顕浄土真実信文類 序
愚禿釈親鸞集
○別序 1 立正意
それおもんみれば、 *信楽を獲得することは、 *如来選択の願心より発起す。 真心を*開闡することは、 大聖 (釈尊) *矜哀の善巧より顕彰せり。
如来選択の願心 阿弥陀仏が因位において一切の自力の行信を選び捨て、 他力の行信を選び取り、 万人を平等に救おうと誓願した大慈大悲心のこと。
開闡 ひらきあらわすこと。
矜哀の善巧 深いあわれみの心による善巧方便。 →
方便
夫以、獲↢得信楽↡、発↣起自↢如来選択願心↡。開↢闡真心↡、顕↣彰従↢大聖矜哀善巧↡。
○別序 2 挙邪執
しかるに*末代の道俗、 近世の宗師、 *自性唯心に沈みて*浄土の真証を貶す、 *定散の*自心に迷ひて*金剛の真信に昏し。
自性唯心 万有はその本性についていえば、 ただ心の変現にほかならないもので、 自己の心以外に何ものもないとする聖道門の考え。 この立場より自己の心性を指してただちに弥陀といい、 この心を浄土であると主張する。
自心 自力の心。
然末代道俗、近世宗師、沈↢自性唯心↡貶↢浄土真証↡、迷↢定散自心↡昏↢金剛真信↡。
○別序 3 示造意
1.承仏祖
ここに*愚禿釈の親鸞、 諸仏如来の真説に信順して、 *論家・*釈家の宗義を披閲す。
論家 龍樹菩薩・天親菩薩を指す。
釈家 曇鸞大師・道綽禅師・善導大師・源信和尚・法然上人を指す。
爰愚禿釈親鸞、信↢順諸仏如来真説↡、披↢閲論家・釈家宗義↡、
2.叙造意
広く*三経の光沢を蒙りて、 ことに*一心の華文を開く。 *しばらく疑問を至してつひに明証を出す。
三経の光沢 ¬大経¼ ¬観経¼ ¬小経¼ の輝かしい恩恵。
一心の華文 一心の信心を説いた名文。 天親菩薩の ¬浄土論¼ を指す。
しばらく疑問を… 下に三一問答を設けたことをいう。
広蒙↢三経灮沢↡、特開↢一心華文↡、且至↢疑問↡遂出↢朙証↡。
3.為報恩
まことに仏恩の深重なるを念じて、 *人倫の哢言を恥ぢず。
人倫の哢言 人々のあざけり。
誠念↢仏恩深重↡不↠恥↢人倫哢言↡。
4.誡疑謗
*浄邦を欣ふ徒衆、 *穢域を厭ふ庶類、 取捨を加ふといへども*毀謗を生ずることなかれとなり。
浄邦 阿弥陀仏の浄土のこと。
毀謗 そしること。
忻↢浄邦↡徒衆、厭↢穢域↡庶類、雖↠加↢取捨↡、莫↠生↢毀謗↡矣。
○標挙
至心信楽の願 *正定聚の機
顕浄土真実信文類 三
愚禿釈親鸞集
○大信釈 1 直釈(嘆徳出願)
1.総標
【1】 つつしんで*往相の回向を案ずるに、 ▲*大信あり。
謹按↢往相廻向↡、有↢大信↡。
2.嘆徳(十二嘆名)
大信心はすなはちこれ*長生不死の神方、 *欣浄厭穢の妙術、 *選択回向の直心、 *利他深広の*信楽、 *金剛不壊の真心、 易往無人の浄信、 心光摂護の一心、 希有最勝の大信、 世間難信の*捷径、 *証大涅槃の真因、 極速円融の*白道、 真如一実の信海なり。
長生不死の神方 生死を超えた不生不滅の命を得る不可思議な方法。
欣浄厭穢の妙術 浄土をねがい穢土を厭う道理にかなうすぐれた方法。
選択回向の直心 阿弥陀仏が選び取り回向した真如にかなった心。
金剛不壊の真心 金剛のように堅く、 破壊されることのない信心。
捷径 近道。
証大涅槃の真因 この上ないさとりを開く真実の因種 (たね)。
大信心者、則是長生不死之神方、忻浄厭穢之妙術、選択廻向之直心、利他深広之信楽、金剛不壊之真心。易往无人之浄信、心灮摂護之一心、希有最勝之大信、世間難信之捷径、証大涅槃之真因、極速円融之白道、真如一実之信海也。
3.出願
この心すなはちこれ*念仏往生の願 (第十八願) より出でたり。 この大願を*選択本願と名づく、 また本願*三心の願と名づく、 また至心信楽の願と名づく、 また往相信心の願と名づくべきなり。
斯心即是出↠於↢念仏往生之願↡。斯大願名↢選択本願↡、亦名↢本願三心之願↡、復名↢至心信楽之願↡、亦可↠名↢往相信心之願↡也。
4.述義
しかるに*常没の凡愚、 流転の群生、 *無上妙果の成じがたきにあらず、 真実の信楽まことに獲ること難し。 なにをもつてのゆゑに、 いまし如来の*加威力によるがゆゑなり、 博く*大悲広慧の力によるがゆゑなり。 たまたま浄信を獲ば、 この心顛倒せず、 この心虚偽ならず。 ここをもつて極悪深重の衆生、 大慶喜心を得、 *もろもろの聖尊の重愛を獲るなり。
常没の凡愚 つねに迷いの世界に沈んでいる凡夫。
無上妙果 この上なくすぐれた証果。 仏のさとりのこと。
加威力 仏が衆生に加える不可思議な救済力。
大悲広慧の力 広大な慈悲と智慧の力。
もろもろの聖尊 ここでは諸仏のこと。
然常没凡愚、流転群生、无上妙果不↠難↠成、真実信楽実難↠獲。何以故、乃由↢如来加威力↡故、博因↢大悲広慧力↡故。遇獲↢浄信↡者、是心不↢顛倒↡、是心不↢虚偽↡。是以極悪深重衆生、得↢大慶喜心↡、獲↢諸聖尊重愛↡也。
○大信釈 2 引文 A 経説
1.因願 一 大経
【2】 至心信楽の本願 (第十八願) の文、 ¬*大経¼ (上) にのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 心を至し信楽してわが国に生れんと欲ひて、 乃至十念せん。 もし生れざれば正覚を取らじと。 ただ*五逆と*誹謗正法を除く」 と。 以上
誹謗正法 仏の正しい教法をそしり、 その真実性を否定すること。
至心信楽本願文、¬大経¼言。「設我得↠仏、十方衆生、至↠心信楽欲↠生↢我国↡、乃至十念、若不↠生者不↠取↢正覚↡。唯除↢五逆誹謗正法↡。」已上
1.因願 二 如来会
【3】 ¬*無量寿如来会¼ (上) にのたまはく、 「もしわれ*無上覚を証得せんとき、 余仏の*刹のうちのもろもろの有情類、 わが名を聞き、 おのれが所有の善根、 心々に回向せしむ。 わが国に生ぜんと願じて、 乃至十念せん。 もし生ぜずは*菩提を取らじと。 ただ*無間の悪業を造り、 正法およびもろもろの聖人を誹謗せんをば除く」 と。 以上
無上覚 この上ない仏のさとり。
刹 梵語クシェートラ (kşetra) の音写。 国土・世界の意。
¬无量寿如来会¼言。「若我証↢得无上覚↡時、余仏刹中諸有情類、聞↢我名↡、已所有善根心心廻向、願↠生↢我国↡乃至十念、若不↠生者不↠取↢菩提↡。唯除↧造↢无間悪業↡、誹↦謗正法及諸聖人↥。」已上
2.成就文 一 大経
【4】 本願成就の文、 ¬経¼ (*大経・下) にのたまはく、 「▲あらゆる衆生、 その名号を聞きて信心歓喜せんこと、 乃至*一念せん。 *至心に回向せしめたまへり。 かの国に生ぜんと願ぜば、 すなはち往生を得、 *不退転に住せん。 ただ五逆と誹謗正法とをば除く」 と。 以上
至心に回向せしめたまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
本願成就文、¬経¼言。「諸有衆生、聞↢其名号↡信心歓喜、乃至一念、至心回向。願↠生↢彼国↡、即得↢往生↡住↢不退転↡。唯除↢五逆誹謗正法↡。」已上
2.成就文 二 如来会
【5】 ¬*無量寿如来会¼ (下) にのたまはく、 *菩提流志訳 「他方の仏国の所有の有情、 無量寿如来の名号を聞きてよく一念の浄信を発して*歓喜せしめ、 所有の善根回向したまへるを愛楽して、 無量寿国に生ぜんと願ぜば、 願に随ひてみな生れ、 不退転乃至*無上正等菩提を得んと。 五無間、 正法を誹謗し、 および聖者を謗らんをば除く」 と。 以上
歓喜…愛楽して 通常は 「歡喜愛楽し、 所有の善根回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
¬无量寿如来会¼言。菩提流支訳 「他方仏国所有有情、聞↢无量寿如来名号↡、能発↢一念浄信↡歓喜、愛↢楽所有善根回向↡、願↠生↢无量寿国↡者、随↠願皆生、得↢不退転乃至无上正等菩提↡。除↧五无間誹↢謗正法↡及謗聖者↥。」已上
3.信益 一 大経(教主嘆誉)
【6】 またのたまはく (*大経・下)、 「▲法を聞きてよく忘れず、 *見て敬ひ得て大きに慶ばば、 すなはちわが善き親友なり。 このゆゑにまさに意を発すべし」 と。 以上
見て…慶ばば 見は聞見のこと。 名号のいわれを聞きひらき、 信を得て法を敬い深く心によろこべば。
又言。「聞↠法能不↠忘、 見敬得大慶、 則我善親友。 是故当↠発↠意。」已上
3.信益 二 如来会(住不退転)
【7】 またのたまはく (*如来会・下)、 「かくのごときらの類は*大威徳のひとなり。 よく*広大仏法の異門に生ぜん」 と。 以上
大威徳のひと 仏のすぐれた徳を与えられている人。
広大仏法の異門 広大無辺な仏法の徳を実現し、 比類のない特異な法門を成就したところ。 安楽浄土のこと。
又言。「如↠是等類、大威徳者、能生↢広大仏法異門↡。」已上
3.信益 三 如来会(諸尊重愛)
【8】 またのたまはく (*同・下)、 「如来の功徳は仏のみみづから知ろしめせり。 ただ世尊ましましてよく開示したまふ。 *天・竜・夜叉及ばざるところなり。 二乗おのづから名言を絶つ。 もしもろもろの有情まさに作仏して、 行、 *普賢に超え、 彼岸に登つて、 一仏の功徳を*敷演せん。 時、 多劫の不思議を逾えん。 この中間において身は滅度すとも、 仏の勝慧はよく量ることなけん。 このゆゑに信・聞およびもろもろの*善友の摂受を具足して、 かくのごときの深妙の法を聞くことを得ば、 まさにもろもろの聖尊に重愛せらるることを獲べし。 *如来の勝智、 *遍虚空の所説の義言は、 ただ仏のみ悟りたまへり。 このゆゑに博く*諸智土を聞きて、 わが教、 如実の言を信ずべし。 *人趣の身得ることはなはだ難し。 如来の出世遇ふことまた難し。 *信慧多き時まさにいまし獲ん。 このゆゑに修せんもの精進すべし。 かくのごときの妙法すでに聴聞せば、 つねに諸仏をして喜びを生ぜしめたてまつるなり」 と。 抄出
敷演 ひろく説きのべること。
如来の…義言は 通常は 「如来の勝智は、 虚空に遍し、 所説の義言は…」 と読む。
遍虚空 虚空に限りなく広がっていること。
諸智土 阿弥陀仏の真実報土。 高麗版大蔵経等は 「諸智士」 となっている。 この場合は諸菩薩を意味する。
人趣 人間世界のこと。
信慧 信心の智慧。
又言。「如来功徳仏自知、 唯有↢世尊↡能開示、 天・竜・夜叉所↠不↠及。 二乗自絶↢於名言↡。 若諸有情当作仏、 行超↢普賢↡登↢彼岸↡、 敷↢演一仏之功徳↡、 時逾↢多劫不思議↡。 於↢是中間↡身滅度、 仏之勝慧莫↢能量↡、 是故具↢足於信聞 及諸善友之摂受↡、 得↠聞↢如↠是深妙法↡、 当↠獲↣重↢愛諸聖尊↡。 如来勝智徧虚空 所説義言唯仏悟、 是故博聞↢諸智土↡、 応↠信↢我教如実言↡。 人趣之身得甚難、 如来出世遇亦難、 信慧多時方乃獲、 是故修者応↢精進↡。 如是妙法已聴聞、 常令↢諸仏而生↟喜。」抄出
○大信釈 2 引文 B 師釈
1.曇鸞(二文) 一 論註
【9】 ¬*論の註¼ (下) にいはく、 「▲ªかの如来の名を称し、 かの如来の*光明智相のごとく、 かの*名義のごとく、 実のごとく修行し相応せんと欲ふがゆゑにº (浄土論) といへり。
光明智相 光明の本質は智慧であり、 智慧のすがたは光明であることをいったもの。 智慧を本質とする光明が、 十方を照らして衆生の迷いを除く。
名義 名号の実義、 いわれ。
¬論註¼曰。「称↢彼如来名↡、如↢彼如来光朙智相↡、如↢彼名義↡、欲↢如↠実修行相応↡故。
1.曇鸞 一 論註 ・ 衆生称名
▲ª称彼如来名º といふは、 いはく*無礙光如来の名を称するなり。
称彼如来名者、謂称↢无礙光如来名↡也。
1.曇鸞 一 論註 ・ 法体徳相
▲ª如彼如来光明智相º といふは、 仏の*光明はこれ*智慧の相なり。 この光明、 十方世界を照らすに障碍あることなし。 よく十方衆生の*無明の*黒闇を除く。 *日・月・珠光のただ室穴のうちの闇を破するがごときにはあらざるなり。
黒闇 迷いの闇。 無明にねざす迷いの状態をくらやみに譬える。
日月珠光 日光、 月光、 珠の光のこと。
如彼如来光朙智相者、仏光朙是智慧相也。此光朙照↢十方世界↡无↠有↢鄣↡、能除↢十方衆生无朙黒闇↡。非↠如↧日月珠灮但破↦室穴中闇↞也。
1.曇鸞 一 論註 ・ 名号破満 ・ 名義
▲ª如彼名義欲如実修行相応º といふは、 かの無礙光如来の名号は、 よく衆生の一切の無明を破す、 よく衆生の一切の志願を満てたまふ。
如彼名義欲如実修行相応者、彼无灮如来名号、能破↢衆生一切无朙↡、能満↢衆生一切志願↡。
1.曇鸞 一 論註 ・ 名号破満 ・ 不実
▲しかるに称名憶念することあれども、 無明なほ存して所願を満てざるはいかんとならば、 実のごとく修行せざると、 名義と相応せざるによるがゆゑなり。 いかんが不如実修行と名義と相応せざるとする。 いはく、 如来はこれ*実相の身なり、 これ*物のための身なりと知らざるなり。
実相の身 真如実相をさとった仏の自利円満の徳をいう。
物のための身 為物身。 物とは衆生の意で、 衆生を救済する仏の利他円満の徳をいう。
然有↢称名憶念↡而、无朙由存而不↠満↢所願↡者何者、由↧不↢如↠実修行↡、与↢名義↡不↦相応↥故也。云何為↧不如↠実修行、与↢名義↡不↦相応↥、謂不↠知↢如来是実相身是為↠物身↡。
1.曇鸞 一 論註 ・ 名号破満 ・ 不実 ・ 三不信
▲また三種の不相応あり。 一つには信心あつ (淳の字、 音純なり、 また厚朴なり。 朴の字、 音卜なり。 薬の名なり。 諄の字、 至なり。 誠懇の貌なり。 上の字に同じ) からず、 *存せるがごとし、 亡ぜるがごときのゆゑに。 二つには信心一ならず、 決定なきがゆゑに。 三つには信心相続せず、 *余念間つるがゆゑに。 この三句展転してあひ成ず。 信心淳からざるをもつてのゆゑに決定なし。 決定なきがゆゑに念相続せず。 また念相続せざるがゆゑに決定の信を得ず、 決定の信を得ざるがゆゑに心淳からざるべし。
存せるがごとし… ¬高僧和讃¼ (48) の左訓には、 「若存若亡」 を釈して 「あるときはさもとおもふ、 あるときはかなふまじとおもふなり」 (文明本) 「あるときには往生してんずとおもひ、 あるときには往生えせじと思ふ」 (異本) とある。
余念間つる… 疑いがまじって信心が断絶するという意。
又有↢三種不相応↡。一者信心不↠淳、淳字常倫反又音純也又厚朴也 朴字音卜也薬名也 諄字至也誠懇之也同上字 若↠存若↠亡故。二者信心不↠一、无↢決定↡故。三者信心不↢相続↡、余念間故。此三句展転相成。以↢信心不↟淳故无↢決定↡、无↢決定↡故念不↢相続↡。亦可↧念不↢相続↡故不↠得↢決定信↡、不↠得↢決定信↡故心不↞淳。
1.曇鸞 一 論註 ・ 名号破満 如実
▲これと相違せるを如実修行相応と名づく。
与↠此相違名↢如実修行相応↡。
1.曇鸞 一 論註 ・ 以信為要
▲このゆゑに論主 (天親)、 建めに ª我一心º とのたまへり」 と。 以上
是故論主建言↢我一心↡。」已上
1.曇鸞 二 讃弥陀偈(一心義相)
【10】¬*讃阿弥陀仏偈¼ にいはく、 *曇鸞和尚の造なり 「▲あらゆるもの、 阿弥陀の徳号を聞きて、 *信心歓喜して聞くところを慶ばんこと、 いまし一念におよぶまでせん。 至心のひと回向したまへり。 生ぜんと願ずればみな往くことを得しむ。 ただ五逆と謗正法とをば除く。 ゆゑにわれ頂礼して往生を願ず」 と。 以上
信心歓喜して…願ずれば 通常は 「信心歓喜して聞くところを慶び、 すなはち一念に曁ぶまで心を至すもの、 回向して生ぜんと願ずれば」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 原文の 「至心者」 を阿弥陀仏とし、 このように読みかえた。
¬讃阿弥陀仏偈¼曰。曇巒和尚造也 「諸聞↢阿弥陀徳号↡ 信心歓喜慶↠所↠聞、 乃曁↢一念↡、至心者 回向、願↠生皆得↠往。 唯除↢五逆謗正法↡。 故我頂願↢往生↡。」已上
2.善導(五文) 一 定善義(本仏摂化)
【11】光明寺 (善導) の ¬観経義¼ (*定善義) にいはく、 「▲如意といふは二種あり。 一つには衆生の意のごとし、 かの心念に随ひてみなこれを*度すべし。 二つには弥陀の意のごとし、 *五眼円かに照らし*六通自在にして、 機の度すべきものを観そなはして、 一念のうちに前なく後なく身心等しく赴き、 *三輪開悟しておのおの益すること同じからざるなり」 と。 以上
度す 済度する。 迷いの世界 (此岸) の衆生をさとりの世界 (彼岸) にわたすこと。
光朙寺¬観経義¼云。「言↢如意↡者、有↢二種↡。一者如↢衆生意↡。随↢彼心念↡皆応↠度↠之。二如↢弥陀之意↡。五眼円照、六通自在、観↢機可↠度者↡、一念之中无↠前无↠後、身心等赴、三輪開悟、各益不↠同也。」已上
2.善導 二 序分義(所化機相)
【12】またいはく (*序分義)、 「▲この*五濁・*五苦等は*六道に通じて受けて、 いまだなきものはあらず。 つねにこれに*逼悩す。 もしこの苦を受けざるものは、 すなはち*凡数の摂にあらざるなり」 と。 抄出
逼悩 逼められ悩むこと。
凡数の摂 凡夫の仲間。
又云。「此五濁五苦等、通↢六道↡受、未↠有↢无者↡、常逼↢悩之↡。若不↠受↢此苦↡者、即非↢凡数摂↡也。」抄出
2.善導 三 散善義(三心義相)
【13】またいはく (*散善義)、 「▲ª何等為三º より下 ª必生彼国º に至るまでこのかたは、 まさしく*三心を弁定して、 もつて正因とすることを明かす。 すなはちそれ二つあり。 ▲一つには世尊、 *機に随ひて益を顕すこと意密にして知りがたし、 仏みづから問うてみづから徴したまふにあらずは、 解を得るに由なきを明かす。 ▲二つに如来還りてみづから前の三心の数を答へたまふことを明かす。
又云。「従↢何等為三↡下至↢必生彼国↡已来、正朙↧弁↢定三心↡以為↦正因↥。即有↢其二↡。一朙↧世尊随↠機顕↠益、意蜜難↠知、非↢仏自問自徴↡无↞由↠得↠解。二朙↢如来還自答↢前三心之数↡。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 至誠心
▲¬経¼ (観経) にのたまはく、 ª一者*至誠心º。 ▲ª至º とは真なり、 ª誠º とは実なり。 一切衆生の*身口意業の所修の*解行、 *かならず真実心のうちになしたまへるを須ゐんことを明かさんと欲ふ。 ▲外に*賢善精進の相を現ずることを得ざれ、 内に虚仮を懐いて、 *貪瞋・邪偽・奸詐百端にして悪性侵めがたし、 事、 *蛇蝎に同じ。 *三業を起すといへども、 名づけて雑毒の善とす、 また虚仮の行と名づく、 真実の業と名づけざるなり。 ▲もしかくのごとき*安心・*起行をなすは、 たとひ身心を苦励して日夜十二時に急に走め急になして*頭燃を灸ふがごとくするものは、 すべて雑毒の善と名づく。 ▽この雑毒の行を回してかの仏の浄土に求生せんと欲するは、 これかならず不可なり。 ▲なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの阿弥陀仏、 *因中に菩薩の行を行じたまひし時、 乃至一念一刹那も、 三業の所修みなこれ真実心のうちに*なしたまひしに由 (由の字、 経なり、 行なり、 従なり、 用なり) つてなり。 おほよそ施したまふところ趣求をなす、 またみな真実なり。
解行 知解と修行。 宗義を領解し行を実践すること。
かならず…懐いて 通常は 「かならずすべからく真実心のうちになすべきことを明かさんと欲す。 外に賢善精進の相を現じ、 内に虚仮を懐くことを得ざれ」 と読む。
貪瞋邪偽奸詐百端 むさぼり、 いかり、 よこしまな心、 いつわりの心、 人をあざむく心が数限りなく起ること。
蛇蝎 へび、 さそり。
因中に 因位の時。
法蔵菩薩であった時。
なしたまひ…みな真実なり 通常は 「なしたまひ、 おほよそ施為・趣求したまふところ、 またみな真実なるによりてなり」 と読む。 「施為」 は利他、 「趣求」 は自利の意。 親鸞聖人は、 如来回向の真実をもちい (受領し) て、 浄土を趣求 (願生) するという意に転じた。
経云。一者至誠心。至者真、誠者実、欲↠朙↢一切衆生身口意業所修解行、必須↢真実心中作↡。不↠得↣外現↢賢善精進之相↡、内懐↢虚仮↡、貪瞋邪偽、姧詐百端、悪性難↠侵、事同↢蛇蝎↡。雖↠起↢三業↡名為↢雑毒之善↡、亦名↢虚仮之行↡、不↠名↢真実業↡也。若作↢如↠此安心起行↡者、縦使苦↢励身心↡、日夜十二時、急走急作如↠炙↢頭燃↡者、衆名↢雑毒之善↡。欲↧回↢此雑毒之行↡、求↦生彼仏浄土↥者、此必不可也。何以故、正由↧ 由字 以周反経也行也従也用也 彼阿弥陀仏因中行↢菩薩行↡時、乃至一念一刹那、三業所修皆是真実心中作↥。凡所↠施為↢趣求↡、亦皆真実。
2.善導 三 散善義(三心義相) 至誠心 ・ 二種真実
▲また*真実に二種あり。 一つには*自利真実、 二つには*利他真実なり。 乃至 ▲*不善の三業はかならず真実心のうちに捨てたまへるを須ゐよ。 またもし善の三業を起さば、 かならず真実心のうちになしたまひしを須ゐて、 *内外明闇を簡ばず、 みな真実を須ゐるがゆゑに至誠心と名づく。
自利真実・利他真実 通常は真実心をもって自利利他することであるが、 親鸞聖人は自利を自力、 利他を他力の意味に転じた。
不善の三業は…名づく 通常は 「不善の三業は、 かならず真実心のうちに捨つべし。 またもし善の三業を起こさば、 かならずすべからく真実心のうちになすべし。 内外明暗を簡ばず、 みなすべからく真実なるべし。 ゆゑに至誠心と名づく」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために 「須」 の字を 「もちゐ」 と読んだ。
内外明闇 「散善義」 の当分は内心と外相、 智明と愚闇。 親鸞聖人は内・明は出世 (聖者)、 外・闇は世間 (凡夫)、 また明は智明 (智者)、 闇は無明 (愚者) の意とする。
又真実有↢二種↡。一者自利真実、二者利他真実。乃至 不善三業、必須↢真実心中捨↡。又若起↢善三業↡者、必須↢真実心中作↡、不↠簡↢内外朙闇↡、皆須↢真実↡故、名↢至誠心↡。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 深信
▲ª二者*深心º。 深心といふは、 すなはちこれ深信の心なり。 また二種あり。
二者深心。言↢深心↡者、即是深信之心也。亦有↢二種↡。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 深信 ・ 第一深信
▲一つには、 決定して深く、 *自身は現にこれ罪悪生死の凡夫、 曠劫よりこのかたつねに没し、 つねに流転して、 *出離の縁あることなしと信ず。
出離の縁 迷いの境界を離れる手がかり。
一者、決定深信↢自身現是罪悪生死凡夫、曠劫已来、常没常流転、无↟有↢出離之縁↡。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 深信 ・ 第二深信
▲二つには、 決定して深く、 かの阿弥陀仏の*四十八願は衆生を*摂受して、 疑なく慮りなく、 かの願力に乗じて、 さだめて往生を得と信ず。
二者、決定深信↧彼阿弥陀仏四十八願、摂↢受衆生↡、无↠疑无↠慮乗↢彼願力↡、定得↦往生↥。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 深信 ・ 第三深信
▲また決定して深く、 釈迦仏この ¬*観経¼ に*三福*九品・*定散二善を説きて、 かの仏の*依正二報を証讃して、 人をして*欣慕せしむと信ず。
欣慕 ねがいしたうこと。
又決定深信↧釈迦仏説↢此観経三福九品・定散二善↡、証↢讃彼仏依正二報↡、使↦人忻慕↥。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 深信 ・ 第四深信
▲また決定して、 ¬*弥陀経¼ のなかに、 十方恒沙の諸仏、 一切凡夫を証勧して決定して生ずることを得と深信するなり。
又決定深↧信弥陀経中、十方恒沙諸仏、証↢勧一切凡夫↡決定得↞生。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 深信 ・ 第五深信
▲また深信するもの、 仰ぎ願はくは一切の行者等、 一心にただ仏語を信じて身命を顧みず、 決定して行によりて、 仏の捨てしめたまふをばすなはち捨て、 仏の行ぜしめたまふをばすなはち行ず。 仏の去らしめたまふ処をばすなはち去つ。 これを仏教に随順し、 仏意に随順すと名づく。 これを仏願に随順すと名づく。 これを↓真の仏弟子と名づく。
又深信者、仰願一切行者等、一心唯信↢仏語↡不↠顧↢身命↡、決定依↠行、仏遣↠捨者即捨、仏遣↠行者即行、仏遣↠去処即去。是名↧随↢順仏教↡、随↦順仏意↥、是名↣随↢順仏願↡、是名↢真仏弟子↡。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 深信 ・ 第六深信
▲また一切の行者、 ただよくこの ¬経¼ (*観経) によりて行を深信するは、 かならず衆生を誤らざるなり。 なにをもつてのゆゑに、 仏はこれ満足大悲の人なるがゆゑに、 *実語なるがゆゑに。 仏を除きて以還は、 *智行いまだ満たず。 それ*学地にありて、 *正習の二障ありていまだ除こらざるによつて、 *果願いまだ円かならず。 これらの*凡聖は、 たとひ諸仏の教意を測量すれども、 いまだ*決了することあたはず。 *平章することありといへども、 かならずすべからく仏証を請うて定とすべきなり。 もし仏意に称へば、 すなはち*印可して ª如是如是º とのたまふ。 ▲もし仏意に可はざれば、 すなはち ªなんだちが所説この義不如是º とのたまふ。 印せざるはすなはち*無記・無利・無益の語に同じ。 仏の印可したまふは、 すなはち仏の正教に随順す。 もし仏の所有の言説は、 ▽すなはちこれ正教・正義・正行・正解・正業・正智なり。 ▲もしは多もしは少、 すべて菩薩・人・天等を問はず、 その是非を定めんや。 もし仏の所説は、 すなはちこれ*了教なり。 菩薩等の説は、 ことごとく不了教と名づくるなり、 知るべし。 ▲このゆゑに今の時、 仰いで一切有縁の往生人等を勧む。 ただ仏語を深信して専注奉行すべし。 菩薩等の不相応の教を信用して、 もつて疑礙をなし、 惑ひを抱いて、 みづから迷ひて往生の大益を廃失すべからざれと。 乃至
実語 真実の言葉。
智行 智慧 (六波羅蜜の第六) と行 (六波羅蜜の前五)。
学地 まだ学ぶべきことの残っている修行中の地位。 これに対し、 さとりに至って学ぶべきもののない地位を無学地という。
正習の二障 正使と習気の二つの障り。 正使とは煩悩の体のこと。 習気は煩悩の体が断ぜられてもなお習慣となって残る煩悩のはたらきのこと。
果願 仏果 (仏のさとり) を求める願。
決了 真実をはっきりと了解して不確かなことが少しもないこと。
平章 道理を正しく明らかにすること。
了教 了義教のこと。 真実を完全に説きあらわした教え。
又一切行者、但能依↢此経↡深↢信行↡者、必不↠悞↢衆生↡也。何以故、仏是満足大悲人故、実語故。除↠仏已還、智行未↠満、在↢其学地↡、由↧有↢正習二鄣↡未↞除、果願未↠円。此等凡聖縦使測↢量諸仏教意↡未↠能↢決了↡、雖↠有↢平章↡、要須↧請↢仏証↡為↞定也。若称↢仏意↡、即印可言↢如是如是↡。若不↠可↢仏意↡者、即言↢汝等所説是義不如是↡。不↠印者、即同↢无記・无利・无益之語↡。仏印可者、即随↢順仏之正教↡。若仏所有言説、即是正教・正義・正行・正解・正業・正智。若多若少、衆不↠問↢菩薩・人・天等↡、定↢其是非↡也。若仏所説、即是了教、菩薩等説尽名↢不了教↡也。応↠知。是故、今時仰勧↢一切有縁往生人等↡。唯可↧深↢信仏語↡専注奉行↥、不↠可↧信↢用菩薩等不相応教↡、以為↢疑礙↡、抱↠惑自迷廃↦失往生之大益↥。乃至
▲釈迦一切の凡夫を指勧して、 この一身を尽して専念専修して、 捨命以後さだめてかの国に生るれば、 すなはち十方諸仏ことごとくみな同じく讃め、 同じく勧め、 同じく証したまふ。 なにをもつてのゆゑに、 *同体の大悲なるがゆゑに。 一仏の所化は、 すなはちこれ一切仏の化なり。 一切仏の化は、 すなはちこれ一仏の所化なり。
同体の大悲 同じ真如のさとりからおこった大悲ということ。
釈迦指↢勧一切凡夫↡、尽↢此一身↡専念専修、捨命已後定生↢彼国↡者、即十方諸仏、悉皆同讃同勧同証。何以故、同軆大悲故。一仏所化即是一切仏化、一切仏化即是一仏所化。
▲すなはち ¬*弥陀経¼ のなかに説かく、 ª釈迦極楽の種々の荘厳を讃嘆したまふ。 また一切の凡夫を勧めて、 一日七日、 一心に弥陀の名号を専念せしめて、 さだめて往生を得しめたまふº と。 次下の文にのたまはく、 ª十方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 同じく釈迦よく*五濁 悪時・悪世界・悪衆生・悪見・悪煩悩・悪邪・無信の盛りなる時において、 弥陀の名号を指讃して衆生を勧励せしめて、 称念すればかならず往生を得と讃じたまふº と、 すなはちその証なり。 ▲また十方の仏等、 衆生の釈迦一仏の所説を信ぜざらんを恐畏れて、 すなはちともに同心同時におのおの*舌相を出して、 あまねく*三千世界に覆ひて誠実の言を説きたまはく、 ªなんだち衆生、 みなこの釈迦の所説・所讃・所証を信ずべし。 一切の凡夫、 罪福の多少、 *時節の久近を問はず、 ただよく上百年を尽し、 下一日七日に至るまで、 一心に弥陀の名号を専念して、 さだめて往生を得ること、 かならず疑なきなりº と。
舌相を出して 仏の舌は広く長いので広長舌相 (三十二相の一) といわれる。 仏が舌を出すのは教説が真実であることを証明するという意味を持つ。
時節の久近 時間の長短。
人 釈迦・諸仏を指す。 一説には四重の破人 (念仏の教えを否定する四種の人。 ¬愚禿鈔¼ 526頁 「四信」 の細註参照) を指すという。
即弥陀経中説、釈迦讃↢嘆極楽種種荘厳↡。又勧↢一切凡夫↡、一日七日一心専↢念弥陀名号↡、定得↢往生↡。次下文云、十方各有↢恒河砂等諸仏↡、同讃↧釈迦能於↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪見・悪煩悩・悪邪・无信盛時↡、指↢讃弥陀名号↡、勧↢励衆生↡称念必得↦往生↥、即其証也。又十方仏等、恐↢畏衆生不↟信↢釈迦一仏所説↡、即共同心同時、各出↢舌相↡徧覆↢三千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生、皆応↠信↢是釈迦所説・所賛・所証↡、一切凡夫不↠問↢罪福多少時節久近↡、但能上尽↢百年↡下至↢一日七日↡、一心専↢念弥陀名号↡、定得↢往生↡必无↠疑也。
▲このゆゑに一仏の所説をば、 すなはち一切仏同じくその事を*証誠したまふなり。 これを*人について信を立つと名づくるなり。 乃至
是故一仏所説、即一切仏同証↢誠其事↡也。此名↢就↠人立↟信也。乃至
▲またこの*正のなかについてまた二種あり。 ▲一つには、 一心に弥陀の名号を専念して、 *行住座臥、 時節の久近を問はず、 念々に捨てざるをば、 これを*正定の業と名づく、 *かの仏願に順ずるがゆゑに。 ▲もし*礼誦等によらば、 すなはち名づけて*助業とす。 ▲この正助二行を除きて以外の自余の諸善は、 ことごとく*雑行と名づく。 乃至 すべて*疎雑の行と名づくるなり。 ▲ゆゑに深心と名づく。
かの仏願 第十八願のこと。
礼誦等 五正行のうちの称名
以外の
行業。
読誦・
観察・
礼拝・
讃嘆供養の四をいう。
疎雑の行 阿弥陀仏と疎遠な自力をまじえた行。
又就↢此正中↡、復有↢二種↡。一者、一心専↢念弥陀名号↡、行住座臥、不↠問↢時節久近↡、念念不↠捨者、是名↢正定之業↡、順↢彼仏願↡故。若依↢誦等↡、即名為↢助業↡。除↢此正助二行↡已外自余諸善、悉名↢雑行↡、乃至 衆名↢疎雑之行↡也、故名↢深心↡。
2.善導 三 散善義(三心義相) ・ 回向発願心
▲ª三者回向発願心º。 乃至 ▲また回向発願して生ずるものは、 *かならず決定して真実心のうちに回向したまへる願を須ゐて*得生の想をなせ。 この心深信せること金剛のごとくなるによりて、 一切の*異見・異学・*別解・別行の人等のために動乱破壊せられず。 ただこれ決定して、 一心に捉つて正直に進んで、 かの人の語を聞くことを得ざれ。 すなはち進退の心ありて*怯弱を生じて*回顧すれば、 *