^*▲¬称讃浄土経¼ にのたまはく、 玄奘三蔵の訳なり
^「▲たとひ百千倶胝那由他劫を経て、 それ無量百千倶胝那由他の舌をもつて、 一々の舌の上に無量の声を出して、 その功徳を讃めむに、 また尽くることあたはじと。」 文
0555◎浄 土 和 讃
○冠頭讃
◎(1) 勧信
▲*弥陀の名号となへつつ
信心まことにうるひとは
*憶念の心つねにして
仏恩報ずるおもひあり
(2) 誡疑
▲*誓願不思議をうたがひて
御名を称する往生は
▲*宮殿のうちに五百歳
むなしくすぐとぞときたまふ
○徳号列示
^0556¬*讃阿弥陀仏偈¼ にいはく *曇鸞御造
^▲南無阿弥陀仏 *釈して ¬無量寿傍経¼ と名づく、 讃めたてまつりてまた安養といふ。
^▲成仏よりこのかた十劫を歴たまへり、 寿命まさに量りあることなし、 *法身の*光輪*法界に遍して、 *世の盲冥を照らしたまふ、 かるがゆゑに頂礼したてまつる。
・阿弥陀三十七号
^また *▲1無量光と ▲2真実明と号く、 また ▲3無辺光と ▲4平等覚と号く、 また ▲5無礙光と ▲6難思議と号く、 また ▲7無対光と ▲8畢竟依と号く、 また ▲9光炎王と ▲10大応供と号く、 また ▲11清浄光と号く、 また ▲12歓喜光と ▲13大安慰と号く、 また ▲14智慧光と号く、 また ▲15不断光と号く、 また ▲16難思光と号く、 また ▲17無称光と号く、 ▲18超日月光と号けたてまつる。
^▲19無等等 ▲20広大会 ▲21大心海 ▲22無上尊 ▲23平等力 ▲24大心力 ▲25無称仏 ▲26婆伽婆 ▲27講堂 ▲28清浄大摂受 ▲29不可思議尊 ▲30道場樹 ▲31真無量 ▲32清浄楽 ▲33本願功徳聚 ▲34清浄勲 ▲35功徳蔵 ▲36無極尊 ▲37南無不可思議光 以上略抄なり。
^¬*十住毘婆娑論¼ にいはく
▲*自在人 我礼 ▲*清浄人 帰命 ▲*無量徳 称讃 以上
○讃弥陀偈讃
讃0557阿弥陀仏偈和讃
愚禿親鸞作
南無阿弥陀仏
Ⅰ 仏の成道
(3) 十劫成道
▲弥陀成仏のこのかたは
いまに十劫をへたまへり
法身の光輪きはもなく
世の盲冥をてらすなり
Ⅱ 如来の荘厳
ⅰ 無量光
(4)
▲智慧の光明はかりなし
*有量の諸相ことごとく
光暁かぶらぬものはなし
真実明に*帰命せよ
ⅱ 無辺光
(5)
▲解脱の光輪きはもなし
*光触かぶるものはみな
有無をはなるとのべたまふ
平等覚に帰命せよ
ⅲ 無礙光
(6)
▲*光雲無礙如虚空
一切の有礙にさはりなし
光沢かぶらぬものぞなき
難思議を帰命せよ
ⅳ 無対光
(7)
▲清浄光明ならびなし
*遇斯光のゆゑなれば
一切の*業繋ものぞこりぬ
畢竟依を帰命せよ
ⅴ 光炎王
(80558)
▲仏光照曜最第一
光炎王仏となづけたり
▲三塗の黒闇ひらくなり
大応供を帰命せよ
ⅵ 清浄光
(9)
▲道光明朗超絶せり
清浄光仏とまうすなり
ひとたび光照かぶるもの
*業垢をのぞき解脱をう
ⅶ 歓喜光
(10)
▲*慈光はるかにかぶらしめ
ひかりのいたるところには
*法喜をうとぞのべたまふ
大安慰を帰命せよ
ⅷ 智慧光
(11)
▲無明の闇を破するゆゑ
智慧光仏となづけたり
▲一切諸仏・三乗衆
ともに*嘆誉したまへり
ⅸ 不断光
(12)
▲光明てらしてたえざれば
不断光仏となづけたり
▲*聞光力のゆゑなれば
*心不断にて往生す
ⅹ 難思光
(13)
▲仏光*測量なきゆゑに
難思光仏となづけたり
諸仏は往生嘆じつつ
弥陀の功徳を称せしむ
ⅺ 無称光
(140559)
▲神光の*離相をとかざれば
無称光仏となづけたり
*因光成仏のひかりをば
諸仏の嘆ずるところなり
ⅻ 超日月光
(15)
▲光明月日に勝過して
超日月光となづけたり
▲釈迦嘆じてなほつきず
無等等を帰命せよ
Ⅲ 聖衆の荘厳
ⅰ 果徳の殊勝
(16)
▲弥陀初会の聖衆は
算数のおよぶことぞなき
浄土をねがはんひとはみな
広大会を帰命せよ
(17)
▲安楽無量の*大菩薩
*一生補処にいたるなり
*普賢の徳に帰してこそ
*穢国にかならず化するなれ
(18)
▲十方衆生のためにとて
如来の法蔵あつめてぞ
本願弘誓に帰せしむる
大心海を帰命せよ
(19)
▲観音・勢至もろともに
慈光世界を*照曜し
有縁を度してしばらくも
休息あることなかりけり
(200560)
▲安楽浄土にいたるひと
*五濁悪世にかへりては
*釈迦牟尼仏のごとくにて
利益衆生はきはもなし
(21)
▲神力自在なることは
*測量すべきことぞなき
不思議の徳をあつめたり
無上尊を帰命せよ
(22)
▲安楽声聞・菩薩衆
人天智慧ほがらかに
身相荘厳みなおなじ
他方に順じて名をつらぬ
(23)
▲顔容端正たぐひなし
精微妙躯非人天
*虚無之身無極体
平等力を帰命せよ
ⅱ 因法の殊勝
(24)
▲安楽国をねがふひと
正定聚にこそ住すなれ
*邪定・不定聚くにになし
諸仏讃嘆したまへり
(25)
▲十方*諸有の衆生は
阿弥陀至徳の御名をきき
*真実信心いたりなば
おほきに*所聞を慶喜せん
(260561)
▲*若不生者のちかひゆゑ
信楽まことにときいたり
一念*慶喜するひとは
往生かならずさだまりぬ
Ⅳ 国土の荘厳
ⅰ 国土の讃嘆
(27)
▲安楽仏土の*依正は
▲法蔵願力のなせるなり
天上天下にたぐひなし
大心力を*帰命せよ
ⅱ 超絶の功徳
(28)
安楽国土の荘厳は
▲釈迦無礙のみことにて
とくともつきじとのべたまふ
▲無称仏を帰命せよ
ⅲ 往生の無数
(29)
▲*已今当の往生は
この土の衆生のみならず
十方仏土よりきたる
無量無数*不可計なり
(30)
▲阿弥陀仏の御名をきき
*歓喜*讃仰せしむれば
功徳の宝を具足して
一念*大利無上なり
(31)
▲たとひ大千世界に
みてらん火をもすぎゆきて
仏の御名をきくひとは
ながく不退にかなふなり
(320562)
▲神力無極の阿弥陀は
無量の諸仏ほめたまふ
東方恒沙の仏国より
無数の菩薩ゆきたまふ
(33)
▲自余の九方の仏国も
菩薩の*往覲みなおなじ
釈迦牟尼如来*偈をときて
無量の功徳をほめたまふ
(34)
▲十方の無量菩薩衆
徳本うゑんためにとて
恭敬をいたし歌嘆す
みなひと婆伽婆を帰命せよ
ⅳ 真化二土
(35)
▲七宝講堂道場樹
*方便化身の浄土なり
十方来生きはもなし
講堂道場礼すべし
(36)
▲妙土広大超数限
本願荘厳よりおこる
清浄大摂受に
稽首帰命せしむべし
(37)
▲*自利利他円満して
*帰命方便巧荘厳
こころもことばもたえたれば
不可思議尊を帰命せよ
(380563)
▲*神力本願及満足
明了堅固*究竟願
慈悲方便不思議なり
真無量を帰命せよ
ⅴ 宝林の讃嘆
(39)
▲宝林・宝樹微妙音
*自然清和の伎楽にて
*哀婉雅亮すぐれたり
清浄楽を帰命せよ
(40)
▲七宝樹林くににみつ
光耀たがひにかがやけり
華・菓・枝・葉またおなじ
本願功徳聚を帰命せよ
(41)
▲清風宝樹をふくときは
*いつつの音声いだしつつ
*宮商和して自然なり
*清浄薫を礼すべし
ⅵ 宝蓮の讃嘆
(42)
▲一々のはなのなかよりは
*三十六百千億の
光明てらしてほがらかに
いたらぬところはさらになし
(43)
▲一々のはなのなかよりは
三十六百千億の
仏身もひかりもひとしくて
相好金山のごとくなり
(440564)
▲相好ごとに百千の
ひかりを十方にはなちてぞ
つねに妙法ときひろめ
衆生を仏道にいらしむる
ⅶ 宝池の讃嘆
(45)
▲七宝の宝池いさぎよく
八功徳水みちみてり
▲無漏の依果不思議なり
功徳蔵を帰命せよ
(46)
▲三塗苦難ながくとぢ
*但有自然快楽音
このゆゑ安楽となづけたり
無極尊を帰命せよ
ⅷ 弥陀功徳の結讃
(47)
▲十方三世の無量慧
おなじく一如に乗じてぞ
二智円満道平等
摂化随縁不思議なり
(48)
▲弥陀の浄土に帰しぬれば
すなはち諸仏に帰するなり
一心をもちて一仏を
ほむるは*無礙人をほむるなり
(49)
▲*信心歓喜慶所聞
乃曁一念至心者
▲南無不可思議光仏
頭面に礼したてまつれ
(500565)
▲*仏慧功徳を*ほめしめて
十方の有縁にきかしめん
信心すでにえんひとは
つねに仏恩報ずべし
以上四十八首 愚禿親鸞作
*阿弥陀如来 |
*観世音菩薩 |
*大勢至菩薩 |
*釈迦牟尼如来 |
*富楼那尊者 |
*大目犍連 |
*阿難尊者 |
*頻婆娑羅王 |
*韋提夫人 |
*耆婆大臣 |
*月光大臣 |
*提婆尊者 |
*阿闍世王 |
*雨行大臣 |
守門者 |
○大経讃
浄土和讃 愚禿親鸞作
¬大経¼ 意
二十二首
Ⅰ 阿難の請問
(51)
▲尊者*阿難座よりたち
▲世尊の威光を*瞻仰し
*生希有心とおどろかし
*未曽見とぞあやしみし
(52)
▲如来の*光瑞希有にして
阿難はなはだこころよく
*如是之義ととへりしに
▲*出世の本意あらはせり
Ⅱ 釈尊の応答
(530566)
▲*大寂定にいりたまひ
▲如来の光顔たへにして
阿難の*慧見をみそなはし
▲*問斯慧義とほめたまふ
(54)
▲如来*興世の本意には
本願真実ひらきてぞ
▲*難値難見とときたまひ
*猶霊瑞華としめしける
Ⅲ 本願の超異
(55)
▲弥陀成仏のこのかたは
いまに十劫とときたれど
*塵点久遠劫よりも
ひさしき仏とみえたまふ
(56)
▲南無不可思議光仏
▲*饒王仏のみもとにて
十方浄土のなかよりぞ
▲*本願*選択摂取する
Ⅳ 弥陀真実の利益
(57)
▲*無礙光仏のひかりには
*清浄・*歓喜・*智慧光
▲その徳不可思議にして
十方*諸有を利益せり
(58)
▲*至心・信楽・欲生と
十方諸有をすすめてぞ
不思議の*誓願あらはして
*真実報土の因とする
(590567)
▲**真実信心うるひとは
すなはち*定聚のかずにいる
*不退のくらゐにいりぬれば
かならず*滅度にいたらしむ
(60)
▲*弥陀の大悲ふかければ
仏智の不思議をあらはして
*変成男子の願をたて
女人成仏ちかひたり
Ⅴ 第十九願の意
(61)
▲*至心・発願・欲生と
十方衆生を*方便し
*衆善の仮門ひらきてぞ
*現其人前と願じける
(62)
▲*臨終現前の願により
釈迦は諸善をことごとく
¬*観経¼ 一部にあらはして
*定散諸*機をすすめけり
(63)
諸善万行ことごとく
至心発願せるゆゑに
▲往生浄土の方便の
善とならぬはなかりけり
Ⅵ 第二十願の意
(64)
▲*至心・回向・欲生と
十方衆生を*方便し
*名号の真門ひらきてぞ
*不果遂者と願じける
(650568)
▲*果遂の願によりてこそ
釈迦は*善本・徳本を
¬*弥陀経¼ にあらはして
*一乗の機をすすめける
(66)
定散自力の称名は
果遂のちかひに帰してこそ
▲をしへざれども自然に
*真如の門に転入する
Ⅶ 疑惑の過失
(67)
▲安楽浄土をねがひつつ
他力の信をえぬひとは
仏智不思議をうたがひて
▲*辺地*懈慢にとまるなり
Ⅷ 弥陀法の難信
(68)
▲如来の*興世にあひがたく
諸仏の*経道ききがたし
*菩薩の*勝法きくことも
無量劫にも*まれらなり
(69)
▲*善知識にあふことも
をしふることもまたかたし
よくきくこともかたければ
信ずることもなほかたし
(70)
▲*一代諸教の信よりも
*弘願の信楽なほかたし
難中之難とときたまひ
*無過此難とのべたまふ
Ⅸ 聖浄の二門
(710569)
▼念仏成仏これ*真宗
万行諸善これ*仮門
*権実真仮をわかずして
*自然の浄土を*えぞしらぬ
(72)
聖道権仮の方便に
衆生ひさしくとどまりて
*諸有に流転の身とぞなる
*悲願の一乗*帰命せよ
以上 ¬大経¼ 意
○観経讃
¬観経¼ 意
九首
Ⅰ 韋提の別選
(73)
恩徳広大釈迦如来
*韋提夫人に勅してぞ
▲*光台現国のそのなかに
▲*安楽世界をえらばしむ
Ⅱ 阿闍世の逆害
(74)
▲*頻婆娑羅王勅せしめ
宿因その期をまたずして
*仙人殺害のむくひには
*七重のむろにとぢられき
(75)
▲*阿闍世王は瞋怒して
*我母是賊としめしてぞ
無道に母を害せんと
つるぎをぬきてむかひける
(760570)
▲*耆婆・*月光ねんごろに
是*旃陀羅とはぢしめて
*不宜住此と奏してぞ
闍王の逆心いさめける
(77)
▲耆婆大臣おさへてぞ
*却行而退せしめつつ
▲闍王つるぎをすてしめて
韋提をみやに禁じける
Ⅲ 聖衆の善化
(78)
弥陀・釈迦方便して
阿難・目連・富楼那・韋提
達多・闍王・頻婆娑羅
耆婆・月光・行雨等
(79)
*大聖おのおのもろともに
凡愚*底下のつみひとを
*逆悪もらさぬ誓願に
方便引入せしめけり
(80)
釈迦韋提方便して
*浄土の機縁熟すれば
▲*雨行大臣証として
闍王逆悪興ぜしむ
Ⅳ 廃立の経意
(81)
▲定散諸機各別の
自力の*三心ひるがへし
▲如来*利他の信心に
通入せんとねがふべし
0571以上 ¬観経¼ 意
○弥陀経讃
¬弥陀経¼ 意
五首
Ⅰ 弥陀の名称
(82)
▲*十方微塵世界の
念仏の衆生をみそなはし
*摂取してすてざれば
阿弥陀となづけたてまつる
Ⅱ 諸仏の讃嘆
(83)
▲*恒沙*塵数の如来は
*万行の少善きらひつつ
名号不思議の信心を
ひとしくひとへにすすめしむ
(84)
十方恒沙の諸仏は
▲*極難信ののりをとき
*五濁悪世のためにとて
*証誠*護念せしめたり
(85)
諸仏の護念証誠は
*悲願成就のゆゑなれば
金剛心をえんひとは
弥陀の大恩報ずべし
Ⅲ 濁世の出要
(86)
▲五濁悪時悪世界
濁悪邪見の衆生には
弥陀の名号あたへてぞ
恒沙の諸仏すすめたる
0572以上 ¬弥陀経¼ 意
○諸経讃
諸経のこころによりて弥陀和讃
九首
Ⅰ 仏徳の讃嘆
(87)
*無明の大夜をあはれみて
*法身の*光輪きはもなく
無礙光仏としめしてぞ
安養界に*影現する
(88)
*久遠実成阿弥陀仏
*五濁の凡愚をあはれみて
*釈迦牟尼仏としめしてぞ
*迦耶城には*応現する
(89)
▲百千*倶胝の*劫をへて
百千倶胝のしたをいだし
したごと無量のこゑをして
弥陀をほめんになほつきじ
Ⅱ 行者の証悟
(90)
▲*大聖易往とときたまふ
浄土をうたがふ衆生をば
*無眼人とぞなづけたる
*無耳人とぞのべたまふ
(91)
▲*無上上は*真解脱
真解脱は如来なり
真解脱にいたりてぞ
*無愛無疑とはあらはるる
(920573)
▲*平等心をうるときを
**一子地となづけたり
一子地は*仏性なり
安養にいたりてさとるべし
(93)
▲如来すなはち*涅槃なり
涅槃を仏性となづけたり
*凡地にしてはさとられず
安養にいたりて証すべし
(94)
▲信心よろこぶそのひとを
*如来とひとしとときたまふ
▲*大信心は仏性なり
仏性すなはち如来なり
(95)
▲衆生有礙の*さとりにて
無礙の仏智をうたがへば
*曽婆羅頻陀羅地獄にて
多劫衆苦にしづむなり
以上諸経意
○現世利益讃
現世利益*和讃
十五首
Ⅰ 鎮護国家の益
(96)
阿弥陀如来*来化して
*息災延命のためにとて
¬*金光明¼ の 「寿量品」
ときおきたまへるみのりなり
(970574)
*山家の*伝教大師は
国土人民をあはれみて
*七難消滅の*誦文には
南無阿弥陀仏をとなふべし
Ⅱ 罪障消滅の益
(98)
▲一切の功徳にすぐれたる
南無阿弥陀仏をとなふれば
*三世の重障みなながら
かならず転じて*軽微なり
(99)
南無阿弥陀仏をとなふれば
この世の利益きはもなし
流転輪廻のつみきえて
*定業*中夭のぞこりぬ
Ⅲ 諸衆護念の益
(100)
▲南無阿弥陀仏をとなふれば
*梵王・帝釈帰敬す
諸天善神ことごとく
よるひるつねにまもるなり
(101)
南無阿弥陀仏をとなふれば
*四天大王もろともに
よるひるつねにまもりつつ
よろづの悪鬼をちかづけず
(102)
南無阿弥陀仏をとなふれば
*堅牢地祇は尊敬す
かげとかたちとのごとくにて
よるひるつねにまもるなり
(1030575)
南無阿弥陀仏をとなふれば
*難陀・跋難大竜等
無量の竜神尊敬し
よるひるつねにまもるなり
(104)
南無阿弥陀仏をとなふれば
*炎魔法王尊敬す
*五道の冥官みなともに
よるひるつねにまもるなり
(105)
南無阿弥陀仏をとなふれば
*他化天の大魔王
釈迦牟尼仏のみまへにて
まもらんとこそちかひしか
(106)
*天神・地祇はことごとく
善鬼神となづけたり
これらの善神みなともに
念仏のひとをまもるなり
(107)
願力不思議の信心は
大菩提心なりければ
天地にみてる*悪鬼神
みなことごとくおそるなり
(108)
▲南無阿弥陀仏をとなふれば
*観音・*勢至はもろともに
恒沙塵数の菩薩と
かげのごとくに身にそへり
(1090576)
無礙光仏のひかりには
無数の阿弥陀ましまして
化仏おのおのことごとく
真実信心をまもるなり
(110)
▲南無阿弥陀仏をとなふれば
十方無量の諸仏は
百重千重*囲繞して
よろこびまもりたまふなり
以上現世利益
○勢至讃
¬*首楞厳経¼ によりて大勢至菩薩和讃したてまつる
八首
Ⅰ 念仏の円通
(111)
勢至*念仏円通して
*五十二菩薩もろともに
すなはち座よりたたしめて
*仏足頂礼せしめつつ
(112)
教主世尊にまうさしむ
往昔恒河沙劫に
仏世にいでたまへりき
無量光とまうしけり
(113)
*十二の如来あひつぎて
十二劫をへたまへり
最後の如来をなづけてぞ
超日月光とまうしける
Ⅱ 念仏三昧の徳
(1140577)
超日月光*この身には
*念仏三昧をしへしむ
十方の如来は衆生を
一子のごとく憐念す
(115)
子の母をおもふがごとくにて
衆生仏を憶すれば
*現前当来とほからず
如来を拝見うたがはず
(116)
*染香人のその身には
香気あるがごとくなり
これをすなはちなづけてぞ
*香光荘厳とまうすなる
Ⅲ 自利利他の徳
(117)
われもと*因地にありしとき
念仏の心をもちてこそ
*無生忍にはいりしかば
いまこの*娑婆界にして
(118)
念仏のひとを摂取して
浄土に帰せしむるなり
大勢至菩薩の
大恩ふかく報ずべし
以上大勢至菩薩
*源空聖人御本地なり。
底本は龍谷大学蔵文明五年蓮如上人開版本(文明本)。
称讃浄土教… この引文は註釈版にない。 聖典全書 (中段・国宝本) の原文より有国が書き下した。
弥陀の名号… 冠頭の二首の和讃は、 念仏する者の中に、 本願を信じて称える者と、 疑いながら称える者があることを示して、 信を勧め疑を誡められたものである。
誓願不思議 阿弥陀仏の
誓願は人間の思慮分別や議論を超えているので不思議という。
宮殿 辺地 (方便
化土) 七宝の宮殿。 本願疑惑の行者はこの宮殿に生れて五百年の間、 三宝を見聞せず、
有情を
利益することができないという。
釈して…安養といふ 通常は 「釈して無量寿と名づく。 経に傍へて奉讃す。 また安養ともいふ」 と読む。 ¬讃弥陀偈¼ を経典と同等とみて、 本文のように読み改めたのであろう。
世の盲冥 無明煩悩の衆生を指す。
無量光… 以下の三十七号は阿弥陀仏の徳号。
自在人・清浄人・無量徳 「易行品」 から抄出した阿弥陀仏の徳号。
有量の諸相 「よろづの衆生なり」 (左訓)
真実明 「真といふは偽りへつらはぬを真といふ。 実といふはかならずもののみ (実) となるをいふなり」 (異本左訓)
光触 「ひかりを身にふるるといふこころなり」 (異本左訓)
光雲無礙如虚空 「ひかり雲のごとくしてさはりなきこと虚空のごとし」 (左訓)
光沢 「ひかりにあたるゆゑに智慧の出でくるなり」 (異本左訓)
遇斯光… 「弥陀仏にまうあひぬるゆゑに」 (左訓)
業繋 「罪の縄にしばらるるなり」 (左訓)
業垢 「悪業煩悩なり」 (左訓)
慈光 「あはれむひかり。 慈は父の慈悲にたとふるなり」 (異本左訓)
法喜 「みのりを喜ぶなり」 (左訓)
聞光力 「弥陀の御ちかひを信じまゐらするなり」 (左訓)
心不断 「弥陀の誓願を信ぜる心たえずして往生すとなり」 (左訓)。
因光成仏 「光きはなからんと誓ひたまひて、 無礙光仏となりておはしますとしるべし」 (左訓) 阿弥陀仏の光明に因って往生人が成仏するという義、 光明無量の願を因として阿弥陀仏となったという義とがある。 左訓は後の義を示したもの。
普賢の徳 「われら衆生、 極楽にまゐりなば、 大慈大悲をおこして十方に至りて衆生を利益するなり。 仏の至極の慈悲を普賢とまうすなり」 (異本左訓)
虚無之身無極体 「法身如来なり」 (左訓)
邪定不定聚 「邪定は万行万善自力の往生、 ¬観経¼ の説。 不定聚は ¬小経¼ のこころ、 行は不可思議なれども、 われら自力に修行するあひだ不定聚と説く」 (異本左訓)
諸有の… 「あらゆる。 諸有は二十五有の
衆生といふ。 われら衆生は二十五有に過ぎて生るるといふこころなり」 (異本左訓) →
二十五有
真実信心… 如来回向の真実信心が到りとどいたなら。
所聞を… 「信ずることを得てよろこぶなり」 (左訓)
若不生者のちかひ 「わがちかひを信ぜんもの、 もし生れずは仏にならじといふこころなり」 (異本左訓) 第十八願を指す。
慶喜 「信をえてのちによろこぶとなり」 (左訓)
依正 「依報はよろづの宝樹、 宝池、 よろづの飾りなり。 すべての飾りの名なり。正報はわれらが極楽にまいりなば神通自在になるをいふなり」 (古写本左訓) →
依正二報
帰命 「仰せにしたがふ」 (異本左訓)
已今当の往生 「過去に生る、 今生に生る、 未来に生るるなり」 (左訓)。
不可計 「かぞふべからずとなり」 (左訓)。
歓喜讃仰 「よろこびほめ仰ぐといふ」 (左訓) 「歓は身をよろこばしむるをいふなり、 喜は心をよろこばしむるをいふなり」 (異本左訓)
讃仰せしむれば 讃仰したてまつれば。
大利 「涅槃に入るを大利といふなり」 (異本左訓)。
往覲 「往生し仏をみたてまつる」 (左訓)
偈 ¬大経¼ (下) の 「往覲偈」 のこと。
婆伽婆 梵語バガヴァット (bhagavat) の音写。 世尊と漢訳する。 ここでは阿弥陀仏の徳号。
方便化身の浄土 「辺地懈慢国なり、 疑惑胎生の浄土なり」 (左訓)。
自利利他… 「自利は阿弥陀の仏になりたまひたるこころ、 利他は衆生を往生せしむるこころ、 円は善悪すべてわかず、 よきことになしてましますこころの満ちたるこころなり。 みづからも仏になり、 衆生も仏になることを円満すといふなり」 (異本左訓)
帰命方便… 衆生を帰命せしめる慈悲方便としてのたくみな浄土の荘厳相。
神力本願… 不可思議の救済力をもった阿弥陀仏の本願の内容を満足、 明了、 堅固、 究竟の四つに分けて説く。
究竟願 どんな困難にもくじけることなく必ず成就する願。
自然清和 おのずから発する響きがきよらかに調和していること。
哀婉雅亮 「あはれに、 すみ、 ただしく、 さえたり」 (左訓)。
清浄楽 清浄の音楽を成就した仏という意。
いつつの音声 宮・商・角・徴・羽の五音階。
宮商和して 宮・商などの五音がよく調和して。
清浄薫 声がきよらかににおう仏という意。 「薫」 は底本には 「勲」 とある。
三十六百千億 浄土の蓮華には百千億の花びらがあり、 その花びらに青・白・玄・黄・朱・紫の六光があって相互に照らし合うから六六三十六の百千億の光になる。 一即一切、 一切即一という無礙の相をあらわしている。
但有自然快楽音 ただ自然快楽の音声のみがある。
無礙人 生死即涅槃、 煩悩即菩提という無礙の智を得た諸仏のこと。
信心歓喜… 「信巻」 215頁12行以下の本文および脚註参照。
仏慧功徳 仏慧は仏の真実の智慧、 功徳は国土・仏・菩薩の三種荘厳のこと。 異本には 「仏恵功徳」 とあり、 「大慈大悲と功徳とを」 の左訓がある。
ほめしめて ほめたてまつりて。
阿弥陀如来… 以下は ¬観経¼ に出る二尊と十三の聖者 (雨行大臣は ¬涅槃経¼ に出る) を列挙したもの。
生希有心 「ありがたきこころといふ」 (左訓)
未曽見 いまだかつてみたことがない。
光瑞 光り輝く奇端の相 (めでたいすがた)。
如是之義… 「かくのごときの義、 いかなる御ことと問いたてまつるにとなり」 (異本左訓)
出世の本意 釈尊がこの世に出現した本意、 真の目的。
問斯慧義 「この慧義を問ふ」 慧義は大寂定に入った釈尊の智慧のいわれ。
興世の… 「世に出でたまふこころはといふ」 (左訓)
至心信楽欲生 「本願のこころ、 第十八の選択本願なり」 (頭註) 「至心に信楽してわが国に生れんとおもへ」 と願われていることをいう。
真実信心… 第十一願の意を述べた一首。
弥陀の大悲… 「三十五の願のこころなり」 (頭註)
至心発願… 「十九の願のこころ、 諸行往生なり」 (頭註)
衆善の仮門 諸善万行を修めて往生を願う権仮の法門。
現其人前 臨終にその人の前に仏が現れる。 来迎の意。
臨終現前の願 第十九願の願名。
至心回向… 「二十の願のこころなり、 自力の念仏を願じたまへり」 (頭註)
名号の真門 名号を自己の善根として称える自力念仏の法門。
不果遂者 「つひにはたしとげんとなり」 (左訓)
果遂の願 第二十願。 果遂は 「はたしとげる」 という意で、 一には仮土往生を、 二には第十八願 (弘願) への転入をはたしとげさせるということ。
善本徳本 「因位を善本といふ。 果位を徳本といふ」 (異本左訓) 因位の万善、 果位の万徳をおさめた名号のこと。
一乗の機を… 本願一乗の法を受けとることのできるものに育てたという意。
真如の門… 「法身のさとりを開く身とうつり入るとまうすなり」 (異本左訓) 第十八願の他力念仏をいう。
興世に… 「世に出でたまふこと難しとなり」 (左訓)
経道 経典に教示された解脱の道。
勝法 「すぐれたる法。 勝法といふは六度波羅蜜なり」 (異本左訓)
まれらなり めったにない。
一代諸教 釈尊が一生の間に説いた教法。
弘願の信楽 第十八願の信心。
無過此難 「これに過ぎて難きことなしとなり」 (左訓)
えぞしらぬ とうてい知ることができない。
悲願の一乗 大悲の願によって成就された、 万人を平等に成仏せしめる唯一絶対の教法。
光台現国 「釈迦如来の御ひかりのなかにさまざまの国を現じたまふなり」 (異本左訓)
仙人殺害 仙人は三年後には頻婆娑羅王の太子として生れかわるべく定まっていたが、 王は早く太子が欲しいばかりにその時期をまたないで仙人を殺害した。
七重のむろ 七重に囲まれ閉ざされた部屋。
我母是賊 「わが母はこれ賊なり」
不宜住此… 「ここにとどまるべからずとまうしけるなり」 (左訓)。
却行而退 「却行して退く」 あとずさりすること。
大聖 前首に列挙した人々が還相の聖者であることを示す。
底下 「そこ。 われらは大海の底に沈めるとなり」 (異本左訓)
浄土の機縁 浄土教が説き明かされる機縁。 阿闍世の逆悪を指す。
雨行… 提婆達多が阿闍世に語った過去の因縁が本当であるということを雨行大臣 (第78首の行雨はその異称) が証言して、 阿闍世の逆悪が起った。 「信巻」 所引の ¬涅槃経¼ の文【117】参照。
利他の信心 「本願真実の信心なり」 (左訓)。
摂取して… 「
摂めとる。 ひとたびとりて永く捨てぬなり。 摂はものの逃ぐるを追はへ取るなり。 摂はをさめとる、 取は迎へとる」 (異本左訓) →
摂取不捨
万行の少善 念仏を多善根多功徳というのに対し、 それ以外のあらゆる行 (万行) を少善とする。
悲願 第十七願を指す。
無明 「煩悩の王を無明といふなり」 (異本左訓)
法身 「法身はすべてこころもことばも及ばぬなり。 虚空に満ちたまへり」 (異本左訓)
応現 衆生に応じたすがたで現れること。
大聖易往 「釈迦仏なり、 往きやすしとなり」 (左訓)
無上上… 「法身を無上上ともいひ、 真解脱ともいふ」 (異本左訓)
真解脱 「まことにさとり開くなり」 (左訓)。
無愛無疑 「欲のこころなし、 疑うこころなしとなり」 (左訓)
平等心 愛情をこえた怨親平等の心をいう。
一子地 「三界の衆生をわがひとり子とおもふことを得るを一子地といふなり」 (異本左訓)
凡地 凡夫の地位、 境涯。
大信心 「われらが弥陀の本願他力を信じたるを大信心といふ。 無上菩提に至るを大信といふなり」 (異本左訓)
さとり 了見。 考え。
曽婆羅頻陀羅地獄 「無間地獄の衆生をみては、 あら楽しげやとみるなり。 仏法を謗りたるもの、 この地獄に堕ちて八万劫住す。 大苦悩を受く」 (異本左訓)
和讃 「やはらげほめ」 (異本左訓)
来化 「来りてあはれみたまふ」 (左訓)
息災延命 「七難をとどめいのちを延べたまふなり」 (左訓)
山家 「比叡の山なり」 (異本左訓)
七難… ¬七難消滅護国頌¼ に七難等の滅除に言及して 「依正安穏にして念仏を修せん」 とある。
誦 「そらにうかべよむを誦といふ」 (異本左訓)
軽微 「軽くなし、 少なくなす、 うすくなす意」 (左訓)
難陀跋難 八大竜王の中の二竜王。 竜王は仏法を守護する鬼神。
炎魔法王 炎魔は梵語ヤマ (Yama) の音写。 地獄の主。 閻魔王ともいう。
五道の冥官 地獄・餓鬼・畜生・人・天の五道の罪をさばく冥界の官吏。
五十二菩薩 勢至菩薩とともに ¬首楞厳経¼ の会座に列なった菩薩たち。
この身 勢至菩薩を指す。
現前当来 現在と未来。 この世と浄土。
染香人 「かうばしき香、 身に染めるがごとしといふ」 (異本左訓) 仏の智慧の香りに染まった人。 念仏の行者をいう。
香光荘厳 「念仏は智慧なり」 (異本左訓) 阿弥陀仏よりたまわった智慧の香りと光によって、 念仏者の人生が美しく飾られること。
因地 ここでは勢至菩薩がまだ無生法忍の果を得ていない時の意。
無生忍 「不退の位とまうすなり。 かならず仏になるべき身となるとなり」 (異本左訓)
源空聖人… 法然上人は勢至菩薩の化身と信じられていた。