0182

▼標挙

0374無む量りょう寿じゅ仏ぶつ▼観かん経ぎょうの意こころなり

▼至し心しん発願ほつがんの願がん ▼邪じゃ定じょう聚じゅの機き ▼双樹そうじゅ林りん下げ往おう生じょう

阿あ弥陀みだ経きょうの意こころなり

▼至し心しん回え向こうの願がん ▼不ふ定じょう聚じゅの機き ▼難なん思じ往おう生じょう

 

▼題号

0375◎顕けん浄じょう土ど▼方便ほうべん▼化け身しん土ど文類もんるい 六

▼愚ぐ禿とく釈しゃく親鸞しんらん集しゅう

 (太字は 「略文類」 と重なる表現を示す。)

一 門内の方便を明かす
  Ⅰ 正しく方便を明かす
    ⅰ 総じて身土を指す【総釈】
      a 牒

【1】 ◎^つつしんで化け身しん土どを顕あらわさば、

◎▼謹0183デ顕サ↢化身土ヲ↡者バ、

一 Ⅰ ⅰ b 指
        イ 仏を指す

^△仏ぶつは ¬*無む量りょう寿じゅ仏ぶつ観かん経ぎょう¼ の説せつのごとし、 ▲真身しんしん観かんの仏ぶつこれなり。

▼仏者ハ如シ↢¬无量寿仏観経ノ¼説ノ↡、▼真身観ノ仏是也。

一 Ⅰ ⅰ b ロ 土を指す

^△土どは *¬*観かん経ぎょう¼ の浄じょう土どこれなり。 また ¬*菩ぼ薩さつ処胎しょたい経きょう¼ 等とうの説せつのごとし、 すなはち懈け慢まん界がいこれなり。 また ¬*大だい無む量りょう寿じゅ経きょう¼ の説せつのごとし、 すなはち▽疑ぎ城じょう胎たい宮ぐこれなり。

▼土者ハ¬観経ノ¼浄土是也。▼復如シ↢¬菩薩処胎経¼等ノ説ノ↡、即チ懈オコタル 慢アナドル界是也。▼亦如シ↢¬大无量寿経ノ¼説ノ↡、即チ▼疑城胎宮是也。

一 Ⅰ ⅱ 別して二願を釈す
      a 第十九願を釈す【要門釈】
        イ 直明【説意出願】
          (一)施権の意を明かす
            (Ⅰ)所被を明かす

【2】 ^しかるに*濁じょく世せの群萌ぐんもう、 *穢え悪あくの含識がんしき、 いまし*九く十じゅう五ご種しゅの邪道じゃどうを出いでて、 *半満はんまん・権実ごんじつの法門ほうもんに入いるといへども、 真しんなるものははなはだもつて難かたく、 実じつなるものははなはだもつて希まれなり。 偽ぎなるものははなはだもつて多おおく、 虚こなるものははなはだもつて滋しげし。

然ルニ濁世ノ群ムラガリ萌、キザス 穢ケガラハシ悪ノ含ガムフウム識、サトル乃シ出デテ↢九十五種之邪道ヲ↡、雖モ↠入ルト↢半満・権実之法門ニ↡、真ナル者 ノハ甚ダ以テ難ク、実ナル者 ノハ甚ダ以テ希マレナリ。偽ナルイツハル 者 ノハ甚ダ以テ多ク、虚ナル者 ノハ甚ダ以テ滋シゲシ。

一 Ⅰ ⅱ a イ (一)(Ⅱ)正しく施権を明かす

^ここをもつて釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつ、 福徳ふくとく蔵ぞうを顕説けんぜつして群ぐん生じょう海かいを誘引ゆういんし、 阿あ弥陀みだ如来にょらい、 本もと誓願せいがんを発おこしてあまねく*諸しょ有う海かいを化けしたまふ。

是ヲ以テ釈迦牟尼仏、顕↢説シテ福徳蔵ヲ↡誘イウ↢コシラヘ引シ群生海ヲ↡、阿弥陀如来、本 ト発シテ↢誓願ヲ↡普ク化シタマフ↢諸有海ヲ↡。

一 Ⅰ ⅱ a イ (二)悲願の目を示す
            (Ⅰ)行に約す

^すでにして悲ひ願がんいます。 ▼修しゅ諸しょ功く徳どくの願がん (第十九願) と名なづく、

既スデニ▼而シテ有イマス↢悲願↡。名ク↢▼修諸功徳之願ト↡、

一 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅱ)行信の益を明かす

^また▼臨りん終じゅう現前げんぜんの願がんと名なづく、 また現前げんぜん導どう生しょうの願がんと名なづく、 また来迎らいこう引いん0376接じょうの願がんと名なづく、

復名ク↢▼臨終現前之願ト↡、復名ク↢▼現前導生之願ト↡、復名ク↢▼来迎引接之願ト↡、

一 Ⅰ ⅱ a イ (二)(Ⅲ)信に約す

^また▼至し心しん発願ほつがんの願がんと名なづくべきなり。

亦可キ↠名ク↢▼至心発願之願ト↡也。▼

一 Ⅰ ⅱ a ロ 引文
          (一)直ちに諸行往生を顕して誘引の願意を示す
            (Ⅰ)能入の因を明かす
              (ⅰ)因願を出す
                (a)¬大経¼

【3】 ^ここをもつて ¬*大だい経きょう¼ (上) の願がん (第十九願) にのたまはく、

▼是ヲ以テ¬大経ノ¼願ニ言ク、

^「▲たとひわれ仏ぶつを得えたらんに、 十方じっぽうの衆しゅ生じょう、 菩ぼ提だい心しんを発おこし、 もろもろの功く徳どくを修しゅし、 心こころを至いたし発願ほつがんしてわが国くにに生しょうぜんと欲おもはん。 寿じゅ終じゅうの時ときに臨のぞんで、 たとひ大衆だいしゅと囲い繞にょうしてその人ひとの前まえに現げんぜずは、 正しょう覚がくを取とらじ」 と。

「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、▼発シ↢菩提心ヲ↡、▼修シ↢諸ノ功徳ヲ↡、▼至シ↠心ヲ発願シテ欲ハム↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡。臨デ↢寿終ノ時ニ↡、▼仮令 タトヒ 不ズ↧与ト↢▼大衆↡囲遶シテ現ゼ↦其ノ人ノ前ニ↥者ハ、不ジト↠取ラ↢正0184覚ヲ↡。」

一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅰ)(b)¬悲華経¼

【4】 ^¬*悲華ひけ経きょう¼ の 「*大だい施せ品ぼん」 にのたまはく、

▼¬悲華経ノ¼大施品ニ言ク、

^「▼願ねがはくは、 われ阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを成なりをはらんに、 その余よの無む量りょう無む辺へん阿あ僧そう祇ぎの諸仏しょぶつ世せ界かいの所しょ有うの衆しゅ生じょう、 もし阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんを発おこし、 もろもろの善根ぜんごんを修しゅして、 わが界かいに生しょうぜんと欲おもはんもの、 臨りん終じゅうの時とき、 われまさに大衆だいしゅと囲い繞にょうして、 その人ひとの前まえに現げんずべし。 その人ひと、 われを見みて、 すなはちわが前まえにして心こころに歓かん喜ぎを得えん。 われを見みるをもつてのゆゑに、 もろもろの障しょう礙げを離はなれてすなはち身みを捨すててわが界かいに来らい生しょうせしめん」 と。 以上

「願クハ我 レ成リ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡已ラムニ、其ノ余ノ无量无辺阿僧祇ノ諸仏世界ノ所有ノ衆生、若シ発シ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡、修シテ↢諸ノ善根ヲ↡、欲ハム↠生ゼムト↢我ガ界ニ↡者 ノ、臨終之時、我当ニシ↧与ト↢大衆↡囲メグリ繞シテメグル 現ズ↦其ノ人ノ前ニ↥。其ノ人見テ↠我ヲ、即チ於シテ↢我ガ前ニ↡得ム↢心ニ歓喜ヲ↡。以テノ↠見ルヲ↠我ヲ故ニ、離レテ↢諸ノ障サハリ閡ゲヲサハル↡、即便チ捨テヽ↠身ヲ来↢生セシメムト我ガ界ニ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)成就を指す

【5】 ^▼この願がん (第十九願) 成じょう就じゅの文もんは、 すなはち三輩さんぱいの文もんこれなり、 ▼¬観かん経ぎょう¼ の定じょう散さん九く品ぼんの文もんこれなり。

▼此ノ願成就ノ文者ハ、即チ三輩ノトモガラ文是也、▼¬観経ノ¼定散九品之文是也。

一 Ⅰ ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)所入の土を明かす
              (ⅰ)¬大経¼

【6】 ^また ¬大だい経きょう¼ (上) にのたまはく、

▼又¬大経ニ¼言ク、

^「▲また無む量りょう寿じゅ仏ぶつのその道どう場じょう樹じゅは、 高たかさ四し0377百ひゃく万まん里りなり、 その本もと周しゅう囲い五ご十じゅう由ゆ旬じゅんなり、 枝し葉よう四よもに布しきて二に十じゅう万まん里りなり。 一切いっさいの衆宝しゅぼう自じ然ねんに合ごう成じょうせり。 月光がっこう摩尼まに・持じ海かい輪宝りんぼうの衆宝しゅほうの王おうたるをもつて、 これを荘しょう厳ごんせり。 乃至

「又无量寿仏ノ其ノ道場ニワ樹ハ、▼高サ四百万ヨロヅ里ナリ、其ノ本周囲メグリ五十由旬ナリ、枝葉四ヨモニ布シキテ二十万里ナリ。一切ノ衆宝自然ニ合成セリ。以テ↢▼月光摩尼・持海輪宝ノ衆宝之王タルヲ↡而荘↢厳セリ之ヲ↡。 ▼乃至

^▲阿あ難なん、 もしかの国くにの人天にんでん、 この樹きを見みるものは三さん法忍ぼうにんを得えん。 一ひとつには音響おんこう忍にん、 二ふたつには柔順にゅうじゅん忍にん、 三みつには無む生しょう法忍ぼうにんなり。 ◆これみな無む量りょう寿じゅ仏ぶつの威い神じん力りきのゆゑに、 本願ほんがん力りきのゆゑに、 満足まんぞく願がんのゆゑに、 明了みょうりょう願がんのゆゑに、 堅けん固ご願がんのゆゑに、 究く竟きょう願がんのゆゑなりと。 乃至

▼阿難、若シ彼ノ国ノ人天見ル↢此ノ樹ヲ↡者 ノハ得ム↢*三法忍ヲ↡。一ニ者ハ音響忍、二ニ者ハ柔順忍、三ニ者ハ无生法忍ナリ。▼此 レ皆无量寿仏ノ威神力ノ故 ヘニ、本願力ノ故 ヘニ、満足タル願ノ故ニ、明了願ノ故ニ、堅カタク固願カタシ ノ故ニ、究竟願ノ故 ヘナリト。 ▼乃至

^▲また講堂こうどう・精しょう舎じゃ・宮く殿でん・楼観ろうかん、 みな七宝しっぽうをもつて荘しょう厳ごんし、 自じ然ねんに化け成じょうせり。 また真珠しんじゅ・明みょう月がつ摩尼まに衆宝しゅぼうをもつて、 もつて交きょう露ろとす、 その上うえに覆ふ蓋がいせり。

▼又▼講堂オコナウ ・▼精舎モンハラ ・宮殿・楼観、皆七宝ヲモテ荘厳シ、自然ニ▼化成セリ。▼復以テ↢真珠・明月摩尼▼衆宝ヲ↡、以テ為ス↢交マジワ露ル ト↡、覆↢蓋セリオヽフ 其ノ上ニ↡。

^◆内ない外げ左右さうにもろもろの浴よく池ちあり。 十じゅう由ゆ旬じゅん、 あるいは二に十じゅう・三さん十じゅう、 乃ない至し百ひゃく千せん由ゆ旬じゅんなり。 縦じゅう広こう深浅じんせん、 おのおのみな一等いっとうなり。 ◆八はっ功く徳どく水すい、 湛然たんねんとして盈満ようまんせり、 清浄しょうじょう香潔こうけつにして味あじはひ甘かん露ろのごとし」 と。

▼内外左右ニ有リ↢諸ノ浴ヨクアムル池↡。▼十由旬、或イハ二十、三十、乃0185至百千由旬ナリ。縦ヨコサマ広深浅、▼各ノ皆一等ナリ。▼八功徳水、湛タンタヽフル然トシテ盈ヤウミチ満セリ、▼清浄香潔ニシテアザヤカナリ味アジワイ如シト↢甘露ノ↡。」

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)真仮の得失を対弁して廃立の仏意を示す
            (Ⅰ)経説
              (ⅰ)¬大経¼

【7】 ^またのたまはく (大経・下)、

▼又*言ク、

^「ª▲それ胎たい生しょうのものは、 処しょするところの宮く殿でん、 あるいは百ひゃく由ゆ旬じゅん、 あるいは五ご百ひゃく由ゆ旬じゅんなり。 おのおのそのなかにして、 もろもろの快け楽らくを受うくること忉とう利り天てん上じょうのごとし。 またみな自じ然ねんなりº と。

「▼其 レ胎生ノ者 ノハ、所ノ↠処スル宮殿、▼或イハ百由旬、或イハ五百由旬ナリ。各ノ於シテ↢其ノ中ニ↡、受クルコト↢諸ノ快楽ヲ↡如シ↢忉利天上ノ↡。亦皆自然ナリト。

^◆その時ときに、 慈氏じし菩ぼ薩さつ (*弥み勒ろく)、 仏ぶつにまうしてまうさく、 ª世せ尊そん、 なんの因いんなんの縁えんあつてか、 かの国くにの人民にんみん、 胎たい生しょう・化け生しょうなるº と。

▼爾ノ時ニ慈氏菩薩白シテ↠仏ニ言サク、世尊、何ノ因何ノ縁アテカ彼ノ国ノ人民タミ、胎生・化生ナルト。

^◆仏ぶつ、 慈氏じしに告つげたまはく、 ªもし衆しゅ生じょうありて、 疑ぎ0378惑わくの心しんをもつてもろもろの功く徳どくを修しゅして、 かの国くにに生しょうぜんと願がんぜん。 仏ぶっ智ち・不ふ思議しぎ智ち・不可ふか称しょう智ち・大だい乗じょう広こう智ち・無む等とう無む倫りん最さい上じょう勝しょう智ちを了さとらずして、 この諸しょ智ちにおいて疑ぎ惑わくして信しんぜず。 しかも、 なほ罪福ざいふくを信しんじて、 善本ぜんぽんを修しゅ習じゅうして、 その国くにに生しょうぜんと願がんぜん。

仏告ゲタマハク↢慈氏ニウヂニ↡、若シ有リテ↢衆生↡、以テ↢疑惑ノ心ヲ↡修シテ↢諸ノ功徳ヲ↡、願ゼム↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。▼不ズシテ↠了サトラ↢仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・无等无倫最上勝智ヲ↡、於テ↢此ノ諸智ニ↡疑惑シテ不ズ↠信ゼ。然モ猶ナホ信ジテ↢罪福ヲ↡、修↢ツクル習シテナラフ 善本ヲ↡、願ゼム↠生ゼムト↢其ノ国ニ↡。

^◆このもろもろの衆しゅ生じょう、 かの宮く殿でんに生しょうじて、 寿いのち五ご百ひゃく歳さい、 つねに仏ぶつを見みたてまつらず、 経きょう法ぼうを聞きかず、 菩ぼ薩さつ・声しょう聞もん聖しょう衆じゅを見みず。 ◆このゆゑにかの国こく土どにはこれを胎たい生しょうといふ。 乃至

此ノ諸ノ衆生、生ジテ↢彼ノ宮殿ニ↡、寿 チ五百歳、常ニ不ズ↠見タテマツラ↠仏ヲ、不ズ↠聞カ↢経法ヲ↡、不ズ↠見ミ↢菩薩・声聞聖衆ヲ↡。是ノ故ニ彼ノ国土ニハ謂イフ↢之ヲ胎生ト↡。 ▼乃至

^◆弥み勒ろくまさに知しるべし、 かの化け生しょうのものは智慧ちえ勝すぐれたるがゆゑに。 その胎たい生しょうのものはみな智慧ちえなきなりº と。 乃至

弥勒当ニシ↠知ル、▼彼ノ化生ノ者 ノハ智慧勝タルガ故ニ。其ノ胎生ノ者 ノハ皆无キナリト↢智慧↡。 乃至

^◆仏ぶつ、 弥み勒ろくに告つげたまはく、 ªたとへば転輪てんりん聖じょう王おうのごとし。 七宝しっぽうの牢獄ろうごくあり。 種々しゅじゅに荘しょう厳ごんし床帳じょうちょうを張ちょう設せつし、 もろもろの繒幡ぞうばんを懸かけたらん。 もしもろもろの小しょう王おう子じ、 罪つみを王おうに得えたらん、 すなはちかの獄ごくのうちに内いれて、 繋つなぐに金こん鎖さをもつてせんº と。 乃至

▼仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、譬ヘバ如シ↢転輪聖王ノ↡。有ラム↢七宝ノ牢ラウカタク獄↡。イマシム種種ニ荘厳シ張ハリ↢設シマウク床ジヤウ ユカ 帳ヲ↡、懸ケタラム↢諸ノ繒ハタ幡ハタヲ↡。若シ諸ノ小王子、得タラム↢罪ヲ於王ニ↡、輒スナワチ内レテ↢彼ノ獄ノ中 チニ↡、繋ツナグニ以テセムト↢金鎖サヲクサリ↡。 乃至

^◆仏ぶつ、 弥み勒ろくに告つげたまはく、 ªこのもろもろの衆しゅ生じょう、 またまたかくのごとし。 仏ぶっ智ちを疑ぎ惑わくするをもつてのゆゑに、 かの胎たい宮ぐに生うまれん。 乃至

仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、▼此ノ諸ノ衆生、亦復 マタ 如シ↠是クノ。以テノ↣疑↢惑スルヲ仏智ヲ↡故ニ▼生レム↢彼ノ胎宮ニ↡。 乃至

^◆もしこの衆しゅ生じょう、 その本もとの罪つみを識しりて、 深ふかくみづから悔け責しゃくしてかの処ところを離はなるることを求もとめん。 乃至

若シ此ノ衆生、識シリテ↢其ノ本ノ罪ヲ↡、深ク自ミヅカラ悔クヱクユル責 ククユシテ求メム↠離ルヽコトヲ↢彼ノ処ヲ↡。 乃至

^◆弥み勒ろくまさに知しるべし、 それ菩ぼ薩さつありて疑ぎ惑わくを生しょうぜば、 大だい利りを失しっすとすº」 と。 以上抄出

弥勒当ニシ↠知ル、其レ有リテ↢菩薩↡生ゼ↢疑惑ヲ↡者バ、為スト↠▼失スト↢大利ヲ↡。」 已上抄出

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)¬如来会¼

【8】 ^¬*如来にょらい会¼ (下) にのたまはく、

▼¬如0186来会ニ¼言ク、

^▲「仏ぶつ、 弥み勒ろくに告つげたまはく、 ªもし衆しゅ生じょうありて0379、 *疑悔ぎけに随したがひて善根ぜんごんを積集しゃくじゅうして、 仏ぶっ智ち・*普ふ遍へん智ち・不ふ思議しぎ智ち・*無む等とう智ち・*威い徳とく智ち・*広大こうだい智ちを希求けぐせん。 みづからの善根ぜんごんにおいて信しんを生しょうずることあたはず。 ◆この因縁いんねんをもつて、 五ご百ひゃく歳さいにおいて宮く殿でんのうちに住じゅうせん。 乃至

「仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、若シ有リテ↢衆生↡、随ヒテ↢於疑悔ツミニ↡積ツミ↢集シテ善根ヲ↡、希↢マレニ求セム仏智・普徧智・不思議智・无等智・威徳智・広大智ヲ↡。於テ↢自ミヅカラノ善根ニ↡不ズ↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ。以テ↢此ノ因縁ヲ↡、於テ↢五百歳ニ↡住セム↢宮殿ノ中 チニ↡。 乃至

^▼阿あ逸いっ多た (弥勒)、 なんぢ*殊しゅ勝しょう智ちのものを観かんずるに、 かれは広こう慧えの力ちからによるがゆゑに、 *かの蓮れん華げのなかに化け生しょうすることを受うけて結けっ跏か趺坐ふざせん。 なんぢ*下げ劣れつの輩ともがらを観かんずるに、 乃至 ◆もろもろの功く徳どくを修しゅ習じゅうすることあたはず。 ゆゑに*因いんなくして無む量りょう寿じゅ仏ぶつに奉事ぶじせん。 このもろもろの人ひと等らは、 みな昔むかしの縁えん、 疑悔ぎけをなして致いたすところなればなりº と。 乃至

阿 逸イチ 多ホシイマヽニ、▼汝観ズルニ↢殊勝智ノ者 ノヲ↡、彼 レハ因ルガ↢広慧ノ力ニ↡故ニ、受ケテ↣彼ノ化↢生スルコトヲ▼於導華ノ中ニ↡結跏趺座セム。汝観ズルニ↢▼下劣之輩 ガラヲ↡、 乃至 不ズ↠能ハ↣修↢習ナラウスルコト諸ノ功徳ヲ↡。故ニ無クシテ↠因奉↢事セム无量寿仏ニ↡。是ノ諸ノ人等ハ、皆為ナシテ↢昔ノ縁疑悔ヲ↡所ナレバナリト↠致ス。 乃至

^◆仏ぶつ、 弥み勒ろくに告つげたまはく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 もし疑悔ぎけに随したがひて、 もろもろの善根ぜんごんを種うゑて、 仏ぶっ智ち乃ない至し広大こうだい智ちを希求けぐすることあらん。 みづからの善根ぜんごんにおいて信しんを生しょうずることあたはず。 仏ぶつの名みなを聞きくによりて*信心しんじんを起おこすがゆゑに、 かの国くにに生しょうずといへども、 蓮れん華げのうちにして出しゅつ現げんすることを得えず。 かれらの衆しゅ生じょう、 *華け胎たいのうちに処しょすること、 なほ園苑おんえん宮く殿でんの想おもいのごとしº」 と。 抄要

仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。若シ有ラム↧随ヒテ↢於疑悔ニ↡、種ヱテ↢諸ノ善根ヲ↡、希↦求スルコト仏智乃至広大智ヲ↥。於テ↢自ミヅカラノ善根ニ↡不ズ↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ。由リテ↠聞クニ↢仏ノ名ミナヲ↡起スガ↢信心ヲ↡故ニ雖モ↠生ズト↢彼ノ国クニニ↡、於シテ↢蓮華ノ中 チニ↡不ズ↠得↢出現スルコトヲ↡。彼等ラノ衆生処スルコト↢華胎ノ中 チニ↡、猶ナホ如シト↢園オンソノ苑エンソノ宮殿之想 ヒノ↡。」 抄要

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)¬大経¼

【9】 ^¬大だい経きょう¼ (下) にのたまはく、

▼¬大経ニ¼言ク、

^「▲もろもろの小行しょうぎょうの菩ぼ薩さつ、 および少しょう功く徳どくを修しゅ習じゅうするもの、 称しょう計げすべからず。 みなまさに往おう生じょうすべし」 と。

「▼諸ノ少行ノ菩薩、及ビ修↢習スル少功徳ヲ↡者 ノ、不ズ↠可カラ↢称計ス↡。皆 ナ当ニシト↢往生ス↡。」

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅳ)¬如来会¼

【10】^またのたまはく (如来会・下)、

▼又*言ク、

^▲「いはんや、 余よの菩ぼ薩さつ、 少しょう善根ぜんごんによりて0380、 かの国くにに生しょうずるもの、 称しょう計げすべからず」 と。 以上

「況イハンヤ余ノ菩薩、由リテ↢少善根ニ↡、生ズル↢彼ノ国ニ↡者 ノ、不ズト↠可カラ↢称計ス↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)師釈
              (ⅰ)終南
                (a)「定善義」(正しく終南を引く)

【11】^光こう明みょう寺じ (*善導) の釈しゃく (*定善義) にいはく、

▼光明寺ノ釈 クニ云ク、

^「▲華はなに含ふくみていまだ出いでず。 あるいは辺界へんがいに生しょうじ、 あるいは宮く胎たいに堕だせん」 と。 以上

「▼含フウガンミテ↠華ニ未ズ ダ↠出デ。或アルイハ生ジ↢▼辺界ニ↡、或イハ堕ダオツセムト↢▼宮胎ニ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)憬興¬述文賛¼(更に他師を挙げて助証す)

【12】^*憬きょう興ごう師しのいはく (*述文賛)、

▼憬興師ノ云ク、

^「▼仏ぶっ智ちを疑うたがふによりて、 かの国くにに生うまれて、 辺へん地じにありといへども、 *聖しょう化けの事じを被かぶらず。 もし胎たい生しょうせば、 よろしくこれを重おもく捨すつべし」 と。 以上

「由リテ↠疑フニ↢仏智ヲ↡、雖モ↧生ムマレ↢彼ノ国ニ↡而テ在リト↦辺地ニ↥、不ズ↠被カブラ↢聖化ノ事ヲ↡。若シ胎生セバ、宜ヨロシベ クシト↢之ヲ重ク捨スツ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)横川
                (a)¬往生要集¼

【13】^首しゅ楞りょう厳ごん院いん (*源信) の ¬*要よう集しゅう¼ (下) に、 感かん禅ぜん師じ (*懐感) の釈しゃく (*群疑論) を引ひきていはく、

首楞厳院 ンノ▼¬要集ニ¼引キテ↢▼感カン*禅師ノ釈ヲ↡云ク、

^「▲問とふ。 ¬*菩ぼ薩さつ処胎しょたい経きょう¼ の第だい二にに説とかく、 ª^西方さいほうこの閻えん浮ぶ提だいを去さること十じゅう二に億おく那由なゆ他たに懈け慢まん界がいあり。 乃至 ◆意こころを発おこせる衆しゅ生じょう、 *阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくに生しょうぜんと欲おもふもの、 みな深ふかく懈け慢まん国こく土どに着じゃくして、 前進すすんで阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくに生しょうずることあたはず。 億おく千万せんまんの衆しゅう、 時ときに一人いちにんありて、 よく阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくに生しょうずº と云々うんぬん。 ^◆この ¬経きょう¼ をもつて*准じゅん難なんするに、 生しょうずることを得うべしやと。

「問フ。▼¬菩薩処胎経ノ¼第二ニ説トカク、西方去ルコト↢此0187ノ閻浮提ヲ↡十二億那由他ニ有リ↢懈*慢界↡。 ▼乃至 発セル↠意ヲ衆生欲フ↠生ゼムト↢阿弥陀仏国ニ↡者 ノ、皆深ク著ツクシテ↢懈慢国土ニ↡、不ズ↠能ハ↣前進 スヽ ムデ生ズルコト↢阿弥陀仏国ニ↡。億千万ノ衆、時ニ有リテ↢一人↡、能ク生ズト↢阿弥陀仏国ニ↡云云。以テ↢此ノ¬経ヲ¼↡准ジユンナヅラフ難スルニ、可シヤト↠得ウ↠生ズルコトヲ。

^◆答こたふ。 ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ に善導ぜんどう和か尚しょうの前さきの文もんを引ひきて、 この難なんを釈しゃくして、 またみづから助じょ成じょうしていはく、 ª^この ¬経きょう¼ の下しもの文もんにいはく、 «なにをもつてのゆゑに、 みな懈け慢まんによりて執しゅう心しん牢ろう固こならず» と。

答フ。¬群疑論ニ¼引キ↢善導和尚ノ▼前ノ文ヲ↡而テ釈シテ↢此ノ難ヲ↡、又▼自ミヅカラ助タスク成シテ云ク、此ノ¬経ノ¼下ノ文ニ*言ク、何ヲ以テノ故ニ皆 ナ由リテ↢懈ケ慢マンニ↡執トル心不ズト↢牢ラウカタク固ナラカタシ↡。

^◆ここに知しんぬ、 雑修ざっしゅのものは執しゅう心しん不ふ牢ろうの0381人ひととす。 ゆゑに懈け慢まん国こくに生しょうず。 もし雑修ざっしゅせずして、 もつぱらこの業ごうを行ぎょうぜば、 これすなはち執しゅう心しん牢ろう固こにして、 さだめて極楽ごくらく国こくに生しょうぜん。 乃至

是ニ知ヌ、雑修之者 ノハ為ス↢執心不牢之人ト↡。故ニ生ズ↢懈慢国ニ↡*也。若シ不ズシテ↢雑修セ↡専ラ行ゼバ↢此ノ業ヲ↡、此即チ執心牢固ニシテ、定メテ生ゼム↢極楽国ニ↡。 ▼乃至

^◆また報ほうの浄じょう土どに生しょうずるものはきはめて少すくなし。 化けの浄じょう土どのなかに生しょうずるものは少すくなからず。 ゆゑに ¬経きょう¼ の別説べっせつ、 実じつに相そう違いせざるなりº」 と。 以上略抄

又報ノ浄土ニ生ズル者 ノハ極テ少シ。化ノ浄土ノ中ニ生ズル者ハ不↠少 ナカラ。故ニ経ノ別説、実ニ不ル↢相違セ↡也ト。」 已上略抄

一 Ⅰ ⅱ a ハ 勧誡

【14】^しかれば、 それ楞りょう厳ごんの和か尚しょう (源信) の解義げぎを案あんずるに、 ▲念仏ねんぶつ証しょう拠こ門もん (往生要集・下) のなかに、 第だい十じゅう八はちの願がんは別願べつがんのなかの別願べつがんなりと顕開けんかいしたまへり。 ▲¬観かん経ぎょう¼ の定じょう散さんの諸しょ機きは、 極ごく重じゅう悪人あくにん、 ただ弥陀みだを称しょうせよと勧励かんれいしたまへるなり。 濁じょく世せの道俗どうぞく、 ▲よくみづからおのれが*能のうを思し量りょうせよとなり、 知しるべし。

▼爾レ者バ夫 レ按ズルニ↢楞リヨウ厳ノ和尚ノ解義ヲハカラフ↡、▼念仏証拠コ門ノ中ニ第十八ノ願者ハ▼顕↢開シタマヘリ別願ノ中之別願ナリト↡。▼¬観経ノ¼定散ノ諸機者ハ勧スヽメ↢励レイハゲマスシタマヘル極重悪人、唯称セヨト弥陀ト↡也。濁世ノ道俗、善ク自ミヅカラ思↢量セヨト己ガ能ヲ↡也、応シ↠知ル。

一 Ⅰ ⅱ b 二経の隠顕を釈す
        イ 観経の三心を釈す【観経隠顕】
          (一)問

【15】^▼問とふ。 ¬*大本だいほん¼ (大経) の*三心さんしんと ¬観かん経ぎょう¼ の*三心さんしんと一いち異いいかんぞや。

▼問フ。¬大本ノ¼三心ト与ト↢¬観経ノ¼三心↡一異云何ゾヤ。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)答
            (Ⅰ)正釈
              (ⅰ)例を作りて略釈す
                (a)立例
                  (イ)標挙

^答こたふ。 釈しゃく家け (善導) の意いによりて ¬無む量りょう寿じゅ仏ぶつ観かん経ぎょう¼ を案あんずれば、 *↓顕けん↓彰しょう隠密おんみつの義ぎあり。

答フ。依リテ↢▼釈家之意ニ↡按ズレ↢¬无量寿仏観経ヲ¼↡者バ有リ↢▼顕彰隠オンカクス密ノカクス義↡。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)解釈
                    [一]顕を釈す

^▽↑顕けんといふは、 すなはち定じょう散さん諸善しょぜんを顕あらわし、 三輩さんぱい・三心さんしんを開ひらく。 しかるに*二に善ぜん・三福さんぷくは報ほう土どの真因しんいんにあらず。 諸しょ機きの三心さんしんは、 *自利じり各別かくべつにして*利他りたの一心いっしんにあらず。 如来にょらいの*異いの方便ほうべん、 *欣ごん慕ぼ浄じょう土どの善根ぜんごんなり。 これはこの経きょう (観経) の意いなり。 すなはちこれ顕けんの義ぎなり。

言フ↠顕ト者ハ、即チ顕シ↢定散諸善ヲ↡開ク↢三輩・三心ヲ↡。然ルニ二善・三福ハ非ズ↢報土ノ真因ニ↡。諸機ノ三心ハ、自利各別ニ而シテ非ズ↢利他ノ一心ニ↡。如来ノ異ノ方便、忻ネガヒ慕浄シタフ 土ノ善根ナリ。是 レハ此ノ¬経¼之意ナリ。即チ是顕ノ義也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]彰を釈す

^▽↑彰しょうといふは、 如来にょらいの弘ぐ0382願がんを彰あらわし、 利他りた通つう入にゅうの一心いっしんを*演えん暢ちょうす。 達だっ多た (*提婆達多)・闍じゃ世せ (*阿闍世) の悪あく逆ぎゃくによりて、 ▲*釈しゃ迦か微み笑しょうの素そ懐かいを彰あらわす。 ▲*韋い提だい別選べっせんの正しょう意いによりて、 弥陀みだ大だい悲ひの本願ほんがんを開闡かいせんす。 これすなはちこの経きょう (観経) の隠おん彰しょうの義ぎなり。

言フ↠彰トアラハス者0188、彰 ハシ↢如来ノ弘願ヲ↡演ノベ↢暢ノブス利他通入ノ一心ヲ↡。▼縁リテ↢達多・闍世ノ悪逆ニ↡、▼彰ス↢釈迦微ミスコシキ笑セウヱムノ素モト懐クワイオモヒヲ↡。▼因リテ↢韋提別選ノ正意ニ↡、開↢闡スヒラク弥陀大悲ノ本願ヲ↡。斯 レ乃チ此ノ¬経ノ¼隠カクス彰ノ義也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ハ)釈例(¬観経¼「序分」九文、「正宗分」四文、計十三文)

 ^ここをもつて ¬経きょう¼ (観経) には、 「▲教きょう我が観かん於お清浄しょうじょう業ごっ処しょ」 といへり。 「清浄しょうじょう業ごっ処しょ」 といふは、 すなはちこれ本願ほんがん成じょう就じゅの報ほう土どなり。

是ヲ以テ¬経ニハ¼言ヘリ↢「▼教我観於清浄業処ト」↡。言フ↢清浄業処ト↡者ハ、則チ是▼本願成就ノ報土也。

^「▲教きょう我が思し惟ゆい」 といふは、 すなはち方便ほうべんなり。

言フ↢▼教我思惟トオモフ↡者ハ、即チ方便也。

^「▲教きょう我が正しょう受じゅ」 といふは、 すなはち金剛こんごうの真心しんしんなり。

言フ↢教我正受ト↡者ハ、即チ▼金剛ノ真心也。

^「▲諦観たいかん彼ひ国こく浄じょう業ごう成じょう者しゃ」 といへり、 本願ほんがん成じょう就じゅの尽じん十方じっぽう無礙むげ光こう如来にょらいを観かん知ちすべしとなり。

言ヘリ↢「▼諦観彼国浄業成者ト」↡、応シト↣観↢知ス本願成就ノ尽十方无光如来ヲ↡也。

^「▲広説こうせつ衆しゅ譬び」 といへり、 すなはち十じゅう三さん観がんこれなり。

▼言ヘリ↢「広説衆譬ビト」↡、則チ十三観是也。

^「▲汝にょ是ぜ凡ぼん夫ぶ心想しんそう羸劣るいれつ」 といへり、 すなはちこれ悪人あくにん往おう生じょうの機きたることを彰あらわすなり。

言ヘリ↢「▼汝是凡夫心想羸ルイオトリ劣ト」↡、則チ是彰ス↠為タルコトヲ↢悪人往生ノ機↡也。

^「▲諸仏しょぶつ如来にょらい有う異い方便ほうべん」 といへり、 すなはちこれ定じょう散さん諸善しょぜんは方便ほうべんの教きょうたることを顕あらわすなり。

言ヘリ↢「▼諸仏如来有異方便ト」↡、則チ是定散諸善ハ顕ス↠為タルコトヲ↢方便之教↡也。

^「▲以い仏力ぶつりき故こ見けん彼ひ国こく土ど」 といへり、 これすなはち他た力りきの意いを顕あらわすなり。

言ヘリ↢「▼以仏力故見彼国土ト」↡、斯乃チ顕ス↢他力之意ヲ↡也。

^「▲若にゃく仏滅ぶつめつ後ご諸しょ衆しゅ生じょう等とう」 といへり、 すなはちこれ未み来らいの衆しゅ生じょう、 往おう生じょうの正しょう機きたることを顕あらわすなり。

言ヘリ↢「▼若仏滅後諸衆生等ト」↡、即チ是未来ノ衆生、顕ス↠為ルコトヲ↢往生ノ正機↡也。

^「▲若にゃく有う合者がっしゃ名みょう為い粗そ想そう」 といへり、 これ定じょう観かん成じょうじがたきことを顕あらわすなり。

言ヘリ↢「▼若有合者名為麁ソ想ト」↡、是顕ス↢▼定観難キコトヲ↟成ジ也。

^「▲於お現身げんしん中ちゅう得とく念仏ねんぶつ三昧ざんまい」 といへり、 すなはちこれ定じょう観かん成じょう就じゅの益やくは、 念仏ねんぶつ三昧ざんまいを獲うるをもつて観かんの益やくとす0383ることを顕あらわす。 すなはち観門かんもんをもつて方便ほうべんの教きょうとせるなり。

言ヘリ↢「▼於現身中得▼念仏三昧ト」↡、即チ是顕ス↧定観成就之益ハ タスク 、以テ↠獲ウルヲ↢念仏三昧ヲ↡為スルコトヲ↦観ノ益ト↥。即チ以テ↢観門ヲ↡為スル↢方便之教ト↡也。

^「▲発ほつ三種さんしゅ心しん即便そくべん往おう生じょう」 といへり。 また 「▲復有ぶう三種さんしゅ衆しゅ生じょう当得とうとく往おう生じょう」 といへり。 これらの文もんによるに、 三輩さんぱいについて、 ▽*三種さんしゅの三心さんしんあり、 また*二に種しゅの往おう生じょうあり。

言ヘリ↢「▼発三種心即便往生ト」↡。又言ヘリ↢「▼復有三種衆生当得往生ト」↡。▼依ルニ↢此等ノ文ニ↡、就テ↢三輩ニ↡有リ↢三種ノ三心↡、復有リ↢二種ノ往生↡。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ニ)結成

 ^まことに知しんぬ、 これいましこの ¬経きょう¼ (観経) に顕けん彰しょう隠密おんみつの義ぎあることを。

▼良マコトニ知ヌ此 レ乃シ此ノ¬経ニ¼有ルコトヲ↢顕彰隠蜜之義↡。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)正答

^▼二に経きょう (大経・観経) の三心さんしん、 まさに一いち異いを談だんぜんとす、 よく思し量りょうすべきなり。 ¬大だい経きょう¼・¬観かん経ぎょう¼、 顕けんの義ぎによれば異いなり、 彰しょうの義ぎによれば一いちなり、 知しるべし。

二経ノ三心、将ス ニ↠談ダンゼムト↢一0189異ヲ↡、応キ↢善ク思量ス↡也。¬大経¼・¬観経¼依レバ↢顕ノ義ニ↡異ナリ、依レバ↢彰ノ義ニ↡一也、可シ↠知ル。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)釈を挙げて広弁す
                (a)引文
                  (イ)「玄義分」二文

・序題門

【16】^しかれば、 光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (*玄義分)、

▼爾レ者バ光明寺ノ和尚ノ云ク、

^「▲しかるに娑しゃ婆ばの化け主しゅ (釈尊)、 その請しょうによるがゆゑに、 すなはち広ひろく浄じょう土どの要門ようもんを開ひらく。 安楽あんらくの能人のうにん (阿弥陀仏) は別べっ意ちの弘ぐ願がんを顕けん彰しょうす。

「然ルニ娑婆ノ化主、因ルガ↢其ノ請コウニ↡故ニ、即チ広ク開ク↢浄土之要門ヲ↡。安楽ノ能人ノ顕↢彰ス別意之弘願ヲ↡。

^◆その要門ようもんとはすなはちこの ¬観かん経ぎょう¼ の定じょう散さん二に門もんこれなり。 定じょうはすなはち慮おもんぱかりを息やめてもつて心こころを凝こらす。 散さんはすなはち悪あくを廃はいしてもつて善ぜんを修しゅす。 この二に行ぎょうを回えして往おう生じょうを求ぐ願がんせよとなり。

其ソレ要門ト者ハ即チ此ノ¬観経ノ¼定散二門是也。定ハ即チ息ヤメテ↠慮オモンパカリヲ以テ凝コラス↠心ヲ。散ハ即チ廃ハイシテ↠悪ヲ以テ修ス↠善ヲ。回シテ↢此ノ二行ヲ↡求↢願セヨト往生ヲ↡也。

^◆弘ぐ願がんといふは ¬大だい経きょう¼ の説せつのごとし」 といへり。

言フ↢弘願ト↡者如シトイヘリ↢¬大経ノ¼説ノ↡。」

・宗旨門

【17】^またいはく (玄義分)、

▼又云ク、

^「▲いまこの ¬観かん経ぎょう¼ はすなはち観仏かんぶつ三昧ざんまいをもつて宗しゅうとす、 また念仏ねんぶつ三昧ざんまいをもつて宗しゅうとす。 一心いっしんに回え願がんして浄じょう土どに往おう生じょうするを0384体たいとす。

「今此ノ¬観経ハ¼即チ以テ↢▼観仏三昧ヲ↡為ス↠▼宗ト、亦以テ↢▼念仏三昧ヲ↡為↠宗ト。▼一心ニ回願シテ往↢生スルヲ浄土ニ↡為スト↠体ト。

^◆教きょうの大だい小しょうといふは、 ◆問とうていはく、 この経きょうは二に蔵ぞうのなかには、 いづれの蔵ぞうにか摂せっする、 二に教きょうのなかには、 いづれの教きょうにか収おさむるやと。

▼言フ↢教之大少ト↡者ハ、問ヒテ曰ク、此ノ¬経ハ¼▼二蔵之中ニハ何ノ蔵ニカ摂スル、▼二教之中ニハ何ノ教ニカ収オサムルヤト。

^◆答こたへていはく、 いまこの ¬観かん経ぎょう¼ は菩ぼ薩さつ蔵ぞうに収おさむ。 頓とん教ぎょうの摂しょうなり」 と。

答ヘテ曰ク、今此ノ¬観経ハ¼菩薩蔵ニ収 サム。頓教ノ摂ナリト。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)「序分義」二文

・証信序

【18】^またいはく (*序分義)、

▼又云ク、

・約定散

^「▲また ª如にょ是ぜº といふは、 すなはちこれは法ほうを指さす、 定じょう散さん両りょう門もんなり。 ª是ぜº はすなはち定さだむる辞ことばなり。 機き、 行ぎょうずればかならず益やくす。 これは如来にょらいの所説しょせつの言みこと、 錯謬しゃくみょうなきことを明あかす。 ゆゑに如にょ是ぜと名なづく。

「又言フ↢如是ト↡者ハ、即チ此ハ指ス↠法ヲ、定散両門也。是ハ即チ▼定ムル辞コトバナリ。▼機、行ズレバ必ズ益ス。此ハ明ス↣如来ノ所説ノ言ミコト无キコトヲ↢錯謬↡。故ニ名ク↢如是ト↡。

・約弘願

^◆また ª如にょº といふは衆しゅ生じょうの意いのごとしとなり。 心こころの所しょ楽ぎょうに随したがひて仏ぶつすなはちこれを度どしたまふ。 機き教きょう相応そうおうせるをまた称しょうして ª是ぜº とす。 ゆゑに如にょ是ぜといふ。

又言フ↠如ト者ハ▼如シト↢衆生ノ意ノ↡也。随ヒテ↢心ノ所楽ニ↡仏即チ度シタマフ↠之ヲ。機教相応セルヲ復称イフシテ為ス↠是ト。故ニ言フ↢如是ト↡。

・約諸教

^◆また如にょ是ぜといふは、 如来にょらいの所説しょせつを明あかさんと欲ほっす。 漸ぜんを説とくことは漸ぜんのごとし、 頓とんを説とくことは頓とんのごとし。 相そうを説とくことは相そうのごとし、 空くうを説とくことは空くうのごとし。

▼又言フ↢如是ト↡者ハ、欲ス↠明サムト↢如来ノ所説ヲ↡。説クコトハ↠漸ヲヤウヤク如シ↠漸ノ、説クコトハ↠頓ヲ如シ↠頓ノ。説クコトハ↠相ヲ如シ↠相ノ、説クコトハ↠空ヲ如シ↠空ノ。

^◆人法にんぼうを説とくこと人法にんぼうのごとし、 天法てんぼうを説とくこと天法てんぼうのごとし。 小しょうを説とくこと小しょうのごとし、 大だいを説とくこと大だいのごとし。

説クコト↢人法ヲ↡如シ↢人法ノ↡、説クコト↢天法ヲ↡如シ↢天法ノ↡。説クコト↠小ヲ如シ↠小ノ、説クコト↠大ヲ如シ↠大ノ。

^◆凡ぼんを説とくこと凡ぼんのごとし、 聖しょうを説とくこと聖しょうのごとし。 因いんを説とくこと因いんのごとし、 果かを説とくこと果かのごとし。

説クコト↠凡ヲ如シ↠凡ノ、説クコト↠聖ヲ如シ↠聖ノ。説クコト↠因ヲ如シ↠因ノ、説クコト↠果ヲ如シ↠果ノ。

^◆苦くを説とくこと苦くのごとし、 楽らくを説とくこと楽らくのごとし。 遠おんを説とくこと遠おんのごとし、 近ごんを説とくこと近ごんのごとし。

説クコト↠苦ヲ如シ↠苦ノ、説クコト↠楽ヲ如シ↠楽ノ。説クコト↠遠ヲ如シ↠遠ノ、説クコト↠近ヲ如シ↠近ノ。

^◆同どうを説とくこと同どうのごとし、 別べつを説と0385くこと別べつのごとし。 浄じょうを説とくこと浄じょうのごとし、 穢えを説とくこと穢えのごとし。

説クコト↠同ヲ如シ↠同ノ、説クコト↠別ヲ如シ↠別ノ。説クコト↠浄ヲ如シ↠浄ノ、説クコト↠穢ヲ如シ↠穢ノ。

^◆一切いっさいの法ほうを説とくこと千差せんじゃ万別まんべつなり。 如来にょらいの観かん知ち、 歴々れきれき了りょう然ねんとして、 心こころに随したがひて行ぎょうを起おこして、 おのおの益やくすること同おなじからず。 *業ごう果か法然ほうねんとしてすべて錯しゃく失しつなし、 また称しょうして ª是ぜº とす。 ゆゑに如にょ是ぜといふ」 と。

説クコト↢一切ノ法ヲ↡千差シナ万別ナリ。如来ノ観知、歴レキフル歴了然トシテ、随ヒテ↠心ニ起シテ↠行ヲ、各ノ益タスクスルコト不ズ↠同ジカラ。業果法然トシテ衆スベテ无シ↢錯シヤクアヤマリ失↡、又称シテ為↠是ト。故ニ言フト↢如是ト↡。」

・散善顕行縁

【19】^またいはく (序分義)、

▼又云ク、

^「▲ª欲よく生しょう彼ひ国こく者しゃº より下しも ª名みょう為い浄じょう業ごうº に至いたるまでこのかたは、 まさしく三福さんぷくの行ぎょうを勧修かんしゅすることを明あかす。

「従リ↢欲生彼国者↡下 モ至ルマデ↢名為浄業ニ↡已来タハ正シク明ス↣勧↢修スルコトヲ三福之行ヲ↡。

^◆これは一切いっさい衆しゅ生じょうの機きに二に種しゅあることを明あかす。 一ひとつには定じょう、 二ふたつには散さんなり。 もし定行じょうぎょうによれば、 すなはち生しょうを摂せっするに尽つきず。 これをもつて如来にょらい方便ほうべんして三福さんぷくを顕開けんかいして、 もつて散動さんどうの根こん機きに応おうじたまへり」 と。

此ハ明ス↣一切衆生ノ▼機ニ有ルコトヲ↢二種↡。一ニ者ハ定、二ニ者ハ散ナリ。若シ依レバ↢定行ニ↡、即チ摂スルニ↠生ヲ不ズ↠尽キ。是 レヲ以テ如来方便シテ▼顕↢開シテ三福ヲ↡、以テ応ジタマヘリト↢散動ノ根機ニ↡。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ハ)「散善義」

・上上品釈

【20】^またいはく (*散善義)、

▼又云ク、

^「▲また真実しんじつに二に種しゅあり。 一ひとつには自利じり真実しんじつ、 二ふたつには利他りた真実しんじつなり。

「又真実ニ有リ↢二種↡。一ニ者ハ自利真実、二ニ者ハ利他真実ナリ。

^◆自利じり真実しんじつといふは、 また二に種しゅあり。

言フ↢自利真実ト↡者ハ、復有リ↢二種↡。

^◆一ひとつには、 真実しんじつ心しんのうちに自他じたの諸悪しょあくおよび穢え国こく等とうを制捨せいしゃして、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがに、 一切いっさい菩ぼ薩さつの諸悪しょあくを制捨せいしゃするに同おなじく、 われもまたかくのごとくせんと想おもふ。

一ニ者ハ真実心ノ中ニ制↢トヾム作シテ自他ノ諸悪及ビ穢国等ヲ↡、行住坐臥ニ、想フ↧同ジク↣一切菩薩ノ制↢捨スルニ諸悪ヲ↡、我モ亦如クセムト↞是クノ也。

^◆二ふたつには、 真実しんじつ心しんのうちに自他じた・凡ぼん聖しょう等とうの善ぜんを勤修ごんしゅす。

二ニ者真実心ノ中ニ懃↢修ス自他凡聖等ノ善ヲ↡。

^◆真実しんじつ心しんのうちの口く業ごうに、 かの阿あ弥陀みだ仏ぶつおよび依え正しょう二に報ほうを讃嘆さんだんす。 また真実しんじつ心しんのうちの口く業ごうに、 三界さんがい六道ろくどう等とうの自他じたの依え正しょう0386二に報ほうの苦く悪あくの事じを毀き厭えんす。 また一切いっさい衆しゅ生じょうの三業さんごう所しょ為いの善ぜんを讃嘆さんだんす。 もし善業ぜんごうにあらずは、 つつしんでこれを遠とおざかれ、 また随ずい喜きせざれとなり。

真実心ノ中ノ口業ニ讃↢嘆ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ口業ニ毀クヰ↢ソシリ厭エンスイトフ三界六道等ノ自他ノ依正ノ二報ノ苦悪之事ヲ↡。亦讃↢嘆ス一切衆生ノ三業所為ノ善ヲ↡。若シ非ズ↢善業ニ↡者ハ、敬ツツシム而デ遠トオザカレ↠之ヲ、亦不レト↢随喜セ↡也。

^◆また真実しんじつ心しんのうちの身業しんごうに、 合がっ掌しょうし礼らい敬きょうし、 四事しじ等とうをもつてかの阿あ弥陀みだ仏ぶつおよび依え正しょう二に報ほうを供く養ようす。 また真実しんじつ心しんのうちの身業しんごうに、 この生しょう死じ三界さんがい等とうの自他じたの依え正しょう二に報ほうを軽きょう慢まんし厭捨えんしゃす。

又真実心ノ中ノ身業ニ、合掌シ礼敬シ、四事等ヲモテ供↢養ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。又真実心ノ中ノ身業ニ軽カロメ↢慢シアナドル厭↣捨ス此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。

^◆また真実しんじつ心しんのうちの意い業ごうに、 かの阿あ弥陀みだ仏ぶつおよび依え正しょう二に報ほうを思し想そうし観かん0387察ざつし憶念おくねんして、 目めの前まえに現げんぜるがごとくす。 また真実しんじつ心しんのうちの意い業ごうに、 この生しょう死じ三界さんがい等とうの自他じたの依え正しょう二に報ほうを軽きょう賎せんし厭捨えんしゃすと。 乃至

又真実0191心ノ中ノ意業ニ思↢想シ観↣察シ憶↤念シテ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡、如クス↠現ゼルガ↢目ノ前ニ↡。又真実心ノ中ノ意業ニ軽↢賎センシイヤシウス厭↣捨スト此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡。 ▼乃至

 ^▲また決けつ定じょうして、 釈しゃ迦か仏ぶつ、 この ¬観かん経ぎょう¼ に三福さんぷく九く品ぼん・定じょう散さん二に善ぜんを説ときて、 かの仏ぶつの依え正しょう二に報ほうを証しょう讃さんして人ひとをして欣ごん慕ぼせしむと深信じんしんすと。 乃至

▼又決定シテ深↧信スト釈迦仏説キテ↢此ノ¬観経ニ¼三福九品・定散二善ヲ↡、証↢賛シテ彼ノ仏ノ依正二報ヲ↡使ムト↦人ヲシテ忻ネガイ慕セシタウ↥。 ▼乃至

^▲*また深心じんしんの深信じんしんとは、 決けつ定じょうして*自じ心しんを建こん立りゅうして、 教きょうに順じゅんじて修しゅ行ぎょうし、 永ながく疑ぎ錯しゃくを除のぞきて、 一切いっさいの別べつ解げ・別べつ行ぎょう・異い学がく・異い見けん・異い執しゅうのために退失たいしつ傾きょう動どうせられざるなりと。 乃至

▼又深心ノ深信ト者ハ、決定シテ建↢立シテ自心ヲ↡、順ジテ↠教ニ修行シ、永ク除キテ↢疑錯ヲアヤマル↡、不ル↧為ニ↢一切ノ別解・別行・異学・異見・異執之↡所レ↦退失傾クヰヤウカタブク動セ↥也ト。 ▼乃至

 ^▲次つぎに行ぎょうについて信しんを立たてば、 しかるに行ぎょうに二に種しゅあり。 一ひとつには正行しょうぎょう、 二ふたつには雑ぞう行ぎょうなり。

▼次ニ就テ↠行ニ立テ↠信ヲ者バ、然ルニ行ニ有リ↢二種↡。一ニ者ハ正行、二ニ者雑行ナリ。

^◆正行しょうぎょうといふは、 もつぱら往おう生じょう経きょうの行ぎょうによりて行ぎょうずるものは、 これを正行しょうぎょうと名なづく。

言フ↢正行ト↡者ハ、専ラ依リテ↢往生経ノ行ニ↡行ズル者ハ、是ヲ名ク↢正行ト↡。

^◆なにものかこれや。 一心いっしんにもつぱらこの ¬観かん経ぎょう¼・¬弥陀みだ経きょう¼・¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 等とうを読誦どくじゅする。 一心いっしんにかの国くにの二に報ほう荘しょう厳ごんを専せん注ちゅうし思し想そうし観察かんざつし憶念おくねんする。 もし礼らいせばすなはち一心いっしんにもつぱらかの仏ぶつを礼らいする。 もし口くちに称しょうせばすなはち一心いっしんにもつぱらかの仏ぶつを称しょうせよ。 もし讃嘆さんだん供く養ようせばすなはち一心いっしんにもつぱら讃嘆さんだん供く養ようする。 これを名なづけて正しょうとす。

何 ニ者カ是也。一心ニ専ラ読↢誦スル此ノ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬无量寿経¼等ヲ↡。一心ニ専↢注シトヾム思↣想シ観↤察シ憶↯念スル彼ノ国ノ二報荘厳ヲ↡。若シ礼セバ即チ一心ニ専ラ礼スル↢彼ノ仏ヲ↡。若シ口ニ称セバ即チ一心ニ専ラ称セヨ↢彼ノ仏ヲ↡。若シ讃嘆供養セバ即チ一心ニ専ラ讃嘆供養スル。是ヲ名ケテ為スト↠正ト。▼

^◆またこの正しょうのなかについて、 また二に種しゅあり。

▼又就テ↢此ノ正ノ中ニ↡、復有リ↢二種↡。

^▼一ひとつには、 一心いっしんに弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんして、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがに時じ節せつの久く近ごんを問とはず、 念々ねんねんに捨すてざるものは、 これを正定しょうじょうの業ごうと名なづく、 かの仏願ぶつがんに順じゅんずるがゆゑに。

一ニ者一心ニ専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡、行住坐臥ニ不↠問ハ↢時節ノ久近ヲ↡、念念ニ不ル↠捨テ者ハ、是ヲ名ク↢正定之業ト↡、順ズルガ↢彼ノ仏願ニ↡故ニ。

^◆もし礼誦らいじゅ等とうによるは、 すなはち名なづけて助業じょごうとす。

若シ依ルヲ↢礼誦等ニ↡、即チ名ケテ為ス↢助業ト↡。

^◆この正しょう助じょ二に行ぎょうを除のぞきて以外いげの自余じよの諸善しょぜんは、 ことごとく雑ぞう行ぎょうと名なづく。 ^◆もし前さきの正しょう助じょ二に行ぎょうを修しゅするは、 心こころつねに親近しんごんし、 憶念おくねん断たえず、 名なづけて無む間けんとす。 もし後のちの雑ぞう行ぎょうを行ぎょうずるは、 すなはち心こころつねに間断けんだんす。 回え向こうして生しょうずることを得うべしといへども、 すべて疎そ雑ぞうの行ぎょうと名なづくるなり。

除キテ↢此ノ正助二行ヲ↡已外ノ自余ノ諸善ハ、悉ク名ク↢雑行ト↡。▼若シ修スルハ↢前ノ正助二行ヲ↡、心常ニ親シン近ゴンシ、憶念不ズ↠断ヘ、名ケテ為↢无間ト↡也。若シ行ズルハ↢後ノ雑行ヲ↡、即チ心常ニ間断ス。雖モ↠可シト↢回向シテ得ウ↟生ズルコトヲ、衆テ名クル↢疎雑之行ト↡也。

^◆ゆゑに深心じんしんと名なづく。

故ニ名0192クト↢深心ト↡。

 ^◆三みつには回え向こう発願ほつがん心しん。

▼三ニ者回向発願心。

^◆回え向こう発願ほつがん心しんといふは、 過去かこおよび今こん生じょうの身しん口意くい業ごうに修しゅするところの世せ・出しゅっ世せの善根ぜんごん、 および他たの一切いっさいの凡ぼん聖しょうの身しん口意くい業ごうに修しゅするところの世せ・出しゅっ世せの善根ぜんごんを随ずい喜きして、 この自他じた所修しょしゅの善根ぜんごんをもつて、 ことごとくみな真実しんじつの深信じんしんの心しんのうちに回え向こうして、 かの国くにに生しょうぜんと願がんず。 ゆゑに回え向こう発願ほつがん心しんと名なづくるなり」 と。

言フ↢回向発願心ト↡者、▼過去及以ビ今生ノ身口意業ニ所ノ↠修スル世・出世ノ善根、及ビ随↢喜シテ他ノ一切ノ凡聖ノ身口意業ニ所ノ↠修スル世・出世ノ善根ヲ↡、以テ↢此ノ自他所修ノ善根ヲ↡、悉ク皆真実ノ深信ノ心ノ中ニ回向シテ、願ズ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。故ニ名クル↢回向発願心ト↡也。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ニ)「序分義」二文

・定善

【038821】^またいはく (序分義)、

▼又云ク、

^「▲*定じょう善ぜんは*観かんを示しめす縁えんなり」 と。

「定善ハ示 メス↠観ヲ縁ナリト。」

・散善

【22】^またいはく (序分義)、

又云ク、

^「▲*散善さんぜんは*行ぎょうを顕あらわす縁えんなり」 と。

「散善ハ顕ス↠行ヲ縁ナリト。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ホ)「散善義」

・結嘆

【23】^またいはく (散善義)、

▼又云ク、

^「▲浄じょう土どの要よう逢あひがたし」 と。 文 抄出

「▼浄土之要難シト↠逢アヒ」*文 抄出

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ヘ)¬礼讃¼二文

・前序

【24】^またいはく (*礼讃)、

▼又云ク、

^「▲¬観かん経ぎょう¼ の説せつのごとし。 まづ三心さんしんを具ぐしてかならず往おう生じょうを得う。 なんらをか三みつとする。

「如シ↢¬観経ノ¼説ノ↡。先マヅ具シテ↢三心ヲ↡必ズ得ウ↢往生ヲ↡。何等ヲカ為スル↠三ト。

^◆一ひとつには至し誠じょう心しん。 いはゆる身業しんごうにかの仏ぶつを礼拝らいはいす、 口く業ごうにかの仏ぶつを讃嘆さんだんし称しょう揚ようす、 意い業ごうにかの仏ぶつを専念せんねんし観察かんざつす。 おほよそ三業さんごうを起おこすに、 かならず真実しんじつを須もちゐるがゆゑに至し誠じょう心しんと名なづく。 乃至

一ニ者ハ至誠心。所ユル↠謂ハ身業ニ礼↢拝ス彼ノ仏ヲ↡、口業ニ讃↢嘆シ称↣揚ス彼ノ仏ヲ↡、意業ニ専↢念シ観↣察ス彼ノ仏ヲ↡。凡ソ起スニ↢三業ヲ↡、必ズ須モチヰルガ↢真実ヲ↡故ニ名クト↢至誠心ト↡。 ▼乃至

^▲三みつには回え向こう発願ほつがん心しん。 所しょ作さの一切いっさいの善根ぜんごん、 ことごとくみな回えして往おう生じょうを願がんず、 ゆゑに回え向こう発願ほつがん心しんと名なづく。

三ニ者ハ回向発願心。所作ノ一切ノ善根、悉ク皆回シテ願ズ↢往生ヲ↡、故ニ名ク↢回向発願心ト↡。

^◆この三心さんしんを具ぐしてかならず生しょうずることを得うるなり。 もし一心いっしん少かけぬればすなはち生しょうずることを得えず。 ¬観かん経ぎょう¼ につぶさに説とくがごとし、 知しるべしと。 乃至

具シテ↢此ノ三心ヲ↡必ズ得ル↠生ズルコトヲ也。若シ少カケヌレバ↢一心↡即チ不ズ↠得↠生ズルコトヲ。如シ↢¬観経ニ¼具ニ説クガ↡、応シト↠知ル。 ▼乃至

 ^▲また菩ぼ薩さつはすでに生しょう死じを勉まぬかれて、 所しょ作さの善法ぜんぽう回えして仏ぶっ果かを求もとむ、 すなはちこれ自利じりなり。 衆しゅ生じょうを教きょう化けして未み来らい際さいを尽つくす、 すなはちこれ利他りたなり。 しかるに今いまの時ときの衆しゅ生じょう、 ことごとく煩悩ぼんのうのために繋け縛ばくせられて、 いまだ悪道あくどう生しょう死じ等とうの苦くを勉まぬかれず。 縁えんに随したがひて行ぎょうを起おこして、 一切いっさいの善根ぜんごんつぶさにすみやかに回えして0389、 阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくに往おう生じょうせんと願がんぜん。 かの国くにに到いたりをはりて、 さらに畏おそるるところなけん。 上かみのごときの四し修しゅ、 自じ然ねん任運にんうんにして、 自利じり利他りた具ぐ足そくせざることなしと、 知しるべし」 と。

▼又菩薩ハ▼已ニ勉マヌカレテ↢生死ヲ↡、▼所作ノ善法回シテ求ム↢仏果ヲ↡、即チ是自利ナリ。▼教↢化シテ衆生ヲ↡尽ス↢未来際ヲ↡、即チ是利他ナリ。▼然ルニ今ノ時ノ衆生、悉ク為ニ↢煩悩ノ↡繋ツナギ縛シバルセラレテ、未ズ ダ↠勉マヌカレ↢悪道生死等ノ苦ヲ↡。随ヒテ↠縁ニ起シテ↠行ヲ、一切ノ善根具 サニ速スミヤカニ回シテ、願0193ゼム↣往↢生セムト阿弥陀仏国ニ↡。▼到リ↢彼ノ国ニ↡已リテ、更サラニ无ケム↠所↠畏オソルヽ。如キノ↠上ノ四修、自然任マカセ運ハコブニシテ、自利利他无シト↠不ルコト↢具足セ↡、応シト↠知ル。」

・前序

【25】^またいはく (礼讃)、

▼又云ク、

^「▲もし専せんを捨すてて雑業ぞうごうを修しゅせんとするものは、 百ひゃくは時ときに希まれに一いち二にを得え、 千せんは時ときに希まれに五ご三さんを得う。

「若シ欲スル↣捨テヽ↠専ヲ修セムト↢雑業ヲ↡者 ノハ、百ハ時ニ希マレニ得ウ↢一二ヲ↡、千ハ時ニ希ニ得ウ↢五三ヲ↡。

^◆なにをもつてのゆゑに、 いまし雑縁ぞうえん乱動らんどうす、 正しょう念ねんを失しっするによるがゆゑに、 仏ぶつの本願ほんがんと相応そうおうせざるがゆゑに、 教きょうと相そう違いせるがゆゑに、 仏ぶつ語ごに順じゅんぜざるがゆゑに、 係け念ねん相続そうぞくせざるがゆゑに、 憶想おくそう間断けんだんするがゆゑに、 回え願がん慇いん重じゅう真実しんじつならざるがゆゑに、 貪とん・瞋しん・諸見しょけんの煩悩ぼんのう来きたり間断けんだんするがゆゑに、 慚ざん愧ぎ・懴さん悔げの心こころあることなきがゆゑに。

何ヲ以テノ故ニ。▼乃 マシ由ルガ↣雑縁乱動ス、失スルニ↢正念ヲ↡故ニ、与ト↢仏ノ本願↡不ルガ↢相応セ↡故ニ、与ト↠教相違セルガ故ニ、不ルガ↠順ゼ↢仏語ニ↡故ニ、▼係カクル念不ルガ↢相続セ↡故ニ、▼憶想間断スルガ故ニ、回願不ルガ↢慇ネムゴロニ重真実ナラ↡故ニ、貪・瞋・諸見ノ煩悩来 タリ間断スルガ故ニ、無キガ↠有ルコト↢▼慚ハヂ愧ハヅ・懴クイ悔クユノ心↡故ニ。

^◆懴さん悔げに三品さんぼんあり。 乃至

懴悔ニ有リ↢三品↡。 ▼乃至

 ^▲上じょう・中ちゅう・下げなり。

▼上・中・下ナリ。

^◆上じょう品ぼんの懴さん悔げとは、 身みの毛もう孔くのうちより血ちを流ながし、 眼まなこのうちより血ち出いだすをば上じょう品ぼんの懴さん悔げと名なづく。

上品ノ懴悔ト者ハ、身ノ毛孔ノ中ヨリ血ヲ流シ、眼ノ中ヨリ血出スヲ者バ名ク↢上品ノ懴悔ト↡。

^◆中ちゅう品ぼんの懴さん悔げとは、 遍身へんしんに熱あつき汗あせ毛もう孔くより出いづ、 眼まなこのうちより血ちの流ながるるをば中ちゅう品ぼんの懴さん悔げと名なづく。

中品ノ懴悔ト者ハ、徧身ニ熱アツキ汗アセ従リ↢毛孔↡出ヅ、眼ノ中ヨリ血ノ流 ガルヽ者ハ名ク↢中品ノ懴悔ト↡。

^◆下げ品ぼんの懴さん悔げとは、 遍身へんしん徹とおり熱あつく、 眼まなこのうちより涙なみだ出いづるをば下げ品ぼんの懴さん悔げと名なづく。

下品ノ懴悔ト者ハ、徧身徹トオリ熱アツク、眼ノ中ヨリ涙 ダ出ヅルヲ者バ名ク↢下品ノ懴悔ト↡。

^◆これらの三品さんぼん、 差別しゃべつありといへども、 これ久ひさしく解げ脱だつ分ぶんの善根ぜんごんを種うゑたる人ひとなり。 今こん生じょうに0390法ほうを敬うやまひ、 人ひとを重おもくし、 身しん命みょうを惜おしまず、 乃ない至し小しょう罪ざいももし懴さんすれば、 すなはちよく心髄しんずいに徹とおりて、 ◆よくかくのごとく懴さんすれば、 久く近ごんを問とはず、 所しょ有うの重障じゅうしょうみなたちまちに滅尽めつじんせしむることを致いたす。

此等ラノ三品、雖モ↠有リト↢差別↡、是 レ▼久シク種ヱタル↢解脱分ノ善根ヲ↡人ナリ。致ス↠使ムルコトヲ↧今生ニ敬ヒ↠法ヲ重クシ↠人ヲ、不ズ↠惜オシマ↢身命ヲ↡、乃至小罪モ若シ懴サンクユスレバ即チ能ク徹リテ↢心髄ニ↡、▼能ク如ク↠此クノ懴スレ者バ、不ズ↠問ハ↢久近ヲ↡、所有ノ重障皆 ナ頓タチマチニ滅尽セ↥。

^◆もしかくのごとくせざれば、 たとひ日にち夜や十じゅう二に時じ、 急きゅうに走もとむれども、 つひにこれ益やくなし。 *差たごうてなさざるものは◆知しんぬべし。 流る涙るい・流る血けつ等とうにあたはずといへども、 ただよく*真心しんしん徹到てっとうするものは、 すなはち上かみと同おなじ」 と。 以上

▼若シ不レバ↠如クセ↠此クノ、縦使ヒ日夜十二時、急ニ走モトムレドモハシル   終ニ是無シ↠益。差タガフテ不ル↠作ナサ者 ノハ応シト↠知ヌ。雖モ↠不ズト↠能ハ↢流涙ルイ・ナミダ流血等ニ↡、但能ク真心徹トホリ到スルイタル 者ハ、即チ▼与ト↠上 ミ同ジト。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ト)¬観念法門¼

・護念縁

【26】^またいはく (*観念法門)、

▼又云ク、

^「▲すべて余よの雑業ぞうごうの行ぎょう者じゃを照摂しょうしょうすと論ろんぜず」 と。

「総 ベテ不ズト↠論ゼ↣照↢摂スト余ノ雑業ノ行者ヲ↡。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(チ)¬法事讃¼

・転経分

【27】^またいはく (*法事讃・下)、

▼又0194云ク、

^「▲如来にょらい五ご濁じょくに出しゅつ現げんして、 宜よろしきに随したがひて方便ほうべんして群萌ぐんもうを化けしたまふ。 あるいは多た聞もんにして得とく度どすと説とき、 ▼あるいは少すこしき解さとりて三さん明みょうを証しょうすと説とく。

「▼如来出↢現シテ於五濁ニ↡▼随ヒテ↠宜ヨロシキニ方便シテ化シタマフ↢群萌ヲ↡
▼或イハ説キ↢多聞ニ而シテ得度スト↡或イハ説ク↣少シキ解リテ証スト↢三明ヲ↡

^◆あるいは福ふく慧えならべて障さわりを除のぞくと教おしへ、 あるいは禅念ぜんねんして坐ざして思し量りょうせよと教おしふ。 種々しゅじゅの法門ほうもんみな解げ脱だつす」 と。

▼或イハ教ヘ↢福サイワイ恵メグム双ベテ除クト↟障 リヲ▼或 イハ教フ↢禅念シテ座シテ思量セヨト↡
▼種種ノ法門皆解脱スト」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(リ)¬般舟讃¼二文

・正讃

【28】^またいはく (*般舟讃)、

▼又云ク、

^「▲万劫まんごう功こうを修しゅせんことまことに続つづきがたし。 一いち時じに煩悩ぼんのう百ももたび千ちたび間まじはる。
もし娑しゃ婆ばにして法忍ほうにんを証しょうせんことを待またば、 六道ろくどうにして恒沙ごうじゃの劫こうにもいまだ期ごあらじ。

「▼万劫▼修セムコト↠功 ウヲ実ニ難シ↠続 ヅキ一時ニ煩悩百モヽタビ千チタビ間マジハル
若シ待マタバ↣娑婆ニシテ▼証セムコトヲ↢法忍ヲ↡▼六道ニシテ恒沙ノ劫ニモ未 ジ ダ↠期ゴアラ

^▲門々もんもん不ふ同どうなるを漸ぜん教ぎょうと名なづく。 万まん0391劫ごう苦く行ぎょうして無む生しょうを証しょうす。
畢ひつ命みょうを期ごとしてもつぱら念仏ねんぶつすべし。 須しゅ臾ゆに命いのち断たゆれば、 仏ほとけ迎むかへ将いてまします。

▼門門不同ナルヲ名ク↢漸教ト↡万劫▼苦行シテ▼証ス↢无生ヲ↡
畢命ヲ為シテ↠期ト専ラ念仏スベシ ▼須スベカラク臾ニ命 チ断フレバ、仏 ケ迎ヘ将ヰテマシマス

^◆一食いちじきの時ときなほ間ひまあり、 いかんが万劫まんごう貪瞋とんじんせざらん。
貪瞋とんじんは人天にんでんを受うくる路みちを障さふ。 三悪さんまく・四し趣しゅのうちに身みを安やすんず」 と。 抄要

▼一食之時尚ナホ有リ↠間ヒマ如何 イカン ガ万劫不ラム↢貪瞋セ↡
▼貪瞋ハ障サフ↧受クル↢人天ヲ↡路ヲ↥三悪・四趣ノ内ニ安ズト↠身ヲ」 抄要

・定散倶回

【29】^またいはく (般舟讃)、

▼又云ク、

^「▲定じょう散さんともに回えして宝国ほうこくに入いれ。 すなはちこれ如来にょらいの異いの方便ほうべんなり。
◆韋い提だいはすなはちこれ女人にょにんの相そう、 貪瞋とんじん具ぐ足そくの凡ぼん夫ぶの位くらいなり」 と。 以上

「定散倶ニ回シテ入レ↢宝国ニ↡即チ是如来ノ異ノ方便ナリ
韋提ハ即チ是女人ノ相貪瞋具足ノ凡夫ノ位ナリト」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ヌ)¬論註¼

・真実功徳釈

【30】^¬*論ろんの註ちゅう¼ (上) にいはく、

▼¬論ノ註ニ¼曰ク、

^「▲二に種しゅの功く徳どく相そうあり。 一ひとつには有漏うろの心しんより生しょうじて法ほっ性しょうに順じゅんぜず。 いはゆる凡ぼん夫ぶ、 人天にんでんの諸善しょぜん、 人天にんでんの果か報ほう、 もしは因いん、 もしは果か、 みなこれ顛倒てんどうす、 みなこれ虚偽こぎなり。 ゆゑに不ふ実じつの功く徳どくと名なづく」 と。 以上

「有リ↢二種ノ功徳相↡。一ニ者従ヨリ↢有漏ノ心↡生ジテ不ズ↠順ゼ↢法性ニ↡。所ル↠謂ハ凡夫、人天ノ諸善、人天ノ果報、若シハ因若シハ果、皆是顛倒ス、皆是虚偽ナリヘツラウ 。故ニ名クト↢▼不実ノ功徳ト↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ル)¬安楽集¼二文

・化前の経意

【31】^¬*安楽あんらく集しゅう¼ (上) にいはく、

▼¬安楽集ニ¼云ク、

^「▲¬*大集だいじっ経きょう¼ の ª月蔵がつぞう分ぶんº を引ひきていはく、 ª^わが末法まっぽうの時ときのなかに、 億々おくおくの衆しゅ生じょう、 行ぎょうを起おこし道どうを修しゅせんに、 いまだ一人いちにんも得うるものあらじº と。

「▼引キテ↢¬大集経ノ¼月蔵分ヲ↡言ハク、▼我ガ末法ノ時ノ中ニ億億ノ衆生、起シ↠行ヲ修セムニ↠道ヲ、▼未ジ ダト↠有ラ↢一人モ得ル者 ノ↡。

^◆当今とうこんは末法まっぽうなり。 この五ご濁じょく悪あく世せには、 ただ浄じょう土どの一門いちもんありて、 通つう入にゅうすべき路みちなり」 と。

▼当今ハ末法ナリ。是ノ五濁悪世ニハ、▼唯有リテ↢浄土ノ一門↡可キ↢通入0195ス↡路ナリト。」

・末法

【32】^またいはく (安楽集・下)、

▼又云ク、

^「▲いまだ一万いちまん劫ごうを満みたざるこのかたは、 つね0392にいまだ火か宅たくを勉まぬかれず、 顛倒てんどう墜つい堕だするがゆゑに。 おのおの功こうを用もちゐることは至いたりて重おもく、 獲うる報ほうは偽ぎなり」 と。 以上

「未ダル↠満タ↢一万劫ヲ↡已来 コノカ タハ恒ツネニ未ズ ダ↠勉マヌカレ↢火宅ヲ↡、顛倒墜ツイオツ堕オツスルガ故ニ。各ノ用イウ↠功クウハ至リテ重ク、※獲ウル報ハ偽ヘツラウ也ラウト。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)釈義
                  (イ)通じて三経を判ず

【33】^しかるに、 いま ¬大本だいほん¼ (大経) によるに、 真実しんじつ・方便ほうべんの願がんを超ちょう発ほつす。 また ▼¬観かん経ぎょう¼ には、 方便ほうべん・真実しんじつの教きょうを顕けん彰しょうす。 ▼¬小しょう本ほん¼ (小経) には、 ただ真門しんもんを開ひらきて方便ほうべんの善ぜんなし。 ここをもつて▼三さん経ぎょうの真実しんじつは、 選せん択じゃく本願ほんがんを宗しゅうとするなり。 また三さん経ぎょうの方便ほうべんは、 すなはちこれもろもろの善根ぜんごんを修しゅするを要ようとするなり。

▼然ルニ今拠キヨヨルニ↢¬大本ニ¼↡、超↢発ス真実・方便之願ヲ↡。亦¬観経ニハ¼顕↢*彰ス方便・真実之教ヲ↡。¬小本ニハ¼唯開キテ↢真門ヲ↡無シ↢方便之善↡。是ヲ以テ三経ノ真実ハ、選択本願ヲ為ル↠宗ト也。復三経ノ方便ハ、即チ是修スルヲ↢諸ノ善根ヲ↡為ル↠要ト也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)別して観経を釈す
                    [一]今経に就きて釈す
                      [Ⅰ]仏願を挙げて法義を標す

 ^▼これによりて△方便ほうべんの願がん (第十九願) を案あんずるに、 仮けあり真しんあり、 また行ぎょうあり信しんあり。 ▽願がんとはすなはちこれ臨りん終じゅう現前げんぜんの願がんなり。 ▽行ぎょうとはすなはちこれ修しゅ諸しょ功く徳どくの善ぜんなり。 ▽信しんとはすなはちこれ至し心しん・発願ほつがん・欲よく生しょうの心しんなり。

依リテ↠此ニ按ズルニ↢方便之願ヲ↡、有リ↠仮有リ↠真、亦有リ↠行有リ↠信。願ト者ハ即チ是臨終現前之願也。行ト者ハ即チ是修諸功徳之善也。信ト者ハ即チ是至心・発願・欲生之心也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]開説に真仮有るを示す
                        [ⅰ]方便を明かす

^この願がんの行ぎょう信しんによりて、 浄じょう土どの要門ようもん、 方便ほうべん権ごん仮けを顕開けんかいす。

依リテ↢此ノ願之行信ニ↡、顕↢開ス浄土之要門、方便権仮ヲ↡。

^この要門ようもんより*正しょう・助じょ・雑ぞうの三さん行ぎょうを出いだせり。 この正しょう助じょのなかについて、 専修せんじゅあり雑修ざっしゅあり。 ▽機きについて二に種しゅあり。 一ひとつには*定じょう機き、 二ふたつには*散さん機きなり。

従ヨリ↢此ノ要門↡出セリ↢正・助・ タスク 雑ノ三行ヲ↡。就テ↢此ノ正助ノ中ニ↡、有リ↢専修↡有リ↢雑修↡。就テ↠機ニハタモノ有リ↢二種↡。一ニ者定機、二ニ者散機也。

^また△↓二に種しゅの三心さんしんあり。 また↓二に種しゅの▽往おう生じょうあり。

又有リ↢二種ノ三心↡。亦有リ↢二種ノ往生↡。

^↑二に種しゅの三心さんしんとは、 一ひとつには定じょうの三心さんしん、 二ふたつには散さんの三心さんしんなり。 定じょう散さんの心しんはすなはち自利じり各別かくべつの心しんなり。

二種ノ三心ト者ハ、一ニ者定ノ三心、二ニ者散ノ三心ナリ。定散ノ心者ハ即チ自利各別ノ心也。

^↑二に種しゅの往おう0393生じょうとは、 一ひとつには*即そく往おう生じょう、 二ふたつには*便べん往おう生じょうなり。 便べん往おう生じょうとはすなはちこれ胎たい生しょう辺へん地じ、 双樹そうじゅ林りん下げの往おう生じょうなり。 即そく往おう生じょうとはすなはちこれ報ほう土ど化け生しょうなり。

二種ノ往生ト者ハ、一ニ者即往生、二ニ者便タヨリ往生ナリ。便往生ト者即チ是胎生辺地、双ナラブ樹林下ノ往生也。即往生ト者ハ即チ是報土化生也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ]真実を明かす

^またこの ¬経きょう¼ (観経) に真実しんじつあり。 これすなはち金剛こんごうの真心しんしんを開ひらきて、 摂取せっしゅ不ふ捨しゃを顕あらわさんと欲ほっす。 しかれば、 濁じょく世せ*能のう化けの釈しゃ迦か*善逝ぜんぜい、 至し心しん信しん楽ぎょうの願心がんしんを宣説せんぜつしたまふ。 報ほう土どの真因しんいんは信しん楽ぎょうを正しょうとするがゆゑなり。

亦此ノ¬経ニ¼有リ↢真実↡。斯 レ乃チ開キテ↢金剛ノ真心ヲ↡、欲ス↠顕サムト↢摂取不0196捨ヲ↡。然レ者バ濁世能化ノ釈迦善逝、ユク サル宣ノベ↢説シタマフ至心信 楽コノミネガフ之願心ヲ↡。報土ノ真因ハ信楽ヲ為ルガ↠正ト故也。

^ここをもつて ¬大だい経きょう¼ には 「▲信しん楽ぎょう」 とのたまへり、 如来にょらいの誓願せいがん、 疑ぎ蓋がい雑まじはることなきがゆゑに信しんとのたまへるなり。 ¬観かん経ぎょう¼ には 「▲深心じんしん」 と説とけり、 諸しょ機きの浅信せんしんに対たいせるがゆゑに深じんとのたまへるなり。 ¬小しょう本ほん¼ (小経) には 「▲一心いっしん」 とのたまへり、 二に行ぎょう雑まじはることなきがゆゑに一いちとのたまへるなり。 また一心いっしんについて深じんあり浅せんあり。 深じんとは利他りた真実しんじつの心しんこれなり、 浅せんとは定じょう散さん自利じりの心しんこれなり。

是ヲ以テ¬大経ニハ¼言ヘリ↢「信楽ト」↡、如来ノ誓願、疑蓋フタ无キガ↠雑ルコト故ニ言ヘル↠信ト也。¬観経ニハ¼説ケリ↢「深心ト」↡、対スルガムカフ  ↢諸機ノ浅信ニ↡故ニ言ヘル↠深ト也。¬小本ニハ¼言ヘリ↢「一心ト」↡、二行無キガ↠雑ハルコト故ニ言ヘル↠一ト也。復就テ↢一心ニ↡有リ↠深有リ↠浅。深ト者ハ利他真実之心是也、浅ト者定散自利之心是也。▼

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]一代に就きて釈す
                      [Ⅰ]釈を挙げて意を述ぶ
                        [ⅰ]引文

【34】^宗しゅう師し (善導) の意いによるに、 「^▲心こころによりて勝行しょうぎょうを起おこせり。 ↓門もん八万はちまん四し千せんに↓余あまれり。 漸頓ぜんとんすなはちおのおの所しょ宜ぎに称かなへり。 縁えんに随したがふものすなはちみな解げ脱だつを蒙かぶる」 (玄義分) といへり。

依ルニ↢宗師ノ意ニ↡、云ヘリ↧「▼依リテ↠心ニ起セリ↢於勝行ヲ↡、門余レリ↢八万四千ニ↡、漸頓則チ各ノ称カナヒテ↢所宜ヨロニシ↡、随フ↠縁ニ者 ノ則チ皆蒙レリト↦解脱ヲ↥。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]難易・権実の意を述ぶ

^しかるに常じょう没もつの凡ぼん愚ぐ、 定じょう心しん修しゅしがたし、 ▲息慮そくりょ凝ぎょう心しんのゆゑに。 散心さんしん行ぎょうじがたし、 ▲廃悪はいあく修善しゅぜんのゆゑに。 こ0394こをもつて▲立相りっそう住じゅう心しんなほ成じょうじがたきがゆゑに、 「^▲たとひ千年せんねんの寿じゅを尽つくすとも、 法眼ほうげんいまだかつて開ひらけず」 (定善義) といへり。

▼然ルニ常没ノ凡愚、定心難シ↠修シ、▼息ヤメテ 慮オモンパカリ凝コラス心ノ故ニ。散心難シ↠行ジ、▼廃ステヽ悪修善ノ故ニ。是ヲ以テ▼立相住心尚ナホ難キガ↠成ジ故ニ言ヘリ↧「▼縦タトヒ尽ストモ↢千年ノ寿ヲ↡、法眼未ズ ダト↦曽 ツテ開ケ↥。」

^いかにいはんや、 ▲無む相そう離り念ねんまことに獲えがたし。 ゆゑに、 「^▲如来にょらいはるかに末代まつだい罪ざい濁じょくの凡ぼん夫ぶを知しろしめして、 相そうを立たて心しんを住じゅうすとも、 なほ得うることあたはじと。 いかにいはんや、 相そうを離はなれて事じを求もとめば、 術じゅつ通つうなき人ひとの空くうに居いて舎しゃを立たてんがごときなり」 (定善義) といへり。

何イ ニ況イハンヤ▼无相離↠念誠マコトニ難シ↠獲エ。故ニ言ヘリ↩「如来懸ハルカニ知 メス↢末代罪濁ノ凡夫ヲ↡、立↠相住↠心、尚 ホ不ト↠能ハ↠得ルコト、何ニ況ヤ離レ↠相ヲ而テ求メ↠事ヲ者バ、如↧似 ゴト キ无キ↢術通↡人ノ居ヰテ↠空ニ立テムガ↞舎イヱヲ也ト。」↨

・門釈

^▼「門もん余よ」 といふは、 「↑門もん」 はすなはち八万はちまん四し千せんの仮け門もんなり、 「↑余よ」 はすなはち▼本願ほんがん一いち乗じょう海かいなり。

言フ↢▼門余ト↡者ハ、門者ハ即チ八万四千ノ仮門也、余者ハ則チ本願一乗海也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]詳らかに法相を判ず
                        [ⅰ]聖道門を明かす

【35】^▲おほよそ*一代いちだいの教きょうについて、 この界かいのうちにして*入にっ聖しょう得とく果かするを聖しょう道どう門もんと名なづく、 難なん行ぎょう道どうといへり。 この門もんのなかについて、 大だい・小しょう、 漸ぜん・頓とん、 一いち乗じょう・二に乗じょう・三さん乗じょう、 権ごん・実じつ、 顕けん・密みつ、 竪しゅ出しゅつ・竪しゅ超ちょうあり。 すなはちこれ自じ力りき、 *利他りた教きょう化け地じ、 方便ほうべん権門ごんもんの道どう路ろなり。

▼凡ソ就テ↢一代ノ教ニ↡、於シテ↢此ノ界ノ中ニ↡入聖得果スルヲ名ク↢聖道門ト↡、云ヘリ↢難行道ト↡。就テ↢此ノ門ノ中ニ↡、有リ↢大・小、漸・頓、一乗・二乗・三乗、権・実、顕・密、▼竪シユタトサマ出・竪超↡。則チ是自力利0197他教化地、方便権門之道路也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]浄土門を明かす

^安あん養にょう浄じょう刹せつにして*入にっ聖しょう証しょう果かするを浄じょう土ど門もんと名なづく、 易い行ぎょう道どうといへり。 この門もんのなかについて、 ↓横おう出しゅつ・↓横おう超ちょう、 ↓仮け・↓真しん、 ↓漸ぜん・↓頓とん、 ↓助じょ↓正しょう・↓雑ぞう行ぎょう、 雑修ざっしゅ・専修せんじゅあるなり。

於シテ↢安養浄刹ニ↡入聖証果スルヲ名ク↢浄土門ト↡、云ヘリ↢易行道ト↡。就テ↢此ノ門ノ中ニ↡、有ル↢▼横出・横超、仮・真、漸・頓、助正・雑行、雑修・専修↡也。

・正助雑釈

^↑正しょうとは五ご種しゅの正行しょうぎょうなり。 ↑助じょとは名みょう号ごうを除のぞきて以外いげの*五ご種しゅこれなり。 ↑雑ぞう行ぎょうとは、 ↓正しょう助じょを除のぞきて以外いげをことごとく雑ぞう行ぎょうと名なづく。 これすなはち↑横おう出しゅつ・↑漸ぜん0395教ぎょう、 定じょう散さん・三福さんぷく、 三輩さんぱい・九く品ぼん、 自じ力りき↑仮け門もんなり。

正ト者五種ノ正行也。助ト者ハ除キテ↢名号ヲ↡已外ノ*五種是也。雑行ト者ハ、除キテ↢正助ヲ↡已外ヲ悉ク名ク↢雑行ト↡。此 レ乃チ横出・漸教、定散・三福、三輩・九品、自力仮門也。

・横超釈

^↑横おう超ちょうとは、 本願ほんがんを憶念おくねんして自じ力りきの心しんを離はなる、 これを横おう超ちょう他た力りきと名なづくるなり。 これすなはち▼専せんのなかの専せん、 ↑頓とんのなかの頓とん、 ↑真しんのなかの真しん、 乗じょうのなかの一いち乗じょうなり。 これすなはち真しん宗しゅうなり。 △すでに真実しんじつ行ぎょうのなかに顕あらわしをはんぬ。

横超ト者ハ、憶↢念シテ本願ヲ↡離ルヽ↢自力之心ヲ↡、*是ヲ名クル↢横超他力ト↡也。斯 レ即チ専ノ中之専、頓ノ中之頓、真ノ中之真、乗ノ中之一乗ナリ。斯 レ乃チ真宗也。▼已ニ顕シ↢真実行之中ニ↡畢ヌ。

・雑行釈

【36】^▼それ雑ぞう行ぎょう雑修ざっしゅ、 その言ことば一ひとつにして、 その意こころこれ異ことなり。 雑ぞうの言ごんにおいて万まん行ぎょうを摂入しょうにゅうす。 五ご正行しょうぎょうに対たいして五ご種しゅの雑ぞう行ぎょうあり。 雑ぞうの言ごんは、 人にん・天てん・菩ぼ薩さつ等とうの*解げ行ぎょう、 雑ぞうせるがゆゑに雑ぞうといへり。 もとより往おう生じょうの因種いんしゅにあらず、 *回え心しん回え向こうの善ぜんなり。 ゆゑに浄じょう土どの雑ぞう行ぎょうといふなり。

夫 レ雑行雑修、其ノ言 バ一ニ而シテ其ノ意惟コレ異ナリ。於オイテ↢雑之言ニ↡摂↢入ス万行ヲ↡。対シテ↢*五正行ニ↡有リ↢五種ノ雑行↡。雑ノ言ハ、人・天・菩薩等ノ解行、雑セルガ故ニ曰ヘリ↠雑ト。自ヨリ↠本 ト非ズ↢往生ノ因種ニ↡、廻心回向之善ナリ。故ニ曰フ↢浄土之雑行ト↡也。

^また雑ぞう行ぎょうについて、 ↓専せん行ぎょうあり↓専心せんしんあり、 また↓雑ぞう行ぎょうあり↓雑心ざっしんあり。

▼復就テ↢雑行ニ↡、有リ↢専行↡有リ↢専心↡、復有リ↢雑行↡有リ↢雑心↡。

・専

^↑専せん行ぎょうとはもつぱら一善いちぜんを修しゅす、 ゆゑに専せん行ぎょうといふ。 ↑専心せんしんとは回え向こうをもつぱらにするがゆゑに専心せんしんといへり。

専行ト者ハ専ラ修ス↢一善ヲ↡、故ニ曰フ↢専行ト↡。専心ト者ハ専ニスルガ↢回向ヲ↡故ニ曰ヘリ↢専心ト↡。

・雑

^雑ぞう行ぎょう雑心ざっしんとは、 諸善しょぜん兼けん行ぎょうするがゆゑに↑雑ぞう行ぎょうといふ、 *定じょう散さん心しん雑ぞうするがゆゑに↑雑心ざっしんといふなり。

雑行雑心ト者諸善兼ケンカネテ行スルガ故ニ曰フ↢雑行ト↡、定散心雑スルガ故ニ曰フ↢雑心ト↡也。

・正助釈

^また↑正しょう・助じょについて↓専修せんじゅあり↓雑修ざっしゅあり。 この雑修ざっしゅについて専心せんしんあり雑心ざっしんあり。

亦就テ↢正・助ニ↡有リ↢専修↡有リ↢雑修↡。就テ↢此ノ雑修ニ↡有リ↢専心↡有リ↢雑心↡。

^↑専修せんじゅについて二に種しゅあり。 一ひとつにはただ仏ぶつ名みょうを称しょうす、 二ふたつには五ご専せんあり。 この行ぎょう業ごうについて↓専心せんしんあり↓雑心ざっしんあり。 五ご専せんとは、 一ひとつには専礼せんらい、 二ふたつには専読せんどく、 三みつには専観せんかん、 四よつには専せん称しょう、 五いつ0396つには専せん讃嘆さんだんなり。 これを五ご専修せんじゅと名なづく。 専修せんじゅ、 その言ことば一ひとつにして、 その意こころこれ異ことなり。 すなはちこれ定じょう専修せんじゅなり、 また散さん専修せんじゅなり。

就テ↢専修ニ↡有リ↢二種↡。一ニ者ハ唯称ス↢仏名ヲ↡、二ニ者ハ有リ↢▼五専↡。就テ↢此ノ行業ニ↡有リ↢専心↡0198有リ↢雑心↡。五専ト者ハ、一ニハ専礼、二ニハ専読、三ニハ専観、四ニハ専*名、五ニハ専讃嘆ナリ。是ヲ名ク↢五ノ専修ト↡。専修其ノ言 バ一ニ而シテ其ノ意 ロ惟コレ異ナリ。即チ是定専修ナリ、復散専修也。

^↑専心せんしんとは、 五ご正行しょうぎょうをもつぱらにして、 二に心しんなきがゆゑに専心せんしんといふ。 すなはちこれ定じょう専心せんしんなり、 またこれ散さん専心せんしんなり。

専心ト者ハ、専ラニ↢五正行ヲ↡而シテ無キガ↢二心↡故ニ曰フ↢専心ト↡。即チ是定専心ナリ、復是散専心也。

^↑雑修ざっしゅとは、 助じょ正しょう兼けん行ぎょうするがゆゑに雑修ざっしゅといふ。

雑修ト者、助正兼行スルガ故ニ曰フ↢雑修ト↡。

^↑雑心ざっしんとは、 定じょう散さんの心しん雑ぞうするがゆゑに雑心ざっしんといふなり、 知しるべし。

雑心ト者ハ、定散ノ心雑スルガ故ニ曰フ↢雑心ト↡也、応シ↠知ル。

・諸師釈

 ^おほよそ浄じょう土どの一切いっさい諸しょ行ぎょうにおいて、 ▼綽しゃく和か尚しょう (道綽) は 「▲万まん行ぎょう」 (安楽集・下) といひ、 導どう和か尚しょう (善導) は 「▲雑ぞう行ぎょう」 (散善義) と称しょうす。 感かん禅ぜん師じ (懐感) は 「▲諸しょ行ぎょう」 (群疑論) といへり。 信しん和か尚しょう (源信) は感かん師しにより、 空くう聖しょう人にん (源空) は▲導どう和か尚しょうによりたまふ。

凡ソ於オイテ↢浄土ノ一切諸行ニ↡、綽和尚ハ云ヒ↢「万行ト」↡、*導和尚ハ称ス↢「雑行ト」↡。感禅師ハ云ヘリ↢「諸行ト」↡。信和尚ハ依レリ↢感師ニ↡。空聖人ハ依リタマフ↢導和尚ニ↡也。

^*経きょう家けによりて師し釈しゃくを披ひらくに、 雑ぞう行ぎょうのなかの雑ぞう行ぎょう雑心ざっしん・雑ぞう行ぎょう専心せんしん・専せん行ぎょう雑心ざっしんあり。 また正行しょうぎょうのなかの専修せんじゅ専心せんしん・専修せんじゅ雑心ざっしん・雑修ざっしゅ雑心ざっしんは、 これみな辺へん地じ・胎たい宮ぐ・懈け慢まん界がいの業因ごういんなり。 ゆゑに極楽ごくらくに生しょうずといへども三宝さんぼうを見みたてまつらず。 仏心ぶっしんの光こう明みょう、 余よの雑業ぞうごうの行ぎょう者じゃを照摂しょうしょうせざるなり。

▼拠ヨリテ↢経家ニ↡披ヒラクニ↢師釈ヲ↡、雑行之中ノ雑行雑心・雑行専心・専行雑心ナリ。亦正行之中ノ専修専心・専修雑心・雑修雑心ハ、此 レ皆 ナ辺地・胎宮・懈慢界ノ業因ナリ。故ニ雖モ↠生ズト↢極楽ニ↡不ズ↠見ミタテマツラ↢三宝ヲ↡。▼仏心ノ光明、不ル↣照↢摂セ余ノ雑業ノ行者ヲ↡也。

^▽仮け令りょうの誓願せいがん (第十九願) まことに由ゆえあるかな。 *仮け門もんの教きょう、 ▲欣ごん慕ぼの釈しゃく、 これいよいよあきらかなり。

◆仮令之誓願良マコトニ有ル↠由ユヘ哉カナ。仮門之教、忻ネガイ慕之シタフ 釈、是 レ弥イヨイヨ明アキラカ也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)正答

 ^二に経きょうの三心さんしん、 顕けんの義ぎによれば異いなり、 彰しょうの義ぎによれば一いちなり。

二経之三心、依レバ↢顕之義ニ↡異也、依レバ↢彰内ニアラハス之義ニ↡一也。

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)結答

^▼三心さんしん一いち異いの0397義ぎ、 答こたへをはんぬ。

三心一異之義、答ヘ竟ヌト。▼

一 Ⅰ ⅱ b ロ 小経の一心を釈す【小経隠顕】
          (一)問

【37】^▼また問とふ。 ¬大本だいほん¼ (大経) と ¬観かん経ぎょう¼ の三心さんしんと、 ¬小しょう本ほん¼ (小経) の*一心いっしんと、 一いち異いいかんぞや。

▼又問フ。¬大本ト¼¬観経ノ¼三心ト、与ト↢¬小本ノ¼一心↡、一異云何ゾヤ。

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)答
            (Ⅰ)正釈
              (ⅰ)正弁
                (a)隠顕有ることを明かす

 ^答こたふ。 ▼いま方便ほうべん真門しんもんの誓願せいがんについて、 行ぎょうあり信しんあり。 また真実しんじつあり方便ほうべんあり。

答フ。今就テ↢方便真門0199ノ誓願ニ↡、有リ↠行有リ↠信。亦有リ↢真実↡有リ↢方便↡。

^△願がんとはすなはち植じき諸しょ徳本とくほんの願がんこれなり。 △行ぎょうとはこれに二に種しゅあり。 一ひとつには善本ぜんぽん、 二ふたつには徳本とくほんなり。

願ト者ハ即チ▼*植ジキウヽル諸徳本之願是也。行ト者ハ此ニ有リ↢二種↡。一ニ者ハ善本、二ニ者ハ徳本也。

^△信しんとはすなはち至し心しん・回え向こう・欲よく生しょうの心しんこれなり。 二に十じゅう願がんなり ^△機きについて定じょうあり散さんあり。

信ト者即チ至心・回向・欲生之心*是也。*廿願也 就テ↠機ニ有リ↠定有リ↠散。

^△往おう生じょうとはこれ難なん思じ往おう生じょうこれなり。 ^△仏ぶつとはすなはち化け身しんなり。 ^△土どとはすなはち疑ぎ城じょう胎たい宮ぐこれなり。

往生ト者ハ此難思往生是也。仏ト者ハ即チ化身ナリ。土ト者即チ疑城ミヤコ胎宮是也。

・標挙

^¬観かん経ぎょう¼ に*准じゅん知ちするに、 この ¬経きょう¼ (小経) にまた↓顕けん↓彰しょう隠密おんみつの義ぎあるべし。

准ジユン↢ナズラウ知スルニ¬観経ニ¼↡、▼此ノ¬経ニ¼亦応シ↠有ル↢顕彰隠密之義↡。

・顕義

^△↑顕けんといふは、 ▼経きょう家けは一切いっさい諸しょ行ぎょうの少しょう善ぜんを*嫌貶けんべんして、 善本ぜんぽん徳本とくほんの真門しんもんを開かい示じし、 自利じりの一心いっしんを励はげまして難なん思じの往おう生じょうを勧すすむ。

言フ↠顕ト者ハ、経家ハ嫌ケンキラフ↢貶シテオトシム 一切諸行ノ少善ヲ↡、開↢示シ善本徳本ノ真門ヲ↡、励ハゲマシテ↢自利ノ一心ヲ↡勧ム↢難思ノ往生ヲ↡。

^ここをもつて ¬経きょう¼ (小経) には 「▽*多た善根ぜんごん・多た功く徳どく・多た福徳ふくとく因縁いんねん」 と説とき、 釈しゃく (法事讃・下) には 「^▲九く品ぼんともに回えして不ふ退たいを得えよ」 といへり。 あるいは 「▲無過むか念仏ねんぶつ往おう西方さいほう▲三念さんねん五ご念ねん仏ぶつ来迎らいこう」 (法事讃・下) といへり。

是ヲ以テ¬経ニハ¼説キ↢「▼多善根・多功徳・多福徳因縁ト」↡、¬釈ニハ¼云ヘリ↣「九品倶ニ回シテ得エヨト↢不退ヲ↡。」或イハ云ヘリ↢「▼無過念仏往西方三念五念仏来迎ト」↡

^これはこれ、 この ¬経きょう¼ (小経) の顕けんの義ぎを示しめすなり。 これすなはち真門しんもんのなかの方便ほうべんなり。

此 レハ*是コレ此ノ¬経ノ¼示 メス↢顕ノ義ヲ↡也。此 レ乃チ真門ノ中之方便也。

・彰義

^△↑彰しょうといふは、 真しん0398実じつ▲難信なんしんの法ほうを彰あらわす。 これすなはち不可ふか思議しぎの願海がんかいを光闡こうせんして、 無礙むげの大だい信心しんじん海かいに帰きせしめんと欲おぼす。

▼言フ↠彰ト者ハ彰ス↢真実難信之法ヲ↡。斯 レ乃チ光↢闡シテヒラク 不可思議ノ願海ヲ↡、欲オボス↠令メムト↠帰セ↢*无ノ大信心海ニ↡。

^まことに勧すすめ、 すでに恒沙ごうじゃの勧すすめなれば、 信しんもまた*恒沙ごうじゃの信しんなり。 ゆゑに甚難じんなんといへるなり。 釈しゃく (法事讃・下) に、 「^▲ただちに弥陀みだの弘ぐ誓ぜい重かさなれるをもつて、 凡ぼん夫ぶ念ねんずればすなはち生しょうぜしむることを致いたす」 といへり。

良マコトニ勧スヽメ既 デニ恒沙ノ勧 メナレバ、信モ亦恒沙ノ信ナリ。故ニ言ヘル↢甚ハナハダ難ト↡也。¬釈ニ¼云ヘリ↧「▼直ニ為ヨテ↢弥陀ノ弘誓重レルニ↡致スト↞使ムルコトヲ↢凡夫念ズレバ即チ生ゼ↡」

^これはこれ、 隠おん彰しょうの義ぎを開ひらくなり。

斯 レハ是 レ開ク↢隠彰ノ義ヲ↡也。

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)別して実義を弁ず

・執持一心釈

^▼¬経きょう¼ (小経) に 「▲執しゅう持じ」 とのたまへり。 また 「▲一心いっしん」 とのたまへり。 ^「執しゅう」 の言ごんは心しん*堅牢けんろうにして移い転てんせざることを彰あらわすなり。 ▲「持じ」 の言ごんは不ふ散さん不ふ失しつに名なづくるなり。 ^「一いち」 の言ごんは無二むにに名なづくるの言みことなり。 「心しん」 の言ごんは真実しんじつに名なづくるなり。

¬経ニ¼言ヘリ↢「執持ト」↡。亦言ヘリ↢「一心ト」↡。執ノ言ハ彰ス↣心堅ケンカタク牢ロウニカタシ而シテ不ルコトヲ↢移イウツリ転セウツル↡也。持ノ言ハ名クル↢不散不失ニ↡也。一之言者ハ名クル↢无二ニ↡之言ミコト也。心之言者ハ名クル↢真実ニ↡也。

・無問自説経

^▼この ¬経きょう¼ (小経) は大だい乗じょう修しゅ多羅たらのなかの*無む問もん自じ説せつ経きょうなり。 しかれば如来にょらい、 世よに興こう出しゅつしたまふゆゑは、 恒沙ごうじゃの諸仏しょぶつの証しょう護ごの正しょう意い、 ただこれにあるなり。

斯コノ¬経ハ¼大乗修多羅ノ中之无問自説経也。爾レ者バ如来所↣以 ユヘ ハ興↢出シタマフ於0200世ニ↡、恒沙ノ諸仏ノ証護ノマモル正意、唯在ル↠斯ニ也。

・列祖弘伝

^▼ここをもつて*四依しえ弘ぐ経きょうの大だい士じ、 *三さん朝ちょう浄じょう土どの宗しゅう師し、 真しん宗しゅう念仏ねんぶつを開ひらきて、 濁じょく世せの邪じゃ偽ぎを導みちびく。

▼是ヲ以テ四依弘経ノ大士、三朝テウ浄土ノ宗師、開キテ↢真宗念仏ヲ↡導 チビク↢濁世ノ邪偽ヲイツハル↡。

・三経大綱

^▼三さん経ぎょうの大綱たいこう、 顕けん彰しょう隠密おんみつの義ぎありといへども、 信心しんじんを彰あらわして能のう入にゅうとす。 ゆゑに経きょうのはじめに 「如にょ是ぜ」 と称しょうす。

三経ノ大綱カウツナ、雖モ↠有リト↢顕彰隠蜜之義↡、彰シテ↢信心ヲ↡為ス↢能入ト↡。故ニ経ノ始 メニ称ス↢「如是ト」↡。

^「如にょ是ぜ」 の義ぎはすなはちよく信しんずる相そうなり。 いま三さん経ぎょうを案あんずるに、 みなもつて金剛こんごうの真心しんしんを最要さいようとせり。 真心しんしんはすなはちこれ大だい信心しんじんなり。 大だい信心しんじんは希有けう・最さい勝しょう0399・真しん妙みょう・清浄しょうじょうなり。 なにをもつてのゆゑに、 大だい信心しんじん海かいははなはだもつて入いりがたし、 仏力ぶつりきより発ほっ起きするがゆゑに。 真実しんじつの*楽邦らくほうはなはだもつて往ゆき易やすし、 願力がんりきによりてすなはち生しょうずるがゆゑなり。

如是之義ハ則チ善ク信ズル相也。今按ズルニ↢三経ヲ↡、皆 ナ以テ金剛ノ真心ヲ為セリ↢最要ト↡。真心ハ即チ是大信心ナリ。大信心ハ希有・最勝・真妙・清浄ナリ。何ヲ以テノ故ニ。▼大信心海ハ甚ダ以テ叵カタハ反シ↠入リ、従ヨリ↢仏力↡発起スルガ故ニ。▼真実ノ楽邦ハウクニ甚ダ以テ易シ↠往キ、籍ヨリテ↢願力ニ↡即チ生ズルガ故 ヘナリ。

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)結成

^いままさに一心いっしん一いち異いの義ぎを談だんぜんとす、 まさにこの意いなるべしと。

今将ス ニ↠談ゼムト↢一心一異ノ義ヲ↡、当ベ ニシト此ノ意ナル↡也。

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)結答

^三さん経ぎょう一心いっしんの義ぎ、 答こたへをはんぬ。

三経一心之義、答ヘ竟ヌ。

一 Ⅰ ⅱ c 第二十願を釈す【真門釈】
        イ 略して勧発す【説意出願】

【38】^それ濁じょく世せの道俗どうぞく、 すみやかに円修えんしゅ至し徳とくの真門しんもんに入いりて、 難なん思じ往おう生じょうを願ねがふべし。

▼夫 レ濁世ノ道俗、応シ↧速スミヤカニ入リテ↢円修至徳ノ真門ニ↡、願フ↦難思往生ヲ↥。

一 Ⅰ ⅱ c ロ 正しく義を明かす
          (一)直釈

・真門行信

^真門しんもんの方便ほうべんにつきて、 ↓善本ぜんぽんあり↓徳本とくほんあり。 また定じょう↓専心せんしんあり、 また散さん専心せんしんあり、 また定じょう散さん↓雑心ざっしんあり。

就キテ↢真門之方便ニ↡、有リ↢善本↡有リ↢徳本↡。復有リ↢定専心↡、復有リ↢散専心↡、復有リ↢定散雑心↡。

^↑雑心ざっしんとは、 大だい小しょう・凡ぼん聖しょう・一切いっさい善悪ぜんあく、 おのおの*助じょ正しょう間雑けんぞうの心しんをもつて名みょう号ごうを称しょう念ねんす。 まことに*教きょうは頓とんにして根こんは漸ぜん機きなり。 行ぎょうは専せんにして心しんは間雑けんぞうす。 ゆゑに雑心ざっしんといふなり。

雑心ト者ハ、大小・凡聖・一切善悪、各ノ以テ↢助正間雑ノ心ヲ↡称↢念ス名号ヲ↡。良マ ニ教者ハ頓ニ而シテ根者ハ漸機ナリ。行者ハ専ニ而シテ心者間雑ス。故ニ曰フ↢雑心ト↡也。

^▼定じょう散さんの↑専心せんしんとは、 罪福ざいふくを信しんずる心しんをもつて本願ほんがん力りきを願がん求ぐす、 これを自じ力りきの専心せんしんと名なづくるなり。

定散之専心ト者、以テ↧信ズル↢罪福ヲ↡心ヲ↥願↢求ス本願力ヲ↡、是ヲ名クル↢自力之専心ト↡也。

^↑善本ぜんぽんとは如来にょらいの嘉か名みょうなり。 この嘉か名みょうは万善まんぜん円えん備びせり、 一切いっさい善法ぜんぽうの本もとなり。 ゆゑに善本ぜんぽんといふなり。

善本ト者ハ如来ノ嘉カヨシ名ナリ。此ノ嘉名者ハ万善円 備ビセリ、ソナハル ツブサナリ一切善法之本ナリ。故ニ曰フ↢善本ト↡也。

^↑徳本とくほんとは如来にょらいの徳号とくごうなり。 この徳号とくごうは一いっ声しょう称しょう念ねんするに、 至し徳とく成じょう満まんし衆しゅ禍かみな転てんず、 十方じっぽう三さん世ぜの徳号とくごうの本もとなり。 ゆゑに徳本とくほんといふなり。

徳本ト者ハ如来ノ徳号ナリ。此ノ徳号者ハ一声称念スルニ、至徳成満シ衆 禍クワワザワイ皆転ズ、十方三世0201ノ徳号之本ナリ。故ニ曰フ↢徳本ト↡也。

・二尊能化

^しかればすなはち、 釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつは、 功く徳どく蔵ぞうを開演かいえんして、 十方じっぽう濁じょく世せを勧かん化けしたまふ。 阿あ弥陀みだ如来にょらいはもと*果か遂すいの誓ちかい こ0400の果か遂すいの願がんとは二に十じゅう願がんなり を発おこして、 諸しょ有うの群ぐん生じょう海かいを悲ひ引いんしたまへり。

然レバ則チ釈迦牟尼仏ハ、開↢演エンシテ功徳蔵ヲ↡、勧↢化メグムシタマフ十方濁世ヲ↡。阿弥陀如来ハ本 ト発シテ↢果遂ハタシトゲム之誓ヲ↡ *此ノ果遂之願ト者廿願也 悲↢引シタマヘリ諸有ノ群生海ヲ↡。

・出願

^▼すでにして悲ひ願がんいます。 植じき諸しょ徳本とくほんの願がんと名なづく、 また係け念ねん定生じょうしょうの願がんと名なづく、 また▼不果ふか遂者すいしゃの願がんと名なづく、 また至し心しん回え向こうの願がんと名なづくべきなり。

既 デニ而シテ有イマス↢悲願↡。名ク↢▼植ウヽル諸徳本之願ト↡、復名ク↢▼係カク念定生之願ト↡、復名ク↢▼不果遂者之願ト↡、亦可キ↠名ク↢▼至心回向之願ト↡也。▼

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)引文
            (Ⅰ)通じて上釈を成ず
              (ⅰ)正証
                (a)引経
                  (イ)因願成就を示す
                    [一]¬大経¼三文

・第二十願文

【39】^ここをもつて ¬大だい経きょう¼ (上) の願がん (第二十願) にのたまはく、

▼是ヲ以テ¬*大経ノ¼願ニ言ハク、

^「▲たとひわれ仏ぶつを得えたらんに、 十方じっぽうの衆しゅ生じょう、 わが名みょう号ごうを聞ききて、 念ねんをわが国くにに係かけて、 もろもろの徳本とくほんを植うゑて、 心しんを至いたし回え向こうしてわが国くにに生しょうぜんと欲おもはん。 果か遂すいせずは正しょう覚がくを取とらじ」 と。

「*設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、▼聞キテ↢我ガ名号ヲ↡、係ケテ↢念ヲ我ガ国ニ↡、*植ヱテ↢諸ノ徳本ヲ↡、至シ↠心ヲ回向シテ欲ハム↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡。不ズ↢▼果遂セハタシトゲ ↡者ハ不ジト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」

・胎生得失

【40】^またのたまはく (大経・下)、

▼又言ハク、

^「▲この*諸しょ智ちにおいて疑ぎ惑わくして信しんぜず、 しかるになほ罪福ざいふくを信しんじて、 善本ぜんぽんを修しゅ習じゅうして、 その国くにに生しょうぜんと願がんぜん。 ◆このもろもろの衆しゅ生じょう、 かの宮く殿でんに生しょうず」 と。

「於テ↢此ノ諸智ニ↡疑惑シテ不ズ↠信ゼ、然ルニ猶ナホ信ジテ↢罪福ヲ↡、修↢習シテ善本ヲ↡、願ゼム↠生ゼムト↢其ノ国ニ↡。此ノ諸ノ衆生、生ズト↢彼ノ宮殿ニ↡。」

・果遂の益

【41】^またのたまはく (大経・下)、

▼又言ク、

^「▲もしひと善本ぜんぽんなければ、 この経きょうを聞きくことを得えず。 清浄しょうじょうに戒かいを有たもてるもの、 いまし正しょう法ぼうを聞きくことを獲えん」 と。 以上

「若シ人无ケレバ↢善本↡不ズ↠得エ↠聞クコトヲ↢此ノ経ヲ↡
清浄ニ有タモテル↠戒ヲ者 ノ乃シ獲エムト↠聞クコトヲ↢正法ヲ↡」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(イ)[二]¬如来会¼

【42】^¬*無む量りょう寿じゅ如来にょらい会¼ (上) にのたまはく、

▼¬無量寿如来会ニ¼言ハク、

^「▲もしわれ成じょう仏ぶつせんに、 無む量りょう国こくのなかの所しょ有うの衆しゅ生じょう、 わが名なを説とかんを聞ききて、 もつておのれが善根ぜんごんとして極楽ごくらくに回え向こうせん。 もし生うまれずは、 菩ぼ提だいを取とらじ」 と。 以上

「*若シ我 レ成仏セムニ、无量国ノ中ナカノ所有ノ衆生、聞キテ↠説カムヲ↢我ガ名ヲ↡、以テ己オノレガ善根トシテ回↢向セム極楽ニ↡。若シ▼不ズ↠生レ者ハ、不ジト↠取ラ↢菩提ヲ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(イ)[三]¬平等覚経¼

【040143】^¬*平びょう等どう覚がく経きょう¼ (二) にのたまはく、

▼¬平等覚経ニ¼言ク、

^「▲この功く徳どくあるにあらざる人ひとは、 この経きょうの名なを聞きくことを得えず。 ただ清浄しょうじょうに戒かいを有たもてるもの、 いまし還かえりてこの正しょう法ぼうを聞きく。

「非ザル↠有ルニ↢是ノ功徳↡人ハ不ズ↠得エ↠聞クコトヲ↢是ノ経ノ名ヲ↡
唯有タモテル↢清浄ニ戒ヲ↡者 ノ乃シ還リテ聞ク↢斯ノ正法ヲ↡

^▲悪あくと憍きょう慢まんと蔽へいと懈け怠だいとは、 もつて*この法ほうを信しんずること難かたし。 *宿しゅく世せの時ときに仏ぶつを見みたてまつれるもの、 楽このみて世せ尊そんの教おしえを*聴ちょう聞もんせん。

悪ト憍オゴル慢トアナドル蔽トオホフ 懈オコタ怠トハオコタル難シ↣以テ信ズルコト↢於此ノ法ヲ↡
宿シウ世ノ時ニ見タテマツレル↠仏ヲ者 ノ楽コノミテ聴↢ユリテキク聞セム信ジテキク世尊ノ教ヲ↡

^▲人ひとの命いのち希まれに得うべし。 仏ぶつは世よにましませどもはなはだ値もうあひがたし。 *信しん慧ねありて致いたるべからず。 もし聞見もんけんせば精しょう進じんして求もとめよ」 と。 以上

人之命希 レニ可シ↠得ウ仏ハ在セドモ↠世ニ甚ダ難シ↠値マウアヒ
有リテ↢信*慧↡不ズ↠可カラ↠*致ル若0202シ聞見セバ精モンハラ進シテコノム 求メヨト」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ロ)随自真実を示す
                    [一]¬観経¼

【44】^¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく、

▼¬観経ニ¼言ク、

^「▲仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 ªなんぢよくこの語ことばを持たもて。 この語ことばを持たもてといふは、 すなはちこれ無む量りょう寿じゅ仏ぶつの名みなを持たもてとなりº」 と。 以上

「▼仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、汝好ヨク持テ↢是ノ語ヲ↡。持テトイフ↢是ノ語ヲ↡者ハ、即チ是持テトナリト↢无量寿仏ノ名ヲ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(a)(ハ)真門の教相を示す
                    [一]¬小経¼

【45】^¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ にのたまはく、

▼¬阿弥陀経ニ¼言ク、

^「▲少しょう善根ぜんごん福徳ふくとくの因縁いんねんをもつて、 かの国くにに生しょうずることを得うべからず。 ◆阿あ弥陀みだ仏ぶつを説とくを聞ききて、 名みょう号ごうを執しゅう持じせよ」 と。 以上

「不↠可カラ↧以テ↢少善根福徳ノ因縁ヲ↡、得ウ↞生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。▼聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡執トリ↢持セヨト名号ヲ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)引釈
                  (イ)「定善義」

【46】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (定善義)、

▼光明寺ノ和尚ノ云ク、

^「▲自余じよの衆しゅ行ぎょう、 これ善ぜんと名なづくといへども、 もし念仏ねんぶつに比たくらぶれば、 まつたく比ひ校きょうにあらざるなり。 このゆゑに、 諸しょ経きょうのなかに処々しょしょに広ひろく念仏ねんぶつの功く能のうを讃ほめたり。

「自余ノ衆行雖モ↠名クト↢是善ト↡、若シ比タクラブレ↢念仏ニ↡者バ、全マタク非ザル↢比ナラブ校ニ↡タクラブ也。是ノ故ニ諸経ノ中ニ処処ニ広ク讃メタリ↢念仏ノ功能ヲ↡。

^◆¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ の四し十じゅう八はち願がんのなかのごとき、 ただ弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんして生しょうずることを得うと明あかす。

如キ↢¬无量寿経ノ¼四十八願ノ中ノ↡、唯明ス↧専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡得ト↞生ズルコトヲ。

^◆また ¬弥陀みだ経きょう¼ のなかのごとし、 一日いちにち七日しちにち弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんして生しょうずる0402ことを得うと。 ^また十方じっぽう恒沙ごうじゃの諸仏しょぶつの証誠しょうじょう虚むなしからざるなり。

又如シ↢¬弥陀経ノ¼中ノ↡、一日七日専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡得ウト↠生ズルコトヲ。又十方恒沙ノ諸仏ノ証成不ル↠虚ムナシカラ也。

^◆またこの ¬経きょう¼ (観経) の定じょう散さんの文もんのなかに、 ただ名みょう号ごうを専念せんねんして生しょうずることを得うと標あらわす。

又此ノ¬経ノ¼定散ノ文ノ中ニ、唯標アラハス↧専↢念シテ名号ヲ↡得ト↞生ズルコトヲ。

^◆この例れい一ひとつにあらざるなり。 広ひろく念仏ねんぶつ三昧ざんまいを顕あらわしをはんぬ」 と。

此ノ例非ザル↠一ニ也。広ク顕シ↢念仏三昧ヲ↡竟ヌト。」

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ロ)「散善義」三文

【47】^またいはく (散善義)、

▼*又云ク、

^「▲また決けつ定じょうして、 ¬弥陀みだ経きょう¼ のなかに、 十方じっぽう恒沙ごうじゃの諸仏しょぶつ、 一切いっさい凡ぼん夫ぶを証しょう勧かんして、 決けつ定じょうして生しょうずることを得うと深信じんしんせよと。 乃至

「又決定シテ深↧信セヨト¬弥陀経ノ¼中ニ、十方恒沙ノ諸仏、証↢勧シテ一切凡夫ヲ↡、決定シテ得ト↞生ズルコトヲ。 ▼乃至

^▲諸仏しょぶつは言ごん行ぎょうあひ違い失しつしたまはず。 ◆たとひ釈しゃ迦か一切いっさい凡ぼん夫ぶを指し勧かんして、 この一身いっしんを尽つくして専念せんねん専修せんじゅして、 捨しゃ命みょう以後いごさだめてかの国くにに生うまるるといふは、 すなはち十方じっぽうの諸仏しょぶつことごとくみな同おなじく讃ほめ、 同おなじく勧すすめ、 同おなじく証しょうしたまふ。 なにをもつてのゆゑに、 同体どうたいの大だい悲ひのゆゑに。 一いち仏ぶつの所しょ化けはすなはちこれ一切いっさい仏ぶつの化けなり、 一切いっさい仏ぶつの化けはすなはちこれ一いち仏ぶつの所しょ化けなり。

▼諸仏ハ言行不ズ↢相 ヒ違失シタマハ↡。縦令 タトヒ 釈迦指オシヘテ勧テ↢一切凡夫ヲ↡、尽シテ↢此ノ一身ヲ↡専念専修シテツクロフ、捨スツ命已後定メテ生ルヽトイフ↢彼ノ国ニ↡者ハ、即チ十方ノ諸仏悉ク皆同ジク賛メ同ジク勧メ同ジク証シタマフ。何ヲ以テノ故ニ。同体ノ大悲ノ故ニ。一仏ノ所化ハ即チ是一切仏ノ化ナリ、一切仏ノ化ハ即0203チ是一仏ノ所化ナリ。

^◆すなはち ¬弥陀みだ経きょう¼ のなかに説とかく、 乃至 ◆ªまた一切いっさい凡ぼん夫ぶを勧すすめて、 一日いちにち七日しちにち、 一心いっしんにして弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんすれば、 さだめて往おう生じょうを得えんº と。

即チ¬弥陀経ノ¼中ニ説トカク、 ▼乃至 又勧メテ↢一切凡夫ヲ↡、一日七日、一心ニシテ専↢念スレバ弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得ムト↢往生ヲ↡。

^◆次下つぎしもの文もん (小経・意) にいはく、 ª^十方じっぽうにおのおの恒ごう河が沙しゃ等とうの諸仏しょぶつましまして、 同おなじく釈しゃ迦かを讃ほめたまはく、 よく五ご濁じょく悪あく時じ・悪あく世せ界かい・*悪あく衆しゅ生じょう・悪あく煩悩ぼんのう・悪邪あくじゃ無む信しんの盛さかんなるときにおいて、 弥陀みだの名みょう号ごうを指し讃さんして衆しゅ生じょうを勧励かんれいして称しょう念ねんせしむれば、 かならず往おう生じょうを得うº と。 ^すなは0403ちその証しょうなり。

次下ノ文ニ云ク、十方ニ各ノ有マシマシテ↢恒河沙等ノ諸仏↡、同ジク賛メタマハク↢釈迦ヲ↡、能ク於テ↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪煩悩・悪邪无信ノ盛ナル時ニ↡、指↢賛シテ弥陀ノ名号ヲ↡勧↢励シテ衆生ヲ↡称念セシムレバ必ズ得ウト↢往生ヲ↡。即チ其ノ証也。

^◆また十方じっぽう仏ぶつ等とう、 衆しゅ生じょうの釈しゃ迦か一仏いちぶつの所説しょせつを信しんぜざらんことを恐畏おそれて、 すなはちともに同心どうしん同どう時じにおのおの舌相ぜっそうを出いだして、 あまねく三千さんぜん世せ界かいに覆おおひて誠じょう実じつの言ごんを説ときたまはく、 ª^なんだち衆しゅ生じょう、 みなこの釈しゃ迦かの所説しょせつ・所讃しょさん・所しょ証しょうを信しんずべし。 一切いっさいの凡ぼん夫ぶ、 罪福ざいふくの多た少しょう、 時じ節せつの久く近ごんを問とはず、 ただよく上かみ百ひゃく年ねんを尽つくし、 下しも一日いちにち七日しちにちに至いたるまで、 一心いっしんに弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんすれば、 さだめて往おう生じょうを得うること、 かならず疑うたがいなきなりº と。

又十方仏等、恐↢畏 オソ レテ衆生ノ不ラムコトヲ↟信ゼ↢釈迦一仏ノ所説ヲ↡、即チ共ニ同心同時ニ各ノ出シテ↢舌相ヲ↡、徧ク覆ヒテ↢三千世界ニ↡説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等ナンダチ衆生、皆 ナ応シ↠信ズ↢是ノ釈迦ノ所説・所讃・所証ヲ↡。一切ノ凡夫、不ズ↠問ハ↢罪福ノ多少、時節ノ久近ヲ↡、但能ク上 ミ尽シ↢百年ヲ↡、下シモ至ルマデ↢一日七日ニ↡、一心ニ専↢念スレバ弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得ルコト↢往生ヲ↡必ズ无キ↠疑也ト。

^◆このゆゑに一仏いちぶつの所説しょせつは、 一切いっさい仏ぶつ同おなじくその事じを証誠しょうじょうしたまふなり。 ◆これを人にんに就ついて信しんを立たつと名なづくるなり」 と。 抄要

是ノ故ニ一仏ノ所説ハ、一切仏同ジク証↢成シタマフ其ノ事ヲ↡也。此ヲ名クル↢就テ↠人ニ立ツト↟信ヲ也ト。 抄要

【48】^またいはく (散善義)、

▼又云ク、

^「▲しかるに仏願ぶつがんの意いを望のぞむには、 ただ正しょう念ねんを勧すすめ、 名みなを称しょうせしむ。 往おう生じょうの義ぎ疾ときことは、 雑散ぞうさんの業ごうには同おなじからず。 この経きょうおよび諸しょ部ぶのなかに処々しょしょに広ひろく嘆たんずるがごときは、 勧すすめて名みなを称しょうせしむるを、 まさに要益ようやくとせんとするなり、 知しるべし」 と。

「然ルニ望ノゾムニ↢仏願ノ意ヲ↡者ハ、唯勧メ↢正念ヲ↡称セシム↠名ヲ。往生ノ義疾トキコトハ不↠同ジカラ↢▼雑散之業ニハ↡。如キハ↢▼此ノ経及ビ諸部ブノ中ニ処処ニ広ク嘆ズルガ↡、勧メテ令ムルヲ↠称セ↠名ヲ将ス ニル↠為セムト↢要益ト↡也、応シト↠知ル。」

【49】^またいはく (散善義)、

▼又云ク、

^「▲ª仏告ぶつごう阿あ難なん汝好にょこう持じ是語ぜごº より以下いげは、 まさしく弥陀みだの名みょう号ごうを付ふ嘱ぞくして、 遐か代だいに流る通ずうすることを明あかす。 上かみよりこのかた定じょう散さん両りょう門もんの益やくを説とくといへども、 仏ぶつの本願ほんがんの意いを望のぞまんには、 衆しゅ生じょうをして一向いっこうに0404もつぱら弥陀みだ仏ぶつの名みなを称しょうするにあり」 と。

「従ヨリ↢仏告阿難汝好持是語↡已下ハ、正シク明ス↧付↢嘱シテ弥陀ノ名号ヲ↡、流↦通スルコトヲ於遐カ代ハルカニニ↥。上ヨリ来タ雖モ↠説クト↢定散両門之益ヲ↡、望ノゾマムニハ↢仏ノ本願ノ意ヲ↡、在リト↣衆生ヲシテ一向ニ専ラ称スルニ↢弥陀仏ノ名ヲ↡。」

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ハ)¬法事讃¼三文

【50】^またいはく (法事讃・下)、

▲又0204云ク、

^「▲極楽ごくらくは無為むい涅ね槃はんの界かいなり。 随縁ずいえんの雑善ぞうぜんおそらくは生しょうじがたし。 ゆゑに如来にょらい (釈尊) 要法ようぼうを選えらびて、 教おしへて弥陀みだを念ねんぜしめてもつぱらにしてまたもつぱらならしめたまへり」 と。

「極楽ハ无為涅槃ノ界ナリ随縁ノ雑善恐オソラクハ難シ↠生ジ
故ニ使メタマヘリト↧如来選ビテ↢要法ヲ↡教エテ念ゼシメテ↢弥陀ヲ↡専ラニシテ復専ナラ↥」

【51】^またいはく (法事讃・下)、

▼又云ク、

^「▲劫こう尽つきなんと欲ほっする時とき、 五ご濁じょく盛さかんなり。 衆しゅ生じょう邪見じゃけんにしてはなはだ信しんじがたし。 もつぱらにしてもつぱらなれと指し授じゅして西さい路ろに帰きせしめしに、 他たのために破壊はえせられて還かえりて故もとのごとし。

「劫欲ホツスル↠尽ツキナムト時五濁盛サカリナリ衆生邪見ニシテ甚ダ難シ↠信ジ
専ニシテ専ナレト指授シテサヅク 帰セシメシニ↢西路ニ↡為ニ↠他ノ破壊セラレテ還リテ如シ↠故モトノ

^曠劫こうごうよりこのかたつねにかくのごとし。 これ今こん生じょうにはじめてみづから悟さとるにあらず。 まさしくよき強縁ごうえんに遇あはざるによりて、 輪りん廻ねして得とく度どしがたからしむることを致いたす」 と。

曠劫ヨリ已来 コノカ タ常ニ如シ↠此クノ非ズ↢是 レ今生ニ始テ自ミヅカラ悟サトルニ↡
正シク由リテ↠不ルニ↠遇ハ↢好ヨキ強縁ニ↡致スト↠使ムルコトヲ↣輪回シテ難カラ↢得度シ↡」

【52】^またいはく (法事讃・下)、

▼又云ク、

^「▲種々しゅじゅの法門ほうもんみな解げ脱だつすれども、 念仏ねんぶつして西方さいほうに往ゆくに過すぎたるはなし。 上かみ一いち形ぎょうを尽つくし、 十じゅう念ねん・三念さんねん・五ご念ねんに至いたるまで、 仏ぶつ来迎らいこうしたまふ。 △ただちに弥陀みだの弘ぐ誓ぜい重かさなれるをもつて、 凡ぼん夫ぶ念ねんずればすなはち生しょうぜしむることを致いたす」 と。

「種種ノ法門皆解脱スレドモ無シ↠過スギタルハ↣念仏シテ往クニ↢西方ニ↡
上尽シ↢一形ヲ↡至ルマデ↢十念・三念・五念ニ↡仏来迎シタマフ
直ニ為モテ↢弥陀ノ弘誓重カサナレルヲ↡致スト↠使ムルコトヲ↢凡夫念ズレバ即チ生ゼ↡」

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ニ)¬般舟讃¼

【53】^またいはく (般舟讃)、

▼又云ク、

^「▲一切いっさい如来にょらい方便ほうべんを設もうけたまふこと、 また今日こんにちの釈しゃ迦か尊そんに同おなじ。 ◆機きに随したがひて法ほうを説とくにみな益やくを蒙かぶる。 おのおの悟解ごげを得えて真しん門もん0405に入いれと。 乃至

「▼一切如来設マウケタマフコト↢方便ヲ↡亦同ジ↢今日ノ釈迦尊ニ↡
▼随ヒテ↠機ニ説クニ↠法ヲ皆蒙 ブル↠益ヲ▼各ノ得テ↢悟解ヲ↡入レト↢真門ニ↡ ▼乃至

^▲仏ぶっ教きょう多た門もんにして八万はちまん四しなり。 まさしく衆しゅ生じょうの機き不ふ同どうなるがためなり。 安身あんしん常住じょうじゅうの処ところを覓もとめんと欲おもはば、 まづ要よう行ぎょうを求もとめて真門しんもんに入いれ」 と。

▼仏教多門ニシテ八万四ナリ正シク為 メナリ↢衆生ノ機不同ナルガ↡
欲ハヾ↠覓モトメムト↢安身常住ノ処ヲ↡先マヅ求メテ↢要行ヲ↡入レト↢真門ニ↡」

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)(ホ)¬礼讃¼

【54】^またいはく、 *智ち昇しょう師しの ¬*礼懴らいさん儀ぎ¼ の文もんにいはく、 光こう明みょう寺 (善導) の ¬礼讃らいさん¼ なり

▼又云ク *智昇師ノ¬礼懴儀ノ¼文ニ云ク、光明寺ノ¬礼賛¼也

^「▲それこのごろ、 みづから諸方しょほうの道俗どうぞくを見聞けんもんするに、 解げ行ぎょう不ふ同どうにして専雑せんぞう、 異いあり。 ただ意こころをもつぱらにしてなさしむれば、 十じゅうはすなはち十じゅうながら生しょうず。 雑ぞうを修しゅするは至し心しんならざれば、 千せんがなかに一ひとりもなし」 と。 以上

「爾ソレ比日コノゴロ、自ミヅカラ見↢聞スルニ諸方ノ道俗ヲ↡、解行不同ニシテ専*修ニ有リ↠異。但使ムレ↢専ニシテ↠意ヲ作サ↡者バ、十ハ即チ十ナガラ生ズ。修スルハ↠雑ヲ不レ↢至心ナラ↡者バ、▼千ガ中ニ无シト↠一 リモ。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)追釈
                (a)元照¬阿弥陀経義疏¼

【55】^*元がん照じょう律りっ師しの ¬*弥陀みだ経きょうの義ぎ疏しょ¼ にいはく、

▲元照律師ノ¬弥陀経ノ義疏ニ¼云ク、

^「如来にょらい、 持じ名みょうの功こう勝すぐれたることを明あかさんと欲ほっす。 まづ余よ善ぜんを貶へんして少しょう善根ぜんごんとす。 いはゆる布施ふせ・持じ戒かい・立りゅう寺じ・造像ぞうぞう・礼誦らいじゅ・座ざ禅ぜん・懴念さんねん・苦く行ぎょう、 一切いっさい福業ふくごう、 もし正しょう信しんなければ、 回え向こう願がん求ぐするにみな少しょう善ぜんとす。 往おう生じょうの因いんにあらず。 もしこの経きょうによりて名みょう号ごうを執しゅう持じせば、 決けつ定じょうして往おう生じょうせん。 すなはち知しんぬ、 称名しょうみょうはこれ多た善根ぜんごん・多た福徳ふくとくなりと。

「▼如来欲ス↠明サムト↢持名ノ功勝レタルコトヲ↡。先マヅ貶シテオトシム↢余善ヲ↡為ス↢少善根ト↡。所ユル↠謂ハ布施・持戒・立寺・造ツクル像・礼誦ジユヨム・座禅・懴クユ念・苦行、一切福業、若シ无0205ケレバ↢正信↡、回向願求スルニ皆為ス↢少善ト↡。非ズ↢往生ノ因ニ↡。若シ依リテ↢此ノ経ニ↡執↢持セバ名号ヲ↡、決定シテ往生セム。即チ知ヌ、称名ハ是 レ多善根・多福徳也ト。

^昔むかしこの解げをなしし、 人ひとなほ遅疑ちぎしき。 近ちかく*襄じょう陽ようの石せき碑ひの経きょうの本文ほんもんを得えて、 理り冥みょう符ふせり。 はじめて深信じんしんを懐いだく。 かれにいはく、 ^ª善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを説とくを聞ききて、 一心いっしんにして乱みだれず、 名みょう号ごうを専せん称しょうせよ。 称名しょうみょうをもつてのゆゑに、 諸罪しょざい消しょう滅めつす。 すなはちこれ△多た功く徳どく・多た善根ぜんごん・多た福徳ふくとく因縁いんねんなりº」 と。 以上

昔 シ作シヽ↢此ノ解ヲ↡、人尚ナホ遅オソシ疑シキ。近 カク得テ↢襄ジヤウ陽ヤウノ▼石セキ碑ヒノアラハス経ノ本文ヲ↡、理コトハリ冥ミヤウカナイ符フセリカナフ 。始 メテ懐イダク↢深信ヲ↡。彼 レニ云ク、善男子・善女人、聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、一心ニシテ不ズ↠乱レ、専↢▼称セヨ名号ヲ↡。以テノ↢称名ヲ↡故ニ諸罪消滅ス。即チ是 レ▼多功徳・多善根・▼多福徳因縁ナリト。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)孤山¬阿弥陀経義疏¼

【040656】^*孤こ山ざんの ¬疏しょ¼ (*阿弥陀経義疏) にいはく、

▼孤コ山ノ¬疏ニ¼云ク、

^「ª執しゅう持じ名みょう号ごうº とは、 ª執しゅうº はいはく執しゅう受じゅなり、 ª持じº はいはく住じゅう持じなり。 信力しんりきのゆゑに執しゅう受じゅ心こころにあり、 念力ねんりきのゆゑに住じゅう持じして忘わすれず」 と。 以上

「▼執持名号ト者ハ、執ハ謂ク執トリ受ウクナリ、持ハ謂ク住持ナリ。信力ノ故ニ執受在リ↠心ニ、念力ノ故ニ住持シテ不ズト↠忘レ。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)別して真実を詳らかにす
              (ⅰ)経説
                (a)¬大経¼

【57】^¬大本だいほん¼ (大経・下) にのたまはく、

▼¬大本ニ¼言ハク、

^「▲如来にょらいの興こう世せ、 値もうあひがたく見みたてまつりがたし。 諸仏しょぶつの経きょう道どう、 得えがたく聞ききがたし。菩ぼ薩さつの勝しょう法ぼう、 諸しょ波羅はら蜜みつ、 聞きくことを得うることまた難かたし。 善ぜん知ぢ識しきに遇あひ、 法ほうを聞ききよく行ぎょうずること、 これまた難かたしとす。 ◆もしこの経きょうを聞ききて信しん楽ぎょう受じゅ持じすること、 難なんのなかの難なん、 これに過すぎて難かたきはなけん。

「▼如来ノ興世、▼難ク↠値マウアヒ難シ↠見タテマツリ。▼諸仏ノ経道、▼難ク↠得難シ↠聞キキ。 ▼菩薩ノ勝法、諸波羅蜜、得ルコト↠聞クコトヲ亦難シ。▼*遇ヒ↢善知識ニ↡、聞キキ↠法ヲ能ク行ズルコト、此亦為ス↠難シト。▼若シ聞キテ↢*斯ノ経ヲ↡信楽受持スルコト、▼難ノ中之難无ケム↢過ギテ↠此ニ難キハ↡。

^◆このゆゑにわが法ほうかくのごとくなしき、 かくのごとく説とく、 かくのごとく教おしふ。 まさに信しん順じゅんして法ほうのごとく修しゅ行ぎょうすべし」 と。 以上

▼是ノ故ニ我ガ法▼如ク↠是クノ作シキ、▼如ク↠是クノ説ク、▼如ク↠是クノ教 シフ。応シト↢当ニ▼信順シテ如ク↠法ノ修行ス↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)¬涅槃経¼(正因の義を詳らかにす)

・迦葉品(1)

【58】^¬*涅ね槃はん経ぎょう¼ (*迦葉品) にのたまはく、

▼¬涅槃経ニ¼言ク、

^「経きょうのなかに説とくがごとし。 ▼一切いっさいの*梵ぼん行ぎょうの因いんは善ぜん知ぢ識しきなり。 一切いっさい梵ぼん行ぎょうの因いん無む量りょうなりといへども、 善ぜん知ぢ識しきを説とけばすなはちすでに*摂しょう尽じんしぬ。 わが所説しょせつのごとし、 一切いっさいの悪あく行ぎょうは邪見じゃけんなり。 一切いっさい悪あく行ぎょうの因いん無む量りょうなりといへども、 もし邪見じゃけんを説とけばすなはちすでに摂しょう尽じんしぬ。 あるいは説とかく、 阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいは信心しんじんを因いんとす。 これ菩ぼ提だいの因いんまた無む量りょうなりといへども、 もし信心しんじんを説とけばすなはちすでに摂しょう尽じんしぬ」 と。

「▼如シ↢経ノ中ニ説クガ↡。▼一切ノ梵行ノ因ハ善知識ナリ。一切梵行ノ因雖モ↢无量ナリト↡、説ケバ↢善知識ヲ↡則チ已スデニ摂尽シヌ。如シ↢我ガ所説ノ↡、一切ノ悪行ハ邪見ナリ。一切悪行ノ因雖モ↢无量ナリト↡、若シ説ケバ↢邪見ヲ↡則チ已ニ摂尽シヌ。或イハ説トカク、阿耨多羅三藐三菩提ハ信心ヲ為ス0206↠因ト。是 レ菩提ノ因雖モ↢復 タ无量ナリト↡、若シ説ケバ↢信心ヲ↡則チ已ニ摂尽シヌト。」

・迦葉品(2)

【040759】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、

▼又言ク、

^「善男ぜんなん子し、 信しんに二に種しゅあり。 一ひとつには*信しん、 二ふたつには*求ぐなり。 かくのごときの人ひと、 また信しんありといへども、 推すい求ぐにあたはざる、 このゆゑに名なづけて信しん不ふ具ぐ足そくとす。

「善男子、信ニ有リ↢二種↡。一ニ者ハ信、二ニ者求ナリ。如キノ↠是クノ之人、雖モ↢復有リト↟信不ル↠能ハ↢推スイ求 モトメ ニ↡、是ノ故ニ名ケテ為ス↢信不具足ト↡。

^▲信しんにまた二に種しゅあり。 一ひとつには*聞もんより生しょうず、 二ふたつには*思しより生しょうず。 この人ひとの信心しんじん、 聞もんよりして生しょうじて思しより生しょうぜざる、 このゆゑに名なづけて信しん不ふ具ぐ足そくとす。

信ニ復有リ↢二種↡。一ニハ従リ↠聞生ズ、二ニハ従リ↠思生ズ。是ノ人ノ信心、従リ↠聞而シテ生ジテ不ズ↢従リ↠思生ゼ↡、是ノ故ニ名ケテ為ス↢信不具足ト↡。

^◆また二に種しゅあり。 一ひとつには*道どうあることを信しんず、 二ふたつには*得者とくしゃを信しんず。 この人ひとの信心しんじん、 ただ道どうあることを信しんじて、 すべて得道とくどうの人ひとあることを信しんぜず、 これを名なづけて信しん不ふ具ぐ足そくとす。

復有リ↢二種↡。一ニハ信ズ↠有ルコトヲ↠道、二ニハ信ズ↢得者ヲ↡。是ノ人ノ信心、唯信ジテ↠有ルコトヲ↠道、都スベテ不ズ↠信ゼ↠有ルコトヲ↢得道之人↡、是ヲ名ケテ為ス↢信不具足ト↡。

^また二に種しゅあり。 一ひとつには信しん正しょう、 二ふたつには信邪しんじゃなり。 因いん果があり、 仏法ぶっぽう僧そうありといはん、 これを信しん正しょうと名なづく。 因いん果がなく、 *三宝さんぼうの性しょう異ことなりといひて、 もろもろの邪じゃ語ご、 *富ふ蘭らん那な等とうを信しんずる、 これを信邪しんじゃと名なづく。 この人ひと、 仏法ぶっぽう僧宝そうぼうを信しんずといへども、 *三宝さんぼう同一どういつの性しょう相そうを信しんぜず。 因いん果がを信しんずといへども得者とくしゃを信しんぜず。 このゆゑに名なづけて信しん不ふ具ぐ足そくとす。 この人ひと、 不ふ具ぐ足そく信しんを成じょう就じゅすと。 乃至

復有リ↢二種↡。一ニ者信正、二ニ者信邪ナリ。言ハム↧有リ↢因果↡有リト↦仏法僧↥、是ヲ名ク↢信正ト↡。言ヒテ↠无シト↢因果↡三宝ノ性異ナリト↡、信ズル↢諸ノ邪語、富フ闌ラン那等ヲ↡、是ヲ名ク↢信邪ト↡。是ノ人雖モ↠信ズト↢仏法僧宝ヲ↡、不ズ↠信ゼ↢三宝同一ノ性相ヲ↡。雖モ↠信ズト↢因果ヲ↡不ズ↠信ゼ↢得者ヲ↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢信不具足ト↡。是ノ人成↢就スト不具足信ヲ↡。 乃至

^善男ぜんなん子し、 四よつの善ぜん事じあり、 悪あく果かを獲ぎゃく得とくせん。 なんらをか四よつとする。

善男子、有リ↢四ノ善事↡、獲グヰヤク↢得ウ  ル セム悪果ヲ↡。何等ヲカ為スル↠四ト。

^一ひとつには*勝しょう他たのためのゆゑに経きょう典てんを読誦どくじゅす。

一ニ者ハ為ノ↢勝他ノ↡故ニ読↢誦ス経典ヲ↡。

^二ふたつには*利り養ようのためのゆゑに禁戒きんかいを受じゅ持じせん。

二ニ者ハ為ノ↢利*養ノ↡故ニ受↢持セム禁戒ヲ↡。

^三みつには*他た属ぞくのためのゆゑにして布施ふせを行ぎょうぜん。

三ニ者為ノ↢他属ノ↡故ニ而シテ行ゼム↢布施ヲ↡。

^四よつには*非ひ想そう非非ひひ想処そうしょのためのゆゑに*繋け念ねん思し0408惟ゆいせん。

四ニ者ハ為ノ↢非想非非想処ノ↡故ニ繋念思惟セムオモフ 。

^この四よつの善ぜん事じ、 悪あく果か報ほうを得えん。 もし人ひとかくのごときの四事しじを修しゅ習じゅうせん、 これを、 没もっして没もっしをはりて還かえりて出いづ、 出いでをはりて還かえりて没もっすと名なづく。 なんがゆゑぞ没もつと名なづくる、 三さん有ぬを楽ねがふがゆゑに。 なんがゆゑぞ出しゅつと名なづくる、 *明みょうを見みるをもつてのゆゑに。 明みょうはすなはちこれ*戒かい・施せ・定じょうを聞きくなり。 なにをもつてのゆゑに還かえりて出しゅつ没もつするや。 邪見じゃけんを増ぞう長じょうし憍きょう慢まんを生しょうずるがゆゑに。

是ノ四ノ善事得エム↢悪果報ヲ↡。若シ人修↢習セムナラフ 如キノ↠是クノ四事ヲ↡、▼是ヲ名ク↢没シテ没シ已リテ還リテ出ヅ、出デ已リテ還リテ没スト↡。何ガ故ゾ名クル↠没ト、楽フガ↢三有ヲ↡故ニ。何ガ故ゾ名クル↠出ト、以テノ↠見ルヲ↠明ヲ故ニ。明者ハ即チ是聞キクナリ↢戒・施・定ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ還リテ出没スルヤ、増↢長シ邪見ヲ↡生ズルガ↢憍慢ヲ↡故ニ。

^このゆゑに、 われ経きょうのなかにおいて偈げを説とかく、

是ノ故ニ我 レ於テ↢経ノ中ニ↡説トカク↠偈ヲ、

^ªもし衆しゅ生じょうありて、 諸しょ有うを楽このんで、 有うのために善悪ぜんあくの業ごうを造ぞう作さする。 この人ひとは涅ね槃はん道どうを迷失めいしつするなり。 これを*暫ざん出しゅつ還げん復ぶ没もつと名なづく。

0207若シ有リテ↢衆生↡楽デ↢諸有ヲ↡為ニ↠有ノ造↢作スル善悪ノ業ヲ↡
是ノ人ハ迷メイ↢マドヒ失スルナリ涅槃道ヲ↡是ヲ名ク↢蹔ザンシバラク出還復没ト↡

^黒闇こくあん生しょう死じ海かいを行ぎょうじて、 解げ脱だつを得うといへども、 煩悩ぼんのうを雑ぞうするは、 この人ひと還かえりて悪あく果か報ほうを受うく。 これを暫ざん出しゅつ還げん復ぶ没もつと名なづくº と。

行ジテ↢於黒闇生死海ヲ↡雖モ↠得ト↢解脱ヲ↡雑スルハ↢煩悩ヲ↡
是ノ人還リテ受ク↢悪果報ヲ↡是ヲ名クト↢蹔出還復没ト↡

 ^如来にょらいにすなはち二に種しゅの涅ね槃はんあり。 一ひとつには有為うい、 二ふたつには無為むいなり。 有為うい涅ね槃はんは*常じょう楽らく我が浄じょうなし、 無為むい涅ね槃はんは常じょう楽らく我が浄じょうあり。

如来ニ則チ有リ↢二種ノ涅槃↡。一ニ者有為、二ニ者无為ナリ。有為涅槃ハ无↢常ナリ、*楽我浄ハ↡无為涅槃ナリ有↢常楽我浄↡。

^この人ひと深ふかくこの*二に種しゅの戒かいともに善ぜん果かありと信しんず。 このゆゑに名なづけて戒かい不ふ具ぐ足そくとなす。 この人ひとは信しん・戒かいの二事にじを具ぐせず、 所修しょしゅの多た聞もんもまた不ふ具ぐ足そくなり。

有リテ↢常人↡深ク信ゼム↣是ノ二種ノ戒倶ニ有リト↢因果↡、是ノ故ニ名ケテ為ス↠戒ト、戒不具足、是ノ人ハ不ズ↠具セ↢信・戒ノ二事ヲ↡、所楽多聞ニシテ亦不具足ナリ。

^▲いかなるをか名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとする。 如来にょらいの所説しょせつは十じゅう二に部ぶ経きょうなり、 ただ六ろく部ぶを信しんじていまだ六ろく部ぶを信しんぜず。 このゆゑに名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとす。

▼云何ルヲカ名ケテ為スル↢聞不具足ト↡。如来ノ所説ハ十二部経ナリ、唯信ジテ↢六部ヲ↡未ズ ダ↠信ゼ↢六部ヲ↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢聞不具足ト↡。

^またこの六ろく部ぶの経きょうを受じゅ持じすといへども、 *読誦どくじゅに0409あたはずして他たのために解げ説せつするは、 利り益やくするところなけん。 このゆゑに名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとす。

雖モ↣復受↢持スト是ノ六部ノ経ヲ↡、不ズシテ↠能ハ↢読ヨミ誦ヨムニ↡為ニ↠他ノ解*説スルハ、无ケム↠所↢利益スル↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢聞不具足ト↡。

^またこの六ろく部ぶの経きょうを受うけをはりて、 論ろん議ぎのためのゆゑに、 勝しょう他たのためのゆゑに、 利り養ようのためのゆゑに、 *諸しょ有うのためのゆゑに、 *持じ読どく誦じゅ説せつせん。 このゆゑに名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとす」 と。 略抄

又復受ケ↢是ノ六部ノ経ヲ↡已リテ、為ノ↢論議ノ↡故ニ、為ノ↢勝他ノ↡故ニ、為ノ↢利養ノ↡故ニ、為ノ↢諸有ノ↡故ニ、持 読コヽロエヨムナリ誦ウカベヨムナリ説セム。是ノ故ニ名ケテ為スト↢聞不具足ト↡。」 略抄

・徳王品

【60】^またのたまはく (涅槃経・*徳王品)、

▼又言ク、

^「善男ぜんなん子し、 第一だいいち真実しんじつの善ぜん知ぢ識しきは、 いはゆる菩ぼ薩さつ・諸仏しょぶつなり。 ^世せ尊そん、 なにをもつてのゆゑに、 ^つねに三種さんしゅの*善ぜん調じょう御ごをもつてのゆゑなり。 なんらをか三みつとする。 一ひとつには*畢ひっ竟きょう軟なん語ご、 二ふたつには*畢ひっ竟きょう呵か責しゃく、 三みつには*軟なん語ご呵か責しゃくなり。 この義ぎをもつてのゆゑに、 菩ぼ薩さつ・諸仏しょぶつはすなはちこれ真実しんじつの善ぜん知ぢ識しきなり。

「▼善男子、▼第一真実ノ善知識者ハ、所ユル↠謂ハ菩薩・諸仏ナリ。世尊、何ヲ以テノ故ニ。常ニ以テノ↢三種ノ善調トヽノフ御ヲ↡故 ヘナリ。何等ヲカ為スル↠三ト。一ニ者ハ畢竟 軟ナンヤハラカナリ語、二ニ者ハ畢竟呵カセメ責シヤク セム 、三ニ者ハ軟語呵責ナリ。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ菩薩・諸仏ハ即チ是真実ノ善知識也。

^また次つぎに善男ぜんなん子し、 仏ぶつおよび菩ぼ薩さつを大だい医いとするがゆゑに、 善ぜん知ぢ識しきと名なづく。 なにをもつてのゆゑに、 病やまいを知しりて薬くすりを知しる、 病やまいに応おうじて薬くすりを授さずくるがゆゑに。 たとへば良りょう医いの善よき*八種はっしゅの術じゅつのごとし。 まづ病びょう相そうを観かんず。 相そうに三種さんしゅあり。 なんらをか三みつとする。 いはく風ふう・熱ねつ・水すいなり。 *風ふう病びょうの人ひとにはこれに*蘇油そゆを授さずく。 *熱ねつ病びょうの人ひとにはこれに*石しゃく蜜みつを授さずく。 *水すい病びょうの人ひとにはこれに*薑きょう湯とうを授さずく。 病びょう根こんを知しるをもつて薬くすりを授さずくるに、 差いゆることを得う。 ゆゑに良りょう医いと名なづく。

復次0208ニ善男子、仏及ビ菩薩ヲ為スルガ↢大医ト↡故ニ名ク↢善知識ト↡。何ヲ以テノ故ニ。知リテ↠病ヲ知シル↠薬ヲ、応ジテ↠病ニ授サヅクルガ↠薬ヲ故ニ。譬ヘバ如シ↢良ラウ医ノ善キ八種ノ術ノ↡。先ヅ観ズ↢病相ヲ↡。相ニ有リ↢三種↡。何等ヲカ為ル↠三ト。謂ク風・熱・水ナリ。風病之人ニハ授ク↢之ニ蘇ソ油ユヲ↡。熱病*之人ニハ授ク↢之ニ石蜜ヲ↡。水病之人ニハ授ク↢之ニ薑キヤク湯タウヲ↡。以テ↠知ルヲ↢病根ヲ↡授クルニ↠薬ヲ、得ウ↠差イユルコトヲ。故ニ名ク↢良医ト↡。

^仏ぶつおよび菩ぼ薩さつもまたまたかくのごとし。 もろもろの凡ぼん夫ぶの0410病やまいを知しるに三種さんしゅあり。 一ひとつには貪欲とんよく、 二ふたつには瞋しん恚に、 三みつには愚痴ぐちなり。 貪欲とんよくの病やまいには教おしへて*骨相こっそうを観かんぜしむ。 瞋しん恚にの病やまいには慈悲じひの相そうを観かんぜしむ。 愚痴ぐちの病やまいには*十じゅう二に縁相えんそうを観かんぜしむ。 この義ぎをもつてのゆゑに諸仏しょぶつ・菩ぼ薩さつを善ぜん知ぢ識しきと名なづく。

仏及ビ菩薩モ亦復如シ↠是クノ。知ルニ↢諸ノ凡夫ノ病ヲ↡有リ↢三種↡。一ニ者貪欲、二ニ者瞋恚、三ニ者愚痴ナリ。貪欲ノ病ニ者ハ教ヘテ観ゼシム↢骨相ヲ↡。瞋恚ノ病ニ者ハ観ゼシム↢慈悲ノ相ヲ↡。愚痴ノ病ニ者ハ観ゼシム↢十二*縁相ヲ↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ▼諸仏・菩薩ヲ名ク↢善知識ト↡。

^善男ぜんなん子し、 たとへば船せん師しのよく人ひとを度どするがゆゑに大だい船せん師しと名なづくるがごとし。 諸仏しょぶつ・菩ぼ薩さつもまたまたかくのごとし。 もろもろの衆しゅ生じょうをして生しょう死じの大海だいかいを度どす。 この義ぎをもつてのゆゑに善ぜん知ぢ識しきと名なづく」 と。 抄出

◆善男子、譬ヘバ如シ↣船師ノ善ク度スルガ↠人ヲ故ニ名クルガ↢大船師ト↡。諸仏・菩薩モ亦復如シ↠是クノ。度ス↢諸ノ衆生ヲシテ生死ノ大海ヲ↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ名クト↢善知識ト↡。」 抄出

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(c)¬華厳経¼(前を結び後を生ず)

・入法界品(1)

【61】^¬*華け厳ごん経ぎょう¼ (*入法界品・唐訳) にのたまはく、

▼¬華厳経ニ¼言ク、

^「▼なんぢ善ぜん知ぢ識しきを念ねんずるに、 われを生うめる、 父母ぶものごとし。 われを養やしなふ、 乳にゅう母ものごとし。 菩ぼ提だい分ぶんを増ぞう長じょうす、

「▼汝念ズルニ↢善知識ヲ↡生メル↠我ヲ如シ↢父母ノ↡
養 シナフ↠我ヲ如シ↢乳母ノ↡増↢長ス菩*提分ヲ↡

^衆しゅうの疾しつを医い療りょうするがごとし。 天てんの甘かん露ろを灑そそぐがごとし。 日ひの正しょう道どうを示しめすがごとし。 月つきの浄じょう輪りんを転てんずるがごとし」 と。

如シ↣医↢療スルガ衆ノ疾シチヤマヒヲ↡如シ↣天ノ灑ソヽシヤグガ↢甘露ヲ↡
如シ↣日ノ示スガオシフ ↢正道ヲ↡如シト↣月ノ転ウツルズルガ↢浄輪ヲ↡」

・入法界品(2)

【62】^またのたまはく (華厳経・入法界品・唐訳)、

▼又言ク、

^「如来にょらい大だい慈悲じひ、 世せ間けんに出しゅつ現げんして、 あまねくもろもろの衆しゅ生じょうのために、 *無む上じょう法輪ほうりんを転てんじたまふ。

「如来大慈悲出↢現シテ於世間ニ↡
普ク為ニ↢諸ノ衆生ノ↡転ジタマフ↢无上法輪ヲ↡

^如来にょらい無む数しゅ劫こうに勤ごん苦くせしことは衆しゅ生じょうのためなり。 いかんぞもろもろの世せ間けん、 よく大だい師しの恩おんを報ほうぜん」 と。 以上

如来无数劫ニ勤ツトム苦セシコトハ為 メナリ↢衆生ノ↡
云何ゾ諸ノ世間能ク報ゼムト↢▼大師ノ恩ヲ↡」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)師釈(仏恩を明かして報謝を勧む)
                (a)¬般舟讃¼

【63】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (般舟讃)、

▼光明寺ノ和尚ノ云ク、

^「▲ただ恨うらむらくは、 衆しゅ0411生じょうの疑うたがふまじきを疑うたがふことを。 浄じょう土ど対面たいめんしてあひ忤たがはず。 弥陀みだの摂しょうと不ふ摂しょうとを論ろんずることなかれ。 意こころ専心せんしんにして回えすると回えせざるとにあり。

「▼唯タヾ恨ウラムラクハ衆生ノ疑フコトヲ↠不マジキヲ↠疑フ▼浄土対面シテ不ズ↢相 ヒ▼忤タガハ↡
▼莫レ↠論ズルコト↢弥陀ノ摂ト不摂トヲ↡意在リ↢専心ニシテ回スルト不ザルトニ↟回セ

^▲あるいはいはく、 今きょうより仏ぶっ果かに至いたるまで、 長じょう劫ごうに仏ぶつを讃ほめて慈じ恩おんを報ほうぜん。 弥陀みだの弘ぐ誓ぜいの力ちからを蒙かぶらずは、 いづれの時ときいづれの劫こうにか娑しゃ婆ばを出いでん、

▼或イハ道イハク従リ↠今ケフ至ルマデ↢仏果ニ↡長劫ニ▼讃メテ↠仏ヲ報ゼム↢慈恩ヲ↡
0209▼不ズハ↠蒙ラ↢弥陀ノ弘誓ノ力ヲ↡何ノ時何ノ劫ニカ出デム↢娑婆ヲ↡

^▲いかんしてか今日こんにち宝国ほうこくに至いたることを期ごせん。 まことにこれ娑しゃ婆ば本ほん師しの力ちからなり。 もし本ほん師し知ち識しきの勧すすめにあらずは、 弥陀みだの浄じょう土どいかんしてか入いらん。

▼何イカンシテカ期マツセム↣今日至ルコトヲ↢宝国ニ↡実ニ是娑婆▼本師ノ力ナリ
若シ非ズハ↢本師知識ノ勧 メニ↡弥陀ノ浄土云何シテカ入ラム

^◆浄じょう土どに生しょうずることを得えて慈じ恩おんを報ほうぜよ」 と。

▼得テ↠生ズルコトヲ↢浄土ニ↡報ゼヨト↢慈恩ヲ↡」

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)¬礼讃¼

【64】^またいはく (礼讃)、

▼又云ク、

^「▲仏ぶつの世みよにはなはだ値もうあひがたし。 人ひと信しん慧ねあること難かたし。 たまたま希有けうの法ほうを聞きくこと、 これまたもつとも難かたしとす。

「▼仏ノ世ニハ甚ダ難シ↠値マウアヒ▼人有ルコト↢信慧↡難シ
遇タマタマ聞クコト↢希有ノ法ヲ↡此復最モトモ為ス↠難シト

^▲みづから信しんじ、 人ひとを教おしへて信しんぜしむること、 難かたきなかにうたたまた難かたし。 大だい悲ひ弘ひろく 弘ぐの字じ、 *智ち昇しょう法ほっ師しの ¬*懴さん儀ぎ¼ の文もんなり あまねく化けするは、 まことに仏恩ぶっとんを報ほうずるになる」 と。

▼自ラ信ジ教ヘテ↠人ヲ信ゼシムルコト難ノ中ニ転ウタタ更マタ難シ
▼大悲▼弘ク普ク化スルハ真ニ成ルト↠報ズルニ↢仏恩ヲ↡」
*弘ノ字 知昇法師ノ¬懴儀ノ¼文也

一 Ⅰ ⅱ c ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)¬法事讃¼二文

【65】^またいはく (法事讃・下)、

▼又云ク、

^「▲*帰去来いざいなん、 他た郷きょうには停とどまるべからず。 仏ぶつに従したがひて*本ほん家けに帰きせよ。 *本国ほんごくに還かえりぬれば、 一切いっさいの行ぎょう願がん自じ然ねんに成じょうず。

「▼帰去来 イザイナム ▼他郷ニハ不↠可カラ↠停トヾマル
従シタガヒテ↠仏ニ▼帰セヨ↢本家ニ↡還リヌレバ↢本国ニ↡▼一切ノ行願自然ニ成ズ

^▲悲喜ひき交まじはり流ながる。 深ふかくみづから度はかるに、 釈しゃ迦か仏ぶつの開かい悟ごによらずは、 弥陀みだの名みょう願がんいづ0412れの時ときにか聞きかん。 仏ぶつの慈じ恩おんを荷になひても、 実じつに報ほうじがたし」 と。

▼悲カナシミ 喜ヨロコブ交マジワリ流ル深ク自ミ ラ度ハカルニ不ズハ↠因ラ↢釈迦仏ノ開悟ニ↡
弥陀ノ名願何ノ時ニカ聞キカム荷ニナヒテモ↢仏ノ慈恩ヲ↡実ニ難シト↠報ジ」

【66】^またいはく (法事讃・下)、

▼又云ク、

^「▲十方じっぽう六道ろくどう、 同おなじくこれ輪りん廻ねして際きわなし、 循々しゅんじゅんとして愛あい波はに沈しずみて苦く海かいに沈しずむ。 ◆仏道ぶつどう人身にんじん得えがたくしていますでに得えたり。 浄じょう土ど聞ききがたくしていますでに聞きけり。 信心しんじん発おこしがたくしていますでに発おこせり」 と。 以上

「▼十方六道、同ジク此 レ輪回シテ无シ↠際キワ、循シウナガク循トシテ沈 ヅミ↢愛波ニ↡而テ沈ム↢苦海ニ↡。仏道人身難クシテ↠得今已ニ得タリ。浄土難クシテ↠聞キキ今已ニ聞ケリ。信心難クシテ↠発シ今已ニ発セリト。」 已上

一 Ⅰ ⅱ c ロ (三)結誡

・真門四失

【67】^まことに知しんぬ、 専修せんじゅにして雑心ざっしんなるものは大だい慶きょう喜き心しんを獲えず。 ゆゑに宗しゅう師し (善導) は、 「^▲かの仏恩ぶっとんを念報ねんぽうすることなし。 *業ごう行ぎょうをなすといへども心こころに軽きょう慢まんを生しょうず。 つねに名みょう利りと相応そうおうするがゆゑに、 人にん我がおのづから覆おおひて同どう行ぎょう・善ぜん知ぢ識しきに親近しんごんせざるがゆゑに、 楽このみて雑縁ぞうえんに近ちかづきて往おう生じょうの正行しょうぎょうを自じ障しょう障しょう他たするがゆゑに」 (礼讃) といへり。

▼真ニ知ヌ専修ニ而シテ雑心ナル者 ノハ不ズ↠獲エ↢大慶喜心ヲ↡。故ニ宗師ハ云ヘリ↧「▼無シ↣念↢報スルコト彼ノ仏恩ヲ↡、雖モ↠作スト↢業行ヲ↡心ニ生ズ↢軽カロメ慢ヲ↡アナドル、常ニ与ト↢名利↡相応スルガ故ニ、人我自 ノヅカラ覆ヒテ不ルガ↣親↢近セ同行・善知識ニ↡故ニ、楽コノミテ近ヅキテ↢雑縁ニ↡自↢*障障↣他スルガ往生ノ正行ヲ↡故ニト」↥。

・悲嘆述懐

 ^▲悲かなしきかな、 *垢く障しょうの凡ぼん愚ぐ、 *無む際さいよりこのかた助じょ正しょう間雑けんぞうし、 定じょう散さん心しん雑ぞうするがゆゑに、 出しゅっ離りその期ごなし。 みづから流る転てん輪りん廻ねを度はかるに、 *微み塵じん劫ごうを超ちょう過かすれども、 仏願ぶつがん力りきに帰きしがたく、 大信だいしん海かいに入いりがたし。 まことに*傷しょう嗟さすべし、 深ふかく悲ひ歎たんすべし。

▼悲シキ哉カナ、垢障ノ凡愚、自↢従リ无際↡已来 コノカ タ助正間雑シ、定散心雑スルガ故ニ出離无シ↢其ノ期↡。自ミヅカラ度ハカルニ↢流転輪回ヲ↡、超↢過スレドモ微塵劫ヲ↡、叵ガタク↠帰シ↢仏願力ニ↡、叵ガタシ↠入リ↢*大信海ニ↡。良ニ可シ↢傷シヤウナゲキ嗟サスナゲク↡、深ク可シ↢悲0210歎スナゲク↡。

・自力念仏の失

^おほよそ▼大だい小しょう聖しょう人にん・一切いっさい善人ぜんにん、 本願ほんがんの嘉か号ごうをもつておのれが善根ぜんごんとするがゆゑに、 信しんを生しょうずることあたはず、 仏ぶっ智ちを了さとらず0413。 *かの因いんを建こん立りゅうせることを了りょう知ちすることあたはざるゆゑに、 報ほう土どに入いることなきなり。

凡ソ▼大小聖人・一切善人、以テ↢本願ノ嘉ヨシ号ガウヲ↡為スルガ↢己オノレガ善根ト↡故ニ不ズ↠能ハ↠生ズルコト↠信ヲ、不ズ↠了ラ↢仏智ヲ↡。不ル↠能ハ↤了↣知スルコト建↢立セルコトヲ彼ノ因ヲ↡故ニ无キ↠入ルコト↢報土ニ↡也。

一 Ⅱ 自喜を申べて結す
    ⅰ 所得の法を明かす【三願転入】

【68】^ここをもつて愚ぐ禿とく釈しゃくの鸞らん、 *論主ろんじゅの解義げぎを仰あおぎ、 *宗しゅう師しの勧かん化けによりて、 久ひさしく*万まん行ぎょう諸善しょぜんの仮け門もんを出いでて、 永ながく双樹そうじゅ林りん下げの往おう生じょうを離はなる。 *善本ぜんぽん徳本とくほんの真門しんもんに回え入にゅうして、 ひとへに難なん思じ往おう生じょうの心しんを発おこしき。

是ヲ以テ▼愚禿釈ノ鸞、仰ギ↢論主ノ解義ヲ↡、依リテ↢宗師ノ勧化ニ↡、▼久シク出デテ↢▼万行諸善之仮門ヲ↡、永ク離 ナル↢▼双樹林下之往生ヲ↡。回↢入シテ▼善本徳本ノ真門ニ↡、偏ニ発シキ↢難思往生之心ヲ↡。

^しかるにいまことに方便ほうべんの真門しんもんを出いでて、 ▼*選せん択じゃくの願海がんかいに*転てん入にゅうせり。 すみやかに難なん思じ往おう生じょうの心しんを離はなれて、 難なん思議じぎ往おう生じょうを遂とげんと欲ほっす。 △果か遂すいの誓ちかい (第二十願)、 まことに由ゆえあるかな。

◆然ルニ*今 マ*特マコトヒトリニ出デテ↢方便ノ真門ヲ↡転↢入セリ▼選択ノ願海ニ↡。速 カニ離レテ↢難思往生ノ心ヲ↡欲オモフ↠遂トゲムト↢難思 議ハカラフ往生ヲ↡。▼果遂之誓、良ニ有ル↠由ユヘ哉カナ。

一 Ⅱ ⅱ 所得を伝ふることを明かす

^ここに久ひさしく願海がんかいに入いりて、 深ふかく仏恩ぶっとんを知しれり。 至し徳とくを報謝ほうしゃせんがために、 真しん宗しゅうの簡要かんようを摭ひろうて、 恒ごう常じょうに不可ふか思議しぎの徳海とくかいを称しょう念ねんす。 いよいよこれを喜き愛あいし、 ことにこれを頂ちょう戴だいするなり。

◆爰ココニ久シク入リテ↢願海ニ↡深ク知レリ↢仏恩ヲ↡。為ニ↣報↢謝シヤノムクフ至徳ヲ↡、摭ヒロフテ↢真宗ノ簡カン要ヲ↡恒ツネ常ニ称↢念ス不可思議ノ徳海ヲ↡。弥イヨイヨ喜↢愛シ斯ヲ↡、特コトニ頂↢イタヾキ戴ダイスルイタヾク斯ヲ↡也。

一 Ⅱ ⅲ 去就の所を示す【結説総勧】
      a 法義の通塞を明かす

【69】^まことに知しんぬ、 聖しょう道どうの諸しょ教きょうは、 *在ざい世せ・正しょう法ぼうのためにして、 まつたく*像末ぞうまつ・*法滅ほうめつの時機じきにあらず。 すでに時ときを失しっし機きに乖そむけるなり。

▼信ニ知ヌ聖道ノ諸教ハ、為ニ↢在世・正法ノ↡而シテ全マタク非ズ↢像末・法滅之時機ニ↡。已ニ失シ↠時ヲ乖ソムケル↠機ニ也。

^浄じょう土ど真しん宗しゅうは、 在ざい世せ・正しょう法ぼう、 像末ぞうまつ・法滅ほうめつ、 濁じょく悪あくの群萌ぐんもう、 斉ひとしく悲ひ引いんしたまふをや。

浄土真宗者ハ、在世・正法、像末・法滅、濁悪ノ群萌、斉ヒトシク悲引シタマフヲ也ヤ。

一 Ⅱ ⅲ b 説人の是非を明かす

【70】^ここをもつて経きょう家けによりて師し釈しゃくを披ひらきたるに、 「▲説人せつにんの差別しゃべつを弁べんぜば、 ◆おほよそ諸しょ経きょうの起き説せつ、 五ご種しゅに過すぎず。 一ひとつには仏説ぶっせつ、 二ふたつには聖しょう弟で子し0414説せつ、 三みつには天仙てんせん説せつ、 四よつには鬼き神じん説せつ、 五いつつには変へん化げ説せつなり」 (玄義分) と。 しかれば、 四し種しゅの所説しょせつは信用しんようにたらず。 この三さん経ぎょうはすなはち大だい聖しょう (釈尊) の自じ説せつなり。

是ヲ以テ▼拠ヨリテ↢経家ニ↡披ヒラキタルニ↢師釈ヲ↡、「※▼*弁ゼワキマウ↢説人ノ差別ヲ↡者バ、▼凡ソ諸経ノ起説不ズ↠過ギ↢五種ニ↡。一ニ者ハ仏説、二ニ者聖弟子説、三ニ者天仙説、四ニ者鬼神説、五ニ者変化説ナリト。」▼爾レ者バ四種ノ所説ハ不ズ↠足タラ↢信用ニ↡。斯ノ三経者ハ則チ大聖ノ自説也。

一 Ⅱ ⅲ c 所依の正不を明かす(¬大智度論¼)

【71】^¬大論だいろん¼ (*大智度論) に四依しえを釈しゃくしていはく、

▼¬大論ニ¼釈シテ↢四依ヲ↡云ク、

^「*涅ね槃はんに入いりなんと欲ほっせし時とき、 もろもろの比丘びくに語かたりたまはく、 ª今日こんにちより*↓法ほうに依よりて*人にんに依よらざるべし、 ↓*義ぎに依よりて*語ごに依よらざるべし、 ↓*智ちに依よりて*識しきに依よらざるべし、 ↓*了りょう義ぎ経きょうに依よりて*不ふ了りょう義ぎに依よらざるべし。

◆「欲セシ↠入リナムト↢涅槃ニ↡時 キ、語リタマハク↢諸ノ比丘ニ↡、従リ↢今日↡応シ↢依リテ↠法ニ不ル↟依0211ラ↠人ニ、応シ↢依リテ↠義ニ不ル↟依ラ↠語ニ、応シ↢依リテ↠智ニ不ル↟依ラ↠識ニ、応シト↧依リテ↢了義経ニ↡不ル↞依ラ↢不了義ニ↡。

^↑法ほうに依よるとは、 法ほうに*十じゅう二部にぶあり、 この法ほうに随したがふべし、 人にんに随したがふべからず。

◆依ルト↠法ニ者ハ、法ニ有リ↢十二部↡、応シ↠随フ↢此ノ法ニ↡、不ズ↠応カラ↠随フ↠人ニ。

^↑義ぎに依よるとは、 義ぎのなかに好悪こうあく・罪福ざいふく・虚こ実じつを諍あらそふことなし、 ゆゑに語ごはすでに義ぎを得えたり、 義ぎは語ごにあらざるなり。 人ひと*指ゆびをもつて*月つきを指おしふ、 もつてわれを示じ教きょうす、 指ゆびを看かん視しして月つきを視みざるがごとし。 人ひと語かたりていはん、 «われ指ゆびをもつて月つきを指おしふ、 なんぢをしてこれを知しらしむ、 なんぢなんぞ指ゆびを看みて、 しかうして月つきを視みざるや» と。 これまたかくのごとし。 語ごは義ぎの指ゆびとす、 語ごは義ぎにあらざるなり。 これをもつてのゆゑに、 語ごに依よるべからず。

◆依↠義ト者ハ、義ノ中ニ无シ↠諍アラソフコト↢好悪・罪福・虚実ヲ↡、故ニ語コトバハ已ニ得タリ↠義ヲ、義ハ非ザル↠語ニ也。▼如シ↧人以テ↠指ヲ指オシフ↠月ヲ以テ示↢教ス我ヲ↡、看カンミル↢視シミルシ指ヲ↡而テ不ルガ↞視ミ↠月ヲ。人語リテ言ハム、我以テ↠指ヲ指オシフ↠月ヲ令ム↢汝ヲシテ知ラ↟之ヲ、汝何ゾ看ミテ↠指ユビヲ而シテ不ルヤト↠*視↠月ヲ。此 レ亦如シ↠是クノ。語ハ為ス↢義ノ指ユビト↡、語ハ非ザル↠義ニ也。以テノ↠此ヲ故ニ、不ズ↠応カラ↠依ヨル↠語ニ。

^↑智ちに依よるとは、 智ちはよく善悪ぜんあくを*籌量ちゅうりょうし分別ふんべつす。 識しきはつねに楽らくを求もとむ、 *正しょう要ように入らず。 このゆゑに識しきに依よるべからずといへり。

◆依↠智ト者ハ、智ハ能ク籌チウ↢ハカライ量シ分↣別ス善悪ヲ↡。識ハサトル常ニ求ム↠楽ヲ、不ズ↠入ラ↢正要ニ↡。是ノ故ニ言ヘリ↢不↠応↠依↠識ト↡。

^↑了りょう義ぎ経きょうに依よるとは、 一切いっさい智ち人にんい0415ます、 仏ぶつ第一だいいちなり。 一切いっさい諸しょ経きょう書しょのなかに仏法ぶっぽう第一だいいちなり。 一切いっさい衆しゅのなかに*比丘びく僧そう第一だいいちなりº と。

◆依↢了義経↡ト者ハ、▼有イマス↢一切智人↡仏第一ナリ。一切諸経書フミノ中ニ仏法第一ナリ。▼一切衆ノ中ニ比丘僧第一ナリ。

^無む仏ぶっ世せの衆しゅ生じょうを、 仏ぶつこれを重じゅう罪ざいとしたまへり、 見仏けんぶつの善根ぜんごんを種うゑざる人ひとなり」 と。 以上

◆无仏世ノ衆生ヲ、仏為シタマヘリ↢此ヲ重罪ト↡、不ル↠種ウヘ↢見仏ノ善根ヲ↡人ナリト。」 已上

【72】^しかれば、 *末代まつだいの道俗どうぞく、 よく四依しえを知しりて法ほうを修しゅすべきなりと。

◆爾レ者バ末代ノ道俗、善ク可キ↧知リテ↢四依ヲ↡修ス↞法ヲ也ト。

二 門外の仮偽を簡ぶ
  Ⅰ 総標

【73】^しかるに正しょう真しんの教きょう意いによつて*古こ徳とくの伝説でんせつを披ひらく。 聖しょう道どう・浄じょう土どの真しん仮けを顕開けんかいして、 ▽邪じゃ偽ぎ*異い執しゅうの外げ教きょうを教きょう誡かいす。

◆然ルニ拠ヨリテ↢正真ノ教意ニ↡披ヒ ク↢古徳ノ伝ツタウ説ヲ↡。顕↢開シテ聖道・浄土ノ真仮ヲ↡、教↢誡カイスイマシム邪 偽イツワル異執ノ外教ヲ↡。

二 Ⅱ 別弁
    ⅰ 真仮を弁ず【聖道釈】
      a 聖浄二門の通塞を分別す【二門通塞】
        イ 略示

^▽如来にょらい涅ね槃はんの時じ代だいを*勘決かんけつして正しょう像ぞう末法まっぽうの*旨し際さいを開かい示じす。

◆勘カン↢カンガフ決シテサダム 如来涅槃之時代ヲ↡開↢示ス正像末法ノ旨シムネ際キワヲ↡。

二 Ⅱ ⅰ a ロ 引文
          (一)¬安楽集¼四文

・第五大門

【74】^ここをもつて*玄げん中ちゅう寺じの綽しゃく和か尚しょう (道綽) のいはく (安楽集・下)、

◆是ヲ以テ玄忠寺ノ綽和尚ノ云ク、

^「▲しかるに修道しゅどうの身しん、 相続そうぞくして絶たえずして、 一万いちまん劫ごうを経へてはじめて不ふ退たいの位くらいを証しょうす。 当今とうこんの凡ぼん夫ぶは現げんに信想しんそう軽きょう毛もうと名なづく、 また仮け名みょうといへり、 また不ふ定じょう聚じゅと名なづく、 また外げの凡ぼん夫ぶと名なづく。 いまだ火か宅たくを出いでず。

◆「然ルニ修道之身、相続ゾクツグシテ不ズシテ↠絶ヘ、▼逕テ↢一万劫ヲ↡始テ▼証ス↢不退ノ位ヲ↡。▼当今ノ凡夫ハ現ニ名ク↢信想軽毛ト↡。亦曰ヘリ↢仮名ト↡、亦名ク↢不定聚ト↡、亦名ク↢外ノ凡夫ト↡。未ズ ダ↠出デ↢火宅ヲ↡。

^◆なにをもつて知しることを得えんと、 ¬*菩ぼ薩さつ瓔珞ようらく経きょう¼ によりて、 つぶさに入にゅう道どう行ぎょう位いを弁べんずるに、 法ほう爾になるがゆゑに難なん行ぎょう道どうと名なづく」 と。

◆何ヲ以テ得ムト↠知ルコトヲ、拠リテ↢¬菩薩瓔珞経ニ¼↡、具ニ*弁ベンワキマフズルニ↢入道行位ヲ↡、法爾ナルガ故0212ニ名クト↢難行道ト↡。」

・第一大門

【75】^またいはく (安楽集・上)、

◆又云ク、

^「▲教きょう興こうの所しょ由ゆを明あかして、 時じに約やくし機きに被かぶらしめて浄じょう土どに勧かん帰きすることあらば、 ▲もし機きと教きょうと時じと乖そむけば、 修しゅしがたく入い0416りがたし。

「▼有ラ↧明シテ↢教興コウノオコル所由ヲ↡、約ヤクヨルシ↠時ニ被カブラシメテ↠機ニ▼勧↦帰スルコト浄土ニ↥者バ、若シ機ト教ト時ト乖ソムケバ、難ク↠修シ難シ↠入リ。

^▲¬*正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ にいはく、

▼¬正法念経ニ¼云ク、

^ª行ぎょう者じゃ一心いっしんに道どうを求もとめん時とき、 つねにまさに時ときと方便ほうべんとを観察かんざつすべし。 もし時ときを得えざれば方便ほうべんなし。 これを名なづけて失しつとす、 利りと名なづけず。

行者一心ニ求メム↠道ヲ時 キ常ニ当ニシ↣観↢察ス時ト方便トヲ↡
若シ不レバ↠得↠時ヲ無シ↢方便↡是ヲ名ケテ為ス↠失ト不ズ↠名ケ↠利ト

^◆いかんとならば、

何トナラ者バ

^湿うるおへる木きを攅きりてもつて火ひを求もとめんに、 火ひ得うべからず、 時ときにあらざるがゆゑに。 もし乾かれたる薪たきぎを折おりてもつて水みずを覓もとめんに、 水みず得うべからず、 智ちなきがごときのゆゑにº と。

如キノ↧攅キリテ↢湿ウルホヘル木ヲ↡以テ求メムニ↠火ヲ火不ズ↠可カラ↠得非ザルガ↠時ニ故ニ
若シ折オリテ↢乾カレタル薪タキヾヲ↡以テ覓モトムルニ↠水ヲ水不↠可カラ↠得無キガ↞智故ニト

^◆¬*大だい集じゅうの月蔵がつぞう経きょう¼ にのたまはく (大集経)、 ª^▽仏ぶつ滅めつ度どの後のちの第一だいいちの五ご百ひゃく年ねんには、 わがもろもろの弟子でし、 慧えを学まなぶこと堅けん固ごなることを得えん。 ◆第だい二にの五ご百ひゃく年ねんには定じょうを学まなぶこと堅けん固ごなることを得えん。 ◆第三だいさんの五ご百ひゃく年ねんには多た聞もん・読誦どくじゅを学まなぶこと堅けん固ごなることを得えん。 ◆第だい四しの五ご百ひゃく年ねんには塔とう寺じを造ぞう立りゅうし、 福ふくを修しゅし、 懴さん悔げすること堅けん固ごなることを得えん。 ◆第だい五ごの五ご百ひゃく年ねんには白びゃく法ほう隠滞おんたいして多おおく諍じょう訟じゅあらん、 微すこしき善法ぜんぼうありて堅けん固ごなることを得えんº と。

▼¬大集ノ月蔵経ニ¼云ク、仏滅度ノ後ノ第一ノ五百年ニハ我ガ諸ノ弟子、学マナブコト↠慧ヲ得ム↢堅カタク固カタシナルコトヲ↡。第二ノ五百年ニハ学ブコト↠定ヲ得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第三ノ五百年ニハ学ブコト↢多聞・読誦ヲ↡得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第四ノ五百年ニハ造↢立シ塔タウ寺ヲ↡修シ↠福ヲ、懴悔スルコト得ム↢堅固ナルコトヲ↡。第五ノ五百年ニハ白法隠カクレ滞タイシテトヾマル多ク有ラム↢諍ジヤウアラソフ訟ジユ↡ウタフ、微スコシキ有リテ↢善法↡得ム↢堅固ナルコトヲ↡。

^▲今いまの時ときの衆しゅ生じょうを計はかるに、 すなはち仏ぶつ、 世よを去さりたまひて後のちの第だい四しの五ご百ひゃく年ねんに当あたれり。 まさしくこれ懴さん悔げし、 福ふくを修しゅし、 仏ぶつの名みょう号ごうを称しょうすべき時ときのものなり。 一念いちねん阿あ弥陀みだ仏ぶつを称しょうするに、 すなはちよく八はち十じゅう億おく劫こうの生しょう死じの罪つみを除じょ却きゃくせん。 一念いちねんすでにしかなり。 いはんや常じょう念ねんに修しゅするは、 すなはちこれつねに懴さん悔げする人ひとなり」 と。

▼計ルニ↢今ノ時ノ衆生ヲ↡、▼即チ当レリ↢仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ第四ノ五百年ニ↡。正シク是懴悔シ修シ↠福ヲ、応キ↠称ス↢仏ノ名号ヲ↡時ノ者 ノナリ。一念称スルニ↢阿弥陀仏ヲ↡、即チ能ク除↢却セム八十億劫ノ生死之罪ヲ↡。一念既スデニ爾ナリ。況イハムヤ修スルハ↢常念ニ↡、即チ是恒ニ懴悔スル人也ト。」

・第六大門

【041776】^またいはく (安楽集・下)、

▼又云ク、

^「▲経きょうの住じゅう滅めつを弁べんぜば、 いはく、 釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつ一代いちだい、 正しょう法ぼう五ご百ひゃく年ねん、 像法ぞうぼう一いっ千年せんねん、 末法まっぽう一万いちまん年ねんには、 衆しゅ生じょう減げんじ尽つき、 諸しょ経きょうことごとく滅めっせん。 如来にょらい、 痛つう焼しょうの衆しゅ生じょうを悲ひ哀あいして、 特ことに此この経きょうを留とどめて止し住じゅうせんこと百ひゃく年ねんならん」 と。

「*弁ゼワキマフ↢経ノ住滅ヲ↡者バ、謂ク釈迦牟尼仏一代、正法五百年、像法一千年、末法一万年ニハ、衆生減ゲムジ尽ツキ、諸経悉ク滅セム。如来悲↢哀シテ痛ツウイタム焼ヤクノ衆生ヲ↡、特コトニ留ト メテ↢▼此ノ経ヲ↡止住セムコト百年ナラムト。」

・第三大門

【77】^またいはく (安楽集・上)、

又0213云ク、

^「▲¬大集だいじっ経きょう¼ にのたまはく、 ª^わが末法まっぽうの時ときのなかの億々おくおくの衆しゅ生じょう、 行ぎょうを起おこし道どうを修しゅせんに、 いまだ一人いちにんも得うるものあらじº と。

「▼¬大集経ニ¼云ク、▼我ガ末法ノ時ノ中ノ億億ノ衆生、起シ↠行ヲ修セムニ↠道ヲ、未 ジ ダト↠有ラ↢一人モ得ル者 ノ↡。

^◆当今とうこんは末法まっぽうにしてこれ五ご濁じょく悪あく世せなり。 ただ浄じょう土どの一門いちもんのみありて通つう入にゅうすべき路みちなり」 と。 以上

当今ハ末法ニシテ是五濁悪世ナリ。唯有リテ↢浄土ノ一門ノミ↡可キ↢通入ス↡路ナリト。」 已上

二 Ⅱ ⅰ b 末法弘化の宗軌を顕示す【三時開遮】
        イ 上を承けて道俗を誡む

【78】^しかれば、 穢え悪あく濁じょく世せの群ぐん生じょう、 末代まつだいの旨し際さいを知しらず、 僧そう尼にの威儀いぎを毀そしる。 今いまの時ときの道俗どうぞく、 おのれが分ぶんを思し量りょうせよ。

▼爾レ者バ穢悪濁世ノ群生、不↠知ラ↢末代ノ旨際ヲ↡、毀ソシル↢僧尼ノ威儀ヲ↡。今ノ時ノ道俗思↢量セヨ己 レガ分ヲ↡。

二 Ⅱ ⅰ b ロ 弘化の宗軌を顕す
          (一)先づ末法の年時を定む

【79】^三さん時じの教きょうを案あんずれば、 △*如来にょらい般はつ涅ね槃はんの時じ代だいを勘かんがふるに、 *周しゅうの▽第だい五ごの主しゅ、 *穆ぼく王おう*五ご十じゅう三年さんねん壬みずのえ申さるに当あたれり。 その壬みずのえ申さるよりわが*元仁げんにん元年がんねん 元仁げんにんとは*後ご堀川ほりかわ院いん、 諱いみな茂仁もちひとの聖代せいだいなり 甲きのえ申さるに至いたるまで、 *二に千せん一いっ百ぴゃく七しち十じゅう三歳さんさいなり。 また ¬*賢劫げんごう経きょう¼・¬*仁王にんのう経ぎょう¼・¬*涅ね槃はん¼ 等とうの説せつによるに、 すでにもつて末法まっぽうに入いりて*六ろっ百ぴゃく七しち十じゅう三歳さんさいなり。

按ズレ↢三時ノ教ヲ↡者バ、勘カンガフルニ↢如来般ハチ涅槃ノ時代ヲ↡、当レリ↢周ノ第五ノ主穆ボク王五十一年壬ミヅノヘ申ニ↡。従リ↢其ノ壬申↡▼至ルマデ↢我ガ元仁元年 *元仁ト者後堀河院*諱*茂仁ノ聖代也 甲キノヘ申ニ↡、二千一百八十三歳也。又依ルニ↢¬賢劫経¼・¬仁王経¼・¬涅槃¼等ノ説ニ↡、▼已ニ以テ入リテ↢末法ニ↡六百八十三歳也。

二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)¬末法燈明記¼を引きて正しく顕す

【041880】^¬*末法まっぽう灯とう明みょう記き¼ *最さい澄ちょうの製作せいさく を披ひ閲えつするにいはく、

▼披ヒ↢ヒラキ閲エチミルスルニ¬末法灯明記ヲ¼↡ 最澄ノ製作 曰ク、

^「それ*一如いちにょに範衛はんえいしてもつて化けを流ながすものは*法王ほうおう、 ^*四し海かいに光宅こうたくしてもつて風ふうを垂たるるものは*仁王にんのうなり。 ^しかればすなはち、 仁王にんのう・法王ほうおう、 たがひに顕あらわれて*物ものを開かいし、 *真諦しんたい・俗諦ぞくたいたがひによりて教きょうを弘ひろむ。 このゆゑに*玄籍げんせき*宇う内だいに盈みち、 *嘉か猷ゆう天てん下かに溢みてり。

「夫 レ範ハン↢サカフ衛エイマモルシテ一如ニ↡以テ流ス↠化ヲ者 ノハ法王、光↢宅シテ四海ニ↡以テ乗ズル↠風ニ者 ノハ仁王ナリ。然レバ則チ仁王・法王互タガヒニ顕アラワレ而テ開シ↠物ヲ、真諦・俗諦遞タガヒニ因リ而テ弘ヒロム↠教ヲ。所以コノユヱニ玄ヨシ籍セキフダ盈ミチ↢宇イヱ内ニ↡、嘉カ猶イウ溢ミイチテリ↢天下ニ↡。

^ここに愚ぐ僧そう等ら率そっして*天網てんもうに容いり、 俯ふして*厳げん科かを仰あおぐ。 いまだ*寧処ねいしょに遑いとまあらず。

爰コヽニ愚僧等率シテ容イリ↢天網マウニ↡、俯フシテ仰グ↢厳ゲンイツクシキ科クワヲ↡シナワイ。未ズ ダ↠遑イトマアラ↢寧ミヤウヤスシ処ニ↡。

^しかるに法ほうに三さん時じあり、 人ひとまた三品さんぼんなり。 *化け制せいの旨むね、 時ときによりて興替こうたいす。 毀き讃さんの文もん、 人ひとに逐したがつて取捨しゅしゃす。 それ*三さん古この運うん、 *減衰げんすい同おなじからず。 *後五ごごの機き、 慧悟えごまた異ことなり。 あに一いち途ずによつて済すくはんや、 一いち理りについて整たださんや。

然ルニ法ニ有リ↢三時↡、人亦三品ナリ。化制之旨ムネ依リテ↠時ニ興オコシ讃ス。毀クヰソシル讃之文遂シタガテ↠人ニ取捨ス。夫 レ三石之運ウンハコブ、減ゲンオトロヘ衰スイオトロフ不ズ↠同ジカラ。後五之機、慧悟又異ナリ。豈アニ拠ヨテ↢一途ヅミチニ↡済スクハムヤ、就テ↢一理ニ↡整タダシヤウサム乎ヤ。

^ゆゑに正しょう像末ぞうまつの旨し際さいを詳つまびらかにして、 試こころみに*破持はじ僧そうの事じを彰あらわさん。 なかにおいて三さんあり。 ▽初はじめには正しょう像末ぞうまつを決けっす。 ▽次つぎに破持はじ僧そうの事じを定さだむ。 ▽後のちに教きょうを挙あげて比ひ例れいす。

故ニ詳ツバヒラカニシテ↢正像末之旨際ヲ↡、試コヽロミニ彰 ハサム↢破持ヂタモチ僧之事ヲ↡。▼於テ↠中ニ有0214リ↠三。▼初ニハ決スサダム正像末ヲ↡。▼次ニ定ム↢破持僧ノ事ヲ↡。後ニ挙ゲテ↠教ヲ比例レイスタクラブ。

・決正像末

 ^△初はじめに正しょう像末ぞうまつを決けっするに、 諸説しょせつを出いだすこと同おなじからず。 しばらく一説いっせつを述じゅっせん。

初ニ決スルニ↢正像末ヲ↡、出スコト↢諸説ヲ↡不ズ↠同ジカラ。且シバラク述ズチノブセム↢一説ヲ↡。

^大だい乗じょう*基き、 ¬賢劫げんごう経きょう¼ を引ひきていはく、 ª^仏ぶつ涅ね槃はんの後のち、 正しょう法ぼう五ご百ひゃく年ねん、 像法ぞうぼう一いっ千年せんねんならん。 この千せん五ご百ひゃく年ねんの後のち、 釈しゃ迦かの法ほう滅尽めつじんせんº と。 ^末法まっぽうをいはず。 余よの所説しょせつに准なずらふるに、 尼に、 八はっ敬きょうに順したがはずして懈け怠だいなるがゆゑに、 法ほう更きょう増ぞうせず。 ゆゑにかれによらず。

▼大乗基キニ、引キテ↢¬▼賢劫経ヲ¼↡言ク、仏涅槃ノ後、正法五百年、像法一千年ナラム。▼此ノ千五百年ノ後、釈迦ノ法滅尽セムト。不ズ↠言ハ↢末法ヲ↡。▼准ナヅラフルニ↢余ノ所説ニ↡、▼尼不ズ↠順シタガハ↢▼八敬ニ↡而シテ懈怠ナルガ故ニ法不ズ↢更キヤウサラニ増セ↡。故ニ▼不ズ↠依ラ↠彼ニ。

^また ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ に、 ª^末法まっぽうのなかにおいて十じゅう二に万まんの大だい0419菩ぼ薩さつ衆しゅましまして、 法ほうを持たもちて滅めっせずº と。 ^これは上じょう位いによるがゆゑにまた同おなじからず。

▼又¬涅槃経ニ¼、於テ↢末法ノ中ニ↡有シテ↢十二万ノ大菩薩衆↡、持チテ↠法ヲ不ズト↠滅セ。此ハ▼拠ルガ↢上位ニ↡故ニ▼亦不ズ↠同ジカラ。

 ^問とふ。 もししからば、 千せん五ご百ひゃく年ねんのうちの行ぎょう事じいかんぞや。

▼問フ。若シ爾ラ者バ千五百年之内ノ行事云何ゾヤ。

 ^答こたふ。 ¬*大だい術じゅつ経きょう¼ によるに、 ª^仏ぶつ涅ね槃はんの後のちの初はじめの五ご百ひゃく年ねんには、 *大だい迦か葉しょう等とうの*七しち賢げん聖じょう僧そう、 次し第だいに正しょう法ぼうを持たもちて滅めっせず、 五ご百ひゃく年ねんの後のち、 正しょう法ぼう滅尽めつじんせんと。

答フ。依ルニ↢¬大術ジユチ経ニ¼↡、仏涅槃ノ後ノ初ノ五百年ニハ、▼大迦葉等ノ七賢カシコシ聖僧、次第ニ持チテ↢正法ヲ↡不ズ↠滅セ、五百年ノ後、正法滅尽セムト。

^六ろっ百ぴゃく年ねんに至いたりて後のち、 九く十じゅう五ご種しゅの外げ道どう競きおひ起おこらん。 *馬め鳴みょう世よに出いでてもろもろの外げ道どうを伏ぶくせん。

▼至リテ↢六百年ニ↡後、九十五種ノ外道競キオヒ起ラム、馬メ鳴ミヤウ出デテ↠世ニ伏セムシタガフ ↢諸ノ外道ヲ↡。

^七しち百ひゃく年ねんのうちに、 *龍りゅう樹じゅ世よに出いでて邪見じゃけんの幡はたぼこを摧くだかん。

▼七百年ノ中ニ、龍樹出デテ↠世ニ摧クダカム↢邪見ノ幢 コヲ↡。

^八はっ百ぴゃく年ねんにおいて、 比丘びく*縦じゅう逸いつにして、 わづかに一いち二に*道どう果かを得うるものあらん。

於テ↢八百年ニ↡、比丘縦ジユウ逸イチホシキマヽニシテ、僅ワヅカマレニニ一二有ラム↠得ルモノ↢道果ヲ↡。

^九く百ひゃく年ねんに至いたりて、 奴ぬを比丘びくとし、 婢ひを尼にとせん。

至リテ↢九百年ニ↡、 奴ヲオトコジユシヤ為シ↢比丘ト↡、 婢ヒヲオウナジウシヤ為セム↠尼ト。

^一いっ千年せんねんのうちに、 *不ふ浄じょう観かんを聞きかん、 瞋しん恚にして欲ほっせじ。

▼一千年ノ中ニ、開カム↢不浄観ヲ↡、瞋恚シテ不ジ↠欲セ。

^千せん一いっ百ぴゃく年ねんに、 *僧そう尼に嫁か娶じゅせん、 僧そう*毘尼びにを毀き謗ほうせん。

千一百年ニ、僧尼 嫁カムコトリ 娶ジユセムヨメトリ、毀↢謗セム僧毘尼ヲ↡。

^千せん二に百ひゃく年ねんに、 諸しょ僧そう尼に等とうともに子し息そくあらん。

千二百年ニ、諸僧尼等倶ニ有ラム↢子息↡。

^▼千せん三さん百びゃく年ねんに、 袈裟けさ変へんじて白しろからん。

千三百年ニ、袈裟変ジテ白カラム。

^千せん四し百ひゃく年ねんに、 *四部しぶの弟子でしみな猟りょう師しのごとし、 三宝さんぼう物もつを売うらん。

千四百年ニ、四部ノ弟子皆如シ↢猟レウカリ師ノ↡、売ウラム↢三宝物ヲ↡。

^ここにいはく、 千せん五ご百ひゃく年ねんに*拘く睒せん弥み国こくにふたりの僧そうありて、 たがひに是非ぜひを起おこしてつひに殺害せつがいせん、 よつて教きょう法ぼう竜りゅう宮ぐうに蔵おさまるなりº と。

▼爰ニ曰ク、千五百年ニ▼ク睒セン弥国ニ有リテ↢二ノ僧↡、互タガヒニ起シテ↢是非ヲ↡遂ツイニ殺害セム、仍ヨテ教法蔵オサマル↢於竜宮ニ↡也ト。

^¬涅ね槃はん¼ の十じゅう八はちおよび ¬仁王にんのう¼ 等とうにまたこの文もんあり。

¬涅槃ノ¼十八及ビ¬仁王¼等ニ復有リ↢此ノ文↡。

^これらの経きょう文もんに準なずらふるに、 千せん五ご百ひゃく年ねんの後のち、 戒かい・定じょう・慧えあることなき0420なり。

準ナズラフルニ↢此等ノ経文ニ↡、千五百年ノ後、無キ↠有ルコト↢戒・定・慧↡也。

^ゆゑに ¬大集だいじっ経きょう¼ の五ご十じゅう一いちにいはく、 ª^▲わが滅めつ度どの後のち、 初はじめの五ご百ひゃく年ねんには、 もろもろの比丘びく等とうわが正しょう法ぼうにおいて*解げ脱だつ堅けん固ごならん。 初はじめに聖しょう果かを得うるを名なづけて解げ脱だつとす。 次つぎの五ご百ひゃく年ねんには、 *禅ぜん定じょう堅けん固ごならん。 次つぎの五ご百ひゃく年ねんには、 *多た聞もん堅けん固ごならん。 次つぎの五ご百ひゃく年ねんには、 *造ぞう寺じ堅けん固ごならん。 後のちの五ご百ひゃく年ねんには、 *闘とう諍じょう堅けん固ごならん、 *白びゃく法ほう隠没おんもつせんº と云々うんぬん。

故ニ▼¬大0215集経ノ¼五十一ニ言ク、我ガ滅度ノ後、▼初ノ五百年ニハ、諸ノ比丘等於テ↢我ガ正法ニ↡解脱堅固ナラム。 初ニ得ルヲ↢聖果ヲ↡名ケテ為↢解脱ト↡。 次ノ五百年ニハ、禅定堅固ナラム。次ノ五百年ニハ、多聞堅固ナラム。次ノ五百年ニハ、造寺堅固ナラム。後ノ五百年ニハ、 闘トウタヽカフ諍ジヤウアラソフ堅固ナラム。白法隠没セムト云云。

^この意い、 初はじめの三分さんぶんの五ご百ひゃく年ねんは、 次ついでのごとく戒かい・定じょう・慧えの三法さんぽう、 堅けん固ごに住じゅうすることを得えん。 すなはち上かみに引ひくところの正しょう法ぼう五ご百ひゃく年ねん、 像法ぞうぼう一千いっせんの二時にじこれなり。 ^造ぞう寺じ以後いごは、 ならびにこれ末法まっぽうなり。

此ノ意、初ノ三*分ノ五百年ハ、如ク↠*次デノ戒・定・慧ノ三法、堅固ニ得ム↠住スルコトヲ。即チ上ニ所ノ↠引ク正法五百年、像法一千ノ二時是也。造寺已後ハ、並ナラビニ是末法ナリ。

^ゆゑに基きの ¬*般若はんにゃ会えの釈しゃく¼ にいはく、 ª^正しょう法ぼう五ご百ひゃく年ねん、 像法ぞうぼう一いっ千年せんねん、 この千せん五ご百ひゃく年ねんの後のち、 正しょう法ぼう滅尽めつじんせんº と。 ^ゆゑに知しんぬ、 以後いごはこれ末法まっぽうに属ぞくす。

故ニ▼基ノ¬般若会ノ釈ニ¼云ク、正法五百年、像法一千年、此ノ千五百年ノ後之正法滅尽セムト。故ニ知ヌ已後ハ是属ス↢末法ニ↡。

 ^問とふ。 もししからば、 今いまの世よは、 まさしくいづれの時ときにか当あたれるや。

▼問フ。若シ爾ラ者バ今ノ世ハ、正シク当レルヤ↢何ノ時ニカ↡。

 ^答こたふ。 滅めつ後ごの年代ねんだい多た説せつありといへども、 しばらく両りょう説せつを挙あぐ。

答フ。滅後ノ年代雖モ↠有リト↢多説↡、且シバラク挙グ↢両説ヲ↡。

^一ひとつには*法ほう上じょう師し等とう、 ¬*周しゅう異い¼ の説せつによりていはく、 ^仏ぶつ、 △第だい五ごの主しゅ、 *穆ぼく王おう満まん五ご十じゅう三年さんねん壬みずのえ申さるに当あたりて入にゅう滅めつしたまふと。 ^もしこの説せつによらば、 その壬みずのえ申さるよりわが*延えん暦りゃく二に十じゅう年ねん辛かのと巳のみに至いたるまで、 一千いっせん七しち百ひゃく五ご十じっ歳さいなり。

一ニハ法上師等、依リテ↢¬周シウ異イノ¼説ニ↡言ク、仏当リテ↢*第五ノ主穆ボク王満五十一年壬ミズノヘ申サルニ↡入滅シタマフト。若シ依ラバ↢此ノ説ニ↡、従リ↢其ノ壬申↡至ルマデ↢我ガ延暦二十年辛 トノ巳ミニ↡、一千七百五十歳ナリト。

^二ふたつには*費ひ長ちょう房ぼう等とう、 魯ろの ¬*春秋しゅんじゅう¼ によらば、 ^仏ぶつ、 周しゅうの第だい二に十じゅうの主しゅ、 *匡きょう王おう班はん四し年ねん壬みずのえ子ねに当あたりて入にゅう滅めつしたまふ。 ^も0421しこの説せつによらば、 その壬みずのえ子ねよりわが延えん暦りゃく二に十じゅう年ねん辛かのとの巳みに至いたるまで、 一千いっせん四し百ひゃく十歳じっさいなり。

二ニハ費ヒ長房等、依ラバ↢魯ロノ¬春秋ニ¼↡、仏当リテ↢周シウノ第二十ノ主匡クヰヤウ王班四年壬ミヅノヘ子ニ↡入滅シタマフ。若シ依ラバ↢此ノ説ニ↡、従リ↢其ノ壬子↡至ルマデ↢我ガ延暦二十年辛 ノ巳ニ↡、一千四百十歳ナリ。

^ゆゑに今いまの時ときのごときは、 これ像法ぞうぼう最末さいまつの時ときなり。 かの時ときの行ぎょう事じすでに末法まっぽうに同どうぜり。

故ニ如キハ↢今ノ時ノ↡、*是像法最末ノ時也。彼ノ時ノ行事既 デニ同ゼリ↢末法ニ↡。

^しかればすなはち、 ▲末法まっぽうのなかにおいては、 ただ言ごん教きょうのみありて行証ぎょうしょうなけん。 もし戒法かいほうあらば破は戒かいあるべし。 すでに戒法かいほうなし、 いづれの戒かいを破はせんによりてか破は戒かいあらんや。 破は戒かいなほなし。 いかにいはんや持じ戒かいをや。 ゆゑに ¬大だい集じゅう¼ にいはく、 ª^仏ぶつ涅ね槃はんの後のち、 無む戒かい州くにに満みたんº と云々うんぬん。

然レバ則チ於テハ↢末法ノ中ニ↡、但有リ↢言教ノミ↡而テ無ケム↢行証↡。若シ有ラバ↢*戒法↡可シ↠有ル↢破戒↡。既ニ無シ↢戒法↡、由リテカ↠破セムニ↢何ノ戒ヲ↡而有ラムヤ↢破戒↡。*破戒尚ナホ無シ。何ニ況ヤ持戒ヲヤ。故ニ▼¬大集ニ¼云ク、仏涅槃ノ後、無戒満ミタムト↠州クニニ云云。

・定破持僧

 ^△問とふ。 諸しょ経きょう律りつのなかに、 広ひろく破は戒かいを制せいして衆しゅうに入いることを聴ゆるさず。 破は戒かいなほしかなり。 いかにいはんや無む戒かいをや。 しかるにいま重かさねて末法まっぽうを論ろんずるに、 戒かいなし。 あに瘡かさなくして、 みづからもつて傷いたまんや。

▼問フ。諸経律ノ中ニ、広ク制シテ↢破0216戒ヲ↡不ズ↠聴ユルサ↠入ルコトヲ↠衆ニ。破戒尚爾ナリ。何ニ況ヤ無戒ヲヤト。而ルニ今重ネテ論ズルニ↢末法ヲ↡、無シ↠戒。▼豈アニ無クシテ↠瘡カサキズ自ラ以テ傷イタマム哉ヤト。

 ^答こたふ。 この理りしからず。 正しょう像ぞう末法まっぽうの所しょ有うの行ぎょう事じ、 広ひろく諸しょ経きょうに載のせたり。 内ない外げの道俗どうぞくたれか*披ひ諷ふうせざらん。 あに自じ身しんの*邪活じゃかつを貪とん求ぐして、 持じ国こくの正しょう法ぼうを隠蔽おんぺいせんや。

▼答フ。此ノ理不ズ↠然ラ。正像末法ノ所有ノ行事、広ク載ノセタリ↢諸経ニ↡。内外ノ道俗誰タレカ不ラム↢披ヒヒラク諷フウミルセ↡。豈 ニ貪↢求シテ自身ノ邪活クワチヲ↡、隠↢蔽ペイセム持国之正法ヲ↡乎ヤ。

^ただし、 いま論ろんずるところの末法まっぽうには、 ▼ただ*名みょう字じの比丘びくのみあらん。 この名みょう字じを世よの真宝しんぽうとせん。 *福田ふくでんなからんや。 ▲たとひ末法まっぽうのなかに持じ戒かいあらば、 すでにこれ怪異けいなり、 市いちに虎とらあらんがごとし。 これたれか信しんずべきや。

但シ今所ノ↠論ズル末法ニハ、唯有ラム↢名字ノ比丘ノミ↡。此ノ名字ヲ為セム↢世ノ真*宝ト↡。無カラムヤ↢福田↡。設ヒ末法ノ中ニ有ラ↢持戒↡者バ、既 デニ是怪クヱアヤシミ異イナリ、如シ↢市ニ有ラムガ↟虎トラ。此 レ誰カ可キヤ↠信ズ。

 ^問とふ。 正しょう像末ぞうまつの事じ、 すでに衆しゅ経きょうに見みえたり。 末法まっぽうの名みょう字じを世よの真宝しんぽうとせんこ0422とは、 聖しょう典てんに出いでたりや。

▼問フ。正像末ノ事、已ニ見エタリ↢衆経ニ↡。末法ノ名字ヲ為セムコトハ↢世ノ真宝ト↡、出デタリヤ↢聖典ニ↡。

 ^答こたふ。 ¬大だい集じゅう¼ の第だい九くにいはく、 ª^たとへば真金しんこんを*無価むげの宝たからとするがごとし。 もし真金しんこんなくは、 銀しろがねを無価むげの宝たからとす。 もし銀しろがねなくは、 鍮石ちゅうしゃく・偽ぎ宝ほうを無価むげとす。 もし偽ぎ宝ほうなくは、 赤白しゃくびゃく銅どう・鉄てつ・白びゃく鑞ろう・鉛えん・錫しゃくを無価むげとす。

▼答フ。¬大集ノ¼第九ニ云ク、譬ヘバ如シ↣真金ヲ為ルガ↢無価ゲアタイノ宝ト↡。若シ無ク↢真金↡者ハ、銀ヲ為ス↢無価ゲノ宝ト↡。若シ無ク↠銀者ハ、鍮チウ石・偽宝ヲ為↢無価ト↡。若シ無クハ↢偽宝↡、赤白 銅ドウアカガネ・ 鉄クロガネ・白錫ラウ・鉛エンナマリ・錫ヲ為↢無価ト↡。

^かくのごとき一切いっさい世せ間けんの宝たからなれども、 仏法ぶっぽう無価むげなり。 もし仏宝ぶっぽうましまさずは、 縁覚えんがく無む上じょうなり。 もし縁覚えんがくなくは、 羅ら漢かん無む上じょうなり。 もし羅ら漢かんなくは、 余よの賢げん聖じょう衆しゅもつて無む上じょうなり。

▼如キ↠是クノ一切世間ノ宝 ラナレドモ仏法無価ナリ。若シ無マシマサズ↢仏宝↡者ハ、縁覚無上ナリ。若シ無クハ↢縁覚↡、羅漢無上ナリ。若シ無クハ↢羅漢↡、余ノ賢聖衆以テ無上ナリ。

^もし余よの賢げん聖じょう衆しゅなくは、 *得とく定じょうの凡ぼん夫ぶもつて無む上じょうとす。 もし得とく定じょうの凡ぼん夫ぶなくは、 浄じょう持じ戒かいをもつて無む上じょうとす。 もし浄じょう持じ戒かいなくは、 *漏ろ戒かいの比丘びくをもつて無む上じょうとす。

若シ無クハ↢余ノ賢聖衆↡、得定ノ凡夫以テ為↢無上ト↡。若シ無クハ↢得定ノ凡夫↡、浄持戒ヲ以テ為ス↢無上ト↡。若シ無クハ↢浄持戒↡、漏ロモラス戒ノ比丘ヲ以テ為ス↢無上ト↡。

^もし漏ろ戒かいなくは、 剃除たいじょ鬚髪しゅほつして身みに袈裟けさを着きたる名みょう字じの比丘びくを無む上じょうの宝たからとす。

若シ無クハ↢漏戒↡、剃除鬚髪シテ身ニ著キタル↢袈裟ヲ↡名字ノ比丘ヲ為ス↢無上ノ宝 ラト↡。

^余よの*九く十じゅう五ご種しゅの異い道どうに比ひするに、 もつとも第一だいいちとす。 世よの供くを受うくべし、 物もののための初はじめの福田ふくでんなり。 なにをもつてのゆゑに、 よく身しんを破やぶる衆しゅ生じょう、 怖畏ふいするところなるがゆゑに。 *護持ごじ養育よういくして、 この人ひとを安あん置ちすることあらんは、 久ひさしからずして*忍にん地じを得えんº と。 以上経文

比スルニ↢余ノ九十五種ノ異道ニ↡、最モトモ為ス↢第一ト↡。応シ↠受ク↢世ノ供クアタフヲ↡、為ノ↠物ノ初ノ福田ナリ。何ヲ以テノ故ニ。破ル↢能ク身ヲ↡衆生、所ナルガ↢怖フオソレ畏ヰスルオソル ↡故ニ。有ラムハ↣護持シ養育イクシテ安↢置スルコト是ノ人ヲ↡不ズシテ↠久シカラ得ムト↢忍地ヲ↡。 已上経文

^この文もんのなかに▽八はち重じゅうの無価むげあり。 いはゆる如来にょらい、 縁覚えんがく・声しょう聞もんおよび*前ぜん三さん果か、 得とく定じょうの凡ぼん夫ぶ、 持じ戒かい・破は戒かい・無む戒かい名みょう字じ、 それ次ついでのごとし、 名なづけて正しょう像末ぞうまつの時ときの無価むげの宝たからとするなり。 初はじめの四よつ0423は正しょう法ぼう時じ、 次つぎの三みつは像法ぞうぼう時じ、 後のちの一ひとつは末法まっぽう時じなり。 これによりてあきらかに知しんぬ、 ▽破は戒かい・無む戒かいことごとくこれ真宝しんぽうなり。

此ノ文ノ中ニ有リ↢八重ノ無価↡。所ル↠謂ハ如来像、縁覚・声聞及ビ前三果、得0217定ノ凡夫、持戒・破戒・無戒名字、如シ↢其レ次デノ↡、名ケテ為スル↢正像末之時ノ無価ノ宝 ラト↡也。初ノ四ハ正法時、次ノ三ハ像法時、後ノ一ハ末法時ナリ。由リテ↠此ニ明ニ知ヌ破戒・無戒咸コトゴトク是真宝ナリ。

 ^問とふ。 伏ふして前さきの文もんを観みるに、 破は戒かい名みょう字じ、 真宝しんぽうならざることなし。 なんがゆゑぞ ¬涅ね槃はん¼ と ¬大集だいじっ経きょう¼ に、 ª^国王こくおう・大臣だいじん、 破は戒かいの僧そうを供くすれば、 国くにに*三災さんさい起おこり、 つひに地じ獄ごくに生しょうずº と。 ^破は戒かいなほしかなり。 いかにいはんや無む戒かいをや。 しかるに如来にょらい、 一ひとつの破は戒かいにおいて、 あるいは毀そしり、 あるいは讃ほむ。 あに一いっ聖しょうの説せつに*両りょう判はんの失とがあるをや。

▼問フ。伏フシテシタガフ観ミルニ↢前ノ文ヲ↡、破戒名字、莫シ↠不ルコト↢真宝ナラ↡。何ガ故ゾ¬涅槃ト¼¬大集経ニ¼、国王・大臣、供アタフスレバ↢破戒ノ僧ヲ↡、国ニ起リ↢三災サイ↡ワザワイ、遂ツイニ生ズト↢地獄ニ↡。破戒尚爾ナリ。何ニ況ヤ無戒ヲヤ。而爾ニ如来於テ↢一ツノ破戒ニ↡、或イハ毀ソシリ或イハ讃ム。豈アニ一聖之説ニ有ルヲヤ↢両判ハンコトワル之失トガ↡。

 ^答こたふ。 この理りしからず。 ¬涅ね槃はん¼ 等とうの経きょうに、 しばらく正しょう法ぼうの破は戒かいを制せいす、 像ぞう・末代まつだいの比丘びくにはあらず。 その名な同おなじといへども、 時ときに異いあり。 時ときに随したがひて*制せい許こす。 これ大だい聖しょう (釈尊) の旨むねなり。 ゆゑに世せ尊そんにおいて両りょう判はんの失とがましまさず。

▼答フ。此ノ理不ズ↠然ラ。¬涅槃¼等ノ経ニ、且シバラク制セイス↢正法之破戒ヲ↡、非ズ↢像・末代之比丘ニハ↡。其ノ名雖モ↠同ジト、而時ニ有リ↠異。随ヒテ↠時ニ制許コスユルス。是大聖ノ旨ムネ破ナリ。於テ↢世尊ニ↡無マシマサズ↢両判ノ失トガ↡。

 ^問とふ。 もししからばなにをもつてか知しらん、 ¬涅ね槃はん¼ 等とうの経きょうは、 ただ正しょう法ぼう所しょ有うの破は戒かいを制せい止しして、 像末ぞうまつの僧そうにあらずとは。

▼問フ。若シ爾ラバ以テカ↠何ヲ知ラム、¬涅槃¼等ノ経ハ、但制↢止シテ正法所有ノ破戒ヲ↡、非ズトハ↢像末ノ僧ニ↡。

 ^答こたふ。 引ひくところの ¬大だい集じゅう¼ 所説しょせつの△八はち重じゅうの真宝しんぽうのごとし、 これその証しょうなり。 みな時ときに当あたりて無価むげとなすゆゑに。

▼答フ。如シ↢所ノ↠引ク¬大集¼所説ノ▼八重ノ真宝ノ↡、是其ノ証也。皆為ス↢当リテ↠時ニ無価ト↡故ニ。

^ただし正しょう法ぼうの時の破は戒かい比丘びくは、 清浄しょうじょう衆しゅを穢けがす。 ゆゑに仏ぶつ固かたく禁制きんぜいして衆しゅうに入いれず。

▼但シ正法ノ時ノ破戒比丘ハ、穢ケガス↢清浄衆ヲ↡。故ニ仏固カタク禁キンイマシム制シテ不ズ↠入レ↠衆ニ。

^しかるゆゑは、 ¬涅ね槃はん¼ の第三だいさんにのた0424まはく、 ª^如来にょらいいま無む上じょうの正しょう法ぼうをもつて、 諸王しょおう・大臣だいじん・宰さい相しょう・比丘びく・比丘びく尼にに付ふ嘱ぞくしたまへり。 乃至 破は戒かいあつて正しょう法ぼうを毀そしるものは、 王おうおよび大臣だいじん、 四部しぶの衆しゅう、 まさに*苦治くちすべし。 かくのごときの王臣おうしん等とう、 無む量りょうの功く徳どくを得えん。 乃至 これわが弟子でしなり、 真しんの声しょう聞もんなり。 福ふくを得うること無む量りょうならんº と。 乃至

所↢以 ユヱ 然ル↡者ハ、¬涅槃ノ¼第三ニ云ク、如来今以テ↢无上ノ正法ヲ↡、付↢嘱シタマヘリ諸王・大臣・宰相・比丘・比丘尼ニ↡。 ▼乃至 有テ↢破戒↡毀ラ↢正法ヲ↡者バ、王及ビ大臣、四部ノ衆、応シ↢当ニ苦治ス↡。如キノ↠是クノ王臣等、得ム↢无量ノ功徳ヲ↡。 ▼乃至 是我ガ弟子ナリ、真ノ声聞也。得ルコト↠福ヲ无量ナラムト。 ▼乃至

^かくのごときの制文せいもんの法ほう、 往々おうおう衆しゅ多たなり。 みなこれ正しょう法ぼうに明あかすところの制文せいもんなり。 像末ぞうまつの教きょうにあらず。

▼如キノ↠是クノ制文ノ法、往往衆多ナリ。皆是正法ニ所↠明ス之制文ナリ。非ズ↢像末ノ教ニ↡。

^しかるゆゑは、 像ぞう季き・末法まっぽうには正しょう法ぼうを行ぎょうぜざれば、 法ほうとして毀そしるべきなし。 なにをか毀き法ほうと名なづけん。 戒かいとして破はすべきなし。 たれをか破は戒かいと名なづけん。 またそのとき大王だいおう、 行ぎょうとして護まもるべきなし。 なにによりてか三災さんさいを出いだし、 および戒かい慧えを失しっせんや。 また像末ぞうまつには証しょう果かの人ひとなし。 いかんぞ*二に聖しょうに聴ちょう護ごせらるることを明あかさん。

所↢以 ユヘ 然ル↡者ハ、像季キ・末法ニハ不レバ↠行ゼ↢正法ヲ↡、無シ↢法トシテ可キ↟毀ソシル。何ヲカ名ケム↢毀法ト↡。無シ↢戒トシテ可0218キ↟破ス。誰ヲカ名ケム↢破戒ト↡。▼又其ノ時大王無シ↢行ト而シテ可キ↟護マモル。由リテカ↠何ニ出シ↢三災ヲ↡、及ビ於失セムヤ↢戒慧ヲ↡。又像末ニハ無シ↢証果ノ人↡。如何ゾ*明サム↠被ルヽコトヲ↣聴↢護セ二聖ニ↡。

^ゆゑに知しんぬ、 上かみの所説しょせつはみな正しょう法ぼうの世よに持じ戒かいあるときに約やくして、 破は戒かいあるがゆゑなり。

故ニ知ヌ上ノ所説ハ皆約ヤクヨルシテ↧正法ノ世ニ有ル↢持戒↡時ニ↥、有ルガ↢破戒↡故ナリ。

 ^次つぎに像法ぞうぼう千年せんねんのうちに、 初はじめの五ご百ひゃく年ねんには持じ戒かいやうやく減げんじ、 破は戒かいやうやく増ぞうせん。 戒かい行ぎょうありといへども証しょう果かなし。

▼次ニ像法千年ノ中ニ、初ノ五百年ニハ持戒漸ク減ジ、破戒漸ク増セム。雖モ↠有リト↢戒行↡而無シ↢証果↡。

^ゆゑに ¬涅ね槃はん¼ の七しちにのたまはく、 ª^*迦か葉しょう菩ぼ薩さつ、 仏ぶつにまうしてまうさく、 «世せ尊そん、 仏ぶつの所説しょせつのごときは*四し種しゅの魔まあり。 もし魔まの所説しょせつおよび仏ぶつの所説しょせつ、 われまさにいかんしてか分別ふんべつすることを得うべ0425き。 もろもろの衆しゅ生じょうありて魔ま行ぎょうに随逐ずいちくせん。 また仏説ぶっせつに随ずい順じゅんすることあらば、 かくのごときらの輩ともがら、 またいかんが知しらん» と。

故ニ¬涅槃ノ¼七ニ云ク、迦葉菩薩白シテ↠仏ニ言サク、世尊、如キハ↢仏ノ所説ノ↡有リ↢四種ノ魔↡。若シ魔ノ所説及ビ仏ノ所説、我当ニキ↣云何ン而シテカ得↢分別スルコトヲ↡。有リテ↢諸ノ衆生↡随↢逐チクセムシタガフ魔行ニ↡。復有ラ↣随↢順スルコト仏説ニ↡者バ、如キ↠是クノ等ラノ輩トモガラ復云何ンガ知ラムト。

^仏ぶつ、 迦か葉しょうに告つげたまはく、 «われ涅ね槃はんして七しち百ひゃく歳さいの後のちに、 これ*魔ま波は旬じゅんやうやく起おこりて、 まさにしきりにわが正しょう法ぼうを壊えすべし。 たとへば猟りょう師しの身みに法ほう衣えを服ぶくせんがごとし。 魔ま波は旬じゅんもまたまたかくのごとし。 比丘びく像ぞう・比丘びく尼に像ぞう・優婆うば塞そく・優婆夷うばい像ぞうとならんこと、 またまたかくのごとしと。 乃至

仏告ゲタマハク↢迦葉ニ↡、我涅槃シテ七百歳ノ後ニ、是 レ魔波ハ旬ジユン漸ク起リテ、当ニシ↣頻シキリニ壊ヱスヤブル↢我ガ之正法ヲ↡。譬ヘバ如シ↣猟カリ師ノ身ニ服セムガ↢法衣ヲ↡。魔波旬モ亦復如シ↠是クノ。作ラムコト↢比丘像・比丘尼像・優婆塞・優婆夷像ト↡、亦復如シト↠是クノ。 ▼乃至

^"もろもろの比丘びく、 奴婢ぬひ・僕ぼく使し、 牛ご・羊よう・象ぞう・馬め、 乃ない至し、 銅鉄どうてつ釜ふ鍑ふく、 大だい小しょう銅盤どうばん、 所須しょしゅのものを受畜じゅちくし、 耕田こうでん・種植しゅじき、 販売はんばい・市し易やくして、 穀米こくまいを儲もうくることを聴ゆるすと。 かくのごときの衆しゅ事じ、 仏ぶつ、 大だい悲ひのゆゑに衆しゅ生じょうを憐愍れんみんしてみな畜たくわふることを聴ゆるさん" と。 かくのごときの経きょう律りつは、 ことごとくこれ魔ま説せつなり»º と云々うんぬん。

聴ユルスト↧諸ノ比丘、受ジユ↢畜チクシタクワウ▼奴婢・僕ボク使、牛・羊・象・馬、乃至 銅ドウアカガネ 鉄テチクロガネ釜コクカマ錫チヤウカナエ、大小銅盤、所須シユモチヰル之物ヲ↡、耕カウツクル田・種タネ植、販ワカツ売バイウル・市シイチ易ヤクシテカウル 、儲マウチヨクルコトヲ↦穀コクコメ米マイコメヲ↥。如キノ↠是クノ衆事、仏大悲ノ故ニ憐↢アハレミ愍シテアハレム衆生ヲ↡皆聴ユルサムト↠畜タクワウルコトヲ。如キノ↠是クノ経律ハ、悉ク是 レ魔説ナリト云云。

^すでに ª七しち百ひゃく歳さいの後のちに波は旬じゅんやうやく起おこらんº といへり。 ゆゑに知しんぬ、 かの時ときの比丘びく、 やうやく*八はち不ふ浄じょう物もつを貪畜とんちくせんと。 この妄説もうせつをなさん、 すなはちこれ魔まの流ともがらなり。 これらの経きょうのなかにあきらかに年代ねんだいを指さして、 つぶさに行ぎょう事じを説とけり。 さらに疑うたがふべからず。 それ一文いちもんを挙あぐ、 余よみな準じゅん知ちせよ。

既ニ云ヘリ↢七百歳ノ後ニ波旬漸ク起ラムト↡。故ニ知ヌ彼ノ時ノ比丘、漸ク貪↢ムサボリ畜チクセムトタクワウ ▼八不浄物ヲ↡。作サム↢此ノ妄説ヲ↡、即チ是魔ノ流トモガラル  也。此等ラノ経ノ中ニ明ニ指シテ↢年代ヲ↡、具ニ説ケリ↢行事ヲ↡。不ズ↠可カラ↢更 ラニ疑フ↡。其 レ挙グ↢一文ヲ↡、余皆準ジユン知ナズラヘ セヨ。

 ^次つぎに像法ぞうぼうの後のち半なかばは持じ戒かい減げん少しょうし、 破は戒かい巨多こたならん。 ゆゑに ¬涅ね槃はん¼ の六ろくにの0426たまはく、 乃至

▼次ニ像法ノ後半ナカバハ持戒減ゲンオトロヘ少シ、破戒巨コ多ナラム。故ニ¬涅槃ノ¼六ニ云ク、 ▼乃至

^また ¬*十じゅう輪りん¼ にのたまはく、 ª^もしわが法ほうによりて出しゅっ家けして悪あく行ぎょうを造ぞう作させん。 これ沙門しゃもんにあらずしてみづから沙門しゃもんと称しょうし、 また*梵ぼん行ぎょうにあらずしてみづから梵ぼん行ぎょうと称しょうせん。

▼又¬十輪リンニ¼言ハク、若シ依0219リテ↢我ガ法ニ↡出家シテ造↢作セム悪行ヲ↡。此 レ非ズシテ↢沙門ニ↡自ラ称シ↢沙門ト↡、亦非ズシテ↢梵行ニ↡自ラ称セム↢梵行ト↡。

^かくのごときの比丘びく、 よく一切いっさい天てん・竜りゅう・夜や叉しゃ、 一切いっさい善法ぜんぽう功く徳どくの*伏蔵ぶくぞうを開かい示じして、 衆しゅ生じょうの善ぜん知ぢ識しきとならん。 少しょう欲よく知ち足そくならずといへども、 剃除たいじょ鬚髪しゅほつして、 法服ほうぶくを被ひ着じゃくせん。 この因縁いんねんをもつてのゆゑに、 よく衆しゅ生じょうのために善根ぜんごんを増ぞう長じょうせん。 もろもろの天てん・人にんにおいて善道ぜんどうを開かい示じせん。 乃ない至し

如キノ↠是クノ比丘、能ク開↢示シテ一切天・竜・夜叉、一切善法功徳ノ伏蔵ヲ↡、為ナラム↢衆生ノ善知識ト↡。雖モ↠不ズト↢少欲知足ナラ↡、剃除鬚髪シテ、被ヒキル↢著キルセム法服ヲ↡。以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ能ク為ニ↢衆生ノ↡増↢長セム善根ヲ↡。於テ↢諸ノ天・人ニ↡開↢示セム善道ヲ↡。乃至

^破は戒かいの比丘びく、 これ死しせる人ひとなりといへども、 しかも戒かいの余よ才さい、 *牛ご黄おうのごとし。 これ死しするものといへども、 人ひとことさらにこれを取とる。 また*麝香じゃこうの後のちに用ゆうあるがごとしº と云々うんぬん。

破戒ノ比丘雖モ↢是 レ死セル人ナリト↡、而モ戒ノ余アマル才如タカラ シ↢牛黄ノ↡。此雖モ↠死スルモノト、而人故 サラニ取ル↠之ヲ。亦如シト↢麝ジヤ香カウノ後ノチニ有ルガ↟用ユウ云云。

^すでに ª*迦羅から林りんのなかに一ひとつの*鎮ちん頭迦ずか樹じゅありº といへり。 これは像運ぞううんすでに衰おとろへて、 破は戒かい濁じょく世せにわづかに一いち二に持じ戒かいの比丘びくあらんに喩たとふるなり。

既ニ云ヘリ↣迦羅林ノ中ニ有リト↢一ノ鎮チン頭ヅ迦カ樹↡。此ハ喩フルナリト↣像運ウンハコブ已ニ衰オトロヘテ、破戒濁世ニ僅ワヅカ キン ニ有ラムニ↢一二持戒ノ比丘↡。

^またいはく、 ª破は戒かいの比丘びく、 これ死しせる人ひとなりといへども、 なほ麝香じゃこうの死しして用ゆうあるがごとし、 衆しゅ生じょうの善ぜん知ぢ識しきとなるº と。 あきらかに知しんぬ、 このときやうやく破は戒かいを許ゆるして世よの福田ふくでんとす。 △前さきの ¬大だい集じゅう¼ に同おなじ。

▼又云ク、破戒ノ比丘、雖モ↢是 レ死セル人ナリト↡、猶如シ↢麝香ノ死シ而シテ有ルガ↟用、為ルト↢衆生ノ善知識ト↡。明ニ知ヌ此ノ時漸ク許ユルシテ↢破戒ヲ↡為ス↢世ノ福田ト↡。同ジト↢前ノ¬大集ニ¼↡。

 ^次つぎに像ぞう季きの後のちは、 まつたくこれ戒かいなし。 仏ぶつ、 時じ運うんを知しろしめして、 末俗まつぞくを済すくはんがために名みょう字じの僧そうを讃ほめて世よの福田ふくでんとしたまへり。

次ニ像季スエノ後ハ、全マタク是無シ↠戒。仏知 シメシテ↢時運ヲ↡、為ニ↠済スクハムガ↢末俗ヲ↡讃メテ↢名字ノ僧ヲ↡為シタマヘリト↢世ノ福田ト↡。

^また ¬大だい集じゅう¼ の五ご十じゅう二に0427にのたまはく、 ª^もし後のちの末まっ世せに、 わが法ほうのなかにおいて鬚髪しゅほつを剃除たいじょし、 身みに袈裟けさを着きたらん名みょう字じの比丘びく、 もし*檀越だんおつありて捨しゃ施せ供く養ようをせば、 無む量りょうの福ふくを得えんº と。

▼又¬大集ノ¼五十二ニ云ク、若シ後ノ末世ニ、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡剃ソル↢除鬚ヒゲ髪カミシ↡、身ニ著キタラム↢袈裟ヲ↡名字ノ比丘、若シ有リテ↢壇ダン越オチ↡捨テバ↢於供養ヲ↡、得ムト↢無量ノ福ヲ↡。

^また ¬*賢げん愚ぐ経きょう¼ にのたまはく、 ª^もし檀越だんおつ、 将しょう来らい末まっ世せに法ほう尽つきんとせんに垂なんなんとして、 まさしく妻つまを蓄たくわへ、 子こを侠わきばさましめん四し人にん以い上じょうの名みょう字じの僧衆そうしゅ、 まさに礼らい敬きょうせんこと、 *舎しゃ利り弗ほつ・*大だい目連もくれん等とうのごとくすべしº と。

▼又¬賢愚経ニ¼言ク、若シ壇越、将マサニ来末世ニ法乗欲セムニ↠尽キムト、正シク使シメム↢蓄タクハヘ↠妻メ ヲ侠ワキバサマ↟子ヲ四人以上ノ名字ノ僧衆、応シト↣当ニ礼敬セムコト如クス↢舎利弗・大目連等ノ↡。

^*またのたまはく、 ª^もし破は戒かいを打ちょう罵めし、 身みに袈裟けさを着きたるを知しることなからん、 罪つみは万億まんおくの仏身ぶっしんより血ちを出いだすに同おなじからん。 もし衆しゅ生じょうありて、 わが法ほうのために剃除たいじょ鬚髪しゅほつし袈裟けさを被ひ服ぶくせんは、 たとひ戒かいを持たもたずとも、 かれらはことごとくすでに*涅ね槃はんの印いんのために印いんせらるるなりº と。 乃至

▼又云ク、若シ打チヤウ ウチ ↢罵メノルシ破戒ヲ↡、無カラム↠知ルコト↣身ニ著キタルヲ↢袈裟ヲ↡、罪ハ同ジカラムト↠出スニ↢万億ノ仏身ヨリ血ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡、為ニ↢我ガ法ノ↡剃除鬚髪シ、被キル↢服キルセムハ袈裟ヲ↡、設ヒ不ズトモ↠持タ↠戒ヲ、彼等ラハ悉ク已ニ涅槃ノ為ニ↢印オシテ之↡所ルヽ↠印セ也ト。 ▼乃至

^¬*大だい悲ひ経きょう¼ にのたまはく、 ª^仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 «将しょう来らい世せにおいて法ほう滅尽めつじんせんと欲ほっせん時とき、 まさに比丘びく・比丘びく尼にありて、 わが法ほうのなかにおいて出しゅっ家けを得えたらんもの、 おのれが手てに児この臂ひじを牽ひきて、 ともに遊ゆ行ぎょうしてかの酒しゅ家けより酒しゅ家けに至いたらん。 わが法ほうのなかにおいて*非ひ梵ぼん行ぎょうをなさん。 かれら酒さけの因縁いんねんたりといへども、 この*賢劫げんごうのなかにおいて、 まさに千仏せんぶつましまして興こう出しゅつしたまはんに、 わが弟子でしとなるべし。

▼¬大0220悲経ニ¼云ク、仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、於テ↢将来世ニ↡法欲セム↢滅尽セムト↡時、当ニ有リテ↢比丘・比丘尼↡、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡得タラムモノ↢出家ヲ↡、己オノレガ手ニ牽ヒキ↢児ノ臂ヲ↡而テ共ニ遊行シテ彼ノ酒家ヨリ至ラム↢酒家ニ↡。於テ↢我ガ法ノ中ニ↡作ナサム↢非梵行ヲ↡。彼等ラ雖モ↠為タリト↢酒ノ因縁↡、於テ↢此ノ賢劫ノ中ニ↡、当ニシト↧有 マシテ↢千仏↡興オコリ出シタマハムニ、我ガ為ナル↦弟子ト↥。

^次つぎに後のちに*弥み勒ろくまさにわが処ところを補つぐべし。 乃ない至し最さい後ご*盧至るし如来にょらいまで、 かくのごとき次し第だいになんぢまさに知し0428るべし、

次ニ後ニ弥勒当ニシ↠補ツグ↢我ガ所ヲ↡。乃至最後盧ル至如来マデ、如キ↠是クノ次第ニ汝応シ↢当ニ知シル↡、

^阿あ難なんわが法ほうのなかにおいて、 ただ性しょうのみこれ沙門しゃもんにして沙門しゃもんの行ぎょうを汚けがし、 みづから沙門しゃもんと称しょうせん、 形かたちは沙門しゃもんに似にて尚ひさしく袈裟けさを被ひ着じゃくすることあらしめんは、 賢劫げんごうにおいて弥み勒ろくを首しゅとして乃ない至し盧至るし如来にょらいまで、 かのもろもろの沙門しゃもん、 かくのごときの仏ぶつの所みもとにして、 *無余むよ涅ね槃はんにおいて次し第だいに涅ね槃はんに入いることを得えん。 遺ゆい余よあることなけん。

阿難、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡、但使メム↫性ハ是沙門ノ汚↢沙門行ニシテ↡自ラ称セム↢沙門ト↡、形ハ似テ↢沙門ニ↡尚ヒサシク有ラ↪被↩著スルコト袈裟ヲ↨者ハ、於テ↢賢劫ニ↡弥勒ヲ為シテ↠首ト乃至盧至如来マデ、彼ノ諸ノ沙門、如キノ↠是クノ仏ノ所ミモトニシテ、於テ↢无余涅槃ニ↡次第ニ得ム↠入ルコトヲ↢涅槃ニ↡。無ケム↠有ルコト↢遺ユ ノコリ余↡アマル。

^なにをもつてのゆゑに、 かくのごとき一切いっさい沙門しゃもんのなかに、 乃ない至し一ひとたび仏ぶつの名みなを称しょうし、 ひとたび信しんを生しょうぜんもの、 所しょ作さの功く徳どくつひに虚こ設せつならじ。 われ仏ぶっ智ちをもつて法界ほうかいを測しき知ちするがゆゑなり»º と云々うんぬん。 乃至

何ヲ以テノ故ニ。如来一切沙門ノ中ニ、乃至一タビ称シ↢仏ノ名ミナヲ↡、一タビ生ゼム↠信ヲ者 ノノ、所作ノ功徳終ニ不ジ↢虚設マウナラク ↡。我 レ以テ↢仏智ヲ↡惻シキ↢ハカリ知スルガ法界ヲ↡故 ヘナリト云云。 ▼乃至

^これらの諸しょ経きょうに、 みな年代ねんだいを指さして将しょう来らい末まっ世せの名みょう字じの比丘びくを世よの尊そん師しとす。 もし▼正しょう法ぼうの時ときの制文せいもんをもつて、 末法まっぽう世せの名みょう字じの僧そうを制せいせんは、 教きょう機きあひ乖そむき、 人法にんぼう合がっせず。 これによりて ¬*律りつ¼ にいはく、 ª^非ひ制せいを制せいするは、 すなはち三さん明みょうを断だんず。 記き説せつするところこれ罪つみありº と。

此等ラノ諸経ニ、皆指シテ↢年代ヲ↡将来末世ノ名字ノ比丘ヲ為スト↢世ノ*尊師ト↡。若シ以テ↢正法ノ時ノ制トヾム文ヲ↡、而制セ↢末法世ノ名字ノ僧ヲ↡者バ、教機相 ヒ乖 ムキ、人法不↠合セ。由リテ↠此ニ¬律ニ¼云ク、制スル↢非制ヲ↡者ハ、則チ断ズ↢三明ヲ↡。所↢記シルシ説スル↡是有リト↠罪。

^この上かみに経きょうを引ひきて配当はいとうしをはんぬ。

此ノ上ニ引キテ↠経ヲ配アテ当アツシ已訖 オハ ヌ。

・挙教比例

 ^△後のちに教きょうを挙あげて比ひ例れいせば、 末法まっぽう法ほう爾にとして正しょう法ぼう毀壊きえし、 *三業さんごう記しるしなし。 *四儀しぎ乖そむくことあらん。 しばらく ¬*像法ぞうぼう決けつ疑ぎ経きょう¼ にのたまふがごとし。 乃至 ^また ¬*遺ゆい教きょう経ぎょう¼ にのたまはく、 乃至 ^また ¬*法ほう行ぎょう経きょう¼ にのたまはく、 乃至 ^¬*鹿ろく子母しも経きょう¼ にのたまはく、 乃至 ^また ¬*仁王にんのう経ぎょう¼ にのたまはく、 乃至」 と。 以上略抄

▼後ニ挙ゲテ↠教ヲ比例レイセ者バ、末法法爾トシテ正法毀クヰソシリ壊シヤブル、三業無シ↠記シルシ。四儀有ラム↠乖ソムクコト。▼且シバラクカツガツ如シト↢¬像法決疑経ニ¼云フガ、 乃至 ▼又¬遺ユイ教経ニ¼云ク、 乃至 ▼又¬法行経ニ¼云ク、 乃至 ▼¬鹿ロク子母経ニ¼云ク、 乃至 ▼又¬仁王経ニ¼云フガ↡ト。 乃至」 已上略*抄

 

  0221

*顕浄土方便化身土文類*六 愚禿釈親鸞集

二 Ⅱ ⅱ 真偽を弁ず【外教釈】
      a 標牒【勘決邪偽】

【042981】^それもろもろの修しゅ多羅たらによつて、 真しん偽ぎを勘決かんけつして、 △外げ教きょう邪じゃ偽ぎの異い執しゅうを教きょう誡かいせば、

▼*夫拠リテ↢諸ノ修多羅ニ↡、▼勘カン↢決シテ真偽ヲ↡、教↢誡セ外教邪偽ノ異執ヲ↡者バ、

二 Ⅱ ⅱ b 引文
        イ 経
          (一)¬涅槃経¼(仏に帰依する者は余の諸天神に帰依せざることを明かす)

【82】^¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (如来性品) にのたまはく、

▼¬涅槃経ニ¼言ハク、

^「仏ぶつに帰依きえせば、 つひにまたその余よのもろもろの天神てんじんに帰依きえせざれ」 と。 略出

「帰↢依セ於ニ↟仏者バ、▼終ニ不レト↣更マタ帰↢依セ其ノ余ノ諸ノ天神ニ↡。」 略出

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)¬般舟三昧経¼(涅槃に入れば則ち密に弥陀の三昧を結して以て一代の真正と為すことを成ず)

【83】^¬*般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ にのたまはく、

▼¬般舟三昧経ニ¼言ハク、

^「優婆夷うばい、 この三昧さんまいを聞ききて学まなばんと欲ほっせんものは、 乃至 みづから仏ぶつに帰き命みょうし、 法ほうに帰き命みょうし、 比丘びく僧そうに帰き命みょうせよ。 余よ道どうに事つかふることを得えざれ、 天てんを拝はいすることを得えざれ、 鬼き神じんを祠まつることを得えざれ、 吉きち良りょう日にちを視みることを得えざれ」 となり。 以上

「▼優婆夷▼聞キテ↢是ノ三昧ヲ↡欲セム↠学 ナバムト者ハ、 乃至 自ラ▼帰↢命シ仏ニ↡、帰↢命シ法ニ↡帰↢命セヨ比丘僧ニ↡。不レ↠得エ↠事ツカフルコトヲ↢余道ニ↡、不レ↠得エ↠拝スルコトヲ↠於ヲ↠天、不レ↠得エ↠祠ルコトヲ↢▼鬼神ヲ↡、▼不レトナリ↠得エ↠視ルコトヲ↢吉良日ヲ↡。」 已上

【84】^またのたまはく (般舟三昧経)、

▼又言ハク、

^「優婆夷うばい、 三昧さんまいを学まなばんと欲ほっせば、 乃至 天てんを拝はいし神じんを祠祀ししすることを得えざれ」 となり。 略出

「優婆夷欲セバ↠学バムト↢三昧ヲ↡ 乃至 不レトナリ↠得エ↣拝シ↠天ヲ祠↢祀シスルコトヲ神ヲ↡。」 略出

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)¬大集経¼
            (Ⅰ)日蔵
              (ⅰ)「魔王波旬星宿品」(総じて天等の体を示す)

【85】^¬*大だい乗じょう大だい方等ほうどう日蔵にちぞう経きょう¼ 巻かん第八だいはち 「魔ま王おう波は旬じゅん星宿しょうしゅく品ぼん」 第八だいはちの二ににのたまはく (大集経)、

▼¬大乗大方等日蔵経¼▼巻第八「魔王波旬星宿品ノ」第八之二ニ言ハマク、

^「ªその時ときに、 *佉盧かる虱しった、 天衆てんしゅに告つげていはまく、 «このもろもろの月がつ等とう、 おのおの*主しゅとうあり。 なんぢ四し種しゅの衆しゅ生じょうを救く済さいすべし。 なにものをか四よつとする。 地じ上じょうの人にん、 諸しょ竜りゅう、 夜や叉しゃ、 乃ない至し*蝎かつ等とうを救たすく。 かくのごときの類たぐい、 みなことごとくこれを救たすけん。 われもろもろの衆しゅ生じょうを安楽あんらくするをもつてのゆゑ0430に、 *星宿しょうしゅくを布置ふちす。 おのおの*分ぶん部ぶ乃ない至し*摸呼羅まこらの時じ等とうあり。 またみなつぶさに説とかん。 その国こく土ど方面ほうめんの処ところに随したがひて、 所しょ作さの事じ業ごう、 随ずい順じゅんし増ぞう長じょうせん» と。

「▼爾ノ時ニ佉カ盧ル虱シチタ告ゲテ↢天衆ニ↡言ハク、是ノ諸ノ月等、各ノ有リ↢主タウ↡。汝可シ↣救↢済ス四種ノ衆生ヲ↡。何 ニ者 ノヲカ為スル↠四ト。救タスケム↢地上ノ人・諸竜・夜叉乃至蝎カチ等ヲ↡。如キ↠斯クノ之ノ類、皆悉ク救ケム↠之ヲ。我 レ以テノ↣安↢楽スルヲ諸ノ衆生ヲ↡故ニ、布↢置ス星宿ヲ↡。各ノ有リ↢分部乃至模マク呼コ羅ラノ時等↡。亦 タ皆 ナ具ニ説カム。随ヒテ↢其ノ国土方面之処ニ↡、所作ノ事業、随順シ増長セムト。

^佉盧かる虱しった、 大衆だいしゅの前まえにして掌たなごころを合あわせて説ときていはまく、 «かくのごとき日月にちがつ・年ねん時じ、 大だい小しょう星宿しょうしゅくを安あん置ちす。 なにものをか名なづけて六ろく時じありとするや。 正しょう月がつ・二に月がつを暄暖けんだん時じと名なづく。 三月さんがつ・四し月がつを種しゅ作さ時じと名なづく。 五ご月がつ・六月ろくがつは求ぐ降こう雨う時じなり。 七月しちがつ・八月はちがつは物欲もつよく熟じゅく時じなり。 九く月がつ・十じゅう月がつは寒涼かんれいの時じなり。 十じゅう有ゆう一月いちがつ、 合がっして十じゅう二に月がつは大雪だいせつの時じなり。 これ十じゅう二に月がつを分わかつて六ろく時じとす。

佉盧虱於シテ↢大衆ノ前0222ニ↡合セテ↠掌ヲ説キテ言イハマク、如キ↠是クノ安↢置ス日月・年時、大小星宿シウヲ↡。何 ニ者モノヲカ名ケテ為スル↢有イウ六時ト↡也ヤ。正月・二月ヲ名ク↢*エン暖クワン時ト↡。三月・四月ヲ名ク↢種作時ト↡。五月・六月ハ求降カウ雨時ナリ。七月・八月ハ物欲熟時ナリ。九月・十月ハ寒カン*涼レイ之時ナリ。十*有イウ一月、合シテ十二月ハ大雪之時ナリ。是 レ十二月ヲ分テ為ス↢六時ト↡。

^また大だい星宿しょうしゅくその数かず八やつあり。 いはゆる*歳さい星しょう・*熒けい惑こく・*鎮ちん星しょう・*太白たいはく・*辰しん星しょう・日にち・月がつ・*荷羅睺からご星しょうなり。 また*小しょう星宿しょうしゅく二に十じゅう八はちあり。 いはゆる昴ぼうより胃いに至いたるまでの諸しょ宿しゅくこれなり。 われかくのごとき次し第だい安あん置ちをなす、 その法ほうを説ときをはんぬ。 なんだち、 みなすべからくまた見み、 また聞きくべし。 一切いっさい大衆だいしゅ、 意こころにおいていかん。 わが置おくところの法ほう、 その事じ是ぜなりやいなや。 二に十じゅう八はち宿しゅくおよび*八はち大だい星しょうの所しょ行ぎょうの諸業しょごう、 なんぢ喜き楽らくするやいなや。 是ぜとやせん、 非ひとやせん。 よろしくおのおの宣説せんぜつすべし» と。

又大星宿シウ其ノ数カズ有リ↠八。所ユル↠謂イハ歳サイ星シヤウ・熒ケイ惑コク・鎮星・太タイ白・辰シン星・日・月・荷カ羅ラ睺ゴ星ナリ。又小星宿シウ有リ↢二十八↡。所ユル↠謂ハ従リ↠昴バウ至ルマデノ↠胃ヰニ諸宿是也。我ワレ作ナス↢如キ↠是クノ次第安置ヲ↡、説キ↢其ノ法ヲ↡已ヌ。汝等ナンダチ皆須ベ クシ↢亦見ミ亦聞ク↡。一切大衆於テ↠意ニ云何 イカン 。我ガ所ノ↠置ク法、其ノ事是コレ不アラズ↢。二十八宿及ビ八大星ノ所行ノ*諸業ニ↡、汝ガ喜楽ハ不ズ↢。為タメニ↠是ゼノ為ニセ↟非ヒノ、宜クシト↢各ノ宣説ス↡。

^その時ときに一切いっさい天人てんにん・仙人せんにん・阿あ修しゅ羅ら・竜りゅうおよび*緊きん那羅なら等とう、 みなことごとく掌たなごころを合あわせて、 ことごとくこの言ごんをなさく、 «いま大仙だいせんのごときは、 天てん0431人にんのあひだにおいてもつとも尊そん重じゅうとす。 乃ない至し諸しょ竜りゅうおよび阿あ修しゅ羅ら、 よく勝すぐれたるものなけん。 智慧ちえ・慈悲じひもつとも第一だいいちとす。 無む量りょう劫こうにおいて忘わすれず、 一切いっさい衆しゅ生じょうを憐愍れんみんするがゆゑに、 福報ふくほうを獲え、 誓願せいがん満みちをはりて功く徳どく海うみのごとし。 よく過去かこ・現在げんざい・当来とうらいの一切いっさい諸しょ事じ、 天人てんにんのあひだを知しるに、 かくのごときの智慧ちえのものあることなし。 かくのごときの*法用ほうゆう、 日にち夜や・刹せつ那なおよび*迦羅から時じ、 大だい小しょう星宿しょうしゅく、 *月半がつはん・*月満がつまん・*年満ねんまんの法用ほうゆう、 さらに衆しゅ生じょうよくこの法ほうをなすことなけん。 みなことごとく随ずい喜きしわれらを安楽あんらくにす。 善よいかな大徳だいとく、 衆しゅ生じょうを安穏あんのんす» と。

爾ノ時ニ一切天人・仙人・阿修羅・竜及ビ緊キン那羅等、皆 ナ悉ク合セテ↠掌ヲ、咸ク作ナサク↢是ノ言ヲ↡、如キハ↢今大仙ノ↡、於テ↢天人ノ間アヒダニ↡最モトモ為ス↢尊重ト↡。乃至諸竜及ビ阿修羅、無ケム↢能ク勝レタル者モノ↡。智慧・慈悲最モ為↢*第一ト↡。於テ↢無量劫ニ↡不ズ↠忘ワスレ、憐↢愍スルガ一切衆生ヲ↡故ニ獲エ↢福報ヲ↡、誓願満チ已リテ功徳如シ↠海ノ。能ク知ルニ↢過去・現在・当来ノ一切諸事、天人之間ヲ↡、無シ↠有ルコト↢如キノ↠是クノ智慧之者 ノ↡。如キノ↠是クノ法用、日夜・刹那及ビ迦羅時、大小星宿、月半・月満・年満ノ法用、更ニ無ケム↣衆生能ク作スコト↢是ノ法ヲ↡。皆 ナ悉ク随喜シ安楽ナラム。我等、善ヨイ哉カナ大徳、安↢*穏スト衆生ヲ↡。

^このとき佉盧かる虱しった仙人せんにん、 またこの言ごんをなさく、 «この十じゅう二に月がつ一年いちねん始し終じゅう、 かくのごとく方便ほうべんす。 大だい小しょう星しょう等とう、 刹せつ那なの時じ法ほう、 みなすでに説ときをはんぬ。

是ノ時 キ佉盧虱仙人、復0223作ナサク↢是ノ言ヲ↡、此ノ十二月一年始終、如キ↠此クノ方便ス。大小星等、刹那ノ時法、皆 ナ已ニ説キ竟ヌ。▼

^またまた*四し天てん大王だいおうを須しゅ弥み山せんの四し方面ほうめん所しょに安あん置ちす、 おのおの一王いちおうを置おく。 このもろもろの方所ほうしょにして、 おのおの衆しゅ生じょうを領りょうす。 北方ほっぽうの天王てんのうを*毘び沙門しゃもんと名なづく。 これその界かいのうちに多おおく夜や叉しゃあり。 南方なんぽうの天王てんのうを*毘留びる荼倶だくと名なづく。 これその界かいのうちに多おおく*鳩く槃はん荼だあり。 西方さいほうの天王てんのうを*毘留びる博叉はくしゃと名なづく。 これその界かいのうちに多おおく諸しょ竜りゅうあり。 東方とうぼうの天王てんのうを*題だい頭隷ずらたと名なづく。 これその界かいのうちに*乾闥けんだつ婆ば多おおし。

▼又復安↣置ス四天大王ヲ於ニ↢須弥山ノ四方面所シヨ↡、各ノ置ク↢一王ヲ↡。是ノ諸ノ方所ニシテ、各ノ領ス↢衆生ヲ↡。北方ノ天王ヲ名ク↢毘沙門ト↡。是其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢夜叉↡。南方ノ天王ヲ名ク↢毘留ル荼ダト↡。倶ニ是 レ其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢鳩ク槃ハン荼ダ↡。西方ノ天王ヲ名ク↢毘留博叉ト↡。是 レ其ノ界ノ内ニ多ク有リ↢諸竜↡。東方ノ天王ヲ名ク↢題頭隷ラタト↡。是 レ其ノ界ノ内ニ多 ホシ↢乾ケン闥婆↡。

^*四し方ほう四し維ゆいみなことごとく一切いっさい*洲す渚しょおよびもろもろの*城じょう邑おうを擁よう護ごす。 また鬼き0432神じんを置おいてこれを守しゅ護ごせしむ» と。

四方四維皆 ナ悉ク擁↢護ス一切洲ス渚シヨ及ビ諸ノ城邑ヲウヲ↡。亦置↢鬼神ヲ↡而テ守↢護セシムト之ヲ↡。

^その時ときに、 *佉盧かる虱しった仙人せんにん、 諸天しょてん・竜りゅう・夜や叉しゃ・阿あ修しゅ羅ら・緊きん那羅なら・摩睺まご羅伽らが、 人にん・非ひ人にん等とう、 一切いっさい大衆だいしゅにおいて、 みな «善よいかな» と称しょうして、 歓かん喜ぎ無む量りょうなることをなす。 この時ときに、 天てん・竜りゅう・夜や叉しゃ・阿あ修しゅ羅ら等とう、 日にち夜やに佉盧かる虱しったを供く養ようす。

爾ノ時ニ佉盧虱仙人、為ナス↧於テ↢諸天・竜・夜叉・阿修羅・緊那羅・摩睺羅伽・人・非人等一切大衆ニ↡、皆称シテ↢善イ哉カナト↡歓喜無量ナルコトヲ↥。是ノ時ニ天・竜・夜叉・阿修羅等、日夜ニ供↢養ス佉盧虱ヲ↡。▼

^次つぎにまた後のちに無む量りょう世せを過すぎて、 また仙人せんにんあらん、 伽か力りき伽かと名なづく。 世よに出しゅつ現げんして、 またさらに別べっして、 もろもろの星宿しょうしゅく、 小しょう大月だいがつの法ほう、 時じ節せつ要よう略りゃくを説とき置おかんº と。

▼次ニ復於ニ↠後 チ過ギテ↢無量世ヲ↡、更マタ有ラム↢仙人↡、名ナヅケム↢伽力*伽ト↡。出↢現シテ於世ニ↡、復更ニ別シテ、説キ↢置カムト諸ノ星宿、小大月ノ法、時節要略ヲ↡。

^その時ときに、 諸しょ竜りゅう、 *佉羅から氐山ていせん聖しょう人にんの住じゅう処しょにありて、 *光こう味み仙人せんにんを尊そん重じゅうし*恭く敬ぎょうせん、 その竜りゅう力りきを尽つくしてこれを供く養ようせん」 と。 以上抄出

爾ノ時ニ諸竜、在リテ↢佉羅坻テイ山聖人ノ住処ニ↡、尊↢重シ恭↣敬セム光味仙人ヲ↡、尽ツクシ↢其 レ竜力ヲ↡而テ供↢養セムト之ヲ↡。」 已上抄出

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅰ)(ⅱ)「念仏三昧品」(一心に帰仏して天神等を拝せざるの相を顕し、魔の害を加へざるはただこの行者のみなることを示す)

【86】^¬*日蔵にちぞう経きょう¼ 巻かん第だい九く 「念仏ねんぶつ三昧ざんまい品ぼん」 第だい十じゅうにのたまはく (大集経)、

¬*日蔵経¼▼巻第九ニ「*念仏三昧品ノ」第十ニ*言ク、

^「その時ときに、 *波は旬じゅん、 この偈げを説ときをはるに、 かの衆しゅうのなかにひとりの魔ま女にょあり、 名なづけて*離り暗あんとす。 この魔ま女にょは、 曽むかし過去かこにおいてもろもろの徳本とくほんを植うゑたりき。

「▼爾ノ時ニ波旬説キ↢是ノ偈ヲ↡已ルニ、▼彼ノ衆之中ニ有リ↢一 リノ魔女↡、名ケテ為↢離暗ト↡。此ノ魔女者ハ、曽ムカシ於テ↢過去ニ↡植ヘタリキ↢衆ノ徳本ヲ↡。

^この説せつをなしていはまく、 ª沙門しゃもん*瞿く曇どんは名なづけて福徳ふくとくと称しょうす。 もし衆しゅ生じょうありて、 仏ぶつの名みなを聞きくことを得えて一心いっしんに帰依きえせん、 一切いっさいの諸しょ魔ま、 かの衆しゅ生じょうにおいて悪あくを加くわふることあたはず。 いかにいはんや仏ぶつを見みたてまつり、 親まのあたり法ほうを聞きかん人ひと、 種々しゅじゅに方便ほうべんし慧解えげ深広じんこうならん。 乃至 たとひ千万せんまん億おくの一切いっさい魔ま軍ぐん、 つひに須しゅ臾ゆも0433害がいをなすことを得うることあたはず。

作シテ↢是ノ説ヲ↡言ハマク、沙門瞿曇ハ名ケテ称ス↢福徳ト↡。若シ有リテ↢衆生↡、得テ↠聞クコトヲ↢仏ノ名ヲ↡一心ニ帰依セム、一切ノ諸魔0224、於テ↢彼ノ衆生ニ↡不ズ↠能ハ↠加フルコト↠悪ヲ。何ニ況ヤ見タテマツリ↠仏ヲ、親マノアタリ聞カム↠法ヲ人、種種ニ方便シ慧解深広ナラム。 乃至 設タトヒ千万億ノ一切魔軍、終ツヒニ不ズ↠能ハ↠得ルコト↢須臾モ為スコトヲ↟害ヲ▼。

^如来にょらいいま涅ね槃はん道どうを開ひらきたまへり。 女にょ、 かしこに往ゆきて仏ぶつに帰依きえせんと欲ほっすº と。

▼如来今者 イマ 開キタマヘリ↢涅槃道ヲ↡。女欲 モフト↣往キテ↠彼ニ帰↢依セムト於ニ↟仏。

^すなはちその父ちちのためにして偈げを説ときていはまく、 乃至 ª^三さん世ぜの諸仏しょぶつの法ほうを修学しゅがくして、 一切いっさいの苦くの衆しゅ生じょうを度ど脱だつせん。 よく諸法しょほうにおいて自じ在ざいを得え、 当来とうらいに願ねがはくはわれ還かえりて仏ぶつのごとくならんº と。

即チ為ニ↢其ノ父ノ↡而シテ説キテ↠偈ヲ言ハマク、 ▼ 乃至

▼修↢学シテ三世ノ諸仏ノ法ヲ↡度↢脱セム一切ノ苦ノ衆生ヲ↡
善ク於テ↢諸法ニ↡得エ↢自在ヲ↡当来ニ願クハ我 レ還リテ如クナラムト↠仏ノ

 ^その時ときに、 離り暗あん、 この偈げを説ときをはるに、 父ちちの王おう宮ぐのうちの五ご百ひゃくの魔ま女にょ、 姉し妹まい眷属けんぞく、 一切いっさいみな菩ぼ提だいの心しんを発ほっせしむ。

▼爾ノ時ニ離暗説キ↢是ノ偈ヲ↡已ルニ、父ノ王ワウ宮ノ中ノ五百ノ魔女、姉シ妹マイ眷属、一切皆 ナ発セシム↢菩提之心ヲ↡。

^この時ときに、 魔ま王おう、 その宮みやのうちの五ご百ひゃくの諸女しょにょ、 みな仏ぶつに帰きして菩ぼ提だい心しんを発ほっせしむるを見みるに、 大おおきに瞋忿しんふん・怖畏ふい・憂う愁しゅうを益ますと。 乃至

▼是ノ時ニ魔王見ルニ↧其ノ宮ノ中ノ五百ノ諸女、皆帰シテ↢於仏ニ↡発セシムルヲ↦菩提心ヲ↥、益マスト↢大ニ瞋忿フン・怖畏・憂愁ヲ↡。 乃至

^この時ときに、 五ご百ひゃくのもろもろの魔ま女にょ等とう、 また波は旬じゅんのためにして偈げを説ときていはまく、

▼是ノ時ニ五百ノ諸ノ魔女等、更マタ為ニ↢波旬ノ↡而シテ説キテ↠偈ヲ言マク、

^ªもし衆しゅ生じょうありて、 仏ぶつに帰きすれば、 かの人ひと、 千せん億おくの魔まに畏おそれず。 いかにいはんや生しょう死じの流ながれを度どせんと欲おもふ。 *無為むい涅ね槃はんの岸きしに到いたらん。

▼若シ有リテ↢衆生↡帰スレ↠仏ニ者バ彼ノ人不ズ↠畏 ソレ↢千億ノ魔ニ↡
何ニ況ヤ欲オモフ↠度セムト↢生死ノ流ヲ↡到ラム↠於ニ↢無為涅槃ノ岸キシ↡

^もしよく一いち香こう華げをもつて、 三宝さんぼう仏法ぶっぽう僧そうに持じ散さんすることありて、 堅けん固ご勇ゆう猛みょうの心しんを発おこさん。 一切いっさいの衆しゅ魔ま、 壊えすることあたはじ。 乃至

若シ有アリテ↧能ク以テ↢一香華ヲ↡持↦散スルコト三宝仏法僧ニ↥
発サム↢於堅固勇猛ノ心ヲ↡一切ノ衆魔不ジ↠能ハ↠壊スルコト 乃至

^われら過去かこの無む量りょうの悪あく、 一切いっさいまた滅めっして余よあることなけん。 至し誠じょう専心せんしんに仏ぶつに帰きしたてまつりをはらば、 さだめて*阿あ耨のく菩ぼ提だいの果かを得えんº と。

▼我等過去ノ無量ノ悪一切亦滅シテ無ケム↠有ルコト↠余
至誠専心ニ帰シタテマツリ↠仏ニ已オハラバ決サダメテ得エムト↢阿耨菩提ノ果ヲ↡▼

 ^その時ときに、 魔ま王おう、 この偈げを聞ききをはりて、 大おおきに瞋しん恚に・怖畏ふいを倍まして、 心こころを煎こ0434がし、 憔しょう悴すい・憂う愁しゅうして、 独ひとり宮みやのうちに坐ざす。

▼爾0225ノ時ニ魔王聞キキ↢是ノ偈ヲ↡已リテ、倍マシテ↢大キニ瞋恚・怖畏ヲ↡、煎コガシ↠心ヲ憔セウ悴スイ憂愁シテ、独リ坐ス↢宮ノ内ニ↡。

^この時ときに、 光こう味み菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ、 仏ぶつの説法せっぽうを聞ききて、 一切いっさい衆しゅ生じょうことごとく*攀縁へんえんを離はなれ、 *四し梵ぼん行ぎょうを得えしむと。 乃至

▼是ノ時ニ光味菩薩摩訶薩、聞キテ↢仏ノ説法ヲ↡、一切衆生尽コトゴトク離レ↢攀ヘン縁ヲ↡、得エシムト↢四梵行ヲ↡。 乃至

^ª浄きよく洗浴せんよくし、 *鮮潔せんけつの衣ころもを着きて、 菜食さいじき*長ちょう斎さいして、 辛からく臭くさきものを*噉だんすることなかるべし。 寂静じゃくじょう処しょにして、 道どう場じょうを荘しょう厳ごんして正しょう念ねん*結けっ跏かし、 あるいは行ぎょうじ、 あるいは坐ざして、 仏ぶつの身相しんそうを念ねんじて乱心らんしんせしむることなかれ。 さらに他た縁えんし、 その余よの事じを念ねんずることなかれ。 あるいは一日いちにち夜や、 あるいは七日しちにち夜や、 余よの業ごうをなさざれ。 至し心しん念仏ねんぶつすれば、 乃ない至し仏ぶつを見みたてまつる。 ▲小しょう念ねんは小しょうを見みたてまつり、 大念だいねんは大だいを見みたてまつる。 乃ない至し無む量りょうの念ねんは仏ぶつの色身しきしん無む量りょう無む辺へんなるを見みたてまつらんº」 と。 略抄

▼応シ↧浄ク洗浴シ、著キテ↢鮮セン潔ケチノ衣ヲ↡、菜サイ食長斉サイシテ、勿ナカル↞噉ダンスルコト↢辛カラク臭クサキモノヲ↡。於シテ↢寂静処ニ↡、荘↢厳シテ道場ヲ↡正念結跏シ、或イハ行ジ或イハ坐シテ、念ジテ↢仏ノ身相ヲ↡無レ↠使ムルコト↢乱心セ↡。更ニ莫ナカレ↣他縁シ念ズルコト↢其ノ余ノ事ヲ↡。或イハ一日夜、或イハ七日夜、不レ↠作サ↢余ノ業ヲ↡。至心念仏スレバ、乃至見ミタテマツル↠仏ヲ。▼小念ハ見タテマツリ↠小ヲ、大念ハ見タテマツル↠大ヲ。乃至無量ノ念者ハ見タテマツラムト↢仏ノ色身無量無辺ナルヲ↡。」 略抄

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅰ)(ⅲ)「護塔品」(魔王と諸眷属との仏法に帰することを明かす)

【87】^¬日蔵にちぞう経きょう¼ の巻かん第だい十じゅう 「護ご塔とう品ぼん」 第だい十じゅう三さんにのたまはく (大集経)、

¬日蔵経ノ¼▼巻第十「護塔品」第十三ニ言ク、

^「時ときに魔ま波は旬じゅん、 その眷属けんぞく八はち十じゅう億おく衆しゅと、 前ぜん後ごに*囲い繞にょうして仏所ぶっしょに往おう至しせしむ。 到いたりをはりて、 *接足せっそくして世せ尊そんを頂ちょう礼らいしたてまつる。

「▼時ニ魔波旬与ト↢其ノ眷属八十億衆↡、前後ニ囲遶シテ往↢至シセシム仏所ニ↡。到リ已リテ接足シテ頂↢礼シタテマツル世尊ヲ↡。

^かくのごときの偈げを説とかく、 乃至

説トカク↢如キノ↠是クノ偈ヲ↡、 乃至

^ª三さん世ぜの諸仏しょぶつの大だい慈悲じひ、 わが礼らいを受うけたまへ、 一切いっさいの殃つみを懴さんせしむ。 法ほう・僧そう二に宝ほうもまたまたしかなり。 至し心しん帰依きえしたてまつるに異いあることなし。

▼三世ノ諸仏ノ大慈悲受ケタマヘ↢我ガ礼ヲ↡懴セシム↢一切ノ殃ツミヲ↡
法・僧二宝モ亦復然シカナリ至心帰依シタマヘルニ无ナシ↠有ルコト↠異

^願ねがはくは、 われ今日こんにち世よの導どう師しを供く養ようし恭く敬ぎょうし尊そん重じゅうしたてまつるところなり。 もろもろの悪あく0435は永ながく尽つくしてまた生しょうぜじ。 寿いのちを尽つくすまで如来にょらいの法ほうに帰依きえせんº と。

願クハ我 レ今日所 ロナリ↯供↢養シ恭↣敬シ尊↤重シタマヘル世ノ導師ヲ↡
諸ノ悪ハ永ク尽シテ不ジ↢復 タ生ゼ↡尽ツクスマデ↠寿ヲ帰↢依セムト如来ノ法ニ↡

 ^時ときに魔ま波は旬じゅん、 この偈げを説ときをはりて、 仏ぶつにまうしてまうさく、 ª世せ尊そん、 如来にょらいわれおよびもろもろの衆しゅ生じょうにおいて、 平びょう等どう無二むにの心しんにしてつねに歓かん喜ぎし、 慈悲じひ*含忍がんにんせんº と。

▼時ニ魔波旬、説キ↢是ノ偈ヲ↡已リテ、白シテ↠仏ニ言マフサク、世尊、如来於テ↢我及ビ諸ノ衆生ニ↡、平等無二ノ心ニシテ常ニ歓喜シ、慈悲含ガム忍セムト。

^仏ぶつののたまはく、 ªかくのごとしº と。

▼仏ノ言ノタマハク、如シト↠是クノ。

^時ときに魔ま波は旬じゅん大おおきに歓かん喜ぎを生しょうじて、 清浄しょうじょうの心しんを発おこす。 重かさねて仏前ぶつぜんにして接足せっそく頂ちょう礼らいし、 *右みぎに繞めぐること三さん帀ぞうして恭く敬ぎょう合がっ掌しょうして、 却しりぞきて一面いちめんに住じゅうして、 世せ尊そんを*瞻仰せんごうしたてまつるに、 心こころに*厭足えんそくなし」 と。 以上抄出

▼時ニ魔波旬生ジテ↢大ニ歓喜ヲ↡、発ス↢清浄ノ心ヲ↡。重ネテ於0226テ↢仏前ニ↡接足頂礼シ、右ニ遶ルコト三帀シテ恭敬合掌シテ、却シリゾキテ住シテ↢一面ニ↡、瞻↢仰シタテマツルニ世尊ヲ↡、心ニ無ナシト↢厭足↡。」 已上抄出

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)月藏
              
(ⅰ)「諸悪鬼神得敬信品」(人の仏に帰して益を得ることを説きて、鬼神をして之を聞きて帰仏得益せしむ)

【88】^¬*大だい方等ほうどう大だい集じゅう月蔵がつぞう経きょう¼ 巻かん第だい五ご 「諸悪しょあく鬼き神じん得とく敬きょう信しん品ぼん」 第八だいはちの上じょうにのたまはく (大集経)、

▼¬大方等大集月蔵経¼▼巻第五「諸悪鬼神得敬信品」第八ノ上ニ*言ク、

^「もろもろの*仁者にんしゃ、 かの邪見じゃけんを遠おん離りする因縁いんねんにおいて、 十種じっしゅの功く徳どくを獲えん。 なんらをか十じゅうとする。

「▼諸ノ仁者、於テ↧彼ノ遠↢離スル邪見ヲ↡因縁ニ↥、獲エム↢十種ノ功徳ヲ↡。何等ラヲカ為スル↠十ト。

^一ひとつには心しん性しょう柔にゅう善ぜんにして伴侶はんりょ賢けん良りょうならん。

▼一ニ者心性*柔*善ニシテ伴侶賢良ナラム。

^二ふたつには業報ごうほう、 乃ない至し奪だつ命みょうあることを信しんじて、 もろもろの悪あくを起おこさず。

二ニ者信ジテ↠有ルコトヲ↢業報乃至奪ダチ命↡、不ズ↠起 コサ↢諸ノ悪ヲ↡。

^三みつには三宝さんぼうを帰き敬きょうして天神てんじんを信しんぜず。

三ニ者帰↢敬シテ三宝ヲ↡不ズ↠信ゼ↢天神ヲ↡。

^四よつには*正しょう見けんを得えて歳さい次じ日月にちがつの吉きっ凶きょうを択えらばず。

四ニ者得テ↢於正見ヲ↡不ズ↠択エラバ↢歳次日月ノ吉凶クヰヨウヲ↡。

^五いつつにはつねに人天にんでんに生しょうじてもろもろの悪道あくどうを離はなる。

五ニ者ハ常ニ生ジテ↢人天ニ↡離ル↢諸ノ悪道ヲ↡。

^六むつには賢善けんぜんの心しんあきらかなることを得え、 人ひと讃さん誉よせしむ。

六ニ者得エ↢賢善ノ心明カナルコトヲ↡人讃誉セシム。

^七ななつには世せ俗ぞくを棄すててつねに*聖しょう道どうを求もとめん。

七ニ者棄ステヽ↠於ヲ↢世俗↡常ニ求メム↢聖道ヲ↡。

^八やつには*断だん・常じょう見けんを離はなれて*因縁いんねんの法ほうを信しんず。

八ニ者離レテ↢断・常見ヲ↡信ズ↢因縁ノ法ヲ↡。

^九ここのつにはつねに正しょう信しん0436・正行しょうぎょう・正しょう発心ほっしんの人ひととともにあひ会あつまり遇あはん。

九ニ者常ニ与ト↢正信・正行・正発心ノ人↡共ニ相アヒ会アツマリ遇アハム。

^十とおには*善道ぜんどうに生しょうずることを得えしむ。

十ニ者得エシム↠生ズルコトヲ↢善道ニ↡。

^この邪見じゃけんを遠おん離りする善根ぜんごんをもつて、 阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいに回え向こうせん、 この人ひとすみやかに六ろっ波羅ぱら蜜みつを満まんぜん、 善ぜん浄じょう仏ぶつ土どにして正しょう覚がくを成ならん。 菩ぼ提だいを得えをはりて、 かの仏ぶつ土どにして、 功く徳どく・智慧ちえ・一切いっさい善根ぜんごん、 衆しゅ生じょうを荘しょう厳ごんせん。 その国くにに来らい生しょうして天神てんじんを信しんぜず、 悪道あくどうの畏おそれを離はなれて、 かしこにして命終みょうじゅうして還かえりて善道ぜんどうに生しょうぜん」 と。 略抄

▼以テ↧是ノ遠↢離スル邪見ヲ↡善根ヲ↥、廻↢向セム阿耨多羅三藐三菩提ニ↡、是ノ人速ニ満ゼム↢六波羅蜜ヲ↡、於ニ↢善浄仏土↡而シテ成ラム↢正覚ヲ↡。得エ↢菩提ヲ↡已リテ、於シテ↢彼ノ仏土ニ↡、功徳・智慧・一切善根、荘↢厳セム衆生ヲ↡。来↢生シテ其ノ国ニ↡不ズ↠信ゼ↢天神ヲ↡、離レテ↢悪道ノ畏ヲ↡、於シテ↠彼 コニ命終シテ還リテ生ゼムト↢善道ニ↡。」 略抄

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)「諸悪鬼神得敬信品」(邪悪を信ずる者は悪報を得ることを明かす)

【89】^¬月蔵がつぞう経きょう¼ 巻かん第六だいろく 「諸悪しょあく鬼き神じん得とく敬きょう信しん品ぼん」 第八だいはちの下げにのたまはく (大集経)、

¬月蔵経¼▼巻第六「諸悪鬼神得敬信品ノ」第八ノ下ニ言ク、

^「仏ぶつの出しゅっ世せはなはだ難かたし。 法ほう・僧そうもまたまた難かたし。 衆しゅ生じょうの浄じょう信しん難かたし。 諸難しょなんを離はなるることまた難かたし。

「▼仏ノ出世甚ダ難シ法・僧モ亦復難シ
衆生ノ浄信難シ離ルヽコト↢諸難ヲ↡亦難シ

^衆しゅ生じょうを哀愍あいみんすること難かたし。 *知ち足そく第一だいいちに難かたし。 正しょう法ぼうを聞きくことを得うること難かたし。 よく修しゅすること第一だいいちに難かたし。

0227哀↢愍スルコト衆生ヲ↡難シ知足第一ニ難シ
得ルコト↠聞クコトヲ↢正法ヲ↡難シ能ク修スルコト第一ニ難シ

^難かたきを知しることを得えて平びょう等どうなれば、 世よにおいてつねに楽らくを受うく。 この*十じゅう平びょう等どう処しょは、 智ち者しゃつねにすみやかに知しらん。 乃至

※得テ↠知ルコトヲ↠難キヲ平等ナレバ於テ↠世ニ常ニ受ク↠楽ヲ
此ノ十平等処ハ智者常ニ速ニ知ラムト 乃至

 ^その時ときに、 世せ尊そん、 かのもろもろの悪あく鬼き神じん衆しゅのなかにして法ほうを説ときたまふ時ときに、 ªかのもろもろの悪あく鬼き神じん衆しゅのなかにして、 かの悪あく鬼き神じんは、 むかし仏法ぶっぽうにおいて決けつ定じょうの信しんをなせりしかども、 かれ後のちの時ときにおいて悪あく知ち識しきに近ちかづきて心こころに他たの過とが0437を見みる。 この因縁いんねんをもつて悪あく鬼き神じんに生うまるº」 と。 略出

▼爾ノ時ニ世尊於シテ↢彼ノ諸ノ悪鬼神衆ノ中ニ↡説キタマフ↠法ヲ時ニ、於シテ↢彼ノ諸ノ悪鬼神衆ノ中ニ↡、彼ノ悪鬼神ハ、昔ムカシ於テ↢仏法ニ↡作ナセリシカドモ↢決定ノ信ヲ↡、彼カレ於イテ↢後ノ時ニ↡近チカヅキテ↢悪知識ニ↡心ニ見ル↢他ノ過トガヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡生ルト↢悪鬼神ニ↡。」 略 *出

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅲ)「諸天王護持品」(諸天神等に帰依せずと雖も自ら擁護有ることを顕すに在り)

【90】^¬大だい方等ほうどう大集だいじっ経きょう¼ 巻かん第六だいろく 「月蔵がつぞう分ぶん」 のなかに 「諸天しょてん王のう護持ごじ品ぼん」 第だい九くにのたまはく (大集経)、

¬大方等大集経¼*巻第六「月蔵分ノ」中ニ▼「諸天王護持品」第九ニ*言ク、

^「その時ときに、 世せ尊そん、 世せ間けんを示しめすがゆゑに、 娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大だい梵天ぼんてん王のうに問とうてのたまはく、 ªこの四し天てん下げに、 これたれかよく護持ごじ養育よういくをなすº と。

「▼爾ノ時ニ世尊示スガ↢世間ニ↡故ニ問トフテ↢娑婆世界ノ主大梵天王ニ↡言 マハマク、此ノ四天下ニ、是 レ誰カ能ク作ナスト↢護持養育ヲ↡。

 ^時ときに娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大だい梵天ぼんてん王のうかくのごときの言ごんをなさく、 ª*大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 *兜と率そつ陀だ天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの兜と率そつ陀だ天てん子しとともに北ほく鬱単うったん越おつを護持ごじし養育よういくせしむ。

▼時ニ娑婆世界ノ主大梵天王作ナサク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、▼大徳婆伽婆、兜率陀天王、共トモニ↢無量百千ノ兜率陀天子ト↡護↢持シ養↣育セシム*北ホク鬱ウツ単タン越オチヲ↡。

^*他化たけ自じ在ざい天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの他化たけ自じ在ざい天てん子しとともに東とう弗ほつ婆ば提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。

他化自在天王、共ニ↢無量百千ノ他化自在天子ト↡護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。

^*化け楽らく天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの化け楽らく天てん子しとともに南なん閻えん浮ぶ提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。

化楽天王、共ニ↢無量百千ノ化楽天子ト↡護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。

^*須しゅ夜摩やま天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの須しゅ夜摩やま天てん子しとともに*西さい瞿陀尼くだにを護持ごじし養育よういくせしむ。

須夜摩天王、共ニ↢無量百千ノ須夜摩天子ト↡護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。▼

 ^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 *毘び沙門しゃもん天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの諸しょ夜や叉しゃ衆しゅとともに北ほく鬱単うったん越おつを護持ごじし養育よういくせしむ。

▼大徳婆伽婆、毘沙門天王、共ニ↢無量百千ノ諸夜叉衆ト↡護↢持シ養↣育セシム北鬱単越ヲ↡。

^*提だい頭頼ずらた天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの乾闥けんだつ婆ば衆しゅとともに東とう弗ほつ婆ば提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。

提頭頼天王、共ニ↢無量百千ノ乾闥婆衆ト↡護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。

^*毘楼びる勒ろく天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの鳩く槃はん荼だ衆しゅとともに南なん閻えん浮ぶ提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。

毘楼勒天王、共ニ↢無量百0228千ノ鳩ク槃荼ダ衆ト↡護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。

^*毘楼びる博叉はくしゃ天王てんのう、 無む量りょう百ひゃく千せんの竜りゅう衆しゅとともに西さい瞿陀尼くだにを護持ごじし養育よういくせしむ。

毘楼博叉天王、共ニ↢無量百千ノ竜衆ト↡護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。▼

 ^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 *天仙てんせん七しち宿しゅく・*三曜さんよう・*三天さんてん童女どうにょ、 北ほく鬱単うったん越おつを護持ごじし養育よういくせしむ。 か0438の天仙てんせん七しち宿しゅくは虚きょ・危き・室しつ・壁へき・奎けい・婁ろう・胃いなり。 三曜さんようは鎮ちん星しょう・歳さい星しょう・熒惑けいこく星しょうなり。 三天さんてん童女どうにょは鳩く槃はん・弥那みな・迷沙めいしゃなり。

▼大徳婆伽婆、天仙七宿シウ・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム北鬱単越ヲ↡。彼ノ天仙七宿者ハ虚キヨ・危クヰ・室シチ・壁ヘキ・奎ケイ・婁ロウ・胃ヰナリ。三曜者ハ鎮星・歳星・熒ケイ惑コク星ナリ。三天童女者鳩槃・弥那・迷沙ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かの天仙てんせん七しち宿しゅくのなかに虚きょ・危き・室しつの三さん宿しゅくはこれ鎮ちん星しょうの*土ど境きょうなり、 鳩く槃はんはこれ*辰しんなり。 壁へき・奎けいの二に宿しゅくはこれ歳さい星しょうの土ど境きょうなり、 弥那みなはこれ辰しんなり。 婁ろう・胃いの二に宿しゅくはこれ熒惑けいこくの土ど境きょうなり、 迷沙めいしゃはこれ辰しんなり。

大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ虚キヨ・危クヰ・室シチノ三宿ハ是鎮星ノ土境ナリ、鳩槃ハ是辰シムナリ。壁・奎ケイノ二宿ハ是歳星ノ土境ナリ、弥那ハ是辰ナリ。婁ロウ・胃ノ二宿ハ是熒惑コクノ土境ナリ、迷沙ハ是辰ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かくのごとき天仙てんせん七しち宿しゅく・三曜さんよう・三天さんてん童女どうにょ、 北ほく鬱単うったん越おつを護持ごじし養育よういくせしむ。

大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム北鬱単越ヲ↡。

 ^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 天仙てんせん七しち宿しゅく・三曜さんよう・三天さんてん童女どうにょ、 東とう弗ほつ婆ば提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。 かの天仙てんせん七しち宿しゅくは昴ぼう・畢ひつ・觜し・参しん・井せい・鬼き・柳りゅうなり。 三曜さんようは太白たいはく星しょう・歳さい星しょう・月がつなり。 三天さんてん童女どうにょは毘利びり沙しゃ・弥み偸ちゅう那な・羯かつ迦かた迦かなり。

大徳婆伽*婆、天仙七宿・三曜・三天童*女、護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。彼ノ天仙七宿者昴バウ・畢ヒチ・觜シ・参シム・井セイ・鬼クヰ・柳リウナリ。三曜者ハ太白星・歳星・月ナリ。三天童女者ハ毘利沙・弥偸チウ那・羯カチ迦タ迦ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かの天仙てんせん七しち宿しゅくのなかに、 昴ぼう・畢ひつの二に宿しゅくはこれ太白たいはくの土ど境きょうなり、 毘利びり沙しゃはこれ辰しんなり。 觜し・参しん・井せいの三さん宿しゅくはこれ歳さい星しょうの土ど境きょうなり、 弥み偸ちゅう那なはこれ辰しんなり。 鬼き・柳りゅうの二に宿しゅくはこれ月がつの土ど境きょうなり、 羯かつ迦かた迦かはこれ辰しんなり。

大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、昴バウ・畢ノ二宿ハ是太白ノ土境ナリ、毘利沙ハ是辰ナリ。觜シ・参シム・井セイノ三宿ハ是歳星ノ土境ナリ、弥偸チウ那ハ是辰ナリ。鬼・柳ノ二宿ハ是月ノ土境ナリ、羯カチ迦迦ハ是辰ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かくのごとき天仙てんせん七しち宿しゅく・三曜さんよう・三天さんてん童女どうにょ、 東とう弗ほつ婆ば提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。

大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム東弗婆提ヲ↡。

 ^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 天仙てんせん七しち宿しゅく・三曜さんよう・三天さんてん童女どうにょ、 南なん閻えん浮ぶ提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。 かの天仙てんせん七しち宿しゅくは星せい・張ちょう・翼よく・軫しん・角かく・亢こう・氐ていなり。 三曜さんようは日にち・辰しん星しょう・太白たいはく星しょうなり0439。 三天さんてん童女どうにょはしゃく訶か・迦か若にゃ・兜羅とらなり。

大徳婆伽婆、天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。彼ノ天仙七宿者星セイ・張チヤウ・翼ヨク・軫シム・角カク・亢カウ・氐テイナリ。三曜者日・辰星・太白0229星ナリ。三天童女者ハ*シヤク訶カ・迦若ニヤ・兜羅ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かの天仙てんせん七しち宿しゅくのなかに、 星せい・張ちょう・翼よくはこれ日にちの土ど境きょうなり、 しゃく訶かはこれ辰しんなり。 軫しん・角かくの二に宿しゅくはこれ辰しん星しょうの土ど境きょうなり、 迦か若にゃはこれ辰しんなり。 亢こう・氐ていの二に宿しゅくはこれ太白たいはくの土ど境きょうなり、 兜羅とらはこれ辰しんなり。

大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、星・張・翼ハ是日ノ土境ナリ、シヤク訶ハ是辰ナリ。軫・角ノ二宿ハ是辰星ノ土境ナリ、迦若ニヤハ是辰ナリ。亢カウ・氐テイノ二宿ハ是太白ノ土境ナリ、兜羅ハ是辰ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かくのごとき天仙てんせん七しち宿しゅく・三曜さんよう・三天さんてん童女どうにょ、 南なん閻えん浮ぶ提だいを護持ごじし養育よういくせしむ。

大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム南閻浮提ヲ↡。

 ^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かの天仙てんせん七しち宿しゅく・三曜さんよう・三天さんてん童女どうにょ、 西さい瞿陀尼くだにを護持ごじし養育よういくせしむ。 かの天仙てんせん七しち宿しゅくは房ぼう・心しん・尾び・箕き・斗と・牛ぎゅう・女じょなり。 三曜さんようは熒惑けいこく星しょう・歳さい星しょう・鎮ちん星しょうなり。 三天さんてん童女どうにょは毘離びり支迦しか・檀だんと婆ば・摩ま伽羅からなり。

大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿・三曜・三天童*女、護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。彼ノ天仙七宿者ハ房バウ・心シム・尾ビ・箕キ・斗ト・牛ギウ・女ヂヨナリ。三曜者熒惑星・歳星・鎮星ナリ。三天童女者毘離支迦・檀ダント婆・摩伽羅ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かの天仙てんせん七しち宿しゅくのなかに、 房ぼう・心しんの二に宿しゅくはこれ熒惑けいこくの土ど境きょうなり、 毘離びり支迦しかはこれ辰しんなり。 尾び・箕き・斗との三さん宿しゅくはこれ歳さい星しょうの土ど境きょうなり、 檀だんと婆ばはこれ辰しんなり。 牛ぎゅう・女じょの二に宿しゅくはこれ鎮ちん星しょうの土ど境きょうなり、 摩ま伽羅からはこれ辰しんなり。

大徳婆伽婆、彼ノ天仙七宿ノ中ニ、房・心ノ二宿ハ是熒惑ノ土境ナリ、毘利支迦ハ是辰ナリ。尾・箕・斗ノ三宿ハ是歳星ノ土境ナリ、*檀ダント*婆バハ是辰ナリ。牛・女ノ二宿ハ是鎮星ノ土境ナリ、摩伽羅ハ是辰ナリ。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 かくのごときの天仙てんせん七しち宿しゅく・三曜さんよう・三天さんてん童女どうにょ、 西さい瞿陀尼くだにを護持ごじし養育よういくせしむ。

大徳婆伽婆、如キ↠是クノ天仙七宿・三曜・三天童女、護↢持シ養↣育セシム西瞿陀尼ヲ↡。▼

 ^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 この四し天てん下げに南なん閻えん浮ぶ提だいはもつとも殊しゅ勝しょうなりとす。 なにをもつてのゆゑに、 閻えん浮ぶ提だいの人ひとは勇健ゆうごん聡そう慧えにして、 *梵ぼん行ぎょう、 仏ぶつに相応そうおうす。 婆伽ばが婆ば、 なかにおいて出しゅっ世せしたまふ。 このゆゑに四し大だい天王てんのう、 ここに倍増ばいぞうしてこの閻えん浮ぶ提だいを護ご0440持じし養育よういくせしむ。

▼大徳婆伽婆、此ノ四天下ニ南閻浮提ハ最モ為ス↢殊勝ナリト↡。何ヲ以テノ故ニ。閻浮提ノ*人ハ*勇健聡ソウ慧ニシテ、梵行相↢応ス仏ニ↡。婆伽婆於イテ↠中ニ出世シタマフ。是ノ故ニ四大天王、於ニ↠此コヽ倍増シテ護↢持シ養↣育セシム此ノ閻浮提ヲ↡。

^*十じゅう六ろくの大国だいこくあり。 いはく、 鴦おう伽摩かま伽陀かだ国こく・傍ぼう伽摩かま伽陀かだ国こく・阿あ槃はん多た国こく・支し提だい国こくなり。 この四よつの大国だいこくは、 毘び沙門しゃもん天王てんのう、 夜や叉しゃ衆しゅと囲い繞にょうして護持ごじし養育よういくせしむ。

有リ↢▼十六ノ大国↡。謂イハク、鴦アウ伽摩伽陀国・傍伽摩伽陀国・阿槃多国・支提国ナリ。此ノ四ノ大国ハ、毘沙門天王、与ト↢夜叉衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。

^迦尸かし国こく・都薩羅とさら国こく・婆ば蹉しゃ国こく・摩羅まら国こく、 この四よつの大国だいこくは、 提だい頭頼ずらた天王てんのう、 乾闥けんだつ婆ば衆しゅと囲い繞にょうして護持ごじし養育よういくせしむ。

迦尸シ国・都薩羅国・婆蹉シヤ国・摩羅国、此ノ四ノ大国ハ、提頭頼0230天王、与↢乾闥婆衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。

^鳩羅婆くらば国こく・毘時びじ国こく・槃遮はんしゃ羅ら国こく・疎那そな国こく、 この四よつの大国だいこくは、 毘楼びる勒叉ろくしゃ天王てんのう、 鳩く槃はん荼だ衆しゅと囲い繞にょうして護持ごじし養育よういくせしむ。

鳩羅婆国・毘時国・槃遮シヤ羅国・疎那国、此ノ四ノ大国ハ、毘楼勒叉天王、与ト↢鳩槃荼ダ衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。

^阿あ湿しゅう婆ば国こく・蘇摩そま国こく・蘇羅そらた国こく・甘満かんまん闍国しゃこく、 この四よつの大国だいこくは、 毘楼びる博叉はくしゃ天王てんのう、 もろもろの竜りゅう衆しゅと囲い繞にょうして護持ごじし養育よういくせしむ。

阿湿シツ婆国・蘇ソ摩国・蘇羅国・甘満闍国、此ノ四ノ大国ハ、毘楼博叉天王、与ト↢諸ノ竜衆↡囲遶シテ護持シ養育セシム。▼

 ^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 過去かこの天仙てんせんこの四し天てん下げを護持ごじし養育よういくせしがゆゑに、 またみなかくのごとき分ぶん布ぷ安あん置ちせしむ。

▼大徳婆伽婆、過去ノ天仙護↢持シ養↣育セシガ此ノ四天下ヲ↡故ニ、亦皆如キ↠是クノ分布安置チセシム。

^後のちにおいてその国こく土ど、 城じょう邑おう・村落そんらく・塔とう寺じ・園林おんりん・樹じゅ下げ・*塚間ちょけん・山谷せんこく・曠こう野や・河か泉せん・*陂は泊はく、 乃ない至し、 海かい中ちゅう宝ほう洲す・*天てん祠しに随したがひて、 かの*卵らん生しょう・胎たい生しょう・湿しっ生しょう・化け生しょうにおいて、 もろもろの竜りゅう・夜や叉しゃ・羅ら刹せつ・餓鬼がき・毘び舎遮しゃしゃ・富ふ単たん那な・迦かた富ふ単たん那な等とう、 かのなかに生しょうじて、 かの処ところに還げん住じゅうして、 繋け属ぞくするところなし、 他たの教おしえを受うけず。

於テ↠後ニ随ヒテ↢其ノ国土、城邑オウムラ・村シユ落・塔寺・園林・樹下・塚チヨツカ間・山谷・曠野・河泉セン・陂ハ泊ハク、乃至、海中宝洲ス・天祠シニ↡、於イテ↢彼ノ卵ランカイゴ生・胎生・湿生・化生ニ↡、諸ノ竜・夜叉・羅刹・餓鬼・毘舎遮・富単那・迦富単那等、生ジテ↠於ニ↢彼ノ中ナカ↡、還↢*住シテ彼ノ処ニ↡、無シ↠所↢繋属スル↡、不ズ↠受ウケ↢*他ノ教オシヘヲ↡。

^このゆゑに願ねがはくは仏ぶつ、 この閻えん浮ぶ提だいの一切いっさい国こく土どにおいて、 かのもろもろの鬼き神じん、 分ぶん布ぷ安あん置ちしたまへ。 護持ごじのためのゆゑに、 一切いっさいのもろもろの衆しゅ生じょうを護まもらんがためのゆゑに。 われらこの説せつにおいて随ずい0441喜きせんと欲おもふº と。

是ノ故ニ願クハ仏、於イテ↢此ノ閻浮提ノ一切国土ニ↡、彼ノ諸ノ鬼神、分布安置シテ、為 メノ↢護持ノ↡故 ヘニ為ノ↠護ラムガ↢一切ノ諸ノ衆生ヲ↡故ニ。我等於イテ↢此ノ説ニ↡欲フト↢随喜セムト↡。▼

 ^仏ぶつののたまはく、 ªかくのごとし、 *大梵だいぼん、 なんぢが所説しょせつのごとしº と。 ^その時ときに、 世せ尊そん重かさねてこの義ぎを明あかさんと欲おぼしめして、 偈げを説ときてのたまはく、

▼仏ノ言ノタマハク、如キ↠是クノ大梵、如シト↢汝ガ所説ノ↡。▼爾ノ時ニ世尊欲オボシメシ↣重ネテ明サムト↢此ノ義ヲ↡而テ説キテ↠偈ヲ言ノタマハク、

^ª世せ間けんに示じ現げんするがゆゑに、 導どう師し、 梵王ぼんのうに問とはまく、 «この四し天てん下げにおいて、 たれか護持ごじし養育よういくせん» と。 ^かくのごとき*天てん師し梵ぼん、 «諸天しょてん王のうを首しゅとして、 兜と率そつ・他化たけ天てん・化け楽らく・須しゅ夜摩やま、

▼示↢現スルガ世間ニ↡故ニ導師問ハマク↢梵王ニ↡
於イテ↢此ノ四天下ニ↡誰 レカ護持シ養育セムト
如キ↠是クノ天師梵諸天王ヲ為シテ↠首ト
兜率・他化天化楽・須夜摩

^よくかくのごとき四し天てん下げを、 護持ごじし養育よういくせしむ。 四し王おうおよび眷属けんぞく、 またまたよく護持ごじせしむ。 ^二に十じゅう八はっ宿しゅく等とう、 および十じゅう二に辰しん・十じゅう二に天てん童女どうにょ、 四し天てん下げを護持ごじせしむ» と。

能ク護↢持シ養↣育セシム如キ↠此ノ四天下ヲ↡
四王及ビ眷属亦復能ク護持セシム
0231二十八宿等及以 オヨビ 十二辰
十二天童女護↢持セシムト四天下ヲ↡

^その所しょ生しょうの処ところに随したがひて、 竜りゅう・鬼き・羅ら刹せつ等とう、他たの教おしえを受うけずは、 かしこにおいて還かえつて護ごをなさしむ。 ^天神てんじん等とう差別しゃべつして、 願ねがはくは仏ぶつ分ぶん布ぷせしめたまへ。 衆しゅ生じょうを憐愍れんみんせんがゆゑに、 正しょう法ぼうの灯ともしびを*熾し然ねんならしむº と。

随ヒテ↢其ノ所生ノ処ニ↡竜・鬼・羅刹等
不ズ↠受ケ↢他ノ教ヲ↡者ハ還 ヘテ↠於テ↠彼カシコニ作サシム↠護ヲ
天神等差別シテ願ジテ仏令シメタマヘリ↢分布セ↡
憐↢愍セムガ衆生ヲ↡故ニ熾↢然ナラシムト正法ノ灯ヲ↡▼

 ^その時ときに、 仏ぶつ、 *月蔵がつぞう菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつに告つげてのたまはく、 ª*了りょう知ち清浄しょうじょう士しよ、 この賢劫げんごうの初はじめ人寿にんじゅ四し万歳まんざいの時とき、 *鳩留くる孫そん仏ぶつ、 世よに出しゅっ興こうしたまひき。 かの仏ぶつ、 無む量りょう阿あ僧そう祇ぎ億おく那由他なゆた百ひゃく千せんの衆しゅ生じょうのために*生しょう死じに回えして、 *正しょう法ぼう輪りんを輪転りんでんせしむ。 追おうて悪道あくどうに回えして、 善道ぜんどうおよび解げ脱だつの果かを安あん置ちせしむ。

▼爾ノ時ニ仏告ゲテ↢月蔵菩薩摩訶薩ニ↡言ノタマハク、▼了↢知スルニ清浄*士ヲ↡、此ノ賢劫ノ初ハジメ人寿四万歳ノ時、鳩留孫仏出↢興シタマヒキ於世ニ↡。彼ノ仏為ニ↢無量阿僧祇億那由他百千ノ衆*生ノ↡廻シテ↢生死ニ↡、輪↢転セシム正法輪ヲ↡。追オフテ廻シテ↢悪道ニ↡、安↢置セシム善道及ビ解脱ノ果ヲ↡。

^かの仏ぶつ、 この四し大だい天てん下げをもつて、 娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのう・他化たけ自じ在ざい天王てんのう・化け楽らく天王てんのう・兜と率そつ陀だ天王てんのう・須しゅ0442夜摩やま天王てんのう等とうに付ふ嘱ぞくせしむ。 護持ごじのゆゑに、 養育よういくのゆゑに、 衆しゅ生じょうを憐愍れんみんするがゆゑに、 三宝さんぼうの種しゅをして断絶だんぜつせざらしめんがゆゑに、 熾し然ねんならんがゆゑに、 *地じの精しょう気け、 *衆しゅ生じょうの精しょう気け、 *正しょう法ぼうの精しょう気け、 久ひさしく住じゅうせしめ増ぞう長じょうせんがゆゑに、 もろもろの衆しゅ生じょうをして三さん悪道まくどうを休く息そくせしめんがゆゑに、 三さん善道ぜんどうに趣向しゅこうせんがゆゑに、 四し天てん下げをもつて大梵だいぼんおよびもろもろの天王てんのうに付ふ嘱ぞくせしむ。

彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱セシム娑婆世界ノ*主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王等ニ↡。護持ノ故ニ、養育ノ故ニ、*憐ムガ↢愍*他ノ衆生ヲ↡故ニ、令シメムガ↣三宝ノ種ヲシテ不ラ↢断絶セ↡故ニ、熾然ナラムガ故ニ、地ノ精気、衆生ノ精気、正法ノ精気、久シク住セシメ増長セムガ故ニ、令メムガ↣諸ノ衆生ヲシテ休↢息セ三悪道ヲ↡故ニ、趣↢向セムガ三善道ニ↡故ニ、以テ↢四天下ヲ↡付↢嘱セシム大梵及ビ諸ノ天王ニ↡。

 ^かくのごとき漸ぜん次じに劫こう尽つき、 もろもろの天人てんにん尽つき、 一切いっさいの善業ぜんごう白びゃく法ほう尽滅じんめつして、 大悪だいあくもろもろの煩悩ぼんのう溺にゃくを増ぞう長じょうせん。

如キ↠是クノ漸次ニ劫尽ツキ、諸ノ天人尽ツキ、一切ノ善業白法尽滅シテ、増↢長セム大悪諸ノ煩悩溺ニヤクヲ↡。

^人寿にんじゅ三さん万歳まんざいの時とき、 *拘那くな含ごん牟尼むに仏ぶつ、 世よに出しゅっ興こうしたまはん。 かの仏ぶつ、 この四し大だい天てん下げをもつて、 娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのう・他化たけ自じ在ざい天王てんのう、 乃ない至し、 四し大だい天王てんのう、 およびもろもろの眷属けんぞくに付ふ嘱ぞくしたまふ。 護持ごじ養育よういくのゆゑに、 乃ない至し一切いっさい衆しゅ生じょうをして三さん悪道まくどうを休く息そくして三さん善道ぜんどうに趣向しゅこうせしめんがゆゑに、 この四し天てん下げをもつて大梵だいぼんおよび諸天しょてん王おうに付ふ嘱ぞくしたまへり。

人寿三万歳ノ時、拘那含牟尼仏、出↢興シタマハム於ニ↟世。彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱シタマフ娑婆世界ノ主大梵天王・他化自在天王乃至四大天王、及ビ諸ノ眷属ニ↡。護持養育ノ故ニ乃至令メムガ↧一切衆生ヲシテ休↢息シテ三悪道ヲ↡趣↦向セ三善0232道ニ↥故ニ、以テ↢此ノ四天下ヲ↡付↢嘱シタマフ大梵及ビ諸天王ニ↡。

 ^かくのごとき次し第だいに劫こう尽つき、 もろもろの天人てんにん尽つき、 白びゃく法ほうまた尽つきて、 大悪だいあくもろもろの煩悩ぼんのう溺にゃくを増ぞう長じょうせん。

如キ↠是クノ次第ニ劫尽ツキ、諸ノ天人尽ツキ、白法亦尽ツキテ、増↢長セム大悪諸ノ煩悩溺ヲ↡。

^人寿にんじゅ二に万歳まんざいの時とき、 *迦か葉しょう如来にょらい、 世よに出しゅっ興こうしたまふ。 かの仏ぶつ、 この四し大だい天てん下げをもつて、 娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのう・他化たけ自じ在ざい天王てんのう・化け楽らく天王てんのう・兜と率そつ陀だ天王てんのう・須しゅ夜摩やま天王てんのう・*憍きょう尸迦しか帝たい釈しゃく・四し天王てんのう等とう、 およびもろも0443ろの眷属けんぞくに付ふ嘱ぞくしたまへり。 護持ごじ養育よういくのゆゑに、 乃ない至し一切いっさい衆しゅ生じょうをして三さん悪道まくどうを休く息そくせしめ、 三さん善道ぜんどうに趣向しゅこうせしめんがゆゑに。 かの迦か葉しょう仏ぶつ、 この四し天てん下げをもつて、 大梵だいぼん・四し天王てんのう等とうに付ふ嘱ぞくし、 およびもろもろの天仙てんせん衆しゅ・七曜しちよう・十じゅう二に天てん童女どうにょ・二に十じゅう八はちっ宿しゅく等とうに付ふしたまへり。 護持ごじのゆゑに、 養育よういくのゆゑに。

人寿二万歳ノ時、迦葉如来出↢興シタマフ於世ニ↡。彼ノ仏以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、付↢嘱シタマヘリ娑婆世界ノ主大梵天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・憍カウ尸シ迦帝釈・四天王等、及ビ諸ノ眷属ニ↡。護持養育ノ故ニ、乃至令メムガ↧一切衆生ヲシテ休↢息セシメ三悪道ヲ↡趣↦向セ三善道ニ↥故ニ。彼ノ迦葉仏以テ↢此ノ四天下ヲ↡、付↢嘱シ大梵・四天王等ニ↡、及ビ付ケタマヘリ↢諸ノ天仙衆・七曜・十二天童女・二十八宿等ニ↡。護持ノ故ニ、養育ノ故ニ。

 ^了りょう知ち清浄しょうじょう士しよ、 かくのごとき次し第だいに、 いま劫こう濁じょく・煩悩ぼんのう濁じょく・衆しゅ生じょう濁じょく・大悪だいあく煩悩ぼんのう濁じょく・闘とう諍じょう悪あく世せの時とき、 人寿にんじゅ百ひゃく歳さいに至いたりて、 一切いっさいの白びゃく法ほう尽つき、 一切いっさいの諸悪しょあく闇翳あんえいならん。 世せ間けんはたとへば海水かいすいの一いち味みにして*大鹹だいかんなるがごとし、 大だい煩悩ぼんのうの味あじはひ世よに遍満へんまんせん。 集しゅう会えの悪党あくとう、 手てに髑どく髏ろを執とり、 血ちをその掌たなごころに塗ぬらん、 ともにあひ殺害せつがいせん。

了↢知スルニ清浄*士ヲ↡、如キ↠是クノ次第ニ、至ルマデ↢今劫濁・煩悩濁・衆生濁・大悪煩悩濁・闘諍悪世ノ時トキ、人寿百歳ニ↡、一切ノ白法尽ツキ、一切ノ諸悪闇アンクラク翳エイナラムカスカナリ。世間ハ譬ヘバ如シ↢海水ノ一味ニシテ大鹹カムナルガシハイシ ↡、大煩悩ノ味遍↢満セム於世ニ↡。集会ノ悪党タウ、アツマル手ニ執リ↢髑髏ヲ↡、血ヲ塗ラム↢其ノ掌ニ↡、共ニ相 ヒ殺害セム。

^かくのごときの悪あくの衆しゅ生じょうのなかに、 われいま菩ぼ提だい樹じゅ下げに出しゅっ世せしてはじめて正しょう覚がくを成なれり。 *提だい謂い・波利はりもろもろの商しょう人にんの食じきを受うけて、 かれらがためのゆゑに、 この閻えん浮ぶ提だいをもつて天てん・竜りゅう・乾闥けんだつ婆ば・鳩く槃はん荼だ・夜や叉しゃ等とうに分ぶん布ぷせしむ。 護持ごじ養育よういくのゆゑに。

如キノ↠是クノ悪ノ衆生ノ中ニ、我今出↢世シテ菩提樹下ニ↡初テ成レリ↢正覚ヲ↡。※受ケテ↢*提謂ヒトナリ波利ヒトナリノ諸ノ商シヤウ人ノ食ヲ↡為ノ↢彼 レ等ガ↡故ニ以テ↢此ノ閻浮提ヲ↡分↢布セシム天・竜・乾闥婆・鳩槃荼・夜叉等ニ↡。護持養育ノ故ニ。

 ^これをもつて大だい集じゅう十方じっぽう所しょ有うの仏ぶつ土ど、 一切いっさい無余むよの菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ等とう、 ことごとくここに来らい集じゅうせん。 乃ない至しこの娑しゃ婆ば仏ぶつ土どにおいて、 その処ところの百ひゃく億おくの日月にちがつ、 百ひゃく億おくの四し天てん下げ、 百ひゃく億おくの四し大海だいかい、 百ひゃく億おくの鉄てっ囲ち山せん・大だい鉄てっ囲ち山せん、 百ひゃく億おくの須しゅ弥み山せん、 百ひゃく億おくの*四し阿あ0444修しゅ羅ら城じょう、 百ひゃく億おくの四し大だい天王てんのう、 百ひゃく億おくの三さん十じゅう三さん天てん、 乃ない至し百ひゃく億おくの非ひ想そう非非ひひ想処そうしょ、 かくのごときの数かずを略りゃくせり。 娑しゃ婆ば仏ぶつ土ど、 われこの処ところにして仏ぶつ事じをなす。

以テ↠是ヲ大集十方所有ノ仏土、一切無余ノ菩薩摩訶薩等、悉ク来↢集セム此コヽニ↡。乃至於イテ↢此ノ娑婆仏土ニ↡、其ノ処ノ百億ノ日月、百億ノ四天下、百億ノ四大海、百億ノ鉄0233囲山・大鉄囲山、百億ノ須弥山、百億ノ四阿修羅城、百億ノ四大天王、百億ノ三十三天、乃至百億ノ非想非非想処、如キノ↠是クノ略セリ↠数ヲ。娑婆ノ仏土、我於ニ↢是ノ処↡而シテ作ナス↢仏事ヲ↡。

^乃ない至し娑しゃ婆ば仏ぶつ土どの所しょ有うのもろもろの梵ぼん天王てんのうおよびもろもろの眷属けんぞく、 魔ま天王てんのう・他化たけ自じ在ざい天王てんのう・化け楽らく天王てんのう・兜と率そつ陀だ天王てんのう・須しゅ夜摩やま天王てんのう・帝たい釈しゃく天王てんのう・四し大だい天王てんのう・阿あ修しゅ羅ら王おう・竜りゅう王おう・夜や叉しゃ王おう・羅ら刹せつ王おう・乾闥けんだつ婆ば王おう・緊きん那羅なら王おう・迦楼羅かるら王おう・摩睺まご羅伽らが王おう・鳩く槃はん荼だ王おう・餓鬼がき王おう・毘び舎遮しゃしゃ王おう・富ふ単たん那な王おう・迦かた富ふ単たん那な王おう等とうにおいて、 ことごとくまさに眷属けんぞくとしてここに大だい集じゅうせり。 法ほうを聞きかんためのゆゑに。

乃至於テ↢娑婆仏土ノ所有ノ諸ノ梵天王及ビ諸ノ眷属、魔天王・他化自在天王・化楽天王・兜率陀天王・須夜摩天王・帝釈天王・四大天王・阿修羅王・竜王・夜叉王・羅刹王・乾闥婆王・緊那羅王・迦楼羅王・摩睺羅伽王・鳩槃荼王・餓鬼王・毘舎遮王・富単那王・迦富単那王等ニ↡、悉ク将シ ニテ↢眷属ト↡於ニ↠此コヽ大集セリ。為ノ↠聞カム↠法ヲ故ニ。

^乃ない至しここに娑しゃ婆ば仏ぶつ土どの所しょ有うのもろもろの菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ等とうおよびもろもろの声しょう聞もん、 一切いっさい余よなく、 ことごとくここに来らい集じゅうせり。 聞法もんぼうのためのゆゑに。 われいまこの所しょ集しゅうの大衆だいしゅのために甚深じんじんの仏法ぶっぽうを顕けん示じせしむ。 また世せ間けんを護まもらんがためのゆゑに、 この閻えん浮ぶ提だい所しょ集しゅうの鬼き神じんをもつて分ぶん布ぷ安あん置ちす。 護持ごじ養育よういくすべしº と。

乃至於ニ↠此コヽ娑婆仏土ノ所有ノ諸ノ菩薩摩訶薩等及ビ諸ノ声聞、一切無ク↠余悉ク来↢集セリ此ニ↡。為ノ↢聞法ノ↡故ニ。我 レ今 マ為ニ↢此ノ所集ノ大衆ノ↡顕↢示セシム甚深ノ仏法ヲ↡。復為ノ↠護ラムガ↢世間ヲ↡故ニ以テ↢此ノ閻浮提所集ノ鬼神ヲ↡分布安置ス。護持養育スベシト。▼

 ^その時ときに、 世せ尊そん、 また娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうに問とうてのたまはく、 ª過去かこの諸仏しょぶつ、 この四し大だい天てん下げをもつて、 かつてたれに付ふ嘱ぞくして護持ごじ養育よういくをなさしめたまふぞº と。

▼爾ノ時ニ世尊復問テ↢娑婆世界ノ主大梵天王ニ↡言ノタマハク、▼過去ノ諸仏、以テ↢此ノ四大天下ヲ↡、曽テ付↢嘱シテ誰ニ↡令シメタマフゾト↠作サ↢護持養育ヲ↡。

^時ときに娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうまうさく、 ª過去かこの諸仏しょぶつ、 この四し天てん下げをもつて、 かつてわれおよび憍きょう尸迦しかに付ふ嘱ぞくしたまへりき。 護持ごじすることをなさ0445しめたまふ。 しかるにわれ失とがありて、 おのれが名なおよび帝たい釈しゃくの名なを彰あらわさず、 ただ諸しょ余よの天王てんのうおよび宿しゅく・曜よう・辰しんを称しょうせしむ、 護持ごじ養育よういくすべしº と。

▼時ニ娑婆世界ノ主大梵天王言マフサク、▼過去ノ諸仏、以テ↢此ノ四天下ヲ↡、曽テ付↢嘱シタマヘリキ我 レ及ビ憍尸迦ニ↡。令シメタマフ↠作サ↢護持スルコトヲ↡。▼而テ我有リヤ↠失不イナヤ、彰 ハス↢己オノレガ名ナ及ビ帝釈ノ名ヲ↡、但称セシム↢諸余ノ天王及ビ宿・曜・辰ヲ↡、護持養育スベシト。

^その時ときに、 娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうおよび憍きょう尸迦しか帝たい釈しゃく、 仏足ぶっそくを頂ちょう礼らいしてこの言ごんをなさく、 ª大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 *大徳だいとく修しゅ伽陀がた、 われいま過とがを謝しゃすべし。 われ小しょう児にのごとくして愚痴ぐち無智むちにして、 如来にょらいの前みまえにして*みづから称名しょうみょうせざらんや。

爾ノ時ニ娑婆世界ノ主大梵天王及ビ憍尸迦帝釈0234、頂↢礼シ仏足ヲ↡而テ作サク↢是ノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、大徳修伽陀、我 レ今 マ謝スベシ↠過ヲ。我如クシテ↢小児ノ↡愚痴無智ニシテ、於シテ↢如来ノ前ミマヘ↡不ラムヤ↢自ミヅカラ称名セ↡。

^大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 やや願ねがはくは*容恕ようじょしたまへ。 大徳だいとく修しゅ伽陀がた、 やや願ねがはくは容恕ようじょしたまへ。 諸来しょらいの大衆だいしゅ、 また願ねがはくは容恕ようじょしたまへ。

大徳婆伽婆、唯ヤヽ願クハ容恕ジヨシタマヘ。大徳修伽陀、唯ヤヽ願クハ容恕シタマヘ。諸来ノ大衆、亦願クハ容恕シタマヘ。▼

^われ境きょう界がいにおいて言説ごんせつ教令きょうりょうす。 自じ在ざいの処ところを得えて護持ごじ養育よういくすべし。 乃ない至しもろもろの衆しゅ生じょうをして善道ぜんどうに趣おもむかしめんがゆゑに。

▼我於イテ↢境界ニ↡言説教令ス。得テ↢自在ノ処ヲ↡護持養育スベシ。乃至令メムガ↣諸ノ衆生ヲシテ趣 ムカ↢善道ニ↡故ニ。

^われら曽むかし鳩留くる孫そん仏ぶつのみもとにして、 すでに教勅きょうちょくを受うけたまはりて、 乃ない至し三宝さんぼうの種しゅをしてすでに熾し然ねんならしむ。

我等曽ムカシ於シテ↢鳩留孫仏ノミモトニ↡、已ニ受ウケタマハリテ↢教勅ヲ↡、乃至令シム↣三宝ノ種ヲシテ已ニ作ナラ↢熾然↡。

^拘那くな含ごん牟尼むに仏ぶつ、 迦か葉しょう仏ぶつの所みもとにして、 われ教勅きょうちょくを受うけたまはりしこと、 またかくのごとし。 三宝さんぼうの種しゅにおいてすでにねんごろにして熾し然ねんならしむ。 地じの精しょう気け、 衆しゅ生じょうの精しょう気け、 *正しょう法ぼうの味あじはひ醍だい醐ごの精しょう気け、 久ひさしく住じゅうして増ぞう長じょうせしむるがゆゑに。

拘那含牟尼仏・迦葉仏ノ所 モトニシテ、我 レ受ウケタマハリシコト↢教勅ヲ↡、亦如シ↠是クノ。於イテ↢三宝ノ種ニ↡已ニ勤ネムゴロニシテ熾然ナラシム。地ノ精気ケ、衆生ノ精気、正法ノ味醍醐ノ精気、久シク住シテ増長セシムルガ故ニ。

^またわがごときも、 いま世せ尊そんの所みもとにして、 教勅きょうちょくを頂ちょう受じゅし、 おのれが境きょう界がいにおいて、 言説ごんせつ教令きょうりょうす。

亦如キモ↠我ガ今イマ於シテ↢世尊ノ所ミモトニ↡、※頂↢受シ教勅シテ↡於テ↢己 レガ境界ニ↡、言説教令ス。

^自じ在ざいの処ところを得えて、 一切いっさい闘とう諍じょう・飢け饉ごんを休く息そくせしめ、 乃ない至し三宝さんぼうの種しゅ断絶だんぜつせざらしむるがゆゑ0446に、 三種さんしゅの精しょう気け久ひさしく住じゅうして増ぞう長じょうせしむるがゆゑに、 悪あく行ぎょうの衆しゅ生じょうを*遮しゃ障しょうして行ぎょう法ほうの衆しゅ生じょうを護ご養ようするがゆゑに、 衆しゅ生じょうをして三さん悪道まくどうを休く息そくせしめ、 三さん善道ぜんどうに趣向しゅこうするがゆゑに、 仏法ぶっぽうをして久ひさしく住じゅうせんことを得えしめんがためのゆゑに、 ねんごろに護持ごじをなすº と。

得テ↢自在ノ処ヲ↡、休↢息セシメ一切闘諍・飢饉ヲ↡、乃至令ムルガ↣三宝ノ種不ザラ↢断絶セ↡故ニ、三種ノ精気久シク住シテ増長セシムルガ故ニ、遮シヤ↣障シテ悪行ノ衆生ヲ↡護↢養スルガ行法ノ衆生ヲ↡故ニ、休↢息セシメ衆生ヲシテ三悪道ヲ↡、趣↢向スルガ三善道ニ↡故ニ、為ノ↠令メムガ↣仏法ヲシテ得エ↢久シク住セムコトヲ↡故ニ、勤ネンゴロニ作ナスト↢護持ヲ↡。

 ^仏ぶつののたまはく、 ª善よいかな善よいかな、 *妙みょう丈じょう夫ぶ、 なんぢかくのごとくなるべしº と。

▼仏ノ言ノタマハク、善イ哉カナ善イ哉カナ、妙丈夫、汝 ヂ応ベシト↠如クナル↠是クノ。▼

^その時ときに、 仏ぶつ、 百ひゃく億おくの大梵だいぼん天王てんのうに告つげてのたまはく、 ª所しょ有うの行ぎょう法ほう、 法ほうに住じゅうし法ほうに順じゅんじて悪あくを厭捨えんしゃせんものは、 いまことごとくなんだちが手てのうちに付ふ嘱ぞくす。 なんだち*賢首けんじゅ、 百ひゃく億おくの四し天てん下げ各々かくかくの境きょう界がいにおいて言説ごんせつ教令きょうりょうす。

▼爾ノ時ニ仏告ゲテ↢百億ノ大梵天王ニ↡言ノタマハク、所有ノ行法住シ↠法ニ順ジテ↠法ニ厭↢捨セム悪ヲ↡者 ノハ、※*今悉ク付↢嘱ス汝等ナンダチガ手ノ中ウチニ↡。汝等ダチ賢首、於テ↢百億ノ四天下各各ノ境界ニ↡言説教令ス。

^自じ在ざいの処ところを得えて、 所しょ有うの衆しゅ生じょう、 弊悪へいあく・粗そ獷こう・悩害のうがい、 他たにおいて慈じ愍みんあることなし。 後世ごせの畏おそれを観かんぜずして、 *刹せつ利り心しんおよび婆羅ばら門もん・毘び舎しゃ・首しゅ陀だの心こころを触悩そくのうせん、 乃ない至し畜ちく生しょうの心こころを触悩そくのうせん。 かくのごとき殺せっ生しょうをなす因縁いんねん乃ない至し邪見じゃけんをなす因縁いんねん、 その所しょ作さに随したがひて非時ひじの風ふう雨うあらん。 乃ない至し地じの精しょう気け、 衆しゅ生じょうの精しょう気け、 正しょう法ぼうの精しょう気け、 損減そんげんの因縁いんねんをなさしめば、 なんぢ*遮しゃ止しして善法ぜんぽうに住じゅうせしむべし。

得テ↢自在ノ処ヲ↡、所有ノ衆生、弊悪・麁ソ獷クワウ・悩害、於テ↠他ニ無シ↠有ルコト↢慈愍↡。不シテ↠観ゼ↢後世ノ畏ヲ↡、触↢悩セム刹利心及ビ婆羅門・毘舎・首0235陀ノ心ヲ↡、乃至触↢悩セム畜生ノ心ヲ↡。如キ↠是クノ作ナス↢殺生ヲ↡因縁乃至作ナス↢邪見ヲ↡因縁、随ヒテ↢其ノ所作ニ↡非時ノ風雨アラム、乃至令メ↣地ノ精気、衆生ノ精気、正法ノ精気、作ナサ↢損減ノ因縁ヲ↡者バ、汝応ベシ↢遮止シテ令ム↟住セ↢善法ニ↡。

^もし衆しゅ生じょうありて、 善ぜんを得えんと欲おもはんもの、 法ほうを得えんと欲おもはんもの、 生しょう死じの彼ひ岸がんに度どせんと欲おもはんもの、 *檀だん婆羅ばら蜜みつを修しゅ行ぎょうすることあらんところのもの、 乃ない至し、 般はん0447若にゃ波羅はら蜜みつを修しゅ行ぎょうせんもの、 所しょ有うの行ぎょう法ほう、 法ほうに住じゅうせん衆しゅ生じょう、 および行ぎょう法ほうのために事じを営いとなまんもの、 かのもろもろの衆しゅ生じょう、 なんだちまさに護持ごじ養育よういくすべし。

若シ有リテ↢衆生↡、欲オモハム↠得ムト↠善ヲ者 ノ、欲ハム↠得ムト↠法ヲ者 ノ、欲ハム↠度セムト↢生死ノ彼岸ニ↡者 ノ、所ノ↠有ラム↣修↢行スルコト檀波羅蜜ヲ↡者 ノ、乃至修↢行セム般若波羅蜜ヲ↡者 ノ、所有ノ行法住セム↠法ニ衆生、及ビ為ニ↢行法ノ↡営マム↠事ヲ者 ノ、彼ノ諸ノ衆生、汝等ナンダチ応ベシ↢当ニ護持養育ス↡。

^もし衆しゅ生じょうありて、 受じゅ持じし読誦どくじゅして、 他たのために演説えんぜつし、 種々しゅじゅに経きょう論ろんを解げ説せつせん。 なんだちまさに*かのもろもろの衆しゅ生じょうと*念ねん持じ方便ほうべんして*堅けん固ご力りきを得うべし。 所聞しょもんに入いりて忘わすれず、 諸法しょほうの相そうを智ち信しんして生しょう死じを離はなれしめ、 八はっ聖しょう道どうを修しゅして*三昧さんまいの根こん、 相応そうおうせん。

若シ有リテ↢衆生↡、受持シ読誦シテ、為ニ↠他ノ演説シ、種種ニ解↢説セム経論ヲ↡。汝等ダチ当ニシ↧与ト↢彼ノ諸ノ衆生↡念持方便シテ得ウ↦堅固力ヲ↥。入リテ↢所聞ニ↡不ズ↠忘レ、智↢信シテ諸法ノ相ヲ↡令シメ↠離レ↢生死ヲ↡、修シテ↢八聖道ヲ↡三昧ノ根相応セム。

^もし衆しゅ生じょうありて、 なんぢが境きょう界がいにおいて法ほうに住じゅうせん。 奢しゃ摩他また・毘婆びば舎しゃ那な、 次し第だい方便ほうべんしてもろもろの三昧さんまいと相応そうおうして、 ねんごろに*三種さんしゅの菩ぼ提だいを修しゅ習じゅうせんと求もとめんもの、 なんだちまさに*遮しゃ護ごし摂しょう受じゅして、 ねんごろに*捨しゃ施せをなして、 乏ぼう少しょうせしむることなかるべし。

若シ有リテ↢衆生↡、於テ↢汝ガ境界ニ↡住セム↠法ニ、奢摩他・毘婆舎那、次第方便シテ与ト↢諸ノ三昧↡相応シテ、勤ネムゴロニ求メム↣修↢習セムト三種ノ菩提ヲ↡者 ノ、汝等ダチ応シ↧当ニ遮護シ摂受シテ、勤ニ作シテ↢捨施ヲ↡、勿ル↞令ムルコト↢乏ボウ少セ↡。

^もし衆しゅ生じょうありて、 その飲食おんじき・衣え服ぶく・臥具がぐを施ほどこし、 病びょう患げんの因縁いんねんに湯薬とうやくを施せせんもの、 なんだちまさにかの施せ主しゅをして五利ごり増ぞう長じょうせしむべし。 なんらをか五いつつとする。 一ひとつには寿じゅ増ぞう長じょうせん、 二ふたつには財ざい増ぞう長じょうせん、 三みつには楽らく増ぞう長じょうせん、 四よつには善ぜん行ぎょう増ぞう長じょうせん、 五いつつには慧え増ぞう長じょうするなり。

若シ有リテ↢衆生↡、施シ↢其ノ飲食・衣服・臥具ヲ↡、病患ノ因縁ニ施セム↢湯薬ヲ↡者 ノ、汝等ダチ応ベシ↣当ニ令ム↢彼ノ施主ヲシテ五利増長セ↡。何等ラヲカ為スル↠五ト。一ニ者ハ寿増長セム、二ニ者ハ財増長セム、三ニ者ハ楽増長セム、四ニ者ハ善行増長セム、五ニ者ハ慧増長スルナリ。

^なんだち長じょう夜やに利り益やく安楽あんらくを得えん。 この因縁いんねんをもつて、 なんだちよく六ろっ波羅ぱら蜜みつを満みてん、 久ひさしからずして一切いっさい種しゅ智ちを成じょうずることを得えんº と。

汝等ダチ長夜ニ得エム↢利益ヤク安楽ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡、汝等ダチ能ク満テム↢六波羅蜜ヲ↡、不ズシテ↠久シカラ得エム↠成ズルコトヲ↢一切種智ヲ↡。▼

 ^0448時ときに娑しゃ婆ば世せ界かいの主しゅ、 大梵だいぼん天王てんのうを首しゅとして、 百ひゃく億おくのもろもろの梵ぼん天王てんのうとともに、 ことごとくこの言ごんをなさく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 われらおのおのにおのれが境きょう界がい、 弊悪へいあく・粗そ獷こう・悩害のうがいにおいて、 他たにおいて慈じ愍みんの心こころなく、 後世ごせの畏おそれを観かんぜざらん。 乃ない至しわれまさに遮しゃ障しょうし、 かの施せ主しゅのために*五事ごじを増ぞう長じょうすべしº と。

▼時ニ娑婆世界ノ主大梵天王ヲ為シテ↠首ト、共ニ↢百億ノ諸ノ梵天王ト↡、咸コトゴトク作サク↢是ノ言ヲ↡、如シ↠是クノ如0236シ↠是クノ。大徳婆伽婆、我等ラ各各ニ於イテ↢己 レガ境界、弊悪・麁獷・悩害ニ↡、於イテ↠他ニ無ク↢慈愍ノ心↡、不ラム↠観ゼ↢後世ノ畏ヲ↡、乃至我 レ当ニシト↧遮障シ与ト↢彼ノ施主↡増↦長ス五事ヲ↥。

^仏ぶつののたまはく、 ª善よいかな善よいかな、 なんぢかくのごとくなるべしº と。

▼仏ノ言ハク、善イ哉善イ哉、汝応シト↠如クナル↠是クノ。

^その時ときに、 また一切いっさいの菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ、 一切いっさいの諸しょ大だい声しょう聞もん、 一切いっさいの天てん・りゅう竜、 乃ない至し一切いっさいの人にん・非ひ人にん等とうありて、 讃ほめてまうさく、 ª善よいかな善よいかな、 *大だい雄おう猛みょう士じ、 なんだちかくのごとき法ほう久ひさしく住じゅうすることを得え、 もろもろの衆しゅ生じょうをして悪道あくどうを離はなるることを得え、 すみやかに善道ぜんどうに趣おもむかしめんº と。

▼爾ノ時ニ復有リテ↢一切ノ菩薩摩訶薩、一切ノ諸大声聞、一切ノ天・竜、乃至一切人・非人等↡、讃メテ言サク、善イ哉善イ哉、大雄猛士、汝等ダチ如キ↠是クノ法得エ↢久シク住スルコトヲ↡、令シメムト↧諸ノ衆生ヲシテ得エ↠離ルヽコトヲ↢悪道ヲ↡、速ニ趣 ムカ↦善道ニ↥。

 ^その時ときに、 世せ尊そん重かさねてこの義ぎを明あかさんと欲おぼしめして、 偈げを説ときてのたまはく、

▼爾ノ時ニ世尊欲オボシメシ↣重ネテ明カナラムト↢此ノ義ヲ↡而テ説キテ↠偈ヲ言ノタマハク、

^ªわれ、 月蔵がつぞうに告つげていはく、 この賢劫げんごうの初はじめに入いりて、 *鳩留くる仏ぶつ、 梵ぼん等とうに四し天てん下げを付ふ嘱ぞくしたまふ。

▼我告ゲテ↢月蔵ニ↡言ハク入リテ↢此ノ賢劫ノ初ニ↡
鳩*留仏付↢嘱シタマフ梵等ニ四天下ヲ↡

^諸悪しょあくを遮しゃ障しょうするがゆゑに、 正しょう法ぼうの眼まなこを熾し然ねんならしむ。 もろもろの悪あく事じを捨しゃ離りし、 行ぎょう法ほうのものを護持ごじし、

遮↢障スルガ諸悪ヲ↡故ニ熾↢然ナラシム正法ノ眼ヲ↡
捨↢離シ諸ノ悪事ヲ↡護↢持シ行法ノ者ヲ↡

^三宝さんぼうの種しゅを断たたず、 *三さん精しょう気けを増ぞう長じょうし、 もろもろの悪趣あくしゅを休く息そくし、 もろもろの善道ぜんどうに向むかへしむ。

不ズ↠断タタ↢三宝ノ種ヲ↡増↢長シ三精気ヲ↡
休↢息シ諸ノ悪趣ヲ↡令シム↠向ヘ↢諸ノ善道ニ↡

^拘那くな含ごん牟尼むに、 また大だい梵王ぼんのう、 他化たけ・化け楽らく天てん、 乃ない至し四し天王てんのうに嘱ぞくしたまふ。

拘那含牟尼復嘱シタマフ↢大梵王
他化・化楽天乃至四天王ニ↡

^次つぎ後のちに迦か葉しょう仏ぶつ、 ま0449た梵ぼん天王てんのう、 化け楽らく等とうの四し天てん、 帝たい釈しゃく・護世ごせ王おう、

次後ニ迦葉仏復嘱シタマフ↢梵天王
化楽等ノ四天帝釈・護世王

^過去かこのもろもろの天仙てんせんに嘱ぞくしたまふ。 もろもろの世せ間けんのためのゆゑに、 もろもろの*曜よう宿しゅくを安あん置ちして、 護持ごじし養育よういくせしめたまへり。

過去ノ諸ノ天仙ニ↡為ノ↢諸ノ世間ノ↡故ニ
安↢置シテ諸ノ曜宿シウヲ↡令シメタマヘリ↢護持シ養育セ↡

^濁じょく悪あく世せに至いたりて、 白びゃく法ほう尽滅じんめつせん時とき、 われ*独覚どっかく無む上じょうにして、 人民にんみんを安あん置ちし護まもらん。

至リテ↠於ニ↢濁悪世↡白法尽滅セム時
我 レ独覚無上ニシテ安↢置シ護ラム↣人民ヲ↡

^いま大衆だいしゅの前まえにして、 しばしばわれを悩乱のうらんせん。 まさに説法せっぽうを*捨すつべし。 われを置たもつて護持ごじせしめよ。

今イマ於シテ↢大衆ノ前ニ↡数シバ数シバ悩↢乱セム我ヲ↡
応シ↣当ニ捨ツ↢説法ヲ↡置テ↠我ヲ令メヨ↢護持セ↡

^十方じっぽうのもろもろの菩ぼ薩さつ、 一切いっさいことごとく来らい集じゅうせん。 天王てんのうもまたこの娑しゃ婆ば仏ぶっ国こく土どに来きたらしめん。

0237十方ノ諸ノ菩薩一切悉ク来集セム
天王モ亦来ラシメム↢此コノ娑婆仏国土ニ↡

^われ大だい梵王ぼんのうに問とはく、 «たれか昔むかし護持ごじせしもの» と。 帝たい釈しゃく・大梵だいぼん天てん、 余よの天王てんのうを指示しじす。

我問ハク↢大梵王ニ↡誰 レカ昔ムカシ護持セル者 ノト
帝釈・大梵天指↢示ス余ノ天王ヲ↡

^時ときに釈しゃく・梵王ぼんのう、 過とがを導どう師しに謝しゃしていはまく、 «われら王おうの処ところを所ところとして、 一切いっさいの悪あくを遮しゃ障しょうし

於時ニ釈・梵王謝シテ↢過トガヲ導師ニ↡言ハマク
我等ラ所 トニシテ↢王ノ処ノ↡遮↢障シ一切ノ悪ヲ↡

^三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめ、 三さん精しょう気けを増ぞう長じょうせん。 諸悪しょあくの朋ともを遮しゃ障しょうして、 善ぜんの朋党ほうとうを護持ごじせしむ»º」 と。 以上抄出

熾↢然ナラシメ三宝ノ種ヲ↡増↢長セム三精気ヲ↡
遮↢障シテ諸悪ノ朋トモホウヲ↡護↢持セシムト善ノ朋ホウ党ヲ↡」 已上抄出

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅳ)「諸魔得敬信品」(護持の誓いを発すべきを明かす)

【91】^¬月蔵がつぞう経きょう¼ 巻かん第七だいしち 「諸しょ魔ま得とく敬きょう信しん品ぼん」 第だい十じゅうにのたまはく (大集経)、

¬月蔵ザウ経キヤウ¼▼巻第七「諸魔得敬信品」第十ニ*言ク、

^「その時ときに、 また百ひゃく億おくの諸しょ魔まあり。 ともに同どう時じに座ざよりして起たちて、 合がっ掌しょうして仏ぶつに向むかひたてまつりて、 仏足ぶっそくを頂ちょう礼らいして仏ぶつにまうしてまうさく、 ª世せ尊そん、 われらまたまさに大だい勇ゆう猛みょうを発おこして仏ぶつの正しょう法ぼうを護持ごじし養育よういくして、 三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめて、 久ひさしく世せ間けんに住じゅうせしむ。 いま地じの精しょう気け、 衆しゅ生じょうの精しょう気け、 法ほうの精しょう気け、 み0450なことごとく増ぞう長じょうせしむべし。 ▲もし世せ尊そん、 声しょう聞もん弟子でしありて、 法ほうに住じゅうし法ほうに順じゅんじて三業さんごう相応そうおうして修しゅ行ぎょうせば、 われらみなことごとく護持ごじし養育よういくして、 一切いっさいの*所須しょしゅ乏とぼしきところなからしめんº と。 乃至

「▼爾ノ時ニ復有リ↢百億ノ諸魔↡。倶共 トモ ニ同時ニ従リ↠座而シテ起チテ、合掌シテ向ムカヒタテマツリテ↠仏ニ、頂↢礼シ仏足ヲ↡而テ白シテ↠仏ニ言サク、世尊、我等ラ亦当ニシ↧発シテ↢大勇猛ヲ↡護↢持シ養↣育シテ仏之正法ヲ↡、熾シサカリ↢*然ナラシメテ三宝ノ種ヲ↡、久シク住セシム↢於世間ニ↡、今 マ地ノ精気タマシイ、衆生ノ精気、法ノ精気、皆悉ク増長セシム↥。若シ有リテ↢世尊、声聞弟子↡、住シ↠法ニ順ジテ↠法ニ三業相応シ而テ修行セ者バ、我等ラ皆悉ク護持シ養育シテ、一切ノ所須モチヰル令メムト↠无カラ↠所↠乏トモシキ。 乃至

 ^ªこの娑しゃ婆ば界かいにして、 初はじめ賢劫げんごうに入いりし時とき、 *拘楼くる孫そん如来にょらい、 すでに四し天てんを^帝たい釈しゃく・梵ぼん天王てんのうに嘱そくせしめて、 護持ごじし養育よういくせしむ。 三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめ、 三さん精しょう気けを増ぞう長じょうせしめたまひき。

▼於シテ↢此ノ娑婆界ニ↡初メ入リシ↢賢劫ニ↡時
拘楼孫ソ 如来已ニ嘱セシメテ↢於四*天ヲ
帝釈・梵天王ニ↡護持シ令ム↢養育セ↡
熾↢燃ナラシメ三宝ノ種ヲ↡増↢長セシメタマヒキ三精気ヲ↡

^拘那くな含ごん牟尼むに、 また四し天てん下げを梵ぼん・釈しゃく・諸天しょてん王のうに嘱ぞくして、 護持ごじし養育よういくせしむ。 ^迦か葉しょうもまたかくのごとし、 すでに四し天てん下げを梵ぼん・釈しゃく・護世ごせ王おうに嘱ぞくして、 行ぎょう法ほうのひとを護持ごじせしめき。

拘那含牟尼亦嘱シテ↢四天下ヲ
梵・釈・諸天王ニ↡護持シ令ム↢養育セ↡
迦葉モ亦如シ↠是クノ已ニ嘱シテ↢四天下ヲ
梵・釈・護世王ニ↡護↢持セシメキ行法ノ者ヒトヲ↡

^過去かこの諸しょ仙衆せんしゅ、 および諸しょ天仙てんせん、 星しょう辰しんもろもろの宿しゅく曜よう、 また嘱ぞくし分ぶん布ぷせしめき。 ^われ五ご濁じょく世せに出いでて、 もろもろの魔まの怨あだを降伏ごうぶくして、 大だい集しゅう会えをなして、 仏ぶつの正しょう法ぼうを顕現けんげんせしむ。 乃至

過去ノ諸仙ヒジリ衆及以 オヨビ 諸天仙
星辰諸ノ宿シウ曜亦嘱シ令シメキ↢分布セ↡
0238我出デヽ↢五濁世ニ↡降↢伏シ諸ノ魔ノ怨ヲ↡
而テ作ナシテ↢大集会ヲ↡顕↢現セシム仏ノ正法ヲ↡▼ 乃至

^一切いっさいの諸天しょてん衆しゅ、 ことごとくともに仏ぶつにまうしてまうさく、 «われら王おうの処ところを所ところにして、 みな正しょう法ぼうを護持ごじし、 ^三宝さんぼうの種しゅを熾し然ねんならしめ、 三さん精しょう気けを増ぞう長じょうせしめん。 もろもろの病びょう疫やく、 飢け饉ごんおよび闘とう諍じょうを息やめしめん»º」 と。 乃至略出

▼一切ノ諸天衆咸ク共ニ白シテ↠仏ニ言サク
我等ラ所ニシテ↢王ノ処ノ↡皆 ナ護↢持シ正法ヲ↡
熾↢燃ナラシメ三宝ノ種ヲ↡増↢長セシメムト三精気ヲ↡
令シメムト↠息ヤメ↢諸ノ病疫ヤク飢饉及ビ闘諍ヲ↡」 乃至略*出

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅴ)「提頭頼大王護持品」(四王の護持を誓ふことを明かす)

【92】^「提だい頭頼ずらた天王てんのう護持ごじ品ぼん」 にのたまはく (大集経)、

▼「提頭頼天王護持品ニ」云ク、

^「仏ぶつののたまはく、 ª*日にっ天てん子し・*月がっ天てん子し、 なんぢわが法ほうにおいて護持ごじし養育よういくせば、 なんぢ長ちょう寿じゅにしてもろ0451もろの衰患すいげんなからしめんº と。

「▼仏ノ言ノタマハク日天子・月天子、汝於テ↢我ガ法ニ↡護持シ養育セバ、令メムト↣汝 ヂ長寿ニシテ无カラ↢諸ノ衰スイ患グヱン↡オトロフ。

^その時ときに、 また百ひゃく億おくの提だい頭頼ずらた天王てんのう、 百ひゃく億おくの毘楼びる勒叉ろくしゃ天王てんのう、 百ひゃく億おくの毘楼びる博叉はくしゃ天王てんのう、 百ひゃく億おくの毘び沙門しゃもん天王てんのうあり。 かれら同どう時じに、 および眷属けんぞくと座ざよりして起たちて、 衣え服ぶくを整しょう理りし、 合がっ掌しょうし敬きょう礼らいして、 かくのごときの言ごんをなさく、 ª大徳だいとく婆伽ばが婆ば、 われらおのおのおのれが天てん下げにして、 ねんごろに仏法ぶっぽうを護持ごじし養育よういくすることをなさん。 三宝さんぼうの種しゅ、 熾し然ねんとして久ひさしく住じゅうし、 三種さんしゅの精しょう気けみなことごとく増ぞう長じょうせしめんº と。 乃至

▼爾ノ時ニ復有リ↢百億ノ提頭頼天王、百億ノ毘楼勒叉天王、百億ノ毘楼博叉天王、百億ノ毘沙門天王↡。彼 レ等同時ニ、及ビ与ト↢眷属↡従リ↠座而シテ起チテ、整シヤウ↢ツクロフ 理リシツクロフ衣服ヲ↡、合掌シ敬礼シテ、作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、大徳婆伽婆、我等 ラ各各於シテ↢己オノレガ天下ゲニ↡、懃ネムゴロニ作サム↤護↢持シ養↣育スルコトヲ仏法ヲ↡。令メムト↢三宝ノ種タネ熾*然トシテ久シク住シ、三種ノ精気皆 ナ悉ク増長セ↡。 乃至

^ªわれいままた上じょう首しゅ毘び沙門しゃもん天王てんのうと同心どうしんに、 この閻えん浮ぶ提だいと北方ほっぽうとの諸仏しょぶつの法ほうを護持ごじすº」 と。 以上略出

我今 マ亦与ト↢上首毘沙門天王↡同心ニ護↢持スト此ノ閻浮提ト北方トノ諸仏ノ法ヲ↡。 已上略出

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅵ)「忍辱品」(仏法を護持せば福報無量なることを明かし、帰仏者を損悩せば則ち堕獄の重罪を得ることを明かす)

【93】^¬月蔵がつぞう経きょう¼ 巻かん第八だいはち 「忍辱にんにく品ぼん」 第だい十じゅう六ろくにのたまはく (大集経)、

¬*月蔵経¼▼巻第八「忍*辱品」*第十六ニ*言ク、

^「仏ぶつののたまはく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 なんぢがいふところのごとし。

「▼仏ノ言ハク、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。如シ↢汝ガ所ノ↟言フ。

^*もしおのれが苦くを厭いとひ楽らくを求もとむるを愛あいすることあらん、 まさに諸仏しょぶつの正しょう法ぼうを護持ごじすべし。 これよりまさに無む量りょうの福報ふくとくを得うべし。

▼若シ有ラム↠愛スルコト↢己 レガ厭ヒ↠苦ヲ求ムルヲ↟楽ヲ、応シ↣当ニ護↢持ス諸仏ノ正法ヲ↡。従リ↠此当ニシ↠得↢無量ノ福報ヲ↡。

^▲もし衆しゅ生じょうありて、 わがために出しゅっ家けし、 鬚髪しゅほつを剃除たいじょして袈裟けさを被ひ服ぶくせん。 たとひ戒かいを持たもたざらん、 かれらことごとくすでに涅ね槃はんの印いんのために印いんせらるるなり。

▼若シ有リテ↢衆生↡、為ニ↠我ガ出家シ、剃↢除シテ鬚髪ヲ↡被↢服セム袈裟ヲ↡。設ヒ不ラム↠持タ↠戒ヲ、彼 レ等ラ悉ク已ニ為ニ↢涅槃ノ印之↡所ラルヽ↠印セ也。

^◆もしまた出しゅっ家けして戒かいを持たもたざらんもの、 非ひ法ほうをもつてして悩乱のうらんをなし、 罵め辱にくし毀呰きしせん、 *手てをもつて刀とう杖じょう*打ちょう縛ばくし、 *斫しゃく截せつすることあらん。 もし衣え鉢はつを奪うばひ、 および種々しゅじゅの資し生しょうの具ぐを0452奪うばはんもの、 この人ひとすなはち三さん世ぜの諸仏しょぶつの真実しんじつの報身ほうじんを壊えするなり。 すなはち一切いっさい天人てんにんの眼目げんもくを排はらふなり。

▼若シ復出家シテ不ラム↠持タ↠戒ヲ者モノ、有ラム↧以テ↢非法ヲ↡而シテ作ナシ↢悩乱ヲ↡、罵辱シ毀クヰソシリ0239呰セムソシル 、以テ↠手ヲ刀杖打チヤウ縛バクシ斫シヤククダキ截キルスルコト↥。若シ奪ウバヒ↢衣鉢ヲ↡、及ビ奪ウバハム↢種種ノ資生ノ具ヲ↡者 ノ、是ノ人ハ則チ壊スルナリ↢三世ノ諸仏ノ真実ノ報身ヲ↡。則チ排ハラフナリ↢一切天人ノ眼目ヲ↡。

^◆この人ひと、 諸仏しょぶつ所しょ有うの正しょう法ぼう三宝さんぼうの種しゅを隠没おんもつせんと欲おもふがためのゆゑに、 *もろもろの天人てんにんをして利り益やくを得えざらしむ。 地じ獄ごくに堕だせんゆゑに、 三さん悪道まくどう増ぞう長じょうし盈満ようまんをなすなりº」 と。 以上

是ノ人為ノ↠欲フガ↣隠↢没セムト諸仏所有ノ正法三宝ノ種ヲ↡故ニ、令シム↢諸ノ天人ヲシテ不ラ↟得↢利益ヲ↡。堕セム↢地獄ニ↡故ニ、為ナスナリト↢三悪道増長シ盈満ヲ↡。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅶ)「忍辱品」(諸天善鬼神の仏弟子を擁護することを明かす)

 ^(大集経) ^「▲その時ときに、 また一切いっさいの天てん・竜りゅう乃ない至し一切いっさいの迦かた富ふ単たん那な・人にん・非ひ人にん等とうありて、 みなことごとく合がっ掌しょうしてかくのごときの言ごんをなさく、 ªわれら、 仏ぶつの一切いっさい声しょう聞もん弟子でし、 乃ない至しもしまた禁戒きんかいを持たもたざれども、 鬚髪しゅほつを剃除たいじょし袈裟けさを片かたに着きんものにおいて、 師し長ちょうの想おもいをなさん。 護持ごじ養育よういくしてもろもろの所須しょしゅを与あたへて乏ぼう少しょうなからしめん。

▼*又言ク、「爾ノ時ニ復有リテ↢一切ノ天・竜、乃至一切ノ迦富単タン那ナ・人・非人等↡、皆悉ク合掌シテ作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、我等於イテ↧仏ノ一切声聞弟子、乃至若シ復 タ不レドモ↠持タ↢禁キム戒ヲ↡、剃ソル↢除シ鬚ヒゲ髪ヲ↡著キム↢袈裟ヲ片カタニ↡者 ノニ↥、作サム↢師長ノ想ヲ↡。護持養育シテ与アタヘテ↢諸ノ所須ヲモチヰル↡令メム↠無カラ↢乏ボフ少↡。

^◆もし余よの天てん・竜りゅう乃ない至し迦かた富ふ単たん那な等とう、 その悩乱のうらんをなし、 乃ない至し悪心あくしんをして眼まなこをもつてこれを視みば、 われらことごとくともに、 かの天てん・竜りゅう・富ふ単たん那な等とう所しょ有うの諸相しょそう欠減けつげんし醜しゅう陋るならしめん。 かれをしてまたわれらとともに住じゅうし、 ともに食じきを与あたふることを得えざらしめん。 またまた同処どうしょにして戯げ笑しょうを得えじ。 かくのごとく擯罰ひんばつせんº」 と。 以上

若シ余ノ天・竜乃至迦富単那等、作シ↢其ノ悩乱ヲ↡、乃至悪心ヲシテ以テ↠眼ヲ視ミバ↠之ヲ、我等悉ク共ニ令シメム↢彼ノ天・竜・富単那等、所有ノ諸相欠クヱチ減カケオトルシ醜シユミニクシ陋ルナラミニクシ↡。令シメム↣彼ヲシテ不ラ↢復 タ得エ↟与アタフルコトヲ↢我等ト共ニ住シ共ニ食ヲ↡。亦復不ジ↠得エ↢同処ニシテ戯ゲタワブレ笑セウヲワラフ↡。如ク↠是クノ 擯ヒンオイヽダス罰バチウツセムト。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b イ (四)¬華厳経¼(諸文を総括して非法の行を誡む)

【94】^またのたまはく (華厳経・十地品・晋訳)、

▼*又言ク、

^「占相せんそうを離はなれて正しょう見けんを修しゅ習じゅうせしめ、 決けつ定じょうして深ふかく罪福ざいふくの因縁いんねんを信しんずべし」 と。 抄出

「離レテ↠於ヲ↢占セムウラ相↡修↢習セシメ正見ヲ↡、決定シテ深ク信ズベシト↢罪福ノ因縁ヲ↡。」 抄出

二 Ⅱ ⅱ b イ (五)¬首楞厳経¼(鬼神に近づくべからざることを示す)

【045395】^¬*首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ にのたまはく、

▼¬首楞厳経ニ¼言ク、

^「かれらの*諸しょ魔ま、 かのもろもろの*鬼き神じん、 かれらの*群邪ぐんじゃ、 また徒と衆しゅありて、 *おのおのみづからいはん。 無む上じょう道どうを成なりて、 わが滅めつ度どの後のち、 末法まっぽうのなかに、 この魔ま民みん多おおからん、 この鬼き神じん多おおからん、 この妖邪ようじゃ多おおからん。 世せ間けんに熾し盛じょうにして、 善ぜん知ぢ識しきとなつてもろもろの衆しゅ生じょうをして*愛見あいけんの坑あなに落おとさしめん。 菩ぼ提だいの路みちを失しっし、 *詃惑げんわく無む識しきにして、 おそらくは心こころを失しっせしめん。 *所しょ過かの処ところに、 その家いえ耗散もうさんして、 愛見あいけんの魔まとなりて如来にょらいの種しゅを失しっせん」 と。 以上

「彼等ノ諸魔、彼ノ諸ノ鬼神、彼等ラノ群邪、亦有リテ↢徒ト衆↡、各各自ミヅカラ謂ハム。成リテ↢无上道ヲ↡、我ガ滅度ノ後末法之中ニ、多カラム↢此ノ魔民↡、多カラム↢此ノ鬼神↡、多カラム↢此ノ妖エウホロブ邪↡。熾↢盛サカリニシテ世間ニ↡、為ナテ↢善知識ト↡令メム↣諸ノ衆生ヲシテ落オトサ↢愛見ノ坑アナニ↡。失シ↢菩提ノ路ヲ↡、詃グヱンクルイ惑無マドウ 識ニシテ、恐オソラ0240クハ令メム↠失セ↠心ヲ。所過之処ニ、其ノ家*耗モウチル散シテ、成リテ↢愛見ノ魔ト↡失セムト↢如来ノ種ヲ↡。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b イ (六)¬潅頂経¼(三十六神の守護を明かして鬼神を祀ることの非なるを示す)

【96】^¬*潅かん頂じょう経ぎょう¼ にのたまはく、

▼¬潅頂経ニ¼言ク、

^「▲三さん十じゅう六ろく部ぶの神王しんのう、 万まん億おく恒沙ごうじゃの鬼き神じんを眷属けんぞくとして、 相そうを陰かくし*番ばんに代かわりて、 三さん帰きを受うくるひとを護まもる」 と。 以上

「▼三十六部ノ神王、万億恒沙ノ鬼神ヲ為シテ↢眷クヱン属ト↡、陰カクシ↠相ヲオモヒ番ニ代カハリテ、護ルト↧受クル↢▼三帰ヲ↡者ヒトヲ↥。」

二 Ⅱ ⅱ b イ (七)¬地蔵十輪経¼二文(外道に帰することを遠離すべきことを明かし、邪神を祭る者は罪を得ることを明かす)

【97】^¬*地じ蔵ぞう十じゅう輪りん経ぎょう¼ にのたまはく、

▼¬地蔵十輪経ニ¼言ク、

^「つぶさにまさしく帰依きえして、 一切いっさいの妄もう執しゅう吉きっ凶きょうを遠おん離りせんものは、 つひに邪神じゃしん・外げ道どうに帰依きえせざれ」 と。 以上

「具ニ正シク帰依シテ、遠↢離セムモノハ一切ノ妄執吉凶ヲ↡、終ニ不レト↣帰↢依セ邪神・外*道ニ↡。」 已上

【98】^またのたまはく (十輪経)、

又言ク、

^「あるいは種々しゅじゅに、 もしは少しょうもしは多た、 吉きっ凶きょうの相そうを執しゅうして、 鬼き神じんを祭まつりて、 乃至 極ごく重じゅうの大罪だいざい悪業あくごうを生しょうじ、 *無む間けん罪ざいに近ちかづく。 かくのごときの人ひと、 もしいまだかくのごときの大罪だいざい悪業あくごうを懴さん悔げし除滅じょめつせずは、 出しゅっ家けしておよび*具ぐ戒かいを受うけしめざらんも、 もしは出しゅっ家けしてあるいは具ぐ戒かいを受うけしめんも、 すなはち罪つみを得えん」 と。 以上

「或イハ執シテ↢種種ニ若シハ少若シハ多、吉凶之相ヲ↡、祭マツリテ↢鬼神ヲ↡、 乃至 而生ジ↢極重ノ大罪悪業ヲ↡、近ヅク↢无間罪ニ↡。如キ↠是クノ之人ヒト、若シ未ズ ダハ↤懴↢悔シ除↣滅セ如キノ↠是クノ大罪悪業ヲ↡、不ラムモ↠令メ↣出家シテ及ビ受ケ↢具戒ヲ↡、若シハ令メムモ↣出家シテ或イハ受ケ↢具戒ヲ↡、即便得エムト↠罪ヲ。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b イ (八)¬福徳三昧経¼・¬薬師経¼初文(余道・余天を拝せざることを記す)

【045499】^¬*集じゅう一切いっさい福徳ふくとく三昧ざんまい経きょう¼ の中なかにのたまはく、

▼¬集一切福徳三昧経ノ¼中ニ言ク、

^「*余よ乗じょうに向むかはざれ、 余よ天てんを礼らいせざれ」 と。 以上

「不レ↠向ハ↢余乗ニ↡不レト↠礼セ↢余天ヲ↡。」 已上

【100】^¬*本願ほんがん薬やく師し経きょう¼ にのたまはく、

▼¬本願薬師経ニ¼言ク、

^「もし浄じょう信しんの善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん等とうありて、 乃ない至し*尽じん形ぎょうまでに余よ天てんに事つかへざれ」 と。

「▼若シ有リテ↢浄信ノ善男子・善女人等↡、乃至尽形マデニ不レト↠事ツカヘ↢余天ニ↡。」

二 Ⅱ ⅱ b イ (九)¬薬師経¼(外道の妄説を信ずれば現当の重罪を得ることを明かす)

【101】^またのたまはく (本願薬師経)、

▼又言ク、

^「また世せ間けんの邪じゃ魔ま・外げ道どう、 *妖ようげつの師しの妄説もうせつを信しんじて、 禍か福ふくすなはち生しょうぜん。 おそらくはややもすれば心こころみづから正ただしからず、 卜問ぼくもんして禍わざわいを覓もとめ、 種々しゅじゅの衆しゅ生じょうを殺ころさん。 神明しんめいに解げ奏そうし、 もろもろの*魍もう魎りょうを呼よばうて、 福祐ふくゆうを請しょう乞こつし、 延年えんねんを冀ねがはんとするに、 つひに得うることあたはず。 愚痴ぐち迷惑めいわくして邪じゃを信しんじ、 倒見とうけんしてつひに横おう死しせしめ、 地じ獄ごくに入いりて出しゅつ期ごあることなけん。 乃至

「▼又信ジテ↢世間ノ邪魔・外道・妖エウホロブゲキ之ホロブ 師ノ妄説ヲ↡、禍クワワザワイ 福サイワイ便チ生ゼム。恐 ソクハ動ヤヽモスレバ心不ズ↢自ミ ラ正タヾシカラ↡、卜ボクウラ問シテ覓モトメ↠禍ヲ、殺セム↢種種ノ衆生ヲ↡。解↢サトス奏ソウシマフス神明ニ↡、呼ヨバフテ↢諸ノ魍マウ魎リヤウヲ↡、請↢ウケコウ乞コチコウシ福祐ユヲ↡、欲スルニ↠冀ネガキ ハムト↢延エン年ヲ↡、終ニ不ズ↠能ハ↠得ルコト。愚痴迷マドイ惑シテ信ジ↠邪ヲ、倒タウ見シテ遂ツイニ令メ↢横死セ↡、入リテ↢於地獄ニ↡無ケム↠有ルコト↢出期↡。 ▼乃至

^八やつには、 横よこさまに毒薬どくやく・*厭祷えんとう・呪咀じゅしょし、 *起屍きし鬼き等とうのために中ちゅう害がいせらる」 と。 以上抄出

▼八ニ者ハ横ニ為ニ↢毒薬・厭イトイ祷タウ・イノル呪ジユノリ咀シヨノルシ、起タツ 屍シシニカバネ鬼等之ノ↡所ラルト↢中アタル害セ↡ソコナウ。▼」 *抄出已上

二 Ⅱ ⅱ b イ (十)¬菩薩戒経¼(鬼神を礼すべからざるの意を彰す)

【102】^¬*菩ぼ薩さつ戒かい経きょう¼ にのたまはく、

▼¬菩0241薩戒経ニ¼言ク、

^「出しゅっ家けの人ひとの法ほうは、 国王こくおうに向むかひて礼拝らいはいせず、 父母ぶもに向むかひて礼拝らいはいせず、 六親ろくしんに務つかへず、 鬼き神じんを礼らいせず」 と。 以上

「出家ノ人ノ法ハ、不ズ↧向ヒテ↢国王ニ↡礼拝セ↥、不ズ↧向ヒテ↢父母ニ↡礼拝セ↥、六親ニ不ズ↠務ツカヘ、鬼神ヲ不ズト↠礼セ。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b イ (士)¬仏本行集経¼(捨邪帰正はすべからく三迦葉の如くなるべきことを示す)

【103】^¬*仏ぶつ本ほん行ぎょう集じっ経きょう¼ *闍じゃ那な崛くっ多たの訳やく の第だい四し十じゅう二に巻かん 「優婆うば斯那しな品ぼん」 にのたまはく、

▼¬仏本行集経ノ¼ *闍那崛多ノ訳 第四十二巻ニ「優婆斯那品ニ」*言ク、

^「その時ときに、 かの*三さん迦か葉しょう兄きょう弟だいにひとりの*外甥がいせい、 *螺ら髻けい梵ぼん志じあり。 その梵ぼん志じ0455を優婆うば斯那しなと名なづく。 乃至

「爾ノ時ニ彼ノ▼三迦葉兄弟ニ有リ↢一ノ外甥セイオイ *甥字 螺ラモトヾリ 髻ケイモトヾリ梵志↡。其ノ梵志ヲ名ク↢優婆斯那ト↡。 乃至

^つねに二に百ひゃく五ご十じゅうの螺ら髻けい梵ぼん志じ弟子でしとともに仙道せんどうを修学しゅがくしき。 かれその*舅きゅう迦か葉しょう三人さんにんを聞きくに、 もろもろの弟子でし、 かの*大だい沙門しゃもんの辺へんに往詣おうげいして、 阿あ舅きゅう鬚髪しゅほつを剃除たいじょし、 袈裟けさ衣えを着きると。 見みをはりて、 舅きゅうに向むかひて偈げを説ときていはく、

恒 ネニ共ニ↢二百五十ノ螺髻梵志弟子ト↡修↢学シキ仙道ヲ↡。彼 レ聞クニ↢其ノ舅キウオヂ *舅字 迦葉三人ヲ↡、諸ノ弟子、往↢詣シテ於彼ノ大沙門ノ辺ニ↡、阿舅剃↢除シ鬚髪ヲ↡、著キルト↢袈裟衣ヲ↡。見ミ已リテ向ヒ↠舅ニ而テ説キテ↠偈ヲ言ク、

^ª舅きゅう等とう虚むなしく火ひを祀まつること百ひゃく年ねん、 またまた空むなしくかの苦く行ぎょうを修しゅしき。 今日こんにち同おなじくこの法ほうを捨すつること、 なほ蛇じゃの故ふるき皮かわを脱ぬぐがごとくするをやº と。

舅等虚シク祀マツルコト↠火ヲ百年亦復空シク修シキ↢彼ノ苦行ヲ↡
今日同ジク捨ツルコト↢於此ノ法ヲ↡猶ナホ如クスルヲヤト↣蛇ノ脱ヌグガ↢於故フルキ皮ヲ↡

 ^その時ときに、 かの舅きゅう迦か葉しょう三人さんにん、 同おなじくともに偈げをもつて、 その外甥がいせい、 優婆うば斯那しなに報ほうじてかくのごときの言ごんをなさく、

爾ノ時ニ彼ノ舅迦葉三人、同ジク共ニ以テ↠偈ヲ、報ジテ↢其ノ外甥優婆斯那ニ↡作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、

^ªわれら昔むかし、 空むなしく火か神じんを祀まつりて、 またまたいたづらに苦く行ぎょうを修しゅしき。 われら今日こんにちこの法ほうを捨すつること、 まことに蛇じゃの故ふるき皮かわを脱ぬぐがごとくすº」 と。 抄出

我等昔 シ空シク祀マツリテ↢火神ヲ↡亦復徒イタヅラニ修シキ↢於苦行ヲ↡
我等今日捨ツルコト↢此ノ法ヲ↡実ニ如クスト↣蛇ジヤノ脱ヌグガ↢於故フルキ皮ヲ↡」 抄出

二 Ⅱ ⅱ b ロ 論
          (一)馬鳴¬起信論¼(他の緇徒の魔の為に誑惑せられて出離を失することを誡む)

【104】^¬*起き信論しんろん¼ にいはく、

▼¬起信論ニ¼曰ク、

^「あるいは衆しゅ生じょうありて、 善根ぜんごん力りきなければ、 すなはち諸しょ魔ま・外げ道どう・鬼き神じんのために*誑惑おうわくせらる。 もしは坐ざ中ちゅうにして形かたちを現げんじて恐怖くふせしむ、 あるいは端たん正じょうの男女なんにょ等とうの相そうを現げんず。 まさに唯心ゆいしんの境きょう界がいを念ねんずべし、 すなはち滅めっしてつひに悩のうをなさず。

「或イハ有リテ↢衆生↡、無ケレバ↢善根力↡、則チ為ニ↢諸魔・外道・鬼神ノ↡所ラル↢誑惑セ↡。若シハ於シテ↢座中ニ↡現ジテ↠形ヲ恐クオソレ怖フオソルセシム、或イハ現ズ↢端タヾシ イツクシキトモ正ノ男女等ノ相ヲ↡。当ニシ↠念ズ↢唯心ノ境界ヲ↡、則チ滅シテ終ニ不ズ↠為ナサ↠悩ヲナヤミヲ。

^あるいは天像てんぞう・菩ぼ薩さつ像ぞうを現げんじ、 また如来にょらい像ぞうの相好そうごう具ぐ足そくせるをなして、 もしは陀羅尼だらにを説とき、 もしは布施ふせ・持じ戒かい・忍辱にんにく・精しょう進じん0456・禅ぜん定じょう・智慧ちえを説とき、 あるいは平びょう等どう、 空くう・無む相そう・無む願がん、 無む怨おん無む親しん、 無む因いん無果むか、 畢ひっ竟きょう空くう寂じゃく、 これ真しんの涅ね槃はんなりと説とかん。

或イハ現ジ↢天像・菩薩像ヲ↡、亦作シテ↢如来像ノ相好具足セルヲ↡、若シハ説キ↢陀羅尼ヲ↡、若シハ説0242キ↢布施・持戒・忍辱・精進・禅定・智慧ヲ↡、或イハ説カム↢平等、空・无相・無願、無怨*無親、無因無果、畢竟空寂、是 レ真ノ涅槃ナリト↡。

^あるいは人ひとをして宿命しゅくみょう過去かこの事じを知しらしめ、 また未み来らいの事じを知しる。 他た心しん智ちを得え、 弁才べんざい無礙むげならしむ。 よく衆しゅ生じょうをして世せ間けんの名みょう利りの事じに貪とん着じゃくせしむ。

或イハ令メ↣人ヲシテ知ラ↢宿シウ命過去之事ヲ↡、亦知ル↢未来之事ヲ↡。得エ↢他心智ヲ↡、弁ワキマウ才無ナラシム。能ク令シム↣衆生ヲシテ貪↢著セ世間ノ名利之事ニ↡。

^また人ひとをしてしばしば瞋いかり、 しばしば喜よろこばしめ、 *性しょう無む常じょうの准ならひならしむ。 あるいは多おおく慈じ愛あいし、 多おおく睡ねむり、 宿やどること多おおく、 多おおく病やまいす、 その心こころ懈け怠だいなり。

又令シム↧使メ↢人ヲシテ数シバシバ瞋リ数シバシバ喜ヨロコバ↡、性无常ノ准ナラヒジユンナラ↥。或イハ多ク慈愛シ、多ク睡ネブリ、多ク↠宿ヤドル、多ク病ス。其ノ心懈怠ナリ。

^あるいはにはかに精しょう進じんを起おこして、 後のちにはすなはち休く廃はいす。 不ふ信しんを生しょうじて疑うたがい多おおく、 慮おもんぱかり多おおし。

或イハ率ニハカニ起シテ↢精進ヲ↡、後ニハ便チ休ク廃ハイス。生ジテ↢於不信ヲ↡多ク↠疑多シ↠慮オモンパカリ。

^あるいはもとの勝行しょうぎょうを捨すてて、 さらに雑業ぞうごうを修しゅせしめ、 もしは世事せじに着じゃくせしめ、 種々しゅじゅに*牽纏けんでんせらる。

或イハ捨テヽ↢本ノ勝行ヲ↡、更 ラニ修セシメ↢雑業ヲ↡、若シハ著ツクセシメ↢世事ニ↡、種種ニ牽ケンヒキ纏デンマツウセラル。

^またよく人ひとをしてもろもろの三昧さんまいの少しょう分ぶん相そう似じせるを得えしむ。 みなこれ外げ道どうの所得しょとくなり、 真しんの三昧さんまいにあらず。

亦能ク使ム↣人ヲシテ得↢諸ノ三昧ノ少分相アヒ似ジニタリセルヲ↡。皆是外道ノ所得ナリ、非ズ↢真ノ三昧ニ↡。

^あるいはまた人ひとをして、 もしは一日いちにち、 もしは二に日にち、 もしは三日さんにち、 乃ない至し七日しちにち、 定中じょうちゅうに住じゅうして自じ然ねんの香こう味み飲食おんじきを得えしむ。 身心しんしん適ちゃく悦えつして、 飢うゑず渇かわかず、 人ひとをして愛あい着じゃくせしむ。

或イハ復令ム↧人ヲシテ若シハ一日、若シハ二日、若シハ三日、乃至七日、住シテ↢於定中ニ↡得エ↦自然ノ香美ミヨシ飲食ヲ↥。身心 適チヤクスナハチ マサニトモ タマタマトモ悦シテ、不↠飢ウヱ不↠渇カハカ、使ム↢人ヲシテ愛著セ↡。

^あるいはまた人ひとをして食じきに*分斉ぶんざいなからしむ、 たちまち多おおく、 たちまち少すくなくして、 顔色げんしき変へん異いす。

或イハ亦令ム↣人ヲシテ食ニ無カラ↢分斉キワ↡。乍タチマサ チ多ク乍チ少クシテ、顔色変カハル異ス。

^この義ぎをもつてのゆゑに、 行ぎょう者じゃつねに智慧ちえをして観察かんざつして、 この心こころをして邪網じゃもうに堕だせしむることなかるべし。 まさにつとめて正しょう念ねんにして、 取とらず着じゃくせずして、 すなは0457ちよくこのもろもろの業ごっ障しょうを遠おん離りすべし。 知しるべし、 外げ道どうの所しょ有うの三昧さんまいは、 みな*見愛けんあい我が慢まんの心こころを離はなれず、 世せ間けんの名みょう利り恭く敬ぎょうに貪とん着じゃくするがゆゑなり」 と。 以上

以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ行者常ニ応シ↢智慧ヲシテ観察シテ、勿カル↟令ムルコト↣此ノ心ヲシテ堕ダセ↢於邪網マウアミニ↡。当ニシ↣勤ツトメテ正念ニシテ、不↠取ラ不ズシテ↠著セ、則チ能ク遠↢離ス是ノ諸ノ業障ヲ↡。応シ↠知ル外道ノ所有ノ三昧ハ、皆不ズ↠離レ↢見愛我慢アナドル之心ヲ↡。貪↢著スルガ世間ノ名利恭敬ニ↡故ナリト。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)法琳¬弁正論¼一三文(一を以て諸を例し人をして自余の道は此に類することを知らしむ)

【105】^¬*弁べん正しょう論ろん¼ *法琳ほうりんの撰せん にいはく、

▼¬弁正論ニ¼ 法琳ノ撰 曰ク、

^「*十じゅう喩ゆ九きゅう箴しん篇へん、 答とうす、 *李り道どう士し、 十じゅう異い九きゅう迷めい。

▼十喩イウ九キウ 箴シムイマシム篇、ツラヌ答タフスコタフ。▼李モヽ道士▼十異▼九述ジユツ。

 ^*外げの一いち異いにいはく、 ª^*太たい上じょう老君ろうくんは、 *神しんを*玄げん妙びょう玉ぎょく女じょに託たくして、 左さ腋えきを割ひらきて生うまれたり。 釈しゃ迦か牟尼むには、 胎たいを摩耶まや夫ぶ人にんに寄よせて、 右う脇きょうを開ひらきて出いでたりº と。 乃至

▼外ノ一異ニ曰ク、

太子老君ハ託タクツクシテ↢神ヲタマシイ玄妙玉女ニ↡、割ヒラキ↢左腋エキヲ↡而テ生レタリ。

釈0243迦牟尼ハ、寄ヨセテ↢胎ヲハラム摩*邪夫人ニ↡、開ヒラキ↢右イウ脇ケフヲ↡而テ出デタリト。 乃至

 ^*内ないの一いち喩ゆにいはく、 ª老君ろうくんは常じょうに逆たがひ、 牧女ぼくじょに託たくして左ひだりより出いづ。 世せ尊そんは化けに順したがひて、 聖せい母ぼによりて右みぎより出いでたまふº と。

▼内ノ一喩ニ曰ク、

老君ハ逆タガヒ↠常ニ、託ツキ↢牧女ニ↡而テ左ヨリ出ヅ。

世尊ハ順ヒテ↠化ニ、因リ↢聖セイ母ボニ↡而テ右ヨリ出デタマフト。

 ^*開かい士しのいはく、 ª慮りょ景裕けいゆう・戴詵たいしん・韋い処玄しょげん等らが*解かい五ご千文せんぶん、 および梁りょうの元帝げんてい・周しゅう弘政こうせい等らが*考こう義ぎ類るいを案あんずるにいはく、 太たい上じょうに四よつあり、 いはく*三皇さんこうおよび*尭ぎょう・舜しゅんこれなり。

開士ノ曰ク、案ズルニ↢▼慮リヨ景ケイ裕ユ・戴タイ詵シン・韋ヰ処玄等ガ解カイ五千文、及ビ梁ノ元グヱン帝テイ・▼周弘コウ政セイ等ガ老義類ヲ↡云ク、▼太上ニ有リ↠四、謂ク三皇及ビ尭ゲウ・舜シユン是也。

^いふこころは、 上じょう古こにこの大徳だいとくの君くんあり、 万民ばんみんの上かみに臨のぞめり。 ゆゑに太たい上じょうといふなり。 *郭荘かくそうがいはく、 «時ときにこれを賢けんとするところのものを君くんとす。 *材ざい、 世よに称しょうせられざるものを臣しんとす» と。

言イフコヽロハ上古ニ有リ↢此ノ大徳之君↡、臨ノゾメリ↢万民ノ上ニ↡。故ニ云フ↢太上ト↡也。郭クワク荘ガ云ク、時ニ之ヲ所ノ↠賢カシコシトスル者 ノヲ為ス↠君ト。材ザイ不ザル↠称セラレ↠世ニ者 ノヲ為スト↠臣ト。

^老ろう子し、 帝ていにあらず、 皇こうにあらず、 四し種しゅの限かぎりにあらず。 いづれの典拠てんきょありてか、 たやすく太たい上じょうと称しょうするや。

老子非ズ↠帝ニ非ズ↠皇ニ、不↠在ラ↢四種之限カギリニ↡。有アリテカ↢何ノ典テンフミ拠キヨヨル↡、輒タヤスク称スル↢太上ト↡邪ヤ。

^道どう家かが ¬*玄げん妙びょう¼ および ¬中ちゅう台たい¼・¬朱韜しゅとう玉ぎょく扎さつ¼ 等とうの経けい、 ならびに ¬出しゅっ塞さい記き¼ を0458検かんがふるにいはく、 老ろうはこれ李母りぼが生うめるところ、 玄げん妙びょう玉ぎょく女じょありといはず。 すでに正説せいせつにあらず、 もつとも仮かりの謬びゅう談だんなり。

撿カンガフルニ↢道家ガ¬玄妙¼及ビ¬中胎¼・¬朱シユ韜タウ王礼¼等ノ経ケイ、并ニ¬出塞ソク記ヲ¼↡云ク、老ハ是李リ母ボガ所↠生メル、不ズ↠云ハ↠有リト↢玄妙玉女↡。既ニ非ズ↢正セイ説ニ↡、尤モ仮カリノ謬ベウ談也。

^¬*仙人せんにん玉ぎょく録ろく¼ にいはく、 «^仙人せんにんは妻さいなし、 玉ぎょく女じょは夫ふなし。 女形じょけいを受うけたりといへども、 つひに産さんせず» と。 ^もしこの瑞ずいあらば、 まことに嘉かとすべしといふ。 いづれぞせん、 ¬*史記しき¼ にも文ぶんなし、 ¬*周しゅう書しょ¼ に載のせず。 虚きょを求もとめて実じつを責せめば、 矯きょう盲ぼうのものの言ことばを信しんずるならくのみと。

¬仙人玉録ロクニシルス¼云ク、仙人ハ無シ↠妻サイ、玉女ハ無シ↠夫。雖モ↠受ケタリト↢女形ケイヲ↡、畢竟 ツイ ニ不ズト↠産セ。若シ有ラバ↢茲コノ瑞ズイヨシ↡、誠ニ曰フ↠可シト↠嘉ヨシトス。何イヅレゾ為セム、¬史シ記ニモ¼無シ↠文、¬周シウ書シヨニ¼不↠載ノサイセ。求メテ↠虚ヲ責セメバ↠実ヲ、信ズル↢矯キヨウイツワリ盲バウノメシイ者 ノ之言ヲ↡耳ナラクノミト。

^¬*礼らい¼ にいはく、 «^官かんを退しりぞきて位くらいなきものは左さ遷せんす» と。

¬礼ニ¼云ク、退シリゾキテ↠官ヲ無キ↠位者ハ左遷センストウツル 。

^¬*論ろん語ご¼ にいはく、 «^*左さ衽じんは礼れいにあらざるなり» と。

¬論語ニ¼云ク、左衽ジン者非ザル↠礼ニ也ト。

^もし左ひだりをもつて右みぎに勝すぐるとせんは、 道どう士し行道こうどうするに、 なんぞ左ひだりに旋めぐらずして右みぎに還かえつて転めぐるや。 国くにの詔しょう書しょにみないはく、 «右みぎのごとし» と。 ならびに天てんの常じょうに順したがふなり。 º と。 乃至

若シ以テ↠左ヲ勝ルトセム↠右ニ者ハ、道上行道スルニ、何ゾ不ズ↢左ニ旋メグラ↡而シテ還テ↠右ニ転メグル邪ヤ。国之ノ詔セフ書センジナリニ皆云ク、如シト↠右ノ。並ナラビニ順シタガフ↢天之常ニ↡也ト。 ▼乃至

 ^外げの四異しいにいはく、 ª^老君ろうくんは*文王ぶんのうの日ひ、 *隆周りゅうしゅうの宗そう師したり。 釈しゃ迦かは*荘王そうおうの時とき、 *罽賓けいひんの教きょう主しゅたりº と。

外0244ノ▼四異ニ曰ク、

老君ハ文王之*日、為タリ↢隆リウ周シウ之宗ソウ師↡。

釈迦ハ荘サウ王之時、為タリト↢罽ケイ賓ヒン之教主↡。

 ^内ないの四喩しゆにいはく、 ª*伯陽はくようは職しょく小しょう臣しんに処おり、 かたじけなく*蔵ぞう吏りに充あたれり。 文王ぶんのうの日ひにあらず、 また隆周りゅうしゅうの師しにあらず。 牟尼むには、 位くらい太たい子しに居こして、 身み特尊どくそんを証しょうしたまへり。 *昭しょう王おうの盛年せいねんに当あたれり、 閻えん浮ぶの教きょう主しゅたりº と。 乃至

内ノ▼四喩ニ曰ク、

▼伯楊ヤウハ職シヨクツカサ処オリ↢小臣ニ↡、忝カタジケナク充アタレリ↢▼蔵吏ニ↡クニノカミナリ。不↠*在ラ↢文王之*日ニ↡、亦非ズ↢隆周之師ニ↡。

牟尼ハ位居シテ↢太子ニ↡、身証シタマタマヘリ↢特ドク尊ヲ↡。当レリ↢*昭セウ王之盛セイサカリ年ニ↡、為タリト↢閻浮ノ教主↡。 乃至

 ^外げの六ろく異いにいはく、 ª^老君ろうくんは世よに降こうして、 始はじめ*周しゅう文ぶんの日ひより*孔こう丘きゅうの時ときに訖おわれり0459。 釈しゃ迦かははじめて浄じょう飯ぼんの家いえに下か生せいして、 わが荘王そうおうの世よに当あたれりº と。

外ノ▼六異ニ曰ク、

老君ハ降カウシテクダル ↠世ニ、始メ自リ↢周文之日↡訖オハレリ↢于孔丘キウ之時ニ↡。

釈迦ハ下カ↢生シテ肇ハジメテ於浄飯ボムイヰ之家ニ↡、当レリト↢我ガ荘王之世ニ↡。

 ^内ないの六ろく喩ゆにいはく、 ª*迦か葉しょうは*桓王かんのう丁卯ていぼうの歳としに生うまれて、 *景王けいおう壬じん午ごの年としに終おわる。 孔こう丘きゅうの時ときに訖おふといへども、 *姫き昌しょうの世よに出いでず。 *調じょう御ごは*昭しょう王おう甲寅こういんの年としに誕たんじて、 *穆王ぼくおう壬申じんしんの歳としに終おわる。 これ浄じょう飯ぼんの*胤いんたり。 もと荘王そうおうの前さきに出いでたまへりº と。

内ノ▼六喩ニ曰ク、

▼迦葉ハ生レテ↢▼桓クワン王丁テイヒノト卯バウウ 之歳トシニ↡、終フ↢▼景王 壬ジンミヅノエ午ゴムマ之年ニ↡。雖モ↠訖オフトオワル ↢孔丘之時ニ↡、不↠出デ↢▼姫キヨワウナリ昌シヤウ之世ニ↡。

調御ハ誕タンジテムマル ↢▼昭王甲カウ寅イントラ之年ニ↡、終フ↢▼穆王壬ジン申シンサル之歳ニ↡。是為タリ↢浄飯ボムイヰ之胤インタネ↡。本 ト出デタマヘリト↢▼荘王之前 キニ↡。

 ^開かい士しのいはく、 ª孔こう子し、 周しゅうに至いたりて、 *老ろう耼たんを見みて礼れいを問とふ。 ここに ¬史記しき¼ につぶさに顕あらわる。 文王ぶんのうの師したること、 すなはち典てん証しょうなし。 周しゅうの末すえに出いでたり、 そのこと尋たずぬべし。 周しゅうの初はじめにありしごときは史し文ぶんに載のせずº と。 乃至

開0245士ノ曰ク、孔コウ子至リテ↠周ニ、見↢老耼タンヲ、而テ問フ↠礼ヲ。焉コヽニ¬史シ記ニ¼具 サニ顕ル。為タルコト↢文王ノ師↡、則チ無シ↢典テンフミ証↡。出デタリ↢於周ノ末スエニ↡、其ノ事可シ↠尋タヅヌ↢。周ノ初 メニ↡。史シ文ブンニ不↠載ノセ。 ▼乃至

 ^外げの七しち異いにいはく、 ª^老君ろうくんはじめて周しゅうの代だいに生うまれて、 晩のちに*流りゅう沙さに適ゆく。 始し終じゅうを測はからず、 方所ほうしょを知しることなし。 釈しゃ迦かは西国さいこく (印度) に生しょうじて、 かの*提だい河がに終おわりぬ。 弟子でし胸むねを搥うち、 *群ぐん胡こ大おおきに叫さけぶº と。

外ノ▼七異ニ曰ク、

老君初 メテ生レテ↢周ノ代ニ↡、晩クマクレニ適ユク↢流リウ沙サニ↡。不↠測ハカラ↢始終ヲ↡、莫ナシ↠知ルコト↢方所ヲ↡。

釈迦ハ生ジテ↢於西国ニ↡、終リヌ↢彼ノ提河ニ↡。弟子捉ウチ タヽク ↠胸 ネヲ、 群グンアツマリ胡コアツマル大ニ叫サケブト。

 ^内ないの七しち喩ゆにいはく、 ª老ろう子しは頼郷らいけいに生うまれて、 槐かい里りに葬ほうむらる。 *秦佚しんいつの弔ちょうに詳つまびらかにす。 責せめ*遁天とんてんの形けいにあり。 瞿く曇どんはかの王おう宮ぐに出いでて、 この*鵠樹こくじゅに隠かくれたまふ。 *漢明かんめいの世よに伝つたはりて、 ひそかに*蘭台らんだいの書しょにましますº と。

内ノ▼七喩ニ曰ク、

老子ハ生レテ↢於頼レイ郷ケイニ↡、葬ハブサウラル↢於槐クワイ里リニ↡。詳ツマビラカニス↠乎ニ↢秦シン佚イチ之弔テウ↡トブラフ。責セメ在リ↢遁トンノガル天之形ケイニ↡。

瞿曇ハ出デテ↢彼ノ王宮ニ↡、隠 クレタマフ↢慈ノ鵠カクツル樹ジユキ ニ↡。伝ツタワリテ↢乎漢カン明之世ニ↡、秘ヒソカニ在マシマスト↢蘭ラン台ダイ之書ニ↡。

 ^開かい士しのいはく、 ª¬荘そう子し¼ の内篇ないへんにいはく、 «^老耼ろうたん死しして秦佚しんいつ弔とむらふ。 ここに三みたび号さけんで出いづ。 弟子でし怪あやしんで問とふ。 "*夫ふう子しの徒ともがらにあらざるか" と。 ^秦佚しんいついはく0460、 "向さきにわれ入いりて少おさなきものを見みるに、 これを哭こくす、 その父ちちを哭こくするがごとく、 老者ろうしゃこれを哭こくす、 その子こを哭こくするがごとし。 古いにしえはこれを遁天とんてんの形けいといふ。 始はじめはおもへらく、 その人ひとなりと、 しかるにいま非ひなり"» と。

開士ノ曰ク、¬荘子ノ¼内篇ヘンニ云ク、老耼タン死シテ秦シン佚イチ弔トブラフ。焉コ ニ三タビ号サケム而デ出ヅ。弟子怪アヤシムデ問フ。非ザル↢夫子之徒トモガラニ↡歟カト。秦シン佚イチ曰ク、向サキニ吾入リテ見ルニ↢少オサナキ者ヲ↡、哭コクナクス↠之ヲ如ク↠哭スルガ↢其ノ父ヲ↡、老者哭ス↠之ヲ如シ↠哭スルガ↢其ノ子ヲ↡。古イニシヘ者※謂フ↢之ヲ遁トンノガル天之形ケイカタチト↡。始 メハ以為オモヘラク其ノ人也ト、而ルニ今非也ト。

^遁とんは隠いんなり、 天てんは免縛べんばくなり、 形けいは身しんなり。 いふこころは、 始はじめ老ろう子しをもつて*免縛べんばく形けいの仙せんとす、 いますなはち非ひなり。 ああ、 その諂曲てんごくして人ひとの情こころを取とる。 ゆゑに死しを免まぬかれず。 わが友ともにあらずº と。 乃至

遁者ハ隠也、天者免ベンマヌカル縛バク也、形者身也。言イフコヽロハ始以テ↢老子ヲ↡為ス↢免縛形之仙ト↡、今則チ非也。嗟アヽナゲク其ノ諂イツハレル典テンフミ取ル↢人之情 ロヲ↡。故コトサラニ不↠免マヌカレ↠死ヲ。非ズト↢我ガ友トモニ↡。 ▼乃至

 ^内ないの十じゅう喩ゆ、 答とうす、 外げの十じゅう異い。

▼内ノ十喩答ス外ノ十異。

 ^外げは生しょうより左右さう異ことなる一いち。 内ないは生しょうより勝しょう劣れつあり。

▼外0246ハ従リ↠生左右異ル一。▼内ハ従リ↠生有リ↢勝劣↡。

 ^内ないに喩さとしていはく、 ª左さ衽じんはすなはち*戎狄じゅてきの尊とうとむところ、 *右命ゆうめいは中ちゅう華かの尚とうとむところとす。

▼内ニ喩サトシテ曰ク、左衽ジムハ則チ 戎ジユニシノエビス 狄テキノキタノエビス所↠尊ム、右命ハ為↢中華クワノ所ト↟尚タトム。

^ゆゑに ¬*春秋しゅんじゅう¼ にいはく、 «^*冢ちょう卿けいは命めいなし、 *介卿かいけいはこれあり、 *また左ひだりにあらざるや» と。

故ニ¬春秋ニ¼云ク、冢チヨウ卿ケイハ無シ↠命、介カイ卿ハ有リ↠之、不ザル↢亦左ニ↡乎ヤト。

^¬史記しき¼ にいはく、 «^*藺りん相しょう如じょは功こう大おおきにして、 位くらい*廉れん頗ぱが右みぎにあり、 ˆ廉頗ˇ これを恥はづ» と。

¬史シ記キニ¼云ク、▼藺ラン相如ジヨハ功大キニシテ、位在リ↢*麁ソ頗ハガ右ニ↡、恥ハヅト↠之ヲ。

^またいはく、 «^*張ちょう儀ぎ相しょう、 秦しんを右みぎにして魏ぎを左ひだりにす。 *犀首さいしゅ相しょう、 韓かんを右みぎにして魏ぎを左ひだりにす» と。 ^けだしいはく、 便たよりならざるなり。

又云ク、張儀相右ニ↠秦シンヲ而シテ左ニス↠魏グヰヲ。犀セイ首シユ相シヤウ▼右ニ↠緯イヲ而シテ左ニスト↠魏ヲ。蓋ニ云ク、不ル↠便タヨリナラ也ヤ。

^¬礼らい¼ にいはく、 «^*左さ道どう乱群らんぐんをばこれを殺ころす» と。 ^あに右みぎは優まさりて左ひだりは劣おとれるにあらずや。

¬礼ニ¼云ク、左道乱ラン群ヲバ殺スト↠之ヲ。豈アニ非ズ↢右ハ優マサリ而テ左ハ劣レルニ↡也ヤ。

^*皇こう甫ほ謐ひつが ¬*高こう士し伝でん¼ にいはく、 «^老ろう子しは楚その*相しょう人じん、 渦か水すいの0461陰みなみに家いえとす。 *常樅じょうしょう子しに師事しじす。 常じょう子し疾やまいあるに及およんで、 *李耳りじ往ゆきて疾やまいを問とふ» と。

皇哺ホ謐ヒチガ¬高士伝ニ¼云ク、老子ハ楚ソ之相人、家イエトス↢▼温水之陰キタニ↡。▼押ヒトシ↢事ヲ常従シヨウ子ニ↡。及ビテ↢常子有ルニ↟疾ヤマフ、李リ耳往キテ問フト↠疾ヲ。

^ここに*康けいこうのいはく、 «^李耳りじ、 *涓けん子しに従したがつて九く仙せんの術じゅつを学まなぶ» と。 ^*太たい史し公こう等らが衆しゅう書しょを検かんがふるに、 老ろう子し、 左さ腋えきを剖ひらいて生うまるといはず。 すでにまさしく出いでたることなし、 承しょう信しんすべからざること明あきらけし。

焉コヽニ嵆ケイ康カウノ云ク、李耳従シ テ↢涓ケン子ニ↡学 ナブト↢九キウ仙之術ジユツヲ↡。※▼撥ハイスツスルニ太史シニ云ク、等ヒ ガ↢衆シウ画グワ ヱ ヲ↡、不↠云ハ↧老子剖ヒライテ↢左腋エキヲ↡生ルト↥。既ニ無シ↢正シク出デタルコト↡、不ルコト↠可カラ↢承シヨウ信ス↡明ケシ矣。

^あきらかに知しんぬ、 *戈かを揮ふるひ*翰かんを操あやつるは、 けだし文ぶん武ぶの先せん、 *五気ごき・三光さんこうは、 まことに陰陽いんようの首はじめなり。 ここをもつて釈しゃく門もんには右みぎに転てんずること、 また人用じんようを扶たすく。 *張陵ちょうりょうの左さ道どう、 まことに天てんの常じょうに逆たがふ。 いかんとなれば、 釈しゃ迦か、 無む縁えんの慈じを起おこして、 *有機うきの召しょうに応おうず、 その迹あとを語かたるなり。 乃至

験アキラカニ知ヌ揮フルヒ↠戈クワンホコ ヲ操アヤツレバ↠翰フデヲ蓋ケダシ文武ブ之先、五気キ・三光ハ寔マコトニ陰陽之首ハジメナリ。是ヲ以テ釈門ニハ右ニ転ズルコト且マタ▼快タノシクス↢人用ヲ↡。張チヤウ陵リヤウノ左道ニス、信ズ↢逆ゲキ天ノ常ニ↡。何イ トナレ者バ釈迦超テ↢无縁之慈ヲ↡、応ヰヨウズ↢有機之召テウメスニ↡、語ル↢其ノ迹アトヲ↡也。 ▼乃至

 ^それ釈しゃく氏しは、 天てん上じょう天てん下げに介然かいぜんとして、 その尊そんに居きょす。 三界さんがい六道ろくどう、 *卓たく爾じとしてその妙びょうを推おすº と。 乃至

▼夫 レ釈氏者、天上天下ニ介カイ然トシテ居キヨス↢其ノ尊ニ↡。三界六道、卓タク爾ジトシテシカラシム推オスイスト↢其ノ妙ヲ↡。 ▼乃至

 ^外げ論ろんにいはく、 ª^老君ろうくん、 範はんとなす、 ただ孝こうただ忠ちゅう、 世よを救すくひ人ひとを度どす、 慈じを極きわめ愛あいを極きわむ。 ここをもつて声せい教きょう永ながく伝つたへ、 百ひゃく王おう改あらたまらず、 *玄風げんぷう長ながく被かぶらしめて万ばん古こ差たがふことなし。 このゆゑに国くにを治おさめ家いえを治おさむるに、 常じょう然ぜんたり*楷かい式しょくたり。

▼外論ニ曰ク、老君作ス↠範ハンノリト、唯タヾ孝カウ唯 忠チウ、コヽロザシ救スクヒ↠世ヲ度ス↠人ヲ、極メ↠慈ヲ極ム↠愛ヲ。是ヲ以テ声セイコヱ教カウ永ク伝ヘ百ハク王不↠改アラタマラ、玄ハルカ風長ク被カブラシメテ万古无シ↠差タガフコト。所以コノユヱニ治オサメ↠国ヲ治ムルニ↠家ヲ、常然タリ楷カイカナウ式シヨクノリ タリ

^*釈教しゃくきょうは義ぎを棄すて親しんを棄すて、 仁じんならず孝こうならず。 闍王じゃおう (*阿闍世) 父ちちを殺ころせる、 翻ほんじてとがなしと説とく。 調じょう達だつ (*提婆達多) 兄あにを射いて罪つみを得うることを聞きくことな0462し。 これをもつて凡ぼんを導みちびく、 さらに悪あくを長ますことをなす。 これをもつて世よに範のりとする、 なんぞよく善ぜんを生しょうぜんや。 ^これ逆げき順じゅんの異い、 十じゅうなりº と。

。釈教ケウハ棄ステ↠義ヲ棄テ↠親ヲ、不↠仁ナラアハレミ 不↠孝ナラ。闍王殺セル↠父ヲ、翻ホンジテヒルガヘス説ク↠無シト↠トガ。調達射イテ↠兄アニヲ无間ニ得↠罪ヲ。以0247テ↠此ヲ導ビク↠凡ヲ、更 ラニ為ナス↠長マスコトヲ↠悪ヲ。用モテ↠斯ヲ範ノリハントスル↠世ニ、何ゾ能ク生ゼムヤ↠善ヲ。此 レ逆順之異、十也ト。

 ^内ない喩ゆにいはく、 ª義ぎはすなはち道徳どうとくの卑いやしうするところ、 礼れいは忠ちゅう信しんの薄うすきより生しょうず。 *瑣き仁じん、 匹ひっ婦ぷを譏そしり、 大孝たいこうは*不匱ふきを存そんす。

▼内喩オシヘニ曰ク、義ハ乃チ道徳ノ所↠卑イヤシウスル、礼レイハ生ズ↢忠信之薄ウスキヨリ↡。瑣サ仁譏ソシリ↢於匹ヒチカタシ婦プメ ヲ↡、大孝カウハ存ス↢乎不匱クヰヲ↡。

^しかうして凶きょうに対むこうて歌うたひ笑わらふ、 中ちゅう夏かの容かたちに乖たがふ。 喪もに臨のぞんで盆ほとぎを扣たたく、 *華か俗ぞくの訓おしえにあらず。 *原げん壌じょう、 母はは死しして棺かんに騎のりて歌うたふ。 孔こう子し、 祭まつりを助たすけて譏そしらず。 *子し桑そう死しするとき*子し貢こう弔とむらふ、 四子ししあひ視みて笑わらふ。 *荘そう子し、 妻め死しす、 盆ほとぎを扣たたきて歌うたふなり。

然シ シテ対ム ウテ↠凶クヰヨウニ歌ウタヒ笑ワラフ、乖スタガフ↢中夏之容カタチニ↡。臨デ↠喪モニ扣タヽク↠盆ホトギカハラヲ、非ズ↢華クワ俗ゾク之訓オシヘニ↡。 原壌ジヤウ、母死シテ▼騎キノル↠棺クワンヒツギシ而テ歌。孔子助↠祭弗ズ↠譏ソシラ。*子桑サウ死スルトキ*子貢コウ弔トブラフ、四子相 ヒ視ミテ歌フ。而孔コウ子時ニ※助タスケテ祭マツリ而テ笑ワラフ。荘子妻メ死ス、扣タヽキ↠盆ホトギヲ而テ歌フ也。

^ゆゑにこれを教おしふるに孝こうをもつてす、 天てん下かの人じん父ぷたるを敬けいするゆゑなり。 これを教おしふるに忠ちゅうをもつてす、 天てん下かの人君じんくんたるを敬けいするなり。 化か、 万国ばんこくに周あまねし、 すなはち*明辟めいへきの至いたれるなり。 仁じん、 四し海かいに形あらわす、 まことに聖王せいおうの巨孝きょこうなり。

故ニ教フルニ↠之ヲ以テス↠孝カウヲオシフ、所↤以 ユヘ 敬ケイスルウヤマフ↣天下之為タルヲ↢人父↡也。教フルニ↠之ヲ以テス↠忠ヲネムゴロ、所以敬スル↣天下之為タルヲ↢人君↡也。化クワ周アマネシ↢万国ニ↡乃チ明メイ辟ヘキ之至ルナリ。仁形アラハル↢于四海ニ↡、▼実ニ聖セイ王之臣孝ナリ。

^仏ぶっ経きょうにのたまはく、 «^*識体しきたい六趣ろくしゅに輪りん廻ねす、 父母ふぼにあらざるなし。 生しょう死じ三界さんがいに変易へんやくす、 たれか怨親おんしんを弁わきまへん» と。

仏経ケイニ言ハク、識シヨク体テイ輪リン↢回クワイス六趣ニ↡、無シ↠非アラザル↢父母ニ↡。生死※変ハン↢易エキヤクス、三界↡孰タレカ弁 マエム↢怨オンアダ親ヲシタシ↡。

^またのたまはく、 «^無む明みょう慧え眼げんを覆おおふ、 生しょう死じのなかに来往らいおうす。 往来おうらいして所しょ作さす、 さらにたがひに父子ふしたり。 怨親おんしんしばしば知ち識しきたり、 知ち識しきしばしば怨親おんしんたり» と。

又言ク、无ブ明覆フ↢慧ケイ眼ガンヲ↡、▼未ズ ダ↠往セ↢生セイ死ノ中ニ↡。往来シテ*之所作ス、更ニ互タガヒニ為タリ↢父子↡。▼怨エン親数シバシバ為リ↢知識↡、知識数シバシバ為リト↢怨親↡。

^ここをもつて沙門しゃもん、 俗ぞくを捨すてて真しんに趣おもむく。 *庶類しょるいを*天てん属しょくに均ひとしうす。 栄えいを遺すてて道どうに即つく。 *含がん気きを*己こ親しんに等ひとしとす。 あまねく正ただしき心こころを行ぎょうじて、 あまねく親したしき志こころざし0463を等ひとしくす。

是ヲ以テ沙門捨テテ↠俗シヨクヲ趣オモムク↠真ニ。均ヒトシウス↢庶シヨ類ルイヲ於天属ニ↡。遺ステヽ↠栄エイサカヘヲ即ツク↠道ニ。等ヒ シトス↢含ガム気キヲ於己コオノレ親ニ↡。 行ジテ↢普ク正シキ之心ヲ↡等クス↢普キ親シキ之志ヲ↡。

^また道どうは*清しょう虚こを尚とうとぶ、 なんぢは恩愛おんないを重おもくす。 法ほうは平びょう等どうを貴とうとぶ、 なんぢは怨親おんしんを簡えらぶ。 あに惑まどひにあらずや。 *勢競せいけい親しんを遺わする、 *文ぶん史し事ことを明あかす、 *斉桓せいかん・*楚そ穆ぼくこれその流ともがらなり。 もつて聖せいを訾そしらんと欲おもふ、 あに謬あやまれるにあらずや。

且マタ道ハ尚タトブ↢清*虚ヲ↡、爾ソレハナンヂハ重クス↢恩愛ヲ↡。法ハ貴タ ブ↢平等ヲ↡、爾ソレナンヂハ簡キラハムヤ↢怨エンアダ親ヲシタシ↡。豈アニ非ズ↠惑ニ也ヤ。 勢セイヨソオイ 競ケイアラソイ遺ワスル↠親ヲ、文史シ明↠事、斉セイ桓クワン・楚ソ穆ボク此 レ其ノ流トモガラ也。欲オモフ↢以テソシラムト↟聖ヲ、豈アニ不ズ↠謬アヤマレルニ哉ヤ。

^なんぢが道どうの劣れつ、 十じゅうなりº と。 乃至

▼爾レナンヂガ道之劣、十也ト。 乃至

 ^ª*二じ皇こう統すべて化けして、 ¬*須しゅ弥み四し域いき経きょう¼ にいはく、 «▲応おう声しょう菩ぼ薩さつを伏ふく羲ぎとす、 吉きっ祥しょう菩ぼ薩さつを女じょ媧かとす» と。 *淳しゅん風ぷうの初はじめに居おり、 *三聖さんせい、 言ことばを立たてて、 ¬*空くう寂じゃく所問しょもん経ぎょう¼ にいはく、 «迦か葉しょうを老ろう子しとす、 儒童じゅどうを孔こう子しとす、 光こう浄じょうを*顔回がんかいとす» と。 *已い澆ぎょうの末すえを興おこす。 *玄虚げんきょ沖ちゅう一いちの旨むね、 *黄こう・*老ろうその談だんを盛さかりにす。 詩し書しょ礼楽れいがくの文ぶん、 *周しゅう・*孔こうその教きょうを隆たかくす。

▼二皇統スベテ↠化クワヲ、 ¬須シユ弥四域イキ経ニ¼云ク、応声菩薩ヲ為↢伏義ト↡、吉祥菩薩ヲ為ト↢女媧クワト↡也。 居オリ↢渟テイ風之初 メニ↡、三聖立テヽ↠言ヲ、 ¬空寂所問経ニ¼云ク、迦葉ヲ為↢老子ト↡、儒ジユ童ヲ為↢孔子ト↡、光浄ヲ為ト↢顔ガン回クワイト↡也。 興オコス↢已イ澆ゲウ之末スエヲ↡。 玄ハルカナリ虚キヨ*沖一之旨ムネ、黄・老※盛ニス↢其ノ談ヲオシフ↡。詩書シヨ礼楽之文、周シウ・孔コウ隆タカクス↢其ノ教ヲ↡。

^謙けんをあきらかにし、 質しつを守まもる、 すなはち聖せいに登のぼるの階梯かいていなり。 *三さん畏い・五ご常じょうは人天にんでんの*由漸ゆうぜんとす。 けだし冥みょうに仏ぶつ理りに符かなふ、 *正弁せいべん極きょく談だんにあらずや。 なほ道どうを*瘖おん聾りょうに訪とぶらふに、 方ほうを麾おしまどひて*遠えん邇じを窮きわむることなし。 *津しんを兎馬とめに問とふ。 済わたるを知しりて浅深せんじんを測はからず。

明ニシ↠謙ケムヲネンゴロニ守マモル↠質シチヲスガタ、乃チ登ノボルニ↠聖ニ之階カイハシ梯テイハシナリ。三畏ヰ・五常ジヤウハ為ス↢人天之由漸ゼント↡。蓋ケダシ冥ミヤウニカスカニ苻カナ0248フ↢於仏理リニ↡、非ズヤ↢正弁極キヨク談ニ↡。猶 ヲ謗ソシル↢道ヲ於瘖オンオシ聾リヨウニミヽシヰ↡、麾オシマドイテ↠方ヲ而莫ナカレ↠窮キワムルコト↢遠エン邇ジヲ↡。問フ↢律ヲ於菟ト馬メニ↡。知リテ↠済ワタルヲ而不↠測ハカラ↢浅深ヲ↡。

^これによりて談だんずるに、 殷いん・周しゅうの世よは釈教しゃくきょうのよろしく行こうすべきところにあらざるなり。 なほ炎えん威い耀ひかりを赫かがやかす、 童どう子じ目めを正ただしくして視みることあたはず。 迅雷じんらい奮ふるひ撃うつ、 懦夫だふ耳みみを張はりて聴きくことあたはず。

因リテ↠斯ニ而談ズルルニ、殷イン・周シウ之世ハ非ザル↢釈教カウノ所ニ↟宜ヨロシベ クキ↠行カウスル也。猶炎威ヨソオイ赫カヾヤカス↠耀ヒカリヲ、童子不↠能ハ↢正シク↠目ヲ而シテ視ルコト↡。迅ジントシ 雷ライイカヅチ奮フルヒ撃ウツ、*懦ダンヤハラカナリ夫フ不↠能ハ↢張ハリ↠耳ヲ而テ聴キクコト↡。

^ここをもつて河池かち涌わき浮うかぶ、 昭しょう王おう、 *神しんを誕たんずることを懼おそる。 *雲霓うんげい色いろを変へんじ、 穆后ぼくこう、 *聖せい0464を亡うしなはんことを欣よろこぶ。 ¬*周しゅう書しょ異記いき¼ にいはく、 «昭しょう王おう二に十じゅう四よ年ねん四し月がつ八よう日か、 江こう河か泉水せんすいことごとく泛はん漲ちょうせり。 *穆王ぼくおう五ご十じゅう三さん年ねん二に月がつ十じゅう五ご日にち、 暴風ぼうふう起おこりて樹木じゅもく折おれ、 天てん陰くもり、 雲くも黒くろし、 白虹はくこうの怪かいあり» と。

是ヲ以テ*河カ池チ涌ワキ浮ウカブ、昭セウ王懼オソル↢於誕タンズルコトヲ↟神ヲ。雲霓ゲイ変ヘンジ↠色ヲ、穆ボク后コウ欣ヨロコブ↠亡ウシナハムコトヲ↠聖セイヲ。 ¬周書異記ニ¼云ク、昭王廿四年四月八日江河泉セン水悉ク泛ハンウカビ漲チヤウセリミナギル 。穆王五十二年二月十五日暴アラキ風起タチテ樹ジユ木折オレ天陰クモリ雲黒クラシ、有リ↢白虹コウ之怪クヱイ↡アヤシミ也。

^あによく*葱そう河かを越こえて化けを稟うけ、 *雪嶺せつれいを踰こえて誠まことを効いたさんや。 ¬*浄名じょうみょう¼ にいはく、 «これ盲者もうじゃの過あやまちにして日月じつげつの咎とがにあらず» と。 たまたまその*鑿竅さくかくの弁べんを窮きわめんと欲おもふ、 おそらくは*吾子ごし混沌こんとんの性せいを傷いたむ。 なんぢの知しるところにあらず。 その盲もう、 一いちなりº と。

豈 ニ能ク越コエテ↢蔥ソウキナリ河ヲ↡而稟ウケ↠化ヲ、踰コエテ↢*雪嶺レイミネヲ↡而効イタサムヤ↠誠マコトヲ。¬浄名ニ¼云ク、是盲メシヒ者*遇マウアヘリ、非ズト↢日月ノ咎トガニ↡。適タマタマ欲フ↠窮キワメムト↢其ノ鑿シヤク ホル 竅ゲキアキラカナリ之弁ヲ↡、恐クハ傷イタム↢吾ワガ子混コン沌トム之性ヲ↡。非ズ↢爾ソレ所ニ↟知ル。其ノ盲、一也ト。

 ^内ないには像塔ぞうとうを建造けんぞうす、 指しの二に。

▼内ニハ建↢造ス像塔ヲ↡指↠オシフル二。

 ^ª漢明かんめいより以下いか、 斉せい・梁りょうに訖おわるまで、 王おう・公こう・*守牧しゅぼく、 *清しょう信しんの士し女にょ、 および比丘びく・比丘びく尼に等とう、 冥みょうに至し聖しょうを感かんじ、 国くにに神光じんこうを覩みるもの、 おほよそ二に百ひゃく余よ人にん。

▼自リ↢漢明↡已下、訖オフマデ↢于斉セイ・梁リヤウニ、王・公・守シウ牧ボク、清信ノ士女、及ビ比丘・比丘尼等↡、冥ニ感ジカナフ↢至聖ヲ↡、国ニ覩ミル↢神光ヲ↡者 ノ、凡ソ二百余人。

^*迹あとを万山ばんざんに見み、 *耀ひかりを滬こ涜とくに浮うかべ、 *清台せいたいの下もとに満月まんげつの容かたちを覩み、 *雍門ようもんの外ほかに相輪そうりんの影かげを観みるがごときに至いたりては、 *南平なんぺいは瑞像ずいぞうに応ようを獲え、 *文宣ぶんせんは夢ゆめを聖せい牙がに感かんず。 *蕭后そうこう一ひとたび鋳いて剋成こくせいし、 *宋皇そうこう四よたび摸もして就ならず。 その例れい、 はなはだ衆おおし、 つぶさに陳のぶべからず。 あになんぢが無む目もくをもつてかの*有う霊りょうを斥きらはんや。

至リテハ↠如キニ↧見↢迹アトヲ万山ニ↡、浮ベ↢耀ヒカリヲ滬コ涜トクニミゾナリ↡、清台之下モトニ覩↢満月之容カタチヲ↡、雍ヰヨウ門之外ニ観ルガ↦相輪之影 ゲヲ↥、南平ハ獲エ↢応ヲ於瑞ズイヨキ像ニ↡、文宣ハ感ズ↢夢ヲ於聖牙ガキバニ↡。蕭サウワウ后コウキサキ一タビ鋳イタウテ剋ウル成シ、宗ソウ皇四タビ摸ボシウツス而テ不↠就ナラ。其ノ例レイ甚ダ衆オヽシ、不↠可カラ↢具 サニ陳ノブ↡。豈 ニ以テ↢爾ナムヂガ之無目ヲ↡而斥キラハム↢彼之有イウ霊レイヲ↡哉ヤ。

^しかるに徳とくとして備そなはらざるものなし、 これをいひて涅ね槃はんとす。 道どうとして通つうぜざるものなし、 これを名なづけて菩ぼ提だいとす。 智ちとして周あまねからざるものなし、 これを称しょうして仏ぶっ0465陀だとす。 この漢かん語ごをもつてかの梵言ぼんごんを訳やくす、 すなはち彼此ひしの仏ぶつ、 昭しょう然ねんとして信しんずべきなり。

▼然ルニ徳トシテ無シ↢不ル↠備ソナハラ者 ノ↡、謂ヒテ↠之ヲ為↢涅ネイ槃ト↡。道トシテ無シ↢不ル↠通トウセ者 ノ↡、名ケテ↠之ヲ為↢菩提テイト↡。智トシテ无シ↢不ル↠周アマネカラ者 ノ↡、称シテ↠之ヲ為↢仏陀ト↡。以テ↢此ノ漢語ギヨヲ↡訳ス↢ツクリツタウ彼0249ノ梵言ヲ↡、則チ彼此之仏、*照然トシテ可キ↠信ズ也。

^なにをもつてかこれを明あかすとならば、 それ仏ぶっ陀だは漢かんには大覚だいかくといふ、 菩ぼ提だいをば漢かんには大道だいどうといふ、 涅ね槃はんは漢かんには無為むいといふなり。 しかるに吾子ごし終しゅう日じつに菩ぼ提だいの地じを践ふんで、 大道だいどうはすなはち菩ぼ提だいの異い号ごうなることを知しらず。 形かたちを大覚だいかくの境きょうに稟うけて、 いまだ大覚だいかくは、 すなはち仏ぶっ陀だの訳やく名みょうなることを閑ならはず。

何ヲ以テカ明ストナラバ↠之ヲ、夫 レ仏陀者ハ漢ニハ言フ↢大覚ト↡也、菩提ヲ者バ漢ニハ言フ↢大道ト↡也、涅槃者ハ漢ニハ言フ↢无ブ為ト↡也。而ルニ吾子終シフ日ヒネモスニ践フンデ↢菩提之地ヲ↡、不↠知ラ↢大道ヲ↡、即チ菩提ノ異号ナルコトヲ也。稟ウケテ↢形ヲ於大覚之境ニ↡、未ズ ダ↠閑ナラハ↢大覚ヲ↡、即チ仏陀之訳名ナルコトヲ也。

^ゆゑに*荘そう周しゅういはく、 «^また大覚だいかくあれば、 後のちにその大だい夢むを知しるなり» と。

故ニ荘周シウ公且マタ有レ↢大覚↡者バ、而後ニ知ル↢其ノ大夢ヲ↡也ト。

^*郭かくが註ちゅうにいはく、 «^覚かくは聖人せいじんなり。 いふこころは、 患うれへ懐こころにあるはみな夢ゆめなり» と。

郭カクガ註チウニシルス云ク、覚者聖人也。言イフコヽロハ患ウレヘグヱン在ル↠懐コヽロニ者ハ皆夢也ト。

^註ちゅうにいはく、 «^夫ふう子しと*子し游ゆうと、 いまだいふことを忘わすれて*神しん解げすることあたはず、 ゆゑに大覚だいかくにあらざるなり» と。

註ニ云ク、夫子ト与ト↢子淤オ↡、未ズ ダ↠能ハ↢忘ワスレテ↠言フコトヲ而神解カイスルコト↡、故ニ非ザル↢大覚ニ↡也ト。

^君くん子しのいはく、 «孔こう丘きゅうの談だん、 ここにまた尽つきぬ» と。

君子ノ曰ク、孔コウ丘キウ之談、茲コヽニ亦尽キヌト矣。

^涅ね槃はん寂照じゃくしょう、 識しきとして識さとるべからず、 智ちとして知しるべからず、 すなはち言げん語ご断たえて*心しん行ぎょう滅めっす。 ゆゑに言ことばを忘わするるなり。 法身ほっしんはすなはち*三点さんてん・四し徳とくの成じょうずるところ、 *蕭しょう然ぜんとして*無ぶ累るいなり。 ゆゑに解げ脱だつと称しょうす。 これその神しん解げとして*患息げんそくするなり。 夫ふう子し、 聖せいなりといへども、 はるかにもつて功こうを仏ぶつに推ゆずれり。

涅ネイ槃寂セキ照、不↠可カラ↢識シヨクトシテ識サトル↡、不↠可カラ↢智ヲシテ智ル↡、則チ言ゲン語ギヨ断エ而テ心行滅ス。故ニ忘ルヽ↠言ヲ也。法身ハ乃チ三点シルス・四徳之所↠成ズル、粛セウ然ゼントシテ無累ルイナリカサナル 。故ニ称ス↢解カイ脱ト↡。此 レ其ノ神解ト而シテ患グヱン息スル也。夫フ子雖 ドモ↠聖ナリト、遥 カニ以テ推ユヅレリ↢功ヲ仏ニ↡。

^いかんとなれば、 *劉向りゅうきょうが ¬*古こ旧きゅう二に録ろく¼ を案あんずるにいはく、 «^仏ぶっ経きょう中ちゅう夏かに流つたはりて一いっ百ぴゃく五ご十じゅう年ねんの後のち、 老ろう子しまさに*五ご千せん文ぶんを説とけり» と。 ^しかるに0466*周しゅうと老ろうと、 ならびに仏ぶっ経きょうの所説しょせつを見みる。 言ごん教きょう往々おうおうたり、 験かんがへつべしº と。 乃至

何者イ トナレバ按ズルニ↢劉リウタカシ向キヤウガ¬古旧キウフルシ二録リヨクシルスヲ¼↡云ク、仏流リウ経ヘテ↢於中夏ヲ↡一百五十年ノ後ノチ、老子方 サニ説ケリト↢五千文ヲ↡。然ル而ニ周ト之与ト↠老、並ビニ見ル↢仏経ノ所ソ説ヲ↡。言ゲン教カウ往往タリ、可シ↠験カンガヘツ。 ▼乃至

 ^¬*正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ にのたまはく、 ª^人ひと戒かいを持たもたざれば、 諸天しょてん減げん少しょうし、 阿あ修しゅ羅ら盛さかりなり。 善ぜん竜りゅう力ちからなし、 悪あく竜りゅう力ちからあり。 悪あく竜りゅう力ちからあれば、 すなはち霜雹そうはくを降くだして非時ひじの暴風ぼうふう疾しつ雨うありて、 五ご穀こく登みのらず、 疾疫しつやく競きそひ起おこり、 人民じんみん飢け饉ごんす、 たがひにあひ残害ざんがいす。

▼¬正法念経ニ¼云ク、人不レバ↠持タ↠戒ヲ、諸天減オトル少シ阿修羅盛ナリ。善竜無シ↠力、悪竜有リ↠力。悪竜有レバ↠力、則スナワチ降クダシテ↢霜シヤウ雹ハウアラレヲ↡非時ノ暴風疾雨アリテ、五穀不↠登ミノラ、疾シチ疫ヤク競キヨイ起リ、人民飢ケ饉ゴンス、互タガヒニ相ヒ残ザンコロス害ス。

^もし人ひと戒かいを持たもてば、 多おおく諸天しょてん威い光こうを増足ぞうそくす。 修しゅ羅ら減げん少しょうし、 悪あく竜りゅう力ちからなし、 善ぜん竜りゅう力ちからあり。 善ぜん竜りゅう力ちからあれば、 風ふう雨う時ときに順じゅんじ、 *四気しき和わ暢ちょうなり。 甘かん雨う降くだりて稔穀ねんこく豊ゆたかなり、 人民じんみん安楽あんらくにして兵へい戈か戢しゅう息そくす。 疾疫しつやく行ぎょうぜざるなりº と。 乃至

若シ人持テバ↠戒ヲ、多ク諸天増↢足タルス威光ヲ↡。修羅減オトル少シ悪竜無シ↠力、善竜有リ↠力。善竜有レバ↠力、風雨順ジ↠時ニ、四気和暢チヤウノブ ナリ。▼甘雨降リテ▼稔ネイコメ穀コク豊ユタカフ ナリ、人民安0250楽ニシテ*兵ツワモノ▼戈クワホコ 戦センタヽカフ息ソクヤムス。疾疫不ル↠行ゼ也ト。 ▼乃至

 ^君くん子しいはく、 ª^道どう士し ¬大だい霄しょう隠書いんしょ¼・¬無む上じょう真書しんしょ¼ 等とうにいはく、 «^*無む上じょう大道だいどう君くんの治ちは五ご十じゅう五ご重ちょう無ぶ極きょく大たい羅ら天てんのうち、 玉ぎょく京けいの上うえ、 七宝しっぽうの台だい、 金きん床しょう玉ぎょく机きにあり。 仙童せんどう・玉ぎょく女じょの侍じ衛えいするところ、 三さん十じゅう三さん天てん三界さんがいの外ほかに住じゅうす» と。

▼君子曰ク、道士¬大霄セウガ隠イン書¼・¬元上ガ真書¼等ニ云ク、元上大道君ノ治ハ在リ↢五十五重ヂウ无極キヨク大羅天ノ中 チ、玉京之上ウヘ、七宝ノ台、金床シヤウ玉机キツクエニ↡。仙セン童ドウ・玉ギヨク女ヂヨ之所↢侍ジ衛ヱイスル↡、住スト↢卅二天三界之外ニ↡。

^¬神泉しんせん五ご岳がく図ず¼ を案あんずるにいはく、 «^*大道だいどう天尊てんそんは、 太玄たいげん都と、 玉ぎょく光こう州しゅう、 金真きんしんの郡ぐん、 天保てんぽうの県けん、 元明げんめいの郷けい、 定てい志しの里りを治ちす。 災わざわい及およばざるところなり» と。

按ズルニ↢¬神仙五岳ガクオカ図ヅヲシルス¼↡云ク、大道天尊ハ、治ス↢大玄都トミヤコ、玉光州、金真之郡グヰンコホリ、天保之県クヱンアガタ、元明之郷ケイサト、定テイ志之里リサトヲ↡。災ワザワイサイ 所ナリト↠不ル↠及バ。

^¬霊書れいしょ経けい¼ にいはく、 «^大たい羅らはこれ五ご億おく五ご万まん五ご千せん五ご百ひゃく五ご十じゅう五ご重ちょう天てんの上じょう天てんなり» と。

¬霊レイ書シヨ経ケイニ¼云ク、大羅ハ是五億五万五千五百五十五重ヂウ天之上天也ト。

^¬五ご岳がく図ず¼ にいはく、 «^都ととは都みやこなり。 太たい上じょう大道だいどう、 道どうのなかの道どう、 *神明しんめい君最くんさい、 静せいを守まもりて大玄たいげんの都とに居おり» と。

¬五岳オカ図ニ¼云ク、都ト者都ミヤコ也。太上大道、道之中ノ道、神明君最サイスグル、守リテ↠静セイヲシヅカニ居オリト↢太玄之都ニ↡。

^¬諸天しょてん内音ないいん¼ にいはく、 «^天てん、 諸仙しょせんと楼ろう都との鼓つづみを鳴ならす。 玉ぎょく京けいに0467*朝ちょう晏あんして、 もつて道君どうくんを楽たのしましむ»º と。

¬諸天内音インニ¼云ク、天与ト↢諸仙↡鳴ナラス↢楼ロウイヱ都之鼓ツヾミヲ↡。朝↢晏アンシテシヅカニ玉京キヤウニ↡、以テ楽タノシマシムト↢道君ヲ↡。▼

 ^道どう士しの上あぐるところの経けいの目なを案あんずるに、 みないはく、 ª宋人そうじん*陸りく修しゅう静せいによりて一千いっせん二に百ひゃく二に十じゅう八はち巻かんを列つらねたりº と。 もと雑書ざっしょ、 *諸しょ子しの名ななし。 しかるに道どう士しいま列つらぬるに、 すなはち二に千せん四し十じっ巻かんあり。 そのなかに多おおく ¬漢書かんじょ芸文げいもん志し¼ の目なを取とりて、 みだりに八はっ百ぴゃく八はち十じゅう四し巻かんを註しるして道どうの経論けいろんとす。 乃至

▼案ズルニ↢道士ノ所ノ↠上グル経ノ目ナヲ↡、皆云ク、依リテ↢宋ソウ人陸*修シウナガシ静セイニ↡而列ツラネタリト↢一千二百廿ジヽウ八巻ケンヲ↡。本モト無シ↢雑書、諸子之名↡。而ルニ道士今列ルニ、乃チ有リ↢二千四十巻↡。其ノ中ニ多ク取リテ↢¬漢書芸ゲイ文志ノ¼目ナヲ↡、妄ミダリニ註シテ↢八百八十四巻ヲ↡為ス↢道ノ経論ト↡。 乃至

 ^陶朱とうしゅを案あんずれば、 すなはちこれ*范蠡はんれいなり。 親まのあたり越えつの王おう*勾践こうせんに事つかへて、 君臣くんしんことごとく呉ごに囚とらはれて、 屎しを嘗なめ尿にょうを飲のんで、 またもつてはなはだし。 また范蠡はんれいの子こは、 斉せいに戮ころさる。 父ちちすでに変へん化げの術じゅつあらば、 なんぞもつて変へん化げしてこれを免まぬかるることあたはざらん。

案ズレ↢陶タウ朱シユヲ↡者バ即チ是范ハン蠡レイナリ。親マノアタリ事ツカヘテ↢越ノ王勾コウ践センニ↡、君臣悉ク囚トラハレテ↢於呉ゴニ↡、嘗ナメ↠屎フンヲ飲ノンデ↠尿ネウヲ、亦以テ甚ハ ダシ矣。又復范ハン蠡レイ之子ハ被ラル↠戮コロサ↢於斉セイニ↡。父既ニ有アラバ↢変ハン化クワ之術↡、何ゾ以テ不ラム↠能ハ↢変化シテ免マヌカルヽコト↟之ヲ。

^¬造立ぞうりつ天てん地ちの記き¼ を案あんずるに称しょうすらく、 ª老ろう子し*幽王ゆうおうの皇后こうごうの腹はらのなかに託生たくせいすº と。 すなはちこれ幽王ゆうおうの子こなり。 また ª身み、 *柱ちゅう史したりº と。 またこれ幽王ゆうおうの臣しんなり。 ¬*化胡かこ経けい¼ にいはく、 ª老ろう子し漢かんにありては*東方とうぼう朔さくとすº と。 もしあきらかにしからば、 知しんぬ、 幽王ゆうおう*犬戎けんじゅのために殺ころさる。 あに君くん父ぶを愛あいして神しん符ぷを与あたへて、 君くん父ぶをして死しせざらしめざるべけんや。 乃至

案ズルニ↢¬造立天地ノ記ヲ¼↡称スラク、老子託タク↢生スト幽イウ王ノ皇后ゴウノ腹 ラノ中ニ↡。即チ是幽王之子ナリ。又身ミ為タリト↢柱チウ史シ↡。復0251是幽王之臣ナリ。¬化胡コ*経ニ¼言ク、老子在リテハ↠漢ニ為スト↢東方朔サクト↡。若シ審アキラカニ爾シカラ者バ知ヌ、幽王為ニ↢犬戎ジユノ↡所ル↠殺サ。豈アニ可ケム↠不ル↧愛シテ↢君父ヲ↡与アタヘテ↢神符ヲ↡、令シメ↦君父ヲシテ不ザラ↞死セ邪ヤ。 乃至

 ^陸りく修しゅう静せいが目録もくろくを指さす、 すでに正本せいほんなし。 なんぞ謬あやまりのはなはだしきをや。 しかるに修しゅう静せい、 目なをなすこと、 すでにこれ大たい偽ぎなり。 いま ¬玄げん都と録ろく¼ またこれ0468偽ぎ中ちゅうの偽ぎなり」 と。 乃至

指ス↢陸*修シウ静セイガ目録ヲ↡、既ニ無シ↢正本↡。何ゾ謬アヤマリ之甚ハナハダシキヲ也ヤ。然ルニ*修静為ナスコト↠目ナヲ、已スデニ是大偽グヰナリアヤマリ 。今¬玄都録¼復是偽中之偽イツワルナリト矣。」 乃至

二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)法琳¬弁正論¼二文(邪正を決判し捨機を勧む)

【106】^またいはく (弁正論)、

▼又云ク、

^「¬大だい経きょう¼ (涅槃経) のなかに説とかく、 ª^道どうに九く十じゅう六ろく種しゅあり、 ただ仏ぶつの一道いちどうこれ正道せいどうなり、 その余よの九く十じゅう五ご種しゅにおいてはみなこれ外げ道どうなりº と。

「▼¬大経ノ¼中ニ説カク、道ニ有リ↢九十六種↡、唯仏ノ一道是於テハ↢正道ナリ、其ノ余ノ九キウ十五種シヨウニ↡皆是外道ナリト。

^朕ちん、 外げ道どうを捨すててもつて如来にょらいに事つかふ。 もし公卿こうけいありて、 よくこの誓ちかいに入いらんものは、 おのおの菩ぼ提だいの心しんを発おこすべし。 老ろう子し・周しゅう公こう・孔こう子し等とう、 これ如来にょらいの弟子でしとして化けをなすといへども、 すでに邪じゃなり。 ただこれ世せ間けんの善ぜんなり、 凡ぼんを隔へだてて聖しょうとなすことあたはず。 公卿こうけい・百ひゃっ官かん、 侯王こうおう・宗室そうしつ、 よろしく偽ぎを反かえし真しんに就つき、 邪じゃを捨すて正しょうに入いるべし。

▼朕チンワレ捨テヽ↢外道ヲ↡以テ事ツカフ↢如来ニ↡。若シ有リテ↢公卿↡、能ク入ラム↢此ノ誓ニ↡者 ノハ、各ノ可シ↠発ス↢菩薩ノ心ヲ↡。老子・周シウ公コウ・孔コウ子等、雖モ↢是如来ノ弟子ト而シテ為ナスト↟化ヲ既ニ邪ナリ。止タヾ是世間之善ナリ、不↠能ハ↢隔ヘダテヽ↠凡ヲ成スコト↟聖ト。公卿・百官・侯コウ王・宗ソウ室、宜ベ クシ↢反カヘシ↠偽ヲイツワリ就ツキ↠真ニ、捨テ↠邪ヲ入ル↟正ニ。

^ゆゑに経教きょうきょう、 ¬*成じょう実論じつろん¼ に説ときていはく、 ª^もし外げ道どうに事つかへて心しん重おもく、 仏法ぶっぽうは心しん軽かろし、 すなはちこれ邪見じゃけんなり。 *もし心しん一等いっとうなる、 これ*無記むきにして善悪ぜんあくに当あたらずº と。 仏ぶつに事つかへて心しん強こわくして老ろう子しに心しん少すくなくは、 すなはちこれ清しょう信しんなり。 清しょうといふは、 清しょうはこれ表ひょう裏りともに浄きよく、 垢穢くえ惑累わくるいみな尽つくす、 信しんはこれ正しょうを信しんじて邪じゃならざるがゆゑに、 清しょう信しんの仏ぶつ弟子でしといふ。 その余よ等ひとしくみな邪見じゃけんなり、 清しょう信しんと称しょうすることを得えざるなり。 乃至

故ニ経教、¬成実論ニ¼説キテ云ク、若シ事ヘテ↢外道ニ↡心重ク、仏法ハ心軽シ、即チ是邪見ナリ。若シ心一等ナル、是无記ニシテ不ト↠当アタラ↢。若善悪↡。事ツ ヒテ↠仏ニ、心強コハクシテ↢孝カウ子ニ↡心少ク者ハ、乃チ是清信ナリ。言フ↠清ト者ハ、清ハ是表裏リウラ倶ニ浄ク、垢アカ穢惑ケガレ 累カサナル皆尽ス、信ハ是信ジテ↠正ヲ不ルガ↠邪ナラ故ニ言フ↢清信ノ仏弟子ト↡。其ノ余等ヒトシク皆邪見ナリ、不ル↠得↠称スルコトヲ↢清信ト↡也。 乃至

 ^老ろう子しの邪風じゃふうを捨すてて法ほうの真しん教きょうに入流にゅうりゅうせよとなり」 と。 以上抄出

捨テヽ↢老子之邪風ヲ↡※入↢流セヨトナリト法之真教ニ↡。」 已上抄出

二 Ⅱ ⅱ b ハ 釈
          (一)¬法事讃¼(邪を信ずる者は現生に悪報を受くることを明かす)

【0469107】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (法事讃・下)、

▼光明寺ノ和尚ノ云ク、

^「▲上じょう方ほうの諸仏しょぶつ恒沙ごうじゃのごとし。 還かえりて舌相ぜっそうを舒のべたまふことは、 娑しゃ婆ばの十じゅう悪あく・五ご逆ぎゃく多おおく疑ぎ謗ほうし、 邪じゃを信しんじ、 鬼きに事つかへ、 神しん魔まを*餧あかしめて、 ^みだりに想おもひて恩おんを求もとめて福ふくあらんと謂おもへば、 災さい障しょう禍か横よこさまにうたたいよいよ多おおし。 連年れんねんに病やまいの床しょう枕ちんに臥ふす。 *聾みみしひ盲めしひ脚あし折おれ、 手て攣ひき撅おる、 ^神明しんめいに承しょう事じしてこの報ほうを得うるもののためなり。 いかんぞ捨すてて弥陀みだを念ねんぜざらん」 と。 以上

「上方ノ諸仏如シ↢恒沙ノ↡▼還リテ舒ノベタマフコトハ↢舌相ヲ↡為 メナリ↧娑婆ノ
▼十悪・五0252逆多ク疑謗シ信ジ↠邪ヲ事ツカヘ↠鬼ニ餧アカシメテ↢神魔ヲ↡
妄ミダリニ想ヒテ求メテ↠恩ヲ謂 モヘバ↠有ラムト↠福災ワザワイ障 禍クワワザワイ横 マニ転ウタヽ弥イヨイヨ多シ
連年ニ臥ス↢病ノ於床ユカ枕ニマクラ↡聾ミヽシヒ盲メシヒ脚アシ折オレ手テ攣ヒキ撅オル
承ジヨウ ウケ ↢事ツカヘシテ神明ニ↡得ルモノヽ↦此ノ報ヲ↥如何 イカン ゾ不ラムト↣捨ステヽ念ゼ↢弥陀ヲ↡」 已上

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)智顗¬法界次第¼(三宝に帰することを勧め余道に事ふることを誡む)

【108】^*天台てんだいの ¬*法界ほうかい次し第だい¼ にいはく、

▼天臺ノ¬法界次第ニ¼云ク、

^「一ひとつには仏ぶつに帰依きえす。 ¬経きょう¼ (涅槃経) にのたまはく、 ª^仏ぶつに帰依きえせんもの、 つひにまたその余よのもろもろの外げ天神てんじんに帰依きえせざれº と。 ^またのたまはく、 ª^仏ぶつに帰依きえせんもの、 つひに悪趣あくしゅに堕おちずº といへり。

「▼一ニハ帰↢依ス仏ニ↡。¬経ニ¼云ク、帰↢依セム於仏ニ↡者 ノ終 イニ不レト↣更カヘマタテ帰↢依セ其ノ余ノ諸ノ外天神ニ↡也。又云*謂ク、帰↢依セム仏ニ↡者 ノ終ニ不ズト↠堕オチ↢悪趣ニ↡云ヘリ。

^二ふたつには法ほうに帰依きえす。 いはく、 ª大だい聖しょうの所説しょせつ、 もしは教きょうもしは理り、 帰依きえし修しゅ習じゅうせよº となり。

▼二ニハ帰↢依ス法ニ↡。謂ク大聖ノ所説、若シハ教若シハ理、帰依シ修習ナラフセヨト也。

^三みつには僧そうに帰依きえす。 いはく、 ª心こころ、 家いえを出いでたる三さん乗じょう正行しょうぎょうの伴ともに帰きするがゆゑにº と。 ¬経きょう¼ (涅槃経) にのたまはく、 ª^永ながくまた更かえつて、 その余よのもろもろの外げ道どうに帰依きえせざるなりº」 と。 以上

▼三ニハ帰↢依ス僧ニ↡。謂ク帰スルガ↢心出デタル↠家ヲ三乗正行之伴ニ↡故ニト。¬経ニ¼云ク、永ク不ルナリト↣復マタ更カヘテ帰↢依セ其ノ余ノ諸ノ外道ニ↡。」 *已上

二 Ⅱ ⅱ b ハ (三)宗暁¬楽邦文類¼(祭祀の法は真正に非ざることを明かす)

【109】^*慈じ雲うん大だい師しのいはく (*楽邦文類)、

▼慈雲大師ノ云ク、

^「しかるに祭さい祀しの法ほうは、 天竺てんじく (印度) には*韋陀いだ、 支那しな (中国) には祀し典てんといへり。 すでにいまだ世よを逃のがれず、 真しんを論ろんずれ0470ば俗ぞくを誘こしらふる権方ごんぼうなり」 と。 文

「然ルニ祭サイマツリ祀シ之マツル 法ハ、天竺ニハ▼韋陀、支那ニハ▼祀シ典トイヘリ。既ニ未ズ ダ↠逃ノガレ↢於世ヲ↡、論ズレバ↠真ヲ誘コシラフル↠俗ヲ之権方ナリト。」 *文

二 Ⅱ ⅱ b ハ (四)諦観¬天台四教儀¼(人趣の尊敬すべからざることを明かす)

【110】^高麗こうらいの*観かん法ほっ師しのいはく (*天台四教儀)、

高麗ライノ▼観法師ノ云ク、

^「餓鬼がき道どう、 梵ぼん語ごには闍黎しゃれい多た。 この道どうまた諸趣しょしゅに遍へんす。 福徳ふくとくあるものは山林せんりん塚ちょ廟びょう神じんとなる。 福徳ふくとくなきものは、 不ふ浄じょう処しょに居こし、 飲食おんじきを得えず、 つねに鞭べん打ちょうを受うく。 河かわを填ふさぎ海うみを塞ふさぎて、 苦くを受うくること無む量りょうなり。 諂誑てんおうの心しん意いなり。 下げ品ぼんの五ご逆ぎゃく・十じゅう悪あくを作つくりて、 この道どうの身しんを感かんず」 と。 以上

「餓鬼道、▼梵語ニハ闍シヤ黎レイ多。此ノ道亦徧ミツス↢諸趣ニ↡。有ル↢福徳↡者 ノハ作ナル↢山林塚チヨツカ広神ト↡。無キ↢福徳↡者 ノハ、居シ↢不浄処ニ↡、不ズ↠得エ↢飲食ヲ↡、常ニ受ク↢鞭ベンムチ打チヤウウツ ヲ↡。填フサギ↠河ヲ塞フサギテ↠海ヲ、受クルコト↠苦ヲ無量ナリ。諂テンヘツラフ誑ノクルフ心意ナリ。▼作リテ↢下品ノ五逆・十悪ヲ↡、感ウクズト↢此ノ道ノ身ヲ↡。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b ハ (五)神智¬天台四教儀集解¼(祭祀する所を尊敬すべからざることを明かす)

【111】^*神じん智ち法ほっ師し釈しゃくしていはく (*天台四教儀集解)、

▼神智法師釈シテ云ク、

^「餓鬼がき道どうはつねに飢うゑたるを餓がといふ、 鬼きとは帰きなり。 ¬*尸子しし¼ にいはく、 ª古いにしえは死し人にんを名なづけて帰き人にんとす。 また人神じんしんを鬼きといひ、 地じ神じんを祇ぎといふº と。 乃至 形かたちあるいは人ひとに似にたり、 あるいは獣けだもの等とうのごとし。 ^心こころ正しょう直じきならざれば、 名なづけて諂誑てんおうとす」 と。

「餓鬼道ハ常ニ飢ウヘタルヲ曰フ↠餓ト、▼鬼之言ハ帰ス↠▼尸シカバネニ。¬子ノ¼曰ク、古 シヘ者名ク↢人死ト↡為ス↢帰人ト↡。又天神ヲ云ヒ↠鬼ト、地神ヲ曰フト↠祇マコトト也。 乃至 形 タチ或イハ似ニタリ↠人ニ、或イハ如シ↢獣ジユ等ケダモノ ノ↡。心0253不レバ↢正直ナラ↡、名ケテ為スト↢諂誑ト↡。」

二 Ⅱ ⅱ b ハ (六)大智(元照)¬盂蘭盆経疏新記¼(鬼神を尊敬すべからざることを明かす)

【112】^*大だい智ち律りっ師しのいはく (*盂蘭盆経疏新記)、

▼大智律師ノ云ク、

^「神じんはいはく鬼き神じんなり。 すべて四し趣しゅ、 天てん・修しゅ・鬼き・獄ごくに収おさむ」 と。

「神ハ謂ク鬼神ナリ。▼総スベテ収オサムト↢四趣、天・修・鬼・獄ニ↡。」

二 Ⅱ ⅱ b ハ (七)戒度¬観経扶新論¼(悪道に摂っせられる所の鬼神を尊敬すべからざることを明かす)

【113】^*度ど律りっ師しのいはく (*観経扶新論)、

▼度律師ノ云ク、

^「魔まはすなはち悪道あくどうの所しょ収しゅうなり」 と。

「▼魔ハ即チ悪道ノ所収シユナリト。」

二 Ⅱ ⅱ b ハ (八)智顗¬摩訶止観¼(神魔を尊敬すべからざることを明かす)

【114】^¬止し観かん¼ (*摩訶止観) の魔事まじ境きょうにいはく、

▼¬止観¼ノ魔事境ニ云ク、

^「二ふたつに魔まの発相ほっそうを明あかさば、 管属かんぞくに通つうじて、 みな称しょうして魔まとす。 細くわしく枝異しいを尋たずぬれば、 三種さんしゅを出いでず。 一ひとつ0471には*慢まん悵ちょう鬼き、 二ふたつには*時媚じみ鬼き、 三みつには*魔羅まら鬼きなり。 三種さんしゅの発相ほっそう、 各々かくかく不ふ同どうなり」 と。

「▼二ニハ明スニ↢魔ノ発相ヲ↡者ハ、通ジテ↢管属ニ↡皆称シテ為ス↠魔ト。細クワシク尋タヅヌレバ↢枝異ヲ↡、不ズ↠出デ↢三種ヲ↡。一ニ者ハ▼慢マン悵鬼、二ニ者ハ▼時媚ミ鬼、三ニ者▼魔羅鬼ナリ。三種ノ発相、各各不同ナリト。」

二 Ⅱ ⅱ b ハ (九)¬往生要集¼(決して魔神を尊むべからざることを明かす)

【115】^源信げんしん、 ¬止し観かん¼ によりていはく (*往生要集・中意)、

▼*源信依リテ↢¬止観ニ¼云ク、

^「▲魔まは煩悩ぼんのうによりて菩ぼ提だいを妨さまたぐるなり。 鬼きは病びょう悪あくを起おこし命みょう根こんを奪うばふ」 (意) と。 以上

「▼魔者依リテ↢煩悩ニ↡而妨サマタグルナリ↢菩提ヲ↡。鬼者起ス↢病悪ヲ↡奪ウバフト↢命根ヲ↡。」 已上

二 Ⅱ ⅱ b ニ 外典
          (一)¬論語¼(外典を挙げて例と為し以て勧誡す)

【116】^¬論ろん語ご¼ にいはく、

▼¬論語ニ¼云ク、

^「*季路きろ問とはく、 ª鬼き神じんに事つかへんかº と。 ^子しのいはく、 ª事つかふることあたはず。 人ひといづくんぞよく鬼き神じんに事つかへんやº」 と。 以上抄出

「季キ路問トハク、事ツカヘムカト↢鬼神ニ↡。▼子ノ曰ク、※不ズ↠能ハ↠事フルコト。▼人焉イズクンゾ能ク事ヘムヤト↢鬼神ニ↡。」 已上抄出▼

後抜

一 禀承に宗有ることを明かす
  Ⅰ 師の弘化を明かす

【117】^▼ひそかにおもんみれば、 聖しょう道どうの諸しょ教きょうは行証ぎょうしょう久ひさしく廃すたれ、 浄じょう土どの真しん宗しゅうは証しょう道どういま盛さかんなり。

▼窃ヒソカニ以オモンミレバ、聖道ノ諸*教ハ行証久シク廃スタレ、浄土ノ真宗ハ証道今盛ナリ。

^◆しかるに諸しょ寺じの釈しゃく門もん、 教きょうに昏くらくして真しん仮けの門もん戸こを知しらず、 洛らく都との儒林じゅりん、 行ぎょうに迷まよひて邪じゃ正しょうの道どう路ろを弁わきまふることなし。 ▼ここをもつて、 *興福こうぶく寺じの学がく徒と、 太だ上じょう天皇てんのう *後ご鳥と羽ばの院いんと号ごうす、 諱いみな尊成たかひら 今きん上じょう *土つち御門みかどの院いんと号ごうす、 諱いみな為仁ためひと 聖暦せいれき、 *承じょう元げん丁ひのと卯のうの歳とし、 *仲春ちゅうしゅん上旬じょうじゅんの候こうに奏達そうたつす。

然ルニ▼諸寺ノ釈門、昏クラク↠教ニ兮シテケイ不↠知ラ↢真仮ノ門戸コト ヲ↡、▼洛ラクミヤコ都トノミヤコ 儒ジユ林、ゾクガクシヤウナリ迷マドフ↠行ニ兮テ無シ↠*弁フルコト↢邪正ノ道路ヲ↡。斯ヲ以テ興福寺ノ学徒ト、奏ソウ↢マフス達ス

号ス↢後ノチノ鳥羽トバノ院ト↡

太上天皇 諱イミナ尊成ゼイ

号ス↢土御門ノ院0254ト↡

今上 諱為仁タメヒト 聖暦セイレキ、承ジヨウ元丁ヒノトノ卯ノ歳仲春上旬之候カタチニ↡。

^◆主しゅ上じょう臣しん下か、 法ほうに背そむき義ぎに違いし、 忿いかりを成なし怨うらみを結むすぶ。 これによりて、 真しん宗しゅう興こう隆りゅうの大たい祖そ*源空げんくう法ほっ師しならびに門もん徒と数す輩はい、 罪ざい科かを考かんがへず、 *猥みだりがはしく死し罪ざいに坐つみす。 あるいは僧そう儀ぎを改あらためて姓名しょうみょうを賜たもうて遠おん流るに処しょす。 予よはその一ひとつなり。

主上臣下、背ソムキ↠法ハウニ違シタガフ↠義ニ、成シ↠忿イカリヲ結 スブ↠怨ウラミヲ。因リテ↠茲コレニ▼真宗興隆ノ大祖ソオホヂ源空法師并ニ門徒数スカズノ輩、トモガラ不ズ↠考カムガヘ↢罪科クワヲシナワイ↡、▼猥ミダリガハシク坐ツミス↢死罪ニ↡。▼或イハ改アラタメテ↢僧儀ヲ↡賜タマフテ↢姓名ヲ↡処ス↢遠流ニ↡。▼豫ヨワレハ其ノ一也。

^◆しかれば、 すでに▼僧そうにあらず俗ぞくにあらず。 このゆゑに禿とく0472の字じをもつて姓しょうとす。 空くう師し (源空) ならびに弟子でし等ら、 諸方しょほうの辺へん州しゅうに坐つみして五ご年ねんの*居諸きょしょを経へたりき。

爾レ者バ已ニ▼非ズ↠僧ニ非ズ↠俗ニ。是ノ故ニ以テ↢禿トクノカブロナリ字ヲ↡為ス↠姓ト。空師并ニ弟子等ラ、坐ツミシテ↢諸方ノ辺州ニ↡▼経ヘタリキ↢五年ノ▼居キヨ諸ヲ↡。

^皇帝こうてい *佐渡さどの院いん、 諱いみな守成もりなり 聖代せいだい、 *建けん暦りゃく辛かのとの未ひつじの歳とし、 *子し月げつの中旬ちゅうじゅん第だい七日しちにちに、 勅ちょく免めんを蒙かぶりて入洛じゅらくして以後いご、 空くう (源空)、 洛陽らくようの東ひがし山やまの西にしの麓ふもと、 *鳥とり部野べのの北きたの辺ほとり、 *大谷おおたにに居いたまひき。 *同おなじき二に年ねん壬みずのえ申さる*寅月いんがつの下げ旬じゅん第だい五ご日にち*午うまの時ときに入にゅう滅めつしたまふ。 奇き瑞ずい称しょう計げすべからず。 *別伝べつでんに見みえたり。

佐*土ノ院  皇帝 諱イミナ守モリシウ成 聖セイ代、建ケン暦*辛カノトノ未ヒツジノ歳▼子月ノ中旬第七日ニ、蒙リテ↢ 勅免メンヲ↡▼入ジフ洛シテ已後、空居タマヒキ↢洛陽ノ東山ノ西ノ麓フモト、鳥部野ノ北ノ辺 リ、大谷ニ↡。同ジキ二年壬申▼寅イン月ノ下旬第五日午時入滅シタマフ。奇キヨシ瑞ズイヨシ不ズ↠可カラ↢称計ス↡。見エタリ↢別伝ニ↡。▼

一 Ⅱ 自の禀承を明かす

【118】^▼しかるに愚ぐ禿とく釈しゃくの鸞らん、 *建仁けんにん辛かのと酉のとりの暦れき、 雑ぞう行ぎょうを棄すてて本願ほんがんに帰きす。 ▼*元げん久きゅう乙きのと丑のうしの歳とし、 *恩恕おんじょを蒙かぶりて ¬選せん択じゃく¼ (*選択集) を書しょしき。 同おなじき年としの*初しょ夏か中旬ちゅうじゅん第だい四し日にちに、 「選せん択じゃく本願ほんがん念仏ねんぶつ集しゅう」 の内題ないだいの字じ、 ならびに 「▲南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつ 往おう生じょう之し業ごう 念仏ねんぶつ為い本ほん」 と 「釈しゃくの綽しゃく空くう」 の字じと、 空くうの真筆しんぴつをもつて、 これを書かかしめたまひき。

▼然ルニ愚禿釈ノ鸞、▼建仁辛カノトノシン 酉イウノ暦レキコヨミ、棄ステ↢雑行ヲ↡兮テ帰ス↢本願ニ↡。▼元久乙キノトノ丑ウシノ歳、蒙 ブリテ↢恩アハレミ恕ジヨヲ↡アハレミ兮テ書カクシキ↢¬選択ヲ¼↡。同ジキ年ノ初ソハジメ夏カ中旬第四日ニ、「選択本願念仏集ノ」内題ノ字、并ニ「南无阿弥陀仏往生之業念仏為本ト」与ト↢「釈ノ綽空ノ」字↡、以テ↢空ノ真筆ヲ↡、令メタマヒキ↠書カ↠之ヲ。

^◆同おなじき日ひ、 空くうの真影しんねい申もうし預あずかりて、 図画ずがしたてまつる。 ▼*同おなじき二に年ねん閏うるう七月しちがつ下げ旬じゅん第だい九く日にち、 真影しんねいの銘めいは、 真筆しんぴつをもつて 「南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつ」 と 「^▲若にゃく我が成じょう仏ぶつ 十方じっぽう衆しゅ生じょう 称しょう我が名みょう号ごう 下至げし十じっ声しょう 若にゃく不ふ生しょう者じゃ 不ふ取しゅ正しょう覚がく 彼ひ仏ぶつ今こん現在げんざい成じょう仏ぶつ 当とう知ち本誓ほんぜい重じゅう願がん不虚ふこ 衆しゅ生じょう称しょう念ねん必得ひっとく往おう生じょう」 (礼讃) の真文しんもんとを書かかしめたまふ。

同ジキ日、空之真影エイ申シ預アヅカリテ、奉 マツル↢図画ヱカクシ↡。同ジキ二年閏ウルフ七月下旬第九日、真影エイノ銘メイシルシニ以テ↢真筆ヲ↡令メタマフ↠書カ↢「南无阿弥陀仏ト」与トヲ↢「▲若我成仏十方衆生称我名号下至十声若不生者不者正覚▼彼仏今現在成仏当知本誓重願不虚衆生称念必得往生」之真文↡。

^◆また夢ゆめの告つげによ0473りて、 *綽しゃく空くうの字じを改あらためて、 同おなじき日ひ、 御ご筆ひつをもつて名なの字じを書かかしめたまひをはんぬ。 本ほん師し聖しょう人にん (源空) 今年こんねんは*七しち旬しゅん三さんの御歳おんとしなり。

▼又依リテ↢夢ノ告ニ↡、改アラタ0255メテ↢綽空ノ字ヲ↡、同ジキ日以テ↢御筆ヲ↡▼令メタマヒ↠書カ↢名之字ヲ↡畢ヌ。本師聖人今年ハ七旬コロ三ノ御歳也。

 ^▼¬選せん択じゃく本願ほんがん念仏ねんぶつ集しゅう¼ は、 *禅ぜん定じょう博陸はくりく 月輪つきのわ殿どの兼実かねざね、 法ほう名みょう円えん照しょう の教命こうめいによりて撰せん集じゅうせしむるところなり。 真しん宗しゅうの簡要かんよう、 念仏ねんぶつの奥おう義ぎ、 これに摂しょう在ざいせり。 見みるもの諭さとり易やすし。 まことにこれ希有けう最さい勝しょうの華か文もん、 無む上じょう甚深じんじんの宝典ほうでんなり。

¬選択本願念仏集¼者ハ、依リテ↢禅定博陸 月輪殿兼実カネザネケンジチ法名円*照 之教カウ命メイニ↡所↠令ムル↢撰集セ↡也。真宗ノ簡要、念仏ノ奥アウフカシ義、摂↢在セリ于ニ↟斯。見ル者 ノ易シ↠諭サトリ。誠マコトニ是 レ希有最勝之華クワ文、无上甚深之宝典也。

^◆年としを渉わたり日ひを渉わたりて、 その教きょう誨けを蒙かぶるの人ひと、 千万せんまんなりといへども、 親しんといひ疎そといひ、 この見写けんしゃを獲うるの徒ともがら、 はなはだもつて難かたし。 しかるにすでに製作せいさくを書写しょしゃし、 真影しんねいを図画ずがせり。 これ専念せんねん正しょう業ごうの徳とくなり、 これ決けつ定じょう往おう生じょうの徴しるしなり。

▼渉ワタリ↠年ヲ渉リテ↠日、蒙 ブル↢其ノ教誨ヲ↡之人雖モ↢千万ナリト↡、云ヒ↠親ト云ヒ↠疎ソウトキト、獲ウル↢此ノ見写ヲウツス↡之徒 モガラ甚ダ以テ難シ。爾ルニ既 デニ書↢写シヤシ製作セイサクヲ↡、図↢画セリ真影ヲ↡。是専念正業之徳也、是決定往生之徴シルシチ  *徴字 チ反アラハス 也。

^◆よりて悲喜ひきの涙なみだを抑おさへて由ゆ来らいの縁えんを註しるす。

仍ヨンテ抑オサヘテ↢悲喜之涙ヲ↡註ス↢由来之縁ヲ↡。

二 製作の由致を述ぶ
  Ⅰ 通じて感荷の恩徳を明かす

 ^▲慶よろこばしいかな、 *心こころを弘ぐ誓ぜいの仏ぶつ地じに樹たて、 念おもいを難なん思じの法海ほうかいに流ながす。 深ふかく如来にょらいの矜哀こうあいを知しりて、 まことに師し教きょうの恩厚おんこうを仰あおぐ。 慶きょう喜きいよいよ至いたり、 至し孝こういよいよ重おもし。

▼慶ヨロコバシイ哉カナ、樹タテ↢心ヲ弘*誓ノ仏地ニ↡、流ス↢念ヲ難思ノ*法海ニ↡。深ク知リテ↢如来ノ矜オホキナル哀ヲ↡、良 トニ仰アフグ↢師教ノ恩厚カウアツシヲ↡。慶喜弥イヨイヨ至リ、至孝カウ弥重シ。

二 Ⅱ 別して製作の由致を述ぶ

^これによりて、 真しん宗しゅうの詮せんを鈔しょうし、 浄じょう土どの要ようを摭ひろふ。 ただ仏恩ぶっとんの深ふかきことを念おもうて、 人倫じんりんの嘲あざけりを恥はぢず。 もしこの書しょを見聞けんもんせんもの、 ▲信しん順じゅんを因いんとし、 疑ぎ謗ほうを縁えんとして、 信しん楽ぎょうを願力がんりきに彰あらわし、 妙みょう果かを安あん養にょうに顕あらわさんと。

因リテ↠茲 レニ、鈔セウシ↢真宗ノ詮ヲ↡、摭ヒロフ↢浄土ノ要ヲ↡。唯念フテ↢仏恩ノ深キコトヲ↡、不ズ↠恥ハヂ↢人ジン倫リンノトモガラ嘲アザケリヲ↡。若シ見↢聞セム斯ノ書ヲ↡者 ノ、信順ヲ為シ↠因ト、疑謗ヲ為シテ↠縁ト、信楽ヲ彰アラハシ↢於願力ニ↡、妙果ヲ顕 ハサムト↢於安養ニ↡矣。

【0474119】^¬安楽あんらく集しゅう¼ にいはく (上)、

▼¬安楽集ニ¼云ク、

^「▲真言しんごんを採とり集あつめて、 往益おうやくを助修じょしゅせしむ。 いかんとなれば、 前さきに生うまれんものは後のちを導みちびき、 後のちに生うまれんひとは前さきを訪とぶらへ、 連続れんぞく無む窮ぐうにして、 願ねがはくは休止くしせざらしめんと欲ほっす。 無む辺へんの生しょう死じ海かいを尽つくさんがためのゆゑなり」 と。 以上

「採トリ↢集メテ真言ヲ↡助↢修オコナフセシム往益ヲ↡。何トナレ者バ欲ス↠使メムト↣前ニ生レム者 ノハ導 ビキ↠後ヲ、後ニ生レム者ヒトハ訪トブラヘ↠前ヲ、連続ゾクツグ无窮ニシテ、願クハ不ラ↢休ヤム止セ↡。為ノ↠尽ツクサムガ↢无辺ノ生死海ヲ↡故 ヘナリト。」 已上

【120】^しかれば末代まつだいの道俗どうぞく、 仰あおいで信しん敬きょうすべきなり、 知しるべし。

爾レ者バ末代ノ道俗、可キ↢仰デ信敬ス↡也、可シ↠知ル。

【121】^¬華け厳ごん経ぎょう¼ (入法界品・唐訳) の偈げにのたまふがごとし。

如0256シ↢▼¬華厳経ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「▲もし菩ぼ薩さつ、 種々しゅじゅの行ぎょうを修しゅ行ぎょうするを見みて、 善ぜん・不ふ善ぜんの心しんを起おこすことありとも、 菩ぼ薩さつみな摂取せっしゅせん」 と。 以上

「若シ有リトモ↧見テ↣菩薩修↢行スルヲ種種ノ行ヲ↡
起スコト↦善・不善ノ心ヲ↥菩薩皆摂取セムト」 已上

顕けん浄じょう土ど方便ほうべん化け身しん土ど文類もんるい 六

 

延書の底本は本派本願寺蔵善如上人書写本。
観経の浄土 ¬観経¼ の定善十三観および九く品ぼん往生の文に説かれる浄土。
大施品 引用の文は 「大施品」 になく 「諸しょ菩ぼ薩さつ本ほん授じゅ記き品ぼん」 にある。
本の罪 仏智を疑惑した罪。
悔責 くいせめること。
普遍智 一切にあまねく満ちわたる智慧ちえ。
無等智 並びなくすぐれた智慧。
威徳智 人間の思いをはるかに超えた、 すぐれた徳をそなえた智慧。
広大智 広く一切を知る智慧。
殊勝智のもの 化生の人は仏の諸智を得るから殊勝智 (ことにすぐれた智慧) の者という。 →化け生しょう
かの蓮華…趺坐せん ¬三経往生文類¼ (広本) では 「かの化生を受く。 蓮華のなかにおいて結跏趺坐す」 と読んでいる。
下劣の輩 胎たい生しょうの人を指す。
因なくして…奉事せん 明信仏智 (明らかに仏智の不思議を信じて疑いのないこと) の正因のないまま無量寿仏にお使えすることになろう。 通常は 「因よって無量寿仏に奉事したてまつることなし」 と読む。
信心 ここでは自力の信のこと。
聖化の事を被らず 阿弥陀仏の教化、 導きを受けることがない。
能 能力。
二善 定じょう善ぜん、 散善さんぜんのこと。
欣慕浄土の善根 浄土をねがい慕わせるための善根。
釈迦微笑の素懐 韋い提だい希け夫人の別選を聞いて釈尊が微笑したのは、 それに応じて説かれるこの経説が釈尊の本意をあらわすものであることを示す。
韋提別選の正意 韋提希夫人がとくに阿弥陀仏の浄土を選んだ真意。
業果法然… 如来のなす利他の行為とその結果は、 すべて法の道理にかなっていて誤りがない。
また深心の深信とは 高田派専修寺蔵宗祖加点 「散善義」 では 「また深心は深き信なりといふは」 と読んでいる。
自心を建立して 自分の心をしっかりと定め不動のものにして。 ここでは自力の信を確立すること。
定善は…縁なり 「定善示観縁」 は元来 「定善観を示す序分」 の意。 親鸞聖人は訓点を施して 「定善は他力の信心を示す縁」 と転意している。
観 ここでは本願力を観知する他力信心の意。 ¬一多証文¼ には 「観」 の字を解釈して 「観は願力をこころにうかべみると申す、 またしるといふこころなり」 とある。
散善は…縁なり 「散善顕行縁」 は元来 「散善行を顕す序文」 の意。 親鸞聖人は訓点を施して 「自力の散善は、 他力念仏を顕す縁」 と転意している。
行 他力の念仏のこと。
解脱分 順解脱分のこと。 解脱 (さとり) へと方向づけられた階位。
差うて…知んぬべし 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬礼らい讃さん¼ には 「若もしなさざるものは知るべし」 と読んでいる。 この文は通常 「なさざるもののごとし。 知るべし」 と読む。
真心徹到 真実の信心がたしかに定まること。 ここでは如来回え向こうの真実心が衆しゅ生じょうのうえに至りとどいたこと。
正助雑の三行 ここでの正について、 五正行とする説と、 正定しょうじょう業ごう (称名) とする説とがある。 助は助業じょごう、 雑は雑ぞう行ぎょう (五正行以外のあらゆる行ぎょう業ごう) を指す。
利他教化地… 利他教化地という還相げんそうの位相にある菩薩が、 衆しゅ生じょうを真実に導くために仮に用いるのが聖しょう道どう門もんの法であるということ。
五種 五正行の中、 第五の讃嘆さんだん供く養ようを開いて二種とし、 称名を除いて五種とすると解釈する説、 他力の称名を除いたほかの、 自力心をもって行ずる五正行を五種とすると解釈する説などがある。
解行 知解と修行。 宗義を領りょう解げし行を実践すること。
回心回向の善 雑ぞう行ぎょうは元来、 此土しど入にっ聖しょう (この世で聖しょう者じゃの位に入る) の行で往生行ではないから、 浄土願生の心をおこし、 往生行となるようにと回え向こうしなければならない善である。
定散心 定じょう善ぜんや散善さんぜんを修して往生を願い求める心。 転じて自力心のことをいう。
仮門の教 ¬観経¼ の教説を指していう。
多善根… 襄じょう陽よう (現在の中国湖こ北ほく省襄陽) の石碑に刻まれた異本の ¬小経¼ にこの語がある。 →襄じょう陽よう石せっ経きょう
恒沙の信 ガンジス河の砂ほどに多い諸仏の勧めによってめぐまれた信心。
四依弘経の大士 衆しゅ生じょうがよりどころとすべき四種の菩薩。 ここでは浄土真宗を顕彰した祖師たちを指すとみられる。 →四依しえ
三朝浄土の宗師 インド・中国・日本にあらわれて浄土真宗を伝えた祖師たち。 七しち高僧こうそうのこと。
助正間雑の心 正定しょうじょう業ごうと助業じょごうのいわれがわからず、 念仏だけでは往生できないと疑い、 助業をはげむ心。 自力疑心のこと。
教は頓… →教きょう頓とん機き漸ぜん
この法 阿弥陀仏の本願を指す。
聴聞 「ゆりてきく」 (左訓) 「ゆりて」 は 「許されて」 の意。
信慧… 信心の智慧ちえを得ることはむずかしい。
悪衆生 高田派専修寺蔵宗祖加点 「散善義」 にはこの語の後に 「悪見」 の語がある。
礼懴儀 ¬集しゅう諸しょ経きょう礼懴らいさん儀ぎ¼ のこと。
信 教法を信受し理解すること。
求 教法のめざすところを一途に求めること。
聞 教法の言葉を聞くだけで、 そのいわれを知らないこと。
思 教法のいわれを十分聞きわけて、 如実に思い知ること。
道 さとりへの道。 また、 さとりのこと。
得者 さとりを得た人。
三宝の性異なり 仏法僧の三宝は一体ではなく、 それぞれの本質が異なっている。
三宝同一の性相 仏法僧の三宝はその本質が異ならず、 一体であるということ。
繋念思惟 思いをとどめて心を一つに集中すること。 禅定に同じ。
明 ここでは仏道のこと。
戒施定 持じ戒かい、 布施ふせ、 禅定のこと。 →六ろっ波羅ぱら蜜みつ
暫出還復没 しばらく生しょう死じ界を出たとしても結局は生死のなかに沈むことになること。
二種の戒 仏教の正しい戒と仏教以外のよこしまな戒。
読誦に…なけん 通常は 「読誦し、 他のために解説することあたはずは、 利益するところなけん」 と読む。
諸有のため 人天等の果か報ほうを得るため。
持読誦説 経典を受じゅ持じし、 理解して読み、 記憶して唱え、 他人のために解説すること。
善調御 衆しゅ生じょうの心をよくととのえる指導方法。
畢竟軟語 この上なくやさしい言葉。
畢竟呵責 この上なくきびしい誡め。
軟語呵責 やさしい言葉ときびしい誡めとを合せ用いること。
八種の術 治身・治眼・治胎・治小児・治瘡・治毒 (中毒や毒虫にさされたのを治す)・治邪 (邪気鬼病を治す)・知星 (治療に当って星のうごきを知る) の八をいう。
風病・熱病・水病 人体を構成する地水火風の四大のうち、 風大の不調によって風病、 火大の不調によって熱病、 水大の不調によって水病がおこるという。
骨相 身体は白骨を連ねたものにすぎないと観ずる修行法。
十二縁相 十じゅう二に因縁いんねんのこと。
無上法輪 この上ない教えの輪。 仏の教法は衆しゅ生じょうの煩悩ぼんのうをうちくだき、 次々と広まってゆくので、 車輪に喩える。
懴儀 ¬集しゅう諸しょ経きょう礼懴らいさん儀ぎ¼ のこと。
本家・本国 阿弥陀仏の浄土を指す。
垢障の凡愚 煩悩ぼんのう悪業あくごうの障りをもった愚かな凡ぼん夫ぶ。
かの因を… 阿弥陀仏が浄土往生の因をたてたことを明らかに信知することができないからという意。
論主・宗師 論主は龍りゅう樹じゅ・天親てんじんの二菩薩、 宗師は曇鸞どんらん大だい師し以下の五祖を指す。
万行諸善の仮門 第十じゅう九く願の法門のこと。 →要門ようもん
善本徳本の真門 第二十願の法門のこと。 →真門しんもん
選択の願海 第十八願のこころ。
転入 転捨てんしゃ帰き入にゅうのこと。 自力の行と信を捨てて、 本願他力の世界にはいること。
在世正法のためにして 釈尊がこの世にいる時と、 滅後五百年 (千年) 間だけ、 解げ脱だつの道として有効であるという意。
涅槃に… (釈尊が) この世から去ろうとする時。
法 教法。
人 教法を説く人。
義 教法の本質的意味内容。
語 教法の言説表現。
智 真実の智慧ちえ。
識 虚こ妄もう分別ふんべつのこころ。
十二部 十じゅう二部にぶ経きょうのこと。
指 「語」 を喩えていう。
月 「義」 を喩えていう。
正要 さとりに入るための正しい肝要な道。
末代の道俗 末法の時代の出家と在家の者。 →末法まっぽう
古徳の伝説 古の高徳方が伝え説いたところ。
大集の月蔵経 ¬大だい集じっ経きょう¼ の 「月蔵分」 のこと。
如来般涅槃の時代 釈尊が入滅された年代。
周の… 紀元前949年にあたる。
五十三年 底本に 「五十一年」 とあるのを改めた。
後堀川院 後醍醐天皇 (1212-1234。 在位1221-1232)。
二千一百七十三歳 底本に 「二千一百八十三歳」 とあるのを改めた。
六百七十三歳 底本に 「六百八十三歳」 とあるのを改めた。
一如に… 唯一絶対の真実にもとづいて教え導く者は。
四海に… 天下を治めて徳風を垂れる者は。
物を開し 人々を導き。
真諦俗諦 仏法と世俗の法 (王法)。
天網 もと ¬老子¼ の言葉。 天が罪人を捕らえるために張りめぐらす網。 ここでは破は戒かい僧を戒めるための詔。
寧処に… 心安らかに落ち着いていられない。
三古の運 中国の古い時代を三期に分け、 各期をその時代の聖賢で代表させたもの。 上古は伏ふく羲ぎ、 中古は文王、 下古は孔子とする。
減衰 現行の ¬末法まっぽう灯とう明みょう記き¼ には 「盛衰」 とある。
後五 仏滅後の二千五百年を五百年ごとに五期に分け、 仏教が次第に衰えていくさまを示したもの。 第一期は解げ脱だつ堅けん固ご、 第二期は禅ぜん定じょう堅けん固ご、 第三期は多た聞もん堅けん固ご、 第四期は造ぞう寺じ堅けん固ご、 第五期は闘とう諍じょう堅けん固ごといわれる。
破持僧 破は戒かい僧と持じ戒かい僧のありさま。
大迦葉 摩訶まか迦か葉しょうのこと。
七賢聖僧 仏滅後に大法を伝え護る七僧。 摩訶まか迦か葉しょう・阿あ難なん・優婆うば掬きく多た・尸羅しら難なん陀だ・青蓮花 (華) 眼・牛口・宝天を指す。
道果 阿羅あら漢かん果のこと。
不浄観 肉体の不浄を観じて煩悩ぼんのうを取り除く観法。 五ご停じょう心観しんかんの一。
僧尼嫁娶せん 比丘びくは娶り、 比丘尼は嫁ぐことになるであろう。
解脱堅固 さとりを得ることが確かであること。
禅定堅固 心静かに瞑想する修行がよく行われること。
多聞堅固 仏の教えがよく聞かれ、 よく理解されること。
造寺堅固 寺院の建造が盛んに行われること。
闘諍堅固 自説が他説よりもすぐれているとして、 仏弟子たちの言い争いが盛んになること。
白法隠没 仏の教え (白法) がこの世から姿を消し去ること。
周異 ¬周しゅう書しょ異記いき¼ のこと。
穆王満五十三年壬申 底本に 「五十一年」 とあるのを改めた。 紀元前949年。
延暦二十年辛巳 801年。
匡王班四年壬子 紀元前609年。
披諷 披はひもとく、 諷は諳んじる。 諳んじて知っているというほどの意。
邪活 比丘びくにあるまじき仕事をして生活すること。
得定の凡夫 有漏うろ (煩悩ぼんのうのある状態) の禅ぜん定じょうを修める凡ぼん夫ぶ。
漏戒 戒を漏失して守持しないこと。
九十五種の異道 九く十じゅう五ご種しゅの外げ道どうに同じ。
護持…あらんは 「この人」 は名字の比丘を指す。 通常は 「護持養育して安置することあらば、 この人」 と読む。 この場合の 「この人」 は名字の比丘を護持養育する人。
忍地 無生法忍の地位。 ここでは単にさとりの意。
前三果 声しょう聞もんの修道しゅどう階位である預流よる・一来いちらい・不ふ還げん・阿羅あら漢かんの四果のうちの前三をいう。 →八輩はっぱい
両判の失 矛盾する二通りの見解を説くという過失。
四部の衆 →四し衆しゅ。
二聖 声しょう聞もんの四果の階位の中の初果 (預流よる果か) と第四果 (阿羅あら漢かん果か) とする説と、 有学 (前三果) の聖しょう者じゃと無学 (阿羅漢果) の聖者とする説とがある。
四種の魔 ここでは魔が仏に似せて説いた経と律、 およびその経・律を奉ずる人をいう。 通常は五陰魔 (五ご蘊うん魔)・死魔・煩悩ぼんのう魔・天魔を指して四魔という。
またのたまはく 引用の意は ¬大集経¼ 巻五十三、 五十四にみえる。
涅槃の… さとりに入ることを約束されるという意。
非梵行 仏の制戒を破る清しょう浄じょうでない行為。
盧至如来 賢劫に出世する千仏の中の最後の如来。
律 ¬四し分律ぶんりつ¼ のこと。
四儀 四し威儀いぎのこと。
蝎 さそり。
惑 火星。
鎮星 土星。
太白 金星。
辰星 水星。
荷羅睺星 古代インドで日食・月食をおこすと考えられていた星。
小星宿二十八 古代インドの天文学では、 東に昴ぼう・畢ひつ・觜し・参しん・井せい・鬼き・柳りゅうの七しち宿しゅく、 南に星せい・張ちょう・翼よく・軫しん・角かく・亢こう・氐ていの七宿、 西に房ぼう・心しん・尾び・箕き・斗と・牛ぎゅう・女じょの七宿、 北に虚きょ・危き・室しつ・壁へき・奎けい・婁ろう・胃いの七宿があるとする。
八大星 歳星より荷羅睺星の八星のこと。
法用 星宿の運行や季節等の法則とそのはたらき。
年満 十二ヵ月。
四天大王 →四し天王てんのう
四方四維 東西南北および東南・東北・西南・西北。
佉盧虱仙人 高麗こうらい版大蔵経は 「佉盧虱仙人」 の後に 「説法已」 の三字がある。 この場合は 「佉盧虱仙人、 法を説きおはりて」 と読む。。
非人 人間以外の天・竜・夜や叉しゃ・妖鬼などをいう。
佉羅氐山  須しゅ弥み山せんの近くにある山。
離暗 波旬の娘。
鮮潔の衣 袈裟けさのこと。
長斎 午後には食事をとらないという戒めを長く持つこと。
噉する 口にする。 食べる。
結跏 結けっ跏か趺坐ふざの略。
大方等大集月蔵経 ¬大集だいじっ経きょう¼ 「月蔵分」 のこと。
仁者 あなたがた。
聖道 聖 (正) 智。 さとりのこと。
断常見 断見だんけんと常じょう見けん。
大徳婆伽婆 釈尊のこと。 →婆伽婆ばがば
兜率陀天王 兜率陀天の天主。 →兜と率そつ天てん
他化自在天王 欲界よくかい六欲天のうちの最高天の主。 →他化たけ自じ在ざい天てん
化楽天王 欲界六欲天の第五天の主。 →化け楽らく天てん
須夜摩天王 欲界六欲天の第三天の主。 →須しゅ夜摩やま
天仙七宿 天仙とは佉盧かる虱しった仙人のことで、 彼がはじめて星宿辰を配置したので、 天仙七宿という。 七宿とは二十八宿の天体を東西南北の四方に配置すると各七宿となる。 そのうち、 ここは、 北方の七宿のこと。
三曜 曜は大きい星のこと。 四方にそれぞれ三曜を配置する。
三天童女 太陽が一年間運行する黄道を十二分して、 十二の星宿宮とする。 この十二宮を司る童女が、 東西南北に三人ずついると考えた。
土境 分野。 領域。
辰 十二の星宿宮 (星のやどり) のことで十二支にあたる。
梵行…婆伽婆 通常は 「梵行相応す。 仏、 婆伽婆」 と読む。 梵行は清浄しょうじょうな行の意。
十六の大国 古代インドにあったという十六の国々。
卵生… 衆しゅ生じょうが生れる四種の形態 (四し生しょう)。
大梵 大梵天王のこと。 →梵天ぼんてん王のう
天師梵 天界の師である梵天王。
月蔵菩薩摩訶薩 ¬大集だいじっ経きょう¼ 「月蔵分」 に対告衆 (仏の説法の相手) として出る菩薩。 西方の月勝世界から眷属けんぞくを率いて来会した。
了知清浄士 「清浄を了知する士」 の意で、 月蔵菩薩を指す。
生死に…悪道に回して 通常は 「生死輪を回して、 正法輪を転じ、 追うて悪道を回して」 と読む。
正法輪 仏の正しい説法は止とどまることなくめぐって次々と広まってゆくので、 車輪に喩える。
地の精気 五穀をみのらせる大地のすぐれた力。
衆生の精気 生きとし生けるものの持つ生命力。
正法の精気 仏法僧の三宝さんぽうの持つ功く徳どく力。
迦葉如来 迦か葉しょう仏ぶつのこと。
大鹹 塩からいこと。
提謂波利 提謂は梵名トラプシャ (Trapuṣa)、 波利は梵名バッリカ (Bhallika) の音写。 ともに商人の名。 成道後の釈尊に遇い、 食を供く養ようして法を聞いたという。 在家信者の最初。
四阿修羅城 須弥山の四面の海中に四大阿修羅王の城があるという。
大徳修伽陀 釈尊のこと。 →修しゅ伽陀がた
みづから称名せざらんや 通常は 「みづから名を称せず」 と読み、 自分から名前をいうことができないという意味。
正法の味はひ醍醐の精気 醍醐は牛乳を精製して作ったもの。 最高の美味であり、 最上の薬とされる。 ここでは正法 (仏法僧の三宝さんぽう) のもつ功く徳どく力を醍醐の味に喩える。
妙丈夫 すぐれた人。 ここでは梵天ぼんてん王のう・帝たい釈しゃく天てんのこと。
賢首 賢者の首たるもの。 ここでは大梵天王等を指す。
刹利・婆羅門毘舎首陀 古代インドの四し姓しょう制度。 →補註9。
かのもろもろの…相応せん 通常は 「かのもろもろの衆生のために念持方便し、 堅固力を得しめ、 所聞不忘智に入りて諸法の相を信ぜしめ、 …三昧の根、 相応せしむべし」 と読む。
念持方便 心が乱れないように思いをかけ、 手だてをめぐらすこと。
堅固力 いかなるものにもさまたげられないかたい力。
三昧の根 さとりに至るはたらきのことで、 信・精進・念・定・慧の五ご根こんをさす。
三種の菩提 声しょう聞もん・縁覚えんがく・菩薩のさとり。
五事 先に出た五利のこと。
大雄猛士 煩悩ぼんのうの敵を退治する勇ゆう猛みょうな人。 ここでは大梵天王等を指す。
鳩留仏 鳩留くる孫仏そんぶつのこと。
三精気 地の精気・衆しゅ生じょうの精気・正法の精気。 精気とは、 もののうちにひそむすぐれた力。
曜宿 星。 四方に配置された三曜七しち宿しゅくなどのこと。
独覚無上 独ひとり無上を覚さとること
捨つ 捨は捨施の意。 説法を施すこと。
拘楼孫如来 鳩留くる孫そん仏ぶつのこと。
日天子 太陽を神格化したもの。
月天子 月を神格化したもの。
もしおのれが…愛することあらん 通常は 「もしおのれを愛し、 苦を厭ひ楽を求むるものあらば」 と読む。
手をもつて刀杖 通常は 「手、 刀杖をもって」 と読む。
もろもろの天人…盈満をなすなり 高麗こうらい版大蔵経等によれば、 「もろもろの天人をして利益を得ず、 地獄に堕せしむるがゆゑに。 三悪道増長し盈満をなすがゆゑに」 と読む。
諸魔 ¬首楞厳経¼ によれば、 修道しゅどう者が淫欲いんよくを断じないまま禅ぜん定じょうを修すれば、 すべてみな魔道におちるという。
鬼神 ¬首楞厳経¼ によれば、 修道者が殺せっ生しょうを離れずに禅定を修すれば、 すべてみな鬼神になるという。
群邪 ¬首楞厳経¼ によれば、 修道者が盗心を捨てずして禅定を修すれば、 すべてみな邪道におちるという。
おのおの…なりて 通常は 「おのおのみづから無上道をなるといはん」 と読む。
詃惑無識 錯乱して、 識別判断ができなくなること。
所過の処  (魔・鬼き神じん・妖魔などが) 通るところ。
番に代りて かわるがわる。
尽形まで 生涯を終えるまで。
妖の師 あやしげなことを説いて人の心を惑わすもの。
起屍鬼 死体の中にある一種の気をよびおこして、 人に害を与える鬼神。
螺髻梵志 もとどりを螺 (ほらがい) のように束ねている婆羅門。 ここでは事じ火か外げ道どう (火を尊び、 これに供く養ようして福を求める異教徒の一派。 拝火外道ともいう) を指す。
舅 おじ。 次の阿舅は親しみをこめたいい方。
大沙門 釈尊を指す。
性無常の准ひならしむ 通常は 「性、 常準 (准) なからしめ」 と読む。 常準は標準のこと。
分斉 節度。
李道士 李り仲ちゅう卿けいのこと。
外の一異 「十異」 の第一。
玄妙玉女 神々しい妙たえなる仙女。 老子の母の尊称。
内の一喩 「十喩」 の第一。
開士 ¬弁べん正しょう論ろん¼ 巻二に仏教側の主張者として総そう持じ開士の号で出る。
解五千文 ¬老子¼ の註釈書。
考義類 ¬老子¼ に関する講義類。
三皇 伏ふく羲ぎ・神農しんのう・黄帝こうていの三皇帝。
尭舜 中国古代の伝説上の二人の帝王。 治世の模範とされる。
郭荘 郭かく象しょう (-312。 字あざなは子玄) が著した ¬荘そう子し¼ の註釈書。
材 素質。 才能。
玄妙および…出塞記 いずれも老子伝の一種。
仙人玉録 老子伝の一種。
礼 ¬礼らい記き¼ のこと。
隆周 周王朝が栄えた頃。
罽賓 インド西北部の古国。 ガンダーラまたはカシュミールにあたるという。
伯陽 老ろう子しの字あざな。
周文 周の文王。
迦葉 老子のこと。 ¬清しょう浄じょう法ほう行ぎょう経きょう¼ ¬空くう寂じゃく所問しょもん経ぎょう¼ (中国撰述の経典) 等に、 仏弟子の迦葉が中国に生れかわって老子となったという。
桓王丁卯 前714年。
景王壬午 前519年。
姫昌 周の文王のこと。 姫は姓、 昌は名。
調御 釈尊のこと。 仏の十号の一、 調御丈夫の略。
昭王甲寅 前1027年。
穆王壬申 前949年。
胤 あとつぎ。
流沙 現在の中国西北部にあるタクラマカン砂漠。
提河 中インドにある河。 梵名アジタヴァティー (Ajitavatī)。
群胡 外国人たち。 ここでは中国人からインド人を指していう。
秦佚 秦失とも書く。 荘そう子しが創作した人物か。
遁天の形 身体をこの世から隠す仙人の姿。
鵠樹 釈尊が入にゅう滅めつした沙さ羅ら樹林じゅりんのこと。
漢明 後ご漢かんの第二代皇帝、 明帝 (在位57-75) のこと。
蘭台 後漢の宮中の書庫。
夫子 老子を指す。
免縛形の仙 世俗のまつわりをのがれ身を隠す仙人。
また左に… 左は 「たがふ」 の意。 原文の 「不亦左」 は 「またたがはずや」 とも読む。
高士伝 古の隠士の列伝。
李耳 老子のこと。
左道乱群 正しくない政治を行って民衆を困らせるもの。
涓子 春秋しゅんじゅう時代、 斉せいの人。 ¬列仙れっせん伝でん¼ にその名がみえる。 老子との関係は不明。
太史公 司馬しば遷せんのこと。
戈 ほこ (長柄の武器)。
翰 筆。
五気三光 五気は太易・太初・大始・大素・大極の五。 ¬易えき¼ では五気通運するのを天地のはじめとする。 三光は日・月・星のこと。
有機の召 人々の求め。
不匱 富める者。
華俗の訓 中国の習俗。
原壌… 以下の細註の文は ¬弁べん正しょう論ろん¼ の原文にしたがって書き下した。
明辟 賢明な君主。
識体 心の主体。
天属 肉親。
含気 衆生、 有う情じょうに同じ。
己親 自分の親。
勢競親を遺る 勢力を得ようと争って、 肉親を死に至らしめてしまう。
斉桓 斉せいの桓公。 春秋しゅんじゅう時代の斉の君主。 異母兄の糾きゅうを伐って斉侯せいこうとなった。
楚穆 楚の穆王。 春秋時代の楚の成王の子。 父を死に至らしめて王位についた。
三聖 老子・孔子・顔回。
已澆の末 濁った末の世。
玄虚沖一の旨 自己を無にして無為むい自じ然ねんの道と一になるという教え。
黄 黄帝こうていのこと。 中国の伝説上の帝王。 度量衡・音律・衣服・幣制などをはじめて確立したという。
周 周しゅう公こうのこと。 名は旦たん。 周初の名臣。 聖人せいじんとして儒家から尊敬された。
孔 孔子のこと。
三畏 君子が畏れはばかる三のもの。 天命・大人たいじん・聖人の言。
正弁極談 正しい道理を述べた究極の教説。
神・聖 釈尊のこと。
周書異記 正史に記載されていない周代の異聞を記した書。 現存しない。
穆王五十三年 底本に 「五十二年」 とあるのを改めた。 紀元前949年。
葱河 パミール高原より流れるヤルカンド・カシュガル両河。
雪嶺 雪山せっせん (ヒマラヤ) のこと。
鑿竅の弁を窮めん 細かく論議をつくそう。
吾子 あなた。 君。
清信の士女 仏教の在家信者の男女。
跡を… 道安どうあん作の襄州じょうしゅう檀渓寺の金像は夜になると万山 (現在の中国湖こ北ほく省襄じょう陽ようにある山) に赴おもむき、 足跡を山にのこしたという。
耀を… 西晋せいしんの建興元年 (313)、 滬こ涜とく (現在の江こう蘇そ省蘇そ州しゅうを流れる松江) に石像二体が浮かび上ったという。
清台… 後ご漢かんの明帝の時代、 インドの迦か葉しょう摩ま騰とうが釈迦像を伝えたので、 明帝はこれを画工に造らせて洛陽らくようの南宮の清涼台に安置したという。 「満月の容」 とは釈迦像のこと。
雍門… 後漢の明帝は雍門 (洛陽の西門) の外に白馬寺を建てたという。 「相輪」 とは仏塔のこと。
南平… 晋しんの南平王は仏像を拝して感応を得たという。
文宣… 北斉ほくせいの文宣帝は聖牙 (仏の歯) の渡来を夢にみたという。
蕭后… 南朝、 斉せいの大祖高帝 (蕭しょう道成どうせい) は ¬法華ほけ経きょう¼ を写し、 ¬般若はんにゃ経きょう¼ を誦じゅして、 仏像の鋳造に一度で成功したという。
宋皇… 劉りゅう宋そうの太祖明帝は仏像を鋳造しようとして四度までも失敗したという。
有霊 奇き端ずい・霊験があること。
郭が註 郭かく象しょうが加えた ¬荘子¼ の註解。
三点 悉曇しったん文字の 「伊」 字の三点。 三の点が三角の形をなしているので、 不縦不横の相即をあらわすとされ、 法身ほっしん・般若はんにゃ・解げ脱だつの三徳に喩える。
古旧二録 不詳。
周と老 荘周 (荘そう子し) と老子のこと。
無上大道君・大道天尊・神明君最 老子の尊称。
朝晏 安らかに朝廷に集まること、 また、 朝廷で酒宴を開くことか。
諸子 ここでは ¬韓かん非子ぴし¼・¬淮え南なん子じ¼ などを指す。
化胡経 ¬老子化胡経¼ (化胡経は 「けこきょう」 とも 「かこきょう」 ともいう) のこと。 老子がインドで釈迦として再誕し、 胡こ人じん (インド人) を教化したと説く。
東方朔 前漢ぜんかんの滑稽文学者。 伝説では方士 (神仙の術を行う人) として知られ、 西せい王おう母ぼの桃を盗食して死ぬことを得ず、 長寿をほしいままにしたという。
もし心一等… 以下の ¬成じょう実論じつろん¼ の引文は ¬弁べん正しょう論ろん¼ の原文にしたがって書き下した。
餧かしめて あがめ供物をして。
聾ひ… →補註14
尸子 尸し佼こうの著。
度律師 戒かい度どのこと。
季路…事へんや 通常は 「季路、 鬼神に事へんことを問ふ。 子のいはく、 いまだ人に事ふることあたはず、 いづくんぞよく鬼神に事へんや」 と読む。 親鸞聖人はこれを読み改めて鬼神につかえてはならない旨を示す。
興福寺の… →興福こうぶく寺じ奏そう状じょう
猥りがはしく 無法にも。 当時の上訴文書の慣用語。
別伝 不明。 ¬西方さいほう指し南なん抄しょう¼ 中末の 「源空げんくう聖しょう人にん私し日にっ記き」 か。
七旬三 旬は十年の意。
心を… ¬大唐だいとう西域さいいき記き¼ 巻三の 「心を仏地に樹て、 情を法海に流す」 という文による。
底本は◎真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆本。 Ⓐ本派本願寺蔵鎌倉時代写本、 Ⓑ高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵存如上人授与本、 Ⓓ本派本願寺蔵版本 と対校。
設 Ⓐ「十九 修諸功徳之願 至心発願之願 現前導生之願」と右傍註記 Ⓑ「十九願」と右傍註記
「三…者」15字 Ⓑに無し
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
言→Ⓑ云
禅 ◎「法」を「禅」と上欄訂記
慢 Ⓐに無し
言→Ⓒ云
「也…國」20字 ◎上欄補記
文 Ⓒに無し
獲ウル報ハ→Ⓒ獲ウコトハ↠報
彰→Ⓑ障
五 Ⓐ「四歟」と右傍註記
是→Ⓒ[専修者唯称↢念仏名↡離↢自力之心↡]是
五→Ⓒ五[種]
名 ◎称を抹消し名と上欄訂記→ⒷⒹ称 Ⓐ称と左傍註記
導→Ⓐ道
植 Ⓐ「殖」と上欄註記
是 ◎「也」を「是」と上書訂記
廿願也 ◎ⒶⒷ上欄註記
是 ◎「即」を「是」と上書訂記
无 ◎「難思」を「无」と上書訂記
「此…也」9字 ◎Ⓑ上欄註記→ⒶⒹ此果遂之願者廿願(Ⓐ上欄註記)→Ⓒ二十願也
大→Ⓒ本(「大」と上欄註記)
設 Ⓐ「二十」と右傍註記 Ⓑ「二十願」と右傍註記
植 Ⓐ「殖」と上欄註記
若 Ⓑ「二十願」と右傍註記
慧→Ⓑ恵
致 Ⓑ「疑イ」と右傍註記
又云 ◎上欄補記
「智…也」14字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸに無し
修→Ⓓ雑 Ⓐ雑歟と右傍註記 Ⓑ雑イ本と右傍註記 Ⓒ雑イと下欄註記
遇→Ⓐ過
斯→Ⓒ此(「斯」と上欄註記)
養→Ⓑ益
楽→ⒷⒸ[常]楽
説→Ⓑ脱
之 Ⓑに無し
縁→Ⓑ[因]縁
提 ◎「薩」を「提」と上書訂記
「弘…也」10字 ◎ⒶⒷ上欄註記 弘字 Ⓒに無し
障→Ⓐ彰
大 Ⓑに無し
今特 ◎二字抹消し「今特」と上書訂記 今 Ⓒ「已」と右傍註記
特 右◎マコトニⒶマサニⒷ「マコトニ」を「コトニ」と訂記
弁ゼワキマウ↢説人ノ差別ヲ↡者バ→Ⓐ弁↢ワキマウ説セ人ノ差別ヲ↡者バ
弁→Ⓒ辨 左Ⓑワキマウ反
視→Ⓒ親(「視」と左傍註記)
弁→Ⓒ辨
弁→Ⓒ辨
「元…也」13字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑに無し
諱 ◎湮滅
茂仁 ◎湮滅
分 Ⓒ「箇イ」と左傍註記
次 ◎「此」を「次」と上書訂記
第 Ⓒ「周イ」と右傍註記
是→Ⓐ是[像法]
戒→◎我
破戒→Ⓑ戒破
宝→Ⓑ実(「宝イ」と上欄註記)
明被 ◎「被明」を「明被」と訂記
尊→Ⓒ導
抄 ⒶⒷⒹ分冊とせず Ⓒ以下「顕浄土方便化身土文類六本愚禿親鸞」の尾題選号あり
「顕…集」17字 ⒶⒷⒹに無し
六→Ⓒ六[末]
夫 Ⓑ「末始」と上欄註記
→ⒷⒹ暄
涼→ⒷⒸ凍
有 ◎「月」を「有」と上書訂記
諸 Ⓑに無し
第→Ⓑ等(「第イ本と上欄註記)
穏→Ⓑ隠
伽 Ⓑ「仙と上欄註記
日 ◎右傍に「大乗大方等」とあるを抹消
念 ◎上に一字抹消あり
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
柔 ◎「煗」と右傍にあり
善 ◎「煗」と右傍にあり Ⓐ「煗歟」と右傍註記
得テ↠知トヲ↠難ヲ平等ナレバ於テ↠世常ニ→Ⓐ得コト↠知トヲ難シ平等ナレバ於テ↢世常ニ↡→Ⓑ得コト↠知コトヲ難シ平等ナレバ於テ↠世ニ常ニ
出→Ⓑ抄
巻 ◎「月」を「巻」と上書訂記
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
北鬱単越 ◎「北州也」と左傍註記 ⒶⒹ「コノ[キタ反歟]北州ナリ」と左傍註記
婆→Ⓑ波
女 Ⓒ「子イ」と右傍註記
 ◎「」と右傍訂記 Ⓑ綽(「歟と上欄註記) Ⓒ「星黒反須陵反」と割註
女 Ⓒ「子イ」と右傍註記
檀 ◎「壇」を「檀」と上欄訂記
婆 ◎上欄に「摩」とあるを抹消
人 Ⓑに無し
勇 Ⓑ「人イ」と右傍註記
住→Ⓒ往(「住」と下欄註記)
他→Ⓐ化
士→ⒶⒷⒸ土
生→Ⓑ生[輪]
主 ◎「王」を「主」と上書訂記
憐→Ⓑ憐[愍] Ⓐ下に装入符号あり、 「愍イ本アリ」と右傍註記
他→◎Ⓐ陀→Ⓑ陀(「イ無」と左傍註記)
士→ⒶⒸ土 Ⓑ「土」と下欄註記
受テ↢提謂ヒトナリ波利ヒトナリノ諸ノ商シヤウ人ノ食ヲ↡→Ⓐ受提謂イハク↢波利ヒトナリニ↡諸ノ商シヤウ人食セム→Ⓑ受提謂ハク↢波利ヒトナリニ↡諸ノ商シヤウ人食セム→Ⓒ受提謂イハク↢波利ヒトナリニ↡諸ノ商人食セム
提謂 ◎「経名也」と右傍註記 Ⓓ「経名ナリ」と右傍註記
頂↢受シ教勅シテ於己レガ境界ニ↡→Ⓐ頂↢受シ教勅シテ↡於テ↢己レガ境界ニ↡→Ⓒ頂↢受シ教勅ヲ↡於テ↢己レガ境界ニ↡→Ⓓ頂↢受シ教勅↡於テ↢己レガ境界ニ↡
今悉ク付↢嘱ス汝等ナンダチガ手ノ中ウチニ↡→Ⓐ令ム↣悉ク付↢嘱ス汝等ナンダチガ手ノ中ウチニ↡→Ⓑ令メム悉ク付↢嘱セ汝等ナンダチガ手ノ中ニ↡
今→ⒶⒷ令
留→Ⓒ留[孫]
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
然 ◎「燃」を「然」と上書訂記→ⒶⒷⒹ燃
天 Ⓑ「下イ」と下欄註記
出→Ⓑ抄
然 ◎「燃」を「然」と上欄訂記
月 ◎上に「大方等大集」とあるを抹消
辱→Ⓒ辰
第 Ⓑに無し([第イ」と右傍註記)
言 ◎「云」を「言」と上書訂記
又言 ◎上欄註記(「云」を「言」と上書訂記) ⒶⒹに無し→Ⓑ又云 Ⓒ「又月蔵分云イ」と右傍註記
「又…出」20字 ◎に無し
耗→◎ⒶⒷⒸ
道→ⒶⒹ道[已上]
抄出已上→ⒶⒷⒸⒹ已上抄出
闍那崛多訳 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸに無し
言→Ⓒ言[闍那崛多訳] Ⓑ「闍那崛多訳イ」と右傍註記
甥字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸⒹに無し
舅字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸⒹに無し
無 Ⓑに無し
邪→Ⓒ耶
日→Ⓐ曰
在→Ⓒ在[之]
日→Ⓐ曰
昭→Ⓑ胎
謂↢之ヲ遁トンノガル天之形ケイト カタチ ↡始メハ以為オモヘラク其ノ人也→Ⓐ謂↠之ヲ↣遁トンノガル天之形ケイト カタチ ↢始メハ以モテ為オモヘラク其ノ人↡也
麁→Ⓒ廉
撥ハイス スツ ルニ太史シニ云等ヒ ガ↢衆シウ画グハ ヱ ヲ↡→Ⓒ撥ハイス スツ ルニ↢太史シニ公コウ等ラガ衆シウ画グハ ヱ ヲ↡
子→Ⓐ
助タスケテ祭マツリ→Ⓒ助ケテ↠祭マツリヲ
変ハン易エキヤクス三界→ⒶⒹ変ハン↢易エキヤクス、三界ニ↡→Ⓑ変ハン↢易エキス、三界ニ↡→Ⓒ変ヘン↢易エキス、三界ニ↡
之 ◎右傍註記 ⒶⒷⒸⒹに無し
虚→Ⓑ慮([虚イ」と左傍註記)
盛ニス↢其ノ談ヲ↡詩書シヨ礼楽之文→Ⓐ盛サカリニス↢其ノ談ヲ オシフ ↡詩シ書シヨ礼レイ楽ガク之文ブン↡→Ⓑ盛サカリニス↢其ノ談オシフ詩シ書シヨ礼レイ楽ガク之文ブン
沖→Ⓒ仲
懦→ⒶⒸ𤏙
河Ⓑ何(「河イ」と左傍註記)
雪→ⒶⒷⒸⒹ雲
遇→Ⓒ過
照→ⒶⒹ昭
兵→ⒶⒷ丘(「兵イ」と上欄註記)
修→◎ⒶⒷⒸ循
経→ⒶⒷ俓
入↢流セヨトナリ法之真教ニ↡→ⒶⒹ入イラ↢流リウセヨトナリ法ハフ之真シン教カウニ↡→Ⓑ入イラセヨトナリ↢流リウ法ハフ之真教カウニ↡
謂 ◎「諸」を「謂」と上書訂記し、さらに「无歟」と上欄註記 Ⓒに無し Ⓐ「无歟」と上欄註記
已上 Ⓓに無し
文→Ⓒ已上
源信 ◎本紙を切り抜き折り込んだ裏面に補記
不ズ↠能↠事コト人→Ⓒ不ズ↠能↠事コト↠人
教行 ◎「教教」を「教行」と上書訂記
弁→Ⓒ辨
土→ⒸⒹ渡
辛 ◎上に「元年」とあるを抹消
照→Ⓒ昭
「徴…ス」8字 ◎Ⓐ上欄註記 ⒷⒸに無し
誓→Ⓒ誓[之]
法 ◎「海」を「法」と上書訂記し、さらに「法」と上欄註記