0711◎法ほっ華け問答もんどう 上

 

◎天臺てんだい一いっ家けの宗しゅう義ぎのほかに、 また近代きんだい ¬法ほっ華け¼ 等とうを信しんずるともがらあり。 みづから称しょうして法ほっ花け宗しゅうと号ごうす。

・第一問答

-かの義ぎにいはく、 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの諸しょ教きょうに得益とくやくあることなし。 爾に前ぜんの教きょうは方便ほうべんの説せつなるがゆへに、 一切いっさい衆しゅ生じょうの開かい示じ悟ご入にゅう、 かぎりて ¬法ほっ花け¼ にあり。 かるがゆへに ¬法ほっ花け¼の 第一だいいち 「方便ほうべん品ぼん」 にいはく、 「如我昔所願、 今者已満足、 化一切衆生、 皆令入仏道」 といへり。 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの諸しょ教きょうに、 曽かつてこの文もんなし。 また ¬無む量りょう義ぎ経きょう¼ (説法品) にいはく、 「▲四し十じゅう余よ年ねんいまだ真実しんじつをあらはさず」 といへり。 この二に経きょうの文もんをみるに、 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの四し十じゅう余よ年ねんの説せつ、 得益とくやくあるべからず。

-しかるに ¬観かん経ぎょう¼ 等とうの爾に前ぜんの教きょうによりて宗しゅうをたてゝ、 大だい乗じょうと号ごうして念仏ねんぶつ往おう生じょうをすゝむ、 この義ぎはなはだ不可ふかなり。

-大だい乗じょうといふは、 三さん乗じょうの異いなきを一いち乗じょうともなづけ、 大だい乗じょうともなづくるなり。 「方便ほうべん品ぼん」 (法華経巻一) にいはく、 「▲十方じっぽう仏ぶつ土どの中なかには、 たゞ一いち乗じょうの法ほうのみありて、 二ふたつもなくまた三みつもなし。 仏ぶつの方便ほうべんの説せつをば除のぞく」 といへり。

-しかるに ¬観かん経ぎょう¼ の説相せっそうをみるに、 ▲中ちゅう三品さんぼんの機き、 かの土どに生しょうじて四し諦たいの法ほうをきゝて小しょう果かを証しょうす。 かる0712がゆへにしりぬ、 かの土どはすなはち方便ほうべんの土どなり、 なんぞ大だい乗じょうといはん。

しかのみならず、 ¬法ほっ花け¼ の文もんをもて浄じょう土どの宗しゅう義ぎを校きょうするに、 念仏ねんぶつはこれ无む間けんの業ごうなるべしといふ。

かくのごときの謗法ほうぼう邪見じゃけんの悪あく義ぎ、 いかんがこれを会え釈しゃくすべきや。

答こた。う この義ぎ、 文もんにそむき理りにそむく。

-まづ理りにそむくといふは、 仏ぶつは機きに随したがひて法ほうをとくこと不ふ同どうなり。 かるがゆへに半満はんまんの教きょう異、ことに 二に蔵ぞうの宗しゅう別べつに、 衆しゅ生じょうの性しょう欲よく不ふ同どうなるがゆへに、 執しゅう法ほうおのおの異ことなり。 この義ぎをもてのゆへに、 如来にょらい或あるいは人にん・天てん・二に乗じょうの法ほうをとき、 或あるいは菩ぼ薩さつ涅ね槃はんの因いんをとく。 或あるいは漸ぜん或あるいは頓とん、 大だい小しょう・権実ごんじつ、 宜ぎヨロシキに随したがひてこれをとくこと不ふ同どうなり。 しかりといへども、 縁えんにしたがふものみな解げ脱だつを蒙こうむる。 もし汝なんじが所しょ立りゅうのごとく、 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの諸しょ経きょうに得益とくやくなしといはゞ、 四し十じゅう余よ年ねんの説せっ経きょうみな虚こ説せつなり。

-つぎに文もんにそむくといふは、 諸しょ経きょうの説相せっそうことごとくみな序じょ・正しょう・流る通ずうの三段さんだんあり。 もし得益とくやくなくは、 なにをもてか流る通ずうとせん。 たゞし爾に前ぜんの教きょうの中なかにをひて、 二に乗じょうの作さ仏ぶつをあかさず。 当分とうぶん得益とくやく、 ならびに菩ぼ薩さつの授じゅ記き、 経釈きょうしゃく分ぶん明みょうなり。

-天臺てんだいは 「菩薩処々得入」 (止観巻七上) と釈しゃくす。 ¬法ほっ花け¼ 「譬喩ひゆ品ぼん」 にいはく、 「われむかし、 仏ぶつに随したがひてかくのごときの法ほうをきゝ、 もろもろの菩ぼ薩さつの授じゅ記き作さ仏ぶつをみたり。 しかるにわれらこの事じにあづからずして、 はなはだみづから感かん傷しょうす」 と0713いへり。 大だい師しこの文もんを釈しゃくして 「文もん句ぐ」 (法華文句巻上 釈譬喩品) に いはく、 「たゞこれ方等ほうどう教きょうのなかに、 大だい乗じょうの実じっ智ちをきゝしと。 いまとことならず。 かるがゆへに如にょ是ぜ法ほうといふなり。 授じゅ記きといふは、 たゞこれ方等ほうどうのなかの菩ぼ薩さつに記きをあたふ。 二に乗じょうはこの事じにあづからずして、 はなはだみづから感かん傷しょうす」 といへり。 かくのごときの経釈きょうしゃく、 爾に前ぜんの得益とくやくにはあらずや。

-大だい師し、 妙みょうの字じを釈しゃくしていはく、 「この妙みょうとかの妙みょうと、 妙みょう義ぎことなることなし」 (法華玄義巻二上) といへり。 「この妙みょう」 といふは ¬法ほっ花け¼ なり、 「かの妙みょう」 といふは ¬華け厳ごん¼ なり。 大だい師しのこゝろ、 二に経きょうの義ぎまたくこれおなじ。

-ひくところの ¬無む量りょう義ぎ経きょう¼ の文もんの始し終じゅうをみるに、 かの ¬経きょう¼ (無量義経説法品) にいはく、 「衆しゅ生じょうの性しょう欲よく不ふ同どうにして種々しゅじゅに説法せっぽうす。 方便ほうべん力りきをもて△四し十じゅう余よ年ねんいまだ真実しんじつをあらはさず。 このゆへに、 衆しゅ生じょうの得道とくどう差別しゃべつして、 とく无む上じょう菩ぼ提だいを成じょうずることをえず。 善男ぜんなん子し、 たとへば水みずのよくけがれをあらふがごとし。 もしは井いもしは池いけ、 もしは江えもしは河かわ、 渓たに・渠みぞ・大海たいかい、 ことごとくよくもろもろの垢穢くえをあらふ。 その法水ほうすいといふは、 またかくのごとし。 衆しゅ生じょうのもろもろの煩悩ぼんのうのあかをあらふ。 善男ぜんなん子し、 水みずの性しょうはこれひとつなれども、 江え・河かわ・池いけ・渓たに・渠みぞ・大海たいかい、 おのおの別べつ異いなり。 その法ほっ性しょうといふは、 またかくのごとし」 といへり。

-すでにこのゆへに、 衆しゅ生じょうの得道とくどう差別しゃべつなりといふ。 これすな0714はち爾に前ぜんの教きょうの得益とくやくにあらずや。

-つぎに念仏ねんぶつ无む間けんの業ごうといふ義ぎ、 いづれの経きょういづれの論ろんをひきて、 かくのごときの悪あく義ぎをたつるや。 もともこれをあはれむべし。 謗法ほうぼうのとが罪業ざいごう阿鼻あびにあり。 おほよそ念仏ねんぶつ往おう生じょうをあかすこと、 浄じょう土どの三さん経ぎょう一論いちろんにかぎらず、 自余じよの諸しょ経きょう緒論しょろんのなかにこれをとくこと称しょう計げすべからず。

-¬法ほっ花け¼の 七しち (巻六) 「薬王やくおう品ぼん」 にいはく、 「もし如来にょらい滅めつ後ごの後のちの五ご百ひゃく歳さいのなかに、 もし女人にょにんありて、 この経きょう典てんをきゝて説せつのごとく修しゅ行ぎょうすれば、 ▽こゝにをひて命終みょうじゅうして、 すなはち安楽あんらく世せ界かいにゆきて、 阿あ弥陀みだ仏ぶつ・大だい菩ぼ薩さつ衆しゅに囲い遶にょうせられて、 住じゅう処しょは蓮れん花げのなか宝ほう座ざの上うえに生しょうぜん」 といへり。

-¬観音かんのん授じゅ記き経きょう¼ (意) にいはく、 「たゞ一向いっこうにもはら阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじて、 往おう生じょうするもののみありて、 つねに弥陀みだ現在げんざいして滅めっしたまはずとみたてまつる」 といへり。

-¬坐ざ禅ぜん三昧ざんまい経きょう¼ にいはく、 「極楽ごくらくの教きょう主しゅ弥陀みだ尊そんは、 念仏ねんぶつのもろもろの衆しゅ生じょうに随ずい順じゅんして、 毎日まいにち千遍せんべん住じゅう処しょに来きたりたまふ。 踊ゆ躍やく歓かん喜ぎしたまふことたとへなし」 といへり。

-¬華け厳ごん経ぎょう¼ (晋訳巻七浮言品) にいはく、 「また光こう明みょうをはなつを見仏けんぶつとなづく。 かのひかりを覚かく悟ごして命終みょうじゅうするもの、 念仏ねんぶつすればかならず仏ぶつをみたてまつる。 命終みょうじゅうの後のちに仏前ぶつぜんに生しょうず」 といへり。

-またいはく、 「願ねがわくは、 われ命いのち終おわらんとするときに臨のぞんで、 ことごとく一切いっさいのもろもろの障しょうげを除のぞき、 面めんにマノアタリかの阿あ弥陀みだ仏ぶつを見みたてま0715つりて、 すなはち安楽あんらく国こくに往おう生じょうすることをえしむ」 (般若訳華厳経巻四〇行願品) といへり。

-▲¬十じゅう往おう生じょう経きょう¼ (意) にいはく、 「もし衆しゅ生じょうありて、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじて往おう生じょうを願がんずるものは、 かの仏ぶつすなはち二に十じゅう五ごの菩ぼ薩さつをつかはして行ぎょう者じゃを擁よう護ごして、 もしは行ぎょうもしは坐ざもしは住じゅうもしは臥が、 もしは昼ちゅうもしは夜や、 一切いっさいのところに悪あく鬼き神じんをして、 そのたよりをえしめざるなり」 といへり。

-¬随ずい求ぐ陀羅だら尼に経きょう¼ にいはく、 「浄じょう土どの因いん行ぎょうは退転たいてんせざれば、 決けつ定じょうして上々じょうじょう品ぼんに往おう生じょうして、 廬る遮しゃ那な仏ぶつに値ち遇ぐうす」 といへり。

-¬尊そん勝しょう陀羅だら尼に経きょう¼ (意) にいはく、 「毎日まいにち二に十じゅう一遍いっぺんこれを誦じゅすれば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす」 といへり。

-¬起き信しん論ろん¼ (真諦訳) にいはく、 「もし人ひと、 もはら西方さいほう安楽あんらく世せ界かいの阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじたてまつりて、 所修しょしゅの善根ぜんごんを回え向こうして、 かの世せ界かいに生しょうぜんと願がん求ぐすれば、 すなはち往おう生じょうすることをえしむ」。

-¬金剛こんごう経きょう¼ (伝大師頌金剛経) の発願ほつがんの文もんにいはく、 「かみは四し重じゅうの恩おんを報ほうじ、 しもは三さん塗ずの苦くをすくひ、 もし見聞けんもんすることあらんものは、 ことごとく菩ぼ提だい心しんを発おこして、 この一報いっぽうをつくして、 同おなじく極楽ごくらく国こくに生しょうぜん」 といへり。

-¬宝ほう性しょう論ろん¼ (巻一信功徳品 巻四信功徳品) にいはく、 「このもろもろの功く徳どくによりて、 願ねがわくは、 命終みょうじゅうのときにをひて、 弥陀みだ仏ぶつの无む辺へん身しんの功く徳どくを見みたてまつることをえん。 われ及および余よの信者しんじゃも、 すでにかの仏ぶつを見みたてまつりをはりなば、 願がんじて離垢りく眼げんをえて无む上じょう菩ぼ提だいを証しょうせん」 と0716いへり。

-¬摂しょう論ろん¼ (真諦訳緒論釈巻一五) にいはく、 「所しょ生しょうの善ぜん、 この願がんによりて、 ことごとく弥陀みだ内得ないとくの浄じょう眼げんを見みたてまつりて正しょう覚がくを成じょうぜん」 といへり。

¬十住じゅうじゅう毘婆びば娑しゃ論ろん¼ (巻五易行品意) にいはく、 「▲易い行ぎょう道どうといふは、 いはくたゞ信仏しんぶつの因縁いんねんをもて浄じょう土どに生しょうぜんと願がんじて、 仏ぶつの願力がんりきに乗じょうずれば、 すなはちかの清浄しょうじょうの土どに往おう生じょうすることをえて、 仏力ぶつりき住じゅう持じして、 すなはち大だい乗じょう正定しょうじょうの聚じゅにいる。 正定しょうじょうといふはすなはちこれ阿毘あび跋ばっ致ちなり。 たとへば水すい路ろの乗じょう船せんはすなはちたのしきがごとし」 といへり。

-智ち者しゃ大だい師しのいはく、 「八万はちまん法蔵ほうぞうの妙みょうの肝心かんじん、 ▽一代いちだい聖教しょうぎょうの結けっ経きょうなり。 衆しゅ生じょうの出しゅつ離りには要かなめの法ほうなり。 弥陀みだ来迎らいこうして往おう生じょうすることをう」 といへり。

-妙みょう楽らくのいはく、 「▲諸しょ経きょうにほむるところ▽おほく弥陀みだにあり。 かるがゆへに西方さいほうをもてしかも一いち准じゅんとす」 (輔行巻二) といへり。

-慈じ雲うん法ほっ師しのいはく、 「浄じょう土どの弥陀みだをひとたび耳に根こんにふるれば、 すなはち大だい乗じょう成じょう仏ぶつの種しゅ子しをくだす。 きかず信しんぜざらんは、 あに大おおきなる失しつにあらずや」 といへり。

-霊れい芝しのいはく、 「一代いちだい弥陀みだの教きょう観かんを准じゅん知ちするに、 みなこれ円頓えんどん一仏いちぶつ乗じょうの法ほうにして、 すなはち摩訶まか衍えんなり」 (観経義疏巻上) といへり。

-おほよそ弥陀みだの名みょう号ごうは、 一声ひとこえくちにとなふれば、 八はち十じゅう億劫おくこうの生しょう死じの重じゅう罪ざいを滅めっして、 一念いちねんの心しんに无む上じょう大だい利りの功く徳どくをうるなり。

-¬観かん経ぎょう¼ にいはく、 「▲声こえをしてたえざらしめて、 十じゅう念ねんを具ぐ足そくして南无なも阿あ弥陀みだ仏ぶつを称しょうするに、 念ねん0717々ねんのうちにをひて八はち十じゅう億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞく」 といへり。

-¬无む量りょう寿じゅ経きょう¼ (巻下) にいはく、 「▲それかの仏ぶつの名みょう号ごうをきくことをえて、 歓かん喜ぎ踊ゆ躍やくし乃ない至し一念いちねんせんものあらん。 まさにしるべし、 このひとは大だい利りをうとす。 すなはちこれ无む上じょうの功く徳どくを具ぐ足そくするなり」 といへり。

釈しゃく尊そん、 諸しょ経きょうのうちにゑらびてひとり浄じょう土どの教きょうをとゞめたまふ。 止し住じゅうすること百ひゃく歳さいせんと。 同おなじき ¬経きょう¼ (大経巻下) にいはく、 「▲当来とうらいの世よに経きょう道どう滅尽めつじんせんに、 われ慈悲じひ哀愍あいみんをもて、 ひとりこの経きょうをとゞめて止し住じゅうすること百ひゃく歳さいせん。 それ衆しゅ生じょうありてこの経きょうにまうあふものは、 こゝろの所願しょがんに随したがいてみな得とく度どすべし」 といへり。

-¬思し益やく経きょう¼ (巻四授不退転天子記品意) にいはく、 「劫こう焼しょうのとき江こう河がまづ滅めっす、 大海たいかいのちに竭かっすカハク 。 法滅ほうめつのとき小乗しょうじょう教きょうまづ滅めっし、 大だい乗じょう教きょうのちに滅めっす」。

-しかるに浄じょう土どの教きょうは、 大だい小乗しょうじょうの色いろの経きょう巻かん、 ことごとくみな滅めっして後のち、 百ひゃく歳さい止し住じゅうす。 もししからば、 大だい乗じょうが中なかの大だい乗じょうといふべきなり。 もし汝なんじが所しょ立りゅうのごときんば、 釈しゃく尊そんあに 「我以がい慈悲じひ哀愍あいみん、 特どく留る此し経きょう」 (大経巻下) といはんや。

-しかるに天臺てんだい大だい師しは、 法ほっ花け三昧ざんまいをえて ¬法ほっ花けの疏しょ¼ (法華玄義巻一下) をつくり、 光宅こうたくを破はして 「余よ者しゃ望風もうふう」 といふ。 光宅こうたく、 七度ななたび生しょうじて七度ななたび ¬法ほっ花けの疏しょ¼ をつくるといへども、 ¬経きょう¼ の深じん意いをしらず。

-いはんや、 相伝そうでんなくしてわづかに経きょう文もんばかりを自じ見けんして、 諸しょ経きょうの明文めいもんにくらくして、 漢かん家け・本ほん朝ちょうの高徳こうとく・祖師そしの釈しゃくを破はして0718、 あまさへ念仏ねんぶつ无む間けんの業ごうといふ。 この義ぎを存ぞんぜんもの、 出しゅつ離りを求もとむるにはあらずして、 阿鼻あびの罪業ざいごうをまねかん歟か。

-もし法ほっ花けの深じん意いをしらば、 もはら弥陀みだをたふとぶべし。 ゆへいかんとなれば、 弘法こうぼう大だい師し ¬法華ほけ経きょう¼ の題号だいごうを釈しゃくしていはく、 「一いち乗じょう妙みょう法ほう蓮れん花げ経きょうは、 観かん自じ在ざいの密号みつごうなり。 浄妙じょうみょう国こく土どにしては弥陀みだとなづけ、 五ご濁じょく世せ界かいにしては観音かんのんとなづく」 (法華経開題意) といへり。

-またいはく、 「むかし霊りょう山ぜんにありては法ほっ花けとなづく。 いま西方さいほうにありては弥陀みだと名なづけたてまつる。 娑しゃ婆ばにしては称しょうして観かん世ぜ音おんとす。 三さん世ぜの利り益やく同おなじく一体いったいなり」 といへり。

-伝でん教ぎょう大だい師しのいはく、 「はじめ妙みょう法ほう蓮れん花げ経きょうより、 をはり作さ礼らい而去にこの文もんにいたるまで、 一々いちいちの文もん字じは殊しゅ妙みょうの理りなり。 みなこれ西方さいほうの阿あ弥陀みだ仏ぶつ也なり」 といへり。

-かくのごとくの解げ釈しゃくをみるに、 法ほっ花けと弥陀みだとまたく一体いったい異い名みょうなり。 もししからば、 法ほっ花けを信しんぜんものは、 もはら弥陀みだをたふとむべし。 弥陀みだを信しんぜんものは、 もとも法ほっ花けをたふとむべし。 弥陀みだを信しんじて法ほっ花けをそしり、 法ほっ花けを信しんじて弥陀みだをそしらんは、 たとへば流ながれをくみて、 みなかみを濁にごすが如ごとし。 いはんや、 天臺てんだい大だい師しの解げ釈しゃくにそむきて、 相伝そうでんなくして別べつ義ぎをたてゝ、 しかも法ほっ花け宗しゅうと号ごうす。 かくのごときの義ぎ、 目めあらんともがら信用しんようにあらず。

-そもそも大だい師しの本ほん地じをとぶらへば、 薬王やくおう菩ぼ薩さつの化け身しん、 四し十じゅう二に品ほん无む明みょうを断だんず。 等覚とうがく无垢むくの0719薩さっ埵た、 入重にゅうじゅう玄門げんもんの大だい聖しょう、 むかし霊りょう山ぜんにありては法ほっ花けの聴ちょう衆しゅ、 いま晨しん州しゅうにいでゝは、 また法ほっ花けの深じん意いをさとる。 一代いちだい聖教しょうぎょうを高覧こうらんあること十じゅう五ご遍へん、 しかるにこの一いち事じにをひて、 霊りょう山ぜんの法ほっ花け、 西方さいほうの阿あ弥陀みだ、 各別かくべつなるにをひては、 あやまて一体いったいと釈しゃくせらるべからず。 かくのごときの大だい聖しょうたりといへども、 臨りん終じゅうにのぞんで西方さいほう往おう生じょうの素そ懐かいをとげたまへり。

-かの ¬別伝べつでん¼ (智者大師別伝意) にいはく、 「この妙みょう法ほっ花けは本ほん迹じゃく二に門もんにして、 その理り深遠じんのんなり。 さとりがたく入いりがたし。 且しばらくおきて論ろんぜず。 すなはち西方さいほうにまうでゝ、 仏ぶつにまうあひたてまつりて、 さとりをひらかん。 四し十じゅう八願はちがんをもて浄じょう土どを荘しょう厳ごんす。 なを往おう生じょうすることをうるなり。 いはんやわれ戒かい恵え薫修くんじゅす、 なんぞ生しょうずることをえざらん」。 已上

-これによりて天臺てんだいの往おう生じょう、 都と率そつ・西方さいほうにあらそひあり。 しかれば、 妙みょう楽らくこれを会えしていはく、 「しかるに大だい師し生しょう存ぞんにはつねに都と率そつに生しょうぜんと願がんじて、 臨りん終じゅうにはすなはち観音かんのんの来迎らいこうすといふ。 まさにしるべし、 軌き物もつ、 機きにしたがひ縁えんに随したがいて、 化けをまうくること一いち准じゅんなるべからず」 (輔行巻一) 已上

-伝文でんもんといひ妙みょう楽らくの釈しゃくといひ、 天臺てんだいの西方さいほう往おう生じょう、 たれかこれをあらそはん。 もし汝なんじが所しょ立りゅうのごときは、 極楽ごくらく虚こ説せつならば、 大だい師しあに西方さいほう往おう生じょうをとげられんや。

・第二問答

難なん0720じていはく、 諸しょ経きょう論ろんの文もんならびに人にん師しの疏しょ釈しゃくをひきて、 念仏ねんぶつ往おう生じょうの義ぎをたつといへども、 なをもてあきらかならず。 ひく所ところの諸しょ経きょう、 みなこれ爾に前ぜんの教きょうなり。 爾に前ぜんの教きょうは方便ほうべんの説せつなるがゆへに、 方便ほうべんの教きょうを所しょ依えとしてつくる所ところの菩ぼ薩さつの論ろん、 人にん師しの釈しゃく、 みなこれ方便ほうべんの説せつに属ぞくすべし。 たとひ ¬法ほっ花け¼ についてつくる疏しょ釈しゃくたりといふとも、 諸しょ師しの意い楽ぎょうまちまちなるがゆへに、 ¬法ほっ花け¼ に合がっせばこれを用もちゆべし。 経きょう文もんに合がっせずしては依え用ようすべからず。 たとひ大だい師しの解げ釈しゃくたりといふとも、 義ぎによりて取捨しゅしゃあるべし。

-たゞしひく所ところの 「即往そくおう安楽あんらく世せ界かいの阿あ弥陀みだ」 (法華経巻六薬王品) は、 汝なんじが所しょ立りゅうの西方さいほう極楽ごくらく世せ界かいの阿あ弥陀みだにあらず、 己こ身しんの阿あ弥陀みだなり。 「安楽あんらく世せ界かい」 といふは、 法身ほっしんの所しょ居ごを安楽あんらく世せ界かいとなづくるなり。

つぎに念仏ねんぶつ无む間けんの業ごうといふは、 直ただちに念仏ねんぶつを无む間けんの業ごうといふにあらず。 念仏ねんぶつの行ぎょう者じゃ、 法ほっ花けを毀き謗ほうす。 かるがゆへに能修のうしゅの機きに約やくして、 所修しょしゅの念仏ねんぶつを无む間けんの業ごうと名なづくるなり。

浄じょう土どの祖師そし善導ぜんどう和か尚しょう、 往おう生じょうの行ぎょうにをひて正しょう雑ぞう二に行ぎょうをたてゝ、 念仏ねんぶつの一いち行ぎょうを正行しょうぎょうとし、 自余じよの諸善しょぜんをことごとく雑ぞう行ぎょうとなづく。 しかるに ¬観かん経ぎょう¼ の説相せっそうをみるに、 九く品ぼん往おう生じょうのむねをあかす。 上じょう品ぼん上生じょうしょうには読誦どくじゅ大だい乗じょうの受法じゅほうとす。 しからば、 読誦どくじゅ大だい乗じょうのなかに ¬法ほっ花け¼ もるべからず。 もししからば、 なんぞ ¬法ほっ花け¼ を雑ぞう行ぎょうに摂せっせん。

-しかのみならず、 雑ぞう行ぎょうに於おいては、 初はじめは 「▲一いち0721二に、三さん五ごの往おう生じょうをゆるす」 (礼讃意) といへども、 後のちには 「▲千せん中ちゅう无む一いち」 (礼讃) と結けっす。 あまさへ雑ぞう行ぎょうについて十じゅう三さんの失しつをいだす。 ことごとくこれ謗法ほうぼうなり。 しかるに ¬法ほっ花け¼ はこれ三さん世ぜの諸仏しょぶつの出しゅっ世せの本懐ほんかい、 一切いっさい衆しゅ生じょうの成じょう仏ぶつの直道じきどうなり。 なんぞ雑ぞう行ぎょうに摂せっして不ふ生しょうといはんや これ一ひとつの謗法ほうぼう。

-つぎに三心さんしんを釈しゃくするに、 回え向こう心しんのなかに二河にが白びゃく道どうのたとへをして、 異い学がく・異い見けん・別べつ解げ・別べつ行ぎょうのものを群賊ぐんぞく悪あく獣じゅうにこれをたとふ。 別べつ解げ・別べつ行ぎょうの中なかに ¬法ほっ花け¼ をもらすべからず。 これまた†謗法ほうぼうなり これ二ふたつの謗法ほうぼう。

-つぎに和わ国こくの†法然ほうねん上しょう人にんの ¬選せん択じゃく集しゅう¼ に善導ぜんどうの ¬疏しょ¼ の五ご種しゅの正行しょうぎょうをひきて、 五ご種しゅの雑ぞう行ぎょうに相対そうたいして第一だいいちに読誦どくじゅ大だい乗じょうをいだす。 文もんにいはく、 「▲第一だいいちに読誦どくじゅ雑ぞう行ぎょうといふは、 上かみの ¬観かん経ぎょう¼ 等とうの往おう生じょう浄じょう土どの経きょうを除のぞきて已外いげの、 大だい小乗しょうじょうの顕密けんみつの諸しょ経きょうに於おいて受じゅ持じ読誦どくじゅする。 ことごとく読誦どくじゅ雑ぞう行ぎょうとなづく」。 已上 すでに大だい小乗しょうじょうの顕密けんみつの諸しょ経きょうといふ、 このなかに ¬法ほっ花け¼ もるべからず これ三みつの謗法ほうぼう。

-つぎに聖しょう道どう難なん証しょうの義ぎを立りゅうせんがために、 初はじめには顕大けんだい・権大ごんだいをひきて ▲「歴りゃっ劫こう迂回うえの行ぎょう」 (選択集) とし、 後のちには 「▲是これに准じゅんじて是これを思おもふに、 密大みつだい及および実大じつだいを存ぞんずべし」 (選択集) と釈しゃくして、 ¬法ほっ花け¼ をもて歴りゃっ劫こう迂回うえの行ぎょうに准じゅんぜしめて 「応おう↠存ぞん」 といふ。 ¬法ほっ花け¼ はこれ速疾そくしつ頓とん悟ごの教きょうなり、 証しょうをとることたなごゝろをかへすが如ごとし。 かくのごときの速疾そくしつ頓とん悟ごの教きょうにをひて、 これを歴りゃっ劫こう迂回うえの行ぎょうに准じゅんずる0722こと、 これまた謗法ほうぼうなり これ四よつの謗法ほうぼう。

-つぎに ¬寿じゅ経きょう¼ の三輩さんぱいと ¬観かん経ぎょう¼ の九く品ぼんをひきあはせて得失とくしつを判はんずる中なかにいはく、 「▲諸しょ行ぎょうは廃はいのためにしかもこれをとく、 念仏ねんぶつは立りゅうのためにしかもこれをとく」 (選択集)。 しかのみならず、 念仏ねんぶつのほか自余じよの諸しょ行ぎょうを▲捨しゃ・スツル ▲閉へい・トヅル ▲閣かく・サシオク▲抛ほうとナゲウツ所々しょしょにこれを釈しゃくす。 かくのごときの義ぎ立りゅう、 いかでか謗法ほうぼうの罪つみをのがれん。

-¬法ほっ花け¼ の二 (譬喩品) 長ちょう者じゃ偈げ にいはく、 「もし人ひと信しんぜずしてこの経きょうを毀き謗ほうすれば、 すなはち一切いっさい世せ間けんの仏種ぶっしゅを断だんずと。 乃至 この人ひとの罪報ざいほう、 汝なんじいままたきく。 その人ひと、 命終みょうじゅうして阿鼻あび獄ごくに入いりて一劫いっこうを具ぐ足そくす」。 已上

-この経きょうを信しんぜずして毀き謗ほうするものは、 必ひつ定じょうして阿鼻あびに堕だ在ざいすべきこと、 現文げんもん分ぶん明みょうなり。 近代きんだい念仏ねんぶつ修しゅ行ぎょうの人ひと、 ¬法ほっ花け¼ を信しんぜずして、 あまさへ雑ぞう行ぎょうのもの往おう生じょうすべからずといふ。 かくのごときの義ぎ、 ¬観かん経ぎょう¼ の説相せっそうにもそむくと 云々うんぬん。

-¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻二六徳王品 南本巻二四徳王品) にいはく、 「信しん不具ふぐなるゆへに一闡いっせん提だいとなづく」。 已上

-しりぬ、 ¬法ほっ花け¼ を信しんぜざるものはすなはち謗法ほうぼうなり、 また不ふ信しんはすなはち闡提せんだいなり。 かるがゆへに、 かみは 「若にゃく人にん不ふ信しん」 といひ、 しもは 「則断そくだん一切いっさい世せ間けん仏種ぶっしゅ」 といふ。 あきらかにしりぬ、 ¬法ほっ花け¼ を信しんぜざるものは、 すなはち謗法ほうぼうと闡提せんだいと二に罪業ざいごうなり。 かるがゆへに罪業ざいごう阿鼻あびにあり。 この義ぎをもてのゆへに、 念仏ねんぶつ无む間けんの業ごうとなづくるなり、 いかん。

答こた0723。う ひくところの 「若にゃく人にん不ふ信しん」 の文もんは、 総そうじて仏法ぶっぽうを信しんずることなきものを不ふ信しんといふなり。 余よ経きょうを信しんじて ¬法ほっ花け¼ を信しんぜざるを 「不ふ信しん」 といふにはあらず。 ¬法ほっ花け¼ の七しち (巻六) 嘱累品 にいはく、 「もし衆しゅ生じょうありて信受しんじゅせざらんものは、 まさに如来にょらい余よの深法じんぼうのなかにおひて示じ教きょう利喜りきすべし」。 已上 ¬法ほっ花け¼ を信しんぜざるものは、 余よ教きょうのなかにをひて示じ教きょう利喜りきすべしといふ文もん分ぶん明みょうなり。 この文もんを見みながら、 ¬法ほっ花け¼ を信しんぜざるものは謗法ほうぼうなりといひ、 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの教きょうに得益とくやくなしといふ、 不ふ足そく言ごんなり。 ¬法ほっ花け¼ のほかに深法じんぼうありといふこと、 たれかこれをあらそはん。

-いふところの深法じんぼうといふは、 すなはちこれ浄じょう土どの教きょうをさすなり。 ゆへいかんとなれば、 弥陀みだの本願ほんがん、 釈しゃ迦かの留る教きょう、 諸仏しょぶつの証誠しょうじょう、 かぎりて浄じょう土どの教きょうにあり。 ¬无む量りょう寿じゅ経きょう¼ の巻かん下げにいはく、 「▲无む量りょう寿じゅ仏ぶつを念ねんじたてまつり、 その国くにに生しょうぜんと願がんじて、 ◆もし深法じんぼうをきゝて歓かん喜ぎせん」 と。 いまだ諸しょ教きょうのなかにをひてかくのごときの説せつをきかず。

-この義ぎをもてのゆへに、 天臺てんだいは 「△一代いちだい聖教しょうぎょうの結けっ経きょう」 と判はんず。 妙みょう楽らくは 「△多た在ざい弥陀みだ」 (輔行巻二) と讃さんず。

-慈じ雲うん法ほっ師しは 「浄じょう土どの弥陀みだをひとたび耳に根こんにふるれば、 すなはち大だい乗じょう成じょう仏ぶつの種しゅ子しをくだす」 と釈しゃくす。

-元がん暁ぎょうの釈しゃくには 「▽両りょう尊そん出しゅっ世せの本ほん意い、 四し輩はい入にゅう道どうの要門ようもん、 耳みみに経名きょうみょうをきゝて、 すなはち一いち乗じょうにいりてしかも退たいすることなし。 口くちに仏号ぶつごうを誦じゅしてすなはち三界さんがいをい0724でゝしかもかへらず」 (小経疏)。

慈じ恩おんの ¬西方さいほう要決ようけつ¼ いはく、 「不ふ了りょう之の教きょう、 涅ね槃はん之の会えに釈しゃく通つうし、 浄じょう土どの一門いちもんは双林そうりんに更さらに疑ぎ決けつなし。 諸仏しょぶつの舒舌じょぜつを引いん成じょうして、 この二義にぎによるがゆへに方便ほうべんにあらず」。 已上

-恵え心しんの釈しゃくには、 「しかるに信受しんじゅをすゝむ、 願がん生しょうを成じょうぜんとする。 これ仏ぶつの本懐ほんかいなり。 軽きょう爾にすべからず」 (小経略記)。 已上

-この義ぎをもてのゆへに、 浄じょう土どの教きょうを深法じんぼうとなづくるなり。

-つぎに不ふ信しんを闡提せんだいといふ。 総そうじて仏法ぶっぽうの信しんなくして因いん果がをやぶるを闡提せんだいと名なづくるなり。¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻二六徳王品 南本巻二四徳王品) にいはく、 「一闡いっせんをば信しんとなづけ、 提だいをば不具ふぐと名なづく。 信しん不具ふぐなるがゆへに一闡いっせん提だいとなづく」。 已上

-しかるにわれら ¬法ほっ花け¼ ついて出しゅつ離りをもとめずといへども、 至し心しんに念仏ねんぶつを行ぎょうじて、 しかも ¬法ほっ花け¼ を謗ほうぜず。

-汝なんじが所説しょせつのごとく、 ¬法ほっ花け¼ を信しんぜざるものを謗法ほうぼう・闡提せんだいといはゞ、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻三三迦葉品 南本巻三一迦葉品) にいはく、 「蟻子ぎしを殺害せつがいしては、 なをし殺罪せつざいをうるなり。 一闡いっせん提だいをころすは、 殺罪せつざいあることなし」。 已上 もししからずは、 余よ法ほうを信しんじて ¬法ほっ花け¼ を信しんぜざるものをころしたらば、 蟻子ぎしを害がいするよりも殺罪せつざいなしといふべき歟か。 もしこの義ぎを存ぞんぜば、 これすなはち闡提せんだいなり、 因いん果がをしらざるがゆへに。

-つぎに和か尚しょう・上しょう人にん両りょう師しの御おん釈しゃくをひきて謗法ほうぼうといふこと、 不ふ足そく言ごんなり。 これすなはち、 文もんにまよひ義ぎにくらきがゆへなり。 両りょう師しともにことごとく諸しょ行ぎょう往おう生じょうをゆるす。

-「玄げん0725義ぎ」 (玄義分) 序題じょだい門もん にいはく、 「▲こゝろによりて勝行しょうぎょうををこす。 門もん八万はちまん四し千せんにあまれり。 漸頓ぜんとんすなはち所しょ宜ぎにかなふ。 縁えんにしたがふものは、 みな解げ脱だつを蒙こうむる」。 已上

-同おなじき 「玄げん義ぎ」 (玄義分) にいはく、 「▲定じょう散さんひとしく回え向こうすれば、 速すみやかに无む生しょう身しんを証しょうす」 といへり。 定じょう散さんのほかにいかなる行ぎょうありてか不ふ生しょうといはん。

-¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にいはく、 「▲如来にょらい五ご濁じょくに出しゅつ現げんして、 随ずい宜ぎに方便ほうべんして群萌ぐんもうを化けす。 或あるいは多た門もんをときてしかも得とく度どせしめ、 或あるいは少しょう解げをときて三さん明みょうを証しょうす。 或あるいは福ふく恵えならべて障さわりを除のぞくとをしへ、 或あるいは禅念ぜんねんして坐ざして思し量りょうせよとをしふ。 種々しゅじゅの法門ほうもんみな解げ脱だつすれども、 念仏ねんぶつして西方さいほうにゆくにすぎたるはなし」 といへり。

-¬般舟はんじゅ讃さん¼ にいはく、 「▲或あるいは人にん・天てん・二に乗じょうの法ほうをとき、 或あるいは菩ぼ薩さつ涅ね槃はんの因いんをとく。 或あるいは漸ぜん或あるいは頓とん、 空くう有う・人法にんぽうならべて除のぞかしむることをあかす。 根こん性じょう利りなるものはみな益やくを蒙こうむる、 鈍根どんこん无智むちにしては開かい悟ごしがたし」。 已上 諸しょ行ぎょう往おう生じょうの文もんしげきをおそれて略りゃくす

-おほよそ諸しょ行ぎょう往おう生じょうを許ゆるすこと、 善導ぜんどう一いっ師しにかぎらず。 ▲道どう綽しゃく禅ぜん師じは 「万まん行ぎょう往おう生じょう」 (安楽集巻下意) といひ、 恵え感かん禅ぜん師じは 「諸しょ行ぎょう往おう生じょう」 (群疑論巻五) といふ。 恵え心しんまたこれに同おなじ。

-念仏ねんぶつ等とうの五ご種しゅの正行しょうぎょうは、 もはら西方さいほうの業ごうなるがゆへに正行しょうぎょうとなづく。 五ご種しゅのほかに自余じよの諸しょ行ぎょうは、 或あるいは人天にんでんに及および三さん乗じょうに通つうじ、 或あるいは十方じっぽうの浄じょう土どに通つうずる行ぎょうなるがゆへに雑ぞう行ぎょうといふ。

-おほよそ▲大だい小乗しょうじょうの経きょう論ろんのなかに純じゅん雑ぞうの0726二に門もんをたつ。 その例れい一ひとつにあらず。 ◆大だい乗じょうにはすなはち八蔵はちぞうのなかに雑蔵ぞうぞうをたつ。 七蔵しちぞうはこれ純じゅん、 一蔵いちぞうはこれ雑蔵ぞうぞうなり。 ◆小乗しょうじょうにはすなはち四し阿あ含ごんのなかにしかも雑含ぞうごんをたつ。 三さん阿あ含ごんはこれ純じゅん、 一いち阿あ含ごんはこれ雑ぞうなり。 ◆律りつにはすなはち二に十じゅうの犍けん度どをたてゝ、 もて戒かい行ぎょうをあかす。 そのなかに、 まへの十じゅう九くは純じゅん、 のちの一いちはこれ雑ぞう犍けん度どなり。

-もし汝なんじが所難しょなんのごとく、 雑ぞう行ぎょうをたつるをもて謗法ほうぼうといはば、 大だい小乗しょうじょうのなかに純じゅん雑ぞうをたつる、 みなこれ謗法ほうぼうといふべきや。 謗法ほうぼうといふは、 汝なんじが所しょ立りゅうのごとく、 真言しんごんは亡国ぼうこく、 禅ぜんは天てん魔まの所しょ行ぎょう、 念仏ねんぶつは无む間けんの業ごうといふ、 かくのごときの説せつことごとく謗法ほうぼうなり。 いかでか三さん悪道まくどうをのがれん。

-¬大論¼ (大智度論巻一初品) にいはく、 「自じ法ほうを愛染あいぜんするが故ゆえに他た人にんの法ほうを毀呰きしすれば、 持じ戒かいの行ぎょう人にんなりといへども地じ獄ごくの苦くをまぬかれず」。 已上

-つぎに十じゅう三さんの得失とくしつといふは、 念仏ねんぶつは本願ほんがんの行ぎょうなるがゆへに、 「▲仏ぶつの本願ほんがんと相応そうおうするがゆへに」 (礼讃) といふなり。 余よ善ぜんは本願ほんがんにあらず、 故かるがゆえに 「▲仏ぶつの本願ほんがんに不ふ相応そうおう」 (礼讃) といふ。 「▲教きょうに違いせざるがゆへ」 (礼讃) といふは、 浄じょう土どの三さん経ぎょうのなかに処々しょしょに念仏ねんぶつをあかして、 もて勝行しょうぎょうとす。 余よ善ぜんはしからず、 故かるがゆえに不違ふい教きょう故こといふ。 念仏ねんぶつはこれ十方じっぽう恒沙ごうじゃの諸仏しょぶつの証誠しょうじょうなるがゆへに、 「▲随ずい順じゅん仏ぶつ語ご」 (礼讃) といふ。

-「▲貪嗔とんじん・諸見しょけん来きたりて間断けんだんせず」 (礼讃意) といふは二義にぎあり。

-一いち義ぎにいはく、 ¬観仏かんぶつ0727経きょう¼ (巻一〇観仏密行品意) の六ろく喩ゆのこゝろによらば、 「念仏ねんぶつは煩悩ぼんのうのために染ぜんせられず」 云々うんぬん。

-一いち義ぎにいはく、 貪嗔とんじんは煩悩ぼんのう濁じょくなり、 諸見しょけんは見けん濁じょくなり。 ¬倶く舎しゃ¼ (玄奘訳巻一二 世品意) にいはく、 「煩悩ぼんのう濁じょくは在ざい家けの善ぜんを損そんじ、 見けん濁じょくは出しゅっ家けの善ぜんを損そんず」。

-「在ざい家けの善ぜん」 といふは、 造像ぞうぞう・起き塔とう・供く仏ぶつ・施せ僧そう等とうこれなり。 「出しゅっ家けの善ぜん」 といふは、 四し諦たい・十じゅう六ろく行ぎょう相そう等とうの観法かんぽうなり。 これすなはち事じと理りとの二に善ぜんなり。 しかるにまさに理り観かんに住じゅうせんとすれば諸見しょけんきおひをこる。 もし事じの善ぜんを修しゅせんと欲ほっすれば貪嗔とんじん生しょうずるによりて念仏ねんぶつを修しゅす。 財宝ざいほうをもちゐざれば貪瞋とんじんこゝろにをこらず。 観法かんぽうをもちゐざれば諸見しょけんをこることなし。

-もし雑ぞう行ぎょうを修しゅするもの、 煩悩ぼんのうをこるといへども、 行ぎょうのなかの起き悪あく微み細さいにしてわきまへがたし。 そのとがをしらざるがゆへに懺さん悔げのこゝろなし。 念仏ねんぶつを行ぎょうずるものはつねに懺さん悔げを修しゅす。 「▲念々ねんねん称名しょうみょう常じょう懺さん悔げ」 (般舟讃) といへり。 正行しょうぎょうを行ぎょうずるものは仏恩ぶっとんを報ほうず。 ¬経きょう¼ (礼讃) にいはく、 「▲自みずからも信しんじ人ひとを教おしえて信しんぜしむること、 難かたきが中なかにうたゝ更さらに難かたし。 大だい悲ひを伝つたえて普あまねく化けす、 まことに仏恩ぶっとんを報ほうずるになる」 と。 已上 雑ぞう行ぎょうを修しゅするは心こころに軽きょう慢まんを生しょうず。

-「▲名みょう利りと相応そうおうす」 (礼讃) と0728いふは、 正行しょうぎょうを修しゅするものは、 ひとへに仏ぶつの大願だいがんをたのむ。 雑ぞう行ぎょうを修しゅするものは、 こゝろに三学さんがくありと念ねんじて貴己きこ等仏とうぶつの見けんををこす。 故かるがゆえに慢まん挙こを生しょうずるなり。 「▲人にん我が自みずからおほふ」 (礼讃) といふは、 正行しょうぎょうを修しゅするものは、 自みずから機きを知しりて貢く高こうを生しょうぜず、 善ぜん友ぬに親近しんごんす。 雑ぞう行ぎょうを修しゅするものは、 自みずからの三学さんがくをたのみて心こころに高慢こうまんをいだく。 故かるがゆえに名みょう利りと相応そうおうす。

-かくのごとく得失とくしつを判はんずること、 たゞこれ仏説ぶっせつにまかす。 なんぞ謗法ほうぼうといはん。

-但ただし千せん中ちゅう无む一いちの釈しゃくに至いたりて、 能別のうべつの言ことばを置おきて 「▲不ふ至し心しん者しゃ千せん中ちゅう无む一いち」 (礼讃) といふ。 それ実じつには正行しょうぎょうたりといふとも、 至し心しんなくは生しょうぜず。 しかりといへども、 雑ぞう行ぎょうは至し心しん具ぐ足そくしがたし、 正行しょうぎょうは至し心しん具ぐ足そくしやすし。 故かるがゆえに雑ぞう行ぎょうの失しつを出いだして 「不ふ至し心しん者しゃ」 等とうといふなり。

-つぎに群賊ぐんぞく・悪あく獣じゅうの喩たとえをもて謗法ほうぼうといふ義ぎ、 これまた不ふ足そく言ごんなり。 文もんにいはく、 「▲或あるいはゆくこと一分いちぶん二に分ぶんするに群賊ぐんぞくよばひかへすといふは、 別べつ解げ・別べつ行ぎょう・悪見あっけん人にん等とうみだりに見けん解げを説ときてたがひにあひ惑乱わくらんし、 及および自みずから罪つみを作つくりて退失たいしつするにたとふ」 (散善義) 。 すでに 「別べつ解げ別べつ行ぎょう悪見あっけん人にん等とう」 といふは、 何なんぞ謗法ほうぼうといはん。 別べつ解げ・別べつ行ぎょうの人ひと、 われらが往おう生じょうの大益だいやくを失しっするがゆへに群賊ぐんぞくにたとふ。 「▲悪あく獣じゅういつはる」 (散善義) といふは、 衆しゅ生じょうの六根ろっこん・六識ろくしき・六塵ろくじん・五ご陰おん・四し大だいにたとふ。 悪あく獣じゅうを別べつ解げ・別べつ行ぎょうにたとふるにあらず。

-凡およそ二河にが白びゃく道どうのたとへは、 ¬大論だいろん¼・¬涅ね槃はん経ぎょう¼ 等とうによりてこの喩たとえをつくる。 ¬大論だいろん¼ (大智度論巻三七習相応品意) にいはく、 「貪愛とんない瞋憎しんぞう深ふかくしてそこなし。 水すい火かの二河にがまたほとりなし。 中ちゅう路ろの白びゃく道どう微み少しょうなりといへども、 信心しんじん決けつ定じょうして西にし0729の岸きしに至いたる」。 已上

-群賊ぐんぞく・悪あく獣じゅうの喩たとえは ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ による。 異い学がく・異い見けんの行ぎょう体たいを群賊ぐんぞく・悪あく獣じゅうにたとふるにあらず。 また汝なんじが所説しょせつのごとく、 念仏ねんぶつ无む間けんの業ごうといふ。 かくのごときの謗法ほうぼう・邪見じゃけんの輩やからを群賊ぐんぞくに喩たとうるなり。

-つぎに西方さいほう浄じょう土どはもはら一いち乗じょうの土どにあらず。 ¬観かん経ぎょう¼ の中ちゅう三品さんぼんの機き、 かの土どに生しょうじて小しょう果かを証しょうす。 故かるがゆえに一いち乗じょうの土どにあらずと。 この義ぎ、 また難なんにあらざるなり。

-¬法ほっ花け¼ (巻一方便品) にいはく、 「十方じっぽう仏ぶつ土ど中ちゅう、 唯ゆい有う一いち乗じょう法ほう」 といへり。 西方さいほう浄じょう土ど、 なんぞ十方じっぽう浄じょう土どにもれん。 故かるがゆえに ¬无む量りょう寿じゅ経きょう¼ (巻下) にいはく、 「▲一いち乗じょうを究く竟きょうして彼ひ岸がんにいたる」。 已上 ¬浄じょう土ど論ろん¼ にいはく、 「大だい乗じょう善根ぜんごん界がい」 といへり。 ¬智ち論ろん¼ (大智度論巻三八往生品) にいはく、 「一いち乗じょう清浄しょうじょう无む量りょう寿じゅ世せ界かい」。 已上 これらの現文げんもん、 一いち乗じょうの土どにあらずや。

但ただし中ちゅう三品さんぼんの機き、 かの土どに生しょうじて後のちに四し諦たいの法ほうをきゝて小しょう果かを証しょうすること、 本願ほんがんによるがゆへにしばらく小しょう果かを証しょうするなり。 例れいせば、 花け光こう如来にょらいの土どは純じゅんに一いち乗じょうの土どなりといへども、 本願ほんがんによりて三さん乗じょうの法ほうをとくがごとし。 ¬法ほっ花け¼ の二に 「譬喩ひゆ品ぼん」 にいはく、 「花け光こう如来にょらい、 また三さん乗じょうをもて衆しゅ生じょうを教きょう化けす。 舎しゃ利り弗ほつ、 かの仏ぶつの出しゅつ時じ、 悪あく世せにあらずといへども、 本願ほんがんをもてのゆへに三さん乗じょうの法ほうをとく」。 已上 ¬疏しょ¼ (法華文句記巻六上釈譬喩品) にいはく、 「土ど浄じょう唯一ゆいいつなれども、 願がんにこたえて三さんをとく」 といへり。 一いち乗じょうの土どに於おいて三さん乗じょうの法ほうをとくこと、 所難しょなん不ふ足そくなり。

・第三問答

た0730づねていはく、 離垢りく世せ界かいには三さん乗じょうの法ほうのみありて、 機きあることなし。 西方さいほう浄じょう土どには機き法ほうともにあり。 例れい同どうずべからず、 いかん。

答こた。う 花け光こう如来にょらいの土ど、 また機き法ほうともにあり。 ¬経きょう¼ (法華経巻二) の次下つぎしも 「譬喩ひゆ品ぼん」 にいはく、 「花け光こう如来にょらい、 十じゅう二に劫こうをすぎて堅満けんまん菩ぼ薩さつに阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいをさづく。 もろもろの比丘びくにつげたまはく、 この堅満けんまん菩ぼ薩さつ、 つぎにまさに作さ仏ぶつすべし。 号ごうして花け足そく安あん行ぎょう多陀ただ阿あ訶度かど・阿羅あら訶か・三さん藐みゃく三さん仏ぶっ陀だといはん」。 已上

¬玄賛げんさん¼ (巻五譬喩品) にいはく、 「三さん乗じょうありといへども、 菩ぼ薩さつの類るいおほきがゆへに大宝だいほうといふ」。 已上 ¬経きょう¼ に 「告ごう諸しょ比丘びく」 といひ、 釈しゃくに 「雖すい有う三さん乗じょう」 といふ。 明あきらかに知しりぬ、 花け光こう如来にょらいの土どに機き法ほうともにこれあり。 たれかこれをあらそはん。

-¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻二七獅子吼品 南本巻二五獅子吼品) にいはく、 「一いち乗じょうといふは、 名なづけて仏ぶっ性しょうとす。 この義ぎをもてのゆへに、 われ一切いっさい衆しゅ生じょうにことごとく仏ぶっ性しょうありととく。 一切いっさい衆しゅ生じょうに悉ことごとく一いち乗じょうあり。 无む明みょうおほふをもてのゆへに、 みることうることあたはず」。 已上 しからば、 いかなる衆しゅ生じょうありてか、 浄じょう土どに生しょうじてまた灰けハイ断だんの情こころあらん。

-つぎに上しょう人にんの ¬選せん択じゃく¼ をひきて謗法ほうぼうといふ、 これ又また所難しょなんとするにたらず。 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ のなかに諸しょ行ぎょう往おう生じょうをあかすこと、 その文もん一ひとつにあらず。 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ の末すえ 付ふ属ぞく章しょう にいはく、 はじめ日想にっそう観かんより、 をはり雑想ざっそう観かんにいたるまで、 具つぶさに十じゅう三観さんがんをひきをはり0731て、 「▲たとひ余よ行ぎょうなしといふとも、 或あるいは一いち或あるいは多た、 その所堪しょかんにしたがひて十じゅう三観さんがんを修しゅして往おう生じょうすることをうべし。 そのむね ¬経きょう¼ にみえたり。 あへて疑ぎ慮りょすることなかれ」。

-つぎしもに、 はじめ孝きょう養よう父母ぶもより、 をはり読誦どくじゅ大だい乗じょう、 勧進かんじん行ぎょう者じゃに至いたるまで、 散善さんぜんの行ぎょうことごとくこれをひきて往おう生じょうをゆるす。 読誦どくじゅ大だい乗じょうを釈しゃくしていはく、 「▲願ねがわくは西方さいほうの行ぎょう者じゃ、 おのおのその意い楽ぎょうに随したがいて、 或あるいは法ほっ花けを読誦どくじゅしてもて往おう生じょうの業ごうとし、 あるひは華け厳ごんを読誦どくじゅしてもて往おう生じょうの業ごうとす。 乃至 これすなはち浄じょう土ど宗しゅうの ¬観かん无む量りょう寿じゅ経きょう¼ のこゝろなり」 (選択集)。

-しばらく不ふ堪かんの機きに対たいして、 ひとへに念仏ねんぶつをすゝめんがために 「捨閉しゃへい」 等とうといへり。 しかりといへども、 またく不ふ捨しゃ不ふ閉へい、 本願ほんがんにあらず。 故かるがゆえに 「捨閉しゃへい」 等とうといふなり。

-おほよそ浄じょう土どの三さん経ぎょうの説相せっそうをみるに、 ¬寿じゅ経きょう¼ の三輩さんぱいのなかに、 念仏ねんぶつと諸しょ行ぎょうと雑ざっすることをとく。 ¬観かん経ぎょう¼ には一いち行ぎょう一いち行ぎょうにおのおの九く品ぼん往おう生じょうのむねをあかす。 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ には諸しょ行ぎょうをとかず、 たゞ一日いちにち七日しちにちの執しゅう持じ名みょう号ごうをもて 「▲得とく生しょう彼ひ国こく」 (意) ととく。 つぎ†しもに 「▲不可ふか以い少しょう善根ぜんごん福徳ふくとく因縁いんねん得とく生しょう彼ひ国こく」 ととく。

-かくのごとく三さん経ぎょうの説相せっそうによりて、 廃はい立りゅう・助じょ正しょう・傍ぼう正しょうの三さん義ぎを立りゅうす。 しかも廃はい立りゅうの一いち義ぎをもて謗法ほうぼうといはば、 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ の小しょう善根ぜんごん不ふ生しょうの文もん、 いかんが謗法ほうぼうといはん。

-十方じっぽう恒沙ごうじゃの証誠しょうじょう、 たゞかぎりて念仏ねんぶつにあり。 念仏ねんぶつはまさ0732しく弥陀みだ如来にょらいの本願ほんがんの行ぎょうなるがゆへに、 行ぎょうじやすく修しゅしやすし。 故かるがゆえに機きの堪かん不ふ堪かんを論ろんぜず、 ひとへに念仏ねんぶつ往おう生じょうをすゝむるなり。

-つぎに 「歴りゃっ劫こう迂回うえの行ぎょう」 (選択集) のこと、 おほよそ浄じょう土ど宗しゅうの大綱たいこうは、 聖しょう道どう・浄じょう土どの二に門もんをたてゝ、 聖しょう道どう門もんをすてゝ浄じょう土ど門もんに帰きするを本ほん意いとす。 その聖しょう道どう門もんといふは、 此土しどの入にっ聖しょう得とく果かなるがゆへに難なん行ぎょう難なん証しょうなり、 故かるがゆえに難なん行ぎょう道どうとなづく。 浄じょう土ど門もんは、 かの土どの入にっ聖しょう得とく果かなるがゆへに易い行ぎょう易い往おうなり、 故かるがゆえに易い行ぎょう道どうとなづく。

-¬十住じゅうじゅう毘婆びば娑しゃ論ろん¼ (巻五易行品意) にいはく、 「▲菩ぼ薩さつ阿毘あび跋ばっ致ちを求もとむるに二に種しゅの道どうあり。 一いちにはいはく難なん行ぎょう道どう、 二ににはいはく易い行ぎょう道どうなり。 難なん行ぎょう道どうといふは、 いはく五ご濁じょくの世よ无む仏ぶつの時ときにをひて阿毘あび跋ばっ致ちを求もとむるを難なんとす。 乃至 たとへば▲陸ろく路ろの歩ぶ行ぎょうはすなはちくるしきがごとし。 △易い行ぎょう道どうといふは、 いはくたゞ信仏しんぶつの因縁いんねんをもて浄じょう土どに生しょうぜんと願がんずれば、 仏ぶつの願力がんりきに乗じょうじて、 すなはちかの清浄しょうじょうの土どに往おう生じょうすることをう。 仏力ぶつりき住じゅう持じして、 すなはち大だい乗じょう正定しょうじょうの聚じゅにいる。 正定しょうじょうはすなはちこれ阿毘あび跋ばっ致ちなり。 たとへば水すい路ろの乗じょう船せんはすなはちたのしきが如ごとし」。 已上

-しかるに真言しんごんには、 顕けん教ぎょう三劫さんこう成じょう仏ぶつと談だんじ、 密みっ教きょうは即身そくしん成じょう仏ぶつといふ。 天臺てんだいには、 三権さんごん歴りゃっ劫こうの行ぎょうも一実いちじつ速疾そくしつ頓とん証しょうと判はんず。 故かるがゆえに顕大けんだい・権大ごんだいをもて難なん証しょうの本ほんとす。 真言しんごん・法ほっ花け等とうは速疾そくしつ頓とん悟ごの教きょうなりといへども、 しかも断だん証しょうなきにあらず。 浄じょう土どはしからず0733、 煩悩ぼんのうを断だんぜずして直ただちに報ほう土どに生しょうず。 得とく生しょう已後いごかの土どにおひて五ご悪趣あくしゅをきる。

-¬大だい経きょう¼ (巻下) にいはく、 「▲必かならず超ちょう絶ぜつしてすつることをえて安楽あんらく国こくに往おう生じょうすれば、 横よこさまに五ご悪趣あくしゅをきりて、 悪趣あくしゅ自じ然ねんにとづ。 道どうにのぼるに窮極ぐうごくなし」。 已上

-故かるがゆえに断だん証しょうをからず。 浄じょう土どの易い行ぎょうに対たいして難なん易いの二に道どうを分別ふんべつせんがために、 初はじめに歴りゃっ劫こう迂回うえの行ぎょうをあげて真言しんごん・法ほっ花け等とうを准じゅん知ち応存おうぞんといふなり。 顕大けんだい・権大ごんだい等とうの歴りゃっ劫こうのごとく、 これを准じゅんずるにあらず。

-難なん易いの二に道どうをたつることは ¬十住じゅうじゅう毘婆びば娑しゃ論ろん¼ によるなり。 かの論ろんのこゝろは得道とくどうの遅ち速そくをば論ろんぜず、 総そうじて此土しどの入にっ聖しょう得とく果かの行ぎょうを難なん行ぎょう道どうと名なづく。 故かるがゆえに真言しんごん・仏心ぶっしん・天臺てんだい等とうをことごとくみな難なん行ぎょう道どうに摂せっするなり。

-もし法ほっ花けを難なん行ぎょう道どうに摂せっするをもて謗法ほうぼうといはゞ、 天臺てんだい大だい師しをも謗法ほうぼうの人ひとといふべきや。 しかるに大だい師しは法ほっ花け三昧ざんまいをえて、 しかも臨りん終じゅうに及およびて ¬法花ほけ経きょう¼ を手てにとりていはく、 「この ¬妙みょう法ほっ花け¼ は本ほん迹じゃく二に門もんにして、 その理り深遠じんのんなり。 さとりがたく入いりがたし。 しばらくをひて論ろんぜず」 (智者大師別伝意) と。 つぎに ¬観かん経ぎょう¼ を手てにとりて 「すなはち西方さいほうにまうでゝ、 仏ぶつにまうあふてさとりをひらかん」 (智者大師別伝意) といへり。

-かくのごときの現文げんもんに難なん易いの義ぎいよいよあらはなり。 ¬法ほっ花け¼ を信しんぜんものは、 余よ法ほうをそしり他た人にんのとがをとくべからず。

-¬法ほっ花け¼ を信しんじて余よ法ほうをそしり、 他た人にんのとがをとくならば、 ¬孝こう経きょう¼ をさ0734ゝげておやのかしらをうつが如ごとし。 ¬法ほっ花け¼ (巻五) 「安楽あんらく行品ぼん」 にいはく、 「如来にょらいの滅めつ後ご、 末法まっぽうのなかにをひてこの経きょうをとかんと欲ほっせば、 安楽あんらく行ぎょうに住じゅうすべし。 もし口くちに宣説せんぜつし、 もし経きょうをよまんとき、 ねがひて他た人にん及および経きょう典てんのとがをとかざれ、 また諸しょ余よの法ほっ師しを軽きょう慢まんせざれ、 他た人にんの好こう悪お・長じょう短たんをとかざれ」。 已上

同おなじき ¬経きょう¼ (法華経巻五安楽行品) の偈げの文もんにいはく、 「もしこの経きょうをとかんと欲ほっせば、 まさに嫉しつ・恚い・慢まん・諂誑てんおう・邪じゃ偽ぎの心こころをすてゝ、 つねに質しっ直ちょくココロヲスの行ぎょうグニシテ を修しゅすべし。 人ひとを軽きょう蔑べつせざれ、 また法ほうを戯け論ろんせアナドルざれ、 他たを疑悔ぎけして汝なんじは仏ぶつをえずといはしめざれ」。 已上

-かくのごときの経きょう文もんをみながら、 諸しょ経きょう論ろんをそしりひとを憍きょう慢まんし、 あまさへ念仏ねんぶつ无む間けんの業ごうといふ、 あに嫉しつ・恚い・慢まん・諂誑てんおう・邪じゃ偽ぎの心こころにあらずや。 これすなはち、 しかしながら阿鼻あびの罪業ざいごうをまねく歟か。

-なかんづく ¬法ほっ花け¼ はこれ多た聞もん強識ごうしきの人ひとのためにこれをとく。 无智むちのものゝためにとくべからずとみえたり。 ¬法ほっ花け¼ の二に (譬喩品) 長ちょう者じゃ偈げ にいはく、 「无智むちの人ひとのなかにしてこの経きょうをとくことなかれ。 もし利り根こん・智恵ちえ明了みょうりょう・多た聞もん強識ごうしきにありて仏道ぶつどうをもとめんものには、 かくのごときのひとにはすなはちためにとくべし」。 已上

-またいはく、 「この法花ほけ経きょうは深じん智ちのためにとく。 浅識せんしきこれをきゝて迷惑めいわくして解げせず」(法華経巻二譬喩品) 。 またいはく、 「諸仏しょぶつ如来にょらいのみことばに虚こ妄もうなし」 (法華経巻一方便品)。

-しかる0735に一文いちもんに通つうぜざる大俗だいぞくの、 黒闇こくあんをもわきまへざる男女なんにょ・盲目もうもく等とうに対たいして、 経きょうの正しょう理りをしらず、 をのれが悪見あっけんのこゝろにまかせてほしゐまゝにこれをとく。 これによりて諸しょ宗しゅうをそしるを要ようとす。

-¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻二二徳王品意 南本巻二〇徳王品意) にいはく、 「悪あく罵め等とうにニクミノルコト 於おいて怖懼ふくなオソルヽコトし、 悪あく知ち識しきに於おいて畏懼いくの心しんを生しょうず。 なにをもてのゆへに。 この悪あく罵め等とうはたゞよく身みを壊えしてこゝろを壊えすることあたはず、 悪あく知ち識しきといふは二ふたつともに壊えするがゆへに」。 已上

-つぎに爾に前ぜんの経きょう、 所しょ依えの論ろんをばもちゐるべからずといふ義ぎ、 これまたはなはだ自由じゆなり。 汝なんじが所しょ立りゅう、 ことごとく諸しょ経きょう緒論しょろんにそむくによりて術じゅつ計けをうしなふゆへなり。 爾に前ぜんの教きょうの得益とくやくに至いたりては、 かみに汝なんじが信しんずるところの ¬法ほっ花け¼ と ¬無む量りょう義ぎ経きょう¼ と、 二に経きょうをひきて文もん証しょうとす。 何なんぞわづらはしくかさねてこの義ぎを論ろんぜん。

-たとひ爾に前ぜんの教きょうの得益とくやくなしといふとも、 ¬観かん経ぎょう¼ の得益とくやくにをひては爾に前ぜんの教きょうに准じゅんずべからず。 かれは此土しどの入にっ聖しょう得とく果かをあかす、 これはかの土どの往おう生じょうの益やくをとく。 かれは難なん行ぎょうこれは易い行ぎょう、 かれは自じ力りきこれは他た力りき。 所しょ行ぎょうすでにことなり、 得益とくやくなんぞ同おなじからん。

-なかんづく ¬観かん経ぎょう¼ は ¬法ほっ花け¼ と同どう時じの説せつなり、 爾に前ぜんの教きょうに摂せっすべからず。 ¬観かん経ぎょう¼・¬法ほっ花け¼ 同どう時じといふこと、 ¬善見ぜんけん論ろん¼ といひ ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の文もんといひ分ぶん明みょうなり、 たれかこれをうたがはん。

-即往そくおう安楽あんらく世せ界かいの阿あ弥陀みだは、 西方さいほうの阿弥あみ0736陀だにはあらず己こ心しんの阿あ弥陀みだといふ、 これまた不ふ足そく言ごんなり。 己こ心しんの仏ぶつは不ふ生しょう不ふ滅めつ・无去むこ无む来らいなり。 あに 「△この命終みょうじゅうに於おいてすなはち安楽あんらく世せ界かいにゆくと、 乃至 生しょう蓮れん花げ中ちゅう」 (法華経巻六薬王品) といはんや。

¬心しん地じ観かん経ぎょう¼ (巻三報恩品) にいはく、 「法身ほっしんの体たいは、 もろもろの衆しゅ生じょうにあまねく万徳まんどく凝ぎょう然ねんとして性しょう常住じょうじゅうなり。 生しょうぜず滅めっせず、 去こ来らいなく、 一いちならず異いならず、 断だん常じょうにあらず」 と。 已上 しかるに 「こゝにをひて命終みょうじゅうして、 すなはち阿あ弥陀みだ仏ぶつのみもとにゆいて、 蓮れん花げの中うちの宝ほう座ざのうへに生しょうず」 といへり。 この文もんの始し終じゅうをみるに往おう生じょうの二字にじををとく、 なんぞ己こ心しんの弥陀みだといはん。

法ほっ華け問答もんどう 上

 

0737法ほっ華け問答もんどう 下

・第四問答

難なんじていはく、 和か尚しょう・上しょう人にん両りょう師しの解げ釈しゃく、 謗法ほうぼうにあらずと。 これを会えすといへえども、 いまだその難なんをのがれず。

-¬選せん択じゃく集しゅう¼ の第だい十じゅう一いちの章しょうに、 「▲雑善ぞうぜんに約対やくたいして讃嘆さんだん念仏ねんぶつの文もん」 とこれを題だいして、 ¬観かん経ぎょう¼ の念仏ねんぶつ流る通ずうの 「▲若にゃく念仏ねんぶつ者しゃ、 当とう知ち、 此し人にん是ぜ人にん中ちゅう分ふん陀利だり花け」 の文もんを引ひきて、 同おなじき経きょうの ¬疏しょ¼ (散善義) に 「▲念仏ねんぶつ三昧ざんまいの功く能のう超ちょう絶ぜつして、 実じつに雑善ぞうぜんをもて比ひ類るいとすることをうるにあらず。 すなはちそのいつゝあり。 乃至 もし念仏ねんぶつするものは、 すなはちこれ人にん中ちゅうの妙みょう好人こうにん」 の釈しゃく、 この二に文もんをひきあはせて、 「わたくしにいはく」 (選択集) の下しもに 「▲この ¬経きょう¼ にすでに定じょう散さん諸善しょぜんならびに念仏ねんぶつの行ぎょうをときて、 しかもそのなかにをひて、 ひとり念仏ねんぶつを標ひょうして芬ふん陀利だりにたとふ。 雑善ぞうぜんに対たいするにあらずは、 いかんがよく念仏ねんぶつの功こうの余よ善ぜん諸しょ行ぎょうにこゑたることをあらはさん。 ◆しかればすなはち、 念仏ねんぶつするものはすなはちこれ人にん中ちゅうの好人こうにんといふは、 これ悪あくに待たいしてしかも美ほむるところなり。 人にん中ちゅうの妙みょう好人こうにんといふは、 これ麁そ悪あくに待たいしてしかも称しょうするところなり」 (選択集) 。 已上 念仏ねんぶつを讃さんぜんがために諸善しょぜんをことごとく雑ぞう行ぎょうとなづく。 あま0738さへ悪あくに待たいしてしかも実じつとするところなり。

-¬法ほっ花け¼ これ一大いちだい事じの因縁いんねん、 諸仏しょぶつ出しゅっ世せの本懐ほんかい、 かぎりてこの ¬経きょう¼ にあり。 しかるに ¬法ほっ花け¼ を雑ぞう行ぎょうのなかに摂せっして悪あくに待たいし麁そ悪あく等とうに待たいすといふ。 已上 これすなはち謗法ほうぼうをのがれがたし、 いかん。

答こた。う この難なんことごとく非ひなり。 文もんの始し終じゅうよくこれをみるべし。 「念仏ねんぶつ三昧ざんまい功く能のう超ちょう絶ぜつ」 とは、 念仏ねんぶつはこれ本願ほんがんの行ぎょうなるがゆへに、 諸善しょぜんに超ちょう過かして 「実じつ非ひ雑善ぞうぜん得とく為い比ひ類るい」 といふことをあらはさんがためなり。 これすなはち勝しょう劣れつの義ぎなり。 かるがゆへに念仏ねんぶつの行ぎょう者じゃを芬ふん陀利だりにたとふ。 芬ふん陀利だり花けは人にん中ちゅうの花はなのなかにすぐれたるがゆへに、 これを人にん中ちゅうの好こう花け・上々じょうじょう花け・妙みょう好こう花け等とうとなづく。 かるがゆへに、 この花はなをもて念仏ねんぶつのものにこれをたとふ。 人にん中ちゅうの好人こうにん・妙みょう好人こうにん・希有けう人にん等とうといふなり。 これすなはち念仏ねんぶつの機きと諸しょ行ぎょうの機きと相対そうたいして、 念仏ねんぶつの機きを好人こうにん・妙みょう好人こうにんとなづく。 故かるがゆえに字じ訓くんに対たいせんがために 「待悪たいあく」・「待たい麁そ悪あく」 といふなり。 法ほうと法ほうとに相対そうたいせば悪あくの言ごんをなすべからず。 故かるがゆえにかみに法ほうと法ほうとを相対そうたいして勝しょう劣れつを判はんずるとき、 実じつ非ひ雑善ぞうぜん得とく為い比ひ類るいといひて悪あくの字じを置おかず。

-つぎにかみにいはく、 「雑善ぞうぜんに待たいするにあらずは、 いかんがよく念仏ねんぶつの功こうの余よ善ぜん諸しょ行ぎょうにこゆることをあらはさん」 (選択集)。 つぎにしもの後ご序じょにいはく、 「▲それ速すみやかに生しょう死じをはなれんとおもはゞ、 二に種しゅの勝しょう法ぼうのなか0739に、 しばらく聖しょう道どう門もんをさしをきてえらびて浄じょう土ど門もんにいれ」 (選択集)。 取要 すでに二に種しゅの法ほうといふ、 いかんが悪あくとなづくる。

しかのみならず、 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ のこゝろ、 所々しょしょに諸しょ行ぎょうを明あかす。 もし汝なんじが所難しょなんのごとく行ぎょうを悪あくとなづけば、 諸しょ行ぎょう往おう生じょうのむねをあかすべからず。 上しょう人にん、 いかんが善悪ぜんあくの二事にじにまよひて諸しょ行ぎょうを悪あくといはん。 またあに往おう生じょうをゆるさん。 つぎしもに ¬観音かんのん授じゅ記き¼ をひきて諸しょ行ぎょう往おう生じょうの支し証しょうとせん。 付ふ属そくの章しょうにいたりて、 はじめ日観にっかんよりをはり下げ品ぼん下げ生しょうにいたるまで、 定じょう散さん二に善ぜんことごとくみな往おう生じょうをあかして、 「▲これすなはち浄じょう土ど宗しゅうの ¬観かん无む量りょう寿じゅ経きょう¼ のこゝろ」 (選択集) と結けっす。 かくのごとく諸しょ行ぎょう往おう生じょうをゆるしながら、 あに諸しょ行ぎょうを悪あくといはん。 所難しょなんとするにたらず。

・第五問答

問とうていはく、 ¬観かん経ぎょう¼ と ¬法ほっ花け¼ と同どう時じの説せつといふこと、 経きょう文もんにそむき道どう理りに違いす。

-まづ経きょう文もんにそむくといふは、 阿あ闍じゃ世せ逆ぎゃく罪ざいををこすこと、 提だい婆ば・雨う行ぎょう等とうの教きょうにゆるがゆへに ¬観かん経ぎょう¼ に 「▲随ずい順じゅん調じょう達だつ悪あく友う之し教きょう」 ととく。 しかるに爾に前ぜんの ¬経きょう¼ (報恩経巻四悪友品) のなかに 「提だい婆ば入にゅう滅めつ」 ととく、 もししからば、 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんに入にゅう滅めつせしむる提だい婆ば、 ¬法ほっ花け¼ をとくとき、 よみがへりて阿あ闍じゃ世せにすゝめて逆ぎゃく罪ざいをつくらしむべきや これ難なん。

次つぎに ¬観かん経ぎょう¼ には阿あ闍じゃ世せ太たい子しととく。 ¬経きょう¼ (観経) にいはく、 「▲而時にじ王舎おうしゃ城じょう有う一いち太たい子し、 名みょう阿あ闍じゃ世せ」 と。 已上 ¬法ほっ花け¼ の同聞どうもん衆しゅには 「阿あ闍じゃ世せ王おう」 ととく。 ¬経きょう¼ (法華経巻一序品) にいはく、 「韋い提だい0740希け子し阿あ闍じゃ世せ王おう」 と。 已上 この二に経きょうの文もんを考かんがうに、 太たい子しはさき、 王おうはのちなり。 この義ぎによるに ¬観かん経ぎょう¼ を ¬法ほっ花け¼ 同どう時じの説せつといふべからず これ二ふたつの難なん。

-しかるに ¬法ほっ花け¼ はこれ正しょう直じき捨しゃ方便ほうべんの教きょうなり。 かくのごときの深法じんぼうをきゝて、 いかでか悪あく逆ぎゃくををこし、 沙門しゃもんを罵の、り 父ちちを殺ころし、 母ははを害がいせんと欲ほっせん。 この義ぎをもてしりぬ、 阿あ闍じゃ世せ ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんに逆ぎゃく罪ざいををかすといへども、 のちに懺さん悔げせしめて罪つみを滅めっすることをえて、 ¬法ほっ花け¼ の座ざにつらなるべし。 かるがゆへにしりぬ、 ¬観かん経ぎょう¼ は ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの説せつなり。 ¬法ほっ花け¼ 同どう時じととくこと、 文もん理りともにそむく。 はなはだもて依え用ようしがたし、 いかん。

答こた。う たとひ ¬報恩ほうおん経きょう¼ (巻四悪友品意) に 「提だい婆ば入にゅう滅めつす」 ととくといへども、 汝なんじが所しょ立りゅうのごときんば、 爾に前ぜんの教きょうは方便ほうべんの教きょうといひて、 ひきて提だい婆ばが入にゅう滅めつの支し証しょうとせん。

-¬涅ね槃はん経ぎょう¼ は汝なんじが信しんずる所ところの経きょうなり。 かの ¬観かん経ぎょう¼ は ¬法ほっ花け¼ 同どう時じととくとみえたり。 これを諍あらそうことなかれ。 ¬涅ね槃はん¼の 三さん十じゅう三さん (北本巻三四 南本巻三一) 「和か尚しょう菩ぼ薩さつ品ぼん」 にいはく、 「▲善見ぜんけん太たい子し、 父ちちの喪そうするをみをはりて、 まさに悔け心しんを生しょうず。 ◆雨う行ぎょう大臣だいじんまた種々しゅじゅの悪邪あくじゃの法ほうをもて、 しかもためにこれをとく。 大王だいおう一切いっさいの業ごう行ぎょうすべて罪つみあることなし。 ◆耆婆ぎばまたのたまはく、 大王だいおうまさにしるべし、 かくのごときの業罪ごうざい二に重じゅうをかねたり。 一ひとつには父ちちの王おうを殺害せつがいし、 二ふたつには須しゅ陀だおんを殺ころす。 かくのごときのつみは、 仏ぶつをのぞきてさらに除滅じょめつするものなけ0741ん。 ◆善見ぜんけん王おうののたまはく、 如来にょらい清浄しょうじょうにして穢え濁じょくあることなし。 われら罪人ざいにんいかんがみることをえん。 ◆善男ぜんなん子し、 われこの事じをしる。 故かるがゆえに▽阿あ難なんにつげたまはく、 三み月つきをすぎをはりて、 われまさに涅ね槃はんすべし。 善見ぜんけん、 きゝをはりてすなはちわが所ところに来きたりて、 われために法ほうをとくに、 重じゅう罪ざいうすくなることをえて无む根こんの信しんをうる」。 已上

-同おなじ◗き¬経きょう¼ の二に十じゅう (北本巻二〇 南本巻一八) 「梵ぼん行ぎょう品ぼん」 にいはく、 「▲阿あ闍じゃ世せ王おうもし耆婆ぎばの語ことばに随ずい順じゅんせずは、 ▽来月らいがつ七日しちにちに必ひつ定じょうして命終みょうじゅうして阿鼻あび地じ獄ごくに堕だせん。 このゆへに阿あ耨のく菩ぼ提だいの近因ごんいんは善ぜん友ぬにしくはなし。 ◆阿あ闍じゃ世せ王おうまた前ぜん路ろにをひて、 舎しゃ婆ば提だい毘流びる離りふねに乗じょうじて海うみにいり、 火ひにすぎてしかも死しす。 瞿迦くか 離羅りら 比丘びくは生しょう身しんに地ちにいり、 阿鼻あびにいたる。 須しゅ那な刹せっ多たは種々しゅじゅの悪あくをつくり、 しかも仏所ぶっしょにいたりて衆罪しゅざい滅めっすることをうときく。 ◆この語ことばをきゝをはりて耆婆ぎばにかたりていはく、 われ汝なんじと同おなじく一象いちぞうにのらんと欲ほっす。 たとひわれまさに阿鼻あび地じ獄ごくにいるとも、 こひねがはくは、 汝なんじ捉そく持じして、 われをして堕だせしめざれと。 なにをもてのゆへに、 われむかしかつてきゝて、 これをうるひと地じ獄ごくにいたらず」 と。 已上

-この勘文かんもんのごとく、 阿あ闍じゃ世せ王おう ¬法ほっ花け¼ の序分じょぶんに同聞どうもん衆しゅにつらなるといへども、 いまだ正しょう説せつをきかず。 かるがゆへに逆ぎゃく罪ざいをつくる。 逆ぎゃく罪ざい已後いご仏所ぶっしょに詣けいせず。 涅ね槃はんの時じ分ぶんにいたりて、 闍王じゃおう、 耆婆ぎばがすゝめて仏所ぶっしょに詣けいするによりて、 仏ぶつために法ほうをとく0742。 闍王じゃおう、 法ほうをきゝて滅罪めつざい得益とくやくすとみる。

-もし汝なんじが所説しょせつの如ごとく、 闍王じゃおうの逆ぎゃく罪ざい ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんならば、 逆ぎゃく罪ざい以後いご ¬法ほっ花け¼ の列れつ座ざに深法じんぼうをきゝて後のちに、 なにの失しつ咎ぐありてか阿鼻あびに堕だすべきや。 もし ¬法ほっ花け¼ の座ざにつらなりて正しょう説せつをきくといへども、 なを以い前ぜんの逆ぎゃく罪ざい余よ殃おうのこりて阿鼻あびに堕だすべしといはゞ、 「一切いっさい衆しゅ生じょう皆かい令りょう入にゅう仏道ぶつどう」 (法華経巻一方便品) の文もんに違いす。 かるがゆへにしりぬ、 ¬観かん経ぎょう¼ は ¬法ほっ花け¼ 同どう時じの説せつなり これひとつ。

-つぎに ¬観かん経ぎょう¼ には 「太たい子し」 ととく、 ¬法ほっ花け¼ には 「王おう」 ととく。 この義ぎをもて ¬観かん経ぎょう¼ は ¬法ほっ花け¼ 同どう時じの説せつにあらずと、 この難なんまた不ふ足そく言ごんなり。 阿あ闍じゃ世せを 「太たい子し」 ととき 「王おう」 ととくこと、 義ぎに随したがひ言便ごんびんによりて、 王おう・太たい子しの前ぜん後ご不ふ定じょうなり。

-¬観かん経ぎょう¼ にいはく、 「有う一いち太たい子し名みょう阿あ闍じゃ世せ」。 つぎしもにいはく、 「時じ守門しゅもん人にん白びゃく言ごん、 大王だいおう慎莫しんまく害がい母も」 といへり。 阿あ闍じゃ世せ、 ちゝの王おうを禁閉きんぺいすといへども、 なを存在そんざいせり、 随したがいていまだ位くらいにのぼらず。 しかりといへども、 守門しゅもんのものは耆婆ぎばともに同おなじく 「大王だいおう」 といふ。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の三さん十じゅう三さん (北本巻三四迦葉品 南本巻三一迦葉品) にいはく、 「時ときに諸もろもろの守人しゅにん、 すなはち太たい子しに告つげたてまつる」。 つぎしもにいはく、 「耆婆ぎば自みずからまうさく、 国くににありしこのかた、 罪つみしかもおもしといへども、 いまだ女人にょにんにをよばず。 いはんや所しょ生しょうの母ははをや。 善見ぜんけん太たい子しこの語ことばをきゝをはりて、 耆婆ぎばのためのゆへにすなはち放捨ほうしゃす」 (北本巻三四迦葉品 南本巻三一迦葉品) といへり。

-またいはく、 「善見ぜんけん太たい0743子し、 ちゝの喪そうするをみをはりて、 まさに悔け心しんを生しょうず」 (北本巻三四迦葉品 南本巻三一迦葉品)。 已上 ちゝの王おう喪そうして後のちになを 「太たい子し」 といふ。 明あきらかに知しりぬ、 王おう・太たい子しの異い説せつをもて二に経きょうの前ぜん後ごを諍あらそふべからず。

-¬善見ぜんけん論ろん¼ (意) にいはく、 「頻びん婆ば娑しゃ羅ら王おう、 寒林かんりん城じょうロウキヨノコトにナリありて、 時ときに阿あ闍じゃ世せ太たい子し、 上じょう茆ぼう城じょうにありてまつりごとをなす。 政せい事じによりて阿あ闍じゃ世せを王おうとなづく」。 取意

-つぎに道どう理りの難なんを会えせば、 阿あ闍じゃ世せ ¬法ほっ花け¼ の序分じょぶんにつらなるといへども、 いまだ正しょう説せつをきかず、 その中ちゅう間げんにをひて逆ぎゃく罪ざいを犯おかす。 逆ぎゃく罪ざい以後いご仏所ぶっしょにいたらず、 涅ね槃はんの時じ節せつにのぞみて、 耆婆ぎばがをしへに随したがいて仏所ぶっしょに詣けいすること、 あに道どう理りにそむかんや。 たゞし ¬法ほっ花け¼ の同聞どうもん衆しゅにつらなりてのち、 逆ぎゃく罪ざいを犯おかすべからずといふ難なんに至いたりては、 いまだ正しょう説せつをきかぬ以い前ぜんに逆ぎゃく罪ざいを犯おかす。 所難しょなんにあらず。

-汝なんじが所説しょせつのごとく、 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんに逆ぎゃく罪ざいをつくり、 逆ぎゃく罪ざい以後いごに ¬法ほっ花け¼ の座ざにつらなり、 正しょう説せつをきゝて逆ぎゃく罪ざい滅めっせずして、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ に至いたりて阿鼻あびの罪業ざいごうを滅めっし、 はじめて得益とくやくせば、 ¬法ほっ花け¼ に更さらに益やくなし。 もしこの義ぎを存ぞんぜば、 これすなはち謗法ほうぼうなり。 ¬法ほっ花け¼ の得益とくやくを失しっするがゆへに。

-なかんづく闍王じゃおうの逆ぎゃく罪ざいは ¬観かん経ぎょう¼ の発ほっ起き序じょなり。 仏ぶつ ¬観かん経ぎょう¼ をとくべき由ゆ序じょのために阿あ闍じゃ世せ逆ぎゃく罪ざいをつくる歟か。 もししからば、 たとひ正しょう説せつをきゝて逆ぎゃく罪ざいを犯おかすといふとも、 またこれ咎とがなし。 闍王じゃおう、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ に至いたりてたゞちに逆ぎゃく罪ざいを0744滅めっして无む根こんの信しんをえたり。 あに実業じつごうの凡ぼん夫ぶの逆ぎゃく罪ざいに同おなじからんや。

・第六問答

難なんじていはく、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ をひきて ¬観かん経ぎょう¼・¬法ほっ花け¼ の同どう時じの支し証しょうとすること、 甚はなはだこの義ぎたちがたし。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ は一代いちだい四し十じゅう余よ年ねんの経きょうを捃くん拾じゅうしオチボヲヒラフてこれをとく。 故かるがゆえに天臺てんだいには ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ を名なづけて捃くん拾じゅう経きょうといふ。 なかんづく、 ひく所ところの 「迦か葉しょう菩ぼ薩さつ品ぼん」 の文もんは涅ね槃はんの当代とうだいにあらず。 如来にょらい畢ひっ竟きょうじて涅ね槃はんすべきことをあらはさんがために、 提だい婆ば達だっ多た、 過去かこの因縁いんねんによりて仏所ぶっしょにをひて不ふ善ぜんの心しんを生しょうじ、 如来にょらいを害がいせんと欲ほっして善見ぜんけん太たい子しと親しん友ぬとなり、 教おしえてちゝを殺ころさしむ。 その次し第だいをつぶさにこれをとく。 故かるがゆえに涅ね槃はんの当代とうだいの説せつにあらず。

-ひく所ところの 「迦か葉しょう菩ぼ薩さつ品ぼん」 (北本巻三四 南本巻三一) のつぎかみにいはく、 「▲そのときに悪人あくにん提だい婆ば達だっ多た、 また過去かこの業ごう因縁いんねんによりて、 またわが所ところにして不ふ善ぜんの心しんを生しょうじ、 われを害がいせんと欲ほっす。 すなはち五ご通つうを修しゅす。 ひさしからずして獲ぎゃく得とくす。 善見ぜんけん太たい子しとともに親しん友ぬとなりて、 ◆太たい子しのためのゆへに現げんじて種々しゅじゅの神通じんずうの事じをなす。 非ひ門もんよりしかもいでゝ門もんよりしかもいる。 門もんよりしかもいでゝ非ひ門もんよりしかもいる。 あるときは示じ現げんして馬め・牛ご・羊よう・男女なんにょの身しんをなす。

-◆善見ぜんけん太たい子し見みをはりて、 すなはち愛心あいしん・敬きょう信しんの心しんを生しょうず。 この事じのためのゆへに、 いつくしく種々しゅじゅの供く養ようの具ぐを設もうけて、 しかもこれを供く養ようす。 またまうしてまうさく、 太たい子し聖しょう人にん、 わ0745れいま曼まん陀羅だら花けをみんとおもふ。 ◆時ときに調じょう婆ば達だっ多た、 すなはち三さん十じゅう三天さんてんに往おう至しして、 かの天人てんにんに随したがいて、 しかもこれを求ぐ索しゃくす。 その福ふくつくるがゆへに、 すべてあたふるものなし、 ◆すでに花はなをえず。 この思し惟ゆいをなさく、 曼まん陀羅だら樹じゅは我々がが所しょなし、 もし自みずからとらんに、 まさになにの罪つみあるべきや。 すなはちまへにとらんと欲ほっすれば、 すなはち神通じんずうをうしなふ。 かへりて己こ身しんをみるに、 王舎おうしゃ城じょうにあり、 こゝろに慚ざん愧ぎを生しょうず、 またみることあたはず。

-◆善見ぜんけん太たい子しまたこの念ねんをなさく、 われいままさに如来にょらいの所ところに往おう至しして大衆だいしゅを求ぐ索しゃくすべし。 仏ぶつ聴者ゆるしたまわば、 ためにわれまさにこゝろにしたがひて、 教おしえてすなはち舎しゃ利り弗ほつ等とうに詔勅しょうちょくせしむべし。 ◆そのときに提だい婆ば達だっ多た、 すなはちわが所ところに来きたりてかくのごときの言ごんをなさく、 やゝねがはくは如来にょらい、 この大衆だいしゅをもてわれに付ふ属そくしたまへ。 まさに種々しゅじゅに説法せっぽう教きょう化けして、 それをして調じょう伏ぶくせしむべし。 われいま文もんにをろかなり。 舎しゃ利り弗ほつ聴そう明みょう多智たちにして世よに信伏しんぶくせらる。 われなを大衆だいしゅをもて付ふ属そくせず。 いはんや、 なんぢ痴ち人にんにして、 つばきを食じきするものをやと。 ◆ときに提だい婆ば達だっ多た、 またわが所ところにしてますます悪心あくしんを生しょうじて、 かくのごときの言ごんをなさく、 瞿く曇どん、 汝なんじいま大衆だいしゅを調じょう伏ぶくすといふとも、 勢いきおいまたひさしからずして磨ま滅めつをみるべし」。 已上

-かくのごときの文もん、 涅ね槃はんの当代とうだいにあらず。 また汝なんじがひく所ところの 「梵ぼん行ぎょう品ぼん0746」 (北本巻二〇 南本巻一八) にとく、 「△汝なんじきたれ、 耆婆ぎば、 われ汝なんじと一象いちぞうにのらんとおもふ。 われまさに阿鼻あび地じ獄ごくにいるべし。 こひねがはくは、 捉そく持じして、 われをして堕だせしめざれ」 と。 ¬法ほっ花け¼ に列れつ座ざしてのち、 なにの失しつ咎ぐありてか阿鼻あびにいらん。 怖畏ふいして耆婆ぎばと一象いちぞうにのらんともとめんこと、 かくのごとく ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの説せつとみる、 いかん。

答こた。う 「迦か葉しょう菩ぼ薩さつ品ぼん」・「梵ぼん行ぎょう品ぼん」 の文もんの始し終じゅうをみるに、 涅ね槃はん以い前ぜんの説せつもあり、 涅ね槃はん当代とうだいの説せつもあり。 ひとへに涅ね槃はんの当代とうだいにあらずといふべからず。 すでに 「△阿あ難なんにつげたまはく、 三み月つきを過すぎてすでにまさに涅ね槃はんすべしと。 善見ぜんけんきゝをはりて、 すなはちわが所ところにきたる。 ために法ほうをとく。 重じゅう罪ざいうすくなることをえて无む根こんの信しんをう」 (北本巻三四迦葉品 南本巻三一迦葉品) といへり。 これすなはち法ほっ花けのをはり、 涅ね槃はんに至いたる時じ節せつなり。 ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんにをひて 「過か三月さんがつ已い当とう涅ね槃はん」 ととくべからず。

-¬普ふ賢げん経ぎょう¼ にいはく 「諸もろもろの比丘びくに告つげたまはく、 三み月つきを去さりてのちわれまさに涅ね槃はんすべし」 ととく。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の文もんと全またくこれ同おなじ。 ¬普ふ賢げん経ぎょう¼ はこれ ¬法ほっ花け¼ の結けっ経きょうなり、 毘び舎しゃ離り国こく大林だいりん精しょう舎じゃ重じゅう閣かく講堂こうどうにをいてこれをとく。 「告ごう阿あ難なん却きゃく後ご三月さんがつ已い吾ご当とう涅ね槃はん」 の文もん ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんの説せつ、 たれかこれをあらそはん これひとつ。

-同おなじ◗き¬経きょう¼ (北本巻二〇 南本巻一八) の 「梵ぼん行ぎょう品ぼん」 にいはく、 「阿あ闍じゃ王おう、 夫ぶ人にんといつくしく車しゃ乗じょうに属ぞくして、 一万いちまん二に千珠せんしゅ荘しょうの大象だいぞう、 そのかず五ご万まん、 一々いちいちの象ぞうのうへに三人さんにんをのす。 蓋がい0747・花け香こう・伎ぎ楽がく、 種種しゅじゅの供具くぐを斉さい持じして道みちにそなへたらずといふことなし。 馬騎ばきにしたがひて十じゅう八万はちまんあり。 摩訶まが陀だ国こくの所しょ有うの人民にんみん、 たづねて王おうにしたがふもの、 そのかず五ご十じゅう八万はちまんに満足まんぞくせり。 そのとき、 拘尸くし那な城じょうの所しょ有うの大衆だいしゅ、 十じゅう二に由ゆ旬じゅんにみてる。 ことごとくみな、 はるかに阿あ闍じゃ世せ王おうと眷属けんぞくとみちをたづねて、 しかもきたるをみる。 そのとき、 仏ぶつもろもろの大衆だいしゅに告つげてのたまはく、 一切いっさい衆しゅ生じょうの阿あ耨のく多羅たら三さん菩ぼ提だいの近因ごんいんとなることは善ぜん友ぬにしくはなし。 なにをもてのゆへに。 阿あ闍じゃ世せ王おう、 もし耆婆ぎばの語ことばに順じゅんぜずは、 来月らいがつ七日しちにち必ひつ定じょうして阿鼻あび地じ獄ごくにおちん。 このゆへに近因ごんいん、 善ぜん友ぬにしくはなし」 已い上じょうこれふたつ。

-またいはく、 「そのとき、 すなはち沙しゃ羅ら双樹そうじゅのあひだにいたり、 仏所ぶっしょに至いたりてあふいで如来にょらいの三さん十じゅう二に相そう・八はち十じゅう種好しゅこうを見みたてまつる。 なをし微み妙みょうの身しん、 金色こんじきのやまのごとし」 (北本巻二〇梵行品 南本巻一八梵行品) 已い上じょうこれみつ。

-かくのごときの経きょう文もん、 あに涅ね槃はん当代とうだいととくにあらずや。

-おほよそ ¬観かん経ぎょう¼・¬法ほっ花け¼ 同どう時じの支し証しょうをたづぬるに、 阿あ闍じゃ世せ ¬法ほっ花け¼ の同聞どうもん衆しゅにつらなること、 これ第一だいいちの支し証しょうなり。 ゆへいかんとなれば、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻二〇梵行品 南本巻一八梵行品) に、 或あるいは 「△来月らいがつ七日しちにち必ひつ定じょう命終みょうじゅう堕だ阿鼻あび獄ごく」 ととき或あるいは 「△善見ぜんけん王おうのまうさく、 如来にょらいは清浄しょうじょうにして穢え濁じょくあることなし。 われら罪人ざいにんいかんが0748みることをえん」 (北本巻三四迦葉品 南本巻三一迦葉品) ととく。

-かくのごときの文もんをもて、 闍王じゃおうの逆ぎゃく罪ざいを考かんがうるに、 もし ¬法ほっ花け¼ 以い前ぜんならば、 列れつ座ざの後のちにいづれの失しつ咎ぐありてか ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ に 「必ひつ定じょう命終みょうじゅう入にゅう阿鼻あび獄ごく」 ととかん。 また ¬法ほっ花け¼ の列れつ座ざののち、 「如来にょらい清浄しょうじょう无有むう穢え濁じょく、 我が等とう罪人ざいにん云うん何が得見とくけん」 とはいふべからず。 明あきらかに知しりぬ、 闍王じゃおうの逆ぎゃく罪ざい、 ¬法ほっ花け¼ の序分じょぶん以後いごとみえたり。

-おほよそ闍王じゃおうの懺さん悔げ・滅罪めつざい・得益とくやく、 ことごとくみな ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ に至いたりてこれをとく。 故かるがゆえにしりぬ、 闍王じゃおう、 ¬法ほっ花け¼ の序分じょぶん同聞どうもん衆しゅにつらなるといへども、 いまだ正しょう説せつをきかず。 正しょう説せつをきかざるさきに調じょう達だつ悪あく友うの教きょうに随ずい順じゅんして逆ぎゃく罪ざいを犯おかす。 以後いご仏所ぶっしょに詣けいせず、 涅ね槃はんの時じ分ぶんに至いたりて耆婆ぎばが教おしえにしたがひて拘尸くし那な城じょう沙しゃ羅ら双樹そうじゅにいたる。 その時ときにをひて逆ぎゃく罪ざいを滅めっす。 得益とくやくを蒙こうむり、 一切いっさい衆しゅ生じょうに阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんををこさしむ。 同おなじ◗き¬経きょう¼ の二十 (北本巻二〇梵行品 南本巻一八梵行品) にいはく、 「▲そのとき阿あ闍じゃ世せ王おう、 耆婆ぎばに語かたりてのたまはく、 われいまいまだ死しせざるに、 すでに天身てんしんをえたり。 短たん命みょうをすてゝしかも長命じょうみょうをえ、 无む常じょう身しんをすてゝしかも常じょう身しんをえ、 もろもろの衆しゅ生じょうをして阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんををこさしむ。 すなはちこれ天身てんしん・長命じょうみょう・常じょう身しん、 これ一切いっさいの諸仏しょぶつの弟子でし」。 已上

-¬法ほっ花け玄げん義ぎ¼ の五ご (巻五上) にいはく、 「成じょう道どう已い来らい四し十じゅう余よ年ねん未み顕けん真実しんじつ、 ¬法ほっ花け¼ にはじめて真実しんじつをあらはす。 相伝そうでんしていはく、 仏年ぶつねん七しち十じゅう二に、 ¬法華ほけ経きょう¼ をとく」。 已上

-¬善見ぜんけん論ろん¼ (巻二) に0749いはく、 「阿あ闍じゃ世せ王おうくらゐにのぼりて八年はちねん、 仏ぶつ涅ね槃はんして」。 これ ¬涅ね槃はん¼・¬観かん経ぎょう¼ 等とうの三さん経ぎょうの説せつ、 符ふ合ごうせり。 よくこゝろをとゞめてこれをみるべしと 云々うんぬん。

・第七問答

難なんじていはく、 「過か三月さんがつ已い当とう涅ね槃はん」 (北本巻三四迦葉品 南本巻三一迦葉品) の文もんによりて ¬観かん経ぎょう¼ を ¬法ほっ花け¼ 同どう時じの説せつといはゞ、 ¬観かん経ぎょう¼ の説せつ時じ、 ¬法ほっ花け¼ 八巻はっかんのすゑにあたる。 もしこの義ぎを存ぞんぜば、 ¬法ほっ花け¼ †の五ご (巻四) 「提だい婆ば品ぼん」 にいはく、 「諸もろもろの四し衆しゅにいはく、 提だい婆ば達だっ多たさりてのち、 无む量りょう劫こうをすぎてまさに成じょう仏ぶつをうべし。 号ごうして天王てんおう如来にょらいといはん。 乃至 世せ界かいをば天道てんどうと名なづけん」。 已上 提だい婆ばが記き別べつ、 入にゅう滅めつしてのち阿鼻あびにこれををくる。 もし ¬法ほっ花け¼ 八巻はっかんのすゑにいたりて阿あ闍じゃ世せ逆ぎゃく罪ざいををかせば、 随ずい順じゅん調じょう達だつとはとくべからず、 いかん。

答こた。う この義ぎ、 あにさきにいはずや。 ¬観かん経ぎょう¼ をとくこと ¬法ほっ花け¼ の序分じょぶんのすゑにあたれり。 「却きゃく後ご三月さんがつ我が当とう般はつ涅ね槃はん」 は、 ¬法ほっ花け¼ をときをはりて ¬法ほっ花け¼ の結けっ経きょう ¬普ふ賢げん経ぎょう¼ の説せつなり。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の説せつ、 またこれにおなじ。 逆ぎゃく罪ざい以後いご、 闍王じゃおう、 仏所ぶっしょに詣けいせず。 如来にょらい、 闍王じゃおうをすゝめて仏所ぶっしょに詣けいせしめんがために、 阿あ難なんにつげて 「過か三月さんがつ已い当とう涅ね槃はん」 といふ。 もししからば ¬観かん経ぎょう¼ と ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ との中ちゅう間げん八はっヶ年ねんなり。 ¬善見ぜんけん論ろん¼ にいはく、 「阿あ闍じゃ世せ位くらいにのぼりて八はっヶ年ねんに仏ぶつ入にゅう滅めつす」 と。 すなはちこの義ぎなり。 故かるがゆえにしりぬ、 提だい婆ばが五ご巻かんの記き別べつ、 またく相そう違いにあらずと 云々うんぬん。

・第八問答

た0750づねていはく、 ¬観かん経ぎょう¼ もし ¬法ほっ花け¼ 同どう時じの説せつならば、 なんがゆへぞ浄じょう土どの祖師そし†法然ほうねん上しょう人にん、 ¬観かん経ぎょう¼ をもて爾に前ぜんの教きょうに摂せっするや。 ¬選せん択じゃく集しゅう¼ にいはく、 「▲問とうていはく、 爾に前ぜんの経きょうのなかになんぞ ¬法ほっ花け¼ を接せっするや」。 かくのごときの現文げんもんを見みながら、 末学まつがくあに ¬法ほっ花け¼ 同どう時じの説せつといはんや、 いかん。

答こた。う 天臺てんだいのこゝろ、 浄じょう土どの教きょうを方等ほうどう部ぶに摂せっして爾に前ぜんの教きょうとなづく。 この義ぎをもてのゆへに、 しばらく他たにしたがひて問といをなして、 答こたえのなかに自義じぎをたつ。 「▲答こたえていはく、 今いまいふ所ところの摂しょうといふは、 権実ごんじつ・遍円へんえん等とうの義ぎを論ろんずるにあらず。 読誦どくじゅ大だい乗じょうの言ごん、 あまねく已い前ぜんの大だい乗じょうの諸しょ教きょうに通つうず。 前まえといふは ¬観かん経ぎょう¼ 以い前ぜんの諸大だい乗じょう経きょうこれなり、 後のちといふは王おう宮ぐ已後いごの諸しょ大だい乗じょう経きょうこれなり」 (選択集) 已上

-すでに ¬観かん経ぎょう¼ 已い前ぜんの諸しょ大だい乗じょう経きょうといふ、 なんぞ ¬観かん経ぎょう¼ を爾に前ぜんの教きょうに接せっするといふや。 ¬弘ぐ決けつ¼ (輔行巻六) にいはく、 「あまねく ¬法ほっ花け¼ 已い前ぜんの諸しょ経きょうをたづぬるに、 二に乗じょう作さ仏ぶつの文もん及および如来にょらい久く成じょうの説せつをあかすことなし。 故かるがゆえに知しりぬ、 ならびに方便ほうべんを帯たいするによるがゆへに」 となり。 已上 「二に乗じょう作さ仏ぶつ」 と 「如来にょらい久く成じょう」 のむね、 ¬法ほっ花け¼ にいたりてこれをとく。 故かるがゆえに知しりぬ、 「已い前ぜん」 といふは ¬法ほっ花け¼ のほかなり。 ¬法ほっ花け¼ 已い前ぜん、 ¬観かん経ぎょう¼ 已い前ぜん、 またくそのこゝろこれに同おなじ。 あやしむにたらず。

・第九問答

たづねていはく、 ¬観かん経ぎょう¼ もし ¬法ほっ花け¼ 同どう時じの説せつならば、 天臺てんだいあやまてなんぞ爾に前ぜんの教きょう0751に摂せっするや。

答こた。う 大だい師しのこゝろもて更さらにはかりがたし。 もしこゝろみにこれを会えせば、 ¬法ほっ花け¼ はこれ八はっヶ年ねんの説せつ、 ¬観かん経ぎょう¼ はわづかに一日いちにちの説せつなり。 しかも ¬法ほっ花け¼ の序分じょぶんの終おわりにあたりてこれをとく。 とき短速たんそくなるゆへに、 方等ほうどう部ぶに属ぞくして爾に前ぜんの教きょうに摂せっする歟か。

・第十問答

問と。う もし汝なんじが所説しょせつのごときんば、 浄じょう土どの教きょうをもて出しゅっ世せの本懐ほんかいとすべきや。

答こた。う しかなり。

・第十一問答

難なんじていはく、 出しゅっ世せの本懐ほんかいかぎりて ¬法ほっ花け¼ にあり。 ¬経きょう¼ (法華経巻一序品) にいはく、 「一大いちだい事じの因縁いんねんのゆへに世よに出しゅつ現げんす」。 已上 浄じょう土どの三さん経ぎょうのなかにかくのごときの文もんなし。 なんぞたゞほしゐまゝに出しゅっ世せの本懐ほんかいといふべきや。 かくのごときの義ぎ、 はなはだもて依え用ようしがたし、 いかん。

答こた。う 大だい悲ひの本懐ほんかい、 もとより重じゅう苦くの衆しゅ生じょうをさきとす。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の七種しちしゅの衆しゅ生じょう、 こゝろこれに同おなじ。

-しかのみならず、 浄じょう土どの教きょうを出しゅっ世せの本懐ほんかいといふ、 その文もん一ひとつにあらず。 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ にいはく、 「▲舎しゃ利り弗ほつ、 まさにしるべし、 われ五ご濁じょく悪あく世せにおひてこの難なん事じを行ぎょうじて、 阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいをえて、 一切いっさい世せ間けんのために、 この難信なんしんの法ほうをとく。 これを甚難じんなんとす」。 已上

-¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) にこの文もんを釈しゃくしていはく、 「△如来にょらい五ご0752濁じょくに出しゅつ現げんして、 随ずい宜ぎに方便ほうべんして群萌ぐんもうを化けす。 或あるいは多た聞もんをときてしかも得とく度どせしめ、 或あるいは小しょう解げをときて三さん明みょうを証しょうせしめ、 或あるいは福ふく恵えならべてさはりを除のぞくとをしへ、 或あるいは禅念ぜんねんして坐ざして思し量りょうせよとをしふ。 種々しゅじゅの法門ほうもんみな解げ脱だつすれども、 念仏ねんぶつして西方さいほうにゆくにすぎたるはなし」。 已上

-この経釈きょうしゃく、 あに出しゅっ世せの本懐ほんかいといふにあらずや。 こゝをもて元がん暁ぎょう、 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ を釈しゃくしていはく、 「△両りょう尊そん出しゅっ世せの本ほん意い、 四し輩はい入にゅう道どうの要門ようもん、 耳みみに経名きょうみょうをきゝて、 すなはち一いち乗じょうにいりてしかも退たいすることなし。 くちに仏号ぶつごうを称しょうしてすなはち三界さんがいをいでゝしかもかへらず」 (小経疏)。 已上

-恵え心しんの ¬略りゃく記き¼ (小経略記) にいはく、 「しかるに信受しんじゅをすゝむるは、 願がん生しょうを成じょうぜんがためなり。 これ仏ぶつの本懐ほんかいなり。 軽きょう爾にすべからず」。 已上

-¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ にいはく、 「▲また舎しゃ利子りし、 われかくのごときの利り益やくを観かんずるに安楽あんらく大だい事じの因縁いんねんなり、 誠じょう諦たいの語ごをとくなり」。 已上

-¬秘ひ密みつ四し蔵ぞう経きょう¼ に、 「諸仏しょぶつの出しゅっ世せの本懐ほんかいは、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの功く徳どく名みょう号ごうなり」 と。 已上

-¬无む量りょう寿じゅ経きょう¼ の下げ巻かんにいはく、 「▲无む量りょう寿じゅ仏ぶつを念ねんじて、 その国くにに生しょうぜんと願がんじて、 ◆もし深法じんぼうをきゝて歓かん喜ぎ信しん楽ぎょうして、 疑ぎ惑わくを生しょうぜず、 乃ない至し一念いちねんかの仏ぶつを念ねんじて、 至し誠じょう心しんをもてその国くにに生しょうぜんと願がんず」。 已上

-これらの経釈きょうしゃく、 出しゅっ世せの本懐ほんかいといふ文もん分ぶん明みょうなり。 たれかこれをうたがはん。

・第十二問答

難なんじていはく、 ¬法ほっ花け¼ を出しゅっ世せの本懐ほんかいといふがごとく、 昔むかし一代いちだいの教きょうを方便ほうべんとす。 いは0753く、 鹿園ろくおんの誘引ゆういん、 方等ほうどうの褒貶ほうへん、 般若はんにゃの洮とう汰た、 種々しゅじゅの利り益やくありといへども、 みなこれ一仏いちぶつ乗じょうの方便ほうべんたり。 故かるがゆえに一代いちだい最さい頂ちょう、 かぎりて ¬法ほっ花け¼ にあり。 このゆへに出しゅっ世せの本懐ほんかいとするに足たりぬ。 しかるに浄じょう土どの教きょうは薄福はくふく一いっ機きのためにこの教きょうをとく、 なんぞ出しゅっ世せの本懐ほんかいに属ぞくせんや。 所引しょいんの ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ は、 またこれたゞ一いっ機きのためにこれをとく。 念仏ねんぶつをすゝむるばかりなり。 もししからば、 出しゅっ世せの本懐ほんかいといふべからず、 いかん。

答こた。う 文もんといひ道どう理りといひ、 すでにまへの答こたえのごとし。 なかんづく、 釈しゃく尊そんの悦えつ予よ・微み笑しょう、 これすなはち本ほん意いをとぐる相そうをあらはすとなり。 しかのみならず、 十方じっぽう恒沙ごうじゃの諸仏しょぶつの護ご念ねん証誠しょうじょう、 あに一大いちだい事じの因縁いんねんにあらずや。 おほよそ諸仏しょぶつの出しゅっ世せ、 もはら重じゅう苦くの衆しゅ生じょうをさきとす。 故かるがゆえに知しりぬ、 出しゅっ世せの本懐ほんかいもはら浄じょう土どの教きょうにあり。 ¬華け厳ごん¼ (唐訳巻一三光明覚品) の文殊もんじゅ讃仏さんぶつの偈げにいはく、 「一々いちいちの地じ獄ごく中ちゅうに无む量りょう劫こうをへたり。 衆しゅ生じょうを度どせんがためのゆへに、 しかもよくこの苦くをしのぶ」。 已上

-¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻二八迦葉品 南本巻二四迦葉品) にいはく、 「一切いっさい衆しゅ生じょうの異いの苦くをうくるは、 ことごとくこれ如来にょらい一人いちにんの苦くなり」。 已上

-¬荘しょう厳ごん論ろん¼ (荘厳経論巻六随修品) にいはく、 「菩ぼ薩さつ、 衆しゅ生じょうを念ねんじてこれを愛あいすること、 骨髄こつずいにとほり、 恒ごう時じに利り益やくせんと欲ほっすること、 なをし一いっ子しのごときのゆへに」 と。 已上

-この義ぎをもてのゆへに、 はじめに ¬无む量りょう寿じゅ経きょう¼ (巻上 巻下) には、 いまだ五ご逆ぎゃくをつくらざる機きにを0754ひては抑おく止しして 「唯除ゆいじょ五ご逆ぎゃく」 ととき、 後のちに ¬観かん経ぎょう¼ にいたりて、 すでに五ご逆ぎゃくをつくる機きにをひては摂取せっしゅして往おう生じょうをゆるす。 これすなはち娑しゃ婆ばの教きょう主しゅ釈しゃく尊そん、 種々しゅじゅの方便ほうべんをもて造悪ぞうあくの衆しゅ生じょうをして利り益やくせしむること、 かくのごとし。 浄じょう土どの教きょう主しゅ弥陀みだ如来にょらいは、 毘び舎しゃ離り国こくにいたりてひかりをのべて、 たちまちに重病じゅうびょうの衆しゅ生じょうをたすけて、 ことごとく安穏あんのんならしむ。 王おう宮ぐにをひて空くう中ちゅうに住立じゅうりゅうする、 韋い提だいすなはち无む生しょうをう。 まことにしりぬ、 二に尊そん出しゅっ世せの大たい意い、 もとも浄じょう土どの教きょうをさきとす。

-¬華け厳ごん経ぎょう¼ (晋訳巻五五入法界品) にいはく、 「自じ在ざい力りきを顕現けんげんすること、 円満えんまん修しゅ多羅たらをとかんがためなり」。 已上 かの宗しゅうのひと、 この文もんばかりをもて出しゅっ世せの本懐ほんかいと号ごうす。 いはんや、 浄じょう土どの教きょうにをひて出しゅっ世せの本懐ほんかいといふ、 ¬秘ひ密みつ四し蔵ぞう経きょう¼ の文もん分ぶん明みょうなり。 ¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ には 「利り益やく安楽あんらく大だい事じ因縁いんねん」 ととけり。 かの ¬経きょう¼ と ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ とは同本どうほん異い訳やくの経きょうなり、 たれかこれをあらそはん。

-出しゅっ世せの本懐ほんかいにをひて経々きょうきょうの異い説せつ所望しょもう不ふ同どうなり。 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ のごときんば厚こう殖しょく善根ぜんごんの上じょう機きを化けして本懐ほんかいとす。 ¬法ほっ花け¼ におひては二に乗じょうを化けするを本懐ほんかいとす。 浄じょう土どの教きょうにいたりては重じゅう苦くをすくふを本懐ほんかいとす。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の七種しちしゅの衆しゅ生じょう、 こゝろをとゞめてこれをみるべし。

法ほっ華け問答もんどう 下

 

底本は大谷大学蔵江戸時代中期恵空写伝本。 ただし訓(ルビ)は有国により、 表記は現代仮名遣いとした。
謗法 底本では「©第一の¹謗法」。 「真宗法要」所収本により削除。
法 底本に無し。 「真宗法要」所収本による。
の 底本に無し。 「真宗法要」所収本による。
しも ¬小経¼では因が先に説かれている。 「かみ」 の誤りか。