1183◎▼*0783選択本願念仏集
一【標宗】
◎^▼南無阿弥陀仏 ▲往生の業には、 念仏を*先となす。
◎▼南1253無阿弥陀仏 往生之業ニハ 念仏ヲ為ス↠*先ト
二 正文
ⅰ 教相章【二門章】
Ⅰ 標章
【1】 ^○道綽禅師、 聖道・浄土の二門を立てて、 聖道を▼捨ててまさしく浄土に帰する文。
▼道綽禅師立テテ↢聖道・浄土ノ二門ヲ↡而捨テテ↢聖道ヲ↡正シク帰スル↢浄土ニ↡之文
二 ⅰ Ⅱ 引文
a 問
^ ◇¬*安楽集¼ の上 にいはく、
¬安楽集ノ¼上ニ云ク、
^「▲問ひていはく、 一切衆生はみな仏性あり。 遠劫よりこのかた多仏に値ひたてまつるべし。 なにによりてか、 いまに至るまでなほみづから生死に輪廻して火宅を出でざるや。
「▼問ヒテ曰ク、一切衆生ハ皆有リ↢仏性↡。遠劫ヨリ以来タ応シ↠値ヒタテマツル↢多仏ニ↡。何ニ因テカ、至ルマデ↠今ニ仍自ラ輪↢廻シテ生死ニ↡不ルヤ↠出デ↢火宅ヲ↡。
二 ⅰ Ⅱ b 答
イ 標挙二門
^◆答へていはく、 大乗の聖教によらば、 まことに二種の勝法を得て もつて生死を排はざるによる。 ここをもつて火宅を出でず。 ◆何者をか二となす。 一にはいはく聖道、 二にはいはく往生浄土なり。
答ヘテ曰ク、▼依ラバ↢大乗ノ聖教ニ↡、良ニ由ル↠不ルニ↧得テ↢二種ノ勝法ヲ↡以テ排ハ↦生死ヲ↥。是ヲ以テ不ルナリ↠出デ↢火宅ヲ↡。何者ヲカ為ル↠二ト。一ニハ謂ク聖道、二ニハ謂ク往生浄土ナリ。
二 ⅰ Ⅱ b ロ 正示廃立
(一)顕示興廃
(Ⅰ)聖道廃退
(ⅰ)直示
^◆それ聖道の一種は、 今の時 証しがたし。 ▽一には大聖 (*釈尊) を去れること遥遠なるによる。 ▽二には理は深く解は微なるによる。
其レ聖道ノ一種ハ今ノ時難シ↠証シ。一ニハ▼由ル↧去レルコト↢大聖ヲ↡遥遠ナルニ↥。二ニハ▼由ル↢理ハ深ク解ハ微ナルニ↡。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)引証
^◆このゆゑに ¬*大集 月1184蔵経¼ にのたまはく、 ªわが末法の時のうちの億々の衆生、 行を起し道を修せんに、 いまだ一人として得るものあらじº と。
▼是ノ故ニ¬大集月蔵経ニ¼云ク、▼我ガ*末法ノ時ノ中ノ億々ノ衆生、▼起シ↠行ヲ修セムニ↠道ヲ、▼未ダト↠有ラ↢一人トシテ得ル者↡。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)浄土興隆
(ⅰ)直示
^◆当今は末法、 これ五濁悪世なり。 ただ浄土の一門のみありて通入すべき路なり。
▼当今ハ*末法、*是五濁悪世ナリ。▼唯有リテ↢浄土ノ一門ノミ↡可キ↢通入ス↡路ナリ。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)引証
^◆このゆゑに ¬大経¼ にのたまはく、 ªもし衆生ありてたとひ0784一生悪を造れども、 命終の時に臨みて、 十念相続してわが名字を称せんに、 もし生ぜずといはば、 正覚を取らじº と。
是ノ故ニ▼¬大経ニ¼云ク、若シ有リテ↢衆生↡▼縦令▼一生造レドモ↠悪ヲ、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、十念相続シテ称セムニ↢我ガ名字ヲ↡、若シ不トイハバ↠生ゼ者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (二)重示機法応不
(Ⅰ)総示
^◆また一切衆生はすべてみづから量らず。
又復一切衆生ハ都テ不↢自ラ量ラ↡。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)別示
(ⅰ)聖道不堪
(a)大乗
^◆もし大乗によらば、 真如実相 第一義空、 かつていまだ心を措かず。
▼若シ拠ラバ↢大乗ニ↡、真如実相・第一義空曽テ未ダ↠*措カ↠心ヲ。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)小乗
^◆もし小乗を論ぜば、 見諦修道に修入し、 乃至、 那含・羅漢、 *五下を断じ五上を除くこと、 道俗を問ふことなく、 いまだその分 あらず。
▼若シ論ゼバ↢小乗ヲ↡、修↢入シ見諦修道ニ↡、乃至那含・羅漢、断ジ↢五下ヲ↡除クコト↢五上ヲ↡、无ク↠問フコト↢道俗ヲ↡、未ダ↠有ラ↢其ノ分↡。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(c)世善
^◆たとひ人天の果報あれども、 みな五戒・十善のためによくこの報を招く。 しかるを持得するものは、 はなはだ希なり。
▼縦ヒ有レドモ↢人天ノ果報↡、皆為ニ↢五戒・十善ノ↡能ク招ク↢此1254ノ報ヲ↡。然ルヲ持得スル者ハ甚ダ希ナリ。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)機法相応
^◆もし起悪造罪を論ぜば、 なんぞ暴き風*駃き雨に異ならん。 ここをもつて諸仏の大慈、 勧めて浄土に帰せしめたまふ。 たとひ一形悪を造れども、 ただよく意を繋けて専精につねによく念仏せば、 一切の諸障自然に消除して、 さだめて往生することを得。
若シ論ゼバ↢起悪造罪ヲ↡、何ゾ異ナラム↢暴キ風駃キ雨ニ↡。▼是ヲ以テ諸仏ノ大慈、勧メテ帰セシメタマフ↢浄土ニ↡。▼縦使一形造レドモ↠悪ヲ、但能ク繋ケテ↠意ヲ専精ニ常ニ能ク念仏セバ、一切ノ諸障自然ニ消除シテ、定メテ得↢往生スルコトヲ↡。
二 ⅰ Ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(Ⅲ)結勧
^◆なんぞ思量せずしてすべて去く心なきや」 と。
▼何ゾ不シテ↢思量セ↡都テ無キ↢去ク心↡也ト。」
二 ⅰ Ⅲ 私釈
a 汎明判教
イ 総標
^わたくしにいはく、 ひそかにはかりみれば、 ▼それ立教の多少、 宗に随ひて1185不同なり。
私ニ云ク、窃ニ計レバ、夫レ立教ノ多少、随ヒテ↠宗ニ不同ナリ。
二 ⅰ Ⅲ a ロ 列他宗判
(一)有相宗
^▼しばらく有相宗 (*法相宗) のごときは、 *三時教を立てて ˆ釈尊のˇ 一代の聖教を判ず。 いはゆる有・空・中これなり。
▼且ク如キハ↢有相宗ノ↡、立テテ↢三時教ヲ↡而判ズ↢一代ノ聖教ヲ↡。所謂ル有空中是也。
二 ⅰ Ⅲ a ロ (二)無相宗
^▼無相宗 (*三論宗) のごときは、 *二蔵教を立ててもつて一代の聖教を判ず。 いはゆる菩薩蔵・声聞蔵これなり。
▼如キハ↢無相宗ノ↡、立テテ↢二蔵教ヲ↡以テ判ズ↢一代ノ聖教ヲ↡。所謂ル菩薩蔵・声聞蔵是也。
二 ⅰ Ⅲ a ロ (三)華厳宗
^▼*華厳宗のごときは、 *五教を立てて一切の仏教を摂す。 いはゆる小乗教・始教・終教・頓教・円教これなり。
▼如キハ↢華厳宗ノ↡、立テテ↢五教ヲ↡而摂ス↢一切ノ仏教ヲ↡。所謂ル小乗教・始教・終教・頓教・円教是也。
二 ⅰ Ⅲ a ロ (四)法華宗
^▼法華宗 (*天台宗) のごときは、 四教五味を立ててもつて一切 仏教を摂す。 「*四0785教」 といふは、 いはゆる蔵・通・別・円これなり。 「*五味」 といふは、 いはゆる乳・酪・生・熟・醍醐これなり。
▼如キハ↢法華宗ノ↡、立テテ↢四教五味ヲ↡以テ摂ス↢一切仏教ヲ↡。四教トイフ者、所謂ル蔵・通・別・円是也。五味トイフ者、所謂ル乳・酪・生・熟・醍醐是也。
二 ⅰ Ⅲ a ロ (五)真言宗
^*真言宗のごときは、 二教を立てて一切を摂す。 いはゆる顕教・密教これなり。
▼如キハ↢真言宗ノ↡、立テテ↢二教ヲ↡而摂ス↢一切ヲ↡。所謂ル顕教・密教是也。
二 ⅰ Ⅲ a ハ 挙本宗判
(一)略明
^▼いまこの*浄土宗は、 もし道綽禅師の意によらば、 二門を立てて一切を摂す。 いはゆる聖道門・浄土門これなり。
▼今此ノ浄土宗者、若シ依ラバ↢道綽禅師ノ意ニ↡、立テテ↢二門ヲ↡而摂ス↢一切ヲ↡。所謂ル聖道門・浄土門是也。
二 ⅰ Ⅲ a ハ (二)立宗名【宗名】
(Ⅰ)問
^問ひていはく、 それ宗の名を立つることは、 本、 華厳・天台等の*八宗・九宗にあり。 いまだ◗浄土の家においてその宗の名を立つることを聞かず。 しかるをいま浄土宗と号する、 なんの証拠かあるや。
▼問ヒテ曰ク、夫レ立ツルコトハ↢宗ノ名ヲ↡、本在リ↢華厳・天臺等ノ八宗・九宗ニ↡。未ダ↠聞カ↧於テ↢浄土之家ニ↡立ツルコトヲ↦其ノ宗ノ名ヲ↥。然ルヲ今号スル↢浄土宗ト↡、有ル↢何ノ証拠カ↡也。
二 ⅰ Ⅲ a ハ (二)(Ⅱ)答
^答へていはく、 ▼浄土宗の名、 その証一にあらず。 *元暁の ¬*遊心安楽道¼ にいはく、 「▼浄土宗の意、 本▼凡夫のためなり、 兼ねては聖人のためなり」 と。 また*慈恩 (基) の1186 ¬*西方要決¼ にいはく、 「この一宗による」 と。 また*迦才の ¬*浄土論¼ にいはく、 「この一宗ひそかに要路たり」 と。 その証かくのごとし。 *疑端に足らず。
答ヘテ曰ク、▼浄土宗ノ名、其ノ証非ズ↠一ニ。▼元暁ノ¬遊心安楽道ニ¼云ク、「浄土宗ノ意、本為ナリ↢凡夫ノ↡、兼ネテハ為ナリト↢聖人ノ↡。」又▼慈恩ノ¬西方要決ニ¼云ク、「依ルト↢此ノ一宗ニ↡。¼又▼迦才ノ¬浄1255土論ニ¼云ク、「此之一宗窃ニ為リト↢要路↡。」其ノ証如シ↠此クノ。不↠足ラ↢疑端ニ↡。
二 ⅰ Ⅲ b 正釈今意【判教】
イ 総標二門
^ただし諸宗の立教は、 まさしくいまの意にあらず。 しばらく浄土宗につきて略して二門を明かさば、 一には↓聖道門、 二には↓浄土門なり。
*但シ諸宗ノ立教ハ、正シク非ズ↢今ノ意ニ↡。且ク就キテ↢浄土宗ニ↡略シテ明サバ↢二門ヲ↡者、一ニ者聖道門、二ニ者浄土門ナリ。
二 ⅰ Ⅲ b ロ 別釈二門
(一)聖道門
(Ⅰ)標列
^初めの↑聖道門と は、 これにつきて二あり。 一 は↓大乗、 二 は↓小乗なり。
初ノ聖道門ト者、就キテ↠之ニ有リ↠二。一者大乗、二者小乗ナリ。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (一)(Ⅱ)釈
(ⅰ)大乗
^↑大乗のなかにつきて*顕密・*権実等の不同ありといへども、 いまこの ¬集¼ (安楽集) の意 、 ただ*顕大および*権大を存ず。 ゆゑに▼*歴劫迂回の行に当れり。 ▼これに准じてこれを思ふに、 *密大および*実大を存ずべし。 しかればすなはち、 い0786ま*真言・*仏心 (禅宗)・*天台・*華厳・*三論・*法相・*地論・*摂論、 これら 八家の意まさしくこれにあり、 知るべし。
▼就キテ↢大乗ノ中ニ↡雖モ↠有リト↢顕密・権実等ノ不同↡、今此ノ¬集ノ¼意、唯存ズ↢顕大及以権大ヲ↡。故ニ当レリ↢歴劫迂廻之行ニ↡。准ジテ↠之ニ思フニ↠之ヲ、応シ↠存ズ↢密大及以実大ヲ↡。然レバ則チ今真言・仏心・天臺・華厳・三論・法相・地論・摂論、此等八家之意正シク在リ↠此ニ也、応シ↠知ル。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)小乗
^次に↑小乗と は、 すべてこれ小乗の経・律・論のなかに明かすところの声聞・縁覚、 *断惑証理・*入聖得果の道なり。 上に准じてこれを思へば、 また*倶舎・*成実・諸部の*律宗を摂すべきのみ。
▼次ニ小乗ト者、総ジテ是小乗ノ経・律・論之中ニ所ノ↠明ス声聞・縁覚、断惑証理、入聖得果之道也。准ジテ↠上ニ思ヘバ↠之ヲ、亦可シ↠摂ス↢倶舎・成実、諸部ノ律宗ヲ↡而已。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (一)(Ⅲ)大意
^おほよそこの聖道門の大意は、 大乗および小乗を論ぜず。 この娑婆世界のなかにおいて、 四乗の道を修し 四乗の果を得 。 四乗と は三乗のほかに仏乗1187を加ふ。
▼凡ソ此ノ聖道門ノ大意者、不↠論ゼ↢大乗及以小乗ヲ↡、於テ↢此ノ娑婆世界之中ニ↡、修シ↢四乗ノ道ヲ↡得ル↢四乗ノ果ヲ↡*也。四乗ト者三乗之外ニ加フ↢仏*乗ヲ↡。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (二)浄土門
(Ⅰ)標列
^次に↑往生浄土門と は、 これにつきて二あり。 一には↓*正しく往生浄土を明かす教 、 二には↓*傍らに往生浄土を明かす教なり。
次ニ往生浄土門ト者、就キテ↠此ニ有リ↠二。一ニ者正シク明ス↢往生浄土ヲ↡之教、二ニ者傍ニ明ス↢往生浄土ヲ↡之教ナリ。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)釈
(ⅰ)正依教【正明往生浄土 浄土三部経】
(a)正列
^初めに↑正しく往生浄土を明かす教といふは、 いはく三経一論これなり。 「三経」 と は、 一には ¬*無量寿経¼、 二には ¬*観無量寿経¼、 三には ¬*阿弥陀経¼ なり。 「一論」 と は、 *天親の ¬*往生論¼ (浄土論) これなり。 あるいはこの三経を指して*浄土の三部経と号す 。
初ニ正シク明ス↢往生浄土ヲ↡之教トイフ者、*謂ク三経一論是也。三経ト者、一ニハ¬無量寿経¼、二ニハ¬観無量寿経¼、三ニハ¬阿弥陀*経¼也。一論ト者、天親ノ¬往生論¼是也。或イハ指シテ↢此ノ三経ヲ↡号ス↢浄土ノ三部経ト↡也。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)引例
^問ひていはく、 三部経の名またその例ありや。
問ヒテ曰ク、三部経ノ名亦有リ↢其ノ例↡乎1256。
^答へていはく、 ▼三部経の名その例一にあらず。
答ヘテ曰ク、三部経ノ名其ノ例非ズ↠一ニ。
^一には*法華の三部、 いはく ¬*無量義経¼・¬*法華経¼・¬*普賢観経¼ これなり。
一ニ*者法華ノ三部、謂ク¬無量義経¼・¬法華経¼・¬普賢観経¼是也。
^二には*大日の三部、 いはく ¬*大日経¼・¬*金剛頂経¼・¬*蘇悉地経¼ これなり。
二ニ者大日ノ三部、謂ク¬大日経¼・¬金剛頂経¼・¬蘇悉地経¼是也。
^三には*鎮護国家の三部、 いはく ¬法華経¼・¬*仁王経¼・¬*金光明経¼ これなり。
三ニ者鎮護国家ノ三部、謂ク¬法華経¼・¬仁王経¼・¬金光明経¼是也。
^四には弥勒の三部、 いはく ¬*上生経¼・¬*下生経¼・¬*成仏経¼ こ0787れなり。
四ニ者弥勒ノ三部、謂ク¬上生経¼・¬下生経¼・¬成仏経¼是也。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(c)結示
^いまはただこれ弥陀の三部なり。 ゆゑに浄土の三部経と名づく 。 ◗弥陀の三部 はこれ浄土の正依経なり。
今者唯是弥陀ノ三部ナリ。故ニ名クル↢浄土ノ三部経ト↡也。弥陀ノ三部*者是浄土ノ*正依経也。
二 ⅰ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)傍依教【傍明往生浄土】
^次に↑傍らに往生浄土を明かす教といふは、 ¬*華厳¼・¬法華¼・¬*随求¼・¬*尊勝¼ 等のもろもろの往生浄土を明かす諸経これなり。 また ¬*起信論¼・¬*宝1188性論¼・¬*十住毘婆沙論¼・¬*摂大乗論¼ 等のもろもろの往生浄土を明かす諸論これなり。
次ニ傍ニ明ス↢往生浄土ヲ↡之教トイフ者、¬華厳¼・¬法華¼・¬随求¼・¬尊勝¼等ノ明ス↢諸ノ往生浄土ヲ↡之諸経是也。又¬起信論¼・¬宝性論¼・¬十住毘婆*娑論¼・¬摂大乗論¼等ノ明ス↢諸ノ往生浄土ヲ↡之諸論是也。
二 ⅰ Ⅲ b ハ 明廃立
(一)正示集意
^おほよそこの ¬集¼ (安楽集) のなかに聖道・浄土の二門を立つる意は、 聖道を捨てて浄土門に入らしめんがためなり。 これにつきて二の由あり。 △一には大聖 (釈尊) を去れること遥遠なるに由る。 △二には理深く解微なるに由る。
凡ソ此ノ¬集ノ¼中ニ立ツル↢聖道・浄土ノ二門ヲ↡意者、為↠令メムガ↧捨テテ↢聖道ヲ↡入ラ↦浄土門ニ↥也。就キテ↠此ニ有リ↢二ノ由↡。一ニハ由ル↧去レルコト↢大聖ヲ↡遥遠ナルニ↥。二ニハ由ル↢理深ク解微ナルニ↡。
二 ⅰ Ⅲ b ハ (二)挙例
(Ⅰ)総挙
^▼この宗のなかに二門を立つることは、 独り*道綽のみにあらず。 *曇鸞・天台 (*智顗)・迦才・*慈恩 (基) 等の諸師みなこの意あり。
此ノ宗之中ニ立ツルコト↢二門ヲ↡者、独リ非ズ↢道綽ノミニ↡。曇鸞・天臺・迦才・慈恩等ノ諸師皆有リ↢此ノ意↡。
二 ⅰ Ⅲ b ハ (二)(Ⅱ)別挙
(ⅰ)正挙鸞師
(a)引文
^▼しばらく曇鸞法師の ¬*往生論の註¼ (上) にいはく、 「▲つつしみて龍樹菩薩の ¬十住毘婆沙¼ (易行品) を案ずるにいはく、 ª菩薩、 阿毘跋致を求むるに、 二種の道あり。 一には難行道、 二には易行道なりº と。
*且ク曇鸞法師ノ¬往生論ノ*注ニ¼云ク、「謹ミテ案ズルニ↢龍樹菩薩ノ¬十住毘婆*娑ヲ¼↡云ク、菩薩求ムルニ↢阿毘跋致ヲ↡有リ↢二種ノ道↡。一ニ者難行道、二ニ者易行道ナリト。
^◆ª難行道º と は、 いはく五濁の世に無仏の時において阿毘跋致を求むるを難となす。 この難にすなはち多くの途あり。 ほぼ五三をいひてもつて義意を示さん。 一には外道の相善、 菩薩の法を乱る。 二には声聞の自利、 大慈悲を障ふ。 三には無顧の悪人、 他の勝徳を破す。 四には顛倒の善の果、 よく梵行を壊る。 五にはただこれ自力のみにして他0788力の持つなし。 かくのごとき等の事、 目に触るる1189にみなこれなり。 たとへば陸路より歩行するはすなはち苦しきがごとし。
難行道ト者、▼*謂ク五濁之世ニ於テ↢無仏ノ時ニ↡、求ムルヲ↢阿毘跋致ヲ↡為ス↠難ト。此ノ難ニ乃チ有リ↢多クノ途↡。粗ボ言ヒテ↢五*三ヲ↡以テ示サム↢義意ヲ↡。▼一ニ者1257外道ノ相善乱ル↢菩薩ノ法ヲ↡。▼二ニ者声聞ノ自利障フ↢大慈悲ヲ↡。▼三ニ者无顧ノ悪人破ス↢他ノ勝徳ヲ↡。▼四ニ者顛倒ノ善果能ク壊ル↢梵行ヲ↡。▼五ニ者唯シ是自力ノミニシテ无シ↢他力ノ持ツ↡。▼如キ↠斯クノ等ノ事、触ルルニ↠目ニ皆是ナリ。譬ヘバ如シ↢陸路ヨリ歩行スルハ則チ苦シキガ↡。
^◆ª易行道º と は、 いはくただ仏を信ずる因縁をもつて浄土に生ぜんと願ずれば、 仏の願力に乗りてすなはちかの清浄の土に往生することを得。 仏力住持して、 すなはち大乗正定の聚に入る。 正定はすなはちこれ阿毘跋致なり。 たとへば水路より船に乗りてすなはち楽なるがごとし」 と。 以上
易行道ト者、謂ク但以テ↢信ズル↠仏ヲ因縁ヲ↡願ズレバ↠生ゼムト↢浄土ニ↡、乗リテ↢仏ノ願力ニ↡便チ得↣往↢生スルコトヲ彼ノ清浄ノ土ニ↡。仏力住持シテ即チ入ル↢大乗正定之聚ニ↡。正定ハ即チ是阿毘跋致ナリ。譬ヘバ如シト↢水路ヨリ乗リテ↠船ニ則チ楽ナルガ↡。」已上
二 ⅰ Ⅲ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)会義
^このなかの▼難行道は、 すなはちこれ聖道門なり。 易行道 は、 すなはちこれ浄土門なり。 難行・易行、 聖道・浄土、 その言異なりといへども、 その意これ同じ。
此ノ中ノ難行道者即チ是聖道門也。易行道者即チ是浄土門也。難行・易行、聖道・浄土、其ノ言雖モ↠異ナリト、其ノ意是同ジ。
二 ⅰ Ⅲ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)列同二師
^▼天台 (智顗)・迦才これに同じ、 知るべし。
▼天臺・迦才同ジ↠之ニ、応シ↠知ル。
二 ⅰ Ⅲ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅲ)兼挙慈恩
(a)引文
^▼また ¬西方要決¼ にいはく、 「仰ぎておもんみれば、 釈迦、 *運を啓けて弘く有縁を 益す。 教、 *随方に闡けて*ならびに*法潤に霑ふ。 親しく*聖化に逢ひて、 道、 ↓三乗を悟りき。
又¬西方要決ニ¼云ク、「仰ギテ惟レバ、▼釈迦啓ケテ↠運ヲ弘ク益ス↢有縁ヲ↡。▼教闡キテ↢随方ニ↡並ニ霑フ↢法潤ニ↡。▼親シク逢ヒテ↢聖化ニ↡、道悟リキ↢三乗ヲ↡。
^福薄く、 因疎かなるものを勧めて浄土に帰せしめたまふ。 この業をなすものは もつぱら弥陀を念じ、 一切 善根、 回らしてかの国に生ず。 弥陀の本願誓ひて娑婆を度したまふ。 上現生の*一形を尽し、 下臨終の十念に至るまで、 ともによく決定してみな往生 を得」 と。 以上
▼福薄ク因疎ナルモノヲ勧メテ帰セシメタマフ↢浄土ニ↡。作ス↢*斯ノ業ヲ↡者ハ専ラ念ジ↢弥陀ヲ↡、一切善根、廻ラシテ生ズ↢彼ノ国ニ↡。弥陀ノ本願誓ヒテ度シタマフ↢娑婆ヲ↡。上尽シ↢現生ノ一形ヲ↡、下至ルマデ↢臨終ノ十念ニ↡、倶ニ能ク決定シテ皆得ト↢往生ヲ↡。」已上
^また同じき後序にいはく、 「それおもんみれば、 生れて*像季に居して、 聖 (釈尊) を去ることこれ1190はるかに、 道、 三乗に預かりて*契悟するに方なし。 人天の両位は躁動して安からず。 智0789博く情弘きものは、 よく久しく処するに堪へたり。 もし識痴かに行浅きものは、 おそらくは*幽途に溺れん 。 かならずすべからく跡を娑婆に遠くして心を*浄域に栖ましむべし」 と。 以上
又同ジキ後序ニ云ク、「夫レ以レバ、▼生レテ居シテ↢像季ニ↡、▼去ルコト↠聖ヲ斯遥ニ、▼道預リテ↢三乗ニ↡无シ↠方↢契悟スルニ↡。▼人天ノ両位ハ躁動シテ不↠安カラ。▼智博ク情弘キモノハ、能ク堪ヘタリ↢久シク処スルニ↡也。若シ識痴ニ行浅キモノハ、恐クハ溺レム↢幽途ニ↡。▼必ズ須クシト↧遠クシテ↢跡ヲ娑婆ニ↡栖マシム↦心ヲ浄域ニ↥。 已上
二 ⅰ Ⅲ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)会義
^▼このなかの↑三乗 はすなはちこれ聖道門の意なり。 浄土 はすなはちこれ浄土門の意なり。 ▼三乗・浄土、 聖道・浄土、 その名異なりといへども、 その意また同じ。
此ノ中ノ▼三乗者即チ是聖道門ノ意也。浄土者即チ是浄1258土門ノ意也。三乗・*浄土、聖道・浄土、其ノ名雖モ↠異ナリト、其ノ意亦同ジ。
二 ⅰ Ⅲ b ハ (三)結勧
(Ⅰ)正示
^浄土宗の学者、 先づすべからくこの旨を知るべし。 たとひ先より聖道門を学する人 といへども、 もし浄土門に その志あらば、 すべからく聖道を棄てて浄土に帰すべし。
浄土宗ノ学者、先ヅ須クシ↠知ル↢*此ノ*旨ヲ↡。設ヒ雖モ↧先ヨリ学スル↢聖道門ヲ↡人ト↥、*若シ浄土門ニ有ラバ↢其ノ志↡者、須クシ↧棄テテ↢聖道ヲ↡帰ス↦於浄土ニ↥。
二 ⅰ Ⅲ b ハ (三)(Ⅱ)引例
^例するに、 ▼かの曇鸞法師は四論の講説を捨てて*一向に浄土に帰し、 ▼道綽禅師は*涅槃の広業を閣きてひとへに西方の行を弘めしがごとし。
▼例スルニ如シ↧彼ノ曇鸞法師ハ捨テテ↢四論ノ講説ヲ↡一向ニ帰シ↢浄土ニ↡、道綽禅師ハ閣キテ↢涅槃ノ広業ヲ↡偏ニ弘メシガ↦西方ノ行ヲ↥。
二 ⅰ Ⅲ b ハ (三)(Ⅲ)正結
^上古の賢哲なほもつてかくのごとし。 末代の愚魯むしろこれに遵はざらんや。
▼上古ノ賢哲猶以テ如シ↠此クノ。*末代ノ愚*魯寧ロ不ラム↠遵ハ↠之ニ哉。
二 ⅰ Ⅲ c 明血脈【師資相承】
イ 挙例問今
^▼問ひていはく、 聖道家の諸宗 おのおの*師資相承あり。 いはく天台宗のごときは、 *慧文・南岳 (*慧思)・天台 (*智顗)・*章安・*智威・*慧威・*玄朗・*湛然、 次第相承せり。 真言宗のごときは、 *大日如来・*金剛薩埵・*龍樹・*龍智・*金智・*不空、 次第相承せり。 自余の諸宗 またおのおの相承の*血脈あり。
▼問ヒテ曰ク、聖道家ノ諸宗各ノ有リ↢師資相承↡。謂ク如キ↢天臺宗ノ↡者、*慧文・南岳・天臺・章安・智威・*慧威・玄朗・湛然、次第相承セリ。如キ↢真言宗ノ↡者、大日如来・金剛薩埵・龍樹・龍智・金智・不空、次第相承セリ。自余ノ諸*宗又各ノ有リ↢相承ノ血脈↡。
^しかる1191にいまいふところの浄土宗に 師資相承の血脈の譜ありや。
而シテ今所ノ↠言フ浄土宗ニ有リ↢師資相承ノ血脈ノ譜↡乎。
二 ⅰ Ⅲ c ロ 順他答今
(一)総
^答へていはく、 聖道0790家の血脈のごとく浄土宗にまた血脈あり。 ただし浄土 一宗において*諸家また不同なり。 いはゆる廬山の*慧遠法師、 *慈愍三蔵、 *道綽・*善導等これなり。
答ヘテ曰ク、如ク↢聖道家ノ血脈ノ↡浄土宗ニ亦有リ↢血脈↡。但シ於テ↢浄土一宗ニ↡諸家*亦不同ナリ。所謂ル廬山ノ*慧遠法師、慈愍三蔵、道綽・善導等是也。
二 ⅰ Ⅲ c ロ (二)別
^▼いましばらく道綽・善導の一家によりて、 師資相承の血脈を論ぜば、 これにまた*両説あり。 一には*菩提流支三蔵・*慧寵法師・*道場法師・*曇鸞法師・*大海禅師・*法上法師。 ▲以上、 ¬安楽集¼ に出でたり。 二には菩提流支三蔵・曇鸞法師・道綽禅師・善導禅師・*懐感法師・*小康法師。 以上、 *唐・宋両伝に出でたり。
今且ク依リテ↢道綽・善導之一家ニ↡、論ゼバ↢師資相承ノ血脈ヲ↡者、此ニ亦有リ↢両説↡。一ニ者菩提流支三蔵・*慧寵法師・道場法師・曇鸞法師・大海禅師・法上法師。已上出デタリ↢¬安楽集ニ¼↡ 二ニ者菩提流支三蔵・曇鸞法師・道綽禅師・善導禅師・懐感法師・*小康法師。已上出デタリ↢唐宋両伝ニ↡
二 ⅱ【二行章】
Ⅰ 標章
【2】 ^○善導和尚、 正雑二行を立てて、 ▼雑行を捨てて正行に帰する文。
1259▼善導和尚立テテ↢*正雑二行ヲ↡、捨テテ↢雑行ヲ↡帰スル↢正行ニ↡之文
二 ⅱ Ⅱ 挙観経疏
a 引文
イ 標列 (正雑二行)
^◇¬*観経 疏¼ の第四 (*散善義) にいはく、
¬観経疏ノ¼第四ニ云ク、
^「▲行につきて信を立つといふは、 しかも行に二種あり。 ○一には正行、 二には雑行なり。
「▼就キテ↠行ニ立ツトイフ↠信ヲ者、然モ行ニ有リ↢二種↡。一ニ者正行、二ニ者雑行ナリ。
二 ⅱ Ⅱ a ロ 釈義
(一)正明
(Ⅰ)正行
(ⅰ)五種正行
^◆正行といふは、 もつぱら*往生の経によりて行を行ずるもの、 これを正行と名づく。
言フ↢正行ト↡者、専ラ依リテ↢往生ノ経ニ↡行ズル↠行ヲ者、是ヲ名ク↢正行ト↡。
^◆いづれのものかこれや。 ▽一心にもつぱらこの ¬*観経¼・¬*弥陀経¼・¬無量寿経¼ 等を読誦し、 ▽一心にもつぱら思想を注めてかの国の二報荘厳を観察 し憶念し、 ▽もし礼せばすなはち1192一心にもつぱらかの仏を礼し、 ▽もし口称せばすなはち一心にもつぱらかの仏を称し、 ▽もし讃歎供養せばすなはち一心にもつぱら讃歎供養す。 これを名づけて正となす。
何レノ者カ是也。▼一心ニ専ラ読↢誦シ此ノ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬无量寿経¼等ヲ↡、一心ニ専ラ注メテ↢思想ヲ↡観↢察シ憶↣念シ彼ノ国ノ二報荘厳ヲ↡、若シ礼セバ即チ一心ニ専ラ礼シ↢彼ノ仏ヲ↡、若シ口称セバ即チ一心ニ専ラ称シ↢彼ノ*仏ヲ↡、若シ讃歎供養セバ即チ一心ニ専ラ讃歎供養ス。是ヲ名ケテ為ス↠正ト。
二 ⅱ Ⅱ a ロ (一)(Ⅰ)(ⅱ)正助二業
^▼またこの正のなかにつきて、 また二種あり。
又就キテ↢此ノ正ノ中ニ↡、復有リ↢二種↡。
・正業
^▽一には一心にもつぱら弥陀の名号を念じて、 行住坐臥 時節の久近を問はず念0791々に捨てざるもの、 ▼これを正定の業と名づく。 かの仏の願に順ずるがゆゑに。
一ニ者一心ニ専ラ念ジテ↢弥陀ノ名号ヲ↡、行住坐臥不↠*問ハ↢時節ノ久近ヲ↡念念ニ不ル↠捨テ者、是ヲ名ク↢正定之業ト↡。順ズルガ↢彼ノ仏ノ願ニ↡故ニ。
・助業
^▽もし礼誦等によるをすなはち名づけて助業となす。
若シ依ルヲバ↢礼誦等ニ↡即チ名ケテ為ス↢助業ト↡。
二 ⅱ Ⅱ a ロ (一)(Ⅱ)雑行
^▽この正助二行を除きてのほかの自余の諸善を ことごとく雑行と名づく。
除キテノ↢此ノ正助二行ヲ↡已外ノ自余ノ諸善ヲバ悉ク名ク↢雑行ト↡。
二 ⅱ Ⅱ a ロ (二)判得失
^▽もし前の正助 二行を修すれば、 心つねに ˆ阿弥陀仏にˇ 親近して憶念断えず、 名づけて無間となす。 もし後の雑行を行ずれば、 すなはち心つねに間断す。 回向して生ずることを得べしといへども、 衆く疎雑の行と名づく 」 と。
若シ修スレバ↢前ノ正助二行ヲ↡、心常ニ親近シテ憶念不↠断エ、名ケテ為ス↢无間ト↡也。若シ行ズレバ↢後ノ雑行ヲ↡、即チ心常ニ間断ス。雖モ↠可シト↢廻向シテ得↟生ズルコトヲ、衆ク名クト↢疎雑之行ト↡也。」
二 ⅱ Ⅱ b 私釈
イ 釈疏文
(一)総分
^◇わたくしにいはく、 この文につきて二の意あり。 一には↓往生の行相を明かす。 二には↓二行の*得失を判ず。
私ニ云ク、就キテ↢此ノ文ニ↡有リ↢二ノ意↡。一ニハ明ス↢往生ノ行相ヲ↡。二ニハ判ズ↢二行ノ得失ヲ↡。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)別釈
(Ⅰ)明往生行相【往生行相】
(ⅰ)標列二行
^◇初めに↑往生の行相を明かすといふは、 善導和尚の意によらば、 往生の行多しといへども大きに分ちて二となす。 一には↓正行、 二には↓雑行なり。
初ニ明ストイフ↢往生ノ行相ヲ↡者、依ラバ↢善*導和尚ノ意ニ↡、往生ノ行雖モ↠多シト大ニ分チテ為ス↠二ト。一ニハ正行、二ニハ雑行ナリ。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)別明二行
(a)明正行【五種正行】
(イ)標開合
^◇初めの↑正行と は、 これにつきて↓開↓合の二の義あり。 初めの開を五種となし、 後の合を二種となす。
初ノ正行ト者、付キテ↠之ニ有リ↢開合ノ二ノ義↡。初ノ開ヲ為シ↢五種ト↡、後ノ合ヲ為ス↢二種ト↡。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)釈開合
[一]開
[Ⅰ]開中合
^◇初めの↑開を五種とな1193すといふは、 一には↓読誦正行、 二には↓観察正行、 三には↓礼拝正行、 四には↓称名正行、 五には↓讃歎供養正行なり。
初ノ開ヲ為1260ストイフ↢五種ト↡者、一ニハ読誦正行、二ニハ観察正行、三ニハ礼拝正行、四ニハ称名正行、五ニハ讃嘆供養正行也。
・読誦正行
^◇第一の↑読誦正行 は、 もつぱら ¬観経¼ 等を読誦するなり。 すなはち文 (散善義) に 、 「△一心にもつぱらこの ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬無量寿経¼ 等を読誦す 」 といふこれなり。
第一ノ読誦正行者、専ラ読↢誦スル¬観経¼等ヲ↡也。即チ文ニ云フ↣「一心ニ専ラ読↢誦スト此ノ¬観経¼・¬弥陀経¼・¬無量寿経¼*等ヲ↡」是也。
・観察正行
^○第二に↑観察正行 は、 もつぱらかの国の依正二報を観察するなり。 すなはち文 (同) に 、 「△一心にもつぱら思想を0792注めてかの国の二報荘厳を観察し憶念す 」 といふこれなり。
第二ニ観察正行者、専ラ観↢察スル彼ノ国ノ依正二報ヲ↡也。即チ文ニ云フ↫「一心ニ専ラ注メテ↢思想ヲ↡観↩察シ憶↪念スト彼ノ国ノ二報荘厳ヲ↨」是也。
・礼拝正行
^◇第三に↑礼拝正行 は、 もつぱら弥陀を礼するなり。 すなはち文 (同) に 、 「△もし礼せばすなはち一心にもつぱらかの仏を礼す 」 といふこれなり。
第三ニ礼拝正行者、専ラ礼スル↢弥陀ヲ↡也。即チ文ニ云フ↣「若シ礼セバ即チ一心ニ専ラ礼スト↢彼ノ仏ヲ↡」是也。
・称名正行
^◇第四に↑称名正行 は、 もつぱら弥陀の名号を称するなり。 すなはち文 (同) に 、 「△もし口称せばすなはち一心にもつぱらかの仏を称す 」 といふこれなり。
第四ニ称名正行者、専ラ称スル↢弥陀ノ名号ヲ↡也。即チ文ニ云フ↣「若シ口称セバ即チ一心ニ専ラ称スト↢彼ノ*仏ヲ↡」是也。
・讃嘆供養正行
^◇第五に↑讃歎供養正行 は、 もつぱら弥陀を讃歎供養するなり。 すなはち文 (同) に 、 「△もし讃歎供養せばすなはち一心にもつぱら讃歎供養す、 これを名づけて正となす」 といふこれなり。
第五ニ讃歎供養正行者、専ラ讃↢歎供↣養スル弥陀ヲ↡也。即チ文ニ云フ↢「若シ讃歎供養セバ即チ一心ニ専ラ讃歎供養ス、是ヲ名ケテ為スト↟正ト」是也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅱ]開中開
^◇もし讃歎と供養とを開して二となさば、 六種 正行と名づくべし。
若シ開テ↣讃歎ト与ヲ↢供養↡而為サバ↠二ト者、可シ↠名ク↢六種正行ト↡也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)[一][Ⅲ]結
^◇いま合の義によるがゆゑに五種といふ。
今依ルガ↢合ノ義ニ↡故ニ云フ↢五種ト↡。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]合
[Ⅰ]正明
^◇次に↑合を二種となすといふは、 一には↓正業、 二には↓助1194業なり。
次ニ合ヲ為ストイフ↢二種ト↡者、一ニ者正業、二ニ者助業ナリ。
・正業
^◇初めの↑正業 は、 上の五種のなかの第四の称名をもつて正定の業となす。 すなはち文 (散善義) に 、 「△一心にもつぱら弥陀の名号を念じて、 行住坐臥時節の久近を問はず念々に捨てざるもの、 これを正定の業と名づく。 かの仏の願に順ずるがゆゑに」 といふこれなり。
初ノ正業者、以テ↢上ノ五種之中ノ第四ノ称名ヲ↡為ス↢正定之業ト↡。即チ文ニ云フ↧「一心ニ専ラ念ジテ↢弥陀ノ名号ヲ↡、行住坐臥不↠問ハ↢時節ノ久近ヲ↡念々ニ不ル↠捨テ者、是ヲ名ク↢正定之業ト↡。順ズルガ↢彼ノ仏ノ願ニ↡故ニト↥」是也。
・助業
^◇次に↑助業 は、 第四の口称を除きてのほかの読誦等の四種をもつてしかも助業となす。 すなはち文 (同) に 、 「△もし礼誦等によるを すなはち名づけて助業となす」 といふこれなり。
次ニ助業者、除キテ↢第四ノ口称ヲ↡之外ノ、以テ↢読誦等ノ四種ヲ↡而モ為ス↢助業ト↡。即チ文ニ云フ↧「若シ依ルヲバ↢礼誦等ニ↡即チ名ケテ為スト↦助業ト↥」是1261也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]料簡
^◇問ひていはく、 なんがゆゑぞ五種のなかに独り称名念仏をもつて正定の業となすや。
問ヒテ曰ク、何ガ故ゾ五種之中ニ独リ以テ↢称名念仏ヲ↡為ル↢正定ノ業ト↡乎。
^◇答へていはく、 かの仏の願に順ずるがゆゑ0793に。 意はいはく、 称名念仏はこれかの仏の*本願の行なり。 ゆゑにこれを修すれば、 かの仏の願に乗じてかならず往生を得。 その仏の本願の義、 ▽下に至りて知るべし。
答ヘテ曰ク、順ズルガ↢彼ノ仏ノ願ニ↡故ニ。意ハ云ク、称名念仏ハ是彼ノ*仏ノ本願ノ行也。故ニ修スレバ↠之ヲ者、乗ジテ↢彼ノ仏ノ願ニ↡必ズ得ル↢往生ヲ↡也。其ノ*仏ノ本願ノ義、至リテ↠下ニ可シ↠知ル。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)明雑行【五種雑行】
(イ)牒文略釈
^○次に↑雑行 は、 すなはち文 (同) に 、 「△この正助二行を除きてのほかの自余の諸善をことごとく雑行と名づく 」 といふこれなり。 意はいはく、 雑行無量なり、 *つぶさに述ぶるに遑あらず。
次ニ雑行者、即チ文ニ云フ↧「除キテノ↢此ノ正助二行ヲ↡已外ノ自余ノ諸善ヲバ悉ク名クト↢雑行ト↥」是也。意ハ云ク、雑行無量ナリ、不↠遑アラ↢具ニ述ブルニ↡。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)広釈
[一]標列
^◇ただし しばらく五種の正行に翻対して もつて五種の雑行を明かすべし。 一には↓読誦雑行、 二には↓観察雑行、 三に1195は↓礼拝雑行、 四には↓称名雑行、 五には↓讃歎供養雑行なり。
*但シ且ク翻↢対シテ五種ノ正行ニ↡以テ明スベシ↢五種ノ雑行ヲ↡也。一ニハ読誦雑行、二ニハ観察雑行、三ニハ礼拝雑行、四ニハ称名雑行、五ニハ讃歎供養雑行也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]別明
・読誦雑行
^◇第一に↑読誦雑行といふは、 上の ¬観経¼ 等の*往生浄土の経を除きてのほかの大小乗顕密の諸経において受持し読誦するをことごとく読誦雑行と名づく。
第一ニ読誦雑行トイフ者、除キテノ↢上ノ¬観経¼等ノ往生浄土ノ経ヲ↡已外ノ、於テ↢大小乗ノ顕密ノ諸経ニ↡受持シ読誦スルヲ悉ク名ク↢読誦雑行ト↡。
・観察雑行
^◇第二に↑観察雑行といふは、 上の極楽の*依正を除きてのほかの大小、 顕密、 *事理の観行をみなことごとく観察雑行と名づく。
第二ニ観察雑行トイフ者、除キテノ↢上ノ極楽ノ依正ヲ↡已外ノ、大小、顕密、事理ノ観行ヲ*皆悉ク名ク↢観察雑行ト↡。
・礼拝雑行
^◇第三に↑礼拝雑行といふは、 上の弥陀を礼拝するを除きてのほかの一切の諸余の仏・菩薩等およびもろもろの*世天等において礼拝*恭敬するをことごとく礼拝雑行と名づく。
第三ニ礼拝雑行トイフ者、除キテノ↣上ノ礼↢拝スルヲ弥陀ヲ↡已外ノ、於テ↢一切ノ諸余ノ仏菩薩等*及ビ諸ノ世天等ニ↡礼拝恭敬スルヲ悉ク名ク↢礼拝雑行ト↡。
・称名雑行
^◇第四に↑称名雑行といふは、 上の弥陀の名号を称するを除きてのほかの自余の一切の仏・菩薩等およびもろもろの世天等の名号を称するを ことごとく称名雑行と名づく。
第四ニ称名雑行トイフ者、除キテノ↣上ノ称スルヲ↢弥陀ノ名号ヲ↡已外ノ、称スルヲ↢自余ノ一切ノ仏菩薩等及ビ諸ノ世天等ノ名号ヲ↡悉ク名ク↢称名雑行ト↡。
・讃嘆供養雑行
^◇第五に↑讃歎供養雑行といふは、 上の弥陀仏を除きてのほかの一切の諸余の仏・菩薩等お0794よびもろもろの世天等において讃歎供養するを ことごとく讃歎供養雑行と名づく。
第五ニ讃歎供養雑行トイフ者、除キテノ↢上ノ弥陀仏ヲ↡已外ノ、於テ↢一切ノ諸余ノ仏菩薩等及ビ諸ノ世天等ニ↡讃歎供養スルヲ悉ク名ク↢讃歎供養雑行ト↡。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]摂余
^◇このほか また布施・持戒等の無量の行あり。 みな*雑行の言に摂尽すべし。
此ノ外亦有リ↢布施・持1262戒等ノ無量之行↡。皆可シ↣摂↢尽ス雑行*之言ニ↡。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)判二行得失【二行得失】
(ⅰ)総標牒文
^◇次に↑二行の得失を判ぜば、 「△もし前の正助二行を修すれば、 心つねに ˆ阿弥陀仏にˇ 親近して憶念断えず、 ▽名づけて無間となす。 もし後の雑行を行ず1196るは、 すなはち▽心つねに間断す。 ▽回向して生ずることを得べしといへども、 衆く疎雑の行と名づく」 (散善義) と、 すなはちその文なり。
次ニ判ゼバ↢二行ノ得失ヲ↡者、「若シ修スレバ↢前ノ正助二行ヲ↡、心常ニ親近シテ憶念不↠断エ、名ケテ為ス↢無間ト↡也。若シ行ズルハ↢後ノ雑行ヲ↡、即チ心常ニ間断ス。雖モ↠可シト↢廻向シテ得↟生ズルコトヲ、衆ク名クト↢疎雑之行ト↡」、即チ其ノ文也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)広釈
(a)標列
^▼この文の意を案ずるに、 正雑二行につきて*五番の相対あり。 一には↓親疎対、 二には↓近遠対、 三には↓有間無間対、 四には↓回向不回向対、 五には↓純雑対なり。
*案ズルニ↢此ノ文ノ意ヲ↡、*就キテ↢正雑二行ニ↡有リ↢五番ノ相対↡。一ニハ親疎対、二ニハ近遠対、三ニハ有間無間対、四ニハ廻向不廻向対、五ニハ純雑対也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)別釈
(イ)親疎対
^▼第一に↑親疎対といふは、 先づ 「親」 といふは、 正助二行を修するものは阿弥陀仏においてはなはだもつて*親昵となす。 ゆゑに ¬疏¼ (*定善義) の上の文にいはく、 「▽衆生行を起して*心口につねに仏を称すれば、 仏すなはちこれを聞しめす。 身につねに仏を礼敬すれば、 仏すなはち心にこれを見たまふ。 心 つねに仏を念ずれば、 仏すなはちこれを知りたまふ。 衆生仏を憶念すれば、 仏衆生を憶念したまふ。 彼此の三業あひ捨離せず。 ゆゑに親縁と名づく 」 と。
第一ニ親疎対トイフ者、先ヅ親トイフ者、修スル↢正助二行ヲ↡者ハ於テ↢阿弥陀仏ニ↡*甚ダ以テ為ス↢*親昵ト↡。故ニ¬疏ノ¼上ノ文ニ云ク、「衆生起シテ↠行ヲ*心口ニ常ニ称スレバ↠仏ヲ、仏即チ聞シメス↠之ヲ。身ニ常ニ礼↢敬スレバ仏ヲ↡、仏即チ見タマフ↠之ヲ↠心ニ。*心常ニ念ズレバ↠仏ヲ、仏即チ知リタマフ↠之ヲ。衆生憶↢念スレバ仏ヲ↡者、*仏憶↢念シタマフ衆生ヲ↡。彼此ノ三業不↢相捨離セ↡。故ニ名クル↢親縁ト↡也。」
^▼次に 「疎」 といふは雑行なり。 衆生仏を称せざれば、 仏すなはちこれを聞きたまはず。 身に仏を礼せざれば、 仏すなはちこれを見たまはず。 心に仏を念ぜざれば、 仏0795すなはちこれを知りたまはず。 衆生仏を憶念せざれば、 仏衆生を憶念したまはず。 彼此の三業つねに捨離す。 ゆゑに疎行と名づく◗。
次ニ疎トイフ者雑行也。衆*生不レバ↠称セ↠仏ヲ、仏即チ不↠聞キタマハ↠之ヲ。身ニ不レバ↠礼セ↠仏ヲ、仏即チ不↠見タマハ↠之ヲ。心ニ不レバ↠念ゼ↠仏ヲ、仏即チ不↠知リタマハ↠之ヲ。衆生不レバ↣憶↢念セ仏ヲ↡者、仏不↣憶↢念シタマハ衆生ヲ↡。彼此ノ三業*常ニ捨離ス。故ニ名クル↢疎行ト↡也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)近遠対
^▼第二に↑近遠対といふは、 先づ 「近」 といふは、 正助二行を修するも1197のは阿弥陀仏においてはなはだもつて隣く近しとなす。 ゆゑに ¬疏¼ (定善義) の上の文にいはく、 「▽衆生仏を見 んと願ずれば、 仏すなはち念に応じて 目の前に現在したまふ。 ゆゑに近縁と名づく 」 と。
第二ニ近遠対トイフ者、先ヅ近トイフ者、修スル↢正助二行ヲ↡者ハ於テ↢阿弥陀仏ニ↡甚ダ*以テ為ス↢隣ク近シト↡。故ニ¬疏ノ¼上ノ文ニ云ク、「衆生願ズレバ↠見ムト↠仏ヲ、仏即チ応ジテ↠念ニ現↢在シタマフ目ノ前ニ↡。故ニ名クル↢近縁ト↡也。」
^◇次に 「遠」 といふは雑行なり。 衆生仏を見 んと願ぜざれば、 仏すなはち念に応ぜず、 目の前に現じたまはず。 ゆゑに遠と名づく 。 ただし親近の義これ一に似たりといへども、 善導の意 分ちて二となす。 その旨 ¬疏¼ (同) の文に見えたり。 ゆゑにいま引き釈するところなり。
次ニ遠トイフ者雑行也。衆生不レバ↠願ゼ↠見ムト↠仏ヲ、仏即チ不↠応ゼ↠念ニ、不↠現ジタマハ↢目ノ前ニ↡。故ニ名クル↠遠ト也。但シ親近ノ義是1263雖モ↠似タリト↠一ニ、善導之意分チテ*而為ス↠二ト。其ノ旨見エタリ↢¬疏ノ¼文ニ↡。故ニ今所↢引キ釈スル↡也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ハ)無間有間対
^▼第三に↑無間有間対といふは、 先づ 「無間」 といふは、 正助の二行を修するものは 弥陀仏において憶念間断せず。 ゆゑに 「△名づけて無間となす」 といふこれなり。
第三ニ無間有*間対トイフ者、先ヅ無間トイフ者、修スル↢正助ノ二行ヲ↡者ハ於テ↢*弥陀仏ニ↡憶念不↢間断セ↡。故ニ云フ↣「名ケテ為スト↢無間ト↡」是也。
^◇次に 「有間」 といふは、 雑行を修するものは 弥陀仏において憶念つねに間断す。 ゆゑに 「△心 つねに間断す」 といふこれなり。
次ニ有間トイフ者、修スル↢雑行ヲ↡者ハ於テ↢*弥陀仏ニ↡憶念常ニ間断ス。故ニ云フ↢「心常ニ間断スト↡」是也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ニ)不廻向廻向対
^▼第四に↑不回向回向対といふは、 正助二行を修するものは、 たとひ別に回向を用ゐざれども*自然に往生の業となる。 ゆゑに ¬疏¼ (*玄義分) の上の文にいはく、 「▲いまこの ¬観経¼ のなかの十声仏を称するは、 すなはち十願十行ありて具足せり。 いかんが具足する。 ª南無º といふはすなはちこれ帰命、 またこれ発願回向0796の義なり。 ª阿弥陀仏º とい1198ふはすなはちこれその行なり。 この義をもつてのゆゑにかならず往生 を得」 と。 以上
第四ニ*不廻向廻向対トイフ者、修スル↢正助二行ヲ↡者ハ、縦令別ニ不レドモ↠用ヰ↢廻向ヲ↡自然ニ成ル↢往生ノ業ト↡。故ニ▼¬疏ノ¼上ノ文ニ云ク、「今此ノ¬観経ノ¼中ノ十声称スルハ↠仏ヲ、即チ有リテ↢十願十行↡具足セリ。云何ガ具足スル。▼言フ↢南無ト↡者即チ是帰命、亦是発願廻向之義ナリ。言フ↢阿弥陀仏ト↡者即チ是其ノ行ナリ。以ノ↢斯ノ義ヲ↡故ニ必ズ得ト↢往生ヲ↡。」 已上
^▼次に 「回向」 といふは、 雑行を修するものは、 かならず回向を用ゐる時に往生の因となる。 もし回向を用ゐざる時には往生の因とならず。 ゆゑに 「△回向して生ずることを得べしといへども」 といふこれなり。
次ニ廻向トイフ*者、修スル↢雑行ヲ↡者ハ、必ズ用ヰル↢廻向ヲ↡之時ニ成ル↢往生之因ト↡。若シ不ル↠用ヰ↢廻向ヲ↡之時ニハ不↠成ラ↢往生之因ト↡。故ニ*曰フ↠「雖モト↠可シト↢廻向シテ得↟生ズルコトヲ」是也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)純雑対
[一]正釈
^▼第五に↑純雑対といふは、 先づ 「純」 といふは、 正助二行を修するものはもつぱらこれ極楽の行なり。
第五ニ純雑対トイフ者、先ズ純トイフ者、修スル↢正助二行ヲ↡者ハ純ラ是極楽之行也。
^◇次に 「雑」 といふは、 これもつぱら極楽の行にあらず。 人天および三乗に通ず、 また十方浄土に通ず。 ゆゑに雑といふ 。
次ニ▼雑トイフ者、是純ラ非ズ↢極楽之行ニ↡。通ズ↢於人天*及ビ三乗ニ↡、亦通ズ↢於十方浄土ニ↡。故ニ云フ↠雑ト也。
^▼しかれば*西方の行者 すべからく雑行を捨てて正行を修すべし。
◆然レバ者西方ノ行者須クシ↧捨テテ↢雑行ヲ↡修ス↦正行ヲ↥也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二]料簡
[Ⅰ]問
^◇問ひていはく、 この純雑の義、 経論のなかにおいてその証拠ありや。
問ヒテ曰ク、此ノ純雑ノ義、於テ↢経論ノ中ニ↡有リ↢其ノ証拠↡乎。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ]答
[ⅰ]標
^◇答へていはく、 ▼大小乗の経・律・論のなかにおいて純雑 二門を立つること、 その例一にあらず。
答ヘテ曰ク、於テ↢大小乗ノ経・律・論之中ニ↡立ツルコト↢純雑二門ヲ↡、其ノ例非ズ↠一ニ。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ]釈
[a]内典
[イ]正挙
ª一º顕教
ªⅠº大乗
^◆大乗 はすなはち*八蔵のなかにおいてしかも雑蔵を立つ。 まさに知るべし、 七蔵はこれ純、 一蔵はこれ雑なり。
大乗ハ即チ於テ↢▼八蔵之中ニ↡而モ立ツ↢雑蔵ヲ↡。当ニシ↠知ル、七蔵ハ是1264純、一蔵ハ是雑ナリ。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª一ºªⅡº小乗
ªⅰº経
^◆小乗 はすなはち*四含のなかにおいて雑含を立つ。 まさに知るべし、 三含はこれ純、 一含はこれ雑なり。
小乗ハ即チ於テ↢▼四含之中ニ↡而立ツ↢雑含ヲ↡。当ニシ↠知ル、三含ハ是純、一含ハ是雑ナリ。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª一ºªⅡºªⅱº律
^◆律にはすなはち*二十の犍度を立ててもつて戒行を明かす。 そのなかに前の十九はこれ純、 後の一は雑犍度なり。
律ニハ*則チ立テテ↢二十ノ*揵度ヲ↡以テ明ス↢戒行ヲ↡。其ノ中ニ前ノ十九ハ是純、後ノ*一ハ雑*揵度也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª一ºªⅡºªⅲº論
^◇論 (*八犍度論) にはすなは1199ち八犍度を立てて諸法の性相を明かす。 前の七犍度はこれ純、 後の一はこれ雑犍度なり。
論ニハ則チ立テテ↢八*揵度ヲ↡明ス↢諸法ノ性相ヲ↡。前ノ七*揵度ハ是純、後ノ一ハ是雑*揵度也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª一ºªⅢº賢聖集
ªⅰº僧伝
^○*賢聖集のなか 、 唐・宋両伝には*十科の法を立てて高僧の行徳を明かす。 そのなかに前の九はこれ純、 後の一はこれ雑科なり。
賢聖集ノ中、唐宋両伝ニハ立テテ↢十科ノ法ヲ↡明ス↢高僧ノ行徳ヲ↡。其ノ中ニ前ノ九ハ是純、後ノ一ハ是雑科也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª一ºªⅢºªⅱº義章
^◇乃至、 ¬*大乗義章¼ に*五聚の法門あり0797。 前の四聚はこれ純、 後の一はこれ雑聚なり。
乃至¬大乗義章ニ¼有リ↢五聚ノ法門↡。前ノ四聚ハ是純、後ノ一ハ是雑聚也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª二º密教
^◇また顕教のみにあらず。 密教のなかに純雑の法あり。 いはく*山家の ¬*仏法の血脈の譜¼ にいはく、 一には*胎蔵界の曼陀羅の血脈の譜一首、 二には*金剛界の曼陀羅の血脈の譜一首、 三には*雑曼陀羅の血脈の譜一首。 前の二首はこれ純、 後の一首はこれ雑なり。
亦非ズ↢顕教ノミニ↡。密教之中ニ有リ↢純雑ノ法↡。謂ク山家ノ¬仏法ノ血脈ノ譜ニ¼云ク、一ニハ胎蔵界ノ曼陀羅ノ血脈ノ譜一首、二ニハ金剛界ノ曼陀羅ノ血脈ノ譜一首、三ニハ雑曼陀羅ノ血脈ノ譜一首ト。前ノ二首ハ是純、後ノ一首ハ是雑ナリ。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]結示
^◇純雑の義多しといへども、 いま略して小分を挙ぐるのみ。 まさに知るべし、 純雑の義、 法に随ひて不定なり。 これによりていま善導和尚の意 、 しばらく浄土の行において純雑を論ずるなり。
純雑之義雖モ↠多シト、今略シテ挙グル↢小分ヲ↡而已。当ニシ↠知ル、純雑之義、随ヒテ↠法ニ不定ナリ。因リテ↠茲ニ今善導和尚ノ意、且ク於テ↢浄土ノ行ニ↡論ズル↢純雑ヲ↡也。
二 ⅱ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ホ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]外典
^◇ この純雑の義*内典のみに局らず、 *外典のなかにその例はなはだ多し。 繁きことを恐れて出さず。
此ノ純雑ノ義不↠局ラ↢内典ノミニ↡、外典之中ニ其ノ例甚ダ多シ。恐レテ↠繁キコトヲ不↠出サ矣。
二 ⅱ Ⅱ b ロ 決判
(一)引例讃勧
^○ただし往生の行において二行を分つこと 、 善導一師のみに限らず。
但シ於テ↢往生ノ行ニ↡而分ツコト↢二行ヲ↡、不↠限ラ↢善導一師ノミニ↡。
^◇もし道綽禅師の意によらば、 往生の行多しといへども束ねて二となす。 一1200にはいはく念仏往生、 二にはいはく▼万行往生なり。
若シ依ラバ↢道綽禅師ノ意ニ↡者、往生ノ行雖モ↠多シト束ネテ而為ス↠二ト。一ニハ謂ク念仏往生、二ニハ謂ク万行往生ナリ。
^◇もし*懐感禅師の意によらば、 往生の行多しといへども束ねて二となす。 一にはいはく念仏往生、 二にはいはく*▼諸行往生なり。 恵心 (*源信) これに同じ。
若シ依ラバ↢懐感禅師ノ意ニ↡、往生ノ行雖モ↠多シト束ネテ而為ス↠二ト。一ニハ謂ク念仏往生、二ニハ謂ク諸行往生ナリ。*恵心同ジ↠之ニ
^◇かくのごときの三師、 おのおの二行を立てて往生の行を摂す。 はなはだその旨を得。
如キノ↠是クノ三師、各ノ立テテ↢二行ヲ↡*摂1265ス↢往生ノ行ヲ↡。甚ダ得↢其ノ旨ヲ↡。
二 ⅱ Ⅱ b ロ (二)斥他師
^◇*自余の諸師はしからず。 行者これを思ふべし。
自余ノ*諸*師ハ不↠然ラ。行者応シ↠思フ↠之ヲ。
二 ⅱ Ⅲ 挙礼讃
a 引文
イ 正判得失
(一)明専修得
^▼¬*往生礼讃¼ にいはく、 「▲もしよく上のごとく念々相続して、 畢命を期となすものは、 十はすなはち十ながら生じ、 百はすなはち百ながら生ず。 ▼なにをもつてのゆゑに。 外の雑縁なく正念を0798得るがゆゑに。 仏の本願と相応するがゆゑに。 教に違せざるがゆゑに。 仏語に随順するがゆゑに。
▼¬往生礼讃ニ¼云ク、「若シ能ク如ク↠上ノ念々相続シテ、畢命ヲ為ル↠期ト者ハ、▼十ハ即チ十ナガラ生ジ、百ハ即チ百ナガラ生ズ。何ヲ以ノ故ニ。▼無ク↢外ノ雑縁↡得ルガ↢正念ヲ↡故ニ。▼与↢仏ノ本願↡*相応スルガ故ニ。▼不ルガ↠違セ↠教ニ故ニ。▼随↢順スルガ仏語ニ↡故ニ。
二 ⅱ Ⅲ a イ (二)明雑修失
^◆もし専を捨てて雑業を修せんと欲するものは、 百の時に希に一二を得、 千の時に希に五三を得。
若シ欲スル↣捨テテ↠専ヲ修セムト↢雑業ヲ↡者ハ、▼百ノ時ニ希ニ得↢一二ヲ↡、千ノ時ニ希ニ得↢五三ヲ↡。
^◆なにをもつてのゆゑに。 ▼雑縁乱動して正念を失ふによるがゆゑに。 仏の本願と相応せざるがゆゑに。 教と相違するがゆゑに。 仏語に順ぜざるがゆゑに。 係念相続せざるがゆゑに。 憶想間断するがゆゑに。 回願慇重真実ならざるがゆゑに。 貪・瞋・諸見の煩悩来りて間断するがゆゑに。 慚愧・悔過 あることなきがゆゑに。
何ヲ以ノ故ニ。▼*由ルガ↣雑縁乱動シテ失フニ↢正念ヲ↡故ニ。▼与↢仏ノ本願↡不ルガ↢相応セ↡故ニ。▼与↠教相違スルガ故ニ。▼不ルガ↠順ゼ↢仏語ニ↡故ニ。▼係念不ルガ↢相続セ↡故ニ。▼憶想間断スルガ故ニ。▼廻願不ルガ↢慇重真実ナラ↡故ニ。▼貪瞋諸見ノ煩悩来リテ間断スルガ故ニ。▼無キガ↠有ルコト↢慚愧*悔過↡故ニ。
^▲また相続してかの仏の恩を報ぜんと念はざるがゆゑに。 心に軽慢を生じて、 業行をなすといへどもつねに名利と相応するがゆゑに。 人我おのづから覆ひて同行善知識に親近せざるがゆゑに。 楽ひて雑縁に近づきて、 往生の正行を自障1201障他するがゆゑなり。
又▼不ルガ↢相続シテ念ハ↟報ゼムト↢彼ノ仏ノ恩ヲ↡故ニ。▼心ニ生ジテ↢軽慢ヲ↡、雖モ↠作スト↢業行ヲ↡常ニ与↢名利↡相応スルガ故ニ。▼人我自ラ覆ヒテ不ルガ↣親↢近セ同行善知識ニ↡故ニ。▼楽ヒテ近ヅキテ↢雑縁ニ↡、自↢障*障↣他スルガ往生ノ正行ヲ↡故ニナリ。
二 ⅱ Ⅲ a ロ 対衆勧励
(一)就見聞示
^◆なにをもつてのゆゑに。 ▼余、 このごろみづから諸方の道俗を見聞するに、 解行不同なり、 専雑異あり。 ただ意をもつぱらにしてなすものは、 十はすなはち十 生ず。 雑を修して心を至さざるものは、 千がなかに一もなし。 この二行の得失、 前にすでに弁ずるがごとし。
▼何ヲ以ノ故ニ。餘比日*自ラ見↢聞スルニ諸方ノ道俗ヲ↡、解行不同ナリ、専雑有リ↠異。但使専ニシテ↠意ヲ作ス者ハ十ハ即チ十生ス。修シテ↠雑ヲ不ル↠至サ↠心ヲ者ハ▼千ガ中ニ無シ↠一モ。此ノ二行ノ得失、如シ↢前ニ已ニ辨ズルガ↡。
二 ⅱ Ⅲ a ロ (二)正勧励
^◆仰ぎ願はくは 一切の往生人等、 よくみづからおのれが能を思量せよ。 今身にかの国に生ぜんと願ぜば、 行住坐臥にかならずすべからく心を励まし、 おのれを剋して昼夜に廃することなかるべし。 畢命を期となせ。 まさしく一形にありて少苦に似如たれども、 前念に命終し0799て後念にすなはちかの国に生じて、 長時永劫につねに*無為の諸楽を受く。 乃至成仏まで生死を経ず。 あに快きにあらずや。 知るべし」 と。
仰ギ願クハ一切ノ往生人等善ク自ラ思↢量セヨ己ガ能ヲ↡。今身ニ願ゼバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡者、行住坐臥ニ必ズ須クシ↢励シ↠心ヲ剋シテ↠己ヲ昼夜ニ莫カル↟癈スルコト。畢命ヲ為ヨ↠期ト。▼*正シク在リテ↢一形ニ↡似↢如タレドモ少苦ニ↡、前念ニ命終シテ後念ニ即チ生ジテ↢彼ノ国ニ↡、長時永劫ニ常ニ受ク↢無為ノ*諸楽ヲ↡。▼乃至成仏マデニ不↠*逕↢生死ヲ↡。豈ニ非ズ↠快キニ哉。応シト↠知ル。」
二 ⅱ Ⅲ b 私釈
^わたくしにいはく、 この文を見るに、 いよいよすべからく雑を捨てて専を修すべし。 ▼あに百即百生の専修正行を捨てて、 堅く*千中無一の雑修雑行を執せんや。 行者よくこれを思量せよ。
1266私ニ云ク、見ルニ↢此ノ文ヲ↡、弥ヨ須クシ↢捨テテ↠雑ヲ修ス↟専ヲ。豈ニ捨テテ↢百即百生ノ専修正行ヲ↡、堅ク執セム↢千中無一ノ雑修雑行ヲ↡乎。行者能ク思↢量セヨ之ヲ↡。
二 ⅲ【▼本願章】
Ⅰ 標章
【3】 ^弥陀如来、 余行をもつて往生の本願となさず、 ただ念仏をもつて往生の本願となしたまへる文。
▼弥陀如来不↧以テ↢余行ヲ↡為サ↦往生ノ本願ト↥、唯以テ↢念仏ヲ↡為シタマヘル↢往生ノ本願ト↡之文
二 ⅲ Ⅱ 引文
a 大経
^1202¬無量寿経¼ の上にのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 心を至し信楽して、 わが国に生ぜんと欲して、 ▽乃至▽十念せんに、 もし生ぜずといはば、 正覚を取らじ」 (第十八願) と。
¬無量寿経ノ¼上ニ云ク、「設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、▼十方ノ衆生、▼至シ↠心ヲ信楽シテ、欲シテ↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡、▼乃至十念セムニ、▼若シ不トイハバ↠生ゼ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 ⅲ Ⅱ b 観念法門
^¬*観念法門¼ に上の文を引きていはく、 「▲もしわれ仏にならんに、 十方の衆生、 わが国に生ぜんと願じて、 わが名号を称すること▽下▽十声に至らんに、 わが願力に乗りて、 もし生ぜずは、 正覚を取らじ」 と。
¬観念法門ニ¼引キテ↢上ノ文ヲ↡云ク、「若シ我成ラムニ↠仏ニ、十方ノ衆生、願ジテ↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡、▼称スルコト↢我ガ名*号ヲ↡下至ラムニ↢十声ニ↡、▼乗リテ↢我ガ願力ニ↡、若シ不ハ↠生ゼ者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 ⅲ Ⅱ c 往生礼讃
^¬往生礼讃¼ に同じき上の文を引きていはく、 「▲ªもしわれ仏にならんに、 十方の衆生、 わが名号を称すること▽下▽十声に至るまで、 もし生ぜずは、 正覚を取らじº と。 かの仏いま現に*世にましまして仏になりたまへり。 まさに知るべし、 本誓重願虚しからず、 衆生称念すればかならず往生することを得」 と。
¬往生礼讃ニ¼同ジキ引キテ↢上ノ文ヲ↡云ク、「若シ我成ラムニ↠仏ニ、十方ノ衆生、▼称スルコト↢我ガ名号ヲ↡下至ルマデ↢十声ニ↡、若シ不ハ↠生ゼ者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。▼彼ノ仏今現ニ在シテ↠世ニ成リタマヘリ↠仏ニ。当ニシ↠知ル、本誓重願不↠虚シカラ、衆生称念スレバ必ズ得ト↢往生スルコトヲ↡。」
二 ⅲ Ⅲ 私釈
a 挙別願選択相
イ 対総明別【総別二願】
^わたくしにいはく、 一切の諸仏おのおの*総別二種の願あり。 「総」 といふは四弘誓願これなり。 「別」 といふは*釈迦の五百の大願、 *薬師の十二の上願等のごときこれなり。 いまこの四十八の願はこれ弥陀の別願なり。
私ニ云ク、一切ノ諸仏各ノ有↢総別二種之願↡。▼総トイフ者四弘誓願是也。別トイフ者如キ↢釈迦ノ五百ノ大願、薬師ノ十二ノ上願等ノ↡是也。今此ノ四十八願者是弥陀ノ別願也。
二 ⅲ Ⅲ a ロ 直釈
(一)発願時処
(Ⅰ)問
^問ひていはく、 弥陀如来、 いづれの時、 いづれの仏の所にしてかこの願を発したまへるや。
問ヒテ曰ク、弥陀如来於テカ↢何レノ時何レノ仏ノ*所ニ↡而発シタマヘル↢此ノ願ヲ↡乎。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (一)(Ⅱ)引経答
^答へていはく、 ○¬寿経¼ (*大経・上) にのたまはく、 「^▲仏、 *阿1203難に告げたまはく、 ª乃往過去久遠無量不可思議無央数劫に、 *定光如来世に興出したまひて、 無量の衆生を教化し度脱して、 みな道を得しめて、 すなはち滅度を取りたまへり。 ◆次に如来まします、 名づけて光遠といふ。 乃至 ◆次を処世と名づく。 ◆かくのごとき諸仏 五十三仏なり。 みなことごとくすでに過ぎて、
答ヘテ曰1267ク、¬寿経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、乃往過去久遠無量不可思議無央数劫ニ、*定光如来興↢出シタマヒテ於世ニ↡、教↢化シ度↣脱シテ無量ノ衆生ヲ↡、皆令メテ↠得↠道ヲ、乃チ取リタマヘリ↢滅度ヲ↡。次ニ有ス↢如来↡、名ケテ曰フ↢光遠ト↡。乃至 次ヲ名ク↢処世ト↡。如キノ↠此クノ諸仏 ▼五十三仏也 皆悉ク已ニ過ギテ、
^◆その時に次に仏まします、 *世自在王如来と名づく。
爾ノ時ニ次ニ有ス↠仏、名ク↢世自在王如来ト↡。
^◆時に国王あり。 仏の説法を聞きて心に悦予を懐きて、 尋いで無上正真道の意を発し、 国を棄て王を捐てて、 行じて沙門となる。 号けて*法蔵といふ。 高才勇哲にして世と超異せり。 ◆世自在王如来の所に詣でたまふ。 乃至
時ニ有リ↢国王↡。聞キテ↢仏ノ説法ヲ↡心ニ懐キテ↢悦予ヲ↡、尋ギテ発シ↢無上正真道ノ意ヲ↡、▼棄テ↠国ヲ捐テテ↠王ヲ、行ジテ作ル↢沙門ト↡。号ケテ曰フ↢法蔵ト↡。高才勇哲ニシテ与↠世超異セリ。詣デタマフ↢世自在王如来ノ所ニ↡。乃至
^▲ここに世自在王仏、 すなはち ˆ法蔵比丘のˇ ために広く二百一十億の諸仏の刹土の人天の善悪、 国土の粗妙を説きて、 その心願に応じてことごとくこれを現与したまふ。
於テ↠是ニ世自在王仏、即チ為ニ広ク説キテ↢二百一十億ノ諸仏ノ刹土ノ*人天之善悪、国土之麁妙ヲ↡、応ジテ↢其ノ心願ニ↡悉ク現↢与シタマフ之ヲ。
^◆時にかの比丘、 仏の所説の厳浄の国土を聞き、 みなことごとく覩見して、 ◆超えて無上殊勝の願を発す。 ◆その心寂静にして、 志所着なく、 一切世間によく及ぶものなし。 ◆五劫を具足して荘厳仏国の清浄の行を思惟し摂取しきº と。
時ニ彼ノ比丘聞キ↢仏ノ所説ノ厳浄ノ国土ヲ↡、皆悉ク覩見シテ、超エテ発ス↢無上殊勝之願ヲ↡。其ノ心寂静ニシテ、志无ク↢所着↡、一切世間ニ無シ↢能ク及ブ者↡。具↢足シテ五劫ヲ↡思↢惟シ摂↣取シキト荘厳仏国ノ清浄之行ヲ↡。
^◆阿難、 仏にまうさく、 ªかの仏の国土の寿量いくばくぞやº と。 ◆仏ののたまはく、 ªその仏の寿命四十二劫なり。 ◆時に法蔵1204比丘▽二百一十億の諸仏の妙土の清浄の行を摂取しきº」 と。 以上
阿難白ク↠仏ニ、彼ノ仏ノ国土ノ寿量幾何ゾヤト。仏ノ言ク、其ノ仏ノ寿命四十二劫ナリ。時ニ法蔵比丘摂↢取シキト二百一十億ノ諸仏ノ妙土ノ清浄之行ヲ↡。」 已上
二 ⅲ Ⅲ a ロ (二)明選択義
(Ⅰ)引異訳経
^▼¬*大阿弥陀経¼ (上) にのたまはく、 「▲その仏 (世自在王仏) すなはち二百一十億の仏の国土中の諸天・人民の善悪、 国土の好醜を↓選択す。 ˆ法蔵比丘の、ˇ 心中の所欲の願を選択せんがためなり。
▼¬*大阿弥陀経ニ¼云ク、「其ノ仏即チ▼選↢択シ二百一十億ノ仏ノ国土中ノ諸天人民之善悪、国土之好醜ヲ↡、為ナリ↣選↢択セムガ心中ノ所欲ノ願ヲ↡。
^◆楼夷亘羅仏 ここには世自在王仏といふ。 経を説きをはりて、 曇摩迦 ここには法蔵といふ。 すなはちその心を一にして、 すなはち天眼を得、 徹視してことごとくみづから二百一十億の諸仏の国土のなかの諸天・人民の善悪、 国土の好醜を見、 ◆すなはち心中の所願を選択して、 すなはちこの二十四の願経を結得す」 と。 ▲¬*平等覚経¼ またこれに同じ。
▼楼夷亘羅仏 此ニハ云フ↢世自在王仏ト↡ 説キ↠経ヲ畢リテ、▼曇摩迦 此ニハ云フ↢法蔵ト↡ 便チ一ニシテ↢其ノ心ヲ↡、即チ得↢天眼1268ヲ↡、徹視シテ悉ク自ラ見↢二百一十億ノ諸仏ノ国土ノ中ノ諸天人民之善悪、国土之好醜ヲ↡、即チ選↢択シテ心中ノ所願ヲ↡、便チ結↢得スト是ノ▼二十四ノ願経ヲ↡。」 ¬平等覚経¼亦*復同ジ↠之ニ
二 ⅲ Ⅲ a ロ (二)(Ⅱ)釈選択義【選択摂取】
^▽このなか、 「↑選択」 とはすなはちこれ取捨の義なり。 いはく二百一十億の諸仏の浄土のなかにおいて、 人天の悪を捨て人天の善を取り、 国土の醜を捨て国土の好を取るなり。 ¬大阿弥陀経¼ の選択の義かくのごとし。 ¬双巻経¼ (大経・上) の意また選択の義あり。 いはく、 「△二百一十億の諸仏の妙土の清浄の行を摂取す」 といふこれなり。
此ノ中選択ト者即チ是取捨ノ義也。謂ク於テ↢二百一十億ノ諸仏ノ浄土ノ中ニ↡、捨テ↢人天之悪ヲ↡取リ↢人天之善ヲ↡、捨テ↢国土之醜ヲ↡取ル↢国土之好ヲ↡也。¬大阿弥陀経ノ¼選択ノ義如シ↠是クノ。¬双*巻経ノ¼意亦有リ↢選択ノ義↡。謂ク云フ↣「摂↢取スト二百一十億ノ諸仏ノ妙土ノ清浄之行ヲ↡」是也。
^◇*選択と摂取とその言異なりといへども、 その意これ同じ。 しかれば不清浄の行を捨てて、 清浄の行を1205取る。 上の天・人の善悪、 国土の粗妙、 その義またしかなり。 これに准じて知るべし。
選択ト与↢摂取↡其ノ言雖モ↠異ナリト、其ノ意是同ジ。然レバ者捨テテ↢不清浄ノ行ヲ↡、取ル↢清浄之行ヲ↡也。上ノ天人之善悪、国土之麁妙、其ノ義亦然ナリ。准ジテ↠之ニ応シ↠知ル。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)明選択相
(Ⅰ)総明諸願相
(ⅰ)就五願明
(a)明前四願
^◇それ四十八願に約して、 一往おのおの選択摂取の義を論ぜば、
夫レ約シテ↢四十八願ニ↡、一往各ノ論ゼバ↢選択摂取之義ヲ↡者、
・第一願
^◇第一に▲*無三悪趣の願は、 覩見するところの二百一十億の土のなかにおいて、 あるいは三悪趣ある国土あり。 あるいは三悪趣なき国土あり。 すなはちその三悪趣ある粗悪の国土を選捨して、 その三悪趣なき善妙の国土を選取す。 ゆゑに選択といふ。
第一ニ無三悪趣ノ願者、於テ↧*所↢覩見ル↡之二百一十億ノ土ノ中ニ↥、或イハ有リ↧有ル↢三悪趣↡之国土↥。或イハ有リ↧無キ↢三悪趣↡之国土↥。即チ選↧捨シテ其ノ有ル↢三悪*趣↡麁悪ノ国土ヲ↥、選↧取ス其ノ無キ↢三悪*趣↡善妙ノ国土ヲ↥。故ニ云フ↢選択1269ト↡也。
・第二願
^◇第二に▲*不更悪趣の願は、 かの諸仏の土のなかにおいて、 あるいはたとひ国のなかに三悪道なしといへども、 その国の人天寿終りて後に、 その国より去りてまた三悪趣に更る土あり。 あるいは悪道に更らざる土あり。 すなはちその悪道に更る粗悪の国土を選捨して、 その悪道に更らざる善妙の国土を選取す。 ゆゑに選択といふ。
第二ニ不更悪趣ノ願者、於テ↢彼ノ諸仏ノ土ノ中ニ↡、或イハ有リ↧縦ヒ雖モ↣国ノ中ニ無シト↢三悪道↡、其ノ国ノ人天寿終リテ之後ニ、従リ↢其ノ国↡去リテ復更ル↢三悪趣ニ↡之土↥。或イハ有リ↧不ル↠更ラ↢悪*道ニ↡之土↥。即チ選↧捨シテ其ノ更ル↢悪*道ニ↡麁悪ノ国土ヲ↥、選↧取ス其ノ不ル↠更ラ↢悪*道ニ↡善妙ノ国*土ヲ↥。故ニ云フ↢選択ト↡也。
・第三願
^◇第三に▲*悉皆金色の願は、 かの諸仏の土のなかにおいて、 あるいは一土のなかに*黄・白二類の人天ある国土あり。 あるいはもつぱら黄金色の国土あり。 すなはち黄・白二類の粗悪の国土を選捨して、 黄金一色の善妙の国土を選取す。 ゆゑに選択といふ。
第三ニ悉皆金色ノ願者、於テ↢彼ノ諸仏ノ土ノ中↡、或イハ有リ↧一土之中ニ有ル↢黄白二類ノ人天↡之国土↥。或イハ有リ↢純ラ黄金色之国土↡。即チ選↢捨シテ黄白二類ノ麁悪ノ国土ヲ↡、選↢取ス黄金一色ノ善妙ノ国土ヲ↡。故ニ云フ↢選択ト↡也。
・第四願
^◇第四に▲*無有好醜の願は、 かの諸仏の土のなかにおいて、 あるいは人天の形色好醜不同の国土あり。 あるいは形色一類にして好醜ある1206ことなき国土あり。 すなはち好醜不同の粗悪の国土を選捨して、 好醜あることなき善妙の国土を選取す。 ゆゑに選択といふ。
第四ニ無有好醜ノ願者、於テ↢彼ノ諸仏ノ土ノ中↡、或イハ有リ↢人天ノ形色好醜不同之国土↡。或イハ有リ↧形色一類ニシテ無キ↠有ルコト↢好醜↡之国土↥。即チ選↢捨シテ好醜不同ノ麁悪ノ国土ヲ↡、選↧取ス無キ↠有ルコト↢好醜↡善妙ノ国土ヲ↥。故ニ云フ↢選択ト↡也。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅰ)(ⅰ)(b)明十八願
^◇乃至、 第十八の△*念仏往生の願は、 かの諸仏の土のなかにおいて、 あるいは布施をもつて往生の行となす土あり。 あるいは持戒をもつて往生の行となす土あり。 あるいは忍辱をもつて往生の行となす土あり。 あるいは精進をもつて往生の行となす土あり。 あるいは禅定をもつて往生の行となす土あり。 あるいは般若 第一義を信ずる等これなり。 をもつて往生の行となす土あり。
乃至第十八ノ念仏往生ノ願者、於テ↢彼ノ諸*仏ノ土ノ中ニ↡、▼或イハ有リ↧*以テ↢布施ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢持戒ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢忍辱ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢精進ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢禅定ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢般若ヲ↡ 信ズル↢第一義ヲ↡等是也 為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。
^▼あるいは菩提心をもつて往生の行となす土あり。 あるいは六念をもつて往生の行となす土あり。 あるいは持経をもつて往生の行となす土あり。 あるいは持呪をもつて往生の行となす土あり。 あるいは起立塔像、 飯食沙門および孝養父母、 奉事師長等の種々の行をもつておのおの往生の行となす国土等あり。 あるいはもつぱらその国の仏の名を称して往生の行となす土あり。
▼或イハ有リ↧以テ↢菩提心ヲ↡為ル↢往生ノ*行ト↡之土↥。▼或イハ有リ↧以テ↢六念ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢持経ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢持呪ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧以テ↢起立塔像、飯食沙門及以孝養父母、奉事師長等ノ種々之行ヲ↡各ノ為ル↢往生ノ行ト↡之国土等↥。或イハ有リ↧専ラ称シテ↢其ノ国ノ仏ノ名ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。
^◇かくのごとく一行をもつて一仏の土に配することは、 これしばらく一往の義なり。 *再往これを論ぜば、 その義不定なり。 あるいは一仏の土のなかに、 多行をもつて往生の行となす土あり。 あるいは多仏の土のなかに、 一行をもつて通じ1207て往生の行となす土あり。 かくのごとく往生の行、 種々不同なり。 つぶさに述ぶべからず。
如ク↠此クノ以テ↢一行ヲ↡配スルコト↢一仏ノ土ニ↡者、是且ク一往之義也。再往論ゼバ↠之ヲ、其ノ義不1270定ナリ。或イハ有リ↧一仏ノ土ノ中ニ、以テ↢多行ヲ↡為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。或イハ有リ↧多仏ノ土ノ中ニ、以テ↢一行ヲ↡通ジテ為ル↢往生ノ行ト↡之土↥。▼如ク↠是クノ往生ノ行種々不同ナリ。不↠可カラ↢具ニ述ブ↡也。
^◇すなはちいま前の布施・持戒、 乃至孝養父母等の諸行を選捨して、 専称仏号を選取す。 ゆゑに選択といふ。 しばらく五の願に約して略して選択を論ずること、 その義かくのごとし。
▼即チ今選↢捨シテ前ノ布施・持戒、乃至孝養父母等ノ諸行ヲ↡、選↢取ス専称仏号ヲ↡。故ニ云フ↢選択ト↡也。且ク約シテ↢五ノ願ニ↡略シテ論ズルコト↢選択ヲ↡、其ノ義如シ↠是クノ。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅰ)(ⅱ)挙諸願行
^◇自余の諸願はこれに准じて知るべし。
自余ノ諸願ハ准ジテ↠之ニ応シ↠知ル。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)別明生因
(ⅰ)問
^▼問ひていはく、 あまねく諸願に約して粗悪を選捨し善妙を選取すること、 その理しかるべし。 なんがゆゑぞ、 第十八の願に、 一切の諸行を選捨して、 ただひとへに念仏一行を選取して往生の本願となしたまふや。
問ヒテ曰ク、普ク約シテ↢諸願ニ↡選↢捨シ麁悪ヲ↡選↢取スルコト善妙ヲ↡、其ノ理可シ↠然ル。何ガ故ゾ第十八ノ願ニ、選↢捨シテ一切ノ諸行ヲ↡、唯偏ニ選↢取シテ念仏一行ヲ↡為シタマフ↢往生ノ本願ト↡乎。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)答
(a)標二義
^◇答へていはく、 *聖意測りがたし。 たやすく解することあたはず。 しかりといへどもいま試みに二の義をもつてこれを解せば、 一には↓勝劣の義、 二には↓難易の義なり。
答ヘテ曰ク、聖意難シ↠測リ。不↠能ハ↢輒ク解スルコト↡。雖モ↠然リト今試ニ以テ↢二ノ義ヲ↡解セバ↠之ヲ、一ニ者勝劣ノ義、二ニ者難易ノ義ナリ。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)釈二義
(イ)【勝劣義】
[一]標
^▼初めの↑勝劣とは、 念仏はこれ勝、 余行はこれ劣なり。
初ノ勝劣ト者、念仏ハ是勝、余行ハ是劣ナリ。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]釈
^◇所以はいかんとならば、 名号はこれ万徳の帰するところなり。 しかればすなはち弥陀一仏のあらゆる四智・三身・十力・四無畏等の一切の*内証の功徳、 相好・光明・説法・利生等の一切の*外用の功徳、 みなことごとく阿弥陀仏の名号のなかに摂在せり。 ゆゑに名号の功徳もつとも勝となす。 余行はしからず。 お1208のおの一隅を守る。 ここをもつて劣となす。
*所以者何ントナラバ、名*号ハ是万徳之所↠帰スル也。然レバ則チ▼弥陀一仏ノ所有ノ四智・三身・十力・四無畏等ノ一切ノ内証ノ功徳、相好・光明・説法・利生等ノ一切ノ外用ノ功徳、皆悉ク摂↢在セリ阿弥陀*仏ノ名号之中ニ↡。故ニ名号ノ功徳最モ為ル↠勝ト也。余行ハ不↠然ラ。各ノ守ル↢一隅ヲ↡。是ヲ以テ為ル↠劣ト也。
^◇たとへば世間の屋舎の、 その屋舎の名字のなかには棟・*梁・*椽・柱等の一切の家具を摂せり。 棟・梁等の一々の名字のなかには一切を摂することあたはざるがごとし。 これをもつて知るべし。
譬ヘバ如シ↧世間ノ屋舎ノ、*其ノ屋舎ノ名字之中ニハ摂セリ↢棟ハリ 梁ウツハリ・ 椽タルキ・ 柱ハシラ等ノ一切家具ヲ↡、棟梁等ノ一々ノ名字ノ中ニハ不ルガ↞能ハ↠摂スルコト↢一切ヲ↡。以テ↠之ヲ応シ↠知ル。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三]結
^◇しかればすなはち仏の名号の功徳、 余の一切の功徳に勝れたり。 ゆゑに劣を捨てて勝を取りてもつて本願となしたまへるか。
然レバ則チ仏ノ名号ノ功徳勝レタリ↢余ノ一切ノ功徳ニ↡。故ニ捨テテ↠劣ヲ取リテ↠勝ヲ以テ為シタマヘル↢本願ト↡歟。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)【難易義】
[一]標
^▼次に↑難易の義とは、 念仏は修しやすし、 諸行は修しがたし。
次ニ難易ノ義ト者、念仏1271ハ易シ↠修シ、諸行ハ難シ↠修シ。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]引文証
[Ⅰ]礼讃
^このゆゑに ¬往生礼讃¼ にいはく、 「▲問ひていはく、 なんがゆゑぞ、 観をなさしめずしてただちにもつぱら名字を称せしむるは、 なんの意かあるや。
是ノ故ニ¬往生礼讃ニ¼云ク、「問ヒテ曰ク、何ガ故ゾ不シテ↠令メ↠作サ↠観ヲ直ニ遣ムル↣専ラ称セ↢名字ヲ↡者、有ル↢何ノ意カ↡也。
^◆答へていはく、 すなはち衆生障重く、 境は細く心は粗し。 識颺り神飛びて、 観成就しがたきによるなり。 ここをもつて大聖 (釈尊) 悲憐して、 ただちにもつぱら名字を称せよと勧めたまふ。 まさしく称名の易きによるがゆゑに、 相続してすなはち生ず」 と。 以上
答ヘテ曰ク、乃チ由ル↣衆生障重ク、境ハ細ク心ハ麁シ、識颺リ神飛ビテ、観難キニ↢成就シ↡也。是ヲ以テ大聖悲憐シテ、直ニ勧メタマフ↣専ラ称セヨト↢名字ヲ↡。正シク由ルガ↢称名ノ易キニ↡故ニ、相続シテ即チ生ズト。」*已上
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]要集
^また ¬*往生要集¼ (下) に、 「▲問ひていはく、 一切の善業おのおの利益あり、 おのおの往生を得。 なんがゆゑぞただ念仏一門を勧むるや。
又¬往生要集ニ¼「問ヒテ曰ク、一切ノ善業各ノ有リ↢利益↡、各ノ得↢往生ヲ↡、何ガ故ゾ唯勧ムルヤ↢念仏一門ヲ↡。
^◆答へていはく、 いま念仏を勧むることは、 これ余の種々の妙行を*遮せんとにはあらず。 ただこれ男女・貴賎、 行住坐臥を*簡ばず、 時1209処諸縁を論ぜず、 これを修するに難からず、 乃至、 臨終に往生を願求するに、 その便宜を得たるは念仏にしかざればなり」 と。 以上
答ヘテ曰ク、今勧ムルコトハ↢念仏ヲ↡、非ズ↣是遮セムトニハ↢余ノ種々ノ妙行ヲ↡。只是男女*貴賎、不↠簡バ↢行住坐臥ヲ↡、不↠論ゼ↢時処諸縁ヲ↡、修スルニ↠之ヲ不↠難カラ、乃至臨終ニ願↢求スルニ往生ヲ↡、得タルハ↢其ノ便宜ヲ↡不レバナリト↠如カ↢念仏ニ↡。」已上
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]釈其義
[Ⅰ]総示
^ゆゑに知りぬ、 念仏は易きがゆゑに一切に通ず。 諸行は難きがゆゑに諸機に通ぜず。 しかればすなはち一切衆生をして平等に往生せしめんがために、 難を捨て易を取りて、 本願となしたまへるか。
故ニ知リヌ、念仏ハ*易キガ故ニ通ズ↢於一切ニ↡。諸行ハ難キガ故ニ不↠通ゼ↢諸機ニ↡。然レバ則チ為ニ↠令メムガ↢一切衆生ヲシテ平等ニ往生セ↡、捨テ↠難ヲ取リテ↠易ヲ、為シタマヘル↢本願ト↡歟。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ]別示
^もしそれ造像起塔をもつて本願となさば、 貧窮困乏の類はさだめて往生の望みを絶たん。 しかも富貴のものは少なく、 貧賎のものははなはだ多し。
若シ夫レ以テ↢造像起塔ヲ↡而為サバ↢本願ト↡*者貧窮困*乏ノ類ハ定メテ絶タム↢往生ノ望ヲ↡。然モ富貴ノ者ハ少ク貧賎ノ者ハ甚ダ多シ。
^もし智慧高才をもつて本願となさば、 愚鈍下智のものはさだめて往生の望みを絶たん。 しかも智慧のものは少なく、 愚痴のものははなはだ多し。
若シ以テ↢智*慧高才ヲ↡而為サバ↢本願ト↡者、愚鈍下智ノ者ハ定メテ絶タム↢往生ノ望ヲ↡。然モ智*慧ノ者ハ少ク愚痴ノ者ハ*甚ダ多シ。
^もし*多聞多見をもつて本願となさば、 少聞少見の輩はさだめて往生の望みを絶たん。 しかも多聞のものは少なく、 少聞のものははなはだ多し。
若シ以テ↢多聞多見ヲ↡而為サバ↢本願ト↡者、少聞少見ノ輩ハ定メテ絶タム↢往生ノ望ヲ↡。然モ多聞ノ者ハ少ク少聞ノ者ハ甚ダ多シ。
^もし*持戒持律をもつて本願となさば、 破戒無戒の人はさだめて往生の望みを絶たん。 しかも持戒のものは少なく、 破戒のものははなはだ多し。
若シ以テ↢持戒持律ヲ↡而為サバ↢本願ト↡者、破戒無戒ノ人ハ定メテ絶タム↢往生ノ望ヲ↡。然モ持戒ノ者ハ少ク破戒ノ者ハ甚ダ多シ。
^自余の諸行これに准じて知るべし。 まさに知るべし、 上の諸行等をもつて本願となさば、 往生を得るものは少なく、 往生せざるものは多からん。
自余ノ諸行准ジテ↠之ニ応シ↠知ル。当ニシ↠知ル、以テ↢上ノ諸1272行等ヲ↡而為サバ↢本願ト↡者、得ル↢往生ヲ↡者ハ少ク不ル↢往生セ↡者ハ多カラム。
^▼しかればすなはち弥陀如来、 法蔵比丘の昔平等の慈1210悲に催されて、 あまねく一切を摂せんがために、 造像起塔等の諸行をもつて往生の本願となしたまはず。 ただ称名念仏一行をもつてその本願となしたまへり。
然レバ則チ弥陀如来、法蔵比丘之昔被テ↠催サ↢平等ノ慈悲ニ↡、普ク為ニ↠摂セムガ↢於一切ヲ↡、不↧以テ↢造像起塔等ノ諸行ヲ↡為シタマハ↦往生ノ本願ト↥。唯以テ↢称名念仏一行ヲ↡為シタマヘル↢其ノ本願ト↡也。
二 ⅲ Ⅲ a ロ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅲ]引文結示
^ゆゑに○*法照禅師の ¬*五会法事讃¼ にいはく、
故ニ法照禅師ノ¬五会法事讃ニ¼云ク、
^「▼かの仏の*因中に弘誓を立てたまへり。 ▼名を聞きてわれを念ぜば▼すべて*迎へに来らん。
◆貧窮と富貴とを簡ばず、 ▼下智と高才とを簡ばず、
^▼多聞にして浄戒を持つを簡ばず、 ▼破戒にして罪根の深きをも簡ばず。
◆ただ心を回して*多く念仏せば、 ▼よく*瓦礫をして変じて金となさしめん」 と。 以上
「彼ノ仏ノ因中ニ立テタマヘリ↢弘誓ヲ↡ | 聞キテ↠名ヲ念ゼバ↠我ヲ総ジテ迎ヘニ来ラム |
不↠簡バ↣貧窮ト将ヲ↢富貴↡ | 不↠簡バ↣下智ト与ヲ↢高才↡ |
不↠簡バ↣多聞ニシテ持ツヲ↢浄戒ヲ↡ | 不↠簡バ↢破戒ニシテ罪根ノ深キヲモ↡ |
但使廻シテ↠心ヲ多ク念仏セバ | 能ク令メムト↢瓦礫ヲシテ変ジテ成サ↟金ト」 已*上 |
二 ⅲ Ⅲ b 決本願成不
イ 問
^○問ひていはく、 一切の菩薩はその願を立つといへども、 あるいは已成就あり、 また未成就あり。 いぶかし、 法蔵菩薩の四十八願はすでに成就すとやなさん、 はた未成就とやなさん。
問ヒテ曰ク、一切ノ菩薩ハ雖モ↠立ツト↢其ノ願ヲ↡、或イハ有リ↢已成就↡、亦有リ↢*未成就↡。未審、法蔵菩薩ノ四十八願ハ已ニ為サム↢成就ストヤ↡、将為サム↢未成就トヤ↡也。
二 ⅲ Ⅲ b ロ 答【誓願成就】
(一)総答
^◇答へていはく、 法蔵の誓願、 一々に成就す。
答ヘテ曰ク、法蔵ノ誓願、一々ニ成就ス。
二 ⅲ Ⅲ b ロ (二)別答
(Ⅰ)明三願成就
・第一願成就
^◇いかんとならば、 極楽界のなかにすでに三悪趣なし。 まさに知るべし、 これすなはち△無三悪趣の願 (第一願) を成就するなり。 なにをもつてか知ることを得る。 すなはち願成就の文 (大経・上) に、 「▲また地獄・餓鬼・畜1211生、 諸難の趣なし」 といふこれなり。
何トナラバ者、▼極楽界ノ中ニ既ニ無シ↢三悪趣↡。当ニシ↠知ル、是即チ成↢就スル無三悪趣之願ヲ↡也。*何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。即チ願成就ノ文ニ云フ↣「亦無シト↢地獄・餓鬼・畜生、諸難之趣↡」是也。
・第二願成就
^またかの国の人天寿終りて後に、 三悪趣に更ることなし。 まさに知るべし、 これすなはち△不更悪趣の願 (第二願) を成就するなり。 なにをもつてか知ることを得る。 すなはち願成就の文 (大経・下) に、 「▲またかの菩薩、 乃至成仏まで悪趣に更らず」 といふこれなり。
又彼ノ国ノ人天寿終リテ之後ニ、無シ↠更ルコト↢三悪趣ニ↡。当ニシ↠知ル、是*即チ成↢就スル不更悪趣之願ヲ↡也。以テカ↠何ヲ得ル↠知ルコトヲ。即チ願成就ノ文ニ云フ↢「又彼ノ菩薩、乃至成仏マデニ不ト↟更ラ↢悪趣ニ↡」是也。
・第二十一願成就
^○また極楽の人天すでにもつて一人として三十二相を具せずといふことあることなし。 まさに知るべし、 これすなはち▲*具三十二相の願 (第二十一願) を成就するなり。 なにをもつてか知ることを得る。 すなはち願成就の文 (大経・下) に、 「▲かの国に生るるものは、 みなことごとく三十二相を具足す」 といふこれなり。
又極楽ノ人天既ニ以テ無シ↠有ルコト↢一人トシテ不トイフコト↟具セ↢▼三十二相ヲ↡。当ニシ↠知ル、是*即チ成↢就スル具三十二相ノ願ヲ↡也。以テカ↠何ヲ得ル↠知ルコトヲ。即チ願成就ノ文ニ云フ↧「生1273ルル↢彼ノ国ニ↡者ハ、皆悉ク具↦足スト三十二相ヲ↥」是也。
二 ⅲ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)別明生因成就
(ⅰ)例余推知
^◇かくのごとく初め無三悪趣の願 (第一願) より終り▲*得三法忍の願 (第四十八願) に至るまで、 一々の誓願みなもつて成就す。 第十八の念仏往生の願、 あに孤りもつて成就せざらんや。 しかればすなはち念仏の人みなもつて往生す。
如ク↠是クノ初メ自リ↢無三悪趣ノ願↡終リ至ルマデ↢得三法忍ノ願ニ↡、一一ノ誓願皆以テ成就ス。第十八ノ念仏往生ノ願、豈ニ孤リ以テ不ラム↢成就セ↡乎。然レバ則チ▼念仏之人皆以テ往生ス。
二 ⅲ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)挙成就文
^◇なにをもつてか知ることを得る。 すなはち念仏往生の願成就の文 (大経・下) に、 「▲*もろもろの衆生ありて、 その名号を聞きて信心歓喜して、 乃至▽一念、 心を至して回向してかの国に生ぜんと願ずれば、 すなはち往生を得て不退転に住す」 といふこれなり。
◆以テカ↠何ヲ得ル↠知ルコトヲ。即チ念仏*往生ノ願成就ノ文ニ云フ↧「諸ノ有リテ↢衆生↡、聞キテ↢其ノ名号ヲ↡信心歓喜シテ、▼乃至▼一念至シテ↠心ヲ廻向シテ願ズレバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、▼即チ得テ↢往生ヲ↡住スト↦不退転ニ↥」是也。
二 ⅲ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅲ)就土況釈
^◇おほよそ四十1212八願荘厳の浄土は、 華池・宝閣、 願力にあらずといふことなし。 なんぞそのなかにおいて独り念仏往生の願を疑惑すべきや。
▼凡ソ四十八願荘厳ノ浄土ハ花池・宝閣無シ↠非ズトイフコト↢願力ニ↡。何ゾ於テ↢其ノ中ニ↡独リ可キ↣疑↢惑ス念仏往生ノ願ヲ↡乎。
二 ⅲ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅳ)就仏比証
^◇しかのみならず一々の願の終りに、 「もししからずは、 正覚を取らじ」 といふ。 しかも阿弥陀仏、 仏になりたまひてよりこのかたいまに十劫、 成仏の誓すでにもつて成就せり。 まさに知るべし、 一々の願*虚設すべからず。 ゆゑに善導いはく (礼讃)、 「△かの仏いま現に*世にましまして仏になりたまへり。 まさに知るべし、 本誓重願虚しからず、 衆生称念すればかならず往生を得」 と。 以上
加之一々ノ願ノ終ニ云フ↢「若シ不ハ↠爾ラ者不ト↟取ラ↢正覚ヲ↡」。而モ阿弥陀仏成リタマヒテヨリ↠仏ニ已来タ於↠今十劫、成仏之誓既ニ以テ成就セリ。当ニシ↠知ル、一々之願不↠可カラ↢虚設ス↡。故ニ善導云ク、「彼ノ仏今現ニ在シテ↠世ニ成リタマヘリ↠仏ニ。当ニシ↠知ル、本誓重願不↠虚シカラ、衆生称念スレバ必ズ得ト↢往生ヲ↡。」已上
二 ⅲ Ⅲ c 釈願文
イ 正釈
(一)釈十念
(Ⅰ)問
^◇問ひていはく、 ¬経¼ (大経・上) には 「△十念」 といふ、 ˆ善導のˇ 釈には 「△十声」 といふ。 念・声の義いかん。
問ヒテ曰ク、¬経ニハ¼云フ↢「十念ト」↡、釈ニハ云フ↢「十声ト」↡。念声之義如何ン。
二 ⅲ Ⅲ c イ (一)(Ⅱ)答【念声是一】
^◇答へていはく、 念・声は是一なり。 なにをもつてか知ることを得る。 ¬観経¼ の下品下生にのたまはく、 「▲声をして絶えざらしめて、 十念を具足して、 ª南無阿弥陀仏º と称せば、 仏の名を称するがゆゑに、 念々のうちにおいて八十億劫の生死の罪を除く」 と。 いまこの文によるに、 声はこれ念なり、 念はすなはちこれ声なり。 その意明らけし。
答ヘテ曰ク、念声ハ是一ナリ。何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。¬観経ノ¼下品下生ニ云ク、「令メテ↢声ヲシテ不ラ↟絶エ、具↢足シテ十念ヲ↡、称セバ↢南無阿弥陀仏ト↡、称スルガ↢仏ノ名ヲ↡故ニ、於テ↢念々ノ中ニ↡除クト↢八十億劫ノ生死之罪ヲ↡。」今依ルニ↢此ノ文ニ↡、*声ハ是念ナリ、念ハ則チ是声ナリ。其ノ意明ケシ矣。
^◇しかのみならず ¬*大集月蔵経¼ にのたまはく、 「▲大念は大仏1213を見、 小念は小仏を見る」 と。 ▼感師 (*懐感) の ¬釈¼ (*群疑論) にいはく、 「▲大念といふは大声に仏を念じ、 小念といふは小声に仏を念ずるなり」 と。 ゆゑに知りぬ、 念はすなはちこれ唱なりと。
加之¬大集月蔵経ニ¼云ク、「大念ハ見↢大仏ヲ↡、小念ハ見ルト↢小仏ヲ↡。」感師ノ¬釈ニ¼云1274ク、「大念トイフ者大声ニ念ジ↠仏ヲ、小念トイフ者*小声ニ念ズルナリト↠仏ヲ。」故ニ知リヌ、念ハ即チ是唱也ト。
二 ⅲ Ⅲ c イ (二)釈乃至
(Ⅰ)問
^◇問ひていはく、 ¬経¼ (大経・上) には 「△乃至」 といひ、 ˆ善導のˇ 釈には 「△下至」 といふ。 その意いかん。
問ヒテ曰ク、¬経ニハ¼云ヒ↢「乃至ト」↡、釈ニハ云フ↢「下至ト」↡。其ノ意如何ン。
二 ⅲ Ⅲ c イ (二)(Ⅱ)答【乃下合釈】
^◇答へていはく、 ▼乃至と下至とその意これ一なり。 ¬経¼ に 「乃至」 といふは、 多より少に向かふ言なり。 多といふは上一形を尽すなり。 少といふは下十声・一声等に至るなり。 釈に 「下至」 といふは、 下とは上に対する言なり。 下とは下十声・一声等に至るなり。 上とは上一形を尽すなり。
答ヘテ曰ク、乃至ト与↢下至↡*其ノ意是一ナリ。¬経ニ¼云フ↢「乃至ト」↡者、従リ↠多向フ↠少ニ之言也。▼多トイフ者上尽ス↢一形ヲ↡也。少トイフ者下至ル↢十声・一声等ニ↡也。釈ニ云フ↢「下至ト」↡者、下ト者対スル↠上ニ之言也。下ト者下至ル↢十声・一声等ニ↡也。上ト者上尽ス↢一形ヲ↡也。
^◇上下相対の文その例多しといへども、 *宿命通の願 (第五願) にのたまはく (大経・上)、 「▲たとひわれ仏を得たらんに、 国のうちの人天宿命を識らずして、 下百千億那由他諸劫の事を知らざるに至るといはば、 正覚を取らじ」 と。
上下相対之文其ノ例*雖モ↠多シト、宿命通ノ願ニ云ク、「設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、国ノ中ノ*人天不シテ↠識ラ↢宿命ヲ↡、下至ルトイハバ↠不ルニ↠知ラ↢百千億那由他諸劫ノ事ヲ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
^◇かくのごとく*五神通および光明・寿命等の願のなかに、 一々に 「▲下至」 の言を置く。 これすなはち多より少に至り、 下をもつて上に対する義なり。
▼如ク↠是クノ五神通及以光明・寿命等ノ願ノ中ニ、一々ニ置ク↢「下至」之言ヲ↡。是則チ従リ↠多至リ↠少ニ、以テ↠下ヲ対スル↠上ニ之義也。
^◇上の八種の願に例するに、 いまこの願の 「乃至」 はすなはちこれ下至なり。 このゆゑにいま善導の引釈するところ1214の 「下至」 の言、 その意相違せず。
例スルニ↢上ノ八種之願ニ↡、今此ノ願ノ「乃至」者即チ是下至也。是ノ故ニ今善導ノ所ノ↢引釈スル↡「下至」之言、其ノ意不↢相違セ↡。
二 ⅲ Ⅲ c ロ 因定願名
^◇ただし善導と諸師とその意不同なり。 ▼*諸師の釈には別して十念往生の願 (第十八願) といふ。 善導独り総じて念仏往生の願といへり。
但シ善導ト与↢諸師↡其ノ意不同ナリ。諸師之釈ニハ別シテ云フ↢十念往*生ノ願ト↡。善導独リ総ジテ云ヘリ↢念仏往*生ノ願ト↡。
^▼諸師の別して十念往生の願といふは、 その意すなはちあまねからず。 しかる所以は、 上一形を捨て、 下一念を捨つるゆゑなり。 善導の総じて念仏往生の願といふは、 その意すなはちあまねし。 しかる所以は、 上一形を取り、 下一念を取るゆゑなり。
諸師ノ別シテ*云フ↢十念往生ノ願ト↡者、其ノ意即チ不↠周カラ也。所↢以然ル↡者、上捨テ↢一形ヲ↡、下捨ツル↢一念ヲ↡之故也。善導ノ総ジテ言フ↢念仏往生ノ願ト↡者、其ノ意即チ周シ也。所↢以然ル↡者、上取リ↢一形ヲ↡、下取ル↢一念ヲ↡之故也。
二 ⅳ【三輩章】
Ⅰ 標章
【4】 ^▼三輩念仏往生の文。
1275三輩念仏往生*之文
二 ⅳ Ⅱ 引文
a 総標
^「▲仏、 阿難に告げたまはく、 ª十方世界の諸天・人民、 それ心を至しかの国に生ぜんと願ずることあるに、 おほよそ三輩あり。
「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、十方世界ノ諸天人民、其レ有ルニ↢至シ↠心ヲ願ズルコト↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、凡ソ有リ↢三輩↡。
二 ⅳ Ⅱ b 別説
イ 上輩
^▼その上輩は、 ▽家を捨て欲を棄てしかも沙門となりて、 菩提心を発して▽一向にもつぱら無量寿仏を念じ、 もろもろの功徳を修してかの国に生れんと願ふ。
其ノ上輩者、▼捨テ↠家ヲ棄テ↠欲ヲ而モ作リテ↢沙門ト↡、発シテ↢菩提心ヲ↡一向ニ専ラ念ジ↢無量寿仏ヲ↡、修シテ↢諸ノ功徳ヲ↡願フ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
^◆これらの衆生は、 寿終る時に臨みて、 無量寿仏、 もろもろの大衆とその人の前に現じて、 すなはちかの仏に随ひてその国に往生して、 すなはち七宝の華のなかにおいて自然に化生して不退転に住す。 智慧勇猛、 神通自在なり。
此等ノ衆生ハ臨ミテ↢寿終ル時ニ↡、無量寿仏与↢諸ノ大衆↡現ジテ↢其ノ人ノ前ニ↡、即チ随ヒテ↢彼ノ仏ニ↡往↢生シテ其ノ国ニ↡、便チ於テ↢七宝ノ花ノ中ニ↡自然ニ化生シテ住ス↢不退転ニ↡。智*慧勇猛、神通自在ナリ。
^◆このゆゑに阿難、 それ衆生ありて今世にお1215いて無量寿仏を見たてまつらんと欲はば、 無上菩提の心を発し、 功徳を修行しかの国に生ぜんと願ずべしº と。
是ノ故ニ阿難、其レ有リテ↢衆生↡欲ハバ↧於↢今世ニ↡見タテマツラムト↦無量寿仏ヲ↥、応シト↧発シ↢無上菩提之心ヲ↡、修↢行シ功徳ヲ↡願ズ↞生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
二 ⅳ Ⅱ b ロ 中輩
^▼仏、 阿難に語りたまはく、 ªその中輩は、 十方世界の諸天・人民、 それ心を至してかの国に生ぜんと願ずることあるに、 行じて沙門となることあたはずといへども、 大きに功徳を修し、
仏*語リタマハク↢阿難ニ↡、其ノ中輩者、十方世界ノ諸天人民、其レ有ルニ↢至シテ↠心ヲ願ズルコト↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、雖モ↠不ト↠能ハ↣行ジテ作ルコト↢沙門ト↡、大ニ修シ↢功徳ヲ↡、
^◆まさに無上菩提の心を発して、 ▽一向にもつぱら無量寿仏を念じ、 ◆多少善を修し、 斎戒を奉持し、 ▽塔像を起立し、 沙門に飯食せしめ、 繒を懸け、 灯を燃し、 華を散じ、 香を焼き、 これをもつて回向してかの国に生ぜんと願ずべし。
当ニシ↧発シテ↢無上菩提之心ヲ↡、一向ニ専ラ念ジ↢無量寿仏ヲ↡、多少修シ↠善ヲ、▼奉↢持シ斎戒ヲ↡、▼起↢立シ塔像ヲ↡、▼飯↢食セシメ沙門ニ↡、▼懸ケ↠繒ヲ然シ↠灯ヲ、▼散ジ↠華ヲ焼キ↠香ヲ、以テ↠此ヲ廻向シテ願ズ↞生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。
^◆その人終りに臨みて、 無量寿仏その身を化現して、 光明・相好つぶさに真仏のごとし。 もろもろの大衆とその人の前に現じたまふ。 すなはち化仏に随ひてその国に往生して、 不退転に住す。 功徳・智慧次いで上輩のもののごとしº と。
其ノ人臨ミテ↠終ニ、無量寿仏化↢現シテ其ノ身ヲ↡、光明相好具ニ如シ↢真仏ノ↡。与↢諸ノ大衆↡現ジタマフ↢其ノ人ノ前ニ↡。即チ随ヒテ↢化仏ニ↡往↢生シテ其ノ国ニ↡、住ス↢不退転ニ↡。功徳智*慧次イデ如シト↢上輩ノ者ノ↡也。
二 ⅳ Ⅱ b ハ 下輩
^▼仏、 阿難に告げたまはく、 ªその下輩は、 十方世界の諸天・人民、 それ心を至してかの国に生ぜんと欲することあるに、 たとひもろもろの功徳をなすことあたはずとも、
仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、其ノ下輩者、十方世界ノ諸天人民、其レ有ルニ↢至シテ↠心ヲ欲スルコト↟生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、1276▼仮使不トモ↠能ハ↠作スコト↢諸ノ功徳ヲ↡、
^◆まさに▽無上菩提の心を発して、 ▽一向に意をもつぱらにして、 乃至十念無量寿仏を念じて、 その国に生ぜんと願ずべし。 ◆もし深法を聞き歓喜信楽1216して、 疑惑を生ぜず、 乃至▽一念かの仏を念じ、 至誠心をもつてその国に生ぜんと願ず。
当ニシ↧発シテ↢無上菩提之心ヲ↡、一向ニ専ニシテ↠意ヲ、乃至十念念ジテ↢无量寿仏ヲ↡、願ズ↞生ゼムト↢其ノ国ニ↡。▼若シ聞キ↢深法ヲ↡▼歓喜信楽シテ不↠生ゼ↢疑惑ヲ↡、乃至一念念ジ↢於彼ノ仏ヲ↡、以テ↢至誠心ヲ↡願ズ↠生ゼムト↢其ノ国ニ↡。
^◆この人終りに臨みて、 *夢にかの仏を見て、 また往生することを得。 功徳・智慧次いで中輩のもののごとしº」 (大経・下) と。
此ノ人臨ミテ↠終ニ、夢ニ見テ↢彼ノ仏ヲ↡、亦得↢往生スルコトヲ↡。功徳智*慧次イデ如シト↢中輩ノ者ノ↡也。」
二 ⅳ Ⅲ 私釈
a 示三輩念仏
イ 総明
(一)問
^▽わたくしに問ひていはく、 上輩の文のなかに、 念仏のほかにまた△捨家棄欲等の余行あり。 中輩の文のなかに、 また△起立塔像等の余行あり。 下輩の文のなかに、 また△菩提心等の余行あり。 なんがゆゑぞただ念仏往生といふや。
私ニ問ヒテ曰ク、上輩ノ文ノ中ニ、念仏之外ニ亦有リ↢捨家棄欲等ノ余行↡。中輩ノ文ノ中ニ、亦有リ↢起立塔像等ノ余行↡。下輩ノ文ノ中ニ、亦有リ↢菩提心等ノ余行↡。何ガ故ゾ唯云フ↢念仏往生ト↡乎。
二 ⅳ Ⅲ a イ (二)答
^答へていはく、 ○善導和尚の ¬観念法門¼ にいはく、 「▲またこの ¬経¼ (大経) の下巻の初めにのたまはく、 ª仏 (釈尊)、 一切衆生の根性の不同を説きたまふに、 上・中・下あり。 その根性に随ひて、 仏、 みなもつぱら無量寿仏の名を念ぜよと勧めたまふ。 その人命終らんと欲する時、 仏 (阿弥陀仏)、 聖衆とみづから来りて迎接したまひて、 ことごとく往生を得しめたまふº」 と。
答ヘテ曰ク、善導和尚ノ▼¬観念法門ニ¼云ク、「又此ノ¬経ノ¼下巻ノ初ニ云ク、仏説キタマフニ↢一切衆生ノ▼根性ノ不同ヲ↡、有リ↢上中下↡。随ヒテ↢其ノ根性ニ↡、仏皆勧メタマフ↣専ラ念ゼヨト↢無量寿仏ノ名ヲ↡。其ノ人命欲スル↠終ラムト時、仏与↢聖衆↡自ラ来リテ迎接シタマヒテ、尽ク得シメタマフト↢往生ヲ↡。」
^◇この釈の意によるに、 三輩ともに念仏往生といふ。
依ルニ↢此ノ釈ノ意ニ↡、三輩共ニ云フ↢念仏往生ト↡也。
二 ⅳ Ⅲ a ロ 別具釈
(一)問
^◇問ひていはく、 この釈いまだ前の難を遮せず。 なんぞ余行を棄ててただ念仏といふや。
問ヒテ曰ク、此ノ釈未ダ↠遮セ↢前ノ難ヲ↡。何ゾ棄テテ↢余行ヲ↡唯云フ↢念仏ト↡乎。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)答
(Ⅰ)正示三義
(ⅰ)総標
^◇答へていはく、 これに三の意あり。 一には↓諸行を廃して念仏に帰せしめんがためにしかも諸行を説く。 二には↓念仏を助成せんがために1217しかも諸行を説く。 三には↓念仏・諸行の二門に約して、 おのおの三品を立てんがためにしかも諸行を説く。
答ヘテ曰ク、*此ニ有リ↢三ノ意↡。一ニハ為ニ↧癈シテ↢諸行ヲ↡帰セシメムガ↦於念仏ニ↥而モ説ク↢諸行ヲ↡也。二ニハ為ニ↣助↢成セムガ念仏ヲ↡而モ説ク↢諸行ヲ↡也。三ニハ約シテ↢念仏・諸行ノ二門ニ↡、各ノ為ニ↠立テムガ↢三品ヲ↡而モ説ク↢諸行ヲ↡也。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)別釈
(a)【廃立】
(イ)標
^▼一に、 ↑諸行を廃して念仏に帰せしめんがためにしかも諸行を説くといふは、
一ニ為ニ↧廃テ↢諸行ヲ↡帰セシメムガ↦於念仏ニ↥而モ説クトイフ↢諸行ヲ↡者、
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)釈
[一]引証述義
^▼善導の ¬観経疏¼ (散善義) のなかに、 「▲上よりこのかた定散両門の益を説くといへども、 仏の本願に望むるに、 意、 衆生をして↓一向にもつぱら弥陀仏の名を称せしむるにあり」 といふ釈の意に准じて、 しばらくこれを解せば、 ▼上輩のなかに菩提心等の余行を説くといへども、 上の本願 (第十八願) に望むるに、 意ただ衆生をしてもつぱら弥陀仏の名を称せしむるにあり。
准ジテ↭*云フ↫善導ノ¬観経疏ノ¼*中ニ、「上ヨリ来タ雖モ↠説クト↢定散両門之益ヲ↡、望ムルニ↢仏ノ本願ニ↡、意在リト↪衆1277生ヲシテ一向ニ専ラ称セシムルニ↩弥陀仏ノ名ヲ↨」之釈ノ意ニ↬、且ク解セバ↠之ヲ者、上輩之中ニ雖モ↠説クト↢菩提心等ノ余行ヲ↡、望ムルニ↢上ノ本願ニ↡、意唯在リ↣衆生ヲシテ専ラ称セシムルニ↢弥陀*仏ノ名ヲ↡。
^◇しかるに本願のなかにさらに余行なし。 三輩ともに上の本願によるがゆゑに、 「△一向専念無量寿仏」 (大経・下) といふ。
而ルニ本願ノ中ニ更ニ無シ↢余行↡。三*輩共ニ依ルガ↢上ノ本願ニ↡故ニ、云フ↢「一向専念無量寿仏ト」↡也。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]約一向言
^「▼↑一向」 は二向・三向等に対する言なり。
「一向」者対スル↢二向三向等ニ↡之言也。
^▼例するに*かの五竺 (印度) に三寺あるがごとし。 一は一向大乗寺、 この寺のなかには小乗を学することなし。 二は一向小乗寺、 この寺のなかには大乗を学することなし。 三は大小兼行寺、 この寺のなかには大小兼ね学す。 ゆゑに兼行寺といふ。 まさに知るべし、 大小の両寺には一向の言あり。 兼行の寺には一向の言なし。
例スルニ如シ↣彼ノ五竺ニ有ルガ↢*三寺↡。一者一向大乗寺、此ノ寺之中ニハ無シ↠学スルコト↢小乗ヲ↡。二者一向小乗寺、此ノ寺之中ニハ無シ↠学スルコト↢大乗ヲ↡。三者大小兼*行寺、此ノ寺之中ニハ大小兼ネ学ス。故ニ云フ↢兼*行寺ト↡。当ニシ↠知ル、大小ノ両寺ニハ有リ↢一向ノ言↡。兼行之寺ニハ無シ↢一向ノ言↡。
^▼いまこの ¬経¼ (大経・下1218) のなかの一向もまたしかなり。 もし念仏のほかにまた余行を加へば、 すなはち一向にあらず。 もし寺に准ぜば兼行といふべし。 すでに一向といふ、 余を兼ねざること明らけし。
今此ノ¬経ノ¼中ノ一向モ亦然ナリ。若シ念仏ノ外ニ亦加ヘバ↢余行ヲ↡、即チ非ズ↢一向ニ↡。若シ准ゼバ↠寺ニ者可シ↠云フ↢兼行ト↡。既ニ云フ↢一向ト↡、不ルコト↠兼ネ↠余ヲ明ケシ矣。
^◇すでに先に余行を説くといへども、 後に 「一向専念」 といふ。 あきらかに知りぬ、 諸行を廃してただ念仏を用ゐるがゆゑに一向といふ。 もししからずは一向の言もつとももつて*消しがたきか。
既ニ先ニ雖モ↠説クト↢余行ヲ↡、後ニ云フ↢一向専念ト↡。明ニ知リヌ、癈シテ↢諸行ヲ↡唯用ヰルガ↢念仏ヲ↡故ニ云フ↢一向ト↡。若シ不ハ↠*爾ラ者一向之言最モ以テ叵キ↠消シ歟。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)【助正】
(イ)標
^▼二に、 ↑念仏を助成せんがためにこの諸行を説くとは、 これにまた二の意あり。 一には↓*同類の善根をもつて念仏を助成す。 二には↓*異類の善根をもつて念仏を助成す。
二ニ為ニ↣助↢成セムガ念仏ヲ↡説クト↢此ノ諸行ヲ↡者、此ニ亦有リ↢二ノ意↡。一ニハ以テ↢同類ノ善根ヲ↡助↢成ス念仏ヲ↡。二ニハ以テ↢異類ノ善根ヲ↡助↢成ス念仏ヲ↡。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)釈
[一]明同類
^○初めに↑同類の助成とは、 善導和尚の ¬観経の疏¼ (散善義) のなかに、 △五種の助行を挙げて念仏一行を助成すこれなり。 つぶさに上の正雑二行のなかに説くがごとし。
初ニ同類ノ助成ト者、善導和尚ノ¬観経ノ疏ノ¼中ニ、挙ゲテ↢五種ノ助行ヲ↡助↢成ス念仏一行ヲ↡是也。具ニ如シ↢上ノ正雑二行之中ニ説クガ↡。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]明異類
^○次に↑異類の助成とは、
*次ニ異類ノ助成ト者、
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅰ]上輩
^先づ上輩につきて正助を論ぜば、 「△一向にもつぱら無量寿仏を念ず」 (大経・下) とはこれ正行なり、 またこれ*所助なり。 ▼「家を捨て欲を棄て沙門となりて、 菩提心を発す」 (大経・下) 等はこれ助行なり、 またこれ*能助なり。
先ヅ就キテ↢上輩ニ↡而論ゼバ↢正助ヲ↡者、「一向ニ専ラ念ズト↢無量寿仏ヲ↡」者是正行也、亦1278是所助也。「捨テ↠家ヲ棄テ↠欲ヲ而作リテ↢沙門ト↡、発ス↢菩提心ヲ」等者是助行也、亦是能助也。
^いはく△往生の業には念仏を本となす。 ゆゑに一向に念仏を修せんがために、 「家を捨て欲1219を棄て沙門となりて、 また菩提心を発す」 (大経・下) 等なり。 就中出家・発心等は、 しばらく*初出および*初発を指す。 念仏はこれ*長時不退の行、 むしろ念仏を妨礙すべけんや。
謂ク往生之業ニハ念仏ヲ為ス↠本ト。故ニ為ニ↣一向ニ修セムガ↢念仏ヲ↡、捨テ↠家ヲ棄テ↠欲ヲ而作リテ↢沙門ト↡、又発ス↢菩提心ヲ↡等也。就中出家発心等者、且ク指ス↢初出及以初発ヲ↡。念仏ハ是長時不退之行、寧ロ容ム↣妨↢ス念仏ヲ↡也。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]中輩
^中輩のなかに、 また△起立塔像・懸繒・燃灯・散華・焼香等の諸行あり。 これすなはち念仏の助成なり。 その旨 ¬往生要集¼ (中) に見えたり。 いはく助念方法のなかの▲方処供具等これなり。
中輩之中ニ、亦有リ↢起立塔像・懸繒・燃灯・散花・焼香等ノ諸行↡。是則チ念仏ノ助成也。其ノ旨見エタリ↢¬往生要集ニ¼↡。謂ク助念方法ノ中ノ方処供具等是也。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ]下輩
^下輩のなかに、 また△発心あり、 また念仏あり。 助正の義前に准じて知るべし。
下輩之中ニ、亦有リ↢発心↡、亦有リ↢念仏↡。助*正之義准ジテ↠前ニ可シ↠知ル。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)【傍正】
(イ)標
^▼三に、 ↑念仏・諸行に約して、 おのおの三品を立てんがためにしかも諸行を説くといふは、
三ニ約シテ↢念仏・諸行ニ↡、各ノ為ニ↠立テムガ↢三品ヲ↡而モ説クトイフハ↢諸行ヲ↡者、
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)釈
[一]念仏三品
^先づ念仏に約して三品を立つとは、 いはくこの三輩のなかに、 通じてみな 「△一向専念無量寿仏」 (大経・下) といふ。 これすなはち念仏門に約してその三品を立つ。 ゆゑに ¬往生要集¼ (下) の念仏証拠門にいはく、 「▲¬双巻経¼ (大経) の三輩の業、 浅深ありといへども、 しかも通じてみな ª一向専念無量寿仏º といふ」 と。 感師 (懐感) これに同じ。
先ヅ約シテ↢念仏ニ↡立ツト↢三品ヲ↡者、謂ク此ノ三輩ノ中ニ、通ジテ皆云フ↢「一向専念無量寿仏ト」↡。是則チ約シテ↢念仏門ニ↡立ツル↢其ノ三品ヲ↡也。故ニ¬往生要集ノ¼念仏証拠門ニ云ク、「¬双巻経ノ¼三輩之業、雖モ↠有リト↢浅深↡、然モ通ジテ皆云フト↢一向専念無量寿仏ト↡。」 感師同ジ↠*之ニ
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)(ロ)[二]諸行三品
^次に諸行門に約して三品を立つとは、 ▼いはくこの三輩のなかに通じてみな菩提心等の諸行あり。 これすなはち諸行に約してその三品を立つ。 ゆゑに ¬往生1220要集¼ (下) の諸行往生門にいはく、 「▲¬双巻経¼ (大経) の三輩またこれを出でず」 と。 以上
次ニ約シテ↢諸行門ニ↡立ツト↢三品ヲ↡者、謂ク此ノ三輩ノ中ニ通ジテ皆有リ↢菩提心等ノ諸行↡。是則チ約シテ↢諸行ニ↡立ツル↢其ノ三品ヲ↡也。故ニ¬往生要集ノ¼諸行往生門ニ云ク、「¬双巻経ノ¼三輩亦不ト↠出デ↠此ヲ。」 已上
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)結示
^おほよそかくのごときの三義不同ありといへども、 ともにこれ一向念仏のための所以なり。
凡ソ如キノ↠此クノ三義雖モ↠有リト↢不同↡、共ニ是所↣以為ノ↢一向念仏ノ↡也。
^初めの義はすなはちこれ廃立のために説く。 いはく▼諸行は廃せんがために説く、 念仏は立せんがために説く。 次の義はすなはちこれ助正のために説く。 いはく念仏の正業を助けんがために諸行の助業を説く。 後の義はすなはちこれ傍正のために説く。 いはく念仏・諸行の二門を説くといへども、 念仏をもつて正となし、 諸行をもつて傍となす。
初ノ義ハ即チ是為ニ↢癈立ノ↡而説ク。謂ク諸1279行ハ為ニ↠癈セムガ而説ク、念仏ハ為ニ↠立テムガ而説ク。次ノ義ハ即チ是為ニ↢助正ノ↡而説ク。謂ク為ニ↠助ケムガ↢念仏之正業ヲ↡而説ク↢諸行之助業ヲ↡。後ノ義ハ即チ是為ニ↢傍正ノ↡而説ク。謂ク雖モ↠説クト↢念仏・諸行ノ二門ヲ↡、以テ↢念仏ヲ↡而為シ↠正ト、以テ↢諸行ヲ↡而為ス↠傍ト。
^ゆゑに三輩通じてみな念仏といふ。
故ニ云フ↢三輩通ジテ皆念仏ト↡也。
二 ⅳ Ⅲ a ロ (二)(Ⅱ)決判
^▼ただしこれらの三義は*殿最知りがたし。 請ふ、 もろもろの学者、 取捨心にあり。 いまもし善導によらば、 初め (廃立) をもつて正となすのみ。
但シ▼此等ノ三義ハ殿最難シ↠知リ。請フ、諸ノ学者、取捨在リ↠心ニ。▼今若シ依ラバ↢善導ニ↡、以テ↠初ヲ為ス↠正ト耳。
二 ⅳ Ⅲ b 示二経旨同【輩品開合】
イ 問
^▼問ひていはく、 三輩の業みな念仏といふ。 その義しかるべし。 ただし ¬観経¼ の九品と ¬寿経¼ (大経) の三輩と、 本これ*開合の異なり。 もししからば、 なんぞ ¬寿経¼ の三輩のなかにはみな念仏といひ、 ¬観経¼ の九品に至りて上・中の二品には念仏を説かず、 下品に至りてはじめて念仏を説1221くや。
問ヒテ曰ク、三輩之業皆云フ↢念仏ト↡。其ノ義可シ↠然ル。但シ¬観経ノ¼九品ト与↢¬寿経ノ¼三輩↡、本是開合ノ異也。若シ爾ラバ者、何ゾ¬寿経ノ¼三輩之中ニハ皆云ヒ↢念仏ト↡、至リテ↢¬観経ノ¼九品ニ↡上中ノ二品ニハ不↠説カ↢念仏ヲ↡、至リテ↢下品ニ↡始テ説ク↢念仏ヲ↡也。
二 ⅳ Ⅲ b ロ 答
(一)標
^答へていはく、 これに二の義あり。
答ヘテ曰ク、此ニ有リ↢二ノ義↡。
二 ⅳ Ⅲ b ロ (二)釈
(Ⅰ)縦答
^一には*問端にいふがごとく、 ¬双巻¼ (大経) の三輩と ¬観経¼ の九品とは開合の異ならば、 これをもつて知るべし、 九品のなかにみな念仏あるべし。 いかんが知ることを得る。 三輩のなかにみな念仏あり。 九品のなかなんぞ念仏なからんや。
一ニハ如ク↢*問端ニ云フガ↡、¬双巻ノ¼三輩ト¬観経ノ¼九品トハ開合ノ異ナラバ者、以テ↠此ヲ応シ↠知ル、九品之中ニ皆可シ↠有ル↢念仏↡。云何ガ得ル↠知ルコトヲ。三輩之中ニ皆有リ↢念仏↡。九品之中盍ゾ無カラム↢念仏↡乎。
^ゆゑに ¬往生要集¼ (下) にいはく、 「▲問ふ。 念仏の行、 九品のなかにおいてこれいづれの品の摂ぞや。 ◆答ふ。 ▽もし説のごとく行ぜば、 理上上に当れり。 かくのごとく▽その勝劣に随ひて九品を分つべし。 しかるに ¬経¼ (観経) に説くところの九品の行業はこれ一端を示す。 理実に無量なり」 と。 以上 ゆゑに知りぬ、 念仏また九品に通ずべしといふことを。
故ニ¬往生要集ニ¼云ク、「問フ。念仏之行於テ↢九品ノ中ニ↡是何レノ品ノ摂ゾヤ。答フ。▼若シ如ク↠説ノ行ゼバ、理当レリ↢上々ニ↡。如ク↠是クノ随ヒテ↢其ノ勝劣ニ↡応シ↠分ツ↢九品ヲ↡。然ルニ¬経ニ¼所ノ↠説ク九品ノ行業ハ是示ス↢一端ヲ↡。理実ニ無量ナリト。」 已*上 故ニ知リヌ、念仏亦可シトイフコトヲ↠通ズ↢九品ニ↡。
二 ⅳ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)奪答
^二には ¬観経¼ の意、 初め広く定散の行を説きて、 あまねく*衆機に逗ず。 後には定散二善を廃して、 念仏一行に帰す。 いはゆる 「▲汝好持是語」 等の文これなり。 その義▽下につぶさに述ぶるがごとし。 ゆゑに知りぬ、 九品の行はただ念仏にありといふことを。
二ニハ¬観経¼之意初メ広ク説キテ↢定散之行ヲ↡、普ク逗ズ↢衆機ニ↡。後ニハ癈シテ↢定散二善ヲ↡、帰ス↢念仏一行ニ↡。所謂ル「汝好持是語」等之文是也。其ノ義如シ↢下ニ具1280ニ述ブルガ↡。故ニ知リヌ、九品之行ハ唯在リトイフコトヲ↢念仏ニ↡矣。
二 ⅴ【利益章】
Ⅰ 標章
【5】 ^○念仏利益の文。
念仏利益之文
二 ⅴ Ⅱ 引文
a 大経
^1222▼¬無量寿経¼ の下にのたまはく、 「▲仏、 弥勒に語りたまはく、 ªそれかの仏の名号を聞くことを得ることありて、 歓喜踊躍し、 乃至↓一念せん。 まさに知るべし、 この人は↓大利を得となす。 すなはちこれ▽↓無上の功徳を具足すº」 と。
¬無量寿経ノ¼下ニ云ク、「▼仏語リタマハク↢弥勒ニ↡、其レ有リテ↠得ルコト↠聞クコトヲ↢▼彼ノ仏ノ名号ヲ↡、▼歓喜踊躍シ、▼乃至一念セム。当ニシ↠知ル、此ノ人ハ▼為ス↠得ト↢▼大利ヲ↡。則チ是具↢足スト▼無上ノ功徳ヲ↡。」
二 ⅴ Ⅱ b 礼讃
^◇善導の ¬礼讃¼ にいはく、
善導ノ▼¬礼讃ニ¼云ク、
^「▲それかの弥陀仏の名号を聞くことを得ることありて、
歓喜して一念を至すもの、 みなまさにかしこに生ずることを得べし」 と。
「其レ有リテ↠得ルコト↠聞クコトヲ↢彼ノ | 弥陀仏ノ名号ヲ↡ |
歓喜シテ至スモノ↢▼一念ヲ↡ | ▼皆当ニシト↠得↠生ズルコトヲ↠彼ニ」 |
二 ⅴ Ⅲ 私釈
a 独讃所以
イ 問
^わたくしに問ひていはく、 ▼上の三輩の文に准ずるに、 念仏のほかに菩提心等の功徳を挙ぐ。 なんぞかれらの功徳を歎めずして、 ただ独り念仏の功徳を讃むるや。
私ニ問ヒテ曰ク、准ズルニ↢上ノ三輩ノ文ニ↡、念仏之外ニ挙グ↢菩提心*等ノ功徳ヲ↡。何ゾ不シテ↠歎メ↢彼等ノ功徳ヲ↡、唯独リ讃ムル↢念仏ノ功徳ヲ↡乎。
二 ⅴ Ⅲ a ロ 答
^答へていはく、 聖意測りがたし。 さだめて深き意あらんか。 しばらく善導の一意によりてしかもこれをいはば、 原それ仏意はまさしくただちにただ念仏の行を説かんと欲すといへども、 機に随ひて一往菩提心等の諸行を説きて、 三輩の浅深不同を分別す。
答ヘテ曰ク、聖意難シ↠測リ。定メテ有ラムカ↢深キ意↡。且ク依リテ↢善導ノ一意ニ↡而モ謂ハバ↠之ヲ者、原夫レ仏意ハ正シク直ニ雖モ↠欲スト↠説カムト↢唯シ念仏之*行ヲ↡、随ヒテ↠機ニ一往説キテ↢菩提心等ノ諸行ヲ↡、分↢別ス三輩ノ浅深不同ヲ↡。
^しかるをいま諸行においてはすでに捨てて歎めたまはず。 置きて論ずべからざるものなり。 ただ念仏の一行につきてすでに選びて讃歎す。 思ひて分別すべきものなり。
然ルヲ今於テ↢諸行ニ↡者既ニ捨テテ而不↠歎メタマハ。置キテ而不ル↠可カラ↠論ズ者也。唯就キテ↢念仏ノ一行ニ↡既ニ選ビテ而讃歎ス。思ヒテ而容キ↢分別ス↡者也。
二 ⅴ Ⅲ b 明念仏三輩
イ 標列
^もし念仏に約して三輩を分別せば、 これに二の意あり。 一には観念の↓浅深に随ひて1223これを分別す。 二には念仏の↓多少をもつてこれを分別す。
▼若シ約シテ↢念仏ニ↡分↢別セバ三輩ヲ↡、此ニ有リ↢二ノ意↡。一ニハ随ヒテ↢観念ノ浅深ニ↡而分↢別ス之ヲ↡。二ニハ以テ↢念仏ノ多少ヲ↡而分↢別ス之ヲ↡。
二 ⅴ Ⅲ b ロ 随釈
(一)約観念浅深
^↑浅深は上に引くところのごとし。 「△もし説のごとく行ぜば、 理上上に当れり」 (往生要集・下) と、 これなり。
▼浅深者如シ↢上ニ所ノ↟*引ク。「若シ如ク↠説ノ行ゼバ、理当レリト↢上上ニ↡」是也。
二 ⅴ Ⅲ b ロ (二)約口称多少
^次に↑多少は、 下輩の文のなかにすでに十念乃至一念の数あり。 上・中の両輩はこれに准じて随ひて増すべし。 ¬観念法門¼ にいはく、 「▲日別に念仏一万遍、 またすべからく時によりて浄土の荘厳を礼讃すべし。 はなはだ精進すべし。 あるいは三万・六万・十万を得るものは、 みなこれ上品上生の人なり」 と。
▼次ニ多少者、下輩ノ文ノ中ニ既ニ有リ↢十念乃至一念ノ数↡。上中1281ノ両輩ハ准ジテ↠此ニ随ヒテ増スベシ。¬観念法門ニ¼云ク、「▼日別ニ念*仏一万*遍、亦須クシ↣依リテ↠時ニ礼↢讃ス浄土ノ荘*厳ヲ↡。太ダ須シ↢精進ス↡。或イハ得ル↢三万・六万・十万ヲ↡者ハ、皆是上品上生ノ人ナリト。」
^まさに知るべし、 三万以上はこれ上品上生の業、 三万以去は上品以下の業なり。 すでに念数の多少に随ひて*品位を分別することこれ明らけし。
▼当ニシ↠知ル、三万已上ハ是上品上生ノ業、三万已*去ハ上品已下ノ業ナリ。既ニ随ヒテ↢念数ノ多少ニ↡分↢別スルコト品位ヲ↡是明ケシ矣。
二 ⅴ Ⅲ c 就文示
イ 釈経文
(一)一念
^いまこの 「↑一念」 といふは、 これ上の念仏の願成就 (第十八願成就文) のなかにいふところの△一念と下輩のなかに明かすところの△一念とを指す。 願成就の文のなかに一念といふといへども、 いまだ功徳の大利を説かず。 また下輩の文のなかに一念といふといへども、 また功徳の大利を説かず。 この ˆ流通分のˇ 一念に至りて、 説きて大利となし、 歎めて無上となす。 まさに知るべし、 これ上の一念を指す。
今此ノ言フ↢「一念ト」↡者、▼是指ス↣上ノ念仏ノ願成就之中ニ所ノ↠言フ一念ト与ヲ↢下輩之中ニ所ノ↠明ス一念↡也。願成就ノ文ノ中ニ雖モ↠云フト↢一念ト↡、*未ダ↠説カ↢功徳ノ大利ヲ↡。又下輩ノ文ノ中ニ雖モ↠云フト↢一念ト↡、亦不↠説カ↢功徳ノ大利ヲ↡。至リテ↢此ノ一念ニ↡、説キテ為シ↢大利ト↡、歎メテ為ス↢無上ト↡。当ニシ↠知ル、是指ス↢上ノ一念ヲ↡也。
二 ⅴ Ⅲ c イ (二)大利【大利無上】
^▼この 「↑大利」 とはこれ小利に対する言なり。 しかればすなはち菩提心等の諸行1224をもつて小利となし、 乃至一念をもつて大利となす。
此ノ大利ト者是対スル↢小利ニ↡之言也。然レバ則チ以テ↢菩提心等ノ諸行ヲ↡而為シ↢小利ト↡、以テ↢乃至一念ヲ↡而為ル↢大利ト↡也。
二 ⅴ Ⅲ c イ (三)無上
^▼また 「↑無上の功徳」 とはこれ有上に対する言なり。 余行をもつて有上となし、 念仏をもつて無上となす。
又「無上ノ功徳ト」者是対スル↢有上ニ↡之言也。以テ↢余行ヲ↡而為シ↢有上ト↡、以テ↢念仏ヲ↡而為ル↢無上ト↡也。
^○すでに一念をもつて一無上となす。 まさに知るべし、 十念をもつて十無上となし、 また百念をもつて百無上となし、 また千念をもつて千無上となす。 かくのごとく*展転して少より多に至る。 念仏恒沙なれば、 無上の功徳また恒沙なるべし。 かくのごとく知るべし。
既ニ以テ↢一念ヲ↡為ス↢一無上ト↡。当ニシ↠*知ル、以テ↢十念ヲ↡為シ↢十無上ト↡、又以テ↢百念ヲ↡為シ↢百無上ト↡、又以テ↢千念ヲ↡為ス↢千無上ト↡。如ク↠是クノ展転シテ従リ↠少至ル↠多ニ。念仏恒沙ナレバ無上ノ功徳復応シ↢恒沙ナル↡。如ク↠是クノ応シ↠知ル。
二 ⅴ Ⅲ c ロ 結勧
^▼しかればもろもろの往生を願求せん人、 なんぞ無上大利の念仏を廃して、 あながちに有上小利の余行を修せんや。
然レバ*者諸ノ願↢求セム往生ヲ↡之人、何ゾ癈シテ↢無上大利ノ念仏ヲ↡、強チニ修セム↢有上小利ノ余行ヲ↡乎。
二 ⅵ 特留念仏章【特留章】
Ⅰ 標章
【6】 ^○*末法万年の後に余行ことごとく滅し、 特に念仏を留めたまふ文。
▼末法万年ノ後ニ余行悉ク滅シ、特ニ留メタマフ↢念仏ヲ↡*之文
二 ⅵ Ⅱ 引文
^▼¬無量寿経¼ の下巻にのたまはく、 「▲当来の世に▽経道滅尽せんに、 ▽われ慈悲をもつて哀愍して、 ↓特にこの経を留めて▽止住すること百歳ならしめん。 それ衆生ありてこの経に値ふもの、 意の所願に随ひてみな得度すべし」 と。
¬無1282量寿経ノ¼下巻ニ云ク、「▼当来之世ニ▼経道滅尽セムニ、▼我以テ↢慈悲ヲ↡哀愍シテ、▼特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡▼止住スル百歳ナラシメム。▼其レ有リテ↢衆生↡▼値ハム↢*此ノ経ニ↡者、▼随ヒテ↢意ノ所願ニ↡皆可シト↢得度ス↡。」
二 ⅵ Ⅲ 私釈
a 釈特留念仏義
イ 特留文意
(一)問
^わたくしに問ひていはく、 ¬経¼ (大経・下) にただ 「↑特留此経止住百歳」 といひて、 まつたくいまだ 「特留念仏止住百歳」 といはず。 しかるにいま1225なんぞ 「特留念仏」 といふや。
私ニ問ヒテ曰ク、¬経ニ¼唯云ヒテ↢「特留此経止住百歳ト」↡、*全ク*未ダ↠云ハ↢「特留念仏止住百歳ト」↡。然ルニ今何ゾ云フ↢「特留念*仏ト」哉。
二 ⅵ Ⅲ a イ (二)答
(Ⅰ)直釈
^答へていはく、 この経の*詮ずるところまつたく念仏にあり。 その旨前に見えたり。 再び出すにあたはず。 善導・懐感・恵心 (源信) 等の意またかくのごとし。 しかればすなはち▼この経の 「止住」 は、 すなはち念仏の止住なり。
答ヘテ曰ク、▼此ノ経ノ所↠詮ズル全ク在リ↢念仏ニ↡。其ノ旨見ヘタリ↠前ニ。不↠能ハ↢再ビ出スニ↡。善導・懐感・*恵心等ノ意亦復如シ↠是クノ。然レバ則チ▼此ノ経ノ「止住ト」者、即チ念仏ノ止住也。
二 ⅵ Ⅲ a イ (二)(Ⅱ)挙由
^しかる所以は、 この経に菩提心の言ありといへども、 いまだ菩提心の*行相を説かず。 また持戒の言ありといへども、 いまだ持戒の行相を説かず。 しかるに菩提心の行相を説くことは広く ¬*菩提心経¼ 等にあり。 かの経先に滅しなば、 菩提心の行なにによりてかこれを修せん。 また持戒の行相を説くことは広く*大小の戒律にあり。 かの戒律先に滅しなば、 持戒の行なにによりてかこれを修せん。 自余の諸行これに准じて知るべし。
所↢以然ル↡者、此ノ経ニ雖モ↠有リト↢菩提心之言↡、未ダ↠説カ↢菩提心之行相ヲ↡。又雖モ↠有リト↢持戒之言↡、未ダ↠説カ↢持戒之行相ヲ↡。▼而ルニ説クコト↢菩提心ノ行相ヲ↡*者広ク在リ↢¬菩提心経¼等ニ↡。彼ノ経先ニ滅シナバ、菩提心之行何ニ因リテカ修セム↠之ヲ。▼又説クコト↢持戒ノ行相ヲ↡者広ク在リ↢大小ノ戒律ニ↡。彼ノ戒律先ニ滅シナバ、持戒之行何ニ因リテカ修セム↠之ヲ。自余ノ諸行准ジテ↠之ニ応シ↠知ル。
二 ⅵ Ⅲ a イ (二)(Ⅲ)引証
^○ゆゑに善導和尚の ¬往生礼讃¼ にこの文を釈していはく、
「▲万年に三宝滅しなば、 この ¬経¼ (大経) 住すること百年あらん。 その時に聞きて一念せん、 みなまさにかしこに生ずることを得べし」 と。
故ニ善導和尚ノ¬往生礼讃ニ¼釈シテ↢此ノ文ヲ↡云ク、「万年ニ三宝滅シナバ、此ノ¬経¼住スルコト百年アラム。▼爾ノ時ニ聞キテ一念セム、▼皆当ニシト↠得↠生ズルコトヲ↠彼ニ。」
二 ⅵ Ⅲ a ロ 教行住滅
(一)標列
^▼またこの文を釈するに略して四の意あり。 一には↓*聖道・浄土二教の住滅の前後、 二には↓十方・西方二教の住滅の前後、 三には↓兜率・西方二教の住滅1226の前後、 四には↓念仏・諸行二行の住滅の前後なり。
又▼釈スルニ↢此ノ文ヲ↡略シテ有リ↢四ノ意↡。一ニ者聖道・浄土二教ノ住滅ノ前後、二ニ者十方・西方二教ノ住滅ノ前後、三ニ者兜率・西方二教ノ住滅ノ前後、四ニ者念仏・諸行二行ノ住滅ノ前後也。
二 ⅵ Ⅲ a ロ (二)随釈
(Ⅰ)聖道浄土相対
^▼一に▼↑聖道・浄土二教の住滅の前後といふは、 いはく聖道門の諸経は先に滅す、 ゆゑに 「△経道滅尽」 といふ。 浄土門のこの経は特り留まる、 ゆゑに 「△止住百歳」 といふ。 まさに知るべし、 聖道は機縁浅薄にして、 浄土は機縁深厚なりといふことを。
▼一ニ聖*道・浄土二教ノ住滅ノ前後トイフ者、謂ク聖道門ノ諸経ハ先ニ滅ス、故ニ云1283フ↢「経道滅尽ト」↡。浄土門ノ此ノ経ハ特リ留マル、故ニ云フ↢「止住百歳ト」↡也。当ニシ↠知ル、聖道ハ機縁浅薄ニシテ、浄土ハ機縁深厚也トイフコトヲ。
二 ⅵ Ⅲ a ロ (二)(Ⅱ)十方西方相対
^▼二に↑十方・西方二教の住滅の前後といふは、 いはく*十方浄土往生の諸教先に滅す、 ゆゑに 「△経道滅尽」 といふ。 西方浄土往生はこの経特り留まる、 ゆゑに 「△止住百歳」 といふ。 まさに知るべし、 十方浄土は機縁浅薄にして、 西方浄土は機縁深厚なり。
▼二ニ十方・西方二教ノ住滅ノ前後トイフ者、謂ク十方浄土ノ往生ハ諸教先ニ滅ス、故ニ云フ↢「経道滅尽ト」↡。西方浄土往生ハ此ノ経特リ留マル、故ニ云フ↢「止住百歳ト」↡也。当ニシ↠知ル、十方浄土ハ機縁浅薄ニシテ、西方浄土ハ機縁深厚也。
二 ⅵ Ⅲ a ロ (二)(Ⅲ)兜率西方相対
^▼三に↑兜率・西方二教の住滅の前後といふは、 いはく ¬*上生¼・¬*心地¼ 等の上生兜率の諸教は先に滅す、 ゆゑに 「△経道滅尽」 といふ。 往生西方のこの経特り留まる、 ゆゑに 「△止住百歳」 といふ。 まさに知るべし、 兜率は近しといへども縁浅く、 極楽は遠しといへども縁深し。
▼三ニ兜率・西方二教ノ住滅ノ前後トイフ者、謂ク¬上生¼・¬心地¼等ノ上生兜率ノ諸教ハ先ニ滅ス、故ニ云フ↢「経道滅尽ト」↡。往生西方ノ此ノ経特リ留マル、故ニ云フ↢「止住百歳ト」↡也。当ニシ↠知ル、兜率ハ雖モ↠近シト縁浅ク、極楽ハ雖モ↠遠シト縁深シ也。
二 ⅵ Ⅲ a ロ (二)(Ⅳ)念仏諸行相対
^▼四に↑念仏・諸行二行の住滅の前後といふは、 諸行往生の諸教は先に滅す、 ゆゑに 「△経道滅尽」 といふ。 念仏往生はこの経特り留まる、 ゆゑに 「△止住百歳」 といふ。 まさに知るべし、 諸行往生は機縁もつとも浅く、 念仏往生は機縁はなはだ深し。
▼四ニ念仏・諸行二行ノ住滅ノ前後トイフ*者、諸行往生ノ諸教ハ先ニ滅ス、故ニ云フ↢「経道滅尽ト」↡。念仏往生ハ此ノ経特リ留マル、故ニ云フ↢「止住百歳ト」↡也。当ニシ↠知ル、諸行往生ハ機縁最モ浅ク、念仏往生ハ機縁甚ダ深シ也。
^◇しかのみならず、 諸行往生は縁1227少なく、 念仏往生は縁多し。 また諸行往生は近く末法万年の時を局る。 念仏往生は遠く法滅百歳の代に霑ふ。
加之、諸行往生ハ縁少ク、念仏往生ハ縁多シ。又諸行往生ハ近ク局ル↢末法万年之時ヲ↡。念仏往生ハ遠ク霑フ↢法滅百歳之代ニ↡也。
二 ⅵ Ⅲ a ハ 明釈尊悲懐
(一)問
^▽問ひていはく、 すでに 「△われ慈悲をもつて哀愍して、 特にこの経を留めて止住すること百歳ならん」 (大経・下) といふ。 もししからば釈尊、 慈悲をもつてしかも経教を留めたまはんに、 いづれの経いづれの教か、 しかも留まらざらんや。 しかるをなんぞ余経を留めずして、 ただこの経を留めたまふや。
問ヒテ曰ク、既ニ云フ↧「我以テ↢慈悲ヲ↡哀愍シテ、特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡止住スルコト百歳ナラムト」↥。若シ爾ラバ者釈尊以テ↢慈悲ヲ↡而モ留メタマハムニ↢経教ヲ↡、*何レノ経何レノ教カ、而モ不ラム↠留マラ也。而ルヲ何ゾ不シテ↠留メ↢余経ヲ↡、唯留メタマフ↢此ノ経ヲ↡乎。
二 ⅵ Ⅲ a ハ (二)答
(Ⅰ)総
^◇答へていはく、 たとひいづれの経を留むといへども、 別して一経を指さば、 またこの難を避らじ。 ただ特にこの経を留むる、 その深き意あるか。
答ヘテ曰ク、縦ヒ雖モ↠留ムト↢何レノ経ヲ↡、別シテ指サバ↢一経ヲ↡者、亦不↠避ラ↢此ノ難ヲ↡。但1284シ特ニ留ムル↢此ノ経ヲ↡、有ル↢其ノ深キ意↡歟。
二 ⅵ Ⅲ a ハ (二)(Ⅱ)別
(ⅰ)正述
^◇もし善導和尚の意によらば、 この経のなかにすでに弥陀如来の▼念仏往生の本願 (第十八願) を説けり。 釈迦、 慈悲をもつて念仏を留めんがために、 殊にこの経を留めたまふ。 余経のなかにはいまだ弥陀如来の念仏往生の本願を説かず。 ゆゑに釈尊、 慈悲をもつてこれを留めたまはず。
若シ依ラバ↢善導和尚ノ意ニ↡者、此ノ経之中ニ已ニ説ケリ↢弥陀如来ノ念仏往生ノ本願ヲ↡。釈迦慈悲ヲモテ為ニ↠留メムガ↢念仏ヲ↡、殊ニ留メタマフ↢此ノ経ヲ↡。余経之中ニハ未ダ↠説カ↢弥陀如来ノ念仏往生ノ本願ヲ↡。故ニ釈尊慈悲ヲ以テ*而不↠留メタマハ↠之ヲ也。
二 ⅵ Ⅲ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)通伏疑
^◇おほよそ四十八願みな本願なりといへども、 殊に念仏をもつて往生の*規となす。 ゆゑに善導釈していはく (*法事讃・上)、
凡ソ四十八願皆雖モ↢本願ナリト↡、殊ニ以テ↢念仏ヲ↡為ス↢往生ノ規ト↡。故ニ▼善導釈シテ云ク、
^「▲弘誓、 門多くして四十八なれども、 ひとへに念仏を標してもつとも親1228しとなす。
人よく仏 (阿弥陀仏) を念ずれば、 仏還りて念じたまふ。 専心に仏を想へば、 仏、 人を知りたまふ」 と。 以上
「弘誓多クシテ↠門四十八ナレドモ | 偏ニ標シテ↢念仏ヲ↡最モ為ス↠親シト |
人能ク念ズレバ↠仏ヲ仏還リテ念ジタマフ | 専心ニ想ヘバ↠仏ヲ仏知リタマフト↠人ヲ」 已上 |
^◇ゆゑに知りぬ、 四十八願のなかに、 すでに念仏往生の願 (第十八願) をもつて▼本願中の王となすといふことを。
故ニ知リヌ、四十八願之中ニ、既ニ以テ↢念仏往生之願ヲ↡而為ストイフコトヲ↢本願中之王ト↡也。
二 ⅵ Ⅲ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅲ)結示
(a)正結
^◇ここをもつて釈迦の慈悲、 特にこの経をもつて止住すること百歳するなり。
是ヲ以テ釈*迦ノ慈悲、特ニ以テ↢此ノ経ヲ↡止住スルコト百歳スル也。
二 ⅵ Ⅲ a ハ (二)(Ⅱ)(ⅲ)(b)引例
^▼例するに、 かの ¬観無量寿経¼ のなかに、 定散の行を付属せずして、 ▽ただ孤り念仏の行を付属したまふがごとし。 これすなはちかの仏願に順ずるがゆゑに、 念仏一行を付属す。
▼例スルニ如シ↧彼ノ¬*観無量寿経ノ¼中ニ、不シテ↣付↢属セ定散之行ヲ↡、唯*孤リ付↦属シタマフガ念仏之行ヲ↥。是即チ順ズルガ↢彼ノ仏願ニ↡之故ニ、付↢属スル念仏一行ヲ↡也。
二 ⅵ Ⅲ b 益布三時
^◇問ひていはく、 百歳のあひだ念仏を留むべきこと、 その理しかるべし。 この念仏の行は、 ただ*かの時機に被らしむとやなさん、 はた*正像末の機に通ずとやなさん。
問ヒテ曰ク、百歳之間可キコト↠留メム↢念仏ヲ↡、其ノ理可シ↠然ル。此ノ念仏ノ行ハ、唯為サム↠被ラシムトヤ↢彼ノ時機ニ↡、将為サム↠通ズトヤ↢於正像*末之機ニ↡也。
^◇答へていはく、 広く正像末法に通ずべし。 後を挙げて今を勧む。 その義知るべし。
答ヘテ曰ク、▼広ク可シ↠通ズ↢於正像末法ニ↡。挙ゲテ↠後ヲ勧ム↠今ヲ。其ノ義応シ↠知ル。
二 ⅶ ▽光明摂取章【摂取章】
Ⅰ 標章
【7】 ^○弥陀の光明余行のものを照らさず、 ただ念仏の行者を*摂取する文。
弥陀ノ光明不↠照サ↢余行ノ者ヲ↡、唯摂↢取スル念仏ノ行者ヲ↡*之文
二 ⅶ Ⅱ 引文
a 観経
^◇¬観無量寿経¼ にのたまはく、 「▲無量寿仏に八万四千の相あり。 一々の相に八1229万四千の随形好あり。 一々の好に八万四千の光明あり。 一々の光明あまねく十方世界の念仏の衆生を照らし、 摂取して捨てたまはず」 と。
▼¬観無量寿経ニ¼云ク、「▼無量寿仏ニ有リ↢八万四千ノ相↡。▼一々ノ*相ニ有リ↢八万四千ノ随形好↡。▼一々ノ*好ニ有リ↢八万四千ノ光明↡。▼一々ノ光明遍ク照シ↢十方世界ノ▼念仏ノ衆1285生ヲ↡、摂取シテ不ト↠捨テタマハ。」
二 ⅶ Ⅱ b 定善義
イ 分文釈義
^同経の ¬疏¼ (定善義) にいはく、 「▲ª無量寿仏º より下 ª摂取不捨º に至るまでよりこのかたは、 まさしく身の別相を観ずるに、 光有縁を益することを明かす。 すなはちその五あり。 ◆一には相の多少を明かし、 ◆二には好の多少を明かし、 ◆三には光の多少を明かし、 ◆四には光の照らす遠近を明かし、 ◆五には光の及ぶところの処、 ひとへに摂益を蒙ることを明かす。
▼同ジキ経ノ¬疏ニ¼云ク、「▼従リ↢無量寿仏↡下至ルマデヨリ↢摂取不捨ニ↡已来タハ、正シク明ス↧観ズルニ↢身ノ別相ヲ↡、光益スルコトヲ↦有縁ヲ↥。即チ有リ↢其ノ五↡。一ニハ▼明シ↢相ノ多少ヲ↡、二ニハ▼明シ↢好ノ多少ヲ↡、三ニハ▼明シ↢光ノ多少ヲ↡、四ニハ▼明シ↢光ノ照ス遠近ヲ↡、五ニハ▼明ス↣光ノ所ノ↠及ブ処、偏ニ蒙ルコトヲ↢摂益ヲ↡。
二 ⅶ Ⅱ b ロ 料簡
(一)問
^◆問ひていはく、 つぶさに衆行を修してただよく回向すれば、 みな往生を得。 なにをもつてか仏の光あまねく照らすにただ念仏者を摂する、 なんの意かあるや。
問ヒテ曰ク、備ニ修シテ↢衆行ヲ↡但能ク廻向スレバ、皆得↢往生ヲ↡。何ヲ以テカ仏ノ光普ク照スニ唯摂スル↢念仏者ヲ↡、有ル↢何ノ意カ↡也。
二 ⅶ Ⅱ b ロ (二)答
(Ⅰ)約三縁
^▽答へていはく、 これに三義あり。
答ヘテ曰ク、此ニ有リ↢三義↡。
・親縁
^◆一には親縁を明かす。 △衆生、 行を起して口につねに仏を称すれば、 仏すなはちこれを聞きたまふ。 身につねに仏を礼敬すれば、 仏すなはちこれを見たまふ。 心につねに仏を念ずれば、 仏すなはちこれを知りたまふ。 衆生仏を憶念すれば、 仏また衆生を憶念したまふ。 彼此の三業あひ捨離せず。 ゆゑに親縁と名づく。
一ニハ明ス↢▼親縁ヲ↡。衆生起シテ↠行ヲ口ニ常ニ称スレバ↠仏ヲ、仏即チ聞キタマフ↠之ヲ。身ニ常ニ礼↢敬スレバ仏↡ヲ、*仏即チ見タマフ↠之ヲ。心ニ常ニ念ズレバ↠仏ヲ、仏即チ知リタマフ↠之ヲ。衆生憶↢念スレバ仏ヲ↡者、仏亦憶↢念シタマフ衆生ヲ↡。▼彼此ノ三業不↢相捨離セ↡。故ニ名クル↢親縁ト↡也。
・近縁
^◆二には近縁を明かす。 △衆生仏を見んと願ずれば、 仏すなはち念に応じて現じて目の前にまします。 ゆゑに近縁と名づく。
二ニハ明ス↢▼近縁ヲ↡。衆生願ズレバ↠見ムト↠仏ヲ、仏即チ応ジテ↠念ニ現ジテ在ス↢目ノ前ニ↡。故ニ名クル↢近縁ト↡也。
・増上縁
^◆三には増上縁を明かす。 衆1230生称念すれば、 すなはち多劫の罪を除きて、 命終らんと欲する時、 仏、 聖衆とみづから来りて迎接したまふ。 もろもろの邪業繋よく礙ふるものなし。 ゆゑに増上縁と名づく。
三ニハ明ス↢▼増上縁ヲ↡。衆生称念スレバ、即チ除キテ↢多劫ノ罪ヲ↡、命欲スル↠終ラムト時、仏与↢聖衆↡自ラ来リテ迎接シタマフ。諸ノ邪業繋无シ↢能ク礙フル者↡。故ニ名クル↢増上縁ト↡也。
二 ⅶ Ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)比況証成
^○自余の衆行はこれ善と名づくといへども、 もし念仏に比ぶれば、 まつたく比校にあらず。 このゆゑに、 諸経のなかに処々に広く念仏の功能を讃む。
自余ノ衆*行ハ雖モ↠名クト↢是善ト↡、若シ比ブレバ↢念仏ニ↡者、全ク非ズ↢比挍ニ↡也。▼是ノ故ニ、諸経ノ中ニ処々ニ広ク讃ム↢念仏ノ功能ヲ↡。
^◆¬無量寿経¼ の四十八願のなかのごときは、 ただもつぱら弥陀の名号を念じて生ずることを得と明かす。
如キハ↢¬无量寿経ノ¼四十八願ノ中ノ↡、▼唯明ス↧専ラ念ジテ↢弥陀ノ名号ヲ↡得ト↞生ズルコトヲ。
^◆また ¬弥陀経¼ のなかのごときは、 一日七日もつぱら弥陀の名号を念じて生ずることを得と。 また十方恒沙の諸仏の虚しからずと証誠したまふ。
又如キハ↢¬弥陀経ノ¼中ノ↡、▼一日七日専ラ念ジテ↢弥陀ノ名号ヲ↡得ト↠生ズルコトヲ。▼又十方恒沙ノ諸仏ノ証↢*誠シタマフ不ト↟虚シカラ也。
^◆またこの ¬経¼ (観経) の定散の文のなかには、 ただもつぱら名号を念じて生ずることを得と標せり。
又此ノ¬経ノ¼▼定散ノ文ノ中ニハ、▼唯標セリ↧専ラ念ジテ↢名号ヲ↡得ト↞生ズルコトヲ。
^◆この例一にあらず。
▼此ノ*例非ズ↠一ニ也。
二 ⅶ Ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)総結
^◆広く念仏三昧を顕しをはりぬ」 と。
広ク顕シ↢念仏1286三昧ヲ↡*竟リヌト。」
二 ⅶ Ⅱ c 観念法門
^¬観念法門¼ にいはく、 「▲また前のごときの身相等の光一々あまねく十方世界を照らすに、 ただもつぱら阿弥陀仏を念ずる衆生のみありて、 かの仏の心光つねにこの人を照らして、 摂護して捨てたまはず。 すべて余の雑業の行者を照摂することをば論ぜず」 と。
▼¬観念法門ニ¼云ク、「又▼如キノ↠前ノ身相等ノ光一々遍ク照スニ↢十方世界ヲ↡、但有リテ↧専ラ念ズル↢阿弥陀仏ヲ↡衆生ノミ↥、▼彼ノ仏ノ心光常ニ照シテ↢是ノ人ヲ↡、摂護シテ不↠捨テタマハ。▼総テ不ト↠論ゼ↣照↢摂スルコトヲバ余ノ雑業ノ行者ヲ↡。」
二 ⅶ Ⅲ 私釈
a 問
^わたくしに問ひていはく、 仏の光明ただ念仏者を照らして、 余行のものを1231照らさざるはなんの意かあるや。
私ニ問ヒテ曰ク、仏ノ光明唯照シテ↢念仏者ヲ↡、不ルハ↠照サ↢余行ノ者ヲ↡、有ル↢何ノ意カ↡乎。
二 ⅶ Ⅲ b 答
イ 標
^答へていはく、 解するに二の義あり。
答ヘテ曰ク、解スルニ有リ↢二ノ義↡。
二 ⅶ Ⅲ b ロ 釈
(一)就義解
(Ⅰ)約三縁
^一には親縁等の三の義、 △文のごとし。
一ニ者親縁等ノ三ノ義、如シ↠文ノ。
二 ⅶ Ⅲ b ロ (一)(Ⅱ)約本願
(ⅰ)正明
^二には本願の義、 いはく余行は本願にあらざるがゆゑに、 これを照摂したまはず。 念仏はこれ本願のゆゑに、 これを照摂したまふ。
二ニ者本願ノ義、謂ク余行ハ非ザルガ↢本願ニ↡故ニ、不↣照↢摂シタマハ之ヲ↡。念仏ハ是本願ノ故ニ、照↢摂シタマフ之ヲ↡。
二 ⅶ Ⅲ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)引証
^○ゆゑに善導和尚の ¬*六時礼讃¼ にいはく、
故ニ善導和尚ノ▼¬六時礼讃ニ¼云ク、
^「▲弥陀の身色は金山のごとし。 相好の光明は十方を照らす。
ただ仏を念ずるのみありて*光接を蒙る。 まさに知るべし、 本願もつとも強しとなす」 と。 以上
「弥陀ノ身色ハ如シ↢金山ノ↡ | 相好ノ光明ハ照ス↢十方ヲ↡ |
▼唯有リテ↠念ズルノミ↠仏ヲ蒙ル↢光*接ヲ↡ | ▼当ニシ↠知ル、本願最モ為スト↠強シト」 已上 |
二 ⅶ Ⅲ b ロ (二)就文解
(Ⅰ)牒文
^また引くところの文 (定善義) のなかに、 「△自余衆善雖名是善若比念仏者↓全非比校也」 といふは、
又▼所ノ↠*引ク文ノ中ニ、言フ↢「自余衆善雖名是善若比念仏者全非比挍也ト」者、
二 ⅶ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)随釈
^意のいはく、 これ浄土門の諸行に約して比論するところなり。 念仏はこれすでに△二百一十億のなかに選取するところの*妙行なり。 諸行はこれすでに二百一十億のなかに選捨するところの*粗行なり。 ゆゑに 「↑全非比校也」 といふ。 また念仏はこれ*本願の行なり。 諸行はこれ本願にあらず。 ゆゑに 「全非比校也」 といふ。
◆意ノ云ク、是約シテ↢浄土門ノ諸行ニ↡而所↢比論スル↡也。念仏ハ是既ニ二百一十億ノ中ニ所ノ↢選取スル↡妙行也。諸行ハ是既ニ二百一十億ノ中ニ所ノ↢選捨スル↡麁行也。故ニ云フ↢「全非比挍也ト」↡。又念仏ハ是本願ノ行ナリ。諸行ハ是非ズ↢本願ニ↡。故ニ云フ↢「全非比挍也ト」↡。
二 ⅷ【三心章】
Ⅰ 標章
【8】 0800^○念仏の行者かならず三心を具足すべき文。
念仏ノ行者▼必ズ可キ↣具↢足ス三心ヲ↡之文
二 ⅷ Ⅱ 引文
a 観経
^1232¬観無量寿経¼ にのたまはく、 「▲もし衆生ありてかの国に生ぜんと願ずるものは、 三種の心を発して即便往生しなん。 ◆なんらをか三となす。 一には至誠心、 二には深心、 三には回向発願心なり。 ▽三心を具すればかならずかの国に生ず」 と。
▼¬観1287無量寿経ニ¼云ク、「▼若シ有リテ↢衆生↡▼願ズル↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡者ハ、▼発シテ↢三種ノ心ヲ↡即便チ往生シナム。何等ヲカ為ル↠三ト。▼一ニ者至誠心、二ニ者深心、三ニ者廻向発願心ナリ。▼具スレバ↢三心ヲ↡者必ズ生ズト↢彼ノ*国ニ↡。」
二 ⅷ Ⅱ b 疏文
イ 別釈三心
(一)至誠心
(Ⅰ)標
^同経の ¬疏¼ (散善義) にいはく、 「^▲¬経¼ (観経) にのたまはく、 ª一には至誠心º と。
同ジキ経ノ¬疏ニ¼云ク、「▼¬経ニ¼云ク、一ニ者至誠心ト。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)釈義
(ⅰ)出字訓
^◆ª至º は真なり。 ª誠º は実なり。
至者真ナリ。誠者実ナリ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)広釈
(a)初約弘願
(イ)約機受相
[一]正示真実
^◆一切衆生の身口意業に修するところの解行、 *かならず真実心のうちになすべきことを明かさんと欲す。
▼欲ス↠明サムト↣一切衆生ノ身口意業ニ所ノ↠修スル解行、必ズ須クキコトヲ↢真実心ノ中ニ作ス↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[二]誡虚仮
[Ⅰ]正誡
^▽外に 賢善精進の相を現じ、 内に虚仮を懐くことを得ざれ。 ◆貪瞋・邪偽・奸詐百端にして悪性侵しがたし。 事、 蛇蝎に同じ。 三業を起すといへども名づけて雑毒の善となす。 また虚仮の行と名づく。 真実の業と名づけず。
不レ↠得↧外ニ現ジ↢賢善精進之相ヲ↡、内ニ懐クコトヲ↦虚仮ヲ↥。▼貪瞋・邪偽・奸詐*百端ニシテ悪性難シ↠侵シ。事同ジ↢蛇蝎ニ↡。雖モ↠起スト↢三業ヲ↡名ケテ為ス↢雑毒之善ト↡。亦名ク↢虚仮之行ト↡。不↠名ケ↢真実ノ業ト↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[二][Ⅱ]示過失
^◆もしかくのごとき安心・起行をなせば、 たとひ身心を苦励して、 日夜十二時 急に*走り急になして、 頭燃を救ふがごとくすとも、 す0801べて雑毒の善と名づく。 この雑毒の行を回らして、 かの仏の浄土に生ずることを求めんと欲せば、 これかならず不可なり。
▼若シ作セバ↢如キ↠此クノ安心・起行ヲ↡者、縦使苦↢励シテ身心ヲ↡、日夜十二時急ニ走リ急ニ作シテ、如クストモ↠灸フガ↢頭燃ヲ↡者、衆テ名ク↢雑毒之善ト↡。欲セバ↧廻シテ↢此ノ雑毒之行ヲ↡、求メムト↞生ズルコトヲ↢彼ノ仏ノ浄土ニ↡者、此必ズ不可也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)顕示所由
^◆なにをもつてのゆゑぞ。 まさしくかの阿弥陀仏の因中に菩薩の行を行じたまひし時に、 乃至一念一刹那も、 三業に修するところ、 みなこれ真実心のうちになした1233まひしによりてなり。 *おほよそ施為・趣求するところ、 またみな真実なるべし。
▼何ヲ以ノ故ゾ。正シク由テナリ↧彼ノ阿弥陀仏ノ因中ニ行ジタマヒシ↢菩薩ノ行ヲ↡時ニ、乃至一念一刹那モ、三業ニ所↠修スル、皆是真実心ノ中ニ作シタマヒシニ↥。▼凡ソ所↢施為・趣求スル↡、亦皆真実ナルベシ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)約二利
(イ)標列
^◆また真実に二種あり。 一には自利の真実、 二には利他の真実なり。
▼又真実ニ有リ↢二種↡。一ニ者自利ノ真実、二ニ者利他ノ真実ナリ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)随釈
[一]明自利真実
[Ⅰ]標数
^◆自利の真実といふは、 また二種あり。
▼言フ↢自利ノ真実ト↡者、復有リ↢二種↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]釈
[ⅰ]明厭離真実
^◆一には真実心のうちに、 自他の諸悪および穢国等を制捨して、 行住坐臥に一切の菩薩の諸悪を制捨するに同じく、 われもまたかくのごとくならんと想ふなり。 ◆二には真実心のうちに、 自他の凡聖等の善を勤修して、
▼一ニ者真実心ノ中ニ、制↢捨シテ自他ノ諸悪及ビ穢国等ヲ↡、行住坐臥ニ想フ↧同ジク↣一切ノ菩薩ノ制↢捨スルニ諸悪ヲ↡、我モ亦如クナラムト↞是ノ也。◆二ニ者真実心ノ中ニ、勤↢修シテ自他ノ凡聖等ノ善ヲ↡、
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ][ⅱ]明欣求真実
・口業
^◆真実心のうちに、 口業をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を讃歎し、 また真実心のうちに、 口業をもつて三界・六道等の自他の依正二報の苦悪の事を毀厭し、 ▼また一切衆生の三業所為の善を讃歎す。 ◗善業にあらざるをばつつしみてこれを遠ざかれ、 また随喜せざれ。
◆真実心1288ノ中ニ、口業ヲモテ讃↢歎シ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡、◆又真実心ノ中ニ、口業ヲモテ毀↢厭シ三界・六道等ノ自他ノ依正二報ノ苦悪之事ヲ↡、◆亦讃↢歎ス一切衆生ノ三業所為ノ善ヲ↡。*非ザルヲバ↢善業ニ↡者敬而テ遠ザカレ↠之ヲ、亦不レ↢随喜セ↡也。
・身業
^◆また真実心のうちに、 身業をもつて合掌礼敬し 、 四事等をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を供養す。 ▼また真実心のうちに、 身業をもつてこの生死三界等の自他の依正二報を軽慢し厭捨し、
◆又真実心ノ中ニ、身業ヲモテ合掌礼敬シ、四事等ヲモテ供↢養ス彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡。◆又真実心ノ中ニ、身業ヲモテ軽↢慢シ厭↣捨シ此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡、
・意業
^◆また真実心のうちに、 意業をもつてかの阿弥陀仏および依正二報を思想し観察し憶念して0802、 目前に現ずるがごとくにし、 ▼また真実心のうちに、 意業をもつてこの生死三界等の自他の依正二報を軽賎し厭捨し、
◆又真実心ノ中ニ、意業ヲモテ思↢想シ観↣察シ憶↤念シテ彼ノ阿弥陀仏及ビ依正二報ヲ↡、如クニシ↠現ズルガ↢目前ニ↡、◆又真実心ノ中ニ、意業ヲモテ軽↢賎シ厭↣捨シ此ノ生死三界等ノ自他ノ依正二報ヲ↡、
二 ⅷ Ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]明利他真実
^◆*不善の三業をば かならずすべからく真実心のうちに捨つべし。 *またもし善の三業を起さば、 かならず1234すべからく真実心のうちになすべし。 ◆内外明闇を簡ばず、 みなすべからく真実なるべし。 ゆゑに 至誠心と名づく。
◆不善ノ三業ヲバ必ズ須クシ↢真実心ノ中ニ捨ツ↡。又若シ起サバ↢善ノ三業ヲ↡者、必ズ須クシ↢真実心ノ中ニ作ス↡。不↠簡バ↢内外明*闇ヲ↡、皆須クシ↢真実ナル↡。故ニ名ク↢至誠心ト↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)深心
(Ⅰ)牒文
^◆ª二には深心º と。
▼*二ニ者深心ト。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)随釈
(ⅰ)釈名
(ⅱ)正釈
(a)標数
^◆ª深心º といふはすなはちこれ深信の心なり。 ▼また二種あり。
◆言フ↢深心ト↡者即チ是深信之心也。◆亦有リ↢二種↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)釈
(イ)明機深信
^◆一には決定して深く、 自身は現にこれ罪悪生死の凡夫 、 曠劫よりこのかたつねに没しつねに流転して、 出離の縁あることなしと信ず。
◆一ニ者決定シテ深ク、信ズ↢自身ハ現ニ是▼罪悪生死ノ凡夫、曠劫ヨリ已来タ常ニ没シ常ニ流転シテ、无シト↟有ルコト↢出離之縁↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)明法深信
[一]正明
^◆二には決定して深く、 かの阿弥陀仏の、 四十八願をもつて衆生を摂受したまふこと、 疑なく慮りなくかの願力に乗りてさだめて往生を得と信ず。
◆二ニ*者決定シテ深ク、信ズ↧彼ノ阿弥陀仏ノ、四十八願ヲモテ摂↢受シタマフコト衆生ヲ↡、▼无ク↠疑ヒ无ク↠*慮リ乗リテ↢彼ノ願力ニ↡定メテ得ト↦往生ヲ↥。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]広示信相
[Ⅰ]深信仏説
^◆また決定して深く、 釈迦仏のこの ¬観経¼ の三福・九品・定散二善を説きて、 かの仏の依正二報を証讃して、 人をして欣慕せしめたまふを信ず。
▼又決定シテ深ク、信ズ↧釈迦仏ノ説キテ↢此ノ¬観経ノ¼三福・九品・定散二善ヲ↡、証↢讃シテ彼ノ仏ノ依正二報ヲ↡、使メタマフヲ↦人ヲシテ欣慕セ↥。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]深信仏証
^◆また決定して深く、 ¬弥陀経¼ のなかに、 十方恒沙の諸仏、 一切凡夫を証勧したまふ、 決定して生ずることを得と信ず。
▼又決定シテ深ク、信ズ↧¬弥陀経ノ¼中ニ、十方恒沙ノ諸仏証↢勧シタマフ一切凡夫ヲ↡、決定シテ得ト↞生ズルコトヲ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ]重成前義
[ⅰ]随順三仏
^◆また深信とは、 仰ぎ願はくは、 一切の行者等、 一心にただ仏語を信じて身命を顧みず、 決定して*より行じて、 仏の捨てしめたまふをばすなはち捨て、 仏の行ぜしめたまふをばすなはち行じ、 仏の0803去らしめたまふ処をばすなはち去る。 これを仏教に随順し、 仏意に随順すと名づけ、 これを仏願に随順すと名づく。 これを真の仏弟子と名づく。
▼又深信ト者、仰ギ願クハ一切1289ノ行者*等、一心ニ▼唯信ジテ↢仏語ヲ↡不↠顧ミ↢身命ヲ↡決定シテ依リ行ジテ、仏ノ遣メタマフヲ↠捨テ*者即チ捨テ、仏ノ遣メタマフヲ↠行ゼ者即チ行ジ、仏ノ遣メタマフ↠去ラ処ヲバ即チ去ル。是ヲ名ケ↧随↢順シ仏教ニ↡*随↦順スト仏意ニ↥、是ヲ名ク↣随↢順スト仏願ニ↡。是ヲ名ク↢真ノ仏弟子ト↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ]審観経信相
[a]略示
^◆また一切の行者 ただよくこの ¬経¼ (観経) によりて1235深信して行ずるものは、 かならず衆生を誤たじ。
▼*又一切ノ行者但能ク依リテ↢此ノ¬経ニ¼↡深信シテ行ズル者ハ、必ズ不↠悞タ↢衆生ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ][b]広明
[イ]総明因果満未満
^◆なにをもつてのゆゑに。 仏はこれ満足大悲の人なるがゆゑに。 実語のゆゑに。 ◆仏を除きてよりこのかたは 智行いまだ満たずして、 その学地にありて、 正習 二障ありていまだ除かず、 果願いまだ円かならざるによりて、
▼何ヲ以ノ故ニ。▼仏ハ是満足大悲ノ人ナルガ故ニ。▼実語ノ故ニ。▼除キテヨリ↠仏ヲ已還ハ智行未ダシテ↠満タ、▼在リテ↢其ノ学地ニ↡、▼由テ↧有リテ↢正習二障↡未ダ↠除カ、▼果願未ダルニ↞円カナラ、
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]別示因人了不了
^◆これらの凡聖はたとひ諸仏の教意を測量すれども、 いまだ 決了することあたはず。 平章することありといへども、 かならずすべからく仏の証を請じて定となすべし。 もし仏の意に称へば すなはち印可して、 ª如是如是º とのたまふ。 もし仏の意に可はざれば、 すなはち ªなんぢらの所説、 この義不如是º とのたまふ。
此等ノ凡聖ハ縦使測↢量スレドモ諸仏ノ教意ヲ↡、未ダ↠能ハ↢決了スルコト↡。雖モ↠有リト↢平章スルコト↡、要ズ須クシ↧請ジテ↢仏ノ証ヲ↡為ス↞定ト也。若シ称ヘバ↢仏ノ意ニ↡即チ印可シテ、言フ↢如是如是ト↡。若シ不レバ↠可ハ↢仏ノ意ニ↡者、即チ言フ↢汝等ノ所説、是ノ義不如是ト↡。
^◆印したまはざるは、 すなはち無記・無利・無益の語に同じ。 仏の印可したまふは、 すなはち仏の正教に随順す 。
不ル↠印シタマハ者、即チ同ジ↢无記・无利・无益之語ニ↡。仏ノ印可シタマフ者、即チ随↢順スルナリ仏之正教ニ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ハ]示仏説了義
^◆もし仏のあらゆる言説は、 すなはちこれ正教・正義・正行・正解・正業・正智なり。 ◆もしは多、 もしは少、 もろもろの菩薩・人・天等を問はず、 その是非を定む。
若シ仏ノ所有ノ言説ハ、即チ是正教・正義・正行・正解・正業・正智ナリ。若シハ多若シハ少、衆ノ不↠問ハ↢菩薩・人・天等ヲ↡定ム↢其ノ是非ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ニ]決判
^◆もし仏の所説は、 すなはちこれ了教なり。 菩薩等の説は、 ことごとく不了教と名づく 、 知るべし。
若シ仏ノ所説ハ、即チ是了教ナリ。菩薩等ノ説ハ、尽ク名ク↢不了教ト↡也、応シ↠知ル。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅲ][ⅱ][c]勧誡行者
^◆このゆゑにい0804まの時、 仰ぎて一切の有縁の往生人等に勧む。 ただ深く仏語を信じて専注奉行すべし。 菩薩等の不相応の教を信用して、 もつて疑礙をなし、 惑ひを抱きてみづから迷ひて、 往生の大益を廃1236失すべからず。
是ノ故ニ今ノ時、仰ギテ勧ム↢一切ノ有縁ノ往生人等ニ↡。唯可シ↧深ク信ジテ↢仏語ヲ↡専注奉行ス↥。不↠可カラ↧信↢用シテ菩薩等ノ不相応ノ教ヲ↡、以テ為シ↢疑礙ヲ↡、抱↠惑自ラ迷シテ、癈↦失ス往生之大益ヲ↥也。▼
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]建立信相
[Ⅰ]略明
^◆また深心は ª深信なりº と は、 決定して自心を建立して、 教に順じて修行して、 永く疑錯を除きて、 ▽一切の別解・別行・異学・異見・異執のために、 退失し傾動せられざるなり。
▼又深心ハ深信ナリト者、決定シテ建↢立シテ自心ヲ↡、順ジテ↠教ニ修行シテ、永ク除キテ↢疑錯ヲ↡、不ル↧為ニ↢一切ノ別解・別行・異学・異見・異執ノ↡之、所レ↦退失シ傾動セ↥。也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ]広明
[ⅰ]就人立信
[a]問
^◆問ひていはく、 凡夫は智浅く、 惑障処深し。 もし解行不同の人に、 多く経論を引きて来りてあひ妨難し、 証して ª一切の罪障の凡夫往生 を得ずº といふに逢はんに、 いかんがかの難を対治して、 信心を成就して、 決定して直に進みて、 怯退を生ぜざらんや。
▼問ヒテ曰1290ク、凡夫ハ智浅ク惑障処深シ。若シ逢ハムニ↧解行不同ノ人ニ、多ク引キテ↢経*論ヲ↡来リテ相*妨ゲテ難シ証シテ云フニ↦一切ノ罪障ノ凡夫不ト↞得↢往生ヲ↡者、云何ガ対↢治シテ彼ノ難ヲ↡、成↢就シテ信心ヲ↡、決定シテ直ニ進ミテ、不ラム↠生ゼ↢*怯退ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b]答
[イ]正明
ª一º第一重
ªⅠº牒難標不受
^◆答へていはく、 もし人ありて 多く経論の証を引きて、 ª生ぜずº といはば、 行者すなはち報へていへ、 ªなんぢ、 経論をもつて来り証して «生ぜず» といふといへども、 わが意のごときは決定してなんぢが破を受けず。
答ヘテ曰ク、若シ有リテ↠人多ク引キテ↢経論ノ証ヲ↡、云ハバ↠不ト↠生ゼ者、行者即チ報ヘテ云ヘ、仁者雖モ↧将テ↢経論ヲ↡来リ証シテ噵フト↞不ト↠生ゼ、如キ↢我ガ意ノ↡者決定シテ不↠受ケ↢汝ガ破ヲ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª一ºªⅡº広述道理
ªⅰº標己正信
^◆なにをもつてのゆゑに。 しかもわれまた、 これかのもろもろの経論を信ぜざるにはあらず。 ことごとくみな仰信す。
何ヲ以ノ故ニ。然モ我亦不ズ↢是不ルニハ↟信ゼ↢彼ノ諸ノ経論ヲ↡。尽ク皆仰信ス。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª一ºªⅡºªⅱº二門経論不同
^◆しかるに仏かの経を説きたまふ時は、 処別に、 時別に、 対機別に、 利益別なり。 またかの経を説きたまふ時は、 すなはち ¬観経¼・¬弥陀経¼ 等を説きたまふ時にあらず。 しかるに仏の説教は、 機に備ひて時また0805不同なり。
然ルニ▼仏説キタマフ↢彼ノ経ヲ↡時ハ、▼処別ニ、時*別ニ、対機別ニ、利益別ナリ。又説キタマフ↢彼ノ経ヲ↡時ハ、即チ非ズ↧説キタマフ↢¬観経¼・¬弥陀経¼等ヲ↡時ニ↥。然ルニ仏ノ説教ハ、備ヒテ↠機ニ時亦不同ナリ。
^◆かれ すなはち通じて人・天・菩薩の解行を説く。 いま ¬観経¼ の定散二善を説くは、 ただ韋提および仏の滅後の五濁・五苦等の一切 凡夫のために、 証して «生ずるこ1237とを得» とのたまふ。
彼即チ通ジテ説ク↢人・天・菩薩之解行ヲ↡。今説クハ↢¬観経ノ¼定散二善ヲ↡、唯為ニ↢韋提及ビ仏ノ滅後ノ五濁・五苦等ノ一切凡夫ノ↡、証シテ言フ↠得ト↠生ズルコトヲ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª一ºªⅡºªⅲº釈成
^◆この因縁のために、 われいま一心にこの仏教によりて決定して奉行す。 たとひなんぢら百千万億ありて «生ぜず» といふとも、 ただわが往生の信心を増長し成就せんº と。
為ニ↢此ノ因縁ノ↡、我今一心ニ依リテ↢此ノ仏教ニ↡決定シテ奉行ス。縦使汝等百千万億アリテ噵フトモ↠不ト↠生ゼ者、唯増↢長シ成↣就セムト我ガ往生ノ信心ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª二º第二重
ªⅠº標起
^◆また行者さらに向かひて説きていへ。 ªなんぢよく聴け。 われいまなんぢがためにまた決定の信相を説かん。
▼又行者更ニ向ヒテ説キテ言ヘ。仁者善ク聴ケ。我今為ニ↠汝ガ更ニ説カム↢決定ノ信相ヲ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª二ºªⅡº釈
ªⅰº仮設難破
^◆たとひ地前の菩薩・羅漢・辟支仏等、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に遍満して、 みな経論の証を引きて «生ぜず» といはば、
縦使地前ノ菩薩・羅漢・辟支*仏等、若シハ一若シハ多、乃至遍↢満シテ▼十方ニ↡、皆引キテ↢経論ノ証ヲ↡言ハバ↠不ト↠生ゼ者、
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª二ºªⅡºªⅱº標不受
^◆われまたいまだ一念の疑心を起さじ。 ただわが清浄の信心を増長し成就せん。
我亦未ダ↠起サ↢一念ノ疑心ヲ↡。唯増↢長シ成↣就セム我ガ清浄ノ信心ヲ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª二ºªⅡºªⅲº釈所由
^◆なにをもつてのゆゑに。 仏語は決定成就の了義にして、 一切のために破壊せられざるによるがゆゑにº と。
何ヲ以ノ故ニ。由ガ↫仏語ハ決定成就ノ了義ニシテ、不ルニ↪為ニ↢一切ノ↡所レ↩破壊セ↨故ニト。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª三º第三重
ªⅠº標
^◆また行者よく聴け。
▼又行者善ク聴ケ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª三ºªⅡº釈
ªⅰº仮設難破
^◆たとひ初地以上十地以来、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に遍満して、 異口同音にみないはく、 ª釈迦仏、 弥陀を指讃し、 三界・六道を毀呰して、 衆生を勧励し 、 «専心に念仏し、 および余 善を修して、 この一身を畢へて後に必定してかの国に生ず» といふは、 これはかならず虚妄なり、 依信すべからずº と 。
縦使初地已上十地已来、若シハ一若シハ多、乃至遍↢満シテ十方1291ニ↡、異口同音ニ皆云ク、釈迦仏指↢讃シ弥陀ヲ↡、毀↢呰シテ三界・六道ヲ↡、勧↢励シ衆生ヲ↡、専心ニ念仏シ、及ビ修シテ↢余善ヲ↡、畢ヘテ↢此ノ一身ヲ↡後ニ必定シテ生ズトイフ↢彼ノ国ニ↡者、此ハ必ズ虚妄ナリ、不ト↠可カラ↢依信ス↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª三ºªⅡºªⅱº標不受
^◆われこれらの所説を聞くといへども、 また一念の疑心を生ぜずして、 ただわが決定0806して上上の信心を増長し成就せん。
我雖モ↠聞クト↢此等ノ所説ヲ↡、亦不シテ↠生ゼ↢一念ノ疑心ヲ↡、唯増↢長シ成↣就セム我ガ決定シテ上々ノ信心ヲ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª三ºªⅡºªⅲº釈所由
^◆なにをもつてのゆゑに。 すなはち仏語は真実の決了の義なるによるがゆゑに。 仏はこれ実知・実1238解・実見・実証にして、 これ疑惑の心中の語にあらざるがゆゑに。 また一切の菩薩の異見・異解のために破壊せられず。 もし実にこれ菩薩ならば 衆く仏教に違はじ。
何ヲ以ノ故ニ。乃チ由ルガ↢仏語ハ真実ノ決了ノ義ナルニ↡故ニ。仏ハ是実知・実解・実見・実証ニシテ、非ザルガ↢是疑惑ノ心中ノ語ニ↡故ニ。又不↧為ニ↢一切ノ菩薩ノ異見・異解ノ↡之所レ↦破壊セ↥。若シ実ニ是菩薩ナラバ者衆ク不↠違ハ↢仏教ニ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四º第四重
ªⅠº標
^◆またこの事を置け。 行者まさに知るべし。
▼又置ケ↢此ノ事ヲ↡。行者当ニシ↠知ル。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡº釈
ªⅰº仮設難破
^◆たとひ化仏・報仏、 もしは一、 もしは多、 乃至、 十方に遍満して、 おのおの光を輝かし 、 舌を吐きて、 あまねく十方に 覆ひて、 一々に説きてのたまはく、 ª釈迦の所説にあひ讃め 、 一切の凡夫を勧発して、 «専心に念仏し、 および余善を修して、 回願してかの浄土に生ずることを得» といふは、 これはこれ虚妄なり、 さだめてこの事なしº と。
縦使化仏・報仏、若シハ一若シハ多、乃至遍↢満シテ十方ニ↡、各*各*輝カシ↠光ヲ、吐キテ↠舌ヲ遍ク覆ヒテ↢十方ニ↡、一々ニ説キテ言ク、釈迦ノ所説ニ相讃メ、勧↢発シテ一切ノ凡夫ヲ↡、専心ニ念仏シ、及ビ修シテ↢余善ヲ↡、廻願シテ得トイフ↠生ズルコトヲ↢*彼ノ浄土ニ↡者、此ハ是虚妄ナリ、定メテ无シト↢此ノ事↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅱº標不受
^◆われこれらの諸仏の所説を聞くといへども、 畢竟じて一念の疑退の心を起して、 かの仏国に生ずることを得ずと畏れじ 。
我雖モ↠聞クト↢此等ノ諸仏ノ所説ヲ↡、▼畢竟ジテ不↧起シテ↢一念ノ疑退之心ヲ↡、畏レ↞不ト↠得↠*生ズルコトヲ↢彼ノ仏国ニ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅲº釈所由
ªaº約通門
ªイº諸仏等同
^◆なにをもつてのゆゑに。 一仏は一切仏なり。 あらゆる知見・解行・証悟・果位・大悲、 等同にして少しき差別なし。
▼何ヲ以ノ故ニ。一仏ハ一切仏ナリ。所有ノ知見・解行・証悟・果位・大悲、等同ニシテ无シ↢少シキノ差別↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅲºªaºªロº引例
^◆このゆゑに一仏の制したまふところは、 すなはち一切の仏同じく制したまふ。 前仏の殺生・十悪等の罪を制断したまふがごとく、 畢竟じて犯せず行ぜざるは、 すなはち十善・十行と名づけ、 六度の義に随順す 。 もし後仏ありて世0807に出でんに、 あに前の十善を改めて十悪を行ぜしむべけんや。
是ノ故ニ一仏ノ所ハ↠制シタマフ、即チ一切ノ仏同ジク制シタマフ。▼如↣似ク前仏ノ制↢断シタマフガ殺生・十悪等ノ罪ヲ↡、畢竟ジテ不↠犯セ不ル↠行ゼ者、即チ名ケ↢十善・十行ト↡、随↢順ス六度之義ニ↡。若シ有リテ↢後仏↡出デムニ↠世ニ、豈ニ可ケム↧改メテ↢前ノ十善ヲ↡令ム↞行ゼ↢十悪ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅲºªaºªハº結示
^◆この道理をもつて推験するに、 あきらかに知りぬ。 諸仏の言行はあひ違失せず。
以テ↢此ノ道理ヲ↡推験スルニ、明ニ知リヌ、諸仏ノ言行ハ不↢相違失セ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅲºªbº約別門
ªイº正明
^◆たとひ釈迦1239一切の凡夫を指し勧めて、 ªこの一身を尽して専念 専修して、 命を捨て て以後にさだめてかの国に生ずº といふは、 すなはち十方の諸仏 ことごとくみな同じく讃め、 同じく勧め、 同じく証したまふ。 なにをもつてのゆゑに。 同体の大悲のゆゑに。 一仏の所化は、 すなはちこれ一切の仏の化なり。 一切の仏の化は、 すなはちこれ一仏の所化なり。
縦令釈迦指シ↢勧シテ一切1292ノ凡夫ヲ↡、尽シテ↢此ノ一身ヲ↡専念専修シテ、捨テテ↠命ヲ已後ニ定メテ生ズトイフ↢彼ノ国ニ↡者、即チ十方ノ諸仏悉ク皆同ジク讃メ同ジク勧メ同ジク証シタマフ。何ヲ以ノ故ニ。同体ノ大悲ノ故ニ。一仏ノ所化ハ即チ是一切ノ仏ノ化ナリ。一切ノ仏ノ化ハ即チ是一仏ノ所化ナリ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅲºªbºªロº引証
ˆ一ˇ同讃
^◆すなはち ¬弥陀経¼ のなかに説きたまはく、 釈迦極楽の種々の荘厳を讃歎し、 ◆また一切 凡夫を勧めて、 ª一日七日、 一心にもつぱら弥陀の名号を念じて、 さだめて往生 を得しめたまふº と。
▼即チ¬弥陀経ノ¼中ニ説カク、釈迦讃↢歎シ極楽ノ種々ノ荘厳ヲ↡、又勧メテ↢一切凡夫ヲ↡、一日七日一心ニ専ラ念ジテ↢弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得シメタマフト↢往生ヲ↡。
^◆次下の文 (小経) にのたまはく、 ª十方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 同じく釈迦を讃めて、 よく五濁悪時、 悪世界、 悪衆生、 悪煩悩、 悪邪、 無信の盛りなる時において、 弥陀の名号を指讃して、 衆生を勧励して、 «称念すればかならず往生 を得»º と。 すなはちその証なり。
次下ノ文ニ云ク、十方ニ各ノ有シテ↢恒*河沙等ノ諸仏↡、同ジク讃メテ↢釈迦ヲ↡、能ク於テ↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・*悪煩悩・*悪邪・无信ノ盛ナル時ニ↡、指↢讃シテ弥陀ノ名号ヲ↡勧↢励シテ衆生ヲ↡、称念スレバ必ズ得ト↢往生ヲ↡。即チ其ノ証也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅲºªbºªロºˆ二ˇ同証
^◆また十方の仏等、 衆生の釈迦一仏の所説を信ぜざることを恐畏して、 すなはちともに同心同時におのおの舌相を出して、 あまねく三千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまふ。 ªなんぢら衆0808生、 みなこの釈迦の所説・所讃・所証を信ずべし。 一切の凡夫、 罪福の多少、 時節の久近を問はず、 ただよく上百年を尽して、 下一日七日に至るまで、 一心にもつぱら弥陀1240の名号を念ずれば、 さだめて往生を得ること、 かならず疑なしº と。
又十方ノ仏等、恐↢畏シテ衆生ノ不ラムコトヲ↟信ゼ↢釈迦一仏ノ所説ヲ↡、即チ共ニ同心同時ニ各ノ出シテ↢舌相ヲ↡、遍ク覆ヒテ↢三千世界ニ↡、説キタマフ↢誠実ノ言ヲ↡。汝等衆生、皆応シ↠信ズ↢是ノ釈迦ノ所説・所讃・所証ヲ↡。一切ノ凡夫、不↠問ハ↢罪福ノ多少、時節ノ久近ヲ↡、但能ク上尽シテ↢百年ヲ↡、下至ルマデ↢一日七日ニ↡一心ニ専ラ念ズレバ↢弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得ルコト↢往生ヲ↡、必ズ无シト↠疑也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][イ]ª四ºªⅡºªⅲºªbºªハº結示
^◆このゆゑに一仏の所説は、 すなはち一切の仏同じくその事を証誠したまふ 。
是ノ故ニ一仏ノ所説ハ、即チ一切ノ仏同ジク証↢誠シタマフ其ノ事ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅰ][b][ロ]結文
^◆これを*人に就きて信を立つと名づく。
▼此ヲ名クル↢就キテ↠人ニ立ツト↟信ヲ也。▼
二 ⅷ Ⅱ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三][Ⅱ][ⅱ]就行立信
^△次に行に就きて信を立つと は、 しかるに行に二種あり。 一には正行、 二には雑行なり 。 云々。 前の二行のなかに引くところのごとし。 繁きを恐れて載せず。 見る人、 意を得よ。
▼次ニ就キテ↠行ニ立ツト↠信ヲ者、然ルニ行ニ有リ↢二種↡。一ニ者正行、二ニ者雑行ナリ。云々。如シ↢▼前ノ二行之中ニ所ノ↟引ク。恐レテ↠*繁キヲ不↠載セ。見ム人得ヨ↠意ヲ
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)回向発願心
(Ⅰ)牒文
^▲三には ª回向発願心º と。
▼三ニ者廻向発願心ト。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)随釈
(ⅰ)約要門
^◆ª回向発願心º といふは、 過去および今生の身口意業に修するところの世・出世の善根、 および他の一切の凡聖の身口意業に修するところの世・出世の善根を随喜して、 この自他の所修の善根をもつて、 ことごとくみな真実の深信の心のうちに回向して、 かの国に生ぜんと願ず。 ゆゑに回向発願心と名づく。
▼言フ↢廻向発願心ト↡者、過去及以今生ノ身口意業ニ所ノ↠修スル世・出世ノ善根、及ビ随↢喜シテ他ノ一切ノ凡聖ノ身口意業ニ所ノ↠修スル世・出世ノ善1293根ヲ↡、以テ↢此ノ自他ノ所修ノ善根ヲ↡、悉ク皆真実ノ深信ノ心ノ中ニ廻向シテ、願ズ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡。故ニ名クル↢廻向発願心ト↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)約弘願
(a)約往相
(イ)広明
[一]出体
^◆また*回向発願とは、 *かならずすべからく決定の真実心のうちに回向して、 得生の想を願作すべし。
▼又廻向発*願ト者、必ズ須クシ↣決定ノ真実心ノ中ニ廻向シテ、願↢作ス得生ノ想ヲ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[二]功徳
^◆この心深く信ずること なほ 金剛のごとく 、 一切の異見・異学・別解・別行の人等のために動乱破壊せられず。 ただこれ決定して一心に捉りて、 正直に進みて、 かの人の語を聞きて、 すなはち進退 ありて、 心に怯弱を生じて、 回顧して道に0809落ちて、 すなはち往生の大益を失ふことを得ざれ 。
▼此ノ心深ク信ズルコト由シ若ク↢金剛ノ↡、不↧為ニ↢一切ノ異見・異学・別解・別行ノ人等ノ↡之所レ↦動乱破壊セ↥。唯是決定シテ一心ニ*捉リテ、正直ニ進ミテ、不レ↠得↧聞キテ↢彼ノ人ノ語ヲ↡、即チ有リテ↢進退↡、心ニ生ジテ↢怯弱ヲ↡、廻顧シテ落チテ↠道ニ、即チ失スルコトヲ↦往生之大益ヲ↥也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三]料簡
[Ⅰ]問
^◆問ひていはく、 もし解行不同の邪雑の人等ありて、 来りてあ1241ひ惑乱して、 種々の疑難を説きて、 ª往生 を得ずº といひ、 あるいはいはん、 ªなんぢら衆生、 曠劫よりこのかたおよび今生の身口意業に、 一切の凡聖の身の上においてつぶさに十悪・五逆・四重・謗法・闡提・破戒・破見等の罪を造りて、 いまだ除尽することあたはず。 しかもこれらの罪は三界の悪道に繋属す。 いかんぞ一生の修福念仏をもつて、 すなはちかの無漏無生の国に入りて、 永く不退の位を証悟することを得んやº と。
▼*問ヒテ曰ク、若シ有リテ↢解行不同ノ邪雑ノ人等↡来リテ相惑乱シテ、*説キテ↢種々ノ疑難ヲ↡、噵ヒ↠不ト↠得↢往生ヲ↡、或イハ云ハム、汝等衆生、曠劫ヨリ已来タ及以今生ノ身口意業ニ、於テ↢一切ノ凡聖ノ身ノ上ニ↡具ニ造リテ↢▼十悪・▼五逆・▼四重・▼謗法・▼闡提・▼破戒・▼破見等ノ罪ヲ↡、未ダ↠能ハ↢除尽スルコト↡。然モ此等之罪ハ繋↢属ス三界ノ悪道ニ↡。云何ゾ一生ノ修福念仏ヲモテ、即チ入リテ↢彼ノ无漏无生之国ニ↡、永ク得ム↣証↢悟スルコトヲ不退ノ位ヲ↡也ト。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三][Ⅱ]答
[ⅰ]法説
[a]総標
^◆答へていはく、 諸仏の教行、 数塵沙に越えたり。 稟識の機縁、 情に随ひて一にあらず。
答ヘテ曰ク、諸仏ノ教行、数越エタリ↢塵沙ニ↡。稟識ノ機縁随ヒテ↠情ニ非ズ↠一ニ。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三][Ⅱ][ⅰ][b]引例比況
^◆たとへば世間の人の眼に見つべく信じつべきがごときは、 明はよく闇を破し、 空はよく有を含す、 地はよく載養す、 水はよく生潤す、 火はよく成壊するがごとし。 かくのごとき等の事、 ことごとく待対の法と名づく。 すなはち目に見つべし。 千差万別なり。 いかにいはんや 仏法の不思議の力、 あに種々の益なからんや。
譬ヘバ如キ↢世間ノ人ノ眼ニ可ク↠見ツ可キガ↟信ズ者、如シ↢明ハ能ク破シ↠闇ヲ、空ハ能ク含ス↠有ヲ、地ハ能ク載養ス、水ハ能ク生潤ス、火ハ能ク成壊スルガ↡。如キ↠此クノ等ノ事悉ク名ク↢待対之法ト↡。即チ*目ニ可シ↠見ツ。千差万別ナリ。▼何ニ況ヤ仏法ノ不思議之力豈ニ无カラム↢種々ノ益↡也。
^◆随ひて一の門より出づといふは、 すなはち一の煩悩の門より出づるなり。 随ひて一の門より入るといふは、 すなはち一の解脱智慧の門より入るなり。 ◆これがために縁に随ひて行を起して、 おのおの解脱を求む。
▼随ヒテ出ヅトイフ↢一ノ門ヨリ↡者、即チ出ヅル↢一ノ煩悩ノ門ヨリ↡也。随ヒテ入ルトイフ↢一ノ門ヨリ↡者、即チ入ル↢一ノ解脱智*慧ノ門ヨリ↡也。為ニ↠此ガ随ヒテ↠縁ニ起シテ↠行ヲ、各ノ求ム↢解脱ヲ↡。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三][Ⅱ][ⅰ][c]遮偏見難
^◆な0810んぢ、 なにをもつてかすなはち有縁 にあらざる要行をもつてわれを障惑する。 しかもわが愛するところは、 すなはちこれわが1242有縁の行なり。 すなはちなんぢが所求にあらず。 なんぢが愛するところは、 すなはちこれなんぢが有縁の行なり。 またわが所求にあらず。 このゆゑに 所楽に随ひて その行を修すれば、 かならず疾く解脱を得 。
汝何ヲ以テカ乃1294チ将テ↧非ザル↢有縁ニ↡之要行ヲ↥障↢惑スル於我ヲ↡。然モ我ガ之所ハ↠愛スル即チ是我ガ有縁之行ナリ。即チ非ズ↢汝ガ所求ニ↡。汝ガ之所ハ↠愛スル、即チ是汝ガ有縁之行ナリ。亦非ズ↢我ガ所求ニ↡。是ノ*故ニ随ヒテ↢所楽ニ↡而修スレバ↢其ノ行ヲ↡者、必ズ疾ク得ル↢解脱ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三][Ⅱ][ⅰ][d]約解行分別
^◆行者まさに知るべし。 もし解を学せんと欲はば、 凡より聖に至るまで、 乃至仏果まで、 一切無礙にみな学することを得よ。 もし行を学せんと欲はば、 かならず有縁の法によれ。 少しき功労を用ゐるに多く益を得 。
行者当ニシ↠知ル。▼若シ欲ハバ↠学セムト↠解ヲ、従リ↠凡至ルマデ↠聖ニ、乃至仏果マデ、一切无礙ニ皆得ヨ↠学スルコトヲ*也。若シ欲ハバ↠学セムト↠行ヲ者必ズ藉レ↢有縁之法ニ↡。▼少シキ用ヰルニ↢功労ヲ↡多ク得ル↠益ヲ也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三][Ⅱ][ⅱ]譬説
[a]用譬意許
^◆また一切の往生人等にまうす。 いまさらに行者のために一の譬喩を説きて、 信心を守護して、 もつて外邪異見の難を防がん。 何の者かこれや。
▼又白ス↢一切ノ往生人等ニ↡。今更ニ為ニ↢行者ノ↡説キテ↢一ノ譬喩ヲ↡、▼守↢護シテ信心ヲ↡、以テ防ガム↢外邪異見之難ヲ↡。何ノ者カ是也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三][Ⅱ][ⅱ][b]正宗
[イ]譬文
^◆たとへば、 人ありて西に向かひて百千の里を行かんと欲するに、 忽然として中路に二の河あり。 一 はこれ火の河、 南にあり。 二 はこれ水の河、 北にあり。 二河おのおの闊さ百歩、 おのおの深さ底もなく、 南北 辺なし。
譬ヘバ如シ↧有リテ↠人欲スルニ↣向ヒテ↠西ニ行カムト↢百千之里ヲ↡、忽然トシテ中*路ニ有リ↢二ノ河↡。一ハ是火ノ河在リ↠南ニ。二ハ是水ノ河在リ↠北ニ。二河*各ノ闊サ百歩、各ノ深サ无ク↠底モ、南北无シ↠辺。
^◆まさしく水火の中間に一の白道あり。 闊さ四 五寸ばかりなるべし。 この道東の岸より西の岸に至るまで、 また長さ百歩、 その水の波浪 交過して道を湿す。 その火の炎 ま0811た来りて道を焼く。 水火あひ交はりてつねに休息することなし。
正シク水火ノ中間ニ有リ↢一ノ白*道↡。可シ↢闊サ四五寸許ナル↡。此ノ道従リ↢東ノ岸↡至ルマデ↢西ノ岸ニ↡、亦長サ百歩、其ノ水ノ波浪交過シテ湿ス↠道ヲ。其ノ火ノ燄亦来リテ焼ク↠道ヲ。水火相交リテ常ニ无シ↢休息スルコト↡。
^◆この人すでに空曠のはるかなる処に至るに、 さらに人物なし。 多く群賊・悪獣のみあり。 この人の単独なるを見て1243、 競ひ来りて殺さんと欲す。 この人死を怖れて直に走りて 西に向かふに、 ◆忽然としてこの大河を見る。 すなはちみづから念言すらく、 ªこの河南北に辺畔を見ず。 中間に一の白道を見る。 きはめてこれ狭少なり。 二つの岸あひ去ること近しといへども、 なにによりてか行くべき。 今日さだめて死すること疑はず。
此ノ人既ニ至ルニ↢空曠ノ迥ナル処ニ↡、更ニ无シ↢人物↡。多ク有リ↢群賊・悪獣ノミ↡。見テ↢此ノ人ノ単独ナルヲ↡、競ヒ来リテ欲ス↠殺サムト。此ノ人怖レテ↠死ヲ直ニ走リテ向フニ↠西ニ、*忽然トシテ見ル↢此ノ大河ヲ↡。即チ自ラ念言スラク、此ノ河南北ニ不↠見↢辺畔ヲ↡。中間ニ見ル↢*一ノ白道ヲ↡。極テ是狭少ナリ。二ノ岸相去ルコト雖モ↠近シト、何ニ由テカ可キ↠行ク。今日定メテ死スルコト不↠疑ハ。
^◆まさしく到り回らんと欲すれば、 群賊・悪獣漸々に来り逼む。 まさしく南北に避り走らんと欲すれば、 悪獣・毒虫競ひ来りてわれに向かふ。 まさしく西に向かひて道を尋ねて去らんと欲すれば、 またおそらくはこの水火の二河に堕することをº と。 時に当りて惶怖することまたいふべからず。
正シク欲スレバ↢到リ廻ラムト↡、群賊・悪獣漸々ニ来リ逼ム。正シク欲スレバ↢南北ニ避リ走ラムト↡、悪獣・毒*虫競ヒ来リテ向フ↠我ニ。正シク欲スレバ↢向ヒテ↠西ニ尋ネテ↠道ヲ而去ラムト↡、復恐クハ堕チラムコトヲト↢此ノ水1295火ノ二河ニ↡。当リテ↠時ニ惶怖スルコト不↢復可カラ↟言フ。
^◆すなはちみづから思念すらく、 ªわれいま回るともまた死なん。 住すともまた死なん。 去るともまた死なん。 一種として死を勉れじ。 われ*むしろこの道を尋ねて前に向かひて去らん。 すでにこの道あり。 かならず度るべしº と。
即チ自ラ思念スラク、我今廻ルトモ亦死ナム、住ストモ*亦死ナム、去ルトモ亦死ナム。一種トシテ不↠*勉レ↠死ヲ者。我寧ロ尋ネテ↢此ノ道ヲ↡向ヒテ↠前ニ而去ラム。既ニ有リ↢此ノ道↡。必ズ応↢可シト度ル↡。
^◆この念をなす時に、 東の岸にたちまちに人の勧むる声を聞く。 ªなんぢ、 ただ決定してこの道を尋ねて行け。 かならず死の難なからん。 もし住0812せばすなはち死 なんº と。
作ス↢此ノ念ヲ↡時ニ、東ノ岸ニ忽ニ聞ク↢人ノ勧ムル声ヲ↡。仁者但決定シテ尋ネテ↢此ノ道ヲ↡行ケ。必ズ无ケム↢死ノ難↡。若シ住セバ即チ死ナムト。
^◆また西の岸の上に人ありて、 喚ばひていはく、 ªなんぢ一心に正念に 直に来れ。 われよくなんぢを護らん。 すべて水火の難に堕することを畏れざれº と。
又西ノ岸ノ上ニ有リテ↠人、喚ヒテ言ク、汝一心ニ正念ニ直ニ来レ。我能ク護ラム↠汝ヲ。衆テ不レト↠畏レ↠堕チムコトヲ↢於水火之難ニ↡。
^◆この人すでにこ1244こに遣り、 かしこに喚ばふを聞きて、 すなはちみづからまさしく身心に当りて、 決定して 道を尋ねて直に進みて疑怯退心を生ぜず。
此ノ人既ニ聞キテ↢此ニ遣リ彼ニ喚フヲ↡、即チ自ラ正シク当リテ↢身心ニ↡、決定シテ尋ネテ↠道ヲ直ニ進ミテ不↠生ゼ↢疑怯退心ヲ↡。
^◆あるいは行くこと一分二分するに、 東の岸に群賊等喚ばひていはく、 ªなんぢ回り来れ。 この道 嶮悪にして過ぐることを得じ。 かならず死すること疑はず。 われら すべて悪心をもつてあひ向かふことなしº と。 この人喚ばふ声を聞くといへども、 また回顧せず。 一心に直に進みて道を念じて行くに、 ◆須臾にすなはち西の岸に到りて、 永く諸難を離れて、 善友とあひ見て慶楽 已むことなきがごとし。
或イハ行クコト一分二分ルニ、▼東ノ岸ニ群賊等喚ヒテ言ク、仁者廻リ来レ。此ノ道嶮悪ニシテ不↠得↠過グルコトヲ。必ズ死セムコト不↠疑ハ。我等衆テ无シト↢悪心ヲモテ相向フコト↡。此ノ人雖モ↠聞クト↢喚フ声ヲ↡亦不↢廻顧セ↡。一心ニ直ニ進ミテ念ジテ↠道ヲ而行クニ、須臾ニ即チ到リテ↢西ノ岸ニ↡、永ク離レテ↢諸難ヲ↡、善友ト相見テ慶楽无キガ↞已ムコト。
^◆これはこれ喩へなり。
此ハ是喩也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[三][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]合文
^◆次に喩へを合せば、 ◆ª東の岸º といふは、 すなはちこの娑婆 の火宅に喩ふ 。
次ニ合セバ↠喩ヲ者、言フ↢東ノ岸ト↡者、即チ喩フル↢此ノ娑婆之火宅ニ↡也。
^◆ª西の岸º といふは、 すなはち極楽の宝国に喩ふ 。
言フ↢西ノ岸ト↡者、即チ喩フル↢極*楽ノ宝国ニ↡也。
^◆ª群賊・悪獣詐り親しむº といふは、 すなはち衆生の六根・六識・六塵・五陰・四大に喩ふ◗。
言フ↢群賊・悪獣詐リ親シムト↡者、即チ喩フル↢衆生ノ▼六根・▼六識・▼六塵・▼五陰・▼四大ニ↡也。
^◆ª人なき空迥の沢º といふは、 すなはちつねに悪友に随ひて真の善知識に値はざるに喩ふ 。
言フ↢无キ↠人空迥ノ沢ト↡者、即チ喩フル↧常ニ随ヒテ↢悪友ニ↡不ルニ↞値ハ↢真ノ善知識ニ↡也。
^◆ª水火の二河º といふは、 すなはち衆生の貪愛は水の0813ごとし、 瞋憎は火のごとしと喩ふるなり。
言フ↢水火ノ二河ト↡者、即チ喩フル↢衆生ノ貪愛ハ如シ↠水ノ、瞋*増ハ如シト↟火ノ也。
^◆ª中間の白道四 五寸なるº といふは、 すなはち衆生の貪瞋煩悩のなかに、 よく清浄の願往生の心を生ずるに喩ふ 。 すなはち貪瞋強きによる1245がゆゑに、 すなはち水火のごとしと喩ふ。 善心は微なるがゆゑに、 白道のごとしと喩ふ 。
▼言フ↢中間ノ白道四五寸ナルト↡者、即チ喩フル↢衆生ノ貪瞋煩悩ノ中ニ能ク生ズルニ↢清浄ノ願往生ノ*心ヲ↡也。乃チ由ルガ↢貪瞋強キニ↡故ニ即チ喩フ↠如シト↢水火ノ↡。善心ハ微ナルガ故ニ喩フ↠如シト↢白道ノ↡。
^◆また ª水波つねに道を湿すº といふは、 すなはち愛心つねに起りて、 よく善心を染汚するに喩ふ 。
又水波常ニ湿ストイフ↠道1296ヲ者、即チ喩フル↣愛心常ニ起リテ能ク染↢汚スルニ善心ヲ↡也。
^◆また ª火炎つねに道を焼くº といふは、 すなはち瞋嫌の心よく功徳の法財を焼くに喩ふ 。
又火燄常ニ焼クトイフ↠道ヲ者、即チ喩フル↣瞋嫌之心能ク焼クニ↢功徳之法財ヲ↡也。
^◆ª人の道の上を行きて直に西に向かふº といふは、 すなはちもろもろの行業を回して 直に西方に向かふに喩ふ 。
言フ↧人ノ行キテ↢道ノ上ヲ↡直ニ向フト↞西ニ者、即チ喩フル↧廻シテ↢諸ノ行業ヲ↡直ニ向フニ↦西方ニ↥也。
^◆ª東の岸に人の声の勧め遣るを聞きて、 道を尋ねて直に西に進むº といふは、 すなはち釈迦はすでに滅して、 後の人見たてまつらざれども、 なほ教法 ありて尋ぬべきに喩ふ 。 すなはちこれを声のごとしと喩ふるなり。
言フ↧東ノ岸ニ聞キテ↢人ノ声ノ勧メ遣ルヲ↡尋ネテ↠道ヲ直ニ西ニ進ムト↥者、即チ喩フ↧釈迦ハ已ニ*滅シテ後ノ人不レドモ↠見タテマツラ、由有リテ↢教法↡可キニ↞尋ヌ。即チ喩フル↢之ヲ如シト↟声ノ也。
^◆ªあるいは行くこと一分二分するに群賊等喚び回すº といふは、 すなはち別解・別行・悪見 人等の、 *妄りに見解を説きてたがひにあひ惑乱し、 およびみづから罪を造りて退失するに喩ふ 。
▼言フ↢或イハ行クコト一分二分スルニ▼群賊等喚ビ廻スト↡者、即チ喩フル↧別解・別行・*悪見人等ノ、妄ニ説キテ↢見解ヲ↡迭ニ相惑乱シ、及ビ自ラ造リテ↠罪ヲ退失スルニ↥也。
^◆ª西の岸の上に人ありて喚ばふº といふは、 すなはち弥陀の願意に喩ふ 。
言フ↢西ノ岸ノ上ニ有リテ↠人喚フト↡者、即チ喩フル↢弥陀ノ願意ニ↡也。
^◆ª須臾に西の岸に到りて善友あひ見て喜ぶº といふは0814、 すなはち衆生久しく生死に沈みて、 曠劫に輪廻し、 迷倒してみづから纏りて、 解脱するに由なきに、 仰ぎて釈迦の発遣して、 さして西方に指向したまふことを蒙り、 また弥陀の悲心をもつて招喚したまふによりて、 いま二尊 (釈尊・阿弥陀仏) の意に信順して、 水1246火の二河を顧みず、 念々に遺るることなく、 かの願力の道に乗りて、 命を捨てをはりて後にかの国に生ずることを得て、 仏とあひ見えて慶喜 なんぞ極まらんと喩ふるなり。
言フ↧須臾ニ到リテ↢西ノ岸ニ↡善友相見テ喜ブト↥者、即チ喩フル↧衆生久シク沈ミテ↢生死ニ↡、曠劫ニ*淪廻シ、迷*倒シテ自ラ纏ヒテ、无キニ↠由↢解脱スルニ↡、仰ギテ蒙リ↣釈迦ノ発遣シテ指↢向シタマフコトヲ西方ニ↡、又藉リテ↢弥陀ノ悲心ヲモテ招喚シタマフニ↡、今信↢順シテ二尊之意ニ↡、不↠顧ミ↢水火ノ二河ヲ↡、念々ニ无ク↠遺ルルコト、乗リテ↢彼ノ願力之道ニ↡、捨テ↠命ヲ已リテ後ニ得テ↠生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡、与↠仏相見エテ慶喜何ゾ極ラムト↥也。
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)結名義
^◆また一切の行者、 行住坐臥 三業に修するところ、 昼夜時節を問ふことなく、 つねにこの解をなし◗つねにこの想をなすがゆゑに、 回向発願心と名づく。
▼又一切ノ行者、行住坐臥三業ニ所↠修スル、无ク↠問フコト↢昼夜時節ヲ↡、常ニ作シ↢此ノ解ヲ↡常ニ*作スガ↢此ノ想ヲ↡故ニ、名ク↢廻向発願心ト↡。▼
二 ⅷ Ⅱ b イ (三)(Ⅱ)(ⅱ)(b)約還相
^◆また ª回向º といふは、 かの国に生じをはりて、 還りて大悲を起して、 生死に回入して衆生を教化するをまた回向と名づく。
▼又言フ↢廻向ト↡者、生ジ↢彼ノ国ニ↡已リテ、還リテ起シテ↢大悲ヲ↡、廻↢入シテ生死ニ↡教↢化スルヲ衆生ヲ↡亦*名クル↢廻向ト↡也。▼
二 ⅷ Ⅱ b ロ 結三心示功能
(一)因果具成
^◆三心すでに具 すれば、 行として成ぜずといふことなし。 願行すでに成じて、 もし生ぜずは、 この処あることなからん。
▼三心既ニ具スレバ、无シ↢行トシテ不トイフコト↟成ゼ。願行既ニ成ジテ若シ不ハ↠生ゼ者、无ケム↠有ルコト↢是ノ処↡也。
二 ⅷ Ⅱ b ロ (二)通摂定善
^◆またこの三心は また通じて定善の義に摂す、 知るべし」 と。
▼又此ノ三心ハ亦通ジテ摂ス↢定善之義ニ↡、応シト↠知ル。」
二 ⅷ Ⅱ c 礼讃
イ 問
^¬往生礼讃¼ にいはく、 「▲問ひていはく、 いま人を勧めて往生せしめんと欲はば、 いまだ知らず、 いかんが安心・起行して業をなしてか、 さだめてかの国土に往生することを得んや。
▼¬往1297生礼讃ニ¼云ク、「問ヒテ曰ク、今欲ハバ↢勧メテ↠人ヲ往生セシメムト↡者、未ダ↠知ラ、若為ガ▼安心・▼起行シテ▼作シテカ↠業ヲ、定メテ得ム↣往↢生スルコトヲ*彼ノ国土ニ↡也。
二 ⅷ Ⅱ c ロ 答
^◆答へていはく、 かならず○浄国の土に往生せんと欲はば、 ¬観経¼ の説0815のごときは、 三心を具すればかならず往生を得。 なんらをか三となす。
答ヘテ曰ク、必ズ欲ハバ↣*往↢生セムト*浄国ノ土ニ↡者、如キ↢¬観経ノ¼説ノ↡者、具スレバ↢三心ヲ↡*者必ズ得↢往生ヲ↡。何等ヲカ為ル↠三ト。
^◆一には至誠心、 いはゆる身業をもつてかの仏を礼拝し、 口業をもつ1247てかの仏を讃歎称揚し、 意業をもつてかの仏を専念 観察す 。 *おほよそ三業を起すに、 かならずすべからく真実なるべし。 ゆゑに至誠心と名づく。
一ニ者至誠心、所謂ル身業ヲモテ礼↢拝シ彼ノ仏ヲ↡、口業ヲモテ讃↢歎称↣揚シ彼ノ仏ヲ↡、意業ヲモテ専↢念観↣察ス彼ノ仏ヲ↡。凡ソ起スニ↢三業ヲ↡必ズ須クシ↢真実ナル↡。故ニ名ク↢至誠心ト↡。
^◆二には深心、 すなはちこれ真実の信心をもつて、 自身はこれ煩悩を具足せる凡夫、 善根薄少にして三界に流転して 火宅を出でずと信知し、 いま弥陀の本弘誓願 、 名号を称すること下十声・一声等に至るに及ぶまで さだめて往生を得と信知して、 乃至一念も疑心あることなし。 ゆゑに深心と名づく。
二ニ者深心、即チ是真実ノ信心ヲモテ、▼信↧知シ*自身ハ是具↢足セル煩悩ヲ↡凡夫、善根薄少ニシテ流↢転シテ三界ニ↡不ト↞出デ↢火宅ヲ↡、今信↪知シテ弥陀ノ本弘誓願、及ブマデ↧称スルコト↢名号ヲ↡下至ルニ↦十声一声等ニ↥定メテ得ト↩往生ヲ↨、乃至一念モ無シ↠有ルコト↢疑心↡。故ニ名ク↢深心ト↡。
^◆三には回向発願心、 所作の一切の善根ことごとくみな往生に回願す。 ゆゑに回向発願心と名づく。
三ニ者廻向発願心、所作ノ一切ノ善根悉ク皆廻願ス↢往生ニ↡。故ニ*名ク↢廻向発願心ト↡。
^◆この三心を具すれば、 かならず生ずることを得、 ▽*もし一心少けぬれば、 すなはち生ずることを得ず。 ¬観経¼ につぶさに説くがごとし、 知るべし」 と。
具スレバ↢此ノ三心ヲ↡必ズ得ル↠*生ズルコトヲ也、若シ少ケヌレバ↢一心↡即チ不↠得↠生ズルコトヲ。如シ↢¬観経ニ¼具ニ説クガ↡。応シト↠*知ル。」
二 ⅷ Ⅲ 私釈
a 総釈
^わたくしにいはく、 ○引くところの三心 は これ行者の*至要なり。 所以はいかんぞ。 ¬経¼ (観経) にはすなはち、 「△具三心者必生彼国」 といふ。 あきらかに知りぬ、 三 を具すればかならず生ずることを得べし 。 ¬釈¼ (礼讃) にはすなはち、 「△若少一心即不得生」 といふ。 あ0816きらかに知りぬ、 一も少けぬればこれさらに不可なり 。 これによりて極楽に生れんと欲はん人は、 まつたく三心を具足すべし。
私ニ云ク、所ノ↠引ク三心者是行者ノ至要也。所以者何ンゾ、¬経ニハ¼則チ、云フ↢「具三心者必生彼国ト」↡。明ニ*知リヌ、具スレバ↠三ヲ必ズ応シ↠得↠生ズルコトヲ。¬釈ニハ¼則チ云フ↢「若少一心即不得生ト」↡。明ニ知リヌ、一モ少ケヌレバ是更ニ不可ナリ。因リテ↠茲ニ欲ハム↠生ゼムト↢極楽ニ↡之人ハ全ク可シ↣具↢足ス三心ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅲ b 別釈
イ 至誠心
(一)総指
^◇そのなかに 「至誠心」 と はこれ真実の心なり。 そ1248の相、 かの文 (散善義) のごとし。
其ノ中ニ「至誠心ト」者是真実ノ心也。其ノ相如シ↢彼ノ文ノ↡。
二 ⅷ Ⅲ b イ (二)別示【内外相翻】
^◇ただし 「△外に賢善精進の相を現じ、 ↓内に虚仮を懐く」 といふは、 外は内に対する辞なり。 いはく外相と内心と不調の意なり。 すなはちこれ外は智、 内は愚なり。 賢といふは愚に対する言なり。 いはく外はこれ賢 、 内はすなはち愚なり。 善は悪に対する辞なり。 いはく外はこれ善 、 内はすなはち悪なり。 精進は懈怠に対する言なり。 いはく外には精進の相を示し 、 内にはすなはち懈怠の心を懐く。 もしそれ*外を翻じて内に蓄へば、 まことに*出要に備ふべし。
但シ「外ニ現ジ↢賢善精進ノ相ヲ↡、内ニ懐クトイフ↢虚仮ヲ↡」者、外者対スル↠内ニ之辞也。謂ク外相ト与↢内心↡不調之意1298ナリ。即チ是外ハ智、内ハ愚也。賢トイフ者対スル↠愚ニ之*言也。謂ク外ハ是賢、内ハ即チ愚也。善者対スル↠悪ニ之辞也。謂ク外ハ是善、内ハ即チ*悪ナリ。精進者対スル↢懈怠ニ↡之*言也。謂ク外ニハ示シ↢精進ノ相ヲ↡、内ニハ即チ懐ク↢懈怠ノ心ヲ↡也。若シ夫レ翻ジテ↠外ヲ蓄ヘバ↠内ニ者、祇ニ応シ↠備フ↢出要ニ↡。
^◇「↑内に虚仮を懐く」 と等とは、 内は外に対する辞なり。 いはく内心と外相と不調の意なり。 すなはちこれ内は虚、 外は実なり。 虚 は実に対する言なり。 いはく内は虚、 外は実なるものなり。 仮◗は真に対する辞なり。 いはく内は仮 、 外は真なり。 もしそれ*内を翻じて外に播さば、 また出要に足りぬべし。
「内ニ懐クト↢虚仮ヲ↡」*等トハ、内者対スル↠外ニ之辞也。謂ク内心ト与↢外相↡不調之意ナリ。即チ是内ハ虚、外ハ実也。虚者対スル↠実ニ之*言也。*謂ク内ハ虚、外ハ実ナル者也。仮者対スル↠真ニ之辞也。謂ク内ハ仮、外ハ真也。若シ夫レ翻ジテ↠内ヲ播サバ↠外ニ者、亦可シ↠足リヌ↢出要ニ↡。
二 ⅷ Ⅲ b ロ 深心【信疑決判】
^◇次に 「深心」 と は、 いはく深信の心なり。 ▼まさに知るべし、 ▼*生死の家には疑0817をもつて所止となし、 ▼涅槃の城には信をもつて能入となす。 ゆゑに いま二種の信心を建立して、 九品の往生を決定するものなり。
次ニ「深心ト」者、謂ク深信之*心ナリ。▼当ニシ↠知ル、▼生死之家ニハ以テ↠疑ヲ為シ↢所止ト↡、▼涅槃之城ニハ以テ↠信ヲ為ス↢能入ト↡。故ニ今建↢立シテ二種ノ信心ヲ↡、決↢定スル九品ノ往生ヲ↡者也。
^◇またこのなかに 「△一切の別解・別行・異学・異見」 等といふは、 これ聖道門の解・行・学・見を指す 。 その余1249はすなはちこれ浄土門の意なり。 文にありて見るべし。 あきらかに知りぬ、 善導の意またこの二門を出でず。
又此ノ中ニ言フ↢「一切ノ別解・別行・異学・異見等ト」↡者、是指ス↢聖道門ノ解行学見ヲ↡也。其ノ余ハ即チ是浄土門ノ意ナリ。在リテ↠文ニ可シ↠見ル。▼明ニ知リヌ、善導之意亦不ル↠出デ↢此ノ二門ヲ↡也。
二 ⅷ Ⅲ b ハ 廻向発願心
^◇回向発願心の義、 別の釈を俟つべからず。 行者これを知るべし。
廻向発願心之義、不↠可カラ↠俟ツ↢別ノ釈ヲ↡。行者応シ↠知ル↠之ヲ。
二 ⅷ Ⅲ c 料簡通局
^◇この三心は ▼総じてこれをいへば、 もろもろの行法に通ず。 ▼別してこれをいへば、 往生の行にあり。 いま通を挙げて別を摂す。 意すなはちあまねし。 行者よく用心して、 あへて*忽諸せしむることなかれ。
▼此ノ三心者総ジテ而言ヘバ↠之ヲ、通ズ↢諸ノ行法ニ↡。別シテ而言ヘバ↠之ヲ、在リ↢往生ノ行ニ↡。▼今挙ゲテ↠通ヲ摂ス↠別ヲ。意即チ周シ矣。▼行者能ク用心シテ、敢テ勿レ↠令ムコト↢忽*諸セ↡。
二 ⅸ【四修章】
Ⅰ 標章
【9】 ^念仏の行者四修の法を行用すべき文。
念仏ノ行者可キ↣行↢用ス四修ノ法ヲ↡之文
二 ⅸ Ⅱ 引文
a 礼讃
イ 標
^善導の ¬往生礼讃¼ にいはく、 「▲また ▽四修の法を勧行す。 何者をか四となす。
善1299導ノ▼¬往生礼讃ニ¼云ク、「又勧↢行ス四修ノ法ヲ↡。何者ヲカ為ル↠四ト。
二 ⅸ Ⅱ a ロ 釈
^◆一には恭敬修。 いはゆるかの仏および 一切の聖衆等を恭敬礼拝す。 ゆゑに恭敬修と名づく。 ▽畢命を期となして誓ひて中止せざる、 すなはちこれ長時修なり。
一ニ者恭敬修。所謂ル恭↢敬礼↣拝ス彼ノ仏*及ビ一切ノ聖衆等ヲ↡。故ニ名ク↢恭敬修ト↡。畢ルヲ↠命為シテ↠期ト▼誓ヒテ不ル↢中止セ↡、即チ是長時修ナリ。
^◆二には無余修。 いはゆるもつぱらかの仏の名を称して専念し専想し、 もつぱらかの仏および一切の聖衆等を礼讃して、 余業を雑へず。 ゆゑに0818無余修と名づく。 ▽畢命を期となして誓ひて中止せざる、 すなはちこれ長時修なり。
*二ニ者無余修。▼所謂ル専ラ称シテ↢彼ノ仏ノ名ヲ↡専念シ専想シ、専ラ礼↢*讃シテ彼ノ仏及ビ一切ノ聖衆等ヲ↡、不↠雑ヘ↢余業ヲ↡。故ニ名ク↢無余修ト↡。畢命ヲ為シテ↠期ト▼誓ヒテ不ル↢中止セ↡、即チ是長時修ナリ。
^◆三には無間修。 いはゆる相続して恭敬 礼拝し、 称名 讃歎し、 憶念 観察し、 回向発願し、 心々に1250相続して余業をもつて来し間へず。 ゆゑに無間修と名づく。 また貪瞋煩悩をもつて来し間へず。 犯せんに随ひ、 随ひて懴せよ。 念を隔て時を隔て日を隔てず。 つねに清浄ならしめよ。 また無間修と名づく。 ▽畢命を期となして誓ひて中止せざる、 すなはちこれ長時修なり」 と。
*三ニ者無間修。▼所謂ル相続シテ恭敬礼拝シ、称名讃歎シ、憶念観察シ、廻向発願シ、心々ニ相続シテ▼不↧以テ↢余業ヲ↡来シ間ヘ↥。故ニ名ク↢無間修ト↡。又▼不↧以テ↢貪瞋煩悩ヲ↡来シ間ヘ↥。随ヒ↠犯セムニ、随ヒテ懴セヨ。*不↢隔テ↠念ヲ隔テ↠時ヲ隔テ↟日ヲ。常ニ使メヨ↢清浄ナラ↡。亦名ク↢無間修ト↡。畢命ヲ為シテ↠期ト▼誓ヒテ不ル↢中止セ↡、即チ是長時修ナリト。」
二 ⅸ Ⅱ b 西方要決
イ 標
^¬西方要決¼ にいはく、 「ただ四修を修してもつて正業となす。
▼¬西方要決ニ¼云ク、「但修シテ↢四修ヲ↡以テ為ス↢正業ト↡。
二 ⅸ Ⅱ b ロ 釈
(一)長時修
^一には長時修。 ▲*初発心よりすなはち菩提に至るまで、 つねに*浄因をなしてつひに退転 なし。
一ニ者長時修。従リ↢初発*心↡乃チ至↢菩提マデ↢、恒ニ作シテ↢浄因ヲ↡終ニ無シ↢退転↡。
二 ⅸ Ⅱ b ロ (二)恭敬修
^▼二には恭敬修。 これにまた五あり。
▼二ニ者恭敬修。此ニ復有リ↠五。
^◆一には有縁の聖人を敬ふ。 いはく▲行住坐臥、 西方を背かず、 *涕唾便痢、 西方に向かはず。
一ニハ敬フ↢▼有縁ノ聖人ヲ↡。謂ク行住坐臥不↠背カ↢西方ヲ↡、涕唾便痢、不↠向ハ↢西方ニ↡也。
^◆二には有縁の*像教を敬ふ。 いはく西方の弥陀の*像変を造る 。 広く作ることあたはずは、 ただ一仏二菩薩 (阿弥陀仏・観音・勢至) を作ることまた得たり。 教 と は ¬弥陀経¼ 等を五色の袋に盛れて、 みづから読み他を教へよ。 この経 像を室のなかに安置して、 六時に*礼懴し、 華香をもつて供養し、 ことに尊重をなせ。
二ニ*者敬フ↢有縁ノ像教ヲ↡。謂ク造ル↢西方ノ弥陀ノ像変ヲ↡。不ハ↠能ハ↢広ク作ルコト↡、但作ルコト↢一仏二菩薩ヲ↡亦得タリ。教ト者¬弥陀経¼等ヲ五色ノ袋ニ盛レテ、自ラ読ミ教ヘヨ↠他ヲ。*此之経像ヲ安↢置シテ*室ノ中ニ↡、六時ニ礼懴シ、*花香ヲモテ供養シ、特ニ生セ↢尊重ヲ↡。
^◆三には有縁の善知識を敬ふ。 いはく浄土の教を宣ぶ0819るものは、 もしは千由旬・十由旬よりこのかた 、 ならびにすべからく敬重し親近し供養すべし。 *別学のものには総じて敬心を起せ。 おのれと同ぜざるをば、 ただ深く敬ふことを知れ。 もし軽慢を生ぜば、 罪を得る1251こと窮まりなし。 ゆゑにすべからくすべて敬ふべし。 すなはち行障を 除く 。
三ニ*者敬フ↢▼有縁ノ善知識ヲ↡。謂ク宣ブル↢浄土ノ教ヲ↡者ハ、若シハ千由旬*十由旬1300ヨリ已来タ、並ニ須クシ↢敬重シ親近シ供養ス↡。別学之者ニハ総ジテ起セ↢敬心ヲ↡。与↠己不ルヲバ↠同ゼ但シ知レ↢深ク敬フコトヲ↡也。若シ生ゼバ↢軽慢ヲ↡、得ルコト↠罪ヲ无シ↠窮リ。故ニ須クシ↢総テ敬フ↡。即チ除ク↢行障ヲ↡。
^◆四には同縁の伴を敬ふ。 いはく同じく業を修するものなり。 みづから 障重くして独業 成ぜずといへども、 かならず良き朋によりてまさによく行をなせば、 危きを扶け厄を救ふ。 助力しあひ資けて、 同伴の善縁深くあひ保重す 。
四ニ*者敬フ↢▼同縁ノ伴ヲ↡。謂ク同ジク修スル↠業ヲ者ナリ。自ラ雖モ↢障重クシテ独業不ト↟成ゼ、要ズ藉リテ↢良キ朋ニ↡方ニ能ク作セバ↠行ヲ、扶ケ↠危キヲ救フ↠*厄ヲ。助力シ相資ケテ、同伴ノ善縁深ク相保重ス。
^◆五には三宝を敬ふ。 *同体・*別相ならびに深く敬ふべし。 つぶさに録すことあたはず。 浅き行者の*依修することを果さざるためなり。 住持の三宝と は、 いまの浅識のために大因縁をなす。 いまほぼ*料簡すべし。
五ニ*者敬フ↢▼三宝ヲ↡。▼同体・▼別相並ニ合シ↢深ク敬フ↡。不↠能ハ↢具ニ録スコト↡。▼為ナリ↢浅キ行者ノ不ル↟果サ↢依修スルコトヲ↡。▼住持ノ三宝ト者、▼与ニ↢今ノ浅識ノ↡作ス↢大因縁ヲ↡。今粗ボ料簡スベシ。
^仏宝といふは、 いはく*檀に雕り、 *綺に繍ひ、 *素質金容、 玉を鏤め、 *繒に図し、 石に磨り、 土に削る。 この霊像ことに尊承すべし。 しばらく形を観たてまつれば、 罪消えて福を増す。 もし少慢を生ずれば、 悪を長じ善を亡ず。 ただし尊容を想ふに、 まさに真仏を見つべし。
言フ↢仏*宝ト↡者、謂ク▼雕リ↠檀ニ、▼繍ヒ↠綺ニ、素質金容、▼鏤メ↠玉ヲ、▼図シ↠*繒ニ、▼磨リ↠石ニ、▼削ル↠土ニ。此之霊像特ニ可シ↢尊承ス↡。蹔爾観タテマツレバ↠形ヲ、罪消エテ増ス↠福ヲ。若シ生ズレバ↢少慢ヲ↡、長ジ↠悪ヲ善ヲ亡ズ。但シ想フニ↢尊容ヲ↡当ニシ↠見ツ↢真仏ヲ↡。
^法宝といふは、 三乗の教旨、 *法界の所流なり。 名句の所詮、 よ0820く*解縁を生ず。 ゆゑにすべからく珍仰すべし。 もつて慧を発す基なり。 尊経を抄写してつねに浄室に安んぜよ。 箱篋に盛れ貯へて、 ならびに厳敬すべし。 読誦の時は、 身手清潔なれ。
言フ↢法宝ト↡者、▼三乗ノ教旨、法界ノ所流ナリ。▼名句ノ所詮能ク生ズ↢解縁ヲ↡。故ニ須クシ↢珍仰ス↡。以テ発ス↠*恵ヲ基ナリ。*抄↢写シテ尊経ヲ↡恒ニ安ンゼヨ↢浄室ニ↡。箱篋ニ盛レ貯ヘテ、並ニ*令シ↢厳敬ス↡。読誦之時ハ身手清潔ナレ。
^僧宝といふは、 聖僧・菩薩・破戒の流なり。 等心に敬ひを起せ。 慢想を生ずることなかれ。
言フ↢僧宝ト↡者、▼聖僧・▼菩薩・▼破戒之流ナリ。等心ニ起セ↠敬ヲ。勿レ↠生ズルコト↢慢想ヲ↡。
二 ⅸ Ⅱ b ロ (三)無間修
^三には無間修。 ▲いはくつねに念仏して往生の心をなす 。 一1252切 時において心につねに想ひ巧め。
▼三ニ者無間修。謂ク常ニ念仏シテ作ス↢往生ノ心ヲ↡。於テ↢一切時ニ↡心ニ恒ニ想ヒ巧メ。
^◆たとへば人ありて他に抄掠せられ 、 身下賎となりてつぶさに艱辛を受けんに、 たちまちに父母を思ひて国に走り帰ることを欲す。 行装いまだ弁ぜず。 なほ他の郷にありて、 日夜に思惟して、 苦忍ぶるに堪へず。 時としてしばらくも捨てて耶嬢を念ぜざることなきが、 計をなすことすでに成じて、 すなはち帰りて達することを得て、 父母に親近してほしいままに歓娯するがごとし。
譬ヘバ若シ↧有リテ↠人被レ↢他ニ抄掠セ↡、身為リテ↢下賎ト↡備ニ受ケムニ↢艱辛ヲ↡、忽ニ思ヒテ↢父母ヲ↡欲ス↣走リ↢帰ラムコトヲ国ニ↡、行装未ダ↠*辨ゼ、由在リテ↢他ノ郷ニ↡、日夜ニ思惟シテ、苦不↠堪ヘ↠忍ブルニ、无キガ↢時トシテ蹔クモ捨テテ不ルコト↟念ゼ↢耶嬢ヲ↡、為スコト↠計ヲ既ニ成ジテ、便チ帰リテ得テ↠達スルコトヲ、親↢近シテ父母ニ↡縦任ニ歓娯スルガ↥。
^◆行者もまたしかなり。 往因の煩悩 、 善心を壊乱し、 福智の珍財ならびにみな散失して、 久しく生死に流れて、 制するに自由ならず。 つねに魔王のために僕使となりて、 六道に駆馳し 、 身心を苦切す。
行者モ亦*爾ナリ。往因ノ煩悩*壊↢乱1301シ善心ヲ↡、福智ノ珍*財並ニ皆散失シテ、久シク流レテ↢生死ニ↡、制スルニ不↢自由ナラ↡。恒ニ与ニ↢魔王ノ↡而作リテ↢僕使ト↡、駆↢馳シ六道ニ↡苦↢切ス身心ヲ↡。
^◆いま善縁に遇ひて、 たちまちに弥陀の慈父、 弘願に違はず群生を済抜したまふことを聞きて、 日夜に驚忙して、 心を発して往かんと願ふ。 このゆゑに精勤0821して倦まずして、 まさに仏恩を念ずべし。 *報じ尽すを期となして、 心 つねに計り念ふべし。
今遇ヒテ↢善縁ニ↡、忽ニ聞キテ↧弥陀ノ慈父不↠違ハ↢弘願ニ↡済↦抜シタマフコトヲ群生ヲ↥、日夜ニ驚忙シテ、発シテ↠心ヲ願フ↠往カムト。所以ニ精懃シテ不シテ↠倦マ、当ニシ↠念ズ↢仏恩ヲ↡。報ジ尽スヲ為シテ↠期ト心恒ニ計リ念フベシ。
二 ⅸ Ⅱ b ロ (四)無余修
^四には無余修。 いはく▲もつぱら極楽を求めて弥陀を礼念するなり。 ただし諸余の業行雑起せしめざれ。 所作の業、 日別にすべからく念仏・誦経を修すべし。 余課を留めざるのみ」 と。
四ニ者无余修。謂ク専ラ求メテ↢極楽ヲ↡礼↢念スルナリ弥陀ヲ↡。但シ▼諸余ノ業行不レ↠令メ↢雑起セ↡。所作之業、日別ニ須クシ↠修ス↢念仏誦経ヲ↡。不レ↠留メ↢余課ヲ↡耳ト。」
二 ⅸ Ⅲ 私釈
a 厭煩
^わたくしにいはく、 四修の文 見つべし。 繁きを恐れて解せず。
私ニ云ク、四修之文可シ↠見ツ。恐レテ↠繁ヲ而不↠解セ。
二 ⅸ Ⅲ b 釈要義
イ 難
^ただし前文1253のなかに、 すでに△四修といひて、 ただ三修のみあり。 もしはその文を脱せるか、 もしはその意あるか。
但シ前文ノ中ニ、既ニ云ヒテ↢四修ト↡、唯有リ↢三修ノミ↡。若シハ脱セルカ↢其ノ文ヲ↡、若シハ有ルカ↢其ノ意↡也。
二 ⅸ Ⅲ b ロ 通
^さらに脱文に あらず。 その深き意を有するなり。 なにをもつてか知ることを得る。 四修と は、 一には長時修、 二には慇重修、 三には無余修、 四には無間修なり。 しかるに初めの長時をもつて、 ただこれ後の三修に通用す 。
更ニ非ズ↢脱文ニ↡。有スル↢*其ノ深キ意ヲ↡也。*何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。四修ト者、一ニハ長時修、二ニハ▼慇重修、三ニハ無余修、四ニハ無間修也。而ルニ以テ↢初ノ長時ヲ↡、只是通↢用ス後ノ三修ニ↡也。
^いはく慇重もし退せば、 慇重の行すなはち成ずべからず。 無余もし退せば、 無余の行すなはち成ずべからず。 無間もし退せば、 無間の修 すなはち成ずべからず。 この三修の行を成就せしめんがために、 みな長時をもつて三修に属して、 通じて修せしむるところなり。
謂ク慇重若シ退セバ、慇重之行即チ不↠可カラ↠成ズ。無余若シ退セバ、無余之行即チ不↠可カラ↠成ズ。無間若シ退セバ、無間之*修即チ不↠可カラ↠成ズ。為ニ↠使メムガ↣成↢就セ此ノ三修ノ行ヲ↡、皆以テ↢長時ヲ↡属シテ↢於三修ニ↡、所↠令ムル↢通ジテ修セ↡也。
^ゆゑに三修の下にみな結して 、 「△畢命為期誓不中止 即是長時修」 (礼讃) といふこれなり。 例するにかの精進の*余の五度に通ずるがごときのみ。
故ニ三修之下ニ皆結シテ、云フ↢「畢命為期誓不中止即是長時修ト」↡是也。▼例スルニ如シ↣彼ノ精進ノ通ズルガ↢於余ノ五度ニ↡而已。
二 ⅹ 化仏讃嘆章【化讃章】
Ⅰ 標章
【10】0822^弥陀の化仏来迎して、 *聞経の善を讃歎せずして、 ただ念仏の行を讃歎したまふ文。
弥陀ノ化仏来迎シテ、不シテ↣讃↢歎セ聞経之善ヲ↡、唯讃↢歎シタマフ念仏之行ヲ↡*之文
二 ⅹ Ⅱ 引文
a 観経
^¬観無量寿経¼ にのたまはく、 「▲あるいは衆生ありてもろもろの悪業を作り 、 方等経典を誹謗せずといへども、 かくのごときの愚人、 多く衆悪を造りて慚愧あ1254ることなし。
¬観1302無量寿経ニ¼云ク、「▼或イハ有リテ↢衆生↡▼作リ↢衆ノ悪業ヲ↡、雖モ↠不ト↣誹↢謗セ▼方等経典ヲ↡、如キノ↠此クノ愚人、多ク造リテ↢衆悪ヲ↡無シ↠有ルコト↢慚愧↡。
^◆命終らんと欲する時、 善知識の、 ために大乗の十二部経の首題の名字を讃むるに遇はん。 かくのごときの諸経の名を聞く をもつてのゆゑに、 千劫の極重の悪業を除却す。 智者また教へて、 掌を合せ手を叉へて ª南無阿弥陀仏º と称せしむ。 仏の名を称するがゆゑに、 五十億劫の生死の罪を除く。
命欲スル↠終ラムト時、遇ハム↣善知識ノ為ニ讃ムルニ↢大乗ノ▼十二部経ノ▼首題ノ名字ヲ↡。以ノ↠聞クヲ↢如キノ↠是クノ諸経ノ名ヲ↡故ニ、除↢却ス千劫ノ極重ノ悪業ヲ↡。智者復教ヘテ、合セ↠掌ヲ叉ヘテ↠手ヲ称セシム↢南無阿弥陀仏ト↡。称スルガ↢仏ノ名ヲ↡故ニ除ク↢五十億劫ノ生死之罪ヲ↡。
^◆その時かの仏、 すなはち化仏・化観世音・化大勢至を遣はして、 行者の前に至らしめ 、 ˆ化仏等のˇ 讃めてのたまはく、 ª善男子、 ▽なんぢ仏名を称するがゆゑにもろもろの罪消滅すれば、 われ来りてなんぢを迎ふº」 と。
爾ノ時彼ノ仏、即チ遣シテ↢化仏・化観世音・化大勢至ヲ↡、至ラシメ↢行者ノ前ニ↡、讃メテ言ク、善男子、汝称スルガ↢仏名ヲ↡故ニ諸ノ罪消滅スレバ、我来リテ迎フト↠*汝ヲ。」
二 ⅹ Ⅱ b 散善義
^同経の ¬疏¼ (散善義) にいはく、 「▲聞くところの化讃、 ただ称仏の功を述べて、 ªわれ来りてなんぢを迎ふº と 、 聞経の事を論ぜず。
同ジキ経ノ¬疏ニ¼云ク、「所ノ↠聞ク化讃、但述ベテ↢称仏之功ヲ↡、我来リテ迎フト↠汝ヲ、不↠論ゼ↢聞経之事ヲ↡。
^◆しかるに仏の願意に望むれば、 ただ励めて正念に 名を称せしむ。 往生の義、 疾きこと雑散の業に同じからず。 この ¬経¼ (観経) および諸部のなかのごとき、 処々に広く歎じて、 勧めて名を称せしむ。 まさに要益となす、 知るべし」 と。
▼然ルニ望ムレバ↢仏ノ願意ニ↡者、唯*励テ正念ニ称セシム↠名ヲ。往生ノ義、疾キコト不↠同ジカラ↢▼雑散之業ニ↡。▼如キ↢此ノ¬経¼及ビ諸部ノ中ノ↡、処々ニ広ク歎ジテ勧メテ令ム↠称セ↠名ヲ。将ニ為ル↢要益ト↡也、応シト↠知ル。」
二 ⅹ Ⅲ 私釈
a 釈讃嘆有無
^0823わたくしにいはく、 聞経の善 これ本願にあらず。 *雑業のゆゑに化仏讃めたまはず。 念仏の行はこれ本願正業のゆゑに、 化仏讃歎したまふ。
私ニ云ク、聞経之善是非ズ↢本願ニ↡。雑業ノ故ニ化仏不↠讃メタマハ。念仏之行ハ是本願正業ノ故ニ、化仏讃歎シタマフ。
二 ⅹ Ⅲ b 約滅罪多少
^しかのみならず、 聞経と念仏とは滅罪の多少不同なり。 ¬観経 疏¼ (散善義) にいは1255く、 「▲問ひていはく、 なんがゆゑぞ、 経を聞くこと十二部なるに、 ただ罪を除くこと千劫、 仏を称すること一声するには、 すなはち罪を除くこと五百万劫なるは、 なんの意ぞや。
加之聞経ト与ハ↢念仏↡滅罪ノ多少不同也。¬観経疏ニ¼云ク、「問ヒテ曰ク、何ガ故ゾ聞クコト↠経ヲ十二部ナルニ、但除クコト↠罪ヲ千劫、称スルコト↠仏ヲ一声スルニハ、即チ除クコト↠罪ヲ五百万劫ナル者、何ノ意ゾ也。
^◆答へていはく、 造罪の人障重くして、 加ふるに死苦来り逼むるをもつてす。 善人多経を説くといへども、 餐受の心浮散す。 心散ずるによるがゆゑに、 罪を除くことやや軽し。 また仏名はこれ一なれば、 すなはちよく散を摂してもつて心を住せしむ。 また教へて正念に 名を称せしむ。 心重きによるがゆゑに、 すなはちよく罪を除くこと多劫なり」 と。
答ヘテ曰ク、造罪之人障重クシテ、加フルニ以テス↢死苦来リ逼ムルヲ↡。善人雖モ↠説クト↢多経ヲ↡、餐受之心浮散ス。由ルガ↢心散ズルニ↡故ニ、除クコト↠罪ヲ稍軽シ。又仏名ハ是一ナレバ、即チ能1303ク摂シテ↠散ヲ以テ住セシム↠心ヲ。復教ヘテ令ム↢正念ニ称セ↟名ヲ。由ルガ↢心重キニ↡故ニ、即チ能ク除クコト↠罪ヲ多劫也ト。」
二 ⅺ 約対讃嘆章【讃嘆念仏章】
Ⅰ 標章
【11】^○*雑善に約対して念仏を讃歎する文。
約↢対シテ雑善ニ↡讃↢歎スル念仏ヲ↡之文
二 ⅺ Ⅱ 引文
ⅰ 観経
^◇¬観無量寿経¼ にのたまはく、 「▲もし仏を念ずるもの 、 まさに知るべし、 この人はすなはちこれ人中の分陀利華なり。 観世音菩薩・大勢至菩薩、 その勝友となる。 まさに道場に坐して諸仏の家に生るべし」 と。
¬観無量寿経ニ¼云ク、「▼若シ念ゼム↠仏ヲ者、当ニシ↠知ル、此ノ人ハ*即チ▼是人中ノ分陀利華ナリ。▼観世音菩薩・大勢至菩薩為ル↢其ノ勝友ト↡。▼当ニシト↧坐シテ↢道場ニ↡生ル↦諸仏ノ*家ニ↥。」
二 ⅺ Ⅱ ⅱ 散善義
^◇同経の ¬疏¼ (散善義) にいはく、 「▲ª若念仏者º といふより下 ª生諸仏家º に至るまでよりこのかたは0824、 まさしく▼念仏三昧の功能超絶して、 ▽実に雑善の比類となすことを得るにあらざる1256ことを顕す。 すなはちその五あり。
同ジキ経ノ¬疏ニ¼云ク、「▼従リ↢若念仏者トイフ↡下至ルマデヨリ↢生諸仏家ニ↡已来タハ、正シク顕ス↣念仏三昧ノ功能超絶シテ、▼実ニ非ザルコトヲ↢雑善ノ得ルニ↟為ルコトヲ↢比類ト↡。即チ有リ↢其ノ五↡。
^◆一にはもつぱら弥陀仏名を念ずることを明かし、 ◆二には能念の人を讃むることを明かし、 ◆三にはもしよく相続して念仏すれば、 この人はなはだ希有となし、 さらに物としてもつてこれに方ぶべきことなきことを明かす。 ゆゑに分陀利を引きて喩へとなす。
▼一ニハ明シ↣専ラ念ズルコトヲ↢弥陀仏名ヲ↡、▼二ニハ*明シ↠讃ムルコトヲ↢能念之人ヲ↡、三ニハ明ス↫若シ能ク相続シテ念仏スレバ者、*斯ノ人甚ダ為シ↢希有ト↡、更ニ無キコトヲ↪物トシテ可キコト↩以テ方ブ↝之ニ。故ニ引キテ↢分陀利ヲ↡為ス↠喩ト。
^◆ª分陀利º といふは、 人中の好華と名づけ、 また希有華と名づけ、 また人中の上上華と名づけ、 また人中の妙好華と名づく。 この華相伝して蔡華と名づく。 この↓念仏のものは、 すなはちこれ人中の好人なり、 ↓人中の妙好人なり、 ↓人中の上上人なり、 ↓人中の希有人なり、 ↓人中の最勝人なり。
言フ↢▼分陀利ト↡者、名ケ↢人中ノ好花ト↡、亦名ケ↢希有花ト↡、亦名ケ↢*人中ノ上々花ト↡、亦名ク↢人中ノ妙好花ト↡。此ノ花相伝シテ名ク↢蔡花ト↡。*是ノ念仏ノ者ハ、即チ是人中ノ好人ナリ、人*中ノ妙好人ナリ、人中ノ上々人ナリ、人中ノ希有人ナリ、人中ノ最勝人也。▼
^◆四にはもつぱら弥陀の名を念ずれば、 すなはち観音・勢至つねに随ひて影護したまふこと、 また親友知識のごとくなることを明かす。 ◆五には今生にすでにこの益を蒙りて、 命を捨ててすなはち諸仏の家に入ることを明かす。 すなはち浄土これなり。 かしこに到り 長時に法を聞きて歴事し供養す。 因円かに果満ず。 道場の座、 あに賖からんや」 と。
▼四ニハ明ス↧専ラ念ズレバ↢弥陀ノ名ヲ↡者、即チ観音・勢至常ニ随ヒテ影護シタマフコト、亦如クナルコトヲ↦親友知識ノ↥也。▼五ニハ明ス↧今生ニ既ニ蒙リテ↢*此ノ益ヲ↡、捨テテ↠命ヲ即チ入ルコトヲ↦諸仏之家ニ↥。即チ浄土是也。▼到リ↠彼ニ長時ニ聞キテ↠法ヲ歴事シ供養ス。因円カニ果満ズ。▼道場之座、豈ニ*賖カラムヤト↥。」
二 ⅺ Ⅲ 私釈
a 釈約対雑善
イ 問
^◇わたくしに問ひていはく、 ¬経¼ (観経) には、 「△もし仏を念ずるもの、 まさに知るべし、 この人」 等といふは、 ただ念仏者に約して これを讃歎す。 釈の家 (善導) なんの意ありてか、 「△実に雑善の比類0825となすことを得るにあら1257ず」 (散善義) といひて、 雑善に相対して独り念仏を歎むるや。
私ニ問ヒテ曰ク、¬経ニハ¼云フハ↢「若シ念ゼム↠仏ヲ者、当ニシ↠知ル、此ノ人」等ト↡、唯約シテ↢念仏者ニ↡而讃↢歎ス之1304ヲ↡。釈ノ家有リテカ↢何ノ意↡、云ヒテ↣「実ニ非ズト↢雑善ノ得ルニ↟為ルコトヲ↢比類ト↡」、相↢対シテ雑善ニ↡独リ歎ムル↢念仏ヲ↡乎。
二 ⅺ Ⅲ a ロ 答
^◇答へていはく、 文のなかに隠れたりといへども、 義意これ明らけし。 知る所以は、 ▼この ¬経¼ (観経) すでに定散の諸善ならびに念仏の行を説きて、 そのなかにおいて孤り念仏を標して分陀利に喩ふ。 雑善に待するにあらずは、 いかんがよく念仏の功の余善諸行に超えたることを顕さん。
答ヘテ曰ク、文ノ中ニ雖モ↠隠レタリト、義意是明ケシ。所↢以知ル↡者、此ノ¬経¼既ニ説キテ↢定散ノ諸善并ニ念仏ノ行ヲ↡而於テ↢其ノ中ニ↡*孤リ標シテ↢念仏ヲ↡喩フ↢*芬陀利ニ↡。非ズハ↠待スルニ↢雑善ニ↡云何ガ能ク顕サム↣念仏ノ功ノ超エタルコトヲ↢余善諸行ニ↡。
二 ⅺ Ⅲ b 釈讃嘆念仏
イ 正示
(一)【五種嘉誉】
^◆しかればすなはち 「↑念仏者はすなはちこれ人中の好人」 と は、 これ悪に待して 美むるところなり。 「↑人中の妙好人」 といふは、 これ粗悪に待して 称するところなり。 「↑人中の上上人」 といふは、 これ下下に待して讃むるところなり。 「↑人中の希有人」 といふは、 これ常有に待して 歎むるところなり。 「↑人中の最勝人」 といふは、 これ最劣に待して 褒むるところなり。
然レバ則チ「念仏者ハ即チ是人中ノ好人ト」者、是待シテ↠悪ニ而所↠美ムル也。言フ↢「人中ノ妙好人ト」↡者、是待シテ↢麁悪ニ↡而所↠称スル也。言フ↢「人中ノ上々人ト」↡者、是待シテ↢下々ニ↡而所↠讃ムル也。言フ↢「人中ノ希有人ト」↡者、是待シテ↢常有ニ↡而所↠歎ムル也。言フ↢「人中ノ最勝人ト」↡者、是待シテ↢最劣ニ↡而所↠褒ムル也。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)料簡
(Ⅰ)示通九品
(ⅰ)問
^◇問ひていはく、 すでに念仏をもつて上上と名づけば、 なんがゆゑぞ、 上上品のなかに説かずして下下品に至りて 念仏を説くや。
▼問ヒテ曰ク、既ニ以テ↢念仏ヲ↡名ケバ↢上上ト↡*者、*何ガ故ゾ不シテ↠説カ↢上々品ノ中ニ↡至リテ↢下々品ニ↡而説ク↢念仏ヲ↡乎。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)答
(a)正宗
^◇答へていはく、 あに前にいはずや。 念仏の行は広く九品に亘ると。 すなはち前に引くところの ¬往生要集¼ (下) に 、 「△その勝劣に随ひて九品を分つべし」 といふこれなり。
▼答ヘテ曰ク、豈ニ前ニ不ヤ↠云ハ、念仏之行ハ広ク亙ルト↢九品ニ↡。即チ前ニ所ノ↠引ク¬往生要集ニ¼云フ↧「随ヒテ↢其ノ勝劣ニ↡応シト↞分ツ↢九品ヲ↡」是也。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)示功徳超絶
(イ)正釈
^◇しかのみならず下品下生はこれ五逆重罪の人なり。 しかるによく1258逆罪を除滅すること、 余行の堪0826へざるところなり。 ただ念仏の力のみありて、 よく重罪を滅するに堪へたり。 ゆゑに▼*極悪最下の人のために極善最上の法を説くところなり。
加之下品下生ハ是五逆重罪之人也。而ルニ能ク除↢滅スルコト逆罪ヲ↡、所ナリ↠不ル↠堪ヘ↢余行ノ↡。唯有リテ↢念仏之力ノミ↡、能ク堪ヘタリ↠滅スルニ↢於重罪ヲ↡。故ニ▼為ニ↢極悪最下之人ノ↡*所ナリ↠説ク↢極善最上之法ヲ↡。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)引例
[一]約顕教
[Ⅰ]正引
^◇例するに、 かの*無明淵源の病 は、 *中道腑臓の薬にあらずはすなはち治することあたはざるがごとし。
▼例スルニ如シ↧彼ノ無明淵源之病ハ、非ズハ↢中道府蔵之薬ニ↡即チ不ルガ↞能ハ↠治スルコト。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]会釈
^◇いまこの五逆は重病の淵源なり。 またこの念仏は霊薬の腑臓なり。 この薬にあらずは、 なんぞこの病を治せん。
今此ノ五逆ハ重病ノ淵源ナリ。亦此ノ念仏ハ霊薬ノ府蔵ナリ。非ズハ↢此ノ薬ニ↡者、何ゾ治セム↢此ノ病ヲ↡。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]約密教
[Ⅰ]正引
^◇ゆゑに*弘法大師の ¬*二教論¼ に、 ¬*六波羅蜜経¼ を引きていはく、 「第三に法宝といふは、 いはゆる過去 無量の諸仏 所説の正法、 およびわがいまの所説なり。 いはゆる八万四千のもろもろの*妙法蘊なり。
故ニ弘法大師ノ▼¬二教論ニ¼引キテ↢¬六波羅蜜経1305ヲ¼↡云ク、「▼第三ニ法宝トイフ者、所謂ル過去無量ノ諸仏所説ノ正法、及ビ我ガ今ノ所説ナリ。所謂ル八万四千ノ諸ノ妙法*蘊ナリ。
^◇乃至、 有縁の衆生を調伏し純熟して、 *阿難陀等の諸大弟子をして、 一たび耳に聞きてみなことごとく憶持せしむ。 摂して五分となす。 一には*素纜、 二には*毘奈耶、 三には*阿毘達磨、 四には*般若波羅蜜多、 五には*陀羅尼門なり。
乃至調↢伏シ純↣熟シテ有縁ノ衆生ヲ↡而令ム↧阿難陀等ノ諸大弟子ヲシテ、一タビ聞キテ↢於耳ニ↡皆悉ク憶持セ↥。摂シテ為ス↢五分ト↡。▼一ニハ素*纜、二ニハ毘奈耶、三ニハ阿毘達磨、四ニハ▼般若波羅蜜多、五ニハ▼陀羅尼門ナリ。
^◇この*五種の蔵は有情を教化して、 度すべきところに随ひて、 ためにこれを説く。 もしかの有情、 ◗山林に処せんと楽ひて、 つねに*閑寂に居して*静慮を修するものには、 しかもかれのために素纜蔵を説く。
此ノ五種ノ蔵ハ教↢化シテ有情ヲ↡、随ヒテ↠所ニ↠応キ↠度ス而為ニ説ク↠之ヲ。若シ彼ノ有情楽ヒテ↠処セムト↢山林ニ↡、常ニ居シテ↢*閑寂ニ↡▼修セム↢静慮ヲ↡者ニハ、而モ為ニ↠彼ノ説ク↢素*纜蔵ヲ↡。
^◇もしかの有情、 *威儀を楽ひ習ひ、 正法を護持して、 一味和合して久住することを得し1259めんには、 しかもかれのために毘奈耶蔵を説く。
若シ彼ノ有情楽ヒ↢▼習ヒ威儀ヲ↡、護↢持シテ正法ヲ↡、▼一味和合シテ令メムニハ↠得↢久住スルコトヲ↡、而モ為ニ↠彼ノ説ク↢毘奈耶蔵ヲ↡。
^◇もしかの有情、 0827正法を楽ひて説き、 *性相を分別し、 *循環研覈して甚深を究竟せんには、 しかもかれのために阿毘達磨蔵を説く。
若シ彼ノ有情楽ヒテ↢説キ正法ヲ↡、▼分↢別シ性相ヲ↡、循環研覈シテ究↢竟セムニハ甚深ヲ↡、而モ為ニ↠彼ノ説ク↢阿毘達磨蔵ヲ↡。
^◇もしかの有情、 大乗真実の智慧を楽ひ習ひて、 *我法執着の分別を離れんには、 しかもかれのために般若波羅蜜多蔵を説く。
若シ彼ノ有情楽ヒ↢習シテ大乗真実ノ智*慧ヲ↡、▼離レムニハ↢於我法執著ノ分別ヲ↡、而モ為ニ↠彼ノ説ク↢般若波羅*蜜多蔵ヲ↡。
^◇もしかの有情、 *契経・*調伏・*対法・*般若 を受持することあたはず、 あるいはまた有情、 もろもろの悪業を造らん。 *四重・*八重・*↓五無間罪・*謗方等経・*一闡提等の種々の重罪をして消滅することを得しめ、 すみやかに解脱し 、 頓く涅槃を悟らしめんには、 しかもかれのためにもろもろの陀羅尼蔵を説く。
若シ彼ノ有情不↠能ハ↣受↢持スルコト契経・調伏・対法・般若ヲ↡、或イハ復有情造ラム↢諸ノ悪業ヲ↡。四重・八重・五無間罪・謗方等経・一闡提等ノ種々ノ重罪ヲシテ使メ↠得↢銷滅スルコトヲ↡*速ニ解脱シ、頓ク悟ラシメムニハ↢涅槃ヲ↡、而モ為ニ↠彼ノ説ク↢諸ノ陀羅尼蔵ヲ↡。▼
^◇この五蔵は、 たとへば*乳・酪・生蘇・熟蘇および妙醍醐のごとし。 契経は乳のごとく、 調伏は酪のごとく、 対法 教はかの生蘇のごとく、 大乗般若はなほ熟蘇のごとく、 *総持門 はたとへば醍醐のごとし。
▼此ノ*五蔵ハ、譬ヘバ如シ↢乳・酪・生*蘇・*熟*蘇及ビ妙醍醐ノ↡。契経ハ如ク↠乳ノ、調伏ハ如ク↠酪ノ、対法教者如ク↢彼ノ生*蘇ノ↡、大乗般若シハ猶如ク↢熟*蘇ノ↡、総持門者譬ヘバ如シ↢醍醐ノ↡。
^◇醍醐の味はひ 乳・酪・蘇のなかに微妙第一なり。 よく諸病を除きて、 もろもろの有情をして身心安楽ならしむ。 総持門 は契経等のなかにもつとも第一となす。 よく重罪を除き、 もろもろの衆生をして生死を解脱してすみやかに涅槃安楽 法身を証せしむ」 と。 以上
醍醐之味1306乳・酪・*蘇ノ中ニ微妙第一ナリ。能ク除キテ↢諸病ヲ↡、令ム↢諸ノ有情ヲシテ身心安楽ナラ↡。総持門者契経等ノ中ニ最モ為ス↢第一ト↡。能ク除キ↢重罪ヲ↡、令ムト↧諸ノ衆生ヲシテ解↢脱シテ生死ヲ↡速ニ証セ↦涅槃安楽法身ヲ↥。▼」 已上
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]会釈
^◇このなか 、 ↑五無間罪 はこれ五逆罪なり。 すなは1260ち醍醐の妙薬にあらずは、 五無間の病はなはだ療しがたしとなす。 念仏もまたしかなり。 往生の教のなかに ▼念仏三昧はこれ総持のごとく、 また0828醍醐のごとし。 ▼もし念仏三昧の醍醐の薬にあらずは、 五逆深重の病ははなはだ治しがたしとなす、 知るべし。
*此ノ中、五無間罪者是五逆罪也。即チ非ズハ↢醍醐之妙薬ニ↡者、五無間ノ病甚ダ為ス↠難シト↠療シ。念仏モ亦然ナリ。往生ノ教ノ中ニ念仏三昧ハ是如ク↢総持ノ↡、亦如シ↢醍醐ノ↡。若シ非ズハ↢念仏三昧ノ醍醐之薬ニ↡者、五逆深重ノ病ハ甚ダ為ス↠難シト↠治シ、応シ↠知ル。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)明滅罪遍
(ⅰ)問
^◇問ひていはく、 もししからば下品上生はこれ十悪軽罪の人なり。 なんがゆゑぞ念仏を説くや。
問ヒテ曰ク、若シ爾ラバ者下品上生ハ是十悪軽罪之人*也。何ガ故ゾ説ク↢*念仏ヲ↡乎。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)答
^◇答へていはく、 念仏三昧は重罪なほ滅す。 いかにいはんや軽罪をや。 余行はしからず。 あるいは軽を滅して重を滅せざるあり。 あるいは一を消して 二を消さざるあり。 念仏はしからず。 軽重兼ね滅す、 一切あまねく治す。 ▼たとへば*阿伽陀薬のあまねく一切の病を治するがごとし。 ゆゑに念仏をもつて*王三昧となす。
答ヘテ曰ク、念仏三昧ハ重罪尚滅ス。何ニ況ヤ軽罪ヲ哉。余行ハ不↠然ラ。▼或イハ有リ↢滅シテ↠軽ヲ而不ル↟滅セ↠重ヲ。▼或イハ有リ↢消テ↠一ヲ而不ル↟消サ↠二ヲ。念仏ハ不↠然ラ。軽重兼ネ滅ス、一切遍ク治ス。譬ヘバ如シ↣阿伽陀薬ノ遍ク治スルガ↢一切ノ病ヲ↡。故ニ以テ↢念仏ヲ↡為ス↢王三昧ト↡。
二 ⅺ Ⅲ b イ (二)(Ⅲ)明九品一往
^◇おほよそ九品の配当はこれ一往の義なり。 *五逆の回心 上上に通ず。 *読誦の妙行 また下下に通ず。 十悪の軽罪、 破戒の次罪 おのおの上下に通じ、 解第一義、 発菩提心 また上下に通ず。 一法におのおの九品あり。 もし品に約せば、 すなはち九九八十一品なり。
凡ソ▼九品ノ配当ハ是一往ノ義ナリ。▼五逆ノ廻心通ズ↢於上々ニ↡。▼読誦ノ妙行亦通ズ↢下々ニ↡。▼十悪ノ軽罪、破戒ノ次罪各ノ通ジ↢上下ニ↡、▼解第一義、発菩提心亦通ズ↢上下ニ↡。▼一法ニ各ノ有リ↢九品↡。若シ約セバ↠品ニ即チ九々八十一品也。
^◇しかのみならず迦才 (浄土論) のいはく、 「衆生、 行を起すにすでに千殊あり。 往生して土を見ることまた万別あり」 と。 一往の文を見て*封執1261を起すことなかれ。
加之▼迦才ノ云ク、「▼衆生起スニ↠行ヲ既ニ有リ↢千殊↡。往生シテ見ルコト↠土ヲ亦有リト↢万*別↡。」見テ↢一往ノ文ヲ↡莫レ↠起スコト↢封執ヲ↡。▼
二 ⅺ Ⅲ b ロ 結示
^◇そのなかに念仏はこれすなはち勝行なり。 ゆゑに分陀利を引きて、 もつてその喩譬となす。 意知るべし 。
▼其ノ中ニ念仏ハ是即チ勝行ナリ。▼故ニ引キテ↢*芬陀利ヲ↡、以テ為ス↢其ノ喩譬ト↡。意応シ↠知ル。
二 ⅺ Ⅲ c 明念仏勝益
イ 明種々益
^◇しかのみならず念仏 行者をば、 観音・勢至、 影と形とのごとくしばらくも捨離せず。 余行はしからず。 ま0829た念仏者は、 命を捨てをはりて後決定して極楽世界に往生す。 余行は不定なり。
加之▼念仏行1307者ヲバ観音・勢至、如ク↢影ト与ノ↟形暫クモ不↢捨離セ↡。余行ハ不↠爾ラ。又念仏者ハ、捨テ↠命ヲ已リテ後決定シテ往↢生ス極楽世界ニ↡。余行ハ不定ナリ。
^◇おほよそ*五種の嘉誉を流し、 二尊 (観音・勢至) の影護を蒙る、 これはこれ*現益なり。 また浄土に往生して、 乃至、 仏になる、 これはこれ*当益なり。
凡ソ▼流シ↢五種ノ嘉*誉ヲ↡、▼蒙ル↢二尊ノ影護ヲ↡、▼*此ハ是現益也。亦▼往↢生シテ浄土ニ↡、乃至成ル↠仏ニ、此ハ是当益也。
二 ⅺ Ⅲ c ロ 明始終両益【始終両益】
^◇また道綽禅師 念仏の一行において始終の両益を立つ。 ¬安楽集¼ (下) にいはく、 ▲「ª念仏の衆生を 摂取して捨てたまはず、 寿尽きてかならず生ずº (観経) と。 これを始益と名づく。
又道綽禅師於テ↢念仏ノ一行ニ↡立ツ↢始終ノ両益ヲ↡。▼¬安楽集ニ¼云ク、「念仏ノ衆生ヲ摂取シテ不↠捨テタマハ、寿尽キテ必ズ生ズト。此ヲ名ク↢始益ト↡。
^◆終益といふは、 ¬*観音授記経¼ によるに、 ª阿弥陀仏、 世に住すること長久にして、 兆載永劫にまた滅度したまふことあり。 般涅槃の時、 ただ観音・勢至ありて、 安楽に住持し、 十方を接引す。 その仏の滅度また住世と時節等同なり。 しかるにかの国の衆生は、 一切、 仏を覩見するものあることなし。
言フ↢終益ト↡者、▼依ルニ↢¬観音授記*経ニ¼↡、阿弥陀仏住スルコト↠世ニ長久ニシテ、兆載永劫ニ亦有リ↢滅度シタマフコト↡。般涅槃ノ時、唯有リテ↢観音・勢至↡、住↢持シ安楽ニ↡、接↢引ス十方ヲ↡。其ノ仏ノ滅度亦与↢住世↡時節等同ナリ。然ルニ彼ノ国ノ衆生ハ、一切無シ↠有ルコト↧*覩↢見スル仏ヲ↡者↥。
^◆ただ一向にもつぱら阿弥陀仏を念じて往生するもののみありて、 つねに弥陀は現にましまして滅したまはずと見1262るº と。 これはすなはちこれその終益なり」 と。 以上
唯有リテ↧▼一向ニ専ラ念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡往生スル者ノミ↥、常ニ見ルト↢弥陀ハ現ニ在シテ不ト↟滅シタマハ。此ハ即チ是其ノ終益也ト。」 已上
二 ⅺ Ⅲ c ハ 結上来諸益
^まさに知るべし。 念仏はかくのごとき等の現当二世、 始終の両益あり、 知るべし。
当ニシ↠知ル。念仏ハ有リ↢如キ↠此クノ等ノ現当二世、始終ノ両益↡、応シ↠知ル。
二 ⅻ ▽付属念仏章【念仏付属章】
Ⅰ 標章
【12】0830^△釈尊 定散の諸行を付属せず 、 ただ念仏をもつて阿難に付属したまふ文。
釈尊不↣付↢属セ定散ノ諸行ヲ↡、唯以テ↢念仏ヲ↡付↢属シタマフ阿難ニ↡*之文
二 ⅻ Ⅱ 引文
a 観経
^▼¬観無量寿経¼ にのたまはく、 「▲↓仏、 阿難に告げたまはく、 ªなんぢよくこの語を持て。 この語を持てと は、 すなはちこれ無量寿仏の名を持てとなりº」 と。
▼¬観無量寿経ニ¼云ク、「▼仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、汝好ク持テ↢是ノ語ヲ↡。▼持テト↢是ノ語ヲ↡者、即チ是持テトナリト↢無量*寿仏ノ*名ヲ↡。」
二 ⅻ Ⅱ b 散善義
^▼同経の ¬疏¼ (散善義) にいはく、 「▲ª↑仏告阿難汝好持是語º といふより以下は、 ▽まさしく弥陀の名号を付属して、 ▽遐代に流通することを明かす。 ▽上よりこのかた定散両門の益を説くといへども、 ▽仏の本願に望むるに、 意、 衆生をして一向にもつぱら弥陀仏の名を称せしむるにあり」 と。
同ジキ経ノ▼¬疏ニ¼云ク、「従リ↢仏告阿難汝好持是語トイフ↡已下ハ、正シク明ス↧付↢属シテ弥陀ノ名号1308ヲ↡流↦通スルコトヲ於遐代ニ↥。上ヨリ来タ雖モ↠▼説クト↢定散両門之益ヲ↡、▼望ムルニ↢仏ノ本願ニ↡、意在リト↣衆生ヲシテ▼一向ニ専ラ称セシムルニ↢弥陀仏ノ*名ヲ↡。」
二 ⅻ Ⅲ 私釈
a 総標二行
^▼わたくしにいはく、 ¬疏¼ (散善義) の文を案ずるに二行あり。 一には↓定散、 二には↓念仏なり。
私ニ云ク、案ズルニ↢¬疏ノ¼文ヲ↡有リ↢二行↡。一ニハ定散、二ニハ念仏ナリ。
二 ⅻ Ⅲ b 別釈
イ 定散
(一)標列
^初めに↑定散といふはまた分ちて二となす。 一には↓定善、 二には↓散善なり。
初ニ言フ↢定散ト↡者、又分チテ為ス↠二ト。一ニハ定善、二ニハ散善ナリ。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)正釈
(Ⅰ)【定善】
(ⅰ)列名
^初めに▼↑定善につきて、 その十三あり。 一には*日想観、 二には*水想観、 三には*地想観、 四には*宝樹観、 五には*宝池観、 六には*宝楼閣1263観、 七には*華座観、 八には*像想観、 九に0831は*阿弥陀仏観、 十には*観音観、 十一には*勢至観、 十二には*普往生観、 十三には*雑想観なり。 つぶさに 経説のごとし。
初ニ付キテ↢▼定善ニ↡、有リ↢其ノ十三↡。一ニ者日想観、二ニ者水想観、三ニ者地想観、四ニ者宝樹観、五ニ者宝池観、六ニ者宝楼閣観、七ニ者花座観、八ニ者像想観、九ニ者阿弥陀仏観、十ニ者観音観、十一ニ者勢至観、十二ニ者普往生観、十三ニ者雑想観ナリ。具ニ如シ↢経説ノ↡。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)明益
^▼たとひ余 行なしといへども、 あるいは一、 あるいは多、 その所堪に随ひて十三観を修して往生を得べし。 その旨 ¬経¼ (観経) に見えたり。 あへて*疑慮することなかれ。
縦ヒ雖モ↠無シト↢余行↡、或イハ一或イハ多、▼随ヒテ↢其ノ所堪ニ↡修シテ↢十三観ヲ↡可シ↠得↢往生ヲ↡。其ノ旨見エタリ↢¬経ニ¼↡。敢テ莫レ↢疑慮スルコト↡。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)【散善】
(ⅰ)標列
^次に↑散善につきて二あり。 一には↓三福、 二には↓九品なり。
次ニ付キテ↢散善ニ↡有リ↠二。一ニ者三福、二ニ者九品ナリ。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)別釈
(a)三福
(イ)挙経文
^▼初めの↑三福と は、 ¬経¼ (観経) にのたまはく、 「▲一には▽↓孝養父母、 ▽↓奉事師長、 ▽↓慈心不殺、 修十善業。 ◆二には↓受持三帰、 ▽↓具足衆戒、 ↓不犯威儀。 ◆三には▽↓発菩提心、 ▽↓深信因果、 ▽↓読誦大乗、 ↓勧進行者なり」 と。 以上経文
▼初ノ▼三福ト者、¬経ニ¼曰ク、「▼一ニ者孝養父母、奉事師長、慈心不殺、修十善業。▼二ニ者受持三帰、具足衆戒、不犯威儀。▼三ニ者発菩提心、深信因果、読誦大乗、勧進行者ナリト。」 已上経文
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)随釈
[一]世福
・教養父母
^「↑孝養父母」 と は、 これにつきて二あり。 一には世間の孝養、 二には出世の孝養なり。 世間の孝養と は ¬*孝経¼ 等の説のごとし。 出世の孝養と は*律中の*生縁奉事の法のごとし。
「孝養父母ト」者、付キテ↠之ニ有リ↠二。一ニハ世間ノ孝養、二ニハ出世ノ孝養也。▼世間ノ孝養ト者如シ↢¬孝経¼等ノ説ノ↡。▼出世ノ孝養ト者如シ↢律中ノ生縁*奉*事ノ法ノ↡。
・奉事師長
^「↑奉事師長」 と は、 これにつきてまた二あり。 一には世間の師長、 二には出世の師長なり。 世間の師と は仁・義・礼・智・信等を教ふる師なり。 出世の師と は聖道・浄土の二門等を教ふる師なり。 たとひ余行なしといへども、 孝養・奉事をもつて往生の業となすなり。
「奉事師長ト」者、付キテ↠之ニ又有リ↠二。一ニハ世間ノ師長、二ニハ出世ノ師長也。世間ノ師ト者▼教フル↢仁1309・義・礼・智・信等ヲ↡師也。出世ノ師ト者▼教フル↢聖道・浄土ノ二門等ヲ↡師也。▼縦ヒ雖モ↠無シト↢余行↡、以テ↢孝養・奉事ヲ↡為ル↢往生ノ業ト↡也。
・慈心不殺修十善業
^「↑慈心不殺、 修十善業」 と は1264、 これにつきて二 義あり。
「慈心不殺修十善業ト」者、就キテ↠此ニ有リ↢二義↡。
^一には 初めの 「慈心不殺」 と は、 これ四無量心のなかの初めの慈無量なり。 すなはち初めの一を挙げて後の三を摂するなり。 たとひ余行なしといへども、 四無量心をもつて0832往生の業となす。 次に 「修十善業」 と は、 一は不殺生、 二は不偸盗、 三は不邪婬、 四は不妄語、 五は不綺語、 六は不悪口、 七は不両舌、 八は不貪、 九は不瞋、 十は不邪見なり。
一ニ者初ノ▼慈心不殺ト者、是四無量心ノ中ノ初ノ慈無量也。即チ挙ゲテ↢初ノ一ヲ↡摂スル↢後ノ三ヲ↡也。▼縦ヒ雖モ↠無シト↢余行↡、以テ↢四無量心ヲ↡為ル↢往生ノ業ト↡也。次ニ▼修十善業ト者、一ハ不殺生、二ハ不偸盗、三*者不邪婬、四ハ不妄語、五ハ不綺語、六ハ不悪口、七ハ不両舌、八ハ不貪、九ハ不瞋、十ハ不邪見也。
^二には 「慈心不殺 、 修十善業」 の二句を合して一句となすとは、 いはく初めの 「慈心不殺」 は、 これ四無量のなかの慈無量にはあらず。 これ十善の初めの不殺を指す。 ゆゑに知りぬ、 まさしくこれ十善の一句なり。 たとひ余行なしといへども、 十善業をもつて往生の業となす。
二ニ者合シテ↢慈心不殺修十善業ノ二句ヲ↡而為ストハ↢一句ト↡、謂ク初ノ慈心不殺者、*是非ズ↢四無量之中ノ慈無量ニハ↡。是指ス↢十善之初ノ不殺ヲ↡。故ニ知リヌ、正シク是十善之一句也。縦ヒ雖モ↠無シト↢余行↡、以テ↢十善業ヲ↡為ル↢往生ノ業ト↡也。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]戒福
・受持三帰
^「↑受持三帰」 と は仏法僧に帰依するなり。 これにつきて二あり。 一は大乗の三帰、 二は小乗の三帰なり。
「受持三帰ト」者、帰↢*依スル仏法僧ニ↡也。就キテ↠此ニ有リ↠二。一者大乗ノ三帰、二者小乗ノ三帰也。
・具足衆戒
^「↑具足*衆戒」 と は、 これに 二あり。 一は大乗戒、 二は小乗戒なり。
「具足衆戒ト」者、*此ニ有リ↠二。一者大乗戒、二者小乗戒也。
・不犯威儀
^「↑不犯威儀」 と は、 これにまた二あり。 一は大乗、 いはく八万あり。 二は小乗、 いはく三千あり。
「不犯威儀ト」者、此ニ亦有リ↠二。一者大乗、謂ク*有リ↢八万↡。二者小乗、謂ク有リ↢三千↡。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[三]行福
・発菩提心
^「↑発菩提心」 と は、 諸師の意不同なり。
「発菩提心ト」者、諸師ノ意不同也。
^*天台にはすなはち*四教の菩提心あり。 いはく蔵・通・別・円これなり。 つぶさには ¬*止観¼ の説のごとし。
▼天臺ニハ即チ有リ↢四教ノ菩提心↡。謂ク蔵・通・別・円是也。▼具ニハ如シ↢¬止観ノ¼説ノ↡。
^*真言にはすなはち三種の菩提心あり1265。 いはく*行願・*勝義・*三摩地これなり。 つぶさには ¬*菩提心論¼ の説のごとし。
▼真言ニハ即チ有リ↢三種ノ菩提心↡。謂ク行願・勝義・三摩地是也。▼具ニハ如シ↢¬菩提心論ノ¼説ノ↡。
^*華厳にはまた菩提心あり。 かの ¬*菩提心義¼ および ¬*遊心安楽道¼ 等の説のごとし。
華厳1310ニハ亦有リ↢菩提心↡。如シ↢彼ノ¬菩提心義¼及ビ¬遊心安楽道¼等ノ説ノ↡。
^*三論・*法相におのおの菩提心あり。 つぶさにはかの宗の章疏等の説のごとし。
三論・法相ニ各ノ有リ↢菩提心↡。具ニハ如シ↢彼ノ宗ノ章疏等ノ説ノ↡。
^ま0833た善導の所釈の菩提心あり。 つぶさには ▲¬疏¼ (観経疏) に述ぶるがごとし。
▼又有リ↢善導ノ所釈ノ菩提心↡。具ニハ如シ↢¬疏ニ¼述ブルガ↡。
^「発菩提心」 、 その言一なりといへども、 おのおのその宗に随ひてその義不同なり。 しかればすなはち 「菩提心」 の一句、 広く諸経に亘り、 あまねく顕密を該ねたり。 *意気博遠にして*詮測沖邈なり。 願はくは もろもろの行者、 一を執して万を遮することなかれ。 もろもろの往生を求むる人、 おのおのすべからく自宗の菩提心を発すべし。 たとひ余行なしといへども、 菩提心をもつて往生の業となす。
発菩提心、其ノ言雖モ↠一ナリト、各ノ随ヒテ↢其ノ宗ニ↡其ノ義不同ナリ。然レバ則チ菩提心之一句、広ク亙リ↢諸経ニ↡、遍ク該ネタリ↢顕密ヲ↡。▼意気博遠ニシテ詮測沖邈ナリ。願クハ諸ノ行者、莫レ↢執シテ↠一ヲ遮スルコト↟万ヲ。諸ノ求メム↢往生ヲ↡之人各ノ須クシ↠発ス↢自宗之菩提心ヲ↡。縦ヒ雖モ↠無シト↢余行↡、以テ↢菩提心ヲ↡為ル↢往生ノ業ト↡也。
・深信因果
^「↑深信因果」 と は、 これにつきて二あり。 一 は世間の因果、 二 は出世の因果なり。 世間の因果◗は、 すなはち六道の因果なり。 ¬*正法念経¼ の説のごとし。 出世の因果 は、 すなはち*四聖の因果なり。 もろもろの大小乗経の説のごとし。 もしこの因果 二法をもつてあまねく諸経を摂せば、 諸家不同なり。
「深信因果ト」者、付キテ↠之ニ有リ↠二。一者世間ノ因果、二*者出世ノ因果ナリ。▼世間ノ因果者即チ六道ノ因果也。如シ↢¬正法念経ノ¼説ノ↡。▼出世ノ因果者即チ四聖ノ因果也。如シ↢諸ノ大小乗経ノ説ノ↡。若シ以テ↢此ノ因果二法ヲ↡遍ク摂セバ↢諸経ヲ↡者、諸家不同ナリ。
^しばらく*天台によらば、 いはく ¬華厳¼ は仏・菩薩 二種の因果を説き、 「阿含」 は1266声聞・縁覚の二乗の因果を説き、 方等の諸経 は*四乗の因果を説く。 「般若」 の諸経 は通・別・円の因果を説き、 ¬法華¼ は仏因仏果を説き、 ¬涅槃¼ はまた四乗の因果を説く 。
且ク依ラバ↢天臺ニ↡、謂ク華厳者説キ↢仏・菩薩二種ノ因果ヲ↡、阿含者説キ↢声聞・縁覚ノ二乗ノ因果ヲ↡、方等ノ諸経者説ク↢四乗ノ因果ヲ↡也。般若ノ諸経者説キ↢通・別・円ノ因果ヲ↡、法華者説キ↢仏因仏果ヲ↡、涅槃者又説ク↢四乗ノ因果ヲ↡也。
^しかればすなはち 「深信因果」 の言、 あまねく一代を該ね羅ねたり。 もろもろの往生を求むる人、 たとひ余行なしと0834いへども、 深信因果をもつて往生の業となすべし。
然レバ則チ深信因果之言、遍普ク該ネ↢羅ネタリ於一代ヲ↡矣。諸ノ求メム↢往生ヲ↡之人縦ヒ雖モ↠無シト↢余行↡、以テ↢深信因果ヲ↡可シ↠為ス↢往生ノ業ト↡。
・読誦大乗
^「↑読誦大乗」 と は、 分ちて二となす。 一は↓読誦、 二は↓大乗なり。
「読誦大乗ト」者、分チテ而為ス↠二ト。一者読誦、二者大乗ナリ。
^「↑読誦」 とは、 すなはちこれ*五種法師のなか 、 *転読・*諷誦の二師を挙げて、 受持等の三師を顕す 。 もし*十種 法行に約せば、 すなはちこれ*披読・諷誦の二種の法行を挙げて、 書写・供養等の八種 法行を顕すなり。
読誦ト者▼即チ是五種法師之中挙ゲテ↢転1311読・諷誦ノ二師ヲ↡、顕ス↢*受持等ノ三師ヲ↡。▼若シ約セバ↢十種法行ニ↡者、*即チ是挙ゲテ↢披読・諷誦ノ二種ノ法行ヲ↡、顕ス↢*書写・供養等ノ八種法行ヲ↡也。
^「↑大乗」 とは、 小乗を簡ぶ言なり。 別して一経を指すに あらず。 通じて一切の諸大乗経を指す 。 いはく一切と は、 仏意広く一代 所説の諸大乗経を指す。 しかも一代の所説において、 *已結集の経あり。 未結集の経あり。 また已結集の経において、 あるいは竜宮に隠れて *人間に流布せざる経あり。 あるいは天竺 (印度) に留まりて、 いまだ漢地 (中国) に来到せざる経あり。
大*乗ト者簡ブ↢小乗ヲ↡之言也。別シテ非ズ↠指スニ↢一経ヲ↡。通ジテ*指ス↢一切ノ諸大乗経ヲ↡。謂ク一切ト者、仏意広ク指ス↢一代所説ノ諸大乗経ヲ↡。▼而モ於テ↢一代ノ所説ニ↡、有リ↢已結集ノ経↡、有リ↢未結集ノ経↡。又於テ↢已結集ノ経ニ↡、或イハ有リ↧隠レテ↢竜宮ニ↡不ル↣流↢布セ人間ニ↡之経↥。或イハ*有リ↧留マリテ↢天竺ニ↡未ダル↣来↢到セ漢地ニ↡之経↥。
^しかるにいま翻訳将来の経につきてこれを論ぜば、 ¬*貞元の入蔵の録¼ のなかに、 ¬大般若経¼ 六百巻より始めて ¬法1267常住経¼ に終るまで、 顕密の大乗経すべて六百三十七部二千八百八十三巻なり。 みなすべからく 「読誦大乗」 の一句に摂すべし。
而ルニ今▼就キテ↢翻訳将来之経ニ↡而論ゼバ↠之ヲ者、¬▼貞元ノ入蔵ノ録ノ¼中ニ、始メテ↠自リ↢¬大般若経¼六百巻↡終ルマデ↢于¬法常住経ニ¼↡、顕密ノ大乗経総ジテ六百三十七部二千八百八十三巻也。皆須クシ↠摂ス↢読誦大乗之一句ニ↡。
^▼願はくは 西方の行者、 おのおのその*意楽に随ひて、 あるいは ¬法華¼ を読誦してもつて往生の業となし、 あるいは ¬華厳¼ を読誦してもつて往生の業となし、 あるいは ¬*遮那¼・¬*教王¼ および諸尊の法等を受持し読誦してもつて往生の業となし、 あるいは 「般若」・方等および ¬涅槃経¼ 等を解説し、 書写0835してもつて往生の業となせ。 ▼これすなはち浄土宗の ¬観無量寿経¼ の意なり。
願クハ西方ノ行者、各ノ随ヒテ↢其ノ意楽ニ↡、或イハ読↢誦シテ法華ヲ↡以テ為シ↢往生ノ業ト↡、或イハ読↢誦シテ華厳ヲ↡以テ為シ↢往生ノ業ト↡、▼或イハ受↢持シ読↣誦シテ遮那・教王及以諸尊ノ法等ヲ↡以テ為シ↢往生ノ業ト↡、或イハ解↢説シ書↣写シテ般若・方等及以涅槃経等ヲ↡以テ為ヨ↢往生ノ業ト↡。是則チ浄土宗ノ¬観無量寿経ノ¼意也。
^問ひていはく、 顕密の旨異なり、 なんぞ顕のなかに密を摂するや。
▼問ヒテ曰ク、顕密ノ旨異ナリ、何ゾ顕ノ中ニ摂スル↠密ヲ乎。
^答へていはく、 これは顕密の旨を摂せんといふにはあらず。 ¬貞元入蔵 録¼ のなかに、 同じくこれを編みて 大乗経の限りに入る。 ゆゑに 「読誦大乗」 の一句に摂するなり。
答ヘテ曰ク、*此ハ▼非ズ↠云フニハ↠摂セムト↢顕密之旨ヲ↡。¬貞元入蔵録ノ¼中ニ、同ジク*編ミテ↠之ヲ而入ル↢大乗経ノ限ニ↡。故ニ摂スル↢読誦大乗ノ一句ニ↡也。
^▼問ひていはく、 *爾前の経のなかになんぞ ¬法華¼ を摂するや。
▼問ヒテ曰ク、爾前ノ経ノ中ニ何ゾ摂スル↢¬法華ヲ¼↡*乎。
^▼答へていはく、 いまいふところの 「摂」 と は、 *権・実・偏・円等の義を論ずるにはあらず。 「読誦大乗」 の言、 あまねく前後の大乗 諸経に通ず。 前と は ¬観経¼ 以前の諸大乗経これなり。 後と は*王宮以後の諸大乗経これなり。 ただ1268大乗といひて権実を選ぶことなし。 しかればすなはち◗まさしく ¬華厳¼・方等・「般若」・¬法華¼・¬涅槃¼ 等の諸大乗経に当れり。
▼答ヘテ曰ク、今所1312ノ↠言フ摂ト者、▼非ズ↠論ズルニハ↢権・実・偏・円等ノ義ヲ↡。読誦大乗之言普ク通ズ↢前後ノ大乗諸経ニ↡。前ト者¬観経¼已前ノ諸大乗経是也。後ト者王宮已後ノ諸大乗経是也。唯シ云ヒテ↢大*乗ト↡無シ↠選ブコト↢権実ヲ↡。然レバ則チ正シク当レリ↢華厳・方等・般若・法華・涅槃等ノ諸大乗経ニ↡也。
・勧進行者
^「↑*勧進行者」 と は、 いはく定散諸善および念仏三昧等を勧進するなり。
「勧進行*者トハ」、謂ク勧↢進スル定散諸善及ビ念仏三昧等ヲ↡也。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)九品
(イ)標
^次に↑九品と は、 前の*三福を開して九品の業となす。
次ニ▼九品ト者▼開シテ↢前ノ三福ヲ↡為ス↢九品ノ業ト↡。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)別明摂属
[一]明上三品
・上品上生
^いはく上品上生のなかに 「▲慈心不殺」 といふは、 すなはち上の世福のなかの△第三の句に当る。 次に 「▲具諸戒行」 と は、 すなはち上の戒福のなかの第二の句の 「△具足衆戒」 に当る。 ▼次に 「▲読誦大乗」 と は、 すなはち上の行福のなかの第三の句の 「△読誦大乗」 に当る。 次に 「▲*修0836行六念」 と は、 すなはち上の第三の福のなかの△第三の句の意なり。
謂ク▼上品上生ノ中ニ*言フ↢「慈心不殺ト」↡者、即チ当ル↢上ノ世福ノ中ノ第三之*句ニ↡。▼次ニ「具諸戒行ト」者、即チ当ル↢上ノ戒福ノ中ノ第二之句ノ「具足衆戒ニ」↡。▼次ニ「読誦大乗ト」者、即チ当ル↢上ノ行福ノ中ノ第*三ノ句ノ「読誦大乗ニ」↡。▼次ニ「修行六念ト」者、即チ上ノ第三ノ福ノ中ノ第三ノ句之意也。
・上品中生
^上品中生のなかに 「▲善解義趣」 等といふは、 すなはちこれ上の第三 福のなかの△第二・△第三の意なり。
▼上品中生ノ中ニ言フ↢「善解義趣」等ト↡者、即チ是上ノ第三福ノ中ノ第二・第三ノ意也。
・上品下生
^上品下生のなかに 「▲深信因果 *発道心」 等といふは、 すなはちこれ上の第三の福の△第一・△第二の意なり。
▼上品下生ノ中ニ言フ↢「深信因果・発道心」等ト↡者、即チ是上ノ第三ノ福ノ第一・第二ノ意也。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]明中三品
・中品上生
^中品上生のなかに 「▲受持五戒」 等といふは、 すなはち上の第二の福のなかの△第二の句の意なり。
▼中品上生ノ中ニ言フ↢「受持五戒」等ト↡者、即チ上ノ第二ノ福ノ中ノ第二ノ句ノ意也。
・中品中生
^中品中生のなかに 「▲或一日一夜受持八戒斎」 等といふは、 また同じく上の△第二の福の意 なり。
▼中品中生ノ中ニ言フ↢「或一日一夜受持八戒斎」等ト↡者、又同ジク*上ノ第二ノ福之意也。
・中品下生
^中品下生のなかに 「▲孝養父母行世仁慈」 等といふは、 すなはち上の初めの福の△第一・△第1269二の句の意なり。
▼中品下生ノ中ニ言フ↢「孝養父母・行世仁慈」等ト↡者、即チ上ノ初ノ福ノ第一・第二ノ句ノ意也。
二 ⅻ Ⅲ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]明下三品
・下品上生
^下品上生 は、 これ▲十悪の罪人なり。 臨終の一念に罪滅して生ずることを得。
下品上生者是十悪ノ罪人也。臨終ノ一念ニ罪滅シテ得↠生1313ズルコトヲ。
・下品中生
^下品中生 は、 これ▲破戒の罪人なり。 臨終に仏の依正の功徳を聞きて、 罪滅して生ずることを得。
下品中生者是破戒ノ罪人也。臨終ニ聞キテ↢仏ノ依正ノ功徳ヲ↡、罪滅シテ得↠生ズルコトヲ。
・下品下生
^下品下生 は、 これ▲五逆の罪人なり。 臨終の十念に罪滅して生ずることを得。
下品下生者是五逆ノ罪人也。臨終ノ十念ニ罪滅シテ得↠生ズルコトヲ。
・下三品
^この三品は、 尋常の時ただ悪業 を造りて往生を求めずといへども、 臨終の時はじめて善知識に遇ひてすなはち往生を得。 もし上の三福に准ぜば、 △第三 福の大乗の意なり。
▼此之三品ハ、尋常之時唯*造リテ↢悪業ヲ↡雖モ↠不ト↠求メ↢往生ヲ↡、臨終之時始テ遇ヒテ↢善知識ニ↡即チ得↢往生ヲ↡。若シ准ゼバ↢上ノ三福ニ↡者、第三福ノ大乗ノ意也。
二 ⅻ Ⅲ b イ (三)総結
^定善・散善 大概かくのごとし。 文 (散善義) に、 すなはち 「△上よりこのかた定散両門の益を説くといへども」 といふこれなり。
定善・散善大概如シ↠此クノ。文ニ即チ云フ↢「上ヨリ来タ雖モト↟説クト↢定散両門之益ヲ↡」是也。
二 ⅻ Ⅲ b ロ【念仏】
(一)正指其体
^次0837に↑念仏と は、 もつぱら弥陀仏の名を称するこれなり。 念仏の義*常のごとし。
▼次ニ念仏ト者、専ラ称スル↢弥陀仏ノ名ヲ↡是也。念仏ノ義如シ↠常ノ。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)釈疏意
(Ⅰ)正明
^しかるにいま、 「△正明付属弥陀名号流通於遐代」 (散善義) といふは、 おほよそこの ¬経¼ (観経) のなかに、 すでに広く定散の諸行を説くといへども、 すなはち定散をもつて阿難に付属し後世に流通せしめず。 ただ念仏三昧の一行をもつてすなはち阿難に付属し遐代に流通せしむ。
而ルニ今言フ↢「正明付属弥陀名号流通於遐代ト」↡者、凡ソ*此ノ¬経ノ¼中ニ既ニ広ク雖モ↠説クト↢定散ノ諸行ヲ↡、即チ以テ↢定散ヲ↡不↠令メ↧付↢属シ阿難ニ↡流↦通セ後世ニ↥。唯以テ↢念仏三昧ノ一行ヲ↡即チ使ム↧付↢属シ阿難ニ↡流↦通セ遐代ニ↥也。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)料簡
(ⅰ)付属有無
(a)問
^問ひていはく、 なんのゆゑぞ 定散の諸行をもつて付属流通せざるや。
問ヒテ曰ク、何ノ故ゾ以テ↢定散ノ諸行ヲ↡而不ル↢付属流通セ↡乎。
^もしそれ業の浅深によりて嫌ひて付属せずは、 *三福 業のなかに浅あり深あり。 そ1270の浅業 は孝養父母・奉事師長なり。 その深業 は具足衆戒・発菩提心・深信因果・読誦大乗なり。 すべからく浅業を捨てて、 深業を付属すべし。
若シ夫レ依リテ↢業ノ浅深ニ↡嫌ヒテ不ハ↢付属セ↡、三福業ノ中ニ有リ↠浅有リ↠深。其ノ浅業者孝養父母・奉事師長也。其ノ深業者具足衆戒・発菩提心・深信因*果・読誦大乗也。須クシ↧捨テテ↢浅業ヲ↡付↦属ス深業ヲ↥。
^もし観の浅深によりて嫌ひて付属せずは、 十三観のなかに浅あり深あり。 その浅観といふは*日想・*水想これなり。 その深観といふは、 *地観より始めて*雑想に終るまで、 すべて十一観これなり。 すべからく浅観を捨てて、 深観を付属すべし。
若シ依リテ↢観ノ浅深ニ↡嫌ヒテ不ハ↢付属セ↡、十三観ノ中ニ有リ↠浅有リ↠深。其ノ浅観トイフ者日想・水想是也。其ノ深観トイフ者始メテ↠自リ↢地観↡終ルマデ↢于雑*想ニ↡、総テ十一観是也。須クシ↧捨テテ↢浅観ヲ↡付↢属ス深観ヲ↡。
^就中 第九観は、 これ*阿弥陀仏観なり。 すなはちこれ観仏三昧なり。 すべからく十二観を捨てて、 観仏三昧を付属すべし。 就中 同疏の 「玄義分」 のなかにいはく、 「▲この経は観仏三昧を宗となし、 または念仏三昧を宗となす」 と。 すでに0838二行をもつて一経の宗となす。 なんぞ観仏三昧を廃して念仏三昧を付属するや。
就中第九*観ハ是阿弥陀仏観也。即チ是観仏1314三昧也。須クシ↧捨テテ↢十二観ヲ↡付↦属ス観仏三昧ヲ↥也。就中ニ同ジキ¬疏ノ¼玄義分ノ中ニ云ク、「*此ノ経ハ観仏三昧ヲ為シ↠宗ト、亦ハ念仏三昧ヲ為スト↠宗ト。」既ニ以テ↢二行ヲ↡為ス↢一経ノ宗ト↡。何ゾ癈シテ↢観仏三昧ヲ↡而付↢属スル念仏三昧ヲ↡*之哉。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)答
^答へていはく、 「△↓仏の本願に望むるに、 意、 衆生をして↓一向にもつぱら弥陀仏の名を称せしむるにあり」 (散善義) といふ。 定散の諸行は本願にあらず。 ゆゑにこれを付属せず。 またそのなかにおいて、 観仏三昧は殊勝の行 といへども、 仏の本願にあらず。 ゆゑに 付属せず。 念仏三昧はこれ仏の本願なるがゆゑに、 もつてこれを付属す。
答ヘテ曰ク、云フ↫「望ムルニ↢仏ノ本願ニ↡、意在リト↪衆生ヲシテ一向ニ専ラ称セシムルニ↩弥陀仏ノ名ヲ↨。」定散ノ諸行ハ非ズ↢本願ニ↡。故ニ不↣付↢属セ之ヲ↡。亦於テ↢其ノ中ニ↡、観仏三昧ハ雖モ↢殊勝ノ行ト↡、非ズ↢仏ノ本願ニ↡。故ニ不↢付属セ↡。念仏三昧ハ是仏ノ本願ナルガ故ニ、以テ付↢属ス之ヲ↡。
^「↑仏の本願に望む」 といふは、 ¬双巻経¼ (大経) の四十八願のなかの△第十八1271の願を指す 。
言フ↠「望ムト↢仏ノ本願ニ↡」者、指ス↢¬双巻経ノ¼四十八願ノ中ノ第十八ノ願ヲ↡也。
^「↑一向専称」 といふは、 同経の三輩のなかの 「△一向専念」 を指す 。 本願の義、 つぶさに△前に弁ずるがごとし。
言フ↢「一向専称ト」↡者、指ス↢同キ¬経ノ¼三輩之中ノ「一向専念ヲ」↡也。本願之義具ニ如シ↢前ニ*辨ズルガ↡。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)明廃立義
(a)正明
(イ)問
^問ひていはく、 もししからば、 なんがゆゑぞただちに本願の念仏の行を説かず 、 煩はしく本願にあらざる定散諸善を説くや。
問ヒテ*曰ク、若シ爾ラバ者、何ガ故ゾ直ニ不↠説カ↢本願ノ念仏ノ行ヲ↡、煩シク説ク↧非ザル↢本願ニ↡定散諸善ヲ↥乎。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)答
^答へていはく、 本願 念仏の行は、 ¬双巻経¼ (大経) のなかに委しくすでにこれを説く。 ゆゑに かさねて説かざるのみ。
答ヘテ*曰ク、本願念仏ノ行ハ、¬双巻経ノ¼中ニ委ク既ニ説ク↠之ヲ。故ニ重ネテ不ル↠説カ耳。
^▼また定散を説くことは、 念仏の余善に超過したることを顕さんがためなり。 もし定散なくは、 なんぞ念仏のことに秀でたることを顕さんや。 例するに ¬法華¼ の*三説の上に秀でたるがごとし。◗もし三説なくは、 なんぞ ¬法華¼ 第一 を顕さん。 ゆゑにいま定散は廃せんがために 説き、 念仏三昧は立せんがために 説く。
又説クコトハ↢定散ヲ↡、為ナリ↠顕サムガ↣念仏ノ超↢過シタルコトヲ余善ニ↡。若シ無クハ↢定散↡、何ゾ顕サムヤ↢念仏ノ特ニ秀デタルコトヲ↡。▼例スルニ如シ↣¬法華ノ¼秀デタルガ↢三説ノ上ニ↡。若シ無クハ↢三説↡、何ゾ顕サム↢¬法華¼第一ヲ↡。故ニ今定散ハ為ニ↠癈セムガ而説キ、念仏三昧ハ為ニ↠立セムガ而説ク。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)嘆益翻顕
(イ)総嘆
^ただし定散の諸善みなもつて0839測りがたし。
▼但シ定散ノ諸善皆用テ難シ↠測リ。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)別示
[一]定善
[Ⅰ]挙益
^おほよそ定善とは、 それ*依正の観、 鏡を懸けて 照臨す。 往生の願、 *掌を指して 速疾なり。 あるいは一観の力、 よく多劫の*罪を祛く。 あるいは*具憶の功、 つひに三昧の*勝利を得。 しかればすなはち 往生を求むる人、 よろしく*定観を修行すべし。
凡ソ定善ト者、夫レ▼依正之観懸ケテ↠鏡ヲ而照臨ス。▼往生之願指シテ↠掌ヲ而速疾ナリ。▼或イハ一観之力能ク*祛ク↢多劫之罪ヲ↡。▼或イハ具憶*之功終ニ得↢三昧之1315勝利ヲ↡。然レバ則チ求メム↢往生ヲ↡之人宜クシ↣修↢行ス定観ヲ↡。
^就中 第九の真身観は、 これ観仏三昧の法なり。 行もし成就せば、 すなはち弥陀の身を見たてまつる。 弥陀を見たて1272まつるがゆゑに、 諸仏を見たてまつることを得。 諸仏を見たてまつるがゆゑに、 現前に*記を授けらる。 この観の利益もつとも甚深なり。
就中ニ第九ノ真身観ハ是観仏三昧之法也。行若シ成就セバ者、即チ見タテマツル↢弥陀ノ身ヲ↡。見タテマツルガ↢弥陀ヲ↡故ニ得↠見タテマツルコトヲ↢諸仏ヲ↡。見タテマツルガ↢諸仏ヲ↡故ニ現前ニ授ケラル記ヲ。*此ノ観ノ利益最モ甚深也。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅱ]明付属相
^しかるをいま ¬観経¼ の*流通分に至りて、 釈迦如来、 阿難に*告命して往生の*要法を付属 流通せしむるちなみに、 観仏の法を嫌ひてなほ阿難に付属せず、 念仏の法を選びてすなはちもつて阿難に付属したまふ。 観仏三昧の法、 なほもつて付属したまはず。 いかにいはんや 日想・水想等の観においてをや。 しかればすなはち 十三 定観は、 みなもつて付属せざるところの行なり。
然ルヲ今至リテ↢¬観経ノ¼流通分ニ↡、釈迦如来告↢命シテ阿難ニ↡因ニ↠使ムル↤付↢属流↣通セ往生ノ要法ヲ↡、嫌ヒテ↢観仏ノ法ヲ↡尚不↣付↢属セ阿難ニ↡、*選ビテ↢念仏ノ法ヲ↡即チ以テ付↢属シタマフ阿難ニ↡。観仏三昧之法、尚以テ不↢付属シタマハ↡。何ニ況ヤ於テヲ↢日想・水想等ノ観ニ↡乎。然レバ則チ十三定観ハ、皆以テ所↠不ル↢付属セ↡之行也。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[一][Ⅲ]誡世人失
^しかるに世の人、 もし観仏等を楽ひて念仏を修せざるは、 これ遠く 弥陀の本願を乖くのみにもあらず、 またこれ近くは釈尊の付属に違ふ。 行者よろしく*商量すべし。
▼然ルニ世ノ人若シ楽ヒテ↢観仏等ヲ↡不ルハ↠修セ↢念仏ヲ↡、是遠ク非ズ↠乖クノミニモ↢弥陀ノ本願ヲ↡、亦是近クハ違フ↢釈尊ノ付属ニ↡。行者宜クシ↢商量ス↡。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]散善
[Ⅰ]出所貴行
^次に散善のなかに、 大小 持戒の行あり。 世みなおもへらく、 持戒の行者はこれ*真0840要に入るなり。 破戒のものは往生すべからずと。
▼次ニ散善ノ中ニ、有リ↢大小持戒ノ行↡。世皆以為ラク、持戒ノ行者ハ是入ル↢真要ニ↡也。破戒之者ハ不ト↠可カラ↢往生ス↡。
^また菩提心の行あり。 人みなおもへらく、 菩提心はこれ浄土の綱要なり。 もし菩提心なくは、 すなはち往生すべからずと。
又有リ↢菩提心ノ行↡。人皆以為ラク、菩提心ハ是浄土ノ綱要ナリ。若シ無クハ↢菩提心↡者即チ不ト↠可カラ↢往生ス↡。
^また*解第一義の行あり。 これはこれ*理観なり。 人またおもへらく、 理はこれ仏の源なり。 理を離れて 仏土を求むべか1273らず。 もし理観なくは、 往生すべからずと。
又有リ↢解第一義ノ行↡。此ハ是理観*也。人亦以為ラク、理ハ是仏ノ源ナリ。離レテ↠理ヲ不↠可カラ↠求ム↢仏土ヲ↡。若シ無クハ↢理観↡者不ト↠可カラ↢往生ス↡。
^また読誦大乗の行あり。 人みなおもへらく、 大乗経を読誦してすなはち往生すべし。 もし読誦の行なくは、 往生すべからずと。
又有リ↢読誦大乗ノ行↡。人皆以為ラク、読↢誦シテ大乗経ヲ↡即チ可シ↢往生ス↡。若シ無クハ↢読誦ノ行↡*者不ト↠可カラ↢往生ス↡。
^これにつきて二あり。 一には持経、 二には持呪なり。 持経と は、 「般若」・¬法華¼ 等の諸大乗経を持するなり。 持呪と は*随求・*尊勝・*光明・*阿弥陀等のもろもろの*神呪を持するなり。
就キテ↠此ニ有リ↠二。一ニ者持経、二ニ者持呪ナリ。持経ト者持スル↢般若・法華等ノ諸大乗経ヲ↡也。持呪ト者持1316スル↢随求・尊勝・光明・阿弥陀等ノ諸ノ神呪ヲ↡也。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]誡世人失
^おほよそ*散善の十一人、 みな貴ぶといへども、 そのなかにおいてこの*四箇の行は、 当世の人ことに欲するところの行なり。 これらの行をもつてほとほと念仏を抑ふ。
凡ソ散善ノ十一人皆雖モ↠貴ブト而於テ↢其ノ中ニ↡*此ノ四箇ノ行ハ、当世之人殊ニ所↠欲スル之行也。▼以テ↢此等ノ行ヲ↡殆抑フ↢念仏ヲ↡。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)重示廃立
^つらつら経の意を尋ぬれば、 この諸行をもつて付属 流通せず。 ただ念仏の一行をもつて、 すなはち後世に付属 流通せしむ。 知るべし、 ▼釈尊の諸行を付属したまはざる所以は、 すなはちこれ弥陀の本願にあらざる ゆゑなり。 また念仏を付属する所以は、 すなはちこれ弥陀の本願のゆゑなり。
◆倩尋ヌレバ↢経ノ意ヲ↡者、不↧以テ↢此ノ諸行ヲ↡付属流通セ↥。唯以テ↢念仏ノ一行ヲ↡即チ使ム↤付↢属流↣通セ後世ニ↡。応シ↠知ル、▼釈尊ノ所↤以不ル↣付↢属シタマハ諸行ヲ↡者、即チ是非ザル↢弥陀ノ本願ニ↡之故也。亦所↣以付↢属スル念仏ヲ↡者、即チ是弥陀ノ本願之故也。
^いままた善導和尚、 諸行を廃して念仏に帰する所以は、 すなはち弥陀の本0841願たる上 、 またこれ釈尊の付属の行なり。
*今又善導和尚、所↧以癈シテ↢諸行ヲ↡帰スル↦念仏ニ↥者、即チ為ル↢弥陀ノ本願↡之上、亦是釈尊ノ付属之行也。
^ゆゑに知りぬ、 諸行は機にあらず 時を失す。 念仏往生は機に当り 、 時を得たり。 感応あに*唐捐せんや。
故ニ知リヌ、諸行ハ非ズ↠機ニ失ス↠時ヲ。念仏往生ハ当リ↠機ニ得タリ↠時ヲ。感応豈ニ唐捐セム哉。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(d)結帰仏意【随自随他】
^まさに知るべし、 *随他の前にはしばらく定散の門を開くといへども、 *随自の後1274には還りて定散の門を▼閉づ。 一たび開きて以後永く閉ぢざるは、 ただこれ念仏の一門なり。 弥陀の本願、 釈尊の付属、 意これにあり。 行者知るべし。
当ニシ↠知ル、随他之前ニハ蹔ク雖モ↠開クト↢定散ノ門ヲ↡、*随自之後ニハ還リテ閉ヅ↢定散ノ門ヲ↡。一タビ開キテ以後永ク不ル↠閉ヂ者、唯是念仏ノ一門ナリ。弥陀ノ本願、釈尊ノ付属、意在リ↠*此ニ矣。行者応シ↠知ル。
二 ⅻ Ⅲ b ロ (三)流通遐代
^またこのなかに 「△遐代」 と は、 ¬双巻経¼ (大経) の意によらば、 △遠く末法万年の後の百歳の時を指す 。 これすなはち遐きを挙げて邇きを摂するなり。 しかれば、 法滅の後なほもつてしかなり。 いかにいはんや末法をや。 末法すでにしかり。 いかにいはんや正法・像法をや。
亦此ノ中ニ「遐代ト」者、依ラバ↢¬双*巻経ノ¼意ニ↡、遠ク指ス↢末法万年之後ノ百歳之時ヲ↡也。是則チ挙ゲテ↠遐ヲ摂スル↠邇ヲ也。然レバ者、法滅之後猶以テ然也。何ニ況ヤ末法ヲ哉。末法已ニ然リ。何ニ況ヤ正法・像法ヲ哉。
^ゆゑに知りぬ、 念仏往生の道は正像末の三時、 および*法滅百歳の時に通ず 。
故ニ知リヌ、念仏往生ノ道ハ通ズ↢正像末之三時、及ビ法滅百歳之時ニ↡焉。
二 ⅼ 念仏多善根章【多善根章】
Ⅰ 標釈
【13】^○念仏をもつて多善根となし、 雑善をもつて少善根となす文。
以テ↢念仏ヲ↡為シ↢多善根ト↡、以テ↢雑善ヲ↡為ル↢少善根ト↡之文
二 ⅼ Ⅱ 引文
a 弥陀経
^▼¬阿弥陀経¼ にのたまはく、 「▲少善根福徳の因縁をもつて、 かの国に生ずることを得べからず。
¬阿1317弥陀経ニ¼云ク、「▼不↠可カラ↧以テ↢少善根福徳ノ因縁ヲ↡得↞生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。
^◆舎利弗、 もし善男子・善女人ありて、 阿弥陀仏を説くを聞きて、 名号を執持して、 もしは一日、 もしは二日、 もしは三日、 もしは四日、 もしは五日、 もし0842は六日、 もしは七日、 心を一にして乱らずは、 ◆その人命終の時に臨みて、 阿弥陀仏もろもろの聖衆と現じて、 その前にましまさん。 この人*終時に心顛倒せずして、 すなはち阿弥陀仏の極楽国土に往生することを得」 と1275。
舎利弗、若シ有リテ↢善男子・善女人↡、聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、執↢持シテ名号ヲ↡、若シハ一日、若シハ二日、若シハ三日、若シハ四日、若シハ五日、若シハ六日、若シハ七日、▼一ニシテ↠心ヲ不ハ↠乱ラ、其ノ人臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、阿弥陀仏与↢諸ノ聖衆↡現ジテ、在サム↢其ノ前ニ↡。是ノ人終時ニ心不シテ↢顛倒セ↡、即チ得ト↣往↢生スルコトヲ阿弥陀仏ノ極楽国土ニ↡。」
二 ⅼ Ⅱ b 法事讃
^善導この文を釈していはく (法事讃・下)、
▼善導釈シテ↢此ノ文ヲ↡云ク、
^「▲極楽 無為涅槃の界には、 ▽縁に随ふ雑善はおそらくは生じがたし。
ゆゑに如来 (釈尊)、 要法を選びて、 教へて弥陀を念ぜしむること専にしてまた専ならしむ。
「▼極楽無為涅槃ノ界ニハ | ▼随フ↠縁ニ雑善ハ恐クハ難シ↠生ジ |
故ニ使ム↧如来選ビテ↢▼要法ヲ↡ | 教ヘテ念ゼシムルコト↢弥陀ヲ↡▼専ニシテ復専ナラ↥ |
^◆七日七夜、 心 無間なれ。 長時に行を起すもますますみなしかなり。
終りに臨みて聖衆、 華を持ちて現じたまふ。 身心踊躍して金蓮に坐す。
七日七夜心無間ナレ | 長時ニ起スモ↠行ヲ倍ス皆然ナリ |
臨ミテ↠終ニ聖衆持チテ↠花ヲ現ジタマフ | 身心踊躍シテ坐ス↢金蓮ニ↡ |
^◆坐する時にすなはち無生忍を得。 一念に迎へ将て仏前に 至る。
法侶衣をもつて 競ひ来りて着す。 不退を証得して三賢に入る」 と。
▼坐スル時ニ即チ得↢無生忍ヲ↡ | 一念ニ迎ヘ将テ至ル↢仏前ニ↡ |
法侶将テ↠衣ヲ競ヒ来リテ著ス | ▼証↢得シテ不退ヲ↡入ルト↢三賢ニ↡」 |
二 ⅼ Ⅲ 私釈
a 釈雑善難生
^わたくしにいはく、 「△少善根福徳の因縁をもつて、 かの国に生ずることを得べからず」 といふは、 諸余の雑行はかの国に生じがたし。 ゆゑに 「△随縁雑善恐難生」 といふ。
私ニ云ク、「不トイフ↠可カラ↧以テ↢少善根福徳ノ因縁ヲ↡得↞生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡」者、諸余ノ雑行者難シ↠生ジ↢彼ノ国ニ↡。故ニ云フ↢「随縁雑善恐難生ト。」
二 ⅼ Ⅲ b 釈多少義
^少善根と は多善根に対する言なり。 しかればすなはち 雑善はこれ少善根なり、 念仏はこれ多善根なり。
「少善根ト」者対スル↢多善根ニ↡之言也。然レバ則チ雑善ハ是少善根也、念仏ハ是多善根也。
^ゆゑに▼*龍舒の ¬*浄土文¼ にいはく、 「*襄陽の石に ¬阿弥陀経¼ を刻れり。 すなはち隋の陳仁稜が書けるところの字画、 *清婉にして 人多く慕ひ玩ぶ。 ▼ª一心不乱0843º より下に1276 、 ª▼*専▼持名号以称名故諸罪消滅即是多善根▼福徳因縁º といふ。 ▼*今世の伝本にこの二十一字を脱せり」 と。 以上
故ニ▼龍舒ノ¬浄土文ニ¼云ク、「▼襄陽ノ石ニ刻レリ↢¬阿弥陀経ヲ¼↡。乃チ隋ノ陳仁稜ガ所ノ↠書ケル字画、清婉ニシテ人多ク慕ヒ玩ス。自リ↢一心不乱↡而下ニ、云フ↢専持名号以称名故諸罪消滅即是多善根1318福徳因縁ト↡。▼今世ノ伝本ニ脱セリト↢此ノ二十一字ヲ↡。」*已上
二 ⅼ Ⅲ c 兼示余意
^ただ多少の義あるのみにあらず。 また大小の義あり 。 いはく雑善はこれ小善根なり、 念仏はこれ大善根なり。 また勝劣の義あり。 いはく雑善はこれ劣の善根なり、 念仏はこれ勝の善根なり。 その義知るべし。
非ズ↣啻有ノミニ↢多少ノ義↡。亦有リ↢大小ノ義↡。謂ク雑善ハ是小善根也、念仏ハ是大善根也。亦有リ↢勝劣ノ義↡。謂ク雑善ハ是劣ノ善根也、念仏ハ是勝ノ善根也。其ノ義応シ↠知ル。
二 ⅽ ▽諸仏証誠章【証誠章】
Ⅰ 標章
【14】^六方恒沙の諸仏余行を*証誠せず、 ただ念仏を証誠したまふ文。
六方恒沙ノ諸仏不↣証↢誠セ余行ヲ↡、唯証↢誠シタマフ念仏ヲ↡之文
二 ⅽ Ⅱ 引文
a 観念法門
^善導の ¬観念法門¼ にいはく、 「▲また ¬弥陀経¼ にのたまふがごとし。 ª六方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 みな舌を舒べてあまねく三千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまふ。 «もしは仏 (釈尊) の在世にもあれ、 もしは仏の滅後にもあれ、 一切の造罪の凡夫、 ただ心を回して阿弥陀仏を念じて、 浄土に生ぜんと願じて、 上百年を尽し、 下七日・一日、 十声・三声・一声等に至るまで、 命終らんと欲する時、 仏、 聖衆とみづから来りて迎接したまひて、 すなはち往生を得»º と。
善導ノ¬観念法門ニ¼云ク、「又▼如シ↢¬弥陀経ニ¼云フガ↡。▼六方ニ各ノ有シテ↢恒河沙等ノ諸仏↡、皆舒ベテ↠舌ヲ遍ク覆ヒテ↢三千世界ニ↡、説キタマフ↢誠実ノ言ヲ↡。▼若シハ仏ノ在世ニモアレ、若シハ仏ノ滅後ニモアレ、一切ノ造罪ノ凡夫、但廻シテ↠心ヲ念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡、願ジテ↠生ゼムト↢浄土ニ↡、▼上尽シ↢百年ヲ↡下至ルマデ↢七日一日▼十声三声一声等ニ↡、命欲スル↠終ラムト時、仏与↢聖衆↡自ラ来リテ迎接シタマヒテ、即チ得ト↢往生ヲ↡。
^◆上のごとき六方等の仏、 舌を舒べて、 さだめて凡夫のために証をなしたまふ、 罪滅して生ずることを得と。 もしこの証によりて生ずるこ1277とを得ずは、 六方 諸仏の舒べたまへる舌、 一たび口より出でて以後、 つひに口に還り入らず0844して、 自然に壊爛せん」 と。
如キ↠上ノ六方等ノ仏舒ベテ↠舌ヲ、定メテ為ニ↢凡夫ノ↡作シタマフ↠証ヲ、罪滅シテ得ト↠生ズルコトヲ。若シ不ハ↧依リテ↢*此ノ証ニ↡得↞生ズルコトヲ者、六方諸仏ノ舒ベタマヘル舌、▼一タビ出デテ↠口ヨリ已後終ニ不シテ↣還リ↢入ラ口ニ↡、自然ニ壊爛セムト。」
二 ⅽ Ⅱ b 往生礼讃
^同じく ¬往生礼讃¼ に ¬阿弥陀経¼ を引きていはく、 「▲東方の恒河沙のごとき等の諸仏、 南西北方および上下一々の方の恒河沙のごとき等の諸仏、 おのおの本国にして、 その舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまふ。 ªなんぢら衆生、 みなこの一切 諸仏の所護念経を信ずべしº と。
同ジク▼¬往生礼讃ニ¼引キテ↢¬阿弥陀経ヲ¼↡云ク、「東方ノ如キ↢恒河沙ノ↡等ノ諸仏、南西北方及ビ上下一々ノ方ノ如キ↢恒河沙ノ↡等ノ諸仏、各ノ於テ↢本国ニ↡、出シテ↢其ノ舌相ヲ↡遍ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマフ↢誠実ノ言ヲ↡。汝等衆生、皆応シト↠信ズ↢是ノ一切諸仏ノ所護念経ヲ↡。
^◆いかんが護念と名づくる。 もし衆生ありて阿弥陀仏を称念すること、 もしは一日および七日、 下十声乃至一声、 一念等に至るまで、 かならず往生 を得。 この事を証誠するがゆゑに護念経と名づく」 と。
云何ガ名クル↢護念ト↡。若シ有リテ↢衆生↡称↢念スルコト阿弥陀仏ヲ↡、若シハ*一日及ビ*七日、下至ルマデ↢十声乃至1319一声一念等ニ↡、必ズ得↢往生ヲ↡。証↢誠スルガ此ノ事ヲ↡故ニ名クト↢護念経ト↡。」
二 ⅽ Ⅱ c 重引礼讃
^またいはく (礼讃)、
又云ク、
^「▲六方の如来舌を舒べて、 もつぱら名号を称して西方に至ることを証したまふ。
かしこに到りて華開けて、 妙法を聞くに、 十地の願行自然に彰る」 と。
「六方ノ如来舒ベテ↠舌ヲ証シタマフ↧ | 専ラ称シテ↢名号ヲ↡至ルコトヲ↦西方ニ↥ |
到リテ↠彼ニ花開ケテ聞クニ↢妙法ヲ↡ | 十地ノ願行自然ニ彰ルト」 |
二 ⅽ Ⅱ d 散善義
^同じく ¬観経 疏¼ (散善義) に ¬阿弥陀経¼ を引きていはく、 「▲また十方の仏等、 衆生の釈迦一仏の所説を信ぜざることを恐畏して、 すなはちともに同心同時1278に、 おのおの舌相を出してあまねく三千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまふ。 ªなんぢら衆生、 みなこの釈迦の所説・所讃・所証を信ずべし。 一切の凡夫、 罪福の多少、 時節の久近を問はず、 ただよく上百年を尽し、 下一日七日に至るま0845で、 一心にもつぱら弥陀の名号を念ずれば、 さだめて往生 を得ることかならず疑なしº」 と。
同ジク▼¬観経疏ニ¼引キテ↢¬阿弥陀経ヲ¼↡云ク、「又十方ノ仏等、恐↢畏シテ衆生ノ不ラムコトヲ↟信ゼ↢釈迦一仏ノ所説ヲ↡、即チ共ニ同心同時ニ、各ノ出シテ↢舌相ヲ↡遍ク覆ヒテ↢三千世界ニ↡、説キタマフ↢誠実ノ言ヲ↡。汝等衆生、皆応シ↠信ズ↢是ノ釈迦ノ所説・所讃・所証ヲ↡。一切ノ凡夫、不↠問ハ↢罪福ノ多少、時節ノ久近ヲ↡、但能ク上尽シ↢百年ヲ↡下至ルマデ↢一日七日ニ↡、一心ニ専ラ念ズレバ↢弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得ルコト↢往生ヲ↡必ズ無シト↠疑也。」
二 ⅽ Ⅱ e 法事讃
^同じく ¬法事讃¼ (下) にいはく、
同ジク▼¬法事讃ニ¼云ク、
^「▲心々に念仏して疑を生ずることなかれ。 六方の如来 虚しからずと証したまふ。
三業専心にして雑乱せざれば、 百宝の蓮華、 時に応じて見ゆ」 と。
「心々ニ念仏シテ莫レ↠生ズルコト↠疑ヲ | 六方ノ如来証シタマフ↢不ト↠虚シカラ |
三業専心ニシテ*不レバ↢雑乱セ↡ | 百宝ノ蓮華応ジテ↠時ニ見ユト」 |
二 ⅽ Ⅱ f 五会讃
^法照禅師の ¬*浄土五会法事讃¼ にいはく、
法照禅師ノ¬浄土五会法事讃ニ¼云ク、
^「▼万行のなか 急要となす。 迅速なること浄土門に過ぎたるはなし。
ただ*本師金口の説のみにあらず。 十方の諸仏ともに伝へ証したまふ」 と。
「▼万行之中▼為ス↢急*用ト↡ | 迅速ナルコト無シ↠過ギタルハ↢浄土門ニ↡ |
不ズ↢但▼本師金口ノ説ノミニ↡ | ▼十方ノ諸仏共ニ伝ヘ証シタマフト」 |
二 ⅽ Ⅲ 私釈
a 明証局念仏
イ 問
^わたくしに問ひていはく、 なんがゆゑぞ 六方の諸仏の証誠 、 ただ念仏の一行に局るや。
私ニ問ヒテ曰ク、何ガ故ゾ六方ノ諸仏ノ証誠、唯局ル↢念仏ノ一行ニ↡乎。
二 ⅽ Ⅲ a ロ 答
^答へていはく、 もし善導の意によらば、 念仏はこれ弥陀の本願なり、 ゆゑにこれを証誠す。 余行はしからず、 ゆゑにこれなし。
答ヘテ曰ク、若シ依ラバ↢善導ノ意ニ↡、念仏ハ是弥陀ノ本願也、故ニ証↢誠ス之ヲ↡。余行ハ不↠爾ラ、故ニ無シ↠之也。
二 ⅽ Ⅲ b 明偏在小経
イ 問
^1279問ひていはく、 もし本願によりて念仏を証誠せば、 ¬双巻 ¼ (大経)・¬観経¼ 等に念仏を説く時、 なんぞ証誠せざるや。
問ヒテ曰ク、若1320シ依リテ↢本願ニ↡証↢誠セバ念仏ヲ↡者、¬双巻¼・¬*観経¼等ニ説ク↢念仏ヲ↡之時、何ゾ不ル↢証誠セ↡乎。
二 ⅽ Ⅲ a ロ 答
^答へていはく、 解するに二 義あり。
答ヘテ曰ク、解スルニ有リ↢二義↡。
^一に解していはく、 ¬双巻¼・¬観経¼ 等のなかに本願 念仏を説くといへども、 兼ねて余行を明かす。 ゆゑに証誠せず。 この ¬経¼ (小経) のなかに一向にもつぱら念仏を0846説く。 ゆゑにこれを証誠す。
一ニ解シテ云ク、¬双巻¼・¬観経¼等ノ中ニ雖モ↠説クト↢本願念仏ヲ↡、*兼ネテ明ス↢余行ヲ↡。故ニ不↢証誠セ↡。*此ノ¬経ノ¼*中ニ一向ニ純ラ説ク↢念仏ヲ↡。故ニ証↢誠ス*之ヲ↡。
^二に解していはく、 かの ¬双巻 ¼ 等のなかに証誠の言なしといへども、 この ¬経¼ にすでに証誠あり。 これに例してかれを思ふに、 かれらの経中 (大経・観経) において説くところの念仏 、 また証誠の義あるべし。 文 この ¬経¼ にありといへども、 義 *かの経に通ず。
二ニ解シテ云ク、彼ノ¬双巻¼等ノ中ニ雖モ↠無シト↢証誠之言↡、*此ノ¬経ニ¼已ニ有リ↢証誠↡。例シテ↠此ニ思フニ↠彼ヲ、於テ↢彼等ノ¬経¼中ニ↡所ノ↠説ク念仏亦応シ↠有ル↢証誠之義↡。文雖モ↠在リト↢此ノ¬経ニ¼↡、義通ズ↢於彼ノ¬経ニ¼↡。
^▼ゆゑに天台 (智顗) の ¬*十疑論¼ にいはく、 「▼また ¬阿弥陀経¼・¬大無量寿経¼・¬*鼓音声陀羅尼経¼ 等にのたまはく、 ª釈迦仏、 経を説きたまふ時に、 十方世界におのおの恒河沙の諸仏ましまして、 その舌相を舒べてあまねく三千大千世界に覆ひて、 «一切衆生の阿弥陀仏を念じて仏の本願大悲願力に乗るがゆゑに、 決定して極楽世界に生ずることを得» と証誠したまふº」 と。
故ニ▼天臺ノ¬十疑論ニ¼云ク、「又¬阿弥陀経¼・¬大無量寿経¼・¬鼓音声陀羅尼経¼等ニ云ク、釈迦仏説キタマフ↠*経ヲ時ニ、有シテ↢十方世界ニ各ノ恒河沙ノ諸仏↡、舒ベテ↢其ノ舌相ヲ↡遍ク覆ヒテ↢三千*大千世界ニ↡、証↧誠シタマフト一切衆生ノ念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡乗ルガ↢仏ノ本願大悲願力ニ↡故ニ、決定シテ得ト↞生ズルコトヲ↢極楽世*界ニ↡。」
二 ⅾ 諸仏護念章【護念章】
Ⅰ 標章
【128015】^○六方 諸仏、 念仏 行者を*護念したまふ文。
六方諸仏護↢*念シタマフ念仏行者ヲ↡*之文
二 ⅾ Ⅱ 引文
a 観念法門
^◇¬観念法門¼ にいはく、 「▲また ¬弥陀経¼ に説くがごとし。 ªもし男子・女人ありて、 七日七夜および一生を尽して、 一心にもつぱら阿弥陀仏を念じて往生を願ずれば、 この人はつねに六方恒河沙等の仏、 ともに来りて護念したまふことを得。 ゆゑに護念経と名づくº と。 護念 の意は、 またもろもろの悪鬼神をして便りを得しめず、 また横病、 横死、 横に厄難あることなく、 一切の災障自0847然に消散しぬ。 不至心をば除く」 と。
▼¬観念法門ニ¼云ク、「又如シ↢¬弥陀経ニ¼説クガ↡。若シ有リテ↢*男子・女人↡、七日七夜及ビ尽シテ↢一生ヲ↡、一心ニ専ラ念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡願ズレバ↢往生ヲ↡者、此ノ人ハ常ニ得↢六方恒河沙等ノ仏共ニ来リテ護念シタマフコトヲ↡。故ニ名クト↢護念経ト↡。▼護念ノ意者、亦不↠令メ↢諸ノ悪鬼神ヲシテ得↟便ヲ、亦无ク↣横病横死、横ニ有ルコト↢厄難↡、一切ノ災障自然ニ消散シヌ。除クト↢不至*心ヲバ↡。」
二 ⅾ Ⅱ b 往生礼讃
^¬往生礼讃¼ にいはく、 「▲ªもし仏を称して往生するものは、 つねに六方恒沙等の諸仏のために護念せらる。 ゆゑに護念経と名づくº (小経) と。 ◆いますでにこの増上の誓願あり、 憑むべし。 もろもろの仏子等、 なんぞ意を励まさざらんや」 と。
¬往1321生礼讃ニ¼云ク、「▼若シ称シテ↠仏ヲ往生スル者ハ、▼常ニ為ニ↢六方恒沙等ノ諸仏ノ↡之所ル↢護念セ↡。故ニ名クト↢護念経ト↡。今既ニ有リ↢*斯ノ増上ノ誓願↡、可シ↠憑ム。諸ノ仏子等、何ゾ不ラム↠励サ↠意ヲ*者也ト。」
二 ⅾ Ⅲ 私釈
a 問
^わたくしに問ひていはく、 ただ六方の如来のみましまして 行者を護念したまふはいかんぞ。
私ニ問ヒテ曰ク、唯有シテ↢六方ノ如来ノミ↡護↢念シタマフハ行者ヲ↡如何ゾ。
二 ⅾ Ⅲ b 答
イ 自釈
^答へていはく、 六方の如来のみには限らず。 弥陀・観音等また来りて護念したまふ。
答ヘテ曰ク、不↠限ラ↢六方ノ如来ノミニハ↡。弥陀・観音等亦来リテ護念シタマフ。
二 ⅾ Ⅲ b ロ 引証
(一) 往生礼讃
^ゆゑに ○¬往生礼讃¼ にいはく、 「▲¬十往生経¼ にのたまはく、 ªもし衆生ありて阿弥陀仏を念じて往生を願ずれば、 か1281の仏すなはち二十五の菩薩を遣はして、 行者を擁護したまふ。 もしは行、 もしは坐、 もしは住、 もしは臥、 もしは昼、 もしは夜、 一切の時、 一切の処に、 悪神をしてその便りを得しめずº と。
故ニ▼¬往生礼讃ニ¼云ク、「¬十往生経ニ¼云ク、若シ有リテ↢衆生↡念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡願ズレバ↢往生ヲ↡者、▼彼ノ仏即チ遣シテ↢二十五ノ菩薩ヲ↡、擁↢護シタマフ行者ヲ↡。若シハ行若シハ坐、若シハ住若シハ臥、若シハ*昼若シハ夜、一切ノ時一切ノ処ニ、不ト↠令メ↢*悪神ヲシテ得↢其ノ便ヲ↡也。
^◆また ¬観経¼ にのたまふがごとし。 ªもし阿弥陀仏を称・礼・念して、 かの国に往生せんと願ずれば、 かの仏すなはち無数の化仏、 無数の化観音・勢至菩薩を遣はして、 行者を護念したまふº と。 また前の二十五の菩薩等と 百重千重行者を囲繞して、 行住坐臥を問はず、 一切の時処に、 もしは昼、 もしは夜、 つねに行者を離れたまはず。
▼又如シ↢¬観経ニ¼云フガ↡。若シ称↢礼↣念シテ阿弥陀仏ヲ↡、願ズレバ↣往↢生セムト彼ノ国ニ↡者、彼ノ仏即チ遣シテ↢無数ノ化仏、無数ノ化観音・勢至菩薩ヲ↡護↢念シタマフト行者ヲ↡。復▼与↢前ノ二十五ノ菩薩等↡百重千重囲↢繞シテ行者ヲ↡、不↠問ハ↢行住坐臥ヲ↡、一切ノ時処ニ、若シハ昼若シハ夜、常ニ不↠離レタマハ↢行者ヲ↡。
^◆いますでにこの勝益あり。 憑むべし。 願はくは も0848ろもろの行者、 *おのおのすべからく至心に往くことを求むべし」 と。
今既ニ有リ↢斯ノ勝益↡。可シ↠憑ム。願クハ諸ノ行者、各ノ須クシ↢至心ニ求ム↟*往クコトヲ。」
二 ⅾ Ⅲ b ロ (二) 観念法門
^また ¬観念法門¼ にいはく、 「▲また ¬観経¼ の下の文のごとし。 ªもし人ありて、 心を至してつねに阿弥陀仏および二菩薩を念ずれば、 観音・勢至つねに行人のために勝友知識となりて随逐影護したまふº」 と。
又▼¬観念法門ニ¼云ク、「又如シ↢▼¬観経ノ¼下ノ文ノ↡。若シ有リテ↠人、至シテ↠心ヲ常ニ*念ズレバ↢阿弥陀仏及ビ二菩薩ヲ↡、観音・勢至、常ニ与ニ↢行人ノ↡作リテ↢勝友・知識ト↡随逐影護シタマフト。」
^またいはく (観念法門)、 「▲また ¬般舟三昧経¼ の ª*行品º のなかに説きてのたまふがごとし。 ◆ª仏ののたまはく、 «もし人もつぱらこの念 弥陀仏三昧を行ずれば、 つねに一切の諸天および四天大王・竜神八部の随逐影護、 愛楽相見を得て、 永くもろ1282もろの悪鬼神、 災障・厄難 、 横に悩乱を加ふることなし»º と。 つぶさには ª*護持品º のなかに説くがごとし」 と。
又云ク、「又如シ↢¬般舟三昧経ノ¼行品ノ中ニ説キテ云フガ↡。仏ノ言ク、若シ人専ラ行ズレバ↢此ノ念弥陀仏三昧ヲ↡者、常ニ得テ↢▼一切ノ諸天及ビ▼四天大王・竜神▼八部ノ随逐影護、愛楽相見ヲ↡、永1322ク無シト↣諸ノ悪鬼神、災障・厄難、横ニ加フルコト↢悩乱ヲ↡。具ニハ如シト↢護持品ノ中ニ説クガ↡。」
^またいはく (観念法門)、 「▲三昧道場に入るを除きては、 日別に弥陀仏を念ずること一万 、 命を畢ふるまで相続すれば、 すなはち弥陀の加念を蒙りて罪障を除くことを得。 また仏、 聖衆とつねに来りて護念したまふことを蒙る。 すでに護念を蒙りぬれば、 すなはち延年転寿を得」 と。
又云ク、「▼除キテハ↠入ルヲ↢三昧道場ニ↡、日別ニ念ズルコト↢弥陀仏ヲ↡一万、畢ヘルマデ↠命ヲ相続スレバ者即チ蒙リテ↢弥陀ノ加念ヲ↡得↠除クコトヲ↢罪障ヲ↡。又蒙ル↧仏与↢聖衆↡常ニ来リテ護念シタマフコトヲ↥。既ニ蒙リヌレバ↢護念ヲ↡、即チ得ト↢延年転寿ヲ↡。」
二 ⅿ【慇懃付属章】
Ⅰ 標章
【16】^○釈迦如来、 弥陀の名号をもつて*慇懃に舎利弗等に付属したまふ文。
釈迦如来以テ↢弥陀ノ名号ヲ↡慇懃ニ▼付↢属シタマフ舎利弗等ニ↡*之文
二 ⅿ Ⅱ 引文
a 弥陀経
^◇¬阿弥陀経¼ にのたまはく、 「▲仏この経を説きたまふこと已りて、 舎利弗およびもろもろの比丘、 一切世間の天・人・阿修羅等、 仏の所説を聞きて、 歓喜し信受して、 礼0849をなして 去りにき」 と。
¬阿弥陀経ニ¼云ク、「仏説キタマフコト↢此ノ経ヲ↡已リテ、舎利弗及ビ諸ノ比丘、一切世間ノ天・人・阿修羅等、聞キテ↢仏ノ所説ヲ↡、歓喜シ信受シテ、作シテ↠礼ヲ而去リニキト。」
二 ⅿ Ⅱ b 法事讃
^◇善導の ¬法事讃¼ (下) に、 この文を釈していはく、
善導ノ▼¬法事讃ニ¼釈シテ↢此ノ文ヲ↡云ク、
^「▲世尊法を説きたまふこと、 時まさに了りなんとして、 慇懃に弥陀の名を付属したまふ。
五濁増の時 は疑謗 多く、 道俗あひ嫌ひて聞くことを用ゐず。
「▼世尊説キタマフコト↠法ヲ時将ニテ↠了リナムト | ▼慇懃ニ付↢属シタマフ弥陀ノ名ヲ↡ |
▼五濁増ノ時ハ多ク↢疑謗↡ | 道俗相嫌ヒテ不↠用ヰ↠聞クコトヲ |
^◆修1283行することあるを見ては瞋毒を起して、 方便して破壊して競ひて怨を生ず。
かくのごとき生盲闡提の輩は、 頓教を毀滅して永く沈淪す。
見テハ↠有ルヲ↢修行スルコト↡起シテ↢瞋毒ヲ↡ | 方便シテ破壊シテ競ヒテ生ズ↠怨ヲ |
▼如キ↠此クノ生盲闡提ノ輩ハ | ▼毀↢滅シテ頓教ヲ↡永ク沈淪ス |
^◆大地微塵劫を超過すとも、 いまだ三途の身を離るることを得べからず。
大衆同心にみな、 あらゆる破法罪の因縁を懴悔せよ」 と。
▼超↢過ストモ大地微塵劫ヲ↡ | 未ダ↠可カラ↠得↠離ルルコトヲ↢三途ノ身ヲ↡ |
▼大衆同心ニ皆懴↢悔セヨト | 所有ノ破法罪ノ因縁ヲ↡」 |
二 ⅿ Ⅲ 私釈
a 総標
^わたくしにいはく、 ▼おほよそ三経の意を案ずるに、 諸行のなかに念仏を選択して もつて*旨帰となす。
私ニ云ク、凡ソ案ズルニ↢三経ノ意ヲ↡、*諸行之中ニ選↢択シテ念仏ヲ↡以為ス↢旨帰ト↡。
二 ⅿ Ⅲ b 別明【八選択】
イ 大経
^▼先づ ¬双巻経¼ (大経) のなかに三の選択あり。 一には↓選択本願、 二には↓選択讃歎、 三には↓選択留教なり。
先ヅ▼¬双巻経ノ¼中ニ有リ↢三ノ選択↡。一ニハ選択本願、二ニハ選択讃歎、三ニハ選択留教ナリ。
・選択本願
^一に↑▼選択本願といふは、 念仏はこれ法蔵比丘、 二百一十億のなかにおいて選択するところの往生の行なり。 細しき旨△上に見えたり。 ゆゑに選択↓本願といふ。
一ニ選択本願トイフ者、念仏ハ是法蔵比丘、於テ↢二百一十億之中ニ↡所ノ↢選択スル↡往生之行也1323。細シキ旨見エタリ↠上ニ。故ニ云フ↢選択本願ト↡也。
・選択讃嘆
^二に↑選択讃歎といふは、 △上の三輩のなかに菩提心等の余行を挙ぐといへども、 釈迦すなはち余行を讃歎せず、 ただ念仏において讃歎したまひて、 「△無上の功徳」 (大経・下意) とのたまふ。 ゆゑに選択↓讃0850歎といふ 。
二ニ選択讃歎トイフ者、上ノ三輩ノ中ニ雖モ↠挙グト↢菩提心等ノ余行ヲ↡、釈迦即チ不↣讃↢歎セ余行ヲ↡、唯於テ↢念仏ニ↡而讃歎シタマヒテ*云フ↢「無上ノ功徳ト」↡。故ニ云フ↢選択讃歎ト↡也。
・選択留教
^三に▼↑選択留教といふは、 また△上に余行 諸善を挙ぐといへども、 釈迦選択してただ念仏の一法を留めたまふ。 ゆゑに選択↓留教といふ。
三ニ選択留教トイフ者、又上ニ雖モ↠挙グト↢余行諸善ヲ↡、釈迦選択シテ唯留メタマフ↢念仏ノ一法ヲ↡。故ニ云フ↢選択留教ト↡也。
二 ⅿ Ⅲ b ロ 観経
^▼次に ¬観経¼ のなかにまた三の選1284択あり。 一には↓選択摂取、 二には↓選択化讃、 三には↓選択付属なり。
次ニ▼¬観経ノ¼中ニ又有リ↢三ノ選択↡。一ニハ選択摂取、二ニハ選択化讃、三ニハ選択付属ナリ。
・選択摂取
^一に↑▼選択摂取といふは、 △¬観経¼ のなかに定散の諸行を説くといへども、 弥陀の光明ただ念仏の衆生を照らして、 摂取して捨てたまはず。 ゆゑに選択↓摂取といふ 。
一ニ選択摂取トイフ者、¬観経¼之中ニ雖モ↠*説クト↢定散ノ諸行ヲ↡、弥陀ノ光明唯照シテ↢念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不↠捨テタマハ。故ニ云フ↢選択摂取ト↡也。
・選択化讃
^二に↑選択化讃といふは、 △下品上生の人、 聞経・称仏 の二行ありといへども、 弥陀の化仏、 念仏を選択して、 「△汝称仏名故諸罪消滅我来迎汝」 (観経) とのたまふ。 ゆゑに選択↓化讃といふ 。
二ニ選択化讃トイフ者、下品上生ノ人、雖モ↠有リト↢聞経・称仏ノ二行↡、弥陀ノ化仏選↢択シテ念仏ヲ↡云フ↢「汝称仏名故諸罪消滅我来迎汝ト」↡。故ニ云フ↢選択化讃ト↡也。
・選択付属
^三に↑▼選択付属といふは、 また△定散の諸行を明かすといへども、 ただ独り念仏の一行を付属す。 ゆゑに選択↓付属といふ 。
三ニ選択付属トイフ者、又雖モ↠明スト↢定散ノ諸行ヲ↡、唯独リ付↢属ス念仏ノ一行ヲ↡。故ニ云フ↢選択付属ト↡也。
二 ⅿ Ⅲ b ハ 弥陀経
^▼次に ¬阿弥陀経¼ のなかに一の選択あり。 いはゆる選択証誠なり。
次ニ▼¬阿弥陀経ノ¼中ニ有リ↢一ノ選*択↡。所謂ル選択証誠也。
・選択証誠
^すでに諸経のなかにおいて多く往生の諸行を説くといへども、 △六方の諸仏かの諸行において 証誠せず、 この ¬経¼ (小経) のなかに至りて念仏往生を説きたまふときに、 六方恒沙の諸仏、 おのおの舌を舒べて大千に覆ひて、 実の語と証誠して、 これを証誠したまふ。 ゆ0851ゑに選択↓証誠といふ 。
已ニ於テ↢諸経ノ中ニ↡多ク雖モ↠説クト↢往生之諸行ヲ↡、六方ノ諸仏於テ↢彼ノ諸行ニ↡而不↢証誠セ↡、至リテ↢此ノ¬経ノ¼中ニ↡説キタマフトキニ↢念仏往生ヲ↡、六方恒沙ノ諸仏、各ノ*舒ベテ↠舌ヲ覆ヒテ↢大千ニ↡、*証↢誠シテ実ノ語ト↡而証↢誠シタマフ之ヲ↡。故ニ*云フ↢選択証誠ト↡也。
二 ⅿ Ⅲ b ニ 般舟経
^▼しかのみならず ¬般舟三昧経¼ のなかにまた一の選択あり。 いはゆる選択我名なり。
加之▼¬般舟三昧経ノ¼中ニ又有リ↢一ノ選択↡。所謂ル選択我名也。
・選択我名
^弥陀みづから説きて、 「▲わが国に来生せんと欲はば、 つねにわが名を念じて、 休息せしむることなかれ」 (意) とのたまへ1285り。 ゆゑに選択↓我名といふ 。
弥陀自1324ラ説キテ、言リ↧「欲ハバ↣来↢生セムト我ガ国ニ↡者、常ニ念ジテ↢我ガ名ヲ↡、莫レト↞令ムルコト↢休息セ↡。」*故ニ云フ↢選択我名ト↡也。
二 ⅿ Ⅲ c 結上
^▼↑本願・↑摂取・↑我名・↑化讃 、 この四はこれ弥陀の選択なり。 ↑讃歎・↑留教・↑付属 、 この三はこれ釈迦の選択なり。 ↑証誠は六方恒沙の諸仏の選択なり。 しかればすなはち 釈迦・弥陀および十方のおのおのの恒沙等の諸仏、 同心に念仏の一行を選択したまふ。 余行はしからず。 ゆゑに知りぬ、 ▼三経ともに念仏を選びて もつて*宗致となすのみ。
本願・摂取・我名・化讃、此之四者是弥陀ノ選択也。讃歎・留教・付属、*此之三者是釈迦ノ選択也。証誠者六方恒沙ノ諸仏之選択也。然レバ則チ釈迦・弥陀及ビ十方ノ各ノ恒沙等ノ諸仏、同心ニ選↢択シタマフ念仏ノ一行ヲ↡。余行ハ不↠爾ラ。故ニ知リヌ、三経共ニ選ビテ↢念仏ヲ↡以テ為ス↢宗致ト↡耳。
三 総結綱要【総結】
ⅰ 正述綱要【三選之文】
【17】^*▼はかりみれば、 ▼それすみやかに生死を離れんと欲はば、 二種の勝法のなかに、 しばらく聖道門を▼閣きて選びて浄土門に入るべし。 浄土門に入らんと欲はば、 正雑二行のなかに、 しばらくもろもろの雑行を▼抛てて選びて正行に帰すべし。 正行を修せんと欲はば、 正助二業のなかに、 なほ助業を傍らにして選びて*正定をもつぱらにすべし。
▼計也、▼夫レ▼速ニ欲ハバ↠離レムト↢生死ヲ↡、二種ノ勝法ノ中ニ、且ク閣キテ↢聖道門ヲ↡選ビテ入ルベシ↢浄土門ニ↡。▼*欲ハバ↠入ラムト↢浄土門ニ↡、正雑二行ノ中ニ、且ク抛チテ↢諸ノ雑行ヲ↡選ビテ応シ↠帰ス↢正行ニ↡。欲ハバ↠修セムト↢於正行ヲ↡、正助二業ノ中ニ、猶シ傍ニシテ↢於助業ヲ↡選ビテ応シ↠専ニス↢*正定ヲ↡。
^◆正定の業と は、 すなはちこれ仏名を称するなり。 名を称すれば、 かならず生ずることを得。 仏の本願によるがゆゑなり。
◆正定之業ト者即チ是称スルナリ↢仏名ヲ↡。称スレバ↠名ヲ必ズ得↠生ズルコトヲ。依ルガ↢仏ノ本願ニ↡故ナリ。▼
三 ⅱ 別依善導【後述】
Ⅰ 簡他師
a 簡他宗人師
イ 問
【18】^問ひていは0852く、 *華厳・天台・真言・禅門・三論・法相の諸師、 おのおの浄1286土法門の章疏を造る。 なんぞかれらの師によらずして、 ただ善導一師を用ゐるや。
*問ヒテ曰ク、華厳・天臺・真言・禅門・三論・法相ノ諸師、各ノ造ル↢浄土法門ノ章疏ヲ↡。何ゾ不シテ↠依ラ↢彼等ノ師ニ↡唯1325用ヰル↢善導一師ヲ↡乎。
三 ⅱ Ⅰ a ロ 答
^答へていはく、 ▼かれらの諸師おのおのみな浄土の章疏を造るといへども、 浄土をもつて宗となさず、 ただ聖道をもつてその宗となす。 ゆゑにかれらの諸師によらず。 善導和尚は偏に浄土をもつて 宗となして、 聖道をもつて宗となさず。 ゆゑに偏に善導一師に依る 。
答ヘテ曰ク、彼等ノ諸師各ノ皆雖モ↠造ルト↢浄土ノ章疏ヲ↡而不↧以テ↢浄土ヲ↡為サ↞宗ト、唯以テ↢聖道ヲ↡而為ス↢其ノ宗ト↡。故ニ不ル↠依ラ↢彼等ノ諸師ニ↡也。善導和尚ハ偏ニ以テ↢浄土ヲ↡而為シテ↠宗ト而不↧以テ↢聖道ヲ↡為サ↞宗ト。故ニ偏ニ依ル↢善導一師ニ↡也。
三 ⅱ Ⅰ b 簡自宗人師
イ 約三昧発得
(一)問
^問ひていはく、 浄土の祖師その数また多し。 いはく弘法寺の*迦才、 *慈愍三蔵等これなり。 なんぞかれらの諸師によらずして、 ただ善導一師を用ゐるや。
問ヒテ曰ク、浄土ノ祖師其ノ数又多シ。謂ク弘法寺ノ迦才、慈愍三蔵等是也。何ゾ不シテ↠依ラ↢彼等ノ諸師ニ↡唯用ヰル↢善導一師ヲ↡哉。
三 ⅱ Ⅰ b イ (二)答
^答へていはく、 これらの諸師浄土を宗とすといへども、 いまだ三昧を発さず。 善導和尚はこれ*三昧発得の人なり。 *道においてすでにその証あり。 ゆゑにしばらくこれを用ゐる 。
答ヘテ曰ク、此等ノ諸師雖モ↠宗トスト↢浄土ヲ↡、未ダ↠発サ↢三昧ヲ↡。善導和尚ハ是三昧発得之人也。於テ↠道ニ既ニ有リ↢其ノ証↡。故ニ且ク用ヰル↠之ヲ。
三 ⅱ Ⅰ b ロ 約師弟
(一)問
^問ひていはく、 もし三昧発得によらば、 *懐感禅師はまたこれ三昧発得の人なり。 なんぞこれを用ゐざる 。
問ヒテ曰ク、若シ依ラバ↢三昧発得ニ↡者、懐感禅師ハ亦是三昧発得之人也。何ゾ不ル↠用ヰ↠之ヲ。
三 ⅱ Ⅰ b ロ (二)答
^答へていはく、 善導はこれ師なり。 懐感はこれ弟子なり。 ゆゑに師によりて弟子によらず。 いはんや師資の釈、 その相違はなはだ多し。 ゆゑにこれを用ゐず。
答ヘテ曰ク、善導ハ是師也。懐感ハ是弟子也。故ニ依リテ↠師ニ不ル↠依ラ↢弟子ニ↡也。況ヤ師資之釈、其ノ相違甚ダ多シ。故ニ不↠用ヰ↠之ヲ。
三 ⅱ Ⅰ b ハ 重約三昧発得
(一)問
^問ひていはく、 もし師によりて弟子によらずは、 道綽禅師はこれ善導和尚1287の師なり。 そもそもまた浄0853土の祖師なり。 なんぞこれを用ゐざるや。
問ヒテ曰ク、若シ依リテ↠師ニ不ハ↠依ラ↢弟子ニ↡者、道綽禅師者是善導和尚之師也。抑モ又浄土ノ祖師也。何ゾ不ルヤ↠用ヰ↠之ヲ。
三 ⅱ Ⅰ b ハ (二)答
^答へていはく、 道綽禅師はこれ師なりといへども、 いまだ三昧を発さず。 ゆゑにみづから往生の得否を知らずして、 ▲善導に問ひていはく、 「道綽念仏して往生を得べしや否や」 と。 導 (善導) 一茎の蓮華を*弁ぜしめて、 これを仏前に置きて、 「*行道七日せんに華萎み悴けずは、 すなはち往生を得ん」 と。 これによりて七日、 華*果然として華萎黄せず。
答ヘテ曰ク、*道綽禅師者是雖モ↠師ナリト、未ダ↠発サ↢三昧ヲ↡。故ニ自ラ不シテ↠知ラ↢往生ノ得否ヲ↡、問ヒテ↢善導ニ↡曰ク、道綽念仏シテ得ベシヤ↢往生ヲ↡否ヤト。導令メテ↠*辨ゼ↢一茎ノ蓮華ヲ↡、置キテ↢之ヲ仏前ニ↡、行道七日セムニ*花不ハ↢萎ミ悴セ↡、即チ得ムト↢往生ヲ↡。依リテ↠之ニ七日、*花果然トシテ花不↢萎黄セ↡。
^◆綽 (道綽) その*深詣を歎ず 。 ちなみに定に入りてまさに生を得べしや否やを観ずることを請ふ。 導 (善導) すなはち定に入りて、 須臾に報へていはく、 「師、 まさに三の罪を懴すべし。 まさに往生すべし 。 一には師、 嘗、 仏の尊像を安んじて、 簷牖の下に在きて、 みづからは*深房に処せり。 二には出家人を*駆使し策役す。 三には*屋宇を営造して虫の命を損傷す。 師、 よろしく十方の仏前において第一の罪を懴し、 四方の僧の前において第二の罪を懴し、 一切衆生の前において第三の罪を懴すべし」 と。
綽歎ズ↢其ノ深詣ヲ↡。因ニ請フ↣入リテ↠定ニ観ゼムコトヲ↢当ニシヤ↠得↠生ヲ否ヤヲ↡。導即チ入リテ↠定ニ、須臾ニ報ヘテ曰ク、師当ニシ↠懴ス↢三ノ罪ヲ↡。方ニ可シ↢往生ス↡。一ニ者師嘗安ンジテ↢仏ノ尊像ヲ↡、在キテ↢*簷牖ノ下ニ↡、自ラハ処セリ↢深房ニ↡。二ニ者駆↢使シ策↣役ス出家人ヲ↡。三ニ者営↢造シテ屋宇ヲ↡損↢傷ス虫ノ命ヲ↡。師宜クシト↧於テ↢十方ノ仏前ニ↡懴シ↢第一ノ罪ヲ↡、於テ↢四方ノ僧ノ前ニ↡懴シ↢第二ノ罪ヲ↡、於テ↢一切衆生ノ前ニ↡懴ス↦第三ノ罪ヲ↥。
^◆綽公 (道綽) 静かに往の咎を思ひて、 「みな虚しからず」 といふ。 ここに心を洗ひ、 悔謝しをはりて、 導 (善導) に見ゆ。 すなはちいはく、 「師の罪滅したり。 後にまさに白光ありて照燭すべ1288し。 これ師の往生の相なり」 と。 以上、 ¬*新修往生伝¼。
綽公静カニ思ヒテ↢往ノ咎ヲ↡、皆曰フ↠不ト↠虚シカラ。於テ↠是ニ洗ヒ↠心ヲ、悔謝シ訖リテ而見ユ↠導ニ。即チ曰ク、師ノ罪滅シタリ矣。後ニ当ニシ↧有リテ↢白光↡照1326燭ス↥。是師ノ往生之相也ト。已上¬新修往生伝¼
三 ⅱ Ⅱ 嘆徳
^ここに知りぬ。 善導和尚は行、 三昧を発し、 力め、 師の位に堪へたり0854。 解行、 凡にあらざることまさにこれ暁らけし。 いはんや また時の人の諺にいはく、 「仏法東行してよりこのかた、 いまだ禅師 (善導) のごとくの盛徳あるはあらず。 絶倫の誉、 得て称すべからざるものか」 と。
爰ニ知リヌ。善導和尚者行、発シ↢三昧ヲ↡、力メ*堪ヘタリ↢師ノ位ニ↡。解行非ザルコト↠凡ニ*将ニ是暁ケシ矣。況ヤ又▼時ノ人ノ諺ニ曰ク、仏法東行シテヨリ已来タ、未ダ↠有ラ↢禅師ノゴトクノ盛徳アルハ↡矣。▼絶倫之誉不ル↠可カラ↢得テ而称ス↡者歟ト。
^しかのみならず ¬観経¼ の文疏を*条録する*刻に、 すこぶる*霊瑞を感ず。 しばしば*聖化に預かる。 すでに聖の冥加を蒙りて、 しかも ¬経¼ (観経) の*科文を造る。 世を挙りて 「*証定の疏」 と称す。 人これを貴ぶこと仏 経の法のごとくす。
加之条↢録スル¬観経ノ¼文疏ヲ↡之刻ニ、頗ル感ズ↢霊瑞ヲ↡。屡預カル↢聖化ニ↡。既ニ蒙リテ↢聖ノ冥加ヲ↡、然モ造ル↢¬経ノ¼科文ヲ↡。挙リテ↠世ヲ而称ス↢証定ノ疏ト↡。人貴ブコト↠之ヲ如クス↢仏経ノ法ノ↡。
三 ⅱ Ⅲ 引疏文
^すなはちかの疏の第四巻 (散善義) の*奥にいはく、 「▲敬ひて一切 有縁の知識等にまうす。 余 (善導) はすでにこれ生死の凡夫なり。 智慧浅短なり。 しかも仏教は幽微なり。 あへてたやすく異解を生ぜず。 つひにすなはち心を標し願を結びて、 霊験を請ひ求めて、 まさに造心すべし。 尽虚空遍法界の一切の三宝、 釈迦牟尼仏・阿弥陀仏・観音・勢至、 かの土のもろもろの菩薩大海衆および一切の荘厳相等に南無し帰命したてまつる。
即チ彼ノ¬疏ノ¼第四巻ノ奥ニ云ク、「敬ヒテ白ス↢一切有縁ノ知識等ニ↡。餘ハ既ニ是生死ノ凡夫ナリ。智*慧浅短ナリ。然モ仏教ハ幽微ナリ。不↣敢テ輒ク生ゼ↢異解ヲ↡。遂ニ*即チ標シ↠心ヲ結ビテ↠願ヲ、請ヒ↢求シテ霊験ヲ↡、方ニ可シ↢造心ス↡。南↢無シ帰↣命シタテマツル*尽虚空遍法界ノ一切ノ三宝、釈迦牟尼仏・*阿弥陀仏・観音・勢至、彼ノ*土ノ諸ノ菩薩大海衆及ビ一切ノ荘厳相等ニ↡。
^◆某、 いまこの ¬観経¼ に要義を出して、 古今を楷定せんと欲す。 もし三世の諸仏・釈迦仏1289・阿弥陀仏等の大悲の願意に称はば、 願はくは夢のうちにおいて、 上の 所願のごときの一切の境界の諸相を見ることを得ん。 仏像の前において願を結びて、 已りて日別に ¬阿弥陀経¼ 三遍を誦し、 阿弥陀仏三万遍を念じ、 心を至して願0855を発す。
某今欲ス↧出シテ↢此ノ¬観経ニ¼要義ヲ↡、*楷↦定セムト古今ヲ↥。若シ称ハバ↢三世ノ諸仏・釈迦仏・阿弥陀仏等ノ大悲ノ願意ニ↡者、願クハ於テ↢夢ノ中ニ↡、得ム↠見ルコトヲ↧如キノ↢上ノ所願ノ↡一切ノ境界ノ諸相ヲ↥。於テ↢仏像ノ前ニ↡結ビテ↠願ヲ、已リテ日別ニ誦シ↢¬阿弥陀経¼三遍ヲ↡、念ジ↢阿弥陀仏三万遍ヲ↡、至シテ↠心ヲ発ス↠願ヲ。
^◆すなはち当夜において西方の空中を見るに、 上のごときの諸相の境界ことごとくみな顕現す。 雑色の宝山百重千重 して、 種々の光明 、 下、 地を照らす。 地、 金色のごとし。 なかに諸仏・菩薩ましまして、 あるいは坐し、 あるいは立し、 あるいは語し、 あるいは黙し、 あるいは身手を動かし、 あるいは住して動ぜざるものあり。 すでにこの相を見て、 合掌して立して観ることやや久しくして、 すなはち覚めぬ。 覚めをはりて欣喜 に勝へず。
即チ於テ↢当夜ニ↡見ルニ↢西方ノ空中ヲ↡、如キノ↠上ノ諸相ノ境界悉ク皆顕現ス。雑色ノ宝山百重千重シテ、種々ノ光明、下照ス↢於地ヲ↡。*地如シ↢金色ノ↡。中ニ有シテ↢諸仏菩薩↡、或イハ坐シ、或イハ立シ、或イハ語シ、或イハ黙シ、或イハ動シ↢身1327手ヲ↡、或イハ住シテ不ル↠動ゼ者アリ。既ニ見テ↢此ノ相ヲ↡、合掌シテ立シテ観ルコト量久シクシテ、乃チ覚メヌ。覚メ已リテ不↠勝ヘ↢欣喜ニ↡。
^◆すなはち ˆ観経のˇ *義門を条録す。 これより以後、 毎夜夢中につねに一の僧ありて、 来りて*玄義の科文を指授することすでに了りて、 さらにまた見えず。
於*即チ条↢録ス義門ヲ↡。自リ↠*此已後、▼毎夜夢中ニ常ニ有リテ↢一ノ僧↡而来リテ指↢授スルコト玄義ノ科文ヲ↡既ニ了リテ、更ニ不↢復見エ↡。
^◆後の時に本を脱しをはりぬ。 またさらに心を至してかならず七日を 期して、 日別に ¬阿弥陀経¼ 十遍を誦し、 阿弥陀仏三万遍を念じ、 初夜・後夜にかの仏の国土の荘厳等の相を観想して、 誠心に帰命してもつぱら上の法のごとくす。
後ノ時ニ脱シ↠本ヲ竟已リヌ。復更ニ至シテ↠心ヲ要ズ期シテ↢七日ヲ↡、*日別ニ誦シ↢¬阿弥陀経¼十遍ヲ↡、念ジ↢阿弥陀仏三万遍ヲ↡、初夜・後夜ニ観↢想シテ彼ノ仏ノ国土ノ荘厳等ノ相ヲ↡、誠心ニ帰命シテ一ラ如クス↢上ノ法ノ↡。
^◆当夜にすなはち *三具の磑輪の道の辺に1290独り転ずるを見る。 たちまちに一人ありて、 白き駱駝に乗りて前に来りて、 見えて勧む。 ª師、 まさに*ゆめゆめ決定して往生すべし。 退転をなすことなかれ。 この界は穢悪にして苦多し。 労しく貪楽せざれº と。 答へていはく、 ª大きに賢者の好心の視誨を蒙り0856ぬ。 某、 畢命を期となして、 あへて懈慢の心を生ぜずº と。 云々
当夜ニ即チ見ル↢▼三具ノ磑輪ノ道ノ辺ニ独リ転ズルヲ↡。▼忽ニ有リテ↢一人↡、乗リテ↢白キ駱駝ニ↡来リテ↠前ニ、見エテ勧ム。師当ニシ↢努力決定シテ往生ス↡。莫レ↠作スコト↢退転ヲ↡。此ノ界ハ穢悪ニシテ多シ↠苦。不レト↢労シク貪楽セ↡。答ヘテ言ク、大ニ蒙リヌ↢賢者ノ好心ノ視誨ヲ↡。某畢命ヲ為シテ↠期ト、不ト↣敢テ生ゼ↢於懈慢之心ヲ↡。云云
^◆第二の夜に見らく、 阿弥陀仏の身は真金の色にして、 七宝樹の下の金蓮華の上にましまして坐したまへり。 十僧囲繞して、 またおのおの一の宝樹の下に坐せり。 仏樹の上に すなはち天衣ありて、 挂り繞れり。 面を正しくし西に向かへて、 合掌して坐して観ず。
第二ノ夜ニ見ラク、阿弥陀仏ノ身ハ真金ノ色ニシテ、在シテ↢七宝樹ノ下ノ金蓮華ノ上ニ↡坐シタマヘリ。十僧囲繞シテ、亦各ノ坐セリ↢一ノ宝樹ノ下ニ↡。仏樹ノ上ニ乃チ有リテ↢天衣↡、挂リ繞レリ。正シクシ↠面ヲ向ヒテ↠西ニ、合掌シテ坐シテ観ズ。
^◆第三の夜に見らく、 両の幢杆 大きに高く顕れて、 幡五色を懸けたり。 道路縦横に 、 人観ること礙なし。
第三ノ夜ニ見ラク、両ノ幢*杆大ニ高ク顕レテ、幡懸ケタリ↢五色ヲ↡。道路*蹤横ニ、人観ルコト无シ↠礙。
^◆すでにこの相を得をはりて、 すなはち休止して七日に至らず。
既ニ得↢此ノ相ヲ↡已リテ、即便チ休止シテ不↠至ラ↢七日ニ↡。
^◆上来あらゆる霊相は、 本心、 物のためにして己身のためにせず。 すでにこの相を蒙れり。 あへて隠蔵せず。 *つつしみてもつて義後に申べ呈して、 末代に聞えられん。 願はくは 含霊をしてこれを聞かしめて信を生ぜしむ。 有識の覩るもの 西に帰せよ。
▼上来所有ノ霊相者、本心、為ニシテ↠物ノ不↠為ニセ↢己身ノ↡。既ニ蒙レリ↢*此ノ相ヲ↡。不↢敢テ隠蔵セ↡。謹ミテ以テ申ベ↢呈シテ義後ニ↡被レム↠聞エ↢於末代ニ↡。願クハ使メテ↢含霊ヲシテ聞カ↟之ヲ生ゼシム↠*信ヲ。有識ノ覩ム者西ニ帰セヨ↡。
^◆この功徳をもつて衆生に回施して、 ことごとく菩提心を発して、 慈心をもつてあひ向かひ、 仏眼をもつてあ1291ひ看ん。 菩提の眷属として真の善知識とならん。 同じく浄国に帰してともに仏道を成ぜん。
以テ↢此ノ功徳ヲ↡廻↢施シテ衆生ニ↡、悉ク発シテ↢菩提心ヲ↡、慈心ヲモテ相向ヒ、仏眼ヲモテ相看1328ム。菩提ノ眷属トシテ作ラム↢真ノ善知識ト↡。同ジク帰シテ↢浄国ニ↡共ニ成ゼム↢仏道ヲ↡。
^◆この義すでに証を請ひて定めをはりぬ。 一句一字加減すべからず。 ▽写さんと欲はば、 もつぱら経法のごとくすべし。 知るべし」 と。 以上
此ノ義已ニ請ヒテ↠証ヲ定メ竟リヌ。一句一字不↠可カラ↢加減ス↡。欲ハバ↠写サムト者、一ラ如クスベシ↢経法ノ↡。応シト↠知ル。」 已上
三 ⅲ 今集興由
Ⅰ 依疏開宗
a 嘆入法
^静0857かにおもんみれば、 善導の ¬観経の疏¼ はこれ*西方の指南、 *行者の目足なり。 しかればすなはち西方の行人、 かならずすべからく珍敬すべし。 就中 、 毎夜に夢のうちに僧ありて、 玄義を指授す。 僧と はおそらくはこれ弥陀の応現なり。 しかればいふべし、 この ¬疏¼ はこれ*弥陀の伝説なりと。 いかにいはんや、 大唐にあひ伝へていはく、 「善導はこれ弥陀の化身なり」 と。
▼静ニ以レバ、善導ノ¬観経ノ疏¼者、*是▼西方ノ指南、▼行者ノ目足也。然レバ則チ西方ノ行人必ズ須クシ↢珍敬ス↡矣。就中ニ、毎夜ニ夢ノ中ニ有リテ↠僧、指↢授ス玄義ヲ↡。僧ト者恐クハ是*弥陀ノ応現ナリ。爾レバ者可シ↠*謂フ、此ノ¬*疏¼*者是*弥陀ノ*伝説ナリト。*何ニ況ヤ大唐ニ相伝シテ云ク、「善導ハ是弥陀ノ化身也ト」。
^しかればいふべし、 またこの文はこれ弥陀の直説なり。 すでに 「△写さんと欲はば、 もつぱら経法のごとくせよ」 (散善義) といふ、 この言誠なるかなや。 ▼仰ぎて*本地を討ぬれば、 四十八願の法王 (阿弥陀仏) なり。 十劫正覚の唱へ、 念仏に憑みあり。 俯して*垂迹を訪へば、 専修念仏の導師 (善導) なり。 *三昧正受の語、 往生に疑なし。 *本迹異なりといへども 化道これ一なり。
爾レバ者可シ↠謂フ、又此ノ文ハ是弥陀ノ直説ナリ。既ニ云フ↣「欲ハバ↠写サムト者、一ラ如クセヨト↢経法ノ↡。」*此ノ言誠ナルカナ乎。仰ギテ討ヌレバ↢本地ヲ↡者、四十八願之法王也。十劫正覚之唱、有リ↠憑ミ↢于念仏ニ↡。俯シテ訪ヘバ↢垂迹ヲ↡者、専修念仏之導師也。三昧正受之語、無シ↠疑↢于往生ニ↡。本迹雖モ↠異ナリト化導是一也。▼
三 ⅲ Ⅰ b 正明開宗【撰述因縁】
^1292ここに*貧道 (源空)、 昔この典 (観経疏) を披閲して、 ほぼ*素意を識る。 立ちどころに余行を舎めてここに念仏に帰す。 それよりこのかた今日に至るまで、 *自行化他ただ念仏を*縡とす。 しかるあひだ 希に*津を問ふものには、 示すに*西方の通津をもつてし、 たまたま行を尋ぬるものには、 誨ふるに念仏の別行をもつてす。 これを信ずるものは多く、 信ぜざるものは尠なし。
▼於テ↠是ニ貧道、昔披↢閲シテ茲ノ典ヲ↡、粗ボ識ル↢素意ヲ↡。立ニ舎メテ↢余行ヲ↡云ニ帰ス↢念仏ニ↡。▼自リ↠其已来タ至ルマデ↢于今日ニ↡、自行化他唯縡トス↢念仏ヲ↡。然ル間希ニ問フ↠津ヲ者ニハ、示スニ以テシ↢西方ノ通津ヲ↡、適マ尋ヌル↠行ヲ者ニハ、誨フルニ以テス↢念仏ノ別行ヲ↡。信ズル↠之ヲ者ハ多ク不ル↠信ゼ者ハ尠シ。
三 ⅲ Ⅰ c 機教相応
^まさに知るべし。 ▼浄土の教、 時機を叩0858きて 行運に当れり。 念仏の行、 *水月を感じて 昇降を得たり。
当ニシ↠知ル。▼浄土之教、叩キテ↢時機ヲ↡而当レリ↢行運ニ↡也。▼念仏之行、感ジテ↢水月ヲ↡而得タリ↢昇降ヲ↡也。▼
三 ⅲ Ⅱ 依命集記
a 明応命
^しかるにいま 図らざるに*仰せを蒙る。 辞謝するに地なし。 よりていま*なまじひに念仏の要文を集めて、 あまつさへ念仏の要義を述ぶ。 ただ*命旨を顧みて*不敏を顧みず。 これすなはち*無慚無愧のはなはだしきなり。
▼而ルニ今▼不ルニ↠図ラ蒙ル↠仰ヲ。辞謝スルニ無シ↠地。仍リテ今▼憖ニ集メテ↢念仏ノ要文ヲ↡、▼剰ヘ述ブ↢念仏ノ要義ヲ↡。▼唯シ顧ミテ↢命旨ヲ↡不↠顧ミ↢不敏ヲ↡。是1329即チ無慚無愧之甚シキ也。
三 ⅲ Ⅱ b 禁他見
^庶幾はくは 一たび*高覧を経て後に、 壁の底に埋みて、 窓の前に遺すことなかれ。 おそらくは破法の人をして、 悪道に堕せしめざらんがためなり。
庶幾クハ一タビ経テ↢高覧ヲ↡之後ニ、埋ミテ↢于壁ノ底ニ↡、莫レ↠遺スコト↢窓ノ前ニ↡。▼恐クハ為↠不ラムガ↠令メ↣破法之人ヲシテ*堕セ↢於悪道ニ↡也。
選択本願念仏集
1293*元久元年十一月二十八日書写しをはりぬ。
願はくはこの功徳をもつて、 一仏土に往生せんのみ。
元久元年十一月廿八日書写了 願以此功徳往生一仏土而已
*元久元年十二月二十七日
元久元年十二月廿七日
源 空 (花押)
源空 (花押)
3
本願章~摂取章には、 宗祖¬選択集延書¼を欠く。
選択本願念仏集 「行文類」 引用箇所や ¬本山蔵版本¼ では、 題号の下に 「源空集」 の撰号がある。
先 宗要、 肝要、 かなめの意。 ¬往生院本(漢文底本◎)¼ ¬廬山寺本(対抗本Ⓐ)¼ 等は 「先」 となっているが、 親鸞聖人への伝授本は 「本」 となっていた。 「本」 は根本最要の意で、 「先」 と同意。
駃 異本には 「駛」 とある。
疑端に足らず 疑う余地がない。
顕大 大乗の中の顕教。
権大 大乗の中の権教。
歴劫迂回の行 ながい間かかって回り道をして、 さとりをひらく行法。
密大 大乗の中の密教。
実大 大乗の中の実教。
正しく往生… 聖道門を捨てて、 ただ往生浄土の法門のみをまさしく説く教。
傍らに往生… 聖道門を説く中に、 その方便法として、 かたわらに往生の行法が説かれている教。
法華の三部 ¬無量義経¼ を ¬法華経¼ の開経とし、 ¬普賢観経¼ (¬観普賢経¼) を結経とする。
大日の三部 密教でよりどころとする三部の経典。
鎮護国家の三部 当時、 国家安泰を祈るための経典として、 この三部が採用されていた。
運を啓けて 運は好機が至ること。 機縁が熟して釈尊が世に出られたことを示す。
随方に闡けて あらゆるところに広まって。
法潤に霑ふ 法のめぐみをほどこす。
契悟するに方なし さとりに至る方法がない。
涅槃の広業 ¬涅槃経¼ を講ずるという広大な事業。
諸家また不同なり… 中国浄土教を廬山流、 慈愍流、 道綽・善導流の三流に分けたもの。 法然上人独自の見解である。
両説 法然上人が用いられたのは後者である。
唐宋両伝 道宣撰の ¬続高僧伝¼ と賛寧撰の ¬宋高僧伝¼ のこと。 両伝によって六師をあげたのは、 法然聖人の選択によるものである。 浄土宗の相承をいう場合は、 この六師から菩提流志を除いて五祖とすることが多い。
往生の経…行ずる 「往生の経」 は浄土三部経を指す。 「往生経の行によりて行ずる」 と読む異本もある。
つぶさに… くわしく述べることはできない。
往生浄土の経 浄土三部経。
事理 事は具体的な差別の事相、 理は普遍的な平等の理性を指す。
雑行の言に摂尽すべし 雑行という言葉の中に含みおさめることができる。
心 諸本にはこの字なし。
自然に往生の業となる 称名念仏は本願によって往生行と選定されているので、 衆生が往生のために回向する必要は全くなく、 称名すればそのままで往生の業因となる。
八蔵 仏の説法を八種に分類したもの。 胎化蔵・中陰蔵・摩訶衍方等蔵・戒律蔵・十住菩薩蔵・金剛蔵・仏蔵・雑蔵。 ¬菩薩処胎経¼ に見える説。
四含 ¬
長阿含経¼ ¬
中阿含経¼ ¬
増一阿含経¼ ¬
雑阿含経¼ のこと。 →
阿含経
二十の犍度 犍度は章のこと。 教団の生活・儀式などに関する規定を二十章に分類整理したもの。 ¬四分律¼ に説く。
賢聖集 諸種の ¬高僧伝¼ を指していう。
十科の法 訳経・解義・習禅・明律・護法・観通・遺身・読誦・興福・雑科。
五聚の法門 教聚・義聚・染聚・浄聚・雑聚。
胎蔵界の曼陀羅 大日如来の慈悲のはたらきを図示したもの。 ¬大日経¼ にもとづく。 →
曼荼羅
金剛界の曼陀羅 大日如来の
智慧のはたらきを図示したもの。 ¬
金剛頂経¼ にもとづく。 →
曼荼羅
自余の諸師 浄影寺慧遠 (523-592)、 天台大師智顗 (538-597)、 嘉祥大師吉蔵 (549-623) などを指す。
無為の諸楽 無為涅槃のさまざまな楽しみ。
世 ¬選択集¼ 延書本 (暦応四年本転写本、 存覚上人相伝本) には 「世」 の字を欠く。
総別二種の願 すべての仏に共通する誓願 (総願) とそれぞれの仏菩薩の独自の誓願 (別願)。
釈迦の五百の大願 ¬悲華経¼ に見える。
薬師の十二の上願 ¬薬師本願経¼ に見える。
選択と… 「選択」 (取捨の義) と 「摂取」 は本来、 同義であるが、 後者は 「捨」 の義がかくれているので、 通常は取捨の両意に通ずる 「選択」 の語が用いられている。
黄白二類 黄色人と白色人。
梁 棟をささえる横木。 はり。
椽 家の棟から軒に掛け渡して屋根をうけている横木。 たるき。
遮 排すること。
簡ばず 区別しない。
多聞多見 仏の教えを多く見聞して学問があること。
多く念仏 親鸞聖人は 「
多念仏」 (唯信鈔文意) とも読まれ、 勝れた徳をもつ念仏の意とされた。
宿命通の願 国土の人天がすべて宿命通 (過去の境界を知る智慧) を得るようにと誓われた願。
五神通…寿命等の願 四十八願の中の第五 (宿命通の願)、 第六 (天眼通の願)、 第七 (天耳通の願)、 第八 (他心通の願)、 第九 (神足通の願)、 第十二 (光明無量の願)、 第十三 (寿命無量の願)、 第十四 (声聞無量の願) を指す。
諸師の釈 智光 (八世紀の人) は 「諸縁信楽十念往生題」 (無量寿経論釈) とし、 源信和尚の師、 良源 (912-985) は 「聞名信楽十念定生願」 (極楽浄土九品往生義) としている。
夢に ¬延応版本¼ (右訓)、 ¬本山蔵版本¼ 等では 「夢のごとくに」 と読む。
かの五竺に… 伝教大師最澄 (766または767-822) の ¬山家学生式¼ ¬顕戒論¼ に見える説。
消し 「消す」 は消釈すること。 解釈すること。
同類の善根 正定業と同じ種類の善根。
五正行 (
読誦・
観察・
礼拝・称名・
讃嘆供養) のうち前三後一の
助業を指していう。
異類の善根 前三後一以外のさまざまな善根で、 称名念仏を修するための助けとなる行。
所助 (異類の善根によって) 助けられる行。
能助 (称名念仏を) よく助けるところの行。
初出 在家からはじめて出家すること。
長時不退の行 ながく退転しないで修する行。
開合の異 詳しく説きひらいたのと、 合せ説いたのとの相違。
衆機に逗ず 多くの機類に対応する。 「逗」 は目標に合うように与えるの意。
末法万年の後 行と証が欠けて教えのみがのこる末法の時代が一万年続いた後は、 その教えすらもない
法滅の時に入るという。 →
三時
詮ずるところ 説きあらわすところ。
大小の戒律 大乗および小乗の戒律。 ¬瓔珞経¼ の三聚浄戒、 ¬梵網経¼ の十重四十八軽戒などを大乗戒とし、 ¬四分律¼ ¬五分律¼ ¬十誦律¼ などの律蔵に説かれる戒律を小乗戒という。
規 規範。 法則。
かの時機 法滅の時代の機類。
光接 異本には 「光摂」 とある。
走り 親鸞聖人は 「
走め」 (信文類訓) と読まれた。
より行じて 「依行」 を親鸞聖人は 「
行によりて」 (信文類訓) と読まれた。
人 ここでは勧める人、 釈迦・諸仏を指す。 一説には四重の破人 (念仏の教えを否定する四種の人) を指すという。
回向発願 異本には 「回向発願願生」 また 「回向発願生」 などとある。
むしろ 原漢文は 「寧」 の字。 親鸞聖人は 「
やすく」 (信文類訓) と読まれた。
外を翻じて内に蓄へば 外にあらわす賢善精進のすがたを内にも蓄えて、 心も賢善精進になるならばという意。 賢者は賢者のままに救われるということ。
内を翻じて外に播さば 愚悪なる内の心をあらわして、 外のすがたも愚悪になるならばという意。 愚者は愚者のままに救われるということ。
生死の家には… 生死輪廻の家にとどまるのは本願を疑うからであり、 さとりの城に入るのは本願を信ずるがゆえである。
檀 白檀・栴檀などの香木。
綺 綾絹。 斜線模様を織り込んだ絹織物。
素質金容 素質は生地のままの像。 金容は金箔をほどこした像。
繒 織りをつめて細かく織った絹の生地。
法界の所流 法の根源より流れ出たものがら。
報じ尽す 仏恩に報謝するの意。 ¬西方要決¼ の原意は 「報の尽くる」 で、 現在のこの身 (報) が尽きるまでということ。
/ruby>識のこと。
無明淵源の病 無明という迷いの根源を、 最も根源的な病に喩えたもの。
中道腑臓の薬 仏法の肝要であるところの中道の教えを、 内臓の重病をなおす妙薬に喩えたもの。
妙法蘊 蘊は積集の意。 すばらしい法のあつまり。
般若波羅蜜多 真実の智慧の完成を説く諸種の大乗の教え。
五種の蔵 釈尊一代の教えを五種に分けたもの。 五蔵という。
循環研覈 問答を繰り返して研究を深めてゆくこと。
契経 素纜の漢訳。
調伏 毘奈耶の漢訳。
対法 阿毘達磨の漢訳。
般若 般若波羅蜜多蔵のこと。
八重 殺生・偸盗・淫・妄語の四重禁に、 女子として慎むべき摩触・八事・覆尼・随挙苾蒭を加えたもの。 尼の八棄戒 (八波羅夷罪)。
謗方等経 大乗の経典を誹謗すること。
総持門 真言密教のこと。
五逆の回心上上に通ず 下下品に説かれている五逆の回心はまた上上品に通じる。
読誦の… 上上品に説かれている読誦大乗の妙行もまた下下品に通じる。
孝経等の… ¬孝経¼ ¬論語¼ 等の儒教典籍に説かれている、 親に仕える法。
律 ¬四分律¼ とする説がある。
生縁奉事の法 生れる縁となった父母に仕える法。
衆戒 ¬瓔珞経¼ の三聚浄戒、 ¬梵網経¼ の十重四十八軽戒などを大乗戒とし、 ¬四分律¼ ¬五分律¼ ¬十誦律¼ などの律蔵に説かれる戒律を小乗戒という。
行願 他を解脱させようとする慈悲の心。
勝義 自らがさとりを得ようとする大智の心。
三摩地 梵語サマーディ (samādhi) の音写。 定、 等持と漢訳する。 心を生仏一如の境地に専注すること。
意気博遠 意味するところが広く深いこと。
詮測沖邈 おしはかろうとしても、 あまりに茫漠 (広大でとりとめがない) としていて把握しがたいこと。
四聖 声聞・
縁覚・菩薩・仏。
四乗のこと。
天台によらば 天台宗の五時の教判によるならばの意。 五時は仏一代の説法を華厳時・鹿苑時 (阿含経)・方等時 (維摩経・勝鬘経等)・般若時・法華涅槃時の五つに分類したもの。
十種法行 経典を伝授するための十種の方法。 書写・供養・施他・諦聴・披読・受持・開演・諷誦・思惟・修習の十。
簡ぶ 区別すること。
爾前の経 ¬法華経¼ が説かれる以前の教典。
権実偏円 権は一時的な方便として仮に説かれた教え、 実は仏意にかなった究極的な真実の教え、 偏は一辺にかたよった教え、 円は完全円満な教え。 いずれも天台宗の一代仏教に対する見方である。
王宮 王舎城の宮殿で説かれた ¬観経¼ のこと。
三福を開して… 三福は散善の行体 (行のものがら) を示したものであり、 九品はその行業を修する機 (人) を功徳の深浅・罪の軽重にしたがって分類したものであるから、 三福を開くと九品往生の行業となる。
常のごとし いつも説いているとおりである。
雑想 →雑想観
三説 已説・今説・当説の三。 已説は ¬法華経¼ 以前に説かれた経、 今説は ¬法華経¼ と同じ座で説かれた ¬無量義経¼、 当説は ¬法華経¼ 以後に説かれた ¬涅槃経¼ を指す。
依正の観 依報・正報の観法。
定善十三観のうち
日観より
華座観までが依報の観、
像観より
雑想観までが正報の観である。 →
依正二報
具憶の功 ¬観経¼ に説かれる定善十三種の観法を、 具さに憶念することによって得られる功徳。
真要に入る 諸本では 「入真の要」 (さとりの世界に入るための肝要なもの) とも読む。
専持名号… 「もつぱら名号を持つ。 称名をもつてのゆゑに諸罪消滅す。 すなはちこれ多善根福徳の因縁なり。
今世の伝本 現在、 世に流布している後秦の鳩摩羅什訳 ¬阿弥陀経¼ の経本。
本師金口の説 釈尊の直説。
かの経 ¬大経¼ ¬観経¼ のこと。
行品 引用に直接、 該当する文は 「行品」 に見出せない。 「擁護品」 の文の取意か。
護持品 「擁護品」 のこと。
正定 ¬往生院本¼ にはこの二字を欠く。 諸本によって補う。
華厳天台… 華厳では ¬
遊心安楽道¼ (伝
元暁)、 天台では ¬観経疏¼ (伝
智顗)、
真言では ¬
阿弥陀経儀規¼ (
不空)、
禅門では ¬
万善同帰集¼ (
智覚)、
三論では ¬大経疏¼ ¬観経疏¼ (
嘉祥)、
法相では ¬
西方要決¼ (伝
慈恩) 等がある。
道において… 道は
行道の意。 行徳の如実であることが証明されていること。
弁ぜしめて 切り分けて。
駆使し策役す つかいまわす。
証定の疏 善導大師の ¬観経疏¼ は、 阿弥陀仏が指授し、 阿弥陀仏の意とするところと同一であると証明された注釈書であるから、 証定の疏 (証によって定められた疏) という。
奥 末尾。
義門 ¬観経¼ の法義を明らかに領解するための教義の分類のこと。
玄義の科文 奥深い教義についての科文、 科段のこと。 また 「玄義・科文」 と読んで、 「玄義分」 と 「文義分」 (序分義・定善義・散善義) のこととする説もある。
三具の磑輪 三つの石臼。 釈尊の転法輪の相 (三転法輪)、 定散・念仏・来迎の三、 弥陀の身口意の三業、 至誠心・深信・回向発願心の三心などに当てる説がある。
つつしみて… (上の霊相のことは) 謹んで ¬観経疏¼ の末尾に書き添えて、 末代の者にまで聞かせたい。
西方の指南 西方浄土へ教え導くもの。
行者の目足 往生浄土を願う者の目や足となるほど重要なもの。
弥陀の伝説 阿弥陀仏が直接に伝え説かれた教え。
三昧正受の語 三昧を発得された善導大師のことば。
本迹 法然上人は阿弥陀仏を本地とし、 善導大師をその垂迹とみられている。
素意 善導大師の本意。
縡とす つとめとする。
津を問ふ 津は渡し場のこと。 生死の苦海をわたる渡し場をたずねること。
西方の通津 西方浄土に通入する教えが生死海の渡し場であること。
水月を感じて… 水は昇らずして月をうつし、 月は降りることなく水にうつるということ。 水を凡心に、 月を仏心に喩えて、 凡心と仏心が念仏の行によって相応し一体となることを示す。
仰せ 法然上人に帰依していた藤原兼実 (1149-1207) の要請。
命旨 (藤原兼実の) 命。
不敏 愚鈍の身。 法然上人が自らをへりくだっていう。
高覧を経て後 (本書を) 御覧になったのちは。
元久…源空 (花押) この奥書は、 後世に書き加えられたもの。
先→ⒹⒺ本(Ⓓ草本と右傍註記)
末→ⒸⒺ未
是→Ⓔ[現]是
措→◎惜
但 ⒶⒷⒹになし
也 Ⓔになし
乗→Ⓐ乗[也]
謂 Ⓔになし
経→Ⓓ経[是]
者 Ⓓになし
者 Ⓐになし
正 Ⓓになし
娑→ⒷⒸⒹⒺ沙
且→Ⓒ具
注→Ⓔ註
謂→Ⓔ謂[於]
三→Ⓐ分
斯→Ⓔ此
浄土 Ⓓになし
此→Ⓓ其
旨→Ⓐ証
若→ⒷⒸⒺ若[於]
末→Ⓒ未
魯 Ⓓ迷イと右傍註記
慧→Ⓓ恵
宗→Ⓐ家
亦→Ⓐ又
小→Ⓔ少
正→Ⓓ聖
仏→Ⓓ仏[名]
問→Ⓔ間
導→◎噵
等 Ⓐになし
仏→Ⓓ仏[名]
仏 Ⓓになし
仏 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
但→ⒶⒷⒸⒹⒺ但[今]
皆 Ⓑになし
及 Ⓓになし
之 Ⓔになし
案→Ⓓ安
就→Ⓐ付(就と右傍註記)
甚 Ⓔになし
親 Ⓓ結イと右傍註記
心 ⒷⒹⒺになし
心 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
仏→Ⓔ仏[亦]
生→Ⓔ生[口]
常→Ⓔ常[相]
以 Ⓔになし
而 Ⓓになし
間→Ⓒ聞
弥→Ⓔ[阿]弥
弥→ⒷⒺ[阿]弥
不廻向→Ⓓ廻向不
者→Ⓓ者[是雑行也翻不廻向謂是者]
曰→ⒷⒺ云
及→ⒶⒷⒸⒹⒺ及[以]
則→ⒷⒸⒺ即
揵→ⒷⒸⒺ犍
一→ⒷⒸⒺ一[是]
恵→Ⓔ慧
摂往生行 Ⓐになし
諸師不然行者応思之 Ⓐになし
師→◎行
相→Ⓔ[得]相
由→Ⓔ[乃]由
悔過→Ⓔ懴悔心
障 Ⓓになし
自 Ⓓになし
正→ⒸⒺ上
諸→Ⓔ法
逕→Ⓔ経
号→ⒶⒷⒸⒹⒺ字
所→Ⓔ所[而]
定→Ⓔ錠
人天→Ⓔ天人
大→ⒶⒷⒸⒹⒺ[又]大
復 Ⓐになし
巻→◎Ⓓ観
所 Ⓓになし
趣→Ⓐ道
道→Ⓐ趣
土 Ⓐになし
仏→Ⓐ仏[国]
以 Ⓓになし
行 Ⓓになし
所 Ⓐ念仏勝と左傍註記
号→ⒶⒷⒸⒺ号[者]
仏→Ⓓ仏[之]
其屋舎 ⒷⒺになし
已上 Ⓐになし
貴→Ⓓ遣
易…云 Ⓐになし
者→Ⓔ則
乏→ⒷⒺ乏[之]
甚 Ⓓになし
上→Ⓐ上[已上]
未→Ⓔ末
何以→Ⓐ以何
即→Ⓓ則
往生 Ⓐになし
声→ⒶⒷⒸⒹⒺ声[即]
小…導 Ⓐになし
其→Ⓒ甚
雖→ⒷⒸⒹⒺ惟
人天→Ⓓ天人
生→Ⓐ生[之]
云→Ⓐ言
之 Ⓐになし
語→Ⓒ告
此→Ⓔ斯
云 Ⓔになし
中→Ⓔ中[云]
仏 ⒷⒸⒺになし
輩→Ⓐ輩[即]
三→ⒷⒺ三[種]
行→Ⓓ学
爾→ⒷⒸⒺ然
次異類助成者 ⒶⒷⒸⒹになし
正→Ⓑ成
之→Ⓓ心
問端云→Ⓐ云問端
上→Ⓐ上[文]
等→Ⓐ等[諸]
行→Ⓔ行[而]
引→Ⓓ説
仏 Ⓐになし
遍→Ⓐ遍[仏]
厳→Ⓔ厳[事]
去→ⒷⒸⒺ去[是]
未→Ⓔ末
知 ⒶⒸⒹになし
者→Ⓔ則
之 Ⓐになし
此→Ⓒ比→Ⓔ斯
全 ◎になし
未→ⒶⒷⒸⒹⒺ不
仏→Ⓐ仏[之]
恵→Ⓔ慧
者 Ⓓになし
道→Ⓓ導
者→Ⓔ者[謂]
何経 Ⓓになし
而 Ⓓになし
迦→Ⓐ尊
観→Ⓐ観[無]
孤→Ⓒ狐
末→ⒷⒺ末[法]
之 Ⓐになし
相→ⒷⒹⒺ相[各]
好→ⒷⒺ好[復]
仏 Ⓐになし
行→Ⓐ善
誠→ⒶⒸ成
例…文 Ⓐになし
竟→Ⓓ竟[已上]
接→Ⓔ摂
引→Ⓒ別
国→ⒶⒸ国[已上]
百…善 Ⓐになし
非→ⒷⒸⒹⒺ[若]非
闇→ⒷⒸ暗
二者→Ⓐ者二
者 Ⓐになし
慮→Ⓐ虚
等 Ⓐになし
者 Ⓓになし
随 Ⓐになし
又…也 Ⓐになし
論→Ⓐ論[証]
妨→◎好 →ⒶⒸⒹ好
怯→Ⓒ悟
別 Ⓐになし
仏 ⒷⒸⒺになし
各 Ⓐになし
輝→Ⓐ耀
彼 Ⓐになし
生 Ⓐになし
河 ⒶⒷⒸになし
悪→Ⓐ悪[見]→Ⓔ悪[見悪]
悪 Ⓐになし
繁→Ⓒ繋
願→ⒶⒺ願[願生]→ⒷⒸ願[生]
捉→ⒷⒸⒹⒺ投
問…也 Ⓐになし
説→ⒷⒸⒹⒺ[或]説
目→Ⓓ自
故→ⒷⒸⒹⒺ故[各]
也 Ⓓになし
路→ⒶⒺ路[見]
各 Ⓐになし
道→Ⓓ噵
忽…畔18字 ◎になし
一 Ⓐになし
虫→Ⓓ虫[親]
亦 Ⓓになし
勉→Ⓔ免
楽→Ⓐ楽[之]
増→ⒶⒺ憎
心 Ⓐになし
滅→Ⓓ滅[已滅]
悪→Ⓐ異
淪→ⒷⒸⒺ輪
倒→ⒷⒸ到
作此想 Ⓐになし
名 ◎になし
彼→Ⓔ浄
往 Ⓔになし
浄→Ⓔ彼
者 ⒶⒷⒸⒺになし
自 ◎ⒶⒸになし
名 Ⓓになし
生→Ⓓ[往]生
知→Ⓐ知[已上]
知→Ⓓ知[三]
言→Ⓔ辞
悪→ⒶⒷⒸⒹⒺ悪[也]
言→ⒷⒺ辞
等→ⒶⒷⒸⒹⒺ等[者]
謂…諸 Ⓑは写補
心→Ⓐ心[也]
諸→ⒷⒺ緒
及→ⒶⒷⒸⒹⒺ及[彼]
二→ⒶⒹ三
讃→Ⓔ[専]讃
三→ⒶⒸ四
不→Ⓔ不[令]
心→Ⓐ意
者 Ⓔになし
室→Ⓐ守
花香→ⒷⒸⒺ香華
者 Ⓔになし
十由旬 Ⓐになし
者 ⒶⒺになし
厄→Ⓑ危
者 Ⓔになし
宝→Ⓐ法
繒→Ⓐ絵
恵→ⒷⒸⒺ慧
抄→ⒷⒸⒺ鈔
令→ⒶⒷⒸⒹⒺ合
辨→ⒷⒸ辦
爾→Ⓔ然
壊→Ⓐ懐
財→Ⓓ宝
其→Ⓓ其[甚]
何以→Ⓐ以何
修→ⒷⒸⒺ行
之 Ⓐになし
汝→Ⓐ汝[文]
励→ⒶⒷⒸⒹⒺ勧
即 ⒷⒺになし
家→Ⓐ家[已上]
明→Ⓔ明[指]
人中 Ⓐになし
是→ⒷⒺ是[若]
中 Ⓐになし
賖→Ⓐ賖[已上]
孤→Ⓔ独
芬→Ⓔ分
者→Ⓐ者[等云々]
何…知 Ⓐになし
所→ⒷⒸⒺ而
蘊→◎ⒷⒸⒹ蘰 ◎蘊聚也蔵也と上欄註記
→ⒷⒹⒺ咀
閑→Ⓔ間
蜜→◎察
速→Ⓓ速[得]→Ⓔ速[疾]
五→Ⓔ五[法]
蘇→ⒷⒸⒺ酥
熟 ◎Ⓓになし
蘇 ◎Ⓓになし→ⒷⒸⒺ酥
也 ⒷⒸⒺになし
念 Ⓓになし
別→Ⓔ別[也]
誉→Ⓐ誉[下而所讃也言人中希有人者是待常有而所歎也言人中最勝人者是待最劣而所褒也]
経→ⒶⒺ経[云]
覩→Ⓒ観
之 Ⓐになし
寿 Ⓐになし
名→Ⓐ名[文]
名→Ⓐ名[文]
奉◎養(奉と右傍註記)
事→ⒷⒺ仕
者 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
是→Ⓔ此
依 Ⓓになし
此→ⒶⒷⒸⒹⒺ此[亦]
有 Ⓓになし
者 Ⓐになし
受→Ⓐ[余]受
即是→Ⓐ是即
書→Ⓐ[余]書
乗 ◎になし
指→ⒷⒺ於
有 Ⓓになし
編→Ⓓ綸
乎→Ⓐ也
乗→Ⓔ乗[而]
者→ⒶⒷⒸⒹⒺ者[者]
言 Ⓓになし
句→Ⓐ句[慈心不殺也]
三→Ⓐ三[之]
上 Ⓓになし
造 Ⓓになし
果 Ⓓになし
想→ⒶⒷⒸⒹⒺ想[観]
観→Ⓐ観[者]
之 Ⓔになし
辨→ⒷⒸ弁
曰 Ⓐになし
祛→Ⓔ袪
之 Ⓓになし
選→Ⓔ[而]選
也 Ⓐになし
者 Ⓐになし
今→Ⓐ之
随自之後還閉定散門 ◎になし
巻→Ⓓ観
已上→Ⓐ文
一→Ⓔ七
七→Ⓔ一
不→ⒷⒺ無
用→ⒶⒷⒸⒹⒺ要
観 Ⓓになし
兼→Ⓔ[而]兼
中 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
之 Ⓓ也
経→ⒷⒸⒺ[此]経
大千 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
界→Ⓐ界[文]
念 ◎になし
之 Ⓐになし
男→Ⓓ[善]男
心→Ⓐ心[此是亦現生護念増上縁]
斯→Ⓔ此
者→Ⓔ去
昼→Ⓑ尽
悪→ⒷⒸ悪[鬼]→Ⓔ悪[鬼悪]
往→Ⓓ往[生]
念…至13字→◎「念レバ↢阿弥陀仏及二菩薩観音勢至ヲ↡」
之 Ⓐになし
諸行之中 Ⓐになし
云→ⒶⒺ云[当知一念]
説→ⒶⒷⒸⒹⒺ明
択 Ⓓになし
舒→Ⓐ舒[斎]
証→ⒶⒷⒸⒹⒺ説
云 Ⓓになし
故 Ⓓになし
欲入浄土門 Ⓓになし
正定 ◎Ⓓになし
問→Ⓐ[私]問
道→Ⓓ噵
辨→ⒷⒸ弁
花 ⒷⒺになし
花 ⒷⒹⒺになし
簷→Ⓔ檐
堪→Ⓐ導
将→Ⓐ倫
即→Ⓓ即[即]
尽→Ⓑ尽[十方]
阿 Ⓓになし
土→Ⓓ等
楷→Ⓓ階
地 Ⓐになし
即 Ⓓになし
日 Ⓓになし
杆→Ⓔ杆[極]
蹤→ⒷⒸⒹⒺ縦
信→Ⓓ信[者]
是 Ⓑになし
弥陀 Ⓓ釋迦と右傍註記
謂→Ⓓ謂[又]
疏→Ⓓ文(疏イと右傍註記)
者 ⒷⒸⒹⒺになし
伝→Ⓓ直(傳イと右傍註記)
何…説27字 Ⓓになし
堕 ⒶⒺ随
无
本
す
謹んで
を按ずる
遇
るに
、
りて也
に
する
もはら
い
云
中
らむに
むで
生
・
下
も
持うる
暴風
駛雨
悲
む
すれ
思量
去ユク
こゝろ
おもむ
きかず、
家
何
にし
(序)
云
かるがゆへ
なぞらへ
云
悪
大
少
し
そ
して
る也
る也
へたる也
也
いふ
と云は、
といふは、
まさに知べし、
経と云
多途
のこゝろ
相
をまつ
を
れば
乗じ
楽
と云
ひろく
ふものは
む
すること
すること、
也。
くして
ことを
ざかり、
といふ
ふと
おひて
おひて、
むものは
謂
門徒一にあらず。
なに
する也。
する也
するには
口に称するには
らば
已外
るは
悉
いはく
専注し
と云
口に
の
るものは
いま
なり
は
は、
ことば
たり
无間有間
不廻向廻向
立
口
みそなわす
しろしめす
きこしめさ
みそなはさ
しろしめさ
隣近たり
故
欣
仏
奉
現じて
在
欣
すと
阿
るが
生
純也、
き也
また
耳と
義
えたり
命終
ず
外
えたる
失する
せ
の心
念ぜ
なし
自のおもさえ、
人のおもさふる
にして
ながら
異こと
じ、
一
すでによく
今身
上
すたる
して、
け、
たのしみ
むまれ
ねがはむ
所修
なしたまへるをもちゐる
おもふ
ずることをえざれ
ければなり
やめ
く
さ
もとめ
廻
求生せモトメムマレムト
おもはむものは
施したまふところ
をなす
り
するにおなじからむとおもふ。
中の
に、
せむ
もし
ずは
敬しかも
し、
目のまへ
せよ。
てたまへるをもちゐ[る]
したまへるをもちゐて、
をもちゐるが
て
と
也
証して
すゝめて
むまる
ふかく信ずといふ
いで
唯信し
く。
ふかく信じ
なるが
已還
なり。
あり。
よく
。
すべきなり
仏意
なむだちが
かくのごとくならず
ひて、
するなり
所有の
おほく
めむや
めむ
惑
迷
ざるなり
ふかく信ず
錯
おなじからざらむ
このむで難証
ば
直
心
じ
あふいで信ず
ところ
時
ひし
そなえし
等
なむだち
仁者
さらに
せしめ
おはり
はゞ
より信ず
じ。
我
語
すべて
あまねく
こと
きなり
いふとも、
となり
ざらむことを
となづく
ましまし
ゝ
おしてかむがふ
おしえ
おは
といへり
讃じ
か
専念し
う
すゝめはげまし
いふこと、
専念す
こゝろうべし
ふかき信心
して生ずといふ
願じて
人等
身
にて
入
ふくみ
これら
る
の要
もとむるところ
、 しかも
まなば
さはりなく
まなぶ
うるなり
りて、
さく、
喩
里
二の河
まじわりすぎ
道
道、
くして、
やうやく
おちむ
ざれば、
おもひ
さむ
るべし
ことごとく
つかはし
たゞち
なさざれ
なむ
もろもろの
かへりみ
けば
世界
无人
くなるに
ありて
つかはす
たちまち
と説に
より
纏
たとふるなり。
むかへしむる
る。
心
かれ。
うるにたとふ。
や
さとり
。 かるが
足
といはゞ
け
作業
くに
うる
かの
生ぜ
に説が
をもちゐるが
、 いまだ
廻して往生せむと願ず
往生
うるなり。
となれば、
けし、
心
生ぜ
ずることをえざれ
ととのはざる
内
をいたす
えつ
むなしく
実なるもの
ひるがへし
とゞまるところ
すべ
用
ぜしむ
なむら
いのちおはる
れ
専念・専想・専礼・専讃
ふて
乃至
をう
にも
華
べむ
をば
おなじから
ひ
なさ
うやまひ
のさわり
べし
しといへども、
ひとり
良朋
もろき
ひ、
ちからをたすけて
浅行のものゝために、 はたしてより修せざらむや
おほきに
綺◗
金
かむばた
みがき
り、
観ず
なせ
まし
亡す
たてまつる
詮ずるところ
さとりを生ずる縁なり
発する
安
箱篋ハコ
身も手も
せよ
等、
仏を念じ
ごときの
らむとす
くるしきことたえしのばず
おもはずといふ
し。
めぐり
おどろきいそぎ
願ず
ものうから
而已
さきの
ぬけ
文をぬける
あり
行
慇
下
」 といへり。
而已と
せば
の名
いひて
諸罪
同
所聞
いは
には
するに、
かくのごとき
称名
るを、
讃ぜ
しばしば
り。
生ず
ぜむ
実
れに
のみな
す。
讃ず
なりとす。
するひと
因円果満す
はるかな
しかも
等のたまふ
嘆ず
のこゝろ
かなり
くるは
ねがふて
ねがひて
治
縵
をもつて
するに
が
む。
覈
つくり
頓に
ず。
第一義をさとり
菩提心をおこす
すぐれたる
てたまへり
ざれば
したまふ
らむ
える
喩の
上来に
まむには
¬経¼ に説が
たえたるところ
の中
」
「
帰依仏法僧
おさめ
該コメ羅するコムルナリ な
ぐ
ずれ
るを
編ヘンし
れたり
れり
うまる
せずして
同
におなじき
まむには
ざるが
これを
直
きたまへるが
ずならく
上に
しりぞ
なること
身
授記せ
によりて
世人
違するにあらずや
入真の要
いふな
たもつ
たふとし
欲
せさせ
せり
き
むなしから
遠
近
おはらむ時
生ず
随縁の
にせよと
ひまなかれ
臨終に
まさに
(巻一)
書す
画
いまの世につたわる本
へる
ねがふて浄土に生ず。
といふことを
みした
といはゞ
みくち
みこと
なんだち
護念したまふところの
かる
きて
て、
仏を念じ
なす
の証
えむ
経
経
したまは
きたまふ
乗ず
きたまふし
専念し
ねがふもの
心をいたさざる
この
ねがは
悪鬼・
心をいたして
をう。
あひみむことを愛楽し
をもて
横
加す
ける
年をのべ命を転ずること
の説法の
ねむごろ
もの
のもの
のつみ
へり
あかす
したまへり
誠実のみことを説
の自説にのたまはく
選択し
すならく
の名
宗シユ
ざる也
発せ
発したまわ
えてむ
萎悴せ
てむ
萎◗きばま
ることはなはだし
まうでゝ請によりて、 入定して観ずべし、 生ずることをうべしやいなやと
入定し
報じ
簷牖
深◗
の人
ふに
みえて
ぬと
白光
発
力
ず、
東にゆい
盛
せし
じて、
請求し
こころをいたす
諸
のおむこゝろ
要
結願し
至心発願して、
立ち
の夢の中
を指授す。 科文
ぬき
たてまつること、
みち
み
らく、
界
おほくくるし
まふさ
夜
をみたてまつるに、
下
まつえ
みる
◗幢ハタボコ杆サホ
かゝりて五色なり
息
す、
をのべあらはすのちに
までに
なら
むもの
相伝し
すべし
言
さとれり
津
るなり
あるいは
おのおの
のみ
をのみ
をして
みらく、
いへり、
兼実博陸の高命をかぶれり
述せり