^*¬しょうさんじょうきょう¼ にのたまはく、 *げんじょう三蔵さんぞうやくなり

^たとひひゃくせんてい那由他なゆたこうて、 それりょうひゃくせんてい由他ゆたしたをもつて、 一々いちいちしたうえりょうこえいだして、 そのどくめむに、 またくることあたはじと。」

 

0555じょう   さん

 

冠頭讃

(1) 勧信

*弥陀みだみょうごうとなへ​つつ

信心しんじんまことに​うる​ひと​は

憶念おくねんしんつねに​して

仏恩ぶっとんほうずる​おもひ​あり

(2) 誡疑

*誓願せいがん思議しぎを​うたがひ​て

御名みなしょうするおうじょう

*殿でんの​うち​にひゃくさい

むなしく​すぐ​と​ぞ​とき​たまふ

徳号列示

^0556¬*さん弥陀みだぶつ¼ にいはく *曇鸞どんらんぞう

^南無なも弥陀みだぶつ *しゃくして ¬りょう寿じゅぼうきょう¼ とづく、 めたてまつりてまたあんにょうといふ。

^じょうぶつよりこのかた十劫じっこうたまへり、 寿じゅみょうまさにはかりあることなし、 法身ほっしん光輪こうりん法界ほうかいへんして、 もうみょうらしたまふ、 かるがゆゑにちょうらいしたてまつる。

阿弥陀三十七号

^また 1りょうこう2真実しんじつみょうなづく、 また 3へんこう4びょうどうかくなづく、 また 5無礙むげこう6なんなづく、 また 7たいこう8ひっきょうなづく、 また 9光炎こうえんのう10だいおうなづく、 また 11しょうじょうこうなづく、 また 12かんこう13だいあんなづく、 また 14智慧ちえこうなづく、 また 15だんこうなづく、 また 16なんこうなづく、 また 17しょうこうなづく、 18ちょう日月にちがつこうなづけたてまつる。

^19等等とうどう 20広大こうだい 21大心だいしんかい 22じょうそん 23びょうどうりき 24大心だいしんりき 25しょうぶつ 26婆伽婆ばがば 27講堂こうどう 28清浄しょうじょうだいしょうじゅ 29不可ふか思議しぎそん 30どうじょうじゅ 31しんりょう 32清浄しょうじょうがく 33本願ほんがんどくじゅ 34清浄しょうじょうくん 35どくぞう 36ごくそん 37不可ふか思議しぎこう じょう略抄りゃくしょうなり。

^¬*十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼ にいはく

ざいにん らい 清浄しょうじょうにん みょう りょうとく しょうさん じょう

讃弥陀偈讃

さん0557弥陀みだぶつさん

禿とく親鸞しんらんさく

南無なも弥陀みだぶつ

  仏の成道

(3) 十劫成道

弥陀みだじょうぶつの​このかた​は

いまに十劫じっこうを​へ​たまへ​り

法身ほっしん光輪こうりんきは​も​なく

もうみょうを​てらす​なり

ヨノ  メシヰクラキモノ

  如来の荘厳
   無量光

(4)

智慧ちえこうみょうはかり​なし

りょう諸相しょそうことごとく

ヨロヅノ  シユジヤウナリ

こうきょうかぶら​ぬ​もの​は​なし

真実しんじつみょうみょうせよ

   無辺光

(5)

だつ光輪こうりんきは​も​なし

光触こうそくかぶる​もの​は​みな

有無うむを​はなる​と​のべ​たまふ

びょうどうかくみょうせよ

   無礙光

(6)

光雲こううん無礙むげにょくう

ヒカリクモノゴトクシテサハリナキコトコクノゴトシ

一切いっさい有礙うげに​さはり​なし

ヨロズノサハリアルコト

光沢こうたくかぶら​ぬ​もの​ぞ​なき

なん思議じぎみょうせよ

   無対光

(7)

清浄しょうじょうこうみょうならび​なし

こうの​ゆゑ​なれば

ミダ仏ニマウアヒヌルユヘニ

一切いっさいごっも​のぞこり​ぬ

ツミノナハニシバラルヽナリ

ひっきょうみょうせよ

   光炎王

(80558)

仏光ぶっこうしょうようさい第一だいいち

光炎こうえんのうぶつと​なづけ​たり

さん黒闇こくあんひらく​なり

ジゴクガクヰチフシヤウ

クラキヤミナリ

だいおうみょうせよ

ミダニヨライナリ

   清浄光

(9)

道光どうこうみょうろうちょうぜつせり

ミダノヒカリアキラカニスグレタリトナリ

清浄しょうじょうこうぶつと​まうす​なり

ひとたびこうしょうかぶる​もの

ヒカリニテラサルトナリ

ごっを​のぞきだつを​う

アクゴフボムナウナリ

サトリヲヒラクナリ

   歓喜光

(10)

こうはるかに​かぶら​しめ

ひかり​の​いたる​ところ​には

ほうを​う​とぞ​のべ​たまふ

ミノリヲヨロコブナリ

だいあんみょうせよ

   智慧光

(11)

みょうあんする​ゆゑ

ヤミニテクラシ

ヤブルナリ

智慧ちえこうぶつと​なづけ​たり

一切いっさい諸仏しょぶつさんじょうしゅ

ともにたんし​たまへ​り

ホメホムルナリ

   不断光

(12)

こうみょうてらし​て​たえ​ざれ​ば

だんこうぶつと​なづけ​たり

聞光もんこうりきの​ゆゑ​なれば

ミダノオンチカヒヲシンジマヒラスルナリ

しんだんにておうじょう

ミダノセイグワンヲシンゼルコヽロタヘズシテワウジヤウストナリ

   難思光

(13)

仏光ぶっこうしきりょうなき​ゆゑに

なんこうぶつと​なづけ​たり

諸仏しょぶつおうじょうたんじ​つつ

ホムルナリ

弥陀みだどくしょうせしむ

   無称光

(140559)

神光じんこうそうを​とか​ざれ​ば

ムゲクワウブチノオンカタチヲイヒヒラクコトバシトナリ

しょうこうぶつと​なづけ​たり

因光いんこうじょうぶつの​ひかり​をば

ヒカリキハナカラントチカヒタマイテムゲクワウブチトナリテオハシマストシルベシ

諸仏しょぶつたんずる​ところ​なり

ホメタマフナリ

   超日月光

(15)

こうみょうつきしょうして

スグレタルナリ

ちょう日月にちがつこうと​なづけ​たり

しゃたんじて​なほ​つき​ず

ホメタマフナリ

等等とうどうみょうせよ

  聖衆の荘厳
   果徳の殊勝

(16)

弥陀みだしょしょうじゅ

ミダノブチニナリタマヒシトキアツマリタマヒシシヤウジユノオホキコトナリ

算数さんじゅの​およぶ​こと​ぞ​なき

じょうを​ねがは​ん​ひと​は​みな

広大こうだいみょうせよ

(17)

安楽あんらくりょうだいさつ

いっしょうしょに​いたる​なり

げんとくして​こそ

ダイジダイヒヲマフスナリ

こくに​かならずする​なれ

(18)

じっぽうしゅじょうのために​とて

如来にょらい法蔵ほうぞうあつめ​て​ぞ

本願ほんがんぜいせ​しむる

だい心海しんかいみょうせよ

(19)

観音かんのんせいもろともに

こうかいしょうよう

えんして​しばらく​も

そくある​こと​なかり​けり

ヤスムコトナシトナリ

(200560)

安楽あんらくじょうに​いたる​ひと

じょくあくに​かへり​ては

しゃ牟尼むにぶつの​ごとくに​て

やくしゅじょうは​きは​も​なし

(21)

神力じんりきざいなる​こと​は

しきりょうす​べき​こと​ぞ​なき

ハカリハカルコトナシトナリ

思議しぎとくを​あつめ​たり

じょうそんみょうせよ

(22)

安楽あんらくしょうもんさつしゅ

にんでん智慧ちえほがらかに

身相しんそうしょうごんみな​おなじ

ほうじゅんじてを​つらぬ

シタガヒテニンアリテンアリトイフ

(23)

顔容げんようたんじょうたぐひ​なし

しょうみょう人天にんでん

タヘナルミナリ

ニンニアラズテンニアラズ

虚無こむしんごくたい

ホフシンニヨライナリ

びょうどうりきみょうせよ

   因法の殊勝

(24)

安楽あんらくこくを​ねがふ​ひと

正定しょうじょうじゅに​こそじゅうす​なれ

じゃじょうじょうじゅくに​に​なし

諸仏しょぶつ讃嘆さんだんし​たまへ​り

(25)

じっぽうしょしゅじょう

弥陀みだとく御名みなを​きき

真実しんじつ信心しんじんいたり​なば

おほきに所聞しょもんきょうせん

シンズルコトヲエテヨロコブナリ

(260561)

にゃくしょうじゃの​ちかひ​ゆゑ

モシムマレズハトチカヒタマヘルナリ

しんぎょうまことに​とき​いたり

一念いちねんきょうする​ひと​は

シンヲエテノチニヨロコブトナリ

おうじょうかならず​さだまり​ぬ

  国土の荘厳
   国土の讃嘆

(27)

安楽あんらくぶつしょう

法蔵ほうぞう願力がんりきの​なせ​る​なり

てんじょうてんに​たぐひ​なし

だい心力しんりきみょうせよ

   超絶の功徳

(28)

安楽あんらくこくしょうごん

しゃ無礙むげの​みこと​にて

とく​とも​つき​じ​と​のべ​たまふ

しょうぶつみょうせよ

   往生の無数

(29)

今当こんとうおうじょう

クワコニムマルコムジヤウニムマルミライニムマルヽナリ

このしゅじょうのみ​なら​ず

じっぽうぶつより​きたる

りょうしゅ可計かけなり

 カゾフベカラズトナリ

(30)

弥陀みだぶつ御名みなを​きき

かん讃仰さんごう*せしむれ​ば

ヨロコビホメアフグトイフ

どくほうそくして

一念いちねんだいじょうなり

(31)

たとひ大千だいせんかい

みて​らんをも​すぎ​ゆき​て

ぶつ御名みなを​きく​ひと​は

ながく退たいに​かなふ​なり

(320562)

神力じんりきごく弥陀みだ

りょう諸仏しょぶつほめ​たまふ

東方とうぼう恒沙ごうじゃ仏国ぶっこくより

しゅさつゆき​たまふ

(33)

自余じよほう仏国ぶっこく

コヽノツノハウノブチドヨリゴクラクニムマルヽナリ

さつ往覲おうごんみな​おなじ

ワウジヤウシホトケヲミタテマツル

しゃ牟尼むに如来にょらい*を​とき​て

りょうどくを​ほめ​たまふ

(34)

じっぽうりょうさつしゅ

徳本とくほんうゑ​ん​ため​に​とて

ぎょうを​いたしたん

ホメホムルナリ

みな​ひと婆伽婆ばがばみょうせよ

ホトケノミナナリ

   真化二土

(35)

七宝しっぽう講堂こうどうどうじょうじゅ

方便ほうべんしんじょうなり

ヘンヂケマンコクナリ ギハクタイシヤウノジヤウドナリ

じっぽうらいしょうきは​も​なし

講堂こうどうどうじょうらいす​べし

(36)

みょう広大こうだいちょう数限しゅげん

本願ほんがんしょうごんより​おこる

清浄しょうじょうだいしょうじゅ

稽首けいしゅみょうせしむ​べし

(37)

自利じり利他りた円満えんまんして

みょう方便ほうべんぎょうしょうごん

こころ​も​ことば​も​たえ​たれば

不可ふか思議しぎそんみょうせよ

(380563)

神力じんりき本願ほんがんぎゅう満足まんぞく

明了みょうりょうけんきょうがん

慈悲じひ方便ほうべん思議しぎなり

しんりょうみょうせよ

   宝林の讃嘆

(39)

宝林ほうりん宝樹ほうじゅみょうおん

ねんしょうがくにて

哀婉あいえんりょうすぐれ​たり

アハレニスミタヾシクサエタリ

清浄しょうじょうがくみょうせよ

(40)

七宝しっぽう樹林じゅりんくに​に​みつ

光耀こうようたがひに​かがやけ​り

ようまた​おなじ

本願ほんがんどくじゅみょうせよ

(41)

しょうふう宝樹ほうじゅを​ふく​とき​は

いつつ​のおんじょういだし​つつ

宮商きゅうしょうし​てねんなり

清浄しょうじょう*くんらいす​べし

   宝蓮の讃嘆

(42)

一々いちいちの​はな​の​なか​より​は

*さんじゅうろっぴゃく千億せんおく

こうみょうてらし​て​ほがらかに

いたら​ぬ​ところ​は​さらに​なし

(43)

一々いちいちの​はな​の​なか​より​は

さんじゅうろっぴゃく千億せんおく

仏身ぶっしんも​ひかり​も​ひとしく​て

相好そうごう金山こんぜんの​ごとく​なり

(440564)

相好そうごうごと​にひゃくせん

ひかり​をじっぽうに​はなち​て​ぞ

つねにみょうほうとき​ひろめ

しゅじょう仏道ぶつどうに​いら​しむる

   宝池の讃嘆

(45)

七宝しっぽうほういさぎよく

はっどくすいみち​みて​り

無漏むろ依果えか思議しぎなり

どくぞうみょうせよ

(46)

さんなんながく​とぢ

たんねんらくおん

この​ゆゑ安楽あんらくと​なづけ​たり

ごくそんみょうせよ

   弥陀功徳の結讃

(47)

じっぽうさんりょう

おなじく一如いちにょじょうじ​て​ぞ

二智にち円満えんまんどうびょうどう

せっ随縁ずいえん思議しぎなり

(48)

弥陀みだじょうし​ぬれ​ば

すなはち諸仏しょぶつする​なり

一心いっしんをもちて一仏いちぶつ

ほむる​は無礙むげにんを​ほむる​なり

(49)

信心しんじんかんきょう所聞しょもん

乃曁ないかい一念いちねんしんしゃ

南無なも不可ふか思議しぎこうぶつ

めんらいし​たてまつれ

(500565)

ぶっどくを​ほめ*しめ​て

じっぽうえんに​きか​しめ​ん

信心しんじんすでに​え​ん​ひと​は

つねに仏恩ぶっとんほうず​べし

じょうじゅう八首はっしゅ  禿とく親鸞しんらんさく

*にょらい *かんおんさつ
*だいせいさつ
*しゃ牟尼むに如来にょらい *富楼那ふるな尊者そんじゃ
*大目だいもく犍連けんれん
*なん尊者そんじゃ
*びんしゃおう *だいにん
*耆婆ぎば大臣だいじん
*月光がっこう大臣だいじん
*だい尊者そんじゃ *じゃおう
*ぎょう大臣だいじん
 守門しゅもんしゃ

大経讃

じょうさん  禿とく親鸞しんらんさく

¬だいきょうの¼ こころ

じゅうしゅ

  阿難の請問

(51)

尊者そんじゃなんより​たち

そんこう瞻仰せんごう

ミタテマツル

しょう希有けうしんと​おどろかし

アリガタキコヽロトイフ

ぞうけんとぞ​あやしみ​し

イマダムカシミタテマツラズ

(52)

如来にょらい光瑞こうずい希有けうにして

ヒカリアリガタシトナリ

なんはなはだ​こころよく

にょ之義しぎと​とへ​り​し​に

*しゅっほんあらはせ​り

ホトケコノヨニイデタマフトナリ

  釈尊の応答

(530566)

*だい寂定じゃくじょうに​いり​たまひ

如来にょらい光顔こうげんたへに​して

なんけんを​みそなはし

もん慧義えぎと​ほめ​たまふ

(54)

如来にょらいこうほんには

ヨニイデタマフコヽロハトイフ

本願ほんがん真実しんじつひらき​て​ぞ

なん難見なんけんと​とき​たまひ

マウアヒガタクミタテマツリガタシトナリ

霊瑞れいずいと​しめし​ける

ウドムグノサクコトノマレナルガゴトクトナリ

  本願の超異

(55)

弥陀みだじょうぶつの​このかた​は

いまに十劫じっこうと​とき​たれ​ど

塵点じんでんおんごうより​も

ひさしきぶつと​みえ​たまふ

(56)

南無なも不可ふか思議しぎこうぶつ

*にょうおうぶつの​みもと​にて

じっぽうじょうの​なか​より​ぞ

本願ほんがんせんじゃく摂取せっしゅする

  弥陀真実の利益

(57)

無礙むげこうぶつの​ひかり​には

清浄しょうじょうかん智慧ちえこう

そのとく不可ふか思議しぎにして

じっぽうしょやくせ​り

(58) ª本願ノコヽロ第十八ノ選択本願ナリº

しんしんぎょうよくしょう

じっぽうしょを​すすめ​て​ぞ

思議しぎ誓願せいがんあらはし​て

真実しんじつほういんと​する

(590567)

真実しんじつ信心しんじんうる​ひと​は

すなはちじょうじゅの​かず​に​いる

退たいの​くらゐ​に​いり​ぬれ​ば

かならずめつに​いたら​しむ

ネチハンノサトリヲヒラクナリ

(60) ª三十五ノ願ノコヽロナリº

弥陀みだだいふかけれ​ば

ぶっ思議しぎを​あらはし​て

へんじょうなんがんを​たて

女人にょにんじょうぶつちかひ​たり

  第十九願の意

(61) ª十九ノ願ノコヽロ諸行往生ナリº

しん発願ほつがんよくしょう

じっぽうしゅじょう方便ほうべん

*衆善しゅぜんもんひらき​て​ぞ

*げん人前にんぜんがんじ​ける

(62)

りんじゅう現前げんぜんがんに​より

しゃ諸善しょぜんを​ことごとく

¬かんぎょう¼ いちに​あらはし​て

じょうさんしょを​すすめ​けり

(63)

諸善しょぜんまんぎょうことごとく

しん発願ほつがんせ​る​ゆゑに

おうじょうじょう方便ほうべん

ぜんと​なら​ぬ​は​なかり​けり

  第二十願の意

(64) ª二十ノ願ノコヽロナリ自力ノ念仏ヲ願ジタマヘリº

しんこうよくしょう

じっぽうしゅじょう方便ほうべん

*みょうごう真門しんもんひらき​て​ぞ

不果遂者と願じ​ける

ツヰニハタシトゲントナリ

(650568)

*すいがんに​よりて​こそ

しゃ善本ぜんぽん徳本とくほん

¬弥陀みだきょう¼ に​あらはし​て

*いちじょうを​すすめ​ける

(66)

じょうさんりき称名しょうみょう

すいの​ちかひ​にし​て​こそ

ハタシトグベシ

をしへ​ざれ​どもねん

真如しんにょもんてんにゅうする

ウツリイルトイフ

  疑惑の過失

(67)

安楽あんらくじょうを​ねがひ​つつ

りきしんを​え​ぬ​ひと​は

ぶっ思議しぎを​うたがひ​て

へんまんに​とまる​なり

  弥陀法の難信

(68)

如来にょらいこうに​あひ​がたく

ヨニイデタマフコトカタシトナリ

諸仏しょぶつきょうどうきき​がたし

さつしょうぼうきく​こと​も

りょうこうにも*まれら​なり

(69)

ぜんしきに​あふ​こと​も

をしふる​こと​も​また​かたし

よく​きく​こと​も​かたけれ​ば

しんずる​こと​も​なほ​かたし

(70)

*一代いちだいしょきょうしんより​も

がんしんぎょうなほ​かたし

なんちゅうなんと​とき​たまひ

カタキガナカニカタシトナリ

無過むかなんと​のべ​たまふ

コレニスギテカタキコトナシトナリ

  聖浄の二門

(710569)

ねんぶつじょうぶつこれしんしゅう

まんぎょう諸善しょぜんこれもん

権実ごんじつしんを​わか​ず​して

ねんじょう*え​ぞ​しら​ぬ

(72)

しょうどうごん方便ほうべん

しゅじょうひさしく​とどまり​て

しょてんと​ぞ​なる

*がんいちじょうみょうせよ

じょう ¬だいきょうの¼ こころ

観経讃

¬かんぎょうの¼ こころ

しゅ

  韋提の別選

(73)

恩徳おんどく広大こうだいしゃ如来にょらい

だいにんちょくし​て​ぞ

光台こうだい現国げんこくの​その​なか​に

安楽あんらくかいを​えらば​しむ

  阿闍世の逆害

(74)

びんしゃおうちょくせ​しめ

宿しゅくいんそのを​また​ず​して

*仙人せんにん殺害せつがいの​むくひ​には

*しちじゅうの​むろ​に​とぢ​られ​き

(75)

じゃおうしんして

オモテノイカリ

コヽロノイカリ

我母がもぞくと​しめし​て​ぞ

どうははがいせ​ん​と

ソコナフトナリ

つるぎ​を​ぬき​て​むかひ​ける

(760570)

耆婆ぎば月光がっこうねんごろに

せん陀羅だらと​はぢ​しめ​て

不宜ふぎじゅうそうし​て​ぞ

コヽニトヾマルベカラズトマフシケルナリ

闍王じゃおうぎゃくしんいさめ​ける

(77)

耆婆ぎば大臣だいじんおさへ​て​ぞ

却行きゃくぎょう退たいせ​しめ​つつ

シリゾキユカシメキ

闍王じゃおうつるぎ​を​すて​しめ​て

だいを​みや​にきんじ​ける

イマシメシナリ

  聖衆の善化

(78)

弥陀みだしゃ方便ほうべんして

なん目連もくれん富楼那ふるなだい

だっ闍王じゃおうびんしゃ

耆婆ぎば月光がっこうぎょうとう

(79)

*だいしょうおのおの​もろともに

ぼんていの​つみびと​を

ぎゃくあくもらさ​ぬ誓願せいがん

方便ほうべんいんにゅうせしめ​けり

(80)

しゃだい方便ほうべんして

*じょうえんじゅくすれば

*ぎょう大臣だいじんしょうとして

闍王じゃおうぎゃくあくこうぜしむ

  廃立の経意

(81)

じょうさんしょ各別かくべつ

りき三心さんしんひるがへし

如来にょらい利他りた信心しんじん

ホンガンシンジチノシンジムナリ

つうにゅうせん​と​ねがふ​べし

0571じょう ¬かんぎょうの¼ こころ

弥陀経讃

¬弥陀みだきょうの¼ こころ

しゅ

  弥陀の名称

(82)

じっぽうじんかい

ねんぶつしゅじょうをみそなはし

摂取せっしゅして​すて​ざれ​ば

オサメトリタマフトナリ

弥陀みだと​なづけ​たてまつる

  諸仏の讃嘆

(83)

恒沙ごうじゃ塵数じんじゅ如来にょらい

*まんぎょうしょうぜんきらひ​つつ

みょうごう思議しぎ信心しんじん

ひとしく​ひとへに​すすめ​しむ

(84)

じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつ

*ごく難信なんしんの​のり​を​とき

じょくあくの​ため​に​とて

証誠しょうじょうねんせしめ​たり

(85)

諸仏しょぶつねん証誠しょうじょう

*がんじょうじゅの​ゆゑ​なれば

金剛こんごうしんを​え​ん​ひと​は

弥陀みだ大恩だいおんほうず​べし

  濁世の出要

(86)

じょくあくあくかい

じょくあく邪見じゃけんしゅじょうには

弥陀みだみょうごうあたへ​て​ぞ

恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつすすめ​たる

0572じょう ¬弥陀みだきょうの¼ こころ

諸経讃

しょきょうのこころによりて弥陀みださん

しゅ

  仏徳の讃嘆

(87)

みょうたいを​あはれみ​て

法身ほっしん光輪こうりんきは​も​なく

ヒカリナリ

無礙むげこうぶつと​しめし​て​ぞ

あんにょうかい影現ようげんする

アラハレタマフ

(88)

おんじつじょう弥陀みだぶつ

じょくぼんを​あはれみ​て

しゃ牟尼むにぶつと​しめし​て​ぞ

*迦耶がやじょうには応現おうげんする

(89)

ひゃくせんていこうを​へ​て

ひゃくせんていの​した​を​いだし

した​ごとりょうの​こゑ​をして

弥陀みだを​ほめ​ん​に​なほ​つき​じ

  行者の証悟

(90)

だいしょうおうと​とき​たまふ

シヤカ仏ナリ

ユキヤスシトナリ

じょうを​うたがふしゅじょうをば

げんにんと​ぞ​なづけ​たる

マナコナキヒトヽイフ

無耳むににんと​ぞ​のべ​たまふ

ミヽナキヒトヽイフ

(91)

じょうじょうしんだつ

マコトニサトリヒラクナリ

しんだつ如来にょらいなり

しんだつに​いたり​て​ぞ

あい無疑むぎと​は​あらはるる

ヨクノコヽロナシウタガフコヽロナシトナリ

(920573)

*びょうどうしんを​うる​とき​を

いっ子地しじと​なづけ​たり

いっ子地しじぶっしょうなり

あんにょうに​いたり​て​さとる​べし

(93)

如来にょらいすなはちはんなり

はんぶっしょうと​なづけ​たり

ぼんにして​は​さとら​れ​ず

あんにょうに​いたり​てしょうす​べし

(94)

信心しんじんよろこぶ​その​ひと​を

如来にょらいと​ひとし​と​とき​たまふ

だい信心しんじんぶっしょうなり

ぶっしょうすなはち如来にょらいなり

(95)

しゅじょう有礙うげ*さとり​にて

ヨロヅノコトサヘラルヽコヽロナリ

無礙むげぶっを​うたがへ​ば

ぞう婆羅ばらびん陀羅だらごくにて

こうしゅに​しづむ​なり

じょうしょきょうのこころ

現世利益讃

げんやくさん

じゅうしゅ

  鎮護国家の益

(96)

弥陀みだ如来にょらいらいして

キタリテアハレミタマフ

息災そくさい延命えんめいのために​とて

シチナンヲトヾメイノチヲノベタマフナリ

¬*金光こんこうみょう¼ の 「寿じゅりょうぼん

コノジユリヤウホムハミダノトキタマヘルナリ

とき​おき​たまへ​る​みのり​なり

(970574)

さん*でんぎょうだい

こく人民にんみんを​あはれみ​て

*七難しちなんしょうめつ誦文じゅもんには

南無なも弥陀みだぶつを​となふ​べし

  罪障消滅の益

(98)

一切いっさいどくに​すぐれ​たる

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

さん重障じゅうしょうみな​ながら

オモキツミナリ

かならずてんじてきょうなり

カロクナシスクナクナスウスクナス

(99)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

このやくきは​も​なし

てんりんの​つみ​きえ​て

*じょうごう*ちゅうようのぞこり​ぬ

  諸衆護念の益

(100)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

梵王ぼんてんたいしゃくきょう

諸天しょてん善神ぜんじんことごとく

よる​ひる​つねに​まもる​なり

(101)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

*てん大王だいおうもろともに

よる​ひる​つねに​まもり​つつ

よろづ​のあくを​ちかづけ​ず

アシキオニナリ

(102)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

*堅牢けんろう地祇じぎそんきょう

かげ​と​かたち​と​の​ごとくに​て

よる​ひる​つねに​まもる​なり

(1030575)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

*なん跋難ばつなんだいりゅうとう

りょうりゅうじんそんきょう

よる​ひる​つねに​まもる​なり

(104)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

*えん法王ほうおうそんきょう

*どうみょうかんみな​ともに

よる​ひる​つねに​まもる​なり

(105)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

*他化たけてんだいおう

しゃ牟尼むにぶつの​みまへ​にて

まもら​ん​と​こそ​ちかひ​し​か

(106)

天神てんじん地祇じぎは​ことごとく

ぜんじんと​なづけ​たり

これら​の善神ぜんじんみな​ともに

ねんぶつの​ひと​を​まもる​なり

(107)

願力がんりき思議しぎ信心しんじん

だいだいしんなり​けれ​ば

てんに​みて​るあくじん

みな​ことごとく​おそる​なり

(108)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

観音かんのんせいは​もろともに

恒沙ごうじゃ塵数じんじゅさつ

かげ​の​ごとくにに​そへ​り

(1090576)

無礙むげこうぶつの​ひかり​には

しゅ弥陀みだましまし​て

ぶつおのおの​ことごとく

真実しんじつ信心しんじんを​まもる​なり

(110)

南無なも弥陀みだぶつを​となふれ​ば

じっぽうりょう諸仏しょぶつ

ひゃくじゅうせんじゅうにょうして

よろこび​まもり​たまふ​なり

じょうげんやく

勢至讃

¬*しゅりょうごんぎょう¼ によりてだいせいさつさんしたてまつる

はっしゅ

  念仏の円通

(111)

せい*ねんぶつ円通えんずうして

*じゅうさつもろともに

すなはちより​たた​しめ​て

仏足ぶっそくちょうらいせしめ​つつ

(112)

きょうしゅそんに​まうさ​しむ

おうじゃくごうしゃこう

ぶつに​いで​たまへ​り​き

りょうこうと​まうし​けり

(113)

*じゅう如来にょらいあひ​つぎ​て

じゅうこうを​へ​たまへ​り

さい如来にょらいを​なづけ​て​ぞ

ちょう日月にちがつこうと​まうし​ける

  念仏三昧の徳

(1140577)

ちょう日月にちがつこう*このには

ねんぶつ三昧ざんまいをしへ​しむ

じっぽう如来にょらいしゅじょう

いっの​ごとく憐念れんねん

(115)

ははを​おもふ​が​ごとくに​て

しゅじょうぶつおくすれ​ば

*現前げんぜん当来とうらいとほから​ず

如来にょらい拝見はいけんうたがは​ず

(116)

*染香ぜんこうにんの​そのには

こうある​が​ごとくなり

これ​を​すなはち​なづけ​て​ぞ

*香光こうこうしょうごんと​まうす​なる

  自利利他の徳

(117)

われ​もと*いんに​あり​し​とき

ねんぶつしんを​もち​て​こそ

しょうにんには​いり​しか​ば

いま​このしゃかいにして

(118)

ねんぶつの​ひと​を摂取せっしゅして

じょうせしむる​なり

だいせいさつ

大恩だいおんふかくほうず​べし

じょうだいせいさつ

*源空げんくうしょうにんほんなり。

 

底本は龍谷大学蔵文明五年蓮如上人開版本(文明本)。
称讃浄土教… この引文は註釈版にない。 聖典全書 (中段・国宝本) の原文より有国が書き下した。
弥陀の名号… 冠頭の二首の和讃は、 念仏する者の中に、 本願を信じて称える者と、 疑いながら称える者があることを示して、 信を勧め疑を誡められたものである。
誓願不思議 阿弥陀仏の誓願せいがんは人間の思慮分別や議論を超えているので不思議という。
宮殿 へん (方便化土けど) 七宝の宮殿。 本願疑惑の行者はこの宮殿に生れて五百年の間、 三宝を見聞せず、 じょうやくすることができないという。
釈して…安養といふ 通常は 「釈して無量寿と名づく。 経にへて奉讃す。 また安養ともいふ」 と読む。 ¬讃弥陀偈¼ を経典と同等とみて、 本文のように読み改めたのであろう。
せしむれば したてまつれば。
 ¬大経¼ (下) の 「往覲おうごん」 のこと。
 「薫」 は底本には 「勲」 とある。
三十六百千億 浄土のれんには百千億の花びらがあり、 その花びらに青・白・玄・黄・朱・紫の六光があって相互に照らし合うから六六三十六の百千億の光になる。 一即一切、 一切即一という無礙むげの相をあらわしている。
しめて たてまつりて。
阿弥陀如来… 以下は ¬観経¼ に出る二尊と十三の聖者 (雨行大臣は ¬涅槃経¼ に出る) を列挙したもの。
出世の本意 釈尊がこの世に出現した本意、 真の目的。
饒王仏 →在王ざいおうぶつ
衆善の仮門 諸善万行を修めて往生を願うごんの法門。
現其人前 臨終にその人の前に仏が現れる。 来迎らいこうの意。
名号の真門 名号を自己の善根ぜんごんとして称える自力念仏の法門。
果遂の願 第二十願。 果遂は 「はたしとげる」 という意で、 一には仮土けど往生を、 二には第十八願 (がん) への転入をはたしとげさせるということ。
一乗の機を… 本願一乗の法を受けとることのできるものに育てたという意。
まれらなり めったにない。
一代諸教 釈尊が一生の間に説いた教法。
えぞしらぬ とうてい知ることができない。
悲願の一乗 大悲の願によって成就された、 万人を平等に成仏せしめる唯一絶対の教法。
仙人殺害 仙人は三年後にはびんしゃおうの太子として生れかわるべく定まっていたが、 王は早く太子が欲しいばかりにその時期をまたないで仙人を殺害した。
七重のむろ 七重に囲まれ閉ざされた部屋。
却行而退 「却行して退く」 あとずさりすること。
大聖 前首に列挙した人々が還相げんそうしょうじゃであることを示す。
浄土の機縁 浄土教が説き明かされる機縁。 じゃの逆悪を指す。
雨行… だいだっが阿闍世に語った過去の因縁いんねんが本当であるということを雨行大臣 (第78首の行雨はその異称) が証言して、 阿闍世の逆悪が起った。
万行の少善 念仏を善根ぜんごんどくというのに対し、 それ以外のあらゆる行 (万行) を少善とする。
極難信ののり きわめて信じ難い教法。 →難信なんしんほう
悲願 第十七願を指す。
平等心 愛情をこえた怨親おんしん平等の心をいう。
さとり 了見。 考え。
金光明 →金光こんこう明経みょうきょう
伝教大師 →さいちょう
七難… ¬七難しちなんしょうめつこくじゅ¼ に七難等の滅除に言及して 「依正安穏にして念仏を修せん」 とある。
四天大王 →天王てんのう
難陀跋難 八大竜王の中の二竜王。 竜王は仏法を守護するじん
炎魔法王 えんおうのこと。
五道の冥官 地獄・餓鬼がきちくしょう・人・天の五道の罪をさばく冥界の官吏。
他化天の大魔王 欲界よくかいの最上界である他化たけざいてん (第六天) の魔王。
五十二菩薩 勢至菩薩とともに ¬首楞厳経¼ の会座えざに列なった菩薩たち。
十二の如来 →じゅうこう
この身 勢至菩薩を指す。
現前当来 現在と未来。 この世と浄土。
染香人 仏の智慧ちえの香りに染まった人。 念仏の行者をいう。
香光荘厳 阿弥陀仏よりたまわった智慧の香りと光によって、 念仏者の人生が美しく飾られること。
因地 ここでは勢至菩薩がまだ無生法忍の果を得ていない時の意。
源空聖人… 法然ほうねん上人は勢至菩薩のしんと信じられていた。