無量寿経優婆提舎願生偈
*婆藪槃頭菩薩造 *後魏*菩提留支訳
後魏 中国南北朝時代の北朝の一。 北魏ともいう。 439年、 華北 (中国北部) を統一し、 534年東西に分裂した。
◎総説分 ○三念門
・ 相含三念
【1】 ▼世尊、 ▼われ一心に▼*尽十方無礙光如来に帰命したてまつりて、
◎▼世尊▼我一心 ▼帰↢命尽十方
◎ 原漢文の底本は京都常楽寺蔵存覚写本。 摂津毫摂寺蔵永享九年刊本、 本派本願寺蔵版、 大派依用十行本と対校。
*安楽国に生ぜんと願ず。
無光如来↡ 願↠生↢安楽国↡
・ 成上起下
【2】 ▼われ*修多羅の▼真実功徳相によりて、
▼我依↢修多羅 真実功徳相↡
*願偈を説きて*総持し、 仏教と相応せん。
願偈を説きて総持し 親鸞聖人は 「願偈総持を説きて」 (行文類訓) と読まれた。
総持 ここでは広博な経の文章を総摂して短い偈のなかにおさめたもつという意。
*説↢願偈総持↡ 与↢仏教↡相応
説願偈総持 返り点は聖教全書まま。 「願偈総持を説きて」。
◎総説分 ○観察門
1. 国土功徳十七種
【3】 ▼かの世界の相を観ずるに、 ▼*三界の道に勝過せり。
▼観↢彼世界相↡ 勝↢過三界道↡
▼究竟して*虚空のごとく、 広大にして辺際なし。
▼究竟如↢虚空↡ 広大無↢辺際↡
▼*正道の大慈悲、 *出世の善根より生ず。
正道 平等の大道。 一如平等のさとり。
出世の善根 迷いの世間を超え出た煩悩のけがれのない善。
▼正道大慈悲 出世善根生
▽浄光明の満足せること、 鏡と*日月輪とのごとし。
▼浄光明満足 如↢鏡日月輪↡
日月輪 太陽と月のこと。
▼もろもろの珍宝の性を備へて、 妙荘厳を具足せり。
▼備↢諸珍宝性↡ 具↢足妙荘厳↡
▽*無垢の光炎熾りにして、 明浄にして世間を曜かす。
▼無垢光炎熾 明浄曜↢世間↡
▽*宝性功徳の草、 柔軟にして左右に旋れり。
宝性功徳の草 いろいろな宝よりできている浄土の荘厳のやわらかな様子を草に喩える。
▼宝性功徳草 柔*左右旋
(外字) 本願寺蔵版、 大派依用本では 輭。 以下同。
触るるもの*勝楽を生ずること、 *迦旃隣陀に過ぎたり。
勝楽 きよらかですぐれた楽しみ。
迦旃隣陀 梵語カーチリンディカ (kāciln1ika) の音写。 迦栴隣陀とも音写する。 曇鸞大師は印度にある柔かな草の名としている。
触者生↢勝楽↡ 過↢迦栴隣陀↡
▼宝華千万種にして、 池・流・泉に*弥覆せり。
▼宝華千萬種 弥↢覆池流泉↡
微風華葉を動かすに、 交錯して光*乱転す。
乱転 きらきらと輝いていること。
微風動↢華葉↡ 交錯光乱転
▽宮殿・もろもろの楼閣にして、 十方を観ること無礙なり。
▼宮殿諸楼閣 観↢十方↡無
雑樹に異の光色あり、 *宝欄あまねく*囲繞せり。
圍繞 ひろくめぐらされていること。
雑樹異光色 宝*欄遍囲遶
欄 毫摂寺本では 蘭。 以下同。
▽無量の宝交絡して、 *羅網虚空にあまねし。
▼無量宝交絡 羅網遍↢虚空↡
種々の鈴響きを発して、 妙法の音を宣べ吐く。
種種鈴発↠響 宣↢吐妙法音↡
▽華と衣とを雨らして荘厳し、 無量の香あまねく薫ず。
▼雨↢華衣荘厳↡ 無量香普薫
▼仏慧明浄なること日のごとく、 世の*痴闇冥を除く。
痴闇冥 愚痴の闇。
▼仏*恵明浄日 除↢世痴闇冥↡
恵 本願寺本では 慧。 以下同。
▽*梵声悟らしむること深遠にして*微妙なり。 十方に聞ゆ。
梵声 仏のきよらかな声。
微妙 はかりしれないほど奥深くすばらしいこと。
▼梵声悟深遠 微妙聞↢十方↡
▽正覚の阿弥陀法王、 よく*住持したまへり。
▼正覚阿弥陀 法王善住持
▼如来浄華の衆は、 正覚の華より化生す。
如来浄華衆 正覚華化生
▽仏法の味はひを愛楽し、 *禅三昧を食となす。
▼愛↢楽仏法味 禅三昧↡為↠食
▽永く身心の悩みを離れ、 楽しみを受くることつねにして間なし。
▼永離↢身心悩↡ 受↠楽常無↠間
▽大乗善根の界は、 等しくして*譏嫌の名なし。
譏嫌の名 不快なそしりの名。
▼大乗善根界 等無↢譏嫌名↡
▼*女人および根欠、 ▼二乗の種生ぜず。
女人及根欠 二乗種不↠生
▼衆生の*願楽するところ、 一切よく満足す。
▼衆生所↢願楽↡ 一切能満足
ゆゑにわれかの阿弥陀仏国に生ぜんと願ず。
▼故我願↠生↢彼 阿弥陀仏国↡▼
2. 仏功徳八種
【4】 ▽*無量大宝王の微妙の*浄華台あり。
無量大宝王 はかりしれない最高にすぐれた宝。 阿弥陀仏を尊んでいう。
浄華台 きよらかな蓮華でできた仏の台座。
▼無量大宝王 微妙浄華台
▽相好の光*一尋にして、 *色像群生に超えたまへり。
一尋 尋は長さの単位。両手を左右に広げた時の長さを一尋とする。 この場合は仏の両手。
色像 すがたかたち。
▼相好光一尋 色像超↢群生↡
▽如来の微妙の声、 梵響十方に聞ゆ。
▼如来微妙声 梵響聞↢十方↡
▽*地・水・火・風・虚空に同じて分別なし。
▼同↢地・水・火・風・ 虚空↡無↢分別↡
▼天・人*不動の衆、 清浄の智海より生ず。
不動 志が堅固で退かないこと。
▼天人不動衆 清浄智海生
▽ˆ如来は〕*須弥山王のごとく、 勝妙にして過ぎたるものなし。
▼如↢須弥山王↡ 勝妙無↢過者↡
▽天・人・*丈夫の衆、 *恭敬して繞りて瞻仰したてまつる。
丈夫 すぐれた志をもって精進する者。 菩薩のこと。
▼天人丈夫衆 恭敬遶瞻仰
▼仏の本願力を観ずるに、 遇ひて空しく過ぐるものなし。
▼観↢仏本願力↡ 遇無↢空過者↡
▼よくすみやかに功徳の大宝海を満足せしむ。
能令↣速満↢足 功徳大宝海↡
3. 菩薩功徳四種
【5】 ▼安楽国は清浄にして、 つねに*無垢の輪を転ず。
無垢の輪を転ず 煩悩のけがれのない清浄真実の法を説くという意。
▼安楽国清浄 常転↢無垢輪↡
*化仏・菩薩の日、 須弥の住持するがごとし。
化仏菩薩 ここでは浄土の聖者たちのこと。
化仏菩薩日 如↢須弥住持↡
▼無垢荘厳の光、 一念および一時に、
▼無垢荘厳光 一念及一時
あまねく諸仏の*会を照らし、 もろもろの*群生を利益す。
普照↢諸仏会↡ 利↢益諸群生↡
▽天の楽と華と衣と妙香等とを雨らして供養し、
▼雨↢天楽華衣 妙香↡*等供養
等 返り点は聖教全書まま。 「ひとしく…」
諸仏の功徳を讃ずるに、 *分別の心あることなし。
分別の心 わけへだてをする心。
讃↢諸仏功徳↡ 無↠有↢分別心↡
▽なんらの世界なりとも、 仏法功徳の宝なからんには、
▼何等世界無↢ 仏法功徳宝↡
われ願はくはみな往生して、 仏法を示すこと仏のごとくせん。
我願↧皆往生 示↢仏法↡如↞仏
◎総説分 ○回向門
【6】 ▼われ論を作り偈を説く。 願はくは弥陀仏を見たてまつり、
▼我作↠論説↠偈 願見↢弥陀仏↡
あまねくもろもろの衆生とともに、 安楽国に往生せん。
▼普共↢諸衆生↡ 往↢生安楽国↡
【7】▼無量寿修多羅の章句、 われ偈頌をもつて総じて説きをはりぬ。
無量寿修多羅章句我以↢偈誦↡総説竟。
◎解義分 ○願偈大意
・ 観見願生
【8】 ▼論じていはく、 ▼この願偈はなんの義をか明かす。 かの安楽世界を観じて阿弥陀仏を見たてまつることを示現す。 かの国に生ぜんと願ずるがゆゑなり。
論曰。此願偈明↢何義↡。示↧現観↢彼安楽世界↡見↢阿弥陀仏↡願↞生↢彼国↡故。
◎解義分 ○起観生信 1 五念門
【9】 ▼いかんが観じ、 いかんが信心を生ずる。 もし善男子・善女人、 ▼*五念門を修して行成就しぬれば、 *畢竟じて安楽国土に生じて、 かの阿弥陀仏を見たてまつることを得。 ▼なんらか五念門。 一には礼拝門、 二には讃歎門、 三には作願門、 四には観察門、 五には回向門なり。
云何観云何生↢信心↡。若善男子・善女人修↢五念門↡行成就畢竟得↧生↢安楽国土↡見↦彼阿弥陀仏↥。何等五念門。一者礼拝門、二者讃歎門、三者作願門、四者観察門、五者廻向門。
1. 礼拝門
▼いかんが礼拝する。 身業をもつて阿弥陀*如来・*応・正遍知を*礼拝したてまつる。 ▼かの国に生ずる意を*なすがゆゑなり。
う供
礼拝したてまつる 親鸞聖人は 「礼拝したまひき」 (論註加点本訓) と読まれた。
なすが 親鸞聖人は 「なさせんが」 (論註加点本訓) と読まれた。
云何礼拝、身業礼↢拝阿弥陀如来・応・正遍知↡。為↠生↢彼国↡意故。
2. 讃歎門
▼いかんが讃歎する。 口業をもつて*讃歎したてまつる。 ▼かの如来の名を称するに、 ▼かの如来の光明智相のごとく、 かの*名義のごとく、 ▼如実に修行して相応せんと欲するがゆゑなり。
讃歎したてまつる 親鸞聖人は 「讃嘆したまひき」 (論註加点本訓) と読まれた。
名義 名号の意義、 いわれ。
云何讃歎、口業讃歎。称↢彼如来名↡如↢彼如来光明智相↡如↢彼名義↡欲↢如↠実修行相応↡故。
3. 作願門
▼いかんが作願する。 *心につねに願を作し、 一心にもつぱら畢竟じて安楽国土に往生せんと念ず。 如実に*奢摩他を修行せんと欲するがゆゑなり。
心に…ゆゑなり 親鸞聖人は 「心につねに作願したまへりき。 一心に専念して畢竟じて安楽国土に往生して、 実のごとく奢摩他を修行せんと欲ふがゆゑにのたまへり」 (論註加点本訓) と読まれた。
云何作願、心常作願。一心専念↣畢竟往↢生安楽国土↡欲↣如↠実修↢行奢摩他↡故。
4. 観察門
▼いかんが観察する。 智慧をもつて*観察し、 正念にかしこを観ず。 如実に*毘婆舎那を修行せんと欲するがゆゑなり。 ▼かの観察に三種あり。 なんらか三種。 一にはかの仏国土の荘厳功徳を観察す。 二には阿弥陀仏の荘厳功徳を観察す。 三にはかの諸菩薩の功徳荘厳を観察す。
観察し 親鸞聖人は 「観察したまへりき」 (論註加点本訓) と読まれた。
云何観察、智恵観察。正念↢観彼↡欲↣如↠実修↢行婆舎那↡故。彼観察有↢三種↡。何等三種。一者観↢察彼仏国土荘厳功徳↡、二者観↢察阿弥陀仏荘厳功徳↡、三者観↢察彼諸菩薩*功徳荘厳↡。
功徳荘厳 本願寺本では 「荘厳功徳」。
5. 回向門
▼いかんが*回向する。 一切苦悩の衆生を捨てずして、 心につねに願を作し、 回向を首となす。 大悲心を成就することを*得んとするがゆゑなり。
回向する 親鸞聖人は 「回向したまへる」 (信文類訓) と読まれた。
得んとする 親鸞聖人は 「得たまへる」 (論註加点本訓) と読まれた。
云何廻向、不↠捨↢一切苦悩衆生↡心常作願。廻向為↠首得↣成↢就大悲心↡故。
◎解義分 ○観察体相 1 観仏国土功徳
【10】▼いかんがかの仏国土の荘厳功徳を観察する。 かの仏国土の荘厳功徳は不可思議力を成就せるがゆゑなり。 かの摩尼如意宝の性のごときに相似相対の法なるがゆゑなり。 ▼かの仏国土の荘厳功徳成就を観察すとは十七種あり、 知るべし。 なんらか十七。 一には荘厳*清浄功徳成就、 二には荘厳**無量功徳成就、 三には荘厳*性功徳成就、 四には荘厳*形相功徳成就、 五には荘厳*種々事功徳成就、 六には荘厳*妙色功徳成就、 七には荘厳*触功徳成就、 八には荘厳*三種功徳成就、 九には荘厳*雨功徳成就、 十には荘厳*光明功徳成就、 十一には荘厳*妙声功徳成就、 十二には荘厳*主功徳成就、 十三には荘厳*眷属功徳成就、 十四には荘厳*受用功徳成就、 十五には荘厳*無諸難功徳成就、 十六には荘厳**大義門功徳成就、 十七には荘厳*一切所求満足功徳成就なり。
無量 異本には 「量」 とある。
大義門 ¬論註¼ では、 大乗門の意と解釈する。
云何観↢察彼仏国土荘厳功徳↡。彼仏国土荘厳功徳者、成↢就不可思議力↡故、如↢彼摩尼如意宝性↡相似相対法故。観↢察彼仏国土荘厳功徳成就↡者、有↢十七種↡、応↠知。何等十七。一者荘厳清浄功徳成就、二者荘厳*無量功徳成就、三者荘厳性功徳成就、四者荘厳形相功徳成就、五者荘厳種種事功徳成就、六者荘厳妙色功徳成就、七者荘厳触功徳成就、八者荘厳三種功徳成就、九者荘厳雨功徳成就、十者荘厳光明功徳成就、十一者荘厳妙声功徳成就、十二者荘厳主功徳成就、十三者荘厳眷属功徳成就、十四者荘厳受用功徳成就、十五者荘厳無諸難功徳成就、十六者荘厳大義門功徳成就、十七者荘厳一切所求満足功徳成就。
無量 本願寺本では 「量」。 以下同。
1. 清浄功徳
▼荘厳*清浄功徳成就とは、 偈に 「△観彼世界相 勝過三界道」 といへるがゆゑなり。
清浄功徳 浄土は清浄な涅槃界であることを明かす。
荘厳清浄功徳成就者、偈言↢「観彼世界相勝過三界道」↡故。
2. 量功徳
▼荘厳*無量功徳成就とは、 偈に 「△究竟如虚空 広大無辺際」 といへるがゆゑなり。
無量功徳 浄土は虚空のようで辺際のない世界であることを明かす。
荘厳無量功徳成就者、偈言↢「究竟如虚空広大無辺際」↡故。
3. 性功徳
▼荘厳*性功徳成就とは、 偈に 「△正道大慈悲 出世善根生」 といへるがゆゑなり。
性功徳 浄土は法蔵菩薩の全性修起の浄土で、 法性顕現の世界であることを明かす。
荘厳性功徳成就者、偈言↢「正道大慈悲出世善根生」↡故。
4. 形相功徳
▼荘厳*形相功徳成就とは、 偈に 「△浄光明満足 如鏡日月輪」 といへるがゆゑなり。
形相功徳 浄土の形相は日月または鏡のように清浄であることを明かす。
荘厳形相功徳成就者、偈言↢「浄光明満足如鏡日月輪」↡故。
5. 種々事功徳
▼荘厳*種々事功徳成就とは、 偈に 「△備諸珍宝性 具足妙荘厳」 といへるがゆゑなり。
種々事功徳 浄土は一切の万物や種々の珍宝でかざられていることを明かす。
荘厳種種事功徳成就者、偈言↢「備諸珍宝性具足妙荘厳」↡故。
6. 妙色功徳
▼荘厳*妙色功徳成就とは、 偈に 「△無垢光炎熾 明浄曜世間」 といへるがゆゑなり。
妙色功徳 浄土の光明と色相が超絶していることを明かす。
荘厳妙色功徳成就者、偈言↢「無垢光炎熾明浄曜世間」↡故。
7. 触功徳
▼荘厳*触功徳成就とは、 偈に 「△宝性功徳草 柔軟左右旋 触者生勝楽 過迦旃隣陀」 といへるがゆゑなり。
触功徳 浄土の境界は柔軟な徳をそなえていることを明かす。
荘厳触功徳成就者、偈言↢「宝性功徳草柔左右旋触者生勝楽過迦栴隣陀」↡故。
8. 三種功徳
▼荘厳*三種功徳成就とは、 三種の事あり、 知るべし。 なんらか三種。 一には水、 二には地、 三には虚空なり。
三種功徳 浄土には水・地・虚空の三徳がそなわっていることを明かす。
荘厳三種功徳成就者、有↢三種事↡。応↠知。何等三種。一者水、二者地、三者虚空。
8-1. 水功徳
▼荘厳水功徳成就とは、 偈に 「△宝華千万種 弥覆池流泉 微風動華葉 交錯光乱転」 といへるがゆゑなり。
荘厳水功徳成就者、偈言「宝華千萬種弥覆池流泉微風動華葉交錯光乱転」故。
8-2. 地功徳
▼荘厳地功徳成就とは、 偈に 「△宮殿諸楼閣 観十方無礙 雑樹異光色 宝欄遍囲繞」 といへるがゆゑなり。
荘厳地功徳成就者、偈言「宮殿諸楼閣観十方無雑樹異光色宝*欄遍囲遶」故。
欄 毫摂寺本では 蘭。
8-3. 虚空功徳
▼荘厳虚空功徳成就とは、 偈に 「△無量宝交絡 羅網遍虚空 種種鈴発響 宣吐妙法音」 といへるがゆゑなり。
荘厳虚空功徳成就者、偈言「無量宝交絡羅網遍虚空種種鈴発響宣吐妙法音」故。
9. 雨功徳
▼荘厳*雨功徳成就とは、 偈に 「△雨華衣荘厳 無量香普薫」 といへるがゆゑなり。
雨功徳 浄土には無量のものを雨ふらす徳のあることを明かす。
荘厳雨功徳成就者、偈言↢「雨華衣荘厳無量香普薫」↡故。
10. 光明功徳
▼荘厳*光明功徳成就とは、 偈に 「△仏慧明浄日 除世痴闇冥」 といへるがゆゑなり。
光明功徳 国土の光明は十方を照らして闇を除くはたらきのあることを明かす。
荘厳光明功徳成就者、偈言↢「仏恵明浄日除世痴闇冥」↡故。
11. 妙声功徳
▼荘厳*妙声功徳成就とは、 偈に 「△梵声悟深遠 微妙聞十方」 といへるがゆゑなり。
妙声功徳 浄土には妙音が十方にきこえて、 衆生を開悟させるはたらきのあることを明かす。
荘厳妙声功徳成就者、偈言↢「梵声悟深遠微妙聞十方」↡故。
12. 主功徳
▼荘厳*主功徳成就とは、 偈に 「△正覚阿弥陀 法王善住持」 といへるがゆゑなり。
主功徳 浄土は主仏である阿弥陀仏が住持することを明かす。
荘厳主功徳成就者、偈言↢「正覚阿弥陀法王善住持」↡故。
13. 眷属功徳
▼荘厳*眷属功徳成就とは、 偈に 「△如来浄華衆 正覚華化生」 といへるがゆゑなり。
眷属功徳 往生者は正覚の華より化生することを明かす。
荘厳眷属功徳成就者、偈言↢「如来浄華衆正覚華化生」↡故。
14. 受用功徳
▼荘厳*受用功徳成就とは、 偈に 「△愛楽仏法味 禅三昧為食」 といへるがゆゑなり。
受用功徳 浄土では百味の飲食を自由に受容することができることを明かす。
荘厳受用功徳成就者、偈言↢「愛楽仏法味禅三昧為食」↡故。
15. 無諸難功徳
▼荘厳*無諸難功徳成就とは、 偈に 「△永離身心悩 受楽常無間」 といへるがゆゑなり。
無諸難功徳 浄土には一切の悩みも諸難もないということを明かす。
荘厳無諸難功徳成就者、偈言↢「永離身心悩受楽常無間」↡故。
16. 大義門功徳
▼荘厳*大義門功徳成就とは、 偈に 「△大乗善根界 等無譏嫌名 *女人及根欠 二乗種不生」 といへるがゆゑなり。 ▼浄土の果報は二種の*譏嫌の過を離れたり、 知るべし。 一には体、 二には名なり。
大義門功徳 浄土は大乗の善根界の国徳をそなえていることを明かす。
譏嫌の過 不快なそしりの過失。
荘厳大義門功徳成就者、偈言↢「大乗善根界等無譏嫌名女人及根欠二乗種不生」↡故。浄土果報離↢二種譏嫌過↡。応↠知。一者体、二者名。
16-1. 体
▼体に三種あり。 一には二乗人、 二には女人、 三には*諸根不具人なり。 この三の過なし。 ゆゑに体の譏嫌を離ると名づく。
体有↢三種↡。一者二乗人、二者女人、三者諸根不具人。無↢此三過↡故、名↠離↢体譏嫌↡。
16-2. 名
▼名にまた三種あり。 ただ三の体なきのみにあらず、 ▼乃至二乗と女人と諸根不具の三種の名を聞かず。 ゆゑに名の譏嫌を離ると名づく。 「等」 とは平等一相のゆゑなり。
名亦有↢三種↡、非↣但無↢三体↡、乃至不↠聞↢二乗・女人・諸根不具三種名↡、故名↠離↢名譏嫌↡。等者平等一相故。
17. 一切所求満足功徳
▼荘厳*一切所求満足功徳成就とは、 偈に 「△衆生所願楽 一切能満足」 といへるがゆゑなり。
一切所求満足功徳 浄土では衆生の一切の要求が満足されることを明かす。
荘厳一切所求満足功徳成就者、偈言↢「衆生所願楽一切能満足」↡故。
【11】▼略してかの阿弥陀仏国土の十七種の荘厳成就を説く。 如来の自身利益大功徳力成就と、 利益他功徳成就とを示現せんがゆゑなり。
略説↢彼阿弥陀仏国土十七種荘厳成就↡。示↢現如来自身利益大功徳力成就利益他功徳成就↡故。
【12】▼かの無量寿仏国土の荘厳は*第一義諦妙境界相なり。 *十六句および一句次第して説けり、 知るべし。
第一義諦妙境界相 真如法性 (第一義諦) がそのまま国土の妙境の相 (
荘厳相) とあらわれたものであるということ。 →
第一義諦
十六句および一句 ¬論註¼ では、 十六句を第二量功徳から第十七一切所求満足功徳まで、 一句を第一清浄功徳と解釈する。
彼無量寿仏国土荘厳、第一義諦妙境界相、十六句及一句次第説。応↠知。
◎解義分 ○観察体相 2 観仏功徳
【13】▼いかんが仏の荘厳功徳成就を観ずる。 仏の荘厳功徳成就を観ずとは、 八種の相あり、 知るべし。 ▼なんらか八種。 一には荘厳*座功徳成就、 二には荘厳*身業功徳成就、 三には荘厳*口業功徳成就、 四には荘厳*心業功徳成就、 五には荘厳*大衆功徳成就、 六には荘厳*上首功徳成就、 七には荘厳*主功徳成就、 八には荘厳*不虚作住持功徳成就なり。
座功徳 如来の座の徳相を明かす。
身業功徳 如来の身相が世に超越していることを明かす。
口業功徳 如来の音声の功徳を明かす。
心業功徳 如来の大慈悲心の功徳を明かす。
大衆功徳 天人大衆は大乗善根の人であることを明かす。
上首功徳 仏は安楽国の上首であることを明かす。
主功徳 仏は浄土の主であることを明かす。
不虚作住持功徳 仏のはたらきは真実にしてすべてのものを保持するものであることを明かす。
云何観↢仏荘厳功徳成就↡。観↢仏荘厳功徳成就↡者、有↢八種相↡。応↠知。何等八種。一者荘厳座功徳成就、二者荘厳身業功徳成就、三者荘厳口業功徳成就、四者荘厳心業功徳成就、五者荘厳大衆功徳成就、六者荘厳上首功徳成就、七者荘厳主功徳成就、八者荘厳不虚作住持功徳成就。
1. 座功徳
▼なんとなれば荘厳*座功徳成就とは、 偈に 「△無量大宝王 微妙浄華台」 といへるがゆゑなり。
何者荘厳座功徳成就、偈言↢「無量大宝王微妙浄華台」↡故。
2. 身業功徳
▼なんとなれば荘厳*身業功徳成就とは、 偈に 「△相好光一尋 色像超群生」 といへるがゆゑなり。
何者荘厳身業功徳成就、偈言↢「相好光一尋色像超群生」↡故。
3. 口業功徳
▼なんとなれば荘厳*口業功徳成就とは、 偈に 「△如来微妙声 梵響聞十方」 といへるがゆゑなり。
何者荘厳口業功徳成就、偈言↢「如来微妙声梵響聞十方」↡故。
4. 心業功徳
▼なんとなれば荘厳*心業功徳成就とは、 偈に 「△同地水火風 虚空無分別」 といへるがゆゑなり。 「無分別」 とは分別の心なきがゆゑなり。
何者荘厳心業功徳成就、偈言↢「同地水火風虚空無分別」↡故。無分別者無↢分別心↡故。
5. 大衆功徳
▼なんとなれば荘厳*大衆功徳成就とは、 偈に 「△天人不動衆 清浄智海生」 といへるがゆゑなり。
何者荘厳大衆功徳成就、偈言↢「天人不動衆清浄智海生」↡故。
6. 上首功徳
▼なんとなれば荘厳*上首功徳成就とは、 偈に 「△如須弥山王 勝妙無過者」 といへるがゆゑなり。
何者荘厳上首功徳成就、偈言↢「如須弥山王勝妙無過者」↡故。
7. 主功徳
▼なんとなれば荘厳*主功徳成就とは、 偈に 「△天人丈夫衆 恭敬繞瞻仰」 といへるがゆゑなり。
何者荘厳主功徳成就、偈言↢「天人丈夫衆恭敬遶瞻仰」↡故。
8. 不虚作住持功徳
▼なんとなれば荘厳*不虚作住持功徳成就とは、 偈に 「△観仏本願力 遇無空過者 能令速満足 功徳大宝海」 といへるがゆゑなり。 ▼すなはちかの仏を見たてまつれば、 *未証浄心の菩薩畢竟じて*平等法身を証することを得て、 *浄心の菩薩と*上地のもろもろの菩薩と畢竟じて同じく*寂滅平等を得るがゆゑなり。
未証浄心の菩薩 十地の階位のうち、 初地以上、 七地以前の未だ平等をさとらない菩薩。 →
十地、
菩薩
平等法身 諸法の
寂滅平等をさとった八地以上の菩薩を指す。 →
十地
寂滅平等 煩悩を離れ差別のないさとりの境地をいう。 涅槃の訳語。 →
涅槃
何者荘厳不虚作住持功徳成就、偈言↢「観仏本願力遇無空過者能令速満足功徳大宝海」↡故。即見↢彼仏↡未証浄心菩薩畢竟得↠証↢平等法身↡、与↢浄心菩薩↡与↢上地諸菩薩↡畢竟同得↢寂滅平等↡故。
【14】▼略して八句を説きて、 如来の自利利他の功徳荘厳、 次第に成就したまへることを示現す、 知るべし。
略説↢八句↡示↢現如来自利利他功徳荘厳次第成就↡。応↠知。
◎解義分 ○観察体相 3 観菩薩功徳
【15】▼いかんが*菩薩の荘厳功徳成就を観察する。 菩薩の荘厳功徳成就を観察すとは、 かの菩薩を観ずるに四種の*正修行功徳成就あり、 知るべし。
菩薩 ここでは浄土の菩薩のこと。
四種の正修行功徳成就 ¬浄土論¼ では、 国土荘厳十七種と仏荘厳八種については個々の荘厳の名称が付されているが、 菩薩荘厳四種については名称が付されていない。 なお、 後世に付された名称として第一 「不動而至功徳」、 第二 「一念遍至功徳」、 第三 「無相供養功徳」、 第四 「示法如仏功徳」 がある。
云何観↢察菩薩荘厳功徳成就↡。観↢察菩薩荘厳功徳成就↡者、観↢彼菩薩↡有↢四種正修行功徳成就↡。応↠知。何者為↠四。
1. 不動而至
▼何者をか四となす。 一には一仏土において身動揺せずして十方に遍して、 種々に応化して如実に修行し、 つねに*仏事をなす。 偈に 「△安楽国清浄 常転無垢輪 化仏菩薩
淤泥華 泥の中に咲く花。 蓮の花のこと。
一者於↢一仏土↡身不↢動揺↡、而遍↢十方↡種種応化如↠実修行常作↢仏事↡。偈言↢「安楽国清浄常転無垢輪化仏菩薩日如須弥住持」↡故。開↢諸衆生淤泥花↡故。
2. 一念遍至
▼二にはかの*応おう化げ身しん、 一切いっさいの時ときに前ぜんならず後ごならず、 一心いっしん一念いちねんに大光明だいこうみょうを放はなちて、 ことごとくよくあまねく十方じっぽう世せ界かいに至いたりて衆しゅ生じょうを教化きょうけす。 種々しゅじゅに方便ほうべんし修行しゅぎょうし、 なすところ一切いっさい衆しゅ生じょうの苦くを滅除めつじょするがゆゑなり。 偈げに 「△無垢むく荘厳しょうごん光こう 一念いちねん及ぎゅう一いち時じ 普照ふしょう諸仏しょぶつ会え 利り益やく諸しょ群生ぐんじょう」 といへるがゆゑなり。
二者彼応化身、一切時不↠前不↠後、一心一念放↢大光明↡悉能遍至↢十方世界↡教↢化衆生↡。種種方便修行所作滅↢除一切衆生苦↡故。偈言↢「無垢荘厳光一念及一時普照諸仏会利益諸群生」↡故。
3. 無相供養
▼三にはかれ一切いっさい世せ界かいにおいて余あますことなく、 諸仏しゅぶつの*会えの大衆だいしゅを照てらして余あますことなく、 広大こうだい無む量りょうに諸仏しょぶつ如来にょらいの功く徳どくを供く養ようし*恭敬くぎょうし讃歎さんだんす。 偈げに 「△雨う天楽てんがく華衣けえ 妙みょう香等こうとう供く養よう 讃さん諸仏しょぶつ功く徳どく 無有むう分別心ふんべつしん」 といへるがゆゑなり。
三者彼於↢一切世界↡無↠余照↢諸仏会↡大衆無↠余広大無量供養恭敬讃↢歎諸仏如来功徳↡。偈言↢「雨天楽華衣妙香等供養讃諸仏功徳無有分別心」↡故。
4. 示法如仏
▼四にはかれ十方じっぽう一切いっさい世せ界かいの三宝さんぽうなき処ところにおいて、 *仏法僧宝ぶっぽうそうぼうの功く徳どくの大海だいかいを住持じゅうじし荘厳しょうごんして、 あまねく示しめして如実にょじつの修行しゅぎょうを解さとらしむ。 偈げに 「△何が等とう世せ界かい無む 仏法ぶっぽう功く徳どく宝ほう 我が願がん皆往生かいおうじょう 示じ仏法ぶっぽう如仏にょぶつ」 といへるがゆゑなり。
四者彼於↧十方一切世界無↢三宝↡処↥住↢持荘↣厳仏・法・僧宝功徳大海↡、遍示令↠解↢如↠実修行↡。偈言↢「何等世界無仏法功徳宝我願皆往生示仏法如仏」↡故。
◎解義分 ○浄入願心
【16】▼また向さきに荘厳しょうごん仏ぶつ土ど功く徳どく成就じょうじゅと荘厳しょうごん仏ぶつ功く徳どく成就じょうじゅと荘厳しょうごん菩ぼ薩さつ功く徳どく成就じょうじゅとを観察かんざつすることを説とけり。 この三種しゅの成就じょうじゅは、 *願心がんしんをもつて荘厳しょうごんせり、 知しるべし。
願心 一切衆生を浄土に生れさせようという法蔵菩薩の願い。
又向説↢観察荘厳仏土功徳成就、荘厳仏功徳成就、荘厳菩薩功徳成就↡。此三種成就願心荘厳。応↠知。
【17】▼略りゃくして*一法いっぽっ句くに入いることを説とくがゆゑなり。 ▼一法いっぽっ句くといふはいはく、 清浄しょうじょう句くなり。 清浄しょうじょう句くといふはいはく、 真実しんじつ智慧ちえ無為むい法身ほっしんなるがゆゑなり。 ▼この清浄しょうじょうに二種しゅあり、 知しるべし。 ▼なんらか二種しゅ。 一には器世きせ間けん清浄しょうじょう、 二には衆しゅ生じょう世せ間けん清浄しょうじょうなり。
略説↠入↢一法句↡故。一法句者謂清浄句。清浄句者謂真実智慧無為法身故。此清浄有↢二種↡。応↠知。何等二種。一者器世間清浄、二者衆生世間清浄。
▼器世きせ間けん清浄しょうじょうとは、 向さきに説とくがごとき十七種しゅの荘厳しょうごん仏ぶつ土ど功く徳どく成就じょうじゅなり。 これを器世きせ間けん清浄しょうじょうと名なづく。
器世間清浄者、如↢向説↡十七種荘厳仏土功徳成就。是名↢器世間清浄↡。
▼衆しゅ生じょう世せ間けん清浄しょうじょうとは、 向さきに説とくがごとき八種しゅの荘厳しょうごん仏ぶつ功く徳どく成就じょうじゅと四種しゅの荘厳しょうごん菩ぼ薩さつ功く徳どく成就じょうじゅとなり。 これを衆しゅ生じょう世せ間けん清浄しょうじょうと名なづく。
衆生世間清浄者、如↢向説↡八種荘厳仏功徳成就、四種荘厳菩薩功徳成就、是名↢衆生世間清浄↡。
▼かくのごとく一法いっぽっ句くに二種しゅの清浄しょうじょうの義ぎを摂せっす、 知しるべし。
如↠是一法句摂↢二種清浄義↡。応↠知。
◎解義分 ○善巧摂化
【18】▼かくのごとく*菩ぼ薩さつは、 *奢しゃ摩他またと*毘婆びば舎しゃ那なを広略こうりゃくに修行しゅぎょうして*柔軟心にゅうなんしんを成就じょうじゅし、 ▼如実にょじつに広略こうりゃくの諸法しょほうを知しる。 ▼かくのごとくして*巧ぎょう方便ほうべん回え向こうを成就じょうじゅす。 ▼何者なにものか菩ぼ薩さつの巧ぎょう方便ほうべん回え向こう。 菩ぼ薩さつの巧ぎょう方便ほうべん回え向こうとは、 いはく、 説とける*礼拝らいはい等とうの五種しゅの修行しゅぎょうをもつて集あつむるところの一切いっさいの功く徳どく善根ぜんごんは、 ▼自じ身しん住持じゅうじの楽らくを求もとめず、 一切いっさい衆しゅ生じょうの苦くを抜ぬかんと欲ほっするがゆゑに、 一切いっさい衆しゅ生じょうを*摂取せっしゅしてともに同おなじくかの安楽あんらく仏国ぶっこくに生しょうぜんと作さ願がんするなり。 これを菩ぼ薩さつの巧ぎょう方便ほうべん回え向こう成就じょうじゅと名なづく。
菩薩 往生浄土を願う行者のこと。 以下に出る菩薩の語はいずれもこの意。
柔軟心 物事にとらわれない心。
巧方便回向 衆しゅ生じょうの素質・能力にあわせて種々の方法、 手段を巧みに用い、 自己の功く徳どくを相手に与えて救うはたらき。
如↠是菩薩、奢摩他婆舎那広略修行成↢就柔心↡、如↠実知↢広略諸法↡。如↠是成↢就巧方便廻向↡。何者菩薩巧方便廻向。菩薩巧方便廻向者、謂説礼拝等五種修行所↠集一切功徳善根、不↠求↢自身住持之楽↡、欲↠抜↢一切衆生苦↡故、作↧願摂↢取一切衆生↡共同生↦彼安楽仏国↥。是名↢菩薩巧方便廻向成就↡。
◎解義分 ○離菩提障
【19】▼菩ぼ薩さつかくのごとくよく*回え向こうを知しりて成就じょうじゅすれば、 すなはちよく▼三種しゅの菩ぼ提門相だいもんそう違いの法ほうを遠おん離りす。 なんらか三種しゅ。
回向を知りて成就すれば 親鸞聖人は 「回向成就したまへるを知れば」 (証文類訓) と読まれた。
菩薩如↠是善知↢廻向成就↡、即能遠↢離三種菩提門相違法↡。何等三種。
1. 智慧門
▼一には智慧ちえ門もんによりて自じ楽らくを求もとめず。 我が心しんの自じ身しんに*貪着とんじゃくすることを遠おん離りするがゆゑなり。
一者依↢智恵門↡不↠求↢自楽↡、遠↣離我心貪↢着自身↡故。
2. 慈悲門
▼二には慈悲じひ門もんによりて一切いっさい衆しゅ生じょうの苦くを抜ぬく。 衆しゅ生じょうを安やすんずることなき心しんを遠おん離りするがゆゑなり。
二者依↢慈悲門↡抜↢一切衆生苦↡、遠↢離無安衆生心↡故。
3. 方便門
▼三には方便門ほうべんもんによりて一切いっさい衆しゅ生じょうを*憐愍れんみんする心しんなり。 自じ身しんを供く養ようし恭敬くぎょうする心しんを遠おん離りするがゆゑなり。
憐愍する心なり 親鸞聖人は 「憐愍したまふ心なり」 (証文類訓) と読まれた。 憐愍はいつくしみあわれむこと。
三者依↢方便門↡憐↢愍一切衆生↡、心遠↧離供↢養恭↣敬自身↡心↥故。
▼これを三種しゅの菩ぼ提門相だいもんそう違いの法ほうを遠おん離りすと名なづく。
是名↣遠↢離三種菩提門相違法↡。
◎解義分 ○順菩提門
【20】▼菩ぼ薩さつはかくのごとき三種しゅの菩ぼ提門相だいもんそう違いの法ほうを遠おん離りして、 *三種しゅの菩ぼ提門だいもんに随順ずいじゅんする法ほうの満足まんぞくを得うるがゆゑなり。 なんらか三種しゅ。
三種の…得るがゆゑなり 親鸞聖人は 「三種の随順菩提門の法満足することを得たまへるがゆゑに」 (証文類訓) と読まれた。
菩薩遠↢離如↠是三種菩提門相違法↡得↢三種随順菩提門法満足↡故。何等三種。
1. 無染清浄心
▼一には無む染ぜん清浄しょうじょう心しんなり。 自じ身しんのために諸楽しょらくを求もとめざるをもつてのゆゑなり。
一者無染清浄心、以↠不↧為↢自身↡求↦諸楽↥故。
2. 安清浄心
▼二には安あん清浄しょうじょう心しんなり。 一切いっさい衆しゅ生じょうの苦くを抜ぬくをもつてのゆゑなり。
二者安清浄心、以↠抜↢一切衆生苦↡故。
3. 楽清浄心
▼三には楽らく清浄しょうじょう心しんなり。 一切いっさい衆しゅ生じょうをして大だい菩ぼ提だいを得えしむるをもつてのゆゑなり。 衆しゅ生じょうを*摂取せっしゅしてかの国こく土どに生しょうぜしむるをもつてのゆゑなり。
三者楽清浄心、以↠令↣一切衆生得↢大菩提↡故。以↧摂↢取衆生↡生↦彼国土↥故。
▼これを三種しゅの菩ぼ提門だいもんに随順ずいじゅんする法ほうの満足まんぞくと名なづく、 知しるべし。
是名↢三種随順菩提門法満足↡。応↠知。
◎解義分 ○名義摂対
【21】▼向さきに説とく智慧ちえと慈悲じひと方便ほうべんとの三種しゅの門もんは般若はんにゃを摂取せっしゅし、 般若はんにゃは方便ほうべんを摂取せっしゅす、 知しるべし。 ▼向さきに我が心しんを遠おん離りして自じ身しんに*貪着とんじゃくせざると、 衆しゅ生じょうを安やすんずることなき心しんを遠おん離りすると、 自じ身しんを供く養ようし恭敬くぎょうする心しんを遠おん離りするとを説とけり。 この三種しゅの法ほうは菩ぼ提だいを障さふる心しんを遠おん離りす、 知しるべし。 ▼向さきに無む染ぜん清浄しょうじょう心しん、 安あん清浄しょうじょう心しん、 楽らく清浄しょうじょう心しんを説とけり。 この三種しゅの心しんは、 一処しょに略りゃくして*妙楽みょうらく勝真しょうしん心しんを*成就じょうじゅす、 知しるべし。
妙楽勝真心 行者が五念門を行じて得る自利利他円満の真実心で、 浄土の最勝の真実の徳 (妙楽勝真) にかなう菩ぼ提心だいしんのこと。
成就す(し) 親鸞聖人は 「成就したまへり」 (証文類訓) と読まれた。
向説智恵・慈悲・方便三種門摂↢取般若↡。般若摂↢取方便↡。応↠知。向説遠離我心不貪着自身、遠離無安衆生心、遠離供養恭敬自身心、此三種法遠↣離障↢菩提心↡。応↠知。向説無染清浄心安清浄心楽清浄心、此三種心略一処成↢就妙楽勝真心↡。応↠知。
◎解義分 ○願事成就
【22】▼かくのごとく菩ぼ薩さつは智慧ちえ心しん・方便ほうべん心しん・無障むしょう心しん・勝真しょうしん心しんをもつてよく清浄しょうじょうの仏国ぶっこく土どに*生しょうず、 知しるべし。 ▼これを菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ、 五種しゅの法門ほうもんに随順ずいじゅんし、 所しょ作さ意こころに随したがひて自じ在ざいに*成就じょうじゅすと名なづく。 向さきの所説しょせつのごとき*身業しんごう・口く業ごう・意い業ごう・智ち業ごう・方便ほうべん智ち業ごうは、 法門ほうもんに随順ずいじゅんするがゆゑなり。
生ず 親鸞聖人は 「生ぜしめたまへり」 (証文類訓) と読まれた。
身業…方便智業 身業は礼らい拝はい、 口業は讃嘆さんだん、 意業は作さ願がん、 智業は観察かんざつ、 方便智業は回え向こうを指す。
如↠是菩薩智恵心方便心無障心勝真心能生↢清浄仏国土↡。応↠知。是名↧菩薩摩訶薩随↢順五種法門↡所作随↠意自在成就↥。如↢向所↟説身業口業意業智業方便智業随↢順法門↡故。
◎解義分 ○利行満足 ・ 五種の功徳
【23】▼また五種しゅの門もんありて漸ぜん次じに*五種しゅの功く徳どくを*成就じょうじゅす、 知しるべし。 ▼何者なにものか五門もん。 一には*近門ごんもん、 二には*大だい会え衆門しゅもん、 三には*宅門たくもん、 四には*屋門おくもん、 五には*園林おんりん遊戯地ゆげじ門もんなり。 ▼この五種しゅの門もんは、 初はじめの四種しゅの門もんは*入にゅうの功く徳どくを*成就じょうじゅし、 第だい五門もんは*出しゅつの功く徳どくを*成就じょうじゅす。
入・出 入は自利、 出は利他の意。
復有↢五種門↡漸次成↢就五種功徳↡。応↠知。何者五門。一者近門、二者大会衆門、三者宅門、四者屋門、五者園林遊戯地門。此五種門、初四種門成↢就入功徳↡、第五門成↢就出功徳↡。
1. 近門
▼入にゅう第だい一門もんとは、 阿弥陀あみだ仏ぶつを礼拝らいはいし、 かの国くにに*生しょうぜんとなすをもつてのゆゑに、 安楽あんらく世せ界かいに生しょうずることを*得う。 これを入にゅう第だい一門もんと名なづく。
生ぜんとなすを 親鸞聖人は 「生ぜしめんがためにするを」 (証文類訓) と読まれた。
得 親鸞聖人は 「得しむ」 (証文類訓) と読まれた。 本頁十二行・十四行の 「得」 もこれに同じ。
入第一門者、以↧礼↢拝阿弥陀仏↡為↞生↢彼国↡故得↠生↢安楽世界↡、是名↢入第一門↡。
2. 大会衆門
▼入にゅう第だい二門もんとは、 阿弥陀あみだ仏ぶつを讃歎さんだんし、 *名義みょうぎに随順ずいじゅんして如来にょらいの名みなを*称しょうし、 如来にょらいの光こう明みょう智ち相そうによりて修行しゅぎょうするをもつてのゆゑに、 大だい会え衆しゅの数かずに入いることを得う。 これを入にゅう第だい二門もんと名なづく。
名義 名号の意義、 いわれ。
称し 親鸞聖人は 「称せしめ」 (証文類訓) と読まれた。
入第二門者、以↧讃↢歎阿弥陀仏↡随↢順名義↡称↢如来名↡依↢如来光明智相↡修行↥故得↠入↢大会衆数↡、是名↢入第二門↡。
3. 宅門
▼入にゅう第だい三門もんとは、 *一心いっしん専念せんねんにかしこに生しょうぜんと作さ願がんし、 奢しゃ摩他また*寂静じゃくじょう三昧ざんまいの行ぎょうを修しゅするをもつてのゆゑに、 ▼*蓮れん華げ蔵ぞう世せ界かいに入いることを得う。 これを入にゅう第だい三門もんと名なづく。
一心…修するを 親鸞聖人は 「一心に専念し作願して、 かしこに生じて奢摩他寂静三昧の行を修するを」 (証文類訓) と読まれた。
入第三門者、以↧一心専念作願生↠彼修↦奢摩他寂静三昧行↥故得↠入↢蓮華蔵世界↡、是名↢入第三門↡。
4. 屋門
▼入にゅう第だい四門もんとは、 *専念せんねんにかの妙みょう荘厳しょうごんを観察かんざつし、 毘婆びば舎しゃ那なを修しゅするをもつてのゆゑに、 *かの所ところに到いたりて種々しゅじゅの*法ほう味み楽らくを受用じゅゆうすることを得う。 これを入にゅう第だい四門もんと名なづく。
専念に…修するを 親鸞聖人は 「かの妙荘厳を専念し観察して、 毘婆舎那を修せしむるを」 (証文類訓) と読まれた。
かの所に…得 親鸞聖人は 「かの所に到ることを得て、 種々の法味の楽を受用せしむ」 (証文類訓) と読まれた。
法味楽 仏法の味わいを楽しむこと。
入第四門者、以↧専↢念観↣察彼妙荘厳↡修↦婆舎那↥故得↠到↢彼所↡受↢用種種法味楽↡、是名↢入第四門↡。
5. 園林遊戯地門
▼出しゅつ第だい五門もんとは、 大だい慈悲じひをもつて一切いっさい苦く悩のうの衆しゅ生じょうを観察かんざつして、 応おう化げ身しんを示しめして、 生しょう死じの園その、 煩悩ぼんのうの林はやしのなかに*回入えにゅうして遊戯ゆげし、 神通じんずうをもつて*教化きょうけ地じに至いたる。 ▼本願力ほんがんりきの回え向こうをもつてのゆゑなり。 これを出しゅつ第だい五門もんと名なづく。
回入 かえり入ること。
出第五門者、以↢大慈悲↡観↢察一切苦悩衆生↡、示↢応化身↡、廻↢入生死園、煩悩林中↡、遊↢戯神通↡至↢教化地↡。以↢本願力廻向↡故、是名↢出第五門↡。
▼菩ぼ薩さつは*入にゅうの四種しゅの門もんをもつて自利じりの行ぎょう成就じょうじゅす、 知しるべし。 ▼菩ぼ薩さつは*出しゅつの第だい五門もんの回え向こうをもつて利り益やく他たの行ぎょう成就じょうじゅす、 知しるべし。
入の…成就す 親鸞聖人は 「四種の門に入りて自利の行成就したまへり」 (行文類訓) と読まれた。
出の…成就す 親鸞聖人は 「第五門に出でて回向利益他の行成就したまへり」 (行文類訓) と読まれた。
菩薩入↢四種門↡自利行成就。応↠知。菩薩出↢第五門↡廻向利益他行成就。応↠知。
【24】▼菩ぼ薩さつはかくのごとく▼*五門もんの行ぎょうを修しゅして自利じり利他りたす。 速すみやかに*阿あ耨のく多羅たら三藐三さんみゃくさん菩ぼ提だいを成就じょうじゅすることを*得うるゆゑなり。
五門 ¬論註¼ 所引の ¬浄土論¼ では 「五念門」 とある。
得る 親鸞聖人は 「得たまへる」 (行文類訓) と読まれた。
菩薩如↠是修↢五門行↡自利利他速得↣成↢就阿耨多羅三藐三菩提↡故。
【25】▼無量寿経むりょうじゅきょう優婆うば提舎だいしゃ願生偈がんしょうげ、 略りゃくして義ぎを解げしをはりぬ。
無量寿修多羅優婆提舎願生偈、略解↠義竟。
無量寿経むりょうじゅきょう優婆うば提舎だいしゃ願生偈がんしょうげ
願主がんしゅ比丘びく敬覚きょうかく
筆者ひっしゃ沙門しゃもん泰兼たいけん
南無なも阿弥陀あみだ仏ぶつ
この ¬浄じょう土ど論ろん¼ の*形かた木ぎ末代まつだい利り益やくのために*知ち恩院おんいんに安あん置ちす。
形木 版木。
知恩院 京都東山にある浄土宗の総本山。
*永享えいきょう九 丁ひのとの巳み 年ねん七月がつ十八日にち
永享九丁巳年 1437年。