノ修シテ↢五門ノ行ヲ↡自利々他シテ、速ニ得ガ↣成↢就スルコトヲ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡故。」 已上

¬註ちゅう¼ (論註巻下) にいはく、 「問とふていはく、 なんの因縁いんねんありてかすみやかに阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを成じょう就じゅすることを得うといふや。 答こたへていはく、 ¬論ろん¼ にいはく、 五ご門もんの行ぎょうを修しゅして、 自利じり利他りた成じょう就じゅするをもつてのゆゑに。 しかるに覈あきらかにその本もとを求もとむるに、 阿あ弥陀みだ如来にょらいを増ぞう上じょう縁えんとなす。 他利たりと利他りたと、 談だんずるに左右さうあり。 もし仏ぶつよりしていはば、 よろしく利他りたといふべし。 衆しゅ生じょうよりしていはば、 よろしく他利たりといふべし。 いままさに仏力ぶつりきを談だんぜんとす。 このゆゑに利他りたをもつてこれをいふ。 まさに知しるべしこの意こころなり。 おほよそこれかの浄じょう土どに生しょうずると、 およびかの菩ぼ薩さつ人にん天でん所しょ起きの諸しょ行ぎょうと、 みな阿あ弥陀みだ如来にょらいの本願ほんがん力りきによるがゆゑなり。 なにをもつてかこれをいふとならば、 もし仏力ぶつりきにあらずは、 四し十じゅう八願はちがんすなはちこれいたづらに設もうくるならん。」 以い上じょうこの釈しゃく文もん第だい二に巻かんにこれを引ひく。

¬註ニ¼云ク、「▲問曰、有テカ↢何ノ因縁↡、言フヤ↤速ニ得ト↣成↢就スルコトヲ阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。◆答曰ク、¬論ニ¼言ク、修シテ↢五門ノ行ヲ↡、以テノ↢自利利他成就スルヲ↡故ニ。◆然ニ覈アキラカニ求ニ↢其ノ本ヲ↡、阿弥陀如来ヲ為ス↢増上縁ト↡。◆他利ト之与↢利他↡、談ズルニ有リ↢左右↡。若シ自シテ↠仏而言ハヾ、宜クシ↠言↢利他ト↡。自シテ↢衆生↡而言ハヾ、宜クシ↠言↢他利ト↡。今将 ス ニ↠談ゼント↢仏力ヲ↡。是ノ故ニ以テ↢利他ヲ↡言フ↠之ヲ。当ニ↠知此ノ意也。◆凡ソ是 レ生ズルト↢彼ノ浄土ニ↡、及ビ彼ノ菩薩人天所起ノ諸行ト、皆縁ヨルガ↢阿弥陀如来ノ本願力ニ↡故ナリ。何ヲ以テカ言フトナラバ↠之ヲ、若シ非ズハ↢仏力ニ↡、四十八願便是 レ徒ニ設クルナラン。」 已上此ノ釈文▲第二巻引↠之

今こん家げことに如来にょらい他た力りき回え向こうの義ぎを立たつること、 もつぱらこの文もんによる。

-今家特ニ立コト↢如来他力廻向之義ヲ↡、専ラ依ル↢此ノ文ニ↡。

【21】「それ真実しんじつの教きょうを顕あらわさば」 とらは、

「▲夫レ顕サ↢真実ノ教ヲ↡者バト」等ラ者、

△問とふ。 現げん行ぎょうの本ほんには 「無む量りょう寿じゅ経きょう」 といふ、 「大だい」 の字じを安あんぜず。 いまなんぞこれを加くわふる。

-問。現行ノ本ニハ云フ↢「无量寿経ト」↡、不↠安ゼ↢「大ノ」字ヲ↡。今何ゾ加ル↠之ヲ。

答こたふ。 いまこの ¬経きょう¼ において広こう略りゃくの名なあり。 広こうは経きょう題だいのごとし。 略名りゃくみょうを称しょうする時ときこれを 「大だい経きょう」 といふ。 大だい部ぶの辺へんによれば多たの義ぎに相応そうおうす。 仏願ぶつがんを説とくに約やくすれば勝しょうの義ぎに符ふ順じゅんす。 多た勝しょうの義ぎを標ひょうすゆゑに 「大だい」 の字じを加くわふ。 崇そう重じゅうの義ぎなり。

-答。今於テ↢此ノ¬経ニ¼↡有リ↢広略ノ名↡。広ハ如シ↢経題ノ↡。称スル↢略名ヲ↡時謂フ↢之ヲ「大経ト」↡。依レバ↢大部ノ辺ニ↡相↢応ス多ノ義ニ↡。約スレバ↠説ニ↢仏願ヲ↡符↢順ス勝ノ義ニ↡。標ス↢多勝ノ義ヲ↡故ニ加フ↢「大ノ」字ヲ↡。崇重ノ義也。

問とふ。 異い訳やくの経きょうの中なかにはすでに 「大だい阿あ弥陀みだ経きょう」 の名なあり、 おそらくは混乱こんらんすべし、 いかん。

-問。異訳ノ経ノ中ニハ既ニ有リ↢「大阿弥陀経ノ」名↡、恐ハ可シ↢混乱ス↡、如何。

答こたふ。 かれは梵ぼん語ごによる、 これは漢音かんおんを用もちゐる。 たとひ 「大だい」 の字じありともなんぞ混乱こんらんせんや。

答。彼ハ依ル↢梵1013語ニ↡、此ハ用ル↢漢音ヲ↡。縦ヒ有リトモ↢「大ノ」字↡何ゾ混乱セン耶。

問とふ。 この義ぎは今こん家げわたくしの意い巧ぎょうか、 もし証しょうありや。

-問。此ノ義ハ今家私ノ意巧歟、若シ有リ↠証乎。

答こたふ。 その文もん証しょうあり。 ¬五会ごえ讃さん¼ (巻本) にいはく、 「いま ¬大だい無む量りょう寿じゅ経きょう¼ の五会ごえの念仏ねんぶつによる。」 以上 またいはく、 「問とふていはく、 五会ごえの念仏ねんぶつ、 出いでていづれの文もんにかある。 答こたへていはく、 ¬大だい無む量りょう寿じゅ経きょう¼ にいはく、 あるいは宝樹ほうじゅあり、 車しゃ渠こを本ほんとす。 乃至 不ふ退転たいてんに住じゅうして仏道ぶつどうを成なるに至いたる。」 以上

-答。有↢其ノ文証↡。¬五会讃ニ¼云、「今依↢¬大无量寿経ノ¼五会ノ念仏ニ↡。」 已上 又云、「問曰、五会ノ念仏、出デヽ在ル↢何ノ文ニカ↡。答曰、¬大无量寿経ニ¼云ク、或ハ有リ↢宝樹↡、車渠ヲ為↠本ト。 乃至 住シテ↢不退転ニ↡至ル↠成ニ↢仏道ヲ↡。」 已上

問とふ。 この ¬*双巻そうかん経ぎょう¼ の翻訳ほんやくいづれの時ときぞ、 また異い訳やくにおいていくばくの種しゅかあるや。

-問。此ノ¬双巻経¼翻訳何レノ時ゾ、又於テ↢異訳ニ↡有↢幾クノ種カ↡耶。

答こたふ。 この二に巻かんの ¬経きょう¼ は、 曹そう魏ぎの代だいに当あたりて印いん度どの三蔵さんぞう*康こう僧鎧そうがい訳やくす。 いまこの ¬経きょう¼ は、 第だい四し代だいに当あたる。 異い訳やくの差しゃにおいて、 ¬内典ないてん録ろく¼・¬衆しゅ経きょう目録もくろく¼・¬*楽邦らくほう文類もんるい¼・¬*貞元ていげんの録ろく¼ 等とう諸録しょろくの意こころによるに、 おほよそこの経きょうに十じゅう二に代だいの訳やくあり。 しかるにその中なかにおいて、 *↓五ご存ぞん↓七欠しちけつなり。

-答。此ノ二巻ノ¬経ハ¼、当テ↢曹魏ノ代ニ↡印度ノ三蔵康僧鎧訳ス。今此ノ¬経¼者、当ル↢第四代ニ↡。於テ↢異訳ノ差ニ↡、依ニ↢¬内典録¼・¬衆経目録¼・¬楽邦文類¼・¬貞元ノ録¼等諸録之意ニ↡、凡ノ此ノ経ニ有リ↢十二代ノ訳↡。而ニ於テ↢其ノ中ニ↡、五存七闕ナリ。

↑五ご存ぞんといふは、 一いちには ¬*無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等どう覚がく経きょう¼ 二に巻かん、 月げっ氏しの沙門しゃもん*支婁しる迦か懴せん、 後ご漢かんの代だいに訳やくす。 これ第だい二に代だいなり。

-言↢五存ト↡者、一ニハ¬无量清浄平等覚経¼二巻、月氏ノ沙門支婁迦懴、後漢ノ代ニ訳ス。是 レ第二代ナリ。

二にには ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ 二に巻かん、 ¬*大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ と称しょうするこれなり。 月げっ氏しの優婆うば塞そく*支し謙けん、 字あざな恭明きょうみょう、 呉ごの代だいに当あたりて訳やくす。 これ第だい三代さんだいなり。

-二ニハ¬阿弥陀経¼二巻、称スル↢¬大阿弥陀経ト¼是也。月氏ノ優婆塞支謙、字恭明、当テ↢呉ノ代ニ↡訳ス。是 レ第三代ナリ。

三さんにはいまの経きょうこれなり。 第だい四し代だいに当あたる。

-三今ノ経是也。当ル↢第四代ニ↡。

四しには ¬*大だい宝ほう積しゃく経きょう¼ の 「*無む量りょう寿じゅ会え」 二に巻かん、 印いん度どの三蔵さんぞう*菩ぼ提だい流支るし ここには覚愛かくあいといふ、 大唐だいとうの代だいに訳やくす。 この ¬経きょう¼ 一いっ百ぴゃく二に十じっ巻かんの中なかに、 第だい十じゅう七しちと八はちと、 一いっ経きょう四し十じゅう九会くえの中なかにこれ第だい五会ごえ。 第だい十じゅう一代いちだいなり。

-四¬大宝積経ノ¼「无量寿会」二巻、印度ノ三蔵菩提流支 此ニハ云↢覚愛↡ 大唐ノ代ニ訳ス。此ノ¬経¼一百二十巻ノ中ニ、第十七ト八ト、一経四十九会之中ニ是 レ第五会。第十一代ナリ。

五ごには ¬*大だい乗じょう無む量りょう寿じゅ荘しょう厳ごん経ぎょう¼ 三巻さんかん、 西天さいてんの沙門しゃもん*法賢ほうけん三蔵さんぞう、 大宋だいそうの代だいに訳やくす。 第だい十じゅう二に代だいなり。

-五¬大乗无量寿荘厳経¼三巻、西天ノ沙門法賢三蔵、大宋ノ代ニ訳ス。第十二代ナリ。

↑七欠しちけつといふは、 ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 二に巻かん、 安息あんそく国こくの沙門しゃもん安清あんせい、 字あざな世高せいこう、 後ご漢かんの代だいに訳やくす。 これ第だい一代いちだいなり。

-言↢七闕ト↡者、¬无量寿経¼二巻、安息国ノ沙門安清、字世高、後漢ノ代1014ニ訳ス。是 レ第一代ナリ。

二ににまた ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 二に巻かん、 西域さいいきの沙門しゃもん帛延はくえん、 曹そう魏ぎの代だいに訳やくす。 これ第だい五ご代だいなり。

-二又¬无量寿経¼二巻、西域ノ沙門帛延、曹魏ノ代ニ訳ス。是 レ第五代ナリ。

三さんににまた ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 二に巻かん、 沙門しゃもん竺じくの曇どん摩羅まら密みつ ここには法ほう護ごといふ、 晋しんの代だいに当あたりて訳やくす。 これ第だい六代ろくだいなり。

-三又¬无量寿経¼二巻、沙門竺ノ曇摩羅密 此云↢法護↡、当テ↢晋ノ代ニ↡訳ス。是第六代ナリ。

四しにまた ¬無む量りょう寿じゅ至し真しん等とう正しょう覚がく経きょう¼ 二に巻かん、 また ¬楽らく仏ぶつ土ど楽ぎょう経きょう¼ と名なづく、 また ¬極楽ごくらく仏ぶつ土ど経きょう¼ と名なづく、 西域さいいきの沙門しゃもん竺じくの法力ほうりき、 東晋とうしんの代だいに訳やくす。 これ第だい七代しちだいなり。

-四又¬无量寿至真等正覚経¼二巻、又名ク↢¬楽仏土楽経ト¼↡、又名ク↢¬極楽仏土経ト¼↡、西域ノ沙門竺ノ法力、東晋ノ代ニ訳ス。是 レ第七代ナリ。

五ごに ¬新しん無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 二に巻かん、 沙門しゃもん仏ぶつ陀だ跋ばつ陀羅だら ここには覚賢かくけんといふ、 同代どうだいに当あたりて訳やくす。 これ第だい八代はちだいなり。

-五¬新无量寿経¼二巻、沙門仏陀跋陀羅 此云↢覚賢↡、当テ↢同代↡訳ス。是第八代。

六ろくに ¬新しん無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 二に巻かん、 涼州りょうしゅうの沙門しゃもん宝雲ほううん、 宋そう代だいに当あたりて訳やくす。 これ第だい九く代だいなり。

-六¬新无量寿経¼二巻、涼州ノ沙門宝雲、当テ↢宋代ニ↡訳ス。是 レ第九代ナリ。

七しちにまた ¬新しん無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 二に巻かん、 𦋺賓けいひん国こくの沙門しゃもん曇どん摩羅まら密みつ多た ここには法ほう秀しゅうといふ、 宋そうの代だいの訳やくなり。 これ第だい十じゅう代だいなり。

-七又¬新无量寿経¼二巻、𦋺賓国ノ沙門曇摩羅密多 此云↢法秀↡、宋ノ代ノ訳也。是 レ第十代ナリ。

十じゅう二に代だいの中なかに、 ただ ¬荘しょう厳ごん経ぎょう¼ は訳やくして三巻さんかんとなす、 余よの十じゅう一代いちだいはみな二に巻かんとなす。

-十二代ノ中ニ、唯¬荘厳経ハ¼訳シテ為ス↢三巻ト↡、余ノ十一代ハ皆為ス↢二巻ト↡。

二 Ⅱ ⅰ d イ (二)大意

【22】大たい意いを叙じょする中なかに、

△叙スル↢大意ヲ↡中ニ、

「弥陀みだ、 誓ちかいを超ちょう発ほつす」 とらは、 重じゅう誓せいの偈げの意こころなり。 かの偈げ (大経巻上) に説ときていはく、 「われ超ちょう世せの願がんを建たつ、 かならず無む上じょう道どうに至いたらん。」 以上

-「▲弥陀超↢発スト於誓ヲ↡」等者、重誓ノ偈ノ意ナリ。彼ノ偈ニ説テ云ク、「▲我レ建ツ↢超世ノ願ヲ↡、必ズ至ラン↢无上道ニ↡。」 已上

「広開こうかい」 とらは、 また同おなじき偈げ (大経巻上) にいはく、 「衆しゅうのために宝蔵ほうぞうを開ひらきて、 広ひろく功く徳どくの宝ほうを施せせん。」 以上

-「▲広開ト」等者、又同キ偈ニ云ク、「▲為ニ↠衆ノ開テ↢宝蔵ヲ↡、広ク施セン↢功徳ノ宝ヲ↡。」 已上

「釈しゃ迦か」 とらは、 下しもの引文いんもんに至いたりてくはしくこれを解げすべし。

-「▲釈迦ト」等者、至テ↢▽下ノ引文ニ↡委ク可シ↠解ス↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅰ d イ (三)宗体

【23】宗しゅう体たいを明あかす中なかに、

△明ス↢宗体ヲ↡中ニ、

問とふ。 如来にょらいの本願ほんがんはすなはちこれ名みょう号ごうなり。 しからば宗しゅう体たいなんの別べつかあるや。

-問。如来ノ本願ハ即是 レ名号ナリ。然ラ者宗体有↢何ノ別カ↡耶。

答こたふ。 本願ほんがんといふは、 まづ六ろく八はちを指さす。 これをもつて宗しゅうとなす。 願々がんがんの所詮しょせんひとへに念仏ねんぶつにあり。 これをもつて体たいとなす。 このゆゑにしばらく総別そうべつをもつて異いとなす。

-答。言↢本願ト↡者、先ズ指ス↢六八ヲ↡。以テ↠之ヲ為ス↠宗ト。願々ノ所詮偏ニ在リ↢念仏ニ↡。以テ↠之ヲ為ス↠体ト。是ノ故ニ且ク以テ↢総別ヲ↡為ス↠異ト。

二 Ⅱ ⅰ d ロ 徴問

【24】次つぎに徴ちょう問もんの中なかに、

△次1015ニ徴問ノ中ニ、

問とふ。 先さきに判はんじて出しゅっ世せの大だい事じといはず。 いまなんぞかくのごとく徴ちょう問もんを設もうくや。

-問。先ニ不↣判ジテ云↢出世ノ大事ト↡。今何ゾ如ク↠此ノ設↢徴問ヲ↡耶。

答こたふ。 仏ぶつの本願ほんがんといひ仏ぶつの名みょう号ごうといひ、 出しゅつ離りの正しょう道どう、 大だい悲ひの極際ごくさい、 言ことばを発おこさずといへども、 如来にょらい出しゅっ世せの大だい事じこれにあり。 ゆゑに徴ちょう問もんするなり。

-答。云ヒ↢仏ノ本願ト↡云ヒ↢仏ノ名号ト↡、出離ノ正道、大悲ノ極際、雖ヘ↠不ト↠発サ↠言ヲ、如来出世ノ大事在リ↠之ニ。故ニ徴問スル也。

二 Ⅱ ⅰ d ハ 引文

【25】△まさしく文もんを引ひく中なかに、 またその四しあり。 いはゆる ¬大だい経きょう¼ とおよび ¬如来にょらい会え¼ と ¬平びょう等どう覚がく経きょう¼ と憬きょう興ごう師しの釈しゃくとなり。

正ク引↠文中ニ、亦有↢其ノ四↡。所謂¬▽大経ト¼及ビ▽¬如来会ト¼▽¬平等覚経ト¼▽憬興師ノ釈トナリ。

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)大経

【26】初はじめに ¬大だい経きょう¼ の中なかに、 いまの所引しょいんは、 序分じょぶんの終おわりの文もんなり。

△初ニ¬大経ノ¼中ニ、今ノ所引者、序分ノ終ノ文ナリ。

しばらく浄じょう影ようによらば、 所引しょいんの上かみの 「爾時にじ世せ尊そん」 より下しもの 「願がん楽ぎょう欲聞よくもん」 の句くに至いたるまで、 文もんを分わかちて六ろくとなす。 かの ¬疏しょ¼ (浄影大経義疏巻上意) にいはく、 「五ごに爾時にじの下しもはまさしく発ほっ起きを明あかす。 中なかに三双さんそう六ろく重じゅうあり。 初はじめに如来にょらいの現相げんそう、 次つぎに尊者そんじゃの下しもは阿あ難なんの請しょう問もん、 三さんに於是おぜの下しもは如来にょらいの審問しんもん、 四しに阿あ難なんの下しもは阿あ難なんの実答じっとう、 五ごに仏言ぶつごんの下しもは如来にょらいの嘆許たんきょ、 六ろくに対曰たいわつの下しもは阿あ難なんの楽ぎょう聞もんなり。」 以上

-且ク依ラバ↢浄影ニ↡、従↢所引ノ上ノ「爾時世尊」↡至マデ↢下ノ「願楽欲聞」之句ニ↡、分テ↠文ヲ為ス↠六ト。彼ノ¬疏ニ¼云ク、「五ニ爾時ノ下ハ正ク明ス↢発起ヲ↡。中ニ有リ↢三双六重↡。▲初ニ如来ノ現相、▲次ニ尊者ノ下ハ阿難ノ請問、▲三ニ於是ノ下ハ如来ノ審問、▲四ニ阿難ノ下ハ阿難ノ実答、▲五ニ仏言ノ下ハ如来ノ嘆許、▲六ニ対曰ノ下ハ阿難ノ楽聞ナリ。」 已上

この科か文もんの内うち、 いまの所引しょいんの文もんは、 初はじめの現相げんそうとならびに請しょう問もんの初はじめの座起ざき等とうの儀ぎを除のぞきて、 正しょう発問ほつもんの言ことば以下いげこれを引ひく。 またの下しもの如来にょらい嘆許たんきょの文もんの残のこりと、 第六だいろくの阿あ難なん楽ぎょう聞もんこれを略りゃくす、 当要とうようにあらざるがゆゑに。 初はじめの現相げんそうを除のぞくことは、 「爾時にじ世せ尊そん、 諸根しょこん悦えつ予よ、 姿し色しき清浄しょうじょう、 光顔こうげん巍々ぎぎ」 (大経巻上)、 下しもの阿あ難なんの請しょう問もんに挙あぐるところの 「今日こんにち世せ尊そん、 乃ない至し巍々ぎぎ」 に同おなじ。 このゆゑにこれを除のぞく。 また座起ざき等とうは、 請しょう問もんを致いたさんと欲ほっする前ぜん方便ほうべんなるがゆゑに、 その要ようにあらざるを除のぞきて、 まさしき発問ほつもん以下いげの文もんを引ひくらくのみ。

-此ノ科文ノ内、今ノ所引ノ文ハ、除テ↢初ノ現相トニ請問ノ初ノ座起等ノ儀ヲ↡、正発問ノ言以下引ク↠之ヲ。又ノ下ノ如来嘆許ノ文ノ残ト、第六ノ阿難楽聞略ス↠之ヲ、非ガ↢当要ニ↡故ニ。除コトハ↢初ノ現相ヲ↡、「爾時世尊、諸根悦予、姿色清浄光顔巍巍」、同ジ↢下ノ阿難ノ請問ニ所ノ↠挙ル「今日世尊、乃至巍々」ニ↡。是ノ故ニ除ク↠之ヲ。又座起等ハ、欲スル↠致ント↢請問ヲ↡前方便ナルガ故ニ、除テ↢其ノ非ヲ↟要ニ、引ラク↢正キ発問以下ノ文ヲ↡耳。

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅱ)請問

【27】請しょう問もんの文もんの中なかに、

△請問ノ文ノ中ニ、

「今日こんにち」 といふは、 上かみの 「爾時にじ」 (大経巻上) を指さす。 *義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) いはく、 「爾時にじとは、 いはく大衆だいしゅすでに集あつまり、 如来にょらい説とかんと欲ほっして、 まづ相そうを現げんじたまふ時ときなり」。

-言↢「▲今日ト」↡者指ス↢上ノ「▲爾時ヲ」↡。義寂云、「爾時ト者、謂ク大衆1016已ニ集マリ、如来欲シテ↠説ント、先ヅ現ジタマフ↠相ヲ時也。」

「諸根しょこん」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上) いはく、 「眼等げんとうの五ご根こん、 同おなじく喜き相そうを現げんずるを根こん悦えつ予よと名なづく。 姿し色しき清浄しょうじょうは喜き色しきを示じ現げんす。 色しき惨戚ざんせきなきがゆゑに、 清浄しょうじょうといふ。 光こう巍々ぎぎといふは、 重かさねて喜き色しきを顕あらわす。 顔げん巍々ぎぎといふは、 重かさねて喜き相そうを顕あらわす。 巍々ぎぎはこれその高こう勝しょうの貌かたちなり。」 以上 憬きょう興ごうおほきに同おなじ。

-「▲諸根ト」等者、浄影云、「眼等ノ五根、同ク現ズルヲ↢喜相ヲ↡名ク↢根悦予ト↡。姿色清浄ハ示↢現ス喜色ヲ↡。色ニ无ガ↢惨イタミ 戚ウレフ↡故、曰フ↢清浄ト↡。言↢光巍々ト↡、重テ顕ス↢喜色ヲ↡。言↢顔巍々ト↡者、重テ顕ス↢喜相ヲ↡。巍々ハ是 レ其ノ高勝之*貌カタチナリ。」 已上 憬興大ニ同ジ。

義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) のいはく、 「眼等げんとうの諸根しょこん、 熙き然ねんとして舒泰じょたいなり。 姿し色しき清浄しょうじょうとは、 姿し容よう色像しきぞう静しずかにして澄ちょう淵えんのごとし。 光顔こうげん巍々ぎぎとは、 光こう輝き顔げん貌みょう厳然ごんねんとして観みつべし、 まさに奇き特どくの法ほうを宣説せんぜつせんと欲ほっす。 このゆゑにまづ非ひ常じょうの相そうを現げんわず。」 以上

-義寂ノ云、「眼等ノ諸根、熙ヨロコブ然トシテ舒泰ナリ。姿色清浄ト者、姿容色像静ニシテ若シ↢澄淵ノ↡。光顔巍々ト者、光輝顔*貌厳然トシテ可シ↠観ツ、将ニ欲ス↣宣↢説セント奇特之法ヲ↡。是ノ故ニ先ヅ現ズ↢非常ノ相ヲ↡也。」 已上

「如にょ明みょう」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上) のいはく、 「鏡かがみの光ひかり外ほかに照てらすを名なづけて影よう表ひょうとなす、 外げ照しょうの光ひかり明あきらかにして鏡かがみの内うちに顕あらわるるを名なづけて影よう裏りとなす。 仏身ぶっしんもかくのごとし。 光こう明みょう外ほかに照てらして施ほどこすところの光ひかり、 仏身ぶっしんを顕耀けんようするを影よう表ひょう裏りと名なづく。」 以上

-「▲如明ト」等者、浄影ノ云、「鏡ノ光外ニ照ヲ名テ為ス↢影表ト↡、外照之光明ニシテ顕ルヽヲ↢鏡ノ内ニ↡名テ為ス↢影裏ト↡。仏身モ如シ↠是ノ。光明外ニ照シテ所ノ↠施之光、顕↢耀スルヲ仏身ヲ↡名ク↢影表裏ト↡。」 已上

*嘉か祥じょう (大経義疏) のいはく、 「表ひょう裏りとは、 表ひょうはその形かたちを語あらわす、 裏りは心悦しんえつを明あかす。」 以上 憬きょう興ごう (述文賛巻中意) のいはく、 「鏡かがみの光ひかり外ほかに照てらすを名なづけて影よう表ひょうとなす。 すなはち仏身ぶっしんの光こう明みょう外ほかに舒のびて影かげ表ひょう裏りに暢とおるに同おなじ。 すなはちおのれが所しょ視しを挙あぐ。」 以上 義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) のいはく、 「いはく明鏡みょうきょうの面おもて極ごく浄じょうなるがゆゑに艶采えんさい外ほかに将いて還かえりてみづから内うちに映ようずるがごとし。 如来にょらいの容色ようしき顕耀けんようすることこれに同おなじ。」 以上

-嘉祥ノ云ク、「表裏ト者、表ハ語ス↢其ノ形ヲ↡、裏ハ明ス↢心悦ヲ↡。」 已上 憬興ノ云ク、「鏡ノ光外ニ照ヲ名テ為ス↢影表ト↡。即同ジ↣仏身ノ光明外ニ舒ビテ影暢ルニ↢表裏ニ↡。即挙グ↢己ガ所視ヲ↡也。」 已上 義寂ノ云、「謂ク如シ↢明鏡ノ面極浄ナルガ故ニ艶采外ニ将テ還テ自ミ 内ニ映ズルガ↡。如来ノ容色顕耀スルコト同ジ↠此ニ。」 已上

「唯然ゆいねん」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上) のいはく、 「唯ゆいはこれ専せんの義ぎ、 おのれが専念せんねんを彰あらわす。 乃至 然ねんはいはく爾になり、 己こ心しん中ちゅうの所念しょねん実じつにしかることを彰あらわす。」 以上 義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) いはく、 「唯然ゆいねん大だい聖しょうとは、 所念しょねんを申のぶるなり。 中なかにおいてまづまさしく申のべ、 後のちに比ひ決けつす。 乃至 敬うやまひてかの旨むねを諾うべなふなり。 すでに聖しょう旨しを蒙こうぶりて教おしふるところ、 これに従したがふゆゑに明あきらかにしかるなり。 我が心しん念言ねんごんとは、 みづからの所念しょねんを申のぶ。」 以上

-「▲唯然ト」等者、浄影ノ云ク、「唯ハ是 レ専ノ義、彰ス↢己ガ専念ヲ↡。 乃至 然ハ謂ク爾也、彰ス↢己心中ノ所念実ニ爾コトヲ↡。」 已上 義寂云、「唯然大聖ト者、申ノブルナリ↢所念ヲ↡也。於テ↠中ニ先ヅ正ク申ノベ、後ニ比决ス。 乃至 敬テ諾↢彼ノ旨ヲ↡也。既ニ蒙テ↢聖旨ヲ↡所↠教ル、斯レニ従フ故ニ明ニ然也。我心念言ト者、申ノブ↢自ノ所念ヲ↡也。」 已上

「今曰こんにち世せ尊そん住じゅう奇き特どく法ほう」 とらは、 興ごうは下しもに引ひくがごとし。 *法ほう位いこれに同おなじ。

-「▲今曰世尊住奇1017特法ト」等者、興ハ▲如シ↢下ニ引クガ↡。法位同ジ↠之ニ。

浄じょう影ようの意こころ (大経義疏巻上意) のいはく、 「初はじめの句くはこれ総そう。 仏ぶつ所しょ住じゅうの法ほう余よ人にんに超こえたるがゆゑに、 奇き特どく法ほうと名なづく。 後のちの四しはこれ別べつ。 この別べつの中なかにおいて、 初はじめの句くは自じ徳とく、 すなはちこれ涅ね槃はん、 諸仏しょぶつ同おなじく住じゅうす、 ゆゑに仏ぶつ住じゅうといふ。 世せにおいて猛みょうたり、 ゆゑに世せ雄おうと名なづく。 次つぎの句くは利他りた、 いはく四し摂しょう等とうなり。 この行ぎょうに住じゅうするがゆゑに人ひとを導みちびきて正しょうを見みせしむ、 ゆゑに世せ眼げんと名なづく。 第三だいさんの句くは自じ徳とく、 すなはちこれ菩ぼ提だい、 ここに住じゅうしてよく諸仏しょぶつの徳とくを知しる。 世せにおいて英よう勝しょうなり、 ゆゑに世せ英ようと名なづく。 ▽第だい四しの句くはこれ利他りたの徳とく、 いはゆる十じゅう力りき・四し無畏むい等とうなり。 これを行ぎょうじて物ものを度どす、 五ご天てんの中なかの上じょうなり、 ゆゑに天尊てんそんと名なづく。 その五ご天てんとは、 一いちは世せ天てん 世せ間けんの人王にんのう、 二には生しょう天てん 三界さんがいの諸天しょてん、 三さんは浄じょう天てん 四果しか支し仏ぶつ、 四しは義ぎ天てん 菩ぼ薩さつよく空くう寂じゃくの義ぎを解げす、 五ごは第一だいいち義ぎ天てん 仏ぶつ仏ぶっ性しょう不ふ空くうの義ぎを解げするがゆゑに」。

浄影ノ意ノ云ク、「初ノ句ハ是 レ総。仏所住ノ法超タルガ↢余人ニ↡故ニ、名ク↢奇特法ト↡。後ノ四ハ是 レ別。於テ↢此ノ別ノ中ニ↡、初ノ句ハ自徳、即是 レ涅槃、諸仏同ク住ス、故ニ云フ↢仏住ト↡。於テ↠世ニ為タリ↠猛、故ニ名ク↢世雄ト↡。次ノ句ハ利他、謂ク四摂等ナリ。住スルガ↢此ノ行ニ↡故ニ導テ↠人ヲ見セシム↠正ヲ、故ニ名ク↢世眼ト↡。第三ノ句ハ自徳、即是 レ菩提、住シテ↠此ニ能ク知ル↢諸仏之徳ヲ↡。於テ↠世ニ英勝ナリ、故ニ名ク↢世英ト↡。第四ノ句ハ是 レ利他之徳、所謂十力・四无畏等ナリ。行ジテ↠之ヲ度ス↠物ヲ、五天ノ中ノ上ナリ、故ニ名ク↢天尊ト↡。其ノ五天ト者、一者世天 世間ノ人王、二者生天 三界ノ諸天、三者浄天 四果支仏、四者義天 菩薩善能ク解ス↢空寂ノ義ヲ↡、五者第一義天 仏解スルガ↢仏性不空ノ義ヲ↡故。」

義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) のいはく、 「略りゃくして五ご号ごうを標ひょうす。 五ご法ほうに住じゅうすとは、 ¬顕揚けんよう¼ 等とうに諸仏しょぶつの功く徳どくを説とくに、 略りゃくして五ご種しゅあり。 一いちには妙みょう色しき、 二にには寂静じゃくじょう、 三さんには勝しょう智ち、 四しには正行しょうぎょう、 五ごには威い徳とく。 乃至 今日こんにち世せ尊そん住じゅう奇き特どく法ほうとは、 すなはちこれ第一だいいちの妙みょう色しき功く徳どく。 相好そうごう荘しょう厳ごん世せに倫ともがらなきがゆゑに、 すなはちこの徳とくによりて名なづけて世せ尊そんとなす。 今日こんにち世せ雄おう住じゅう仏ぶつ所しょ住じゅうとは、 これすなはち第だい二にの寂静じゃくじょう功く徳どく。 ひそかに根門こんもんを護まもりて永ながく惑わく習じゅうを抜ぬく、 ただ仏ぶつのみ独ひとりこの法ほうに住じゅうすることを得うるがゆゑに、 すなはちこの徳とくによりて名なづけて世せ雄おうとなす。 今日こんにち世せ眼げん住じゅう導どう師し行ぎょうとは、 すなはちこれ第三だいさんの勝しょう智ち功く徳どく。 世せ非世ひせを知しりてよく衆人しゅにんを導みちびくがゆゑに、 すなはちこの徳とくによりて名なづけて世せ眼げんとなす。 今日こんにち世せ英よう住じゅう最さい勝しょう道どうとは、 すなはちこれ第だい四しの正行しょうぎょう功く徳どく。 自他じたを利り楽ぎょうして行ぎょうもつとも勝しょう導どうたるがゆゑに、 すなはちこの徳とくによりて名なづけて世せ英ようとなす。 今日こんにち天尊てんそん行ぎょう如来にょらい徳とくとは、 すなはちこれ第だい五ごの威い徳とく功く徳どく。 神通じんずう遊戯ゆげを如来にょらい徳とくと名なづく、 すなはちこの徳とくによりて名なづけて天尊てんそんとなす。」 以上

-義寂ノ云、「略シテ標ス↢五号ヲ↡。住スト↢五法ニ↡者、¬顕揚¼等ニ説ニ↢諸仏ノ功徳ヲ↡、略シテ有↢五種↡。一ニハ妙色、二ニハ寂静、三ニハ勝智、四ニハ正行、五ニハ威徳。 乃至 今日世尊住奇特法ト者、即是第一妙色功徳。相好荘厳世ニ无ガ↠倫ガラ故ニ、即由テ↢此ノ徳ニ↡名テ為ス↢世尊ト↡。今日世雄住仏所住ト者、是 レ即第二ノ寂静功徳。密ニ護テ↢根門ヲ↡永ク抜ク↢惑習ヲ↡、唯仏ノミ独得ガ↠住スルコトヲ↢此ノ法ニ↡故ニ、即由テ↢此ノ徳ニ↡、名テ為ス↢世雄ト↡。今日世眼住導師行ト者、即是 レ第三ノ勝智功徳。知テ↢世非世ヲ↡能ク導ガ↢衆人ヲ↡故ニ、即由テ↢此ノ徳ニ↡名テ為ス↢世眼ト↡。今日世英住最勝道ト者、即是 レ第四ノ正行功徳。利↢楽シテ自他ヲ↡行最モ為ガ↢勝導1018↡故ニ、即由テ↢此ノ徳ニ↡名テ為ス↢世英ト↡。今日天尊行如来徳ト者、即是第五ノ威徳功徳。神通遊戯ヲ名ク↢如来徳ト↡、即由テ↢此ノ徳ニ↡名テ為ス↢天尊ト↡。」 已上

「去こ来現らいげん仏ぶつ仏々ぶつぶつ」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上意) のいはく、 「去こ来現らいげんの下しもは仏ぶつの所しょ為いを念ねんず。もろもろの如来にょらいに勝すぐれたり、 これ所しょ為いなり。 仏々ぶつぶつ相念そうねんは余よを挙あげてこれに類るいす。 得とく無む今仏こんぶつ念ねん諸仏しょぶつ耶やとは、 これを惻はかつて余よによる。 耶やとは、 これその不ふ定じょうの辞じ、 理りをもつて測度しきたくするにいまだあえて専決せんけつせず、 このゆゑに耶やといふ。」 以上 憬きょう興ごうこれに同おなじ。

-「▲去来現仏仏仏ト」等者、浄影ノ云ク、「去来現ノ下ハ念ズ↢仏ノ所為ヲ↡。勝タリ↢諸ノ如来ニ↡、是 レ所為也。仏々相念ハ挙テ↠余ヲ類ス↠此ニ。得无今仏念諸仏耶ト者、惻ハカテ↠此ヲ因ル↠余ニ。耶ト者、是 レ其ノ不定ノ辞、以テ↠理ヲ測度スルニ未 ズ ダ↢敢テ専决セ↡、是ノ故ニ言フ↠耶ト。」 已上 憬興同ジ↠之ニ。

寂じゃく (大経義記巻上) のいはく、 「いはく三さん世ぜの仏ぶつたがひにあひ念ねんず。 所しょ住じゅうの功く徳どく、いまの仏ぶつ諸仏しょぶつを念ねんずることなきことを得えんやとは、 いはくいまの世せ尊そんかならず諸仏しょぶつの徳とくを相念そうねんすることあるなり。得とく無むといふは、 いはくかならずあるなり、 下しもに耶やを置おくがゆゑに。 すなはちわが世せ尊そん釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつ、 弥陀みだ法身ほっしん浄じょう土どの因いん果がの功く徳どくを念ねんず。 旨むねを承うけ相すがたを覩みるにかならずあることを知しるなり。」

-寂ノ云ク、「謂ク三世ノ仏更互ニ相 ヒ念ズ。所住ノ功徳、得↠无コトヲ↣今ノ仏念ズルコト↢諸仏ヲ↡耶ト者、謂ク今ノ世尊有↣必相↢念スルコト諸仏ノ徳ヲ↡也。言↢得无ト↡者、謂ク必有ルナリ也、下ニ置ガ↠耶ヲ故ニ。即我ガ世尊釈迦牟尼仏、念ズ↢於弥陀法身浄土ノ因果ノ功徳ヲ↡。承ケ↠旨ヲ覩ニ↠相ヲ知ル↢必有コトヲ↡也。」

「何故がこ威い神じん↓光々こうこう」 とらは、 浄じょう影ようのいはく、 「¬宝ほう積しゃく経きょう¼ にいはく、世せ尊そんいま大だい寂定じゃくじょうに入いりて如来にょらいの徳とくを行ぎょうず、 みなことごとく円満えんまんしてよく大だい丈じょう夫ぶの行ぎょうを建こん立りゅうしたまへり。 去こ来らい現在げんざいの諸仏しょぶつを思し惟ゆいするに、 世せ尊そんなんがゆゑぞこの念ねんに住じゅうするや。 以上 この文もんによるにわれいま仏々ぶつぶつの相念そうねんすることを思し惟ゆいするに、 釈しゃく尊そんなんぞ諸仏しょぶつの現相げんそうを知しりたまはざらんや。 しかるにいま諸仏しょぶつに超ちょう過がしてこの奇き相そうを現げんじたまふ、 なんのゆゑかあるや。」 以上

-「▲何故威神光々ト」等者、浄影ノ云ク、「¬宝積経ニ¼云ク、世尊今者入テ↢大寂定ニ↡行ズ↢如来ノ徳ヲ↡、皆悉円満シテ善能ク建↢立シタマヘリ大丈夫ノ行ヲ↡。思↢惟スルニ去来現在ノ諸仏ヲ↡、世尊何ガ故ゾ住スル↢斯ノ念ニ↡耶。 已上 依ニ↢此ノ之文ニ↡我今思↢惟スルニ仏々ノ相念スルコトヲ↡、釈尊何ゾ不ン↠知タマハ↢諸仏ノ現相ヲ↡耶。然ニ今超↢過シテ諸仏ニ↡而現ジタマフ↢此之奇相ヲ↡、有ル↢何ノ故カ↡耶。」 已上

義ぎ寂じゃく (大乗義記巻上) いはく、 「いはくもし仏々ぶつぶつ相念そうねんしたまふことあることなくは、 なんがゆゑぞ威い光こういましかくのごときや。」 以上

-義寂ノ云ク、「謂ク若シ无クハ↠有コト↢仏々相念シタマフコト↡、何ガ故ゾ威光乃シ如↠是ノ耶。」 已上

「↑光々こうこう」 といふは、 同おなじき次下つぎしも (大乗義記巻上) にいはく、 「表ひょう裏りならびに耀かがやくを名なづけて光々こうこうとなす。」 以上 憬きょう興ごう (述文賛巻中) のいはく、 「すなはち顕曜けんようの状かたちなり。 ¬梵網ぼんもう¼ の疏しょにいはく、 光々こうこうとは盛さかんなる義ぎなり。」 以上

-言↢「光々ト」↡者、同キ次下ニ云ク、「表裏並ニ耀クヲ名テ為ス↢光々ト↡。」 已上 憬興ノ云ク、「即顕曜之状カタチ也。」¬梵網1019ノ¼疏ニ云ク、「光々ト者盛ナル義也。」 已上

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅲ・Ⅳ)審問・実答

【28】「於是おぜ世せ尊そん 乃至 問もん斯義しぎ」 とは、 浄じょう影ようのごときは如来にょらいの審問しんもん、 阿あ難なんの実答じっとう、 第三だいさん・第だい四し両りょう科かの文もんなり。 義ぎ寂じゃくは名なづけて (大経義記巻上) 「審しん彼ぴ所問しょもん」 といひて、 中なかにおいて二にを分わかつ。 一いちには如来にょらいの審問しんもん、 二にには阿あ難なんの奉ぶ答とう。 分文ぶんもんいささか異ことなれども、 その意こころおほきに同おなじ。 寂じゃく (大乗義記巻上) のいはく、 「位くらい不ふ足そくに居こしてよく深じん義ぎを問とふ、 ゆゑに審問しんもんしたまふなり。 ひそかに聖しょう旨しを承うけてみづからこの問といを発おこす、 さらに諸天しょてんのわれを教おしへて問とはしむることなし。 義意ぎいかくのごとし、 わづらはしく文もんを怙こせず。」 以上

-「△於是世尊 乃至 問斯義ト」者、如↢浄影ノ↡者如来ノ審問、阿難ノ実答、第三・第四両科ノ文也。義寂ハ名テ云↢テ「審彼所問ト」↡、於テ↠中ニ分ツ↠二ヲ。一ニハ如来ノ審問、二ニハ阿難ノ奉答。分文聊異ナレドモ其ノ意大ニ同ジ。寂ノ云ク。「位居シテ↢不足ニ↡能ク問↢深義ヲ↡、故ニ審問シタマフ也。冥ニ承ケテ↢聖旨ヲ↡自ミ 発ス↢斯ノ問ヲ↡、更ニ无↢諸天ノ教テ↠我ヲ令コト↟問。義意如シ↠此ノ、不↢煩ク怙セ↟文ヲ。」 已上

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅴ)嘆許

【29】五ごに如来にょらい嘆許たんきょの中なかにまた三さん。 初はじめには所問しょもんを嘆たんじ、 二にに 「阿あ難なん当とう知ち」 の下しもは請しょう問もんを対たいす、 三さんに 「阿あ難なん諦たい聴ちょう」 の下しもは勅聴ちょくちょう許こ説せつを明あかす。

△五ニ如来嘆許ノ中ニ亦三。▽初ニハ嘆ジ↢所問ヲ↡、▽二ニ「阿難当知ノ」下ハ対ス↢請問ヲ↡、▽三ニ「阿難諦聴ノ」下ハ明ス↢勅聴許説ヲ↡。

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅴ)(ⅰ)嘆所問

△初はじめの文もんにまた三さん。 まづ慧え問もんを嘆たんじ、 次つぎに「如来にょらい」 の下しもは仏ぶっ出しゅつの難なん値ちを挙あぐ、 三さんに「今こん所しょ」 の下しもは所問しょもんの益やく多おおきことを嘆たんず。 以上

-初ノ文ニ亦三。▲先ヅ嘆ジ↢恵問ヲ↡、▽次ニ「▲如来ノ」下ハ挙グ↢仏出ノ難値ヲ↡、▽三ニ「▲今所ノ」下ハ嘆ズ↢所問ノ益多コトヲ↡。 已上

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅴ)(ⅰ)(a)慧問

【30】「善哉ぜんざい」 とらは、 義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) のいはく、 「善哉ぜんざい阿あ難なんとはその人ひとを美ほむるなり。 所問しょもん甚じん快けとはその問といを嘆たんずるなり。」

「△善哉ト」等者、義寂ノ云ク、「善哉阿難ト者美ル↢其ノ人ヲ↡也。所問甚快ト者嘆ズル↢其ノ問ヲ↡也。」

「発深ほつじん」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上) のいはく、 「発ほつ深じん智慧ちえといふはその問もん智ちを嘆たんず、 さきに仏ぶつの五ご種しゅの功く徳どくを念ねんずるを発ほつ深じん智ちと名なづく。 真しん妙みょう弁才べんざいといふはその問もん辞じを嘆たんず、 さきに仏ぶつの五ご徳とくに住じゅうするを嘆たんずるを真しん妙みょう弁べんと名なづく。 実じつを弁べんずるを真しんと名なづけ、 言ことばの巧たくみなるを妙みょうと称しょうす。 言ごんよく弁べん了りょうし語ごよく才さい巧ぎょうなり、 ゆゑに弁才べんざいといふ。」 以上 義ぎ寂じゃく (大乗義記巻上) のいはく、 「智ち聖しょう旨しに愜かなふゆゑに深ふかし、 弁べん時機じきに当あたるゆゑに妙たえなり。 智ち深ふかく弁べん妙たえなり、 ゆゑに善哉ぜんざいなり。」

-「▲発深ト」等者、浄影ノ云ク、発深智恵トイフハ嘆↢其ノ問智ヲ↡、向前サキニ念ズルヲ↢仏ノ五種ノ功徳ヲ↡名ク↢発深智ト↡。真妙弁才トイフハ嘆ズ↢其ノ問辞ヲ↡、向前ニ嘆ズルヲ↣仏ノ住スルヲ↢於五徳ニ↡名ク↢真妙弁ト↡。*弁ズルヲ↠実ヲ名ケ↠真ト、言ノ巧ナルヲ称ス↠妙ト。言能ク弁了シ語能ク才巧ナリ、故ニ曰↢弁才ト↡。」 已上 義寂ノ云ク、「智愜カナフ↢聖旨ニ↡故ニ深シ、弁当ル↢時機ニ↡故ニ妙ナリ。智深ク弁妙ナリ、故ニ善哉也。」

「愍念みんねん」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上) のいはく、 「愍みん生しょう問もん義ぎといふは、 その問といの意こころを嘆たんず。 また名なづけて問といの所しょ為いを嘆たんずとなすことを得う。 阿あ難なんさきに仏ぶつの五ご徳とくを挙あげてしかも請しょう問もんをなす。 この五ご徳とくは慧えをもつて主しゅとすれば問もん慧義えぎと名なづく。」 以上 義ぎ寂じゃく (大乗義記巻上) のいはく、 「所問しょもんただ衆しゅ生じょうを愍念みんねんすることを存そんじて名みょう利りを求もとめず、 ゆゑに甚じん快けなり。」 以上 憬きょう興ごう (述文賛巻中) のいはく、 「仏ぶつの五ご号ごうを称しょうす、 ゆゑに深じん智慧ちえを発おこすといふ。 五ご住じゅうの徳とくをもつて五ご号ごうの義ぎを嘆たんず、 ゆゑに真しん妙みょう弁才べんざいなり。」 以上

-「▲愍念1020ト」等者、浄影ノ云ク、「愍生問義トハ、嘆ズ↢其ノ問ノ意ヲ↡。亦得ウ↢名テ為コトヲ↟嘆ズト↢問ノ所為ヲ↡。阿難向前ニ挙テ↢仏ノ五徳ヲ↡而モ為ナス↢請問ヲ↡。此ノ之五徳ハ以テ↠恵ヲ為スレバ↠主ト名ク↢問恵義ト↡。」 已上 義寂ノ云ク、「所問唯存ジテ↣愍↢念スルコトヲ衆生ヲ↡不↠求↢名利ヲ↡、故ニ甚快也。」 已上 憬興ノ云ク、「称ス↢仏ノ之五号ヲ↡、故ニ発ストイフ↢深キ智恵ヲ↡。将モテ↢五住之徳ヲ↡嘆ズ↢五号ノ之義ヲ↡、故ニ真妙辨才ナリ。」 已上

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅴ)(ⅰ)(b)難値

【31】「如来にょらい以い無む蓋がい大だい悲ひ」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上意) のいはく、 「次つぎに難なん値ちの中なかにまた二に。 初はじめには法ほうの次つぎに猶ゆ霊れいの下しもは譬たとえなり。」 以上

「△如来以无蓋大悲ト」等者、浄影ノ云ク、「次ニ難値ノ中ニ亦二。初ニハ法ノ次ニ猶霊ノ下ハ譬ナリ。」 已上

初はじめの文もんの中なかに就つきて、 「無む蓋がい大だい悲ひ」 とは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上) のいはく、 「仏ぶつ悲ひ殊しゅ勝しょうにして、 上うえを蓋おおふことあたはざるを、 無む蓋がい悲ひと名なづく。」 以上 義ぎ寂じゃく (大乗義記巻上) のいはく、 「無む蓋がいといふは、 なほし無む上じょうのごとし。 さらに余よの悲ひの上うえを覆ふ蓋がいすることなきがゆゑなり。 ある本ほんには無む尽じんと作つくる、 義ぎまた爽たがふことなし。」 以上 憬きょう興ごうこれに同おなじ。 玄一げんいち師しの意こころは、 尽じんをもつて勝すぐれたりとなす。

-就↢初ノ文ノ中ニ↡、「▲无蓋大悲ト」者、浄影ノ云ク、「仏悲殊勝ニシテ、不ルヲ↠能↠蓋オホフコト↠上ヲ、名ク↢无蓋悲ト↡。」 已上 義寂ノ云ク、「▼言↢无蓋ト↡者、猶シシ↢无上ノ↡也。更ニ无ガ↣余ノ悲ノ覆↢蓋スルコト上ヲ↡故ナリ。有ル本ニハ作ル↢无尽ト↡、義亦无シ↠爽タガフコト。」 已上 憬興同ジ↠之ニ。玄一師ノ意ハ、以テ↠尽ヲ為ス↠勝タリト。

「矜哀こうあい↓三界さんがい」 とは、 憬きょう興ごう (述文賛巻中) のいはく、 「矜こうはまた憐れんなり。」 「矜こう」 ¬宋韻そういん¼ にいはく、 「拱きょう陵りょうの切せつ、 矛ぼう柄へい。」 一いちにいはく、 「愍みんなり、 荘しょうなり、 憐れんなり。」

-「▲矜哀三界ト」者、憬興ノ云ク、「矜ハ亦憐也。」「矜」¬宋韻ニ¼云ク、「拱クヰヨウ陵ノ切、矛ボウ柄」。一ニ曰ク、「愍也、荘也、憐也。」

↑三界さんがいといふは、 ¬倶く舎しゃ論ろん¼ の第だい十じゅう八はち (玄奘訳巻八世品) の頌じゅにいはく、 「地じ獄ごくと傍ぼう生しょうと鬼きと人にんとおよび六欲ろくよく天てんとを、 欲界よくかいの二に十じゅうと名なづく、 地じ獄ごくと州しゅうとの異いによる。 この上うえの十じゅう七しち処しょを色界しきかいと名なづく。 中なかにおいて三さん静じょう慮りょにおのおの三さん、 第だい四し静じょう慮りょに八はちあり。 無む色しき界かいには処しょなし、 生しょうによりて四し種しゅあり。」 以上

-言↢三界ト↡者、¬倶舎論ノ¼第十八ノ頌ニ*曰ク、「地獄ト傍生ト鬼キト人ト及ビ六欲天トヲ、名ク↢欲界ノ二十ト↡、由ル↢地獄ト州トノ異ニ↡。此ノ上ノ十七処ヲ名ク↢色界ト↡。於テ↠中ニ三静*慮ニ各三、第四静*慮八アリ。无色界ニハ无シ↠処、由テ↠生ニ有リ↢四種↡。」 已上

¬論ろんの註ちゅう¼ の上じょうにいはく、 「三界さんがい、 一いちにはこれ欲界よくかい、 いはゆる六欲ろくよく天てんと四し天てん下げと人にんと畜ちく生しょうと餓鬼がきと地じ獄ごく等とうこれなり。 二ににはこれ色界しきかい、 いはゆる初禅しょぜんと二に禅ぜんと三禅さんぜんと四し禅ぜんとの天等てんとうこれなり。 三さんにはこれ無む色しき界かい、 いはゆる空処くうしょと識処しきしょと無む所しょ有う処しょと非ひ想そう非非ひひ想そう処しょとの天等てんとうこれなり。 この三界さんがいはけだしこれ生しょう死じの凡ぼん夫ぶ流る転てんの闇宅あんたくなり。」 以上

-¬論ノ註ノ¼上ニ云ク、「▲三界、一ニハ是 レ欲界、所謂六欲天ト四天下ト人ト畜生ト餓鬼ト地獄等是 レ也1021。二ニハ是色界、所謂初禅ト二禅ト三禅ト四禅トノ天等是也。三ニハ是无色界、所謂空処ト識処ト无所有処ト非想非非想処天等是也。◆此ノ三界ハ蓋シ是 レ生死ノ凡夫流転之闇宅ナリ。」 已上

「光闡こうせん」 とらは、 教きょう法ぼう人ひとを利りするを名なづけて道どう教きょうとなす、 理りを証しょうして物ものを益やくするをもつて真実しんじつとなす。 「光こう」 は広こうなり、 「闡せん」 は暢ちょうなり、 「恵え」 は施せなり 諸しょ師しの意こころ。 いま宗しゅう義ぎによるに 「道どう教きょう」 といふは、 光ひろく一代いちだいを指さす、 ますます五ご乗じょうに亘わたる。

-「▲光闡ト」等者、▼教法利スルヲ↠人ヲ名テ為ス↢道教ト↡、証シテ↠理ヲ益スルヲ↠物ヲ以テ為ス↢真実ト↡。「光ハ」広也、「闡ハ」暢也、「恵ハ」施也 諸師ノ意。今依ニ↢宗義ニ↡言↢「道教ト」↡者、光ヒロク指ス↢一代ヲ↡、益マス亘ル↢五乗ニ↡。

「↓真実しんじつ利り」 とは、 この名みょう号ごうを指さす。 すなはちこれ仏ぶっ智ちなり。 名みょう号ごうを指さすとは、 流る通ずうの文もん (大経巻下) にいはく、「それかの仏ぶつの名みょう号ごうを聞きくことを得えて、 歓かん喜ぎ踊ゆ躍やくして、 乃ない至し一念いちねんすることあらん。 まさに知しるべし、 この人ひとは大だい利りを得うとなす。 すなはちこれ無む上じょうの功く徳どくを具ぐ足そくするなり。」 以上

-「▲真実利ト」者、▼指ス↢此ノ名号ヲ↡。即是 レ仏智ナリ。指スト↢名号ヲ↡者、流通ノ文ニ云ク、「▲其 レ有ラン↧得テ↠聞コトヲ↢彼ノ仏ノ名号ヲ↡、歓喜踊躍シテ、乃至一念スルコト↥。当ニシ↠知ル、此ノ人ハ為ス↠得ト↢大利ヲ↡。即是 レ具↢足スルナリ无上ノ功徳ヲ↡。」 已上

同どう ¬経きょう¼ (大経巻下) の文もんに、 仏ぶつの五智ごちを説ときていはく、 「疑ぎ惑わくを生しょうずる者ものは、 大だい利りを失しっすとなす。」 以上 信しんと疑ぎとに就つきてその得失とくしつを説とくに、 ともに大だい利りといふ。 名みょう号ごうを念ねんずるをもつて説ときて大だい利りとなし、 仏ぶっ智ちを疑うたがふをもつて大だい利りを失しっすとなす。 名みょう号ごうと仏ぶっ智ちとまつたくこれ一法いっぽうなり。 序分じょぶん (大経巻上) にこれを標ひょうして 「↑真実しんじつの利り」 と説とく、 よろしくこれを思し択ちゃくすべし。

-同¬経ノ¼文ニ、説テ↢仏ノ五智ヲ↡云ク、「▲生ズル↢疑惑ヲ↡者 ノハ、為ス↠失スト↢大利ヲ↡。」 已上 就テ↢信ト与 トニ↟疑説ニ↢其ノ得失↡、共ニ云フ↢大利ト↡。以テ↠念ズルヲ↢名号ヲ↡説テ為シ↢大利ト↡、以テ↠疑ヲ↢仏智ヲ↡為ス↠失スト↢大利ヲ↡。名号ト仏智ト全ク是 レ一法ナリ。序分ニ標シテ↠之ヲ説ク↢「真実ノ利ト」↡、宜クシ↢思↢択ス之ヲ↡。

次つぎに譬たとえの中なかに就つきて、 浄じょう影ようのいはく、 「霊瑞れいずい華けとは、 梵ぼんには優う曇どん波羅ぱらといふ、 また優う曇どん鉢ば樹じゅといふ。 ¬法ほっ華け文もん句ぐ¼ (巻四上釈方便品) にいはく、 「優う曇どん華げとは、 ここには霊瑞れいずいといふ。 三千さんぜん年ねんにひとたび現げんず、 現げんずればすなはち金輪こんりん王のう出いず。」 以上 霊瑞れいずいの名なこれをもつて知しるべし。

-▲次ニ就テ↢譬ノ中ニ↡、浄影ノ云、「霊瑞華ト者、梵ニハ云フ↢優曇波羅ト↡、又云フ↢優曇鉢樹ト↡。」¬法*花文句ニ¼云ク、「優曇*花ト者、此ニハ云↢霊瑞ト↡。三千年ニ一タビ現ズ、現ズレバ則金輪王出ヅ。」 已上 霊瑞之名以テ↠之ヲ可シ↠知。

この ¬経きょう¼ (大経) の下げにいはく、 「優う曇どん鉢ば華けのごとし、 希有けうにして遇あひ難がたきがゆゑに。」 以上 ¬法ほっ華け¼ の第一だいいち 「方便ほうべん品ぼん」 にいはく、 「かくのごときの妙みょう法ほうは、 諸仏しょぶつ如来にょらい時ときにいましこれを説ときたまふ。 優う曇どん鉢ば華けの時ときにひとたび現げんずるがごとくならくのみ。」 以上 また第だい八巻はちかん (法華経巻七) 「厳王ごんおう品ぼん」 にいはく、 「仏ぶつは値あふことを得うること難かたきこと、 優う曇どん波羅ばら華けのごとし。」 以上

-此ノ¬経ノ¼下ニ云、「▲如シ↢優曇鉢*花ノ↡、希有ニシテ難ガ↠遇ヒ故ニ。」 已上 ¬法花ノ¼第一「方便品ニ」云ク、「如ノ↠是ノ妙法ハ、諸仏如来時ニ乃シ説タマフ↠之ヲ。如クナラク↢優曇鉢華ノ時ニ一タビ現ズルガ↡耳ノミ。」 已上 又第八巻「厳王品ニ」云、「仏難コト↠得コト↠値コトヲ、如シ↢優曇1022波羅*花ノ↡。」 已上

「時々じじ」 といふは、 憬きょう興ごう (述文賛巻中) のいはく、 「希け出しゅつの義ぎ、 善ぜん時じをもつて出いずるがゆゑに。」 以上

-言↢「▲時々ト」↡者、憬興ノ云、「希出之義、以テ↢善時ヲ↡出ガ故ニ。」 已上

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅴ)(ⅰ)(c)益多

【32】「今こん所問しょもん」 の下しも、 「天てん人民にんみん」 に至いたる、 仏ぶつ所問しょもんの益やく多おおきことを嘆たんずる文もんなり。

「△今所問ノ」下至↢「天人民ニ」↡、仏嘆ズル↢所問ノ益多コトヲ↡文也。

二 Ⅱ ⅰ d ハ (一)(Ⅴ)(ⅱ)対請問

「阿あ難なん」 とらは、 浄じょう影よう (大経義疏巻上意) のいはく、 「二にに請しょう問もんに対たいする中なかにまた二に。 初はじめに請しょう問もんを述成じゅつじょうし、 次つぎに所しょ以いの下しもは因いんを挙あげて果か徳とくを結けっす。 初はじめの文もんにまた二に。 まづ阿あ難なんの所問しょもんを述のべ、 次つぎに以い一いちの下しもは阿あ難なんの所見しょけんを述のぶ。」 以上

-「△阿難ト」等者、浄影ノ云ク、「二ニ対スル↢請問ニ↡中ニ亦二。初述↢成シ請問ヲ↡、次ニ所以ノ下ハ挙テ↠因ヲ結ス↢果徳ヲ↡。初ノ文ニ亦二。先ヅ述ベ↢阿難ノ所問ヲ↡、次ニ以一ノ下ハ述ブ↢阿難ノ所見ヲ↡。」 已上

初はじめにまづ阿あ難なんの所問しょもんを述のぶるに就つきて、 相対そうたいするに異いあり。 浄じょう影よう (大経義疏巻上意) のいはく、 「如来にょらいとらは、 これに五句ごくあり。 初はじめの一いっ句くは総そう、 後のちの四句しくは別べつなり。 これすなはち前さきの五ご徳とくを述成じゅつじょうす。 いはく如来にょらい覚かくは前さきの奇き特どくを述じゅつす、 正しょう覚がくはすなはちこれ仏ぶつの所得しょとくなるがゆゑに。 其智ごち量はかりがたしは前さきの仏ぶつ住じゅうを述じゅつす、 仏ぶっ智ちよく涅ね槃はんの理りを証しょうするがゆゑに。 多た所しょ導どう御ごは前さきの導どう師しを述じゅつす、 四し摂しょう等とうをもつて衆しゅ生じょうを導みちびくがゆゑに。 慧え見けん無礙むげは如来にょらいの徳とくを述じゅつす、 如来にょらいの徳とくみな慧えを主しゅとするがゆゑに。 無む能のう遏絶あつぜつは最さい勝しょう道どうを述じゅつす、 菩ぼ提だい勝すぐれたるがゆゑに、 他た人にんのために止し抑おくせられざるがゆゑに。」 以上 憬きょう興ごうこれに同おなじ。 ただ少しょう異いあり。 第だい四し・第だい五ご相翻そうほんするこれなり。

-初ニ先ヅ就テ↠述ニ↢阿難ノ所問ヲ↡相対スルニ有リ↠異。浄影ノ云ク、「▲如来ト等者、此ニ有リ↢五句↡。初ノ一句ハ総、後ノ四句ハ別ナリ。是 レ則述↢成ス前之五徳ヲ↡。謂ク如来覚ハ述ス↢前ノ奇特ヲ↡、正覚ハ即是仏ノ所得ナルガ故ニ。▲其ノ智難↠量述ス↢前ノ仏住ヲ↡、仏智能ク証スルガ↢涅槃ノ理ヲ↡故ニ。▲多所導御ハ述ス↢前ノ導師ヲ↡、以テ↢四摂等ヲ↡導ガ↢衆生ヲ↡故ニ。▲恵見无ハ述ス↢如来ノ徳ヲ↡、如来ノ徳皆恵ヲ為スルガ↠主ト故ニ。▲无能遏絶ハ述ス↢最勝道ヲ↡、菩提勝タルガ故ニ、不ルガ↧為ニ↢他人ノ↡所ラレ↦止抑セ↥故ニ。」 已上 憬興同ジ↠之ニ。但有リ↢少異↡。第四・第五相翻スル是也。

問とふ。 いまの所引しょいんの文もん、 一いっ科かの文もんにおいてなんぞ初しょ後ごを除のぞくや。 その初はじめを除のぞくとは、 しばらく浄じょう影ようの三双さんそう六ろく重じゅうの解げ釈しゃくの中なかによるに、 最初さいしょの如来にょらい現相げんそうの文もんこれなり。 その終おわりを除のぞくとは、 如来にょらい嘆許たんきょの三さんの文もん段だんの中なかに、 二にに所問しょもんを対たいする内うち、 また二にを分わかつ中なかに、 初はじめに請しょう問もんを述成じゅつじょうする内うち、 まづ阿あ難なんの所問しょもんを述じゅつす。 いまの所引しょいんはこの文もんに至いたる。 次つぎに所見しょけんを述じゅつする以下いげの文もん、 重々じゅうじゅうの子し段だん乃ない至し第六だいろくの阿あ難なん楽ぎょう聞もんの句く等とうこれを除のぞく。 なんの意こころかあるや。

-問。今ノ所引ノ文、於テ↢一科ノ文ニ↡何ゾ除クヤ↢初後ヲ↡。除クト↢其ノ初↡者、且ク依ニ↢浄影ノ三双六重ノ解釈之中ニ↡、最初ノ如来現相ノ文是ナリ。除ト↢其ノ終ヲ↡者、如来嘆許ノ三ノ*文段ノ中ニ、二ニ対スル↢所問ヲ↡内、又分ツ↠*二ヲ中ニ、初ニ述↢成スル請*問ヲ↡内、先ヅ述ス↢阿難ノ所問ヲ↡。今之所引ハ至ル↢于此ノ文ニ↡。次ニ述スル↢所見ヲ↡以下之文、重々ノ子段乃至第六ノ阿難楽聞ノ句等除ク↠之ヲ。有ル↢何ノ意カ↡耶。

答こたふ。 かくのごときの引文いんもん、 その当用とうように就つきてこれを引ひくばかりなり、 一いっ科かの始し終じゅうなんぞあながちにことごとく引ひかん。 その初はじめを除のぞく意こころは、 如来にょらいの現相げんそうすでに阿あ難なん請しょう問もんの詞ことばにありかの現相げんそうをもつて請しょう問もんの言ことばに載のす。 彼此ひしの相そう別べつにあらざるがゆゑなり。 その終おわりを除のぞく意こころは、 いまの要ようにあらざるがゆゑに。

-答。如ノ↠此ノ引文、就テ↢其ノ当用ニ↡引1023ク↠之ヲ許也。一科ノ始終何ゾ強ニ悉ク引カン。除ク↢其ノ初ヲ↡意ハ、如来ノ現相既ニ在リ↢阿難請問之詞ニ↡以テ↢彼ノ現相ヲ↡載ス↢請問ノ言ニ↡。彼此之相非ガ↠別ニ故也。除ク↢其ノ終ヲ↡意ハ、非ガ↢今ノ要ニ↡故ニ。

問とふ。 いま引用いんようするところ、 その要よういかん。

-問。今所↢引用スル↡、其ノ要如何。

答こたふ。 ▼出しゅっ世せの大だい事じたる旨むねを述のべて、 この ¬大だい経きょう¼ 真実しんじつの教きょうたることを成じょうず。 これその要ようなり。

-答。述テ↧為タル↢出世ノ大事↡之旨ヲ↥、成ズ↣此ノ¬大経¼為タルコトヲ↢真実ノ教↡。是 レ其ノ要也。

問とふ。 大だい事じの因縁いんねんは文もん ¬法ほっ華け¼ にあり。 いまの ¬経きょう¼ にさらに本懐ほんがいの言ことばなし、 なんぞその義ぎを成じょうぜん。

-問。大事ノ因縁ハ文在リ↢¬法*花ニ¼↡。今ノ¬経ニ¼更ニ无シ↢本懐之言↡、何ゾ成ゼン↢其ノ義ヲ↡。

答こたふ。 その出しゅっ世せ本懐ほんがいの義ぎを論ろんずるに、 略りゃくして二にの意こころあり。

-答。論ズルニ↢其ノ出世本懐之義ヲ↡、略シテ有リ↢二ノ意↡。

一いちには教きょうの権実ごんじつに約やくす。 三さん乗じょうはこれ権ごん、 一いち乗じょうはこれ実じつ。 ゆゑに一いち乗じょうをもつて説ときて本懐ほんがいとなす。 これ ¬法ほっ華け¼ の意こころなり。

-一ニハ約ス↢教ノ権実ニ↡。三乗ハ是 レ権、一乗ハ是 レ実。故ニ以テ↢一乗ヲ↡説テ為ス↢本懐ト↡。是 レ¬法*花ノ¼意ナリ。

▽二にには機きの利り鈍どんに約やくす。

-二ニハ約ス↢機ノ利鈍ニ↡。

¬般舟はんじゅ讃さん¼ にいはく、 「根こん性じょう利りなる者ものはみな益やくを蒙こうぶる、 鈍根どんこん無智むちなるは開かい悟ごしがたし。」 以上

-¬般舟讃ニ¼云、「▲根性利ナル者 ノハ皆蒙ル↠益ヲ、鈍根无智ナルハ難シ↢開悟シ↡。」 已上

「玄げん義ぎ」 (玄義分) にいはく、 「諸仏しょぶつの大だい悲ひは苦く者しゃにおいてす、 心しんひとへに常じょう没もつの衆しゅ生じょうを愍念みんねんしたまふ。 これをもつて勧すすめて浄じょう土どに帰きせしめたまふ。 また水みずに溺おぼれたる人ひとのごときは、 すみやかにすべからくひとへに救すくふべし、 岸がん上じょうの者ものをば、 なにをもつてか済すくふことをせん。」 以上

-「玄義ニ」云ク、「▲諸仏ノ大悲ハ於ス↢苦者ニ↡、心偏ニ愍↢念シタマフ常没ノ衆生ヲ↡。是ヲ以テ勧テ帰シメタマフ↢浄土ニ↡。亦如ハ↢溺タル↠水ニ之人ノ↡、急ニ須ク↢偏ニ救↡、岸上之者ヲバ、何ヲ用テカ済為コトヲセン。」 已上

¬観念かんねん法門ぼうもん¼ にいはく、 「釈しゃ迦かの出しゅつ現げんは、 五ご濁じょくの凡ぼん夫ぶを度どせんがためなり、 すなはち慈悲じひをもつて、 十じゅう悪あくの因いんの三さん途ずの苦くを報ほう果かすることを開かい示じし、 また平びょう等どうの智慧ちえをもつて、 人天にんでん回えして弥陀みだ仏国ぶっこくに生しょうずることを悟ご入にゅうせしむ。」 以上

-¬観念法門ニ¼云ク、「▲釈迦ノ出現ハ、為ナリ↠度センガ↢五濁ノ凡夫ヲ↡、則以テ↢慈悲ヲ↡、開↣示シ十悪之因ノ報↢果スルコトヲ三途之苦ヲ↡、又以テ↢平等ノ智恵ヲ↡、悟↣入セシム人天廻シテ生ズルコトヲ↢弥陀仏国ニ↡。」 已上

大だい悲ひの本懐ほんがい、 ただ障重しょうじゅう根鈍こんどん常じょう没もつの衆しゅ生じょうを済さい度どするにあり。 しかるに利り根こんは少すくなく、 鈍根どんこんの者ものは多おおし。 ゆゑに知しりぬ諸しょ教きょうの出しゅつ離りはこれ少すくなく、 浄じょう土どの得脱とくだつはその機きこれ多おおしといふことを。 この道どう理りによれば、 施ほどこすところの利り益やく、 諸しょ教きょうに超ちょう過がせり。 浄じょう土どの教きょう門もんあに本懐ほんがいにあらずや。

-大悲ノ本懐、唯在リ↣済↢度スルニ障重根鈍常没ノ衆生ヲ↡。而ニ利根ハ少ク、鈍根ノ者 ノハ多シ。故ニ知ヌ諸教ノ出離ハ是 レ少ク、浄土ノ得脱ハ其ノ機是 レ多シト云コトヲ。依レバ↢此ノ道理ニ↡、所ノ↠施ス利益、超↢過セリ諸教ニ↡。浄土ノ教門豈非ズヤ↢本懐ニ↡。

ゆゑに ¬大だい経きょう¼ (巻下) にいはく、 「如来にょらいの智慧ちえ海かいは、 深広じんこうにして涯底がいたいなし。」 以上 けだしこの意こころなり。 慈悲じひ深じん重じゅうにして悪あく機きを救度くどす、 ゆゑに説ときて深じんとす。 利り益やく広大こうだいにしてあまねく群ぐん機きに被こうぶらしむ、 ゆゑに説ときて広こうとす。

-故ニ¬大経ニ¼云ク、「▲如来ノ智恵海ハ、深広ニシテ无↢涯底↡。」 已上 蓋シ此ノ意也。慈悲深重ニシテ救↢度1024ス悪機ヲ↡、故ニ説テ為↠深ト。利益広大ニシテ普ク被シム↢群機ニ↡、故ニ説テ為↠広ト。

二 Ⅱ ⅰ d ハ (二)如来会

【33】次つぎに ¬如来にょらい会え¼ の説相せっそうおほきに同おなじ。 この諸相しょそうをもつて ¬大だい経きょう¼ の説せつに校きょうずるに、 「阿あ難なん白びゃく仏ぶつ」 の下しもは 「非ひ因いん天てん等とう」 に至いたるまでは阿あ難なん実答じっとう、 「仏告ぶつごう阿あ難なん」 の下しもは如来にょらいの嘆許たんきょなり。 中なかにおいて、 初はじめより 「是ぜ之義しぎ」 に至いたるまではまづ慧え問もんを嘆たんじ、 「汝にょ為い」 より下しも 「問もん斯義しぎ」 に至いたるまでは仏ぶつ出しゅつの難なん値ちを挙あぐ、 「又為うい」 より下しもは所問しょもんの益やく多おおきことを嘆たんず。

-△次ニ¬如来会ノ¼説相大ニ同ジ。以テ↢此ノ*諸相ヲ↡校ズルニ↢¬大経ノ¼説ニ↡、「▲阿難白仏ノ」下ハ至マデハ↢「非因天等ニ」↡阿難ノ実答、「▲仏告阿難ノ」下ハ如来ノ嘆許ナリ。於テ↠中ニ、自↠初至マデハ↢「是之義ニ」↡先ヅ嘆ジ↢恵問ヲ↡、自↢「▲汝為」↡下至マデハ↢「問斯義ニ」↡挙グ↢仏出ノ難値ヲ↡、自↢「▲又為」↡下ハ嘆ズ↢所問ノ益多コトヲ↡。

二 Ⅱ ⅰ d ハ (三)平等覚経

【34】次つぎに ¬覚かく経きょう¼ の文もん、 その意こころ見みつべし。

△次ニ¬覚経ノ¼文、其ノ意可シ↠見ツ。

二 Ⅱ ⅰ d ハ (四)憬興師釈

【35】次つぎに興ごうの釈しゃく (述文賛・中) の中なかに、

△次ニ興ノ釈ノ中ニ、

「奇き特どく法ほう」 を釈しゃくするに、 「神通じんずう輪りん」 とは、 三業さんごうの中なかにこれ身業しんごうの名ななり。 すなはち口く業ごうをもつて説法せっぽう輪りんと名なづく、 また意い業ごうをもつて記き心しん輪りんと名なづく。 これ法相ほっそう宗しゅうの名みょう目もくならくのみ。

釈スルニ↢「▲奇特法ヲ」↡、「神通輪ト」者、三業之中ニ是身業ノ名ナリ。即以テ↢口業ヲ↡名ケ↢説法輪ト↡、又以テ↢意業ヲ↡名ク↢記心輪ト↡。是 レ法相宗ノ名目而已ナラクノミ。

【36】「仏ぶつ所しょ住じゅう」 を釈しゃくするに、 「普ふ等とう三昧ざんまい」 とは、 六八ろくはち願がんの中なかの第だい四し十じゅう五ごの聞もん名みょう見仏けんぶつの願がん (大経巻上) に説ときていはく、 「たとひわれ仏ぶつを得えんに、 他た方ほう国こく土どのもろもろの菩ぼ薩さつ衆しゅ、 わが名みょう字じを聞ききて、 みなことごとく普ふ等とう三昧ざんまいを逮得たいとくせん。 この三昧さんまいに住じゅうして、 成じょう仏ぶつに至いたるまで、 つねに無む量りょう不可ふか思議しぎの一切いっさいの諸仏しょぶつを見みたてまつらん。 もししからずは、 正しょう覚がくを取とらじ。」 以上

釈ニ↢「▲仏所住ヲ」↡、「普等三昧ト」者、六八願ノ中ノ第四十五ノ聞名見仏之願ニ説テ言ク、「▲設ヒ我レ得ニ↠仏ヲ、他方国土ノ諸ノ菩薩衆、聞テ↢我ガ名字↡、皆悉ク逮↢得セン普等三昧ヲ↡。住シテ↢是ノ三昧ニ↡、至ルマデ↢于成仏ニ↡、常ニ見タテマツラン↢无量不可思議ノ一切ノ諸仏ヲ↡。若シ不↠爾者、不↠取↢正覚↡。」 已上

憬きょう興ごうの釈しゃく (述文賛巻中) にいはく、 「普ふとはすなはち普ふ遍へんの義ぎ、 等とうとはすなはち斉等さいとうの義ぎ。 所見しょけんあまねく広ひろし、 仏ぶつをばみな見みる。 ゆゑに住じゅうするところの定じょうを名なづけて普ふ等とうとなす。」 以上

-憬興ノ釈ニ云ク、「普ト者即普遍ノ義、等ト者即斉等ノ義。所見普ク広シ、仏ヲバ者皆見ル。故ニ所ノ↠住スル定ヲ名テ為ス↢普等ト↡。」 已上

玄一げんいちの釈しゃく (大経義記巻上意) にいはく、 「この三昧さんまい力りきによりてあまねく諸仏しょぶつの世せ界かいを見みる、 ゆゑにいひて普ふとなす。 平びょう等どうに現げんに見みる所見しょけんなし、 ゆゑに普ふ等とうといふ。」 以上

-玄一ノ釈ニ云ク、「由テ↢此ノ三昧力ニ↡普ク見ル↢諸仏ノ世界ヲ↡、故ニ言テ為ス↠普ト。平等ニ現ニ見ル无シ↢所見↡、故ニ言フ↢普等ト↡。」 已上

この三昧さんまいにおいて多おおくの異い名みょうあり。 遍へん至し三昧ざんまい・普至ふし三昧さんまいおよび普ふ遍へん三さん摩地まやと名なづくるこれなり。 次ついでのごとく ¬悲花ひけ¼ と ¬分ふん陀利だり経きょう¼ と ¬荘しょう厳ごん経ぎょう¼ の説せつなり。

-於テ↢此1025ノ三昧ニ↡有リ↢多ノ異名↡。遍至三昧・普至三昧及ビ名クル↢普遍三摩地ト↡是ナリ。如ク↠次ノ¬悲*花ト¼¬分陀利経ト¼¬荘厳経ノ¼説ナリ。

問とふ。 なんらの義ぎによりてか 「普ふ等とう」 と名なづくるや。

-問。依テカ↢何等ノ義ニ↡名ル↢「普等ト」↡耶。

答こたふ。 上かみの所引しょいんの両りょう師し釈しゃくのごときは、 見仏けんぶつの義ぎによりて名なづけて普ふ等とうとす。 これ果かの名なに従したがふ。 因いんに従したがひてはいひて念仏ねんぶつ三昧ざんまいと名なづくる、 これその名ななり。

-答。如↢上ノ所引ノ両師ノ釈ノ↡者、依テ↢見仏ノ義ニ↡名テ為↢普等ト↡。是従フ↢果ノ名ニ↡。従テハ↠因ニ言テ名ル↢念仏三昧ト↡、是 レ其ノ名也。

【37】「導どう師し行ぎょう」 の中なかに 「五ご眼げん」 といふは、 常じょう途ずの説せつによるに、 一いちは↓肉眼にくげん、 二には↓天眼てんげん、 三さんは↓慧え眼げん、 四しは↓法眼ほうげん、 五ごは↓仏眼ぶつげんなり。

「▲導師行ノ」中ニ言↢「五眼ト」↡者、依ニ↢常途ノ説ニ↡、一者肉眼、二者天眼、三者恵眼、四者法眼、五者仏眼ナリ。

↑肉眼にくげんといふは、 人間にんげんの扶ふ根こんの四し境きょうを肉にくと名なづく、 正しょう根こんの浄じょう色しきのよく見みるを眼げんと名なづく。 ただし隙きゃく塵じん以い上じょうの麁そ色しきを縁えんじて牛ご塵じん以下いげの細さい色しきを縁えんぜず、 また障しょう内ないを縁えんじて障しょう外げを縁えんぜず、 また近ごん境きょうを縁えんじて遠おん境きょうを縁えんぜず。

-言↢肉眼ト↡者、人間ノ扶根ノ四境ヲ名ク↠肉ト、正根ノ浄色ノ能ク見ルヲ名ク↠眼ト。但シ縁ジテ↢隙塵已上ノ麁色ヲ↡不↠縁ゼ↢牛塵已下ノ細色ヲ↡、又縁ジテ↢障内ヲ↡不↠縁ゼ↢障外ヲ↡、又縁ジテ↢近境ヲ↡不↠縁ゼ↢遠境ヲ↡。

↑天眼てんげんといふは、 禅ぜん定じょうを天てんと名なづく。 天てんによりて眼げんを得う、 ゆゑに天眼てんげんと名なづく。 天てん中ちゅうの浄じょう色しきをもつてその体たいとし、 よく衆しゅ生じょうの此死しし生しょう彼ひを見みる。 ¬大論だいろん¼ の三さん十じゅう三さん (大智度論発品意) にいはく、 「肉眼にくげんは近ごんを見みて遠おんを見みず、 前ぜんを見みて後ごを見みず、 外げを見みて内ないを見みず、 昼ちゅうを見みて夜やを見みず、 上じょうを見みて下げを見みず。 これらをもつてのゆゑに天眼てんげんを求もとむ。 この天眼てんげんを得えつれば、 遠近ごんおんみな見みる。 前ぜん後ご・内ない外げ・上じょう下げことごとくみな無礙むげなり。」 以上

-言↢天眼ト↡者、禅定ヲ名ク↠天ト。依テ↠天ニ得ウ↠眼ヲ、故ニ名↢天眼ト↡。天中ノ浄色ヲ以テ為↢其ノ体ト↡、能ク見ル↢衆生ノ此死生彼ヲ↡。¬大論ノ¼三十三ニ云ク、「肉眼ハ見テ↠近ヲ不↠見↠遠ヲ、見テ↠前ヲ不↠見↠後ヲ、見テ↠外ヲ不↠見↠内ヲ、見テ↠昼ヲ不↠見↠夜ヲ、見テ↠上ヲ不↠見↠下。以ノ↢此等ヲ↡故ニ求ム↢天眼ヲ↡。得ツレバ↢此ノ天眼ヲ↡、遠近皆見ル。前後・内外・上下悉ク皆无ナリ。」 已上

↑慧え眼げんといふは、 真諦しんたいを縁えんずる智ち、 よく空くう理りを照てらすゆゑに慧え眼げんと名なづく。

-言↢恵眼ト↡者、縁ズル↢真諦ヲ↡智、能ク照ス↢空理ヲ↡故ニ名ク↢恵眼ト↡。

↑法眼ほうげんといふは、 俗諦ぞくたいを縁えんずる智ち、 よく法ほうを照てらすゆゑに名なづけて法眼ほうげんとなす。

-言↢法眼ト↡者、縁ズル↢俗諦ヲ↡智、能ク照ス↠法ヲ故ニ名テ為↢法眼ト↡。

↑仏眼ぶつげんというは、 人にんに就つきて名なとす、 ゆゑに仏眼ぶつげんと名なづく。 中ちゅう道どうを縁えんずる智ちをもつてその体たいとなす。

-言↢仏眼ト↡者、就テ↠人ニ為↠名ト、故ニ名ク↢仏眼ト↡。縁ズル↢中道ヲ↡智ヲ以テ為ス↢其ノ体ト↡。

この五ご眼げんにおいて、 四し眼げんはこれ別べつ、 仏眼ぶつげんはこれ総そうなり。 四し眼げん仏ぶつに至いたりぬればことごとく仏眼ぶつげんと名なづく。 このゆゑに天台てんだいの ¬文もん句ぐ¼ の四し (法華文句巻四下釈方便品) にいはく、 「仏眼ぶつげんは円通えんずうなり、 もと勝しょうにして劣れつを兼かぬ。 四し眼げん仏眼ぶつげんに入いりぬればみな仏眼ぶつげんと名なづく。」 以上 これはこれ諸しょ教きょう通つう途ずの説相せっそうなり。

-於テ↢此ノ五眼ニ↡、四眼ハ是別、仏眼ハ是 レ総ナリ。四眼至ヌレバ↠仏ニ悉ク名ク↢仏眼ト↡。是1026ノ故ニ天臺ノ¬文句ノ¼四ニ云ク、「仏眼ハ円通ナリ、本勝ニシテ兼ヌ↠劣ヲ。四眼入ヌレバ↢仏眼ニ↡皆名ク↢仏眼ト↡。」 已上 此ハ是 レ諸教通途ノ説相ナリ。

問とふ。 ¬大だい経きょう¼ の下げにいはく、 「▲肉眼にくげん清しょう徹てつにして分ぶん了りょうせずといふことなし。 ▽天眼てんげん通達つうだつして無む量りょう無む限げんなり。 ▽法眼ほうげん観察かんざつして諸道しょどうを究く竟きょうす。 ▽慧え眼げん真しんを見みてよく彼ひ岸がんに度どす。 ▽仏眼ぶつげん具ぐ足そくして法ほっ性しょうを覚かく了りょうす。」 以上 これ上かみの説せつと同どう異いいかん。

問。¬大経ノ¼下ニ云ク、「肉眼清徹ニシテ靡シ↠不ト云コト↢分了セ↡。天眼通達シテ无量无限ナリ。法眼観察シテ究↢竟ス諸道ヲ↡。恵眼見テ↠真ヲ能ク度ス↢彼岸ニ↡。仏眼具足シテ覚↢了ス法性ヲ↡。」 已上 是 レ与↢上ノ説↡同異如何。

答こたふ。 同どうあり異いあり。 その同どうといふは、 五ご眼げんの功く用ゆう相監そうかんせざるがゆゑに。 その異いといふは、 いま ¬大だい経きょう¼ には浄じょう土どの菩ぼ薩さつの功く徳どくを説とくがゆゑに、 肉眼にくげん・天眼てんげん所見しょけんの分ぶん量りょう人天にんでんの分ぶんに超こえたり。 仏眼ぶつげんに至いたりては、 これは菩ぼ薩さつ所しょ具ぐの徳とくを説とくがゆゑに、 究く竟きょうに及およばず、 また法ほうと慧えと三さんと四しと前ぜん後ごせり。

-答。有リ↠同有リ↠異。言↢其ノ同ト↡者、五眼ノ功用不ルガ↢相監セ↡故ニ。言↢其ノ異ト↡者、今¬大経ニハ¼説↢浄土ノ菩薩ノ之功徳ヲ↡故ニ、肉眼・天眼所見ノ分量超タリ↢人天ノ分ニ↡。至↢仏眼ニ↡者、是説ガ↢菩薩所具ノ徳ヲ↡故ニ、不↠及↢究竟ニ↡、又法ト与 ト ↠恵三ト四ト前後セリ。

△肉眼にくげん清しょう徹てつ靡不みふ分ぶん了りょうとは、 義ぎ寂じゃく (大乗義記巻上) のいはく、 「その所応しょおうに随したがひて、 もしは近ごんもしは遠おん、 もしは内ないもしは外げ、 みな分ぶん明みょうに見みる。 根こんの精しょう徹てつと境きょうの無む障しょうとによるがゆゑに。」

-肉眼清徹靡不分了ト者、義寂ノ云ク、「随テ↢其ノ所応ニ↡、若ハ近若ハ遠、若ハ内若ハ外、皆分明ニ見ル。由ガ↢根ノ精徹ト境ノ无障トニ↡故ニ。」

△天眼てんげん通達つうだつ無む量りょう無む限げん」 とは、 ¬論ろん¼ (大智度論巻三十九往生品意) に説とかく、 「菩ぼ薩さつの天眼てんげんに二に種しゅあり。 一いちに果か報ほう得とく、 二には修禅しゅぜん得とくなり。 果か報ほう得とくとは、 つねに肉眼にくげんと合用ごうゆうす。 ただ闇あん夜やには天眼てんげん独ひとり用もちゐる。 余よ人にんは果か報ほうの天眼てんげんを得えて四し天てん下げを見みる。 欲界よくかいの諸天しょてんは下げを見みて上じょうを見みず。 菩ぼ薩さつ所得しょとくの果か報ほうの天眼てんげんは三千さんぜん大千だいせん世せ界かいを見み、 乃至 菩ぼ薩さつこの天眼てんげんを用もちゐて十方じっぽう如にょ恒ごう河が沙しゃ等とうの国こく土どの中なかの衆しゅ生じょうの生しょう死じ・善悪ぜんあく・好こう醜しゅうおよび善悪ぜんあくの業ごう因縁いんねんを見みるに障しょう礙げするところなし、 一切いっさいみな見みる。 四し天王てんのう天てん乃ない至し阿迦あか弐にた天眼てんげんの所見しょけん、 またよくこれに過すぎたり。 この諸天しょてん、 菩ぼ薩さつの天眼てんげんの所見しょけんを知しることあたはず。 なにをもつてのゆゑに。 この菩ぼ薩さつは三界さんがいを出いでて法ほっ性しょう生しょう身じんを得え、 弁才べんざい力りきを得うるがゆゑに。 この中なかにいふところの無む量りょう限げんとは、 応おうに随したがひて通つうじて報得ほうとくおよび修しゅを説とく。 四し十じゅう八願はちがんの中なかに説とくところは、 最さい少しょうに就つきて説とくゆゑに相そう違いせず。」 以上

-天眼通達无量无限ト者、¬論ニ¼説カク、「菩薩ノ天眼ニ有リ↢二種↡。一果報得、二修禅得ナリ。果報得ト者、常ニ与↢肉眼↡合用ス。唯闇夜ニハ天眼独用ル。余人ハ得テ↢果報ノ天眼ヲ↡見ル↢四天下ヲ↡。欲界ノ諸天ハ見テ↠下ヲ不↠見↠上ヲ。菩薩所得ノ果報ノ天眼ハ見↢三千大千世界ヲ↡、 乃至 菩薩用テ↢是ノ天眼ヲ↡見ニ↢十方如恒河沙等ノ国土ノ中ノ衆生ノ々死・善悪・好醜及ビ善悪ノ業因縁ヲ↡无シ↠所↢障スル↡、一切皆見ル。四天王天乃至阿迦貮天眼ノ所見、又能ク過タリ↠之ニ。是ノ諸天、不↠能↠知コト↢菩薩ノ天1027眼ノ所見ヲ↡。何ヲ以ノ故ニ。是ノ菩薩ハ出デヽ↢三界ヲ↡得エ↢法性生身ヲ↡、得ルガ↢弁才力ヲ↡故ニ。此ノ中ニ所ノ↠言无量限ト者、随テ↠応ニ通ジテ説ク↢報得及ビ修ヲ↡。四十八願ノ中ニ所↠説者、就テ↢最少ニ↡説ク故ニ不↢相違セ↡。」 已上

問とふ。 肉眼にくげん精しょう徹てつ、 天眼てんげん通達つうだつ、 二に眼げんの所見しょけんおなじく無む限げんならば、 なにをか差別しゃべつとせん。

-問。肉眼精徹、天眼通達、二眼ノ所見同ク无限ナラ者、何ヲカ為セン↢差別ト↡。

答こたふ。 憬きょう興ごう (述文賛巻下意) のいはく、 「現在げんざいの色像しきぞうを照しょう矚しょくするを、 名なづけて肉眼にくげんとなす。 よく衆しゅ生じょうの此死しし生しょう彼ひを見みる、 ゆゑに天眼てんげんと名なづく。」 以上

-答。憬興ノ云、「照↢矚ミルスルヲ現在ノ色像ヲ↡、名テ為ス↢肉眼ト↡。能ク見ル↢衆生ノ此死生彼ヲ↡、故ニ名ク↢天眼ト↡。」 已上

△法眼ほうげん観察かんざつ究く竟きょう諸道しょどうとは、 同どう師し (述文賛巻下) のいはく、 「法眼ほうげんはすなはち有智うちをもつて体たいとなす。 よく衆しゅ生じょうの欲よく性しょうの心しんおよび諸仏しょぶつの法ほうを見みる、 ゆゑに法眼ほうげんと名なづく。 あまねく三さん乗じょうの道法どうほうの差別しゃべつを知しる、 ゆゑに究く竟きょう諸道しょどうといふ。」 以上

-法眼観察究竟諸道ト者、同師ノ云ク、「法眼ハ即以テ↢有智ヲ↡為ス↠体ト。能ク見ル↢衆生ノ欲性ノ心及ビ諸仏ノ法ヲ↡、故ニ名ク↢法眼ト↡。普ク知ル↢三乗ノ道法ノ差別ヲ↡、故ニ云フ↢究竟諸道ト↡。」 已上

義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) のいはく、 「余よ処しょには多おおく慧え眼げんを第三だいさんと説とく。 この中なかにまづ法眼ほうげんを説とくことは、 修しゅ起きの次し第だい先さきのごとくに説とくべし。 かならずまづ真しんに達たっして、 まさに俗ぞくを了りょうするがゆゑに。 しかも法眼ほうげんの境きょう、 前さきの二に眼げんとおなじくこれ俗ぞくなるがゆゑに。 これこの中なかには慧え眼げんに先さきんじて説とく。 論ろんにいはく、 菩ぼ薩さつ初しょ発心ほっしんの時とき、 肉眼にくげんをもつて衆しゅ生じょうの苦くを受うくるを見みて心しんに慈じ愍みんを生しょうじて、 もろもろの禅ぜん定じょうを学がくし五ご通つうを修得しゅとくす。 天眼てんげんをもつてあまねく六道ろくどうの衆しゅ生じょうの種々しゅじゅ身心しんしんの苦くを受うくるを見みて、 ますます憐愍れんみんを加くわふ。 ゆゑに慧え眼げんを求もとめてもつてこれを救く済さいす。 この慧え眼げんを得えてすでに衆しゅ生じょうの心相しんそうの種々しゅじゅ不ふ同どうなるを見みて、 いかんしてか衆しゅ生じょうをしてこの実法じっぽうを得えしめんとおもふ。 ゆゑに法眼ほうげんを求もとめて衆しゅ生じょうを引導いんどうして法ほうの中なかに入いらしむ、 ゆゑに法眼ほうげんと名なづく。」 以上

-義寂ノ云、「余処ニハ多ク説ク↢恵眼ヲ第三ト↡。此ノ中ニ先ヅ説コトハ↢法眼ヲ↡者、修起ノ次第応シ↢如ニ↠先ノ説ク↡。要ズ先ヅ達シテ↠真ニ、方ニ了スルガ↠俗ヲ故ニ。然モ法眼ノ境、与↢前ノ二眼↡同ク是 レ俗ナルガ故ニ。是 レ此ノ中ニハ先テ↢恵眼ニ↡説ク。論ニ云ク、菩薩初発心ノ時、以テ↢肉眼ヲ↡見テ↢衆生ノ受ヲ↟苦ヲ、心ニ生ジテ↢慈愍ヲ↡学シ↢諸ノ禅定ヲ↡修↢得ス五通ヲ↡。以テ↢天眼ヲ↡遍ク見テ↣六道ノ衆生ノ受ルヲ↢種々身心ノ苦ヲ↡、益マス加フ↢憐愍ヲ↡。故ニ求テ↢恵眼ヲ↡以テ救↢済ス之ヲ↡。得テ↢此ノ恵眼ヲ↡已ニ見テ↢衆生ノ心相ノ種々不同ナルヲ↡、云何シテカ令↣シメントオモフ衆生ヲシテ得↢是ノ実法ヲ↡。故ニ求テ↢法眼ヲ↡引↢導シテ衆生ヲ↡令ム↠入ラ↢法ノ中ニ↡、故ニ名ク↢法眼ト↡。」 已上

△慧え眼げん見真けんしん能のう度ど彼ひ岸がんとは、 浄じょう影よう (大経義疏巻下) のいはく、 「よく真空しんくうを見みる、 ゆゑに見真けんしんと名なづく。 有う相そうを除捨じょしゃして平びょう等どう無む相そうの彼ひ岸がんに達到たっとうするを、 度ど彼ひ岸がんと名なづく。」 以上

-恵眼見真能度彼岸ト者、浄影ノ云ク、「能ク見ル↢真空ヲ↡、故ニ名↢見真ト↡。除↢捨シテ有相ヲ↡達↢到スルヲ平等无相ノ彼岸ニ↡、名ク↢度彼岸ト↡。」 已上1028

憬きょう興ごう (述文賛巻下) のいはく、 「度どとは至しなり。」 以上

-憬興ノ云ク、「度ト者至也。」 已上

義ぎ寂じゃく (大経義記巻下) のいはく、 「¬論ろん¼ にいはく、 肉眼にくげんは障しょう外げの事じを見みることあたはず、 また遠とおく見みることあたはず。 このゆゑに天眼てんげんを求もとむ。 天眼てんげんはまた見みるといへども、 また虚こ誑おうなり。 一いち異いの相そうを見み衆しゅ物もつの和わ合ごうの虚こ誑おうの法ほうを見みる、 これをもつてのゆゑに慧え眼げんを求もとむ。 慧え眼げんの中なかにはかくのごときの過とがなし。」 以上

-義寂ノ云ク、「¬論¼云、肉眼ハ不↠能ハ↠見コト↢障*外ノ事ヲ↡、又不↠能↢遠ク見コト↡。是ノ故ニ求ム↢天眼ヲ↡。天眼ハ雖ヘ↢復見ルト↡亦復虚誑ナリ。見ミ↢一異ノ相ヲ↡見ル↢衆物ノ和合ノ虚誑ノ法ヲ↡、以ノ↠是ヲ故ニ求ム↢恵眼ヲ↡。恵眼ノ中ニハ无シ↢如ノ↠是ノ過↡。」 已上

¬思し益やく¼ の三さん (思益経論寂品) にいはく、 「もし所見しょけんあらば慧え眼げんと名なづけず。 慧え眼げんは有為ういの法ほうを見みず、 無為むいの法ほうを見みず。」 以上

-¬思益ノ¼三ニ云ク、「若シ有ラバ↢所見↡不↠名↢恵眼ト↡。恵眼ハ不↠見↢有為ノ法ヲ↡、不↠見↢无為ノ法ヲ↡。」 已上

¬大論だいろん¼ の三さん十じゅう三さん (大智度論初品意) にいはく、 「この天眼てんげんは、 和わ合ごうの因縁いんねん生しょうの仮け名みょうの物ものを見みて実相じっそうを見みず、 故ゆゑに慧え眼げんを求もとむ。 慧え眼げんを得えぬれば衆しゅ生じょうの尽滅じんめつ一いち異いの相そうを見みず、 諸しょ著じゃくを捨しゃ離りして一切いっさいの法ほうを受うけず。 智慧ちえおのづから内うちに滅めっす、 これを慧え眼げんと名なづく。」 以上

-¬大論ノ¼三十三ニ云ク、「是ノ天眼ハ、見テ↢和合ノ因縁生ノ仮名之物ヲ↡不↠見↢実相ヲ↡、故ニ求ム↢恵眼ヲ↡。得ヌレバ↢恵眼ヲ↡不↠見↢衆生ノ尽滅一異ノ相ヲ↡、捨↢離シテ諸著ヲ↡不↠受↢一切ノ法ヲ↡。智恵自ヲ 内ニ滅ス、是ヲ名ク↢恵眼ト↡。」 已上

△仏眼ぶつげん具ぐ足そく覚かく了りょう法ほっ性しょうとは、 義ぎ寂じゃく (大経義記巻上) のいはく、 「また位々いいの中なかに随分ずいぶんに成じょう仏ぶつす、 ゆゑに位々いいの中なかにまた眼げんを具ぐ足そくす。 ¬経きょう¼ に説とかく、 初しょ発心ほっしんの位くらいにすでに十じゅう力りき分ぶんを得うるがゆゑに。」 以上

-仏眼具足覚了法性ト者、義寂ノ云ク、「又位々ノ中ニ随分ニ成仏ス、故ニ位々ノ中ニ亦具↢足ス眼ヲ↡。¬経ニ¼説カク、初発心ノ位ニ已ニ得ガ↢十力分ヲ↡故ニ。」 已上

【38】「最さい勝しょう道どう」 の中なかに 「四智しち」 といふは、 如来にょらい所しょ具ぐの功く徳どくなり。

「▲最勝道ノ」中ニ言↢「四智ト」↡者、如来所具之功徳也。

一いちには大だい円えん鏡きょう智ち。 第だい八識はっしきを転てんじて仏ぶっ果かにこれを得う。 もろもろの分別ふんべつを離はなれてこの智ちの上うえにおいて身しん土ど影現ようげんすること、 鏡かがみの上うえにおいてもろもろの色像しきぞうを現げんずるがごとし。 このゆゑに名なづけて大だい円えん鏡きょう智ちとなす。

-一ニハ大円鏡智。転ジテ↢第八識ヲ↡仏果ニ得↠之ヲ。離テ↢諸ノ分別ヲ↡於テ↢此ノ智ノ上ニ↡身土影現スルコト、如シ↧於テ↢鏡ノ上ニ↡現ズルガ↦衆ノ色像ヲ↥。是ノ故ニ名テ為ス↢大円鏡智ト↡。

二にには平びょう等どう性しょう智ち。 第だい七識しちしきを転てんじて初しょ地じにこれを得う。 これ自他じたの有う情じょうの平びょう等どうを観かんず。 この智ち品ぼん、 大だい慈悲じひ等とうの功く徳どくと相応そうおうす。

-二ニハ平等性智。転ジテ↢第七識ヲ↡初地ニ得↠之ヲ。是 レ観ズ↢自他ノ有情ノ平等ヲ↡。是ノ智品、与↢大慈悲等ノ功徳↡相応ス。

三さんには妙みょう観察かんざつ智ち。 第だい六識ろくしきを転てんじて真しんの見道けんどうの初はじめにこの智ち品ぼんを得う。 よく諸法しょほうの自じ相そう・共ぐ相そうを観かんず。

-三ニハ妙観察智。転ジテ↢第六識ヲ↡真ノ見道ノ初ニ得↢此ノ智品ヲ↡。善ク観ズ↢諸法ノ自相・共相ヲ↡。

四しには成じょう所しょ作さ智ち。 前ぜん五ご識しきを転てんじて仏ぶっ果かにこれを得う。 あまねく十方じっぽうにおいて種々しゅじゅの変へん化げの三業さんごうを示じ現げんして事じ業ごうを応おう作さす。

-四ニハ成所作智。転ジテ↢前五識ヲ↡仏1029果ニ得↠之ヲ。普ク於テ↢十方ニ↡示↢現シテ種々ノ変化ノ三業ヲ↡応↢作ス事業ヲ↡。

【39】「如来にょらい徳とく」 の中なかに 「即そく第だい一いち義ぎ天てん」 とらいふは、 釈しゃくの意こころまつたく浄じょう影ようの所しょ解げに同おなじ。 その釈しゃく△初はじめにあり、 重じゅう挙こするにあたはず。

「▲如来徳ノ」中ニ言↢「即第一義天ト」等↡者、釈ノ意全ク同ジ↢浄影ノ所解ニ↡。其ノ釈在リ↠初ニ、不↠能↢重挙ルニ↡。

【40】「阿あ難なん」 以下いげは前さきの問といを対たいする文もんなり。 ただしこの所対しょたい、 浄じょう影よう・憬きょう興ごう少すこしきの不ふ同どうあり。 「如来にょらい正しょう覚がく」 以下いげの三さん句くは所対しょたいまつたく同おなじ。 「慧え見けん無礙むげ」、 「無む能のう遏絶あつぜつ」、 いまこの二句にく前ぜん後ご相翻そうほんせり。 いはゆる浄じょう影ようは△上かみの所引しょいんのごとし、 興ごうはいまの文もんのごとし。

「▲阿難」以下ハ対スル↢前ノ問ヲ↡文ナリ。但シ此ノ所対、浄影・憬興有リ↢少シキノ不同↡。「如来正覚」已下ノ三句ハ所対全ク同ジ。「恵見无」、「无能遏絶」、今此ノ二句前後相翻セリ。所謂浄影ハ如シ↢上ノ所引ノ↡、興ハ如シ↢今ノ文ノ↡。

問とふ。 所引しょいんの釈しゃくの中なかに、 なんぞ中ちゅう間げんの 「其智ごち難なん量りょう多た所しょ導どう御ご」 (述文賛巻中) の二句にくを除のぞくや。

-問。所引ノ釈ノ中ニ、何ゾ除ク↢中間ノ「▲其智難量多所導御」之二句ヲ↡耶。

答こたふ。 別べつの意い趣しゅなし。 ただ初しょ後ごを挙あげてその中ちゅう間げんを略りゃくす、 省略しょうりゃくの義ぎなり。

-答。无シ↢別ノ意趣↡。只挙テ↢初後ヲ↡略ス↢其ノ中間ヲ↡、省略ノ義也。

二 Ⅱ ⅰ e 総結

【41】「爾に者しゃ」 以下いげはこれ総結そうけつなり。 いまその中なかにおいて、

「△爾者」已下ハ是 レ総結也。今於テ↢其ノ中ニ↡、

「如来にょらい興こう世せの正しょう説せつ」 とは、 出しゅっ世せの本懐ほんがい、 済凡さいぼんの義ぎ、 △上かみにつぶさに述のぶるがごとし。

-「▲如来興世之正説ト」者、出世ノ本懐、済凡ノ之義、如シ↢上ニ具ニ述ルガ↡。

「奇き特どく最さい勝しょうの妙みょう典でん」 とは、 奇き特どくの法ほうに住じゅうし最さい勝しょうの道どうに住じゅうして説とくところの教きょうなるがゆゑに。

-「▲奇特最勝之妙典ト」者、住シ↢奇特ノ法ニ↡住シテ↢最勝ノ道ニ↡所ノ↠説教ナルガ故ニ。

「一いち乗じょう究く竟きょうの極説ごくせつ」 とは、 この ¬経きょう¼ (大経) の下げにいはく、 「一いち乗じょうを究く竟きょうして彼ひ岸がんに至いたる。」 以上 義ぎ寂じゃく釈しゃくして (大経義記巻下) いはく、 「一いち妙みょう道どうをもつてあまねく群ぐん生じょうを載のせて、 自他じたともに無為むいの岸きしに至いたるなり。」 以上 この徳とくを得うべき極説ごくせつなるがゆゑに。

-「▲一乗究竟之極説ト」者、此ノ¬経ノ¼下ニ云ク、「▲究↢竟シテ一乗ヲ↡至ル↢于彼岸ニ↡。」 已上 義寂釈シテ云ク、「以テ↢一妙道ヲ↡普ク載テ↢群生ヲ↡、自他倶ニ至ル↢无為ノ岸ニ↡也。」 已上 可キ↠得↢此ノ徳↡之極説ナルガ故ニ。

「速疾そくしつ↓円えん融にゅうの金言きんげん」 とは、 また (大経巻下) いはく、 「一いっ世せの勤ごん苦くは須しゅ臾ゆの間あいだなりといへども、 後のちに無む量りょう寿じゅ仏国ぶっこくに生しょうじて快け楽らく極きわまりなし。 長ながく道徳どうとくと合がっして明あきらかなり。 永ながく生しょう死じの根本こんぽんを抜ぬく。」 以上 須しゅ臾ゆ之し間けん永抜ようばつ生しょう死じはこれ速疾そくしつの益やくなり。

-「▲速疾円融之金言ト」者、又云ク、「▲雖ヘ↢一世ノ勤苦ハ須臾之間ナリト↡、後ニ生ジテ↢无量寿仏国ニ↡快楽无シ↠極リ。長ク与↢道徳↡合シテ明ナリ。永ク抜ク↢生死ノ根本1030↡。」 已上 須臾之間永抜生死ハ是速疾ノ益ナリ。

また (大経巻下) いはく、 「横よこさまに五ご悪趣あくしゅを截きりて、 悪趣あくしゅ自じ然ねんに閉とづ。」 以上 「横截おうぜつ」 といふは、 頓速とんそくの義ぎなり。

-又云ク、「▲横ニ截テ↢五悪趣ヲ↡、悪趣自然ニ閉ヅ。」 已上 言↢横截↡者、頓速ノ義也。

また (大経巻下) いはく、 「▲法ほうを聞ききて楽ねがひて受じゅ行ぎょうして、 疾とく清浄しょうじょうの処ところを得えよ。」 以上

-又云ク、「聞テ↠法ヲ楽テ受行シテ、疾ク得ヨ↢清浄ノ処ヲ↡。」 已上

また ¬覚かく経きょう¼ (巻二) にいはく、 「速疾そくしつに超こえてすなはち安楽あんらく国こくの世せ界かいに到いたるべし。」 以上

-又¬覚経ニ¼云ク、「▲速疾ニ超テ便チ可シ↠到ル↢安楽国之世界ニ↡。」 已上

また ¬十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼ (巻五易行品) にいはく、 「もし人ひと疾とく不ふ退転たいてん地じに至いたらんと欲ほっせば、 恭く敬ぎょうの心しんをもつて執しゅう持じして名みょう号ごうを称しょうすべし。」 以上

-又¬十住毘婆沙論ニ¼云ク、「▲若シ人疾ク欲↠至ラント↢不退転地ニ↡者、応シ↧以テ↢恭敬ノ心ヲ↡執持シテ称ス↦名号ヲ↥。」 已上

¬浄じょう土ど論ろん¼ にいはく、 「よくすみやかに功く徳どくの大だい宝海ほうかいを満足まんぞくせしむ。」 以上

-¬浄土論ニ¼云ク、「▲能ク令ム↣速ニ満↢足セ功徳ノ大宝海ヲ↡。」 已上

これみな速疾そくしつ得益とくやくの義ぎなり。

-是 レ皆速疾得益ノ義也。

「↑円えん融にゅう」 といふは、 △序じょの中なかに述のぶるがごとし。

-言↢「円融ト」↡者、如↢序ノ中ニ述ガ↡。

「十方じっぽう称しょう讃さんの誠じょう言ごん」 とは、 第だい十じゅう七しちの願がん諸仏しょぶつ咨し嗟しゃ、 すなはちその意こころなり。 ¬小経しょうきょう¼ 所説しょせつの諸仏しょぶつの証誠しょうじょう、 この願がんによらまくのみ。

-「▲十方称讃之誠言ト」者、第十七ノ願諸仏咨嗟、即其ノ意也。¬小経¼所説ノ諸仏ノ証誠、依ラマク↢此ノ願ニ↡耳。

「時機じき純熟じゅんじゅくの真しん教きょう」 とは、 釈しゃく尊そん興こう世せ大だい悲ひの本懐ほんがい、 これ時機じき純熟じゅんじゅくによるがゆゑなり。

-「▲時機純熟之真教ト」者、釈尊興世大悲ノ本懐、是依ガ↢時機純熟ニ↡故也。

流る通ずうの文もん (大経巻下) にいはく、 「当来とうらいの世よに経きょう道どう滅尽めつじんせんに、 われ慈悲じひをもつて哀愍あいみんして、 ことにこの経きょうを留とどめて止し住じゅうすること百ひゃく歳さいせん。」 以上 法滅ほうめつ百ひゃく歳さいの時ときの下げ機き、 なほもつて得脱とくだつす。 いかにいはんや末法まっぽう最初さいしょのいま、 時じ節せつ相応そうおうし機き縁えん純熟じゅんじゅくす。

-流通ノ文ニ云ク、「▲当来ノ之世ニ経道滅尽センニ、我以テ↢慈悲ヲ↡哀愍シテ、特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡止住コト百歳セン。」 已上 法滅百歳之時ノ下機、猶以テ得脱ス。何ニ况ヤ末法最初ノ之今、時節相応シ機縁純熟ス。

¬*西方さいほう要決ようけつ¼ にいはく、 「末法まっぽう万年まんねんに余よ経きょうことごとく滅めっせんに、 弥陀みだの一いっ教きょう利り物もつひとへに増ぞうせん。」 以上

-¬西方要决ニ¼云ク、「末法万年ニ余経悉ク滅センニ、弥陀ノ一教利物偏ニ増セン。」 已上

【42】当巻とうかんの大たい旨し、 略りゃくして述のぶることかくのごとし。

当巻ノ大旨、略シテ述コト如↠斯ノ。

*六要ろくよう鈔しょう第一だいいち 全ぜん

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
初めの一字と後の三字 「顕」 と 「文類序」。
中間の七字 「浄土真実教行証」。
無分・亡文 読み不明 (ム-ブン・モウ-ブンだと 「文」 の読みが 「ムン」 になる)。
序文の七縁 化前序と観経六縁。
権仮の仁・群萌・世雄・逆謗・闡提 五項目の註釈を、 内容からこの位置に繰り上げた。 底本では【8】に続いている。
底本は◎本派本願寺蔵明徳三年慈観上人書写本。 Ⓐ本派本願寺蔵文安四年空覚書写本、 Ⓑ興正派興正寺蔵蓮如上人書写本 と対校。
花→Ⓐ華
則→Ⓐ即
文→Ⓐ分
惷 左Ⓐヲロカナリ
厳師 ◎「黒谷」と左傍註記
嗔→Ⓐ瞋
恵→Ⓐ慧
令 左Ⓐシメン
曰→Ⓐ云
斉→Ⓐ再
捷 左Ⓐトシ
摂→Ⓐ接
貌→◎Ⓐ豤
弁→Ⓐ辨
曰→Ⓐ云
慮→Ⓐ盧
文 Ⓐ「初嘆所問三二対所問三勅聴許説先嘆恵問次挙仏出難□次嘆所問益多」と右傍註記
二 Ⓐ「初述成請問」と右傍註記し、さらに「次挙因結果」と左傍註記
問 Ⓐ「先述阿難所問」と右傍註記し、さらに「次述阿難所見」と左傍註記
諸→Ⓐ説
花→◎化
外→Ⓐ
六…全 Ⓐになし