0477じょう文類もんるいじゅしょう

禿とくしゃく*親鸞しんらんしゅう

 (色はそれぞれ 教巻 行巻 信巻 行・信巻 証巻 真巻 化巻 との対応を示す。)

正釈
  序分【序】
    大綱序
      讃嘆法益

【1】 ^それ*無礙むげなん光耀こうようは、 めっらくしょうす。 *まんぎょうえんごうは、 さわりうたがいのぞく。 *末代まつだい教行きょうぎょう、 もつぱらこれをしゅすべし。 *じょく目足もくそく、 かならずこれをつとむべし。

0261无ムゲナムコウ耀エウメチシヨウラクマムギヤウエンガウミヤウガウナリキヤサワリノゾウタガヒマチダイケウギヤウホトケノミノリナリモハシユコレヂヨク目足モクソクカナラツトコレ

一 Ⅰ ⅰ 勧進機受

^しかれば、 さいしょうぜいじゅぎょうして、 じょうねがへ。 如来にょらい教勅きょうちょく奉持ぶじして、 おんほうとくしゃせよ。

シカジユギヤウサイシヨウゼイシテネガジヤウニヨライケウチヨクシテオンシヤセヨトク

一 Ⅰ 縁起序

^ここに*へんしゅう禿とく (親鸞)いん*西蕃せいばん論説ろんせつし、 かん (中国)日域じちいき (日本)しゃくあおいで、 しんしゅう教行きょうぎょうしょうきょうしんす。 ことにんぬ、 仏恩ぶっとんじんしがたければ、 あきらかにじょう文類もんるいじゅもちゐるなり。

コヽヘンシウ禿トククヰイン西セイバンロンセツ↡、アオギテクヱカンジチイキシヤク↡、キヤウシンシンシユケフギヤウシヨウコトブチオンガタケレバジンアキラカニモチヰルナリ↢浄モンルイジユ↡矣。

本文
    正釈三法【三法列釈】
      正明教法
        指示経典

【2】 ^しかるにきょうといふは、 すなはち ¬*だいりょう寿じゅきょう¼ なり。

シカルニケフスナワ¬ダイリヤウ寿ジユキヤウ¼ナリ

一 Ⅱ ⅰ a 正述大意
          (一)
          (二)

^このきょうたいは、 弥陀みだちかいちょうほつし、 ひろ法蔵ほうぞうひらきて、 ぼんしょうあわれんでえらんでどくほうすることをいたす。 しゃしゅっこうして、 どうきょう光闡こうせんし、 群萌ぐんもうすくめぐむに真実しんじつをもつてせんとおぼしてなり。

キヤウタイテウホチチカヒヒロヒラキテホフザウ↡、イタアハレミテボンセウエラビテスルコトヲドクホウ↥。シヤシユツコウシテクワウセンダウケウ↡、オボシテナリスクグンマウメグムニテセムトシンジチ↥。

一 Ⅱ ⅰ a ロ (三)

^まことにこれ、 如来にょらいこう真説しんせつどくさいしょう0478みょうでんいちじょうきょう極説ごくせつ十方じっぽうしょうさん正教しょうきょうなり。

マコトコレニヨライコウシンセチドクサイシヨウメウデン、一ジヨウキヤウゴクセチ、十パウシヨウサンシヤウケウナリ

一 Ⅱ ⅰ a 明示宗体

^如来にょらい本願ほんがんくをきょうしゅうとす、 すなはちぶつみょうごうをもつてきょうたいとするなり。

クヲ↢如来本願↢経シユ↡、↢仏名号↡為↢経タイナリ

一 Ⅱ ⅰ 正明大行
        直釈大行
          (一)略釈大行

【3】 ^ぎょうといふは、 すなはち*利他りた円満えんまんだいぎょうなり。

ギヤウ、則利他リタエンマム大行ナリ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)広釈大行
            (Ⅰ)正出願名

^すなはちこれ、 諸仏しょぶつしゃがん (第十七願) よりでたり。 また諸仏しょぶつ称名しょうみょうがんづけ、 また往相おうそうしょうごうがんづくべし

デタリ↢諸仏シヤグワン↡。↢諸仏0262↡、マタナヅ↢往相正業之願↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)正釈大行

・標回向

^しかるに本願ほんがんりきこうしゅそうあり。 ひとつには往相おうそうふたつには還相げんそうなり。

ルニ本願力廻向↢二種サウ↡。一往相、二グヱンサウナリ

・顕行信

^往相おうそうについてだいぎょうあり、 また*じょうしんあり。

イテ↢往相↢大行↡、亦有↢浄信↡。

・行体

^だいぎょうといふは、 すなはち無礙むげこう如来にょらいみなしょうするなり。

大行トイフスナワスルナリ↢无光如来↡。

・釈名

^このぎょうあまねく一切いっさいぎょうせっし、 極速ごくそく円満えんまんす。 ゆゑにだいぎょうづく。

セフ↢一切↡、極ソクエンセリカルガユヘナヅ↢大行↡。

・破満

^このゆゑに称名しょうみょうは、 よくしゅじょう一切いっさいみょうし、 よくしゅじょう一切いっさいがんてたまふ。

称名↢衆生一切无明↡、テタマフ↢衆生一切↡。

・転釈

^称名しょうみょうすなはち憶念おくねんなり。 憶念おくねんはすなはち念仏ねんぶつなり。 念仏ねんぶつはすなはちこれ南無なも弥陀みだぶつなり。

称名オクネンナリオク念仏ナリ。念仏南无阿弥陀仏ナリ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅲ)大行引文

・大経(成就文)

【4】 ^がん (第十七・十八願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (*大経・下) にのたまはく、

願成就文、¬経¼言

^十方じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつ如来にょらい、 みなともにりょう寿じゅぶつじんどく不可ふか思議しぎにましますことを讃嘆さんだんしたまふ。

「十方恒沙諸仏如来、皆共讃↢嘆シタマフ无量寿仏威神功徳不可思議ナル↡。

^*しょしゅじょう、 そのみょうごうきて信心しんじんかんし、 ない一念いちねんせん。 *しんこうしたまへり。 かのくにしょうぜんとがんずれば、 すなはちおうじょう退転たいてんじゅう」 と。

諸有 ユル衆生、聞↢其名号↡信心歓喜セムコト、乃至一念セム。至心廻向シタマヘリ。願↠生ムト↢彼↡、即得↢往生↡、住セム↢不退転↡。」

・大経(流通文)

^またのたまはく (大経・下)

ハク

^ぶつろくかたりたまはく、 ªそれかの0479ぶつみょうごうくことをることありて、 かんやくない一念いちねんせん。 まさにるべし、 このひとだいとす。 すなはちこれじょうどくそくすº」 と。

「仏語タマハク↢弥勒↠得ルコト↠聞クコトヲ↢彼名号↡、歓喜踊躍乃至一念セム。当、此↠得↢大利↡。則具↢足ルナリ无上功徳↡。」

・易行品

 ^*りゅうじゅさつ、 ¬*十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼ (*易行品) にいはく、

龍樹菩薩、¬十住婆沙論¼云

^もしひと退転たいてんんとおもはば、 ぎょうしんをもつて、 しゅうしてみょうごうしょうすべし。

「若オモムト不退転
↧以↢恭敬シテ↦名号

^もしひと善根ぜんごんゑて、 うたがへばすなはちはなひらけず。 信心しんじん清浄しょうじょうなるものは、 はなひらけてすなはちぶつたてまつる」 と。

ヘテ↢善根ウタガヘバハナ↠開
信心清浄ヒラケテタテマツルト↠仏

・浄土論

 ^*天親てんじんさつ、 ¬*じょうろん¼ にいはく、

天親菩薩、¬浄土論¼云ハク

^そん、 われ一心いっしんじん十方じっぽう無礙むげこう如来にょらいみょうしたてまつりて、 安楽あんらくこくしょうぜんとがんず。

「世尊我一心帰↢命シタテマツリテ尽十方
无光如来0263↠生ムト↢安楽国

^われしゅ多羅たら真実しんじつどくそうによりて、 がんそうきてぶっきょう相応そうおうせり。

リテ↢修多羅真実功徳相
↢願ソウ↢仏教↡相応セリ

^ぶつ本願ほんがんりきそなはすに、 もうおうてむなしくぐるものなし。 よくすみやかにどくだい宝海ほうかい満足まんぞくせしむ」 と。

ズル↢仏本願力マウアフテムナシクグルモノ
ムト満↢足功徳大宝海↡」

一 Ⅱ ⅰ b イ (三)結嘆大行

・結上

【5】 ^しょうごん論説ろんせつ、 ことにもちゐてんぬ、 ぼんこうぎょうにあらず、 これだいこうぎょうなるがゆゑにこうづく。

聖言・論説、コトチヰ、非↢凡夫廻向↡、是大悲廻向ナルガ↢不廻向↡。

・正嘆

^まことにこれ、 せんじゃく摂取せっしゅ本願ほんがん じょうちょうぜいいちじょうしんみょうしょうぼう万善まんぜん円修えんしゅ勝行しょうぎょうなり。

マコト選択摂取本願、无上テウ誓、一乗シン正法、万善円修勝行ナリ

・行一念

【6】 ^¬きょう¼ (大経)ない」 といふは、 じょうねてちゅうりゃくするのことばなり。 一念いちねん」 といふはすなはちこれ専念せんねんなり。 専念せんねんはすなはちこれいっしょうなり。 いっしょう0480はすなはちこれ称名しょうみょうなり。 称名しょうみょうはすなはちこれ憶念おくねんなり。 憶念おくねんはすなはちこれしょうねんなり。 しょうねんはすなはちこれしょうごうなり。

¬経¼言「乃至」ヌルナリ↢上下リヤクスルナカ之言ナリ↢「一念」↡スナハ専念ナリ。専念一声ナリ。一声称名ナリ。称名憶念ナリ。憶念正念ナリ。正念正業ナリ

・信一念

^また 「ない一念いちねん」 といふは、 これさらに観想かんそうどく遍数へんじゅとう一念いちねんをいふにはあらず。 おうじょうしんぎょうぎゃくとくする*せつ延促えんそくについて、 ない一念いちねんといふなりるべし。

マタ「乃至一念トイフ↠言ニハ観想・功徳・ヘン数等一念↡。イテグヰヤク↢得スル往生心行↡時セチエンソク↥、言↢乃至一念ナリ

一 Ⅱ ⅰ b 開釈浄信
          (一)略釈浄信

【7】 ^じょうしんといふは、 すなはち利他りた深広じんこう信心しんじんなり。

↢浄信、則ジン信心ナリ

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)広釈浄信
            (Ⅰ)正出願名

^すなはちこれ念仏ねんぶつおうじょうがん (第十八願) よりでたり。 またしんしんぎょうがんづけ、 また往相おうそう信心しんじんがんづくべし。

タリ↢念仏往生願↡。亦ナヅ↢至心信楽↡、マタキナリ↠名↢往相信心↡。

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)示極難信
              (ⅰ)示難信義

^しかるにはくぼんていぐんじょう じょうしんがたく、 ごくしょうしがたし。

ルニハク凡夫、テイグン生、浄信ガタ、極果叵↠証ナリ

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)斥自力失

^なにをもつてのゆゑに、 往相おうそうこうによらざるがゆゑに、 もう*纏縛てんばくせらるるによるがゆゑに。

ユヘルガ↢往相廻向↡故、由ルヽニテンバクマウ↡故ナリ

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)嘆他力得

^いまし如来にょらい加威かいりきによるがゆゑに、 ひろだいこうちからによるがゆゑに、 清浄しょうじょう真実しんじつ信心しんじん。 このしん顛倒てんどうせず、 このしん虚偽こぎならず。

イマ↢如来ユヘヒロルガ↢大悲広慧チカラ↡故シムシヤウ浄真実信心↡。是↡、シン不↢グヰナラ↡。

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅳ)結判難易

^まことにんぬ、 じょうみょうじょうじがたきにはあらず、 真実しんじつじょうしんまことにることかたし。

マコト无上妙果↠難キニハジヤウ、真実浄信マコト0264

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅲ)明示信益
              (ⅰ)直示信益

^真実しんじつじょうしんれば、 だいきょうしんるなり。

レバ↢真実浄信↡、ルナリ↢大慶喜↡。

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅱ)引経三文

・大経

 ^だいきょうしん」 といふは、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、 「^それしん安楽あんらくこくしょうぜんとがんずることあるものは、 智慧ちえあきらかにたっし、 どくしゅしょうなることをべし」 と。

イフハ↢大慶喜心↡、¬経¼言、「↢至心ズルコト↟生ゼムト↢安楽国、可シト↢智慧アキラカニタチ、功徳殊勝ナルコトヲ↡。」

・如来会

 ^0481また ¬きょう¼ (*如来会・下意) にのたまはく、 「このひとはすなはちこれだいとくのひとなり」 と。 また 「広大こうだいしょうのひとなり」 とけり。

又¬経¼言、「是ヒトナリ。」亦ケリ↢「広大勝ヒトナリト」↡。

一 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅳ)結嘆浄信

【8】 ^まことにこれ、 じょぎゃくとく神方しんぽう極速ごくそくえんにゅう真詮しんせんちょうせい不死ふし妙術みょうじゅつとく広大こうだいじょうしんなり。

マコトヂヨギヤクトクシンポウ、極ソクユウセン、長セイ不死フシメウジユチトク広大浄信ナリ

一 Ⅱ ⅰ b 結成行信

【9】 ^しかれば、 もしはぎょう、 もしはしんいちとして弥陀みだ如来にょらい清浄しょうじょう願心がんしんこうじょうじゅしたまふところにあらざることあることなし。 いんなくしていんのあるにはあらざるなりと、 るべし。

シカシハシハ信、↠有コト↤一トシテルコト↣阿弥陀如来清浄願心トコロ↢廻向成就シタマフ↡。アラザル↢无シテ↠因他ルニハ↡也、応↠知

一 Ⅱ ⅰ 正明証果
        明往生果
          (一)正明証果
            (Ⅰ)略釈証果

【10】^しょうといふは、 すなはち利他りた円満えんまんみょうなり。

↠証、則利他リタ円満妙果ナリ

一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)広釈証果
              (ⅰ)正出願名

^すなはちこれひっめつがん (第十一願) よりでたり。 またしょうだいはんがんづけ、 また往相おうそうしょうがんづくべし。

タリヒチメチ願↡。亦ナヅ↢証大涅槃↡、亦可↠名↢往相証果↡。

一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)嘆所出法

^すなはちこれ清浄しょうじょう真実しんじつごくひっきょうしょうなり。

清浄真実至極ヒチキヤウ无生ナリ

一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)(ⅲ)証果引文

【11】^じょうはんがん (第十一願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

无上願成就文、¬経¼言

^それしゅじょうありて、 かのくにしょうずるものは、 みなことごとく正定しょうじょうじゅじゅうす。 ゆゑはいかん。 かの仏国ぶっこくちゅうにはもろもろの邪聚じゃじゅおよびじょうじゅなければなり」 と。

↢衆生↡、生ズル↢彼↡者コトゴト↢正定ジユ↡。所以 ユヘ イカトナレバ仏国 ニハレバナリ邪聚及不定聚↡。」

 ^またのたまはく (大経・上)

又言

^ただほういんじゅんするがゆゑに、 人天にんでんあり。 げんみょうたんじょうにしてちょう希有けうなり。 容色ようしきみょうにして、 てんにあらずにんにあらず。 みな0482ねん虚無こむしんごくたいけたり」 と。

タヾイムジユンスルガハウユヘニン↡。ゲンメウタンジヤウニシテエテ希有ナリヨウシキメウニシテアラテンアラ↠人。皆ケタリネン身、无極↡。」

 ^またのたまはく (大経・下)

又言

^かならずちょうぜつしてつることをて、 あんにょうこくおうじょうせよ。 おう悪趣あくしゅり、 悪趣あくしゅねんづ。 どうのぼるに窮極ぐうごくなし。 やすくしてひとなし。 そのくにぎゃくせず、 ねんくところなり」 と。

「必↢超絶シテルコトヲ↡、往↢生セヨ安養国↡。横↢五悪趣↡、悪趣自然ノボルニ↠道0265グウゴク↡。ヤスシテヒト。其ギヤク↡、ネントコロナリ。」

一 Ⅱ ⅰ c イ (一)(Ⅱ)(ⅳ)結嘆証果

【12】^しょうごん、 あきらかにんぬ、 煩悩ぼんのうじょうじゅぼんしょうざいじょく群萌ぐんもう往相おうそうしんぎょうればすなはちだいじょう正定しょうじょうじゅじゅうす。 正定しょうじょうじゅじゅうすればかならずめついたる。

聖言、明カニ煩悩成就凡夫、生死罪濁グンマウレバ↢往相心行↡、即セシム↢大乗正定↡。住スレバ↢正定聚↡必↢滅↡。

^かならずめついたるはすなはちこれじょうらくなり。 じょうらくはすなはちこれだいはんなり。 だいはんはすなはちこれ*利他りたきょうなり。 このしんはすなはちこれ無為むい法身ほっしんなり。 無為むい法身ほっしんはすなはちこれひっきょうびょうどうしんなり。 ひっきょうびょうどうしんはすなはちこれじゃくめつなり。 じゃくめつはすなはちこれ実相じっそうなり。 実相じっそうはすなはちこれほっしょうなり。 ほっしょうはすなはちこれ真如しんにょなり。 真如しんにょはすなはちこれ一如いちにょなり。

イタレバ↢滅↡即常楽ナリ。常楽大涅槃ナリ大涅槃利他リタケウクヱナリ。是法身ナリ。无為法身スナワヒチキヤウ平等ナリ。畢竟平等コレジヤクメチナリ。寂滅実相ナリ。実相ナリ。法性真如ナリ。真如一如也。

一 Ⅱ ⅰ c イ (二)結成因果

【13】^しかれば、 もしはいん、 もしはいちとして弥陀みだ如来にょらい清浄しょうじょう願心がんしんこうじょうじゅしたまふところにあらざることあることなし。 いんじょうなるがゆゑに、 またじょうなり、 るべし。

シカシハインシハクワ↠有コト↤一トシテアラザルコト↣阿弥陀如来清浄願心トコロ↢廻向成就シタマフ↡。因浄ナルガクワマタナリ

一 Ⅱ ⅰ c 明示還相
          (一)正明還相
            (Ⅰ)略釈還相

【14】^ふたつに還相げんそうこうといふは、 すなはち利他りたきょうやくなり

グヱンサウカウ、則利他リタケウクヱヤクナリ

一 Ⅱ ⅰ c ロ (一)(Ⅱ)広釈還相
              (ⅰ)正出願名

^すなはちこれひっ0483しょがん (第二十二願) よりでたり。 またいっしょうしょがんづけ、 また還相げんそうこうがんづくべし。

タリヒチシヨグワン↡。亦名↢一生↡、亦↠名↢還相廻向↡。

一 Ⅱ ⅰ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)嘆所出法
                (a)還相引文

【15】^がん (第二十二願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

願成就文、¬経¼言

^かのくにさつ、 みなまさにいっしょうしょきょうすべし。 その本願ほんがんしゅじょうのためのゆゑに、 ぜいどくをもつてみづからしょうごんし、 あまねく一切いっさいしゅじょうだつせんとほっせんをばのぞ」 と。

「彼菩薩キヤウ一生補処↡。ノゾカム↫其本願↢衆生↡故、以↢弘誓功徳シカウシテシヤウゴン、普ムヲバダチセムト一切衆生↨。」

一 Ⅱ ⅰ c ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)結嘆還相

【16】^しょうごん、 あきらかにんぬ、 だいだいぜい広大こうだいなんやくいまし*煩悩ぼんのうちゅうりんりてしょ開導かいどうし、 すなはちげんとくしたがひてぐんじょういんす。

聖言、仏ノミコトナリ大慈大悲弘誓、クワウナンヤクナリイマ↢煩悩シゲキハヤシカイダウシタガゲンイングン↡。

一 Ⅱ ⅰ c ロ (二)結成往還

【17】^しかれば、 もしはおう、 もしはげんいちとして如来にょらい清浄しょうじょう願心がんしんこうじょうじゅしたまふところにあらざることあることなしるべし。

シカ0266シハワウシハグヱンルコト↤一事トシテアラザルコト↣如来清浄願心↢廻向成就シタマフナリ

一 Ⅱ 結成三宝
      機法相応
        在世起化

【18】^ここをもつてじょうえんじゅくして、 調じょうだつ (*提婆達多)闍王じゃおう (*阿闍世) をしてぎゃくがいこうぜしめ、 じょくあわれんで、 しゃ*だいをしてあんにょうえらばしめたまへり。 つらつらかれをおもひ、 しずかにこれをねんずるに、 だっじゃひろ*にんほどこし、 弥陀みだしゃふか*かいあらわせり。

浄土エンジユクシテ調デウダチジヤワウヲシテオコグヰヤクガイ濁世アワレミテ、釈迦、ダイヲシテバシメタマヘリ↢安養↡。ツラツラ↠彼シヅカコレ、達多・ジヤヒロホドコニン↡、弥陀・釈迦、フカアラワセリクワイ↡。

一 Ⅱ ⅱ a 滅後承揚

^これによりて、 ろんじゅ (天親)広大こうだい無礙むげじょうしんせんし、 あまねく雑染ぞうぜん堪忍かんにんぐんじょうかいす。 しゅう (*曇鸞)*おう0484げんだいこうけんして、 ねんごろに他利たり利他りたじんせんせり。

コレ論主セン広大无浄信↡、普徧カイ↢化セシムザウゼンカムニン群生↡。シユケンシテグヱン大悲廻向↡、慇懃ネンゴロオンゴムセンセリ他利タリ利他リタジン↡。

一 Ⅱ ⅱ a 所為正意

^*しょうごんやく、 あまねく一切いっさいぼんせんがため、 広大こうだいしんぎょう、 ただぎゃくあく闡提せんだいいんせんとおぼしてなり。

聖権ヤク、徧タメ↠利セムガ↢一切凡愚↡、広大心行、唯オボシテナリインセムトギヤクアクセンダイ↡。

一 Ⅱ ⅱ 時機勧誡
        示要勧信

 ^いまねがはくは道俗どうぞくとうだい願船がんせんには清浄しょうじょう信心しんじんじゅんぷうとし、 みょうあんには*どく宝珠ほうしゅだいとす。 こころくらさとりすくなきものうやまひてこのどうつとめよ。 あくおもさわりおおきもの、 ふかくこのしんあがめよ。

イマネガハクハ道俗等、大悲セン清浄シンジムシテジユンプウ↡、无明アムニハ功徳シユシテ↢大↡。心クラシキスクナキモノツヽシンデツトメヨ↡。悪オモサワリオホキモノフカアガメヨ↡。

一 Ⅱ ⅱ b 示難勧慶

^ああ、 ぜい強縁ごうえんしょうにももうあひがたく、 真実しんじつじょうしん億劫おくこうにもがたし。 たまたま信心しんじんば、 とお宿しゅくえんよろこべ。 もしまたこのたびもうへいせられば、 かへつてかならず曠劫こうごうしょう経歴きょうりゃくせん。 摂取せっしゅしゃしんちょうせつおう教勅きょうちょくもんしてりょすることなかれ。

アヽナゲクコヽロナリゼイガウエン、多生ニモマウアシンシンオクニモガタタマタマ↢信心トオヨロコ宿シウ↡。マタタビヘイセラレバウタガフマウ↡、カヘキヤウリヤクセムクワウゴウ多生↡。摂取不捨シンテウセチ易往之ケウチヨクモンシテナカリヨスルコト↡。

一 Ⅱ ⅱ 撰述意趣
        慶嘆仰法

^よろこばしきかな禿とくあおいでおもんみれば、 しんぜいぶつて、 こころなん法海ほうかいながす。

ヨロコバシキカナ禿トク、仰フニシムゼイ仏地↡、流コヽロナンホフカイ↡。

一 Ⅱ ⅱ c 撰述報恩

^くところをたんじ、 るところをよろこびて、 真言しんごんさいしゅうし、 しゃく鈔出しょうしゅつして、 もつぱらじょうそんねんじて、 ことに広大こうだいおんほうず。

タン↠所↠聞ヨロコビテ↠所サグアツ真言↡、マコトノミコトナリセウシユチシテ↡、専ジテ↢无上尊↡、コト↢広大↡。

偈文【念仏正信偈】
  叙述由致
    承上起下

【19】^これによりて曇鸞どんらんさつの ¬ちゅうろん¼ (*論註・上)えつするにのたまはく、 「それさつぶつす。 こう父母ぶもし、 ちゅうしん君后くんこうして、 どうじょうおのれにあらず、 しゅつもつかならずゆえあるがごとし。 おんりてとくほうず、 0485ろしくまづけいすべし」 と。

0267コレエチスルニ曇鸞菩薩¬註論¼↡言、「菩薩↠仏。如カウ↢父母↡、チウシンシテクンコウ↡、ドウ静非オノレシユツモチユヘアルガ↥。知リテオン↠徳ヨロシベ ↢先ケイ↡。」

二 Ⅰ 立題述意

^仏恩ぶっとんじんじゅうなることをしんして、 「*念仏ねんぶつしょうしん」 をつくりていはく、

シンシテ仏恩深重ナルコトヲ↡、ツクリテ↢「念仏正信」曰

正説偈文
    依経段
      弥陀因果
        総指尊号

【20】 ^*西方さいほう不可ふか思議しぎそん

西方不可思議尊

二 Ⅱ ⅰ a 別指因果

法蔵ほうぞうさついんのうちに、

 法蔵菩薩因

^しゅしょうほんぜいちょうほつして、 じょうだいがんこんりゅうしたまふ。

超↢発シテシユホンコン↢立セリ无上大悲

^ゆい摂取せっしゅするにこうたり。 だいみょうじょうがんむくひたり。

ユイ摂取スルニタリ↢五劫菩提クワコタタリカミ

^本誓ほんぜい満足まんぞくするにじっこうたり。 寿じゅみょうえんちょうにして、 よくはかることなし。

満↢足スルニ本誓タリ↢十劫寿命エンニシテ↢能ルコト

^慈悲じひ深遠じんのんにしてくうのごとし、 智慧ちえ円満えんまんして巨海きょかいのごとし。

慈悲ジンオンニシテ↢虚空智慧円満シテ

^清浄しょうじょうみょうへんせつ広大こうだいしょうごん*とうそくせり。

清浄妙无ヘンクニニシテ広大シヤウゴンヒトシク具足セリ

^種々しゅじゅどくことごとくじょうまんす。 十方じっぽう諸仏しょぶつくにちょうせり。

種々功徳悉ジヤウセリテウセリ十方諸仏

^あまねくなん無礙むげこうはなちて、 よくみょうだいあんしたまふ。

アマネチテナン・无ヒカリ↢无明大アン

^こうみょうろうにしてげんひらく。 名声みょうしょう十方じっぽうきこえずといふことなし。

智光明ラウニシテ↢慧ゲン名声↠不コトキコ↢十方

二 Ⅱ ⅰ 釈迦述成
        総明述成

^如来にょらいどくはただぶつのみりたまへり。 仏法ぶっぽうぞうあつめてぼんす。

如来功徳タヾノミメセアツメテ↢仏法↢凡

二 Ⅱ ⅰ b 別明述成

^弥陀みだぶつ、 あまねくしょう耀ようす。 すでによくみょうあんすといへども、

弥陀仏ニチセウ耀ヨウスト↢无明アン

^貪愛とんない*瞋嫌しんけんうん、 つねに清浄しょうじょう信心しんじんてんおおへり。

0268貪愛・シンケムウムオホヘリ↢清浄信心

^たとへばなほ日月にちがつ星宿しょうしゅくの、 えんうんとうおおはるといへども、

ヘバ猶↧如  ゴト  ニチグワチシヤウ宿シウオホハルトエンウントウ

^0486そのうんしたあきらかにしてやみなきがごとし。 しんするに日月にちがつ光益こうやくえたり。

雲霧シタアキラカニシテキガヤミシンスルニタリ↢日月クワウヤク

^かならずじょうじょうしんあかつきいたれば、 さんしょうくもる、

レバ↢无上浄シンアカツキ三有生死クモ

^清浄しょうじょう無礙むげ光耀こうようほがらかにして、 一如いちにょ法界ほうかい真身しんしんあらわる。

清浄无耀ヨウホガラカニシテ一如法界シンシンアラハ

^しんおこして称名しょうみょうすれば、 ひかりしょうしたまふ、 またげんしょうりょうとく

オコシテシンスレバセフシタマフゲン无量トク

^へんなんひかりだんにして、 さらにしょしょえんへだつることなし。

ヘンナンダンニシテヘダツルコト↢時処諸縁

^諸仏しょぶつねんまことにうたがいなし、 十方じっぽうおなじくしょうさん*えつす。

諸仏十方同ジク称讃エチ

^惑染わくぜんぎゃくあくひとしくみなしょうじ、 謗法ほうぼう闡提せんだいすればみなく。

ワクゼンギヤクアクヒトシクハウ法・センダイスレバミナ

二 Ⅱ ⅰ b 讃嘆勧信

^当来とうらいきょうどうめっせんに、 こときょうとどめてじゅうすることひゃくさいせん。

当来経道滅セムニコトトヾメテ↢此↡住スルコト百歳セム

^いかんぞこの大願だいがんわくせん、 ただしゃ如実にょじつみことしんぜよ。

如何ワクセムダイグワンタヾシンゼヨ↢釈迦ニヨミコト

二 Ⅱ 依釈段
      総嘆七祖

^いん西天さいてんろんちゅう (中国)日域じちいき (日本)高僧こうそう

印度西サイテンロンジチヰキカウソウ

^だいしょうおう (釈尊)しょうひらき、 如来にょらい本誓ほんぜいおうずることをかす。

↢大聖正意如来本誓キラオウルコトヲ

二 Ⅱ ⅱ 別嘆七祖
        讃嘆龍樹
          (一) 釈迦懸記

^しゃ如来にょらいりょうせんにして、 しゅうのためにごうみょうしたまふ。

釈迦如来レウセンニシテタメシユガウミヤウシタマハク南天ヂク

^なん天竺てんじく (南印度) に、 りゅうじゅさつこうしゅつして、 ことごとくよく有無うむけんさいせん。

0269龍樹菩薩コウシユツシテコトゴトサイセム有无ウムケン

^0487だいじょうじょうほう宣説せんぜつし、 かんしょうして安楽あんらくしょうぜんと。

センゼチ大乗无上シテ↢歓喜地↡生ゼム↢安楽

二 Ⅱ ⅱ b イ (二) 大士弘化

^¬*十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼ をつくりて、 なんぎょうけん、 ことにれんせん、

リテ↢¬十住毘婆沙論¼↡難行ケムコトレンシム

^おう大道だいどうひろかいす。 ぎょうしんをもつてしゅうして、

大道広カイギヤウシユシテ

^みょうごうしょう退たいべし。 信心しんじん清浄しょうじょうなればすなはちぶつたてまつると。

↢名号退タイ信心清浄ナレバタテマツル↠仏

二 Ⅱ ⅱ b 讃嘆天親
          (一) 標示説論

^天親てんじんさつ、 ¬ろん¼ (浄土論)つくりてかく、

テンジンサチツクリテ↠¬ロン¼カク

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二) 明示所論

 しゅ多羅たらによりて真実しんじつあらわす。

 ↢修多羅アラワシン

^おうちょうほんぜい光闡こうせんし、 不可ふか思議しぎがんえんちょうしたまへり。

クワウセンワウテウ本弘誓エンチヤウシタマヘリ不可思議

^本願ほんがんりきこうによるがゆゑに、 ばくせんがために一心いっしんあらわす。

ルガ↢本願力廻向↡故セムガバクアラワ↢一心

^どくだい宝海ほうかいにゅうすれば、 かならずだいしゅかずることを

帰↢入スレバ功徳大宝海↠入ルコトヲ↢大カズシヤウジヤウジユノクラヰナリ

^れんぞうかいいたることをれば、 すなはち*じゃくめつびょうどうしんしょうせしむ。

レバ↠至ルコトヲ↢蓮華蔵世界セシムジヤクメチビヤウ

^煩悩ぼんのうはやしあそびて神通じんずうげんじ、 しょうそのりておうしめすと。

アソビテ↢煩悩ハヤシゲン↢神通リテ↢生死ソノシメスト↢応化

二 Ⅱ ⅱ b 讃嘆曇鸞
          (一) 讃嘆事跡

^*曇鸞どんらんだいをば、 りょう*蕭王そうおう、 つねにらん (曇鸞)かたかひてさつらいす。

鸞大ヲバリヤウサウワウカタ↡菩薩

^三蔵さんぞう流支るし浄教じょうきょうさずけしかば、 せんぎょうぼんじょうして楽邦らくほうす。

三蔵流サヅケシカバジヤウボムゼウシテセンクヰラクハウ

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二) 讃嘆解釈

^天親てんじんさつの ¬ろん¼ (浄土論)ちゅうして、 如来にょらい本願ほんがん称名しょうみょうあらわす。

天親菩薩¬論¼チユシテ如来本願アラワ↢称名

^往還おうげんこう本誓ほんぜいによる。 煩悩ぼんのうじょうじゅぼんにん

0270ワウグヱン廻向↢本誓煩悩成就凡夫ニン

^0488信心しんじん開発かいほつすればすなはち*にんしょうすなはちはんなりとしょうす。

信心カイスレバニンシヨウ生死即涅槃ナリ

^かならずりょうこうみょういたりて、 しょしゅじょうみなあまねくすと。

リテ↢无量光明土諸有衆生スト

二 Ⅱ ⅱ b 讃嘆道綽
          (一) 二門二行

^どうしゃくしょうどうしょうしがたきことをけっして、 ただじょうつうにゅうすべきことをかせり。

道綽クヱチシテ↢聖道ガタキコトヲ↟証唯明↣浄土キコトヲ↢通入

^万善まんぜんりきなれば勤修ごんしゅへんす、 円満えんまん徳号とくごうせんしょうすすむ。

万善自力ナレバヘンオトシムゴムシユ円満スヽ↢専称

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二) 誡三不信

^さん三信さんしんおしえ慇懃おんごんにして、 像末ぞうまつ法滅ほうめつおなじくいんす。

シンオシヘオンゴンニシテザウマチメチオナジクイン

^いっしょうあくつくれども、 ぜいもうあへば、 あんにょうかいいたりてみょうしょうすと。

一生ツクレドモ↠悪マウアヘバ↢弘誓リテ↢安ヤウ↡証スト↢妙果

二 Ⅱ ⅱ b 讃嘆善導
          (一) 古今楷定

^*善導ぜんどうひとぶつしょうにあきらかにして、 ふか本願ほんがんによりてしんしゅうおこしたまふ。

善導独ナリ↢仏↢本願↡興シンシユ

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二) 正明要義

^じょうさんぎゃくあくとを矜哀こうあいして、 こうみょうみょうごう因縁いんねんしめす。

コウアイシテサンギヤク光明・名号シメ↢因縁

^はんもんりて、 真心しんしんもうあへば、 かならず*しんにん

ルハ↢涅槃マウアウナリ↢真心レバ↢信・ニン

^なんおうじょうひとすなはちほっしょうじょうらくしょうすと。

↢難思議往生ヒトナリスト↢法性常楽

二 Ⅱ ⅱ b 讃嘆源信
          (一) 総嘆一代

^源信げんしんひろ一代いちだいきょうひらきて、 ひとへにあんにょうして一切いっさいすすむ。

源信広キテ↢一代シテ↢安ヤウ↡勧↢一切

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二) 決判専雑

^しょきょうろんによりて教行きょうぎょうえらびたまふ。 まことにこれじょく目足もくそくたり。

↢諸経論エラビタマフ↢教行マコト↢濁世

^得失とくしつ専雑せんぞう決判けっぱんして、 念仏ねんぶつ真実しんじつもん*にゅうせしむ。

クヱチパンシテシチ↢専ザフニウセシム念仏真実門

^ただ浅深せんじんしゅうしんさだめて、 ほう二土にどまさしくべんりゅうせりと。

0271タヾメテセンジム↢執心↡ホウ化二シクベンセリト

二 Ⅱ ⅱ b 讃嘆源空
          (一) 讃嘆徳行

^0489源空げんくうもろもろのしょうてん*暁了ぎょうりょうして、 善悪ぜんあくぼんにん憐愍れんみんせしむ。

源空ゲウレウシテ聖典レンミンセシム善悪凡夫ニン

二 Ⅱ ⅱ b ト (二) 述成釈義

^しんしゅう教証きょうしょうへんしゅうおこす。 せんじゃく本願ほんがんじょくほどこす。

真宗教証興ヘンシウ選択本願ホドコ↢濁世

^しょうてんいえ還来げんらいすること、 けっするにじょうをもつてしょとす。

ゲンライスルコト生死流転クヱチスルニジヤウシヨ

^すみやかに寂静じゃくじょう無為むいみやこること、 かならず信心しんじんをもつてのうにゅうとすと。

スミヤカルコトジヤクジヤウミヤコ↢信心イヘリ↢能入

二 Ⅱ ⅱ 結勧道俗

^論説ろんせつしゃくともに同心どうしんに、 へんごくじょくあくじょうさいす。

セチ釈共ドウシムジヨウサイセシムヘン極濁悪

^道俗どうぞくしゅみなことごとくともに、 ただこの高僧こうそうせつしんずべし。

シン↢斯高僧

結成偈数

 ^ろく十行じゅうぎょういっぴゃくじっじゅ、 すでにおわりぬ。

 六十ガウ一百二十ジユスデオハリヌ

料簡
  問答料簡【問答分】
    経論相望
     

【21】^ふ。 念仏ねんぶつおうじょうがん (第十八願)、 すでに三心さんしんおこしたまへり。 論主ろんじゅ (天親)、 なにをもつてのゆゑに一心いっしんといふや。

。念仏往生願、已オコシタマヘリ↢三心↡。論主、何テノ↢一心↡。

三 Ⅰ ⅰ
        総答

 ^こたふ。 どんしゅじょうをしてかくやすからしめんがためのゆゑに、 論主ろんじゅさんがっしていちとしたまふか。

ドン衆生ヲシテ、覚↠令ムガ↠易カラ、論主合シテ↠三タマフ↠一

三 Ⅰ ⅰ b 別釈
          (一)標列三心

^三心さんしんといふは、 ひとつにはしんふたつにはしんぎょうつにはよくしょうなり。

ノタマ↢三心、一至心、二信楽、三欲生ナリ

三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)正合一心
            (Ⅰ)約字訓

【22】^わたくしにくんをもつて ¬ろん¼ (浄土論)こころうかがふに、 さんがっしていちとすべし。

ワタクシクンウカヾフニ↢¬論¼意↡、合シテ↠三↠一トス

^そのこころいかんとならば、 ひとつにはしん。 「」 といふは1しんなり、 3じょうなり。 「しん」 といふは1しゅなり、 2じつなり。 ふたつにはしんぎょう。 「しん」 といふは1しんなり、 2じつ0490なり、 3じょうなり、 4まんなり、 5ごくなり、 6じょうなり、 7ゆうなり、 8じゅうなり、 9しんなり、 10げんなり。 「ぎょう」 といふは1よくなり、 2がんなり、 8きょうなり、 6なり、 らくなり。 つにはよくしょう。 「よく」 といふは、 1がんなり、 2ぎょうなり、 3かくなり、 4なり。 「しょう」 といふは、 1じょうなり、 4こうなり。

意何トナレ、一至心。至トイフシンナリジヤウナリトイフシユナリジチナリ。二信楽。信トイフシンナリジチナリマコトナリマンナリゴクナリジヤウナリナリヂウナリシンナリゲンナリゲウトイフヨクナリグワンナリキヤウナリナリラクナリ。三欲生。欲トイフナリゲウナリカクナリナリトイフジヤウナリコウ也。

^しかれば、 しん」 はすなはちこれじょうしゅ真実しんじつしんなるがゆゑに、 しんあることなし。 「しんぎょう」 はすなはちこれ真実しんじつじょうまんしんなり、 ごくじょうゆうじゅうしんなり、 *欲願よくがん審験しんげんしんなり、 *きょうらくしんなり、 ゆゑにしんあることなし。 よくしょう」 はすなはちこれ*がんぎょうしんなり*かくじょうこうしんなり、 ゆゑに三心さんしんみなともに真実しんじつにしてしんなし。 しんなきがゆゑに三心さんしんすなはち一心いっしんなり。

シカ至心ジヤウシユシンカルガユヱ↠有コト↢疑心↡。信楽シンジヤウナリ、極ジヤウ0272ヨウナリ、欲願シンゲンナリキヤウラクナリカルガユヘ↠有コトシン↡。欲生ゲウナリ、覚知成興ナリ三心皆共真実シテシン↡。キガ↢疑心↡ユヘ三心即一心ナリ

^くんかくのごとし、 これをちゃくすべし。

クンゴトクノチヤク↡。

三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)約実義
              (ⅰ)

【23】^また三心さんしんといふは、

↢三心

三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)
                (a)別釈
                  (イ)至心釈

・直釈

^ひとつにはしん、 このしんすなはちこれ、 如来にょらいとく円修えんしゅ満足まんぞく真実しんじつしんなり。 弥陀みだ如来にょらい真実しんじつどくをもつて一切いっさい回施えせしたまへりすなはちみょうごうをもつてしんたいとす。

者至心、シムコレ如来シユ真実ナリ。阿弥陀如来、↢真実功徳↡廻シタマヘリ一切↡。即↢名号↢至心タイ↡。

^しかるに十方じっぽうしゅじょうあくぜんにして清浄しょうじょうしんなし、 虚仮こけ雑毒ぞうどくにして真実しんじつしんなし。 ここをもつて如来にょらいいんちゅうさつぎょうぎょうじたまひしとき三業さんごう所修しょしゅない一念いちねんいっせつも、 清浄しょうじょう真実しんじつしんにあらざることあることなし。

ルニ十方衆生、ゼンニシテ↢清浄シム↡、虚仮コケザウニシテ↢真実シム↡。 如来因中ジタマヒシ↢菩薩↡時、三業シヨシユ、乃至一念一セチ↠有コト↠非ザルコト↢清浄真実↡。

^如来にょらい清浄しょうじょう真心しんしんをもつてしょしゅじょうこう0491したまへり。

如来以↢清浄真心↡、廻↢向シタマヘリ諸有衆生↡。

・引文

【24】^¬きょう¼ (大経・上) にのたまはく、 ^欲覚よくかく瞋覚しんかく害覚がいかくしょうぜず。 欲想よくそう瞋想しんそう害想がいそうおこさず。 しきしょうこうほうじゃくせず。 忍力にんりきじょうじゅしてしゅはからず。 しょうよくそくにしてぜんなし。 ^三昧さんまい常寂じょうじゃくにして智慧ちえ無礙むげなり。

¬経¼言ハク、「↠生↢欲覚・トムヨクナリ瞋覚・イカリナリガイカクモノヲコロスオコヨクサウシンサウガイ↡。ヂヤクシキシヤウカウホフ↡。ニンリキジヤウシテハカ↢衆苦↡。少欲知ソクニシテゼン↡。三昧ニシテ慧无ナリ

^虚偽こぎ諂曲てんごくしんあることなし。 げんあいにして、 こころさきにしてじょうもんす。 ゆうみょうしょうじんにしてがんむことなし。 もつぱら清白しょうびゃくほうもとめて、 もつてぐんじょう恵利えりす。 三宝さんぽうぎょうし、 ちょう奉事ぶじす。 だいしょうごんをもつてしゅぎょうそくし、 もろもろのしゅじょうをしてどくじょうじゅせしめたまふ」 と。

ルコトグヰテムゴクシム↡。ゲンアイニシテサキニシテ↠意ジヨウモンミヤウ精進ニシテグワンモノウキコト。専モトメテ↢清ビヤク↡、以シテグンジヤウ↢敬三宝↡、師長↢大荘厳↡具↢足衆行↡、メタマヘリ↢諸衆生ヲシテ功徳成就↡。」

・結成

【25】^しょうごん、 あきらかにんぬ、 いまこのしんは、 これ如来にょらい清浄しょうじょう広大こうだいしんなり、 これを*真実しんじつづく。 しんはすなはちこれだいしんなるがゆゑに、 しんあることなし

ゴンアキラカニリヌイマシム如来清浄広大至心ナリ、是↢真実心↡。至心大悲心ナルガユヘ、无↠有コト↢疑シム↡。

三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)信楽釈

・直釈

【26】^ふたつにはしんぎょうすなはちこれ、 真実しんじつしんをもつてしんぎょうたいとす。

ゲフ、即↢真実心↢信楽↡。

^しかるにばく群萌ぐんもうじょくぼん清浄しょうじょう信心しんじんなし、 真実しんじつ信心しんじんなし。 このゆゑに真実しんじつどくもうあひがたく、 清浄しょうじょうしんぎょうぎゃくとくしがたし。

ルニ0273バクグンマウジヨク、无↢清浄信心↡、无↢真実信心↡。是真実功徳難マウ、清浄信楽難↢叵  ガタ  ギヤクトク↡。

^これによりてしゃく (散善義)こころうかがふに、 愛心あいしんつねにおこりてよく善心ぜんしんけがし、 瞋嫌しんけんしんよく法財ほうざいく。 しんしん0492れいしてにちじゅう二時にじきゅうもときゅうしてねんはらふがごとくすれども、 すべて雑毒ぞうどくぜんづく、 また虚仮こけぎょうづく、 真実しんじつごうづけざるなり。 この雑毒ぞうどくぜんをもつてかのじょうこうする、 これかならず不可ふかなり。

コレウカヾフニ↢釈↡、アイシムオコリテケガ↢善心↡、シンケンシム↢法財↡。レイシテ身心十二時キウモトキウシテクスレドモハラフガ↢頭ネン↡、スベ↢雑毒亦名虚仮コケ↠名↢真実↡也。以ザウ↡廻向スル浄土↡、此不可也。

^なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの如来にょらいさつぎょうぎょうじたまひしときない一念いちねんいっせつも、 三業さんごう所修しょしゅみなこれ真実しんじつしんちゅうになしたまひしによるがゆゑに、 がいまじはることなし。

マサシクルガ↧彼如来、行ジタマ↢菩薩トキ、乃至一念一セチ、三業所修真実心シタマ↥故、疑蓋マジハルコト

^如来にょらい清浄しょうじょう真実しんじつしんぎょうをもつて、 しょしゅじょうこうしたまへり。

如来以↢清浄真実信楽↡、廻↢向シタマヘリ諸有衆生↡。

・引文

【27】^本願ほんがん (第十八願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、 「^しょしゅじょう、 そのみょうごうきて信心しんじんかんせん」 と。

本願成就文、¬経¼言、「諸有衆生、聞↢其名号↡信心歓喜セムト。」

・結成

【28】^しょうごん、 あきらかにんぬ、 いまこのしんすなはちこれ本願ほんがん円満えんまん清浄しょうじょう真実しんじつしんぎょうなり、 これを信心しんじんづく。 信心しんじんはすなはちこれだいしんなるがゆゑに、 がいあることなし。

聖言、明カニシム本願ヱンマム清浄真実信楽ナリ、是↢信心↡。信心大悲心ナルガ↠有コトガイ↡。

三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ハ)欲生釈

・直釈

【29】^つにはよくしょう すなはち清浄しょうじょう真実しんじつ信心しんじんをもつてよくしょうたいとす。

欲生、即↢清浄真実信心↢欲生タイ↡。

^しかるにてんりんぼん曠劫こうごうしょうぐんじょう清浄しょうじょうこうしんなし、 また真実しんじつこうしんなし。

流転輪廻凡夫、クワウゴウ多生グン↢清浄廻向シム↡、亦无↢真実廻向心↡。

^ここをもつて如来にょらいいんちゅうさつぎょうぎょうじたまひしとき三業さんごう所修しょしゅない一念いちねんいっせつも、 こうしゅとしてだいしんじょうじゅすることをたまふ0493にあらざることあることなし。

如来、因中ジタマ↢菩薩、三業シユ、乃至一念一セチ、无↠有コト↠非ルコト↤廻向シユマフニ↣成↢就スルコトヲ大悲心↡。

^ゆゑに如来にょらい清浄しょうじょう真実しんじつよくしょうしんをもつて、 しょしゅじょうこうしたまへり。

如来以↢清浄真実欲生心↡、廻↢向シタマヘリ諸有衆生↡。

・引文

【30】^本願ほんがん (第十八願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、 「^*しんこうしたまへり。 かのくにしょうぜんとがんずれば、 すなはちおうじょう退転たいてんじゅうせん」 と。

本願成就文、¬経¼言、「至心廻向シタマヘリ。願スレバ↡、即↢往生↡、住セムト↢不退転↡。」

・結成

【31】^しょうごん、 あきらかにんぬ、 いまこのしんは、 これ如来にょらいだいしょしゅじょうしょうかんしたまふの教勅きょうちょくなり。 すなはちだいよくしょうしんをもつて、 これをこうづく。

ゴン、明シム如来大悲、セウクワン0274シタマフ諸有衆生↡之ケウチヨクナリ。即↢大悲欲生心↡、是↢廻向↡。

三 Ⅰ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)総結

【32】^三心さんしんみなこれだいこうしんなるがゆゑに、 清浄しょうじょう真実しんじつにしてがいまじはることなし。 ゆゑに一心いっしんなり

三心大悲廻向ナルガ、清浄真実ニシテガイキガ↠雑ハルコト一心

・二河譬

【33】^これによりてしゃくひらきたるにいはく、^西にしきしうえひとありてばひていはく、 ªなんぢ一心いっしんしょうねんにしてただちにきたれ、 われよくなんぢをまもらん。 すべてすいなんせんことをおそれざれº(*散善義) と。

↠之ヒラキタルニ↢師釈↡云、「西ガン↠人ヨバ ハク一心正念ニシテジキラム↠汝スベレト↠畏ムコトヲ↢水火ナム↡。」

^また 「^ªちゅうげんびゃくどうº といふは、 すなはち貪瞋とんじん煩悩ぼんのうのなかに、 よく清浄しょうじょうがんおうじょうしんしょうぜしむるにたとふ。 あおいでしゃ発遣はっけんかぶり、 また弥陀みだしょうかんしたまふに0494よりて、 すい二河にがかえりみず、 かの願力がんりきどうじょう(散善義) と。

又言「中ゲントイフ、即タト↣貪瞋煩悩、能シムルニ↢清浄願往生↡也。アフヒデカウブ↢釈迦ハチケン↡、又↢弥陀セウクワンシタマフカヘリミ↢水火二河↡、ルベシトナリ↢彼願力↡。」

【34】^ここにんぬ、 のうしょう清浄しょうじょう願心がんしん」 は、 これぼんりきしんにあらず、 だいこうしんなるがゆゑに清浄しょうじょう願心がんしんとのたまへり。

コヽリヌノウ清浄願心トイフ↢凡夫自力↡、大悲廻向ナリカルガユヘヘリ↢清浄願心↡。

^しかれば、 一心いっしんしょうねん」 といふは、 しょうねんはすなはちこれ称名しょうみょうなり。 称名しょうみょうはすなはちこれ念仏ねんぶつなり。 1一心いっしんはすなはちこれ-2深心じんしんなり。 3深心じんしんはすなはちこれ-4けん深信じんしんなり。 5けん深信じんしんはすなはちこれ-7真心しんしんなり。 8真心しんしんはすなはちこれ-14金剛こんごうしんなり。 15金剛こんごうしんはすなはちこれ-6じょうしんなり。 7じょうしんはすなはちこれじゅんいつ-8相続そうぞくしんなり。 じゅんいつ9相続そうぞくしんはすなはちこれ-12だいきょうしんなり。 13だいきょうしんれば、 このしん*さんす、 このしん三信さんしんじゅんず。 このしんはすなはちこれだいだいしんなり。 だいだいしんはすなはちこれ-13真実しんじつ信心しんじんなり。 14真実しんじつ信心しんじんはすなはちこれ-15がんぶつしんなり。 16がんぶつしんはすなはちこれしゅじょうしんなり。 17しゅじょうしんはすなはちこれしゅじょう摂取せっしゅして、 安楽あんらくじょうしょうぜしむるしんなり。

シカ一心正念トイフ、正念称名ナリ。称名念仏ナリ。一心深心ナリ。深心ケンジンシムナリケン深信シンシムナリ。真心コムガウシムナリ。金剛心无上心ナリ。无上心ジユムアツキナリサウ続心ナリ。淳一相ゾク大慶喜心ナリレバ↢大慶↡、是↢三不↡、是ジユン↢三信↡。是大菩提心ナリ。大菩提心真実信心ナリ。真実信心願作仏心ナリ。願作仏心度衆生心ナリ。度衆生心摂↢取シテ衆生↡生ゼシムル↢安楽浄土↡心ナリ

^このしんはすなはちこれひっきょうびょうどうしんなり。 このしんはすなはちこれだいしんなり。 *このしんぶつす。 *このしんこれ仏なり。

是畢竟平等心ナリ大悲心ナリ。是ナリ

^これを 「如実にょじつしゅぎょう相応そうおう (浄土論) づくるなり、 るべし。

クル↢「如実修行相応」↡ナリ↠知

三 Ⅰ ⅰ b 結答

^三心さんしんすなはち一心いっしんこたへをはりぬ。

三心即0275コタオハリヌ

三 Ⅰ 諸経相望
      大観相望
       

【35】^またふ。 ¬だいきょう¼ (第十八願)三心さんしんと ¬かんぎょう¼ の三心さんしんと、 いちいかん

又問。¬大経¼三心↢¬観経¼三心↡一云何 イカン ゾト

三 Ⅰ ⅱ a
          (一)総答

 ^0495こたふ。 両経りょうきょう三心さんしんすなはちこれいちなり。

リヤウシムナリ

三 Ⅰ ⅱ a ロ (二)引証

^なにをもつてかることをるとならば、 しゅう (善導)しゃくにいはく、

テカルトナラバ↠知コトヲシユ

^じょうしんのなかにいはく、 「ªº といふはしんなり、 ªじょうº といふはじつなり(散善義) と。 ^にんき、 ぎょういてしんつるなかにいはく、 「一心いっしん弥陀みだみょうごう専念せんねんする、 これを正定しょうじょうごうづく(散善義) と。

至誠心、「トイフシンナリ、誠トイフジチナリ。」ヒト↠行ツル↠信、「一心専↢念スル弥陀名号↡、是クト↢正定↡。」

^またいはく、 「深心じんしんすなはちこれ真実しんじつ信心しんじんなり(*礼讃) と。

マタ、「深シム真実信心ナリト。」

^こう発願ほつがんしんのなかにいはく、 「このしん深信じんしんせることなほ金剛こんごうのごとし(散善義) と。

向発願心、「此心深信セルコトルトゴトクナルニ↢金剛↡。」

三 Ⅰ ⅱ a ロ (三)結成

^あきらかにんぬ、 一心いっしんはこれ信心しんじんなり、 専念せんねんはすなはちしょうごうなり。 一心いっしんのなかにじょうこうしんしょうざいせり。 ^さきもんのなかにこたへをはりぬ。

一心信心ナリ、専念正業ナリ。一心セフザイセリ誠・廻向二心↡。サキモンオハリヌ

三 Ⅰ ⅱ 二経対小経
       

【36】^またふ。 ぜんきょう (大経・観経)三心さんしんと ¬小経しょうきょう¼ のしゅうと、 いちいかん。

又問。已二経三心↢¬小経¼執持↡一云何 イカン ゾヤ

三 Ⅰ ⅱ b
          (一)引経釈義

 ^こたふ。 ¬きょう¼ (*小経) にのたまはく、 「みょうごうしゅうす」 と。 しゅう」 といふはしん堅牢けんろうにしてうつらず、 「」 といふはさんしつづく。 ゆゑに 「らん」 といへり。 しゅうはすなはち一心いっしんなり。 一心いっしんはすなはち信心しんじんなり。

。¬経¼ノタマハク、「執↢持ベシ名号↡。」執トイフシムケンラウシテウツトイフ↢不散不シチ↡。ユヘヘリ↢「ラン」↡。シフ一心ナリ。一心信心ナリ

三 Ⅰ ⅱ b ロ (二)結勧帰仰

^しかればすなはち、 「しゅうみょうごう」 の真説しんせつ、 「一心いっしんらん」 のじょうごんかならずこれにすべし、 ことにこ0496れをあおぐべし。

レバ「執持名号」シンセチ、「一心不ランジヤウゴン、必↠帰コレコトアオコレ

結成【結嘆】
    結一心要

【37】^*ろんしゅうじょうしんしゅうひらきて、 じょくじゃみちびかんとなり。 さんぎょう大綱たいこう隠顕おんけんありといへども、 一心いっしんのうにゅうとす。 ゆゑに ¬きょう¼ のはじめに、 「にょ」 としょうす。 論主ろんじゅ (天親) はじめに 「一心いっしん(浄土論)とのたまへり。 すなはちこれ 「にょ」 のあらわすなり。

シユ↢浄土シンシユ↡、ミチビカムトナリヂヨクジヤギヰ↡。三経カウイヱド↠有リトオムケン↡、一心ノウニウ↡。故ハジメ↢「ニヨ」↡。論ジユハジメノタマヘリ↢「一心」↡。即アラハスナリニヨ↡。

三 Ⅱ 結一心勝

 ^いましゅう (善導) (*定善義)ひらきたるにいはく、 「^ªにょº といふはしゅあり。 ひとつにはしゅじょうこころのごとし、 かのしんねんしたがひてみなおうじてこれをす。 ふたつには弥陀みだおんこころのごとし、 げんまどかにらし六通ろくつうざいにして、 すべきものをそなはして、 一念いちねんのうちにぜんなくなく身心しんしんひとしくおもむく。 三輪さんりんをもつてかいせしめて、 おのおのやくすることどうなり」 と。

イマヒラキタルニシユハク、「ノタマニヨ↢二種↡。一ゴト↢衆生コヽロ↡、シタガ↢彼心念0276コレニハゴト↢弥陀オムコヽロ↡、五ゲンマドカカニテラ六通自在ニシテミソナワシテ↢機↡、一念ウチゼンシンシムヒトシクオモムリンヲモテカイニシオノオシタマフコトカラ。」

 ^またいはく (*般舟讃)、 「^うやまつてまうす、 一切いっさいおうじょうしきとうおおきにすべからくざんすべししゃ如来にょらいはまことにこれ慈悲じひ父母ぶもなり。 種々しゅじゅ方便ほうべんをもつて、 われらがじょう信心しんじんほっせしめたまふ」 と。

ノタマハク、「ウヤマフテマフサク一切往生知識等、大キニスベカラベ  グヰ↡。釈迦如来慈悲父母ナリ。種種便ベンシテタマフト我等无上信心↡。」

【38】^あきらかにんぬ、 そんだいによりて、 一心いっしん仏因ぶついんたり。 まさにるべし、 このひと希有けうにんなり、 さいしょうにんなりと。 しかるにてん愚夫ぐふりん0497ぐんじょう信心しんじんおこることなし、 真心しんしんおこることなし。

リヌリテ↢二尊大悲↡、タリ↢一心イン↡。↠知ヒト希有ケウニンナリ、最勝ニンナリシカルニテン愚夫グフリングン、信ジンヲコルコト真心↠起ルコト

 ^ここをもつて ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、 「^もしこのきょうきて、 しんぎょうじゅすること、 なんのなかのなん、 これにぎたるなんなし」 と。 ^また 「^*一切いっさいけん極難ごくなん信法しんぽう(*称讃浄土経)きたまへり。

¬経¼ノタマハク、「↢斯↡信楽ジユセムコトナンナカカタギガナカニナンナリカタシ ギタル↠此ナン↡。」亦説タマヘリ↢「一サイケンゴクナンシンホフ」↡。

三 Ⅱ 総結成
      出世正意

【39】^まことにんぬ、 だいしょうそん (釈尊)しゅっこうしたまふ*だい因縁いんねん*がんしんあらわして、 如来にょらい直説じきせつとしたまへり。 ぼん*そくしょうしめすを、 だいしゅうとすとなり。 これによりて諸仏しょぶつきょううかがふに、 さんのもろもろの如来にょらいしゅっのまさしきほん、 ただ弥陀みだ不可ふか思議しぎがんかんとなり。

マコト大聖世ソン、出↢興シテ大事イム縁、シテシン↡、タマヘリ↢如来ヂキセチ↡。シメスヲ↢凡夫ソク↡、トナリ↢大悲シユ↡。因コレウカヾウニ↢諸仏↡、三世如来出世シキタヾカムトナリ↢阿弥陀不可思議↡。

三 Ⅱ ⅲ 信者得益

^*じょうもつぼんにん願力がんりきこうによりて真実しんじつどくき、 じょう信心しんじんれば、 すなはちだいきょう退転たいてん煩悩ぼんのうだんぜしめずして、 すみやかにだいはんしょうすとなり。

ジヤウモチニンリテ↢願力廻向シンジチ功徳↡、レバ↢无上信心↡、則↢大慶喜↡、↢不退転↡。シテダン↢煩悩↡、スミヤカストナリ↢大涅槃↡矣。

じょう文類もんるいじゅしょう

 

延書の底本は龍谷大学蔵慶長七年准如上人開版本ˆ原漢文の対校本Ⓒˇ。
無礙難思の光耀 何ものにもさまたげられない、 ぼんの思慮を超えた阿弥陀仏の智慧ちえこうみょう
万行円備の嘉号 すべての行、 すべての徳をかけめなくまどかにそなえた阿弥陀仏のみょうごう
末代の教行 光明・名号は、 末法まっぽうを救う教となり、 行となって、 行者の上に実現するので、 このようにいう。
濁世の目足 教と行は、 じょく悪世の行者の目となり足となるので、 このようにいう。
至心に回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
時節の延促 時間の長短。 ここでは延長 (相続) に対する極促 (初際しょさい) の意味で、 南無 (心) 阿弥陀仏 (行) を受領した最初、 すなわちしん一念いちねんをいう。
纏縛 まとわりつかれ、 しばられること。
利他教化地の果 他のしゅじょうを救済する位。
煩悩の稠林 煩悩が多くあることを密林に喩えていう。
往還大悲の回向 往相回向と還相回向のこと。 →往相おうそうこう還相げんそうこう
聖権 聖は仏、 権はしゅじょうを導くために仮に人間のすがたをとってあらわれただいだっじゃだい等を指す。
功徳の宝珠 阿弥陀仏のみょうごうのこと。
 「等しく」 とも読む。
瞋嫌 いかり嫌うこと。
悦可 よろこび、 認可すること。
寂滅平等身 煩悩が完全に滅して、 一如いちにょ平等の真実をさとったもの。 ここでは仏のこと。
 三忍さんにんのこと。
信喜悟の忍 三忍さんにんのこと。
欲願審験の心 仏の慈悲を明らかにあじわい、 浄土をこのもしくまちもうける心。
慶喜楽の心 救いの法を聞いてよろこぶ心。
覚知成興の心 仏と成り大悲を興して、 しゅじょう救済の活動をなさしめられることを明らかに知る心。
至心に回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
三不 三不信のこと。 →さん三信さんしん
この心作仏す 如来こうの信心は仏道の正因であるから、 仏にるという意。
この心これ仏なり 如来回向の信心の本質は仏心であることをいう。
論家宗師 総じて七祖を指す。
一切世間極難信法 自力の心では決して信じることができないという意。 本願救済の法は、 世間の常識的な道理を超越しているから、 自力にとらわれた心では信じ難い法であるということ。 そのことはまたこの法の尊高をあらわしている。
大事の因縁 最も大切ないわれ。 ここでは如来出現の本意、 本懐のこと。
悲願の真利 真利は真実のやく、 めぐみ。 大悲の本願によって救われること。
即生 信心をぎゃくとくすると同時に、 正定しょうじょうじゅの位に入って往生がけつじょうすること。
底本は◎滋賀県光延寺蔵延慶二年書写本。 Ⓐ真宗大谷派蔵室町初期書写本、 Ⓑ龍谷大学蔵室町中期書写本、 Ⓒ龍谷大学蔵慶長七年准如上人開版本 と対校。
→◎
→Ⓒ
→Ⓐ
→ⒷⒸ
 左Ⓑホドコスハヅストイフハケムドムノゴフヲハヅスニヨテフセノセニハカクナリ
→Ⓐ
→Ⓐ
→Ⓐ
観想 左スイテウジユリムエホフシヤウゴムヲクワンズルヲイフ Ⓐに無し
→Ⓐ
 Ⓐに無し
 Ⓐに無し
余方故有天人之名 左タノジヤウドニハ人天アリトイフニミダノジヤウドニ人天ナシトイフナラバゴクラクニムマレムトスルモノアリガタキユヘニハウベンシテニンデンアリトイフナリ ⒶⒷに無し
人天→Ⓒ天人
→ⒶⒷⒸ
虚无 左ホフシンノノリハキハナキユヘニコムトハマフスナリ Ⓐに無し
→Ⓒ
→ⒷⒸ
→◎
→◎Ⓐ
→Ⓐ
→◎
→Ⓒ
→ⒷⒸ(Ⓑ「」と左傍註記)
→◎
 ⒷⒸに無し(Ⓑ「」と左傍註記)
→Ⓒ
→ⒷⒸ
 Ⓐ「クラシ ヤミ」と下に註記
→Ⓐ
 Ⓑ湮滅
→ⒷⒸ
 Ⓑ「」と左傍註記
→Ⓑ
→Ⓐ
法滅→Ⓒ滅法
→ⒶⒷⒸ
 Ⓐに無し
无疑心 ⒷⒸに無し(Ⓑ「无疑心)」と右傍註記
→◎
 左イカリハラダチソネミネタムヲシノブヲイフ ⒶⒷ無し
→Ⓑ
→Ⓐ
信心是故真実→Ⓐ无信心コノユヱニ
→ⒷⒸ
→ⒷⒸ即[是]
→Ⓐ菩[薩]
 ◎「如是一心」と右傍註記
→ⒷⒸ二[者]
→Ⓒ
→Ⓐ
→◎
真心无起 Ⓑに無し
 ◎に無し