安楽行道転経願生浄土法事讃 巻下
沙門*善導集記
◎転経分 ○第一段
【43】*高座入文。
高座入文。
「▲かくのごとくわれ聞きたてまつりき。 一時、 仏、 舎衛国の*祇樹給孤独園にましまして、 ▲大比丘の衆、 千二百五十人とともなりき。 みなこれ大阿羅漢なり。 衆に知識せらる。 *長老*舎利弗・摩訶目犍連・摩訶迦葉・摩訶迦旃延・摩訶倶絺羅・離婆多・周利槃陀伽・難陀・*阿難陀・羅睺羅・憍梵波提・賓頭盧頗羅堕・迦留陀夷・摩訶劫賓那・薄拘羅・阿楼駄、 かくのごとき等のもろもろの大弟子、 ならびにもろもろの*菩薩摩訶薩、 文殊師利法王子・阿逸多菩薩 (弥勒)・乾陀訶提菩薩・常精進菩薩、 かくのごとき等のもろもろの大菩薩、 および*釈提桓因等の無量の諸天大衆とともなりき」 と。
高座 道場の高座の導師。
祇樹給孤独園 舎衛国 (コーサラ国の首都。 現在のサヘート・マヘートの地と推定される) の南にあった祇園精舎のこと。
長老 年長の比丘、 また智徳ある比丘に対する尊称。
菩薩摩訶薩 菩薩に同じ。 摩訶薩は梵語マハーサットヴァ (mahāsattva) の音写。
摩訶薩埵とも音写する。 偉大な人の意。 →
菩薩
釈提桓因 梵語シャクラ・デーヴァーナーム・インドラ (Śakra-devānām-indra) の音写。 帝釈天のこと。 →
帝釈天
「如↠是我聞。一時仏、在↢舎衛国祇樹給孤独園↡、与↢大比丘衆、千二百五十人↡倶。皆是大阿羅漢、衆所↢知識↡。長老舎利弗・摩訶目犍連・摩訶迦葉・摩訶迦旃延・摩訶倶絺羅・離婆多・周利槃陀伽・難陀・阿難陀・羅睺羅・驕梵波提・賓頭盧頗羅堕・迦留陀夷・摩訶劫賓那・薄拘羅・阿楼駄、如↠是等諸大弟子、并諸菩薩摩訶薩、文殊師利法王子・阿逸多菩薩・乾陀訶提菩薩・常精進菩薩、与↢如↠是等諸大菩薩及釈提桓因等無量諸天大衆↡倶。」
【44】*下、 高に接ぎて讃じていへ。
下高 下は道場の下座、 高は道場の高座。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 諸仏の大悲心無二なり。 ▼方便の*化門等しくして殊なることなし。 ˆ釈尊はˇ かの*荘厳無勝の土を捨てて、 *八相示現して閻浮に出でたまふ。 あるいは*真形を現じて*物を利し、 あるいは*雑類に同じて凡愚を化す。 身を六道に分ちて停息することなし。 変現よろしきに随ひて*有流を度す。 有流の見解心一にあらず。 ゆゑに八万四千の門あり。 門々不同にしてまた別にあらず。 別々の門還りてこれ同なり。 同なるゆゑはすなはちこれ如来の*致なり。 別なるゆゑはまたこれ慈悲の心なり。 悲心をもつて念々に三界を縁ずるに、 人天・*四趣罪根深し。 過・現の諸仏みな来りて化すれども、 無明・*業障をもつてあひ逢はず。 慚愧す、 釈迦の弘誓重くして娑婆十悪の叢を捨てたまはざることを。 希に道場に遇ひて浄土を聞く。 *神を騰げて永く逝きて*煩篭を出でん。 衆等、 傷心しともに悲嘆して、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
化門 衆生を教化し利益する法門。 「信文類」 の引用では 「仮門」 となっている。
荘厳無勝の土 無勝荘厳国。 西方四十二恒河沙の諸仏の国土の彼方にある釈迦仏の浄土。
真形 真の仏身。
物 衆生の意。
雑類 さまざまな機類。
有流 有漏に同じ。
煩悩 (漏) のある存在。 →
有漏
致 趣意。 おぼしめし。
四趣 四悪趣のことで、 地獄・
餓鬼・
畜生・
阿修羅をいう。 →
悪趣
神 神識。 こころ。
煩篭 煩悩によってとじこめられた迷いの世界を篭に喩えていう。
願往生、願往生。諸仏大悲心無二、方便化門等無↠殊。捨↢彼荘厳無勝土↡、八相示現出↢閻浮↡。或現↢真形↡而利↠物、或同↢雑類↡化↢凡愚↡。分↢身六道↡無↢停息↡。変現随宜度↢有流↡。有流見解心非↠一。故有↢八万四千門↡、門門不同亦非↠別、別別之門還是同。同故即是如来致、別故復是慈悲心。悲心念念縁↢三界↡。人天四趣罪根。過現諸仏皆来化、無明業障不↢相逢↡。慚愧釈迦弘誓重、不↠捨↢娑婆十悪叢↡。希遇↢道場↡聞↢浄土↡、騰神永逝出↢煩篭↡。衆等傷↠心共悲嘆、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【45】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 釈迦如来正覚を成じてより、 *四十九載衆生を度したまふ。 五天竺国 (印度) にみな化を行ずるに、 邪魔・外道ことごとく*帰宗す。 天上天下に仏に過ぎたるはなし。 慈悲をもつて苦を救ひたまふ。 実に逢ひがたし。 あるいは神光を放ちて六道に遍す。 光触を蒙るものは慈心を起す。 あるいは住し、 あるいは来るに、 みなことごとく益す。 三塗永く絶えて*追尋を断ず。 あるいは大地・山・河・海を震ふ。 *萌冥の信いまだ深からざるを覚せしめんがためなり。 あるいはみづから法を説きて教へてあひ勧め、 展転してあひ将て*法林に入らしむ。 法林はすなはちこれ弥陀国なり。 逍遙快楽してあひ侵さず。 衆等、 心を傾けてみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
四十九載 載は年の意。 釈尊の説法の年数。 ¬修行本起経¼ などによれば、 釈尊成道は三十歳とする。 その成道から八十歳の入滅に至る五十一年間のうち成道と入滅の年を除いた四十九年間をいう。 なお、三十五歳成道が一般的。
帰宗 帰依し仕えること。
追尋 おいもとめることで、 生死流転の意。
萌冥 まよっている人々。
法林 仏の教えが遍満していることを林に喩える。
願往生、願往生。釈迦如来成↢正覚↡四十九載度↢衆生↡。五天竺国皆行↠化、邪魔外道尽帰宗。天上天下無↠過↠仏。慈悲救↠苦、実難↠逢。或放↢神光↡遍↢六道↡、蒙↢光触↡者起↢慈心↡。或住或来皆尽益。三塗永絶断↢追尋↡。或震↢大地・山・河・海↡。為↠覚↢萌冥信未↟。或自説法教相勧、展転相将入↢法林↡。法林即是弥陀国。逍遥快楽不↢相侵↡。衆等傾↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【46】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 如来の教法は元無二なり。 まさしく衆生の機不同なるがために、 *一音をもつて演説したまふに、 縁に随ひて悟る。 *残結を留めずして*生空を証す。 あるいは神通を現じ、 あるいは法を説く。 あるいは外道を服して魔蹤を滅す。 みづから一身を利して*縛を免るといへども、 悲心のあまねく益すること絶えて功なし。 *灰身滅智の無余の証なれども、 二万劫尽きてまた心を生ず。 生心覚動して身また現ずれば、 諸仏先づ教へて*大乗を発さしむ。 *衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
一音を…悟る 仏の教えは本来ただ一つであるのに、 衆生はそれぞれの素質能力に応じてさとるという意。 ¬維摩経¼ 「仏国品」 等に出る。
残結を留めず 小乗の阿羅漢は少しも煩悩 (結) をとどめないという意。
生空 人空に同じ。 実体としての自我は存在しないということ。
灰身滅智…また現ずれば 小乗のさとりは身心ともに全くの無に帰した境地であるけれども、 二万劫という時を経て、 再び心が生じ、 その心が動いて身体がまた現れるという意。
大乗を発さしむ 小乗を捨てて大乗に帰入する心をおこさせる。
衆等 大衆のこと。 道場に参集している人々。
願往生、願往生。如来教法元無二。正為↢衆生機不同↡、一音演説随↠縁悟。不↠留↢残結↡証↢生空↡。或現↢神通↡或説法、或服↢外道↡滅↢魔蹤↡。自利↢一身↡雖↠免↠縛、悲心普益絶無↠功。灰身滅智無余証。二万劫尽復生↠心。生心覚動身還現。諸仏先教発↢大乗↡。衆等迴↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
【47】高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 菩薩大衆*無央数なり。 文殊師利もつとも尊たり。 大慈悲を発して苦行を行じ、 *弘願に違せずして衆生を度す。 あるいは上好荘厳の相を現じ、 あるいは上好荘厳の身を現ず。 *含霊*覩見してみな喜びを生ず。 ために妙法を説きて*真門に入らしむ。 十方仏国に身みな到り、 仏の*神光を助けて*法輪を転ず。 衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
願往生、願往生。菩薩大衆無央数。文殊師利最為↠尊、発↢大慈悲↡行↢苦行↡、不↠違↢弘願↡度↢衆生↡。或現↢上好荘厳相↡、或現↢上好荘厳身↡。含霊覩見皆生↠喜。為説↢妙法↡入↢真門↡。十方仏国身皆到、助↢仏神化↡転↢法輪↡。衆等迴↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【48】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 仏と声聞・菩薩衆、 同じく*舎衛に遊び*祇園に住し、 三塗を閉ぢ六道を絶たんと願じて、 無生浄土の門を開顕したまふ。 人天大衆みな来集して、 尊顔を*瞻仰して*未聞を聴く。 仏を見たてまつり経を聞きて同じく悟を得、 *畢命に心を傾けて宝蓮に入る。 誓ひて弥陀の安養界に到り、 *穢国に還来して人天を度せん。 願はくはわが慈悲際限なくして、 長時長劫に*慈恩を報ぜん。 衆等、 心を回して浄土に生ぜんとして、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
祇園 祇樹給孤独園の略称。 舎衛国 (コーサラ国の首都) の南にあった精舎。
未聞 いままでに聞いたことのない尊い教え。
願往生、願往生。与仏↢声聞・菩薩衆↡、同遊↢舎衛↡住↢祇園↡願↧閉↢三塗↡絶↦六道↥、開↢顕無生浄土門↡。人天大衆皆来集、瞻↢仰尊顔↡、聴↢未聞↡。見↠仏聞↠経同得↠悟、畢命傾↠心入↢宝蓮↡。誓到↢弥陀安養界↡、還↢来穢国↡度↢人天↡。願我慈悲無↢際限↡、長時長劫報↢慈恩↡。衆等迴↠心生↢浄土↡、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第二段
【49】高座入文。
高座入文。
「▲その時に仏、 *長老舎利弗に告げたまはく、 これより西方に十万億の仏土を過ぎて世界あり、 名づけて極楽といふ。 その土に仏まします、 阿弥陀と号す。 いま現にましまして法を説きたまふ。 ▲舎利弗、 かの土をなんがゆゑぞ名づけて極楽となす。 その国の衆生、 もろもろの苦あることなく、 ただもろもろの楽を受く。 ゆゑに極楽と名づく」 と。
「爾時仏告↢長老舎利弗↡、従↠是西方、過↢十万億仏土↡有↢世界↡、名曰↢極楽↡。其土有↠仏、号↢阿弥陀↡。今現在説法。舎利弗、彼土何故名為↢極楽↡。其国衆生、無↠有↢衆苦↡、但受↢諸楽↡、故名↢極楽↡。」
【50】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 人天大衆みな*囲繞して、 心を傾けて合掌して経を聞かんと願ず。 仏 (釈尊)、 *凡聖の機と時と悟とを知りたまひて、 すなはち*舎利に告げて用心して聴かしめたまふ。 一切の仏土みな厳浄なれども、 凡夫の乱想おそらくは生じがたければ、 如来 (釈尊) 別して西方の国を指したまふ。 「これより十万億を超過せり。 七宝の荘厳もつとも勝たり。 *聖衆人天の寿命長し。 仏を弥陀と号す。 つねに法を説きたまふ。 極楽の衆生障おのづから亡ず」 と。 衆等、 心を回してかしこに生ぜんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
聖衆 浄土の聖者たち。
願往生、願往生。人天大衆皆囲繞、傾↠心合掌願↠聞↠経。仏知↢凡聖機時悟↡、即告↢舎利↡用心聴。一切仏土皆厳浄、凡夫乱想恐難↠生。如来別指↢西方国↡。従↠是超↢過十万億↡。七宝荘厳最為↠勝。聖衆人天寿命長。仏号↢弥陀↡、常説法。極楽衆生、障自亡。衆等迴↠心願↠生↠彼、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第三段
【51】高座入文。
高座入文。
「▲また舎利弗、 極楽国土には七重の*欄楯・七重の*羅網・七重の*行樹あり。 みなこれ*四宝をもつて*周帀し囲繞せり。 このゆゑにかの国を名づけて極楽といふ」 と。
欄楯 装飾をほどこした垣。
行樹 並木。
四宝 金・銀・瑠璃・玻。
周帀し囲繞せり あまねくめぐり、 とりかこんでいること。
「又舎利弗、極楽国土、七重欄楯、七重羅網、七重行樹。皆是四宝、周帀囲繞。是故彼国名曰↢極楽↡。」
【52】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 三界の衆生は智慧なし。 *惛々として六道のうちに身を安く。 諸仏慈心をもつてために法を説きたまへども、 *聾盲*觝突の伴は聞かず。 たちまちに無常の苦来り逼むれば、 精神錯乱してはじめて*驚忙す。 *万事の家生みな捨離し、 専心に*発願して西方に向かへ。 弥陀の名号相続して念ずれば、 化仏・菩薩眼前に行なりたまふ。 あるいは*華台を与へ、 あるいは手を授け、 *須臾に命尽きぬれば、 仏迎へ将たまふ。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
惛々 道理に暗いさま。
觝突 角でつくものの意で、 牛などの畜類のこと。
驚忙 おどろきあわてること。
万事の家生 すべての家業。
願往生、願往生。三界衆生無↢智慧↡。惛惛六道内安↠身。諸仏慈心為説↠法、聾盲觝突伴不↠聞。忽爾無常苦来逼、精神錯乱始驚忙。万事家生皆捨離、専心発願向↢西方↡。弥陀名号相続念、化仏・菩薩眼前行、或与↢華台↡或授↠手、須臾命尽仏迎将。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【53】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 *歴劫よりこのかたいまだ聞見せず。 西方浄土の宝荘厳、 地上・虚空にみな*遍満して、 *珠羅宝網百千重なり。 一々の*網羅珍宝を結び、 *玲瓏たる雑色ことごとく光を暉かす。 宝樹の枝条異相間はり、 *行々整直にして巧みにあひ当れり。 これはこれ弥陀の悲願力なり。 無衰無変にして*湛然として常なり。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
歴劫 はかりしれない昔。
珠羅宝網 宝珠をつらねた飾りあみ。
網羅 羅網 (あみ) に同じ。
玲瓏 すきとおって美しく光り輝くさま。
行々整直 規則正しく並んでいるさま。
湛然 静かに落ち着いているさま。
願往生、願往生。歴劫已来未↢聞見↡。西方浄土宝荘厳、地上虚空皆徧満、珠羅宝網百千重。一一網羅結↢珍宝↡、玲瓏雑色尽↢暉光↡。宝樹枝条異相間、行行整直巧相当。此是弥陀悲願力。無衰無変湛然常。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第四段
【54】高座入文。
高座入文。
「▲また舎利弗、 極楽国土には七宝の池あり。 *八功徳水そのなかに充満せり。 池の底にはもつぱら金沙をもつて地に布けり。 四辺の*階道は金・銀・*瑠璃・*玻瓈をもつて合成せり。 上に*楼閣あり。 また*金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯をもつて、 これを*厳飾す。 池のなかの蓮華、 大きさ車輪のごとし。 青色には青光、 黄色には黄光、 赤色には赤光、 白色には白光あり。 微妙香潔なり。 舎利弗、 極楽国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
階道 階段状になった道。
玻瓈 水晶のこと。
「又舎利弗、極楽国土有↢七宝池↡、八功徳水、充↢満其中↡。池底純以↢金沙↡布↠地。四辺階道、金・銀・瑠璃・玻瓈合成。上有↢楼閣↡、亦以↢金・銀・瑠璃・玻瓈・硨磲・赤珠・碼碯↡、而厳↢飾之↡。池中蓮華、大如↢車輪↡。青色青光、黄色黄光、赤色赤光、白色白光。微妙香潔。舎利弗、極楽国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【55】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 極楽世界は広くして清浄なり。 地上の荘厳量るべきこと難し。 *八功の香池流れて*遍満す。 底に布ける金沙、 照らすに異光あり。 四辺の階道一色にあらず。 岸上の*重楼百万行なり。 真珠・碼碯あひ*映飾し、 四種の蓮華開けてすなはち香ばし。 十方の人天生ずることを得るものは、 おのおの*一箇に坐して*真常を聴く。 このゆゑにかの国を極楽と名づく。 衆等、 華を持して来りて供養したてまつれ。
重楼 楼閣に同じ。
映飾 照らし合うこと。
一箇 ひとつの蓮華の台。
真常 変わることのないまことの法。
願往生、願往生。極楽世界、広清浄。地上荘厳難↠可↠量。八功香池流徧満。底布金沙照↢異光↡。四辺階道非↢一色↡。岸上重楼百万行。真珠・碼碯相映飾、四種蓮華開即香。十方人天得↠生者、各坐↢一箇↡聴↢真常↡。是故彼国名↢極楽↡。衆等持↠華来供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第五段
【56】高座入文。
高座入文。
「▲また舎利弗、 かの仏国土にはつねに*天の楽をなす。 黄金をもつて地となし、 *昼夜六時に天の*曼陀羅華を雨らす。 その国の衆生、 つねに*清旦をもつて、 おのおの*衣裓をもつてもろもろの妙華を盛れて、 他方十万億の仏を供養したてまつる。 すなはち*食時をもつて本国に還り到りて、 飯食し*経行す。 舎利弗、 極楽国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
天の楽 すぐれた音楽。
曼陀羅華 梵語マーンダーラヴァ (māndārava) の音写。 天上界の華の名。
清旦 すがすがしい朝。
衣裓 花を盛る器。
食時をもつて 食事の時までにの意。
「又舎利弗、彼仏国土、常作↢天楽↡。黄金為↠地、昼夜六時而雨↢曼陀羅華↡。其国衆生、常以↢清旦↡、各以↢衣裓↡、盛↢衆妙華↡、供↢養他方十万億仏↡。即以↢食時↡還↢到本国↡、飯食経行。舎利弗、極楽国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【57】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 弥陀仏国はもつとも勝たり。 広大*寛平にして実にこれ*精なり。 天楽音声つねに遍満す。 黄金をもつて地となして奇珍を間へたり。 昼夜六時に華おのづから散ず。 法音つねに説きて自然に聞く。 かの国の衆生はさらに事なし。 衣裓に華を盛れて十方に詣す。 *一々に親承して供養を修するに、 *塵労垢習永く消亡す。 種々に心に随ひみな意に称ひて、 利益せざるはなし。 これ真常なり。 たちまちに*飛騰して本国に還り、 飯食して七宝の台に経行す。 衆等、 心を傾けてみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
一々に親承して 十方世界の各々の仏に親しく仕えて。
塵労垢習 塵労は煩悩、 垢習はその習気 (潜在的余力、 なごり) のこと。
飛騰 空間を自由自在に移動すること。
願往生、願往生。弥陀仏国最為↠勝。広大寛平実是精。天楽音声常徧満。黄金為↠地間↢奇珍↡。昼夜六時華自散。法音常説自然聞。彼国衆生更無↠事。衣裓盛↠華詣↢十方↡。一一親承修↢供養↡、塵労垢習永消亡。種種随↠心皆称↠意、無↠不↢利益↡。是真常。欻爾飛騰還↢本国↡、飯食経↢行七宝台↡。衆等傾↠心、皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第六段
【58】高座入文。
高座入文。
「▲また次に舎利弗、 かの国にはつねに種々奇妙なる雑色の鳥あり。 *白鵠・孔雀・鸚鵡・*舎利・*迦陵頻伽・*共命の鳥なり。 このもろもろの衆鳥、 昼夜六時に*和雅の音を出す。 その音*五根・*五力・*七菩提分・*八聖道分、 かくのごとき等の法を*演暢す。 その土の衆生この音を聞きをはりて、 みなことごとく仏を念じ法を念じ僧を念ず。 舎利弗、 なんぢこの鳥は実にこれ罪報の所生なりと謂ふことなかれ。 所以はいかん。 かの仏国土には三悪趣なければなり。 舎利弗、 その仏国土にはなほ三悪道の名すらなし、 いかにいはんや*実あらんや。 このもろもろの衆鳥は、 みなこれ阿弥陀仏、 法音を*宣流せしめんと欲して、 変化してなしたまふところなり。 ▲舎利弗、 かの仏国土には微風吹きて、 もろもろの*宝行樹および*宝羅網を動かすに、 微妙の音を出す。 たとへば百千種の楽を同時にともになすがごとし。 この音を聞くもの、 みな自然に仏を念じ法を念じ僧を念ずる心を生ず。 舎利弗、 その仏国土にはかくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
白鵠 鶴の一種。 白鳥または天鵞ともいう。
舎利 梵語シャーリカ (śārika) の音写。 鶖鷺・鸜などと漢訳する。 黒色で人語を暗誦するという。
漢訳する。 殻のなかにいるとき、 すでによく鳴き、 きわめて美しい声を出すという。
共命の鳥 命々鳥ともいう。 人面禽形で一身に両頭を有するという。
和雅の音 調和のとれた優雅な声。
実 実体。
宣流 のべひろめること。
宝行樹 宝でできている並木。
宝羅網 宝珠をつらねた飾りあみ。
「復次舎利弗、彼国常有↢種種奇妙雑色之鳥↡。白鵠・孔雀・鸚鵡・舎利・迦陵頻伽・共命之鳥。是諸衆鳥、昼夜六時出↢和雅音↡。其音演↢暢五根・五力・七菩提分・八聖道分、如↠是等法↡。其土衆生、聞↢是音↡已、皆悉念↠仏念↠法念↠僧。舎利弗、汝勿↠謂↢此鳥実是罪報所生↡。所以者何、彼仏国土無↢三悪趣↡。舎利弗、其仏国土尚無↢三悪道之名↡、何況有↠実。是諸衆鳥、皆是阿弥陀仏、欲↠令↢法音宣流↡変化所作。舎利弗、彼仏国土、微風吹↢動諸宝行樹及宝羅網↡、出↢微妙音↡。譬如↢百千種楽同時倶作↡。聞↢是音↡者皆自然生↢念仏・念法・念僧之心↡。舎利弗、其仏国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【59】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 道場清浄にして希にして見がたし。 弥陀の浄土はなはだ聞きがたし。 聞きがたく見がたくしていま会ふことを得たり。 *如説に修行して意をもつぱらにしてもつぱらにせん。 願はくは仏の慈悲はるかに*摂受して、 臨終に宝座その前に現じたまへ。 すでに華台を見て心踊躍し、 仏に従ひて*逍遙して自然に帰す。 自然はすなはちこれ弥陀国なり。 無漏無生にしてまたすなはち真なり。 *行来進止、 つねに仏に随ひて*無為法性の身を証得す。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
如説 経説のとおり。
行来進止 行くのもとどまるのも。
無為法性の身 すべての限定を超えたさとりの身。
願往生、願往生。道場清浄希難↠見、弥陀浄土甚難↠聞。難↠聞難↠見今得↠会。如説修行専↠意専。願仏慈悲遥摂受、臨終宝座現↢其前↡。既見↢華台↡心踊躍、従↠仏逍遥帰↢自然↡。自然即是弥陀国。無漏無生還即真。行来進止、常随↠仏、証↢得無為法性身↡。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【60】 下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 極楽の荘厳は雑宝を間へたり。 実にこれ*希奇にして未聞を聞く。 *宝鳥、 空に臨みて*仏会を讃ず。 文々句々、 理あひ同じ。 昼夜に声を連ねて息むことあることなし。 *哀婉雅亮にして人心を発す。 あるいは五根・七覚分を説き、 あるいは*八聖慈悲門を説き、 あるいは他方の悪道を離るることを説き、 あるいは地獄の人天を封ずることを説き、 あるいは長時に苦行を修することを説き、 あるいは*無上菩提の因を説き、 あるいは散善の波羅蜜を説き、 あるいは*定慧をもつて深禅に入ることを説く。 菩薩・声聞この法を聞きて、 処々に分身して*法輪を転ず。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
宝鳥 阿弥陀仏の変化であるところの宝の鳥。
哀婉雅亮 深い情趣をたたえて、 しなやかに響きわたり、 優雅・明澄であること。
願往生、願往生。極楽荘厳間↢雑宝↡。実是希奇聞↢未聞↡。宝鳥臨↠空讃↢仏会↡。文文句句理相同。昼夜連↠声無↠有↠息。哀婉雅亮発↢人心↡。或説↢五根・七覚分↡、或説↢八聖慈悲門↡、或説↣他方離↢悪道↡、或説↣地獄封↢人天↡、或説↣長時修↢苦行↡、或説↢無上菩提因↡、或説↢散善波羅蜜↡、或説↣定慧入↢禅↡。菩薩・声聞聞↢此法↡、処処分身転↢法輪↡。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
【61】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 極楽の荘厳は三界を出で、 人・天・雑類等しくして無為なり。 *法蔵は*因の広弘願を行じ、 もしわれ仏を得ば*希奇を現ぜんと。 あるいは*鳥身を現じてよく法を説き、 あるいは*無請に現じてよく機に応じ、 あるいは*微波をして妙響を出さしめ、 あるいは林樹をして慈悲を讃ぜしめ、 あるいは風光をしてあひ応じて動ぜしめ、 あるいは*羅網をして音辞を説かしめん。 一切の荘厳の声*遍満し、 恒沙の*天楽おのづから時による。 *他方の凡聖の類を引かんがために、 ことさらに仏この不思議を現じたまふ。 われらこれを聞きて身の毛竪つ。 骨を砕きて*阿弥師に*慚謝す。 一たび受けて専精にして命を惜しまざれば、 須臾にすなはち ˆ浄土にˇ 到る。 あに遅しとせんや。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
鳥身 白鵠・孔雀等の鳥のすがた。
無請に 誰も懇請しないのに。
微波 さざ波。
他方の凡聖 極楽以外の世界の凡夫と聖者。
阿弥師 阿弥陀大師の略。
願往生、願往生。極楽荘厳出↢三界↡。人天雑類等無為。法蔵行因広弘願、設我得↠仏、現↢希奇↡。或現↢鳥身↡能説↠法、或現↢無請↡能応↠機、或使↣微波出↢妙響↡、或使↣林樹讃↢慈悲↡、或使↢風光相応動↡、或令↣羅網説↢音辞↡。一切荘厳声徧満、恒沙天楽自依↠時。為↠引↢他方凡聖類↡、故仏現↢此不思議↡。我等聞↠之身毛豎。砕↠骨慚↢謝阿弥師↡。一受専精不↠惜↠命、須臾即到豈為↠遅。衆等迴↠心皆願↠往、手執↢香華↡常供養。
下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
【62】高、 下に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 弥陀の仏国はまことに厳浄なり。 *三悪・六道永く名すらなし。 事々の荘厳識るべきこと難し。 種々妙微にしてはなはだ精たり。 地はるかに*寛平にして衆宝間はり、 一々に同じく耀きて五百の光あり。 一々の光宝台座となる。 一々の座上に百千の堂あり。 千堂の化仏、 *塵沙の会あり。 衆生入るものともにあひ量る。 無数の音声空に遊びて転じ、 *化天童子華香を散ず。 *昼夜六時に間息することなし。 地上・虚空量るべきこと難し。 *八徳の香池に意に随ひて入る。 *潅注すること人によりて浅深なし。 あるいは出で、 あるいは没す。 *三禅の楽なり。 *徐々としてあひ喚ばひて*檀林に入る。 檀林には宝座行々として別れたり。 聖衆はなほ日月に超ゆるがごとし。 日月はすなはちこれ長時劫なり。 あるいは坐し、 あるいは立し、 あるいは遊方するに、 到る処にはただ無上の法のみを聞きて、 永く凡夫生死の殃を絶つ。 このゆゑにかの国を安楽と名づく。 衆等、 心を回して往生を願ぜよ。 かの国に往生しぬれば余の事なし。 手に香華を執りてつねに供養したてまつれ。
塵沙の会 数限りない説法の会座。
潅注 (宝池の水を) そそぐこと。
徐々 静かにおちついているさま。
檀林 栴檀 (香木) の林。
願往生、願往生。弥陀仏国真厳浄。三悪・六道永無↠名。事事荘厳、難↠可↠識。種種妙微甚為↠精。地迥寛平衆宝間、一一同耀五百光。一一光成↢宝台座↡、一一座上百千堂。千堂化仏塵沙会。衆生入者共相量。無数音声遊↠空転、化天童子散↢華香↡。昼夜六時無↢間息↡。地上・虚空難↠可↠量。八徳香池随↠意入。灌注由↠人無↢浅↡。或出或没三禅楽。徐徐相喚入↢檀林↡、檀林宝座行行別。聖衆猶若↠超↢日月↡。日月即是長時劫。或坐或立或遊方、到処唯聞↢無上法↡、永絶↢凡夫生死殃↡。是故彼国名↢安楽↡。衆等回↠心願↢往生↡。往↢生彼国↡無↢余事↡。手執↢香華↡常供養。
高、 下に接ぎて讃じていへ。 下、 高に接ぎて讃じていへ。
高接↠下讃云。 下接↠高讃云。
◎転経分 ○第七段
【63】高座入文。
高座入文。
「▲舎利弗、 なんぢが意においていかん、 かの仏をなんがゆゑぞ阿弥陀と号する。 舎利弗、 かの仏の光明無量にして十方の国を照らすに、 *障礙するところなし。 このゆゑに号して阿弥陀となす。 また舎利弗、 かの仏の寿命およびその人民 ˆの寿命ˇ も無量無辺阿僧祇劫なり。 ゆゑに阿弥陀と名づく。 舎利弗、 阿弥陀仏は、 成仏よりこのかたいまに十劫なり。 ▲また舎利弗、 かの仏に無量無辺の声聞の弟子あり、 みな阿羅漢なり。 これ*算数のよく知るところにあらず。 もろもろの菩薩衆もまたかくのごとし。 舎利弗、 かの仏の国土には、 かくのごとき功徳荘厳を成就せり」 と。
「舎利弗、於↢汝意↡云何。彼仏何故号↢阿弥陀↡。舎利弗、彼仏光明無量、照↢十方国↡、無↠所↢障礙↡、是故号為↢阿弥陀↡。又舎利弗、彼仏寿命及其人民、無量無辺阿僧祇劫。故名↢阿弥陀↡。舎利弗、阿弥陀仏成仏已来、於↠今十劫。又舎利弗、彼仏有↢無量無辺声聞弟子↡、皆阿羅漢。非↣是算数之所↢能知↡。諸菩薩衆、亦復如↠是。舎利弗、彼仏国土、成↢就如↠是功徳荘厳↡。」
【64】下、 高に接ぎて讃じていへ。
下接↠高讃云。
願はくは往生せん、 願はくは往生せん。 ˆ阿弥陀仏はˇ 果、 涅槃を得てつねに世に住す。 寿命延長にして量るべきこと難し。 千劫・万劫・恒沙劫・*兆載永劫にしてまた*無央なり。 一たび坐して移ることなくまた不動なり。 *後際を徹窮して身光を放つ。 *霊儀の相好真金色なり。 *巍々として独り坐して衆生を度す。 十方の*凡聖専心に向かへば、 ˆ阿弥陀仏はˇ 身を分ち化を遣はして往きてあひ迎へしめたまふ。 一念に空に乗じて*仏会に入れば、 身色・寿命ことごとくみな平し。 衆等、 心を回してみな往かんと願じて、