0335かんぎょう0458序分じょぶん かんだい

沙門しゃもん*善導ぜんどう集記しゅうき

通裁節一経【一経大科】
  承上総標

【1】 ^これより以下いげもんにつきてりょうけんするに、 りゃくして*もんつくりてかす。

0680↠此以下キテ↠文料簡スルニ、略シテリテ↢五門↡明↠義

随標分章
    明王宮四分
      分文
        序分

^いちにょもん よりしも五苦ごく所逼しょひつうんけん極楽ごくらくかい いたるこのかたは、 その*序分じょぶんかす。

↢「如是我聞」↡下至↢「五苦所逼云何見極楽世界」↡已来タハ、明↢其序分↡。

一 Ⅱ ⅰ a 正宗分

^日観にっかんはじめの 仏告ぶつごうだいにょぎゅうしゅじょう よりしもぼんしょういたるこのかたは、 *正宗しょうしゅうぶんかす。

↢日観「仏告韋提汝及衆生」↡下至↢下品下生↡已来タハ、明↢正宗分↡。

一 Ⅱ ⅰ a 得益分

^さんせつ是語ぜご よりしも諸天しょてん発心ほっしんいたるこのかたは、 まさしく*得益とくやくぶんかす。

↢「説是語時」↡下至↢「諸天発心」↡已来タハ、正シク↢得益分↡。

一 Ⅱ ⅰ a 流通分

^なんびゃくぶつ よりしもだいとう かんいたるこのかたは、 *通分ずうぶんかす。

↢「阿難白仏」↡下至↢「韋提等歓喜」↡已来タハ、明↢流通分↡。

一 Ⅱ ⅰ 示会

^このぶつ*おうにましますいちしょうせつなり。

此之四義仏在↢王宮↡一会正説ナリ

一 Ⅱ 明耆闍一分

^なんしゃ大衆だいしゅのために伝説でんせつする」 よりはまたこれ*いちなり。 また*三分さんぶんあり。 いち爾時にじそんそくくうげんしゃ崛山くっせん」 よりこのかたは、 その序分じょぶんかす。 なんこう大衆だいしゅせつ如上にょじょう よりこのかたは、 正宗しょうしゅうぶんかす。 さん一切いっさい大衆だいしゅかんぎょう よりこのかたは、 通分ずうぶんかす。

リハ↧「阿難為↢耆闍大衆↡伝説スル」↥復是一会ナリ亦有↢三分↡。一↢「爾時世尊足歩虚空還耆闍崛山」↡已来タハ、明↢其序分↡。二↢「阿難広為大衆説如上事」↡已来タハ、明↢正宗分↡。三↢「一切大衆歓喜奉行」↡已来タハ、明↢流通分↡。

摂五帰三
    述三分義

^しかるににはかならずゆえあり、 ゆゑにじょかす。 *じょすでにおこりぬればまさし0336所説しょせつつぎ*正宗しょうしゅうかす。 ためにくことすでにおわりて所説しょせつをもつて末代まつだいでんせしめんとほっして、 *しょうたんじてがくすすむ。 のちずうかす。

ルニニハユヱ、故↠序。由序既リヌレバシク↢所説↡。次↢正宗↡。為クコトヲハリテ、欲シテ↧以↢所説↡伝↦持セシメムト末代↥、歎ジテ↠勝↠学。後↢流通↡。

一 Ⅲ 結示摂帰

^じょうらい 五義ごぎどうありといへども、 りゃくしてじょしょうずう0459りょうけんしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢五義不同↡、略シテ料↢簡序・正・流通0681↡竟リヌ

別解釈序分
  標科

【2】 ^またさきじょのなかにつきてまたわかちてとなす。 いちには にょもん よりいっづけて*しょうしんじょとなす。 には いち よりしもうんけん極楽ごくらくかいいたるこのかたは、 まさしく*ほっじょかす。

又就キテ↢前↡復分チテ↠二。一ニハ↢「如是我聞」↡一句ケテ↢証信序↡。二ニハ↢「一時」↡下至↢「云何見極楽世界」↡已来タハシク↢発起序↡。

随釈
    【証信序】
      双釈二意
        述意

【3】 ^はじめにしょうしんといふはすなはち二義にぎあり。

↢証信↡者即↢二義↡。

・如是

^いちにはいはく、 「にょ」 の二字にじはすなはちそうじてきょうしゅ (*釈尊)ひょうす。 *能説のうせつにんなり。

ニハ「如是」二字ジテ↢教主↡。能説之人ナリ

・我聞

^にはいはく、 「もん」 のりょうはすなはちべつして*なんす。 *のうちょうにんなり。 ゆゑににょもんといふ。 これすなはちならべてこころしゃくす。

ニハ「我聞」両字シテ↢阿難↡。能聴之人ナリ。故↢「如是我聞」↡。此即ベテ↢二↡也。

二 Ⅱ ⅰ a 釈文
          (一)釈如是
            (Ⅰ)第一釈

^また 「にょ」 といふはすなはちほうす。 *じょうさんりょうもんなり。 「」 はすなはちさだむることばなりぎょうずればかならずやく 。 これは如来にょらい所説しょせつごん*さくびゅうなきことをかす。 ゆゑににょづく。

又言↢如是↡者↠法。定散両門也。是ムルナリ。機行ズレバ。此↣如来所説キコトヲ↢錯謬↡。故↢如是↡。

二 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅱ)第二釈

^また 「にょ」 といふはしゅじょうこころのごとし。 しん*しょぎょうしたがひて、 ぶつすなはちこれをしたまふ*きょう相応そうおうするをまたしょうして 「」 となす。 ゆゑににょといふ。

又言↠如者如↢衆生↡也。随ヒテ↢心所楽↡仏即シタマフ↠之。機教相応スルヲ復称シテ↠是。故↢如是↡。

二 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅲ)第三釈

^また 「にょ」 といふは、 如来にょらい所説しょせつぜんくことぜんのごとく、 とんくこととん0337ごとく、 そうくことそうのごとく、 くうくことくうのごとく、

又言↢如是↡者、欲↠明サムト↧如来所説、説クコト↠漸↠漸、説クコト↠頓↠頓、説クコト↠相↠相、説クコト↠空↠空

^*人法にんぼうくこと人法にんぼうのごとく、 *天法てんぽうくこと天法てんぽうのごとく、 *しょうくことしょうのごとく、 *だいくことだいのごとく、

クコト↢人法↡如↢人法↡、説クコト↢天法↡如↢天法↡、説クコト↠小↠小、説クコト↠大↠大

^ぼんくことぼんのごとく、 しょうくことしょうのごとく、 いんくこといんのごとく、 くことのごとく、

クコト↠凡↠凡、説クコト↠聖↠聖、説クコト↠因↠因、説クコト↠果↠果

^くことのごとく、 らくくことらくのごとく、 おんくことおんのごとく、 ごんくことごんのごとく、

クコト↠苦↠苦、説クコト↠楽↠楽、説クト↠遠↠遠、説クコト↠近↠近

^どうくことどうのごとく、 べつくことべつのごとく、 じょうくことじょうのごとく、 くことのごとく、

クコト↠同↠同、説クコト↠別↠別、説クコト↠浄↠浄、説クコト↠穢↠穢

^一切いっさい 諸法しょほう千差せんじゃ万別まんべつなるをきたまふ如来にょらいかん *歴々れきれき了然りょうねんなることをかさんとほっす。 *随心ずいしん起行きぎょう*各益かくやくどう*ごう法然ほうねんたる、 すべて*錯失さくしつきをまたしょうしてとなす。 ゆゑににょといふ。

クキタマフニ↢一切諸法千差万別ナルヲ↡、如来観知歴歴了然ナルコトヲ↥。随心起行、各益不同、業果法然タル、衆キヲ↢錯失↡又称シテ↠是。故↢如是↡。

二 Ⅱ ⅰ a ロ (二)釈我聞

^もん」 といふは、 なんこれぶつしゃにして、 つねにぶつしたがひてもんこう0460しきなり座下ざげのぞみてよくきよくたもちて、 きょうしたしくくることをかして、 伝説でんせつあやまりなきことをひょうせんほっす。 ゆゑにもんといふ。

↢我聞↡者、欲↩明シテ↧阿難是仏侍者ニシテ、常ヒテ↢仏後↡多聞広識ナリ身臨ミテ↢座0682↡能チテ、教旨親シククルコトヲ↥、表セムト↝無キコトヲ↢伝説之錯↡。故↢我聞↡也。

二 Ⅱ ⅰ 就阿難解

^また 「しょうしん」 といふは、 なんぶっきょう*ほんじょう末代まつだいでんするにしゅじょうたいするがためのゆゑにかくのごと観法かんぽう 、 われぶつしたがひてくといふことをかして、 *しん証誠しょうじょうせんほっす。 ゆゑにしょうしんじょづく。 これはなんにつきて

又言↢証信↡者、欲↪明シテ↧阿難稟↢承シテ仏教↡伝↢持スルニ末代↡、為↠対スルガ↢衆生↡故↠是クノ観法、我従ヒテ↠仏クトイフコトヲ↥、証↩誠セムト可信↨。故↢証信序↡。此キテ↢阿難↡解也。

二 Ⅱ 【発起序】
      標章

03384】 ^ほっじょのなかにつきてくわしくわかちてしちとなす。

キテ発起序クハシクチテ↠七

・化前序

^はじ いち仏在ぶつざい」 よりしも法王ほうおう而為にいじょうしゅいたるこのかたは、 *ぜんじょかす。

↢「一時仏在」↡下至↢「法王子而為上首」↡已来タハ、明↢化前序↡。

・禁父縁

^ 王舎おうしゃだいじょう」 よりしも顔色げんしきえついたるこのかたは、 まさしくほっじょ*ごんえんかす。

↢「王舎大城」↡下至↢「顔色和悦」↡已来タハ、正シク↢発起序禁父之縁↡。

・禁母縁

^さん じゃ」 よりしもりょうすいいたるこのかたは、 *ごんえんかす。

↢「時阿闍世」↡下至↢「不令復出」↡已来タハ、明↢禁母↡。

・厭苦縁

^ だい幽閉ゆうへい よりしも共為ぐい眷属けんぞくいたるこのかたは、 *えんえんかす。

↢「時韋提希被幽閉」↡下至↢「共為眷属」↡已来タハ、明↢厭苦↡。

・欣浄縁

^ 唯願ゆいがん為我いが広説こうせつ よりしもきょうしょうじゅいたるこのかたは、 その*ごんじょうえんかす。

↢「唯願為我広説」↡下至↢「教我正受」↡已来タハ、明↢其欣浄↡。

・散善顕行縁

^ろく 爾時にじそん即便そくべんしょう」 よりしもじょうごうしょういん いたるこのかたは、 *散善さんぜんけんぎょうえんかす。

↢「爾時世尊即便微笑」↡下至↢「浄業正因」↡已来タハ、明↢散善顕行縁↡。

・定善示観縁

^しち 仏告ぶつごうなんとう諦聴たいちょう よりしもうん得見とくけん極楽ごくらくこくいたるこのかたは、 まさしく*じょうぜんかんえんかす。

↢「仏告阿難等諦聴」↡下至↢「云何得見極楽国土」↡已来タハ、正シク↢定善示観縁↡。

^じょうらい 七段しちだんどうありといへども、 ひろほっじょ*りょうけんしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢七段不同↡、広料↢簡発起序↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ 随釈
        【化前序】
          (一)牒標

【5】 ^*つぎぜんじょせば、 このじょのなかにつきてすなはちそのあり。

セバ↢↡化前序↡者、就キテ↢此↡即↢其四↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)随釈
            (Ⅰ)釈時
              (ⅰ)約義旨釈
                (a)牒科

^はじめに 「いち」 といふは まさしく*起化きけときかす。

↢「一時」↡者、正シク↢起化之時↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)述意

^ぶつまさに説法せっぽうせんするに*しょたくしたまふ。 ただしゅじょうかい かならず因縁いんねんによるをもつて、 しゅ (釈尊) のぞみてしょちたまふ。

仏将ルニ↢説法セムト↡、先シタマフ↢於時処↡。但以↣衆生開悟必ルヲ↢因縁↡、化主臨ミテ↠機チタマフ↢於時処↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)釈文

^また 「いち」 といふは、 あるいはにちじゅう年月ねんがつ四時しじとうく。 これみな0461これ如来にょらいおうじて*せっしたまふとき0339り。

又言↢一時↡者、或イハ↢日夜十二時、年月四時等↡。此皆是如来0683ジテ↠機摂化シタマフ時也。

^しょ」 といふは、 かのしょしたがひて如来にょらい説法せっぽうしたまふ。 あるいは山林せんりんしょにましまし、 あるいはおう*聚落じゅらくしょにましまし、 あるいはこう*塚間ちょけんしょにましまし、 あるいはしょう人天にんでんしょにましまし、 あるいはしょうもんさつしょにましまし、 あるいははちにん天王てんのうとうところにましまし、 あるいは*じゅんぼんもしはいちとのところにましまし、 あるいは*純聖じゅんしょうもしはいちとのところにまします。

↠処者、随ヒテ↢彼所宜↡如来説法シタマフ。或在↢山林処↡、或イハ↢王宮・聚落処↡、或イハ↢曠野・塚間処↡、或イハ↢多少人天処↡、或イハ↢声聞・菩薩処↡、或イハ↢八部・人・天王等↡、或イハ↢純凡若一二トノ↡、或イハ↢純聖若シハ一二トノ↡。

^そのしょしたがひて如来にょらいかんしてぞうせずげんぜず、 えんしたがひてほうさずけておのおの*しょやくす。 これすなはち*こうしょうひびくといへども、 かならずたたくをちてまさにる。 だいしょう (釈尊) れたまふこと、 かならず*しょうちてまさにくべし。 ゆゑにいちづく。

ヒテ↢其時処↡如来観知シテ不↠増不↠減、随ヒテ↠縁ケテ↠法↢所資↡。斯乃洪鐘雖↠響クト、必チテ↠扣クヲ而方。大聖レタマフコト↠慈、必チテ↠請而当↠説。故↢一時↡也。

・以下形上

^また 「いち」 と は、 *じゃまさしく*ぎゃくおこときぶついづれのところにかまします。 このいちあたりて、 如来にょらいひとしゅ (声聞・菩薩) かの*しゃにまします。 これすなはちしもをもつてかみあらわこころなり。 ゆゑにいちといふ。

又一時者、阿闍世正シク↠逆時、仏在↢何ニカ↡。当リテ↢此一時↡、如来独与↢二衆↡在↢彼耆闍↡。此即↠下アラハ↠上意也。故↢一時↡。

・以上形下

^また 「いち」 といふは、 ぶつしゅ いちのうちにおいて、 かのしゃにましまして、 すなはちじゃこのあくぎゃく おこ因縁いんねんたまふ。 これすなはちかみをもつてしもあらわこころなり。 ゆゑにいちといふ。

又言↢一時↡者、仏与↢二衆↡於↢一時↡、在シテ↢彼耆闍↡、即キタマフ↧阿闍世↢此悪逆↡因縁↥。此即↠上アラハ↠下意也。故↢一時↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)釈主

^ぶつ」 といふは、 これすなはちしゅ*標定ひょうじょうす。 ぶつ*けんしてひとしゃあらわこころなり。

↢「仏」↡者、此即標↢定化主↡。簡↢異シテ余仏↡独↢釈迦↡意也。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅲ)釈処

^さん ざい王舎おうしゃじょう より以下いげは、 ま0340さしく如来にょらい*遊化ゆげところかす。 すなはちそのあり。 いちにはおうじょう聚落じゅらくあそびたまふは在俗ざいぞくしゅうせんがためなり。 には*せんとうところあそびたまふしゅっしゅうせんがためなり。

↢「在王舎城」↡已下シク如来遊化之処↡。即↢其二↡。一ニハビタマフハ↢王城・聚落↡、為ナリ↠化セムガ↢在俗之衆↡。二ニハビタマフハ↢耆山等↡、為ナリ↠化セムガ↢出家之衆↡。

・在家

^またざいといふは、 よくとんること相続そうぞくしてこれつねなり。 たとひしょうしんおこせども、 なほみずえがくがごとし。 ただおもんみればえんしたがひてあまねくやくし、 だいてたまはざれども*道俗どうぞくかたちことなればともにじゅうするによしなし。 これを*きょうがいじゅうづく。

又在家トイフ者、貪↢求スルコト五欲↡相続シテ是常ナリ。縦セドモ↢清心↡、猶如↠画クガ↠水。但以レバヒテ↠縁、不レドモ↠捨テタマハ↢大悲↡、道俗形殊ナレバ↠由↢共スルニ↡。此↢境界住↡也。

・出家

^またしゅっといふは、 もういのちて、 よくだんしんす。 しん金剛こんごうのごとく えんきょう等同とうどうなり。 *ぶつ悕求けぐしてすなはちひろ0462 やくす。 もし*囂塵ごうじんぜつするにあらずは、 このとくしょうすべきによしなし。 これを*依止えじじゅうづく。

又出家トイフ者、↠身↠命、断↠欲↠真。心若↢金剛↡等↢同ナリ円鏡↡。悕↢求シテ仏地↡即↢自他↡。若ズハ↣絶↢離スルニ0684囂塵↡、此徳無↠由↠可キニ↠証。此↢依止住↡也。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)釈衆
              (ⅰ)牒文標科

^ だい比丘びくしゅ よりしも而為にい上首じょうしゅ」 にいたるこのかたは、 ぶつしゅかす。

↢「与大比丘衆」↡下至↢「而為上首」↡已来タハ↢仏徒衆↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)列釈二衆
                (a)標列

^このしゅうのなかにつきてすなはちわかちてとなす。 いちしょうもんしゅさつしゅなり。

キテ↢此↡即チテ↠二。一者声聞衆、二者菩薩衆ナリ

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)随釈
                  (イ)声聞衆
                    [一]

^しょうもんしゅのなかにつきてすなはちそのあり。

キテ↢声聞衆↡即↢其九↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二]
                      [Ⅰ]標列文義

^はじめに 「」 といふは仏身ぶっしんしゅう。 ゆゑにづけてとなす。 **総大そうだいさん*相大そうだい*衆大しゅだい*年大ねんだいろく*数大しゅだいしち*そん宿しゅくだいはち*ない実徳じっとくだい*しょうだいなり

↢「与」↡者仏身兼↠衆。故ケテ↠与。二者総大、三者相大、四者衆大、五者耆年大、六者数大、七者尊宿大、八者内有実徳大、九者果証大ナリ

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]問答料簡
                        [ⅰ]料簡標数
                          [a]正釈標数
                            [イ]

 ^ひていはく、 一切いっさいきょうはじめにみなこれらのしょうもんありて、 もつて*猶置ゆちとなせ0341るはなんの所以ゆえんかある

ヒテ、一切ハジメ皆有リテ↢此等声聞↡、以セルハ↢猶置↡有↢何所以↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][a][ロ]

^こたへていはく、 これに*べっあり。 いかなるかべっ 。 これらのしょうもんおおこれどうなり。 ¬*げんきょう¼ (意)きたまふがごとし。

ヘテ、此↢別意↡。云何ナルカ別意。此等声聞多クハ是外道ナリ。如↢¬賢愚経¼説キタマフガ↡。

^*優楼うるびんしょうは、 ひゃく弟子でしりょうして邪法じゃほうしゅす。 *伽耶がやしょうは、 ひゃくじゅう弟子でしりょうして邪法じゃほうしゅす。 *だいしょうは、 ひゃくじゅう弟子でしりょうして邪法じゃほうしゅす。 そうじて一千いっせんあり。 みな*ぶっけて*かんどうたり。

優楼頻螺迦葉シテ↢五百弟子↡修↢事邪法↡。伽耶迦葉シテ↢二百五十弟子↡修↢事邪法↡。那提迦葉シテ↢二百五十弟子↡修↢事邪法↡。総ジテ↢一千↡。皆受ケテ↢仏化↡得タリ↢羅漢道↡。

^ひゃくじゅうといふは、 すなはちこれ*しゃ*目連もくれんとの弟子でしなり。 ともに 一処いっしょりょうして邪法じゃほうしゅす。 またぶっけてみな*どうたり。 これらのしゅがっして一処いっしょとなす。 ゆゑにせんひゃくじゅうにんあり」

二百五十トイフ者、即是舎利目連トノ弟子ナリ。共シテ↢一処↡修↢事邪法↡。亦受ケテ↢仏化↡皆得タリ↢道果↡。此等四衆シテ↢一処↡。故リト↢千二百五十人↡也。」

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b]弁総標意
                            [イ]

 ^ひていはく、 このしゅうのなかにまたどうにあらざるものあり。 なんがゆゑぞそうじてひょうする。

ヒテ、此亦有↧非ザル↢外道↡者↥。何ジテスル

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b][ロ]

^こたへていはく、 ¬きょう¼ (賢愚経・意) のなかにきたまふがごとし。 「このもろもろのどう つねにそんしたがひてあひしゃせず」 。 しかる*けつじゅういえとく*えらる。 ゆゑにみょうあり。 これどうなるものはおおく、 あらざるものはすくなし。

ヘテ、如↢¬経¼中キタマフガ↡。「此外道常ヒテ↢世尊↡不↢相捨離↡。」然ルニ結集之家、簡↢取外徳↡。故↢異名↡。是外道ナル、非ザル

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]弁常随意
                          [a]

 ^またひていはく、 いぶかし、 これらのどうつねにぶつしたがへるは、 なんのこころかあるや。

又問ヒテ未審イブカシ、此等外道常ヘルハ↢仏後↡、有↢何↡也。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]

^こたへていはく、 するに二義にぎあり。 いちにはぶつ0463につきてす。 には0342どうにつきてす。

ヘテ、解スルニ↢二義↡。一ニハキテ↠仏。二ニハキテ↢外道↡解

・就仏解

^ぶつにつきてすとは、 こもろもろのどう邪風じゃふうひさしくあおぐこと、 これいっしょうのみにあらず。 *真門しんもんるといへども、 *じゅうなほあり。 ゆゑに如来にょらいかく*外化げけせしめざらしむ。 しゅじょうしょうけんこんそん 悪業あくごうぞうじょう此世しせしょうじつおさめざることをおそるればなり。 この因縁いんねんのためにせっしてみづからちかかしめ*やくゆるしたまはず。 これすなはちぶつにつきてしをはりぬ。

キテ↠仏0685スト者、此外道邪風久シクグコト、非↢是一生ノミニ↡。雖↠入ルト↢真門↡、気習ナホ。故使↢如来知覚シテ↟令↢外化↡。畏ルレバナリ↧損↢衆生正見根芽↡悪業増長シテ、此世・後生ルコトヲ↞収↢果実↡。為↢此因縁↡摂シテメテ↢自ヅカ↡、不↠聴シタマハ↢外益↡。此即キテ↠仏リヌ

・就外道解

^つぎどうにつきてすとはしょうとうこころ、 みづからただ曠劫こうごうよりひさしくしょうしず 六道ろくどう*じゅんかんして、 くるしみいふべからず。 愚痴ぐち悪見あくけんにして邪風じゃふう*ふうしゅうし、 *みょうはずしてながかいなが。 ただ *宿しゅくえんをもつてたまたまそん (釈尊)ことをることあり*法沢ほうたくわたくしなし。 わがともがらにんこうむり、 ぶつ恩徳おんどくじんするに、 *砕身さいしんごく*惘然もうねんたり。 したしく*りょうつかへて、 しばらくもかわるによしなからしむることをいたす。 これすなはちどうにつきてしをはりぬ。

キテ↢外道↡解スト者、迦葉等意、自唯曠劫ヨリシク↢生死↡循↢還シテ六道↡、苦不↠可カラ↠言。愚痴・悪見ニシテ封↢執邪風↡、不シテ↠値↢明師↡永↢於苦海↡。但以↢宿縁↡有↢遇ルコト↟会フコトヲ↢慈尊↡。法沢無↠私。我トモガラ↠潤尋↢思スルニ仏之恩徳↡、砕身之極惘然ナリ。致↠使ムルコトヲ↧親シクツカヘテ↢霊儀↡、無カラ↞由↢暫ルニ↡。此即キテ↢外道↡解リヌ

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]料簡嘆徳
                          [a]

 ^またひていはく、 これらのそん宿しゅくいかん衆所しゅしょしきづくる。

又問ヒテ、此等尊宿云何クル↢衆所知識↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]

^こたへていはく、 とくたかきをそんといねんなるを宿しゅくといふ一切いっさい*ぼんしょうかの内徳ないとくの、 ひとたることをり、 そのそうしゅなる る。 ゆゑに衆所しゅしょしきづく。

ヘテ、徳高キヲ↠尊、耆年ナルヲ↠宿。一切凡聖知↢彼内徳ギタルコトヲ↟人、識↢其外相殊異ナルヲ↡。故↢衆所知識↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[三]

 ^じょうらい 九句くくどうありといへども、 しょうもんしゅしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢九句不同↡、解↢声聞衆↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)菩薩衆
                    [一]

^つぎさつしゅ0343しゅうのなかにつきてすなはちそのしちあり。

↢菩薩衆↡。就キテ↢此↡即↢其七↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]
                      [Ⅰ]標列文義

^いちそうひょうす。 しゅひょうす。 さんくらいひょうす。 ひょうす。 とくひょうす。 ろくべつして*文殊もんじゅ高徳こうとくくらいあらわしちそうじてけっす。

者標↠相。二者標↠数。三者標↠位。四者標↠果。五者標↠徳。六者別シテ↢文殊高徳之位↡。七者総ジテ

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]広嘆衆徳
                        [ⅰ]総嘆

^またこれらのさつりょうぎょうがん 一切いっさいどくほうあんじゅうす。 十方じっぽう遊歩ゆぶして*ごん方便ほうべんぎょうじ、

又此等菩薩具↢無量行願↡、安↢住一切功徳之法↡。遊↢歩シテ十方↡行↢権方便↡、

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]別嘆
                          [a]約果嘆

^ぶつ法蔵ほうぞうりてがんきょうす。 りょうかいにおいて、 して*等覚とうがくじょうこうみょう*顕曜けんようしてあまねく十方じっぽう らす。 りょうぶつ*六種ろくしゅ震動しんどうす。

リテ↢仏法蔵↡究↢竟彼岸↡。於↢無量世界↡、化シテ↢等覚↡。光明顕曜ニシテ↢十方↡。無量仏土六種震動

^えんしたがひてかいしてすなはち*法輪ほうりんてん0464ず。 ほうたたき、 法剣ほうけん ほう らいふるひ、 ほうあめふらし ほうぶ。 つねに法音ほうおんをもつてもろもろのけんかくせしむ。 *邪網じゃもう掴裂かくれつし、 *諸見しょけんしょうめつし、 もろもろの*塵労じんろうさんじ、 もろもろの*欲塹よくぜんやぶり、 *清白しょうびゃくけんみょう 仏法ぶっぽう*こうし、 しょう*せんす。

ヒテ↠縁開示シテ↢法輪↡。扣↢法鼓↡、執↢法剣↡、震↢法雷↡、雨ラシ↢法雨0686↡、演↢法施↡。常↢法音↡覚セシム↢諸世間↡。掴↢裂邪網↡、消↢滅諸見↡、散↢諸塵労↡、ヤブ↢諸欲塹↡、顕↢明清白↡、光↢融仏法↡、宣↢流正化↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]約因嘆

^しゅじょうみんしょうしていまだかつて*まんせず。 びょうどうほうりょうひゃくせん三昧ざんまいそくす。 一念いちねんのあひだにおいてしゅうへんせざるなし。 *ぐんじょう荷負かぶしてこれをあいすることのごとし。 一切いっさい*善本ぜんぽん みながんす。

愍↢傷シテ衆生↡未↢曽慢恣↡。得↢平等↡具↢足無量百千三昧↡。於↢一念↡無↠不ルハ↢周遍↡。荷↢負シテ群生↡愛スルコト↠之↠子。一切善本、皆度↢彼岸↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ]結嘆

^ことごとく諸仏しょぶつりょうどくて、 智慧ちえ開朗かいろうなること思議しぎすべからず

↢諸仏無量功徳↡、智慧開朗ナルコト不↠可カラ↢思議↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]

^しちどうありといへども、 さつしゅしをはりぬ。

↠有リト↢七句不同↡、解↢菩薩衆↡訖リヌ

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)総結

^じょうらい しゅどうありといへども、 ひろ ぜんじょかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢二衆不同↡、広↢化前序↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ b 【禁父縁】
          (一)

03446】 ^ごんえんのなかにつきてすなはちそのしちあり。

キテ↢禁父↡即↢其七↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)
            (Ⅰ)釈王舎大城文
              (ⅰ)科節

^いち 爾時にじ王舎おうしゃ大城だいじょう より以下いげは、 そうじて起化きけところかす。

↢「爾時王舎大城」↡以下、ジテ↢起化↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)釈文
                (a)釈名

・王舎

^これおう*ひゃくせい、 ただ じょう ちゅうしゃつくるにすなはちてんのためにかる。 もしこれおう舎宅しゃたくには、 ことごとくちかづくことなし。 のちときひゃくせいともにおうそうしんたくつくればしばしばてんのためにかる、 ただ これ*王舎おうしゃのみことごとくちかづくことなし。 なんの所以ゆえんあるといふことをらず」 と。

此明↧往古百姓、但城中ルニ↠舎↢天火↡所↠焼是王家舎宅ニハ、悉↢火近ヅクコト百姓共↢於王臣等造レバ↠宅↢天火↡所↠焼、但是王舎ノミ↢火近ヅクコト↠知↠有ルトイフコトヲ↢何所以

^おう*奏人そうにんげたまはく、 「いまより以後いごなんぢらたくつくとき 、 ªただ われいまおうのためにしゃつくるº といふべし奏人そうにんおのおのおうちょくうけたまわて、 帰還かえりてしゃつくるにさらにれず。 これによりて相伝そうでんて、 ことさらに王舎おうしゃづくることをかす。

王告ゲタマハク↢奏人↡、自↠今以後ナンヂ等造↠宅之時、但言フベシト↢我今為↠王ルト↟舎奏人等各リテ↢王↡、帰還 カヘ リテルニ↠舎不↠被↠焼リテ↠此相伝シテ、故ラニクルコトヲ↦「王舎」↥。

・大城

^だいじょう」 といふは、 このしろきはめてだいにして、 *みんおくり。 ゆゑに王舎おうしゃだいじょうといふ

↢「大城」↡者、此城極ニシテ、居民九億ナリ。故↢王舎大城↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)弁義

^起化きけところといふは すなはちそのあり。

↢起化↡者、即↢其二↡。

・機相

^いちにはいはく*闍王じゃおうあくおこしてすなはち父母ぶもきんずるえんあり。 きん によりてすなはちこのしゃいとひて、 *無憂むうかいたくせんとがんず。

ニハ闍王起シテ↠悪↧禁ズル↢父母↡之縁↥。因リテ↠禁ヒテ↢此娑婆↡、願↠託セムト↢無憂之世界↡。

・法益

^にはすなはち如来にょらい (釈尊) しょうおもむ ひかりへんじてだいとなりて*りょうよう0465げんしたまふに、 にんすなはち安楽あんらくしょうずることをもとむ。 またしんかたむけてぎょうぶつ*三福さんぷくいんひらきたまふ。 しょうかんはすなはちこれ*じょうもんなり。 さらに*しょうやくあらわ0345す。 この因縁いんねんのためのゆゑに起化きけところづく。

ニハ如来赴↠請、光変ジテリテ↠台影↢現シタマフニ0687↡、夫人即↠生ズルコトヲ↢安楽↡。又傾ケテ↠心↠行、仏キタマフ↢三福之因↡。正観是定門ナリ。更↢九章之益↡。為↢此因縁↡故↢起化↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)釈随順悪友文
              (ⅰ)科節

^ いったい よりしもあくきょう」 にいたるこのかたは、 まさしく闍王じゃおう*怳忽こうこつのあひだに悪人あくにんあやまところを信受しんじゅすることをかす。

↢「有一太子」↡下至↢「悪友之教」↡已来タハシク↣闍王怳忽之間信↢受スルコトヲ悪人↟悞

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)釈文
                (a)弁位釈名

・太子

^たい」 といふはそのくらいあらわ 。 「じゃ」 といふはそのあらわす。 また じゃ」 といふはすなはちこれ*西国さいこくしょうおんなり。 *この往翻おうほんには*しょうおんづけ、 またせっづく。

↢「太子」↡者↢其↡也。言↢「阿闍世」↡者↢其↡也。又阿闍世トイフ者乃是西国正音ナリ。此往翻ニハ↢未生怨↡、亦名↢折指↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)問答料簡
                  (イ)

 ^ひていはく、 なんがゆゑぞ 「しょうおん」 とづけ、 および 「せっ」 とづくるや。

ヒテ、何↢未生怨↡、及クル↢折指↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)

^こたへていはく、 これみなしゃくにち因縁いんねんぐ。 ゆゑにこのあり。

ヘテ、此皆挙↢昔日因縁↡。故↢此名↡。

・折指

^ˆ「せっ」 のˇ 因縁いんねんといふは、 元本もとちちおうそくあることなし。 処々しょしょ*じんもとれども、 つひにることあたはず。

↢因縁↡者、元本 モト 王無↠有ルコト↢子息↡。処処ムレドモ↠神、竟不↠能↠得ルコト

^たちまちに*そうありて、 おうそうしてまうさく、 「しんれり やまのなかにいち仙人せんにんあり。 ひさしからずして寿いのち命終みょうじゅうしをはりてのちかならずまさにおうのためにとなるべし」

リテ↢相師↡而奏シテ↠王、臣知レリ。山↢一仙人↡。不シテ↠久シカラ↠寿、命終リテ後必シト ↢与↠王↟子

^おうきてかんす。 「このひといづれのときにかしゃみょうするそうおうこた「さらに三年さんねんてはじめて命終みょうじゅうすべし」 おう いはく、 「われいまとしいてくに*けいなし。 さらに三年さんねんつるまでなにによりてかつべき

王聞キテ歓喜。此人何ニカ捨命スル。相師答↠王。更↢三年↡始シト↢命終↡。王言、我今年老イテ↢継祀↡。更ツルマデ↢三年↡何リテカキト↠待

^おうすなはち使つかひをつかはしてやまらしめ仙人せんにんしょうじていはしむ。大王だいおうけて*じょうけいなし。 処々しょしょじんもと0346 ることあたはざるにくるしむすなはちそうありて大仙だいせん瞻見るに、 ひさしからずしてしゃみょうて、 おうのためにとなるべしと ねがはくは大仙だいせんおんれてはやきたまへ」

王即シテ↠使ラシメ↠山、往キテジテ↢仙人↡曰ハシム。大王無↠子、闕ケテ↢紹継↡。処処ムルニ↠神クルシ↠不ルニ↠能↠得ルコト。乃リテ↢相師↡瞻↢見ルニ大仙↡、不シテ↠久シカラ捨命シテ、与↠王ルベシト↠子。請クハ大仙垂レテ↠恩キタマヘト

^使にんきょうけてやま 仙人せんにんところいたりて、 つぶさにおうしょう因縁いんねんく。 仙人せんにん使しゃこたへていはく、 「われさらに三年さんねんてはじめて命終みょうじゅうすべし。 おう すなはちけとちょくするは、 この不可ふかなり」

使人受ケテ↠教↠山、到リテ↢仙人↡、具↢王請因縁↡。仙人報ヘテ↢使者↡言、我更↢三年↡始↢命終↡。王スル↢即ケト↡者、是事不可ナリト

^使つかせんきょうけて、 かえりて大王だいおうほうずるに、 つぶさにせんこころぶ。 おう いはく、 「われはこれ一国いっこくあるじなり。 あらゆる0466人物にんもつみなわれにぞくす。 いまことさらにれいをもつてあひくっするに、 すなはちわがこころざるや

使奉ケテ↢仙↡、還リテズルニ↢大王↡、具↢仙↡。王曰、我是一国之主ナリ。所有人物皆帰↢属↡。今0688ラニ↠礼相屈スルニ、乃ルヤ↠承↢我↡。

^おうさらに使しゃちょく「なんぢきてかさねてしょうぜよ。 しょうぜんにもしずは、 まさにすなはちこれをころすべし。 すでに命終みょうじゅうしをはりなば、 わがためにとならざるべけんや」

王更↢使者↡。ナンヂキテゼヨ。請ゼムニ↠得、当↢即↟之。既命終リナバ、可ケム↠不↢与↠我↟子

^使にんちょくけて、 仙人せんにんところいたりて、 つぶさにおうこころをいふ。 仙人せんにん使つかひのせつくといへども、 こころにまたけず。

使人受ケテ↠勅、至リテ↢仙人↡、具↢王↡。仙人雖↠聞クト↢使↡、意亦不↠受

^使にんちょくけてすなはちこれをころさんとほっ仙人せんにんいはく、 「なんぢまさにおうかたるべし。 ªわがいのちいまだきざるに、 おう*しんをもつてひとてわれをころさしむ。 われもしおうのためにとならば、 またしんをもつてひとおうころしめんº」 せんにん0347このをいひをはりてすなはち

使人奉ケテ↠勅↠殺サムト↠之。仙人曰ナンヂ↠語↠王。我命未ルニ↠尽、王以↢心口↡遣↢人ヲシテ↟我。我若↠王ラバ↠児者、還↢心口↡遣メムト↢人ヲシテ↟王。仙人↢此↡已リテ↠死

^すでにしをはりて、 すなはちおうたくしてしょうく。 そのよるあたりてにんすなはち*しんおぼゆ。 おうきてかんす。

リテ、即シテ↢王宮↡受↠生。当リテ↢其↡夫人即↢有身スト↡。王聞キテ歓喜

^てんけてすなはちそうびて、 もつてにん しむ。 これおとこなりやこれおんななりや。 そうをはりておうこたへていはく、 「こおんなにあらず。 この*おうにおいてそんるべしおういはく、 「わがこくはみなこれを*捨属しゃぞくすべし。 たとひそんずるところありとも、 われまたおそれなし」 と。 おうこのきて憂喜うきまじはりいだく。

天明ケテビテ↢相師↡、以シム↢夫人↡。是男ナリヤ是女ナリヤ。相師観已リテ而報ヘテ↠王、是↠女。此児於↠王ルベシト↠損。王曰、我之国土皆捨↢属スベシ↡。縦リトモ↠所↠損、吾亦無シト↠畏。王聞キテ↢此↡憂喜交

^おうにんにまうしてまうさく、 「われにんとともにひそかにみづから *平章びょうしょうせん。 そう われにおいてそんあるべしといにんこれをちて、 高楼こうろううえにありててんじょうのなかにあたりてこれを ひとをしてらしむることなかれ。 おとしてあらんに、 あにせざるべけんや。 われまたうれふることなく、 *またあらわれじ」

王白シテ↢夫人↡言、吾共↢夫人ヒソカ平章セム。相師↢児於↠吾ルベシト↟損。夫人待チテ↢生↠之↡、在リテ↢高楼↡当リテ↢天井↡生↠之、勿↠令ムルコト↢人ヲシテ↡。落シテラムニ↢於地↡、豈ケム↠不↠死也。吾亦無↠憂フルコト亦不↠露

^にんすなはちおうはかりごと 、 そのときにおよびてもつぱらさきほうのごとくす。 をはりてつるにいのちすなはちえず、 ただしょうそんず。 よりてすなはち*にんおなじくとなへて 「せったい」 といふ。

夫人即トシ↢王之計↡、及ビテ↢其↡一クス↢前↡。生リテツルニ↠地、命便不↠断、唯損↢手小指↡。因リテ外人同ジクヘテ↢折指太子↡也。

・未生怨

^しょうおん」 といふは、 これ*だいだっ あくしんおこ がゆゑにかのたいたいしゃくにち悪縁あくえん顕発けんぽつるによる

↢未生怨↡者、此因↧提婆達多起スガ↢悪妬之心↡故シテ↢彼太子↡顕↦発スルニ昔日悪縁↥。

^いかんしんして悪縁あくえんおこ0348す。 だいあくしょうにして*為人ひととなりきょうもうなり。 また0467しゅっすといへども、 つねにぶつみょうもんようねたむ。

云何妬心シテ而起↢悪縁↡。提婆悪性ニシテ為人ヒトトナリ匈猛ナリ。雖↢復出家スト↡、恒常 ツネ ↢仏名聞利養↡。

^しかるにちちおうはこれぶつ*檀越だんおつなり。 いちのうちにおいておおようをもつて如来にょらいじょう。 いはく、 こんごん七宝しっぽうみょうじょうぶくひゃくじきとう 一々いちいち色々しきしき みなひゃくしゃなり。 こう*がくし、 ひゃく千万せんまんしゅう讃歎さんだん*にょうして *ぶつ送向そうこうて、 ぶつおよびそうほどこす。

ルニ0689是仏檀越ナリ。於↢一時↡多↢供養↡奉↢上如来↡。謂金・銀・七宝・名衣・上服・百味菓食等、一一色色皆五百車ナリ。香・華・伎楽、百千万衆讃歎囲遶シテ送↢向シテ仏会↡、施↢仏及↡。

^とき調じょうだつ (提婆達多) をはりてしんさらにさかりなり。 すなはち*しゃほつところかひて*身通しんつうがくせんともとむ。 尊者そんじゃかたりていはく、 「なんぢしばらく念処ねんじょがくせよ。 身通しんつうがくすべからず」 。 すでにしょうずれどもしんげず。 さらに尊者そんじゃへんかひてもとむ。 ないひゃく弟子でしとうことごとくひととしておしふるものなし、 みな念処ねんじょがくせしむ。

調達見已リテ妬心更ナリ。即ヒテ↢舎利弗↡求↠学セムト↢身通↡。尊者語リテ人者 ナンヂ セヨ↢四念処↡。不↠須カラ↠学↢身通↡也。既ズレドモ不↠遂↠心。更ヒテ↢余尊者↡求。乃至五百弟子等悉↢人トシテフルモノ↡、皆遣↠学↢四念処↡。

^しょうずることむことずして、 つひになんへんかひてがくす。 なんかたりていはく、 「なんぢはこれわがおとうとなり。 われつうがくせんとほっす。 一々いちいちだいにわれにおし よ」 。 しかるになん*しょたりといへども、 いまだ*しんしょうせず。 *きょうのひそかにつうがくして、 ぶつみもとおい*悪計あくけいおこさんとほっすることをらずなんつひにすなはちびてじょうしょかひて、 だいにこれをおしふ。

ズルコトシテ↠得↠已ムコトヲ、遂ヒテ↢阿難↡学。語リテ↢阿難↡言、汝是我ナリ。我欲↠学セムト↠通。一一次第ヘヨト↠我。然ルニ阿難雖↠得タリト↢初果↡、未↠証↢他心↡。不↠知↫阿兄私密 ヒソカ シテ↠通、欲スルコトヲ↪於↢仏↡起サムト↩於悪計↨。阿難遂ビテヒテ↢静処↡、次第↠之

^*跏趺かふしょうせしめて、 しんをもつてぐることをおしふ。 うごくにたりとおもること一分いちぶん一寸いっすんするおもへ。 いっしゃくいちじょうするおもへ。 しゃいたるに、 *くう無礙むげおもいをなし、 ただちにぎてくう ちゅうのぼるとおもへ。 またしんせっしてくだ もとしょいたるとおもへ。

跏趺正坐セシメテ、先↢将↠心グルコトヲ↟身。似タリト↠動クニ。去ルコト↠地一分・一寸スルト。一尺・一丈スルト。至ルニ↠舎、作↢空無礙↡、直ギテルト↢空中↡想。還シテ↠心、至ルト↢本坐処↡想

^つぎをもつてしんはじめのときること0349一分いちぶん一寸いっすんするとう、 またさきほうのごとくせよをもつてしんげ、 しんをもつてるに、 またしたがひてすでにいたる。 くうのぼ をはりまた*摂取せっしゅしてくだ もとしょいた

↠身↠心、初ルコト↠地一分・一寸スル等、亦如クセヨ↢前↡。以↠身↠心、以↠心グルニ↠身、亦随ヒテ。上↠空リテ、還摂↢取シテ↡下、至↢本坐処↡。

^つぎ身心しんしんがっしてぐとおもへ。 またさきほうおなじく、 一分いちぶん一寸いっすんするとうおわりてまたはじめよ。

↢身心合シテグト↡。還ジク↢前↡、一分・一寸スル等、ヲハリテ而復始メヨ

^つぎ 身心しんしん一切いっさい*ぜつ*しききょうのなかにるとおもぜつおもいをなつぎ 一切いっさいせん だいとうしきしん0468のなかにるに、 くうのごとく*無礙むげにして色相しきそうずとおも

↣身心入ルト↢一切質色境↡、作↢不質↡。次↧一切山・河・大地等色入ルニ↢自身↡、如↠空無礙ニシテ↞見↢色相↡。

^つぎ しんあるいはだいにしてくう*遍満へんまんして坐臥ざがざい、 あるいはあるいはして、 をもつて日月にちがつうごかすとおも。 あるいはしょうしんとなりて*じんのなかにるに、 一切いっさいみな無礙むげおもいをなせ

↧自身或イハニシテ遍↢満シテ虚空↡坐0690臥自在ナリ、或イハイハシテ、以↠手↦動スト日月↥。或イハリテ↢小身↡入ルニ↢微塵↡、一切皆作セト↢無礙↡。

^なんかくのごとだいおしへをはりぬ。 とき調じょうだつ (提婆達多) すでにほう受得じゅとくしをはりて、 すなはちべつしてじょうしょかひて七日しちにちしち一心いっしんせんちゅうして、 すなはち身通しんつうたり。 一切いっさいざいにしてみなじょうじゅすることをたり

阿難如↠是クノ次第リヌ。時調達既受↢得↡已リテ、即シテヒテ↢静処↡七日七夜一心専注シテ、即タリ↢身通↡。一切自在ニシテ皆得タリ↢成就スルコトヲ↡。

^すでにつうをはりてすなはちたい殿でんまえかひて、 くう ちゅうにありてだい神変じんぺんげんず。 しんじょうよりいだ0350し、 しんよりみずいだす。 あるいはへんみずいだし、 へんいだす。 あるいは大身だいしんげんじ、 あるいはしょうしんげんず。 あるいはくうちゅう坐臥ざがし、 こころしたがひてざいなり。

得↠通リテヒテ↢太子殿↡、在リテ↢於空中↡現↢大神変↡。身上ヨリ↠火、身下ヨリ↠水。或イハ左辺↠水、右辺↠火。或イハ↢大身↡、或イハ↢小身↡。或イハ坐↢臥空中↡、随ヒテ↠意自在ナリ

^たいをはりて左右さうひていはく、 「これはこれ何人なんぴと 左右さうたいこたへてまうさく、 「これはこれ尊者そんじゃだいなり」

太子見已リテヒテ↢左右↡曰、此是何人。左右答ヘテ↢太子↡言、此是尊者提婆ナリト

^たいきをはりてしんおおきにかんす。 つひにすなはちげてていはく、 「尊者そんじゃなんぞくだきたらざる」 だいすでにをはりてすなはちしてようとなり、 ただちにたいひざうえかふ。 たいすなはちいだきて、 くちひてこれをもてあそ、 またくちのなかにつばきはく。 ようつひにこれをむ。 しゅかえりて本身ほんしんぶくす。 たいすでにだい種々しゅじゅ神変じんぺん*うたた敬重きょうじゅうくわふ。

太子聞リテ心大歓喜。遂ゲテ↠手ビテ、尊者何ルト↢下↡。提婆既見↠喚ブヲリテシテ↢嬰児↡、直↢太子↡。太子即、嗚シテ↠口↠之、又唾ハク↢口↡。嬰児遂↠之。須臾リテ↢本身↡。太子既↢提婆種種神変↡転↢敬重↡。

^すでにたいしん 敬重きょうじゅうるををはりて、 すなはちちちおうよう因縁いんねんく。 「色別しきべつひゃくじょうくるま ぶつみもとかひてぶつおよびそうにたてまつる たいきをはりてすなはち尊者そんじゃかたる。弟子でしまたよくしきおのおのひゃくしゃととのそなへて、 尊者そんじゃようし、 および衆僧しゅそうほどここと、 かれのごとくならざるべけんや」 だいいはく、 「たい、 このこころおおきにし」

見↢太子心敬重ナルヲ↡已リテ、即↢父供養因縁↡。色別五百乗、向ヒテ↢仏↡奉ルト↢仏及↡。太子聞リテ↢尊者↡。弟子亦能↢具ヘテ色各五百車↡、供↢養尊者↡、及スコト↢衆僧↡、可ケム↠不↠如クナラ↠彼。提婆言、太子、此意大シト

^これより以後いご おおきによう しんうたた高慢こうまんなり。 たとへばつえをもつてあくはなつに、 うたたあくすがごとし。 これまた0351かくのごとし。 たいいま*ようつえ0469をもつてだい貪心とんしんはなつに、 うたたあくすことさかなり。 これによりてそうし、 仏法ぶっぽうかいあらためて、 きょうかいどうなり。

↠此已後大得↢供養↡、心転高慢ナリ。譬ヘバ↧以↠杖ツニ↢悪狗↡、転スガ↦狗↥。此亦如↠是クノ。太子今将↢利養之杖↡打ツニ↢提婆貪心↡、転スコト↠悪ナリ。因リテ↠此↠僧、改メテ↢仏法↡、教戒不同0691ナリ

^ぶつあまねくぼんしょう大衆だいしゅのためにほうきたまふときちて、 すなはち* ちゅうきたりてぶつしたが *しゅならびにもろもろの*法蔵ほうぞう ことごとくわれにぞくしたまへともと。 「そんとしまさに老邁ろうまいしたまへり。 よろしくじょうないにつきてみづから*しょうようしたまふべし」 一切いっさい大衆だいしゅだいがこのきて、 *がくとしてたがひにあひてはなはだ*きょうしょうず。

チテ↧仏普↢凡聖大衆↡説キタマフ↠法之時↥、即リテ↢会中↡従↠仏、索↣於徒衆并法蔵尽付↢嘱シタマヘト↡。世尊年将老邁シタマヘリ。宜シクシト↧就キテ↢静内↡自将養シタマフ↥。一切大衆聞キテ↢提婆↡、愕爾トシテ迭互 タガヒ 相看↢驚怪↡。

^そのときそん、 すなはち大衆だいしゅたいしてだいかたりてのたまはく、 「しゃ目連もくれんとうのすなはちだい*ほうしょうなるすら、 われなほ仏法ぶっぽうをもつてぞくせず、 いはんやなんぢにん つばきらへるものをや」

時世尊、即シテ↢大衆↡語リテ↢提婆↡言、舎利・目連等大法将ナルスラ、我尚不↧将↢仏法↡付嘱↥。況汝痴人、食ヘル↠唾

^ときだいぶつしゅうたいして*にくしたま 、 なほ *毒箭どくせんむねるがごとし、 さらにきょうこころおこす。 この因縁いんねんによりてすなはちたいところかひてともに悪計あくけいろんず。 たいすでに尊者そんじゃて、 きょうしんをもつてじょうもんしていはく尊者そんじゃ今日こんにち顔色げんしきしょうすいることおうじゃくおなじからず

提婆聞↢仏シテ↠衆毀辱シタマフヲ↡、ナホ↢毒箭ルガムネ、更↢痴狂之意↡。藉リテ↢此因縁↡即ヒテ↢太子↡共↢悪計↡。太子既↢尊者↡、敬心ヲモテ承問シテ、尊者、今日顔色憔悴セルコト↠同ジカラ↢往昔↡。

^だいこたへていはく、 「われいましょうすいることはまさしくたいのためなり」

提婆答ヘテ、我今憔悴スルコトハシク為↢太子↡也

^たいうやまひてはく、 「尊者そんじゃ、 わがためになんのこころかあるや」

太子敬ヒテハク、尊者、為↠我↢何↡也

^だいすなはちこたへていはく、 「たいやい0352なや。 そんとしいて*堪任かんにんるところなし。 まさにこれをのぞきてわれみづからぶつるべし。 ちちおうとしり。 またこれをのぞきてたいみづからしょうべし。 新王しんおう新仏しんぶつ治化じけんに、 あにたのしからざらんや」

提婆即ヘテ、太子知ルヤ。世尊年老イテ↠所↢堪任スル↡。当↢除キテ↠之我自↟仏。父王年老イタリ。亦可↣除キテ↠之太子自↢正位↡。新王新仏治化セムニ、豈ラム↠楽シカラ

^たいこれをきてきはめておおきにしんして、 「このせつをなすことなかれ」 といふ。

太子聞キテ↠之瞋怒シテ、勿レトイフ↠作スコト↢是↡。

^またいはく、 「たいいかることなかれ。 ちちおうたいにおいてまつたく恩徳おんどくなし。 はじめたいしょうぜんとほっせしときちちおうすなはちにん百尺ひゃくしゃくろううえにありててんじょうのなかにあたりてしょうぜしめて、 すなはちおとしてせしめんとのぞむ。 まさしくたい福力ふくりきをもつてのゆゑにみょうこんえず、 ただしょう そん。 もししんぜずは、 みづからしょうたまへ。 もつてげんなすれり」

又言、太子莫↠瞋ルコト。父王於↢太子↡全↢恩徳↡。初セシ↠生ゼムト↢太子↡時、父王即メテ↧夫人ヲシテリテ↢百尺↡当リテ↢天↡生↥、即↢堕シテ↠地メムト↟死。正シクテノ↢太子福力↡故命根不↠断、但損↢小指↡。若↠信者、自タマヘ↢小指↡。足レリト↢以スニ↟験

^たいすで0470にこのきて、 さらにかさねてあきらめていはく、 「じつにしかりやいなや」

太子既キテ↢此↡、更メテ、実爾已 シカリ ヤト

^だいこたへていはく、 「これもしじつならば、 われことさらにきたりて*まんをなすべけんや」

提婆答ヘテ、此若不実ナラバ、我可ケム↣故ラニリテ↢漫語↡也

^このによりをはりてつひにすなはちだい悪見あくけんはかりごと信用しんようす。

↢此↡已リテ0692信↢用提婆悪見之計↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)結示順教

^ゆゑに 「ずいじゅん調じょうだつあくきょう」 といふ。

↢「随順調達悪友之教」↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)釈父王幽禁文
              (ⅰ)科節

 ^さん 収執しゅうしゅうおう よりしもいち得往とくおう いたるこのかたは、 まさしくちちおうのために幽禁ゆうきんせらるることをかす。

↢「収執父王」↡下至↢「一不得往」↡已来タハシク↢父王為↠子幽禁セラルルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これ じゃだい悪計あくけいりて、 たちま0353ちに父子ぶしじょうつることをかす。 ただ*罔極もうごくおんしっするのみにあらず、 *ぎゃくひびきこれによりてみちてり

此明↧闍世取リテ↢提婆之悪計↡、頓チニツルコトヲ↦父子之情↥。非↣直失スルノミニ↢於罔極之恩↡。逆リテ↠茲テリ↠路

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

・収執

^たちまちにおうおおふを 「しゅう」 とい、 すでにてざるを 「しゅう」 といふ。 ゆゑに収執しゅうしゅうづく。

オホフヲ↢王↡曰↠収、既ルヲ↠捨↠執。故↢「収執」↡也。

・父王

^」 といふはべつしてしんごくあらわす。 「おう」 とそのくらいあらわす。 「びん」 とそのあらわす。

↢「父」↡者別シテ↢親之極↡也。「王」者彰↢其↡也。「頻婆」者彰↢其↡也。

・幽閉

^幽閉ゆうへいしちじゅう室内しつない」 といふは、 しょすでにおもし、 またかろきにあらず。 あさ*人間にんげんきんずべからず、 まつたくしゅければなり。 ただおう*こうとして*にんつとも、 ただ群臣ぐんしん ればすなはちひさよりこのかた*じょうせるをもつて、 もし厳制ごんせいせずはおそらくは*じょうつう あらん 。 ゆゑにないをしてまじはりをたしめて、 ぢてしちじゅうのうちにく。

↢「幽閉七重室内」↡者、所為既、事亦非↠軽キニ。不↠可カラ↣浅↢人間↡、全ケレバナリ↢守護↡。但以↧王之宮閤トシテツトモ↢外人↡、唯有レバ↢群臣↡則シキヨリコノカ承奉セルヲ↥、若↢厳制↡恐クハラム↢情通↡。故使メテ↢内外ヲシテ↟交リヲ、閉ヂテ↢七重之内↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)釈夫人奉食文
              (ⅰ)科節

^ 国大こくだいにん よりしもみつじょうおう いたるこのかたは、 まさしくにんひそかにおうじきをたてまつることをかす。

↢「国大夫人」↡下至↢「密以上王」↡已来タハ、正シク↣夫人密ルコトヲ↢王↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅱ)釈文

・国大夫人

^国大こくだいにん」 といふは、 これ最大さいだいなることをかす。 「にん」 といふはそのくらいひょうす。 「だい」 といふはそのあらわす。

↢「国大夫人」↡者、此明↢最大ナルコトヲ↡也。言↢夫人↡者標↢其↡也。言↢「韋提」↡者彰↢其↡也。

・恭敬大王

^ぎょう大王だいおう」 といふは、 これにんすでにおうきんぜらるるをるに、 もんきはめてかたくして音信いんしんつうぜず、 おそらくはおうしんみょうことを。

↢「恭敬大王」↡者、此明↧夫人既ルニ↢王身被ルルヲ↟禁、門戸極クシテ音信不↠通、恐クハツコトヲ↢王身命

^つひにすなはち香湯こうとう *滲浴しんよくしてをして清浄しょうじょうならしめて、 すなはち*みつりてづそのり、 のち*かんしょうりてはじめてみつうえ、 すなはち0354じょうてこれをおおひて外衣げえうえにありてはじめて*瓔珞ようらくことつね0471服法ぶくほうのごとくして、 *にんをしてあやしまざらしむ

香湯滲浴シテメテ↢身ヲシテ清浄ナラ↡、即リテ↢酥蜜↡先↢其↡、後リテ↢乾麨↡始↢酥蜜之上↡、即↢浄衣↡覆ヒテ↠之、在リテ↢外衣↡始ルコト↢瓔珞↡、如クニシテ↢常服法↡、令↢外人ヲシテ↟怪

^また瓔珞ようらく りてあないち*ろうをもつてこれをふさいちあなのなかにどう*漿しょうてをはりてまたふさぐに、 ただこれ瓔珞ようらくなりことごとくみなかくのごとく

又取リテ↢瓔珞↡孔一頭以↠之、一頭リテ↢蒲桃漿↡、満リテグニ、但是瓔珞ナリ皆如クス↠此クノ

^しょうごんすることすでにおわりて、 *やうやくあゆみてりておうとあひまみゆることをかす。

荘厳0693スルコトリテヤウヤミテリテ↠宮与↠王相マミユルコトヲ↥。

 ^ひていはく、 しょしんちょく おうまみゆることをゆるさず。 いぶかし、 にん*もんせいせずしてほしいままにることをしむるは、 なんのこころかあるや。

ヒテ、諸臣ケテ↠勅不↠許マミユルコトヲ↠王未審イブカシ、夫人門家不シテ↠制ホシイママムルハ↠得↠入ルコトヲ者、有↢何↡也。

^こたへていはく、 諸臣しょしんことなりて、 またこれ*にんなり。 じょうつうあることをおそきびしくじゅうせいくわへしむることをいたす。 またにんこれ女人にょにんにしてしん*けいなし。 おう*宿しゅくえん ごうおもくしてひさしくちかづきてさいなり。 別体べったい同心どうしんにしてひとをしてりょなからしむることをいたす。 ここをもつてりて、 おうとあひまみゆることをしむ。

ヘテ、諸臣身異ナリテ、復是外人ナリ。恐レテ↠有ルコトヲ↢情通↡、致↠使ムルコトヲ↣厳シク↢重制↡。又夫人者身是女人ニシテ、心↢異計↡。与↠王宿縁業重クシテ、久シクヅキテ夫妻ナリ。別体同心ニシテ、致↠使ムルコトヲ↣人ヲシテカラ↢外慮↡。是シム↢入リテ与↠王相マミユルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)釈父王請法文
              (ⅰ)科節

 ^ 爾時にじ大王だいおうじきしょう よりしもじゅ八戒はっかい いたるこのかたは、 まさしくちちおうきんによりてほうしょうずることをかす。

↢「爾時大王食麨」↡下至↢「授我八戒」↡已来タハ、正シク↢父王因リテ↠禁ズルコトヲ↟法

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

・王得食

^これにんすでにおうまみえをはりて、 すなはちしんじょう*けずりて、 *しょうだんもつおうじゅおうすなはちじき0355しょうじきすることすでにおわりて、 すなはちないにおいてにんじょうすいもとて、 おうあたへてくちすすがしむ

此明↧夫人既マミ↠王リテ、即↢取リテ身上↡、麨団ヲモテ授↢与王得スルコト↠麨リテ、即↢宮内↡夫人求↢得浄水↡、与ヘテ↠王ガシム↠口

・請求加護

^くちきよめをはりてむなしくときくべからず*ちょうしんるところなしここをもつて*けんがっしょうして、 おもてめぐらしてしゃきょう如来にょらいいたして*加護かごしょうすることをかす。

↠口已竟 ヲハ リテ不↠可カラ↢虚シク↟時朝心無↠所↠寄虔恭合掌シテ、廻シテ↠面↢於耆闍↡、致シテ↢敬如来↡請↦求スルコトヲ加護↥。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文
                (a)正釈

・身業敬

^これ身業しんごうきょうかす、 またつうじてごうあり。

此明↢身業↡、亦通ジテ↢意業↡也。

・口業請

^而作是にさぜごん 以下いげ、 まさしくごうしょうかす、 またつうじてごうあり。

「而作是言」已下、正シク↢口業↡、亦通ジテ↢意業↡也。

・目連親友

^大目連だいもくれん是吾ぜごしん」 といふはその二意にいあり。 ただ目連もくれん ぞくにありてはこれおう*別親べっしんなり。 すでにしゅっ てすなはちこれ*もんなり。 こう往来おうらいすることすべて*しょうなし。 しかるにぞくにありてはしんとなし、 しゅっしてはづく。 ゆゑにしんづく。

↢「大目連是吾親友」↡者有↢其二意↡。但目連在リテハ↠俗是王別親ナリ。既↢出家↡即是門師ナリ。往↢来スルコト宮閤↡都↢障礙↡。ルニリテハ↠俗↠親、出家シテハ↠友。故↢親友↡也。

・授我八戒

^願興がんこう慈悲じひじゅ八戒はっかい」 といふは、 これちちおうほう0472うやまじょうふかくして、 ひとおもんずることおのれにぎたることをかす。 もしいまだ*幽難ゆうなんはずは、 仏僧ぶっそうじょうるにかたしとなすらず。 いますでにとらはれて*くついたすによしなし。 ここをもつてただ目連もくれんしょうじて八戒はっかいく。

↢「願興慈悲授我八戒」↡者、此明↢父王敬↠法情深クシテ、重ズルコト↠人ギタルコトヲ↟己。若↠逢↢幽難↡、奉↢請スルニ仏僧↡不↠足↠為スニ↠難シト。今既↠囚↠由↠致スニ↠屈。是但請ジテ↢目連↡受↢於八戒↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅲ)(b)料簡

・礼世尊請目連意

 ^ひていはく、 ちちおうはるかにうやまふには、 そんらいし、 その受戒じゅかいおよびて すなはち目連もくれんしょうずる、 なんのこころかあるや。

ヒテ、父王遥フニハ、先↢世尊0694↡、及ビテ↢其受戒↡即ズルハ↢目連↡、有↢何↡也。

^こたへていはく、 ぼんしょう極尊ごくそんぶつぎたるはなし。 しんかたむけてがんおこすにはすなはちだい (釈尊)らい0356かいはこれしょうえんなり。 ここをもつてただ目連もくれんきたりてさずくることをしょうず。 しかるにおうこころとうとぶこと得戒とくかいぞんず。 すなはちこれあまねし。 なんぞいたわしくげてそんくっせんや。

ヘテ、凡聖極尊無↠過ギタルハ↢於仏↡。傾ケテ↠心スニハ↠願↢大師↡。戒是小縁ナリ。是唯請↢目連リテクルコトヲ↡。然ルニ意者貴ブコト↢得戒↡。即是義周。何イタハシクゲテセム↢世尊↡也。

・請八戒不請余意

 ^ひていはく、 如来にょらい戒法かいほう すなはちあることりょうなるにちちおうただ八戒はっかいのみしょうじてしょうや。

ヒテ、如来戒法乃ルコト無量ナルニ、父王唯請ジテ↢八戒ノミヲ↡不↠請↠余也。

^こたへていはく、 かいはややひろくして*せつじょうおんなり。 おそらくはちゅうげん失念しつねんしてしょうてんすることを。 その八戒はっかい*ぶっきょうきたまふがごとし。 ざいひとしゅっかいたもつ。 このかい*しん極細ごくさいごくきゅうなり。 なんのこころぞしかるとなれば、 ただせつややつづまりて、 ただ一日いちにちいちかぎほうしてすなはちつ。

ヘテ、余戒ヤヤクシテ時節長遠ナリ恐畏オソラク中間失念シテ流↢転スルコトヲ生死↡。其八戒者如↢余仏経キタマフガ↡。在家人持↢出家↡。此持心極細極急ナリ。何ルトナラバ者、但時節ヤヤツヅマリテ、唯限リテ↢一日一夜↡作法シテ

^いかんこのかい*用心ようじんぎょうとの*さいなることる。 *戒文かいもんのなかにつぶさにあらわしていふがごとし。 「*ぶっ*今旦こんたんより*みょうたんいたるまで一日いちにちいち諸仏しょぶつ せっしょうしたまはざるがごとくよくたもやいなや」 と。 こたへていはく、 「よくたも

云何↢此用心トノナルコトヲ↡。如↢戒文シテフガ↡。仏子従↢今旦↡至マデ↢明旦↡一日一夜、如↣諸仏ルガ↢殺生シタマハ↡能ツヤ。答ヘテ、能ツト

^だいにまたいはく、 「ぶっ今旦こんたんよりみょうたんいたるまで一日いちにちいち諸仏しょぶつちゅうとうず、 いんぎょうぜず、 もうせず、 飲酒おんじゅせず、 ふんることをず、 歌舞かぶしょうしおよびきてかんちょうすることをず、 高広こうこうだいじょうのぼることをたまはざるがごとくすべし」

第二又云、仏子従↢今旦↡至ルマデ↢明旦↡一日一夜、如クスベシト↧諸仏不↢偸盗↡、不↠行↠婬、不↢妄語↡、不↢飲酒↡、不↠得↢脂粉ルコトヲ↟身、不↠得↢歌舞唱伎キテ観聴スルコトヲ↡、不ルガ↞得タマハ↠上ルコトヲ↢高広大床↡。

^このかみはちはこれかいにしてさいにあらず。 *ちゅう0357ぎてじきすることを、 このいちはこれさいにしてかいにあらず。 これらの諸戒しょかいみな諸仏しょぶつきてしょうとなす。 なにをもつてのゆゑにただぶつぶつとのみ*正習しょうじゅうともにつくしたまへり。 ぶつのぞきてげん*あくじゅうとうなほあり0473。 このゆゑにきてしょうなさず。 ここをもつてることをこのかい用心ようじんぎょうきはめてこれ*さいきゅうなり。

是戒ニシテ↠斎。不↠得↢過ギテ↠中スルコトヲ↡、此是斎ニシテ↠戒。此等諸戒皆引キテ↢諸仏↡為↠証。何テノ唯仏ノミ↠仏正習倶シタマヘリ。除キテ↠仏已還悪習等ナホ。是不↢引キテ↟証也。是得↠知ルコトヲ。此用心起行是細急ナリ

^またこかいは、 ぶつ八種はっしゅ*しょうぼうありときたまへり。 もしひと一日いちにちいちつぶさにたもちておかざれば、 所得しょとくどくにんてんじょうきょうがいちょうせり。 *きょうひろきたまふがごとし。 このやくあるがゆゑに、 ちちおうをして日々にちにちにこれをけしむることをいたす。

又此ニハ仏説キタマヘリ↠有リト↢八種勝法↡。若人一日一夜具チテレバ↠犯、所得功徳超↢過セリ人・天・二乗境界↡。如↢経0695キタマフガ↡。有ルガ↢斯益↡故、致↠使ムルコトヲ↢父ヲシテ日日↟之

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)釈父王受法文
              (ⅰ)科節

 ^ろく だい目連もくれん よりしもおう説法せっぽう いたるこのかたは、 そのちちおう しょうによりてしょうぼうこうむることをることをかす。

↢「時大目連」↡下至↢「為王説法」↡已来タハ、明↢其王因リテ↠請ルコトヲ↟蒙ルコトヲ↢聖法↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これ目連もくれんしんてはるかにちちおうしょう りて、 すなはち神通じんずうおこして*だんのあひだのごとくにおうところいたることをかす。

此明↧目連得↢他心智↡遥リテ↢父請意↡、即シテ↢神通↡如クニ↢弾指↡到ルコトヲ↦於王↥。

^またおそらくはひと神通じんずうそうざらん。 ゆゑに*おうきてたとへとなす。 しかるに目連もくれん通力つうりきは、 一念いちねんのあひだにてんめぐることひゃくせんそうなり。 あにおうるいをなすことをんや 。 かくのごとき *きょうすなはちしゅあり。 つぶさにくべからず。 ¬げんきょう¼ につぶさにきたまふがごとし。

又恐クハ人不ラム↠識↢神通之相↡。故キテ↢快鷹↡為↠喩。然ルニ目連通力、一念之頃ルコト↢四天下↡百千之帀ナリ。豈↢与↠鷹為スコトヲ↟類也。如↠是クノ比校↢衆多↡。不↠可カラ↢具↡。如↢¬賢愚経¼具キタマフガ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅲ)釈文

・受戒

^にち0358にちにょ授王じゅおう八戒はっかい」 といふは、 これちちおう いのちべて目連もくれんしばしばきたりてかいけしむることをいたすことをかす。

↢「日日如是授王八戒」↡者、此明↧父王延ベテ↠命スコトヲ↞使ムルコトヲ↢目連数リテ↟戒

 ^ひていはく、 八戒はっかいすでにすぐれたりといふは、 ひとたびくるにすなはちりぬ。 なんぞ 日々にちにちにこれをるをもちゐん

ヒテ、八戒既↠勝レタリト者、一タビクルニリヌ。何ヰム↢日日クルヲ↟之

^こたへていはく、 やまたか いとはず、 うみふか いとはず、 かたな いとはず、 あかきをいとはず、 ひとぜんいとはず、 つみのぞこるをいとはず、 げんとくいとはず、 ぶつしょういとはず。

ヘテ、山不↠厭↠高キヲ、海不↠厭↠深キヲ、刀不↠厭↠利キヲ、日不↠厭↠明キヲ、人不↠厭↠善、罪不↠厭↠除コルヲ、賢不↠厭↠徳、仏不↠厭↠聖

^しかるにおうこころはすでにしゅうきんせられて、 さらにしんこうむらず。 念々ねんねんのうちにひところすことをおそる。 これがためにちゅうしんかたむけ、 あおぎて八戒はっかい たのむ。 ぜんむことますますたかきことを望欲もうよくして*来業らいごうせん

ルニ意者既レテ↢囚禁↡、更不↠蒙↢進止↡。念念之中↢人スコトヲ↡。為↠此昼夜↠心、仰ギテ↢八戒↡。望↢欲シテムコト↠善キコトヲ↡擬↠資セムト↢来業↡。

・説法

 ^そん亦遣やくけん富楼那ふるなおう説法せっぽう」 といふは、 これそん 慈悲じひこころおもくしておう愍念みんねんしたまふに、 たちまちにしゅうろうひて、 おそらくはすいしょうずることを。

↢「世尊亦遣富楼那為王説法」↡者、此明↧世尊慈悲意重クシテ、愍↢念シタマフニ↡、忽ヒテ↢囚労↡、恐クハズルコトヲ↢憂悴

^しかるに*富楼那ふるなしょう弟子でし0474のなかにおいてもつともよく説法せっぽうし、 よく方便ほうべんありてひとしん開発かいほつす。 この因縁いんねんのために、 如来にょらい*発遣はっけんしておうのためにほうて、 もつてのうのぞかしめたまふことをかす

ルニ富楼那者於↢聖弟子↡最説法、善リテ↢方便↡開↢発↢此因縁↡、如来発遣シテ↠王キテ↠法、以カシメタマフコトヲ↦憂悩↥。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)釈多日不死文
              (ⅰ)科節

^しち にょけん よりしも顔色げんしきえつ いたるこのかたは、 まさしくちちおうじき聞法もんぼうとによりてにちせざること0359かす

↢「如是時間」↡下至↢「顔色和悦」↡已来タハシク↧父王因リテ↢食聞法トニ↡多日不ルコトヲ↞死

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

^これ まさしくにん多時たじじきをたてまつりてもつてかつのぞき、 しょう (目連・富楼那) また戒法かいほうをもつてうちにたすけてよくおうこころひら じきはよくいのちべ、 戒法かいほう*じんやしなひて、 しっうれひをもうじて、 顔容げんようえつならしむることをいたことをかす

此正シク0696↧夫人多時リテ↠食↢飢渇↡、二聖又以↢戒法↡内ケテ↢王↠命、戒法ヒテ↠神、失↠苦ジテ↠憂、致スコトヲ↞使ムルコトヲ↢顔容和悦ナラ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)

^じょうらいしちどうありといへども、 ひろごんえんかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢七句不同↡、広↢禁父↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ b 【禁母縁】
          (一)

【7】 ^さんごんえんのなかにつきてすなはちそのはちあり。

キテ↢禁母↡即↢其八↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)
            (Ⅰ)釈問父音信文
              (ⅰ)科節

^いちには じゃ よりしも存在ぞんざい いたるこのかたは、 まさしくちち音信いんしんふことをかす。

ニハ↢「時阿闍世」↡下至↢「由存在耶」↡已来タハシク↠問フコトヲ↢父音信↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これ闍王じゃおうちちきんずること日数にっしゅすでにおおし。 ひとまじはりすべてえ、 水食すいじきつうぜずして*しち有余うよなりいのちおわるべ。 このねんをなしをはりて、 すなはちもんいたりて守門しゅもんのものにひて、 「ちちおういま なほ存在ぞんざいせりや」 といふことをかす

此明↧闍王禁ズルコト↠父日数既ジテ、水食不シテ↠通二七有余ナリ命応↠終↢是↡已リテリテ↢宮門↡問ヒテ↢守門↡、父王今者 イマ 猶存在セリトイフコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)料簡
                (a)

 ^ひていはく、 もしひと一餐いちざんいいじきして、 かぎ七日しちにちいたりぬればすなはちす。 ちちおう*三七さんしちたるをもつてはかるに、 いのちゆべきことうたがいなし。 闍王じゃおうなにをもつてかただちにひてもんちちおういましをはれりや」 といはずして、 いかんぞいたして 「なほ存在ぞんざいりや」 とへるは、 なんのこころかあるや。

ヒテ、若人食シテ↢一餐之飯↡、限リヌレバ↢七日↡即。父王以↠経タルヲ↢三七↡計ルニキコト↢命断↡無↠疑。闍王何テカシテ↣直ヒテ、曰↢門家、父今者 イマ レリ↡、云何シテ↠疑而問ヘル↢猶存在セリヤト↡者、有↢何↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(b)

^こたへていはく、 これはこれ闍王じゃおう*みつといなり。 ただおもんみれば*ばんしゅなれば*0360どうずいなるべからず。 ちちおうすでにこれてんしょうこころしたし、 いひて 「せりや」 とふべきことなし。 おそらくはとがとうにありて、 もつて*譏過きかじょうずることを 。 ただおもんみれば内心ないしんひょうして、 くちに 「ありや」 とへるは、 なが*あくぎゃくめんとほっするがためなり。

ヘテ、此是闍王意密問也。但以レバ万基之主ナレバ、挙動不↠可カラ↢随宜ナル↡。父王既是天性情親、無↠容キコト↢言ヒテ↟死セリヤト。恐クハ失在リテ↢当時↡、以ズルコトヲ↢譏過↡。但以レバ内心シテ↠死、口ヘル↠在リヤト者、為↠欲スルガ↠息メムト↢永悪逆之↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)釈門家具答文
              (ⅰ)科節

 ^ 守門しゅもんにんびゃくごん よりしも不可ふか禁制きんぜい いたるこのかた0475は、 まさしくもんをもつてつぶさにこたふることをかす。

↢「時守門人白言」↡下至↢「不可禁制」↡已来タハシク↢門家以↠事フルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これ じゃさきに 「ちちおうありや」 とへば、 いまつぎもんとうすることをかす。

此明↧闍世前ヘバ↢父王在リヤト↡者、今次門家奉答スルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

・奉食事

^びゃくごん大王だいおう国大こくだいにん」 といふ 以下いげは、 まさしくにんひそかにおうじきをたてまつるおうすでにじき じきよくいのちべて、 にちといへどもちちいのちなほぞん。 これすなはちにんこころにして、 このもんとがにはあらずといふことをかす

「白言大王国大夫人トイフ」已下シク↧夫人密ルニ↢王↡、王既得↠食食能ベテ↠命、雖↠経↢多日↡父0697猶存此乃夫人之意ニシテ、非ズトイフコトヲ↦是門家之過ニハ↥。

 ^ひていはく、 にんじきをたてまつるに、 うえしょうころもしたひそかにおお出入しゅつにゅう往還おうげんするに、 ひとることることなし。 なんがゆゑぞもんつぶさににんじきをたてまつるあらわ

ヒテ、夫人奉ルニ↠食、身リテ↠麨。出入往還スルニ、無↢人ルコト↟見ルコトヲ。何門家具↢夫人奉↠食之事↡。

^こたへていはく、 一切いっさい*みつひさしくぎょうずべからず。 たとひたくみにかたかくせども、 かえりて彰露あらわちちおうすでにきんぜられてないにあり、 にん日々にちにち往還おうげんす。 もしひそかにしょうちてじきせしめずは、 おういのち0361くることるによしなし。

ヘテ、一切私密不↠可カラ↢久シク↡。縦セドモ、事還リテ彰露 アラハ 。父王既ゼラレテ↢宮内↡、夫人日日往還。若↢密チテ↠麨セシメ↡、王命無↠由↠得ルニ↠活クルコト

^いま 「みつ」 といふは、 もんのぞめてにんこころぶるなり。 にんかくして*にんらずとおもへども、 そのもんことごとくもつてこれをさとらざらんや。 いますでにきわまりて、 あひかくすによしなし。 ここをもつて一々いちいち つぶさにおうかひてく。

今言↠密者、望メテ↢門家↡述ブル↢夫人↡也。夫人謂ヘドモ↢密シテ外人不↟知、不ラムヤ↢其門家尽↟之。今既事窮リテ、無↠由↢相隠スニ↡。是一一具ヒテ↠王

・説法事

 ^沙門しゃもん目連もくれん」 といふ以下いげは、 まさしくしょう (目連・富楼那) くうあがりてらいもんによらず日々にちにち往還おうげんしておうのためにほう 大王だいおうまさにるべし*にん進食しんじきさきおうきょう ず、 ゆゑにあへて*遮約しゃやくせずしょうくうじょうず、 これまた*門制もんせいによらずといふことをかす

↢「沙門目連」↡已下、正シク↧二聖騰リテ↠空来去、不↠由↢門路日日往還シテ↠王↠法大王当↠知夫人進食先不↠奉↢王↡、所以不↢敢遮約二聖乗↠空、此亦不トイフコトヲ↞猶↢門制↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)釈闍王瞋怒文
              (ⅰ)科節

^さん じゃもん此語しご よりしも欲害よくがい其母ごも いたるこのかたは、 まさしくおうしんかす。

↢「時阿闍世聞此語」↡下至↢「欲害其母」↡已来タハシク↢世王瞋怒↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これ闍王じゃおうすでにもん*分疏ぶんしょきをはりて、 すなはちにんおいしんあくおこし、 くちあくぶることをかす。

此明↧闍王既↢門家分疏↡已リテ、即↢夫人↡心↢悪怒↡、口ブルコトヲ↦悪辞↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

・逆悪

^また三業さんごうぎゃく三業さんごうあくおこす。 父母ぶもののしりてぞくとなすをごうぎゃくく。 沙門しゃもんののしるを ごうあくく。 けんりてははころさんとするを身業しんごうぎゃくづく。 しんしょしんをもつてしゅとなす、 すなはち0476ごうぎゃくづく。 また*ぜん方便ほうべんあくとなし、 *のち正行しょうぎょうぎゃくとなす。

又起↢三業三業トヲ↡。罵リテ↢父母↡為スヲ↠賊↢口業↡。罵ルヲ↢沙門↡者名↢口業↡。執リテ↠剣サムトスルヲ↠母↢身業↡。身口所為以↠心スヲ↠主、即↢意業↡。又復前方便↠悪、後正行↠逆

・罵其母

^我母がもぞく」 といふ 以下いげ、 まさしくくちあくいだすことをかす。 いかんぞははののしりて、 「ぞく0362なりぞくともなればなり」 となす。 ただ 闍王じゃおうもとしんあだちちいた はやおわらざることうらむにはは すなはちしてためにかてすすむるが ゆゑにせざらしむ。 このゆゑにののしりて、 「わがはははこれぞくなり、 ぞくともればなり」 といふ。

↢「我母是賊」↡已下シク↣口スコトヲ↢悪辞↡。云何リテ↠母、為↢賊ナリ賊之伴ナレバナリト↡也。但闍王心致↢怨於父↡、恨ムニ↠不ルコトヲ↢早↡、母乃シテムルガ↠糧↠不↠死0698。是リテ↢我是賊ナリ、賊之伴ナレバナリト↡也。

・瞋二聖

^沙門しゃもん悪人あくにん」 といふ以下いげは、 これ じゃははじきすすむることいか 、 また*沙門しゃもんおうのためにらいすることをきて、 さらに瞋心しんしんおこさしむることをいたことをかす。 「ゆゑになんのしゅじゅつありてか悪王あくおうをしてにちせざらしむ 」 といふ。

↢「沙門悪人」↡已下此明↧闍世瞋↢母ムルコトヲ↟食、復聞キテ↢沙門与↠王来去スルコトヲ↡、致スコトヲ↞使ムルコトヲ↣更↢瞋心↡。故↧有リテカ↢何呪術↡而令ムト↦悪王ヲシテ多日↞死

・欲害母

^そくしゅうけん」 といふ以下いげ、 これおういかさかりにしてぎゃくははおよぶことをかす。 なんぞそれいたましきかな こうべりてけんしんみょうたちまちにしゅにあり。 *慈母じもがっしょうしてこうべれ、 *く。 にんそのときあつあせあまねくながれて、 *心神しんじん悶絶もんぜつす。 あああわれなるかな、 *怳忽こうこつのあひだにこのなんへること

↢「即執利剣」↡已下此明↣世王ニシテ、逆及ブコトヲ↢於母↡。何其痛マシキ哉。撮リテ↠頭↠剣。身命頓チニ↢須臾↡。慈母合掌シテ↠身↠頭、就↢児之手↡。夫人爾時熱汗遍レテ、心神悶絶。嗚呼哀レナル哉、怳忽之間ヘルコト↢斯苦難↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)釈二臣切諌文
              (ⅰ)科節

^ しんみょうわつ月光がっこう よりしも却行きゃくぎょう退たい いたるこのかたは、 まさしくしん (*月光・*耆婆) *切諌せっかんしてゆるさざることをかす。

↢「時有一臣名曰月光」↡下至↢「却行而退」↡已来タハシク↢二臣切諌シテルコトヲ↟聴

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^これ しんすなはちこれくにしょう立政りっせいこうなり万国ばんこく*八方はっぽう*ほうじゅうすることをんとのぞたちまちに闍王じゃおう*ぼつぎゃくおこけんりてそのははころさんとほっるを、 このあくるにしのびず。 つひに耆婆ぎば*かおおかしてかんもうくることを0363かす。

此明↩二臣是国之輔相、立政之綱ナリ↠得ムト↢万国↠名、八方昉習スルコトヲ↧闍王シテ↢於勃逆↡執リテ↠剣スルヲ↞殺サムト↢其↡、不↠忍↠見ルニ↢斯悪事与↢耆婆↡犯シテ↠顔クルコトヲ↝諌也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

^」 といふは、 闍王じゃおうははころさんとほっするときあたれり。 「いち大臣だいじん」 といふはそのくらいあらわす。 「月光がっこう」 といふはそのあらわす。 「そうみょう多智たち」 といふはそのとくあらわす。

↢「時」↡者、当レリ↢闍王欲スル↠殺サムト↠母↡也。言↢「有一大臣」↡者彰↢其↡也。言↢「月光」↡者、↢其↡也。言↢「聡明多智」↡者↢其↡也。

^ぎゅう耆婆ぎば」 といふは、 耆婆ぎばまたこれちちおうにして*にょなり。 たちまちに*きょうははにおいてぎゃくおこすをて、 つひに月光がっこうおなじくいさ0477

↢「及与耆婆」↡者、耆婆亦是父王之子ニシテ、奈女之児ナリ。忽↢家兄↠母スヲ↟逆、遂与↢月光↡同ジク

^おうらい」 といふは、 おほよそ*大人だいにん*かんせんとほっするほうかならずすべからくはいもうけてもつてしんきょうあらわすべし。 いまこのしん (月光・耆婆) またしかなり。 しんきょうもうけておうしん覚動かくどうおさげてまさにほんぶ。

↢「為王作礼」↡者、凡スル↣諮↢諌セムト大人↡之法、要↣設ケテ↠拝、以↢身敬↡。今此二臣亦爾ナリ。先ケテ↢身敬↡覚↢動↡、斂↠手ゲテ↠躬↢本意↡也。

^また 「びゃくごん大王だいおう」 といふは、 これ 月光がっこうまさしくことばべんとほっして、 闍王じゃおうしんひら *ちょうらんすることをんとのぞことをかす。 この因縁いんねんのためのゆゑに、 びゃく」 をもちゐる

又「白言大王トイフ」者、此明↢月光正シクシテ↠陳ベムト↠辞、望ムコトヲ↟得ムト↢闍王開↠心0699スルコトヲ↡。為↢此因縁↡故、須ヰル↢先↡。

^臣聞しんもん毘陀びだろんきょうせつ」 といふは、 これ ひろ*こんしょ歴帝れきていもんくことをかす。 じん いはく、 「いふことてんあずからざるはくんづるところなり」 。 いますでにかんかろからずあにごんをもつて妄説もうせつすべけんや。

↢「臣聞毘陀論経説」↡者、此明↣広クコトヲ↢古今書史、歴帝之文記↡。古人云、言フコトルハアヅカ↠典君子ナリト↠慚ヅル。今既諌事不↠軽カラケムヤ↢虚言ヲモテ妄説↡。

^劫初こうしょらい」 といふはそのときあらわす。

↢「劫初已来」↡者↢其↡也。

^しょ悪王あくおう」 といふは、 これ そうじてれいぼうぎゃくひとひょうすることをかす。

↢「有諸悪王」↡者、此明↣総ジテスルコトヲ↢非礼暴逆之人↡也。

^貪国とんごく位故いこ」 といふは、 これ *非意ひいちちしょ貪奪とんだつするところをかす。

↢「貪国位故」↡者、此明↤非意↣貪↢奪スル坐処↡也。

^殺害せつがい其父ごぶ」 といふは、 こ0364 すでにちちにおいてあくおこことはひさしくとどべからず。 ゆゑにすべからくいのちだんべしといふことをかす。

↢「殺害其父」↡者、此明↧既↠父スコトハ↠悪不↠可カラ↢久シクシトイフコトヲ↞断↠命也。

^一万いちまん八千はっせん」 といふは、 これおういまちちころことは、 かれと類同るいどうすることをかす。

↢「一万八千」↡者、此明↢王今殺スコトハ↠父、与↠彼類同スルコトヲ↡也。

^曽聞ぞうもん有無うむ道害どうがい」 といふは、 これいにしえよりいまいたるまでちちがいしてくらい ることは*じゃく ややだんずるもくにとんじてははころことはすべてせるところなきことをかす。 もし劫初こうしょ らいろんぜば、 悪王あくおう くにとんしに、 ただそのちちころして慈母じもくわへず。

↢「未曽聞有無道害母」↡者、此明↣自↠古至ルマデ↠今、害シテ↠父ルコトハ↠位史籍ヤヤズルモ、貪↠国スコトハ↠母キコトヲ↢記セル処↡。若ゼバ↢劫初已来↡、悪王貪シニ↠国、但殺シテ↢其↡不↠加↢慈母↡。

^これすなはちいにしえいまことなるを大王だいおういまくにとんじてちちころす。 ちちはすなはちくらいとんずべきことあり。 いにしえ類同るいどうせしむべし。 はははすなはちくらいもとむべきなし。 よこさまぎゃくがいくわふ。 ここをもつて いまをもつてむかしす。

此則↢古ナルヲ↟今。大王今者 イマ ↠国↠父。父↢位キコト↟貪。可↠使↣類↢同於古↡。母↢位↟求。横↢逆害↡。是↠今↠昔也。

^おういまこのせつをなさば、 せつしゅけがさん」 といふ。 「せつ」 といふは、 すなはちこれしょう高元こうげん王者おうじゃしゅなり代々だいだいそうじょうす。 あに凡砕ぼんさいおなじからんや。

↧「王今為サバ↢此殺母↡者、汚サムト↦刹利種↥」也。↢「刹利」↡者、乃是四姓高元、王者之種ナリ、代代相承。豈ジカラムヤ↢凡砕↡。

^しん忍聞にんもん」 といふ0478は、 おうあくおこして宗親そうしん損辱そんにくするをあくしょう流布るふせん。 わがしょうもうざんするにところなし。

↢「臣不忍聞」↡者、↣王起シテ↠悪損↢辱スルヲ宗親↡、悪声流布セム。我之性望恥慚スルニ↠地。

^せん陀羅だら」 といふはすなはちこれしょう下流げるなり。 これすなはちしょうきょうあくいだきてじんならはず。 ひとかわたりといへども、 おこなきんじゅうおなじ。 おうじょうぞくして、 してばんのぞしゅなり。 いますでにあくおこしておんくわふ、 かの下流げるとなんぞこと0365ならんや。

↢「是旃陀羅」↡者是四姓之下流也。此乃性懐キテ↢匈悪↡不↠ナラ↢仁義↡。雖↠著タリト↢人↡、行↢禽獣↡。王シテ↢上族↡、押シテ↢万基↡之主ナリ。今既シテ↠悪↠恩0700、与↢彼下流↡何ナラム也。

^不宜ふぎじゅう」 といふはすなはち二義にぎあり。 いちにはおういまあくつくりて*風礼ふうれいぞんぜず。 *きょうおうしんしゅう 、 あにせん陀羅だらしゅたらしめんや。 これすなはちじょうひんしゅつするこころなり。 にはおうくににありといへどもわが宗親そうしんそんぜば とおほうひんしてなが*もんたんにはしかず。 ゆゑに不宜ふぎじゅうといふ。

↢「不宜住此」↡者↢二義↡。一者王今造リテ↠悪不↠存↢風礼↡。京邑神州、豈メム↢旃陀羅ヲシテ↟主也。此即擯↢出スル宮城↡意也。二者王雖↠在リト↠国セバ↢我宗親↡、不↠如↧遠シテ↢他方↡永タムニハ↦無聞之地↥。故↢「不宜住此」↡也。

^大臣だいじんせつ此語しご」 といふ以下いげは、 これ しん (月光・耆婆)直諌じきかんせつにして、 ことばきはめてあらくして、 ひろこんきて、 おうしんかいすることをんとのぞむことをかす。

↢「時二大臣説此語」↡已下此明↧二臣直諌切ニシテ、語極クシテ、広キテ↢古今↡、望ムコトヲ↞得ムト↢王心開悟スルコトヲ↡。

^しゅ按剣あんけん」 といふは、 しんみづからしゅちゅう*けんあんずるなり。

↢「以手按剣」↡者、臣自ズル↢手中↡也。

 ^ひていはく、 *かんあくにしてかおおかすことをけず君臣くんしんすでにそむけり。 なにをもつてかめぐしてただちにらずして、 すなはち*却行きゃくぎょう退たいすといふや。

ヒテ、諌辞麁悪ニシテ不↠避↠犯スコトヲ↠顔、君臣之義既ケリ。何テカシテ↢廻シテ↠身↡、乃↢「却行而退スト」↡也。

^こたへていはく、 ごんおうさからふといへども、 がいしんむることをのぞむ。 またおそらくは*瞋毒しんどくいまだのぞこらず、 けたるけんおのれをあやふくすることを。 ここをもつてけんあんてみづからふせぎて、 却行きゃくぎょうして退しりぞく。

ヘテ、麁言雖↠逆フト↠王、望↠息ムルコトヲ↢害母之心↡。又恐クハ瞋毒未↠除コラ、繋ケタル剣危クスルコトヲ↠己。是ジテ↠剣ギテ、却行シテ而退

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)釈世王生怖文
              (ⅰ)科節

 ^ じゃきょう よりしもにょ不為ふい我耶がや いたるこのかたは、 まさしくおうおそれをしょうずることをかす。

↢「時阿闍世驚怖」↡下至↢「汝不為我耶」↡已来タハ、正シク↢世王生ズルコトヲ↟怖

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^これじゃすでにしんかんせつなるをまたけんあんるをて、 しんわれをそむきてかのちちおうかひてさらに*けいしょう0366ることをおそ*じょうをしてやすからざらしむることをいたことをかす

此明↩闍世既見↢二臣諌辞麁切ナルヲ↡、又覩↢按ジテ↠剣而去ルヲ↡、恐↧臣背キテ↠我ヒテ↢彼↡更ズルコトヲ↦異計↥、致スコトヲ↝使ムルコトヲ↢情地ヲシテ↟安カラ

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文

^ゆゑに 「こう」 としょうす。 かれすでにわれを、 たれがためにすといふことをらず。 しん うたがひてけっせず。 つひ0479にすなはちくちひてこれをつまびらかにす。 ゆゑに 「耆婆ぎばにょ不為我ふいが」 といふ。

↢惶懼↡。彼既↠我、不↠知↠為ニストイフコトヲ↠誰。心疑ヒテ不↠決。遂ヒテカニス↠之。故↢「耆婆汝不為我也」↡。

^耆婆ぎば」 といふはこれおうおとうとなり。 じん いはく、 「いえすいあるときは、 しんにあらざればすくはず」 。 なんぢすでにこれわがおとうとなれば、 あに月光がっこうどうぜんや。

↢耆婆↡者是王之弟也。古人云、家ルトキハ↢衰禍↡、非ザレバ↠親↠救。汝既是我ナレバ者、豈ゼム↢月光↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅵ)釈二臣重諌文
              (ⅰ)科節

^ろく 耆婆ぎばびゃくごん よりしもしん莫害まくがい いたるこのかたは、 しん (月光・耆婆) かさねていさむることをかす。

↢「耆婆白言」↡下至↢「慎莫害母」↡已来タハ、明二臣重ムルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これ耆婆ぎばまことをもつて大王だいおうこたふることをかす。 「もしわれらを*しょうなさんほっば、 ねがはくはははがいすることなかれ」 となりここに直諌じきかんすることおはりぬ。

此明↣耆婆実ヲモテフルコトヲ↢大王↡。若セバ↧得↢我等↡為0701サムト↞相者、願クハレト↠害スルコト↠母也。此直諌スルコトリヌ

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅶ)釈闍王受諌文
              (ⅰ)科節

^しち 王聞おうもん此語しご よりしも止不しふがい いたるこのかたは、 まさしく闍王じゃおうかんけてはは*ざんみょうゆるすことをかす。

↢「王聞此語」↡下至↢「止不害母」↡已来タハシク↣闍王受ケテ↠諌ユルスコトヲ↢母残命↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

^これ おうすでに耆婆ぎばかんをはりて、 しんこんしょう さき所造しょぞうぢて、 すなはちしんかひてあわれみをもと いのちよりてすなはちははゆるしてなんのがれしめ しゅ ちゅうけん もとはこげんすることをかす。

此明↧世王既得↢耆婆↡已リテ、心↢悔恨↡、愧ヂテ↢前所造↡、即ヒテ↢二臣↡求↠哀ミヲ↠命リテユルシテ↠母レシメ↢於死↡、手中之剣還↦帰スルコトヲハコ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅷ)釈闍王禁母文
              (ⅰ)科節

^はち ちょく内官ないかん よりしもりょうすい いたるこのかたは、 そのおうしんははきんずることをかす。

↢「勅語内官」↡下至↢「不令復出」↡已来タハ↢其世王余瞋禁ズルコトヲ↟母

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅷ)(ⅱ)述意

^これ おうしんかんけてははゆるすといへども、 なほしん0367ありてほかにあらしめず内官ないかんちょく じんへいて、 さらにいだしてちちおうとあひまみ しむることなきことをかす。

此明↩世王雖↧受ケテ↢臣ユルスト↞母、猶有リテ↢余瞋↡不↠令↠在↠外勅↢語内官↡閉↢置シテ深宮↡、更キコトヲ↝令ムルコト↧出シテ与↢父王↡相マミ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (三)

^じょうらい はっどうありといへども、 ひろごんえんかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢八句不同↡、広↢禁母↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ b 【厭苦縁】
          (一)

【8】 ^えんえんのなかにつきてすなはちそのあり。

キテ↢厭苦↡即↢其四↡。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)
            (Ⅰ)釈為子幽禁文
              (ⅰ)科節

^いちには だい よりしも憔悴しょうすい いたるこのかたは、 まさしくにんのために幽禁ゆうきんせらるることをかす。

↢「時韋提希」↡下至↢「憔悴」↡已来タハシク↢夫人為↠子幽禁セラルルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これにんなんまぬかるといへども、 さらにじんかれて、 *守当しゅとうきはめてかたくしてづることをるによしなしただ念々ねんねんうれひをいだくことのみありて、 ねんしょうすいすることをかす。

此明↧夫人雖マヌカルト↢死↡、更カレテ深宮↡、守当極クシテ↠由↠得ルニ↠出ヅルコトヲ唯有リテ↢念念クコトノミ↟憂、自然憔悴スルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅲ)傷歎

^しょうたんしていはく、 「わざわいなるかな今日こんにち闍王じゃおう びてじんちゅうげんつな、 またじんなん遇値

傷歎シテ、禍ナル哉今日苦、遇↧値 ア フト闍王喚ビテ利刃中間ツナ、復置↢深宮↡難↥。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅳ)料簡

 ^ひていはく、 にんすでにまぬかれて0480ることを。 よろしく*らくすべし、 なにによりてかかへりてさらにしゅうするや。

ヒテ、夫人既得↢マヌカレテ↠死ルコトヲ↟宮。宜シク↢訝楽↡、何リテカリテ愁憂スル也。

^こたへていはく、 すなはちさん どうあり。

ヘテ、即↢三義不同↡。

^いちにはにんすでにみづからぢられて、 さらにひとじきすすめておうあたふる なしおうまたわがなんにあるをきてうたたさらにしゅうせんいますでにじきなくしてうれひをくわへば、 おうしんみょうさだめてひさしからざるべきことをかす。

ニハ↧夫人既レテ↠閉、更↢人メテ↠食フル↟王王又聞キテ↢我ルヲ↟難愁憂セム今既クシテ↠食加ヘバ↠憂者、王之身命定メテキコトヲ↞不↠久シカラ

^にはにんすでにしゅうなんこうむ、 いづれのときにかさらに如来にょらい (釈尊)みかおおよびも0368ろもろの弟子でしたてまつらんといふことをかす。

ニハ↧夫人既↢囚難↡、何ニカタテマツラムトイフコトヲ↦如来之面0702弟子↥。

^さんにはにんきょうけてきんぜられじんにあり内官ないかん守当しゅとうして*水泄すいせつすらつうぜず*旦夕たんせきのあひだただ死路しろのみうれふることをかす。

ニハ↧夫人奉リテ↠教ゼラレテ↢深宮内官守当シテ水泄スラ不↠通旦夕之間唯愁スルコトヲ↦死路ノミヲ↥。

^このさん ありて身心しんしん切逼せっぴつす。 しょうすいすることなきことをんや。

リテ↢斯三義↡切↢逼身心↡。得↠無キコトヲ↢憔悴スルコト↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)釈夫人請仏文
              (ⅰ)科節

 ^ 遥向ようこうしゃ崛山くっせん よりしも挙頭こずきょう いたるこのかたは、 まさしくにんきんによりてぶつしょうこころぶるところあることをかす。

↢「遥向耆闍崛山」↡下至↢「未挙頭頃」↡已来タハシク↢夫人因リテ↠禁↠仏、意ルコトヲ↟所↠陳ブル

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これにんすでにしゅうきんにありて、 しん仏辺ぶっぺんいたることをるによしなしただ*単心たんしんのみありて、 おもてしゃかへ 、 はるかにそんらいしたてまつりて、 「ねがはくはぶつ慈悲じひ弟子でししゅうこころ*ひょうしたまへ」 といふことをかす。

此明↧夫人既リテ↢囚禁↡、自身無↠由↠得ルニ↠到ルコトヲ↢仏辺唯有リテ↢単心ノミ↡、面↢耆闍↡、遥シタテマツリテ↢世尊↡、願クハ慈悲、表↦知シタマヘトイフコトヲ弟子愁憂之意↥。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

^如来にょらいざいしゃく之時しじ」 といふ以下いげ、 これ二義にぎあり。

↢「如来在昔之時」↡已下↢二義↡。

^いちにはちちおういまだきんぜられざるときは、 あるいはおうおよびわがしたしく仏辺ぶっぺんいたるべし、 あるいは如来にょらいおよびもろもろの弟子でし したしくおうしょうくべし。 しかるにわれおよびおうともにしゅうきんにありて、 因縁いんねん断絶だんぜつし、 *彼此ひしこころそむことをかす。

ニハ↧父王未↠被↠禁、或イハ↣王及身親シク↢仏辺↡、或イハ↣如来及弟子親シク↢王ルニ我及身倶リテ↢囚禁↡、因縁断絶、彼此情乖ケルコトヲ↥。

^にはちちおうきんにありてよりこのかた、 しばしばそんなんつかはしてきたてわれをもんせしめたまふことをこうむることをかす。 いかんがもんする。 ちちおうしゅうきんせらるるをるをもつて、 ぶつ にん0369のうすることをおそれたまふこの因縁いんねんをもつてのゆゑ もんせしめたまふ

ニハ↫父王在リテヨリ↠禁已来、数ルコトヲ↪世尊遣シテ↢阿難↡来リテ慰↩問セシメタマフコトヲ↨。云何慰問スル。以↠見ルヲ↢父囚禁セラルルヲ↡、仏恐レタマフ↢夫人憂悩スルコトヲ↡。以テノ↢是因縁↡故メタマフ↢慰問↡也。

^そんじゅう無由むゆ得見とくけん」 といふは、 これにんうちにみづからけんして、 ぶつ弟子でしそん*ぜつ女身にょしん*福因ふくいん尠薄せんぱくなり仏徳ぶっとくたかし、 かろがろしくるるによしなしねがはくは目連もくれんとう0481つかはしてわれあひまみえしめたまへ」 といふことをかす。

↢「世尊威重無由得見」↡者、此明↧夫人内卑謙シテ、帰↢尊於仏弟子穢質女身、福因尠薄ナリ仏徳威高、無↠由↢軽シクルルニクハシテ↢目連等↡与↠我相マミエシメタマヘトイフコトヲ↥。

 ^ひていはく、 如来にょらいはすなはちこれしゅなり。 *時宜じぎうしなはざるべし。 にんなにをもつて*たびしょうくわへずして、 すなはち目連もくれんとうなんのこころかあるや。

ヒテ、如来是化主ナリ。応↠不↠失↢時宜↡。夫人何テカシテ↣三タビ↢致請↡、乃ブハ↢目連等↡有↢何↡也。

^こたへていはく、 仏徳ぶっとく尊厳そんごんなり。 しょうえんをもつてあへてたやすくしょうぜず。 ただなんて、 ことばつたへて、 きてそんにまうさしめんとほっぶつわがこころりたまはば、 またなんをしてぶつことばつたへて、 われに*じゅせしめたまはん。 このをもつてのゆゑになんんとねがふ。

ヘテ、仏徳尊厳ナリ。小縁ヲモテ不↢敢タヤス↡。但見↢阿難↡、欲↣伝ヘテ↠語、往キテサシメムト↢世尊↡。仏知リタマハバ↢我↡、復使メタマハム↧阿難ヲシテヘテ↢仏之語↡、指↦授於我↥。以0703テノ↢斯↡故↠見ムト↢阿難↡。

 ^作是さぜ語已ごい」 といふはそうじてさきこころきをはるなり。

↢「作是語已」↡者総ジテ↢前↡竟也。

^きゅうるい」 といふは、 これにんみづからただ つみおもぶつあいしょうずるに、 きょういたこころふかくしてるいてり

↢「悲泣雨涙」↡者、此明↧夫人自唯罪重ズルニ↢仏加哀↡、致↠敬情深クシテ、悲涙満テリ↠目

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅳ)結意

^ただりょう*渇仰かつごうするをもつて、 またますますはるかにらいし、 いただきたたきて*じょしばらくいまだげざることをかす。

但以↣渇↢仰スルヲ霊儀↡、復マスマス、叩キテ↠頂跱須臾シバラクルコトヲ↞挙

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)釈如来赴請文
              (ⅰ)科節

^さん 爾時にじそん よりしもてんゆうよう」 にいたるこのかたは、 まさしくそんみづからきたりてしょうおもむ0370ことをかす。

↢「爾時世尊」↡下至↢「天華持用供養」↡已来タハシク↢世尊自リテクコトヲ↟請

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これそんしゃにましますといへども、 すでににん心念しんねんこころることをかす。

此明↧世尊雖↠在スト↢耆闍↡、已ルコトヲ↦夫人心念之意↥。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

^ちょくだい目連もくれんとうじゅうくうらい」 といふは、 これにんしょうおうずることをかす。

↢「勅大目連等従空而来」↡者、此明↠応ズルコトヲ↢夫人↡也。

^ぶつじゅうせんもつ」 といふは、 これにんない禁約きんやくきはめてかたぶつもしげんじてらいしたまはば、 おそらくはじゃもんしてさらに*なんしょうずることをこの因縁いんねんをもつてのゆゑに、 すべからく*ここにもっして*かしこにでたまふべきことをかす。

↢「仏従耆山没」↡者、此明↧夫人宮内禁約極仏若ジテ↠身来赴シタマハバ、恐畏闍世知聞シテズルコトヲ↢留難テノ↢是因縁↡故、須キコトヲ↦此シテデタマフ↥也。

^だいらい挙頭こず」 といふは、 これにんきょういたときかす。

↢「時韋提礼已挙頭」↡者、此明↢夫人致↠敬之時↡也。

^けんぶつそん」 といふは、 これそんちゅうにすでにでて、 にんをしてこうべげてすなはち しむることをいたすことをかす。

↢「見仏世尊」↡者、此明↢世尊宮中デテ、致スコトヲ↟使ムルコトヲ↢夫人ヲシテゲテ↠頭見↡。

^しゃ牟尼むにぶつ」 といふはぶつ*けんす。 ただ 諸仏しょぶつみなつう 身相しんそうことならず。 いまことさらにしゃ*標定ひょうじょうしてうたがいなからしむ。

↢「釈迦牟尼仏」↡者簡↢異余仏↡。但諸仏名通、身相不↠異ナラ。今故ラニ標↢定シテ釈迦↡使↠無カラ↠疑也。

^しん金色こんじき」 といふはそのそうあらわさだむ。 「ひゃっぽう」 といふは余座よざけんす。 目連もくれん侍左じさとうといふ0482は、 これさらにしゅうなくして、 ただそう (目連・阿難) のみあることをかす。

↢「身紫金色」↡者↢定↡也。言↢「坐百宝華」↡者簡↢異余座↡也。言↢「目連侍左」等↡者、此明↧更クシテ↢余衆↡、唯有ルコトヲ↦二僧ノミ↥。

^しゃくぼん護世ごせ」 といふは、 これ天王てんのうしゅとうぶつそんかくれておうあらわたまふをるに、 「かならず*希奇けきほうたまはん、 われらてんにんだいによるがゆゑに*もんやくくことをん」 。 おのおの本念ほんねんじょうじてあまねくくうじゅうりんして、 てんはるかにさんして、 0371あめふらしようすることをかす。

↢「釈梵護世」↡者、此明↧天王衆等、見ルニ↣仏世尊隠レテレタマフヲ↢王宮↡、必キタマハム↢希奇之法↡、我等天・人因ルガ↢韋提↡故ムト↠聴クコトヲ↢未聞之益ジテ↢本念↡普住↢臨シテ↡、天耳遥シテ、雨ラシテ↠華供養スルコトヲ↥。

^また 「しゃく」 といふは、 すなはちこれ*天帝てんたいなり。 「ぼん」 といふは、 すなはちこれ色界しきかい*梵王ぼんのうとうなり。 「護世ごせ」 といふは、 すなはちこれ天王てんのうなり。 「諸天しょてん」 といふは、 すなはちこれしき欲界よくかいとう天衆てんしゅなり。 すでに天王てんのう仏辺ぶっぺんきたかへるをて、 かのもろもろの天衆てんしゅまたおうしたがひてきたりて、 ほうきてようす。

又言↠釈者、即是天0704帝也。言↠梵者、即是色界梵王等也。言↢護世↡者、即是四天王也。言↢「諸天」↡者、即是色・欲界等天衆ナリ。既↣天王↢向ヘルヲ仏辺↡、彼天衆亦従ヒテ↠王リテ、聞キテ↠法供養

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅳ)釈夫人傷歎文
              (ⅰ)科節

^ だいけんそん よりしもだい共為ぐい眷属けんぞく」 にいたるこのかたは、 まさしくにんこうべげてぶつたてまつり ごんしょうたんし、 怨結おんけつこころふかきことをかす。

↢「時韋提希見世尊」↡下至↢「与提婆共為眷属」↡已来タハシク↢夫人挙ゲテ↠頭タテマツリ↠仏、口言傷歎、怨結情深キコトヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅳ)(ⅱ)釈文

^ぜつ瓔珞ようらく」 といふは、 これにんかざ瓔珞ようらくなほあいしていまだのぞかず、 たちまちに如来にょらいたてまつりてぢてみづからつことをかす。

↢「自絶瓔珞」↡者、此明↧夫人身カザリ瓔珞猶愛シテ↠除、忽タテマツリテ↢如来↡羞ヂテツコトヲ↥。

 ^ひていはく、 いかんぞみづからつや。

ヒテ、云何也。

^こたへていはく、 にんはすなはちこれのなかのそんのなかのそんなり。 威儀いぎおおくのひときゅうし、 たるところのぶくみな傍人ぼうにん使つかふ。 いますでにぶつたてまつりづるこころふかくして、 *鉤帯こうたいによらず、 たちまちにみづからく。 ゆゑにぜつといふ。

ヘテ、夫人是貴中之貴、尊中之尊ナリ。身四威儀クノ人供給、所↠着タル衣服皆使↢傍人↡。今既タテマツリテ↠仏ヅル情深クシテ、不↠依↢鉤帯↡、頓チニ。故↢自絶↡也。

 ^しんとう」 といふは、 これにん内心ないしん *かんけつおんへがたしここをもつてよりおどらしてりゅうし、 りゅうせるよりおどらしてぐることをかす。 こ0372れすなはち歎恨たんごんことわりふかくして、 さらに礼拝らいはい威儀いぎこととせず。

↢「挙身投地」↡者、此明↢夫人内心感結シテ怨苦難↠堪、是↠坐踊ラシテ↠身而立、従↠立セルラシテ↠身グルコトヲ↟地。此乃歎恨コトワリクシテ、更不↠事トセ↢礼拝威儀↡也。

^ごうきゅう向仏こうぶつ」 といふは、 これにん仏前ぶつぜん*婉転えんでん 悶絶もんぜつ 号哭ごうこくすることをかす。

↢「号泣向仏」↡者、此明↧夫人婉↢転仏前↡、悶絶号哭スルコトヲ↥。

^びゃくぶつ」 といふ以下いげは、 これにん婉転えんでん涕哭ていこくすることややひさしくしてすこしきめて0483はじめて*威儀いぎただしくして、 がっしょうしてぶつにまうすことをかす。 「われいっしょうよりこのかた、 いまだかつてその大罪だいざいつくらず。 いぶかし、 宿しゅくごう因縁いんねんなんの*おうありてこのとともに母子もしたる」

↢「白仏」↡已下此明↧夫人婉転涕哭スルコトヤヤシクシテ、少メテシクシテ↢身威儀↡、合掌シテスコトヲ↞仏。我自↢一生↡已来、未↣曽↢其大罪↡。未審イブカシ、宿業因縁有リテカ↢何殃咎↡而与↢此↡共ルト↢母子↡。

^これにんすでにみづからさわりふかくして*宿しゅくいんらずいまがいこうむこれよこさまきたれりとおもひて、 「ねがはくはぶつ慈悲じひ、 われに*けいしめしたまへ」 といふことをかす。

此明↧夫人既障深クシテ不↠識↢宿因今被↢児ヒテ↢是横レリト↡、願クハ慈悲、示シタマヘトイフコトヲ↦我径路↥。

^そん復有ぶうとう因縁いんねん」 といふ以下いげは、 これにんぶつかひてちんす。 「われはこれぼんなり 罪惑ざいわくきざれば、 この悪報あくほうありこの*甘心かんしんそん曠劫こうごうどうぎょうじて、 正習しょうじゅうともにもうたまへり しゅ朗然ろうねんとしてまどかなるをぶつなづけたてまつる。 いぶかし、 なんの因縁いんねんありてかすなはちだいとともに眷属けんぞくなりたまふ」 といふことをかす。

↢「世尊復有何等因縁」↡已下、此0705↧夫人向ヒテ↠仏陳訴是凡夫ナリ罪惑不レバ↠尽、有↢斯悪報↡事甘心世尊曠劫ジテ↠道正習倶ジタマヘリ衆智朗然トシテ果円カナルヲシタテマツル↠仏未審イブカシ、有リテカ↢何因縁↡乃与↢提婆↡共リタマフトイフコトヲ↦眷属↥。

^このこころあり。 いちにはにんあだいたすことをかす。 たちまちに父母ぶもにおいてたぶれてぎゃくしんおこせばなりにはまたうらむらくはだいわがじゃおしへてこの悪計あくけいつくらしむもしだいによらずは、 わがつひにこのこころなからんと0373いふことをかす。 この因縁いんねんのためのゆゑにこのといいたす。

↠二。一ニハ↣夫人致スコトヲ↢怨於子↡。忽↢父母タブレテセバナリ↢逆心↡。二ニハ↧又恨ムラクハ提婆教ヘテ↢我闍世↡造ラシム↢斯悪計↠因↢提婆↡者、我児終カラムトイフコトヲ↦此意↥也。為↢此因縁↡故↢斯↡。

^またにんぶつひて 「だい眷属けんぞく」 といふはすなはちそのあり。 いちざい眷属けんぞくしゅっ眷属けんぞくなり

又夫人問ヒテ↠仏↢「与提婆眷属」↡者即↢其二↡。一者在家眷属、二者出家眷属ナリ

^ざいといふは、 ぶつはくしゅくにそのにんあり。 ぶつ はすなはちこれ白浄びゃくじょうおう (浄飯王)こんびゃくぼんのうだい斛飯こくぼんのうしゃくなんはこれかんぼんのうなり。 これをざい眷属けんぞくづく。

↢在家↡者、仏之伯叔↢其四人↡。仏者即是白浄王児、金毘者白飯王児、提婆者斛飯王児、釈魔男者是甘露飯王ナリ。此↢在家外眷属↡也。

^しゅっ眷属けんぞくといふは、 ぶつのために弟子でしとなるゆゑにない眷属けんぞくづく。

↢出家眷属↡者、与↠仏↢弟子↡、故↢内眷属↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)

^じょうらい 四句しくどうありといへども、 ひろえんえんかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢四句不同↡、広↢厭苦↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ b 【欣浄縁】
          (一)

【9】 ^ごんじょうえんのなかにつきて、 すなはちそのはちあり。

キテ↢欣浄↡、即↢其八↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)
            (Ⅰ)釈通請所求文
              (ⅰ)科節

^いち 唯願ゆいがんそん為我いが広説こうせつ」 よりしもじょくあく0484世也せや」 にいたるこのかたは、 まさしくにんつうじて*しょしょうじ、 べつしてかいひょうすることをかす。

↢「唯願世尊為我広説」↡下至↢「濁悪世也」↡已来タハシク↧夫人通ジテ↢所求↡、別シテスルコトヲ↦苦界↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これにんしんひて、 *じょうさとるに、 六道ろくどうおなじくしかなり安心あんじんところあることなし。 ここにぶつじょうしょうなるきたまふをきて、 しんててかの無為むいらくしょうせんとがんずることをかす。

此明↫夫人遇ヒテ↢自身↡覚ルニ↢世非常↡、六道同ジクナリ↠有ルコト↢安心之トコロキテ↣仏説キタマフヲ↢浄土無生ナルヲ↡、願ズルコトヲ↪捨テテ↢穢身↡証セムト↩彼無為之楽↨。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)釈挙所厭境文
              (ⅰ)科節

^ じょくあくしょ よりしもけん悪人あくにん」 にいたるこのかたは、 まさしくにん所厭しょえんきょうすいることをかす。

↢「此濁悪処」↡下至↢「不見悪人」↡已来タハシク0706↣夫人挙↢出スルコトヲ所厭之境↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これ*えんすべてあくにしていまだ一処いっしょとしてとんずべきことあら。 ただ 幻惑げんわく愚夫ぐふなるをもつて、 このじょう0374といふことをかす

此明↧閻浮ジテニシテ、未↠有↢一処トシテキコト↟貪但以↢幻惑愚夫ナルヲ↡、飲ムトイフコトヲ↦斯長苦↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

^じょくあくしょ」 といふはまさしくかいかす。 また器世きせけんかす。 またこれしゅじょうほうところなり。 またしゅじょうしょところづく。

↢「此濁悪処」↡者シク↢苦界↡也。又明↢器世間↡。亦是衆生依報ナリ。亦名↢衆生所依↡也。

^ごくとうといふ以下いげは、 *三品さんぼんあくもつともおもければなり。

↢「地獄」等↡已下、三品悪果最ケレバ也。

^盈満ようまん」 といふは、 この*さんじゅただひとえん のみにあらず、 しゃまたみなあまねくあり。 ゆゑに盈満ようまんといふ。

↢「盈満」↡者、此苦聚↣直独スノミニ↢閻浮↡、娑婆亦皆遍。故↢盈満↡。

^多不たふ善聚ぜんじゅ」 といふは、 これ三界さんがい六道ろくどうどうにして種類しゅるい恒沙ごうじゃるはしん差別しゃべつしたがことをかす。 *きょうにのたまはく、 「ごうよくしきかざ世々せせ処々しょしょにおのおのおもむきて、 えんしたがひてほう対面たいめんすれどもあひらず」

↢「多不善聚」↡者、此明↣三界・六道不同ニシテ種類恒沙ナルハ、随フコトヲ↢心差別↡。経、「業能カザ↠識、世世処処キテ、随ヒテ↠縁↢果報↡、対面スレドモ↢相知↡。」

^がんらい」 といふ以下いげは、 これにん真心しんしん徹到てっとうしてしゃいとひ、 らく無為むいねがひてながじょうらくすることをかす。 ただ無為むいきょう*きょうとしてすなはちかなふべからず。 のうしゃ*ちょうねんとしてはなるることをるによしなし。 金剛こんごうこころざしおこすにあらざるよりは、 ながしょうもとたんや。 もししたしくそん (釈尊)したがずは、 なんぞよくこのじょうたんまぬかれん

↢「願我未来」↡已下、此明↧夫人真心徹到シテ↢苦娑婆↡、欣ヒテ↢楽無為↡永スルコトヲ↦常楽↥。但無為之境、不↠可カラ↢軽爾トシテカナ↡。苦悩娑婆、無↠由↢輒然トシテルニ↟離ルルコトヲ。自リハ↠非ザル↠発スニ↢金剛之志↡、永タムヤ↢生死之元↡。若↣親シク↢慈尊↡、何マヌカレム↢斯長歎↡。

^しかしてがんらいもんあくしょう悪人あくにん」 と、 これ闍王じゃおう調じょうだつ (提婆達多) ごとき、 ちちころそうるもの、 およびあくしょうとうねがはくはまたかずざらんといふことをかす。 ただ闍王じゃおうすでにこれしんしょうるもかみ父母ぶもにおいてせっ0485しんおこす。 いか0375にいはんやうとひとにしてあひがいせざらんや。 このゆゑににんしん*えらばず、 そうじてみなたちまちつ。

シテ「願我未来不聞悪声悪人」者、此明↧如↢闍王・調達↡、殺↠父スルモノ↠僧、及悪声等、願クハ亦不↠聞ラムトイフコトヲ↞見。但闍王是親生之子ナルモ、上於↢父母↡起↢於殺心↡。何ニシテ而不ラムヤ↢相害↡。是夫人不↠簡↢親疎↡、総ジテ皆頓チニ

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅲ)釈求哀懴悔文

^さん 今向こんこうそん よりしもさん」 にいたるこのかたは、 まさしくにんじょうみょうしょぜんにあらずはしょうぜず、 おそらくは*けんありてへてくことをざることを。 ここをもつてあいしてさらにすべからくさんすべきことをかす。

↢「今向世尊」↡下至↢「懴悔」↡已来タハシク↧夫人浄土妙処ズハ↠善不↠生、恐クハリテ↢余↡障ヘテルコトヲ↠得↠往クコトヲ求哀シテキコトヲ↦懴悔↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)釈通請去行文
              (ⅰ)科節

^ 唯願ゆいがん仏日ぶつにち よりしも清浄しょうじょう業処ごっしょ」 にいたるこのかたは、 まさしくにんつうじて*ぎょうしょうずることをかす。

↢「唯願仏日」↡下至↢「清浄業処」↡已来0707タハシク↣夫人通ジテズルコトヲ↢去行↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^これにんかみすなはちつうじて*しょうじょしょうじ、 いままたつうじて*とくしょうぎょうしょうずることをかす。

此明↧夫人上ニハジテ↢生処↡、今亦通ジテズルコトヲ↦得生之行↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

^仏日ぶつにち」 といふはほうならべてひょう 。 たとへばでて衆闇しゅあんことごとくのぞこるがごとぶっひかりかがやかしてみょうよるのごとくにほがらかなり。

↢「仏日」↡者法・喩双ベテ也。譬ヘバ↢日出デテ衆闇尽コルガ↡、仏智輝カシテ↠光無明之夜日ノゴトクカナリ

^きょうかん清浄しょうじょう」 といふ以下いげは、 まさしくすでによくいとじょうねがいかんが安心あんじん ちゅうそうして清浄しょうじょうところしょうずることをといふことをかす。

↢「教我観於清浄」↡已下シク↢既↠穢↠浄若為 イカン 安心注想シテルトイフコトヲ↟生ズルコトヲ↢清浄↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)【光台現国】
              (ⅰ)科節

^ 爾時にじそんほうけんこう よりしもりょうだいけん」 にいたるこのかたは、 まさしくそんひろじょうげんじてさきつうしょうこたへたまふことをかす。

↢「爾時世尊放眉間光」↡下至↢「令韋提見」↡已来タハシク↧世尊広ジテ↢浄土コタヘタマフコトヲ↦前通請↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^これそんにんひろじょうもとむることをたまへるをもつて如来にょらいすなはちけんひかりはなちて十方じっぽう こくらし、 ひかりをもつてくにせっし、 頂上ちょうじょう還来げんらいしてして金台こんだいとなるにしゅせんのごとし。

此明↧世尊以↠見タマヘルヲ↣夫人ムルコトヲ↢浄土↡、如来即チテ↢眉間↡照↢十方国↡、以↠光↠国、還↢来シテ頂上↡化シテルニ↢金台↡、如↢須弥山

^にょ」 のごん0376り、 しゅせんたり。 このやま こしほそかみひろし。 あらゆる仏国ぶっこく*ならびになかにおいてげんじ、 種々しゅじゅどうにしてしょうごんことなることあり。 ぶつ*神力じんりきのゆゑに*了々りょうりょうとしてぶんみょうなり。 だい*加備かびしてことごとくみなることをしむることをかす

「如」之言ナリ、似タリ↢須弥山山腰ヒロ所有仏国並↠中、種種不同ニシテ荘厳有↠異ナルコト神力了了トシテ分明ナリ加↢備シテ韋提↡尽皆得シムルコトヲ↞見ルコトヲ

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)(ⅲ)料簡

 ^ひていはく、 だいかみわがためにひろ無憂むうところきたまへ」 としょうず。 ぶついまなんがゆゑぞためにひろきたまはずして、 すなはちために金台こんだいあまねくげんるはなんのこころかあるや。

ヒテ、韋提上ニハ↣為↠我キタマヘト↢無憂之処↡。仏今何シテ↢為キタマハ↡、乃金台ズル者有↢何↡也。

^こたへていはく、 これ 如来にょらい*みつあらわ 。 しかるにだいごんおこしてしょういた、 すなはちこれひろじょうもんひらけとなり。 もしこれがためにそうじて0486かば、 おそらくはかれずしてしん なほまどひをいたことを。 ここをもつて一々いちいち顕現けんげんしてかの眼前げんぜんたいして、 かの*所須しょしゅまかせてしんしたがひみづからえらばしむ。

ヘテ、此彰↢如来意密↡也。然ルニ韋提発シテ↠言スハ↠請、即是広ケトナリ↢浄土之門↡。若↠之ジテカバ、恐クハ彼不シテ↠見心猶致スコトヲ↠惑。是一一顕現シテシテ↢彼眼前↡、マカセテ↢彼所須↡随↠心バシム

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)釈総領所現文
              (ⅰ)科節

 ^ろく だいびゃくぶつ よりしもかいこうみょう」 にいたるこのかたは、 まさしくにんそうじて*所現しょげんりょうして、 仏恩ぶっとん*かんすることをかす。

↢「時韋提白仏」↡下至↢「皆有光明」↡已来タハシク↧夫人総ジテシテ↢所現↡、感↦荷スルコトヲ仏恩↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これにんそうじて十方じっぽう仏国ぶっこくるに、 ならびにことごとく*しょうなれども、 極楽ごくらくしょうごんせんとほっするに、 まつたくきょうにあらざることをかす。 ゆゑに 「こん楽生ぎょうしょう安楽あんらくこく」 といふ

此明↧夫人総ジテルニ↢十方仏国↡、並精華ナレドモ、欲スルニ↠比セムト↢極楽荘厳↡、全ザルコトヲ↦比況↥。故0708↢「我今楽生安楽国」↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)(ⅲ)料簡

 ^0377ひていはく、 十方じっぽう諸仏しょぶつ*断惑だんわくことなることなく、 ぎょうおわまどかなること、 またなかるべし。 なにをもつてか一種いっしゅじょうにすなはちこのれつるや。

ヒテ、十方諸仏断惑無↠殊ナルコト、行畢果円カナルコト、亦応↠無カル↠二。何テカ一種浄土↢斯優劣↡也。

^こたへていはく、 ぶつはこれ法王ほうおう神通じんずうざいなり。 れつ*凡惑ぼんわくるところにあらず。 隠顕おんけんしたがひて*やくぞんずることをのぞむ。 あるいはことさらにかのとなすことをかくして、 ひと西方さいほうあらわしてしょうとなすべし。

ヘテ、仏是法王、神通自在ナリ。優之与↠劣非↢凡惑↟知。隠顕随ヒテ↠機↠存スルコトヲ↢化益↡。或イハ↧故ラニシテ↢彼スコトヲ↟優、独シテ↢西方↡為↞勝

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅶ)釈別選所求文
              (ⅰ)科節

 ^しち こん楽生ぎょうしょう弥陀みだ」 より以下いげは、 まさしくにん*べっしてしょえらぶことをかす。

↢「我今楽生弥陀」↡已下シク↣夫人別シテブコトヲ↢所求↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

・総標

^これ弥陀みだ本国ほんごくじゅうはちがんよりす

此明↧弥陀本国四十八願ヨリス

・別顕

^願々がんがんみな*ぞうじょうしょういんおこし、 いんによりて勝行しょうぎょうおこぎょうによりてしょうかんによりてしょうほうかんじょうほうによりて極楽ごくらくかんじょうらくによりて*悲化ひけ顕通けんつう悲化ひけによりて智慧ちえもん顕開けんかいす。

願願皆発↢増上勝因↡、依リテ↠因↢於勝行↡、依リテ↠行↢於勝果↡、依リテ↠果感↢成勝報↡、依リテ↠報感↢成極楽↡、依リテ↠楽顕↢通悲化↡、依リテ↢於悲化↡顕↢開智慧之門

・一代化儀

^しかるにしんじんればまたぐうなり。 *悲智ひちそうぎょうしてすなはちひろ*かんひらく。 これによりて*法潤ほうにんあまねくぐんじょうせっす。

ルニ悲心無尽ナレバ、智亦無窮ナリ悲智双行シテ↢甘露リテ↠茲法潤普↢群生↡也

・末仏勧讃

^しょきょうてんすすむるところいよいよおおし。 *しゅしょうしんひとしくしてみなおなじく*さんす。

諸余経典ムル処弥衆聖斉シクシテ↠心皆同ジク指讃

・別選所由

^この因縁いんねんありて、 如来にょらいひそかににんつかはして、 べつしてえらしめたまふことをいたことをかす

リテ↢此因縁↡、致スコトヲ↞使メタマフコトヲ↧如来密シテ↢夫人↡別シテ↥也。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)釈請求別行文
              (ⅰ)科節

^はち 唯願ゆいがんそん」 より以下いげは、 まさしくにん*べつぎょうしょうすることをかす。

↢「唯願世尊」↡已下シク↣夫人請↢求スルコトヲ別行↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)(ⅱ)述意

^これだいすでにとくしょうところえらびて、 かえりてべつぎょうしゅして、 おのれをはげまし しんとどめて0378ならず*往益おうやくのぞむことをかす。

此明↧韋提既ビテ↢得生↡、還リテシテ↢別行↡、励↠己トドメテ↠心ムコトヲ↦往益↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)(ⅲ)釈文

・教我思惟

^きょうゆい」 といふは、 すなはち0487これ*じょうぜん方便ほうべん、 かのくにしょうほう*しゅしょうごんそう憶念おくねんするなり。

↢「教我思惟」↡者、即是定前方便、思↢想憶↣念スル依正二報・四種荘厳↡也。

・教我正受

^きょうしょうじゅ」 といふは、 これさきそう 漸々ぜんぜんさいにして、 *覚想かくそうともにもうずるによりて、 ただじょうしんのみありて*ぜんきょうがっするをづけてしょうじゅなすことをかす。 このなかにりゃくしてすでにりょうけんす。 *しも観門かんもんいたりてさらにまさにひろべんずべし、 るべし。

↢「教我正受」↡者、此明↧因リテ↢前思想漸漸微細ニシテ、覚想倶ズルニ↡、唯有リテ↢定心ノミ↡与↢前境↡合スルヲケテスコトヲ↦正受↥。此シテ料簡。至リテ↢下観門↡更↢広↡、応↠知

二 Ⅱ ⅱ b ホ (三)

^じょうらい はっどうありといへども、 ひろごんじょうえんかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢八句不同↡、広↢欣浄↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ b 【散善顕行縁】
          (一)

【10】^ろく散善さんぜんけんぎょう えんのなかにつきてすなはちそのあり。

0709キテ↢散善顕行縁↡即↢其五↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)
            (Ⅰ)釈光益父王文
              (ⅰ)科節

^いち 爾時にじそん即便そくべんしょう よりしもじょうごん」 にいたるこのかたは、 まさしくひかりちちおうやくすることをかす。

↢「爾時世尊即便微笑」↡下至↢「成那含」↡已来タハシク↣光益スルコトヲ↢父↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらいにん極楽ごくらくしょうぜんとがんじ、 さらにとくしょうぎょうしょうずるをたまふにぶつ本心ほんしんかなひ、 また弥陀みだがん あらわをもつて、 このしょうによりてひろじょうもんひらけば、 ただだいことを にあらず、 *しきこれをきてみなく。 このやくあるがゆゑに、 ゆゑに如来にょらいしょうしたまふことをかす

此明↭如来以↪見タマフニ↧夫人↠生ゼムト↢極楽↡、更ズルヲ↦得生之行↥、カナ↢仏本心↡、又顕スヲ↩弥陀願意↨、因リテ↢斯二請↡広ケバ↢浄土之門↡、非↢直韋提ノミルニ↟去クコトヲ、有識聞キテ↠之皆往ルガ益↡故、所以如来微笑シタマフコトヲ↬也。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅲ)釈文

・光益所由

^色光しきこうじゅうぶつしゅつ」 といふは、 これ一切いっさい 諸仏しょぶつしんつね*威儀いぎ*ほうとしておほよそいだすところのひかりかならずやくあることをかす。

↢「有五色光従仏口出」↡者、此明↣一切諸仏心口威儀、法爾トシテ↠出光必ルコトヲ↢利益↡。

・唯照頻婆

^一一いちいちこうしょうびんちょう」 といふは、 まさしくくちひかりほうらさずして、 ただおうちょうらすことを0379かす。

↢「一一光照頻婆頂」↡者、シク↧口光不シテ↠照↢余方↡、唯照スコトヲ↦王頂↥。

^しかるにぶつひかりしゅっしょしたがひてかならずみなやくあり。 ぶつみあししたよりひかりはなてば、 すなはちごくどうしょうやくす。 もしひかりひざよりづれば、 ちくしょうどうををしょうやくす。 もしひかり*陰蔵おんぞうよりづれば、 じんどうしょうやくす。 もしひかりほぞよりづれば、 しゅどうしょうやくす。 ひかりむねよりづれば、 人道にんどうしょうやくす。 もしひかりくちよりづれば、 じょうひとしょうやくす。 もしひかりけんよりづれば、 だいじょうひとしょうやくす。

ルニ光随ヒテ↢身出処↡必皆有↠益。仏ヨリテバ↠光、即照↢益地獄道↡。若光従↠膝出ヅレバ、照↢益畜生道↡。若光従↢陰蔵↡出ヅレバ、照↢益鬼神道↡。若光従↠臍出ヅレバ、照↢益修羅道↡。光従↠心出ヅレバ、照↢益於人道↡。若光従↠口出ヅレバ、照↢益二乗之人↡。若光従↢眉間↡出ヅレバ、照↢益大乗↡。

^いまこのひかりくちよりでてただちにおうちょうらすは、 すなはちその*しょうさず0488くることをかす。 もしひかりけんよりでてすなはちぶっちょうよりるは、 すなはちさつ*さずくるなり。 かくのごとき こうにしてりょうなり、 つぶさにぶべからず。

今明↧此光従↠口出デテ↢王頂↡者、即クルコトヲ↦其小果↥。若光従↢眉間↡出デテ↢仏頂↡入者、即クル↢菩薩↡也。如↠斯クノ義者広多ニシテ無量ナリ、不↠可カラ↢具↡。

・頻婆得益

^爾時にじ大王だいおう雖在すいざい幽閉ゆうへい」 といふ以下いげは、 まさしくちちおうひかりいただきらすことをこうむりて心眼しんげんひらくることをて、 *障隔しょうきゃくおおしといへどもねんにあひ 。 これすなはちひかりによりてぶつたてまつるこころするところにあらず、 きょういた帰依きえするにすなはち *第三だいさんちょうしょうることをかす

↢「爾時大王雖在幽閉」↡已下シク↧父王蒙リテ↢光スコトヲ↟頂心眼得↠開クルコトヲ、障隔雖↠多シト自然相見斯乃リテ↠光タテマツルハ↠仏、非↢意↟期スル、致↠敬帰依スルニ超↦証スルコトヲ第三之果↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)釈酬請許説文
              (ⅰ)科節

^爾時にじそん」 よりしも広説こうせつしゅ」 にいたるこのかたは、 まさしくさきにんべつして*しょぎょうえら こたふることをかす。

↢「爾時世尊」↡下至↢「広0710説衆譬」↡已来タハシク↠答フルコトヲ↣前夫人別シテブニ↢所求之行↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらいかみしゃもっしておうをはるよりこのもんいたまでそん*黙然もくねんとして して、 そうていまだ言説ごんせつしたまはざることを0380す。

此明↧如来従↢上耆闍シテ王宮↡至ルマデ↢此↡、世尊嘿然トシテ而坐シテ、総ジテルコトヲ↦言説シタマハ↥。

^ただちゅうげんにんさんしょうもん放光ほうこう現国げんごくとうは、 すなはちこれなんぶつしたがひておうにしてこの因縁いんねんて、 おわりてやまかえ つたへてしゃ大衆だいしゅかひてかみのごとき くに、 はじめてこのもんあり。 またこれときぶつなきにあらず るべし。

但中間夫人懴悔・請問・放光・現国等、乃是阿難従ヒテ↠仏王宮ニシテ↢此因縁↡、事了リテ↠山、伝ヘテヒテ↢耆闍大衆↡説クニ↢如↠上↡、始↢此文↡。亦非↣是無キニ↢時仏語↡也、応↠知

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

・告命許説

^爾時にじそんごうだい」 といふ以下いげは、 まさしく*ごうみょうせつかす

↢「爾時世尊告韋提」↡已下シク↢告命許説↡也。

・去此不遠

^弥陀みだぶつおん」 といふは、 まさしく*きょうひょうしてもつてしんとどることをかす。 すなはちそのさんあり。

↢「阿弥陀仏不遠」↡者、シク↢標シテ↠境トドムルコトヲ↟心。即↢其三↡。

^いちには*分斉ぶんざいとおからずこれよりじゅう万億まんおくせつちょうして、 すなはちこれ弥陀みだくになることをかす。

ニハ↧分斉不↠遠カラ↠此超↢過シテ十万億刹↡、即是弥陀之国ナルコトヲ↥。

^には*どうはるかなりといへども、 とき一念いちねんすなはちいたることをかす。

ニハ↢道里雖↠遥ナリト、去時一念ルコトヲ↡。

^さんにはだいとうおよびらいえんしゅじょうしんとどめて観念かんねんすれば *定境じょうきょう相応そうおうして、 ぎょうにんねんにつねにることをかす

ニハ↢韋提等及未来有縁衆生、トドメテ↠心観念スレバ、定境相応シテ、行人自然ルコトヲ↡。

^このさんあるがゆゑにおんといふ。

ルガ↢斯三義↡故↢不遠↡也。

・浄業成

^汝当にょとうねん」 といふ以下いげは、 まさしく凡惑ぼんわくさわりふかくしてしんおお散動さんどうもしたちまち*攀縁へんえんてずは、 *浄境じょうきょうげんずることをるによしなきことをかす。 これすなはちまさしく安心あんじん住行じゅうぎょうおしふ。 もしこのほうによるを づけて 「*じょう0489ごうじょう」 となす

↢「汝当繋念」↡已下シク↧凡惑障深クシテ心多散動↣頓チニ↢攀縁↡、浄境無キコトヲ↞由↠得ルニ↠現ズルコトヲ。此即シク↢安心住行↡。若ルヲ↢此↡名ケテ↢浄業成ズト↡也。

・自開散善

^こんにょ」 といふ以下いげは、 これえんいまだせず、 ひとへに*じょうもんくべからず、 ぶつさらにかんじて、 みづから三福さんぷくぎょうひらたまふことをかす。

↢「我今為汝」↡已下此明↧機縁未↠具、不↠可カラ↣偏↢定門↡、仏更ジテ↠機、自キタマフコトヲ↦三福之行↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)釈挙機勧修文
              (ⅰ)科節

^さん やくりょうらい 0381しも極楽ごくらくこく」 にいたるこのかたは、 まさしくげてしゅすすやくることをかす。

↢「亦令未来世」↡下至↢「極楽国土」↡已来タハシク↢挙ゲテ↠機↠修、得ルコトヲ↟益

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これにんしょうずるところ、 やくいよいよふかしてらいおよぶまでしんすればみないたることをかす。

此明↧夫人所↠請ズル、利益弥クシテ、及ブマデ↢未来↡廻心スレバ皆到ルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)釈勧修三福文
              (ⅰ)科節

^よくしょうこくしゃ」 よりしもみょうじょうごう」 にいたるこのかたは、 まさしくすすめて三福さんぷくぎょうしゅせしむることをかす。

↢「欲生彼国者」↡下至↢「名為浄業」↡已来タハシク↣勧メテセシムルコトヲ↢三福之0711↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^これ一切いっさいしゅじょうしゅり。 いち*じょう*さんなりもし定行じょうぎょうによれば、 すなはち*しょうせっするにきず。 ここをもつて如来にょらい (釈尊) 方便ほうべんして三福さんぷく顕開けんかいして、 もつて散動さんどうこんおうじたまふことをかす

此明↧一切衆生↢二種↡者定、二者散ナリレバ↢定行↡、即スルニ↠生不↠尽如来方便シテ顕↢開シテ三福↡、以ジタマフコトヲ↦散動根機↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

・所帰

^よくしょうこく」 といふはしょひょう

↢「欲生彼国」↡者標↢指所帰↡也。

・行門

^当修とうしゅ三福さんぷく」 といふはそうじてぎょうもんひょうす。 いかんがさんづくる。

↢「当修三福」↡者総ジテ↢行門↡也。云何クル↠三

・行門 ・世福

^一者いっしゃきょうよう父母ぶも」、 すなはちそのあり。

「一者孝養父母」、即↢其四↡。

・行門 ・世福 ・孝養父母

^いちきょうよう父母ぶも」 といふは、 これ一切いっさいぼんみなえんによりてしょうずることをかす。

↢「孝養父母」↡者、此明↢一切凡夫皆藉リテ↠縁而生ズルコトヲ↡。

^いかんがえんによる。 あるいは*しょうあり、 あるいは湿しっしょうあり、 あるいはらんしょうあり、 あるいは*たいしょうあり。 このしょうのなかにおのおのにまたしょうあり。 *きょうひろきたまふがごとし。

云何↠縁。或イハ↢化生↡、或イハ↢湿生↡、或イハ↢卵生↡、或イハ↢胎生↡。此四生各各復有↢四生↡。如↢経キタマフガ↡。

^ただ これ あひよりて しょうずればすなはち父母ぶもあり。 すでに父母ぶもあればすなはち大恩だいおんあり。 もしちちなくは*のうしょういんすなはち 、 もしははなくは*しょしょうえんすなはちそむきなん。 もしにんともになくはすなはちたくしょうところうしなん。 かならずすべからく父母ぶもえん0382してまさに受身じゅしんことわりあるべし。

但是相因リテ而生ズレバ、即↢父母↡。既レバ↢父母↡即↢大恩↡。若クハ↠父者能生之因即、若クハ↠母者所生之縁即キナム。若二人倶クハハム↢託生之トコロ↡。要↣父母縁具シテ、方↢受身之コトワリ↡。

^すでにけんとほっするに、 みづからの*業識ごっしきをもつて内因ないいんとなし、 父母ぶもしょうけつをもつてえんとなして因縁いんねんごうするがゆゑにこのあり。 このをもつてのゆゑに父母ぶもおんおもし。

スルニ↠受ケムト↠身、以↢自ラノ業識↡為↢内因↡、以↢父母精血↡為シテ↢外縁↡、因縁和合スルガ↢此身↡。以テノ↢斯↡故父母恩重

^はは懐胎かいたいをはりてつきるまで*行住ぎょうじゅう坐臥ざがつねにのうしょうず。 また0490さんときなんうれふ。 もししょうじをはりぬれば、 三年さんねんるまでつねにねむ尿にょうす。 *じょうぶくみなまたじょうなり。

母懐胎リテルマデ↢於十月↡、行住坐臥↢苦悩↡。復憂↢産↡。若リヌレバ、経ルマデ↢於三年恒常 ツネ ↠屎↠尿。床被・衣服皆亦不浄ナリ

^そのちょうだいおよびてあいしたしみて、 父母ぶもところにおいてかへりて憎疾ぞうしつしょうおんきょうぎょうぜざるものはすなはちちくしょうことなることな

ビテ↢其長大↡愛↠婦ミテ↠児、於↢父母↡反リテ↢憎↡、不↠行↢恩孝↡者与↢畜生↡無↠異ナルコト也。

^また父母ぶもけん*福田ふくでんきわなり。 ぶつはすなはちこれ*しゅっ福田ふくでんきわなり。

又父母者世間福田之極也。仏者即是出世福田之極也。

^しかるにぶつざいときねん*けんせるに遇値ひて、 ひとみな餓死がしして白骨はっこつ*じゅうおうなり。 もろもろの比丘びくとう*乞食こつじきするにがたし。 ときそん比丘びくとうりぬのちちて、 ひとりみづからしろりて乞食こつじきしたまふ。 あしたよりひるいたるまで門々もんもんひたまへども、 じきあたふるものなし。 ぶつ またはちむなしくしてかえりたまふ。

ルニ仏在世時、遇↢値 ア ヒテ時年飢倹セルニ↡、人皆餓死シテ白骨縦横ナリ。諸比丘等乞食スルニ↠得0712。於↠時世尊待チテ↢比丘等リヌル↡、独リテ↠城乞食シタマフ。従アシタルマデヒル門門ヒタマヘドモ、無↢与フル↠食者↡。仏還シクシテ↠鉢而帰リタマフ

^明日あくるひまたきて、 また たまはず。 のちまたきたまふに、 またたまはず。

明日アクルヒ復去キテ又還 マタ 不↠得タマハ。後日復去キタマフニ、又亦不↠得タマハ

^たちまちにいち比丘びくありて、 みちひてぶつたてまつるに、 顔色げんしきつねよりもことにしてそうましますたり。

リテ↢一比丘↡、道ヒテタテマツルニ↠仏、顔色異ニシテ↠常ヨリモタリ↠有スニ↢飢相↡。

^すなはちぶつひたてまつりてまうさく0383、 「そんいますでにじきしをはりたまへりや」 と。

ヒタテマツリテ↠仏、世尊今已リタマヘリ

^ぶつ のたまはく、 「比丘びく、 われ三日さんにちてよりこのかた、 乞食こつじきするにいちをもず。 われいま飢虚きこにしてちからなし、 よくなんぢとともにかたんや」

仏言、比丘、我経テヨリ↢三日↡已来、乞食スルニ不↠得↢一匙ヲモ↡。我今飢虚ニシテ↠力、能↠汝ラムヤト

^比丘びくぶつきをはりて、 るいしてみづからることあたはず。 すなはちみづから念言ねんごんすらく、 「ぶつはこれじょう福田ふくでんしゅじょう*覆護ふごなり。 わこの*さんばいきゃくて、 一鉢ひとはちいいりてぶつじょうせん 、 いままさしくこれときなり」

比丘聞↢仏語↡已リテ、悲涙不↠能↢自フルコト↡。即念言スラク、仏是無上福田、衆生覆護ナリ。我此三衣売却シテ、買↢取リテ一鉢↡奉↢上セム於仏↡。今正シク時也。

^このねんをなしをはりてすなはち一鉢ひとはちいいて、 すみやかにもつてぶつにたてまつる。

↢是↡已リテ↢得一鉢↡、急カニ↠仏

^ぶつろしめして ことさらにひてのたまはく、 「比丘びくねんけんにしてひとみな餓死がしす。 なんぢいまいづれのところこの一鉢ひとはちじゅんしきいいきたれる

仏知シテ而故ラニヒテ、比丘、時年飢倹ニシテ人皆餓死。汝今何ニシテカ↢此一鉢純色↡来レルト

^比丘びくさきのごとくつぶさにそんにまうす。 ぶつまたのたまはく比丘びくさんはすなはちこれさん諸仏しょぶつ*幢相どうそうなり。 この因縁いんねんきはめてとうときはめておも、 きはめておんあり。 なんぢいまこのいいてわれにあたふることは、 おおきになんぢ0491好心こうしんりょうすれども、 われこのいいしょうせず

比丘如↠前↢世尊↡。仏又言、比丘三衣者即是三世諸仏之幢相ナリ。此衣因縁極アリ。汝今易↢得↡与フルコト↠我者、大スレドモ↢汝好心↡、我不↠消↢此↡也。

^比丘びくかさねてぶつにまうしてまうさく、 「ぶつはこれ三界さんがい福田ふくでんしょうのなかのごくるに、 なほしょうせずはば、 ぶつのぞきて以外いげはたれかよくしょうんや」

比丘重シテ↠仏、仏是三界福田、聖中之極ナルニ、尚言ハバ↠不↠消者、除キテ↠仏已外セム

^ぶつ のたまはく、 「比丘びく、 なんぢ父母ぶもありやいなや」 0384こたへてまうさく、 「あり」 。 「なんぢもつて父母ぶもよう れ」

仏言、比丘、汝有リヤ↢父母↡已不 イナ ヤト。答ヘテ、有リト。汝将供↢養シテ父母↡去レト

^比丘びくまうさく、 「ぶつなほしょうせずとのたまふ、 わが父母ぶもあによくしょうんや」

比丘言、仏尚云↠不↠消、我父母豈セム

^ぶつのたまはく、 「しょうすることを。 なにをもつてのゆゑに。 父母ぶもよくなんぢがしょうぜり。 なんぢにおいてだいじゅうおんあり。 これがためにしょうすることを

仏言、得↠消スルコトヲ。何テノ。父母能ゼリ↢汝↡。於↠汝↢大重恩↡。為↠此↠消スルコトヲ

^ぶつまた比丘びくひたまはく、 「なんぢが父母ぶもぶつしんずるしんありやいなや」 比丘びくまうさく、 「すべて信心しんじんなし」

仏又問ヒタマハク↢比丘↡、汝父母有↢信0713ズル↠仏心↡不ヤト。比丘言、都シト↢信心↡。

^ぶつのたまはく、 「いましんずるしんあるべし。 なんぢいいあたふるおおきにかんしょうじて、 これによりてすなはち信心しんじんおこさん。 おしへてさん帰依きえけしめよ。 すなはちよくこのじきしょうん」

仏言、今有ルベシ↢信ズル心↡。見↢汝フルヲ↟飯ジテ↢歓喜↡、因リテ↠此サム↢信心↡。先ヘテケシメヨ↢三帰依↡。即セムト↢此↡也。

^とき比丘びくすでにぶつおしえけて*愍仰みんごうしてりぬ。

比丘既ケテ↢仏↡愍仰シテ而去リヌ

^このをもつてのゆゑに、 おおきにすべからく父母ぶもきょうようすべし。

テノ↢此↡故、大↣孝↢養父母↡。

^また*ぶつ*摩耶まやぶつしょうじて七日しちにちをはりてすなはちして、 とうてんしょうず。 ぶつのちじょうどうしたまひて、 がつじゅうにちいたりてすなはちとうてんかひ いちははのために説法せっぽうしたまふ。 つき懐胎かいたいおんほうぜんがためなり。 ぶつすらなほみづからおんおさめて父母ぶもきょうようしたまふ、 いかにいはんやぼんにしてきょうようせざらん

又仏母摩耶生ジテ↠仏経↢七日↡已リテシテ、生↢忉利天↡。仏後成道シタマヒテ、至リテ↢四月十五日↡即↢忉利天↡、一夏為↠母説法シタマフ。為ナリ↠報ゼムガ↢十月懐胎之恩↡。仏スラ尚自メテ↠恩孝↢養シタマフ父母↡、何凡夫ニシテ而不ラムヤ↢孝養↡。

^ゆゑにりぬ父母ぶもおんふかしてきはめておも

リヌ、父母恩深クシテ也。

・行門 ・世福 ・奉事師長

^奉事ぶじちょう」 とは、 これ礼節らいせつきょうして学識がくしきとくじょう*いんぎょうくる0385ことなくすなはちじょうぶついたるは、 これなほぜん りきなりこの大恩だいおんもつともすべからく敬重きょうじゅうすべきことをかす。

「奉事師長」者、此明↧教↢示シテ礼節↡学識成↠徳、因行無↠虧クルコトルハ↢成仏↡、此猶師之善友力也此之大恩最キコトヲ↦敬重↥。

^しかるに父母ぶもおよび*ちょうづけて*敬上きょうじょうぎょうとなす。

ルニ父母及師長者名ケテ↢敬上↡也。

・行門 ・世福 ・慈心不殺

^しんせつ」 といふは、 これ一切いっさいしゅじょうみないのちをもつてほんなすことをかす。

↢「慈心不殺」↡者、此明↢一切衆生皆以↠命スコトヲ↟本

^もし悪縁あくえんおそはしかくるは、 ただいのちまもらんがためなり。

↢悪縁↡怖クル者、但為↠護ラムガ↠命也。

^¬きょう¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「一切いっさいのもろもろのしゅじょう寿じゅみょうあいざるはなし。 ころすことなかれ、 じょうぎょう0492ずることなかれ。 おのれを*いかるにさとをなすべし」 。 すなはちしょうとなす。

¬経¼云、「一切衆生無↠不ルハ↠愛↢寿命↡。勿↠殺スコト、勿↠行ズルコト↠杖ルニ↠己シト↠為↠喩。」即↠証也。

・行門 ・世福 ・修十善業

^しゅじゅう善業ぜんごう」 といふは、 これじゅうあくのなかに殺業せつごうもつともあくなることをかす。

↢「修十善業」↡者、此明↢十悪之中殺業最ナルコトヲ↡。

^ゆゑにこれをつらねてはじめにく。 *じゅうぜんのなかには長命じょうみょうもつともぜんなり。 ゆゑにこれをもつてそうたいす。 以下いげあくぜんは、 しもぼんのなかにいたりて、 つぎひろべし。

ネテ↠之↠初十善之中ニハ長命最ナリ。故↠之相対也。已下九悪九善者、至リテ↢下九品↡、次↢広↡。

^これ ぜんかす。 また*慈下じげぎょうづく

此明↢世善↡。又名↢慈下↡也。

・行門 ・戒福 ・受持三帰

^に 「じゅさん」 といふは、 これぜんきょうにして*感報かんぽうつぶさならず*戒徳かいとく巍々ぎぎとしてよくだいかんずることをかす。

↢「受持三帰」↡者、此明↣世善軽微ニシテ感報不↠具ナラ戒徳巍巍トシテズルコトヲ↢菩提之果↡。

^ただ しゅじょうしんあさきよりふかきにいたる。 *さんけしめ のち衆戒しゅかいおしふ。

但衆生帰信従0714↠浅↠深キニ。先ケシメ↢三帰↡、後↢衆戒↡。

・行門 ・戒福 具足衆戒

^そく衆戒しゅかい」 といふは、 しかるにかいしゅあり。 あるいは*さんかい、 あるいは*かい*八戒はっかい*じゅう善戒ぜんかい*ひゃくじゅうかい*ひゃくかい*しゃかい、 あるいはさつ*さん聚戒じゅかい*じゅうじんかいとうなり。 ゆゑに0386そく衆戒しゅかいづく

↢「具足衆戒」↡者、然ルニ↢多種↡。或イハ三帰戒、或イハ五戒・八戒・十善戒・二百五十戒・五百戒・沙弥戒、或イハ菩薩三聚戒・十無尽戒等ナリ。故↢具足衆戒↡也。

^また一々いちいち*戒品かいほんのなかにまた*しょうぶんかい分戒ぶんかいぜん分戒ぶんかい

又一一戒品亦有↢少分戒・多分戒・全分戒↡也。

・行門 ・戒福 ・不犯威儀

^ぼん威儀いぎ」 といふは、 これしん口意くいごう行住ぎょうじゅう坐臥ざがによく一切いっさいかいのために方便ほうべん威儀いぎをなすことをかす

↢「不犯威儀」↡者、此明↧身口意業行住坐臥↢一切↡作スコトヲ↦方便威儀↥也。

^もしは軽重きょうじゅうさいみなよく護持ごじして、 おかせばすなはち悔過けかす。 ゆゑにぼん威儀いぎといふ。 これを戒善かいぜんづく

シハ軽重麁細皆能護持シテ、犯セバ悔過。故↢不犯威儀↡。此↢戒善↡也。

・行門 ・行福 ・発菩提心

^さんほつだいしん」 といふは、 これしゅじょう*欣心ごんしん*だいおもむく。 あさ*しょういんおこすべからひろ*しんおこすにあらざるよりは、 なんぞよくだいとあひすることをといふことをかす

↢「発菩提心」↡者、此明↧衆生欣心趣↟大不↠可カラ↣浅↢小因リハ↠非ザル↣広スニ↢弘心↡、何ムトイフコトヲ↦与↢菩提↡相会スルコトヲ↥。

^ただねがはくはわがくうおなじくしん法界ほうかいひとしく、 しゅじょうしょうつくさん。 われ身業しんごうをもつてぎょうよう礼拝らいはい *らい迎送こうそう*うんしてつくさしめん。 またわれごうをもつて讃歎さんだん説法せっぽうして、 みなわが*けて、 ことばもと*どうるもの つくさしめん。 またわれごうをもつて入定にゅうじょう観察かんざつ 法界ほうかい分身ぶんしんおうじて0493して、 いちとしてつくざるはなからん。

唯願クハ身、身ジク↢虚空↡心シク↢法界↡、尽サム↢衆生↡。我以↢身業↡恭敬供養礼拝、迎↢送シテ来去↡運度シテメム↠尽。又我以↢口業↡讃歎説法シテ、皆受ケテ↢我↡、言↠道者、令メム↠尽。又我以↢意業↡入定観察↢身法界↡応ジテ↠機而度シテ、無カラム↢一トシテルハ↟尽

^われこのがんおこす。 運々うんうん ぞうじょうしてなほくうのごとく、 しょとしてへんせざるなく、 ぎょうじんにして*さいてつ *けんなくしん*厭足えんそくなからん。

我発↢此↡。運運増長シテ猶如↢虚空↡、無↢処トシテルハ↟遍、行流無尽ニシテ徹↢窮後際↡、身↢疲倦↡心カラム↢厭足↡。

^また 「だい」 といふはすなはちこれぶっなり。 また 「しん」 といふはすなはちこれしゅじょう*のうしんなり。 ゆゑにほつだいしんといふ

又言↢菩提↡者即是仏果之名ナリ。又言↠心者即是衆生能求之心ナリ。故↢発菩提心↡也。

・行門 ・行福 ・深信因果

^深信じんしんいん」 といふはすなはちそあり。

↢「深信因果」↡者即↢其二↡。

^いち0387にはけんらくいんかす。 もしいんつくればすなはちかんじ、 もしらくいんつくばすなはちらくかんず。 *いんをもつてでいいんるにいんこわれてもんじょうずるがごとし。 うたがふこと

ニハ↢世間苦楽因果↡。若レバ↢苦↡即↢苦↡、若レバ↢楽↡即↢楽↡。如↢似 ゴト ↠印スルニ↠泥、印0715シテ文成ズルガ↡。不↠得↠疑フコトヲ也。

・行門 ・行福 ・読誦大乗

^読誦どくじゅだいじょう」 といふは、 これ経教きょうきょうはこれをたとふるにかがみのごとししばしばみしばしばたずぬれば、 智慧ちえ開発かいほつもし智慧ちえまなこひらけぬれば、 すなはちよくいとひてはんとうごんぎょうすることをかす。

↢「読誦大乗」↡者、此明↧経教フルニ↠之↠鏡ヌレバ、開↢発智慧智慧眼開ケヌレバ、即ヒテ↠苦欣↦楽スルコトヲ涅槃等↥也。

・行門 ・行福 ・勧進行者

^勧進かんじんぎょうじゃ」 といふは、 これほうどくのごと悪法あくほうとうのごとしさんてんしてしゅじょう損害そんがいいますでにぜん明鏡みょうきょうのごとほうかんのごとしかがみはすなはちしょうどうらしてもつてしんし、 かんはすなはちほうそそぎてくることなく、 *含霊がんれいをしてにんけ、 ひとしくほうせしめんとほっすることをかす。 この因縁いんねんのためのゆゑにすべからくあひすすむべし。

フハ↢「勧進行」↡、此明↧苦法↠毒、悪法↠刀流↢転シテ三有↡損↢害衆生今既↢明鏡↡、法↢甘露シテ↢正道↡以↠真、甘露ギテ↢法雨↡而無↠竭クルコト、欲スルコトヲ↞使メムト↣含霊ヲシテ↠潤、等シク↢法流↡。為↢此因縁↡故↢相勧↡。

・結行

^にょさん」 といふ以下いげは、 そうじてかみぎょうけつじょうす。

↢「如此三事」↡已下ジテ結↢成↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)釈引聖励凡文
              (ⅰ)科節

^ 仏告ぶつごうだい よりしもしょういん」 にいたるこのかたは、 そしょうきてぼんはげますことをかす。

↢「仏告韋提」↡下至↢「正因」↡已来タハ↢其引キテ↠聖スコトヲ↟凡

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^ただよくけつじょうしてしんとどむれば、 かならずくことうたがいなし。

但能決定シテムレバ↠心、必クコト↠疑。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (三)

^じょうらい五句ごくどうありといへども、 ひろ散善さんぜんけんぎょうえんかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢五句不同↡、広↢散善顕行縁↡竟リヌ

二 Ⅱ ⅱ b 【定善示観縁】
          (一)

【11】^しちじょうぜんかんえんのなかにつきてすなはちそのしちあり。

キテ↢定善示観縁↡即↢其七↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)
            (Ⅰ)釈勅聴許説文
              (ⅰ)科節

^いち仏告ぶつごうなん」 よ0388しも清浄しょうじょうごう」 にいたるこのかたは、 まさしく*勅聴ちょくちょうせつかす。

↢「仏告阿難」↡下至↢「清浄業」↡已来タハシク↢勅聴許説↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これだいさき極楽ごくらくしょうぜんとがんずることをしょうじ、 またとくしょうぎょうしょうるににょ0494らいすでにゆるたまへり。 いまこのもんにつきてまさしく*しょうじゅ方便ほうべん開顕かいけんせんとほっすることをかす。

此明↫韋提前↠願ズルコトヲ↠生ゼムト↢極楽↡、又請ズルニ↢得生之行↡、如来已シタマヘリ今就キテ↢此↡正シクスルコトヲ↪開↩顕セムト正受之方便↨。

^これすなはち因縁いんねん極要ごくようにしてやくするところふかし。 曠劫こうごうにもことまれなり。 いまはじめてく。 こののためのゆゑに、 如来にょらいそうじて*にんめいぜしむることをいたす。

此乃因縁極要ニシテ利益スル処深。曠劫ニモナリ↠聞クコト如今 イマ 。為↢斯↡故、致↠使ムルコトヲ↣如来総ジテ↢二人↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅰ)(ⅲ)釈文

^ごうなん」 といふは、 「われいまじょうもん開説かいせつせんとほっ。 なんぢよくでんして遺失ゆいしつせしむることなかれ」 となり

↢「告阿難」↡者、我今欲↣開↢説セムト浄土之門↡。汝好伝持シテレトナリ↠令ムルコト↢遺失↡。

^ごうだい」 といふは、 「なんぢはこれ請法しょうぼうひとなり。 われいまかんとほっ。 なんぢよくつまびらかにき、 りょう*諦受たいじゅして、 *錯失さくしつせしむることなかれ」 となり

↢「告韋提」↡者、汝是請法之人ナリ。我今欲↠説カムト。汝好カニ、思量諦受シテ、莫レトナリ↠令ムルコト↢錯失↡。

^らい一切いっさいしゅじょう」 といふは、 ただ 如来にょらいのぞみたまふことは、 ひとへに*じょうもつしゅじょうのためなり。 いますでにひとしくうんきて、 あまねく*来潤らいにんうるおさんと望欲もうよくす。

↢「為未0716来世一切衆生」↡者、但如来臨ミタマフコトハ↠化、偏ナリ↢常没衆生↡。今既シクキテ↢慈雲↡、望↣欲サムト↢来潤↡。

^煩悩ぼんのう賊害ぞくがい」 といふは、 これぼん さわりおもく、 妄愛もうあいまよふかくして、 三悪さんまく*きょうくらくしてひとそくにあることをおもはずえんしたがひてぎょうおこして、 *進道しんどうりょうなさんとする、 なんぞそれ*六賊ろくぞくもん きおきたりておかうばいますでにこの法財ほうざいうしなふ、 なんぞ憂苦うくなきことをんやといふことをかす。

↢「為煩悩賊害」↡者、此明↧凡夫障重、妄愛迷クシテ、不↠謂↣三悪坑闇クシテルコトヲ↢人之足下ヒテ↠縁シテ↠行、擬スルモ↠作サムト↢進道資糧↡、何六賊知聞、競リテ今既↢此法財↡、何↠無キコトヲ↢憂苦↡也トイフコトヲ↥。

^せつ清浄しょうじょうごう」 といふ0389は、 これ如来にょらいしゅじょうつみたまふをもつてのゆゑに、 ためにさんほうき、 相続そうぞくして断除だんじょせしめ、 *ひっきょうじてなが清浄しょうじょうならしめんとほっすることをかす。 また 「清浄しょうじょう」 といふは、 *しも観門かんもんによりて専心せんしん念仏ねんぶつし、 おもい西方さいほうとどむれば、 念々ねんねんつみのぞこるゆゑに清浄しょうじょうなり。

↢「説清浄業」↡者、此明↫如来以テノ↠見タマフヲ↢衆生↡故、為↢懴悔之方↡、欲スルコトヲ↪令↢相続シテ断除↡、畢竟ジテメムト↩清浄ナラ↨。又言↢清浄↡者、依リテ↢下観門↡専心念仏、注ムレバ↢想西方↡、念念罪除コルガ清浄也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅱ)釈如来可問文

^ 善哉ぜんざい より以下いげは、 まさしくにんとい *しょうあたれることをかす。

↢「善哉」↡已下シク↣夫人問当レルコトヲ↢聖意↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)釈勧持勧説文
              (ⅰ)科節

^さんなん汝当にょとうじゅ よりしも宣説せんぜつぶつ」 にいたるこのかたは、 まさしくかん勧説かんせつかす。

↢「阿難汝当受持」↡下至↢「宣説仏語」↡已来タハシク↢勧持勧説トヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^このほう深要じんようなり、 よくすべからく流布るふすべしこれ如来にょらいさきにはすなはちそうじてげて安心あんじんちょうじゅせしむこのもんはすなはちべつしてなんちょくして、 じゅしてわするることなく、 ひろにんところにして、 ためにきてぎょうせしむることをかす。

法深要ナリ、好↢流布↡。此明↧如来前ニハジテゲテ↢安心聴受シテシテ↢阿難↡、受持シテ↠忘ルルコト、広多人ニシテ、為キテ流行セシムルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

^ぶつ」 といふは、 これ如来にょらいこう0495ごうにすでにくちとがのぞきたまひて、 言説ごんせつあるにしたがひて一切いっさいくもののねんしんしょうずることをかす。

↢「仏語」↡者、此明↧如来曠劫キタマヒテ↢口↡、随ヒテ↠有ルニ↢言説↡一切聞自然ズルコトヲ↞信

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)釈勧修得益文
              (ⅰ)科節

^如来にょらい今者こんしゃ よりしもとくしょうにん」 にいたるこのかたは、 まさしく勧修かんしゅ得益とくやくそうかす。

↢「如来今者」↡下至↢「得無生忍」↡已来タハシク↢勧修得益之相↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^これ 如来にょらいにんおよび*らいとうのためにかん方便ほうべんあらわして、 おもい西方さいほうとどめしめて、 しゃ*捨厭しゃえん極楽ごくらく*貪欣とんごんせしめんとほっすることをかす。

此明↫如来欲スルコトヲ↪為↢夫人及未来等↡顕シテ↢観方便↡、注メシメテ↢想西方↡、捨↢厭娑婆↡貪↩欣セシメムト極楽↨。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

^仏力ぶつりき」 といふ以下いげは、 これしゅじょう*ごっしょうるるに*しょうもうなれば、 たなごころすにとおしとおも ほう*竹ちくこんへだつるにすなはち0390これをせんとすあにいはんやぼんぶん諸仏しょぶつきょうないしんうかがんや。 *しょうりきみょうするにあらざるよりは、 かのくになにによりてかることをんといふことをかす。

↢「以仏力故」↡已下此明↧衆生業障触ルルニ↠目生盲ナレバ、指スニ↠掌↠遠シト他方隔ツルニ↢竹↡即ユトス↢之千里凡夫0717分外諸仏境内闚ハムヤ↠心リハ↠非ザル↢聖力スルニ↡、彼国何リテカムトイフコトヲ↞覩ルコトヲ

^にょしゅう明鏡みょうきょうけん面像めんぞう」 といふ以下いげは、 これにんおよびしゅじょうとうにゅうかんしてしんとど*じんこらしててざれば、 *しんきょう相応そうおうしてことごとくみな顕現けんげんすることをかす。 きょうげんずるときあたりて、 かがみのなかにものるにことなることなきがごとし。

↢「如執明鏡自見面像」↡已下此明↢夫人及衆生等入観シテ↠心、凝シテ↠神レバ↠捨、心境相応シテ皆顕現スルコトヲ↡。当リテ↢境現ズル↡、如↢似 ゴト ルニ↠物キガ↟異ナルコト也。

・得忍相

^しんかん得忍とくにん」 といふは、 これ弥陀みだぶっ こく清浄しょうじょうこうみょう、 たちまちに眼前げんぜんげんず、 なんぞ*やくへんこのによるがゆゑに、 すなはち*しょうにんることをかす。 また*にん、 また*にん、 また*信忍しんにんづく。 これすなはちはるかにだんじていまだ*得処とくしょひょうせず、 にんとうをしてしんにこのやくねがはしめんとほっす。 *ゆうみょうせんしょうしてしんぶつを〕おもひてとき、 まさににんさとるべし。 これおおくこれ*十信じっしんのなかのにんにして*ぎょうじょうにんにはあらず。

↢「心歓喜故得忍」↡者、此明↧阿弥陀仏国清浄光明、忽↢眼前↡、何ヘム↢踊躍ルガ↢茲↡故、即ルコトヲ↦無生之忍↥。亦名↢喜忍↡、亦名↢悟忍↡、亦名↢信忍↡。此乃ハルカジテ↠標↢得処↡、欲↠令メムト↣夫人等ヲシテ↢心↡。勇猛専精ニシテヒテ時、方↠悟↠忍。此多是十信ニシテ、非↢解行已上ニハ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)釈仏力観成文
              (ⅰ)科節

^ 仏告ぶつごうだい よりしもりょうにょ得見とくけん」 にいたるこのかたは、 まさしくにんこれ*ぼんにして*しょうにあらずしょうにあらざるによるがゆゑに、 あおぎておもんみればしょうりきみょうして、 かのくにはるかなりといへどもることをることをかす。

↢「仏告韋提」↡下至↢「令汝得見」↡已来タハシク↧夫人是凡ニシテ↠聖ルガ↠非ザルニ↠聖、仰ギテレバ聖力冥シテ、彼国雖↠遥ナリトルコトヲ↞覩ルコトヲ

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらいしゅじょうまどひをきて、 *にんはこれしょうにしてぼんにあらずといひて0391うたがいおこすによるがゆゑにすなはちみづから*こうにゃくしょう、 しかるにだいげんにこれさつにしてかりに凡身ぼんしんしめ0496す、 われら罪人ざいにん ぎゅうするよしなしといふことをおそる。 このうたがいだんぜんがためのゆゑに 「にょぼん」 とのたまふことをかす

此明↪如来恐↧衆生置キテ↠惑謂↢言ヒテ夫人是聖ニシテズト↟凡ルガ↠起スニ↠疑↢怯弱↡、然ルニ韋提是菩薩ニシテ↢凡身↡、我等罪人無シトイフコトヲ↞由↢比及スルニ↠断ゼムガ↢此↡故フコトヲ↩汝是凡夫↨也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文

・心想羸劣

^心想しんそう羸劣るいれつ」 といふは、 これぼんなるによるがゆゑにかつてだいなし。

↢「心想羸劣」↡者、ルガ↢是凡ナルニ↡故↢大志↡也。

・未得天眼

^とく天眼てんげん」 といふは、 これにん 肉眼にくげんるところの遠近おんごんごんなすらず、 いはんやじょういよいよはるかなり、 いかんぞるべきといふことをかす。

↢「未得天眼」↡者、此明↢夫人肉眼↠見遠近不↠足↠為スニ↠言、況浄土弥ナリ、云何キトイフコトヲ↟見

・異方便

^諸仏しょぶつ如来にょらい有異うい方便ほうべん」 といふ以下いげは、 これもししんによりてるところのこくしょうごん、 なんぢぼんのよく*しつするにあらずこうぶつすることをかす。

↢「諸仏如来有異方便」↡已下此明↧若リテ↠心↠見国土荘厳者、非ズト↢汝凡普悉スルニ↡、帰スルコトヲ↦功於仏↥也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅵ)釈牒前起後文
              (ⅰ)科節

^ろく だいびゃくぶつ よりしもけんこく」 にいたるこのかたは、 そにんかさねて*さきおん*でつし、 のちといしょうせんとほっするこころかす。

↢「時韋提0718白仏」↡下至↢「見彼国土」↡已来タハ↧其夫人重↢前↡、欲スル↣生↢起セムト↡之意↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これにんぶつりょうするに、 かみ光台こうだい所見しょけんのごとき、 これすでによくさきたりおもひき、 そんかいしたまふにはじめてこれぶつ方便ほうべんおんなりとる。 もししからば、 ぶついまににましませば、 しゅじょうねんこうむりて西方さいほうることをしむべしぶつもしはんしたまひて加備かびこうむらざものは、 いかんることをんやといふことをかす。

此明↧夫人領↢解スルニ仏意↡、如キハ↢上光台所見↡、謂ヒキ↢是已サキタリト↡、世尊開示シタマフニ↢是仏方便之恩ナリトラバ者、仏今セバ↠世、衆生蒙リテ↠念↠使↠得↠見ルコトヲ↢西方仏若涅槃シタマヒテ↠蒙↢加備↡者、云何↠見ルコトヲトイフコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)釈悲心為物文
              (ⅰ)科節

^しち にゃく仏滅ぶつめつ よりしも極楽ごくらくかい」 にいたるこのかたは、 まさしくにんしん*もの0392のためにすること、 おの おうじょうおなじく、 ながしゃきて、 なが安楽あんらくあそばしめんといふことをかす。

↢「若仏滅後」↡下至↢「極楽世界」↡已来タハシク↧夫人悲心為ニスルコト↠物、同ジク↢己往生↡、永キテ↢娑婆↡、長バシメムトイフコトヲ↦安楽↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらいしんしたまふうんさいてつしていまだやすまず。 ただ かわときうつりて、 ぐんじょう*浅促せんそくなるをもつてのゆゑに、 如来にょらいをしてようしょう寿じゅげんじ、 *じょうごう*みんてもつて*人年にんねんるいし、 きょうまんせっせんとしてもつてじょうしめし、 剛強こうごうせんとしておなじく*めつせしむることをかす。 ゆゑににゃく仏滅ぶつめつといふ。

此明↫如来期シタマフ↠心運度、徹↢窮シテ後際↡而未↠休但以テノ↢世代時移リテ、群情浅促ナルヲ↡故、使ムルコトヲ↪如来ヲシテ↢永生之寿↡、泯ジテ↢長劫↡以↢人年↡、摂セムトシテ↢憍慢↡以↢無常↡、化セムトシテ↢剛強↡同ジク↩於磨滅↨。故↢「若仏滅後」↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)(ⅲ)釈文

^諸衆しょしゅじょう」 といふは、 これ如来にょらいたまはばしゅじょう帰依きえするにところし。 *蠢々しゅんしゅん周慞しゅうしょうして、 じゅうおう六道ろくどうはしることをかす。

↢「諸衆生」↡者、此明↧如来息メタマハバ↠化、衆生無↠処↢帰依スルニ蠢蠢周慞シテ、縦横ルコトヲ↦於六道↥。

・濁悪不善

^じょくあくぜん」 といふは、 これじょくかす。 いちこう0497じょくしゅ生濁じょうじょくさんけんじょく煩悩ぼんのうじょくみょうじょくなり。

↢「濁悪不善」↡者、此明↢五濁↡也。一者劫濁、二者衆生濁、三者見濁、四者煩悩濁、五者命濁ナリ

・劫濁

^こうじょく」 といふは、 しかるにこうじつにこれじょくにあらず、 こうげんずるときあたりて諸悪しょあくぞうす。

↢劫濁↡者、然ルニ↢是濁↡、当リテ↢劫減ズル↡諸悪加増也。

・衆生濁

^しゅじょうじょく」 といふは、 こうもしはじめてじょうときしゅじょうじゅんぜんなり、 こうもしまつなるときしゅじょうじゅうあくいよいよさかりなり。

↢衆生濁↡者、劫若ズルトキハ衆生純善ナリ、劫若ナル衆生十悪弥也。

・見濁

^けんじょく」 といふは、 しん衆悪しゅあくそうへんじてぜんとなうえなきをならずとなす。

↢見濁↡者、自身衆悪ジテジテ↠善、他キヲバ↠非見↠不↠是ナラ也。

・煩悩濁

^煩悩ぼんのうじょく」 といふは、 当今とうこん劫末こうまつしゅじょうあくしょうにしてしたしみがたし。 六根ろっこん随対ずいたいして*貪瞋とんじんきおおこる。

↢煩悩濁↡者、当今衆生悪性ニシテ↠親。随↢対シテ六根↡貪瞋競也。

・命濁

^命濁みょうじょく」 といふは、 さきけんのうじょくによりておお殺害せつがいぎょうじて、 いつくしみ恩養おんようすることなし。 すでに0393*だんみょう いんぎょうじ、 じょうねんけんとほっするも、 なにによりてかべき。

↢命濁↡者、由リテ↢前見・悩0719↡多ジテ↢殺害↡、無↢慈シミ恩養スルコト↡。既↢断命之苦因↡、欲スルモ↠受ケムト↢長年之果↡者、何リテカ↠得也。

^しかるにじょく*たいこれぜんにあらず。 いまりゃくしてじょくしめしをはりぬ。

ルニ濁者体非↢是善↡。今略シテ↢五濁↡竟リヌ

・五苦所逼

^五苦ごく所逼しょひつ」 といふは、 はっのなかにしょうろうびょう死苦しく*愛別あいべつ りて、 これ五苦ごくづく 。 さらにさんくわふればすなはちはっとなるいち*おんじょう*求不ぐふとくさん*怨憎おんぞう会苦えくそうじてはっづく。

↢「五苦所逼」↡者、八苦リテ↢生苦・老苦・病苦・死苦・愛別苦↡、此↢五苦↡也。更フレバ↢三苦↡即↢八苦↡。一者五陰盛苦、二者求不得苦、三者怨憎会苦、総ジテ↢八苦↡也。

^このじょく五苦ごくはっとう六道ろくどうつうじてく、 いまだなきものあらず。 つねにこれを*逼悩ひつのうす。 もしこのけざるものは、 すなはち*凡数ぼんじゅしょうにあらず。

五濁・五苦・八苦等ジテ↢六道↡受、未↠有↢無者↡。常逼↢悩↡。若↠受↢此↡者、即↢凡数↡也。

^うん当見とうけん」 といふ以下いげは、 これにん*苦機くきすいして、 これらの*罪業ざいごうきはめてふかくして、 またぶつたてまつらず、 加備かびこうむらずは、 いかんかのくに るべきといふことをかす。

↢「云何当見」↡已下、此明↧夫人挙↢出シテ苦機↡、此等罪業極クシテ、又不↠見タテマツラ↠仏、不↠蒙↢加備↡、云何ルベキトイフコトヲ↦於彼↥也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (三)

^じょうらい しちどうありといへども、 ひろじょうぜんかん えんかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢七句不同↡、広↢定善示観縁↡竟リヌ

総結

【12】^はじめに*しょうしんじょかし、 つぎ*ぜんじょかし、 のち*ほっじょかす。

ニハ↢証信序↡、次ニハ↢化前序↡、後ニハ↢発起序↡。

^じょうらい 三序さんじょどうありといへども、 そうじてじょ0498ぶんかしをはりぬ。

上来雖↠有リト↢三序不同↡、総ジテ↢序分↡竟リヌ

かんぎょう序分じょぶん かんだい

 

延書の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし返点については本派本願寺蔵版によるか。 なお、 宗祖加点本と対校し、 相違箇所を赤の点下線(クリックで内容表示)、 減語句を青の点下線で示している。
五門 五分。 じょうようおん (523-592)・嘉祥かじょう大師吉蔵きちぞう (549-623) 等の諸師は ¬観経¼ に三分 (序分じょぶん正宗しょうしゅうぶんずうぶん) を立てて解釈するが、 善導ぜんどう大師は、 五分 (序分・正宗分・得益とくやく分・流通分・しゃ分) を立てて解釈する。
得益分 その経の教えによってやくを得ることを示す部分。
王宮にまします一会 王宮会のこと。 仏が王舎城おうしゃじょうなんだいのために説法した会座。
一会 しゃのこと。 阿難がしゃ崛山くっせんの大衆のために王宮会での仏の説法を再説した会座。 「散善義」 では耆闍分ともよぶ。
三分 善導大師は全四十五字の耆闍会 (耆闍分) にも序分・正宗分・流通分の三分があるとする。
正宗 正宗しょうしゅうぶんのこと。
勝を歎じて (¬観経¼ の教説が) すぐれていることを讃嘆さんだんして。
能説の人 教えを説く人。
能聴の人 教えを聞く人。
天法 天に生ずるための教え。 じゅうぜんの法。
 小乗しょうじょうの教え。
 だいじょうの教え。
歴々了然 きわめて明らかであること。
随心の起行 (しゅじょうが) その心にしたがって行をおこすこと。
各益の不同 (その行によって得る) やくはそれぞれ同じではないということ。
業果の法然 業因によって果報を得ることが道理として自然にあること。
可信を証誠せん 信ずべきことを証明しよう。
禁父の縁 じゃが父のびん婆娑羅ばしゃら王を幽閉する因縁。
禁母の縁 阿闍世が母のだいを幽閉する因縁。
厭苦の縁 韋提希が苦悩の穢土えどを厭う因縁。
欣浄の縁 韋提希が浄土を願い求める因縁。
散善顕行縁 散善行を顕す序文。 親鸞聖人は 「散善は行を顕す縁なり」 (化身土文類訓) と読み、 「自力の散善は他力念仏を顕す縁」 と転意した。
定善示観縁 定善観を示す序文。 親鸞聖人は 「定善は観を示す縁なり」 (化身土文類訓) と読み、 「定善は他力の信心 (観) を示す縁」 と転意した。
 化前序の七段を指してならばこれは 「一」 の誤りと思われる。【4】の標列を一と考えて二としたものか。(有国)
起化の時 説法教化をおこす時。
純凡 ぼんのみ (がいる場所)。
純聖 聖者のみ (がいる場所)。
 父王を殺すという逆罪。
耆闍 しゃ崛山くっせんのこと。
耆山 耆闍ぎしゃ崛山くっせんのこと。
二には… 以下、 「大比丘びく衆」 の大についていう。
総大 以下の七大の総句。
相大 すがたがすぐれていること。
衆大 僧衆が巧みに和合していること。
耆年大 長老の比丘であること。
数大 比丘の数が多いこと。
尊宿大 高徳の長老であること。
内有実徳大 内に尊い徳をそなえていること。
果証大 すぐれた証果を得ていること。
猶置 安置の意。 あるいは由致 (由序) の意か。
羅漢道 阿羅漢果。 →阿羅あらかん
舎利 しゃ利弗りほつのこと。
道果 阿羅漢果。 →阿羅あらかん
結集の家 経を結集けつじゅうした人。
簡び 区別して。
真門に入る 真実の教えである仏法に帰入すること。
気習 じっに同じ。
砕身の極 仏の恩徳は身を砕いてもなお報じがたいほど深いという意。
六種に振動す →六種ろくしゅ震動しんどう
邪網を掴裂し よこしまな教えの網を切り裂いて。
百姓 (王舎城中の) 人民。
王舎 王家の舎宅。
無憂の世界 いかなる憂いもない極楽世界。
霊儀を影現し 釈尊が十方の仏の尊いありさまをだいに示したことをいう。
三福の因 往生の因であるところの散善さんぜん三福さんぷくの行。
定門 じょうぜんの法門。
九章の益 ぼんの散善のやく
この地の往翻には 中国語の意訳では。
未生怨 出生以前より既に父に怨を懐いた者という意。
継祀 先祖の祭祀をうけつぐこと。 ここでは王位を相続する者の意。
心口をもつて 心に殺意をいだき、 口に命令を発して。
王において… 王に害を加えるであろう。
捨属 (生れてくる子に) 与えること。
平章 正しく明らかにすること。 ここでは適切な処置をとるという意。
 風聞。 うわさ。
外人 王族以外の人々。
為人匈猛 性格が凶暴であること。
仏会 釈尊の説法の会座。
身通 神足通じんそくつうのこと。 →ろく神通じんずう
他心 他心通たしんつうのこと。 →ろく神通じんずう
跏趺正坐 けっ趺坐ふざに同じ。
空無礙の想 くうを自由自在に行く想い。
摂取 おさめとること。
堪任するところなし (教団を率いてゆく) 能力がない。
罔極の恩 極まりない恩。
逆の響き 逆罪を犯したという噂。
人間 人の出入りするところ。
外人 他の人々。
 蜜蝋のこと。 蜂蜜の巣を精製してつくった蝋。
漿 汁。
門家 守門の者。 門番のこと。
異計 特別なはかりごと。
宿縁業 過去の因縁いんねん
 酥蜜のこと。 牛乳を精製してつくった乳酥に蜂蜜を加えたもの。
麨団 乾麨のこと。 炒った麦をひいた粉。 麦こがし。
朝心 王の心の意か。
別親 母方の親類。
門師 びんしゃ王家の師匠。
幽難 幽閉の難。
 屈請くっしょう。 尊い人の来臨を請うこと。
時節長遠 (戒をたもつべき) 時間が長いこと。
余の仏経 ¬じゅじゅう善戒ぜんかいきょう¼ などを指す。
持心極細極急 戒をたもつ心が細密で精励であること。
用心 (戒をたもつ) 心がまえ。
 細密。
戒文 戒を説く律文。 ¬分律ぶんりつ¼ ¬分律ぶんりつ¼ など。
仏子 かいの人。 仏弟子。
今旦・明旦 今朝・明朝。
 正午。
悪習 悪の余残の気分。
 ¬じゅじゅう善戒ぜんかいきょう¼ などの経。
快鷹 空を早く飛ぶ鷹。
来業を資せんと擬す 来世の果報を招く業因の資糧にしたいと望む。
発遣 (富楼那ふるなを) 派遣すること。
二七有余 十四日余り。 ¬観経¼ には 「三七日」 とある。
三七 二十一日間。
意密の問 本心を隠した問いかけ。
万基の主 国を統治する者。 国王。
挙動… 行動が気ままであってはならない。
悪逆の声 悪逆を犯したという評判。
 乾麨のこと。 炒った麦をひいた粉。 麦こがし。
夫人の… だい夫人が食物をもちこむことができたのは、 じゃがあらかじめこれを禁じていなかったからである。
門制 宮殿の出入りについての制禁。
後の正行 行為そのもの。
沙門 目連もくれん富楼那ふるなのこと。
慈母 だいのこと。
 じゃのこと。
八方 四方およびゆい。 ここではすべての民衆のこと。
顔を犯して 遠慮しないという意。
家兄 じゃのこと。
古今の書史歴帝の文記 古今の歴史書や歴代帝王の記録。
京邑神州 京邑は都、 神州は国土の美称。 ここではおう舎城しゃじょう摩竭陀まがだこくを指す。
無聞の地 たよりの聞えないようなところ。
剣を按ずる 剣のつかに手をおく。
諌辞 (じゃを) いさめることば。
却行而退 後向きに退くこと。
異計 (阿闍世を追放するための) 陰謀。
情地 心地。 気持ち。
 大臣。
訝楽 憩いたのしむこと。
水泄すら通ぜず 水も漏らさないように厳重に警備するという意。
彼此 彼は釈尊、 此はだいびんしゃ王を指す。
穢質の女身 →補註10
福因尠薄なり 過去の善根ぜんごんの因がとぼしい。
三たび致請 仏を懇請こんせいすること。 三度請をかさねることは仏を請ずるときの礼法。
ここ 耆闍崛山。
かしこ 王舎城おうしゃじょうの王宮。
未聞の益 いままでに聞いたことのないすぐれたやく
鉤帯 瓔珞のとめひも。
婉転 ころびたおれること。
身の威儀を正しくして 身だしなみをととのえて。
径路 (じゃ王が逆罪をおこすに至った) 道筋。
甘心 甘んじて受けるの意か。 またここでの甘を厭の義と解する説もある。
by>とじっのこと。
別して… →だい別選べっせん
増上の勝因 この上なくすぐれた原因。
三本の悪果 地獄・餓鬼がきちくしょうの三悪道の果報。
三の苦聚 三悪道さんまくどうのこと。
経にのたまはく… 引用は ¬華厳経¼ 等の諸経の取意の文か。
簡ばず 区別しない。
生処 往生すべき浄土。
得生の行 往生を得るための行業。
意密 密意みっちに同じ。 仏の深いみこころ。
所現 金台に現れた十方仏国のありさま。
甘露 ここでは浄土の法門を甘露に喩える。 →かん
衆聖 数多くの聖者たち。 ここでは諸仏のこと。
指讃 阿弥陀仏の浄土を指し示してほめたたえること。
別行 阿弥陀仏の浄土に往生するための特別な行。
 じょうぜんに入るためのてだて。
四種の荘厳 定善十三観をほうしょうぼうに分け、 そのそれぞれに通と別とを分つので、 四種のしょうごんとなる。
前境 所観の境としての正二報しょうにほう荘厳相そうごんそう
下の観門 定善十三観のこと。
威儀 ふるまい。 作法。
記を授く →じゅ
第三の果 声聞乗しょうもんじょうの修道階位である四向四果のうちの阿那含果のこと。 →阿那あなごん
所求の行 阿弥陀仏の浄土に往生するための行。
告命許説 告命は仏が韋提希に告げること。 許説は仏が韋提希の願いをききいれて法を説くこと。
 所観の境。 観想の対象となるところの浄土。
分斉遠からず ここでの分斉は程度の意。 十万億刹は二十万億刹、 三十万億刹等の距離に比べれば遠くないということ。
道里 (西方浄土への) みちのり。
定境相応して 定心と所観の境が合致して。
浄境 清浄しょうじょうなる境界であるところの浄土のありさま。
定門 じょうぜんの法門。
定・散 じょうぜんの機と散善さんぜんの機。
生を摂するに尽きず すべてのしゅじょうをおさめとることはできない。
 ¬さつ処胎しょたいきょう¼ 等の諸経を指す。
能生の因・所生の縁 父は子種を下すから子をく生ずる因といい、 母は子種をたもち育てるから子を生ずる所の縁であるという。
飢倹 飢饉。
縦横 至るところにあること。
幢相 はたじるし。 袈裟は煩悩ぼんのうの敵を破るはたじるしに喩えられる。
仏母… 以下の説は ¬だいほう便べんぶつ報恩ほうおんぎょう¼ に出る。
敬上の行 かみを敬う行為。
 異本には 「恕」 とある。
慈下の行 しもを慈しむ行為。
戒徳巍々として 戒をたもつ徳はおごそかである。
少分戒… 少分戒は戒のうちのいくつかをたもつこと。 多分戒は戒の過半をたもつこと。 全分戒は戒のすべてをたもつこと。
 だいじょうのこと。
弘心 大乗のさとりを求める心。
来去を迎送して 来る者を迎え、 去る者を送って。
後際を徹窮し 未来永遠に。
印を… 臘印を熱い泥土におすと臘印は壊れるが文字のみが残る。
勅聴許説 勅聴は仏がだいに聞くことを命じること。 許説は仏が韋提希の願いに応じて法を説くこと。
正受の方便 じょうぜんかんの方法。
二人 なんと韋提希を指す。
来潤 未来のしゅじょう。 潤は法のうるおいを受くべき者の意。
進道の資糧 さとりの道をあゆむためのかて。
下の観門 じょうぜん十三観。
未来 未来世のしゅじょう
貪欣 ねがい求めること。
竹 竹の皮を薄く編んだものの意か。 異本には 「竹篾」 (竹の皮の意) とある。
心境相応して 観ずる心と観の対象とが完全に合致して。
無生の忍 しょう法忍ぼうにんのこと。
得処 無生法忍を得るところ。 善導ぜんどう大師はだいが無生法忍を得るのは第七華座けざかんのはじめに住立じゅうりゅうくうちゅうそんがあらわれるところにおいてであるとする。
勇猛専精 いさましく一筋にはげむこと。
十信の… 無生法忍は十信じっしん位のぼんの得るやくであって、 じゅうじゅう十行じゅうぎょう以上の高位の菩薩の得る利益ではないとするのが善導大師の理解である。
解行以上 (十信に続く) じゅうじゅう十行じゅうぎょう以上の位。
凡・聖 凡夫、 聖者。
夫人は… じょうようおん (523-592) 等の諸師が韋提希を高位の聖者としたことを受けていう。
普悉 あまねく知るの意か。
前の恩 仏の力によって光台のうちに十方諸仏の国土を見ることができたことを指す。
浅促 心が浅く寿命が短いという意。
泯じて 減らして。
人年 人間の寿命。
磨滅 死。
蠢々周慞して うごめきあわてて。
断命の苦因 苦の原因となる殺生せっしょう
愛別苦 愛別あいべつ離苦りくのこと。
苦機 苦悩の機類。
底本は◎高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本。 Ⓐ大谷大学蔵鎌倉時代刊本、 Ⓑ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓒ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 ª全部対校º 辯→Ⓒ辨
→Ⓑ
→Ⓒ即[此]
→Ⓑ
→Ⓒ
→Ⓑ
→Ⓒ
→Ⓒ
→◎ⒶⒷ
→Ⓒ
→Ⓒ
→Ⓒ
→◎
→Ⓒ
→Ⓒ
→Ⓒ
→Ⓒ
→Ⓒ
→Ⓒ者[者]
→Ⓒ
→Ⓒ
→Ⓒ
→Ⓑ
ト云
コウジテ
チン
アマネ
クワン学セムト欲ス、
二意
定レル
ジテ
ルコトヲ
コトバ
ニ、
シテ
心ニ随テ行ヲ起スニ
スルコト
同ラズ
トシテ
シ、
スルコトヲ明
スルコトシンジツベキコトヲ明
ルナリ
法ヲ説タマハム
法ヲ説タマフコト、
若多一二処
ク。
イフ
シヽ
ナリ。
シヽ
シテ、
トモ
ノ因縁
コト
カシメ
ンデ
以テミレバ反
ニシテ
弘ク
ザレバ
ネタリ
云何ガ
ナル
キ、
領シテ
セバ
セシメ
オソラクハ
サザラシム
レタリ
ヒタテマツル
ウルオヒカブ
ツイ
オモ
クダキワマリ
マノアタ
グレ
ルニ、
ノ無量ノ仏土
ス。
ジ、
ベテ、
サトラシメ、
ス。
ト云コト
ク、
可思議ナリ
サキ
父ヲキンズル
ラク、
コン
ナン
ラム
焼セラ
ツタ
故名ナヅケタ
ナリ
ズル
ウレヘ無キ
請ズルニ
タルヽ
ニハ
ルニ
ツベシ
イノチオハ
命ヲツベキ
カシメ
レドモ
タシナンデ
イマシ
命ヲ
云リ
使人ツカヒ
王ノシヤウズル
チヨク
カバ
シヨ
ツカハシ
セツ
カヘ
ケツ
有身ハラミヌ
イテ、
ヘリ
カバ
ウレヘ
メル
チテ
ユビ
ニヨル
ムカ
奉上タテマツ
アルコロモ
スグレタルキモノ
オク
ムカ
人者キミ ナンヂ
ホトリ
タマヘ
シヨ
悪ノハカリゴト
教ヘテ
ゲテ
動想ドウソウタラシム
セ。
ヨ。
スベシ
ベシ。
至リ
ナバ
ルベシ
想ヘ、
シム
スコトヲ
ザルコトヲ
ルコトヲ
テ、
身ノ下
バヒ
バフ
仏所
コトヲ
カク
ヽム
アシイヌ
テバ
イヌ
アシキコト
ニス
説法ノ
モト
マサヤシナイタテマツル
ノ、
ヘル
ドク
如ニシテ
今日ケフ
タマヘ
シタマウ
ツカハ
ムルコト
メシカドモ、
ノミ
ゼリ
シルシ
実ナラズハ
調達悪ノ教ニ随順ス
父王
ナサケ
タヾチ
ウシナ
キワマ
ツコトヲ
ハバ
 マリ
イハ
コト
カルベカラズ
オサメ
ヘタリ
コトヲ
キ。
タム
ヲシテ
アナノ一ノハシ
イデ
漿コムヅ
諸ノ
タマハ
ヲバ
イツク
コトナハカリゴト
タイベチナレドモ同ジ
身ノ上
ネブ
ルコトヲツ、
宮ノ内
ヘテ
ト云ヨリ
セルヲ
コヽロ
請ジ奉ル
戒ヲ受ル
ナルコト
ワヅラハ
スデ
ニ有リ
ザル
セム
イ ハ
説ノ
極メテコマカナリ極メテ
サイ
如ク
セズ、
ノウナラム
テ□□
シタマハ
ザレ
已還コノカタ
ヒトシ
ルニ、
ボン
タカ
タカ
タグヒトスル
スベカラ
ベシ
コト
ヨバ
アオイデ
シヤク増高ゾウカウニシテ
ルコトヲ望欲マウヨク
コトヲ明ス。
ゼム
法ヲ説ク。
カシメ
ナイヨリ
コトヲ明ス
ソウジテ
キコトヲ明ス
ハク
云何イカヾ
シカ
ルカ
モン
ヌシタルヲ以テナリ
宜ニ随フ
以テ
フニ
ヨリ
テ、
ゼルコトヲ明ス
キヌ
レヌ
コトヲ明ス
食ヲ進ス
タマハラ
コノ
瞋怒イカルコト
アシコトバ
オコス。
云ハ、
ケ、
セツ
コロ
悪ノコトバ
ト為ル
ウラミ
ウラムラクハ
タメノ
リト
明ス
イカナル
ウナダ
スヲ見
バズシテ、
当ニ
スルコトヲ明ス。
スベカラ
マウスベシ
カンズルコト
マル
セル
リヤウダンナリ
セツスル
ヲ引テ今ニ異ス
ワウ
マサ
スヲ見ルニ
ヅルコト
ノ主ヲノゾ
カジ、
ヘテン
ヂキイサムルコト
手ヲオサヘテツルギツル
ラズシテ
母ヲ害スル
メム
ケンクルコト
ツルギ
ルコトヲ明ス。
オソラクハ
テヽ
同カラム
スルコト
オモ
此ハ
タヾチニ諌コト
コト、
還テオサムル
ノガ
クルシミ
ムスボヲ
モノ
コトヲ、
カブ
ミヅモルコト
シン
リテ
ケシメツ、
リト云
ラシメ
オソラクハ
コトサラ
ツカハシテ
スルナリ
タメ
欲フ
カフベ
シユ
キタマフ
ゼン
タマフベシ
ヅルニ
トン
トコロ
チゴ
ウタフ、
ガウス、
ウラミ
トイフ
心ヲアムズルニヨリドコロ
此ハ
仏説ノ
タノシミ
テ出
ザルヲ明ス
娑婆
心ニ随
アル
フ、
ザラマシカバ
ズ、
ニチ
明ス。
シヨ
ズ。
タリ
為我広説無シヨ
シテ
コトバ
サン
マナコマヘ
シ。
タル
ヲ明ス
使ル
サキ
前ノ
スル
ヲ見タマフニ
以テ
コトヲ明ス。
イデドコロ
ニン
コトヲ明ス
コヘ
行ヲ
オハ
スベ
ヂユ
ギウ
トナリ
ソナハラザレバ
カイ
クワンシユ
得益ス
勧修ス
ルコトヲ明ス、
ナン
ヒテ
カウジヤウ
タル
キナリ
キワマリ
ジヨウ
ヨバ
カヘ
還タマフニ
イマ
一匙ヒトカヒ
ボン
コロモ
サジ
ノタマ
テム
信心
ヘム
極重ゴクヂウナリ
乃至
仏ニルマデ
ズト云コト
ジユツ
キテ、
ザルコトヲ明ス
シタ
ヒトリ
ズト云コト
レバ
ヤブ
ザレト
ツルギ
ウルヲイ
オモ
アシシタ
ヘダタルヽコト
ナレドモ
ブンホカニシテ
シメムト、
ヂユセシメ
ヨロコビ
オソラクハ
ナリ、
タクラオヨ
大ノコヽロザシ
コト
ナラバ
普ク
ヌ、
ラン
シテカ
マザルコトヲ明ス
オモンミレバ
寿イノチ
ヒタヽ
メタマフ
スエ
オモハバ
ジヤウ
ゲ出ス
タテマツ