題目

0209◎▼顕けん浄じょう土ど真実しんじつ信しん文類もんるい 序じょ

愚ぐ禿とく釈しゃく*親鸞しんらん集しゅう

 (太字は 「略文類」 と重なる表現を示す。)

別序

一 宗義を立す

 ◎^それおもんみれば、 信しん楽ぎょうを獲ぎゃく得とくすることは、 *如来にょらい選せん択じゃくの願心がんしんより発ほっ起きす。 真心しんしんを*開闡かいせんすることは、 大だい聖しょう (*釈尊) *矜哀こうあいの善ぜん巧ぎょうより顕けん彰しょうせり。

◎▼夫 レ0065以オモンミレバ、獲↢得スルコトハ信楽ヲ↡、発↣起ス自リ↢▼如来選択ノ願心↡。開↢闡スルコトハ真心ヲ↡、顕↣彰セリ従リ↢▼大聖矜哀ノ善巧↡。

二 邪執を挙ぐ

 ^しかるに末代まつだいの道俗どうぞく、 近こん世せの宗しゅう師し、 *自じ性しょう唯心ゆいしんに沈しずみて浄じょう土どの真しん証しょうを貶へんす、 定じょう散さんの*自じ心しんに迷まどひて*金剛こんごうの真信しんしんに昏くらし。

▼然ルニ末代ノ道俗、近世ノ宗師、沈ミテ↢自性唯心ニ↡貶ヘンス↢オトシム浄土ノ真証ヲ↡、迷ヒテ↢定散ノ自心ニ↡昏クラシ↢金剛ノ真信ニ↡。

三 造意を示す

1.承仏祖

 ^ここに愚ぐ禿とく釈しゃくの親鸞しんらん、 諸仏しょぶつ如来にょらいの真説しんせつに信しん順じゅんして、 *論ろん家げ・*釈しゃく家けの宗しゅう義ぎを披ひ閲えつす。

▼爰ニ愚禿釈ノ*親鸞、信↢順シテ諸仏如来ノ真説ニ↡、披↢閲ス論家・釈家ノ宗義ヲ↡。

2.叙造意

^広ひろく*三さん経ぎょうの光沢こうたくを蒙かぶりて、 ことに*一心いっしんの華か文もんを開ひらく。 *しばらく疑ぎ問もんを至いたしてつひに明証みょうしょうを出いだす。

広ク蒙リテ↢三経ノ光沢ヲ↡、特ニ開ク↢一心ノ華文ヲ↡。且シバラク至シテ↢疑問ヲ↡遂ニ出ス↢明証ヲ↡。

3.為報恩

^まことに仏恩ぶっとんの深じん重じゅうなるを念ねんじて、 *人倫じんりんの哢言ろうげんを恥はぢず。

誠ニ念ジテ↢仏恩ノ深重ナルヲ↡、不ズ↠恥ヂ↢人ジン倫リンノ哢ロウ言ゲンヲ↡。

4.誡疑謗

^*浄じょう邦ほうを欣ねがふ徒と衆しゅ、 *穢え域いきを厭いとふ庶類しょるい、 取捨しゅしゃを加くわふといへども*毀き謗ほうを生しょうずることなかれとなり。

▼忻フ↢浄邦ヲ↡*徒衆、厭フ↢穢域ヲ↡庶シヨ類、雖モ↠加フト↢取捨ヲ↡、莫レト↠生ズルコト↢毀謗ヲ↡矣。

標挙

0210▼至し心しん信しん楽ぎょうの願がん ▼正定しょうじょう聚じゅの機き

  0066

題号

0211▼顕けん浄じょう土ど真実しんじつ信しん文類もんるい 三

愚ぐ禿とく釈しゃく親鸞しんらん集しゅう

一 正しく大信を明かす【大信釈】
  Ⅰ 解釈
    ⅰ 標

【1】 ^つつしんで往相おうそうの回え向こうを案あんずるに、 △大信だいしんあり。

▼謹0067デ按ズルニ↢往相ノ廻向ヲ↡、有リ↢大信↡。

一 Ⅰ ⅱ 釈
      a 釈義【嘆徳出願】
        イ 嘆徳【十二嘆名】

^▼大だい信心しんじんは、 すなはちこれ▼ 1長ちょう生せい不死ふしの神方しんぼう、 2欣ごん浄じょう厭えん穢ねの妙術みょうじゅつ、 3▼選せん択じゃく回え向こうの直心じきしん、 4▼利他りた深広じんこうの信しん楽ぎょう、 5金剛こんごう不壊ふえの真心しんしん、 6易い往おう無む人にんの浄じょう信しん、 7▼心光しんこう摂しょう護ごの一心いっしん、 8希有けう最さい勝しょうの大信だいしん、 9世せ間けん難信なんしんの捷径せつけい、 10▼証しょう大だい涅ね槃はんの真因しんいん、 11極速ごくそく円えん融にゅうの白びゃく道どう、 12真如しんにょ一実いちじつの信海しんかいなり。

▼大信心者ハ、則チ是 レ長生セイ不死之神シン方ボウ、忻浄厭穢之妙術、選択廻向之直心、利他深広之信楽、金 剛不壊之真心、易往无人之浄信、心光摂護之一心、希有最勝之大信、世間難信之捷セチ径ケイ、証大涅槃之真因、極速円融之白道、真如一実之信海也。

一 Ⅰ ⅱ a ロ 出願
          (一)正しく出願を明かす

^▼この心しんすなはちこれ▲念仏ねんぶつ往おう生じょうの願がん (第十八願) より出いでたり。

斯ノ心即チ是 レ出デタリ↠於ヨリ↢念仏往生之願↡。

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)願の異名を挙ぐ

^▼この大願だいがんを選せん択じゃく本願ほんがんと名なづく、 また本願ほんがん三心さんしんの願がんと名なづく、 また至し心しん信しん楽ぎょうの願がんと名なづく、 また往相おうそう信心しんじんの願がんと名なづくべきなり。

斯ノ大願ヲ名ク↢選択本願ト↡、亦名ク↢本願三心之願ト↡、復名ク↢至心信楽之願ト↡、亦可キ↠名ク↢往相信心之願ト↡也。

一 Ⅰ ⅱ a ハ 述義
          (一)信心の難得を明かす

^▼しかるに*常じょう没もつの凡ぼん愚ぐ、 流る転てんの群ぐん生じょう、 ▼*無む上じょう妙みょう果かの成じょうじがたきにあらず、 真実しんじつの信しん楽ぎょうまことに獲うること難かたし。 ▼なにをもつてのゆゑに、 ▲いまし如来にょらいの*加威かい力りきによるがゆゑなり、 ▲博ひろく*大だい悲ひ広こう慧えの力ちからによるがゆゑなり。

然ルニ常没ノ凡愚、流転ノ群生、无上妙果ノ不ズ↠難キニ↠成ジ、真実ノ信楽実ニ難シ↠獲ルコト。何ヲ以ノ故ニ。乃イマシ由ルガ↢如来ノ加威力ニ↡故 ヘナリ、博ク因ルガ↢大悲広*慧ノ力ニ↡故 ヘナリ。

一 Ⅰ ⅱ a ハ (二)信心の利益を明かす

^▼たまたま浄じょう信しんを獲えば、 ▲この心しん顛倒てんどうせず、 この心しん虚偽こぎならず。 ここをもつて極悪ごくあく深じん重じゅうの衆しゅ生じょう、 大だい慶きょう喜き0212心しんを得え、 *もろもろの聖しょう尊そんの重じゅう愛あいを獲うるなり。

遇タマタマ獲エ↢浄信ヲ↡者バ、是ノ心▼不ズ↢顛倒セ↡、是ノ心▼不ズ↢虚偽ナラ↡。是ヲ以テ極悪深重ノ衆生、得エ↢大慶喜心ヲ↡、獲ル↢諸ノ聖尊ノ重愛ヲ↡也。

一 Ⅰ ⅱ b 引文
        イ 経文
          (一)正しく大信を証す
            (Ⅰ)因願
              (ⅰ)¬大経¼

【2】 ^至し心しん信しん楽ぎょうの本願ほんがん (第十八願) の文もん、 ¬*大だい経きょう¼ (上) にのたまはく、

▼至心信楽ノ本願ノ文、¬*大経ニ¼言ノタマハク、

^「▲たとひわれ仏ぶつを得えたらんに、 十方じっぽうの衆しゅ生じょう、 心こころを至いたし信しん楽ぎょうしてわが国くにに生うまれんと欲おもひて、 ▼乃ない至し十じゅう念ねんせん。 もし生うまれざれば、 正しょう覚がくを取とらじと。 ただ五ご逆ぎゃくと誹ひ謗ほう正しょう法ぼうを除のぞく」 と。 以上

「設ヒ我 レ得タラムニ↠仏ヲ、十方ノ衆生、至シ↠心ヲ信楽シテ欲オモフテ↠生0068レムト↢我ガ国ニ↡、乃至十念セム。若シ不レ↠生レ者バ、不ジト↠取ラ↢正覚ヲ↡。唯タヾ除クト↢五逆ト誹謗正法ヲ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅰ)(ⅱ)¬如来会¼

【3】 ^¬*無む量りょう寿じゅ如来にょらい会え¼ (上) にのたまはく、

¬*无量寿如来会ニ¼言ノタマハク、

^「▲もしわれ*無む上じょう覚かくを証しょう得とくせん時とき、 余よ仏ぶつの*刹せつのうちのもろもろの有う情じょう類るい、 わが名なを聞きき、 おのれが所しょ有うの善根ぜんごん、 心々しんしんに回え向こうせしむ。 わが国くにに生しょうぜんと願がんじて、 乃ない至し十じゅう念ねんせん。 もし生しょうぜずは、 菩ぼ提だいを取とらじと。 ただ*無む間けんの悪業あくごうを造つくり、 正しょう法ぼうおよびもろもろの聖しょう人にんを誹ひ謗ほうせんをば除のぞく」 と。 以上

「▼若シ我 レ証↢得セム无上覚ヲ↡時、余仏ノ刹ノ中ウチノ諸ノ有情類、聞キキ↢我ガ名ヲ↡*已リテ、所有ノ善根、心心ニ廻向セシム。願ジテ↠生ゼムト↢我ガ国ニ↡、乃至十念セム。若シ不ズ↠生ゼ者ハ、不ジト↠取ラ↢菩提ヲ↡。唯除クト↧造リ↢无間ノ悪業ヲ↡、誹↦謗セムヲバ正法及ビ諸ノ聖人ヲ↥。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅱ)成就
            (ⅰ)¬大経¼

【4】 ^本願ほんがん成じょう就じゅの文もん、 ¬経きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

▼本願成就ノ文、¬経ニ¼言ク、

^「▲あらゆる衆しゅ生じょう、 その名みょう号ごうを聞ききて信心しんじん歓かん喜ぎせんこと、 乃ない至し一念いちねんせん。 ▽*至し心しんに回え向こうせしめたまへり。 かの国くにに生しょうぜんと願がんぜば、 すなはち往おう生じょうを得え、 不ふ退転たいてんに住じゅうせん。 ただ五ご逆ぎゃくと誹ひ謗ほう正しょう法ぼうとをば除のぞく」 と。 以上

「諸有アラユル衆生、聞キテ↢其ノ名号ヲ↡信心歓喜セムコト、乃至一念セム。至心ニ回向セシメタマヘリ。願ズレバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、即チ得エ↢往生ヲ↡、▼住セム↢不退転ニ↡。唯除クト↢五逆ト誹謗正法トヲバ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (一)(Ⅱ)(ⅱ)¬如来会¼

【5】 ^¬無む量りょう寿じゅ如来にょらい会え¼ (下) にのたまはく、 *菩ぼ提だい流志るし訳やく

¬*無量寿如来会ニ¼言ク、*菩提流支訳

^「▲他た方ほうの仏国ぶっこくの所しょ有うの有う0213情じょう、 無む量りょう寿じゅ如来にょらいの名みょう号ごうを聞ききてよく一念いちねんの浄じょう信しんを発おこして*歓かん喜ぎせしめ、 ▽所しょ有うの善根ぜんごん回え向こうしたまへるを愛あい楽ぎょうして無む量りょう寿じゅ国こくに生しょうぜんと願がんぜば、 願がんに随したがひてみな生うまれ、 不ふ退転たいてん乃ない至し*無む上じょう正しょう等とう菩ぼ提だいを得えんと。 五ご無む間けん、 正しょう法ぼうを誹ひ謗ほうし、 および聖しょう者じゃを謗そしらんをば除のぞく」 と。 以上

「▼他方ノ仏国ノ所有ノ*有*情、聞キテ↢无量寿如来ノ名号ヲ↡能ク発シテ↢一念ノ浄信ヲ↡歓喜セシメ、愛↢楽シテ所有ノ善根回向シタマヘルヲ↡、願ゼ↠生ゼムト↢无量寿国ニ↡者バ、随ヒテ↠願ニ皆生レ、得ムト↢不退転乃至无上正等菩提ヲ↡。※除クト↢五无間*誹謗↢正法↡及ビ謗↢聖者ヲバ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)信の利益を示す
            (Ⅰ)¬大経¼

・教主嘆誉

【6】 ^またのたまはく (大経・下)、

▼又言ク、

^「▲法ほうを聞ききてよく忘わすれず、 見みて敬うやまひ得えて大おおきに慶よろこばば、 すなはちわが善よき親しん友ぬなり。 このゆゑにまさに意こころを発おこすべし」 と。 以上

「▼聞キテ↠法ヲ能ク不ズ↠忘レ見テ敬ヒ得テ大ニ慶ヨロコバヾ
▼則チ我ガ善ヨキ親友ウナリ是ノ故ニ当ニシト↠発ス↠意ヲ」 已上

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)¬如来会¼二文

・住不退転

【7】 ^またのたまはく (*如来会・下)、

▼又言ク、

^「▲かくのごときらの類るいは*大だい威い徳とくのひとなり。 よく*広大こうだい仏法ぶっぽうの異い門もんに生しょうぜん」 と。 以上

「如キ↠是クノ等ラノ類ハ大威徳ノ者ヒトナリ。能ク生ゼムト↢広大仏法ノ異門ニ↡。」 已上

・諸尊重愛

【8】 ^またのたまはく (如来会・下)、

又言ク、

^「▲如来にょらいの功く徳どくは仏ぶつのみみづから知しろしめせり。 ただ世せ尊そんましましてよく開かい示じしたまふ。 *天てん・竜りゅう・夜や叉しゃ及およばざるところなり。 二に乗じょうおのづから名みょう言ごんを絶たつ。

「如来ノ功徳ハ仏ノミ自ミ ラ知シロシメセリ唯有マシマシテ↢世尊↡能ク開示シタマフ
天・竜・夜叉所ナリ↠不ル↠及バ二乗自オノヅカラ絶タツ↢於名言ヲ↡

^◆もしもろもろの有う情じょうまさに作さ仏ぶつして、 行ぎょう、 普ふ賢げんに超こえ、 彼ひ岸がんに登のぼつて、 一いち仏ぶつの功く徳どくを*敷ふ演えんせん。 時とき、 多た劫こうの不ふ思議しぎを逾こえん。 この中ちゅう間げんにおいて身みは滅めつ度どすとも、 仏ぶつの勝しょう慧えはよく量はかることなけん。

若シ諸ノ有情当ニ作仏シテ行超ヘ↢普賢ニ↡登ノボテ↢彼岸ニ↡
敷フ↢ヒラキ演エンノブセム一仏0069之功徳ヲ↡時逾コユ エム↢多劫ノ不思議ヲ↡
於テ↢是ノ中間ニ↡身ハ滅度ストモ仏之勝*慧ハ莫ケム↢能ク量ルコト↡

^◆このゆゑに信しん・聞もんおよびもろもろの*善ぜん友ぬの摂しょう受じゅを具ぐ足そくして、 かくのごときの深じん妙みょうの法ほうを聞きくことを得えば、 まさにもろもろの聖しょう尊そんに重じゅう愛あいせらるることを獲うべし。 *如にょ来らい0214の勝しょう智ち、 *遍へん虚こ空くうの所説しょせつの義ぎ言ごんは、 ただ仏ぶつのみ悟さとりたまへり。

是ノ故ニ具↢足シテ於信・聞及ビ諸ノ善友之摂受ヲ↡
得エバ↠聞クコトヲ↢如キノ↠是クノ深妙ノ法ヲ↡▼当ニシ↠獲ウ↣重↢愛セラルヽコトヲ諸ノ聖尊ニ↡
如来ノ勝智徧虚空ノ所説ノ義言ハ唯仏ノミ悟リタマヘリ

^◆このゆゑに博ひろく*諸しょ智ち土どを聞ききて、 わが教きょう、 如実にょじつの言ごんを信しんずべし。 *人趣にんしゅの身しん得うることはなはだ難かたし。 如来にょらいの出しゅっ世せ遇もうあふことまた難かたし。

是ノ故ニ博クヒロク聞キテ↢諸智土ヲ↡応シ↠信ズ↢我ガ教如実ノ言ヲ↡
人趣オモムク之身得ルコト甚ダ難シ如来ノ出世遇マウアフコト亦難シ

^◆*信しん慧ね多おおき時ときまさにいまし獲えん。 このゆゑに修しゅせんもの精しょう進じんすべし。 かくのごときの妙みょう法ほうすでに聴ちょう聞もんせば、 つねに諸仏しょぶつをして喜よろこびを生しょうぜしめたてまつるなり」 と。 抄出

信*慧多キ時方 サニ乃シ獲エム是ノ故ニ修セム者 ノ応シ↢精進ス↡
如キノ↠是クノ妙法已スデニ聴聞セバ▼常ニ令シメタテマツルナリト↢諸仏ヲ而シテ生ゼ↟喜 コビヲ」 抄出

一 Ⅰ ⅱ b ロ 師釈
          (一)雁門(行信二法を明かす)
            (Ⅰ)¬論註¼

【9】 ^¬*論ろんの註ちゅう¼ (下) にいはく、

▼¬*論ノ註チウニ¼曰ク、

^「▲ªかの如来にょらいの名みなを称しょうし、 かの如来にょらいの光こう明みょう智ち相そうのごとく、 かの名みょう義ぎのごとく、 実じつのごとく修しゅ行ぎょうし相応そうおうせんと欲おもふがゆゑにº (浄土論) といへり。

「▼称シ↢彼ノ如来ノ名ヲ↡、如ク↢彼ノ如来ノ光明智相ノ↡、▽如ク↢彼ノ名義ノ↡、欲フガ↢如ク↠実ノ修行シ相応セムト↡故ニトイヘリト。

・衆生称名

^◆ª称しょう彼ひ如来にょらい名みょうº といふは、 いはく無礙むげ光こう如来にょらいの名みなを称しょうするなり。

▼称彼如来名トイフ者ハ、謂ク称スル↢无光如来ノ名ヲ↡也。

・法体徳相

^◆ª如にょ彼ひ如来にょらい光こう明みょう智ち相そうº といふは、 仏ぶつの光こう明みょうはこれ智慧ちえの相そうなり。 この光こう明みょう、 十方じっぽう世せ界かいを照てらすに障しょう礙げあることなし。 よく十方じっぽう衆しゅ生じょうの無む明みょうの黒闇こくあんを除のぞく。 日にち・月がつ・珠光しゅこうのただ室穴しつけつのうちの闇あんを破はするがごときにはあらざるなり。

▼如彼▼如来光明智相トイフ者ハ、▼仏ノ光明ハ是智*慧ノ相也。此ノ光明照スニ↢十方世界ヲ↡无シ↠有ルコト↢障↡。能ク除ク↢十方衆生ノ无明ノ黒闇ヲ↡。非ザル↠如キニハ↣日・月・珠光ノ但破スルガ↢室穴ノ中ノ闇ヲ↡也。

・名号破満 ・名義

^◆ª如にょ彼ひ名みょう義ぎ欲よく如実にょじつ修しゅ行ぎょう相応そうおうº といふは、 ▲かの無礙むげ光こう如来にょらいの名みょう号ごうは、 よく衆しゅ生じょうの一切いっさいの無む明みょうを破はす、 よく衆しゅ生じょうの一切いっさいの志し願がんを満みてたまふ。

▼如彼名義欲如実修行相応トイフ者ハ、彼ノ无光如来ノ名号ハ、▼能ク破ス↢衆生ノ▼一切ノ无明ヲ↡、▼能ク満テタマフ↢衆生ノ▼一切ノ志願ヲ↡。

・名号破満 ・不実

^◆しかるに称名しょうみょう憶念おくねんすることあれども、 無む明みょうなほ存そんして所願しょがんを満みてざるはいかんとならば、 実じつのごとく修しゅ行ぎょうせざると、 名みょう義ぎと相応そうおうせざるによるがゆゑなり。 ◆いかん0215が不ふ如実にょじつ修しゅ行ぎょうと名みょう義ぎと相応そうおうせざるとする。 いはく、 如来にょらいはこれ実相じっそうの身しんなり、 これ物もののための身しんなりと知しらざるなり。

▼然ルニ有レ↢称名憶念スルコト↡而ドモ、无明由ナホ存シ而テ不ル↠満テ↢所願ヲ↡者ハ何者イカントナラバ、▼由ルガ↧不ルト↢如↠実修行セ↡与ト↢名義↡不ルニ↦相応セ↥故 ヘ也。▼云何 イカン ガ為スル↣*不如実修行ト与ト↢名義不相応↡。▼謂ク不ルナリ↠知ラ↢如来ハ是実相ノ身ナリ、是為ノ↠物ノ身ナリト↡。

・名号破満 ・不実 ・三不信

^◆また三種さんしゅの不ふ相応そうおうあり。 一ひとつには信心しんじん淳あつ (淳じゅんの字じ、 音おん純じゅんなり、 また厚朴こうぼくなり。 朴ぼくの字じ、 音おん卜ぼくなり。 薬くすりの名ななり。 諄じゅんの字じ、 至しなり。 誠じょう懇こんの貌かおばせなり。 上かみの字じに同おなじ) からず、 *存そんせるがごとし、 亡もうぜるがごときのゆゑに。 二ふたつには信心しんじん一いちならず、 決けつ定じょうなきがゆゑに。 三みつには信心しんじん相続そうぞくせず、 *余よ念ねん間へだつるがゆゑに。

▼又有リ↢三種ノ不相応↡。▼一ニ者ハ信心不ズ↠淳アツカラ ▼*淳ノ字 ▼常倫反 又音純也 又厚*丨朴也 朴ノ*字 音卜也 *薬ノ名也 諄字 至也 誠懇之貌也 同↢上字↡ 若ゴトシ↠存セルガ若キノ↠亡ゼルガ故ニ。▼二ニ者ハ信心0070▼不ズ↠一ナラ、无キガ↢決定↡故ニ。三ニ者ハ信心▼不ズ↢相続セ↡、▼余念間ヘダツツルガ故ニ。

^◆この三さん句く展転てんでんしてあひ成じょうず。 信心しんじん淳あつからざるをもつてのゆゑに決けつ定じょうなし、 決けつ定じょうなきがゆゑに念ねん相続そうぞくせず。 また念ねん相続そうぞくせざるがゆゑに決けつ定じょうの信しんを得えず、 決けつ定じょうの信しんを得えざるがゆゑに心しん淳あつからざるべし。

此ノ三句展転シテ相成ズ。以テノ↢信心不ルヲ↟淳カラ故ニ无シ↢決定↡、无キガ↢決定↡故ニ念不ズ↢相続セ↡。亦可シ↧*念不ルガ↢相続セ↡故ニ不ズ↠得↢決定ノ信ヲ↡、不ルガ↠得↢決定ノ信ヲ↡故ニ心不ル↞淳カラ。

・名号破満 ・如実

^◆これと相そう違いせるを*如実にょじつ修しゅ行ぎょう相応そうおうと名なづく。

与ト↠此 レ相違タガフセルヲ名ク↢如実修行相応ト↡。

・以信為要

^◆このゆゑに論主ろんじゅ (*天親)、 建はじめに ª我が▽一心いっしんº とのたまへり」 と。 以上

▼是ノ故ニ*論主、建ハジメニ言 タマヘリト↢我一心ト↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)¬讃弥陀偈¼

・一心義相

【10】^¬*讃さん阿あ弥陀みだ仏ぶつ偈げ¼ にいはく、 *曇鸞どんらん和か尚しょうの造ぞうなり

▼¬讃阿弥陀仏偈ニ¼曰ク、 曇*巒和尚ノ造也

^「▲あらゆるもの、 阿あ弥陀みだの徳号とくごうを聞ききて、 信心しんじん歓かん喜ぎして聞きくところを*慶よろこばんこと、 いまし一念いちねんに曁およぶまでせん。 至し心しんのひと回え向こうしたまへり。 生しょうぜんと願がんずればみな往ゆくことを得えしむ。 ただ五ご逆ぎゃくと謗ほう正しょう法ぼうとをば除のぞく。 ゆゑにわれ頂ちょう礼らいして往おう生じょうを願がんず」 と。 以上

「諸アラユルモノ聞キテ↢阿弥陀ノ徳号ヲ↡信心歓喜シテ慶ヨロコバムコト↠所ヲ↠聞ク
乃シ曁オヨブマデセム↢一念ニ↡ 至心ノ者ヒト回向シタマヘリ 願ズレバ↠生ゼムト皆得シム↠往クコトヲ
唯除ク↢五逆ト謗正法トヲバ↡故ニ我 レ頂礼シテ願ズト↢往生ヲ↡」 已上

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)終南(三心即一の義相を明かす)
            (Ⅰ)「定善義」

・本仏摂化

【021611】^*光こう明みょう寺じ (善導) の ¬観かん経ぎょう義ぎ¼ (*定善義) にいはく、

▼*光明寺ノ¬観経義ニ¼云ク、

^「▲ª如にょ意いº といふは二に種しゅあり。 一ひとつには衆しゅ生じょうの意こころのごとし、 かの心念しんねんに随したがひてみなこれを度どすべし。 二ふたつには弥陀みだの意おんこころのごとし、 五ご眼げん円まどかに照てらし六通ろくつう自じ在ざいにして、 機きの度どすべきものを観みそなはして、 一念いちねんのうちに前ぜんなく後ごなく身心しんしん等ひとしく赴おもむき、 三輪さんりん開かい悟ごしておのおの益やくすること同おなじからざるなり」 と。 以上

「▼言フ↢如意ト↡者ハ有リ↢二種↡。一ニ者ハ如シ↢衆生ノ意ノ↡、随ヒテ↢彼ノ心念ニ↡皆応シ↠度ス↠之ヲ。二ニハ如シ↢弥陀之意オンコヽロノ↡、▼五眼円ニ照シ▼六通自在ニシテ、観ミソナハシテ↢機ノ可キ↠度ス者 ノヲ↡、一念之中 チニ无ク↠前无ク↠後身心等シク赴オモムキ、三輪リン開悟シテサトリ 各ノ益スルコトタスク マストモ不ル↠同ジカラ也ト。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)「序分義」

・所化機相

【12】^またいはく (*序分義)、

▼又*云ク、

^「▲この五ご濁じょく・五苦ごく等とうは六道ろくどうに通つうじて受うけて、 いまだなきものはあらず。 つねにこれに逼悩ひつのうす。 もしこの苦くを受うけざるものは、 すなはち凡ぼん数じゅの摂しょうにあらざるなり」 と。 抄出

「此ノ五濁・五苦等ハ通ジテ↢六道ニ↡受ケテ、未ズ ダ↠有ラ↢无キ者 ノハ↡。常ニ逼ヒチセム↢悩スナヤマス之ニ↡。若シ不ル↠受ケ↢此ノ苦ヲ↡者 ノハ、即チ非ザル↢凡数ノ摂ニ↡也ト。」 抄出

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)「散善義」

・三心義相

【13】^またいはく (*散善義)、

▼*又云ク、

^「▲ª何が等とう為い三さんº より下しも ª必ひっ生しょう彼ひ国こくº に至いたるまでこのかたは、 まさしく三心さんしんを弁べん定じょうして、 もつて正しょう因いんとすることを明あかす。 すなはちそれ二ふたつあり。 ◆一ひとつには世せ尊そん、 機きに随したがひて益やくを顕あらわすこと意い密みつにして知しりがたし、 仏ぶつみづから問とうてみづから徴ちょうしたまふにあらずは、 解さとりを得うるに由よしなきを明あかす。 ◆二ふたつに如来にょらい還かえりてみづから前さきの三心さんしんの数かずを答こたへたまふことを明あかす。

「従リ↢何等為三↡下シモ至ルマデ↢必生彼国ニ↡已来タハ正シク明ス↧▼弁ベン↢ワキマフ定シテ三心ヲ↡以テ為ルコトヲ↦▼正因ト↥。即チ有リ↢其 レ二↡。一ニハ明ス↧世尊▼随ヒテ↠機ニ顕スコト↠▼益ヲ▼意密ニシテ難シ↠知リ、非ズハ↢仏自ミ ラ問ウテ自ミ ラ徴チヨウシタマフニセム アラハストモ↡无0071キヲ↞由 シ↠得ルニ↠解サトリヲ。二ニ明ス↣如来還リテ自ミ ラ答ヘタマフコトヲ↢前ノ三心之数カズヲ↡。

・三心義相 ・至誠心

 ^◆¬経きょう¼ (観経) にのたまはく、 ª一者いっしゃ至し誠じょう心しんº。

▼経ニ云ク、一者至誠心。

^▼ª至しº とは真しんなり、 ª誠じょうº とは実じつなり。 ◆一切いっさい衆しゅ生じょうの身しん口意くい業ごうの所修しょしゅの解げ行ぎょう、 *かならず真実しんじつ心しんのうちになしたま0217へるを▼須もちゐんことを明あかさんと欲おもふ。

▼至ト者ハ真ナリ、誠ト者ハ実ナリ。▼欲オモフ↠明サムト↣一切衆生ノ身口意業ノ所修ノ解行、必ズ▼須モチヰムコトヲ↢真実▼心ノ中ニ作シタマヘルヲ↡。

^▼*外ほかに賢善けんぜん精しょう進じんの相そうを現げんずることを得えざれ、 内うちに虚仮こけを懐いだいて、 ◆貪瞋とんじん・邪じゃ偽ぎ・奸かん詐さ百ひゃく端たんにして悪あく性しょう侵やめがたし、 事こと、 蛇蝎じゃかつに同おなじ。 三業さんごうを起おこすといへども、 名なづけて雑毒ぞうどくの善ぜんとす、 また虚仮こけの行ぎょうと名なづく、 真実しんじつの業ごうと名なづけざるなり。

▼不レ↠▼得エ↣外ニ▼現スコトヲ↢賢善精進之相ヲ↡、▼内ニ懐イダヱ イテ↢虚仮ヲ↡、貪ムサボル 瞋イカル・邪偽グヰ・イツワル 奸カムイツワリ 詐サ反イツワル百端ハシニシテ悪性難シ↠侵ヤシムメ、事同ジ↢蛇ジヤ蝎カチムシニ↡。▼雖モ↠起スト↢三業ヲ↡名ケテ為ス↢雑毒之善ト↡、亦名ク↢虚仮之行ト↡、不ル↠名ケ↢真実ノ業ト↡也。

^◆もしかくのごとき安心あんじん・起き行ぎょうをなすは、 たとひ身心しんしんを苦く励れいして日にち夜や十じゅう二に時じに急きゅうに走もとめ急きゅうになして頭ず燃ねんを灸はらふがごとくするものは、 すべて雑毒ぞうどくの善ぜんと名なづく。 ▽この雑毒ぞうどくの行ぎょうを回えしてかの仏ぶつの浄じょう土どに求ぐ生しょうせんと欲ほっするは、 これかならず不可ふかなり。

▼若シ作ス↢如キ↠此クノ安心・起行ヲ↡者ハ、縦使 タトヒ 苦↢励レイシテハゲマス身心ヲ↡日夜十二時ニ急ニイソガワシ走モトメ急ニ作シテ如クスル↠炙ハラフガキウ反 ↢*頭ノ燃ヲ↡者 ノハ、衆スベテミナ コトゴトク名ク↢雑毒之善ト↡。▼欲スル↧回シテ↢此ノ雑毒之行ヲ↡求↦生セムト彼ノ仏ノ浄土ニ↥者ハ、此 レ必ズ不可也ナリ。

^◆なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの阿あ弥陀みだ仏ぶつ、 因いん中ちゅうに菩ぼ薩さつの行ぎょうを行ぎょうじたまひし時とき、 乃ない至し一念いちねん一いっ刹せつ那なも、 三業さんごうの所修しょしゅみなこれ真実しんじつ心しんのうちに*なしたまひしに由よ (由ゆの字じ、 経きょうなり、 行ぎょうなり、 従じゅうなり、 用ゆうなり) つてなり。 ^おほよそ施ほどこしたまふところ趣しゅ求ぐをなす、 またみな真実しんじつなり。

▼何ヲ以テノ故ニ。▼正シク由テナリ↧ *由ノ字 以周反 経也 行也 従也 用也 彼ノ阿弥陀▼仏、因中ニ行ジタマヒシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、乃至一念一刹那モイカム、三業ノ所修皆是真実心ノ中ニ作シタマヒシニ↥。▼凡ソ▼所 ロ↠施シタマフホドコス ハヅトモ▼為ナス↢趣求オモムキ ヲ↡、▼亦皆真実ナリ。

・三心義相 ・至誠心 ・二種真実

^◆また真実しんじつに二に種しゅあり。 一ひとつには自利じり真実しんじつ、 二ふたつには利他りた真実しんじつなり。 乃至

▼又真実ニ有リ↢二種↡、一ニ者ハ▼自利真実、二ニ者ハ▼利他真実ナリ。 乃至

^▲*不ふ善ぜんの三業さんごうはかならず真実しんじつ心しんのうちに捨すてたまへるを須もちゐよ。 またもし善ぜんの三業さんごうを起おこさば、 かならず真実しんじつ心しんのうちになしたまひしを須もちゐて、 ◆*内ない外げ明みょう闇あんを簡えらばず、 みな真実しんじつを須もちゐる◆がゆゑに至し誠じょう心しんと名なづく。

▼不善ノ三業ハ必ズ須モチヰヨ↢真実心ノ中ニ捨テタマヘルヲ↡。▼又若シ起サ↢善ノ三業ヲ↡者バ、必ズ須モチヰテ↢真実心ノ中ニ作ナシタマヒシヲ↡、▼不↠簡エラバ↢内外明闇ヲ↡、▼皆須モチヰルガ↢真実ヲ↡故ニ名ク↢至誠心ト↡。

・三心義相 ・深信

 ^◆ª二に者しゃ深心じんしんº。 ◆深心じんしんといふは、 すなはちこれ深信じんしんの心しんなり。 また二に種しゅあり。

▼二者深心。言フ↢▼深心ト↡者ハ、即チ是深信之心也。▼亦有リ↢二種↡。

・三心義相 ・深信 ・第一深信

^0218◆一ひとつには、 決けつ定じょうして深ふかく、 *自じ身しんは現げんにこれ罪悪ざいあく生しょう死じの凡ぼん夫ぶ、 曠劫こうごうよりこのかたつねに没もっし、 つねに流る転てんして、 出しゅつ離りの縁えんあることなしと信しんず。

一ニ者ハ決定シテ深ク信ズ↢自身ハ現ニ是罪悪生死ノ凡夫、曠劫ヨリ已来タ常ニ没シシヅム常ニ流転シテ、▼无シト↟有ルコト↢出離之縁↡。

・三心義相 ・深信 ・第二深信

^◆二ふたつには、 決けつ定じょうして深ふかく、 かの阿あ弥陀みだ仏ぶつの四し十じゅう八はち願がんは衆しゅ生じょうを摂しょう受じゅして、 疑うたがいなく慮おもんぱかりなく、 かの願力がんりきに乗じょうじて、 さだめて往おう生じょうを得うと信しんず。

二ニ者ハ決定シテ深ク信ズ↧彼ノ阿弥陀仏ノ四十八願ハ摂↢受シテ衆生ヲ↡、▼无ク↠疑▼无ク↠慮、オモンパカリ乗ジテ↢彼ノ願力ニ↡定メテ得ト↦往生ヲ↥。

・三心義相 ・深信 ・第三深信

^◆また決けつ定じょうして深ふかく、 釈しゃ迦か仏ぶつこの ¬観かん経ぎょう¼ に三福さんぷく九く品ぼん・定じょう散さん二に善ぜんを説ときて、 かの仏ぶつの依え正しょう二に報ほうを証しょう讃さんして、 人ひとをして欣ごん慕ぼせしむと信しんず。

▼又0072決定シテ深ク信ズ↧釈迦仏説キテ↢此ノ¬観経ニ¼三福九品・定散二善ヲ↡、証↢讃シテ彼ノ仏ノ依正二報ヲ↡、使ムト↦人ヲシテ忻ゴンネガイ慕ボセシタフ↥。

・三心義相 ・ 深信 ・第四深信

^◆また決けつ定じょうして、 ¬弥陀みだ経きょう¼ のなかに、 十方じっぽう恒沙ごうじゃの諸仏しょぶつ、 一切いっさい凡ぼん夫ぶを証しょう勧かんして決けつ定じょうして生しょうずることを得うと深信じんしんするなり。

▼又決定シテ深↧信スルナリ¬弥陀経ノ¼中ニ、十方恒沙ノ諸仏、証↢カナフ勧シテ一切凡夫ヲ↡決定シテ得ト↞生ズルコトヲ。

・三心義相 ・深信 ・第五深信

^◆また深信じんしんするもの、 仰あおぎ願ねがはくは一切いっさいの行ぎょう者じゃ等とう、 一心いっしんにただ仏ぶつ語ごを信しんじて身しん命みょうを顧かえりみず、 決けつ定じょうして行ぎょうによりて、 仏ぶつの捨すてしめたまふをばすなはち捨すて、 仏ぶつの行ぎょうぜしめたまふをばすなはち行ぎょうず。 仏ぶつの去さらしめたまふ処ところをばすなはち去すつ。 これを仏ぶっ教きょうに随ずい順じゅんし、 仏ぶつ意いに随ずい順じゅんすと名なづく。 これを仏願ぶつがんに随ずい順じゅんすと名なづく。 これを▽真しんの仏ぶつ弟子でしと名なづく。

▼又深信スル者 ノ、仰ギ願クハ一切ノ行者等、一心ニ唯信ジテ↢仏語ヲ↡不↠顧カヘリミ↢身命ヲ↡、決定シテ依リテ↠行ニ、仏ノ遣シメタマフヲ↠捨テ者バ即チ捨テ、仏ノ遣シメタマフヲ↠行ゼ者バ即チ行ズ。仏ノ遣シメタマフ↠去テ処ヲバ即チ去スツ。是ヲ名ク↧随↢順シ仏教ニ↡、随↦順スト仏意ニ↥。是ヲ名ク↣随↢順スト仏願ニ↡。是ヲ名ク↢真ノ仏弟子ト↡。

・三心義相 ・深信 ・第六深信

^◆また一切いっさいの行ぎょう者じゃ、 ただよくこの ¬経きょう¼ (観経) によりて行ぎょうを深信じんしんするは、 かならず衆しゅ生じょうを誤あやまらざるなり。 ◆なにをもつてのゆゑに、 仏ぶつはこれ満足まんぞく大だい悲ひの人にんなるがゆゑに、 実じつ語ごなるがゆゑに。 ◆仏ぶつを除のぞきて以い還げんは、 智ち行ぎょういまだ満みたず。 それ学がく地じにありて、 正習しょうじゅうの二に障しょうありていまだ除のぞこらざ0219るによつて、 果か願がんいまだ円まどかならず。

▼又一切ノ行者、但能ク依リテ↢此ノ¬経ニ¼↡深↢信スル行ヲ↡者ハ、必ズ不ル↠悞アヤマゴ ラ↢衆生ヲ↡也。何ヲ以テノ故ニ。仏ハ是満足大悲ノ人ナルガ故ニ、実語ナルガ故ニ。除キテ↠仏ヲ已還ハ、智行未ズ ダ↠満ミタ。在リテ↢其 レ学地ニ↡、由ヨテ↧有リテ↢正習ジウノナラフ二障↡未ザ ダルニ↞除カラ、果願未ズ ダ↠円ナラ。

^◆これらの凡ぼん聖しょうは、 たとひ諸仏しょぶつの教きょう意いを測しき量りょうすれども、 いまだ決けつ了りょうすることあたはず。 平章びょうしょうすることありといへども、 かならずすべからく仏ぶっ証しょうを請こうて定じょうとすべきなり。 ^もし仏ぶつ意いに称かなへば、 すなはち印いん可かして ª如にょ是ぜ如にょ是ぜº とのたまふ。 もし仏ぶつ意いに可かなはざれば、 すなはち ªなんだちが所説しょせつ、 この義ぎ不ふ如にょ是ぜº とのたまふ。

此等ノ凡聖ハ縦使 タトヒ 測↢量スレドモ諸仏ノ教意ヲ↡未ズ ダ↠能ハ↢決了スルコト↡。雖モ↠有リト↢平章スルコト↡、ノリ ハカラフトモ要カナラズ須ベ クキ↧請コフテ↢仏証ヲ↡為↞定ト也。若シ称カナヘバ↢仏意ニ↡、即チ印オシテ可シテ言ノタマフ↢如是如是ト↡。若シ不レ↠可カナハ↢仏意ニ↡者バ、即チ言ノタマフ↢汝等ナンダチガ所説是ノ義不如是ト↡。

^◆印いんせざるは、 すなはち無記むき・無利むり・無む益やくの語ごに同おなじ。 仏ぶつの印いん可かしたまふは、 すなはち仏ぶつの正教しょうきょうに随ずい順じゅんす。 もし仏ぶつの所しょ有うの言説ごんせつは、 ▽すなはちこれ正教しょうきょう・正しょう義ぎ・正行しょうぎょう・正しょう解げ・正しょう業ごう・正しょう智ちなり。

不ル↠印ヒクセ者ハ、即チ同ジ↢无記・无利・メグミ无益之語ニ↡。仏ノ印可シタマフヲ者バ、即チ随↢順ス仏之正教ニ↡。若シ仏ノ所有ノ言説ハ、即チ是 レ正教・正義・正行・正解・正業・正智ナリ。

^◆もしは多たもしは少しょう、 すべて菩ぼ薩さつ・人にん・天てん等とうを問とはず、 その是非ぜひを定さだめんや。 もし仏ぶつの所説しょせつは、 すなはちこれ了教りょうきょうなり。 菩ぼ薩さつ等とうの説せつは、 ことごとく不ふ了教りょうきょうと名なづくるなり、 知しるべし。

若シハ多若シハ少、衆スベテ不↠問ハ↢菩薩・人・天等ヲ↡、定メム↢其ノ是非ヲ↡也ヤ。▼若シ仏ノ所説ハ、即チ是了教ナリ。菩薩等ノ説ハ、尽コトゴトク名クル↢不了教ト↡也、応シト↠知ル。

^◆このゆゑに今いまの時とき、 仰あおいで一切いっさい有う縁えんの往おう生じょう人にん等とうを勧すすむ。 ただ仏ぶつ語ごを深信じんしんして専せん注ちゅう奉ぶ行ぎょうすべし。 菩ぼ薩さつ等とうの不ふ相応そうおうの教きょうを信用しんようして、 もつて疑礙ぎげをなし、 惑まどひを抱いだいて、 みづから迷まどひて往おう生じょうの大益だいやくを廃失はいしつすべからざれと。 乃至

是ノ故ニ今ノ時仰デ勧ム↢一切有縁ノ往生人等ヲ↡。唯可シ↧深↢信シテ仏語ヲ↡専注モンハラ 奉ウケタマワル行ス↥。不レト↠可カラ↧信↢用シテ菩薩0073等ノ不相応ノ教ヲ↡、以テ為ナシ↢疑ギウタガヒゲヲサワリ↡、抱イダハウイテ↠惑 ヒヲ、自ミヅカラ迷マドメイヒテ廃ハイ↦スタル失ス往生之大益ヲ↥*也。 ▼乃至

^▲釈しゃ迦か一切いっさいの凡ぼん夫ぶを指し勧かんして、 この一身いっしんを尽つくして専念せんねん専修せんじゅして、 捨しゃ命みょう以後いごさだめてかの国くにに生うまるれば、 すなはち十方じっぽう諸仏しょぶつことごとくみな同おなじく讃ほめ、 同おなじく勧すすめ、 同おなじく証しょうしたまふ。 なにをもつてのゆゑに、 同どう0220体たいの大だい悲ひなるがゆゑに。 一いち仏ぶつの所しょ化けは、 すなはちこれ一切いっさい仏ぶつの化けなり。 一切いっさい仏ぶつの化けは、 すなはちこれ一いち仏ぶつの所しょ化けなり。

▼釈迦指↢勧シテ一切ノ凡夫ヲ↡、尽ツクシテ↢此ノ一身ヲ↡専念専修シテ、捨スツ命已後定メテ生ルレ↢彼ノ国ニ↡者バ、即チ十方諸仏悉ク皆同ジク讃メ、同ジク勧メ、同ジク証シタマフ。何ヲ以テノ故ニ。同体ノ大悲ナルガ故ニ。一仏ノ所化ハ即チ是一切仏ノ化ナリ。一切仏ノ化ハ即チ是一仏ノ所化ナリ。

^◆すなはち ¬弥陀みだ経きょう¼ のなかに説とかく、 ª釈しゃ迦か極楽ごくらくの種々しゅじゅの荘しょう厳ごんを讃嘆さんだんしたまふ。 ◆また一切いっさいの凡ぼん夫ぶを勧すすめて、 一日いちにち七日しちにち、 一心いっしんに弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんせしめて、 さだめて往おう生じょうを得えしめたまふº と。

即チ¬弥陀経ノ¼中ニ説トカク、釈迦讃↢嘆シタマフ極楽ノ種種ノ荘厳ヲ↡。又勧メテ↢一切ノ凡夫ヲ↡、一日七日一心ニ専↢念セシメテ弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得シメタマフト↢往生ヲ↡。

^◆次下つぎしもの文もん (小経・意) にのたまはく、 ª^十方じっぽうにおのおの恒ごう河が沙しゃ等とうの諸仏しょぶつましまして、 同おなじく釈しゃ迦かよく五ご濁じょく悪あく時じ・悪あく世せ界かい・悪あく衆しゅ生じょう・悪見あくけん・悪あく煩悩ぼんのう・悪邪あくじゃ無む信しんの盛さかりなる時ときにおいて、 弥陀みだの名みょう号ごうを指し讃さんして衆しゅ生じょうを勧励かんれいせしめて、 称しょう念ねんすればかならず往おう生じょうを得うと讃さんじたまふº と、 すなはちその証しょうなり。

▼次下ノ文ニ云ク、十方ニ各ノ有シテ↢恒河砂等ノ諸仏↡、同ジク讃ホムジタマフト↧釈迦能ク於イテ↢五濁悪時・悪世界・悪衆生・悪見・悪煩悩・悪邪无信ノ盛サカリナル時ニ↡、指シ↢讃シテ弥陀ノ名号ヲ↡勧↢励レイセシメテハゲマス  衆生ヲ↡、称念スレバ必ズ得ト↦往生ヲ↥、即チ其ノ証也。

^◆また十方じっぽうの仏ぶつ等とう、 衆しゅ生じょうの釈しゃ迦か一いち仏ぶつの所説しょせつを信しんぜざらんを恐畏おそれて、 すなはちともに同心どうしん同どう時じにおのおの舌相ぜっそうを出いだして、 あまねく三千さんぜん世せ界かいに覆おおひて誠じょう実じつの言ごんを説ときたまはく、 ª^なんだち衆しゅ生じょう、 みなこの釈しゃ迦かの所説しょせつ・所讃しょさん・所しょ証しょうを信しんずべし。 一切いっさいの凡ぼん夫ぶ、 罪福ざいふくの多た少しょう、 時じ節せつの久く近ごんを問とはず、 ただよく上かみ百ひゃく年ねんを尽つくし、 下しも一日いちにち七日しちにちに至いたるまで、 一心いっしんに弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんして、 さだめて往おう生じょうを得うること、 かならず疑うたがいなきなりº と。

又十方ノ仏等、恐↢畏 オソレ テ衆生ノ不ラムヲ↟信ゼ↢釈迦一仏ノ所説ヲ↡、即チ共ニ同心同時ニ各ノ出シテ↢舌相ヲ、↡徧ク覆ヒテ↢三千世界ニ↡説キタマハク↢誠実ノ言ヲ↡、汝等ナンダチ衆生、皆応シ↠信ズ↢是ノ釈迦ノ所説・所賛・所証ヲ↡。一切ノ凡夫、不ズ↠問ハ↢罪福ノ多少、時節ノ久近ヲ↡、但能ク上尽シ↢百年ヲ↡、下至ルマデ↢一日七日ニ↡、一心ニ専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡、定メテ得ルコト↢往生ヲ↡、必ズ无キ↠疑也ト。

^◆このゆゑに一いち仏ぶつの所説しょせつをば、 すなはち一切いっさい仏ぶつ同おなじくその事じを証誠しょうじょうしたまふなり。 ◆これを人にんについて信しんを立たつと名なづくるなり。 乃至

是ノ故ニ一仏ノ所説ヲバ、即チ一切仏同ジク証↢誠シタマフ其ノ事ヲ↡也。▼此ヲ名クル↢就ツイテ↠人ニ立ツト↟信ヲ也。 ▼乃至

^▲またこの0221*正しょうのなかについてまた二に種しゅあり。 ◆一ひとつには、 ▼一心いっしんに弥陀みだの名みょう号ごうを専念せんねんして、 行住ぎょうじゅう坐臥ざが、 時じ節せつの久く近ごんを問とはず、 念々ねんねんに捨すてざるをば、 これを正定しょうじょうの業ごうと名なづく、 *かの仏願ぶつがんに順じゅんずるがゆゑに。 ◆もし礼誦らいじゅ等とうによらば、 すなはち名なづけて助業じょごうとす。

▼又就テ↢此ノ正ノ中ニ↡復有リ↢二種↡。一ニ者、▼一心ニ専↢念シテ弥陀ノ名号ヲ↡、▼行住坐臥、不ズ↠問ハ↢時節ノ久近ヲ↡、▼念念ニ不ルヲ↠捨テ者ハ、是ヲ名ク↢正定之業ト↡、順ズルガ↢彼ノ仏願ニ↡故0074ニ。若シ依ラバ↢礼誦オガム等ニ↡、即チ名ケテ為↢助業ト↡。

^◆この正しょう助じょ二に行ぎょうを除のぞきて以外いげの自余じよの諸善しょぜんは、 ことごとく雑ぞう行ぎょうと名なづく。 乃至 ◆すべて疎そ雑ぞうの行ぎょうと名なづくるなり。 ^◆ゆゑに深心じんしんと名なづく。

除キテ↢此ノ正助二行ヲ↡已外ノ自余ノ諸ノ善ハ、悉ク名クト↢雑行ト↡。 ▼乃至 衆スベテコトゴトク名クル↢疎ソウトシ雑之行ト↡也。故ニ名ク↢深心ト↡。

・三心義相 ・回向発願心

 ^◆ª三さん者じゃ回え向こう発願ほつがん心しんº。 乃至 ◆また回え向こう発願ほつがんして生しょうずるものは、 *かならず決けつ定じょうして真実しんじつ心しんのうちに回え向こうしたまへる願がんを須もちゐて得とく生しょうの想おもいをなせ。

▼三者回向発願心。 ▼乃至 ▼又回向発願シテ生ズル者 ノハ、必ズ須モチヰテ↢決定シテ真実心ノ中ニ回向シタマヘル願ヲ↡作ナセ↢得生ノ想ヲ↡。

^▼この心しん深信じんしんせること金剛こんごうのごとくなるによりて、 一切いっさいの異い見けん・異い学がく・別べつ解げ・別べつ行ぎょうの人にん等らのために動乱どうらん破壊はえせられず。 ただこれ決けつ定じょうして一心いっしんに捉とつて正しょう直じきに進すすんで、 かの人ひとの語ごを聞きくことを得えざれ。 すなはち進退しんたいの心しんありて怯こう弱にゃくを生しょうじて回顧えこすれば、 道どうに落おちてすなはち往おう生じょうの大益だいやくを失しっするなり。

▼此ノ心深信セルコト由ヨリテ↠若クナルニ↢金剛ノ↡、不ズ↧為ニ↢一切ノ異見・異*学・別解・別行ノ人等ラ之↡所レ↦動乱ミダレ破ワレ 壊ヤブルセ↥。唯是 レ決定シテ一心ニ捉トテ正直ニ進デ、不レ↠得エ↠聞クコトヲ↢彼ノ人ノ語ヲ↡。即チ有リテ↢進スヽミ 退ノシリゾク心↡生ジテ↢怯カウコハシ弱ニヤクヨハシヲ↡回顧コスレバカヘリミル、落オチテ↠道ニ即チ失スル↢往生之大益ヲ↡也。▼

・三心義相 ・廻向発願心 ・問

 ^◆問とうていはく、 もし解げ行ぎょう不ふ同どうの邪雑じゃぞうの人ひと等らありて、 来きたりてあひ惑乱わくらんして、 あるいは種々しゅじゅの疑ぎ難なんを説ときて ª往おう生じょうを得えじº といひ、 あるいはいはん、 ªなんだち衆しゅ生じょう、 曠劫こうごうよりこのかた、 および今こん生じょうの身しん口意くい業ごうに、 一切いっさい凡ぼん聖しょうの身みの上うえにおいて、 つぶさに十じゅう悪あく・五ご逆ぎゃく・四し重じゅう・謗法ほうぼう・闡提せんだい・破は戒かい・破は見けん等とうの罪つみを造つくりて、 い0222まだ除尽じょじんすることあたはず。 しかるにこれらの罪つみは三界さんがい悪道あくどうに繋け属ぞくす。 いかんぞ一いっ生しょうの修福しゅふく念仏ねんぶつをして、 すなはちかの無漏むろ無む生しょうの国くにに入いりて、 永ながく不ふ退たいの位くらいを証しょう悟ごすることを得えんやº と。

▼問ウテ曰ク、若シ有リテ↢解行不同ノ邪雑ノ人等↡、来リテ相 ヒ惑マドイ乱シテ、或イハ説キテ↢種種ノ疑難ヲ↡道イヒ↠不ジト↠得エ↢往生ヲ↡、或イハ云ハム、汝等ダチ衆生、曠劫ヨリ已来タ及以 オヨビ 今生ノ身口意業ニ、於テ↢一切凡聖ノ身ノ上ニ↡、具ツブサニ造リテ↢十悪・五逆・四重・謗法・闡提・破戒・破見等ノ罪ヲ↡、未ズ ダ↠能ハ↢除尽スルコト↡。然ルニ此等之罪ハ繋↢ツナギ属ツクス三界悪道ニ↡。云何ゾ一生ノ修福念仏ヲシテ、即チ入リテ↢彼ノ无漏无生之国ニ↡、永ク得ム↣証↢悟スルコトヲ不退ノ位ヲ↡也ヤト。

・三心義相 ・廻向発願心 ・答

 ^◆答こたへていはく、 諸仏しょぶつの教行きょうぎょう数かず塵沙じんじゃに越こえたり。 識さとりを稟うくる機き縁えん、 情こころに随したがひて一ひとつにあらず。

答ヘテ曰ク、▼諸仏ノ教行数カズ越エタリ↢塵砂ニ↡。稟ウホンクル↠識サトリヲ機縁、随ヒテ↠情コヽロニジヤウニ非ズ↠一ニ。

^◆たとへば世せ間けんの人ひと、 眼まなこに見みるべく信しんずべきがごときは、 明みょうのよく闇あんを破はし、 空くうのよく有うを含ふくみ、 地じのよく載養さいようし、 水みずのよく生しょう潤にんし、 火ひのよく成じょう壊えするがごとし。 これらのごときの事じ、 ことごとく待対たいたいの法ほうと名なづく。 すなはち目めに見みつべし、 千差せんじゃ万別まんべつなり。 いかにいはんや仏法ぶっぽう不ふ思議しぎの力ちから、 あに種々しゅじゅの益やくなからんや。

▼譬ヘバ如キ↢世間ノ人、眼ニ可ク↠見ル可キガ↟信ズ者ハ、如シ↢明ノ能ク破シ↠闇ヲ、空ノ能ク含フウガムミ↠有ヲ、地ノ能ク載サイノセ養シ、ヤシナウ水ノ能ク生潤ニンシ、ウルヲス火ノ能ク成ナシ壊スルガヤブル  ↡。如キノ↢此 レ等ラノ↡事、悉ク名ク↢待タイマツ対ムカフ之法ト↡。即チ目メニ可シ↠見ツ、千差シナ万別ナリ。何ニ況 ハンヤ仏法不思議之力、豈アニ无カラム↢種種ノ益↡也ヤ。

^◆*随したがひて一門いちもんを出いづるは、 すなはち一いち煩悩ぼんのうの門もんを出いづるなり。 随したがひて一門いちもんに入いるは、 すなはち一いち解げ脱だつ智慧ちえの門もんに入いるなり。

▼随ヒテ出ヅル↢一門ヲ↡者ハ、即チ出ヅル↢一煩悩ノ門ヲ↡也。▼随ヒテ入ル↢一門ニ↡者ハ、即チ入ル↢一解脱智0075*慧ノ門ニ↡也。

^◆ここを為も (▼為いの字じ、 定じょうなり、 用ゆうなり、 彼ひなり、 作さなり、 是ぜなり、 相そうなり) つて縁えんに随したがひて行ぎょうを起おこして、 おのおの解げ脱だつを求もとめよ。 ◆なんぢなにをもつてか、 いまし有う縁えんの要よう行ぎょうにあらざるをもつて、 われを障しょう惑わくする。 しかるにわが所愛しょあいはすなはちこれわが有う縁えんの行ぎょうなり、 すなはちなんぢが所しょ求ぐにあらず。 なんぢが所愛しょあいはすなはちこれなんぢが有う縁えんの行ぎょうなり、 またわれの所しょ求ぐにあらず。 このゆゑにおのおの所しょ楽ぎょう0223に随したがひてその行ぎょうを修しゅするは、 かならず疾とく解げ脱だつを得うるなり。

為モテ↢ *為ノ字 定也 用也 彼也 作也 是也 相也 此ヲ↡随ヒテ↠縁ニ起シテ↠行ヲ、各ノ求メヨ↢解脱ヲ↡。汝何ヲ以テカ乃シ将モテ↠非ザルヲ↢有縁之要行ニ↡、障↢惑スル於我ヲ↡。然ルニ我ガ之所愛ハ即チ是我ガ有縁之行ナリ、即チ非ズ↢汝ガ所求ニ↡。汝ガ之所愛ハ即チ是汝ガ有縁之行ナリ、亦非ズ↢我ガ所求ニ↡。是ノ故ニ各ノ随ヒ↢所楽ニ↡而テ修スル↢其ノ行ヲ↡者ハ、必ズ疾トク得ル↢解脱ヲ↡也。

^◆行ぎょう者じゃまさに知しるべし、 もし解げを学まなばんと欲おもはば、 凡ぼんより聖しょうに至いたるまで、 乃ない至し仏ぶっ果かまで、 一切いっさい礙さわりなし、 みな学まなぶことを得えよ。 もし行ぎょうを学まなばんと欲おもはば、 かならず有う縁えんの法ほうによれ。 少すこしき功く労ろうを用もちゐるに、 多おおく益やくを得うればなりと。

行者当ニシ↠知ル、▼若シ欲ハヾ↠学マナバムト↠解ヲ、従リ↠凡至ルマデ↠聖ニ、乃至仏果マデ、一切无シ↠サワリ、皆得ルコト↠学ブコトヲ也。▼若シ欲ハ↠学バムト↠行ヲ者バ、必ズ籍ヨジヤクレ↢▼有縁之法ニ↡。少スコシキ用ヰルニ↢功労ヲ↡、多ク得ウレバ↠益ヲ也ト。▼

・三心義相 ・廻向発願心 ・二河喩

 ^◆また一切いっさい往おう生じょう人にん等とうにまうさく、 いまさらに行ぎょう者じゃのために一ひとつの譬喩ひゆ (喩ゆの字じ、 さとす) を説ときて、 信心しんじんを守しゅ護ごして、 もつて外げ邪じゃ異い見けんの難なんを防ふせがん。 なにものかこれや。

▼又白サク↢一切往生人等ニ↡、今更サラニ為ニ↢行者ノ↡説キテ↢一ノ譬*喩ヲ↡、守↢護シテ信心ヲ↡、以テ防フセガム↢外邪異見之難ヲ↡。何者モノカ是 レ也ヤ。

^◆たとへば人ひとありて、 西にしに向むかひて行いかんとするに百ひゃく千せんの里りならん。 忽然こつねんとして中ちゅう路ろに見みれば二ふたつの河かわあり。 一ひとつにはこれ火ひの河かわ、 南みなみにあり。 二ふたつにはこれ水みずの河かわ、 北きたにあり。 二河にがおのおの闊ひろさ百ひゃく歩ぶ、 おのおの深ふかくして底そこなし、 南北なんぼく辺ほとりなし。

▼譬ヘバ如シ↧有リテ↠人欲スルニ↢向ヒテ↠西ニ行カント↡百千之里ナラム。忽コチ然トシテ中*路ニ見レバ有リ↢二ノ河↡。一ニハ是火ノ河 ハ在リ↠南ニ。二ニハ是水ノ河 ハ在リ↠北ニ。二河各ノ闊ヒロクワチサ百歩、各ノ深クシテ无シ↠底、南北无シ↠辺 リ。

^◆まさしく水すい火かの中ちゅう間げんに一ひとつの白びゃく道どうあり、 闊ひろさ四五しご寸すんばかりなるべし。 この道みち、 東ひがしの岸きしより西にしの岸きしに至いたるに、 また長ながさ百ひゃく歩ぶ、 その水みずの波は浪ろう交まじはり過すぎて道みちを湿うるおす。 その火か焔えん (焔ほのお、 けむりあるなり、 炎ほのお、 けむりなきほのほなり) また来きたりて道みちを焼やく。 水すい火かあひ交まじはりて、 つねにして休く息そくすることなけん。

正シク水火ノ中間ニ有リ↢一ノ白道↡、可シ↢闊ヒロサ四五寸許 リキヨナル↡、此ノ道従リ↢東ノ岸↡至ルニ↢西ノ岸ニ↡、亦長ナガサ百歩、其ノ水ノ波大ナミ浪小ナミ交マジワリ過スギテ湿ウルヲス↠道ヲ。其ノ火*焔亦来リテ焼ク↠道ヲ。水火相 ヒ交リテ常ニシテ无ケム↢休ヤミ息ヤムスルコト↡。

^◆この人ひとすでに空曠くうこうのはるかなる処ところに至いたるに、 さらに人物にんもつなし。 多おおく群賊ぐんぞく・悪あく獣じゅうありて、 この人ひとの単独たんどくなるを見みて、 競きおひ来きたりてこの人ひとを殺ころさんとす0224。 死しを怖おそれてただちに走はしりて西にしに向むかふに、 ◆忽然こつねんとしてこの大たい河がを見みて、 すなはちみづから念言ねんごんすらく、 ªこの河かわ、 南北なんぼくに辺畔へんぱんを見みず、 中ちゅう間げんに一ひとつの白びゃく道どうを見みる、 きはめてこれ狭少きょうしょうなり。 二ふたつの岸きしあひ去さること近ちかしといへども、 なにによりてか行ゆくべき。 今日こんにちさだめて死しせんこと疑うたがはず。

此ノ人既スデニ至ルニ↢空曠ノ迥ハルカナル処ニ↡、更サラニ无シ↢人物↡。多ク有リテ↢群ムラガル賊・悪獣ジユ↡ケダモノ、見テ↢此ノ人ノ単タンヒトヘ 独ヒトリナルヲ↡、競キソヒ来リテ欲ス↠殺セムト↢此ノ人ヲ↡。怖オソレテ↠死ヲ直ニ走リテ向フニ↠西ニ、忽然トシテ見テ↢此ノ大河ヲ↡、即チ自ミヅカラ念言スラク、此ノ河、南北ニ不ズ↠見↢辺畔パンヲホトリ↡、中間ニ見ル↢一ノ白道ヲ↡、極テ是狭ケチセバシ少ナリ。二ノ*岸相 ヒ去ルコト雖モ↠近シト、何ニ由リテカ可キ↠行ク。今日 ケフ 定メテ死セムコト不↠疑ハ。

^◆まさしく到いたり回かえらんと欲おもへば、 群賊ぐんぞく・悪あく獣じゅう、 漸々ぜんぜんに来きたり逼せむ。 まさしく南北なんぼくに避さり走はしらんとすれば、 悪あく獣じゅう・毒どく虫ちゅう、 競きおひ来きたりてわれに向むかふ。 まさしく西にしに向むかひて道みちを尋たずねて去ゆかんとすれば、 またおそらくはこの水すい火かの二河にがに堕だせんことをº と。 ^時ときにあたりて惶こう怖ふすることまたいふべからず。

正シク欲スレバ↢到リ回 ヘラムト↡、群賊・悪獣漸漸ニ来リ逼セム。正シク欲スレバ↢南0076北ニ避サリ走ラムト↡、悪獣・毒虫競ヒ来リテ向フ↠我ニ。正シク欲スレバ↢向ヒテ↠西ニ尋タヅネ↠道ヲ而テ去カムト↡、復恐オソラクハ*堕センコトヲト↢此ノ水火ノ二河ニ↡。当リテ↠時ニ惶オソレ 怖オソルスルコト不ズ↢復可カラ↟言フ。

^◆すなはちみづから思し念ねんすらく、 ªわれいま回かえらばまた死しせん、 住とどまらばまた死しせん、 去ゆかばまた死しせん。 一種いっしゅとして死しを勉まぬかれざれば、 われ*寧やすくこの道みちを尋たずねて前さきに向むかひて去ゆかん。 すでにこの道みちあり、 かならず可度かどすべしº と。

即チ自ミヅカラ思念スラク、我 レ今回カヘラバ亦死セム、住トドマラバ亦死セム、去ユカバ亦死セム。一種トシテ不レ↠勉マヌカレ↠死ヲ者バ、我 レ寧ヤスク尋タヅネテ↢此ノ道ヲ↡向フ↠前 キニ而テ去ユカム。既 デニ有リ↢此ノ道↡、必ズ応ベシト↢可度ス↡。

^◆この念ねんをなす時とき、 東ひがしの岸きしにたちまちに人ひとの勧すすむる声こえを聞きく、 ªきみただ決けつ定じょうしてこの道みちを尋たずねて行ゆけ、 かならず死しの難なんなけん。 もし住とどまらばすなはち死しせんº と。

作ス↢此ノ念ヲ↡時、東ノ岸ニ忽タチマチニ聞ク↢人ノ勧ムル声ヲ↡、仁者 キミ 但決定シテ尋タヅネテ↢此ノ道ヲ↡行ユケ、必ズ无ケム↢死ノ難↡。若シ住ラバ即チ死セムト。

^▼また西にしの岸きしの上うえに、 人ひとありて*喚よばひていはく、 ªなんぢ*一心いっしんに正しょう念ねんにしてただちに来きたれ、 われよくなんぢを護まもらん。 すべて水すい火かの難なんに堕だせんことを畏おそれざれº と。

又西ノ岸ノ上ニ有リテ↠人喚ヨバウテ言ハク、汝一心ニ正念ニシテ直ニ来レ、我 レ能ク護ラム↠汝ヲ。衆 ベテ不レト↠畏 ソレ↠堕セムコトヲ↢於水火之難ニ↡。

^◆この人ひと、 すでにここに遣つかはし、 か0225しこに喚よばふを聞ききて、 すなはちみづからまさしく身心しんしんに当あたりて、 決けつ定じょうして道みちを尋たずねてただちに進すすんで、 疑ぎ怯こう退心たいしんを生しょうぜずして、

此ノ人既ニ聞キテ↢此コヽニ遣ツカハシ彼 コニ喚 バフヲ↡、即チ自ミヅカラ正シク当リテ↢身心ニ↡、決定シテ尋ネテ↠道ヲ直ニ進デ、不ズシテ↠生ゼ↢疑怯カウコワク 退シリゾク心ヲ↡、

^◆あるいは行ゆくこと一分いちぶん二に分ぶんするに、 東ひがしの岸きしの群賊ぐんぞく等ら喚よばひていはく、 ªきみ回かえり来きたれ、 この道みち嶮悪けんあくなり、 過すぐることを得えじ。 かならず死しせんこと疑うたがはず。 われらすべて悪心あくしんあつてあひ向むかふことなしº と。 ^この人ひと、 喚よばふ声こえを聞きくといへども、 また回顧かえりみず、 一心いっしんにただちに進すすんで道みちを念ねんじて行ゆけば、 ◆須しゅ臾ゆにすなはち西にしの岸きしに到いたりて、 永ながくもろもろの難なんを離はなる。 善ぜん友ぬあひ見みて慶きょう楽らくすること已やむことなからんがごとし。

或イハ行ユクコト一分二分スルニ、東ノ岸ノ群賊等ラ喚ヒテ言ハク、仁者 キミ 回カヘリ来レ、此ノ道 チ嶮ケンサカシ悪ナリ、不ジ↠得エ↠過グルコトヲ。必ズ死セムコト不ズ↠疑ハ。我 レ等ラ衆テ无シト↢悪心アテ相 ヒ向フコト↡。此ノ人 ト雖モ↠聞クト↢喚フ声ヲ↡、亦不ズ↢回顧カヘリミ↡、一心ニ直ニ進デ念ジ↠道ヲ而テ行ユケバ、須臾ニ即チ到リテ↢西ノ岸ニ↡、永ク離ル↢諸難ヲ↡。善友相 ヒ見テ慶ヨロコブ楽スルコト无カラムガ↞已ヤムコト。

^◆これはこれ喩たと (喩ゆの字じ、 をしへなり) へなり。

此ハ是*喩タトヘ也。

・三心義相 ・廻向発願心 ・合法

 ^◆次つぎに喩たとへを合がっせば、 ◆ª東ひがしの岸きしº といふは、 すなはちこの娑しゃ婆ばの火か宅たくに喩たとふ。

▼次ニ合セ↠喩ヲ者バ、言フ↢東ノ岸ト↡者ハ、即チ喩フ↢此ノ娑婆之火宅ニ↡也。

^◆ª西にしの岸きしº といふは、 すなはち極楽ごくらく宝国ほうこくに喩たとふ。

言フ↢西ノ岸ト↡者ハ、即チ喩フ↢極楽宝国ニ↡也。

^◆ª群賊ぐんぞく・悪あく獣じゅう詐いつわり親したしむº といふは、 すなはち衆しゅ生じょうの六根ろっこん・六識ろくしき・六塵ろくじん・五ご陰おん・四し大だいに喩たとふ。

言フ↢群賊・悪獣 詐サイツワリ 親トシタシム↡者ハ、即チ喩フ↢衆生ノ六根・六識シキ・六塵・五陰オム・四大ニ↡也。

^◆ª無む人にん空くう迥きょうの沢さわº といふは、 すなはちつねに悪あく友うに随したがひて真しんの善ぜん知ぢ識しきに値あはざるに喩たとふ。

言フ↢无人空迥クヰヤウノハルカナリ沢ト↡者ハ、即チ喩フ↧常ニ随ヒテ↢悪友ニ↡不ルニ↞値アワ↢真ノ善知識ニ↡也。

^◆ª水すい火かの二河にがº といふは、 すなはち衆しゅ生じょうの貪愛とんないは水みずのごとし、 瞋憎しんぞうは火ひのごとしと喩たとふ。

言フ↢水火ノ二河ト↡者ハ、即チ喩フ↢衆生ノ貪愛ハ如シ↠水ノ、瞋憎ハ如シト↟火ノ也。

^▼ª中ちゅう間げんの▽白びゃく道どう四五しご寸すんº といふは、 すなはち衆しゅ生じょうの貪瞋とんじん煩悩ぼんのうのなかに、 ▽よく*清浄しょうじょう願がん往おう生じょうの心しんを生しょうぜしむるに喩たとふ。 いまし貪瞋とんじん強こわきによるがゆゑに0226、 すなはち水すい火かのごとしと喩たとふ。 善心ぜんしん、 微みなるがゆゑに、 白びゃく道どうのごとしと喩たとふ。

言フ↢中間ノ白道四五寸ト↡者ハ、即チ喩フ↢衆生ノ貪瞋煩悩ノ中ニ、能ク生ゼシムルニ↢清浄願往生ノ心0077ヲ↡也。乃シ由ルガ↢貪瞋強コハキニ↡故ニ即チ喩フ↠如シト↢水火ノ↡。善心微ナルガスクナシ 故ニ喩フ↠如シト↢白道ノ↡。

^◆また ª水すい波はつねに道みちを湿うるおすº とは、 すなはち愛心あいしんつねに起おこりてよく善心ぜんしんを染ぜん汚わするに喩たとふ。

又水波常ニ湿ウルホスト↠道ヲ者ハ、即チ喩フ↣愛心常ニ起リテ能ク染ゼンソメ↢汚ワケガススルニ善心ヲ↡也。

^◆また ª火か焔えんつねに道みちを焼やくº とは、 すなはち瞋嫌しんけんの心しんよく功く徳どくの法財ほうざいを焼やくに喩たとふ。

又火*焔エム常ニ焼クト↠道ヲ者ハ、即チ喩フ↣瞋シンイカリ 嫌ケンキラフ之心能ク焼クニ↢功徳之法財ヲ↡也。

^◆ª人ひと、 道みちの上うえを行ゆいて、 ただちに西にしに向むかふº といふは、 すなはちもろもろの行ぎょう業ごうを*回えしてただちに西方さいほうに向むかふに喩たとふ。

言フ↧人行ユイテ↢道ノ上ヲ↡直ニ向フト↞西ニ者ハ、即チ喩フ↧回シテ↢諸ノ行業ヲ↡直ニ向フニ↦西方ニ↥也。

^◆ª東ひがしの岸きしに人ひとの声こえの勧すすめ遣つかはすを聞ききて、 道みちを尋たずねてただちに西にしに進すすむº といふは、 すなはち釈しゃ迦かすでに滅めっしたまひて、 後のちの人ひと見みたてまつらず、 なほ教きょう法ぼうありて尋たずぬべきに喩たとふ、 すなはちこれを声こえのごとしと喩たとふるなり。

言フ↧東ノ岸ニ聞キテ↢人ノ声ノ勧メ遣ツカハスヲ↡、尋ネテ↠道ヲ直ニ西ニ進ムト↥者ハ、即チ喩フ↧釈迦已ニ滅シタマヒテ後ノ人不ズ↠見タテマツラ、由ナホ有リテ↢教法↡可キニ↞尋タヅヌ、即チ喩フル↢之ヲ如シト↟声ノ也。

^◆ªあるいは行ゆくこと一分いちぶん二に分ぶんするに群賊ぐんぞく等ら喚よび回かえすº といふは、 すなはち別べつ解げ・別べつ行ぎょう・悪見あくけんの人ひと等ら、 *みだりに見けん解げをもつてたがひにあひ惑乱わくらんし、 およびみづから罪つみを造つくりて退失たいしつすと説とくに喩たとふるなり。

言フ↢或イハ行クコト一分二分スルニ群賊等ラ喚ヨビ回カヘスト↡者ハ、即チ喩フル↢別解・別行・悪見ノ人等ラ、妄マウミダリニ説シ↢見解ヲモテ迭タガイニ相 ヒ惑乱シ、及ビ自ミヅカラ造リテ↠罪ヲ退失スト↡也。

^◆ª西にしの岸きしの上うえに人ひとありて喚よばふº といふは、 すなはち弥陀みだの願がん意いに喩たとふ。

言フ↢西ノ岸ノ上ニ有リテ↠人喚フト↡者ハ、即チ喩フ↢弥陀ノ願意ニ↡也。

^◆ª須しゅ臾ゆに西にしの岸きしに到いたりて善ぜん友ぬあひ見みて喜よろこぶº といふは、 すなはち衆しゅ生じょう久ひさしく生しょう死じに沈しずみて、 曠劫こうごうより輪りん廻ねし、 迷倒めいとうしてみづから纏まとひて、 解げ脱だつするに由よしなし。 ▼仰あおいで釈しゃ迦か発遣はっけんして、 指おしへて西方さいほうに向むかへたまふことを蒙かぶり、 また弥陀みだの悲ひ心しん招しょう喚かんしたまふによつて、 いま二に尊そんの意おんこころに信しん順じゅんして0227、 水すい火かの二河にがを顧かえりみず、 念々ねんねんに遺わするることなく、 かの願力がんりきの道どうに乗じょうじて、 捨しゃ命みょう以後いごかの国くにに生しょうずることを得えて、 仏ぶつとあひ見みて慶きょう喜きすること、 なんぞ極きわまらんと喩たとふるなり。

言フ↧須臾ニ到リテ↢西ノ岸ニ↡善友相 ヒ見テ喜ブト↥者ハ、即チ喩フル↧衆生久シク沈ミテ↢生死ニ↡、曠劫ヨリ淪回シ、迷メイ倒シテ自ミヅカラ纏マトウテ、无シ↠由ヨシ↢解脱スルニ↡、仰デ蒙カブリ↣釈迦発遣シテ指オシヘテ向ヘタマフコトヲ↢西方ニ↡、又籍ヨテ↢弥陀ノ悲心招セウマネキ喚クワン ヨブ シタマフニ↡、今信↢順シテ二尊之意オンコヽロニ↡、不ズ↠顧カヘリミ↢水火ノ二河ヲ↡、念念ニ无ク↠遺ワスルルコト乗ジテ↢彼ノ願力之道ニ↡、捨命已後得テ↠生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡、与ト↠仏相 ヒ見テ慶喜スルコト何ゾ極ラムト↥也。

 ^◆また一切いっさいの行ぎょう者じゃ、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがに三業さんごうの所修しょしゅ、 昼ちゅう夜や時じ節せつを問とふことなく、 つねにこの解げをなし、 つねにこの想そうをなすがゆゑに、 回え向こう発願ほつがん心しんと名なづく。

▼又一切ノ行者、行住坐臥ニ三業ノ所修、无ク↠問フコト↢昼夜時節ヲ↡、常ニ作シ↢此ノ解ヲ↡、常ニ作スガ↢此ノ想ヲ↡故ニ名ク↢廻向発願心ト↡。

^◆また回え向こうといふは、 かの国くにに生しょうじをはりて、 還かえりて大だい悲ひを起おこして、 生しょう死じに回え入にゅうして衆しゅ生じょうを教きょう化けする、 また回え向こうと名なづくるなり。

▼又言フ↢回向ト↡者ハ、生ジ↢彼ノ国ニ↡已リテ、還リテ起シテ↢大悲ヲ↡、回↢入シテ生死ニ↡教↢化スル衆生ヲ↡、亦名クル↢回向ト↡也。

・三心義相 ・三心結釈

 ^◆三心さんしんすでに具ぐすれば、 行ぎょうとして成じょうぜざるなし。 願がん行ぎょうすでに成じょうじて、 もし生しょうぜずは、 この処ことわりあることなしとなり。 またこの三心さんしん、 また*定じょう善ぜんの義ぎを通つう摂しょうすと、 知しるべし」 と。 以上

▼三心既ニ具スレバ、无シ↢行トシテ不ル↟成ゼ。願行既ニ成ジテ、▼若シ不ズ↠生ゼ者ハ、无シト↠有ルコト↢是ノ処コトハリ↡也。▼又此ノ三心、亦通0078↢摂スト定善之義ヲ↡、応シト↠知ル。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)¬般舟讃¼

・釈尊善巧

【14】^またいはく (*般舟讃)、

又云ク、

^「▲敬うやまひて一切いっさい往おう生じょうの知ち識しき等とうにまうさく、 大おおきにすべからく慚ざん愧ぎすべし。 釈しゃ迦か如来にょらいはまことにこれ慈悲じひの父母ぶもなり。 種々しゅじゅの方便ほうべんをして、 われらが無む上じょうの信心しんじんを発ほっ起きせしめたまへり」 と。 以上

「▼敬ヒテ白サク↢一切往生ノ知識等ニ↡、大ニ須クシ↢慚愧ス↡。釈迦如来ハ実ニ是慈悲ノ父母ナリ。種種ノ方便ヲシテ発↢起セシメタマヘリト我等ラガ无上ノ信心ヲ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)¬礼讃¼

・機受信相

【15】^¬*貞元ていげんの新しん定じょう釈教しゃくきょうの目録もくろく¼ 巻かん第だい十じゅう一いちにいはく、

¬貞元ノ新定釈教ノ目録¼巻第十一ニ云ク、

^「¬*集しゅう諸しょ経きょう礼懴らいさん儀ぎ¼ 上じょう下げ 大唐だいとう西さい崇しゅう福ふく寺じの沙門しゃもん*智ち昇しょうの撰せんなり。 *貞元ていげん十じゅう五ご年ねん十じゅう月がつ二に十じゅう三さん日にちの勅ちょくに准じゅん0228じて編へん入にゅうす」 と云々うんぬん。 ¬懴さん儀ぎ¼ の上じょう巻かんは、 智ち昇しょう、 諸しょ経きょうによりて ¬懴さん儀ぎ¼ を造つくるなかに、 ¬観かん経ぎょう¼ によりて善導ぜんどうの ¬礼懴らいさん¼ (*礼讃) の日にっ中ちゅうの時ときの礼らいを引ひけり。 下げ巻かんは 「比丘びく善導ぜんどうの集しゅう記き」 と云々うんぬん。 ^かの ¬懴さん儀ぎ¼ によりて要文ようもんを鈔しょうしていはく、

「▼¬集諸経礼懴儀¼ *上下 *大唐西崇シユ福寺ノ沙門智昇ノ撰也。准ナズラヘテ↢貞元十五年十月廿三日ニ↡勘カムカムガウ編ヘンシテツラヌ入ルト」云云。¬懴儀ノ¼上巻ハ、智昇依リテ↢諸経ニ↡造ル↢¬懴儀ヲ¼↡中ニ、依リテハ↢¬観経ニ¼↡引ケリ↢善導ノ¬礼懴ノ¼日中ノ時ノ礼ヲ↡。下巻者ハ「比丘善導ノ集記ト」云云。依リテ↢彼ノ¬懴儀ニ¼↡鈔シテ↢ヌク エラブトモ要文ヲ↡云ク、

^「▲二ふたつには深心じんしん、 すなはちこれ真実しんじつの信心しんじんなり。 自じ身しんはこれ煩悩ぼんのうを具ぐ足そくせる凡ぼん夫ぶ、 善根ぜんごん薄はく少しょうにして三界さんがいに流る転てんして火か宅たくを出いでずと信しん知ちす。 いま弥陀みだの本ほん弘ぐ誓ぜい願がんは、 名みょう号ごうを称しょうすること*下至げし十じっ声しょう聞もん等とうに及およぶまで、 さだめて往おう生じょうを得えしむと信しん知ちして、 *一念いちねんに至いたるに及およぶまで疑ぎ心しんあることなし。 ゆゑに深心じんしんと名なづくと。 乃至

「二ニ者ハ深心、▼即チ是真実ノ信心ナリ。信↧知ス自身ハ是具↢足セル煩悩ヲ↡凡夫、善根薄ウスシ少ニシテ流↢転シテ三界ニ↡不ズト↞出デ↢火宅ヲ↡。今▼信↪知シテ弥陀ノ本弘誓願ヲバ、及ブマデ↧称スルコト↢名号ヲ↡下至十声*聞等ニ↥、定メテ得エシムト↩往生ヲ↨、▼及ブマデ↠至ルニ↢一念ニ↡無シ↠有ルコト↢疑心↡。故ニ名クト↢深心ト↡。 乃至

 ^▲ªそれかの弥陀みだ仏ぶつの名みょう号ごうを聞きくことを得うることありて、 歓かん喜ぎして一心いっしんを至いたせば、 みなまさにかしこに生しょうずることを得うべしº」 と。 抄出

▼其 レ有リテ↠得ルコト↠聞クコトヲ↢彼ノ弥陀仏ノ名号ヲ↡
▼歓喜シテ至セバ↢一*心ヲ↡皆当ニシト↠得ウ↠生ズルコトヲ↠彼 コニ」 抄出

一 Ⅰ ⅱ b ロ (三)横川(大信の利益を明かす)
            (Ⅰ)¬往生要集¼

・領受体徳

【16】^¬*往おう生じょう要よう集しゅう¼ (上) にいはく、

▼¬往生要集ニ¼云ク、

^「▲ª入にゅう法界ほっかい品ぼんº にのたまはく、 ª^たとへば人ひとありて不可ふか壊えの薬くすりを得うれば、 一切いっさいの怨敵おんてきその便たよりを得えざるがごとし。 菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつもまたまたかくのごとし。 菩ぼ提だい心しん不可ふか壊えの法薬ほうやくを得うれば、 一切いっさいの煩悩ぼんのう、 諸しょ魔ま怨敵おんてき、 壊えすることあたはざるところなり。

「入法界品ニ言ク、譬ヘバ如シ↧有リテ↠人得レバ↢不可壊ノ薬ヲ↡、一切ノ怨オンアダ 敵テキカタキ不ルガ↞得↢其ノ便タヨ ヲ↡。菩薩摩訶薩モ亦復 マタ 如シ↠是クノ。得レバ↢菩提心不可壊ノ法薬ヲ↡、一切ノ煩悩、諸魔怨敵、所ナリ↠不ル↠能ハ↠壊ヤブルスルコト。

^◆たとへば人ひとありて住じゅう水すい宝珠ほうしゅを得えて、 その身みに瓔珞ようらくとすれば、 深ふかき水すい中ちゅうに入いりて没もつ溺にゃくせざるがごとし。 菩ぼ0229提だい心しんの住じゅう水すい宝珠ほうしゅを得うれば、 生しょう死じ海かいに入いりて沈没ちんもつせず。

譬ヘバ如シ↧有リテ↠人得テ↢住水宝珠ヲ↡、瓔↢珞トスレバ其ノ身ニ↡、入リ↢深キ水中0079ニ↡而テ不ルガ↦没シヅミ 溺オボルセ↥。得レバ↢菩提心ノ住水宝珠ヲ↡、入リ↢生死海ニ↡而テ不ズ↢沈没セ↡。

^◆たとへば金剛こんごうは百ひゃく千せん劫こうにおいて水すい中ちゅうに処しょして爛らん壊えし、 また異い変へんなきがごとし。 菩ぼ提だいの心しんもまたまたかくのごとし。 無む量りょう劫こうにおいて生しょう死じのなか、 もろもろの煩悩ぼんのうの業ごうに処しょするに、 断滅だんめつすることあたはず、 また損減そんげんなしº」 と。 以上

譬ヘバ如シ↧金剛ハ於テ↢百千劫ニ↡処シ↢於水中ニ↡而テ爛ランミダル壊シ亦無キガ↦異変↥カハル。菩提之心モ亦復如シ↠是クノ。於テ↢无量劫ニ↡処スルニ↢生死ノ中 カ諸ノ煩悩ノ業ニ↡、不ズ↠能ハ↢断滅スルコト↡、亦无シト↢損ソンホロブ減ゲン↡。スクナシ」 已上

・本仏照護

【17】^またいはく (往生要集・中)、

▼又云ク、

^「▲われまたかの摂取せっしゅのなかにあれども、 煩悩ぼんのう、 眼まなこを障さへて見みたてまつるにあたはずといへども、 大だい悲ひ、 *倦ものうきことなくして、 つねにわが身みを照てらしたまふ」 と。 以上

「我亦在レドモ↢彼ノ摂取之中ニ↡、煩悩障ヘテ↠眼ヲ雖モ↠不ズト↠能ハ↠見タテマツルニ、大悲无クシテ↠倦モノウキコト、常ニ照シタマフト↢我ガ身ヲ↡。」 已上

一 Ⅰ ⅲ 結

【18】^▼しかれば、 ▼もしは行ぎょう、 もしは信しん、 一いち事じとして阿あ弥陀みだ如来にょらいの清浄しょうじょう願心がんしんの*回え向こう成じょう就じゅしたまふところにあらざることあることなし。 ▲*因いんなくして他たの因いんのあるにはあらざるなりと、 知しるべし。

▼爾レ者バ若シハ行若シハ信、无シ↠有ルコト↤一事トシテ非ザルコト↣阿弥陀如来ノ清浄願心之所ニ↢回向成就シタマフ↡。非ザル↢无クシテ↠因他ノ因ノ有アルニハ↡也ト、可シ↠知ル。

一 Ⅱ 料簡
    ⅰ 正明【三一問答】
      a 問

【19】^▼*問とふ。 如来にょらいの本願ほんがん (第十八願)、 すでに▲至し心しん・信しん楽ぎょう・欲よく生しょうの誓ちかいを発おこしたまへり。 なにをもつてのゆゑに論主ろんじゅ (*天親) ▲一心いっしんといふや。

▼問フ。如来ノ本願、已ニ発シタマヘリ↢至心・信楽・欲生ノ誓ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ論主言フ↢一心ト↡也ヤ。

一 Ⅱ ⅰ b 答
        イ 解釈
          (一) 略釈

 ^▼答こたふ。 愚ぐ鈍どんの衆しゅ生じょう、 解げ了りょう易やすからしめんがために、 弥陀みだ如来にょらい、 三心さんしんを発おこしたまふといへども、 涅ね槃はんの真因しんいんはただ信心しんじんをもつてす。 このゆゑに論主ろんじゅ (天親)、 三さんを合がっして一いちとせるか。

答フ。愚鈍ノ衆生、解了為ニ↠令メムガ↠易カラ、弥陀如来雖モ↠発シタマフト↢三心ヲ↡、涅槃ノ真因ハ唯以テス↢信心ヲ↡。是ノ故ニ論主合シテ↠三ヲ為セル↠一ト*歟カ。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二) 広釈
            (Ⅰ)字訓に寄せて釈す【字訓釈】
              (ⅰ)標

【023020】^▼わたくしに三心さんしんの字じ訓くんを闚うかがふに、 三さんすなはち一いちなるべし。

▼私ワタクシニ闚ウカヾフニ↢三心ノ字訓クンヲオシヘ↡、三即チ合ベシ↠一ナル。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)釈
                (a)微

^▼その意こころいかんとなれば、

其ノ意何ントナレ者バ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)正釈
                  (イ)出訓

^▼「至し心しん」 といふは、 「至し」 とはすなはちこれ1真しんなり、 2実じつなり、 3誠じょうなり。 「心しん」 とはすなはちこれ1種しゅなり、 2実じつなり。

*言フ↢至心ト↡者ハ、至ト者ハ即チ是真也、実也、誠也。心ト者即チ是種也、実也。

^▼「信しん楽ぎょう」 といふは、 「信しん」 とはすなはちこれ1真しんなり、 2実じつなり、 3誠じょうなり、 4満まんなり、 5極ごくなり、 6成じょうなり、 7用ゆうなり、 8重じゅうなり、 9審しんなり、 10験げんなり、 11宣せんなり、 12忠ちゅうなり。 「楽ぎょう」 とはすなはちこれ1欲よくなり、 2願がんなり、 3愛あいなり、 4悦えつなり、 5歓かんなり、 6喜きなり、 7賀がなり、 8慶きょうなり。

*言フ↢信楽ト↡者ハ、信ト者即チ是真也、実也、誠也、満ミツ也、極也、成也、用ユウ也、重也、審也、ツマビラカナリ験ゲン也シルシ 、宣ノブ也、忠チウ也。コヽロザシ 楽ト者*即チ是欲也、願也、愛也ヨミス 、悦也ヨロコブ、歓也、喜也、*賀ヨロコブガナリ也、*慶也。

▼^「欲よく生しょう」 といふは、 「欲よく」 とはすなはちこれ1願がんなり、 2楽ぎょうなり、 3覚かくなり、 4知ちなり。 「生しょう」 とはすなはちこれ1成じょうなり、 2作さ (作さの字じ、 為いなり、 起きなり、 行ぎょうなり、 役えきなり、 始しなり、 生しょうなり) なり、 3為いなり、 4興こうなり。

言フ↢欲生ト↡者ハ、欲ト者即チ是願也、楽フ也、覚也サトル 、知也。生ト者即チ是成0080也、作 *作ノ字 則羅反 則落反 蔵*洛反 為也 起也 行也 *役也 始也 生也 也、為也、興也オコス 。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)会訓

^▼あきらかに知しんぬ、 「至し心しん」 は、 すなはちこれ*真実しんじつ誠じょう種しゅの心しんなるがゆゑに、 *疑ぎ蓋がい雑まじはることなきなり。

明ニ知ヌ至心ハ即チ是真実*誠マコト種之心ナルガ故ニ、疑蓋オホフ无キ↠*雑ハルコト也。

^▼「信しん楽ぎょう」 は、 すなはちこれ*真実しんじつ誠じょう満まんの心しんなり、 *極ごく成じょう用ゆう重じゅうの心しんなり、 *審験しんげん宣せん忠ちゅうの心しんなり、 *欲願よくがん愛悦あいえつの心しんなり、 *歓かん喜ぎ賀が慶きょうの心しんなるがゆゑに、 疑ぎ蓋がい雑まじはることなきなり。

信楽ハ即チ是真実誠満之心ナリ、極成用ユウ重之心ナリ、審アキラカナリ*験ゲンシルシ宣忠之心ナリ、欲願愛悦之心ナリ、歓喜*賀*慶ケイ之心ナルガ故ニ、疑蓋无キ↠雑ハルコト也。

^▼「欲よく生しょう」 は、 すなはちこれ*願がん楽ぎょう覚かく知ちの心しんなり、 *成じょう作さ為い興こうの心しんなり。 *大だい悲ひ回え向こうの心しんなるがゆゑに、 疑ぎ蓋がい雑まじはることなきなり。

欲生ハ即チ是願楽覚知之心ナリ、成作為興之心ナリ。大悲回向之心ナルガ故ニ、疑蓋无キ↠雑ハルコト也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ハ)成一

^▼いま三心さんしんの字じ訓くんを案あんずるに、 真実しんじつの心しんにして虚仮こけ雑まじはること0231なし、 正しょう直じきの心しんにして邪じゃ偽ぎ雑まじはることなし。 まことに知しんぬ、 疑ぎ蓋がい間雑けんぞうなきがゆゑに、 これを信しん楽ぎょうと名なづく。 信しん楽ぎょうすなはちこれ一心いっしんなり、 一心いっしんすなはちこれ真実しんじつ信心しんじんなり。 このゆゑに論主ろんじゅ (天親)、 建はじめに 「一心いっしん」 といへるなりと、 知しるべし。

今按ズルニ↢三心ノ字*訓クンヲ↡、オシヘ コヽロトイフ真実ノ心ニ而シテ虚仮无シ↠雑ハルコト、正直ノ心ニ而シテ邪偽无シ↠雑ハルコト。真 トニ知ヌ、疑蓋无キガ↢間雑↡故ニ、是ヲ名ク↢信楽ト↡。信楽即チ是一*心ナリ、一心即チ是真実信心ナリ。是ノ故ニ論主建ハジメニ言ヘル↢一心ト↡也ト、応シ↠知ル。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)法義に就きて釈す【法義釈】
              (ⅰ)正しく三心即一を明かす
                (a)問

【21】^また問とふ。 ▼字じ訓くんのごとき、 論主ろんじゅの意こころ、 三さんをもつて一いちとせる義ぎ、 その理りしかるべしといへども、 愚ぐ悪あくの衆しゅ生じょうのために阿あ弥陀みだ如来にょらいすでに三心さんしんの願がんを発おこしたまへり。 いかんが思し念ねんせんや。

▼又問フ。如キ↢字訓ノ↡、論主ノ意以テ↠三ヲ為セル↠一ト義、其ノ理雖モ↠可シト↠然ル、為ニ↢愚悪ノ衆生ノ↡阿弥陀如来已ニ発シタマヘリ↢三心ノ願ヲ↡。云何イカンガ思念セム也ヤ。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)答
                  (イ)正釈
                    [一]総標

 ^答こたふ。 仏ぶつ意い測はかりがたし。

▼答フ。仏意難シ↠惻リ。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二]弁別
                      [Ⅰ]至心を釈す【至心釈】
                        [ⅰ]正明
                          [a]正釈

・表謙遜意

^しかりといへども、 ひそかにこの心しんを推すいするに、

▼雖モ↠然リト、窃ヒソカニ推オススルニ↢斯ノ心ヲ↡、

・所為機相

^▽一切いっさいの群ぐん生じょう海かい、 *無始むしよりこのかた乃ない至し今日こんにち今こん時じに至いたるまで、 *穢え悪あく汚わ染ぜんにして清浄しょうじょうの心しんなし、 *虚仮こけ諂てん偽ぎにして真実しんじつの心しんなし。

一切ノ群生*海クラシ、自↢従ヨリ无始↡已来タ乃至今日至ルマデ↢今時ニ↡、*穢ヱケガラハシ悪*汚ワケガス染ソムニシテ无シ↢清浄ノ心↡、虚仮 諂テンヘツラフ偽ニシテ无シ↢真実ノ心↡。

・法体成就

^▽ここをもつて如来にょらい、 一切いっさい苦く悩のうの衆しゅ生じょう海かいを悲ひ憫びんして、 不可ふか思議しぎ*兆ちょう載さい永劫ようごうにおいて、 菩ぼ薩さつの行ぎょうを行ぎょうじたまひし時とき、 三さん業ごうの所修しょしゅ、 一念いちねん一いっ刹せつ那なも清浄しょうじょうならざることなし、 真心しんしんならざることなし。 ▼如来にょらい、 清浄しょうじょうの真心しんしんをもつて、 *円えん融にゅう無礙むげ*不可ふか思議しぎ不可ふか称しょう不可ふか説せつの至し徳とくを成じょう就じゅしたまへり。

是ヲ以テ如来悲↢憫ビンシテアワレブ一切苦悩ノ衆生海ヲ↡、於テ↢不可思議兆テウ載永劫ニ↡、行ジタマフシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、三業ノ所修、一念一刹那モ无シ↠不ルコト↢清浄ナラ↡、无シ↠不ルコト↢真心ナラ↡。如来以テ↢清浄ノ真心ヲ↡、成↢就シタマヘリツク ナルトモ 円融无不可思議不可称不可説ノ至徳ヲ↡。

・法界回施

^▽如来にょらいの至し心しんをもつて、 諸しょ有うの一切いっさい煩悩ぼんのう悪業あくごう邪じゃ智ちの群ぐん生じょう海かいに*回施えせしたまへり。

以テ↢如来ノ至心ヲ↡、回↢*施シタマヘリホドコス ハヅストモ諸有ノ一切煩悩悪業邪0081智ノ群生海ニ↡。

・結帰一心

^▽すなはちこれ利他りたの真心しんしんを彰あらわ0232す。 ゆゑに疑ぎ蓋がい雑まじはることなし。

則チ是彰アラハス↢利他ノ真心ヲ↡。故ニ疑*蓋ボムナフ无シ↠雑ハルコト。

・出体

^▼この至し心しんはすなはちこれ*至し徳とくの尊号そんごうをその体たいとせるなり。

斯ノ至心ハ則チ是至徳ノ尊号ヲ為セル↢其ノ体ト↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][b]引文
                            [イ]経文
                              ª一º¬大経¼

【22】^ここをもつて ¬大だい経きょう¼ (上) にのたまはく、

是ヲ以テ▼¬大経ニ¼言ク、

^「▲欲覚よくかく・瞋覚しんかく・害覚がいかくを生しょうぜず。 欲想よくそう・瞋想しんそう・害想がいそうを起おこさず。 色しき・声しょう・香こう・味みの法ほうに着じゃくせず。 忍力にんりき成じょう就じゅして衆しゅ苦くを計はからず。 少しょう欲よく知ち足そくにして染ぜん・恚い・痴ちなし。 三昧さんまい常寂じょうじゃくにして智慧ちえ無礙むげなり。

「▼*不ズ↠生ゼ↢欲覚・瞋覚・害覚ヲ↡。不ズ↠起サ↢▼欲想・瞋想・害想ヲ↡。▼不ズ↠著セ↢色・声・香・味之法ニ↡。▼忍力成就シテ不ズ↠計ラ↢衆苦ヲ↡。▼少欲知足タルニシテ▼无シ↢染ツク・恚イカル・痴↡。オロカナリ▼三味▼常寂ニシテシヅカナリ▼智*慧▼无ナリ。

^▼虚偽こぎ諂曲てんごくの心しんあることなし。 和わ顔げん愛あい語ごにして、 意こころを先さきにして承じょう問もんす。 ◆勇ゆう猛みょう精しょう進じんにして志し願がん倦ものうきことなし。 ◆もつぱら清白しょうびゃくの法ほうを求もとめて、 もつて群ぐん生じょうを恵利えりしき。 ◆三宝さんぼうを恭く敬ぎょうし、 師し長ちょうに奉事ぶじしき。 大だい荘しょう厳ごんをもつて衆しゅ行ぎょうを具ぐ足そくして、 もろもろの衆しゅ生じょうをして功く徳どく成じょう就じゅせしむ」 とのたまへりと。 以上

▼无シ↠有ルコト↢虚偽グヰイツハル 諂テムヘツラフ曲ゴク之心↡。和顔カオバセ 愛アハレミ 語コトバニシテ、先ニシテ↠意ヲ承ジヨウ ツク 問ス。▼勇イサム 猛タケシ 精モハラ進ニシテ志願无シ↠惓モノウクヱンキコト。専ラ求メテ↢清キヨシ白之法ヲ↡、以テ恵↢メグム利シキ群生ヲ↡。▼恭↢ツヽシム敬シ三宝ヲ↡、奉↢ツカフ事シキ師長ニ↡。以テ↢大荘カザリ厳ヲ↡イツクシ具↢足シテ衆行ヲ↡、令ムトノタマヘリト↢諸ノ衆生ヲシテ功徳成就セ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][イ]ª二º¬如来会¼

【23】^¬無む量りょう寿じゅ如来にょらい会え¼ (上) にのたまはく、

▼¬*无量寿如来会ニ¼言ク、

^「▲仏ぶつ、 *阿あ難なんに告つげたまはく、 ªかの法処ほうしょ比丘びく (*法蔵菩薩)、 世せ間けん自じ在ざい王おう如来にょらい (*世自在王仏) および諸天しょてん・人にん・魔ま・梵ぼん・沙門しゃもん・婆羅ばら門もん等とうの前まえにして、 広ひろくかくのごとき大だい弘ぐ誓ぜいを発おこしき。 みなすでに成じょう就じゅしたまへり。 ^世せ間けんに希有けうにして◆この願がんを発おこし、 すでに実じつのごとく安あん住じゅうす。 種々しゅじゅの功く徳どく具ぐ足そくして、 威い徳とく広大こうだい清浄しょうじょう仏ぶつ土どを荘しょう厳ごんせり。

「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、彼ノ▼法処比丘、於シテ↢▼世間自在王如来及ビ諸天・人・魔・梵・沙門・婆羅門等ノ前ニ↡、広ク発シキ↢如キ↠是クノ大弘誓ヲ↡。皆已ニ成就シタマヘリ。世間ニ希マレニ有ニシテ発シ↢是ノ願ヲ↡已リテ、如ク↠実ノ安住ス。種種ノ功徳具足シテ、荘↢厳セリ威徳広大清浄仏土ヲ↡。

^◆かくのごとき菩ぼ薩さつの行ぎょうを修しゅ習じゅうせること、 時とき、 無む量りょう無む数しゅ不可ふか思議しぎ無有むう等等とうどう億おく那由他なゆた百ひゃく千せん劫こうを経ふる0233。 うちにはじめていまだかつて貪瞋とんじんおよび痴ち、 欲よく・害がい・恚いの想おもいを起おこさず、 色しき・声しょう・香こう・味み・触そくの想おもいを起おこさず、 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて、 つねに愛あい敬きょうを楽ねがふことなほ親属しんぞくのごとし。 乃至

修↢ツクロフ習ナラフセルコト如キ↠是クノ菩薩ノ行ヲ↡、時経フル↢於无量无数不可思議无有等等億那由他百千劫ヲ↡。内ニ初メテ未ズ ダ↣曽テ起サ↢貪瞋及ビ痴、欲・害・恚イノイカル想ヲ↡、不ズ↠起サ↢色・声・香・味・触ソクノ想ヲ↡、於テ↢諸ノ衆生ニ↡、常ニ楽ネガコノムフコト↢愛*敬ヲ↡猶ナホ如シ↢親シタシ属ノ↡。*乃至

^◆その性しょう、 調順じょうじゅんにして暴悪ぼうあくあることなし。 もろもろの有う情じょうにおいて、 つねに慈じ忍にんの心こころを懐いだいて詐さ諂てんせず、 また懈け怠だいなし。 ◆*善言ぜんごん策しゃく進しんして、 もろもろの白びゃく法ほうを求もとめしめ、 あまねく群ぐん生じょうのために勇ゆう猛みょうにして退たいすることなく、 世せ間けんを利り益やくせしめ、 大願だいがん円満えんまんしたまへりº」 と。 略出

其ノ性、調トヽノフ順ニシテ无シ↠有ルコト↢暴ボアラシ悪↡。於テ↢諸ノ有情ニ↡、常ニ懐イダイテ↢慈忍ノ心ヲ↡不ズ↢詐サイツワリ諂テンセ↡、ヘツラワズ亦无シ↢懈オコタリ怠↡。善*言策シヤクムチウツ進シテ、求メシメ↢諸ノ白法ヲ↡、普ク為0082ニ↢群生ノ↡勇イサミ 猛タケシニシテ无ク↠*退スルコト、利↢益セシメ世間ヲ↡、大願円満シタマヘリト。」 略出

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][b][ロ]師釈
                              ª一º「散善義」

【24】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (散善義)、

▼*光明寺ノ和尚ノ*云ク、

^「▲この雑毒ぞうどくの行ぎょうを回えして、 かの仏ぶつの浄じょう土どに求ぐ生しょうせんと欲おもふは、 これかならず不可ふかなり。 ◆なにをもつてのゆゑに、 まさしくかの阿あ弥陀みだ仏ぶつ、 因いん中ちゅうに菩ぼ薩さつの行ぎょうを行ぎょうぜし時とき、 乃ない至し一念いちねん一いっ刹せつ那なも、 三業さんごうの所修しょしゅみなこれ真実しんじつ心しんのなかになしたまへるによりてなり。

「欲フ↧回シテ↢此ノ雑毒之行ヲ↡、求↦生セムト彼ノ仏ノ浄土ニ↥者ハ、此 レ必ズ不可也ナリ。何ヲ以テノ故ニ。正シク由リテナリ↧彼ノ阿弥陀仏、因中ニ行ゼシ↢菩薩ノ行ヲ↡時、乃至一念一刹那モ、三業ノ所修皆是 レ真実心ノ中ニ作シタマヘルニ↥。

^◆おほよそ施ほどこしたまふところ趣しゅ求ぐをなす、 またみな▽真実しんじつなり。 ◆また真実しんじつに二に種しゅあり。 一ひとつには自利じり真実しんじつ、 二ふたつには利他りた真実しんじつなりと。 乃至

▼凡ソ所↠施シタマフ為ナス↢趣オモムク求ヲ↡、亦皆真実ナリ。▼又真実ニ有リ↢二種↡。一ニ者ハ自利真実、二ニ者ハ利他真実ナリト。 乃至

^▲不ふ善ぜんの三業さんごうをば、 かならず真実しんじつ心しんのうちに捨すてたまへるを須もちゐよ。 またもし善ぜんの三業さんごうを起おこさば、 かならず真実しんじつ心しんのうちになしたまへるを須もちゐて、 ◆内ない外げ明みょう闇あんを簡えらばず、 みな真実しんじつを須もちゐる◆がゆゑに、 至し誠じょう心しんと名なづく」 と。 抄要

不善ノ三業オバ、必ズ須モチヰヨ↢真実心ノ中ニ捨ステタマヘルヲ↡。又若シ起サ↢善ノ三業ヲ↡者バ、必ズ須モチヰテ↢真実心ノ中ニ作ナシタマヘルヲ↡、▽不↠簡エラバ↢内外明闇ヲ↡、皆須モチヰルガ↢真実ヲ↡故ニ、名クト↢至誠心ト↡。」 抄*要

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅰ][c]結成

【023425】^しかれば、 大だい聖しょう (釈尊) の真言しんごん、 宗しゅう師し (善導) の釈しゃく義ぎ、 まことに知しんぬ、 この心しんすなはちこれ不可ふか思議しぎ不可ふか称しょう不可ふか説せつ*一いち乗じょう大だい智ち願がん海かい、 *回え向こう利り益やく他たの真実しんじつ心しんなり。 これを至し心しんと名なづく。

▼爾レ者バ大聖ノ真言、宗師ノ釈義、信 トニ知ヌ斯ノ心則チ是不可思議不可称不可説一乗大智願海、回向利益他之真実心ナリ。是ヲ名ク↢至心ト↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ]追釈
                          [a]先挙
                          [b]牒

【26】^すでに 「△真実しんじつ」 といへり。 真実しんじつといふは、

既ニ言ヘリ↢真実ト↡。言フ↢真実ト↡者ハ、

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ][c]釈
                            [イ]真実の言を釈す
                              ª一º¬涅槃経¼「聖行品」

 ^¬*涅ね槃はん経ぎょう¼ (聖行品) にのたまはく、

▼¬*涅槃経ニ¼言ク、

^「▲*実諦じったいは一道いちどう清浄しょうじょうにして二にあることなきなり。 真実しんじつといふはすなはちこれ如来にょらいなり。 如来にょらいはすなはちこれ真実しんじつなり。 真実しんじつはすなはちこれ虚こ空くうなり。 虚こ空くうはすなはちこれ真実しんじつなり。 真実しんじつはすなはちこれ仏ぶっ性しょうなり。 仏ぶっ性しょうはすなはちこれ真実しんじつなり」 と。 以上

「*▼実諦者ハ一道清浄ニシテ无キ↠有ルコト↠二也。▼言フ↢真実ト↡者ハ即チ是如来ナリ。如来者ハ即チ是真実ナリ。真実者ハ即チ是虚空ナリ。虚空者ハ即チ是真実ナリ。真実者ハ即チ是仏性ナリ。仏性者ハ即チ是真実ナリト。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ][c][ロ]内外明暗を釈す

【27】^釈しゃく (散善義) に 「△不ふ簡けん内ない外げ明みょう闇あん」 といへり。 ^「内ない外げ」 とは、 「内ない」 はすなはちこれ*出しゅっ世せなり、 「外げ」 はすなはちこれ*世せ間けんなり。 「明みょう闇あん」 とは、 「明みょう」 はすなはちこれ出しゅっ世せなり、 「闇あん」 はすなはちこれ世せ間けんなり。 また 「明みょう」 はすなはち*智ち明みょうなり、 「闇あん」 はすなはち*無む明みょうなり。

▼*釈ニ云ヘリ↢「不簡内外明闇ト」↡。内外ト者ハ、内者ハ即チ是出世ナリ、外者ハ即チ是世間ナリ。明闇ト者ハ、明者ハ即チ是出世ナリ、闇者ハ即チ是世間ナリ。又復明者即チ智明ナリ、闇者ハ0083即チ无明也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ][c][ロ]ª一º¬涅槃経¼「聖行品」

 ^¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (聖行品) にのたまはく、

¬*涅槃経ニ¼言ク、

^「闇あんはすなはち世せ間けんなり、 明みょうはすなはち出しゅっ世せなり。 闇あんはすなはち無む明みょうなり、 明みょうはすなはち智ち明みょうなり」 と。 以上

「闇ハ即チ世間ナリ、明ハ即チ出世ナリ。闇ハ即チ无明ナリ、明ハ即チ智明ナリト。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ]信楽を釈す【信楽釈】
                        [ⅰ]正釈
                          [a]直釈

【28】^▼次つぎに信しん楽ぎょうといふは、 ▼すなはちこれ如来にょらいの*満足まんぞく大だい悲ひ円えん融にゅう無礙むげの信心しんじん海かい0235なり。 このゆゑに疑ぎ蓋がい間雑けんぞうあることなし。 ゆゑに信しん楽ぎょうと名なづく。

▼次ニ言フ↢信楽ト↡者ハ、則チ是如来ノ満足大悲円融无ノ信心海ナリ。是ノ故ニ疑蓋无シ↠有ルコト↢間雑↡。故ニ名ク↢信楽ト↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b]出体

^▼すなはち利他りた回え向こうの至し心しんをもつて信しん楽ぎょうの体たいとするなり。

▼即チ以テ↢利他回向之至心ヲ↡為ル↢信楽ノ体ト↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][c]弁義

・信楽難得

^△しかるに無始むしよりこのかた、 一切いっさい群ぐん生じょう海かい、 無む明みょう海かいに流る転てんし、 *諸しょ有う輪りんに沈迷ちんめいし、 *衆しゅ苦く輪りんに繋け縛ばくせられて、 清浄しょうじょうの信しん楽ぎょうなし、 *法ほう爾にとして真実しんじつの信しん楽ぎょうなし。 ここをもつて無む上じょうの功く徳どく値ち遇ぐうしがたく、 最さい勝しょうの浄じょう信しん獲ぎゃく得とくしがたし。

然ルニ従リ↢无始↡已来タ一切群生海、流↢転シ无明海ニ↡、沈↢ シズミ 迷シ マドフ 諸有輪ニ↡、繋↢ ツナグ 縛シバルセラレテ衆苦輪ニ↡、无シ↢清浄ノ信楽↡、法爾トシテ无シ↢真実ノ信楽↡。是ヲ以テ无上ノ功徳難↢叵  ガタ  ク カタシ *値アフ遇アフシ↡、最勝ノ浄信難↢叵  ガタ  シ獲得ウル シ↡。

・自力不生

^▼一切いっさい*凡ぼん小しょう、 一切いっさい時じのうちに、 ▲貪愛とんないの心しんつねによく善心ぜんしんを汚けがし、 瞋憎しんぞうの心しんつねによく法財ほうざいを焼やく。 急きゅう作さ急きゅう修しゅして頭ず燃ねんを灸はらふがごとくすれども、 すべて雑毒ぞうどく雑修ざっしゅの善ぜんと名なづく。 また虚仮こけ諂てん偽ぎの行ぎょうと名なづく。 真実しんじつの業ごうと名なづけざるなり。 この虚仮こけ雑毒ぞうどくの善ぜんをもつて無む量りょう光こう明みょう土どに生しょうぜんと欲ほっする、 これかならず不可ふかなり。

一切凡小、一切時ノ中ニ、▼貪愛之心常ニ能ク汚ケガシ↢善心ヲ↡、瞋憎之心常ニ能ク焼ク↢法財ヲ↡。▲*急作急修シテ如クスレドモ↠炙ハラフガ↢頭燃ヲ↡、▼衆テ名ク↢雑毒雑修之善ト↡。亦名ク↢虚仮諂テン偽グヰ之行ト↡。不ル↠名ケ↢真実ノ業ト↡也。以テ↢此ノ虚仮雑毒之善ヲ↡欲スル↠生ゼムト↢无量光明土ニ↡、此必ズ不可也。

・不生所由

^△なにをもつてのゆゑに、 まさしく如来にょらい、 菩ぼ薩さつの行ぎょうを行ぎょうじたまひし時とき、 三業さんごうの所修しょしゅ、 乃ない至し一念いちねん一いっ刹せつ那なも、 △疑ぎ蓋がい雑まじはることなきによりてなり。

何ヲ以テノ故ニ。正シク由リテナリ↧如来、行ジタマフシ↢菩薩ノ行ヲ↡時 キ、三業ノ所修、乃至一念一刹クニ那ナニモ、疑蓋无キニ↞雑ハルコト。

・正因

^この心しんはすなはち如来にょらいの大だい悲ひ心しんなるがゆゑに、 かならず報ほう土どの正定しょうじょうの因いんとなる。

斯ノ心者ハ即チ如来ノ大悲心ナルガ故ニ、必ズ成ル↢報土ノ正定之因ト↡。

・回施

^△如来にょらい、 苦く悩のうの群ぐん生じょう海かいを悲ひ憐れんして、 無礙むげ広大こうだいの浄じょう信しんをもつて*諸しょ有う海かいに回施えせしたまへり。 これを利他りた真実しんじつの信心しんじんと名なづく。

如来悲↢憐レンシテアワレム苦悩ノ群生海ヲ↡、以テ↢无広大ノ浄信ヲ↡回↢施アタフシタマヘリ諸有海ニ↡。是ヲ名ク↢利他真実ノ信心ト↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]引文
                          [a]経文
                            [イ]本経
                              ª一º¬大経¼

【29】^本願ほんがん信心しんじんの願がん (第十八願) 成じょう就じゅの文もん、 ¬経きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

▼本願信心ノ願成就ノ文、¬経ニ¼言ノタマハク、

^0236「▲諸しょ有うの衆しゅ生じょう、 その名みょう号ごうを聞ききて信心しんじん歓かん喜ぎせんこと乃ない至し一念いちねんせん」 と。 以上

「諸有ノ衆生、聞キテ↢其ノ名号ヲ↡信心歓喜セムコト、乃至0084一念セムト。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][イ]ª二º¬如来会¼

【30】^またのたまはく (如来会・下)、

▼又言ハク、

^「▲他た方ほう仏国ぶっこくの所しょ有うの衆しゅ生じょう、 無む量りょう寿じゅ如来にょらいの名みょう号ごうを聞ききてよく一念いちねんの浄じょう信しんを発おこして歓かん喜ぎせん」 と。 以上

「他方仏国ノ所有ノ衆生、聞キテ↢无量寿如来ノ名号ヲ↡能ク発シテ↢一念ノ浄信ヲ↡歓*喜セムト。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]末経
                              ª一º¬涅槃経¼「師子吼品」

【31】^¬涅ね槃はん経¼ (*師子吼品) にのたまはく、

▼¬*涅槃経ニ¼言 マハク、

^「善男ぜんなん子し、 *大だい慈じ大だい悲ひを名なづけて仏ぶっ性しょうとす。 なにをもつてのゆゑに、 大だい慈じ大だい悲ひはつねに菩ぼ薩さつに随したがふこと、 影かげの形かたちに随したがふがごとし。 一切いっさい衆しゅ生じょう、 つひにさだめてまさに大だい慈じ大だい悲ひを得うべし。 このゆゑに説ときて一切いっさい衆しゅ生じょう悉しつ有う仏ぶっ性しょうといふなり。 大だい慈じ大だい悲ひは名なづけて仏ぶっ性しょうとす。 仏ぶっ性しょうは名なづけて如来にょらいとす。

「善男子、大慈大悲ヲ名ケテ為ス↢▼仏性ト↡。何ヲ以テノ故ニ。大慈大悲ハ常ツネニ随フコト↢菩薩ニ↡、如シ↢影カゲノ随フガ↟形ニ。一切衆生畢ツイニ定メテ当ニシ↠得ウ↢大慈大悲ヲ↡、是ノ故ニ説キテ言 マヘルナリ↢一切衆生悉有仏性ト↡。大慈大悲者ハ名ケテ為ス↢仏性ト↡、仏性者ハ名ケテ為ス↢如来ト↡。

^*大だい喜き大だい捨しゃを名なづけて仏ぶっ性しょうとす。 なにをもつてのゆゑに、 菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつは、 もし二に十じゅう五ご有うを*捨すつるにあたはず、 すなはち阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを得うることあたはず。 もろもろの衆しゅ生じょう、 つひにまさに得うべきをもつてのゆゑなり。 このゆゑに説ときて一切いっさい衆しゅ生じょう悉しつ有う仏ぶっ性しょうといへるなり。 大だい喜き大捨だいしゃはすなはちこれ仏ぶっ性しょうなり、 仏ぶっ性しょうはすなはちこれ如来にょらいなり。

大喜大捨ヲ名ケテ為ス↢仏性ト↡。何ヲ以テノ故ニ。菩薩摩訶薩ハ若シ不ズ↠能ハ↠捨↢二十五有ニ↡、則チ不ズ↠能ハ↠得ルコト↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。以テノ↢諸ノ衆生畢ツイニ当ベ ニキヲ↟得ウ故ニ、是ノ故ニ説キテ言ヘルナリ↢一切衆生悉有仏性ト↡。大喜大捨者ハ即チ是仏性ナリ、仏性者ハ即チ是如来ナリ。

^仏ぶっ性しょうは大だい信心しんじんと名なづく。 なにをもつてのゆゑに、 信心しんじんをもつてのゆゑに菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつはすなはちよく*檀だん波羅はら蜜みつ乃ない至し般若はんにゃ波羅はら蜜みつを具ぐ足そくせり。 一切いっさい衆しゅ生じょうは、 つひにさだめてまさに大だい信心しんじんを得うべきをもつてのゆゑに、 このゆゑに説ときて一切いっさい衆しゅ生じょう悉しつ有う仏ぶっ性しょうといふなり0237。 ▼大だい信心しんじんはすなはちこれ仏ぶっ性しょうなり、 仏ぶっ性しょうはすなはちこれ如来にょらいなり。

仏性者ハ名ク↢大信心ト↡。何ヲ以テノ故ニ。以テノ↢信心ヲ↡故ニ、*以テノ↧菩薩摩訶薩ハ則チ能ク具↢足セリ檀波羅蜜乃至般若波羅蜜ヲ↡、一切衆生ハ畢ツイニ定メテ当ニキヲ↞得↢大信心ヲ↡故ニ、是ノ故ニ説キテ言ヘルナリ↢一切衆生悉有仏性ト↡。▼大信心者ハ即チ是仏性ナリ、仏性者ハ即チ是如来ナリ。

^仏ぶっ性しょうは▼一いっ子地しじと名なづく。 なにをもつてのゆゑに、 一いっ子地しじの因縁いんねんをもつてのゆゑに菩ぼ薩さつはすなはち一切いっさい衆しゅ生じょうにおいて平びょう等どう心しんを得えたり。 一切いっさい衆しゅ生じょうは、 つひにさだめてまさに一いっ子地しじを得うべきがゆゑに、 このゆゑに説ときて一切いっさい衆しゅ生じょう悉しつ有う仏ぶっ性しょうといふなり。 一いっ子地しじはすなはちこれ仏ぶっ性しょうなり、 仏ぶっ性しょうはすなはちこれ如来にょらいなり」 と。 以上

仏性者ハ名ク↢▼一子地ト↡。何ヲ以テノ故ニ。以テノ↢一子地ノ因縁ヲ↡故ニ、菩薩ハ則チ於テ↢一切衆生ニ↡得タリ↢平等心ヲ↡。一切衆生ハ*畢ツイニ定メテ当ニキガ↠得↢一子地ヲ↡故ニ、是ノ故ニ説キテ言ヘルナリ↢一切衆生悉有仏性ト↡。一子0085地者ハ即チ是仏性ナリ、仏性者ハ即チ是如来ナリト。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]ª二º¬涅槃経¼「迦葉品」二文

【32】^またのたまはく (涅槃経・*迦葉品)、

▼又言 マハク、

^「あるいは阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを説とくに、 信心しんじんを因いんとす。 これ菩ぼ提だいの因いん、 また無む量りょうなりといへども、 もし信心しんじんを説とけば、 すなはちすでに*摂しょう尽じんしぬ」 と。 以上

「或イハ説クニ↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡、信心ヲ為ス↠因ト。是菩提ノ因、雖モ↢復无量ナリト↡、若シ説トケバ↢信心ヲ↡、則チ已ニ摂尽シヌト。」 已上

【33】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、

▼又*言ノタマハク、

^「▼信しんにまた二に種しゅあり。 一ひとつには*聞もんより生しょうず、 二ふたつには*思しより生しょうず。 この人ひとの信心しんじん、 聞もんよりして生しょうじて、 思しより生しょうぜず。 このゆゑに名なづけて*信しん不ふ具ぐ足そくとす。

「▼信ニ復有リ↢二種↡。一ニハ従リ↠聞生ズ、二ニハ従リ↠思生ズ。是ノ人ノ信心、従ヨリ↠聞而シテ生ジテ、不ル↢従ヨリ↠思生ゼ↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢信不具足ト↡。

^◆また二に種しゅあり。 一ひとつには*道どうありと信しんず、 二ふたつには*得者とくしゃを信しんず。 この人ひとの信心しんじん、 ただ道どうありと信しんじて、 すべて得道とくどうの人ひとありと信しんぜざらん。 これを名なづけて信しん不ふ具ぐ足そくとす」 と。 以上抄出

▼復マタ有リ↢二種↡。一ニハ信ズ↠有リト↠道、二ニハ信ズ↢得者ヲ↡。是ノ人ノ信心、唯信ジテ↠有リト↠道、都スベテ不ラム↠信ゼ↠有アリト↢得道之人↡。是ヲ名ケテ為ストイヘリ↢信不具足ト↡。」 已上抄出

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]ª三º¬華厳経¼「入法界品」二文

【34】^¬*華け厳ごん経ぎょう¼ (入法界品・晋訳) にのたまはく、

▼¬*華厳経ニ¼言ノタマハク、

^「▼*この法ほうを聞ききて信心しんじんを歓かん喜ぎして、 疑うたがいなきものは、 すみやかに無む上じょう道どうを成ならん。 ▼もろもろの▼如来にょらいと等ひとし」 と0238なり。

「▼聞キテ↢此ノ法ヲ↡歓↢喜シテ信心ヲ↡ 无キ↠疑者ハ
速ニ成ラム↢无上道ヲ↡与ト↢諸ノ如来↡等ヒトシトナリ」

【35】^またのたまはく (華厳経・入法界品・唐訳)、

又言 マハク、

^「如来にょらい、 よく永ながく一切いっさい衆しゅ生じょうの疑うたがいを断たたしむ。 その心こころの*所しょ楽ぎょうに随したがひて、 あまねくみな満足まんぞくせしむ」 となり。

「如来能ク永ク断タタシム↢一切衆生ノ疑ヲ↡
随ヒテ↢其ノ心ノ所楽ニ↡普ク皆令シムトナリ↢満足セ↡」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][a][ロ]ª四º¬華厳経¼「賢首品」

【36】^またのたまはく (華厳経・*賢首品・唐訳)、

▼又言 マハク、

^「信しんは*道どうの元もととす、 功く徳どくの母ははなり。 一切いっさいのもろもろの善法ぜんぽうを*長ちょう養ようす。 疑ぎ網もうを断除だんじょして*愛あい流るを出いで、 涅ね槃はん無む上じょう道どうを開かい示じせしむ。

「▼信ハ為ス↢道ノ元ト↡ 功徳ノ母ナリ長↢養ス一切ノ諸ノ善法ヲ↡
断↢除シテ疑網ヲ↡出デ↢愛流ヲ↡開↢示セシム涅槃无上道ヲ↡

^信しんは垢く濁じょくの心こころなし。 清浄しょうじょうにして憍きょう慢まんを滅除めつじょす。 恭く敬ぎょうの本もとなり。 また*法蔵ほうぞう第一だいいちの財たからとす。 清浄しょうじょうの手てとして衆しゅ行ぎょうを受うく。

信ハ無シ↢垢濁ノ心↡ 清浄ニシテ滅↢除ス驕慢ヲ↡ 恭敬ノ本ナリ
亦為ス↢法蔵第一ノ財ト↡為シテ↢清浄ノ手ト↡受ク↢衆行ヲ↡

^信しんはよく恵施えせして心こころに悋おしむことなし。 信しんはよく歓かん喜ぎして仏法ぶっぽうに入いる。 信しんはよく*智ち功く徳どくを増ぞう長じょうす。 信しんはよくかならず*如来にょらい地じに到いたる。

信ハ能ク恵施シテ心ニ無シ↠悋オシム リン コト信ハ能ク歓喜シテ入ル↢仏法ニ↡
信ハ能ク増↢長ス智功徳ヲ↡信ハ能ク必ズ到 タル↢如来地ニ↡

^信しんは*諸根しょこんをして浄明じょうみょう利りならしむ。 信力しんりき堅けん固ごなればよく壊えすることなし。 信しんはよく永ながく煩悩ぼんのうの本もとを滅めっす。 信しんはよくもつぱら仏ぶつの功く徳どくに向むかへしむ。

信ハ令シム↢諸根ヲシテ浄明利ナラ↡信力堅カタシ固ナレバ無シ↢能ク壊スルコト↡
信ハ能ク永ク滅ス↢煩悩ノ本ヲ↡信ハ能ク専ラ向ヘシム↢仏功徳ニ↡

^信しんは境きょう界がいにおいて所しょ着じゃくなし。 諸難しょなんを遠おん離りして無む難なんを得えしむ。 信しんはよく衆しゅ魔まの路みちを超出ちょうしゅつし、 *無む上じょう解げ脱だつ道どうを示じ現げんせしむ。

信ハ於テ↢境界ニ↡無シ↢所著↡遠オン↢離0086シテ諸難ヲ↡得エシム↢无難ヲ↡
信ハ能ク超↢出シ衆魔ノ路ヲ↡示↢現セシム无上解脱道ヲ↡

^信しんは功く徳どくのために種たねを壊やぶらず。 信しんはよく菩ぼ提だいの樹じゅを生長しょうちょうす。 信しんはよく*最さい勝しょう智ちを増益ぞうやくす。 信しんはよく一切いっさい仏ぶつを示じ現げんせしむ。

信ハ為ニ↢功徳ノ↡不↠壊ヤブラ↠種 ネヲ信ハ能ク生↢長ス菩提ノ樹ヲ↡
信ハ能ク増↢益ス最勝智ヲ↡信ハ能ク示↢現セシム一切仏ヲ↡

^このゆゑに行ぎょうによりて次し第だいを説とく。 信しん楽ぎょう、 最さい勝しょうにしてはなはだ得うること難かたし。 乃至

是ノ故ニ依リテ↠行ニ説ク↢次第ヲ↡信楽、最勝ニシテ甚ダ難シ↠得ルコト 乃至

^もしつねに諸仏しょぶつに信しん奉ぶすれば、 すなはちよ0239く大だい供く養ようを興こう集じゅうす。 もしよく大だい供く養ようを興こう集じゅうすれば、 かの人ひと、 仏ぶつの不ふ思議しぎを信しんず。

若シ常ニ信↢奉スレバ於諸仏ニ↡則チ能ク興↢集ス大供養ヲ↡
若シ能ク興↢集スレバ大供養ヲ↡彼ノ人信ズ↢仏ノ*不思議ヲ↡

^もしつねに尊法そんぼうに信しん奉ぶすれば、 すなはち仏法ぶっぽうを聞きくに*厭足えんそくなし。 もし仏法ぶっぽうを聞きくに厭足えんそくなければ、 かの人ひと、 法ほうの不ふ思議しぎを信しんず。

若シ常ニ信↢奉スレバ於尊法ニ↡則チ聞クニ↢仏法ヲ↡无シ↢厭イトヒ足タル↡
若シ聞クニ↢仏法ヲ↡无ケレバ↢厭足↡彼ノ人信ズ↢法ノ不思議ヲ↡

^もしつねに清浄しょうじょう僧そうに信しん奉ぶすれば、 すなはち信心しんじん退転たいてんせざることを得う。 もし信心しんじん不ふ退転たいてんを得うれば、 かの人ひとの信力しんりきよく動うごくことなし。

若シ常ニ信↢奉スレバ清浄僧ニ↡則チ得ウ↣信心不ルコトヲ↢退転セ↡
若シ得レバ↢信心不退転ヲ↡彼ノ人ノ信力无シ↢能ク動クコト↡

^もし信力しんりきを得えてよく動うごくことなければ、 すなはち諸根しょこん浄明じょうみょう利りを得えん。 もし諸根しょこん浄明じょうみょう利りを得うれば、 すなはち善ぜん知ぢ識しきに親近しんごんすることを得う。

若シ得エテ↢信力ヲ↡无ケレバ↢能ク動クコト↡則チ得ム↢諸根浄明利ヲ↡
若シ得レバ↢諸根浄明利ヲ↡則チ得ウ↣親↢近スルコトヲ善知識ニ↡

^すなはち善ぜん知ぢ識しきに親近しんごんすることを得うれば、 すなはちよく広大こうだいの善ぜんを修しゅ集じゅうす。 もしよく広大こうだいの善ぜんを修しゅ集じゅうすれば、 かの人ひと、 *大だい因力いんりきを成じょう就じゅす。

則チ得レバ↣親↢近スルコトヲ善知識ニ↡則チ能ク修↢集ス広大ノ善ヲ↡
若シ能ク修↢集スレバ広大ノ善ヲ↡彼ノ人成↢就ス大因力ヲ↡

^もし人ひと大だい因力いんりきを成じょう就じゅすれば、 すなはち*殊しゅ勝しょう決けつ定じょうの解げを得う。 もし殊しゅ勝しょう決けつ定じょうの解げを得うれば、 すなはち諸仏しょぶつの為みために護ご念ねんせらる。

若シ人成↢就スレバ大因力ヲ↡則チ得ウ↢殊勝決定ノ解ヲ↡
若シ得レバ↢殊勝決定ノ解ヲ↡則チ為ミタメニ↢諸仏ノ↡所ル↢護念セ↡

^もし諸仏しょぶつの為みために護ご念ねんせらるれば、 すなはちよく菩ぼ提だい心しんを発ほっ起きす。 もしよく菩ぼ提だい心しんを発ほっ起きすれば、 すなはちよく仏ぶつの功く徳どくを勤修ごんしゅせしむ。

若シ為ミタメニ↢諸仏ノ↡所ルレバ↢護念セ↡則チ能ク発↢起ス菩提心ヲ↡
若シ能ク発↢起スレバ菩提心ヲ↡則チ能ク勤↢修セシム仏ノ功徳ヲ↡

^もしよく仏ぶつの功く徳どくを勤修ごんしゅすれば、 すなはちよく生うまれて如来にょらいの家いえにあらん。 もし生うまれて如来にょらいの家いえにあることを得うれば、 すなはち*善ぜんをして巧ぎょう方便ほうべんを修しゅ行ぎょうせん。

若シ能ク勤↢修スレバ仏ノ功徳ヲ↡則チ能ク生レテ在ラム↢如来ノ家ニ↡
若シ得レバ↣生レテ在ルコトヲ↢如来ノ家ニ↡則チ善ヲシテ修↢行セム巧ゲウ方便ヲ↡

^もし善ぜんをして巧ぎょう方便ほうべんを修しゅ行ぎょうすれば、 すなはち信しん楽ぎょうの心しん、 清浄しょうじょうなることを得う。 もし信しん楽ぎょうの心しん、 清浄しょうじょうなることを得うれば、 すなはち*増ぞう上じょうの最さい勝しょう0240心しんを得う。

若シ善ヲシテ修↢行スレバ巧方便ヲ↡則チ得ウ↢信楽ノ心清浄ナルコトヲ↡
若シ得レバ↢信楽ノ心清浄ナルコトヲ↡則チ得ウ↢増上ノ最勝心ヲ↡

^もし増ぞう上じょうの最さい勝しょう心しんを得うれば、 すなはちつねに波羅はら蜜みつを修しゅ習じゅうせん。 もしつねに波羅はら蜜みつを修しゅ習じゅうすれば、 すなはちよく*摩訶まか衍えんを具ぐ足そくせん。

若シ得レバ↢増上ノ最勝心ヲ↡則チ常ニ修↢習セム波羅蜜ヲ↡
若シ常ニ修↢習スレバ波羅蜜ヲ↡則チ能ク具↢足セム摩訶衍エンカンヲ↡

^もしよく摩訶まか衍えんを具ぐ足そくすれば、 すなはちよく法ほうのごとく仏ぶつを供く養ようせん。 もしよく法ほうのごとく仏ぶつを供く養ようすれば、 すなはちよく念仏ねんぶつの心しん、 動どうぜず。

若シ能ク具↢足スレバ摩訶衍ヲ↡則0087チ能ク如ク↠法ノ供↢養セム仏ヲ↡
若シ能ク如↠法ニ供↢養スレバ仏ヲ↡則チ能ク念仏ノ心 不ズ↠動ゼ

^もしよく念仏ねんぶつの心、 動どうぜざれば、 すなはちつねに無む量りょう仏ぶつを覩と見けんせん。 もしつねに無む量りょう仏ぶつを覩と見けんすれば、 すなはち如来にょらいの体たい、 常住じょうじゅうを見ん。

若シ能ク念仏ノ心 不レバ↠動ゼ則チ常ニ覩↢見セム无量仏ヲ↡
若シ常ニ覩↢見スレバ无量仏ヲ↡則チ見ム↢如来ノ体常住ヲ↡

^もし如来にょらいの体たい、 常住じょうじゅうを見みれば、 すなはちよく法ほうの永ながく不ふ滅めつなることを知しらん。 もしよく法ほうの永ながく不ふ滅めつなるを知しれば、 *弁才べんざいを得え、 無む障しょう礙げを得えん。

若シ見レバ↢如来ノ体常住ヲ↡則チ能ク知ラム↢法ノ永ク不滅ナルコトヲ↡
若シ能ク知レバ↢法ノ永ク不滅ナルヲ↡得エム↧得エ↢*弁才ヲ↡ 无障ヲ↥

^もし弁才べんざい、 無む障しょう礙げを得うれば、 すなはちよく無む辺へんの法ほうを開演かいえんせん。 もしよく無む辺へんの法ほうを開演かいえんせば、 すなはちよく慈じ愍みんして衆しゅ生じょうを度どせん。

若シ得レバ↢*弁才无障ヲ↡則チ能ク開↢演ノブセム无辺ノ法ヲ↡
若シ能ク開↢演セバ无辺ノ法ヲ↡則チ能ク慈愍シテ度セム↢衆生ヲ↡

^もしよく衆しゅ生じょうを慈じ愍みんし度どすれば、 すなはち堅けん固ごの大だい悲ひ心しんを得えん。 もし堅けん固ごの大だい悲ひ心しんを得うれば、 すなはちよく甚深じんじんの法ほうを愛あい楽ぎょうせん。

若シ能ク慈↢愍テ度スレバ↣衆生ヲ↡則チ得ム↢堅カタク固ノカタシ大悲心ヲ↡
若シ得レバ↢堅固ノ大悲心ヲ↡則チ能ク愛↢楽セム甚深ノ法ヲ↡

^もしよく甚深じんじんの法ほうを愛あい楽ぎょうすれば、 すなはちよく*有為ういの過とがを捨しゃ離りせん。 もしよく有為ういの過とがを捨しゃ離りすれば、 すなはち憍きょう慢まんおよび放逸ほういつを離はなる。

*若シ能ク愛↢楽スレバ甚深ノ法ヲ↡則チ能ク捨↢離セム有為ノ過トガヲ↡
若シ能ク捨↢離スレバ有為ノ過ヲ↡則チ離ル↢驕慢及ビ放ハウ逸イチヲ↡

^もし憍きょう慢まんおよび放逸ほういつを離はなるれば、 すなはちよく一切いっさい衆しゅを*兼けん利りせん。 もしよく一切いっさい衆しゅを兼けん利りすれば、 すなはち生しょう死じに処しょして*疲ひ厭えんなけん」 となり。 略抄

若シ離ルレバ↢驕慢及ビ放逸ヲ↡則チ能ク兼ケムカヌ↢利セム一切衆ヲ↡
若シ能ク兼↢利スレバ一切衆ヲ↡則チ処シテ↢生死ニ↡无ナケムトナリ↢疲ヒツカレ厭エン↡イトフ」 略抄

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]師釈
                            [イ]¬論註¼二文

【024137】^¬論ろんの註ちゅう¼ (下) にいはく、

▼¬*論ノ*註ニ¼曰ク、

^「▲ª如実にょじつ修しゅ行ぎょう相応そうおうºと名なづく。 ◆このゆゑに論主ろんじゅ (天親)、 建はじめに ª▽我が一心いっしんº (浄土論) とのたまへり」 と。 以上

「▼名ク↢如実修行相応ト↡。是ノ故ニ論主建ハジメニ言 タマヘリト↢我一心ト↡。」 已上

【38】^またいはく (論註・下)、

又言ク、

^「▲経きょうの始はじめに ª如にょ是ぜº と称しょうすることは、 信しんを彰あらわして能のう入にゅうとす」 と。 以上

「▼経ノ始ニ称スルコトハ↢如是ト↡、彰シテ↠信ヲ為スト↢能入ト↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ]欲生を釈す【欲生釈】
                        [ⅰ]正釈
                          [a]略して分斉を示す

【39】^▼次つぎに欲よく生しょうといふは、 ▼すなはちこれ如来にょらい、 諸しょ有うの群ぐん生じょうを*招しょう喚かんしたまふの勅ちょく命めいなり。

次ニ言フ↢欲生ト↡者、則チ是如来招セウ↢喚クワンマネキヨブ シタマフ諸有ノ群生ヲ↡之勅命ナリ。

・出体

^▼すなはち真実しんじつの信しん楽ぎょうをもつて欲よく生しょうの体たいとするなり。

即チ以テ↢真実ノ信楽ヲ↡為スル↢欲生ノ体ト↡也。

・簡示他力

^▼まことにこれ大だい小しょう・凡ぼん聖しょう、 定じょう散さん自じ力りきの回え向こうにあらず。 ゆゑに不ふ回え向こうと名なづくるなり。

誠 トニ是非ズ↢大小・凡聖、定散自力之回向ニ↡。故ニ名クル↢不回向ト↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅰ][b]広く義旨を顕す

・所為機相

^△しかるに*微み塵じん界かいの有う情じょう、 煩悩ぼんのう海かいに流る転てんし、 生しょう死じ海かいに*漂ひょう没もつして、 真実しんじつの回え向こう心しんなし、 清浄しょうじょうの回え向こう心しんなし。

然ルニ微塵界ノ有情、流↢転シ煩悩海ニ↡、ヘウ↢タヾヨフ没モチシテ生死海ニ↡、无シ↢真実ノ回向心↡、无シ↢清浄ノ回向心↡。

・法体成就

^△このゆゑに如来にょらい、 一切いっさい苦く悩のうの群ぐん生じょう海かいを*矜哀こうあいして、 菩ぼ薩さつの行ぎょうを行ぎょうじたまひし時とき、 三業さんごうの所修しょしゅ、 乃ない至し一念いちねん一いっ刹せつ那なも、 ▲回え向こう心しんを*首しゅとして大だい悲ひ心しんを成じょう就じゅすることを得えたまへるがゆゑに、

是ノ故ニ如来矜コウ↢哀シテオホキニアワレム一切苦悩ノ群生海ヲ↡、行ジタマフシ↢菩薩ノ行ヲ↡時 キ、三業0088ノ所修、乃至一念一刹那モ、回向心ヲ為シテ↠首ト得タマヘルガ↣成↢就スルコトヲ大悲心ヲ↡故ニ、

・法界回施

^△利他りた真実しんじつの欲よく生しょう心しんをもつて諸しょ有う海かいに回施えせしたまへり。

以テ↢利他真実ノ欲生心ヲ↡廻↢施シタマヘリ諸*有海ニ↡。

・結帰一心

^△欲よく生しょうすなはちこれ回え向こう心しんなり。 これすなはち大だい悲ひ心しんなるがゆゑに、 疑ぎ蓋がい雑まじはることなし。

欲生即チ是廻向心ナリ。斯 レ則チ大悲心ナルガ故ニ疑蓋无シ↠雑ハルコト。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ]引文
                          [a]経文
                            [イ]¬大経¼

【40】^ここをもつて本願ほんがんの欲よく生しょう心しん成じょう就じゅの文もん、 ¬経きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

是ヲ以テ▼本願ノ欲生心成就ノ文、¬経ニ¼言 マハク、

^「▲*至し心しん回え向こうしたまへり。 かの国くにに生しょうぜんと願がんずれば、 すなはち往おう生じょうを得え、 不ふ0242退転たいてんに住じゅうすと。 ただ五ご逆ぎゃくと誹ひ謗ほう正しょう法ぼうとをば除のぞく」 と。 以上

「至心廻向シタマヘリ。願ズレバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、即チ得エ↢往生ヲ↡、住セムト↢不退転ニ↡。唯除クト↢五逆ト誹謗正法トヲバ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][a][ロ]¬如来会¼

【41】^またのたまはく (如来会・下)、

▼又言 マハク、

^「▲*所しょ有うの善根ぜんごん回え向こうしたまへるを愛あい楽ぎょうして無む量りょう寿じゅ国こくに生しょうぜんと願がんずれば、 願がんに随したがひてみな生しょうぜしめ、 不ふ退転たいてん乃ない至し無む上じょう正しょう等とう菩ぼ提だいを得えんと。 五ご無む間けん・誹ひ謗ほう正しょう法ぼうおよび謗ほう聖しょう者じゃを除のぞく」 と。 以上

「*愛↢楽シテ所有ノ善根廻向シタマヘルヲ↡願ズレ↠生ゼムト↢无量寿国ニ↡者バ、随ヒテ↠願ニ皆 ナ生ゼシメ、得ムト↢不退転乃至无上正等菩提ヲ↡。除クト↢五无間・誹謗正法及ビ謗聖者ヲ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b]師釈
                            [イ]¬論註¼三文

【42】^¬浄じょう土ど論ろん¼ (論註・下) にいはく、

▼¬*浄土論ニ¼曰ク、

^「▲ª*いかんが回え向こうしたまへる。 一切いっさい苦く悩のうの衆しゅ生じょうを捨すてずして、 心こころにつねに*作さ願がんすらく、 回え向こうを首しゅとして大だい悲ひ心しんを成じょう就じゅすることを得えたまへるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

「云何ガ廻向シタマヘル。不ズシテ↠捨テ↢一切苦悩ノ衆生ヲ↡、心ニ常ニ作願スラク、廻向ヲ為シテ↠首ト得エタマヘルガ↣成↢就スルコトヲ大悲心ヲ↡故ニトノタマヘリ。

^◆回え向こうに二に種しゅの相そうあり。 一ひとつには往相おうそう、 二ふたつには還相げんそうなり。

▼廻向ニ有リ↢二種ノ相↡。一ニ者ハ往相、二ニ者ハ還相ナリ。

^◆往相おうそうとは、 おのれが功く徳どくをもつて一切いっさい衆しゅ生じょうに回施えせしたまひて、 作さ願がんしてともにかの阿あ弥陀みだ如来にょらいの安楽あんらく浄じょう土どに往おう生じょうせしめたまふなり。

往相ト者ハ、以テ↢己オノレガ功徳ヲ↡廻↢施シタマヒテ一切衆生ニ↡、作願シテ共ニ往↢生セシメタマフナリ彼ノ阿弥陀如来ノ安楽浄土ニ↡。

^◆還相げんそうとは、 かの土どに生しょうじをはりて、 奢しゃ摩他また・毘婆びば舎しゃ那な・*方便ほうべん力りき成じょう就じゅすることを得えて、 ▼生しょう死じの稠ちゅう林りんに回え入にゅうして、 一切いっさい衆しゅ生じょうを教きょう化けして、 ともに仏道ぶつどうに向かえらしめたまふなり。

▼還相ト者ハ、生ジ↢彼ノ土ニ↡已 ハリテ、得テ↢奢摩他・毘婆舎那・方便力成就スルコトヲ↡、廻↢入シテ生死ノ稠林ニ↡、教↢化シテ一切衆生ヲ↡、共ニ向ヘシメタマフナリ↢仏道ニ↡。

^◆もしは往おう、 もしは還げん、 みな衆しゅ生じょうを抜ぬいて生しょう死じ海かいを渡どせんがためにしたまへり。 このゆゑに ª回え向こう為い首しゅ得とく成じょう就じゅ大だい悲ひ心しん故こº とのたまへり」 と。 以上

若シハ往若シハ還、皆*為ニトノタマヘリ↧抜テ↢衆生ヲ↡渡セムガ↦生死海ヲ↥。是コノ故ニ言ノタマヘリト↢廻向為首得成就大悲心故ト↡。」 已上

【43】^またいはく (論註・下)、

▼又云ク、

^「▲浄入じょうにゅう願心がんしんとは、 ¬論¼ (浄土論) にいはく0243、 ª^また*向さきに観察かんざつ荘しょう厳ごん仏ぶつ土ど功く徳どく成じょう就じゅ・荘しょう厳ごん仏ぶつ功く徳どく成じょう就じゅ・荘しょう厳ごん菩ぼ薩さつ功く徳どく成じょう就じゅを説ときつ。 この三種さんしゅの成じょう就じゅは願心がんしんの荘しょう厳ごんしたまへるなりと知しるべしº といへりと。

「▼浄入願心ト者ハ、¬論ニ¼曰ク、▼又向サキニ説キツ↢観察荘厳仏土功徳成就・荘厳0089仏功徳成就・荘厳菩薩功徳成就ヲ↡。此ノ三種ノ成就ハ願心ノ荘厳シタマヘルナリト応シトイヘリト↠知ル。

^◆ª知しるべしº とは、 この三種さんしゅの荘しょう厳ごん成じょう就じゅはもと四し十じゅう八はち願がん等とうの清浄しょうじょうの願心がんしんの荘しょう厳ごんしたまふところなるによりて、 因いん浄じょうなるがゆゑに果か浄じょうなり、 *因いんなくして他たの因いんのあるにはあらざるなりと知しるべしとなり」 と。 以上

▼応↠知ト者ハ、応シト↠知ル↧此ノ三種ノ荘厳成就ハ由リテ↣本 ト四十八願等ノ清浄ノ願心之所ナルニ↢荘厳シタマフ↡、因浄ナルガ故ニ果浄ナリ、非ザルナリト↦无クシテ↠因他ノ因ノ有ルニハ↥也ト。」 已上

【44】^また ¬論ろん¼ (論註・下) にいはく、

▼又¬論ニ¼曰ク、

^「▲ª*出しゅつ第だい五ご門もんとは、 大だい慈悲じひをもつて一切いっさい苦く悩のうの衆しゅ生じょうを観察かんざつして、 応おう化げの身しんを示しめして、 生しょう死じの園その、 煩悩ぼんのうの林はやしのなかに回え入にゅうして、 神通じんずうに遊戯ゆげし教きょう化け地じに至いたる。 本願ほんがん力りきの回え向こうをもつてのゆゑに。 これを出しゅつ第だい五ご門もんと名なづくº (浄土論) とのたまへり」 と。 以上

「▼出第五門ト者ハ、以テ↢大慈悲ヲ↡観↢察カヾムシテ一切苦悩ノ衆生ヲ↡、示シテ↢応化ノ身ヲ↡、回↢入シテ生死ノ園ソノオン、煩悩ノ林ノ中ニ↡、遊↢戯ゲシタワブル神通ニ↡至ル↢教化地ニ↡。以テノ↢本願力ノ回向ヲ↡故ニ。是ヲ名クトノタマヘリト↢出第五門ト↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]¬義疏¼
                              ª一º出文
                                ªⅠº「散善義」

【45】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (散善義)、

▼*光明寺ノ和尚ノ云ク、

^「▲また回え向こう発願ほつがんして生うまるるものは、 かならず決けつ定じょう真実しんじつ心しんのなかに回え向こうしたまへる願がんを須もちゐて得とく生しょうの想おもいをなせ。

「又回向発願シテ生ルヽ者モノハ、必ズ須モチヰテ↢決定真実心ノ中 カニ回向シタマヘル願ヲ↡作ス↢得生ノ想ヲ↡。

^▼この心しん深ふかく信しんぜること金剛こんごうのごとくなるによつて、 一切いっさいの異い見けん・異い学がく・別べつ解げ・別べつ行ぎょうの人にん等らのために動乱どうらん破壊はえせられず。 ただこれ決けつ定じょうして一心いっしんに捉とつて正しょう直じきに進すすんで、 かの人ひとの語ことばを聞きくことを得えざれ。 すなはち進退しんたいの心しんありて怯こう弱にゃくを生しょうじ回顧えこすれば、 道どうに落おちてすなはち往おう生じょうの大益だいやくを失しっするなり」 と。 以上

此ノ心深ク信ゼルコト由ヨテ↠若ゴトクナルニ↢金剛ノ↡、不ズ↧為ニ↢一切ノ異見・異学・別解・別行ノ人等ラ之↡所ラレ↦動乱破壊セ↥。唯是決定シテ一心ニ捉トトウテ正直ニ進デ、不レ↠得エ↠聞クコトヲ↢彼ノ人ノ語 バヲ↡。即チ有リテ↢進退ノ心↡生ジ↢怯カウヨハク弱ヲ↡回顧スレバカヘリミル、落チテ↠道ニ即チ失スル↢往生之大益ヲ↡也ト。」*已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二º釈意
                                ªⅠº総標

【024446】^▼まことに知しんぬ、 二河にがの譬喩ひゆのなかに

▼*真ニ知ヌ二河ノ譬喩ノ中ニ

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡº別釈
                                  ªⅰº白道四五寸を釈す

^「△白びゃく道どう四五しご寸すん」 といふは、 「白びゃく道どう」 とは、 「白びゃく」 の言ごんは黒こくに対たいするなり。 「白びゃく」 はすなはちこれ*選せん択じゃく摂取せっしゅの白びゃく業ごう、 *往相おうそう回え向こうの浄じょう業ごうなり。 「黒こく」 はすなはちこれ無む明みょう煩悩ぼんのうの黒業こくごう、 二に乗じょう・人にん・天てんの雑善ぞうぜんなり。 「道どう」 の言ごんは路ろに対たいせるなり。 「道どう」 はすなはちこれ▼本願ほんがん一実いちじつの直道じきどう、 大だい般はつ涅ね槃はん、 無む上じょうの大道だいどうなり。 「路ろ」 はすなはちこれ二に乗じょう・三さん乗じょう、 ▼万善まんぜん諸しょ行ぎょうの小しょう路ろなり。 「四五しご寸すん」 といふは衆しゅ生じょうの四し大だい五ご陰おんに喩たとふるなり。

▼言フ↢白道四五寸ト↡者ハ、白道ト者、白之言ハ対スル↠黒ニ也。白者ハ即チ是選択摂取之白業、往相回向之浄業也。黒者即チ是无明煩悩之黒業、二乗・人・天之雑善也。道之言ハ対セルナリ↠*路セバキニ。▼*道ヒロキ者則チ是▼本願一実之直道、大般ハチ涅槃、无上之大道也。路者則チ是 レ二乗・三乗、万善0090諸行之小路也。言フ↢四五寸ト↡者喩フル↢衆生ノ四大五陰ニ↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱº清浄願心を釈す
                                    ªaº直釈

^「△*能のう生しょう清浄しょうじょう願心がんしん」 といふは、 金剛こんごうの真心しんしんを獲ぎゃく得とくするなり。 本願ほんがん力りきの回え向こうの大だい信心しんじん海かいなるがゆゑに、 破壊はえすべからず。 これを金剛こんごうのごとしと喩たとふるなり。

言フ↢能生清浄願心ト↡者ハ、獲↢得スル金剛ノ真心ヲ↡也。本願力ノ回向ノ大信心海ナルガ故ニ、不ズ↠可カラ↢破壊ス↡。喩フル↣之ヲ如シト↢金剛ノ↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱºªbº引証
                                      ªイº「玄義分」

【47】^¬観かん経ぎょう義ぎ¼ (*玄義分) に、

▼¬観経義ニ¼云ヘリ↧

^「▲道俗どうぞく時じ衆しゅ等とう、 おのおの▽*無む上じょうの心しんを発おこせども、 生しょう死じはなはだ厭いとひがたく、 仏法ぶっぽうまた欣ねがひがたし。 ^ともに金剛こんごうの志こころざしを発おこして、 横おうに四流しるを超ちょう断だんせよ。

「▼道俗時衆等各ノ発セドモ↢无上心ヲ↡
生死甚ダ難ク↠厭イトヒ仏法復難シ↠忻ネガヒ
共ニ発シテ↢▼金剛ノ志ヲ↡▽横ニ超↢断セヨ▼四流ヲ↡

^▲まさしく金剛こんごう心しんを受うけて、 *一念いちねんに相応そうおうして後のち、 *果か、 涅ね槃はんを得えんひと」 といへり。 抄要

▼正シク受ケテ↢金剛心ヲ↡
▼相↢応シテ一念ニ↡後▼果*得エム↢涅槃ヲ↡者ヒトト」↥ 抄要

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱºªbºªロº「序分義」

【48】^またいはく (*序分義)、

▼又云ク、

^「▲真心しんしん徹到てっとうして苦くの娑しゃ婆ばを厭いとひ、 楽らくの無為むいを欣ねがひて、 永ながく常じょう楽らくに帰きすべし。 ただし*無為むいの境さかい、 軽きょう爾にとしてすなはち階かなふべ0245からず、 苦く悩のうの娑しゃ婆ば、 輒ちょう然ねんとして離はなるることを得うるに由よしなし。 金剛こんごうの志こころざしを発おこすにあらずよりは、 永ながく生しょう死じの元もとを絶たたんや。 もし親まのあたり*慈じ尊そんに従したがひたてまつらずは、 なんぞよくこの長ながき歎なげきを勉まぬかれん」 と。

「真心徹トホル到シテ厭ヒ↢苦ノ娑婆ヲ↡、忻ヒテ↢楽ノ无為ヲ↡、永ク帰スベシ↢常楽ニ↡。但シ无為之境、サカイ不ズ↠可カラ↢軽カロク爾トシテシカラシム即チ階カナハシフ↡、苦悩ノ娑婆无シ↠由 シ↢輒テウタヤスシ然トシテシカラシム得ルニ↟離ルヽコトヲ。自リハ↠非ズ↠発スニ↢▼金剛之ノ志ヲ↡、永ク絶タタムヤ↢生死之元モトヲ↡。若シ不ズハ↣親マノアタリ従シタガヒタテマツラ↢慈尊ニ↡、何ゾ能ク勉マヌカレムト↢斯ノ長キ歎ナゲキヲ↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二][Ⅲ][ⅱ][b][ロ]ª二ºªⅡºªⅱºªbºªハº「定善義」

【49】^またいはく (*定善義)、

▼又云ク、

^「▲金剛こんごうといふは、 すなはちこれ無漏むろの体たいなり」 と。 以上

「▼言フ↢金剛ト↡者ハ、即チ是无漏之体也。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三]結示
                      [Ⅰ]正結
                        [ⅰ]正しく三心即一を明かす

【50】^▼まことに知しんぬ、 至し心しん・信しん楽ぎょう・欲よく生しょう、 その言ことば異ことなりといへども、 その意こころこれ一ひとつなり。

▼信ニ知ヌ至心・信楽・欲生、其ノ言 バ雖モ↠異ナリト、其ノ意惟コレ一ナリ。

・示由

^なにをもつてのゆゑに、 三心さんしんすでに疑ぎ蓋がい雑まじはることなし、

何ヲ以テノ故ニ。三心已ニ*疑蓋无シ↠ウタガフコヽロナリ雑ハルコト、

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三][Ⅰ][ⅱ]名号に対弁す

^▼ゆゑに真実しんじつの一心いっしんなり。 これを金剛こんごうの真心しんしんと名なづく。 ▼金剛こんごうの真心しんしん、 これを真実しんじつの信心しんじんと名なづく。

故ニ真実ノ一心ナリ。是ヲ名ク↢金剛ノ真心ト↡。金剛ノ真心、是ヲ名ク↢真実ノ信心ト↡。

・必具行

^▼真実しんじつの信心しんじんはかならず*名みょう号ごうを具ぐす。 名みょう号ごうはかならずしも願力がんりきの信心しんじんを具ぐせざるなり。

▼真実ノ信心ハ必ズ具ス↢名号ヲ↡。名号ハ必ズシモ不ル↠具セ↢願力ノ信心ヲ↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[三][Ⅱ]引証

^このゆゑに論主ろんじゅ (天親)、 建はじめに 「▲我が一心いっしん」 (*浄土論) とのたまへり。 また 「▲如にょ彼ひ名みょう義ぎ欲よく↓如実にょじつ修しゅ行ぎょう相応そうおう故こ」 (浄土論) とのたまへり。

是ノ故ニ論主、建ハジメニ言ノタマヘリ↢「我一心ト」↡。又言ヘリ↢「如彼名義欲如実修行相応故ト」↡。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)結嘆【大信嘆徳】
                    [一]上の成一を牒す

【51】^おほよそ大信だいしん海かいを案あんずれば、

0091凡ソ按ズレ↢▼大信海ヲ↡者バ、

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)[二]正嘆

・四不十四非

ⅰ貴き賎せん*緇素しそを簡えらばず、 ⅱ男女なんにょ老ろう少しょうをいはず、 ⅲ造罪ぞうざいの多た少しょうを問とはず、 ⅳ修しゅ行ぎょうの久く近ごんを論ろんぜず、 1*行ぎょうにあらず善ぜんにあらず、 2頓とんにあらず漸ぜんにあらず、 3定じょうにあらず散さんにあらず、 4*正しょう観かんにあらず邪観じゃかんにあら0246ず、 5有う念ねんにあらず無む念ねんにあらず、 6尋じん常じょうにあらず臨りん終じゅうにあらず、 7多た念ねんにあらず一念いちねんにあらず、 ^ただこれ不可ふか思議しぎ不可ふか称しょう不可ふか説せつの信しん楽ぎょうなり。

▼不ズ↠簡バ↢*貴賎*緇シホフシ 素ソオトコヲ↡、▼不ズ↠謂イハ↢男女老少ヲ↡、▼不ズ↠問ハ↢造罪ノ多少ヲ↡、▼不ズ↠論ゼ↢修行ノ久近ヲ↡、▼非ズ↠行ニ非ズ↠善ニ、▼非ズ↠頓ニ非ズ↠漸ニ、▼非ズ↠定ニ非ズ↠散ニ、▼非ズ↢正観ニ↡非ズ↢邪観ニ↡、▼非ズ↢有念ニ↡非ズ↢无念ニ↡、▼非ズ↢尋常ニ↡非ズ↢臨終ニ↡、▼非ズ↢多念ニ↡非ズ↢一念ニ↡、唯是不可思議不可*説不可*称ノ信楽也。

・喩顕

^▲たとへば*阿伽陀あかだ薬やくのよく一切いっさいの毒どくを滅めっするがごとし。 如来にょらい誓願せいがんの薬くすりはよく*智愚ちぐの毒どくを滅めっするなり。

喩ヘバ如シ↣阿伽陀薬ノ能ク滅スルガ↢一切ノ毒ヲ↡。如来誓願ノ薬ハ能ク▼滅スル↢智愚ノ毒ヲ↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)別して信楽を釈す
                (a)菩提心の義を釈す【菩提心釈】
                  (イ)解義
                    [一]対判して宗を示す
                      [Ⅰ]標

・▼二双四重

【52】^しかるに△菩ぼ提だい心しんについて二に種しゅあり。 一ひとつには↓竪しゅ、 二ふたつには↓横おうなり。

▼然ルニ就テ↢菩提心ニ↡有リ↢二種↡。一ニ者竪、二ニ者横ナリ。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[一][Ⅱ]釈
                        [ⅰ]竪を明かす

^また↑竪しゅについてまた二に種しゅあり。 一ひとつには▽竪しゅ超ちょう、 二ふたつには▽竪しゅ出しゅつなり。 竪しゅ超ちょう・竪しゅ出しゅつは*権実ごんじつ・*顕密けんみつ・*大だい小しょうの教きょうに明あかせり。 *歴りゃく劫こう迂回うえの菩ぼ提だい心しん、 自じ力りきの金剛こんごう心しん、 菩ぼ薩さつの大心だいしんなり。

又就テ↠竪ニ復有リ↢二種↡。一ニ者ハ*竪超、二ニ者竪出ナリ。竪超・竪出ハ明セリ↢権実・顕密・大小之教ニ↡。歴劫迂廻之菩提心、自力ノ金剛*心、菩薩ノ大心也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[一][Ⅱ][ⅱ]横を明かす

^また↑横おうについてまた二に種しゅあり。 一ひとつには▽横おう超ちょう、 二ふたつには▽横おう出しゅつなり。 横おう出しゅつとは、 *正しょう雑ぞう・*定じょう散さん、 ▼他た力りきのなかの自じ力りきの菩ぼ提だい心しんなり。 ▼横おう超ちょうとは、 これすなはち願力がんりき回え向こうの信しん楽ぎょう、 これを願がん作さ仏ぶつ心しんといふ。 願がん作さ仏ぶつ心しんすなはちこれ横おうの大だい菩ぼ提だい心しんなり。 これを*横おう超ちょうの金剛こんごう心しんと名なづくるなり。

亦就テ↠横ニ復有リ↢二種↡。一ニ者横超、二ニ者横出ナリ。横出ト者、正雑・定散、他力ノ中之自力ノ菩提心也。横超ト者ハ、斯乃チ願力廻向之信楽、是ヲ曰イフ↢願作仏心ト↡。*願作仏心即チ是横ノ大菩提心ナリ。是ヲ名クル↢横超ノ金剛心ト↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(イ)[二]結成・勧誡

^横竪おうじゅの菩ぼ提だい心しん、 その言ことば一ひとつにしてその心こころ異ことなりといへども、 入にゅう真しんを正しょう要ようとす、 真心しんしんを根本こんぽんとす、 邪雑じゃぞうを錯しゃくとす、 疑ぎ情じょうを失しつとするなり。

横竪ノ菩提心、其ノ言一ニ而シテ其ノ心雖モ↠異ナリト、入真ヲ為ス↢正要ト↡、真心ヲ為ス↢根本ト↡、邪雑ヲ為ス↠*錯シヤクアヤマトリ、疑情ヲ為スル↠失ト也。

^欣ごん求ぐ*浄じょう刹せつの道俗どうぞく、 深ふかく信しん不ふ具ぐ足そくの金言きんげんを了りょう知ちし、 永ながく*聞もん不ふ具ぐ足そくの邪心じゃしんを離はなるべきなり。

忻求浄刹ノ道俗、深ク了↢知シ信不具足之金言ヲ↡、永ク応キ↠離ル↢聞不具足之邪心ヲ↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)引証
                    [一]横超の菩提心を証す
                      [Ⅰ]¬論註¼

【024753】^¬論ろんの註ちゅう¼ (下) にいはく、

▼¬*論ノ註ニ¼*曰ク、

^「▲*王舎おうしゃ城じょう所説しょせつの ¬*無む量りょう寿じゅ経きょう¼ を案あんずるに、 三輩さんぱい生しょうのなかに行ぎょうに優う劣れつありといへども、 みな無む上じょう菩ぼ提だいの心しんを発ほっせざるはなし。 この無む上じょう菩ぼ提だい心しんは、 すなはちこれ願がん作さ仏ぶつ心しんなり。 願がん作さ仏ぶつ心しんは、 すなはちこれ度ど衆しゅ生じょう心しんなり。 度ど衆しゅ生じょう心しんは、 すなはちこれ衆しゅ生じょうを摂取せっしゅして有う仏ぶつの国こく土どに生しょうぜしむる心しんなり。 このゆゑに▽かの安楽あんらく浄じょう土どに生しょうぜんと願がんずるものは、 かならず無む上じょう菩ぼ提だい心しんを発ほっするなり。

「▼按ズルニ↢王舎城所説ノ¬无量寿経ヲ¼↡、▼三輩生ノ中ニ雖モ↣行ニ有リト↢優劣↡、▼莫シ↠不0092ルハ↠発セ↢皆 ナ无上菩提之心ヲ↡。此ノ无上菩提心ハ、即チ是願作仏心ナリ。願作仏心ハ、即チ是度衆生心ナリ。度衆生心ハ、即チ是*摂↢オサメ取シテムカエトリ衆生ヲ↡タマフトナリ生ゼシムル↢有仏ノ国土ニ↡心ナリ。是ノ故ニ願ズル↠生ゼムト↢▼彼ノ安楽浄土ニ↡者ハ、要ズ発スル↢无上菩提心ヲ↡也。

^◆もし人ひと無む上じょう菩ぼ提だい心しんを発ほっせずして、 ただかの国こく土どの受楽じゅらく間ひまなきを聞ききて、 楽らくのためのゆゑに生しょうぜんと願がんぜん、 またまさに往おう生じょうを得えざるべきなり。 このゆゑにいふこころは、 ª自じ身しん住じゅう持じの楽らくを求もとめず、 一切いっさい衆しゅ生じょうの苦くを抜ぬかんと欲おもふがゆゑにº (浄土論) と。

▼若シ人不ズシテ↠発セ↢无上菩提心ヲ↡、但聞キテ↢彼ノ国土ノ受楽无キヲ↟間ヒマ、為ノ↠楽ノ故ニ願ゼム↠生ゼムト、亦当ニキ↠不ル↠得エ↢往生ヲ↡也。是ノ故ニ言イフコヽロハ、不ズ↠求メ↢自身住持之楽ヲ↡、欲フガ↠抜カムト↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニト。

^◆ª住じゅう持じ楽らくº とは、 いはく、 かの安楽あんらく浄じょう土どは阿あ弥陀みだ如来にょらいの本願ほんがん力りきのために住じゅう持じせられて受楽じゅらく間ひまなきなり。

住持楽ト者ハ、謂ク彼ノ安楽浄土ハ為ニ↢阿弥陀如来ノ本願力之ノ↡所レテ↢住持セ↡受楽无キ↠間ヒマ也。

^◆おほよそ ª回え向こうº の名みょう義ぎを釈しゃくせば、 いはく、 おのれが所しょ集しゅうの一切いっさいの功く徳どくをもつて一切いっさい衆しゅ生じょうに*施与せよしたまひて、 ともに仏道ぶつどうに向むかへしめたまふなり」 と。 抄出

▼凡ソ釈セバ↢廻向ノ名義ヲ↡、謂ク以テ↢己 レガ所集ノ一切ノ功徳ヲ↡*施セ↢与ヨシタマヒテホドコシアタフ一切衆生ニ↡、共ニ向ヘシメタマフナリト↢仏道ニ↡。」 抄出

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二]横超の特絶を示す
                      [Ⅰ]元照¬弥陀経義疏¼三文

1.甚難希有

【54】^*元がん照じょう律りっ師しのいはく (*阿弥陀経義疏)、

▼*元*昭律師ノ云ク、

^「▽他たのなすことあたはざるがゆゑに甚難じんなんなり。 世よ挙こぞつていまだ見みたてまつらざるがゆゑに希有けうなり」 と。

▲「他ノ不ルガ↠能ハ↠為ナスコト故ニ甚難ナリ。挙コゾテ↠世未ダルガ↠見ミタテマツラ故ニ希有ナリトイヘリ。」

2.世間難信

【55】^またいはく (阿弥陀経義疏)、

▼又云ク、

^「▽念仏ねんぶつ法門ぼうもんは↓愚智ぐち・↓豪賎ごうせんを簡えらばず、 ↓久く近ごん・↓善悪ぜんあくを論ろんぜず0248、 ただ↓*決誓けっせい猛みょう信しんを取とれば、 臨りん終じゅう悪相あくそうなれども、 十じゅう念ねんに往おう生じょうす。 これすなはち▼↓*具ぐ縛ばくの凡ぼん愚ぐ、 ▼↓*屠沽とこの下げ類るい、 刹せつ那なに超ちょう越おつする成じょう仏ぶつの法ほうなり。 ▽*世せ間けん甚じん難信なんしんといふべきなり」 と。

▲「念仏法門ハ不ズ↠簡 ラバ↢愚智・豪賎ヲ↡、不ズ↠論ゼ↢久近・善悪ヲ↡、唯取レバ↢決誓猛信ヲ↡、臨終悪相ナレドモ、十念ニ往生ス。此 レ乃チ具縛ノ凡愚、屠沽ノ下類、刹那ニ※超越スル成仏之法ナリ。可キ↠謂フ↢世間甚難信ト↡也。」

3.二難弁成

【56】^またいはく (阿弥陀経義疏)、

▼又云ク、

^「△この悪あく世せにして修しゅ行ぎょう成じょう仏ぶつするを難なんとするなり。 △もろもろの衆しゅ生じょうのために、 この法門ほうもんを説とくを二ふたつの難なんとするなり。 前さきの二に難なんを承うけて、 すなはち諸仏しょぶつ所讃しょさんの虚むなしからざる意こころを彰あらわす。 衆しゅ生じょう聞ききて信受しんじゅせしめよとなり」 と。 以上

▲「於シテ↢此ノ悪世ニ↡修行成仏スルヲ為ル↠難ト也。▼為ニ↢諸ノ衆生ノ↡、説クヲ↢此ノ法門ヲ↡為ル↢二ノ難ト↡也。▼承ウケテ↢前ノ二難ヲ↡、則チ彰ス↢諸仏所讃ノ不ル↠虚シカラ意ヲ↡。使メヨトナリト↢衆生聞キキ而テ信受セ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅱ]用欽¬超玄記¼(いま伝わらず)

【57】^*律りっ宗しゅうの*用欽ようきんのいはく、

▼律宗ノ用欽ノ云ク、

^「△法ほうの難なんを説とくなかに、 まことにこの法ほうをもつて凡ぼんを転てんじて聖しょうとなすこと、 なほし掌たなごころを反かえすがごとくなるをや。 大おおきにこれ易やすかるべきがゆゑに、 おほよそ浅あさき衆しゅ生じょうは多おおく疑ぎ惑わくを生しょうぜん。 すなはち ¬*大本だいほん¼ (大経・下) に ª▲易い往おう而に無む人にんº といへり。 ゆゑに知しんぬ、 難信なんしんなり」 と。

「説ク↢法ノ難ヲ↡中ニ、良ニ以テ↢此ノ法ヲ↡転ジテ↠凡ヲ成スコト↠聖ト、猶シクナルオ↠反カヘスガ↠掌ヲ乎ヤ。大ニ為コレ容ベキガ↠易0093カル故ニ、凡ソ浅キ衆生ハ多ク生ゼム↢疑惑ヲ↡。即チ¬大本ニ¼云ヘリ↢易往而无人ト↡。故ニ知ヌ難信ナリト矣。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅲ]戒度¬聞持記¼

【58】^¬*聞もん持じ記き¼ にいはく、

▼¬聞持記ニ¼云ク、

^「ª↑愚智ぐちを簡えらばずº といふは、 性しょうに利り鈍どんあり。 ª↑豪賎ごうせんを択えらばずº といふは、 *報ほうに強ごう弱にゃくあり。 ª↑久く近ごんを論ろんぜずº といふは、 *功こうに浅深せんじんあり。 ª↑善悪ぜんあくを選えらばずº といふは、 行ぎょうに好醜こうしゅあり。 ª↑決誓けっせい猛みょう信しんを取とれば、 臨りん終じゅう悪相あくそうなれどもº といふは、 すなはち ¬観かん経ぎょう¼ 下げ品ぼん中生ちゅうしょうに ª▲地じ獄ごくの衆しゅ火か、 一いち時じにとも0249に至いたるº と等らいへり。

「不簡愚智トイフハ、 性ニ有リ↢利鈍↡。 不択豪賎トイフハ、 報ニ有リ↢*強弱↡。 不論久近トイフハ、 功ニ有リ↢浅深↡。 不選善悪トイフハ、 行ニ有リ↢好*醜↡。 取決誓猛ミヤウ信、臨終悪相トイフハ、 即チ¬観経ノ¼下品中生ニ地獄ノ衆火、一時ニ倶ニ至ルト等ライヘリ。

^ª↑具ぐ縛ばくの凡ぼん愚ぐº といふは、 *二に惑わくまつたくあるがゆゑに。 ª↑屠沽とこの下げ類るい、 刹せつ那なに超ちょう越おつする成じょう仏ぶつの法ほうなり。 一切いっさい世せ間けん甚じん難信なんしんといふべきなりº といふは、 屠とはいはく、 殺せつを宰つかさどる。 沽こはすなはち*醞売うんばい。 かくのごとき悪人あくにん、 ただ十じゅう念ねんによりてすなはち*超ちょう往おうを得う、 あに難信なんしんにあらずや。

具縛凡愚トイフハ、二惑全ク在ルガ故ニ。屠沽下類、刹那※超越成仏之法。可謂一切世間甚難信也トイフハ、屠ハ謂ク、*宰ツカサドル↠殺ヲ。沽ハ即チ*醞売バイ。如シ↠此クノ悪人、止タダ由リテ↢十念ニ↡便チ得ウ↢超往ヲ↡、豈 ニ非ズヤ↢難信ニ↡。

 ^*阿あ弥陀みだ如来にょらいは▲真実しんじつ明みょう・▲平びょう等どう覚がく・▲難なん思議じぎ・▲畢ひっ竟きょう依え・▲大だい応おう供ぐ・▲大だい安あん慰に・▲無む等等とうどう・▲不可ふか思議しぎ光こうと号ごうしたてまつるなり」 と。 以上

阿弥陀如来ハ、号シマツルナリト↢真実明・平等覚・難思議・畢竟依・大応供・大安慰・无等等・不可思議光ト↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(a)(ロ)[二][Ⅳ]宗暁¬楽邦文類¼

【59】^¬*楽邦らくほう文類もんるい¼ の*後ご序じょにいはく、

▼¬*楽邦文類ノ¼後序ニ曰ク、

^「浄じょう土どを修しゅするものつねに多おおけれども、 その門もんを得えてただちに造いたるものいくばくもなし。 浄じょう土どを論ろんずるものつねに多おおけれども、 その要ようを得えてただちに指おしふるものあるいは寡すくし。 かつていまだ聞きかず、 *↓自じ障しょう↓自じ蔽へいをもつて説せつをなすことあるもの。 得うるによりてもつてこれをいふ。

「修スル↢浄土ヲ↡者 ノ常ニ多ケレドモ、得エ↢其ノ門ヲ↡而テ径ダヾチニ造イタル者 ノ无シ↠幾イクバクモ。論ズル↢浄土ヲ↡者 ノ常ニ多ケレドモ、得エ↢其ノ要ヲ↡而テ直ニ指オシフル者 ノ或イハ寡スクナシ矣。曽カツテ未ズ ダ↠聞キカ、有ル↧以テ↢自障自蔽ヲ↡為ナスコト↞説ヲ者モノ。因リテ↠得ルニ以テ言フ↠之ヲ。

^それ↑自じ障しょうは*愛あいにしくなし、 ↑自じ蔽へいは*疑ぎにしくなし。 ただ疑ぎ・愛あいの二に心しんつひに障しょう礙げなからしむるは、 すなはち浄じょう土どの一門いちもんなり。 いまだはじめて*間けん隔きゃくせず。 弥陀みだの*洪願こうがんつねにおのづから摂しょう持じしたまふ。 *必然ひつねんの理りなり」 と。 以上

夫 レ自障ハ莫シ↠若シク↠愛ニ、自蔽ハ莫シ↠若ク↠疑ニ。但使シムルハ↣疑・愛ノ二心了ツイニ無カラ↢障↡、則チ浄土ノ一門ナリ。未ズ ダ↢始テ*間隔セ↡。弥陀ノ洪願常ニ自オノヅカラ摂持シタマフ。必然之理也。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)信一念の義を釈す【信一念釈】
                  (イ)正しく信一念の義を釈す
                    [一]直釈

【025060】^▼それ真実しんじつの信しん楽ぎょうを案あんずるに、 ▼*信しん楽ぎょうに一念いちねんあり。 ▼一念いちねんとはこれ*信しん楽ぎょう開発かいほつの時じ剋こくの極促ごくそくを顕あらわし、 *広大こうだい難なん思じの慶きょう心しんを彰あらわすなり。

▼夫 レ按ズルニ↢真実ノ信楽ヲ↡、信楽ニ有リ↢一念↡。一念ト者ハ斯 レ顕シ↢信楽開発ノ時剋之極*促トシヲ↡、*彰ス↢ウチニアラハス広大難思ノ慶心ヲ↡也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二]引文
                      [Ⅰ]経説
                        [ⅰ]¬大経¼

【61】^ここをもつて ¬大だい経きょう¼ (下) にのたまはく、

是ヲ以テ▼¬大経ニ¼言ノタマハク、

^「▲あらゆる衆しゅ生じょう、 その名みょう号ごうを↓聞ききて↓信心しんじん↓歓かん喜ぎせんこと、 ↓乃ない至し↓一いち念ねんせん。 *至し心しんに回え向こうしたまへり。 かの国くにに生しょうぜんと願がんずれば、 すなはち往おう生じょうを得え、 不ふ退転たいてんに住じゅうせん」 と。

「諸有アラユル衆生、聞キテ↢其ノ名号ヲ↡信心歓喜セムコト、乃至一念セム。至心ニ廻*向シタマヘリ。願ズレバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、即チ得エ↢往生ヲ↡、住セムト↢不退転ニ↡。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅱ]¬如来会¼

【62】^また (如来会・下)、

▼又0094

^「▲他た方ほう仏国ぶっこくの所しょ有うの衆しゅ生じょう、 無む量りょう寿じゅ如来にょらいの名みょう号ごうを聞ききてよく一念いちねんの浄じょう信しんを発おこして歓かん喜ぎせん」 とのたまへり。

言ノタマヘリ↧「他方仏国ノ所有ノ衆生、聞キテ↢无量寿如来ノ名号ヲ↡能ク発シテ↢一念ノ浄信ヲ↡歓*喜セムト。」↥

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅲ]¬大経¼

 ^また (大経・下)、

又

^「▲その仏ぶつの本願ほんがんの力ちから、 名みなを聞ききて往おう生じょうせんと欲おもはん」 とのたまへり。

言ノタマヘリ↣
「其ノ仏ノ本願ノ力 ラ聞キテ↠名ヲ欲ヘト↢往生セムト↡」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅳ]¬如来会¼

 ^また (如来会・下)、

又

^「▲仏ぶつの聖しょう徳とくの名みなを聞きく」 とのたまへり。 以上

言ヘリ↣「聞クト↢仏ノ聖徳ノ名ヲ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅰ][ⅴ]¬涅槃経¼「迦葉品」

【63】^¬涅ね槃はん経¼ (迦葉品) にのたまはく、

▼¬*涅槃経ニ¼言ノタマハク、

^「▼いかなるをか名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとする。 如来にょらいの所説しょせつは十じゅう二に部ぶ経きょうなり。 ただ六ろく部ぶを信しんじていまだ六ろく部ぶを信しんぜず、 このゆゑに名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとす。

「云何 イカン ガ名ケテ為スル↢聞不具足ト↡。▼如来ノ所説ハ十二部経ナリ。唯 ダ信ジテ↢六部ヲ↡未ズ ダ↠信ゼ↢六部ヲ↡、是ノ故ニ名ケテ為ス↢聞不具足ト↡。

^またこの六ろく部ぶの経きょうを受じゅ持じすといへども、 *読誦どくじゅにあたはずして他たのために解げ説せつすれば利り益やくするところなけん。 このゆゑに名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとす。

▼雖モ↣復 タ受↢持スト是ノ六部ノ経ヲ↡、不ズシテ↠能ハ↢読誦ニ↡為ニ↠他ノ解*説スルハ无ケム↠所↢利益スル↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢聞不具足ト↡。

^またこの六ろく部ぶの経きょうを受うけをはりて、 論ろん議ぎのためのゆゑに、 *勝しょう0251他たのためのゆゑに、 *利り養ようのためのゆゑに、 *諸しょ有うのためのゆゑに、 *持じ読どく誦じゅ説せつせん。 このゆゑに名なづけて聞もん不ふ具ぐ足そくとす」 とのたまへり。 以上

▼又復受ケ↢是ノ六部ノ経ヲ↡已リテ、為ノ↢論議ノ↡故ニ、為ノ↢勝他ノ↡故ニ、為ノ↢利養ノ↡故ニ、為ノ↢諸有ノ↡故ニ、持読誦説セム。是ノ故ニ名ケテ為ストノタマヘリ↢聞不具足ト↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]師釈
                        [ⅰ]「散善義」二文

【64】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) は ^「▲一心いっしん↓専せん念ねん」 (散善義) といひ、 ^また ^「▲↓専心せんしん専念せんねん」 (散善義・意) といへり。 以上

*光明寺ノ和尚ハ云ヒ↢「一心専念ト」↡、又云ヘリト↢「専心専念ト」↡。 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三]釈成
                      [Ⅰ]経説を釈す
                        [ⅰ]聞信一念を釈す

【65】^しかるに ¬経きょう¼ (大経・下) に *「↑聞もん」 といふは、 衆しゅ生じょう、 ▼*仏願ぶつがんの生しょう起き本末ほんまつを聞ききて疑ぎ心しんあることなし、 これを聞もんといふなり。 「↑信心しんじん」 といふは、 すなはち本願ほんがん力りき回え向こうの信心しんじんなり。 「↑歓かん喜ぎ」 といふは、 身心しんしんの悦えつ予よを形あらわすの貌かおばせなり。

然ルニ¬経ニ¼言イフ↠聞ト者ハ、衆生聞キテ↢仏願ノ生起本末ヲ↡無シ↠有ルコト↢疑心↡、是ヲ曰フ↠聞ト也。言フ↢信心ト↡者ハ、則チ本願力廻向之信心也。言フ↢歓喜ト↡者ハ、※形アラハス↢身心ノ悦予之貌カホバセヲ↡也。

^「↑乃ない至し」 といふは、 多た少しょうを摂せっするの言ことばなり。 「↑一念いちねん」 といふは、 信心しんじん二に心しんなきがゆゑに一念いちねんといふ。 これを一心いっしんと名なづく。 一心いっしんはすなはち▼清浄しょうじょう報ほう土どの真因しんいんなり。

言フ↢乃至ト↡者ハ、※摂スル↢多少之言↡也。言フ↢一念ト↡者ハ、信心无キガ↢二心↡故ニ曰フ↢一念ト↡。是ヲ名ク↢一心ト↡。一心ハ則チ清浄報土ノ真因也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三][Ⅰ][ⅱ]一心の利益を明かす【現生十益】

^金剛こんごうの真心しんしんを獲ぎゃく得とくすれば、 横おうに五ご趣しゅ八難はちなんの道どうを超こえ、 かならず現げん生しょうに十種じっしゅの益やくを獲う。 なにものか十じゅうとする。

獲↢得スレ金剛ノ真心ヲ↡者バ、▼横ニ超ヘ↢五趣八0095難ノ道ヲ↡、必ズ獲ウ↢現生ニ▼十種ノ益ヲ↡。何者モノカ為スル↠十ト。

^一ひとつには冥みょう衆しゅ護持ごじの益やく、 ^二ふたつには至し徳とく具ぐ足そくの益やく、 ^三みつには転悪てんあく成じょう善ぜんの益やく、 ^四よつには諸仏しょぶつ護ご念ねんの益やく、 ^五いつつには諸仏しょぶつ称しょう讃さんの益やく、 ^六むつには心光しんこう常じょう護ごの益やく、 ^七ななつには心しん多た歓かん喜ぎの益やく、 ^八やつには知ち恩おん報徳ほうとくの益やく、 ^九ここのつには常行じょうぎょう大だい悲ひの益やく、 ^十とおには正定しょうじょう聚じゅに入いる益やくなり。

▼一ニ者ハ*冥衆護持ノ益、▼二ニ者ハ至徳具足ノ益、▼三ニ者ハ転悪成善ノ益、▼四ニ者ハ諸仏護念ノ益、▼五ニ者ハ諸仏称讃ノ益、▼六ニ者ハ心光常護ノ益、▼七ニ者ハ心多歓喜ノ益、▼八ニ者ハ知恩報徳ノ益、▼九ニ者ハ常行大悲ノ益、▼十ニ者ハ入ル↢正定聚ニ↡益也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[三][Ⅱ]師釈を釈す

【025266】^宗しゅう師し (善導) の 「↑専念せんねん」 (散善義) といへるは、 すなはちこれ一いち行ぎょうなり。 「↑専心せんしん」 (散善義) といへるは、 すなはちこれ一心いっしんなり。

宗師ノ云ヘルハ↢専念ト↡、即チ是 レ一行ナリ。云ヘルハ↢専心ト↡、即チ是 レ一心也。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四]会名
                      [Ⅰ]正明
                        [ⅰ]正会【一念転釈】

^▼しかれば、 1願がん成じょう就じゅ (第十八願成就文) の 「一念いちねん」 はすなはちこれ専心せんしんなり。

然レ者バ願成就ノ一念ハ即チ是専心ナリ。

2専心せんしんはすなはちこれ深心じんしんなり。

専心ハ即チ是深心ナリ。

3深心じんしんはすなはちこれ深信じんしんなり。

深心ハ即チ是深信ナリ。

4深信じんしんはすなはちこれ堅けん固ご深信じんしんなり。

深信ハ即チ是 レ堅固深信ナリ。

5堅けん固ご深信じんしんはすなはちこれ決けつ定じょう心しんなり。

堅固深信ハ即チ是決定心ナリ。

6決けつ定じょう心しんはすなはちこれ無む上じょう上じょう心しんなり。

決定心ハ即チ是 レ无上上心ナリ。

7無む上じょう上じょう心しんはすなはちこれ真心しんしんなり。

无上上心ハ即チ是真心ナリ。

8真心しんしんはすなはちこれ相続そうぞく心しんなり。

真心ハ即チ是相続心ナリ。

9相続そうぞく心しんはすなはちこれ淳じゅん心しんなり。

相続心ハ即チ是淳ジユン心ナリ。

10淳じゅん心しんはすなはちこれ憶念おくねんなり。

淳心ハ即チ是憶念ナリ。

11憶念おくねんはすなはちこれ真実しんじつの一心いっしんなり。

憶念ハ即チ是真実ノ一心ナリ。

12真実しんじつの一心いっしんはすなはちこれ大だい慶きょう喜き心しんなり。

真実ノ一心ハチ即是大慶喜心ナリ。

13大だい慶きょう喜き心しんはすなはちこれ真実しんじつ信心しんじんなり。

大慶喜心ハ即チ是真実信心ナリ。

14真実しんじつ信心しんじんはすなはちこれ金剛こんごう心しんなり。

真実信心ハ即チ是金剛心ナリ。

15金剛こんごう心しんはすなはちこれ願がん作さ仏ぶつ心しんなり。

金剛心ハ即チ是願作仏心ナリ。

16願がん作さ仏ぶつ心しんはすなはちこれ度ど衆しゅ生じょう心しんなり。

願作仏心ハ即チ是度衆生心ナリ。

17度ど衆しゅ生じょう心しんはすなはちこれ衆しゅ生じょうを摂取せっしゅして安楽あんらく浄じょう土どに生しょうぜしむる心しんなり。

度衆生心ハ即チ是摂↢取シテ衆生ヲ↡生ゼシムル↢安楽浄土ニ↡心ナリ。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅰ][ⅱ]結示

^▼この心しんすなはちこれ大だい菩ぼ提だい心しんなり。 この心しんすなはちこれ大だい慈悲じひ心しんなり。 この心しんすなはちこれ*無む量りょう光こう明みょう慧えによりて生しょうずるがゆゑに。

是ノ心即チ是大菩堤心ナリ。是ノ心即チ是大慈悲心ナリ。是ノ心即チ是 レ由リテ↢无量光明慧ニ↡生ズルガ故ニ。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ]嘆徳
                        [ⅰ]正しく菩提心の徳を嘆ず

^*願海がんかい平びょう等どうなるがゆゑに*発心ほっしん等ひとし、 発心ほっしん等ひとしきがゆゑに*道どう等ひとし、 道どう等ひとしきがゆゑに大だい慈悲じひ等ひとし、 大だい慈悲じひはこれ*仏道ぶつどうの正しょう因いんなるがゆゑに。

願海平等ナルガ故ニ発心等ヒトシ、発心等ヒトシキガ故ニ道等ヒトシ、道等シキガ故ニ大慈悲等ヒトシ、大慈悲者ハ是仏道ノ正因ナルガ故ニ。

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ][ⅱ]菩提心を要となすことを明かす
                          [a]¬論註¼

【025367】^¬論ろんの註ちゅう¼ (下) にいはく、

▼¬*論0096ノ註ニ¼曰ク、

^「▲かの安楽あんらく浄じょう土どに生うまれんと願がんずるものは、 かならず無む上じょう▽菩ぼ提だい心しんを発ほっするなり」 とのたまへり。

「▼願ズル↠生レムト↢彼ノ安楽浄土ニ↡者ハ、要ストノタマヘリ↢発无上菩提心ヲ↡也。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ][ⅲ]生仏不二を詳らかにす
                          [a]¬論註¼

【68】^またいはく (論註・上)、

▼又云ク、

^「▲ª*是ぜ心しん作さ仏ぶつº (観経) とは、 いふこころは、 心しんよく作さ仏ぶつするなり。

「是心作仏ト者ハ、言心イフコヽロハ能ク作仏スル也。

^▼ª是ぜ心しん是ぜ仏ぶつº (観経) とは、 心しんのほかに仏ぶつましまさずとなり。 たとへば火ひ、 木きより出いでて、 火ひ、 木きを離はなるることを得えざるなり。 木きを離はなれざるをもつてのゆゑに、 すなはちよく木きを焼やく。 木き、 火ひのために焼やかれて、 木きすなはち火ひとなるがごときなり」 とのたまへり。

是心是仏ト者ハ、心ノ外ニ无マシマサズト↠仏也。▼譬ヘバ如キ↢火、従リ↠木出デヽ、火不ル↠得エ↠離ルルコトヲ↠木ヲ也、以テノ↠不ルヲ↠離レ↠木ヲ故ニ、則チ能ク焼ク↠木ヲ、木為ニ↠火ノ焼カレテ、木即チ為ナルガ↟火ト也トノタマヘリ。」

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(イ)[四][Ⅱ][ⅲ][b]「定善義」

【69】^光こう明みょう (善導) のいはく (定善義)、

▼*光明ノ云ク、

^「▲この心しん作さ仏ぶつす、 *この心しんこれ仏ぶつなり、 この心しんのほかに異い仏ぶつましまさず」 (意) とのたまへり。 以上

「是ノ心作仏ス、是ノ心是 レ仏ナリ、是ノ心ノ外ニ无マシマサズトノタマヘリ↢異仏↡。」 已上

一 Ⅱ ⅰ b イ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)結示

【70】^▼ゆゑに知しんぬ、 一心いっしんこれを↑如実にょじつ修しゅ行ぎょう相応そうおうと名なづく。 ▲すなはちこれ正教しょうきょうなり、 これ正しょう義ぎなり、 これ正行しょうぎょうなり、 これ正しょう解げなり、 これ正しょう業ごうなり、 これ正しょう智ちなり。

故ニ知ヌ一心是ヲ名ク↢如実修行相応ト↡。即チ是 レ正教ナリ、是正義ナリ、是正行ナリ、是正解ナリ、是正業ナリ、是 レ正智也。

一 Ⅱ ⅰ b ロ 総結【問答結帰】

【71】^▼三心さんしんすなはち一心いっしんなり、 一心いっしんすなはち金剛こんごう真心しんしんの義ぎ、 答こたへをはんぬ、 知しるべしと。

三心即チ一心ナリ、一心即チ金剛真心之義、答ヘ竟ヌ、可シト↠知ル。

一 Ⅱ ⅱ 追釈【追釈】
      a 菩提心の名を釈す

【72】^¬*止し観かん¼ の一いちにいはく、

▼¬*止観ノ¼一ニ云ク、

^△「ª*菩ぼ提だいº とは天竺てんじく (印度) の語ことば、 ここには*道どうと称しょう0254す。 ª*質しっ多たº とは天竺てんじくの音こえなり、 この方ほうには心しんといふ。 心しんとはすなはち*慮りょ知ちなり」 と。 以上

「菩*提ト者ハ天竺ノ語 バ、此ニハ称ス↠道ト。質シチ多ト者ハ天竺ノ音ナリ、此ノ方ニハ云フ↠心ト。心ト者ハ即チ慮知也。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b 正しく大信の利益を明かす
        イ 横超断四流を釈す【横超断四流釈】
          (一)牒

【73】^「△↓横おう超ちょう↓断だん↓四流しる」 といふは、

言フ↢▼横超断四流ト↡者ハ、

一 Ⅱ ⅱ b イ (二)釈
            (Ⅰ)横超を釈す
              (ⅰ)釈義

^↑横おう超ちょうとは、 横おうは竪しゅ超ちょう・竪しゅ出しゅつに対たいす、 超ちょうは*迂うに対たいし*回えに対たいするの言ことばなり。

横超ト者ハ、横者ハ対ス↢竪超・竪出ニ↡、超者ハ対シ↠*迂ニ対スル↠廻ニ之言ナリ。

^△竪しゅ超ちょうとは大だい乗じょう真実しんじつの教きょうなり。 △竪しゅ出しゅつとは大だい乗じょう*権ごん方便ほうべんの教きょう、 二に乗じょう・三さん乗じょう迂回うえの教きょうなり。 ^△横おう超ちょうとはすなはち*願がん成じょう就じゅ一実いちじつ円満えんまんの真しん教きょう、 真しん宗しゅうこれなり。

竪超ト者ハ大乗真実之教也。竪出ト者ハ大乗*権方便之教、二乗・三乗迂廻之教也。横超ト者ハ即チ願成就一実円満之真教、真宗是 レ也。

^▼また△横おう出しゅつあり、 すなはち三輩さんぱい・九く品ぼん、 定じょう散さんの教きょう、 化土けど・懈け慢まん、 迂回うえの善ぜんなり。

亦復有リ↢横出↡、即チ三輩・九品、定散之教、化*土・懈慢、*迂廻之善也。

^大願だいがん清浄しょうじょうの報ほう土どには品ほん位い階かい次じをいはず、 *一念いちねん須しゅ臾ゆのあひだに、 すみやかに疾とく無む上じょう正しょう真しん道どうを超証ちょうしょうす、 ゆゑに横おう超ちょうといふなり。

▼大願0097清浄ノ報土ニハ不ズ↠云ハ↢*品位*階*次ヲ↡、一念須臾ノ*傾アヒダニ、速スミヤカニ疾トク超↢証ス▼无上正真道ヲ↡、故ニ曰フ↢▼横超ト↡也。

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅰ)(ⅱ)引証
              (a)¬大経¼三文

・超発

【74】^¬大本だいほん¼ (大経・上) にのたまはく、

▼¬*大本ニ¼*言ノタマハク、

^「▲無む上じょう殊しゅ勝しょうの願がんを超ちょう発ほつす」 と。

「▼超↢発スト无上殊勝之願ヲ↡。」

・超世

【75】^またのたまはく (大経・上)、

▼又*言ク、

^「▲われ超ちょう世せの願がんを建たつ。 かならず無む上じょう道どうに至いたらんと。

「我 レ建タツ↢▼超世ノ願ヲ↡必ズ至ラムト↢无上道ニ↡

^▲名声みょうしょう十方じっぽうに超こえて、 究く竟きょうして聞きこゆるところなくは、 誓ちかふ、 正しょう覚がくを成ならじ」 と。

名声超エテ↢十方ニ↡
究竟シテ靡ナクハ↠*所↠聞キコユル誓チカフ不ジト↠成ラ↢正覚ヲ↡」

・超絶

【76】^またのたまはく (大経・下)、

▼又*言ク、

^「▲かならず超ちょう絶ぜつして去すつることを得えて、 安あん養にょう国こくに往おう生じょうして、 横おうに五ご悪趣あくしゅを截きり、 悪趣あくしゅ自じ然ねんに閉とぢん。 道どうに昇のぼるに窮極ぐうごくなし。 ◆往ゆ0255き易やすくして人ひとなし。 その国くに逆ぎゃく違いせず、 自じ然ねんの牽ひくところなり」 と。 以上

「▼必ズ得テ↢超絶シテ去スツルコトヲ↡、往↢生シテ安養国ニ↡、▼横ニ截キリ↢五悪趣ヲ↡、悪趣自然ニ閉トヂム。▼昇ルニ↠道ニ无シ↢窮極↡。易ク↠往キ而シテ无シ↠人。▼其ノ国不ズ↢逆違セ↡、自然之ノ所トコロナリト↠牽ヒク。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅰ)(ⅱ)(b)¬大阿弥陀経¼

【77】^¬*大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ (下) *支し謙けん三蔵さんぞうの訳やく にのたまはく、

▼¬*大阿弥陀経ニ¼ *友謙 言ク、

^「▲超ちょう絶ぜつして去すつることを得うべし。 阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくに往おう生じょうすれば、 横おうに五ご悪あく道どうを截きりて自じ然ねんに閉塞へいそくす。 道どうに昇のぼるにこれ極きわまりなし。 往ゆき易やすくして人ひとあることなし。 その国こく土ど逆ぎゃく違いせず、 自じ然ねんの牽ひくところなり」 と。 以上

「可シ↠得ウ↢超絶シテ去スツルコトヲ↡。往↢生スレバ阿弥陀仏国ニ↡、横ニ截キリテ↢於五悪道ヲ↡自然ニ閉塞ス。昇ルニ↠道ニ之コレ无シ↠極 マ リ。易クシテ↠往キ无シ↠有ルコト↠人。其ノ国土不ズ↢逆違セ↡、自然之随トコロナリト↠牽ヒク。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)断四流を釈す
            (ⅰ)釈義

・断

【78】^↑断だんといふは、 *往相おうそうの一心いっしんを発ほっ起きするがゆゑに、 *生しょうとしてまさに受うくべき生しょうなし。 *趣しゅとしてまた到いたるべき趣しゅなし。 すでに六趣ろくしゅ・四し生しょう、 因いん亡もうじ果か滅めっす。 ゆゑにすなはち頓とんに三さん有ぬの生しょう死じを断絶だんぜつす。 ゆゑに断だんといふなり。

▼言フ↠断ト者ハ、発↢起スルガ往相ノ一心ヲ↡故ニ、无シ↢生ト而シテ当ベ ニキ↠受ク生↡。无シ↢趣ト而シテ更マタ応ベキ↠到ル趣↡。已ニ六趣・四生、因亡ジ果滅ス。故ニ即チ頓ニ断↢絶ス三有ノ生死ヲ↡。故ニ曰フ↠断ト也。

・四流

^↑四流しるとはすなはち四し暴流ぼるなり。 また生しょう老ろう病びょう死しなり。

四流ト者ハ則チ四暴流ナリ。又生老病死也。

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)引証
              (a)¬大経¼

【79】^¬大本だいほん¼ (大経・下) にのたまはく、

▼¬大本ニ¼言 マハク、

^「▲かならずまさに仏道ぶつどうを成なりて、 広ひろく生しょう死じの流ながれを度どすべし」 と。

「会カナラズ当ニシト↧成リテ↢仏道ヲ↡広ク度ス↦▼生死ノ流ヲ↥」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(b)¬平等覚経¼

【80】^またのたまはく (*平等覚経・二)、

又0098言ク、

^「▲かならずまさに世せ尊そんとなりて、 まさに一切いっさい生しょう老ろう死しを度どせんとすべし」 と。 以上

「会カナラズ当ニ作リテ↢世尊ト↡ 将ス ニベシト↠度セムト↢一切▼生老死ヲ↡」 已上

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(c)¬涅槃経¼「師子吼品」

【81】^¬涅ね槃はん経¼ (師子吼品) にのたまはく、

¬*涅槃経ニ¼言ハク、

^「また涅ね槃はんは名なづけて*洲しゅう渚しょとす。 なにをもつてのゆゑに、 *四し大だいの暴河ぼがに漂ただよふことあたはざるがゆゑに。 なんらをか0256四よつとする。 一ひとつには欲よく暴ぼ、 二ふたつには有う暴ぼ、 三みつには見けん暴ぼ、 四よつには無む明みょう暴ぼなり。 このゆゑに涅ね槃はんを名なづけて洲しゅう渚しょとす」 と。 以上

「▼又涅槃者ハ名ケテ為ス↢洲ス渚シヨト↡。何ヲ以テノ故ニ。四大ノ暴河ニ不ルガ↠能ハ↠漂タヾヨフコト故ニ。何等ラヲカ為スル↠四ト。一ニ者ハ欲暴、二ニ者ハ有暴、三ニ者ハ見暴、四ニハ无明暴ナリ。是ノ故ニ涅槃ヲ名ケテ為スト↢洲ス渚ト↡。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(d)¬般舟讃¼

【82】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) のいはく (般舟讃)、

▼*光明*寺ノ和尚ノ云ク、

^「▲もろもろの行ぎょう者じゃにまうさく、 *凡ぼん夫ぶの生しょう死じ貪とんじて厭いとはざるべからず。 弥陀みだの浄じょう土ど軽かるめて欣ねがはざるべからず。 厭いとへばすなはち娑しゃ婆ば永ながく隔へだつ、 欣ねがへばすなはち浄じょう土どにつねに居こせり。 隔へだつればすなはち六道ろくどうの因いん亡もうじ、 輪りん廻ねの果かおのづから滅めっす。 因いん果がすでに亡もうじてすなはち形かたちと名なと頓とんに絶たえぬるをや」 と。

「▼白マフサク↢諸ノ行者ニ↡、▼凡夫ノ生死▼不ズ↠可カラ↢貪ジ而テ不ザル↟厭ハ。▼弥陀ノ浄土▼不ズ↠可カラ↢軽メ而テ不ル↟忻ハ。厭イトヘバ則チ娑婆永ク隔ヘダツ、忻ヘバ則チ浄土ニ常ニ居セリ。隔ヘダツレバ則チ六道ノ因亡ジ、*淪廻之果自オノヅカラ滅ス。因果既ニ亡ジテ則チ▼形 タチト名ナト頓ニ絶タフルヲ也ヤト。」

一 Ⅱ ⅱ b イ (Ⅱ)(ⅱ)(e)¬礼讃¼

【83】^またいはく (礼讃)、

▼又云ク、

^「▲仰あおぎ願ねがはくは一切いっさい往おう生じょう人にん等とう、 *よくみづからおのれが能のうを思し量りょうせよ。 今身こんじんにかの国くにに生しょうぜんと願ねがはんものは、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがにかならずすべからく心こころを励はげましおのれに剋こくして、 昼ちゅう夜やに廃はいすることなかるべし。 畢ひつ命みょうを期ごとして、 上かみ一いち形ぎょうにあるは、 少すこしき苦くるしきに似如にたれども、 前念ぜんねんに命終みょうじゅうして後ご念ねんにすなはちかの国くにに生しょうじて、 長じょう時じ永劫ようごうにつねに無為むいの法楽ほうらくを受うく。 乃ない至し成じょう仏ぶつまでに生しょう死じを経へず。 あに快たのしみにあらずや、 知しるべし」 と。 以上

「仰ギ願クハ一切往生人等、▼善ク自ミヅカラ思↢量セヨ己 ノレガ能ヲ↡。今身ニ願ハム↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡者 ノハ、行住坐臥ニ必ズ須ベ クシ↧励ハゲマシ↠心ヲ剋シテ↠己 レニ、昼夜ニ莫カル↞廃スルコト。畢命ヲ為テ↠期ト、▼上カミ在ルハ↢一形ニ↡、似↢如 ニ タレドモ少シキ苦シキニ↡、▼前念ニ命終シテ後念ニ即チ生ジテ↢彼ノ国ニ↡、長時永劫ニ常ニ受ク↢无為ノ法楽ヲ↡。乃至成仏マデニ不ズ↠逕↢生死ヲ↡。豈 ニ非ズ↠快タノシミニ哉ヤ、応シト↠知ル。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ 真仏弟子を釈す【真仏弟子釈】
          (一)正しく真仏弟子を釈す
            (Ⅰ)直釈

【84】^「△*真しんの仏ぶつ弟子でし」 といふは、 真しんの言ごんは↓偽ぎに対たいし↓仮けに対たいするなり。 弟子でしとは釈しゃ迦か・諸仏しょぶつの弟子でしなり、 金剛こんごう心しんの行ぎょう人にんなり。 この信しん行ぎょう0257によりてかならず大だい涅ね槃はんを超証ちょうしょうすべきがゆゑに、 真しんの仏ぶつ弟子でしといふ。

▼言フ↢真ノ仏弟子ト↡者ハ、真ノ言ハ対シ↠偽ニ対スル↠仮ニ也。弟子ト者ハ釈迦・諸仏之弟子ナリ、金剛心ノ行人也。▼由リテ↢斯ノ信行ニ↡必ズ可キガ↣▼超↢証ス大涅槃ヲ↡故ニ、曰フ↢真ノ仏弟子ト↡。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)引証
              (ⅰ)引文
                (a)総じて諸徳を明かす
                  (イ)経説
                    [一]¬大経¼二文

【85】^¬大本だいほん¼ (大経・上) にのたまはく、

▼¬大本ニ¼言ノタマハク、

1.第33願(触光柔軟の願)

^「▲たとひわれ仏ぶつを得えたらんに、 十方じっぽう無む量りょう不可ふか思議しぎの諸仏しょぶつ世せ界かいの衆しゅ生じょうの類るい、 わが光こう明みょうを蒙かぶりてその身みに触ふるるもの、 身心しんしん柔にゅう軟なんにして人天にんでんに超ちょう過かせん。 もししからずは、 正しょう覚がくを取とらじと。

「設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方无量不可思議ノ諸仏世界ノ衆生之類、▼蒙0099リテ↢我ガ光明ヲ↡触フルヽ↢其ノ身ニ↡者 ノ、▼身心▼柔軟ニシテ超↢過セム人天ニ↡。若シ不ズ↠爾ラ者ハ、不ジト↠取ラ↢正覚ヲ↡。

2.第34願(聞名得忍の願)

 ^(大経・上) ▲たとひわれ仏ぶつを得えたらんに、 十方じっぽう無む量りょう不可ふか思議しぎの諸仏しょぶつ世せ界かいの衆しゅ生じょうの類るい、 わが名みょう字じを聞ききて、 菩ぼ薩さつの無む生しょう法ぼう忍にん、 もろもろの深じん総そう持じを得えずは、 正しょう覚がくを取とらじ」 と。 以上

▼設ヒ我得タラムニ↠仏ヲ、十方无量不可思議ノ諸仏世界ノ▼衆生之類、聞キテ↢我ガ名字ヲ↡、不ズ↠得エ↢菩薩ノ▼无生法忍、諸ノ深総持ヲ↡者ハ、不ジト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」 *已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二]¬如来会¼

【86】^¬無む量りょう寿じゅ如来にょらい会え¼ (上) にのたまはく、

▼¬无量寿如来会ニ¼言ノタマハク、

^「▲もしわれ成じょう仏ぶつせんに、 周しゅう遍へん十方じっぽう無む量りょう無む辺へん不可ふか思議しぎ無む等とう界かいの有う情じょうの輩ともがら、 仏ぶつの威い光こうを蒙かぶりて照しょう触そくせらるるもの、 身心しんしん安楽あんらくにして人天にんでんに超ちょう過かせん。 もししからずは、 菩ぼ提だいを取とらじ」 と。 以上

「若シ我成仏セムニ、周徧十方无量无辺不可思議无等界ノ*有情之輩、蒙リテ↢仏ノ威光ヲ↡所ルヽ↢照触セ↡者 ノ、身心▼安楽ニシテ超↢過セム人天ニ↡。若シ不ズ↠爾ラ者ハ、不ジト↠取ラ↢菩提ヲ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[三]¬大経¼二文

【87】^また (大経・下)、

▼又言ノタマヘリト↢

^「▲法ほうを聞ききてよく忘わすれず、 見みて敬うやまひ得えて大おおきに慶よろこばば、 すなはちわが善よき親しん友ぬなり」 とのたまへり。

「聞キテ↠法ヲ能ク不ズ↠忘ワスレ見テ敬ヒ得テ大ニ慶ヨロコバヾ
則チ我ガ善キ親友ナリト」↡

【88】^またのたまはく (大経・下)、

又言ノタマハク、

^「▲それ至し心しんありて安楽あんらく国こくに生しょうぜんと願がんずれば、 智慧ちえあきらかに達たっし、 功く徳どく殊しゅ勝しょうなることを得うべし」 と。

「▼其レ有リテ↢至心↡願ズレ↠生ゼムト↢安楽国ニ↡者バ、可シト↠得ウ↢▼智慧明カニ達シ、功徳殊勝ナルコトヲ↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[四]¬如来会¼二文

【89】^また (如来会・下)、

又

^「▲広大こうだい勝しょう解げ者しゃ」 とのたまへり。

言 マヘリト↢「広大勝解者ト。」↡

【025890】^また (如来会・下)、

又

^「▲かくのごときらの類るい、 大だい威い徳とくのひと、 よく*広大こうだい異い門もんに生うまる」 とのたまへり。

言ノタマヘリト↣「如キ↠是クノ等ラノ類、大威徳ノ者ヒト、能ク生ルト↢広大異門ニ↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[五]¬観経¼

【91】^またのたまはく (観経)、

又言ハク、

^「▲もし念仏ねんぶつするひとは、 まさに知しるべし、 この人ひとはこれ人にん中ちゅうの分ふん陀利だり華けなり」 と。 以上

「若シ念仏スル者ヒトハ、当ニシ↠知ル、此ノ人ハ是人中ノ分陀利華ナリト。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)師釈
                    [一]¬安楽集¼五文

【92】^¬*安楽あんらく集しゅう¼ (上) にいはく、

▼¬安楽集ニ¼云ク、

1.説聴方軌

^「▲諸しょ部ぶの大だい乗じょうによりて説せっ聴ちょうの方ほう軌きを明あかさば、

「▼拠リテ↢諸部ノ大乗ニ↡明サ↢説聴ノ方軌ヲ↡者バ、

^◆¬*大集だいじっ経きょう¼ にのたまはく、 ª^説法せっぽうのひとにおいては、 医い王おうの想おもいをなせ、 抜ばっ苦くの想おもいをなせ。 所説しょせつの法ほうをば甘かん露ろの想おもいをなせ、 醍だい醐ごの想おもいをなせ。 ^それ聴ちょう法ほうのひとは、 増ぞう長じょう勝しょう解げの想おもいをなせ、 愈ゆ病びょうの想おもいをなせ。 ^もしよくかくのごとき説者せっしゃ・聴ちょう者しゃは、 みな仏法ぶっぽうを紹隆しょうりゅうするに堪たへたり。 つねに仏前ぶつぜんに生しょうぜんº と。 乃至

▼¬大集経ニ¼云ク、於テハ↢説法ノ者ヒトニ↡、作セ↢医王ノ想ヲ↡、作セ↢抜苦ノ想ヲ↡。所説之法ヲバ作セ↢甘露ノ想ヲ↡、作セ↢醍醐ゴノ想ヲ↡。其レ聴法ノ者ヒトヲバ、作セ↢増長勝解ノ想ヲ↡、作セ↢愈病ノ想ヲ↡。若シ能ク如キ↠是クノ説者・聴者ハ、皆堪タエタリ↣紹セウツグ↢隆リウスルニ仏法ヲ↡。常ニ生ゼムト↢仏0100前ニ↡。 ▼乃至

2.諸仏現前

^(安楽集・下) ▲¬涅ね槃はん経ぎょう¼ によるに、 ª^仏ぶつののたまはく、 «もし人ひとただよく心こころを至いたして、 つねに念仏ねんぶつ三昧ざんまいを修しゅすれば、 十方じっぽう諸仏しょぶつつねにこの人ひとを見みそなはすこと、 現げんに前まえにましますがごとし»º と。

▼依ルニ↢¬涅槃経ニ¼↡、仏ノ言ノタマハク、若シ人但能ク至シテ↠心ヲ、常ニ修スレ↢念仏三昧ヲ↡者バ、十方諸仏恒ニ見ミソナハスコト↢此ノ人ヲ↡、如シト↢現ニ在 マスガ↟前ニ。

^◆このゆゑに ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ にのたまはく、 ª^仏ぶつ、 *迦か葉しょう菩ぼ薩さつに告つげたまはく、 «もし善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにんありて、 つねによく心こころを至いたし、 もつぱら念仏ねんぶつするひとは、 もしは山林せんりんにもあれ、 もしは聚落じゅらくにもあれ、 もしは昼ひるもしは夜よる、 もしは坐ざもしは臥がに、 諸仏しょぶつ世せ尊そんつねにこの人ひとを見みそな0259はすこと目めの前まえに現げんぜるがごとし。 つねにこの人ひとのためにして受じゅ施せをなさん»º と。 乃至

是ノ故ニ¬涅槃経ニ¼云ノタマハク、仏告ゲタマハク↢迦葉菩薩ニ↡、若シ有リテ↢善男子・善女人↡、常ニ能ク至シ↠心ヲ専ラ念仏スル者ヒトハ、若シハ在アレ↢山林ニモ↡、若シハ在レ↢聚落ニモ↡、若シハ昼ヒル若シハ夜、若シハ座若シハ臥ニ、諸仏世尊常ニ見ミソナハスコト↢此ノ人ヲ↡如シ↠現ゼルガ↢目ノ前ニ↡。恒ニ与タメニ↢此ノ人ノ↡▼而シテ作サムト↢受施ヲ↡。 ▼乃至

3.知恩報徳

^(安楽集・下) ▲¬*大だい智度ちど論ろん¼ によるに、 三番さんばんの解げ釈しゃくあり。 ^ª◆第一だいいちには、 仏ぶつはこれ無む上じょう法王ほうおうなり、 菩ぼ薩さつは法臣ほうしんとす。 尊とうとぶところ重おもくするところ、 ただ仏ぶつ世せ尊そんなり。 このゆゑに、 まさにつねに念仏ねんぶつすべきなり。

▼依ルニ↢¬大智度論ニ¼↡、有リ↢三番ノ解釈↡。第一ニハ仏ハ是 レ无上法王ナリ、菩薩ハ為ス↢法臣ト↡。所↠尊ブ所↠重クスル、唯仏世尊ナリ。是ノ故ニ応ベキ↢当ニ常ニ念仏ス↡也。

^◆第だい二にに、 もろもろの菩ぼ薩さつありてみづからいはく、 «われ曠劫こうごうよりこのかた、 世せ尊そんわれらが法身ほっしん・智ち身しん・大だい慈悲じひ身しんを長ちょう養ようしたまふことを蒙かぶることを得えたりき。 禅ぜん定じょう・智慧ちえ、 無む量りょうの行ぎょう願がん、 仏ぶつによりて成じょうずることを得えたり。 報恩ほうおんのためのゆゑに、 つねに仏ぶつに近ちかづかんことを願がんず。 また大臣だいじんの、 王おうの恩おん寵ちょうを蒙かぶりてつねにその王おうを念おもふがごとし» と。

第二ニ有リテ↢諸ノ菩薩↡自ミヅカラ云ク、我 レ従リ↢曠劫↡已来 コノカ タ得タリキ↠蒙ブルコトヲ↣世尊長↢養スルコトヲ我等ラガ法身・智身・大慈悲身ヲ↡。禅定・智慧、无量ノ行願、由リテ↠仏ニ得タリ↠成ズルコトヲ。為ノ↢報恩ノ↡故ニ常ニ願ズ↠近チカヅカムコトヲ↠仏ニ。亦如シト↧大臣ノ蒙リテ↢王ノ恩寵ヲ↡常ニ念フガ↦其ノ王ヲ↥。

^◆第三だいさんに、 もろもろの菩ぼ薩さつありて、 またこの言ごんをなさく、 «われ因いん地じにして悪あく知ち識しきに遇あひて、 *波は若にゃを誹ひ謗ほうして悪道あくどうに堕だしき。 無む量りょう劫こうを経へて余よ行ぎょうを修しゅすといへども、 いまだ出いづることあたはず。 後のちに一いち時じにおいて善ぜん知ぢ識しきの辺ほとりによりしに、 われを教おしへて念仏ねんぶつ三昧ざんまいを行ぎょうぜしむ。 その時ときに、 すなはちよくしかしながらもろもろの障さわり、 まさに解げ脱だつすることを得えしめたり。 この大益だいやくあるがゆゑに、 願がんじて仏ぶつを離はなれず»º と。 乃至

第三ニ有リテ↢諸ノ菩薩↡、復作サク↢是ノ言ヲ↡、我於シテ↢因地ニ↡遇ヒテ↢*悪知識ニ↡、誹↢謗シテ*波若ヲ↡堕シキ↠於ニ↢悪道↡。逕テ↢无量劫ヲ↡雖モ↠修スト↢余行ヲ↡、未ズ ダ↠能ハ↠出ヅルコト。後ニ於テ↢一時ニ↡依リシニ↢善知識ノ辺ニ↡、教ヘテ↠我ヲ行ゼシム↢念仏三昧ヲ↡。其ノ時ニ即チ能ク併シカシナガラ遣シム↣諸ノ障 リ、方ニ得エ↢解脱スルコトヲ↡。有ルガ↢斯ノ大益↡故ニ願ジテ不ズト↠離レ↠仏ヲ。 ▼乃至

4.菩提心功用

^(安楽集・上) ▲¬大だい経きょう¼ (下) にのたまはく、 ª^おほよそ浄じょう土どに往おう生じょうせんと欲おもはば、 かならず発ほつ菩ぼ提だい心しんを須もちゐるを源みなもととす。 ◆いかんと0260なれば、 菩ぼ提だいはすなはちこれ無む上じょう仏道ぶつどうの名ななり。 ◆もし発心ほっしん作さ仏ぶつせんと欲おもはば、 この心しん広大こうだいにして法界ほうかいに周しゅう遍へんせん、 この心しん長じょう遠おんにして未み来らい際さいを尽つくす。 この心しんあまねくつぶさに二に乗じょうの障さわりを離はなる。 ◆もしよく一ひとたび発心ほっしんすれば、 無始むし生しょう死じの有う輪りんを傾かたぶくº と。 乃至

▼¬大経ニ¼云ノタマハク、凡ソ欲ハヾ↣往↢生セムト浄土ニ↡、要トスルヲ↠須モチヰルヲ↢発菩提心ヲ↡為ス↠源ト。云何 イカン ゾ菩提者ハ乃スナワチ是 レ无上仏道之名也。若シ欲オモハ↢発心作仏セムト↡者バ、此ノ心広大ニシテ周↢徧セム法界ニ↡、此ノ心長遠ニシテ尽ス↢未来際ヲ↡。此ノ心普ク備ツブサニ離ル↢二乗ノ障 リヲ↡。若シ能ク一タビ発0101心スレバ、▼傾カタブクト↢无始生死ノ有輪ヲ↡。 乃至

5.常行大悲

^(安楽集・下) ▲¬*大だい悲ひ経きょう¼ にのたまはく、 ª^いかんが名なづけて大だい悲ひとする。 もしもつぱら念仏ねんぶつ相続そうぞくして断たえざれば、 その命終みょうじゅうに随したがひてさだめて安楽あんらくに生しょうぜん。 もしよく展転てんでんしてあひ勧すすめて念仏ねんぶつを行ぎょうぜしむるは、 これらをことごとく大だい悲ひを行ぎょうずる人ひとと名なづくº」 と。 以上抄出

▼¬大悲経ニ¼云ノタマハク、云何 イカン ガ名ケテ為スル↢大悲ト↡。▼若シ専ラ念仏相続シテ不レ↠断ヘ者バ、随ヒテ↢其ノ命終ニ↡定メテ生ゼム↢安楽ニ↡。▼若シ能ク展転シテ相 ヒ勧メテ行ゼシムル↢念仏ヲ↡者ハ、此等ラヲ悉ク名クト↧行ズル↢大悲ヲ↡人ト↥。」 已上抄*出

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[二]¬般舟讃¼

・知恩報徳

【93】^光こう明みょう師 (善導) のいはく (般舟讃)、

▼光明師ノ云ク、

^「▲ただ恨うらむらくは、 衆しゅ生じょうの疑うたがふまじきを疑うたがふことを。 浄じょう土ど対面たいめんしてあひ忤たがはず。 弥み陀だの摂しょうと不ふ摂しょうとを論ろんずることなかれ。 意こころ専心せんしんにして回えすると回えせざるとにあり。 乃至

「▼唯タヾ恨ウラムラクハ衆生ノ疑ウタガフコトヲ↠不マジキヲ↠疑フ浄土対面シテ不ズ↢相 ヒ忤タガハ↡
▼莫ナカレ↠論ズルコト↢弥陀ノ摂ト不摂トヲ↡▼意在アリ↢▼専心ニシテ廻スルト不ルトニ↟廻セ *乃至

^▲あるいはいはく、 今いまより仏ぶっ果かに至いたるまで、 長じょう劫ごうに仏ぶつを讃ほめて慈じ恩おんを報ほうぜん。 弥陀みだの弘ぐ誓ぜいの力を蒙かぶらずは、 いづれの時ときいづれの劫こうにか娑しゃ婆ばを出いでんと。 乃至

▼或イハ道イハク従リ↠今ケフ至ルマデ↢仏果ニ↡長劫ニ讃メテ↠仏ヲ報ゼムト↢慈恩ヲ↡
不ズハ↠蒙 ブラ↢弥陀ノ弘誓ノ力ヲ↡何 ヅレノ時何 ヅレノ劫ニカ出デムト↢娑婆ヲ↡ 乃至

^▲いかんが今日こんにち宝国ほうこくに至いたることを期ごせん。 まことにこれ娑しゃ婆ば本ほん師しの力ちからなり。 もし本ほん師し知ち識しきの勧すすめにあらずは、 弥陀みだの浄じょう土どいかんしてか入いらん」 と。

▼何イカンガ期セム↣今日至ルコトヲ↢宝国ニ↡実ニ是 レ娑婆本師ノ力ナリ
若シ非ズハ↢▼本師知識ノ勧スヽメニ↡弥陀ノ浄土云何 イカン シテカ入ラムト」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[三]¬礼讃¼二文

1.知恩報徳

【94】^またいはく (礼讃)、

▼又云ク、

^「▲仏ぶっ世せはなはだ値もうあひがたし。 人ひと、 信しん慧ねあること0261難かたし。 たまたま希有けうの法ほうを聞きくこと、 これまたもつとも難かたしとす。

「▼仏世甚ダ難シ↠値マウアヒ人有ルコト↢信慧↡難シ
▼遇タマタマ聞クコト↢▼希有ノ法ヲ↡斯コレ復最 トモ為ス↠難シト

^▲みづから信しんじ、 人ひとを教おしへて信しんぜしむること、 難かたきがなかにうたたまた難かたし。 大だい悲ひ弘ひろくあまねく化けする、 まことに仏恩ぶっとんを報ほうずるになる」 と。

▼自ミヅカラ信ジ教オシヘテ↠人ヲ信ゼシムルコト難キガ中ニ転ウタタ更マタ難シ
大悲*弘ク普ク化スル真ニ成ナルト↠報ズルニ↢仏恩ヲ↡」

2.心光摂護

【95】^またいはく (礼讃)、

▼又云ク、

^「▲弥陀みだの身色しんじきは金山こんぜんのごとし。 相好そうごうの光こう明みょうは十方じっぽうを照てらす。 ただ念仏ねんぶつするもののみありて光こう摂しょうを蒙かぶる。 まさに知しるべし、 本願ほんがんもつとも強こわしとす。

「▼弥陀ノ身色ハ如シ↢金山ノ↡相好ノ光明ハ照ス↢十方ヲ↡
▼唯有リテ↢念仏スルモノノミ↡蒙 ブル↢光摂ヲ↡▼当ニシ↠知ル▼本願最モ為ス↠強コワシト

^◆十方じっぽうの如来にょらい、 舌みしたを舒のべて証しょうしたまふ。 もつぱら名みょう号ごうを称しょうして西方さいほうに至いたる。 かの華け台だいに到いたつて妙みょう法ほうを聞きく。 十じゅう地じの願がん行ぎょう、 自じ然ねんに彰あらわる」 と。

▼十方ノ如来 舒ベテ↠舌ミシタヲ証シタマフ▼専ラ称シテ↢名号ヲ↡至ル↢西方ニ↡
到リテ↢彼ノ華台ニ↡聞ク↢妙法ヲ↡▼十地ノ願行 自然ニ彰アラワルト」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[四]¬観念法門¼

・心光摂護

【96】^またいはく (*観念法門)、

▼又云ク、

^「▲ただ阿あ弥陀みだ仏ぶつを専念せんねんする衆しゅ生じょうのみありて、 かの仏ぶっ心しんの光ひかり、 つねにこの人ひとを照てらして摂しょう護ごして捨すてたまはず。 すべて余よの雑業ぞうごうの行ぎょう者じゃを照てらし摂おさむと論ろんぜず。 これまたこれ現げん生しょう護ご念ねん増ぞう上じょう縁えんなり」 と。 以上

「▼但有リテ↧専↢念スル阿弥陀仏ヲ↡衆生ノミ↥、彼ノ仏▼心ノ光 リ、常ニ照シテ↢是ノ人ヲ↡摂護シテ不ズ↠捨テタマハ。総テ不ズ↠論ゼ↣照シ↢摂ムト余ノ雑業ノ行者ヲ↡。此 レ亦 タ是 レ現生護念増上縁ナリト。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[五]「序分義」

・心多歓喜

【97】^またいはく (序分義)、

▼又0102云ク、

^「▲ª心しん歓かん喜ぎ得忍とくにんº といふは、 これは阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくの清浄しょうじょうの光こう明みょう、 たちまちに眼まなこの前まえに現げんぜん、 なんぞ踊ゆ躍やくに勝たへん。 この喜よろこびによるがゆゑに、 すなはち無む生しょうの忍にんを得うることを明あかす。 また喜き忍にんと名なづく、 また悟ご忍にんと名なづく、 また信忍しんにんと名なづく。 これすなはちはるかに談だんずるに、 い0262まだ得とく処しょを標あらわさず、 夫ぶ人にんをして等ひとしく心こころにこの益やくを悕ねがはしめんと欲おもふ。 勇ゆう猛みょう専せん精しょうにして心こころに見みんと想おもふ時ときに、 まさに忍にんを悟さとるべし。 これ多おおくこれ十信じっしんのなかの忍にんなり、 解げ行ぎょう以い上じょうの忍にんにはあらざるなり」 と。

「▼言フ↢心歓喜得忍ト↡者ハ、此ハ明ス↧阿弥陀仏国ノ清浄ノ光明、忽タチマチニ現ゼム↢眼ノ前ニ↡、何ゾ勝タエム↢▼踊躍ニ↡、▼因ルガ↢茲コノ喜ニ↡故ニ即チ得ウルコトヲ↢无生之忍ヲ↡、亦名ク↢▼喜忍ト↡、亦名ク↢▼悟忍ト↡、亦名ク↢▼信忍ト↡、▼此 レ乃チ玄ニ談ダンズルニ、▼未ズ ダ↠標アラハサ↢得処ヲ↡、欲フ↠令シメムト↣夫人ヲシテ等シク悕ネガハ↢心ニ此ノ益ヲ↡、▼勇猛専精ニシテ心ニ想フ↠見ムト時ニ、方ニ応シ↠悟ル↠*忍ヲフタイノクラヰ、▼此 レ多ク是 レ十信ノ中ノ忍ナリ、▼非ザルコトヲ↦解行已上ノ忍ニハ↥也ト。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)[六]「散善義」

・諸仏称讃

【98】^またいはく (散善義)、

▼又云ク、

^「▲ª若にゃく念仏ねんぶつ者しゃº より下しも ª生しょう諸仏しょぶつ家けº に至いたるまでこのかたは、 まさしく念仏ねんぶつ三昧ざんまいの功く能のう超ちょう絶ぜつして、 まことに雑善ぞうぜんをして比ひ類るいとすることを得うるにあらざることを顕あらわす。 すなはちそれに五いつつあり。

「従ヨリ↢若念仏者ト↡下 モ至ルマデ↢生諸仏家ニ↡已来 コノカ タハ▼正シク顕ス↣念仏三昧ノ功能超絶シテ、▼実ニ非ザルコトヲ↢雑善ヲシテ得ウルニ↟為スルコトヲ↢比類ト↡。即チ有リ↢其 レニ五↡。

^◆一ひとつには、 弥陀みだ仏ぶつの名みなを専念せんねんすることを明あかす。

一ニハ明ス↣専↢念スルコトヲ弥陀仏ノ名ミナヲ↡。

^◆二ふたつには、 能念のうねんの人ひとを指し讃さんすることを明あかす。

二ニハ明ス↣指↢讃スルコトヲ能念之人ヲ↡。

^◆三みつには、 もしよく相続そうぞくして念仏ねんぶつするひと、 この人ひとはなはだ希有けうなりとす、 さらに物ものとしてもつてこれを方たくらぶべきことなきことを明あかす。 ゆゑに分ふん陀利だりを引ひきて喩たとへとす。

三ニハ明ス↫若シ能ク相続シテ念仏スル者ヒト、此ノ人甚ダ為ス↢希有ナリト↡、更ニ無キコトヲ↪物トシテ可キコト↩以テ方ナラブ↝之コレニ。故ニ引キテ↢▼芬陀利ヲ↡為ス↠喩ト。

^◆分ふん陀利だりといふは、 人にん中ちゅうの好こう華けと名なづく、 また希有けう華けと名なづく、 また人にん中ちゅうの上上じょうじょう華けと名なづく、 また人にん中ちゅうの妙みょう好こう華けと名なづく。 この華けあひ伝つたへて蔡さい華けと名なづくるこれなり。 もし念仏ねんぶつのひとはすなはちこれ人にん中ちゅうの好人こうにんなり、 人にん中ちゅうの妙みょう好こう人にんなり、 人にん中ちゅうの上上じょうじょう人にんなり、 人にん中ちゅうの希有けう人にんなり、 人にん中ちゅうの最さい勝しょう人にんなり。

言フ↢分陀利ト↡者ハ、名ク↢人中ノ好華ト↡、亦名ク↢希有華ト↡、亦名ク↢人中ノ上上華ト↡、亦名ク↢人中ノ妙好華ト↡。此 ノ華相アヒ伝ツタヘテ名 ヅクル↢▼蔡華ト↡是ナリ。若シ念仏ノ者ヒトハ即チ是 レ人中ノ好人ナリ、人中ノ妙好人ナリ、人中ノ上上人ナリ、人中ノ希有人ナリ、人中ノ最勝人也。

^◆四よつには、 弥陀みだの名みなを専念せんねんすれば、 すなはち観音かんのん・勢せい至しつねに随したがひて影よう護ごしたまふこと、 また親しん友ぬ知ち識しきのごとくなることを明あかす0263。

四ニハ明ス↧専↢念スレ弥陀ノ名ヲ↡者バ、即チ観音・勢至常ニ随ヒテ影護シタマフコト、亦如クナルコトヲ↦親友知識ノ↥也。

^◆五いつつには、 今こん生じょうにすでにこの益やくを蒙かぶれり、 命いのちを捨すててすなはち諸仏しょぶつの家いえに入いらん、 すなはち浄じょう土どこれなり。 かしこに到いたりて長じょう時じに法ほうを聞きき、 歴りゃく事じ供く養ようせん。 因いん円まどかに果か満まんず、 道どう場じょうの座ざあにはるかならんやといふことを明あかす」 と。 以上

五ニハ明スト↧今生ニ既ニ蒙レリ↢此ノ益ヲ↡、捨ステヽ↠命ヲ▼即チ入ラム↢諸仏之家ニ↡、即チ浄土是也、到リテ↠彼 コニ長時ニ聞キキ↠法ヲ、歴事供養セム、因円カニ果満ズ、▼道場之座豈 ニ賖ハルカナラムヤトイフコトヲ↥。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)別して勝益を明かす【便同弥勒釈】
                  (イ)王日休¬龍舒浄土門¼

【99】^*王おう日にっ休きゅうがいはく (*龍舒浄土文)、

▼王日休キウガ云ク、

^「われ ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ を聞きくに、 ª▲衆しゅ生じょう、 この仏ぶつ名みょうを聞ききて信心しんじん歓かん喜ぎせんこと乃ない至し一念いちねんせんもの、 かの国くにに生しょうぜんと願がんずれば、 すなはち往おう生じょうを得え、 不ふ退転たいてんに住じゅうすº と。

「我 レ聞クニ↢¬无量寿経ヲ¼↡、衆生聞キテ↢是ノ仏名ヲ↡信心歓喜セムコト乃至一0103念セムモノ、願ズレバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡、即チ得エ↢往生ヲ↡、住スト↢不退転ニ↡。

^不ふ退転たいてんは梵ぼん語ごにはこれを阿あ惟ゆい越おっ致ちといふ。 ¬*法華ほけ経きょう¼ にはいはく、 ª*弥み勒ろく菩ぼ薩さつの所得しょとくの*報ほう地じなりº と。

不退転者ハ梵語ニハ謂イフ↢之ヲ阿惟越致ト↡。¬法華経ニハ¼▼謂ク弥勒菩薩ノ所得ノ報地也ト。

^▼*一念いちねん往おう生じょう、 ↓*便すなわち弥み勒ろくに同おなじ。 仏ぶつ語ご虚むなしからず、 この ¬経きょう¼ はまことに往おう生じょうの*径けい術じゅつ、 脱だっ苦くの*神方しんぼうなり。 みな信受しんじゅすべし」 と。 以上

▼一念往生、▼便チ同ジ↢弥勒ニ↡。仏語不ズ↠虚シカラ、此ノ¬経ハ¼寔マコトニ往生之径ケイ術ジユチ、脱苦之神シン方ボウナリ。応シト↢皆信受ス↡。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)¬大経¼

【100】^¬大だい経きょう¼ (下) にのたまはく、

▼¬大経ニ¼言ク、

^「▲仏ぶつ、 弥み勒ろくに告つげたまはく、 ªこの世せ界かいより六ろく十じゅう七しち億おくの不ふ退たいの菩ぼ薩さつありて、 かの国くにに往おう生じょうせん。 一々いちいちの菩ぼ薩さつは、 すでに曽むかし無む数しゅの諸仏しょぶつを供く養ようせりき、 *次ついで弥み勒ろくのごとしº」 と。

「仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、於ヨリ↢▼此ノ世界↡有リテ↢六十七億ノ不退ノ菩薩↡、往↢生セム彼ノ国ニ↡。一一ノ菩薩ハ、已ニ曽ムカシ供↢養セリキ无数ノ諸仏ヲ↡、次デ如シト↢弥勒ノ↡。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ハ)¬如来会¼

【101】^またのたまはく (如来会・下)、

▼又言ノタマハク、

^「▲仏ぶつ、 弥み勒ろくに告つげたまはく、 ªこの仏ぶつ土どのなかに七しち十じゅう二に億おくの菩ぼ薩さつあり。 かれは無む量りょう億おく那由他なゆた百ひゃく千せんの仏ぶつの所みもとにして、 もろ0264もろの善根ぜんごんを種うゑて不ふ退転たいてんを成じょうぜるなり。 まさにかの国くにに生しょうずべしº」 と。 抄出

「仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、此ノ仏土ノ中ニ有リ↢七十二億ノ菩薩↡。彼 レハ於シテ↢无量億那由他百千ノ仏ノ所 トニ↡、種エテ↢諸ノ善根ヲ↡成ゼルナリ↢不退転ヲ↡。当ニシト↠生ズ↢彼ノ国ニ↡。」 抄出

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ニ)用欽¬超玄記¼(いま伝わらず)

【102】^*律りっ宗しゅうの用欽ようきん師しのいはく、

▼律宗ノ用ヨウ欽キム師ノ云ク、

^「至いたれること、 ¬華け厳ごん¼ の極ごく唱しょう、 ¬法ほっ華け¼ の妙みょう談だんにしかんや。 かつはいまだ*普ふ授じゅあることを見みず。 衆しゅ生じょう一いっ生しょうにみな阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいの記きを得うることは、 まことにいふところの不可ふか思議しぎ功く徳どくの利りなり」 と。 以上

「至レルコト如シカムヤ↢¬華厳ノ¼極ゴク*唱シヤウ、¬法華ノ¼妙談ニ↡。且カツハ未ズダ↠見↠有ルコトヲ↢普授↡。衆生一生ニ皆得ルコト↢阿耨多羅三藐三菩提ノ記ヲ↡者ハ、誠ニ所ノ↠謂フ不可思議功徳之利也ト。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)(ⅱ)釈成

【103】^▼まことに知しんぬ、 弥み勒ろく大だい士じは等覚とうがくの金剛こんごう心しんを窮きわむるがゆゑに、 *竜りゅう華げ三さん会ねの暁あかつき、 まさに無む上じょう覚かく位いを極きわむべし。 念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうは▼横おう超ちょうの金剛こんごう心しんを窮きわむるがゆゑに、 *臨りん終じゅう一念いちねんの夕ゆうべ、 大だい般はつ涅ね槃はんを超証ちょうしょうす。 ゆゑに↑便同べんどうといふなり。

▼真ニ知リヌ弥勒大士ハ窮キワムルガ↢等覚ノ金剛心ヲ↡故ニ、▼竜華三会之暁、当ニシ↠極ム↢无上覚位ヲ↡。念仏ノ衆生ハ窮ムルガ↢横超ノ金剛心ヲ↡故ニ、▼臨終一念之夕、超↢証ス大般涅槃ヲ↡。故ニ曰フ↢便同ト↡也。

^しかのみならず金剛こんごう心しんを獲うるものは、 すなはち韋い提だいと等ひとしく、 すなはち*喜き・悟ご・信しんの忍にんを獲ぎゃく得とくすべし。 これすなはち往相おうそう回え向こうの真心しんしん徹到てっとうするがゆゑに、 不可ふか思議しぎの本誓ほんぜいによるがゆゑなり。

加之シカノミナラズ▼獲ル↢金剛心ヲ↡者 ノハ、則チ与ト↢韋提↡等ヒトシク、即チ可シ↣獲↢得ス喜・悟・信之忍ヲ↡。是則チ往相廻向之真心徹到スルガ故ニ、籍ヨルガ↢不可思議之本誓ニ↡故 ヘ也。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅲ)結勧
              (ⅰ)宗暁¬楽邦文類¼二文

1.智覚

【104】^禅ぜん宗しゅうの*智ち覚かく、 念仏ねんぶつの行ぎょう者じゃを讃ほめていはく (*楽邦文類)、

▼禅0104宗ノ智覚讃メテ↢念仏ノ行者ヲ↡云ク、

^「奇まれなるかな、 仏力ぶつりき難なん思じなれば、 古こ今こんもいまだあらず」 と。

「▼奇マレナル哉カナ仏力難思ナレバ、古今モ未ズ ダト↠有ラ。」

2.元照

【105】^律りっ宗しゅうの元がん照じょう師しのいはく (楽邦文類)、

▼律宗ノ元*昭師ノ云ク、

^「ああ、 *教きょう観かんにあきらかなること、 たれか智ち者しゃ (*智顗) にしかんや。 終おわりに臨のぞんで ¬観かん経ぎょう¼ を挙きょし、 浄じょう土どを讃さんじて長ながく0265逝ゆきき。

「▼嗚呼 アヽ ▼明ナルコト↢教観ニ↡、熟タレカ如シカム↢智者ニ↡乎ヤ。▼臨デ↠終ニ▼挙キヨシ↢¬観経ヲ¼↡、▼讃ジ↢浄土ヲ↡而テ長ク逝ユキムキ矣。

^法界ほうかいに達たっせること、 たれか*杜と順じゅんにしかんや。 四し衆しゅを勧すすめ仏ぶっ陀だを念ねんじて、 勝しょう相そうを感かんじて西にしに邁ゆきき。

▼達セルコト↢法界ニ↡、熟タレカ如シカム↢杜ト順ジユンニ↡乎ヤ。勧メ↢四衆ヲ↡念ジテ↢仏陀ヲ↡、感ジ↢勝相ヲ↡而テ西ニ邁ユキヽ矣。

^禅ぜんに参まじはり性しょうを見みること、 たれか*高こう玉ぎょく・智ち覚かくにしかんや。 みな社しゃを結むすび、 仏ぶつを念ねんじて、 ともに上じょう品ぼんに登のぼりき。

▼参マジワリ↠禅ニ見ルコト↠性ヲ、熟 レカ如シカム↢高玉・智覚ニ↡乎ヤ。皆結ムスビ↠*社ヲ、念ジ↠仏ヲ而テ倶ニ▼登ノボリキ↢上品ニ↡矣。

^*業ごう儒じゅ、 才さいある、 たれか*劉りゅう・*雷らい・*柳りゅう子し厚こう・*白はく楽天らくてんにしかんや。 しかるにみな筆ふでを秉とりて、 誠まことを書しょして、 かの土どに生しょうぜんと願がんじき」 と。 以上

▼業ゲフ儒ジユ有ル↠才、熟 レカ如シカム↢▼*劉リウ・▼雷ライ・▼*柳リウ子シ厚カウ・▼白楽天ニ↡乎ヤ。▼然ルニ皆秉トリテ↠筆ヲ、書シヨシ↠誠ヲ而テ願ジキト↠生ゼムト↢彼ノ*土ニ↡矣。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)仮偽を弁釈して反顕す【仮偽弁釈】
            (Ⅰ)仮を弁ず
              (ⅰ)正釈

【106】^↑仮けといふは、 すなはちこれ聖しょう道どうの諸しょ機き、 浄じょう土どの定じょう散さんの機きなり。

▼言フ↠仮ト者ハ、即チ是聖道ノ諸機、浄土ノ定散ノ機也。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)引文
                (a)¬般舟讃¼

【107】^ゆゑに光こう明みょう師 (善導) のいはく (般舟讃)、

▼故ニ光明師ノ云ク、

^「▲仏ぶっ教きょう多た門もんにして*八万はちまん四しなり。 まさしく衆しゅ生じょうの機き、 不ふ同どうなるがためなり」 と。

「▼仏教多門ニシテ八万四ナリ正シク為 メナリト↢衆生ノ機不同ナルガ↡」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)¬法事讃¼

【108】^またいはく (*法事讃・下)、

又*云ク、

^「▲方便ほうべんの仮け門もん、 等ひとしくして殊ことなることなし」 と。

「▼方便ノ仮門、等ヒトシクシテ無シト↠殊ナルコト。」

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(c)¬般舟讃¼

【109】^またいはく (般舟讃)、

又云ク、

^「▲門々もんもん不ふ同どうなるを漸ぜん教ぎょうと名なづく。 万まん劫ごう苦く行ぎょうして無む生しょうを証しょうす」 と。 以上

「▼門門不同ナルヲ名ク↢漸教ト↡万劫苦行シテ証スト↢无生ヲ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)偽を弁ず
              (ⅰ)正釈

【110】^↑偽ぎといふは、 すなはち六ろく十じゅう二に見けん・九く十じゅう五ご種しゅの邪じゃ道どうこれなり。

▼言フ↠*偽ト者ハ、則チ▼六十二見・▼九十五種之邪道是也。

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)引文
                (a)¬涅槃経¼「大衆所聞品」

【111】^¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (*大衆所聞品) にのたまはく、

¬涅槃経ニ¼言ノタマハク、

^「世せ尊そんつねに説ときたまはく、 ª一切いっさいの外げは九く十じゅう五ご種しゅを学ならひて、 みな悪道あくどうに趣おもむくº」 と。 以上

「世尊常ニ説キタマハク、一切ノ外ハ学マナブテ↢九十五種ヲ↡、皆趣 ムクト↢悪道ニ↡。」 已上

一 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)¬法事讃¼

【0266112】^光こう明みょう師 (善導) のいはく (法事讃・下)、

▼光明師ノ云ク、

^「▲九く十じゅう五ご種しゅみな世よを汚けがす。 ただ仏ぶつの一道いちどうのみ独ひとり清しょう閑げんなり」 と。 以上

「九十五種皆汚ケガス↠世ヲ▼唯仏ノ一道ノミ独ヒトリ清閑ナリト」 已上

一 Ⅱ ⅱ c 結嘆

【113】^まことに知しんぬ、 ▲悲かなしきかな愚ぐ禿とく鸞らん、 ▼*愛欲あいよくの広海こうかいに沈没ちんもつし、 *名みょう利りの太山たいせんに迷惑めいわくして、 定じょう聚じゅの数かずに入いることを喜よろこばず、 真しん証しょうの証さとりに近ちかづくことを快たのしまざることを、 恥はづべし傷いたむべしと。

0105▼誠ニ知ヌ悲シキ哉愚禿*鸞、沈↣没シ於ニ↢愛欲ノ広海↡、迷↣*惑シテ於ニ↢名利ノ太山↡、▼不ズ↠喜ヨロコバ↠入ルコトヲ↢定聚之数ニ↡、▼不ザルコトヲ↠*快タノシマ↠近ヅクコトヲ↢真証之証ニ↡、可シ↠恥ハヅ可シト↠*傷イタム矣。

二 摂取の義を弁ず【明所被機】
  Ⅰ 直弁
    ⅰ 文を引きて広く顕す(¬涅槃経¼)
      a 総明(「現病品」)
        イ 難化の機を挙ぐ

【114】^*それ仏ぶつ、 ↓難なん治ちの機きを説ときて、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (*現病品) にのたまはく、

▼夫レ仏説キテ↢難治ノ機ヲ↡、¬涅槃経ニ¼言ノタマハク、

^「*迦か葉しょう、 世よに三人さんにんあり、 その病やまい治ちしがたし。 一ひとつには謗ほう大だい乗じょう、 二ふたつには五ご逆ぎゃく罪ざい、 三みつには一闡提いっせんだいなり。

「迦葉、▼世ニ有リ↢三人↡、其ノ病難ガタシ↠治シ。一ニハ謗大乗、二ニハ五逆罪、三ニハ*一闡提ナリ。

二 Ⅰ ⅰ a ロ 其の分斉を示す

・法説

^かくのごときの三さん病びょう、 世よのなかに極ごく重じゅうなり。 ことごとく声しょう聞もん・縁覚えんがく・菩ぼ薩さつのよく治ちするところにあらず。

如キノ↠是クノ三病、世ノ中ニ極重ナリ。悉ク非ズ↣▼声聞・縁覚・菩薩之所ニ↢能ク治スル↡。

・譬説

^善男ぜんなん子し、 *たとへば病やまいあればかならず死しするに治ちすることなからんに、 もし*瞻せん病びょう*随ずい意いの医い薬やくあらんがごとし。 もし瞻せん病びょう随ずい意いの医い薬やくなからん、 かくのごときの病やまい、 さだめて治ちすべからず。 まさに知しるべし、 この人ひとかならず死しせんこと疑うたがはずと。

善男子、譬ヘバ如シ↣有レバ↠病必ズ死スルニ無ナカラムニ↠治スルコト、若シ有ラムガ↢瞻病随意ノ医薬↡。若シ無カラム↢瞻病随意ノ医薬↡、如キ↠是クノ之病、定メテ不↠可カラ↠治ス。当ニシ↠知ル、是ノ人必ズ死セムコト不ズト↠疑ハ。

・合法

^善男ぜんなん子し、 この三種さんしゅの人ひとまたまたかくのごとし。 *仏ぶつ・菩ぼ薩さつに従したがひて聞もん治ちを得えをはりて、 すなはちよく阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんを発ほっせん。 もし声しょう聞もん・縁覚えんがく・菩ぼ薩さつありて、 あるいは法ほうを説とき、 あるいは法ほうを説とかざるあらん、 それをして阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しん0267を発ほっせしむることあたはず」 と。 以上

善男子、是ノ三種ノ人亦復如シ↠是クノ。従ヒテ↢仏・菩薩ニ↡得エ↢聞治ヲ↡已リテ、即便チ能ク発セム↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡。若シ有リテ↢声聞・縁覚・菩薩↡、或イハ有ラム↢説キ↠法ヲ或イハ不ル↟説カ↠法ヲ、不ズト↠能ハ↠令ムルコト↣其ヲシテ発セ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡。」 已上

二 Ⅰ ⅰ b 別顕(「梵行品」)
        イ 所化の機相を明かす
          (一)正引

・闍王興逆

【115】^またのたまはく (涅槃経・*梵行品)、

又言ク、

^「そのときに、 *王舎おうしゃ大だい城じょうに*阿あ闍じゃ世せ王おうあり。 その性しょう、 弊悪へいあくにしてよく殺戮せつろくを行ぎょうず。 *口くちの四し悪あく、 *貪とん・恚い・愚痴ぐちを具ぐしてその心こころ熾し盛じょうなり。 乃至 しかるに眷属けんぞくのために現げん世ぜの五ご欲よくの楽らくに貪とん着じゃくするがゆゑに、 *父ちちの王おう辜つみなきに、 *横よこさまに逆ぎゃく害がいを加かす。

「▼爾ノ時ニ王舎大城ニ阿闍世王アリ。其ノ性弊悪ニシテ善ク行ズ↢殺戮ロクヲ↡。具シテ↢口ノ四悪、貪・恚・愚痴ヲ↡其ノ心熾盛ナリ。 乃至 而ルニ為ニ↢眷属ノ↡貪↢著スルガ現世ノ五欲ノ楽ニ↡故ニ、父ノ王无キニ↠辜ツミ横ニ加ス↢逆害ヲ↡。

・生悔過心

^父ちちを害がいするによりて、 おのれが心こころに*悔け熱ねつを生しょうず。 乃至 心こころ悔け熱ねつするがゆゑに、 遍体へんたいに瘡かさを生しょうず。 その瘡かさ臭しゅう穢えにして附ふ近ごんすべからず。 すなはちみづから念言ねんごんすらく、 ªわれいまこの身しんにすでに*華け報ほうを受うけたり、 地じ獄ごくの果か報ほうまさに近ちかづきて、 遠とおからずとすº と。

◆因リテ↠害スルニ↠父ヲ、己オノレガ心ニ生ズ↢悔熱ヲ↡。 乃至 心悔熱スルガ故ニ徧体ニ生ズ↠瘡ヲ。其ノ瘡臭シユ穢ヱニシテ不↠可カラ↢附近ス↡。尋スナワチ自ラ念言スラク、我今此ノ身ニ已ニ受ケタリ↢華報ヲ↡、地獄ノ果報将ス ニト↢近ヅキテ不ズト↟遠カラ。

・余術不治

^その時ときに、 その母はは*韋い提だい希け后こう、 種々しゅじゅの薬くすりをもつてためにこれを塗ぬる。 その瘡かさつひに増ぞうすれども降損ごうそんあることなし。 王おうすなはち母ははにまうさく、 ªかくのごときの瘡かさは心こころよりして生しょうぜり。 四し大だいより起おこれるにあらず。 もし衆しゅ生じょうよく治ちすることありといはば、 この処ことわりあることなけんº と。

爾ノ時ニ其ノ母韋提希后コウ、以テ↢種種ノ薬ヲ↡而為 メニ塗ヌル↠之ヲ。其ノ瘡遂ニ増スレドモ無シ↠有0106ルコト↢降損↡。王即チ白マ ク↠母ニ、如キノ↠是クノ瘡者ハ従リ↠心而シテ生ゼリ。非ズ↢四大ヨリ起レルニ↡。若シ言イハ↣衆生有リト↢能ク治スルコト↡者バ、无ナケムト↠有ルコト↢是ノ処コトワリ↡。

・余術不治 1.月称

 ^時ときに大臣だいじんあり、 名なづけて月がっ称しょうといふ。 王おうのところに往おう至しして、 一面いちめんにありて立たちてまうしてまうさく、 ª大王だいおうなんがゆゑぞ愁しゅう悴すいして顔容げんよう悦よろこばざる。 身み痛いたむとやせん、 心こころ痛いたむとやせんº と。

時ニ有リ↢大臣↡、名ク↢日月称ト↡。往↢至シテ王ノ所ニ↡、在リテ↢一面ニ↡立チテ白シテ言ク、大王、何ガ故ゾ愁悴シテ顔容不ル↠悦バ、為セム↢身痛ムト邪ヤ↡、為セムト↢心痛ムト乎ヤ↡。

^王おう、 臣しんに答こたへていはまく、 ªわれいま身心しんしんあに痛いた0268まざることを得えんや。 わが父ちち辜つみなきに横よこさまに逆ぎゃく害がいを加かす。 われ智ち者しゃに従したがひて、 かつてこの義ぎを聞ききき。 «世よに五ご人にんあり、 地じ獄ごくを脱まぬかれずと。 いはく五ご逆ぎゃく罪ざいなり» と。 われいますでに無む量りょう無む辺へん阿あ僧そう祇ぎの罪つみあり。 いかんぞ身心しんしんをして痛いたまざることを得えん。 また良りょう医いのわが身心しんしんを治ちせんものなけんº と。

王答ヘテ↠臣ニ言ハマク、我今身心豈 ニ得ムヤ↠不ルコトヲ↠痛マ。我ガ父无キニ↠辜ツミ横ニ加ス↢逆害ヲ↡。我従ヒテ↢智者ニ↡曽テ聞キキヽ↢是ノ義ヲ↡。世ニ有リ↢五人↡、不ズト↠脱マヌカレ↢地獄ヲ↡。謂ク五逆罪ナリト。我 レ今 マ已ニ有リ↢无量无辺阿僧祇ノ罪↡。云何ゾ身心ヲ而シテ得ム↠不ルコトヲ↠痛マ。又无ケムト↣良医ノ治セムモノ↢我ガ身心ヲ↡。

^臣しん、 大王だいおうにまうさく、 ª大おおきに愁しゅう苦くすることなかれと。 すなはち*偈げを説ときていはく、 «^もしつねに愁しゅう苦くせば、 愁うれへつひに増ぞう長じょうせん。 人ひと眠ねむりを喜このめば、 眠ねむりすなはち滋しげく多おおきがごとし。 婬いんを貪とんじ酒さけを嗜たしなむも、 またまたかくのごとし» と。

臣言サク↢大王ニ↡、莫レト↢大ニ愁苦スルコト↡。即チ説キテ↠偈ヲ言ク、

若シ常ニ愁苦セバ愁ウレヘ遂ニ増長セム
如シ↢人喜コノメバ↠眠ヲ眠則チ滋シゲク多キガ↡
貪ジ↠婬ヲ嗜タシナムモ↠酒ヲ亦復如シト↠是クノ

^王おうののたまふところのごとし、 «世よに五ご人にんあり、 地じ獄ごくを脱まぬかれず» とは、 たれか往ゆきてこれを見みて、 来きたりて王おうに語かたるや。 地じ獄ごくといふは、 ただちにこれ世せ間けんに多おおく智ち者しゃ説とかく、 王おうののたまふところのごとし、 «世よに良りょう医いの身心しんしんを治ちするものなけん» と。

如シ↢王ノ所ノ↟言 タマフ、世ニ有リ↢五人↡、不ズトハ↠脱レ↢地獄ヲ↡、誰カ往キテ見テ↠之ヲ、来リテ語ル↠王ニ邪ヤ。言フ↢地獄ト↡者ハ、直ニ是 レ世間ニ多ク智者説トカク、如シ↢王ノ所ノ↟言フ、世ニ无ケムト↧良医ノ治スル↢身心ヲ↡者 ノ↥。

^いま大だい医いあり、 *富ふ蘭らん那なと名なづく。 *一切いっさい知ち見けんして自じ在ざいを得えて、 さだめて畢ひっ竟きょうじて清浄しょうじょう*梵ぼん行ぎょうを修しゅ習じゅうして、 つねに無む量りょう無む辺へんの衆しゅ生じょうのために、 無む上じょう涅ね槃はんの道どうを演説えんぜつす。

今有リ↢大医↡、名ク↢富フ闌ラン那ナト↡。一切*知見シテ得テ↢自在ヲ↡、定メテ畢竟ジテ修↢習シテ清浄梵行ヲ↡、常ニ為ニ↢无量无辺ノ衆生ノ↡、演↢説ス无上涅槃之道ヲ↡。

^もろもろの弟子でしのために、 かくのごときの法ほうを説とけり。 «^*黒業こくごうあることなければ、 黒業こくごうの報ほうなし。 *白びゃく業ごうあることなければ、 白びゃく業ごうの報ほうなし。 黒こく白びゃく業ごうなければ、 黒こく白びゃくの*業報ごうほうなし。 *上じょう業ごうおよび*下げ業ごうのあることなし» と。

為ニ↢諸ノ弟子ノ↡、説ケリ↢如キノ↠是クノ法ヲ↡。
无ケレバ↠有ルコト↢黒業↡无シ↢黒業ノ報↡
无ケレバ↠有ルコト↢白業↡无シ↢白業ノ報↡
无ケレバ↢黒白業↡无シ↢黒白ノ業報↡
无シト↠有ルコト↢上業及以 オヨビ 下業ノ↡

^この師しいま0269王舎おうしゃ城じょうのうちにいます。 やや、 願ねがはくは大王だいおう、 *屈くつ駕がしてかしこに往ゆけ。 この師しをして身心しんしんを療りょう治じせしむべしº と。

是ノ師今在イマス↢王舎城ノ中ニ↡。惟ヤヽ願クハ大王、崛クツ駕ガシテ往ユケ↠彼 コニ。可ベシト↠令ム↣是ノ師ヲシテ療↢治セ身心ヲ↡。

^時ときに王おう答こたへていはまく、 ªあきらかによくかくのごときわが罪つみを滅除めつじょせば、 われまさに帰依きえすべしº と。

時ニ王0107*答ヘテ言ハマク、審アキラカニ能ク如キ↠是クノ滅↢除セバ我ガ罪ヲ↡、我当ニシト↢帰依ス↡。

・余術不治 2.蔵徳

 ^またひとりの臣しんあり、 名なづけて蔵徳ぞうとくといふ。 また王おうのところに往ゆきてこの言ごんをなさく、 ª大王だいおう、 なんがゆゑぞ面めん貌みょう憔しょう悴すいして、 脣しん口く乾燥かんそうし、 音おん声じょう微み細さいなるや。 乃至 なんの苦くるしむところあつてか、 身み痛いたむとやせん、 心こころ痛いたむとやせんº と。

復有リ↢一ノ臣↡、名ケテ曰フ↢蔵徳ト↡。復往キ↢王ノ所ニ↡而テ作サク↢是ノ言ヲ↡、大王、何ガ故ゾ面*貌憔悴シテ、*屑セウカワキ口ク乾カン*燋シ、音声微細ナルヤト。 乃至 何ノ所 ロアテカ↠苦シム、為セム↢身痛ムト邪ヤ↡、為セムト↢心痛ムト乎ヤ↡。

^王おうすなはち答こたへていはく、 ªわれいま身心しんしんいかんぞ痛いたまざらん。 われ痴ち盲もうにして慧え目もくあることなし。 もろもろの悪あく友うに近ちかづきて、 これよく*提だい婆ば達だっ多た悪人あくにんの言ことばに随したがひて、 *正しょう法ぼうの王おうに横よこさまに逆ぎゃく害がいを加かす。

王即チ答ヘテ言ク、我 レ今身心云何ゾ不ラム↠痛マ。我 レ之痴盲ニシテ无シ↠有ルコト↢*慧*目↡。近チカヅキ↢諸ノ悪友ニ↡而テ為コレ善ク随ヒテ↢提婆達多悪人之言 バニ↡、正法之王ニ横ニ加ス↢逆害ヲ↡。

^われ昔むかしかつて智ち人にんの偈げ説せつせしを聞ききき。 «^もし父母ぶも、 仏ぶつおよび弟子でしにおいて、 不ふ善ぜんの心しんを生しょうじ、 悪業あくごうを起おこさん。 かくのごときの果か報ほう、 *阿鼻あび獄ごくにあり» と。

我昔曽テ聞キキヽ↢智人ノ偈説セシヲ↡。

若シ於テ↢父母仏及ビ弟子ニ↡
生ジ↢不善ノ心ヲ↡起サム↠於ヲ↢悪業↡
如キノ↠是クノ果報在リト↢阿鼻獄ニ↡

^この事じをもつてのゆゑに、 われ心しん怖ぷして大だい苦く悩のうを生しょうぜしむ。 また良りょう医いの救く療りょうを見みることなけんº と。

以テノ↢是ノ事ヲ↡*故ニ、令ムト↣我 レ心怖シテ生ゼ↢大苦悩ヲ↡。又*无ケムト↣良医ノ而見ルコト↢救療ヲ↡。

^大臣だいじんまたいはく、 ªやや、 願ねがはくは大王だいおう、 しばらく愁しゅう怖ふすることなかれ。 法ほうに二に種しゅあり。 一ひとつには出しゅっ家け、 二ふたつには王法おうぼうなり。

大臣復言ク、惟ヤヽ願クハ大王、且シバラク莫レ↢愁怖スルコト↡。法ニ有リ↢二種↡。一ニ者ハ出家、二ニ者ハ王法ナリ。

^王法おうぼうといふは、 いはく、 その父ちちを害がいして、 すなはち国こく土どに王おうたるなり。 これ逆ぎゃくなりといふといへども、 実じつに罪つみあることなけん0270。 *迦羅羅からら虫ちゅうのかならず母ははの腹はらを壊やぶりて、 しかして後のち、 いまし生しょうずるがごとし。 *生しょうの法ほうかくのごとし。 母ははの身みを壊やぶるといへども実じつにまた罪つみなし。 *騾ら腹ふくの懐妊かいにん等とうまたまたかくのごとし。 治ち国こくの法ほう、 法ほうとしてかくのごとくなるべし。 父ぶ兄きょうを殺ころすといへども、 実じつに罪つみあることなけん。

王法トイフ者ハ、謂ク害セリ↢其ノ父ヲ↡、則チ*王↢国土↡。雖モ↠云フト↢是 レ逆ナリト↡、実ニ无ケム↠有ルコト↠罪。如シ↧迦羅羅虫ノ要ズ壊リテ↢母ノ腹ヲ↡、然シテ*後乃シ生ズルガ↥。生ノ法如シ↠是クノ。※雖モ↠破ルト↢母ノ*身ヲ↡実ニ亦无シ↠罪。騾ラ*腹ノ懐妊等亦復如シ↠是クノ。治国之法ハフ、法トシテ応シ↠如クナル↠是クノ。雖モ↠殺スト↢父兄ヲ↡、実ニ无ケム↠有ルコト↠罪。

^出しゅっ家けの法ほうは、 乃ない至し蚊もん蟻ぎを殺ころす、 また罪つみあり。 乃至

出家ノ法者ハ、乃至蚊蟻ヲ殺スル、亦有リ↠罪。 乃至

^王おうののたまふところのごとし、 «世よに良りょう医いの身心しんしんを治ちするものなけん» と。 いま大だい師しあり、 *末伽梨まかり拘く賖しゃ梨子りしと名なづく。 一切いっさい知ち見けんして衆しゅ生じょうを憐愍れんみんすること、 赤しゃく子しのごとし。 すでに煩悩ぼんのうを離はなれて、 よく衆しゅ生じょう三毒さんどくの*利り箭せんを抜ぬく。 乃至

如シ↢王ノ所ノ↟言フ、世ニ无ケムト↧良医ノ治スル↢身心ヲ↡者 ノ↥。今有リ↢大師↡、名ク↢末マ伽カ梨リク*賖シヤ*梨リ子シト↡。一切知見シテ憐↢愍スルコト衆生ヲ↡、猶↢如 ゴト シ赤子ノ↡。已ニ離レテ↢煩悩ヲ↡、能ク抜クト↢衆生ノ三毒ノ利箭0108ヲ↡。 乃至

^この師しいま王舎おうしゃ大だい城じょうにいます。やや、 願ねがはくは大王だいおう、 その所ところに往おう至しして、 王おうもし見みば衆罪しゅざい消しょう滅めつせんº と。

是ノ師今在イマス↢王舎大城ニ↡。惟ヤヽ願クハ大王、往↢至シテ其ノ所ニ↡、王若シ見ミ者バ衆罪消*滅セムト。

^時ときに王おう答こたへていはく、 ªあきらかによくかくのごときわが罪つみを滅除めつじょせば、 われまさに帰依きえすべしº と。

時ニ王答ヘテ言ク、審ツマビラカニ能ク如キ↠是クノ*滅↢除セバ我ガ罪ヲ↡、我当ニシト↢帰依ス↡。

・余術不治 3.実徳

 ^またひとりの臣しんあり、 名なづけて実徳じっとくといふ。 また王おうの所ところに到いたりて、 すなはち偈げを説ときていはく、 ª^大王だいおう、 なんがゆゑぞ身みの瓔珞ようらくを脱ぬぎ、 首こうべの髪かみ蓬乱ほうらんせる。 乃ない至しかくのごときなるや。 乃至 これ心こころ痛いたむとやせん、 身み痛いたむとやせんº と。

復有リ↢一ノ臣↡、名ケテ曰フ↢実*徳ト↡。復到リテ↢王ノ所ニ↡、即チ説キテ↠偈ヲ言ク、

大王何ガ故ゾ身ノ脱ヌギ↢瓔珞ヲ↡
首ノ髪カミ蓬ホウ乱セル乃至如キナルヤト↠是クノ 乃至
為セム↢是 レ心痛ムト邪ヤ↡為セムト↢身痛ムト邪ヤ↡

^王おうすなはち答こたへていはく、 ªわれいま身心しんしんあに痛いたまざることを得えんや。 わが父ちち先王せんおう、 慈じ愛あい*仁惻にんしきして、 ことに見みて*矜念こうねんせり。 実じつに*過咎かぐなきに、 往ゆきて*相そう師しに問と0271ふ。 相そう師し答こたへてまうさく、 «この児こ生うまれをはりて、 さだめてまさに父ちちを害がいすべし» と。 この語ごを聞きくといへども、 なほ見みて*瞻養せんようす。

王即チ答ヘテ言ク、我今身心豈 ニ得ムヤ↠不ルコトヲ↠痛マ。我ガ父先王、慈愛仁惻シテ、*特ニ見テ矜念セリ。実ニ無キニ↠*辜ツミ、往キテ問フ↢相師ニ↡。相師答ヘテ言ク、是ノ児生レ已リテ、定メテ当ニシト↠害ス↠父ヲ。雖モ↠聞クト↢是ノ語ヲ↡、猶 ヲ見テ瞻養ス。

^曽むかし智ち者しゃの、 かくのごときの言ごんをなししを聞ききき。 «もし人ひと母ははと通つうじ、 および比丘びく尼にを汚けがし、 僧そう祇ぎ物もつを偸ぬすみ、 無む上じょう菩ぼ提だい心しんを発おこせる人ひとを殺ころし、 およびその父ちちを殺ころさん。 かくのごときの人ひとは必ひつ定じょうしてまさに阿鼻あび地じ獄ごくに堕だすべし» と。 われいま身心しんしんあに痛いたまざることを得えんやº と。

曽 シ聞キキヽ↣智者ノ作ナシヽヲ↢如キノ↠是クノ言ヲ↡。若シ人通ノ↠母ト、及ビ汚ケガシ↢比丘尼ヲ↡、偸ヌスミ↢僧祇物ヲ↡、殺シ↧発セル↢无上菩提心ヲ↡人ヲ↥、及ビ殺サム↢其ノ父ヲ↡。如キ↠是クノ之人ハ必定シテ当ニシト↠堕ス↢阿鼻地獄ニ↡。我今身心豈 ニ得ムヤト↠不ルコトヲ↠痛マ。

^大臣だいじんまたいはく、 ªやや、 願ねがはくは大王だいおう、 また愁しゅう苦くすることなかれ。 乃至 一切いっさい衆しゅ生じょうみな*余よ業ごうあり。 業縁ごうえんをもつてのゆゑにしばしば生しょう死じを受うく。 もし先王せんおうに余よ業ごうあらしめば、 王おういまこれを殺ころさんに、 つひになんの罪つみかあらん。

大臣復言ク、惟ヤヽ願クハ大王、且マタ莫レト↢愁苦スルコト↡。 乃至 一切衆生皆有リ↢余業↡。以テノ↢業縁ヲ↡故ニ*数数シバシバ受ク↢生死ヲ↡。若シ使シメ↣先生ニ有ラ↢余業↡者バ、王今殺セムニ↠之ヲ、竟ツイニ有ラム↢何ノ罪カ↡。

^やや、 願ねがはくは大王だいおう、 意こころを寛ゆたかにして愁うれふることなかれ。 なにをもつてのゆゑに、 «^もしつねに愁しゅう苦くすれば、 愁うれへつひに増ぞう長じょうす。 人ひと眠ねむりを喜このめば、 眠ねむりすなはち滋しげく多おおきがごとし。 婬いんを貪とんじ酒さけを嗜たしなむも、 またまたかくのごとし»º と。 乃至

惟ヤヽ願クハ大王、寛ユタカニシテ↠意ヲ莫レ↠愁フルコト。何ヲ以テノ故ニ。

若シ常ニ愁苦スレバ愁遂ニ増長ス
如シ↢人喜コノメバ↠眠ヲ眠則チ滋シゲク多キガ↡
貪ジ↠婬ヲ嗜タシナムモ↠酒ヲ亦復如シト↠是クノ 乃至

^*刪闍さんじゃ耶や毘羅びら胝てい子し。

刪サン闍ジヤ*邪ヤ毘ビ羅ラ肱セン子シ。

・余術不治 4.悉知義

 ^またひとりの臣しんあり、 悉しっ知義ちぎと名なづく。 すなはち王おうの所ところに至いたりて、 かくのごときの言ごんをなさく。 乃至

復有リ↢一ノ臣↡、名ク↢悉知義ト↡。即チ至リテ↢王ノ所ニ↡、作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡。 乃至

^王おうすなはち答こたへていはまく、 ªわれいま身心しんしんあに痛いたみなきことを得えんや。 乃至 先王せんおう辜つみなきに、 横よこさまに逆ぎゃく害がいを興こうず。 われまた曽むかし智ち者しゃの説と0272きていひしを聞ききき。 «もし父ちちを害がいすることあれば、 まさに無む量りょう阿あ僧そう祇ぎ劫こうにして大だい苦く悩のうを受うくべし» と。 われいま久ひさしからずしてかならず地じ獄ごくに堕だせん。 また良りょう医いのわが罪つみを救く療りょうすることなけんº と。

王即チ答ヘテ言イハマク、我今身心豈 ニ得ムヤ↠无キコトヲ↠痛 ミ。 乃至 先王无キニ↠辜ツミ、横ニ興ズ↢逆害ヲ↡。我亦曽テ聞キキヽ↢智者ノ説キテ言ヒシヲ↡。若0109シ有レバ↠害スルコト↠父ヲ、当ニシト↧於テ↢无量阿僧祇劫ニ↡受ク↦大苦悩ヲ↥。我今不シテ↠久シカラ必ズ堕セム↢地獄ニ↡。又无ケムト↣良医ノ救↢療スルコト我ガ罪ヲ↡。

^大臣だいじんすなはちまうさく、 ªやや、 願ねがはくは大王だいおう、 愁しゅう苦くを放捨ほうしゃせよ。

大臣即チ言サク、惟ヤヽ願クハ大王、放↢捨セヨ愁苦ヲ↡。

^王おう聞きかずや、 昔者むかし王おうありき、 名なづけて羅摩らまといひき。 その父ちちを害がいしをはりて王おう位いを紹つぐことを得えたりき。 跋提ばつだい大王だいおう・毘楼びる真王しんおう・那睺なご沙しゃ王おう・迦か帝てい迦か王おう・毘び舎佉しゃきゃ王おう・月光がっこう明みょう王おう・日光にっこう明みょう王おう・愛あい王おう・持多じた人にん王おう、 かくのごときらの王おう、 みなその父ちちを害がいして王おう位いを紹つぐことを得えたりき。 しかるにひとりとして王おうの地じ獄ごくに入いるものなし。

王不ズ↠聞カ邪ヤ、昔者 ムカシ 有リキ↠王、名ケテ曰ヒキ↢羅摩ト↡。害シ↢其ノ父ヲ↡已リテ得タリキ↠紹ツグコトヲ↢王位ヲ↡。跋提大王・毘楼真王・那睺沙王・迦帝迦王・毘舎佉王・月光明王・日光明王・愛王・持多人王、如キ↠是クノ等ラノ王、皆 ナ害シテ↢其ノ父ヲ↡得タリキ↠紹ツグコトヲ↢王位ヲ↡。然ルニ无シ↧一トシテ王ノ入ル↢地獄ニ↡者 ノ↥。

^いま現在げんざいに毘瑠璃びるり王おう・優陀邪うだや王おう・悪あく性しょう王おう・鼠そ王おう・蓮れん華げ王おう、 かくのごときらの王おう、 みなその父ちちを害がいせりき。 ことごとくひとりとして王おうの愁しゅう悩のうを生しょうずるものなし。 地じ獄ごく・餓鬼がき・*天てん中ちゅうといふといへども、 たれか見みるものあるや。

於今 イマ 現在ニ毘瑠璃王・優陀*邪ヤ王・悪性王・鼠王・蓮華王、如キ↠是クノ等ラノ王、皆害セリキ↢其ノ父ヲ↡。悉ク无シ↧一トシテ王ノ生ズル↢愁悩ヲ↡者 ノ↥。雖モ↠言フト↢地獄・餓鬼・天中ト↡、誰タレカ有ルヤ↢見ミル者 ノ↡。

^大王だいおう、 ただ二ふたつの有うあり。 一ひとつには人道にんどう、 二ふたつには畜ちく生しょうなり。 この二ふたつありといへども、 因縁いんねん生しょうにあらず、 因縁いんねん死しにあらず。 もし因縁いんねんにあらずは、 なにものか善悪ぜんあくあらん。

大王、唯有リ↢二ノ有↡。一ニ者ハ人道、二ニ者ハ畜生ナリ。雖モ↠有リト↢是ノ二↡、非ズ↢因縁生ニ↡、非ズ↢因縁死ニ↡。若シ非ズハ↢因縁ニ↡、何ナニ者 ノカ有ラム↢善悪↡。

^やや、 願ねがはくは大王だいおう、 愁しゅう怖ふを懐いだくことなかれ。 なにをもつてのゆゑに、 «^もしつねに愁しゅう苦くすれば、 愁うれへつひに増ぞう長じょうす。 人ひと眠ねむりを喜このめば、 眠ねむりすなはち滋しげく多おおきがごとし。 婬いんを貪とんじ酒さけを0273嗜たしなむも、 またまたかくのごとし»º と。 乃至

惟ヤヽ願クハ大王、勿レ↠懐クコト↢愁怖ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。

若シ常ニ愁苦スレバ愁 ヘ遂ツイニ増長ス
如シ↢人喜コノメバ↠眠ヲ眠則チ滋シゲク多キガ↡
貪ジ↠婬ヲ嗜タシナムモ↠酒ヲ亦復如シト↠是クノ 乃至

^*阿耆多あぎた翅し舎しゃ欽きん婆羅ばら。 乃至

阿ア耆ギ多タ翅シ*金キム欽キン婆バ*羅ラ。

・余術不治 5.吉徳

 ^また大臣だいじんあり、 名なづけて吉徳きっとくといふ。 乃至 ª地じ獄ごくといふは、 なんの義ぎありとかせん。 臣しんまさにこれを説とくべし。

復有リ↢大臣↡、名ケテ曰フ↢吉徳ト↡。 乃至 言フ↢地獄ト↡者ハ、為セムト↠有リトカ↢何ノ義↡。臣当ニシト↠説ク↠之ヲ。

^地じは地ちに名なづく、 獄ごくは破はに名なづく。 地じ獄ごくを破はせん、 罪報ざいほうあることなけん。 これを地じ獄ごくと名なづく。

地者ハ名ク↠地ニ、獄者ハ名ク↠破ニ。破セム↠於ヲ↢地獄↡、无ケム↠有ルコト↢罪報↡。是ヲ名ク↢地獄ト↡。

^また地じは人にんに名なづく、 獄ごくは天てんに名なづく。 その父ちちを害がいするをもつてのゆゑに人天にんでんに到いたらん。 この義ぎをもつてのゆゑに、 婆蘇ばそ仙人せんにん唱となへていはく、 «羊ひつじを殺ころして人天にんでんの楽らくを得う» と。 これを地じ獄ごくと名なづく。

又復地者ハ名ク↠人ニ、獄者ハ名ク↠天ニ。以テノ↠害スルヲ↢其ノ父ヲ↡故ニ到イタラム↢人天ニ↡。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ婆バ蘇ソ仙人唱トナヘテ言ク、殺シテ↠羊ヲ得クト↢人天ノ楽ヲ↡。是ヲ名ク↢地獄ト↡。

^また地じは命みょうに名なづく、 獄ごくは長ちょうに名なづく。 *殺せっ生しょうをもつてのゆゑに寿じゅ命みょうの長ながきを得う。 ゆゑに地じ獄ごくと名なづく。

又復地者ハ名ク↠命ニ、獄者ハ名ク↠長ニ。※以テノ↢殺*彼ノ寿命ノ*長ヲ↡故ニ名ク↢地獄ト↡。

^大王だいおうこのゆゑにまさに知しるべし、 実じつに地じ獄ごくなけんと。 大王だいおう、 麦むぎを種うゑて麦むぎを得え、 稲いねを種うゑて稲いねを得うるがごとし。 地じ獄ごくを殺ころしては、 還かえりて地じ獄ごくを得えん。 人にんを殺害せつがいしては、 還かえりて人にんを得うべし。

大王、是ノ故ニ当ニシ↠知0110ル実ニ无ケムト↢地獄↡。大王、如シ↢種エテ↠麦ヲ得エ↠麦ヲ、種エテ↠稲ヲ得ルガ↟稲ヲ。殺シテ↢地獄ヲ↡者ハ、還リテ得ム↢地獄ヲ↡。殺↢害シテハ於ヲ↟人、応シ↢還リテ得ウ↟人ヲ。

^大王だいおういままさに臣しん (吉徳) の所説しょせつを聴きくに、 実じつに殺害せつがいなかるべし。 もし有我うがならば実じつにまた害がいなし。 もし無我むがならばまた害がいするところなけん。 なにをもつてのゆゑに。

大王、今当ニシト↧聴クニ↢臣ノ所説ヲ↡、実ニ无カル↦殺害↥。若シ有我ナラ者バ実ニ亦无シ↠害。若シ无我ナラ者バ復无ケム↠所↠害スル。何ヲ以テノ故ニ。

^もし有我うがならばつねに変易へんやくなし、 常住じょうじゅうをもつてのゆゑに殺害せつがいすべからず。 不破ふは不壊ふえ、 不繋ふけ不ふ縛ばく、 不ふ瞋しん不喜ふきはなほ虚こ空くうのごとし。 いかんぞまさに殺害せつがいの罪つみあるべき。

若シ有我ナラ*者バ常ニ無シ↢変易↡、以テノ↢常住ヲ↡故ニ不↠可カラ↢殺害ス↡。不破不壊、不繋不縛、不瞋不喜ハ猶↢如 ゴト シ虚空ノ↡。云何ゾ当ベ ニキ↠有ル↢殺害之罪↡。

^もし無我むがならば諸法しょほう無む常じょうなり。 無む常じょうをもつてのゆゑに念々ねんねんに壊え0274滅めつす。 念々ねんねんに滅めっするがゆゑに殺者せっしゃ・死し者しゃみな念々ねんねんに滅めっす。 もし念々ねんねんに滅めっせば、 たれかまさに罪つみあるべきや。

若シ无我ナラ者バ諸法无常ナリ。以テノ↢无常ヲ↡故ニ念念ニ壊滅ス。念念ニ滅スルガ故ニ殺者・死者皆念念ニ滅ス。若シ念念ニ滅セバ、誰カ当ベ ニキヤ↠有ル↠罪。

^大王だいおう、 火ひ、 木きを焼やくに、 火ひすなはち罪つみなきがごとし。 斧おの、 樹きを斫きるに、 斧おのまた罪つみなきがごとし。 鎌かま、 草くさを刈かるに、 鎌かま、 実じつに罪つみなきがごとし。 刀かたな、 人ひとを殺ころすに、 刀かたな、 実じつに人ひとにあらず、 刀かたなすでに罪つみなきがごとし。 人ひといかんぞ罪つみあらんや。 毒どく、 人ひとを殺ころすに、 毒どく、 実じつに人ひとにあらず、 *毒薬どくやく、 罪人ざいにんにあらざるがごとし。 いかんぞ罪つみあらんや。 一切いっさい万物まんもつみなまたかくのごとし。 実じつに殺害せつがいなけん。 いかんぞ罪つみあらんや。

大王、如シ↢火焼クニ↠木ヲ、火則チ无キガ↟罪。如シ↢斧オノ斫ルニ↠樹ヲ、斧亦无キガ↟罪。如シ↢鎌カマ刈カルニ↠草ヲ、鎌実ニ无キガ↟罪 ミ。如シ↢刀カタナ殺スニ↠人ヲ、刀カタナ実ニ非ズ↠人ニ、刀既ニ无キガ↟罪。人云何 イカン ゾ罪アラムヤ。如シ↣毒殺スニ↠人ヲ、毒実ニ非ズ↠人ニ、毒薬※*非ザルガ↢*罪人ニ↡。*云何 イカン ゾ罪アラムヤ。一切万物皆 ナ亦如シ↠是クノ。実ニ无ナケム↢殺害↡。云何ゾ有ラムヤ↠罪。

^やや、 願ねがはくは大王だいおう、 愁しゅう苦くを生しょうずることなかれ。 なにをもつてのゆゑに、 «^もしつねに愁しゅう苦くせば、 愁うれへつひに増ぞう長じょうせん。 人ひと眠ねむりを喜このめば、 眠ねむりすなはち滋しげく多おおきがごとし。 婬いんを貪とんじ酒さけを嗜たしなむも、 またまたかくのごとし» と。

惟ヤヽ願クハ大王、莫レ↠生ズルコト↢愁苦ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。

若シ常ニ愁苦セバ愁 ヘ遂ニ増長ス
如シ↢人喜メバ↠眠ヲ眠則チ滋ク多キガ↡
貪ジ↠婬ヲ嗜タシナムモ↠酒ヲ亦復如シ↠是クノ

^いま大だい師しあり、 *迦羅鳩からく駄迦だか旃延せんえんと名なづくº と。

今有リ↢大師↡、名クト↢迦カ羅ラ鳩ク駄ダ迦カ旃セン*延ト↡。

・余術不治 6.無所畏

 ^またひとりの臣しんあり、 無む所しょ畏いと名なづく。 ^ªいま大だい師しあり、 *尼に乾けん陀だ若にゃ提だい子しと名なづくº と。 乃至

復有リ↢一ノ臣↡、名ク↢无所*畏ト↡。今有リ↢大師↡、名クト↢尼ニ乾ケン陀ダ若ニヤ*犍ケン子シト↡。 乃至

・非仏不療 1.耆婆勧

 ^その時ときに、 大だい医いあり、 名なづけて*耆婆ぎばといふ。 王おうの所ところに往おう至ししてまうしてまうさく、 ª大王だいおう、 *いづくんぞ眠ねむることを得えんやいなやº と。

爾ノ時ニ大医アリ、名ケテ曰フ↢耆婆ト↡。往↢至シテ王ノ所ニ↡白シテ言ク、大王、得エムヤ↢安イヅクンゾ眠ルコトヲ↡不イナヤト。

^王おう、 偈げをもつて答こたへて0275いはまく、 乃至 ª耆婆ぎば、 われいま病やまい重おもし。 正しょう法ぼうの王おうにおいて悪あく逆ぎゃく害がいを興おこす。 一切いっさいの良りょう医い・妙みょう薬やく・呪しゅ術じゅつ・*善ぜん巧ぎょう瞻せん病びょうの治ちすることあたはざるところなり。 なにをもつてのゆゑに、 わが父ちち法王ほうおう、 法ほうのごとく国くにを治おさむ、 実じつに辜咎つみとがなし。 横よこさまに逆ぎゃく害がいを加かす、 魚うおの陸くがに処しょするがごとし。 乃至

王以テ↠偈ヲ答ヘテ言ハマク、乃至 耆婆、我今病重シ。於テ↢正法ノ王ニ↡興コウズ↢悪逆害ヲ↡。一切ノ良医・妙薬・呪術・善巧瞻病ノ※所ナリ↠不ル↠能ハ↠治スルコト。何ヲ以テノ故ニ。我ガ父法王、如ク↠法ノ治オサム↠国ヲ、実ニ无シ↠*辜ツミ咎。横0111ニ加ス↢逆害ヲ↡、如シ↢魚ウオノ処スルガ↟陸ニ。 乃至

^われ昔むかしかつて智ち者しゃの説ときていひしことを聞ききき。 «身しん口意くい業ごうもし清浄しょうじょうならずは、 まさに知しるべし、 この人ひとかならず地じ獄ごくに堕だせん» と。 われまたかくのごとし。 いかんぞまさに安穏あんのんに眠ねむることを得うべきや。 いまわれまた無む上じょうの大だい医いなし、 法薬ほうやくを演説えんぜつせんに、 わが病びょう苦くを除のぞきてんやº と。

我 レ昔ムカシ曽テ聞キキヽ↢智者ノ説キテ言ヒシコトヲ↡。身口意業若シ不ズハ↢清浄ナラ↡、当ニシ↠知ル是ノ人必ズ堕セムト↢地獄ニ↡。我 レ亦如シ↠是クノ。云何ゾ当ニキ↠得ウ↢安穏ニ眠ルコトヲ↡邪ヤ。今我 レ又マタ无シ↢无上ノ大医↡、演↢説セムニ法薬ヲ↡、除キテムヤト↢我ガ病苦ヲ↡。

^耆婆ぎば答こたへていはく、 ª善よいかな善よいかな、 王おう罪つみをなすといへども、 心こころに*重じゅう悔けを生しょうじて慚ざん愧ぎを懐いだけり。

耆婆答ヘテ言ク、善イ哉カナ善イ哉、王雖モ↠作スト↠罪ヲ、心ニ生ジ↢重悔ヲ↡而テ懐イダケリ↢慚愧ヲ↡。

^大王だいおう、 諸仏しょぶつ世せ尊そんつねにこの言ごんを説ときたまはく、 ^二ふたつの*白びゃく法ほうあり、 よく衆しゅ生じょうを救たすく。 一ひとつには慚ざん、 二ふたつには愧きなり。 慚ざんはみづから罪つみを作つくらず、 愧きは他たを教おしへてなさしめず。 慚ざんはうちにみづから羞しゅう恥ちす、 愧きは発ほつ露ろして人ひとに向むかふ。 慚ざんは人にんに羞はづ、 愧きは天てんに羞はづ。 これを慚ざん愧ぎと名なづく。

大王、諸仏世尊常ニ説キタマハク↢是ノ言ヲ↡、有リ↢二ノ白法↡、能ク救タスク↢衆生ヲ↡。一ニハ慚、二ニハ愧ナリ。慚者ハ自ミヅカラ不ズ↠作ラ↠罪ヲ、愧者ハ不ズ↢教ヘテ↠他ヲ作ナサシメ↡。慚者ハ内ニ自ミヅカラ羞シユハヂ恥チハヅス、愧者ハ発露シテ向フ↠人ニ。慚者ハ羞ハヅ↠人ニ、愧者ハ羞ハヅ↠天ニ。是ヲ名ク↢慚愧ト↡。

^無む慚ざん愧ぎは名なづけて人にんとせず、 名なづけて畜ちく生しょうとす。 慚ざん愧ぎあるがゆゑに、 すなはちよく父母ぶも・師し長ちょうを*恭く敬ぎょうす。 慚ざん愧ぎあるがゆゑに、 父母ぶも・兄きょう弟だい・姉し妹まいあることを説とく。 ^善よきかな大王だいおう、 つぶさに慚ざん愧ぎあり。 乃至

无慚愧者ハ不ズ↢名ケテ為セ↟人ト、名ケテ為ス↢畜生ト↡。有ルガ↢慚愧↡故ニ則チ能ク恭↢敬ス父母・師長ヲ↡。有ルガ↢慚愧↡故ニ説ク↠有ルコトヲ↢父母・兄弟・姉妹↡。善キ哉大王、具ツブサニ有リト↢慚愧↡。 乃至

^王おうののたまふところのごと0276し、 «よく治ちするものなけん» と。 大王だいおうまさに知しるべし、 *迦毘羅かびら城じょうに*浄じょう飯ぼん王のうの子こ、 姓しょうは*瞿く曇どん氏し、 *悉達しっだっ多たと字なづく。 師しなくして自じ然ねんに覚かく悟ごして阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを得えたまへり。 乃至 これ仏ぶつ世せ尊そんなり。 *金剛こんごう智ちましまして、 よく衆しゅ生じょうの一切いっさい悪罪あくざいを破はせしむること、 もしあたはずといはば、 この処ことわりあることなけん。 乃至

如シ↢王ノ所ノ↟言フ、无ケムト↢能ク治スル者 ノ↡。大王当ニシ↠知ル、迦毘羅城ニ浄*飯王ノ子、姓ハ瞿ク曇ドム氏シ、字ナヅク↢悉達多ト↡。无クシテ↠師覚↢悟シ自然ニ↡而テ得タマヘリト↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。 乃至 是 レ仏世尊ナリ。有マシマシテ↢金剛智↡、能ク破セシムルコト↢衆生ノ一切悪罪ヲ↡、若シ言イハヾ↠不ズト↠能ハ、无ケムト↠有ルコト↢是ノ処コトワリ↡。 乃至

^大王だいおう、 如来にょらいに*弟てい提だい婆ば達だっ多たあり。 *衆僧しゅそうを破壊はえし、 仏身ぶっしんより血ちを出いだし、 *蓮れん華げ比丘びく尼にを害がいす。 三さん逆ぎゃく罪ざいを作つくれり。 如来にょらい、 ために種々しゅじゅの法要ほうようを説ときたまふに、 その重じゅう罪ざいをしてすなはち微み薄はくなることを得えしめたまふ。 このゆゑに如来にょらいを大だい良りょう医いとす。 六ろく師しにはあらざるなりº と。 乃至

大王、如来ニ有リ↢弟提婆達多↡。破↢壊シ衆僧ヲ↡、出シ↢仏身ヨリ血ヲ↡、害ス↢蓮華比丘尼ヲ↡。作レリ↢三逆罪ヲ↡。如来為ニ説キタマフニ↢種種ノ法要ヲ↡、令メタマフ↣其ノ重罪ヲシテ尋スナワチ得エ↢微薄ナルコトヲ↡。是ノ故ニ如来ヲ為ス↢大良医ト↡。非ザル↢六師ニハ↡也ト。 乃至

・非仏不療 2.父王勧

^ª*大王だいおう、 一いち逆ぎゃくを作つくれば、 すなはちつぶさにかくのごときの一罪いちざいを受うく。 もし二に逆ぎゃく罪ざいを造つくらば、 すなはち二に倍ばいならん。 五ご逆ぎゃくつぶさならば、 罪つみもまた五ご倍ばいならん。 大王だいおういまさだめて知しんぬ、 王おうの悪業あくごうかならず勉まぬかるることを得えじ。 やや、 願ねがはくは大王だいおう、 すみやかに仏ぶつの所みもとに往もうづべし。 仏ぶつ世せ尊そんを除のぞきて余よは、 よく救たすくることなけん。 われいまなんぢを愍あわれむがゆゑに、 あひ勧すすめて導みちびくなりº と。

大王、作レ↢一逆ヲ↡者バ、則便チ具ニ受ク↢如キノ↠是クノ一罪ヲ↡。若シ造ラバ↢二逆罪ヲ↡、則チ二倍ナラム。五逆具ナラ者バ、罪モ亦五倍ナラムト。大王、今定メテ知ヌ、王之悪0112業必ズ不ジ↠得エ↠勉マヌカルコトヲ。惟ヤヽ願クハ大王、速 カニ往マウヅベシ↢仏ノ所 トニ↡。除キテ↢仏世尊ヲ↡余ハ、无ケム↢能ク救クルコト↡。我今愍ムガ↠汝ヲ故ニ相 ヒ勧メテ導 チビクナリト。

^その時ときに、 大王だいおう、 この語ごを聞ききをはりて、 心こころに*怖懼ふくを懐いだけり。 身みを挙あげて戦慄せんりつす。 五ご体たい掉じょう動どうして芭ば蕉しょう樹じゅのごとし。 仰あおぎて答こたへていはく、 ª天てんこれたれとかせん、 *色像しきぞうを現げんぜずしてただ声こえのみある0277ことはº と。

爾ノ時ニ大王、聞キキ↢是ノ語ヲ↡已リテ、心ニ懐 ダケリ↢怖懼クヲ↡。挙アゲテ↠身ヲ戦センオノヽク慓ペウスオソル。五体*梓シム動シテ如シ↢芭バ蕉セウ樹ノ↡。仰ギ而テ答ヘテ曰ク、*天ニ為セム↢是 レ誰 レトカ↡、不ズ↠現ゼ↢色像ヲ↡而シテ但有ルコトハト↠声ノミ。

^ª大王だいおう、 われはこれなんぢが父ちち頻びん婆ば沙しゃ羅らなり。 なんぢいままさに耆婆ぎばの所説しょせつに随したがふべし。 邪見じゃけん六臣ろくしんの言ことばに随したがふことなかれº と。

大王、吾ワレハ是 レ汝ガ父頻婆沙羅ナリ。汝今当ニシ↠随フ↢耆婆ノ所説ニ↡。莫レト↠随フコト↢邪見六臣之言コトバニ↡。

^時ときに聞ききをはりて*悶絶もんぜつ躄びゃく地じす。 身みの瘡かさ、 増ぞう劇ぎゃくして臭しゅう穢えなること、 前さきよりも倍まされり。 もつて冷薬れいやくをして塗ぬり、 瘡かさを治ち療りょうすといへども、 瘡かさ蒸あつかはし。 毒熱どくねつただ増ませども損そんずることなし」 と。 以上略出

時ニ聞キキ已リテ悶絶躄地ス。身ノ瘡カサ増劇ギヤクシテ臭穢ナルコト倍マサレリ↠前ヨリモ。雖モ↧以テ↢冷薬ヲ↡塗ヌリ、治↦療スト瘡ヲ↥、瘡蒸アツカワシ。毒熱但増マセドモ无シト↠損ズルコト。」 已上*略出

二 Ⅰ ⅰ b イ (二)列名

 ^一*大臣だいじん、 名なづけて月がっ称しょうといふ一富ふ蘭らん那なと名なづく
 二蔵徳ぞうとく二末伽梨まかり拘く賖しゃ梨子りしと名なづく
 三一ひとりの臣しんあり、 名なづけて実徳じっとくといふ三刪闍さんじゃ耶や毘羅びら胝てい子しと名なづく
 四一ひとりの臣しんあり、 悉しっ知義ちぎと名なづく四阿耆多あぎた翅し舎しゃ欽きん婆羅ばらと名なづく
 五大臣だいじん、 名なづけて吉徳きっとくといふ五迦羅鳩からく駄迦だか旃延せんえん
 六無む所しょ畏い六尼に乾けん陀だ若にゃ提だい子しと名なづく
 ▼一大臣名ケテ曰フ↢日月称ト↡一名ク↢富フ闌ラン那ナト↡
 二蔵*徳二名ク↢末マ伽カ梨リク*賖シヤ梨リ子シト↡
 三有リ↢一ノ臣↡名ケテ曰フ↢実*徳ト↡三名ク↢那ナ闡セン*邪ヤ毘ビ羅ラ肱セン子シト↡
 四有リ↢一ノ臣↡名ク↢悉シチ知チ義ギト↡四名ク↢阿ワ*嗜ギ多タ翅シ金キム欽キン*婆バ羅ラト↡
 五大臣名ケテ曰フ↢吉徳ト↡五▼婆バ蘇ソ仙セン
 六▼加カ羅ラ鳩ク駄ダ迦カ旃セン延エン六名ク↢尼ニ乾ケン陀ダ若ニヤ犍ケン子シト↡

二 Ⅰ ⅰ b ロ 能化の徳相を明かす
          (一)不入涅槃を明かす

【116】^またのたまはく (涅槃経・梵行品)、

又言ノタマハク、

^「ª善男ぜんなん子し、 わがいふところのごとし、 阿あ闍じゃ世せ王おうの為ために涅ね槃はんに入いらず。 かくのごときの*密みつ義ぎ、 なんぢいまだ解とくことあたはず。

「▼善男子、如シ↢我ガ所ノ↟言フ、為ニ↢阿闍世王ノ↡不ズ↠入ラ↢涅槃ニ↡。如キノ↠是クノ密義、汝未ズ ダ↠能ハ↠解クコト。

^なにをもつてのゆゑに、 われ «為ため» といふは一切いっさい凡ぼん夫ぶ、 «阿あ闍じゃ世せ王おう» とはあまねくおよび一切いっさい五ご逆ぎゃくを造つくるものなり。

◆何ヲ以テノ故ニ。我言フ↠為ト者ハ一切凡夫、阿闍*世王ト者ハ普ク及ビ一切造ル↢五0113逆ヲ↡者 ノナリ。

^また «為ため» とはすなはちこれ*一いっ切さい0278有為ういの衆しゅ生じょうなり。 われつひに*無為むいの衆しゅ生じょうのためにして世よに住じゅうせず。 なにをもつてのゆゑに、 それ無為むいは衆しゅ生じょうにあらざるなり。 «阿あ闍じゃ世せ» とはすなはちこれ煩悩ぼんのう等とうを具ぐ足そくせるものなり。

◆又復為ト者ハ即チ是一切有為ノ衆生ナリ。我 レ終ニ不ズ↧為ニ↢无為ノ衆生ノ↡而シテ住セ↞於ニ↠世。何ヲ以テノ故ニ。夫 レ无為者ハ非ザル↢衆生ニ↡也。阿闍世ト者ハ即チ是具↢足セル煩悩等ヲ↡者 ノナリ。

^また «為ため» とはすなはちこれ仏ぶっ性しょうを見みざる衆しゅ生じょうなり。 もし仏ぶっ性しょうを見みんものには、 われつひにために久ひさしく世よに住じゅうせず。 なにをもつてのゆゑに、 仏ぶっ性しょうを見みるものは衆しゅ生じょうにあらざるなり。 «阿あ闍じゃ世せ» とはすなはちこれ一切いっさいいまだ阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんを発ほっせざるものなり。 乃至

◆又復為ト者ハ即チ是不ル↠見ミ↢仏性ヲ↡衆生ナリ。若シ見ミムモノニハ↢仏性ヲ↡、我 レ終ニ不ズ↢為ニ久シク住セ↟於ニ↠世。何ヲ以テノ故ニ。見ル↢仏性ヲ↡者 ノハ非ザル↢衆生ニ↡也。阿闍世ト者ハ即チ是一切未ダル↠発セ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡者 ノナリ。 乃至

^また «為ため» とは名なづけて仏ぶっ性しょうとす。 «阿あ闍じゃ» は名なづけて不ふ生しょうとす、 «世せ» は怨おんに名なづく。 仏ぶっ性しょうを生しょうぜざるをもつてのゆゑに、 すなはち煩悩ぼんのうの怨あだ生しょうず。 煩悩ぼんのうの怨あだ生しょうずるがゆゑに、 仏ぶっ性しょうを見みざるなり。 煩悩ぼんのうを生しょうぜざるをもつてのゆゑに、 すなはち仏ぶっ性しょうを見みる。 仏ぶっ性しょうを見みるをもつてのゆゑに、 すなはち大般だいはつ涅ね槃はんに安あん住じゅうすることを得う。 これを不ふ生しょうと名なづく。 このゆゑに名なづけて阿あ闍じゃ世せとす。

◆又復為ト者ハ名ケテ為ス↢仏性ト↡。阿闍者ハ名ケテ為ス↢不生ト↡、世者ハ名ク↠怨ニ。以テノ↠不ルヲ↠生ゼ↢仏性ヲ↡故ニ則チ煩悩ノ怨アダ生ズ。煩悩ノ怨アダ生ズルガ故ニ不ルナリ↠見↢仏性ヲ↡。以テノ↠不ルヲ↠生ゼ↢煩悩ヲ↡故ニ則チ見ル↢仏性ヲ↡。以テノ↠見ルヲ↢仏性ヲ↡故ニ則チ得ウ↣安↢住スルコトヲ大般涅槃ニ↡。是ヲ名ク↢不生ト↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢阿闍世ト↡。

^善男ぜんなん子し、 «阿あ闍じゃ» は不ふ生しょうに名なづく、 不ふ生しょうは涅ね槃はんと名なづく。 «世せ» は世せ法ほうに名なづく。 «為ため» とは不汚ふわに名なづく。 世せの*八法はっぽうをもつて汚けがさざるところなるがゆゑに、 無む量りょう無む辺へん阿あ僧そう祇ぎ劫こうに涅ね槃はんに入いらず。 このゆゑにわれ «阿あ闍じゃ世せの為ために無む量りょう億おく劫こうに涅ね槃はんに入いらず» とのたまへり。

◆善男子、阿闍者ハ名ク↢不生ニ↡、不生者ハ名ク↢涅槃ト↡。世ハ名ク↢世法ニ↡。為ト者ハ名ク↢不汚ニ↡。以テ↢世ノ八法ヲ↡所ナルガ↠不ル↠汚ケガサ故ニ无量无辺阿僧祇劫ニ不ズト↠入ラ↢涅槃ニ↡。是ノ故ニ我 レ言ノタマヘリ↧為ニ↢阿闍世ノ↡无量億劫ニ不ズト↞入ラ↢涅槃ニ↡。

^善男ぜんなん子し、 如来にょらいの密みつ語ご不可ふか思議しぎなり。 仏法ぶっぽう衆僧しゅそうまた不可ふか思し議ぎ0279なり。 菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつまた不可ふか思議しぎなり。 ¬大だい涅ね槃はん経ぎょう¼ また不可ふか思議しぎなりº と。

◆善男子、如来ノ密語不可思議ナリ。仏法衆僧亦不可思議ナリ。菩薩摩訶薩亦不可思議ナリ。¬大涅槃経¼亦不可思議ナリト。

二 Ⅰ ⅰ b ロ (二)善巧開化を明かす

・治身 ・放光治身

 ^その時ときに、 世せ尊そん大だい悲ひ導どう師し、 阿あ闍じゃ世せ王おうのために*月愛がつあい三昧ざんまいに入いれり。 三昧さんまいに入いりをはりて大だい光こう明みょうを放はなつ。 その光ひかり清涼しょうりょうにして、 往ゆきて王おうの身しんを照てらしたまふに、 身みの瘡かさすなはち愈いえぬ。 乃至

◆爾ノ時ニ世尊大悲導師、為ニ↢阿闍世王ノ↡入レリ↢月愛三昧ニ↡。入リ↢三昧ニ↡已リテ放ツ↢大光明ヲ↡。其ノ光清涼ニシテ、往キテ照シタマフニ↢王ノ身ヲ↡、身ノ瘡カサ即チ愈イエヌ。 乃至

・治身 ・放光所由

^王おう、 耆婆ぎばにいはまく、 ªかれは*天てん中ちゅうの天てんなり。 なんの因縁いんねんをもつてこの光こう明みょうを放はなちたまふぞやº と。

◆※*白シテ↠王ニ言イワマク↢耆婆ニ↡、彼 レハ天中ノ天ナリ。以テ↢何ノ因縁ネンヲ↡放チタマフゾヤト↢斯ノ光明ヲ↡。

^ª大王だいおう、 いまこの*瑞相ずいそうは、 および王おうのためにするにあひ似にたり。 まづいはまく、 世よに良りょう医いの身心しんしんを療りょう治じするものなきがゆゑに、 この光ひかりを放はなちてまづ王おうの身みを治ちす。 しかうして後のちに心こころに及およぶº と。

◆*大王、今是ノ瑞相ハ、*相 ヒ↣似ニタリ為ニスルニ↢及以 オヨビ 王ノ↡。先マヅ言0114マク、世ニ无キガ↣良医ノ療↢治スルモノ身心ヲ↡故ニ、放チテ↢此ノ光ヲ↡先マヅ治ス↢王ノ身ヲ↡。然シテ後ニ及ブト↠心ニ。

^王おうの耆婆ぎばにいはまく、 ª如来にょらい世せ尊そんまた見みたてまつらんと念おもふをやº と。

◆王ノ言イハマク↢耆婆ニ↡、如来世尊亦見タテマツラムト念オモフヲ邪ヤト。

^耆婆ぎば答こたへていはく、 ªたとへば一人いちにんにして七しち子しあらん。 この七しち子しのなかに一いっ子し病やまいに遇あへば、 父母ぶもの心こころ平びょう等どうならざるにあらざれども、 しかるに病びょう子しにおいて心こころすなはちひとへに重おもきがごとし。

◆耆婆答ヘテ言ハク、譬ヘバ如シ↧一人ニ而シテ有ラム↢七子↡、是ノ七子ノ中ニ一子遇ヘバ↠病ニ、父母之心非ザレドモ↠不ルニ↢平等ナラ↡、然ルニ於テ↢病子ニ↡心則チ偏 ヘニ重キガ↥。

^大王だいおう、 如来にょらいもまたしかなり。 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて平びょう等どうならざるにあらざれども、 しかるに罪者ざいしゃにおいて心こころすなはちひとへに重おもし。 放逸ほういつのものにおいて仏ぶつすなはち慈じ念ねんしたまふ。 不ふ放逸ほういつのものは心こころすなはち放捨ほうしゃす。 なんらをか名なづけて不ふ放逸ほういつのものとすると。 いはく、 *六ろく住じゅうの菩ぼ薩さつなりと。

◆大王、如来モ亦爾ナリ。於テ↢諸ノ衆生ニ↡非ザレドモ↠不ルニ↢平等ナラ↡、然ルニ於テ↢罪者ニ↡心則チ偏ニ重シ。於テ↢放逸ノ者 ノニ↡仏則チ慈念シタマフ。不放逸ノ者 ノハ心則チ放ユルシ捨スツス。何等ラヲカ名ケテ為スルト↢不放逸ノ者ト↡。謂ク六住ノ菩薩ナリト。

^大王だいおう、 諸仏しょぶつ世せ尊そん、 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて、 *種しゅ姓しょう0280・老ろう少しょう中ちゅう年ねん・貧ひん富ぷ・*時じ節せつ・日月にちがつ星宿しょうしゅく・*工く巧ぎょう・下げ賎せん・僮僕どうぼく・婢使ひしを観みそなはさず、 ただ衆しゅ生じょうの善心ぜんしんあるものを観みそなはす。 もし善心ぜんしんあればすなはち慈じ念ねんしたまふ。 大王だいおうまさに知しるべし、 かくのごときの瑞相ずいそうは、 すなはちこれ如来にょらい、 月愛がつあい三昧ざんまいに入いりて放はなつところの光こう明みょうなりº と。

◆大王、諸仏世尊、於テ↢諸ノ衆生ニ↡、不ズ↠観ミソナハサ↢種姓・老少中年・貧富・時節・日月星宿シフ・工ク巧ゲウ・下賎セン・僮ドウ僕・婢使ヲ↡、唯観ス↧衆生ノ有ル↢善心↡者 ノヲ↥。若シ有レバ↢善心↡則便チ慈念シタマフ。大王当ニシ↠知ル、如キノ↠是クノ瑞相ハ、即チ是如来入リテ↢月愛三昧ニ↡所ノ↠放ツ光明ナリト。

・治身 ・三昧徳名

^王おうすなはち問とうていはまく、 ªなんらをか名なづけて月愛がつあい三昧ざんまいとするº と。

◆王即チ問ウテ言ハマク、何等ラヲカ名ケテ為スルト↢月愛三昧ト↡。

^耆婆ぎば答こたへていはまく、 ªたとへば月つきの光ひかりよく一切いっさいの*優鉢羅うはら華けをして開かい敷ふし鮮せん明みょうならしむるがごとし。 月愛がつあい三昧ざんまいもまたまたかくのごとし。 よく衆しゅ生じょうをして善心ぜんしん開かい敷ふせしむ。 このゆゑに名なづけて月愛がつあい三昧ざんまいとす。

◆耆婆答ヘテ言ハマク、譬ヘバ如シ↣月ノ光能ク令ムルガ↢一切ノ優鉢羅華ヲシテ開敷シ鮮明ナラ↡。月愛三昧モ亦復如シ↠是クノ。能ク令ム↢衆生ヲシテ善心開敷セ↡。是ノ故ニ名ケテ為ス↢月愛三昧ト↡。

^大王だいおう、 たとへば月つきの光ひかりよく一切いっさい、 路みちを行ゆく人ひとの心こころに歓かん喜ぎを生しょうぜしむるがごとし。 月愛がつあい三昧ざんまいもまたまたかくのごとし。 よく涅ね槃はん道どうを修しゅ習じゅうせんものの心こころに歓かん喜ぎを生しょうぜしむ。 このゆゑにまた月愛がつあい三昧ざんまいと名なづく。 乃至 諸善しょぜんのなかの王おうなり。 甘かん露ろ味みとす。 一切いっさい衆しゅ生じょうの愛あい楽ぎょうするところなり。 このゆゑにまた月愛がつあい三昧ざんまいと名なづくº と。 乃至

◆大王、譬ヘバ如シ↤月ノ光 リ能ク令ムルガ↣一切行ク↠路ヲ之人ノ心ニ生ゼ↢歓喜ヲ↡。月愛三昧モ亦復如シ↠是クノ。能ク令シム↧修↢習セム涅槃道ヲ↡者 ノノ心ニ生ゼ↦歓喜ヲ↥。是ノ故ニ復名クト↢月愛三昧ト↡。 乃至 諸善ノ中ノ王ナリ。為ス↢甘露味ト↡。一切衆生之所ナリ↢愛楽スル↡。是ノ故ニ復名クト↢月愛三昧ト↡。 乃至

・治心 ・先明詣仏

 ^その時ときに、 仏ぶつ、 もろもろの大衆だいしゅに告つげてのたまはく、 ª一切いっさい衆しゅ生じょう、 阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいに近ちかづく因縁いんねんのためには、 *善ぜん友ぬを先さきとするにはしかず。 なにをもつてのゆゑに、 ▼阿あ闍じゃ世せ王おう、 もし耆婆ぎばの語ことばに随ずい順じゅんせずは、 来月らいげつの七なぬ日かに必ひつ定じょうして0281命終みょうじゅうして阿鼻あび獄ごくに堕だせん。 *このゆゑに日ひに近ちかづきにたり、 善ぜん友ぬにしくことなしº と。

◆爾ノ時ニ仏告ゲテ↢諸ノ大衆ニ↡言ノタマハク、一切衆生為ニ↢阿耨多羅三藐三菩提ニ近チカヅク因縁ノ↡者ハ、无シカズ↠先サキトスルニハ↢善友ヲ↡。何ヲ以テノ故0115ニ。阿闍世王、*若シ不ズ↠随↢順セ耆婆ノ語ニ↡者ハ、来月ノ七日ニ必定シテ命終シテ堕セム↢阿鼻獄ニ↡。是ノ故ニ近チカヅキニタリ↠日ニ、莫レト↠若シクコト↢善友ニ↡。

^◆阿あ闍じゃ世せ王おうまた*前ぜん路ろにおいて聞きく、 ª*舎しゃ婆ば提だいに*毘び瑠璃るり王おう、 船ふねに乗じょうじて海辺かいへんに入いりて火ひに遇あふ、 しかうして死しぬ。 *瞿迦くか離り比丘びく、 生しょう身じんに地じに入いりて阿鼻あび獄ごくに至いたれり。 *須しゅ那な刹せっ多たは種々しゅじゅの悪あくを作つくりしかども、 仏所ぶっしょに到いたりて衆罪しゅざい消しょう滅めつしぬº と。

阿闍世王復於テ↢前路ニ↡聞キク、舎婆提ニ毘瑠璃王、乗ジテ↠船ニ入リテ↢海辺ニ↡*災サイシ而テ死ヌ。瞿伽離比丘、生身ニ入リテ↠地ニ至レリ↢阿鼻獄ニ↡。須那刹多ハ作リシカドモ↢種種ノ悪ヲ↡、*到リテ↠於ニ↢仏所ニ↡衆罪消滅シヌト。

^◆この語ことばを聞ききをはりて、 耆婆ぎばに語かたりていはまく、 ªわれいまかくのごときの*二ふたつの語ことばを聞きくといへども、 なほいまだあきらかならず。 さだめてなんぢ来きたれり、 耆婆ぎば、 われなんぢと同おなじく一象いちぞうに載のらんと欲おもふ。 たとひわれまさに阿鼻あび地じ獄ごくに入いるべくとも、 冀ねがはくは、 なんぢ捉そく持じしてわれをして堕おととさしめざれ。 なにをもつてのゆゑに、 われ昔むかしかつて聞ききき、 «得道とくどうの人ひとは地じ獄ごくに入いらず»º と。 乃至

聞キキ↢是ノ語ヲ↡已リテ、語リテ↢耆婆ニ↡言ハマク、吾今雖モ↠聞クト↢如キノ↠是クノ二ノ語コトバヲ↡、猶ナホ未ズ ダ↠審アキラカナラ。定メテ汝来レリ。耆婆、吾 レ欲フ↣与ト↠汝同ジク載ノラムト↢一象ニ↡。*設タトヒ我 レ当ニクトモ↠入ル↢阿鼻地獄ニ↡、冀ネガハクハ汝投トウ持ヂシテ不レト↠令メ↢我ヲシテ堕オトサ↡。何ヲ以テノ故ニ。吾 レ昔ムカシ曽テ聞キヽ、得道之人ハ不ズト↠入ラ↢地獄ニ↡。 乃至

・治心 ・説法治心 1.造罪軽重

^ªいかんぞ説ときてさだめて地じ獄ごくに入いらんといはん。 大王だいおう、 一切いっさい衆しゅ生じょうの所しょ作さの罪業ざいごうにおほよそ二に種しゅあり。 一ひとつには軽きょう、 二ふたつには重じゅうなり。 もし心こころと口くちとに作つくるはすなはち名なづけて軽きょうとす。 身みと口くちと心こころとに作つくるはすなはち名なづけて重じゅうとす。

云何 イカン ゾ説キテ言ハム↣定メテ入ラムト↢地*獄ニ↡。大王、一切衆生ノ所作ノ罪業ニ凡ソ有アリ↢二種↡。一ニ者ハ軽、二ニ者ハ重ナリ。若シ心ト口トニ作ルハ則チ名ケテ為ス↠軽ト。身ト口ト心トニ作ルハ則チ名ケテ為スト↠重ト。

^大王だいおう、 心こころに念おもひ口くちに説ときて身みになさざれば、 得うるところの報ほう、 軽きょうなり。 大王だいおう、 昔日むかし口くちに殺ころせと勅ちょくせず、 ただ足あしを削けずれといへりき。 大王だいおう、 もし侍じ臣しんに勅しょくせましかば、 たちどころに王おうの首こうべを斬きらまし。 坐ざの時ときにすなはち斬きるとも0282、 なほ罪つみを得えじ。 いはんや王おう勅ちょくせず、 いかんぞ罪つみを得えん。

大王、心ニ念オモヒ口ニ説キテ身ニ不レ↠作ナサ者バ、所ノ↠得ル報、軽ナリ。大王、昔日 ムカシ 口ニ不ズ↠勅セ↠殺ヨト、但言ヘリキ↠削ケヅレト↠足ヲ。大王、若シ勅セマシカバ↢侍臣ニ↡、立タチドコロニ斬キラマシ↢王ノ首ヲ↡。坐ノ時ニ乃スナワチ斬キルトモ猶ナホ不ジ↠得↠罪ヲ。況ヤ王不ズ↠勅セ、云何ゾ得ム↠罪ヲ。

^王おうもし罪つみを得えば、 諸仏しょぶつ世せ尊そんもまた罪つみを得えたまふべし。 なにをもつてのゆゑに。 なんぢが父ちち、 先王せんおう頻びん婆ば沙しゃ羅ら、 つねに諸仏しょぶつにおいてもろもろの善根ぜんごんを種うゑたりき。 このゆゑに今日こんにち王おう位いに居こすることを得えたり。 諸仏しょぶつもしその供く養ようを受うけたまはざらましかば、 すなはち王おうたらざらまし。 もし王おうたらざらましかば、 なんぢすなはち国くにのために害がいを生しょうずることを得えざらまし。 もしなんぢ父ちちを殺ころしてまさに罪つみあるべくは、 われら諸仏しょぶつまた罪つみましますべし。 もし諸仏しょぶつ世せ尊そん、 罪つみを得えたまふことなくは、 なんぢ独ひとりいかんぞ罪つみを得えんや。

王若シ得エバ↠罪ヲ、諸仏世尊モ亦応シ↠得エタマフ↠罪ヲ。何ヲ以テノ故ニ。汝ガ父先王頻婆沙羅、常ニ於テ↢諸仏ニ↡種ヘタリキ↢諸ノ善根ヲ↡。是ノ故ニ今日 ケフ 得タリ↠居スルコトヲ↢王位ニ↡。諸仏若シ不ザラマシカバ↠受ケタマハ↢其ノ供養ヲ↡、則チ不ラマシ↠為タラ↠王。若シ不ザラマシカバ↠為タラ↠王、汝則チ不ラマシト↠得エ↢為ニ↠国ノ生ズルコトヲ↟害ヲ。若シ汝殺シテ↠父ヲ当ニク↠有ル↠罪者ハ、我等諸仏亦応シ↠有マシマス↠罪。若シ諸仏世尊无ク↠得タマフコト↠罪ヲ者ハ、汝独リ云何ゾ而得ム↠罪ヲ邪ヤ。

・治心 ・説法治心 2.父王以類

 ^大王だいおう、 頻びん婆ば沙しゃ羅ら往むかし悪心あくしんありて、 *毘富羅びふら山せんにして遊ゆ行ぎょうし、 鹿ししを射しゃ猟りょうして曠こう野やに周しゅう遍へんしき。 ことごとく得うるところなし。 ただひとりの*仙せんの五ご通つう具ぐ足そくせるを見みる。 見みをはりてすなはち瞋しん恚に悪心あくしんを生しょうじき。 «われいま遊ゆ猟りょうす。 *得えざるゆゑんは、 まさしくこの人ひとの駆く逐ちくして去さらしむるに坐よる» と。 すなはち左右さうに勅ちょくしてこれを殺ころさしむ。

大王、頻婆沙0116羅往ムカシ有リテ↢悪心↡、於シテ↢毘富羅山ニ↡遊行シ、射↢猟レウシテ*鹿ヲ↡周↢徧シキ曠野ニ↡。悉ク无シ↠所 コロ↠得ル。唯見ル↢一ノ仙ノ五通具足セルヲ↡。見已リテ即チ生ジキ↢瞋恚悪心ヲ↡。我今遊猟レウス。所以コノユヘニ不ズ↠得エ↢正シク坐ヲ↡、此ノ人駆カリテ*逐ニ令シム↠去ラ。即チ勅シ↢左右ニ↡而テ令シム↠殺セ↠之ヲ。

^その人ひと終おわりに臨のぞんで瞋しんを生しょうず。 悪心あくしんあつて神通じんずうを退失たいしつして誓言せいごんをなさく、 «われ実じつに辜つみなし。 なんぢ心しん口くをもつて横よこさまに*戮害ろくがいを加かす。 われ来らい世せにおいて、 またまさにかくのごとく還かえつて心しん口くをもつてして、 なんぢを害がいすべ0283し» と。 時ときに王おう、 聞ききをはりて、 すなはち悔け心しんを生しょうじて死屍ししを供く養ようしき。

其ノ人臨テ↠終ニ※生ズ↢瞋イカテ悪心ヲ↡。退↢失シチシ神通ヲ↡而テ作サク↢誓言ヲ↡、我実ニ无シ↠辜ツミ。汝以テ↢心口ヲ↡横ニ加ス↢戮ロク害ヲ↡。我於テ↢来世ニ↡、亦当ニシト↧如ク↠是クノ還テ以テ↢心口ヲ↡而シテ害ス↞於ヲ↠汝。時ニ王聞キキ已リテ、即チ生ジテ↢悔心ヲ↡供↢養シキ死屍ヲ↡。

^先王せんおうかくのごとくなほ軽かるく受うくることを得えて、 地じ獄ごくに堕おちず。 いはんや王おうしからずして、 まさに地じ獄ごくの果か報ほうを受うくべけんや。 先王せんおうみづから作つくりて、 還かえつてみづからこれを受うく。 いかんぞ王おうをして殺罪せつざいを得えしめん。 王おうのいふところのごとし。 父ちちの王おう辜つみなくは、 *大王だいおういかんぞ、 失とがなきに罪つみありといはば、 すなはち罪報ざいほうあらん。 悪業あくごうなくはすなはち罪報ざいほうなけん。 なんぢが父ちち先王せんおう、 もし辜こ罪ざいなくは、 いかんぞ報ほうあらん。

先王如ク↠是クノ尚ナホ得テ↢軽ク受クルコトヲ↡、不ズ↠堕チ↢地獄ニ↡。況ヤ王不ズ↠爾シカラ而シテ当ニケム↣地獄ノ受ク↢果報ヲ↡邪ヤ。先王自ミヅカラ作リテ還テ自ミヅカラ受ク↠之ヲ。云何 イカン ゾ令メム↣王ヲ而シテ得エ↢殺罪ヲ↡。如シ↢王ノ所ノ↟言フ。父ノ王无ク↠辜ツミ者ハ、大王云何 イカン ゾ言イハ↢无キニ↠失トガ有リト↟罪者バ、則チ有ラム↢罪報↡。无ク↢悪業↡者ハ則チ无ケム↢罪報↡。汝ガ父先王、若シ無クハ↢辜 ミ罪↡、云何ゾ有ラム↠報。

^頻びん婆ば沙しゃ羅ら、 現げん世ぜのなかにおいて、 また善ぜん果かおよび悪あく果かを得えたり。 このゆゑに先王せんおうまたまた不ふ定じょうなり。 不ふ定じょうなるをもつてのゆゑに殺せつもまた不ふ定じょうなり。 殺せつ不ふ定じょうならば、 いかんしてかさだめて地じ獄ごくに入いらんといはん。

頻婆沙羅於テ↢現世ノ中ニ↡、亦得タリ↢善果及以 オヨビ 悪果ヲ↡。是ノ故ニ先王亦復不定ナリ。以テノ↢不定ヲ↡故ニ殺モ亦不定ナリ。殺不定ハ、云何 イカン 而シテカ言ハムト↣定メテ入ラムト↢地獄ニ↡。

・治心 ・説法治心 3.造罪心地

 ^大王だいおう、 衆しゅ生じょうの狂きょう惑わくにおほよそ四し種しゅあり。 一ひとつには貪とん狂きょう、 二ふたつには薬やく狂きょう、 三みつには呪しゅ狂きょう、 四よつには*本業ほんごう縁えん狂きょうなり。 大王だいおう、 わが弟子でしのなかに、 この四し狂きょうあり。 多おおく悪あくを作つくるといへども、 われつひにこの人ひと、 戒かいを犯ぼんせりと記きせず。 この人ひとの所しょ作さ三悪さんまくに至いたらず。 もし還かえつて心しんを得えば、 また犯ぼんといはず。

大王、衆生ノ狂惑ニ凡ソ有リ↢四種↡。一ニ者ハ貪狂、二ニ者ハ薬狂、三ニ者ハ呪狂、四ニ者ハ本業縁狂ナリ。大王、我ガ弟子ノ中ニ有リ↢是ノ四狂↡。雖モ↢多ク作ルト↟悪ヲ、我終ニ不ズ↠記セ↢是ノ人犯セリト↟戒ヲ。是ノ人ノ所作不ズ↠至ラ↢三悪ニ↡。若シ還テ得エバ↠心ヲ、亦不ズ↠言ハ↠犯ト。

^王おうもと国くにを貪とんじてこの父ちちの王おうを逆ぎゃく害がいす。 貪とん狂きょうの心こころをもつてためになせり。 いかんぞ罪つみを得えん。 大王だいおう、 人ひとの*耽酔たんすいしてその母ははを逆ぎゃく害がいせん、 すでに*醒しょう悟ごしをはりて心こころに悔け恨こん0284を生しょうぜんがごとし。 まさに知しるべし、 この業ごうまた報ほうを得えじ。 王おういま貪酔とんすいせり。 本心ほんしんのなせるにあらず。 もし本心ほんしんにあらずは、 いかんぞ罪つみを得えんや。

王本 ト貪ジテ↠国ヲ此レ逆↢害ス父ノ王ヲ↡。貪狂ノ心ヲモテ与タメニ作ナセリ。云何ゾ得ム↠罪ヲ。大王、如シ↧人ノ耽タン酔スイシテ逆↢害セム其ノ母ヲ↡、既ニ醒シヤウ悟シ已リテ心ニ生ゼムガ↦悔恨ヲ↥。当ニシ↠知ル是0117ノ業亦不ジ↠得エ↠報ヲ。*王今貪酔セリ。非ズ↢本心ノ作セルニ↡。若シ非ズハ↢本心ニ↡、云何ゾ得ムヤ↠罪ヲ。

・治心 ・説法治心 4.以譬示殺

 ^大王だいおう、 たとへば*幻げん師しの*四衢しく道どうの頭ほとりにして、 種々しゅじゅの男女なんにょ・象ぞう・馬め・瓔珞ようらく・衣え服ぶくを幻げん作さするがごとし。 愚痴ぐちの人ひとは謂おもうて真実しんじつとす。 有智うちの人ひとは真しんにあらずと知しれり。 殺せつもまたかくのごとし。 凡ぼん夫ぶは実じつと謂おもへり、 諸仏しょぶつ世せ尊そんはそれ真しんにあらずと知しろしめせり。

大王、譬ヘバ如シ↧幻師ノ於シテ↢四衢道ノ頭ホトリニ↡、*幻↦作スルガ種種ノ男女・象・馬・瓔珞・衣服ヲ↥。愚痴之人ハ謂オモフテ為ス↢真実ト↡、有智之人ハ知レリ↠非ズト↠真ニ。*殺モ亦如シ↠是クノ。凡夫ハ謂ヘリ↠実ト、諸仏世尊ハ知シロシメセリ↢*其 レ非ズト↟真ニ。

^大王だいおう、 たとへば*山谷せんこくの響ひびきの声こえのごとし。 愚痴ぐちの人ひとはこれを実じつの声こえと謂おもへり、 有智うちのひとはそれ真しんにあらずと知しれり。 殺せつもまたかくのごとし。 凡ぼん夫ぶは実じつと謂おもへり、 諸仏しょぶつ世せ尊そんはそれ真しんにあらずと知しろしめせり。

大王、譬ヘバ如シ↢山谷ノ響ヒヾキノ声ノ↡。愚痴之人ハ謂ヘリ↢之ヲ実ノ声ト↡、有智之人ハ知レリ↢其 レ非ズト↟真ニ。殺モ亦如シ↠是クノ。凡夫ハ謂ヘリ↠実ト、諸仏世尊ハ知 シメセリ↢其 レ非ズト↟真ニ。

^大王だいおう、 人ひとの怨あだあるが、 詐いつわり来きたりて親しん付ぷするがごとし。 愚痴ぐちの人ひとは謂おもうてまことに親したしむとす、 智ち者しゃは*了りょう達だつしてすなはちそれ虚むなしく詐いつわれりと知しらん。 殺せつもまたかくのごとし。 凡ぼん夫ぶは実じつと謂おもふ、 諸仏しょぶつ世せ尊そんはそれ真しんにあらずと知しろしめせり。

大王、如シ↢人ノ有アルガ↠怨アダ詐イツワリ来キタリテ親附スルガ↡。愚痴之人ハ謂オモフテ為ス↢*実 トニ親シムト↡、智者ハ了達シテ乃チ知ル↢其 レ虚シク詐イツワレリト↡。殺モ亦如シ↠是クノ。凡夫ハ謂オモフ↠実ト、諸仏世尊ハ知 メセリ↢其 レ非ズト↟真ニ。

^大王だいおう、 人ひと鏡かがみを執とりてみづから面像めんぞうを見みるがごとし。 愚痴ぐちの人ひとは謂おもうて真しんの面おもてとす、 智ち者しゃは了りょう達だつしてそれ真しんにあらずと知しれり。 殺せつもまたかくのごとし。 凡ぼん夫ぶは実じつと謂おもふ、 諸仏しょぶつ世せ尊そんはそれ真しんにあらずと知しろしめせり。

大王、如シ↣人執リテ↠鏡ヲ自ミヅカラ見ルガ↢面像ヲ↡。愚痴之人ハ謂フテ為ス↢真ノ面ト↡、智者ハ了達シテ知レリ↢其 レ非ズト↟真ニ。殺モ亦如シ↠是クノ。凡夫ハ謂オモフ↠実ト、諸仏世尊ハ知 メセリ↢其 レ非ズト↟真ニ。

^大王だいおう、 *熱ねつの時ときの炎ほのおのごとし。 愚痴ぐちの人ひとはこれはこれ水みずと謂おもはん、 智ち者しゃは了りょう達だつしてそれ水みずにあらずと知しら0285ん。 殺せつもまたかくのごとし。 凡ぼん夫ぶは実じつと謂おもはん、 諸仏しょぶつ世せ尊そんはそれ真しんにあらずと知しろしめせり。

大王、如シ↢熱ノ時ノ炎ノ↡。愚痴之人ハ謂ハム↢之ハ是 レ水ト↡、智者ハ了達シテ知ラム↢其 レ非ズト↟水ニ。殺モ亦如シ↠是クノ。凡夫ハ謂ハム↠実ト、諸仏世尊ハ知 メセリ↢其 レ非ズト↟真ニ。

^大王だいおう、 *乾闥けんだつ婆ば城じょうのごとし。 愚痴ぐちの人ひとは謂おもうて真実しんじつとす、 智ち者しゃは了りょう達だつしてそれ真しんにあらずと知しれり。 殺せつもまたかくのごとし。 凡ぼん夫ぶは実じつと謂おもへり、 諸仏しょぶつ世せ尊そんはそれ真しんにあらずと了りょう知ちしたまへり。

大王、如シ↢乾闥婆城ノ↡。愚痴之人ハ謂オモフテ為ス↢真実ト↡、智者ハ了達シテ知レリ↢其 レ非ズト↟真ニ。殺モ亦如シ↠是クノ。凡夫ハ*謂ヘリ↠実ト、諸仏世尊ハ了↢知メタマヘリ其 レ非ズト↟真ニ。

^大王だいおう、 人ひとの夢ゆめのうちに五ご欲よくの楽らくを受うくるがごとし。 愚痴ぐちの人ひとはこれを謂おもうて実じつとす、 智ち者しゃは了りょう達だつしてそれ真しんにあらずと知しれり。 殺せつもまたかくのごとし。 凡ぼん夫ぶは実じつと謂おもへり、 諸仏しょぶつ世せ尊そんはそれ真しんにあらずと知しろしめせり。

大王、如シ↣人ノ夢ノ中ニ受クルガ↢五欲ノ楽ヲ↡。愚痴之人ハ謂フテ↠之ヲ為ス↠実ト、智者ハ了達シテ知レリ↢其 レ非ズト↟真ニ。殺モ亦如シ↠是クノ。凡夫ハ謂ヘリ↠実ト、諸仏世尊ハ知 メセリ↢其 レ非ズト↟真ニ。

^大王だいおう、 *殺法せっぽう・殺業せつごう・殺者せっしゃ・殺せっ果かおよび解げ脱だつ、 われみなこれを了さとれり、 すなはち罪つみあることなけん。 王おう、 殺せつを知しるといへども、 いかんぞ罪つみあらんや。 大王だいおう、 たとへば人主にんしゅありて酒さけを典つかさどれりと知しれども、 もしそれ飲のまざれば、 すなはちまた酔よはざるがごとし。 ^また火ひと知しるといへども焼しょう燃ねんせず。 王おうもまたかくのごとし。 また殺せつを知しるといへども、 いかんぞ罪つみあらんや。

大王、殺法・殺業・殺*者・殺果及以 オヨビ 解脱、我皆了サトレリ↠之ヲ、則チ无ケム↠有ルコト↠罪。王雖モ↠知ルト↠殺ヲ、云何 イカン ゾ有ラムヤ↠罪0118。大王、譬ヘバ如シ↧有リテ↢人主↡知レドモ↠典ツカサドレリト↠酒ヲ、如モシ其 レ不レバ↠飲マ則チ亦不ルガ↞酔ヱハ。雖モ↢復知ルト↟火ト不ズ↢焼燃セ↡。王モ亦如シ↠是クノ。雖モ↢復知ルト↟殺ヲ、云何 イカン ゾ有ラムヤ↠罪。

^大王だいおう、 もろもろの衆しゅ生じょうありて、 日ひの出いづるときにおいて種々しゅじゅの罪つみを作つくる、 月つきの出いづるときにおいてまた劫盗こうとうを行ぎょうぜん。 日月にちがつ出いでざるにすなはち罪つみを作つくらず。 日月にちがつによりて、 それ罪つみを作つくらしむといへども、 しかるにこの日月にちがつ実じつに罪つみを得えず。 殺せつもまたかくのごとし。 乃至

大王、有リテ↢諸ノ衆生↡、於テ↢日ノ出ヅル時ニ↡作ル↢種種ノ罪ヲ↡、於テ↢月ノ出ヅル時ニ↡復行ゼム↢劫盗ヲ↡。日月不ルニ↠出デ則チ不ズ↠作ラ↠罪ヲ。雖モ↧因リテ↢日月ニ↡令ムト↦其 ソ作ラ↞罪ヲ、然ルニ此ノ日月実ニ不ズ↠得エ↠罪ヲ。殺モ亦如シ↠是クノ。 乃至

・治心 ・説法治心 5.以涅槃譬

 ^0286大王だいおう、 たとへば涅ね槃はんは有うにあらず無むにあらずして、 またこれ有うなるがごとし。 殺せつもまたかくのごとし。 非有ひう・非無ひむにしてまたこれ有うなりといへども、 慚ざん愧ぎの人ひとはすなはち有うにあらずとす。 無む慚ざん愧ぎのものはすなはち無むにあらずとす。 果か報ほうを受うくるもの、 これを名なづけて有うとす。

大王、譬ヘバ如シ↢涅槃ハ非↠有非↠無ニ而シテ亦是有ナルガ↡。殺モ亦如シ↠是クノ。雖モ↢非有非无ニ而シテ亦是有ナリト↡、慚愧之人ハ則チ為ス↢非↠有ト↡。无慚愧ノ者 ノハ則チ為ス↢非↠无ト↡。受クル↢果報ヲ↡者 ノ、名ケテ↠之ヲ為ス↠有ト。

^*空見くうけんの人ひとはすなはち有うにあらずとす。 *有う見けんの人ひとはすなはち無むにあらずとす。 *有有うう見けんのものはまた名なづけて有うとす。 なにをもつてのゆゑに、 有有うう見けんのものは果か報ほうを得うるがゆゑに。 *無有むう見けんのものはすなはち果か報ほうなし。

空見之人ハ則チ為ス↢非↠有ト↡。有見之人ハ則チ※為ス↢非↠无有ト↡。有見ノ者 ノハ亦名ケテ為ス↠有ト。何ヲ以テノ故ニ。有有見ノ者 ノハ得ルガ↢果報ヲ↡故ニ。无有見ノ者 ノハ則チ无シ↢果報↡。

^*常じょう見けんの人ひとはすなはち非有ひうとす。 *無む常じょう見けんのものはすなはち非無ひむとす。 *常常じょうじょう見けんのものは無むとすることを得えず。 なにをもつてのゆゑに、 常常じょうじょう見けんのものは悪業あくごうの果かあるがゆゑに、 このゆゑに常常じょうじょう見けんのものは無むとすることを得えず。

常見之人ハ則チ為ス↢非有ト↡。无常見ノ者 ノハ則チ為ス↢非无ト↡。常常見ノ者 ノハ不ズ↠得エ↠為スルコトヲ↠无ト。何ヲ以テノ故ニ。常常見ノ者 ノハ有ルガ↢悪業ノ果↡故ニ、是ノ故ニ常常見ノ者 ノハ不ズ↠得エ↠為スルコトヲ↠无ト。

^この義ぎをもつてのゆゑに、 非有ひう・非無ひむなりといへども、 しかもまたこれ有うなり。

以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ雖モ↢非有非无ニ而シテ亦是有ナリト↡、

・治心 ・随俗説殺

^大王だいおう、 それ衆しゅ生じょうは出入しゅつにゅうの息いきに名なづく。 出入しゅつにゅうの息いきを断たつ、 ゆゑに名なづけて殺せつとす。 諸仏しょぶつ、 俗ぞくに随したがひて、 また説ときて殺せつとすº。 乃至

*大王、夫 レ衆生者ハ名ク↢出入ノ息ニ↡。断タツ↢出入ノ息ヲ↡、故ニ名ケテ為ス↠殺ト。諸仏随ヒテ↠俗ニ、亦説キテ為ス↠殺ト。 乃至

二 Ⅰ ⅰ b ハ 所化の得益を明かす
          (一)闍王の領解を明かす

・領解発心

 ^ª世せ尊そん、 われ世せ間けんを見みるに、 *伊い蘭らん子しより伊い蘭らん樹じゅを生しょうず、 伊い蘭らんより栴檀せんだん樹じゅを生しょうずるをば見みず。 われいまはじめて伊い蘭らん子しより栴檀せんだん樹じゅを生しょうずるを見みる。 伊い蘭らん子しはわが身みこれなり。 栴檀せんだん樹じゅはすなはちこれわが心こころ、 ▽*無む根こんの信しんなり。 無む根こんとは、 われ0287はじめて如来にょらいを恭く敬ぎょうせんことを知しらず、 法ほう・僧そうを信しんぜず、 これを無む根こんと名なづく。

世尊、我見ルニ↢世間ヲ↡、従ヨリ↢伊蘭子↡生ズ↢伊蘭樹ヲ↡、不ズ↠見ミ↧伊蘭ヨリ生ズルヲ↢栴檀樹ヲ↡*者バ↥。我今始テ見ル↧従リ↢伊蘭子↡生ズルヲ↦栴檀樹ヲ↥。伊蘭子者ハ我ガ身是也。栴檀樹者ハ即チ是我ガ心、无根ノ信也。无根ト者ハ、我初テ不ズ↠知ラ↣恭↢敬セムコトヲ如来ヲ↡、不ズ↠信ゼ↢法・僧ヲ↡、是ヲ名ク↢无根ト↡。

^世せ尊そん、 われもし如来にょらい世せ尊そんに遇もうあはずは、 まさに無む量りょう阿あ僧そう祇ぎ劫こうにおいて、 大だい地じ獄ごくにありて無む量りょうの苦くを受うくべし。 われいま仏ぶつを見みたてまつる。 ここをもつて仏ぶつの得えたまふところの功く徳どくを見みたてまつり、 衆しゅ生じょうの煩悩ぼんのう悪心あくしんを破壊はえせしむº と。

世尊、我若シ不ズハ↠遇マウアハ↢如0119来世尊ニ↡、当ニシ↧於テ↢无量阿僧祇劫ニ↡、在リテ↢大地獄ニ↡受ク↦无量ノ苦ヲ↥。我今見タテマツル↠仏ヲ。※以テ↢是レ見↟仏所ノ↠得ル功徳、破↢壊セシムト衆生ノ煩悩悪心ヲ↡。

^仏ぶつののたまはく、 ª大王だいおう、 善よいかな善よいかな、 われいまなんぢかならずよく衆しゅ生じょうの悪心あくしんを破壊はえすることを知しれりº と。

▼仏ノ言ハク、大王、善イ哉善イ哉、我今知レリト↣汝必ズ能ク破↢壊スルコトヲ衆生ノ悪心ヲ↡。

^ª世せ尊そん、 もしわれあきらかによく衆しゅ生じょうのもろもろの悪心あくしんを破壊はえせば、 われつねに阿鼻あび地じ獄ごくにありて、 無む量りょう劫こうのうちにもろもろの衆しゅ生じょうのために苦く悩のうを受うけしむとも、 もつて苦くとせずº と。

◆世尊、若シ我 レ審アキラカニ能ク破↢壊セ衆生ノ諸ノ悪心ヲ↡者バ、使シムトモ↧我 レ常ニ在リテ↢阿鼻地獄ニ↡、无量劫ノ中ニ為ニ↢諸ノ衆生ノ↡受ケ↦苦悩ヲ↥、不ズト↢以テ為セ↟苦ト。

・所得利益 1.重罪微薄

^その時ときに、 *摩伽陀まかだ国こくの無む量りょうの人民にんみん、 ことごとく阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんを発おこしき。 かくのごときらの無む量りょうの人民にんみん、 大心だいしんを発ほっするをもつてのゆゑに、 阿あ闍じゃ世せ王おう所しょ有うの重じゅう罪ざいすなはち微み薄はくなることを得えしむ。 王おうおよび夫ぶ人にん、 *後こう宮きゅう采女さいにょことごとくみな同おなじく阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんを発おこしき。

◆爾ノ時ニ摩伽陀国ノ无量ノ人民、悉ク発シキ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡。以テノ↣如キ↠是クノ等ノ无量ノ人民、発スルヲ↢大心ヲ↡故ニ阿闍世王所有ノ重罪即チ得エシム↢微薄ナルコトヲ↡。王及ビ夫人、後コウ宮キウ采サイ女悉ク皆同ジク発シキ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡。

・所得利益 2.得常住身

^▼その時ときに、 阿あ闍じゃ世せ王おう、 耆婆ぎばに語かたりていはまく、 ª耆婆ぎば、 われいまいまだ死しせずしてすでに*天身てんしんを得えたり。 命いのち短みじかきを捨すてて長命じょうみょうを得え、 無む常じょうの身しんを捨すてて常じょう身しんを得えたり。 もろもろの衆しゅ生じょうをして阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんを発ほっせしむº と。 乃至

◆爾ノ時ニ阿闍世王、語リテ↢耆婆ニ↡言イハマク、耆婆、我 レ今 マ未ザ ダルニ↠死セ已ニ得タリ↢天身ヲ↡。捨ステ↠於ヲ↢短↠命↡而テ得エ↢長命ヲ↡、捨ステ↢无常ノ身ヲ↡而テ得タリ↢常身ヲ↡。令シム↣諸ノ衆生ヲシテ発セ↢阿耨多羅三藐三菩提心ヲ↡。 乃至

・所得利益 3.諸仏弟子

^*諸仏しょぶつの弟子でし、 この語ことばを説ときを0288はりて、 すなはち種々しゅじゅの*宝幢ほうどうをもつて、 乃至 また*偈げ頌じゅをもつて、 しかうして讃嘆さんだんしてまうさく、

◆諸仏ノ弟子、説キ↢是ノ語ヲ↡已リテ、即チ以テ↢種種ノ宝幢ヲ↡、 乃至 復以テ↢偈*頌ヲ↡而シテ讃嘆シテ言マフサク、

・讃嘆

^ª*実じつ語ごはなはだ微み妙みょうなり。 *善ぜん巧ぎょう、 句義くぎにおいて、 *甚深じんじん秘ひ密みつの蔵ぞうなり。 衆しゅうのためのゆゑに、

実語甚ダ微妙ナリ善巧於テ↢句義ニ↡
甚深秘密ノ蔵ナリ為ノ↠衆ノ故ニ顕↢示ス

^*所しょ有う広博こうはくの言ごんを顕けん示じす。 衆しゅうのためのゆゑに略りゃくして説とかく、 かくのごときの語ごを具ぐ足そくして、 よく衆しゅ生じょうを療りょうす。

所有広博ノ言ヲ↡為タメノ↠衆ノ故ニ略シテ説トカク
具↢足シテ如キノ↠是クノ語ヲ↡善能ク療ス↢衆生ヲ↡

^もしもろもろの衆しゅ生じょうありて、 この語ごを聞きくことを得うるものは、 もしは信しんおよび不ふ信しん、 さだめてこの仏説ぶっせつを知しらん。

若シ有リテ↢諸ノ衆生↡得ル↠聞クコトヲ↢是ノ語ヲ↡者 ノハ
若シハ信及ビ不信定メテ知ラム↢是ノ仏説ヲ↡

^諸仏しょぶつつねに*軟なん語ごをもつて、 衆しゅうのためのゆゑに*粗そを説ときたまふ。 粗語そごおよび軟なん語ご、 みな第一だいいち義ぎに帰きせん。

▼諸仏常ニ軟ナン語ヲモテ為タメノ↠衆ノ故ニ説キタマフ↠麁ヲ
麁語及ビ軟ナン語ゴ皆 ナ帰セム↢第一義ニ↡

^このゆゑにわれいま、 世せ尊そんに帰依きえしたてまつる。 如来にょらいの語みことは一いち味みなること、 なほ大海だいかいの水みずのごとし。

0120◆是ノ故ニ我 レ今者 イマ 帰↣依シタテマツル於ニ↢世尊↡
如来ノ語ミコトハ一味ナルコト猶ナホ如シ↢大海ノ水ノ↡

^これを*第一だいいち諦たいと名なづく。 ゆゑに*無む無義むぎの語みことにして、 如来にょらいいま説ときたまふところの、 種々しゅじゅ無む量りょうの法ほう、

◆是ヲ名ク↢第一諦ト↡故ニ无无義ノ語ミコトニシテ
如来今所ノ↠説キタマフ種種无量ノ法

^男女なんにょ大だい小しょう聞ききて、 同おなじく第一だいいち義ぎを獲えしめん。 *無む因いんまた無果むかなり。 *無む生しょうまた無む滅めつなり。

◆男女大小聞キキテ同ジク獲エシメム↢第一義ヲ↡
无因亦无果ナリ无生*亦无滅ナリ

^これを大だい涅ね槃はんと名なづく。 聞きくもの*諸しょ結けつを破はす。 如来にょらい一切いっさいのために、 つねに慈じ父母ぶもとなりたまへり。

◆是ヲ名ク↢大涅槃ト↡聞ク者 ノ破ス↢諸*結ヲ↡
▼如来為ニ↢一切ノ↡常ニ作リタマヘリ↢慈父母ト↡

^まさに知しるべし、 もろもろの衆しゅ生じょうは、 みなこれ如来にょらいの子こなり。 世せ尊そん大だい慈悲じひは、 衆しゅうのために苦く行ぎょうを修しゅしたまふこと、

◆当ニシ↠知ル諸ノ衆生ハ皆是 レ如来ノ子ナリ
世尊大慈悲ハ為ニ↠衆ノ*修シタマフコト↢苦行ヲ↡

^人ひとの*鬼魅きみに着くるはされて、 狂きょう乱らんして所しょ為い多おおきがごとし。 われいま仏ぶつを見みたてまつることを得えたり。 得うるところの三業さんごうの善ぜん、

◆如シ↧人ノ著クルワサレテ↢鬼魅ニ↡狂乱シテ多キガ↦所為↥
我今得タリ↠見タテマツルコトヲ↠仏ヲ所ノ↠得ル三業ノ善

^願ねがはくはこの功く徳どくをもつて、 無む上じょう道どう0289に回え向こうせん。 われいま供く養ようするところの、 仏ぶつ・法ほうおよび衆僧しゅそう、

◆願クハ以テ↢此ノ功徳ヲ↡廻↢向セム无上道ニ↡
我今所ノ↢供養スル↡仏・法及ビ衆僧

^願ねがはくはこの功く徳どくをもつて、 三宝さんぼうつねに世よにましまさん。 われいままさに獲うべきところの、 種々しゅじゅのもろもろの功く徳どく、

◆願クハ以テ↢此ノ功徳ヲ↡三宝常ニ在マシマサム↠世ニ
我 レ今 マ所ノ↠当ベ ニキ↠獲ウ種種ノ諸ノ功徳

^願ねがはくはこれをもつて、 衆しゅ生じょうの四し種しゅの魔まを破壊はえせん。 われ悪あく知ち識しきに遇おうて、 三さん世ぜの罪つみを造ぞう作させり。

◆願クハ以テ↠此ヲ破↢壊セム衆生ノ四種ノ魔ヲ↡
我遇フテ↢悪知識ニ↡造↢作セリ三世ノ罪ヲ↡

^いま仏前ぶつぜんにして悔くゆ。 願ねがはくは後のちにまた造つくることなからん。 願ねがはくはもろもろの衆しゅ生じょう、 等ひとしくことごとく菩ぼ提だい心しんを発ほっせしめん。

今於シテ↢仏前ニ↡悔クユ願クハ後ノチニ更 タ莫カラム↠造ルコト
願クハ諸ノ衆生等ヒトシク悉ク発セシメム↢菩提心ヲ↡

^心こころを繋かけてつねに、 十方じっぽう一切いっさい仏ぶつを思し念ねんせん。 また願ねがはくはもろもろの衆しゅ生じょう、 永ながくもろもろの煩悩ぼんのうを破はし、

繋ケテ↠心ヲ常ニ思↢念セム十方一切仏ヲ↡
復願クハ諸ノ衆生永ク破シ↢諸ノ煩悩ヲ↡

^了々りょうりょうに仏ぶっ性しょうを見みること、 なほ*妙みょう徳とくのごとくして等ひとしからんº と。

了了ニ見ルコト↢仏性ヲ↡猶↢如 ゴト クシテ*妙徳ノ↡等ヒトシカラムト

二 Ⅰ ⅰ b ハ (二)釈迦の述成を明かす

 ^その時ときに、 世せ尊そん、 阿あ闍じゃ世せ王おうを讃ほめたまはく、 ª善よいかな善よいかな、 もし人ひとありてよく菩ぼ提だい心しんを発ほっせん。 まさに知しるべし、 この人ひとはすなはち諸仏しょぶつ大衆だいしゅを荘しょう厳ごんすとす。

▼爾ノ時ニ世尊、讃メタマハク↢阿闍世王ヲ↡、善ヨイ哉カナ善イ哉カナ、若シ有リテ↠人能ク発セム↢菩提心ヲ↡。当ニシ↠知ル是ノ人ハ則チ為ス↣荘↢厳スト諸仏大衆ヲ↡。

^大王だいおう、 なんぢ昔むかしすでに*毘婆尸びばし仏ぶつのみもとにして、 はじめて阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だい心しんを発おこしき。 これよりこのかた、 わが出しゅっ世せに至いたるまで、 その中ちゅう間げんにおいていまだかつてまた地じ獄ごくに堕だして苦くを受うけず。

◆大王、汝 ヂ昔ムカシ已ニ於シテ↢毘婆尸仏ノミモトニ↡、初テ発シキ↢阿耨多羅三藐0121三菩提心ヲ↡。従リ↠是已来 コノカ タ至ルマデ↢我ガ出世ニ↡、於テ↢其ノ中間ニ↡未ズ ダ↧曽テ復マタ堕シテ↠於ニ↢地獄↡受ケ↞苦ヲ。

^大王だいおうまさに知しるべし、 菩ぼ提だいの心しん、 いましかくのごとき無む量りょうの果か報ほうあり。 大王だいおう今きょうより以い往おうに、 つねにまさにねんごろに菩ぼ提だいの心しんを修しゅすべし。 なにをもつてのゆゑに、 この因縁いんねんに従したがつて0290まさに無む量りょうの悪あくを消しょう滅めつすることを得うべきがゆゑなりº と。

◆大王当ニシ↠知ル、菩提之心ハ、乃イマシ有リ↢如キ↠是クノ无量ノ果報↡。大王、従リ↠今ケフ已往ニ、常ニ当ニシ↣懃↢修ス菩提之心ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。従シタガテ↢是ノ因縁ニ↡当ベ ニキガ↠得ウ↣消↢滅スルコトヲ无量ノ悪ヲ↡故 ヘナリト。

二 Ⅰ ⅰ b ハ (三)益を得て宮に還る

^その時ときに、 阿あ闍じゃ世せ王おうおよび摩伽陀まかだ国こくの人民にんみん挙こぞつて座ざよりして起たちて、 仏ぶつを繞めぐること*三さん帀ぞうして、 辞じ退たいして宮みやに還かえりにき」 と。 以上抄出

爾ノ時ニ阿闍世王及ビ摩伽陀国ノ挙コゾテ↢人民↡従リ↠座而シテ起チテ、遶ルコト↠仏ヲ三帀シテ、辞退シテ還リニキト↠宮ニ。」 已上抄出

二 Ⅰ ⅰ c 重明(「迦葉品」)
        イ 興逆の因縁を顕して以て造罪の始末を詳述す

【117】^またのたまはく (涅槃経・迦葉品)、

又言ノタマハク、

^「善男ぜんなん子し、 *羅ら閲えつ祇ぎの王おう頻びん婆ば沙しゃ羅ら、 その王おうの太たい子し、 名なづけて善見ぜんけん (阿闍世) といふ。 *業ごう因縁いんねんのゆゑに悪あく逆ぎゃくの心こころを生しょうじて、 その父ちちを害がいせんとするに、 しかるに便たよりを得えず。

「善男子、羅閲エチ祇ノ王頻婆沙羅、其ノ王ノ太子名ケテ曰フ↢善見ト↡。業因縁ノ故ニ生ジテ↢悪逆ノ心ヲ↡、欲スルニ↠害セムト↢其ノ父ヲ↡、而不ズ↠得↠便ヲ。

^▼その時ときに、 悪人あくにん提だい婆ば達だっ多た、 また過去かこの業ごう因縁いんねんによるがゆゑに、 またわが所ところにおいて不ふ善ぜんの心こころを生しょうじて、 われを害がいせんとす。 すなはち五ご通つうを修しゅして、 久ひさしからずして善見ぜんけん太たい子しとともに*親厚しんこうたることを獲ぎゃく得とくせり。

爾ノ時ニ悪人提婆達多、亦因ルガ↢過去ノ業因縁ニ↡故ニ復於テ↢我ガ所ニ↡生ジテ↢不善ノ心ヲ↡、欲ス↠害セムト↠於ヲ↠我。即チ修シテ↢五通ヲ↡、不ズシテ↠久シカラ獲↧得セリ与ト↢善見太子↡共ニ為タルコトヲ↦親*原↡。

 ^◆太たい子しのためのゆゑに、 種々しゅじゅの神通じんずうの事じを現げん作さす。 門もんにあらざるより出いでて門もんよりして入いりて、 門もんよりして出いでて門もんにあらざるよりして入いる。 ある時ときは象ぞう・馬め・牛ご・羊よう・男なん・女にょの身しんを示じ現げんす。

為ノ↢太子ノ↡故ニ現↢作ス種種ノ神通之事ヲ↡。従リ↠非ザル↠門ニ出デヽ従リ↠門而シテ入リテ、従リ↠門而シテ出デテ非ザルヨリ↠門ニ而シテ入ル。或時ハ示↢現ス象・馬・牛・羊・男子之身ヲ↡。

^◆善見ぜんけん太たい子し見みをはりて、 すなはち愛心あいしん・喜き心しん・敬きょう信しんの心こころを生しょうず。 これを本ほんとするがゆゑに、 種々しゅじゅの供く養ようの具ぐを厳設ごんせつしこれを供く養ようす。 ^またまうしてまうさく、 ª*大だい師し聖しょう人にん、 われいま*曼まん陀羅だら華けを見みんと欲おもふº と。

善見太子見已リテ、即チ生ズ↢愛心・喜心・敬信之心ヲ↡。為スルガ↢是ヲ本ト↡故ニ、厳キビシク説トキ↢種種ノ供養之具ヲ↡而テ供↢養ス之ヲ↡。又復白シテ言ク、大師聖人、我今イマ欲オモフト↠見ムト↢曼陀羅華ヲ↡。

^◆時ときに提だい婆ば達だっ多た、 すなはち往ゆきて*三さん十じゅう三さん天てんに至いたりて、 かの天人てんにんに従したがひ0291てこれを求ぐ索しゃくするに、 その福ふく尽つくるがゆゑにすべて与あたふるものなし。

時ニ提婆達多、即便チ*法トシテ至リテ↢三十三天ニ↡、従シタガフ↢彼ノ天人ニ↡而テ求↢索スルニ之ヲ↡、其ノ福尽ツクルガ故ニ都スベテ无シ↢与 タフル者↡。

^◆すでに華はなを得えず。 この思し惟ゆいをなさく、 ª曼まん陀羅だら樹じゅは*我が・我が所しょなし、 もしみづから取とらんにまさになんの罪つみかあるべきº と。 すなはち前すすんで取とらんとするに、 すなはち神通じんずうを失うしなへり。 還かえりて己こ身しんを見みれば、 王舎おうしゃ城じょうにあり。 心こころに慚ざん愧ぎを生しょうじ、 また善見ぜんけん太たい子し (阿闍世) を見みることあたはず。

既ニ不ズ↠得エ↠華ヲ。作ナサク↢是ノ思惟ヲ↡、曼陀羅樹ハ无シ↢我・我所↡、若シ自ミヅカラ取ラムニ当ベ ニキト↠有ル↢何ノ*罪カ↡。即チ前スヽムデ欲ルニ↠取ラムト、便チ失ウシナヘリ↢神通ヲ。↡還リテ見レバ↢己身ヲ↡、在リ↢王舎城ニ↡。心ニ生ズルニ↢慚愧ヲ↡、不ズ↠能ハ↢復見0122ルコト↡善見太子ヲ。

^◆またこの念ねんをなさく、 ªわれいままさに如来にょらいの所みもとに往おう至しして大衆だいしゅを求ぐ索しゃくすべし。 仏ぶつもし聴ゆるさば、 われまさに意こころに随したがひて教おしへて、 すなはち*舎しゃ利り弗ほつ等とうに*詔勅しょうちょくすべしº と。

復作ナサク↢是ノ念ヲ↡、我今当ニシト↧往↢至シテ如来ノ所 トニ↡求↦索シヤクス大衆ヲ↥。仏若シ聴ユルサ者バ、我当ニシト↣随ヒテ↠意ニ教ヘテ詔↢勅ス便チ舎利弗等ニ↡。

^◆その時ときに、 提だい婆ば達だっ多た、 すなはちわが所ところに来きたりてかくのごときの言ごんをなさく、 ªやや、 願ねがはくは如来にょらい、 この大衆だいしゅをもつてわれに*付ふ嘱ぞくせよ。 われまさに種々しゅじゅに法ほうを説ときて教きょう化けして、 それをして*調じょう伏ぶくせしむべしº と。 われ*痴ち人にんにいはく、 ª舎しゃ利り弗ほつ等とう、 *大だい智ちを聴ちょう聞もんして世よに信伏しんぶくするところなり。 われなほ大衆だいしゅをもつて付ふ嘱ぞくせじ。 いはんやなんぢ痴ち人にん、 ▲唾つばきを食くらふものをやº と。

爾ノ時ニ提婆達多、便チ来リテ↢我ガ所ニ↡作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、唯ヤヽ願クハ如来、以テ↢此ノ大衆ヲ↡付↢嘱セヨ於我ニ↡。我当ベ ニシト↣種種ニ説キテ↠法ヲ教化シテ、令ム↢其ヲシテ調トヽノウ 伏セシタガフ↡。我言ハク↢痴人ニ↡、舎利弗等、聴↢聞シテ大智ヲ↡世ニ所ナリ↢信伏スル↡。我猶ナホ不ジ↧以テ↢大衆ヲ↡付嘱セ↥。況イ ヤ汝 ヂ痴人、食フ↠唾ツバキヲ者 ノヲ乎ヤト。

^◆時ときに提だい婆ば達だっ多た、 またわが所ところにおいてますます悪心あくしんを生しょうじて、 かくのごときの言ごんをなさく、 ª瞿く曇どん、 なんぢいままた大衆だいしゅを調じょう伏ぶくすといへども、 勢いきおひまた久ひさしからじ。 まさに見みるに磨ま滅めつすべしº と。

時ニ提婆達多、復於テ↢我ガ所ニ↡倍マスマス生ジテ↢悪心ヲ↡、作サク↢如キノ↠是クノ言ヲ↡、瞿ク曇、汝今雖モ↣復調↢伏スト大衆ヲ↡、勢イキオヒ亦不ジ↠久シカラ。当ニシト↢見ルニ磨滅ス↡。

^この語ごをなしをはるに、 大だい地じ即そく時じに六反ろっぺん震動しんどうす。 提だい婆ば達だっ多た、 すなはちの時ときに地じに躄たおれて0292、 その身みの辺へんより大だい暴風ぼうふうを出いだして、 もろもろの塵じん土どを吹ふきてこれを*汚わ坌ふんす。 提だい婆ば達だっ多た、 悪相あくそうを見みをはりて、 またこの言ごんをなさく、 ªもしわれこの身み、 現げん世ぜにかならず阿鼻あび地じ獄ごくに入いらば、 *わが悪あくまさにかくのごときの大悪だいあくを報むくふべしº と。

作シ↢是ノ語ヲ↡已ルニ、大地即時ニ六反震動ス。提婆達多、尋スナワチノ時ニ躄タフレテ↠地ニ、於ヨリ↢其ノ身ノ辺↡出シテ↢大暴アラキ風ヲ↡、吹キ↢諸ノ塵土ヲ↡而テ汚ワ↢ケガス坌フンヌルス之ヲ↡。提婆達多見↢悪相ヲ↡已リテ、復作サク↢是ノ言ヲ↡、若シ我此ノ身、現世ニ必ズ入ラバ↢阿鼻地獄ニ↡、我ガ悪当ニシト↠報ムクフ↢如キノ↠是クノ大悪ヲ↡。

^時ときに提だい婆ば達だっ多た、 すなはち起たちて善見ぜんけん太たい子し (阿闍世) の所ところに往おう至しす。 善見ぜんけん見みをはりてすなはち聖しょう人にん (提婆達多) に問とはく、 ªなんがゆゑぞ顔容げんよう憔しょう悴すいして憂うれへの色いろあるやº と。

時ニ提婆達多、尋スナワチ起チテ往↢至ス善見太子ノ所ニ↡。善見見已リテ即チ問ハク↢聖人ニ↡、何ガ故ゾ顔容憔セウ悴シテ有ル↢憂ノウレヘ色↡邪ヤト。

^提だい婆ば達だっ多たいはく、 ªわれつねにかくのごとし。 なんぢ知しらずやº と。

提婆達多言ク、我常ニ如シ↠是クノ。汝不ズ↠知ラ乎ヤト。

^善見ぜんけん答こたへていはく、 ª願ねがはくはその意こころを説とくべし、 なんの因縁いんねんあつてか、 しかるº と。

善見答ヘテ言ク、領ウク↢説ス其ノ意ヲ↡、何ノ因縁アテカ爾シカルト。

^提だい婆ば達だつのいはく、 ªわれいまなんぢがために、 きはめて親愛しんあいをなす。 *外人がいじんなんぢを罵のりて、 もつて非理ひりとす。 われこの事じを聞きくに、 あに憂うれへざることを得えんやº と。

提婆*達ノ言ク、我今与タメニ↠汝ガ極テ成ナス↢親愛ヲ↡。外グワイ人ジン罵ノリテ↠汝ヲ以テ為ス↢非理トコトハリ↡。我聞クニ↢是ノ事ヲ↡、豈 ニ得ムヤト↠不ルコトヲ↠憂ウレヘ。

^善見ぜんけん太たい子しまたこの言ごんをなさく、 ª国くにの人ひといかんぞわれを罵め辱にくするº と。

善見太子復作サク↢是ノ言ヲ↡、国ノ人云何ゾ罵↢辱ニクムスルト於我ヲ↡。

^提だい婆ば達だつのいはく、 ª国くにの人ひとなんぢを罵のりて未み生しょう怨おんとすº と。

提婆達ノ言ク、国ノ人罵リテ↠汝ヲ為スト↢未生怨アダト↡。

^善見ぜんけんまたいはく、 ªなんがゆゑぞわれを名なづけて未み生しょう怨おんとする。 たれかこの名なをなすº と。

善見復言ク、何ガ故ゾ名ケテ↠我ヲ為スル↢未生怨ト↡。誰タレスイカ作スト↢此ノ名ヲ↡。

^提だい婆ば達だつのいはく、 ªなんぢいまだ生うまれざりし時とき、 一切いっさいの相そう師しみなこの言ごんをなさく、 «この児こ生うまれをはりて、 まさにその父ちちを殺ころすべし» と。 このゆゑに外がい人じんみなことごとくなんぢを号ごうして未み生しょう怨おんとす。 一切いっさい*内ないの人ひと、 なん0293ぢが心こころを護まもるがゆゑに、 いうて善見ぜんけんとす。

提婆達ノ言ク、汝未ダリシ↠生レ時、一切ノ相師0123皆作サク↢是ノ言ヲ↡、是ノ児コ生レ已リテ、当ニシト↠殺ス↢其ノ父ヲ↡。是ノ故ニ外人皆悉ク号シテ↠汝ヲ為ス↢未生怨ト↡。一切内ノ人護マモルガ↢汝ガ心ヲ↡故ニ、謂イフテ為ス↢善見ト↡。

^毘び提だい夫ぶ人にん (韋提希) この語ごを聞ききをはりて、 すでになんぢを生うまんとして、 身みを高こう楼ろうの上うえよりこれを地じに棄すてしに、 なんぢが一ひとつの指ゆびを壊やぶれり。 この因縁いんねんをもつて、 人ひとまたなんぢを号ごうして*婆羅ばら留枝るしとす。 われこれを聞ききをはりて心こころに愁しゅう憤ふんを生しょうじて、 またなんぢに向むかひてこれを説とくことあたはずº と。

毘提夫人聞キキ↢是ノ語ヲ↡已リテ、既ニ生マムトシテ↠汝ヲ身ヲ於ヨリ↢高楼ノ上 ヘ↡棄ステシニ↢之ヲ於ニ↟地、壊ヤブレリ↢汝ガ一ノ指ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡、人復号シテ↠汝ヲ為ス↢婆羅*オン枝ト↡。我聞キキ↠是ヲ已リテ心ニ生ジ↢愁憤フンヲ↡而テ復不ズト↠能ハ↢向ヒテ↠汝ニ説クコト↟之ヲ。

^提だい婆ば達だっ多た、 かくのごときらの種々しゅじゅの悪あく事じをもつて、 教おしへて父ちちを殺ころさしむ。 ªもしなんぢが父ちち死しせば、 われまたよく瞿く曇どん沙門しゃもんを殺ころさんº と。

提婆達多以テ↢如キ↠是クノ等ノ種種ノ悪事ヲ↡、教ヘテ令ム↠殺セ↠父ヲ。若シ汝ガ父死セバ、我亦能ク殺セムト↢瞿曇沙門ヲ↡。

^▼善見ぜんけん太たい子し (阿闍世)、 ひとりの大臣だいじんに問とはく、 名なづけて*雨う行ぎょうといふ。 ª大王だいおう、 なんがゆゑぞわが字あざなを立たてんとするに、 未み生しょう怨おんと作つくるやº と。

善見太子問ハク↢一ノ大臣ニ↡、名ケテ曰フ↢雨ウ行ギヤウト↡。大王、何ガ故ゾ為スルニ↢我ガ立テムト↟字ヲ、作ツクルヤト↢未生怨ト↡。

^大臣だいじんすなはちためにその本末ほんまつを説とく、 提だい婆ば達だつの所説しょせつのごとくして異いなけん。

大臣即チ為ニ説ク↢其ノ本未ヲ↡、如クシテ↢提婆達ノ所説ノ↡无ケム↠異。

^善見ぜんけん聞ききをはりて、 すなはち大臣だいじんとともにその父ちちの王おうを収とつて、 これを城しろの外ほかに閉とぢ、 *四し種しゅの兵つわものをもつて、 しかうしてこれを守しゅ衛えせしむ。 毘び提だい夫ぶ人にん (韋提希) この事じを聞ききをはりて、 すなはち王おうの所ところに至いたる。 ときに王おうを守まもりて、 人ひとをして遮さえぎりて入いることを聴ゆるさず。 その時ときに、 夫ぶ人にん、 瞋しん恚にの心こころを生しょうじてすなはちこれを*呵罵かめす。

善見聞キ已リテ、即チ与トモニ↢大臣ト↡収トテ↢其ノ父ノ王ヲ↡閉トヘイヅ↢之ヲ城ノ外ニ↡、以テ↢四種ノ兵ツワモノヲ↡而シテ守↢衛ヱマモルセシム之ヲ↡。毘提夫人聞キ↢是ノ事ヲ↡已リテ、即チ至ル↢王ノ所ニ↡。時ニ守マモリテ↠王ヲ、人ヲシテ遮シヤシテサイギル不ズ↠聴ユルサ↠入ルコトヲ。爾ノ時ニ夫人、生ジテ↢瞋恚ノ心ヲ↡便チ呵↢イマシム罵ノルス之ヲ↡。

^時ときにもろもろの守人しゅにん、 すなはち太たい子しに告つぐらく、 ª大王だいおうの夫ぶ人にん、 父ちちの王おうを見みんと欲おもふをば、 いぶかし、 聴ゆるしてんやいなやº と。

時ニ諸ノ守人、即チ告グラク↢太子ニ↡、大王ノ夫人、欲オモフヲバ↠見ムト↢父ノ王ヲ↡、不審イブカシ聴ユルシテムヤ不ヤト。

^善見ぜんけん聞ききをはりてまた*瞋しん嫌けん0294を生しょうじて、 すなはち母ははの所ところに往ゆきて、 前すすんで母ははの髪かみを牽ひきて、 刀かたなを抜ぬきて斫きらんとす。

善見聞キ已リテ復生ジテ↢瞋嫌ケンヲキラフ↡、即チ往キテ↢母ノ所ニ↡、前スヽムデ牽ヒキテ↢母ノ髪ヲ↡、抜ヌキテ↠刀ヲ欲ス↠斫キセチラムト。

^その時ときに、 耆婆ぎばまうして大王だいおうにいはく、 ª国くにを有たもつてよりこのかた、 罪つみきはめて重おもしといへども、 女人にょにんに及およばず。 いはんや所しょ生しょうの母ははをやº と。

爾ノ時ニ耆婆白シテ言ク↢大王ニ↡、有タモテヨリ↠国ヲ已来 コノカ タ罪雖モ↢極テ重シト↡、不ズ↠及バ↢女人ニ↡。況 ムヤ所生ノ母ヲヤト。

^善見ぜんけん太たい子し (阿闍世) この語ごを聞ききをはりて、 耆婆ぎばのためのゆゑにすなはち放捨ほうしゃして、 遮さえぎりて大王だいおうの衣え服ぶく・臥具がぐ・飲食おんじき・湯薬とうやくを断たつ。 七日しちにちを過すぎをはるに、 王おうの命いのちすなはち終おわりぬと。

善見太子聞キキ↢是ノ語ヲ↡已リテ、為ノ↢耆婆ノ↡故ニ即便チ放捨シテ、遮リテ断タツ↢大王ノ衣服・臥具・飲食・湯薬ヲ↡。過ギ↢七日ヲ↡已ルニ、王ノ命便チ終リヌト。

^▼善見ぜんけん太たい子し、 父ちちの喪そうを見みをはりて、 まさに悔け心しんを生しょうず。

善見太子、見↢父ノ喪サウモ ヲ↡已リテ、方ニ生ズ↢悔心ヲ↡。

^◆雨う行ぎょう大臣だいじん、 また種々しゅじゅの悪邪あくじゃの法ほうをもつて、 しかうしてためにこれを説とく。 ª大王だいおう、 一切いっさいの業ごう行ぎょうすべて罪つみあることなし。 なんがゆゑぞ、 いま悔け心しんを生しょうずるやº と。

雨行大臣、復以テ↢種種ノ悪邪之法ヲ↡、而シテ為ニ説ク↠之ヲ。大王、一切ノ業行都スベテ无0124シ↠有ルコト↠罪。何ガ故ゾ今者 イマ 而生ズルヤト↢悔心ヲ↡。

^◆耆婆ぎばまたいはく、 ª大王だいおうまさに知しるべし、 かくのごときの業ごうは罪業ざいごう二に重じゅうなり。 一ひとつには父ちちの王おうを殺ころさん、 二ふたつには*須しゅ陀だ洹おんを殺ころせり。 かくのごときの罪つみは、 仏ぶつを除のぞきてさらによく除滅じょめつしたまふひとましまさずº と。

耆婆復言ク、大王当ニシ↠知ル、如キノ↠是クノ業者罪業二重ナリ。一ニ者殺ス↢父ノ王ヲ↡、二ニ者殺セリ↢須陀洹ヲ↡。如キノ↠是クノ罪者ハ、除キテ↠仏ヲ更 ラニ无マシマサズト↢能ク除滅シタマフ者ヒト↡。

^◆善見ぜんけん王おういはく、 ª如来にょらいは清浄しょうじょうにして穢え濁じょくましますことなし。 われら罪人ざいにんいかんしてか、 見みたてまつることを得えんº と。

善見王言ク、如来ハ清浄ニシテ无シ↠有マシマスコト↢穢ケガラハシ濁↡。我等罪人云何シテカ得エムト↠見タテマツルコトヲ。

二 Ⅰ ⅰ c ロ 入不入の説意を弁じて上の不入涅槃の意を顕す

 ^◆善男ぜんなん子し、 われ*この事じを知しらんと。 阿あ難なんに告つげたまはく、 ª三み月つきを過すぎをはりて、 われまさに涅ね槃はんすべきがゆゑにº と。 善見ぜんけん聞ききをはりて、 すなはちわが所ところに0295来きたれり。 われために法ほうを説ときて、 重じゅう罪ざいをして薄うすきことを得えしめき、 △無む根こんの信しんを獲えしむ。

善男子、我 レ知ラムト↢是ノ事ヲ↡。告ゲタマハク↢阿難ニ↡、過ギ↢三月ヲ↡已リテ、吾 レ当ベ ニキガ↢涅槃ス↡故ニト。善見聞キキ已リテ、即チ来レリ↢我ガ所ニ↡。我為ニ説キテ↠法ヲ、重罪ヲシテ得エシメキ↠薄キコトヲ、*獲エシメタマヘト↢无根ノ信ヲ↡。

 ^善男ぜんなん子し、 わがもろもろの弟子でし、 この説せつを聞ききをはりて、 わが意こころを解さとらざるがゆゑに、 この言ごんをなさく、 ª如来にょらいさだめて畢ひっ竟きょう涅ね槃はんを説ときたまへりº と。

善男子、我ガ諸ノ弟子聞キキ↢是ノ説ヲ↡已リテ、不ルガ↠解ラ↢我ガ意ヲ↡故ニ作ナサク↢是ノ言ヲ↡、如来定メテ説キタマヘリト↢畢竟涅槃ヲ↡。

^善男ぜんなん子し、 菩ぼ薩さつに二に種しゅあり。 一ひとつには*実じつ義ぎ、 二ふたつには*仮け名みょうなり。 仮け名みょうの菩ぼ薩さつ、 われ三み月つきあつてまさに涅ね槃はんに入いるべしと聞ききて、 みな退心たいしんを生しょうじてこの言ごんをなさく、 ªもしそれ如来にょらい、 無む常じょうにして住じゅうしたまはずは、 われらいかがせん。 この事じのためのゆゑに、 無む量りょう世せのうちに大だい苦く悩のうを受うけき。 如来にょらい世せ尊そんは無む量りょうの功く徳どくを成じょう就じゅし具ぐ足そくしたまひて、 なほ壊えすることあたはず。 かくのごときの死魔しまをや。 いはんやわれらが輩ともがら、 まさによく壊えすべけんやº と。

善男子、菩薩ニ二種アリ。一ニ者ハ実義、二ニ者ハ仮名ナリ。仮名ノ菩薩、聞キテ↢我 レ三月アテ当ニシト↟入ル↢涅槃ニ↡、皆生ジ↢退心ヲ↡而テ作サク↢是ノ言ヲ↡、如モシ其 レ如来无常ニシテ不ズハ↠住シタマハ、我等何イカガ為セム。為ノ↢是ノ事ノ↡故ニ无量世ノ中ニ受ウケキ↢大苦悩ヲ↡。如来世尊ハ成↢就シ具↣足シタマヒテ无量ノ功徳ヲ↡、尚ナホ不ズ↠能ハ↠壊ヤブルスルコト。如キノ↠是クノ死魔ヲヤ。況イ ヤ我等ラガ輩トモガラ当ベ ニケム↢能ク壊ス↡邪ヤト。

^善男ぜんなん子し、 このゆゑに、 われかくのごときの菩ぼ薩さつのためにして、 この言ごんをなさく、 ª如来にょらいは常住じょうじゅうにして変易へんやくあることなしº と。 わがもろもろの弟子でし、 この説せつを聞ききをはりて、 わが意こころを解さとらざれば、 さだめていはく、 ª如来にょらいはつひに畢ひっ竟きょうじて涅ね槃はんに入いりたまはずº」 と。 以上抄出

善男子、是ノ故ニ我 レ為ニ↢如キノ↠是クノ菩薩ノ↡而シテ作サク↢是ノ言ヲ↡、如来ハ常住ニシテ无シト↠有ルコト↢変カハル易↡カハル。我ガ諸ノ弟子、聞キ↢是ノ説ヲ↡已リテ不レバ↠解ラ↢我ガ意ヲ↡、定メテ言ハク、如来ハ終ニ不ズト↣畢竟ジテ入リタマハ↢於涅槃ニ↡。」 已上抄出

二 Ⅰ ⅱ 結成・勧信

【118】^ここをもつていま大だい聖しょう (釈尊) の真説しんせつによるに、 ↑*難なん化げの三さん機き、 *難なん治ち0296の三さん病びょうは、 大だい悲ひの弘ぐ誓ぜいを憑たのみ、 *利他りたの信海しんかいに帰きすれば、 これを矜哀こうあいして治ちす、 これを憐憫れんびんして療りょうしたまふ。 たとへば醍だい醐ごの妙みょう薬やくの、 一切いっさいの病やまいを療りょうするがごとし。 濁じょく世せの庶類しょるい、 穢え悪あくの群ぐん生じょう、 *金剛こんごう不壊ふえの真心しんしんを求ぐ念ねんすべし。 本願ほんがん醍だい醐ごの妙みょう薬やくを執しゅう持じすべきなりと、 知しるべし。

▼是ヲ以テ今拠ヨルニ↢大聖ノ真説ニ↡、難化ノ▼三機、難治ノ▼三病者ハ、憑タノミ↢大悲ノ弘誓ヲ↡、帰スレバ↢利他ノ信海ニ↡、矜↢オホキニ哀シテアハレム斯ヲ↡治ス、憐レン↢アハレミ憫ビンシテアハレム斯ヲ↡療シタマフ。喩ヘバ如シ↣醍醐ノ妙薬ノ療スルガ↢一切ノ病ヲ↡。濁世ノ庶シヨモロモロ類、穢悪ノ群生、応シ↣求↢念ス金剛不壊ノ真心ヲ↡。可ベキ↣執トル↢持ス本願醍醐ノ妙薬ヲ↡也ト、応0125シ↠知ル。

二 Ⅱ 料簡
    ⅰ 問

【119】^それ諸しょ大だい乗じょうによるに、 難なん化げの機きを説とけり。 いま ¬大だい経きょう¼ には 「^▲唯除ゆいじょ五ご逆ぎゃく誹ひ謗ほう正しょう法ぼう」 といひ、 ^あるいは 「^▲唯除ゆいじょ造ぞう無む間けん悪業あくごう誹ひ謗ほう正しょう法ぼう及ぎゅう諸しょ聖しょう人にん」 (如来会・上) とのたまへり。 ^¬観かん経ぎょう¼ には五ご逆ぎゃくの往おう生じょうを明あかして謗法ほうぼうを説とかず。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ には難なん治ちの機きと病やまいとを説とけり。 これらの真しん教きょう、 いかんが思し量りょうせんや。

▼夫 レ拠ヨルニ↢諸大乗ニ↡、説ケリ↢難化ノ機ヲ↡。今¬大経ニハ¼言ヒ↢「唯除五逆誹謗正法ト」↡、或イハ言ノタマヘリ↢「唯*除造无間悪業誹謗正法及諸聖人ト」↡。¬観経ニハ¼明シテ↢五逆ノ往生ヲ↡不ズ↠説カ↢謗法ヲ↡。¬涅槃経ニハ¼説ケリ↢難治ノ機ト与トヲ↟病。斯 レ等ラノ真教、云何 イカン ガ思量セム邪ヤ。

二 Ⅱ ⅱ 答
      a 通じて祖文を引く
        イ 文に依る
          (一)七箇の問答有り(¬論註¼)
            (Ⅰ)大観二経の相違を会す

【120】^報こたへていはく、 ¬論ろんの註ちゅう¼ (上) にいはく、

▼報コタヘテ道イハク、¬論ノ註ニ¼曰ク、

^「▲問とうていはく、 ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ (下) にのたまはく、 ª^往おう生じょうを願がんぜんもの、 みな往おう生じょうを得えしむ。 ただ五ご逆ぎゃくと誹ひ謗ほう正しょう法ぼうとを除のぞくº (意) と。 ^¬観かん無む量りょう寿じゅ経きょう¼ に、 ª^五ご逆ぎゃく・十じゅう悪あくもろもろの不ふ善ぜんを具ぐせるもの、 また往おう生じょうを得うº といへり。 ^この二に経きょう、 いかんが会えせんやと。

「▼問ウテ曰ク、¬无量寿経ニ¼言ク、願ゼム↢往生ヲ↡者 ノ、皆得エシム↢往生ヲ↡。唯除クト↢五逆ト誹謗正法トヲ↡。¬観无量寿経ニ¼言ヘリ↧五逆・十悪具セルモノ↢諸ノ不善ヲ↡、亦得ト↦往生ヲ↥。此ノ二経、云何  ン ガ会ワカツセムヤト。

 ^◆答こたへていはく、 一いっ経きょう (大経) には二に種しゅの重じゅう罪ざいを具ぐするをもつてなり。 一ひとつには五ご逆ぎゃく、 二ふたつには誹ひ謗ほう正しょう法ぼうなり。 この二に種しゅの罪つみをもつてのゆゑに、 このゆゑ0297に往おう生じょうを得えず。 一いっ経きょう (観経) にはただ十じゅう悪あく・五ご逆ぎゃく等とうの罪つみを作つくるというて、 正しょう法ぼうを誹ひ謗ほうすといはず。 正しょう法ぼうを謗ほうせざるをもつてのゆゑに、 このゆゑに生しょうを得えしむと。

答ヘテ曰ク、一経ニハ以テナリ↠具スルヲ↢二種ノ重罪ヲ↡。▼一ニ者五逆、二ニ者誹謗正法ナリ。以テノ↢此ノ二種ノ罪ヲ↡故ニ、所以コノユヘニ不ズ↠得エ↢往生ヲ↡。一経ニハ但言フテ↠作ルト↢十悪・五逆等ノ罪ヲ↡、不ズ↠言ハ↣誹↢謗スト正法ヲ↡。以テノ↠不ルヲ↠謗ゼ↢正法ヲ↡故ニ、是ノ故ニ得エシムト↠生ヲ。

 ^◆問とうていはく、 たとひ一人いちにんは五ご逆ぎゃく罪ざいを具ぐして正しょう法ぼうを誹ひ謗ほうせざれば、 ¬経きょう¼ (観経) に得とく生しょうを許ゆるす。 また一人いちにんありてただ正しょう法ぼうを誹ひ謗ほうして、 五ご逆ぎゃくもろもろの罪つみなきもの往おう生じょうを願がんぜば、 生しょうを得うるやいなやと。

問ウテ曰ク、仮使 タトヒ 一人ハ具シ↢五逆罪ヲ↡而テ不レバ↣誹↢謗セ正法ヲ↡、¬経ニ¼許ユルス↢得生ヲ↡。復有リテ↢一人↡但誹↢謗シ正法ヲ↡而テ无キモノ↢五逆諸ノ罪↡願ゼ↢往生ヲ↡者バ、得ルヤ↠生ヲ以不イナヤト。

 ^◆答こたへていはく、 ただ正しょう法ぼうを誹ひ謗ほうせしめて、 さらに余よの罪つみなしといへども、 かならず生しょうずることを得えじ。

答ヘテ曰ク、但令メテ↣誹↢謗セ正法ヲ↡、雖モ↣更ニ无シト↢余ノ罪↡、必ズ不ジ↠得↠生ズルコトヲ。

^◆なにをもつてこれをいふとならば、 ¬経きょう¼ (*大品般若経) にいはく、 ª五ご逆ぎゃくの罪人ざいにん、 阿鼻あび大だい地じ獄ごくのなかに堕だして、 つぶさに一劫いっこうの重じゅう罪ざいを受うく。 誹ひ謗ほう正しょう法ぼうの人ひとは阿鼻あび大だい地じ獄ごくのなかに堕だして、 この劫こうもし尽つくれば、 また転てんじて他た方ほうの阿鼻あび大だい地じ獄ごくのなかに至いたる。 かくのごとく展転てんでんして百ひゃく千せんの阿鼻あび大だい地じ獄ごくを経ふº と。 仏ぶつ、 出いづることを得うる時じ節せつを記きしたまはず。 誹ひ謗ほう正しょう法ぼうの罪つみ、 極ごく重じゅうなるをもつてのゆゑなり。

何ヲ以テ言フトナラバ↠之ヲ、¬経ニ¼言ク、五逆ノ罪人堕シテ↢阿鼻大地獄ノ中ニ↡、具 サニ受ク↢一劫ノ重罪ヲ↡。誹謗正法ノ人ハ堕シテ↢阿鼻大地獄ノ中ニ↡、此ノ劫若シ尽クレバ復転ジテ至ル↢他方ノ阿鼻大地獄ノ中ニ↡。如ク↠是クノ展0126転シテ逕フト↢百千ノ阿鼻大地獄ヲ↡。仏不ズ↠記シタマハ↢得ル↠出ヅルコトヲ時節ヲ↡。以テノ↢誹謗正法ノ罪極重ナルヲ↡故 ヘナリ。

^◆また正しょう法ぼうはすなはちこれ仏法ぶっぽうなり。 この愚痴ぐちの人ひと、 すでに誹ひ謗ほうを生しょうず、 いづくんぞ仏ぶつ土どに願がん生しょうするの理ことわりあらんや。 たとひただかの安楽あんらくに生しょうぜんことを貪とんじて生しょうを願がんぜんは、 また水みずにあらざるの氷こおり0298、 煙けむりなきの火ひを求もとめんがごとし。 あに得うる理ことわりあらんやと。

又正法者ハ即チ是仏法ナリ。此ノ愚痴ノ人、既ニ生ズ↢誹謗ヲ↡、安イヅクンゾ有ラムヤ↧願↢生スル仏土ニ↡之理 ワリ↥。仮使 タトヒ 但貪トムジ↣彼ノ生ゼムコトヲ↢安楽ニ↡而テ願ゼム↠生ヲ者ハ、亦如シ↠求メムガ↢非ザル↠水ニ之氷コホリ、无キ↠煙ケムリ之火ヲ↡。豈 ニ有ラムヤト↢得ル理 ハリ↡。

 ^◆問とうていはく、 なんらの相そうか、 これ誹ひ謗ほう正しょう法ぼうなるやと。

問ウテ曰ク、何等ラノ相カ、是誹謗正法ナルヤト。

 ^◆答こたへていはく、 もし無む仏ぶつ・無む仏法ぶっぽう・無む菩ぼ薩さつ・無む菩ぼ薩さつ法ほうといはん。 かくのごときらの見けんをもつて、 もしは心こころにみづから解さとり、 もしは他たに従したがひてその心こころを受うけて決けつ定じょうするを、 みな誹ひ謗ほう正しょう法ぼうと名なづくと。

答ヘテ曰ク、若シ言ハム↢无仏・无仏法・无菩薩・无菩薩法ト↡。如キ↠是クノ等ラノ見ヲモテ、若シハ心ニ自ミヅカラ解リ、若シハ従シ ヒテ↠他ニ受ケテ↢其ノ心ヲ↡決定スルヲ皆名クト↢誹謗正法ト↡。

 ^◆問とうていはく、 かくのごときらの計けはただこれおのれが事じなり。 衆しゅ生じょうにおいてなんの苦く悩のうあればか、 五ご逆ぎゃくの重じゅう罪ざいに踰こえんやと。

問ウテ曰ク、如キ↠是クノ等ラノ計ケハハカラフ但是己 ノレガ事ナリ。於テ↢衆生ニ↡有レバカ↢何ノ苦悩↡、踰コヘム↠於ニ↢五逆ノ重罪↡邪ヤト。

 ^◆答こたへていはく、 もし諸仏しょぶつ・菩ぼ薩さつ、 世せ間けん・出しゅっ世せ間けんの善道ぜんどうを説ときて衆しゅ生じょうを教きょう化けするひとましまさずは、 あに仁じん・義ぎ・礼れい・智ち・信しんあることを知しらんや。 かくのごとき世せ間けんの一切いっさい善法ぜんぽうみな断だんじ、 出しゅっ世せ間けんの一切いっさい賢げん聖じょうみな滅めっしなん。 なんぢただ五ご逆ぎゃく罪ざいの重じゅうたることを知しりて、 五ご逆ぎゃく罪ざいの正しょう法ぼうなきより生しょうずることを知しらず。 このゆゑに謗ほう正しょう法ぼうの人ひとはその罪つみ最さい重じゅうなりと。

答ヘテ曰ク、若シ无マシマサズハ↧諸仏・菩薩、説キテ↢世間・出世間ノ善道ヲ↡教↢化スル衆生ヲ↡者ヒト↥、豈 ニ知ラム↠有ルコトヲ↢仁・義・礼・智・信↡邪ヤ。如キ↠是クノ世間ノ一切ノ善法皆断ジ、出世間ノ一切賢聖皆滅シナム。汝但知リテ↢五逆罪ノ為タルコトヲ↟重而不ズ↠知ラ↧五逆罪ノ従ヨリ↠无キ↢正法↡生ズルコトヲ↥。是ノ故ニ謗正法ノ人ハ其ノ罪最スグルモトモ重ナリト。

二 Ⅱ ⅱ a イ (一)(Ⅱ)罪滅得生を論定す

 ^◆問とうていはく、 業道ごうどう経きょうにいはく、 ª業道ごうどうは秤はかりのごとし、 重おもきものまづ牽ひくº と。

問ウテ曰ク、業道経ニ言ク、業道ハ如シ↠称ハカリノ、重キ者モノ先マヅ牽ヒクト。

^◆¬観かん無む量りょう寿じゅ経きょう¼ にいふがごとし。 ª人ひとありて五ご逆ぎゃく・十じゅう悪あくを造つくり、 もろもろの不ふ善ぜんを具ぐせらん。 悪道あくどうに堕だして多た劫こうを経歴きょうりゃくして無む量りょうの苦くを受うくべし。 命みょう終じゅう0299のときに臨のぞんで、 善ぜん知ぢ識しきの、 教おしへて南無なも無む量りょう寿じゅ仏ぶつを称しょうせしむるに遇あはん。 かくのごとき心こころを至いたして、 声こえをして絶たえざらしめて十じゅう念ねんを具ぐ足そくすれば、 すなはち安楽あんらく浄じょう土どに往おう生じょうすることを得えて、 すなはち大だい乗じょう正定しょうじょうの聚じゅに入いりて、 畢ひっ竟きょうじて不ふ退たいならん。 三さん塗ずのもろもろの苦くと永ながく隔へだつº と。

如シ↢¬観无量寿経ニ¼言ガ↡。有リテ↠人造ツクリ↢五逆・十悪ヲ↡、具セラム↢諸ノ不善ヲ↡。応シ↧堕シテ↢悪道ニ↡逕↢歴シテ多劫ヲ↡受ク↦无量ノ苦ヲ↥。臨デ↢命終ノ時ニ↡、遇ハム↣善知識ノ、教オシヘテ称セシムルニ↢南无无量寿仏ヲ↡。如キ↠是クノ至シテ↠心ヲ、令メテ↢声ヲシテ不ラ↟絶ヘ具↢足スレバ十念ヲ↡、便チ得エテ↣往↢生スルコトヲ安楽浄土ニ↡、即チ入リテ↢大乗正定之聚ニ↡、畢竟ジテ不退ナラム。与ト↢三塗ミチノ諸ノ苦↡永ク隔 ダツト。

^◆まづ牽ひくの義ぎ、 理りにおいていかんぞ。

先マヅ牽ヒク之義、於テ↠理ニ如何 イ   ゾ。

^◆また曠劫こうごうよりこのかたつぶさにもろもろの行ぎょうを造つくれり、 有漏うろの法ほうは三界さんがいに繋け属ぞくせり。 ただ十じゅう念ねんをもつて阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじてすなはち三界さんがいを出いでば、 繋け業ごうの義ぎまたいかんがせんとするやと。

又曠劫ヨリ已来タ備ツブサニ造レル↢諸ノ行ヲ↡有漏之法ハ繋ツナギ↢属ツクセリ三界0127ニ↡。但以テ↢十念ヲ↡念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡便チ出デバ↢三界ヲ↡、繋業之義復欲セムトスルヤト↢云何ガ↡。

・三在釈

 ^◆答こたへていはく、 なんぢ五ご逆ぎゃく・十じゅう悪あく・繋け業ごう等とうを重じゅうとし、 下下げげ品ぼんの人ひとの十じゅう念ねんをもつて軽きょうとして、 罪つみのために牽ひかれてまづ地じ獄ごくに堕だして三界さんがいに繋け在ざいすべしといはば、 いままさに義ぎをもつて軽重きょうじゅうの義ぎを校量きょうりょうすべし。 心しんに在あり、 縁えんに在あり、 決けつ定じょうに在あり、 時じ節せつの久く近ごん・多た少しょうに在あるにはあらざるなり。

答ヘテ曰ク、汝謂イハ↫五逆・十悪繋業等ヲ為シ↠重ト、以テ↢下下品ノ人ノ十念ヲ↡為シテ↠軽ト、応シト↪為ニ↠罪ノ所レテ↠牽ヒカ先マヅ堕シテ↢地獄ニ↡繋↩在ス三界ニ↨者バ、今当ニシ↣以テ↠義ヲ校↢量スハカラフ軽重之義ヲ↡。▼在リ↠心ニ、在リ↠縁ニ、在リ↢決定ニ↡、不ア ル↠在ルニハ↢時節久近・多少ニ↡也。

^◆いかんが心しんに在あると。 かの罪つみを造つくる人は、 みづから虚こ妄もう顛倒てんどうの見けんに依止えじして生しょうず。 この十じゅう念ねんは、 善ぜん知ぢ識しきの、 方便ほうべん安あん慰にして実相じっそうの法ほうを聞きかしむるによりて生しょうず。 一ひとつは実じつ、 一ひとつは虚こなり。 あにあひ比たくらぶることを得えんや。

云何ガ在ルト↠心ニ。彼ノ造ル↠罪ヲ人ハ、自ミヅカラガ依↢止シテ虚妄顛倒ノ見ニ↡生ズ。此ノ十念者ハ、依リテ↣善知識ノ、方便安慰シテ聞キカシムルニ↢実相ノ法ヲ↡生ズ。一ハ実、一ハ虚ナリ。豈 ニ得ムヤ↢相 ヒ比クラブルコトヲ↡。

^◆たとへば千歳せんざいの闇室あんしつに、 光ひかりもししばらく至いたれば、 すなはち明みょう朗ろうなるがごとし。 闇やみ、 あに室しつにあること千歳せんざいにして去さら0300じといふことを得えんや。 これを在心ざいしんと名なづく。

譬ヘバ如シ↢千歳ノ闇ヤミ室ニ、光若シ蹔シバラ ザム ク至レバ即便チ明朗ナルガホガラカナリ↡。闇豈 ニ得ム↠言フコトヲ↢在ルコト↠室ニ千歳ニ而シテ不ジト↟去ラ邪ヤ。是ヲ名ク↢在心ト↡。

^◆いかんが縁えんに在あると。 かの罪つみを造つくる人ひとは、 みづから妄想もうぞうの心しんに依止えじし、 煩悩ぼんのう虚こ妄もうの果か報ほうの衆しゅ生じょうによりて生しょうず。 この十じゅう念ねんは無む上じょうの信心しんじんに依止えじし、 阿あ弥陀みだ如来にょらいの方便ほうべん荘しょう厳ごん真実しんじつ清浄しょうじょう無む量りょう功く徳どくの名みょう号ごうによりて生しょうず。

云何ガ在ルト↠縁ニ。彼ノ造ル↠罪ヲ人ハ、自ミヅカラガ依↢止シ妄想ノオモフ心ニ↡、依リテ↢煩悩虚妄ノ果報ノ衆生ニ↡生ズ。此ノ十念者ハ依↢止シ无上ノ信心ニ↡、依リテ↢阿弥陀如来ノ方便荘厳真実清浄无量功徳ノ名号ニ↡生ズ。

^◆たとへば人ひとありて毒どくの箭やを被かぶりて、 中あたるところ筋すじを截きり、 骨ほねを破やぶるに、 滅除めつじょ薬やくの鼓つづみを聞きけば、 すなはち箭や出ぬけ、 毒どく除のぞこるがごとし。

譬ヘバ如シ↧有リテ↠人被カブリテ↢毒ノ箭ヲ↡、所 ロ↠中アタル截キリ↠筋スヂヲ破 ブルニ↠骨ヲ、聞ケバ↢滅除薬ノ鼓ヲ↡、即チ箭ヤ出ヌケ毒除コルガ↥。

^◆¬*首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ にいはく、 ªたとへば薬くすりあり、 名なづけて滅除めつじょといふ。 もし闘戦とうせんの時ときにもつて鼓つづみに塗ぬるに、 鼓つづみの声こえを聞きくもの、 箭や出ぬけ、 毒どく除のぞこるがごとし。 菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつもまたまたかくのごとし。 首しゅ楞りょう厳ごん三昧ざんまいに住じゅうしてその名なを聞きくもの、 三毒さんどくの箭や、 自じ然ねんに抜ばっ出しゅつすº と。

¬首楞リヨウ厳経ニ¼言ク、譬ヘバ如シ↧有リ↠薬、名ケテ曰フ↢滅除ト↡、若シ闘トウ戦センノタヽカフ時ニ用以テ塗ヌルニ↠鼓ニ、聞ク↢鼓ノ声ヲ↡者 ノ、箭出ヌケ毒除コルガ↥。菩薩摩訶薩モ亦復如シ↠是クノ。住シテ↢首楞厳三昧ニ↡聞ク↢其ノ名ヲ↡者 ノ、三毒*之箭、自然ニ抜ヌク出スト。

^◆あにかの箭や深ふかく、 毒どく厲はげしからんと、 鼓つづみの音おん声じょう聞きくとも、 箭やを抜ぬき毒どくを去さることあたはじといふことを得うべけんや。 これを在縁ざいえんと名なづく。

豈 ニ可ケム↠得ウ↠言フコトヲ↧彼ノ箭深ク毒厲ハゲシカラムト、聞クトモ↢鼓ノ音声ヲ↡、不ジト↞能ハ↢抜キ↠箭ヲ去ルコト↟毒ヲ邪ヤ。是ヲ名ク↢在縁ト↡。

^◆いかんが決けつ定じょうに在あると。 かの罪つみを造つくる人ひとは有後うご心しん・有う間けん心しんに依止えじして生しょうず。 この十じゅう念ねんは無後むご心しん・無む間けん心しんに依止えじして生しょうず。 これを決けつ定じょうと名なづく。

云何ガ在ルト↢決定ニ↡。彼ノ造ル↠罪ヲ人ハ依↢止シテ有後心・有間心ニ↡生ズ。此ノ十念者ハ依↢止シテ▼无後心・▼无間心ニ↡生ズ。是ヲ名ク↢決定ト↡。

^◆三みつの義ぎを校量きょうりょうするに、 十じゅう念ねんは重じゅうなり。 重おもきものまづ牽ひきて、 よく三さん有ぬを出いづ。 両経りょうきょう一いち義ぎなるならくのみと。

校↢量スルニ三ノ義ヲ↡、十念者ハ重ナリ。重キ者 ノ先ヅ牽ヒキテ、能ク出ヅ↢三有ヲ↡。両経一義ナル耳ナラクノミト。

二 Ⅱ ⅱ a イ (一)(Ⅲ)別して十念の義を釈す

 ^◆問とうていはく、 いくばくの時ときをか名なづけて一念いちねんとするやと。

問ウテ曰ク、幾イクバクノ時ヲカ名ケテ為ルヤト↢一念ト↡。

 ^0301◆答こたへていはく、 百ひゃく一いちの生しょう滅めつを一いっ刹せつ那なと名なづく。 六ろく十じゅうの刹せつ那なを名なづけて一念いちねんとす。 このなかに念ねんといふは、 この時じ節せつを取とらざるなり。 ただ阿あ弥陀みだ仏ぶつを憶念おくねんして、 もしは総相そうそうもしは別相べっそう、 所観しょかんの縁えんに随したがひて心こころに他た想そうなくして十じゅう念ねん相続そうぞくするを名なづけて十じゅう念ねんとすといふなり。 ただ名みょう号ごうを称しょうすることもまたまたかくのごとしと。

答ヘテ曰ク、百一ノ生滅ヲ名ク↢一刹0128那ト↡。六十ノ刹那ヲ名ケテ為↢一念ト↡。▼此ノ中ニ云フ↠念ト者ハ、不ル↠取ラ↢此ノ時節ヲ↡也。但言フナリ↧憶↢念シテ阿弥陀仏ヲ↡、若シハ総ソウ相若シハ別相、随ヒテ↢所観ノ縁ニ↡心ニ无クシテ↢他想↡十念相続スルヲ名ケテ為スト↦十念ト↥。但シ称スルコトモ↢名号ヲ↡亦復如シ↠是クノ。

 ^◆問とうていはく、 心こころもし他た縁えんせば、 これを摂せっして還かえらしめて念ねんの多た少しょうを知しるべし。 ただし多た少しょうを知しらば、 また間ひまなきにあらず。 もし心こころを凝こらし想おもいを注とどめば、 またなにによりてか念ねんの多た少しょうを記きすることを得うべきやと。

▼問ウテ曰ク、心若シ他縁セバ、摂シテ↠之ヲ令メテ↠還 ヘラ可シ↠知ル↢念之多少ヲ↡。但シ知ラバ↢多少ヲ↡、復非ズ↠无キニ↠間 マ。若シ凝コラギヤウシ↠心ヲ注トヾメバ↠想ヲ、復依リテカ↠何ニ可キヤト↠得↠記スルコトヲ↢念之多少ヲ↡。

 ^◆答こたへていはく、 ¬経きょう¼ (観経) に十じゅう念ねんといふは、 業ごう事じ成じょう弁べんを明あかすならくのみ。 かならずしも、 すべからく頭ず数しゅを知しるべからざるなり。 ª蟪けい蛄こ春秋しゅんじゅうを識しらず、 *伊い虫ちゅうあに朱陽しゅようの節せつを知しらんやº といふがごとし。 知しるものこれをいふならくのみ。

▼答ヘテ曰ク、¬経ニ¼言フ↢十念ト↡者ハ、明ス↢業事成弁ヲ↡ワキマウ耳ナラクノミト。不ル↢必ズシモ須ベ クカラ↟知シル↢頭数ヲ↡也。如シ↠言フガ↧蟪ケイ蛄コ不ズ↠識シラ↢春秋ヲ↡、伊虫豈アニ知ラム↢朱シユ陽之アカシ 節ヲ↡乎ヤト↥。知シル者 ノ言イフ↠之ヲ耳ナラクノミト。

^◆十じゅう念ねん業ごう成じょうとは、 これまた神じんに通つうずるものこれをいふならくのみ。 ただ念ねんを積つみ相続そうぞくして他事たじを縁えんぜざれば、 すなはち罷やみぬ。 またなんぞ仮かりに念ねんの頭ず数しゅを知しることを須もちゐんや。 もしかならず知しることを須もちゐば、 また方便ほうべんあり。 かならず口く授じゅを須もちゐよ、 これを筆点ひってんに題だいすることを得えざれ」 と。 以上

十念業成ト者ハ、是亦通ズル↠神ニ者 ノ言フ↠之ヲ耳ナラクノミト。但積ミ↠念ヲ相続シテ▼不レバ↠縁ゼ↢他事ヲ↡便チ罷ヤミヌ。復何ゾ仮 リニ須モチヰム↠知ルコトヲ↢念之頭数ヲ↡也ヤ。若シ必ズ須モチヰバ↠知ルコトヲ、亦有リ↢方便↡。必ズ須モチヰヨ↢口授ジユヲサヅク↡、不レト↠得↠題シルススルコトヲ↢之ヲ筆点テンニ↡。」 已上

二 Ⅱ ⅱ a イ (二)摂抑二門に就きて二経の除取を分別す
            (Ⅰ)「散善義」

【0302121】^光こう明みょう寺じの和か尚しょう (善導) いはく (散善義)、

▼光明寺ノ和尚云ク、

^「▲問とうていはく、 四し十じゅう八はち願がんのなかのごときは、 ただ五ご逆ぎゃくと誹ひ謗ほう正しょう法ぼうとを除のぞきて、 往おう生じょうを得えしめず。 いまこの ¬観かん経ぎょう¼ の下げ品ぼん下げ生しょうのなかには、 誹ひ謗ほうを簡きらひて五ご逆ぎゃくを摂せっせるは、 なんの意こころかあるやと。

「▼問ウテ曰ク、如キハ↢四十八願ノ中ノ↡、唯除キテ↢五逆ト誹謗正法トヲ↡、不ズ↠得エシメ↢往生ヲ↡。今此ノ¬観経ノ¼下品下生ノ中ニハ、簡キラヒテ↢誹謗ヲ↡摂セル↢五逆ヲ↡者ハ、有ル↢何ノ意カ↡也ヤト。

 ^◆答こたへていはく、 この義ぎ、 仰あおいで抑おく止し門もんのなかについて解げす。 ◆四し十じゅう八はち願がんのなかのごとき、 謗法ほうぼう・五ご逆ぎゃくを除のぞくことは、 しかるにこの二に業ごう、 その障さわり極ごく重じゅうなり。 衆しゅ生じょうもし造つくれば、 ただちに阿鼻あびに入いりて歴りゃく劫こう周章しゅうしょうして出いづべきに由よしなし。 ただ如来にょらい、 それこの二ふたつの過とがを造つくらんを恐おそれて、 方便ほうべんして止とどめて ª往おう生じょうを得えずº とのたまへり。 またこれ摂せっせざるにはあらざるなり。

▼答ヘテ曰ク、▼此ノ義仰イデ就イテ↢抑オクオサフ止門ノ中ニ↡解ス。如キ↢四十八願ノ中ノ↡、除クコト↢謗法・五逆ヲ↡者ハ、然ルニ此之二業、其ノ障 リ極重ナリ。衆生若シ造レバ、直ニ入リテ↢阿鼻ニ↡歴劫周章シヤウシテ无シ↠由ヨシ↠可キニ↠出ヅ。但如来恐オソレテ↣其 レ造ラムヲ↢斯ノ二過トガヲ↡、方便シテ止メテ言ノタマヘリ↠不ズト↠得エ↢往生ヲ↡。亦不ル↢是不ルニハ↟摂セ也。

^◆また下げ品ぼん下げ生しょうのなかに五ご逆ぎゃくを取とりて謗法ほうぼうを除のぞくとは、 それ五ご逆ぎゃくはすでに作つくれり、 捨すてて流る転てんせしむべからず。 還かえりて大だい悲ひを発おこして摂取せっしゅして往おう生じょうせしむ。 しかるに謗法ほうぼうの罪つみは、 いまだ為つくらざれば、 また止とどめて ªもし謗法ほうぼうを起おこさば、 すなはち生しょうずることを得えじº とのたまふ。 これは未み造ぞう業ごうについて解げするなり。 もし造つくらば、 還かえりて摂せっして生しょうずることを得えしめん。

又下品下生ノ中ニ取リテ↢五逆ヲ↡除クコト↢謗法ヲ↡者ハ、其 レ▼五逆ハ已ニ作レリ、不ズ↠可カラ↣捨テヽ令ム↢流転セ↡。還リテ発シテ↢大悲ヲ↡摂取シテ往生0129セシム。然ルニ謗法之罪ハ未ダレバ↠為ツクラ、又止メテ言ノタマフ↧若シ起サバ↢謗法ヲ↡、即チ不ジト↞得エ↠生ズルコトヲ。此ハ就テ↢未造業ニ↡而解スル也。▼若シ造ラバ、還リテ摂シテ得エシメム↠生ズルコトヲ。

^◆かしこに生しょうずることを得うといへども、 *華はな合がっして多た劫こうを経へん。 これらの罪人ざいにん、 華はなのうちにある時とき三種さんしゅの障さわりあり。 一ひとつには仏ぶつおよびもろ0303もろの聖しょう衆じゅを見みることを得えじ、 二ふたつには正しょう法ぼうを聴ちょう聞もんすることを得えじ、 三みつには歴りゃく事じ供く養ようを得えじ。

雖モ↠得ト↠生ズルコトヲ↠彼 コニ、華合シテ逕ヘム↢於多劫ヲ↡。此 レ等ラノ罪人、在ル↢華ノ内ニ↡時有リ↢三種ノ障↡。一ニ者不ジ↠得エ↠見ルコトヲ↢仏及ビ諸ノ聖聚ヲ↡、二ニ者不ジ↠得エ↣聴↢聞スルコトヲ正法ヲ↡、三ニ者不ジト↠得エ↢歴事供養ヲ↡。

^◆これを除のぞきて以外いげは、 さらにもろもろの苦くなけん。 経きょうにいはく、 ªなほ比丘びくの三禅さんぜんの楽らくに入いるがごときなりº と、 知しるべし。 華はなのなかにありて多た劫こう開ひらけずといふとも、 阿鼻あび地じ獄ごくのなかにして長じょう時じ永劫ようごうにもろもろの苦く痛つうを受うけんに勝すぐれざるべけんや。 この義ぎ、 抑おく止し門もんにつきて解げしをはりぬ」 と。 以上

除キテ↠此ヲ已外ハ、更ニ无ケム↢諸ノ苦↡。経ニ云ク、猶ナホ如キ↣比丘ノ入ルガ↢三禅之楽ニ↡也ト、応シ↠知ル。雖モ↧在リテ↢華ノ中ニ↡多劫不ズト↞開ケ、可ベケム↠不ル↠勝レ↣阿鼻地獄之中ニシテ長時永劫ニ受ケムニ↢諸ノ苦痛ヲ↡也ヤ。此ノ義就テ↢抑止門ニ↡解シサトス竟リヌト。」 已上

二 Ⅱ ⅱ a ロ 宗に依る
          (一)回心の人に約して以て二罪倶に摂することを顕す
            (Ⅰ)¬法事讃¼

【122】^またいはく (法事讃・上)、

▼又云ク、

^「▲永ながく譏き嫌げんを絶たち、 等ひとしくして憂う悩のうなし。 人天にんでん善悪ぜんあくみな往ゆくことを得う。 かしこに到いたりて殊ことなることなし、 *斉同さいどう不ふ退たいなり。

「永ク絶チ↢譏嫌ヲキラフ↡、等ヒトシクシテ无シ↢憂悩↡。人天善悪、皆得ウ↠往クコトヲ。▼到リテ↠彼 コニ无シ↠殊コトナルコト、斉同ヒトシ 不退ナリ。

^◆なにの意こころかしかるとならば、 いまし弥陀みだの因いん地じにして世せ饒にょう王おう仏ぶつの所みもとにして、 位くらいを捨すてて家いえを出いづ、 すなはち悲智ひちの心しんを起おこして広ひろく四し十じゅう八願がんを弘ひろめたまふによりてなり。 仏願ぶつがん力りきをもつて、 五ご逆ぎゃくと十じゅう悪あくと罪つみ滅めっし生しょうずることを得えしむ。 謗法ほうぼう・闡提せんだい、 回え心しんすればみな往ゆく」 と。 抄出

何ノ意カ然 カルトナラ者バ、乃シ由リテナリ↧弥陀ノ因地ニシテ、世饒王仏ノ所ミモトニシテ、捨テヽ↠位ヲ出ヅ↠家ヲ、即チ起シテ↢悲智之心ヲ↡広ク弘メシメタマフシニ↦四十八願ヲ↥。▼以テ↢仏願力ヲ↡、五逆ト之与ト↢十悪↡罪滅シ得エシム↠生ズルコトヲ。謗法ソシル ・闡提、回心スレバ皆往クト。」 抄出

二 Ⅱ ⅱ b 別して五逆を釈す
        イ 永観¬往生十因¼

【123】^五ご逆ぎゃくといふは (*往生十因)、

言フ↢▼五逆ト↡者、

^「もし*淄し州しゅうによるに五ご逆ぎゃくに二ふたつあり。 一ひとつには三さん乗じょうの五ご逆ぎゃくなり。 いはく、 一ひとつにはことさらに思おもうて父ちちを殺ころす、 二ふたつにはことさらに思おもうて母ははを殺ころす、 三みつにはことさらに思おもうて羅ら漢かんを殺ころす、 四よつには0304倒見とうけんして*和わ合ごう僧そうを破はす、 五いつつには悪心あくしんをもつて仏身ぶっしんより血ちを出いだす。 *恩田おんでんに背そむき*福田ふくでんに違いするをもつてのゆゑに、 これを名なづけて逆ぎゃくとす。 この逆ぎゃくを執しゅうするものは、 身み壊やぶれ命いのち終おへて、 必ひつ定じょうして無む間けん地じ獄ごくに堕だして、 一いち大劫だいこうのうちに無む間けんの苦くを受うけん、 無む間けん業ごうと名なづく。

「若シ依ルニ↢▼淄シ州シウニ↡五逆ニ有リ↠二。▼一ニ者三乗ノ五逆ナリ。謂ク、一ニ者故コトサラニ思ウテ殺ス↠父ヲ、二ニ者故コトサラニ思ウテ殺ス↠母ヲ、三ニ者故ニ思ウテ殺ス↢羅漢ヲ↡、四ニ者倒見タフルヽ シテ破ス↢和合僧ヲ↡、五ニ者悪心ヲモテ出ス↢仏身ヨリ血ヲ↡。以テノ↧背ソムキ↢恩田ニ↡違タガフスルヲ↦福田ニ↥故ニ、名ケテ↠之ヲ為ス↠逆ト。執トルスル↢此ノ逆ヲ↡者 ノハ、身壊ヤブレ命終オエテ、必定シテ堕シテ↢无間地獄ニ↡、一大劫ノ中ニ受ケム↢无間ノ苦ヲ↡、名クト↢无間業ト↡。

^また ¬*倶く舎しゃ論ろん¼ のなかに、 五ご無む間けんの同類どうるいの業ごうあり。 かの頌じゅにいはく、 ª^母はは・*無む学がくの尼にを汚けがす、 母ははを殺ころす罪つみの同類どうるい。 *住定じゅうじょうの菩ぼ薩さつ、 父ちちを殺ころす罪つみの同類どうるい。 および*有う学がく・無む学がくを殺ころす、 羅ら漢かんを殺ころす同類どうるい。 僧そうの*和わ合ごう縁えんを奪うばふ、 僧そうを破はする罪つみの同類どうるい。 *卒都波そとばを破壊はえする、 仏身ぶっしんより血ちを出いだすº と。

又¬倶舎論ノ¼中ニ、有0130リ↢五无間ノ同類ノ業↡。彼ノ頌ニ云ク、

汚ケガス↢母・无学ノ尼ヲ↡ *殺ス↠母ヲ罪ノ同類。殺ス↢住定ノ菩薩 殺ス↠父ヲ罪ノ同類。
及ビ有学・无学ヲ↡ 殺ス↢羅漢ヲ↡同類。奪ウバフ↢僧ノ和合縁ヲ↡ 破ル↠僧ヲ罪ノ同類。
破↢壊スルト率都*波ヲ↡ 出ス↢仏身ヨリ血ヲ↡。

 ^二ふたつには大だい乗じょうの五ご逆ぎゃくなり。 ¬*薩遮さっしゃ尼に乾けん子じ経きょう¼ に説とくがごとし。 ª^一ひとつには塔とうを破壊はえし経きょう蔵ぞうを焚ぼん焼じょうする、 および三宝さんぼうの財物ざいもつを盗用とうようする。 二ふたつには三さん乗じょうの法ほうを謗そしりて聖教しょうぎょうにあらずというて、 *障しょう破は留る難なんし*隠蔽おんぺい覆ふ蔵ぞうする。 三みつには一切いっさい出しゅっ家けの人ひと、 もしは戒かい・無む戒かい・破は戒かいのものを打ちょう罵めし呵か責しゃくして、 過とがを説とき禁閉きんぺいし*還俗げんぞくせしめ、 *駈使くし債さい調ちょうし断だん命みょうせしむる。 四よつには父ちちを殺ころし、 母ははを害がいし、 仏身ぶっしんより血ちを出いだし、 和わ合ごう僧そうを破はし、 阿羅あら漢かんを殺ころす。 五いつつには*謗ほうじて因いん果がなく、 長じょう夜やにつねに十じゅう不ふ善業ぜんごうを行ぎょうずるなりº と。 以上

▼二ニ者ハ大乗ノ五逆ナリ。如シ↢¬▼薩遮シヤ尼ニ乾ケン子経ニ¼説クガ↡。一ニ者ハ破↢壊シ塔タウヲ↡焚ヤキ↢焼スル経蔵ヲ↡、及以 オヨビ 盗↢用スル三宝ノ財物ヲ↡。二ニ者謗ソシリテ↢三乗ノ法ヲ↡言フテ↠非ズト↢聖教ニ↡、障破留ルトヾム難シ隠カクス 蔽オホフ*落ラク蔵カクススル。三ニ者ハ一切出家ノ人、若シハ戒・无戒・破戒ノモノヲ打チヤウ ウツ 罵ノルシ呵セメ責シヤク セム シテ、説キ↠過トガヲ禁キムイマシメ閉トヅシ還俗セシメ、駆クカリ使債サイツグノウ調テウシトヽノウ断命セシムル。四ニ者殺シ↠父ヲ、害シ↠母ヲ、出シ↢仏身ヨリ血ヲ↡、破シ↢和合僧ヲ↡、殺ス↢阿羅漢ヲ↡ナリ。五ニ者ハ謗ジテ無ク↢因果↡、長夜ニ常ニ行ズルナリト↢十不善業ヲ↡。 *已上

^かの ¬経きょう¼ (*十輪経) にいはく、 ª^一ひとつには不ふ善心ぜんしんを起おこして*独覚どくかくを殺害せつがいする、 これ殺せっ生しょうなり。 二ふたつには羅ら漢かんの尼にを婬いんする0305、 これを邪じゃ行ぎょうといふなり。 三みつには所しょ施せの三宝さんぼう物もつを侵損しんそんする、 これ*不与ふよ取しゅなり。 四よつには倒見とうけんして和わ合ごう僧衆そうしゅを破はする、 これ*虚こ誑おう語ごなりº」 と。 略出

▼彼ノ¬経ニ¼云ク、一ニハ起シテ↢不善心ヲ↡殺↢害スル独覚ヲ↡、是 レ殺生ナリ。二ニハ婬スル↢羅漢ノ尼ヲ↡、是ヲ云フ↢邪行ト↡也。三ニハ侵シム↢オカス損スル所施ノ三宝物ヲ↡、是 レ不与アタフ取ナリ。四ニハ倒見シテ破スル↢和合僧衆ヲ↡、是虚誑語*也ト。」 略出

顕けん浄じょう土ど真実しんじつ信しん文類もんるい 三

 

延書の底本は本派本願寺蔵善如上人書写本。
如来選択の願心 阿弥陀仏が因いん位ににおいて一切の自力の行信を選び捨て、 他力の行信を選び取り、 万人を平等に救おうと誓願せいがんした大慈大悲心のこと。
矜哀の善巧 深いあわれみの心による善巧方便。 →方ほう便べん
自心 自力の心。
金剛の真信 如来回え向こうの信心のこと。 →金剛こんごう心しん
三経の光沢 ¬大だい経きょう¼ ¬観かん経ぎょう¼ ¬小経しょうきょう¼ の輝かしい恩恵。
しばらく疑問を… 下に三一問答を設けたことをいう。
人倫の哢言 人々のあざけり。
常没の凡愚 つねに迷いの世界に沈んでいる凡ぼん夫ぶ。
無上妙果 この上なくすぐれた証果。 仏のさとりのこと。
大悲広慧の力 広大な慈悲と智慧ちえの力。
もろもろの聖尊 ここでは諸仏のこと。
至心に回向せしめたまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
歓喜…愛楽して 通常は 「歡喜愛楽し、 所有の善根回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
無上正等菩提 阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいのこと。
大威徳のひと →大だい威い徳とく者しゃ
天竜夜叉 八はち部ぶ鬼き神じんのうちの代表的なもの。
善友の摂受 善ぜん知ぢ識しきの教導。
如来の…義言は 通常は 「如来の勝智は、 虚空に遍あまねし、 所説の義言は…」 と読む。
黒闇 迷いの闇。 無明にねざす迷いの状態をくらやみに譬える。
存せるがごとし… →若にゃく存ぞん若にゃく亡もう
余念間つる… 疑いがまじって信心が断絶するという意。
慶ばんこと…願ずれば 通常は 「慶び、 すなはち一念に曁ぶまで心を至すもの、 回向して生ぜんと願ずれば」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 原文の 「至心者」 を阿弥陀仏とし、 このように読みかえた。
かならず…欲ふ 通常は 「かならずすべからく真実心のうちになすべきことを明かさんと欲す」 と読む。
外に…懐いて 通常は 「外に賢善精進の相を現じ、 内に虚仮を懐くことを得ざれ」 と読む。
なしたまひ…みな真実なり 通常は 「なしたまひ、 おほよそ施為・趣求したまふところ、 またみな真実なるによりてなり」 と読む。 「施為」 は利他、 「趣求」 は自利の意。 親鸞聖人は、 如来回え向こうの真実をもちい (受領し) て、 浄土を趣求 (願生) するという意に転じた。
不善の三業は…名づく 通常は 「不善の三業は、 かならずすべからく真実心のうちに捨つべし。 またもし善の三業を起こさば、 かならずすべからく真実心のうちになすべし。 内外明暗を簡ばず、 みなすべからく真実なるべし。 ゆゑに至誠心と名づく」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために 「須」 の字を 「もちゐ」 と読んだ。
自身は… →補註3
正 正行しょうぎょうのこと。
かの仏願 第十八願のこと。
かならず…想をなせ 通常は 「かならずすべからく決定真実心のうちに回向し願じて、 得生の想をなすべし」 と読む。
随ひて… それぞれの縁にしたがい、 どれか一つの法門によって出るのは一つの迷いの門を出ることであり、 どれか一つの法門によって入るのは一つのさとりに入る門であるという意。
空曠のはるかなる処 果てしない広野。
競ひ 「きほふ」 は勢い込んでわれ先にする意。
寧く 通常は 「むしろ」 と読む。
喚ばひ 「よばふ」 は呼びつづけるの意。
一心に正念にして →一心いっしん正しょう念ねん
清浄願往生の心 如来回え向こうの信心のこと。
回して ここでの 「回」 は回転、 回捨の意。 ひるがえし捨てて。
みだりに…喩ふるなり 通常は 「みだりに見解を説きてたがひに惑乱し、 およびみづから罪を造りて退失するに喩ふ」と読む。
定善の義を通摂す この三心はもともと散善さんぜんのところで説かれたものであるが、 定じょう善ぜんの機にも通じるという意。
貞元の新定釈教の目録 →貞元ていげん釈教しゃくきょう録ろく
貞元… ¬集しゅう諸しょ経きょう礼懴らいさん儀ぎ¼ は ¬開元かいげん録ろく¼ に入っているが、 どちらも智ち昇しょう自選のため公に蔵経目録に入れられていない。 そこで ¬貞じょう元げん録ろく¼ において公式に入れられたことを示す。
下至十声聞等 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬礼讃らいさん¼ には 「下至十声一声等」 とある。 親鸞聖人は 「聞」 の語を示すために ¬礼讃¼ を直接引用せず、 ¬礼讃らいさん儀ぎ¼ を引用したのであろう。
一念に至るに及ぶまで 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬礼讃¼ には 「乃至一念」 とある。
倦きことなく 飽きることなく。 ここでは見捨てることなくという意。
回向成就し… 行も信も如来が成就して与えたものであるという意。
因なくして… 如来回え向こうの行信が往生の因となるのであるから、 因がなくて往生するのではなく、 また、 その行信の他に別の因があるのでもないという意。
問ふ… →補註11
真実誠種の心 往生成仏の因種 (たね) となる真実にして誠なる心。
真実誠満の心 仏の真実が満入している心。
極成用重の心 完成 (至極成就) された本願のはたらき (用) を敬い、 尊重する心。
審験宣忠の心 つまびらかに明言 (審験) された如来の仰せ (宣) を偽りなく (忠) 信じる心。
欲願愛悦の心 浄土往生の願いを満たされて愛めで悦ぶ心。
歓喜賀慶の心 往生の決けつ定じょうしたことをよろこび、 聞き得た法をよろこぶ心。
願楽覚知の心 往生できると知って、 よろこび願う心。
成作為興の心 仏に成り大悲を興して、 衆しゅ生じょう救済の活動をなさしめられることを期する心。
大悲回向の心 字訓にはないが、 欲生の体が如来の大だい悲ひ回え向こう心しんであることをあらわすとともに三心全体が如来回向の心であることを示す。
穢悪汚染 煩悩ぼんのう罪悪にけがされていること。
虚仮諂偽 いつわり、 へつらい。
不可思議… 思いはかることも、 たたえ尽すことも、 説き尽すこともできない。
至徳の尊号 無上の功く徳どくである南無阿弥陀仏の名みょう号ごう。
善言策進 善を行うよう勧めること。
回向利益他の真実心 仏よりふりむけられ、 与えられた真実の心。
出世 聖しょう者じゃのこと。
世間 凡ぼん夫ぶのこと。
智明 智者のこと。
無明 愚者のこと。
満足大悲… 満足大悲は慈悲の徳が完全に成就していることをいい、 円えん融にゅう無礙むげは万徳一如いちにょとさとる智慧の徳をいう。
諸有輪 諸有は二に十じゅう五ご有う (迷いの世界の総称) のこと。 一切衆しゅ生じょうは車輪が回転し続けるように迷いの世界を果てしなく輪りん廻ねするので、 諸有輪という。
衆苦輪 数多くの苦しみ。 衆生の苦しみは車輪が回転し続けるように果てしなく続くので、 衆苦輪という。
法爾として 本来。
凡小 愚かな凡ぼん夫ぶ。
大慈大悲・大喜大捨 四し無む量りょう心しんのこと。 無量の衆しゅ生じょうに対しておこす四種の広大な心。 大慈は衆生に楽を与えること。 大悲は衆生の苦を抜くこと。 大喜は衆生が喜び楽しむのをみて自分も同じく喜ぶこと。 大捨は愛憎の心を捨てて平等の心に住すること。
捨つる 底本に 「捨」 の字なし。 「二十五有にあたはず」 と読まれている。
檀波羅蜜乃至般若波羅蜜 六ろっ波羅ぱら蜜みつのこと。 檀波羅蜜は六波羅蜜の第一 (布施ふせ)。 般若波羅蜜は六波羅蜜の第六 (智慧ちえ)。
聞 教法の言葉を聞くだけで、 そのいわれを知らないこと。
思 教法のいわれを十分聞きわけて、 如実に思い知ること。
道 さとりへの道。 また、 さとりのこと。
得者 さとりを得た人。
この法…等し 通常は 「この法を聞きて歡喜し、 心に信じて疑なければ、 すみやかに無上道を成じ、 もろもろの如来と等しからん」 と読む。
道の元 仏のさとりを得る因。
愛流 愛欲あいよく (貪愛とんない) の煩悩のこと。
法蔵第一の財 法蔵は功く徳どくの蔵の意。 多くの功徳の中での第一の財宝。
智功徳 智慧ちえ荘厳と福徳ふくとく荘厳。 六ろっ波羅ぱら蜜みつ (六度) の中の第六が智慧荘厳、 前五が福徳荘厳である。
如来地 仏ぶつ地じ、 仏ぶっ果かに同じ。 一切の智慧と慈悲を完全に成就した仏のさとり。
無上解脱道 完全に煩悩業ごっ苦くから解放され、 離脱したさとりのこと。
最勝智 この上なくすぐれた智慧。
大因力 仏のさとりを得る因となる力。
殊勝決成の解 成仏することに間違いないというすぐれた領りょう解げ。
善をして巧方便を修行せん 通常は 「善よく巧方便を修行せん」 と読む。
増上の最勝心 すぐれたはたらきをもったこの上ない心。
摩訶衍 梵語マハーヤーナ (mahāyāna) の音写。 大だい乗じょうと漢訳する。 ここでは大乗の行を指す。
弁才…得ん 高麗こうらい版大蔵経等には 「すなわち弁才、 障碍なきを得ん」 とある。 弁才とは事柄の道理を明らかに分別する才能をいう。
有為の過 迷いのあやまち。
如是 経の冒頭の 「如是我聞 (かくのごとく、 われ聞きたてまつりき)」、 「我聞如是 (われ聞きたてまつりき、 かくのごとく)」 の 「如是」。
招喚したまふの勅命 衆しゅ生じょうに帰せよと命じる如来のよび声。
微塵界 数限りない世界。
首として 第一にして。 中心にして。
至心回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。。
諸有の…愛楽して 通常は 「愛楽し、 諸有の善根回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。。
いかんが回向…ゆゑに ¬浄土論¼ ¬論註¼ の当分はすべて、 願生行者の利他回向の行相を明かすから、 「いかんが回向する。 …大悲心を成就することを得んとするがゆゑに」 等と読む。 親鸞聖人は如来の回向に転意しているから、 すべて仏の側におさめた読み方になっている。
作願 衆生救済を願うこと。
方便力 奢しゃ摩他また (止し)、 毘び婆ば舎しゃ那な (観かん) によって生ずる利他教化のはたらき。
向に ¬浄土論¼ の観察かんざつ体相たいそう章を指す。
因なくして…あらざるなり 通常は 「無因他因の有にはあらざるなり」 と読む。
出第五門 出しゅつは利他教化に出ること。 第五門は五功徳門の中の園林おんりん遊戯ゆげ地じ門もんのこと。 さとりの世界より迷いの世界にたちかえって、 自由自在に衆生を救済するのを楽しみとすることを出第五門という。 →五ご種しゅの功く徳どく
選択摂取の白業 阿弥陀仏因いん位にの法蔵ほうぞう菩薩の時に、 あらゆる行ぎょう業ごうの中から選び取られ成就された善業ぜんごう。 南無阿弥陀仏の名みょう号ごうのこと。
往相回向の浄業 浄土に生れゆくために、 仏より回向された清浄しょうじょうな行業。 南無阿弥陀仏の名号のこと。
能生清浄願心 「よく清浄の願心を生ず」。
無上の心を発せども 通常は 「無上心を発せ」 と読む。 親鸞聖人は 「無上心」 を自力の菩提心の意とみて、 このように読みかえた。 →菩ぼ提だい心しん
一念に相応して 本願に相応する一念の信を得るという意。
果涅槃を得んひと 高田派専修寺蔵宗祖加点 ¬観経疏¼ には 「果徳涅槃者」 とある。
無為の境 阿弥陀仏の浄土 (真実報ほう土ど) のこと。
慈尊 慈悲ある世尊。 「序分義」 の当分では釈尊を指す。 引用の意では釈尊・阿弥陀仏の二尊を指すか。
名号 ここでは称名の意。
行にあらず… →非ひ行ぎょう非ひ善ぜん
正観・邪観 正観は仏の経説と合致する観法、 邪観は仏の経説と合致しない観法。
智愚の毒 自力のさかしい智慧ちえの毒や愚痴ぐち (無明) の毒。
歴劫迂回の菩提心 自力聖道の菩提心のこと。 長い時間をかけて修行を積んで証さとりに至るからこのようにいう。
無上菩提の心 この上ないさとりを求める心。 →菩ぼ提だい心しん
施与…たまふなり 通常は 「施与して、 ともに仏道に向かふなり」 と読む。 親鸞聖人は如来回え向こうの義をあらわすために、 このように読みかえた。
決誓猛信 確固とした決けつ定じょうの信心。
世間甚難信 自力の心では決して信じることができないという意。 本願救済の法は、 世間の常識的な道理を超越しているから、 自力にとらわれた心では信じ難い法であるということ。 そのことはまたこの法の尊高をあらわしている。
律宗の用欽のいはく… 引用は用欽の ¬阿弥陀あみだ経きょう疏しょ超ちょう玄げん記き¼ の文ともいわれるが、 同書は現存しない。
報 果か報ほう。
功 修行の功。
阿弥陀如来… 現存の ¬聞もん持じ記き¼ にはこの文はない。
後序 ¬楽邦らくほう文類もんるい¼ (宗暁しゅうぎょう編) の後序は南宋なんそう代、 天竺寺の学僧であった光遠こうおん (諱いみなは善月、 1149-1241) が書いた。
自障自蔽 みずからさとりの道をさえぎり、 みずから正しい道を蔽おおいかくすこと。
信楽に一念 →補註7
信楽開発の時剋の極促 信心が開けおこる最初の時。
広大難思の慶心 広大で思いはかることのできない法をいただいたよろこびの心。
至心に回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。
読誦に…なけん 通常は 「読誦し、 他のために解脱することあたはずは、 利益するところなけん」 と読む。
諸有のため 人天等の果か報ほうを得るため。
持読誦説 教典を受じゅ持じし、 理解して読み、 記憶して唱え、 他人のために解説すること。
聞といふは… 以下は第十八願成就文の 「その名みょう号ごうを聞きて信心歡喜せんこと、 乃至一念せん」 等の意についての解釈。 はじめに 「聞」 が 「信」 であることを釈する。
発心 阿弥陀仏より回え向こうされた信心。
道 智慧のこと。
仏道の正因 仏ぶっ果かを得る決定的な因。
是心是仏 ¬観経¼ の当分は、 観仏の心に仏が顕現することを 「心が仏を作つくる」 といったのであるが、 親鸞聖人は、 如来回向の信心は仏道の正因であるから、 仏に作なるという意に転じた。
この心これ仏なり 如来回向の信心の本質は仏心であることをいう。
質多 梵語チッタ (citta) の音写。 心の意。
迂 遠まわりすること。
回 まわり道すること。
願成就一実円満の真教 本願成就文に示されているように、 本願が成就して万人を平等に成仏せしめる絶対唯一の真実円満の教え。
一念須臾のあひだに きわめて短い時間に。 往生すると同時に。
往相の一心 他た力りき信心しんじん。 阿弥陀仏よりたまわった信心のこと。
生 四し生しょうのこと。
趣 六趣 (六道ろくどう) のこと。
四大の暴河 四し暴流ぼるのこと。
凡夫の…欣はざるべからず 通常は 「凡夫の生死は貪るべからざれども厭はず。 弥陀の浄土は軽んずべからざれども欣はず」 と読む。
よく…願はんものは 通常は 「よくみづから思量せよ。 すでによく今身にかの国に生ぜんと願ずるものは」 と読む。
真の仏弟子 →補註6
王日休がいはく… 引用は ¬龍りゅう舒じょ浄じょう土ど文もん¼ の後跋の一節で、 唯心ゆいしん居士こじ荊渓けいけい周しゅう葵きの文。 →王おう日にっ休きゅう
神方 不思議な方法。
次いで弥勒のごとし →次し如にょ弥み勒ろく
報地 因いん位にの修行が報いあらわれた地位。
律宗の用欽師のいはく… 引用は用欽の ¬阿弥陀あみだ経きょう疏しょ超ちょう玄げん記き¼ の文ともいわれるが、 同書は現存しない。
臨終… →補註2
喜悟信の忍 三忍さんにんのこと。
教観 教相と観法。 教相とは教義を明らかにすること。 観法とは法を心に観ずること。 すなわち教義と実践のこと。
業儒 儒学を業なりわいとする人。 儒学者のこと。
劉 劉りゅう程てい之しのこと。
雷 雷らい次じ宗そうのこと。
八万四 →八万はちまん四し千せんの法門ほうもん
愛欲の広海 愛執・恩愛が深いことを海に喩えていう。
名利の太山 名誉心や、 物質的欲望が大きいことを山に喩えていう。
それ仏… 以下、 難化の三機 (五逆・謗法・一闡提) をあげて所被の機 (仏の救いをうける機類) を明かす。
迦葉 →迦か葉しょう菩ぼ薩さつ
たとへば…治すべからず 通常は 「たとへば病あり、 必死にして治することなきがごとし。 もしは瞻病随意の医薬あるも、 もしは瞻病随意の医薬なきも、 かくのごとき病はさだめて治すべからず」 と読む。
瞻病 看病人。
随意の医薬 適切な医者と薬。 仏の本意である随自意の法に喩える。
仏菩薩に…発せん この文は ¬涅槃経¼ の原文では、 次の 「もし声しょう聞もん・縁覚えんがく・菩薩ありて…発せしむることあたはず」 から三十四字 (原漢文の字数) をへだてた後にある。
王舎大城 王舎おうしゃ城じょうのこと。
口の四悪 十じゅう悪あくのうちの口業による悪。 妄もう語ご・綺語きご・悪あっ口く・両りょう舌ぜつのこと。
貪恚愚痴 三毒さんどくのこと。
父の王 頻びん婆ば娑しゃ羅ら王のこと。
横に 道理に背いて。 非道にも。
悔熱 後悔の念にさいなまれて熱がでること。
一切知見して…修習して 一切知見は一切を知り尽すこと。 通常は 「一切知見、 自在定を得て、 畢竟じて清浄梵行を修習して」 と読む。
上業 すぐれた行為。
下業 劣った行為。
正法の王 正しく国を治めた王。 頻婆娑羅王のこと。
生の法 生れかた。
騾腹の懐妊 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻十二) 等には、 騾馬は子を妊はらんで死す、 とある。
余業 過去の業の残り。
殺生を…長きを得 大谷派本願寺蔵本 (板東本) には 「彼の寿命の長を殺すをもつてのゆゑに」 とある。 また底本には 「寿命を殺すをもつての彼のゆゑに」 とある。 ここでは ¬高麗こうらい版大蔵経¼ による。
毒薬…あらんや 通常は 「毒薬、 罪にあらず、 人いかんぞ罪あらん」 と読む。
いずくんぞ…いなや 通常は 「安眠を得うやいなや」 と読む。
善巧瞻病 たくみな看病。
金剛智 煩悩ぼんのう罪障を破る力をもつ仏の智慧ちえを一切を打ち砕く金剛こんごうに喩えていう。
弟提婆達多 提だい婆ば達だっ多たが弟となっているが、 実際は従弟。
衆僧を破壊し… 以下、 五ご逆ぎゃく罪ざいのうちの破は和わ合ごう僧そう、 出しゅつ仏身ぶっしん血けつ、 殺せつ阿羅あら漢かんにあたる。
蓮華比丘尼 蓮華色比丘尼ともいう。 阿羅漢を証し、 神通じんずう第一といわれたが、 提婆達多のあやまちを誡めて殺害されたという。
大王一逆を… ここからは殺害された父、 頻びん婆ば娑しゃ羅らの空中の声。
悶絶躄地 もだえ苦しんで気絶し地面に倒れること。
大臣… 底本に出された大臣と六師の名のうち、 日月称、 那闡邪毘羅肱子、 阿嗜多翅金欽波羅、 婆蘇仙、 加羅鳩駄迦旃延、 尼乹陀若犍子は高麗こうらい版大蔵経等によって改めた。
一切有為の衆生 無常なる迷える衆生。
無為の衆生 常住じょうじゅう不ふ変へんの真理をさとった人々。
天中の天 五天すなわち世天 (世間の人王)、 生天 (天界の神々)、 浄天 (声しょう聞もん・縁覚えんがく)、 義天 (菩薩)、 第一義天 (仏) のなかの第一義天である釈尊を指す。
六住 十じゅう地じのうちの初しょ地じから六地を指すという説、 十じゅう住じゅうのうちの初住から六住を指すという説とがある。
時節日月星宿 日のよしあし、 星回りのよしあしなどのこと。
このゆゑに…しくことなし 高麗こうらい版大蔵経では 「日」 は 「因」 となっている。 この場合は 「このゆゑに近因は善友にしくはなし」 と読む。
前路 釈尊のもとへ向かう途中。
二つの語 悪をなして回え心しんせず、 地獄に堕ちた例 (毘瑠璃王・瞿伽離比丘びく) と、 悪をなして回心し、 地獄に堕ちることを免れた例 (須那刹多)。
毘富羅山 毘富羅は梵語ヴィプラ (Vipula) の音写。 広博脇山と漢訳する。 インドのマガダ国にある山の名。
仙 仙人のこと。
得ざる…坐る 底本には 「このゆゑにまさしく坐を得ず、 この人駈りて遂に去らしむ」 とある。 ここでは寂如上人校訂本を参照して訓読した。
大王…罪報あらん 通常は 「大王いかんがなしといふ、 それ罪あるものはすなはち罪報あり」 と読む。
貪狂 貪欲とんよくによる錯乱。
四衢道 街の四つ角。
山谷の響きの声 やまびこ。
熱の時の炎 かげろう。
殺法殺業殺者殺果 殺害の仕方、 殺害という行為、 殺害する人、 殺害によるその結果。
空見の人 あらゆるものの体はもともと実体があるのではなく、 空くうであると知った人。
有見の人 あらゆるものに固定した実体があると考える人。
有有見のもの 有見にさらに執着する人。
無有見のもの 有見を否定した人。
常見の人 涅ね槃はんの常住じょうじゅうをさとっている人。
無常見のもの 涅槃の常住をさとらない人。
常常見のもの 常を常と執ずる偏見の人。
伊蘭子 伊蘭の種子。
無根の信 煩悩ぼんのう心より生じた信でないこと。 すなわち他力回え向こうの信心をいう。
後宮采女 後宮 (王妃の宮殿) に仕える女官たち。
天身 浄天身のこと、 すなわち聖しょう者じゃの身。
諸仏の弟子 ここでは真の仏弟子となった阿あ闍じゃ世せのことを指していう。
善巧句義において 仏の説法は言葉も意味も巧みであるという意。
甚深秘密の蔵 はかりしれない深いいわれが蔵されているという意。
所有広博の言を顕示す 仏が所有する広大な義理を博く説くこと。
粗 粗語。 きびしい言葉。
第一諦 第一だいいち義ぎ諦たいのこと。
無無義の語 無義でない語のことで、 仏の言葉には何一つ無意味なところはないということ。
無因また無果なり 涅ね槃はんの境地が因果の束縛を離れていることをいう。
無生また無滅なり 涅槃の境地が消しょう滅めつを離れていることをいう。
諸結 煩悩ぼんのうの束縛。
鬼魅に着はされて 魔ものにとりつかれて錯乱するという意。
業因縁 悪業あくごうをつくらねばならないような因縁。
大師聖人 ここでは阿あ闍じゃ世せが提だい婆ば達だっ多たに敬意を表していったもの。
我我所 我が見けんと我が所しょ見けん。
付嘱 ここではまかせるというほどの意。
痴人 愚か者。 ここでは提だい婆ば達だっ多たのこと。
大智を聴聞して 高麗こうらい版大蔵経では 「聴聞」 は 「聡明」 となっている。 この場合は 「聡明大智にして」 と読む。
わが悪…報ふべし 高麗こうらい版大蔵経では 「悪」 は 「要」 となっている。 この場合は 「われ要かならず、 まさにかくのごときの大怨を報ふべし」 と読む。
外人 宮廷外の人々。
内の人 宮廷内の人々。
婆羅留枝 指が折れた者という意。
四種の兵 像兵・馬兵・車兵・歩兵。
須陀洹 頻びん婆ば娑しゃ羅ら王おうは須しゅ陀だ洹おんを成じていたという (¬観経¼ では、 幽閉中に阿那あな含ごんを成じたという)。
この事…告げたまはく 高こう麗らい版大蔵経は 「知是事故告阿難」 となっている。 この場合は 「この事を知るがゆゑに阿難に告ぐ」 と読む。
実義 大乗の実義を体得した本当の意味の菩薩。
仮名 大乗の実義を体得していない名前だけの菩薩。
利他の信海 他力回え向こうの信心のこと。
金剛不壊の真心 金剛こんごうのように堅く、 破壊されることのない信心。
伊虫 この虫という意。
華合して… 蓮れん華げの華の中に包まれて、 非常に長い間そのなかから出ることができないことをいう。
斉同不退 浄土に往生すれば、 みな一味平等のさとりをひらいて、 再び迷界に退転しないことをいう。
住定の菩薩 無漏むろ定に住している最高位の菩薩。
和合縁 教団を構成する縁となるもの。 僧院、 生活用具など。
障破留難 仏法の流布をさまたげ攻撃し危難を加えること。
隠蔽覆蔵 仏法の光を覆い隠して、 広まらないようにすること。
駈使債調 労役に従事させ、 債務や税を負担させること。
謗じて因果なく 通常は 「因果を謗無し」 と読む。
不与取 与えられないものを盗ること。 偸ちゅう盗とうのこと。
虚誑語 うそ、 いつわりの言葉。
底本は◎真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆本。 Ⓐ本派本願寺蔵鎌倉時代写本、 Ⓑ高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵存如上人授与本、 Ⓓ本派本願寺蔵版本 と対校。
親鸞→Ⓑ巒
徒→Ⓑ従
慧→Ⓒ恵
大 Ⓐ「十八念仏往生之願往相廻向之願」と左傍註記
无 Ⓐ「宝積経十八願言」と右傍註記
已→ⒶⒷⒹ己
無 Ⓐ「願成就」と左傍にあり
菩提流支訳 ◎下欄補記→ⒶⒹ菩提流支[訳] ⒷⒸに無し
有情 ◎二字抹消し「有情」と上欄訂記→ⒷⒸ衆生
情 Ⓐ「生」と右傍註記し、 さらに「イ本」と左傍註記
除クト↢五无間誹謗正法及謗聖者ヲ↡→ⒶⒹ除クト↧五无間誹↢ソシリ謗正法ヲ↡及謗↦ソシラムヲバ聖者ヲ↥→Ⓑ除クト↧五无間謗ソシリ↢正法ヲ↡及謗ソシラムヲ↦聖者ヲ↥
誹 Ⓑに無し
慧→Ⓒ恵
論 Ⓐ「信成就」と左傍にあり
慧→Ⓒ恵
不如実 Ⓐ「イ本ニアリ」と左傍註記 不 Ⓑになし
「淳…字」34字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑに無し 淳字 Ⓒに無し
丨 Ⓐに無し
字音卜→Ⓒ音
「薬…字」15字 Ⓒに無し
念不→Ⓒ不念
論 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
巒→Ⓒ鸞
光 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
云→Ⓑ言
又云 Ⓑ「自此観経三心」と右傍に張紙
頭燃 右Ⓑカウベノヒヲ
「由…也」13字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑに無し 由字 Ⓒに無し
也 ⒶⒷに無し
学→覚
慧→恵
「為…也」14字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑに無し 為字 Ⓒに無し
喩 ◎Ⓐ喩字 サトス と上欄註記
路→ⒶⒹ路[見]
焔 ◎燄ホノヲを焔ホノヲケムリアルナリと上欄訂記し、 その左傍に炎ケムリナキホノオと註記 Ⓐ炎ケムリナキホノヲと上欄註記 左Ⓐホノヲ ケムリアルナリ
岸 ◎「河」を「岸」と上書訂記
堕→随
喩 ◎Ⓐ喩字 オシヘナリ と上欄註記
焔 ◎一字抹消し焔エムと上欄訂記
上→Ⓐ[已上]上
大 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
聞 Ⓑ「ヒ歟」と左傍註記 Ⓒ「一声イ」と右傍註記
心 Ⓑ「念」と上欄註記 Ⓒ「念イ」と右傍註記
歟 ◎上に一字抹消あり
言 ◎上欄補記
言 ◎右欄補記
即 ◎欲を即と上書訂記
賀 右◎ヨロコブ 左Ⓑヨロコブ
慶 右Ⓑケイ反 左Ⓐケイ反Ⓑキヤウ反
作…也23字 ◎Ⓐ上欄註記 Ⓑに無し
作字 Ⓒに無し
洛→Ⓒ落
役也始也→Ⓒ始也役也
誠 左Ⓑ―
雑 左Ⓑ―
験 左Ⓑ―
賀 左Ⓑヨロコブ
慶 右◎ケイⒶⒷケイ反 左Ⓐヨロコブ
訓 左Ⓑオシヘ
心→Ⓒ心[也]
海 左Ⓑ―
穢 左Ⓑ―
汚 右◎ワ反アセⒶワ反 左◎ヲ反ケガスⒶアセ ケガス反ヲ反Ⓑケガス
施 左Ⓐホドコス ハヅストナリ
蓋 左Ⓑ―
不 Ⓐ「成就信」と右傍にあり
慧→Ⓒ恵
无 Ⓐ「信」と左傍にあり
敬→Ⓒ欲(「敬イ」と右傍註記
乃至→Ⓑ已上
言 Ⓒ「根」と右傍註記
退 Ⓒ「スルコトイ」と左傍註記
光 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
云→Ⓑ言
要→Ⓑ出
涅 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
実 Ⓑに無し
釈 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
涅 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
値遇 左Ⓑ―
急 左ⒶⒷイソガシ
喜→Ⓒ喜[愛楽]
涅 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
以 ◎上欄補記 Ⓑに無し
畢 Ⓑ或本必と上欄註記
言→Ⓑ云 Ⓐ「云イマ本」と右傍註記
華 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
不→Ⓒ不[可]
弁→Ⓒ辨
若 Ⓑに無し
論 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
註→Ⓑ主(「註イ」と上欄註記)
有 Ⓒ「情イ」と右傍註記
愛→Ⓒ[歓喜]愛
浄 Ⓐ「成就信」と左傍にあり
為 右Ⓐシタマヘリ ニトノタマヘリⒷニシタマヘリ
光 Ⓐ「信」と左傍にあり
已上 ◎「問」を「已上」と上書訂記
真 ◎「曰」を「真」と上書訂記
路 左ⒶⒷ
道 左ⒶⒷ
得 Ⓑ「徳イ」と上欄註記
疑蓋 左ⒶⒷ
貴賎 左ⒶⒷヨキヒト イヤシキ
緇 左Ⓑアマホフシ
説→ⒶⒷⒹ称 Ⓒ「不可称イ在之」と右傍註記
称→ⒶⒷⒹ説
竪 左ⒶⒷタテサマ
心 ◎右傍補記
願作仏心 ◎右傍補記
錯 左Ⓑ―
論 Ⓐ「信」と左傍にあり
曰→Ⓑ云
摂取 左Ⓑ
施与 左ⒶⒷ
元 Ⓐ「信」と左傍にあり
昭→ⒷⒸ照
超越スル成仏之法ナリ→Ⓐ超↢越 ススル成仏之法ナリ↡→Ⓑ超↢越ヲチス成仏之法ヲ↡
強 左ⒶⒷコハシ
醜 左ⒶⒷミニクシ
宰 左ⒶサイⒷツカサドル
醜…也16字→Ⓐ超↢越ス成仏之シ法。可カ謂ヰ一切世間甚難信也ヤトイフハ→Ⓑ超↢越成仏之シ法↡。可シト↠謂フ↢一切世間甚難信↡也ヤトイフハ→Ⓒ超↢越ス成仏之法ヲ↡。可カ↠謂ヰ↢一切世間甚難信↡也ヤト云ハ
醞売 左ⒶⒷウリカフ
楽 Ⓐ「信」と左傍にあり
間→Ⓐ問
促 左ⒶⒷ
彰 左ⒶⒷ
向 右Ⓑセシメタマヘリ
喜→Ⓒ喜[受楽]
涅 Ⓐ「信」と左傍にあり
説→Ⓑ脱(「説イ」と上欄註記)
光 Ⓐ「信」と左傍にあり
形アラハス↢身心ノ悦予之貌カホバセヲ↡→Ⓐ形アラハス↢身心ノ悦エチ予ヨヨロコブヲ↡之貌カホバセ→Ⓑ形アラハス↢身心悦エチ予ヨヨロコブヲ↡之貌カホバセ→Ⓒ形アラハス↢身心ノ悦予ヲ↡之貌カホバセ
摂スル↢多少之言↡→Ⓑ摂スル↢多少ヲ↡之言 バ→Ⓓ摂スル↢多少ヲ↡之言
冥→Ⓐ宜 左ⒶⒷクラシ
論 Ⓐ「信」と左傍にあり
光 Ⓐ「信」と左傍にあり
止 Ⓐ「信」と左傍にあり
提→ⒶⒷ薩
迂 左ⒶⒷメグル
権 左ⒶカリナルナリⒷカリナリ
土 ◎右傍補記
迂廻 左ⒶⒷメグル カヘル
品位 左Ⓐシナワイ クラヰ
階 左ⒶシナⒷシナワイ
次 左Ⓑクラヰシナ
傾→Ⓓ頃
大 Ⓐ「信」と左傍にあり
言→Ⓑ云
所 ◎に無し(上欄に補記の跡があるが不明)
大 Ⓐ「信」と左傍にあり
友謙言→ⒶⒹ友謙[三蔵訳]言→Ⓑ言友謙[三蔵訳也]→Ⓒ言支謙[三蔵訳]
涅 Ⓐ「信」と左傍にあり
光 Ⓐ「信」と左傍にあり
寺和尚 Ⓑ師
淪→Ⓒ輪
已上 Ⓑになし
有情 ◎「衆生」を「有情」と右傍訂記→ⒷⒸ衆生
悪→◎Ⓑ善(Ⓑ「悪歟」と右傍註記)
波→Ⓑ般
出→Ⓑ要 Ⓒ「出イ」と左傍註記
乃至→Ⓑ已上
弘 Ⓒ「伝イ」と左傍註記
忍 左Ⓐ
唱→Ⓑ昌
昭→ⒷⒸ照
社 Ⓒ「堂造」と右傍註記
劉 Ⓑ「左大臣」と左傍註記
柳子厚 ⒶⒷⒸ「右大臣」と左傍註
土→Ⓑ上(土と左傍註記)
云→Ⓑ言
偽 左ⒶⒷイツワル
鸞 Ⓑに無し
惑 左Ⓐマド
快 Ⓒ「決イ」と左傍註記
傷 右Ⓑシヤウノ反 左Ⓐシヤウ反Ⓑイタム
一 Ⓑに無し
知→ⒶⒷⒹ智
答→Ⓑ益(答」と左傍註記)
貌→Ⓑ藐
屑 Ⓑ唇イと右傍註記 左Ⓑカハク
燋→Ⓑ燥
慧→恵
目→ⒶⒷ日
故 Ⓑに無し
无→Ⓒ無[有]
王 左Ⓑノ
後→Ⓑ従
身→Ⓑ腹腹
雖モ↠破ト↢母ノ身ヲ↡実亦无シ↠罪→Ⓑ雖モ↠破ト↢母ノ腹ヲ↡腹実ニ亦无シ↠罪
腹→Ⓑ等
賖→Ⓑ舎
梨 Ⓑ「離歟」と左傍註記
滅→Ⓑ除
滅除→Ⓒ除滅
徳→Ⓑ得
特→Ⓑ持
辜→ⒶⒷ過トガ咎ツミ
数数→Ⓑ数
邪→Ⓒ耶
邪→ⒷⒸ耶
金 Ⓒ舎イ本と右傍註記
羅→ⒶⒷⒸⒹ羅乃至
彼 ⒶⒹに無し Ⓒ故イと右傍註記
長→ⒶⒹ彼 Ⓑになし
以ノ↢殺彼ノ寿命ノ長ヲ↡故ニ→ⒶⒹ以ノ↠殺コロスヲ↢寿命ヲ↡彼ノ故ニ→Ⓑ以ノ↠殺スヲ↢彼ノ寿命ヲ↡故ニ→Ⓒ以ノ↠殺ヲ↢彼ノ寿命ノ長ヲ↡故ニ(彼に故イと右傍註記)
者→Ⓑ者[実ニ亦无シ↠害若シ无我ナラ者バ復无ケム↠所 ロ↠害スル何以ノ故ニ若有我ナラ者バ]
非↢罪人↡→Ⓐ非ルガズ ↦↢人ニ↡無キ↦罪↥罪人ニ↥(人無罪に「イマノ本ニアリ三字」と左傍註記し、 罪人に「今本ニ无二字ハ」と左傍註記)→Ⓑ非レバ↠人ニ↢無キガ↞罪
非→Ⓑ非[人無罪] Ⓐ「↠人ニ無キ↟罪イマノ本ニアリ三字」と下欄註記 左Ⓐズ
罪人 Ⓑになし Ⓐ「今本ニ无二字ハ」と左傍註記
云 Ⓑ人イと上欄註記
延→ⒷⒸ延乃至
畏→ⒷⒸ畏乃至
犍→Ⓒ提イと左傍註記
所ナリ↠不ル↠能ハ↠治スルコト→Ⓑ所ナリ↠不ル↢能治スルコト↡(不に王と上欄註記)
辜→Ⓐ辜[咎]
飯→Ⓑ鈑
梓 Ⓒ揺エウと左傍註記 左ⒶハタラクⒷハタラク反
天→Ⓑ汝
略→Ⓑ抄
徳→Ⓑ得
賖梨→Ⓑ舎離 Ⓐ「舎離」と下欄註記
邪→Ⓒ耶
嗜→Ⓑ耆
婆→Ⓐ波
世→ⒶⒷⒹ世[王]
白シテ↠王ニ言イハマク↢耆婆ニ↡→Ⓑ白王言イハマク耆婆
白 ◎右傍補記
大→Ⓒ[耆婆答言]大
相似→Ⓑ似相
若→Ⓒ者
災 ◎「或本遇火」と上欄註記 ⒶⒹ遇火
到→Ⓑ至
設→ⒶⒷⒹ誤
獄 Ⓒ「仏告」と左傍註記
鹿 Ⓑに無し
逐→Ⓑ遂
生ズ↢瞋イカテ悪心↡→ⒶⒹ生ズ↠瞋イカラシンヲ悪心アテ
王 Ⓑに無し
幻 Ⓑに無し
殺→Ⓒ[有]殺
其非→Ⓑ非其
実 Ⓑに無し→Ⓒ[真]実
謂→Ⓒ為
者 Ⓑ「因歟」と右傍註記 Ⓒ「因イ」と右傍註記
為ス↢非无有ト↡有見者 ノハ→為ス↠非ズト↠无ニ有有見ノ者 ノハ
大王夫→Ⓑ夫大王
者 Ⓑに無し
以↢是レ見↟仏所ノ↠得ル功徳→ⒶⒹ以テ↠是ヲ見ミタテマツリ↢仏ノ所ノ↠得エタマフ功徳ヲ↡→Ⓑ以テ↠是ヲ見マツリ↢仏ノ所ノ↠得エタマフ功徳ヲ↡→Ⓒ以テ↠是ヲ見ツル↢仏ノ所ノ↠得タマフ功徳ヲ↡
頌 Ⓑに無し
亦→Ⓑ及
結→Ⓑ果(「或本結字也」と上欄註記)
修→Ⓑ故
妙徳 Ⓒ「文殊」と左傍註記
原→Ⓒ厚(原イと右傍註記)
左ⒶⒷトモ
法 Ⓐ往イと右傍注記
罪→Ⓐ羅(「罪」と上欄註記)
達→Ⓒ達[多]
 Ⓒ留ルと上欄註記
獲 左Ⓐシム
除 Ⓑに無し
之 Ⓑに無し
殺→Ⓐ刹
波→ⒷⒸ婆
落→Ⓒ覆(左傍に訂正符号あり、 「落イ」と左傍註記)
已上 Ⓐに無し
也 Ⓒに無し