0297◎観経玄義分 巻第一
沙門*善導集記
一 説偈勧帰【帰三宝偈】
Ⅰ 総標
【1】 ◎^先0433づ大衆を勧めて願を発して三宝に帰せしむ。
0655◎▲先ヅ勧メテ↢大衆ヲ↡発シテ↠願ヲ帰セシム↢三宝ニ↡
一 Ⅱ 説偈
ⅰ 勧他
^▼*道俗の時衆等、 おのおの*無上 心を発せ。
^生死はなはだ厭ひがたく、 仏法また欣ひがたし。
^▼ともに*金剛の志を発して、 ▼横に*四流を超断すべし。
^▼弥陀 界に入らんと願じて、 帰依し合掌し 礼したてまつれ。
願ジテ↠入ラムト↢弥陀界ニ↡ | 帰依シ合掌シ礼シタテマツレ |
一 Ⅱ ⅱ 自帰
a 帰敬
^世尊、 われ一心に*尽十方の
^法性真如海と、 *報化等の諸仏と、
^一々の菩薩 身と、 眷属等の無量なると、
^*荘厳および変化と、 *十地と三賢海と、
^*時劫の満と未満と、 *智行の円と未円と、
^*正使の尽と未尽と、 *習気の亡と未亡と、
^0298*功用と無功用と、 *証智と未証智と、
^▼*妙覚 および*等覚の、 ▼まさしく金剛心を受け、
^▼*相応する一念の後 、 *果徳涅槃のものに帰命したてまつる。
一 Ⅱ ⅱ b 乞加
^われらことごとく*三仏菩提の尊に帰命したてまつる。
^無礙の神通力をもつて、 冥に加して願はくは*摂受したまへ。
^われらことごとく三乗等の*賢聖の、 仏の大悲心を学して、
^長時に退することなきものに帰命したてまつる。
学シテ↢仏ノ大悲心ヲ↡ | 長時ニ無キ↠退スルコト者ニ↥ |
^請ひ願はくははるかに*加備したまへ。 念々に諸仏を見たてまつらん。
請ヒ願クハ遥ニ加備シタマヘ | 念念ニ見タテマツラム↢諸仏ヲ↡ |
一 Ⅱ ⅲ 述意
a 嘆自信法義
^わ0434れら愚痴の身、 *曠劫よりこのかた流転して、
^いま釈迦仏の末法の遺跡たる
^弥陀の本誓願、 極楽の*要門に逢へり。
^▼定散等しく回向して、 すみやかに*無生の身を証せん。
一 Ⅱ ⅲ b 標能弘心願
^▼われ菩薩蔵▼頓教、 一乗海によりて、
^偈を説きて三宝に帰して、 仏心と相応せん。
^十方恒沙の仏、 六通をもつてわれを照/rb>知したまへ。
^0299いま二尊 (釈尊・阿弥陀仏) の教に乗じて、 広く浄土の門を開く。
一 Ⅱ ⅳ 廻願
^願はくはこの功徳をもつて、 平等に一切に施し、
^同じく菩提心を発して、 安楽国に往生せん。
二 文前玄義
Ⅰ 標列【七門料簡】
【2】 ^この ¬*観経¼ 一部のうちに、 先づ七門を作りて*料簡し、 しかして後に文によりて義を釈せん。
▲此ノ¬観経¼一部之内ニ、先ヅ作リテ↢七門ヲ↡料簡シ、然シテ後ニ依リテ↠文ニ釈セム↠義ヲ。
^第一に ↓先づ序題を標す。 第二に↓次にその名を釈す。 第三に↓文によりて義を釈し、 ならびに*宗旨の不同、 *教の大小を弁ず。 第四にまさしく↓説人の差別を顕す。 第五に↓定散 二善、 通別に異なることあることを料簡す。 第六に↓経論の相違を和会するに、 広く問答を施して疑情を*釈去す。 第七に↓*韋提の、 仏の正説を聞きて益を得る分斉を料簡す。
▲第一ニ先ヅ標ス↢序題ヲ↡。第二ニ次ニ釈ス↢其ノ名ヲ↡。第三ニ依リテ↠文ニ釈シ↠義ヲ、并ニ弁ズ↢宗旨ノ不同、教之大小ヲ↡。第四ニ正シク顕ス↢説人ノ差別ヲ↡。第五ニ料↢簡ス定散二善、通別ニ有ルコトヲ↟異ナルコト。第六ニ和↢会スルニ経論ノ相違ヲ↡、広ク施シテ↢問答ヲ↡釈↢去ス疑情ヲ↡。第七ニ料↧簡ス韋提ノ聞テ↢仏ノ正説ヲ↡得ル↠益ヲ分斉ヲ↥。
二 Ⅱ 牒釈
ⅰ【序題門】
a 牒標
【3】 ^第一に↑先づ序題を標すとは、
▲第一ニ先ヅ標スト↢序題ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅰ b 正釈
イ 総明出世利益
(一)先明出世由
(Ⅰ)性海平等
^▼ひそかにおもんみれば、 真如広大にして五乗もその辺を測らず。 法性深高にして十聖もその際を窮むることなし。 真如の体量、 量性、 *蠢々の心を出でず。 法性 無辺なり。 辺体すなはちもとよりこのかた動ぜず。 *無塵の法界は*凡聖斉しく円かに、 *両垢の如々すなはちあまねく*含識を該ね、 恒沙の功徳*寂用湛然なり。
~窃ニ以レバ、真如広大ニシテ五乗モ不↠測ラ↢其ノ辺ヲ↡。法性深高ニシテ十聖モ莫シ↠窮ムルコト↢其ノ際ヲ↡。真如之体量、量性不↠出デ↢蠢蠢之心ヲ↡、法性無辺ナリ。辺体則チ元ヨリ来タ不↠動ゼ。無*塵ノ法界ハ凡聖斉シク円カニ、両垢ノ如如則チ普ク該ネ↢於含識ヲ↡、恒沙ノ功徳寂用湛然ナリ。
二 Ⅱ ⅰ b イ (一)(Ⅱ)垢障覆深
^▼ただ垢障覆ふこと深きをもつて、 *浄体顕照するに由なし。
~但以テ↢垢障覆フコト深キヲ↡、浄体無シ↠由↢顕照スルニ↡。
二 Ⅱ ⅰ b イ (二)正示出世益
^ゆゑに ˆ釈尊はˇ 大悲をもつて*西化を隠し 、 驚きて火宅の0300門に入り、 ▼甘露を灑ぎて*群萌を潤し、 *智炬を輝かせばすなはち*重昏を永夜より朗らかならしむ。 *三檀等しく備0435はり、 四摂をもつて斉しく収めて、 長劫の苦因を開示し 、 *永生の楽果に悟入せしむ。
~故ニ使ム↧大悲ヲモテ隠シ↢於西化ヲ↡、驚キテ入リ↢火宅之門ニ↡、灑ギテ↢甘露ヲ↡潤シ↢於群萌ヲ↡、輝カセバ↢智炬ヲ↡則チ朗カナラ↦重昏ヲ於永夜ヨリ↥。三檀等シク備0657ハリ、四摂ヲモテ斉シク収メテ、開↢示シ長劫之苦因ヲ↡、悟↢入セシム永生之楽果ニ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ 別明二門教益
(一)明化前教益
(Ⅰ)随類開化
【4】 ^*群迷の性の隔たり、 *楽欲の不同をいはず。 *一実の機なしといへども、 等しく五乗の用あれば、 慈雲を三界に布き、 法雨を大悲より注がしむることを致す。 等しく*塵労を洽すに、 あまねく未聞の益を沾さざるはなし。 菩提の種子これによりてもつて心を抽き 、 正覚の芽念々にこれによりて増長す。
~不↠謂ハ↢群迷ノ性ノ隔リ、楽欲ノ不同ヲ↡。雖モ↠無シト↢一実之機↡、等シク有レバ↢五乗之用↡、致ス↠使ムルコトヲ↧布キ↢慈雲ヲ於三界ニ↡、注ガ↦法雨ヲ於大悲ヨリ↥。莫シ↠不ルハ↧等シク洽スニ↢塵労ヲ↡普ク沾サ↦未聞之益ヲ↥。菩提ノ種子藉リテ↠此ニ以テ抽キ↠心ヲ、正覚之芽念念ニ因リテ↠茲ニ増長ス。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (一)(Ⅱ)随宜得益
^▼心によりて勝行を起すに、 門八万四千に余れり。 *漸頓すなはちおのおの所宜に称ふをもつて、 縁に随ふもの 、 すなはちみな解脱を蒙る。
~依リテ↠心ニ起スニ↢於勝行ヲ↡、門余レリ↢八万四千ニ↡。漸頓則チ各ノ称フヲモテ↢所宜ニ↡、随フ↠縁ニ者、則チ皆蒙ル↢解脱ヲ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)明今経利益【要弘二門】
(Ⅰ)正明
(ⅰ)明教興因縁
(a)教興因
【5】 ^しかるに衆生障重くして、 悟を取るもの明めがたし。 教益多門なるべしといへども、 *凡惑*遍攬するに由なし。
~然ルニ衆生障重クシテ、取ル↠悟ヲ之者難シ↠明メ。雖モ↠可シト↢教益多門ナル↡、凡惑無シ↠由↢遍攬スルニ↡。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)教興縁
^たまたま韋提、 請を致して、 「▲われいま安楽に往生せんと楽欲す。 ◆ただ願はくは如来、 われに思惟を教へたまへ、 われに正受を教へたまへ」 といふによりて、
~遇マ因リテ↧韋提致シテ↠請ヲ、我今楽↣欲ス往↢生セムト安楽ニ↡、唯願クハ如来、教ヘタマヘ↢我ニ思惟ヲ↡、教ヘタマヘトイフニ↦我ニ正受ヲ↥、
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)明一部教義
^▼しかも娑婆の化主 (釈尊) はその請によるがゆゑにすなはち広く浄土の↓要門を開き、 *安楽の能人 (阿弥陀仏) は▼*別意の↓弘願を顕彰したまふ。
~然モ娑婆ノ化主ハ因ルガ↢其ノ請ニ↡故ニ即チ広ク開キ↢浄土之要門ヲ↡、安楽ノ能人ハ顕↢彰シタマフ別意之弘願ヲ↡。
1.要門
^▼その↑要門とはすなはちこの ¬*観経¼ の定散二門これなり。 ▼「定0301」 はすなはち*慮りを息めてもつて心を凝らす。 「散」 はすなはち悪を廃してもつて善を修す。 この二行を*回して往生を求願す 。
~其ノ要門ト者即チ此ノ¬観経ノ¼定散二門是也。定ハ即チ息メテ↠慮リヲ以テ凝ラス↠心ヲ。散ハ即チ廃シテ↠悪ヲ以テ修ス↠善ヲ。廻シテ↢斯ノ二行ヲ↡求↢願ス往生ヲ↡也。
2.弘願
^▼↑弘願といふは ¬*大経¼ (上・意) に説きたまふがごとし。 「▲一切▼善悪の凡夫生ずることを得るものは、 ▲みな阿弥陀仏の大願業力に乗じて増上縁となさざるはなし」 と。
~言フ↢弘願ト↡者如シ↢¬大経ニ¼説キタマフガ↡。「一切善悪ノ凡夫得ル↠生ズルコトヲ者ハ、莫シト↠不ルハ↧皆乗ジテ↢阿弥陀仏ノ大願業力ニ↡為サ↦増上縁ト↥也。」
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)顕密意所在
^▼また仏の*密意弘深なり、 教門 暁めがたし。 三賢・十聖も測りて闚ふところにあらず。 いはんやわれ*信外の軽毛なり、 あへて旨趣を知らんや。
~又仏ノ密意弘深ナリ、教門難シ↠暁メ。三賢・十聖モ弗ズ↢測リテ所ニ↟闚フ。況ヤ我信外ノ軽毛ナリ、敢テ知ラムヤ↢旨趣ヲ↡。
^◆仰ぎておもんみれば、 ▼釈迦はこの方より*発遣し、 弥陀はすなはちかの国より来迎したまふ。 かしこに喚ばひここに遣はす、 あに去かざるべけんや。
~仰ギテ惟レバ、釈迦ハ此ノ方ヨリ発遣シ、弥陀ハ即チ彼ノ国ヨリ来迎シタマフ。彼ニ喚バヒ此ニ遣ハス、豈ニ容ケム↠不ル↠去カ也。
二 Ⅱ ⅰ b ロ (二)(Ⅱ)結勧
^◆ただ勤心に法を奉けて、 *畢命を期となして、 ▼この穢身を捨てて▼すなはちかの法性の▼常楽を証すべし。
~唯可シ↧勤心ニ奉ケテ↠法ヲ、畢命ヲ為シテ↠期ト、捨テテ↢此ノ穢身ヲ↡即チ証ス↦彼ノ法性之常楽ヲ↥。
二 Ⅱ ⅰ c 総結
^これすなはち略して序0436題を標しをはりぬ。
~此即チ略シテ標シ↢序題ヲ↡竟リヌ。
二 Ⅱ ⅱ【釈名門】
a 牒標
【6】 ^第二に↑次に名を釈すとは、
▲第0658二ニ次ニ釈スト↠名ヲ者、
二 Ⅱ ⅱ b 釈義
イ 標挙
^¬経¼ に 「↓仏↓説↓無量寿↓観↓経↓一巻」 とのたまへり。
~¬経ニ¼言ヘリ↢「仏説無量寿観経一巻ト」↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ 正釈
(一)釈仏字
^「↑仏」 といふはすなはちこれ*西国 (印度) の正音なり。 この土 (中国) には 「覚」 と名づく。 ↓自覚・↓覚他・↓覚行窮満、 これを名づけて仏となす。
~言フ↢「仏ト」↡者乃チ是西国ノ正音ナリ。此ノ土ニハ名ク↠覚ト。自覚・覚他・覚行窮満、名ケテ↠之ヲ為ス↠仏ト。
^「↑自覚」 といふは凡夫に*簡異す。 これ▼声聞は狭劣にして、 ただよく自利のみありて、 闕けて利他の大悲なきによるがゆゑなり。
~言フ↢自覚ト↡者簡↢異ス凡夫ニ↡。此由ルガ↣声聞ハ狭劣ニシテ、唯能ク自利ノミアリテ、闕キテ無キニ↢利他ノ大悲↡故ナリ。
^「↑覚他」 といふは二乗に簡異す。 これ 菩0302薩は智あるがゆゑによく自利し、 悲あるがゆゑによく利他し、 つねによく*悲智双行して有無に着せざるによる。
~言フ↢覚他ト↡者簡↢異ス二乗ニ↡。此由ル↢菩薩ハ有ルガ↠智故ニ能ク自利シ、有ルガ↠悲故ニ能ク利他シ、常ニ能ク悲智双行シテ不ルニ↟著セ↢有無ニ↡也。
^「↑覚行窮満」 といふは菩薩に簡異す。 これ 如来は智行すでに窮まり、 *時劫すでに満ちて、 *三位を出過せるによるがゆゑに、 名づけて仏となす。
~言フ↢覚行窮満ト↡者簡↢異ス菩薩ニ↡。此由ルガ↣如来ハ智行已ニ窮リ、時劫已ニ満チテ、出↢過スルニ三位ヲ↡故ニ、名ケテ為ス↠仏ト。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)釈説字
^「↑説」 といふは口音に陳唱す。 ゆゑに名づけて説となす。 また如来、 機に対して法を説きたまふこと多種不同なり。 漸頓よろしきに随ひ 、 *隠彰異なることあり。 あるいは六根通じて説きたまふ。 相好もまたしかなり。 念に応じ、 縁に随ひてみな証益を蒙る。
~言フ↢「説ト」↡者口音ニ陳唱ス。故ニ名ケテ為ス↠説ト。又如来対シテ↠機ニ説キタマフコト↠法ヲ多種不同ナリ。漸頓随ヒ↠宜シキニ、隠彰有リ↠異ナルコト。或ハ六根通ジテ説キタマフ。相好モ亦然ナリ。応ジ↠念ニ、随ヒテ↠縁ニ皆蒙ル↢証益ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)釈無量寿
(Ⅰ)梵漢対釈
【7】 ^▼「↑無量寿」 といふは、 すなはちこれこの地 (中国) の漢音なり。 「南無阿弥陀仏」 といふは、 またこれ西国 (印度) の正音なり。 また 「南」 はこれ帰、 「無」 はこれ命、 「阿」 はこれ無、 「弥」 はこれ量、 「陀」 はこれ寿、 「仏」 はこれ覚なり。 ゆゑに 「帰命無量寿覚」 といふ。 これすなはち*梵 漢 相対するに、 その義かくのごとし。
~言フ↢「無量寿ト」↡者、乃チ是此ノ地ノ漢音ナリ。言フ↢南無阿弥陀仏ト↡者、又是西国ノ正音ナリ。又南者是帰、無者是命、阿者是無、弥者是量、陀者是寿、仏者是覚ナリ。故ニ言フ↢帰命無量寿覚ト↡。此乃チ梵漢相対スルニ、其ノ義如シ↠此クノ。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)(Ⅱ)約人法釈
^いま ▼「無量寿」 といふはこれ法、 「覚」 とはこれ人なり。 ↓人法並べ 彰す、 ゆゑに阿弥陀仏と名づく。
~今言フ↢無量寿ト↡者是法、覚ト者是人ナリ。人・法並ベ彰ス、故ニ名ク↢阿弥陀仏ト↡。△
二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)(Ⅲ)約観境釈
【8】 ^◆また↑人法といふはこれ所観の境なり。 すなはちその二あり。 一には↓依報、 二には↓正報なり。
又言フ↢人法ト↡者是所観之境ナリ。即チ有リ↢其ノ二↡。一ニ者依報、二ニ者正報ナリ。
・依報
^↑依報のなかにつきてすなはちその三あり。
就キテ↢依報ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ三↡。
・依報 ・地下荘厳
^一には地下の荘厳、 す0303なはち一切の*宝幢光明のたがひにあひ*映発する等これなり。
一ニ者地下ノ荘厳、即チ一切ノ宝幢光明ノ互ニ相映発スル等是ナリ。
・依報 ・地下荘厳
^二には0437地上の荘厳、 すなはち一切の宝地・池林・宝楼・宮閣等これなり。
二ニ者地上ノ荘厳、即チ一切ノ宝地池林・宝楼・*宮閣等是ナリ。
・依報 ・地下荘厳
^三には虚空の荘厳、 すなはち一切の変化の宝宮・*華網・宝雲・*化鳥・風光の動発せる声楽等これなり。
三ニ者虚空ノ荘厳、即チ一切0659ノ変化ノ宝宮・華網・宝雲・化鳥・風光ノ動発セル声楽等是ナリ。
^前のごとく三種の差別ありといへども、 みなこれ弥陀浄国の無漏真実の*勝相なり。 これすなはち総じて依報の荘厳を結成す。
如ク↠前ノ雖モ↠有リト↢三種ノ差別↡、皆是弥陀浄国ノ無漏真実之勝相ナリ。此即チ総ジテ結↢成ス依報ノ荘厳ヲ↡也。
・依報 ・通別
^また依報といふは、 ▲日観より下▲華座観に至るこのかたは、 総じて依報を明かす。 この依報のなかにつきてすなはち↓通あり↓別あり。
又言フ↢依報ト↡者、従リ↢日観↡下至ル↢華座観ニ↡已来タハ、総ジテ明ス↢依報ヲ↡。就キテ↢此ノ依報ノ中ニ↡即チ有リ↠通有リ↠別。
・別依報
^↑別といふは、 ▲華座の一観はこれその別依なり、 ただ弥陀仏に属す。
言フ↠別ト者、華座ノ一観ハ是其ノ別依ナリ、唯属ス↢弥陀仏ニ↡也。
・通依報
^余の*上の六観はこれその↑通依なり、 すなはち法界の凡聖に属す。 ただ生ずることを得れば、 ともに同じく受用す。 ゆゑに通といふ。
余ノ上ノ六観ハ是其ノ通依ナリ、即チ属ス↢法界之凡聖ニ↡。但使得レバ↠生ズルコトヲ者、共ニ同ジク受用ス。故ニ言フ↠通ト也。
^またこの六のなかにつきてすなはち↓真あり↓仮あり。
又就キテ↢此ノ六ノ中ニ↡、即チ有リ↠真有リ↠仮。
・仮依報
^↑仮といふはすなはち▲日想・▲水想・▲氷想等、 これ その仮依なり。 これこの界中の相似可見の境相なるによるがゆゑなり。
言フ↠仮ト者、即チ日想・水想・氷想等、是其ノ仮依ナリ。由ルガ↢是此ノ界中ノ相似可見ノ境相ナルニ↡故ナリ。
・真依報
^↑真依といふは、 すなはち▲瑠璃地より下▲宝楼観に至るこのかたは、 これ その真依なり。 これかの国の真実無漏の可見の境相なるによるがゆゑなり。
言フ↢真依ト↡者、即チ従リ↢瑠璃地↡下至ル↢宝楼観ニ↡已来タハ、是其ノ真依ナリ。由ルガ↢是彼ノ国ノ真実無漏ノ可見ノ境相ナルニ↡故ナリ。
・正報
^二には↑正報のなかにつきてまたその二あり。
二ニ就キテ↢正報ノ中ニ↡亦有リ↢其ノ二↡。
・正報 ・主
^一には▲主荘厳、 すなはち阿弥陀仏これなり。
一ニ者主荘厳、即チ阿弥陀仏是ナリ。
・正報 ・聖衆
^二には▲聖衆荘厳、 すなはち現にかしこにある衆および十方法界 同生のものこれ0304なり。
二ニ者聖衆荘厳、即チ現ニ在ル↠彼ニ衆及ビ十方法界同生ノ者是ナリ。
・正報 ・通別
^またこの正報のなかにつきてまた↓通あり↓別あり。
又就キテ↢此ノ正報ノ中ニ↡亦有リ↠通有リ↠別。
・別正報
^↑別といふはすなはち阿弥陀仏これなり。 すなはちこの別のなかにまた↓真あり↓仮あり。
言フ↠別ト者即チ阿弥陀仏是也。即チ此ノ別ノ中ニ亦有リ↠真有リ↠仮。
・仮正報
^↑仮正報といふはすなはち第八の▲像観これなり。 ▲観音・勢至等もまたかくのごとし。 これ衆生障重く*染惑処深きによりて、 仏 (釈尊)、 たちまちに*真容を想はんに、 顕現するに由なきことを恐れたまふがゆゑに、 *真像を仮立してもつて*心想を住めしめ、 かの仏に同じてもつて境を証せしめたまふ。 ゆゑに仮0438正報といふ 。
言フ↢仮正報ト↡者即チ第八ノ像観是也。観音・勢至等モ亦如シ↠是クノ。此由リテ↢衆生障重ク染惑処深キニ↡、仏恐レタマフガ↧乍ニ想ハムニ↢真容ヲ↡、無キコトヲ↞由↢顕現スルニ↡故ニ、使メタマフ↧仮↢立テ真像ヲ↡以テ住メシメ↢心想ヲ↡、同ジテ↢彼ノ仏ニ↡以テ証セ↞境ヲ。故ニ言フ↢仮正報ト↡也。
・真正報
^↑真正報といふはすなはち第九の▲真身観これなり。 これ前の仮正によりて、 やうやくもつて乱想を息めて、 心眼開くることを得て、 ほぼかの方の清浄 二報、 種々の荘厳を見て、 もつて*昏惑を除く。 障を除くによるがゆゑに、 かの真実の境相を見ることを得 。
言フ↢真正報ト↡者即チ第九ノ真身観是也。此由リテ↢前ノ仮正ニ↡、漸ク以テ息メテ↢於乱0660想ヲ↡、心眼得テ↠開クルコトヲ、粗ボ見テ↢彼ノ方ノ清浄二報、種種ノ荘厳ヲ↡、以テ除ク↢昏惑ヲ↡。由ルガ↠除クニ↠障ヲ故ニ、得↠見ルコトヲ↢彼ノ真実之境相ヲ↡也。
・通正報
^↑通正報といふはすなはち▲観音聖衆等以下これなり。
言フ↢通正報ト↡者即チ観音・聖衆等已下是也。
^向よりこのかたいふところの通別・真仮 は、 まさしく依正二報を明かす 。
向ヨリ来タ所ノ↠言フ通別・真仮者、正シク明ス↢依正二報ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (四)釈観字
【9】 ^「↑観」 といふは照なり。 つねに浄信心の手をもつて、 もつて智慧の輝を持ち、 かの弥陀の*正依等の事を照らす 。
▲言フ↢「観ト」↡者照也。常ニ以テ↢浄信心ノ手ヲ↡、以テ持チ↢智慧之輝ヲ↡、照ス↢彼ノ弥陀ノ正依等ノ事ヲ↡。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (五)釈経字
^「↑経」 といふは*経なり。 経よく*緯を持ちて*疋丈を成ずることを得て、 その丈用あり。
~言フ↢「経ト」↡者経也。経能ク持チテ↠緯ヲ得テ↠成ズルコトヲ↢*疋丈ヲ↡、有リ↢其ノ丈用↡。
^経よく法を持ちて*理事相応し、 ▼定散機に随ひて義 *零落せず。 よく*修趣のものをして、 かならず教行の縁因によ0305りて、 願に乗じて往生してかの*無為の法楽を証せしむ。 すでにかの国に生じぬれば、 さらに畏るるところなし。 長時に行を起して、 果、 菩提を極む。 ▼法身常住なること、 たとへば虚空のごとし。 よくこの益を招く。 ゆゑにいひて経となす。
~経能ク持チテ↠法ヲ理事相応シ、定散随ヒテ↠機ニ義不↢零落セ↡。能ク令ム↧修趣之者ヲシテ、必ズ藉リテ↢教行之縁因ニ↡、乗ジテ↠願ニ往生シテ証セ↦彼ノ無為之法楽ヲ↥。既ニ生ジヌレバ↢彼ノ国ニ↡、更ニ無シ↠所↠畏ルル。長時ニ起シテ↠行ヲ、果極ム↢菩提ヲ↡。法身常住ナルコト比バ若シ↢虚空ノ↡。能ク招ク↢此ノ益ヲ↡。故ニ曰ヒテ為ス↠経ト。
二 Ⅱ ⅱ b ロ (六)釈一巻
^「↑一巻」 といふは、 この ¬観経¼ 一部は*両会の正説なりといふといへども、 総じてこの一を成ず。 ゆゑに一巻と名づく。
~言フ↢「一巻ト」↡者、此ノ¬観経¼一部ハ雖モ↠言フト↢両会ノ正説ナリト↡、総ジテ成ズ↢斯ノ一ヲ↡。故ニ名ク↢一巻ト↡。
二 Ⅱ ⅱ b ハ 総結
^ゆゑに 「仏説無量寿観経一巻」 といふ。
~故ニ言フ↢「仏説無量寿観経一巻ト」↡。△
二 Ⅱ ⅱ c 結示
^これすなはちその名義を釈しをはりぬ。
此即チ釈シ↢其ノ名義ヲ↡竟リヌ。
二 Ⅱ ⅲ【宗教門】
a 牒標
【10】^三に▲↑↓宗旨の不同、 ↓教の大小を弁釈すとは、
▲三ニ弁↢釈スト宗旨ノ不同、教之大小ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅲ b 正釈
イ 宗旨不同
(一)挙他経例
^↑▲¬*維摩経¼ のごときは*不思議解脱をもつて宗となし、 ▲¬*大品経¼ のごときは*空慧をもつて宗となす。 この例一にあらず。
~如キハ↢¬維摩経ノ¼↡以テ↢不思議解脱ヲ↡為シ↠宗ト、如キハ↢¬大品経ノ¼↡以テ↢空慧ヲ↡為ス↠宗ト。此ノ例非ズ↠一ニ。
二 Ⅱ ⅲ b イ (二)正明今経【念観両宗】
^▲いまこの ¬観経¼ はすなはち観仏三昧をもつて宗となし、 また念仏三昧をもつて宗となす。 一心に*回願して浄土に往生するを*体となす。
~今此ノ¬観経ハ¼即チ以テ↢観仏三昧ヲ↡為シ↠宗ト、亦以テ↢念仏三昧ヲ↡為ス↠宗ト。*一心ニ廻願シテ往↢生スルヲ浄土ニ↡為ス↠体ト。
二 Ⅱ ⅲ b ロ 教大小
【11】^◆↑教の大小といふは0439、
~言フ↢教之大小ト↡者、
^◆問ひていはく、 この ¬経¼ は*二蔵のなかにはいづれの蔵の摂なる。 *二教のなかにはいづれの教の収なる。
~問ヒテ曰ク、此ノ¬経ハ¼二蔵之中ニハ何ノ蔵ノ摂ナル。二教之中ニハ何ノ教ノ収ナル。
^◆答へていはく、 いまこの ¬観経¼ は菩薩 蔵の収なり。 頓教の摂なり。
~答ヘテ曰ク、今此ノ¬観経0661ハ¼菩薩蔵ノ収ナリ。頓教ノ摂ナリ。
二 Ⅱ ⅳ【説人門】
a 牒標
【12】^四に▲↑説人の差別を弁ずとは、
▲四ニ弁ズト↢説人ノ差別ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅳ b 正釈
イ 挙他経例
^◆おほよそ諸経の起説五種を過ぎず。 一には仏の説、 二には*聖弟子の説、 三には*天仙の説、 四には鬼神の説、 五には変化の説0306なり。
~凡ソ諸経ノ起説不↠過ギ↢五種ヲ↡。一ニ者仏ノ説、二ニ者聖弟子ノ説、三ニ者天仙ノ説、四ニ者鬼神ノ説、五ニ者変化ノ説ナリ。
二 Ⅱ ⅳ b ロ 正明今経
^▼いまこの ¬観経¼ はこれ仏の自説なり。
~今此ノ¬観経ハ¼是仏ノ自説ナリ。
二 Ⅱ ⅳ b ハ 処・対告
^▼問ひていはく、 仏いづれの処にかましまして説き、 何人のためにか説きたまへる。
~問ヒテ曰ク、仏在シテ↢何ノ処ニカ↡説キ、為ニカ↢何人ノ↡説キタマヘル。
^答へていはく、 仏*王宮にましまして、 韋提等のために説きたまへ り。
~答ヘテ曰ク、仏在シテ↢王宮ニ↡、為ニ↢韋提等ノ↡説キタマヘリ。
二 Ⅱ ⅴ【定散門】
a 牒標
【13】^五に↑*定散両門を料簡するにすなはちその六あり。
▲五ニ料↢簡スルニ定散両門ヲ↡即チ有リ↢其ノ六↡。
二 Ⅱ ⅴ b 正釈
イ 条録義門
^一には*能請のひとを明かす、 すなはちこれ韋提なり。 二には*所請のひとを明かす、 すなはちこれ世尊なり。 三には能説のひとを明かす、 すなはちこれ如来なり。 四には所説を明かす、 すなはちこれ定散 二善十六観門なり。 五には*能為を明かす、 すなはちこれ如来なり。 六には*所為を明かす、 すなはち韋提等これなり。
~一ニハ明ス↢能請ノ者ヲ↡、即チ是韋提ナリ。二ニハ明ス↢所請ノ者ヲ↡、即チ是世尊ナリ。三ニハ明ス↢能説ノ者ヲ↡、即チ是如来ナリ。四ニハ明ス↢所説ヲ↡、即チ是定散二善十六観門ナリ。五ニハ明ス↢能為ヲ↡、即チ是如来ナリ。六ニハ明ス↢所為ヲ↡、即チ韋提等是也。
二 Ⅱ ⅴ b ロ 料簡意義
(一)顕所立
(Ⅰ)弁定所立
【14】^問ひていはく、 定散 二善はたれの*致請による。
~問ヒテ曰ク、定散二善ハ因ル↢誰ノ致請ニ↡。
^答へていはく、 定善の一門は韋提の致請にして、 *散善の一門はこれ仏の自説なり。
~答ヘテ曰ク、定善ノ一門ハ韋提ノ致請ニシテ、散善ノ一門ハ是仏ノ自説ナリ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)料簡所由
(ⅰ)問
^問ひていはく、 いぶかし、 定散二善は↓出でていづれの文にかある。 いますでに教備はりて虚しからず、 ↓いづれの機か受くることを得る。
~問ヒテ曰ク、未審、定散二善ハ出デテ在ル↢何ノ文ニカ↡。今既ニ教備リテ不↠虚シカラ、何ノ機カ得ル↠受クルコトヲ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)答
(a)標挙
^答へていはく、 解するに二義あり。
~答ヘテ曰ク、解スルニ有リ↢二義↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)正答
(イ)明何機得受
^一には▼謗法と無信と、 八難および*非人、 これらは受けず。 これすなはち*朽林・▲碩石、 生潤の期あるべからず。 これらの衆生はかならず受化の義なし。 これを除きて以外は、 一心に信楽して往生を求願すれば、 上*一形を尽0307し下十念を収む。 仏の願力に乗じてみな往かざるはなし。 これすなはち上の↑いづれの機か受くることを得るの義を答へをはりぬ。
~一ニ者謗法ト与↢無信↡、八難及ビ非人、此等ハ不↠受ケ也。斯乃チ朽林・碩石不↠可カラ↠有ル↢生潤之期↡。此等ノ衆生ハ必ズ無シ↢受化之義↡。除キテ↠斯ヲ已外ハ、一心ニ信楽シテ求↢願スレバ往生ヲ↡、上尽シ↢一形ヲ↡下収ム↢十念ヲ↡。乗ジテ↢仏ノ願力ニ↡莫シ↠不ルハ↢皆往カ↡。此即チ答ヘ↢上ノ何ノ機カ得ルノ↠受クルコトヲ義ニ↡竟リヌ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)明出在何文
[一]牒
[二]正釈
[Ⅰ]通別
^二には↑出でていづれの文にかあるとはすなはち↓*通あり↓*別あり。
~二ニハ出デテ在ルト↢何ノ文ニカ↡者即チ有リ↠通有リ↠別。
・通
^「↑通」 といふはすなはち三 義0440の不同あり。
~言フ↠通ト者即チ有リ↢三義ノ不同↡。
^なんとなれば、 一には 「▲韋提白仏唯願↓為我広説無憂悩処」 よりは、 すなはちこれ韋提、 心を標してみづからために通じて所求を請ふ。
~何トナレバ者一ニハ従リ↢「韋提白仏唯願為我広説無憂悩処」↡者、即チ是韋提0662標シテ↠心ヲ自ラ為ニ通ジテ請フ↢所求ヲ↡。
^二には 「▲唯願仏日▽教我観於清浄業処」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために通じて*去行を請ふ。
~二ニハ従リ↢「唯願仏日教我観於清浄業処」↡者、即チ是韋提自ラ為ニ通ジテ請フ↢去行ヲ↡。
^三には 「▲世尊光台現国」 よりは、 すなはちこれ前の通請の 「↑為我広説」 の言に酬ゆ。
~三ニハ従リハ↢「世尊光台現国」↡、即チ是酬ユ↢前ノ通請ノ「為我広説」之言ニ↡。
^三義の不同ありといへども、 前の通を答へをはりぬ。
~雖モ↠有リト↢三義ノ不同↡、答ヘ↢前ノ通ヲ↡竟リヌ。
・別
^「↑別」 といふはすなはち二 義あり。
~言フ↠別ト者則チ有リ↢二義↡。
^一には 「韋提白仏▲我今楽生極楽世界弥陀仏所」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために別して所求を選ぶ。
~一ニハ従リ↢「韋提白仏我今楽生極楽世界弥陀仏所」↡者、即チ是韋提自ラ為ニ別シテ選ブ↢所求ヲ↡。
^二には 「▲唯願▽教我思惟教我正受」 よりは、 すなはちこれ韋提みづからために*別行を修せんと請ふ。
~二ニハ従リ↢「唯願教我思惟教我正受」↡者、即チ是韋提自ラ為ニ請フ↠修セムト↢別行ヲ↡。
^二義の不同ありといへども、 上の別を答へをはりぬ。
~雖モ↠有リト↢二義ノ不同↡、答ヘ↢上ノ別ヲ↡竟リヌ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]定散
[ⅰ]標示
^これより以下は、 次に定散両門の義を答ふ。
~従リ↠此已下ハ、次ニ答フ↢定散両門之義ヲ↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]正明
[a]定定散文処
^問ひていはく、 いかなるをか定善と名づけ、 いかなるをか散善と名づくる 。
~問ヒテ曰ク、云何ナルヲカ名ケ↢定善ト↡、云何ナルヲカ名クル↢散善ト↡。
^答へていはく、 日観より下十三観に至る このかたを名づけて定善となし、 三福0308・九品を名づけて散善となす。
~答ヘテ曰ク、従リ↢日観↡下至ル↢十三観ニ↡已来タヲ名ケテ為シ↢定善ト↡、三福九品ヲ名ケテ為ス↢散善ト↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]明定散差別
^問ひていはく、 定善のなかになんの差別かある、 出でていづれの文にかある 。
~問ヒテ曰ク、定善之中ニ有ル↢何ノ差別カ↡、出デテ在ル↢何ノ文ニカ↡。
^答へていはく、 いづれの文にか出づるといふは、 ¬経¼ (観経) に 「△↓教我思惟↓教我正受」 とのたまへり、 すなはちこれその文なり。 差別といふはすなはち二義あり。 一にはいはく↓思惟、 二にはいはく↓正受なり。
~答ヘテ曰ク、出ヅルトイフハ↢何ノ文ニカ↡者、¬経ニ¼言ヘリ↢「教我思惟教我正受ト」↡、即チ是其ノ文ナリ。言フ↢差別ト↡者即チ有リ↢二義↡。一ニハ謂ク思惟、二ニハ謂ク正受ナリ。
・思惟
^「↑思惟」 といふはすなはちこれ観の*前方便なり。 かの国の依正二報総別の相を思想す 。 すなはち地観の文 (観経) のなかに説きて、 「▲かくのごとく想ふものを名づけてほぼ極楽国土を見るとなす」 とのたまへり。 すなはち上の 「↑教我思惟」 の一句に合す。
~言フ↢思惟ト↡者即チ是観ノ前方便ナリ。思↢想ス彼ノ国ノ依正二報総別ノ相ヲ↡也。即チ地観ノ文ノ中ニ説キテ言ヘリ↤「如ク↠此クノ想フ者ヲ名ケテ為スト↣粗ボ見ルト↢極楽国土ヲ↡。」即チ合ス↢上ノ「教我思惟ノ」一句ニ↡。
・正受
^「↑正受」 といふは、 *想心すべて息み、 *縁慮並び亡じて、 三昧 相応するを名づけて正受となす。 すなはち地観の文のなかに説きて、 「▲もし三昧を得れば、 かの国0441地を見ること*了々分明なり」 とのたまへり。 すなはち上の 「↑教我正受」 の一句に合す。
~言フ↢正受ト↡者、想心都テ息ミ、縁慮並ビ亡ジテ、三昧相応スルヲ名ケテ為ス↢正受ト↡。即チ地観ノ文ノ中ニ説キテ言ヘリ↧「若シ得レバ↢三昧ヲ↡、見ルコト↢彼ノ国地ヲ↡了了分明ナリト」↥。即チ合ス↢上ノ「教我正受ノ」一句ニ↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(c)総結
^定散に二義の不同ありといへども、 総じて上の問を答へをはりぬ。
~定散ニ雖モ↠有リト↢二義ノ不同↡、総ジテ答ヘ↢上ノ問ヲ↡竟0663リヌ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)破異解
(Ⅰ)標示
【15】^また向よりこのかたの解は諸師と不同なり。
~又向ヨリ来タノ解者与↢諸師↡不同ナリ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)正明
(ⅰ)挙所被
^*諸師は 思惟の一句をもつて、 もつて三福・九品に合して、 もつて散善となし、 正受の一句、 もつて通じて十六観に合して、 もつて定善となす。
~諸師ハ将テ↢思惟ノ一句ヲ↡、用テ合シテ↢三福九品ニ↡、以テ為シ↢散善ト↡、正受ノ一句、用テ通ジテ合シテ↢十六観ニ↡、以テ為ス↢定善ト↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述能破
(a)総非
^かくのごとき解 はまさに謂ふにしからず。
~如キ↠斯クノ解者将ニ謂フニ不↠然ラ。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)正破
(イ)引証
^な0309んとなれば、 ¬*華厳経¼ (意) に、 「思惟正受とはただこれ*三昧の異名なり」 と説きたまふがごときは、 この地観の文と同じ。 この文をもつて証す 、 あに散善に通ずることを得んや。
~何トナレバ者如キハ↣¬華厳経ニ¼説キタマフガ↢「思惟正受ト者但是三昧之異名ナリト」↡、与↢此ノ地観ノ文↡同ジ。以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス、豈ニ得ムヤ↠通ズルコトヲ↢於散善ニ↡。
二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)立理
^また向よりこのかた、 韋提 上には請ひて、 ただ 「△教我観於清浄業処」 といひ、 次下にはまた請ひて 「△教我思惟正受」 といへり。 二請ありといへども、 ただこれ定善なり。
~又向ヨリ来タ韋提、上ニハ請ヒテ但言ヒ↢「教我観於清浄業処ト」↡、次下ニハ又請ヒテ言ヘリ↢「教我思惟正受ト」↡。雖モ↠有リト↢二請↡、唯是定善ナリ。
^また散善の文はすべて請へる処なし。 ただこれ仏の自開なり。 次下の*散善縁のなかに説きて、 「▲亦令未来世一切凡夫」 といへる以下はすなはちこれその文なり。
~又散善之文ハ都テ無シ↢請ヘル処↡。但是仏ノ自開ナリ。次下ノ散善縁ノ中ニ説キテ云ヘル↢「亦令未来世一切凡夫ト」↡已下ハ即チ是其ノ文ナリ。
二 Ⅱ ⅵ【和会門】
a牒標
【16】^六に↑経論の相違を和会するに、 広く問答を施して疑情を*釈去すとは、
▲六ニ和↢会スルニ経論ノ相違ヲ↡、広ク施シテ↢問答ヲ↡釈↢去スト疑情ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅵ b 正釈
イ 標列
^この門のなかにつきてすなはちその六あり。 一には↓先づもろもろの法師につきて九品の義を解す。 二には↓すなはち*道理をもつて来してこれを破す。 三には↓かさねて九品を挙げて*返対してこれを破す。 四には↓文を出し 来して、 さだめて凡夫のためにして聖人のためにせずといふことを証す。 五には↓*別時の意を*会通す。 六には↓*二乗種不生の義を会通す。
~就キテ↢此ノ門ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ六↡。一ニハ先ヅ就キテ↢諸ノ法師ニ↡解ス↢九品之義ヲ↡。二ニハ即チ以テ↢道理ヲ↡来シテ破ス↠之ヲ。三ニハ重テ挙ゲテ↢九品ヲ↡返対シテ破ス↠之ヲ。四ニハ出シ↠文ヲ来シテ、証ス↧定メテ為ニシテ↢凡夫ノ↡不トイフコトヲ↞為ニセ↢聖人ノ↡。五ニハ会↢通ス別時之意ヲ↡。六ニハ会↢通ス二乗種不生之義ヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ 随釈
(一)【諸師解】
【17】^初めに↑*諸師の解といふは、
~初ニ言フ↢諸師ノ解ト↡者
・上品上生
^先づ上輩の三人を挙ぐ。 ▽上が上といふは、 これ*四地より*七地に至るこのかたの菩薩なり。 なんがゆゑぞ知ることを得る。 かし0310こに到りて▲すなはち無生忍を得るによるがゆゑなり。
~先ヅ挙グ↢上輩ノ三人ヲ↡。言フ↢上ガ上ト↡者、是四地ヨリ至ル↢七地ニ↡已来タノ菩薩ナリ。何ガ故ゾ得ル↠知ルコトヲ。由ルガ↣到リテ↠彼ニ即チ得ルニ↢無生忍ヲ↡故ナリ。
・上品中生
^▽上が中とは、 これ*初地より四地に至るこのかた0442の菩薩なり。 なんがゆゑぞ知ることを得る。 かしこに到りて▲一小劫を経て無生忍を得るによるがゆゑなり。
上ガ中ト者、是初地ヨリ至ル↢四地ニ↡已来タノ菩薩ナリ。何ガ故ゾ得ル↠知ルコトヲ。由ルガ↧到リテ↠彼ニ経テ↢一小劫ヲ↡得ルニ↦無生忍ヲ↥故ナリ。
・上品下生
^▽上が下とは、 これ*種性以上より初地に至るこのかたの菩薩なり。 なんがゆゑぞ知ることを得る。 かしこに到りて▲三小劫を経てはじめて初地に入るによるがゆゑなり。
上ガ下ト者、是種性以上0664ヨリ至ル↢初地ニ↡已来タノ菩薩ナリ。何ガ故ゾ得ル↠知ルコトヲ。由ルガ↧到リテ↠彼ニ経テ↢三小劫ヲ↡始テ入ルニ↦初地ニ↥故ナリ。
^この三品の人はみなこれ大乗の聖人の生ずる位なり。
~此ノ三品ノ人ハ皆是大乗ノ聖人ノ生ズル位ナリ。
・中品上生
^次に中輩の三人を挙げば、 諸師のいはく、 ▽中が上とはこれ*三果の人なり。 なにをもつてか知ることを得る。 かしこに到りて▲すなはち羅漢を得るによるがゆゑなり。
~次ニ挙ゲバ↢中輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ云ク、中ガ上トハ是三果ノ人ナリ。何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。由ルガ↣到リテ↠彼ニ即チ得ルニ↢羅漢ヲ↡故ナリト。
・中品中生
^▽中が中とはこれ*内凡なり。 なにをもつてか知ることを得る。 かしこに到りて▲須陀洹を得るによるがゆゑなり。
中ガ中ト者是内凡ナリ。何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。由ルガ↣到リテ↠彼ニ得ルニ↢須陀洹ヲ↡故ナリ。
・中品下生
^▽中が下とはこれ世善の凡夫にして、 苦を厭ひて生ずることを求む 。 なにをもつてか知ることを得る。 かしこに到りて▲7一小劫を経て羅漢果を得るによるがゆゑなり。
中ガ下ト者是世善ノ凡夫ニシテ、厭ヒテ↠苦ヲ求ム↠生ズルコトヲ。何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。由ルガ↧到リテ↠彼ニ経テ↢一小劫ヲ↡得ルニ↦羅漢果ヲ↥故ナリ。
^ この三品はただこれ小乗の聖人等なり。
~此之三品ハ唯是小乗ノ聖人等也。
・下輩
^▽下輩の三人はこれ*大乗始学の凡夫なり。 過の軽重に随ひて分ちて三品となす。 ともに同じく一位にして往生を求願すと は、 いまだかならずしもしからず、 知るべし。
~下輩ノ三人者是大乗始学ノ凡夫ナリ。随ヒテ↢過ノ軽重ニ↡分チテ為ス↢三品ト↡。共ニ同ジク一位ニシテ求↢願スト往生ヲ↡者、未ダ↢必ズシモ然ラ↡也。可シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (二)【道理破】
【18】^第二に↑すなはち道理をもつて来し破すとは、
~第二ニ即チ以テ↢道理ヲ↡来シ破スト者、
・初地-七地 (上品中生・上品上生)
^上に 「△初地より七地に至るこ0311のかたの菩薩」 といはば、 ¬華厳経¼ (意) に説きたまふがごとく、
~上ニ言ハバ↧「初地ヨリ至ル↢七地ニ↡已来タノ菩薩ト」↥者、如ク↢¬華厳経ニ¼説キタマフガ↡、
^「▽初地以上七地以来は、 すなはちこれ*法性生身・*変易生身なり。 これらはかつて*分段の苦なし。 その功用を論ずれば、 すでに二大阿僧祇劫を経て、 ならべて*福・智を修し、 *人法両ながら空ず、 ならびにこれ不可思議なり。 神通自在にして*転変無方なり。 身は報土に居してつねに報仏の説法を聞き、 十方を*悲化して須臾に遍満す」 と。
~「初地已上七地已来ハ、即チ是法性生身・変易生身ナリ。斯等ハ曽テ無シ↢分段之苦↡。論ズレバ↢其ノ功用ヲ↡、已ニ経テ↢二大阿僧祇劫ヲ↡、双ベテ修シ↢福・智ヲ↡、人法両ナガラ空ズ、並ニ是不可思議ナリ。神通自在ニシテ転変無方ナリ。身ハ居シテ↢報土ニ↡常ニ聞キ↢報仏ノ説法ヲ↡、悲↢化シテ十方ヲ↡須臾ニ遍満スト。
^さらに何事を憂へてかすなはち韋提のそれがために仏に請ずるによりて安楽国に生ずることを求めんや。 この文をもつて証するに、 諸師の所説あに錯りにあらずや。 上の二を答へをはりぬ。
~更ニ憂ヘテカ↢何事ヲ↡乃チ藉リテ↢韋提ノ為ニ↠其ガ請ズルニ↟仏ニ求メム↠生ズルコトヲ↢安楽国ニ↡也。以テ↢斯ノ文ヲ↡証スルニ、諸師ノ所説豈ニ非ズ↠錯ニ也。答ヘ↢上ノ二ヲ↡竟リヌ。
・種性-初地 (上品下生)
^上が下とは、 上に 「△種性より初0443地に至るこのかた」 といふ は、 いまだかならずしもしからず。
~上ガ下ト者、上ニ言フ↧「従リ↢種性↡至ル↢初地ニ↡已来タト」↥者、未ダ↢必ズシモ然ラ↡也。
^▼*経に説きたまふがごとく、 「これらの菩薩を名づけて不退となす。 身は生死に居して、 生死のために染せられず。 ▲*鵝鴨の水にあるに、 水湿すことあたはざるがごとし」 と。
~如ク↢¬経ニ¼説キタマフガ↡、「此等ノ菩薩ヲ名ケテ為ス↢不退ト↡。身ハ居シテ↢生死0665ニ↡、不↧為ニ↢生死ノ↡所レ↞染セ。如シト↢鵝鴨ノ在ルニ↠水ニ、水不ルガ↟能ハ↠湿スコト。」
^¬*大品経¼ に説きたまふがごとし。 「この位のなかの菩薩は、 二種の真の善知識の守護を得るによるがゆゑに不退 なり。 なんとなれば、 一にはこれ十方の諸仏、 二にはこれ十方の諸大菩薩、 つねに三業をもつてほかに加してもろもろの善法において退失あることなし。 ゆゑに不退の位と名づく。
~如シ↢¬大品経ニ¼説キタマフガ↡。「此ノ位ノ中ノ菩薩ハ、由ルガ↠得ルニ↢二種ノ真ノ善知識ノ守護ヲ↡故ニ不退ナリ。何トナレバ者一ニハ是十方ノ諸仏、二ニハ是十方ノ諸大菩薩、常ニ以テ↢三業ヲ↡外ニ加シテ於テ↢諸ノ善法ニ↡無シ↠有ルコト↢退失↡。故ニ名ク↢不退ノ位ト↡也。
^これらの菩薩もまた0312よく*八相成道して衆生を教化す。 その功行を論ずれば、 すでに一大阿僧祇劫を経て、 ならべて福・智等を修す」 と。
~此等ノ菩薩モ亦能ク八相成道シテ教↢化ス衆生ヲ↡。論ズレバ↢其ノ功行ヲ↡、已ニ経テ↢一大阿僧祇劫ヲ↡、双ベテ修スト↢福・智等ヲ↡。」
^すでにこの勝徳あり。 さらに何事を憂へてかすなはち韋提の請によりて生ずることを求めんや。 この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 諸師の所判還りて錯りとなる。 これ上輩を責めをはりぬ。
~既ニ有リ↢斯ノ勝徳↡。更ニ憂ヘテカ↢何事ヲ↡乃チ藉リテ↢韋提ノ請ニ↡求メム↠生ズルコトヲ也。以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス。故ニ知リヌ、諸師ノ所判還テ成ル↠錯ト也。此ノ責メ↢上輩ヲ
↡竟リヌ。
・三果 (中品上生)
^次に中輩の三人を責めば、 諸師のいはく、 「△中が上とはこれ三果のひとなり」 と。 しかるにこれらの人は三塗永く絶え 、 四趣 生ぜず。 現在に*罪業を造るといへども、 必定して*来報を招かず。 仏説きて、 「この四果の人は、 われと同じく解脱の床に坐す」 とのたまふがごとし。
~次ニ責メバ↢中輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ云ク、「中ガ上トハ是三果ノ者ナリト。」然ルニ此等之人ハ三塗永ク絶エ、四趣不↠生ゼ。現在ニ雖モ↠造ルト↢罪業ヲ↡、必定シテ不↠招カ↢来報ヲ↡。如シ↤仏説キテ、言フガ↣此ノ四果ノ人ハ与↠我同ジク坐スト↢解脱ノ床ニ↡。
^すでにこの功力あり。 さらにまたなにを憂へてかすなはち韋提の請によりて*生路を求めんや。
~既ニ有リ↢斯ノ功力↡。更ニ復何ヲ憂ヘテカ乃チ藉リテ↢韋提ノ請ニ↡求メムヤ↢生路ヲ↡。
・大悲於苦者
^しかるに▼*諸仏の大悲は苦あるひとにおいてす、 心ひとへに*常没の衆生を愍念したまふ。 ここをもつて勧めて浄土に帰せしむ。 また水に溺れたる人のごときは、 すみやかにすべからくひとへに救ふべし、 岸上のひと 、 なんぞ済ふを用ゐるをなさん。 この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 諸師の所判の義、 前の錯りに同じ。
~然ルニ諸仏ノ大悲ハ於テス↢苦アル者ニ↡、心偏ニ愍↢念シタマフ常没ノ衆生ヲ↡。是ヲ以テ勧メテ帰セシム↢浄土ニ↡。亦如キハ↢溺レタル↠水ニ之人ノ↡、急カニ須クシ↢偏ニ救フ↡、岸上之者、何ゾ用ヰルヲ↠済フヲ為サム。以テ↢斯ノ文ヲ↡証ス。故ニ知リヌ、諸師ノ所判ノ、義同ジ↢前ノ錯ニ↡也。
^以下知るべし。
~以下可シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (三)【返対破】
【19】^第三に↑かさねて九品を挙げて返対して破すとは、
~第三ニ重テ挙ゲテ↢九品ヲ↡返対シテ破スト者、
・上品上生
^諸師のいふ、 「△上品上生の人は、 これ四地より七地に至るこ0444のかたの菩薩なり」 とならば、
諸師ノ云フ、「上品上生ノ人ハ、是四地ヨリ至ル↢七地ニ↡已来タノ菩薩ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑ0313ぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲三種の衆生まさに往生 を得べし 。 ◆何者をか三となす。 ▼一にはただよく戒を持ち慈を修す。 二には戒を持ち慈を修することあたはざれども、 ただよく大乗を読誦す。 三には戒を持ち経を読むことあたはざれども、 ただよく*仏法僧等を念ず。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「三種ノ衆生当ニシ↠得↢往生ヲ↡。何者ヲカ為ス↠三ト。一ニ者但能ク持チ↠戒ヲ修ス↠慈ヲ。二ニ者不レドモ↠能ハ↢持チ↠戒ヲ修スルコト↟慈ヲ、但能ク読↢誦ス大乗ヲ↡。三ニ者不レドモ↠能ハ↢持チ↠戒ヲ読0666ムコト↟経ヲ、唯能ク念ズ↢仏法僧等ヲ↡。
^◆この三人おのおのおの が業をもつて専精に意を励まして、 一日一夜、 乃至七日七夜相続して断ぜず、 おのおの所作の業を回して往生を求願す。 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏および化仏・菩薩大衆と光を放ち手を授けて、 ◆*弾指のあひだのごとくにすなはちかの国に生ず」 と。
此之三人各ノ以テ↢己ガ業ヲ↡専精ニ励マシテ↠意ヲ、一日一夜乃至七日七夜相続シテ不↠断ゼ、各ノ廻シテ↢所作之業ヲ↡求↢願ス往生ヲ↡。命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏及ビ与↢化仏・菩薩・大衆↡放チ↠光ヲ授ケテ↠手ヲ、如クニ↢弾指ノ頃ノ↡即チ生ズト↢彼ノ国ニ↡。」
^この文をもつて証するに、 まさしく▼これ仏世を去りたまひて後の大乗極善の上品の凡夫、 ▼日数少なしといへども、 業をなす時は猛し、 なんぞ判じて*上聖に同ずることを得んや。
以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、正シク是仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ、大乗極善ノ上品ノ凡夫、日数雖モ↠少シト、作ス↠業ヲ時ハ猛シ、何ゾ得ム↣判ジテ同ズルコトヲ↢上聖ニ↡也。
^しかるに四地より七地以来の菩薩は、 その功用を論ずるに不可思議なり。 あに一日七日の善によりて、 *華台に授手迎接せられて往生せんや。
然ルニ四地ヨリ七地已来ノ菩薩ハ、論ズルニ↢其ノ功用ヲ↡不可思議ナリ。豈ニ藉リテ↢一日七日之善ニ↡、華台ニ授手迎接セラレテ往生セム也。
^これすなはち上が上を返対しをはりぬ。
此即チ返↢対シ上ガ上ヲ↡竟リヌ。
・上品中生
^次に上が中を対せば、 諸師のいふ、 「△これ初地より四地以来の菩薩なり」 とならば、
次ニ対セバ↢上ガ*中ヲ↡者、諸師ノ云フ、「是初地ヨリ四地已来ノ菩薩ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲必ずしも大乗を受持せず」 と 。 いかんが 「不必」 と名づくる。 あるいは読み読まず、 ゆゑに不必と名づく。 ただ▲*善解といひていまだその行を論0314ぜず。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「不ト↣必ズシモ受↢持セ大乗ヲ↡。」云何ガ名クル↢「不必ト」↡。或イハ読ミ不↠読マ、故ニ名ク↢「不必ト」↡。但言ヒテ↢善解ト↡未ダ↠論ゼ↢其ノ行ヲ↡。
^またのたまはく (観経・意)、 「▲深く因果を信じ大乗を謗らず、 この善根をもつて回して往生を願ず。 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏および化仏・菩薩大衆と◆一時に手を授けてすなはちかの国に生ず」 と。
又言ク、「深ク信ジ↢因果ヲ↡不↠謗ラ↢大乗ヲ↡、以テ↢此ノ善根ヲ↡廻シテ願ズ↢往生ヲ↡。命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏及ビ与↢化仏・菩薩・大衆↡一時ニ授ケテ↠手ヲ即チ生ズト↢彼ノ国ニ↡。」
^この文をもつて証するに、 またこれ仏世を去りたまひて後の大乗の凡夫、 ▼行業やや弱くして*終時の迎候に異なることあらしむることを致す。
以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、亦是仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ大乗ノ凡夫、行業稍弱クシテ致ス↠使ムルコトヲ↢終時ノ迎候ニ有ラ↟異ナルコト。
^しかるに初地より四地以来の菩薩は、 その功用を論ずるに、 △¬華厳経¼ に説きたまふがごとし。 すなはちこれ不可思0445議なり。 あに韋提の請を致すによりて、 まさに往生 を得んや。
然ルニ初地ヨリ四地已来ノ菩薩ハ、論ズルニ↢其ノ功用ヲ↡、如シ↢¬華厳経ニ¼説キタマフガ↡。乃チ是不可思議ナリ。豈ニ藉リテ↢韋提ノ致スニ↟請ヲ、方ニ得ム↢往生ヲ↡也。
^上が中を返対しをはりぬ。
返↢対シ上ガ中ヲ↡竟リヌ。
・上品下生
^次に上が下を対せば、 諸師のいふ、 「△これ種性以上 初地に至るこのかたの菩薩なり」 とならば、
次ニ対セバ↢上ガ下ヲ↡者、諸師ノ云フ、「是種性以上至ル↢初地ニ↡已来タノ菩薩ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲亦因果を信ず」 と 。 いかんが 「亦信」 なる。 あるいは信じ信ぜず、 ゆゑに名づけて亦となす。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「亦信ズト↢因果ヲ↡。」云何ガ「亦信ナル。」或イハ信ジ不↠信0667ゼ、故ニ名ケテ為ス↠亦ト。
^またのたまはく (観経)、 「▲大乗を謗らず、 ただ無上道心を発す」 と。 ただこの一句、 もつて正業となす。 さらに余善なし。 「▲この一行を回して往生を求願す。 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏および化仏・菩薩大衆と一時に手を授けて◆すなはち往生 を得」 (観経・意) と。
又言ク、「不↠謗ラ↢大乗ヲ↡、但発スト↢無上道心ヲ↡。」唯此ノ一句、以テ為ス↢正業ト↡。更ニ無シ↢余善↡。「廻シテ↢斯ノ一行ヲ↡求↢願ス往生ヲ↡。命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏及ビ与↢化仏・菩薩・大衆↡一時ニ授ケテ↠手ヲ即チ得ト↢往生ヲ↡。」
^この文をもつて証するに、 ただこれ仏世を去りたまひて後の一切の*大乗心を発せる衆生、 ▼行業強からずして*去時の迎候0315に異なることあらしむることを致す。
以テ↢斯ノ文ヲ↡証スルニ、唯是仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ一切ノ発セル↢大乗心ヲ↡衆生、行業不シテ↠強カラ致ス↠使ムルコトヲ↢去時ノ迎候ニ有ラ↟異ナルコト。
^もしこの位のなかの菩薩の力勢を論ぜば、 十方浄土に意に随ひて往生す。 あに韋提 それがために仏に請じて、 勧めて西方極楽国に生ぜしむるによらんや。
若シ論ゼバ↢此ノ位ノ中ノ菩薩ノ力勢ヲ↡、十方浄土ニ随ヒテ↠意ニ往生ス。豈ニ藉ラム↣韋提為ニ↠其ガ請ジテ↠仏ニ、勧メテ生ゼシムルニ↢西方極楽国ニ↡也。
^上が下を返対しをはりぬ。
返↢対シ上ガ下ヲ↡竟リヌ。
^すなはちこの三品は去時に異なることあり。 いかんが異なる。 上が上の去時は、 仏、 ▲無数の化仏と一時に手を授く。 上が中の去時は、 仏、 ▲千の化仏と一時に手を授く。 上が下の去時は、 仏、 ▲五百の化仏と一時に手を授く。 ただこれ業に強弱ありて、 この差別あらしむることを致す のみ。
即チ此ノ三品ハ去時ニ有リ↠異ナルコト。云何ガ異ナル。上ガ上ノ去時ハ、仏与↢無数ノ化仏↡一時ニ授ク↠手ヲ。上ガ中ノ去時ハ、仏与↢千ノ化仏↡一時ニ授ク↠手ヲ。上ガ下ノ去時ハ、仏与↢五百ノ化仏↡一時ニ授ク↠手ヲ。直是業ニ有リテ↢強弱↡、致ス↠使ムルコトヲ↠有ラ↢斯ノ差別↡耳。
・中品上生
^次に中輩の三人を対せば、 諸師のいふ、 「△中が上とはこれ小乗の三果のひとなり」 とならば、
次ニ対セバ↢中輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ云フ、「中ガ上トハ是小乗ノ三果ノ者ナリトナラバ、」
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲もし衆生ありて、 五戒・八戒を受持し、 もろもろの戒を修行して五逆を造らず、 もろもろの過患なからんに、 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏、 比丘聖衆と光を放ち法を説きて、 来りてその前に現じたまふ。 ◆この人見をはりてすなはち往生を得」 と。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「若シ有リテ↢衆生↡、受↢持シ五戒・八戒ヲ↡、修↢行シテ諸ノ戒ヲ↡不↠造ラ↢五逆ヲ↡、無カラムニ↢衆ノ過患↡、命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏与↢比丘聖衆↡放チ↠光ヲ説キテ↠法ヲ、来リテ現ジタマフ↢其ノ前ニ↡。此ノ人見已リテ即チ得ト↢往生ヲ↡。」
^この文をもつて証するに、 またこれ仏世を去りたまひて後の小乗戒を持てる凡夫なり。 なん0446ぞ*小聖ならんや。
以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、亦是仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ持テル↢小乗戒ヲ↡凡夫ナリ。何ゾ小聖ナラム也。
・中品中生
^中が中といふは、 諸師のいふ、 「△*見道以前の内凡なり」 とならば、
中ガ中トイフ者、諸師ノ云フ、「見道已前ノ内凡ナリトナラバ」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲一日一夜の戒を受持して、 ◆回して往生を願ず。 ◆命0316終らんと欲する時、 仏を見たてまつりてすなはち往生を得」 と。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「受↢持シテ一日一夜ノ戒ヲ↡、廻シテ願ズ↢往生ヲ↡。命欲スル↠終ラムト時、見タテマツリテ↠仏ヲ即チ得ト↢往生ヲ↡。」
^この文をもつて証するに、 あにこれ内凡の人 といふことを得んや。 ただこれ仏世を去りたまひて後の無善の凡夫 、 命延ぶること日夜、 *小縁のその*小戒を授くるに逢遇ひて、 回して往生を願ず。 仏の願力をもつてすなはち生ずることを得 。
以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、豈ニ得ム↠言フコトヲ↢是内凡ノ人ト↡也。但0668是仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ無善ノ凡夫、命延ブルコト日夜、逢↣遇ヒテ小縁ノ授クルニ↢其ノ小戒ヲ↡、廻シテ願ズ↢往生ヲ↡。以テ↢仏ノ願力ヲ↡即チ得↠生ズルコトヲ也。
・此経為凡
^もし小聖を論ぜば、 去ることまた妨げなし。 ▼ただ この ¬観経¼ は、 ▽仏、 凡のために説きたまへり、 聖のためにせず。
若シ論ゼバ↢小聖ヲ↡、去ルコト亦無シ↠妨ゲ。但此ノ¬観経ハ¼仏為ニ↠凡ノ説キタマヘリ、不↠于セ↠聖ノ也。
・中品下生
^中が下といふは、 諸師のいふ、 「△小乗の内凡以前の世俗の凡夫、 ただ*世福を修して出離を求む」 とならば、
中ガ下トイフ者、諸師ノ云フ、「小乗ノ内凡已前ノ世俗ノ凡夫、唯修シテ↢世福ヲ↡求ムトナラバ↢出離ヲ↡」者、
^なんがゆゑぞ、 ¬観経¼ (意) にのたまはく、 「▲もし衆生ありて、 父母に孝養し、 世の仁慈を行ぜんに、 ◆命終らんと欲する時、 善知識の、 ためにかの仏の国土の楽事、 四十八願等を説くに遇ふ。 ◆この人聞きをはりてすなはちかの国に生ず」 と。
何ガ故ゾ¬観経ニ¼云ク、「若シ有リテ↢衆生↡、孝↢養シ父母ニ↡、行ゼムニ↢世ノ仁慈ヲ↡、命欲スル↠終ラムト時、遇フ↣善知識ノ、為ニ説クニ↢彼ノ仏ノ国土ノ楽事、四十八願等ヲ↡。此ノ人聞キ已リテ即チ生ズト↢彼ノ国ニ↡。」
^この文をもつて証するに、 ただこれ仏法に遇はざる 人 、 孝養を行ずといへども、 またいまだ心に出離を希求することあらず。 ただこれ臨終に善の勧めて往生せしむるに遇ふ。 この人勧めによりて回心してすなはち往生 を得。
以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、但是不ル↠遇ハ↢仏法ニ↡之人、雖モ↠行ズト↢孝養ヲ↡、亦未ダ↠有ラ↣心ニ希↢求スルコト出離ヲ↡。直是臨終ニ遇フ↣善ノ勧メテ令ムルニ↢往生セ↡。此ノ人因リテ↠勧メニ廻心シテ即チ得↢往生ヲ↡。
^またこの人世にありて自然に孝を行ず、 また出離のためのゆゑに孝道を行ぜず。
又此ノ人在リテ↠世ニ自然ニ行ズ↠孝ヲ、亦不↧為ノ↢出離ノ↡故ニ行ゼ↦孝道ヲ↥也。
・下輩
^次に下輩の三人を対せば、 諸師のいふ、 「△これらの人はすなはちこれ大乗始学の凡夫なり。 過の軽0317重に随ひて分ちて三品となす。 いまだ*道位にあらず。 *階降を弁ちがたし」 とは、
次ニ対セバ↢下輩ノ三人ヲ↡者、諸師ノ云フ、「此等之人ハ乃チ是大乗始学ノ凡夫ナリ。随ヒテ↢過ノ軽重ニ↡分チテ為ス↢三品ト↡。未ダ↠有ラ↢道位ニ↡。難シト↠弁チ↢階降ヲ↡」者、
^まさに謂ふにしからず。 なんとなれば、 この三品の人、 仏法 ・世俗 の二種の善根あることなし。 ただ悪を作ることを知るのみ。
将ニ謂フニ不↠然ラ。何トナレバ者此ノ三品ノ人無シ↠有ルコト↢仏法・世俗ノ二種ノ善根↡。唯知ルノミ↠作ルコトヲ↠悪ヲ。
・下品上生
^なにをもつてか知ることを得る。 下が上の文に説くがごとし。 「▲ただ 五逆と謗法とを作らず、 自余の諸悪はことごとくみなつぶさに造りて、 慚愧すなはち一念に至るまでも あることなし。
何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。如シ↢下ガ上ノ文ニ説クガ↡。「但不↠作ラ↢五逆ト謗法トヲ↡、自余ノ諸悪ハ悉ク皆具ニ造リテ、無シ↠有ルコト↣慚愧乃チ至ルマデモ↢一念ニ↡。
^◆命終らんと欲する時、 善0447知識の、 ために大乗を説き 、 教へて仏を称せしむるに遇ひて一声す。 ◆その時 阿弥陀仏、 すなはち化仏・菩薩を遣はしてこの人を来迎し 、 すなはち往生を得しめたまふ」 (観経・意) と。
命欲スル↠終ラムト時、遇ヒテ↧善知識ノ、為ニ説キ↢大乗ヲ↡、教ヘテ令ムルニ↞称セ↠仏ヲ一声ス。爾ノ時阿弥陀仏、即チ遣シテ↢化仏・菩薩ヲ↡来↢迎シ此ノ人ヲ↡、即チ得シメタマフト↢往生ヲ↡。」
^ただかくのごとき 悪人目に触るるにみなこれなり。 もし*善縁に遇へば、 すなはち往生を得。 もし善に遇はざれば、 さだめて三塗に入りていまだ出づべからず。
但如キ↠此クノ悪人触ルルニ↠目ニ皆是ナリ。若シ遇ヘバ↢善縁ニ↡、即チ得↢往生ヲ↡。若シ不レバ↠遇ハ↠善ニ、定メテ入リテ↢三塗ニ↡未ダ↠可0669カラ↠出ヅ也。
・下品中生
^下が中とは、 「▲この人先に仏の戒を受く。 受けをはりて持たずしてすなはち毀破す。 また*常住僧物・*現前僧物を偸み、 不浄 説法して、 乃至、 一念慚愧の心あることなし。
下ガ中ト者、「此ノ人先ニ受ク↢仏ノ戒ヲ↡。受ケ已リテ不シテ↠持タ即便チ毀破ス。又偸ミ↢常住僧物・現前僧物ヲ↡、不浄説法シテ、乃至無シ↠有ルコト↢一念慚愧之心↡。
^◆命終らんと欲する時、 地獄の猛火一時にともに至りて、 現じてその前にあり。 火を見る時に当りて、 すなはち善知識の、 ためにかの仏 国土の功徳を説きて、 勧めて往生せしむるに遇ふ。 ◆この人聞きをはりてすなはち仏を見たてまつり、 *化0318に随ひて往生す」 (観経・意) と。
命欲スル↠終ラムト時、地獄ノ猛火一時ニ倶ニ至リテ、現ジテ在リ↢其ノ前ニ↡。当リテ↢見ル↠火ヲ時ニ↡、即チ遇フ↧善知識ノ、為ニ説キテ↢彼ノ仏国土ノ功徳ヲ↡、勧メテ令ムルニ↦往生セ↥。此ノ人聞キ已リテ即便チ見タテマツリ↠仏ヲ、随ヒテ↠化ニ往生スト。」
^初め善に遇はざれば獄火来迎し、 後に善に逢ふがゆゑに化仏来迎す。 これすなはちみなこれ弥陀 願力のゆゑなり。
初メ不レバ↠遇ハ↠善ニ獄火来迎シ、後ニ逢フガ↠善ニ故ニ化仏来迎ス。斯乃チ皆是弥陀願力ノ故也。
・下品下生
^下が下とは、 「▲これらの衆生不善業たる五逆・十悪を作り 、 もろもろの不善を具す。 この人悪業をもつてのゆゑに、 さだめて地獄に堕して多劫窮まりなからん。
下ガ下ト者、「此等ノ衆生作リ↢不善業タル五逆・十悪ヲ↡、具ス↢諸ノ不善ヲ↡。此ノ人以テノ↢悪業ヲ↡故ニ、定メテ堕シテ↢地獄ニ↡多劫無カラム↠窮リ。
^◆命終らんと欲する時、 善知識の、 教へて阿弥陀仏を称せしめ、 勧めて往生せしむるに遇ふ。 この人教によりて仏を称し、 ◆念に乗じてすなはち生ず」 (観経・意) と。
命欲スル↠終ラムト時、遇フ↧善知識ノ教ヘテ称セシメ↢阿弥陀仏ヲ↡、勧メテ令ムルニ↦往生セ↥。此ノ人依リテ↠教ニ称シ↠仏ヲ、乗ジテ↠念ニ即チ生ズト。」
^この人もし善に遇はずは、 必定して*下沈すべし。 終りに善に遇ふによりて*七宝 来迎す。
此ノ人若シ不ハ↠遇ハ↠善ニ、必定シテ下沈スベシ。由リテ↢終ニ遇フニ↟善ニ七宝来迎ス。
・五濁凡夫
^またこの ¬観経¼ の定善および三輩上下の文の意を看るに、 総じてこれ仏世を去りたまひて後の五濁の凡夫なり。 ただ 縁に遇ふに異なることあるをもつて、 九品をして差別せしむることを致す。
~又看ルニ↢此ノ¬観経ノ¼定善及ビ三輩上下ノ文ノ意ヲ↡、総ジテ是仏去リタマヒテ↠世ヲ後ノ五濁ノ凡夫ナリ。但以テ↢遇フニ↠縁ニ有ルヲ↟異ナルコト、致ス↠令ムルコトヲ↢九品ヲシテ差別セ↡。
^なんとなれば、 上品の三人はこれ*大に遇へる凡夫、 中品の三人はこれ*小に遇へる凡夫、 下品の三人はこれ▼悪に遇へる凡夫なり。 悪業をもつてのゆゑなり。 終りに臨みて善によりて、 仏の願力に乗じてすなはち往生 を得。 かしこに到りて華開0448けてまさにはじめて*発心す。 なんぞこれ始学大乗の人といふことを得んや。 もしこの見をなさば、 みづから失し他を誤りて害をなすことこれはなはだし。
~何トナレバ者上品ノ三人ハ是遇ヘル↠大ニ凡夫、中品ノ三人ハ是遇ヘル↠小ニ凡夫、下品ノ三人ハ是遇ヘル↠悪ニ凡夫ナリ。以テノ↢悪業ヲ↡故ナリ。臨ミテ↠終ニ藉リテ↠善ニ、乗ジテ↢仏ノ願力ニ↡乃チ得↢往生ヲ↡。到リテ↠彼ニ華開ケテ方ニ始テ発心ス。何ゾ得ム↠言フコトヲ↢是始学大乗ノ人ト↡也。若シ作サバ↢此ノ見ヲ↡、自ラ失シ悞リテ↠他ヲ為スコト↠害ヲ茲甚ダシ。
^いまもつて一々に文を出し顕証し0319て、 いまの時の善悪の凡夫をして同じく九品に沾はしめんと欲す。 信を生じて疑なければ、 仏の願力に乗じてことごとく生ずることを得。
~今以テ一一ニ出シ↠文ヲ顕証シテ、欲ス↠使メムト↣今ノ時ノ善悪ノ凡夫ヲシテ同ジク沾ハ↢九品ニ↡。生ジテ↠信ヲ無ケレバ↠疑、乗ジテ↢仏ノ願力ニ↡悉ク得↠生ズルコトヲ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (四)【出文顕証】
【20】^第四に↑文を出して顕証すとは、
~第0670四ニ出デテ↠文ヲ顕証スト者、
^問ひていはく、 上来返対の義、 いかんが知ることを得る。 「△世尊さだめて凡夫のためにして聖人のためにせず」 といふは、 いぶかし、 ただ*人情をもつて準へ義するや、 はたまた聖教ありて来し証するや。
~問ヒテ曰ク、上来返対之義、云何ガ得ル↠知ルコトヲ。「世尊定メテ為ニシテ↢凡夫ノ↡不トイフ↠為ニセ↢聖人ノ↡」者未審、直以テ↢人情ヲ↡準ヘ義スルヤ、為当亦有リテ↢聖教↡来シ証スルヤ。
^答へていはく、 衆生は*垢重くして智慧浅近なり。 *聖意は弘深なり。 ▲あにいづくんぞみづからほしいままにせんや。 いま一々にことごとく仏説を取りて、 もつて明証となさん。 この証のなかにつきてすなはちその十句あり。
~答ヘテ*曰ク、衆生ハ垢重クシテ智慧浅近ナリ。聖意ハ弘深ナリ。豈ニ寧ンゾ自ラ輒セムヤ。今者一一ニ悉ク取リテ↢仏説ヲ↡、以テ為サム↢明証ト↡。就キテ↢此ノ証ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ十句↡。
・散善顕行縁文
^なんとなれば、 第一には ¬観経¼ にのたまふがごとし。 「仏、 韋提に告げたまはく、 ª▲われいまなんぢがために広くもろもろの譬へを説かん。 ◆また未来世の一切 凡夫の浄業を修せんと欲するものをして、 西方極楽国土に生ずることを得しめんº」 と はこれその一の証なり。
~何トナレバ者第一ニハ如シ↢¬観経ニ¼云フガ↡。「仏告ゲタマハク↢韋提ニ↡、我今為ニ↠汝ガ広ク説カム↢衆ノ譬ヲ↡。亦令メムト↧未来世ノ一切凡夫ノ欲スル↠修セムト↢浄業ヲ↡者ヲシテ、得↞生ズルコトヲ↢西方極楽国土ニ↡」者、是其ノ一ノ証也。
・定善示観縁文 一
^二には 「▲如来いま 未来世の一切衆生の煩悩の賊のために害せらるるもののために清浄の業を説く」 とのたまふは、 これその二の証なり。
~二ニハ言フ↪「如来今者為ニ↧未来世ノ一切衆生ノ為ニ↢煩悩ノ賊ノ↡之所ルル↠害セ者ノ↥説クト↩清浄ノ業ヲ↨」者、是其ノ二ノ証也。
・定善示観縁文 二
^三には 「▲如来いま 韋提希および未来世の一切衆生を教へて西方極楽世界を観ぜしめん」 とのたまふは、 これその三の証なり。
~三ニハ言フ↧「如来今者教ヘテ↢韋提希及ビ未来世ノ一切衆生ヲ↡観ゼシメムト↦於西方極楽世界ヲ↥」者、是其ノ三ノ証也。
・定善示観縁文 三
^四には 「▲韋提、 仏0320にまうさく、 ªわれいま仏力によるがゆゑにかの国土を見る。 ◆もし仏滅後のもろもろの衆生等は、 濁悪不善にして五苦に逼められ ん、 いかんがまさにかの仏の国土を見たてまつるべきº」 とのたまふは、 これその四の証なり。
~四ニハ言フ↧「韋提白サク↠仏ニ、我今因ルガ↢仏力ニ↡故ニ見ル↢彼ノ国土ヲ↡。若シ仏滅後ノ諸ノ衆生等ハ、濁悪不善ニシテ五苦ニ所レム↠逼メ、云何ガ当ニキト↞見タテマツル↢彼ノ仏ノ国土ヲ↡」者、是其ノ四ノ証也。
・日観文
^五には日観の初めにのたまふがごとし。 「▲仏、 韋提に告げたまはく、 ªなんぢおよび衆生、 念をもつぱらにせよº」 といふより以下、 すなはち 「一切0449衆生*生盲にあらざるよりは有目の徒日を見よ▲」 といふに至るこのかたは、 これその五の証なり。
~五ニハ如シ↢日観ノ初ニ云フガ↡。「仏告ゲタマハク↢韋提ニ↡、汝及ビ衆生専ニセヨトイフヨリ↠念ヲ」已下、乃チ至ル↧「一切衆生自リハ↠非ザル↢生盲ニ↡有目之徒見ヨトイフニ↞日ヲ」已来タ者、是其ノ五ノ証也。
・地観文
^六には地観のなかに説きてのたまふがごとし。 「▲仏、 阿難に告げたまはく、 ªなんぢ、 仏語を持ち 、 未来世の一切衆生の苦を脱れんと欲するもののために、 この観地の法を説けº」 といふは、 これその六の証なり。
~六ニハ如シ↢地観ノ中ニ説キテ言フガ↡。「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、汝持チ↢仏語ヲ↡、為ニ↢未来世ノ一切衆生ノ欲スル↠脱レムト↠苦ヲ者ノ↡、説ケトイフ↢是ノ観地ノ法ヲ↡」者、是其ノ六ノ証也。
・華座観文 一
^七には華座観のなかに説きてのたまふがごとし。 「▲韋提、 仏にまうさく、 ªわれ仏力によりて阿弥陀仏および二菩薩 (観音・勢至) を見たてまつることを得たり、 ◆未来の衆生はいかんが見たてまつることを得んº」 といふは、 これその七の証なり。
~七ニハ如シ↢華座観ノ中ニ説キテ言フガ↡。「韋提白サク↠仏ニ、我因リテ↢仏力ニ↡得タリ↠見0671タテマツルコトヲ↢阿弥陀仏及ビ二菩薩ヲ↡、未来ノ衆生ハ云何ガ得ムトイフ↠見タテマツルコトヲ」者、是其ノ七ノ証也。
・華座観文 二
^八には次 下に、 請に答ふるなかに説きてのたまはく、 「▲仏、 韋提に告げたまはく、 ªなんぢおよび衆生、 かの仏を観ぜんと欲するもの、 まさに想念を起すべしº」 といふは、 これその八の証なり。
~八ニハ次下ニ、答フル↠請ニ中ニ説キテ言ク、「仏告ゲタマハク↢韋提ニ↡、汝及ビ衆生欲スル↠観ゼムト↢彼ノ仏ヲ↡者、当ニシトイフ↠起ス↢想念ヲ↡」者、是其ノ八ノ証也。
・像観文
^九には像観のなかに説きてのたまふがごとし。 「仏0321、 韋提に告げたまはく、 ª▲諸仏如来は一切衆生の心想のうちに入りたまふ。 ◆このゆゑになんぢら心に仏 (阿弥陀仏) を想ふ時º」 といふは、 これその九の証なり。
~九ニハ如シ↢像観ノ中ニ説キテ言フガ↡、「仏告ゲタマハク↢韋提ニ↡、諸仏如来ハ入リタマフ↢一切衆生ノ心想ノ中ニ↡。是ノ故ニ汝等心ニ想フ↠仏ヲ時トイフ」者、是其ノ九ノ証也。
・九品段文意
^十には九品のなかに一々に説きて、 「▲もろもろの衆生のためにす」 といふがごときは、 これその十の証なり。
~十ニハ如キ↢九品之中ニ一一ニ説キテ言フガ↟「為ニスト↢諸ノ衆生ノ↡」者、是其十ノ証也。
^上来 十句の不同ありといへども、 如来 (釈尊) この*十六観の法を説きたまふは、 ただ*常没の衆生のためにして、 *大小の聖のためにせずといふことを証明す 。 この文をもつて証するに、 あにこれ謬りならんや。
~上来雖モ↠有リト↢十句ノ不同↡、証↧明ス如来説キタマフハ↢此ノ十六観ノ法ヲ↡、但為ニシテ↢常没ノ衆生ノ↡、不トイフコトヲ↞于セ↢大小ノ聖ノ↡也。以テ↢斯ノ文ヲ↡証スルニ、豈ニ是謬ナラム哉。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)【別時意会通】
(Ⅰ)牒標
(Ⅱ)正釈
(ⅰ)正会別時
(a)標挙
【21】^第五に↑▲別時意を会通すといふはすなはちその二あり。
~第五ニ会↢通ストイフ別時意ヲ↡者即チ有リ↢其ノ二↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)正明
(イ)釈成仏別時
[一]釈論文
^一には ¬論¼ (*摂大乗論・意) にいはく、 「▽人、 ↓*多宝仏を念ずれば、 すなはち無上↓菩提において↓退堕せざることを得るがごとし」 とは、
~一ニハ¬論ニ¼云ク、「如シト↧人念ズレバ↢多宝仏ヲ↡、即チ於テ↢無上菩提ニ↡得ルガ↞不ルコトヲ↢退堕セ↡」者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二]釈義意
[Ⅰ]正明別時意
^おほよそ 「↑菩提」 といふはすなはちこれ仏果の名なり、 またこれ正報なり。 道理として成仏の法は、 かならずすべからく万行円かに備へてまさにすなはち*剋成すべし。 あに念仏の一行をもつてせんや。 すなはち成ずることを望まば、 この処あることなからん。 いまだ証せずといふといへども、 万行のなかにこれその一行なり。
~凡ソ言フハ↢菩提ト↡乃チ是仏果之名ナリ、亦是正報ナリ。道理トシテ成仏之法ハ、要ズ須クシ↢万行円カニ備ヘテ方ニ乃チ剋成ス↡。豈ニ将テセムヤ↢念仏ノ一行ヲ↡。即チ望マバ↠成ズルコトヲ者、無カラム↠有ルコト↢是ノ処↡。雖モ↠言フト↠未ダト↠証セ、万行之中ニ是其ノ一行ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ]明念仏一行
^なにをもつてか知ることを得る。 ¬華0450厳経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「▲*功徳雲比丘、 *善財に語りていは0322く、 ªわれ仏法三昧海のなかにおいて、 ただ一行を知れり。 いはゆる念仏三昧なりº」 と。
~何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。如シ↢¬華厳経ニ¼説キタマフガ↡。「功徳雲比丘語リテ↢善財ニ↡言ク、我於テ↢仏法三昧海ノ中ニ↡、唯知レリ↢一行ヲ↡。所謂ル念仏三昧ナリト。」
^この文をもつて証するに、 あに一行にあらずや。
~以テ↢此ノ文ヲ↡証スルニ、豈ニ非ズ↢一行ニ↡也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ]釈不退堕義
^これ一行なりといへども、 生死のなかにおいてすなはち成仏に至るまで永く退没せず。 ゆゑに 「↑不堕」 と名づく。
~雖モ↢是一行ナリト↡、於テ↢生死ノ中ニ↡乃チ至ルマデ↢成仏ニ↡永ク不↢退没セ↡。故ニ名ク↢不堕ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三]釈違文
^問ひていはく、 もししからば、 ¬*法華経¼ にのたまはく、 「一たび ª↓南無仏º と称すれば、 みな↓すでに仏道を成ず」 と。 また成仏しをは るべし。 この二文なんの差別かある。
~問ヒテ曰ク、若シ爾ラバ者¬法華経ニ¼云ク、「一タビ称0672スレバ↢南無仏ト↡、皆已ニ成ズト↢仏道ヲ↡。」亦応シ↢成仏シ竟ル↡也。此之二文有ル↢何ノ差別カ↡。
^答へていはく、 ¬論¼ (摂大乗論) のなかの↑称仏は、 ただみづから仏果を成ぜんと欲す。 ¬経¼ (法華経) のなかの↑称仏は、 九十五種の外道に*簡異せんがためなり。 しかるに外道のなかにはすべて称仏の人なし。 ただ 仏を称すること一口 すれば、 すなはち仏道のなかにありて摂す。 ゆゑに 「↑已竟」 といふと。
~答ヘテ曰ク、¬論ノ¼中ノ称仏ハ、唯欲ス↣自ラ成ゼムト↢仏果ヲ↡。¬経ノ¼中ノ称仏ハ、為ナリ↣簡↢異セムガ九十五種ノ外道ニ↡。然ルニ外道之中ニハ都テ無シ↢称仏之人↡。但使称スルコト↠仏ヲ一口スレバ、即チ在リテ↢仏道ノ中ニ↡摂ス。故ニ言フト↢已竟ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)会往生別時
[一]挙論文
【22】^二には ¬論¼ (摂大乗論・意) のなかに説きていはく、 「▽人ありてただ↓*発願するによりて安楽土に生ずるがごとし」 とは、
~二ニハ¬論ノ¼中ニ説キテ云ク、「如シト↧人アリテ唯由リテ↢発願スルニ↡生ズルガ↦安楽土ニ↥」者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]会義意
[Ⅰ]破邪執
[ⅰ]正破
[a]先挙邪計
^久しきよりこのかた、 *通論の家、 論の意を会せずして、 錯りて下品下生の十声の称仏を引きて、 これと相似せしめて、 いまだすなはち生ずることを得ずといふ。 ▲一金銭の千を成ずることを0323得る は、 多日にしてすなはち得。 一日にすなはち千を成ずることを得るにはあらざるがごとし。
~久シキヨリ来タ、通論之家不シテ↠会セ↢論ノ意ヲ↡、錯リテ引キテ↢下品下生ノ十声ノ称仏ヲ↡、与↠此相似セシメテ、未ダトイフ↢即チ得↟生ズルコトヲ。如シ↣一金銭ノ得ル↠成ズルコトヲ↠千ヲ者、多日ニシテ乃チ得、非ザルガ↢一日ニ即チ得ルニハ↟成ズルコトヲ↠千ヲ。
^十声の称仏もまたかくのごとし。 ただ*遠生のために因となる。 このゆゑにいまだすなはち生ずることを得ず。 仏ただ*当来の凡夫のために悪を捨て 仏を称せしめんと欲して、 *誑言して生ずとのたまふ、 実にはいまだ生ずることを得ず、 名づけて別時意となすといはば、
~十声ノ称仏モ亦復如シ↠是クノ。但与ニ↢遠生ノ↡作ル↠因ト。是ノ故ニ未ダ↢即チ得↟生ズルコトヲ。噵ハバ↧仏直為ニ↢当来ノ凡夫ノ↡欲シテ↠令メムト↢捨テ↠悪ヲ称セ↟仏ヲ、誑言シテ噵フ↠生ズト、実ニハ未ダ↠得↠生ズルコトヲ、名ケテ作スト↦別時意ト↥者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b]引証破斥
[イ]正引
^なんがゆゑぞ、 ¬*阿弥陀経¼ (意) にのたまはく、 「▲仏、 *舎利弗に告げたまはく、 ªもし善男子・善女人ありて阿弥陀仏を説くを聞かば、 すなはち名号を執持すべし。 ↓一日乃至七日一心に生ぜんと願ずれば、 ◆命終らんと欲する時、 阿弥陀仏、 もろもろの聖衆と*迎接して、 往生せしめたまふº」 と。
~何ガ故ゾ¬阿弥陀経ニ¼云ク、「仏告ゲタマフ↢舎利弗ニ↡、若シ有リテ↢善男子・善女人↡聞カバ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、即チ応シ↣執↢持ス名号ヲ↡。一日乃至七日一心ニ願ズレバ↠生ゼムト、命欲スル↠終ラムト時、阿弥陀仏与↢諸ノ聖衆↡迎接シテ往生セシメタマフト。」
^次下に (小経・意)、 「▲十方におのおの恒河沙等のごとき 諸仏、 おのおの広長の舌相を出0451してあまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまふ。 ªなんぢら衆生みな、 この一切諸仏の↓護念したまふところの経を信ずべしº」 と。
~次下ニ、「十方ニ各ノ如キ↢恒河沙等ノ↡諸仏、各ノ出シテ↢広長ノ舌相ヲ↡遍ク覆ヒテ↢三千大千世界ニ↡、説キタマフ↢誠実ノ言ヲ↡。汝等衆生皆、応シト↠信ズ↧是ノ一切諸仏ノ所ノ↢護念シタマフ↡経ヲ↥。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]釈成
^「↑護念」 といふは、 すなはちこれ上の文の↑一日乃至七日仏の名を称するなり。
~言フ↢護念ト↡、者即チ是上ノ文ノ一日乃至七日称スル↢仏之名ヲ↡也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ハ]結破
^いますでにこの聖教ありてもつて明証となす。 いぶかし、 今時の一切の行者、 知らずなんの意ぞ、 *凡小の論に すなはち信受を加へ 、 諸仏の*誠言を 返りてまさに*妄語せんとする。 苦しきかな、 なんぞ劇しくよくかく0324のごとき *不忍の言を出す。
~今既ニ有リテ↢斯ノ聖教↡以テ為ス↢明証ト↡。未審、今時ノ一切ノ行者不↠知ラ何ノ意ゾ、*凡小之論0673ニ乃チ加ヘ↢信受ヲ↡、諸仏ノ誠言ヲ返リテ将ニル↢妄語セムト↡。苦シキ哉、奈ゾ劇シク能ク出ス↢如キ↠此クノ不忍之言ヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅰ][ⅱ]勧誡
^しかりといへども、 ▼仰ぎ願はくは一切の往生せんと欲する*知識等、 ▼よくみづから思量せよ。 むしろ今世の錯りを傷りて仏語を信ぜよ。 *菩薩の論を執して、 もつて指南となすべからず。 もしこの執によらば、 すなはちこれみづから失し他を誤らん。
~雖モ↠然リト、仰ギ願クハ一切ノ欲スル↢往生セムト↡知識等、善ク自ラ思量セヨ。寧ロ傷リテ↢今世ノ錯ヲ↡信ゼヨ↢仏語ヲ↡。不↠可カラ↧執シテ↢菩薩ノ論ヲ↡、以テ為ス↦指南ト↥。若シ依ラバ↢此ノ執ニ↡者、即チ是自ラ失シ悞ラム↠他ヲ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]立正義
[ⅰ]弁論意
^問ひていはく、 いかんが行を起せるを、 しかも往生を得ずといふ 。
~問ヒテ曰ク、云何ガ起セルヲ↠行ヲ、而モ言フ↠不ト↠得↢往生ヲ↡。
^答へていはく、 もし往生せんと欲せば、 かならずすべからく行願具足すべし。 まさに生ずることを得べし。 いまこの ¬論¼ (摂大乗論) のなかには、 ただ 「↑発願」 といひて、 行ありと論ぜず。
~答ヘテ曰ク、若シ欲セバ↢往生セムト↡者、要ズ須クシ↢行願具足ス↡。方ニ可シ↠得↠生ズルコトヲ。今此ノ¬論ノ¼中ニハ、但言ヒテ↢発願ト↡、不↠論ゼ↠有リト↠行。
^問ひていはく、 なんがゆゑぞ論ぜざる。
~問ヒテ曰ク、何ガ故ゾ不ル↠論ゼ。
^答へていはく、 すなはち一念に至るまでかつていまだ心を措かず。 このゆゑに論ぜず。
~答ヘテ曰ク、乃チ至ルマデ↢一念ニ↡曽テ未ダ↠措カ↠心ヲ。是ノ故ニ不↠論ゼ。
^問ひていはく、 願行の義になんの差別かある。
~問ヒテ曰ク、願行之義ニ有ル↢何ノ差別カ↡。
^答へていはく、 経のなかに説きたまふがごとし。 ▼ただその行のみあるは、 行すなはち孤にしてまた至るところなし。 ただその願のみあるは、 願すなはち虚しくしてまた至るところなし。 かならずすべからく願行あひ扶けて所為みな剋すべしと。
~答ヘテ曰ク、如シ↢経ノ中ニ説キタマフガ↡。但有ルハ↢其ノ行ノミ↡、行即チ孤ニシテ亦無シ↠所↠至ル。但有ルハ↢其ノ願ノミ↡、願即チ虚シクシテ亦無シ↠所↠至ル。要ズ須クシト↢願行相扶ケテ所為皆剋ス↡。
このゆゑにいまこの ¬論¼ (摂大乗論) のなかには、 ただ 「発願」 といひて、 行ありと論ぜず。 このゆゑに0325いまだすなはち生ずることを得ず。 遠生のために因となるといふは、 その義実なり。
是ノ故ニ今此ノ¬論ノ¼中ニハ、直言ヒテ↢発願ト↡、不↠論ゼ↠有リト↠行。是ノ故ニ未ダ↢即チ得↟生ズルコトヲ、与ニ↢遠生ノ↡作ルトイフ↠因ト者、其ノ義実也。
^問ひていはく、 願の意いかんぞ、 すなはち生ぜずといふ 。
~問ヒテ曰ク、願ノ意云何ゾ乃チ言フ↠不ト↠生ゼ。
^答へていはく、 他の説きて、 「西方は快楽不可思議なり」 といふを聞きて、 すなはち願をなしていはく、 「われもまた願はくは生ぜん」 と。 この語をいひをはりてさらに相続せず。 ゆゑに願と名づく。
~答ヘテ曰ク、聞テ↣他ノ説キテ、言フヲ↢西方ハ快楽不可思議ナリト↡、即チ作シテ↠願ヲ言ク、我モ亦願クハ生ゼムト。噵ヒ↢此ノ語ヲ↡已リテ更ニ不↢相続セ↡。故ニ名ク↠願ト也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]弁経意【六字釈】
^▼いまこの ¬観経¼ のなかの十声の称仏は、 すなはち十願 十行あ0452りて具足す。 いかんが具足する。 ▼「南無」 といふはすなはちこれ帰命なり、 またこれ発願回向の義なり。 ▼「阿弥陀仏」 といふはすなはちこれその行なり。 この義をもつてのゆゑにかならず往生 を得。
~今此ノ¬観経ノ¼中ノ十声ノ称仏ハ、即チ有リテ↢十願・十行↡具足ス。云何ガ具足スル。言フ↢南無ト↡者即チ是帰命ナリ、亦是発願廻向之義ナリ。言フ↢阿弥陀仏ト↡者、即チ是其ノ行ナリ。以テノ↢斯ノ義ヲ↡故ニ必ズ得↢往生ヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)重弁分斉
(a)弁依正差別
【23】^また ¬論¼ (摂大乗論) のなかに 「△多宝仏を称してために仏果を求むる」 とは、 すなはちこれ正報にして、 下に 「△ただ発願して浄土に生ぜんと求むる」 とは、 すなはちこれ依報なり。 一は正、 一は依、 あに相似することを得んや。
~又来¬論ノ¼中ニ「称シテ↢多宝仏ヲ↡為ニ求ムルトハ↢仏果ヲ↡」、即チ是正報ニシテ、下ニ「唯発願シテ求ムルトハ↠生ゼムト↢浄土ニ↡」、即チ是依報ナリ。一ハ正、一ハ依、豈0674ニ得ムヤ↢相似スルコトヲ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)(b)明二種別時
^しかるに▼正報は期しがたし。 一行*精なりといへどもいまだ*剋せず。 依報は求めやすけれども、 一願の心をもつてはいまだ入らざる所なり。
~然ルニ正報ハ難シ↠期シ。一行雖モ↠精ナリト未ダ↠剋セ。依報ハ易ケレドモ↠求メ、所ナリ↧以テハ↢一願之心ヲ↡未ダル↞入ラ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)(c)示浄土易往
(イ)約譬明
^しかりといへども、 たとへば*辺方 化に投ずるはすなはち易く、 主となることはすなはち難きがご0326とし。 今時の往生を願ずるものは、 *ならびにこれ一切化に投ずる衆生なり。 あに易きにあらずや。
~雖モ↠然リト、譬ヘバ如シ↢辺方投ズルハ↠化ニ即チ易ク、為ルコトハ↠主ト即チ難キガ↡。今時ノ願ズル↢往生ヲ↡者ハ、並ニ是一切投ズル↠化ニ衆生ナリ。豈ニ非ズ↠易キニ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅱ)(ⅱ)(c)(ロ)顕願力
^ただよく上一形を尽し下十念に至るまで、 仏の願力をもつてみな往かざるはなし。 ゆゑに易と名づく。
~但能ク上尽シ↢一形ヲ↡下至ルマデ↢十念ニ↡、以テ↢仏ノ願力ヲ↡莫シ↠不ルハ↢皆往カ↡。故ニ名ク↠易ト也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (五)(Ⅲ)結成
^これすなはち言をもつて義を定むべからず。 取りて信ずるもの、 疑を懐けばなり。 かならず聖教を引きて来し明かし、 これを聞くものをしてまさによく惑ひを遣らしめんと欲す。
~斯乃チ不↠可カラ↢以テ↠言ヲ定ム↟義ヲ。取リテ信ズル之者、懐ケバナリ↠疑ヲ。要ズ引キテ↢聖教ヲ↡*来シ明シ、欲ス↠使メムト↢聞ク↠之ヲ者ヲシテ方ニ能ク遣ラ↟惑ヲ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)【二乗種不生】
(Ⅰ)牒標
【24】^▼第六に▲↑二乗種不生の義を会通すとは、
~第六ニ会↢通スト二乗種不生ノ義ヲ↡者、
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)正釈
(ⅰ)立義
(a)明報仏報土
(イ)正明報義
[一]問
^▲*問ひていはく、 弥陀の浄国ははたこれ*報なりやこれ*化なりや。
~問ヒテ曰ク、弥陀ノ浄国ハ為当是報ナリヤ是化ナリ也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二]答
[Ⅰ]直答【是報非化】
^◆答へていはく、 これ報にして化にあらず。
~答ヘテ曰ク、是報ニシテ非ズ↠化ニ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ]引証
[ⅰ]同性経
^◆いかんが知ることを得る。 ¬*大乗同性経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「▲西方安楽の阿弥陀仏はこれ報仏・報土なり」 と。
~云何ガ得ル↠知ルコトヲ。如シ↢¬大乗同性経ニ¼説キタマフガ↡。「西方安楽ノ阿弥陀仏ハ是報仏報土ナリト↡。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]大経
[a]正引
^◆また ¬*無量寿経¼ (上・意) にのたまはく、 「▼*法蔵比丘、 *世饒王仏の所にましまして菩薩の道を行じたまひし時、 四十八願を発したまへり。 ▼*一々の願にのたまはく、 ª▲もしわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 わが名号を称してわが国に生ぜんと願ぜんに、 下十念に至るまで、 もし生ぜずは、 正覚を取らじº」 と 。
~又¬無量寿経ニ¼云ク、「法蔵比丘在シテ↢世饒王仏ノ所ニ↡行ジタマヒシ↢菩薩ノ道ヲ↡時、発シタマヘリ↢四十八願ヲ↡。一一ノ願ニ言ク、若シ我得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生称シテ↢我ガ名号ヲ↡願ゼムニ↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡、下至ルマデ↢十念ニ↡、若シ不ハ↠生ゼ者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]釈成
^◆いますでに成仏したまへり。 ▼すなはちこれ*酬因の身なり。
~今既ニ成仏シタマヘリ。即チ是酬因之身也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ]観経
[a]正引
^◆また ¬観経¼ (意) のなかの*上輩の三人、 命終の時に臨みて、 みな 「▲阿弥陀仏およ0453び化仏と↓与にこの人を来迎す」 とのたまへり。
~又¬観経ノ¼中ノ上輩ノ三人、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、皆言ヘリ↧「阿弥陀仏及ビ与ニ↢化仏ト↡来↦迎スト此ノ人ヲ↥。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b]釈成
[イ]正釈成
^▼しかるに報身0327、 化を兼ねてともに来りて手を授く。 ゆゑに名づけて 「↑与」 となす。 この文をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 これ報なり。
~然ルニ報身兼ネテ↠化ヲ共ニ来リテ授ク↠手ヲ。故ニ名ケテ為ス↠与ト。以テ↢此ノ文ヲ↡証ス。故ニ知リヌ、是報ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]遮伏疑
ª一º釈報応名
ªⅠº名異
^◆しかるに*報・応の二身は*眼目の異名なり。 *前には 「報」 を翻じて応となし、 後には 「応」 を翻じて報となす。
~然ルニ報・応ノ二身者眼目之異名ナリ。前ニハ翻ジテ↠報ヲ作シ↠応ト、後ニハ翻ジテ↠応ヲ作ス↠報ト。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]ª一ºªⅡº義同
^◆おほよそ報といふは*因行虚しからず 、 さだめて来果を招く。 果をもつて因に応ず、 ゆゑに 名づけて報となす。 また*三大僧祇の所修の万行、 必定して応じて菩提を得 。 いますでに道成ぜり、 すなはちこれ応身なり。
~凡ソ言フ↠報ト者因行不↠虚シカラ、定メテ招ク↢来果ヲ↡。以テ↠果ヲ応ズ↠因ニ、故ニ名ケテ為ス↠報ト。又三大僧祇ノ所修ノ万0675行、必定シテ応ジテ得↢菩提ヲ↡。今既ニ道成ゼリ、即チ是応身ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ロ]ª二º定三身体
^◆これすなはち*過・現の諸仏に三身を弁立す 。 これを除きて以外 さらに別の体なし。 たとひ*無窮の八相・名号*塵沙なるも、 体を剋して論ずれば、 すべて化に帰して摂す。
~斯乃チ過・現ノ諸仏ニ弁↢立ス三身ヲ↡。除キテ↠斯ヲ已外更ニ無シ↢別ノ体↡。縦使無窮ノ八相・名号塵沙ナルモ、剋シテ↠体ヲ而論ズレバ、衆テ帰シテ↠化ニ摂ス。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二][Ⅱ][ⅲ][b][ハ]結所立
^◆いまかの弥陀は現にこれ報なり。
~今彼ノ弥陀ハ現ニ是報也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)会釈違文
[一]問
^◆問ひていはく、 すでに報といはば、 報身は常住にして永く生滅なし。 なんがゆゑぞ、 ¬*観音授記経¼ (意) に、 「▲阿弥陀仏 また*入涅槃の時あり」 と説きたまふ。 この一義いかんが通釈せん 。
~問ヒテ曰ク、既ニ言ハバ↠報ト者、報身ハ常住ニシテ永ク無シ↢生滅↡。何ガ故ゾ¬観音授記経ニ¼説キタマフ↣「阿弥陀仏亦有リト↢入涅槃ノ時↡。」此之一義若為ガ通釈セム。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]答
[Ⅰ]仰推仏境
^◆答へていはく、 入・不入の義はただこれ諸仏の境界なり。 なほ 三乗 浅智の闚ふところにあらず、 あにいはんや*小凡たやすくよく知らんや。
~答ヘテ曰ク、入・不入ノ義者唯是諸仏ノ境界ナリ。尚非ズ↢三乗浅智ノ所ニ↟闚フ、豈ニ況ヤ小凡輒ク能ク知ラム也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]引証答釈
[ⅰ]標証
^◆しかりといへども、 かならず知らんと欲せば、 あへて仏経を引きてもつて明証となさん。
~雖モ↠然リト必ズ欲セバ↠知ラムト者、敢テ引キテ↢仏経ヲ↡以テ為サム↢明証ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]正引
[a]明如化
[イ]明諸法如化
^◆なんとなれば、 ▼¬大品経¼ の 「*涅槃非化品」 (意) の0328なかに説きてのたまふがごとし。
~何トナレバ者如シ↢¬大品経ノ¼「涅槃非化品ノ」中ニ説キテ云フガ↡。
^「◆仏、 *須菩提に告げたまはく、 ªなんぢが意においていかん 。 もし*化人ありて化人をなす、 この化すこぶる実事にして、 空ならざるものありやいなやº と。
~「仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、於テ↢汝ガ意ニ↡云何ン。若シ有リテ↢化人↡作ス↢化人ヲ↡、是ノ化頗ル有リヤ↢実事ニシテ不ル↠空ナラ者↡不ヤト。
^◆須菩提 まうさく、 ªいななり、 世尊º と。
~須菩提言ク、不也、世尊ト。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ª*色すなはちこれ化なり。 *受・想・行・識 すなはちこれ化なり。 乃至*一切種智すなはちこれ化なりº と。
~仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、色即チ是化ナリ。受・想・行・識即チ是化ナリ。乃至一切種智即チ是化ナリト。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]約出世間明
^◆須菩提、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 もし世間の法これ化なり、 出世間の法もまたこれ化ならば、 いはゆる四念処・四正勤・四如意足・五根・五力・七覚分・八聖道分0454・三解脱門・仏の十力・四無所畏・四無礙智・十八不共法、 ならびに諸法の果および賢聖人、 いはゆる須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏・菩薩摩訶薩・諸仏世尊、 この法またこれ化なりやいなやº と。
~須菩提白シテ↠仏ニ言ク、世尊、若シ世間ノ法是化ナリ、出世間ノ法モ亦是化ナラバ、所謂ル四念処・四正勤・四如意足・五根・五力・七覚分・八聖道分・三解脱門・仏ノ十*力・四無所畏・四無礙智・十八不共法、并ニ諸法ノ果及ビ賢聖人、所謂ル須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢・辟支仏・菩薩摩訶薩・諸仏世尊、是ノ法亦是化ナリヤ不ヤト。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ª一切の法 みなこれ化なり。 この法のなかにおいて声聞法の*変化あり、 辟支仏法の変化あり、 菩薩法の変化あり、 諸仏法の変化あり、 煩悩法の変化あり、 業因縁法の変化あり。 この因縁をもつてのゆゑに、 須菩提、 一切の法はみなこれ化なりº と。
~仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、一切ノ法皆是化ナリ。於テ↢是ノ法ノ中ニ↡有リ↢声聞法ノ変化↡、有リ↢辟支仏0676法ノ変化↡、有リ↢菩薩法ノ変化↡、有リ↢諸仏法ノ変化↡。有リ↢煩悩法ノ変化↡、有リ↢業因*縁法ノ変化↡。以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ、須菩提、一切ノ法ハ皆是化ナリト。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ハ]約無為法明
^◆須菩提、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 このもろもろの*煩悩断の、 いはゆる須陀洹果・斯陀含果・阿那含果・阿羅漢果、 辟支仏道の、 もろもろの煩0329悩の*習を断ぜるも、 みなこれ変化なりやいなやº と。
~須菩提白シテ↠仏ニ言ク、世尊、是ノ諸ノ煩悩断ノ、所謂ル須陀洹果・斯陀含果・阿那含果・阿羅漢果、辟支仏道ノ断ゼルモ↢諸ノ煩悩ノ習ヲ↡、皆是変化ナリヤ不ヤト。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ªもし法の生滅の相あるは、 みなこれ変化なりº と。
~仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、若シ有ル↢法ノ生滅ノ相↡者、皆是変化ナリト。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]示非化
^◆須菩提 まうさく、 ª世尊、 なんらの法か変化にあらざるº と。
~須菩提言ク、世尊、何等ノ法カ非ザルト↢変化ニ↡。
^◆仏 のたまはく、 ªもし法の無生無滅なる、 これ変化にあらずº と。
~仏言ク、若シ法ノ無生無滅ナル、是非ズト↢変化ニ↡。
^◆須菩提 まうさく、 ªなんらかこれ不生不滅にして変化にあらざるº と。
~須菩提言ク、何等カ是不生不滅ニシテ非ザルト↢変化ニ↡。
^◆仏 のたまはく、 ª*誑相なき涅槃 、 この法のみ変化にあらずº と。
~仏言ク、無キ↢誑相↡涅槃、是ノ法ノミ非ズト↢変化ニ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][c]弁異説
^◆ª世尊、 仏のみづから説きたまふがごときは、 諸法は平等にして声聞の作にあらず、 辟支仏の作にあらず、 諸菩薩摩訶薩の作にあらず、 諸仏の作にあらず。 有仏無仏、 諸法の*性はつねに空なり。 性空 すなはちこれ涅槃なり。 いかんが涅槃の一法のみ化のごとくにあらざる º と。
~世尊、如キハ↢仏ノ自ラ説キタマフガ↡、諸法ハ平等ニシテ非ズ↢声聞ノ作ニ↡、非ズ↢辟支仏ノ作ニ↡、非ズ↢諸菩薩摩訶薩ノ作ニ↡、非ズ↢諸仏ノ作ニ↡。有仏無仏、諸法ノ性ハ常ニ空ナリ。性空即チ是涅槃ナリ。云何ガ涅槃ノ一法ノミ非ザルト↠如クニ↠化ノ。
^◆仏、 須菩提に告げたまはく、 ªかくのごとしかくのごとし。 諸法は平等にして声聞の所作にあらず。 乃至性空すなはちこれ涅槃なり。 もし*新発意の菩薩、 この一切の法はみな畢竟じて性空なり、 乃至涅槃もまたみな化のごとしと聞かば、 心すなはち驚怖0455せん。 この新発意の菩薩のために、 ことさらに 生滅のものは化のごとく、 不生不滅のものは化のごとくにはあらずと分別するなりº」 と。
~仏告ゲタマハク↢須菩提ニ↡、如シ↠是クノ如シ↠是クノ。諸法ハ平等ニシテ非ズ↢声聞ノ所作ニ↡。乃至性空即チ是涅槃ナリ。若シ新発意ノ菩薩聞カバ↢是ノ一切ノ法ハ皆畢竟ジテ性空ナリ、乃至涅槃モ亦皆如シト↟化ノ者、心則チ驚怖セム。 為ニ↢是ノ新発意ノ菩薩ノ↡、故ラニ分↢別スルナリト生滅ノ者ハ如ク↠化ノ、不生不滅ノ者ハ不ズト↟如クニハ↠化ノ耶。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ]結顕
^◆いますでにこの聖教をもつてあきらかに知りぬ、 弥陀はさだめてこれ報なることを。 たとひ後に涅槃に入0330るとも、 その義妨げなし。 もろもろの*有智のもの知るべし。
~今既ニ以テ↢斯ノ聖教ヲ↡験ニ知リヌ、弥陀ハ定メテ是報ナルコトヲ也。縦使後ニ入ルトモ↢涅槃ニ↡、其ノ義無シ↠妨ゲ。諸ノ有智ノ者応シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)明凡夫往生
(イ)問
【25】^▼問ひていはく、 かの仏および土すでに報といはば、 *報法は高妙にして、 小聖すら階ひがたし。 垢障の凡夫いかんが入ることを得ん。
~問ヒテ曰ク、彼ノ仏及ビ土既ニ言ハバ↠報ト者、報法ハ高妙ニシテ、小聖スラ難シ↠階ヒ。垢障ノ凡夫云何ガ得ム↠入ルコトヲ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)答
^▼答へていはく、 もし衆生の垢障を論ぜば、 実に欣趣しがたし。 ▼まさしく仏願に託して もつて強縁となすによりて、 五乗をして斉しく入らしむることを致す。
~答ヘテ曰ク、若シ論ゼバ↢衆生0677ノ垢障ヲ↡、実ニ難シ↢欣趣シ↡。正シク由リテ↧託シテ↢仏願ニ↡以テ作スニ↦強縁ト↥、致ス↠使ムルコトヲ↢五乗ヲシテ斉シク入ラ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)釈難
(a)問
^問ひていはく、 もし凡夫・小聖生ずることを得といはば、 なんがゆゑぞ、 天親の ¬*浄土論¼ に 、 「▲*女人 および根欠、 二乗の↓種生ぜず」 といへる。 いまかの国のなかに現に二乗あり。 かくのごとき*論教、 いかんが*消釈せん。
~問ヒテ曰ク、若シ言ハバ↢凡夫・小聖得ト↟生ズルコトヲ者、何ガ故ゾ天親ノ¬浄土論ニ¼、云ヘル↢「女人及ビ根欠、二乗ノ種不ト↟生ゼ。」今彼ノ国ノ中ニ現ニ有リ↢二乗↡。如キ↠斯クノ論教、若為ガ消釈セム。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)答
(イ)正会論文不生
[一]明二乗不生
[Ⅰ]呵問標証
[ⅰ]呵問
^答へていはく、 なんぢただその文を誦して理を闚はず、 いはんや加ふるに*封拙 懐迷をもつてすれば、 *啓悟するに由なし。
~答ヘテ曰ク、子但誦シテ↢其ノ文ヲ↡不↠闚ハ↠理ヲ、況ヤ加フルニ以テスレバ↢封拙懐迷ヲ↡、無シ↠由↢啓悟スルニ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅰ][ⅱ]標証
^いま仏教を引きてもつて明証となして、 なんぢが疑情を却けん。 なんとなれば、 すなはち ¬観経¼ の下輩の三人これなり。
~今引キテ↢仏教ヲ↡以テ為シテ↢明証ト↡、却ケム↢汝ガ疑情ヲ↡。何トナレバ者即チ¬観経ノ¼下輩ノ三人是也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ]引証料簡
[ⅰ]引証直答
^↓なにをもつてか知ることを得る。 下品上生にのたまふがごとし。 「▲あるいは衆生ありて、 多く悪法を造りて慚愧あることなし。 かくのごとき 愚人◆命終らんと欲する時、 善知識の、 ために大乗を説き、 教へて阿弥陀仏を称せしむるに遇ふ。
~何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。如シ↢下品上生ニ云フガ↡。「或イハ有リテ↢衆生↡、多ク造リテ↢悪法ヲ↡無シ↠有ルコト↢慚愧↡。如キ↠此クノ愚人命欲スル↠終ラムト時、遇フ↧善知識ノ、為ニ説キ↢大乗ヲ↡、教ヘテ令ムルニ↞称セ↢阿弥陀仏ヲ↡。
^◆仏を称する時に当りて化仏・菩薩現じてその前にまします。 金光・*華蓋迎0331へてかの土に還る。 ▲華開以後、 観音、 ↓ために大乗を説きたまふ。 ◆この人聞きをはりてすなはち無上道↓心を発す」 (観経・意) と。
~当リテ↢称スル↠仏ヲ時ニ↡化仏・菩薩現ジテ在ス↢其ノ前ニ↡。金光・華蓋迎ヘテ還ル↢彼ノ土ニ↡。華開已後、観音、為ニ説キタマフ↢大乗ヲ↡。此ノ人聞キ已リテ即チ発スト↢無上道心ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ]料簡義意
[a]問
^問ひていはく、 ↑種と↑心となんの差別かある。
~問ヒテ曰ク、種ト之与↠心有ル↢何ノ差別カ↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b]答
[イ]総答
^答へていはく、 ただ 便を取りていふのみ、 義は差別なし。
~答ヘテ*曰ク、但以取リテ↠便ヲ而言フノミ、義ハ無シ↢差別↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]別釈
ª一º約上品明
^華開くる時に当りて、 この人身器清浄にして、 まさしく法を聞くに堪へたり。 また*大小を*簡ばず、 ただ聞くことを得ればすなはち信を生ず。
~当リテ↢華開クル之時ニ↡、此ノ人身器清浄ニシテ、正シク堪ヘタリ↠聞クニ↠法ヲ。亦不↠簡バ↢大小ヲ↡、但使得レバ↠聞クコトヲ即便チ生ズ↠信ヲ。
^ここをもつて観音、 ために小を説かず 、 先0456づ↑ために大を説きたまふ。 大を聞きて歓喜してすなはち無上道心を発す。 すなはち大乗の種生ずと名づけ、 また大乗の心生ずと名づく。
~是ヲ以テ観音不↢為ニ説カ↟小ヲ、先ヅ為ニ説キタマフ↠大ヲ。聞キテ↠大ヲ歓喜シテ即チ発ス↢無上道心ヲ↡。即チ名ケ↢大乗ノ種生ズト↡、亦名ク↢大乗ノ心生ズト↡。
^また華 開くる時に当りて、 観音、 先づために小乗を説きたまはば、 小を聞きて信を生ぜん。 すなはち二乗の種生ずと名づけ、 また二乗の心生ずと名づけん。
~又当リテ↢華開クル時ニ↡、観音先ヅ為ニ説キタマハバ↢小乗ヲ↡者、聞キテ↠小ヲ生ゼム↠信ヲ。即チ名ケ↢二乗ノ種生ズト↡、亦名ケム↢二乗ノ心生ズト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]ª二º例下二品
^この品 (下品上生) すでにしかなり、 *下の二もまたしかなり。
~此ノ品既ニ爾ナリ、下ノ二モ亦然ナリ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ロ]ª三º結成道理
^この三品の人はともにかしこにありて発心す。 まさしく大を聞くによりてすなはち大乗の種生ず。 小を聞かざるによるがゆゑに、 ゆゑに二乗の種生ぜず。
~此ノ三品ノ人ハ*倶ニ在リテ↠彼ニ発心ス。正シク由リテ↠聞クニ↠大ヲ即チ大乗ノ種生ズ。由ルガ↠不ルニ↠聞カ↠小ヲ故ニ、所以ニ二乗ノ種不↠生0678ゼ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ][b][ハ]結示
^おほよそ種といふはすなはちこれその心なり。
~凡ソ言フ↠種ト者即チ是其ノ心也。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[一][Ⅲ]総結不生
^上来 二乗種不生の義を解しをはりぬ。
~上来解シ↢二乗種不生ノ義ヲ↡竟リヌ。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二]例女人根欠
^女人および根欠の義はかしこになきがゆゑに、 知るべし。
~女人及ビ根欠ノ義者彼ニ無キガ故ニ、可シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)就小機往生会
^↓また十方の衆生、 小乗の戒行を修して往生を願ずるもの、 一も*妨礙なくこ0332とごとく往生を得。 ただかしこに到りて先づ*小果を証す。 証しをはりてすなはち転じて*大に向かふ。 一たび転じて大に向かひて以去、 さらに退して二乗の心を生ぜず。 ゆゑに二乗種不生と名づく。
~又十方ノ衆生修シテ↢小乗ノ戒行ヲ↡願ズル↢往生ヲ↡者、一モ無ク↢妨礙↡悉ク得↢往生ヲ↡。但到リテ↠彼ニ先ヅ証ス↢小果ヲ↡。証シ已リテ即チ転ジテ向フ↠大ニ。一タビ転ジテ向ヒテ↠大ニ以去、更ニ不↣退シテ生ゼ↢二乗之心ヲ↡。故ニ名ク↢二乗種不生ト↡。
二 Ⅱ ⅵ b ロ (六)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ハ)結成二義差別
^↑*前の解は不定の始めに就き、 ↑*後の解は小果の終りに就く、 知るべし。
~前ノ解ハ就キ↢不定之始ニ↡、後ノ解ハ就ク↢小果之終ニ↡也、応シ↠知ル。
二 Ⅱ ⅶ【得益門】
a 牒標
【26】^第七に↑韋提、 仏の正説を聞きて*益を得る分斉を料簡すとは、
▲第七ニ料↧簡スト韋提聞キテ↢仏ノ正説ヲ↡得ル↠益ヲ分斉ヲ↥者、
二 Ⅱ ⅶ b 正釈
イ 定得処
(一)問
^問ひていはく、 韋提すでに*忍を得といふ。 いぶかし、 いづれの時にか忍を得たる、 出でていづれの文にかある 。
~問ヒテ曰ク、韋提既ニ言フ↠得ト↠忍ヲ。未審、何ノ時ニカ得タル↠忍ヲ、出デテ在ル↢何ノ文ニカ↡。
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)答
(Ⅰ)正答
(ⅰ)直答
^答へていはく、 韋提の得忍は、 出でて*第七観の初めにあり。
~答ヘテ曰ク、韋提ノ得忍ハ、出デテ在リ↢第七観ノ初ニ↡。
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)出文
^¬経¼ (観経・意) にのたまはく、 「▲仏、 韋提に告げたまはく、 ª仏まさになんぢがために苦悩を除く法を分別し解説すべしº と。 ▲この語を説きたまふ時、 無量寿仏空 中に住立したまふ。 観音・勢至左右に侍立したまへり。 ▲時に韋提、 時に応じて見たてまつることを得て、 接足作礼し◆歓喜讃歎してすなはち無生法忍を得」 と 。
~¬経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢韋提ニ↡、仏当ニシト↫為ニ↠汝ガ分↩別シ解↪説ス除ク↢苦悩ヲ↡法ヲ↨。説キタマフ↢是ノ語ヲ↡時、無量寿仏住↢立シタマフ空中ニ↡。観音・勢至侍↢立シタマヘリ左右ニ↡。時ニ韋提応ジテ↠時ニ得テ↠見タテマツルコトヲ、接足作礼シ歓喜讃歎シテ即チ得ト↢無生法忍ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)(Ⅰ)(ⅲ)証定
^なにをもつてか知ることを得る。 下の*利益分のなかに説きてのたまふがごとし。 「▲仏身および二菩薩 (観音・勢至) を見たてまつることを得て、 心に歓喜を生じ 、 未曽有なりと歎ず。 廓然として大悟して無生忍を得」 (観経) と。
~何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。如シ↢下ノ利益分ノ中ニ説キテ言フガ↡。「得テ↠見タテマツルコトヲ↢仏身及ビ二菩薩ヲ↡、心ニ生ジ↢歓喜ヲ↡、歎ズ↢未曽有ナリト↡。廓然トシテ大悟シテ得ト↢無生忍ヲ↡。」
二 Ⅱ ⅶ b イ (二)(Ⅱ) 簡非
^これ▲光0457台のなかに国を見し時 得たるにはあらず。
~非ズ↢是光台ノ中ニ見シ↠国ヲ時得タルニハ↡也。
二 Ⅱ ⅶ b ロ 会余文
(一)問
^0333問ひていはく、 上の文のなかに説きてのたまはく (観経)、 「▲かの国土の極妙の楽事を見れば、 心歓喜するがゆゑに、 時に応じてすなはち無生法忍を得」 と。 この一義いかんが通釈せん。
~問ヒテ曰ク、上ノ文ノ中ニ説キテ言ク、「見レバ↢彼ノ国土ノ極妙ノ楽事ヲ↡心歓喜スルガ故ニ、応ジテ↠時ニ即チ得ト↢無生法忍ヲ↡。」此之一義云何ガ通釈セム。
二 Ⅱ ⅶ b ロ (二)答
(Ⅰ)総答
^答へていはく、 かくのごとき義は、 ただこれ世尊、 ▲前の別請に酬いて、 利益を挙勧したまへる▼方便の由序なり。
~答ヘテ曰ク、如キ↠此クノ義者、但是世尊酬ヒテ↢前ノ別請ニ↡、挙↢勧シタマヘル利益ヲ↡方便之由序ナリ。
二 Ⅱ ⅶ b ロ (二)(Ⅱ)別釈
^なにをもつてか知ることを得る。 次下の文のなかに説きてのたまはく (観経)、 「▲諸仏如来に異の方便ましまして、 なんぢをして見ることを得 しめたまふ」 と。
~何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ。次下0679ノ文ノ中ニ説キテ言ク、「諸仏如来ニ有シテ↢異ノ方便↡、令メタマフト↢汝ヲシテ得↟見ルコトヲ。」
^次下の▼日想・水想・氷想よりすなはち十三観に至るこのかたをことごとく異の方便と名づく。 衆生をしてこの*観門において一々に成ずることを得て、 かの妙事を見て心 歓喜するがゆゑに、 すなはち*無生を得しめんと欲す。
~次下ノ日想・水想・氷想ヨリ乃チ至ル↢十三観ニ↡已来タヲ尽ク名ク↢異ノ方便ト↡也。欲ス↠使メムト↧衆生ヲシテ於テ↢此ノ観門ニ↡一一ニ得テ↠成ズルコトヲ見テ↢彼ノ妙事ヲ↡心歓喜スルガ故ニ、即チ得↦無生ヲ↥。
二 Ⅱ ⅶ b ロ (二)(Ⅲ)結成
^これすなはちただこれ如来末代を慈哀して、 挙勧して修することを励まし、 積学のものをして遺りなく、 *聖力冥に加して*現益あらしめんと欲するがゆゑなり。
~斯乃チ直是如来慈↢哀シテ末代ヲ↡、挙勧シテ励シ↠修スルコトヲ、欲スルガ↠令メムト↢積学之者ヲシテ無ク↠遺リ、聖力冥ニ加シテ現益アラ↡故也。
二 Ⅲ【結証】
【27】^証していはく、 *掌に機糸を握ること*十有三結、 条々 理に順じて、 もつて玄門に応じ をはりぬ。 この義周りて▼三たび前の証を呈すものなり。
▲証シテ*曰ク、掌ニ握ルコト↢機絲ヲ↡十有三結、条条順ジテ↠理ニ、以テ応ジ↢玄門ニ↡訖リヌ。此ノ義周リテ三タビ呈ス↢前ノ証ヲ↡者矣。
^上来七段の不同ありといへども、 総じてこれ*文 前の玄義なり。 経論の相違妨難を 料簡するに、 一々に教を引きて証明す。 信ずるものをして疑なく、 求むる0334ものをして滞りなからしめんと欲す、 知るべし。
~上来雖モ↠有リト↢七段ノ不同↡、総ジテ是文前ノ玄義ナリ。料↢簡スルニ経論ノ相違妨難ヲ↡、一一ニ引キテ↠教ヲ証明ス。欲ス↠使メムト↢信ズル者ヲシテ無ク↠疑、求ムル者ヲシテ無カラ↟滞リ、応シ↠知ル。
観経玄義分 巻第一
延書の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし返点については本派本願寺蔵版によるか。 なお、 宗祖加点本と対校し、 相違箇所を赤の点下線(クリックで内容表示)、 減語句を青の点下線で示している。
道俗の時衆 現在、 道場に参集している出家・在家の人々。
無上心を発せ 無上心は菩提心のこと。 親鸞聖人はこれを自力の菩提心の意とし、 「無上の心を発せども」 (信文類訓) と読まれた。
荘厳および変化 荘厳身 (報身) および変化身 (化身) の菩薩。
時劫 (菩薩としての修行の) 時間。
功用と無功用 修行するうえで、 努力を要する者と、 要しない者。
証智と未証智 真如の理をさとった者と、 さとらない者。
相応 ここでは真如にかなうという意。
果徳涅槃のもの 仏果の徳である涅槃を得た者。
三仏菩提の尊 法身・報身・化身の三身。 または弥陀・釈迦・諸仏を指す。
教の大小 ¬観経¼ が大乘教か小乗教か。
両垢の如々 有垢真如と無垢真如のこと。 煩悩によって覆われている真如とそうでない真如。
寂用湛然 すぐれたはたらきが常に満ちあふれているという意。
浄体 清浄な真如の本体。
西化を隠し 釈尊はその本国であるところの西方
無勝世界の教化をさしおいてという意。
塵労 煩悩の異名。 ここでは煩悩にけがれた衆生のこと。
畢命を期となして 命が終る時を限りとして。
時劫 (菩薩としての修行の) 時間。
隠彰 隠顕に同じ。 文の表にあらわれた意 (彰) と、 文の裏にかくれた意 (隠)。
善導大師の隠顕 (隠彰) はともに真実の説意で、 親鸞聖人が 「化身土文類」 でいわれるような真仮 (真実・方便) を分別する意味ではない。
上の六観 日観・水観・地観・宝樹観・宝池観・宝楼観を指す。
経・緯 たて糸とよこ糸。
理事相応 教 (事) と教に説かれた法義 (理) とがあい離れないこと。
両会の正説 仏が王舎城宮で阿難と韋提希のために説法した王宮会と、 阿難が耆闍崛山の大衆のために王宮会での仏の説法を再説した耆闍会。
体 ここでは観仏三昧および念仏三昧の体 (本質) という意。
能為 教化を行った人。
所為 教化を受けた人。
朽林碩石… 雨を得ても朽ちた林は芽を出すことがなく、 大きな石は中まで潤うことがないという意。
通 一般的な諸仏の国土。
別 特別な阿弥陀仏の国土。
去行 仏国土に生れるための行。
別行 阿弥陀仏の浄土に往生するための特別な行。
縁慮 観ずる対象をとらえようと思いはかる心。
了々分明 はっきりとあきらかな。
諸師は… 諸師とは
浄影寺慧遠、
天台大師
智顗、
嘉祥大師
吉蔵等であるが、 ここではおもに慧遠の ¬観経義疏¼ に見える説を指す。
散善縁 序分の散善顕行縁。
道理を… 筋道を立てて論破する。
返対して… 経の文をあげて論破する。
二乗種不生 天親菩薩の ¬浄土論¼ に出る語。 元来は声聞・縁覚の二乗の種 (種類) は浄土に往生しないという意。 善導大師はこれを往生人には二乗の心が生じないという意とされた。
諸師の解 具体的には
浄影寺慧遠 (523-592) の ¬観経義疏¼ の説を指す。
大乗始学の凡夫 十信位の凡夫。
浄影寺慧遠 (523-529) は十住以上を菩薩、 十信以下を凡夫とする。 →
菩薩
分段の苦 六道に輪廻する凡夫が受ける苦しみ。
転変無方 自由自在にすがたを変えて現れるという意。
経に説きたまふがごとく… 引用は ¬大智度論¼ の取意の文。 ここでは論の文を経の文として引用している。
鵝鴨 がちょうとあひる。 ともに水鳥。
大品経に説きたまふ… 引用は ¬大品般若経¼ の処々の文を合集したもの。
生路 往生浄土の路。
上聖 上位の聖者。
善解 (大乗経典の意を) よく理解すること。
終時の迎候 臨終の際の来迎のありさま。
善縁 善知識の縁。
不浄説法 自己の名誉や利益のために教法を説くこと。
七宝来迎す 七宝の蓮台に迎えとられて往生する。 →
来迎
大 大乗の縁。
小 小乗の縁。
人情 個人的な考え。
観と散善三観のこと。
多宝仏 東方宝浄世界の過去仏のこと。 その誓願により、 入滅後は宝塔中の全身舎利となり、 ¬法華経¼ の説かれるところに出現して、 同経の教えを讃嘆するという。 ¬法華経¼ 「見宝塔品」 などに説かれる。
功徳雲比丘 ¬華厳経¼ 「入法界品」 に説かれる五十三人の善知識の第二。
不忍の言 聞くに耐えないような言葉。
知識 ここでは同行、 法友の意。
菩薩の論 ¬摂大乗論¼ 等の論書。
精 精勤。 つとめはげむこと。
剋せず (正報であるところの仏果は) 成就しない。
辺方化に… 僻地の者が帰順して国王の支配下に入ることはたやすいが、 国王となるのはむずかしい。
一々の願に… 善導大師は四十八願のすべてに第十八願の意を認める。
上輩の三人 九品のうちの上品上生・上品中生・上品下生のこと。
眼目の異名 同一物の異なった名称の意。
前には… ¬摂大乗論¼ の真諦訳 (前訳) で三身中第二身を応身と訳しているのを、 達摩笈多訳 (後訳) では報身と訳したことを指すものか。
無窮の八相 十方世界にくまなく八相成道のすがたを示現するという意。 →
八相
小凡 愚かな凡夫。
涅槃非化品 現行の ¬大品般若経¼ では 「如化品」 とある。
煩悩断 煩悩を断ずること。
有智のもの 了解する智慧をもったもの。
報法 報仏・報土のものがら。
論教 天親菩薩の ¬浄土論¼ と ¬観経¼。
封拙懐迷 つたない考えに固執して迷いをいだくこと。
啓悟 明らかに理解すること。
簡ばず 区別しない。
下の二 下品中生・下品下生を指す。
前の解 下輩についての解釈。
後の解 中輩についての解釈。
益 無生法忍の利益を指す。
第七観 華座観のこと。
利益分 ¬観経¼ の得益分のこと。
廓然 からりと迷いがはれたさま。
観門 観察の法門。 定善観のこと。
現益 現在に無生法忍の利益を受けること。
掌に機糸を握る ¬観経¼ の全体にわたるということをいったもの。
十有三結 序題門・釈名門・宗教門・説人門・定散門・和会門・得益門の七門と第六門の諸師解・道理破・返対破・出文顕証・別時意会通・二乗種不生の六項を合わせて十三とする。
三たび前の証 「散善義」 末尾に示される三度の霊証。
文前の玄義 経文の解釈に至る以前の奥義。
底本は◎高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本。 Ⓐ大谷大学蔵鎌倉時代刊本、 Ⓑ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓒ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 ª全部対校º 辯→Ⓒ辨
塵→Ⓒ尽
宮→Ⓒ官
疋→Ⓒ匹
一→Ⓒ下
中→Ⓒ帀
曰→Ⓒ口
凡→Ⓒ几
来→Ⓑ求
力→Ⓐ方
縁→Ⓐ経
曰→Ⓐ口
倶→Ⓐ与
曰→Ⓐ日
ム
シ
ノ
ドモ
願入シテ
テ
心ヲ一ニシテ
ト
正受金剛身
者
シメ玉
ス
リ
施ヽム
セム。
ベシ
シ、
ハ
シテ
ナリ、
量ノ性ナリ。
ルハ
辺ノ体ナリ。
タリ。
ニス
ヘ
ニ
ム。
性隔キヤク
ヲ
ズト云コト
ヘリ。
遍ク攬ルニ
ルニ、
唯
オモヒ
トヾメ
ルナリ
キハ、
コト
ニシテ
ニテハ
暁リ
遣ル
ネムゴロ
奉ヘ
セバ
言ハク
リテナリ
ニシ
異
生ル
ル者ヲシテ
セシム
ガ
ナリ。
トイフハ
ノ中ノ
已来
住セ
ナリ
ルナリ
トイフ
イフ
得。
セシムル者ハ
総
スルコト
ガ
ニカ
収ムル
収ム
ゼバ
何ノ
ルナ
請ヲ致ス
出在セル
以外
ルニ
ズト云コト
何機得受
何者ゾ
ト云
酬フ
ヤ
マデ
ス。
何
出何文
ル
前ノ
、
ルナリ
如此想者名為粗見極楽国土
息シ
若得三昧見彼国地了了分明
フ
問
同ラズ
マサニ
者
説ガ如シ。
請ズルニ
自ラ開シタマヘリ
ズ
証ス。
テノ
生ル
此
イフ
。
フハ
クガ如キハ
両空
此
何ノ事
ニヨテ
ジ
コノカタ
ガ如キハ
スレドモ
レドモ
キハ、
ト云
イカン
イマシ
ムル
判ズル所
モ
説ト言フガ如キハ
シテ、
何ノ憂アテ
者
ヲバ
何ヽ用カ済ウコトヲ為ム
文証ヲモテノ
返テ対破ス
云ク
者
云ル
何者
スル
レ
レバ、
キ
ナリ。
廻ラ
作業
手ヲ授ク
不必受持大乗
イカナルヲカ
イ
謗ゼ
廻願スルニ、
終ル時
ストハ
ヨリ
亦信因果
メム
去ル時
タヾチニ
マク
諸
逢ヒ遇ヒ
廻願ス
ハアラザルナリ
命欲終ノ
ハム
ゼム
之
心ヲ廻シ
弁ヘ
イカントナラバ
作ス
レリ
乃至
慚愧
仏ヲ称スルコト一声セシムルニ遇フ
ズハ
ザルモノナリ
ケ、
持セ
ノ物
ルベシ
遇大ノ
遇小ノ
遇悪ノ
タム
為ス
セム。
出文顕証
義ニ準ズルニ
垢重ニ
寧
輒
セ
欲ハム
レム
ンコトヲ教ヘ
ツ、
タラ
目有ム
脱
ツ
シテカ
得ベキ
言ガ如ク、
汝等
クガ如シ。
コト
アラザル
二ツ
ルガ如キ
円備スレバ
ムハ
ケ
未証
セシ
レルナ
仏ヲ称スル
成
願ヲ発ス
相似タレバ
一ツノ
成
ガ如キ
ク
ヽ
ヲオモテ
実ニ
ザルヲ
生レ
玉ヘバ
称仏ノ名
今ノ時
バ
仰ヒデ
ズベシ
ムテ
欲ハ
有コトヲ
乃至一念モ
キ、
直ニ
セルコトアリ
来¬論¼
スルハ
メムガ為ナリ
願ヲ発シ
所以
ノミ
今ノ時
願フ
ズト云コト
言
信ヲ取ル
ラム
カム
トヤセム
トセム
ジテ
云ヘリ
仏ニ成リ
シ玉ヘリ
言フ
ヲ以ノ
レド
衆ク
クニ、
イカントナラバ
ゾ
有テ
アラズ
ラバ
リト。
聞テ
者
シナ
ノ故
分別スルナリ、
ナ
リト云ナリ
ズレ
由
不生
ヲ以テ
迷ヲ懐テ
却
已後
玉ニ、
何
以テ
得セ使レ
ニ、
生ヲ、
ヌ
願ハ往生ス
ザルガ
得益ス
得リ
ヘリ
イヘリ
ジテ、
大ニ悟
得
此ノ義ノ如ノ者
酬エ
挙テ
勧ム
已来ハ
直ニ
セム
セン
カラシメント欲ス
トシテ
此ノ義ヲ
周ク
一一ニ
信者
求者
シナ