0271◎*仏説ぶっせつ無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等覚どうがく経きょう 巻かん第だい四し

*後ご漢かん月げっ氏し国こく三蔵さんぞう支婁しる迦か讖せん訳やく

 

二 Ⅴ ⅲ 五善五悪

【23】◎仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつらに告つげたまはく、 なんぢらこの世よにおいて、 よくみづから心こころを制せいし意こころを正ただしくして、 身みに悪あくをなさざれば、 これを大徳だいとくの善ぜんとなし、 すべて八方はっぽう上じょう下げの最さいとなりて比ならびあることなし。 ゆゑはいかん。 八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくのなかの諸天しょてん・人民にんみんは、 みな自じ然ねんに善ぜんをなしておほきに悪あくをなさざれば教きょう化けしやすければなり、

◎○仏告ゲタマハク↢阿逸菩薩等ニ↡、若ナンヂ曹ラ於テ↢是ノ世ニ↡、能ク自ラ制シ↠心ヲ正シクシテ↠意ヲ、身ニ不レバ↠作サ↠悪ヲ者、是ヲ為シ↢大徳ノ善ト↡、都テ為リテ↢八方上下ノ最ト↡無シ↠有ルコト↠比。所以者何ン。八方上下ノ無央数ノ*仏国ノ中ノ諸天・人民ハ、皆自然ニ作シテ↠善ヲ不レバ↢大ニ為サ↟悪ヲ易ケレバナリ↢教化シ↡、

いまわれこの世せ間けんにおいて仏ぶつとなる。 五ご悪あく・五ご痛つう・五ご焼しょうのなかにおいて仏ぶつとなることもつとも劇はげしとなす。 人民にんみんを教きょう語ごして、 五ご悪あくを絶たたしめて、 五ご痛つうを去さらしめ、 五ご焼しょうを去さらしめ、 その心こころを降ごう化けして、 五ご善ぜんを持たもちその福徳ふくとく・度世どせ・長ちょう寿じゅ・泥洹ないおんの道どうを得えしむ。

○今我於テ↢是ノ世間ニ↡為ル↠仏ト。於テ↢五悪・五痛・五焼之中ニ↡作ルコト↠仏ト為ス↢最モ劇シト↡。教↢語シテ人民ヲ↡、令メテ↠*絶タ↢五悪ヲ↡、令メ↠去ラ↢五痛ヲ↡、令メ↠去ラ↢五焼ヲ↡、降↢化シテ其ノ心ヲ↡、令メム↧持チ↢五善ヲ↡得↦其ノ福徳・度世・長寿・泥洹之道ヲ↥。

仏ぶつのたまはく、 なんらをか五ご悪あくとなし、 なんらをか五ご痛つうとなし、 なんらをか五ご焼しょうのなかのものとなす。 なんらをか五ご悪あくを消しょう化けして五ご善ぜんを持たもたしむものとなす。 なんらをか五ご善ぜんを持たもちてその福徳ふくとく・長ちょう寿じゅ・度世どせ・泥洹ないおんの道どうを得うとなすと。

○仏言ク、何等ヲカ為シ↢五悪ト↡、何等ヲカ為シ↢五痛ト↡、何等ヲカ為ス↢五焼ノ中ノ者↡。何等ヲカ為ス↧消↢化シテ五悪ヲ↡令メム↠持タ↢五善ヲ↡者ト↥。何等ヲカ為スト↧持チテ↢五善ヲ↡得ト↦其ノ福徳・長寿・度世・泥洹之道ヲ↥。

【24】仏ぶつのたまはく、 その一悪いちあくとは、 諸天しょてん・人民にんみんより下しも禽きん獣じゅう・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐいに至いたるまで、 衆悪しゅあくをなさんと欲ほっして強つよきものは弱よわきを伏ぶくし、 うたたあひ剋賊こくぞくし、 おのづからあひ殺せっ傷しょうしてたがひに食噉じきだんす。

○仏言ク、其ノ一悪ト者、○諸天・人民ヨリ下至ルマデ↢禽獣・蜎飛蠕動之類ニ↡、欲シテ↠為サムト↢衆悪ヲ↡強キ者ハ伏シ↠弱キヲ、転タ相剋賊シ、自ラ相殺傷シテ更相 タガヒ ニ食噉ス。

善ぜんをなすことを知しらず、 悪あく逆ぎゃく不ふ道どうにしてその殃罰おうばつを受うく。 道どうの自じ然ねんにしてまさに往ゆきて趣向しゅこうすべし。

○不↠知ラ↠為スコトヲ↠善ヲ、悪逆不道ニシテ受ク↢其ノ殃罰ヲ↡。道之自然ニシテ当ニシ↢往キテ趣向ス↡。

神じん明みょう記識きししてこれを犯おかさば貰ゆるさず、 うたたあひ承うけ続つぐ。 ゆゑに貧びん窮ぐ・下げ賎せん・乞丐こつがい・孤こ独どくなるものあり。 人ひとに聾ろう・盲もう・瘖おん瘂あ・愚痴ぐち・弊悪へいあくなるものありて、 下しもに尫おう狂きょうにして及逮およばざる属たぐいあり。 その尊そん貴き・豪ごう富ふ・高才こうざい明みょう達だつ・智慧ちえ勇ゆう猛みょうなるものあるは、 みなその前ぜん世せ宿命しゅくみょうに善ぜんをなし慈じ孝きょうにして恩おんを布しき徳とくを施ほどこせるがゆゑなり。

○神明記識シテ犯セバ↠之ヲ不↠貰サ、転タ相承ケ続グ。故ニ有リ↢貧窮0272・下賎・乞丐・孤独ナルモノ↡。人ニ有リテ↢聾・盲・瘖瘂・愚痴・弊悪ナルモノ↡、下ニ有リ↧尫*狂ニシテ不ル↢及逮 オヨ バ↡之属↥。其ノ有ルハ↢尊貴・豪富・高才明達・智慧勇猛ナルモノ↡、皆其ノ前世宿命ニ為シ↠善ヲ慈孝ニシテ布キ↠恩ヲ施セルガ↠徳ヲ故ナリ。

官かん事じ王法おうぼうの牢獄ろうごくあれども、 畏おそれ慎つつしむことを肯がえんぜずして悪あくをなせば法ほうに入いりてその過か讁ちゃくを受うく。 重じゅう罰ばつ致いたりて劇はげしくして、 解げ脱だつを求ぐ望もうすれども度ど出しゅつすることを得えがたし。 今こん世ぜにこれありて目前もくぜんに現在げんざいし、 寿いのち終おわりてもつとも劇はげし。 その窈よう冥みょうに入いり、 身みを受うけてまた生しょうず。 たとへば王法おうぼうの劇ぎゃく苦く極ごく刑ぎょうのごとし。

○有レドモ↢官事王法ノ牢獄↡、不シテ↠肯ゼ↢畏レ慎ムコトヲ↡作セバ↠悪ヲ入リテ↠法ニ受ク↢其ノ過讁ヲ↡。重罰致リテ劇シクシテ、求↢望スレドモ解脱ヲ↡難シ↠得↢度出スルコトヲ↡。今世ニ有リテ↠是目前ニ現在シ、○寿終リテ尤モ劇シ。入リ↢其ノ窈冥ニ↡、受ケテ↠身ヲ更タ生ズ。譬ヘバ若シ↢王法ノ劇苦極*刑ノ↡。

ゆゑに自じ然ねんの泥ない犁り・禽きん獣じゅう・薜荔へいれい・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類属るいぞくあり。 身しん形ぎょうを貿かへ、 悪あくを改あらためて道どうを易かへ、 寿じゅ命みょうに短たん長じょうあり。 魂神こんじん命精みょうしょう、 自じ然ねんに趣しゅに入いりて形かたちを受うけ胎たいに寄よりて、

○故ニ有リ↢自然ノ泥*犁・禽獣・薜荔・蜎飛蠕動之*類属↡。貿カヘ↢身形ヲ↡、改メテ↠悪ヲ易カヘ↠道ヲ、寿命ニ短長アリ。魂神命精、自然ニ入リテ↠趣ニ受ケ↠形ヲ寄リテ↠胎ニ、

まさに独ひとり値あひ向むかふも、 あひ従したがひともに生しょうずべく、 うたたあひ報ほう償しょうしてまさにあひ還復げんぶくすべし。 殃悪おうばつ・讁ちゃく罰ばつ、 衆しゅ事じいまだ尽つきざれば、 つひに離はなるることを得えずして、 そのなかに展転てんでんして、 世々せせ累劫るいこうにも出いづる期ごあることなく、 解げ脱だつを得えがたし。 痛いたみいふべからず。

○当ニク↢独リ値ヒ向フモ、相従ヒ共ニ生ズ↡、転タ相報償シテ当ニシ↢相還復ス↡。殃悪・讁罰、衆事未ダレバ ↠尽キ、終ニ不シテ↠得↠離ルルコトヲ、展↢転シテ其ノ中ニ↡、世世累劫ニモ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。

天てん地ちのあひだに自じ然ねんにこれあり。 時ときに臨のぞみてにはかに至いたり時ときに応おうぜずといへども、 つねに自じ然ねんの道どうを取とりて、 みなまさに善悪ぜんあくこれに帰きすべし。

○天地之間ニ自然ニ有リ↠是。雖モ↠不ト↢臨ミテ↠時ニ卒暴 ニハカ ニ至リ応ゼ↟時ニ、*恒ニ取リテ↢自然之道ヲ↡、皆当ニシ↢善悪帰ス↟之ニ。

これを一ひとつの大悪だいあくとなし、 一ひとつの痛つうとなし、 一ひとつの焼しょうとなす。 勤ごん苦くかくのごとくして、 愁しゅう毒どく呼こ嗟しゃすべし。 たとへば劇ぎゃく火かの起おこりて人身にんじんを焼やくがごとし。

○是ヲ為シ↢一ノ大悪ト↡、為シ↢一ノ痛ト↡、為ス↢一ノ焼ト↡。勤苦如クシテ↠是クノ、愁毒呼嗟スベシ。比タトヘバ如シ↣劇火ノ起リテ焼クガ↢人身ヲ↡。

人ひとよくみづからそのなかにおいて、 一心いっしんに意こころを制せいし身みを端ただしくし行おこなひを正ただしくして、 独ひとり諸善しょぜんをなし衆悪しゅあくをなさざれば、 身み独ひとり度ど脱だつして、 その福徳ふくとくを得え、 長ちょう寿じゅ・度世どせ・上じょう天てん・泥洹ないおんの道どうを得うべし。 これを一ひとつの大善だいぜんとなすと。

○人能ク自ラ於テ↢其ノ中ニ↡、一心ニ制シ↠意ヲ端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シ↢諸善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、得↢其ノ福徳ヲ↡、可シ↠得↢長寿・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢一ノ大善ト↡。

【25】仏ぶつのたまはく、 その二に悪あくとは、 世せ間けんの帝王たいおう・長ちょう吏り・人民にんみん・父子ぶし・兄きょう弟だい・室しっ家け・夫ふう婦ふ、 ほぼ義理ぎりなくして政令しょうりょうに従したがはず、 うたた淫いん奢じゃく憍きょう慢まんにしておのおの意こころを快こころよくせんと欲ほっし、 恣し心しん自じ在ざいにして、 たがひに欺ご調じょうし、 ことに死しを懼おそれず。 心しん口くおのおの異ことにして言念ごんねん実まことなく、 佞にょう諂てんにして忠ちゅうならず、 諛媚ゆみ巧ぎょう辞じにして行おこなひ端たん正じょうならず。 たがひに嫉ねたみ憎にくみ、 うたたあひ讒ざん悪おして悪枉あくおうに陥かん入にゅうす。

○仏言ク、其ノ二悪ト者、○世間ノ帝王・長吏・人民・父子・兄弟・室家・夫婦、略ホボ無クシテ↢義理0273↡不↠従ハ↢政令ニ↡、転タ淫奢憍慢ニシテ各ノ欲シ↠快クセムト↠意ヲ、恣心自在ニシテ、更相 タガヒ ニ欺調シ、殊ニ不↠懼レ↠死ヲ。心口各ノ異ニシテ言念無ク↠実、佞諂ニシテ不↠忠ナラ、*諛媚巧辞ニシテ行ヒ不↢端正ナラ↡。更相 タガヒ ニ嫉ミ憎ミ、転タ相讒悪シテ陥↢*入ス*悪*枉ニ↡。

主しゅ上じょうあきらかならず心こころあきらかに照てらさずして臣しん下げを任用にんようす、 臣しん下げ存在ぞんざいして度どを践ふみてよく行おこなひその形ぎょう勢せいを知しりて、 位くらいにありて正ただしからざれば、 その調じょうするところとなりてみだりに忠良ちゅうりょうを捐えんじ、 天心てんしんに当あたらずしてはなはだ道どう理りに違いす。

○主上不↠明カナラ心不シテ↢察アキラカニ照サ↡任↢用ス臣下ヲ↡、臣下存在シテ*践ミテ↠度ヲ能ク行ヒ知リテ↢其ノ形勢ヲ↡、在リテ↠位ニ不レバ↠正シカラ、為リテ↢其ノ所ト↟調スル妄ニ*捐ジ↢忠良ヲ↡、不シテ↠当ラ↢天心ニ↡甚ダ違ス↢道理ニ↡。

臣しんはその君くんを欺あざむき、 子こはその父ちちを欺あざむき、 弟おとうとはその兄あにを欺あざむき、 婦つまはその夫おっとを欺あざむき、 室しっ家け・中ちゅう外げ・知ち識しきはあひ紹つぎておのおの貪淫とんいんの心しんを懐いだき、 独ひとり恚しん怒ぬ・蒙聾もうろう・愚痴ぐちにして、 ますます多おおくあらんことを欲ほっす。 尊そん卑ぴ・上じょう下げ男おとことなく女おんなとなく、 大だいとなく小しょうとなく、 心こころともに同おなじくしかなり。

○臣ハ欺キ↢其ノ君ヲ↡、子ハ欺キ↢其ノ父ヲ↡、弟ハ欺キ↢其ノ兄ヲ↡、婦ハ欺キ↢其ノ夫ヲ↡、室家・中外・知識ハ相*紹ギテ ○各ノ懐キ↢貪淫ノ心ヲ↡、独リ恚怒・*蒙聾・愚痴ニシテ、*欲ス↢益マス多ク有ラムコトヲ↡。尊卑・上下無ク↠男ト無ク↠女ト、無ク↠大ト無ク↠小ト、心倶ニ同ジク然ナリ。

みづからおのれを厚あつくせんと欲ほっし、 家いえを破やぶり身みを亡ほろぼして、 前ぜん後ご・家け室しつ・親属しんぞくを顧こ念ねんせず、 これによりて族やからを破やぶる。

○欲シ↢自ラ厚クセムト↟己ヲ、破リ↠家ヲ亡シテ↠身ヲ、不↣顧↢念セ前後・家室・親属ヲ↡、坐ヨリテ↠之ニ破ル↠族ヲ。

ある時ときは家け中ちゅう・内ない外げ・知ち識しき・朋ほう友う・郷ごう党とう・市里じり・愚ぐ民みん、 うたたともに従じゅう事じし、 たがひに利り害がいして銭財ぜんざいを争あらそひ闘たたかひ、 忿ふん怒ぬして仇あだをなして、 うたた勝しょう負ぶを争あらそふ。

○或ル時ハ家中・内外・知識・朋友・郷党・市*里・愚民、転タ共ニ従事シ、更相 タガヒ ニ利害シテ争ヒ↢銭財ヲ↡闘ヒ、忿怒シテ成シテ↠*仇ヲ、転タ争フ↢勝負ヲ↡。

富とみを慳おしみ心こころを焦こがして施与せよすることを肯がえんぜず、 専々せんせんに守しゅ惜しゃくし、 宝たからを愛あいして貪むさぼり重おもんず。 これによりて思し念ねんし心しん労ろうし身み苦くるしむ。

○慳オシミ↠富ヲ焦シテ↠心ヲ不↠肯ゼ↢施与スルコトヲ↡、専専ニ守惜シ、愛シテ↠宝ヲ貪リ重ンズ。坐ヨリテ↠之ニ思念シ心労シ身苦ム。

かくのごとくにして竟おわるに至いたり、 恃怙じこするところなし。 独ひとり来きたり独ひとり去さりてひとりとして随したがふものなし。 善悪ぜんあくの禍か福ふく・殃おう咎ぐ・讁ちゃく罰ばつ命みょうを追おひて生しょうずるところなり。 あるいは楽処らくしょにありあるいは毒どく苦くに入いる。 しかうして後のちにすなはち悔くゆともまさにまたなんぞ及およぶべき。

○如クニシテ↠是クノ至リ↠竟ルニ、無シ↠所↢恃怙スル↡。独リ来リ独リ去リテ無シ↢一トシテ随フ者↡。善悪ノ禍福・殃咎・讁罰追ヒテ↠*命ヲ所ナリ↠生ズル。或イハ在リ↢楽処ニ↡或イハ入ル↢毒苦ニ↡。然シテ後ニ乃チ悔ユトモ当ニキ↢復何ゾ及ブ↡。

ある時ときは世せ人にん、 愚ぐ心しん少しょう智ちにして、 善ぜんを見みては誹ひ謗ほうしてこれを恚いかり、 慕したひ及したがふことを肯がえんぜず。 ただ悪あくをなさんと欲ほっしてみだりに非ひ法ほうをなし、 ただ盗窃とうせつを欲ほっしてつねに毒心どくしんを懐いだき、 他た人にんの財物ざいもつを得えんと欲ほっして用もちゐてみづからに供く給きゅうし、 消しょう散さんし摩ま尽じんし賜つくしてまた求ぐ索しゃくす。 邪心じゃしんにして正ただしからず、 つねに独ひとり恐怖くふして人ひとの色しることあらんことを畏おそる。 時ときに臨のぞみて計はからず、 事じ至いたりてすなはち悔くゆ。

○或ル時ハ世人、愚心少智ニシテ、見テハ↠善ヲ誹謗シテ恚リ↠之ヲ、不↠肯ゼ↢慕ヒ及ブコトヲ↡。但欲シテ↠為サムト↠悪ヲ妄ニ作シ↢非法ヲ↡、但欲シテ↢盗窃ヲ↡常ニ懐キ↢*毒心ヲ↡、欲シテ↠得ムト↢他人ノ財物ヲ↡用ヰテ自ラニ供給シ、消散シ*摩尽シ*賜ツクシテ復求索ス。邪心ニシテ不↠正シカラ、常ニ独リ恐怖シテ畏ル↢人ノ有ラムコトヲ↟色シルコト。臨ミテ↠時ニ不0274↠計ラ、事至リテ乃チ悔ユ。

今こん世ぜに現げんに長ちょう吏り・牢獄ろうごくありて、 自じ然ねんに趣向しゅこうしてその殃おう咎ぐを受うく。 世せ間けんの貧びん窮ぐ・乞丐こつがい・孤こ独どく、 ただ前ぜん世せ宿命しゅくみょうに道徳どうとくを信しんぜずして善ぜんをなすことを肯がえんぜざるによりて、 今こん世ぜに悪あくをなす。 天神てんじん籍じゃくを別わかち、

○今世ニ現ニ在リテ↢長吏・牢獄↡、自然ニ*趣向シテ受ク↢其ノ殃咎ヲ↡。世間ノ貧窮・乞丐・孤独、但坐ヨリテ↧前世宿命ニ不シテ↠信ゼ↢道徳ヲ↡不ルニ↞肯ゼ↠為スコトヲ↠善ヲ、今世ニ為ス↠悪ヲ。天神別チ↠籍ヲ、

寿いのち終おわりて悪道あくどうに入いる。 ゆゑに自じ然ねんの泥ない犁り・禽きん獣じゅう・薜荔へいれい・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐいあり。 そのなかに展転てんでんして世々せせ累劫るいこうにも出いづる期ごあることなく、 解げ脱だつを得えがたし。 痛いたみいふべからず。

○寿終リテ入ル↢悪道ニ↡。○故ニ有リ↢自然ノ泥*犁・禽獣・薜荔・蜎飛蠕動之類↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世累劫ニモ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。

これを二ふたつの大悪だいあく・二ふたつの痛つう・二ふたつの焼しょうとなす。 勤ごん苦くかくのごとくにして、 たとへば火ひの起おこりて人身にんじんを焼やくがごとし。

○是ヲ為ス↢二ノ大悪・二ノ痛・二ノ焼ト↡。勤苦如クニシテ↠是クノ、比タトヘバ如シ↣火ノ起リテ焼クガ↢人身ヲ↡。

人ひとよくみづからそのなかにおいて一心いっしんに意こころを制せいし身みを端ただしくし行おこなひを正ただしくして、 独ひとり衆善しゅぜんをなし衆悪しゅあくをなさざれば、 身み独ひとり度ど脱だつして、 その福徳ふくとくを得えて、 長ちょう寿じゅ・度世どせ・上じょう天てん・泥洹ないおんの道どうを得うべし。 これを二ふたつの大善だいぜんとなすと。

○人能ク自ラ於テ↢其ノ中ニ↡一心ニ制シ↠意ヲ端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シ↢*衆善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、得テ↢其ノ福徳ヲ↡、可シ↠得↢長寿・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢二ノ大善ト↡。

【26】仏ぶつのたまはく、 その三悪さんあくとは、 世せ間けんの人民にんみん、 寄き生しょうしあひ因よりともによりて、 天てん地ちのあひだに居こす。 処年しょねん寿じゅ命みょう、 よくいくばくの歳としもなし。 至いたりては豪ごう貴きなるもの・賢げん明みょう・善人ぜんにんあり、 下しもに貧賎びんせん・尫羸おうるい・愚ぐ者しゃあり。 なかに不ふ良りょうの人ひとありて、 ただ毒悪どくあくを懐え念ねんして身心しんしん正ただしからず、

○仏言ク、其ノ三悪ト者、○世間ノ人民、寄生シ*相因リ共ニ依リテ、居ス↢天地之間ニ↡。処年寿命、无シ↢能ク幾クノ歳モ↡。至リテハ有リ↢豪*貴ナル者・賢明・善人↡、下ニ有リ↢貧賎・尫羸・愚者↡。中ニ有リテ↢不良之人↡、但懐↢念シテ毒悪ヲ↡身心不↠正シカラ、

つねに婬泆いんいつを念ねんじて煩わずらひ胸中きょうちゅうに満みつ、 愛欲あいよく交錯きょうしゃくして坐起ざき安やすからず、 貪とん意い慳けん惜じゃくにしてただいたづらに得えんことを欲ほっす。 細色さいしきを眄睞めんらいして悪態あくたい婬泆いんいつし、 婦つまあれども厭いとひ憎にくみてひそかにみだりに出入しゅつにゅうし、 家いえの所しょ有うを持もちてあひ結けっして非ひをなし、 聚じゅ会え飲食おんじきしてみづからともに悪あくをなす。

○常ニ念ジテ↢婬泆ヲ↡煩ヒ満ツ↢胸中ニ↡、愛欲交錯シテ坐起不↠安カラ、貪意慳惜ニシテ但欲ス↢唐イタヅラニ得ムコトヲ↡。眄↢睞シテ細色ヲ↡悪態*婬泆シ、有レドモ↠婦*厭ヒ憎ミテ私ヒソカニ妄ニ出入シ、持チテ↢家ノ所有ヲ↡相結シテ為シ↠非ヲ、聚会飲食シテ自ラ共ニ作ス↠悪ヲ。

兵ひょうを興おこし賊ぞくをなして城しろを攻せめ格闘かくとうし、 劫殺こうせつ截断ぜつだんして強奪ごうだつ不ふ道どうなり。 人ひとの財物ざいもつを取とり偸ちゅう窃せつしてにはかに得うれども治じ生しょうすることを肯がえんぜず、 まさに求もとむべきところのものこれをなすことを肯がえんぜず、 悪心あくしん外ほかにありては、 もつぱらなすことあたはず、 欲よく繋けして事じをなし恐く勢せい迫はく脅きょうし、 持もち帰かえりては家いえに給きゅうしてともにあひ生しょう活かつす。 心こころをほしいままにし意こころを快こころよくして身みを極きわめ楽らくをなす。 他た人にんの婦ふ女にょを行ぎょう乱らんし、 あるいはその親属しんぞくにおいて尊そん卑ぴ・長ちょう老ろうを避さけず。 衆しゅともに憎ぞう悪おし、 家け室しつ・中ちゅう外げ患うれひてこれに苦くるしむ。

○興シ↠兵ヲ作シテ↠賊ヲ攻メ↠城ヲ格闘シ、劫殺截断シテ強奪不道ナリ。取リ↢人ノ財物ヲ↡偸窃シテ趣ニハカニ得レドモ不↠肯ゼ↢治生スルコトヲ↡、所ノ↠当ニキ↠求ム者不↠肯ゼ↠為スコトヲ↠之ヲ、悪心在リテハ↠外ニ、不↠能ハ↢専ラ作スコト↡、欲*繋シテ成シ↠事ヲ恐勢*迫脅シ、持チ帰リテハ給シテ↠家ニ共ニ相0275生活ス。恣ニシ↠心ヲ快クシテ↠意ヲ極メ↠身ヲ作ス↠楽ヲ。*行↢乱シ他人ノ婦女ヲ↡、或イハ於テ↢其ノ親属ニ↡不↠避ケ↢尊卑・長老ヲ↡。衆共ニ憎悪シ、家室・中外患ヒテ而苦ム↠之ニ。

また県官けんかんの法ほう令りょうを畏おそれず、 録ろくを避さくるところなし。 かくのごとき悪あく、 自じ然ねんに牢獄ろうごくあり、 日月にちがつ照しょう識しし神じん明みょう記き取しゅして諸神しょじん摂しょう録ろくす。

○亦復不↠*畏レ↢県官ノ法令ヲ↡、無シ↠所↠避クル↠録ヲ。如キ↠是クノ之悪、自然ニ牢獄アリ、日月照識シ神明*記取シテ諸神摂録ス。

ゆゑに自じ然ねんの泥ない犁り・禽きん獣じゅう・薜荔へいれい・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐいあり。 そのなかに展転てんでんして世々せせ累劫るいこうにも出いづる期ごあることなく、 度ど脱だつを得えがたし。 痛いたみいふべからず。

○故ニ有リ↢自然ノ泥*犁・禽獣・薜荔・蜎飛蠕動之類↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世累劫ニモ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢*度脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。

これを三みつの大悪だいあく・三みつの痛つう・三みつの焼しょうとなす。 勤ごん苦くかくのごとくにして、 たとへば火ひの起おこりて人身にんじんを焼やくがごとし。

○是ヲ為ス↢三ノ大悪・三ノ痛・三ノ焼ト↡。勤苦如クニシテ↠是クノ、*比タトヘバ若シ↣火ノ起リテ焼クガ↢人身ヲ↡。

人ひとよくみづからそのなかにおいて一心いっしんに意こころを制せいし身みを端ただしくし行おこなひを正ただしくして、 独ひとり衆善しゅぜんをなし衆悪しゅあくをなさざれば、 身み独ひとり度ど脱だつして、 その福徳ふくとくを得え、 長ちょう寿じゅ・度世どせ・上じょう天てん・泥洹ないおんの道どうを得うべし。 これを三みつの大善だいぜんとなすと。

○人能ク自ラ於テ↢其ノ中ニ↡一心ニ制シ↠意ヲ端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シ↢*衆善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、得↢其ノ福徳ヲ↡、可シ↠得↢長寿・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢三ノ大善ト↡。

【27】仏ぶつのたまはく、 その四し悪あくとは、 もろもろの悪人あくにん善ぜんをなすことあたはずしてみづからあひ壊え敗はいし、 うたたあひ教令きょうりょうしてともに衆悪しゅあくを作つくり、 主しゅとして伝言でんごんをなすに、 ただ両りょう舌ぜつ・悪あっ口く・罵め詈ごん・妄もう語ごを欲ほっし、 あひ嫉ねたみてたがひに闘乱とうらんす。

○仏言ク、其ノ四悪ト者、○諸ノ悪人不シテ↠能ハ↠作スコト↠善ヲ自ラ相壊敗シ、転タ相教令シテ共ニ作リ↢衆悪ヲ↡、主トシテ為スニ↢伝言ヲ↡、但欲シ↢両舌・悪口・罵詈・妄語ヲ↡、相嫉ミテ更相 タガヒ ニ闘乱ス。

善人ぜんにんを憎嫉ぞうしつし賢善げんぜんを敗はい壊えして傍かたわらにおいて悪あくを快よろこぶ。 また父母ぶもに孝順きょうじゅんし供く養ようせず、 師父しぶ・知ち識しきを軽きょう易いして信しんなく誠じょう実じつを得えがたし。 みづから尊そん貴きにして道どうありといひて、 横よこさまに威武いぶを行ぎょうじて捲力けんりき勢いきおひを加くわへ、 侵剋しんこくして人ひとを易あなどりみづから悪あくをなすと知しることあたはず、 みづから羞しゅう慚ざんすることなく、 自じ用ゆう頗は健ごんにして人ひとをして承じょう事じし敬きょう畏いせしむ。

○憎↢嫉シ善人ヲ↡敗↢壊シテ賢善ヲ↡於テ↠傍ニ快ヨロコブ↠悪ヲ。復不↤孝↢順シ供↣養セ父母ニ↡、軽↢易シテ師父・知識ヲ↡無ク↠信難シ↠得↢誠実ヲ↡。自ラ*言ヒテ↢尊貴ニシテ有リト↟道、横ニ行ジテ↢威武ヲ↡加ヘ↢*捲力勢ヲ↡、侵剋シテ易アナドリ↠人ヲ不↠能ハ↢自ラ知ルコト↟為スト↠悪ヲ、*無ク↢自ラ羞慚スルコト↡、自用頗健ニシテ令ム↢人ヲシテ承事シ敬畏セ↡。

また天てん地ち・神じん明みょう・日月にちがつを敬きょう畏いせず、 また善ぜんをなすことを教令きょうりょうすべからず、 降ごう化けすべからず。 自じ用ゆう偃蹇えんけんにして、 つねにまさにしかなりと謂おもへり。 また憂う哀あいの心しんなく、 また恐懼くいを知しらずして、 恣意しい憍きょう慢まんなることかくのごとし。

○復不↣敬↢畏セ天地・神明・日月ヲ↡、亦不↠可カラ↣教↢令ス作スコトヲ↟善ヲ、不↠可カラ↢降化ス↡。自用偃蹇ニシテ、謂ヘリ↢常ニ当ニ爾ナリト↡。亦復無ク↢憂哀ノ心↡、亦0276不シテ↠知ラ↢恐懼ヲ↡、恣意憍慢ナルコト如シ↠是クノ。

天神てんじん記識きしす。 その前ぜん世せ宿命しゅくみょうにすこぶる福徳ふくとくをなすによりて、 小しょう善ぜん扶ふ接しょうし営よう護ごしてこれを助たすくるも、 今こん世ぜに悪あくをなして福徳ふくとく尽じん儩しし、 もろもろの善ぜん鬼き神じんおのおの去さりてこれを離はなれ、 身み独ひとりむなしく立たちてまたよるところなく、 重おもき殃おう讁ちゃくを受うけて、

○天神記識ス。頼リテ↣其ノ前世宿命ニ頗ル作スニ↢福徳ヲ↡、小善扶接シ営護シテ助クルモ↠之ヲ、今世ニ作シテ↠悪ヲ福徳尽*儩シ、諸ノ善鬼神各ノ去リテ離レ↠之ヲ、身独リ空シク立チテ無ク↠所↢復依ル↡、受ケテ↢重キ殃*讁ヲ↡、

寿じゅ命みょう終おわるとき身みの悪あく繞めぐり帰きして自じ然ねんに迫促はくそくす。 まさに往ゆきて追逐ついちくして止し息そくすることを得えざるべし。 自じ然ねんに衆悪しゅあくともに趣おもむきこれに頓いたる。

○寿命終ルトキ身ノ悪繞リ帰シテ自然ニ迫促ス。当ニシ↢往キテ追逐シテ不ル↟得↢止息スルコトヲ↡。自然ニ衆悪共ニ趣キ頓イタル↠*之ニ。

それ名籍みょうじゃく神じん明みょうの所ところにあることありて、 殃おう咎ぐ引牽いんけんしまさに値あひ相得そうとくすべし、 まさに往ゆきて趣向しゅこうすべし。 過とがの讁ちゃく罰ばつを受うけ身心しんしん摧ざい砕さいし、 神じん形ぎょう苦く極ごくして、 離り却きゃくすることを得えず。 ただ前すすみて行ゆきて火か鑊かくに入いることを得う。 この時ときに当あたりて悔くゆともまたなんの益やくかあらん。 まさにまたなんぞ及およぶべき。 天道てんどう自じ然ねんにして蹉さ跌でつすることを得えず。

○*其レ有リテ↣名籍在ルコト↢神明ノ所ニ↡、殃咎引牽シ当ニシ↢値ヒ相得ス↡、当ニシ↢往キテ趣向ス↡。受ケ↢過ノ讁罰ヲ↡身心摧砕シ、神形苦極シテ、不↠得↢離却スルコトヲ↡。但得↣前ミ行キテ入ルコトヲ↢於火鑊ニ↡。当リテ↢是ノ時ニ↡悔ユトモ復何ノ益カアラム。当ニキ↢復何ゾ及ブ↡。天道自然ニシテ不↠得↢蹉跌スルコトヲ↡。

ゆゑに泥ない犁り・禽きん獣じゅう・薜荔へいれい・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの属たぐいあり。 そのなかに展転てんでんして世々せせ累劫るいこうにも出いづる期ごあることなく、 解げ脱だつを得えがたし。 痛いたみいふべからず。

○故ニ有リ↢泥*犁・禽獣・薜荔・蜎飛蠕動之属↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世累劫ニモ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。

これを四よつの大悪だいあく・四よつの痛つう・四よつの焼しょうとなす。 勤ごん苦くかくのごとくにして、 たとへば火ひの起おこりて人身にんじんを焼やくがごとし。

○是ヲ為ス↢四ノ大悪・四ノ痛・四ノ焼ト↡。勤苦如クニシテ↠是クノ、比タトヘバ*如シ↣火ノ起リテ焼クガ↢人身ヲ↡。

人ひとよくそのなかにおいて一心いっしんに意こころを制せいし身みを端ただしくし行おこなひを正ただしくして、 独ひとり衆善しゅぜんをなし衆悪しゅあくをなさざれば、 身み独ひとり度ど脱だつして、 その福徳ふくとくを得え、 長ちょう寿じゅ・度世どせ・上じょう天てん・泥洹ないおんの道どうを得うべし。 これを四よつの大善だいぜんとなすと。

○人能ク於テ↢其ノ中ニ↡一心ニ制シ↠意ヲ端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、独リ作シ↢*衆善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、得↢其ノ福徳ヲ↡、可シ↠得↢長寿・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢四ノ大善ト↡。

【28】仏ぶつのたまはく、 その五ご悪あくとは、 世せ人にん徙倚しい懈け惰だにして、 善ぜんをなすことを肯がえんぜず、 治じ生しょうすることを念おもはずして、 妻さい子し飢き寒かんし、 父母ぶももともにしかなり。 呵かしてその子こを教おしへんと欲ほっすれば、 その子こ悪心あくしんをもつて目めを瞋いからして言ごん令りょうに譍おう怒ぬして和わせず、 違い戻らい反ほん逆ぎゃくすること野や人にんよりも劇はげし。 たとへば怨おん家げのごとし。 子こなきにしかず。

○仏言ク、其ノ五悪ト者、○世人徙倚懈*惰ニシテ、不↠肯ゼ↠作スコトヲ↠善ヲ、不シテ↠念ハ↢治生スルコトヲ↡、妻子飢寒シ、父母モ倶ニ然ナリ。欲スレバ↣呵シテ教ヘムト↢其ノ子ヲ↡、其ノ子悪心ヲモテ瞋ラシテ↠目ヲ譍↢怒シテ言令ニ↡不↠和セ、違戻反逆スルコト劇シ↢於野人ヨリモ↡。比タトヘバ若シ↢怨家ノ↡。不↠如カ↠無キニ↠子。

みだりにあまねく仮け貸たいして衆しゅともに患うれひ厭いとふ。 もつとも反復ほんぶくすることなし、 報ほう償しょうの心しんあることなし。

○妄ニ遍ク仮貸シテ衆共ニ患ヒ厭フ。尤モ無シ↢*反*復スルコト↡、无シ↠有ルコト↢報0277償之心↡。

窮ぐ貧びん困乏こんぼうしてまた得うることあたはずして、 辜こ較かくし諧かい声しょうしほしいままに遊ゆ散さんし、 しばしばいたづらに得うるに串ならひて、 自じ用ゆう賑しん給きゅうす。 防禁ぼうきんを畏おそれず、 飲食おんじき極きわまりなく酒さけを喫きっし美うまきを嗜たしなみ、 出入しゅつにゅうに期度ごどあることなし。 魯扈ろこ抵突たいとつして人にん情じょうを知しらず、 睢き眄めん強制ごうせいして

○窮貧困乏シテ不シテ↠能ハ↢復得ルコト↡、辜較シ諧声シ放縦ホシイママニ遊散シ、串ナラヒテ↢数バ唐イタヅラニ得ルニ↡、自用賑給ス。不↠畏レ↢防禁ヲ↡、飲食无ク↠極リ喫シ↠酒ヲ嗜ミ↠美ヲ、出入ニ無シ↠有ルコト↢期度↡。*魯扈*抵突シテ不↠知ラ↢人情ヲ↡、睢*眄強制シテ

人ひとの喜よろこびあるを見みては憎嫉ぞうしつしてこれを恚いかり、 義ぎなく礼らいなく、 自じ用ゆう職当しきとうして諌かん暁ぎょうすべからず。 また父母ぶも・妻さい子しの有無うむを憂う念ねんせず。 またつひに父母ぶもの徳とくに報むくゆることを念おもはず、 また師父しぶの恩おんを念おもはず。 心こころにつねに悪あくを念ねんじ、 口くちにつねに悪あくをいひ、 日ひに成じょう就じゅすることあらず。

○見テハ↢人ノ有ルヲ↟*喜ビ憎嫉シテ恚リ↠之ヲ、無ク↠義无ク↠礼、自用*職当シテ不↠可カラ↢諌暁ス↡。亦復不↣憂↢念セ父母・妻子ノ有無ヲ↡。又復不↠念ハ↣*卒ツヒニ報ユルコトヲ↢父母之徳ニ↡、亦復不↠念ハ↢師父之恩ヲ↡。心ニ常ニ念ジ↠悪ヲ、口ニ常ニ言ヒ↠悪ヲ、日ニ不↢成就スルコトアラ↡。

道徳どうとくを信しんぜず、 賢げん明みょう・先せん聖しょうあることを信しんぜず、 善ぜんをなし道どうをなせば度世どせを得うべきことを信しんぜず、 世せ間けんに仏ぶつあることを信しんぜず。 羅ら漢かんを殺ころし比丘びく僧そうをして闘あらそはしめんと欲ほっし、 つねに人ひとを殺ころさんと欲ほっし、 父母ぶも・兄きょう弟だい・妻さい子し・宗そう親しん・朋ほう友うを殺ころさんと欲ほっす。 父母ぶも・兄きょう弟だい・妻さい子し・宗そう親しん・朋ほう友うも、 憎ぞう悪おしてこれを見みてはこれをして死しせしめんと欲ほっす。 仏ぶつの経きょう語ごを信しんぜず、 人ひとの寿じゅ命みょう終しゅう尽じんし死しして後世ごせにまた生しょうずることを信しんぜず、 善ぜんをなせば善ぜんを得うることを信しんぜず、 悪あくをなせば悪あくを得うることを信しんぜざるなり。

○不↠信ゼ↢道徳ヲ↡、不↠信ゼ↠有ルコトヲ↢賢明・先聖↡、不↠信ゼ↢作シ↠善ヲ為セバ↠道ヲ可キコトヲ↟得↢度世ヲ↡、不↠信ゼ↢世間ニ有ルコトヲ↟仏。欲シ↧殺シ↢羅漢ヲ↡闘ハシメムト↦比丘僧ヲシテ↥、常ニ欲シ↠殺サムト↠人ヲ、欲ス↠殺サムト↢父母・兄弟・妻子・宗親・朋友ヲ↡。父母・兄弟・妻子・宗親・朋友モ、憎悪シテ見テハ↠之ヲ欲ス↠使メムト↢之ヲシテ死セ↡。不↠信ゼ↢仏ノ経語ヲ↡、不↠信ゼ↢人ノ寿命終尽シ死シテ後世ニ復生ズルコトヲ↡、不↠信ゼ↢作セバ↠善ヲ得ルコトヲ↟善ヲ、不ルナリ↠信ゼ↢作セバ↠悪ヲ得ルコトヲ↟悪ヲ。

かくのごときらの人ひと、 男なん子しも女人にょにんも心しん意いともにしかなり。 違い戻らい反ほん逆ぎゃくして愚痴ぐち濛澒もうこうなり。 瞋しん怒ぬ嗜し欲よくにして識しき知ちするところなく、 自じ用ゆう快け善ぜんにして大だい智慧ちえありとなして、 また従じゅう来らいするところの生しょう、 死しして趣向しゅこうするところを知しらず。 あへて慈じ孝きょうならずして天てん地ちに悪あく逆ぎゃくす。 その中ちゅう間げんにおいて僥きょう倖ぎょうを求ぐ望もうし、 長生じょうしょうを得えてみづから不死ふしを得えんことを欲ほっすれども、 かならずまさに生しょう死じの勤ごん苦く善悪ぜんあくの道どうに帰き就じゅすべし。 身みに作つくるところの悪あくの殃おう咎ぐ衆おおく趣おもむき、 度ど脱だつするを得えず。 また降ごう化けして善ぜんをなさしむべからず。

○如キ↠是クノ曹ラノ人、男子モ女人モ心意倶ニ然ナリ。違戻反逆シテ愚痴*濛澒ナリ。瞋怒嗜欲ニシテ無ク↠所↢識知スル↡、自用快善ニシテ*為シテ↢大智慧アリト↡、亦不↠知ラ↧所ノ↢従来スル↡生、死シテ所ヲ↦趣向スル↥。不シテ↢肯テ慈孝ナラ↡悪↢逆ス天地ニ↡。於テ↢其ノ中間ニ↡求↢望シ僥倖ヲ↡、欲スレドモ↧得テ↢長生ヲ↡*躬ミヅカラ得ムコトヲ↦不死ヲ↥、会ズ当ニシ↣帰↢就ス生死ノ勤苦善悪之道ニ↡。身ニ所ノ↠作ル悪ノ殃咎衆ク趣キ、不↠得↢度脱スルヲ↡。亦不↠可カラ↢降化シテ令ム↟作サ↠善ヲ。

慈じ心しんをもつて教きょう語ごし、 生しょう死じ善悪ぜんあくの趣おもむくところこれあることを開導かいどうすれども、 またこれを信しんぜず。 しかれば苦く心しんしてともに語かたりて度ど脱だつせしめんと欲ほっすれども益やくなし。 その人ひと心しん中ちゅう閉塞へいそくして意こころ開かい解げせず、

○慈心ヲモテ教語シ、開↢導スレドモ生死善悪ノ所↠趣ク有ルコトヲ↟是、復不↠信ゼ↠之ヲ。然レバ苦心シテ与ニ語リテ欲スレシドモ↠令メムト↢度脱セ↡無シ↠益。其0278ノ人心中閉塞シテ意不↢開解セ↡、

大だい命みょうまさに至いたらんとするに、 時ときに至いたりてみな悔くゆ。 その後のちにすなはち悔くゆれどもまさにまたなんぞ及およぶべき。 あらかじめ善ぜんを計けせずして窮きわまるに臨のぞみてなんの益やくかあらん。

○大命将ニ至ラムトスルニ、至リテ↠時ニ皆悔ユ。其ノ後ニ乃チ悔ユレドモ当ニキ ↢復何ゾ及ブ↡。不シテ↢予メ計セ↟善ヲ臨ミテ↠窮マルニ何ノ益カアラム。

天てん地ちのあひだに五ご道どう分ぶん明みょうに、 恢廓かいかく窈よう窕ちょう、 浩々こうこう茫々もうもうたり。 うたたあひ善悪ぜんあくの毒痛どくつうを承じょう受じゅして、 身みみづからこれに当あたりて代かわるものあることなし。 道どうの自じ然ねんなり、 その所しょ行ぎょうに随したがひて命みょうを追おひて生しょうずるところ、 縦じゅう捨しゃすることを得えず。

○天地之間ニ五道分明ニ、恢廓窈*窕、浩浩茫茫タリ。転タ相承↢受シテ善悪ノ毒痛ヲ↡、身自ラ当リテ↠之ニ无シ↠有ルコト↢代ル者↡。道之自然ナリ、随ヒテ↢其ノ所行ニ↡*追ヒテ↠命ヲ所↠生ズル、不↠得↢縦捨スルコトヲ↡。

善人ぜんにんは善ぜんを行ぎょうじ善ぜんに従したがひ慈じ孝きょうなれば、 楽らくより楽らくに入いり、 明みょうより明みょうに入いる。 悪人あくにんは悪あくを行ぎょうじて、 苦くより苦くに入いり、 冥みょうより冥みょうに入いる。 たれかよく知しるものあらん。 独ひとり仏ぶつの知ち見けんしたまへるのみ。 人民にんみんを教きょう語ごしたまへども信用しんようするものは少すくなし。 生しょう死じ休やまず、 悪道あくどう絶たえず。 かくのごときの世せ人にん、 ことごとくいふべからず。

○善人ハ行ジ↠善ヲ従ヒ↠善ニ慈孝ナレバ、従リ↠楽入リ↠楽ニ、従リ↠明入ル↠明ニ。悪人ハ行ジテ↠悪ヲ、従リ↠苦入リ↠苦ニ、従リ↠冥入ル↠冥ニ。誰カ能ク知ル者アラム。独リ仏ノ*知見シタマヘル耳。教↢語シタマヘドモ人民ヲ↡信用スル者ハ少シ。生死不↠休マ、悪道不↠絶エ。如キノ↠是クノ世人、不↠可カラ↢悉ク道フ↡。

ゆゑに自じ然ねんの泥ない犁り・禽きん獣じゅう・薜茘へいれい・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐいあり。 そのなかに展転てんでんして世々せせ累劫るいこうにも出いづる期ごあることなく、 解げ脱だつを得えがたし。 痛いたみいふべからず。

○故ニ有リ↢自然ノ泥犁・禽獣・薜茘・蜎飛蠕動之類↡。展↢転シテ其ノ中ニ↡世世累劫ニモ無ク↠有ルコト↢出ヅル期↡、難シ↠得↢解脱ヲ↡。痛ミ不↠可カラ↠言フ。

これを五いつつの大悪だいあく・五いつつの痛つう・五いつつの焼しょうとなす。 勤ごん苦くかくのごとし、 たとへば火ひの起おこりて人身にんじんを焼やくがごとし。

○是ヲ為ス↢五ノ大悪・五ノ痛・五ノ焼↡。勤苦如シ↠是クノ、比タトヘバ*如シ↣火ノ起リテ焼クガ↢人身ヲ↡。

人ひとよくみづからそのなかにおいて一心いっしんに意こころを制せいし身みを端ただしくし行おこなひを正ただしくして、 言ごん行ぎょうあひ副かなひてなすところ至し誠じょうに語かたるところ語ことばのごとくして、 心しん口く転てんぜずして独ひとり衆善しゅぜんをなし衆悪しゅあくをなさざれば、 身み独ひとり度ど脱だつして、 その福徳ふくとくを得え、 長ちょう寿じゅ・度世どせ・上じょう天てん・泥洹ないおんの道どうを得うべし。 これを五いつつの大善だいぜんとなす。

○人能ク自ラ於テ↢其ノ中ニ↡一心ニ制シ↠意ヲ端シクシ↠身ヲ正シクシテ↠行ヲ、言行相副カナヒテ所↠作ス至誠ニ所↠語ル如クシテ↠語ノ、心口不シテ↠転ゼ独リ作シ↢*衆善ヲ↡不レバ↠為サ↢衆悪ヲ↡者、身独リ度脱シテ、得↢其ノ福徳ヲ↡、可シ↠得↢長寿・度世・上天・泥洹之道ヲ↡。是ヲ為スト↢五ノ大善ト↡。

【29】仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつらに告つげたまはく、 われみななんぢらに語かたる、 この世よの五ご悪あくの勤ごん苦くかくのごとし。 五ご痛つうを起おこさしめ五ご焼しょうを起おこさしめて展転てんでんしてあひ生しょうず、

○仏告ゲタマハク↢阿逸菩薩等ニ↡、我皆語ル↢若ナンヂ曹ラニ↡、是ノ世ノ五悪ノ勤苦如シ↠是クノ。令メ↠起サ↢五痛ヲ↡令メテ↠起サ↢五焼ヲ↡展転シテ相生ズ、

世せ間けんの人民にんみん善ぜんをなすことを肯がえんぜずして衆悪しゅあくをなさんと欲ほっす。 あへてこのもろもろの悪あく事じを犯おかすことあるものは、 みなことごとく自じ然ねんにまさにかはるがはるつぶさに歴へて悪道あくどうのなかに入いるべし。

○世間ノ人民不シテ↠肯ゼ↠為スコトヲ↟善ヲ欲ス↠作サムト↢衆悪ヲ↡。敢テ有ル↠犯スコト↢此ノ諸ノ悪事ヲ↡者ハ、皆悉ク自然ニ当ニシ↣*更カハルガハル具ニ歴テ入ル↢悪道ノ中ニ↡。

あるいはそれ今こん世ぜにはまづ病びょう殃おうを被こうむりて死しも生しょうも得えず。 衆しゅに示しめしてこれを見みしむ。 寿いのち終おわりては至し極ごくの大だい苦くに趣しゅ入にゅうし、 愁しゅう痛つう酷毒こくどくし、 みづからあひ燋しょう然ねんしてうたたあひ焼しょう滅めつするなり。

○或イハ其レ今世ニハ先ヅ被リテ↢病殃ヲ↡死モ生モ不↠得0279。示シテ↠衆ニ見シム↠之ヲ。寿終リテハ趣↢入シ至極ノ大苦ニ↡、愁痛酷毒シ、自ラ相*燋然シテ転タ相焼滅スルナリ。

その後のちに至いたりてともに怨おん家げとなりてたがひに傷しょう殺せつす。 小しょう微みより起おこりて大だい困こん劇ぎゃくに至いたる。 みな財色ざいしきを貪淫とんいんしあへて忍辱にんにくして施与せよせざるによりてなり。 おのおのみづから快こころよくせんことを欲ほっして、 また曲こく直ちょくあることなく、 健ごん名みょうを得えんことを欲ほっすれども、 痴ち欲よくの迫せまるところとなり、 心こころに随したがひて思し想そうし、 得うることあたはず。 憤いきどおりを胸中きょうちゅうに結むすび財色ざいしきに縛束ばくそくせられ、 解げ脱だつすることあることなし。

○至リテ↢其ノ後ニ↡共ニ作リテ↢怨家ト↡更相 タガヒ ニ傷殺ス。従リ↢小微↡起リテ至ル↢大困劇ニ↡。皆従リテナリ↧貪↢淫シ財色ヲ↡不ルニ↦肯テ忍辱シテ施与セ↥。各ノ欲シテ↢自ラ快クセムコトヲ↡、無ク↣復有ルコト↢曲直↡、欲スレドモ↠得ムコトヲ↢健名ヲ↡、為リ↢痴欲ノ所ト↟迫ル、随ヒテ↠心ニ思想シ、不↠能ハ↠得ルコト也。結ビ↢憤ヲ胸中ニ↡財色ニ縛束セラレテ、无シ↠有ルコト↢解脱スルコト↡。

厭足えんそくを知しらずして、 おのれを厚あつくし欲よくを諍あらそひて省しょう録ろくするところなし。 すべて義理ぎりなく正しょう道どうに随したがはず。 富ふ貴き栄よう華がなれども時ときに当あたりて意こころを快こころよくし、 忍辱にんにくすることあたはず、 善ぜんを施ほどこすことを知しらず。 威い勢せいいくばくもなくして悪あく名みょうに随したがひて身みを燋こがし、 労ろう苦くに坐ざして久ひさしくして後のちにおほきに劇はげし。

○不シテ↠知ラ↢厭足ヲ↡、厚クシ↠己ヲ諍ヒテ↠欲ヲ無シ↠所↢省録スル↡。都テ无ク↢義理↡不↠随ハ↢正道ニ↡。富貴栄華ナレドモ当リテ↠時ニ快クシ↠意ヲ、不↠能ハ↢忍辱スルコト↡、不↠知ラ↠施スコトヲ↠善ヲ。威勢无クシテ↠幾クモ随ヒテ↢悪名ニ↡*燋シ↠身ヲ、坐シテ↢労苦ニ↡久シクシテ後ニ大ニ劇シ。

自じ然ねんに随逐ずいちくして解とけやむことあることなし。 王法おうぼう施し張ちょうして自じ然ねんに糺く挙こし、 上じょう下げ相応そうおうして羅ら網もう綱こう紀き、 々けいげい忪々しゅじゅとしてまさにそのなかに入いるべし。 古こ今こんにこれあり。 痛いたましきかな、 傷いたむべし。

○自然ニ随逐シテ無シ↠有ルコト↢解ケ已ムコト↡。王法施張シテ自然ニ糺挙シ、上下相応シテ羅網綱紀、忪忪トシテ当ニシ↠入ル↢其ノ中ニ↡。古今ニ有リ↠是。痛マシキ哉、可シ↠傷ム。

仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつらに語かたりたまはく、 もし世よにこれあらんに、 仏ぶつみな慈じ愍ねんしてこれを哀あわれみ、 威い神じんをもつて衆悪しゅあく諸しょ事じを摧動さいどうし、 みなこれを消しょう化けしたまふ。 悪あくを去さりて善ぜんに就つき所しょ思しを棄き捐えんして経きょう戒かいを奉持ぶじすることを得えしめ、 経きょう法ぼうを承じょう奉ぶし施せ行ぎょうせざるはなく、 あへて度世どせ・無為むい・泥洹ないおんの道どうの快け善ぜん極楽ごくらくにして甚じん明みょう無む極ごくなるを違い失しつせずと。

○仏語リタマハク↢阿逸菩薩等ニ↡、若シ世ニ有ラムニ↠是、仏皆慈愍シテ哀ミ↠之ヲ、威神ヲモテ摧↢動シ衆悪諸事ヲ↡、皆消↢化シタマフ之ヲ↡。令メ↠得↧去リテ↠悪ヲ就キ↠善ニ棄↢捐シテ所思ヲ↡奉↦持スルコトヲ経戒ヲ↥、莫ク↠不ルハ↤承↢*奉シ施↣行セ経法ヲ↡、不ト↣敢テ違↢失セ度世・無為・泥洹之道ノ快善極楽ニシテ甚明无極ナルヲ↡。

仏ぶつのたまはく、 なんぢら諸天しょてん・帝王たいおう・人民にんみんおよび後世ごせの人ひと、 仏ぶつの経きょう語ごを得えてつらつらこれを思し惟ゆいして、 よくみづからそのなかにおいて心こころを端ただしくし行おこなひを正ただしくすべし。

○仏言ク、若ナンヂ曹ラ諸天・帝王・人民及ビ後世ノ人、得テ↢仏ノ経語ヲ↡熟ツラ思↢惟シテ之ヲ↡、能ク自ラ於テ↢其ノ中ニ↡端シクシ↠心ヲ正シクスベシ↠行ヲ。

その主しゅ上じょう善ぜんをなしその下しもを率そっ化けし撿けん御ごして、 人民にんみんを教きょう語ごしうたたあひ敕令ちょくりょうし、 うたたともに善ぜんをなしうたたあひ度ど脱だつせよ。 おのおのみづから端ただしく守まもり慈じ仁にん愍哀みんあいして、 終しゅう身しんおこたらざれ。 聖しょうを尊とうとび孝きょうを敬うやまひ通洞つうどう博愛はくあいにして、 仏ぶつ語ごの教令きょうりょうはあへて虧負きぶすることなく、 まさに憂うれへて度世どせ・泥洹ないおんの道どうたるべし。 まさに憂うれへて生しょう死じの痛痒つうようを断截だんぜつし悪あくの根本こんぽんを抜ぬくべし。 まさに憂うれへて泥ない犁り・禽きん獣じゅう・薜茘へいれい・蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐいの悪あっ苦くの道どうを断絶だんぜつすべし。 まさに仏ぶっ世せに勱つとめて堅かたく経きょう道どうを持たもちてあへて失しっすることなかるべしと。

○其ノ主*上為シ↠善ヲ率↢化シ撿↣御シテ其ノ下ヲ↡、教↢語シ人民ヲ↡転タ相敕令シ、転タ共ニ為シ↠善ヲ転タ相度脱セヨ。各ノ自ラ端シク守リ慈仁愍哀シテ、終身不レ↠*殆オコタラ。尊ビ↠聖ヲ敬ヒ↠孝ヲ通洞博愛ニシテ、仏語ノ教令ハ無ク↢敢テ虧負スルコト↡、当ニシ↢憂ヘテ度世・泥0280洹之道タル↡。当ニシ↧憂ヘテ断↢截シ生死ノ痛痒ヲ↡抜ク↦悪ノ根本ヲ↥。当ニシ↣憂ヘテ断↢絶ス泥犁・禽獣・薜茘・蜎飛蠕動之類ノ悪苦之道ヲ↡。当ニシト↧*勱メテ↢仏世ニ↡堅ク持チテ↢経道ヲ↡無カル↦敢テ失スルコト↥也。

仏ぶつのたまはく、 なんぢらまさに善ぜんをなすべきものはいかん、 第一だいいち急きゅうにまさにみづから身みを端ただしくすべし、 まさにみづから心こころを端ただしくすべし、 まさにみづから目めを端ただしくすべし、 まさにみづから耳みみを端ただしくすべし、 まさにみづから鼻はなを端ただしくすべし、 まさにみづから口くちを端ただしくすべし、 まさにみづから手てを端ただしくすべし、 まさにみづから足あしを端ただしくすべし。 よくみづから撿斂けんれんしてみだりに動どう作さすることなく、 身心しんしん浄じょう潔けつにしてともによく相応そうおうし、 中ちゅう外げ約束やくそくして嗜し欲よくに随したがふことなく、 諸悪しょあくを犯おかさざれ。

●仏言ク、若ナンヂ曹ラ当ニキ↠作ス↠善ヲ者ハ云何ン、第一急ニ当ニシ↢自ラ端シクス↟身ヲ、当ニシ↢自ラ端シクス↟心ヲ、当ニシ↢自ラ端シクス↟目ヲ、当ニシ↢自ラ端シクス↟耳ヲ、当ニシ↢自ラ端シクス↟鼻ヲ、当ニシ↢自ラ端シクス↟口ヲ、当ニシ↢自ラ端シクス↟手ヲ、当ニシ↢自ラ端シクス↟足ヲ。能ク自ラ撿*斂シテ莫ク↢妄ニ動作スルコト↡、身心浄潔ニシテ倶ニ善ク相応シ、中外約束シテ勿ク↠随フコト↢嗜欲ニ↡、不レ↠犯サ↢諸悪ヲ↡。

言色ごんしきつねに和わす。 身しん行ぎょうまさに専せんなるべし。 行ぎょう歩ぶ坐起ざき動どうぜず、 事じをなさばなすところまさにまづつらつら思し慮りょしてこれを計はかるべし。 才能さいのうを揆き度たくし、 円えん規きを視し瞻せんし、 安あん定じょうにしておもむろにこれを作為さいすべし。 事じをなすこと倉卒そうそつにして、 あらかじめ熟じゅく計けせずしてこれをなして諦あきらかならざればその功夫くふを亡うしなふ。 敗はい悔け後のちにあればいたづらに苦くるしみて身みを亡ほろぼす。 至し誠じょう忠ちゅう信しんにして道どうを得えて絶ぜっ去こすべしと。

●言色*常ニ和ス。身行当ニシ↠専ナル。行歩坐起不↠動ゼ、作サバ↠事ヲ所↠為ス当ニシ↢先ヅ熟ツラ思慮シテ計ル↟之ヲ。揆↢度シ才能ヲ↡、視↢瞻シ*円規ヲ↡、安定ニシテ徐ニ作↢為スベシ之ヲ↡。作スコト↠事ヲ倉卒ニシテ、不シテ↢予メ熟計セ↡為シテ↠之ヲ不レバ↠諦ナラ亡フ↢其ノ功夫ヲ↡。敗悔在レバ↠*後ニ唐イタヅラニ苦ミテ亡ボス↠身ヲ。至誠忠信ニシテ得テ↠道ヲ絶去スベシト。

仏ぶつのたまはく、 なんぢらここにおいてますます諸善しょぜんをなして、 恩おんを布しき徳とくを施ほどこしてよく道禁どうきんを絶たたず、 忍辱にんにく・精しょう進じん・一心いっしん・智慧ちえをもつて、 展転てんでんしてまたあひ教きょう化けして善ぜんをなし徳とくをなせ。 かくのごときの経きょう法ぼう、 慈じ心しん専一せんいつにして、 斎戒さいかい清浄しょうじょうなること一日いちにち一いち夜やなれば、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くににおいて善ぜんをなすこと百ひゃく歳さいなるに勝すぐれり。

○仏言ク、若ナンヂ曹ラ於テ↠是ニ益マス作シテ↢諸善ヲ↡、布キ↠恩ヲ施シテ↠徳ヲ能ク不↠*絶タ↢道禁ヲ↡、忍辱・精進・一心・智慧ヲモテ、展転シテ復相教化シテ作シ↠善ヲ為セ↠徳ヲ。如キノ↠是クノ経法、慈心専一ニシテ、斎戒清浄ナルコト一日一夜ナレバ者、勝レリ↧*於テ↢无量清浄仏ノ国ニ↡作スコト↠善ヲ百歳ナルニ↥。

ゆゑはいかん。 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにはみな徳とく衆善しゅぜんを積つむこと無為むい自じ然ねんにして求ぐ索しゃくするところのごとくありて、 諸悪しょあくのおほきさ毛髪もうはつのごとくなるものもあることなければなりと。

○所以者何ン。無量清浄仏ノ国ハ皆積ムコト↢徳衆善ヲ↡无為自然ニシテ在リテ↠所ノゴトク↢求索スル↡、無ケレバナリト↠有ルコト↣諸悪ノ大キサ如クナルモノモ↢毛髪ノ↡。

仏ぶつのたまはく、 ここにおいて善ぜんをなすこと十じゅう日にち十じゅう夜やなれば、 その福ふくを得うること他た方ほう仏国ぶっこくのなかの人民にんみんの善ぜんをなすこと千歳せんざいなるに勝すぐれり。

○仏言ク、於テ↠是ニ作スコト↠善ヲ十日十夜ナレバ者、其ノ得ルコト↠福ヲ勝レリ↢於他方仏国ノ中ノ人民ノ作スコト↠善ヲ千歳ナルニ↡。

ゆゑはいかん。 他た方ほう仏国ぶっこくはみなことごとく善ぜんをなすに、 善ぜんをなすものは多おおく悪あくをなすものは少すくなし、 みな自じ然ねんのものありて、 求作ぐさを行ぎょうぜずしてすなはちおのづからこれを得うればなり。

○所以者何ン。他方仏国ハ皆悉ク作スニ↠善ヲ、作ス↠善ヲ者ハ多ク為ス↠悪ヲ者ハ少シ、皆有リテ↢自然之*物↡、不シテ↠行ゼ↢求作ヲ↡便チ自ラ得レバナリ↠之0281ヲ。

この間けんは悪あくをなすものは多おおく善ぜんをなすものは少すくなし、 求作ぐさを行ぎょうぜざれば得うることあたはず。 人ひとよくみづから端ただしく制せいして善ぜんをなし、 至し心しんに道どうを求もとむ、 ゆゑによくしかるのみ。 この間けんは自じ然ねんなることあることなく、 自じ給きゅうすることあたはず、 まさに求ぐ索しゃくを行ぎょうじて勤ごん苦くして治じ生しょうすべし。 うたたあひ欺ご怠だいし調じょう作さして悪あくを好このみ、 その財物ざいもつを得えて妻さい子しに帰き給きゅうす。 苦くを飲のみ毒どくを食くらひ心こころを労ろうし身みを苦くるしむ。 かくのごとくにして至いたり竟おわるに、 心しん意い専せんならず周しゅう旋せんとして安やすからず。

○是ノ間ハ為ス↠悪ヲ者ハ多ク*為ス↠善ヲ者ハ少シ、不レバ↠行ゼ↢求作ヲ↡不↠能ハ↠得ルコト也。*人能ク自ラ端シク制シテ作シ↠善ヲ、至心ニ求ム↠道ヲ、故ニ能ク爾ル耳。是ノ間ハ無ク↠有ルコト↢自然ナルコト↡、不↠能ハ↢自給スルコト↡、当ニシ↧行ジテ↢求索ヲ↡勤苦シテ治生ス↥。転タ相欺*怠シ調作シテ好ミ↠悪ヲ、得テ↢其ノ財物ヲ↡帰↢給ス妻子ニ↡。飲ミ↠苦ヲ食ヒ↠毒ヲ労シ↠心ヲ苦ム↠身ヲ。如クニシテ↠是クノ至リ竟ルニ、心意不↠専ナラ周旋トシテ不↠安カラ。

人ひとよくみづから安あん静じょうにして善ぜんをなし精しょう進じんして徳とくをなす、 ゆゑによくしかるのみと。

●人能ク自ラ安静ニシテ為シ↠善ヲ精進シテ作ス↠徳ヲ、故ニ能ク爾ル耳ト。

仏ぶつのたまはく、 われみななんぢらおよび諸天しょてん・帝王たいおう・人民にんみんを哀あわれみて、 みな教おしへて諸善しょぜんをなし衆悪しゅあくをなさざらしむ。 その所能しょのうに随したがひてすなはち道どうの教きょう戒かいを授じゅ与よし開導かいどうして、 ことごとくこれを奉ぶ行ぎょうせしむ。

○仏言ク、我皆哀ミテ↢若ナンヂ曹ラ及ビ諸天・帝王・人民ヲ↡、皆教ヘテ令ム↧作シ↢諸善ヲ↡不ラ↞為サ↢衆悪ヲ↡。随ヒテ↢其ノ所能ニ↡輒チ授↢与シ道ノ教戒ヲ↡開導シテ、悉ク奉↢行セシム之ヲ↡。

すなはち君くんは率そっ化けして善ぜんをなして臣しん下げに教令きょうりょうし、 父ちちはその子こに教おしへ、 兄あにはその弟おとうとに教おしへ、 夫おっとはその婦つまに教おしへ、 室しっ家け・内ない外げ・親属しんぞく・朋ぼう友う、 うたたあひ教きょう語ごして、 善ぜんをなし道どうをなし経きょうを奉ほうじ戒かいを持たもち、 おのおのみづから端ただしく守まもりて上じょう下げあひ撿いましめ、 尊そんとなく卑ひとなく、 男おとことなく女おんなとなく、 斎戒さいかい清浄しょうじょうにして歓かん喜ぎせざるはなし。 義理ぎりに和わ順じゅんして歓かん楽らくし慈じ孝きょうし、 みづからあひ約撿やくけんす。

●則チ君ハ率化シテ為シテ↠善ヲ教↢令シ臣下ニ↡、父ハ教ヘ↢其ノ子ニ↡、兄ハ教ヘ↢其ノ弟ニ↡、夫ハ教ヘ↢其ノ婦ニ↡、*室家・内外・親属・朋友、転タ相教語シテ、作シ↠善ヲ為シ↠道ヲ奉ジ↠経ヲ持チ↠戒ヲ、*各ノ自ラ端シク守リテ上下相撿イマシメ、無ク↠尊ト无ク↠卑ト、無ク↠男ト无ク↠女ト、斎戒清浄ニシテ莫シ↠不ルハ↢歓喜セ↡。和↢順シテ義理ニ↡*歓楽シ慈孝シ、自ラ相約撿ス。

それ仏ぶつの経きょう語ごを得うることあらば、 ことごとく持たもちてこれを思おもへ。 まさに所しょ作さすべからざるを犯おかすがごとくにこれをなさば、 すなはちみづから悔過けかせよ。 悪あくを去さりて善ぜんに就つき、 邪じゃを棄すてて正しょうをなし、 朝あしたに聞ききて夕ゆうべに改あらためて、 経きょう戒かいを奉持ぶじすれば劇はげしきこと貧人ひんにんの宝たからを得うるがごとし。

●其レ有ラバ↠得ルコト↢仏ノ経語ヲ↡、悉ク持チテ思ヘ↠之ヲ。不ルヲ↠当ニカラ↢所作ス↡如クニ↠犯スガ為サバ↠之ヲ、則チ自ラ悔過セヨ。去リテ↠悪ヲ就キ↠善ニ、棄テテ↠邪ヲ為シ↠正ヲ、朝ニ聞キテ夕ニ改メテ、奉↢持スレバ経戒ヲ↡劇シキコト如シ↢貧人ノ得ルガ↟宝ヲ。

仏ぶつの所しょ行ぎょうの処ところ、 所在しょざいの郡国ぐんこくにはすなはち経きょう戒かいを授じゅ与よす。 諸天しょてん・日にち・月がつ・星しょう辰しん・諸神しょじん・国王こくおう・傍臣ぼうしん・長ちょう吏り・人民にんみん・諸しょ竜りゅう・鬼き神じん・泥ない犁り・禽きん獣じゅうも、 承うけてこれを奉ぶ行ぎょうす。

●仏ノ所行ノ処、所在ノ郡国ニハ輒チ授↢与ス経戒ヲ↡。諸天・日・月・星辰・諸神・国王・傍臣・長吏・人民・諸竜・鬼神・泥犁・禽獣モ、承ケテ奉↢行ス之ヲ↡。

すなはち君くん改がい化けして善ぜんをなし、 斎戒さいかい精しょう思しして浄きよくみづから湔すすぎ洒あらひ、 心こころを端ただしくし行おこなひを正ただしくせん。 位くらいに居こして厳ごん慓ひょうにして、 教敕きょうちょくし衆しゅを率ひきゐて善ぜんをなし、 道禁どうきんを奉ぶ行ぎょうして言ごん令りょうをして止やましむ。 臣しんはその君くんに事つかへて、 忠ちゅう直じきに令りょうを受うけてあへて違負いぶせず。 父子ぶしは言ごん令りょうし孝順きょうじゅんに承じょう受じゅし、 兄きょう弟だい・夫ふう婦ふ・宗そう親しん・朋ぼう友うは上じょう下げあひ令りょうして、 言ことばに順したがひ理りに和わす。 尊そん卑ぴ・大だい小しょう、 うたたあひ敬きょう事じするに、 礼らいをもつてし義ぎに如かなひあひ違負いぶせず。

●則チ君改化シテ為シ↠善ヲ、斎戒精思シテ浄ク自ラ湔ギ洒ヒ、端シクシ↠心ヲ正シクセム↠行ヲ。居シテ↠位ニ厳慓ニシテ、教敕シ率ヰテ↠衆ヲ為シ↠善ヲ、奉↢行シテ道禁ヲ↡令ム↢言令ヲシテ*止マ↡。臣ハ事ヘテ↢其ノ君ニ↡、忠直ニ受ケテ↠令ヲ不0282↢敢テ違負セ↡。父子ハ言令シ孝順ニ承受シ、兄弟・夫婦・宗親・朋友ハ上下相令シテ、順ヒ↠言ニ和ス↠理ニ。尊卑・大小、転タ相敬事スルニ、以テシ↠礼ヲ如カナヒ↠義ニ不↢相違負セ↡。

往おうを改あらため来らいを修しゅし心こころを洒そそぎ行おこなひを易おさめずといふことなく、 中表ちゅうひょうを端たん正じょうにして自じ然ねんに善ぜんをなし、 願ねがふところすなはち感かんを得えて、 よく降ごう化けすること自じ然ねんの道どうなり。 不死ふしを求ぐ欲よくすればすなはち長ちょう寿じゅを得うべし。 度世どせを求ぐ欲よくすればすなはち泥洹ないおんの道どうを得うべしと。

●莫ク↠不トイフコト↢改メ↠往ヲ修シ↠来ヲ洒ギ↠心ヲ易ヲサメ↟行ヲ、端↢正ニシテ中表ヲ↡自然ニ作シ↠善ヲ、所↠願フ輒チ得テ↠感ヲ、善ク降化スルコト自然之道ナリ。求↢欲スレバ不死ヲ↡則チ可シ↠得↢長寿ヲ↡。求↢欲スレバ度世ヲ↡則チ可シト↠得↢泥洹之道ヲ↡。

仏ぶつのたまはく、 仏ぶつは威い神じん尊そん重じゅうにして、 悪あくを消けし善ぜんに化けして、 度ど脱だつせざるはなし。 いまわれ天てん下げに出いでて、 この悪あくのなかにありて、 苦くの世よにおいて仏ぶつとなり、 慈じ愍みん哀あい傷しょうし教きょう語ご開道かいどうす。 諸天しょてん・帝王たいおう・傍臣ぼうしん・左右さう・長ちょう吏り・人民にんみん、 その心こころの欲ほっし願がん楽ぎょうするところに随したがひて、 みな道どうを得えしむ。

●仏言ク、仏ハ威神尊重ニシテ、消シ↠悪ヲ化シテ↠善ニ、莫シ↠不ルハ↢度脱セ↡。今我出デテ↢於天下ニ↡、在リテ↢是ノ悪ノ中ニ↡、於テ↢苦ノ世ニ↡作リ↠仏ト、慈愍哀傷シ教語開道ス。諸天・帝王・傍臣・左右・長吏・人民、随ヒテ↣其ノ心ノ所ニ↢欲シ願楽スル↡、皆令ム↠得↠道ヲ。

仏ぶつのもろもろの所しょ行ぎょうの処ところ、 さらに過すぎ歴ふるところの郡国ぐんこく・県邑けんおう・丘く聚じゅ・市里じり、 豊ぶ熟じゅくせざるはなし。 天てん下げ太たい平びょうにして、 日月にちがつの運うん照しょうますます明みょう好こうに、 風ふう雨うに時じ節せつありて人民にんみん安寧あんねいならん。 強つよきは弱よわきを凌しのがず、 おのおのその所ところを得えて、 悪歳あくさい・疾疫しっぺいなく、 病びょう痩しゅするものなく、 兵ひょう革かく起おこらず、 国くにに盗賊とうぞくなく、 怨抂おんおうあることなく、 拘く閉へいせらるるものあることなからん。

○仏ノ諸ノ所行ノ処、所ノ↢更ニ過ギ歴ル↡郡国・県邑・丘聚・市*里、莫シ↠不ルハ↢豊熟セ↡。天下太平ニシテ、日月ノ運照倍益マスマス明好ニ、風雨ニ時節アリテ人民安寧ナラム。強キハ不↠*凌ガ↠弱キヲ、各ノ得テ↢其ノ所ヲ↡、無ク↢悪*歳・疾疫↡、無ク↢病痩スル者↡、兵革不↠起ラ、国ニ无ク↢盗賊↡、無ク↠有ルコト↢怨*抂↡、无カラム↠有ルコト↢拘閉セラルル者↡。

君臣くんしん人民にんみん歓かん喜ぎせざることなく、 忠ちゅう慈じ至し誠じょうにして、 おのおのみづから端ただしく守まもり、 みな自じ然ねんに国くにを守まもり、 雍よう和わ孝順きょうじゅんにして、 歓かん喜ぎせざるはなからん。 有無うむあひともに恩おんを布しき徳とくを施ほどこして、 心こころ歓かん楽らくしともにみなあひ敬きょう愛あいして、 財ざいを推おし義ぎを譲ゆずりまづ前ぜん後ごに謙けん譲じょうして、 礼らいをもつて敬きょう事じすること父ちちのごとく子このごとく、 兄あにのごとく弟おとうとのごとくにして、 仁賢にんげん・和わ順じゅん・礼節らいせつならざることなく、 すべて違い諍じょうなく快け善ぜん極きわまりなからんと。

○君臣人民莫ク↠不ルコト↢歓喜セ↡、忠慈至誠ニシテ、各ノ自ラ端シク守リ、皆自然ニ守リ↠国ヲ、雍和孝順ニシテ、莫カラム↠不ルハ↢歓楽セ↡。有无相与ニ布キ↠恩ヲ施シテ↠徳ヲ、心歓楽シ与ニ皆相敬愛シテ、推シ↠財ヲ譲リ↠義ヲ謙↢譲シテ於先ヅ前後ニ↡、以テ↠礼ヲ敬事スルコト如ク↠父ノ如ク↠子ノ、如ク↠兄ノ如クニシテ↠弟ノ、莫ク↠不ルコト↢仁賢・和順・礼節ナラ↡、都テ无ク↢違諍↡快善無カラムト↠極リ。

仏ぶつのたまはく、 われなんぢらを哀あわれみて、 これを度ど脱だつせんと欲ほっすること父母ぶもの子こを念おもふよりも劇はげし。 いま八方はっぽう上じょう下げの諸天しょてん・帝王たいおう・人民にんみんおよび蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐい、 仏ぶつの経きょう戒かいを得えて仏道ぶつどうを奉ぶ行ぎょうし、 みな明みょう慧えを得えて心こころことごとく開かい解げして、 憂苦うくを過度かどし脱だっすることを得えざるものなし。 いまわれ仏ぶつとなり、 五ご悪あく・五ご痛つう・五ご焼しょうのなかにありて、 五ご悪あくを降ごう化けし、 五ご痛つうを消しょう尽じんし、 五ご焼しょうを絶滅めつじんして、 善ぜんをもつて悪あくを攻せめ毒どっ苦くを抜ぬき去さりて、 五ご善ぜんを得えしめてあきらかに好うるわしく、 焼しょう・悪あく起おこらざらしむ。

○仏言ク、我哀ミテ↢子ナンヂ曹ラヲ↡、欲スルコト↣度↢脱セムト之ヲ↡劇シ↢父母ノ念フヨリモ↟子ヲ。今八方上下ノ諸天・帝王・人民及ビ蜎飛蠕動之類、得テ↢仏ノ経戒ヲ↡奉0283↢行シ仏道ヲ↡、皆得テ↢明慧ヲ↡心悉ク開解シテ、莫シ↧不ル↠*得↤過↢度シ脱スルコトヲ↣憂苦ヲ↡者↥。今我作リ↠仏ト、在リテ↢於五悪・五痛・五焼之中ニ↡、降↢化シ五悪ヲ↡、消↢尽シ五痛ヲ↡、絶↢滅シテ五焼ヲ↡、以テ↠善ヲ攻メ↠悪ヲ抜キ↢去リテ毒苦ヲ↡、令メテ↠得↢五善ヲ↡明カニ好シク、焼・悪不ラシム↠起ラ。

われ般はつ泥洹ないおんし去さりて後のち、 経きょう道どうやや断絶だんぜつし、 人民にんみん諛ゆ諂てんにして淳あつく衆悪しゅあくをなしまた善ぜんをなさざれば、 五ご焼しょうまた起おこり、 五ご痛つうの劇ぎゃく苦く、 また前さきの法ほうのごとく、 自じ然ねんに還復げんぶくし久ひさしくして後のちうたた劇はげしからん。 ことごとく説とくべからず。 われただなんぢらがために小すこしくこれをいふのみと。

○我般泥洹シ去リテ後、経道稍稍断絶シ、人民*諛諂ニシテ淳ク為シ↢衆悪ヲ↡不レバ↢復作サ↟善ヲ、五焼復起リ、五痛ノ劇苦、復如ク↢前ノ法ノ↡、自然ニ還復シ久シクシテ後転タ劇シカラム。不↠可カラ↢悉ク説ク↡。我但為ニ↢若ナンヂ曹ラガ↡小シク道フ↠之ヲ耳ト。

仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつらに告つげたまはく、 なんぢらおのおの思おもひてこれを持たもて。 展転てんでんしてあひ教きょう戒かいし、 仏ぶつの経きょう法ぼうのごとくにしてあへて犯おかすことなかれと。

○仏告ゲタマハク↢阿逸菩薩等ニ↡、若ナンヂ曹ラ各ノ思ヒテ持テ↠之ヲ。展転シテ相教戒シ、如クニシテ↢仏ノ経法ノ↡無レト↢敢テ犯スコト↡也。

阿あ逸いつ菩ぼ薩さつ長じょう跪き叉手しゃしゅしてまうさく、 仏ぶつの説ときたまふところはなはだ苦く痛つうなり。 世せ人にん悪あくをなすことはなはだ劇はげしきことかくのごとくかくのごとし。 仏ぶつみな慈じ哀あいしてことごとくこれを度ど脱だつしたまふと。 みなまうさく、 仏ぶつの重教じゅうきょうを受うけたまへり、 請ねがはくは展転てんでんして相そう承じょうしあへて犯おかさずと。

○阿逸菩薩長跪叉手シテ言ク、仏ノ所↠説キタマフ甚ダ苦痛ナリ。世人為スコト↠悪ヲ*甚ダ劇シキコト如ク↠是クノ如シ↠是クノ。仏皆慈哀シテ悉ク度↢脱シタマフト之ヲ↡。皆言ク、受ケタマヘリ↢仏ノ重教ヲ↡、請ネガハクハ展転シテ相*承シ不ト↢敢テ犯サ↡也。

二 Ⅴ ⅳ 霊山現土

【30】仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 われなんぢらを哀あわれみて、 ことごとく無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん所しょ居ごの国こく土どを見みしめん。 なんぢこれを見みることを欲ほっするやいなやと。

●仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、我哀ミテ↢若ナンヂ曹ラヲ↡、*令メム↣悉ク見↢无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢所居ノ国土ヲ↡。若欲スルヤ↠見ルコトヲ↠之ヲ不ヤト。

阿あ難なんすなはちおほきに喜よろこび、 長じょう跪き叉手しゃしゅしてまうさく、 願ねがはくはみなこれを見みることを欲ほっすと。

●阿難則チ大ニ喜ビ、長跪叉手シテ言ク、願クハ皆欲スト↠見ルコトヲ↠之ヲ。

仏ぶつのたまはく、 なんぢ起たちて更あらためて袈裟けさを被きて西にしに向むかひて拝はいし、 日ひの没もっする処ところに当あたりて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 頭ず面めんをもつて地じに著つけ、 南無なも無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等どう覚がくといへと。

○仏言ク、若起チテ更メテ被テ↢袈裟ヲ↡西ニ向ヒテ拝シ、当リテ↢日ノ没スル処ニ↡為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ、以テ↢頭面ヲ↡著ケ↠地ニ、言ヘト↢南無無量清浄平等覚ト↡。

阿あ難なんまうさく、 諾だく、 教きょうを受うけてすなはち起たち、 更あらためて袈裟けさを被きて西にしに向むかひて拝はいし、 日ひの所没しょもつの処ところに当あたりて、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 頭ず脳のうをもつて地じに著つけて、 南無なも無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等どう覚がくといふ。

○阿難言ク、諾、受ケテ↠教ヲ則チ起チ、更メテ被テ↢袈裟ヲ↡西ニ向ヒテ拝シ、当リテ↢日ノ所没ノ処ニ↡、為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シ↟礼ヲ、以テ↢頭脳ヲ↡著ケテ↠地ニ、言フ↢南無無量清浄平等覚ト↡。

阿あ難なんいまだ起たたざるに、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつすなはちおほきに光こう明みょう威い神じんを放はなちて、 すなはち八方はっぽう上じょう下げのもろもろの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくに遍へんす。 天てん地ちすなはちみなためにおほきに震動しんどうし、 諸天しょてん無む央数おうしゅの天てん地ち、 須しゅ弥み山せん羅ら宝ほう・摩訶まか須しゅ弥み大山だいせん羅ら宝ほう、 もろもろの天てん地ち、 大界だいかい・小しょう界かい、 そのなかの諸しょ有うの大だい泥ない犁り・小しょう泥ない犁り、 もろもろの山林せんりん・渓谷けいこく・幽ゆう冥みょうの処ところ、 みなすなはち大だい明みょうにして、 ことごとくみなおほきに開かい闢びゃくす。

○阿難未ダルニ↠起タ、无量清浄仏便チ大ニ放チテ↢光明威神ヲ↡、則チ遍ス↢八方上下0284ノ諸ノ無央数ノ仏国ニ↡。天地則チ皆為ニ大ニ震動シ、諸天无央数ノ天地、須弥山羅宝・摩訶須弥大山羅宝、諸ノ天地、大界・小界、其ノ中ノ諸有ノ大泥犁・小泥犁、諸ノ山林・渓谷・幽冥之処、皆則チ大明ニシテ、悉ク*皆大ニ開闢ス。

すなはち阿あ難なん、 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん等とう、 諸天しょてん・帝王たいおう・人民にんみん、 ことごとくみな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの国こく土どの七宝しっぽうを見みをはりて、 心こころみなおほきに歓かん喜ぎし踊ゆ躍やくして、 ことごとく起たちて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつのために礼らいをなし、 頭ず脳のうをもつて地じに著つけて、 みな南無なも無む量りょう清浄しょうじょう三さん藐みゃく三さん仏ぶっ陀だといふ。

●則チ阿難、諸ノ菩薩・阿羅漢等、諸天・帝王・人民、悉ク皆見↢无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ国土ノ七宝ヲ↡已リテ、心皆大ニ歓喜シ踊躍シテ、悉ク起チテ為ニ↢无量清浄仏ノ↡作シ↠礼ヲ、以テ↢頭脳ヲ↡著ケテ↠地ニ、皆言フ↢南無無量清浄三藐三仏陀ト↡。

無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの放はなてる光こう明みょうに威い神じんありて、 すでにもろもろの無む央数おうしゅの天てん・人民にんみんおよび蜎けん飛ぴ蠕動ねんどうの類たぐい、 みなことごとく無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの光こう明みょうを見みたてまつるに、 慈じ心しんをもつて歓かん喜ぎして善ぜんをなさざるものなし。 諸しょ有うの泥ない犁り・禽きん獣じゅう・薜茘へいれい、 諸しょ有うの考こう治じ勤ごん苦くの処ところ、 すなはちみな休止くししてまた治じせず、 憂苦うくを解げ脱だつせざるものなし。

●无量清浄仏ノ放テル*光明ニ威神アリテ、已ニ諸ノ無央数ノ天・人民及ビ蜎飛蠕動之類、皆悉ク見タテマツルニ↢无量清浄仏ノ光明ヲ↡、莫シ↧不ル↢慈心ヲモテ歓喜シテ作サ↟善ヲ者↥。諸有ノ泥犁・禽獣・薜茘、諸有ノ考治勤苦之処、則チ皆休止シテ不↢復治セ↡、莫シ↧不ル↣解↢脱セ憂苦ヲ↡者↥。

諸しょ有うの盲者もうじゃはすなはちみな視みることを得え、 もろもろの跛は躄びゃく蹇者けんじゃは、 すなはちみな走はしり行ゆくことを得え、 もろもろの病びょう者しゃはすなはちみな愈いえて起たち、 もろもろの尫者おうしゃはすなはちみな強健ごうごんに、 愚痴ぐち者しゃはすなはちみなさらに黠がち慧えに、 諸しょ有うの婬泆いんいつ・瞋しん怒ぬ者しゃは、 みなことごとく慈じ心しんをもつて善ぜんをなし、 諸しょ有うの毒どくを被こうむるものは毒どくみな行めぐらず、 鍾しゅ鼓こ・琴瑟きんしつ・箜篌くご楽がっ器き諸しょ伎ぎは鼓こせざるにみなおのづから音おん声じょうをなし、 婦ふ女にょの珠環しゅかんはみなおのづから声こえをなし、 百鳥ひゃくちょう畜ちく獣じゅうみなおのづから悲ひ鳴みょうす。

●諸有ノ盲者ハ則チ皆得↠視ルコトヲ、諸ノ跛躄蹇者ハ、則チ皆得↢走リ行クコトヲ↡、諸ノ病者ハ則チ皆愈エテ起チ、諸ノ尫者ハ則チ皆強健ニ、愚痴者ハ則チ皆更ニ黠慧ニ、諸有ノ婬*泆・瞋怒者ハ、皆悉ク慈心ヲモテ作シ↠善ヲ、諸有ノ被ル↠毒ヲ者ハ毒皆不↠行メグラ、鍾鼓・琴瑟・箜篌楽器諸伎ハ不ルニ↠鼓セ皆自ラ作シ↢音声ヲ↡、婦女ノ珠環ハ皆自ラ作シ↠声ヲ、百鳥畜獣皆自ラ悲鳴ス。

この時ときに当あたりて、 歓かん喜ぎして過度かどを得えざるものなし。 すなはち時ときに爾に日にち、 諸しょ仏国ぶっこく中ちゅうの諸天しょてん・人にん天てん上じょうの華け香こうを持もちて来きたり下くだり、 虚こ空くうのなかにおいてことごとくみな諸仏しょぶつおよび無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの上うえに供く養ようし散さんぜざるはなし。 諸天しょてんおのおのともにおほきに万種まんじゅ自じ然ねんの伎ぎ楽がくをなして、 諸仏しょぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんを楽たのしましむ。 この時ときに当あたりて、 はなはだ快け楽らくすることいふべからず。

●当リテ↢是之時ニ↡、莫シ↧不ル↣歓喜シテ得↢過度ヲ↡者↥。則チ時ニ*爾日、諸仏国中ノ諸天・人莫シ↠不ルハ↫持チテ↢天上ノ華香ヲ↡来リ下リ、於テ↢虚空ノ中ニ↡悉ク皆供↩養シ散0285ゼ↪諸仏及ビ无量清浄仏ノ上ニ↨。諸天各ノ共ニ大ニ作シテ↢万種自然ノ伎楽ヲ↡、楽マシム↢諸仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ヲ↡。当リテ↢是之時ニ↡、甚ダ快楽スルコト不↠可カラ↠言フ。

仏ぶつ、 阿あ難なん・阿あ逸いつ菩ぼ薩さつらに告つげたまはく、 われ無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつおよびもろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かんの国こく土どの自じ然ねんの七宝しっぽうを説とくに、 まさに異いあることなきやと。

○仏告ゲタマハク↢阿難・阿逸菩薩等ニ↡、我説クニ↢无量清浄仏及ビ諸ノ菩薩・阿羅漢ノ国土ノ自然ノ七宝ヲ↡、当ニ無キ↠有ルコト↠異乎ト。

阿あ難なん長じょう跪き叉手しゃしゅしてまうさく、 仏ぶつ、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国こく土どの快け善ぜんなることを説ときたまふ。 仏ぶつの説とくところのごとくひとつも異ことなることあることなしと。

○阿難長跪叉手シテ言ク、仏説キタマフ↢無量清浄仏ノ国土ノ快善ナルコトヲ↡。如ク↢仏ノ所ノ↟説ク无シト↠有ルコト↢一ツモ異ナルコト↡。

仏ぶつのたまはく、 われ無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの功く徳どく、 国こく土どの快け善ぜんを説とかんに、 昼ちゅう夜や一劫いっこうすともなほまたいまだ竟おへず。 われただなんぢらがために小すこしくこれを説とくのみと。

○仏言ク、我説カムニ↢無量清浄仏ノ功徳、国土ノ快善ヲ↡、昼夜一劫ストモ尚復未ダ↠竟ヘ。我但為ニ↢若ナンヂ曹ラガ↡小シク説ク↠之ヲ耳ト。

二 Ⅴ ⅴ 十方来生

阿あ逸いつ菩ぼ薩さつすなはち長じょう跪き叉手しゃしゅして、 仏ぶつに問とひたてまつりてまうさく、 今仏こんぶつの国くにはこの間けんよりまさにいくばくの阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつありてか無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべき。 願ねがはくはこれを聞きかんと。

○阿逸菩薩則チ長跪叉手シテ、問ヒタテマツリテ↠仏ニ言ク、今仏ノ国ハ従リ↢是ノ間↡当ニキ↧有リテカ↢幾クノ阿惟越致ノ菩薩↡往↦生ス无量清浄仏ノ国ニ↥。願クハ聞カムト↠之ヲ。

仏ぶつのたまはく、 なんぢ知しらんと欲ほっせば、 あきらかに聴ききて心しん中ちゅうに著つけよと。 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつまうさく、 教きょうを受うけんと。

●仏言ク、若欲セバ↠知ラムト者、明カニ聴キテ著ケヨト↢心中ニ↡。阿逸菩薩言ク、受ケムト↠教ヲ。

仏ぶつのたまはく、 わが国くによりまさに七しち百ひゃく二に十じゅう億おくの阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつありて、 みな無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。 ひとりの阿あ惟ゆい越おっ致ちの菩ぼ薩さつは、 前ぜん後ご無む央数おうしゅの諸仏しょぶつを供く養ようし、 もつて次ついで弥み勒ろくのごとし。 みなまさに作さ仏ぶつすべし。 およびその余よのもろもろの小しょう菩ぼ薩さつの輩ともがらは、 無む央数おうしゅにしてまた計かぞふべからず、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○仏言ク、従リ↢我ガ国↡当ニシ↧有リテ↢七百二十億ノ阿惟越致ノ菩薩↡、*皆往↦生ス無量清浄仏ノ国ニ↥。一ノ阿惟越致ノ菩薩者、前後供↢養シ无央数ノ諸仏ヲ↡、以テ次イデ如シ↢弥勒ノ↡。皆当ニシ↢作仏ス↡。及ビ其ノ余ノ諸ノ小菩薩ノ輩者、無央数ニシテ不↠可カラ↢復計フ↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつに告つげたまはく、 ただわが国こく中ちゅうのもろもろの菩ぼ薩さつのみまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべきにあらず。 他た方ほう異い国こくにまた仏ぶつましましてまたかくのごとし。

○仏告ゲタマハク↢阿逸菩薩ニ↡、不ズ↤但我ガ国中ノ諸ノ菩薩ノミ当ニキニ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。他方異国ニ復有シテ↠仏亦復如シ↠是クノ。

第一だいいちの仏ぶつを光遠こうおん炤しょうと名なづく。 その国くにに百ひゃく八はち十じゅう億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○第一ノ仏ヲ名ク↢光遠*炤ト↡。其ノ国ニ有リ↢百八十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい二にの仏ぶつあり、 仏ぶつを宝ほう積しゃくと名なづく。 その国くにに九く十じゅう億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第二ノ仏アリ、仏ヲ名ク↢宝積ト↡。其ノ国ニ有リ↢九十億ノ菩薩↡、皆当0286ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第三だいさんの仏ぶつを儒じゅ無垢むくと名なづく。 二に百ひゃく二に十じゅう億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第三ノ仏ヲ名ク↢儒無垢ト↡。有リ↢二百二十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい四しの仏ぶつを無む極ごく光こう明みょうと名なづく。 その国くにに二に百ひゃく五ご十じゅう億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第四ノ仏ヲ名ク↢無極光明ト↡。其ノ国ニ有リ↢二百五十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい五ごの仏ぶつを於世おせ無む上じょうと名なづく。 その国くにに六ろっ百ぴゃく億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第五ノ仏ヲ名ク↢於世无上ト↡。其ノ国ニ有リ↢六百億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第六だいろくの仏ぶつを勇光ゆうこうと名なづく。 その国くにに万まん四し千せんの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第六ノ仏ヲ名ク↢勇光ト↡。其ノ国ニ有リ↢万四千ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第七だいしちの仏ぶつを具ぐ足そく交きょう絡らくと名なづく。 その国くにに十じゅう四し億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第七ノ仏ヲ名ク↢具足交絡ト↡。其ノ国ニ有リ↢十四億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第八だいはちの仏ぶつを雄おう慧え王おうと名なづく。 その国くにに八はちの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第八ノ仏ヲ名ク↢雄慧王ト↡。其ノ国ニ有リ↢*八ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス无量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい九くの仏ぶつを多た力りき無過むか者しゃと名なづく。 その国くにに八はっ百ぴゃく一いち十じゅう億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第九ノ仏ヲ名ク↢多力無過者ト↡。其ノ国ニ有リ↢八百一十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい十じゅうの仏ぶつを吉きち良りょうと名なづく。 その国くにに万億まんおくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第十ノ仏ヲ名ク↢吉良ト↡。其ノ国ニ有リ↢万億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス无量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい十じゅう一いちの仏ぶつを慧え弁べんと名なづく。 その国くにに万まん二に千せんの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第十一ノ仏ヲ名ク↢慧弁ト↡。其ノ国ニ有リ↢万二千ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい十じゅう二にの仏ぶつを無む上じょう華けと名なづく。 その国くににもろもろの菩ぼ薩さつあり、 無む央数おうしゅにしてまた計かぞふべからず。 みな阿あ惟ゆい越おっ致ちなり。 みな智慧ちえ勇ゆう猛みょうにして、 おのおの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつを供く養ようしをはりて、 一いち時じにともに心こころに願がんじて往おう生じょうせんと欲ほっして、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに生しょうずべし。

○他方異国ノ第十二ノ仏ヲ名ク↢*無上華ト↡。其ノ国ニ有リ↢諸ノ菩薩↡、无央数ニシテ不↠可カラ↢*復計フ↡。皆阿惟越致ナリ。皆智慧勇猛ニシテ、各ノ供↢養シ無央数ノ諸仏ヲ↡*已リテ、一時ニ倶ニ心ニ願ジテ欲シテ↢往*生セムト↡、皆当ニシ↠生ズ↢无量清浄仏ノ国ニ↡。

他た方ほう異い国こくの第だい十じゅう三さんの仏ぶつを楽らく大だい妙みょう音おんと名なづく。 その国くにに七しち百ひゃく九く十じゅう億おくの菩ぼ薩さつあり、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。

○他方異国ノ第十三ノ仏ヲ名ク↢楽大妙音ト↡。其ノ国ニ有リ↢七0287百九十億ノ菩薩↡、皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。

仏ぶつのたまはく、 このもろもろの菩ぼ薩さつはみな阿あ惟ゆい越おっ致ちなり。 もろもろの比丘びく僧そう中ちゅうの小しょう菩ぼ薩さつの輩ともがらに及およぶまで無む央数おうしゅなり。 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし。 独ひとりこの十じゅう四し仏国ぶっこくのなかのもろもろの菩ぼ薩さつのみまさに往おう生じょうすべきにあらず。 すべて八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの仏国ぶっこくのもろもろの菩ぼ薩さつの輩ともがら、 おのおのかくのごとし、 みなまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし、 それ無む央数おうしゅなり。 すべてともに往ゆきて無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに会えす、 おほきに衆しゅ多たにしてまた計かぞふべからず↡。

○仏言ク、是ノ諸ノ菩薩ハ皆阿惟越致ナリ。諸ノ比丘僧中ノ及ブマデ↢小菩薩ノ輩ニ↡无央数ナリ。皆当ニシ↣往↢生ス無量清浄仏ノ国ニ↡。不ズ↣独リ是ノ十四仏国ノ中ノ諸ノ菩薩ノミ当ニキニ↢往生ス↡也。都テ八方上下ノ無央数ノ仏国ノ諸ノ菩薩ノ輩、各各如シ↠是クノ、皆当ニシ↣往↢生ス无量清浄仏ノ国ニ↡、*其無央数ナリ。都テ共ニ往キテ会ス↢無量清浄仏ノ国ニ↡、大ニ衆多ニシテ不↠可カラ↢復計フ↡。

われただ八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの仏ぶつの名みょう字じを説とかんに、 昼ちゅう夜や一劫いっこうすともなほいまだ竟おへず。 われただまた仏国ぶっこくのもろもろの比丘びく僧そうのもろもろの菩ぼ薩さつのまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに往おう生じょうすべし人数にんじゅを説とかんに、 これを説とくこと一劫いっこうにして休止くしせざるもなほいまだ竟おへず。 われただなんぢらがために総攬そうらんしてすべて小すこしくこれを説とくのみと。

○我但説カムニ↢八方上下ノ無央数ノ仏ノ名字ヲ↡、昼夜一劫ストモ尚未ダ↠竟ヘ。我但復説カムニ↧仏国ノ諸ノ比丘僧ノ衆ノ菩薩ノ当ニキ↣往↢生ス无量清浄仏ノ国ニ↡人数ヲ↥、説クコト↠之ヲ一劫ニシテ不ルモ↢休止セ↡尚未ダ↠竟ヘ。我但為ニ↢若ナンヂ曹ラガ↡総攬シテ都テ小シク説ク↠之ヲ耳ト。

三 流通分
  Ⅰ 弥勒領解

【31】仏ぶつ、 阿あ難なん・阿あ逸いつ菩ぼ薩さつらに語かたりたまはく、 それ世せ間けんの帝王たいおう・人民にんみん・善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん、 前ぜん世せ宿命しゅくみょうに善ぜんを行ぎょうじて致いたすところの相禄そうろく、 すなはちまさに無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの声みなを聞ききて、 慈じ心しんをもつて歓かん喜ぎすべし。 われこれに代かわりて喜よろこばんと。 仏ぶつのたまはく、 それ▼善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにんありて、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの声みなを聞きき、 慈じ心しんをもつて歓かん喜ぎして一いち時じに踊ゆ躍やくし、 心しん意い清浄しょうじょうに、 衣え毛もうために起たちて、 涙なみだ出いづるものは、 みな前ぜん世せ宿命しゅくみょうに仏道ぶつどうをなせること他た方ほう仏ぶつのごとく、 もと菩ぼ薩さつにして凡人ぼんにんにあらず。

○仏語リタマハク↢阿難・阿逸菩薩等ニ↡、其レ世間ノ帝王・人民・善男子・善女人、前世宿命ニ行ジテ↠善ヲ所ノ↠致ス相禄、*廼チ当ニシ↧聞キテ↢无量清浄仏ノ声ヲ↡、慈心ヲモテ歓喜ス↥。我代リテ↠之ニ喜セムト。仏言ク、其レ有リテ↢善男子・善女人↡、聞キ↢無量清浄仏ノ声ヲ↡、慈心ヲモテ歓喜シテ一時ニ踊躍シ、心意清浄ニ、衣毛為ニ起チテ、*涙出ヅル者ハ、皆前世宿命ニ作セルコト↢仏道ヲ↡若ク↢他方仏ノ↡、故モト菩薩ニシテ非ズ↢凡人ニ↡。

▼それ人民にんみん、 男なん子し・女人にょにんありて、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの声みなを聞ききて仏ぶつありと信しんぜざるものは、 仏ぶつの経きょう語ごを信しんぜず、 比丘びく僧そうあることを信しんぜず、 心しん中ちゅうに狐疑こぎしてすべて信しんずるところなきものは、 みなもと悪道あくどうのなかより来きたり生しょうじて、 愚ぐ蒙もうにして解さとらず、 宿命しゅくみょうの殃悪おうあくいまだ尽つきず、 いまだまさに度ど脱だつを得うべからず。 ゆゑに心しん中ちゅうに狐疑こぎして、 信向しんこうせざるのみと。

●其レ有リテ↢人民、男子・女人↡、聞キテ↢無量清浄仏ノ声ヲ↡不ル↠信ゼ↠有リト↠仏者ハ、不↠信ゼ↢仏ノ経語ヲ↡、不↠信ゼ↠有ルコトヲ↢比丘僧↡、心中ニ狐疑シテ都テ无キ↠所↠信ズル者ハ、皆故モト従リ↢悪道ノ中↡来リ生0288ジテ、愚*蒙ニシテ不↠解ラ、宿命ノ殃悪未ダ↠尽キ、未ダ↠当ニカラ↠得↢度脱ヲ↡。故ニ心中ニ狐疑シテ、不ル↢信向セ↡耳ト。

仏ぶつのたまはく、 われなんぢらに語かたらん。 なんぢらまさになすべきところの善法ぜんぽうは、 みなまさに奉ぶ行ぎょうしてこれを信しんずべし、 われ般はつ泥洹ないおんして去さりて後のちといふゆゑをもつてすることを得うることなかれ。 なんぢらおよび後世ごせの人ひと、 またわれ無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにあることを信しんぜずといふことを得うることなかれ。 われことさらになんぢらをしてことごとく無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国こく土どを見みしむ。 まさになすべきところのものは、 なんぢみづからこれを求もとめよ。

○仏言ク、我語ラム↢若ナンヂ曹ラニ↡。若ナンヂ曹ラ所ノ↠当ニキ↠作ス善法ハ、皆当ニシ↢奉行シテ信ズ↟之ヲ、無レ↠得ルコト↠以テスルコトヲ↢我般泥洹シ去リテ後トイフ故ヲ↡。若ナンヂ曹ラ及ビ後世ノ人、無レ↠得ルコト↣復言フコトヲ↢我不ト↟信ゼ↠有ルコトヲ↢无量清浄仏ノ国↡。我故ラニ令ム↣若ナンヂ曹ラヲシテ悉ク見↢無量清浄仏ノ国土ヲ↡。所ノ↠当ニキ↠為ス者ハ、若自ラ求メヨ↠之ヲ。

われつぶさになんぢらがために経きょう戒かい順じゅん法ぽうを道説どうせつす。 なんぢらをしてまさに仏ぶっの法ほうのごとくこれを持たもつべし、 毀き失しつを得うることなかれ。 われこの経きょうを持たもちもつてなんぢらに累るいす。 なんぢらまさに堅かたくこれを持たもつべし、 みだりにこの経きょう法ぼうを増減ぞうげんするをなすことを得うることなかれ。

●我具ニ為ニ↢汝曹ラガ↡道↢説ス経戒*順法ヲ↡。若ナンヂ曹ラヲシテ当ニシ↧如ク↢仏ノ法ノ↡持ツ↞之ヲ、无レ↠得ルコト↢毀失ヲ↡。我持チ↢是ノ経ヲ↡以テ累ス↢汝曹ラニ↡。汝曹ラ当ニシ↢堅ク持ツ↟之ヲ、無レ↠*得ルコト↠為スコトヲ↣妄ニ増↢減スルヲ是ノ経法ヲ↡。

三 Ⅱ 特留此経

われ般はつ泥洹ないおんし去さりて後のち、 経きょう道どう留止るしすること千歳せんざいせん。 千歳せんざいの後のち、 経きょう道どう断絶だんぜつせん。 心こころの所願しょがんのごとくありてみな道どうを得うべしと。

○我般泥洹シ去リテ後、経道留*止スルコト千歳セム。千歳ノ後、経道断*絶セム。在リテ↢心ノ所願ノゴトク↡皆可シト↠得↠道ヲ。

仏ぶつのたまはく、 師しは人ひとを開導かいどうするに、 耳に目もく・智慧ちえ明みょう達だつにして、 人ひとを度ど脱だつしてよく泥洹ないおんの道どうに合がっすることを得えしむ。 つねにまさに仏ぶつに慈じ孝きょうすること父母ぶものごとくすべし。 つねに師しの恩おんを念ねんじてまさに念ねんじて断絶だんぜつせざれば、 すなはち道どうを得うること疾はやからんと。

●仏言ク、師ハ開↢導スルニ人ヲ↡、耳目・智慧明達ニシテ、度↢脱シテ人ヲ↡令ム↠得↣善ク*合スルコトヲ↢泥洹之道ニ↡。常ニ当ニシ↧慈↢孝スルコト於仏ニ↡如クス↦父母ノ↥。常ニ念ジテ↢師ノ恩ヲ↡当ニ念ジテ不レバ↢断絶セ↡、則チ得ルコト↠道ヲ疾カラムト。

仏ぶつのたまはく、 天てん下げに仏ぶつましますははなはだ値あふことを得えがたし。 人ひと師し法ほうの経きょう語ごの深ふかきことを信受しんじゅすることあるは、 また値あふことを得えがたし。 もしは沙門しゃもんありて師しのごとく人ひとのために仏ぶっ経きょうを説とくもの、 はなはだ値あふことを得えがたし。

○仏言ク、天下ニ有ス↠仏者甚ダ難シ↠得↠値フコトヲ。人有ル↣信↢受スルコト師法ノ経語ノ深キコトヲ↡者、亦難シ↠得↠値フコトヲ。若シハ有リテ↢沙門↡若ク↠師ノ為ニ↠人ノ説ク↢仏経ヲ↡者、甚ダ難シ↠得↠値フコトヲ。

仏ぶつこの経きょうを説ときたまふ時とき、 すなはち万まん二に千億せんおくの諸天しょてん・人民にんみんみな天眼てんげんを得えて徹てっ視しし、 ことごとく一心いっしんにみな菩ぼ薩さつ道どうをなす。 すなはち二に百ひゃく二に十じゅう億おくの諸天しょてん・人民にんみんみな阿那あな含道ごんどうを得え、 すなはち八はっ百ぴゃくの沙門しゃもんみな阿羅あら漢道かんどうを得え、 すなはち四し十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 みな阿あ惟ゆい越おっ致ちを得えたりと。

○仏説キタマフ↢是ノ経ヲ↡時、則チ万二千億ノ諸天・人民皆得テ↢天眼ヲ↡徹視シ、悉ク一心ニ皆為ス↢菩薩道ヲ↡。則チ二百二十億ノ諸天・人民皆得↢阿那含道ヲ↡、則チ八百ノ沙門皆得↢阿羅漢道ヲ↡、則チ四十億ノ菩薩、皆得タリト↢阿惟越致ヲ↡。

仏ぶつ、 経きょうを説ときをはりたまふに、 もろもろの菩ぼ薩さつ・阿羅あら漢かん・諸天しょてん・帝王たいおう・人民にんみん、 みなおほきに歓かん喜ぎし、 前すすみ趣おもむきて仏ぶつのために礼らいをなし、 仏ぶつを遶めぐること三帀さんぞうして、 頭ず面めんをもつて仏足ぶっそくに著つけて去さりにき。

○仏説キ↠経ヲ已リタマフニ、諸ノ菩薩・阿羅漢・諸天・帝王・人民、皆大ニ歓喜シ、前ミ趣キテ為ニ↠仏ノ作シ↠礼ヲ、遶ルコト↠仏0289ヲ三帀シテ、以テ↢頭面ヲ↡著ケテ↢仏足ニ↡而去リニキ。

 

*仏説ぶっせつ無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等覚どうがく経きょう 巻かん*第だい四し

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
底本は◎高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本。 Ⓐ高麗版(初雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ元版(普寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本 と対校。 ª全部対校º 琉→ⒷⒸⒹ瑠、 項→ⒷⒸⒹ頂、 虎→ⒷⒸⒹ琥
佛…四13字 ⒷⒸⒹになし
後…譯12字 ⒷⒸⒹになし
仏国→Ⓓ国界
絶→ⒷⒸⒹ断
狂→ⒷⒸⒹ羸
刑→Ⓐ形
犁→Ⓑ黎
類属→ⒷⒸⒹ属転
恒→ⒷⒸⒹ但
諛→Ⓑ諭
入→Ⓑ人
悪→ⒷⒸⒹ怨
枉→Ⓑ抂
践→◎ⒶⒷ浅
捐→Ⓒ損
紹→ⒷⒹ殆→Ⓒ訟
蒙聾→ⒷⒸⒹ朦朧
欲益多→ⒸⒹ殺盜無
里→ⒷⒸⒹ廛
仇→ⒷⒸⒹ讐
命→ⒸⒹ念
毒→ⒷⒸⒹ恚
摩→ⒸⒹ靡
賜→ⒸⒹ儩
趣→Ⓓ趨
衆→ⒷⒸⒹ諸
相→ⒷⒸⒹ相[仮]
貴→ⒸⒹ貴[長]
婬→ⒷⒸⒹ恣
厭→Ⓐ懕
繋→◎ⒷⒸⒹ撃
迫→Ⓑ拍
行→ⒸⒹ婬
畏→Ⓑ思
記→ⒷⒸⒹ紀
度→ⒷⒸⒹ解
比→ⒷⒸⒹ比[如]
言→ⒸⒹ大
捲→ⒷⒸⒹ権
無→ⒷⒸⒹ不
儩→ⒶⒷⒸ賜
讁→Ⓐ擿→Ⓑ適
之→◎ⒶⒸⒹ乏
其有→ⒷⒸⒹ有其
如→Ⓐ而
惰→ⒷⒸ堕
反→ⒷⒸⒹ返
復→Ⓑ覆
魯→Ⓓ虜
抵→Ⓐ詆
眄→ⒶⒷ吁→ⒸⒹ盱
喜→ⒷⒸⒹ善
職→Ⓒ識
卒→ⒷⒸⒹ酬
濛澒→ⒷⒸⒹ蒙冥
為大→ⒷⒸⒹ大為
躬→Ⓐ射
窕→ⒷⒸⒹ窈
追→Ⓑ退
知見→ⒷⒸⒹ見知
如→ⒶⒷⒸ而
更具→ⒶⒹ具更
燋→ⒷⒸⒹ焦
奉→ⒷⒸⒹ受
上→Ⓐ人
殆→ⒸⒹ怠
勱→ⒷⒸⒹ励
斂→Ⓒ歛
常→ⒷⒸⒹ当
円→ⒷⒸⒹ図
後→Ⓑ彼
絶→ⒷⒸⒹ犯
於→ⒶⒷⒸⒹ於[在]
物→Ⓓ仏
為→ⒷⒸⒹ作
人→ⒸⒹ[世]人
怠→ⒸⒹ詒
室家→ⒷⒸⒹ家室
各→Ⓐ又
歓→◎勧
止→ⒷⒸⒹ正
里→ⒷⒸⒹ廛
凌→Ⓐ臨→ⒷⒸⒹ陵
歳→ⒸⒹ穢
抂→ⒷⒸⒹ枉
得→ⒷⒸⒹ得[度]
甚→ⒷⒸⒹ其
承→ⒷⒸⒹ教
令悉→Ⓓ悉令
皆→◎Ⓐ雨
光→ⒸⒹ大
泆→ⒸⒹ泆[者皆修梵行]
爾日→ⒷⒸⒹ念曰
皆→ⒷⒸⒹ皆[当]
炤→ⒷⒸⒹ照
八→Ⓓ八[十億]
無上華→ⒷⒸⒹ仏
復→Ⓐ得
已→◎ⒶⒷ以
生 ⒷⒸⒹになし
其→Ⓐ甚
廼→Ⓓ乃
涙→◎ⒶⒷ抜
蒙→ⒷⒸⒹ朦
順→ⒷⒸⒹ慎
得→ⒸⒹ以
止→Ⓐ心
絶→ⒸⒹ絶[我皆慈哀特留是経法止住百歳百歳中竟乃休止絶]
合→◎Ⓐ舎
仏説 ⒷⒸになし
第四→ⒷⒸⒹ下