題目

0209けんじょう真実しんじつしん文類もんるい じょ

禿とくしゃく*親鸞しんらんしゅう

別序

宗義を立す

 ^それおもんみれば、 しんぎょうぎゃくとくすることは、 *如来にょらいせんじゃく願心がんしんよりほっ真心しんしん*開闡かいせんすることは、 だいしょう (*釈尊) *矜哀こうあいぜんぎょうよりけんしょうせり

0065オモンミレバ、獲↢得スルコトハ信楽↡、発↣起↢如来選択願心↡。開↢闡スルコトハ真心↡、顕↣彰セリ↢大聖矜哀善巧↡。

邪執を挙ぐ

 ^しかるに末代まつだい道俗どうぞくこんしゅう*しょう唯心ゆいしんしずみてじょうしんしょうへんじょうさん*しんまどひて*金剛こんごう真信しんしんくらし。

末代道俗、近世宗師、沈↢自性唯心ヘンオトシム浄土真証↡、迷↢定散自心クラ↢金剛真信↡。

造意を示す

1.承仏祖

 ^ここに禿とくしゃく親鸞しんらん諸仏しょぶつ如来にょらい真説しんせつしんじゅんして、 *ろん*しゃくしゅうえつ

愚禿釈親鸞、信↢順シテ諸仏如来真説↡、披↢閲論家・釈家宗義↡。

2.叙造意

^ひろ*さんぎょう光沢こうたくかぶりて、 ことに*一心いっしんもんひらく。 *しばらくもんいたしてつひに明証みょうしょういだす。

↢三経光沢↡、特↢一心華文↡。シバラシテ↢疑問↡遂↢明証↡。

3.為報恩

^まことに仏恩ぶっとんじんじゅうなるをねんじて、 *人倫じんりん哢言ろうげんぢず。

↢仏恩深重ナルヲ↡、↠恥ジンリンロウゲン↡。

4.誡疑謗

^*じょうほうねがしゅ*いきいと庶類しょるい取捨しゅしゃくわふといへども*ほうしょうずることなかれとなり。

↢浄邦徒衆、厭↢穢域シヨ類、雖↠加フト↢取捨↡、莫レト↠生ズルコト↢毀謗

標挙

0210しんしんぎょうがん 正定しょうじょうじゅ

  0066

題号

0211けんじょう真実しんじつしん文類もんるい 三

禿とくしゃく親鸞しんらんしゅう

正しく大信を明かす【大信釈】
  解釈
   

【1】 ^つつしんで往相おうそうこうあんずるに、 大信だいしんあり。

0067ズルニ↢往相廻向↡、有↢大信↡。

一 Ⅰ
      釈義【嘆徳出願】
        嘆徳【十二嘆名

^だい信心しんじんは、 すなはちこれ 1ちょうせい不死ふし神方しんぼう2ごんじょうえん妙術みょうじゅつ3せんじゃくこう直心じきしん4利他りた深広じんこうしんぎょう5金剛こんごう不壊ふえ真心しんしん6おうにんじょうしん7心光しんこうしょう一心いっしん8希有けうさいしょう大信だいしん9けん難信なんしん捷径せつけい10しょうだいはん真因しんいん11極速ごくそくえんにゅうびゃくどう12真如しんにょ一実いちじつ信海しんかいなり。

大信心、則セイ不死之シンボウ、忻浄厭穢之妙術、選択廻向之直心、利他深広之信楽、 剛不壊之真心、易往无人之浄信、心光摂護之一心、希有最勝之大信、世間難信之セチケイ、証大涅槃之真因、極速円融之白道、真如一実之信海也。

一 Ⅰ ⅱ a 出願
          (一)正しく出願を明かす

^このしんすなはちこれ念仏ねんぶつおうじょうがん (第十八願) よりでたり。

心即デタリ↢念仏往生之願↡。

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)願の異名を挙ぐ

^この大願だいがんせんじゃく本願ほんがんづく、 また本願ほんがん三心さんしんがんづく、 またしんしんぎょうがんづく、 また往相おうそう信心しんじんがんづくべきなり

大願↢選択本願↡、亦名↢本願三心之願↡、復名↢至心信楽之願↡、亦可↠名↢往相信心之願↡也。

一 Ⅰ ⅱ a 述義
          (一)信心の難得を明かす

^しかるに*じょうもつぼんてんぐんじょう*じょうみょうじょうじがたきにあらず、 真実しんじつしんぎょうまことにることかたし。 なにをもつてのゆゑに、 いまし如来にょらい*加威かいりきによるがゆゑなり、 ひろ*だいこうちからによるがゆゑなり

常没凡愚、流転群生、无上妙果↠難キニ↠成、真実信楽実↠獲ルコト。何イマ↢如来加威力ナリ、博↢大悲広ナリ

一 Ⅰ ⅱ a ハ (二)信心の利益を明かす

^たまたまじょうしんば、 このしん顛倒てんどうせず、 このしん虚偽こぎならず。 ここをもつて極悪ごくあくじんじゅうしゅじょうだいきょう0212しん*もろもろのしょうそんじゅうあいるなり。

タマタマ↢浄信、是↢顛倒↡、是↢虚偽ナラ↡。是極悪深重衆生、↢大慶喜心↡、獲↢諸聖尊重愛↡也。

一 Ⅰ ⅱ 引文
        経文
          (一)正しく大信を証す
            (Ⅰ)因願
              (ⅰ)¬大経¼

【2】 ^しんしんぎょう本願ほんがん (第十八願)もん、 ¬*だいきょう¼ (上) にのたまはく、

至心信楽本願文、¬大経¼ノタマハク

^たとひわれぶつたらんに、 十方じっぽうしゅじょうこころいたしんぎょうしてわがくにうまれんとおもひて、 ないじゅうねんせん。 もしうまれざれば、 しょうがくらじと。 ただぎゃくほうしょうぼうのぞく」 と。

「設タラムニ↠仏、十方衆生、至↠心信楽シテオモフテ↠生0068レム↢我↡、乃至十念セム。若↠生↠取↢正覚↡。タヾクト↢五逆誹謗正法↡。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅰ)(ⅱ)¬如来会¼

【3】 ^¬*りょう寿じゅ如来にょらい¼ (上) にのたまはく、

¬无量寿如来会¼ノタマハク

^もしわれ*じょうかくしょうとくせんときぶつ*せつのうちのもろもろのじょうるい、 わがき、 おのれがしょ善根ぜんごん心々しんしんこうせしむ。 わがくにしょうぜんとがんじて、 ないじゅうねんせん。 もししょうぜずは、 だいらじと。 ただ*けん悪業あくごうつくしょうぼうおよびもろもろのしょうにんほうせんをばのぞく」 と。

「若証↢得セム无上覚↡時、余仏ウチ有情類、↢我所有善根、心心廻向セシム。願ジテ↠生ゼム↢我↡、乃至十念セム。若↠生↠取↢菩提↡。唯除クト↧造↢无間悪業↡、誹↦謗セムヲバ正法及聖人↥。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅱ)成就
            (ⅰ)¬大経¼

【4】 ^本願ほんがんじょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

本願成就文、¬経¼言

^あらゆるしゅじょう、 そのみょうごうきて信心しんじんかんせんこと、 ない一念いちねんせん。 *しんこうせしめたまへり かのくにしょうぜんとがんぜば、 すなはちおうじょう退転たいてんじゅうせん。 ただぎゃくほうしょうぼうとをばのぞ」 と。

諸有アラユル衆生、聞↢其名号↡信心歓喜セムコト、乃至一念セム。至心回向セシメタマヘリ。願ズレ↠生ゼム↢彼↡、即↢往生↡、住セム↢不退転↡。唯除クト↢五逆誹謗正法トヲバ↡。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)¬如来会¼

【5】 ^¬りょう寿じゅ如来にょらい¼ (下) にのたまはく、 *だい流志るしやく

¬無量寿如来会¼言菩提流支訳

^ほう仏国ぶっこくしょ0213じょうりょう寿じゅ如来にょらいみょうごうきてよく一念いちねんじょうしんおこして*かんせしめ、 しょ善根ぜんごんこうしたまへるをあいぎょうしてりょう寿じゅこくしょうぜんとがんぜばがんしたがひてみなうまれ、 退転たいてんない*じょうしょうとうだいんと。 けんしょうぼうほうし、 およびしょうじゃそしらんをばのぞ」 と。

「他方仏国所有情、聞↢无量寿如来名号↡能シテ↢一念浄信↡歓喜セシメ、愛↢楽シテ所有善根回向シタマヘルヲ↡、願↠生ゼム↢无量寿国、随↠願皆生、得ムト↢不退転乃至无上正等菩提↡。クト五无間誹謗正法聖者。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)信の利益を示す
            (Ⅰ)¬大経¼

・教主嘆誉

【6】 ^またのたまはく (大経・下)

又言

^ほうきてよくわすれず、 うやまおおきによろこばば、 すなはちわがしんなり。 このゆゑにまさにこころおこすべし」 と。

「聞↠法↠忘ヨロコバヾ
ナリシト↠発↠意

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)¬如来会¼二文

・住不退転

【7】 ^またのたまはく (*如来会・下)

又言

^かくのごときらのるい*だいとくのひとなり。 よく*広大こうだい仏法ぶっぽうもんしょうぜん」 と。

「如↠是大威徳ヒトナリ。能ゼムト↢広大仏法異門↡。」

・諸尊重愛

【8】 ^またのたまはく (如来会・下)

又言

^如来にょらいどくぶつのみみづからろしめせり。 ただそんましましてよくかいしたまふ。 *てんりゅうしゃおよばざるところなり。 じょうおのづからみょうごんつ。

「如来功徳ノミシロシメセリマシマシテ↢世尊↡能開示シタマフ
天・竜・夜叉所ナリ↠不↠及二乗オノヅカ↢於名言

^もしもろもろのじょうまさにぶつして、 ぎょうげんえ、 がんのぼつて、 いちぶつどく*えんせん。 ときこう思議しぎえん。 このちゅうげんにおいてめつすとも、 ぶつしょうはよくはかることなけん。

有情当作仏シテ行超↢普賢ノボ↢彼岸
ヒラキエンノブセム一仏0069之功徳エム↢多劫不思議
↢是中間↡身滅度ストモ仏之勝ケム↢能コト

^このゆゑにしんもんおよびもろもろの*ぜんしょうじゅそくして、 かくのごときのじんみょうほうくことをば、 まさにもろもろのしょうそんじゅうあいせらるることをべし。 *にょらい0214しょう*へんくう所説しょせつごんは、 ただぶつのみさとりたまへり。

具↢足シテ於信・聞善友之摂受
↠聞コトヲ↢如↠是クノ深妙↣重↢愛セラルヽコトヲ聖尊
如来勝智徧虚空所説義言唯仏ノミリタマヘリ

^このゆゑにひろ*しょきて、 わがきょう如実にょじつごんしんずべし。 *人趣にんしゅしんることはなはだかたし。 如来にょらいしゅっもうあふことまたかたし。

ヒロク↢諸智土↠信↢我教如実
人趣オモムク之身得コト如来出世マウアフコト亦難

^*しんおおときまさにいましん。 このゆゑにしゅせんものしょうじんすべし。 かくのごときのみょうほうすでにちょうもんせば、 つねに諸仏しょぶつをしてよろこびをしょうぜしめたてまつるなり」 と。

慧多セム↢精進
↠是クノ妙法スデ聴聞セバメタテマツルナリト↢諸仏シテ コビ

一 Ⅰ ⅱ b 師釈
          (一)雁門(行信二法を明かす)
            (Ⅰ)¬論註¼

【9】 ^¬*ろんちゅう¼ (下) にいはく、

¬チウ¼曰

^ªかの如来にょらいみなしょうし、 かの如来にょらいこうみょうそうのごとく、 かのみょうのごとく、 じつのごとくしゅぎょう相応そうおうせんとおもふがゆゑにº (浄土論) といへり。

「称↢彼如来↡、如↢彼如来光明智相↡、如↢彼名義↡、欲↢如↠実修行相応セム↡故トイヘリ

・衆生称名

^ªしょう如来にょらいみょうº といふは、 いはく無礙むげこう如来にょらいみなしょうするなり。

称彼如来名イフ、謂スル↢无光如来↡也。

・法体徳相

^ªにょ如来にょらいこうみょうそうº といふは、 ぶつこうみょうはこれ智慧ちえそうなり。 このこうみょう十方じっぽうかいらすにしょうあることなし。 よく十方じっぽうしゅじょうみょう黒闇こくあんのぞく。 にちがつ珠光しゅこうのただ室穴しつけつのうちのあんするがごときにはあらざるなり。

如彼如来光明智相トイフ、仏光明是智相也。此光明照↢十方世界↡无↠有コト↢障↡。能↢十方衆生无明黒闇↡。非↠如キニハ↣日・月・珠光但破スルガ↢室穴↡也。

・名号破満 ・名義

^ªにょみょうよく如実にょじつしゅぎょう相応そうおうº といふは、 かの無礙むげこう如来にょらいみょうごうは、 よくしゅじょう一切いっさいみょうす、 よくしゅじょう一切いっさいがんてたまふ

如彼名義欲如実修行相応トイフ、彼无光如来名号、能↢衆生一切无明↡、能テタマフ↢衆生一切志願↡。

・名号破満 ・不実

^しかるに称名しょうみょう憶念おくねんすることあれども、 みょうなほそんして所願しょがんてざるはいかんとならば、 じつのごとくしゅぎょうせざると、 みょう相応そうおうせざるによるがゆゑなり。 いかん0215如実にょじつしゅぎょうみょう相応そうおうせざるとする。 いはく、 如来にょらいはこれ実相じっそうしんなり、 これもののためのしんなりとらざるなり。

↢称名憶念スルコトドモ、无明ナホ↠満↢所願何者イカントナラバ、由↧不ルト↢如実修行↢名義↡不ルニ↦相応也。云何 イカン 不如実修行名義不相応↡。謂ルナリ↠知↢如来是実相ナリ、是為↠物ナリト↡。

・名号破満 ・不実 ・三不信

^また三種さんしゅ相応そうおうあり。 ひとつには信心しんじんあつ (じゅんおんじゅんなり、 また厚朴こうぼくなり。 ぼくおんぼくなり。 くすりなり。 じゅんなり。 じょうこんかおばせなり。 かみおなじ) からず、 *そんせるがごとし、 もうぜるがごときのゆゑにふたつには信心しんじんいちならず、 けつじょうなきがゆゑに。 つには信心しんじん相続そうぞくせず、 *ねんへだつるがゆゑに。

又有↢三種不相応↡。一信心アツカラ 字 常倫反 又音純也 又厚朴也 朴字 音卜也 名也 諄字 至也 誠懇之貌也 同上字 ゴト↠存セルガキノ↠亡ゼルガ。二信心0070↠一ナラ、无キガ↢決定↡故。三信心↢相続↡、余念ヘダツツルガ

^このさん展転てんでんしてあひじょうず。 信心しんじんあつからざるをもつてのゆゑにけつじょうなし、 けつじょうなきがゆゑにねん相続そうぞくせず。 またねん相続そうぞくせざるがゆゑにけつじょうしんず、 けつじょうしんざるがゆゑにしんあつからざるべし。

三句展転シテ相成。以↢信心不ルヲ↟淳↢決定↡、无キガ↢決定↡故↢相続↡。亦可念不ルガ↢相続↡故↠得↢決定↡、不ルガ↠得↢決定↡故心不↞淳

・名号破満 ・如実

^これとそうせるを*如実にょじつしゅぎょう相応そうおうづく。

相違タガフセルヲ↢如実修行相応↡。

・以信為要

^このゆゑに論主ろんじゅ (*天親)はじめに ª一心いっしんº とのたまへり」 と。

論主、ハジメ タマヘリト↢我一心↡。」

一 Ⅰ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)¬讃弥陀偈¼

・一心義相

【10】^¬*さん弥陀みだぶつ¼ にいはく、 *曇鸞どんらんしょうぞうなり

¬讃阿弥陀仏偈¼曰巒和尚造也

^あらゆるもの、 弥陀みだ徳号とくごうきて、 *信心しんじんかんしてくところをよろこばんこと、 いまし一念いちねんおよぶまでせん。 しんのひとこうしたまへり。 しょうぜんとがんずればみなくことをしむ。 ただぎゃくほうしょうぼうとをばのぞく。 ゆゑにわれちょうらいしておうじょうがん」 と。

アラユルモノ↢阿弥陀徳号信心歓喜シテヨロコバムコト↠所↠聞
オヨブマデセム↢一念↡ 至心ヒト回向シタマヘリズレバ↠生ゼム皆得シム↠往クコト
唯除↢五逆謗正法トヲバ頂礼シテズト↢往生↡」

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)終南(三心即一の義相を明かす)
            (Ⅰ)「定善義」

・本仏摂化

021611】^*こうみょう (善導) の ¬かんぎょう¼ (*定善義) にいはく、

光明寺¬観経義¼云

^ªにょº といふはしゅあり。 ひとつにはしゅじょうこころのごとし、 かの心念しんねんしたがひてみなこれをすべし。 ふたつには弥陀みだおんこころのごとし、 げんまどかにらし六通ろくつうざいにして、 すべきものをそなはして、 一念いちねんのうちにぜんなくなく身心しんしんひとしくおもむき、 三輪さんりんかいしておのおのやくすることおなじからざるなり」 と。

「言↢如意↢二種↡。一↢衆生↡、随↢彼心念↡皆応↠度↠之。二ニハ↢弥陀之オンコヽロ↡、五眼円六通自在ニシテミソナハシテ↢機↠度↡、一念之↠前无↠後身心等シクオモム、三リン開悟シテサトリ スルコトタスク マストモ↠同カラ。」

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)「序分義」

・所化機相

【12】^またいはく (*序分義)

^このじょく五苦ごくとう六道ろくどうつうじてけて、 いまだなきものはあらず。 つねにこれに逼悩ひつのうす。 もしこのけざるものは、 すなはちぼんじゅしょうにあらざるなり」 と。

「此五濁・五苦等ジテ↢六道↡受、未↠有↢无↡。常ヒチセム↢悩ナヤマス↡。若↠受↢此、即↢凡数↡也。」

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)「散善義」

・三心義相

【13】^またいはく (*散善義)

又云

^ªとうさんº よりしも ªひっしょうこくº にいたるまでこのかたは、 まさしく三心さんしんべんじょうして、 もつてしょういんとすることをかす。 すなはちそれふたつあり。 ひとつにはそんしたがひてやくあらわすことみつにしてりがたしぶつみづからうてみづからちょうしたまふにあらずは、 さとりるによしなきをかす。 ふたつに如来にょらいかえりてみづからさき三心さんしんかずこたへたまふことをかす。

「従↢何等為三↡シモマデ↢必生彼国↡已来タハシクベンワキマフシテ三心↡以ルコトヲ↦正因↥。即二↡。一ニハ↧世尊随↠機コト↠益意密ニシテ↠知、非ズハ↢仏チヨウシタマフニセム アラハストモ↡无0071キヲ↠得サトリ。二↣如来還タマフコトヲ↢前三心之カズ↡。

・三心義相 ・至誠心

 ^¬きょう¼ (観経) にのたまはく、 ª一者いっしゃじょうしんº。

、一者至誠心。

^ªº とはしんなり、 ªじょうº とはじつなり一切いっさいしゅじょうしん口意くいごう所修しょしゅぎょう*かならず真実しんじつしんのうちになしたま0217へるをもちゐんことをかさんとおもふ。

ナリ、誠ナリオモ↠明ムト↣一切衆生身口意業所修解行、必モチヰムコトヲ↢真実心シタマヘルヲ↡。

^*ほか賢善けんぜんしょうじんそうげんずることをざれ、 うち虚仮こけいだいて貪瞋とんじんじゃかんひゃくたんにしてあくしょうめがたし、 こと蛇蝎じゃかつおなじ。 三業さんごうおこすといへども、 づけて雑毒ぞうどくぜんとす、 また虚仮こけぎょうづく、 真実しんじつごうづけざるなり。

↣外コトヲ↢賢善精進之相↡、内イダイテ↢虚仮↡、貪ムサボル イカル・邪グヰイツワル カムイツワリ サ反イツワル百端ハシニシテ悪性難シム、事同ジヤカチムシ↡。雖↠起スト↢三業↡名↢雑毒之善↡、亦名↢虚仮之行↡、不↠名↢真実↡也。

^もしかくのごとき安心あんじんぎょうをなすは、 たとひ身心しんしんれいしてにちじゅうきゅうもときゅうになしてねんはらふがごとくするものは、 すべて雑毒ぞうどくぜんづく。 この雑毒ぞうどくぎょうしてかのぶつじょうしょうせんとほっするは、 これかならず不可ふかなり。

↢如↠此安心・起行縦使 タトヒ 苦↢レイシテハゲマス身心↡日夜十二時イソガワシモトシテクスルハラフガキウ反 スベミナ コトゴトク↢雑毒之善↡。欲スル↧回シテ↢此雑毒之行↡求↦生セム浄土不可ナリ

^なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの弥陀みだぶついんちゅうさつぎょうぎょうじたまひしときない一念いちねんいっせつも、 三業さんごう所修しょしゅみなこれ真実しんじつしんのうちに*なしたまひしに (きょうなり、 ぎょうなり、 じゅうなり、 ゆうなり) つてなり。 ^おほよそほどこしたまふところしゅをなす、 またみな真実しんじつなり

。正シクテナリ字 以周反 経也 行也 従也 用也阿弥陀仏、因中タマヒシ↢菩薩↡時、乃至一念一刹那イカム、三業所修皆是真実心シタマヒシニ↥。凡↠施シタマフホドコス ハヅトモ↢趣求オモムキ ↡、亦皆真実ナリ

・三心義相 ・至誠心 ・二種真実

^また真実しんじつしゅあり。 ひとつには自利じり真実しんじつふたつには利他りた真実しんじつなり

又真実↢二種↡自利真実、二利他真実ナリ

^*ぜん三業さんごうはかならず真実しんじつしんのうちにてたまへるをもちゐよまたもしぜん三業さんごうおこさば、 かならず真実しんじつしんのうちになしたまひしをもちゐて*ないみょうあんえらばず、 みな真実しんじつもちゐるがゆゑにじょうしんづく

不善三業モチヰヨ↢真実心テタマヘルヲ↡。又若↢善三業、必モチヰテ↢真実心シタマヒシヲ↡、不↠エラ↢内外明闇↡、皆モチヰルガ↢真実↡故↢至誠心↡。

・三心義相 ・深信

 ^ªしゃ深心じんしんº。 深心じんしんといふは、 すなはちこれ深信じんしんしんなり。 またしゅあり。

二者深心。言↢深心、即是深信之心也。亦有↢二種↡。

・三心義相 ・深信 ・第一深信

^0218ひとつには、 けつじょうしてふかく、 *しんげんにこれ罪悪ざいあくしょうぼん曠劫こうごうよりこのかたつねにもっし、 つねにてんして、 しゅつえんあることなしとしん

決定シテ↢自身是罪悪生死凡夫、曠劫ヨリ已来シヅム流転シテ、无シト↟有コト↢出離之縁↡。

・三心義相 ・深信 ・第二深信

^ふたつには、 けつじょうしてふかく、 かの弥陀みだぶつじゅうはちがんしゅじょうしょうじゅしてうたがいなくおもんぱかりなく、 かの願力がんりきじょうじて、 さだめておうじょうしんず。

決定シテ↧彼阿弥陀仏四十八願摂↢受シテ衆生↡、无↠疑无↠慮、オモンパカリジテ↢彼願力↡定↦往生↥。

・三心義相 ・深信 ・第三深信

^またけつじょうしてふかく、 しゃぶつこの ¬かんぎょう¼ に三福さんぷくぼんじょうさんぜんきて、 かのぶつしょうほうしょうさんして、 ひとをしてごんせしむとしんず。

0072決定シテ↧釈迦仏説↢此¬観経¼三福九品・定散二善↡、証↢讃シテ依正二報↡、使ムト↦人ヲシテゴンネガイシタフ↥。

・三心義相 ・ 深信 ・第四深信

^またけつじょうして、 ¬弥陀みだきょう¼ のなかに、 十方じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつ一切いっさいぼんしょうかんしてけつじょうしてしょうずることを深信じんしんするなり。

又決定シテ深↧信スルナリ¬弥陀経¼中、十方恒沙諸仏、証↢カナフシテ一切凡夫↡決定シテ↞生ズルコト

・三心義相 ・深信 ・第五深信

^また深信じんしんするもの、 あおねがはくは一切いっさいぎょうじゃとう一心いっしんにただぶつしんじてしんみょうかえりみず、 けつじょうしてぎょうによりてぶつてしめたまふをばすなはちて、 ぶつぎょうぜしめたまふをばすなはちぎょうず。 ぶつらしめたまふところをばすなはちつ。 これをぶっきょうずいじゅんし、 ぶつずいじゅんすとづく。 これを仏願ぶつがんずいじゅんすとづく。 これをしんぶつ弟子でしづく。

又深信スル、仰一切行者等、一心唯信ジテ↢仏語↡不↠カヘリミ↢身命↡、決定シテ↠行、仏メタマフヲ↠捨、仏メタマフヲ↠行。仏メタマフ↠去ヲバ。是↧随↢順仏教↡、随↦順スト仏意↥。是↣随↢順スト仏願↡。是↢真仏弟子↡。

・三心義相 ・深信 ・第六深信

^また一切いっさいぎょうじゃ、 ただよくこの ¬きょう¼ (観経) によりてぎょう深信じんしんするは、 かならずしゅじょうあやまらざるなり。 なにをもつてのゆゑに、 ぶつはこれ満足まんぞくだいにんなるがゆゑにじつなるがゆゑにぶつのぞきてげんは、 ぎょういまだたず。 それがくにありて、 正習しょうじゅうしょうありていまだのぞこらざ0219るによつて、 がんいまだまどかならず。

又一切行者、但能↢此¬経¼↡深↢信スル、必アヤマゴ ↢衆生↡也。何。仏是満足大悲ナルガ、実語ナルガ。除↠仏已還、智行未。在学地↡、↧有↢正ジウナラフ二障↡未ルニ↞除、果願未↠円ナラ

^これらのぼんしょうは、 たとひ諸仏しょぶつきょうしきりょうすれども、 いまだけつりょうすることあたはず。 平章びょうしょうすることありといへども、 かならずすべからくぶっしょううてじょうとすべきなり。 ^もしぶつかなへば、 すなはちいんして ªにょにょº とのたまふ。 もしぶつかなはざれば、 すなはち ªなんだちが所説しょせつ、 このにょº とのたまふ。

此等凡聖縦使 タトヒ 測↢量スレドモ諸仏教意↡未↠能↢決了スルコト↡。雖↠有↢平章スルコト↡、ノリ ハカラフトモカナラフテ↢仏証↡為↞定也。若カナヘバ↢仏意↡、即オシテシテノタマ↢如是如是↡。若カナ↢仏意、即ノタマ汝等ナンダチ所説是義不如是↡。

^いんせざるは、 すなはち無記むき無利むりやくおなじ。 ぶついんしたまふは、 すなはちぶつ正教しょうきょうずいじゅんす。 もしぶつしょ言説ごんせつは、 すなはちこれ正教しょうきょうしょう正行しょうぎょうしょうしょうごうしょうなり。

↠印ヒク、即↢无記・无利・メグミ无益之語↡。仏印可シタマフ、即随↢順仏之正教↡。若所有言説、即正教・正義・正行・正解・正業・正智ナリ

^もしはもしはしょう、 すべてさつにんてんとうはず、 その是非ぜひさだめんや。 もしぶつ所説しょせつは、 すなはちこれ了教りょうきょうなり。 さつとうせつは、 ことごとく了教りょうきょうづくるなりるべし。

多若少、スベ不↠問↢菩薩・人・天等↡、定メム↢其是非。若所説、即是了教ナリ。菩薩等コトゴト↢不了教↡也、応↠知

^このゆゑにいまときあおいで一切いっさいえんおうじょうにんとうすすむ。 ただぶつ深信じんしんしてせんちゅうぎょうすべし。 さつとう相応そうおうきょう信用しんようして、 もつて疑礙ぎげをなし、 まどひをいだいて、 みづからまどひておうじょう大益だいやく廃失はいしつすべからざれと。

時仰↢一切有縁往生人等↡。唯可↧深↢信シテ仏語↡専注モンハラウケタマワル↥。不レト↠可カラ↧信↢用シテ菩薩0073不相応↡、以ウタガヒサワリ↡、イダハウイテミヅカマドメイヒテハイスタル往生之大益也。

^しゃ一切いっさいぼんかんして、 この一身いっしんつくして専念せんねん専修せんじゅして、 しゃみょう以後いごさだめてかのくにうまるれば、 すなはち十方じっぽう諸仏しょぶつことごとくみなおなじくめ、 おなじくすすめ、 おなじくしょうしたまふ。 なにをもつてのゆゑに、 どう0220たいだいなるがゆゑにいちぶつしょは、 すなはちこれ一切いっさいぶつなり。 一切いっさいぶつは、 すなはちこれいちぶつしょなり。

釈迦指↢勧シテ一切凡夫↡、ツクシテ↢此一身↡専念専修シテ、捨スツ命已後定ルレ↢彼、即十方諸仏悉皆同ジク、同ジク、同ジクシタマフ。何。同体大悲ナルガ。一仏所化是一切仏ナリ。一切仏是一仏所化ナリ

^すなはち ¬弥陀みだきょう¼ のなかにかく、 ªしゃ極楽ごくらく種々しゅじゅしょうごん讃嘆さんだんしたまふ。 また一切いっさいぼんすすめて、 一日いちにち七日しちにち一心いっしん弥陀みだみょうごう専念せんねんせしめて、 さだめておうじょうしめたまふº と。

¬弥陀経¼中カク、釈迦讃↢嘆シタマフ極楽種種荘厳↡。又勧↢一切凡夫↡、一日七日一心専↢念セシメテ弥陀名号↡、定シメタマフト↢往生↡。

^次下つぎしももん (小経・意) にのたまはく、 ª^十方じっぽうにおのおのごうしゃとう諸仏しょぶつましまして、 おなじくしゃよくじょくあくあくかいあくしゅじょう悪見あくけんあく煩悩ぼんのう悪邪あくじゃしんさかりなるときにおいて、 弥陀みだみょうごうさんしてしゅじょう勧励かんれいせしめて、 しょうねんすればかならずおうじょうさんじたまふº と、 すなはちそのしょうなり。

次下、十方シテ↢恒河砂等諸仏↡、同ホムジタマフ↧釈迦能イテ↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪見・悪煩悩・悪邪无信サカリナル↡、↢讃シテ弥陀名号↡勧↢レイセシメテハゲマス  衆生↡、称念スレバ↦往生↥、即証也。

^また十方じっぽうぶつとうしゅじょうしゃいちぶつ所説しょせつしんぜざらんを恐畏おそれて、 すなはちともに同心どうしんどうにおのおの舌相ぜっそういだして、 あまねく三千さんぜんかいおおひてじょうじつごんきたまはく、 ª^なんだちしゅじょう、 みなこのしゃ所説しょせつ所讃しょさんしょしょうしんずべし。 一切いっさいぼん罪福ざいふくしょうせつごんはず、 ただよくかみひゃくねんつくし、 しも一日いちにち七日しちにちいたるまで、 一心いっしん弥陀みだみょうごう専念せんねんして、 さだめておうじょうること、 かならずうたがいなきなりº と。

又十方仏等、恐↢畏 オソレ 衆生ラムヲ↟信↢釈迦一仏所説↡、即同心同時シテ↢舌相、↡徧↢三千世界↡説タマハク↢誠実↡、汝等ナンダチ衆生、皆応↠信↢是釈迦所説・所賛・所証↡。一切凡夫、↠問↢罪福多少、時節久近↡、但能上尽↢百年↡、下至マデ↢一日七日↡、一心専↢念シテ弥陀名号↡、定コト↢往生↡、必↠疑也

^このゆゑにいちぶつ所説しょせつをば、 すなはち一切いっさいぶつおなじくその証誠しょうじょうしたまふなり。 これをにんについてしんつとづくるなり。

一仏所説ヲバ、即一切仏同ジク証↢誠シタマフ↡也。此クルイテ↠人↟信也。

^またこの0221*しょうのなかについてまたしゅあり。 ひとつには、 一心いっしん弥陀みだみょうごう専念せんねん行住ぎょうじゅう坐臥ざがせつごんはず、 念々ねんねんてざるをば、 これを正定しょうじょうごうづく*かの仏願ぶつがんじゅんずるがゆゑにもし礼誦らいじゅとうによらば、 すなはちづけて助業じょごうとす。

又就↢此↡復有↢二種↡。一者、一心専↢念シテ弥陀名号↡、行住坐臥、↠問↢時節久近↡、念念↠捨、是↢正定之業↡、順ズルガ↢彼仏願↡故0074。若↢礼誦オガム↡、即為↢助業↡。

^このしょうじょぎょうのぞきて以外いげ自余じよ諸善しょぜんは、 ことごとくぞうぎょうづく。 すべてぞうぎょうづくるなり。 ^ゆゑに深心じんしんづく。

キテ↢此正助二行↡已外自余、悉↢雑行↡。 スベコトゴトクウトシ雑之行↡也。故↢深心↡。

・三心義相 ・回向発願心

 ^ªさんじゃこう発願ほつがんしんº。 またこう発願ほつがんしてしょうずるものは、 *かならずけつじょうして真実しんじつしんのうちにこうしたまへるがんもちゐてとくしょうおもいをなせ

三者回向発願心。 又回向発願シテズル、必モチヰテ↢決定シテ真実心回向シタマヘル↢得生↡。

^このしん深信じんしんせること金剛こんごうのごとくなるによりて、 一切いっさいけんがくべつべつぎょうにんのために動乱どうらん破壊はえせられず。 ただこれけつじょうして一心いっしんつてしょうじきすすんで、 かのひとくことをざれ。 すなはち進退しんたいしんありてこうにゃくしょうじて回顧えこすれば、 どうちてすなはちおうじょう大益だいやくしっするなり。

心深信セルコトリテ↠若クナルニ↢金剛↡、↧為↢一切異見・異学・別解・別行之↡所↦動乱ミダレワレ ヤブル↥。唯決定シテ一心正直、不↠聞コトヲ↢彼↡。即↢進スヽミ 退シリゾク心↡生ジテカウコハシニヤクヨハシ↡回スレバカヘリミルチテ↠道スル↢往生之大益↡也。

・三心義相 ・廻向発願心 ・問

 ^うていはく、 もしぎょうどう邪雑じゃぞうひとありてきたりてあひ惑乱わくらんして、 あるいは種々しゅじゅなんきて ªおうじょうじº といひ、 あるいはいはん、 ªなんだちしゅじょう曠劫こうごうよりこのかた、 およびこんじょうしん口意くいごうに、 一切いっさいぼんしょううえにおいて、 つぶさにじゅうあくぎゃくじゅう謗法ほうぼう闡提せんだいかいけんとうつみつくりて、 い0222まだ除尽じょじんすることあたはず。 しかるにこれらのつみ三界さんがい悪道あくどうぞくす。 いかんぞいっしょう修福しゅふく念仏ねんぶつをして、 すなはちかの無漏むろしょうくにりて、 なが退たいくらいしょうすることをんやº と。

ウテ、若↢解行不同邪雑人等↡、来マドイシテ、或↢種種疑難↢往生↡、或ハム、汝ダチ衆生、曠劫ヨリ已来及以 オヨビ 今生身口意業、於↢一切凡聖↡、ツブサ↢十悪・五逆・四重・謗法・闡提・破戒・破見等↡、未↠能↢除尽スルコト↡。然此等之罪繋↢ツナギツク三界悪道↡。云何一生修福念仏ヲシテ、即↢彼无漏无生之国↡、永↣証↢悟スルコトヲ不退

・三心義相 ・廻向発願心 ・答

 ^こたへていはく、 諸仏しょぶつ教行きょうぎょうかず塵沙じんじゃえたり。 さとりくるえんこころしたがひてひとつにあらず。

ヘテ、諸仏教行カズタリ↢塵砂↡。ホンクルサトリ機縁、随コヽロジヤウニ↠一

^たとへばけんひとまなこるべくしんずべきがごときは、 みょうのよくあんし、 くうのよくふくみ、 のよく載養さいようし、 みずのよくしょうにんし、 のよくじょうするがごとし。 これらのごときの、 ことごとく待対たいたいほうづく。 すなはちつべし、 千差せんじゃ万別まんべつなり。 いかにいはんや仏法ぶっぽう思議しぎちから、 あに種々しゅじゅやくなからんや。

↢世間人、眼↠見キガ↟信、如↢明↠闇、空フウガム↠有、地サイノセヤシナウニンウルヲスナシスルガヤブル  ↡。如キノ↡事、悉タイマツムカフ之法↡。即↠見、千差シナ万別ナリ。何 ハン仏法不思議之力、アニラム↢種種益↡

^*したがひて一門いちもんづるは、 すなはちいち煩悩ぼんのうもんづるなり。 したがひて一門いちもんるは、 すなはちいちだつ智慧ちえもんるなり。

↢一門、即↢一煩悩↡也。随↢一門、即↢一解脱智0075↡也。

^ここを (じょうなり、 ゆうなり、 なり、 なり、 なり、 そうなり) つてえんしたがひてぎょうおこして、 おのおのだつもとめよ。 なんぢなにをもつてか、 いましえんようぎょうにあらざるをもつて、 われをしょうわくする。 しかるにわが所愛しょあいはすなはちこれわがえんぎょうなり、 すなはちなんぢがしょにあらず。 なんぢが所愛しょあいはすなはちこれなんぢがえんぎょうなり、 またわれのしょにあらず。 このゆゑにおのおのしょぎょう0223したがひてそのぎょうしゅするは、 かならずだつるなり。

字 定也 用也 彼也 作也 是也 相也↡随↠縁シテ↠行、各メヨ↢解脱↡。汝何テカ↠非ルヲ↢有縁之要行↡、障↢惑スル於我↡。然之所愛是我有縁之行ナリ、即↢汝所求↡。汝之所愛是汝有縁之行ナリ、亦非↢我所求↡。是↢所楽スル↢其、必↢解脱↡也。

^ぎょうじゃまさにるべし、 もしまなばんとおもはば、 ぼんよりしょういたるまで、 ないぶっまで、 一切いっさいさわりなし、 みなまなぶことをよ。 もしぎょうまなばんとおもはば、 かならずえんほうによれ。 すこしきろうもちゐるに、 おおやくればなりと。

行者当↠知、若ハヾマナバムト↠解、従↠凡至マデ↠聖、乃至仏果マデ、一切无サワリ、皆得ルコト↠学ブコトヲ也。若↠学バムト↠行、必ジヤク↢有縁之法↡。スコシキヰルニ↢功労↡、多レバ↠益

・三心義相 ・廻向発願心 ・二河喩

 ^また一切いっさいおうじょうにんとうにまうさく、 いまさらにぎょうじゃのためにひとつの譬喩ひゆ (、 さとす)きて、 信心しんじんしゅして、 もつてじゃけんなんふせがん。 なにものかこれや。

又白サク↢一切往生人等↡、今サラ↢行者↡説↢一↡、守↢護シテ信心↡、以フセガム↢外邪異見之難↡。何モノ

^たとへばひとありて、 西にしかひてかんとするにひゃくせんならん。 忽然こつねんとしてちゅうればふたつのかわあり。 ひとつにはこれかわみなみにあり。 ふたつにはこれみずかわきたにあり。 二河にがおのおのひろひゃく、 おのおのふかくしてそこなし、 南北なんぼくほとりなし。

↧有↠人欲スル↢向↠西ント↡百千之里ナラムコチトシテレバ↢二河↡。一ニハ是火↠南。二ニハ是水↠北。二河各ヒロクワチ百歩、各シテ↠底、南北无

^まさしくすいちゅうげんひとつのびゃくどうあり、 ひろ四五しごすんばかりなるべし。 このみちひがしきしより西にしきしいたるに、 またながひゃく、 そのみずろうまじはりぎてみち湿うるおす。 そのえん (ほのお、 けむりあるなり、 ほのお、 けむりなきほのほなり) またきたりてみちく。 すいあひまじはりて、 つねにしてそくすることなけん。

シク水火中間↢一白道↡、可ヒロ四五寸キヨナル↡、此道従↢東岸↡至ルニ↢西↡、亦ナガ百歩、其大ナミ小ナミマジワギテ湿ウルヲ↠道。其焔亦来↠道。水火ニシテケム↢休ヤミヤムスルコト↡。

^このひとすでに空曠くうこうのはるかなるところいたるに、 さらに人物にんもつなし。 おお群賊ぐんぞくあくじゅうありて、 このひと単独たんどくなるをて、 きおきたりてこのひところさんとす0224おそれてただちにはしりて西にしかふに、 忽然こつねんとしてこのたいて、 すなはちみづから念言ねんごんすらく、 ªこのかわ南北なんぼく辺畔へんぱんず、 ちゅうげんひとつのびゃくどうる、 きはめてこれ狭少きょうしょうなり。 ふたつのきしあひることちかしといへども、 なにによりてかくべき。 今日こんにちさだめてせんことうたがはず。

スデルニ↢空曠ハルカナル↡、サラ↢人物↡。多リテ↢群ムラガル賊・悪ジユケダモノ、見↢此タンヒトヘ ヒトリナルヲ↡、↠殺ムト↢此↡。オソレテ↠死リテ↠西、忽然トシテ↢此大河↡、即ミヅカ念言スラク、此河、南北↠見↢辺パンホトリ↡、中間↢一白道↡、極ケチセバシナリ。二ルコト↠近、何テカ↠行今日 ケフ セムコト不↠疑

^まさしくいたかえらんとおもへば、 群賊ぐんぞくあくじゅう漸々ぜんぜんきたむ。 まさしく南北なんぼくはしらんとすれば、 あくじゅうどくちゅうきおきたりてわれにかふ。 まさしく西にしかひてみちたずねてかんとすれば、 またおそらくはこのすい二河にがせんことをº と。 ^ときにあたりてこうすることまたいふべからず。

シクスレ↢到ラムト↡、群賊・悪獣漸漸。正シクスレ↢南0076ラムト↡、悪獣・毒虫競↠我。正シクスレ↢向↠西タヅ↠道カムト↡、復オソラクハンコトヲ↢此水火二河↡。当リテ↠時オソレ オソルスルコト↢復可↟言

^すなはちみづからねんすらく、 ªわれいまかえらばまたせん、 とどまらばまたせん、 かばまたせん。 一種いっしゅとしてまぬかれざれば、 われ*やすこのみちたずねてさきかひてかん。 すでにこのみちあり、 かならず可度かどすべしº と。

ミヅカ思念スラクカヘラバ亦死セムラバ亦死セムカバ亦死セム。一種トシテマヌカ↠死ヤスタヅネテ↢此↡向カム↢此道↡、必シト↢可度↡。

^このねんをなすときひがしきしにたちまちにひとすすむるこえく、 ªきみただけつじょうしてこのみちたずねてけ、 かならずなんなけん。 もしとどまらばすなはちせんº と。

↢此↡時、東タチマチ↢人↡、仁者 キミ 但決定シテタヅネテ↢此、必ケム↢死難↡。若ラバセムト

^また西にしきしうえに、 ひとありて*ばひていはく、 ªなんぢ*一心いっしんしょうねんにしてただちにきた、 われよくなんぢをまもらん。 すべてすいなんせんことをおそれざれº と。

又西↠人ヨバウテハク、汝一心正念ニシテラム↠汝レト↠堕セムコトヲ↢於水火之難↡。

^このひと、 すでにここにつかはし、 か0225しこにばふをきて、 すなはちみづからまさしく身心しんしんあたりて、 けつじょうしてみちたずねてただちにすすんで、 こう退心たいしんしょうぜずして

人既コヽツカハフヲ↡、即ミヅカシク↢身心↡、決定シテ↠道シテ↠生↢疑カウコワク 退シリゾク↡、

^あるいはくこと一分いちぶんぶんするに、 ひがしきし群賊ぐんぞくばひていはく、 ªきみかえきたれ、 このみち嶮悪けんあくなり、 ぐることをじ。 かならずせんことうたがはず。 われらすべて悪心あくしんあつてあひかふことなしº と。 ^このひとばふこえくといへども、 また回顧かえりみず、 一心いっしんにただちにすすんでみちねんじてけば、 しゅにすなはち西にしきしいたりて、 ながくもろもろのなんはなる。 ぜんあひきょうらくすることむことなからんがごとし。

クコト一分二分スルニ、東群賊ハク仁者 キミ カヘ、此ケンサカシナリ↠過グルコトヲ。必セムコト↠疑シト↢悪心アテコト↡。此↠聞↢喚↡、亦回顧カヘリミ↡、一心↠道ケバ、須臾↢西↡、永↢諸難↡。善友ヨロコブスルコトラムガムコト

^これはこれたと (、 をしへなり) へなり。

タトヘ也。

・三心義相 ・廻向発願心 ・合法

 ^つぎたとへをがっせば、 ªひがしきしº といふは、 すなはちこのしゃたくたとふ。

↠喩、言↢東、即↢此娑婆之火宅↡也。

^ª西にしきしº といふは、 すなはち極楽ごくらく宝国ほうこくたとふ。

↢西、即↢極楽宝国↡也。

^ª群賊ぐんぞくあくじゅういつわしたしむº といふは、 すなはちしゅじょう六根ろっこん六識ろくしき六塵ろくじんおんだいたと

↢群賊・悪獣 イツワリ シタシム、即↢衆生六根・六シキ・六塵・五オム・四大↡也。

^ªにんくうきょうさわº といふは、 すなはちつねにあくしたがひてしんぜんしきはざるにたとふ。

↢无人空クヰヤウハルカナリ、即↧常↢悪友↡不ルニ↢真善知識↡也。

^ªすい二河にがº といふは、 すなはちしゅじょう貪愛とんないみずのごとし、 瞋憎しんぞうのごとしとたとふ。

↢水火二河、即↢衆生貪愛↠水、瞋憎シト↟火也。

^ªちゅうげんびゃくどう四五しごすんº といふは、 すなはちしゅじょう貪瞋とんじん煩悩ぼんのうのなかに、 よく*清浄しょうじょうがんおうじょうしんしょうぜしむるにたと。 いまし貪瞋とんじんこわきによるがゆゑに0226、 すなはちすいのごとしとたとふ。 善心ぜんしんなるがゆゑに、 びゃくどうのごとしとたとふ。

↢中間白道四五寸、即↢衆生貪瞋煩悩、能ゼシムルニ↢清浄願往生0077↡也。乃↢貪瞋コハキニ↡故↠如シト↢水火↡。善心微ナルガスクナシ ↠如シト↢白道↡。

^また ªすいつねにみち湿うるおすº とは、 すなはち愛心あいしんつねにおこりてよく善心ぜんしんぜんするにたとふ。

又水波常湿ウルホ↠道、即↣愛心常ゼンソメケガススルニ善心↡也。

^また ªえんつねにみちくº とは、 すなはち瞋嫌しんけんしんよくどく法財ほうざいくにたとふ。

又火エム↠道、即シンイカリ ケンキラフ之心能クニ↢功徳之法財↡也。

^ªひとみちうえいて、 ただちに西にしかふº といふは、 すなはちもろもろのぎょうごう*してただちに西方さいほうかふにたとふ。

↧人イテ↢道↡直フト↞西、即↧回シテ↢諸行業↡直フニ↦西方↥也。

^ªひがしきしひとこえすすつかはすをきて、 みちたずねてただちに西にしすすむº といふは、 すなはちしゃすでにめっしたまひて、 のちひとたてまつらず、 なほきょうぼうありてたずぬべきにたとふ、 すなはちこれをこえのごとしとたとふるなり。

↧東↢人ツカハスヲ↡、尋↠道西、即↧釈迦已シタマヒテ↠見タテマツラナホ↢教法↡可キニタヅ、即↢之シト↟声也。

^ªあるいはくこと一分いちぶんぶんするに群賊ぐんぞくかえすº といふは、 すなはちべつべつぎょう悪見あくけんひと*みだりにけんをもつてたがひにあひ惑乱わくらんし、 およびみづからつみつくりて退失たいしつすとくにたとふるなり

↢或コト一分二分スルニ群賊カヘスト、即別解・別行・悪見マウミダリニ見解ヲモテタガイ惑乱、及ミヅカ↠罪退失スト↡也。

^ª西にしきしうえひとありてばふº といふは、 すなはち弥陀みだがんたとふ。

↢西↠人喚フト、即↢弥陀願意↡也。

^ªしゅ西にしきしいたりてぜんあひよろこぶº といふは、 すなはちしゅじょうひさしくしょうしずみて、 曠劫こうごうよりりんし、 迷倒めいとうしてみづからまとひて、 だつするによしなし。 あおいでしゃ発遣はっけんしておしへて西方さいほうかへたまふことをかぶり、 また弥陀みだしんしょうかんしたまふによつて、 いまそんおんこころしんじゅんして0227すい二河にがかえりみず、 念々ねんねんわするることなく、 かの願力がんりきどうじょうて、 しゃみょう以後いごかのくにしょうずることをて、 ぶつとあひきょうすること、 なんぞきわまらんとたとふるなり。

↧須臾↢西↡善友ブト、即↧衆生久シクミテ↢生死↡、曠劫ヨリメイシテミヅカマトウテ、无ヨシ↢解脱スル↡、仰カブ↣釈迦発遣シテオシヘテヘタマフコトヲ↢西方↡、又↢弥陀悲心セウマネキクワン ヨブ シタマフニ↡、今信↢順シテ二尊之オンコヽロ↡、カヘリミ↢水火二河↡、念念ワスルルコトジテ↢彼願力之道↡、捨命已後得↠生ズルコト↢彼↡、↠仏慶喜スルコトラムト↥也。

 ^また一切いっさいぎょうじゃ行住ぎょうじゅう坐臥ざが三業さんごう所修しょしゅちゅうせつふことなく、 つねにこのをなし、 つねにこのそうをなすがゆゑに、 こう発願ほつがんしんづく。

又一切行者、行住坐臥三業所修、无↠問コト↢昼夜時節↡、常↢此↡、常スガ↢此↡故↢廻向発願心↡。

^またこうといふは、 かのくにしょうじをはりて、 かえりてだいおこして、 しょうにゅうしてしゅじょうきょうする、 またこうづくるなり。

又言↢回向、生↢彼↡已、還シテ↢大悲↡、回↢入シテ生死↡教↢化スル衆生↡、亦名↢回向↡也。

・三心義相 ・三心結釈

 ^三心さんしんすでにすれば、 ぎょうとしてじょうぜざるなし。 がんぎょうすでにじょうじて、 もししょうぜずは、 このことわりあることなしとなり。 またこの三心さんしん、 また*じょうぜんつうしょうすと、 るべし」 と。

三心既スレバ、无↢行トシテ↟成。願行既ジテ、若↠生、无シト↠有コト↢是コトハリ↡也。又此三心、亦通0078↢摂スト定善之義↡、応シト↠知。」

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)¬般舟讃¼

・釈尊善巧

【14】^またいはく (*般舟讃)

又云

^うやまひて一切いっさいおうじょうしきとうにまうさく、 おおきにすべからくざんすべししゃ如来にょらいはまことにこれ慈悲じひ父母ぶもなり。 種々しゅじゅ方便ほうべんをして、 われらがじょう信心しんじんほっせしめたまへり」 と。

「敬サク↢一切往生知識等↡、大↢慚愧↡。釈迦如来是慈悲父母ナリ。種種方便ヲシテ発↢起セシメタマヘリト无上信心↡。」

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)¬礼讃¼

・機受信相

【15】^¬*貞元ていげんしんじょう釈教しゃくきょう目録もくろく¼ かんだいじゅういちにいはく、

¬貞元新定釈教目録¼巻第十一

^¬*しゅうしょきょう礼懴らいさん¼ じょう 大唐だいとう西さいしゅうふく沙門しゃもん*しょうせんなり。 *貞元ていげんじゅうねんじゅうがつじゅうさんにちちょくじゅん0228じてへんにゅうす」 と云々うんぬん。 ¬さん¼ のじょうかんは、 しょうしょきょうによりて ¬さん¼ をつくるなかに、 ¬かんぎょう¼ によりて善導ぜんどうの ¬礼懴らいさん¼ (*礼讃)にっちゅうときらいけり。 かんは 「比丘びく善導ぜんどうしゅう」 と云々うんぬん^かの ¬さん¼ によりて要文ようもんしょうしていはく、

「¬集諸経礼懴儀¼ 大唐西シユ福寺沙門智昇撰也。ナズラヘテ↢貞元十五年十月廿三日カムカムガウヘンシテツラヌルト」云云。¬懴儀¼上巻、智昇依↢諸経↡造↢¬懴儀¼↡中、依↢¬観経¼↡引ケリ↢善導¬礼懴¼日中↡。下巻「比丘善導集記」云云。依↢彼¬懴儀¼↡鈔シテヌク エラブトモ要文↡云

^ふたつには深心じんしんすなはちこれ真実しんじつ信心しんじんなり。 しんはこれ煩悩ぼんのうそくせるぼん善根ぜんごんはくしょうにして三界さんがいてんしてたくでずとしんす。 いま弥陀みだほんぜいがんは、 みょうごうしょうすること*下至げしじっしょうもんとうおよぶまで、 さだめておうじょうしむとしんして、 *一念いちねんいたるにおよぶまでしんあることなし。 ゆゑに深心じんしんづくと。

「二深心、即是真実信心ナリ。信↧知自身是具↢足セル煩悩↡凡夫、善根薄ウスシニシテ流↢転シテ三界↞出↢火宅↡。今信↪知シテ弥陀本弘誓願ヲバ、及ブマデ↧称スルコト↢名号↡下至十声聞等↥、定シムト↩往生↨、及ブマデ↠至↢一念↡無↠有コト↢疑心↡。故クト↢深心↡。

 ^ªそれかの弥陀みだぶつみょうごうくことをることありて、 かんして一心いっしんいたせば、 みなまさにかしこにしょうずることをべしº」 と。

↠得コト↠聞コトヲ↢彼弥陀仏名号
歓喜シテセバ↢一皆当シト↠生ズルコト

一 Ⅰ ⅱ b ロ (三)横川(大信の利益を明かす)
            (Ⅰ)¬往生要集¼

・領受体徳

【16】^¬*おうじょうようしゅう¼ (上) にいはく、

¬往生要集¼云

^ªにゅう法界ほっかいぼんº にのたまはく、 ª^たとへばひとありて不可ふかくすりれば、 一切いっさい怨敵おんてきその便たよりをざるがごとし。 さつ摩訶まかさつもまたまたかくのごとし。 だいしん不可ふか法薬ほうやくれば、 一切いっさい煩悩ぼんのうしょ怨敵おんてきすることあたはざるところなり。

「入法界品、譬↧有↠人得レバ↢不可壊↡、一切オンアダ テキカタキルガ↞得↢其便タヨ ↡。菩薩摩訶薩亦復 マタ ↠是。得レバ↢菩提心不可壊法薬↡、一切煩悩、諸魔怨敵、所ナリ↠不↠能↠壊ヤブルスルコト

^たとへばひとありてじゅうすい宝珠ほうしゅて、 その瓔珞ようらくとすれば、 ふかすいちゅうりてもつにゃくせざるがごとし。 0229だいしんじゅうすい宝珠ほうしゅれば、 しょうかいりて沈没ちんもつせず。

↧有↠人得↢住水宝珠↡、瓔↢珞トスレバ↡、入↢深水中0079ルガ↦没シヅミ オボル↥。得レバ↢菩提心住水宝珠↡、入↢生死海↢沈没↡。

^たとへば金剛こんごうひゃくせんこうにおいてすいちゅうしょしてらんし、 またへんなきがごとしだいしんもまたまたかくのごとし。 りょうこうにおいてしょうのなか、 もろもろの煩悩ぼんのうごうしょするに、 断滅だんめつすることあたはず、 また損減そんげんなしº」 と。

↧金剛↢百千劫↡処↢於水中ランミダル亦無キガ↦異変↥カハル。菩提之心亦復如↠是。於↢无量劫↡処スルニ↢生死煩悩↡、↠能↢断滅スルコト↡、亦无シトソンホロブゲン↡。スクナシ

・本仏照護

【17】^またいはく (往生要集・中)

又云

^われまたかの*摂取せっしゅのなかにあれども、 煩悩ぼんのうまなこへてたてまつるにあたはずといへども、 だい*ものうきことなくして、 つねにわがらしたまふ」 と。

「我亦在レドモ↢彼摂取之中↡、煩悩障↠眼↠能↠見タテマツルニ、大悲无クシテモノウキコト、常シタマフト↢我↡。」

一 Ⅰ

【18】^しかれば、 もしはぎょう、 もしはしんいちとして弥陀みだ如来にょらい清浄しょうじょう願心がんしん*こうじょうじゅしたまふところにあらざることあることなし *いんなくしていんのあるにはあらざるなりと、 るべし。

行若信、无↠有コト↤一事トシテルコト↣阿弥陀如来清浄願心之所↢回向成就シタマフ↡。非↢无クシテ↠因他ルニハ↡也、可↠知

料簡
    正明【三一問答
     

【19】^*ふ。 如来にょらい本願ほんがん (第十八願)、 すでにしんしんぎょうよくしょうちかいおこしたまへり。 なにをもつてのゆゑに論主ろんじゅ (*天親) 一心いっしんといふや。

。如来本願、已シタマヘリ↢至心・信楽・欲生↡。何論主言↢一心

一 Ⅱ ⅰ
        解釈
          (一) 略釈

 ^こたふ。 どんしゅじょうりょうやすからしめんがために弥陀みだ如来にょらい三心さんしんおこしたまふといへども、 はん真因しんいんはただ信心しんじんをもつてす。 このゆゑに論主ろんじゅ (天親)さんがっしていちとせるか

。愚鈍衆生、解了為↠令ムガ↠易、弥陀如来雖↠発シタマフト↢三心↡、涅槃真因唯以テス↢信心↡。是論主合シテ↠三↠一

一 Ⅱ ⅰ b イ (二) 広釈
            (Ⅰ)字訓に寄せて釈す【字訓釈】
              (ⅰ)

023020】^わたくしに三心さんしんくんうかがふに、 さんすなはちいちなるべし。

ワタクシウカヾフニ↢三心クンオシヘ↡、三即↠一ナル

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)
                (a)

^そのこころいかんとなれば、

意何ントナレ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)正釈
                  (イ)出訓

^しん」 といふは、 「」 とはすなはちこれ1しんなり、 2じつなり、 3じょうなり。 「しん」 とはすなはちこれ1しゅなり、 2じつなり。

↢至心、至是真也、実也、誠也。心者即是種也、実也。

^しんぎょう」 といふは、 「しん」 とはすなはちこれ1しんなり、 2じつなり、 3じょうなり、 4まんなり、 5ごくなり、 6じょうなり、 7ゆうなり、 8じゅうなり、 9しんなり、 10げんなり、 11せんなり、 12ちゅうなり。 ぎょう」 とはすなはちこれ1よくなり、 2がんなり、 3あいなり、 4えつなり、 5かんなり、 6なり、 7なり、 8きょうなり。

↢信楽、信者即是真也、実也、誠也、満ミツ也、極也、成也、用ユウ也、重也、審也、ツマビラカナリゲンシルシ 、宣ノブ也、チウ也。コヽロザシ 是欲也、願也、愛也ヨミス 、悦也ヨロコブ、歓也、喜也、ヨロコブガナリ也、慶也。

^よくしょう」 といふは、 「よく」 とはすなはちこれ1がんなり、 2ぎょうなり、 3かくなり、 4なり。 「しょう」 とはすなはちこれ1じょうなり、 2 (なり、 なり、 ぎょうなり、 えきなり、 なり、 しょうなり) なり、 3なり、 4こうなり。

↢欲生、欲者即是願也、楽也、覚也サトル 、知也。生者即是成0080也、作 字 則羅反 則落反 蔵洛反 為也 起也 行也 役也 始也 生也 也、為也、興也オコス 

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)会訓

^あきらかにんぬ、 しん」 は、 すなはちこれ*真実しんじつじょうしゅしんなるがゆゑに、 *がいまじはることなきなり

至心是真実マコト種之心ナルガ、疑蓋オホフハルコト也。

^しんぎょう」 は、 すなはちこれ*真実しんじつじょうまんしんなり、 *ごくじょうゆうじゅうしんなり、 *審験しんげんせんちゅうしんなり、 *欲願よくがん愛悦あいえつしんなり、 *かんきょうしんなるがゆゑに、 がいまじはることなきなり。

信楽是真実誠満之心ナリ、極成ユウ重之心ナリ、審アキラカナリゲンシルシ宣忠之心ナリ、欲願愛悦之心ナリ、歓喜ケイ之心ナルガ、疑蓋无↠雑ハルコト也。

^よくしょう」 は、 すなはちこれ*がんぎょうかくしんなり、 *じょうこうしんなり。 *だいこうしんなるがゆゑに、 がいまじはることなきなり。

欲生是願楽覚知之心ナリ、成作為興之心ナリ。大悲回向之心ナルガ、疑蓋无↠雑ハルコト也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ハ)成一

^いま三心さんしんくんあんずるに、 真実しんじつしんにして虚仮こけまじはること0231なし、 しょうじきしんにしてじゃまじはることなし。 まことにんぬ、 がい間雑けんぞうなきがゆゑに、 これをしんぎょうづく。 しんぎょうすなはちこれ一心いっしんなり一心いっしんすなはちこれ真実しんじつ信心しんじんなり。 このゆゑに論主ろんじゅ (天親)はじめに 「一心いっしん」 といへるなりと、 るべし。

今按ズルニ↢三心クン↡、オシヘ コヽロトイフ真実シテ虚仮无↠雑ハルコト、正直シテ邪偽无↠雑ハルコト、疑蓋无キガ↢間雑↡故、是↢信楽↡。信楽即是一ナリ、一心即是真実信心ナリ。是論主ハジメ↢一心↡也、応↠知

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)法義に就きて釈す【法義釈】
              (ⅰ)正しく三心即一を明かす
                (a)

【21】^またふ。 くんのごとき論主ろんじゅこころさんをもつていちとせる、 そのしかるべしといへども、 あくしゅじょうのために弥陀みだ如来にょらいすでに三心さんしんがんおこしたまへり。 いかんがねんせんや。

又問。如↢字訓↡、論主意以↠三↠一義、其理雖↠可↠然、為↢愚悪衆生↡阿弥陀如来已シタマヘリ↢三心↡。云何イカンガ思念セム

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)
                  (イ)正釈
                    [一]総標

 ^こたふ。 ぶつはかりがたし。

。仏意難↠惻

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二]弁別
                      [Ⅰ]至心を釈す【至心釈】
                        [ⅰ]正明
                          [a]正釈

・表謙遜意

^しかりといへども、 ひそかにこのしんすいするに、

↠然ヒソカオススルニ↢斯↡、

・所為機相

^一切いっさいぐんじょうかい *無始むしよりこのかたない今日こんにちこんいたるまで、 *あくぜんにして清浄しょうじょうしんなし、 *虚仮こけてんにして真実しんじつしんなし。

一切群生クラシ自↢従无始↡已来乃至今日至マデ↢今時↡、ケガラハシケガスソムニシテ↢清浄心↡、虚仮 テンヘツラフニシテ↢真実心↡。

・法体成就

^ここをもつて如来にょらい 一切いっさいのうしゅじょうかいびんして、 不可ふか思議しぎ*ちょうさい永劫ようごうにおいて、 さつぎょうぎょうじたまひしときさんごう所修しょしゅ一念いちねんいっせつ清浄しょうじょうならざることなし、 真心しんしんならざることなし。 如来にょらい清浄しょうじょう真心しんしんをもつて、 *えんにゅう無礙むげ*不可ふか思議しぎ不可ふかしょう不可ふかせつとくじょうじゅしたまへり。

如来悲↢ビンシテアワレブ一切苦悩衆生海↡、於↢不可思議テウ載永劫↡、行タマフシ↢菩薩↡時、三業所修、一念一刹那↠不ルコト↢清浄ナラ↡、无↠不ルコト↢真心ナラ↡。如来以↢清浄真心↡、成↢就シタマヘリツク ナルトモ 円融无不可思議不可称不可説至徳↡。

・法界回施

^如来にょらいしんをもつて、 しょ一切いっさい煩悩ぼんのう悪業あくごうじゃぐんじょうかい*回施えせしたまへり。

↢如来至心↡、回↢シタマヘリホドコス ハヅストモ諸有一切煩悩悪業邪0081群生海↡。

・結帰一心

^すなはちこれ利他りた真心しんしんあらわ0232す。 ゆゑにがいまじはることなし

アラハ↢利他真心↡。故ボムナフ↠雑ハルコト

・出体

^このしんはすなはちこれ*とく尊号そんごうをそのたいとせるなり。

至心是至徳尊号↢其↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][b]引文
                            [イ]経文
                              ª一º¬大経¼

【22】^ここをもつて ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、

¬大経¼言

^欲覚よくかく瞋覚しんかく害覚がいかくしょうぜず。 欲想よくそう瞋想しんそう害想がいそうおこさず。 しきしょうこうほうじゃくせず。 忍力にんりきじょうじゅしてしゅはからず。 しょうよくそくにしてぜんなし。 三昧さんまい常寂じょうじゃくにして智慧ちえ無礙むげなり。

↠生↢欲覚・瞋覚・害覚↡。↠起↢欲想・瞋想・害想↡。↠著↢色・声・香・味之法↡。忍力成就シテ↠計↢衆苦↡。少欲知足タルニシテ↢染ツク・恚イカル・痴↡。オロカナリ三味常寂ニシテシヅカナリ慧无ナリ

^虚偽こぎ諂曲てんごくしんあることなし。 げんあいにして、 こころさきにしてじょうもんす。 ゆうみょうしょうじんにしてがんものうきことなし。 もつぱら清白しょうびゃくほうもとめて、 もつてぐんじょう恵利えりしき。 三宝さんぼうぎょうし、 ちょう奉事ぶじしき。 だいしょうごんをもつてしゅぎょうそくして、 もろもろのしゅじょうをしてどくじょうじゅせしむ」 とのたまへりと。

↠有コト↢虚グヰイツハル テムヘツラフゴク之心↡。和顔カオバセ アハレミ コトバニシテ、先ニシテ↠意ジヨウ ツク 。勇イサム タケシ モハラニシテ志願无モノウクヱンキコト。専↢清キヨシ白之法↡、以恵↢メグムシキ群生↡。恭↢ツヽシム三宝↡、奉↢ツカフシキ師長↡。以↢大荘カザリイツクシ具↢足シテ衆行↡、令ムトノタマヘリト↢諸衆生ヲシテ功徳成就↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][イ]ª二º¬如来会¼

【23】^¬りょう寿じゅ如来にょらい¼ (上) にのたまはく、

¬无量寿如来会¼言

^ぶつ*なんげたまはく、 ªかの法処ほうしょ比丘びく (*法蔵菩薩)けんざいおう如来にょらい (*世自在王仏) および諸天しょてんにんぼん沙門しゃもん婆羅ばらもんとうまえにして、 ひろくかくのごときだいぜいおこしき。 みなすでにじょうじゅしたまへり。 ^けん希有けうにしてこのがんおこし、 すでにじつのごとくあんじゅうす。 種々しゅじゅどくそくして、 とく広大こうだい清浄しょうじょうぶつしょうごんせり。

「仏告ゲタマハ↢阿難↡、彼法処比丘、↢世間自在王如来及諸天・人・魔・梵・沙門・婆羅門等↡、広シキ↢如↠是大弘誓↡。皆已成就シタマヘリ。世間マレニニシテ↢是↡已リテ、如↠実安住。種種功徳具足シテ、荘↢厳セリ威徳広大清浄仏土↡。

^かくのごときさつぎょうしゅじゅうせること、 ときりょうしゅ不可ふか思議しぎ無有むう等等とうどうおく那由他なゆたひゃくせんこう0233。 うちにはじめていまだかつて貪瞋とんじんおよびよくがいおもいおこさず、 しきしょうこうそくおもいおこさず、 もろもろのしゅじょうにおいて、 つねにあいきょうねがふことなほ親属しんぞくのごとし。

修↢ツクロフナラフセルコト↠是クノ菩薩↡、時↢於无量无数不可思議无有等等億那由他百千劫↡。内メテ↣曽↢貪瞋及痴、欲・害・イカル↡、↠起↢色・声・香・味・ソク↡、於↢諸衆生↡、常ネガコノムフコト↢愛ナホ↢親シタシ↡。

^そのしょう調順じょうじゅんにして暴悪ぼうあくあることなし。 もろもろのじょうにおいて、 つねににんこころいだいててんせず、 まただいなし。 *善言ぜんごんしゃくしんして、 もろもろのびゃくほうもとめしめ、 あまねくぐんじょうのためにゆうみょうにして退たいすることなく、 けんやくせしめ、 大願だいがん円満えんまんしたまへりº」 と。

性、調トヽノフニシテ↠有コトアラシ悪↡。於↢諸有情↡、常イダイテ↢慈忍イツワリテン↡、ヘツラワズ亦无↢懈オコタリ怠↡。善シヤクムチウツシテ、求メシメ↢諸白法↡、普0082↢群生↡勇イサミ タケシニシテ退スルコト、利↢益セシメ世間↡、大願円満シタマヘリト。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]師釈
                              ª一º「散善義」

【24】^こうみょうしょう (善導) のいはく (散善義)

光明寺和尚

^この雑毒ぞうどくぎょうして、 かのぶつじょうしょうせんとおもふは、 これかならず不可ふかなり。 なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの弥陀みだぶついんちゅうさつぎょうぎょうぜしときない一念いちねんいっせつも、 三業さんごう所修しょしゅみなこれ真実しんじつしんのなかになしたまへるによりてなり。

「欲↧回シテ↢此雑毒之行↡、求↦生セムト浄土不可ナリ。何。正シクテナリ↧彼阿弥陀仏、因中ゼシ↢菩薩↡時、乃至一念一刹那、三業所修皆真実心シタマヘルニ↥。

^おほよそほどこしたまふところしゅをなす、 またみな真実しんじつなり。 また真実しんじつしゅあり。 ひとつには自利じり真実しんじつふたつには利他りた真実しんじつなりと。

所↠施シタマフ↢趣オモムク↡、亦皆真実ナリ。又真実↢二種↡。一自利真実、二利他真実ナリト

^ぜん三業さんごうをば、 かならず真実しんじつしんのうちにてたまへるをもちゐよ。 またもしぜん三業さんごうおこさば、 かならず真実しんじつしんのうちになしたまへるをもちゐて、 ないみょうあんえらばず、 みな真実しんじつもちゐるがゆゑに、 じょうしんづく」 と。

不善三業オバ、必モチヰヨ↢真実心テタマヘルヲ↡。又若↢善三業、必モチヰテ↢真実心シタマヘルヲ↡、不↠エラ↢内外明闇↡、皆モチヰルガ↢真実↡故、名クト↢至誠心↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][c]結成

023425】^しかれば、 だいしょう (釈尊)真言しんごんしゅう (善導)しゃく、 まことにんぬ、 このしんすなはちこれ不可ふか思議しぎ不可ふかしょう不可ふかせつ*いちじょうだいがんかい*こうやく真実しんじつしんなり。 これをしんづく。

大聖真言、宗師釈義、心則是不可思議不可称不可説一乗大智願海、回向利益他之真実心ナリ。是↢至心↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ]追釈
                          [a]先挙
                          [b]

【26】^すでに 「真実しんじつ」 といへり。 真実しんじつといふは、

ヘリ↢真実↡。言↢真実

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ][c]
                            [イ]真実の言を釈す
                              ª一º¬涅槃経¼「聖行品」

 ^¬*はんぎょう¼ (聖行品) にのたまはく、

¬涅槃経¼言

^*実諦じったい一道いちどう清浄しょうじょうにしてあることなきなり。 真実しんじつといふはすなはちこれ如来にょらいなり。 如来にょらいはすなはちこれ真実しんじつなり。 真実しんじつはすなはちこれくうなり。 くうはすなはちこれ真実しんじつなり。 真実しんじつはすなはちこれぶっしょうなり。 ぶっしょうはすなはちこれ真実しんじつなり」 と。

実諦一道清浄ニシテ↠有コト↠二也。言↢真実是如来ナリ。如来是真実ナリ。真実是虚空ナリ。虚空是真実ナリ。真実是仏性ナリ。仏性是真実ナリト。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ][c][ロ]内外明暗を釈す

【27】^しゃく (散善義) に 「けんないみょうあん」 といへり。 ^ない」 とは、 「ない」 はすなはちこれ*しゅっなり、 「」 はすなはちこれ*けんなり。 「みょうあん」 とは、 「みょう」 はすなはちこれしゅっなり、 「あん」 はすなはちこれけんなり。 また 「みょう」 はすなはち*みょうなり、 「あん」 はすなはち*みょうなり。

ヘリ↢「不簡内外明闇」↡。内外、内是出世ナリ、外是世間ナリ。明闇、明是出世ナリ、闇是世間ナリ。又復明者即智明ナリ、闇0083无明也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ][c][ロ]ª一º¬涅槃経¼「聖行品」

 ^¬はんぎょう¼ (聖行品) にのたまはく、

¬涅槃経¼言

^あんはすなはちけんなり、 みょうはすなはちしゅっなり。 あんはすなはちみょうなり、 みょうはすなはちみょうなり」 と。

「闇世間ナリ、明出世ナリ。闇无明ナリ、明智明ナリト。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ]信楽を釈す【信楽釈】
                        [ⅰ]正釈
                          [a]直釈

【28】^つぎしんぎょうといふは、 すなはちこれ如来にょらい*満足まんぞくだいえんにゅう無礙むげ信心しんじんかい0235なり。 このゆゑにがい間雑けんぞうあることなし。 ゆゑにしんぎょうづく。

↢信楽、則是如来満足大悲円融无信心海ナリ。是疑蓋无↠有コト↢間雑↡。故↢信楽↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b]出体

^すなはち利他りたこうしんをもつてしんぎょうたいとするなり

↢利他回向之至心↡為↢信楽↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][c]弁義

・信楽難得

^しかるに無始むしよりこのかた、 一切いっさいぐんじょうかいみょうかいてんし、 *しょりん沈迷ちんめいし、 *しゅりんばくせられて、 清浄しょうじょうしんぎょうなし、 *ほうとして真実しんじつしんぎょうなし。 ここをもつてじょうどくぐうしがたく、 さいしょうじょうしんぎゃくとくしがたし。

↢无始↡已来一切群生海、流↢転无明海↡、沈↢ シズミ マドフ 諸有輪↡、繋↢ ツナグ シバルセラレテ衆苦輪↡、无↢清浄信楽↡、法爾トシテ↢真実信楽↡。是无上功徳難↢叵  ガタ   カタシ アフアフ↡、最勝浄信難↢叵  ガタ  獲得ウル ↡。

・自力不生

^一切いっさい*ぼんしょう一切いっさいのうちに、 貪愛とんないしんつねによく善心ぜんしんけがし、 瞋憎しんぞうしんつねによく法財ほうざいく。 きゅうきゅうしゅしてねんはらふがごとくすれども、 すべて雑毒ぞうどく雑修ざっしゅぜんづく。 また虚仮こけてんぎょうづく。 真実しんじつごうづけざるなり。 この虚仮こけ雑毒ぞうどくぜんをもつてりょうこうみょうしょうぜんとほっする、 これかならず不可ふかなり。

一切凡小、一切時、貪愛之心常ケガ↢善心↡、瞋憎之心常↢法財↡。急作急修シテクスレドモハラフガ↢頭燃↡、衆↢雑毒雑修之善↡。亦名↢虚仮テングヰ之行↡。不↠名↢真実↡也。以↢此虚仮雑毒之善↡欲スル↠生ゼム↢无量光明土↡、此必不可也。

・不生所由

^なにをもつてのゆゑに、 まさしく如来にょらいさつぎょうぎょうじたまひしとき三業さんごう所修しょしゅない一念いちねんいっせつも、 がいまじはることなきによりてなり。

シクテナリ↧如来、行タマフシ↢菩薩、三業所修、乃至一念一刹クニナニ、疑蓋无キニ↞雑ハルコト

・正因

^このしんはすなはち如来にょらいだいしんなるがゆゑに、 かならずほう正定しょうじょういんとなる。

如来大悲心ナルガ、必↢報土正定之因↡。

・回施

^如来にょらい のうぐんじょうかいれんして、 無礙むげ広大こうだいじょうしんをもつて*しょかい回施えせしたまへり。 これを利他りた真実しんじつ信心しんじんづく。

如来悲↢レンシテアワレム苦悩群生海↡、以↢无広大浄信↡回↢施アタフシタマヘリ諸有海↡。是↢利他真実信心↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]引文
                          [a]経文
                            [イ]本経
                              ª一º¬大経¼

【29】^本願ほんがん信心しんじんがん (第十八願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

本願信心願成就文、¬経¼ノタマハク

^0236しょしゅじょう、 そのみょうごうきて信心しんじんかんせんことない一念いちねんせん」 と。

「諸有衆生、聞↢其名号↡信心歓喜セムコト、乃至0084一念セムト。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª二º¬如来会¼

【30】^またのたまはく (如来会・下)

又言ハク

^ほう仏国ぶっこくしょしゅじょうりょう寿じゅ如来にょらいみょうごうきてよく一念いちねんじょうしんおこしてかんせん」 と。

「他方仏国所有衆生、聞↢无量寿如来名号↡能シテ↢一念浄信↡歓セムト。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]末経
                              ª一º¬涅槃経¼「師子吼品」

【31】^¬はん¼ (*師子吼品) にのたまはく、

¬涅槃経¼ハク

^善男ぜんなん*だいだいづけてぶっしょうとす。 なにをもつてのゆゑに、 だいだいはつねにさつしたがふこと、 かげかたちしたがふがごとし。 一切いっさいしゅじょう、 つひにさだめてまさにだいだいべし。 このゆゑにきて一切いっさいしゅじょうしつぶっしょうといふなり。 だいだいづけてぶっしょうとす。 ぶっしょうづけて如来にょらいとす。

「善男子、大慈大悲↢仏性↡。何。大慈大悲ツネフコト↢菩薩↡、如カゲフガ↟形。一切衆生ツイ↢大慈大悲↡、是 ヘルナリ↢一切衆生悉有仏性↡。大慈大悲↢仏性仏性↢如来↡。

^*だいだいしゃづけてぶっしょうとす。 なにをもつてのゆゑに、 さつ摩訶まかさつは、 もしじゅう*つるにあたはず、 すなはちのく多羅たらさんみゃくさんだいることあたはず。 もろもろのしゅじょう、 つひにまさにべきをもつてのゆゑなり。 このゆゑにきて一切いっさいしゅじょうしつぶっしょうといへるなり。 だい大捨だいしゃはすなはちこれぶっしょうなり、 ぶっしょうはすなはちこれ如来にょらいなり。

大喜大捨↢仏性↡。何。菩薩摩訶薩↠能↠捨↢二十五有↡、則↠能↠得コト↢阿耨多羅三藐三菩提↡。以↢諸衆生ツイキヲヘルナリ↢一切衆生悉有仏性↡。大喜大捨是仏性ナリ、仏性是如来ナリ

^ぶっしょうだい信心しんじんづく。 なにをもつてのゆゑに、 信心しんじんをもつてのゆゑにさつ摩訶まかさつはすなはちよく*だん波羅はらみつない般若はんにゃ波羅はらみつそくせり。 一切いっさいしゅじょうは、 つひにさだめてまさにだい信心しんじんべきをもつてのゆゑに、 このゆゑにきて一切いっさいしゅじょうしつぶっしょうといふなり0237だい信心しんじんはすなはちこれぶっしょうなり、 ぶっしょうはすなはちこれ如来にょらいなり。

仏性↢大信心↡。何。以↢信心↡故↧菩薩摩訶薩具↢足セリ檀波羅蜜乃至般若波羅蜜一切衆生ツイキヲ↞得↢大信心↡故、是ヘルナリ↢一切衆生悉有仏性↡。大信心是仏性ナリ、仏性是如来ナリ

^ぶっしょういっ子地しじづく。 なにをもつてのゆゑに、 いっ子地しじ因縁いんねんをもつてのゆゑにさつはすなはち一切いっさいしゅじょうにおいてびょうどうしんたり一切いっさいしゅじょうは、 つひにさだめてまさにいっ子地しじべきがゆゑに、 このゆゑにきて一切いっさいしゅじょうしつぶっしょうといふなり。 いっ子地しじはすなはちこれぶっしょうなり、 ぶっしょうはすなはちこれ如来にょらいなり」 と。

仏性↢一子地↡。何。以↢一子地因縁↡故、菩薩↢一切衆生↡得タリ↢平等心↡。一切衆生ツイキガ↠得↢一子地↡故、是ヘルナリ↢一切衆生悉有仏性↡。一子0085是仏性ナリ、仏性是如来ナリト。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]ª二º¬涅槃経¼「迦葉品」二文

【32】^またのたまはく (涅槃経・*迦葉品)

ハク

^「あるいはのく多羅たらさんみゃくさんだいくに、 信心しんじんいんとす。 これだいいん、 またりょうなりといへども、 もし信心しんじんけば、 すなはちすでに*しょうじんしぬ」 と。

「或↢阿耨多羅三藐三菩提↡、信心↠因。是菩提因、雖↢復无量ナリト↡、若ケバ↢信心↡、則摂尽ヌト。」

【33】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)

ノタマハク

^しんにまたしゅあり。 ひとつには*もんよりしょうず、 ふたつには*よりしょうず。 このひと信心しんじんもんよりしてしょうじて、 よりしょうぜず。 このゆゑにづけて*しんそくとす。

「信復有↢二種↡。一ニハ↠聞生、二ニハ↠思生。是信心、↠聞シテジテ、不↠思生↡。是↢信不具足↡。

^またしゅあり。 ひとつには*どうありとしんず、 ふたつには*得者とくしゃしんず。 このひと信心しんじんただどうありとしんじて、 すべて得道とくどうひとありとしんぜざらん。 これをづけてしんそくとす」 と。 以上抄出

マタ↢二種↡。一ニハ↠有↠道、二ニハ↢得者↡。是信心、唯信ジテ↠有↠道、スベラム↠信リト↢得道之人↡。是イヘリ↢信不具足↡。」 已上抄出

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]ª三º¬華厳経¼「入法界品」二文

【34】^¬*ごんぎょう¼ (入法界品・晋訳) にのたまはく、

¬華厳経¼ノタマハク

^*このほうきて信心しんじんかんして、 うたがいなきものは、 すみやかにじょうどうらん。 もろもろの如来にょらいひと」 と0238なり。

「聞↢此↡歓↢喜シテ信心↡ 无↠疑者
ラム↢无上道↢諸如来↡ヒトシトナリ

【35】^またのたまはく (華厳経・入法界品・唐訳)

ハク

^如来にょらい、 よくなが一切いっさいしゅじょううたがいたしむ。 そのこころ*しょぎょうしたがひて、 あまねくみな満足まんぞくせしむ」 となり。

「如来能タシム一切衆生
↢其所楽ムトナリ↢満足↡」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]ª四º¬華厳経¼「賢首品」

【36】^またのたまはく (華厳経・*賢首品・唐訳)

ハク

^しん*どうもととす、 どくははなり。 一切いっさいのもろもろの善法ぜんぽう*ちょうようす。 もう断除だんじょして*あいで、 はんじょうどうかいせしむ。

「信↢道↡ 功徳ナリ長↢養一切善法
断↢除シテ疑網↡出↢愛流開↢示セシム涅槃无上道

^しんじょくこころなし。 清浄しょうじょうにしてきょうまん滅除めつじょす。 ぎょうもとなり。 また*法蔵ほうぞう第一だいいちたからとす。 清浄しょうじょうとしてしゅぎょうく。

↢垢濁心↡ 清浄ニシテ滅↢除驕慢↡ 恭敬ナリ
↢法蔵第一↢清浄↡受↢衆行

^しんはよく恵施えせしてこころしむことなし。 しんはよくかんして仏法ぶっぽうる。 しんはよく*どくぞうじょうす。 しんはよくかならず*如来にょらいいたる。

恵施シテオシム リン コト歓喜シテ↢仏法
増↢長智功徳↢如来地

^しん*諸根しょこんをして浄明じょうみょうならしむ。 信力しんりきけんなればよくすることなし。 しんはよくなが煩悩ぼんのうもとめっす。 しんはよくもつぱらぶつどくかへしむ。

↢諸根ヲシテ浄明利ナラ信力堅カタシナレバ↢能スルコト
↢煩悩ヘシム↢仏功徳

^しんきょうがいにおいてしょじゃくなし。 諸難しょなんおんしてなんしむ。 しんはよくしゅみち超出ちょうしゅつし、 *じょうだつどうげんせしむ。

↢境界↡無↢所著↡オン↢離0086シテ諸難シム↢无難
超↢出衆魔示↢現セシム无上解脱道

^しんどくのためにたねやぶらず。 しんはよくだいじゅ生長しょうちょうす。 しんはよく*さいしょう増益ぞうやくす。 しんはよく一切いっさいぶつげんせしむ。

↢功徳↡不↠ヤブ生↢長菩提
増↢益最勝智示↢現セシム一切仏

^このゆゑにぎょうによりてだいく。 しんぎょうさいしょうにしてはなはだることかたし。

↠行↢次第信楽、最勝ニシテ↠得コト

^もしつねに諸仏しょぶつしんすれば、 すなはちよ0239だいようこうじゅうす。 もしよくだいようこうじゅうすれば、 かのひとぶつ思議しぎしんず。

信↢奉スレバ於諸仏興↢集大供養
興↢集スレバ大供養人信↢仏不思議

^もしつねに尊法そんぼうしんすれば、 すなはち仏法ぶっぽうくに*厭足えんそくなし。 もし仏法ぶっぽうくに厭足えんそくなければ、 かのひとほう思議しぎしんず。

信↢奉スレバ於尊法クニ↢仏法↡无↢厭イトヒタル
↢仏法↡无ケレバ↢厭足↡人信↢法不思議

^もしつねに清浄しょうじょうそうしんすれば、 すなはち信心しんじん退転たいてんせざることを。 もし信心しんじん退転たいてんれば、 かのひと信力しんりきよくうごくことなし。

信↢奉スレバ清浄僧↣信心不ルコトヲ↢退転
レバ↢信心不退転信力无↢能クコト

^もし信力しんりきてよくうごくことなければ、 すなはち諸根しょこん浄明じょうみょうん。 もし諸根しょこん浄明じょうみょうれば、 すなはちぜんしき親近しんごんすることを

↢信力↡无ケレバ↢能コト↢諸根浄明利
レバ↢諸根浄明利↣親↢近ルコトヲ善知識

^すなはちぜんしき親近しんごんすることをれば、 すなはちよく広大こうだいぜんしゅじゅうす。 もしよく広大こうだいぜんしゅじゅうすれば、 かのひと*だい因力いんりきじょうじゅす。

レバ↣親↢近スルコトヲ善知識修↢集広大
修↢集スレバ広大人成↢就大因力

^もしひとだい因力いんりきじょうじゅすれば、 すなはち*しゅしょうけつじょう。 もししゅしょうけつじょうれば、 すなはち諸仏しょぶつみためねんせらる。

人成↢就スレバ大因力↢殊勝決定
レバ↢殊勝決定ミタメ↢諸仏↡所↢護念

^もし諸仏しょぶつみためねんせらるれば、 すなはちよくだいしんほっす。 もしよくだいしんほっすれば、 すなはちよくぶつどく勤修ごんしゅせしむ。

ミタメ↢諸仏↡所ルレバ↢護念発↢起菩提心
発↢起スレバ菩提心勤↢修セシム功徳

^もしよくぶつどく勤修ごんしゅすれば、 すなはちよくうまれて如来にょらいいえにあらん。 もしうまれて如来にょらいいえにあることをれば、 すなはち*ぜんをしてぎょう方便ほうべんしゅぎょうせん。

勤↢修スレバ功徳ラム↢如来
レバ↣生コトヲ↢如来ヲシテ修↢行セムゲウ方便

^もしぜんをしてぎょう方便ほうべんしゅぎょうすれば、 すなはちしんぎょうしん清浄しょうじょうなることを。 もししんぎょうしん清浄しょうじょうなることをれば、 すなはち*ぞうじょうさいしょう0240しん

ヲシテ修↢行スレバ巧方便↢信楽心清浄ナルコトヲ
レバ↢信楽心清浄ナルコト↢増上最勝心

^もしぞうじょうさいしょうしんれば、 すなはちつねに波羅はらみつしゅじゅうせん。 もしつねに波羅はらみつしゅじゅうすれば、 すなはちよく*摩訶まかえんそくせん。

レバ↢増上最勝心修↢習セム波羅蜜
修↢習スレバ波羅蜜具↢足セム摩訶エンカン

^もしよく摩訶まかえんそくすれば、 すなはちよくほうのごとくぶつようせん。 もしよくほうのごとくぶつようすれば、 すなはちよく念仏ねんぶつしんどうぜず。

具↢足スレバ摩訶衍0087↠法供↢養セム
供↢養スレバ念仏↠動

^もしよく念仏ねんぶつの心、 どうぜざれば、 すなはちつねにりょうぶつけんせん。 もしつねにりょうぶつけんすれば、 すなはち如来にょらいたい常住じょうじゅうを見ん。

念仏心 不レバ↠動覩↢見セム无量仏
覩↢見スレバ无量仏↢如来体常住

^もし如来にょらいたい常住じょうじゅうれば、 すなはちよくほうながめつなることをらん。 もしよくほうながめつなるをれば、 *弁才べんざいしょうん。

レバ↢如来体常住ラム↢法不滅ナルコトヲ
↢法不滅ナルヲ弁才↡ 无障

^もし弁才べんざいしょうれば、 すなはちよくへんほう開演かいえんせん。 もしよくへんほう開演かいえんせば、 すなはちよくみんしてしゅじょうせん。

レバ弁才无障開↢演ノブセム无辺
開↢演セバ无辺慈愍シテセム↢衆生

^もしよくしゅじょうみんすれば、 すなはちけんだいしんん。 もしけんだいしんれば、 すなはちよく甚深じんじんほうあいぎょうせん。

慈↢愍スレバ↣衆生↢堅カタクカタシ大悲心
レバ↢堅固大悲心愛↢楽セム甚深

^もしよく甚深じんじんほうあいぎょうすれば、 すなはちよく*有為ういとがしゃせん。 もしよく有為ういとがしゃすれば、 すなはちきょうまんおよび放逸ほういつはなる。

愛↢楽スレバ甚深捨↢離セム有為トガ
捨↢離スレバ有為↢驕慢及ハウイチ

^もしきょうまんおよび放逸ほういつはなるれば、 すなはちよく一切いっさいしゅ*けんせん。 もしよく一切いっさいしゅけんすれば、 すなはちしょうしょして*えんなけん」 となり。

レバ↢驕慢及放逸ケムカヌ↢利セム一切衆
兼↢利スレバ一切衆シテ↢生死ケムトナリツカレエンイトフ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]師釈
                            [イ]¬論註¼二文

024137】^¬ろんちゅう¼ (下) にいはく、

¬¼曰

^ª如実にょじつしゅぎょう相応そうおうºとづく。 このゆゑに論主ろんじゅ (天親)はじめに ª一心いっしんº (浄土論) とのたまへり」 と。

「名↢如実修行相応↡。是論主ハジメ タマヘリ↢我一心↡。」

【38】^またいはく (論註・下)

又言

^きょうはじめに ªにょº としょうすることは、 しんあらわしてのうにゅうとす」 と。

「経ルコトハ↢如是↡、彰↠信↢能入↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ]欲生を釈す【欲生釈】
                        [ⅰ]正釈
                          [a]略して分斉を示す

【39】^つぎよくしょうといふは、 すなはちこれ如来にょらいしょぐんじょう*しょうかんしたまふのちょくめいなり。

↢欲生↡者、則是如来セウクワンマネキヨブ シタマフ諸有群生↡之勅命ナリ

・出体

^すなはち真実しんじつしんぎょうをもつてよくしょうたいとするなり。

↢真実信楽↢欲生↡也。

・簡示他力

^まことにこれだいしょうぼんしょうじょうさんりきこうにあらず。 ゆゑにこうづくるなり。

是非↢大小・凡聖、定散自力之回向↡。故↢不回向↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅰ][b]広く義旨を顕す

・所為機相

^しかるに*じんかいじょう煩悩ぼんのうかいてんし、 しょうかい*ひょうもつして、 真実しんじつこうしんなし、 清浄しょうじょうこうしんなし。

微塵界有情、流↢転煩悩海↡、ヘウタヾヨフモチシテ生死海↡、无↢真実回向心↡、无↢清浄回向心↡。

・法体成就

^このゆゑに如来にょらい 一切いっさいのうぐんじょうかい*矜哀こうあいして、 さつぎょうぎょうじたまひしとき三業さんごう所修しょしゅない一念いちねんいっせつも、 こうしん*しゅとしてだいしんじょうじゅすることをたまへるがゆゑに、

如来コウ↢哀シテオホキニアワレム一切苦悩群生海↡、行ジタマフシ↢菩薩、三業0088所修、乃至一念一刹那、回向心↠首タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ大悲心↡故

・法界回施

^利他りた真実しんじつよくしょうしんをもつてしょかい回施えせしたまへり。

↢利他真実欲生心↡廻↢施シタマヘリ有海↡。

・結帰一心

^よくしょうすなはちこれこうしんなり。 これすなはちだいしんなるがゆゑに、 がいまじはることなし。

欲生即是廻向心ナリ大悲心ナルガ疑蓋无↠雑ハルコト

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ]引文
                          [a]経文
                            [イ]¬大経¼

【40】^ここをもつて本願ほんがんよくしょうしんじょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

本願欲生心成就文、¬経¼ハク

^*しんこうしたまへり。 かのくにしょうぜんとがんずれば、 すなはちおうじょう0242退転たいてんじゅうすと。 ただぎゃくほうしょうぼうとをばのぞく」 と。

「至心廻向シタマヘリ。願ズレ↠生ゼム↢彼↡、即↢往生↡、住セム↢不退転↡。唯除クト↢五逆誹謗正法トヲ↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][a][ロ]¬如来会¼

【41】^またのたまはく (如来会・下)

ハク

^*しょ善根ぜんごんこうしたまへるをあいぎょうしてりょう寿じゅこくしょうぜんとがんずれば、 がんしたがひてみなしょうぜしめ、 退転たいてんないじょうしょうとうだいんと。 けんほうしょうぼうおよびほうしょうじゃのぞく」 と。

愛↢楽シテ所有善根廻向シタマヘルヲ↡願ズレ↠生ゼム↢无量寿国、随↠願ゼシメ、得ムト↢不退転乃至无上正等菩提↡。除クト↢五无間・誹謗正法及謗聖者↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b]師釈
                            [イ]¬論註¼三文

【42】^¬じょうろん¼ (論註・下) にいはく、

¬浄土論¼曰

^ª*いかんがこうしたまへる一切いっさいのうしゅじょうてずして、 こころにつねに*がんすらく、 こうしゅとしてだいしんじょうじゅすることをたまへるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

「云何廻向シタマヘルシテ↠捨↢一切苦悩衆生↡、心作願スラク、廻向↠首タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ大悲心↡故ニトノタマヘリ

^こうしゅそうあり。 ひとつには往相おうそうふたつには還相げんそうなり。

廻向↢二種相↡。一往相、二還相ナリ

^往相おうそうとは、 おのれがどくをもつて一切いっさいしゅじょう回施えせしたまひて、 がんしてともにかの弥陀みだ如来にょらい安楽あんらくじょうおうじょうせしめたまふなり

往相、以オノレ功徳↡廻↢施シタマヒテ一切衆生↡、作願シテ往↢生セシメタマフナリ阿弥陀如来安楽浄土↡。

^還相げんそうとは、 かのしょうじをはりて、 しゃ摩他また毘婆びばしゃ*方便ほうべんりきじょうじゅすることをて、 しょうちゅうりんにゅうして、 一切いっさいしゅじょうきょうして、 ともに仏道ぶつどうかえらしめたまふなり

還相、生↢彼リテ、得↢奢摩他・毘婆舎那・方便力成就スルコトヲ↡、廻↢入シテ生死稠林↡、教↢化シテ一切衆生↡、共シメタマフナリ↢仏道↡。

^もしはおう、 もしはげん、 みなしゅじょういてしょうかいせんがためにしたまへり。 このゆゑに ªこうしゅとくじょうじゅだいしんº とのたまへり」 と。

往若還、皆トノタマヘリ↧抜↢衆生↡渡セムガ↦生死海↥。ノタマヘリト↢廻向為首得成就大悲心故↡。」

【43】^またいはく (論註・下)

又云

^浄入じょうにゅう願心がんしんとは、 ¬論¼ (浄土論) にいはく0243ª^また*さき観察かんざつしょうごんぶつどくじょうじゅしょうごんぶつどくじょうじゅしょうごんさつどくじょうじゅきつ。 この三種さんしゅじょうじゅ願心がんしんしょうごんしたまへるなりとるべしº といへりと。

「浄入願心、¬論¼曰、又サキキツ↢観察荘厳仏土功徳成就・荘厳0089仏功徳成就・荘厳菩薩功徳成就↡。此三種成就願心荘厳シタマヘルナリトシトイヘリト↠知

^ªるべしº とは、 この三種さんしゅしょうごんじょうじゅはもとじゅうはちがんとう清浄しょうじょう願心がんしんしょうごんしたまふところなるによりて、 いんじょうなるがゆゑにじょうなり*いんなくしていんのあるにはあらざるなりとるべしとなり」 と。

、応シト↠知↧此三種荘厳成就四十八願等清浄願心之所ナルニ↢荘厳シタマフ↡、因浄ナルガ果浄ナリ、非ルナリト↦无クシテ↠因他ニハ↥也。」

【44】^また ¬ろん¼ (論註・下) にいはく、

又¬論¼曰

^ª*しゅつだいもんとは、 だい慈悲じひをもつて一切いっさいのうしゅじょう観察かんざつして、 おうしんしめして、 しょうその煩悩ぼんのうはやしのなかににゅうして、 神通じんずう遊戯ゆげきょういたる。 本願ほんがんりきこうをもつてのゆゑに。 これをしゅつだいもんづくº (浄土論) とのたまへり」 と。

「出第五門、以↢大慈悲↡観↢察カヾムシテ一切苦悩衆生↡、示シテ↢応化↡、回↢入シテ生死ソノオン、煩悩↡、遊↢タワブル神通↡至↢教化地↡。以↢本願力回向↡故。是クトノタマヘリト↢出第五門↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]¬義疏¼
                              ª一º出文
                                ªⅠº「散善義」

【45】^こうみょうしょう (善導) のいはく (散善義)

光明寺和尚

^またこう発願ほつがんしてうまるるものは、 かならずけつじょう真実しんじつしんのなかにこうしたまへるがんもちゐてとくしょうおもいをなせ。

「又回向発願シテルヽモノ、必モチヰテ↢決定真実心回向シタマヘル↡作↢得生↡。

^このしんふかしんぜること金剛こんごうのごとくなるによつて、 一切いっさいけんがくべつべつぎょうにんのために動乱どうらん破壊はえせられず。 ただこれけつじょうして一心いっしんつてしょうじきすすんで、 かのひとことばくことをざれ。 すなはち進退しんたいしんありてこうにゃくしょう回顧えこすれば、 どうちてすなはちおうじょう大益だいやくしっするなり」 と。

心深ゼルコトゴトクナルニ↢金剛↡、↧為↢一切異見・異学・別解・別行之↡↦動乱破壊↥。唯是決定シテ一心トウ正直、不↠聞コトヲ↢彼↡。即↢進退心↡生カウヨハク↡回顧スレバカヘリミル、落↠道スル↢往生之大益↡也。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二º釈意
                                ªⅠº総標

024446】^まことにんぬ、 二河にが譬喩ひゆのなかに

二河譬喩

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡº別釈
                                  ªⅰº白道四五寸を釈す

^びゃくどう四五しごすん」 といふは、 「びゃくどう」 とは、 「びゃく」 のごんこくたいするなり。 びゃく」 はすなはちこれ*せんじゃく摂取せっしゅびゃくごう*往相おうそうこうじょうごうなり こく」 はすなはちこれみょう煩悩ぼんのう黒業こくごうじょうにんてん雑善ぞうぜんなり。 どう」 のごんたいせるなり。 どう」 はすなはちこれ本願ほんがん一実いちじつ直道じきどうだいはつはんじょう大道だいどうなり。」 はすなはちこれじょうさんじょう万善まんぜんしょぎょうしょうなり。四五しごすん」 といふはしゅじょうだいおんたとふるなり。

↢白道四五寸、白道者、白之言スル↠黒也。白是選択摂取之白業、往相回向之浄業也。黒者即是无明煩悩之黒業、二乗・人・天之雑善也。道之言セルナリセバキヒロキ者則是本願一実之直道、大ハチ涅槃、无上之大道也。路者則二乗・三乗、万善0090諸行之小路也。言↢四五寸↡者喩フル↢衆生四大五陰↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱº清浄願心を釈す
                                    ªaº直釈

^*のうしょう清浄しょうじょう願心がんしん」 といふは金剛こんごう真心しんしんぎゃくとくするなり。 本願ほんがんりきこうだい信心しんじんかいなるがゆゑに、 破壊はえすべからず。 これを金剛こんごうのごとしとたとふるなり。

↢能生清浄願心、獲↢得スル金剛真心↡也。本願力回向大信心海ナルガ↠可カラ↢破壊↡。喩フル↣之↢金剛↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱºªbº引証
                                      ªイº「玄義分」

【47】^¬かんぎょう¼ (*玄義分) に、

¬観経義¼云ヘリ

^道俗どうぞくしゅとう、 おのおの*じょうしんおこせども、 しょうはなはだいとひがたく、 仏法ぶっぽうまたねがひがたし。 ^ともに金剛こんごうこころざしおこして、 おう四流しるちょうだんせよ

「道俗時衆等セドモ↢无上心
生死甚イト仏法復難ネガ
シテ↢金剛超↢断セヨ四流

^まさしく金剛こんごうしんけて、 *一念いちねん相応そうおうしてのち*はんんひと」 といへり。

シク↢金剛心
相↢応シテ一念↡後↢涅槃ヒト」↥

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱºªbºªロº「序分義」

【48】^またいはく (*序分義)

又云

^真心しんしん徹到てっとうしてしゃいとひ、 らく無為むいねがひて、 ながじょうらくすべし。 ただし*無為むいさかい*きょうとしてすなはちかなふべ0245からず、 のうしゃ*ちょうねんとしてはなるることをるによしなし。 金剛こんごうこころざしおこすにあらずよりは、 ながしょうもとたんや。 もしまのあた*そんしたがひたてまつらずは、 なんぞよくこのながなげきをまぬかれん」 と。

「真心徹トホルシテ↢苦娑婆↡、忻↢楽无為↡、永スベシ↢常楽↡。但无為之境、サカイ↠可↢軽カロクトシテシカラシムカナハシ↡、苦悩娑婆无テウタヤスシトシテシカラシム↟離ルヽコトヲ。自リハ↠非↠発↢金剛↡、永タムヤ↢生死之モト↡。若マノアタシタガヒタテマツラ↢慈尊↡、何マヌカレムト↢斯ナゲキ↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱºªbºªハº「定善義」

【49】^またいはく (*定善義)

又云

^金剛こんごうといふは、 すなはちこれ無漏むろたいなり」 と。

「言↢金剛、即是无漏之体也。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三]結示
                      [Ⅰ]正結
                        [ⅰ]正しく三心即一を明かす

【50】^まことにんぬ、 しんしんぎょうよくしょう、 そのことばことなりといへども、 そのこころこれひとつなり

至心・信楽・欲生、其↠異ナリト、其コレナリ

・示由

^なにをもつてのゆゑに、 三心さんしんすでにがいまじはることなし、

。三心已疑蓋无ウタガフコヽロナリルコト

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三][Ⅰ][ⅱ]名号に対弁す

^ゆゑに真実しんじつ一心いっしんなり。 これを金剛こんごう真心しんしんづく。 金剛こんごう真心しんしん、 これを真実しんじつ信心しんじんづく。

真実一心ナリ。是↢金剛真心↡。金剛真心、是↢真実信心↡。

・必具行

^真実しんじつ信心しんじんはかならず*みょうごうす。 みょうごうはかならずしも願力がんりき信心しんじんせざるなり。

真実信心↢名号↡。名号ズシモ↠具↢願力信心↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三][Ⅱ]引証

^このゆゑに論主ろんじゅ (天親)はじめに 「一心いっしん(*浄土論) とのたまへり。 また 「にょみょうよく如実にょじつしゅぎょう相応そうおう(浄土論) とのたまへり。

論主、ハジメノタマヘリ↢「我一心」↡。又言ヘリ↢「如彼名義欲如実修行相応故」↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)結嘆【大信嘆徳】
                    [一]上の成一を牒す

【51】^おほよそ大信だいしんかいあんずれば、

0091ズレ↢大信海

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]正嘆

四不十四非

せん*緇素しそえらばず、 男女なんにょろうしょうをいはず造罪ぞうざいしょうはず、 しゅぎょうごんろんぜず、 1*ぎょうにあらずぜんにあらず2とんにあらずぜんにあらず、 3じょうにあらずさんにあらず、 4*しょうかんにあらず邪観じゃかんにあら0246ず、 5ねんにあらずねんにあらず、 6じんじょうにあらずりんじゅうにあらず、 7ねんにあらず一念いちねんにあらず、 ^ただこれ不可ふか思議しぎ不可ふかしょう不可ふかせつしんぎょうなり。

↠簡貴賎ホフシ オトコ↡、↢男女老少↡、↠問↢造罪多少↡、↠論↢修行久近↡、非↠行↠善、非↠頓↠漸、非↠定↠散、非↢正観↡非↢邪観↡、非↢有念↡非↢无念↡、非↢尋常↡非↢臨終↡、非↢多念↡非↢一念↡、唯是不可思議不可説不可信楽也。

・喩顕

^たとへば*阿伽陀あかだやくのよく一切いっさいどくめっするがごとし。 如来にょらい誓願せいがんくすりはよく*智愚ちぐどくめっするなり。

↣阿伽陀薬スルガ↢一切↡。如来誓願スル↢智愚↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)別して信楽を釈す
                (a)菩提心の義を釈す【菩提心釈
                  (イ)解義
                    [一]対判して宗を示す
                      [Ⅰ]

二双四重

【52】^しかるにだいしんについてしゅあり。 ひとつにはしゅふたつにはおうなり。

↢菩提心↡有↢二種↡。一者竪、二者横ナリ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[一][Ⅱ]
                        [ⅰ]竪を明かす

^またしゅについてまたしゅあり。 ひとつにはしゅちょうふたつにはしゅしゅつなり。 しゅちょうしゅしゅつ*権実ごんじつ*顕密けんみつ*だいしょうきょうかせり。 *りゃくこう迂回うえだいしんりき金剛こんごうしんさつ大心だいしんなり。

又就↠竪復有↢二種↡。一竪超、二者竪出ナリ。竪超・竪出セリ↢権実・顕密・大小之教↡。歴劫迂廻之菩提心、自力金剛心、菩薩大心也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ]横を明かす

^またおうについてまたしゅあり。 ひとつにはおうちょうふたつにはおうしゅつなり。 おうしゅつとは、 *しょうぞう*じょうさんりきのなかのりきだいしんなり。 おうちょうとは、 これすなはち願力がんりきこうしんぎょう、 これをがんぶつしんといふ。 がんぶつしんすなはちこれおうだいだいしんなり。 これを*おうちょう金剛こんごうしんづくるなり。

亦就↠横復有↢二種↡。一者横超、二者横出ナリ。横出者、正雑・定散、他力中之自力菩提心也。横超、斯乃願力廻向之信楽、是↢願作仏心↡。願作仏心即是横大菩提心ナリ。是↢横超金剛心↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[二]結成・勧誡

^横竪おうじゅだいしん、 そのことばひとつにしてそのこころことなりといへども、 にゅうしんしょうようとす、 真心しんしん根本こんぽんとす、 邪雑じゃぞうしゃくとすじょうしつとするなり。

横竪菩提心、其言一シテ心雖↠異ナリト、入真↢正要↡、真心↢根本↡、邪雑シヤクアヤマ、疑情↠失也。

^ごん*じょうせつ道俗どうぞくふかしんそく金言きんげんりょうし、 なが*もんそく邪心じゃしんはなるべきなり。

忻求浄刹道俗、深了↢知信不具足之金言↡、永↠離↢聞不具足之邪心↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)引証
                    [一]横超の菩提心を証す
                      [Ⅰ]¬論註¼

024753】^¬ろんちゅう¼ (下) にいはく、

¬¼

^*王舎おうしゃじょう所説しょせつの ¬*りょう寿じゅきょう¼ をあんずるに、 三輩さんぱいしょうのなかにぎょうれつありといへども、 みなじょうだいしんほっせざるはなし。 このじょうだいしんは、 すなはちこれがんぶつしんなり。 がんぶつしんは、 すなはちこれしゅじょうしんなり。 しゅじょうしんは、 すなはちこれしゅじょう摂取せっしゅしてぶつこくしょうぜしむるしんなり。 このゆゑにかの安楽あんらくじょうしょうぜんとがんずるものは、 かならずじょうだいしんほっするなり。

「按ズル↢王舎城所説¬无量寿経¼↡、三輩生↣行↢優劣↡、莫↠不0092ルハ↠発无上菩提之心↡。此无上菩提心、即是願作仏心ナリ。願作仏心、即是度衆生心ナリ。度衆生心、即摂↢オサメシテムカエトリ衆生タマフトナリゼシム↢有仏国土↡心ナリ。是ズル↠生ゼム↢彼安楽浄土↡者、要スル↢无上菩提心↡也。

^もしひとじょうだいしんほっせずして、 ただかのこく受楽じゅらくひまなきをきて、 らくのためのゆゑにしょうぜんとがんぜん、 またまさにおうじょうざるべきなり。 このゆゑにいふこころは、 ªしんじゅうらくもとめず、 一切いっさいしゅじょうかんとおもふがゆゑにº (浄土論) と。

シテ↠発↢无上菩提心↡、但聞↢彼国土受楽无キヲヒマ、為↠楽ゼム↠生ゼム、亦当↠不↢往生↡也。是イフコヽロ↠求↢自身住持之楽↡、欲フガ↠抜ムト↢一切衆生↡故ニト

^ªじゅうらくº とは、 いはく、 かの安楽あんらくじょう弥陀みだ如来にょらい本願ほんがんりきのためにじゅうせられて受楽じゅらくひまなきなり。

住持楽、謂安楽浄土↢阿弥陀如来本願力↡所レテ↢住持↡受楽无ヒマ也。

^おほよそ ªこうº のみょうしゃくせば、 いはく、 おのれがしょしゅう一切いっさいどくをもつて一切いっさいしゅじょう*施与せよしたまひて、 ともに仏道ぶつどうかへしめたまふなり」 と。

セバ↢廻向名義↡、謂所集一切功徳シタマヒテホドコシアタフ一切衆生↡、共ヘシメタマフナリト↢仏道↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]横超の特絶を示す
                      [Ⅰ]元照¬弥陀経義疏¼三文

1.甚難希有

【54】^*がんじょうりっのいはく (*阿弥陀経義疏)

昭律師

^のなすことあたはざるがゆゑに甚難じんなんなり。 こぞつていまだたてまつらざるがゆゑに希有けうなり」 と。

「他ルガ↠能スコト甚難ナリコゾ↠世未ルガタテマツラ希有ナリトイヘリ。」

2.世間難信

【55】^またいはく (阿弥陀経義疏)

又云

^念仏ねんぶつ法門ぼうもん愚智ぐち豪賎ごうせんえらばず、 ごん善悪ぜんあくろんぜず0248、 ただ*決誓けっせいみょうしんれば、 りんじゅう悪相あくそうなれども、 じゅうねんおうじょうす。 これすなはち*ばくぼん*屠沽とこるいせつちょうおつするじょうぶつほうなり。 *けんじん難信なんしんといふべきなり」 と。

「念仏法門↢愚智・豪賎↡、↠論↢久近・善悪↡、唯取レバ↢決誓猛信↡、臨終悪相ナレドモ、十念往生具縛凡愚、屠沽下類、刹那超越スル成仏之法ナリ。可↠謂↢世間甚難信↡也。」

3.二難弁成

【56】^またいはく (阿弥陀経義疏)

又云

^このあくにしてしゅぎょうじょうぶつするをなんとするなり。 もろもろのしゅじょうのために、 この法門ほうもんくをふたつのなんとするなり。 さきなんけて、 すなはち諸仏しょぶつ所讃しょさんむなしからざるこころあらわす。 しゅじょうきて信受しんじゅせしめよとなり」 と。

↢此悪世↡修行成仏スルヲ↠難也。為↢諸衆生↡、説↢此法門↡為↢二↡也。ケテ↢前二難↡、則↢諸仏所讃↠虚カラ↡。使メヨトナリト↢衆生信受↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]用欽¬超玄記¼(いま伝わらず)

【57】^*りっしゅう*用欽ようきんのいはく、

律宗用欽

^ほうなんくなかに、 まことにこのほうをもつてぼんてんじてしょうとなすこと、 なほしたなごころかえすがごとくなるをや。 おおきにこれやすかるべきがゆゑに、 おほよそあさしゅじょうおおわくしょうぜん。 すなはち ¬*大本だいほん¼ (大経・下) に ªおうにんº といへり。 ゆゑにんぬ、 難信なんしんなり」 と。

「説↢法↡中、良↢此↡転ジテ↠凡スコト↠聖、猶クナルオカヘスガ↠掌。大コレキガ↠易0093、凡衆生ゼム↢疑惑↡。即¬大本¼云ヘリ↢易往而无人↡。故難信ナリト矣。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅲ]戒度¬聞持記¼

【58】^¬*もん¼ にいはく、

¬聞持記¼云

^「ª愚智ぐちえらばずº といふは、 しょうどんあり。 ª豪賎ごうせんえらばずº といふは、 *ほうごうにゃくあり。 ªごんろんぜずº といふは、 *こう浅深せんじんあり。 ª善悪ぜんあくえらばずº といふは、 ぎょう好醜こうしゅあり。 ª決誓けっせいみょうしんれば、 りんじゅう悪相あくそうなれどもº といふは、 すなはち ¬かんぎょう¼ ぼん中生ちゅうしょうに ªごくしゅいちにとも0249いたるº といへり。

「不簡愚智トイフハ↢利鈍↡。 不択豪賎トイフハ強弱↡。 不論久近トイフハ↢浅深↡。 不選善悪トイフハ↢好醜↡。 取決誓ミヤウ信、臨終悪相トイフハ¬観経¼下品中生地獄衆火、一時ルトイヘリ

^ªばくぼんº といふは、 *わくまつたくあるがゆゑに。 ª屠沽とこるいせつちょうおつするじょうぶつほうなり。 一切いっさいけんじん難信なんしんといふべきなりº といふは、 はいはく、 せつつかさどる。 はすなはち*醞売うんばい。 かくのごとき悪人あくにん、 ただじゅうねんによりてすなはち*ちょうおう、 あに難信なんしんにあらずや

具縛凡愚トイフハ二惑全屠沽下類、刹那超越成仏之法。可謂一切世間甚難信也トイフハツカサド↠殺。沽バイ。如↠此悪人、タダ↢十念↡便↢超往↡、ズヤ↢難信↡。

 ^*弥陀みだ如来にょらい真実しんじつみょうびょうどうがくなん思議じぎひっきょうだいおうだいあん等等とうどう不可ふか思議しぎこうごうしたてまつるなり」 と。

阿弥陀如来、号シマツルナリト↢真実明・平等覚・難思議・畢竟依・大応供・大安慰・无等等・不可思議光↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅳ]宗暁¬楽邦文類¼

【59】^¬*楽邦らくほう文類もんるい¼ の*じょにいはく、

¬楽邦文類¼後序

^じょうしゅするものつねにおおけれども、 そのもんてただちにいたるものいくばくもなし。 じょうろんずるものつねにおおけれども、 そのようてただちにおしふるものあるいはすくし。 かつていまだかず、 *しょうへいをもつてせつをなすことあるもの。 るによりてもつてこれをいふ。

「修スル↢浄土ケレドモ↢其ダヾチイタイクバク。論ズル↢浄土ケレドモ↢其オシフルスクナ矣。カツ、有↧以↢自障自蔽スコト↞説モノ。因↠得↠之

^それしょう*あいにしくなし、 へい*にしくなし。 ただあいしんつひにしょうなからしむるは、 すなはちじょう一門いちもんなり。 いまだはじめて*けんきゃくせず。 弥陀みだ*洪願こうがんつねにおのづからしょうしたまふ。 *必然ひつねんなり」 と。

自障↠愛、自蔽↠若↠疑。但使ムルハ↣疑・愛二心ツイ↢障↡、則浄土一門ナリ。未↢始間隔↡。弥陀洪願常オノヅカ摂持シタマフ。必然之理也。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)信一念の義を釈す【信一念釈
                  (イ)正しく信一念の義を釈す
                    [一]直釈

025060】^それ真実しんじつしんぎょうあんずるに、 *しんぎょう一念いちねんあり。 一念いちねんとはこれ*しんぎょう開発かいほつこく極促ごくそくあらわし、 *広大こうだいなんきょうしんあらわすなり。

ズルニ↢真実信楽↡、信楽↢一念↡。一念↢信楽開発時剋之極トシ↡、ウチニアラハス広大難思慶心↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]引文
                      [Ⅰ]経説
                        [ⅰ]¬大経¼

【61】^ここをもつて ¬だいきょう¼ (下) にのたまはく、

¬大経¼ノタマハク

^あらゆるしゅじょう、 そのみょうごうきて信心しんじんかんせんこと、 ないいちねんせん。 *しんこうしたまへり。 かのくにしょうぜんとがんずれば、 すなはちおうじょう退転たいてんじゅうせん」 と。

諸有アラユル衆生、聞↢其名号↡信心歓喜セムコト、乃至一念セム。至心シタマヘリ。願ズレバ↠生ゼム↢彼↡、即↢往生↡、住セムト↢不退転↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ]¬如来会¼

【62】^また (如来会・下)

0094

^ほう仏国ぶっこくしょしゅじょうりょう寿じゅ如来にょらいみょうごうきてよく一念いちねんじょうしんおこしてかんせん」 とのたまへり。

ノタマヘリ↧「他方仏国所有衆生、聞↢无量寿如来名号↡能シテ↢一念浄信↡歓セムト。」↥

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅲ]¬大経¼

 ^また (大経・下)

^そのぶつ本願ほんがんちからみなきておうじょうせんとおもはん」 とのたまへり。

ノタマヘリ
「其本願↠名↢往生セムト↡」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅳ]¬如来会¼

 ^また (如来会・下)

^ぶつしょうとくみなく」 とのたまへり。

ヘリ「聞クト↢仏聖徳↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅴ]¬涅槃経¼「迦葉品」

【63】^¬はん¼ (迦葉品) にのたまはく、

¬涅槃経¼ノタマハク

^いかなるをかづけてもんそくとする。 如来にょらい所説しょせつじゅうきょうなり。 ただろくしんじていまだろくしんぜず、 このゆゑにづけてもんそくとす。

云何 イカン ↢聞不具足↡。如来所説十二部経ナリジテ↢六部↡未↠信↢六部↡、是↢聞不具足↡。

^またこのろくきょうじゅすといへども、 *読誦どくじゅにあたはずしてのためにせつすればやくするところなけん。 このゆゑにづけてもんそくとす。

受↢持スト六部↡、シテ↠能↢読誦↡為↠他ルハケム↠所↢利益スル↡。是↢聞不具足↡。

^またこのろくきょうけをはりて、 ろんのためのゆゑに、 *しょう0251のためのゆゑに、 *ようのためのゆゑに、 *しょのためのゆゑに*どくじゅせつせん。 このゆゑにづけてもんそくとす」 とのたまへり。

又復受↢是六部↡已、為↢論議↡故、為↢勝他↡故、為↢利養↡故、為↢諸有↡故、持読誦説セム。是トノタマヘリ↢聞不具足↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]師釈
                        [ⅰ]「散善義」二文

【64】^こうみょうしょう (善導)^一心いっしんせんねん(散善義) といひ、 ^また ^専心せんしん専念せんねん(散善義・意) といへり。

光明寺和尚↢「一心専念」↡、又云ヘリ↢「専心専念」↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三]釈成
                      [Ⅰ]経説を釈す
                        [ⅰ]聞信一念を釈す

【65】^しかるに ¬きょう¼ (大経・下)*もん」 といふは、 しゅじょう*仏願ぶつがんしょう本末ほんまつきてしんあることなし、 これをもんといふなり。 「信心しんじん」 といふは、 すなはち本願ほんがんりきこう信心しんじんなり。 かん」 といふは、 身心しんしんえつあらわすのかおばせなり。

¬経¼↠聞、衆生聞↢仏願生起本末↡無↠有コト↢疑心↡、是↠聞也。言↢信心、則本願力廻向之信心也。言↢歓喜アラハ↢身心悦予之カホバセ也。

^ない」 といふは、 しょうせっするのことばなり。 一念いちねん」 といふは、 信心しんじんしんなきがゆゑに一念いちねんといふ。 これを一心いっしんづく。 一心いっしんはすなはち清浄しょうじょうほう真因しんいんなり。

↢乃至スル↢多少之言也。言↢一念、信心无キガ↢二心↡故↢一念↡。是↢一心↡。一心清浄報土真因也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三][Ⅰ][ⅱ]一心の利益を明かす【現生十益】

^金剛こんごう真心しんしんぎゃくとくすれば、 おうしゅ八難はちなんどうえ、 かならずげんしょう十種じっしゅやく なにものかじゅうとする。

獲↢得スレ金剛真心、横↢五趣八0095↡、必↢現生十種↡。何モノ↠十

^ひとつにはみょうしゅ護持ごじやく^ふたつにはとくそくやく^つには転悪てんあくじょうぜんやく^つには諸仏しょぶつねんやく^いつつには諸仏しょぶつしょうさんやく^つには心光しんこうじょうやく^ななつにはしんかんやく^つにはおん報徳ほうとくやく^ここのつには常行じょうぎょうだいやく^とおには正定しょうじょうじゅやくなり。

冥衆護持益、二至徳具足益、三転悪成善益、四諸仏護念益、五諸仏称讃益、六心光常護益、七心多歓喜益、八知恩報徳益、九常行大悲益、十↢正定聚↡益也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三][Ⅱ]師釈を釈す

025266】^しゅう (善導) の 「専念せんねん(散善義) といへるは、 すなはちこれいちぎょうなり。 専心せんしん(散善義) といへるは、 すなはちこれ一心いっしんなり。

宗師ヘルハ↢専念↡、即一行ナリ。云ヘルハ↢専心↡、即一心也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四]会名
                      [Ⅰ]正明
                        [ⅰ]正会【一念転釈】

^しかれば、 1がんじょうじゅ (第十八願成就文)一念いちねんはすなはちこれ専心せんしんなり。

願成就一念是専心ナリ

2専心せんしんはすなはちこれ深心じんしんなり。

専心是深心ナリ

3深心じんしんはすなはちこれ深信じんしんなり。

深心是深信ナリ

4深信じんしんはすなはちこれけん深信じんしんなり。

深信堅固深信ナリ

5けん深信じんしんすなはちこれけつじょうしんなり。

堅固深信是決定心ナリ

6けつじょうしんはすなはちこれじょうじょうしんなり。

決定心无上上心ナリ

7じょうじょうしんはすなはちこれ真心しんしんなり。

无上上心是真心ナリ

8真心しんしんはすなはちこれ相続そうぞくしんなり。

真心是相続心ナリ

9相続そうぞくしんはすなはちこれじゅんしんなり。

相続心ジユンナリ

10じゅんしんはすなはちこれ憶念おくねんなり。

淳心是憶念ナリ

11憶念おくねんはすなはちこれ真実しんじつ一心いっしんなり。

憶念是真実一心ナリ

12真実しんじつ一心いっしんはすなはちこれだいきょうしんなり。

真実一心即是大慶喜心ナリ

13だいきょうしんはすなはちこれ真実しんじつ信心しんじんなり。

大慶喜心是真実信心ナリ

14真実しんじつ信心しんじんはすなはちこれ金剛こんごうしんなり。

真実信心是金剛心ナリ

15金剛こんごうしんはすなはちこれがんぶつしんなり。

金剛心是願作仏心ナリ

16がんぶつしんはすなはちこれしゅじょうしんなり。

願作仏心是度衆生心ナリ

17しゅじょうしんはすなはちこれしゅじょう摂取せっしゅして安楽あんらくじょうしょうぜしむるしんなり。

度衆生心是摂↢取シテ衆生↡生ゼシムル↢安楽浄土↡心ナリ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅰ][ⅱ]結示

^このしんすなはちこれだいだいしんなり。 このしんすなはちこれだい慈悲じひしんなり。 このしんすなはちこれ*りょうこうみょうによりてしょうずるがゆゑに。

心即是大菩堤心ナリ。是心即是大慈悲心ナリ。是心即↢无量光明慧↡生ズルガ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ]嘆徳
                        [ⅰ]正しく菩提心の徳を嘆ず

^*願海がんかいびょうどうなるがゆゑに*発心ほっしんひとし、 発心ほっしんひとしきがゆゑに*どうひとどうひとしきがゆゑにだい慈悲じひひとし、 だい慈悲じひはこれ*仏道ぶつどうしょういんなるがゆゑに。

願海平等ナルガ発心ヒト、発心ヒトシキガヒト、道等シキガ大慈悲ヒト、大慈悲是仏道正因ナルガ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ][ⅱ]菩提心を要となすことを明かす
                          [a]¬論註¼

025367】^¬ろんちゅう¼ (下) にいはく、

¬0096¼曰

^かの安楽あんらくじょううまれんとがんずるものは、 かならずじょうだいしんほっするなり」 とのたまへり。

「願ズル↠生レム↢彼安楽浄土↡者、要トノタマヘリ発无上菩提心↡也。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ][ⅲ]生仏不二を詳らかにす
                          [a]¬論註¼

【68】^またいはく (論註・上)

又云

^ª*しんぶつº (観経) とは、 いふこころは、 しんよくぶつするなり。

「是心作仏言心イフコヽロ作仏スル也。

^ªしんぶつº (観経) とは、 しんのほかにぶつましまさずとなり。 たとへばよりでて、 はなるることをざるなり。 はなれざるをもつてのゆゑに、 すなはちよくく。 のためにかれて、 すなはちとなるがごときなり」 とのたまへり。

是心是仏、心マシマサズト↠仏也。譬↢火、従↠木出デヽ、火不↠離ルルコトヲ↠木↠不ルヲ↠離↠木、則↠木木為↠火カレ、木即ルガ↟火トノタマヘリ。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ][ⅲ][b]「定善義」

【69】^こうみょう (善導) のいはく (定善義)

光明

^このしんぶつす、 *このしんこれぶつなり、 このしんのほかにぶつましまさず」 (意) とのたまへり。

「是心作仏、是ナリ、是マシマサズトノタマヘリ↢異仏↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)結示

【70】^ゆゑにんぬ、 一心いっしんこれを如実にょじつしゅぎょう相応そうおうづく。 すなはちこれ正教しょうきょうなり、 これしょうなり、 これ正行しょうぎょうなり、 これしょうなり、 これしょうごうなり、 これしょうなり。

一心是↢如実修行相応↡。即正教ナリ、是正義ナリ、是正行ナリ、是正解ナリ、是正業ナリ正智也。

一 Ⅱ ⅰ b 総結【問答結帰】

【71】^三心さんしんすなはち一心いっしんなり、 一心いっしんすなはち金剛こんごう真心しんしんこたへをはんぬるべしと。

三心即一心ナリ、一心即金剛真心之義、答、可シト↠知

一 Ⅱ 追釈【追釈】
      菩提心の名を釈す

【72】^¬*かん¼ のいちにいはく、

¬止観¼一

^「ª*だいº とは天竺てんじく (印度)ことば、 ここには*どうしょう0254す。 ª*しっº とは天竺てんじくこえなり、 このほうにはしんといふ。 しんとはすなはち*りょなり」 と。

「菩天竺、此ニハ↠道シチ天竺ナリ、此ニハ↠心。心慮知也。」

一 Ⅱ ⅱ 正しく大信の利益を明かす
        横超断四流を釈す【横超断四流釈】
          (一)

【73】^おうちょうだん四流しる」 といふは、

↢横超断四流

一 Ⅱ ⅱ b イ (二)
            (Ⅰ)横超を釈す
              (ⅰ)釈義

^おうちょうとは、 おうしゅちょうしゅしゅつたいす、 ちょう*たい*たいするのことばなり

横超、横↢竪超・竪出↡、超スル↠廻之言ナリ

^しゅちょうとはだいじょう真実しんじつきょうなり。 しゅしゅつとはだいじょう*ごん方便ほうべんきょうじょうさんじょう迂回うえきょうなり。 ^おうちょうとはすなはち*がんじょうじゅ一実いちじつ円満えんまんしんきょうしんしゅうこれなり。

竪超大乗真実之教也。竪出大乗権方便之教、二乗・三乗迂廻之教也。横超願成就一実円満之真教、真宗也。

^またおうしゅつあり、 すなはち三輩さんぱいぼんじょうさんきょう化土けどまん迂回うえぜんなり。

亦復有↢横出↡、即三輩・九品、定散之教、化土・懈慢、迂廻之善也。

^大願だいがん清浄しょうじょうほうにはほんかいをいはず*一念いちねんしゅのあひだに、 すみやかにじょうしょうしんどう超証ちょうしょう、 ゆゑにおうちょうといふなり。

大願0097清浄報土ニハ↠云品位↡、一念須臾アヒダスミヤカ超↢証无上正真道↡、故↢横超↡也。

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅰ)(ⅱ)引証
              (a)¬大経¼三文

・超発

【74】^¬大本だいほん¼ (大経・上) にのたまはく、

¬大本¼ノタマハク

^じょうしゅしょうがんちょうほつす」 と。

「超↢発スト无上殊勝之願↡。」

・超世

【75】^またのたまはく (大経・上)

^われちょうがんつ。 かならずじょうどういたらんと。

↢超世ラムト↢无上道

^名声みょうしょう十方じっぽうえて、 きょうしてきこゆるところなくは、 ちかふ、 しょうがくらじ」 と。

名声超↢十方
究竟シテクハ所↠キコユルチカ↠成↢正覚↡」

・超絶

【76】^またのたまはく (大経・下)

^かならずちょうぜつしてつることをて、 あんにょうこくおうじょうして、 おう悪趣あくしゅり、 悪趣あくしゅねんぢん。 どうのぼるに窮極ぐうごくなし。 0255やすくしてひとなし。 そのくにぎゃくせず、 ねんくところなり」 と。

「必↢超絶シテツルコトヲ↡、往↢生シテ安養国↡、横↢五悪趣↡、悪趣自然ヂム。昇ルニ↠道↢窮極↡。易↠往シテ↠人。其↢逆違↡、自然トコロナリ。」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅰ)(ⅱ)(b)¬大阿弥陀経¼

【77】^¬*だい弥陀みだきょう¼ (下) *けん三蔵さんぞうやく にのたまはく、

¬大阿弥陀経¼

^ちょうぜつしてつることをべし。 弥陀みだ仏国ぶっこくおうじょうすれば、 おうあくどうりてねん閉塞へいそくす。 どうのぼるにこれきわまりなし。 やすくしてひとあることなし。 そのこくぎゃくせず、 ねんくところなり」 と。

「可↢超絶シテツルコトヲ↡。往↢生スレバ阿弥陀仏国↡、横リテ↢於五悪道↡自然閉塞。昇↠道コレ。易クシテ↠往↠有コト↠人。其国土↢逆違↡、自然之トコロナリト。」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)断四流を釈す
            (ⅰ)釈義

・断

【78】^だんといふは、 *往相おうそう一心いっしんほっするがゆゑに、 *しょうとしてまさにくべきしょうなし。 *しゅとしてまたいたるべきしゅなし。 すでに六趣ろくしゅしょういんもうめっす。 ゆゑにすなはちとんさんしょう断絶だんぜつす。 ゆゑにだんといふなり。

↠断、発↢起スルガ往相一心↡故、无↢生シテ↠受生↡。无↢趣シテマタ↠到趣↡。已六趣・四生、因亡果滅。故断↢絶三有生死↡。故↠断也。

・四流

^四流しるとはすなはち暴流ぼるなり。 またしょうろうびょうなり。

四流四暴流ナリ。又生老病死也。

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)引証
              (a)¬大経¼

【79】^¬大本だいほん¼ (大経・下) にのたまはく、

¬大本¼ハク

^かならずまさに仏道ぶつどうりて、 ひろしょうながれをすべし」 と。

カナラシト↧成↢仏道↦生死↥」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(b)¬平等覚経¼

【80】^またのたまはく (*平等覚経・二)

0098

^かならずまさにそんとなりて、 まさに一切いっさいしょうろうせんとすべし」 と。

カナラ↢世尊↡  将ベシセムト↢一切生老死↡」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(c)¬涅槃経¼「師子吼品」

【81】^¬はん¼ (師子吼品) にのたまはく、

¬涅槃経¼言ハク

^またはんづけて*しゅうしょとす。 なにをもつてのゆゑに、 *だい暴河ぼがただよふことあたはざるがゆゑに。 なんらをか0256つとする。 ひとつにはよくふたつにはつにはけんつにはみょうなり。 このゆゑにはんづけてしゅうしょとす」 と。

「又涅槃シヨ↡。何。四大暴河ルガ↠能タヾヨフコト。何ヲカ↠四。一欲暴、二有暴、三見暴、四ニハ无明暴ナリ。是涅槃↡。」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(d)¬般舟讃¼

【82】^こうみょうしょう (善導) のいはく (般舟讃)

光明和尚

^もろもろのぎょうじゃにまうさく、 *ぼんしょうとんじていとはざるべからず。 弥陀みだじょうかるめてねがはざるべからず。 いとへばすなはちしゃながへだつ、 ねがへばすなはちじょうにつねにせり。 へだつればすなはち六道ろくどういんもうじ、 りんおのづからめっす。 いんすでにもうじてすなはちかたちとんえぬるをや」 と。

マフサク↢諸行者↡、凡夫生死↠可↢貪↟厭。弥陀浄土↠可↢軽↟忻イトヘバ娑婆永ヘダ、忻浄土セリヘダツレバ六道因亡淪廻之果オノヅカ。因果既ジテ タチルヲ。」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(e)¬礼讃¼

【83】^またいはく (礼讃)

又云

^あおねがはくは一切いっさいおうじょうにんとう*よくみづからおのれがのうりょうせよ。 今身こんじんにかのくにしょうぜんとねがはんものは、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがにかならずすべからくこころはげましおのれにこくして、 ちゅうはいすることなかるべし。 ひつみょうとして、 かみいちぎょうにあるは、 すこしきくるしきに似如たれども、 前念ぜんねん命終みょうじゅうしてねんにすなはちかのくにしょうじて、 じょう永劫ようごうにつねに無為むい法楽ほうらくないじょうぶつまでにしょうず。 あにたのしみにあらずや、 るべし」 と。

「仰一切往生人等、善ミヅカ思↢量セヨ ノレ↡。今身ハム↠生ゼム↢彼、行住坐臥ハゲマ↠心シテ、昼夜↞廃スルコト。畢命↠期カミルハ↢一形↡、似↢如 ニ タレドモシキキニ↡、前念命終シテ後念↢彼↡、長時永劫↢无為法楽↡。乃至成仏マデニ↠逕↢生死↡。タノシミ、応シト↠知。」

一 Ⅱ ⅱ b 真仏弟子を釈す【真仏弟子釈】
          (一)正しく真仏弟子を釈す
            (Ⅰ)直釈

【84】^*しんぶつ弟子でし」 といふは、 しんごんたいたいするなり弟子でしとはしゃ諸仏しょぶつ弟子でしなり、 金剛こんごうしんぎょうにんなり。 このしんぎょう0257によりてかならずだいはん超証ちょうしょうすべきがゆゑに、 しんぶつ弟子でしといふ。

↢真仏弟子、真↠偽スル↠仮也。弟子釈迦・諸仏之弟子ナリ、金剛心行人也。由↢斯信行↡必キガ↣超↢証大涅槃↡故、曰↢真仏弟子↡。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)引証
              (ⅰ)引文
                (a)総じて諸徳を明かす
                  (イ)経説
                    [一]¬大経¼二文

【85】^¬大本だいほん¼ (大経・上) にのたまはく、

¬大本¼ノタマハク

1.第33願(触光柔軟の願)

^たとひわれぶつたらんに、 十方じっぽうりょう不可ふか思議しぎ諸仏しょぶつかいしゅじょうるいわがこうみょうかぶりてそのるるもの、 身心しんしんにゅうなんにして人天にんでんちょうせん。 もししからずは、 しょうがくらじと。

「設我得タラムニ↠仏、十方无量不可思議諸仏世界衆生之類、蒙0099↢我光明ルヽ↢其、身心柔軟ニシテ超↢過セム人天↡。若↠爾↠取↢正覚↡。

2.第34願(聞名得忍の願)

 ^(大経・上) たとひわれぶつたらんに、 十方じっぽうりょう不可ふか思議しぎ諸仏しょぶつかいしゅじょうるい、 わがみょうきて、 さつしょうぼうにんもろもろのじんそうずは、 しょうがくらじ」 と。

我得タラムニ↠仏、十方无量不可思議諸仏世界衆生之類、聞↢我名字↡、↢菩薩无生法忍、諸深総持↠取↢正覚↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二]¬如来会¼

【86】^¬りょう寿じゅ如来にょらい¼ (上) にのたまはく、

¬无量寿如来会¼ノタマハク

^もしわれじょうぶつせんに、 しゅうへん十方じっぽうりょうへん不可ふか思議しぎとうかいじょうともがらぶつこうかぶりてしょうそくせらるるもの、 身心しんしん安楽あんらくにして人天にんでんちょうせん。 もししからずは、 だいらじ」 と。

「若我成仏セムニ、周徧十方无量无辺不可思議无等界有情之輩、蒙↢仏威光↡所ルヽ↢照触、身心安楽ニシテ超↢過セム人天↡。若↠爾↠取↢菩提↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[三]¬大経¼二文

【87】^また (大経・下)

ノタマヘリ

^ほうきてよくわすれず、 うやまおおきによろこばば、 すなはちわがしんなり」 とのたまへり。

「聞↠法ワスヨロコバヾ
親友ナリト」↡

【88】^またのたまはく (大経・下)

ノタマハク

^それしんありて安楽あんらくこくしょうぜんとがんずれば、 智慧ちえあきらかにたっし、 どくしゅしょうなることをべし」 と。

「其↢至心↡願ズレ↠生ゼム↢安楽国、可シト↢智慧明、功徳殊勝ナルコト↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[四]¬如来会¼二文

【89】^また (如来会・下)

^広大こうだいしょうしゃ」 とのたまへり。

ヘリ↢「広大勝解者。」↡

025890】^また (如来会・下)

^かくのごときらのるいだいとくのひと、 よく*広大こうだいもんうまる」 とのたまへり。

ノタマヘリ↣「如↠是類、大威徳ヒト、能ルト↢広大異門↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[五]¬観経¼

【91】^またのたまはく (観経)

又言ハク

^もし念仏ねんぶつするひとは、 まさにるべし、 このひとはこれにんちゅうふん陀利だりなり」 と。

「若念仏スルヒト、当↠知、此是人中分陀利華ナリト。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)師釈
                    [一]¬安楽集¼五文

【92】^¬*安楽あんらくしゅう¼ (上) にいはく、

¬安楽集¼云

1.説聴方軌

^しょだいじょうによりてせっちょうほうかさば、

「拠↢諸部大乗↡明↢説聴方軌

^¬*大集だいじっきょう¼ にのたまはく、 ª^説法せっぽうのひとにおいては、 おうおもいをなせ、 ばっおもいをなせ。 所説しょせつほうをばかんおもいをなせ、 だいおもいをなせ。 ^それちょうほうのひとは、 ぞうじょうしょうおもいをなせ、 びょうおもいをなせ。 ^もしよくかくのごとき説者せっしゃちょうしゃは、 みな仏法ぶっぽう紹隆しょうりゅうするにへたり。 つねに仏前ぶつぜんしょうぜんº と。

¬大集経¼云、於テハ↢説法ヒト↡、作↢医王↡、作↢抜苦↡。所説之法ヲバ↢甘露↡、作↢醍↡。其聴法ヒトヲバ、作↢増長勝解↡、作↢愈病↡。若↠是説者・聴者、皆エタリセウツグリウスルニ仏法↡。常ゼムト↢仏0100↡。

2.諸仏現前

^(安楽集・下) ¬はんぎょう¼ によるに、 ª^ぶつののたまはく、 «もしひとただよくこころいたして、 つねに念仏ねんぶつ三昧ざんまいしゅすれば、 十方じっぽう諸仏しょぶつつねにこのひとそなはすこと、 げんまえにましますがごとし»º と。

↢¬涅槃経¼↡、仏ノタマハク、若人但能シテ↠心、常スレ↢念仏三昧、十方諸仏恒ミソナハスコト↢此↡、如↢現スガ↟前

^このゆゑに ¬はんぎょう¼ にのたまはく、 ª^ぶつ*しょうさつげたまはく、 «もし善男ぜんなんぜん女人にょにんありて、 つねによくこころいたし、 もつぱら念仏ねんぶつするひとは、 もしは山林せんりんにもあれ、 もしは聚落じゅらくにもあれ、 もしはひるもしはよる、 もしはもしはに、 諸仏しょぶつそんつねにこのひとそな0259はすことまえげんぜるがごとし。 つねにこのひとのためにしてじゅをなさん»º と。

¬涅槃経¼ノタマハク、仏告ゲタマハク↢迦葉菩薩↡、若↢善男子・善女人↡、常↠心念仏スルヒト、若↢山林ニモ↡、若↢聚落ニモ↡、若ヒル夜、若座若、諸仏世尊常ミソナハスコト↢此↡如↠現ゼルガ↢目↡。恒タメ↢此シテサムト↢受施↡。

3.知恩報徳

^(安楽集・下) ¬*だい智度ちどろん¼ によるに、 三番さんばんしゃくあり。 ^ª第一だいいちには、 ぶつはこれじょう法王ほうおうなり、 さつ法臣ほうしんとす。 とうとぶところおもくするところ、 ただぶつそんなり。 このゆゑに、 まさにつねに念仏ねんぶつすべきなり。

↢¬大智度論¼↡、有↢三番解釈↡。第一ニハ无上法王ナリ、菩薩↢法臣↡。所↠尊所↠重スル、唯仏世尊ナリ。是↢当念仏↡也。

^だいに、 もろもろのさつありてみづからいはく、 «われ曠劫こうごうよりこのかた、 そんわれらが法身ほっしんしんだい慈悲じひしんちょうようしたまふことをかぶることをたりき。 ぜんじょう智慧ちえりょうぎょうがんぶつによりてじょうずることをたり。 報恩ほうおんのためのゆゑに、 つねにぶつちかづかんことをがんず。 また大臣だいじんの、 おうおんちょうかぶりてつねにそのおうおもふがごとし» と。

第二↢諸菩薩↡ミヅカ↢曠劫↡已来 コノカ タリキ↠蒙ブルコトヲ↣世尊長↢養スルコトヲ法身・智身・大慈悲身↡。禅定・智慧、无量行願、由↠仏タリ↠成ズルコトヲ。為↢報恩↡故チカヅカムコトヲ↠仏。亦如↧大臣↢王恩寵↡常フガ↦其↥。

^第三だいさんに、 もろもろのさつありて、 またこのごんをなさく、 «われいんにしてあくしきひて、 *にゃほうして悪道あくどうしき。 りょうこうぎょうしゅすといへども、 いまだづることあたはず。 のちいちにおいてぜんしきほとりによりしに、 われをおしへて念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうぜしむ。 そのときに、 すなはちよくしかしながらもろもろのさわり、 まさにだつすることをしめたり。 この大益だいやくあるがゆゑに、 がんじてぶつはなれず»º と。

第三↢諸菩薩↡、復作サク↢是↡、我↢因地↡遇悪知識↡、誹↢謗シテ波若↡堕シキ↢悪道↡。逕↢无量劫↡雖↠修スト↢余行↡、未↠能↠出ヅルコト。後↢一時↡依リシニ↢善知識↡、教ヘテ↠我シム↢念仏三昧↡。其シカシナガラ↣諸、方↢解脱スルコト↡。有ルガ↢斯大益↡故ジテ↠離↠仏

4.菩提心功用

^(安楽集・上) ¬だいきょう¼ (下) にのたまはく、 ª^おほよそじょうおうじょうせんとおもはば、 かならずほつだいしんもちゐるをみなもととす。 いかんと0260なれば、 だいはすなはちこれじょう仏道ぶつどうなり。 もし発心ほっしんぶつせんとおもはば、 このしん広大こうだいにして法界ほうかいしゅうへんせん、 このしんじょうおんにしてらいさいつくす。 このしんあまねくつぶさにじょうさわりはなる。 もしよくひとたび発心ほっしんすれば、 無始むししょうりんかたぶくº と。

¬大経¼ノタマハク、凡ハヾ↣往↢生セムト浄土↡、要トスルヲモチヰルヲ↢発菩提心↠源云何 イカン 菩提スナワ无上仏道之名也。若オモ↢発心作仏セムト、此心広大ニシテ周↢徧セム法界↡、此心長遠ニシテ↢未来際↡。此心普ツブサ↢二乗↡。若タビ0101スレバカタブクト↢无始生死有輪↡。

5.常行大悲

^(安楽集・下) ¬*だいきょう¼ にのたまはく、 ª^いかんがづけてだいとする。 もしもつぱら念仏ねんぶつ相続そうぞくしてえざれば、 その命終みょうじゅうしたがひてさだめて安楽あんらくしょうぜん。 もしよく展転てんでんしてあひすすめて念仏ねんぶつぎょうぜしむるは、 これらをことごとくだいぎょうずるひとづくº」 と。 以上抄出

¬大悲経¼ノタマハク云何 イカン ↢大悲↡。若念仏相続シテ↠断、随↢其命終↡定ゼム↢安楽↡。若展転シテゼシムル↢念仏、此クト↧行ズル↢大悲↡人↥。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]¬般舟讃¼

・知恩報徳

【93】^こうみょう(善導) のいはく (般舟讃)

光明師

^ただうらむらくは、 しゅじょううたがふまじきをうたがふことを。 じょう対面たいめんしてあひたがはず。 しょうしょうとをろんずることなかれ。 こころ専心せんしんにしてするとせざるとにあり。

タヾウラムラクハ衆生ウタガフコトヲマジキヲ↠疑浄土対面シテタガ
ナカ↠論ズルコト↢弥陀不摂↢専心ニシテスルトルトニ↟廻

^あるいはいはく、 いまよりぶっいたるまで、 じょうごうぶつめておんほうぜん。 弥陀みだぜいの力をかぶらずは、 いづれのときいづれのこうにかしゃでんと。

ハクケフマデ↢仏果長劫↠仏ゼム↢慈恩
↢弥陀弘誓 ヅレ ヅレニカデムト↢娑婆

^いかんが今日こんにち宝国ほうこくいたることをせん。 まことにこれしゃほんちからなり。 もしほんしきすすめにあらずは、 弥陀みだじょういかんしてからん」 と。

イカンセム↣今日至コトヲ↢宝国娑婆本師ナリ
ズハ↢本師知識スヽメ弥陀浄土云何 イカン シテカラムト

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[三]¬礼讃¼二文

1.知恩報徳

【94】^またいはく (礼讃)

又云

^ぶっはなはだもうあひがたし。 ひとしんあること0261かたし。 たまたま希有けうほうくこと、 これまたもつともかたしとす。

「仏世甚マウア人有コト↢信慧↡難
タマタマコト↢希有コレ↠難シト

^みづからしんじ、 ひとおしへてしんぜしむること、 かたきがなかにうたたまたかたし。 だいひろくあまねくする、 まことに仏恩ぶっとんほうずるになる」 と。

ミヅカオシヘテ↠人ゼシムルコトウタマタ
大悲スルルト↠報ズルニ↢仏恩↡」

2.心光摂護

【95】^またいはく (礼讃)

又云

^弥陀みだ身色しんじき金山こんぜんのごとし。 相好そうごうこうみょう十方じっぽうらす。 ただ念仏ねんぶつするもののみありてこうしょうかぶる。 まさにるべし、 本願ほんがんもつともこわしとす。

「弥陀身色↢金山相好光明↢十方
唯有↢念仏スルモノノミ↢光摂↠知本願最コワシト

^十方じっぽう如来にょらいみしたべてしょうしたまふ。 もつぱらみょうごうしょうして西方さいほういたる。 かのだいいたつてみょうほうく。 じゅうがんぎょうねんあらわる」 と。

十方如来 舒ミシタシタマフシテ↢名号↡至↢西方
↢彼華台↡聞↢妙法十地願行 自然アラワルト

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[四]¬観念法門¼

・心光摂護

【96】^またいはく (*観念法門)

又云

^ただ弥陀みだぶつ専念せんねんするしゅじょうのみありて、 かのぶっしんひかり、 つねにこのひとらしてしょうしててたまはず。 すべて雑業ぞうごうぎょうじゃらしおさむとろんぜず。 これまたこれげんしょうねんぞうじょうえんなり」 と。

「但有↧専↢念スル阿弥陀仏↡衆生ノミ↥、彼仏心、常シテ↢是↡摂護シテ↠捨テタマハ。総↠論↣照↢摂ムト雑業行者↡。現生護念増上縁ナリト。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[五]「序分義」

・心多歓喜

【97】^またいはく (序分義)

0102

^ªしんかん得忍とくにんº といふは、 これは弥陀みだ仏国ぶっこく清浄しょうじょうこうみょう、 たちまちにまなこまえげんぜん、 なんぞやくへん。 このよろこびによるがゆゑに、 すなはちしょうにんることをかす。 またにんづく、 またにんづく、 また信忍しんにんづく。 これすなはちはるかにだんずるに、 0262まだとくしょあらわさず、 にんをしてひとしくこころにこのやくねがはしめんとおもふ。 ゆうみょうせんしょうにしてこころんとおもときに、 まさににんさとるべし。 これおおくこれ十信じっしんのなかのにんなり、 ぎょうじょうにんにはあらざるなり」 と。

「言↢心歓喜得忍、此阿弥陀仏国清浄光明、タチマチゼム↢眼↡、何エム↢踊躍↡、因ルガ↡故ルコトヲ↢无生之忍亦名↢喜忍↡、亦名↢悟忍↡、亦名↢信忍ダンズルニ、未アラハ↢得処↡、欲メムト↣夫人ヲシテシクネガ↢心勇猛専精ニシテ↠見、方↠悟フタイノクラヰ十信ナリ、非コトヲ解行已上ニハ。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[六]「散善義」

・諸仏称讃

【98】^またいはく (散善義)

又云

^ªにゃく念仏ねんぶつしゃº よりしも ªしょう諸仏しょぶつº にいたるまでこのかたは、 まさしく念仏ねんぶつ三昧ざんまいのうちょうぜつして、 まことに雑善ぞうぜんをしてるいとすることをるにあらざることをあらわす。 すなはちそれにいつつあり。

↢若念仏者マデ↢生諸仏家已来 コノカ タハシク↣念仏三昧功能超絶シテ、実ルコトヲ↢雑善ヲシテルニルコトヲ↢比類↡。即五↡。

^ひとつには、 弥陀みだぶつみな専念せんねんすることをかす。

ニハ↣専↢念スルコトヲ弥陀仏ミナ↡。

^ふたつには、 能念のうねんひとさんすることをかす。

ニハ↣指↢讃スルコトヲ能念之人↡。

^つには、 もしよく相続そうぞくして念仏ねんぶつするひと、 このひとはなはだ希有けうなりとす、 さらにものとしてもつてこれをたくらぶべきことなきことをかす。 ゆゑにふん陀利だりきてたとへとす。

ニハ↫若相続シテ念仏スルヒト、此人甚↢希有ナリト↡、更コトヲ↪物トシテキコト↩以ナラコレ。故↢芬陀利↠喩

^ふん陀利だりといふは、 にんちゅうこうづく、 また希有けうづく、 またにんちゅう上上じょうじょうづく、 またにんちゅうみょうこうづく。 このあひつたへてさいづくるこれなり。 もし念仏ねんぶつのひとはすなはちこれにんちゅう好人こうにんなり、 にんちゅうみょうこうにんなり、 にんちゅう上上じょうじょうにんなり、 にんちゅう希有けうにんなり、 にんちゅうさいしょうにんなり。

↢分陀利、名↢人中好華↡、亦名↢希有華↡、亦名↢人中上上華↡、亦名↢人中妙好華↡。アヒツタヘテクル↢蔡華↡是ナリ。若念仏ヒト人中好人ナリ、人中妙好人ナリ、人中上上人ナリ、人中希有人ナリ、人中最勝人也。

^つには、 弥陀みだみな専念せんねんすれば、 すなはち観音かんのんせいつねにしたがひてようしたまふこと、 またしんしきのごとくなることをかす0263

ニハ↧専↢念スレ弥陀、即観音・勢至常影護シタマフコト、亦如クナルコトヲ↦親友知識↥也。

^いつつには、 こんじょうにすでにこのやくかぶれり、 いのちててすなはち諸仏しょぶついえらん、 すなはちじょうこれなり。 かしこにいたりてじょうほうき、 りゃくようせん。 いんまどかにまんず、 どうじょうあにはるかならんやといふことをかす」 と。

ニハ↧今生レリ↢此↡、テヽ↠命ラム↢諸仏之家↡、即浄土是也長時↠法、歴事供養セム因円果満、道場之座ハルカナラムヤトイフコトヲ↥。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)別して勝益を明かす【便同弥勒釈】
                  (イ)王日休¬龍舒浄土門¼

【99】^*おうにっきゅうがいはく (*龍舒浄土文)

王日キウ

^「われ ¬りょう寿じゅきょう¼ をくに、 ªしゅじょう、 このぶつみょうきて信心しんじんかんせんことない一念いちねんせんもの、 かのくにしょうぜんとがんずれば、 すなはちおうじょう退転たいてんじゅうすº と。

↢¬无量寿経¼↡、衆生聞↢是仏名↡信心歓喜セムコト乃至一0103セムモノ、願ズレバ↠生ゼム↢彼↡、即↢往生↡、住スト↢不退転↡。

^退転たいてんぼんにはこれをゆいおっといふ。 ¬*法華ほけきょう¼ にはいはく、 ª*ろくさつ所得しょとく*ほうなりº と。

不退転梵語ニハ↢之阿惟越致↡。¬法華経ニハ¼謂弥勒菩薩所得報地也

^*一念いちねんおうじょう*便すなわろくおな ぶつむなしからず、 この ¬きょう¼ はまことにおうじょう*けいじゅつだっ*神方しんぼうなり。 みな信受しんじゅすべし」 と。

一念往生、便↢弥勒↡。仏語↠虚カラ、此¬経¼マコト往生之ケイジユチ、脱苦之シンボウナリ。応シト↢皆信受↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)¬大経¼

【100】^¬だいきょう¼ (下) にのたまはく、

¬大経¼言

^ぶつろくげたまはく、 ªこのかいよりろくじゅうしちおく退たいさつありて、 かのくにおうじょうせん。 一々いちいちさつは、 すでにむかししゅ諸仏しょぶつようせりき、 *いでろくのごとしº」 と。

「仏告ゲタマハク↢弥勒↡、↢此世界↡有↢六十七億不退菩薩↡、往↢生セム↡。一一菩薩、已ムカシ供↢養セリキ无数諸仏↡、次シト↢弥勒↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ハ)¬如来会¼

【101】^またのたまはく (如来会・下)

ノタマハク

^ぶつろくげたまはく、 ªこのぶつのなかにしちじゅうおくさつあり。 かれはりょうおく那由他なゆたひゃくせんぶつみもとにして、 もろ0264もろの善根ぜんごんゑて退転たいてんじょうぜるなり。 まさにかのくにしょうずべしº」 と。

「仏告ゲタマハク↢弥勒↡、此仏土↢七十二億菩薩↡。↢无量億那由他百千↡、種↢諸善根↡成ゼルナリ↢不退転↡。当シト↠生↢彼↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ニ)用欽¬超玄記¼(いま伝わらず)

【102】^*りっしゅう用欽ようきんのいはく、

律宗ヨウキム

^いたれること、 ¬ごん¼ のごくしょう、 ¬ほっ¼ のみょうだんにしかんや。 かつはいまだ*じゅあることをず。 しゅじょういっしょうにみなのく多羅たらさんみゃくさんだいることは、 まことにいふところの不可ふか思議しぎどくなり」 と。

「至レルコトカムヤ↢¬華厳¼ゴクシヤウ、¬法華¼妙談↡。カツ↠見↠有コトヲ↢普授↡。衆生一生皆得ルコト↢阿耨多羅三藐三菩提、誠↠謂不可思議功徳之利也。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)釈成

【103】^まことにんぬ、 ろくだい等覚とうがく金剛こんごうしんきわむるがゆゑに、 *りゅうさんあかつき、 まさにじょうかくきわむべし念仏ねんぶつしゅじょうおうちょう金剛こんごうしんきわむるがゆゑに*りんじゅう一念いちねんゆうべだいはつはん超証ちょうしょうす。 ゆゑに便同べんどうといふなり。

弥勒大士キワムルガ↢等覚金剛心↡故、竜華三会之暁、当↠極↢无上覚位↡。念仏衆生ルガ↢横超金剛心↡故、臨終一念之夕、超↢証大般涅槃↡。故↢便同↡也。

^しかのみならず金剛こんごうしんるものは、 すなはちだいひとしく、 すなはち*しんにんぎゃくとくすべし。 これすなはち往相おうそうこう真心しんしん徹到てっとうするがゆゑに、 不可ふか思議しぎ本誓ほんぜいによるがゆゑなり。

加之シカノミナラズ↢金剛心、則↢韋提↡ヒトシク、即↣獲↢得喜・悟・信之忍↡。是則往相廻向之真心徹到スルガルガ↢不可思議之本誓也。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅲ)結勧
              (ⅰ)宗暁¬楽邦文類¼二文

1.智覚

【104】^ぜんしゅう*かく念仏ねんぶつぎょうじゃめていはく (*楽邦文類)

0104智覚讃↢念仏行者↡云

^まれなるかな、 仏力ぶつりきなんなれば、 こんもいまだあらず」 と。

マレナルカナ仏力難思ナレバ、古今↠有。」

2.元照

【105】^りっしゅうがんじょうのいはく (楽邦文類)

律宗昭師

^ああ、 *きょうかんにあきらかなること、 たれかしゃ (*智顗) にしかんや。 おわりにのぞんで ¬かんぎょう¼ をきょし、 じょうさんじてなが0265きき。

嗚呼 アヽ ナルコト↢教観↡、タレカム↢智者。臨↠終キヨ↢¬観経¼↡、讃↢浄土矣。

^法界ほうかいたっせること、 たれか*じゅんにしかんや。 しゅすすぶっねんじて、 しょうそうかんじて西にしきき。

セルコト↢法界↡、タレカムジユン。勧↢四衆↡念ジテ↢仏陀↡、感↢勝相西キヽ矣。

^ぜんまじはりしょうること、 たれか*こうぎょくかくにしかんや。 みなしゃむすび、 ぶつねんじて、 ともにじょうぼんのぼりき。

マジワ↠禅ルコト↠性カム↢高玉・智覚。皆ムス、念↠仏ノボリキ↢上品↡矣。

^*ごうじゅさいある、 たれか*りゅう*らい*りゅうこう*はく楽天らくてんにしかんや。 しかるにみなふでりて、 まことしょして、 かのしょうぜんとがんじき」 と。

ゲフジユ↠才、カムリウライリウカウ・白楽天。然↠筆シヨ↠誠ジキト↠生ムト↢彼↡矣。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)仮偽を弁釈して反顕す【仮偽弁釈】
            (Ⅰ)仮を弁ず
              (ⅰ)正釈

【106】^といふは、 すなはちこれしょうどうしょじょうじょうさんなり。

↠仮、即是聖道諸機、浄土定散機也。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)引文
                (a)¬般舟讃¼

【107】^ゆゑにこうみょう(善導) のいはく (般舟讃)

光明師

^ぶっきょうもんにして*八万はちまんなり。 まさしくしゅじょうどうなるがためなり」 と。

「仏教多門ニシテ八万四ナリシクナリト↢衆生機不同ナルガ↡」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)¬法事讃¼

【108】^またいはく (*法事讃・下)

^方便ほうべんもんひとしくしてことなることなし」 と。

「方便仮門、ヒトシクシテシト↠殊ナルコト。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)¬般舟讃¼

【109】^またいはく (般舟讃)

又云

^門々もんもんどうなるをぜんぎょうづく。 まんごうぎょうしてしょうしょうす」 と。

「門門不同ナルヲ↢漸教万劫苦行シテスト↢无生↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)偽を弁ず
              (ⅰ)正釈

【110】^といふは、 すなはちろくじゅうけんじゅうしゅじゃどうこれなり。

、則六十二見・九十五種之邪道是也。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)引文
                (a)¬涅槃経¼「大衆所聞品」

【111】^¬はんぎょう¼ (*大衆所聞品) にのたまはく、

¬涅槃経¼ノタマハク

^そんつねにきたまはく、 ª一切いっさいじゅうしゅならひて、 みな悪道あくどうおもむくº」 と。

「世尊常キタマハク、一切マナ↢九十五種↡、皆クト↢悪道↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)¬法事讃¼

0266112】^こうみょう(善導) のいはく (法事讃・下)

光明師

^じゅうしゅみなけがす。 ただぶつ一道いちどうのみひとしょうげんなり」 と。

「九十五種皆ケガ↠世唯仏一道ノミヒト清閑ナリト

一 Ⅱ ⅱ 結嘆

【113】^まことにんぬ、 かなしきかな禿とくらん*愛欲あいよく広海こうかい沈没ちんもつし、 *みょう太山たいせん迷惑めいわくしてじょうじゅかずることをよろこばず、 しんしょうさとりちかづくことをたのしまざることを、 づべしいたむべしと。

0105シキ哉愚禿鸞、沈↣没↢愛欲広海↡、迷↣シテ↢名利太山↡、ヨロコ↠入コトヲ↢定聚之数↡、ルコトヲタノシ↠近クコトヲ↢真証之証↡、可シトイタ矣。

摂取の義を弁ず【明所被機】
  直弁
    文を引きて広く顕す(¬涅槃経¼)
      総明(「現病品」)
        難化の機を挙ぐ

【114】^*それぶつなんきて、 ¬はんぎょう¼ (*現病品) にのたまはく、

仏説↢難治↡、¬涅槃経¼ノタマハク

^*しょう三人さんにんあり、 そのやまいしがたし。 ひとつにはほうだいじょうふたつにはぎゃくざいつには一闡提いっせんだいなり。

「迦葉、世↢三人↡、其ガタ↠治。一ニハ謗大乗、二ニハ五逆罪、三ニハ一闡提ナリ

二 Ⅰ ⅰ a 其の分斉を示す

・法説

^かくのごときのさんびょうのなかにごくじゅうなり。 ことごとくしょうもん縁覚えんがくさつのよくするところにあらず。

↠是三病、世極重ナリ。悉↣声聞・縁覚・菩薩之所↢能スル↡。

・譬説

^善男ぜんなん*たとへばやまいあればかならずするにすることなからんに、 もし*せんびょう*ずいやくあらんがごとし。 もしせんびょうずいやくなからん、 かくのごときのやまい、 さだめてすべからず。 まさにるべし、 このひとかならずせんことうたがはずと。

善男子、譬↣有レバ↠病必スルニカラムニ↠治スルコト、若ムガ↢瞻病随意医薬↡。若ラム↢瞻病随意医薬↡、如↠是之病、定不↠可カラ↠治。当↠知、是人必セムコト↠疑

・合法

^善男ぜんなん、 この三種さんしゅひとまたまたかくのごとし。 *ぶつさつしたがひてもんをはりて、 すなはちよくのく多羅たらさんみゃくさんだいしんほっせん。 もししょうもん縁覚えんがくさつありて、 あるいはほうき、 あるいはほうかざるあらん、 それをしてのく多羅たらさんみゃくさんだいしん0267ほっせしむることあたはず」 と。

善男子、是三種人亦復如↠是。従↢仏・菩薩↢聞治↡已、即便セム↢阿耨多羅三藐三菩提心↡。若↢声聞・縁覚・菩薩↡、或ラム↢説↠法↟説↠法↠能↠令ムルコト↣其ヲシテ↢阿耨多羅三藐三菩提心↡。」

二 Ⅰ ⅰ 別顕(「梵行品」)
        所化の機相を明かす
          (一)正引

・闍王興逆

【115】^またのたまはく (涅槃経・*梵行品)

又言

^そのときに、 *王舎おうしゃだいじょう*じゃおうあり。 そのしょう弊悪へいあくにしてよく殺戮せつろくぎょうず。 *くちあく*とん愚痴ぐちしてそのこころじょうなり。 しかるに眷属けんぞくのためにげんよくらくとんじゃくするがゆゑに、 *ちちおうつみなきに、 *よこさまぎゃくがいす。

「爾王舎大城阿闍世王アリ。其性弊悪ニシテ↢殺ロク↡。具シテ↢口四悪、貪・恚・愚痴↡其心熾盛ナリ↢眷属↡貪↢著スルガ現世五欲↡故、父王无キニツミ↢逆害↡。

・生悔過心

^ちちがいするによりて、 おのれがこころ*ねつしょうず。 こころねつするがゆゑに、 遍体へんたいかさしょうず。 そのかさしゅうにしてごんすべからず。 すなはちみづから念言ねんごんすらく、 ªわれいまこのしんにすでに*ほうけたり、 ごくほうまさにちかづきて、 とおからずとすº と。

↠害スルニ↠父オノレ↢悔熱↡。 心悔熱スルガ徧体↠瘡。其シユニシテ不↠可↢附近↡。スナワ念言スラク、我今此ケタリ↢華報↡、地獄果報将↢近ヅキテ↟遠カラ

・余術不治

^そのときに、 そのはは*だいこう種々しゅじゅくすりをもつてためにこれをる。 そのかさつひにぞうすれども降損ごうそんあることなし。 おうすなはちははにまうさく、 ªかくのごときのかさこころよりしてしょうぜり。 だいよりおこれるにあらず。 もししゅじょうよくすることありといはば、 このことわりあることなけんº と。

母韋提希コウ、以↢種種↡而↠之。其瘡遂スレドモ↠有0106コト↢降損↡。王即↠母、如↠是↠心シテゼリ。非↢四大ヨリレルニ↡。若↣衆生有↢能スルコトケム↠有コト↢是コトワリ↡。

・余術不治 1.月称

 ^とき大臣だいじんあり、 づけてがっしょうといふ。 おうのところにおうして、 一面いちめんにありてちてまうしてまうさく、 ª大王だいおうなんがゆゑぞしゅうすいして顔容げんようよろこばざる。 いたむとやせん、 こころいたむとやせんº と。

↢大臣↡、名↢日月称↡。往↢至シテ↡、在↢一面↡立チテ、大王、何愁悴シテ顔容不↠悦↢身痛↡、ムト↢心痛↡。

^おうしんこたへていはまく、 ªわれいま身心しんしんあにいた0268まざることをんや。 わがちちつみなきによこさまぎゃくがいす。 われしゃしたがひて、 かつてこのきき。 «にんあり、 ごくまぬかれずと。 いはくぎゃくざいなり» と。 われいますでにりょうへんそうつみあり。 いかんぞ身心しんしんをしていたまざることをん。 またりょうのわが身心しんしんせんものなけんº と。

王答↠臣ハマク、我今身心ムヤ↠不ルコトヲ↠痛。我父无キニツミ↢逆害↡。我従↢智者↡曽キヽ↢是↡。世↢五人↡、マヌカ↢地獄↡。謂五逆罪ナリ↢无量无辺阿僧祇罪↡。云何身心シテ↠不ルコトヲ↠痛。又无ケムト↣良医セムモノ↢我身心↡。

^しん大王だいおうにまうさく、 ªおおきにしゅうすることなかれと。 すなはち*きていはく、 «^もしつねにしゅうせば、 うれへつひにぞうじょうせん。 ひとねむりをこのめば、 ねむりすなはちしげおおきがごとし。 いんとんさけたしなむも、 またまたかくのごとし» と。

臣言サク↢大王↡、莫レト↢大愁苦スルコト↡。即キテ↠偈

愁苦セバウレヘ増長セム
↢人コノメバ↠眠眠則シゲキガ
↠婬タシナムモ↠酒亦復如シト↠是

^おうののたまふところのごとし、 «にんあり、 ごくまぬかれず» とは、 たれかきてこれをて、 きたりておうかたるや。 ごくといふは、 ただちにこれけんおおしゃかく、 おうののたまふところのごとし、 «りょう身心しんしんするものなけん» と。

↢王 タマ、世↢五人↡、トハ↠脱↢地獄↡、誰↠之、来↠王。言↢地獄、直世間智者カク、如↢王↟言、世ケム↧良医スル↢身心↥。

^いまだいあり、 *らんづく。 *一切いっさいけんしてざいて、 さだめてひっきょうじて清浄しょうじょう*ぼんぎょうしゅじゅうして、 つねにりょうへんしゅじょうのために、 じょうはんどう演説えんぜつす。

今有↢大医↡、名ラン↡。一切知見シテ↢自在↡、定畢竟ジテ修↢習シテ清浄梵行↡、常↢无量无辺衆生↡、演↢説无上涅槃之道↡。

^もろもろの弟子でしのために、 かくのごときのほうけり。 «^*黒業こくごうあることなければ、 黒業こくごうほうなし。 *びゃくごうあることなければ、 びゃくごうほうなし。 こくびゃくごうなければ、 こくびゃく*業報ごうほうなし。 *じょうごうおよび*ごうのあることなし» と。

↢諸弟子↡、説ケリ↢如↠是↡。
レバ↠有コト↢黒業↡↢黒業報↡
レバ↠有コト↢白業↡↢白業報↡
レバ↢黒白業↡↢黒白業報↡
シト↠有コト↢上業及以 オヨビ 下業

^このいま0269王舎おうしゃじょうのうちにいます。 やや、 ねがはくは大王だいおう*くつしてかしこにけ。 このをして身心しんしんりょうせしむべしº と。

師今イマ↢王舎城↡。ヤヽ大王、クツシテシト↠令↣是ヲシテ療↢治身心↡。

^ときおうこたへていはまく、 ªあきらかによくかくのごときわがつみ滅除めつじょせば、 われまさに帰依きえすべしº と。

0107マクアキラカ↠是滅↢除セバ↡、我当シト↢帰依↡。

・余術不治 2.蔵徳

 ^またひとりのしんあり、 づけて蔵徳ぞうとくといふ。 またおうのところにきてこのごんをなさく、 ª大王だいおう、 なんがゆゑぞめんみょうしょうすいして、 しん乾燥かんそうし、 おんじょうさいなるや。 なんのくるしむところあつてか、 いたむとやせん、 こころいたむとやせんº と。

復有↢一臣↡、名↢蔵徳↡。復往↢王↢是↡、大王、何貌憔悴シテセウカワキカン、音声微細ナルヤアテカ↠苦シム↢身痛↡、ムト↢心痛↡。

^おうすなはちこたへていはく、 ªわれいま身心しんしんいかんぞいたまざらん。 われもうにしてもくあることなし。 もろもろのあくちかづきて、 これよく*だいだっ悪人あくにんことばしたがひて、 *しょうぼうおうよこさまぎゃくがいす。

王即今身心云何ラム↠痛之痴盲ニシテ↠有コト目↡。チカヅ↢諸悪友コレ↢提婆達多悪人之↡、正法之王↢逆害↡。

^われむかしかつてにんせつせしをきき。 «^もし父母ぶもぶつおよび弟子でしにおいて、 ぜんしんしょうじ、 悪業あくごうおこさん。 かくのごときのほう*阿鼻あびごくにあり» と。

我昔曽キヽ↢智人偈説セシ↡。

↢父母仏及弟子
↢不善サム↢悪業↡
↠是果報リト↢阿鼻獄

^このをもつてのゆゑに、 われしんしてだいのうしょうぜしむ。 またりょうりょうることなけんº と。

↢是、令心怖シテ↢大苦悩↡。又ケムト↣良医而見コト↢救療↡。

^大臣だいじんまたいはく、 ªやや、 ねがはくは大王だいおう、 しばらくしゅうすることなかれ。 ほうしゅあり。 ひとつにはしゅっふたつには王法おうぼうなり。

大臣復言ヤヽ大王、シバラ↢愁怖スルコト↡。法↢二種↡。一出家、二王法ナリ

^王法おうぼうといふは、 いはく、 そのちちがいして、 すなはちこくおうたるなり。 これぎゃくなりといふといへども、 じつつみあることなけん0270*迦羅羅かららちゅうのかならずはははらやぶりて、 しかしてのち、 いまししょうずるがごとし。 *しょうほうかくのごとし。 ははやぶるといへどもじつにまたつみなし。 *ふく懐妊かいにんとうまたまたかくのごとし。 こくほうほうとしてかくのごとくなるべし。 きょうころすといへども、 じつつみあることなけん。

王法トイフ、謂セリ↢其↡、則国土。雖↠云フトナリト↡、実ケム↠有コト↠罪。如↧迦羅羅虫リテ↢母↡、然シテ後乃ズルガ↥。生法如↠是↠破↢母↡実亦无↠罪。懐妊等亦復如↠是。治国之ハフ、法トシテ↠如クナル↠是。雖↠殺スト↢父兄↡、実ケム↠有コト↠罪。

^しゅっほうは、 ないもんころす、 またつみあり。

出家、乃至蚊蟻、亦有↠罪。

^おうののたまふところのごとし、 «りょう身心しんしんするものなけん» と。 いまだいあり、 *末伽梨まかりしゃ梨子りしづく。 一切いっさいけんしてしゅじょう憐愍れんみんすること、 しゃくのごとし。 すでに煩悩ぼんのうはなれて、 よくしゅじょう三毒さんどく*せんく。

↢王↟言、世ケムト↧良医スル↢身心↥。今有↢大師↡、名シヤ↡。一切知見シテ憐↢愍スルコト衆生↡、猶↢如 ゴト 赤子↡。已↢煩悩↡、能↢衆生三毒利箭0108↡。

^このいま王舎おうしゃだいじょうにいます。やや、 ねがはくは大王だいおう、 そのところおうして、 おうもし衆罪しゅざいしょうめつせんº と。

師今イマ↢王舎大城↡。ヤヽ大王、往↢至シテ↡、王若衆罪消セムト

^ときおうこたへていはく、 ªあきらかによくかくのごときわがつみ滅除めつじょせば、 われまさに帰依きえすべしº と。

王答ツマビラカ↠是滅↢除セバ↡、我当シト↢帰依↡。

・余術不治 3.実徳

 ^またひとりのしんあり、 づけて実徳じっとくといふ。 またおうところいたりて、 すなはちきていはく、 ª^大王だいおう、 なんがゆゑぞ瓔珞ようらくぎ、 こうべかみ蓬乱ほうらんせる。 ないかくのごときなるや。 これこころいたむとやせん、 いたむとやせんº と。

復有↢一臣↡、名↢実↡。復到↢王↡、即↠偈

大王何↢瓔珞
カミホウセル乃至如キナルヤ↠是クノ
心痛↢身痛

^おうすなはちこたへていはく、 ªわれいま身心しんしんあにいたまざることをんや。 わがちち先王せんおうあい*仁惻にんしきして、 ことに*矜念こうねんせり。 じつ*過咎かぐなきに、 きて*そう0271ふ。 そうこたへてまうさく、 «このうまれをはりて、 さだめてまさにちちがいすべし» と。 このくといへども、 なほ*瞻養せんようす。

王即、我今身心ムヤ↠不ルコトヲ↠痛。我父先王、慈愛仁惻シテ矜念セリ。実ツミ、往↢相師↡。相師答、是児生、定シト↠害↠父。雖↠聞↢是↡、瞻養

^むかししゃの、 かくのごときのごんをなししをきき。 «もしひとははつうじ、 および比丘びくけがし、 そうもつぬすみ、 じょうだいしんおこせるひところし、 およびそのちちころさん。 かくのごときのひとひつじょうしてまさに阿鼻あびごくすべし» と。 われいま身心しんしんあにいたまざることをんやº と。

キヽ↣智者シヽヲ↢如↠是↡。若人通、及ケガ↢比丘尼↡、ヌス↢僧祇物↡、殺↧発セル↢无上菩提心↡人↥、及サム↢其↡。如↠是クノ之人必定シテシト↠堕↢阿鼻地獄↡。我今身心ムヤ↠不ルコトヲ↠痛

^大臣だいじんまたいはく、 ªやや、 ねがはくは大王だいおう、 またしゅうすることなかれ。 一切いっさいしゅじょうみな*ごうあり。 業縁ごうえんをもつてのゆゑにしばしばしょうく。 もし先王せんおうごうあらしめば、 おういまこれをころさんに、 つひになんのつみかあらん。

大臣復言ヤヽ大王、マタ↢愁苦スルコト↡。 一切衆生皆有↢余業↡。以↢業縁↡故数数シバシバ↢生死↡。若使↣先生↢余業↡、王今殺↠之ツイラム↢何↡。

^やや、 ねがはくは大王だいおうこころゆたかにしてうれふることなかれ。 なにをもつてのゆゑに、 «^もしつねにしゅうすれば、 うれへつひにぞうじょうす。 ひとねむりをこのめば、 ねむりすなはちしげおおきがごとし。 いんとんさけたしなむも、 またまたかくのごとし»º と。

ヤヽ大王、ユタカニシテ↠意↠愁フルコト。何

愁苦スレバ愁遂増長
↢人コノメバ↠眠眠則シゲキガ
↠婬タシナムモ↠酒亦復如↠是

^*刪闍さんじゃ毘羅びらてい

サンジヤセン

・余術不治 4.悉知義

 ^またひとりのしんあり、 しっ知義ちぎづく。 すなはちおうところいたりて、 かくのごときのごんをなさく。

復有↢一臣↡、名↢悉知義↡。即↢王↡、作サク↢如↠是↡。

^おうすなはちこたへていはまく、 ªわれいま身心しんしんあにいたみなきことをんや。 先王せんおうつみなきに、 よこさまぎゃくがいこうず。 われまたむかししゃ0272きていひしをきき。 «もしちちがいすることあれば、 まさにりょうそうこうにしてだいのうくべし» と。 われいまひさしからずしてかならずごくせん。 またりょうのわがつみりょうすることなけんº と。

王即ハマク、我今身心ムヤ↠无コトヲ 先王无キニツミ、横↢逆害↡。我亦曽キヽ↢智者シヲ↡。若0109レバ↠害スルコト↠父、当シト↧於↢无量阿僧祇劫↡受↦大苦悩↥。我今不シテ↠久シカセム↢地獄↡。又无ケムト↣良医救↢療スルコト↡。

^大臣だいじんすなはちまうさく、 ªやや、 ねがはくは大王だいおうしゅう放捨ほうしゃせよ。

大臣即サクヤヽ大王、放↢捨セヨ愁苦↡。

^おうかずや、 昔者むかしおうありき、 づけて羅摩らまといひき。 そのちちがいしをはりておうぐことをたりき。 跋提ばつだい大王だいおう毘楼びる真王しんおう那睺なごしゃおうていおう舎佉しゃきゃおう月光がっこうみょうおう日光にっこうみょうおうあいおう持多じたにんおう、 かくのごときらのおう、 みなそのちちがいしておうぐことをたりき。 しかるにひとりとしておうごくるものなし。

↠聞昔者 ムカシ リキ↠王、名ヒキ↢羅摩↡。害↢其↡已タリキグコトヲ↢王位↡。跋提大王・毘楼真王・那睺沙王・迦帝迦王・毘舎佉王・月光明王・日光明王・愛王・持多人王、如↠是王、シテ↢其↡得タリキグコトヲ↢王位↡。然↧一トシテ↢地獄↥。

^いま現在げんざい毘瑠璃びるりおう優陀邪うだやおうあくしょうおうおうれんおう、 かくのごときらのおう、 みなそのちちがいせりき。 ことごとくひとりとしておうしゅうのうしょうずるものなし。 ごく餓鬼がき*てんちゅうといふといへども、 たれかるものあるや。

於今 イマ 現在毘瑠璃王・優陀王・悪性王・鼠王・蓮華王、如↠是クノ王、皆害セリキ↢其↡。悉↧一トシテズル↢愁悩↥。雖↠言フト↢地獄・餓鬼・天中↡、タレルヤ↡。

^大王だいおう、 ただふたつのあり。 ひとつには人道にんどうふたつにはちくしょうなり。 このふたつありといへども、 因縁いんねんしょうにあらず、 因縁いんねんにあらず。 もし因縁いんねんにあらずは、 なにものか善悪ぜんあくあらん。

大王、唯有↢二有↡。一人道、二畜生ナリ。雖↠有↢是二↡、非↢因縁生↡、非↢因縁死↡。若ズハ↢因縁↡、ナニラム↢善悪↡。

^やや、 ねがはくは大王だいおうしゅういだくことなかれ。 なにをもつてのゆゑに、 «^もしつねにしゅうすれば、 うれへつひにぞうじょうす。 ひとねむりをこのめば、 ねむりすなはちしげおおきがごとし。 いんとんさけ0273たしなむも、 またまたかくのごとし»º と。

ヤヽ大王、勿↠懐クコト↢愁怖↡。何

愁苦スレバツイ増長
↢人コノメバ↠眠眠則シゲキガ
↠婬タシナムモ↠酒亦復如シト↠是

^*阿耆多あぎたしゃきん婆羅ばら

キムキン

・余術不治 5.吉徳

 ^また大臣だいじんあり、 づけて吉徳きっとくといふ。 ªごくといふは、 なんのありとかせん。 しんまさにこれをくべし。

復有↢大臣↡、名↢吉徳↡。 ↢地獄↠有トカ↢何義↡。臣当↠説↠之

^づく、 ごくづく。 ごくせん、 罪報ざいほうあることなけん。 これをごくづく。

↠地、獄↠破。破セム↢地獄↡、无ケム↠有コト↢罪報↡。是↢地獄↡。

^またにんづく、 ごくてんづく。 そのちちがいするをもつてのゆゑに人天にんでんいたらん。 このをもつてのゆゑに、 婆蘇ばそ仙人せんにんとなへていはく、 «ひつじころして人天にんでんらく» と。 これをごくづく。

又復地↠人、獄↠天。以↠害スルヲ↢其↡故イタラム↢人天↡。以↢是↡故仙人トナヘテ、殺シテ↠羊↢人天↡。是↢地獄↡。

^またみょうづく、 ごくちょうづく。 *せっしょうをもつてのゆゑに寿じゅみょうながきを。 ゆゑにごくづく。

又復地↠命、獄↠長↢殺寿命↢地獄↡。

^大王だいおうこのゆゑにまさにるべし、 じつごくなけんと。 大王だいおうむぎゑてむぎいねゑていねるがごとし。 ごくころしては、 かえりてごくん。 にん殺害せつがいしては、 かえりてにんべし。

大王、是↠知0110ケムト↢地獄↡。大王、如↢種↠麦↠麦、種↠稲ルガ↟稲。殺シテ↢地獄、還↢地獄↡。殺↢害シテハ↟人、応↢還↟人

^大王だいおういままさにしん (吉徳)所説しょせつくに、 じつ殺害せつがいなかるべし。 もし有我うがならばじつにまたがいなし。 もし無我むがならばまたがいするところなけん。 なにをもつてのゆゑに。

大王、今当↧聴クニ↢臣所説↡、実↦殺害↥。若有我ナラ亦无↠害。若无我ナラ復无ケム↠所↠害スル。何

^もし有我うがならばつねに変易へんやくなし、 常住じょうじゅうをもつてのゆゑに殺害せつがいすべからず。 不破ふは不壊ふえ不繋ふけばくしん不喜ふきはなほくうのごとし。 いかんぞまさに殺害せつがいつみあるべき。

有我ナラ↢変易↡、以↢常住↡故不↠可カラ↢殺害↡。不破不壊、不繋不縛、不瞋不喜 ゴト 虚空↡。云何↠有↢殺害之罪↡。

^もし無我むがならば諸法しょほうじょうなり。 じょうをもつてのゆゑに念々ねんねん0274めつす。 念々ねんねんめっするがゆゑに殺者せっしゃしゃみな念々ねんねんめっす。 もし念々ねんねんめっせば、 たれかまさにつみあるべきや。

无我ナラ諸法无常ナリ。以↢无常↡故念念壊滅。念念スルガ殺者・死者皆念念。若念念セバ、誰キヤ↠有↠罪。

^大王だいおうくに、 すなはちつみなきがごとし。 おのるに、 おのまたつみなきがごとし。 かまくさるに、 かまじつつみなきがごとし。 かたなひところすに、 かたなじつひとにあらず、 かたなすでにつみなきがごとし。 ひといかんぞつみあらんや。 どくひところすに、 どくじつひとにあらず、 *毒薬どくやく罪人ざいにんにあらざるがごとし。 いかんぞつみあらんや。 一切いっさい万物まんもつみなまたかくのごとし。 じつ殺害せつがいなけん。 いかんぞつみあらんや。

大王、如↢火焼↠木、火則キガ↟罪。如オノルニ↠樹、斧亦无キガ↟罪。如カマルニ↠草、鎌実キガ。如カタナ↠人カタナ↠人、刀既キガ↟罪。人云何 イカン アラムヤ。如↣毒殺↠人、毒実↠人、毒薬ルガ罪人↡。云何 イカン アラムヤ。一切万物亦如↠是。実ケム↢殺害↡。云何ラムヤ↠罪。

^やや、 ねがはくは大王だいおうしゅうしょうずることなかれ。 なにをもつてのゆゑに、 «^もしつねにしゅうせば、 うれへつひにぞうじょうせん。 ひとねむりをこのめば、 ねむりすなはちしげおおきがごとし。 いんとんさけたしなむも、 またまたかくのごとし» と。

ヤヽ大王、莫↠生ズルコト↢愁苦↡。何

愁苦セバ増長
↢人メバ↠眠眠則キガ
↠婬タシナムモ↠酒亦復如↠是

^いまだいあり、 *迦羅鳩からく駄迦だか旃延せんえんづくº と。

今有↢大師↡、名クトセン↡。

・余術不治 6.無所畏

 ^またひとりのしんあり、 しょづく。 ^ªいまだいあり、 *けんにゃだいづくº と。

復有↢一臣↡、名↢无所↡。今有↢大師↡、名クトケンニヤケン↡。

・非仏不療 1.耆婆勧

 ^そのときに、 だいあり、 づけて*耆婆ぎばといふ。 おうところおうしてまうしてまうさく、 ª大王だいおう*いづくんぞねむることをんやいなやº と。

大医アリ、名↢耆婆↡。往↢至シテ↡白シテ、大王、ムヤイヅクンゾコトヲイナヤト

^おうをもつてこたへて0275いはまく、 ª耆婆ぎば、 われいまやまいおもし。 しょうぼうおうにおいてあくぎゃくがいおこす。 一切いっさいりょうみょうやくしゅじゅつ*ぜんぎょうせんびょうすることあたはざるところなり。 なにをもつてのゆゑに、 わがちち法王ほうおうほうのごとくくにおさむ、 じつ辜咎つみとがなし。 よこさまぎゃくがいす、 うおくがしょするがごとし。

王以↠偈マク 耆婆、我今病重。於↢正法コウ↢悪逆害↡。一切良医・妙薬・呪術・善巧瞻病ナリ↠不↠能↠治スルコト。何。我父法王、如↠法オサ↠国、実ツミ。横0111↢逆害↡、如ウオスルガ↟陸

^われむかしかつてしゃきていひしことをきき。 «しん口意くいごうもし清浄しょうじょうならずは、 まさにるべし、 このひとかならずごくせん» と。 われまたかくのごとし。 いかんぞまさに安穏あんのんねむることをべきや。 いまわれまたじょうだいなし、 法薬ほうやく演説えんぜつせんに、 わがびょうのぞきてんやº と。

ムカシキヽ↢智者ヒシコトヲ↡。身口意業若↢清浄ナラ↡、当↠知人必セムト↢地獄↡。亦如↠是。云何↢安穏コトヲ。今マタ↢无上大医↡、演↢説セムニ法薬↡、除キテムヤ↢我病苦↡。

^耆婆ぎばこたへていはく、 ªいかないかな、 おうつみをなすといへども、 こころ*じゅうしょうじてざんいだけり。

耆婆答、善カナ哉、王雖↠作スト↠罪、心↢重悔イダケリ↢慚愧↡。

^大王だいおう諸仏しょぶつそんつねにこのごんきたまはく、 ^ふたつの*びゃくほうあり、 よくしゅじょうたすく。 ひとつにはざんふたつにはなり。 ざんはみづからつみつくらず、 おしへてなさしめず。 ざんはうちにみづからしゅうす、 ほつしてひとかふ。 ざんにんづ、 てんづ。 これをざんづく。

大王、諸仏世尊常キタマハク↢是↡、有↢二白法↡、能タス↢衆生↡。一ニハ慚、二ニハナリ。慚ミヅカ↠作↠罪、愧↢教↠他サシメ↡。慚ミヅカシユハヂハヅ、愧発露シテ↠人。慚↠人、愧↠天。是↢慚愧↡。

^ざんづけてにんとせず、 づけてちくしょうとす。 ざんあるがゆゑに、 すなはちよく父母ぶもちょう*ぎょうす。 ざんあるがゆゑに、 父母ぶもきょうだいまいあることをく。 ^きかな大王だいおう、 つぶさにざんあり。

无慚愧↢名↟人、名↢畜生↡。有↢慚愧↡故恭↢敬父母・師長↡。有↢慚愧↡故↠有コトヲ↢父母・兄弟・姉妹↡。善哉大王、ツブサ↢慚愧↡。

^おうののたまふところのごと0276し、 «よくするものなけん» と。 大王だいおうまさにるべし、 *迦毘羅かびらじょう*じょうぼんのうしょう*どん*悉達しっだっなづなくしてねんかくしてのく多羅たらさんみゃくさんだいたまへり。 これぶつそんなり。 *金剛こんごうましまして、 よくしゅじょう一切いっさい悪罪あくざいせしむること、 もしあたはずといはば、 このことわりあることなけん。

↢王↟言、无ケム↢能スル↡。大王当↠知、迦毘羅城飯王子、姓ドムナヅ↢悉達多↡。无シテ↠師覚↢悟自然タマヘリ↢阿耨多羅三藐三菩提↡。 仏世尊ナリマシマシテ↢金剛智↡、能セシムルコト↢衆生一切悪罪↡、若ハヾ↠能、无ケム↠有コト↢是コトワリ↡。

^大王だいおう如来にょらい*ていだいだっあり。 *衆僧しゅそう破壊はえし、 仏身ぶっしんよりいだし、 *れん比丘びくがいす。 さんぎゃくざいつくれり。 如来にょらい、 ために種々しゅじゅ法要ほうようきたまふに、 そのじゅうざいをしてすなはちはくなることをしめたまふ。 このゆゑに如来にょらいだいりょうとす。 ろくにはあらざるなりº と。

大王、如来↢弟提婆達多↡。破↢壊衆僧↡、出↢仏身ヨリ↡、害↢蓮華比丘尼↡。作レリ↢三逆罪↡。如来為タマフニ↢種種法要↡、令メタマフ↣其重罪ヲシテスナワ↢微薄ナルコトヲ↡。是如来↢大良医↡。非↢六師ニハ↡也

・非仏不療 2.父王勧

^ª*大王だいおういちぎゃくつくれば、 すなはちつぶさにかくのごときの一罪いちざいく。 もしぎゃくざいつくらば、 すなはちばいならん。 ぎゃくつぶさならば、 つみもまたばいならん。 大王だいおういまさだめてんぬ、 おう悪業あくごうかならずまぬかるることをじ。 やや、 ねがはくは大王だいおう、 すみやかにぶつみもともうづべし。 ぶつそんのぞきては、 よくたすくることなけん。 われいまなんぢをあわれむがゆゑに、 あひすすめてみちびくなりº と。

大王、作↢一逆、則便↢如↠是一罪↡。若ラバ↢二逆罪↡、則二倍ナラム。五逆具ナラ、罪亦五倍ナラム。大王、今定、王之悪0112業必マヌカルコトヲヤヽ大王、マウヅベシ↢仏↡。除↢仏世尊↡余、无ケム↢能クルコト↡。我今愍ムガ↠汝 チビクナリト

^そのときに、 大王だいおう、 このきをはりて、 こころ*怖懼ふくいだけり。 げて戦慄せんりつす。 たいじょうどうしてしょうじゅのごとし。 あおぎてこたへていはく、 ªてんこれたれとかせん、 *色像しきぞうげんぜずしてただこえのみある0277ことはº と。

大王、↢是↡已、心ケリ↢怖↡。ゲテ↠身センオノヽクペウオソル。五体シムシテセウ↡。仰トカ↡、↠現↢色像シテ但有ルコトハ↠声ノミ

^ª大王だいおう、 われはこれなんぢがちちびんしゃなり。 なんぢいままさに耆婆ぎば所説しょせつしたがふべし。 邪見じゃけん六臣ろくしんことばしたがふことなかれº と。

大王、ワレ父頻婆沙羅ナリ。汝今当↠随↢耆婆所説↡。莫↠随コト↢邪見六臣之コトバ↡。

^とききをはりて*悶絶もんぜつびゃくす。 かさぞうぎゃくしてしゅうなること、 さきよりもまされり。 もつて冷薬れいやくをしてり、 かさりょうすといへども、 かさあつかはし。 毒熱どくねつただせどもそんずることなし」 と。 以上略出

悶絶躄地。身カサギヤクシテ臭穢ナルコトマサレリ↠前ヨリモ。雖↧以冷薬、治↦療スト↥、瘡アツカワ。毒熱但セドモシト↠損ズルコト。」 已上略出

二 Ⅰ ⅰ b イ (二)列名

^*大臣だいじんづけてがっしょうといふらんづく
 蔵徳ぞうとく末伽梨まかりしゃ梨子りしづく
 ひとりしんあり、 づけて実徳じっとくといふ刪闍さんじゃ毘羅びらていづく
 ひとりしんあり、 しっ知義ちぎづく阿耆多あぎたしゃきん婆羅ばらづく
 大臣だいじんづけて吉徳きっとくといふ迦羅鳩からく駄迦だか旃延せんえん
 しょけんにゃだいづく
 大臣名ケテ月称ラン
 シヤ
 ↢一臣↡名ケテ↢実センセン
 ↢一臣↡名シチキムキン
 大臣名ケテ↢吉徳セン
 センエンケンニヤケン

二 Ⅰ ⅰ b 能化の徳相を明かす
          (一)不入涅槃を明かす

【116】^またのたまはく (涅槃経・梵行品)

ノタマハク

^ª善男ぜんなん、 わがいふところのごとし、 じゃおうためはんらず。 かくのごときの*みつ、 なんぢいまだくことあたはず。

「善男子、如↢我↟言、為↢阿闍世王↠入↢涅槃↡。如↠是密義、汝未↠能↠解コト

^なにをもつてのゆゑに、 われ «ため» といふは一切いっさいぼん、 «じゃおう» とはあまねくおよび一切いっさいぎゃくつくるものなり。

我言↠為一切凡夫、阿闍一切造↢五0113ナリ

^また «ため» とはすなはちこれ*いっさい0278有為ういしゅじょうなり。 われつひに*無為むいしゅじょうのためにしてじゅうせず。 なにをもつてのゆゑに、 それ無為むいしゅじょうにあらざるなり。 «じゃ» とはすなはちこれ煩悩ぼんのうとうそくせるものなり。

又復為是一切有為衆生ナリ↧為↢无為衆生シテ↠世。何无為↢衆生↡也。阿闍世是具↢足セル煩悩等ナリ

^また «ため» とはすなはちこれぶっしょうざるしゅじょうなり。 もしぶっしょうんものには、 われつひにためにひさしくじゅうせず。 なにをもつてのゆゑに、 ぶっしょうるものはしゅじょうにあらざるなり。 «じゃ» とはすなはちこれ一切いっさいいまだのく多羅たらさんみゃくさんだいしんほっせざるものなり。

又復為是不↢仏性↡衆生ナリ。若ムモノニハ↢仏性↡、↢為シク↠世。何↢仏性↢衆生↡也。阿闍世是一切未↠発↢阿耨多羅三藐三菩提心ナリ

^また «ため» とはづけてぶっしょうとす。 «じゃ» はづけてしょうとす、 «» はおんづく。 ぶっしょうしょうぜざるをもつてのゆゑに、 すなはち煩悩ぼんのうあだしょうず。 煩悩ぼんのうあだしょうずるがゆゑに、 ぶっしょうざるなり。 煩悩ぼんのうしょうぜざるをもつてのゆゑに、 すなはちぶっしょうる。 ぶっしょうるをもつてのゆゑに、 すなはち大般だいはつはんあんじゅうすることを。 これをしょうづく。 このゆゑにづけてじゃとす。

又復為↢仏性↡。阿闍↢不生↡、世↠怨。以↠不ルヲ↠生↢仏性↡故煩悩アダ。煩悩アダズルガルナリ↠見↢仏性↡。以↠不ルヲ↠生↢煩悩↡故↢仏性↡。以↠見↢仏性↡故↣安↢住スルコトヲ大般涅槃↡。是↢不生↡。是↢阿闍世↡。

^善男ぜんなん、 «じゃ» はしょうづく、 しょうはんづく。 «» はほうづく。 «ため» とは不汚ふわづく。 *八法はっぽうをもつてけがさざるところなるがゆゑにりょうへんそうこうはんらず。 このゆゑにわれ «じゃためりょうおくこうはんらず» とのたまへり。

善男子、阿闍↢不生↡、不生↢涅槃↡。世↢世法↡。為↢不汚↡。以↢世八法↡所ナルガ↠不ケガ无量无辺阿僧祇劫↠入↢涅槃↡。是ノタマヘリ↧為↢阿闍世↡无量億劫↞入↢涅槃↡。

^善男ぜんなん如来にょらいみつ不可ふか思議しぎなり。 仏法ぶっぽう衆僧しゅそうまた不可ふか0279なり。 さつ摩訶まかさつまた不可ふか思議しぎなり。 ¬だいはんぎょう¼ また不可ふか思議しぎなりº と。

善男子、如来密語不可思議ナリ。仏法衆僧亦不可思議ナリ。菩薩摩訶薩亦不可思議ナリ。¬大涅槃経¼亦不可思議ナリ

二 Ⅰ ⅰ b ロ (二)善巧開化を明かす

・治身 ・放光治身

 ^そのときに、 そんだいどうじゃおうのために*月愛がつあい三昧ざんまいれり三昧さんまいりをはりてだいこうみょうはなつ。 そのひかり清涼しょうりょうにして、 きておうしんらしたまふに、 かさすなはちえぬ。

世尊大悲導師、為↢阿闍世王↡入レリ↢月愛三昧↡。入↢三昧↡已↢大光明↡。其光清涼ニシテ、往シタマフニ↢王↡、身カサエヌ

・治身 ・放光所由

^おう耆婆ぎばにいはまく、 ªかれは*てんちゅうてんなり。 なんの因縁いんねんをもつてこのこうみょうはなちたまふぞやº と。

シテワマク↢耆婆↡、天中ナリ。以↢何ネン↡放チタマフゾヤト↢斯光明↡。

^ª大王だいおう、 いまこの*瑞相ずいそうは、 およびおうのためにするにあひたり。 まづいはまく、 りょう身心しんしんりょうするものなきがゆゑに、 このひかりはなちてまづおうす。 しかうしてのちこころおよぶº と。

大王、今是瑞相タリスルニ及以 オヨビ ↡。0114マク、世キガ↣良医療↢治スルモノ身心↡故、放↢此↢王↡。然シテ↠心

^おう耆婆ぎばにいはまく、 ª如来にょらいそんまたたてまつらんとおもふをやº と。

ハマク↢耆婆↡、如来世尊亦見タテマツラムトオモフヲ

^耆婆ぎばこたへていはく、 ªたとへば一人いちにんにしてしちあらん。 このしちのなかにいっやまいへば、 父母ぶもこころびょうどうならざるにあらざれども、 しかるにびょうにおいてこころすなはちひとへにおもきがごとし。

耆婆答ハク、譬↧一人シテラム↢七子↡七子一子ヘバ↠病、父母之心非レドモ↠不ルニ↢平等ナラ↡、然↢病子↡心則キガ↥。

^大王だいおう如来にょらいもまたしかなり。 もろもろのしゅじょうにおいてびょうどうならざるにあらざれども、 しかるに罪者ざいしゃにおいてこころすなはちひとへにおもし。 放逸ほういつのものにおいてぶつすなはちねんしたまふ。 放逸ほういつのものはこころすなはち放捨ほうしゃす。 なんらをかづけて放逸ほういつのものとすると。 いはく、 *ろくじゅうさつなりと。

大王、如来亦爾ナリ。於↢諸衆生↡非レドモ↠不ルニ↢平等ナラ↡、然↢罪者↡心則。於↢放逸↡仏則慈念シタマフ。不放逸心則ユルシスツ。何ヲカルト↢不放逸↡。謂六住菩薩ナリト

^大王だいおう諸仏しょぶつそん、 もろもろのしゅじょうにおいて、 *しゅしょう0280ろうしょうちゅうねんひん*せつ日月にちがつ星宿しょうしゅく*ぎょうせん僮僕どうぼく婢使ひしそなはさず、 ただしゅじょう善心ぜんしんあるものをそなはす。 もし善心ぜんしんあればすなはちねんしたまふ。 大王だいおうまさにるべし、 かくのごときの瑞相ずいそうは、 すなはちこれ如来にょらい月愛がつあい三昧ざんまいりてはなつところのこうみょうなりº と。

大王、諸仏世尊、於↢諸衆生↡、ミソナハ↢種姓・老少中年・貧富・時節・日月星宿シフゲウ・下センドウ僕・婢使↡、唯観↧衆生↢善心↡↥。若レバ↢善心↡則便慈念シタマフ。大王当↠知、如↠是瑞相、即是如来入↢月愛三昧↡所↠放光明ナリト

・治身 ・三昧徳名

^おうすなはちうていはまく、 ªなんらをかづけて月愛がつあい三昧ざんまいとするº と。

王即マク、何ヲカルト↢月愛三昧↡。

^耆婆ぎばこたへていはまく、 ªたとへばつきひかりよく一切いっさい*優鉢羅うはらをしてかいせんみょうならしむるがごとし。 月愛がつあい三昧ざんまいもまたまたかくのごとし。 よくしゅじょうをして善心ぜんしんかいせしむ。 このゆゑにづけて月愛がつあい三昧ざんまいとす。

耆婆答マク、譬↣月光能ルガ↢一切優鉢羅華ヲシテ開敷鮮明ナラ↡。月愛三昧亦復如↠是。能↢衆生ヲシテ善心開敷↡。是↢月愛三昧↡。

^大王だいおう、 たとへばつきひかりよく一切いっさいみちひとこころかんしょうぜしむるがごとし。 月愛がつあい三昧ざんまいもまたまたかくのごとし。 よくはんどうしゅじゅうせんもののこころかんしょうぜしむ。 このゆゑにまた月愛がつあい三昧ざんまいづく。 諸善しょぜんのなかのおうなり。 かんとす。 一切いっさいしゅじょうあいぎょうするところなり。 このゆゑにまた月愛がつあい三昧ざんまいづくº と。

大王、譬↤月ルガ↣一切行↠路之人↢歓喜↡。月愛三昧亦復如↠是。能↧修↢習セム涅槃道↦歓喜↥。是復名↢月愛三昧↡。 諸善ナリ↢甘露味↡。一切衆生之所ナリ↢愛楽スル↡。是復名クト↢月愛三昧↡。

・治心 ・先明詣仏

 ^そのときに、 ぶつ、 もろもろの大衆だいしゅげてのたまはく、 ª一切いっさいしゅじょうのく多羅たらさんみゃくさんだいちかづく因縁いんねんのためには、 *ぜんさきとするにはしかず。 なにをもつてのゆゑに、 じゃおう、 もし耆婆ぎばことばずいじゅんせずは、 来月らいげつなぬひつじょうして0281命終みょうじゅうして阿鼻あびごくせん。 *このゆゑにちかづきにたり、 ぜんにしくことなしº と。

仏告↢諸大衆ノタマハク、一切衆生為↢阿耨多羅三藐三菩提チカヅ因縁カズサキトスルニハ↢善友↡。何0115。阿闍世王、↠随↢順耆婆、来月七日必定シテ命終シテセム↢阿鼻獄↡。是チカヅキニタリ↠日、莫クコト↢善友↡。

^じゃおうまた*ぜんにおいてく、 ª*しゃだい*瑠璃るりおうふねじょうじて海辺かいへんりてふ、 しかうしてぬ。 *瞿迦くか比丘びくしょうじんりて阿鼻あびごくいたれり。 *しゅせっ種々しゅじゅあくつくりしかども、 仏所ぶっしょいたりて衆罪しゅざいしょうめつしぬº と。

阿闍世王復於↢前路、舎婆提毘瑠璃王、乗ジテ↠船↢海辺サイ。瞿伽離比丘、生身↠地レリ↢阿鼻獄↡。須那刹多リシカドモ↢種種↡、↢仏所↡衆罪消滅シヌト

^このことばきをはりて、 耆婆ぎばかたりていはまく、 ªわれいまかくのごときの*ふたつのことばくといへども、 なほいまだあきらかならず。 さだめてなんぢきたれり、 耆婆ぎば、 われなんぢとおなじく一象いちぞうらんとおもふ。 たとひわれまさに阿鼻あびごくるべくとも、 ねがはくは、 なんぢそくしてわれをしておととさしめざれ。 なにをもつてのゆゑに、 われむかしかつてきき、 «得道とくどうひとごくらず»º と。

↢是↡已、語リテ↢耆婆↡言ハマク、吾今雖↠聞↢如↠是コトバ↡、ナホアキラカナラ。定汝来レリ耆婆、↠汝同ジクラムト↢一象↡。タトクトモ↠入↢阿鼻地獄↡、ネガハクハトウシテ↠令↢我ヲシテオト↡。何ムカシキヽ、得道之人↠入↢地獄↡。

・治心 ・説法治心 1.造罪軽重

^ªいかんぞきてさだめてごくらんといはん。 大王だいおう一切いっさいしゅじょうしょ罪業ざいごうにおほよそしゅあり。 ひとつにはきょうふたつにはじゅうなり。 もしこころくちとにつくるはすなはちづけてきょうとす。 くちこころとにつくるはすなはちづけてじゅうとす。

云何 イカン ハム↣定↢地↡。大王、一切衆生所作罪業アリ↢二種↡。一軽、二ナリ。若トニルハ↠軽。身トニルハ↠重

^大王だいおうこころおもくちきてになさざれば、 るところのほうきょうなり。 大王だいおう昔日むかしくちころせとちょくせず、 ただあしけずれといへりき。 大王だいおう、 もししんしょくせましかば、 たちどころにおうこうべらまし。 ときにすなはちるとも0282、 なほつみじ。 いはんやおうちょくせず、 いかんぞつみん。

大王、心オモ、所↠得報、軽ナリ。大王、昔日 ムカシ ↠勅↠殺、但言ヘリキケヅレト↠足。大王、若セマシカバ↢侍臣↡、タチドコロラマシ↢王↡。坐スナワルトモナホ↠得↠罪。況↠勅、云何↠罪

^おうもしつみば、 諸仏しょぶつそんもまたつみたまふべし。 なにをもつてのゆゑに。 なんぢがちち先王せんおうびんしゃ、 つねに諸仏しょぶつにおいてもろもろの善根ぜんごんゑたりき。 このゆゑに今日こんにちおうすることをたり。 諸仏しょぶつもしそのようけたまはざらましかば、 すなはちおうたらざらまし。 もしおうたらざらましかば、 なんぢすなはちくにのためにがいしょうずることをざらまし。 もしなんぢちちころしてまさにつみあるべくは、 われら諸仏しょぶつまたつみましますべし。 もし諸仏しょぶつそんつみたまふことなくは、 なんぢひとりいかんぞつみんや。

王若↠罪、諸仏世尊亦応タマフ↠罪。何。汝父先王頻婆沙羅、常↢諸仏↡種ヘタリキ↢諸善根↡。是今日 ケフ タリ↠居スルコトヲ↢王位↡。諸仏若ラマシカバ↠受タマハ↢其供養↡、則ラマシ↠王。若ラマシカバ↠王、汝則ラマシ↢為↠国ズルコトヲ↟害。若汝殺シテ↠父↠有↠罪、我等諸仏亦応マシマ↠罪。若諸仏世尊无↠得タマフコト↠罪、汝独云何而得↠罪

・治心 ・説法治心 2.父王以類

 ^大王だいおうびんしゃむかし悪心あくしんありて、 *毘富羅びふらせんにしてぎょうし、 鹿しししゃりょうしてこうしゅうへんしき。 ことごとくるところなし。 ただひとりの*せんつうそくせるをる。 をはりてすなはちしん悪心あくしんしょうじき。 «われいまりょうす。 *ざるゆゑんは、 まさしくこのひとちくしてらしむるにる» と。 すなはち左右さうちょくしてこれをころさしむ。

大王、頻婆沙0116ムカシ↢悪心↡、↢毘富羅山↡遊行、射↢レウシテ鹿↡周↢徧シキ曠野↡。悉 コロ↠得。唯見↢一五通具足セルヲ↡。見已ジキ↢瞋恚悪心↡。我今遊レウ所以コノユヘニ↢正シク、此リテ↠去。即↢左右↠殺↠之

^そのひとおわりにのぞんでしんしょうず。 悪心あくしんあつて神通じんずう退失たいしつして誓言せいごんをなさく、 «われじつつみなし。 なんぢしんをもつてよこさま*戮害ろくがいす。 われらいにおいて、 またまさにかくのごとくかえつてしんをもつてして、 なんぢをがいすべ0283し» と。 ときおうきをはりて、 すなはちしんしょうじて死屍ししようしき。

人臨↠終イカ悪心↡。退↢シチ神通↢誓言↡、我実ツミ。汝以↢心口↡横ロク↡。我於↢来世↡、亦当シト↧如↠是↢心口シテ↠汝。時、即ジテ↢悔心↡供↢養シキ死屍↡。

^先王せんおうかくのごとくなほかるくることをて、 ごくちず。 いはんやおうしからずして、 まさにごくほうくべけんや。 先王せんおうみづからつくりて、 かえつてみづからこれをく。 いかんぞおうをして殺罪せつざいしめん。 おうのいふところのごとし。 ちちおうつみなくは、 *大王だいおういかんぞ、 とがなきにつみありといはば、 すなはち罪報ざいほうあらん。 悪業あくごうなくはすなはち罪報ざいほうなけん。 なんぢがちち先王せんおう、 もしざいなくは、 いかんぞほうあらん。

先王如↠是ナホ↢軽クルコトヲ↡、↠堕↢地獄↡。況シカシテケム↣地獄↢果報。先王ミヅカミヅカ↠之云何 イカン メム↣王シテ↢殺罪↡。如↢王↟言。父王无ツミ、大王云何 イカン ↢无キニトガ↟罪、則ラム↢罪報↡。无↢悪業↡ケム↢罪報↡。汝父先王、若クハ罪↡、云何ラム↠報。

^びんしゃげんのなかにおいて、 またぜんおよびあくたり。 このゆゑに先王せんおうまたまたじょうなり。 じょうなるをもつてのゆゑにせつもまたじょうなり。 せつじょうならば、 いかんしてかさだめてごくらんといはん。

頻婆沙羅於↢現世↡、亦得タリ↢善果及以 オヨビ 悪果↡。是先王亦復不定ナリ。以↢不定↡故亦不定ナリ。殺不定云何 イカン シテハム↣定ラム↢地獄↡。

・治心 ・説法治心 3.造罪心地

 ^大王だいおうしゅじょうきょうわくにおほよそしゅあり。 ひとつにはとんきょうふたつにはやくきょうつにはしゅきょうつには*本業ほんごうえんきょうなり。 大王だいおう、 わが弟子でしのなかに、 このきょうあり。 おおあくつくるといへども、 われつひにこのひとかいぼんせりとせず。 このひとしょ三悪さんまくいたらず。 もしかえつてしんば、 またぼんといはず。

大王、衆生狂惑↢四種↡。一貪狂、二薬狂、三呪狂、四本業縁狂ナリ。大王、我弟子↢是四狂↡。雖↢多↟悪、我終↠記↢是人犯セリト↟戒。是所作↠至↢三悪↡。若↠心、亦↠言↠犯

^おうもとくにとんじてこのちちおうぎゃくがいす。 とんきょうこころをもつてためになせり。 いかんぞつみん。 大王だいおうひと*耽酔たんすいしてそのははぎゃくがいせん、 すでに*しょうしをはりてこころこん0284しょうぜんがごとし。 まさにるべし、 このごうまたほうじ。 おういま貪酔とんすいせり。 本心ほんしんのなせるにあらず。 もし本心ほんしんにあらずは、 いかんぞつみんや。

ジテ↠国逆↢害↡。貪狂ヲモテタメセリ。云何↠罪。大王、如↧人タンスイシテ逆↢害セム↡、既シヤウゼムガ↦悔恨↥。当↠知0117業亦↠報王今貪酔セリ。非↢本心セルニ↡。若ズハ↢本心↡、云何ムヤ↠罪

・治心 ・説法治心 4.以譬示殺

 ^大王だいおう、 たとへば*げん*四衢しくどうほとりにして、 種々しゅじゅ男女なんにょぞう瓔珞ようらくぶくげんするがごとし。 愚痴ぐちひとおもうて真実しんじつとす。 有智うちひとしんにあらずとれり。 せつもまたかくのごとし。 ぼんじつおもへり、 諸仏しょぶつそんはそれしんにあらずとろしめせり。

大王、譬↧幻師↢四衢道ホトリ↡、幻↦作スルガ種種男女・象・馬・瓔珞・衣服↥。愚痴之人オモフテ↢真実有智之人レリ↠非ズト↠真亦如↠是。凡夫ヘリ↠実、諸仏世尊シロシメセリズト↟真

^大王だいおう、 たとへば*山谷せんこくひびきのこえのごとし。 愚痴ぐちひとはこれをじつこえおもへり、 有智うちのひとはそれしんにあらずとれり。 せつもまたかくのごとし。 ぼんじつおもへり、 諸仏しょぶつそんはそれしんにあらずとろしめせり。

大王、譬↢山谷ヒヾキ↡。愚痴之人ヘリ↢之↡、有智之人レリズト↟真。殺亦如↠是。凡夫ヘリ↠実、諸仏世尊 シメセリズト↟真

^大王だいおうひとあだあるが、 いつわきたりてしんするがごとし。 愚痴ぐちひとおもうてまことにしたしむとす、 しゃ*りょうだつしてすなはちそれむなしくいつわれりとらん。 せつもまたかくのごとし。 ぼんじつおもふ、 諸仏しょぶつそんはそれしんにあらずとろしめせり。

大王、如↢人ルガアダイツワキタリテ親附スルガ↡。愚痴之人オモフテシムト↡、智者了達シテシクイツワレリト↡。殺亦如↠是。凡夫オモ↠実、諸仏世尊セリズト↟真

^大王だいおうひとかがみりてみづから面像めんぞうるがごとし。 愚痴ぐちひとおもうてしんおもてとす、 しゃりょうだつしてそれしんにあらずとれり。 せつもまたかくのごとし。 ぼんじつおもふ、 諸仏しょぶつそんはそれしんにあらずとろしめせり。

大王、如↣人執↠鏡ミヅカ↢面像↡。愚痴之人フテ↢真↡、智者了達シテレリズト↟真。殺亦如↠是。凡夫オモ↠実、諸仏世尊セリズト↟真

^大王だいおう*ねつときほのおのごとし。 愚痴ぐちひとはこれはこれみずおもはん、 しゃりょうだつしてそれみずにあらずと0285ん。 せつもまたかくのごとし。 ぼんじつおもはん、 諸仏しょぶつそんはそれしんにあらずとろしめせり。

大王、如↢熱↡。愚痴之人ハム↢之↡、智者了達シテラムズト↟水。殺亦如↠是。凡夫ハム↠実、諸仏世尊セリズト↟真

^大王だいおう*乾闥けんだつじょうのごとし。 愚痴ぐちひとおもうて真実しんじつとす、 しゃりょうだつしてそれしんにあらずとれり。 せつもまたかくのごとし。 ぼんじつおもへり、 諸仏しょぶつそんはそれしんにあらずとりょうしたまへり。

大王、如↢乾闥婆城↡。愚痴之人オモフテ↢真実↡、智者了達シテレリズト↟真。殺亦如↠是。凡夫ヘリ↠実、諸仏世尊了↢知タマヘリズト↟真

^大王だいおうひとゆめのうちによくらくくるがごとし。 愚痴ぐちひとはこれをおもうてじつとす、 しゃりょうだつしてそれしんにあらずとれり。 せつもまたかくのごとし。 ぼんじつおもへり、 諸仏しょぶつそんはそれしんにあらずとろしめせり。

大王、如↣人ルガ↢五欲↡。愚痴之人フテ↠之↠実、智者了達シテレリズト↟真。殺亦如↠是。凡夫ヘリ↠実、諸仏世尊セリズト↟真

^大王だいおう*殺法せっぽう殺業せつごう殺者せっしゃせっおよびだつ、 われみなこれをさとれり、 すなはちつみあることなけん。 おうせつるといへども、 いかんぞつみあらんや。 大王だいおう、 たとへば人主にんしゅありてさけつかさどれりとれども、 もしそれまざれば、 すなはちまたはざるがごとし。 ^またるといへどもしょうねんせず。 おうもまたかくのごとし。 またせつるといへども、 いかんぞつみあらんや。

大王、殺法・殺業・殺者・殺果及以 オヨビ 解脱、我皆サトレリ↠之、則ケム↠有コト↠罪。王雖↠知↠殺云何 イカン ラムヤ↠罪0118。大王、譬↧有↢人主↡知レドモツカサドレリト↠酒モシレバ↠飲亦不ルガ。雖↢復知↟火↢焼燃↡。王亦如↠是。雖↢復知↟殺云何 イカン ラムヤ↠罪。

^大王だいおう、 もろもろのしゅじょうありて、 づるときにおいて種々しゅじゅつみつくる、 つきづるときにおいてまた劫盗こうとうぎょうぜん。 日月にちがつでざるにすなはちつみつくらず。 日月にちがつによりて、 それつみつくらしむといへども、 しかるにこの日月にちがつじつつみず。 せつもまたかくのごとし。

大王、有↢諸衆生↡、於↢日↡作↢種種↡、於↢月ヅル↡復行ゼム↢劫盗↡。日月不ルニ↠出↠作↠罪。雖↧因↢日月↡令ムト↞罪、然日月実↠罪。殺亦如↠是

・治心 ・説法治心 5.以涅槃譬

 ^0286大王だいおう、 たとへばはんにあらずにあらずして、 またこれなるがごとし。 せつもまたかくのごとし。 非有ひう非無ひむにしてまたこれなりといへども、 ざんひとはすなはちにあらずとす。 ざんのものはすなはちにあらずとす。 ほうくるもの、 これをづけてとす。

大王、譬↢涅槃有非シテ亦是有ナルガ↡。殺亦如↠是。雖↢非有非无シテ亦是有ナリト↡、慚愧之人↢非↡。无慚愧↢非↡。受↢果報、名↠之↠有

^*空見くうけんひとはすなはちにあらずとす。 *けんひとはすなはちにあらずとす。 *有有ううけんのものはまたづけてとす。 なにをもつてのゆゑに、 有有ううけんのものはほうるがゆゑに。 *無有むうけんのものはすなはちほうなし。

空見之人↢非↡。有見之人↢非无有↡。有見亦名↠有。何有有見ルガ↢果報↡故。无有見↢果報↡。

^*じょうけんひとはすなはち非有ひうとす。 *じょうけんのものはすなはち非無ひむとす。 *常常じょうじょうけんのものはとすることをず。 なにをもつてのゆゑに、 常常じょうじょうけんのものは悪業あくごうあるがゆゑに、 このゆゑに常常じょうじょうけんのものはとすることをず。

常見之人↢非有↡。无常見↢非无↡。常常見ルコトヲ↠无。何常常見ルガ↢悪業果↡故、是常常見ルコトヲ↠无

^このをもつてのゆゑに、 非有ひう非無ひむなりといへども、 しかもまたこれなり。

↢是↡故↢非有非无シテ亦是有ナリ↡、

・治心 ・随俗説殺

^大王だいおう、 それしゅじょう出入しゅつにゅういきづく。 出入しゅつにゅういきつ、 ゆゑにづけてせつとす。 諸仏しょぶつぞくしたがひて、 またきてせつとすº。

大王、衆生↢出入↡。↢出入↡、故↠殺。諸仏随↠俗、亦説↠殺

二 Ⅰ ⅰ b 所化の得益を明かす
          (一)闍王の領解を明かす

・領解発心

 ^ªそん、 われけんるに、 *らんよりらんじゅしょうず、 らんより栴檀せんだんじゅしょうずるをばず。 われいまはじめてらんより栴檀せんだんじゅしょうずるをる。 らんはわがこれなり。 栴檀せんだんじゅはすなはちこれわがこころ*こんしんなり。 こんとは、 われ0287はじめて如来にょらいぎょうせんことをらず、 ほうそうしんぜず、 これをこんづく。

世尊、我見↢世間↡、↢伊蘭子↡生↢伊蘭樹↡、↧伊蘭ヨリズルヲ↢栴檀樹↥。我今始↧従↢伊蘭子↡生ズルヲ↦栴檀樹↥。伊蘭子身是也。栴檀樹是我心、无根信也。无根、我初↠知↣恭↢敬セムコトヲ如来↡、↠信↢法・僧↡、是↢无根↡。

^そん、 われもし如来にょらいそんもうあはずは、 まさにりょうそうこうにおいて、 だいごくにありてりょうくべし。 われいまぶつたてまつる。 ここをもつてぶつたまふところのどくたてまつり、 しゅじょう煩悩ぼんのう悪心あくしん破壊はえせしむº と。

世尊、我若マウア↢如0119来世尊↡、当↧於↢无量阿僧祇劫↡、在↢大地獄↡受↦无量↥。我今見タテマツル↠仏↢是仏所↠得功徳、破↢壊セシムト衆生煩悩悪心↡。

^ぶつののたまはく、 ª大王だいおういかないかな、 われいまなんぢかならずよくしゅじょう悪心あくしん破壊はえすることをれりº と。

ハク、大王、善哉善哉、我今知レリ↣汝必破↢壊スルコトヲ衆生悪心↡。

^ªそん、 もしわれあきらかによくしゅじょうのもろもろの悪心あくしん破壊はえせば、 われつねに阿鼻あびごくにありて、 りょうこうのうちにもろもろのしゅじょうのためにのうけしむとも、 もつてとせずº と。

世尊、若アキラカ破↢壊衆生悪心使トモ↢阿鼻地獄↡、无量劫↢諸衆生↡受↦苦悩↥、↢以↟苦

・所得利益 1.重罪微薄

^そのときに、 *摩伽陀まかだこくりょう人民にんみん、 ことごとくのく多羅たらさんみゃくさんだいしんおこしき。 かくのごときらのりょう人民にんみん大心だいしんほっするをもつてのゆゑに、 じゃおうしょじゅうざいすなはちはくなることをしむ。 おうおよびにん*こうきゅう采女さいにょことごとくみなおなじくのく多羅たらさんみゃくさんだいしんおこしき。

摩伽陀国无量人民、悉シキ↢阿耨多羅三藐三菩提心↡。以↣如↠是无量人民、発スルヲ↢大心↡故阿闍世王所有重罪即シム↢微薄ナルコトヲ↡。王及夫人、コウキウサイ女悉皆同ジクシキ↢阿耨多羅三藐三菩提心↡。

・所得利益 2.得常住身

^そのときに、 じゃおう耆婆ぎばかたりていはまく、 ª耆婆ぎば、 われいまいまだせずしてすでに*天身てんしんたり。 いのちみじかきをてて長命じょうみょうじょうしんててじょうしんたり。 もろもろのしゅじょうをしてのく多羅たらさんみゃくさんだいしんほっせしむº と。

阿闍世王、語↢耆婆ハマク、耆婆、ルニ↠死タリ↢天身↡。↢短命↡↢長命↡、↢无常タリ↢常身↡。↣諸衆生ヲシテ↢阿耨多羅三藐三菩提心↡。

・所得利益 3.諸仏弟子

^*諸仏しょぶつ弟子でし、 このことばきを0288はりて、 すなはち種々しゅじゅ*宝幢ほうどうをもつて、 また*じゅをもつて、 しかうして讃嘆さんだんしてまうさく、

諸仏弟子、説↢是↡已、即↢種種宝幢↡、 復以↢偈↡而シテ讃嘆シテマフサク

・讃嘆

^ª*じつはなはだみょうなり。 *ぜんぎょう句義くぎにおいて、 *甚深じんじんみつぞうなり。 しゅうのためのゆゑに、

実語甚微妙ナリ善巧於↢句義
甚深秘密ナリ↠衆顕↢示

^*しょ広博こうはくごんけんす。 しゅうのためのゆゑにりゃくしてかく、 かくのごときのそくして、 よくしゅじょうりょうす。

所有広博タメ↠衆シテカク
具↢足シテ↠是善能↢衆生

^もしもろもろのしゅじょうありて、 このくことをるものは、 もしはしんおよびしん、 さだめてこの仏説ぶっせつらん。

↢諸衆生↡↠聞コトヲ↢是
信及不信ラム↢是仏説

^諸仏しょぶつつねに*なんをもつて、 しゅうのためのゆゑに*きたまふ。 粗語そごおよびなん、 みな第一だいいちせん。

諸仏常ナンヲモテタメ↠衆キタマフ↠麁
麁語及ナンセム↢第一義

^このゆゑにわれいま、 そん帰依きえしたてまつる。 如来にょらいみこといちなること、 なほ大海だいかいみずのごとし。

0120今者 イマ 帰↣依シタテマツル↢世尊↡
如来ミコト一味ナルコトナホ↢大海

^これを*第一だいいちたいづく。 ゆゑに*無義むぎみことにして、 如来にょらいいまきたまふところの、 種々しゅじゅりょうほう

↢第一諦无无義ミコトニシテ
如来今所↠説タマフ種種无量

^男女なんにょだいしょうきて、 おなじく第一だいいちしめん。 *いんまた無果むかなり。 *しょうまためつなり。

男女大小キテジクシメム↢第一義
无因亦无果ナリ无生亦无滅ナリ

^これをだいはんづく。 くもの*しょけつす。 如来にょらい一切いっさいのために、 つねに父母ぶもとなりたまへり。

↢大涅槃↢諸
如来為↢一切タマヘリ↢慈父母

^まさにるべし、 もろもろのしゅじょうは、 みなこれ如来にょらいなり。 そんだい慈悲じひは、 しゅうのためにぎょうしゅしたまふこと、

↠知衆生如来ナリ
世尊大慈悲↠衆シタマフコト↢苦行

^ひと*鬼魅きみくるはされて、 きょうらんしてしょおおきがごとし。 われいまぶつたてまつることをたり。 るところの三業さんごうぜん

↧人クルワサレテ↢鬼魅狂乱シテキガ↦所為↥
我今得タリ↠見タテマツルコト↠仏↠得三業

^ねがはくはこのどくをもつて、 じょうどう0289こうせん。 われいまようするところの、 ぶつほうおよび衆僧しゅそう

↢此功徳廻↢向セム无上道
我今所↢供養スル仏・法及衆僧

^ねがはくはこのどくをもつて、 三宝さんぼうつねににましまさん。 われいままさにべきところの、 種々しゅじゅのもろもろのどく

↢此功徳三宝常マシマサム↠世
↠当種種功徳

^ねがはくはこれをもつて、 しゅじょうしゅ破壊はえせん。 われあくしきうて、 さんつみぞうせり。

↠此破↢壊セム衆生四種
我遇フテ↢悪知識造↢作セリ三世

^いま仏前ぶつぜんにしてゆ。 ねがはくはのちにまたつくることなからん。 ねがはくはもろもろのしゅじょうひとしくことごとくだいしんほっせしめん。

↢仏前ノチラム↠造コト
衆生ヒトシクセシ↢菩提心

^こころけてつねに、 十方じっぽう一切いっさいぶつねんせん。 またねがはくはもろもろのしゅじょうながくもろもろの煩悩ぼんのうし、

↠心思↢念セム十方一切仏
復願衆生↢諸煩悩

^了々りょうりょうぶっしょうること、 なほ*みょうとくのごとくしてひとしからんº と。

了了コト↢仏性猶↢如 ゴト クシテ妙徳ヒトシカラムト

二 Ⅰ ⅰ b ハ (二)釈迦の述成を明かす

 ^そのときに、 そんじゃおうめたまはく、 ªいかないかな、 もしひとありてよくだいしんほっせん。 まさにるべし、 このひとはすなはち諸仏しょぶつ大衆だいしゅしょうごんすとす。

世尊、讃メタマハク↢阿闍世王↡、カナカナ、若↠人能セム↢菩提心↡。当↠知↣荘↢厳スト諸仏大衆↡。

^大王だいおう、 なんぢむかしすでに*毘婆尸びばしぶつのみもとにして、 はじめてのく多羅たらさんみゃくさんだいしんおこしき。 これよりこのかた、 わがしゅっいたるまで、 そのちゅうげんにおいていまだかつてまたごくしてけず。

大王、ムカシ↢毘婆尸仏ノミモトニ↡、初シキ↢阿耨多羅三藐0121三菩提心↡。従↠是已来 コノカ マデ↢我出世↡、於↢其中間↡未↧曽マタシテ↢地獄↡受↞苦

^大王だいおうまさにるべし、 だいしん、 いましかくのごときりょうほうあり。 大王だいおうきょうよりおうに、 つねにまさにねんごろにだいしんしゅすべし。 なにをもつてのゆゑに、 この因縁いんねんしたがつて0290まさにりょうあくしょうめつすることをべきがゆゑなりº と。

大王当↠知、菩提之心イマ↢如↠是无量果報↡。大王、従ケフ已往、常↣懃菩提之心↡。何シタガ↢是因縁↡当↣消↢滅スルコトヲ无量ナリ

二 Ⅰ ⅰ b ハ (三)益を得て宮に還る

^そのときに、 じゃおうおよび摩伽陀まかだこく人民にんみんこぞつてよりしてちて、 ぶつめぐること*さんぞうして、 退たいしてみやかえりにき」 と。 以上抄出

阿闍世王及摩伽陀国コゾ↢人民↡従↠座シテ、遶コト↠仏三帀シテ、辞退シテニキト↠宮。」 已上抄出

二 Ⅰ ⅰ 重明(「迦葉品」)
        興逆の因縁を顕して以て造罪の始末を詳述す

【117】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)

ノタマハク

^善男ぜんなん*えつおうびんしゃ、 そのおうたいづけて善見ぜんけん (阿闍世) といふ。 *ごう因縁いんねんのゆゑにあくぎゃくこころしょうじて、 そのちちがいせんとするに、 しかるに便たよりをず。

「善男子、羅エチ王頻婆沙羅、其太子名↢善見↡。業因縁ジテ↢悪逆↡、ルニ↠害セムト↢其↡、而↠得↠便

^そのときに、 悪人あくにんだいだっ、 また過去かこごう因縁いんねんによるがゆゑに、 またわがところにおいてぜんこころしょうじて、 われをがいせんとす。 すなはちつうしゅして、 ひさしからずして善見ぜんけんたいとともに*親厚しんこうたることをぎゃくとくせり。

悪人提婆達多、亦因ルガ↢過去業因縁↡故復於↢我↡生ジテ↢不善↡、↠害セムト↠我。即シテ↢五通↡、シテ↠久シカ獲↧得セリ↢善見太子↡共タルコトヲ↦親↡。

 ^たいのためのゆゑに、 種々しゅじゅ神通じんずうげんす。 もんにあらざるよりでてもんよりしてりて、 もんよりしてでてもんにあらざるよりしてる。 あるときぞうようなんにょしんげんす。

↢太子↡故現↢作種種神通之事↡。従↠非↠門デヽ↠門シテ、従↠門シテヨリ↠門シテ。或時示↢現象・馬・牛・羊・男之身↡。

^善見ぜんけんたいをはりて、 すなはち愛心あいしんしんきょうしんこころしょうず。 これをほんとするがゆゑに、 種々しゅじゅよう厳設ごんせつしこれをようす。 ^またまうしてまうさく、 ª*だいしょうにん、 われいま*まん陀羅だらんとおもふº と。

善見太子見已、即↢愛心・喜心・敬信之心↡。ルガ↢是↡故キビシ種種供養之具供↢養↡。又復白シテ、大師聖人、我イマオモフト↠見↢曼陀羅華↡。

^ときだいだっ、 すなはちきて*さんじゅうさんてんいたりて、 かの天人てんにんしたが0291てこれをしゃくするに、 そのふくくるがゆゑにすべてあたふるものなし。

提婆達多、即便トシテ↢三十三天↡、シタガ↢彼天人求↢索スルニ↡、其ルガスベフル者↡。

^すでにはなず。 このゆいをなさく、 ªまん陀羅だらじゅ*しょなし、 もしみづかららんにまさになんのつみかあるべきº と。 すなはちすすんでらんとするに、 すなはち神通じんずううしなへり。 かえりてしんれば、 王舎おうしゃじょうにあり。 こころざんしょうじ、 また善見ぜんけんたい (阿闍世)ることあたはず。

↠華サク↢是思惟↡、曼陀羅樹↢我・我所↡、若ミヅカラム↠有↢何↡。即スヽムデ↠取ラムト、便ウシナヘリ↢神通。↡還レバ↢己身↡、在↢王舎城↡。心ズルニ↢慚愧↡、↠能↢復見0122コト善見太子

^またこのねんをなさく、 ªわれいままさに如来にょらいみもとおうして大衆だいしゅしゃくすべし。 ぶつもしゆるさば、 われまさにこころしたがひておしへて、 すなはち*しゃほつとう*詔勅しょうちょくすべしº と。

サク↢是↡、我今当↧往↢至シテ如来↡求↦シヤク大衆↥。仏若ユル、我当シト↣随↠意詔↢勅便舎利弗等↡。

^そのときに、 だいだっ