0477◎浄土文類聚鈔
*愚禿釈*親鸞集
(色はそれぞれ 教巻 行巻 信巻 行・信巻 証巻 真巻 化巻 との対応を示す。)
一 正釈
Ⅰ 序分【序】
ⅰ 大綱序
a 讃嘆法益
【1】 ◎^▲それ*無礙難思の光耀は、 苦を滅し楽を証す。 ▲*万行円備の嘉号は、 障を消し疑を除く。 *末代の教行、 もつぱらこれを修すべし。 ▲*濁世の目足、 かならずこれを勤むべし。
◎夫0261レ无難思ノ光耀ハ、滅シ↠苦ヲ証ス↠楽ヲ。万行円備ノ嘉号ハ、ミヤウガウナリ消シ↠障ヲ除ク↠疑ヲ。末*代ノ教行、ホトケノミノリナリ専ラ応シ↠修ス↠*此ヲ。濁世ノ目足、必ズ可シ↠勤ム↠斯ヲ。
一 Ⅰ ⅰ b 勧進機受
^▲しかれば、 最勝の*弘誓を受行して、 穢を捨て浄を欣へ。 ▲如来の教勅を奉持して、 恩を報じ徳を謝せよ。
爾レ者*受↢行シ最勝ノ弘誓ヲ↡而捨テ↠穢ヲ忻ヘ↠浄ヲ。奉↢持シ如来ノ教勅ヲ↡而報ジ↠恩ヲ謝ヨ↠徳ヲ。
一 Ⅰ ⅱ 縁起序
^▲ここに*片州の愚禿 (親鸞)、 印度・*西蕃の論説に帰し、 華漢 (中国)・日域 (日本) の*師釈を仰いで、 ▲*真宗の*教行証を敬信す。 ことに知んぬ、 *仏恩窮尽しがたければ、 あきらかに浄土文類聚を用ゐるなり。
爰ニ片州ノ愚禿、帰シ↢印度・*西蕃ノ論説ニ↡、仰ギテ↢華漢・日域ノ師釈ヲ↡、敬↢信ス真宗ノ教行証ヲ↡。特ニ知ヌ、仏恩叵レバ↢窮尽シ↡明ニ用ルナリ↢浄土ノ文類聚ヲ↡矣。
一 Ⅱ 本文
ⅰ 正釈三法【三法列釈】
a 正明教法
イ 指示経典
【2】 ^▲しかるに*教といふは、 すなはち ¬*大無量寿経¼ なり。
然ニ言フ↠教ト者、則チ¬大无量寿経¼也。
一 Ⅱ ⅰ a ロ 正述大意
(一)標
(二)釈
^▲この経の大意は、 *弥陀、 誓を超発し、 広く*法蔵を開きて、 *凡小を哀れんで選んで*功徳の宝を施することを致す。 *釈迦、 世に出興して、 *道教を*光闡し、 *群萌を拯ひ恵むに*真実の利をもつてせんと欲してなり。
斯ノ経ノ大意者、弥陀超↢発テ於誓ヲ↡、広ク開テ↢法蔵ヲ↡、致ス↧哀ミテ↢凡小ヲ↡選ビテ*施コトヲ↦功徳之宝ヲ↥。釈迦出↢興テ於世ニ↡、光↢闡シ道教ヲ↡、欲テナリ↧拯ヒ↢群萌ヲ↡恵ムニ以テセムト↦真実之利ヲ↥。
一 Ⅱ ⅰ a ロ (三)結
^▲まことにこれ、 如来興世の真説、 奇特最勝0478の妙典、 *一乗究竟の極説、 十方称讃の正教なり。
誠ニ是如来興世之真説、奇特最勝之妙典、一乗究竟之極説、十方称讃之正教也。
一 Ⅱ ⅰ a ハ 明示宗体
^▲如来の*本願を説くを経の*宗致とす、 すなはち仏の*名号をもつて経の*体とするなり。
説クヲ↢如来ノ本願ヲ↡為↢経ノ宗致ト↡、即チ以テ↢仏ノ名号ヲ↡為ル↢経ノ体ト↡也。
一 Ⅱ ⅰ b 正明大行
イ 直釈大行
(一)略釈大行
【3】 ^▲行といふは、 すなはち▲*利他▲円満の大行なり。
言フ↠行ト者、則チ利他円満ノ大行也。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)広釈大行
(Ⅰ)正出願名
^▲すなはちこれ、 諸仏*咨嗟の願 (第十七願) より出でたり。 また*諸仏称名の願と名づけ、 また▽往相正業の願と名づくべし。
即チ是出タリ↠於リ↢諸仏咨嗟之願↡。復名ク↢諸仏0262称*名之願ト↡、亦可シ↠名ク↢往相正業之願ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)正釈大行
・標回向
^▲しかるに▲*本願力の回向に二種の相あり。 一つには↓*往相、 二つには↓*還相なり。
然ニ本願力ノ廻向ニ有リ↢二種ノ相↡。一ニ者往相、二ニ者還相ナリ。
・顕行信
^▲↑往相について↓大行あり、 また↓*浄信あり。
就テ↢往相ニ↡有リ↢大行↡、亦有リ↢浄信↡。
・行体
^▲↑大行といふは、 すなはち*無礙光如来の名を称するなり。
大行トイフ者、則チ称ルナリ↢无光如来ノ名ヲ↡。
・釈名
^▲この行は▲あまねく一切の行を摂し、 *極速円満す。 ゆゑに大行と名づく。
斯ノ行ハ徧ク摂ス↢一切ノ行ヲ↡、極速円満セリ。故ニ名ク↢大行ト↡。
・破満
^▲このゆゑに*称名は、 よく*衆生の一切の*無明を破し、 よく衆生の*一切の志願を*満てたまふ。
是ノ故ニ称名ハ、能ク破ス↢衆生ノ一切ノ无明ヲ↡、能ク満タマフ↢衆生ノ一切ノ志願ヲ↡。
・転釈
^▲称名はすなはち▲*憶念なり。 憶念はすなはち*念仏なり。 念仏はすなはちこれ*南無阿弥陀仏なり。
称名ハ即チ憶念ナリ。憶念ハ即チ念仏ナリ。念仏ハ*則チ是南无阿弥陀仏ナリ。
一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅲ)大行引文
・大経(成就文)
【4】 ^願 (第十七・十八願) 成就の文、 ¬経¼ (*大経・下) にのたまはく、
願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、
^「▲*十方*恒沙の諸仏如来、 みなともに*無量寿仏の*威神功徳*不可思議にましますことを*讃嘆したまふ。
「十方恒沙ノ諸仏如来、皆共ニ讃↢嘆タマフ无量寿仏ノ威神功徳不可思議ナルヲ↡。
^▲*諸有の衆生、 その名号を聞きて*信心歓喜し、 ↓乃至*一念せん。 ▽*至心に回向したまへり。 かの国に生ぜんと願ずれば、 すなはち*往生を得、 *不退転に住す」 と。
諸有ユル衆生、聞テ↢其ノ名号ヲ↡信心歓喜ムコト、乃至一念ム。至心ニ廻向タマヘリ。願ゼバ↠生レムト↢彼ノ国ニ↡、即チ得↢往生ヲ↡、住ムト↢不退転ニ↡。」
・大経(流通文)
^またのたまはく (大経・下)、
又言ク、
^「▲仏、 *弥勒に語りたまはく、 ªそれかの0479仏の名号を聞くことを得ることありて、 *歓喜踊躍し↓乃至↓一念せん。 まさに知るべし、 この人は大利を得とす。 すなはちこれ無上の功徳を具足すº」 と。 以上
「仏語タマハク↢弥勒ニ↡其有テ↠得コト↠聞コトヲ↢彼ノ仏ノ*名号ヲ↡、歓喜踊躍シテ乃至一念ム。当ニシ↠知ル、此ノ人ハ為↠得ト↢大利ヲ↡。則チ是具↢足スルナリト无上ノ功徳ヲ↡。」已上
・易行品
^*龍樹菩薩、 ¬*十住毘婆沙論¼ (*易行品) にいはく、
龍樹菩薩、¬十住婆沙論ニ¼云ク、
^「▲もし人疾く不退転地を得んと欲はば、 *恭敬の心をもつて、 *執持して名号を称すべし。
「若シ人欲ハ↣疾ク得ムト↢ | 不退転ノ地ヲ↡者 |
応シ↧以テ↢恭敬ノ心ヲ↡ | 執持テ称ス↦名号ヲ↥ |
^▲もし人*善根を種ゑて、 疑へばすなはち華開けず。 *信心清浄なるものは、 華開けてすなはち仏を見たてまつる」 と。
若シ人種テ↢善根ヲ↡ | 疑ヘバ則チ華不↠開ケ |
信心清浄ナレ者 | 華開ケテ即チ見マツルト↠仏ヲ」 |
・浄土論
^*天親菩薩、 ¬*浄土論¼ にいはく、
天親菩薩、¬浄土論ニ¼云ク、
^「▲世尊、 われ一心に*尽十方無礙光如来に*帰命したてまつりて、 ◆*安楽国に生ぜんと願ず。
「世尊我一心ニ | 帰↢命マツリテ尽十方 |
无光如来ニ↡ | 願0263ズ↠生レムト↢安楽国ニ↡ |
^▲われ*修多羅真実功徳相によりて、 *願偈総持を説きて仏教と相応せり。
我依テ↢修多羅 | 真実功徳相ニ↡ |
説ク↢願偈総持ヲ↡ | 与↢仏教↡相応セリ |
^▲仏の本願力を観そなはすに、 遇うて空しく過ぐるものなし。 よくすみやかに*功徳大宝海を満足せしむ」 と。 以上
観ルニ↢仏ノ本願力ヲ↡ | 遇テ无シ↢空ク過ル者↡ |
能ク令ムト↣速ニ満↢足セ | 功徳ノ大宝海ヲ↡」已上 |
一 Ⅱ ⅰ b イ (三)結嘆大行
・結上
【5】 ^▲聖言・論説、 ことに用ゐて知んぬ、 *凡夫*回向の行にあらず、 これ大悲回向の行なるがゆゑに*不回向と名づく。
聖言・論説、特ニ用テ知ヌ、非ズ↢凡夫廻向ノ行ニ↡、是大悲廻向ノ行ナルガ故ニ名ク↢不廻向ト↡。
・正嘆
^▲まことにこれ、 *選択*摂取の*本願、 無上超世の*弘誓、 *一乗真妙の正法、 万善円修の勝行なり。
誠ニ是選択摂取之本願、无上超世之弘誓、一乗真妙之正法、万善円修之勝行也。
・行一念
【6】 ^¬経¼ (大経) に ▲「↑乃至」 といふは、 上下を兼ねて中を略するの言なり。 ▲「↑一念」 といふはすなはちこれ専念なり。 ▲専念はすなはちこれ*一声なり。 一声0480はすなはちこれ称名なり。 称名はすなはちこれ憶念なり。 憶念はすなはちこれ正念なり。 正念はすなはちこれ正業なり。
¬経ニ¼言ク↢「乃至」↡者、兼ルナリ↢上下ヲ↡略ル↠中ヲ之言ナリ。言フ↢「一念ト」↡者即チ是専念ナリ。専念ハ即チ是一声ナリ。一声ハ即チ是称名ナリ。称名ハ即チ是憶念ナリ。憶念ハ即チ是正念ナリ。正念ハ即チ是正業也。
・信一念
^▲また 「↑乃至一念」 といふは、 これさらに観想・功徳・遍数等の一念をいふにはあらず。 ▽往生の*心行を獲得する*時節の延促について、 乃至一念といふなり、 知るべし。
復「乃至一念トイフ」者、是更ニ非ズ↠言フニハ↢*観想・功徳・徧数等之一念ヲ↡。就テ↧獲↢得ル往生ノ心行ヲ↡時節ノ延促ニ↥、言フ↢乃至一念ト↡也ト、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅰ b ロ 開釈浄信
(一)略釈浄信
【7】 ^▲↑浄信といふは、 すなはち利他深広の信心なり。
言フ↢浄信ト↡者、則チ利他深広ノ信心也。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)広釈浄信
(Ⅰ)正出願名
^▲すなはちこれ*念仏往生の願 (第十八願) より出でたり。 ▲また*至心信楽の願と名づけ、 また△往相信心の願と名づくべし。
即チ是出タリ↠於リ↢念仏往生之願↡。亦名ク↢至心信楽之願ト↡、復可キナリ↠名ク↢往相ノ信心之願ト↡。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)示極難信
(ⅰ)示難信義
^▲しかるに▲*薄地の凡夫、 底下の*群生、 浄信獲がたく、 極果証しがたし。
然ニ薄地ノ凡夫、底下ノ群生、浄信叵ク↠獲、極果叵キ↠証シ也。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)斥自力失
^▲なにをもつてのゆゑに、 往相の回向によらざるがゆゑに、 疑網に*纏縛せらるるによるがゆゑに。
何ヲ以ノ故ニ。不ルガ↠由ラ↢往相ノ廻向ニ↡故ニ、由ガ↠所ルニ↣纏↢縛セ疑網ニ↡故ニ。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)嘆他力得
^▲いまし如来の*加威力によるがゆゑに、 博く*大悲広慧の力によるがゆゑに、 ▲清浄真実の信心を獲。 この心*顛倒せず、 この心虚偽ならず。
乃シ由ガ↢如来ノ加威力ニ↡故ニ、博ク因ガ↢大悲広慧ノ力ニ↡故ニ、獲シム↢清浄真実ノ信心ヲ↡。是ノ心不↢顛倒セ↡、是ノ心不↢虚偽ナラ↡。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅳ)結判難易
^▲まことに知んぬ、 無上妙果の成じがたきにはあらず、 真実の浄信まことに得ること難し。
信ニ知ヌ无上妙果ノ不ズ↠難キニハ↠成ジ、真実ノ浄信実ニ難0264シ↠得コト。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅲ)明示信益
(ⅰ)直示信益
^▲真実の浄信を獲れば、 ↓*大慶喜心を得るなり。
獲レバ↢真実ノ浄信ヲ↡、得ナリ↢大慶喜ノ心ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅱ)引経三文
・大経
^「↑大慶喜心を得」 といふは、 ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、 「^▲それ至心に安楽国に生ぜんと願ずることあるものは、 智慧あきらかに達し、 功徳殊勝なることを得べし」 と。 取要
得トイフハ↢大慶喜心ヲ↡、¬経ニ¼言ク、「其レ有レ↢至心ニ願コト↟生ムト↢安楽国ニ↡者、可シト↠得↢智慧明ニ達シ、功徳殊勝ナルコトヲ↡。」* 取要
・如来会
^0481また ¬経¼ (*如来会・下意) にのたまはく、 「▲この人はすなはちこれ*大威徳のひとなり」 と。 また 「▲*広大勝解のひとなり」 と説けり。 以上
又¬経ニ¼言ク、「是ノ人ハ即チ是大威徳ノ者ナリト。」亦説リト↢「広大勝解ノ者ナリト」↡。 已上
一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅳ)結嘆浄信
【8】 ^▲まことにこれ、 除疑獲徳の*神方、 極速円融の真詮、 *長生不死の妙術、 威徳広大の浄信なり。
誠ニ是除疑獲徳之神方、極速円融之真詮、長生不死之妙術、威徳広大之浄信也。
一 Ⅱ ⅰ b ハ 結成行信
【9】 ^▲しかれば、 もしは行、 もしは信、 一事として阿弥陀如来の*清浄願心の*回向成就したまふところにあらざることあることなし。 *因なくして他の因のあるにはあらざるなりと、 知るべし。
爾レ者若ハ行若ハ信、无シ↠有コト↤一事トシテ非ルコト↣阿弥陀如来ノ清浄願心之所ニ↢廻向成就タマフ↡。非ル↢无クシテ↠因他ノ因ノ有ルニハ↡也ト、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅰ c 正明証果
イ 明往生果
(一)正明証果
(Ⅰ)略釈証果
【10】^▲*証といふは、 すなはち利他円満の妙果なり。
言フ↠証ト者、則チ利他円満ノ妙果也。
一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)広釈証果
(ⅰ)正出願名
^▲すなはちこれ*必至滅度の願 (第十一願) より出でたり。 ▲また証大涅槃の願と名づけ、 また△往相証果の願と名づくべし。
即チ*是出タリ↠於リ↢必至滅度之願↡。亦名ク↢証大涅槃之願ト↡、亦可シ↠名ク↢往相証果之願ト↡。
一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)嘆所出法
^▲すなはちこれ清浄真実・至極畢竟無生なり。
即チ是清浄真実至極畢竟无生ナリ。
一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)(ⅲ)証果引文
【11】^▲無上涅槃の願 (第十一願) 成就の文、 ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、
无上涅槃ノ願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、
^「▲それ衆生ありて、 かの国に生ずるものは、 みなことごとく*正定の聚に住す。 ゆゑはいかん。 かの仏国中にはもろもろの*邪聚および*不定聚なければなり」 と。
「其レ有テ↢衆生↡、生ル↢彼ノ国ニ↡者ハ、皆悉ク住ス↠於↢正定之聚ニ↡。所以者何ントナレバ、彼ノ仏国ノ中ニハ无レバナリト↢*諸ノ邪聚及ビ不定聚↡。」
^またのたまはく (大経・上)、
又言ク、
^「▲*ただ余方に因順するがゆゑに、 人天の名あり。 ◆顔貌端正にして超世希有なり。 容色微妙にして、 天にあらず人にあらず。 みな0482*自然虚無の身、 無極の体を受けたり」 と。
「但因↢順ルガ*余方ニ↡故ニ、有リ↢*人天之名↡。顔貌端*政ニシテ超テ↠世ニ希有ナリ。容色微妙ニシテ、非ズ↠天ニ非ズ↠人ニ。皆受タリト↢自然*虚无之身、无極之体ヲ↡。」
^またのたまはく (大経・下)、
又言ク、
^「▲かならず*超絶して去つることを得て、 *安養国に往生せよ。 *横に*五悪趣を截り、 悪趣自然に閉づ。 *道に昇るに窮極なし。 ◆*往き易くして人なし。 その国逆違せず、 自然の牽くところなり」 と。 以上
「必ズ得テ↢超絶テ去コトヲ↡、往↢生ヨ安養国ニ↡。横ニ截リ↢五悪趣ヲ↡、悪趣自然ニ閉ヅ。昇ルニ↠道0265ニ无シ↢窮極↡。易ク↠往キ而无シ↠人。其ノ国不↢逆*違セ↡、自然之所ナリト↠牽ク。」已上
一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)結嘆証果
【12】^▲聖言、 あきらかに知んぬ、 *煩悩*成就の凡夫、 *生死罪濁の群萌、 △往相の心行を獲ればすなはち*大乗正定の聚に住す。 *正定聚に住すればかならず*滅度に至る。
聖言、明ニ知ヌ煩悩成就ノ凡夫、生死罪濁ノ群萌、獲バ↢往相ノ心行ヲ↡、即チ住シム↢大乗正定之聚ニ↡。住レバ↢正定聚ニ↡必ズ至ル↢滅度ニ↡。
^▲かならず滅度に至るはすなはちこれ*常楽なり。 常楽はすなはちこれ大涅槃なり。 大涅槃はすなはちこれ▲*利他教化地の果なり。 この身はすなはちこれ*無為法身なり。 無為法身はすなはちこれ▲畢竟平等身なり。 畢竟平等身はすなはちこれ*寂滅なり。 寂滅はすなはちこれ*実相なり。 実相はすなはちこれ*法性なり。 法性はすなはちこれ*真如なり。 真如はすなはちこれ*一如なり。
必ズ至レバ↢滅度ニ↡即チ是常楽ナリ。常楽ハ即チ是大涅槃ナリ。大涅槃ハ*則チ是利他教化地ノ果ナリ。是ノ身ハ即チ是无為法身ナリ。无為法身ハ即チ是畢竟平等ノ身ナリ。畢竟平等ノ身ハ即チ是寂滅ナリ。寂滅ハ即チ是実相ナリ。実相ハ即チ是法*性ナリ。法性ハ即チ是真如ナリ。真如ハ即チ是一如也。
一 Ⅱ ⅰ c イ (二)結成因果
【13】^▲しかれば、 もしは因、 もしは果、 一事として阿弥陀如来の清浄願心の回向成就したまふところにあらざることあることなし。 *因浄なるがゆゑに、 果また浄なり、 知るべし。
爾レ者若ハ因若ハ果、无シ↠有コト↤一事トシテ非ルコト↣阿弥陀如来ノ清浄願心之所ニ↢廻向成就タマフ↡。因浄ナルガ故ニ、果亦浄也、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅰ c ロ 明示還相
(一)正明還相
(Ⅰ)略釈還相
【14】^▲二つに↑*還相回向といふは、 すなはち*利他教化地の益なり。
二ニ言フ↢還相廻向ト↡者、則チ利他教化地ノ益也。
一 Ⅱ ⅰ c ロ (一)(Ⅱ)広釈還相
(ⅰ)正出願名
^▲すなはちこれ*必0483至補処の願 (第二十二願) より出でたり。 また一生補処の願と名づけ、 また還相回向の願と名づくべし。
即チ是出タリ↠於リ↢必至補処之願↡。亦名ク↢一生補処之願ト↡、亦可シ↠名ク↢還相ノ廻向之願ト↡。
一 Ⅱ ⅰ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)嘆所出法
(a)還相引文
【15】^願 (第二十二願) 成就の文、 ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、
願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、
^「▲かの国の菩薩、 みなまさに*一生補処を究竟すべし。 その本願、 衆生のためのゆゑに、 弘誓の功徳をもつてみづから荘厳し、 あまねく一切衆生を*度脱せんと欲せんをば除く」 と。 以上
「彼ノ国ノ菩薩ハ、皆当ニシ↣究↢竟ス一生補処ヲ↡。除ムト↫其ノ本願ノ為ノ↢衆生ノ↡故ニ、以テ↢弘誓ノ功徳ヲ↡而テ自ラ荘厳シ、普ク欲ハムヲバ↪度↩脱ムト一切衆生ヲ↨。」已上
一 Ⅱ ⅰ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)結嘆還相
【16】^▲聖言、 あきらかに知んぬ、 大慈大悲の弘誓、 広大難思の利益、 ▲いまし*煩悩の稠林に入りて*諸有を開導し、 ▲すなはち*普賢の徳に遵ひて群生を悲引す。
聖言、仏ノミコト明ニ知ヌ大慈大悲ノ弘誓、広大難思ノ利益ナリ。乃シ入ヌ↢煩悩ノ稠林ニシゲキハヤシ↡。開↢道ス諸有ヲ↡。則チ遵フテ↢普賢之徳ニ↡悲↢*引ス群生ヲ↡。
一 Ⅱ ⅰ c ロ (二)結成往還
【17】^▲しかれば、 もしは往、 もしは還、 一事として如来の清浄願心の回向成就したまふところにあらざることあることなし、 知るべし。
爾0266レ者若ハ往若ハ還、无キ↠有コト↤一事トシテ非ルコト↣如来清浄ノ願心之所ニ↢廻向成就タマフ↡也、応シ↠知ル。
一 Ⅱ ⅱ 結成三宝
a 機法相応
イ 在世起化
【18】^▲ここをもつて浄土の縁、 熟して、 調達 (*提婆達多)、 闍王 (*阿闍世) をして逆害を興ぜしめ、 *濁世の機を憫れんで、 釈迦、 *韋提をして安養を選ばしめたまへり。 ▲つらつらかれを思ひ、 静かにこれを念ずるに、 達多・闍世、 博く*仁慈を施し、 弥陀・釈迦、 深く*素懐を顕せり。
是ヲ以テ浄土ノ縁熟テ、調達・闍王ヲシテ興ス↢逆害ヲ↡。濁世ノ機ヲ*憫ミテ、釈迦、韋*提ヲシテ選シメタマヘリ↢安養ヲ↡。倩ラ思ヒ↠彼ヲ静ニ念フニ↠此ヲ、達多・闍世、博ク施シ↢仁慈ヲ↡、弥陀・釈迦、深ク顕セリ↢素懐ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ a ロ 滅後承揚
^▲これによりて、 論主 (天親) は広大無礙の浄信を宣布し、 あまねく*雑染堪忍の群生を開化す。 宗師 (*曇鸞) は*往0484還大悲の回向を顕示して、 ねんごろに*他利利他の深義を弘宣せり。
依テ↠之ニ論主ハ宣↢布シ広大无ノ浄信ヲ↡、普徧ク開↢化シム雑*染堪忍ノ群生ヲ↡。*宗師ハ顕↢示テ往還大悲ノ廻向ヲ↡、慇懃ニ弘↢宣リ他利利他ノ深義ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ a ハ 所為正意
^▲*聖権の化益、 あまねく一切凡愚を利せんがため、 △*広大の心行、 ただ逆悪*闡提を引せんと欲してなり。
聖権ノ化益、徧ニ為↠利ムガ↢一切凡愚ヲ↡、広大ノ心行、唯欲シテナリ↠*引ムト↢逆悪闡提ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ b 時機勧誡
イ 示要勧信
^▲いま庶はくは道俗等、 ▲大悲の願船には清浄の信心を順風とし、 無明の闇夜には*功徳の宝珠を大炬とす。 ▲心昏く識寡なきもの、 敬ひてこの道を勉めよ。 悪重く障多きもの、 深くこの信を崇めよ。
*今庶ハ道俗等、大悲ノ願船ニハ清浄ノ信心ヲ而為↢順風ト↡、无明ノ闇夜ニハ功徳ノ宝*珠ヲ而為↢大炬ト↡。心昏ク識寡キモノ、敬ンデ勉ヨ↢斯ノ道ヲ↡。悪重ク障多キモノ、深ク崇ヨ↢斯ノ信ヲ↡。
一 Ⅱ ⅱ b ロ 示難勧慶
^▲ああ、 弘誓の*強縁、 *多生にも値ひがたく、 真実の浄信、 *億劫にも獲がたし。 ▼たまたま信心を獲ば、 遠く*宿縁を慶べ。 ▲もしまたこのたび疑網に覆蔽せられば、 かへつてかならず*曠劫多生を*経歴せん。 *摂取不捨の真理、 超捷易往の教勅、 *聞思して遅慮することなかれ。
噫弘誓ノ強縁、多生ニモ難ク↠値ヒ、真実ノ浄信、億劫ニモ叵シ↠獲。遇マ獲バ↢信心ヲ↡遠ク慶ベ↢宿縁ヲ↡。若シ也此ノ廻覆↢蔽ラレバ疑網ニ↡、更テ必ズ逕↢歴ム曠劫多生ヲ↡。摂取不捨之真理、超捷易往之教勅、聞思テ莫レ↢遅慮コト↡。
一 Ⅱ ⅱ c 撰述意趣
イ 慶嘆仰法
^▲慶ばしきかな、 愚禿、 仰いでおもんみれば、 *心を*弘誓の仏地に樹て、 情を難思の法海に流す。
慶シキ哉愚禿、仰デ惟フニ、樹テ↢心ヲ弘誓ノ仏地ニ↡、流ス↢情ヲ難思ノ法海ニ↡。
一 Ⅱ ⅱ c ロ 撰述報恩
^▲聞くところを嘆じ、 獲るところを慶びて、 ▲*真言を採集し、 師釈を鈔出して、 もつぱら無上尊を念じて、 ことに広大の恩を報ず。
嘆ジ↠所ヲ↠聞ク、慶テ↠所ヲ↠獲ル、*探リ↢集メ真言ヲ↡、鈔↢出テ師釈ヲ↡、専ラ念テ↢无上尊ヲ↡、特ニ報ズ↢広大ノ恩ヲ↡。
二 偈文【念仏正信偈】
Ⅰ 叙述由致
ⅰ 承上起下
【19】^▲これによりて曇鸞菩薩の ¬註論¼ (*論註・上) を披閲するにのたまはく、 「▲それ菩薩は仏に帰す。 孝子の父母に帰し、 忠臣の君后に帰して、 *動静おのれにあらず、 *出没かならず由あるがごとし。 *恩を知りて徳を報ず、 理よ0485ろしくまづ*啓すべし」 と。 取要
因0267テ↠茲ニ披↢閲ルニ曇鸞菩薩ノ¬註論ヲ¼↡言ク、「夫レ菩薩ハ帰ス↠仏ニ。如シ↧孝子之帰シ↢父母ニ↡、忠臣之帰テ↢君后ニ↡、動静非ズ↠己ニ、出没必ズ由アルガ↥。知テ↠恩ヲ報ズ↠徳ヲ、理宜クシト↢先ヅ啓ス↡。」 取要
二 Ⅰ ⅱ 立題述意
^▲仏恩の深重なることを信知して、 「*念仏正信偈」 を作りていはく、
信↢知テ仏恩ノ深重ナルコトヲ↡、作テ↢「念仏正信偈ヲ」曰ク、
二 Ⅱ 正説偈文
ⅰ 依経段
a 弥陀因果
イ 総指尊号
【20】 ^▲*西方不可思議尊、
二 Ⅱ ⅰ a ロ 別指因果
▲*法蔵菩薩*因位のうちに、
^▲殊勝の本弘誓を超発して、 *無上大悲の願を建立したまふ。
超↢発テ殊勝ノ本弘誓ヲ↡ | 建↢立セリ无上大悲ノ願ヲ↡ |
^▲思惟摂取するに五劫を経たり。 ▲菩提の妙果、 上願に酬ひたり。
思惟摂取ルニ経タリ↢五劫ヲ↡ | 菩提ノ妙果酬ヒタリ↢上ノ願ニ↡ |
^▲本誓を満足するに十劫を歴たり。 ▲寿命延長にして、 よく量ることなし。
満↢足ルニ本誓ヲ↡歴タリ↢十劫ヲ↡ | 寿命延長ニシテ莫シ↢能ク量ルコト↡ |
^▲慈悲深遠にして虚空のごとし、 智慧円満して巨海のごとし。
慈悲深遠ニシテ如シ↢虚空ノ↡ | 智慧円満テ如シ↢巨海ノ↡ |
^▲*清浄微妙無辺の刹、 広大荘厳*等具足せり。
^▲種々の功徳ことごとく成満す。 ▲十方諸仏の国に超逾せり。
^▲あまねく*難思・*無礙光を放ちて、 ▲よく無明大夜の闇を破したまふ。
普ク放テ↢難思・无ノ光ヲ↡ | 能ク破ス↢无明大夜ノ*闇ヲ↡ |
^▲智光明朗にして*慧眼を開く。 ▲*名声、 十方に聞えずといふことなし。
智光明朗ニシテ開ク↢慧眼ヲ↡ | 名声靡シ↠不ルコト↠聞エ↢十方ニ↡ |
二 Ⅱ ⅰ b 釈迦述成
イ 総明述成
^▲如来の功徳はただ仏のみ知りたまへり。 ▲仏法蔵を集めて凡愚に施す。
如来ノ功徳ハ唯仏ノミ知メセリ | 集テ↢仏法ノ蔵ヲ↡施ス↢凡愚ニ↡ |
二 Ⅱ ⅰ b ロ 別明述成
^▲弥陀仏の日、 あまねく照耀す。 すでによく無明の闇を破すといへども、
弥陀仏ノ日普ク照耀ス | 已ニ能ク雖モ↠破スト↢无明ノ闇ヲ↡ |
^▲*貪愛・*瞋嫌の雲霧、 つねに清浄信心の天に覆へり。
0268貪愛・瞋嫌之雲霧 | 常ニ覆ヘリ↢清浄信心ノ天ニ↡ |
^▲たとへばなほ日月星宿の、 煙霞・雲霧等に覆はるといへども、
譬バ猶↧如シ日・月・星宿ノ | 雖モ↠覆ルト↢煙霞・雲霧等ニ↡ |
^0486~その雲霧の下あきらかにして闇なきがごとし。 ▲信知するに日月の光益に超えたり。
其ノ雲霧ノ下*明ニシテ无キガ↞闇 | 信知ルニ超タリ↢日月ノ光益ニ↡ |
^▼かならず無上浄信の暁に至れば、 *三有生死の雲晴る、
^▲清浄無礙の光耀朗らかにして、 *一如*法界の*真身顕る。
^▲信を発して称名すれば、 光*摂護したまふ、 また現生無量の徳を獲。
発テ↠信ヲ称レバ↠名ヲ光摂護タマフ | 亦獲↢現*生无量ノ徳ヲ↡ |
^▲無辺・難思の光不断にして、 さらに時処諸縁を隔つることなし。
无辺・難思ノ光不断ニシテ | 更ニ无シ↠隔コト↢時処諸縁ヲ↡ |
^▲諸仏の*護念まことに疑なし、 十方同じく称讃し*悦可す。
^▲惑染・*逆悪斉しくみな生じ、 *謗法・*闡提回すればみな往く。
二 Ⅱ ⅰ b ハ 讃嘆勧信
^▲*当来の世、 *経道滅せんに、 *特に此の経を留めて住すること百歳せん。
当来之世経道滅ムニ | 特ニ留テ↢此ノ経ヲ↡住コト百歳セム |
^▲いかんぞこの大願を疑惑せん、 ▲ただ釈迦*如実の言を信ぜよ。
如何ゾ疑↢惑ムヤ斯ノ大願ヲ↡ | 唯信ヨ↢釈迦如実ノ言ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ 依釈段
a 総嘆七祖
^▲印度*西天の*論家、 中夏 (中国)・日域 (日本) の高僧、
^▲大聖*世雄 (釈尊) の正意を開き、 如来の本誓、 機に応ずることを明かす。
開キ↢大聖世雄ノ正意ヲ↡ | 如来ノ本誓明ム↠応コトヲ↠機ニ |
二 Ⅱ ⅱ b 別嘆七祖
イ 讃嘆龍樹
(一) 釈迦懸記
^▲釈迦如来、 *楞伽山にして、 衆のために告命したまふ。
釈迦如来楞伽山ニシテ | 為ニ↠衆ノ告命タマハク南天竺ニ |
^▲南天竺 (南印度) に、 *龍樹菩薩世に興出して、 ことごとくよく*有無の見を摧破せん。
0269龍樹菩薩興↢出テ世ニ↡ | 悉ク能ク摧↢破ム有无ノ見ヲ↡ |
^0487▲*大乗無上の法を宣説し、 *歓喜地を証して*安楽に生ぜんと。
宣↢説シ大乗无上ノ法ヲ↡ | 証テ↢歓喜地ヲ↡生ゼムト↢安楽ニ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b イ (二) 大士弘化
^▲¬十住毘婆沙論¼ を造りて、 ▲*難行の嶮路、 ことに悲憐せん、
造テ↢¬十住毘婆*沙論ヲ¼↡ | 難行ノ嶮路特ニ悲憐セシム |
^▲*易往の*大道広く開示す。 ▲*恭敬の心をもつて*執持して、
易*往ノ大道広ク開示ス | 応シ↧以テ↢恭敬ノ心ヲ↡執持テ |
^▲名号を称し▲疾く不退を得べし。 ▲信心清浄なればすなはち仏を見たてまつると。
称シテ↢名号ヲ↡疾ク得↦不退ヲ↥ | 信心清浄ナレバ即チ見マツルト↠仏ヲ |
二 Ⅱ ⅱ b ロ 讃嘆天親
(一) 標示説論
^▲*天親菩薩、 ¬論¼ (浄土論) を作りて説かく、
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二) 明示所論
▲*修多羅によりて*真実を顕す。
^▲*横超の本弘誓を光闡し、 ▲不可思議の願を*演暢したまへり。
光↢闡シ横超ノ本弘誓ヲ↡ | 演↢暢タマヘリ不可思議ノ願ヲ↡ |
^▲*本願力の回向によるがゆゑに、 *具縛を度せんがために*一心を彰す。
由ガ↢本願力ノ廻向ニ↡故ニ | 為ニ↠度ムガ↢具縛ヲ↡彰ス↢一心ヲ↡ |
^▲*功徳の大宝海に帰入すれば、 かならず*大会衆の数に入ることを獲。
帰↢入レバ功徳ノ大宝海ニ↡ | 必ズ獲↠入コトヲ↢大会衆ノ数ニ↡シヤウジヤウジユノクラヰナリ |
^▲*蓮華蔵世界に至ることを得れば、 すなはち*寂滅平等身を証せしむ。
得レバ↠至コトヲ↢蓮華蔵世界ニ↡ | 即チ証シム↢寂滅平等ノ身ヲ↡ |
^▲煩悩の林に遊びて*神通を現じ、 生死の園に入りて*応化を示すと。
遊テ↢煩悩ノ林ニ↡現ジ↢神通ヲ↡ | 入テ↢生死ノ園ニ↡示スト↢応化ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ハ 讃嘆曇鸞
(一) 讃嘆事跡
^▲*曇鸞大師をば、 梁の*蕭王、 つねに鸞 (曇鸞) の方に向かひて菩薩と礼す。
曇*鸞大師ヲバ梁ノ蕭王 | 常ニ向テ↢*鸞ノ方ニ↡菩薩ト礼スト |
^▲*三蔵流支、 *浄教を授けしかば、 *仙経を焚焼して*楽邦に帰す。
三蔵流支授ケシカバ↢浄教ヲ↡ | 焚↢焼テ仙経ヲ↡帰ス↢楽邦ニ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ハ (二) 讃嘆解釈
^▲天親菩薩の ¬論¼ (浄土論) を註解して、 ▲如来の本願、 称名に顕す。
^▲*往還の回向は本誓による。 ▲煩悩成就の凡夫人、
0270往還ノ廻向ハ由ル↢本誓ニ↡ | 煩悩成就ノ凡夫人 |
^0488▲信心開発すればすなはち*忍を獲、 ▲生死すなはち涅槃なりと証知す。
信心開発レバ即チ獲↠忍ヲ | 証↢知スト生死即チ涅槃ナリト↡ |
^▲かならず*無量光明土に到りて、 諸有の衆生みなあまねく化すと。
二 Ⅱ ⅱ b ニ 讃嘆道綽
(一) 二門二行
^▲*道綽、 聖道の証しがたきことを決して、 ただ浄土の通入すべきことを明かせり。
道綽決テ↢聖道ノ難キコトヲ↟証シ | 唯明ス↣浄土ノ可キコトヲ↢通入ス↡ |
^▲万善は*自力なれば勤修を貶す、 円満の*徳号、 専称を勧む。
万善ハ自力ナレバ貶スオトシム↢勤修ヲ↡ | 円満ノ徳号勧ム↢専称ニ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ニ (二) 誡三不信
^▲*三不三信の誨慇懃にして、 *像末・法滅同じく悲引す。
^▲一生悪を造れども、 弘誓に遇へば、 *安養界に至りて*妙果を証すと。
一生造ドモ↠悪ヲ遇ヘバ↢弘誓ニ↡ | 至テ↢安養界ニ↡証スト↢妙果ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ホ 讃嘆善導
(一) 古今楷定
^▲*善導独り仏の正意にあきらかにして、 ▲深く本願によりて*真宗を興したまふ。
善導独リ明ナリ↢仏ノ正意ニ↡ | 深ク藉テ↢本願ニ↡興ス↢真宗ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ホ (二) 正明要義
^▲*定散と*逆悪とを*矜哀して、 ▲*光明・名号因縁を示す。
矜↣哀テ定散ト与ヲ↢逆悪↡ | 光明・名号示ス↢因縁ヲ↡ |
^▲*涅槃の門に入りて、 ▲*真心に値へば、 ▲かならず*信・喜・悟の忍を獲。
入ルハ↢涅槃ノ門ニ↡値フナリ↢真心ニ↡ | 必ズ獲レバ↠於↢信・喜・悟ノ忍↡ |
^▲*難思議往生を得る人、 ▲すなはち*法性の常楽を証すと。
得ル↢難思議往生ヲ↡人ナリ | 即チ証スト↢法性之常楽ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ヘ 讃嘆源信
(一) 総嘆一代
^▲*源信広く一代の教を開きて、 ひとへに安養に帰して一切を勧む。
源信広ク開テ↢一代ノ教ヲ↡ | 偏ニ帰テ↢安養ニ↡勧ム↢一切ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二) 決判専雑
^▲諸経論によりて教行を撰びたまふ。 ▲まことにこれ濁世の目足たり。
依テ↢諸経論ニ↡撰タマフ↢教行ヲ↡ | 誠ニ是為↢濁世ノ目足ト↡ |
^▲得失を*専雑に決判して、 ▲念仏の真実門に*回入せしむ。
決↣判テ得失ヲ於↢専雑↡ | 廻↢入シム念仏ノ真実門ニ↡ |
^▲*ただ浅深を執心に定めて、 *報化二土まさしく弁立せりと。
0271唯定テ↣浅深ヲ於↢執心↡ | 報化二土正ク*弁立セリト |
二 Ⅱ ⅱ b ト 讃嘆源空
(一) 讃嘆徳行
^0489▲*源空もろもろの聖典を*暁了して、 善悪の凡夫人を*憐愍せしむ。
源空暁↢了テ諸ノ聖典ヲ↡ | 憐↢愍シム善悪ノ凡夫人ヲ↡ |
二 Ⅱ ⅱ b ト (二) 述成釈義
^▲真宗の教証、 *片州に興す。 *選択本願、 濁世に施す。
^▲生死*流転の家に還来すること、 決するに*疑情をもつて*所止とす。
還↢来コト生死流転ノ家ニ↡ | 決ルニ以テ↢疑情ヲ↡為↢所止ト↡ |
^▲すみやかに*寂静*無為の楽に入ること、 かならず信心をもつて*能入とすと。
速ニ入コトハ↢寂静无為ノ楽ニ↡ | 必ズ以テ↢信心ヲ↡為トイヘリ↢能入ト↡ |
二 Ⅱ ⅱ c 結勧道俗
^▲論説・師釈ともに同心に、 無辺の極濁悪を*拯済す。
^▲*道俗*時衆みなことごとくともに、 ただこの高僧の説を信ずべし。
道俗時衆皆悉ク共ニ | 唯可シト↠信ズ↢斯ノ高僧ノ説ヲ↡ |
二 Ⅲ 結成偈数
^六十行一百二十句の偈頌、 すでに畢りぬ。
六十行一百二十句ノ偈頌、已ニ畢ヌト。
三 料簡
Ⅰ 問答料簡【問答分】
ⅰ 経論相望
a 問
【21】^▲問ふ。 念仏往生の願 (第十八願)、 すでに*三心を発したまへり。 論主 (天親)、 なにをもつてのゆゑに*一心といふや。
問フ。念仏往生ノ願、已ニ発タマヘリ↢三心ヲ↡。論主、何ヲ以ノ故ニ言ヤ↢一心ト↡。
三 Ⅰ ⅰ b 答
イ 総答
^▲答ふ。 愚鈍の衆生をして覚知易からしめんがためのゆゑに、 論主、 三を合して一としたまふか。
答フ。愚鈍ノ衆生ヲシテ、覚知為ノ↠令メムガ↠易カラ故ニ、論主合テ↠三ヲ為タマフ↠一ト歟。
三 Ⅰ ⅰ b ロ 別釈
(一)標列三心
^▲三心といふは、 一つには*至心、 二つには*信楽、 三つには*欲生なり。
言フ↢三心ト↡者、一ニ者至心、二ニ者信楽、三ニ者欲生ナリ。
三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)正合一心
(Ⅰ)約字訓
【22】^▲わたくしに字訓をもつて ¬論¼ (浄土論) の意を闚ふに、 三を合して一とすべし。
私ニ以テ↢字訓ヲ↡闚フニ↢¬論ノ¼意ヲ↡、合テ↠三ヲ応シ↠一トス。
^▲その意いかんとならば、 ▲一つには至心。 「至」 といふは1真なり、 3誠なり。 「心」 といふは1種なり、 2実なり。 二つには信楽。 「信」 といふは1真なり、 2実0490なり、 3誠なり、 4満なり、 5極なり、 6成なり、 7*用なり、 8重なり、 9審なり、 10験なり。 「楽」 といふは1欲なり、 2願なり、 8慶なり、 6喜なり、 楽なり。 三つには欲生。 「欲」 といふは、 1願なり、 2楽なり、 3覚なり、 4知なり。 「生」 といふは、 1成なり、 4興なり。
其ノ意何ントナレ者、一ニ者至心。至トイフ者真ナリ・誠ナリ、心トイフ者種ナリ・実ナリ。二ニ者信楽。信トイフ者真ナリ・実ナリ・誠ナリ・満ナリ・極ナリ・成ナリ・用ナリ・重ナリ・審ナリ・験ナリ、楽トイフ者欲ナリ・願ナリ・慶ナリ・喜ナリ・楽ナリ。三ニ者欲生。欲トイフ者願ナリ・楽ナリ・覚ナリ・知ナリ、生トイフ者成ナリ・興也。
^▲しかれば、 「至心」 はすなはちこれ*誠種真実の心なるがゆゑに、 疑心あることなし。 「信楽」 はすなはちこれ*真実誠満の心なり、 *極成用重の心なり、 *欲願審験の心なり、 *慶喜楽の心なり、 ゆゑに疑心あることなし。 「欲生」 はすなはちこれ*願楽の心なり、 *覚知成興の心なり、 ▲ゆゑに三心みなともに真実にして疑心なし。 疑心なきがゆゑに三心すなはち一心なり。
爾ラ者至心ハ即チ是誠種真実之心ナリ、故ニ无シ↠有コト↢疑心↡。信楽ハ即チ是真実誠満之心ナリ、極成0272用重之心ナリ、欲願審験之心ナリ、慶喜楽之心ナリ、故ニ无シ↠有コト↢疑心↡。欲生ハ即チ是願楽之*心ナリ、覚知成興之心ナリ。故ニ三心皆共ニ真実ニ而无シ↢疑心↡。*无キガ↢疑心↡故ニ三心即チ一心ナリ。
^▲字訓かくのごとし、 これを*思択すべし。
字訓如シ↠斯ノ、可シ↣思↢択ス之ヲ↡。
三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)約実義
(ⅰ)牒
【23】^また三心といふは、
復言フ↢三心ト↡者、
三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)釈
(a)別釈
(イ)至心釈
・直釈
^▲一つには至心、 この心すなはちこれ、 如来の至徳円修満足真実の心なり。 阿弥陀如来、 真実の功徳をもつて一切に*回施したまへり。 ▲すなはち名号をもつて至心の体とす。
一ニ者至心、斯ノ心即チ是如来ノ至徳円修満足真実之心ナリ。阿弥陀如来、以テ↢真実ノ功徳ヲ↡廻施タマヘリ一切ニ↡。即チ以テ↢名号ヲ↡為リ↢至心ノ体ト↡。
^▲しかるに十方衆生、 穢悪汚染にして清浄の心なし、 虚仮雑毒にして真実の心なし。 ▲ここをもつて如来、 *因中に菩薩の行を行じたまひし時、 三業の所修、 乃至一念一刹那も、 清浄真実の心にあらざることあることなし。
然ニ十方衆生、穢悪汚染ニシテ无シ↢清浄ノ心↡、虚仮雑毒ニシテ无シ↢真実ノ心↡。是ヲ以テ如来ノ因中ニ行タマヒシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、三業ノ所修、乃至一念一刹那モ无シ↠有コト↠非ルコト↢清浄真実ノ心ニ↡。
^▲如来、 清浄の真心をもつて、 諸有の衆生に回向0491したまへり。
如来以テ↢清浄ノ真心ヲ↡、廻↢向タマヘリ諸有ノ衆生ニ↡。
・引文
【24】^¬経¼ (大経・上) にのたまはく、 ^「▲*欲覚・*瞋覚・*害覚を生ぜず。 *欲想・*瞋想・*害想を起さず。 *色・声・香・味の法に着せず。 忍力成就して衆苦を計らず。 *少欲知足にして*染・恚・痴なし。 ^三昧常寂にして智慧無礙なり。
¬経ニ¼言ク、「不↠生ゼ↢欲覚・瞋覚・害覚ヲ↡。不↠*起サ↢欲想・瞋想・害想ヲ↡。不↠著セ↢色・声・香・味之法ニ↡。*忍力成就テ不↠計ラ↢衆苦ヲ↡。少欲知足ニシテ无シ↢染・恚・痴↡。三昧常寂ニシテ智*慧无ナリ。
^◆*虚偽諂曲の心あることなし。 *和顔愛語にして、 *意を先にして承問す。 ◆勇猛精進にして志願倦むことなし。 ◆もつぱら*清白の法を求めて、 もつて群生を恵利す。 ◆三宝を恭敬し、 師長に奉事す。 *大荘厳をもつて衆行を具足し、 もろもろの衆生をして功徳成就せしめたまふ」 と。 抄出
无シ↠有コト↢虚偽諂曲之心↡。和顔愛語ニシテ、先ニシテ↠意ヲ承*問ス。勇猛精進ニシテ志願无シ↠倦コト。専ラ求テ↢清白之法ヲ↡、以テ恵↢利テ群生ヲ↡、恭↢敬シ三宝ヲ↡、奉↢事シ師長ニ↡、以テ↢大荘厳ヲ↡具↢足テ衆行ヲ↡、令タマヘリト↢諸ノ衆生ヲシテ功徳成就セ↡。」 抄出
・結成
【25】^聖言、 あきらかに知んぬ、 ▲いまこの心は、 これ如来の清浄広大の至心なり、 これを*真実心と名づく。 至心はすなはちこれ大悲心なるがゆゑに、 疑心あることなし。
聖言、明ニ知ヌ今斯ノ心ハ、是如来ノ清浄広大ノ至心ナリ、是ヲ名ク↢真実心ト↡。至心ハ即チ是大悲心ナルガ故ニ、无シ↠有コト↢疑心↡。
三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)信楽釈
・直釈
【26】^▲二つには信楽、 ▲すなはちこれ、 真実心をもつて信楽の体とす。
二ニ者信楽、即チ是以テ↢真実心ヲ↡為↢信楽ノ体ト↡。
^▲しかるに▲具縛の群萌、 穢濁の凡愚、 ▲清浄の信心なし、 ▲真実の信心なし。 このゆゑに▲真実の功徳値ひがたく、 清浄の信楽獲得しがたし。
然ニ具0273縛ノ群萌、穢濁ノ凡愚、无シ↢清浄ノ信心↡、无シ↢真実ノ*信心↡。是ノ故ニ真実ノ功徳難ク↠値ヒ、清浄ノ信楽難↢叵シ獲得シ↡。
^▲これによりて釈 (散善義) の意を闚ふに、 愛心つねに起りてよく善心を汚し、 瞋嫌の心よく法財を焼く。 身心0492を苦励して日夜十二時に急に走め急に作して*頭燃を灸ふがごとくすれども、 すべて雑毒の善と名づく、 また虚仮の行と名づく、 真実の業と名づけざるなり。 この雑毒の善をもつてかの浄土に回向する、 これかならず不可なり。
依テ↠之ニ闚ニ↢釈ノ意ヲ↡、愛心常ニ起テ能ク汚ス↢善心ヲ↡、瞋嫌之心能ク焼ク↢法財ヲ↡。苦↢励テ身心ヲ↡日夜十二時ニ急ニ走メ急ニ作テ如クスレドモ↣*灸フガ↢頭燃ヲ↡、衆テ名ク↢雑毒之善ト↡。亦名ク↢虚仮之行ト↡。不ル↠名ケ↢真実ノ業ト↡也。以テ↢此ノ雑毒之善ヲ↡廻向ル彼ノ浄土ニ↡、此レ必ズ不可也。
^▲なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの如来、 菩薩の行を行じたまひし時、 乃至*一念一*刹那も、 *三業の所修みなこれ真実心中になしたまひしによるがゆゑに、 *疑蓋雑はることなし。
何ヲ以ノ故ニ。正ク由ガ↧彼ノ如来、行タマフシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、乃至一念一刹那モ、三業ノ所修皆是真実心ノ中ニ作タマフニ↥故ニ、疑蓋无シ↠雑コト。
^▲如来、 清浄真実の信楽をもつて、 諸有の衆生に回向したまへり。
如来以テ↢清浄真実ノ信楽ヲ↡、廻↢向タマヘリ諸有ノ衆生ニ↡。
・引文
【27】^本願 (第十八願) 成就の文、 ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、 「^▲諸有の衆生、 その名号を聞きて信心歓喜せん」 と。 抄出
本願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、「諸有ノ衆生ハ、聞テ↢其ノ名号ヲ↡信心歓喜ムト。」 抄出
・結成
【28】^聖言、 あきらかに知んぬ、 ▲いまこの心はすなはちこれ本願円満清浄真実の信楽なり、 これを信心と名づく。 信心はすなはちこれ大悲心なるがゆゑに、 疑蓋あることなし。
聖言、明ニ知ヌ今斯ノ心ハ即チ是本願円満清浄真実ノ信楽ナリ、是ヲ名ク↢信心ト↡。信心ハ即チ是大悲心ナルガ故ニ、无シ↠有コト↢疑蓋↡。
三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ハ)欲生釈
・直釈
【29】^▲三つには欲生、 ▲すなはち清浄真実の信心をもつて欲生の体とす。
三ニ者欲生、即チ以テ↢清浄真実ノ信心ヲ↡為↢欲生ノ体ト↡。
^▲しかるに流転輪廻の凡夫、 曠劫多生の群生、 清浄の回向の心なし、 また真実の回向の心なし。
然ニ流転輪廻ノ凡夫、曠劫多生ノ群生、无シ↢清浄ノ廻向ノ心↡、亦无シ↢真実ノ廻向ノ心↡。
^▲ここをもつて如来、 因中に菩薩の行を行じたまひし時、 三業の所修、 乃至一念一刹那も、 回向を*首として大悲心を成就することを得たまふ0493にあらざることあることなし。
是ヲ以テ如来、因中ニ行タマフシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、三業ノ所修、乃至一念一刹那モ、无シ↠有コト↠非ルコト↤廻向ヲ為テ↠首ト得タマフニ↣成↢就コトヲ大悲心ヲ↡。
^▲ゆゑに如来、 清浄真実の欲生心をもつて、 諸有衆生に回向したまへり。
故ニ如来以テ↢清浄真実ノ欲生心ヲ↡、廻↢向タマヘリ諸有ノ衆生ニ↡。
・引文
【30】^本願 (第十八願) 成就の文、 ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、 「^▲*至心に回向したまへり。 かの国に生ぜんと願ずれば、 すなはち往生を得、 不退転に住せん」 と。 取要
本願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、「至心ニ廻向タマヘリ。願↢生レバ彼ノ国ニ↡、即チ得↢往生ヲ↡、住ムト↢不退転ニ↡。」 取要
・結成
【31】^聖言、 あきらかに知んぬ、 ▲いまこの心は、 これ如来の大悲、 諸有の衆生を招喚したまふの教勅なり。 ▲すなはち大悲の欲生心をもつて、 これを回向と名づく。
聖言、明ニ知ヌ今斯ノ心ハ、是如来ノ大悲、招↢喚0274タマフ諸有ノ衆生ヲ↡之教勅ナリ。即チ以テ↢大悲之欲生心ヲ↡、是ヲ名ク↢廻向ト↡。
三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)総結
【32】^▲三心みなこれ*大悲回向心なるがゆゑに、 清浄真実にして疑蓋雑はることなし。 ゆゑに一心なり。
三心皆是大悲廻向ノ心ナルガ故ニ、清浄真実ニシテ疑蓋无キガ↠雑コト故ニ、一心也。
・二河譬
【33】^▲これによりて師釈を披きたるにいはく、 「^▲*西の岸の上に人ありて喚ばひていはく、 ªなんぢ↓*一心に正念にしてただちに来れ、 われよくなんぢを護らん。 すべて水火の難に堕せんことを畏れざれº」 (*散善義) と。
依テ↠之ニ披タルニ↢師釈ヲ↡云ク、「西ノ岸ノ上ニ有テ↠人喚フテ言ク、汝一心ニ正念ニシテ直ニ来レ、我能ク護ム↠汝ヲ。衆テ不レト↠畏レ↠堕ムコトヲ↠於↢水火之難↡。」
^また 「^▲ª中間の白道º といふは、 すなはち*貪瞋煩悩のなかに、 ↓よく清浄願往生の心を生ぜしむるに喩ふ。 ▲仰いで釈迦の*発遣を蒙り、 また弥陀の*招喚したまふに0494よりて、 水火二河を顧みず、 かの願力の道に乗ず」 (散善義) と。 略出
又言ク、「中間ノ白道トイフ者、即チ喩フル↣貪瞋煩悩ノ中ニ、能ク生シムルニ↢清浄願往生ノ心ヲ↡也。仰デ蒙リ↢釈迦ノ発遣ヲ↡、又藉テ↢弥陀ノ招喚タマフニ↡不↠顧ミ↢水火ノ二河ヲ↡、乗ベシトナリト↢彼ノ願力之道ニ↡。」略出
【34】^ここに知んぬ、 ▲「↑*能生清浄願心」 は、 ▲これ凡夫自力の心にあらず、 大悲回向の心なるがゆゑに清浄願心とのたまへり。
是ニ知ヌ、能生清浄願心トイフハ、是非ズ↢凡夫自力ノ心ニ↡、大悲廻向ノ心ナリ、故ニ言リ↢清浄願心ト↡。
^▲しかれば、 「↑一心正念」 といふは、 正念はすなはちこれ称名なり。 称名はすなはちこれ念仏なり。 一心はすなはちこれ深心なり。 3深心はすなはちこれ堅固深信なり。 5堅固深信はすなはちこれ真心なり。 8真心はすなはちこれ金剛心なり。 15金剛心はすなはちこれ無上心なり。 7無上心はすなはちこれ淳一相続心なり。 9淳一相続心はすなはちこれ大慶喜心なり。 13大慶喜心を獲れば、 この心*三不に違す、 この心三信に順ず。 この心はすなはちこれ大菩提心なり。 大菩提心はすなはちこれ真実信心なり。 14真実信心はすなはちこれ*願作仏心なり。 16願作仏心はすなはちこれ*度衆生心なり。 17度衆生心はすなはちこれ衆生を摂取して、 安楽浄土に生ぜしむる心なり。
爾レ者一心正念トイフ者、正念ハ即チ是称名ナリ。称名ハ即チ是念仏ナリ。一心ハ即チ是深心ナリ。深心ハ即チ是堅固深信ナリ。堅固深信ハ即チ是真心ナリ。真心ハ即チ是金剛心ナリ。金剛心ハ即チ是无上心ナリ。无上心ハ即チ是淳一相続心ナリ。淳一相続心ハ*即チ大慶喜心ナリ。獲レバ↢大慶喜心ヲ↡、是ノ心違ス↢三不ニ↡、是ノ心順ズ↢三信ニ↡。是ノ心ハ即チ是大菩提心ナリ。大*菩提心ハ即チ是真実ノ信心ナリ。真実ノ信心ハ即チ是願作仏心ナリ。願作仏心ハ即チ是度衆生心ナリ。度衆生心ハ即チ是摂↢取テ衆生ヲ↡生シムル↢安楽浄土ニ↡心ナリ。
^▲この心はすなはちこれ畢竟平等心なり。 この心はすなはちこれ大悲心なり。 ▲*この心作仏す。 *この心これ仏なり。
是ノ心ハ即チ是畢竟平等心ナリ。是ノ心ハ即チ是大悲心ナリ。是ノ心作仏ス、是ノ心是仏ナリ。
^▲これを 「▲*如実修行相応」 (浄土論) と名づくるなり、 知るべし。
是ヲ名クル↢「如実修行相応ト」↡也、応シ↠知ル。
三 Ⅰ ⅰ b ハ 結答
^▲三心すなはち一心の義、 答へをはりぬ。
三心即チ一0275心之義、答ヘ竟ヌ。
三 Ⅰ ⅱ 諸経相望
a 大観相望
イ 問
【35】^▲また問ふ。 ¬大経¼ (第十八願) の*三心と ¬*観経¼ の*三心と、 一異いかん。
又問フ。¬大経ノ¼三心ト与↢¬観経ノ¼三心↡一異云何ゾト。
三 Ⅰ ⅱ a ロ 答
(一)総答
^0495▲答ふ。 両経の三心すなはちこれ一なり。
答フ。両経ノ三心即チ是一也。
三 Ⅰ ⅱ a ロ (二)引証
^▲なにをもつてか知ることを得るとならば、 宗師 (善導) の釈にいはく、
何ヲ以カ得ルトナラバ↠知コトヲ。宗師ノ釈ニ云ク、
^至誠心のなかにいはく、 「▲ª至º といふは真なり、 ª誠º といふは実なり」 (散善義) と。 ^*人に就き、 *行に就いて信を立つるなかにいはく、 「▲一心に弥陀の名号を専念する、 これを*正定の業と名づく」 (散善義) と。
至誠心ノ中ニ云ク、「至トイフ者真ナリ、誠トイフ者実ナリト。」就キ↠人ニ、就テ↠行ニ立ツル↠信ヲ中ニ云ク、「一心ニ専↢念ル弥陀ノ名号ヲ↡、是ヲ名クト↢正定之業ト↡。」
^またいはく、 「▲深心すなはちこれ真実信心なり」 (*礼讃) と。
又云ク、「深心即チ是真実ノ信心ナリト。」
^回向発願心のなかにいはく、 「▲この心深信せることなほ金剛のごとし」 (散善義) と。
廻向発願心ノ中ニ云ク、「此ノ心深信コト由ルト↠若クナルニ↢金剛ノ↡。」
三 Ⅰ ⅱ a ロ (三)結成
^▲あきらかに知んぬ、 一心はこれ信心なり、 専念はすなはち正業なり。 一心のなかに至誠・回向の二心を摂在せり。 ^▲向の問のなかに答へをはりぬ。
明ニ知ヌ一心ハ是信心ナリ、専念ハ即チ正業ナリト。一心之中ニ摂↢在セリ至誠・廻向之二心ヲ↡。向ノ問ノ中ニ答ヘ竟ヌト。
三 Ⅰ ⅱ b 二経対小経
イ 問
【36】^▲また問ふ。 以前二経 (大経・観経) の三心と ¬小経¼ の*執持と、 一異いかん。
又問フ。已ニ前ノ二経ノ三心ト与↢¬小経ノ¼執持↡一異云何ゾヤ。
三 Ⅰ ⅱ b ロ 答
(一)引経釈義
^▲答ふ。 ¬経¼ (*小経) にのたまはく、 「▲名号を執持す」 と。 「執」 といふは心堅牢にして移らず、 「持」 といふは不散不失に名づく。 ゆゑに 「不乱」 といへり。 執持はすなはち一心なり。 一心はすなはち信心なり。
答フ。¬経ニ¼言ク、「執↢持ベシト名号ヲ↡。」執トイフ者心堅牢ニ而不↠移ラ、持トイフ者名ク↢不散不失ニ↡。故ニ曰リ↢「不乱ト」↡。執持ハ即チ一心ナリ。一心ハ即チ信心ナリト。
三 Ⅰ ⅱ b ロ (二)結勧帰仰
^▲しかればすなはち、 「*執持名号」 の真説、 「▲*一心不乱」 の誠言、 かならずこれに帰すべし、 ことにこ0496れを仰ぐべし。
然レバ則チ「執持名号」之真説、「一心不乱」之誠言、必ズ可シ↠帰ス↠之ニ、特ニ可シ↠仰グ↠之ヲ。
三 Ⅱ 結成【結嘆】
ⅰ 結一心要
【37】^▲*論家・宗師、 *浄土真宗を開きて、 濁世、 邪偽を導かんとなり。 ▲*三経の大綱、 *隠顕ありといへども、 一心を能入とす。 ゆゑに ¬経¼ の始めに、 「*如是」 と称す。 論主 (天親) 建めに 「▲一心」 (浄土論)とのたまへり。 すなはちこれ 「如是」 の義を彰すなり。
論家・宗師、開キテ↢浄土真宗ヲ↡、導ムトナリ↢濁世ノ邪偽ヲ↡。三経ノ大綱、雖モ↠有リト↢隠顕↡、一心ヲ為↢能入ト↡。故ニ経ノ*始ニ称ス↢「如是ト」↡。論主建ニ言ヘリ↢「一心ト」↡。即チ是彰スナリ↢如是之義ヲ↡。
三 Ⅱ ⅱ 結一心勝
^いま宗師 (善導) の解 (*定善義) を披きたるにいはく、 「^▲ª如意º といふは二種あり。 一つには衆生の意のごとし、 かの心念に随ひてみな応じてこれを*度す。 二つには弥陀の意のごとし、 *五眼円かに照らし*六通自在にして、 機の度すべきものを観そなはして、 一念のうちに前なく後なく身心等しく赴く。 *三輪をもつて開悟せしめて、 おのおの益すること不同なり」 と。
今披タルニ↢宗師ノ解ヲ↡云ク、「言フ↢如意ト↡者有リ↢二種↡。一ニ者如シ↢衆生ノ意ノ↡、随テ↢彼ノ心念0276ニ↡皆応シ↠度ス↠之ヲ。*二ニハ如シ↢弥陀之意ノ↡、五眼円カニ照シ六通自在ニシテ、観テ↢機ノ可キ↠度ス者ヲ↡、一念之中ニ无ク↠前无ク↠後身心等ク*赴キ、三輪ヲモテ開悟シメテ各ノ*益コト不ト↠同カラ也。」
^またいはく (*般舟讃)、 「^▲敬つてまうす、 *一切往生の知識等、 大きにすべからく*慚愧すべし。 釈迦如来はまことにこれ慈悲の父母なり。 種々の*方便をもつて、 われらが*無上の信心を発起せしめたまふ」 と。 以上
又言ク、「敬テ白ク↢一切往生ノ知識等ニ↡、大ニ須クシ↢慚愧ス↡。釈迦如来ハ実ニ是慈悲ノ父母ナリ。種種ニ方便シテ発↢起シメタマフト我等ガ无上ノ信心ヲ↡。」已上
【38】^▲あきらかに知んぬ、 *二尊の大悲によりて、 一心の*仏因を獲たり。 まさに知るべし、 この人は*希有人なり、 最勝人なりと。 しかるに流転の愚夫、 *輪廻の0497群生、 信心起ることなし、 真心起ることなし。
明ニ知ヌ縁テ↢二尊ノ大悲ニ↡、獲タリ↢一心ノ仏因ヲ↡。*当ニシ↠知ル、斯ノ人ハ希有人ナリ、最勝人也ト。然ニ流転ノ愚夫、輪廻ノ群生、信心无シ↠起コト、*真心无シ↠起コト。
^ここをもつて ¬経¼ (大経・下) にのたまはく、 「^▲もしこの経を聞きて、 信楽受持すること、 難のなかの難、 これに過ぎたる難なし」 と。 ^また 「^▲*一切世間極難信法」 (*称讃浄土経) と説きたまへり。
是ヲ以テ¬経ニ¼言ク、「若シ聞テ↢斯ノ経ヲ↡信楽受持ムコト、難ノ中之難ナリ、无シ↢過タル↠此ニ難↡。」亦説タマヘリ↢「一切*世間極難信ノ法ト」↡。
三 Ⅱ ⅲ 総結成
a 出世正意
【39】^▲まことに知んぬ、 大聖世尊 (釈尊)、 世に出興したまふ*大事の因縁、 *悲願の真利を顕して、 如来の直説としたまへり。 凡夫の*即生を示すを、 大悲の宗致とすとなり。 これによりて諸仏の教意を闚ふに、 三世のもろもろの如来、 出世のまさしき本意、 ただ阿弥陀の不可思議の願を説かんとなり。
誠ニ知ヌ大聖世尊、出↢興テ於↟世大事ノ因縁、顕テ↢悲願ノ真利ヲ↡、為タマヘリ↢如来ノ直説ト↡。示スヲ↢凡夫ノ即生ヲ↡、為トナリ↢大悲ノ宗致ト↡。因テ↠茲ニ闚ニ↢諸仏ノ教意ヲ↡、三世ノ諸ノ如来ノ出世ノ正キ本意、唯説ムトナリ↢阿弥陀ノ不可思議ノ願ヲ↡。
三 Ⅱ ⅲ b 信者得益
^▲*常没の凡夫人、 願力の回向によりて真実の功徳を聞き、 無上の信心を獲れば、 すなはち大慶喜を得、 不退転地を獲。 煩悩を断ぜしめずして、 すみやかに大涅槃を証すとなり。
常没ノ凡夫人、縁テ↢願力ノ廻向ニ↡聞キ↢真実ノ功徳ヲ↡、獲レバ↢无上ノ信心ヲ↡、則チ得↢大慶喜ヲ↡、獲↢不退転地ヲ↡。不シテ↠令メ↠断ゼ↢煩悩ヲ↡、速ニ証ストナリト↢大涅槃ヲ↡矣。
浄土文類聚鈔
延書の底本は龍谷大学蔵慶長七年准如上人開版本ˆ原漢文の対校本Ⓒˇ。
無礙難思の光耀 何ものにもさまたげられない、 凡夫の思慮を超えた阿弥陀仏の智慧の光明。
万行円備の嘉号 すべての行、 すべての徳をかけめなくまどかにそなえた阿弥陀仏の名号。
末代の教行 光明・名号は、
末法を救う教となり、 行となって、 行者の上に実現するので、 このようにいう。
濁世の目足 教と行は、
五濁悪世の行者の目となり足となるので、 このようにいう。
西蕃 インドを指す。
功徳の宝 阿弥陀仏の名号のこと。
真実の利 真実の利益。 阿弥陀仏の本願名号によって得る利益をいう。
一乗究竟の極説 一切衆生をことごとく仏のさとりに至らせる一乗教の究極を説きあらわした最高の教え。
宗致 経典に説かれた法義の最も肝要なことがら。
咨嗟 讃嘆の意で、 ほめたたえること。
極速円満す きわめて速やかに往生の因が満足する。
一切の志願 往生成仏の願を根本とする一切の願。
満てたまふ 「たまふ」 は尊敬の意。 無明を破し、 志願を満たすのは、 阿弥陀仏の力によることをあらわす。
至心に回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
恭敬の心 つつしみ敬う心。 ここでは他力の信心のこと。
修多羅 親鸞聖人は ¬銘文¼ で浄土三部経のこととする。
願偈総持を説きて 願偈は ¬浄土論¼ の 「願生偈」 のこと。 総持は親鸞聖人の解釈では 「無礙光の智慧」 (¬銘文¼) の意。 阿弥陀仏の智慧を 「願生偈」 として説くということ。
時節の延促 時間の長短。 ここでは延長 (相続) に対する極促 (
初際) の意味で、 南無 (心) 阿弥陀仏 (行) を受領した最初、 すなわち信の
一念をいう。
薄地の凡夫 聖者の域に達しない下劣な者。 凡夫を三種に分け、 三賢 (十住・十行・十回向) を内凡、 十信を下凡、 それ以下を薄地とする。
纏縛 まとわりつかれ、 しばられること。
大悲広慧の力 広大な慈悲と智慧の力。
大威徳のひと・広大勝解のひと 仏のすぐれた徳を与えられている人。 広大なすぐれた法をよく領解した智慧の人。 ともに他力信心の人をいう。
神方 不可思議な方法。
長生不死の妙術 生死を超えた不生不滅の命を得る不可思議な方法。
回向成就し… 行も信も如来が成就して与えたものであるという意。
因なくして… 如来回向の行信が往生の因となるのであるから、 因がなくて往生するのではなく、 また、 その行信の他に別の因があるのでもないという意。
ただ余方に… 浄土の聖者を他方世界に順じて天とか人とか呼ぶのみで実の天でも人でもないという意。
超絶して (迷いの世界を) 超え離れて。
利他教化地の果 他の衆生を救済する位。
煩悩の稠林 煩悩が多くあることを密林に喩えていう。
仁慈 いつくしみ恵むこと。
素懐 本意。 本懐。
雑染堪忍 雑染は煩悩によってけがされていること。 堪忍は娑婆世界のこと。
他利利他の深義 如来の救済を衆生からいえば他 (如来) が利すといい、 仏からいえば他 (衆生) を利すという。
聖権 聖は仏、 権は衆生を導くために仮に人間のすがたをとってあらわれた提婆達多、 阿闍世、 韋提希等を指す。
広大の心行 無辺の徳をもつ他力回向の信心と念仏。
功徳の宝珠 阿弥陀仏の名号のこと。
多生にも値ひがたく いくたび生を重ねても容易にあえるものではなく。
聞思して… 本願のいわれを聞きひらき、 疑いためらってはならない。
心を… ¬大唐西域記¼ 巻三の 「心を仏地に樹て、 情を法海に流す」 という文による。
清浄微妙無辺の刹 刹は梵語クシェートラ (kşetra) の音写。 国土・世界の意。 煩悩のけがれを離れた実相の境界で、 一切の限定を超えた阿弥陀仏の浄土のこと。
等 「等しく」 とも読む。
瞋嫌 いかり嫌うこと。
悦可 よろこび、 認可すること。
当来の世… 末法の時代 (教のみがあって行・証のない時代) が一万年続いた後、 自力成仏の道を説いた聖道門の経典がすべてこの世界から消え失せることをいう。
演暢 広く説きのべること。
大会衆の数に… 浄土で阿弥陀仏が説法する時の集会を広大会と名づけ、 それに参列し聞法する大衆を大会衆という。 ここでは信心の行者が、 現生 (この世) において正定聚に入り、 阿弥陀仏の眷属となることをいう。
寂滅平等身 煩悩が完全に滅して、 一如平等の真実をさとったもの。 ここでは仏のこと。
浄教を… ¬続高僧伝¼ 巻六では ¬観経¼ を授けたとするが、 諸説があって定かではない。
仙経 長生不死の神仙術を説く道教の書。 曇鸞大師は江南の道士、 陶弘景 (陶隠居) から仙経十巻を授けられたといわれる。
光明名号… 名号は衆生に与えられて信心の因となり、 光明はこの人を照らしまもる縁となるという救済のありさまをいう。
回入 自力をひるがえして、 本願に帰入すること。
ただ浅深を… 専修の者は、 本願を執りたもつ信心が深く決定しているから報土に往生するが、 雑修の者は、 信心が浅く不決定であるから化土にしか往生できないと弁立 (説き明かすこと) したという意。
暁了 明らかに理解すること。
所止 迷いの世界に止まるところの理由 (所以)。
能入 よく浄土に入ることのできる因のこと。
拯済 救いたすけること。
時衆 現在、 道場に参集している人々。 また広く今の世の人々。
誠種真実の心 往生成仏の因種 (たね) となる真実にして誠なる心。
真実誠満の心 仏の真実が満入している心。
極成用重の心 完成 (至極成就) された本願のはたらき (用) を敬い、 尊重する心。
欲願審験の心 仏の慈悲を明らかにあじわい、 浄土をこのもしくまちもうける心。
慶喜楽の心 救いの法を聞いてよろこぶ心。
覚知成興の心 仏と成り大悲を興して、 衆生救済の活動をなさしめられることを明らかに知る心。
因中 因位の時。
法蔵菩薩であった時。
色声香味の法 感官のはたらく対象。 経の原文には 「色・声・香・味・触・法」 とある。
虚偽諂曲の心 うそいつわりの心、 相手にこびへつらう心。
意を先にして承問す 相手の意志を先んじて知り、 よく受け入れて教え導くこと。
清白の法 清浄潔白な無漏 (煩悩のない状態) の善法。
大荘厳 三法を恭敬し、 師長を奉事することによって得られた福徳と智慧の二つの荘厳。 また誓願を指すという説もある。
疑蓋 蓋はおおうの意。 疑いは真実をおおいかくすので疑蓋という。
首として 第一にして。 中心にして。
至心に回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
能生清浄願心 「よく清浄の願心を生ず」
この心作仏す 如来回向の信心は仏道の正因であるから、 仏に作るという意。
この心これ仏なり 如来回向の信心の本質は仏心であることをいう。
論家宗師 総じて七祖を指す。
度す 済度する。 迷いの世界 (此岸) の衆生をさとりの世界 (彼岸) にわたすこと。
一切往生の知識等 往生を願うすべての同行たち。 ここでの知識は同行、 法友の意。
仏因 仏果 (仏のさとり) を得る因。
一切世間極難信法 自力の心では決して信じることができないという意。 本願救済の法は、 世間の常識的な道理を超越しているから、 自力にとらわれた心では信じ難い法であるということ。 そのことはまたこの法の尊高をあらわしている。
大事の因縁 最も大切ないわれ。 ここでは如来出現の本意、 本懐のこと。
悲願の真利 真利は真実の利益、 めぐみ。 大悲の本願によって救われること。
即生 信心を獲得すると同時に、 正定聚の位に入って往生が決定すること。
常没 つねに迷いの世界に沈んでいること。
底本は◎滋賀県光延寺蔵延慶二年書写本。 Ⓐ真宗大谷派蔵室町初期書写本、 Ⓑ龍谷大学蔵室町中期書写本、 Ⓒ龍谷大学蔵慶長七年准如上人開版本 と対校。
代→◎伐
此→Ⓒ比
受→Ⓐ愛
蕃→ⒷⒸ番
施 左Ⓑホドコスハヅストイフハケムドムノゴフヲハヅスニヨテフセノセニハカクナリ
名→Ⓐ揚
則→Ⓐ即
名→Ⓐ号
観想 左スイテウジユリムエホフシヤウゴムヲクワンズルヲイフ Ⓐに無し
要→Ⓐ意
是 Ⓐに無し
諸 Ⓐに無し
余方故有天人之名 左タノジヤウドニハ人天アリトイフニミダノジヤウドニ人天ナシトイフナラバゴクラクニムマレムトスルモノアリガタキユヘニハウベンシテニンデンアリトイフナリ ⒶⒷに無し
人天→Ⓒ天人
政→ⒶⒷⒸ正
虚无 左ホフシンノノリハキハナキユヘニコムトハマフスナリ Ⓐに無し
違→Ⓒ達
則→ⒷⒸ即
性→◎往
引→◎Ⓐ弘
憫→Ⓐ燘
提→◎根
染→Ⓒ善
宗→ⒷⒸ主(Ⓑ「宗イ」と左傍註記)
引→◎弘
今 ⒷⒸに無し(Ⓑ「今イ」と左傍註記)
珠→Ⓒ殊
探→ⒷⒸ採
闇 Ⓐ「クラシ ヤミ」と下に註記
明→Ⓐ曜
生 Ⓑ湮滅
沙→ⒷⒸ娑
往 Ⓑ「行イ」と左傍註記
鸞→Ⓑ巒
到→Ⓐ至
法滅→Ⓒ滅法
弁→ⒶⒷⒸ辨
心 Ⓐに無し
无疑心 ⒷⒸに無し(Ⓑ「无疑心)イ」と右傍註記
起→◎超
忍 左イカリハラダチソネミネタムヲシノブヲイフ ⒶⒷ無し
慧→Ⓑ恵
問→Ⓐ門
信心是故真実→Ⓐ无信心コノユヱニ
灸→ⒷⒸ炎
即→ⒷⒸ即[是]
菩→Ⓐ菩[薩]
始 ◎「如是一心」と右傍註記
二→ⒷⒸ二[者]
赴→Ⓒ起
益→Ⓐ答
当→◎常
真心无起 Ⓑに無し
世 ◎に無し