安楽集あんらくしゅう かんじょう

しゃく*道綽どうしゃくせん

総説

【1】 この ¬安楽あんらくしゅう¼ 一のうちに、 そうじて十二の大門だいもんあり。 みな経論きょうろんきて証明しょうみょうして、 しんすすくことをもとめしむ

此安楽集一部之内、総有↢十二大門↡。皆引↢経論↡証明勧↠信求↠往。

原漢文の底本は本派本願寺蔵版。 高野山宝寿院蔵天永三年写本、 龍谷大学蔵宝永元年刊本、 龍谷大学蔵鎌倉時代刊本 (下巻のみ)、 龍谷大学蔵正平二年写本、 大派依用十行本と対校されている。

第一大門

【2】 いまだい一の大門だいもんのうちにつきて、 文義もんぎおおしといへども、 りゃくして九もんつくりて*料簡りょうけんし、 しかるのちもんいたらん

今先就↢第一大門内↡、文義雖↠衆略作↢九門↡料簡、然後造↠文。

1. 教興所由

だい一に*教興きょうこうしょかして、 *ときやくこうむらしめてすすめてじょうせしむ

教興の所由 浄土の教えが興る理由。
 時節。 時代。

第一明↢教興所由↡約↠時被↠機勧↢帰浄土↡。

2. 説聴方軌

だい二に*しょ大乗だいじょうによりて*説聴せっちょうほうあらわ

諸部の大乗 諸種の大乗の経論。
説聴の方軌 教えを説く者と聞く者との心構え。

第二拠↢諸部大乗↡顕↢説聴方軌↡。

3. 発心久近

だい三に大乗だいじょう聖教しょうぎょうによりて、 もろもろのしゅじょう*発心ほっしんごん*ぶつ多少たしょうかして、 *時会じえ聴衆ちょうしゅをしてつとはげみて発心ほっしんせしめんとほっ

供仏 仏をようすること。
時会の聴衆 現在この会座に参集している人々。

第三拠↢大乗聖教↡明↢諸衆生発心久近、供仏多小↡、欲↠使↢時会聴衆力励発心↡。

4. 宗旨不同

だい四に諸経しょきょう*宗旨しゅうしどうべん

宗旨 経典に説かれた法義の最も肝要なことがら。

第四弁↢諸経宗旨不同↡。

5. 諸経得名

だい五に諸経しょきょう得名とくみょうおのおのことなることをかす。 ¬*はん¼・「*般若経はんにゃきょうとうのごときはほうにつきてとなす。 おのづからたとへにつくことあり、 あるいはにつくことあり、 またときにつき、 ところにつくことあり。 このれい一にあらず。 いまこの ¬*かんぎょう¼ は人法にんぽうにつきてとなす。 「ぶつ」 はこれにん、 「せつかん無量寿むりょうじゅ」 はこれほうなり

第五明↢諸経得名各異↡。如↢¬涅槃¼・¬般若経¼等↡就↠法為↠名。自有↠就↠喩、或有↠就↠事、亦有↢就↠時就↟処、此例非↠一。今此¬観経¼就↢人・法↡為↠名。「仏」是人名、「説観無量寿」是法名也。

6. 説人差別

だい六に説人せつにん差別しゃべつ*料簡りょうけんす。 諸経しょきょうせつしゅぎず。 一にはぶつせつ、 二には*しょう弟子でしせつ、 三には*諸天しょてんせつ、 四には*神仙しんせんせつ、 五には*へんせつなり。 この ¬*かんぎょう¼ は、 五しゅせつのなか、 そんせつなり

聖弟子 しゃほつ等の仏弟子。
諸天 梵天ぼんてん帝釈天たいしゃくてん等の護法の善神。
神仙 仏法に帰依きえした仙人。
変化 変化身のこと。 仏・菩薩がすがたを変えて仮に現れたもの。

第六料↢簡説人差別↡。諸経起説不↠過↢五種↡。一者仏自説、二者聖弟子説、三者諸天説、四者神仙説、五者変化説。此¬観経¼者、五種説中世尊自説。

7. 三身三土

だい七にりゃくして*しんおうの二しんかし、 ならびにしんおうの二べん

真応 真は報身、 応は応身のこと。 →報身ほうじん応身おうじん

第七略明↢真・応二身、并弁↢真・応二土↢。

8. 凡聖通往

だい八に弥陀みだ浄国じょうこくくらい上下じょうげね、 *凡聖ぼんしょうつうじてくことをあらわ

第八顕↧弥陀浄国位該↢上下↡凡聖通往↥。

9. 三界摂不

だい九に弥陀みだ浄国じょうこく*がいしょう不摂ふしょうとをかす

三界の摂と不摂 迷いの境界であるところの三界におさまるか、 おさまらないか。 →三界さんがい

第九明↣弥陀浄国三界摂与↢不摂↡也。

◎第一大門 教興所由

約時被機

【3】 だい大門だいもんのなか、 *教興きょうこうしょかして、 ときやくこうむらしめてすすめてじょうせしむとは、 もしきょう時機じき*おもむけば、 しゅしやすくさとりやすし。 もしきょうときそむけば、 しゅしがたくりがたし

教興の所由を… →補註4
赴けば 合致すればの意。

第一大門中、明↢教興所由↡約↠時被↠機勧↢帰浄土↡者、若教赴↢時機↡易↠修易↠悟、若機教時乖難↠修難↠入。

このゆゑに *¬*しょうぼう念経ねんぎょう¼ にのたまはく、

正法念経に… 引用の文は ¬正法念経¼ にはない。 摩羅まらじゅう訳 ¬座禅ざぜん三昧ざんまいきょう¼ の取意の文。

行者ぎょうじゃしんどうもとむるとき、 つねにまさにとき方便ほうべんとを観察かんざつすべし。

もしときず、 方便ほうべんなくは、 これをづけてしつとなしづけず。

 なんとなれば、   

もし湿うるおへるりてもつてもとめんに、 べからず、 ときにあらざるがゆゑなり。

もしかわきたるたきぎりてもつてもとめんに、 べからず、 なきがゆゑなり」 と

是故¬正法念経¼云。「行者一心求↠道時、常当↣観↢察時方便↡。若不↠得↠時無↢方便↡。是名為↠失、不↠名↠利。何者如↧攢↢木↡以求↠火火不↠可↠得、非↠時故、若折↢乾薪↡以覓↠水水不↠可↠得、無↞智故。」

水水 天永三年写本では 「火火」。

五箇五百年

このゆゑに ¬*大集だいじゅう月蔵がつぞうきょう¼ (意) にのたまはく、 「ぶつめつのちだい一の五百年ひゃくねんには、 わがもろもろの弟子でしまなぶことけんなることをん。 だい二の五百年ひゃくねんには、 じょうまなぶことけんなることをん。 だい三の五百年ひゃくねんには、 もん読誦どくじゅまなぶことけんなることをん。 だい四の五百年ひゃくねんには、 とう造立ぞうりゅうふくしゅさんすることけんなることをん。 だい五の五百年ひゃくねんには、 *白法びゃくほう隠滞おんたいしておお*諍訟じょうじゅあらん。 すこしき善法ぜんぽうありてけんなることをん」 と

白法隠滞 仏の教えがかくれとどこおること。
諍訟 争いごと。

是故¬大集月蔵経¼云。「仏滅度後第一五百年、我諸弟子学↠慧得↢堅固↡。第二五百年、学↠定得↢堅固↡。第三五百年、学↢多聞・読誦↡得↢堅固↡。第四五百年、造↢立塔寺↡修↠福懺悔得↢堅固↡。第五五百年、白法隠滞多有↢諍訟↡。微有↢善法↡得↢堅固↡。」

またかの ¬きょう¼ (同・意) にのたまはく、 「諸仏しょぶつでたまふに、 四しゅほうありてしゅじょうしたまふ。 なんらをか四となす。 一にはくち*十二部経ぶきょうく。 すなはちこれ*ほうをもつてしゅじょうしたまふ。 二には諸仏しょぶつ如来にょらいにはりょう*こうみょう*相好そうごうまします。 一さいしゅじょうただよくしんけて*観察かんざつすれば、 やくざるはなし。 これすなはち*身業しんごうをもつてしゅじょうしたまふ。 三にはりょう徳用とくゆう*神通じんずう道力どうりき種々しゅじゅへんまします。 すなはちこれ神通じんずうりきをもつてしゅじょうしたまふ。 四には諸仏しょぶつ如来にょらいにはりょう*みょうごうまします。 もしは*そう、 もしは*べつなり。 それしゅじょうありてしんけて称念しょうねんすれば、 さわりのぞやくて、 みな仏前ぶつぜんしょうぜざるはなし。 すなはちこれみょうごうをもつてしゅじょうしたまふ」 と

法施 人々に教えを説いて聞かせること。
総・別 総は如来の十号を指し、 別は阿弥陀如来ややく如来等の個々の名号を指す。

又彼¬経¼云。「諸仏出↠世有↢四種法↡度↢衆生↡。何等為↠四。一者口説↢十二部経↡。即是法施度↢衆生↡。二者諸仏如来有↢無量光明・相好↡。一切衆生、但能繋↠心観察無↠不↠獲↠益。是即身業度↢衆生↡。三者有↢無量徳用・神通道力・種種変化↡。即是神通力度↢衆生↡。四者諸仏如来有↢無量名号↡。若総若別。其有↢衆生↡繋↠心称念、莫↠不↣除↠鄣獲↠益皆生↢仏前↡。即是名号度↢衆生↡。」

いまのときしゅじょうはかるに、 すなはちぶつりたまひてのちだい四の五百年ひゃくねんあたれり。 まさしくこれ*さんふくしゅし、 ぶつみょうごうしょうすべきときなり。 もし一ねん阿弥陀あみだぶつしょうすれば、 すなはちよく八十億劫おくこうしょうつみ除却じょきゃくす。 一ねんすでにしかなり。 いはんや常念じょうねんしゅせんをや。 すなはちこれつねにさんするひとなり。 またもししょう (釈尊)ることちかければ、 すなはちさきのものじょうしゅしゅするはこれその正学しょうがくなり、 のちのものはこれけんなり。 もししょうることすでにとおければ、 すなはちのちのものみなしょうするはこれしょうにして、 さきのものはこれけんなり。 なんのこころぞしかるとならば、 まことにしゅじょうしょうること遙遠ようおんにして、 *機解きげせん暗鈍あんどんなるによるがゆゑなり

機解 しゅじょうの理解するところ。

計↢今時衆生↡即当↢仏去↠世後第四五百年↡。正是懺悔修↠福応↠称↢仏名号↡時者。若一念称↢阿弥陀仏↡、即能除↢却八十億劫生死之罪↡。一念既爾、況修↢常念↡即是恒懺悔人也。又若去↠聖近即前者修↠定修↠慧是其正学、後者是兼。如去↠聖已遠則後者称↠名是正、前者是兼。何意然者、寔由↢衆生去↠聖遥遠、機解浮浅暗鈍↡故也。

ここをもつて*だいだい、 みづからおよびまつ*じょくしゅじょう*りんこうにしていたづらに痛焼つうしょうくるを*哀愍あいみんするがゆゑに、 よくかりにえんひて*出路しゅつろかいす。 しかれば大聖だいしょう (釈尊) 弘慈ぐじをもつてすすめて極楽ごくらくせしむ。 もし*ここにおいて*進趣しんしゅせんとほっせば、 *勝果しょうかかなひがたし。 ただじょうの一もんのみありて、 *じょうをもつてねがひて趣入しゅにゅうすべし。 もし*衆典しゅてんひらたずねんとほっせば、 すすむるところいよいよおおし。 つひにもつて*真言しんごんあつめてたすけて*往益おうやくしゅせしむ。 なんとなれば、 さきしょうずるものはのちみちびき、 のちかんものはさきとぶらひ、 連続れんぞくぐうにしてねがはくは休止くしせざらしめんとほっす。 へんしょうかいつくさんがためのゆゑなり

韋提大士 大士は菩薩の意。 道綽どうしゃくぜんは韋提希をごんの菩薩とする。 →だい
出路を諮開す (迷いの世界を) しゅつする道を尋ねる。
ここ 此土しどしゃ世界。
進趣 (さとりに向かって) 修行し進むこと。
勝果 すぐれたさとりの果報。
 凡情。 ぼんの心情。
衆典 数多くの経典。
真言 真実なる仏の言葉。
往益 往生浄土のやく

是以韋提大士自為及哀↣愍末世五濁衆生輪迴多劫徒受↢痛焼↡故、能仮遇↢苦縁↡諮↢開出路↡豁然。大聖加↠慈勧↢帰極楽↡。若欲↢於↠斯進趣↡勝果難↠階。唯有↢浄土一門↡可↢以↠情悕趣入↡。若欲↣披↢尋衆典↡勧処弥多。遂以採↢集真言↡助↢修往益↡。何者欲↠使↧前生者導↠後、後去者訪↠前、連続無窮願不↦休止↥。為↠尽↢無辺生死海↡故。

為及 「および」 とむ。
 天永三年写本、 正平二年写本では脱落。
 天永三年写本、 正平二年写本では 「弘」。

◎第一大門 説聴方軌

【4】 だい二に*しょ大乗だいじょうによりて*説聴せっちょうほうかすとは、 なかに六あり

諸部の大乗 諸種の大乗の経論。
説聴の方軌 教えを説く者と聞く者との心構え。

第二拠↢諸部大乗↡明↢説聴方軌↡者、於↠中有↠六。

1. 大集経

だい一に¬*大集だいじっきょう¼ (意) にのたまはく、 「説法せっぽうのものにおいてはおうおもいをなし、 ばっおもいをなせ。 くところのほうには*かんおもいをなし、 *だいおもいをなせ。 それほうくものは*増長ぞうじょう勝解しょうげおもいをなし、 愈病ゆびょうおもいをなせ。 もしよくかくのごとくくもの、 くものは、 みな仏法ぶっぽう紹隆しょうりゅうするにへたり、 つねに仏前ぶつぜんしょうず」 と

増長勝解の想 仏法を領解りょうげし、 味わうすぐれた心が成長してゆくこと。

第一¬大集経¼云。「於↢説法者↡作↢医王想↡、作↢抜苦想↡。所説之法作↢甘露想↡、作↢醍醐想↡。其聴法者作↢増長勝解想↡、作↢愈病想↡。若能如↠是説者・聴者、皆堪↣紹↢隆仏法↡。常生↢仏前↡。」

2. 大智度論 一

 だい二に ¬*だい智度ちどろん¼ にいはく、

くものは*たんして*渇飲かつおんのごとくせよ。 一しん*語議ごぎのなかにり、

端視 ひたすらに心を傾けること。
渇飲 のどのかわいた人が水を求めるような思い。
語議 言葉の深い意味内容。

ほうきてやくしん悲喜ひきす。 かくのごときひとにためにくべし」 と

第二¬大智度論¼云。「聴者端視如↢渇飲↡。一心入↢於語議中↡聞↠法踊躍心悲喜、如↠是之人応↢為説↡。」

3. 大智度論 二

 だい三にかの ¬ろん¼ (同・意) にまたいはく、 「二しゅひとありて、 ふくることりょうへんなり。 なんらをか二となす。 一にはこのみてほうひと、 二にはこのみてほうひとなり。 このゆゑに*なんぶつにまうしてまうさく、 ª*しゃほつ*目連もくれんなにをもつてかるところの*智慧ちえ*神通じんずう*しょう弟子でしのなかにおいてもつとも殊勝しゅしょうなりとなすº と。 ぶつなんげたまはく、 ªこの二にんは、 *因中いんちゅうときにおいて、 *ほう因縁いんねんのためにせんかたしとせず。 このゆゑに今日こんにちもつとも殊勝しゅしょうなりとなすº」 と

聖弟子 仏弟子のこと。
因中の時 (阿羅あらかんの) さとりを得るための修行をしている時期。
法の因縁 仏法を聞く機会。

第三彼¬論¼又云。「有↢二種人↡得↠福無量無辺。何等為↠二。一者楽説法人、二者楽聴法人。是故阿難白↠仏言。舎利弗・目連何以所↠得智慧・神通於↢聖弟子中↡最為↢殊勝↡。仏告↢阿難↡。此之二人於↢因中時↡為↢法因縁↡千里不↠難。是故今日最為↢殊勝↡。」

4. 大経(下) 一

 だい四に ¬*りょう寿じゅだいきょう¼ (下) にのたまはく、

もしひと*善本ぜんぽんなければ、 このきょうくことをず。

清浄しょうじょうかいたもてるもの、 すなはちしょうぼうくことを」 と

第四¬無量寿大経¼云。「若人無↢善本↡不↠得↠聞↢此経↡。清浄有↠戒者乃獲↠聞↢正法↡。」

5. 大経(下) 二

 だい五にのたまはく (*同・下意)

曾更むかしそんたてまつるもの、 すなはちよくこのしんず。

おく如来にょらい*奉事ぶじして、 このみてかくのごとききょうく」 と

第五云。「曾更見↢世尊↡則能信↢此事↡。奉↢事億如来↡楽聞↢如↠是教↡。」

6. 平等覚経

 だい六に ¬*りょう清浄しょうじょうがくきょう¼ (四・意) にのたまはく、 「ぜんなんぜん女人にょにんじょう法門ほうもんくをきて、 しん悲喜ひきしょうじて為竪いよだちてづるがごとくなるものは、 まさにるべし、 このひと*過去かこ宿命しゅくみょうにすでに仏道ぶつどうをなせるなり。 もしまたひとありてじょう法門ほうもんひらくをきて、 すべてしんしょうぜざるものは、 まさにるべし、 このひとははじめて*悪道まくどうよりきたりて、 *おういまだきず。 これがために*信向しんこうなきのみ。 われく、 ªこのひとはいまだだつべからずº」 と

過去宿命 過去世の境界。
殃咎 罪や過ち。
信向 信じ帰依きえすること。

第六¬無量清浄覚経¼云。「善男子・善女人聞↠説↢浄土法門↡心生↢悲喜↡身毛為豎如↢抜出↡者、当↠知、此人過去宿命已作↢仏道↡也。若復有↠人聞↠開↢浄土法門↡都不↠生↠信者、当↠知、此人始従↢三悪道↡来殃咎未↠尽、為↠此無↢信向↡耳。我説、此人未↠可↠得↢解脱↡也。」

 天永三年写本、 正平二年写本では

このゆゑに ¬*りょう寿じゅだいきょう¼ (下) にのたまはく、

*憍慢きょうまん*へい*だいとは、 もつてこのほうしんずることかたし」 と

 弊悪の意で邪見のこと。 →邪見じゃけん

是故¬無量寿大経¼云。「驕慢弊懈怠難↣以信↢此法↡。」

◎第一大門 発心久近

【5】 だい三に大乗だいじょう聖教しょうぎょうによりて、 しゅじょう*発心ほっしんごん*ぶつ多少たしょうかすとは

供仏 仏をようすること。

第三拠↢大乗聖教↡明↢衆生発心久近、供仏多少↡者、

¬*はんぎょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「ぶつ*迦葉かしょうさつげたまはく

如↢¬涅槃経¼云↡。「仏告↢迦葉菩薩↡。

ªもししゅじょうありて、 *れんはんごうしゃとう諸仏しょぶつみもとにおいて*だいしんおこせば、 しかしてのちにすなはちよくあくのなかにおいて、 この大乗だいじょう経典きょうてんきてほうしょうぜず

熙連半恒河沙 熙連河の砂の数の意。 熙連河は中インドにある河。 釈尊はその西側の沙羅さらりんにゅうめつされた。 恒河 (ガンジス河) より小さいので、 ここでは半恒河という。

若有↢衆生↡於↢熈連半恒河沙等諸仏所↡発↢菩提心↡、然後乃能於↢悪世中↡聞↢是大乗経典↡不↠生↢誹謗↡。

もし一*ごうしゃとうぶつみもとにおいてだいしんおこすことあれば、 しかしてのちにすなはちよくあくのなかにおいてきょうきてほうおこさず、 ふか*愛楽あいぎょうしょう

愛楽 喜び好むこと。

若有↧於↢一恒河沙等仏所↡発↦菩提心↥、然後乃能於↢悪世中↡聞↠経不↠起↢誹謗↡、生↢愛楽↡。

もし二ごうしゃとうぶつみもとにおいてだいしんおこすことあれば、 しかしてのちにすなはちよくあくのなかにおいてこのほうほうぜず、 正解しょうげしんぎょうじゅ読誦どくじゅ

若有↧於↢二恒河沙等仏所↡発↦菩提心↥、然後乃能於↢悪世中↡不↠謗↢是法↡、正解信楽受持読誦。

もし三ごうしゃとうぶつみもとにおいてだいしんおこすことあれば、 しかしてのちにすなはちよくあくのなかにおいてこのほうほうぜず、 経巻きょうかん書写しょしゃし、 ひとのためにくといへども、 いまだじんさとらずº」 と

若有↧於↢三恒河沙等仏所↡発↦菩提心↥、然後乃能於↢悪世中↡不↠謗↢是法↡、書↢写経巻↡。雖↢為↠人説↡未↠解↢義↡。」

なにをもつてのゆゑにかくのごとき教量きょうりょうもちゐるとならば、 今日こんにち坐下ざげにしてきょうくものは、 むかしすでに発心ほっしんしてぶつようせることをあらわさんがためなり

何以故須↢如↠此教量↡者、為↠彰↧今日座下聞↠経者曾已発心供↦養多仏↥也。

また大乗だいじょうきょうりき不可ふか思議しぎなることをあらわ

又顕↢大乗経之威力不可思議↡。

このゆゑに ¬きょう¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「もししゅじょうありてこの経典きょうてんけば、 おくひゃく千劫せんごうにも悪道あくどうせず。 なにをもつてのゆゑに。 このみょう経典きょうてん流布るふするところのところ、 まさにるべし、 そのはすなはちこれ金剛こんごうなり。 このなかの諸人しょにんまた金剛こんごうのごとし」 と

是故¬経¼云。「若有↢衆生↡聞↢是経典↡、億百千劫不↠堕↢悪道↡。何以故、是妙経典所↢流布↡処、当↠知、其地即是金剛。是中諸人亦如↢金剛↡。」

ゆゑにりぬ、 きょうきてしんしょうずるものはみな不可ふか思議しぎやくるなり

故知、聞↠経生↠信者皆獲↢不可思議利益↡也。

◎第一大門 宗旨不同

【6】 だい四につぎ諸経しょきょう*宗旨しゅうしどうべんずとは

宗旨 経典に説かれた法義の最も肝要なことがら。

第四次弁↢諸経宗旨不同↡者、

もし ¬*はんぎょう¼ によらば*仏性ぶっしょうしゅうとなす。 もし ¬*ゆいぎょう¼ によらば*不可ふか思議しぎだつしゅうとなす。 もし 「*般若はんにゃきょう」 によらば*くうしゅうとなす。 もし ¬*大集だいじっきょう¼ によらば*陀羅尼だらにしゅうとなす。 いまこの ¬*かんぎょう¼ は*観仏かんぶつ三昧ざんまいをもつてしゅうとなす。 もし所観しょかんろんずれば*しょうほうぎず。 しも諸観しょかんによりてべんずるところのごとし

不可思議解脱 思惟を超えたさとりの境界。
空慧 一切のものには実体がないというくうの道理をさとる智慧ちえ

若依↢¬涅槃経¼↡仏性為↠宗。若依↢¬維摩経¼↡不可思議解脱為↠宗。若依↢¬般若経¼↡空慧為↠宗。若依↢¬大集経¼↡陀羅尼為↠宗。今此¬観経¼以↢観仏三昧↡為↠宗。若論↢所観↡不↠過↢依正二報↡。如↧下依↢諸観↡所↞弁。

もし ¬*観仏かんぶつ三昧ざんまいきょう¼ (意) によらばのたまはく、 「ぶつ*ちちおうげたまはく、 ª諸仏しょぶつしゅっに三しゅやくあり

父の王 釈尊の父、 浄飯じょうぼんのう

若依↢¬観仏三昧経¼↡云。「仏告↢父王↡。諸仏出世有↢三種益↡。

一にはくち*十二部経ぶきょうきたまふ。 *ほうやくなり。 よくしゅじょうみょう暗障あんしょうのぞき、 智慧ちえまなこひらきて諸仏しょぶつみまえしょうじてはや*無上むじょうだいしむ

法施 人々に教えを説いて聞かせること。

一者口説↢十二部経↡、法施利益能除↢衆生無明暗障↡、開↢智慧眼↡生↢諸仏前↡早得↢無上菩提↡。

二には諸仏しょぶつ如来にょらい身相しんそうこうみょうりょう妙好みょうこうまします。 もししゅじょうありて称念しょうねん観察かんざつすれば、 もしは*総相そうそう、 もしは*別相べっそう仏身ぶっしん現在げんざい過去かこふことなく、 みなよくしゅじょう*じゅう*ぎゃく除滅じょめつしてなが*そむき、 こころ*所楽しょぎょうしたがひてつねにじょうしょうじ、 すなはち成仏じょうぶついた

総相 仏身の全体のすがた。
別相 仏身の一部分のすがた。 総相に対す。

二者諸仏如来有↢身相光明無量妙好↡。若有↢衆生↡称念観察、若総相若別相、無↠問↢仏身現在・過去↡、皆能除↢滅衆生四重・五逆↡永背↢三途↡、随↢意所楽↡常生↢浄土↡、乃至成仏。

三にはちちおうすすめて*念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうぜしめたまふº と

三者令↧勧↢父王↡行↦念仏三昧↥。

ちちおうぶつにまうさく、 ª*ぶつとく*真如しんにょ*実相じっそう*だいくうなり。 なにによりてか弟子でしをしてこれをぎょうぜしめざるº と

仏地の果徳 仏のさとられた徳。

父王白↠仏。仏地果徳真如実相第一義空、何因不↠遣↢弟子行↟之。

ぶつちちおうげたまはく、 ª諸仏しょぶつとくにはりょう深妙じんみょう境界きょうがい神通じんずうだつまします。 これぼん所行しょぎょう境界きょうがいにあらざるがゆゑに、 ちちおうすすめて念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうぜしめたてまつるº と

仏告↢父王↡。諸仏果徳有↢無量妙境界・神通・解脱↡。非↢是凡夫所行境界↡故、勧↢父王↡行↢念仏三昧↡。

ちちおうぶつにまうさく、 ª念仏ねんぶつこうそのかたちいかんº と

父王白↠仏。念仏之功其状云何。

ぶつちちおうげたまはく、 ª*らんりんほう四十由旬ゆじゅんなるに、 一*牛頭ごず栴檀せんだんあり。 こんありといへども、 なほいまだつちでず。 そのらんりんはただくさくしてこうばしきことなし。 もしその華菓けからふことあれば、 きょうおこしてす。 のちとき栴檀せんだんこんやうやく生長しょうちょうしてわづかにじゅとならんとほっするに、 こう昌盛しょうじょうにしてつひによくこのはやし改変がいへんして、 あまねくみなこうならしむ。 しゅじょうるものみな*希有けうしんしょうずるがごとしº と

伊蘭林 伊蘭は梵語エーランダ (eraņđa) の音写。 インドの植物の一種。 強い悪臭があり、 芳香を放つ栴檀せんだんと対照される。
牛頭栴檀 梵語ゴーシールシャ・チャンダナ (gośīrşa-candana) の音写。 インドの摩羅耶まらやせん (牛頭山) に産するという香木の一種。 色は赤銅色で、 栴檀の中で最も香気が高い。
希有の心 不思議なおもい。

仏告↢父王↡。如↧伊蘭林方四十由旬、有↢一科牛頭栴檀↡、雖↠有↢根芽↡猶未↠出↠土、其伊蘭林唯臭無↠香、若有↠噉↢其花果↡発↠狂而死。後時栴檀根芽漸漸生長纔欲↠成↠樹、香気昌盛遂能改↢変此林↡暜皆香美。衆生見者皆生↦希有心↥。

ぶつちちおうげたまはく、 ª一さいしゅじょうしょうのなかにありて念仏ねんぶつしんもまたかくのごとし。 ただよくねんけてまざれば、 さだめて仏前ぶつぜんしょうず。 一たびおうじょうれば、 すなはちよく一さい諸悪しょあく改変がいへんしてだい慈悲じひじょうずること、 かの香樹こうじゅらんりんあらたむるがごとしº」 と

仏告↢父王↡。一切衆生在↢生死中↡念仏之心亦復如↠是。但能繋↠念不↠止定生↢仏前↡。一得↢往生↡即能改↢変一切諸悪↡成↢大慈悲↡如↣彼香樹改↢伊蘭林↡。」

いふところの 「らんりん」 とは、 しゅじょうのうちの*どく*しょうへん重罪じゅうざいたとふ。 「栴檀せんだん」 といふは、 しゅじょう念仏ねんぶつしんたとふ。 「わづかにじゅとならんとほっす」 とは、 いはく、 一さいしゅじょうただよくねんみてえざれば、 *業道ごうどう成弁じょうべんするなりと

業道成弁 業事成弁のこと。 →ごう成弁じょうべん

所↠言伊蘭林者、喩↢衆生身内三毒・三障、無辺重罪↡、言↢栴檀↡者、喩↢衆生念仏之心↡。纔欲↠成↠樹者、謂一切衆生但能積↠念不↠断業道成弁也。

 ひていはく、 一さいしゅじょう念仏ねんぶつこうはかりてまた一さいおうじてるべし。 なにによりてか一ねんちからよく一さい諸障しょしょうつこと、 一の香樹こうじゅの四十由旬ゆじゅんらんりんあらためてことごとくこうならしむるがごとくなるや

問曰。計↢一切衆生念仏之功↡亦応一切可↠知。何因一念之力能断↢一切諸障↡、如↧一香樹改↢四十由旬伊蘭林↡悉使↦香美↥也。

こたへていはく、 *しょ大乗だいじょうによりて念仏ねんぶつ三昧ざんまい*のう不可ふか思議しぎなることをあらわさん

諸部の大乗 諸種の大乗経典。
功能 作用。 はたらき。

答曰。依↢諸部大乗↡顕↢念仏三昧功能不可思議↡也。

なんとなれば、 ¬ごんぎょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「たとへばひとありて獅子ししすじもちゐて、 もつてことげんとなして、 音声おんじょう一たびそうするに、 一さいげんことごとくみなだんするがごとし。 もしひとだいしんのなかに念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうずれば、 一さい煩悩ぼんのう、 一さい諸障しょしょうことごとくみな断滅だんめつ

何者如↢¬華厳経¼云↡。「譬如↧有↠人用↢師子筋↡以為↢琴絃↡音声一奏一切余絃悉皆断壊↥。若人菩提心中行↢念仏三昧↡者、一切煩悩、一切諸障悉皆断滅。

またひとありてよう驢馬ろめ、 一さいのもろもろのちちしぼりて一のなかにくに、 もし獅子ししちちたいちてこれをぐるに、 ただちにぎてはばかりなし。 一さい諸乳しょにゅうことごとくみな破壊はえして、 へんじて清水しょうすいとなるがごとし。 もしひとただよくだいしんのなかに念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうずれば、 一さいあく諸障しょしょうただちにぎてはばかりなし」 と

亦如↧有↠人搆↢取牛・羊・驢馬一切諸乳↡置↢一器中↡、若持↢師子乳一渧↡投↠之直過無↠難、一切諸乳悉皆破壊変為↦清水↥。若人但能菩提心中行↢念仏三昧↡者、一切悪魔諸障直過無↠難。」

またかの ¬きょう¼ (華厳経・意) にのたまはく、 「たとへばひとありて*翳身えいしんやくちて処々しょしょ遊行ゆぎょうするに、 一さいにんこのひとざるがごとし。 もしよくだいしんのなかに念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうずれば、 一さい悪神あくじん、 一さい諸障しょしょうこのひとず。 所詣しょげいところしたがひてよく*遮障しゃしょうすることなし。 なんがゆゑぞよくしかるとならば、 この念仏ねんぶつ三昧ざんまいはすなはちこれ一さい三昧さんまいのなかのおうなるがゆゑなり」 と

翳身薬 身体をかくす薬。
遮障 さまたげること。

又彼¬経¼云。「譬如↧有↠人持↢翳身薬↡処処遊行、一切余人不↞見↢是人↡。若能菩提心中行↢念仏三昧↡者、一切悪神一切諸障不↠見↢是人↡。随↢所詣処↡無↢能遮障↡也。何故能爾、此念仏三昧、即是一切三昧中王故也。

◎第一大門 三身三土

【7】 だい七にりゃくして*しんかすとは

第七略明↢三身三土義↡、

報身報土

ひていはく、 いま現在げんざい阿弥陀あみだぶつはこれいづれのしんぞ、 極楽ごくらくくにはこれいづれの

問曰。今現在阿弥陀仏是何身、極楽之国是何土。

こたへていはく、 現在げんざい弥陀みだはこれ報仏ほうぶつ極楽ごくらくほう荘厳しょうごんこくはこれほうなり。 しかるに*古旧こきゅうあひつたへて、 みな阿弥陀あみだぶつはこれ*しんもまたこれ化土けどなりといへり。 これを大失だいしつとなす。 もししからば、 *穢土えどもまたしん所居しょごじょうもまたしん所居しょごならば、 いぶかし、 如来にょらい*報身ほうじんはさらにいづれのによるや

古旧あひ伝へて… じょうようおん (523-592)、 天台てんだい大師智顗ちぎ (538-597) などの説を指す。

答曰。現在弥陀是報仏、極楽宝荘厳国是報土。然古旧相伝皆云↢阿弥陀仏是化身、土亦是化土↡、此為↢大失↡也。若爾者穢土亦化身所居、浄土亦化身所居者、未審、如来報身更依↢何土↡也。

いま ¬*大乗だいじょう同性どうしょうきょう¼ によりてほう浄穢じょうえ弁定べんじょうせば、 ¬きょう¼ (同・意) にのたまはく、 「じょうのなかにぶつとなりたまへるはことごとくこれ報身ほうじんなり、 穢土えどのなかにぶつとなりたまへるはことごとくこれしんなり」 と

今依↢¬大乗同性経¼↡弁↢定報化浄穢↡者、¬経¼云。「浄土中成仏者悉是報身、穢土中成仏者悉是化身。」

かの ¬きょう¼ (大乗同性経・意) にのたまはく、 「阿弥陀あみだ如来にょらいれんかい星王しょうおう如来にょらい竜主りゅうしゅ如来にょらい宝徳ほうとく如来にょらいとうのもろもろの如来にょらい清浄しょうじょう*仏刹ぶっせつにしてげん*どうたまへるもの、 まさにどうたまふべきもの、 かくのごとき一さいはみなこれ報身ほうじんぶつなり。 何者なにもの如来にょらいしん。 なほ今日こんにち踊歩ゆぶ如来にょらい魔恐怖まくふ如来にょらいのごとき、 かくのごときの一さい如来にょらいの、 *濁世じょくせのなかにしてげんぶつとなりたまへるもの、 まさにぶつとなりたまふべきもののごとし。 *そつよりくだり、 ないさい*しょうぼう・一さい*像法ぞうぼう・一さい*末法まっぽう*住持じゅうじす。 かくのごとき化事けじみなこれしんぶつなり。 何者なにもの如来にょらい*法身ほっしん如来にょらいしん法身ほっしんとは、 しきなくぎょうなく、 げんなくじゃくなく、 るべからず、 言説ごんせつなく、 住処じゅうしょなく、 しょうなくめつなし。 これをしん法身ほっしんづく」 と

 仏のさとり。
穢濁世 五濁悪世のこと。 →五濁ごじょく

彼¬経¼云。「阿弥陀如来・蓮花開敷星王如来・竜主王如来・宝徳如来等諸如来清浄仏刹、現得↠道者、当↠得↠道者、如↠是一切皆是報身仏也。何者如来化身。由如↢今日踊歩健如来・魔恐怖如来↡、如↠是等一切如来、穢濁世中如↧現成仏者、当↢成仏↡者、従↢兜率↡下乃至住↦持一切正法・一切像法・一切末法↥、如↠是化事、皆是化身仏也。何者如来法身。如来真法身者、無↠色無↠形、無↠現無↠著、不↠可↠見、無↢言説↡無↢住処↡、無↠生無↠滅。是名↢真法身義↡也。」

 聖教全書まま。 脱落についての註なし。
 他書では脱落。

報身隠没相

 ひていはく、 如来にょらい報身ほうじん*常住じょうじゅうなり。 いかんぞ ¬*観音かんのんじゅきょう¼ (意) に、 「阿弥陀あみだぶつ*にゅうはんのちかんおんさつ*いで仏処ぶっしょす」 とのたまふや

次いで仏処を補す 次に仏の位をおぎなう。 →一生いっしょうしょ

問曰。如来報身常住。云何¬観音授記経¼云↧「阿弥陀仏入涅槃後、観世音菩薩次補↦仏処↥」也。

こたへていはく、 これはこれ報身ほうじん*隠没おんもつそうげんす。 *めつにはあらず

答曰。此是報身示↢現隠没相↡、非↢滅度↡也。

かの ¬きょう¼ (同・意) にのたまはく、 「阿弥陀あみだぶつにゅうはんのち、 また深厚じんこう善根ぜんごんしゅじょうありて、 かえりてることもとのごとし」 と。 すなはちそのしょうなり

彼¬経¼云。「阿弥陀仏入涅槃後、復有↢厚善根衆生↡還見如↠故。」即其証也。

また ¬宝性ほうしょうろん¼ (意) にいはく、

報身ほうじんに五しゅそうまします。 *説法せっぽうとおよび*けんと、

説法 大乗の通説では法身ほっしんに説法はないが、 報身ほうじんにはそれがある。
可見 しゅじょうの観見の対象となるということ。 法身はしき無形むぎょうで不可見であるが、 報身は相好そうごうこうみょうをそなえているので可見である。

*諸業しょごうそくせざると、 および*そく隠没おんもつと、

諸業の休息せざる 衆生救済のさまざまなはたらきが決してやまないという意。
休息隠没 衆生の機によっては姿をかくすこともあるという意。

*実体じったいげんするとなり」 と。

不実体を示現する 不実体は応身おうじんのこと。 報身は応身を示現する本体であるという意。

すなはちそのしょうなり

又¬宝性論¼云。「報身有↢五種相↡。説法及可見諸業不休息及休息隠没、示現不実体。」即其証也。

 ひていはく、 しゃ如来にょらい報身ほうじんほうはいづれのほうにかましますや

問曰。釈迦如来報身・報土在↢何方↡也。

こたへていはく、 ¬はんぎょう¼ (意) にのたまはく、 「西方さいほうここをること四十二ごうしゃぶつかいあり、 づけて無勝むしょうといふ。 かののあらゆる荘厳しょうごんまた西方さいほう極楽ごくらくかいのごとし。 ひとしくしてことなることあることなし。 われかのにおいて出現しゅつげんす。 しゅじょうせんがためのゆゑに、 きたりてこの*しゃこくにあり。 ただわれのみこのづるにあらず、 一さい如来にょらいもまたかくのごとし」 と。 すなはちそのしょうなり

答曰。¬涅槃経¼云。「西方去↢此四十二恒河沙仏土↡有↢世界↡、名曰↢無勝↡。彼土所有荘厳亦如↢西方極楽世界↡、等無↠有↠異。我於↢彼土↡出↢現於世↡、為↠化↢衆生↡故来在↢此娑婆国土↡。但非↣我出↢此土↡、一切如来亦復如↠是。」即其証也。

 ひていはく、 ¬*おんぎょう¼ (意) にのたまはく、 「阿弥陀あみだぶつ父母ぶもあり」 と。 あきらかにりぬ、 これ報仏ほうぶつほうにあらずや

問曰。¬鼓音経¼云。「阿弥陀仏有↢父母↡。」明知、非↢是報仏・報土↡也。

こたへていはく、 なんぢはただきてきょうむねきわたずねずしてこのうたがいいたす。 これを*毫毛ごうもうあやまりてこれをせんしっすといふべし。 しかれども阿弥陀あみだぶつまた*しんそなへたまへり。 極楽ごくらく出現しゅつげんしたまふはすなはちこれ報身ほうじんなり。 いま父母ぶもありといふは、 これ穢土えどのなかにげんしたまへるしん父母ぶもなり。 またしゃ如来にょらいじょうのなかにしてその報仏ほうぶつじょうじ、 このほう応来おうらいして父母ぶもありとしめしてその*ぶつじょうじたまふがごとし。 阿弥陀あみだぶつもまたかくのごとし

毫毛に… 毫毛 (細い毛) ほどの小さな誤りから千里にもおよぶ大きな誤りを招くという意。
化仏 →ぶつ

答曰。子但聞↠名不↣究↢尋経旨↡致↢此疑↡。可↠謂、錯↢之毫毛↡失↢之千里↡。然阿弥陀仏亦具↢三身↡。極楽出現者即是報身、今言↠有↢父母↡者、是穢土中示現化身父母也。亦如↢釈迦如来↡。浄土中成、其報仏。応↢来此方↡示↠有↢父母↡成、其化仏。阿弥陀仏亦復如↠是。

また ¬*音声おんじょうきょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「そのとき阿弥陀あみだぶつしょうもんしゅともなり。 くに清泰しょうたいなづく。 聖王しょうおう所住しょじゅうなり。 そのしろ*縦広じゅうこうせん由旬ゆじゅんなり。 阿弥陀あみだぶつちちはこれ*転輪てんりん聖王じょうおうなり。 おう月上がつじょうづけ、 はは殊勝しゅみょう妙顔みょうげんづく。 おう無勝むしょうづけ、 *ぶっ月明がつみょうづけ、 *だいだっじゃくづけ、 *給侍きゅうじ弟子でし無垢むくしょうづく」 と。 また上来じょうらいくところはならびにこれしんそうなり。 もしこれじょうならば、 あに*輪王りんのうおよびしろ女人にょにんとうあらんや。 これすなはちもん*炳然へいねんなり、 なんぞ分別ふんべつたんや。 みなよくたずきわめずして、 まよひてしゅうしょうぜしむることをいた

仏子・給侍の弟子 釈尊に照らし合わせていえば、 仏子は羅睺羅らごらにあたり、 給侍の弟子はなんにあたる。
炳然 あきらかであること。

又如↢¬鼓音声経¼云↡。「爾時阿弥陀仏与↢声聞衆↡倶、国号↢清泰↡、聖王所住、其城縦広十千由旬。阿弥陀仏父是転輪聖王、王名↢月上↡、母名↢殊勝妙顔↡。魔王名↢無勝↡、仏子名↢月明↡、提婆達多名↢寂意↡、給侍弟子名↢無垢称↡。」又上来所↠引並是化身之相。若是浄土豈有↢輪王及城女人等↡也。此即文義昞然、何待↢分別↡。皆不↢善尋究↡致↠使↢迷↠名生↟執也。

 天永年間刊本、 寛永年間刊本では脱落。

 ひていはく、 もし報身ほうじん隠没おんもつそくそうましまさば、 またじょう*成壊じょうえあるべきや

成壊 消滅しょうめつに同じ。

問曰。若報身有↢隠没休息相↡者、亦可↣浄土有↢成壊事↡。

こたへていはく、 かくのごときなんは、 いにしえよりいまにいたりてまたつうじがたし。 しかりといへども、 いまあへてきょうきてしょうとなさん。 またるべし。 たとへば仏身ぶっしん*常住じょうじゅうなれども、 しゅじょうはんありとるがごとし。 じょうもまたしかなり。 たい成壊じょうえにあらざれども、 しゅじょう所見しょけんしたがひてじょうありあり

答曰。如↠斯難者自↠古将↠今義亦難↠通。雖↠然今敢引↠経為↠証。義亦可↠知。譬如↢仏身常住衆生見↟有↢涅槃↡。浄土亦爾。体非↢成壊↡随↢衆生所見↡有↠成有↠壊。

¬ごんぎょう¼ にのたまふがごとし。   

「なほ*どう種々しゅじゅりょうしきるがごとく、

導師 仏のこと。

しゅじょう*心行しんぎょうしたがひて、 *仏刹ぶっせつることもまたしかなり」 と

如↢¬華厳経¼云↡。「由如↠見↢導師種種無量色↡、随↢衆生心行↡見↢仏刹↡亦然。」

このゆゑに ¬**じょうろん¼ にいはく、

*ぜつじょうぜざるがゆゑに、 浄穢じょうえ*ようあり。

一質・異質・無質 ここでの質は本体の意。
虧盈 虧は欠ける、 盈は満ちるの意。

*ぜつじょうぜざるがゆゑに、 *もとさぐればすなはちみょう一なり。

原を… 本源をたずねれば一つに融合するという意。

*ぜつじょうぜざるがゆゑに、 えんすればすなはち*万形まんぎょうなり」 と

万形 種々雑多な形となってあらわれるという意。

是故¬浄土論¼云。「一質不↠成故浄穢有↢虧盈↡。異質不↠成故捜↠原則冥一。無質不↠成故縁起則万形。」

ゆゑにりぬ、 もしほっしょうじょうによらばすなはち清濁しょうじゃくろんぜず、 もし*ほうだいによらばすなはち浄穢じょうえなきにあらず。 またひろぶつかしてかんどうたいするに、 その三しゅ差別しゃべつあり

故知、若拠↢法性浄土↡則不↠論↢清濁↡、若拠↢報化大悲↡則非↠無↢浄穢↡也。又汎明↢仏土↡対↢機感不同↡、有↢其三種差別↡。

一には*しんよりほうるるをづけてほうとなす。 なほ日光にっこう*てんらすがごとし。 法身ほっしんのごとく、 ほうひかりのごとし

 法身のこと。 →法身ほっしん

一者従↠真垂↠報名為↢報土↡。猶如↣日光照↢四天下↡、法身如↠日報化如↠光。

二には*無而むにこつなる、 これをづけてとなす

無而忽有 無であってたちまち現れるという意。

二者無而忽有名↠之為↠化。

すなはち ¬*分律ぶんりつ¼ (意) にのたまふがごとし。 「*定光じょうこう如来にょらいだいじょうして、 抜提ばつだいじょうとあひちかくして、 ともに親婚しんこんをなして往来おうらいす。 のちとき忽然こつねんして焼却しょうきゃくす。 もろもろのしゅじょうをしてこの無常むじょうしめて、 えんしょうじて仏道ぶつどうこうせしめざるはなし」 と

即如↢¬四分律¼云↡。「錠光如来化↢提婆城↡与↢抜提城↡相近共為↢親婚↡往来。後時忽然化↠火焼却。令↣諸衆生覩↢此無常↡莫↠不↣生↠厭帰↢向仏道↡也。」

 天永年間刊本では 「定」。

このゆゑに ¬きょう¼ (維摩経・意) にのたまはく、

「あるいは*こうきて、 てんみな*洞然どうねんたるをげんじ、

洞然 すべて燃えつきるさま。

しゅじょう*常想じょうそうあるものをして、 あきらかに無常むじょうらしめ、

常想 無常であるものを常住と見誤る見解。

あるいは貧乏びんぼうすくはんがために、 げん*じんそうてて、

無尽蔵 尽きることのない財宝をおさめる蔵。

えんしたがひてひろ開導かいどうして、 だいしんおこさしむ」 と

是故¬経¼云。或現↢劫火焼天地皆洞然↡、衆生有↢常想↡照令↠知↢無常↡、或為↠済↢貧乏↡現立↢無尽蔵↡、随↠縁広開導令↠発↢菩提心↡。」

三にはかくじょうあらわす。 ¬ゆいぎょう¼ (意) のごとし。 「ぶつあしゆびをもつてあんじたまふに、 *ぜんせつ厳浄ごんじょうならざるはなし」 と

三千の刹土 三千大千世界のこと。 →三千さんぜん大千だいせんかい

三者隠↠穢顕↠浄。如↢¬維摩経¼↡。「仏以↢足指↡按↠地三千刹土莫↠不↢厳浄↡。」

いまこのりょう寿じゅこくは、 すなはちこれ*しんよりほうるるくになり。 なにをもつてかることをる。 ¬*観音かんのんじゅきょう¼ (意) によるにのたまはく、 「らい観音かんのん成仏じょうぶつして阿弥陀あみだぶつところかわりたまふ」 と。 ゆゑにりぬ、 これほうなり

 法身のこと。 →法身ほっしん

今此無量寿国即是従↠真垂↠報国也。何以得↠知、依↢¬観音授記経¼↡云。「未来観音成仏替↢阿弥陀仏処↡。」故知、是報也。

◎第一大門 凡聖通往

【8】 だい八に弥陀みだ浄国じょうこくくらい上下じょうげね、 *凡聖ぼんしょうつうじてくことをかすとは

第八明↧弥陀浄国位該↢上下↡凡聖通往↥者、

いまこのりょう寿じゅこくはこれその*ほうじょうなり。 仏願ぶつがんによるがゆゑにすなはち上下じょうげ該通がいつうして、 ぼんぜんをして*ならびにおうじょうしむることをいたす。 うえぬるによるがゆゑに、 *天親てんじん*龍樹りゅうじゅおよび上地じょうじさつまたみなしょう

報の浄土 報土のこと。

今此無量寿国是其報浄土。由↢仏願↡故、乃該↢通上下↡致↠令↣凡夫之善並得↢往生↡。由↠該↠上故天親・龍樹及上地菩薩亦皆生也。

このゆゑに ¬*だいきょう¼ (下・意) にのたまはく、 「ろくさつぶつひたてまつる。 ªいまだらず、 このさかいにいくばくの*退たいさつありてか、 かのくにしょうずることをるº と。 ぶつのたまはく、 ªこのしゃかいに六十七おく退たいさつありて、 みなまさにおうじょうすべしº」 と

是故¬大経¼云。「弥勒菩薩問↠仏。未↠知、此界有↢幾許不退菩薩↡得↠生↢彼国↡。仏言。此娑婆世界有↢六十七億不退菩薩↡皆当↢往生↡。」

もしひろかんとほっせば、 ほうもみなしかなり

若欲↢広引↡余方皆爾。

 ひていはく、 弥陀みだ浄国じょうこくすでにくらい上下じょうげね、 凡聖ぼんしょうふことなくみなつうじてくといはば、 いまだらず、 ただ*そうしゅしてしょうずることをや、 はたぼん*そうもまたしょうずることを

無相 無相の善根ぜんごん。 すがたかたちを離れた真如しんんほほっしょうの理にかなって修める善根。
有相 有相の善根。 具体的なすがたかたちをとる浄土の往生を願って修める善根。

問曰。弥陀浄国既云↧位該↢上下↡無↠問↢凡聖↡皆通往↥者、未↠知唯修↢無相↡得↠生、為当凡夫有相亦得↠生也。

こたへていはく、 ぼんあさくしておおそうによりてもとむるに、 けっしておうじょう。 しかるに*相善しょうぜんちからなるをもつて、 ただ*そうしょうじてただ*ほうぶつ

相土 有相の浄土。 すがたかたちのある浄土。 これに対して、 法性の浄土はしき無形むぎょうである。

答曰。凡夫智浅多依↠相求決得↢往生↡。然以↢相善力微↡但生↢相土↡唯覩↢報化仏↡也。

このゆゑに ¬*観仏かんぶつ三昧ざんまいきょう¼ の 「さつ本行ほんぎょうぼん(意) にのたまはく、 「*文殊もんじゅ師利しりぶつにまうしてまうさく、 ªまさにるべし、 われ過去かこりょう劫数こうしゅぼんたりしときおもふに、 かのぶつましましき、 ほうとく上王じょうおう如来にょらいづく。 かのぶつでたまひしとき、 いまとことなることなし。 かのぶつまたたけ*じょう六、 こんじきにして*じょうほうきたまふこと*しゃもんのごとし。 そのときかのくにだい長者ちょうじゃあり、 一さいづく。 長者ちょうじゃあり、 づけてかいといふ。 たいにありしときはは敬信きょうしんをもつてのゆゑにあらかじめそののために*帰依きえく。 すでにしょうじをはりてとしさいいたるに、 父母ぶもぶついえしょうじてようしたてまつる。 どうぶつたてまつりて、 ぶつのためにらいをなす。 ぶつうやましんおもくして、 しばらくもてず。 一たびぶつたてまつるがゆゑに、 すなはちひゃく万億まんおく*那由他なゆた*こうしょうつみ除却じょきゃくすることを。 これより以後いごつねにじょうしょうじてすなはち百億ひゃくおく那由他なゆた*ごうしゃぶつぐうしたてまつることをたり。 このもろもろのそんまた*相好そうごうをもつてしゅじょう*だつしたまふ。 そのときどう、 一々にしたしくつかへて、 あひだにむなしくくることなし。 礼拝らいはいよう合掌がっしょうしてぶつたてまつる。 因縁いんねんりきをもつてのゆゑに、 また百万ひゃくまん*そうぶつぐうしたてまつることを。 かの諸仏しょぶつとうもまた*色身しきしん相好そうごうをもつてしゅじょう*化度けどしたまふ。 これより以後いごすなはちひゃく千億せんおく*念仏ねんぶつ三昧ざんまいもん、 またそう*陀羅尼だらにもんたり。 すでにこれををはりて、 諸仏しょぶつ現前げんぜんしてすなはちためにそうほうきたまふ。 *しゅのあひだに*首楞厳しゅりょうごん三昧ざんまいときにかのどうただ三けて一たびぶつらいするがゆゑに、 あきらかに仏身ぶっしんかんじてしんえんなし。 この因縁いんねんによりてしゅぶつふ。 いかにいはんやねんけてそくゆいしてぶつ色身しきしんかんぜんをや。 ときにかのどうあに異人ことひとならんや。 これわがなりº と。 そのときそん文殊もんじゅめてのたまはく、 ªきかなきかな、 なんぢ一たびぶつらいするをもつてのゆゑに、 しゅ諸仏しょぶつふことをたり。 いかにいはんやらいのわがもろもろの弟子でし、 ねんごろにぶつかんずるもの、 ねんごろにぶつねんずるものをやº と。 ぶつ*なんちょくしたまはく、 ªなんぢ文殊もんじゅ師利しりちて、 あまねく大衆だいしゅおよびらいしゅじょうげよ。 もしはよくぶつらいするもの、 もしはよくぶつねんずるもの、 もしはよくぶつかんずるものは、 まさにるべし、 このひと文殊もんじゅ師利しりひとしくしてことなることあることなし。 捨身しゃしんして、 他世たせに、 文殊もんじゅ師利しりとうのもろもろのさつ、 その和上わじょうとなるº」 と

釈迦文 釈迦牟尼に同じ。 →釈迦しゃか牟尼むにぶつ
陀羅尼門 陀羅尼は梵語ダーラニー (dhāraņī) の音写。 そうのうなどと漢訳する。 種々の善法を保持し、 悪法をおこさせない力のこと。 門は法門、 教えのこと。

是故¬観仏三昧経¼菩薩本行品云。「文殊師利白↠仏言。当↠知、我念↧過去無量劫数為↢凡夫↡時↥、彼世有↠仏、名↢宝威徳上王如来↡。彼仏出時与↠今無↠異。彼仏亦長丈六、身紫金色説↢三乗法↡如↢釈迦文↡。爾時彼国有↢大長者↡、名↢一切施↡。長者有↠子、名曰↢戒護↡。子在↢母胎↡時、母以↢敬信↡故預為↢其子↡受↢三帰依↡。子既生已年至↢八歳↡、父母請↠仏於↠家供養。童子見↠仏為↠仏作↠礼。敬↠仏心重目不↢暫捨↡。一見↠仏故即得↣除↢却百万億那由他劫生死之罪↡。従↠是以後常生↢浄土↡即得↣値↢遇百億那由他恒河沙仏↡。是諸世尊亦以↢相好↡度↢脱衆生↡。爾時童子一一親侍間無↢空欠↡。礼拝供養合掌観↠仏。以↢因縁力↡故復得↣値↢遇百万阿僧祇仏↡。彼諸仏等亦以↢色身相好↡化↢度衆生↡。従↠是以後即得↢百千億念仏三昧門↡、復得↢阿僧祇陀羅尼門↡。既得↠此已諸仏現前乃為説↢無相法↡。須臾之間得↢首楞厳三昧↡。時彼童子、但受↢三帰↡一礼↠仏故、諦観↢仏身↡心無↢疲厭↡。由↢此因縁↡値↢無数仏↡、何況繋↠念具足思惟観↢仏色身↡。時彼童子豈異人乎。是我身也。爾時世尊讃↢文殊↡言。善哉善哉、汝以↢一礼↟仏故得↠値↢無数諸仏↡。何況未来我諸弟子、懃観↠仏者、懃念↠仏者。仏勅↢阿難↡。汝持↢文殊師利語↡遍告↢大衆及未来世衆生↡。若能礼↠仏者、若能念↠仏者、若能観↠仏者、当↠知、此人与↢文殊師利↡等無↠有↠異。捨↠身他世文殊師利等諸菩薩為↢其和上↡。」

このもんをもつてしょうす。 ゆゑにりぬ、 じょうそう該通がいつうせり、 おうじょうすることあやまらず。 もし*そうねんたいとなすとりて、 しかも*えんのなかにくことをもとむるものは、 おおくは*上輩じょうはいしょうなるべし

無相離念 しき無形むぎょう真如しんにょほっしょうの理を観ずること。
縁のなかに… 浄土の具体的な荘厳しょうごんそうを心に認めて往生を願う者。
上輩の生 三輩のうちの上輩の往生。 →三輩さんぱい

以↢此文↡証。故知、浄土該↢通相土↡、往生不↠謬。若知↢無相離念為↟体、而縁中求往者多応↢上輩生↡也。

このゆゑに天親てんじんさつの ¬ろん¼ (*論註・下意) にいはく、 「もしよく*二十九しゅ荘厳しょうごん清浄しょうじょうかんずれば、 すなはちりゃくして*法句ぽっくに入る。 法句ぽっくとはいはく、 清浄しょうじょうなり。 清浄しょうじょうとはすなはちこれ智慧ちえ無為むい法身ほっしんなるがゆゑなり。 なんがゆゑぞすべからく*広略こうりゃく相入そうにゅうすべきとならば、 ただ諸仏しょぶつさつに二しゅ法身ほっしんまします。 一には*ほっしょう法身ほっしん、 二には*方便ほうべん法身ほっしんなり。 ほっしょう法身ほっしんによるがゆゑに方便ほうべん法身ほっしんしょうず。 方便ほうべん法身ほっしんによるがゆゑにほっしょう法身ほっしん顕出けんしゅつす。 この*しゅ法身ほっしんにしてわかつべからず。 一にしてどうずべからず。 このゆゑに広略こうりゃく相入そうにゅうす。 さつもし広略こうりゃく相入そうにゅうらざれば、 すなはち自利じり利他りたすることあたはざるなり。 無為むい法身ほっしんとはすなはちほっしょうしんなり。 ほっしょうじゃくめつなるがゆゑに、 すなはち法身ほっしんそうなり。 法身ほっしんそうなるがゆゑに、 すなはちよくそうならざるはなし。 このゆゑに相好そうごう荘厳しょうごんすなはちこれ法身ほっしんなり。 法身ほっしん*無知むちなるがゆゑに、 すなはちよくらざるはなし。 このゆゑに*さい種智しゅちはすなはちこれ真実しんじつ智慧ちえなり。 えんにつきて*総別そうべつかんずることをるといへども、 実相じっそうにあらざるはなし。 実相じっそうるをもつてのゆゑに、 すなはち三がいしゅじょうもうそうる。 三がいしゅじょうもうるをもつてのゆゑに、 すなはち真実しんじつ慈悲じひおこす。 真実しんじつ慈悲じひるをもつてのゆゑに、 すなはち真実しんじつ帰依きえおこす」 と

二十九種の荘厳清浄 天親てんじん菩薩の ¬浄土論¼ に説かれる国土十七種・仏八種・菩薩四種の二十九種の清浄しょうじょうなる荘厳相。
一法句 真如法性のこと。 →真如しんにょほっしょう
広略相入 広は浄土の二十九種荘厳、 略は一法句を指す。 真如法性の略から浄土荘厳の広が生起し、 また浄土荘厳の広により一法句の徳をあらわす。 広略が相互に摂入しょうにゅうするありさまを広略相入という。
二種の法身 →補註1
無知 すべての因縁いんねんによって生じたものは実態がなくくうであるから、 対象的に知ることもないという意。
総別 いっぽっを総とし、 二十九種の荘厳しょうごん清浄しょうじょうを別という。

是故天親菩薩¬論¼云。「若能観↢二十九種荘厳清浄↡即略入↢一法句↡。一法句者謂清浄句。清浄句者即是智慧無為法身故。何故須↢広略相入↡者、但諸仏・菩薩有↢二種法身↡。一者法性法身、二者方便法身。由↢法性法身↡故生↢方便法身↡、由↢方便法身↡故顕↢出法性法身↡。此二種法身異而不↠可↠分、一而不↠可↠同。是故広略相入。菩薩若不↠知↢広略相入↡則不↠能↢自利利他↡。無為法身者即法性身也。法性寂滅故即法身無相也。法身無相故則能無↠不↠相。是故相好荘厳即是法身也。法身無知故則能無↠不↠知。是故一切種智即是真実智慧也。雖↠知↣就↠縁観↢総別二句↡莫↠非↢実相↡也。以↠知↢実相↡故即知↢三界衆生虚妄相↡也。以↠知↢三界衆生虚妄↡故即起↢真実慈悲↡也。以↠知↢真実慈悲↡故即起↢真実帰依↡也。」

いまの行者ぎょうじゃ*緇素しそふことなく、 ただよくしょうしょうりて*たいせざるものは、 おお上輩じょうはいしょう*落在らくざいすべし

落在 おさめるの意。

今之行者無↠問↢緇素↡、但能知↢生・無生↡不↠違↢二諦↡者多応↣落↢在上輩生↡也。

◎第一大門 三界摂不

【9】 だい九に弥陀みだ浄国じょうこく*がいしょう不摂ふしょうとをかすとは

三界の摂と不摂 迷いの境界であるところの三界におさまるか、 おさまらないか。 →三界さんがい

第九明↣弥陀浄国三界摂与↢不摂↡。

ひていはく、 安楽国あんらくこくは三がいのなかにおいて、 いづれのかい所摂しょしょう

問曰。安楽国土於↢三界中↡何界所摂。

こたへていはく、 じょう勝妙しょうみょうにしてたいけんでたり。 この三がいはすなはちこれしょうぼん闇宅あんたくなり。 またらくすこしきことにし、 *修短しゅたんことなることありといへども、 すべてこれをかんずるに*有漏うろ*長津じょうしんにあらざるはなし。 *ぶく相乗そうじょうして循環じゅんかんさいなり。 *雑生ざっしょう触受そくじゅ*とうながかかはる。 かつはいんかつは虚偽こぎ相習そうじゅうせり。 ふかいとふべし。 このゆゑにじょうは三がいしょうにあらず

修短 長短。 ここでは寿命の長短のこと。
長津 長い渡し場。
雑生の触受 雑多な生を経て、 さまざまな苦にふれ、 その苦を受けること。

答曰。浄土勝妙体出↢世間↡。此三界者乃是生死凡夫之闇宅。雖↢復苦楽少殊、脩短有↟異、統如観↠之莫↠非↢有漏之長津↡。倚伏相乗循環無際。雑生触受四倒長溝、且因且果、虚偽相習。可↠厭也。是故浄土非↢三界摂↡。

また ¬智度ちどろん¼ (意) によるにいはく、 「じょうほうよくなきがゆゑに*欲界よくかいにあらず、 地居じこのゆゑに*色界しきかいにあらず、 形色ぎょうしきあるがゆゑに*色界しきかいにあらず、 地居じこといふといへども精勝しょうしょう妙絶みょうぜつなり」 と

又依↢¬智度論¼↡云。「浄土果報無↠欲故非↢欲界↡、地居故非↢色界↡、有↢形色↡故非↢無色界↡、雖↠言↢地居↡精勝妙絶」。

このゆゑに天親てんじんの ¬ろん¼ (*浄土論) にいはく、

かのかいそうかんずるに、 三がいどう勝過しょうがせり。

究竟くきょうしてくうのごとく、 広大こうだいにして辺際へんざいなし」 と

是故天親¬論¼云。「観↢彼世界相↡、勝↢過三界道↡、究竟如↢虚空↡、広大無↢辺際↡。」

このゆゑに ¬だいきょうさん¼ にいはく (讃阿弥陀仏偈)

妙土みょうど広大こうだいにして*数限しゅげんゆ。 ねん*ぽうをもつて合成ごうじょうするところなり。

数限を超ゆ 数量による限定を超えている。

ぶつ*本願ほんがんりきより*荘厳しょうごんおこる。 *清浄しょうじょうだい摂受しょうじゅ*稽首けいしゅしたてまつる。

清浄大摂受 清浄で、 広くしゅじょうをおさめとる仏という意。

かい*光耀こうようすることたえにして殊絶しゅぜつす。 *適悦ちゃくえつ晏安えんあんとして*なし。

適悦晏安 よろこびに満たされ、 おだやかに安らいでいるさま。

*自利じり*利他りたちから円満えんまんしたまふ。 *方便ほうべん巧荘厳ぎょうしょうごんみょうしたてまつる」 と

方便巧荘厳 慈悲のてだてとしてのたくみな浄土の荘厳相。

是故¬大経讃¼云。「妙土広大超↢数限↡、自然七宝所↢合成↡、仏本願力荘厳起、稽↢首清浄大摂受↡。世界光耀妙殊絶、適悦晏安無↢四時↡、自利利他力円満、帰↢命方便巧荘厳↡。」

第二大門

【10】だい大門だいもんのなかに三ばん料簡りょうけんあり。 だい一に*ほつだいしんかし、 だい二にけん邪執じゃしゅうし、 だい三にひろ問答もんどうほどこして、 疑情ぎじょう*釈去しゃくこ

第二大門中有↢三番料簡↡。第一明↢発菩提心↡、第二破↢異見邪執↡、第三広施↢問答↡釈↢去疑情↡。

◎第二大門 発菩提心

【11】はじめのほつだいしんにつきて、 うちに四ばんあり。 一にはだいしん*ゆういだし、 二にはだい名体みょうたいいだし、 三には*発心ほっしんことなることあることをあらわし、 四には問答もんどう解釈げしゃく

功用 作用。 はたらき。

就↢初発菩提心内↡有↢四番↡。一出↢菩提心功用↡、二出↢菩提名体↡、三顕↢発心有↟異、四問答解釈。

1. 菩提心功用

 だい一にだいしんゆういだすとは、 *¬だいきょう¼ にのたまはく、 「おほよそじょうおうじょうせんとほっせば、 かならずすべからくだいしんおこすをみなもととなすべし」 と

大経にのたまはく… ここでは ¬大経¼ 三輩さんぱい段の意を ¬論註¼ (下) の文によって示されている。

第一出↢菩提心功用↡者、¬大経¼云。「凡欲↣往↢生浄土↡要須↢発菩提心↡為↠源。」

いかんとなれば、 「*だい」 といふはすなはちこれ*無上むじょう仏道ぶつどうなり。 もししんおこぶつらんとほっすれば、 このしん広大こうだいにして*法界ほうかい遍周へんしゅうせり。 このしん究竟くきょうしてひとしきことくうのごとし。 このしん長遠じょうおんにしてらいさいつくす。 このしんあまねくつぶさに*じょうさわりはなる。 もしよく一たびこのしんおこせば、 無始むししょう*りんかたむく。 あらゆるどくだいこうすれば、 みなよくとおぶっいたるまで失滅しつめつあることなし。 たとへばはな*じょうすれば風日ふうにちにもしぼまず、 みず*霊河りょうがすれば*かんにもくることなきがごとし

無上仏道 この上ない仏のさとり。
有輪 有は三有さんぬ (三界) のこと。 迷いの世界である三界を回転してきわまるところのない車輪に喩えていう。 →三界さんがい
五浄 浄居じょうごてんのこと。 しきかい十八天の最上に位置するしき究竟くきょうてん善見ぜんけんてん善現ぜんげんてんねつてんぼんてんを五浄居天という。
霊河 竜のすむ河。
世旱 世のひでり。

云何菩提者乃是無上仏道之名也。若欲↢発心作仏↡者、此心広大徧↢周法界↡、此心究竟等若↢虚空↡、此心長遠尽↢未来際↡、此心暜備離↢二乗障↡。若能一発↢此心↡、傾↢無始生死有淪↡。所有功徳迴↢向菩提↡、皆能遠詣↢仏果↡無↠有↢失滅↡。譬如↧寄↢花五浄↡風日不↠萎、附↢水霊河↡世旱無↞竭。

2. 菩提名体

 だい二にだい名体みょうたいいだすとは、 しかるにだいに三しゅあり。 一には法身ほっしんだい、 二には報身ほうじんだい、 三にはしんだいなり

第二出↢菩提名体↡者、然菩提有↢三種↡。一者法身菩提、二者報身菩提、三者化身菩提也。

*法身ほっしんだいといふは、 いはゆる*真如しんにょ*実相じっそう*だいくうなり。 *自性じしょう清浄しょうじょうにして、 たい*ぜんなし。 *天真てんしんでて*修成しゅじょうらざるをづけて法身ほっしんとなす。 仏道ぶつどう体本たいほんづけてだいといふ

自性 本来の性。
穢染 煩悩ぼんのうのけがれ。
天真 真如のこと。 →真如しんにょ
修成を仮らざる 修行によって成じたものではないという意。

言↢法身菩提↡者、所謂真如実相第一義空。自性清浄体無↢穢染↡。理出↢天真↡不↠仮↢修成↡名為↢法身↡。仏道体本名曰↢菩提↡。

*報身ほうじんだいといふは、 つぶさに万行まんぎょうしゅしてよく報仏ほうぶつかんず。 いんむくゆるをもつてづけて報身ほうじんといふ。 *円通えんずう無礙むげなるをづけてだいといふ

円通無礙 まどかなさとりに通達して、 なにものにもさまたげられないこと。

言↢報身菩提↡者、備修↢万行↡能感↢報仏之果↡。以↢果酬↟因名曰↢報身↡。円通無礙名曰↢菩提↡。

*しんだいといふは、 いはく、 ほうより*ゆうおこして、 よく*まんおもむくをづけてしんとなす。 *益物やくもつ円通えんずうするをづけてだいといふ

 (しゅじょうやくする) はたらき。
万機に趣く すべてのこん (素質能力) に対応する。
益物円通する 物は衆生の意。 衆生を利益することが自由自在であること。

言↢化身菩提↡者、謂従↠報起↠用能趣↢万機↡名為↢化身↡。益物円通名曰↢菩提↡。

3. 発心有異

 だい三に発心ほっしんことなることあることをあらわすとは、 いまいはく、 行者ぎょうじゃいんしゅしんおこすにその三しゅせり。 一には、 かならずすべからく有無うむもとよりこのかた自性じしょう清浄しょうじょうなりと識達しきだつすべし。 二には、 万行まんぎょう縁修えんしゅす。 八まんせんしょ*波羅はらみつもんとうなり。 三には、 だい慈悲じひほんとなしてつねに*うんせんとするをかいとなす。 この三いんはよくだいだい相応そうおうす。 ゆゑにほつだいしんづく

波羅蜜門 →波羅はらみつ
運度 衆生をさとりの世界に導きわたすこと。

第三顕↢発心有↟異者、今謂行者修↠因発↠心具↢其三種↡。一者要須↣識↢達有無従↠本已来自性清浄↡。二者縁↢修万行↡、八万四千諸波羅蜜門等。三者大慈悲為↠本恒擬↢運度↡為↠懐。此之三因能与↢大菩提↡相応。故名↢発菩提心↡。

また ¬じょうろん¼ (*論註・下意) によるにいはく、 「いまほつだいしんといふは、 まさしくこれがんぶつしんなり。 がんぶつしんとは、 すなはちこれしゅじょうしんなり。 しゅじょうしんとは、 すなはちしゅじょう*摂取せっしゅしてぶつこくしょうぜしむるしんなり。 いますでにじょうしょうぜんとがんず。 ゆゑにづすべからくだいしんおこすべし」 と

又拠↢¬浄土論¼↡云。「今言↢発菩提心↡者、即是願作仏心。願作仏心者、即是度衆生心。度衆生心者、即摂↢取衆生↡生↢有仏国土↡心。今既願↠生↢浄土↡。故先須↠発↢菩提心↡也。」

4. 問答解釈

 だい四に問答もんどう解釈げしゃくすとは

第四問答解釈者、

ひていはく、 もしつぶさに万行まんぎょうしゅしてよくだいかん成仏じょうぶつといはば、 なんがゆゑぞ ¬*諸法しょほう無行むぎょうきょう¼ に、

「もしひとだいもとめば、 すなはちだいあることなし。

このひとだいとおざかること、 なほてんとのごとし」

とのたまへるや  

問曰。若備修↢万行↡能感↢菩提↡得↢成仏↡者、何故¬諸法無行経¼云↧「若人求↢菩提↡即無↠有↢菩提↡。是人遠↢菩提↡猶如↦天与↞地。」

こたへていはく、 だい正体しょうたいは、 もとむるに*そうなり。 いまそうをなしてもとむ。 じつあたらず。 ゆゑにひととおざかるとづく

答曰。菩提正体理求無相。今作↠相求、不↠当↢理実↡。故名↢人遠↡也。

このゆゑに*きょうにのたまはく、 「だいしんをもつてべからず、 しんをもつてべからず」 と

経にのたまはく… 引用の文は ¬維摩経ゆいまぎょう¼ ¬大集だいじつきょう¼ の両経にみられる。

是故¬経¼言。「菩提者不↠可↢以↠心得↡、不↠可↢以↠身得↡也。」

いまいはく、 行者ぎょうじゃ修行しゅぎょうしてきてもとむるをるといへども、 *了々りょうりょうたいもとむることなきことをしきして、 なほ*仮名けみょうせず。 このゆゑにつぶさに万行まんぎょうしゅす。 ゆゑによくかん

仮名 因縁いんねんによって仮に生じた現象世界のありさま。

今謂行者雖↠知↢修行往求↡、了了識↢知理体無↟求、仍不↠壊↢仮名↡。是故備修↢万行↡、故能感也。

このゆゑに*¬だい智度ちどろん¼ にいはく、

大智度論にいはく… 引用は ¬略論りゃくろん安楽あんらくじょう¼ に引く ¬だい智度ちどろん¼ (龍樹りゅうじゅ菩薩造) 取意の文。

「もしひと*般若はんにゃるも、 これすなはちばくせられたりとなす。

もし般若はんにゃざるも、 これまたばくせられたりとなす。

もしひと般若はんにゃるも、 これすなはち*だつとなす。

もし般若はんにゃざるも、 これまただつとなす」 と

是故¬大智度論¼云。「若人見↢般若↡是則為↠被↠縛。若不↠見↢般若↡是亦為↠被↠縛。若人見↢般若↡是則為↢解脱↡。若不↠見↢般若↡是亦為↢解脱↡。」

*龍樹りゅうじゅさつしゃくにいはく、 「このなかに*はなれざるを*ばくとなし、 四はなるるを*となす」 と

龍樹菩薩の釈にいはく  引用は ¬略論りゃくろん安楽あんらくじょう¼ に引く ¬だい智度ちどろん¼ (龍樹りゅうじゅ菩薩造) 取意の文。
四句 四句分別のこと。 存在に関する四種の考察。 「有・無・または有または無・有にあらず無にあらず」 をいう。
 解脱のこと。 →だつ

龍樹菩薩¬釈¼曰。「是中不↠離↢四句↡者為↠縛、離↢四句↡者為↠解。」

いまだいさとるに、 ただよくかくのごとく修行しゅぎょうすれば、 すなはちこれ不行ふぎょうにしてぎょうなり。 不行ふぎょうにしてぎょうなれば、 *たい大道だいどうせず

祈↢菩提↡但能如↠此修行即是不行而行。不行而行者不↠違↢二諦大道理↡也。

 天永三年写本、 正平二年写本では 。 なお、 「祈菩提」 は 「菩提をもとめて」 と読む。

また天親てんじんの ¬じょうろん¼ (*論註・下意) によるにいはく、 「おほよそ*発心ほっしんして無上むじょうだいせんとほっせば、 その二あり。 一には、 づすべからく三しゅだいもんそうするほうはなるべし。 二には、 すべからく三しゅだいもんじゅんずるほうるべし。 なんらをか三となす。 一には智慧ちえもんによりてらくもとめず。 しんをもつてしん*貪着とんじゃくすることをおんするがゆゑなり。 二には慈悲じひもんによりて一さいしゅじょうく。 しゅじょうやすんずることなきしんおんするがゆゑなり。 三には方便ほうべんもんによりて一さいしゅじょう憐愍れんみんするしんなり。 しん*恭敬くぎょうようするしんおんするがゆゑなり。 これを三しゅだいもんそうほうおんすとづく。 だいもんじゅんずるとは、 さつはかくのごとき三しゅだいもんそうほうおんして、 すなはち三しゅだいもん随順ずいじゅんするほう。 なんらをか三となす。 一にはぜん清浄しょうじょうしんなり。 しんのために諸楽しょらくもとめざるがゆゑなり。 だいはこれぜん清浄しょうじょうところなり。 もししんのためにらくもとむれば、 すなはちだいもんせり。 このゆゑにぜん清浄しょうじょうしんはこれだいもんじゅんずるなり。 二にはあん清浄しょうじょうしんなり。 一さいしゅじょうかんがためのゆゑなり。 だいは一さいしゅじょう安穏あんのんにする清浄しょうじょうしょなり。 もししんをなして、 一さいしゅじょうきてしょうはなれしめざれば、 すなはちだいす。 このゆゑに一さいしゅじょうくはこれだいもんじゅんずるなり。 三にはらく清浄しょうじょう心なり。 一さいしゅじょうをしてだいだいしめんとほっするがゆゑなり。 しゅじょう*摂取せっしゅしてかのこくしょうぜしむるがゆゑなり。 だいはこれ*畢竟ひっきょう常楽じょうらくところなり。 もし一さいしゅじょうをして畢竟ひっきょう常楽じょうらくしめざれば、 すなはちだいもんす。 この畢竟ひっきょう常楽じょうらくはなにによりてかる。 かならずだいもんによる。 だいもんといふは、 いはく、 かの安楽あんらく仏国ぶっこくこれなり。 ゆゑに一しんせんしてかのくにしょうぜんとがんぜしむ。 はや*無上むじょうだいせしめんとほっすればなり」 と

畢竟常楽の処 究極的な常住安楽の境地。

又依↢天親¬浄土論¼云。「凡欲↣発心会↢無上菩提↡者有↢其二義↡。一者先須↠離↧三種与↢菩提門↡相違法↥、二者須↠知↧三種順↢菩提門↡法↥。何等為↠三。一者依↢智慧門↡不↠求↢自楽↡、遠↣離我心貪↢着自身↡故。二者依↢慈悲門↡抜↢一切衆生苦↡、遠↢離無安衆生心↡故。三者依↢方便門↡憐↢愍一切衆生↡、心遠↧離恭↢敬供↣養自身↡心↥故。是名↣遠↢離三種菩提門相違法↡。順菩提門者、菩薩遠↢離如↠是三種菩提門相違法↡、即得↢三種随順菩提門法↡。何等為↠三。一者無染清浄心。不↧為↢自身↡求↦諸楽↥故。菩提是無染清浄処。若為↢自身↡求↠楽即違↢菩提門↡。是故無染清浄心是順↢菩提↡門。二者安清浄心。為↠抜↢一切衆生苦↡故。菩提安↢隠一切衆生↡清浄処。若不↧作↠心抜↢一切衆生↡離↦生死苦↥即便違↢菩提↡。是故抜↢一切衆生苦↡是順菩提門。三者楽清浄心。欲↠令↣一切衆生得↢大菩提↡故、摂↢取衆生↡生↢彼国土↡故。菩提是畢竟常楽処。若不↠令↣一切衆生得↢畢竟常楽↡者則違↢菩提↡門。此畢竟常楽依↠何而得。要依↢大義門↡。大義門者、謂彼安楽仏国是也。故令↢一心専至願↟生↢彼国↡、欲↠使↣早会↢無上菩提↡也。」

◎第二大門 破異見邪執

【12】だい二にけん邪執じゃしゅうすることをかすとは、 なかにつきてその九ばんあり。 だい一には大乗だいじょうそうもうするけん偏執へんじゅうす。 だい二にはさつ*愛見あいけんだい*つうす。 だい三にはしんほうなしとけいするをす。 だい四には*こくしょうぜんとがんじて、 じょうおうじょうせんとがんぜざるをす。 だい五にはもしじょうしょうずれば、 おおよろこびてらくじゃくすといふをす。 だい六にはじょうしょうぜんともとむるはなり、 これ小乗しょうじょうなりといふをす。 だい七には*そつしょうぜんともとめて、 じょうせざれとすすむるをす。 だい八にはもし十ぽうじょうしょうぜんともとめんよりは、 西にしするにしかずといふをつうす。 だい九には*べつ時意じい*料簡りょうけん

愛見の大悲 愛着の心からおこす慈悲。

第二明↠破↢異見邪執↡者、就↠中有↢其九番↡。第一破↧妄計↢大乗無相↡異見偏執↥。第二会↢通菩薩愛見大悲↡。第三破↠繋↢心外無法↡。第四破↧願↠生↢穢国↡不↞願↣往↢生浄土↡。第五破↧若生↢浄土↡多喜著↞楽。第六破↧求↠生↢浄土↡非、是小乗↥。第七破↧求↠生↢兜率↡勧↞不↠帰↢浄土↡。第八会↧通若求↠生↢十方浄土↡不↞如↠帰↠西。第九料↢簡別時之意↡。

1. 破無相妄執

【13】だい一に大乗だいじょうそう妄執もうしゅうすとは、 なかにつきて二あり。 一には*そう生起しょうきなり。 後代こうだい学者がくしゃをしてあきらかに是非ぜひりてじゃせいかはしめんとほっす。 だい二にはひろ*繋情けじょうにつきてしょうあらわしてこれを

総生起 九番の異見邪執を破する由縁。
繋情 誤った見解。

第一破↢大乗無相妄執↡者、就↠中有↠二。一総生起。欲↠令↧後代学者明識↢是非↡去↠邪向↞正。第二広就↢繋情↡顕↠正破↠之。

一にそう生起しょうきとは、 しかるに大乗だいじょう深蔵じんぞう*名義みょうぎ塵沙じんしゃなり。 このゆゑに ¬はんぎょう¼ (意) にのたまはく、 「一みょうりょうあり、 一りょうあり」 と。 かならずすべからくあまねく*衆典しゅてんつまびらかにして、 まさに*部旨ぶしあきらむべし。 小乗しょうじょう俗書ぞくしょとのもんあんじておわるがごときにあらず。 なんのかすべからくしかるべき。 ただ*じょう幽廓ゆうかくにして経論きょうろん*隠顕おんけんす。 凡情ぼんじょうをして種々しゅじゅ*だくせしむることをいたす。 おそらくは*てん刁々ちょうちょうわたりて、 *百盲ひゃくもう偏執へんじゅう雑乱ぞうらん無知むちにしておうじょう*ぼうすることを。 いましばらく少状しょうじょうげて一々これをせん

名義塵沙 名 (名称) と義 (名にあらわされる意味) が無量であること。
衆典 数多くの経典。
部旨 真意。
浄土 ここでは往生浄土の教えの意。
隠顕 意味が文の表面に顕れていたり、 隠れていたりすること。
図度 推量すること。
諂語刁々 諂語はいつわりの言葉。 刁々はふらふらと動揺するさま。
百盲偏執 →補註10
妨礙 さまたげること。

一総生起者、然大乗蔵名義塵沙。是故¬涅槃経¼云。「一名無量義、一義無量名。」要須↧徧審↢衆典↡方暁↦部旨↥。非↠如↢小乗俗書案↠文畢↟義。何意須↠然。但浄土幽廓経論隠顕。致↠令↢凡情種種図度↡。恐渉↢謟語刁刁↡百盲偏執雑乱無知妨↢礙往生↡。今且挙↢少状↡一一破↠之。

 だい一に大乗だいじょうそうもうするをすとは

第一破↣妄↢計大乗無相↡者、

ひていはく、 あるいはひとありていはく、 「大乗だいじょうそうなり、 彼此ひしねんずることなかれ。 もしじょうしょうぜんとがんずれば、 すなはちこれ*取相しゅそうなり、 *うたた*ばくす。 なにをもつてかこれをもとむる」 と

取相 彼此ひし差別の相にとらわれること。

問曰。或有↠人言、大乗無相勿↠念↢彼此↡。若願↠生↢浄土↡便是取相、転増↢漏縛↡。何用求↠之。

 天永三年写本では 「偏」、 正平二年写本では脱落。

こたへていはく、 かくのごとき*けいはまさにおもふにしからず。 なんとなれば、 一さい諸仏しょぶつ説法せっぽうはかならず二えんす。 一にはほっしょうじつによる。 二にはすべからくその二たいじゅんずべし。 かれは、 大乗だいじょうねんなり、 ただほっしょうによるとけいして、 しかも*えんそしみす。 すなはちこれ二たいじゅんぜず。 かくのごときけんは、 *滅空めっくう所収しょしゅう

 見解。 考え。
縁求 因縁いんねんしょうの立場で往生浄土を願い求めること。
滅空の所収 一切のものには実体がないというくうの道理を偏ってとらえてしまうこと。

答曰。如↠此計者将謂不↠然。何者一切諸仏説法要具↢二縁↡。一依↢法性実理↡、二須↠順↢其二諦↡。彼計↣大乗無念但依↢法性↡然謗↢無縁求↡。即是不↠順↢二諦↡。如↠此見者堕↢滅空所収↡。

このゆゑに ¬*無上むじょうきょう¼ (意) にのたまはく、 「ぶつなんげたまはく、 ªさいしゅじょうもし*けんおこすこと*しゅせんのごとくならんも、 われおそれざるところなり。 なにをもつてのゆゑに。 このひとはいまだすなはちしゅつずといへども、 つねにいんせず、 ほううしなはざるがゆゑなり。 もし*空見くうけんおこすこと芥子けしのごとくなるも、 われすなはちゆるさず。 なにをもつてのゆゑに。 このけんいんやぶうしなひておお悪道あくどうす。 らい生処しょうじょかならずわがそむくº」 と

是故¬無上依経¼云。「仏告↢阿難↡。一切衆生若起↢我見↡如↢須弥山↡、我所↠不↠懼。何以故、此人雖↠未↣即得↢出離↡、常不↠壊↢因果↡、不↠失↢果報↡故。若起↢空見↡如↢芥子↡我即不↠許。何以故。此見者破↢喪因果↡多堕↢悪道↡。未来生処必背↢我化↡。」

いま行者ぎょうじゃすすむ。 *しょうなりといへども、 しかも二たいどうえんなきにあらざれば、 一さいおうじょう

今勧↢行者↡、理雖↢無生↡然二諦道理非↠無↢縁求↡、一切得↢往生↡也。

このゆゑに ¬*ゆいぎょう¼ (意) にのたまはく、

諸仏しょぶつくにとおよびしゅじょうとは、 くうなりとかんずといへども、

しかもつねにじょうしゅして、 もろもろの*群生ぐんじょう教化きょうけす」 と

是故¬維摩経¼云。「雖↠観↧諸仏国及与↢衆生↡空↥、而常修↢浄土↡教↢化諸羣生↡。」

またかの ¬きょう¼ (維摩経) にのたまはく、 「*無作むさぎょうずといへども*受身じゅしんげんず。 これさつぎょうなり。 *無起むきぎょうずといへども、 一さい善行ぜんぎょうおこす。 これさつぎょうなり」 と。 これその真証しんしょうなり

無作を行ず 一切諸法は本来くうであり、 はたらきはないと観ずること。
受身を現ず 衆生済度のために生死の身を受けること。
無起を行ず 一切諸法は本来空であり、 生起することがないと観ずること。

又彼¬経¼云。「雖↠行↢無作↡而現↢受身↡。是菩薩行。雖↠行↢無起↡而起↢一切善行↡。是菩薩行。」是其真証也。

 ひていはく、 いまけんひとありて、 大乗だいじょう*そうぎょうじてまた彼此ひしぞんぜず、 まつたく戒相かいそうまもらず。 このいかん

無相を行じ 一切諸法に差別の相をみないこと。

問曰。今世間有↠人、行↢大乗無相↡亦不↠存↢彼此↡。全不↠護↢戒相↡。是事云何。

こたへていはく、 かくのごときけいがいをなすことますますはなはだし。 なんとなれば、 ¬*だい方等ほうどうきょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「ぶつ*優婆うばそくのためにかいせいす。 ª寡婦かふ処女しょにょいえ*しゅ藍染らんぜんおう熟皮じゅくひいたることをざれ、 ことごとく往来おうらいすることをざれº と。 なんぶつにまうしてまうさく、 ªそん、 なんらのひとのためにか、 かくのごときかいせいしたまふº と。 ぶつなんげたまはく、 ª行者ぎょうじゃに二しゅあり。 一には*ざいにんぎょう、 二にはしゅっにんぎょうなり。 しゅっにんには、 われかみせいせず。 ざいにんには、 われいまこれをせいす。 なにをもつてのゆゑに。 一さいしゅじょうはことごとくこれわがなり。 ぶつはこれ一さいしゅじょう父母ぶもなり。 *遮制しゃせい約勒やくろくすれば、 はやけんでてはんるがゆゑなりº」 と

沽酒家… 沽酒家は酒の販売を職業とする者。 藍染家は染物を職業とする者。 押油家は製油を職業とする者。 熟皮家は皮革加工を職業とする者。 →補註8
在世人 在俗の人。
遮制約勒 悪をさえぎりとどめるべく誡めること。

答曰。如↠此計者為↠害滋甚。何者如↢¬大方等経¼云↡。「仏為↢優婆塞↡制↠戒、不↠得↠至↢寡婦・処女家↡。沽酒家・藍染家・押油家・熟皮家、悉不↠得↢往来↡。阿難白↠仏言。世尊、為↢何等人↡制↢如↠斯戒↡。仏告↢阿難↡。行者有↢二種↡。一者在世人行、二者出世人行。出世人者吾不↠制↢上事↡。在世人者吾今制↠之。何以故。一切衆生悉是吾子。仏是一切衆生父母。遮制約勒早出↢世間↡得↢涅槃↡故。」

2. 会通愛見大悲

【14】だい二にさつ*愛見あいけんだい*つうすとは

愛見の大悲 愛着の心からおこす慈悲。

第二会↢通菩薩愛見大悲↡者、

ひていはく、 大乗だいじょう聖教しょうぎょうによるに、 「さつもろもろのしゅじょうにおいて、 もし愛見あいけんだいおこさばすなはちしゃすべし」 と。 いましゅじょうすすめてともにじょうしょうぜしむるは、 あに*愛染あいぜん取相しゅそうにあらずや。 いかんぞその*塵累じんるいまぬかれんや

愛染取相 分別にとらわれた愛着の心。
塵累 煩悩ぼんのう (塵) に束縛された迷いの境界。

問曰。依↢大乗聖教↡、菩薩於↢諸衆生↡、若起↢愛見大悲↡即応↢捨離↡。今勧↢衆生↡共生↢浄土↡、豈非↢愛染取相↡、若為免↢其塵累↡也。

 正平二年写本・大派依用本では 「勉」。

こたへていはく、 さつ行法ぎょうほう*ゆうに二あり。 なんとなれば、 一には*くう般若はんにゃさとる。 二にはだいす。 一にはくう般若はんにゃしゅするちからをもつてのゆゑに、 六どうしょうるといへども、 *塵染じんぜんのためにつながれず。 二にはだいをもつてしゅじょうねんずるがゆゑにはんじゅうせず。 さつ*たいしょすといへども、 つねによくみょう有無うむて、 取捨しゅしゃ*ちゅう大道だいどうせず

空慧般若 一切のものには実体がないというくうの道理をさとる般若の智慧ちえ。 →はんにゃ
塵染 煩悩 (塵) に染っていること。
 中道。 両極端を離れた正しいありかた。

答曰。菩薩行法功用有↠二。何者、一証↢空慧般若↡、二具↢大悲↡。一以↧修↢空慧般若↡力↥故、雖↠入↢六道生死↡不↧為↢塵染↡所↞繋。二以↢大悲↡念↢衆生↡故、不↠住↢涅槃↡。菩薩雖↠処↢二諦↡、常能妙捨↢有無↡、取捨得↠中不↠違↢大道理↡也。

このゆゑに ¬ゆいぎょう¼ にのたまはく、 「たとへばひとありてくうにおいてしゃ造立ぞうりゅうせんとほっせば、 こころしたがひてさわりなきも、 もしくうにおいてはつひにじょうずることあたはざるがごとし。 さつもまたかくのごとし。 *しゅじょう成就じょうじゅせんとほっするがためのゆゑに仏国ぶっこくらんとがんず。 仏国ぶっこくらんとがんずるは、 くうにおいてするにはあらず」 と

衆生を成就せん 衆生にさとりを得させる。

是故¬維摩経¼云。「譬如↩有↠人欲↧於↢空地↡造↦立宮舎↥随↠意無↠礙、若於↢虚空↡終不↝能↠成。菩薩亦如↠是。為↠欲↣成↢就衆生↡故願↠取↢仏国↡。願↠取↢仏国↡者非↠於↠空也。」

3. 破繋心外無法

【15】だい三にしんほうなしとけいするをすとは

第三破↠繋↢心外無法↡者、

なかにつきて二あり。 一には計情けじょうし、 二には問答もんどう解釈げしゃく

就↠中有↠二。一破↢計情↡、二問答解釈。

 ひていはく、 あるいはひとありていはく、 「*所観しょかん浄境じょうきょう内心ないしん約就やくじゅすればじょう融通ゆうずうす。 しんきよければすなはちなり。 しんほうなし。 なんぞ西にしるをもちゐんや」 と

所観の浄境は… 観察かんざつの対象である浄土の環境は、 心におさまっているので浄土とこころは一つにとけあっている。

問曰。或有↠人言、所観浄境約↢就内心↡浄土融通。心浄即是、心外無↠法、何須↢西入↡。

こたへていはく、 ただほっしょうじょうは、 *ゆうしょし、 たい*偏局へんごくなし。 これすなはちしょうしょうにして、 *上士じょうしのみるにへたり

虚融に処し しき無形むぎょうであらゆる限定を超えているという意。
偏局なし 法界ほうかいに周遍していて、 十方のうちの一方にかたよるようなことがないという意。
上士 すぐれた聖者。

答曰。但法性浄土理処↢虚融↡、体無↢偏局↡、此乃無生之生、上士堪↠入。

このゆゑに ¬*無字むじ宝篋ほうきょうきょう¼ (意) にのたまはく、 「ぜんなんまた一ぽうあり、 これぶつさとるところなり。 いはゆる諸法しょほう不去ふこらいいんえんしょうめつ無思むし無不思むふしぞうげんなり。 ぶつ*羅睺羅らごらげてのたまはく、 ªなんぢいまわがこの所説しょせつしょうぼうじゅすやいなやº と。 そのときぽうに九おくさつありて、 すなはちぶつにまうしてまうさく、 ªわれらみなよくこの法門ほうもんして、 まさにしゅじょうのためにずうしてえざらしむべしº と。 そんこたへてのたまはく、 ªこれをぜんなんとうすなはち両肩りょうけんだいたんすとなす。 かのひとすなはち*だん弁才べんざい、 よく清浄しょうじょうなる諸仏しょぶつかい命終みょうじゅうときにすなはちげん阿弥陀あみだぶつ、 もろもろのしょうじゅとそのひとまえじゅうしたまふをたてまつることをおうじょうº」 と

不断弁才 他人によって断ち切られることのない弁舌の才能。

是故¬無字宝篋経¼云。「善男子復有↢一法↡、是仏所↠覚。所謂諸法不去・不来・無因・無縁・無生・無滅・無思・無不思・無増・無減。仏告↢羅睺羅↡言。汝今受↢持我此所説正法義↡不。爾時十方有↢九億菩薩↡、即白↠仏言。我等皆能持↢此法門↡、当↧為↢衆生↡流通不↞絶。世尊答言。是善男子等則為↣両肩荷↢担菩提↡。彼人即得↢不断弁才↡、得↢善清浄諸仏世界↡。命終之時即得↫現見↪阿弥陀仏与↢諸聖衆↡住↩其人前↨得↢往生↡也。」

おのづからちゅうはいあり。 いまだ*そうすることあたはざれども、 かならず*信仏しんぶつ因縁いんねんによりてじょうしょうぜんともとむ。 かのくにいたるといへども、 かえりて*そう

 そうの見。 すがたかたちにとらわれた見解。
相土 有相の浄土。 すがたかたちのある浄土。 これに対して、 ほっしょうの浄土は無色無形である。

自有↢中下之輩↡。未↠能↠破↠相、要依↢信仏因縁↡求↠生↢浄土↡、雖↠至↢彼国↡還居↢相土↡。

またいはく、 もし*えんせっしてほんしたがへば、 すなはちこれしんほうなし。 もし二たいわかちてかさば、 じょうはこれしんほうなることをさまたぐることなし

縁を摂して… 因縁いんねんしょう差別の立場 (俗諦ぞくたい) をおさめて、 根本の立場 (真諦しんたい) についていえばという意。 →たい

又云。若摂↠縁従↠本即是心外無↠法。若分↢二諦↡明↠義浄土無↠妨↢是心外法↡也。

 二に問答もんどう解釈げしゃくすとは

二問答解釈。

ひていはく、 さきに 「しょうしょうはただ*上士じょうしのみよくる、 ちゅうへず」 といふは、 はたただちにひとをもつてほうやくしてかくのごときはんをなすや、 はたまた聖教しょうぎょうありてきたしょうすや

上士 すぐれた聖者。

問曰。向言↢無生之生唯上士能入、中下不↟堪者、為当直将↠人約↠法作↢如↠此判↡。為当亦有↢聖教↡来証。

こたへていはく、 ¬*智度ちどろん¼ (意) によるにいはく、 「*しんぽっさつ*機解きげ軟弱なんにゃくにして*発心ほっしんすといふといへども、 おおじょうしょうぜんとがんず。 なんのこころぞしかるとならば、 たとへば嬰児ようにのもし父母ぶも恩養おんようちかづかざれば、 あるいはあなじゃとうなんあり、 あるいはちちともしくしてす。 かならず父母ぶもせん養育よういくするをりて、 まさに長大ちょうだいしてよくごう紹継じょうけいすべきがごとし。 さつもまたしかなり。 もしよくだいしんおこして、 おおじょうしょうぜんとがんずれば、 諸仏しょぶつ親近しんごんしたてまつりて法身ほっしん増長ぞうちょうし、 まさによくさつごう匡紹こうじょうし十ぽう*済運さいうんす。 このやくのためのゆゑにおおしょうぜんとがんず」 と

機解 こん (素質能力) と智慧ちえのこと。

答曰。依↢¬智度論¼↡云。「新発意菩薩機解輭弱、雖↠言↢発心↡多願↠生↢浄土↡。何意然者、譬如↫嬰児若不↠近↢父母恩養↡、或堕↠坑落↠井火蛇等難。或乏↠乳而死。要仮↢父母摩洗養育↡方可↪長大能紹継家業↨。菩薩亦爾。若能発↢菩提心↡多願↠生↢浄土↡。親↢近諸仏↡増↢長法身↡、方能匡↢紹菩薩家業↡十方済運。為↢斯益↡故多願↠生也。」

またかの ¬ろん¼ (同・意) にいはく、 「たとへば鳥子ちょうしかくいまだならざるをば、 めてたかけしむべからず。 づすべからくはやしによりてじゅつたはしむべし。 はねちからありてまさにはやしそらあそぶべきがごとし。 しん発意ぽっちさつもまたしかなり。 づすべからくがんじょうじて仏前ぶつぜんしょうずることをもとめ、 法身ほっしん成長じょうちょうしてかんしたがひてやくおもむくべし

又彼¬論¼云。「譬如↧鳥子翅翮未↠成不↠可↣逼令↢高翔↡、先須↢依↠林伝↟樹、羽成有↠力方可↦捨↠林遊↞空。新発意菩薩亦爾。先須↧乗↠願求↠生↢仏前↡、法身成長随↠感赴↞益。

またなんぶつにまうしてまうさく、 ªこの*そう波羅はらみつは、 いづれのところにありてかきたまふº と。 ぶつのたまはく、 ªかくのごとき法門ほうもんは、 *阿毘あび跋致ばっちのなかにありてく。 なにをもつてのゆゑに。 しん発意ぽっちさつありてこのそう波羅はら蜜門みつもんかば、 あらゆる清浄しょうじょう善根ぜんごんことごとくまさに滅没めつもつすべしº」 と

無相の波羅蜜 差別の相を離れて修する行。 →波羅はらみつ
阿毘跋致地 阿毘跋致 (不退転) の地位に入った者。 →阿毘あび跋致ばっち退転たいてん

又阿難白↠仏言。此無相波羅蜜在↢何処↡説。仏言。如↠此法門在↢阿跋致地中↡説。何以故、有↢新発意菩薩↡聞↢此無相波羅蜜門↡、所有清浄善根悉当↢滅没↡也。

またただかのくにいたりぬれば、 すなはち一さいおわりぬ。 なにをもつてかこの深浅じんせんあらそはんや

又来但至↢彼国↡即一切事畢、何用諍↢此浅理↡也。」

4. 破穢土願生

【16】だい四に穢土えどしょうぜんとがんじて、 じょうしょうぜんとがんぜざるをすとは

第四破↧願↠生↢穢土↡不↞願↠生↢浄土↡者、

ひていはく、 あるいはひとありていはく、 「*こくしょうじてしゅじょう教化きょうけせんとがんじてじょうおうじょうすることをがんぜず」 と。 このいかん

問曰。或有↠人言、願↧生↢穢国↡教↦化衆生↥不↠願↣往↢生浄土↡、是事云何。

こたへていはく、 これひとにまた一のともがらあり。 何者なにものぞ。 もし退たいして以去いこなれば、 雑悪ぞうあくしゅじょうせんがためのゆゑに、 よくぜんしょすれどもぜんせず、 あくへどもへんぜず。 *おうみずれども、 みず湿うるおすことあたはざるがごとし。 かくのごとき人等にんとうよくしょしてくにへたり。 もしこれじつぼんならば、 ただおそらくは自行じぎょういまだたず、 はばすなはちへんじ、 かれをすくはんとほっせばあひともにもっしなん。 にわとりめてみずらしむるがごとし。 あによく湿うるおはざらんや

鵝鴨 がちょうとあひる。 ともに水鳥。

答曰。此人亦有↢一徒↡。何者若身居↢不退↡已去為↠化↢雑悪衆生↡故能処↠染不↠染逢↠悪不↠変、如↢鵝鴨入↠水水不↟能↠。如↠此人等堪↢能処↠穢抜↟苦。若是実凡夫者、唯恐自行未↠立逢↠苦即変、欲↠済↠彼者相与倶没。如↢似逼↠鶏入↟水。豈能不↠。

このゆゑに ¬智度ちどろん¼ (意) にいはく、 「もしぼん*発心ほっしんしてすなはち穢土えどにありてしゅじょう抜済ばっさいせんとがんずるをば、 *聖意しょういゆるしたまはず」 と

聖意 仏のみこころ。

是故¬智度論¼云。「若凡夫発心即願↧在↢穢土↡抜↦済衆生↥者聖意不↠許。」

なんのこころぞしかるとならば、 龍樹りゅうじゅさつしゃくしていはく (同・意)、 「たとへば四十こおりに、 もし一にんありて一しょう熱湯ねっとうをもつてこれをとうずれば、 *とうすこしきげんずるに似如たれども、 もしよるあけいたれば、 すなはちのものよりもたかきがごとし。 ぼんここにありて発心ほっしんしてすくふも、 またかくのごとし。 *貪瞋とんじん境界きょうがい*違順いじゅんおおきをもつてのゆゑに、 みづから煩悩ぼんのうおこして、 かえりて悪道あくどうするがゆゑなり」 と

当時 当座。 その時。
違順 心にかなったり、 かなわなかったりすること。

何意然者、龍樹菩薩釈云。「譬如↧四十里冰如有↢一人↡以↢一升熱湯↡投↠之、当時似↢如少減↡若経↠夜至↠明乃高↦於余者↥。凡夫在↠此発心救↠苦亦復如↠是。以↢貪・瞋境界違順多↡故、自起↢煩悩↡返堕↢悪道↡故也。」

5. 破浄土着楽

【17】だい五にもしじょうしょうずれば、 おおよろこびてらくじゃくすといふをすとは

第五破↧若生↢浄土↡多喜著↞楽者、

ひていはく、 あるいはひとありていはく、 「じょうのなかにはただらくのみありて、 おおよろこびてらくじゃくして修道しゅどう妨廃ぼうはいす。 なんぞおうじょうがんずるをもちゐんや」 と

問曰。或有↠人言、浄土之中唯有↢楽事↡、多喜著↠楽妨↢廃修道↡。何須↠願↢往生↡也。

こたへていはく、 すでにじょうといふ、 しゅあることなし。 もしらくじゃくすといはば、 すなはちこれ*貪愛とんない煩悩ぼんのうなり。 なんぞづけてじょうとなさん

答曰。既云↢浄土↡無↠有↢衆穢↡。若言↠著↠楽便是貪愛煩悩。何名為↠浄。

このゆゑに ¬*だいきょう¼ (下・意) にのたまはく、 「かのくに人天にんでんは、 往来おうらい進止しんしこころくるところなし」 と

是故¬大経¼云。「彼国人天往来進止情無↠所↠繋。」

また四十八がんにのたまはく (*同・上意)、 「ぽう人天にんでん、 わがくにらいして、 もし想念そうねんおこして*とんせば、 しょうがくらじ」 (第十願)

又四十八願云。「十方人天来↢至我国↡、若起↢想念↡貪↢計身↡者、不↠取↢正覚↡。」

¬*だいきょう¼ (下・意) にまたのたまはく、 「かのくに人天にんでん*適莫ちゃくまくするところなし」 と。 なんぞ着楽じゃくらくあらんや

¬大経¼又云。「彼国人天無↠所↢適莫↡。」何有↢著楽之理↡也。

6. 破求生浄土非

【18】だい六にじょうしょうぜんともとむるはなり、 これ*小乗しょうじょうなりといふをすとは

第六破↧求↠生↢浄土↡非、是小乗↥、

ひていはく、 あるいはひとありていはく、 「じょうしょうぜんともとむるはすなはちこれ小乗しょうじょうなり。 なんぞこれをしゅするをもちゐんや」 と

問曰。或有↠人言、求↠生↢浄土↡便是小乗。何須↠修↠之。

こたへていはく、 これまたしからず。 なにをもつてのゆゑに。 ただ小乗しょうじょうきょうには一こうじょうしょうずることをかさざるがゆゑなり

答曰。此亦不↠然、何以故、但小乗之教一向不↠明↠生↢浄土↡故也。

7. 会通兜率願生

【19】だい七に*そつしょうぜんとがんずることと、 じょうするをすすむることとを*つうすとは

第七会↧通願↠生↢兜率↡勧↞帰↢浄土↡者、

ひていはく、 あるいはひとありていはく、 「そつしょうぜんとがんじて、 *西にしすることをがんぜず」 と。 このいかん

西 西方の阿弥陀仏の浄土。

問曰。或有↠人言、願↠生↢兜率↡不↠願↠帰↠西、是事云何。

こたへていはく、 このるいせず。 少分しょうぶんおなじきにたれども、 たいによればおおきにべつなり。 その四しゅあり

答曰。此義不↠類。少分似↠同拠↠体大別。有↢其四種↡。

なんとなれば、 一には*ろくそん、 その天衆てんしゅのために*退たい*法輪ほうりんてんず。 ほうきてしんしょうずるものはやくづけて信同しんどうとなす。 らくじゃくしてしんなきもの、 そのかず一にあらず。 またそつしょうずといへども、 くらいこれ*退処たいしょなり。 このゆゑに ¬きょう¼ (法華経) にのたまはく、 「三がいやすきことなし、 なほ*たくのごとし」 と

弥勒世尊 →ろくさつ
退処 悪趣あくしゅへの退転があるところ。 西方浄土が三界さんがいを超越するのに対し、 そつはなお三界のうちであるので、 退転がある。

何者一弥勒世尊為↢其天衆↡転↢不退法輪↡。聞↠法生↠信者獲↠益、名為↢信同↡。著↠楽無↠信者其数非↠一。又来雖↠生↢兜率↡位是退処。是故¬経¼云。「三界無↠安猶如↢火宅↡。」

二にはそつおうじょうしてまさに寿命じゅみょうること四千歳せんざいなり。 命終みょうじゅうのち*退落たいらくまぬかれず

退落 (悪趣あくしゅへ) 転落すること。

二往↢生兜率↡正得↢寿命↡四千歳、命終之後不↠免↢退落↡。

三にはそつ天上てんじょうにはすいちょう樹林じゅりん*和鳴わみょうあいなることありといへども、 ただ諸天しょてん生楽しょうらくのためにえんたり。 五よくしたがひて*しょうどうたすけず。 もし弥陀みだ浄国じょうこくかはば、 一たびしょうずることをるものはことごとくこれ*阿毘あび跋致ばっちなり。 さらに*退人たいにんのそれとぞうするものなし。 またくらいはこれ無漏むろにして、 三がい出過しゅっかしてまたりんせず。 その寿命じゅみょうろんずれば、 すなはちぶつ (阿弥陀仏)ひとし。 *算数さんじゅのよくるところにあらず。 それすいちょう樹林じゅりんありてみなよくほうき、 ひとをして悟解ごげしてしょう証会しょうえせしむ

和鳴哀雅 音声が調和していて、 情趣とみやびやかさがあるということ。
聖道 仏道。 さとりへの道。
退人 (悪趣へ) 転落してしまう人。

三兜率天上雖↠有↢水鳥樹林和鳴哀雅↡、但与↢諸天生楽↡為↠縁。順↢於五欲↡不↠資↢聖道↡。若向↢弥陀浄国↡一得↠生者悉是阿跋致。更無↢退人与↠其雑居↡。又復位是無漏出↢過三界↡不↢復輪迴↡、論↢其寿命↡即与↠仏斉。非↢算数能知↡。其有↢水鳥樹林↡皆能説↠法令↣人悟解証↢会無生↡。

四には ¬だいきょう¼ によりて、 しばらく一しゅ音楽おんがくをもつて*比校ひきょうせば、 ¬きょうさん¼ にいはく (讃阿弥陀仏偈)

帝王たいおうより*てんいたるまで、 音楽おんがくうたたみょうにして八じゅうあり。

*展転てんでんしてさきすぐるること億万おくまんばい宝樹おうじゅこえうるわしきことばいしてまたしかなり。

またねんたえなるがくあり。 法音ほうおん清和しょうわにして*心神しんじんよろこばしめ、

心神 神識じんしき。 こころ。

*哀婉あいえん雅亮がりょうにして十ぽうゆ。 このゆゑに*清浄しょうじょうくん稽首けいしゅしたてまつる」 と

哀婉雅亮 深い情趣をたたえて、 しなやかに響きわたり、 優雅・明澄であること。
清浄勲 きよらかな勲功 (どく) のある仏という意。

四拠↢¬大経¼↡且以↢一種音楽↡比挍者、経¬讃¼言。「従↢世帝王↡至↢六天↡、音楽転妙有↢八重↡、展転勝↠前億万倍、宝樹音麗倍亦然、復有↢自然妙伎楽↡、法音清和悦↢心神↡、哀婉雅亮超↢十方↡、是故稽↢首清浄勲↡。」

8. 校量願生十方

【20】だい八に十ぽうじょうしょうぜんとがんぜんよりは、 西方さいほうするにしかずといふを*校量きょうりょうすとは

第八挍↧量願↠生↢十方浄土↡不↞如↠帰↢西方↡者、

ひていはく、 あるいはひとありていはく、 「十ぽう浄国じょうこくしょうぜんとがんじて、 西方さいほうせんとがんぜず」 と。 このいかん

問曰。或有↠人言、願↠生↢十方浄国↡不↠願↠帰↢西方↡。是義云何。

こたへていはく、 このるいせず。 なかに三あり

答曰。此義不↠類。於↠中有↠三。

なんとなれば、 一には十ぽう仏国ぶっこく不浄ふじょうとなすにはあらず。 しかるにきょうひろければすなはちしんくらく、 きょうせまければすなはちこころもつぱらなり

何者一十方仏国非↠為↢不浄↡。然境寛則心昧、境狭則意専。

このゆゑに ¬*ぽう随願ずいがんおうじょうきょう¼ (意) にのたまはく、 「こうさつぶつにまうしてまうさく、 ªそん、 十ぽうぶつみな厳浄ごんじょうなりとなす、 なんがゆゑぞ諸経しょきょうのなかにひとへに西方さいほう阿弥陀あみだこくたんじておうじょうすすめたまふº と。 ぶつこうさつげたまはく、 ª一さいしゅじょう濁乱じょくらんのものはおおく、 正念しょうねんのものはすくなし。 しゅじょうをしてせんあることをあらしめんとほっす。 このゆゑにかのくに讃歎さんだんすること*べつとなすのみ。 もしよくがんによりて修行しゅぎょうすれば、 やくざるはなしº」 と

別異 相違。

是故¬十方随願往生経¼云。「普広菩薩白↠仏言。世尊、十方仏土皆為↢厳浄↡。何故諸経中偏歎↢西方阿弥陀国↡勧↢往生↡也。仏告↢普広菩薩↡。一切衆生、濁乱者多正念者少、欲↠令↢衆生専志有↟在。是故讃↢歎彼国↡為↢別異↡耳。若能依↠願修↠行莫↠不↠獲↠益。」

二には十ぽうじょうみなこれじょうにして深浅じんせんりがたしといへども、 弥陀みだ浄国じょうこくはすなはちこれ*じょう初門しょもんなり

浄土の初門 あらゆる浄土の最初の入り口。

二十方浄土雖↢皆是浄↡而浅難↠知。弥陀浄国乃是浄土之初門。

なにをもつてかることをる。 ¬ごんぎょう¼ (意) によるにのたまはく、 「しゃかいの一こう極楽ごくらくかいの一にちあたる。 極楽ごくらくかいの一こう袈裟けさどうかいの一にちあたる。 かくのごとく優劣ゆうれつあひのぞむるに、 すなはち十*そうあり」 と

何以得↠知。依↢¬華厳経¼↡云。「娑婆世界一劫当↢極楽世界一日一夜↡、極楽世界一劫当↢袈娑幢世界一日一夜↡。如↠是優劣相望乃有↢十阿僧祇↡。」

ゆゑにりぬ、 じょう初門しょもんとなすなり。 このゆゑに諸仏しょぶつひとへにすすめたまふ。 ほう仏国ぶっこくはすべてかくのごとく丁寧ていねいならず。 このゆゑにしんともがらおおおうじょうがん

故知、為↢浄土初門↡。是故諸仏偏勧也。余方仏国都不↢如↠此丁寧↡。是故有信之徒多願↢往生↡也。

三には弥陀みだ浄国じょうこくはすでにこれじょう初門しょもんなり。 しゃかいはすなはち*穢土えど末処まっしょなり

穢土の末処 穢土のおわり尽きるところ。

三弥陀浄国既是浄土初門。娑婆世界即是穢土末処。

なにをもつてかることをる。 ¬*しょうぼうねんぎょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「ここより東北とうほくに一かいあり、 づけて斯訶しかといふ。 でんにただ三かく沙石しゃせきのみあり。 一ねんに三たびあめふる。 一湿潤しゅうにんすること五すんぎず。 そのしゅじょう、 ただ*菓子かしじきじゅころもとなし、 しょうもとむるにず、 もとむるにず。 また一かいあり。 一さいろう禽獣きんじゅうない*蛇蝎じゃかつことごとくみなはねありて飛行ひぎょうす。 ふものあひらふ。 善悪ぜんあく*えらばず」 と

菓子 果実。
蛇蝎 へびやさそり。
簡ばず 区別しない。

何以得↠知。如↢¬正法念経¼云↡。「従↠此東北有↢一世界↡、名曰↢斯訶↡。土田唯有↢三角沙石↡。一年三雨。一雨潤不↠過↢五寸↡。其土衆生、唯食↢菓子↡樹皮為↠衣、求↠生不↠得求↠死不↠得。復有↢一世界↡。一切虎狼・禽獣、乃至虵蝎、悉皆有↠翅飛行。逢者相噉。不↠簡↢善悪↡。」

これあに穢土えど始処ししょづけざらんや。 しかるにしゃ*ほうはすなはち*賢聖げんじょうたぐいおなじくす。 ただこれすなはちこれ穢土えど終処しゅうしょなり。 安楽あんらくかいはすでにこれじょう初門しょもんなり。 すなはちこのほうさかいいであひせっせり。 おうじょうはなはだ便べんなり。 なんぞかざらんや

賢聖 さとりの位にある人。

此豈不↠名↢穢土始処↡。然娑婆依報乃与↢賢聖↡同↠流、唯此乃是穢土終処。安楽世界既是浄土初門。即与↢此方↡境次相接。往生甚便、何不↠去也。

9. 料簡別時意

【21】だい九に ¬*摂論しょうろん¼ とこの ¬きょう¼ (観経)そうするによりて、 *べつ時意じい*料簡りょうけんすとは

摂論 →しょう大乗だいじょうろん

第九拠↧¬摂論¼与↢此¬経¼↡相違↥料↢簡別時意語↡者、

いま ¬*かんぎょう¼ (意) のなかに、 ぶつ、 「*ぼんしょうひとげん重罪じゅうざいつくるも、 命終みょうじゅうときのぞみてぜんしきひて十ねん成就じょうじゅしてすなはちおうじょう」 ときたまふ。 ¬摂論しょうろん¼ にいふによるに、 「ぶつべつ時意じいなり」 といふ

下品生 →ぼん

今¬観経¼中仏説↧下品生人現造↢重罪↡、臨↢命終時↡遇↢善知識↡十念成就即得↦往生↥。依↢¬摂論¼云↡、噵↢仏別時意語↡。

またらい*通論つうろんいえおおくこのもんはんじていはく、 「臨終りんじゅうの十ねんはただおうじょういんとなることをるも、 いまだすなはちしょうずることを

通論の家 じゃくの ¬しょう大乗だいじょうろん¼ にもとづく摂論しょうろん学派のこと。

又古来通論之家多判↢此文↡云。臨終十念但得↠作↢往生因↡未↢即得↟生。

なにをもつてかることをるとならば、 ¬ろん¼ (摂大乗論釈・意) にいはく、 ª一の金銭こんせんをもつてせん金銭こんせん貿あがなるは、 一にちにすなはちるにはあらざるがごとしº と

何以得↠知¬論¼云。「如↧以↢一金銭↡貿↢得千金銭↡非↦一日即得↥。」

ゆゑにりぬ、 十ねん成就じょうじゅは、 ただいんとなることをるも、 いまだすなはちしょうずることをず。 ゆゑにべつ時意じいづく」 と

故知、十念成就者但得↠作↠因未↢即得↟生。故名↢別時意語↡。

かくのごときはまさにいまだしからずとなす

如↠此解者将為↠未↠然。

なんとなれば、 おほよそさつの、 ろんつくりてきょうしゃくすることは、 みなとおぶつたすけて*聖情しょうじょうかいせんとほっしてなり。 もし論文ろんもんきょうすることあらば、 このことわりあることなからん

聖情に契会せん 仏のおぼしめしにかなうこと。

何者凡菩薩作↠論釈↠経皆欲↧遠扶↢仏意↡契↦会聖情↥。若有↢論文違↟経者無↠有↢是処↡。

いまべつ時意じいせば、 いはく、 ぶつ*常途じょうず説法せっぽうはみな先因せんいん後果ごかかす。 *しゅ炳然へいねんなり

常途 通常。
理数炳然 道理があきらかであること。

今解↢別時意語↡者、謂仏常途説法皆明↢先因後果↡。理数炳然。

いまこの ¬きょう¼ (観経) のなかには、 ただ一しょうつみつくりて、 命終みょうじゅうときのぞみて十ねん成就じょうじゅしてすなはちおうじょうきて、 過去かこいんいんろんぜざるは、 ただこれそん*当来とうらい造悪ぞうあくともがら*引接いんじょうして、 その臨終りんじゅうあくぜんし、 ねんじょうじておうじょうせしめんとなり。 ここをもつてその*宿因しゅくいんかくす。 これはこれそんはじめをかくしておわりをあらわし、 いんもっしてだんずるをづけてべつ時意じいとなす

引接 仏道に誘い導くこと。
宿因 過去世につくった業因。

今此経中但説↧一生造↠罪臨↢命終時↡十念成就即得↦往生↥、不↠論↢過去有因無因↡者、直是世尊引↢接当来造悪之徒↡、令↢其臨終捨↠悪帰↠善乗↠念往生↡。是以隠↢其宿因↡。此是世尊隠↠始顕↠終、没↠因談↠果、名作↢別時意語↡。

なにをもつてかただ十ねん成就じょうじゅするは、 みな過去かこいんありとることをる。 ¬*はんぎょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「もしひと過去かこにすでにかつてはんごうしゃ諸仏しょぶつようし、 またすでに*発心ほっしんし、 しかうしてよくあくのなかにおいて大乗だいじょう経教きょうきょうくをけば、 ただよくそしらざるのみ、 いまだこうあらず。 もしすでに一ごうしゃ諸仏しょぶつようし、 およびすでに発心ほっしんして、 しかるのち大乗だいじょう経教きょうきょうけば、 ただそしらざるのみにあらず、 また*愛楽あいぎょうくわふ」 と

愛楽 喜び好むこと。

何以得↠知↧但使↢十念成就↡皆有↦過去因↥。如↢¬涅槃経¼云↡。「若人過去已曾供↢養半恒河沙諸仏↡、復経↢発心↡而能於↢悪世中↡聞↠説↢大乗経教↡、但能不↠謗、未↠有↢余功↡。若経↣供↢養一恒河沙諸仏↡及経↢発心↡然後聞↢大乗経教↡、非↢直不↟謗、復加↢愛楽↡。」

この諸経しょきょうをもつて*来験らいけんするに、 あきらかにりぬ、 十ねん成就じょうじゅするものはみないんありてむなしからず。 もしかの過去かこいんなきものは、 ぜんしきにすらなほ逢遇ふべからず、 いかにいはんや十ねんして成就じょうじゅすべけんや

来験 証明すること。

以↢此諸経↡来験、明知、十念成就者、皆有↢過因↡不↠虚。若彼過去無↠因者善知識尚不↠可↢逢遇↡。何況十念而可↢成就↡也。

¬ろん¼ (摂大乗論釈) に、 「一の金銭こんせんをもつてせん金銭こんせん貿あがなるは一にちにすなはちるにはあらず」 といふは、 もし*ぶつによれば、 しゅじょうをしておお善因ぜんいんみてすなはちねんじょうじておうじょうせしめんとほっす。 もし論主ろんじゅ (無着)のぞむればいんづるにじょうず、 またたがふことなし

仏意 仏のおぼしめし。

¬論¼云↧「以↢一金銭↡貿↢得千金銭↡非↦一日即得↥」者、若拠↢仏意↡、欲↠令↧衆生多積↢善因↡便乗↠念往生↥。若望↢論主↡乗↠閉↢過去因↡。理亦無↠爽。

もしこのをなさば、 すなはちかみ仏経ぶっきょうしたがひ、 しもろんこころはん。 すなはちこれきょうろんあひたすけておうじょうみちつうず。 またわくすることなかれ

若作↢此解↡即上順↢仏経↡下合↢論意↡。即是経論相扶往生路通。無↢復疑惑↡也。

◎第二大門 広施問答

【22】だい三にひろ問答もんどうほどこして、 疑情ぎじょう*釈去しゃくこすることをかすとは、 自下じげは ¬*だい智度ちどろん¼ につきてひろ問答もんどうほどこ

第三明↧広施↢問答↡釈↦去疑情↥者、自下就↢¬大智度論¼↡広施↢問答↡。

第一問答 繋業之義

 ひていはく、 ただ一さいしゅじょう*曠大こうだいこうよりこのかた、 つぶさに*有漏うろごうつくりて*がい*ぞくせり。 いかんが三がい*ごうだんぜずして、 ただしばらく、 阿弥陀あみだぶつねんじてすなはちおうじょうて、 すなはち三がいづるといはば、 このごうまたいかんせんとほっする

曠大劫 久しくはるかな昔。
繋属 つなぎとめること。
とめる煩悩ぼんのうにもとづく行為。

問曰。但一切衆生従↢曠大劫↡来備造↢有漏之業↡繋↢属三界↡。云何不↠断↢三界繋業↡直爾少時念↢阿弥陀仏↡、即得↢往生↡便出↢三界↡者、此繋業之義、復欲↢云何↡。

こたへていはく、 二しゅ解釈げしゃくあり。 一にはほうにつきてきたす。 二にはたとへをりてもつてあらわ

答曰。有↢二種解釈↡。一就↠法来破。二借↠喩以顕。

ほうにつくといふは、 諸仏しゅぶつ如来にょらい*思議しぎ*大乗だいじょうこう*とうりん最上さいじょう勝智しょうちまします。 不思議ふしぎりきとは、 よくしょうをもつてとなし、 をもつてしょうとなす。 ごんをもつておんとなし、 おんをもつてごんとなす。 きょうをもつてじゅうとなし、 じゅうをもつてきょうとなす。 かくのごときありてりょうへん不可ふか思議しぎなり

不思議智 ぼんの思議の及ばない智慧ちえ
大乗広智 一切の衆生を救う広大な智慧。
無等無倫最上勝智 なにものにも比べることのできないもっともすぐれた智慧。

言↠就↠法者、諸仏如来有↢不思議智・大乗広智・無等無倫最上勝智↡。不思議智力者、能以↠少作↠多以↠多作↠少。以↠近為↠遠以↠遠為↠近。以↠軽為↠重以↠重為↠軽。有↢如↠是等智↡無量無辺不可思議。

自下じげだい二に七ばんあり。 ならびにたとへをりてもつてあらわ

自下第二有↢七番↡。並借↠喩以顕。

  a. 積薪即尽

だい一にはたとへば百夫ひゃっぷ百年ひゃくねんたきぎあつめてむことたか千刃せんじんならんに、 まめばかりのをもつてくに、 半日はんにちにすなはちくるがごとし。 あに百年ひゃくねんたきぎ半日はんにちきずといふことをべけんや

第一譬如↢百夫百年聚↠薪積高千仭、豆許火焚半日便尽↡。豈可↠得↠言↢百年之薪半日不↟尽也。

  b. 癖者乗船

だい二にはたとへば癖者へきしゃふねさいすれば、 風帆ふうはんいきおひによりて一にちせんいたるがごとし。 あに癖者へきしゃいかんぞ一にちせんいたらんといふことをべけんや

第二譬如↧癖者寄↢載他船↡因↢風帆勢↡一日至↦於千里↥。豈可↠得↠言↣癖者云何一日至↢千里↡也。

  c. 貧者重賞

だい三にはまたせん貧人びんにん一の*瑞物ずいもつて、 もつておうみつぐに、 おうるところをよろこびてもろもろの重賞じゅうしょうくわふれば、 しばらくのあひだに富貴ふきのぞみをつるがごとし。 あにしゅねんつかへてつぶさに辛勤しんごんつくせども、 じょうなほたっせずしてかえるものあるをもつて、 かの富貴ふきをいひてこのなしといふことをべけんや

瑞物 宝物。

第三亦如↧下賤貧人獲↢一瑞物↡而以貢↠王、王慶↠所↠得加↢諸重賞↡、斯須之頃富貴盈↞望。豈可↠得↠言↪以↧数十年仕備尽↢辛勤↡上下尚不↠達而帰者↥言↢彼富貴↡無↩此事↨也。

  d. 劣夫従王

だい四にはなほれっしんちからをもつて*あがりてのぼらざれども、 もし*輪王りんのうみゆきしたがへば、 すなはちくうじょうじてとうざいなるがごとし。 あにれっちからをもつてかならずくうのぼることあたはずといふことをべけんや

 ろば。

第四猶如↧劣夫以↢己身力↡擲↠驢不↠上、若従↢輪王行↡便乗↢虚空↡飛騰自在↥。豈可↠得↠言↧以↢劣夫之力↡必不↞能↠昇↢虚空↡也。

  e. 童子断索

だい五にはまた十さくせんせいせざれども、 どうけんふるへば*儵爾しゅくじとして両分りょうぶんするがごとし。 あにどうちからさくつことあたはずといふことをべけんや

儵爾 たちまち。

第五又如↧十囲之索千夫不↠制童子揮↠剱儵爾両分↥。豈可↠得↠言↢童子之力不↟能↠断↠索也。

  f. 鴆鳥犀角

だい六にはまた*鴆鳥ちんちょうみずれば*魚蚌ぎょほうここにたおれてみなし、 *犀角さいかくでいるればせるものかえりてくるがごとし。 あに生命しょうみょう一たびゆれば、 くべからずといふことをべけんや

鴆鳥 中国に伝えられる毒鳥の名。 毒蛇を食べるといい、 その羽根を酒に浸すと毒酒になるという。
魚蚌 魚貝類。 蚌は、 どぶ貝、 またははまぐり。
犀角 さいのつの。

第六又如↢鴆鳥入↠水魚蜯斯斃皆死、犀角触↠泥死者還活↡。豈可↠得↠言↢性命一断不↟可↠生也。

  g. 子安還活

だい七にはまた*黄鵠こうこくあんあん」 とぶに、 かえりてくるがごとし。 あにふん千齢せんれいけっしてよみがえるるべきことなしといふことをべけんや

黄鵠… ¬れつでん¼ に出る故事。 子安 (仙人の名) にたすけられた鶴 (黄鵠) が、 子安の死後、 三年間その墓の上でかれを思って鳴きつづけ、 鶴は死んだが子安は蘇って千年の寿命を保ったという。

第七亦如↧黄鵠喚↢子安↡子安還活↥。豈可↠得↠言↢墳下千齢決無↟可↠蘇也。

さい万法まんぽうはみな*りき*りき*自摂じしょう他摂たしょうありて、 千開せんかい万閉まんぺいりょうへんなり。 なんぢあに*有礙うげしきをもつて、 かの*無礙むげほううたがふことをんや

自摂他摂 自摂は自力によってたもつこと、 他摂は他力によってたもつこと。
有礙の識 煩悩にさまたげられた心。
無礙の法 なにものにもさまたげられない法。

一切万法皆有↢自力・他力、自摂・他摂↡千開万閉無量無辺。汝豈得↧以↢有礙之識↡疑↦彼無礙之法↥乎。

また*五の思議しぎのなかに、 仏法ぶっぽうもつとも不可ふか思議しぎなり。 なんぢ三がいごうをもつておもしとなし、 かの少時しょうじ念仏ねんぶつうたがひてかろしとなして、 安楽あんらくこくおうじょうして正定しょうじょうじゅることをずといふはこのしからず

五の不思議 →不思議ふしぎ

又五不思議中仏法最不可思議。汝以↢三界繋業↡為↠重疑↢彼少時念仏↡為↠軽不↠得↧往↢生安楽国↡入↦正定聚↥者、是事不↠然。

第二問答 業道如秤

 ひていはく、 *大乗だいじょうきょうにのたまはく、 「*業道ごうどうはかりのごとし、 おもところく」 と。 いかんがしゅじょう*ぎょうよりこのかた、 あるいは百年ひゃくねん、 あるいは十ねん、 すなはち今日こんにちいたるまで、 あくとしてつくらざるはなし。 いかんが臨終りんじゅうぜんしきひて十ねん相続そうぞくしてすなはちおうじょうん。 もししからば、 *先牽せんけん」 のなにをもつてかしん

大乗経 ¬論註¼ では業道経とする。
業道 善悪の業によって苦楽の果報を得るという道理。 →補註6
先牽の義 業は重い方が先に報いがあらわれるという道理。

問曰。大乗経云。「業道如↠秤、重処先牽。」云何衆生一形已来、或百年或十年乃至今日無↢悪不↟造。云何臨終遇↢善知識↡十念相続即得↢往生↡。若爾者先牽之義何以取↠信。

  三在釈

こたへていはく、 なんぢ一ぎょう悪業あくごうおもしとなして、 ぼんひとの十ねんぜんをもつて、 もつてかろしとなすといはば、 いままさにをもつて軽重けいちょう校量きょうりょうせん。 まさしくしんり、 えんり、 けつじょうり、 せつごん多少たしょうにはらざることをかす

答曰。汝謂↧一形悪業為↠重以↢下品人十念之善↡以為↞軽者、今当以↠義挍↢量軽重之義↡者、正明↧在↠心在↠縁在↢決定↡不↞在↢時節久近多少↡也。

  ・ 三在釈 1. 在心

いかんが 「しんる」 とは、 いはく、 かのひとつみつくときは、 みづから*もう顛倒てんどうしん依止えじしてしょうず。 この十ねんは、 ぜんしきの、 *方便ほうべんあんして*実相じっそうほうかしむるによりてしょうず。 一はじつ、 一は、 あにあひくらぶることをんや。 なんとなれば、 たとへば千歳せんざい闇室あんしつひかりもししばらくもいたれば、 すなはち明朗みょうろうなるがごとし。 やみあにしつにあること千歳せんざいなるをもつて、 らずといふことをべけんや

虚妄顛倒の… 真実の理にそむいた誤った心をよりどころとして。
方便安慰 いろいろてだてをして教え、 心を安らかにすること。
実相の法 名号には仏のさとられた諸法実相の徳が含まれているので、 仏の名号のことを実相という。

云何在↠心。謂彼人造罪時自依↢止虚妄顛倒心↡生、此十念者依↣善知識方便安慰聞↢実相法↡生。一実一虚、豈得↢相比↡也。何者譬如↢千歳闇室光若暫至即便明朗↡。豈可↠得↠言↢闇在↠室千歳而不↟去也。

このゆゑに ¬*遺日ゆいにち摩尼まにほうきょう¼ (意) にのたまはく、 「ぶつ迦葉かしょうさつげたまはく、 ªしゅじょうまた数千しゅせん億万おくまんごう愛欲あいよくのなかにありて、 つみのためにおおはるといへども、 もし仏経ぶっきょうきてひとたびぜんねんずれば、 つみすなはち消尽しょうじんすº」 と。 これをしんるとづく

是故¬遺日摩尼宝経¼云。「仏告↢迦葉菩薩↡。衆生雖↧復数千巨億万劫在↢愛欲中↡為↠罪所↞覆、若聞↢仏経↡一反念↠善罪即消尽也。」是名↢在心↡。

  ・ 三在釈 2. 在縁

二にはいかんが 「えんる」 とは、 いはく、 かのひとつみつくときは、 みづから妄想もうぞう依止えじし、 煩悩ぼんのうほうしゅじょうによりてしょうず。 いまこの十ねんは、 無上むじょう信心しんじん依止えじし、 阿弥陀あみだ如来にょらい真実しんじつ清浄しょうじょうりょうどくみょうごうによりてしょうず。 たとへばひとありてどくこうむるに、 あたるところ、 すじとおほねやぶる。 もし*滅除めつじょやくつづみこえけば、 すなはちどくのぞこるがごとし。 あにかのふかどくはげしくしてつづみ音声おんじょうけども、 どくることあたはずといふことをべけんや。 これをえんるとづく

滅除薬の鼓… 滅除という薬を塗った鼓の音を聞けば、 戦闘の際に受けた毒矢の傷もたちまち愈えるという。 ¬しゅ楞厳りょうごんきょう¼ の説。

二云何在↠縁者、謂彼人造↠罪時自依↢止妄想↡依↢煩悩果報衆生↡生。今此十念者依↢止無上信心↡依↢阿弥陀如来真実清浄無量功徳名号↡生。譬如↧有↠人被↢毒箭所↠中徹↠筋破↟骨、若聞↢滅除薬鼓声↡即箭出毒除↥。豈可↠得↠言↧彼箭毒厲聞↢鼓音声↡不↞能↢抜↠箭去↟毒也。是名↢在縁↡。

  ・ 三在釈 3. 在決定

三にはいかんが 「けつじょうる」 とは、 かのひとつみつくときは、 みづから*有後うごしん*けんしん依止えじしてしょうず。 いまこの十ねん無後むごしんけんしん依止えじしておこる。 これをけつじょうとなす

有後心 まだ後があると思うゆっくりした心。
有間心 他のさまざまな想いがまじって、 専一でない心。

三云何在↢決定↡者、彼人造↠罪時自依↢止有後心・有間心↡生。今此十念者依↢止無後心・無間心↡起。是為↢決定↡。

また ¬智度ちどろん¼ (意) にいはく、 「さいしゅじょう臨終りんじゅうとき*刀風とうふうかたちき、 死苦しくきたむるに、 だい怖畏ふいしょうず。 このゆゑにぜんしきひてだい勇猛ゆうみょうおこして、 心々しんしん相続そうぞくして十ねんすれば、 すなはちこれ増上ぞうじょう善根ぜんごんなるをもつてすなはちおうじょう

又¬智度論¼云。「一切衆生臨終之時、刀風解↠形、死苦来逼生↢大怖畏↡。是故遇↢善知識↡発↢大勇猛↡、心心相続十念、即是増上善根便得↢往生↡。」

またひとありててきたいしてじんやぶるに、 *ぎょうちからにことごとくもちゐるがごとし。 その十ねんぜんもまたかくのごとし

又「如↢有↠人対↠敵破↠陣一形之力一時尽用↡。其十念之善亦如↠是也。」

またもしひと臨終りんじゅうとき、 一ねん邪見じゃけん増上ぞうじょう悪心あくしんしょうずれば、 すなはちよく三がいふくかたむけてすなはち悪道あくどうる」 と

又「若人臨終時生↢一念邪見↡、増上悪心即能傾↢三界之福↡即入↢悪道↡也。」

第三問答 十念相続

 ひていはく、 すでにおわりになんなんとするに十ねんぜんよく一しょう悪業あくごうかたむけてじょうしょうずることをといはば、 いまだらず、 いくばくのときをか十ねんとなすや

問曰。既云↧垂↠終十念之善能傾↢一生悪業↡得↞生↢浄土↡者、未↠知幾時為↢十念↡也。

こたへていはく、 きょうきてのたまふがごとし。 ひゃく一の生滅しょうめつ、 一*せつじょうず。 六十のせつ、 もつて一ねんとなす。 これ経論きょうろんによりてひろねんす。 いまのときねんするにこのせつらず。 ただ阿弥陀あみだぶつの、 もしは*総相そうそう、 もしは*別相べっそう憶念おくねんして、 所縁しょえんしたがひてかんじ、 十ねんるに、 念想ねんそう*間雑けんぞうすることなし。 これを十ねんづく

総相 仏身の全体のすがた。
別相 仏身の一部分のすがた。 総相に対す。

答曰。如↢経説云↡。百一生滅成↢一刹那↡、六十刹那以為↢一念↡。此依↢経論↡汎解↠念也。今時解↠念不↠取↢此時節↡。但憶↢念阿弥陀仏↡、若総相若別相、随↢所縁↡観、逕↢於十念↡無↢他念想間雑↡、是名↢十念↡。

またねん相続そうぞくといふは、 これ聖者しょうじゃの一のかずなるのみ。 ただよくねんおもいらして他事たじえんぜざれば、 *業道ごうどうをして成弁じょうべんせしめてすなはちみぬ。 もちゐざれ。 またいまだわずらはしくこれが*頭数じゅしゅせず

業道をして成弁せしめて 業事成弁のこと。 →ごうじょうべん
頭数 念仏の回数の意。

又云↢十念相続↡者、是聖者一数之名耳。但能積↠念凝↠思不↠縁↢他事↡使↢業道成弁↡便罷。不↠用。亦未↣労↢記之頭数↡也。

またいはく、 もし久行くぎょうひとねんおおくこれによるべし、 もし始行しぎょうひとねんかずするもまたし。 これまた聖教しょうぎょうによるなり

又云。若久行人念多応↠依↠此。若始行人念者記↠数亦好。此亦依↢聖教↡。

第四問答 計念相状

 またひていはく、 いますすめによりて*念仏ねんぶつ三昧ざんまいぎょうぜんとほっす。 いまだらず、 ねん相状そうじょうはなににかたる

又問曰。今欲↣依↠勧行↢念仏三昧↡。未↠知計念相状何似。

こたへていはく、 たとへばひとありて*空曠くうこうのはるかなるところにおいて、 怨賊おんぞくかたなゆうふるひてただちにきたりてころさんとほっするにぐうす。 このひとただちにはしるに、 一のかわわたらんとするをる。 いまだかわいたるにおよばざるに、 すなはちこのねんをなす。 「われかわきしいたらば、 ころもぎてわたるとやせん、 ころもうかぶとやせん。 もしころもぎてわたらば、 ただおそらくはいとまなからん。 もしころもうかばば、 またおそらくは*首領しゅりょうまったくしがたからん」 と。 そのとき、 ただ一しんかわわた方便ほうべんをなすことのみありて、 心想しんそう*間雑けんぞうすることなきがごとし

空曠のはるかなる処 何もなくて、 どこまでも広がっている場所。
首領全くしがたからん 命を全うすることができないであろう。 ここではおぼれ死ぬであろうの意。

答曰。譬如↧有↠人於↢空曠逈処↡値↢遇怨賊抜↠刀奮↠勇直来欲↟殺。此人径走視↠度↢一河↡。未↠及↠到↠河即作↢此念↡。我至↢河岸↡為↢脱↠衣渡↡、為↢著↠衣浮↡。若脱↠衣渡唯恐無↠暇、若著↠衣浮復畏↢首領難↟全。爾時但有↣一心作↢渡↠河方便↡無↦余心想間雑↥。

行者ぎょうじゃもまたしかなり。 阿弥陀あみだぶつねんずるとき、 またかのひとわたることのみをねんじて、 念々ねんねんあひいで心想しんそう間雑けんぞうすることなきがごとし。 あるいはぶつ*法身ほっしんねんじ、 あるいはぶつ*神力じんりきねんじ、 あるいはぶつ*智慧ちえねんじ、 あるいはぶつ*毫相ごうそうねんじ、 あるいはぶつ*相好そうごうねんじ、 あるいはぶつ*本願ほんがんねんず。 しょうすることもまたしかなり。 ただよくせん相続そうぞくしてえざれば、 さだめて仏前ぶつぜんしょうず。 いま後代こうだい学者がくしゃすすむ。 もしその*たいせんとほっせば、 ただ念々ねんねん*不可ふかとくなりとるはすなはちこれ*智慧ちえもんにして、 よく*ねん相続そうぞくしてえざるはすなはちこれ*どくもんなり

不可得 固定的な実体はないということ。
智慧門 二諦のうちのしんたい。 →たい
繋念 係念、 懸念とも書く。 想いをかけること。
功徳門 二諦のうちの俗諦ぞくたい。 →たい

行者亦爾。念↢阿弥陀仏↡時、亦如↢彼人念↟渡、念念相次無↢余心想間雑↡、或念↢仏法身↡、或念↢仏神力↡、或念↢仏智慧↡、或念↢仏毫相↡、或念↢仏相好↡、或念↢仏本願↡。称↠名亦爾。但能専至相続不↠断、定生↢仏前↡。今勧↢後代学者↡。若欲↠会↢其二諦↡、但知↢念念不可得↡即是智慧門、而能繋念相続不↠断即是功徳門。

このゆゑに ¬きょう¼ (維摩経・意) にのたまはく、 「*さつ摩訶まかさつつねにどく智慧ちえをもつて、 もつてそのしんしゅす」 と。 もしがくのものは、 いまだ*そうすることあたはず、 ただよくそうによりてせんせば、 おうじょうせざるはなし。 うたがふべからず

 具体的なすがたかたち。

是故¬経¼云。「菩薩摩訶薩、恒以↢功徳智慧↡以修↢其心↡。」若始学者、未↠能↠破↠相、但能依↠相専至、無↠不↢往生↡。不↠須↠疑也。

第五問答 臨終修念

 またひていはく、 ¬*りょう寿じゅだいきょう¼ (上) にのたまはく、 「ぽうしゅじょうしんいたしんぎょうして、 わがくにしょうぜんとほっして、 すなはち十ねんいたるまでせん。 もししょうぜずは、 しょうがくらじ」 (第十八願) と。 いまにんありて、 この聖教しょうぎょうきて現在げんざい*ぎょうまつたくこころをなさず、 臨終りんじゅうときしてまさに修念しゅねんせんとほっす。 このいかん

又問曰。¬無量寿大経¼云。「十方衆生、至↠心信楽欲↠生↢我国↡乃至十念。若不↠生者不↠取↢正覚↡。」今有↢世人↡聞↢此聖教↡現在一形全不↠作↠意、擬↢臨終時↡方欲↢修念↡。是事云何。

こたへていはく、 このるいせず。 なんとなれば、 きょうねん相続そうぞくとのたまふは、 かたからざるに似若たり。 しかれどももろもろのぼんしん野馬やめのごとく、 しき猿猴えんこうよりもはげし。 六じん馳騁ちちょうして、 なんぞかつて*停息じょうそくせん。 おのおのすべからくよろしく信心しんじんおこして、 あらかじめみづから*剋念こくねんし、 積習しゃくじゅうして*しょうじょうじ、 善根ぜんごんをしてけんならしむべし。 ぶつ大王だいおうげたまふがごとし。 「ひと善行ぜんごんめば、 するとき悪念あくねんなし。 じゅさきよりかたむけるはたおるるに、 かならずまがれるにしたがふがごとし」 (大智度論・意)

停息 とどまって休息すること。
剋念 心をはげまして努力すること。
 (善なる) 性質。

答曰。此事不↠類。何者¬経¼云↢十念相続↡、似↢若不↟難。然諸凡夫、心如↢野馬↡、識劇↢猨猴↡、馳↢騁六塵↡何曾停息。各須↧宜発↢信心↡、預自剋念、使↦積習成↠性善根堅固↥也。如↣仏告↢大王↡。人積↢善行↡死無↢悪念↡。如↢樹先傾倒必随↟曲也。

もし*刀風とうふう一たびいたれば、 百苦ひゃっくあつまる。 もしならいさきよりあらずは、 ねんなんぞべんずべけんや。 おのおのよろしくどう*三五あらかじめ*言要ごんようむすび、 命終みょうじゅうときのぞみてたがひにあひ開暁かいぎょうして、 ために弥陀みだみょうごうしょうして安楽あんらくこくしょうぜんとがんじ、 声々しょうしょうあひいで十ねんじょうぜしむべし。 たとへば*蝋印ろういんをもつてでいいんするに、 いんこわれてもんじょうずるがごとし。 ここにいのちゆるときは、 すなはちこれ安楽あんら、 くこくしょうずるときなり。 一たび正定しょうじょうじゅれば、 さらになんのうれふるところかあらん。 おのおのよろしくこのだいはかるべし。 なんぞあらかじめ剋念こくねんせざらんや

三五 三人でも五人でも。
言要を結び 約束し。
蝋印を… 蝋印を熱い泥土におすと蝋印は壊れるが文字は残る。

若刀風一至百苦湊↠身、若習先不↠在懐念何可↠弁。各宜↧同志三五預結↢言要↡、臨↢命終時↡迭相開暁為称↢弥陀名号↡、願↠生↢安楽国↡、声声相次使↞成↢十念↡也。譬如↢臘印印↠泥印壊文成↡。此命断時即是生↢安楽国↡時。一入↢正定聚↡更何所↠憂、各宜↠量↢此大利↡。何不↢預剋念↡也。

第六問答 無生之生

 またひていはく、 もろもろの*大乗だいじょう経論きょうろんにみな、 「一さいしゅじょう*畢竟ひっきょうしょうにしてなほくうのごとし」 といへり。 いかんぞ天親てんじん龍樹りゅうじゅさつみなおうじょうがんずるや

大乗経論 ¬維摩経ゆいまぎょう¼ ¬だい智度ちどろん¼ 等の経論のこと。
畢竟無生 本来、 消滅しょうめつ変化のないこと。

又問曰。諸大乗経論皆言↣「一切衆生畢竟無生猶若↢虚空↡。」云何天親・龍樹菩薩皆願↢往生↡也。

こたへていはく、 「しゅじょう畢竟ひっきょうしょうにしてくうのごとし」 といふは、 二しゅあり

答曰。言↣衆生畢竟無生如↢虚空↡者、有↢二種義↡。

一にはぼんにん所見しょけんのごときは、 じつしゅじょうじつしょうとうなり。 もしさつによらば、 おうじょう畢竟ひっきょうじてくうのごとくかくのごとし

一者如↢凡夫人所見↡実衆生実生死等。若拠↢菩薩往生↡畢竟如↢虚空↡如↢兎角↡。

二にはいま 「しょう」 といふはこれ因縁いんねんしょうなり。 しょうなるがゆゑにすなはちこれ*仮名けみょうしょうなり。 仮名けみょうしょうなるがゆゑにすなはちこれしょうなり。 大道だいどうせず。 ぼんじつしゅじょうじつしょうありとふがごときにはあらず

仮名 実体のないものに仮につけられた名。

二者今言↠生者是因縁生。因縁生故即是仮名生。仮名生故即是無生、不↠違↢大道理↡也。非↠如↢凡夫謂↟有↢実衆生実生死↡也。

第七問答 生何可尽

 またひていはく、 それしょうほんたり、 すなはちこれ*衆累しゅるいもとなり。 もしこのりてしょうしょうもとめば、 のがるるあるべし。 いますでにじょうしょうずることをすすむ。 すなはちこれしょうててしょうもとむ。 しょうなんぞくべけんや

衆累 さまざまなわずらい。

又問曰。夫生為↢有本↡、乃是衆累之元。若知↢此過↡捨↠生求↢無生↡者可↠有↢脱期↡。今既勧↠生↢浄土↡、即是棄↠生求↠生、生何可↠尽。

こたへていはく、 しかるにかのじょうは、 すなはちこれ阿弥陀あみだ如来にょらい清浄しょうじょう本願ほんがんしょうしょうなり。 三しゅじょう*愛染あいぜんもう執着しゅうじゃくしょうのごときにはあらず。 なにをもつてのゆゑに。 それほっしょう清浄しょうじょうにして畢竟ひっきょうしょうなればなり。 しかるにしょうといふは得生とくしょうのもののこころなるのみと

愛染虚妄 うそいつわりでとらわれの心。

答曰。然彼浄土乃是阿弥陀如来清浄本願無生之生。非↠如↢三有衆生愛染虚妄執著生↡也。何以故。夫法性清浄畢竟無生。而言↠生者得生者之情耳。

第八問答 実生願生

 またひていはく、 かみにいふところのごとく、 しょうしょうなりとるは、 まさに*上品じょうぼんしょうのものなるべし。 もししからば*ぼんしょうひとの十ねんじょうじておうじょうするは、 あにじつしょうるにあらずや。 もしじつしょうならば、 すなはち二す。 一にはおそらくはおうじょうず。 二にはいはく、 この*相善しょうぜんしょうのためにいんとなることあたはず

上品生 ¬観経¼ に説かれる九品往生のうち、 上品上生、 上品中生、 上品下生のものをいう。 →ぼん
下品生 →ぼん

又問曰。如↢上所↟言知↢生・無生↡当↢上品生者↡。若爾下品生人乗↢十念↡往生者豈非↠取↢実生↡也。若実生者即堕↢二疑↡。一恐不↠得↢往生↡。二謂此相善不↠能↧与↢無生↡為↞因也。

こたへていはく、 しゃくするに三ばんあり

答曰。釈有↢三番↡。

  a. 浄摩尼珠譬

一にはたとへば*じょう摩尼まにしゅ、 これを濁水じょくすいけば、 たまりきをもつてみずすなはち澄清ちょうしょうなるがごとし。 もしひとりょうしょう罪濁ざいじょくありといへども、 もし阿弥陀あみだ如来にょらいごくしょう清浄しょうじょう宝珠ほうしゅみょうごうきてこれを濁心じょくしんとうずれば、 念々ねんねんのうちにつみめっしんきよくして即便すなわちおうじょう

浄摩尼珠 摩尼まに宝珠ほうしゅのこと。 意のままに財宝や衣服・飲食などを出す徳をもつ宝珠。 また悪を去り、 濁水をきよらかにし、 わざわいを去る徳をもつともいう。

一譬如↧浄摩尼珠置↢之濁水↡以↢珠威力↡水即澂清↥。若人雖↠有↢無量生死罪濁↡、若聞↢阿弥陀如来至極無生清浄宝珠名号↡投↢之濁心↡、念念之中罪滅心浄即便往生。

  b. 玄黄帛譬

二にはじょう摩尼まにしゅ玄黄げんおうはくをもつてつつみてこれをみずとうずれば、 みずすなはち玄黄げんおうにしてもつぱらものいろのごとくなるがごとし。 かの清浄しょうじょうぶつに、 阿弥陀あみだ如来にょらい無上むじょう宝珠ほうしゅみょうごうまします。 りょうどく成就じょうじゅはくをもつてつつみてこれをおうじょうするところのものの心水しんすいのうちにとうずるに、 あにしょうてんじて*しょうとなすことあたはざらんや

無生の智 不生ふしょうめつの理をさとる智慧ちえのこと。 →しょう

二如↧浄摩尼珠以↢玄黄帛↡裹投↢之於水↡、水即玄黄一如↦物色↥。彼清浄仏土有↢阿弥陀如来無上宝珠名号↡、以↢無量功徳成就帛↡裹投↧之所↢往生↡者心水之中↥、豈不↠能↣転↠生為↢無生智↡乎。

  c. 氷上燃火

三にはまたこおりうえくに、 たけければすなはちこおりく、 こおりくればすなはちめっするがごとし。 かのぼんおうじょうひとほっしょうしょうらずといへども、 ただ仏名ぶつみょうしょうするちからをもつておうじょうこころをなし、 かのしょうぜんとがんじて、 すでにしょうさかいいたとき見生けんしょうねんめっ

三亦如↢冰上然↠火火猛則冰液、冰液則火滅↡。彼下品往生人雖↠不↠知↢法性無生↡但以↧称↢仏名↡力↥作↢往生意↡、願↠生↢彼土↡既至↢無生界↡、時見生之火自然而滅也。

第九問答 浄穢仮名人

 またひていはく、 なんのによるがゆゑにおうじょうくや

又問曰。依↢何身↡故説↢往生↡也。

こたへていはく、 このけん*仮名けみょうにんのなかにおいて、 もろもろの行門ぎょうもんしゅすれば、 前念ぜんねんねんのためにいんとなる。 穢土えど仮名けみょうにんじょう仮名けみょうにんけつじょうして一なることをず、 けつじょうしてことなることをず。 前心ぜんしんしんもまたかくのごとし。 なにをもつてのゆゑに。 もしけつじょうして一ならばすなはちいんなからん。 もしけつじょうしてならばすなはち相続そうぞくにあらず。 このをもつてのゆゑに、 横竪おうしゅべつなりといへども、 始終しじゅうこれ一の行者ぎょうじゃなり

仮名人 仮名とは実体のないものに仮につけた名という意で、 人といっても五蘊ごうん (五陰) が因縁いんねんによって仮に和合したものであるから仮名人という。 →おん

答曰。於↢此間仮名人中↡修↢諸行門↡。前念与↢後念↡作↠因、穢土仮名人浄土仮名人不↠得↢決定一↡、不↠得↢決定異↡、前心後心亦如↠是。何以故、若決定一則無↢因果↡、若決定異則非↢相続↡。以↢是義↡故、横竪雖↠別始終是一行者也。

第十問答 名法即非

 またひていはく、 もしひとただよくぶつみょうごうとなへてよくもろもろのさわりのぞかば、 もししからば、 たとへばひとありてゆびをもつてつきすがごとし。 このゆびよくやみすべきや

又問曰。若人但能称↢仏名号↡能除↢諸障↡者、若爾、譬如↢有↠人以↠指指↟月。此指応↢能破↟闇也。

こたへていはく、 諸法しょほう万差まんじゃなり。 一がいすべからず。 なんとなれば、 おのづから*ほうそくするあり、 おのづからほうするあり。 ほうそくするありとは、 諸仏しょぶつさつみょうごう*禁呪きんじゅおんしゅ多羅たら章句しょうくとうのごときこれなり

名の法に即するあり 名と名によって示されるもの (法) のはたらきとが一体であるという意。
禁呪の音辞 悪やわざわいをとどめるための呪文。

答曰。諸法万差、不↠可↢一↡。何者自有↢名即↟法、自有↢名異↟法。有↢名即↟法者、如↢諸仏・菩薩名号、禁呪音辞、修多羅章句等↡是也。

禁呪きんじゅことばに、 「*日出にっしゅつ東方とうぼう乍赤さしゃくおう」 といはんに、 たとひ*酉亥ゆうがいきんぎょうずるも、 わずらへるものまたゆるがごとし

日出東方… 中国に古くから伝わる呪文の一種と考えられる。
酉亥に… 酉亥は午後五時頃から午後十一時頃までのこと。 日の出とは関係のないこの時刻に 「日出…」 の呪文をとなえても、 腫物がひくという意。

如↧禁呪辞曰↢「日出東方乍赤乍黄↡。」仮令酉亥行↠禁患者亦愈↥。

またひとありていぬ所噛しょこうこうむらんに、 とらほねあぶりてこれをせば、 わずらへるものすなはちゆ。 あるいはときほねなければ、 よくたなごころひろげてこれをり、 くちのなかにびて 「らいらい」 といはんに、 わずらへるものまたゆるがごとし

又如↧有↠人被↢狗所噛↡炙↢虎骨↡↠之患者即愈、或時無↠骨、好↠掌摩↠之、口中喚言↢「虎来虎来」↡、患者亦愈↥。

あるいはまたひとありて脚転筋こむらがえりわずらはんに、 木瓜ぼけえだあぶりてこれをせば、 わずらへるものすなはちゆ。 あるいは木瓜ぼけなければ、 あぶりてこれをりて、 口に 「木瓜ぼけ木瓜ぼけ」 とべば、 わずらへるものまたゆ。 わがにそのしるしたり。 なにをもつてのゆゑに。 ほうそくするをもつてのゆゑなり

或復有↠人患↢脚転筋↡、炙↢木瓜枝↡↠之患者即愈、或無↢木瓜↡炙↠手磨↠之、口喚↢「木瓜木瓜↡」患者亦愈。吾身得↢其効↡也。何以故、以↢名即↟法故。

ほうするありとは、 ゆびをもつてつきすがごときこれなり

有↢名異↟法者、如↢以↠指指↟月是也。

第十一問答 三不三信

 またひていはく、 もしひとただ弥陀みだみょうごう称念しょうねんすれば、 よく十ぽうしゅじょうみょう黒闇こくあんのぞきておうじょうといはば、 しかるにしゅじょうありてしょう憶念おくねんすれども、 みょうなほありて所願しょがんてざるはなんのこころ

又問曰。若人但称↢念弥陀名号↡能除↢十方衆生無明黒闇↡得↢往生↡者、然有↢衆生↡称↠名憶念而無明猶在不↠満↢所願↡者何意。

こたへていはく、 如実にょじつ修行しゅぎょうせず、 *名義みょうぎ相応そうおうせざるによるがゆゑなり。 所以ゆえんはいかん。 いはく、 如来にょらいはこれ*実相じっそうしん、 これ*もつしんなりとらず

名義 名号の意義、 いわれ。
実相身 実相 (真如しんにょ) をさとり、 自利の徳をそなえた仏身。 →補註1
為物身 物はしゅじょうの意。 衆生を救う利他の徳をそなえた仏身。 →補註1

答曰。由↧不↢如実修行↡、与↢名義↡不↦相応↥故也。所以者何、謂不↠知↢如来是実相身、是為物身↡。

*また三しゅ相応そうおうあり。 一には信心しんじんあつからず、 ぞんぜるがごとくもうぜるがごとくなるがゆゑなり。 二には信心しんじん一ならず、 いはく、 けつじょうなきがゆゑなり。 三には信心しんじん相続そうぞくせず、 いはく、 ねんへだつるがゆゑなり。 たがひにあひ収摂しゅうしょう

また三種の不相応あり… →補註7

復有↢三種不相応↡、一者信心不↠淳、若↠存若↠亡故。二者信心不↠一、謂無↢決定↡故。三者信心不↢相続↡、謂余念間故。迭相収摂。

もしよく相続そうぞくすればすなはちこれ一しんなり。 ただよく一しんなれば、 すなはちこれ淳心じゅんしんなり。 この三しんしてもししょうぜずといはば、 このことわりあることなからん

若能相続則是一心。但能一心即是淳心。具↢此三心↡若不↠生者無↠有↢是処↡。

第三大門

【23】だい大門だいもんのなかに四ばん*料簡りょうけんあり。 だい一には難行なんぎょうどうぎょうどうべんず。 だい二にはこう大小だいしょうどうかす。 だい三には無始むしこうよりこのかた、 この*がい・五どうしょして、 *善悪ぜんあくごうじょうじてらく両報りょうほうけ、 りんぐうにしてしょうくることしゅなることをかす。 だい四には聖教しょうぎょうをもつて*証成しょうじょうして、 後代こうだいすすめてしんしょうくことをもとめしむ

三界五道 迷いの世界。 →三界さんがい悪趣あくしゅ
善悪二業に…無数なる →補註6

第三大門中有↢四番料簡↡。第一弁↢難行道・易行道↡。第二明↢時劫大小不同↡。第三明↧従↢無始世劫↡已来、処↢此三界五道↡乗↢善悪二業↡受↢苦楽両報↡、輪迴無窮受↠生無数↥。第四将↢聖教↡証成勧↢後代↡生↠信求↠往。

◎第三大門 難易二道

【24】だい一に難行なんぎょうどうぎょうどうべんずとは、 なかに二あり。 一には二しゅどういだし、 二には問答もんどう解釈げしゃく

第一弁↢難行道・易行道↡者、於↠中有↠二。一出↢二種道↡、二問答解釈。

(道綽) すでにみづからかいして、 じつおもふにおそれをいだけり。 あおぎておもんみれば、 大聖だいしょう (釈尊) *しゃをもつて招慰しょういし、 しばらく羊鹿ようろくうん*かりいこいにしていまだたっせず。 ぶつ邪執じゃしゅう上求じょうぐだいふと*したまふ。 たとひのちこうするも、 なほ迂回うえづく。 もしただちに*大車だいしゃあがるも、 またこれ一なり。 ただおそらくはげん*退たいして*嶮径けんけいはるかにながきことを。 とくいまだたず。 昇進しょうしんすべきことかた

三車を… ¬法華ほけきょう¼ 「譬喩ひゆぼん」 のたく三車の喩えによっていう。 この喩えは、 火宅の邸宅から子供を救い出すために、 羊鹿牛の三車 (玩具の乗物) を与えるからといって、 屋外につれだすというもの。 羊車ようしゃ鹿ろくしゃしゃをそれぞれしょうもんじょう縁覚えんがくじょうさつじょうに喩える。
権の息… 仮の休息であって、 真のさとりには到達していない。
訶し 誡めるの意。
大車 だいびゃくしゃ。 大乗の法を喩えたもの。
退位 仏道より退転する可能性のある位。
嶮径 修行のけわしい道。

餘既自居↢火界↡実想懐↠怖。仰惟大聖三車招慰、且羊鹿之運、権息未↠達。仏訶↣邪執鄣↢上求菩提↡。縦後迴向仍名↢迂迴↡。若径攀↢大車↡亦是一途。只恐現居↢退位↡嶮径遥長。自徳未↠立、難↠可↢昇進↡。

このゆゑに*龍樹りゅうじゅさついはく、 「*阿毘あび跋致ばっちもとむるに二しゅみちあり。 一には*難行なんぎょうどう、 二には*ぎょうどうなり

龍樹菩薩いはく… 引用は ¬易行品¼ の意にもとづく ¬論註¼ (上) の文。

是故龍樹菩薩云。「求↢阿跋致↡有↢二種道↡。一者難行道、二者易行道。

ª難行なんぎょうどうº といふは、 いはく、 *じょくぶつときにありて阿毘あび跋致ばっちもとむるをなんとなす。 このなんにすなはち多途たずあり。 りゃくしてぶるに五あり。 なんとなれば、 一には*どう*相善しょうぜん*さつほうみだる。 二には*しょうもん自利じりにしてだい慈悲じひふ。 三には無顧むこ悪人あくにん勝徳しょうとくやぶる。 四にはあらゆる*人天にんでん顛倒てんどうぜんは、 ひと梵行ぼんびょうこぼつ。 五にはただ*りきのみありて*りきたもつなし。 かくのごときるるにみなこれなり。 たとへばろく歩行ぶぎょうはすなはちくるしきがごとし。 ゆゑに難行なんぎょうどうといふ

菩薩の法 自利利他の行。
人天の顛倒の善果 人間・天上界に生れる果報は、 善果といっても迷いの境界の中であるので顛倒という。

言↢難行道↡者、謂在↢五濁之世於無仏時↡求↢阿跋致↡為↠難。此難乃有↢多途↡。略述有↠五。何者一者外道相善乱↢菩薩法↡。二者声聞自利鄣↢大慈悲↡。三者無↠顧↠悪人破↢他勝徳↡。四者所有人天顛倒善果壊↢人梵行↡。五者唯有↢自力↡無↢他力持↡。如↠斯等事触↠目皆是。譬如↢陸路歩行則苦↡、故曰↢難行道↡。

ªぎょうどうº といふは、 いはく、 *信仏しんぶつ因縁いんねんをもつてじょうしょうぜんとがんじて、 しんおことくて、 もろもろの行業ぎょうごうしゅすれば、 仏願ぶつがんりきのゆゑに即便すなわちおうじょうす。 *仏力ぶつりき住持じゅうじするをもつてすなはち大乗だいじょう正定しょうじょうじゅる。 正定しょうじょうじゅとはすなはちこれ阿毘あび跋致ばっち退たいくらいなり。 たとへばすいふねじょうずればすなはちたのしきがごとし。 ゆゑにぎょうどうづく」 と

仏力住持する 仏の本願力が支えたもつという意。

言↢易行道↡者、謂以↢信仏因縁↡願↠生↢浄土↡起↠心立↠徳修↢諸行業↡、仏願力故即便往生、以↢仏力住持↡即入↢大乗正定聚↡。正定聚者即是阿跋致不退位也。譬如↢水路乗↠船則楽↡、故名↢易行道↡也。」

 ひていはく、 *だいはこれ一なり。 修因しゅいんまた二なるべし。 なんがゆゑぞ、 ここにありていんしゅしてぶっかふをづけて難行ぞうぎょうとなし、 じょうおうじょうしてだいだいするをすなはちぎょうどうづくるや

問曰。菩提是一。修因亦応↢不二↡。何故在↠此修↠因向↢仏果↡名為↢難行↡、往↢生浄土↡期↢大菩提↡乃名↢易行道↡也。

こたへていはく、 もろもろの大乗だいじょうきょうべんずるところの一さい行法ぎょうほうに、 みなりきりき*自摂じしょう他摂たしょうあり

自摂他摂 自摂は自力によってたもつこと。 他摂は他力によってたもつこと。

答曰。諸大乗経所↠弁一切行法皆有↢自力・他力、自摂・他摂↡。

何者なにものりき。 たとへばひとありてしょう怖畏ふいして、 *発心ほっしん出家しゅっけしてじょうしゅし、 *つうおこして四てんあそぶがごときをづけてりきとなす

何者自力。譬如↧有↠人怖↢畏生死↡発心出家修↠定発↠通遊↦四天下↥名為↢自力↡。

何者なにものりきれっありてしんちからまかせて*あがりてのぼらざれども、 もし*輪王りんのうしたがへばすなはちくうじょうじて*てんあそぶがごとし。 すなはち輪王りんのうりきのゆゑにりきづく

 ろば。

何者他力。如↧有↢劣夫↡以↢己身力↡擲↠驢不↠上、若従↢輪王↡即便乗↠空遊↦四天下↥。即輪王威力故名↢他力↡。

しゅじょうもまたしかなり。 ここにありてしんおこぎょうじょうしょうぜんとがんずるは、 これはこれりきなり。 命終みょうじゅうときのぞみて、 阿弥陀あみだ如来にょらい*光台こうだい迎接こうしょうして、 つひにおうじょうるをすなはちりきとなす

光台迎接して 光輝くれんの台座に迎えとられて。

衆生亦爾。在↠此起↠心立↠行願↠生↢浄土↡、此是自力。臨↢命終時↡阿弥陀如来光台迎接遂得↢往生↡即為↢他力↡。

ゆゑに ¬だいきょう¼ (上・意) にのたまはく、 「十ぽう人天にんでん、 わがくにしょうぜんとほっするものはみな阿弥陀あみだ如来にょらい大願だいがん業力ごうりきをもつて*増上ぞうじょうえんとなさざるはなし」 と。 もしかくのごとくならずは、 四十八がんすなはちこれ*せつならん

増上縁 →増上ぞうじょうえん
徒設 いたずらに設けられたもの。

故¬大経¼云。「十方人天欲↠生↢我国↡者莫↠不↧皆以↢阿弥陀如来大願業力↡為↦増上縁↥也。」若不↠如↠是四十八願便是徒設。

後学こうがくのものにかたる。 すでにりきじょうずべきあり。 みづからおのがぶんかぎり、 いたづらにたくにあることをざれ

語↢後学者↡、既有↢他力可↟乗、不↠得↧自局↢己分↡徒在↦火宅↥也。

◎第三大門 劫之大小

【25】だい二にこう大小だいしょうかすとは、 ¬智度ちどろん¼ (意) にいふがごとし。 「こうに三しゅあり。 いはく一にはしょう、 二にはちゅう、 三にはだいなり。 ほう四十のごときしろあり、 *こうもまたしかなり。 なかに芥子けしてて、 長寿ちょうじゅ諸天しょてんありて三ねんに一をり、 すなはち芥子けしくるにいたるを一小劫しょうこうづく。 あるいは八十しろあり、 こうもまたしかなり。 芥子けしをなかにてて、 さきのごとくつくすを一中劫ちゅうこうづく。 あるいはひゃく二十しろあり、 こうもまたしかなり。 芥子けしをなかにててつくすこと、 もつぱらさきせつおなじきをまさに大劫だいこうづく。 あるいは八十いしあり、 こうもまたしかなり。 一の長寿ちょうじゅ諸天しょてんありて、 三ねんてんをもつて一たびはらふ。 てんおも*じゅなり。 はらふことをなすことまず、 このいしすなはちくるをづけて中劫ちゅうこうとなす。 その小石しょうせき大石だいせきさき中劫ちゅうこうるいす、 るべし」 と。 わずらはしくつぶさにべず

高下 高さの意。
三銖 銖は重さの単位。 一銖は一両の二十四分の一。 周代の一銖は約 0.67 グラム。

第二明↢劫之大小↡者、如↢¬智度論¼云↡。劫有↢三種↡。謂一小、二中、三大。如↢方四十里城、高下亦然↡。満↢中芥子↡有↢長寿諸天↡三年去↠一乃至芥子尽名↢一小劫↡。或八十里城高下亦然、芥子満↠中如↠前取尽名↢一中劫↡。或百二十里城高下亦然、芥子満↠中取尽一同↢前説↡方名↢大劫↡。或八十里石高下亦然、有↢一長寿諸天↡三年以↢天衣↡一払。天衣重三銖、為払不↠已、此石乃尽名為↢中劫↡。其小石・大石類↢前中劫↡、可↠知。不↢労具述↡。

◎第三大門 輪廻無窮

【26】だいもんのなかに五ばんあり

第三門中有↢五番↡。

1. 受身無数

だい一に無始むしこうよりこのかたここにありて、 *りんぐうにしてくることしゅなることをかすとは

第一明↧従↢無始劫↡来、在↠此輪迴無窮受↠身無数↥者、

¬智度ちどろん¼ (意) にいふがごとし。 「人中にんちゅうにありて、 あるいは張家ちょうけしておうしょうじ、 おうして李家りけしょうず。 かくのごとく*えんだいさかいつくして、 あるいはかさねてしょうじ、 あるいは異家いけしょうず。 あるいは*なんえんだいして*西さい拘耶尼くにやしょうず。 えんだいのごとくの三てんもまたかくのごとし。 *てんして*天王てんのうてんしょうずることもまたかくのごとし。 あるいは四天王てんのうてんして*忉利天とうりてんしょうず。 忉利天とうりてんして*じょうてんしょうずることもまたかくのごとし。*色界しきかい*十八重天じゅうてんあり、 *色界しきかい*重天じゅうてんあり。 ここにしてかしこにしょうず。 一々にみなあまねきことまたかくのごとし。 あるいは色界しきかいして*阿鼻あびごくしょうず。 阿鼻あびごくのなかにして*軽繋きょうけごくしょうず。 軽繋きょうけごくのなかにして*畜生ちくしょうのなかにしょうず。 畜生ちくしょうのなかにして*餓鬼がきどうのなかにしょうず。 餓鬼がきどうのなかにしてあるいは人天にんでんのなかにしょうず。 かくのごとく*どうりんしてらくの二ほうけ、 しょうきわまりなし。 *胎生たいしょうすでにしかなり。 *の三しょうもまたかくのごとし」 と

南閻浮提 閻浮提に同じ。 →えんだい
西拘耶尼 しゅせんの西にあるといわれる大陸。 →てん
上四天 欲界よくかいの最上層にある四つの天。 →夜摩やまてんそつてん化楽けらくてん他化たけざいてん
十八重天 ¬だい智度ちどろん¼ 等の大乗の説では、 色界しきかいに十八の天があるという。
四重天 くうへんしょてんしきへんしょてんしょしょてんそうそうしょてんの四。
軽繋地獄 八大地獄に付属する小地獄 (眷属けんぞく地獄・別処) のこ。
胎生・余の三生 →四生ししょう

如↢¬智度論¼云↡。「在↢於人中↡或張家死王家生、王家死李家生。如↠是尽↢閻浮提界↡、或重生或異家生。或南閻浮提死西拘耶尼生。如↢閻浮提↡余三天下亦如↠是。如四天下死生↢四天王天↡亦如↠是。或四天王天死忉利天生。忉利天死生↢余上四天↡亦如↠是。色界有↢十八重天↡、無色界有↢四重天↡。此死生↠彼。一一皆徧亦如↠是。或色界死生↢阿鼻地獄↡。阿鼻地獄中死生↢余軽繋地獄↡。軽繋地獄中死生↢畜生中↡。畜生中死生↢餓鬼道中↡。餓鬼道中死或生↢人天中↡。如↠是輪↢迴六道↡受↢苦楽二報↡生死無↠窮。胎生既爾、余三生亦如↠是。」

このゆゑに ¬*しょうぼうねんぎょう¼ (意) にのたまはく、 「さつ化生けしょうしてもろもろの天衆てんしゅげていはく、

ªおほよそひとこの百千ひゃくせんしょうて、 らくじゃく*放逸ほういつにしてどうしゅせず。

放逸 おこたりなまけること。

*往福おうふくやうやくおわき、 かえりて*してしゅくることをさとらずº」 と

往福 過去の福徳の善根ぜんごん

是故¬正法念経¼云。「菩薩化生告↢諸天衆↡云。凡人経↢此百千生↡著↠楽放逸不↠修↠道。不↠覚↧往福侵已尽還堕↢三塗↡受↦衆苦↥。」

このゆゑに ¬*はんぎょう¼ にのたまはく、

「このあつまるところなり。 一さいみな不浄ふじょうなり。

*扼縛やくばく癰瘡ようそうとう根本こんぽんにして、 *義利ぎりあることなし。

扼縛癰瘡 扼・縛はしばりつけるの意、 癰・瘡ははれものの意で、 ここではこれらを煩悩ぼんのうに喩える。
義利 やく

かみ諸天しょてんいたるまで、 みなまたかくのごとし」 と

是故¬涅槃経¼云。「此身苦所↠集、一切皆不浄。扼縛癰瘡等根本無↢義利↡。上至↢諸天身↡皆亦復如↠是。」

このゆゑにまたかの ¬きょう¼ (同・意) にのたまはく、 「すすめて放逸ほういつしゅせしむ。 なにをもつてのゆゑに。 それ放逸ほういつはこれ衆悪しゅあくもとなり。 放逸ほういつはすなはちこれ衆善しゅぜんみなもとなり。 日月にちがつこう諸明しょみょうのなかにさいなるがごとし。 放逸ほういつほうもまたかくのごとし。 もろもろの善法ぜんぽうにおいてはさいとなしじょうとなす。 またしゅ山王せんのうの、 もろもろのやまのなかにおいてさいとなしじょうとなすがごとし。 放逸ほういつほうもまたかくのごとし。 もろもろの善法ぜんぽうのなかにおいてさいとなしじょうとなす。 なにをもつてのゆゑに。 一さい悪法あくほう放逸ほういつよりしょうず。 一さい善法ぜんぽう放逸ほういつもととなす」 と

是故又彼¬経¼云。「勧修↢不放逸↡。何以故、夫放逸者是衆悪之本、不放逸者乃是衆善之源。如↢日月光諸明中最↡。不放逸法亦復如↠是。於↢諸善法↡為↠最為↠上。亦如↧須弥山王於↢諸山中↡為↠最為↞上。不放逸法亦復如↠是。於↢諸善法中↡為↠最為↠上。何以故、一切悪法猶放逸而生。一切善法不放逸為↠本。」

2. 身数無際

 だい二にひていはく、 無始むしこうよりこのかた六どうりんして*さいなりといふといへども、 いまだらず、 一こうのうちにいくばくの身数しんしゅくるをてんといふや

無際 きわまりない。

第二問曰。雖↠云↢無始劫