0578こう そう  さん

こうそうのさん

禿とく親鸞しんらんさく

龍樹讃

 *りゅうじゅさつ *しゃくもんけて

じっしゅ

  龍樹菩薩の功績

(1)

*ほんりゅうじゅさつ

¬*智度ちど¼ ¬*十住じゅうじゅう毘婆びばしゃ¼ とう

つくり​て​おほく*西にしを​ほめ

すすめ​て念仏ねんぶつせしめ​たり

(2)

*なん天竺てんじく比丘びくあら​ん

りゅうじゅさつと​なづく​べし

*有無うむ邪見じゃけんす​べし​と

*そんは​かねて​とき​たまふ

(3)

ほんりゅうじゅさつ

だいじょうじょうほうを​とき

かんしょうし​て​ぞ

ひとへに念仏ねんぶつすすめ​ける

  難易の二道

(40579)

りゅうじゅだいに​いで​て

なんぎょうぎょうの​みち​をしへ

てんりんの​われら​をば

*ぜいの​ふね​に​のせ​たまふ

(5)

ほんりゅうじゅさつ

をしへ​を​つたへ​きか​ん​ひと

本願ほんがんこころ​に​かけ*​しめ​て

つねに弥陀みだしょうす​べし

トナフベシトナリ

(6)

退たいの​くらゐ​すみやかに

え​ん​と​おもは​ん​ひと​は​みな

*ぎょうしんしゅうして

コヽロニトリタモツトイフ

弥陀みだみょうごうしょうす​べし

(7)

しょうかいほとり​なし

ひさしく​しづめ​る​われら​をば

弥陀みだぜいの​ふね​のみ​ぞ

のせ​て​かならず​わたし​ける

  念仏の勝益

(8)

¬智度ちどろん¼ に​のたまは​く

如来にょらいじょう法皇ほうおうなり

さつ法臣ほっしんと​し​たまひ​て

そんじゅうす​べき​はそんなり

(9)

一切いっさいさつの​のたまは​く

われらいんに​あり​し​とき

りょうこうを​へ​めぐり​て

万善まんぜんしょぎょう*しゅせ​しか​ど

(100580)

*恩愛おんないはなはだ​たち​がたく

しょうはなはだ​つき​がたし

念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうじ​て​ぞ

ざいしょうめっだつせ​し

じょうりゅうじゅさつ

天親讃

 *天親てんじんさつ  しゃくもんけて

じっしゅ

  造論の本意

(11)

しゃきょうぼうおほけれ​ど

天親てんじんさつは​ねんごろに

*煩悩ぼんのうじょうじゅの​われら​には

弥陀みだぜいを​すすめ​しむ

  三種の荘厳

(12)

あんにょうじょうしょうごん

*唯仏ゆいぶつぶつけんなり

*きょうせ​る​ことくうにして

広大こうだいにして辺際なし

ホトリキハナシトナリ

(13)

本願ほんがんりきに​あひ​ぬれ​ば

むなしく​すぐる​ひと​ぞ​なき

どく宝海ほうかいみち​みち​て

煩悩ぼんのうじょくすいへだて​なし

(14)

如来にょらいじょうしょうじゅ

しょうがくの​はな​よりしょうして

しゅじょうがんぎょうことごとく

すみやかに​とく満足まんぞく

(150581)

*てんにんどうしょうじゅ

*ぜいかいよりしょう

心業しんごうどく清浄しょうじょうにて

くうの​ごとく差別しゃべつなし

  往生の因果

(16)

天親てんじん論主ろんじゅ一心いっしん

無礙むげこうみょう

本願ほんがんりきじょうずれ​ば

ほうに​いたる​と​のべ​たまふ

(17)

じん十方じっぽう無礙むげこうぶつ

一心いっしんみょうする​を​こそ

天親てんじん論主ろんじゅの​みこと​には

がんぶつしんと​のべ​たまへ

ホトケニナラントネガフコヽロナリ

(18)

がんぶつしんは​これ

しゅじょうの​こころ​なり

シユジヤウヲワタスコヽロナリ

しゅじょうしんは​これ

利他りた真実しんじつ信心しんじんなり

(19)

信心しんじんすなはち一心いっしんなり

一心いっしんすなはち金剛こんごうしん

金剛こんごうしんだいしん

このしんすなはちりきなり

(20)

がんに​いたれ​ば​すみやかに

じょうはんしょうし​て​ぞ

すなはちだいを​おこす​なり

これ​をこうと​なづけ​たり

0582じょう天親てんじんさつ

曇鸞讃

 *曇鸞どんらんしょう  しゃくもんけて

さんじゅうしゅ

  師徳の讃嘆

(21)

ほん曇鸞どんらんしょう

*だい流支るしの​をしへ​にて

せんぎょうながく​やき​すて​て

じょうに​ふかくせ​しめ​き

(22)

ろん講説こうせつさしおき​て

本願ほんがんりきを​とき​たまひ

ばく凡衆ぼんしゅを​みちびき​て

*はんの​かど​に​ぞ​いら​しめ​し

(23)

*ぞくくん*幸臨こうりん

ちょくして*じょうの​ゆゑ​を​とふ

十方じっぽう仏国ぶっこくじょうなり

なに​に​よりて​か西にしに​ある

(24)

らんこたへ​て​のたまは​く

わが智慧ちえあさく​して

いまだ*地位じいに​いら​ざれ​ば

フタイノクラヰニイタラズトナリ

*念力ねんりきひとしく​およば​れ​ず

(25)

一切いっさい道俗どうぞくもろともに

す​べき​ところ​ぞ​さらに​なき

*安楽あんらくかんの​こころざし

らんひとり​さだめ​たり

(260583)

*しゅちょくして*へいしゅう

*大巌だいがんに​ぞ​おはし​ける

やうやく​をはり​に​のぞみ​ては

*ふんしゅうに​うつり​たまひ​にき

(27)

*てんは​たふとみ​て

*神鸞じんらんと​こそごうせ​し​か

ナヅケタテマツル

おはせ​し​ところ​の​そのをば

*鸞公らんこうがんと​ぞ​なづけ​たる

(28)

*じょうごうさかりに​すすめ​つつ

*げんちゅうに​ぞ​おはし​ける

*こうねん

*遙山ようさんに​こそ​うつり​し​か

(29)

ろくじゅうゆうしちとき​いたり

じょうおうじょうとげ​たまふ

その​とき霊瑞れいずい思議しぎにて

一切いっさい道俗どうぞくきょうし​き

(30)

*くんひとへに​おもく​して

ちょくせんくだし​て​たちまちに

*ふんしゅう汾西ふんせい*しんりょう

クニノナヽリ

サトノナナリ

コホリノナナリ

しょうれいびょうたて​たまふ

スグレタルトコロ

ドムランノミハカナリ

  論註の功績

(31)

*天親てんじんさつの​みこと​をも

らんとき​のべ​たまは​ずは

*りき広大こうだいとく

しんぎょういかでか​さとら​まし

  本願の勝徳

(320584)

本願ほんがん円頓えんどんいちじょう

*ぎゃくあくせっす​としんして

*煩悩ぼんのうだいたい無二むに

すみやかに​とく​さとら​しむ

(33)

*いつつ​の思議しぎを​とく​なか​に

仏法ぶっぽう思議しぎに​しく​ぞ​なき

仏法ぶっぽう思議しぎといふ​こと​は

弥陀みだぜいに​なづけ​たり

  二種の回向

(34)

弥陀みだこうじょうじゅして

往相おうそう還相げんそうふたつ​なり

これら​のこうによりて​こそ

しんぎょうともに​え​しむ​なれ

(35)

往相おうそうこうと​とく​こと​は

弥陀みだ方便ほうべん*とき​いたり

がんしんぎょうえ​しむれ​ば

しょうすなはちはんなり

(36)

還相げんそうこうと​とく​こと​は

利他りたきょうを​え​しめ

すなはちしょ*にゅうして

げんとくしゅする​なり

  一心の釈顕

(37)

論主ろんじゅ一心いっしんと​とけ​る​をば

曇鸞どんらんだいの​みこと​には

煩悩ぼんのうじょうじゅの​われら​が

りきしんと​のべ​たまふ

  無礙の仏徳

(380585)

じん十方じっぽう無礙むげこう

みょうの​やみ​を​てらし​つつ

*一念いちねんかんする​ひと​を

かならずめつに​いたら​しむ

(39)

無礙むげこうやくより

とく広大こうだいしんを​え​て

かならず煩悩ぼんのうの​こほり​とけ

すなはちだいの​みづ​と​なる

(40)

*ざいしょうどくたいと​なる

こほり​と​みづ​の​ごとくに​て

こほり​おほき​に​みづ​おほし

さはり​おほき​にとくおほし

アクゴフオホケレバクドクノオホキナリ

(41)

みょうごう思議しぎ海水かいすい

*ぎゃくほうがいも​とどまら​ず

シニカバネニタトヘタリ

衆悪しゅあく万川ばんせんし​ぬれ​ば

ヨロヅノアクヲヨロヅノカハニタトヘタリ

*どくの​うしほ​にいちなり

ヒトツアヂハヒトナルナリ

(42)

じん十方じっぽう無礙むげこう

だい大願だいがん海水かいすい

煩悩ぼんのうしゅりゅうし​ぬれ​ば

智慧ちえの​うしほ​にいちなり

  一乗の勝益

(43)

安楽あんらく仏国ぶっこくしょうずる​は

*ひっきょうじょうぶつどうにて

ヒロキミチ

セバキミチ

じょう方便ほうべんなり​けれ​ば

諸仏しょぶつじょうを​すすめ​けり

(440586)

諸仏しょぶつ三業さんごうしょうごんして

ひっきょうびょうどうなる​こと​は

しゅじょうおうしん口意くい

せ​ん​が​ため​と​のべ​たまふ

(45)

安楽あんらく仏国ぶっこくに​いたる​には

じょう宝珠ほうしゅみょうごう

真実しんじつ信心しんじんひとつ​にて

別道べつどうと​とき​たまふ

(46)

如来にょらい清浄しょうじょう本願ほんがん

しょうしょうなり​けれ​ば

本則ほんそく三三さんざんほんなれ​ど

モトハコヽノシナノシユジヤウノホウドニムマレヌレバヒトリモカハルコトナシトナリ

いちも​かはる​こと​ぞ​なき

  名号の徳益

(47)

無礙むげこう如来にょらいみょうごう

かの*こうみょうそうと​は

みょうじょうあん

しゅじょうがんを​みて​たまふ

コヽロザシ

ネガフコトヲ

  三不の信心

(48)

如実にょじつしゅぎょうと​いへ​る​こと

オシヘノゴトクナラズトイフコヽロナリ

らんしゃくして​のたまは​く

一者いっしゃ信心しんじんあつから​ず

にゃくぞんにゃくもうする​ゆゑに

アルトキニハサモトオモフアルトキハカナフマジトオモフナリ

(49)

しゃ信心しんじんいちなら​ず

けつじょうなき​ゆゑ​なれ​ば

三者さんじゃ信心しんじん相続そうぞくせ​ず

アヒツガズ

ねんけんと​のべ​たまふ

マジヘルガユヘニシンナシトイフナリ

(500587)

*三信さんしん展転てんでんそうじょう

アヒジヤウズルナリ

ぎょうじゃこころ​を​とどむ​べし

信心しんじんあつから​ざる​ゆゑに

けつじょうしんなかり​けり

(51)

けつじょうしんなき​ゆゑに

ねん相続そうぞくせ​ざる​なり

ねん相続そうぞくせ​ざる​ゆゑ

けつじょうしんを​え​ざる​なり

(52)

けつじょうしんを​え​ざる​ゆゑ

信心しんじんじゅんと​のべ​たまふ

シンジムアツカラズトイフナリ

如実にょじつしゅぎょう相応そうおう

オシヘノゴトクシンズルコヽロナリ

信心しんじんひとつ​に​さだめ​たり

  本願の大道

(53)

まんぎょう諸善しょぜんしょうより

*本願ほんがん一実いちじつ大道だいどう

にゅうし​ぬれ​ばはん

さとり​は​すなはち​ひらく​なり

  師徳の讃嘆

(54)

ほん曇鸞どんらんだいをば

*りょうてん蕭王そうおう

おはせ​し​かた​に​つねに​むき

らんさつと​ぞらいし​ける

じょう曇鸞どんらんしょう

道綽讃

 *どうしゃくぜん  しゃくもんけて

しちしゅ

  二門の廃立

(550588)

ほんどうしゃくぜん

*しょうどうまんぎょうさしおき​て

ゆいじょう一門いちもん

つうにゅうす​べき​みち​と​とく

(56)

ほんどうしゃくだい

*はん広業こうごうさしおき​て

本願ほんがんりきを​たのみ​つつ

じょくぐんじょうすすめ​しむ

  聖道の難証

(57)

末法まっぽうじょくしゅじょう

しょうどうしゅぎょう*せしむ​とも

ひとり​もしょうを​え​じ​と​こそ

きょうしゅそんは​とき​たまへ

(58)

らんの​をしへ​を​うけ​つたへ

しゃくしょうは​もろともに

ざいしん立行りゅうぎょう

シヤバセカイニテボダイシムヲオコシギヤウヲタツルハミナジリキナリトシルベシ

此是しぜりきと​さだめ​たり

コレハコレジリキナリトイフ

  諸仏の勧讃

(59)

じょくあく造罪ぞうざい

アクヲオコシツミヲツクルコトノオホキコトヲイフ

暴風ぼうふう駛雨しうに​ことなら​ず

諸仏しょぶつこれら​を​あはれみ​て

すすめ​てじょうせしめ​り

  念仏の滅罪

(60)

いちぎょうあくを​つくれ​ども

せんしょうに​こころ​を​かけ​しめ​て

モハラコノミテトイフ

つねに念仏ねんぶつ*せしむれ​ば

しょしょうねんに​のぞこり​ぬ

  本願の正意

(610589)

縦令じゅうりょういっしょう造悪ぞうあく

タトヒ一ゴアクヲツクルモノナリトモミダノチカヒヲタノミマヒラセテワウジヤウスベシトナリ

しゅじょういんじょうのために​とて

しょうみょうがんじ​つつ

ワガナヲトナヘヨトグワンジタマヘリ

にゃくしょうじゃと​ちかひ​たり

モシムマレズハホトケニナラジトチカヒタマヘルナリ

じょうどうしゃくだい

善導讃

 *善導ぜんどうだい  しゃくもんけて

じゅうろくしゅ

  大師の出世

(62)

*大心だいしんかいよりして​こそ

善導ぜんどうしょうと​おはし​けれ

末代まつだいじょくのために​とて

十方じっぽう諸仏しょぶつしょうを​こふ

(63)

世々よよ善導ぜんどういで​たまひ

*ほっしょう*しょうこうと​しめし​つつ

どくぞうを​ひらき​て​ぞ

諸仏しょぶつほんとげ​たまふ

  女人の成仏

(64)

弥陀みだみょうがんに​よら​ざれ​ば

ひゃく千万せんまんごうすぐれ​ども

*いつつ​の​さはり​はなれ​ねば

女身にょしんを​いかでかてんず​べき

  釈尊の教意

(65)

しゃ要門ようもんひらき​つつ

じょうさんしょ*こしらへ​て

しょうぞうぎょう方便ほうべん

ひとへに専修せんじゅを​すすめ​しむ

(660590)

*じょしょうならべ​てしゅする​をば

すなはち*雑修ざっしゅと​なづけ​たり

一心いっしんを​え​ざる​ひと​なれば

仏恩ぶっとんほうずる​こころ​なし

(67)

仏号ぶつごうむねとしゅすれ​ども

げんを​いのるぎょうじゃをば

これ​も雑修ざっしゅと​なづけ​て​ぞ

せんちゅういちと​きらは​るる

(68)

こころ​は​ひとつ​に​あら​ね​ども

ぞうぎょう雑修ざっしゅこれ​に​たり

*じょうぎょうに​あら​ぬ​をば

ひとへにぞうぎょうと​なづけ​たり

  大師の釈意

(69)

善導ぜんどうだいしょうを​こひ

じょうさんしんを​ひるがへし

貪瞋とんじん譬喩ひゆを​とき

がん信心しんじんしゅせしむ

マモリマモル

  弥陀の教意

(70)

*きょうどう滅尽めつじんとき​いたり

如来にょらいしゅっほんなる

*がんしんしゅうに​あひ​ぬれ​ば

ぼんねんじ​て​さとる​なり

(71)

仏法ぶっぽうりき思議しぎには

諸邪しょじゃごうさはら​ねば

弥陀みだほんぜいがん

ぞうじょうえんと​なづけ​たり

(720591)

願力がんりきじょうじゅほうには

りきしんぎょういたら​ねば

だいしょうしょうにんみな​ながら

如来にょらいぜいじょうず​なり

(73)

煩悩ぼんのうそくしんして

本願ほんがんりきじょうずれ​ば

すなはちしんすて​はて​て

ほっしょうじょうらくしょうせしむ

  二尊の慈悲

(74)

しゃ弥陀みだ慈悲じひ父母ぶも

シヤカハチヽナリミダハハヽナリトタトヘタマヘリ

種々しゅじゅぜんぎょう方便ほうべん

われら​がじょう信心しんじん

ほっせしめ​たまひ​けり

ヒラキオコシタマフナリ

  信心の徳益

(75)

真心しんしん徹到てっとうする​ひと​は

金剛こんごうしんなり​けれ​ば

三品さんぼんさんする​ひと​と

ひとし​としゅうは​のたまへ​り

(76)

じょくあくの​われら​こそ

金剛こんごう信心しんじんばかり​にて

ながくしょうを​すて​はて​て

ねんじょうに​いたる​なれ

(77)

金剛こんごうけん信心しんじん

さだまる​とき​を​まち​え​て​ぞ

弥陀みだ心光しんこうしょうして

ながくしょうを​へだて​ける

(780592)

真実しんじつ信心しんじんえ​ざる​をば

一心いっしんかけ​ぬ​と​をしへ​たり

一心いっしんかけ​たる​ひと​は​みな

三信さんしんせ​ず​と​おもふ​べし

ホングワンノシンジムヲイフナリ

(79)

利他りたしんぎょううる​ひと​は

*がん相応そうおうする​ゆゑに

*きょうぶつに​したがへ​ば

雑縁ぞうえんさらに​なし

(80)

しんしゅう念仏ねんぶつきき​え​つつ

*一念いちねん無疑むぎなる​を​こそ

希有けうさいしょうにんと​ほめ

しょうねんを​う​と​は​さだめ​たれ

(81)

本願ほんがん相応そうおうせ​ざる​ゆゑ

雑縁ぞうえんきたり​みだる​なり

信心しんじん乱失らんしつする​を​こそ

ミダレウシナフコヽロナリ

しょうねんうす​と​は​のべ​たまへ

(82)

しんがんよりしょうずれ​ば

念仏ねんぶつじょうぶつねんなり

ねんは​すなはちほうなり

しょうだいはんうたがは​ず

  疑謗の嫌誡

(83)

じょくぞうの​とき​いたり

ほうの​ともがら​おほく​して

ミダノチカヒヲウタガフモノソシルモノナリ

道俗どうぞくともに​あひ​きらひ

しゅする​を​み​て​は*あだ​を​なす

(840593)

本願ほんがんめつの​ともがら​は

ソシリホロボスナリ

しょうもう闡提せんだいと​なづけ​たり

ムマレテヨリメシヰタルモノ

センダイハホトケニナリガタシ

*だいじんごうを​へ​て

ながくさんに​しづむ​なり

(85)

西さいじゅせ​しか​ども

オシヘサヅケシニ

しょうしょうせ​し​ほど​に

ワガミヲサヘヒトヲサエミダルナリ

曠劫こうごうらいも​いたづらに

むなしく​こそ​は​すぎ​に​けれ

  二尊の念報

(86)

ぜいのちから​を​かぶら​ずは

いづれ​の​とき​にかしゃを​いで​ん

仏恩ぶっとんふかく​おもひ​つつ

つねに弥陀みだねんず​べし

(87)

しゃ永劫ようごうを​すて​て

じょう無為むい*する​こと

ほんしゃの​ちから​なり

じょうおんほうず​べし

じょう善導ぜんどうだい

源信讃

 *源信げんしんだい  しゃくもんけて

じっしゅ

  師徳の讃嘆

(88)

源信げんしんしょうの​のたまは​く

われ​これ*ぶつと​あらはれ​て

モトノホトケトマフスコトナリ

えんすでに​つき​ぬれ​ば

*ほんに​かへる​と​しめし​けり

(890594)

ほん源信げんしんねんごろに

*一代いちだいぶっきょうの​その​なか​に

念仏ねんぶつ一門いちもんひらき​て​ぞ

じょく末代まつだいをしへ​ける

  専雑の対説

(90)

*りょうぜんちょうじゅと​おはし​ける

源信げんしんそうの​をしへ​には

ほう二土にどを​をしへ​て​ぞ

専雑せんぞう得失とくしつさだめ​たる

(91)

ほん源信げんしんしょう

*かんぜんしゃくに​より

¬*処胎しょたいきょう¼ を​ひらき​て​ぞ

まんがいをば​あらはせ​る

(92)

専修せんじゅの​ひと​を​ほむる​には

せん一失いっしつと​をしへ​たり

センニヒトツノトガナシトナリ

雑修ざっしゅの​ひと​を​きらふ​には

まんいっしょうと​のべ​たまふ

マンニヒトリモホウドニムマレズトナリ

(93)

ほうじょうおうじょう

おほから​ず​と​ぞ​あらはせ​る

化土けどに​うまるるしゅじょうをば

すくなから​ず​と​をしへ​たり

  専修の称揚

(94)

男女なんにょせんことごとく

弥陀みだみょうごうしょうする​に

トナフルナリ

行住ぎょうじゅう座臥ざがも​えらば​れ​ず

アルク

ヰル

トヾマル

フスナリ

しょ諸縁しょえんも​さはり​なし

トキ

ヨロヅノコトナリ

トコロ

(950595)

煩悩ぼんのうに​まなこ*さへ​られ​て

摂取せっしゅこうみょうみ​ざれ​ども

だいものうき​こと​なく​て

つねに​わがを​てらす​なり

(96)

弥陀みだほうを​ねがふ​ひと

外儀げぎの​すがた​は​こと​なり​と

本願ほんがんみょうごう信受しんじゅして

寤寐ごびに​わするる​こと​なかれ

ネテモサメテモトイフナリ

(97)

極悪ごくあくじんじゅうしゅじょう

方便ほうべんさらに​なし

ひとへに弥陀みだしょうし​て​ぞ

じょうに​うまる​と​のべ​たまふ

じょう源信げんしんだい

源空讃

 *源空げんくうしょうにん  しゃくもんけて

じっしゅ

  専修の称揚

(98)

ほん源空げんくうに​いで​て

がんいちじょうひろめ​つつ

日本にっぽんいっしゅうことごとく

*じょうえんあらはれ​ぬ

(99)

*智慧ちえこうの​ちから​より

ほん源空げんくうあらはれ​て

じょうしんしゅうを​ひらき​つつ

せんじゃく本願ほんがんのべ​たまふ

(1000596)

善導ぜんどう源信げんしんすすむ​とも

ほん源空げんくうひろめ​ずは

*へんしゅうじょくの​ともがら​は

いかでかしんしゅうを​さとら​まし

(101)

曠劫こうごうしょうの​あひだ​にも

*しゅつ強縁ごうえんしら​ざり​き

ほん源空げんくういまさ​ずは

このたび​むなしく​すぎ​なまし

  一代の威徳

(102)

源空げんくう*さんの​よはひ​にて

じょうの​ことわり​さとり​つつ

*えんかいを​あらはし​て

ヨヲイトフナリ

モトノコヽロトイフ

だいの​みち​に​ぞ​いら​しめ​し

(103)

源空げんくうぎょうとくには

チヱモギヤウモイタリタマフヒトナリトイフ

しょうどうしょしゅうしゅ

シヤウニンノオンシナリ

みな​もろともにせしめ​て

*一心いっしん金剛こんごうかいと​す

シヨシユノオンシノシヤウニンノオンデシニミナナリタマフ

(104)

源空げんくう存在ぞんざいせ​し​とき​に

金色こんじきこうみょうはなた​しむ

*ぜんじょう博陸はくりくまのあたり

クワンパクナリ

拝見はいけんせしめ​たまひ​けり

(105)

ほん源空げんくうほんをば

ぞくの​ひとびと​あひ​つたへ

*しゃくしょうしょう*せしめ

あるいは善導ぜんどうと​しめし​けり

(1060597)

源空げんくうせいげん

シメシアラハシタマフ

あるいは弥陀みだ顕現けんげん

アラハレタマフ

じょうこう群臣ぐんしんそんきょう

コクワウナリ ダイジムクギヤウナリ

きょう庶民しょみん欽仰きんごう

ミヤコ

ヨロヅノタミ

ヰナカ

ウヤマヒアフギタテマツル

(107)

*承久じょうきゅうだいじょう法皇ほうおう

ほん源空げんくうきょうし​き

しゃくもん儒林じゅりんみな​ともに

ソウナリ

ゾクガクシヤウナリ

ひとしくしんしゅうにゅうせ​り

サトリイルナリ

  教化の要旨

(108)

*諸仏しょぶつ方便ほうべんとき​いたり

源空げんくうひじり​と​しめし​つつ

じょう信心しんじんをしへ​て​ぞ

はんの​かど​をば​ひらき​ける

(109)

しんしきに​あふ​こと​は

かたき​が​なか​に​なほ​かたし

てんりんの​きは​なき​は

じょうの​さはり​に​しく​ぞ​なき

ウタガフコヽロナリ

  臨終の霊異

(110)

源空げんくうこうみょうはなた​しめ

もんに​つねに​み​せしめ​き

賢哲げんてつ愚夫ぐぶも​えらば​れ​ず

カシコクスグレタル

オロカナルモノ

ごうせんも​へだて​なし

ヨキヒト

イヤシキモノ

(111)

命終みょうじゅうそのちかづき​て

ほん源空げんくうのたまは​く

*おうじょうみたび​に​なり​ぬる​に

このたび​ことに​とげ​やすし

(1120598)

源空げんくうみづから​のたまは​く

*りょうぜんじょうに​あり​し​とき

*しょうもんそうに​まじはり​て

頭陀ずだぎょうじ​て化度けどせしむ

(113)

*粟散ぞくさんへんしゅうたんじょうして

コノニチポンコクナリ

ムマレタマフトナリ

念仏ねんぶつしゅうを​ひろめ​しむ

しゅじょう化度けどの​ため​に​とて

このに​たびたび​きたら​しむ

(114)

弥陀みだ如来にょらいして​こそ

ほん源空げんくうと​しめし​けれ

えんすでに​つき​ぬれ​ば

じょうに​かへり​たまひ​にき

(115)

ほん源空げんくうの​をはり​には

こうみょううんの​ごとく​なり

ムラサキノクモノゴトシ

音楽おんがく哀婉あいえんりょうにて

アハレミスメルコヽロナリ

*きょうみぎりに映芳えいほう

カヾヤキカウバシ

(116)

道俗どうぞく男女なんにょ*さん

カネテ

アツマル

*けいしょう*雲客うんかくくんじゅう

*ほく面西めんさいきょうにて

カウベヲキタニシオモテヲニシニス

如来にょらいはんを​まもる

(117)

ほん源空げんくう命終みょうじゅう

*けんりゃくだい壬申にんしんさい
しょしゅんじゅんだいにち

じょうげんせしめ​けり

0599じょう源空げんくうしょうにん

 

じょうしち高僧こうそうさん いっぴゃくじゅうしちしゅ

 

結讃
  要旨の結讃

(118)

じょくあくしゅじょう

せんじゃく本願ほんがんしんずれ​ば

*不可ふかしょう不可ふかせつ不可ふか思議しぎ

どくぎょうじゃに​みて​り

 

*てん じく りゅうじゅさつ
天親てんじんさつ
*しん たん 曇鸞どんらんしょう
どうしゃくぜん
善導ぜんどうぜん
* ちょう 源信げんしんしょう
源空げんくうしょうにん

じょう七人しちにん

*しょうとくたい *敏達びんだつ天皇てんのう元年がんねん
しょうがつ一日ついたちたんじょうしたまふ。

 

仏滅ぶつめつ一千いっせんひゃくじゅう一年いちねんあたれり。

 

  回向の讃文

(119)

南無なも弥陀みだぶつを​とけ​る​には

衆善しゅぜん海水かいすいの​ごとく​なり

かの清浄しょうじょうぜんに​え​たり

ひとしくしゅじょうこうせん

 

底本は龍谷大学蔵文明五年蓮如上人開版本(文明本)。
釈文に付けて 高僧の著作によって。
本師 本宗の祖師。
智度 ¬だい智度ちどろん¼ のこと。
十住毘婆沙 ¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼ のこと。
西 西方浄土。
南天竺 南インド。りゅうじゅ菩薩は南インドに出生した。
有無の邪見 有見・無見の誤った見解。 →有無うむ
世尊は… 釈尊は (¬りょうきょう¼ に) 予言しておられる。
歓喜地 「歓喜地は正定しょうじょうじゅの位なり。 身によろこぶを歓といふ、 こころによろこぶを喜といふ。 得べきものを得てんずとおもひてよろこぶを歓喜といふ」 (異本左訓)
弘誓のふね 阿弥陀仏の本願を、 迷いの海をわたってさとりの彼岸に至らせる船に喩える。
しめて たてまつりて。
恭敬の心 つつしみ敬う心。 ここでは他力の信心のこと。
修せしかど 修めたけれども。
煩悩成就 あらゆる煩悩ぼんのうを欠くことなくそなえていること。
究竟せること その大きさが、 至りきわまっていること。
天人不動の聖衆 天上界・人間界から浄土に生れたしょうじゃたち。 大乗の善根ぜんごんを成就して動揺することがないから不動という。
弘誓の智海 本願によって成じた広大な仏の智慧ちえを海に喩える。
涅槃のかど →はんもん
世俗の君子・魏の主・魏の天子・君子 とう孝静こうせいていであろう。
浄土… 西方浄土のみ願生する理由を問う。
念力… 十方の浄土を平等に念ずる力がないということ。
安楽勧帰 安楽浄土への往生を勧め、 自他ともに阿弥陀仏に帰依きえすること。
神鸞 不思議な徳を持っている曇鸞大師の意。
浄業 念仏のこと。
魏の興和四年 542年。
遙山寺 平遙へいようさんの寺。
汾州汾西 現在の山西省平遙。
秦陵 大陵の誤伝。
天親菩薩のみこと 天親菩薩の ¬浄土論¼ をいう。
他力広大威徳の心行 心は一心帰命の信心、 行は五念門の行。 この心行は如来よりこうされたものであるので、 他力広大威徳という。
逆悪 →ぎゃくじゅうあく
煩悩菩提体無二 煩悩と菩提とが本来一つであること。
いつつの不思議 思議しぎのこと。
ときいたり 時節が到来し。
一念歓喜するひと 疑いなく、 往生せしめられることをよろこぶひと。
罪障功徳の体となる 体は本体。 罪障がそのまま功徳になる。
逆謗… 五逆・謗法の者は仏道の死骸のようなものであるのでこのようにいう。
功徳のうしほに… 万川が海に入れば同一の塩味となるように、 五逆・謗法の者も他力の信心を獲れば、 一切の悪業を転じて仏の功徳と一味となる。
畢竟成仏… 究極においては仏になること。 ここでは転じて究極無上の成仏道の意味とする。
余念間故 「まじへるがゆゑに信なしといふなり」 (左訓) 疑いがまじわるので。
三信展転… 淳心・一心・相続心の三信さんしんが相関連して一つの信心の内容が明らかになる。
如実修行相応 「をしへのごとく信ずるこころなり」 (左訓)
本願一実の大道 本願の念仏は、 すべての人の往生の道であるから大道という。
梁の天子蕭王 南朝梁の武帝 (464―549) のこと。 仏教を深く信奉した。 蕭王は通常 「しょうおう」 と読むが、 当派依用音によって 「そうおう」 と振る。
聖道万行 聖道門の教えによって修める自力諸善の行。
涅槃の広業 ¬涅槃経¼ を講ずる広大な事業。
せしむとも したてまつったとしても。
せしむれば したてまつれば。
功徳蔵 「みょうごうを功徳蔵とまうすなり。 よろづの善根ぜんごんを集めたるによりてなり」 (異本左訓)
いつつのさはり →しょうさんしょう補註14
こしらへて 誘い導いて。
浄土の行 →正行しょうぎょう
経道滅尽 末法まっぽうの時代 (教のみがあって行・証のない時代) が一万年続いた後、 自力成仏の道を説いた聖道門の経典がすべてこの世界から消え失せることをいう。
願に相応する 信心を得ることは阿弥陀仏の本願の趣旨にかなっている。
教と仏語 釈尊の教えと諸仏の言葉。
一念無疑 阿弥陀仏の本願をふたごころなく信じること。
期すること 心に待ちもうけること。 期待すること。
故仏と… 元来、 仏であったが、 しゅじょう済度のためにこの世に現れたという伝承を指す。 ¬げんしんそうぎょうじつ』にみえる。
本土 本国である浄土。
一代仏教 釈尊が一生の間に説いた教法。
霊山聴衆 インドの霊鷲山で釈尊の説法を聞いた人々。
処胎経 ¬さつ処胎しょたいきょう¼ のこと。
さへられて さえぎられて。
浄土の機縁 浄土教を信受する機縁。
智慧光のちから だいせいさつのこと。 ¬観経¼ による。
出離の強縁 迷いの世界を離れ出るための因縁いんねん。 阿弥陀仏の本願力のこと。
三五のよはひ 十五歳。 ほうねん上人は十五歳で出家受戒した。
厭離の素懐 この世を厭い離れたいというかねてからの願い。
綽和尚 どうしゃくぜんのこと。
せしめ したてまつり。
承久の太上法皇 高倉たかくらのこと。
諸仏方便… 諸仏がしゅじょうを救うためにぜんぎょう方便ほうべんする時節が到来して。
往生みたびに… インドではしょうもん僧、 中国では善導ぜんどうとして往生し、 いま日本の源空げんくうとして三たび往生することをいう。
霊山会上 釈尊がしばしば説法したりょうじゅせん (しゃくっせん) の会座えざ
声聞僧 釈尊の直弟子。 ほうねん上人はしゃほつであったといわれる。
異香みぎりに… おりからたえなる香りがあたりにただよった。
敏達天皇元年 572年。 ¬しょうとくたいでんりゃく¼ などでは、 太子の生誕をこの年とするが、 574年が正しい。