◎1031六要ろくよう鈔しょう第だい二に 新本しんほん

 

二 Ⅱ ⅱ 行

【1】 ◎△当巻とうかん大文だいもん第だい二にに行ぎょうを明あかす。 中なかにおいて五ごとなす。

◎当巻大文第二ニ明ス↠行ヲ。於テ↠中ニ為ス↠五ト。

一いちは題目だいもく、 ▽二には標ひょう挙こ、 題だいの後のちの一いち行ぎょう、 ▲第だい一巻いっかんのごとし。 かれは総そうじて経名きょうみょうを標ひょうし、 これは別べっして願がん名みょうを標ひょうす。 ▼以下いげの諸巻しょかんまた当巻とうかんに同おなじ。

-▽一者題目、二者標挙、題ノ後ノ一行、如シ↢第一巻ノ↡。彼ハ総ジテ標シ↢経名ヲ↡、此ハ別シテ標ス↢願名ヲ↡。以下ノ諸巻又同ジ↢当巻ニ↡。

▽三さんは正釈しょうしゃく、 文もんの初はじめより下しも終おわり下しもに ¬安楽あんらく集しゅう¼ に 「これまた聖教しょうぎょうによる」 といふ文もんを引ひくに至いたるまでこれなり。 広ひろく諸文しょもんを引ひき少すこしきわたくしの釈しゃくを加くわふ。

^三者正釈、自↢文ノ初↡下終至マデ↧下ニ引ニ↦¬安楽集ニ¼云↣「此レ亦依ト↢聖教ニ↡▲」文ヲ↥是ナリ。 広ク引キ↢諸文ヲ↡少シキ加フ↢私ノ釈ヲ↡。

四しは総結そうけつ、 ▽「斯し乃ない」 より下しも 「之し大だい行ぎょう也や可知かち」 といふに至いたるまで二に行ぎょう余よこれなり。

-四者総結、従↢「斯乃」↡下至マデ↠云ニ↢「之大行也可知ト」↡二行余是ナリ。

五ごには重釈じゅうしゃく、 次つぎに 「言ごん他た力りき者しゃ」 といふより下しも巻かんの終おわりに至いたるまでこれなり。

-▽五者重釈、次ニ従↠云↢「言他力者ト」↡下至マデ↢巻ノ終ニ↡是ナリ。

二 Ⅱ ⅱ a 題目

【2】 初はじめに題目だいもくの中なかに、 二にを分わかつこと▲前さきに準じゅんず。 題だいに就つきて、 ▲第一だいいちには 「教きょう」 といひ 「一いち」 といふ。 この巻かんの題だいには 「行ぎょう」 といひ 「二に」 といふ。 次し第だい知しるべし。 撰号せんごうは前さきのごとし。

初△題目ノ中ニ、分コト↠二ヲ準ズ↠前ニ。就テ↠題ニ、第一ニハ云ヒ↠「教ト」云フ↠「一ト」。此ノ巻ノ之題ニハ云ヒ↠「▲行ト」云フ↠「▲二ト」。次第応シ↠知。▲撰号ハ▲如シ↠前ノ。

二 Ⅱ ⅱ b 標挙

【3】 △二にに標ひょう挙この中なかに、

二ニ標挙ノ之中ニ、

「諸仏しょぶつ称名しょうみょうの願がん」 とは、 これ第だい十じゅう七しちの願がんなり。 これすなはち往おう生じょうの行ぎょうたる名みょう号ごうを説とく願がんなるがゆゑに当巻とうかんにこれを出いだす。 おほよそ四し十じゅう八願はちがんの中なかにおいてこの願がん至し要ようなり。 もしこの願がんなくば名みょう号ごうの徳とくなんぞ十方じっぽうに聞きこえん。 聞ききて信しん行ぎょうするはこの願がんの力ちからなり。 もしこの願がんなくば超ちょう世せの願がん意い、 諸仏しょぶつなんぞ証しょうせん。 証しょうによりて信しんを立たつるはまたこの願がんの恩おんなり。

-「▲諸仏称名ノ願ト」者、是 レ第十七ノ願也。是則説ク↧為タル↢往生ノ行↡之名号ヲ↥願ナルガ故ニ当巻ニ出ス↠之ヲ。凡ソ於テ↢四十八願ノ之中ニ↡此ノ願至要ナリ。若シ無クハ↢此ノ願↡名号ノ之徳何ゾ聞ヘン↢十方ニ↡。聞テ而信行スルハ此ノ願ノ之力ナリ。若シ無ハ↢此ノ願↡超世ノ願意、諸仏何ゾ証セン。依テ↠証ニ立ルハ↠信ヲ又此ノ願ノ恩也。

「浄じょう土ど真実しんじつの行ぎょう」 とは、 往おう生じょうの行ぎょうの中なかに、 仏ぶつの本願ほんがんなるがゆゑにまさしく念仏ねんぶつをもつてその生しょう因いんとなす、 ゆゑに 「真実しんじつ」 といふ、 これ称名しょうみょうなり。 余よは本願ほんがんにあらず、 ゆゑに真実しんじつにあらず。

-「▲浄土真実ノ行ト」者、往生ノ行ノ中ニ、仏ノ本願ナルガ故1032ニ正ク以テ↢念仏ヲ↡為ス↢其ノ生因ト↡、故ニ云フ↢「真実ト」↡、是 レ称名也。余ハ非ズ↢本願ニ↡、故ニ非ズ↢真実ニ↡。

「選せん択じゃく本願ほんがんの行ぎょう」 とは、 その意こころまた同おなじ。 念仏ねんぶつはまさしくこれ選せん択じゃく本願ほんがん、 余よは選せん択じゃく本願ほんがんの行ぎょうにあらず。 ゆゑに念仏ねんぶつをもつて真実しんじつの行ぎょうといひ、 選せん択じゃくの行ぎょうといふ。

-「▲選択本願ノ行ト」者、其ノ意又同ジ。念仏ハ正ク是 レ選択本願、余ハ非ズ↢選択本願ノ之行ニ↡。故ニ以テ↢念仏ヲ↡云ヒ↢真実ノ行ト↡、云フ↢選択ノ行ト↡。

二 Ⅱ ⅱ c 正釈

【4】 △三さんに正釈しょうしゃくの中なかに就つきて、 文もんを分わかちて二にとなす。 ▽文もんの初はじめより下しも「之し願がん也や」 に至いたるまでは、 まづ行ぎょう体たいを標ひょうしかねて願がん名みょうを挙あぐ。 ▽「諸仏しょぶつ称名しょうみょうの願がん」 といふより下しもはまさしく諸文しょもんを引ひく。

三ニ就テ↢正釈ノ中ニ↡、分テ↠文ヲ為ス↠二ト。自↢文ノ初↡下至マデハ↢「之願也ニ▲」↡、先ヅ標シ↢行体ヲ↡兼テ挙グ↢願名ヲ↡。従↠云↢「▲諸仏称名ノ願ト」↡下ハ正ク引ク↢諸文ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ c イ 行体願名

【5】 △「つつしんで按あんず」 と言いふは発端ほったんの詞ことば。 「往相おうそうの回え向こう」 は前さきの巻かんに述のぶるがごとし。

言「▲謹按ズト」者発端ノ之詞。「▲往相ノ回向ハ」如シ↢▲前ノ巻ニ述ルガ↡。

「もろもろの善法ぜんぼうを摂せっす」 とは、 「玄げん義ぎ」 (玄義分) にいはく、 「無む量りょう寿じゅとはこれ法ほう、 覚かくとはこれ人にん。 人法にんぼう並へいして彰あらわす、 ゆゑに阿あ弥陀みだ仏ぶつと名なづく。」 以上 法ほうは所覚しょかくの法ほう、 覚かくは能覚のうかくの人にん。 その所覚しょかくの法ほうはすなはちこれ八万はちまん四し千せんの法門ほうもん、 因いん行ぎょう・果か徳とく法ほうとして備そなはらざることなし。 もろもろの善法ぜんぽうを摂せっする義ぎ知しるべし。

-「▲摂スト↢諸ノ善法ヲ↡」者、「玄義ニ」云、「▲無量寿ト者是 レ法、覚ト者是 レ人。人法並シテ彰ス、故ニ名ク↢阿弥陀仏ト↡。」 已上 法ハ所覚ノ法、覚ハ能覚ノ人。其ノ所覚ノ法ハ乃チ是 レ八万四千ノ法門、因行・果徳無シ↢法トシテ不ルコト↟備ハラ。摂スル↢諸ノ善法ヲ↡之義応↠知。

「もろもろの徳本とくほんを具ぐす」 とは、 ¬大だい経きょう¼ の上じょうにいはく、 「一切いっさいの仏ぶつを供く養ようし、 もろもろの徳本とくほんを具ぐ足そくす。」 以上 *饒にょう王おうの徳とくを讃さんじて順じゅん求ぐしてこれを得う。 *慈じ恩おんの ¬*西方さいほう要決ようけつ¼ にいはく、 「諸仏しょぶつの願がん行ぎょうこの果かの名なを成じょうず、 ただよく号みなを念ねんずればつぶさに衆徳しゅとくを包かぬ。」 以上

-「▲具スト↢諸ノ徳本ヲ↡」者、¬大経ノ¼上ニ云ク、「▲供↢養シ一切ノ仏ヲ↡、具↢足ス衆ノ徳本ヲ↡。」 已上 讃ジテ↢饒王ノ徳ヲ↡順求シテ得↠之ヲ。慈恩ノ¬西方要决ニ¼云ク、「諸仏ノ願行成ズ↢此ノ果ノ名ヲ↡、但能ク念ズレバ↠号ヲ具ニ包カヌ↢衆徳ヲ↡。」 已上

「真如しんにょ」 とらは、

-「▲真如ト」等者、

¬*唯識ゆいしき論ろん¼ (巻九) にいはく、 「真しんはいはく真実しんじつ、 虚こ妄もうにあらざることを顕あらわす。 如にょはいはく如にょ常じょう、 変易へんやくなきことを表あらわす。」 以上

-¬唯識論ニ¼云ク、「真ハ謂ク真実、顕ス↠非コトヲ↢虚妄ニ↡。如ハ謂ク如常、表ス↠無コトヲ↢変易↡。」 已上

▼¬*起き信しん論ろん¼ にいはく、 「いはゆる心しん性しょう不ふ生しょう不ふ滅めつなり。 一切いっさいの諸法しょほうはただ妄念もうねんによりてしかも差別しゃべつあり。 もし心念しんねんを離はなるればすなはち一切いっさい境きょう界がいの相そうなし。 このゆゑに一切いっさいの法ほうは、 もとよりこのかた言説ごんぜつの相そうを離はなれ、 名みょう字じの相そうを離はなれ、 心縁しんえんの相そうを離はなる。 畢ひっ竟きょう平びょう等どうにして変へん移いあることなし。 破壊はえすべからず、 ただこれ一心いっしんなり。 ゆゑに真如しんにょと名なづく。」 以上

-¬起信論ニ¼云ク、「所謂心性ハ不生不滅ナリ。一切ノ諸法ハ唯 ヾ依テ↢妄念ニ↡而モ有リ↢差別↡。若シ離ルレバ↢心念ヲ↡即無シ↢一切境界ノ之相↡。是ノ故ニ一切ノ法ハ、従↠本已来離レ↢言説ノ相ヲ↡、離レ↢名字ノ相ヲ↡、離ル↢心縁ノ相ヲ↡。畢竟平1033等ニシテ無シ↠有コト↢変移↡。不↠可↢破壊ス↡、唯是一心ナリ。故ニ名ク↢真如ト↡。」 已上

この真如しんにょの理り、 言説ごんぜつ名みょう字じの相そうに離はなるといへども、 いまこの名みょう号ごうすなはち真如しんにょ法ほっ性しょうの正しょう体たいたる義ぎ宛然えんねんなり。

-此ノ真如ノ理、雖ヘ↠離ルト↢言説名字ノ之相ヲ↡、今此ノ名号即為タル↢真如法性ノ正体↡之義宛然ナリ。

¬*浄じょう土ど論ろん¼ に*依え報ほうの相そうを説ときていはく、 「かの無む量りょう寿じゅ仏ぶつの国こく土どの荘しょう厳ごんは*第だい一いち義ぎ諦たい妙みょう境きょう界がいの相そうなり。」 以上

-¬浄土論ニ¼説テ↢依報ノ相ヲ↡云ク、「▲彼ノ無量寿仏ノ国土ノ荘厳ハ第一義諦妙境界ノ相ナリ。」 已上

¬*論ろんの註ちゅう¼ の上じょうに本論ほんろんの 「真実しんじつ功く徳どく相そう」 の文もんを解げしていはく、 「二に種しゅの功く徳どくあり。 一いちは有漏うろ心しんより生しょうじて法ほっ性しょうに順じゅんぜず。 いはゆる凡ぼん夫ぶ人天にんでんの諸善しょぜん、 人天にんでんの果か報ほう、 もしは因いんもしは果か、 みなこれ顛倒てんどうなり。 みなこれ虚偽こぎなり。 このゆゑに不ふ実じつの功く徳どくと名なづく。 二には菩ぼ薩さつの智慧ちえ清浄しょうじょうの業ごうより起おこりて仏ぶつ事じを荘しょう厳ごんす。 法ほっ性しょうによりて清浄しょうじょうの相そうに入いる。 この法ほう顛倒てんどうせず、 虚偽こぎならず。 名なづけて真実しんじつの功く徳どくとなす。」 以上

-¬論ノ註ノ¼上ニ解シテ↢本論ノ「真実功徳相ノ」文ヲ↡云ク、「▲有リ↢二種ノ功徳↡。一者従↢有漏心↡生ジテ不↠順ゼ↢法性ニ↡。所謂凡夫人天ノ諸善、人天ノ果報、若ハ因若ハ果、皆是 レ顛倒ナリ。皆是 レ虚偽ナリ。是ノ故ニ名ク↢不実ノ功徳ト↡。◆二者従リ↢菩薩ノ智恵清浄ノ業↡起テ荘↢厳ス仏事ヲ↡。依テ↢法性ニ↡入ル↢清浄ノ相ニ↡。是ノ法不↢顛倒セ、↡不ズ↢虚偽ナラ↡。名テ為ス↢真実ノ功徳ト↡。」 已上

また同おなじき下げに (論註) 往おう生じょうの義ぎを釈しゃくしていはく、 「かの浄じょう土どはこれ阿あ弥陀みだ如来にょらい清浄しょうじょう本願ほんがん無む生しょうの生しょうなり、 三さん有ぬ虚こ妄もうの生しょうのごとくにはあらず。 なにをもつてかこれをいふとならば、 それ法ほっ性しょう清浄しょうじょう畢ひっ竟きょう無む生しょうなり。 生しょうといふはこれ得とく生しょうの者ものの情こころならくのみ。」 以上

-又同キ下ニ釈シテ↢往生ノ義ヲ↡云ク、「▲彼ノ浄土ハ是 レ阿弥陀如来清浄本願无生ノ之生ナリ、非ズ↠如クニハ↢三有虚妄ノ生ノ↡也。◆何ヲ以テカ言フトナラバ↠之、夫レ法性清浄畢竟无生ナリ。言↠生ト者是 レ得生ノ者ノ之情ナラク耳ノミ。」 已上

また名みょう号ごうの功く徳どくを嘆たんじて (論註巻下) いはく、 「かの阿あ弥陀みだ如来にょらいの至し極ごく無む生しょう清浄しょうじょう宝珠ほうしゅの名みょう号ごうを聞ききて、 これを濁じょく心しんに投なぐれば、 念々ねんねんの中なかに罪ざい滅めつ心しん浄じょうにして、 すなはち往おう生じょうを得う。」 以上

-又嘆ジテ↢名号ノ之功徳ヲ↡云ク、「▲聞テ↢彼ノ阿弥陀如来ノ至極无生清浄宝珠ノ名号ヲ↡、投ナグレバ↢之ヲ濁心ニ↡、念々ノ之中ニ罪滅心浄ニシテ、即得↢往生ヲ↡。」 已上

真如しんにょ・法ほっ性しょう・第一だいいち義ぎ諦たい・涅ね槃はん・無む生しょう、 みなこれ一法いっぽうの異い名みょうなり。

-真如・法性・第一義諦・涅槃・無生、皆是 レ一法ノ之異名也。

「功く徳どくの宝海ほうかい」 とは、 いま名みょう号ごうの功く徳どく甚深じんじん殊しゅ勝しょうなるを嘆たんじて 「宝たから」 と称しょうす、 広大こうだいなるを 「海うみ」 に喩たとふ。

-「▲功徳ノ宝海ト」者、今嘆ジテ↢名号ノ功徳甚深殊勝ナルヲ↡称す↠「宝ト」、広大ナルヲ喩フ↠「海ニ」。

¬論ろん¼ (浄土論) にいはく、 「よくすみやかに功く徳どくの大だい宝海ほうかいを満足まんぞくせしむ。」 以上

-¬論ニ¼云ク、「▲能ク令シム↣速ニ満↢足セ功徳ノ大宝海ヲ↡。」 已上

¬註ちゅう¼ (論註巻上) にいはく、 「わが成じょう仏ぶつせん時とき、 われに値ち遇ぐうせん者ものをして、 みなすみやかに無む上じょう大宝だいほうを満足まんぞくせしめん。」 以上

-¬註ニ¼云ク、「▲使↧ メン 我ガ成仏セン時、値↢遇セン我ニ↡者ヲシテ、皆速ニ満↦足セ無上大宝1034ヲ↥。」 已上

*智ち光こうの ¬疏しょ¼ (無量寿経論釈巻一) にいはく、 「仏身ぶっしん所しょ有うの不共ふぐの功く徳どく、 数かず塵沙じんじゃに過すぎて測しき量りょうすべからず。 ゆゑに海うみのごとしと喩たとふ。」 以上

智光ノ¬疏ニ¼云ク、「仏身所有ノ不共ノ功徳、数過テ↢塵沙ニ↡不↠可↢測量ス↡。故ニ喩フ↠如ト↠海ノ。」 已上

「大だい悲ひの願がんより出いでたり」 とは、

-「▲出タリト↢於大悲ノ願↡」者、

問とふ。 *浄じょう影よう (大経義疏巻上) のいはく、 「四し十じゅう八願はちがん、 義ぎ要ようはただ三さん、 文別もんべつに七しちあり。 義ぎ要ように三さんとは、 一いちには↓摂しょう法身ほっしんの願がん、 二にには↓摂しょう浄じょう土どの願がん、 三さんには↓摂しょう衆しゅ生じょうの願がん。 四し十じゅう八はちの中なかに、 十じゅう二にと十じゅう三さんとおよび第だい十じゅう七しちとはこれ摂しょう法身ほっしん、 第だい三さん十じゅう一いちと第だい三さん十じゅう二にとはこれ摂しょう浄じょう土ど、 余よの四し十じゅう三さんはこれ摂しょう衆しゅ生じょうなり。 文別もんべつに七しちとは、 初はじめの十じゅう一願いちがんを摂しょう衆しゅ生じょうとなす。 次つぎに両りょう願がんあり、 これその第だい二にに摂しょう法身ほっしんとなす。 次つぎに三願さんがんあり、 これその第三だいさんに重かさねて摂しょう衆しゅ生じょう。 次つぎに一願いちがんあり、 これその第だい四しに重かさねて摂しょう法身ほっしん。 次つぎに十じゅう三さんあり、 これその第だい五ごに重かさねて摂しょう衆しゅ生じょう。 次つぎに両りょう願がんあり、 これその第六だいろくに摂しょう衆しゅ生じょうとなす。 下しもに十じゅう六ろくあり、 これその第七だいしちに重かさねて摂しょう衆しゅ生じょうなり。」 以上

-問。浄影ノ云ク、「四十八願、義要ハ唯 ヾ三、文別ニ有↠七。義要ニ三ト者、一ニハ摂法身ノ願、二ニハ摂浄土ノ願、三ニハ摂衆生ノ願。四十八ノ中ニ、十二ト十三ト及ビ第十七トハ是摂法身、第三十一ト第三十二トハ是 レ摂浄土、余ノ四十三ハ是 レ摂衆生ナリ。文別ニ七ト者、初ノ十一願ヲ為ス↢摂衆生ト↡。次有リ↢両願↡、是 レ其ノ第二ニ為ス↢摂法身ト↡。次ニ有リ↢三願↡、是 レ其ノ第三ニ重テ摂衆生。次ニ有リ↢一願↡、是 レ其ノ第四ニ重テ摂法身。次ニ有リ↢十三↡、是 レ其ノ第五ニ重テ摂衆生。次ニ有リ↢両願↡、是 レ其ノ第六ニ為ス↢摂衆生ト↡。下ニ有リ↢十六↡、是 レ其ノ第七ニ重テ摂衆生ナリ。」 已上

*義ぎ寂じゃく・*憬きょう興ごうともにまたこれに同おなじ。 しかれば大だい悲ひの言ことばは摂しょう衆しゅ生じょうの義ぎなり。 摂しょう法身ほっしんにおいてなんぞ 「大だい悲ひ」 といふ。

-義寂・憬興共ニ又同ジ↠之ニ。然者大悲ノ之言ハ摂衆生ノ義ナリ。於テ↢摂法身ニ↡何ゾ云フ↢「大悲ト」↡。

答こたふ。 解げするに二義にぎあり。

-答。解スルニ有リ↢二義↡。

一いちにいはく、 摂しょう法身ほっしんなりといへどももつぱらこれ大だい悲ひなり。 しかるゆゑは、 なんぞ仏ぶつ意いにおいてその名みょう聞もんを求もとめん。 咨し嗟しゃの願がんによりて仏ぶつの証誠しょうじょうあり。 仏ぶつの証誠しょうじょうによりて衆しゅ生じょう帰き信しんす。 ゆゑに仏讃ぶっさんを願がんずるはしかしながら利り益やくのためなり。 ゆゑに大だい悲ひといふ。

-一ニ云ク、雖ヘ↢摂法身ナリト↡専ラ是 レ大悲ナリ。所↢以然ル↡者、何ゾ於テ↢仏意ニ↡求メン↢其ノ名聞ヲ↡。依テ↢咨嗟ノ願ニ↡有リ↢仏ノ証誠↡。依テ↢仏ノ証誠ニ↡衆生帰信ス。故ニ願ズルハ↢仏讃ヲ↡併ラ為ナリ↢利益ノ↡。故ニ云フ↢大悲ト↡。

一いちにいはく、 義ぎ寂じゃく影ようを引ひきをはりて (大経義記巻中) いはく、 「これまた多おおく願相がんそうに従したがへて説とく。 もし委い細さいに論ろんぜば一々いちいちに具ぐ足そくす。」 以上 大だい師しまた義ぎ寂じゃく師しの意こころに同おなじく、 諸願しょがん三さんに亘わたりて簡えらぶところなきか。

-一ニ云ク、義寂引キ↠影ヲ已テ云ク、「此レ亦多ク従ヘテ↢願相ニ↡而説ク。若シ委細ニ論ゼバ一々ニ具足ス。」 已上 大師又同ク↢義寂師ノ意ニ↡、諸願亘テ↠三ニ無↠所↠簡ブ歟。

↑摂しょう法身ほっしんとは、 「玄げん義ぎ」 (玄義分) にいはく、 「一々いちいちに願がんじていはく、 もしわれ仏ぶつを得えたらんに、 十方じっぽうの衆しゅ生じょうわが名みょう号ごうを称しょうしてわが国くにに生しょうぜんと願がんぜん、 下しも十じゅう念ねんに至いたるまで、 もし生しょうぜずといはば正しょう覚がくを取とらじ。 いますでに成じょう仏ぶつしたまへり。 すなはちこれ酬しゅう因いんの身しんなり。」 以上

-摂法身ト者、「玄義ニ」云ク、「▲一々ニ願ジテ言ク、若シ我レ得ランニ↠仏ヲ、十方ノ衆生称シテ↢我ガ名号ヲ↡願ゼン↠生ゼント↢我ガ国ニ↡、下1035至マデ↢十念ニ↡、若不トイハヾ↠生ゼ者不↠取↢正覚↡。◆今既ニ成仏シタマヘリ。即是 レ酬因ノ之身也。」 已上

↑摂しょう浄じょう土どとは、 ¬礼讃らいさん¼ にいはく、 「四し十じゅう八願はちがんの荘しょう厳ごんより起おこりて、 諸仏しょぶつの刹せつに超こえてもつとも精しょうたり。」 以上

-摂浄土ト者、¬礼讃ニ¼云ク、「▲四十八願ノ荘厳ヨリ起テ、超テ↢諸仏ノ刹ニ↡最モ為タリ↠精。」 已上

↑摂しょう衆しゅ生じょうとは、 「散善さんぜん義ぎ」 にいはく、 「四し十じゅう八願はちがんをもつて衆しゅ生じょうを摂しょう受じゅしたまふ。」 以上

-摂衆生ト者、「散善義ニ」云ク、「▲四十八願ヲモテ摂↢受シタマフ衆生ヲ↡。」 已上

¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にいはく、 「四し十じゅう八願はちがん慇懃おんごんに喚よばひたまふ、 仏ぶつの願力がんりきに乗じょうじて西方さいほうに往ゆく。」 以上

-¬法事讃ニ¼云ク、「▲四十八願慇懃ニ喚ヨバヒタマフ、乗ジテ↢仏ノ願力ニ↡往ク↢西方ニ↡。」 已上

もしこの義ぎによらば、 四し十じゅう八願はちがん一々いちいちにみな大だい悲ひの誓願せいがんたらくのみ。

-若シ依ラバ↢此ノ義ニ↡、四十八願一々ニ皆為タラク↢大悲之誓願↡耳ノミ。

「称しょう揚よう」 といふは、 「称しょう」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「歯し証しょうの切せつ、 遂すいなり。 歯し陵りょうの切せつ、 讃さんなり。」 以上 いま讃さんの義ぎを用もちゐる。 また (玉篇) いはく、「揚よう、 与よ章しょうの切せつ。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「音おん揚よう、 飛ひ挙こなり、 明みょうなり。」 以上

-言↢「▲称揚ト」↡者、「称」¬玉篇ニ¼云、「歯証ノ切、遂也。歯陵ノ切、讃也。」 已上 今用ル↢讃ノ義ヲ↡。又云ク、「揚、与章ノ切。」¬広韻ニ¼云ク、「音揚、飛挙也、明也。」 已上

「称名しょうみょう」 といふは、 これ称しょう念ねんにあらず。 いまかの名みょう号ごうを称しょう揚ようする義ぎなり。

-言↢「▲称名ト」↡者、此レ非ズ↢称念ニ↡。今称↢揚スル彼ノ名号ヲ↡義也。

「咨し嗟しゃ」 といふは、 憬きょう興ごう (述文賛巻中) のいはく、 「咨しとは讃さんなり、 嗟しゃとは嘆たんなり。」 以上 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「咨しは即そく夷いの切せつ、 嗟しゃなり、 謀ぼうなり。」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「子し祇しの切せつ、 謀ぼうなり、 嗟しゃなり。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「嗟しゃ、 子し邪じゃの切せつ、 咨しなり、 嘆たんなり、 痛つう惜しゃくなり。」

-言↢「▲咨嗟ト」↡者、憬興ノ云、「咨ト者讃也、嗟ト者嘆也。」 已上 ¬広韻ニ¼云ク、「咨ハ即夷ノ切、嗟也、謀也。」¬玉篇ニ¼云ク、「子祇シノ旨夷反切、謀也、嗟也。」¬広韻ニ¼云、「嗟、子邪ノ切、咨也、嘆也、痛惜也。」

二 Ⅱ ⅱ c ロ 引文
          ・ 願文

【6】 △初はじめに願文がんもんの中なかに、

初ニ願文ノ中ニ、

「設せつ我が得仏とくぶつ」 はすなはちこれ願がんなり。 弘ぐ誓ぜい心しん堅かたく、 成じょう仏ぶつ決けつ定じょうす。 しかりといへども因いんにありて極ごく果かを欣ごん求ぐす。 こと聊りょう爾じにあらず、 ゆゑにしばらく 「設せつ」 といふ。

-「▲設我得仏ハ」即是 レ願也。弘誓心堅ク、成仏决定ス。雖↠然ト在テ↠因ニ欣↢求ス極果ヲ↡。縡コト非ズ↢聊爾ニ↡、故ニ且ク云フ↠「設ト」。

「諸仏しょぶつ」 といふは、 問とふ。 報ほう化けの中なかにはこれなんの身しんぞや。 答こたふ。 報ほう化けに亘わたるべし、 証誠しょうじょうの仏ぶつのごとし。

-言↢「▲諸仏ト」↡者、 問。報化ノ之中ニハ是 レ何ノ身ゾヤ耶。答。可シ↠亘↢報化ニ↡、如シ↢証誠ノ仏ノ↡。

「不ふ取しゅ正しょう覚がく」 はすなはちこれ誓ちかいなり。 願がんの首しゅ尾びを合がっしてこれを誓願せいがんといふ。 諸願しょがんかくのごとし。

-「▲不取正覚ハ」即是 レ誓也。合シテ↢願ノ首尾ヲ↡謂フ↢之ヲ誓願ト↡。諸願如シ↠斯ノ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 重誓願文

【7】 次つぎの文もんは重じゅう誓せいの願がんの文もんなり。

▲次ノ文ハ重誓ノ願ノ之文也。

六八ろくはちの願がんの上かみに重かさねてこの誓ちかいあり。 このゆゑにこの偈げを重じゅう誓せいの偈げといふ。 しかるに十じゅう一いち行ぎょうの偈げ文もんの中なかに、 いまの所引しょいんは第だい三さん行ぎょうと第八だいはち行ぎょうとなり。

-六八ノ願ノ上ニ重テ有リ↢此ノ誓↡。是ノ故ニ此ノ偈ヲ云フ↢重誓ノ偈ト↡。而ニ十1036一行ノ偈文ノ之中ニ、今ノ之所引ハ第三行ト与 ト ↢第八行↡也。

問とふ。 この二に行ぎょうを引ひくその要よういかん。

-問。引ク↢此ノ二行ヲ↡其ノ要如何。

答こたふ。 十じゅう一いち行ぎょうの中なかに、 初はじめの一いち行ぎょうは総そうじて六八ろくはちの願がん決けつ定じょうして満足まんぞくせんことを望のぞむ。 次つぎの二に行ぎょうは別べっして次ついでのごとく衆しゅ生じょうの苦くを済すくひ、 名な十方じっぽうに聞きこえんことを望欲もうよくす。 義ぎ寂じゃく (大乗義記巻中) のいはく、 「三種さんしゅの果かを望のぞむ。 一いちには満願まんがんの果かを望のぞみ、 二にには大だい施せの果かを望のぞみ、 三さんには名みょう聞もんの果かを望のぞむ。」 以上 この三誓さんせいによりて、 この偈げをまた名なづけて三誓さんせいの偈げといふ。

-答。十一行ノ中ニ、初ノ一行ハ総ジテ望ム↢六八ノ願决定シテ満足センコトヲ↡。次ノ二行ハ別シテ如ク↠次ノ望↧欲ス済ヒ↢衆生ノ苦ヲ↡名聞エンコトヲ↦十方ニ↥。義寂ノ云ク、「望↢三種ノ果ヲ↡。一ニハ望ミ↢満願ノ果ヲ↡、二ニハ望ミ↢大施ノ果ヲ↡、三ニハ望ム↢名聞ノ果ヲ↡。」 已上 依ッッテ↢此ノ三誓ニ↡、此ノ偈ヲ又名テ云フ↢三誓ノ偈ト↡。

第三だいさん行ぎょうを引ひくことは、 いま咨し嗟しゃの願がんの意いを宣説せんぜつせんと欲ほっするに、 いまの偈げこれ当願とうがんの意こころたるがゆゑに。

-引クコトハ↢▲第三行ヲ↡、今欲スルニ↣宣↢説セント咨嗟ノ願ノ意ヲ↡、今ノ偈是 レ為タルガ↢当願ノ意↡故ニ。

第八だいはち行ぎょうを引ひくことは、 十じゅう一いち行ぎょうの内うちに、 第だい四し行ぎょうの下しもはその仏徳ぶっとくを挙あげて順じゅん求ぐする中なかに、 仏ぶつの自じ行ぎょう化他けたの功く徳どくを嘆たんずるに、 その重々じゅうじゅうあり。 いまの文もんは重かさねて化他けたの徳とくを挙あぐ、 これ最要さいようなり。 寂じゃくの意こころのごときは、 第だい四し行ぎょうより第だい十じゅう行ぎょうに至いたるまでは七種しちしゅの果かを望のぞむ。 いまその中なかにおいて五ごに無畏むい方便ほうべんの果かを求もとむる文もんなり。

-引コトハ↢▲第八行ヲ↡、十一行ノ内ニ、第四行ノ下ハ挙テ↢其ノ仏徳ヲ↡順求スル之中ニ、嘆ズルニ↢仏ノ自行化他ノ功徳ヲ↡、有リ↢其ノ重々↡。今ノ文ハ重テ挙ク↢化他之徳ヲ↡、是 レ最要也。如↢寂ノ意ノ↡者、自↢第四行↡至マデハ↢第十行ニ↡望ム↢七種ノ果ヲ↡。今於テ↢其ノ中ニ↡五ニ求ムル↢無畏方便ノ果ヲ↡文ナリ。

「説法せっぽう師子しし吼く」 とは、 これすなはち無畏むいの徳とくなり。 ¬*大論だいろん¼ の七しち (大智度論初品) にいはく、 「また師子ししの四し足そくの獣じゅうの中なかに独どく歩ぶ無畏むいにしてよく伏ぶくするがごとく、 一切いっさいの仏ぶつもまたかくのごとし。 九く十じゅう六種ろくしゅの外げ道どうの中なかにおいて一切いっさい降伏こうぶくす、 ゆゑに人にん師子ししと名なづく。」 以上 梵ぼんには迦羅からといふ。 ここには無畏むいといふ、 または師子ししといふ。 その法蔵ほうぞうを開ひらきて功く徳どくの宝ほうを施ほどこしたまふ。 これすなはちもろもろの善法ぜんぽうを摂せっしもろもろの徳本とくほんを具ぐするがゆゑなり。

-「▲説法師子吼ト」者、是則无畏ノ徳也。¬大論ノ¼七ニ云ク、「又如ク↢師子ノ四足ノ獣ノ中ニ独歩无畏ニシテ能ク伏スルガ↡、一切ノ仏モ亦如シ↠是ノ。於テ↢九十六種ノ外道ノ中ニ↡一切降カウ伏ス、故ニ名ク↢人師子ト↡。」 已上 梵ニハ云フ↢迦羅ト↡。此ニハ云フ↢無畏ト↡、又ハ云フ↢師子ト↡。開テ↢其ノ法蔵ヲ↡施シタマフ↢功徳ノ宝ヲ↡。是 レ則摂シ↢諸ノ善法ヲ↡具スルガ↢諸ノ徳本ヲ↡故也。

問とふ。 経きょう (大経巻上) には 「法蔵ほうぞう」 といひ、 いまは 「宝蔵ほうぞう」 といふ、 いかん。 答こたふ。 所覧しょらんの本ほんその異いあるか。 また 「法ほう」 はすなはち法ほう、 「宝ほう」 はこれ喩たとえに寄よす、 法ほう喩ゆ違いせず。 その義ぎ失しつなし。

-問。経ニハ云ヒ↢「▲法蔵ト」↡、今ハ云フ↢「▲宝蔵ト」↡、如何。答。所覧ノ之本有↢其ノ異イ↡歟。又「法ハ」即法、「宝ハ」是寄ス↠喩ニ、法喩不↠違セ。其ノ義无シ↠失。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 願成就文

【8】 次つぎに願がん成じょう就じゅの文もんに就つきて、

▲次ニ就テ↢願成就ノ文ニ↡、

「十方じっぽう」 といふは、

-言↢「▲十方ト」↡者、

問とふ。 ¬弥陀みだ経きょう¼ の中なかには説ときて 「▲六方ろっぽう」 となし、 いまは 「十方じっぽう」 といふ、 差別しゃべついかん。

-問。¬弥陀経ノ¼中ニハ説テ為シ↢「六方ト」↡、今ハ云フ↢「十方1037ト」↡、差別如何。

答こたふ。 これ開合かいごうの異いなり、 彼此ひし爽たがふことなし。 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ には合がっして 「六方ろっぽう」 となし、 いまこの ¬大だい経きょう¼ には開かいして 「十方じっぽう」 となす。 ¬*称しょう讃さん浄じょう土ど¼ にはまた 「十方じっぽう」 と説とく。

-答。是 レ開合ノ異ナリ、彼此無シ↠爽タガフコト。¬阿弥陀経ニハ¼合シテ為シ↢「六方ト」↡、今此ノ¬大経ニハ¼開シテ為↢「十方ト」↡。¬称讃浄土ニハ¼又説ク↢「▲十方ト」↡。

このゆゑに慈じ恩おんの ¬弥陀みだ経きょうの疏しょ¼ (通賛疏巻下) に六方ろっぽうの証誠しょうじょうを釈しゃくしていはく、 「¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ には十方じっぽう諸仏しょぶつといふ、 ここには略りゃくして六方ろっぽうを挙あぐ。」 以上

-是ノ故ニ慈恩ノ¬弥陀経ノ疏ニ¼釈シテ↢六方ノ証誠ヲ↡云ク、「¬称讃浄土経ニハ¼云フ↢十方諸仏ト↡、此ニハ略シテ挙グ↢六方ヲ↡。」 已上

高こう祖その解げ釈しゃく、 またもつて宜よろしきに随したがふ。

-高祖ノ解釈、又以テ随フ↠宜シキニ。

¬礼讃らいさん¼ にいはく、 「十方じっぽうの如来にょらい舌したを舒のべて証しょうしたまふ、 もつぱら名みょう号ごうを称しょうして西方さいほうに至いたると。」 以上

-¬礼讃ニ¼云ク、「▲十方ノ如来舒テ↠舌ヲ証シタマフ、専ラ称シテ↢名号ヲ↡至ルト↢西方ニ↡。」 已上

¬法ほう事じ讃さん¼ (巻上) にいはく、 「十方じっぽう恒沙ごうじゃの仏ぶつ舌したを舒のべて、 われ凡ぼん夫ぶの安楽あんらくに生しょうぜんことを証しょうしたまふ。」 以上

-¬法事讃ニ¼云ク、「▲十方恒沙ノ仏舒テ↠舌ヲ、証シタマフ↣我レ凡夫ノ生ゼンコトヲ↢安楽ニ↡。」 已上

また (法事讃巻上) いはく、 「十方じっぽう恒沙ごうじゃの諸仏しょぶつともに釈しゃ迦かを讃さんじて舌したを舒のべてあまねく三千さんぜんに覆おおひて往おう生じょうを得うることの謬あやまりにあらざることを証しょうしたまふ。」 以上

-又云、「▲十方恒沙ノ諸仏共ニ讃ジテ↢釈迦ヲ↡舒テ↠舌ヲ遍ク覆テ↢三千ニ↡証シタマフ↧得コトノ↢往生ヲ↡非ザルコトヲ↞謬ニ。」 已上

また (法事讃巻上) いはく、 「十方じっぽう恒沙ごうじゃのもろもろの世せ尊そん、 慈悲じひ巧ぎょう方便ほうべんを捨すてずして、 ともに弥陀みだ弘ぐ誓ぜいの門もんを讃さんじたまふ。」 以上

-又云ク、「▲十方恒沙ノ諸ノ世尊、不シテ↠捨↢慈悲巧方便ヲ↡、共ニ讃ジタマフ↢弥陀弘誓ノ門ヲ↡。」 已上

¬般舟はんじゅ讃さん¼ にいはく、 「十方じっぽうの如来にょらい舌したを舒のべて定さだめて九く品ぼんを判はんじて還げん帰きすることを得うと証しょうしたまふ。」 以上

-¬般舟讃ニ¼云、「▲十方ノ如来舒テ↠舌証シタマフ↧定テ判ジテ↢九品ヲ↡得ト↦還帰スルコトヲ↥。」 已上

これらの諸文しょもんみな十方じっぽうと判はんず。

-是等ノ諸文皆判ズ↢十方ト↡。

¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にいはく、 「六方ろっぽうの如来にょらいみな釈しゃ迦かの出しゅつ現げんはなはだ逢あひがたきことを讃嘆さんだんしたまふ。」 以上

-¬法事讃ニ¼云ク、「▲六方ノ如来皆讃↢嘆シタマフ釈迦ノ出現甚難コトヲ↟逢。」 已上

また (法事讃巻下) いはく、 「六方ろっぽうの如来にょらい不虚ふこを証しょうしたまふ。」 以上

-又云、「▲六方ノ如来証シタマフ↢不虚ヲ↡。」 已上

また (法事讃巻下) いはく、 「六方ろっぽうの諸仏しょぶつ信心しんじんを護ご念ねんしたまへ。」 以上

-又云ク、「▲六方ノ諸仏護↢念シタマヘ信心ヲ↡。」 已上

これらの諸文しょもん、 みな六方ろっぽうといふ。

-是等ノ諸文、皆云↢六方ト↡。

また ¬礼讃らいさん¼ にいはく、 「△十方じっぽうの如来にょらい舌したを舒のべて証しょうしたまふ。」 あるいは六方ろっぽうといふ、 異い本ほんの不ふ同どうなり。

-又¬礼讃ニ¼云ク、「十方ノ如来舒テ↠舌ヲ証シタマフ。」或ハ云フ↢六方ト↡、異本ノ不同ナリ。

「↓威い↓神じん功く徳どく」 といふは、 ¬観かん経ぎょう¼ の中なかに仏ぶつの功く徳どくを説ときていはく、 「ために阿あ弥陀みだ仏ぶつの十じゅう力りき威い徳とくを説とき、 広ひろくかの仏ぶつの光こう明みょう神力じんりきを説とき、 また戒かい・定じょう・慧え・解げ脱だつ・解げ脱だつ知ち見けんを讃さんず。」 以上

-言↢「▲威神功徳ト」↡者、¬観経ノ¼中ニ説テ↢仏ノ功徳ヲ↡云ク、「▲為ニ説キ↢阿弥陀仏ノ十力威徳ヲ↡、広ク説キ↢彼ノ仏ノ光明神力ヲ↡、亦讃ズ↢戒・定・*恵・解脱・解脱知見ヲ↡。」 已上

これに就つきてこれを思おもふに、 「↑威い」 とは十じゅう力りき威い徳とく、 これはこれ如来にょらい不共ふぐの勝しょう徳とく、 自じ在ざいの妙みょう用ゆう。 一々いちいちの名みょう義ぎ▽下しもに至いたりてつまびらかにすべし。 「↑神じん」 とは光こう明みょう神力じんりき。 滅罪めつざい生しょう善ぜん・抜ばっ苦く与よ楽らく等とうの利り益やく、 これすなはち十じゅう二に光仏こうぶつの功く能のう、 戒等かいとうはすなはちこれ五ご分ぶん法身ほっしんの功く徳どくならくのみ。 これわたくしの料りょう簡けんなり。 智ち者しゃ思し択ちゃくせよ。

-就テ↠之ニ思ニ↠之ヲ、「威ト」者十力威徳、此ハ是 レ如来不共ノ勝徳、自在ノ妙用。一々ノ名義至1038テ↠下ニ可シ↠詳ニス。「神ト」者光明神力。滅罪生善・抜苦与楽等ノ之利益、是 レ則十二光仏ノ功能、戒等ハ乃チ是 レ五分法身ノ功徳而已ナラクノミ。是 レ私ノ料簡ナリ。智者思択セヨ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 諸仏称嘆文

【9】 次つぎの文もんは摂聖しょうしょうの徳とくを讃嘆さんだんする文もんの初はじめなり。 いはく上かみの三輩さんぱいに摂しょう凡ぼんの徳とくを讃さんじ、 いまこの文もんに至いたりて摂聖しょうしょうの徳とくを嘆たんず。

▲次ノ文ハ讃↢嘆スル摂聖ノ之徳ヲ↡文ノ之初也。謂ク上ノ三輩ニ讃ジ↢摂凡ノ徳ヲ↡、今至テ↢此ノ文ニ↡嘆ズ↢摂聖ノ徳ヲ↡。

憬きょう興ごう (述文賛巻下) のいはく、 「凡ぼん小しょうをして欲よく生しょうの意こころを増まさしめんと欲ほっす、 ゆゑにすべからくかの国こく土どの勝すぐれたることを顕あらわすべし。」 以上

-憬興ノ云ク、「欲ス↠令ント↣凡小ヲシテ増サ↢欲生ノ之意ヲ↡、故ニ須ク↠顕ス↢彼ノ国土ノ之勝タルコトヲ↡。」 已上

義ぎ寂じゃく (大経義記巻下) 初はじめこの文もんより終おわり 「四し維ゆい・上じょう下げ亦やく復ぶ如にょ是ぜ」 (大経巻下) に至いたるまで、 取とりて一いっ科かとなして釈しゃくしていはく、 「自下じげは仏ぶつ土どの荘しょう厳ごん功く徳どく成じょう就じゅを観かんずることを顕けん示じす。 まづ直説じきせつをもつて略りゃくして讃さんじ、 後のちに偈げ頌じゅをもつて広ひろく讃さんず。 直説じきせつの讃さんの中なかに、 威い神じん功く徳どくは二事にじをもつて顕あらわす。 一いちは十方じっぽうの諸仏しょぶつ同おなじく称しょう嘆たんしたまふがゆゑに、 二には十方じっぽうの菩ぼ薩さつみなかの所ところに詣もうでて道どう化けを受うくるがゆゑに。」 以上

-義寂初従↢此ノ文↡終リ至マデ↢「四維・上下亦復如是ニ▲」↡、取テ為シテ↢一科ト↡釈シテ云ク、「自下ハ顕↣示ス観ズルコトヲ↢仏土ノ荘厳功徳成就ヲ↡。先以テ↢直説ヲ↡略シテ讃ジ、後ニ以テ↢偈頌ヲ↡広ク讃ズ。直説ノ賛ノ中ニ、威神功徳ハ以テ↢二事ヲ↡顕ス。一者十方ノ諸仏同ク称嘆シタマフガ故ニ、二者十方ノ菩薩皆詣デヽ↢彼ノ所ニ↡受ルガ↢道化ヲ↡故ニ。」 已上

その中なかにいままた諸仏しょぶつ称しょう嘆たんの文もんこれなり。 これすなはち当願とうがん成じょう就じゅの意こころなり。 またこの文もんにおいてその二にの意こころあり。 初はじめの八はち字じは釈しゃ迦かの讃嘆さんだん、 「十方じっぽう」 以下いげは諸仏しょぶつの讃嘆さんだんなり。

-其ノ中ニ今又諸仏称嘆ノ之文是也。是則当願成就ノ之意ナリ。又於テ↢此ノ文ニ↡有リ↢其ノ二ノ意↡。▲初ノ之八字ハ釈迦ノ讃嘆、「▲十方」以下ハ諸仏ノ讃嘆ナリ。

問とふ。 「於彼おひ」 の二字にじ下しもの東方とうぼうに属ぞくするその言ことば便べんを得う。 これによりて浄じょう影ようは於彼おひの下しもは大だい聖しょうの往詣おうげいといふ。 なんぞいま上かみに属ぞくする。

-問。「▲於彼ノ」二字属スル↢下ノ東方ニ↡得ウ↢其ノ言便ヲ↡。依テ↠之ニ浄影ハ云フ↢於彼ノ下ハ大聖ノ往詣ト↡。何ゾ今属スル↠上ニ。

答こたふ。 影ようの釈しゃくはしかなり。 ただし憬きょう興ごう師しこの二字にじをもつて上かみの句くの末まつに属ぞくす。 いま興ごうの意こころによりて引用いんようすることかくのごとし。

-答。影ノ釈ハ然也。但シ憬興師以テ↢此ノ二字ヲ↡属ス↢上ノ句ノ末ニ↡。今依テ↢興ノ意ニ↡引用コト如シ↠此ノ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・ 大聖往詣偈中文

【10】次つぎの文もんはすなはちこれかの偈げの中なかの文もんなり。

▲次ノ文ハ即是 レ彼ノ偈ノ中ノ文ナリ。

浄じょう影ようの意こころによるに、 かの偈げの中なかに、 仏ぶつの讃嘆さんだんを明あかし、 往覲おうごんの益やくを挙あぐるに、 その五ごの益やくを明あかす。 一いちには神通じんずうの益やく、 二にには受じゅ記きの益やく、 三さんには不ふ退たいの益やく、 四しには起き願がんの益やく、 五ごには供く仏ぶつの益やくなり。 いまの偈げは第三だいさんに不ふ退たいの益やくを明あかす経きょう文もんなり。 ここによりていまの一いち四句しく偈げをもつて上かみの住じゅ正定しょうじょう聚じゅの義ぎに合がっす。 憬きょう興ごうまた同おなじくいまの諸しょ句くの中なかにこの偈げの意こころを引ひく。 仏ぶつの讃嘆さんだんの中なかに名みょう号ごうの称しょう歎たんこれその最要さいようなり、 これすなはちもつぱら当願とうがんの意こころたるがゆゑなり。

-依ニ↢浄影ノ意ニ↡、彼ノ偈ノ之中ニ、明シ↢仏ノ讃嘆ヲ↡、挙ニ↢往覲ノ益ヲ↡、明ス↢其ノ五ノ益ヲ↡。一ニハ神通ノ益、二ニハ受記ノ益、三ニハ不退ノ益、四ニハ起願ノ益、五ニハ供仏ノ益ナリ。今ノ偈ハ第1039三ニ明ス↢不退ノ益ヲ↡之経文也。因テ↠茲ニ以テ↢今ノ一四句偈ヲ↡合ス↢上ノ住正定聚ノ之義ニ↡。憬興又同ク今ノ諸句ノ中ニ引ク↢此ノ偈ノ意ヲ↡。仏ノ讃嘆ノ中ニ名号ノ称歎是 レ其ノ最要ナリ、是 レ則専ラ為タルガ↢当願ノ意↡故ナリ。

問とふ。 いまいふところの 「本願ほんがん力りき」 とはいづれの願がんを指さすや。

-問。今所ノ↠言之「▲本願力ト」者指↢何ノ願ヲ↡乎。

答こたふ。 第だい十じゅう七しちを指さして本願ほんがん力りきといふ。

-答。指シテ↢第十七ヲ↡云フ↢本願力ト↡。

問とふ。 六八ろくはち願がんの中なかに、 第だい十じゅう八はちをもつて仏ぶつの本願ほんがんとすること自他じたともに許ゆるす、 さらに異義いぎなし。 第だい十じゅう七しちの願がんなんぞその言ことばに関あずからん。

-問。六八願ノ中ニ、以テ↢第十八ヲ↡為スルコト↢仏ノ本願ト↡自他共許、更ニ無シ↢異義↡。第十七ノ願何ゾ関アヅカラン↢其ノ言ニ↡。

答こたふ。 十じゅう七しち・十じゅう八はちさらにあひ離りせず、 行ぎょう信しん・*能所のうじょ・機き法ほう一いちなり。 総そうじてこれをいヘば四し十じゅう八願はちがんみなこれ本願ほんがん、 別べっしてこれをいへば第だい十じゅう八はちをもつてその本願ほんがんとすること、 たれかもつて諍あらそいをなさん。 願王がんおうたるがゆゑに。

-答。十七・十八更ニ不↢相離セ↡、行信・能所・機法一也。総ジテ而言ヘバ↠之ヲ四十八願皆是 レ本願、別シテ而言ヘバ↠之ヲ以テ↢第十八ヲ↡為スルコト↢其ノ本願ト↡、誰カ以テ成サン↠諍ヲ。為タルガ↢願王↡故ニ。

ただしいまの経きょう文もん至し要ようたるがゆゑに、 十じゅう七しち・十じゅう八はち両りょう願がんともに存ぞんじ、 所しょ行ぎょう・能信のうしんともにもつて周しゅう備びす。 第一だいいちの句くは第だい十じゅう七しちを指さす、 これ名みょう号ごうなるがゆゑに。 第だい二に・第三だいさんの両りょう句くは第だい十じゅう八はちを指さす、 これ信心しんじんを明あかし往おう生じょうを説とくがゆゑに。 第だい四しの一いっ句くは第だい十じゅう一いちを指さす、 不ふ退たいを明あかすがゆゑに。 いま当巻とうかんに引ひくことは口く称しょうを本ほんとなす、 第だい十じゅう七しちの意こころなり。

-但シ今ノ経文為タルガ↢至要↡故ニ、十七・十八両願倶ニ存ジ、所行・能信共ニ以テ周備ス。▲第一ノ句者指ス↢第十七ヲ↡、是 レ名号ナルガ故ニ。▲第二・第三ノ之両句者指ス↢第十八ヲ↡、是 レ明シ↢信心ヲ↡説クガ↢往生ヲ↡故ニ。▲第四ノ一句ハ指ス↢第十一ヲ↡、明スガ↢不退ヲ↡故ニ。今引クコトハ↢当巻ニ↡口称ヲ為ス↠本ト、第十七ノ意ナリ。

総そうじてこれをいふ時とき、 この文もんもつぱら十じゅう八はちの願がんの意こころたること置おきて論ろんぜず。

-総ジテ言フ↠之ヲ時、此ノ文専為タルコト↢十八ノ願ノ意↡置テ而不ズ↠論ゼ。

問とふ。 いふところの不ふ退たいはこれなんの位くらいぞや。

-問。所ノ↠言フ▲不退ハ是 レ何ノ位ゾヤ耶。

答こたふ。 もし摂しょう凡ぼんに約やくせばこれ処しょ不ふ退たい、 もし摂聖しょうしょうに約やくせばこれ行ぎょう不ふ退たいなり。 また平生へいぜい業ごう成じょうの義ぎを存ぞんじ、 また護ご念ねん不ふ退たいの意こころによる。 隠おんにまた即得そくとく往おう生じょう現げん生しょう不ふ退たいの義ぎあるべきものなり。

-答。若シ約セバ↢摂凡ニ↡是 レ処不退、若シ約セバ↢摂聖ニ↡是 レ行不退ナリ。又存ジ↢平生業成之義ヲ↡、又依ル↢護念不退ノ之意ニ↡。隠ニ又可↠有↢即得往生現生不退ノ之義↡者也。

問とふ。 いまの偈げ頌じゅはこれ摂聖しょうしょうの益やくを明あかす、 なんのゆゑにか摂しょう凡ぼんに約やくする義ぎあらんや。

-問。今ノ偈頌ハ是 レ明ス↢摂聖ノ益ヲ↡、何ノ故ニカ有ンヤ↧約スル↢摂凡ニ↡義↥耶。

答こたふ。 摂聖しょうしょうの益やくを明あかすその意こころ凡ぼん夫ぶ小聖しょうしょう欲よく生しょうの心しんを勧すすめんがためなり。 ゆゑに摂聖しょうしょうの中なかにこの文もんありといへども、 その意こころもつぱら摂しょう凡ぼんの益やくにあり、 凡ぼん夫ぶ人にんを摂せっするは仏ぶつの本ほん意いなるがゆゑに。

答。明ス↢摂聖ノ益ヲ↡其ノ意為ナリ↠勧ンガ↢凡夫・小聖欲生ノ之心ヲ↡。故1040ニ摂聖ノ中ニ雖ヘドモ↠有ト↢此ノ文↡、其ノ意専在リ↢摂凡之益ニ↡、摂スルハ↢凡夫人ヲ↡仏ノ本意ナルガ故ニ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『如来会』二文

【11】次つぎに ¬宝ほう積しゃく¼ の文もんの中なかに、

▲次ニ¬宝積ノ¼文ノ中ニ、

初はじめの四句しくは ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ の重じゅう誓せいの偈げの中なかの第一だいいち行ぎょうの意こころ、 次つぎの三さん句くは第だい二に行ぎょうの意こころ、 次つぎの四句しくは前さきに引ひくところの第八だいはち行ぎょうの意こころなり。

-▲初ノ之四句ハ¬無量寿経ノ¼重誓ノ偈ノ中ノ第一行ノ意、▲次ノ之三句ハ第二行ノ意、▲次ノ之四句ハ前ニ所ノ↠引ク之第八行ノ意ナリ。

その文もんの中なかに就つきて、 「今こん対たい如来にょらい」 とは*世せ饒にょう王おう仏ぶつを指さす、 「発ほつ弘ぐ誓ぜい」 とは四し十じゅう八願はちがん。

-就テ↢其ノ文ノ中ニ↡、「▲今対如来ト」者指ス↢世饒王仏ヲ↡、「▲発弘誓ト」者四十八願。

「↓十じゅう力りき無む等とう尊そん」 とは無む上じょう仏ぶっ果かの位くらいを指さす。

-「▲十力无等尊ト」者指ス↢无上仏果ノ位ヲ↡。

「↑十じゅう力りき」 といふは仏ぶつの不共ふぐの徳とく、 ¬*倶く舎しゃ論ろん¼ の第だい二に十じゅう七しちに見みえたり。 いま文もんを出いださず、 ほぼ大綱たいこうを示しめす。

-言↢「△十力ト」↡者仏ノ不共ノ徳、見タリ↢¬倶舎論ノ¼第二十七ニ↡。今不↠出サ↠文ヲ、粗示ス↢大綱ヲ↡。

一いちには処しょ非ひ処しょ智ち力りき、 是ぜの処しょを是ぜの処しょと知しり非ひ処しょを非ひ処しょと知しる。 この智ち通つうじて一切いっさいの情じょうと非ひ情じょうとの境きょうを縁えんず。

-一ニハ処非処智力、是ノ処ヲ知リ↢是ノ処ト↡非処ヲ知ル↢非処ト↡。此ノ智通ジテ縁エンズ↧一切ノ情ト与 ト ↢非情↡之境ヲ↥。

二にには業ごうの異い熟じゅく智ち力りき、 この智ち一切いっさいの種類しゅるい業因ごういん所感しょかんの異い熟じゅくを分別ふんべつす。

-二ニハ業ノ異熟智力、此ノ智分↢別ス一切ノ種類業因所感ノ之異熟ヲ↡也。

三さんには等とう持じ等とう至し智ち力りき、 いはゆる実じつのごとくもろもろの三昧さんまい静じょう慮りょの相そうを知しるなり。

-三ニハ等持等至智力、所謂如ク↠実ノ知ル↢諸ノ三昧静慮ノ相ヲ↡也。

四しには根こん上じょう下げ智ち力りき、 いはく有う情じょうの信等しんとうの諸根しょこん上じょう下げの相そうを知しるなり。 信等しんとうといふは、 信しん・進しん・念ねん・定じょうおよび恵えこれなり。

-四ニハ根上下智力、謂ク知ル↢有情ノ信等ノ諸根上下ノ相ヲ↡也。言↢信等ト↡者、信・進・念・定及ビ恵是也。

五ごには種々しゅじゅ勝しょう解げ力りき、 いはく有う情じょうの勝しょう意い楽ぎょうの別べつを知しる。

-五ニハ種々勝解力、謂ク知ル↢有情ノ勝意楽ノ別ヲ↡。

六ろくには種々しゅじゅ界かい智ち力りき、 もろもろの有う情じょうの前際ぜんさい無始むし所しょ成じょうの志し性しょう随眠ずいめんおよび諸法しょほうの種々しゅじゅの相そうを知しるなり。

-六ニハ種々界智力、知ル↢諸ノ有情ノ前際無始所成ノ志性随眠及以ビ諸法ノ種々ノ相ヲ↡也。

七しちには遍へん趣しゅ行ぎょう智ち力りき、 いはく実じつのごとく生しょう死じの因いん果がを知しる。

-七ニハ遍趣行智力、謂ク如ク↠実ノ知ル↢生死ノ因果ヲ↡。

八はちには宿住しゅくじゅう随念ずいねん智ち力りき、 いはく実じつのごとく自他じた宿住しゅくじゅうの諸しょ事じを知しるなり。

-八ニハ宿住随念智力、謂ク如ク↠実ノ知ル↢自他宿住ノ之諸事ヲ↡也。

九くには死し生しょう智ち力りき、 もろもろの有う情じょうの未み来らい世せの此死しし生しょう彼ひを知しる。

-九ニハ死生智力、知ル↢諸ノ有情ノ未来世ノ之此死生彼ヲ↡。

十じゅうには漏ろ尽じん智ち力りき、 いはく漏ろ尽じん身しんの所得しょとくの智ちなり。

-十ニハ漏尽智力、謂ク漏尽身ノ所得ノ智也。

【12】次つぎの文もんは同おなじき ¬経きょう¼ の願がん成じょう就じゅの文もん、 文もんの意こころ見みつべし。

▲次1041文ハ同キ¬経ノ¼願成就ノ文、文ノ意可シ↠見ツ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『大阿弥陀経』文

【13】次つぎの文もんは ¬大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ の文もん、

▲次ノ文ハ¬大阿弥陀経ノ¼文、

挙あぐるところの経きょう名みょうはこれ梵ぼん語ごなり。 ¬貞元ていげんの録ろく¼ (巻二九) にいはく、 「¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ 二に巻かん、 註ちゅうにいはく、 上じょう巻かんの題だいにいはく、 ¬仏説ぶっせつ請しょう仏ぶつ阿あ弥陀みだ三さん耶や三仏さんぶつ薩楼さる仏ぶつ檀だん過度かど人道にんどう経きょう¼、 また ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ と名なづく。」 以上 「▲諸しょ」 と 「▲請しょう」 と、 「▲那な」 と 「▲耶や」 と、 本ほんに異いあるか。

-所ノ↠挙ル経名ハ是 レ梵語也。¬貞元ノ録ニ¼云ク、「¬阿弥陀経¼二巻、註ニ云ク、上巻ノ題ニ云ク、¬仏説請仏阿弥陀三耶三仏薩楼仏檀過度人道経¼、亦名↢¬无量寿経¼↡。」 已上 「諸ト」「請ト」、「那ト」「耶ト」、本ニ有↠異歟。

この願がんは十じゅう七しち・十じゅう八はち両りょう願がんの意こころを含容がんようす。 いわゆる初はじめより 「之し善ぜん」 といふに至いたるまでは第だい十じゅう七しちの意こころ、 「諸天しょてん」 以下いげは第だい十じゅう八はちの意こころなり。

-此ノ願ハ含↢容ス十七・十八両願ノ之意ヲ↡。所謂▲自↠初至マデハ↠言フニ↢「之善ト」↡第十七ノ意、「▲諸天」以下ハ第十八ノ意ナリ。

「*蜎えん飛ぴ」 といふは、 畜ちく生しょう蠢々しゅんしゅんの種類しゅるいなり。 「蜎えん」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「於お犬けん於お沿えん二にの切せつ。 蜀しょくの貌かおばせ蠕うごめく。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「而に兌えんの切せつ、 虫むし動うごく。」

-言↢「▲蜎エン飛ト」↡者、畜生蠢々ノ之種類也。「蜎」¬玉篇ニ¼云、「於犬於沿エン二ノ切、蜀ノ貌蠕。」¬広韻ニ¼云ク、「而兌エン切、虫動。」

問とふ。 ¬大だい経きょう¼ (巻上) にはただ 「▲十方じっぽう衆しゅ生じょう」 といひて畜類ちくるいに及およばず、 相そう違いいかん。

-問。¬大経ニハ¼只云テ↢「十方衆生ト」↡不↠及バ↢畜類ニ↡、相違如何。

答こたふ。 たれかいふ十方じっぽう衆しゅ生じょうの言ことば畜類ちくるいに及およばずとは。 畜ちくは至し心しん信しん楽ぎょうに関あずからずといへどもこれまた随分ずいぶんの益やくなきにあらず。 ゆゑに ¬大だい経きょう¼ (巻上) にいはく、 「もし三さん途ず勤ごん苦くの処ところにありても、 この光こう明みょうを見みれば、 みな休く息そくすることを得えてまた苦く悩のうなし。 寿じゅ終じゅうの後のちに、 みな解げ脱だつを蒙こうぶる。」 以上。

-答。誰カ謂フ十方衆生ノ之言不ズトハ↠及バ↢畜類↡。畜ハ雖ヘ↠不↠関カラ↢至心信楽ニ↡、是 レ又非ズ↠无ニ↢随分ノ之益↡。故ニ¬大経ニ¼云ク、「▲若シ在テモ↢三途勤苦之処ニ↡、見レバ↢此ノ光明ヲ↡、皆得テ↢休息スルコトヲ↡无↢復苦悩↡。寿終ノ之後ニ、皆蒙ル↢解脱ヲ↡。」 已上

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『平等覚経』文

【14】次つぎに ¬覚かく経きょう¼ の文もん、 説相せっそう大たい略りゃく ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ に同おなじ。

▲次ニ¬覚経ノ¼文、説相大略同ジ↢¬宝積経ニ¼↡。

「令りょう我が名みょう聞もん」 とらは、 十じゅう七しちの願がんの意こころ、 「来らい生しょう我が国こく」 とらは、 十じゅう八はちの願がんの意こころ。

-「▲令我名聞ト」等者、十七ノ願ノ意、「▲来生我国ト」等者、十八ノ願ノ意。

「前ぜん世せ為い悪あく」 とらは、 また聞もん名みょうの益やくを説とく。

-「▲前世為悪」等者、又説ク↢聞名ノ之益ヲ↡。

「阿あ闍じゃ世せ王おう太たい子し」 以下いげは、 聞もん経きょうの益やくを説ときて宿命しゅくみょうの事じを述のぶ。

「▲阿闍世王太子」以下ハ、説テ↢聞経ノ之益ヲ↡述ブ↢宿命ノ事ヲ↡。

「如にょ是ぜ人にん」 の下しも六言ろくごんの偈げは、 また聞もん名みょうの徳とく、 「非有ひう是ぜ」 の下しもはあるいはその功く徳どくによりて経きょうを聞きくことを説とき、 あるいはその宿しゅく善ぜんによりて法ほうを聞きくことを説ときて、 あるいは憍きょう慢まん・蔽へい 懈け怠だいの機きは、 この法ほうを信しんじがたき等とうの義ぎ趣しゅを説とくこと、 しかしながら ¬大だい経きょう¼ に同おなじ。 その文もん見みつべし。

-「▲如是人ノ」下六言ノ偈者、又聞名ノ徳、「▲非有是ノ」下ハ或ハ説キ↧因テ↢其ノ功徳ニ↡聞コトヲ↞経ヲ、或ハ説テ↧因テ↢其ノ宿善ニ↡聞コトヲ↞法ヲ、或ハ説コト↧憍慢・蔽懈1042怠ノ機ハ、難キ↠信ジ↢此ノ法ヲ↡等ノ之義趣ヲ↥、併ラ同ジ↢¬大経ニ¼↡。其ノ文可シ↠見ツ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『悲華経』文

【15】次つぎに ¬悲華ひけ¼ の文もん、

▲次ニ¬悲*華ノ¼文、

文相もんそうのごときは十じゅう八はちの願がんか。 しかるに名みょう号ごう得とく生しょうの益やくを説とく。 ゆゑにいまこれを引ひく。

-如キ↢文相ノ↡者十八ノ願歟。而ニ説ク↢名号得生ノ之益ヲ↡、故ニ今引ク↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ○ 私釈(称名破満)

【16】次つぎにわたくしの釈しゃくの中なかに、

▲次ニ私ノ釈ノ中ニ、

「称名しょうみょう」 以下いげ 「志し願がん」 といふに至いたるまでの十じゅう八はち字じは、 ¬論ろんの註ちゅう¼ の下げに 「如にょ彼ひ名みょう義ぎ欲よく如実にょじつ修しゅ行ぎょう相応そうおう」 (浄土論) の論文ろんもんを釈しゃくする文もん意いなり。

-「▲称名」以下至マデノ↠言フニ↢「志願ト」↡十八字者、¬論ノ註ノ¼下ニ釈スル↢「▲如彼名義欲如実修行相応ノ」之論文ヲ↡之文意也。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『十住毘婆娑論』九文

【17】次つぎに ¬十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼ の文もんに就つきて、

▲次ニ就テ↢¬十住毘婆沙論ノ¼文ニ、

問とふ。 所引しょいんの文もん名みょう号ごうの徳とくにあらず、 ただ菩ぼ薩さつ登とう地じの益やくを説とく、 なんぞこれを引ひくや。

-問。所引ノ文非ズ↢名号ノ徳ニ↡、唯説ク↢菩薩登地ノ之益ヲ↡、何ゾ引↠之ヲ耶。

答こたふ。 下しもに引ひくところの 「▽仏法ぶっぽうに無む量りょうの門もんあり」 とらは、 難なん易いの道どうを明あかして称名しょうみょう易い行ぎょうの徳とくを讃嘆さんだんす。 以い上じょうの文もんは、 当用とうようにあらずといへども前ぜん後ごを明あかさんがためにくはしくこれを引ひくか。 はたまた二に行ぎょう同おなじく欣ごん趣しゅするところともに不ふ退たい位い、 すなはちこれ初しょ地じなり。 いま初しょ地じ見道けんどうの相そうを明あかす、 もつともこれ要須ようしゅなり、 ゆゑに広ひろくこれを引ひく。

-答。下ニ所ノ↠引ク之「仏法ニ有ト↢无量ノ門↡」等者、明シテ↢難易ノ道ヲ↡讃↢嘆ス称名易行ノ之徳ヲ↡。已上ノ文者、雖ヘ↠非ト↢当用ニ↡為ニ↠明ンガ↢前後ヲ↡委ク引ク↠之ヲ歟。将又二行同ク所↢欣趣スル↡共ニ不退ノ位、即是 レ初地ナリ。今明ス↢初地見道ノ之相ヲ↡、最モ是 レ要須ナリ、故ニ広ク引ク↠之ヲ。

この中なかに 「般舟はんじゅ三昧ざんまい」 といふは、 ¬般舟はんじゅ讃さん¼ にいはく、 「梵ぼん語ごには般舟はんじゅと名なづく、 ここには翻ほんじて常行じょうぎょう道どうと名なづく。 西国さいごくの語ことば、 ここには翻ほんじて名なづけて定じょうとす。 乃至 また立定りゅうじょう見けん諸仏しょぶつと名なづくなり。」 以上 また ¬止し観かん¼ (巻二上) には仏ぶつ立りゅう三昧ざんまいと名なづく。

-此ノ中ニ言↢「▲般舟三昧ト」↡者、¬般舟讃ニ¼云ク、「▲梵語ニハ名ク↢般舟ト↡、此ニハ翻ジテ名ク↢常行道ト↡。▲西国ノ語、此ニハ翻ジテ名テ為↠定ト。乃至 ▲亦名ク↢立定見諸仏ト↡也。」 已上 又¬止観ニハ¼名ク↢仏立三昧ト↡。

「六ろっ波羅ぱら蜜みつ」 といふは、 いわゆる六ろく度ど。 一いちには檀だん那な、 ここには布施ふせといふ。 二にには尸羅しら、 ここには翻ほんじて戒かいとなす。 三さんには羼さん提てい、 ここには忍辱にんにくといふ。 四しには毘び梨耶りや、 ここには精しょう進じんといふ。 五ごには禅ぜん那な、 ここには禅ぜん定じょうという。

-言↢「▲六波羅蜜ト」者、所謂六度。一者檀那、此ニハ云↢布施ト↡。二者尸羅、此ニハ翻ジテ為ス↠戒ト。三者羼提、此ニハ云フ↢忍辱ト。四ニハ毘梨耶、此ニハ云フ↢精進ト↡。五者禅那、此ニハ云フ↢禅定ト↡。

「諸忍しょにん」 といふは、 ¬仁王にんのう経きょう¼ の中なかには説ときて五ご忍にんとなす。 浄じょう影ようの ¬観かん経ぎょうの義ぎ疏しょ¼ (巻本) に釈しゃくしていはく、 「一いちは伏忍ぶくにん、 種しゅ姓しょう解げ行ぎょうの位くらいの中なかにあり、 諸法しょほうを学観がくかんしてよく煩悩ぼんのうを伏ぶくす、 ゆゑに名なづけて伏ぶくとなす。 二には信忍しんにん、 初しょ・二に・三さん地じ無む生しょうの理りにおいて信心しんじん決けつ定じょうするを名なづけて信忍しんにんとなす。 三さんは順じゅん忍にん、 四し・五ご・六ろく地じ相そうを破はし如にょに入いりて無む生しょうに趣しゅ順じゅんするを名なづけて順じゅん忍にんとなす。 四しには無む生しょう忍にん、 七しち・八はち・九地くじ実じつを証しょうし相そうを離はなるるを無む生しょう忍にんと名なづく。 五ごには寂じゃく滅めつ忍にん、 十じゅう地じ以い上じょう相そうを破はし畢ひっ竟きょうじて冥みょう心しん寂じゃくに至いたりて大だい涅ね槃はんを証しょうするを寂じゃく滅めつ忍にんと名なづく。」 以上

-言↢「▲諸忍ト」↡者、¬仁王経ノ¼中ニハ説テ為ス↢五忍ト↡。浄影ノ¬観経ノ義疏ニ¼釈シテ云ク、「一者伏忍、在リ↢於種姓解行ノ位ノ中ニ↡、学↢観シテ諸法ヲ↡能ク伏ス↢煩悩ヲ↡、故ニ名1043テ為↠伏ト。二者信忍、初・二・三地於テ↢無生ノ理ニ↡信心決定スルヲ名テ為↢信忍ト↡。三者順忍、四・五・六地破シ↠相ヲ入テ↠如ニ趣↢順スルヲ無生ニ↡名テ為ス↢順忍ト↡。四ニハ無生忍、七・八・九地証シ↠実ヲ離ルヽヲ↠相ヲ名ク↢無生忍ト↡。五ニハ寂滅忍、十地已上破シ↠相ヲ畢竟ジテ冥心至テ↠寂ニ証スルヲ↢大涅槃ヲ↡名ク↢寂滅忍ト↡。」 已上

「初しょ果かを得うるがごとし」 とは、 これ声しょう聞もんの須しゅ陀だ洹おんを得うるに況きょうしてかの菩ぼ薩さつの歓かん喜ぎ地じを得うることを顕あらわす。 初しょ果か・初しょ地じ通別つうべつ二に惑わく所断しょだん異ことなりといへども、 断道だんどう同おなじきがゆゑに。 「須しゅ陀だ洹おん」 とは、 すなはち↓四果しかの中なかにその初しょ果かなり。

-「▲如ト↠得ルガ↢初果↡」者、是 レ況シテ↣声聞ノ得ルニ↢須陀洹ヲ↡顕ス↣彼ノ菩薩ノ得ルコトヲ↢歓喜地ヲ↡。初果・初地通別二惑所断雖ヘ↠異ナリト、断道同ガ故ニ。「▲須陀洹ト」者、即四果ノ中ニ其ノ初果也。

↑四果しかといふは、 一いちには須しゅ陀だ洹おん、 ここには預流よるといふ。 初はじめて聖ひじりの流ながれに預あずかるゆゑに預流よるといふ。 この位くらいに頓とんに三界さんがいの八はち十じゅう八はっ使しの見惑けんわくを断だんず。 次下つぎしもに 「見諦けんたい所断しょだんの法ほうを断だんず」 といふは、 すなはちこれ見惑けんわくなり。 この見惑けんわくとは八はち十じゅう八はっ使し、 いはく四し諦たいにおいて三界さんがいに異いあり、 欲よくに三さん十じゅう二に、 色しきと無む色しきとおのおの二に十じゅう八はち、 合がっして八はち十じゅう八はっ使しの数かずを成じょうず。

-言↢▼四果ト↡者、一ニハ須陀洹、此ニハ云フ↢預流ト↡。初テ預ル↢聖ノ流ニ↡故ニ云フ↢預流ト↡。此ノ位ニ頓ニ断ズ↢三界ノ八十八使ノ見惑ヲ↡。次下ニ云↠「▲断ズト↢見諦所断ノ法ヲ↡」者、即是 レ見惑ナリ。此ノ見惑ト者八十八使、謂ク於↢四諦ニ↡三界ニ有リ↠異、欲ニ三十二、色ト与 ト ↢无色↡各二十八、合テ成ズ↢八十八使之数ヲ↡。

二にには斯し陀だ含ごん、 ここには一来いちらいといふ。 欲界よくかいの九く品ぼんの修惑しゅわくの中なかに前ぜん六品ろくぼんを断だんず、 後のちの三品さんぼんによりてひとたび欲界よくかいに来きたる、 ゆゑに一来いちらいといふ。

-二ニハ斯陀含、此ニハ云フ↢一来ト↡。欲界ノ九品ノ修惑ノ之中ニ断ズ↢前六品ヲ↡、因テ↢後ノ三品ニ↡一タビ来ル↢欲界ニ↡、故ニ云フ↢一来ト↡。

三さんには阿あ那な含ごん、 ここには不ふ還げんといふ。 後のちの三品さんぼんを断だんじて欲よくの修惑しゅわくを尽つくす、 ゆゑに欲界よくかいに還かえらざるをもつて名なとなす。

-三ニハ阿那含、此ニハ云フ↢不還ト↡。断ジテ↢後ノ三品ヲ↡尽ス↢欲ノ修惑ヲ↡、故ニ以テ↠不ヲ↠還ラ↢欲界ニ↡為ス↠名ト。

四しには阿羅あら漢かん、 ここには無む生しょうといふ。 色しき・無む色しき二に界かいの修惑しゅわくを断だんず、 生しょうとして受うくべきなし、 ゆゑに無む生しょうといふ。

-四ニハ阿羅漢、此ニハ云フ↢无生ト↡。断ズ↢色・无色二界ノ修惑ヲ↡、无シ↢生トシテ可キ↟受ク、故ニ云フ↢无生ト↡。

「二に十じゅう九有くう」 とは、

-「▲二十九有ト」者、

問とふ。 なんらを指さすや。 答こたふ。 二に十じゅう五ご有うとは四し州しゅう・四し悪趣あくしゅ・六欲ろくよくならびに梵王ぼんのう・四し禅ぜん・四し無む色しき・無む想そう・五ご那な含ごんなり。 これ五ご那な含ごんを合がっして一種いっしゅとなす、 五ご那な含ごんを開かいしてもつて二に十じゅう九有くうの数かずを成じょうずらくのみ。

-問。指↢何等ヲ↡*耶。答。二十五有ト者四州・四悪趣・六欲ニ梵王・四禅・四無色・无想・五那含ナリ。是 レ五那含ヲ合シテ為ス↢一種ト↡、開シテ↢五那含ヲ↡以テ成ズラク↢二十九有1044ノ数ヲ↡耳。

「一毛いちもうをもつて百ひゃくとするがごとし」 とらは、 その文点もんてんによりて義理ぎりを解げすべし。 いふところの文点もんてん口く伝でんにあるべし。

-「▲如シト↧以テ↢一毛ヲ↡為スルガ↞百ト」等者、依テ↢其ノ文点ニ↡可シ↠解ス↢義理ヲ↡。所ノ↠言フ文点可シ↠在↢口伝ニ↡。

【18】「仏法ぶっぽうに無む量りょうの門もんあり」 とらは、 つぶさに難なん行ぎょう・易い行ぎょうの道どうを挙あげて、 まさしく二に道どうの期ごするところともに不ふ退たいの位くらいにあることを明あかす。 その不ふ退たいの位くらい、 難なん行ぎょうは至いたりがたく易い行ぎょうは至いたりやすし、 これ難なん行ぎょうに対たいして念仏ねんぶつを易いとなす。

「▲仏法ニ有ト↢无量ノ門↡」等者、具ニ挙テ↢難行・易行ノ之道ヲ↡、正ク明ス↣二道ノ所↠期スル共ニ在コトヲ↢不退ノ之位ニ↡。其ノ不退ノ位、難行ハ難ク↠至リ易行ハ易シ↠至リ、是 レ対シテ↢難行ニ↡念仏ヲ為ス↠易ト。

また易い行ぎょう念仏ねんぶつの中なかにおいて、 弥陀みだを念ねんずるをもつてその本ほんとすることを顕あらわすこと、 かの ¬論ろん¼ の説せつその意こころ分ぶん明みょうなり。

-又於テ↢易行念仏ノ之中ニ↡、以テ↠念ズルヲ↢弥陀ヲ↡顕コト↠為スルコトヲ↢其ノ本ト↡、彼ノ¬論ノ¼之説其ノ意分明ナリ。

いはゆるその易い行ぎょうを釈しゃくする中なかに、 まづ東方とうぼう善徳ぜんとく仏ぶつ等とうの十方じっぽう十じゅう仏ぶつを挙あげて、 次つぎに 「阿あ弥陀みだ等とうの仏ぶつおよびもろもろの大だい菩ぼ薩さつ、 名なを称しょうして一心いっしんに念ねんずればまた不ふ退転たいてんを得う」 といふ、

-▲所謂釈スル↢其ノ易行ヲ↡之中ニ、▲先ヅ挙テ↢東方善徳仏等ノ十方十仏ヲ↡、次ニ云フ↣「▲阿弥陀等ノ仏及ビ諸ノ大菩薩称シテ↠名ヲ一心ニ念ズレバ亦得ト↢不退転ヲ↡」、

次つぎに世せ自じ在王ざいおう仏ぶつ等とうの一いっ百ぴゃく余よ仏ぶつを挙あげて、 判はんじて 「阿あ弥陀みだ仏ぶつ本願ほんがんかくのごとし、 もし人ひとわれを念ねんじ名なを称しょうしてみづから帰きすれば、 すなはち必ひつ定じょうに入いりて阿あ耨のく菩ぼ提だいを得う」 といふ、

-次ニ挙テ↢▲世自在王仏等ノ一百余仏ヲ↡、判ジテ云フ↧「▲阿弥陀仏本願如シ↠是ノ若人念ジ↠我ヲ称シテ↠名ヲ自ミ 帰スレバ即入テ↢必定ニ↡得ト↦阿耨菩提ヲ↥」、

次つぎに三さん十じゅう行ぎょうの偈げをもつて、 広ひろく弥陀みだの功く徳どくを讃さんず。 いまの所引しょいんの偈げはすなはちかの偈げの文もんなり。

-次ニ以テ↢三十行ノ偈ヲ↡広ク讃ズ↢弥陀ノ功徳ヲ↡。今ノ所引ノ偈ハ即彼ノ偈ノ文ナリ。

次つぎに善ぜん意い等とうの一いっ百ぴゃく四し十じゅう余よ仏ぶつを挙あげて、 易い行ぎょう道どうとなす。

-▲次ニ挙テ↢▲善意等ノ一百四十余仏ヲ↡、為ス↢易行道ト↡。

問とふ。 かの ¬論ろん¼ の中なかに、 つぶさに諸仏しょぶつの名みょう号ごうを挙あげて、 その名なを称しょうするをもつて易い行ぎょう道どうとなす、 なんぞ弥陀みだをもつて易い行ぎょう道どうとする。

-問。彼ノ¬論ノ¼之中ニ、具ニ挙テ↢諸仏ノ名号ヲ↡、以テ↠称スルヲ↢其ノ名ヲ↡為ス↢易行道ト↡、何ゾ以テ↢弥陀ヲ↡為スル↢易行道ト↡。

答こたふ。 挙あぐるところの名な諸仏しょぶつにわたるといへども、 あるいは 「阿あ弥陀みだ仏ぶつ本願ほんがん如にょ是ぜ」 といひ、 あるいは 「若にゃく人にん念ねん我が称名しょうみょう自帰じき」 といひ、 あるいは 「称名しょうみょう一心いっしん念ねん亦得やくとく不ふ退転たいてん」 といふ、 もつぱら弥陀みだに約やくす。 これによりてかの弥陀みだの章しょうにおいては、 余よ仏ぶつ菩ぼ薩さつの章しょうよりも委くわし。 けだしこれ諸しょ教きょうに讃ほむるところ多おおく弥陀みだにあるがゆゑなり。

-答。所ノ↠挙之名雖ヘ↠亘ト↢諸仏ニ↡、或ハ云ヒ↢「▲阿弥陀仏本願如是ト」↡、或ハ云ヒ↢「▲若人念我称名自帰ト」↡、或ハ云フ↢「▲称名一心念亦得不退転ト」↡、専ラ約ス↢弥陀ニ↡。依テ↠之ニ於↢彼ノ弥陀ノ章ニ↡者、委シ↠自モ↢余仏菩薩ノ之章↡。蓋シ是 レ諸教ニ所↠讃ル多ク在ルガ↢弥陀ニ↡故也。

問とふ。 かの ¬論ろん¼ の所判しょはん難なん行ぎょうに対たいする時とき、 易い行ぎょうの益やく、 これ此土しど所得しょとくの不ふ退たいなりとやせん、 これ他土たど所得しょとくの不ふ退たいなりとやせん、 はたまたいはゆる往おう生じょう・不ふ退たい、 同どうなりや異いなりや。

-問。彼ノ¬論ノ¼所判対スル↢難行ニ↡時、易1045行ノ之益、是 レ為セン↢此土所得ノ不退ナリトヤ↡、是 レ為セン↢他土所得ノ不退ナリトヤ↡、将又所ノ↠言往生・不退、同ナリヤ耶異ナリヤ耶。

答こたふ。 ▽総そうじて三さん義ぎあり。 ▽一いちにいはく、 此土しどの不ふ退たいなり。 これすなはち行ぎょうにおいてその難なん易いを論ろんじ、 機きにおいて精しょう進じん・儜弱にょうにゃくを分わかつといへども、 至いたるところともにこれ阿あ惟ゆい越おっ致ちすなはちこれ不ふ退たいなり。 このゆゑに此土しどの不ふ退たいならくのみ。

-答。総ジテ有リ↢三義↡。一云、此土ノ不退ナリ。是 レ則於テ↠行ニ論ジ↢其ノ難易ヲ↡、於テ↠機ニ雖ヘ↠分ツト↢精進・儜弱ヲ↡、所↠至ル共ニ是 レ阿惟越致即是 レ不退ナリ。是ノ故ニ此土ノ不退而已ナラクノミ。

二ににいはく、 他土たどの往おう生じょうなり。 しかるゆゑは、 弥陀みだの本願ほんがんはもとこれ往おう生じょうなり。 弥陀みだの益やく往おう生じょうたらば、 諸仏しょぶつまた同おなじ。 論文ろんもんすでに 「△阿あ弥陀みだ等とう仏ぶつおよび諸しょ大だい菩ぼ薩さつ称名しょうみょう一心いっしん念ねん亦得やくとく不ふ退転たいてん」 といふ。 ゆゑに知しんぬ、 いま不ふ退転たいてんといふは、 これ往おう生じょうして不ふ退たいを得うるを指さすなり。

-二ニ云、他土ノ往生ナリ。所↢以然ル↡者、弥陀ノ本願ハ本是 レ往生ナリ。弥陀ノ之益為タラ↢往生↡者、諸仏又同ジ。論文既ニ云フ↢「阿弥陀等仏及ビ諸大菩薩称名一心念亦得不退転ト」↡。故ニ知ヌ、今言↢不退転ト↡者、是 レ指↣往生シテ得ルヲ↢不退ヲ↡也。

三さんにいはく、 余よ仏ぶつの益やくは此土しどの不ふ退たい、 弥陀みだの益やくは浄じょう土どの往おう生じょうなり。 余よ仏ぶつの益やく不ふ退たいたるべきことは、 その義ぎ第一だいいちの義ぎに同おなじかるべし、 弥陀みだの益やく往おう生じょうたるべきことは、 その義ぎ第だい二にの義ぎに同おなじかるべし。

-三ニ云、余仏ノ之益ハ此土ノ不退、弥陀ノ之益ハ浄土ノ往生ナリ。余仏之益可コトハ↠為↢不退↡、其ノ義可シ↠同カル↢第一ノ之義ニ↡、弥陀ノ之益可コトハ↠為↢往生↡、其ノ義可シ↠同カル↢第二之義ニ↡。

問とふ。 今こん家げの意こころ、 三さん義ぎの中なかにいづれの義ぎによるや。

-問。今家ノ之意、三義ノ之中ニ依↢何ノ義ニ↡耶。

答こたふ。 △第一だいいちの義ぎをもつて ¬論ろん¼ の正しょう意いとなす、 ゆゑにこれを用もちゐるべし。

-答。以テ↢第一ノ義ニ↡為↢¬論ノ¼正意ト↡、故ニ可シ↠用↠之ヲ。

▼問とふ。 ¬論ろん¼ の正しょう意いたることその義ぎいかん。

-問。為タルコト↢¬論ノ¼正意↡其ノ義如何。

答こたふ。 かの ¬論ろん¼ の所説しょせつ、 称名しょうみょうの利り益やく、 不ふ退転たいてんをもつてその所しょ期ごとすること、 諸文しょもん分ぶん明みょうなり。

-答。彼ノ¬論ノ¼所説、称名ノ利益、以テ↢不退転ヲ↡為スルコト↢其ノ所期ト↡、諸文分明ナリ。

いはくその文もん (十住論巻五易行品) にいはく、 「称名しょうみょう一心いっしん念ねん、 亦得やくとく不ふ退転たいてん。」 以上

-謂ク其ノ文ニ云ク、「▲称名一心念、亦得不退転。」 已上

またいはく、 「称名しょうみょう自帰じき、 即そく入にゅう必ひつ定じょう。」 以上

-又云ク、「▲称名自帰、即入必定。」 已上

弥陀みだの章しょうにいはく、 「人ひとよくこの仏ぶつの無む量りょう力りき功く徳どくを念ねんずれば、 ↓即そくの時とき必ひつ定じょうに入いるこのゆゑにわれ常つねに念ねんず。」 以上

-弥陀ノ章ニ云ク、「▲人能ク念ズレバ↢是ノ仏ノ无量力功徳ヲ↡、即ノ時入ル↢必定ニ↡是ノ故ニ我常ニ念ズ。」 已上

十じゅう仏ぶつの章しょうにいはく、 「もし人ひと疾とく不ふ退転たいてん地じを得えんと欲おもはば、 恭く敬ぎょうの心しんをもつて、 執しゅう持じして名みょう号ごうを称しょうすべし。」 以上

-十仏ノ章ニ云ク、「▲若シ人欲↣疾ク得ント↢不退転地ヲ↡者、応シ↧以テ↢恭敬ノ心ヲ↡、執持シテ称ス↦名号ヲ↥。」 已上

またいはく、 「もし菩ぼ薩さつ↓この身みにおいて阿あ惟ゆい越おっ致ち地じに至いたることを得えて、 阿あ耨のく菩ぼ提だいを成じょうぜんと欲おもはば、 まさにこの十方じっぽうの諸仏しょぶつを念ねんじて、 その名みょう号ごうを称しょうすべし。」 以上

-又云、「▲若シ菩薩欲↧於テ↢此ノ身ニ↡得テ↠至コトヲ↢阿惟1046越致地ニ↡、成ゼント↦阿耨菩提ヲ↥者、応シ↧当ニ念ジテ↢是ノ十方ノ諸仏ヲ↡、称ス↦其ノ名号ヲ↥。已上

あるいは↑即そく時じといひ、 あるいは↑此し身しんといふ。 これ此土しどの不ふ退たいをもつて本ほんとなす、 種々しゅじゅの異義いぎ等とうありといへども、 今こん家げの意こころ、 料りょう簡けんかくのごとし。 長じょう行ごう・偈げ頌じゅ多おおくの文もんありといへども、 ほぼこの趣おもむきを得えて ¬論ろん¼ の意こころを解げすべし。

-或ハ云ヒ↢即時ト↡、或ハ云フ↢此身ト↡。是 レ以テ↢此土ノ不退ヲ↡為ス↠本ト、雖ヘ↠有ト↢種々ノ之異義等↡、今家ノ之意、料簡如シ↠此ノ。長行・偈頌雖ヘ↠有ト↢多ノ文↡、粗得テ↢此ノ趣ヲ↡可シ↠解ス↢¬論ノ¼意ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『浄土論』文

【19】次つぎに ¬浄じょう土ど論ろん¼。

▲次ニ¬浄土論¼。

「我依がえ」 とらは、 ▽偈げの前まえの ¬註ちゅう¼ (論註巻上) にいはく、 「次つぎに優婆うば提舎だいしゃの名なを成じょうず、 また上かみを成じょうじ下しもを起おこす偈げ。」 以上

-「▲我依ト」等者、偈ノ前ノ¬註ニ¼云ク、「▲次ニ成ズ↢優婆提舎ノ名ヲ↡、又成ジ↠上ヲ起ス↠下ヲ偈。」 已上

また▽偈げの後のちにいはく、 「この一いち行ぎょういかんぞ優婆うば提舎だいしゃの名なを成じょうずる、 いかんぞ上かみの三門さんもんを成じょうじ下しもの二に門もんを起おこす。 偈げに我依がえ修しゅ多羅たら、 与よ仏ぶっ教きょう相応そうおうといふ。 修しゅ多羅たらはこれ仏ぶっ経きょうの名な。 われ仏ぶっ経きょうの義ぎを論ろんじて、 経きょうと相応そうおうす、 仏法ぶっぽうの相そうに入いるをもつてのゆゑに優婆うば提舎だいしゃと名なづく。 名なを成じょうじをはりぬ。 上かみの三門さんもんを成じょうじ下しもの二に門もんを起おこす。」 以上

-又偈ノ後ニ云、「▲此ノ一行云何ゾ成ズル↢優*波提舎ノ名ヲ↡、云何ゾ成ジ↢上ノ三門ヲ↡起ス↢下ノ二門ヲ↡。偈ニ言フ↢我依修多羅、与仏教相応ト↡。修多羅ハ是 レ仏経ノ名。我論ジテ↢仏経ノ義ヲ↡、与↠経相応ス、以ノ↠入ルヲ↢仏法ノ相ニ↡故ニ名ク↢優*婆提舎ト↡。名ヲ成ジ竟ヌ。◆成ジ↢上ノ三門ヲ↡起ス↢下ノ二門ヲ↡。」 已上

これらの義ぎ趣しゅ、 次下つぎしもの 「何が所しょ依え」 以下いげ 「函蓋かんがい相そう称しょう」 に至いたるまで、 下しもにこれを引ひかる。 よりていまこれを略りゃくす、 よろしくかの文もんを見みるべし。

-是等ノ義趣、次下ノ「何所依」以下至マデ↢「函蓋相称ニ」↡、▲下ニ被↠引↠之ヲ。仍今略ス↠之ヲ。宜クシ↠見ル↢彼ノ文ヲ↡。

「観仏かんぶつ」 とらは、 ¬論ろん¼ に二に十じゅう九句くくの荘しょう厳ごんを明あかす。 その中なかに、 如来にょらい八種はっしゅの功く徳どく荘しょう厳ごんの内うち、 第八だいはちの荘しょう厳ごん不ふ虚作こさ住じゅう持じ功く徳どく荘しょう厳ごんの文もんなり。

-「▲観仏ト」等者、¬論ニ¼明ス↢二十九句ノ荘厳ヲ↡。其ノ中ニ、如来八種ノ功徳荘厳ノ之内、第八ノ荘厳不虚作住持功徳荘厳ノ文也。

¬註ちゅう¼ (論註巻上) にいはく、 「この四句しくを荘しょう厳ごん不ふ虚作こさ住じゅう持じ功く徳どく成じょう就じゅと名なづく。 仏ぶつもとなんがゆゑぞこの荘しょう厳ごんを起おこしたまふ。 ある如来にょらいを見みれば、 ただ声しょう聞もんをもつて僧そうとなして、 仏道ぶつどうを求もとむる者ものなし。 あるいは仏ぶつに値あひてしかも三さん塗ずを免まぬかれざるあり。 *善ぜん星しょう・*提だい婆ば達だっ多た・*居こ迦離かり等とうこれなり。 また人ひと仏ぶつの名みょう号ごうを聞ききて無む上じょう道心どうしんを発おこせども悪あくの因縁いんねんに遇あひて、 退たいして声しょう聞もん・辟びゃく支し仏ぶつ地じに入いる者もの、 かくのごときら空むなしく過すぐる者もの、 退没たいもつの者ものあり。 このゆゑに願がんじていはく、 われ成じょう仏ぶつせん時とき、 われに値ち遇ぐうせん者ものをしてみなすみやかに疾とく無む上じょう大宝だいほうを満足まんぞくせしめん。」 以上

-¬註ニ¼云ク、「▲此ノ四句ヲ名ク↢荘厳不虚作住持功徳成就ト↡。◆仏本何ガ故ゾ起シタマフ↢此ノ荘厳ヲ↡。見レバ↢有ル如来ヲ↡、但 ヾ以テ↢声聞ヲ↡為シテ↠僧ト、无シ↧求ル↢仏道ヲ↡者↥。或ハ有リ↧値テ↠仏ニ而モ不ル↞免マヌカレ↢三途ヲ↡。善星・提婆達多・居迦離等是也。又人聞テ↢仏ノ名号ヲ↡発セドモ↢无上道心ヲ↡遇テ↢悪ノ因縁ニ↡、退シテ入ル↢声聞・辟支仏地ニ↡者、有リ↢如↠是ノ等空ク過ル者、退没ノ者↡。◆是ノ故ニ願ジテ言ク、使1047シメン↧我レ成仏セン時、値↢遇セン我ニ↡者ヲシテ皆速ニ疾ク満↦足セ无上大宝ヲ↥。」 已上

「又う曰わつ菩ぼ薩さつ」 とらは、 ¬論ろんの註ちゅう¼ の意こころによるに、 解義げぎ分ぶんの中なかに分わかちて十重じゅうじゅうとなす。 その中なかに第だい十じゅう*利り行ぎょう満足まんぞくの章しょうの終おわりの文もんなり。 くはしく知しらんと欲おもわば、 ¬註ちゅう¼ の文もんを看みるべし。

「▲又曰菩薩ト」等者、依ニ↢¬論ノ註ノ¼意ニ↡、解義分ノ中ニ分テ為ス↢十重ト↡。其ノ中ニ第十利行満足ノ章ノ終ノ文也。欲↢委ク知ント↡者、可シ↠看↢▲¬註ノ¼文ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『論註』四文

【20】次つぎに「論ろん註ちゅう曰わつ」 とらは、 かの ¬註ちゅう¼ の最初さいしょに ¬論ろん¼ の大たい意いを標ひょうする発端ほったんの釈しゃくなり。 鸞らん師し深ふかく ¬十住じゅうじゅう論ろん¼ の意こころを得えて難なん易いの道どうを判はんず、 その文もん少すこしき異ことなれども、 その義ぎおほいに同おなじ。

次ニ「▲論註曰ト」等者、彼ノ¬註ノ¼最初ニ標スル↢¬論ノ¼大意ヲ↡発端ノ釈也。鸞師深ク得テ↢¬十住論ノ¼意ヲ↡判ズ↢難易ノ道ヲ↡、其ノ文少シキ異ナレドモ、其ノ義大ニ同ジ。

「五ご濁じょく世せ」 とは、 五ご濁じょく悪あく世せ在滅ざいめつを分わかたず。 「無む仏ぶつ時じ」 とは、 滅めつ後ごの時ときを指さす、 これすなはちつぶさに時じ処しょの難なんを挙あぐ。 「五ご三さん」 といふは、 少々しょうしょうと称しょうする詞ことば、 内ない外げ典てんの中なかに多おおくその例れいあり。

-「▲五濁世ト」者、五濁悪世不↠分↢在滅ヲ↡。「▲无仏時ト」者、指ス↢滅後ノ時ヲ↡、是則具ニ挙グ↢時処ノ之難ヲ↡。言「▲五三ト」者、称スル↢少々ト↡詞、内外典ノ中ニ多ク有リ↢其ノ例↡。

問とふ。 五ご種しゅの難なん大たい意いいかん。

-問。五種之難大意如何。

答こたふ。 澄ちょう或わくの ¬註ちゅう十じゅう疑ぎ¼ にいはく、 「前さきの四し種しゅの難なんは凡ぼんを非ひし小しょうを斥きらふ、 一いちの難なんは大だい乗じょうの行ぎょうただ自じにして他たなし。 おほきに外げ縁えんを欠かく。 ゆゑにまた難なんなり。」 以上

-答。澄*或ノ¬註十疑ニ¼云ク、「前ノ四種ノ難ハ非シ↠凡ヲ斥キラフ↠小ヲ、一ノ難ハ大乗ノ行唯自ニシテ无シ↠他。大ニ闕ク↢外*縁ヲ↡。故亦難也。」 已上

「外げ道どう」 とらは、 同おなじき ¬註ちゅう¼ (註十疑論) にいはく、 「わが仏ぶつの正しょう法ぼう、 小乗しょうじょうにはすなはち無む常じょう・無我むが・寂じゃく滅めつ法印ほういんあり。 大だい乗じょうにはすなはち一実いちじっ相印そういんあり。 これによりて行ぎょうずればかならず聖しょう果かに登のぼる。 外げ道どうはすなはちしからず。 迷惑めいわく邪見じゃけん所説しょせつの法ほう、 その相そう善せんに似にてしかも実じつに善ぜんにあらず。 邪じゃをもつて正しょうを乱みだる、 人ひと甄あらわし分わかつことあたはず、 深ふかく障しょう道どうを成じょうず。」 以上

-「▲外道ト」等者、同キ¬註¼云、「我ガ仏ノ正法、小乗ニハ則有リ↢无常・无我・寂滅法印↡。大乗ニハ則有リ↢一実相印↡。依テ↠之ニ行ズレバ必登ル↢聖果ニ↡。外道ハ則不↠然ラ。迷惑邪見所説ノ之法、其ノ相似テ↠善ニ而モ実ニ非ズ↠善ニ。以テ↠邪ヲ乱ル↠正ヲ、人不↠能↢甄アラハシ分コト↡、深ク成ズ↢障道ヲ↡。」 已上

「声しょう聞もんの自利じり大だい慈悲じひを障さふ」 とは、 ¬十住じゅうじゅう論ろん¼ (巻五易行品) にいはく、 「もし声しょう聞もん地じおよび辟びゃく支し仏ぶつ地じに堕だする、 これを菩ぼ薩さつの死しと名なづく。 すなはち一切いっさいの利りを失しっす。」 以上 ¬荘しょう厳ごん論ろん¼ (荘厳経論巻六随修品) にいはく、 「つねに地じ獄ごくに処しょすといへども大だい菩ぼ提だいを障さへず、 もし自利じりの心しんを起おこすはこれ大だい菩ぼ提さいの障さわりなり。」 以上 大だい乗じょうの諸しょ経きょうに多おおくこの説せつあり。 つぶさに挙あぐるに遑いとまあらず。

-「▲声聞ノ自利障ト↢大慈悲ヲ↡」者、¬十住論ニ¼云ク、「▲若シ堕スル↢声聞地及ビ辟支仏地ニ↡、是ヲ名ク↢菩薩ノ死ト↡。則失ス↢一切ノ利ヲ↡。」 已上 ¬荘厳論ニ¼云ク、「雖ヘ↣恒ニ処スト↢地獄ニ↡不↠障↢大菩提ヲ↡、若シ起スハ↢自利ノ心ヲ↡是 レ大菩提ノ障ナリ。」 已上 大乗ノ諸経ニ多ク有リ↢此1048ノ説↡。不↠遑アラ↢具ニ挙ニ↡。

「無顧むこの悪人あくにん他たの勝しょう徳とくを破はす」 とは、 同おなじき ¬註ちゅう¼ (註十疑論) にいはく、 「濁じょく世せの悪人あくにん、 修道しゅどうの者ものを見みては人ひとの美ほむるを成じょうずることあたはず、 かへりて毀破きはの言ことばを宣のぶ。」 以上 ¬漢書かんじょ¼ の註ちゅうにいはく、 「江淮こうかいの間あいだ、 いはく小しょう児子にし詐いつわり多おおくして狡獪こうかいなるを無顧むこと名なづく。」 以上 かの身しん子しが乞眼こつげんの縁えんに逢あひて菩ぼ薩さつの行ぎょうを退たいせしがごとき、 これその類たぐいなり。

-「▲无顧ノ悪人破スト↢他ノ勝徳ヲ↡」者、同キ¬註ニ¼云ク、「濁世ノ悪人、見テハ↢修道ノ者ヲ↡不↠能↠成コト↢人ノ之美ヲ↡、反テ宣ノブ↢毀破之言ヲ↡。」 已上 ¬漢書ノ¼註云、「江淮クワイノ之間、謂ク小児子多シテ↠詐狡カウ獪クワイナルヲ名ク↢无顧ト↡。」 已上 如キ↧彼カノ身子ガ逢テ↢乞眼ノ*縁ニ↡退センガ↦菩薩ノ行ヲ↥、是 レ其ノ類也。

「顛倒てんどうの善ぜん果かよく梵ぼん行ぎょうを壊えす」 とは、 同おなじき ¬註ちゅう¼ (註十疑論) にいはく、 「人天にんでんの果かは無漏むろの善ぜんにあらず、 しばらく楽らくにして還かえりて苦くなり、 顛倒てんどうとなす。 梵ぼん行ぎょうは浄行じょうぎょうなり。」

-「▲顛倒ノ善果能ク壊スト↢梵行ヲ↡」者、同¬註¼云、「人天之果ハ非ズ↢无漏ノ善ニ↡、暫ク楽ニシテ還テ苦ナリ、為ス↢顛倒ト↡。梵行ハ浄行也。」

また ¬論ろんの註ちゅう¼ (巻上) にいはく、 「人天にんでんの果か報ほう、 もしは因いんもしは果か、 みなこれ顛倒てんどうなり、 みなこれ虚偽こぎなり。」 以上

-又¬論ノ註ニ¼云、「▲人天ノ果報、若ハ因若ハ果、皆是 レ顛倒ナリ、皆是 レ虚偽ナリ。」 已上

「定じょう善ぜん義ぎ」 にいはく、 「人天にんでんの楽らくはなほし電光でんこうのごとし。 須しゅ臾ゆにすなはち捨すつ、 還かえりて三悪さんまくに入いりて長じょう時じに苦くを受うく。」 以上

-「定善義ニ」云ク、「▲人天ノ之楽ハ猶シ如シ↢電光ノ↡。須臾ニ即捨ツ、還テ入テ↢三悪ニ↡長時ニ受ク↠苦ヲ。」 已上

かの妙みょう荘しょう厳ごん王おうの本ほん事じのごときこれその類たぐいなり。

-如キ↢彼ノ妙荘厳王ノ本事ノ↡是 レ其ノ類也。

「ただこれ自じ力りきにして他た力りきの持たもつなし」 とは、 ¬十じゅう疑ぎ¼ にいはく、 「譬たとへば跛あしなえたる人ひとの歩かちにより行いくときは、 一日いちにちに数しゅ里りを過すぎず、 きわめておほいに辛しん苦くするがごときを自じ力りきといふなり。 易い行ぎょう道どうとは、 いはく仏ぶつ語ごを信しんずるがゆゑに、 念仏ねんぶつ三昧ざんまいを行ぎょうじて浄じょう土どに生しょうぜんと願がんずれば、 弥陀みだの願力がんりきの摂しょう持じするに乗じょうじて、 決けつ定じょうして往おう生じょうすること疑うたがはざるなり。 人ひと水すい路ろに船ふねの力ちからによるがゆゑに、 須しゅ臾ゆにすなはち千せん里りに至いたるがごときを他た力りきといふ。」 以上

-「▲唯是自力ニシテ無ト↢他力ノ持ツ↡」者、¬十疑ニ¼云、「譬如キヲ↧跛アシナヘタル人ノ歩ヨリ行トキハ、一日ニ不↠過↢数里ヲ↡、極テ大ニ辛苦スルガ↥謂↢自力ト↡也。易行道ト者、謂ク信ズルガ↢仏語ヲ↡故ニ、行ジテ↢念仏三昧ヲ↡願ズレバ↠生ゼント↢浄土ニ↡、乗ジテ↢弥陀ノ願力ノ摂持スルニ↡、決定シテ往生スルコト不↠疑也。如キヲ↧人水路ニ因ガ↢船ノ力ニ↡故ニ、須臾ニ即至ルガ↦千里ニ↥謂フ↢他力ト↡。」 已上

「易い行ぎょう道どうとはいはくただ」とらは、

-「▲易行道ト者謂ク但ト」等者、

問とふ。 上かみに述のぶるがごときは、 難なん易いの二に道どう所しょ行ぎょう異ことなりといへども、 所しょ期ごの益やくともにこれ不ふ退たいなり。 その不ふ退たいとは、 同おなじくこの土どにおいて得うるところの益やくなり。 しかるにいまの文もんのごときは、 不ふ退たいといふは往おう生じょうの後のち得うるところの益やくたること、 その文もん炳然へいねんなり、 いかん。

-問。如↢上ニ述ルガ↡者、難易ノ二道所行雖ヘ↠異ナリト、所期之益共ニ是 レ不退ナリ。其ノ不退ト者、同ク於テ↢此ノ土ニ↡所ノ↠得ル益也。而ニ如↢今ノ文ノ↡者、言↢不退ト↡者為タルコト↢往生ノ後所ノ↠得ル之益↡、其ノ文炳然ナリ、如何。

答こたふ。 もとより△三さん義ぎあり、 諸しょ師しの意こころ、 おのおの一いち義ぎを存ぞんず。 いはんやまた生しょう後ごの義ぎを存ぞんずといへども、 現げん生しょう不ふ退たいの益やくを遮しゃするにあらず。 位くらいいまだ不ふ退たいの地じに至いたらずといへども、 蒙もう光触こうそく者しゃ心しん不ふ退たいの義ぎ、 摂取せっしゅ不ふ捨しゃ、 ▲横おう超ちょう断だん四流しる、 あにもつて空むなしからんや。 これらの明みょう文もん虚こ説せつにあらずは、 不ふ退たいの義ぎなんぞ成じょうぜざらんや。 三さん不ふ退たいにあらず、 処しょ不ふ退たいにあらず、 ただこれ信心しんじん不ふ退たいの義ぎなり。

-答。本モトヨリ有リ↢三義↡、諸師ノ之意、各存ズ↢一義ヲ↡。況又雖ヘ↠存ズト↢生後ノ之義ヲ↡、非ズ↠遮スルニ↢現生不退ノ之1049益ヲ↡。位雖ヘ↠未 ズ ダト↠至↢不退ノ之地ニ↡、▲蒙光触者心不退ノ義、摂取不*捨、▲横超断四流、豈以テ空カランヤ耶。此等ノ明文非↢虚説ニ↡者、不退ノ之義何ゾ不↠成ゼ乎。非ズ↢三不退ニ↡、非ズ↢処不退ニ↡、只是信心不退ノ義也。

「蓋がい上じょう衍えん之し極ごく致ち」 といふは、 流布るふの本ほん 「衍えん」、 いまは 「衎かん」 の字じたり、 異い本ほんあるか。 「衍えん」 ¬宋韻そういん¼ にいはく、 「易えき浅せんの切せつ、 達たつなり、 また大衍だいえん易えきの数しゅなり。」 いま衍えんといふはこれらの訓くんにあらず、 これ梵ぼん語ごなり。 ここには乗じょうの義ぎとなす、 摩訶まか衍えんとはこれ大だい乗じょうなるがゆゑに。 「衎かん」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「口く且しゃの切せつ、 衎かんは楽らくなり。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「苦く旰かんの切せつ、 楽らくなり。」 また (広韻) いはく、 「空くう旱かんの切せつ、 信しんの言ことばなり。」 いま衍えんを用もちゐることは、 上かみはすなはち上じょう乗じょう、 衎かんはすなはち信しんの言ことば、 この論説ろんせつを信しんじて安楽あんらくに生しょうずべき義ぎならくのみ。

言↢「▲蓋上衍之極致ト」↡者、流布ノ本「衍」、今ハ為タリ↢「*衎カンノ」字↡、有↢異本↡歟。「*衍」¬宋韻¼云、「易浅切、達也、又大衍易エキノ数也。」今言↠衍ト者非ズ↢此等ノ訓ニ↡、是 レ梵語也。此ニハ為ス↢乗ノ義ト↡、摩訶衍ト者是 レ大乗ナルガ故。「衎カム」¬玉篇ニ¼云、「口且ノ切、*衎カムハ楽也。」¬広韻ニ¼云ク、「苦*旰カンノ切、古按切曰晩也楽也。」又云、「空旱カン切、信ノ言也。」今用コトハ↠*衍者、上ハ即上乗、*衎カムハ即信ノ言、信ジテ↢此ノ論説ヲ↡可キ↠生↢安楽ニ↡之義而已ナラクノミ。

「風航ふうこう」 といふは、 「航こう」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「可か当とうの切せつ、 船ふねなり。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「洪こう郎ろうの切せつ、 船ふねなり。」

-言↢「▲風航ト」↡者、「航」¬玉篇ニ¼云、「可当ノ切、船也。」¬広韻¼云、「洪郎ノ切、船也。」

「無む量りょう寿じゅはこれ安楽あんらく」 とらは、 論ろんの名みょう義ぎを解げす。

-「▲無量寿ハ是安楽ト」等者、解ス↢論ノ名義ヲ↡。

「王舎おうしゃ城じょうおよび舎しゃ衛え国こくにましまして」 とは、 つぶさに三さん経ぎょうの説処せっしょを挙あぐらくのみ。 この文もんによらば鸞らん師しの意こころ、 いまこの ¬論ろん¼ をもつてもつて三さん部ぶ通申つうしんの論ろんとなす。 義ぎ寂じゃく・宗暁しゅうぎょう同おなじく三さん部ぶ通申つうしんの義ぎによる。 智ち昇しょう・智ち光こうともに ¬大だい経きょう¼ 別申べっしんの義ぎを存ぞんず。

-「▲在テト↢王舎城及ビ舎衛ニ↡」者、具ニ挙グラク↢三経ノ之説処ヲ↡耳ノミ。依ラ↢此ノ文ニ↡者鸞師ノ之意、今以テ↢此ノ¬論ヲ¼↡以テ為ス↢三部通申ノ之論ト↡。義寂・宗暁同ク依ル↢三部通申ノ之義ニ↡。智昇・智光共ニ存ズ↢¬大経¼別申ノ之義ヲ↡。

【21】「また所願しょがん軽かろからず」 とらは、 論ろんの偈げの第一だいいち行ぎょうの文もんを釈しゃくす、 文もん意い見みつべし。

「▲又所*願不↠軽」等者、釈ス↢論ノ偈ノ之第一行ノ文ヲ↡、文意可シ↠見ツ。

「督とく」 の字じの註ちゅうは、 ¬広韻こういん¼ の詞ことばなり、 同どう詞し (広韻) にまたいはく、 「察さつなり、 目め痛いたし、 また姓しょう。」 また ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「都と谷こくの切せつ、 正しょうなり、 目め痛いたし。」 これらの訓くんの中なかに、 いまの釈しゃく正しょうと勧かんとの義ぎに叶かなふべきか。

-「▲督トクノ」字ノ註者、¬広韻ノ¼詞也、同詞ニ又云ク、「察也、目痛シ、又姓。」又¬玉篇ニ¼云ク、「都谷ノ切、正也、目痛也。」此等ノ訓ノ中ニ、今ノ釈可↠叶↢正ト勧トノ義ニ↡耶。

次つぎに 「間雑けんぞう」 の下しも 「帰き命みょう」 の上かみに 「乃ない至し」 といふは、 「我が」 の一いち字じに就つきて一いちの問答もんどうを設もうくる三さん行ぎょう余よの文もんこれなり。

-次ニ「間*雑ノ」之下「帰命ノ」之上ニ言↢「▲乃至1050ト」↡者、▲就テ↢「我ノ」一字ニ↡設クル↢一ノ問答ヲ↡之三行余ノ之文是也。

「相応そうおう故こ」 の下しも 「天親てんじん今こん」 の上かみに 「乃ない至し」 といふは、 ¬小経しょうきょう¼ の説せつによりて阿あ弥陀みだ如来にょらいの名みょう義ぎを解げし、 また光こう照しょうに就つきて一いちの問答もんどうありてその利り益やくを顕あらわし、 また一仏いちぶつ諸仏しょぶつ世せ界かいを主しゅ領りょうする広こう狭きょうを弁べんじて、 その小乗しょうじょう・大だい乗じょう所談しょだんの差別しゃべつを明あかす等とう、 十じゅう一いち行ぎょう余よの文もんこれなり。

-「相応故ノ」下「天親今ノ」上ニ言↢「▲乃至ト」↡者、▲依テ↢¬小経ノ¼説ニ↡解シ↢阿弥陀如来ノ名義ヲ↡、又▲就テ↢光照ニ↡有テ↢一ノ問答↡顕シ↢其ノ利益ヲ↡、又▲弁ジテ↧一仏諸仏主↢領スル世界ヲ↡広狭ヲ↥、明ス↢其ノ小乗・大乗所談ノ之差別ヲ↡等、十一行余ノ之文是也。

「之意しい也や」 の下しも 「問曰もんわつ」 の上かみに 「乃ない至し」 といふは、 「その安楽あんらくの義ぎつぶさに下しもの観察かんざつ門もんの中なかにあり」 といふ十じゅう一いち字じなり。

-「之意也ノ」下「問曰ノ」之上ニ言↢「▲乃至」↡者、云フ↣「▲其ノ安楽ノ義具ニ在ト↢下ノ観察門ノ中ニ↡」十一字也。

「問曰もんわつ」 とらは、 二にの問答もんどうあり。 初はじめの問答もんどうの意こころは、 「願がん生しょう」 の言ことばに就つきて不ふ生しょうの義ぎを顕あらわし、 次つぎの問答もんどうは、 往おう生じょうの義ぎに就つきて一いち異いの意こころを顕あらわす。 註ちゅう家けもとこれ四し論ろんの碩徳せきとくなり、 ゆゑに ¬*中ちゅう論ろん¼ の↓八はっ不ぷの法門ほうもんによりてこの釈しゃくあり。

-「問曰」等者、有リ↢二ノ問答↡。▲初ノ問答ノ意ハ、就テ↢「願生ノ」言ニ↡顕シ↢不生ノ義ヲ↡、▲次ノ問答者、就テ↢往生ノ義ニ↡顕ス↢一異ノ意ヲ↡。註家本モト是 レ四論ノ碩徳ナリ、故ニ依テ↢¬中論ノ¼八不ノ法門ニ↡有↢此ノ釈↡也。

↑八はっ不ぷといふは、 ¬中ちゅう観がん論ろん¼ の 「観かん因いん果が品ぼん」 (巻一観因縁品) にいはく、 「常じょうならずまた断だんならず、 一いちならずまた異いならず、 来きたらずまた去さらず、 *生しょうならずまた滅めつならず。」 以上

-言↢八不ト↡者、¬中観論ノ¼「観因果品ニ」云ク、「不↠常ナラ亦不↠断ナラ、不↠一ナラ亦不↠異ナラ、不↠来ラ亦不↠去ラ。」 已上

「この義ぎ一いち異いを観かんずる門もんなり」 とは、 八はっ不ぷの中なかに就つきてしばらくその一いち異いを明あかす。

-「▲是ノ義観ズル↢一異ヲ↡門ナリト」者、就テ↢八不ノ中ニ↡且ク明ス↢其ノ一異ヲ↡。

「論ろんの中なかに委い曲きょくなり」 とは、 かの ¬論ろん¼ を指さすなり。 あるいはまた連読れんどくして観かん一いち異い門論もんろんと読よむべしといふ一いち義ぎあり、 これ所説しょせつの法門ほうもんに就つきて ¬十じゅう二に門論もんろん¼ および ¬中ちゅう観がん論ろん¼ この名なを得うべしと 云々。

-「▲論ノ中ニ委曲ナリト」者、指↢彼ノ¬論ヲ¼↡也。或又連読シテ有リ↧云フ↠可ト↠読↢観一異門論ト↡之一義↥、是 レ就テ↢所説ノ法門ニ↡¬十二門論¼及ビ¬中観論¼可ト↠得↢此ノ名ヲ↡ 云云。

「我依がえ」 の四句しくの偈げの前ぜん後ごに 「乃ない至し」 といふは、 これ△優婆うば提舎だいしゃの名なを成じょうじ、 また△上かみを成じょうじ下しもを起おこすことを解げする釈しゃく、 上かみにこれを出いだし訖おわりぬ。

-「我依ノ」四句ノ偈ノ之▲前▲後ニ言↢「乃至ト」↡者、是 レ成ジ↢優*波提舎ノ之名ヲ↡、又解スル↢成ジ↠上ヲ起スコトヲ↟下ヲ之釈、上ニ出シ↠之ヲ訖ヌ。

問とふ。 この 「我依がえ修しゅ」 の一いち四句しく偈げ、 上かみにすでにこれを引ひく、 当巻とうかんの中なかに重かさねてこれを引ひかるる、 繁はん重じゅうの失しつ遁のがれがたし、 いかん。

-問。此ノ「我依修ノ」一四句偈、▲上ニ既ニ引ク↠之ヲ、当巻ノ之中ニ重テ被ル↠引之ヲ、繁重之失難シ↠遁レ、如何。

答こたふ。 まことにもつてしかなり。 ▼ただしこの文体もんたいもとよりただこれ文もん集じゅうの体ていなり。 よりて当用とうようの時とき繁はん重じゅうを憚はばからざることこの文もんに限かぎらず。 余よ処しょにまた重じゅう引いんの例れいあり。 みな準じゅん拠きょすべし。 ただいささかその差別しゃべつなきにあらざるか。 いはく上かみの所引しょいんは、 龍りゅう樹じゅ・天親てんじん鉤こう鎖さしてこれを引ひく。 よりてただ ¬論ろん¼ に限かぎる。 いまの所引しょいんは ¬註ちゅう¼ を引ひく時とき ¬論ろん¼ を載のせずはその義ぎ顕あらわれがたし、 このゆゑにこれを引ひく。 本論ほんろんと ¬註ちゅう¼ と所引しょいん別べつなり。

-答。誠ニ以テ爾也。但シ此ノ文体自↠元只是文集ノ体也。仍テ当用ノ時不ルコト↠憚ラ↢繁重1051ヲ↡不↠限↢此ノ文ニ↡。余処ニ又有リ↢重引之例↡。皆可シ↢準拠ス↡。但聊非ル↠无ニ↢其ノ差別↡歟。謂ク上ノ所引ハ、龍樹・天親鉤鎖シテ引ク↠之ヲ。仍テ唯限ル↠¬論ニ¼。今ノ所引者引ク↠¬註ヲ¼之時不ズ↠載セ↠¬論ヲ¼者其ノ義難シ↠顕シ、是ノ故ニ引ク↠之ヲ。本論与ト↠¬註¼所引別也。

「十じゅう二部にぶ経きょうの中なかに」 とらは、

-「▲十二部経ノ中ニ」等者、

問とふ。 「十じゅう二部にぶ」 とはその相そういかん。

-問。「十二部ト」者其ノ相如何。

答こたふ。 十じゅう二にの名みょう義ぎ、 諸典しょてんにこれを解げす。 その中なかにしばらく*戒かい度ど律りっ師しの ¬正しょう観かん記き¼ (巻下) の説せつを出いだす、 かの記きの文もん (下) にいはく、 「いま ¬大論だいろん¼ によりて略りゃくして梵ぼん語ごを出いだす。 一いちには修しゅ多羅たら、 ここには法本ほうほんといふ、 また契かい経きょうといふ。 二にには祇夜ぎや、 ここには重じゅう頌じゅといふ。 三さんには和伽わが羅那らな、 ここには授じゅ記きといふ。 四しには伽陀かだ、 ここには孤起こき偈げといふ。 五ごには優う陀那だな、 ここには無む問もん自じ説せつといふ。 六ろくには尼に陀那だな、 ここには因縁いんねんという。 七しちには阿波あば陀那だな、 ここには譬喩ひゆといふ。 八はちには伊い帝てい曰わつ多伽たか、 ここには本ほん事じといふ。 九くには闍じゃ陀伽だか、 ここには本ほん生じょうといふ。 十じゅうには毘び仏ぶつ略りゃく、 ここには方広ほうこうといふ。 十じゅう一いちには阿あ浮陀ぶだ達だつ摩ま、 ここには未み曽有ぞうといふ。 十じゅう二にには優婆うば提舎だいしゃ、 ここには論ろん義ぎといふ。 最初さいしょの修しゅ多羅たらは、 名なに通別つうべつあり。 通つうはすなはち十じゅう二部にぶみな修しゅ多羅たらといふ。 別べつはすなはち十じゅう二部にぶの中なかに第一だいいちこれなり。」 以上 いま直説じきせつといふすなはち第一だいいちなり。

-答。十二ノ名義、諸典ニ解ス↠之ヲ。其ノ中ニ且ク出ス↢戒度律師ノ¬正観記ノ¼説ヲ↡、彼ノ記ノ文ニ云ク、「今依テ↢¬大論ニ¼↡略シテ出ス↢梵語ヲ↡。一ニハ修多羅、此ニハ云↢法本ト↡、亦云フ↢契経ト↡。二ニハ祇夜、此ニハ云フ↢重頌ト↡。三ニハ和伽羅那、此ニハ云フ↢授記ト↡。四ニハ伽陀、此ニハ云フ↢孤起偈ト↡。五ニハ優陀那、此ニハ云↢無問自説ト↡。六ニハ尼陀那、此ニハ云↢因縁ト↡。七ニハ阿波陀那、此ニハ云↢譬喩ト↡。八ニハ伊帝テイ曰多伽、此ニハ云フ↢本事ト↡。九ニハ闍陀伽、此ニハ云↢本生ト↡。十ニハ毘仏略、此ニハ云↢方広ト↡。十一阿浮陀達摩、此ニハ云↢未曽有ト↡。十二ニハ優婆提舎、此ニハ云↢論義ト↡。最初ノ修多羅ハ、名ニ有↢通別↡。通ハ則十二部皆云フ↢修多羅ト↡、別ハ乃十二部ノ中ニ第一是也。」 已上 今云フ↢直説ト↡即第一也。

「摂しょう多た」 の下しも 「願がん名みょう」 の上かみに 「乃ない至し」 といふは、 「偈げ」 の字じの釈しゃくなり。

-「摂多ノ」之下「願名ノ」之上ニ言↢「▲乃至ト」↡者、▲「偈ノ」字ノ釈也。

「往おう生じょう」 の下しも 「与よ仏ぶつ」 の上かみに 「乃ない至し」 といふは、 「説せつ」 と 「総そう持じ」 との釈しゃくなり。

-「往生ノ」之下「与仏」之上ニ言↢「▲乃至ト」↡者、▲「説ト」「総持トノ」釈ナリ。

「相そう称しょう也や」 の下しもに 「乃ない至し」 といふは、 五ご念ねん門もんの中なか、 観察かんざつ以下いげ乃ない至し下げ巻かんの解義げぎ分ぶんの釈しゃく十重じゅうじゅうの中なかに、 第だい二にの起き観かん生しょう信しんの内うち初はじめの四し門もんなり。

-「相称也ノ」下ニ言↢「▲乃至ト」↡者、五念門ノ中、観察已下乃至下巻ノ解義分ノ釈十重ノ之中ニ、第二ノ起観生信ノ之内初ノ四門也。

「云うん何が」 とらは、 第だい五ごの回え向こうの釈しゃくなり。 中なかにおいて初はじめより 「大だい悲ひ心しん故こ」 に至いたるまでの二に十じゅう七しち字じは、 本論ほんろんの文もん、 「回え向こう有う」 の下しもの四し十じゅう一いち字じは、 註釈ちゅうしゃくならくのみ。

-「▲云何ト」等者1052、第五ノ廻向ノ之釈也。於テ↠中ニ自↠初至マデノ↢「大悲心故ニ」↡二十七字ハ、本論ノ之文、「▲廻向有ノ」下四十一字ハ、註釈而已ミ 。

問とふ。 五ご念ねんの中なかにおいて回え向こうを引ひかば、 一段いちだんの文もんつぶさにこれを引ひくべし。 なんぞ還相げんそう回え向こうの釈しゃくを略りゃくすや。

-問。於テ↢五念ノ中ニ↡引カ↢廻向ヲ↡者、一段ノ之文具ニ可シ↠引ク↠之ヲ。何ゾ略ス↢還相回向ノ釈ヲ↡耶。

答こたふ。 当巻とうかんの初はじめにいはく、 「謹つつしんで往相おうそうの回え向こうを按あんずるに、 大だい行ぎょうあり大信だいしんあり。 大だい行ぎょうとはすなはち無礙むげ光こう如来にょらいの名みなを称しょうするなり。」 以上 いま往相おうそうに就つきて明あかすところかくのごとし、 よりてしばらくこれを略りゃくす。

-答。当巻ノ初ニ云ク、「▲謹デ按ズルニ↢往相ノ回向ヲ↡、有リ↢大行↡有リ↢大信↡。大行ト者則称スルナリ↢無光如来ノ名ヲ↡。」 已上 今就テ↢往相ニ↡所↠明ス如シ↠此ノ、仍テ且ク略ス↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『安楽集』四文

【22】次つぎの所引しょいんの文もん ¬安楽あんらく集しゅう¼ は、 上じょう下げ二に巻かん、 綽しゃく公こうの述じゅつなり。 いまこの集しゅうにおいて総そうじて十じゅう二にの大門だいもんある中なかに、 上じょう巻かん第一だいいち大門だいもんの内うち、 また九く門もんあり。 その中なかに第だい四しに諸しょ経きょうの宗しゅう旨しの不ふ同どうを弁べんずる次ついでに、 ¬*観仏かんぶつ経きょう¼ を引ひきて三種さんしゅの益やくを説とく。 その第三だいさんの益やく念仏ねんぶつたるがゆゑに、 いまことさらこれを引ひく。

▲次ノ所引ノ文¬安楽集¼者、上下二巻、綽公ノ述也。今於テ↢此集ニ↡総ジテ有ル↢十二ノ大門↡之中ニ、上巻第一大門ノ之内、又有リ↢九門↡。其ノ中ニ第四ニ弁ズル↢諸経ノ宗旨ノ不同ヲ↡之次デニ、引テ↢¬観仏経ヲ¼↡説ク↢三種ノ益ヲ↡。▲其ノ第三ノ益為タルガ↢念仏↡故ニ、今故ラ引ク↠之ヲ。

¬*観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ は*覚賢かくけん三蔵さんぞうの訳やく、 これ第だい一巻いっかん 「観かん地じ品ぼん」 の文もん、 いまの所引しょいん当とう章しょうを尽つくす。

-¬観仏三昧経ハ¼覚賢三蔵ノ訳、是 レ第一巻「観地品ノ」文、今之所引尽↢当章ヲ↡也。

【23】次つぎの所引しょいんは下げ巻かんの文もんなり。 第だい四し大門だいもんに三番さんばんの料りょう簡けんある中なかに、 第三だいさんに問答もんどう解げ釈しゃくして念仏ねんぶつ三昧ざんまいに種々しゅじゅの利り益やくあることを顕あらわすにその五ご番ばんあり。 その中なかに第だい二に番ばんの釈しゃくなり。

▲次ノ所引者下巻ノ文也。第四大門ニ有ル↢三番ノ料簡↡中ニ、第三ニ問答解釈シテ顕スニ↣念仏三昧ニ有コトヲ↢種種ノ利益↡有↢其ノ五番↡。其ノ中ニ第二番ノ釈也。

その初はじめの文もん (安楽集巻下) にいはく、 「第だい二にに問とひていはく、 もし常つねに念仏ねんぶつ三昧ざんまいを修しゅすることを勧すすめば、 余よの三昧さんまいとよく階降かいごうありやいなや。 答こたへていはく、 念仏ねんぶつ三昧ざんまいの勝しょう相そう不可ふか思議しぎなり。 これいかんぞ知しらん。」 以上 以下いげの文言もんごんいまの所引しょいんのごとし。

-其ノ初ノ文ニ云ク、「▲第二ニ問テ曰ク、若シ勧メバ↣常ニ修スルコトヲ↢念仏三昧ヲ↡、与↢余ノ三昧↡能ク有リヤ↢*階降↡以不 イナ ヤ。◆答テ曰、念仏三昧ノ勝相不可思議ナリ。此レ云何ゾ知ラン。」 已上 已下ノ文言如シ↢今ノ所引↡。

「摩訶まか衍えん」 とは、 いま ¬大論だいろん¼ を指さす、 第だい七巻しちかんの文もんなり。 文もんの意こころ見みやすし。

-「▲摩訶衍ト」者、今指ス↢¬大論ヲ¼↡、第七巻ノ文ナリ。文ノ意易シ↠見。

【24】次つぎに引ひくところの ¬大だい経きょうの讃さん¼ は、 第だい五ご大門だいもんに四し番ばんの料りょう簡けんある中なかに、 第一だいいちにひろく修道しゅどうの延促えんそくを明あかす段だんに安あんずるところの讃さん、 鸞らん師しの所造しょぞう、 流る通ずうの文もんの意こころなり。

▲次1053ニ所ノ↠引ク之¬大経ノ讃¼者、第五大門ニ有ル↢四番ノ料簡↡中ニ、第一ニ汎ヒロク明ス↢修道ノ延促ヲ↡之段ニ所ノ↠安ズル之讃、鸞師ノ所造、流通ノ文ノ意ナリ。

【25】次つぎの所引しょいんはまた上じょう巻かんの文もん。 第三だいさん大門だいもんに四し番ばんの料りょう簡けんある中なかの、 第だい四しに聖教しょうぎょうを引ひきて証成しょうじょうして信しんを勧すすめて生しょうぜんことを求もとめしむるに、 始はじめに ¬観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ の文もんを引ひき、 後のちに ¬*目連もくれん所問しょもん経ぎょう¼ の文もんを引ひく。 いまの所引しょいんはこれ後のちの文もんなり。

▲次ノ所引ハ者又上巻ノ文。第三大門ニ有ル↢四番ノ料簡↡中ノ、第四ニ引テ↢聖教ヲ↡証成シテ勧メテ↠信ヲ求シムルニ↠生ゼンコトヲ、始ニ引キ↢▲¬観仏三昧経ノ¼文ヲ↡、後ニ引ク↢¬目連所問経ノ¼文ヲ↡。今ノ之所引ハ是 レ後ノ文也。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『礼讃』五文

【26】次つぎに*光こう明みょう寺じの和か尚しょうの釈しゃくは、 ¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ の前序ぜんじょの文もんなり。

▲次ニ光明寺ノ和尚ノ釈者、¬往生礼讃ノ¼前序ノ文也。

問とふ。 かの ¬礼讃らいさん¼ の中なかに ¬*文殊もんじゅ般若はんにゃ¼ を引ひく。 その要よう何事なにごとぞや。

-問。彼ノ¬礼讃ノ¼中ニ引ク↢¬文殊般若ヲ¼↡。其ノ要何事ゾヤ耶。

答こたふ。 上かみにつぶさに三心さんしん・五ご念ねんおよび四し修しゅを釈成しゃくじょうしをはりて、 かの安心あんじん・起き行ぎょう・作さ業ごうことごとく称名しょうみょうの一いち行ぎょうたる義ぎを結けっすとして、 かの ¬経きょう¼ の一いち行ぎょう三昧ざんまいの文もんを引用いんようすらくのみ。

-答。上ニ具ニ釈↢成シ▲三心・▲五念及ビ▲四修ヲ↡已テ、結ストシテ↧彼ノ安心・起行・作業悉ク為タル↢称名ノ一行↡之義ヲ↥、引↢用スラク彼¬経ノ¼一行三昧ノ之文ヲ↡而已。

問とふ。 いまの所引しょいんに就つきて二にの不ふ審しんあり。

-問。就テ↢今ノ所引ニ↡有リ↢二ノ不審↡。

一いちにいはく、 かの ¬経きょう¼ の説せつを見みるに二に重じゅうの義ぎあり。 初はじめ (文殊般若経巻下) にいはく、 「仏ぶつのたまはく、 法界ほうかい一相いっそうなり。 縁えんを法界ほうかいに繋つなぐ、 これを一いち行ぎょう三昧ざんまいと名なづく。 まさにまづ般若はんにゃ波羅はら密みつを聞ききて説せつのごとく修学しゅがくすべし、 しかして後のちよく一いち行ぎょう三昧ざんまいに入いりて、 法界ほうかいのごとく不ふ退たい・不壊ふえ・不ふ思議しぎ・無礙むげ・無む相そうを縁えんず。」 以上 後のちの所説しょせつはいまの所用しょようなり。 ただ文もんいささか違いす。 この二義にぎを説ときてまた結けっしをはりて (文殊般若経巻下) いはく、 「かくのごときの一いち行ぎょう三昧ざんまいは、 かならず恒沙ごうじゃの仏法ぶっぽう界かい無む差別しゃべつの相そうを知しる。」 以上 かくのごときとらは、 一念いちねん法界ほうかいといひ、 無む差別しゃべつ相そうといふ。 これ ¬経きょう¼ の本ほん意いなり。 なんぞ称名しょうみょうに限かぎりて一いち行ぎょうといふや。

-一云、見ニ↢彼ノ¬経ノ¼説ヲ↡有リ↢二重ノ義↡。初ニ云ク、「仏言ハク、法界一相ナリ。繋グ↢縁ヲ法界ニ↡、是ヲ名↢一行三昧ト↡。当ニ↧先ヅ聞テ↢般若波羅蜜ヲ↡如ク↠説ノ修学ス↥、然シテ後能ク入テ↢一行三昧ニ↡、如ク↢法界ノ↡縁エンズ↢不退・不壊・不思議・無・無相ヲ↡。」 已上 後ノ所説者今ノ所用也。但文聊違ス。説テ↢此ノ二義ヲ↡又結シ已テ云ク、「如ノ↠是ノ一行三昧者、要ズ知ル↢恒沙ノ仏法界无差別ノ相ヲ↡。」 已上 如キト↠此ノ等者、云ヒ↢一念法界ト↡、云フ↢无差別相ト↡。是 レ¬経ノ¼本意ナリ。何ゾ限テ↢称名ニ↡云↢一行ト↡耶。

二ににいはく、 経きょう説せつのごとく (文殊般若経巻下) は、 「空閑くうげんに処しょしてもろもろの乱らん意いを捨すてて、 相そう貌みょうを取とらず、 心こころを一仏いちぶつに繋かけてもつぱら名みょう字じを称しょうし、 仏ぶつの方所ほうしょに随したがひて端身たんじん正しょう向こうし、 よく一仏いちぶつを持たもちて念々ねんねんに相続そうぞくすべし。」 以上 ただ一仏いちぶつといひて弥陀みだといはず。 なんぞ相そう違いするや。

-二ニ云ク、如↢経説ノ↡者1054、「▲応シ↧処シテ↢空閑ニ↡捨テヽ↢諸ノ乱意ヲ↡、不↠取↢相貌ヲ↡、繋テ↢心ヲ一仏ニ↡専ラ称シ↢名字ヲ↡、随テ↢仏ノ方所ニ↡端身正向シ、能ク持テ↢一仏ヲ↡念々ニ相続ス↥。」 已上 唯云テ↢一仏ト↡不↠謂↢弥陀ト↡。何ゾ相違スルヤ耶。

答こたふ。 まづ初はじめの疑うたがいを決けっせば、 ¬経きょう¼ に理り観かん・専せん称しょうの二に重じゅうあり、 おのおの所用しょようによりてその一いち義ぎを取とる、 なんの相そう違いかあらん。 このゆゑに天台てんだいは上かみの理り観かんに約やくしてかの常行じょうぎょう三昧ざんまいの下もとにおいてこれを引ひく。 今こん師しは下しもの専せん称しょうに約やくしてこれを引ひく。 経きょうに二に重じゅうを説とくこと、 おのおの機き縁えんに被かぶらしむ。

-答。先决セバ↢初ノ疑ヲ↡、¬経ニ¼有リ↢理観・専称ノ二重↡、各依テ↢所用ニ↡取ル↢其ノ一義ヲ↡、有ラン↢何ノ相違カ↡。是ノ故ニ天臺ハ約シテ↢上ノ理観ニ↡於テ↢彼ノ常行三昧ノ之下ニ↡引ク↠之ヲ。今師ハ約シテ↢下ノ専称ニ↡引ク↠之ヲ。経ニ説コト↢二重ヲ↡、各被シム↢機縁ニ↡。

次つぎに後のちの疑うたがいを決けっせば、 経きょう文もんの中なかに、 名なを指ささずといへども、 意こころは弥陀みだにあり。 これによりて天台てんだいは釈しゃくして (止観巻二上) 「ただもつぱら弥陀みだをもつて法門ほうもんの主しゅとなす」 といひ、 妙みょう楽らくは (輔行巻二) また 「ゆゑに西方さいほうをもつてしかも一いち準じゅんとなす」 といふ。 いかにいはんや大だい師し諸仏しょぶつといふをもつてすでに弥陀みだに被かぶらしむ、 もつともその意こころあり。 ¬般舟はんじゅ経きょう¼ (巻下勧助品 一巻本勧助品) の中なかに 「過去かこの諸仏しょぶつこの三昧さんまいを持たもちて」 とら説とくといへども、 ¬観念かんねん法門ぼうもん¼ に阿あ弥陀みだの三さん字じを加くわふる、 これまたその義ぎなり。

-次ニ决セバ↢後ノ疑ヲ↡、経文ノ之中ニ、雖ヘ↠不ズト↠指サ↠名ヲ意ハ在リ↢弥陀ニ↡。依↠之ニ天臺ハ釈シテ云ヒ↧「但 ヾ専ラ以テ↢弥陀ヲ↡為スト↦法門ノ主ト↥」、妙楽ハ又云フ↧「故ニ以テ↢西方ヲ↡而モ為スト↦一准ト↥。」何ニ況ヤ大師以テ↠謂ヲ↢諸仏ト↡既ニ被シム↢弥陀ニ↡、尤モ有リ↢其ノ意↡。¬般舟経ノ¼中ニ雖ヘ↠説ト↧「過去ノ諸仏持テト↢是ノ三昧ヲ↡」等↥、▲¬観念法門ニ¼加フル↢「阿弥陀ノ」三字ヲ↡、是又其ノ義ナリ。

問とふ。 ¬文殊もんじゅ般若はんにゃ¼ 二に重じゅうの問答もんどうに就つきて、 初しょ重じゅうの問といの意こころ見みつべし。 答こたえの中なかに 「専せん称しょう名みょう字じ」 といふに至いたるまでは、 これ前さきの問といに対たいす。 「正しょう由ゆ」 以下いげ問といに余あまるか、 いかん。

-問。就テ↢¬文殊般若¼二重ノ問答ニ↡、▲初重ノ問ノ意可シ↠見ツ。▲答ノ中ニ至マデハ↠云ニ↢「専称名字ト」↡、是 レ対ス↢前ノ問ニ↡。「▲正由」以下余ル↢于問ニ↡歟、如何。

答こたふ。 これ仏ぶつ意いを探さぐりてかくのごとくこれを釈しゃくす。 これ仏ぶつの密みつ意い凡ぼん夫ぶ往おう生じょうの直じき路ろを開ひらくにあり。 あるいは (般舟讃) 「種々しゅじゅの方便ほうべんを説ときて教きょう門もん一いちにあらざることは、 ただわれら倒見とうけんの凡ぼん夫ぶのためなり」 といい、 あるいは (玄義分) 「諸仏しょぶつの大だい悲ひは苦く者しゃにおいてす」 といい、 あるいは (般舟讃) 「門々もんもん見仏けんぶつして浄じょう土どに生しょうずることを得う」 といふ。 処々しょしょの解げ釈しゃくみなこの意こころを帯たいす。 貴たっとむべし貴たっとむべし。

-答。是 レ探テ↢仏意ヲ↡如ク↠此ノ釈ス↠之ヲ。是 レ仏ノ密意在リ↠開ニ↢凡夫往生ノ直路ヲ↡。或ハ云ヒ↧「▲説テ↢種種ノ方便ヲ↡教門非コトハ↠一ニ、但 ヾ為ナリト↦我等倒見ノ凡夫ノ↥」、或ハ云ヒ↣「▲諸仏ノ大悲ハ於スト↢苦者ニ↡」、或ハ云フ↢「▲門々見仏シテ得ウト↟生ズルコトヲ↢浄土ニ↡。」処々ノ解釈皆帯ス↢此ノ意ヲ↡、可↠貴可↠貴。

次つぎの問答もんどうの中なかに、 その問といの詞ことばにおいてその意い趣しゅを含ふくむ。

-▲次ノ問答ノ中ニ、於テ↢其ノ問ノ詞ニ↡含ム↢其ノ意趣ヲ↡。

一いちには ¬観かん経ぎょう¼ に 「もし他た観かんするをば名なづけて邪観じゃかんとなす」 と説とく、 所観しょかんの境きょうに違いするはこれ邪観じゃかんなるがゆゑに。 もし弥陀みだを見みるにもし諸仏しょぶつを見みるは、 あに邪じゃにあらずや。

-一ニハ¬観経ニ¼説ク↢「▲若シ他観スルヲバ者名テ為スト↢邪観ト↡」、違1055スルハ↢所観ノ境ニ↡是 レ邪観ナルガ故ニ。若シ見ニ↢弥陀ヲ↡若シ見ルハ↢諸仏ヲ↡、豈非↠邪ニ耶。

二にには多た仏ぶつを見みばその義ぎこれ多た行ぎょう三昧ざんまいに当あたる。 その理りすでに一いち行ぎょう三昧ざんまいにあらず。 答こたえの言ことばの中なかに 「仏々ぶつぶつ斉ひとしく証しょうして形かたち二に別べつなし」 といふに、 二にの難なんともに消けす、 その義ぎ見みやすし。

-二ニハ見ミバ↢多仏ヲ↡其ノ義是 レ当アタル↢多行三昧ニ↡。其ノ理已ニ非ズ↢一行三昧ニ↡。答ノ言ノ中ニ云ニ↣「▲仏々斉ク証シテ形無ト↢二別↡」、二ノ難共ニ消ス、其ノ義易シ↠見。

次つぎに 「また観かん経ぎょうにいふがごとし」 といふは、 一いち行ぎょう三昧ざんまい尊せん称しょうの義ぎただ ¬文殊もんじゅ般若はんにゃ経ぎょう¼ の説せつのみにあらず。 この ¬観かん経ぎょう¼ においてまたその説せつあり。 これすなはち随ずい他たの前まえには諸行しょぎょうを説とくといへども、 随ずい自じの後のちには念仏ねんぶつの義ぎを説とく、 この ¬経きょう¼ の説せつをもつてかの ¬経きょう¼ の意こころを知しる。

-次ニ言↣「▲又如ト↢観経ニ云ガ↡」者、一行三昧尊称ノ之義非ズ↢唯 ヾ¬文殊般若経ノ¼説ノミニ↡。於テ↢此ノ¬観経ニ¼↡又有リ↢其ノ説↡。是 レ則随他ノ之前ニハ雖ヘ↠説ト諸行ヲ、随自ノ之後ニハ説ク↢念仏ノ義ヲ↡、以テ↢此ノ¬経ノ¼説ヲ↡知ル↢彼ノ¬経ノ¼意ヲ↡。

「問曰もんわつ一切いっさい諸仏しょぶつ」 とらは、 ¬文殊もんじゅ般若はんにゃ¼ と ¬観かん経ぎょう¼ とを相対そうたいしてこの問といを致いたすなり。 いわゆるすでに 「△仏々ぶつぶつ斉ひとしく証しょうして形かたち二に別べつなし、 たとひ一いちを念ねんじて多たを見みるともなんの大だい道どう理りにか乖そむかん」 といふなり、 これ ¬文殊もんじゅ般若はんにゃ¼ の意こころを述のぶ。 しかるに問といの意こころは、 ¬観かん経ぎょう¼ のごときは、 ひとへに西方さいほうを歎たんじて余よの九く域いきを簡きらふ、 このゆゑに上かみに面おもてを西方さいほうに向むかふることを勧すすむ、 しかればなんぞ相そう違いの説せつをもつて一いち義ぎを成じょうずるや。 これ問といの意い趣しゅなり。

-「▲問曰一切諸仏ト」等者、相↢対シテ¬文殊般若ト¼¬観経トヲ¼↡致↢此ノ問ヲ↡也。所謂已ニ云フ↧「仏々斉ク証シテ形无シ↢二別↡縦使ヒ念ジテ↠一ヲ見トモ↠多ヲ乖カント↦何ノ大道理ニカ↥」也、是述ブ↢¬文殊般若ノ¼之意ヲ↡。而ニ問ノ意者、如↢¬観経ノ¼↡者、偏ニ歎ジテ↢西方ヲ↡簡キラフ↢余ノ九域ヲ↡、是ノ故ニ▲上ニ勧ム↣面ヲ向フルコトヲ↢西方ニ↡、然者何ゾ以テ↢相違之説ヲ↡成↢一義ヲ↡耶。是 レ問ノ意趣ナリ。

答こたえの詞ことばの中なかに就つきて、

-▲就テ↢答ノ詞ノ中ニ↡、

問とふ。 すでに仏々ぶつぶつ平びょう等どうの義ぎをもつて判はんじて平びょう等どう是ぜ一いちといふ、 なんぞ 「若にゃく以い願がん行ぎょう」 とらいふや。

-問。既ニ以テ↢仏々平等ノ之義ヲ↡判ジテ云フ↢平等是一ト↡、何ゾ云↢「▲若以願行ト」等↡耶。

答こたふ。 果か平びょう等どうなるがゆゑに勝しょう劣れつなしといへども、 因いん差別しゃべつせるがゆゑにすなはち 「本発ほんほつ深じん重じゅう誓願せいがん」 といふ。 これをもつて ¬大だい乗じょう止し観かん¼ の下げ (巻四) にいはく、 「もし我が執しゅうを離はなれて心体しんたい平びょう等どうを証しょう得とくする時ときは、 実じつに十方じっぽう三さん世ぜの異いなし。 ただしもと因いん地じにありていまだ我が執しゅうを離はなれざる時とき、 各別かくべつに願がんを発おこしておのおの浄じょう土どを修しゅし、 おのおの衆しゅ生じょうを化けす、 かくのごときらの業ごう差別しゃべつ不ふ同どうなり、 浄じょう心しんに薫くんずれば心しん性しょう別薫べっくんの力ちからによりて、 ゆゑにこの十方じっぽう三さん世ぜ諸仏しょぶつの依え正しょう二に報ほう相別そうべつなることを現げんず。 真如しんにょの体たいにこの差別しゃべつの相そうありといふにはあらず、 この義ぎをもつてのゆゑに一切いっさい諸仏しょぶつ、 常じょう同どう常じょう別べつなること古こ今こん法ほう爾になり。」 以上

-答。果平等ナルガ故ニ雖↠无ト↢勝劣↡、因差別セルガ故ニ即云フ↢「▲本発深重誓願ト」↡。是ヲ以テ¬大乗止観ノ¼下ニ云、「若シ離テ↢我執ヲ↡証↢得スル心体平等ヲ↡之時ハ、実ニ无シ↢十方三世ノ之異↡。但シ本在テ↢因地ニ↡未↠離↢我執ヲ↡時、各別ニ発シテ↠願ヲ各修シ↢浄土ヲ↡、各化ス↢衆生ヲ↡、如↠是ノ等ノ業差別不同ナリ、薫ズレバ↢於浄心ニ↡心性依テ↢別薫ノ之力ニ↡、故ニ現ズ↢此ノ十方三世諸仏ノ依正二報相別ナルコトヲ↡。非1056ズ↠謂ニハ↣真如之体ニ有ト↢此ノ差別之相↡、以ノ↢是ノ義ヲ↡故ニ一切ノ諸仏、常同常別ナルコト古今法爾ナリ。」 已上

「光こう明みょう名みょう号ごうをもつて」 とらいふは、 六八ろくはち願がんの中なかに、 十じゅう二に・十じゅう三さん両りょう願がんの意こころなり。

-言↧「▲以テト↢光明名号ヲ↡」等↥者、六八願ノ中ニ、十二・十三両願ノ意也。

¬大集だいじっ経きょう¼ に 「諸仏しょぶつ出しゅっ世せして種々しゅじゅの益やくあり。 光こう明みょう・名みょう号ごう・神通じんずう・説法せっぽうなり。 ただその中なかにおいて、 此土しどの教きょう主しゅは、 神通じんずう・説法せっぽうその利りことに親したし。 浄じょう土どの弥陀みだは光こう明みょう・名みょう号ごうその益やくなほ勝すぐれたり」 と説とく。

-¬大集経ニ¼説ク↧「諸仏出世シテ有リ↢種々ノ益↡。光明・名号・神通・説法ナリ。但於テ↢其ノ中ニ↡、此土ノ教主ハ、神通・説法其ノ利殊ニ親シ。浄土ノ弥陀ハ光明・名号其ノ益猶勝タリト」↥。

「但たん使し」 とらは、 十じゅう八はちの願がんの意こころ。 「信心しんじん」 といふは至し心しん信しん楽ぎょう。 「上じょう尽じん」 とらは、 乃ない至し十じゅう念ねん。 「仏ぶつ願力がんりき」 とは、 若にゃく不ふ生しょう者じゃの誓願せいがんの意こころ。 「易い得とく往おう生じょう」 はすなはちこれ願力がんりき成じょう就じゅのゆゑなり。

-「▲但使ト」等者、十八ノ願ノ意。言↢「▲信心ト」↡者至心信楽。「▲上尽ト」等者、乃至十念。「▲仏願力ト」者、若不生者ノ誓願ノ之意。「▲易得往生ハ」即是 レ願力成就ノ故也。

「亦やく非ひ」 とらは、 諸仏しょぶつにまた除じょ障しょう滅罪めつざい随分ずいぶんの益やくあり、 しかるも往おう生じょうの益やくはただ弥陀みだにあり。

-「▲亦非ト」等者、諸仏ニ亦有リ↢除障滅罪随分之益↡、然モ往生ノ益ハ唯在リ↢弥陀ニ↡。

「若にゃく能のう如にょ上じょう念々ねんねん」 とらは、 これ専雑せんぞう二に修しゅの得失とくしつを明あかす。 ただしいまの所引しょいん徳とくを挙あげて失しつを略りゃくす。

-「▲若能如上念々ト」等者、是 レ明ス↢専雑二修ノ得失ヲ↡。但シ今ノ所引挙テ↠徳ヲ略ス↠失ヲ。

「如にょ上じょう」 といふは、

-言「▲如上ト」者、

問とふ。 三心さんしん・五ご念ねん・四し修しゅ、 みなことごとく具ぐ足そくすべきか、 随一ずいいちの往おう生じょうこれを許ゆるすべきや。

-問。三心・五念・四修、皆悉ク可↢具足ス↡歟、随一ノ往生可↠許↠之ヲ耶。

答こたふ。 一いち義ぎにいはく、 ことごくこれを具ぐすべし。 もし具ぐせずは往おう生じょうすべからず。 一いち義ぎにいはく、 いま上じょう輩はい求ぐ生しょう浄じょう土ど断だん貪瞋とんじんの機きに約やくす。 一切いっさいの行ぎょう者じゃいまだかならずしもことごとくしからずして、 いはゆる二河にがの白びゃく道どうの喩たとえの中なかに、 すでに (散善義) 「水すい火かあひ交まじはりて常つねに休く息そくすることなし」 といふ。 かくのごときの機きにおいていかでか上かみのごとくならんや。

-答。一義ニ云ク、悉ク可シ↠具ス↠之ヲ。若シ不↠具セ者不↠可↢往生ス↡。一義ニ云ク、今約ス↢上輩求生浄土断貪*嗔ノ機ニ↡。一切ノ行者未シテ↢必シモ悉ク然ラ↡、所謂二河ノ白道ノ喩ノ中ニ、既ニ云フ↣「▲水火相交テ常ニ无シト↢休息スルコト↡。」於テ↢如ノ↠此ノ機ニ↡争カ如ナラン↠上ノ耶。

「念々ねんねん相続そうぞく」 は無む間けん修しゅの義ぎ、 「畢ひつ命みょう為期いご」 は長じょう時じ修しゅの義ぎなり。 ただし自じ力りきを励はげまば念々ねんねんに続つづきがたし。 他た力りきの益やくによらば自じ然ねんに相続そうぞくして 「十じゅう即そく十じっ生しょう百ひゃく即そく百生ひゃくしょう」 せん。 これ仏願ぶつがん不虚ふこの益やくを顕あらわす。 これすなはち荘しょう厳ごん所しょ求ぐ満足まんぞく功く徳どく成じょう就じゅのゆゑならくのみ。

-「▲念念相続ハ」无間修ノ義、「▲畢命為期ハ」長時修ノ義ナリ。但シ励マバ↢自力ヲ↡念々ニ難シ↠続キ。依ラバ↢他力ノ益ニ↡自然ニ相続シテ「▲十即十生百即百生セン」。是 レ顕ス↢仏願不虚ノ之益ヲ↡。是 レ則▲荘厳所求満足功1057徳成就ノ之故而已ナラクノミ。

第一だいいちの得とくは、 「外げ」 とは助業じょごう、 正定しょうじょう業ごうの外げ。 「雑ぞう」 とは雑業ぞうごう、 ただ助業じょごうのみにあらず、 広ひろく雑ぞう行ぎょうに亘わたる。 その 「雑ぞう」 の言ことばは 「正しょう」 に対たいし 「専せん」 に対たいす、 ともに 「雑ぞう」 と称しょうするがゆゑに。 「縁えん」 とは三さんあり、 いはく教きょうと人にんと処しょとなり。

-▲第一ノ得者、「外ト」者助業、正定業ノ外。「雑ト」者雑業、非ズ↢唯 ヾ助業ノミニ↡広ク亘ル↢雑行ニ↡。其ノ「雑ノ」言者対シ↠「正ニ」対ス↠「専ニ」、共ニ称スルガ↠「雑ト」故ニ。「縁ト」者有リ↠三、謂ク教ト人ト処トナリ。

第だい二にの得とくは、 弥陀みだ仏ぶつの本願ほんがんに順じゅんずる義ぎ。

-▲第二ノ得者、順ズル↢弥陀仏ノ本願ニ↡之義。

第三だいさんの得とくは、 釈しゃ迦か如来にょらいの教きょうに違いせざる義ぎ。

-▲第三ノ得者、不ル↠違セ↢釈迦如来ノ教ニ↡義。

第だい四しの得とくは、 六方ろっぽう諸仏しょぶつの語ごに随ずい順じゅんする義ぎ。

-▲第四ノ得者、随↢順スル六方諸仏ノ語ニ↡義。

おのおのその文もんにあり。 つぶさに述のぶるに遑いとまあらず。

-各在リ↢其ノ文ニ↡。不↠遑アラ↢具ニ述ニ↡。

【27】「またいはく唯観ゆいかん念仏ねんぶつ」 とらは、 同おなじき六ろく時じの中なかに日没にちもつの ¬礼讃らいさん¼ の弥陀みだ礼らいの註ちゅう、 肝要かんようの文もんなり。

「▲又云唯観念仏ト」等者、同キ六時ノ中ニ日没ノ¬礼讃ノ¼弥陀礼ノ註、肝要ノ文也。

¬観かん経ぎょう¼ に説ときていはく、 「光こう明みょうあまねく十方じっぽう世せ界かいの念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうを照てらして、 摂取せっしゅして捨すてたまはず。」 以上

-¬観経ニ¼説テ云ク、「▲光明遍ク照シテ↢十方世界ノ念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不↠捨タマハ。」 已上

¬弥陀みだ経きょう¼ にいはく、 「かの仏ぶつの光こう明みょう無む量りょうにして、 十方じっぽう国こくを照てらすに障しょう礙げするところなし。 ゆゑに阿あ弥陀みだと名なづく。」 以上

-¬弥陀経ニ¼云ク、「▲彼ノ仏ノ光明無量ニシテ、照ニ↢十方国ヲ↡无シ↠所↢障スル↡。故ニ名ク↢阿弥陀ト↡。」 已上

二に経きょうを引ひき合あはせてその名みょう義ぎ甚深じんじんの利り益やくを顕あらわす。 いはゆる ¬観かん経ぎょう¼ に摂取せっしゅ不ふ捨しゃの益やくを説とくといへども、 いまだ弥陀みだの名みょう義ぎの徳とくを顕あらわさず。 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ に弥陀みだの名みょう義ぎの徳とくを説とくといへども、 いまだ摂取せっしゅ不ふ捨しゃの益やくを顕あらわさず。 このゆゑに ¬小経しょうきょう¼ 所説しょせつの徳とく、 無む所しょ障しょう礙げの光こう明みょうは、 摂取せっしゅ不ふ捨しゃの益やくを施ほどこさんがためなることを顕あらわさんがために、 かくのごとく合説がっせつす。 その義ぎ知しるべし。

-引↢合テ二経ヲ↡顕ス↢其ノ名義甚深ノ利益ヲ↡。所謂¬観経ニ¼雖↠説ト↢摂取不捨之益ヲ↡、未ダ↠顕↢弥陀ノ名義ノ之徳ヲ↡。¬阿弥陀経ニ¼雖↠説ト↢弥陀ノ名義之徳ヲ↡、未ダ↠顕↢摂取不捨之益ヲ↡。是ノ故ニ為ニ↠顕ンガ↢¬小経¼所説ノ之徳、无所障之光明者、為タメナルコトヲ↟施サンガ↢摂取不捨ノ之益ヲ↡、如ク↠此ノ合説ス。其ノ義応↠知。

【28】次つぎの三さん偈げは、 共ともにこれ初しょ夜やの ¬礼讃らいさん¼ の文もん、 ¬大だい経きょう¼ の採さい集しゅう要文ようもんの釈しゃくなり。

▲次ノ三偈者、共ニ是 レ初夜ノ¬礼讃ノ¼之文、¬大経ノ¼採集要文ノ釈也。

その中なかに初はじめの偈げは、 本ほん経ぎょう (大経巻下) の ▲「如来にょらい智慧ちえ海かい」 の一いち四句しく偈げ、 「其ご仏ぶつ本願ほんがん力りき」 の一いち四句しく偈げを採さい集しゅうする解げ釈しゃくなり。 ¬経きょう¼ には 「如来にょらい」 といひ釈しゃくには 「弥陀みだ」 といふ。 これ諸仏しょぶつすなはちこれ弥陀みだ、 弥陀みだすなはちこれ諸仏しょぶつなる義ぎを示しめすなり。

-其ノ中ニ▲初ノ偈ハ、採↢集スル本経ノ「如来智恵海ノ」一四句偈、「▲其仏本願力ノ」一四句偈ヲ↡之解釈也。¬経ニハ¼云ヒ↢「如来ト」↡釈ニハ云フ↢「弥陀ト」↡。是 レ示ス↢諸仏即是弥陀、弥陀乃是諸仏ナル義1058ヲ↡也。

¬観かん経ぎょう¼ には説ときて 「諸仏しょぶつ如来にょらいはこれ法界ほうかいの身しんなり」 といひ、 ¬礼讃らいさん¼ には釈しゃくして 「弥陀みだの身心しんしん法界ほうかいに遍へんず」 とらいふ。 みなこの義ぎなり。

-¬観経ニハ¼説テ云ヒ↢「▲諸仏如来ハ是 レ法界ノ身ナリト」↡、¬礼讃ニハ¼釈シテ云フ↧「▲弥陀ノ身心遍スト↢法界ニ↡」等↥。皆此ノ義也。

次つぎの二偈にげその意こころ見みつべし。

-▲次ノ之二偈其ノ意可シ↠見。

【29】「またいはく現げんにこれ生しょう死じ」 とらは、 同おなじき発願ほつがんの文もん、

「▲又云ク現ニ是 レ生死ト」等者、同キ発願ノ文、

あるいは観念かんねんの時とき、 あるいは睡眠ずいめんの時とき、 心しんを勧すすめ願がんを発おこして仏ぶつを称しょうする時とき、 唱となふべき言ことばなり。 かの ¬書しょ¼ に ¬経きょう¼ を引ひきてほぼ五ご種しゅの増ぞう上じょう縁えんを明あかす中なかに、 当段とうだんはこれ見仏けんぶつ縁えんを明あかす釈しゃくなり。

-或ハ観念ノ時、或ハ睡眠ノ時、勧メ↠心ヲ発シテ↠願ヲ称スル↠仏ヲ之時、可キ↠唱フ言也。彼ノ¬書ニ¼引テ↠¬経ヲ¼粗明ス↢五種ノ増上縁ヲ↡中ニ、当段ハ是 レ明ス↢見仏縁ヲ↡釈ナリ。

すなはち次下つぎしも (礼讃) にいはく、 「弥陀みだ仏ぶつの身相しんそう光こう明みょうを識しらず。 願ねがはくは仏ぶつの慈悲じひ弟子でしに身相しんそう、 観音かんのん・勢せい至し等とうの相そうを示じ現げんしたまへ。 この語ごを道いひをはりて一心いっしん正しょう念ねんに、 すなはち意こころに随したがひて観かんに入いり、 および睡ねむれ。 あるいはまさしく願がんを発おこす時ときすなはちこれを見みることを得うることあり。 あるいは睡眠すいめんの時とき見みることを得うることあり。 不至ふし心しんをば除のぞく。 この願がんこのごろおほきに現験げんけんあり。」 以上

-則次下ニ云ク、「▲不↠識ラ↢弥陀仏ノ身相光明ヲ↡。願クハ仏ノ慈悲示↢現タマヘ弟子ニ身相、観音・勢至等ノ相ヲ↡。◆噵イヒ↢此ノ語ヲ↡已テ一心正念ニ、即随テ↠意ニ入リ↠観ニ、及ビ睡レ。或ハ有リ↢正ク発ス↠願ヲ時即得コト↟見コトヲ↠之ヲ。或ハ有リ↢睡眠ノ時得コト↟見コトヲ。除ク↢不至心ヲバ↡。此ノ願此来大ニ有リ↢現験↡。」 已上

【30】次つぎの所引しょいん等とう、 しかしながら本文ほんもんのごとし。

▲次ノ所引等、併ラ如シ↢本文ノ↡。

初はじめの一いちの問答もんどうは滅罪めつざい縁えんを明あかし、 ¬*十じゅう往おう生じょう経きょう¼ および ¬観かん経ぎょう¼ の説せつは護ご念ねん縁えんを明あかす。

-▲初ノ一ノ問答ハ明シ↢滅罪縁ヲ↡、▲¬十往生経¼及ビ▲¬観経ノ¼説ハ明ス↢護念縁ヲ↡。

問とふ。 ¬観かん経ぎょう¼ に護ご念ねんの益やくを説とく文もんを見みず、 いかん。

-問。¬観経ニ¼不↠見↧説ク↢護念ノ益ヲ↡之文ヲ↥、如何。

答こたふ。 普ふ観かんの文もん (観経) にいはく、 「無む量りょう寿じゅ仏ぶつ化け身しん無む数しゅなり。 観かん世ぜ音おん・大だい勢せい至しと↓常つねにこの行ぎょう人にんの所ところに来らい至しす。」 以上 この文もんによるなり。

-答。普観ノ文ニ云ク、「▲无量寿仏化身无数ナリ。与↢観世音・大勢至↡常ニ来↢至ス此ノ行人ノ之所ニ↡。」 已上 依↢此ノ文ニ↡也。

問とふ。 菩ぼ薩さつといへども二に十じゅう五ごを挙あげず、 来らい至しといふといへども護ご念ねんをいはず、 いかん。

-問。雖ヘ↠言ト↢菩薩ト↡不↠挙↢廿五ヲ↡、雖ヘ↠言ト↢来至ト↡不↠謂↢護念ヲ↡、如何。

答こたふ。 五々ごごの菩ぼ薩さつは極楽ごくらくの聖しょう衆じゅ、 観音かんのん・勢せい至しはその上じょう首しゅを挙あぐ、 かならずこれあるべきこと理り在ざい絶言ぜつごん。 また↑常じょう来らいといふは不離ふりの義ぎ、 不離ふりはすなはちこれ護ご念ねんの義ぎなり。

-答。五々ノ菩薩ハ極楽ノ聖衆、観音・勢至ハ挙グ↢其ノ上首ヲ↡、必可コト↠有↠之理在絶言。又云ハ↢常来ト↡不離ノ之義、不離ハ即是護念ノ義也。

次つぎに ¬大だい経きょう¼ の文もん、 第だい十じゅう八はちの願がん取しゅ意いの文もん、 摂せっ生しょう縁えんを明あかす。 摂せっ生しょうといふは、 すなはちこれ往おう生じょう、 如来にょらい摂取せっしゅ衆しゅ生じょうの義ぎなり。

-▲次ニ¬大経ノ¼文、第十八ノ願取意ノ之文1059、明ス↢摂生縁ヲ↡。言↢摂生ト↡者、即是往生、如来摂取衆生ノ義也。

問とふ。 第だい十じゅう八はちの願がん、 至し心しん等とうの三信さんしんをもつて要ようとなす、 なんぞ 「至し心しん信しん楽ぎょう」 (大経巻上) の句くを除のぞきていま 「称しょう我が名みょう号ごう」 の句くを加くわふるや。 この句く願文がんもんにこれなし、 いかん。

-問。第十八ノ願、以テ↢至心等ノ三信ヲ↡為ス↠要ト、何ゾ除テ↢「至心信楽」之句ヲ↡今加ル↢「▲称我名号ノ」句ヲ↡耶。此ノ句願文ニ无シ↠之レ、云何。

答こたふ。 ここに深じん意いあり、 いまいふところの称しょう我が名みょう号ごうは、 すなはち本ほん経ぎょうの至し心しん信しん楽ぎょう欲よく生しょうの意こころを示しめす。 しかるゆゑは、 至し心しんとらは、 仏ぶつの名みょう号ごうを称しょうして往おう生じょうの益やくを得うる、 これ仏ぶつの本願ほんがんなり。 かくのごとく信しん知ちする、 これを至し心しん信しん楽ぎょう欲よく生しょうと名なづく。 ゆゑにこの心しんを発おこす。 すなはちこれ称しょう我が名みょう号ごうの義ぎなり。 この意こころを顕あらわさんがためにかれを除のぞきてこれを加くわふ。 その義ぎ知しんぬべし。

-答。此ニ有↢深意↡、今所ノ↠言之称我名号ハ、則示ス↢本経ノ「至心信楽欲生ノ」之意ヲ↡。所↢以然↡者、至心ト等者、称シテ↢仏ノ名号ヲ↡得ル↢往生ノ益ヲ↡、是 レ仏ノ本願ナリ。如ク↠此ノ信知スル、是ヲ名ク↢至心信楽欲生ト↡。故ニ発ス↢此ノ心ヲ↡。即是 レ称我名号ノ之義ナリ。為ニ↠顕ンガ↢此ノ意ヲ↡、除テ↠彼ヲ加フ↠此ヲ。其ノ義可シ↠知ヌ。

次つぎに ¬小経しょうきょう¼ の文もん、 証生しょうしょう縁えんを明あかす。 証生しょうしょうといふは、 すなはちこれ証誠しょうじょう、 凡ぼん夫ぶの往おう生じょうを証しょうする義ぎなり。

-▲次ニ¬小経ノ¼文、明ス↢証生縁ヲ↡。言↢証生ト↡者、即是 レ証誠、証スル↢凡夫ノ之往生ヲ↡義也。

「いかんが護ご念ねんと名なづくる」 とらいふは、 これ六方ろっぽうの諸仏しょぶつの証誠しょうじょうを指さして護ご念ねんと名なづくるなり。

-言↧「▲云何ンガ名ルト↢護念ト↡」等↥者、是 レ指テ↢六方ノ諸仏ノ証誠ヲ↡名↢護念ト↡也。

「次下つぎしもの文もんに若称にゃくしょうといふ」 等とうは、 「於お汝にょ意い」 (小経) 以下いげの文もんを指さす。 これ釈しゃ迦か・諸仏しょぶつの証誠しょうじょうに亘わたる。 下しもに 「なんぢらみなまさにわが語ごおよび諸仏しょぶつの所説しょせつを信受しんじゅすべし」 (小経) と説とくがゆゑなり。

-「▲次下ノ文ニ云↢若称ト↡」等者、指ス↢「▲於汝意」以下ノ之文ヲ↡。是亘ル↢釈迦・諸仏ノ証誠ニ↡。下ニ説クガ↤「▲汝等皆当ベシニト↣信↢受ス我ガ語及ビ諸仏ノ所説ヲ↡」故也。

問とふ。 五ご種しゅの増ぞう上じょう縁えんの中なかの護ご念ねんと、 いまの護ご念ねんと同どう異いいかん。

-問。五種ノ増上縁ノ之中ノ護念ト、与 ト ↢今ノ護念↡同異如何。

答こたふ。 五ごの中なかの護ご念ねんはこれ現げん生しょうの益やく、 いまの護ご念ねんは出しゅっ世せの益やくなり。 これすなはち六方ろっぽうの諸仏しょぶつ信心しんじんを護ご念ねんすといふがごとし、 今こん経ぎょう ¬小経しょうきょう¼ にいふところの護ご念ねん、 その意こころこれにあり。

-答。五ノ中ノ護念ハ是 レ現生ノ益、今ノ護念者出世ノ益也。是則如シ↠云ガ↣六方ノ諸仏護↢念スト信心ヲ↡、今経¬小経ニ¼所ノ↠云護念、其ノ意在リ↠斯ニ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・「玄義分」文

【31】次つぎに 「又う云うん言ごん弘ぐ」 等とうといふは、

▲次言↢「又云言弘」等ト↡者、

問とふ。 上じょう来らいの文もんはこれ ¬礼讃らいさん¼ の釈しゃく、 いまの所引しょいんはこれ ¬観かん経ぎょう義ぎ¼ 「玄げん義ぎ」 の文もんなり。 なんぞ書しょの名なを略りゃくして 「又う云うん」 といふや。

-問。上来ノ文者是 レ¬礼讃ノ¼釈、今ノ所引者是 レ¬観経義¼「玄義ノ」文也。何ゾ略シテ↢書ノ名ヲ↡言↢「又云ト」↡耶。

答こたふ。 上かみに引ひくところの初はじめに 「光こう明みょう寺じ和か尚しょうのいはく」 といひ訖おわりぬ。 このゆゑにいずれの書しょの解げ釈しゃくを引ひくといふとも、 ともに大だい師しの解げ釈しゃくたらば、 さらに相そう違いにあらず。

-答。上ニ所ノ↠引ク初ニ云↢「▲光明寺和尚ノ云1060ト」↡訖ヌ。是故ニ雖フトモ↠引ト↢何ノ書ノ解釈ヲ↡、共ニ為タラ↢大師ノ之解釈↡者、更ニ非ズ↢相違ニ↡。

「弘ぐ願がん」 といふは、 弘ぐ願がんの称しょう、 総そうじてこれをいはば六八ろくはちに通つうずべし、 余よ処しょの釈しゃく (序分義) に 「願々がんがんみな増ぞう上じょうの勝しょう因いんを発おこす」 といふがゆゑなり。 別べっしてこれを論ろんぜば第だい十じゅう八はちの願がんなり、 いまの解げ釈しゃく得とく生しょうの益やくを明あかすがゆゑなり。

-言↢「▲弘願ト」↡者、弘願ノ之称、総ジテ而言ハヾ↠之ヲ可シ↠通ズ↢六八ニ↡、余処ノ釈ニ云ガ↣「▲願々皆発スト↢増上ノ勝因ヲ↡」故也。別シテ而論ゼバ↠之ヲ第十八ノ願ナリ、今ノ之解釈明スガ↢得生ノ益ヲ↡故也。

「大願だいがん業力ごうりき」 とは、 願がんと業ごうと力りきとの三さん、 因いんと果かとにおいてみなその由ゆえあり。 大だいの言ことばは三さんに亘わたる、 いはゆる大願だいがんは、 五ご劫こう思し惟ゆい超ちょう世せ無む上じょう殊しゅ勝しょうの願がんこれなり。 大業だいごうは、 すなはちこれ不可ふか思議しぎ兆ちょう載さい永劫ようごう六ろく度ど万まん行ぎょう、 願がん行ぎょう殊ことなりといへどもともにこれ因いん位になり。 大力だいりきといふは、 果位かいの神力じんりき、 光こう明みょう摂取せっしゅ利り益やく衆しゅ生じょうこれを大力だいりきと名なづく。

-「▲大願業力ト」者、願ト業ト力トノ三、於テ↢因ト与 トニ↟果皆有リ↢其ノ由↡。大ノ言ハ亘ル↠三ニ、所謂大願ハ、五劫思惟超世无上殊勝ノ願是ナリ。大業ハ、即是 レ不可思議兆載永劫六度万行、願行雖↠殊ナリト共ニ是 レ因位ナリ。言↢大力ト↡者、果位ノ神力、光明摂取利益衆生名ク↢之ヲ大力ト↡。

「増ぞう上じょう縁えん」 とは、これ強縁ごうえんなり。 「玄げん義ぎ分ぶん」 にいはく、 「まさしく仏願ぶつがんに託たくしてもつて強縁ごうえんとなるによる。」 以上 ¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にいはく、 「まさしく好よき強縁ごうえんに遇あはざるによりて、 輪りん回ねをして得とく度どしがたきことを致いたす。」 以上

-「▲増上縁ト」者、是 レ強縁也。「玄義分ニ」云ク、「▲正ク由ル↧託シテ↢仏願ニ↡以テ作ナルニ↦強縁ト↥。」 已上 ¬法事讃ニ¼云ク、「▲正ク由テ↠不ニ↠遇↢好強縁ニ↡、致ス↧使シテ↢輪廻ヲ↡難コトヲ↦得度シ↥。」 已上

問とふ。 増ぞう上じょう縁えんとは強縁ごうえんに名なづくる義ぎ、 その証しょういかん。

-問。増上縁ト者名ル↢強縁ニ↡義、其ノ証如何。

答こたふ。 ¬*大だい乗じょう義ぎ章しょう¼ の第三だいさんに釈しゃくしていはく、 「増ぞう上じょう縁えんとは、 法ほうの功こうを起おこすこと強こわし、 ゆゑに増ぞう上じょうといふ、 法ほうのための縁えんなるがゆゑに増ぞう上じょう縁えんと名なづく。」 以上 また ¬摂しょう論ろん¼ (真諦釈摂論釈巻二) にいはく、 「眼根げんこん眼識げんしきのために増ぞう上じょう縁えんとなるがごとし。」 これ有う力りき増ぞう上じょう縁えんなり。 無む力りき増ぞう上じょう縁えんとは、 有為うい無為むいの諸法しょほうを生しょうずるに障しょう礙げをなさざるなり。

-答。¬大乗義章ノ¼第三ニ釈シテ云、「増上縁ト者、起コト↢法ノ功ヲ↡強シ、故ニ曰↢増上ト↡、為ノ↠法ノ縁ナルガ故ニ名ク↢増上縁ト↡。」 已上 又¬摂論ニ¼云ク、「如シ↧眼根為ニ↢根識ノ↡作ナルガ↦増上縁ト↥。」此レ有力増上縁也。无力増上縁ト者、生ズルニ↢有為・无為ノ諸法ヲ↡不↠作サ↢障ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『観念法門』文

【32】次つぎの所引しょいんの文もんはともにこれ ¬観念かんねん法門ぼうもん¼ の釈しゃく、 次ついでのごとく摂せつ生しょう・証生しょうしょうの両りょう縁えんなり。

▲次ノ所引ノ文者共ニ是 レ¬観念法門ノ¼之釈、如ク↠次ノ摂生・証生ノ両縁ナリ。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『般舟讃』文

【33】次つぎに 「又う云うん門々もんもん」 といふ以下いげ十じっ句くの文もんとは ¬般舟はんじゅ讃さん¼ の釈しゃくなり。 四句しくと二句にくと四句しくと別べつの文もんなり。

次ニ言↢「▲又云門々ト」↡以下十句ノ文ト者¬般舟讃ノ¼釈ナリ。四句ト二句ト四句ト別ノ文ナリ。

「門々もんもん」 といふは、 諸しょ教きょうの門もんなり。 「八万はちまん四し」 とは、 ¬大だい集じゅう¼ の意こころによるに、 一々いちいちの衆しゅ生じょうに八万はちまん四し千せんの諸しょ行ぎょうあり。 いはゆる貪欲とんよくの行ぎょうに二に万まん一千いっせん、 瞋しん恚にの行ぎょうに二に万まん一千いっせん、 愚痴ぐちの行ぎょうに二に万まん一千いっせん、 等分とうぶんの行ぎょうに二に万まん一千いっせん、 これを八万はちまん四し千せんの諸しょ行ぎょうとなす。

-言1061↢「▲門々ト」↡者、諸教ノ門也。「▲八万四ト」者、依ニ↢¬大集ノ¼意ニ↡、一々ノ衆生ニ有リ↢八万四千ノ諸行↡。所謂貪欲ノ行ニ二万一千、瞋恚ノ行ニ二万一千、愚痴ノ行ニ二万一千、等分ノ行ニ二万一千、是ヲ為ス↢八万四千ノ諸行ト↡。

「無む明みょう」 とらは、 十じゅう二に支しに約やくして滅罪めつざいの益やくを明あかす。 異義いぎありといへども試こころみに短たん解げを述のぶ。 「無む明みょう」 といふは、 総そうじて惑わく障しょうを標ひょうす。 ¬倶く舎しゃ¼ (玄奘訳巻二〇随眠品) の頌じゅにいはく、 「無む明みょうは諸しょ有うの本もとなり、 ゆゑに別べつに一いち漏ろとなす。」 以上 「果か業因ごういん」 とは、 逆ぎゃくに煩悩ぼんのう・業ごう・苦くの三道さんどうを挙あぐ。 「利り剣けん」 といふは、 その利り用ゆうをもつて名みょう号ごうの徳とくに喩たとふ。

-「▲无明ト」等者、約シテ↢十二支ニ↡明ス↢滅罪ノ益ヲ↡。雖ヘ↠有ト↢異義↡試ニ述ブ↢短解ヲ↡。言↢「无明ト」↡者、総ジテ標ス↢惑障ヲ↡。¬倶舎ノ¼頌ニ云ク、「無明ハ諸有ノ本ナリ、故ニ別ニ為ス↢一漏ト↡。」 已上 「果業因ト」者、逆ニ挙グ↢煩悩・業・苦ノ三道ヲ↡。言↢「利剣ト」↡者、以テ↢其ノ利用ヲ↡喩フ↢名号ノ徳ニ↡。

「微み塵じん」 とらは、 故こは曠劫こうごうを差さす、 業ごうはこれ業ごっ障しょう。

-「▲微塵ト」等者、故ハ差ス↢曠劫ヲ↡、業ハ是 レ業障。

「不ふ覚かく」 とらは、 頓とん悟ごの理りを示しめす。 同おなじき下しもの句く (般舟讃) にいはく、 「大だい小しょう僧そう祇ぎ恒沙ごうじゃの劫こう、 また弾だん指し須しゅ臾ゆの間あいだのごとし。」 以上 ¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ の日にっ中ちゅうの讃さんにいはく、 「心しんに領りょう納のうすることなくして自じ然ねんに知しる。」 以上 これその謂いいなり。

-「▲不覚ト」等者、示ス↢頓悟ノ理ヲ↡。同キ下ノ句ニ云ク、「▲大小僧祇恒沙ノ劫、亦如シ↢弾指須臾ノ間ノ。」 已上 ¬往生礼讃ノ¼日中ノ讃ニ云ク、「▲无シテ↢心ニ領納コト↡自然ニ知ル。」 已上 是 レ其ノ謂也。

ただし 「覚かく」 の字じの註ちゅうは 「教きょうの音おん」、 これに二にの音おんあり、 ¬玉ぎょく¼ (玉篇) にいはく、 「有う楽ぎょう切せつ、 寤ごなり、 大だいなり。」 ¬宋そう¼ (宋韻) にいはく、 「古こ孝きょう切せつ、 睡すい寤ご、 覚かく醒しょうといふ、 省しょうなり」 。

-但シ「▲覚ノ」字ノ註者「教ノ*音」、此ニ有リ↢二ノ音↡。¬玉¼云、「有楽切、寤也、大也。」¬宋¼云、「古孝切、睡寤、曰↢覚醒↡、省也。」

二 Ⅱ ⅱ c ロ ○ 私釈(六字釈)

【34】「爾に者しゃ」 以下いげ八はち行ぎょう余よは、 わたくしに上かみの 「言ごん南無なも者しゃ」 の文もんの意こころを得えらるる釈しゃくなり。

「▲爾者」以下八行余者、私ニ被ルヽ↠得↢上ノ「▲言南無者ノ」之文ノ意ヲ↡釈ナリ。

「南無なも」 とらは、

-「▲南無ト」等者、

「帰き」 の字じにおいて、 「至し」 ならびに 「説えつ」 の意こころ▼いまだこれを勘かんがへ得えず。 「説せつ」 字じの音おん、 ¬玉ぎょく篇へん¼・¬広韻こういん¼、 註ちゅうに同おなじ、 三みつの音おんいま二ふたつの音おんあり、 「始し悦えつの反はん」 を略りゃくす、 これはこれ常つねの音おん、 勿論もちろんのゆゑなり。 「告ごう」・「述じゅつ」・「宣せん」 の訓くん、 載のせて ¬広韻こういん¼ にあり。

-於テ↢「▲帰」之字ニ↡、「至」ニ「説ノ」意未ダ↣勘↢得之ヲ↡。「説」字之音、¬玉篇¼・¬広韻¼同ジ↠註ニ、三ノ音今有リ↢二ノ音↡、略ス↢「始悦ノ反ヲ」↡、此ハ是 レ常ノ音、勿論ノ故也。「告」・「述」・「宣ノ」訓、載テ在リ↢¬広韻ニ¼↡。

「命みょう」 の字じの訓くん、 ¬玉ぎょく篇へん¼ の中なかに 「教きょう」・「令りょう」・「使し」 の註ちゅうあり、 ¬広韻こういん¼ の中なかに 「使し」・「教きょう」・「召しょう」 の訓くんを出いだす。 「業ごう」・「招しょう引いん」・「使し」・「道どう」・「信しん」・「計け」 等とう、 追おってこれを勘かんがふべし。

-「▲命ノ」字ノ之訓、¬玉篇ノ¼中ニ有リ↢「教」・「令」・「使ノ」註↡、¬広韻ノ¼中ニ出ス↢「使」・「教」・「召ノ」訓1062ヲ↡。「業」・「招引」・「使」・「道」・「信」・「計」等、追テ可↠勘↠之。

「必ひつ」 の字じの註ちゅう ¬廣韻こういん¼ の文もんなり。

-「▲必ノ」字ノ之註¬廣韻ノ¼文也。

二 Ⅱ ⅱ c ロ ・『五会讃』文

【35】次つぎに ¬五会ごえ讃さん¼。

▲次ニ¬五会讃¼。

*法ほっ照しょう禅ぜん師じの述じゅつ作さくするところ一巻いっかんの書しょなり。 いまの所引しょいんの文もんはこれ序じょの初はじめの詞ことば、 流布るふの本ほん、 「深じん妙みょう」 の下しも 「門もん矣い」 の上かみに「禅ぜん」 の一いち字じあり、 また「焉えん」 あるいは 「為い」、 彼此ひし差しゃあり、 異い本ほんあるか。 義ぎにおいて違いせず。 「度ど衆しゅ生じょう」 に至いたるまでこれ序じょの文もんなり。

-法照禅師之所↢述作スル↡一巻ノ書也。今ノ所引ノ文ハ是 レ序ノ初ノ詞、流布ノ之本、「深妙」之下「▲門矣ノ」之上ニ有リ↢「禅ノ」一字↡、又「▲焉」或ハ「為」、彼此有リ↠差、有↢異本↡歟。於↠義ニ不↠違セ。至マデ↢「度衆生ニ」↡是 レ序ノ文也。

「乃ない至し」 といふは、 序じょの残のこるところなほ五ご十じゅう余よ行ぎょうあるこれなり。

-言↢「▲乃至ト」↡者、序ノ之所↠残猶有ル↢五十余行↡是也。

次つぎに「如来にょらい」 とらは、 これ五会ごえ念仏ねんぶつを釈しゃくする文もんなり。

-次ニ「▲如来ト」等者、是 レ釈スル↢五会念仏ヲ↡文也。

次つぎに「爾に大だい」 とらは、 これ荘しょう厳ごんの文もんなり。

-次ニ「▲爾大ト」等者、是 レ荘厳ノ文。

問とふ。 荘しょう厳ごんの文もんは前さきにあり、 五会ごえの釈しゃくは後のちに居こす。 いまの所引しょいんの前ぜん後ごなんぞ違いせる。

-問。荘厳ノ文ハ在リ↠前ニ、五会ノ釈ハ居ス↠後ニ。今ノ之所引前後何ゾ違セル。

答こたふ。 所問しょもんまことにしかり。 試こころみにいまこれを推すいするに、 上かみには 「念仏ねんぶつ三昧ざんまい是ぜ真しん無む上じょう深じん妙みょう禅門ぜんもん」 といひ、 いまは 「如来にょらい常じょう於お三昧さんまい海かい中ちゅう」 といふ。 上かみに標ひょうするところは念仏ねんぶつ三昧ざんまい、 下しもに挙あぐるところは諸しょ三昧さんまい海かい、 ゆゑに三昧さんまいの中なかに念仏ねんぶつ三昧ざんまい甚深じんじんの義ぎ、 鉤こう鎖さ相連そうれんしてその理りを成じょうぜんがためにかくのごとく次し第だいせり。 「爾に大だい」 とらは、 また二に尊そん大だい悲ひの弘ぐ誓ぜいを挙あげ、 まさに浄じょう穢え斉一さいいちの利り益やくを明あかして、 その次つぎに諸しょ経きょうの要文ようもんを引用いんようす。 このゆゑに能讃のうさん・所讃しょさん次ついでありて、 その由ゆえなきにあらず。

-答。所問誠ニ爾リ。試ニ今推スルニ↠之ヲ、上ニハ云ヒ↢「▲念仏三昧是真无上深妙禅門ト」↡、今ハ云フ↢「▲如来常於三昧海中ト」↡。上ニ所↠標スル者念仏三昧、下ニ所↠挙ル者諸三昧海、故ニ三昧ノ中ニ念仏三昧甚深ノ之義、鉤鎖相連シテ為ニ↠成ゼンガ↢其ノ理ヲ↡如ク↠此ノ次第セリ。「爾大ト」等者、又挙ゲ↢二尊大悲ノ弘誓ヲ↡、方ニ明シテ↢浄穢斉一ノ利益ヲ↡、其ノ次ニ引↢用ス諸経ノ要文ヲ↡。是ノ故ニ能讃・所讃有テ↠次、非ズ↠无ニ↢其ノ由 ヘ↡。

問とふ。 一巻いっかんの文もんを引ひくに、 前さきをもつて後あととなし、 後あとをもつて前さきとなす、 その例れいありや。

-問。引ニ↢一巻ノ文ヲ↡、以テ↠前ヲ為シ↠後ト、以↠後ヲ為↠前ト、有↢其ノ例↡耶。

答こたふ。 その例れいこれ多おおし。 ほぼ少しょう分ぶんを挙あぐ。

-答。其ノ例多シ↠之レ。粗挙グ↢少分ヲ↡。

¬礼讃らいさん¼ の初しょ夜やに ¬大だい経きょう¼ 下げ巻かんの要文ようもんを採さい集しゅうするに、 三さん十じゅう偈げにおいて最前さいぜんの一礼いちらいはこれその奥おくの文もん、 第だい二に・第三だいさん・第だい四しの三礼さんらいはならびにこれ末まつ後ご流る通ずうの文もんなり。 この文もんはこれすなはち十じゅう四し仏国ぶっこくの菩ぼ薩さつ衆しゅ等とう、 みな仏ぶっ智ちに乗じょうじてことごとく往おう生じょうするは、 弥陀みだの智ち願がん深広じんこうのゆゑなり。 その義ぎを顕あらわさんがために引ひき上あげてこれを引ひく。 しかして後のちまた還かえりて初はじめの偈げの文もんを引ひく。

-¬礼讃ノ¼初夜ニ採↢集スルニ¬大経¼下巻ノ要文ヲ↡、於テ↢▲三十偈ニ↡最前ノ一礼ハ是 レ其ノ奥ノ文、▲第二・▲第三・▲第四ノ三礼ハ並ニ是 レ末後流通ノ文也。此ノ文ハ是 レ則十四仏国ノ菩薩衆等、皆乗ジテ↢仏智ニ↡悉ク往生スル者1063、弥陀ノ智願深広ノ故也。為ニ↠顕ンガ↢其ノ義ヲ↡引上テ引ク↠之ヲ。然シテ後又還テ引ク↢▲初ノ偈ノ文ヲ↡。

しかのみならず後夜ごやにまたこの例れいあり。 「↓能のう令りょう速そく満足まんぞく功く徳どく大だい宝海ほうかい」 (浄土論) とは、 如来にょらい八種はっしゅの功く徳どくの終おわりなり。 しかるに菩ぼ薩さつ四し種しゅの功く徳どくの後のちにおいてこれを讃さんず。 また 「↓雨う天てん楽がく華衣けえ妙みょう香等こうとう供く養よう」 (浄土論) とは、 菩ぼ薩さつ四し種しゅの功く徳どくの第三だいさんなり。 しかるに如来にょらい功く徳どくの中なかに加くわふる、 みなその由ゆえあり。

-加之後夜ニ又有↢此ノ例↡。「▲能令速満足功徳大宝海ト」者、如来八種ノ功徳ノ終也。而ニ於テ↢菩薩四種ノ功徳ノ之後ニ↡讃ズ↠之ヲ。又「▲雨天楽華衣妙香等供養ト」者、菩薩四種ノ功徳之第三也。而ニ加ル↢如来功徳ノ之中ニ↡、皆有リ↢其ノ由↡。

問とふ。 その由ゆえいかん。

-問。其ノ由如何。

答こたふ。 ↑能のう令りょう等とうの句く、 ¬論ろん¼ は能のう持じに約やくす、 ゆゑに如来にょらいに属ぞくす。 釈しゃくは所しょ持じに約やくす、 ゆゑに菩ぼ薩さつに属ぞくす。 ↑雨う天てん等とうの句く、 ¬論ろん¼ は能のう供ぐにより、 釈しゃくは所しょ供ぐに拠よる。 おのおの一いち義ぎを存ぞんず。 ともにもつて違いせず。 これらの釈しゃく、 みなその例れいなり。

-答。能*令等ノ句、¬論ハ¼約ス↢能持ニ↡、故ニ属ス↢如来ニ↡。釈ハ約ス↢所持ニ↡、故ニ属ス↢菩薩ニ↡。雨天等ノ句、¬論ハ¼依リ↢能供ニ↡、釈ハ拠ル↢所供ニ↡。各存ズ↢一義ヲ↡。共ニ以テ不↠違セ。此等之釈、皆其ノ例也。

次つぎに同おなじき七言しちごん数しゅ首しゅの中なかに、 「称しょう讃さん浄じょう土ど経きょうによる」 といふ三首さんしゅの文もんは、 浄じょう土ど楽らくの讃さん一いち十じゅう九く首しゅ、 その中なかの第だい九くならびに第だい十じゅう一いち・第だい十じゅう五ごなり。

-▲次ニ同キ七言数首ノ之中ニ、云↠「依ルト↢称讃浄土経ニ↡」之三首ノ文者、浄土楽ノ讃一十九首、其ノ中ノ第九ニ第十一・第十五也。

問とふ。 これらの讃さんかの ¬経きょう¼ のいづれの文もんの意こころによるや。

-問。此等ノ之讃依↢彼ノ¬経ノ¼之何ノ文ノ意ニ↡耶。

答こたふ。 一文いちもんを指ささず、 ただ本ほん意いを讃さんず、 以下いげの諸讃しょさんみなこれに準じゅんずべし。

-答。不↠指↢一文ヲ↡、只讃ズ↢本意ヲ↡、以下ノ諸讃皆可シ↠准ズ↠之ニ。

次つぎに 「仏ぶつ本ほん行ぎょう経きょうによる」 三首さんしゅは、 正しょう法ぼう楽らくの讃さん、 かの讃さんに総そうじて三さん十じゅう二に首しゅあり、 いまの所引しょいんは第だい二に十じゅう九くおよび第だい三さん十じゅう・第だい三さん十じゅう一いちなり。 「正しょう法ぼう能のう超出ちょうしゅつ世せ間けん」 の句くは、 みな毎まい句くの中ちゅう間げんにあり。

-次ニ「▲依ル↢仏本行経ニ↡」三首ハ、正法楽ノ讃、彼ノ讃ニ総ジテ有↢三十二首↡、今ノ所引者第二十九及ビ第三十・第三十一ナリ。「▲正法能超出世間ノ」句ハ、皆在リ↢毎句ノ之中間ニ↡也。

次つぎに ¬小経しょうきょう¼ による四し首しゅの文もんは、 西方さいほう楽らくの讃さん十じゅう五ご首しゅの中なか、 第だい二に・第三だいさんならびに第だい十じゅう二におよび第だい十じゅう四し、 みな最要さいようの文もんなり。

-▲次ニ依ル↢¬小経ニ¼↡四首ノ文者、西方楽ノ讃十五首ノ中、第二・第三ニ第十二及ビ第十四、皆最要ノ文ナリ。

次つぎに ¬般舟はんじゅ¼ による二に十じゅう行ぎょうは、 すなはちこれ般舟はんじゅ三昧ざんまい楽らくの讃さん、 一いち行ぎょう二句にくをもつて一首いっしゅとなす、 総そうじて三さん十じゅう八首はっしゅある中なかに、 第だい十じゅう七首しちしゅ以下いげ終おわりに至いたるまでなり。 ただしその中なかにおいて 「不ふ簡けん下智げち与よ高才こうざい」 の次つぎ、 「不ふ簡けん多た聞もん持じ浄じょう戒かい」 の上かみの二に行ぎょう四句しく、 除のぞくところあるなり。

-▲次ニ依ル↢¬般舟ニ¼↡二十行者、即是 レ般舟三昧楽ノ讃、一行二句ヲ以テ為ス↢一首ト↡、総ジテ有ル↢三十八首↡之中ニ、第十1064七首以下至マデナリ↠終。但シ於テ↢其ノ中ニ↡、「不簡下智与高才ノ」次、「不簡多聞持浄戒ノ」上二行四句、有↠所↠除也。

次つぎに ¬新しん無む量りょう寿じゅ観かん経ぎょう¼ の讃さん、 一いち四句しく偈げ二に十じゅう八首はっしゅ、 いまその中なかにおいて、 この一首いっしゅは第だい二に十じゅう七しち下げ輩はいの讃さんなり。

-▲次ニ¬新无量寿観経ノ¼讃、一四句偈二十八首、今於テ↢其ノ中ニ↡、此ノ一首者、第二十七下輩ノ讃也。

問とふ。 ¬新しん無む量りょう¼ とはいづれの経きょうを指さすや。

-問。¬新无量ト¼者指↢何ノ経ヲ↡耶。

答こたふ。 これ ¬観かん経ぎょう¼ を指さす、 元がん照じょうの釈しゃく (観経義疏巻上) にいはく、 「おほよそ両りょう訳やくあり。 前さきの本ほんすでに亡もうず。 いまの本ほんすなはち*畺良きょうりょう耶や舎しゃの訳やく。」 当巻とうかんの下しもにこれを引ひき載のせらる いま前さきの本ほんに対たいして 「新しん」 と称しょうするところなり、 「新しん」 の字じ思おもひがたし。 しかるに畺良きょうりょう耶や舎しゃの訳やくの外ほかに古いにしえその異い訳やくの本ほんあることを聞きくといへども、 欠けっして世よに行ぎょうぜず。 ただこの一本いっぽん世せ間けんに流布るふす。 まさに知しんぬ、 ただこの ¬覲かん経ぎょう¼ を指さすなり。 随したがひてこの讃さんの始し終じゅう、 みないまの経きょうの意こころを讃さんず。 ただし 「新しん」 の字じに就つきて試こころみに料りょう簡けんを加くわふるに、 いま寿前じゅぜん観かん後ごの義ぎによりて、 寿じゅをもつて旧きゅうとなし、 観かんをもつて新しんとなして、 その義ぎを示しめさんがためにかくのごとく題だいするか。

-答。*是 レ指↢¬観経¼↡、元照ノ釈云、「凡有↢両訳↡。前ノ本已ニ亡ズ。今ノ本乃畺良耶舎ノ訳。」 ▲当巻之下ニ被↣引↢載之↡ 今対↢前ノ本ニ↡所↠称スル↠「新ト」也 △、「新ノ」字難↠思。然而畺良耶舎ノ訳ノ外ニ雖↠聞ト↣古ヘ有コトヲ↢其ノ異訳ノ本↡、*欠シテ不↠行ゼ世ニ。只此ノ一本流↢布ス世間ニ↡。方ニ知ヌ、只指↢此ノ¬覲経ヲ¼↡也。随テ而此ノ讃ノ始終、皆讃ズ↢今ノ経ノ之意ヲ↡。但シ就テ↢「新ノ」字ニ↡試ニ加ニ↢料簡ヲ↡、今依テ↢寿前観後ノ之義ニ↡、以テ↠寿ヲ為シ↠旧ト、以テ↠観ヲ為シテ↠新ト、為ニ↠示ンガ↢其ノ義ヲ↡如ク↠此ノ題スル歟。

 

六要ろくよう鈔しょう第だい二に 新本しんほん

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
蜎 「えん」 と右傍に註記されている。
生ならず… 底本に欠く。 異本により補う。
底本は◎本派本願寺蔵明徳三年慈観上人書写本。 Ⓐ本派本願寺蔵文安四年空覚書写本、 Ⓑ興正派興正寺蔵蓮如上人書写本 と対校。
花→Ⓐ華
則→Ⓐ即
恵→Ⓐ慧
華→Ⓐ花
耶→◎Ⓑ那
波→Ⓐ婆
或→ⒶⒷ惑
縁→Ⓑ流
捨→◎Ⓑ摂(◎捨と右傍註記)
衎→◎衍(衎カンと右傍註記)
衎→◎衍(衎カムと右傍註記)
旰→◎Ⓑ肝Ⓐ「旰[古按反日晩也]」と右傍註記
衍→◎Ⓐ衎カンヲ
衎→Ⓑ衍
願→Ⓑ願[止]
雑→Ⓑ誰
波→Ⓐ婆
階→Ⓑ諧
嗔→Ⓐ瞋
音→Ⓑ字
令 ◎合(令と右傍註記)
欠→Ⓐ闕
是…・也 △ Ⓐ別筆にて上に貼紙