安楽行道転経願生浄土法事讃 巻下
沙門*善導集記
◎転経分 ○第一段
【43】*高座入文。
高座入文。
「▲かくのごとくわれ聞きたてまつりき。 一時、 仏、 舎衛国の*祇樹給孤独園にましまして、 ▲大比丘の衆、 千二百五十人とともなりき。 みなこれ大阿羅漢なり。 衆に知識せらる。 *長老*舎利弗・摩訶目犍連・摩訶迦葉・摩訶迦旃延・摩訶倶絺羅・離婆多・周利槃陀伽・難陀・*阿難陀・羅睺羅・憍梵波提・賓頭盧頗羅堕・迦留陀夷・摩訶劫賓那・薄拘羅・阿楼駄、 かくのごとき等のもろもろの大弟子、 ならびにもろもろの*菩薩摩訶薩、 文殊師利法王子・阿逸多菩薩 (弥勒)・乾陀訶提菩薩・常精進菩薩、 かくのごとき等のもろもろの大菩薩、 および*釈提桓因等の無量の諸天大衆とともなりき」 と。
高座 道場の高座の導師。
祇樹給孤独園 舎衛国 (コーサラ国の首都。 現在のサヘート・マヘートの地と推定される) の南にあった祇園精舎のこと。
長老 年長の比丘、 また智徳ある比丘に対する尊称。
菩薩摩訶薩 菩薩に同じ。 摩訶薩は梵語マハーサットヴァ (mahāsattva) の音写。
摩訶薩埵とも音写する。 偉大な人の意。 →
菩薩
釈提桓因 梵語シャクラ・デーヴァーナーム・インドラ (Śakra-devānām-indra) の音写。 帝釈天のこと。 →
帝釈天
「如↠是我聞。一時仏、在↢舎衛国祇樹給孤独園↡、与↢大比丘衆、千二百五十人↡倶。皆是大阿羅漢、衆所↢知識↡。長老舎利弗・摩訶目犍連・摩訶迦葉・摩訶迦旃延・摩訶倶絺羅・離婆多・周利槃陀伽・難陀・阿難陀・羅睺羅・驕梵波提・賓頭盧頗羅堕・迦留陀夷・摩訶劫賓那・薄拘羅・阿楼駄、如↠是等諸大弟子、并諸菩薩摩訶薩、文殊師利法王子・阿逸多菩薩・乾陀訶提菩薩・常精進菩薩、与↢如↠是等諸大菩薩及釈提桓因等無量諸天大衆↡倶。」
【44】*下、 高に接ぎて讃じていへ。
下高 下は道場の下座、 高は道場の高座。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 諸仏の大悲心無二なり。 ▼方便の*化門等しくして殊なることなし。 ˆ釈尊はˇ かの*荘厳無勝の土を捨てて、 *八相示現して閻浮に出でたまふ。 あるいは*真形を現じて*物を利し、 あるいは*雑類に同じて凡愚を化す。 身を六道に分ちて停息することなし。 変現よろしきに随ひて*有流を度す。 有流の見解心一にあらず。 ゆゑに▼八万四千の門あり。 門々不同にしてまた別にあらず。 別々の門還りてこれ同なり。 同なるゆゑはすなはちこれ如来の*致なり。 別なるゆゑはまたこれ慈悲の心なり。 悲心をもつて念々に三界を縁ずるに、 人天・*四趣罪根深し。 過・現の諸仏みな来りて化すれども、 無明・*業障をもつてあひ逢はず。 慚愧す、 釈迦の弘誓重くして娑婆十悪の叢を捨てたまはざることを。 希に道場に遇ひて浄土を聞く。 *神を騰げて永く逝きて*煩篭を出でん。 衆等、 傷心しともに悲嘆して、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
化門 衆生を教化し利益する法門。 「信文類」 の引用では 「仮門」 となっている。
荘厳無勝の土 無勝荘厳国。 西方四十二恒河沙の諸仏の国土の彼方にある釈迦仏の浄土。
真形 真の仏身。
物 衆生の意。
雑類 さまざまな機類。
有流 有漏に同じ。
煩悩 (漏) のある存在。 →
有漏
致 趣意。 おぼしめし。
四趣 四悪趣のことで、 地獄・
餓鬼・
畜生・
阿修羅をいう。 →
悪趣
神 神識。 こころ。
煩篭 煩悩によってとじこめられた迷いの世界を篭に喩えていう。
願往生、願往生。諸仏大悲心無二、方便化門等無↠殊。捨↢彼荘厳無勝土↡、八相示現出↢閻浮↡。或現↢真形↡而利↠物、或同↢雑類↡化↢凡愚↡。分↢身六道↡無↢停息↡。変現随宜度↢有流↡。有流見解心非↠一。故有↢八万四千門↡、門門不同亦非↠別、別別之門還是同。同故即是如来致、別故復是慈悲心。悲心念念縁↢三界↡。人天四趣罪根。過現諸仏皆来化、無明業障不↢相逢↡。慚愧釈迦弘誓重、不↠捨↢娑婆十悪叢↡。希遇↢道場↡聞↢浄土↡、騰神永逝出↢煩篭↡。衆等傷↠心共悲嘆、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【45】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 釈迦如来正覚を成じてより、 *四十九載衆生を度したまふ。 五天竺国 (印度) にみな化を行ずるに、 邪魔・外道ことごとく*帰宗す。 天上天下に仏に過ぎたるはなし。 慈悲をもつて苦を救ひたまふ。 実に逢ひがたし。 あるいは神光を放ちて六道に遍す。 光触を蒙るものは慈心を起す。 あるいは住し、 あるいは来るに、 みなことごとく益す。 三塗永く絶えて*追尋を断ず。 あるいは大地・山・河・海を震ふ。 *萌冥の信いまだ深からざるを覚せしめんがためなり。 あるいはみづから法を説きて教へてあひ勧め、 展転してあひ将て*法林に入らしむ。 法林はすなはちこれ弥陀国なり。 逍遙快楽してあひ侵さず。 衆等、 心を傾けてみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
四十九載 載は年の意。 釈尊の説法の年数。 ¬修行本起経¼ などによれば、 釈尊成道は三十歳とする。 その成道から八十歳の入滅に至る五十一年間のうち成道と入滅の年を除いた四十九年間をいう。 なお、三十五歳成道が一般的。
帰宗 帰依し仕えること。
追尋 おいもとめることで、 生死流転の意。
萌冥 まよっている人々。
法林 仏の教えが遍満していることを林に喩える。
願往生、願往生。釈迦如来成↢正覚↡四十九載度↢衆生↡。五天竺国皆行↠化、邪魔外道尽帰宗。天上天下無↠過↠仏。慈悲救↠苦、実難↠逢。或放↢神光↡遍↢六道↡、蒙↢光触↡者起↢慈心↡。或住或来皆尽益。三塗永絶断↢追尋↡。或震↢大地・山・河・海↡。為↠覚↢萌冥信未↟。或自説法教相勧、展転相将入↢法林↡。法林即是弥陀国。逍遥快楽不↢相侵↡。衆等傾↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【46】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ▼如来の教法は元無二なり。 ▼まさしく衆生の機不同なるがために、 *一音をもつて演説したまふに、 縁に随ひて悟る。 *残結を留めずして*生空を証す。 あるいは神通を現じ、 あるいは法を説く。 あるいは外道を服して魔蹤を滅す。 みづから一身を利して*縛を免るといへども、 悲心のあまねく益すること絶えて功なし。 *灰身滅智の無余の証なれども、 二万劫尽きてまた心を生ず。 生心覚動して身また現ずれば、 諸仏先づ教へて*大乗を発さしむ。 *衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
一音を…悟る 仏の教えは本来ただ一つであるのに、 衆生はそれぞれの素質能力に応じてさとるという意。 ¬維摩経¼ 「仏国品」 等に出る。
残結を留めず 小乗の阿羅漢は少しも煩悩 (結) をとどめないという意。
生空 人空に同じ。 実体としての自我は存在しないということ。
灰身滅智…また現ずれば 小乗のさとりは身心ともに全くの無に帰した境地であるけれども、 二万劫という時を経て、 再び心が生じ、 その心が動いて身体がまた現れるという意。
大乗を発さしむ 小乗を捨てて大乗に帰入する心をおこさせる。
衆等 大衆のこと。 道場に参集している人々。
願往生、願往生。如来教法元無二。正為↢衆生機不同↡、一音演説随↠縁悟。不↠留↢残結↡証↢生空↡。或現↢神通↡或説法、或服↢外道↡滅↢魔蹤↡。自利↢一身↡雖↠免↠縛、悲心普益絶無↠功。灰身滅智無余証。二万劫尽復生↠心。生心覚動身還現。諸仏先教発↢大乗↡。衆等迴↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
【47】高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 菩薩大衆*無央数なり。 文殊師利もつとも尊たり。 大慈悲を発して苦行を行じ、 *弘願に違せずして衆生を度す。 あるいは上好荘厳の相を現じ、 あるいは上好荘厳の身を現ず。 *含霊*覩見してみな喜びを生ず。 ために妙法を説きて*真門に入らしむ。 十方仏国に身みな到り、 仏の*神光を助けて*法輪を転ず。 衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
願往生、願往生。菩薩大衆無央数。文殊師利最為↠尊、発↢大慈悲↡行↢苦行↡、不↠違↢弘願↡度↢衆生↡。或現↢上好荘厳相↡、或現↢上好荘厳身↡。含霊覩見皆生↠喜。為説↢妙法↡入↢真門↡。十方仏国身皆到、助↢仏神化↡転↢法輪↡。衆等迴↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【48】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ▼仏と声聞・菩薩衆、 同じく*舎衛に遊び*祇園に住し、 三塗を閉ぢ六道を絶たんと願じて、 無生浄土の門を開顕したまふ。 人天大衆みな来集して、 尊顔を*瞻仰して*未聞を聴く。 仏を見たてまつり経を聞きて同じく悟を得、 *畢命に心を傾けて宝蓮に入る。 誓ひて弥陀の安養界に到り、 *穢国に還来して人天を度せん。 願はくはわが慈悲際限なくして、 長時長劫に*慈恩を報ぜん。 衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
祇園 祇樹給孤独園の略称。 舎衛国 (コーサラ国の首都) の南にあった精舎。
未聞 いままでに聞いたことのない尊い教え。
願往生、願往生。与仏↢声聞・菩薩衆↡、同遊↢舎衛↡住↢祇園↡願↧閉↢三塗↡絶↦六道↥、開↢顕無生浄土門↡。人天大衆皆来集、瞻↢仰尊顔↡、聴↢未聞↡。見↠仏聞↠経同得↠悟、畢命傾↠心入↢宝蓮↡。誓到↢弥陀安養界↡、還↢来穢国↡度↢人天↡。願我慈悲無↢際限↡、長時長劫報↢慈恩↡。衆等迴↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第二段
【49】高座入文。
高座入文。
「▲その時に仏、 *長老舎利弗に告げたまはく、 これより西方に十万億の仏土を過ぎて世界あり、 名づけて極楽といふ。 その土に仏まします、 阿弥陀と号す。 いま現にましまして法を説きたまふ。 ▲舎利弗、 かの土をなんがゆゑぞ名づけて極楽となす。 その国の衆生、 もろもろの苦あることなく、 ただもろもろの楽を受く。 ゆゑに極楽と名づく」 と。
「爾時仏告↢長老舎利弗↡、従↠是西方、過↢十万億仏土↡有↢世界↡、名曰↢極楽↡。其土有↠仏、号↢阿弥陀↡。今現在説法。舎利弗、彼土何故名為↢極楽↡。其国衆生、無↠有↢衆苦↡、但受↢諸楽↡、故名↢極楽↡。」
【50】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 人天大衆みな*囲繞して、 心を傾けて合掌して経を聞かんと願ず。 仏 (釈尊)、 *凡聖の機と時と悟とを知りたまひて、 すなはち*舎利に告げて用心して聴かしめたまふ。 ▼一切の仏土みな厳浄なれども、 凡夫の乱想おそらくは生じがたければ、 如来 (釈尊) 別して西方の国を指したまふ。 「これより十万億を超過せり。 七宝の荘厳もつとも勝たり。 *聖衆人天の寿命長し。 仏を弥陀と号す。 つねに法を説きたまふ。 極楽の衆生障おのづから亡ず」 と。 衆等、 心を回してかしこに生ぜんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
聖衆 浄土の聖者たち。
願往生、願往生。人天大衆皆囲繞、傾↠心合掌願↠聞↠経。仏知↢凡聖機時悟↡、即告↢舎利↡用心聴。一切仏土皆厳浄、凡夫乱想恐難↠生。如来別指↢西方国↡。従↠是超↢過十万億↡。七宝荘厳最為↠勝。聖衆人天寿命長。仏号↢弥陀↡、常説法。極楽衆生、障自亡。衆等迴↠心願↠生↠彼、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第三段
【51】高座入文。
高座入文。
「▲また舎利弗、 極楽国土には七重の*欄楯・七重の*羅網・七重の*行樹あり。 みなこれ*四宝をもつて*周帀し囲繞せり。 このゆゑにかの国を名づけて極楽といふ」 と。
欄楯 装飾をほどこした垣。
行樹 並木。
四宝 金・銀・瑠璃・玻。
周帀し囲繞せり あまねくめぐり、 とりかこんでいること。
「又舎利弗、極楽国土、七重欄楯、七重羅網、七重行樹。皆是四宝、周帀囲繞。是故彼国名曰↢極楽↡。」
【52】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 三界の衆生は智慧なし。 *惛々として六道のうちに身を安く。 諸仏慈心をもつてために法を説きたまへども、 *聾盲*觝突の伴は聞かず。 たちまちに無常の苦来り逼むれば、 精神錯乱してはじめて*驚忙す。 *万事の家生みな捨離し、 専心に*発願して西方に向かへ。 弥陀の名号相続して念ずれば、 化仏・菩薩眼前に行なりたまふ。 あるいは*華台を与へ、 あるいは手を授け、 *須臾に命尽きぬれば、 仏迎へ将たまふ。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
惛々 道理に暗いさま。
觝突 角でつくものの意で、 牛などの畜類のこと。
驚忙 おどろきあわてること。
万事の家生 すべての家業。
願往生、願往生。三界衆生無↢智慧↡。惛惛六道内安↠身。諸仏慈心為説↠法、聾盲觝突伴不↠聞。忽爾無常苦来逼、精神錯乱始驚忙。万事家生皆捨離、専心発願向↢西方↡。弥陀名号相続念、化仏・菩薩眼前行、或与↢華台↡或授↠手、須臾命尽仏迎将。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【53】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 *歴劫よりこのかたいまだ聞見せず。 西方浄土の宝荘厳、 地上・虚空にみな*遍満して、 *珠羅宝網百千重なり。 一々の*網羅珍宝を結び、 *玲瓏たる雑色ことごとく光を暉かす。 宝樹の枝条異相間はり、 *行々整直にして巧みにあひ当れり。 これはこれ弥陀の悲願力なり。 無衰無変にして*湛然として常なり。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
歴劫 はかりしれない昔。
珠羅宝網 宝珠をつらねた飾りあみ。
網羅 羅網 (あみ) に同じ。
玲瓏 すきとおって美しく光り輝くさま。
行々整直 規則正しく並んでいるさま。
湛然 静かに落ち着いているさま。
願往生、願往生。歴劫已来未↢聞見↡。西方浄土宝荘厳、地上虚空皆徧満、珠羅宝網百千重。一一網羅結↢珍宝↡、玲瓏雑色尽↢暉光↡。宝樹枝条異相間、行行整直巧相当。此是弥陀悲願力。無衰無変湛然常。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第四段
【54】高座入文。
高座入文。
「▲また舎利弗、 極楽国土には七宝の池あり。 *八功徳水そのなかに充満せり。 池の底にはもつぱら金沙をもつて地に布けり。 四辺の*階道は金・銀・*瑠璃・*玻瓈をもつて合成せり。 上に*楼閣あり。 また*金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯をもつて、 これを*厳飾す。 池のなかの蓮華、 大きさ車輪のごとし。 青色には青光、 黄色には黄光、 赤色には赤光、 白色には白光あり。 微妙香潔なり。 舎利弗、 極楽国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
階道 階段状になった道。
玻瓈 水晶のこと。
「又舎利弗、極楽国土有↢七宝池↡、八功徳水、充↢満其中↡。池底純以↢金沙↡布↠地。四辺階道、金・銀・瑠璃・玻瓈合成。上有↢楼閣↡、亦以↢金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯↡、而厳↢飾之↡。池中蓮華、大如↢車輪↡。青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光。微妙香潔。舎利弗、極楽国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【55】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 極楽世界は広くして清浄なり。 地上の荘厳量るべきこと難し。 *八功の香池流れて*遍満す。 底に布ける金沙、 照らすに異光あり。 四辺の階道一色にあらず。 岸上の*重楼百万行なり。 真珠・碼碯あひ*映飾し、 四種の蓮華開けてすなはち香ばし。 十方の人天生ずることを得るものは、 おのおの*一箇に坐して*真常を聴く。 このゆゑにかの国を極楽と名づく。 衆等、 華を持して来りて供養したてまつれ。
重楼 楼閣に同じ。
映飾 照らし合うこと。
一箇 ひとつの蓮華の台。
真常 変わることのないまことの法。
願往生、願往生。極楽世界、広清浄。地上荘厳難↠可↠量。八功香池流徧満。底布金沙照↢異光↡。四辺階道非↢一色↡。岸上重楼百万行。真珠・碼碯相映飾、四種蓮華開即香。十方人天得↠生者、各坐↢一箇↡聴↢真常↡。是故彼国名↢極楽↡。衆等持↠華来供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第五段
【56】高座入文。
高座入文。
「▲また舎利弗、 かの仏国土にはつねに*天の楽をなす。 黄金をもつて地となし、 *昼夜六時に天の*曼陀羅華を雨らす。 その国の衆生、 つねに*清旦をもつて、 おのおの*衣裓をもつてもろもろの妙華を盛れて、 他方十万億の仏を供養したてまつる。 すなはち*食時をもつて本国に還り到りて、 飯食し*経行す。 舎利弗、 極楽国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
天の楽 すぐれた音楽。
曼陀羅華 梵語マーンダーラヴァ (māndārava) の音写。 天上界の華の名。
清旦 すがすがしい朝。
衣裓 花を盛る器。
食時をもつて 食事の時までにの意。
「又舎利弗、彼仏国土、常作↢天楽↡。黄金為↠地、昼夜六時而雨↢曼陀羅華↡。其国衆生、常以↢清旦↡、各以↢衣裓↡、盛↢衆妙華↡、供↢養他方十万億仏↡。即以↢食時↡還↢到本国↡、飯食経行。舎利弗、極楽国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【57】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 弥陀仏国はもつとも勝たり。 広大*寛平にして実にこれ*精なり。 天楽音声つねに遍満す。 黄金をもつて地となして奇珍を間へたり。 昼夜六時に華おのづから散ず。 法音つねに説きて自然に聞く。 かの国の衆生はさらに事なし。 衣裓に華を盛れて十方に詣す。 *一々に親承して供養を修するに、 *塵労垢習永く消亡す。 種々に心に随ひみな意に称ひて、 利益せざるはなし。 これ真常なり。 たちまちに*飛騰して本国に還り、 飯食して七宝の台に経行す。 衆等、 心を傾けてみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
一々に親承して 十方世界の各々の仏に親しく仕えて。
塵労垢習 塵労は煩悩、 垢習はその習気 (潜在的余力、 なごり) のこと。
飛騰 空間を自由自在に移動すること。
願往生、願往生。弥陀仏国最為↠勝。広大寛平実是精。天楽音声常徧満。黄金為↠地間↢奇珍↡。昼夜六時華自散。法音常説自然聞。彼国衆生更無↠事。衣裓盛↠華詣↢十方↡。一一親承修↢供養↡、塵労垢習永消亡。種種随↠心皆称↠意、無↠不↢利益↡。是真常。欻爾飛騰還↢本国↡、飯食経↢行七宝台↡。衆等傾↠心、皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第六段
【58】高座入文。
高座入文。
「▲また次に舎利弗、 かの国にはつねに種々奇妙なる雑色の鳥あり。 *白鵠・孔雀・鸚鵡・*舎利・*迦陵頻伽・*共命の鳥なり。 このもろもろの衆鳥、 昼夜六時に*和雅の音を出す。 その音*五根・*五力・*七菩提分・*八聖道分、 かくのごとき等の法を*演暢す。 その土の衆生この音を聞きをはりて、 みなことごとく仏を念じ法を念じ僧を念ず。 舎利弗、 なんぢこの鳥は実にこれ罪報の所生なりと謂ふことなかれ。 所以はいかん。 かの仏国土には三悪趣なければなり。 舎利弗、 その仏国土にはなほ三悪道の名すらなし、 いかにいはんや*実あらんや。 このもろもろの衆鳥は、 みなこれ阿弥陀仏、 法音を*宣流せしめんと欲して、 変化してなしたまふところなり。 ▲舎利弗、 かの仏国土には微風吹きて、 もろもろの*宝行樹および*宝羅網を動かすに、 微妙の音を出す。 たとへば百千種の楽を同時にともになすがごとし。 この音を聞くもの、 みな自然に仏を念じ法を念じ僧を念ずる心を生ず。 舎利弗、 その仏国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
白鵠 鶴の一種。 白鳥または天鵞ともいう。
舎利 梵語シャーリカ (śārika) の音写。 鶖鷺・鸜などと漢訳する。 黒色で人語を暗誦するという。
漢訳する。 殻のなかにいるとき、 すでによく鳴き、 きわめて美しい声を出すという。
共命の鳥 命々鳥ともいう。 人面禽形で一身に両頭を有するという。
和雅の音 調和のとれた優雅な声。
実 実体。
宣流 のべひろめること。
宝行樹 宝でできている並木。
宝羅網 宝珠をつらねた飾りあみ。
「復次舎利弗、彼国常有↢種種奇妙雑色之鳥↡。白鵠・孔雀・鸚鵡・舎利・迦陵頻伽・共命之鳥。是諸衆鳥、昼夜六時出↢和雅音↡。其音演↢暢五根・五力・七菩提分・八聖道分、如↠是等法↡。其土衆生、聞↢是音↡已、皆悉念↠仏念↠法念↠僧。舎利弗、汝勿↠謂↢此鳥実是罪報所生↡。所以者何、彼仏国土無↢三悪趣↡。舎利弗、其仏国土尚無↢三悪道之名↡、何況有↠実。是諸衆鳥、皆是阿弥陀仏、欲↠令↢法音宣流↡変化所作。舎利弗、彼仏国土、微風吹↢動諸宝行樹及宝羅網↡、出↢微妙音↡。譬如↢百千種楽同時倶作↡。聞↢是音↡者皆自然生↢念仏・念法・念僧之心↡。舎利弗、其仏国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【59】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 道場清浄にして希にして見がたし。 弥陀の浄土はなはだ聞きがたし。 聞きがたく見がたくしていま会ふことを得たり。 *如説に修行して意をもつぱらにしてもつぱらにせん。 願はくは仏の慈悲はるかに*摂受して、 臨終に宝座その前に現じたまへ。 すでに華台を見て心踊躍し、 ▼仏に従ひて*逍遙して自然に帰す。 自然はすなはちこれ弥陀国なり。 無漏無生にしてまたすなはち真なり。 *行来進止、 つねに仏に随ひて*無為法性の身を証得す。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
如説 経説のとおり。
行来進止 行くのもとどまるのも。
無為法性の身 すべての限定を超えたさとりの身。
願往生、願往生。道場清浄希難↠見、弥陀浄土甚難↠聞。難↠聞難↠見今得↠会。如説修行専↠意専。願仏慈悲遥摂受、臨終宝座現↢其前↡。既見↢華台↡心踊躍、従↠仏逍遥帰↢自然↡。自然即是弥陀国。無漏無生還即真。行来進止、常随↠仏、証↢得無為法性身↡。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【60】 下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 極楽の荘厳は雑宝を間へたり。 実にこれ*希奇にして未聞を聞く。 *宝鳥、 空に臨みて*仏会を讃ず。 文々句々、 理あひ同じ。 昼夜に声を連ねて息むことあることなし。 *哀婉雅亮にして人心を発す。 あるいは五根・七覚分を説き、 あるいは*八聖慈悲門を説き、 あるいは他方の悪道を離るることを説き、 あるいは地獄の人天を封ずることを説き、 あるいは長時に苦行を修することを説き、 あるいは*無上菩提の因を説き、 あるいは散善の波羅蜜を説き、 あるいは*定慧をもつて深禅に入ることを説く。 菩薩・声聞この法を聞きて、 処々に分身して*法輪を転ず。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
宝鳥 阿弥陀仏の変化であるところの宝の鳥。
哀婉雅亮 深い情趣をたたえて、 しなやかに響きわたり、 優雅・明澄であること。
願往生、願往生。極楽荘厳間↢雑宝↡。実是希奇聞↢未聞↡。宝鳥臨↠空讃↢仏会↡。文文句句理相同。昼夜連↠声無↠有↠息。哀婉雅亮発↢人心↡。或説↢五根・七覚分↡、或説↢八聖慈悲門↡、或説↣他方離↢悪道↡、或説↣地獄封↢人天↡、或説↣長時修↢苦行↡、或説↢無上菩提因↡、或説↢散善波羅蜜↡、或説↣定慧入↢禅↡。菩薩・声聞聞↢此法↡、処処分身転↢法輪↡。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【61】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 極楽の荘厳は三界を出で、 人・天・雑類等しくして無為なり。 *法蔵は*因の広弘願を行じ、 もしわれ仏を得ば*希奇を現ぜんと。 あるいは*鳥身を現じてよく法を説き、 あるいは*無請に現じてよく機に応じ、 あるいは*微波をして妙響を出さしめ、 あるいは林樹をして慈悲を讃ぜしめ、 あるいは風光をしてあひ応じて動ぜしめ、 あるいは*羅網をして音辞を説かしめん。 一切の荘厳の声*遍満し、 恒沙の*天楽おのづから時による。 *他方の凡聖の類を引かんがために、 ことさらに仏この不思議を現じたまふ。 われらこれを聞きて身の毛竪つ。 ▼骨を砕きて*阿弥師に*慚謝す。 一たび受けて専精にして命を惜しまざれば、 須臾にすなはち ˆ浄土にˇ 到る。 あに遅しとせんや。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
鳥身 白鵠・孔雀等の鳥のすがた。
無請に 誰も懇請しないのに。
微波 さざ波。
他方の凡聖 極楽以外の世界の凡夫と聖者。
阿弥師 阿弥陀大師の略。
願往生、願往生。極楽荘厳出↢三界↡。人天雑類等無為。法蔵行因広弘願、設我得↠仏、現↢希奇↡。或現↢鳥身↡能説↠法、或現↢無請↡能応↠機、或使↣微波出↢妙響↡、或使↣林樹讃↢慈悲↡、或使↢風光相応動↡、或令↣羅網説↢音辞↡。一切荘厳声徧満、恒沙天楽自依↠時。為↠引↢他方凡聖類↡、故仏現↢此不思議↡。我等聞↠之身毛豎。砕↠骨慚↢謝阿弥師↡。一受専精不↠惜↠命、須臾即到豈為↠遅。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
【62】高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 弥陀の仏国はまことに厳浄なり。 *三悪・六道永く名すらなし。 事々の荘厳識るべきこと難し。 種々妙微にしてはなはだ精たり。 地はるかに*寛平にして衆宝間はり、 一々に同じく耀きて五百の光あり。 一々の光宝台座となる。 一々の座上に百千の堂あり。 千堂の化仏、 *塵沙の会あり。 衆生入るものともにあひ量る。 無数の音声空に遊びて転じ、 *化天童子華香を散ず。 *昼夜六時に間息することなし。 地上・虚空量るべきこと難し。 *八徳の香池に意に随ひて入る。 *潅注すること人によりて浅深なし。 あるいは出で、 あるいは没す。 *三禅の楽なり。 *徐々としてあひ喚ばひて*檀林に入る。 檀林には宝座行々として別れたり。 聖衆はなほ日月に超ゆるがごとし。 日月はすなはちこれ長時劫なり。 あるいは坐し、 あるいは立し、 あるいは遊方するに、 到る処にはただ無上の法のみを聞きて、 永く凡夫生死の殃を絶つ。 このゆゑにかの国を安楽と名づく。 衆等、 心を回して往生を願ぜよ。 かの国に往生しぬれば余の事なし。 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
塵沙の会 数限りない説法の会座。
潅注 (宝池の水を) そそぐこと。
徐々 静かにおちついているさま。
檀林 栴檀 (香木) の林。
願往生、願往生。弥陀仏国真厳浄。三悪・六道永無↠名。事事荘厳、難↠可↠識。種種妙微甚為↠精。地迥寛平衆宝間、一一同耀五百光。一一光成↢宝台座↡、一一座上百千堂。千堂化仏塵沙会。衆生入者共相量。無数音声遊↠空転、化天童子散↢華香↡。昼夜六時無↢間息↡。地上・虚空難↠可↠量。八徳香池随↠意入。灌注由↠人無↢浅↡。或出或没三禅楽。徐徐相喚入↢檀林↡、檀林宝座行行別。聖衆猶若↠超↢日月↡。日月即是長時劫。或坐或立或遊方、到処唯聞↢無上法↡、永絶↢凡夫生死殃↡。是故彼国名↢安楽↡。衆等回↠心願↢往生↡。往↢生彼国↡無↢余事↡。手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第七段
【63】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 なんぢが意においていかん、 かの仏をなんがゆゑぞ阿弥陀と号する。 舎利弗、 かの仏の光明無量にして十方の国を照らすに、 *障礙するところなし。 このゆゑに号して阿弥陀となす。 また舎利弗、 かの仏の寿命およびその人民 ˆの寿命ˇ も無量無辺阿僧祇劫なり。 ゆゑに阿弥陀と名づく。 舎利弗、 阿弥陀仏は、 成仏よりこのかたいまに十劫なり。 ▲また舎利弗、 かの仏に無量無辺の声聞の弟子あり、 みな阿羅漢なり。 これ*算数のよく知るところにあらず。 もろもろの菩薩衆もまたかくのごとし。 舎利弗、 かの仏の国土には、 かくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
「舎利弗、於↢汝意↡云何。彼仏何故号↢阿弥陀↡。舎利弗、彼仏光明無量、照↢十方国↡、無↠所↢障礙↡、是故号為↢阿弥陀↡。又舎利弗、彼仏寿命及其人民、無量無辺阿僧祇劫。故名↢阿弥陀↡。舎利弗、阿弥陀仏成仏已来、於↠今十劫。又舎利弗、彼仏有↢無量無辺声聞弟子↡、皆阿羅漢。非↣是算数之所↢能知↡。諸菩薩衆、亦復如↠是。舎利弗、彼仏国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【64】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ˆ阿弥陀仏はˇ 果、 涅槃を得てつねに世に住す。 寿命延長にして量るべきこと難し。 千劫・万劫・恒沙劫・*兆載永劫にしてまた*無央なり。 ▼一たび坐して移ることなくまた不動なり。 *後際を徹窮して身光を放つ。 *霊儀の相好真金色なり。 *巍々として独り坐して衆生を度す。 十方の*凡聖専心に向かへば、 ˆ阿弥陀仏はˇ 身を分ち化を遣はして往きてあひ迎へしめたまふ。 一念に空に乗じて*仏会に入れば、 身色・寿命ことごとくみな平し。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
後際を徹窮して 未来際を尽して。 未来永劫に。
霊儀の相好 (阿弥陀仏の) 尊く威儀のあるすがた。
巍々 けだかくおごそかに輝くさま。
仏会 阿弥陀仏の説法の会座。 ここでは極楽浄土のこと。
願往生、願往生。果得↢涅槃↡常住↠世。寿命延長難↠可↠量。千劫・万劫・恒沙劫・兆載永劫、亦無央。一坐無↠移亦不動。徹↢窮後際↡放↢身光↡。霊儀相好真金色。巍巍独坐度↢衆生↡。十方凡聖専↠心向、分↠身遣↠化往相迎。一念乗↠空入↢仏会↡。身色・寿命尽皆平。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
【65】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 かの仏は*因より苦行を行じ、 *勇猛専精にして退する時なし。 一たび坐して百劫・長時劫、 なしがたきをよくなして疲れを生ぜず。 自利利他同じく悪を断ず。 怨憎を捨てざるは大悲による。 *有識含霊みなあまねく化す。 同因同行菩提に至る。 誓願して清浄の土を荘厳す。 見聞歓喜して無為を証す。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
因より 因位の法蔵菩薩の時から。
勇猛専精 いさましく一筋にはげむこと。
有識含霊 有識も含霊もともに心のはたらきを有するものの意。 衆生、 有情に同じ。
願往生、願往生。彼仏従↠因行↢苦行↡、勇猛専精無↢退時↡。一坐百劫・長時劫、難↠作能作不↠生↠疲。自利利他同断↠悪。不↠捨↢怨憎↡由↢大悲↡。有識含霊皆普化。同因同行至↢菩提↡。誓願荘↢厳清浄土↡、見聞歓喜証↢無為↡。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
【66】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 弥陀の*化主*心に当りて坐す。 *華台独りはるかにもつとも*精たり。 百億の*摩尼、 雑宝を間へたり。 *葉々の荘厳相おのづからなる。 *正坐よりこのかた十劫を経たり。 心は法界を縁じて慈光を照らす。 光触を蒙るものは*塵労滅し、 臨終に仏を見たてまつりて西方に往く。 かしこに到りて華開けて*大会に入る。 無明煩悩自然に亡じ、 *三明自然なるは仏願に乗ずればなり。 須臾に合掌して神通を得。 かの仏の声聞・菩薩衆は、 *塵沙のごとくして*算数また窮めがたし。 願はくはわれ今生につとめて意を発して、 *畢命にかの聖人の叢に往かん。 衆等、 心を傾け往生を願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
化主 教化の主。
心 浄土の中央。
摩尼 梵語マニ (maņi) の音写。 宝珠の意。
葉々 蓮華のはなびら。
正坐 華台に座して正覚を得ること。
塵労 心を疲れさせるものの意。 煩悩の異名。 →
煩悩
願往生、願往生。弥陀化主当↠心坐。華台独迥最為↠精。百億摩尼間↢雑宝↡。葉葉荘厳相自成。正坐已来経↢十劫↡。心縁↢法界↡照↢慈光↡。蒙↢光触↡者塵労滅、臨終見↠仏往↢西方↡。到↠彼華開入↢大会↡。無明煩悩自然亡、三明自然乗↢仏願↡。須臾合掌得↢神通↡。彼仏声聞・菩薩衆、塵沙算数亦難↠窮。願我今生強発↠意、畢命往↢彼聖人叢↡。衆等傾↠心願↢往生↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第八段
【67】高座入文。
高座入文。
「▲また舎利弗、 極楽国土には衆生生ずるもの、 みなこれ*阿鞞跋致なり。 そのなかに多く*一生補処 ˆの菩薩ˇ あり。 その数はなはだ多し。 これ算数のよくこれを知るところにあらず。 ただ無量無辺阿僧祇劫をもつて説くべし。 ▲舎利弗、 衆生聞くものは、 まさに発願してかの国に生ぜんと願ずべし。 所以はいかん。 かくのごときもろもろの上善人と倶に一処に会することを得ればなり。 ▲舎利弗、 *少善根福徳の因縁をもつてかの国に生ずることを得べからず」 と。
少善根福徳 わずかな善根功徳。 大善根功徳である念仏以外のすべての行。
「又舎利弗、極楽国土、衆生生者、皆是阿鞞跋致。其中多有↢一生補処↡、其数甚多。非↣是算数所↢能知↟之、但可↧以↢無量無辺阿僧祇劫↡説↥。舎利弗、衆生聞者、応↢当発願願↟生↢彼国↡。所以者何、得↧与↢如↠是諸上善人↡倶会↦一処↥。舎利弗、不↠可↧以↢少善根福徳因縁↡得↞生↢彼国↡。」
【68】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 釈迦如来、 身子 (舎利弗) に告げたまふは、 すなはちこれあまねく苦の衆生に告げたまふなり。 娑婆六道は安き処にあらず。 冥々たる長夜の闇のなかに行く。 *聖化同居すれどもあひ識らず。 ややもすれば*瞋毒を生じて無明を闘はしむ。 この無明のために六道に繋がれ、 愛憎高下していづれの時にか平らかならん。 すでに善業の生死を排ふなし。 貪によりて罪を造りていまだ心驚かず。 この人皮に裹める*驢骨に狂かされて、 三塗にみづから入ること争ふべからず。 われらこれを聞きて心髄痛む。 誓願してたちまちに世間の栄を捨てん。 あまねく願はくは心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
聖化同居すれども 聖者の教化とともにありながら。
驢骨 ろばのように愚かな性質。
願往生、願往生。釈迦如来告↢身子↡、即是普告↢苦衆生↡。娑婆六道非↢安処↡。冥冥長夜闇中行。聖化同居不↢相識↡。動生↢瞋毒↡闘↢無明↡。為↢此無明↡繋↢六道↡、愛憎高下何時平。既無↣善業排↢生死↡。由↠貪造↠罪未↢心驚↡。狂↢此人皮裹驢骨↡、三塗自入不↠須↠争。我等聞↠之心髄痛。誓願頓捨↢世間栄↡。普願回↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【69】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 娑婆はきはめて苦にして*生処にあらず。 極楽は無為にして実にこれ*精なり。 ▼九品ともに回して不退を得よ。 阿鞞跋致はすなはち無生なり。 ただ*初生の*限極なきのみにあらず。 十地以下も*劫にも窮めがたし。 かくのごときもの大海塵恒沙なり。 有縁到ればそのなかに入る。 *四種の威儀につねに仏を見たてまつり、 *行来進止、 神通に駕す。 六識縦横にして自然に悟り、 ▼いまだ思量一念の功によらず。 あまねく*同生の善知識に勧む。 専心専注して西方に往け。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
生処 生れるべきところ。
初生 新たに往生した者。
限極なき 数に限りがない。
劫にも… 一劫の間数えても、 きわめ尽すことができない。
同生の善知識 同じく往生を願う者。
願往生、願往生。娑婆極苦非↢生処↡、極楽無為実是精。九品倶回得↢不退↡。阿鞞跋致即無生。非↣直初生無↢限極↡、十地已下劫難↠窮。如↠此大海塵恒沙。有縁到者入↢其中↡。四種威儀常見↠仏、行来進止駕↢神通↡。六識縦横自然悟、未↠藉↢思量一念功↡。普勧同生善知識、専心専注往↢西方↡。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
◎転経分 ○第九段
【70】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 もし善男子・善女人ありて、 阿弥陀仏を説くを聞きて、 名号を*執持すること、 もしは一日、 もしは二日、 もしは三日、 もしは四日、 もしは五日、 もしは六日、 もしは七日、 一心にして乱れざれば、 ▲その人、 命終の時に臨みて、 阿弥陀仏、 もろもろの聖衆と現じてその前にまします。 この人終る時、 心顛倒せずして、 すなはち阿弥陀仏の極楽国土に往生することを得。 ▲舎利弗、 われこの利を見るがゆゑに、 この言を説く。 もし衆生ありてこの説を聞かんものは、 まさに*発願してかの国土に生ずべし」 と。
「舎利弗、若有↢善男子・善女人↡、聞↠説↢阿弥陀仏↡、執↢持名号↡、若一日、若二日、若三日、若四日、若五日、若六日、若七日、一心不↠乱、其人臨↢命終時↡、阿弥陀仏、与↢諸聖衆↡、現在↢其前↡。是人終時、心不↢顛倒↡、即得↣往↢生阿弥陀仏極楽国土↡。舎利弗、我見↢是利↡故説↢此言↡。若有↢衆生↡、聞↢是説↡者、応↣当発願生↢彼国土↡。」
【71】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ▼極楽は無為涅槃の界なり。 *随縁の雑善おそらくは生じがたし。 ▼ゆゑに如来 (釈尊) *要法を選びて、 教へて弥陀を念ぜしむることもつぱらにしてまたもつぱらならしむ。 七日七夜、 心*無間に、 長時の起行もますますみなしかなり。 臨終に聖衆、 華を持して現ず。 身心*踊躍して金蓮に坐す。 坐する時すなはち無生忍を得。 一念に迎へ将て仏前に至る。 *法侶衣をもつて競ひ来りて着しむ。 不退を証得して*三賢に入る。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
随縁の雑善 衆生がそれぞれの縁にしたがって行じた種々雑多な善根。
願往生、願往生。極楽無為涅槃界、随縁雑善恐難↠生。故使↧如来選↢要法↡、教念↢弥陀↡専復専↥。七日七夜心無間、長時起行倍皆然。臨終聖衆持↠華現。身心踊躍坐↢金蓮↡。坐時即得↢無生忍↡、一念迎将至↢仏前↡。法侶将↠衣競来著。証↢得不退↡入↢三賢↡。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【72】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 弥陀の侍者二菩薩を号して無辺 (大勢至)・観世音といふ。 一切の時中に*仏化を助けて、 六道に分身して慈心を起し、 念々に機に随ひて、 ために法を説きたまふ。 *惛々として悟りがたきは罪根の深ければなり。 百計千万数世に出でたまふも、 万がなかに一も*煩篭を出づるものなし。 なんぢ衆生の*長劫の苦を念ふに、 諸仏対面すれどもあひ逢はず。 人天の少善なほ弁じがたし、 いかにいはんや無為にして*六通を証せんをや。 *希有の法を見聞することを得たりといへども、 粗心、 *懈怠にしてますます功なし。 たとひ連年にほしいままに脚走して趁め得んとするも、 *貪瞋内胸に満てり。 貪瞋はすなはちこれ身の三業なり。 なんぞ浄土のうちの*真空を開かん。 語を*同生の善知識に寄す。 仏の慈悲を念じて聖の叢に入れ。 衆等、 心を傾けてみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
仏化 阿弥陀仏の教化。
惛々 道理に暗いさま。
希有の法 尊くすぐれた教え。
貪瞋 三毒のうちの
貪欲と
瞋恚。 →
三毒
真空 真実の空。 この上ないさとり。
願往生、願往生。弥陀侍者二菩薩、号曰↢無辺・観世音↡。一切時中助↢仏化↡、分↢身六道↡起↢慈心↡、念念随↠機為説↠法。惛惛難↠悟罪根。百計千万数出↠世、万中無↣一出↢煩篭↡。念↢汝衆生長劫苦↡、諸仏対面不↢相逢↡。人天少善尚難↠弁。何況無為証↢六通↡。雖↠得↣見↢聞希有法↡。麤心懈怠益無↠功。縦使連年放脚走、趂得貪瞋満↢内胸↡。貪瞋即是身三業。何開↢浄土裏真空↡。寄↢語同生善知識↡、念↢仏慈悲↡入↢聖叢↡。衆等傾↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十段
【73】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 われいま阿弥陀仏の不可思議の功徳を讃歎するがごとく、 東方にまた*阿閦鞞仏・須弥相仏・大須弥仏・須弥光仏・妙音仏、 かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において*広長の舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしº」 と。
広長の舌相を出して 仏の説くところが虚妄でないという証誠の意を示す。 広長の舌相は仏の三十二相の一。
「舎利弗、如↣我今者讃↢歎阿弥陀仏不可思議功徳↡、東方亦有↢阿閦鞞仏・須弥相仏・大須弥仏・須弥光仏・妙音仏、如↠是等恒河沙数諸仏k、各於↢其国↡、出↢広長舌相↡、徧覆↢三千大千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生、当↠信↧是称讃不可思議功徳、一切諸仏所↢護念↡経↥。」
【74】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 釈迦如来つねに東方恒沙の*等覚尊を讃嘆したまふ。 大悲同じく化して心無二なり。 一仏功を施せば、 多もまたしかなり。 凡夫疑見の執を断ぜんがために、 みな舌相を舒べて*三千に覆ひて、 ともに七日名号を称することを証し、 また釈迦の言説の真なることを表す。 *終時正意にして弥陀を念ずれば、 仏の慈光来りて身を照らすを見る。 この弥陀の本願力に乗じて、 一念のあひだに*宝堂に入る。 宝堂の荘厳限極なし。 化仏・聖衆、 坐して思量す。 心性は百千の日よりもあきらかなり。 *悲智双行法爾として常なり。 われいますでに無為の処に到る。 あまねく*含霊のこの方に帰することを願ず。 衆等、 心を傾けてみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
等覚尊 一如平等の理をさとられた方。 仏の意。
終時正意 臨終正念。 臨終の時に心が乱れないこと。
悲智双行… おのずから常に智慧と慈悲との二つをならべて行ずるという意。
願往生、願往生。釈迦如来、常讃↢歎東方恒沙等覚尊↡。大悲同化心無二。一仏施功多亦然。為↠断↢凡夫疑見執↡、皆舒↢舌相↡覆↢三千↡、共証↣七日称↢名号↡、又表↢釈迦言説真↡。終時正意念↢弥陀↡、見↢仏慈光来照↟身。乗↢此弥陀本願力↡、一念之間入↢宝堂↡。宝堂荘厳無↢限極↡、化仏聖衆坐思量。心性明↢於百千日↡。悲智双行法爾常。我今既到↢無為処↡。普願↣含霊帰↢此方↡。衆等傾↠心皆願↠往。手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十一段
【75】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 南方の世界に、 日月灯仏・名聞光仏・大焔肩仏・須弥灯仏・無量精進仏、 かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において広長の舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしº」 と。
「舎利弗、南方世界、有↢日月灯仏・名聞光仏・大焔肩仏・須弥灯仏・無量精進仏、如↠是等恒河沙数諸仏↡、各於↢其国↡出↢広長舌相↡、徧覆↢三千大千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生当↠信↧是称讃不可思議功徳、一切諸仏所↠護念↡経↥。」
【76】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 南方の諸仏恒沙のごとし。 また舌相を舒べて*三千に覆ひて、 その本国の*凡聖の衆のために、 釈迦変現の身を讃嘆したまふ。 娑婆*五濁のうちに出現したまふは、 心を標して罪根の人を化せんがためなり。 *我見・*邪貪・*増上慢、 教へて世を出さしめんとしたまふに、 かへりて瞋りを生ず。 「なんぢ衆生の*流浪の久しきことを念ふに、 諸仏の誠言真ならずと謂へばなり」 と。 衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
我見 実態的な自我の存在を認め、 それに執着する見解。
邪貪 道理にはずれた欲望。
増上慢 いまださとりを得ていないのに、 さとったと思っておごりたかぶること。
願往生、願往生。南方諸仏如↢恒沙↡。亦舒↢舌相↡覆↢三千↡、為↢其本国凡聖衆↡、讃↢歎釈迦変現身↡。出↢現娑婆五濁内↡、標↠心為↠化↢罪根人↡。我見・邪貪・増上慢、教令↠出↠世反生↠瞋。念↢汝衆生流浪久↡、諸仏誠言謂↠不↠真。衆等回↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十二段
【77】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 西方の世界に、 無量寿仏・無量相仏・無量幢仏・大光仏・大明仏・宝相仏・浄光仏、 かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において広長の舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしº」 と。
「舎利弗、西方世界、有↢無量寿仏・無量相仏・無量幢仏・大光仏・大明仏・宝相仏・浄光仏、如↠是等恒河沙数諸仏↡、各於↢其国↡出↢広長舌相↡、徧覆↢三千大千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生、当↠信↧是称讃不可思議功徳、一切諸仏所↢護念↡経↥。」
【78】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 西方の諸仏恒沙のごとし。 おのおの本国において如来 (釈尊) を讃ず。 百億*閻浮のうちに分身して、 *八相大希奇を示現す。 五濁の凡夫まさに実なりと謂へり。 六年苦行して無為を証し、 降魔成道して妙法を説きたまふ。 種々の方便不思議なり。 あまねく衆生を勧めて浄土に帰せしめたまふに、 前みて思ひ却きて慮りてさらに疑を生ず。 われいま*舌を舒べてもつて証をなす。 「西方極楽かならずすべからくよるべし」 と。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
舌を舒べて… 仏の説くところが虚妄でないという証誠の意を示す。 「広長の舌相を出して」 に同じ。
願往生、願往生。西方諸仏如↢恒沙↡。各於↢本国↡讃↢如来↡。分↢身百億閻浮内↡、示↢現八相大希奇↡。五濁凡夫将謂↠実。六年苦行証↢無為↡、降魔成道説↢妙法↡。種種方便不思議。普勧↢衆生↡帰↢浄土↡。前思却慮更生↠疑。我今舒↠舌以為↠証。西方極楽必須↠依。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十三段
【79】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 北方の世界に、 焔肩仏・最勝音仏・難俎仏・日生仏・網明仏、 かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において広長の舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしº」 と。
「舎利弗、北方世界、有↢焔肩仏・最勝音仏・難俎仏・日生仏・網明仏、如↠是等恒河沙数諸仏↡、各於↢其国↡出↢広長舌相↡、徧覆↢三千大千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生、当↠信↧是称讃不可思議功徳、一切諸仏所↢護念↡経↥。」
【80】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 北方の諸仏恒沙のごとし。 みな舌相を舒べて*牟尼を証す。 われ凡夫のために来りて世に出で、 縁に随ひて法を説き時機に応ず。 時機あひ感ずれば聞きてすなはち悟る。 説のごとく修行して疑を致さざれ。 七日名を称して*間雑することなく、 身心*踊躍して喜びまた悲しむ。 慶ばしきかな、 希に*自家国を聞くことを得たり。 諸仏還帰することを得と証判したまふ。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
牟尼 梵語ムニ (muni) の音写。 聖者の意。 ここでは釈迦牟尼仏のこと。
間雑 他の想がまじわること。
自家国 往生者の本国。
願往生、願往生。北方諸仏如↢恒沙↡。皆舒↢舌相↡証↢牟尼↡。為↢我凡夫↡来出↠世、随↠縁説↠法応↢時機↡。時機相感聞即悟。如↠説修行不↠致↠疑、七日称↠名無↢間雑↡、身心踊躍喜還悲。慶得↣希聞↢自家国↡、諸仏証判得↢還帰↡。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十四段
【81】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 下方の世界に、 師子仏・名聞仏・名光仏・達摩仏・法幢仏・持法仏、 かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において広長の舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしº」 と。
「舎利弗、下方世界、有↢師子仏・名聞仏・名光仏・達摩仏・法幢仏・持法仏、如↠是等恒河沙数諸仏↡、各於↢其国↡出↢広長舌相↡、徧覆↢三千大千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生、当↠信↧是称讃不可思議功徳、一切諸仏所↢護念↡経↥。」
【82】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 下方の諸仏恒沙のごとし。 おのおの本国において衆生を度し、 釈迦の五濁に出でてよく難事をなして*群萌を化することを証讃したまふ。 *善巧よろしきに随ひて悪を断たしめ、 *偏心に*指授して西に向かひて行かしむ。 一切の福業みな回向すれば、 *終時に化仏みづから来迎したまふ。 *利根の智者は聞きて歓喜し、 たちまちに三塗を憶して心すなはち驚く。 心を驚かせば、 毛竪ちてつとめて懺悔す。 おそらくは罪滅せずして*深坑に堕することを。 衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
善巧 善巧方便。 衆生を導くためのたくみな手段、 方法。
偏心に ひとえに。
終時 臨終時。 いのちがおわる時。
利根 素質能力のすぐれた者。
深坑 深いあな。 三塗を喩えていう。 →
三塗
願往生、願往生。下方諸仏如↢恒沙↡。各於↢本国↡度↢衆生↡、証↧讃釈迦出↢五濁↡、能為↢難事↡化↦羣萌↥。善巧随↠宜令↠断↠悪、偏心指授向↠西行。一切福業皆回向、終時化仏自来迎。利根智者聞歓喜、忽憶↢三塗↡心即驚。驚心毛豎勤懺悔、恐罪不↠滅堕↢坑↡。衆等回↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十五段
【83】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 上方の世界に、 梵音仏・宿王仏・香上仏・香光仏・大焔肩仏・雑色宝華厳身仏・娑羅樹王仏・宝華徳仏・見一切義仏・如須弥山仏、 かくのごとき等の恒河沙数の諸仏ましまして、 おのおのその国において広長の舌相を出して、 あまねく三千大千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªなんぢら衆生、 まさにこの称讃不可思議功徳一切諸仏所護念経を信ずべしº」 と。
「舎利弗、上方世界、有↢梵音仏・宿王仏・香上仏・香光仏・大焔肩仏・雑色宝華厳身仏・娑羅樹王仏・宝華徳仏・見一切義仏・如須弥山仏、如↠是等恒河沙数諸仏↡、各於↢其国↡、出↢広長舌相↡、徧覆↢三千大千世界↡、説↢誠実言↡。汝等衆生当↠信↧是称讃不可思議功徳、一切諸仏所↢護念↡経↥。」
【84】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ▼上方の諸仏恒沙のごとし。 また舌相を舒べたまふことは娑婆のためにす。 十悪・五逆、 多く*疑謗し、 *邪を信じ*鬼に事へ神魔を*餧ふ。 妄想をもつて*恩を求め、 福あらんと謂へり。 *災障禍横うたたいよいよ多し。 連年、 病みて床枕に臥す。 *聾盲、 脚折れ、 手攣撅す。 *神明に*承事してこの報を得。 いかんぞ捨てて弥陀を念ぜざる。 弥陀の願力はみな平等なり。 ただ心を回して華みづから捧げ、 一念に*快楽の国に*逍遙すれば、 *畢竟常安にして退動することなし。 衆等、 心を回してかしこに生ぜんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
疑謗 仏法を疑いそしること。
邪 仏法以外の謝った教え。
鬼 鬼神。
餧ふ 供物を与える。
恩 恩恵。
災障禍横 災難。 わざわい。
神明 前出の鬼・神魔のこと。
承事 つかえること。
快楽の国 極楽浄土。
逍遙 安らかに赴くこと。
畢竟常安 究極的な常住安楽。
願往生、願往生。上方諸仏如↢恒沙↡、還舒↢舌相↡、為↧娑婆十悪・五逆、多疑謗、信↠邪事↠鬼餧↢神魔↡、妄想求↠恩謂↠有↠福、災障禍横転弥多。連年臥↢病於牀枕↡、聾盲・脚折・手攣撅、承↢事神明↡得↦此報↥。如何不↣捨念↢弥陀↡。弥陀願力皆平等、但使回心華自捧。一念逍↢遥快楽国↡、畢竟常安無↢退動↡。衆等回↠心願↠生↠彼、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十六段
【85】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 なんぢが意においていかん。 なんがゆゑぞ名づけて一切諸仏所護念経となす。 舎利弗、 もし善男子・善女人ありて、 この諸仏の所説の名および経の名を聞くもの、 このもろもろの善男子・善女人、 みな一切諸仏のためにともに*護念せられて、 みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得ん。 このゆゑに舎利弗、 なんぢらみなまさにわが語および諸仏の所説を信受すべし。 ▲舎利弗、 もし人ありて、 すでに*発願し、 いま発願し、 まさに発願して、 阿弥陀仏国に生ぜんと欲するものは、 このもろもろの人等みな阿耨多羅三藐三菩提を退転せざることを得て、 かの国土において、 もしはすでに生じ、 もしはいま生じ、 もしはまさに生ずべし。 このゆゑに舎利弗、 もろもろの善男子・善女人、 もし信あるものは、 まさに発願してかの国土に生ずべし」 と。
「舎利弗、於↢汝意↡云何。何故名為↢一切諸仏所護念経↡。舎利弗、若有↢善男子・善女人↡、聞↢是諸仏所説名及経名↡者、是諸善男子・善女人、皆為↢一切諸仏↡共所↢護念↡、皆得↠不↣退↢転於阿耨多羅三藐三菩提↡。是故舎利弗、汝等皆当↣信↢受我語及諸仏所説↡。舎利弗、若有↠人、已発願、今発願、当発願、欲↠生↢阿弥陀仏国↡者、是諸人等、皆得↠不↣退↢転於阿耨多羅三藐三菩提↡、於↢彼国土↡、若已生、若今生、若当生。是故舎利弗、諸善男子・善女人、若有↠信者、応↣当発願生↢彼国土↡。」
【86】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 釈迦如来の大慈悲、 娑婆に応現して有縁を度したまふ。 有縁*三千界に*遍満せり。 機に随ひて*示悟して*貪痴を断ぜしめ、 総じて勧めてこの人天の楽を厭はしめたまふ。 無常・八苦の火、 人を焼けども、 念仏・*誦経すれば罪障を除き、 諸仏はるかに加して身を護念したまふ。 *昼夜六時につとめて発願して、 心を持ちて散ぜざれば*業また成ず。 業成ずれば、 *仏華台主を見たてまつる。 須臾に変じて紫金台となり、 仏に従ひて逍遙して*宝国に入り、 *畢竟じて永く愁憂の声を絶つ。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
示悟 教え導いて、 さとりを得させること。
業 往生浄土の業因。
仏華台主 蓮華台の仏。
願往生、願往生。釈迦如来大慈悲、応↢現娑婆↡度↢有縁↡。有縁徧↢満三千界↡、随↠機示悟断↢貪痴↡、総勧厭↢此人天楽↡。無常八苦火焼↠人。念仏誦経除↢罪障↡、諸仏遥加護↢念身↡。昼夜六時強発願、持↠心不↠散業還成。業成見↢仏華台主↡。須臾変作↢紫金台↡、従↠仏逍遥入↢宝国↡、畢竟永絶↢愁憂声↡。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第十七段
【87】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 われいま諸仏の不可思議の功徳を称讃するがごとく、 かの諸仏等もまた、 わが不可思議の功徳を称説して、 この言をなしたまはく、 ª釈迦牟尼仏、 よく*甚難希有の事をなし、 よく娑婆国土の五濁悪世の劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・命濁のなかにおいて、 阿耨多羅三藐三菩提を得て、 もろもろの衆生のために、 この*一切世間難信の法を説きたまふº と。 ▲舎利弗、 まさに知るべし、 われ五濁悪世において、 この難事を行じて阿耨多羅三藐三菩提を得て、 一切世間のためにこの難信の法を説く。 これを甚難となす。 ▲仏 (釈尊) この経を説きをはりたまふに、 舎利弗およびもろもろの比丘、 一切世間の天・人・阿修羅等、 仏の所説を聞きて、 歓喜し信受して、 礼をなして去りぬ」 と。
甚難希有の事 世にもまれなむずかしい事。
一切世間難信の法 ¬小経¼ の教説は、 世間の道理を超越しているから、 はなはだ信じ難いということ。 それはまたこの教説の尊高をあらわしている。
「舎利弗、如↣我今者称↢讃諸仏不可思議功徳↡、彼諸仏等、亦称↢説我不可思議功徳↡、而作↢是言↡。釈迦牟尼仏、能為↢甚難希有之事↡、能於↢娑婆国土五濁悪世、劫濁・見濁・煩悩濁・衆生濁・命濁中↡、得↢阿耨多羅三藐三菩提↡、為↢諸衆生↡、説↢是一切世間難信之法↡。舎利弗、当↠知、我於↢五濁悪世↡、行↢此難事↡、得↢阿耨多羅三藐三菩提↡、為↢一切世間↡説↢此難信之法↡。是為↢甚難↡。仏説↢此経↡已、舎利弗及諸比丘、一切世間天・人・阿脩羅等、聞↢仏所説↡、歓喜信受、作↠礼而去。」
【88】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 世尊*慇懃に身子 (舎利弗) に告げて、 諸仏の大悲の同じきことを表知せしめたまふ。 たがひに徳を讃じて心異なることなく、 巧みに時機に応じておのおの功あり。 ▼六方の如来みな讃嘆したまふ。 「釈迦の出現はなはだ逢ひがたし」 と。 まさしく五濁の時の興盛なるを治す。 無明頑硬にして高峰に似たり。 劫濁の時移りて身やうやく小なり。 衆生濁悪にして蛇竜に等し。 *悩濁遍満して*塵数に過ぎ、 *愛憎違順して岳山のごとし。 見濁の*叢林棘刺のごとし。 命濁*中夭刹那のあひだなり。 *依正二報同時に滅し、 正に背き邪に帰して横に怨を起す。 ▼*九十五種みな世を汚す。 ただ仏の一道のみ独り*清閑なり。 出でて菩提に到らば心尽くることなく、 火宅に還来して人天を度す。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
悩濁 煩悩濁。
愛憎違順 心に順うものには貪愛の心をいだいて、 心に違うものには瞋憎の思いをいだくこと。
叢林棘刺 くさむら・はやし・いばら・とげ。
中夭 不慮の死。 または早死のこと。
清閑 清浄、 静寂であること。
願往生、願往生。世尊慇懃告↢身子↡、表↢知諸仏大悲同↡。互相讃↠徳心無↠異、巧応↢時機↡各有↠功。六方如来皆讃嘆。釈迦出現甚難↠逢。正治↢五濁時興盛↡。無明頑硬似↢高峰↡、劫濁時移身漸小、衆生濁悪等↢蛇竜↡。悩濁徧満過↢塵数↡、愛憎違順若↢丘山↡。見濁藂林如↢棘刺↡、命濁中夭刹那間。依正二報同時滅、背↠正帰↠邪横起↠怨。九十五種皆汚↠世、唯仏一道独清閒。出↢到菩提↡心無↠尽、還↢来火宅↡度↢人天↡。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【89】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ▼如来 (釈尊) 五濁に出現して、 よろしきに随ひて方便して*群萌を化したまふ。 あるいは多聞にして*得度すと説き、 あるいは少解をもつて三明を証すと説く。 あるいは*福慧ならべて障を除くと教へ、 あるいは*禅念して坐して思量せよと教ふ。 ▼種々の法門みな解脱すれども、 ▼念仏して西方に往くに過ぎたるはなし。 ▼上*一形を尽し十念に至り、 ▼三念・五念まで仏来迎したまふ。 ▼ただに弥陀の弘誓重きがために、 ▼凡夫をして念ずればすなはち生ぜしむることを致す。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
得度 さとること。
禅念 六波羅蜜のうちの禅定と智慧。
願往生、願往生。如来出↢現於五濁↡、随↠宜方便化↢羣萌↡。或説↢多聞而得度↡、或説↣少解証↢三明↡。或教↢福慧双除↟障、或教↢禅念坐思量↡。種種法門皆解脱、無↠過↣念仏往↢西方↡。上尽↢一形↡至↢十念・三念・五念↡、仏来迎。直為↢弥陀弘誓重↡、致↠使↢凡夫念即生↡。衆等回↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
【90】高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ▼世尊法を説きたまふこと、 時まさに了りなんとして、 *慇懃に弥陀の名を付属したまふ。 ▼*五濁増の時は多く疑謗し、 *道俗あひ嫌ひて聞くことを用ゐず。 修行することあるを見ては*瞋毒を起し、 *方便破壊して競ひて怨を生ず。 ▼かくのごとき*生盲闡提の輩は、 頓教を*毀滅して永く*沈淪す。 *大地微塵劫を超過すとも、 いまだ三塗の身を離るることを得べからず。 大衆同心にみな、 あらゆる*破法罪の因縁を懺悔せよ。 衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
方便破壊 種々の手段で仏徳をこわすこと。
生盲闡提の輩 仏の教えに目がひらかれず、 仏になる因をもたないもの。
正法を疑いそしるもののこと。 →
補註10
毀滅 うちこわし、 ほろぼすこと。
大地微塵劫 大地を微塵 (物質の最小単位) にくだいたように数多い劫。 非常に長い時間。
破法罪 仏法を破壊する罪。
願往生、願往生。世尊説法、時将↠了、慇懃付↢属弥陀名↡。五濁増時多↢疑謗↡、道俗相嫌不↠用↠聞。見↠有↢修行↡起↢瞋毒↡、方便破壊競生↠怨。如↠此生盲闡提輩、毀↢滅頓教↡永沈淪。超↢過大地微塵劫↡、未↠可↠得↠離↢三塗身↡。大衆同心、皆懺↢悔所有破法罪因縁↡。衆等回↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎後行法分 ○懺悔
【91】高座、 下座の声の尽くるを待ちて、 すなはち大衆のために総じて懺悔していへ。
高座待↢下座声尽↡、即為↢大衆↡総懺悔云。
弟子道場の衆等、 そこばくの人、 おのおのに心を標して愧謝す。 諸仏、 冥空に幽顕したまへる得道の聖人、 *三十三天等の一切の天神・地神、 虚空・山林・河海神等、 *天曹・*地府・*閻羅・*伺命・*五道・*太山・*三十六王・地獄典領・一切の霊祇等、 およびこの道場の尊経・舎利・*形像・霊儀等、 ただ願はくは大悲光威神をもつて、 今日道場の主某甲およびそこばくの人、 心を披き懺悔するを*加備し護念し摂受し証明したまへ。 弟子某甲等、 *無身有身・無識有識よりこのかた、 すなはち今日に至り今時に至るまで、 その中間において、 所作の*身口意業の十悪の罪無量無辺なり。 あるいは身業をほしいままにして、 一切の地獄・畜生の衆生、 水・陸・虚空の*蠕動の類を殺害し劫奪せること数を知るべからず。 あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を殺害し劫奪せること数を知るべからず。 あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・*六親眷属・善知識・法界の衆生を殺害し劫奪せること数を知るべからず。 あるいは*故殺・誤殺・*戯笑殺・自殺・教他殺・*随喜殺・相続殺・無間殺・愛憎違順殺・放逸殺・貪味為財殺、 かくのごとき等の殺の罪無量無辺なり。 いま道場の*凡聖に対して*発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
伺命 司命。 人の生命を司る神。
五道 閻羅王に仕える冥官。 五道 (地獄・餓鬼・畜生・人・天) の衆生の罪を裁く。
太山 太山府君。 太山は中国の五岳のうちの東岳泰山のこと。 中国では閻羅王と同一視された。
三十六王 ¬潅頂経¼ に説かれる三十六の善神。
形像 仏像。
加備 不思議な力を加え与えること。 加被とも書く。
無身有身無識有識 無身有身と無識有識のこと。 無身無識は身体・心識がいまだ現れない時、 有身有識は身体・心識が現れた後をいう。
故殺 わざと殺すこと。
戯笑殺 たわむれに殺すこと。
随喜殺 人が殺すのを見聞して喜ぶこと。
弟子道場衆等、爾許多人、各各標↠心愧謝。諸仏、冥空幽顕得道聖人、三十三天等一切天神・地神、虚空・山林・河海神等、天曹・地府・閻羅・伺命・五道太山・三十六王・地獄典領、一切霊祇等、及此道場尊経・舎利・形像・霊儀等、唯願大悲光威神、加↢備護↣念摂↤受証↯明、今日道場主某甲、及爾許多人、披↠心懺悔↡。弟子某甲等、自↢従無身・有身・無識・有識↡已来、乃至今日至↢於今時↡、於↢其中間↡、所作身口意業、十悪之罪無量無辺。或放↢縦身業↡、殺↢害劫↣奪一切地獄・畜生・衆生・水陸虚空蝡動之類↡不↠可↠知↠数、或殺↢害劫↣奪一切脩羅・鬼神・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或殺↢害劫↣奪一切人天三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界衆生↡不↠可↠知↠数、或故殺・悞殺・戯笑殺・自殺・教他殺・随喜殺・相続殺・無間殺・愛憎違順殺・放逸殺・貪味為財殺、如↠是等殺罪無量無辺、今対↢道場凡聖↡、発露懺悔。永尽無↠余。懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
【92】高、 下に接ぎて懺していへ。
高接↠下懺云。
弟子衆等、 次にまさに*偸盗の罪を懺悔すべし。 あるいは身業をほしいままにして、 一切の地獄・畜生の衆生、 水・陸・虚空の*蠕動の類を偸盗し*劫奪せること数を知るべからず。 あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を偸盗し劫奪せること数を知るべからず。 あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を偸盗し劫奪せること数を知るべからず。 あるいは故盗・誤盗・戯笑盗・自盗・*教他盗・随喜盗・*放逸盗・*無間盗・愛憎盗・違順盗・*貪味為財盗、 かくのごとき等の偸盗の罪無量無辺なり。 いま道場の凡聖に対して発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
教他盗 他を教えて盗ませること。
放逸盗 ほしいままに盗むこと。
無間盗 ひまなく盗むこと。
貪味為財盗 味をむさぼり財のために盗むこと。
弟子衆等、次当↣懺↢悔偸盗罪↡。或放↢縦身業↡偸↢盗劫↣奪一切地獄・畜生・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或偸↢盗劫↣奪一切脩羅・鬼神・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或偸↢盗劫↣奪一切人天三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界衆生↡不↠可↠知↠数。或故盗・悞盗・戯笑盗・自盗・教他盗・随喜盗・放逸盗・無間盗・愛憎盗・違順盗・貪味為財盗、如↠是等偸盗罪無量無辺。今対↢道場凡聖↡発露懺悔。永尽無↠余。懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
【93】高、 下に接ぎて懺していへ。
高接↠下懺云。
弟子衆等、 次にまさに*邪婬顛倒の罪を懺悔すべし。 あるいは身業をほしいままにして邪婬を起し、 あるいは一切の畜生の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を*逼掠せること数を知るべからず。 あるいは婬を起して一切の鬼神の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を逼掠せること数を知るべからず。 あるいは婬心を起して一切の師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を逼掠せること数を知るべからず。 あるいは放逸作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・*無慚愧作・相続作・無間作・*邪貪悪貪作、 かくのごとき等の邪婬の罪無量無辺なり。 いま道場の凡聖に対して発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
逼掠 せめおびやかすこと。
無慚愧作 慚愧の心なくおこなうこと。 →
慚愧
邪貪悪貪作 邪悪な欲望の心でなすこと。
弟子衆等、次当↣懺↢悔邪婬顛倒罪↡。或放↢縦身業↡、起↢於邪婬↡、或逼↢掠一切畜生・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或起↠婬逼↢掠一切鬼神・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或起↢婬心↡逼↢掠一切師僧・父母・六親眷属・善知識・法界衆生↡不↠可↠知↠数、或放逸作・故作・悞作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・無慚愧作・相続作・無間作・邪貪悪貪作、如↠是等邪婬罪無量無辺。今対↢道場凡聖↡発露懺悔。永尽無↠余。懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
【94】高、 下に接ぎて懺していへ。
高接↠下懺云。
弟子衆等、 次にまさに口業*虚誑の罪を懺悔すべし。 あるいは口業をほしいままにして、 一切の地獄・畜生の衆生、 水・陸・虚空の*蠕動の類を*欺誑せること数を知るべからず。 あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を*欺誑せること数を知るべからず。 あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を欺誑せること数を知るべからず。 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、 かくのごとき等の欺誑の罪無量無辺なり。 いま道場の凡聖に対して発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
虚誑 妄語のこと。 いつわりの言葉。
弟子衆等、次当↣懺↢悔口業虚誑罪↡。或放↢縦口業↡、欺↢誑一切地獄・畜生・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或欺↢誑一切脩羅・鬼神・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或欺↢誑一切人天三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界衆生↡不↠可↠知↠数、或常作・無間作・故作・悞作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、如↠是等欺誑罪無量無辺。今対↢道場凡聖↡発露懺悔。永尽無↠余。懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
【95】高、 下に接ぎて懺していへ。
高接↠下懺云。
弟子衆等、 次にまさに*調戯の罪を懺悔すべし。 あるいは口業をほしいままにして、 一切の地獄・畜生の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を調戯軽弄せること数を知るべからず。 あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を*調弄せること数を知るべからず。 あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を調弄せること数を知るべからず。 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作、 かくのごとき等の調弄の罪無量無辺なり。 いま道場の凡聖に対して発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
調戯 綺語のこと。 まことのないかざった言葉。
弟子衆等、次当↣懺↢悔調戯之罪↡。或放↢縦口業↡調↢戯軽↣弄一切地獄・畜生・衆生・水陸虚空蠕動之類↡不↠可↠知↠数、或調↢弄一切脩羅・鬼神・衆生・水陸虚空蝡動之類↡不↠可↠知↠数、或調↢弄一切人天三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界衆生↡不↠可↠知↠数、或常作・無間作・故作・悞作・戯笑作・自作・教他作・随喜作、如↠是等調弄之罪無量無辺。今対↢道場凡聖↡発露懺悔。永尽無↠余。懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
【96】高、 下に接ぎて懺していへ。
高接↠下懺云。
弟子衆等、 次にまさに悪口の罪を懺悔すべし。 あるいは口業をほしいままにして、 一切の地獄・畜生の衆生、 水・陸・虚空の*蠕動の類を*罵辱し誹謗し*毀呰せること数を知るべからず。 あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を罵辱し誹謗し毀呰せること数を知るべからず。 あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を罵辱し誹謗し毀呰せること数を知るべからず。 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、 かくのごとき等の悪口の罪無量無辺なり。 いま道場の凡聖に対して発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
弟子衆等、次当↣懺↢悔悪口罪↡。或放↢縦口業↡、罵↢辱誹↣謗毀↤呰一切地獄・畜生・衆生・水陸虚空蝡動之類↡不↠可↠知↠数、或罵↢辱誹↣謗毀↤呰一切脩羅・鬼神・衆生・水陸虚空蝡動之類↡不↠可↠知↠数、或罵↢辱誹↣謗毀↤呰一切人天三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界衆生↡不↠可↠知↠数、或常作・無間作・故作・悞作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、如↠是等悪口罪無量無辺。今対↢道場凡聖↡、発露懺悔。永尽無↠余。懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
【97】高、 下に接ぎて懺していへ。
高接↠下懺云。
弟子衆等、 次にまさに*両舌の罪を懺悔すべし。 あるいは口業をほしいままにして、 両舌をもつて一切の畜生の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を闘乱破壊せること数を知るべからず。 あるいは一切の修羅・鬼神の衆生、 水・陸・虚空の蠕動の類を闘乱破壊せること数を知るべからず。 あるいは一切の人天・三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界の衆生を闘乱破壊せること数を知るべからず。 あるいは常作・無間作・故作・誤作・戯笑作・無間作・自作・教他作・無間作・随喜作・無間作・邪貪悪貪作、 かくのごとき等の両舌の罪無量無辺なり。 いま道場の凡聖に対して発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
弟子衆等、次当↣懺↢悔両舌罪↡。或放↢縦口業↡、両舌闘↢乱破↣壊一切畜生・衆生・水陸虚空蝡動之類↡不↠可↠知↠数、或闘↢乱破↣壊一切脩羅・鬼神・衆生・水陸虚空蝡動之類↡不↠可↠知↠数、或闘↢乱破↣壊一切人天三宝・師僧・父母・六親眷属・善知識・法界衆生、不↠可↠知↠数、或常作・無間作・故作・悞作・戯笑作・自作・教他作・随喜作・邪貪悪貪作、如↠是等両舌罪無量無辺。今対↢道場凡聖↡発露懺悔。永尽無↠余。懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
【98】高、 下に接ぎて懺していへ。
高接↠下懺云。
弟子衆等、 次にまさに意業の罪を懺悔すべし。 あるいは邪貪・悪貪を起し*身口意業を動ぜること数を知るべからず。 あるいは*邪瞋を起し身口意業を動ぜること数を知るべからず。 あるいは*邪痴顛倒・悪見顛倒を起し身口意業を動ぜること数を知るべからず。 あるいは意業によりて身業の十悪の罪を造作して、 凡聖、 六道の衆生、 親疎人畜等の衆生を簡ばざること数を知るべからず。 あるいは故作・誤作・常作・無間作・無間作・自作・教他作・無間作・随喜作、 かくのごとき等の意業の罪無量無辺なり。 いま道場の凡聖に対して発露懺悔す。 永く尽して余なからん。 総じて十悪の罪を懺しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
邪痴顛倒悪見顛倒 さとりにそむくよこしまな愚痴とさとりにそむく悪い考え。 →
愚痴、
悪見
弟子衆等、次当↣懺↢悔意業罪↡。或起↢邪貪悪貪↡、動↢身口意業↡不↠可↠知↠数、或起↢邪瞋↡動↢身口意業↡不↠可↠知↠数、或起↢邪痴顛倒・悪見顛倒↡動↢身口意業↡不↠可↠知↠数、或因↢意業↡造↢作身業十悪之罪↡、不↠簡↢凡聖六道衆生、親疎人畜等衆生↡不↠可↠知↠数、或故作・悞作・常作・無間作・自作・教他作・随喜作、如↠是等意業罪無量無辺。今対↢道場凡聖↡発露懺悔。永尽無↠余。総懺↢十悪罪↡竟、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
下、 高に接ぎて和していへ。
下接↠高和云。
懺悔しをはりて、 心を至して阿弥陀仏に帰命したてまつる。
懺悔已、至心帰↢命阿弥陀仏↡。
この十悪はすなはち一切の悪を摂し尽す。 いま十悪の罪を懺悔すれば、 すなはち一切の罪を懺し尽すなり、 知るべし。
此十悪即摂↢一切悪↡尽。今懺↢悔十悪罪↡者、即懺↢一切罪↡尽。応↠知。
【99】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 三界は安きことなし。 火宅のごとし。 六道*周慞たり。 競ひて門を出でよ。 門々不同にして*八万四なり。 おのおのみな心眼の前に当れり。 *棄々して出でんと欲すれどもまた回り去く。 この無明のために誤りて人を殺し、 財を貪り色を愛でて*厭足することなし。 *虚華幻惑詐りてあひ親しむ。 財尽き色落ちぬればあひ嫌ひて恨む。 須臾に義断えて屠怨のごとし。 屠怨、 娑婆のうちに遍満す。 *有識含情みなまたしかなり。 これがために如来 (釈尊) ひとへに*指授して、 勧めてもつぱら浄土の因を修せしむ。 浄土の因、 成じぬれば自然に到る。 終る時に合掌して香煙をたてまつる。 香煙ただちに弥陀仏に注ぐ。 聖衆華を持してわが身を迎ふ。 すなはち華台に坐するに紫金色なり。 かの*無漏に到りぬれば、 真にしてまた真なり。 衆等、 悲流してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
周慞 あわてふためくこと。
八万四 八万四千の略。 多数の意。
棄々 すてること。
虚華 空中にうかぶまぼろしの華。 空華ともいう。
有識含情 情識を有するもの。 有情。 衆生。
無漏 ここでは煩悩のけがれのない浄土のこと。
願往生、願往生。三界無↠安如↢火宅↡、六道周慞競出↠門。門門不同八万四。各各皆当↢心眼前↡。棄棄欲↠出還回去。為↢箇無明↡悞殺↠人。貪↠財愛↠色無↢厭足↡。虚華幻惑詐相親。財尽色落相嫌恨。須臾義断若↢屠怨↡。屠怨徧↢満娑婆内↡。有識含情皆亦然。為↠此如来偏指授、勧使↣専修↢浄土因↡。浄土因成自然到。終時合掌奉↢香烟↡。香烟直注↢弥陀仏↡。聖衆持↠華迎↢我身↡。即坐↢華台↡紫金色。到↢彼無漏↡真復真。衆等悲流皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【100】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ▼*劫尽きんと欲する時五濁盛りなり。 衆生邪見にしてはなはだ信じがたし。 もつぱらにしてもつぱらなれと指授して*西路に帰せしむれども、 他のために破壊せられてまた故のごとし。 *曠劫よりこのかたつねにかくのごとし。 これ今生にはじめてみづから悟るにあらず。 ▼まさしく*好き強縁に遇はざるによりて、 輪廻して*得度しがたからしむることを致す。 今日今時*要法を聞き、 *畢命を期となして、 誓ひて堅固なれ。 堅固に心を持ちて身を惜しまずして、 釈迦・諸仏の恩を慚愧すべし。 心を標してために西方の楽を説きて、 斉しく帰して正門に入らしめんと欲す。 ▼正門はすなはちこれ弥陀界なり。 *究竟解脱して*根源を断ず。 ▼去来、 ▼*他郷には停まるべからず。 仏の▼帰家に従ひて本国に還りぬれば、 一切の行願自然に成ず。 衆等おのおの浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
劫尽きん… ここでの劫は減劫の意。 減劫は人間の寿命が次第に減じていく期間。 減劫が終りに近づくにしたがって、 五濁の世の相はますますはげしくなっていくという。
西路 西方浄土への往生を勧める教え。
好き強縁 生死輪廻を出離するすぐれた縁。
得度 迷いの世界を離れて、 さとりの世界にわたること。
究竟解脱 この上ないさとりを得ること。
根源 (迷いの世界にとどまる) 根本的原因。
他郷 娑婆世界のこと。 衆生にとって真実の故郷というべきは阿弥陀仏の浄土であるから、 娑婆を他郷という。
願往生、願往生。劫欲↠尽時五濁盛。衆生邪見甚難↠信。専専指授帰↢西路↡、為↠他破壊還如↠故。曠劫已来常如↠此。非↢是今生始自悟↡、正由↠不↠遇↢好強縁↡、致↠使↣輪回難↢得度↡。今日今時聞↢要法↡。畢命為↠期誓堅固。堅固持↠心不↠惜↠身。慙愧釈迦諸仏恩。標↠心為説↢西方楽↡、欲↠使↣斉帰入↢正門↡。正門即是弥陀界。究竟解脱断↢根源↡。去来他郷不↠可↠停。従↠仏帰↠家、還↢本国↡、一切行願自然成。衆等各各生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
【101】高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 大衆人々みな合掌して、 ▼身を砕きて釈迦の恩を慚謝せよ。 よく*慈悲巧方便を得て西方快楽の門を指授したまふ。 道場散ぜんと欲して人まさに別れんとす。 ゆめあひ勧めて*貪瞋を断ぜよ。 貪瞋の因縁*聖土を障ふ。 みづから悟ることを得ずして永く*沈淪す。 *同行あひ親しみてあひ*策励し、 畢命を期となして仏前に到らん。 願はくはこの*法輪相続して転じ、 道場の*施主ますます長年ならん。 大衆ことごとく同じく安楽を受け、 見聞随喜もまたみなしかならん。 あまねく願はくは心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつらん。
慈悲巧方便 慈悲のたくみな手段。
聖土 浄土。
同行 同じく浄土を願う者。
策励 つとめはげむこと。
法輪相続して転じ 仏の教えがつづいてひろまり。 仏の説かれた教えは、 衆生の煩悩をうちくだき、 次々とひろまってゆくので、 これを車輪に喩えていう。
願往生、願往生。大衆人人皆合掌、砕↠身慙↢謝釈迦恩↡。能得↢慈悲巧方便↡、指↢授西方快楽門↡。道場欲↠散人将↠別。努力相勧断↢貪瞋↡。貪瞋因縁障↢聖土↡。不↠得↢自悟↡永沈淪。同行相親相策励、畢命為↠期到↢仏前↡。願此法輪相続転、道場施主益長年。大衆咸同受↢安楽↡、見聞随喜亦皆然。普願回↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
下、 高に接ぎて讃じていへ。 高、 下に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。 高接↠下讃云。
◎後行法分 ○行道
【102】また経を誦し讃を唱ふることをはりて、 高座すなはち一人をして行香せしめ、 大衆と*行華せよ。 次にまさに*讃人等*行道の処に向かひて立すべし。 また小者をして礼供養および如法行道を唱へしめよ。 唱へをはりてその散華の法、 もつてもつぱら上のごとくせよ。 あるいは*三帀しあるいは*七帀しをはりて、 すなはち仏前に当りて立ちて次に後讃を唱へよ。
行華 華を配ること。
讃人 和讃のもの。 ともに和して讃文を唱える人。
行道 道場の仏座の周囲をまわり歩くこと。
三帀・七帀 (仏座の周囲を) 三周、 七周すること。
下接↠高讃云。
【103】高座唱讃し、 下座和していへ。
高接↠下讃云。
*般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 「般舟三昧楽」 は讃文の発声の句として、 「願往生」 「無量楽」 等は唱和の句として用いられたもの。 →
般舟三昧
般舟三昧楽 願往生
大衆人々みな合掌せよ 無量楽
大衆人人皆合掌 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
*道場の聖衆*帰還せんと欲す 無量楽
道場の聖衆 浄土から道場に来臨した聖者たち。
帰還 (本国である極楽に) かえること。
道場聖衆欲↢帰還↡ 無量楽
衆等心を傷めともに傷歎して 願往生
衆等傷↠心共傷歎 願往生
ただ釈迦の恩を*慚謝することを知れ 無量楽
唯知慙↢謝釈迦恩↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
▼悲喜交流して深くみづから慶ぶ 無量楽
悲喜交流自慶 無量楽
▼釈迦仏の開悟によらずは 願往生
不↠因↢釈迦仏開悟↡ 願往生
弥陀の*名願いづれの時にか聞かん 無量楽
名願 名号願力。
弥陀名願何時聞 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
仏 (釈尊) の*慈恩を荷ひて実に報じがたし 無量楽
荷↢仏慈恩↡実難↠報 無量楽
▼四十八願*慇懃に喚ばふ 願往生
四十八願慇懃喚 願往生
仏 (阿弥陀仏) の願力に乗じて西方に往かん 無量楽
乗↢仏願力↡往↢西方↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
娑婆永く別れなばさらになにをか憂へん 無量楽
娑婆永別更何憂 無量楽
▼罪と福と時との多少を問ふことなく 願往生
無↠問↢罪福時多少↡ 願往生
▼心々に念仏して疑を生ずることなかれ 無量楽
心心念仏莫↠生↠疑 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
▼六方の如来*不虚を証したまふ 無量楽
不虚 (念仏往生が) 虚妄でなく、 真実であるということ。
六方如来証↢不虚↡ 無量楽
三業専心にして雑乱なければ 願往生
三業専↠心無↢雑乱↡ 願往生
百宝の蓮華時に応じて見る 無量楽
百宝蓮華応↠時見 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
臨終に*聖衆みづから来迎したまふ 無量楽
聖衆 阿弥陀仏と観音・勢至等の菩薩たち。
臨終聖衆自来迎 無量楽
行者仏を見たてまつりて心歓喜す 願往生
行者見↠仏心歓喜 願往生
弥陀手を接りて*華台に坐せしむ 無量楽
弥陀接↠手坐↢華台↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
坐しをはれば身同じく紫金色なり 無量楽
坐已身同紫金色 無量楽
仏に従ひて須臾に*宝国に至り 願往生
従↠仏須臾至↢宝国↡ 願往生
▼ただちに*弥陀大会のなかに入る 無量楽
弥陀大会 阿弥陀仏の説法の会座。
直入↢弥陀大会中↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
仏の荘厳の無数億なるを見る 無量楽
見↢仏荘厳無数億↡ 無量楽
*三明六通みな具足して 願往生
三明六通皆具足 願往生
わが*閻浮の同行人を憶ふ 無量楽
閻浮の同行人 閻浮提の念仏の行者。
憶↢我閻浮同行人↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
同行あひ親しみて願はくは退することなかれ 無量楽
同行相親願莫↠退 無量楽
七周行道し散華しをはりて 願往生
七周行道散華竟 願往生
冥空の諸仏会を供養したてまつる 無量楽
供↢養冥空諸仏会↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
大会*頂礼して弥陀に別れたてまつる 無量楽
大会頂礼別↢弥陀↡ 無量楽
【104】 行道散華七周しをはりて、 次に仏前に向かひて立ちて讃を唱へていへ。
行道散華七周竟、次向↢仏前↡立唱↠讃云。
弥陀ともろもろの聖衆とに慚愧す 願往生
慙愧弥陀諸聖衆 願往生
われと施主と衆生との請を受けたまへ 無量楽
受↢我施主衆生請↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
慈悲平等にして衆生を度し 無量楽
慈悲平等度↢衆生↡ 無量楽
功徳を証明し罪障を除きたまへ 願往生
証↢明功徳↡除↢罪障↡ 願往生
*存亡の利益思議しがたし 無量楽
存亡の利益 現存者と亡者の利益の意。
存亡利益難↢思議↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
*形枯命断に仏前を期す 無量楽
形枯命断 身体がくちはて命がおわること。
形枯命断仏前期 無量楽
供養荘厳如法ならざれども 願往生
供養荘厳不↢如法↡ 願往生
衆生に歓喜の心を布施したまへ 無量楽
布↢施衆生歓喜心↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
見聞するもの涙を流して同じく懺悔せよ 無量楽
見聞流↠涙同懺悔 無量楽
散華行道訖りぬ 願往生
散華行道訖 願往生
諸仏縁に随ひて本国に還りたまふ 無量楽
諸仏随↠縁還↢本国↡ 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
あまねく香華を散じて心に仏を送りたてまつる 無量楽
普散↢香華↡心送↠仏 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
願はくは仏の慈心はるかに*護念したまへ 無量楽
願仏慈心遥護念 無量楽
般舟三昧楽 願往生
般舟三昧楽 願往生
*同生あひ勧むことごとくすべからく来るべし 無量楽
同生 同じく往生を願う者。
同生相勧尽須↠来 無量楽
◎後行法分 ○嘆仏呪願
【105】 次に*磬子を打ちて、 「*敬礼常住三宝」 を唱へよ。
磬子 梵唄・読誦の際に用いる梵音具 (鳴器)。 主に銅でつくり、 打棒で鳴らす。
敬礼常住三宝 常住の三宝を敬礼したてまつる。
次打↢磬子↡、唱↢敬礼常住三宝↡。
次に歎仏の呪願を唱へよ。
次唱↢歎仏咒願↡。
歎仏しをはりて、 すなはち法によりて七礼敬を唱へ、 随意を唱へよ。
歎仏竟、即依↠法唱↢七礼敬↡、唱↢随意↡。
【106】ひそかにおもんみれば、 ▼弥陀の妙果を号して無上涅槃といふ。 国土はすなはち広大にして荘厳*遍満す。 自然の衆宝なり。 *観音大士左に侍して*霊儀し、 *勢至慈尊すなはち右辺に供養す。 *三華独りはるかにして*宝縵躯に臨む。 珠は内に光を輝かし、 *天の声は外に繞れり。 声聞・菩薩数*塵沙に越え、 化鳥・天同じく*会に遍せざるはなし。 *他方の聖衆起りて雲の奔るがごとく、 *凡惑同じく生ずること盛りなる雨に*過踰せり。 十方より来るものみな仏辺に到りて、 鼓楽いよいよ歌ひ、 香華をもつて繞り讃ず。 供養あまねく訖りて、 処に随ひて遍歴親承す。 あるいは百宝の*池渠の会に入り、 あるいは宝楼・宮殿の会に入り、 あるいは宝林・宝樹の会に入り、 あるいは虚空の会に上り、 あるいは大衆*無生法食の会に入る。 かくのごとき清浄荘厳大会の聖衆等、 同じく行じ、 同じく坐し、 同じく去り、 同じく来る。 一切の時中に証悟せざるはなし。 西方極楽の種々の荘厳歎ずとも、 よく尽すことなし。
霊儀 威厳があるすがたを示すこと。
三華 阿弥陀仏・観音・勢至の三尊が座る蓮華の台座。
天の声 諸天が阿弥陀仏をほめたたえる声。
塵沙 無数の意。
会 阿弥陀仏の説法の会座。
他方の聖衆 他方の世界より来訪した菩薩衆。
過踰 超えていること。
無生法食 法にかなった無生のさとりを食するという意。
窃以弥陀妙果号曰↢無上涅槃↡。国土則広大荘厳徧満自然衆宝。観音大士左侍↢霊儀↡、勢至慈尊則右辺供養。三華独迥宝幡臨↠躯。珠内輝↠光、天声外繞、声聞・菩薩数越↢塵沙↡、化鳥・天同無↠不↠徧↠会。他方聖衆起若↢雲奔↡、凡惑同生過↢踰盛雨↡。十方来者、皆到↢仏辺↡、鼓楽弥歌、香華繞讃。供養周訖、随↠処徧歴親承。或入↢百宝池渠会↡、或入↢宝楼宮殿会↡、或入↢宝林宝樹会↡、或上↢虚空会↡、或入↢大衆無生法食会↡。如↠是清浄荘厳大会聖衆等、同行同坐、同去同来。一切時中無↠不↢証悟↡。西方極楽種種荘厳、歎莫↢能尽↡。
【107】しかるにいま清信の弟子某甲等、 そこばくの人、 身はかりに四大を合してともに成ぜりと知り、 命は浮危なること、 たとへば厳霜の日に対へるに似たりと識る。 ▼十方の六道同じくこれ輪廻して*無際なり。 *循々として*愛波に沈みて苦海に沈む。 仏道人身得がたくしていますでに得たり。 浄土聞きがたくしていますでに聞けり。 信心発しがたくして、 いますでに発せり。
無際 きわまるところがない。
循々 長くめぐるさま。
愛波 貪愛を波に喩えていう。
然今清信弟子某甲等、爾許多人、知↠身仮合四大共成、識↠命浮危、譬似↢厳霜対↟日。十方六道同此輪回無↠際、循循沈↢愛波↡而沈↢苦海↡。仏道人身難↠得今已得、浄土難↠聞今已聞、信心難↠発今已発。
仰ぎておもんみれば、 今時の*同生知識等、 そこばくの人、 おそらくは命は*石火に同じ、 久しく照らすこと期しがたし。 *識性は無常なり、 逝くこと風燭に踰えたり。 ゆゑに人々同じく願じてともに往生の業を結ぶ。 おのおの『弥陀経』を誦することそこばく万遍、 弥陀の名を念ずることそこばく万遍、 また某の功徳等を造りてあまねくみな周備す。 ゆゑに某の月日に*院宇を荘厳し、 道場を*瑩飾し、 僧尼を*奉請して、 *宿宵*行道す。 また*廚皇の百味・種々の甘香をもつて仏および僧徒にたてまつりて、 同心に慶喜す。
同生知識 同じく往生を願う者。
石火 火打ち石をうって出す火。 非常に短い時間をいうときの喩え。
識性 心識。
院宇 寺院の建物。
瑩飾 美しく飾ること。
奉請 道場への来入を懇請すること。
宿宵 徹夜。
行道 道場の仏座の周囲をまわり歩くこと。
廚皇 料理場。
仰惟、今時同生知識等、爾許多人、恐畏命同↢石火↡、久照難↠期。識性無常、逝踰↢風燭↡。故人人同願共結↢往生之業↡。各誦↢¬弥陀経¼↡爾許万徧、念↢弥陀名↡爾許万徧。又造↢某功徳等↡、普皆周備。故於↢某月日↡、荘↢厳院宇↡、瑩↢飾道場↡、奉↢請僧尼↡、宿宵行道。又以↢廚皇百味種種甘香↡、奉↢仏及以僧徒↡、同心慶喜。
また願はくは持戒・*誦経・念仏・行道し、 およびもろもろの功徳等を造らん。 当今の*施主および*同行の諸人、 法界の衆生、 いまより以去、 天神影衛して万善扶持し、 福命休強にしてもろもろの憂悩を離れ、 ▼六方の諸仏信心を*護念し、 浄土の弥陀慈心をもつて*摂受したまへ。
同行 同じく往生を願う者。
又願持戒・誦経・念仏・行道、及造↢諸功徳等↡。当今施主及同行諸人、法界衆生、従↠今已去、天神影衛万善扶持、福命休強離↢諸憂悩↡、六方諸仏護↢念信心↡、浄土弥陀慈心摂受。
また願はくは観音聖衆*駱駅として往来して、 念々に遺るることなくはるかに加しあまねく備へて、 春秋冬夏*四大つねに安く、 罪滅し福成じて、 *回して浄土に生ぜん。
駱駅 往来が引き続いて絶え間ないさま。
四大 身体のこと。 身体は地・水・火・風の四大よりなると考えられていた。
又願観音聖衆駱駅往来、念念無↠遺、遥加普備、春秋冬夏四大常安、罪滅福成回生↢浄土↡。
また願はくは臨終に病なく正念堅強にして、 *聖衆来迎したまひ、 *華台あまねく集まり、 弥陀光照し、 菩薩身を扶け、 化仏心を斉しくして、 同声に等しく讃じ、 台に乗じて一念すなはち西方に至り、 仏の尊顔を見たてまつりて無生忍を悟らん。 仰ぎ願はくは往生の同行人等、 かくのごとき善を得ん。
聖衆 阿弥陀仏と観音・勢至等の菩薩たち。
又願臨終無↠病正念堅強、聖衆来迎華台普集、弥陀光照、菩薩扶↠身。化仏斉↠心同声等讃、乗↠台一念即至↢西方↡、見↢仏尊顔↡悟↢無生忍↡。仰願往生同行人等、得↢如↠此善↡。
また願はくはこの功徳、
*大唐の皇帝を*資益したてまつり、 福基永く固く、 *聖化窮まることなからん。 また願はくは、
大唐の皇帝… 平出の書式。 皇帝等の称号を書く場合、 戒行表記をするのが通例であった。
資益 たすけ利益すること。
聖化 尊い導き。
又願此功徳資↢益
大唐皇帝↡、福基永固、聖化無↠窮。又願
皇后慈心平等にして*六宮を哀愍したまはん。 また願はくは、
六宮 後宮の異称。
皇后慈心平等、哀↢愍六宮↡。又願
皇太子、 ˆ天子のˇ 恩を承くること地よりも厚く、 山岳の移ることなきに同じく、 福命唐々として*滄波に類して尽きたまふことなからん。
滄波 あおあおとした波。
皇太子承↢恩厚地↡、同↢山岳之莫↟移、福命唐唐類↢滄波↡而無↠尽。
また願はくは*天曹・*地府・*閻羅・*伺命、 罪障を滅除して*善名を注記せん。 また願はくは修羅戦諍を息め、 餓鬼飢虚を除き、 地獄と畜生と倶時に解脱を得ん。 竪には三界に通じ横には*九居を括りて、 等しく娑婆を出でて同じく浄土に帰せざるはなからん。
善名を注記せん 善根を名簿に記録する。
九居 三界のうちで衆生が喜びねがう九種の居処。 欲界の人天・梵衆天・極光浄天・遍浄天・無想天・空無辺処・識無辺処・無所有処・非想非非想処の九種。
又願天曹・地府・閻羅・伺命、滅↢除罪障↡注↢記善名↡。又願脩羅息↢戦諍↡、餓鬼除↢飢虚↡、地獄与↢畜生↡倶時得↢解脱↡。豎通↢三界↡横括↢九居↡、莫↠不↧等出↢娑婆↡同帰↦於浄土↥。
◎後行法分 ○七唱礼
【108】 下座七礼を唱へよ。
下座唱↢七礼↡。
本師釈迦牟尼仏等の一切の三宝に南無したてまつる。 われいま*稽首して礼し、 回して無量寿国に往生せんと願じたてまつる。
南↢無本師釈迦牟尼仏等一切三宝↡。我今稽首礼、回願↣往↢生無量寿国↡。
十方三世の*尽虚空遍法界の*微塵刹土のなかの一切の三宝に南無したてまつる。 われいま稽首して礼し、 回して無量寿国に往生せんと願じたてまつる。
微塵刹土 微塵は仏教でいう物質の最小単位。 刹は梵語クシェートラ (kşetra) の音写で国土の意。 微塵のように無数の国土。
南↢無十方三世尽虚空徧法界微塵刹土中一切三宝↡。我今稽首礼、回願↣往↢生無量寿国↡。
西方極楽世界の阿弥陀仏に南無したてまつる。 願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。
南↢無西方極楽世界阿弥陀仏↡。願共↢諸衆生↡往↢生安楽国↡。
西方極楽世界の観世音*菩薩摩訶薩に南無したてまつる。 願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。
南↢無西方極楽世界観世音菩薩摩訶薩↡。願共↢諸衆生↡往↢生安楽国↡。
西方極楽世界の大勢至菩薩摩訶薩に南無したてまつる。 願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。
南↢無西方極楽世界大勢至菩薩摩訶薩↡。願共↢諸衆生↡往↢生安楽国↡。
西方極楽世界のもろもろの菩薩摩訶薩、 *清浄大海衆に南無したてまつる。 願はくはもろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。
清浄大海衆 清浄で海のように広大な浄土の聖者たち。
南↢無西方極楽世界諸菩薩摩訶薩、清浄大海衆↡。願共↢諸衆生↡往↢生安楽国↡。
あまねく四恩・三友・帝王・人王・師僧・父母・善知識・法界の衆生、 三障を断除して、 同じく阿弥陀仏国に往生することを得んがために、 一切の*賢聖を和上し、 回して無量寿国に往生せんと願じたてまつる。
普為↤四恩・三友・帝王・人王・師僧・父母・善知識・法界衆生、断↢除三障↡、同得↣往↢生阿弥陀仏国↡、和↢上一切賢聖↡、回願↣往↢生無量寿国↡。
◎後行法分 ○随意
【109】 唱へをはりてすなはち随意をいへ。
唱竟、即云↢随意↡。
行者等にまうす。 一切の時につねにこの法によりて、 もつて恒の式となせ、 知るべし。 経を送りていづれの処にか致す。 送りて*摩尼宝殿のなかに至らしめん。 経を送りていづれの処にか致す。 送りて*竜宮大蔵のなかに至らしめん。 経を送りていづれの処にか致す。 送りて西方石窟宝函のなかに至らしめん。
摩尼宝殿 兜率天にある弥勒菩薩の座処。
竜宮大蔵 大海中の竜王の宮にある仏のたくさんの遺法をおさめた蔵のこと。
白↢行者等↡。一切時常依↢此法↡以為↢恒式↡。応↠知。送↠経致↢何処↡、送至↢摩尼宝殿中↡。送↠経致↢何処↡、送至↢竜宮大蔵中↡。送↠経致↢何処↡、送至↢西方石窟宝函中↡。
安楽行道転経願生浄土法事讃 巻下