無量寿経むりょうじゅきょう優婆うば提舎だいしゃ願生偈がんしょうげちゅう かん

 

解義分

【44】 ろんじてはく

論曰。

 原漢文 (真宗聖教全書) の底本は本派本願寺蔵建長八年宗祖加点本。 本派本願寺蔵鎌倉時代刊本、 宗教大学蔵嘉永年間刊本、 本派本願寺蔵版、 大派依用十行本と対校。

 これはこれ*解義げぎぶんなり。 このぶんのなかに、 に十じゅうあり。 一には*がんたい、 二には*かん生信しょうしん、 三には*観行かんぎょう体相たいそう、 四には*浄入じょうにゅう願心がんしん、 五には*ぜんぎょうせっ、 六には*だいしょう、 七には*じゅんだいもん、 八には*名義みょうぎ摂対せったい、 九には*がん成就じょうじゅ、 十には*利行りぎょう満足まんぞくなり

解義分 ¬浄土論¼ の長行じょうごう (散文) の部分。
願偈大意 「願生偈」 の大意をあらわす。
起観生信 観察かんざつによって信を生ずる。 ここでは五念門について略説する。 →ねんもん
観行体相 観察の対象となる浄土、 仏および菩薩の荘厳相を明かす。 観察体相ともいう。 →荘厳しょうごん
浄入願心 浄土の荘厳のすべては、 法蔵菩薩の清浄しょうじょう願心におさまることを示す。
善巧摂化 菩薩のたくみな利他の救済活動をあらわす。
離菩提障 三種の菩提の障害を除く心を説く。
順菩提門 三種の菩提の門に随順ずいじゅんする心を説く。
名義摂対 善巧摂化・離菩提障・順菩提門に明かすところの名目みょうもくを摂めて対比する。
願事成就 浄土願生の事業の成就について明かす。
利行満足 自利と利他の行が満足していることを明かす。 →自利じり利他りた

此是解義分。此分中義有↢十重↡。一者願偈大意、二者起観生信、三者観行躰相、四者浄入願心、五者善巧摂化、六者離菩提鄣、七者順菩提門、八者名義摂対、九者願事成就、十者利行満足。

ろん」 とは*なり。 いふこころは所以ゆえんするなり

 すじ道を通して説き明かすこと。 順序だてて解釈していくこと。

「論」者議也。言議↢偈所以↡也。

わつ」 とはことばなり。 しもしょす。 これは議釈ぎしゃくすることばなり。 ゆゑに 「ろんじてはく」 といふ

「曰」者詞也。指↢下諸句↡、是議↢釈偈↡詞也。故言↢「論曰」↡。

◎解義分 願偈大意章

【45】がんたいとは、

このがんはなんのをかかす。 かの*安楽あんらくかいかんじて*阿弥陀あみだ如来にょらいたてまつることをげんす。 かのくにしょうぜんとがんずるがゆゑなり

願偈大意者、

此願偈明↢何義↡、示↧現観↢彼安楽世界↡、見↢阿弥陀如来↡、願↞生↢彼国↡故。

示現AB願生c 返り点は聖教全書まま。 「A、 B、 cに生ぜんと願ずることを示現する」

◎解義分 起観生信章

【46】かん生信しょうしんとは、 このぶんのなかにまた二じゅうあり。 一には*念力ねんりきしめす。 二には*念門ねんもんいだ

五念力 五念門のはたらきのことで、 信を生ぜしめるはたらきのあることをいう。 →ねんもん

起観生信者、此分中又有↢二重↡。一者示↢五念力↡、二者出↢五念門↡。

◎解義分 ○起観生信章  五念力

【47】念力ねんりきしめすとは、

いかんがかんじ、 いかんが信心しんじんしょうずる。 もし善男ぜんなん善女人ぜんにょにん念門ねんもんしゅしてぎょう成就じょうじゅしぬれば、 *畢竟ひっきょうじて安楽あんらくこくしょうじて、 かの阿弥陀あみだぶつたてまつることを

示↢五念力↡者、

云何観云何生↢信心↡。若善男子・善女人、修↢五念門↡行成就、畢竟得↧生↢安楽国土↡見↦彼阿弥陀仏↥。

◎解義分 ○起観生信章  五念門

【48】念門ねんもんいだすとは、

なんらかねんもん。 一には礼拝らいはいもん、 二には讃嘆さんだんもん、 三にはがんもん、 四には観察かんざつもん、 五にはこうもんなり

出↢五念門↡者、

何等五念門。一者拝門、二者讃嘆門、三者作願門、四者観察門、五迴向門。

 諸本では 「者」 の字あり。

 「もん」 とは入出にゅうしゅつなり。 ひともんればすなはち入出にゅうしゅつ*無礙むげなるがごとし。 さきの四ねんはこれ安楽あんらくじょうもんなり。 のちの一ねんはこれ慈悲じひ教化きょうけづるもんなり

「門」者入出義也、如↢人得↠門則入出无↡。前四念是入↢安楽浄土↡門、後一念是出↢慈悲教化↡門。

◎解義分 ○起観生信章 2 五念門 1. 礼拝門

【49】 いかんが*礼拝らいはいする。 *身業しんごうをもつて阿弥陀あみだ*如来にょらい*おう*しょうへん*礼拝らいはいしたてまつる

礼拝したてまつる 親鸞聖人は 「礼拝したまひき」 (加点本訓) と読まれた。

云何拝、身業↢拝阿弥陀如来応正遍知↡。

 諸仏しょぶつ如来にょらいに、 とくりょうあり。 とくりょうなるがゆゑに*徳号とくごうまたりょうなり。 もしつぶさにだんぜんとほっせば、 ひつすることあたはず。 ここをもつて諸経しょきょうに、 あるいは*みょうげ、 あるいは三ごうげたり。 けだし*至宗ししゅうぞんずるのみ。 あにここにつくさんや。 いふところの三ごうは、 すなはちこれ如来にょらいおうしょうへんなり

徳号 どくのみ名。
十名 如来の十号のこと。 →如来にょらい
至宗 きわめて主要なもの。

諸仏如来徳有↢无量↡、徳无量故徳號亦无量。若欲↢具談↡、紙筆不↠能↠載也。是以諸経、或挙↢十名↡、或騰↢三號↡、盖存↢至宗↡而已、豈此尽耶。所↠言三號、即此如来・応・正遍知也。

如来にょらい」 とは、 *法相ほっそうのごとくさとり、 法相ほっそうのごとくき、 諸仏しょぶつ*安穏道あんのんどうよりきたるがごとく、 このぶつもまたかくのごとくきたりて、 また*後有ごうのなかにらず。 ゆゑに如来にょらいづく

法相 一切の事物の真実のすがた。 ありのままのすがた。 真如しんにょほっしょうの理。 →真如しんにょ
安穏道 安穏は涅槃の異名。 涅槃の境界。 →はん
後有 有は迷いの生のこと。 後の世における迷いの生存。 →

「如来」者、如↢法相↡解、如↢法相↡説、如↢諸仏安穏道来↡、此仏亦如↠是、来更不↠去↢後有中↡、故名↢如来↡。

 読点位置は聖教全書まま。

おう」 とは*おうなり。 ぶつ*けっ使除尽じょじんして一切いっさい智慧ちえて、 まさ一切いっさいてん衆生しゅじょうようくべきがゆゑにおうといふなり

「応」者応供也。仏結使除尽得↢一切智慧↡、応↠受↢一切天地衆生供養↡、故曰↠応也。

 諸本では 。 「慧」 と 「恵」 は諸本それぞれに用法が一貫していない。 以下同。

しょうへん」 とは、 一切いっさい諸法しょほうじつ不壊ふえそうにしてぞうげんなりとる。 いかんが不壊ふえなる。 *心行しんぎょう処滅しょめつし、 *ごんどうぎたり。 諸法しょほう*はんそうのごとくにしてどうなり。 ゆゑにしょうへんづく。 無礙むげこうは、 さきのなかにするがごとし

心行処滅し 心の行処の止滅。 心で思いわけることができないという意。
言語の道過ぎたり 言葉で言い表すことができない。

「正遍知」者、知↢一切諸法実不壊相、不増不減↡。云何不壊、心行処滅言語道過、諸法如↢涅槃相不動↡。故名↢正遍知↡。无光義如↢前偈中解↡。

如…不動 返り点は聖教全書まま。 「…の不動なる如し」

【50】 かのくにしょうずるこころ*なすがゆゑなり

なすが 親鸞聖人は 「なさせんが」 (加点本訓) と読まれた。

為↧生↢彼国↡意↥故。

 なんがゆゑぞこれをいふとなれば、 さつほうは、 つねに*ひるよるをもつて十方じっぽう一切いっさい諸仏しょぶつらいす。 かならずしも願生がんしょうこころあるにあらず。 いまつねに願生がんしょうこころをなすべきがゆゑに、 阿弥陀あみだ如来にょらいらいしたてまつるなり

何故言↠此、菩薩之法常以↢昼三時夜三時↡↢十方一切諸仏↡、不↣必有↢願生意↡。今応↣常作↢願生意↡故、↢阿弥陀如来↡也。

◎解義分 ○起観生信章 2 五念門 2. 讃嘆門

【51】 いかんが*さんだんする。 *ごうをもつて*讃嘆さんだんしたてまつる

讃嘆したてまつる 親鸞聖人は 「讃嘆したまひき」 (加点本訓) と読まれた。

云何讃嘆、口業讃嘆。

 「さん」 とは讃揚さんようなり。 「たん」 とはたんなり。 讃嘆さんだんくちにあらざればべず。 ゆゑに 「ごう」 といふなり

「讃」者讃揚也。「嘆」者歌嘆也。讃嘆非↠口不↠宣、故曰↢「口業」↡也。

【52】 *かの如来にょらいみなしょうするに、 かの如来にょらいこうみょうそうのごとく、 かの*名義みょうぎのごとく、 如実にょじつ修行しゅぎょうして相応そうおうせんとほっするがゆゑなり

かの如来の名を… →補註5
名義 名号の意義、 いわれ。

称↢彼如来名↡、如↢彼如来光明智相↡、如↢彼名義↡、欲↢如↠実修行相応↡故。

 かの如来にょらいみなしょうす」 とは、 いはく、 無礙むげこう如来にょらいみなしょうするなり

「称彼如来名」者、謂称↢无光如来名↡也。

かの如来にょらいこうみょうそうのごとく」 とは、 ぶつこうみょうはこれ智慧ちえそうなり。 このこうみょう十方じっぽうかいらしたまふに*障礙しょうげあることなし。 よく十方じっぽう衆生しゅじょうみょう黒闇こくあんのぞくこと、 にちがつ珠光しゅこうのただ空穴くうけつのなかのあんをのみするがごときにはあらず

「如彼如来光明智相」者、仏光明是智慧相也。此光明照↢十方世界↡无↠有↢鄣↡、能除↢十方衆生无明黒闇↡、非↠如↣日・月・珠光但破↢室穴中闇↡也。

 他本では

名号破満

かの名義みょうぎのごとく、 如実にょじつ修行しゅぎょうして相応そうおうせんとほっす」 とは、 かの無礙むげこう如来にょらいみょうごうは、 よく衆生しゅじょう一切いっさいみょうし、 よく衆生しゅじょう一切いっさい*がんてたまふ

志願 往生し成仏しようとする願い。

「如彼名義欲如実修行相応」者、彼无光如来名號、能破↢衆生一切无明↡、能満↢衆生一切志願↡。

 略字 (新字) は聖教全書まま。 以下同。 (原漢文中での 「号」 には旧字 「號」 の文字コードを使用)

しかるにみなしょう*憶念おくねんすれども、 *みょうなほありて所願しょがんてざるものあり。 なんとなれば、 如実にょじつ修行しゅぎょうせず、 名義みょうぎ相応そうおうせざるによるがゆゑなり。 いかんが如実にょじつ修行しゅぎょうせず、 名義みょうぎ相応そうおうせざるとなすとならば、 いはく、 如来にょらいはこれ*実相身じっそうしんなり、 これ*物身もつしんなりとらざればなり

実相身 実相 (真如しんにょ) をさとり、 自利の徳をそなえた仏身。 →補註1
為物身 物は衆生しゅじょうの意。 衆生を救う利他の徳をそなえた仏身。 →補註1

然有↢称↠名憶念↡而、无明由存而不↠満↢所願↡者、何者、由↧不↢如実修行↡、与↢名義↡不↦相応↥故也。云何為↧不↢如実修行↡与↢名義↡不↦相応↥、謂不↠知↢如来是実相身、是為↠物身↡。

 他本では

三不知三不信

また*しゅ相応そうおうあり。 一には信心しんじんあつからず、 *ぞんずるがごとくもうずるがごときゆゑなり。 二には信心しんじん一ならず、 けつじょうなきがゆゑなり。 三には信心しんじん相続そうぞくせず、 ねんへだつるがゆゑなり。 この三展転てんでんしてあひじょうず。 信心しんじんあつからざるをもつてのゆゑにけつじょうなし。 けつじょうなきがゆゑにねん相続そうぞくせず。 またねん相続そうぞくせざるがゆゑにけつじょうしんず。 けつじょうしんざるがゆゑにしんあつからざるべし

三種の不相応あり… →補註7
存ずるがごとく… ときには有り、 ときには無くなる。 半信半疑の状態をいう。

又有↢三種不相応↡。一者信心不↠淳、若↠存若↠亡故。二者信心不↠一、无↢決定↡故。三者信心不↢相続↡、余念間故。此三句展転相成、以↢信心不↟淳故无↢決定↡、无↢決定↡故念不↢相続↡、亦可↧念不↢相続↡故不↠得↢決定信↡、不↠得↢決定信↡故心不↞淳。

これとそうせるを 如実にょじつ修行しゅぎょう相応そうおうす」 とづく。 このゆゑに論主ろんじゅ (天親)、 「一心いっしん」 と建言こんごん

与↠此相違名↢如実修行相応↡。是故論主建言↢「我一心」↡。

建言… 返り点は聖教全書まま。 「はじめに…とのたまへり」

名法相即

 ひていはく、 をばほうゆびとなす。 ゆびをもつて*つきすがごとし。 もしぶつみょうごうしょうするにすなはちがんつることをといはば、 つきゆび、 よくあんすべし。 もしつきゆびあんすることあたはずは、 ぶつみょうごうしょうすとも、 またなんぞよくがんてんや

 底本には 「日」 とあるが、 異本およびこの譬喩ひゆの典拠となっている ¬だい智度ちどろん¼ 巻九等の文では、 「月」 となっているのでこれを改めた。 以下、 同じ。

問曰。名為↢法指↡、如↢指指↟日、若称↢仏名號↡便得↠満↠願者、指↠日之指応↢能破↟闇。若指↠日之指不↠能↠破↠闇、称↢仏名號↡亦何能満↠願耶。

 嘉永年間刊本・本願時本・大派依用本では 「月」。 以下同。

こたへていはく、 諸法しょほう万差まんじゃなり。 一概いちがいすべからず。 *ほうそくするあり。 ほうするあり

名の法に即するあり 名と名によって示されるもの (法) のはたらきとが一体であるという意。

答曰。諸法萬差、不↠可↢一概↡。有↢名即↟法、有↢名異↟法。

 略字は聖教全書まま。 (原漢文中での 「万」 には旧字 「萬」 の文字コード使用。) 以下同。

ほうそくするとは、 諸仏しょぶつさつ*みょうごう*般若はんにゃ波羅はらみつ、 および*陀羅尼だらに章句しょうく*禁呪きんじゅおんとうこれなり。 禁腫きんじゅことばに、 「*日出にっしゅつ東方とうぼう乍赤さしゃくおうとうをいふがごとし。 たとひ*酉亥ゆうがいきんぎょうじて、 日出にっしゅつあずからざれども、 しゅゆることを。 またいくさくにじんむかひてただ一たびもせっのなかに 「*臨兵りんぴょう闘者とうしゃ皆陣列かいじんれつ前行ぜんぎょう」 とじゅするがごとし。 この九じゅするに*ひょうあたらざるところなり。 ¬*抱朴ほうぼく¼ これを*要道ようどうといふものなり。 また転筋こむらがえりくるしむもの、 木瓜ぼけをもつててこれを*すにすなはちえぬ。 またひとありて、 ただ木瓜ぼけぶにまたえぬ。 わがにそのしるしるなり。 かくのごとき*ごんけんにともにれり。 いはんや不可思議ふかしぎ境界きょうがいなるものをや。 *滅除薬めつじょやくつづみたとへ、 またこれ一なり。 このたとへはすでにさきあらわすゆゑにかさねてかず

禁呪の音辞 悪やわざわいをとどめるための呪文。
日出東方… 中国に古くから伝わる呪文の一種と考えられる。
酉亥に… 酉亥は午後五時頃から午後十一時頃までのこと。 日の出とは関係のないこの時刻に 「日出…」 の呪文をとなえても、 腫物がひくという意。
臨兵闘者… ¬抱朴ほうぼく¼ に出る呪文。
五兵 五種の武器。 きゅうしゅぼうげきの五。
要道 大切な教え。
熨す 上から下へじわじわとおさえていく。
近事 身近なできごと。 手近な例。
滅除薬を鼓に塗る喩へ ¬しゅ楞厳経りょうごんぎょう¼ に出る喩え。 人が毒矢をうけても滅除薬を塗った鼓の音を聞けば、 矢は抜け毒も除かれるというもの。

名即↠法者諸仏・菩薩名號・般若波羅蜜、及陀羅尼章句・禁咒・音辞等是也。如↢禁腫辞云↡、「日出東方乍赤乍黄」等句。仮使酉亥行↠禁不↠関↢日出↡而、腫得↠差。亦如↣行↠師対↠陣、但一切歯中誦↢「臨兵闘者皆陣列前行」↡。誦↢此九字↡、五兵之所↠不↠中。抱朴子、謂↢之要道↡者也。又苦↢転筋↡者、以↢木瓜↡対↠火慰↠之則愈。復有↠人、但呼↢木瓜名↡亦愈、吾身得↢其効↡也。如↠斯近事世間共知、況不可思議境界者乎。滅除薬塗↠皷之喩、復是一事。此喩已彰↠於↠前、故不↢重引↡。

禁呪音辞 区切りの中黒は聖教全書まま。
 本願寺本・大派依用本では

ほうするありとは、 ゆびつきすがごときなり

有↢名異↟法者、如↢指指↠日等名↡也。

◎解義分 ○起観生信章 2 五念門 3. 作願門

【53】 いかんが*がんする。 *しんにつねにがんし、 一心いっしんにもつぱら畢竟ひっきょうじて安楽あんらくこくおうじょうせんとねんず。 如実にょじつ*しゃ摩他また修行しゅぎょうせんとほっするがゆゑなり

心に…ゆゑなり 親鸞聖人は 「心につねに作願したまへりき。 一心に専念して畢竟じて安楽国土に往生して、 実の如く奢摩他を修行せんとおもふがゆゑにのたまへり」 (加点本訓) と読まれた。

云何作願、心常作願、一心専念畢竟往↢生安楽国土↡、欲↣如↠実修↢行奢摩他↡故。

心… 返り点は聖教全書まま。 書き下し文 「心」 の註に符合。

 「しゃ摩他また」 をやくして 「」 といふ。 「」 とは、 しんを一しょとどめてあくをなさず。 この訳名やくみょうはすなはちたいそむかざれども、 においていまだたず。 なにをもつてこれをいふとならば、 *しんたんとどむるがごときをもまたづけてとなす。 *不浄観ふじょうかんとんとどめ、 *慈悲じひかんしんとどめ、 *因縁いんねんかんとどむ。 かくのごときをもまたづけてとなす。 ひとのまさにかんとしてかざるがごときをもまたづけてとなせばなり。 ここにりぬ、 ことば*まんにしてまさしくしゃ摩他またずと。 *椿ちんしゃりょうのごときをみなづくといへども、 もしただといふときは、 いづくんぞりょうんや

心を鼻端に止むる 出入の息を数えて心の散乱をとどめるという数息観しゅそくかんのこと。 五停心観ごじょうしんかんの一。
不浄観 身や三界さんがいの不浄を観じて貪欲を離れる観法。 五停心観の一。
慈悲観 すべての衆生しゅじょうを観じて慈悲のおもいを生じ、 いかりをとどめる観法。 五停心観の一。
因縁観 すべての事物がみな因縁によって生じるという道理を観じて、 愚かさをとどめる観法。 五停心観の一。
浮漫 漠然としていて確かでないこと。
椿柘楡柳 つばき・やまぐわ・にれ・やなぎ。

訳↢「奢摩他」↡曰↠止、止者止↢心一処↡不↠作↠悪也。此訳名乃不↠乖↢大意↡於↠義未↠満、何以言↠之、如↠止↢心鼻端↡亦名為↠止。不浄観止↠貪、慈悲観止↠瞋、因縁観止↠痴、如↠是等亦名為↠止。如人将↠行、不↠行、亦名為↠止。是知止語浮漫不↣正得↢奢摩他名↡也。如↢椿・柘・楡・柳↡雖↢皆名↟木、若但云↠木安得↢楡・柳↡耶。

しゃ摩他また」 をといふは*ふくみて三のあり。 一には一心いっしんにもつぱら阿弥陀あみだ如来にょらいねんじてかのしょうぜんとがんずれば、 この如来にょらいみょうごうおよびかのこくみょうごう、 よく一切いっさいあくとどむ。 二にはかの安楽あんらく三界さんがいどうぎたり。 もしひとまたかのくにしょうずれば、 ねんしん口意くいあくとどむ。 三には阿弥陀あみだ如来にょらい*しょうがく住持じゅうじちからねん*しょうもん*辟支びゃくしぶつもとむるしんとど

 異本には 「今」 とある。

奢摩他云↠止者、合↠有↢三義↡。一者一心専念↢阿弥陀如来↡願↠生↢彼土↡、此如来名號及彼国土名號、能止↢一切悪↡。二者彼安楽土過↢三界道↡、若人亦生↢彼国↡自然止↢身口意悪↡。三者阿弥陀如来正覚住持力、自然止↧求↢声聞・辟支仏↡心↥。

 聖教全書まま。 「(三の義有る) べし」。 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「今」。

この三しゅ如来にょらい如実にょじつどくよりしょうず。 このゆゑに 「如実にょじつしゃ摩他また修行しゅぎょうせんとほっするがゆゑなり」 といへり

此三種止、従↢如来如実功徳↡生、是故言↢「欲如実修行奢摩他故」↡。

◎解義分 ○起観生信章 2 五念門 4. 観察門

【54】 いかんが*観察かんざつする。 智慧ちえをもつて*観察かんざつし、 正念しょうねんにかしこをかんず。 如実にょじつ*毘婆びばしゃ修行しゅぎょうせんとほっするがゆゑなり

観察し 親鸞聖人は 「観察したまへりき」 (加点本訓) と読まれた。

云何観察、智慧観察、正念観↠彼欲↣如↠実修↢行婆舎那↡故。

 「毘婆びばしゃ」 をやくして 「かん」 といふ。 ただひろかんといふには、 またいまだたず。 なにをもつてこれをいふとならば、 しん*無常むじょう**くう*無我むが*そうとうかんずるがごときをも、 みなづけてかんとなせばなり。 またかみ椿ちんしゃざるがごとし

九想 人の屍相についての九通りの観想。 九相ともいう。 ちょう青瘀しょうお血塗けつず膿爛のうらんかんさんこつしょうの九種をいう。

訳↢「婆舎那」↡曰↠観、但汎言↠観、義亦未↠満。何以言↠之、如↠観↢身无常・苦・空・无我・九想等↡、皆名為↠観、亦如↢上木名↡不↠得↢椿・柘↡也。

毘婆びばしゃ」 をかんといふはまた二のあり。 一には、 ここにありてそうをなしてかの三しゅ荘厳しょうごんどくかんずれば、 このどく如実にょじつなるがゆゑに、 修行しゅぎょうするものもまた如実にょじつどく如実にょじつどくとは、 けつじょうしてかのしょうずることをるなり。 二には、 またかのじょうしょうずることをれば、 すなはち阿弥陀あみだぶつたてまつり、 *未証みしょう浄心じょうしんさつ畢竟ひっきょうじて*平等びょうどう法身ほっしんしょうすることを*浄心じょうしんさつ*上地じょうじさつと、 畢竟ひっきょうじておなじく*じゃくめつ平等びょうどうるなり

未証浄心の菩薩 十地の階位のうち、 しょ以上、 七地以前の未だ平等をさとらない菩薩。 →十地じゅうじさつ
平等法身 諸法のじゃくめつ平等をさとった八地以上の菩薩を指す。 →十地じゅうじ
浄心の菩薩 八地以上の菩薩。 →十地じゅうじ
上地の菩薩 九地・十地の菩薩。 →十地じゅうじ
寂滅平等 煩悩ぼんのうを離れ差別のないさとりの境地をいう。 涅槃の訳語。 →はん

婆舎那云↠観者、亦有↢二義↡。一者在↠此作↠想観↢彼三種荘厳功徳↡、此功徳如実故、修行者亦得↢如実功徳↡。如実功徳者、決定得↠生↢彼土↡。二者亦得↠生↢彼浄土↡、即見↢阿弥陀仏↡。未証浄心菩薩、畢竟得↢証平等法身↡。与↢浄心菩薩↡与↢上地菩薩↡、畢竟同得↢寂滅平等↡、

このゆゑに 「如実にょじつ毘婆びばしゃ修行しゅぎょうせんとほっするがゆゑなり」 といへり

是故言↢「欲如実修行婆奢那故」↡。

【55】 かのかんざつに三しゅあり。 なんらか三しゅ。 一にはかの仏国ぶっこく荘厳しょうごんどく観察かんざつす。 二には阿弥陀あみだぶつ荘厳しょうごんどく観察かんざつす。 三にはかのしょさつ荘厳しょうごんどく観察かんざつ

彼観察有↢三種↡。何等三種。一者観↢察彼仏国土荘厳功徳↡、二者観↢察阿弥陀仏荘厳功徳↡、三者観↢察彼諸菩薩荘厳功徳↡。

 しんにそのえんずるを 「かん」 といふ。 *観心かんじん分明ぶんみょうなるを 「さつ」 といふ

観心分明 観ずるこころが明らかな状態。

心縁↢其事↡曰↢「観」↡、観心分明曰↢「察」↡。

◎解義分 ○起観生信章 2 五念門 5. 回向門

【56】 いかんが**こうする。 一切いっさいのうしゅじょうてずして、 しんにつねにがんし、 こうしゅとなす。 だいしん成就じょうじゅすることを*んとするがゆゑなり

回向する 親鸞聖人は 「回向したまへる」 (信文類訓) と読まれた。
得んとする 親鸞聖人は 「得たまへる」 (加点本訓) と読まれた。

云何迴向、不↠捨↢一切苦悩衆生↡、心常作願、迴向為↠首得↣成↢就大悲心↡故。

往還回向

 こう」 に二しゅそうあり。 一には*往相おうそう、 二には*還相げんそうなり

迴向有↢二種相↡。一者往相、二者還相。

・ 往還回向 ・ 往相

往相おうそう」 とは、 おのがどくをもつて*一切いっさいしゅじょう回施えせして、 ともにかの阿弥陀あみだ如来にょらい安楽あんらくじょうおうじょうせんとがんするなり

一切…作願するなり 親鸞聖人は 「一切衆生に回施したまひて、 作願してともにかの阿弥陀如来の安楽浄土に往生せしめたまふなり」 (信文類訓) と読まれた。

往相者、以↢己功徳↡迴↢施一切衆生↡、作願共往↢生彼阿弥陀如来安楽浄土↡。

迴施… 返り点は聖教全書まま。 書き下し文 「一切…」 の註に符合。

・ 往還回向 ・ 還相

還相げんそう」 とは、 かのしょうじをはりて、 しゃ摩他また毘婆びばしゃ方便力ほうべんりき成就じょうじゅすれば、 しょう*稠林ちゅうりん回入えにゅうして一切いっさいしゅじょう教化きょうけして、 ともに仏道ぶつどう*かふなり

稠林 深くしげった林。 迷いの世界を深い林に喩えていう。
向かふなり 親鸞聖人は 「向かへしむるなり」 (加点本訓)、 「かえらしめたまふなり」 (信文類訓) などと読まれた。

還相者、生↢彼土↡已、得↢奢摩他婆舎那方便力成就↡、迴↢入生死稠林↡、教↢化一切衆生↡、共向↢仏道↡。

もしはおう、 もしはげん、 みなしゅじょうきて生死海しょうじかいせんがためなり。 このゆゑに 「こうしゅとなす。 だいしん成就じょうじゅすることをんとするがゆゑなり」 といへり

若往若還、皆為↧抜↢衆生↡渡↦生死海↥。是故言↢「迴向為首得成就大悲心故」↡。

◎解義分 観察体相章

【57】*観察かんざつ体相たいそうとは、 このぶんのなかに二のたいあり。 一には*たい、 二には*しゅじょうたいなり

観察体相 観察の対象となる浄土、 仏および菩薩のしょう厳相ごんそうを明かす。
器体 器世間の体相。 ここでは浄土の荘厳のこと。 →しゅけん
衆生体 衆生世間の体相。 ここでは仏および菩薩の荘厳のこと。 →しゅけん

観察躰相者、此分中有↢二躰↡。一者器躰、二者衆生躰。

◎解義分 ○観察体相章  器世間

ぶんのなかにまた三じゅうあり。 一にはこく*体相たいそう。 二には*自利じり*利他りたげんす。 三には*第一だいいちたいるなり

体相 体はものがらの意。 観の対境となる荘厳相のこと。

器分中又有↢三重↡。一者国土躰相、二者示↢現自利利他↡、三者入↢第一義諦↡。

◎解義分 ○観察体相章 Ⅰ 器世間  国土体相

【58】こく体相たいそうとは、

いかんがかの仏国ぶっこく荘厳しょうごんどく観察かんざつする。 かの仏国ぶっこく荘厳しょうごんどく不可思議ふかしぎりき成就じょうじゅせるがゆゑなり。 かの*摩尼まににょほうしょうのごときにそう相対そうたいほうなるがゆゑなり

摩尼如意宝 摩尼は梵語マニ (maņi) の音写。 摩尼宝珠に同じ。 意のままに財宝や衣服・飲食などを出す徳をもつ宝珠。 また悪を去り、 濁水をきよらかにし、 わざわいを去る徳をもつともいう。

国土躰相者、

云何観↢察彼仏国土荘厳功徳↡。彼仏国土荘厳功徳者、成↢就不可思議力↡故。如↢彼摩尼如意寳性相似相対法↡故。

如ab 返り点は聖教全書まま。 「aのbなるがごとき」

 「不可思議ふかしぎりき」 とは、 そうじてかの仏国ぶっこくの十七しゅ荘厳しょうごんどくりきの、 思議しぎすることをべからざるをすなり。 諸経しょきょうべてのたまはく、 *しゅ不可思議ふかしぎあり。 一にはしゅじょう多少たしょう不可思議ふかしぎ、 二には業力ごうりき不可思議ふかしぎ、 三には竜力りゅうりき不可思議ふかしぎ、 四には禅定力ぜんじょうりき不可思議ふかしぎ、 五には仏法力ぶっぽうりき不可思議ふかしぎなり。 このなかのぶつ不可思議ふかしぎに二しゅりきあり。 一には業力ごうりき、 いはく、 *法蔵ほうぞうさつしゅっ善根ぜんごん*大願だいがん業力ごうりき所成しょじょうなり。 二にはしょうがく*阿弥陀あみだ法王ほうおう善住持ぜんじゅうじりき所摂しょしょうなり。 この不可思議ふかしぎしもの十七しゅのごとし。 一々のそうみな不可思議ふかしぎなり。 もんいたりてまさにしゃくすべし

五種の不可思議 →五不思ごふし
阿弥陀法王善住持力 阿弥陀仏の浄土をよくささえたもつはたらき。

「不可思議力」者、惣指↢彼仏国土十七種荘厳功徳力不↟可↠得↢思議↡也。諸経統言。有↢五種不可思議↡。一者衆生多少不可思議、二者業力不可思議、三者竜力不可思議、四者禅定力不可思議、五者仏法力不可思議。此中仏土不可思議有↢二種力↡。一者業力、謂法蔵菩薩出世善根、大願業力所成。二者正覚阿弥陀法王善住持力所↠摂。此不可思議如↢下十七種↡、一一相皆不可思議。至↠文当↠釈。

かの摩尼まににょほうしょうのごときにそう相対そうたい」 といふは、 かの摩尼まににょほうしょうりて、 安楽あんらくぶつ不可思議ふかしぎしょうしめすなり。 諸仏しょぶつ*にゅうはんとき方便力ほうべんりきをもつて*砕身さいしんしゃとどめてもつてしゅじょうふくす。 しゅじょうふくきぬれば、 このしゃへんじて摩尼まににょ宝珠ほうしゅとなる。 このしゅおお大海だいかいのなかにあり。 大竜王だいりゅうおう、 もつてくびかざりとなせり。 もし*転輪聖王てんりんじょうおうづるときは、 慈悲じひ方便ほうべんをもつてよくこのしゅて、 *えんだいにおいて*大饒益だいにょうやくをなす。 もしぶく飲食おんじき灯明とうみょうがくこころ所欲しょよくしたがひて種々しゅじゅものもちゐるときに、 おうすなはち*潔斎けっさいして、 しゅ長竿じょうかんはしきてがんおこしていはく、 「もしわれじつにこれ転輪王てんりんのうならば、 ねがはくは宝珠ほうしゅ、 かくのごときものあめふらして、 もしは一へんし、 もしは十、 もしは百に、 わが心願しんがんしたがへ」 と。 そのときにすなはち、 くうのなかにおいて種々しゅじゅものあめふらして、 みな*所須しょしゅかなひててん一切いっさいにんがん満足まんぞくせしむ。 この宝性ほうしょうちからをもつてのゆゑなり。 かの安楽あんらくぶつもまたかくのごとし。 安楽あんらくしょう種々しゅじゅ成就じょうじゅせるをもつてのゆゑなり

砕身の舎利 舎利は梵語シャリーラ (śarīra) の音写。 仏の分骨を指していう。
大饒益 大きなやく
潔斎 身心をつつしみきよめること。
所須に称ひて 必要に応じて。

「如↢彼摩尼如意寳性、相似相対↡」者、借↢彼摩尼如意寳性↡、示↢安楽仏土不可思議性↡也。諸仏入涅槃時、以↢方便力↡、畱↢砕身舎利↡、以福↢衆生↡。衆生福尽、此舎利変為↢摩尼如意寳珠↡。此珠多在↢大海中↡、大竜王以為↢首餝↡。若転輪聖王出↠世、以↢慈悲方便↡能得↢此珠↡、於↢閻浮提↡作↢大饒益↡。若須↧衣服・飲食・灯明・楽具、随↢意所欲↡種種物↥時、王便潔斎、置↣珠於↢長竿頭↡、発↠願言。若我実是転輪王者、願寳珠雨↢如↠此之物↡、若遍↢一里↡、若十里、若百里、随↢我心願↡。爾時即便於↢虚空中↡、雨↢種種物↡、皆称↢所須↡満↢足天下一切人願↡。以↢此寳性力↡故、彼安楽仏土亦如↠是、以↢安楽性種種成就↡故。

そう相対そうたい」 とは、 かの宝珠ほうしゅちからじきもとむるには、 よくじきとうものあめふらしてもとむるもののこころかなふ。 これもとめざるにはあらず。 かのぶつはすなはちしからず。 しょう満足まんぞく成就じょうじゅせるがゆゑに、 乏少ぼうしょうするところなし。 かのしょう片取へんしゅしてたとへとなす。 ゆゑにそう相対そうたいといへり。 またかのほうは、 ただよくしゅじょうじきとうがんあたふるも、 しゅじょう*無上道むじょうどうがんあたふることあたはず。 またかのほうは、 ただよくしゅじょうに一しんがんあたふるも、 しゅじょう*りょうしんがんあたふることあたはず。 かくのごときりょう差別しゃべつあるがゆゑにそうといへり

無上道の願 この上ないさとりを求め願う心。 菩提心のこと。 →だいしん
無量身の願 我身だけでなく、 一切のしゅじょうを済度して浄土に往生させようと願う心。

「相似相対」者、彼寳珠力、求↢衣食↡者、能雨↢衣食等物↡称↢求者意↡、非↢是不↟求。彼仏土則不↠然、性満足成就故无↠所↢乏少↡。片取↢彼性↡為↠喩、故言↢相似相対↡。又彼寳、但能与↢衆生衣食等願↡、不↠能↠与↢衆生无上道願↡。又彼寳但能与↢衆生一身願↡、不↠能↠与↢衆生无量身願↡。有↢如↠是等无量差別↡故言↢相似↡。

国土荘厳十七種

【59】 かの仏こく荘厳しょうごんどく成就じょうじゅ観察かんざつすとは十七しゅあり。 るべし。 なんらか十七。 一には荘厳しょうごん清浄しょうじょうどく成就じょうじゅ、 二には荘厳しょうごん*りょうどく成就じょうじゅ、 三には荘厳しょうごんしょうどく成就じょうじゅ、 四には荘厳しょうごん形相ぎょうそうどく成就じょうじゅ、 五には荘厳しょうごん種々しゅじゅどく成就じょうじゅ、 六には荘厳しょうごん妙色みょうしきどく成就じょうじゅ、 七には荘厳しょうごんそくどく成就じょうじゅ、 八には荘厳しょうごん三種さんしゅどく成就じょうじゅ、 九には荘厳しょうごんどく成就じょうじゅ、 十には荘厳しょうごんこうみょうどく成就じょうじゅ、 十一には荘厳しょうごん妙声みょうしょうどく成就じょうじゅ、 十二には荘厳しょうごんしゅどく成就じょうじゅ、 十三には荘厳しょうごん眷属けんぞくどく成就じょうじゅ、 十四には荘厳しょうごん受用じゅゆうどく成就じょうじゅ、 十五には荘厳しょうごん諸難しょなんどく成就じょうじゅ、 十六には荘厳しょうごんだいもんどく成就じょうじゅ、 十七には荘厳しょうごん一切いっさいしょ満足まんぞくどく成就じょうじゅなり。

 ¬浄土論¼ (底本) には 「無量」 とある。

観↢察彼仏国土荘厳功徳成就↡者、有↢十七種↡、応↠知。何等十七。一者荘厳清浄功徳成就、二者荘厳量功徳成就、三者荘厳性功徳成就、四者荘厳形相功徳成就、五者荘厳種種事功徳成就、六者荘厳妙色功徳成就、七者荘厳触功徳成就、八者荘厳三種功徳成就、九者荘厳雨功徳成就、十者荘厳光明功徳成就、十一者荘厳妙声功徳成就、十二者荘厳主功徳成就、十三者荘厳眷属功徳成就、十四者荘厳受用功徳成就、十五者荘厳无諸難功徳成就、十六者荘厳大義門功徳成就、十七者荘厳一切所求満足功徳成就。

 *章門しょうもんげ、 つぎつづきて*提釈ていしゃく

章門 前に掲げた十七種の浄土の荘厳しょうごんの分類を指す。
提釈 要をとって略して解釈すること。

先挙↢章門↡、次続提釈。

◎解義分 ○観察体相章 Ⅰ 器世間 1 国土体相 1. 清浄功徳

【60】 荘厳しょうごん清浄しょうじょうどく成就じょうじゅとは、 に 「かんかいそう 勝過しょうか三界さんがいどう」 といへるがゆゑなり

荘厳清浄功徳成就者、偈言↢観彼世界相勝過三界道↡故。

 これいかんが不思議ふしぎなる。 ぼんにんありて煩悩ぼんのう成就じょうじゅするもまたかのじょうしょうずることをれば、 三界さんがい*ごう*畢竟ひっきょうじてかず。 すなはちこれ煩悩ぼんのうだんぜずして*はんぶん。 いづくんぞ思議しぎすべきや

涅槃分 涅槃の分斉ぶんざい。 さとりの境界のこと。 また涅槃の因分とする説もある。

此云何不思議、有↢凡夫人煩悩成就↡亦得↠生↢彼浄土↡、三界繋業畢竟不↠牽、則是不↠断↢煩悩↡得↢涅槃分↡、焉可↢思議↡。

◎解義分 ○観察体相章 Ⅰ 器世間 1 国土体相 2. 量功徳

【61】 荘厳しょうごん*りょうどく成就じょうじゅとは、 に 「究竟くきょうにょくう 広大こうだい辺際へんざい」 といへるがゆゑなり

荘厳量功徳成就者、偈言↢究竟如虚空広大无辺際↡故。

 これいかんが不思議ふしぎなる。 かのくに人天にんでん、 もしこころ殿でん*楼閣ろうかく、 もしはひろさ一由旬ゆじゅん、 もしはひゃく由旬ゆじゅん、 もしはせん由旬ゆじゅん、〔そのかず千間せんげん万間まんげんならんとほっすれば、 しんしたがひてじょうずるところなり。 ひとおのおのかくのごとし

此云何不思議、彼国人天若意欲↢宮殿・楼閣、若広一由旬、若百由旬、若千由旬、千間万間↡、随↠心所↠成。人各如↠此。

また十方じっぽうかいしゅじょうおうじょうがんずれば、 もしはすでにうまれ、 もしはいまうまれ、 もしはまさにうまるべし。 一にちのあひだをも*算数さんじゅするに、 その多少たしょうることあたはざるところなり。 しかもかのかいつねにくうのごとし。 *迫迮はくさくそうなし。 かしこのなかのしゅじょう、 かくのごときりょうのなかにじゅうして、 がん広大こうだいにしてまたくうのごとくして限量げんりょうあることなからん。 かのこくりょう、 よくしゅじょう*心行しんぎょうりょうじょうず。 なんぞ思議しぎすべきや

迫迮 迫も迮も狭いという意。

又十方世界衆生、願↢往生↡者、若已生、若今生、若当生。一時一日之頃、算数所↠不↠能↠知↢其多少↡。而彼世界常若↢虚空↡、无↢迫迮相↡。彼中衆生、住↢如↠此量中↡、志願広大、亦如↢虚空↡、无↠有↢限量↡。彼国土量、能成↢衆生心行量↡、何可↢思議↡。

 宗祖加点本、 鎌倉時代刊本では 。 聖教全書では他書によって訂正されている。

◎解義分 ○観察体相章 Ⅰ 器世間 1 国土体相 3. 性功徳

【62】 荘厳しょうごんしょうどく成就じょうじゅとは、 に 「正道しょうどうだい慈悲じひ しゅっ善根ぜんごんしょう」 といへるがゆゑなり

荘厳性功徳成就者、偈言↢正道大慈悲出世善根生↡故。

 これいかんが不思議ふしぎなる。 たとへば*迦羅求羅からくらちゅうの、 そのかたち微小みしょうなれども、 もし大風だいふうれば大山だいせんのごとし。 かぜ大小だいしょうしたがひておのが身相しんそうとなすがごとし。 安楽あんらくしょうずるしゅじょうもまたかくのごとし。 かの*正道しょうどうかいしょうずれば、 すなはち*しゅっ善根ぜんごん成就じょうじゅして*正定聚しょうじょうじゅること、 またかのかぜの、 にあらずしてなるがごとし。 いづくんぞ思議しぎすべきや

迦羅求羅虫 身は小さいが風を得ると大きくなり、 すべてをのみこむという虫。 ¬だい智度ちどろん¼ に出る。
正道 平等の大道。 一如いちにょ平等のさとり。
出世の善根 迷いの世間を超え出た煩悩ぼんのうのけがれのない善。

此云何不思議、譬如↧迦羅求羅虫其形微小、若得↢大風↡身如↢大山↡、随↢風大小↡為↦己身相↥。生↢安楽↡衆生亦復如↠是、生↢彼正道世界↡、即成↢就出世善根↡入↢正定聚↡、亦如↢彼風非↠身而身↡、焉可↢思議↡。

◎解義分 ○観察体相章 Ⅰ 器世間 1 国土体相 4. 形相功徳

【63】 荘厳しょうごん形相ぎょうそうどく成就じょうじゅとは、 に 「浄光明じょうこうみょう満足まんぞく にょきょう日月輪にちがつりん」 といへるがゆゑなり

荘厳形相功徳成就者、偈言↢浄光明満足如鏡日月輪↡故。

 これいかんが不思議ふしぎなる。 それ*忍辱にんにく*端正たんじょう。 わがしん*影響