1060◎往おう生じょう要よう集しゅう 巻かん下げ

天台てんだい*首しゅ楞りょう厳ごん院いん沙門しゃもん*源信げんしん撰せん

二 Ⅶ ▼念仏利益

【58】◎^大文だいもん第だい七しちに、 △*念仏ねんぶつ利り益やくを明あかさば、 大おおきに分わかちて七しちあり。 一いちには▽滅罪めつざい生しょう善ぜん、 二にには▽冥みょう得とく護持ごじ、 三さんには▽現身げんしん見仏けんぶつ、 四しには▽当来とうらい勝しょう利り、 五ごには▽弥陀みだ別益べつやく、 六ろくには▽引例いんれい勧信かんしん、 七しちには▽悪趣あくしゅ利り益やくなり。 その文もんおのおの多おおし、 いま略りゃくして要ようを挙あぐ。

◎大1171文第七ニ明サバ↢▼念仏ノ利益ヲ↡者、大ニ分チテ有リ↠七。▼一ニハ滅罪生善。二ニハ冥ニ得ル↢護持ヲ↡。三ニハ現身ニ見タテマツル↠仏ヲ。四ニハ当来ノ勝利。五ニハ弥陀ノ別益。六ニハ引キテ↠例ヲ勧信スル。七ニハ悪趣ノ利益ナリ。其ノ文各 ノ多シ、今略シテ挙グ↠要ヲ。

二 Ⅶ ⅰ 滅罪生善

【59】^第一だいいちに△*滅罪めつざい生しょう善ぜんといふは、

第一ニ滅罪生善トイフ者、

・滅罪

^¬*観仏かんぶつ経きょう¼ の第だい二ににのたまはく、 「一いち時じのなかにおいて分わかちて少しょう分ぶんとなして、 少しょう分ぶんのなかによく須しゅ臾ゆのあひだも仏ぶつの白びゃく毫ごうを念ねんじて、 心しんをして*了々りょうりょうならしめ、 謬びゅう乱らんの想おもいなく、 分ぶん明みょう*正住しょうじゅうにして、 意こころを注つくること息やまずして白びゃく毫ごうを念ねんずるものは、 もしは相好そうごうを見み、 もしは見みることを得えずとも、 かくのごとき等らの人ひとは、 九く十じゅう六ろく億おく那由なゆ他た恒ごう河が沙しゃ微み塵数じんしゅ劫こうの生しょう死じの罪つみを除じょ却きゃくせん。

¬観仏経ノ¼第二ニ云ク、「於テ↢一時ノ中ニ↡分チテ為シテ↢少分ト↡、少分之中ニ能ク須臾ノ間モ念ジテ↢仏ノ白毫ヲ↡、令メ↢心ヲシテ了了ナラ↡、無ク↢謬乱ノ想↡、分明ニ正住ニシテ、注ツグコト↠意ヲ不シテ↠息マ念ズル↢白毫ヲ↡者ハ、若シハ見↢相好ヲ↡、若シハ不トモ↠得↠見ルコトヲ、如キ↠是クノ等ノ人ハ、除↢却セム九十六億那由他恒河沙微塵数劫ノ生死之罪ヲ↡。

^たとひまた人ひとありて、 ただ白びゃく毫ごうを聞ききて心こころに驚きょう疑ぎせず、 歓かん喜ぎし信受しんじゅせん。 この人ひともまた八はち十じゅう億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを却さけん」 と。

設ヒ復有リテ↠人、但聞キテ↢白毫ヲ↡心ニ不↢驚疑セ↡、歓喜シ信受セム。此ノ人モ亦却サケムト↢八十億劫ノ生死之罪ヲ↡。」

^またのたまはく (観仏経)、 「仏ぶつ1061、 世よを去さりたまひて後のち、 三昧さんまい正しょう受じゅして仏ぶつの*行ぎょうを想おもふものは、 また千劫せんごうの極ごく重じゅうの悪業あくごうを除のぞかん」 と。 仏ぶつの行ぎょう歩ぶの相そうは、 △上かみの助念じょねん方法ほうほう門もんのごとし。

又云ク、「仏去リタマヒテ↠世ヲ後、三昧正受シテ想ハム↢仏ノ行ヲ↡者ハ、亦除カムト↢千劫ノ極重ノ悪業ヲ↡。」仏ノ行歩ノ相ハ、如シ↢上ノ助念ノ方法門ノ↡

^またのたまはく (観仏経)、 「仏ぶつ、 *阿あ難なんに告つげたまはく、 ªなんぢ、 今日こんにちより如来にょらいの語ごを持たもちて、 あまねく弟子でしに告つげよ。 仏ぶつの滅めつ度どの後のちに、 好よき形ぎょう像ぞうを造つくりて、 身相しんそうをして具ぐ足そくせしめ、 また無む量りょうの化け仏ぶつの色像しきぞうおよび*通身つうしんの色しきを作つくり、 および*仏ぶっ跡しゃくを画えがき、 微み妙みょうの糸いとおよび*頗梨はり珠しゅをもつて白びゃく毫ごうの処ところに安おきて、 もろもろの衆しゅ生じょうをしてこの相そうを見みることを得えしめよ。 ただこの相そうを見みて心しんに歓かん喜ぎをなさば、 この人ひとは百ひゃく億おく那由なゆ他た恒ごう河が沙しゃ劫こうの生しょう死じの罪つみを除じょ却きゃくせんº」 と。

又云ク、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、汝従リ↢今日↡持チテ↢如来ノ語ヲ↡、遍ク告ゲヨ↢弟子ニ↡。仏ノ滅度ノ後ニ、造リテ↢好キ形像ヲ↡、令1172メ↢身相ヲシテ*具足セ↡、亦作リ↢无量ノ化仏ノ色像及ビ通身ノ色ヲ↡、及ビ画キ↢仏跡ヲ↡、以テ↢微妙ノ絲及ビ頗梨珠ヲ↡安オキテ↢白毫ノ処ニ↡、令メヨ↢諸ノ衆生ヲシテ得↟見ルコトヲ↢*是ノ相ヲ↡。但見テ↢此ノ相ヲ↡心ニ生ナサバ↢歓喜ヲ↡、此ノ人ハ除↢却セムト百億那由他恒河沙劫ノ生死之*罪ヲ↡。」

^またのたまはく (観仏経)、 「▽老女ろうにょの、 仏ぶつを見みて、 邪見じゃけんにして信しんぜざるすら、 なほよく八はち十じゅう万億まんおく劫こうの生しょう死じの罪つみを除じょ却きゃくしき。 いはんや、 また善よき意こころをもつて恭く敬ぎょうし礼拝らいはいせんをや」 と。 *須達しゅだつが家いえの老女ろうにょの因縁いんねんは、 かの ¬経きょう¼ (同) に広ひろく説とくがごとし。

又云ク、「老女ノ見テ↠仏ヲ、邪見ニシテ不ルスラ↠信ゼ、猶能ク除↢却シキ八十*万億劫ノ生死之罪ヲ↡。況ヤ復善キ意ヲモテ恭敬シ礼拝セムヲヤト。」須達ガ家ノ*老女ノ因縁ハ、如シ↢*彼ノ¬経ニ¼広ク説クガ↡

^またのたまはく (観仏経)、 「もろもろの凡ぼん夫ぶおよび*四部しぶの弟子でし、 *方等ほうどう経きょうを謗そしり、 五ご逆ぎゃく罪ざいを作つくり、 四し重じゅう禁きんを犯おかし、 僧そう祇ぎ物もつを偸ぬすみ、 比丘びく尼にを婬いんし、 八はっ戒斎かいさいを破やぶり、 もろもろの悪あく事じをなし、 種々しゅじゅの邪見じゃけんあらん。 かくのごとき等らの人ひと、 もしよく心しんを至いたして一日いちにち一いち夜や、 繋け念ねん在前ざいぜんして、 仏ぶつ如来にょらいの一いちの相好そうごうを観かんぜば、 もろもろの悪あく・罪ざい障しょうも、 みなことごとく尽滅じんめつしなん」 と1062。

又云ク、「諸ノ凡夫及ビ四部ノ弟子、謗リ↢方等経ヲ↡、作リ↢五逆罪ヲ↡、犯シ↢四重禁ヲ↡、偸ミ↢僧祇物ヲ↡、婬シ↢比丘尼ヲ↡、破リ↢八戒斎ヲ↡、作シ↢諸ノ悪事ヲ↡、種々ノ邪見アラム。如キ↠是クノ等ノ人、若シ能ク至シテ↠心ヲ一日一夜繋念在前シテ、観ゼバ↢仏如来ノ一ノ相好ヲ↡者、諸ノ悪・罪障モ、皆悉ク尽滅シナムト。」

^またのたまはく (観仏経)、 「もしは仏ぶつ世せ尊そんに帰依きえすることあるもの、 もしは名みなを称しょうするものは、 百ひゃく千せん劫ごうの煩悩ぼんのうの重障じゅうしょうを除のぞく。 いかにいはんや、 正しょう心しんに*念仏ねんぶつ定じょうを修しゅせんをや」 と。

又云ク、「若シハ有ル↣帰↢依スルコト仏世尊ニ↡者、若シハ称スル↠名ヲ者ハ、除ク↢百千劫ノ煩悩ノ重障ヲ↡。何ニ況ヤ正心ニ修セムヲヤトイヘリ↢念仏定ヲ↡。」

^¬*宝ほう積しゃく経きょう¼ の第だい五ごにのたまはく、 「宝珠ほうしゅあり、 種々しゅじゅ色しきと名なづく。 大海だいかいのなかにあり、 無む量りょう衆しゅ多たの駃はやき流ながれありて大海だいかいに入いるといへども、 珠しゅ火かの力ちからをもつて水みずをして消しょう滅めつせしめて、 盈溢よういつせざらしむるがごとく、 かくのごとく*如来にょらい・応おう・正しょう等覚とうがくは菩ぼ提だいを証しょうしをはりて、 智火ちかの力ちからによりて、 よく衆しゅ生じょうの煩悩ぼんのうをして消しょう滅めつせしめたまふことも、 またかくのごとし。 乃至

¬宝積経ノ¼第五ニ云ク、「如クニ↪有リ↢宝珠↡、名ク↢種々色ト↡、在リ↢大海ノ中ニ↡、雖モ↧有リテ↢無量衆多ノ駃ハヤキ流↡入ルト↦於大海ニ↥、以テ↢珠火ノ力ヲ↡令メテ↢水ヲシテ銷滅セ↡、而シテ不ルガ↩盈溢セ↨、如ク↠是クノ如来・応・正等覚ハ証シ↢菩提ヲ↡已リテ、由リテ↢智ノ火ノ力ニ↡能ク令メタマフコトモ↢衆生ノ煩悩ヲシテ*消滅セ↡、亦復如シ↠是クノ。乃至

^もしまた人ひとありて、 日々にちにちのうちにおいて如来にょらいの名みょう号ごう功く徳どくを称しょう説せつせば、 このもろもろの衆しゅ生じょうはよく黒闇こくあんを離はなれて、 漸ぜん次じにまさにもろもろの煩悩ぼんのうを焼やくことを得うべし。 かくのごとくして ª南無なも仏ぶつº と称しょう念ねんするもの、 語ご業ごう空むなしからじ。 かくのごとき語ご業ごうを、 *大だい炬こを執とりてよく煩悩ぼんのうを焼やくと名なづく」 と。

若シ復有リテ↠人、於テ↢日々ノ中ニ↡称↢説セバ如来ノ名号功徳ヲ↡、是ノ諸ノ衆生ハ能ク離レテ↢黒闇ヲ↡、漸次ニ当ニシ↠得↠焼コトヲ↢諸ノ煩悩ヲ↡。如クシテ↠是クノ称↢念スル南無仏ト↡者、語業不↠空シカラ。如キ↠是クノ語業ヲバ、名クト↧執リテ↢*大炬ヲ↡能ク焼クト↦煩悩ヲ↥。」

^¬*遺日ゆいにち摩尼まに経きょう¼ にのたまはく、 「菩ぼ薩さつは、 また数千しゅせん巨こ億万おくまん劫ごう、 愛欲あいよくのなかにありて罪つみのために覆おおはれたりといへども、 もし仏ぶっ経きょうを聞ききて一反いっぺんも善ぜんを念ねんずれば、 罪つみすなはち消しょう尽じんす」 と。 以い上じょうのもろもろの文もんは滅罪めつざいなり。

¬遺*日摩尼経1173ニ¼云ク、「菩薩ハ雖モ↧復数千*巨億万劫在リテ↢愛欲ノ中ニ↡為ニ↠罪ノ所タマヘリト↞覆ハ、若シ聞キテ↢仏経ヲ↡一反モ念ズレバ↠善ヲ、罪即チ消*尽スト。」已上ノ諸ノ文ハ滅罪ナリ

・生善

^¬*大だい悲ひ経きょう¼ の第だい二ににのたまはく、 「もし三千さんぜん大千だいせん世せ界かいのなかに満みてらん須しゅ陀だ洹おん・斯陀しだ含ごん・阿那あな含ごん・阿羅あら漢かんを、 もし善男ぜんなん子し・善ぜん女にょ人にん1063ありて、 もしは一劫いっこう、 もしは*減げん一劫いっこう、 もろもろの種々しゅじゅの*称しょう意いの一切いっさいの楽らく具ぐをもつて、 恭く敬ぎょうし尊そん重じゅうし*謙けん下げして供く養ようせん。

¬大悲経ノ¼第二ニ云ク、「若シ三千大千世界ニ満テラム↠中ニ須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢ヲ、若シ有リテ↢善男子・善女人↡、若シハ一劫、若シハ減一劫、以テ↢諸ノ種々ノ称意ノ一切ノ楽具ヲ↡恭敬シ尊重シ謙下シテ供養セム。

^もしまた人ひとありて、 諸仏しょぶつの所みもとにして、 ただ一ひとたび掌たなごころを合あわせ、 一ひとたび名みなを称しょうせん。 かくのごとき福徳ふくとくを、 前さきの福徳ふくとくに比くらぶるに、 百ひゃく分ぶんにして一いちにも及およばず。 百ひゃく千億せんおく分ぶんにして一いちにも及およばず。 *迦羅から分ぶんにして一いちにも及およばず。 なにをもつてのゆゑに。 仏ぶつ如来にょらいはもろもろの*福田ふくでんのなかに最さい無む上じょうたるをもつてなり。 このゆゑに仏ぶつに施せするは大だい功く徳どくを成じょうず」 と。

若シ復有リテ↠人、於テ↢諸仏ノ所ニ↡但シ一タビ合セ↠掌ヲ、一タビ称セム↠名ヲ。如キ↠是クノ福徳ヲ比ブルニ↢前ノ福徳ニ↡、百分ニシテ不↠及バ↠一ニモ。百千億分ニシテ不↠及バ↠一ニモ。迦羅分ニシテ不↠及バ↠一ニモ。何ヲ以テノ故ニ。以テナリ↣仏如来ハ諸ノ福田ノ中ニ為マシマスヲ↢最モ无上ト↡。是ノ故ニ施スルハ↠仏ニ成ズト↢大功徳ヲ↡。」

^略りゃくして抄しょうす。 三千さんぜん世せ界かいに満みてる辟びゃく支し仏ぶつをもつて*校量きょうりょうすることまたしかり。

略シテ抄ス。以テ↧満テル↢三千*世界ニ↡辟支仏ヲ↥挍量スルコト亦爾リ

^¬*普ふ曜よう経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬普曜経ノ¼偈ニ云ク、

^「一切いっさい衆しゅ生じょうの、 縁覚えんがくとならんに、 もし供く養ようすること億数おくしゅ劫こうにして、
飲食おんじき・衣え服ぶく・床じょう臥具がぐ、 *梼香とうこう・雑香ざっこうおよび名華みょうけをもつてすることあらんも、

「一切衆生ノ成レラムヲ↢縁覚ト↡若シハ有ラムモ↢供養スルコト億数劫ニシテ
飲食衣服床臥具*梼香雑香及ビ名華ヲモテスルコト↡

^もし心しんを一いちにして十じゅうの指ゆびを叉あざへ、 心しんをもつぱらにしてみづから一いちの如来にょらいに帰きしたてまつり、
口くちにみづから言ごんを発おこして ª南無なも仏ぶつº といふことあらば、 この功く徳どくの福ふくをば最さい上じょうなりとなす」 と。

若シハ有ラム↧一ニシテ↠心ヲ叉アザヘ↢十ノ指ヲ↡専ニシテ↠心ヲ自ラ帰シタテマツリ↢一ノ如来ニ↡
口ニ自ラ発シテ↠言ヲ南無仏トイフコト↥是ノ功徳ノ福ヲバ為スト↢最上ナリト↡」

^¬*般舟はんじゅ経きょう¼ に念仏ねんぶつ三昧ざんまいを説とく偈げにのたまはく、

¬般舟経ニ¼説ク↢念仏三昧ヲ↡偈ニ云ク、

^1064「たとひ一切いっさいみな仏ぶつとなりて、 聖しょう智ち清浄しょうじょうにして慧え第一だいいちならん。
みな億劫おくこうよりその数しゅを過すぐすまで、 一いち偈げの功く徳どくを講説こうせつし、

「仮使 タトヒ 一切皆為リテ↠仏ト聖智清浄ニシテ慧第一ナラム
皆於テ↢億劫ニ↡過グスマデニ↢其ノ数ヲ↡講↢説スルコト一偈↡之功徳ヲ

^*泥洹ないおんに至いたるまで*福ふくを誦詠じゅようし、 無む数しゅ億劫おくこうにことごとく嘆誦たんじゅすとも、
その功く徳どくを究きわめ尽つくすことあたはじ。 この三昧さんまいの一いち偈げの事じにおいてするを、

至ルマデニ↢於泥洹ニ↡誦↢詠シ福ヲ↡無数億劫ニ悉ク嘆誦ストモ
不↠能ハ↣究メ↢尽スコト其ノ功徳ヲ↡於テハ↢是ノ三昧ノ一偈ノ事ニ↡

^一切いっさいの仏国ぶっこくのあらゆる地じ、 四し方ほう四し隅ぐうおよび上じょう下げの、
なかに満みてらん珍宝ちんぽうをもつて布施ふせし、 用もちゐて仏ぶつ*天てん中ちゅうの天てんに供く養ようせんも、

一切ノ仏国ノ所有ノ地四方四*隅及ビ上下ニ
満テラム↠中ニ珍宝ヲ以テ布施トシテ用ヰテ供↢養セムモ仏天中ノ天ニ↡

^もしこの三昧さんまいを聞きくことあるものは、 その*福祐ふくゆうを得うること、 かれに過すぎたらん。

*安諦あんたいに*諷ふ誦じゅし説講せっこうするものは、 譬たとへを引ひくとも功く徳どく喩たとふべからず」 と。

若シ有ラム↠聞クコト↢是ノ三昧ヲ↡者ハ得ルコト↢其ノ福祐ヲ↡過ギタラム↢於彼ニ↡
安諦シ諷誦シ説講セム者1174ハ引クトモ↠譬ヲ功徳不ト↠可カラ↠喩フ」

^一仏いちぶつの刹せつを破はして*塵じんとなして、 一々いちいちの塵じんを取とりて、 また砕くだくこと、 一いち仏刹ぶっせつの塵数じんじゅにおいてするがごとくして、 この一いち塵じんをもつて一いち仏刹ぶっせつとなして、 そこばくの仏刹ぶっせつの、 なかに満みてらん珍宝ちんぽうを諸仏しょぶつに供く養ようせん。 これをもつて比ひとなせり。 以い上じょう生しょう善ぜん。

破シテ↢一仏ノ刹ヲ↡為シテ↠塵ト取リテ↢一々ノ塵ヲ↡、亦砕クコト、如クシテ↢一仏刹ノ塵数ニオイテスルガ↡、以テ↢此ノ一塵ヲ↡為シテ↢一仏刹ト↡、若干ソコバクノ仏刹ニ、満テラム↠中ニ珍宝ヲ供↢養セム諸仏ニ↡。以テ↠之ヲ為セリ↠比ト也。已上生善

・滅罪生善

^¬*度ど諸仏しょぶつ境きょう界がい経きょう¼ に説とかく、 「もしもろもろの衆しゅ生じょうの、 如来にょらいを縁えんじて、 もろもろの行ぎょうを生しょうずるものは、 無む数しゅ劫こうの地じ獄ごく・畜ちく生しょう・餓鬼がき・閻えん魔ま王おうの生しょうを断だんず。 もし衆しゅ生じょうありて、 一念いちねんも*作意さいして如来にょらいを縁えんずるものは、 所得しょとくの功く徳どく限極げんごくあることなし1065。 称量しょうりょうすべからず。 百ひゃく千せん万億まんおく那由なゆ他たのもろもろの大だい菩ぼ薩さつの、 ことごとく不可ふか思議しぎの解げ脱だつ定じょうを得えんも、 *計け校きょうしてその辺際へんざいを知しることあたはじ」 と。

¬度諸仏境界経ニ¼説カク、「若シ諸ノ衆生ノ縁ジテ↢於如来ヲ↡生ズル↢諸ノ行ヲ↡者ハ、断ズ↢無数劫ノ地獄・畜生・餓鬼・閻*魔王ノ生ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡、一念モ作意シテ縁ズル↢如来ヲ↡者ハ、所得ノ功徳無シ↠有ルコト↢限極↡。不↠可カラ↢称量ス↡。百千万億那由他ノ諸ノ大菩薩ノ、悉ク得タルモ↢不可思議ノ解脱定ヲ↡、不ト↠能ハ↣計挍シテ知ルコト↢其ノ辺際ヲ↡。」

^¬観仏かんぶつ経きょう¼ に、 「仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 ªわれ涅ね槃はんしなん後のちに、 諸天しょてん・世せ人にん、 もしわが名なを称しょうし、 および «南無なも諸仏しょぶつ» と称しょうせば、 獲えるところの福徳ふくとく無む量りょう無む辺へんならん。 いはんやまた繋け念ねんして諸仏しょぶつを念ねんずるものは、 しかももろもろの障しょう礙げを滅除めつじょせざらんやº」 と。 以い上じょう、 滅罪めつざい生しょう善ぜん。 その余よは△上かみの正しょう修しゅ念仏ねんぶつ門もんのごとし。

¬観仏*経ニ¼、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、我涅槃シナム後ニ、諸天・世人、若シ称シ↢我ガ名ヲ↡、*及ビ称セムハ↢南無諸仏ト↡、所ノ↠獲ム福徳無量无辺ナラム。況ヤ復繋念シテ念ゼム↢諸仏ヲ↡者ハ、而モ不ラム↣滅↢除セ諸ノ障礙ヲ↡耶ト。」已上滅罪生善。其ノ余ハ如シ↢上ノ正修念仏門ノ↡

二 Ⅶ ⅱ 冥得護持

【60】^第だい二にに△*冥みょう得とく護持ごじといふは、

第二ニ冥ニ得トイフ↢護持ヲ↡者、

^¬*護ご身呪しんじゅ経きょう¼ (意) にのたまはく、 「▼*三さん十じゅう六ろく部ぶの神王しんのうに、 万億まんおく恒沙ごうじゃの鬼き神じんありて眷属けんぞくとなして、 *三さん帰きを受うけたるものを護まもる」 と。

¬護身呪経ニ¼云ク、「卅六部ノ神王ニ有リテ↢万億恒沙ノ鬼神↡為シテ↢眷属ト↡、護ルト↧受ケタル↢三帰ヲ↡者ヲ↥。」

^¬般舟はんじゅ経きょう¼ にのたまはく、 「*劫こう尽つき壊え焼しょうする時ときに、 この三昧さんまいを持たもてる菩ぼ薩さつは、 たとひこの火ひのなかに堕おつとも、 火ひすなはちために滅めっしなんこと、 たとへば、 大おおきなる*甖もたいの水みずの、 小しょう火かを滅めっするがごとし。

¬般舟経ニ¼云ク、「劫尽キ壊焼セム時ニ、持タム↢是ノ三昧ヲ↡菩薩者、正 使 タトヒ * ヒ堕ツトモ↢是ノ火ノ中ニ↡、火即チ為ニ滅シナムコト。譬ヘバ如シ↣大ナル*甖モタヒノ水ノ滅スルガ↢小火ヲ↡。

^仏ぶつ、 跋ばつ陀和だわに告つげたまはく、 ªわが語かたるところは異いあることなし。 この菩ぼ薩さつは、 この三昧さんまいを持たもてるに、 もしは帝王たいおう、 もしは賊ぞく、 もしは火か、 もしは水すい、 もしは竜りゅう、 もしは蛇じゃ、 もしは*閲叉えつしゃ・鬼き神じん、 もしは猛獣みょうじゅう、 乃至 もしは人ひとの禅ぜんを壊やぶり、 人ひとの念ねんを奪うばふものも、 たとひこの菩ぼ薩さつを中やぶらんと欲ほっせば、 つひに中やぶることあたはじº と。

仏告ゲタマハク↢跋陀和ニ↡、我ガ所語ハ無シ↠有ルコト↠異。是ノ菩薩者、持タバ↢是ノ三昧ヲ↡、若シハ帝王、若シハ賊、若シハ火、若シハ水、若シハ竜、若シハ蛇、若シハ*閲叉・鬼神、若シハ*猛獣、乃至 若シハ壊ヤブリ↢人ノ禅ヲ↡奪フモノモ↢人ノ念ヲ↡、設ヒ欲セバ↠中ヤブラムト↢是ノ菩薩ヲ↡者、終ニ不ト↠能ハ↠中ヤブラムコト。

^仏ぶつののたまはく、 ªわ1066が語かたるところのごときは異いあることなし。 その宿命しゅくみょうをば除のぞきて、 その余よはよく中やぶるものあることなしº」 と。

仏ノ言ク、如キハ↢我ガ所語ノ↡無シ↠有ルコト↠異。除キテ↢其ノ宿命ヲバ↡、其ノ余ハ無シト↠有ルコト↢能ク中ヤブル者↡。」

^偈げ (般舟経) にのたまはく、

偈ニ曰ク、

^「鬼き神じん・*乾けん陀だともに擁よう護ごし、 諸天しょてん・人民にんみんもまたかくのごとくせん。
ならびに*阿あ須輪しゅりん・摩睺まご勒ろくも、 この三昧さんまいを行ぎょうぜば、 かくのごときことを得えん。

「鬼神乾陀共ニ擁護セム諸天人民モ亦如クセム↠是クノ
并アハセテ阿須*輪摩1175睺勒モセム行ゼバ↢此ノ三昧ヲ↡得ム↠如キコトヲ↠是クノ

^諸天しょてんことごとくともにその徳とくを頌ほめ、 天てん・人にん・竜神りゅうじん・*甄けん陀羅だら、
諸仏しょぶつも、 *嗟嘆しゃたんして願がんのごとくならしめたまはん。 経きょうを諷ふ誦じゅし説ときて人ひとのためにせんがゆゑなり。

諸天悉ク共ニ頌セム↢其ノ徳ヲ↡天人竜神甄陀羅
諸仏モ嗟嘆シテ令メタマハム↠如クナラ↠願ノ諷↢誦シ説キテ↣経ヲ↡為ニセムガ↠人ノ故ナリ

^国々くにぐにあひ伐うちて民たみ荒乱こうらんし、 飢き饉きんしきりに臻いたりて苦窮くぐを懐いだくとも、
つひにその命いのちを*中夭ちゅうようせじ。 よくこの経きょうを誦じゅして人ひとを化けするものは、

国々相伐ウチテ民荒乱シ飢饉*荐シキリニ臻イタリ*懐クトモ↢苦窮ヲ↡
終ニ不↣於テ↠中ニ*夭セ↢其ノ命ヲ↡能ク誦シテ↢*此ノ経ヲ↡化セム↠人ヲ者ハ

^勇ゆう猛みょうにしてもろもろの魔事まじを*降伏ごうぶくし、 心しんに畏おそるるところなく毛け竪いよだたじ。
その功く徳どく行ぎょうも不可ふか議ぎならん。 この三昧さんまいを行ぎょうずるものは、 かくのごときことを得えん」 と。

勇猛ニシテ降↢伏セム諸ノ魔事ヲ↡心ニ無ク↢所畏↡毛不↠竪タ
其ノ功徳行モ不可議ナラム行ゼバ↢此ノ三昧ヲ↡得ムト↠如キコトヲ↠是クノ」

^¬*十住じゅうじゅう婆ば沙しゃ¼ に、 これらの文もんを引ひきをはりていはく、 「ただ*業報ごうほうかならず受うくべきものをば除のぞく」 と、 云々うんぬん。

¬*十住婆*娑ニ¼引キ↢此等ノ文ヲ↡已リテ云ク、「唯除クト↢業報必ズ応キ↠受ク者ヲバ↡」*云々

^¬*十じゅう二に仏ぶつ名みょう経きょう¼ の偈げにのたまはく、

▼¬十二仏名経ノ¼偈ニ云ク、

^「もし人ひと、 仏ぶつの名みなを持たもてば、 衆しゅ魔まおよび*波は旬じゅん、
1067行住ぎょうじゅう坐臥ざがの処ところに、 その便たよりを得うることあたはじ」 と。

「若シ人持テバ↢仏ノ名ヲ↡衆魔及ビ波旬
行住坐臥ノ処ニ不ト↠能ハ↠得ルコト↢其ノ便ヲ↡」

二 Ⅶ ⅲ 現身見仏

【61】^第だい三さんに△*現身げんしん見仏けんぶつといふは、

第三ニ現身ニ見タテマツルトイフ↠仏ヲ者、

^¬*文殊もんじゅ般若はんにゃ経きょう¼ の下げ巻かんにのたまはく、 「仏ぶつののたまはく、 ªもし善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん、 *一いち行ぎょう三昧ざんまいに入いらんと欲おもはば、 *空閑くうげんに処しょしてもろもろの乱らん意いを捨すて、 *相そう貌みょうを取とらずして、 心しんを一仏いちぶつに繋かけて、 もつぱら名みょう字じを称しょうすべし。 仏ぶつの*方所ほうしょに随したがひて身みを端なおくして正ただしく向むかひて、 よく一仏いちぶつにおいて念々ねんねんに相続そうぞくせよ。 すなはち念ねんのうちにおいて、 よく過去かこ・未み来らい・現在げんざいの諸仏しょぶつを見みたてまつらんº」 と。

¬文殊般若経ノ¼下巻ニ云ク、「仏ノ*言ク、若シ善男子・善女人欲ハバ↠入ラムト↢一行三昧ニ↡、応シ↧処シテ↢*空閑ニ↡捨テ↢諸ノ乱意ヲ↡、不シテ↠取ラ↢相貌ヲ↡繋ケテ↢心ヲ一仏ニ↡、専ラ称ス↦名字ヲ↥。随ヒテ↢仏ノ方所ニ↡端ナホクシテ↠身ヲ正シクシテ向ヒテ、能ク於テ↢一仏ニ↡念々ニ相続セヨ。即チ於テ↢*念ノ中ニ↡、能ク見タテマツラムトイヘリ↢過去・未来・現在ノ諸仏ヲ↡。」

^導どう禅ぜん師じ (*善導) 釈しゃくしていはく (*礼讃・意)、 「▲衆しゅ生じょう障さわり重おもくして、 観かん成じょう就じゅしがたし。 ここをもつて大だい聖しょう (釈尊) 悲ひ憐れんして、 ただもつぱら名みょう字じを称しょうせよと勧すすめたまふ」 と。

導禅師釈シテ云ク、「衆生障重クシテ、観難シ↢成*就シ↡。是ヲ以テ大聖悲憐シテ、直ニ勧メタマフト↣専ラ称セヨト↢名字ヲ↡。」

^¬般舟はんじゅ経きょう¼ にのたまはく、 「前さきに聞きかざるところの経きょう巻かんを、 この菩ぼ薩さつ、 この三昧さんまいを持たもてる威い神じんをもつて、 夢ゆめのうちにことごとくみづからその経きょう巻かんを得えて、 おのおのことごとく見み、 ことごとく経きょうの声なを聞きかん。 もし昼ちゅう日じつに得えずは、 もしは夜よる、 夢ゆめのうちにしてことごとく仏ぶつを見みたてまつることを得えん。

¬般舟経ニ¼云ク、「前ニ所ノ↠不ル↠聞カ経巻ヲ、是ノ菩薩持ツ↢是ノ三昧ヲ↡威神ニ、夢ノ中ニ悉ク自ラ得テ↢其ノ経巻ヲ↡、各々悉ク見、悉ク聞カム↢経ノ声ナ ヲ↡。若シ昼日ニ不ハ↠得者、若シハ夜於テ↢夢ノ中ニ↡悉ク得ム↠見タテマツルコトヲ↠仏ヲ。

^仏ぶつ、 跋ばつ陀和だわに告つげたまはく、 ªもしは一劫いっこう、 もしは一劫いっこうを過すぎて、 われ、 この菩ぼ薩さつの、 この三昧さんまいを持たもてるものを説とき、 その功く徳どくを説とかんに、 尽つくしをはるべからず。 いかにいはんや、 よくこの三昧さんまいを求もとめ得えたるものをや1068º」 と。

仏告ゲタマハク↢跋陀和ニ↡、若シハ一劫、若シハ過ギテ↢一劫ヲ↡、我説キ↧是ノ菩薩ノ持タム↢是ノ三昧ヲ↡者ヲ↥、説カムニ↢其ノ功徳ヲ↡、不↠可カラ↢尽キ竟ル↡。何ニ況ヤ能ク求ム↠得ムト↢是ノ三昧1176ヲ↡者ヲヤト。」

^また同どう経きょうの偈げにのたまはく、

又同ジキ¬経ノ¼偈ニ云ク、

^「*阿あ弥陀みだの国くにの菩ぼ薩さつの、 *無む央数おうしゅ百ひゃく千せんの仏ぶつを見みたてまつるがごとく、
この三昧さんまいを得えたる菩ぼ薩さつもしかなり。 まさに無む数しゅ百ひゃく千せんの仏ぶつを見みたてまつるべし。 乃至

「如ク↣阿弥陀ノ国ノ菩薩ノ見タテマツルガ↢无央数百千ノ仏ヲ↡
得タル↢是ノ三昧ヲ↡菩薩モ然ナリ当ニシ↠見タテマツル↢無*数百千ノ仏ヲ↡ 乃至

^それこの三昧さんまいを誦受じゅじゅすることあらば、 すでにまのあたり百ひゃく千せんの仏ぶつを見みたてまつるとなす。
たとひ最さい後ごの大だい恐懼くくにおいても、 この三昧さんまいを持たもたば畏おそるるところなからん」 と。

其レ有ラム↣誦↢受スルコト是ノ三昧ヲ↡已ニ為ニ面マノアタリ見タテマツラム↢百千ノ仏ヲ↡
仮使 タトヒ 最後ノ大恐懼ニオイテモ持タバ↢此ノ三昧ヲ↡無ケムト↠所↠畏ルル」

^¬*念仏ねんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ の第だい九くの偈げにのたまはく、

¬念仏三昧経ノ¼第九ノ偈ニ云ク、

^「もしはことごとく一切いっさいの仏ぶつ、 現在げんざい・未み来らいおよび十方じっぽうを見みんと欲ほっし、
あるいはまた*妙みょう法輪ほうりんを転てんずることを求もとめんには、 また先まづこの三昧さんまいを修しゅ習じゅうせよ」 と。

「若シハ欲セバ↧尽ク見タテマツリ↢一切ノ仏現在・未来及ビ十方ヲ↡
或イハ復求メムト↞転ゼムコトヲ↢妙法輪ヲ↡亦先ヅ修↢習セヨト此ノ三昧ヲ↡」

^¬十じゅう二に仏ぶつ名みょう経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬十二仏名経ノ¼偈ニ云ク、

^「もし人ひとよく心しんを至いたして、 七日しちにち仏ぶつの名なを誦じゅせば、
清浄しょうじょうの眼まなこを得えて、 よく無む量りょうの仏ぶつを見みたてまつらん」 と。

「若シ人能ク至シテ↠心ヲ七日誦セバ↢仏ノ名ヲ↡
得テ↢於清浄ノ眼ヲ↡能ク見タテマツラムト↢無量ノ仏ヲ↡」

二 Ⅶ ⅳ 当来勝利

【106962】^第だい四しに△*当来とうらい勝しょう利りといふは、

第四ニ当来ノ勝利トイフ者、

・離悪趣

^¬*華け厳ごん¼ の偈げにのたまはく、

¬華厳ノ¼偈ニ云ク、

^「もし如来にょらいの小しょうの功く徳どくをも念ねんじ、 乃ない至し一念いちねんの心しんにも専仰せんごうしたてまつらば、
もろもろの悪道あくどうの怖おそれ、 ことごとく永ながく除のぞこり、 智ち眼げんはここにおいてよく深ふかく悟さとれり」 と。 智ち眼げん天王てんのうの頌じゅなり。

「若シ念ジ↢如来ノ小ノ功徳ヲモ↡乃至一念モ心ニモ専仰セムハ
諸ノ悪道ノ怖リ悉ク永ク除コリナム智眼ハ於テ↠此ニ能ク深ク悟レリト」
智眼天王ノ*頌ナリ

^¬般舟はんじゅ経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬般舟経ノ¼偈ニ云ク、

^「その人ひとつひに地じ獄ごくに堕だせじ。 餓鬼がき道どうおよび畜ちく生しょうを離はなれん。
世々せせに生うまるるところにて宿命しゅくみょうを識しらん。 この三昧さんまいを学がくせば、 かくのごときことを得えてん」 と。

「其ノ人終ニ不↠堕セ↢地獄ニ↡離レム↢餓鬼道及ビ畜生ヲ↡
世々ニ所ニテ↠生レム識ラム↢宿命ヲ↡学セバ↢*是ノ三昧ヲ↡得テムト↠如キコトヲ↠是クノ」

^¬観仏かんぶつ経きょう¼ にのたまはく、 「もし衆しゅ生じょうありて、 一ひとたびも仏身ぶっしんの、 上かみのごとき功く徳どく・相好そうごう・光こう明みょうを聞きかば、 億々おくおく千せん劫こうにも悪道あくどうに堕おちず、 邪見じゃけん・雑ぞう穢えの処ところに生うまれず、 つねに正しょう見けんを得えて、 勤修ごんしゅすること息やまざらん。 ただ仏ぶつの名みなを聞きくに、 かくのごとき福ふくを獲う。 いかにいはんや、 念ねんを観仏かんぶつ三昧ざんまいに繋かけんをや」 と。

¬観仏経ニ¼云ク、「若シ有リテ↢衆生↡一タビモ聞カバ↢仏身ノ如キ↠上ノ功徳・相好・光明ヲ↡、億々千劫ニモ不↠堕チ↢悪道ニ↡。不↠生レ↢邪見・雑穢之処ニ↡。常ニ得テ↢正見ヲ↡、勤修シテ不ラム↠息セ。但聞クニ↢仏ノ名ヲ↡、獲↢如キ↠是クノ福ヲ↡。何ニ況ヤ繋ケテ↠念ヲ観ズル↠仏ヲ三*昧ヲヤト。」

^¬*安楽あんらく集しゅう¼ (上) にいはく、 「▲¬*大集だいじっ経きょう¼ にのたまはく、 ª諸仏しょぶつ、 世よに出いでたまふに、 四し種しゅの法ほうありて、 衆しゅ生じょうを度どしたまふ。 なんらをか四しとなす。

¬*安楽集ニ¼云ク、「¬大集経ニ¼云ク、諸仏出デタマフニ↠世ニ、有リテ↢四種ノ法↡度シタマフ↢衆生ヲ↡。何等ヲカ為ル↠四ト。

^◆一いちには、 口くちに十じゅう二に部ぶ経きょうを説ときたまふ。 すなはちこれ、 法ほう施せをもつて衆しゅ生じょうを度どしたまふなり。

一ニ者口ニ説キタマフ↢十二部経ヲ↡。即チ是法施ヲモテ度シタマフナリ↢衆生ヲ↡。

^◆二にには1070、 諸仏しょぶつ如来にょらいには無む量りょうの光こう明みょう・相好そうごうまします。 一切いっさいの衆しゅ生じょう、 ただよく心しんを繋かけて観察かんざつすれば、 益やくを獲えずといふことなし。 すなはちこれ、 身業しんごうをもつて衆しゅ生じょうを度どするなり。

二ニ者諸仏如来ニハ有ス↢無量ノ光明・相好↡。一切ノ衆生1177、但能ク繋ケテ↠心ヲ観察スレバ、无シ↠不トイフコト↠*獲↠益ヲ。即チ是身業ヲモテ度スルナリ↢衆生ヲ↡。

^◆三さんには、 無む量りょうの徳用とくゆう・神通じんずう道力どうりき・種々しゅじゅの神変じんぺんまします。 すなはちこれ、 神通じんずう道力どうりきをもつて衆しゅ生じょうを度どするなり。

三ニ者有ス↢無量ノ徳用・神通道力・種々ノ神変↡。即チ是神通道力ヲモテ度スルナリ↢衆生ヲ↡。

^◆四しには、 諸仏しょぶつ如来にょらいには無む量りょうの名みょう号ごうまします。 もしは総そう、 もしは別べつなり。 それ衆しゅ生じょうありて、 心しんを繋かけて称しょう念ねんすれば、 障さわりを除のぞき、 益やくを獲えて、 みな仏前ぶつぜんに生うまれずといふことなし。 すなはちこれ、 名みょう号ごうをもつて衆しゅ生じょうを度どするなりº」 と。 云々

四ニ者諸仏如来ニハ有ス↢無量ノ名号↡。若シハ総若シハ別ナリ。其レ有リテ↢衆生↡繋ケテ↠心ヲ称念スルハ、莫シ↠不トイフコト↣除キ↠障ヲ獲テ↠益ヲ皆生レ↢仏前ニ↡。即チ是名号ヲモテ度スルナリ↢衆生ヲ↡。」云々

^*あるがいはく、 「¬*正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ にこの文もんあり」 と。

*有ルガ云ク、「¬正法念経ニ¼有リト↢此ノ*文↡。」

^¬十じゅう二に仏ぶつ名みょう経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬十二仏名経ノ¼偈ニ云ク、

^「もし人ひと、 仏ぶつの名みなを持たもてば、 *怯こう弱にゃくの心しんを生しょうぜず、
智慧ちえありて*諂曲てんごくなきは、 つねに諸仏しょぶつの前まえにあり。

「若シ人持テ↢仏ノ名ヲ↡不↠生ゼ↢怯弱ノ心ヲ↡
智*慧アリテ無キハ↢諂曲↡常ニ在リ↢諸仏ノ前ニ↡

^もし人ひと、 仏ぶつの名みなを持たもてば、 七宝しっぽうの華はなのなかに生しょうず。
その華はな千億せんおく葉ようにして、 威い光こうの相そう具ぐ足そくせり」 と。

若シ人持テバ↢仏ノ名ヲ↡七宝ノ華ノ中ニ生ズ
其ノ華千億ニシテ葉アリテ威光ノ相具足セリト」

^以い上じょう諸文しょもん、 永ながく悪趣あくしゅを離はなれて浄じょう土どに往おう生じょうするなり

已上諸文、永ク離レテ↢悪趣ヲ↡往↢生スルナリ浄土ニ↡

・得菩提

^¬観仏かんぶつ経きょう¼ にのたまはく、 「もしよく心しんを至いたして、 繋け念ねんうちにあり、 *端たん坐ざし*正しょう受じゅして仏ぶつの色身しきしんを観かんぜば、 まさに知しるべし、 この人ひとの心しんは仏ぶつの心しんのごとくにして1071、 仏ぶつと異ことなることなからん。 煩悩ぼんのうありといへども、 もろもろの悪あくのために*覆ふ蔽へいせられじ。 未み来らい世せに大法だいほうの雨あめを雨あめふらさん」 と。

¬観仏経ニ¼云ク、「若シ能ク至シテ↠心ヲ、繋念在リテ↠内ニ、端坐シ正受シテ観ゼムハ↢仏ノ色身ヲ↡、当ニシ↠知ル、是ノ人ノ心ハ如シ↢仏ノ心ノ↡。与↠仏無ケム↠異ナルコト。雖モ↠在リト↢煩悩↡不↧為ニ↢諸ノ悪ノ↡之所レ↦覆蔽セ↥。於テ↢未来世ニ↡雨ラサムト↢大法ノ雨ヲ↡。」

^¬*大だい集じゅうの念仏ねんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ の第だい七しちにのたまはく、 「まさに知しるべし、 かくのごとき念仏ねんぶつ三昧ざんまいは、 すなはち一切いっさいの諸法しょほうを総そう摂しょうすることをなす。 このゆゑに、 かの声しょう聞もん・縁覚えんがくの二に乗じょうの境きょう界がいにあらず。 もし人ひと、 しばらくもこの法ほうを説とくを聞きかば、 この人ひとは*当来とうらいに決けつ定じょうして仏ぶつになること疑うたがいあることなからん」 と。

¬大集ノ念仏三昧経ノ¼第七ニ云ク、「当ニシ↠知ル、如キ↠是クノ念仏三昧ハ、則チ為ス↣総↢摂スルコトヲ一切ノ諸法ヲ↡。是ノ故ニ非ズ↢彼ノ声聞・縁覚ノ、二乗ノ境界ニ↡。若シ人暫モ聞カム↠説カムヲ↢此ノ法ヲ↡者、是ノ人ハ当来ニ決定シテ成ラムコト↠仏ニ無ケムト↠有ルコト↠疑也。」

^第だい九くにのたまはく (大集経)、 「ただよく耳みみにこの三昧さんまいの名なを聞きかば、 たとひ読どくせず誦じゅせず、 受じゅせず持じせず、 修しゅせず習じゅうせず、 他たのために転てんぜず、 他たのために説とかず、 また広ひろく分別ふんべつし釈しゃくすることあたはずとも、 しかもかのもろもろの善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん、 みなまさに次し第だいに*阿あ耨のく菩ぼ提だいを成じょう就じゅすべし」 と。

*第九ニ云ク、「但能ク耳ニ聞キテ↢此ノ三昧ノ名ヲ↡、仮令 タトヒ 不↠読セ不↠誦セ、不↠受セ不↠持セ、不↠修セ不↠習セ、不↢為ニ↠他ノ転ゼ↡、不↢為ニ↠他ノ説カ↡、亦復不トモ↠能ハ↢広ク分別シ釈スルコト↡、然モ彼ノ諸ノ善男子・善女人、皆当ニシト↣次第ニ成↢*就ス阿耨菩提ヲ↡。」

^同どう偈げにのたまはく、

*同ジキ偈ニ云ク、

^「もしもろもろの妙みょう相そうを円満えんまんし、 もろもろの好こう上じょうの荘しょう厳ごんを具ぐ足そくせんと欲おもひ、
および清浄しょうじょうの処ところに転てん生しょうすることを求もとめんものは、 かならず先まづこの三昧さんまいを受じゅ持じせよ」 と。

「*若シ欲ハバ↫円↢満シ諸ノ妙相ヲ↡具↢足シ衆ノ*好上ノ荘厳ヲ↡
及ビ求メムト↪転1178↩生スルコトヲ清浄ノ*処ニ↨必ズ先ヅ受↢持セヨト此ノ三昧ヲ↡」

^またある ¬経きょう¼ (*倶舎論) にのたまはく、

又有ル¬経ニ¼言ク、

^「もし仏ぶつの福田ふくでんにおいて、 よく少しょう分ぶんの善ぜんを殖うゑつれば、
1072初はじめには*勝しょう善趣ぜんしゅを獲え、 後のちにはかならず涅ね槃はんを得う」 と。

「若シ於テ↢仏ノ福田ニ↡能ク殖ヱツレバ↢少分ノ善ヲ↡
初ニハ獲↢勝善趣ヲ↡後ニハ必ズ得ト↢涅槃ヲ↡」

^¬*大だい般若はんにゃ経きょう¼ にのたまはく、 「仏ぶつを敬うやまひ憶おもふによりて、 かならず生しょう死じを出いでて涅ね槃はんに至いたる。 これを置おきて、 乃ない至し、 仏ぶつを供く養ようせんがために、 一いっ華けをもつて虚こ空くうに散さんずるもまたかくのごとし。 またこれを置おきて、 もし善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん等とう、 下しも一ひとたび ª南無なも仏ぶっ陀だ大だい慈悲じひ者しゃº と称しょうするに至いたらば、 この善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん等とうは、 生しょう死じの際きわを窮きわむるまで善根ぜんごん尽つくることなくして、 天てん・人にんのなかにしてつねに富ふ楽らくを受うけ、 乃ない至し、 最さい後ごには*般はつ涅ね槃はんを得えん」 と。

¬大般若経ニ¼云ク、「依リテ↠*驚ニ憶スルニ↠仏ヲ、必ズ出デテ↢生死ヲ↡至ル↢涅槃ニ↡、置キテ↠此ヲ、乃至為ニ↣供↢養セムガ仏ヲ↡以テ↢一華ヲ↡散ズルモ↢虚空ニ↡亦如シ↠是クノ。又置キテ↠此ヲ若シ善男子・善女人等、下至ルマデセム↣一タビ称スルニ↢南*謨仏陀大慈悲者ト↡。是ノ善男子・善女人等ハ、窮ムルマデ↢生死ノ際ヲ↡善根無クシテ↠尽クルコト、於テ↢天人ノ中ニ↡恒ニ受ケ↢富楽ヲ↡、乃至最後ニハ得ムト↢般涅槃ヲ↡。」

^略りゃくして抄しょうす。 ¬大だい悲ひ経きょう¼ の第だい二に、 これに同おなじ。 ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ 以下いげ、 粗そなり。

略シテ抄ス。¬大悲経ノ¼第二、同ジ↠之ニ。¬*宝積経¼已下麁*也

^¬宝ほう積しゃく経きょう¼ にのたまはく、 「もし衆しゅ生じょうありて、 如来にょらいの所みもとにして微み善ぜんを起おこさば、 *苦く際さいを尽つくすまで*畢ひっ竟きょうじて壊えせず」 と。

¬宝積経ニ¼云ク、「*若シ有リテ↢衆生↡於テ↢如来ノ所ニ↡起ス↢微善ヲ↡者ハ、尽スマデニ↢於苦際ヲ↡畢竟ジテ不ト↠壊セ。」

^またのたまはく (宝積経)、 「もし菩ぼ薩さつありて、 *勝しょう意い楽ぎょうをもつてよくわが所ところにおいて父ちちの想おもいを起おこさば、 かの人ひとはまさに如来にょらいの数かずに入いることを得えて、 わがごとくにして異ことなることなからん」 と。

又云ク、「若シ有リテ↢菩薩↡、以テ↢勝意楽ヲ↡能ク於テ↢我ガ所ニ↡*起セバ↢父ノ想ヲ↡、彼ノ人ハ当ニシ↠得テ↠入ルコトヲ↢如来ノ数ニ↡。如クシテ↠我ガ無ケムト↠異ナルコト。」

^¬十じゅう二に仏ぶつ名みょう経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬十二仏名経ノ¼偈ニ云ク、

^「もし人ひと、 仏ぶつの名みなを持たもたば、 世々せせ所しょ生しょうの処ところに、
*身通しんつうをもつて虚こ空くうに遊あそび、 よく無む辺へんの刹せつに至いたりて、

「若シ人持タムハ↢仏ノ名ヲ↡世々所生ノ処ニ
身通ヲモテ遊ビ↢虚空ニ↡能ク至リテ↢無辺ノ刹ニ↡

^まのあたり諸仏しょぶつを覩みたてまつりて、 よく甚深じんじんの義ぎを問とふ。 乃至
1073ために*微み妙みょうの法ほうを説ときて、 かれに*菩ぼ提だいの記きを授さずけたまふ」 と。

面マノアタリ覩タテマツリテ↢於諸仏ヲ↡能ク問フ↢甚深ノ義ヲ↡ 乃至
為ニ説キテ↢微妙ノ法ヲ↡授ケタマフト↢彼ニ菩提ノ記ヲ↡」

^¬*法華ほけ経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬法華経ノ¼偈ニ云ク、

^「もし人ひと、 散乱さんらんの心しんにして、 *塔とう廟びょうのなかに入いり、
一ひとたび ª南無なも仏ぶつº と称しょうすれば、 みなすでに仏道ぶつどうを成じょうず」 と。

「若シ人散乱ノ心ニシテ入リテ↢於塔廟ノ中ニ↡
一タビ称セシ↢南無仏ト↡皆已ニ成リニキト↢仏道ヲ↡」

^¬大だい悲ひ経きょう¼ の第だい三さんに、 「仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 ªもし衆しゅ生じょうありて、 仏ぶつの名みなを聞きかば、 われ説とかく、 «この人は*畢定ひつじょうしてまさに般はつ涅ね槃はんに入いることを得うべし»º」 と。

¬大悲経ノ¼第三ニ、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、若シ有リテ↢衆生↡聞カバ↢仏ノ名ヲ↡者、我説カク、是ノ人ハ畢定シテ当ニシト↠得↠入ルコトヲ↢般涅槃ニ↡。」

^¬華け厳ごん経ぎょう¼ の法幢ほうどう菩ぼ薩さつの偈げにのたまはく、

¬華厳経ノ¼法幢菩薩ノ偈ニ云ク、

^「もしもろもろの衆しゅ生じょうありて、 いまだ菩ぼ提心だいしんを発おこさざらんも、
一ひとたび仏ぶつの名みなを聞きくことを得えば、 決けつ定じょうして菩ぼ提だいを成じょうぜん」 と。

「若シ有リテ↢諸ノ衆生↡未ダラムモ↠発サ↢菩提心ヲ↡
一タビ得バ↠聞クコトヲ↢仏ノ名ヲ↡決定シテ成ラムト↢菩提ヲ↡」

^以い上じょうのもろもろの文もん、 菩ぼ提だいを得うることなり。

已上ノ諸ノ文、得ルコトナリ↢菩提ヲ↡

^ただ名みょう号ごうを聞きくすら、 *勝しょう利りかくのごとし。 いはんやしばらくも相好そうごう・功く徳どくを観念かんねんし、 あるいはまた一いっ華け・一いっ香こうを供く養ようせんをや。 いはんや一いっ生しょうに勤修ごんしゅする功く徳どく、 つひに虚むなしからじ。 すなはち知しりぬ、 仏法ぶっぽうに値あひ、 仏号ぶつごうを聞きくことは、 これ少しょう縁えんにあらず。

但聞クニスラ↢名号ヲ↡勝利如シ↠是クノ。況1179ヤ暫モ観↢念シ相好・功徳ヲ↡、或イハ復供↢養セムヲヤ一華・一香ヲ↡。況ヤ一生ニ勤修セム功徳、終ニ不↠虚シカラ。則チ知リヌ、値ヒ↢仏法ニ↡、聞クコトハ↢仏号ヲ↡、非ズ↢是少縁ニ↡。

^このゆゑに ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の真実しんじつ慧え菩ぼ薩さつの偈げにのたまはく、

是ノ故ニ¬華厳経ノ¼真実慧菩薩ノ偈ニ云ク、

^「むしろ地じ獄ごくの苦くを受うくとも、 諸仏しょぶつの名みなを聞きくことを得えよ。
1074無む量りょうの楽らくを受うくとも、 仏ぶつの名みなを聞きかざることなかれ」 と。

「寧ロ受ケテ↢地獄ノ苦ヲ↡得ム↠聞クコトヲ↢諸仏ノ名ヲ↡
不レト↧受ケテ↢無量ノ楽ヲ↡而不ハアラ↞聞カ↢仏ノ名ヲ↡」

^以い上じょうの*四しの門もんは、 総そうじて諸仏しょぶつを念ねんずる利り益やくを明あかす。 そのなかに、 ¬観仏かんぶつ経きょう¼ には釈しゃ迦かをもつて首はじめとなす。 ¬般舟はんじゅ経きょう¼ は多おおく弥陀みだをもつて首はじめとなす。 理り、 実じつにはともに一切いっさいの諸仏しょぶつに通つうず。 ¬*念仏ねんぶつ経きょう¼ は三さん世ぜの諸仏しょぶつに通つうず。

已上ノ四ノ門ハ、総ジテ明ス↧念ズル↢諸仏ヲ↡之利益ヲ↥。其ノ中ニ¬観仏経ニハ¼以テ↢釈迦ヲ↡為ス↠首ハジメト。¬般舟経ハ¼多ク以テ↢弥陀ヲ↡為ス↠首ト。理実ニハ倶ニ通ズ↢一切ノ諸仏ニ↡。¬念仏経ハ¼通ズ↢三世ノ*諸仏ニ↡。

 ^問とふ。 ¬観仏かんぶつ経きょう¼ にのたまはく、 「この人ひとの心しんは、 仏ぶつの心しんのごとくにして、 仏ぶつと異ことなることなし」 と。

問フ。¬観仏経ニ¼云ク、「是ノ人ノ心ハ如シ↠仏ノ。心ト与↠仏無シト↠異ナルコト。」

^また ¬*観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 ª▲諸仏しょぶつはこれ法界ほうかいの身しんなり、 一切いっさい衆しゅ生じょうの心想しんそうのうちに入いりたまふ。 ◆このゆゑに、 なんぢら心しんに仏ぶつを想おもふ時とき、 この心しんすなはちこれ三さん十じゅう二に相そう・八はち十じゅう随ずい形ぎょう好こうなり。 是この心しん、 仏ぶつに作なる。 是この心しん、 是これ仏ぶつなり。 諸仏しょぶつの正しょう遍へん知ち海かいは、 心想しんそうより生しょうじたまふº」 と。 以上

又¬観経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、諸*仏ハ是法界ノ身ナリ、入リタマフ↢一切衆生ノ心想之中ニ↡。是ノ故ニ汝等ナムダチ心ニ想フ↠仏ヲ時、是ノ心即チ是卅二相・八十随形好ナリ。是ノ心作ル↠仏ニ。是ノ心是仏ナリ。諸仏ノ正遍知海ハ、従リ↢心想↡生ジタマフトイヘリ。」 已上

^この義ぎいかん。

此ノ義云何ン。

^答こたふ。 ¬往おう生じょう論ろん¼ (天親の浄土論) の*智ち光こうの ¬疏しょ¼ にこの文もんを釈しゃくしていはく、 「▲衆しゅ生じょうの心しんに仏ぶつを想おもふ時ときに当あたりて、 仏ぶつの身相しんそうみな衆しゅ生じょうの心しんのなかに顕現けんげんす。 たとへば、 水みず清きよければすなはち色像しきぞう現げんず。 しかも水みずと像ぞうとは、 一いちならず異いならざるがごとし。 ゆゑにいふ、 仏ぶつの相好そうごうの身しんは、 すなはちこれ心想しんそうなりと。

答フ。¬往生論ノ¼智光ガ¬疏ニ¼釈シテ↢此ノ文ヲ↡云ク、「当リテ↢衆生ノ心ニ想フ↠仏ヲ時ニ↡、仏ノ身ノ相皆顕↢現ス衆生ノ心ノ中ニ↡。譬ヘバ如シ↢水清レバ即チ色像現ズ、而モ水ト与ハ↠像不↠一ナラ不ルガ↟異ナラ。故ニ言フ、仏ノ相好ノ身ハ、即チ是心*相ナリト。

^◆ª是ぜ心しん作さ仏ぶつº とは、 心しんよく仏ぶつに作なるなり。 ◆ª是ぜ心しん是ぜ仏ぶつº とは、 心しんがほかに仏ぶつなきなり。 たとへば、 火ひの木きより出いづれども、 木きを離はなる1075ることを得えず、 木きを離はなれざるをもつてのゆゑに、 すなはちよく木きを焼やきて火ひとなる。 木きを焼やけば、 すなはちこれ火ひたるがごとし」 と。 以上

是心作仏ト者心能ク作ルナリ↠仏ト。是心是仏ト者心ガ外ニ無キナリ↠仏。譬ヘバ如シト↢火ノ従リ↠木出ヅレドモ不↠得↠離ルルコトヲ↠木ヲ、以テノ↠不ルヲ↠離レ↠木ヲ故ニ、即チ能ク焼キテ↠木ヲ為ス↠火ト、焼キツルハ↠木ヲ、即チ是火ナルガ↡。」 已上

^また余よの釈しゃくあり。 学者がくしゃさらに勘かんがへよ。

亦有リ↢余ノ釈↡。学者更ニ勘ヘヨ。

^わたくしにいはく、 ¬大集だいじつ経きょう¼ の 「日蔵にちぞう分ぶん」 (意) にのたまはく、 「行ぎょう者じゃ、 この念ねんをなさく、 これらの諸仏しょぶつは従よりて来きたるところなし。 去さりて至いたるところなし。 ただわが心しんの作さなり。 三界さんがいのなかにおいて、 この身しんは因縁いんねんなり。 ただこれ心しんの作さなり。

私ニ云ク、¬大集経ノ¼「日蔵分ニ」云ク、「行者作サク↢是ノ念ヲ↡、是等ノ諸仏ハ無シ↠所↢従ヒテ来ル↡。去リテ無シ↠所↠至ル。唯1180我ガ心ノ作ナリ。於テ↢三界ノ中ニ↡、是ノ身ノ因縁ハ唯是心ノ作ナリ。

^われ、 *覚観かくかんに随したがひて、 多たを欲ほっすれば多たを見み、 少しょうを欲ほっすれば少しょうを見みる。 諸仏しょぶつ如来にょらいは、 すなはちこれわが心しんなり。 なにをもつてのゆゑに。 心しんに随したがひて見みるがゆゑに。 心しん、 すなはちわが身しんなり。 すなはちこれ虚こ空くうなり。

我随ヒテ↢覚観ニ↡欲スレバ↠多ヲ見↠多ヲ、欲スレバ↠少ヲ見ル↠少ヲ。諸仏如来ハ即チ是我ガ心ナリ。何ヲ以テノ故ニ。随ヒテ↠心ニ見ルガ故ニ。心即チ我ガ身ナリ。即チ是虚空ナリ。

^われ、 覚観かくかんによりて無む量りょうの仏ぶつを見みたてまつる。 われ、 覚心かくしんをもつて仏ぶつを見みたてまつり、 仏ぶつを知しる。 心しんは心しんを見みず、 心しんは心しんを知しらず。 われ、 法界ほうかいを観かんずるに、 性しょう、 牢ろう固こなることなし。 一切いっさいの諸仏しょぶつはみな覚観かくかんの因縁いんねんより生うまれたまふ。 このゆゑに、 法ほっ性しょうはすなはちこれ虚こ空くうなり、 虚こ空くうの性しょうもまたこれ空くうなり」 と。 以上

我因リテ↢覚観ニ↡見タテマツル↢無量ノ仏ヲ↡。我以テ↢覚心ヲ↡、見タテマツリ↠仏ヲ知ル↠仏ヲ。心ハ不↠見↠心ヲ、心ハ不↠知ラ↠心ヲ。我観ズルニ↢法界ヲ↡、性無シ↢牢固ナルコト↡。一切ノ諸仏ハ皆従リ↢覚観ノ因縁↡而生レタマフ。是ノ故ニ法性ハ即チ是虚空ナリ、虚空之性モ亦復是空ナリト。」 已上

^この文もんの意こころ ¬観かん経ぎょう¼ に同おなじ。 光こう師し (智光) の釈しゃくまた違たがふことなし。

此ノ文ノ意同ジ↢¬観経ニ¼↡。光師ノ釈亦無シ↠違フコト。

 ^問とふ。 心しん、 仏ぶつに作なることを知しるに、 なんの勝しょう利りかある。

問フ。知ルニ↢心作ルコトヲ↟仏ニ、有ル↢何ノ勝利カ↡。

^答こたふ。 もしこの理りを観かんずれば、 よく三さん世ぜの一切いっさいの仏法ぶっぽうを了りょうす。 乃ない至し、 一ひとたびも聞きかば、 すなはち三さん途ず1076の苦く難なんを解げ脱だつすることを得う。

答フ。若シ観ズレバ↢此ノ理ヲ↡、能ク了ス↢三世ノ一切ノ仏法ヲ↡。乃至一タビモ聞クニ、即チ得↣解↢脱スルコトヲ三途ノ苦難ヲ↡。

^¬華け厳ごん経ぎょう¼ の如来にょらい林りん菩ぼ薩さつの偈げにのたまふがごとし。

如シ↢¬華厳経ノ¼如来林菩薩ノ偈ニ云フガ↡。

^「もし人ひと、 三さん世ぜの一切いっさいの仏ぶつを知しらんと欲よく求ぐせば、
まさにかくのごとく観かんずべし。 心しんもろもろの如来にょらいを造つくる」 と。

「若シ人欲↣求セバ知ラムト↢三世ノ一切ノ仏ヲ↡
応ニ当シ↢如ク↠是クノ観ズ↡心造ルト↢諸ノ如来ヲ↡」

^¬*華け厳ごんの伝でん¼ にいはく、 「*文明ぶんめい元年がんねんに、 *京けい師しの人にん、 姓しょうは王おう、 その名なを失しっせり。 すでに戒かい行ぎょうなく、 かつて善ぜんを修しゅせず。 患やまいによりて死しを致いたす。 二に人にんに引ひかれて地じ獄ごくの門もんの前まえに至いたりぬ。

¬華厳ノ伝ニ¼曰ク、「文明元年ニ、京師ノ人、姓ハ王、失セリ↢其ノ名ヲ↡。既ニ無シ↢戒行↡。曽テ不↠修セ↠善ヲ。因リテ↠患ヤマヒニ致ス↠死ヲ。被テ↢二人ニ引カ↡至リヌ↢地獄ノ門ノ前ニ↡。

^見みれば一いちの僧そうあり。 これ*地じ蔵ぞう菩ぼ薩さつなりといふ。 すなはち王おう氏しに教おしへて、 *この一いちの偈げを誦じゅせしむ。 これに謂かたらひていはく、 ªこの偈げを誦じゅし得えては、 よく地じ獄ごくを排はらひてんº と。

見レバ有リ↢一ノ僧↡。云フ↢是地蔵菩薩ナリト↡。乃チ教ヘテ↢王氏ニ↡、誦セシム↢此ノ一ノ偈ヲ↡。謂カタラヒテ↠之ニ曰ク、誦シ↢得テハ此ノ偈ヲ↡能ク排ヒテムト↢地獄ヲ↡。

^王おう氏しつひに入いりて閻えん羅ら王おうに見まみゆ。 王おう、 この人ひとに問とふ、 ª功く徳どくありやº と。 答こたへていはく、 ªただ一いちの四句しくの偈げを受じゅ持じせりº と。 つぶさに上かみに説とくがごとし。 ˆ閻えん羅らˇ 王おう、 つひに ˆ王おう氏しをˇ *放勉ゆるしつ。

王氏遂ニ入リテ見マミユ↢閻羅王ニ↡。王問フ↢此ノ人ニ↡、有ヤト↢功徳↡。答ヘテ云ク、*唯受↢持セリト一ノ四句ノ偈ヲ↡。具ニ如シ↢上ニ説クガ↡。王遂ニ*故ナホ放勉 マノカ レヌ。

^この偈げを誦じゅする時ときに当あたりて、 声こえの及およぶところの受じゅ苦くの人にんはみな解げ脱だつすることを得えつ。 王おう氏し、 三さん日にちありてはじめて蘇よみがえりぬ。

当リテ↧誦スル↢此ノ偈ヲ↡時ニ↥、声ノ所ノ↠*及ブ受苦之人ハ皆得ツ↢解脱スルコトヲ↡。王ノ氏、三日アリテ始テ蘇リヌ。

^この偈げを*憶おく持じして、 もろもろの沙門しゃもんに向むかひてこれを説とく。 偈げの文もんを示じ験げんするに、 まさに知しりぬ、 これ ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の第だい十じゅう二に巻かんの ª夜摩やま天てん宮ぐ無む量りょう諸しょ菩ぼ薩さつ雲うん集じゅう説法せっぽう品ぼんº なり。 王おう氏しみづから、 空観くうかん寺じの1077僧そう定じょう法ほっ師しに向むかひて、 説ときてしかりといふ」 と。 略抄

憶↢持シテ此ノ偈ヲ↡、向ヒテ↢諸ノ沙門ニ↡説キテ↠之ヲ示ス↠験ヲ。偈ノ文ハ方ニ知リヌ、是¬華厳経ノ¼第十二巻ノ夜摩天宮無量諸1181菩薩雲集説法品ナリ。王氏自ラ向ヒテ↢空観寺ノ僧定法師ニ↡、説キテ云フト↠然リト也。」略抄

二 Ⅶ ⅴ 弥陀別益

【63】^第だい五ごに△弥陀みだを念ねんずる別益べつやくをいはば、

第五ニ*念ズル↢弥陀ヲ↡別ノ益ヲイハバ者、

^行ぎょう者じゃをしてその心しん決けつ定じょうせしめんがためのゆゑに、 別べつにこれを明あかす。 滅罪めつざい生しょう善ぜんと冥みょう得とく護持ごじと現身げんしん見仏けんぶつと将しょう来らい勝しょう利りとは、 次ついでのごとし。

為ノ↠令メムガ↢行者ヲシテ其ノ心決定セ↡故ニ、別ニ明ス↠之ヲ。滅罪生善ト冥得護*持ト現身見仏ト将来勝利トハ如シ↠次デノ

・滅罪生善

^¬観かん経ぎょう¼ の*像想ぞうそう観かんに説ときてのたまはく、 「▲この観かんをなすものは、 無む量りょう億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞきて、 現身げんしんのなかに念仏ねんぶつ三昧ざんまいを得う」 と。

¬観経ノ¼*説キテ↢像想観ニ↡云ク、「作ス↢是ノ観ヲ↡者ハ、除キテ↢無量億劫ノ生死之罪ヲ↡、於テ↢現身ノ中ニ↡得ト↢念仏三昧ヲ↡。」

^またのたまはく (観経)、 「▲ただ仏ぶつ (阿弥陀仏) の名みな・二に菩ぼ薩さつ (観音・勢至) の名みなを聞きくに、 無む量りょう劫こうの生しょう死じの罪つみを除のぞく。 いかにいはんや憶念おくねんせんをや」 と。

*又云ク、「但聞クニ↢仏ノ名二菩薩ノ名ヲ↡、除ク↢無量劫ノ生死之罪ヲ↡。何ニ況ヤ憶念セムヲヤト。」

^またのたまはく (観経)、 「▲ただ仏像ぶつぞうを想おもふに、 無む量りょうの福ふくを得う。 いはんやまた仏ぶつの具ぐ足そくせる身相しんそうを観かんぜんをや」 と。

又云ク、「但想フニ↢仏像ヲ↡得↢無量ノ福ヲ↡。況ヤ復観ゼムヲヤト↢仏ノ具足ノ身相ヲ↡。」

^¬*阿あ弥陀みだ思し惟ゆい経きょう¼ にのたまはく、 「もし転輪てんりん王のう、 千万せんまん歳ざいのうちに四し天てん下げに満みてる七宝しっぽうをもつて十方じっぽうの諸仏しょぶつに布施ふせせんも、 *苾蒭びっしゅ・*苾蒭びっしゅ尼に・優婆うば塞そく・優婆うば夷い等とうの、 一ひとたび*弾だん指しするあひだも坐ざ禅ぜんして、 平びょう等どう心しんをもつて一切いっさい衆しゅ生じょうを憐愍れんみんして、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんずる功く徳どくにはしかじ」 と。 以い上じょう、 滅罪めつざい生しょう善ぜん。

¬阿弥陀思惟経ニ¼云ク、「若シ転輪王、千万歳ノ中ニ満テテ↢四天下ニ↡七宝ヲモテ布↢施シタテマツラムハ十方ノ諸仏ニ↡、不ト↠如カ↧苾蒭・苾蒭尼・優婆塞・優婆夷等ノ、一タビ弾指セム*頃モ坐禅シテ、以テ↢平等心ヲ↡憐↢愍シテ一切衆生ヲ↡、念ゼム↢阿弥陀仏ヲ↡功徳ニハ↥。」已上滅罪生善

・冥得護持

^¬*称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ にのたまはく、 「▲あるいは善男ぜんなん子し、 あるいは善ぜん女人にょにん、 無む量りょう寿じゅの極楽ごくらく世せ界かいの清浄しょうじょうの仏ぶつ土どの功く徳どく荘しょう厳ごんにおいて、 もしはすでに願がんを発おこし、 もしはまさに願がんを発おこすべく、 もしはいま願がんを発おこすは、 かならずかくのごとく、 十方じっぽうの面めんに住じゅうしたま1078へる十じゅう恒ごう河が沙しゃの諸仏しょぶつ世せ尊そんの、 摂しょう受じゅしたまふところたらん。 説せつのごとく行ぎょうずるものは、 一切いっさいさだめて阿あ耨のく菩ぼ提だいにおいて退転たいてんせざることを得う。 一切いっさいさだめて無む量りょう寿じゅ仏ぶつの極楽ごくらく世せ界かいに生うまれん」 と。

¬称讃浄土経ニ¼云ク、「或イハ善男子或イハ善女人於テ↢無量寿ノ極楽世界ノ清浄ノ仏土ノ功徳荘厳ニ↡、若シハ已ニ発シ↠願ヲ、若シハ当ニクハ↠発ス↠願ヲ、若シハ今発スハ↠願ヲ、必ズ為ラム↧如ク↠是クノ住シタマヘル↢十方ノ面ニ↡十*兢伽沙ノ諸仏世尊之所↦摂受シタマフ↥。如ク↠説ノ行ズル者ハ、一切定メテ於テ↢阿耨菩提ニ↡得↠不ルコトヲ↢退転ヲセ↡。一切定メテ生レムト↢無量寿仏ノ極楽世界ニ↡。」

^¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「▲光こう明みょうあまねく十方じっぽう世せ界かいの念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうを照てらして、 摂取せっしゅして捨すてたまはず」 と。

¬観経ニ¼云ク、「光明遍ク照シテ↢十方世界ノ念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不ト↠捨テタマハ。」

^またのたまはく (観経)、 「▲無む量りょう寿じゅ仏ぶつの化け身しん無む数しゅにして、 観かん世ぜ音おん・大勢だいせい至しと、 つねにこの行ぎょう人にんの所ところに来らい至ししたまふ」 と。

又云ク、「無量寿仏ノ化身無数ニシテ、与↢観世音・大勢至↡常ニ来↢至シタマフト此ノ行人之所ニ↡。」

^¬*十じゅう往おう生じょう経きょう¼ (意) に、 釈しゃく尊そん、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの功く徳どく、 国こく土どの荘しょう厳ごん等とうを説ときをはりてのたまはく、 「*清しょう信しん士じ・*清しょう信女しんにょ、 この経きょうを読誦どくじゅし、 この経きょうを流布るふし、 この経きょうを恭く敬ぎょうし、 この経きょうを謗ほうぜず、 この経きょうを信しん楽ぎょうし、 この経きょうを供く養ようせん。

¬十往生経ニ¼釈尊説キ↢阿弥陀仏ノ功徳・国土1182ノ荘厳等ヲ↡已リテ云ク、「清信士・清信女、読↢誦シ是ノ経ヲ↡、流↢布シ是ノ経ヲ↡、恭↢敬シ是ノ経ヲ↡、不↠謗ゼ↢是ノ経ヲ↡、信↢楽シ是ノ経ヲ↡、供↢養セバ是ノ経ヲ↡、

^かくのごとき人ひとの輩ともがらは、 この信しん敬きょうによりて、 われ、 今日こんにちよりつねに前さきの▲二に十じゅう五ごの菩ぼ薩さつをしてこの人ひとを護持ごじせしめ、 つねにこの人ひとをして病やまいなく悩なやみなく、 悪あく鬼き・悪神あくじん、 また中ちゅう害がいせず。 またこれを悩なやまさず、 また便たよりを得えざらしめん」 と。

如キ↠是クノ人ノ輩ハ、縁リテ↢是ノ信敬ニ↡、我従リ↢今日↡常ニ使メム↣前ノ廿五ノ菩薩ヲシテ護↢持セ是ノ人ヲ↡。常ニ使メム↢是ノ人ヲシテ無ク↠病無カラ↟悩。悪鬼・悪神、亦不↢中害セ↡。亦不↠悩マサ↠之ヲ、亦不ト↠得↠便ヲ。」

^以い上じょう乃ない至し、 *睡すい寤ご・行住ぎょうじゅう・所しょ至しの処ところ、 みなことごとく安穏あんのんならしめん、 云々うんぬん。

已上乃至睡寤・行住・所至之処、皆悉ク安穏ナラシメム、云々

^*唐とう土ど (中国) の諸しょ師しのいはく、 「二に十じゅう五ごの菩ぼ薩さつ、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじ、 往おう生じょうを願ねがふものを擁よう護ごせん」 と。 云々 これまたかの ¬経きょう¼ (十往生経) の意こころに違たがはず。

唐土ノ諸師ノ云ク、廿五ノ菩薩擁↧護セムトイヘリ念ジ↢阿弥陀仏ヲ↡、願フ↢往生ヲ↡者ヲ↥。*云々 此亦不↠違ハ↢彼ノ¬経ノ¼意ニ↡也。

^二に十じゅう五ごの菩ぼ薩さつとは、 観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつ・大勢だいせい至し菩ぼ薩さつ・薬王やくおう菩ぼ薩さつ・薬やく上じょう菩ぼ薩さつ・普ふ賢げん菩ぼ薩さつ・法ほう自じ在ざい菩ぼ薩さつ・師子しし吼く菩ぼ1079薩さつ・陀羅だら尼に菩ぼ薩さつ・虚こ空くう蔵ぞう菩ぼ薩さつ・徳蔵とくぞう菩ぼ薩さつ・宝蔵ほうぞう菩ぼ薩さつ・金蔵こんぞう菩ぼ薩さつ・金剛こんごう蔵ぞう菩ぼ薩さつ・光こう明みょう王おう菩ぼ薩さつ・山海さんかい慧え菩ぼ薩さつ・華け厳ごん王おう菩ぼ薩さつ・衆宝しゅぼう王おう菩ぼ薩さつ・月光がっこう王おう菩ぼ薩さつ・日にっ照しょう王おう菩ぼ薩さつ・三昧さんまい王おう菩ぼ薩さつ・定じょう自じ在ざい王おう菩ぼ薩さつ・大だい自じ在ざい王おう菩ぼ薩さつ・白びゃく象王ぞうおう菩ぼ薩さつ・大だい威い徳とく王おう菩ぼ薩さつ・無む辺身へんしん菩ぼ薩さつなり。

▼廿五ノ*菩薩ト者、観世音菩薩・大勢至菩薩・薬王菩薩・薬上菩薩・普賢菩薩・法自在菩薩・師子*吼菩薩・陀羅尼菩薩・虚空蔵菩薩・徳蔵菩薩・宝蔵菩薩・*金蔵菩薩・金剛蔵菩薩・光明王菩薩・山海慧菩薩・華厳王菩薩・衆宝王菩薩・月光*王菩薩・日照王菩薩・三昧王菩薩・定自在王菩薩・大自在王菩薩・白象王菩薩・大威徳王菩薩・无辺身菩薩也

^¬*双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・上) に、 かの仏ぶつの本願ほんがん (第三十七願) にのたまはく、 「▲諸天しょてん・人民にんみん、 わが名みょう字じを聞ききて、 五ご体たいを地じに投なげて、 稽首けいしゅし礼らいをなして、 歓かん喜ぎし信しん楽ぎょうして、 菩ぼ薩さつの行ぎょうを修しゅせば、 諸天しょてん・世せ人にん、 敬きょうを致いたさずといふことなからん。 もししからずは、 正しょう覚がくを取とらじ」 と。 以い上じょう、 冥みょう得とく護持ごじ。

¬双巻経ニ¼彼ノ仏ノ本願ニ云ク、「諸天・人民、聞キテ↢我ガ名字ヲ↡、五体ヲ投ゲテ↠地ニ、稽首シ作シテ↠礼ヲ、歓喜シ信楽シテ、修セバ↢菩薩ノ行ヲ↡、諸天・世人、莫ケム↠不トイフコト↠致サ↠敬ヲ。若シ不ハ↠爾ラ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」已上冥得護持

・見仏

^*△¬大集だいじつ経きょう¼ の 「賢げん護ご分ぶん」 にのたまはく、 「善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにん、 端たん坐ざ繋け念ねんし、 心しんをもつぱらにして、 かの阿あ弥陀みだ如来にょらい・応おう供ぐ・*等とう正しょう覚がくを想おもひ、 かくのごとき相好そうごう、 かくのごとき*威儀いぎ、 かくのごとき大衆だいしゅ、 かくのごとき説法せっぽうを、 聞きくがごとく繋け念ねんし、 一心いっしんに相続そうぞくして次し第だい乱みだれず、 あるいは一日いちにちを経へ、 あるいはまた一いち夜やせん。 かくのごとくして、 あるいは七日しちにち七夜やに至いたるまで、 わが所聞しょもんのごとく具ぐ足そくして念ねんぜんがゆゑに、 この人ひと、 かならず阿あ弥陀みだ如来にょらい・応おう供ぐ・等とう正しょう覚がくを覩みたてまつらん。

¬大集経ノ¼「賢護分ニ」云ク、「善男子・善女人、端坐繋念シテ専ニシテ↠心ヲ想ヒ↢彼ノ阿弥陀如来・応供・*等正覚ノ、如キ↠是クノ相好、如キ↠是クノ威儀、如キ↠是クノ大衆、如キ↠是クノ説法ヲ↡、如クシテ↠聞クガ繋念シ一心ニ相続シテ次第不↠乱レ、或イハ経↢一日ヲ↡、或イハ復一夜シ、如クシテ↠是クノ或イハ至ルマデニ↢七日七夜ニ↡、如ク↢我ガ所聞ノ↡具足シテ念ゼムガ故ニ、是ノ人、必ズ覩タテマツラム↢阿弥陀如来・応供・等正覚ヲ↡。

^もし昼ひるの時ときに見みたてまつることあたはずは、 もしは夜や分ぶんにおいて、 あるいは夢ゆめのうちに、 阿あ弥陀みだ仏ぶつはかならずまさに現げんじたまふべし」 と。

若シ於昼ノ時ニ不ハ↠能ハ↠見タテマツルコト者、若シハ於テ↢夜分ニ↡、或イハ夢ノ中ニマレ、阿弥陀仏ハ必ズ当ニシト↠現ジタマフ*也。」

^¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「▲眉み間けんの白びゃく毫ごうを見みるものは、 八はち1080万まん四し千せんの相好そうごう、 自じ然ねんにまさに見みつべし。 ◆無む量りょう寿じゅ仏ぶつを見みるものは、 すなはち十方じっぽうの無む量りょうの諸仏しょぶつを見みたてまつるなり。 十方じっぽう無む量りょうの諸仏しょぶつを見みたてまつることを得うるがゆゑに、 諸仏しょぶつ、 現前げんぜんに授じゅ記きせん。 ◆これをあまねく一切いっさい色相しきそうを観かんずとなす」 と。 以い上じょう見仏けんぶつ。

¬観経ニ¼云ク、「見ル↢眉間ノ白毫ヲ↡者ハ、八万四千ノ相好、自然ニ当ニシ↠見1183ツ。見ル↢無量寿仏ヲ↡者ハ、即チ見タテマツルナリ↢十方ノ無量ノ諸仏ヲ↡。得ルガ↠見タテマツルコトヲ↢*十方無量ノ諸仏ヲ↡故ニ、諸仏現前ニ授記セム。是ヲ為スト↣遍ク観ズト↢一切色相ヲ↡。」已上見仏

・将来勝利

^△¬*鼓く音おん声じょう王おう経きょう¼ にのたまはく、 「十じゅう日にち十じゅう夜や、 六ろく時じに念ねんをもつぱらにし、 五ご体たいを地じに投なげてかの仏ぶつを*礼らい敬きょうし、 堅けん固ご正しょう念ねんにしてことごとく散乱さんらんを除のぞき、 もしはよく心しんに念ねんじ、 念々ねんねんに絶たえずは、 十じゅう日にちのうちにかならずかの阿あ弥陀みだ仏ぶつを見みたてまつることを得え、 *ならびに十方じっぽう世せ界かいの如来にょらいおよび所しょ住じゅうの処ところを見みたてまつらん。 ただ重障じゅうしょう・鈍根どんこんの人ひとをば除のぞく。

¬鼓音声王経ニ¼云ク、「十日十夜、六時ニ専ニシ↠念ヲ、五体ヲ投ゲテ↠地ニ礼↢敬シ彼ノ仏ヲ↡、堅固正念ニシテ悉ク除キ↢散乱ヲ↡、若シハ能ク念ノ心念々ニ不ハ↠絶エ、十日之中ニ必ズ得テム↧見タテマツルコトヲ↢彼ノ阿弥陀仏ヲ↡、并アハセテ見ルコトヲ↦十方世界ノ如来及ビ所住ノ処ヲ↥。唯シ除ク↢重障・鈍根之人ヲバ↡。

^いまの少しょう時じにおいて覩みたてまつることあたはざるところなり。 一切いっさいのもろもろの善ぜんをみなことごとく回え向こうして、 安楽あんらく世せ界かいに往おう生じょうすることを得えんと願がんぜば、 終おわらんとする日ひに、 阿あ弥陀みだ仏ぶつ、 もろもろの大衆だいしゅとその人ひとの前まえに現げんじて、 *安あん喩ゆし*称しょう善ぜんしたまはん。 この人ひと、 すなはちの時ときにはなはだ慶きょう悦えつをなさん。 この因縁いんねんをもつて、 その所願しょがんのごとく、 すなはち往おう生じょうすることを得えん」 と。

於テ↢今ノ少時ニ↡所ナリトモ↠不ル↠能ハ↠覩タテマツルコト、一切ノ諸ノ善ヲ皆悉ク廻向シテ、願ゼバ↠得ムト↣往↢生スルコトヲ安楽世界ニ↡、垂セム↠終ラムト之日ニ、阿弥陀仏与↢諸ノ大衆↡現ジテ↢其ノ人ノ前ニ↡、安*喩シ称善シタマハム。是ノ人即チノ時ニ甚ダ生ナサム↢慶悦ヲ↡。以テ↢是ノ因縁ヲ↡、如ク↢其ノ所願ノ↡、即チ得ムト↢往生スルコトヲ↡。」

^△¬*平びょう等覚どうがく経きょう¼ (三) にのたまはく、 「仏ぶつののたまはく、 ª▲かならずまさに斎戒さいかいして、 一心いっしん清浄しょうじょうにして昼ちゅう夜やにつねに念ねんじ、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに生うまれんと欲おもひて、 十じゅう日にち十じゅう夜や、 断絶だんぜつせざるべし。 われ、 みなこれを1081慈じ愍みんして、 ことごとく無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの国くにに生しょうぜしめんº」 と。 乃ない至し、 一日いちにち一いち夜やもまたかくのごとし。 あるいは、 この文もんをもつて▽下しもの諸しょ行ぎょう門もんのなかに置おくべし。

¬平等覚経ニ¼云ク、「仏ノ言ク、要ズ当ニシ↧斎戒シテ一心清浄ニシテ昼夜ニ常ニ念ジ、欲ヒテ↠生レムト↢無量清浄仏ノ国ニ↡、十日十夜不ル↦断絶セ↥。我皆慈↢愍シテ之ヲ↡、悉ク令メムト↠生ゼ↢無量清浄仏ノ国ニ↡。」乃至一日一夜モ亦如シ↠是クノ。或イハ、可シ↧以テ↢此ノ文ヲ↡置ク↦下ノ諸行門ノ中ニ↥

^¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) の偈げにのたまはく、

¬双巻経ノ¼偈ニ云ク、

^「▲その仏ぶつの本願ほんがん力りきありて、 名みなを聞ききて往おう生じょうせんと欲おもへば、
みなことごとくかの国くにに到いたりて、 おのづから不ふ退転たいてんに致いたる」 と。

「其ノ仏ノ本願力アリテ聞キテ↠名ヲ欲フハ↢往生セムト↡
皆悉ク到リテ↢彼ノ国ニ↡自ラ致ルト↢不退転ニ↡」

^¬観かん経ぎょう¼ の下げ品ぼん上生じょうしょうの人にんは、 ▲命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて、 *掌たなごころを合あわせ手てを叉あざへて 「南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつ」 と称しょうすれば、 仏ぶつの名みなを称しょうするがゆゑに、 五ご十じゅう億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞき、 化け仏ぶつの後しりえに従したがひて、 宝ほう池ちのなかに生うまる。

¬観経ノ¼下品上生ノ人ハ、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、合セ↠掌ヲ叉アザヘテ↠手ヲ称スレバ↢南無阿弥陀仏ト↡、称スルガ↢仏ノ名ヲ↡故ニ、除キテ↢五十億劫ノ生死之罪1184ヲ↡、従ヒテ↢化仏ノ後ニ↡、生ル↢宝池ノ中ニ↡。

^同おなじき品ほんの中生ちゅうしょうの人にんは、 ▲命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて、 地じ獄ごくの猛みょう火か一いち時じにともに至いたらんに、 弥陀みだ仏ぶつの十じゅう力りき威い徳とく、 光こう明みょう神力じんりき、 戒かい・定じょう・慧え・解げ脱だつ・知ち見けんを聞きけば、 八はち十じゅう億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞき、 地じ獄ごくの猛みょう火か、 化けして清涼しょうりょうの風かぜとなりて、 もろもろの天てんの華はなを吹ふく。 華はなの上うえにみな化け仏ぶつ・菩ぼ薩さつましまして、 この人ひとを迎こう接しょうして、 すなはち往おう生じょうすることを得えしめたまふ。

同ジキ品ノ中生ノ人ハ、臨↢命終ノ時ニ↡、地獄ノ猛火一時ニ倶ニ至ル。聞キテ↢弥陀仏ノ十力威徳、光明神力、戒・定・*慧・解脱・知見ヲ↡、除キテ↢八十億劫ノ生死之罪ヲ↡、地獄ノ猛火化シテ為リテ↢清涼ノ風ト↡、吹ク↢諸ノ天ノ華ヲ↡。華ノ上ニ皆有シテ↢化仏・菩薩↡、迎↢接シテ此ノ人ヲ↡、即チ得シメタマフ↢往生スルコトヲ↡。

^同おなじき品ほんの下げ生しょうの人にんは、 ▲命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて、 苦くに逼せめられて仏ぶつを念ねんずることあたはず。 善ぜん友ぬの教おしえに随したがひて、 ただ心しんを至いたして声こえをして絶たえざらしめ、 十じゅう念ねんを具ぐ足そくして 「南無なも無む量りょう寿じゅ仏ぶつ」 と称しょうすれば、 仏ぶつの名みなを称しょうするがゆゑに、 念々ねんねんのうちに八はち十じゅう1082億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞき、 一念いちねんのあひだのごときにすなはち往おう生じょうすることを得う。

同ジキ品ノ下生ノ人ハ、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡、苦ニ逼メサレテ不↠能ハ↠念ズルニ↠仏ヲ。随ヒテ↢善友ノ教ニ↡、但シ至シテ↠心ヲ令メテ↢声ヲシテ不ラ↟絶エ、具↢足シテ十念ヲ↡称スレバ↢南無無*量寿仏ト↡、称スルガ↢仏ノ名ヲ↡故ニ、於テ↢念々ノ中ニ↡除キテ↢八十億劫ノ生死之罪ヲ↡、如キニ↢一念ノ*項アヒダノ↡即チ得ト↢往生スルコトヲ↡。

^¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・上) に、 かの仏ぶつの本願ほんがんにのたまはく、 「ª▲諸仏しょぶつの世せ界かいの衆しゅ生じょうの類たぐい、 わが名みょう字じを聞ききて、 菩ぼ薩さつの無む生しょう法忍ぼうにん、 もろもろの深総じんそう持じを得えずといはば、 正しょう覚がくを取とらじº (第三十四願) と。 ª▲他た方ほうの国こく土どのもろもろの菩ぼ薩さつ衆しゅ、 わが名みょう字じを聞ききて、 すなはち不ふ退転たいてんに至いたることを得えずといはば、 正しょう覚がくを取とらじº (第四十七願)」 と。

¬双巻経ニ¼、彼ノ仏ノ本願ニ云ク、「諸仏ノ世界ノ衆生之類、聞キテ↢我ガ名字ヲ↡、不トイハバ↠得↢菩薩ノ無生法忍、諸ノ深総持ヲ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。他方ノ国土ノ諸ノ菩薩衆、聞キテ↢我ガ名字ヲ↡、不トイハバ↢*即チ得↟至ルコトヲ↢不退転ニ↡者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」

^¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「▲もし仏ぶつを念ねんずるものは、 まさに知しるべし、 この人ひとはこれ人にん中ちゅうの分ふん陀利だり華けなり。 観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつ・大勢だいせい至し菩ぼ薩さつ、 その勝しょう友うとならん。 まさに道どう場じょうに坐ざし、 諸仏しょぶつの家いえに生うまるべし」 と。 以い上じょう、 将しょう来らいの勝しょう利りなり。 余よは△上かみの別べつ時じ念仏ねんぶつ門もんのごとし。

¬観経ニ¼云ク、「若シ念ズル↠仏ヲ者ハ、当ニシ↠知ル、此ノ人ハ是人中ノ分陀利華ナリ。観世音菩薩・大*勢至菩薩、為ラム↢其ノ勝友ト↡。当ニシト↧坐シ↢道場ニ↡、生ル↦諸仏ノ家ニ↥。」已上将来ノ勝利ナリ。余ハ如シ↢上ノ別時念仏門ノ↡

二 Ⅶ ⅵ 引例勧信

【64】^第だい六ろくに△*引例いんれい勧信かんしんといふは、

第六ニ引例勧信トイフ者、

^▼¬観仏かんぶつ経きょう¼ の第だい三 (意) に、 仏ぶつ、 もろもろの*釈しゃく子しに告つげてのたまはく、 「▽*毘婆尸びばし仏ぶつの像法ぞうぼうのうちに一いちの長ちょう者じゃありき、 名なづけて月徳がっとくといひき。 五ご百ひゃくの子こありき、 同おなじく重おもき病やまいに遇あへり。

¬観仏経ノ¼第三ニ、仏告ゲテ↢諸ノ釈子ニ↡言フハ、「毘婆尸仏ノ像法ノ中ニ有リキ↢一ノ長者↡、名ケテ曰ヒキ↢月徳ト↡。有リキ↢五百ノ子↡、同ジク遇ヘリ↢重キ病ニ↡。

^父ちち、 子この前まえに致いたりて涕涙ているいし合がっ掌しょうして、 もろもろの子こに語かたらひていはく、 ªなんぢら、 邪見じゃけんにして正しょう法ぼうを信しんぜず。 いま無む常じょうの刀かたな、 なんぢが身みを截きり切せむとも、 なんの怙たのむところありとかせん。 仏ぶつ世せ尊そんまします、 毘婆尸びばしと名なづく。 なんぢ、 仏ぶつを称しょうすべしº と。

父*致リテ↢子ノ前ニ↡涕涙シ合掌シテ、語ラヒテ↢諸ノ子ニ↡言ヒシク、汝等邪見ニシテ不↠信ゼ↢正法ヲ↡。今無常ノ刀截リ↢切セムトモ汝ガ身ヲ↡。為ム↢何ノ所アリトカ↟怙タノム。有ス↢仏世尊↡、名ク↢毘婆尸ト↡。汝可シト↠称ス↠仏ヲ。

^も1083ろもろの子こ聞ききをはりて、 その父ちちを敬うやまふがゆゑに ª南無なも仏ぶつº と称しょうしき。 父ちちまた告つげていはく、 ªなんぢ、 法ほうを称しょうすべし、 なんぢ、 僧そうを称しょうすべしº と。

諸ノ子聞キ已リテ、敬フガ↢其ノ父ヲ↡故ニ称シキ↢南無仏ト↡。父復告ゲテ言ク、汝可シ↠称ス↠法ト、汝可シト↠称ス↠僧ト。

^いまだ三みたび称しょうするに及およばずして、 その子こ命終みょうじゅうしき。 仏ぶつを称しょうせしをもつてのゆゑに四し天王てんのうの所ところに生うまれき。 天てん上じょうの寿じゅ尽つきて、 前さきの邪見じゃけんの業ごうをもつて大だい地じ獄ごくに堕おちき。 獄率ごくそつ羅ら刹せつ、 熱鉄ねつてつの扠ひしをもつてその眼まなこを刺さし壊やぶりき。 この苦くを受うけし時ときに、 父ちちの長ちょう者じゃの教きょう誨けせしところの事じを憶おくして、 仏ぶつを念ねんぜしをもつてのゆゑに、 還かえりて人にん中ちゅうに生しょうじき。

未ダシテ↠及バ↢三タビ称スルニ↡、其ノ子命終シキ。以テノ↠称セシヲ↠仏ヲ故ニ生レキ↢四1185天王ノ所ニ↡。天上ノ寿尽キテ、前ノ邪見ノ業ヲモテ堕チキ↢大地獄ニ↡。獄卒羅刹以テ↢熱鉄ノ*扠ヒシヲ↡刺シ↢壊ヤブリキ其ノ眼ヲ↡。受ケシ↢是ノ苦ヲ↡時ニ、憶シテ↧父ノ長者ノ所ノ↢教誨セシ↡事ヲ↥、以テノ↠念ゼシヲ↠仏ヲ故ニ、還リテ生ジキ↢人中ニ↡。

^*尸棄しき仏ぶつの出いでたまへりしに、 ただ仏ぶつの名みなを聞ききて、 仏ぶつの形かたちを覩みたてまつらざりき。 乃ない至し、 *迦か葉しょう仏ぶつの時ときにもまたその名みなを聞ききき。 *六仏ろくぶつの名みなを聞ききし因縁いんねんをもつてのゆゑに、 われ (釈尊) と同おなじく生しょうぜり。

尸棄仏ノ出デタマヘリシニ、但聞キテ↢仏ノ名ヲ↡、不リキ↠覩タテマツラ↢仏ノ形ヲ↡。乃至迦葉仏ノ時ニモ亦聞キキ↢其ノ名ヲ↡。以テノ↧聞キシ↢六仏ノ名ヲ↡因縁ヲ↥故ニ、与↠我同ジク生ゼリ。

^このもろもろの比丘びく、 前ぜん世せの時ときに、 悪心あくしんをもつてのゆゑに仏ぶつの正しょう法ぼうを謗ほうぜしも、 ただ父ちちのためのゆゑに ª南無なも仏ぶつº と称しょうせしをもつて、 生々しょうじょうにつねに諸仏しょぶつの名みなを聞きくことを得え、 乃ない至し、 今こん世ぜにわが出いでたるに値ち遇ぐうして、 もろもろの障さわり除のぞこるがゆゑに阿羅あら漢かんとなれり」 と。

是ノ諸ノ比丘、前世之時ニ、以テノ↢悪心ヲ↡故ニ謗ジキ↢仏ノ正法ヲ↡。但為ノ↠父ノ故ニ称セシヲモテ↢南無仏ト↡、生々ニ常ニ得↠聞クコトヲ↢諸仏ノ名ヲ↡、乃至今世ニ値↢遇シテ我ガ出デタルニ↡、諸ノ障除コルガ故ニ成レリト↢阿羅漢ト↡。」

^またのたまはく (観仏経・意)、 「*燃灯ねんとう仏ぶつの末法まっぽうのうちに一いちの羅ら漢かんありき。 その千せんの弟子でし、 羅ら漢かんの説せつを聞ききて、 心しんに瞋恨しんごんを生しょうじき。 寿じゅの*修短しゅたんに随したがひておのおの命終みょうじゅうせんと欲ほっせしに、 羅ら漢かん、 教おしへて ª南無なも諸仏しょぶつº と称しょうせしめき。 すで1084に仏ぶつを称しょうしをはりて忉とう利り天てんに生しょうずることを得えてき。 乃至 未み来らい世せにまさに仏ぶつに作なることを得うべし、 南無なも光こう照しょうと号ごうせん」 と。

又云ク、「燃灯仏ノ末法之中ニ有リキ↢一ノ羅漢↡。其ノ千ノ弟子聞キテ↢羅漢ノ説ヲ↡、心ニ生ジキ↢瞋恨ヲ↡。随ヒテ↢寿ノ修短ニ↡各 ノ欲セシニ↢命終ラムト↡、羅漢教ヘテ称セシメキ↢南無諸仏ト↡。既ニ称シ↠仏ヲ已リテ得テキ↠生ズルコトヲ↢忉利天ニ↡。乃至 於テ↢未来世ニ↡当ニシ↠得↠作ルコトヲ↠仏ニ、*号セムト↢南無光照ト↡。」

^第だい七巻しちかん (観仏経・意) に、 *文殊もんじゅみづから説とけり、 過去かこの宝ほう威い徳とく仏ぶつに値ち遇ぐうし礼拝らいはいせしことを。 「その時ときに、 *釈しゃ迦か文もん仏ぶつ讃さんじてのたまはく、 ª善よきかな、 善よきかな。 文殊もんじゅ師利しり、 すなはち昔むかしの時ときに一ひとたび仏ぶつを礼らいせしがゆゑに、 そこばくの無む数しゅの諸仏しょぶつに値あふことを得えてき。 いかにいはんや、 未み来らいにわがもろもろの弟子でしの、 つとめて仏ぶつを観かんずるものをやº と。

第七巻ニ、文殊自ラ説カク、*於値↢遇シ礼↣拝シキ過去ノ宝威徳仏ヲ↡。「爾ノ時ニ、釈迦文仏讃ジテ言ク、善キ哉善キ哉。文殊師利、乃チ於テ↢昔ノ時ニ↡一タビ礼セシガ↠仏ヲ故ニスラ、得テキ↠値フコトヲ↢爾許ソコバクノ無数ノ諸仏ニ↡。何ニ況ヤ未来ニ我ガ諸ノ弟子ノ、勤メテ観ゼム↠仏ヲ者ヲヤト。

^仏ぶつ、 阿あ難なんに勅ちょくしたまはく、 ªなんぢ、 文殊もんじゅ師利しりの語ごを持たもちて、 あまねく大衆だいしゅおよび未み来らい世せの衆しゅ生じょうに告つげよ。 もしはよく礼拝らいはいするもの、 もしはよく仏ぶつを念ねんずるもの、 もしはよく仏ぶつを観かんずるもの、 まさに知しるべし、 この人ひとは、 文殊もんじゅ師利しりと等ひとしくして異ことなることあることなからん。 身みを捨すてて、 他世たせに、 文殊もんじゅ師利しり等とうのもろもろの大だい菩ぼ薩さつ、 その和上わじょうとなりたまはんº」 と。

仏勅シタマハク↢阿難ニ↡、汝持チテ↢文殊師利ノ語コトヲ↡、遍ク告ゲヨ↢大衆及ビ未来世ノ衆生ニ↡。若シハ能ク礼拝スル者、若シハ能ク念ズル↠仏ヲ者、*若シハ能ク観ズル↠仏ヲ者、当ニシ↠知ル、此ノ人ハ与↢文殊師利↡等シクシテ無ケム↠有ルコト↠異ナルコト。捨テテ↠身ヲ他世ニ文殊師利等ノ諸ノ大菩薩、為リタマハムト↢其ノ和上ト↡。」

^またのたまはく (観仏経・意)、 「▲時ときに、 十方じっぽうの仏ぶつ、 来きたりて*跏趺かふして坐ざしたまへり。 東方とうぼうの善徳ぜんとく仏ぶつ、 大衆だいしゅに告つげてのたまはく、 ªわれ、 過去かこの無む量りょう世せの時ときを念おもへば、 仏ぶつの、 世よに出いでたまへることありき。 宝ほう威い徳とく上王じょうおう仏ぶつと号ごうしき。

又云ク、「時ニ十方ノ仏来リテ跏趺シテ坐シタマヘリ。東方ノ善徳仏告ゲテ↢大1186衆ニ↡言ク、我念ヘバ↢過去ノ無量世ノ時ヲ↡、有リキ↢仏ノ出デタマヘルコト↟世ニ。号シキ↢宝威徳上王*仏ト↡。

^時ときに比丘びくありき。 九く弟子でしと*仏塔ぶっとうに往詣おうげいして、 仏像ぶつぞうを礼拝らいはいしき。 一いちの宝像ほうぞうの厳顕ごんけんにして観かんじつべきを見みて、 礼らいしをはりて、 あきらかに視み1085て、 偈げを説ときて讃嘆さんだんしき。 後のちの時ときに命終みょうじゅうして、 ことごとく東方とうぼうの宝ほう威い徳とく上王じょうおう仏ぶつの国くにに生うまれて、 大だい蓮れん華げのなかに結けっ跏か趺坐ふざして、 忽然こつねんとして化生けしょうしき。

時ニ有リキ↢比丘↡。与↢九弟子↡往↢詣シテ仏塔ニ↡、礼↢拝シキ仏像ヲ↡。見テ↢一ノ宝像ノ厳顕ニシテ可キヲ↟観ジツ、礼シ已リテ諦ニ視テ、説キテ↠偈ヲ讃嘆シキ。後ノ時ニ命終シテ、悉ク生レテ↢東方ノ宝威徳上王仏ノ国ニ↡、大蓮華ノ中ニシテ結跏趺坐シテ、忽然ニ化生シキ。

^これより以後のち、 つねに仏ぶつに値あふことを得え、 諸仏しょぶつの所みもとにして浄きよく*梵行ぼんぎょうを修しゅし、 念仏ねんぶつ三昧ざんまいを得えてき。 三昧さんまいを得えをはりしかば、 仏ぶつ、 ために授じゅ記きしたまひき。 «十方じっぽうの面めんにおのおの仏ぶつになることを得えん» と。

従リ↠此已後、恒ニ得テ↠値フコトヲ↠*仏ニ、於テ↢諸仏ノ所ニ↡浄ク修シテ↢梵行ヲ↡、得テキ↢念仏三昧ヲ↡。得↢三昧ヲ↡已リシカバ、仏為ニ授記シタマヒキ。於テ↢十方ノ面ニ↡各 ノ得ムト↠成ルコトヲ↠仏ニ。

^▲東方とうぼうの善徳ぜんとく仏ぶつはすなはちわが身みこれなり。 東南方とうなんぽうの無憂むう徳とく仏ぶつ、 南方なんぽうの栴檀せんだん徳とく仏ぶつ、 西南方さいなんぽうの宝ほう施せ仏ぶつ、 西方さいほうの無む量りょう明みょう仏ぶつ、 西北方さいほっぽうの華け徳とく仏ぶつ、 北方ほっぽうの相徳そうとく仏ぶつ、 東北方とうほっぽうの三さん乗行じょうぎょう仏ぶつ、 上じょう方ほうの広衆徳こうしゅとく仏ぶつ、 下げ方ほうの明徳みょうとく仏ぶつ、 かくのごとき十じゅう仏ぶつは、 過去かこに塔とうを礼らいし、 像ぞうを観かんじ、 一偈げをもつて讃嘆さんだんせるによりて、 いま十方じっぽうにしておのおの仏ぶつになることを得えたるなりº と。

東方ノ善徳仏者則チ我ガ身是ナリ。東南方ノ無*憂徳仏、南方ノ*旃檀徳仏、西南方ノ宝施仏、西方ノ無量明仏、西北方ノ華徳仏、北方ノ相徳仏、東北方ノ三乗行仏、上方ノ広衆徳仏、下方ノ明徳仏ナリ。如キ↠是クノ十仏ハ、由リテ↢過去ニ礼シ↠塔ヲ、観ジ↠像ヲ、一偈ヲモテ讃嘆セルニ↡、今於テ↢十方ニ↡各 ノ得タルナリト↠成ルコトヲ↠仏ニ。

^この語ごを説ときをはりて、 釈しゃ迦か文もん仏ぶつを問訊もんじんしたまふ。 すでに問訊もんじんしをはりて、 大だい光こう明みょうを放はなちて、 おのおの本国ほんごくに還かえりたまひぬ」 と。

説キ↢是ノ語コトヲ↡已リテ、問↢訊シタマフ釈迦文仏ヲ↡。既ニ問訊シ已リテ、放チテ↢大光明ヲ↡、各 ノ還リタマヒヌト↢本国ニ↡。」

^またのたまはく (観仏経)、 「*四し仏ぶつ世せ尊そん、 空そらより下くだりて釈しゃ迦か文もん仏ぶつの床ゆかに坐ざして、 讃さんじてのたまはく、 ª善よきかな、 善よきかな。 すなはちよく未み来らいの時ときの濁悪じょくあくの衆しゅ生じょうのために、 三さん世ぜの仏ぶつの白びゃく毫ごうの光こう明みょうを説ときて、 もろもろの衆しゅ生じょうをして罪ざい咎ぐを滅めっすることを得えしめたまふ。

又云ク、「四仏世尊従リ↠空而下リテ坐シテ↢釈迦*文仏ノ床ニ↡、讃ヘテ言ク、善キ哉善キ哉。乃シ能ク為ニ↢於未来之時ノ濁悪ノ衆生ノ↡、説キテ↢三世ノ仏ノ白毫ノ光*明ヲ↡、令メタマフ↢諸ノ衆生ヲシテ得↟滅スルコトヲ↢罪咎ヲ↡。

^所以ゆえんはいかん。 われ昔曽むかしをおもんみれば、 空王くうおう仏ぶつの所みもとにして出しゅっ家けして道どうを学がくしき。 時ときに1086四しの比丘びくあり。 ともに同学どうがくとなりて、 仏ぶつの正しょう法ぼうを習ならひき。 煩悩ぼんのう、 心しんを覆おおひて、 堅かたく仏法ぶっぽうの宝蔵ほうぞうを持たもつことあたはず、 不ふ善ぜんの業ごう多おおくして、 まさに悪道あくどうに堕おつべし。

所以者何ン。念オモンミレバ↢我昔ヲ↡、曽ムカシ空王仏ノ所ニシテ出家シテ学シキ↠道ヲ。時ニ四ノ比丘アリ、共ニ為リテ↢同学ト↡、習ヒキ↢仏ノ正法ヲ↡。煩悩覆ヒテ↠心ヲ、不シテ↠能ハ↣堅ク持ツコト↢仏法ノ宝蔵ヲ↡、多クシテ↢不善ノ業↡、当ニカリキ↠*堕ツ↢悪道ニ↡。

^空くう中ちゅうに声こえありて、 比丘びくに語かたりていはく、 «空王くうおう如来にょらいはまた*涅ね槃はんしたまひにき。 なんぢが所犯しょぼんを救すくふものなしと謂おもへりといへども、 なんぢら、 いま塔とうに入いりて像ぞうを観かんずべし。 仏ぶつの在ざい世せと等ひとしくして異いあることなからん» と。

空ノ中ニ有リテ↠声、語リテ↢比丘ニ↡言ク、空王如来ハ雖モ↢復涅槃シタマヒニキ、汝ガ之所1187犯ヲ謂ヘリト↟無シト↢救フ者↡、汝等今可シ↢入リテ↠塔ニ観ズ↟像ヲ。与↢仏ノ在世↡等シクシテ無ケムト↠有ルコト↠異。

^われ、 空そらの声こえに従したがひて塔とうに入いり、 像ぞうの眉み間けんの白びゃく毫ごうを観かんじて、 すなはちこの念ねんをなさく、 «如来にょらいの在ざい世せの光こう明みょう・色身しきしんは、 これとなんぞ異ことならん。 仏ぶつの大人相だいにんそう、 願ねがはくはわが罪つみを除のぞきたまへ» と。 この語ごをなしをはりて、 大山だいせんの崩くずるるがごとくにして五ご体たいを地じに投なげて、 もろもろの罪つみを懴さん悔げしき。

我従ヒテ↢空ノ声ニ↡入リテ↠塔ニ、観ジテ↢像ノ眉間ノ白毫ヲ↡、即チ作サク↢是ノ念ヲ↡、如来ノ在世ノ光明色身ハ、与↠此何ゾ異ナラム。仏ノ大人相、願クハ除キタマヘト↢我ガ罪ヲ↡。作シ↢是ノ語コトヲ↡已リテ、如クニシテ↢大山ノ崩ルルガ↡五体ヲ投ゲテ↠地ニ、懴↢悔シキ諸ノ罪ヲ↡。

^これより以後のち、 八はち十じゅう億おく阿あ僧そう祇ぎ劫こうに悪道あくどうに堕おちず、 生々しょうじょうにつねに十方じっぽうの諸仏しょぶつを見みたてまつり、 諸仏しょぶつの所みもとにして甚深じんじんの念仏ねんぶつ三昧ざんまいを受じゅ持じしき。 三昧さんまいを得えをはりて、 諸仏しょぶつ現前げんぜんして、 われに*記き別べつを授さずけたまひき。

従リ↠是已後、八十億阿僧祇劫ニ不リキ↠堕チ↢悪道ニ↡、生々ニ常ニ見タテマツリキ↢十方ノ諸仏ヲ↡。於テ↢諸仏ノ所ニ↡受↢持シキ甚深ノ念仏三昧ヲ↡。得↢三昧ヲ↡已リテ、諸仏現前ニ、授ケタマヒキ↢我ニ記別ヲ↡。

^東方とうぼうの妙みょう喜き国こくの*阿あ閦しゅく仏ぶつは、 すなはち第一だいいちの比丘びくこれなり。 南方なんぽうの歓かん喜ぎ国こくの宝相ほうそう仏ぶつは、 すなはち第だい二にの比丘びくこれなり。 西方さいほうの極楽ごくらく国こくの無む量りょう寿じゅ仏ぶつは、 第だい三さんの比丘びくこれなり。 北方ほっぽうの蓮れん華げ荘しょう厳ごん国こくの微み妙みょう声しょう仏ぶつは、 第だい四しの比丘びくこれなりº と。

東方ノ妙喜国ノ阿閦仏ハ、即チ第一ノ比丘是ナリ。南方ノ歓喜国ノ宝相仏ハ、即チ第二ノ比丘是ナリ。西方ノ極楽国ノ無量寿仏ハ、第三ノ比丘是ナリ。北方ノ蓮華荘厳国ノ微妙声仏ハ、第四ノ比丘是ナリト。

^時ときに、 四しの如来にょらいおのおの右みぎの手みてを申のべて、 阿あ難なんが頂いただきを摩なで、 告つげて1087のたまはく、 ªなんぢ、 仏ぶつ語ごを持たもちて、 広ひろく未み来らいのもろもろの衆しゅ生じょうのために説とけº と。 三みたびこれを説ときをはりて、 おのおの光こう明みょうを放はなちて、 本国ほんごくに還げん帰きしたまひにき」 と。

時ニ四ノ如来各 ノ申ベテ↢右ノ手ヲ↡、摩ナデ↢阿難ガ頂ヲ↡、告ゲテ言ク、汝持チテ↢仏語ヲ↡、広ク為ニ↢未来ノ諸ノ衆生ノ↡説ケト。三タビ説キタマフコト↠此ヲ已リテ、各 ノ放チテ↢光明ヲ↡、還↢帰シタマヒニキト本国ニ↡。」

^またのたまはく (観仏経)、 「財首ざいしゅ菩ぼ薩さつ、 仏ぶつにまうしてまうさく、 ª世せ尊そん、 われ過去かこの無む量りょう世せの時ときを念おもへば、 仏ぶつ世せ尊そんましましき、 また釈しゃ迦か牟尼むにと名なづけたてまつりき。 かの仏ぶつの滅めつ後ごに一いちの王おう子じありき、 名なづけて金幢こんどうといひき。 憍きょう慢まん・邪見じゃけんにして正しょう法ぼうを信しんぜざりき。 *知ち識しきの比丘びくありき、 定じょう自じ在ざいと名なづくるもの、 王おう子じに告つげていはく、 «世よに仏像ぶつぞうまします、 衆宝しゅぼうをもつて*厳飾ごんじきせり。 しばらく塔とうに入いりて、 仏ぶつの形ぎょう像ぞうを観かんずべし» と。

又云ク、「財首菩薩白シテ↠*仏ニ言ク、世尊、我念ハバ↢過去ノ無量世ヲ↡、時ニ有シキ↢仏世尊↡、亦名ケタテマツリキ↢釈迦牟*尼ト↡。彼ノ仏ノ滅後ニ有リキ↢一ノ王子↡、名ケテ曰ヒキ↢金幢ト↡。憍慢邪見ニシテ不リキ↠信ゼ↢正法ヲ↡。知識ノ比丘ノ名クルモノ↢定自在ト↡、告ゲテ↢王子ニ↡言ヒシク、世ニ有ス↢仏像↡、衆宝ヲモテ厳飾セリ。可シト↣暫ク入リテ↠塔ニ観ズ↢仏ノ形像ヲ↡。

^時ときにかの王おう子じ、 善ぜん友ぬの語ごに随したがひて、 塔とうに入いりて像ぞうを観かんじき。 像ぞうの相好そうごうを見みて、 比丘びくにまうさく、 «仏像ぶつぞうの端厳たんごんなること、 なほかくのごとし。 いはんや仏ぶつの真身しんしんをや» と。 比丘びく、 告つげていはく、 «なんぢ、 いま像ぞうを見みるに、 礼らいすることあたはずは、 まさに "南無なも仏ぶつ" と称しょうすべし» と。

時ニ彼ノ王子随ヒテ↢善友ノ*語コトニ↡、入リテ↠塔ニ観ジキ↠像ヲ。見テ↢像ノ相好ヲ↡、白シテ言ク、比丘、仏像ノ端厳ナルコト猶尚如シ↠此クノ。況ヤ仏ノ真身ヲヤト。比丘告ゲテ言ヒシク、汝今見ルニ↠像ヲ、不ハ↠能ハ↠*礼スルコト者、当ニシト↠称ス↢南無仏1188ト↡。

^この時ときに、 王おう子じ、 合がっ掌しょうし恭く敬ぎょうして、 "南無なも仏ぶつ" と称しょうしき。 宮くに還かえりて、 念ねんを繋かけて塔とうのなかの像ぞうを念ねんずるに、 すなはち*後夜ごやに夢ゆめに仏像ぶつぞうを見みき。 仏像ぶつぞうを見みしがゆゑに、 心しん大おおきに歓かん喜ぎし、 邪見じゃけんを捨しゃ離りして、 三宝さんぼうに帰依きえしき。

是ノ時ニ、王子合掌シ恭敬シテ称シキ↢南無仏ト↡。還リテ↠宮ニ、繋ケテ↠念ヲ念ズルニ↢塔ノ中ノ像ヲ↡、即於テ↢後夜ニ↡夢ニ見キ↢仏像ヲ↡。見シガ↢仏像ヲ↡故ニ、心大ニ歓喜シテ、捨↢離レテ邪見ヲ↡、帰↢依シキ三宝ニ↡。

^寿じゅ命みょう終おわるに随したがひて、 前さきに塔とうに入いりて "南無なも仏ぶつ" と称しょうせし因縁いんねんの功く徳どくによりて、 九く百ひゃく1088万億まんおく那由なゆ他たの仏ぶつに値あひて、 甚深じんじんの念仏ねんぶつ三昧ざんまいを*逮得たいとくせり。 三昧さんまい力りきのゆゑに、 諸仏しょぶつ現前げんぜんして、 それがために記きを授さずけたまひき。 これよりこのかた百万ひゃくまん阿あ僧そう祇ぎ劫こう、 悪道あくどうに堕だせざりき。 乃ない至し今日こんにち、 甚深じんじんの*首しゅ楞りょう厳ごん三昧ざんまいを獲得ぎゃくとくせり。 その時ときの王おう子じは、 いまのわれ、 財首ざいしゅこれなりº」 と。

随ヒテ↢寿命終ルニ↡、由リテ↧前ニ入リテ↠塔ニ称セシ↢南無仏ト↡因縁ノ功徳ニ↥、値ヒテ↢九*百万億那由他ノ仏ニ↡、逮↢得セリ甚深ノ念仏三昧ヲ↡。三昧力ノ故ニ、諸仏現前シテ為ニ↠其ガ授ケタマヒキ↠記ヲ。従リ↠是已来タ百万阿僧祇劫、不リキ↠堕セ↢悪道ニ↡。乃至今日、獲↢得セリ甚深ノ首楞厳三昧ヲ↡。爾ノ時ノ王子ハ、今ノ我、財首是也ト。」

^またのたまはく (観仏経)、 「仏ぶつののたまはく、 ªわれ、 *賢劫げんごうのもろもろの菩ぼ薩さつと、 曽むかし、 過去かこの栴檀窟せんだんくつ仏ぶつの所みもとにして、 この諸仏しょぶつの色身しきしん・変へん化げの観仏かんぶつ三昧ざんまい海かいを聞きけり。 この因縁いんねんの功く徳どく力りきをもつてのゆゑに、 九く百ひゃく万億まんおく阿あ僧そう祇ぎ劫こうの生しょう死じの罪つみを超越ちょうおつして、 この賢劫げんごうにして次し第だいに仏ぶつになる。 乃至 かくのごとく、 十方じっぽうの無む量りょうの諸仏しょぶつもみなこの法ほうによりて*三さん菩ぼ提だいを成じょうじたまふº」 と。

又云ク、「仏ノ言ク、我与↢賢劫ノ諸ノ菩薩↡、曽ムカシ於テ↢過去ノ*旃檀窟仏ノ所ニ↡、聞キテ↢是ノ諸仏ノ色身・変化ノ、観仏三昧海ヲ↡、以テノ↢是ノ因縁ノ功徳力ヲ↡故ニ、超↢越シテ九百万億阿僧祇劫ノ生死之罪ヲ↡、於テ↢此ノ*賢劫ニ↡次第ニ成ル↠仏ニ。乃至 如ク↠是クノ、十方ノ無量ノ諸仏モ皆由リテ↢此ノ法ニ↡成ジタマフト↢三菩提ヲ↡。」

^¬*迦か葉しょう経きょう¼ (意) にのたまはく、 「昔むかし、 過去かこ久く遠おんの阿あ僧そう祇ぎ劫こうに、 仏ぶつ、 世よに出いでたまへることありき。 号ごうして光こう明みょうとまうしき。 *入にゅう涅ね槃はんの後のちに、 一いちの菩ぼ薩さつありき。 大だい精しょう進じんと名なづけき。 年としはじめて十じゅう六ろくにして、 *婆羅ばら門もん種しゅなり。 端たん正じょうなること比ならびなし。

¬迦葉経ニ¼云ク、「昔過去久遠ノ阿僧祇劫ニ、有リキ↢仏出デタマヘルコト↟世ニ。号シテ曰シキ↢光明ト↡。入涅槃ノ後ニ、有リキ↢一ノ菩薩↡。*名ケキ↢大精進ト↡。年始メテ十六ニシテ、婆羅門種トシテ端正ナルコト無シ↠比ナラビ。

^一いちの比丘びくありて、 白畳びゃくじょうの上うえに仏ぶつの形ぎょう像ぞうを画えがきて、 持たもちて精しょう進じんに与あたへき。 精しょう進じん、 像そうを見みて、 心しん大おおきに歓かん喜ぎして、 かくのごとき言ごんをなさく、 ª如来にょらいの形ぎょう像ぞうすら妙好みょうこうなること、 なほしかり。 いはんやまた仏ぶつの身しんをや。 願ねがはくは、 われ、 未み来らいにまたかくのごとき妙身みょうしんを成じょう就じゅすることを得えんº と。

有リテ↢一ノ比丘↡、於テ↢白畳ノ上ニ↡画キテ↢仏ノ形像ヲ↡、持チテ与ヘキ↢精進ニ↡。精進見テ↠像ヲ心大ニ歓喜シテ、作サク↢如キ↠是クノ言コトヲ↡、如来ノ形像スラ妙好ナルコト乃ナホ爾リ。況ヤ復仏ノ身ヲヤ。願クハ我、未来ニ亦得ムト↣成↢就スルコトヲ如キ↠是クノ妙身ヲ↡。

^いひをはりて思し1089念ねんすらく、 ªわれもし家いえにあらば、 この身みは得うること叵かたしº と。 すなはち父母ぶもにまうして、 哀あわれみを求もとめ、 出しゅっ家けせんとせしに、 父母ぶも答こたへていはく、 ªわれいま年とし老おいたり、 ただなんぢ一いっ子しあるのみ。 なんぢもし出しゅっ家けしなば、 われらまさに死しぬべしº と。

言ヒ已リテ思念セシク、我若シ在ラバ↠家ニ、此ノ身ハ叵カタケムト↠得ルコト。即チ啓マウシテ↢父母ニ↡、求↢哀シキ出家セムコトヲ↡。父母答ヘテ言ク、我今年老イタリ、唯汝一子アルノミナリ。汝若シ出家シナバ、我1189等当ニシト↠死ヌ。

^子こ、 父母ぶもにまうさく、 ªもしわれを聴ゆるしたまはずは、 われ今日こんにちより飲おんせじ、 食じきせじ、 床じょう座ざに昇のぼらじ、 また言説ごんせつせじº と。 この誓ちかいをなしをはりて、 一日いちにち食じきせずして、 すなはち六日ろくにちに至いたる。 父母ぶも・知ち識しき・八万はちまん四し千せんのもろもろの*婇女さいにょ等とう、 同どう時じに悲ひ泣きゅうして、 大だい精しょう進じんを礼らいして、 尋ついで出しゅっ家けを聴ゆるしき。

子白サク↢父母ニ↡、若シ不ハ↠聴ユルシタマハ↠我ヲ者、*我従リ↢今日↡不↠飲セ、不↠食セ、不↠昇ラ↢床座ニ↡、亦不ト↢言説セ↡。作シ↢是ノ誓ヲ↡已リテ、一日不シテ↠食セ、乃至六日マデニス。父母・知識・八万四千ノ諸ノ婇女等、同時ニ悲泣シテ、礼シテ↢大精進ヲ↡、尋ツギテ聴ユルシキ↢出家ヲ↡。

^すでに出しゅっ家けすることを得え、 像ぞうを持じして山やまに入いり、 草くさを取とりて座ざとなし、 画え像ぞうの前まえにありて結けっ跏か趺坐ふざし、 一心いっしんにあきらかに観かんぜり。 ªこの画え像ぞうは如来にょらいに異ことならず。 像ぞうは覚かくにあらず、 知ちにあらず。 一切いっさいの諸法しょほうもまたかくのごとし。 相そうなく、 相そうを離はなれたり。 体たい性しょう空くう寂じゃくなりº と。

既ニ得テ↢出家コトヲ↡、持シテ↠像ヲ入リテ↠山ニ取リテ↠草ヲ為シテ↠座ト、在リテ↢画像ノ前ニ↡結跏趺坐シテ、一心ニ諦ニ、観ジキ↢此ノ画像ノ不ルコトヲ↟異ナラ↢如来ニ↡。像者*非ズ↠覚ニ、非ズ↠知ニ。一切ノ諸法モ亦復如シ↠是クノ。无ク↠相、離レタリ↠相ヲ。体性空寂ナリト。

^この観かんをなしをはりて日にち夜やを経へて、 *五ご通つうを成じょう就じゅし、 *無む量りょうを具ぐ足そくし、 *無礙むげ弁べんを得え、 *普ふ光こう三昧ざんまいを得えて、 大だい光こう明みょうを具ぐせり。

作シ↢是ノ観ヲ↡已リテ経テ↢於日夜ヲ↡、成↢就シ五通ヲ↡、具↢*足シ无量ヲ↡、得↢无礙*弁ヲ↡、得テ↢普光三昧ヲ↡、具シ↢大光明ヲ↡、

^浄じょう天眼てんげんをもつて東方とうぼうの阿あ僧そう祇ぎの仏ぶつを見みたてまつり、 浄じょう天てん耳にをもつて仏ぶつの所説しょせつを聞ききて、 ことごとくよく聴ちょう受じゅしき。 七月しちがつを満足まんぞくするまで、 智ちをもつて食じきとなしき。 一切いっさいの諸天しょてん、 華はなを散さんじて供く養ようしき。

以テ↢浄天眼ヲ↡見タテマツリ↢於東方ノ阿僧祇ノ仏ヲ↡、以テ↢浄天耳ヲ↡聞キテ↢仏ノ所説ヲ↡、悉ク能ク聴受シキ。満↢足スルマデニ七月ヲ↡、以テ↠智ヲ為シキ↠食ト。一切ノ諸天散ジテ↠華ヲ供養シキ。

^山やまより出いでて村落そんらくに来らい至しして、 人ひとのために法ほうを説と1090くに、 二に万まんの衆しゅ生じょう、 菩ぼ提心だいしんを発おこし、 無む量りょう阿あ僧そう祇ぎの人にんは、 声しょう聞もん・縁覚えんがくの功く徳どくに住じゅうし、 父母ぶも・親眷しんけんもみな、 *不ふ退たいの無む上じょう菩ぼ提だいに住じゅうしき。

従リシテ↠山而出デテ来↢至シテ村落ニ↡、為ニ↠人ノ説キ↠法ヲ、二万ノ衆生発シ↢菩提心ヲ↡、无量阿僧祇ノ人ハ住シキ↢於声聞・縁覚ノ功徳ニ↡。父母・親眷モ、皆住シキ↢不退ノ無上菩提ニ↡。

^仏ぶつ、 迦か葉しょうに告つげたまはく、 ª昔むかしの大だい精しょう進じんは、 いまのわが身みこれなり。 この像ぞうを観かんぜしによりて、 いま仏ぶつになることを得えたり。 もし人ひとありて、 よくかくのごとき観かんを学がくせば、 未み来らいにかならずまさに*無む上じょう道どうを成じょうずべしº」 と。

仏告ゲタマハク↢迦葉ニ↡、昔ノ大精進ハ、今ノ我ガ身是ナリ。由リテ↢此ノ観ゼシニ↟像ヲ、今得タリ↠成ルコトヲ↠仏ニ。若シ有リテ↠人能ク学セバ↢如キ↠此クノ観ヲ↡、未来ニ必ズ当ニシトイヘリ↠成ル↢无上道ヲ↡。」

^¬*譬喩ひゆ経きょう¼ の第だい二ににのたまはく、 「▽昔むかし、 比丘びくありき。 その母ははを度どせんと欲ほっせしに、 母ははすでに命みょう過かしぬ。 すなはち*道眼どうげんをもつて天てん上じょう・人にん中ちゅう・*擒狩きんしゅ・*薜茘へいれいのなかに求ぐ索しゃくするに、 つひにこれを見みず。 *泥ない梨りを観かんずるに、 母ははがなかにあるを見みて、 すなはち*懊惋おうえんし悲ひ哀あいして、 広ひろく方便ほうべんを求もとめて、 その苦くを脱だっせんと欲おもひき。

¬譬喩経ノ¼第二ニ云ク、「昔有リキ↢比丘↡。欲シキ↠度セムト↢其ノ母ヲ↡。母已ニ命過シヌ。便チ以テ↢道眼ヲ↡天上・人中・*擒狩・薜茘ノ中ニ求索スルニ、了ツヒニ不↠見↠之ヲ。観ジテ↢於泥*梨ヲ↡、見テ↢母ガ在ルヲ↟中ニ、*便チ懊惋シ悲哀シテ、広ク求メテ↢方便ヲ↡、欲ヒキ↠脱セムト↢其ノ苦ヲ↡。

^時ときに辺へん境きょうに王おうありき。 父ちちを害がいして国くにを奪うばひてき。 比丘びく、 この王おうの命いのち、 余あまり七日しちにちありて、 罪つみを受うくる地ところは、 比丘びくの母ははと同おなじく一処いっしょにあらんと知しりて、 夜よるの*安靖あんせいの時ときに、 王おうの寝ねむれる処ところに到いたりて、 壁かべを穿うがちて半身はんしんを現げんず。 王おう、 怖おぢて刀かたなを抜ぬきて頭かしらを斫きる。 頭かしらすなはち地じに落おちぬれども、 その処ところは故もとのごとし。 これを斫きること数反しゅへんするに、 *化けの頭かしら、 地じに満みつれども、 比丘びくは動うごかず。

時ニ辺境ニ有リキ↠王。害シテ↠父ヲ奪ヒテキ↠国ヲ。比丘知リテ↧此ノ王ノ命ノ余リ有リテ↢七日↡、受クル↠罪ヲ之1190地トコロハ与↢比丘ノ母↡同ジク在ラムト↦一処ニ↥、夜ノ安靖ノ時ニ、到リテ↢王ノ*寝レル処ニ↡、穿チテ↠壁ヲ現ズ↢半身ヲ↡。王怖オヂテ抜キテ↠刀ツルギヲ斫キル↠頭ヲ。頭即チ落チヌレドモ↠地ニ。其ノ処ハ如シ↠故モトノ。斫ルコト↠之ヲ数反スルニ、化ノ頭満チヌ↠地ニ。比丘ハ不↠動カ。

^王おう、 意こころにすなはち解さとりて、 その*非ひ常じょうなることを知しりぬ。 *頭こうべを叩たたきて過とがを謝しゃす。 比丘びくのいはく、 ª恐おそるることなかれ、 怖おづることなかれ。 あひ度どせん1091と欲ほっするのみ。 なんぢ、 父ちちを害がいして国くにを奪うばへりやいなやº と。 対こたへていはく、 ª実じつにしかり。 願ねがはくは慈救じくせられよº と。

王意ニ*乃チ解サトリテ、知リヌ↢其ノ非常ナルコトヲ↡。叩キテ↠頭ヲ謝ス↠過ヲ。比丘ノ言ヒシク、*莫レ↠恐ルルコト、莫レ↠怖ヅルコト。欲フラク↢相度セムト↡耳。汝害シテ↠父ヲ奪ヘリヤ↠国ヲ不耶ト。対ヘテ曰ク、実ニ爾リ。願クハ見ラレヨト↢慈救セ↡。

^比丘びくのいはく、 ª大だい功く徳どくをなすとも、 おそらくはあひ及およばざらんか。 王おう、 まさに南無なも仏ぶつと称しょうすべし。 七日しちにち絶たえずは、 すなはち罪つみを免まぬかるることを得えてんº と。 かさねて、 これに告つげていはく、 ªつつしみてこの法ほうを忘わするることなかれº と。 すなはち飛とびて去さりぬ。

比丘ノ曰ク、作ストモ↢大功徳ヲ↡、恐クハ不ラムカ↢相及バ↡。王当ニシト↧称シテ↢南無仏ト↡七日不ハ↠絶エ、便チ得テム↞*免ルルコトヲ↠罪ヲ。重ネテ告ゲテ↠之ニ曰ク、慎ミテ莫レト↠忘ルベキコト↢此ノ法ヲ↡。即便チ飛ビテ去リヌ。

^王おうすなはち*手てを叉あざへて一心いっしんに ª南無なも仏ぶつº と称しょう説せつすること、 昼ちゅう夜やに懈おこたらず、 七日しちにちありて命終みょうじゅうして、 ˆ王おうのˇ *魂神ごんじん、 泥ない梨りの門もんに向むかひて ª南無なも仏ぶつº と称しょうす。 泥ない梨りのなかの人ひと、 仏ぶつといふ音おん声じょうを聞ききて、 みな一いち時じに ª南無なも仏ぶつº といひしかば、 泥ない梨りすなはち冷さめにき。

王便チ叉アザヘテ↠手ヲ一心ニシテ称↢*説シテ南無仏ト↡、昼夜ニ不シテ↠懈オコタラ、七日アリテ命終シテ、魂神向ヒテ↢泥*梨ノ門ニ↡称ス↢南無仏ト↡。泥*梨ノ中ノ人聞キテ↢仏トイフ音声ヲ↡皆一時ニ言ヒシカバ↢南無仏ト↡、泥*梨即チ冷メニキ。

^比丘びく、 ために法ほうを説ときしかば、 比丘びくの母はは、 王おう、 および泥ない梨りのなかの人ひと、 みな度ど脱だつを得えき。 後のちに大おおきに精しょう進じんして、 須しゅ陀だ洹おん道どうを得えき」 と。 以い上じょう諸文しょもん、 略りゃくして抄しょうす。

比丘為ニ説キシカバ↠法ヲ、比丘ノ母・王及ビ泥*梨ノ中ノ人、皆得キ↢度脱ヲ↡。後ニ大ニ精進シテ、得キト↢須陀*洹道ヲ↡。」已上諸文、*略シテ抄ス

^*¬優婆うば塞そく戒かい経きょう¼ にのたまはく、 「善男ぜんなん子し、 われ本もと往むかし、 邪見じゃけんの家いえに堕おちたりき、 *惑網わくもうおのづからわれを蓋おおへり。 われ、 その時ときに名なを広こう利りといへり。 妻つまは名みょう女にょにして、 精しょう進じん勇ゆう猛みょうし度ど脱だつすること無む量りょうにして、 十じゅう善ぜんをもつて化け導どうしき。 われその時ときに、 心しんに殺猟せつりょうをなしき。 酒肉しゅにくを貪とん嗜じし、 懶らん惰だ懈け怠だいにして、 精しょう進じんすることあたはざりき。

¬優婆塞戒経ニ¼云ク、「善男子、我本往 ムカシ 堕チタリキ↢邪見ノ家ニ↡、*或↢網セラレタリキ自我ミヅカラノ蓋ニ↡。我ヲバ於テ↢爾ノ時ニ↡名ケテ曰ヒ↢広利ト↡、妻ヲバ名ケキ↢女精進ト↡。勇猛ナリキ、度脱スルコト無量ナリキ。十善ヲモテ化導シキ。我於テ↢爾ノ時ニ↡心ニ生ナシキ↢殺猟ヲ↡。貪↢嗜シ酒肉ヲ↡、懶*堕懈怠ニシテ不リキ↠能ハ↢精進スルコト↡。

^妻つま時ときにわれに語かたらはく、 ªその猟りょう殺せつを止とどめ、 戒いましめて1092酒肉しゅにくを断たち、 つとめて精しょう進じんを加くわへて、 地じ獄ごくの苦く悩のうの患うれひを脱だっして、 天てん宮ぐに上生じょうしょうして、 一処いっしょに与くみすることを得えよº と。

妻時ニ語ラハク↠我ニ、止メ↢其ノ猟殺ヲ↡戒メテ断テト↢酒肉ヲ↡、勤メテ加ヘテ↢精進ヲ↡、得ヨト↧脱シテ↢地獄ノ苦悩之患ウレヒヲ↡、上↢生シテ天宮ニ↡与スルコトヲ↦一処ニ↥。

^われその時ときにおいても殺心せっしん止やまず、 酒肉しゅにくの美味びみをも割捨かっしゃすることあたはず、 精しょう進じんの心しんも懶らん惰だにして前すすまず、 天てん宮ぐは意のぞみを息やめ、 地じ獄ごくの分ぶんを受うけたり。 われその時ときに*聚落じゅらくのうちに居こし、 *僧そう伽藍ぎゃらんに近ちかくして、 しばしば鍾かねを槌うつを聞ききき。

我於テモ↢爾ノ時ニ↡殺心不↠止マ、酒肉ノ美味ヲモ不↠能ハ↢割捨スルコト↡、精進之心モ懶*堕ニシテ不↠前ススマ、天ノ宮ニ息メ↠意ヲ、地獄ノ分ヲ受ケタリ。我於テ↢爾ノ時ニ↡居シテ↢聚落ノ内ニ↡、近ヅケリキ↢僧伽藍ニ↡。数バ聞キキ↠*槌ウ1191ツヲ↠*鍾ヲ。

^妻つまわれに語かたりていはく、 ª事々じじあたはずは、 *健けん鍾しょうの声こえを聞きくとき、 三みたび弾だん指しして一ひとたび仏ぶつを称しょうせよ。 身みを斂おさめてみづから恭かしこまり、 憍きょう慢まんを生しょうずることなかれ。 その夜や半はんのごときも、 この法ほう廃はいすることなかれº と。

妻語リテ↠我ニ言ヒシク、事々ニ不ハ↠能ハ↠聞クコト↢*健*鍾ノ声ヲ↡、三タビ弾指シテ一タビ称セヨ↠仏ヲ。*斂ヲサメテ↠身ヲ自ラ恭カシコマリテ、莫レ↠生ズルコト↢憍*慢ヲ↡。如キニ↢其ノ夜半ノ↡此ノ法莫レト↠癈スルコト。

^われすなはちこれを用もちゐて、 また捨失しゃしつすることなかりき。 十じゅう二に年ねんを経へて、 その妻つま命終みょうじゅうして、 忉とう利り天てんに生うまれき。 かへりて後のち三さん年ねんありて、 われまた寿じゅ尽つきて、 *断だん事じに経きょう至しせしに、 われを判はんじて罪つみに入いれて、 地じ獄ごくの門もんに向むかへき。

我即チ用ヰテ↠之ヲ、無カリキ↢復捨失スルコト↡。経テ↢十二年ヲ↡其ノ妻命終シテ、生レキ↢忉利天ニ↡。却リテ後三年アリテ、我亦寿尽キテ経↢*至セシニ断事ニ↡、判ジテ↠我ヲ入レテ↠罪ニ、向ヘキ↢地獄ノ門ニ↡。

^門もんに入いる時ときに当あたりて、 鍾かねの三さん声しょうを声ききしに、 われすなはち住立じゅうりゅうして、 心しんに歓かん喜ぎをなし、 愛あい楽ぎょうして厭いとはず。 法ほうのごとく三みたび弾だん指しして、 長ながき声こえをもつて仏ぶつを唱となへき。 声こえごとにみな慈悲じひありて、 *梵音ぼんのん朗ほがらかに徹とおれりき。

当リテ↢入ル↠門ニ時ニ↡*声キキシニ↢*鍾ノ三声ヲ↡、我即チ住立シテ、心ニ生ナシテ↢歓喜ヲ↡、愛楽シテ不シテ↠厭ハ、如ク↠法ノ三タビ弾指シテ、長キ声ヲモテ唱ヘキ↠仏ヲ。声ゴトニ皆慈悲ニシテ梵音朗カニ徹レリキ。

^*主しゅ事じ、 聞ききをはりて、 心しんはなはだ*愧き感かんすらく、 ªこれ真しんの菩ぼ薩さつなりけり。 いかんぞ錯あやまりて判はんぜるº と。 すなはち*遣追けんつい・還送げんそうして、 天てん上じょうに往ゆかしめき。

主事聞キ已リテ、心甚ダ愧感セシク、此真ノ菩薩ナリケリ。云何ゾ錯リテ判ゼルト。即チ遣追シテ還シテ送リテ、往カシメキ↢天上ニ↡。

^すでに往ゆき、 到いたりをは1093りて、 五ご体たいを地じに投なげて、 わが妻つまを礼らい敬きょうして、 まうさく、 ª大だい師し、 幸さいわひにして大恩だいおんを義うけて、 いま済抜さいばつせらる。 すなはち菩ぼ提だいに至いたるまで教勅きょうちょくに違たがはじº」 と。 以上

既ニ往キ*到リ已リテ、五体ヲ投ゲテ↠地ニ、礼↢敬シテ我ガ妻ヲ↡白シテ言イヒシク、大師、幸ニシテ義ヨクシテ大恩ヲモテ如カク見ラレタリ↢済抜セ↡。乃至菩提マデニ不ト↠違ハ↢教勅ニ↡。」 已上

^また震旦しんたん (中国) には、 *東晋とうしんよりこのかた*唐とう朝ちょうに至いたるまで、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじて浄じょう土どに往おう生じょうせるもの、 *道俗どうぞく・男女なんにょ、 合あわせて五ご十じゅう余よ人にんなり。 僧そう二に十じゅう三さん人にん、 尼に六ろく人にん、 沙しゃ弥み二に人にん、 在ざい家け男女なんにょ合あわせて二に十じゅう四し人にん。 ¬*浄じょう土ど論ろん¼ ならびに ¬*瑞応伝ずいおうでん¼ に出いでたり。

又震*旦ニハ、東晋ヨリ已来タ至ルマデニ↢于唐朝ニ↡、念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡往↢生セル浄土ニ↡者、道俗・男女、合セテ五十余人ナリ。*僧廿三人、尼六人、沙弥二人、在家男女合セテ廿四人。出ダセリ↢¬浄土論¼并ニ¬瑞応*伝ニ¼↡。

^わが朝ちょうに往おう生じょうせるもの、 またその数かずあり。 つぶさには*慶けい氏しの ¬*日に本ほん往おう生じょうの記き¼ にあり。 いかにいはんや、 朝ちょう市しにありて徳とくを隠かくし、 山林せんりんに名なを逃のがれたるもの、 独ひとり修しゅして独ひとり去さる、 たれか知しることを得えんや。

我ガ朝ニ往生セル者亦有リ↢其ノ数↡。具ニハ在リ↢慶氏ノ¬日本往生ノ記ニ¼↡。何ニ況ヤ朝市ニアリテ隠シ↠徳ヲ山林ニ逃レタル↠名ヲ之者、独リ修シテ独リ去ルハ、誰カ得ム↠知ルコトヲ耶。

 ^*問とふ。 △下下げげ品ぼんの人にんと△五ご百ひゃくの釈しゃく子しとは、 臨りん終じゅうに同おなじく念ねんじたるに、 昇しょう沈ちんなんぞ別べつなる。

問フ。下下品ノ人ト、五百ノ釈子トハ、臨終ニ同ジク念ゼリ。昇沈何ゾ別コトナル。

^答こたふ。 ¬*群ぐん疑ぎ論ろん¼ に会えしていはく、 「五ご百ひゃくの釈しゃく子しは、 ただ父ちちが教おしえによりて一ひとたび仏ぶつを念ねんぜしかども、 しかも菩ぼ提心だいしんを発おこし浄じょう土どに生うまるることを求もとめて、 慇懃おんごんに慚ざん愧ぎせざりき。 またかれは心しんを至いたさず、 またただ一念いちねんにして十じゅう念ねんを具ぐせざるがゆゑなり」 と。 略抄

答フラク、¬群疑論ニ¼会シテ云ク、「五百ノ釈子ハ、但依リテ↢*父ガ教ニ↡一タビ念ゼシカドモ↠仏ヲ、而モ不リキ↧発シ↢菩提心ヲ↡求メテ↠生レムコトヲ↢浄土ニ↡慇懃ニ慚愧セ↥。又彼ハ不↠至サ↠心ヲ、復唯一念ニシテ不ルガ↠具セ↢十念ヲ↡故ナリトイヘリ。」略抄

二 Ⅶ ⅶ 悪趣利益

【65】^第だい七しちに△悪趣あくしゅの利り益やくを明あかさば、

第1192七ニ明サバ↢悪趣ノ利益ヲ↡者、

^¬大だい悲ひ経きょう¼ の第だい二ににのたまはく、 「もしまた人ひとありて、 ただ心しんに仏ぶつを念ねんじて一ひとたびも敬きょう信しんをなさば、 われ説とかく、 この人ひと1094はまさに涅ね槃はんの果かを得えて、 涅ね槃はんの際きわを尽つくすべし。 阿あ難なん、 しばらく人にん中ちゅうの念仏ねんぶつの功く徳どくをば置おきて、 もし畜ちく生しょうありて、 仏ぶつ世せ尊そんにおいてよく念ねんをなすものをば、 われまた説とかく、 その善根ぜんごんの福報ふくほう、 まさに涅ね槃はんを得うべし」 と。

¬大悲経ノ¼第二ニ云ク、「若シ復有リテ↠人、*但シ心ニ念ジテ↠仏ヲ一タビモ生ナサバ↢敬信ヲ↡、我説カク、是ノ人ハ当ニシ↧得テ↢涅槃ノ果ヲ↡、尽ス↦涅槃ノ際ヲ↥。阿難、且ク置キテ↢人中ノ念仏ノ功徳ヲバ↡、若シ有リテ↢畜生↡於テ↢仏世尊ニ↡能ク生ナサム↠念ヲ者ヲバ、我亦説カク、其ノ善根ノ福報、当ニシト↠得↢涅槃ヲ↡。」

 ^問とふ。 なんらかこれなるや。

問フ。何等カ是ナル耶。

^答こたふ。 同どう経きょうの第だい三さんに、 仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 「過去かこに大だい商しょう主しゅありき。 もろもろの商人あきびとを将いて大海だいかいに入いりしに、 その船ふね、 にはかに*摩ま竭かつ大魚たいぎょのために、 来きたりて呑のみ噬くらはれんとす。

答フ。同ジキ¬経ノ¼第三ニ、仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、「過去ニ有リキ↢大商主↡。将ヰテ↢諸ノ商人ヲ↡*於入リキ↢大海ニ↡。其ノ船卒ニハカニ為ニ↢摩竭大魚ノ↡欲シキ↢来リテ呑ミ*噬クラハレムト↡。

^その時ときに、 商しょう主しゅおよびもろもろの商人あきびと、 心しん驚おどろき毛け竪いよだちて、 おのおのみな悲かなしみ泣なきて、 *嗚呼おこす。 ª奇あやしきかな、 かの閻えん浮ぶ提だいはかくのごとく楽たのしむべく、 かくのごとく*希有けうなり。 世せ間けんの人身にんじん、 かくのごとく得えがたし。 われいままさに父母ぶもと離り別べつしぬ。 姉し妹まい・婦児ふに・親しん戚しゃく・朋ぼう友うにも別べつ離りして、 われさらに見みざるべし。 また仏ぶつ・法ほう・衆僧しゅそうをも見みたてまつることを得うまじくなりぬº と。 きはめて大おおきに悲ひ哭こくしき。

爾ノ時ニ、商主及ビ諸ノ商人、心驚キ毛竪イヨダチテ、各 ノ皆悲シビ泣キテ、嗚呼ス。奇アヤシキ哉、彼ノ閻浮提ハ如ク↠是クノ可ク↠楽フ、如ク↠是クノ希有ナリ。世間ノ人身如ク↠是クノ難シ↠得。我今当ニシ↧与↢父母↡離別シヌ、姉妹・婦児・親戚・朋友ニモ別離シテ、我更ニ不ル↞見。亦不クナリヌト↠得マ↠見タテマツルコトヲ↢仏・法・衆僧ヲモ↡。極テ大ニ悲哭シキ。

^その時ときに、 商しょう主しゅひとへに右みぎの肩かたを袒あらわし、 右みぎの膝ひざを地じに着つけて、 船ふねの上うえに住じゅうして、 一心いっしんに仏ぶつを念ねんじ、 掌たなごころを合あわせて礼拝らいはいして、 声こえを高たかくして唱となへていはく、 ª南無なも諸仏しょぶつ、 *得大とくだい無畏むい者しゃ、 大だい慈悲じひ者しゃ、 *憐愍れんみん一切いっさい衆しゅ生じょう者しゃº と。 かくのごとく三みたび称しょうする時ときに、 もろもろの商人あきびと、 また同どう時じにかくのごとく三みたび称しょうしき。

爾ノ時ニ、商主偏ニ袒アラハシ↢右ノ肩ヲ↡、右ノ膝ヲ著ケテ↠地ニ、住シテ↢於船ノ上ニ↡、一心ニシテ念ジ↠仏ヲ、合セテ↠掌ヲ礼拝シテ、高クシテ↠声ヲ唱ヘテ言ク、南無諸仏、得大無畏者、大慈悲者、*憐愍一切衆生者ト。如ク↠是クノ三タビ称スル時ニ、諸ノ商人、亦復同時ニ如ク↠是クノ三タビ称シキ。

^時ときに摩ま竭魚かつぎょ、 仏ぶつの名みょう号ごう1095、 礼拝らいはいの音おん声じょうを聞ききて、 大だい愛あい敬きょうをなし、 聞ききてすなはち口くちを閉とぢてき。 その時ときに、 商しょう主しゅおよびもろもろの商人あきびと、 みなことごとく安穏あんのんにして、 魚うおの難なんを免まぬかるることを得えてき。

時ニ摩竭魚聞キテ↢仏ノ名号、礼拝ノ音声ヲ↡、生ナシテ↢大愛敬ヲ↡、聞キテ即チ閉ヂテキ↠口ヲ。爾ノ時ニ、商主及ビ諸ノ商人皆悉ク安*穏ニシテ、得テキ↠免ルルコトヲ↢魚ノ難ヲ↡。

^時ときに摩ま竭魚かつぎょ、 仏ぶつの音おん声じょうを聞ききて、 心しんに喜き楽らくをなし、 さらに余よのもろもろの衆しゅ生じょうをも食噉じきだんせざりき。 これによりて命終みょうじゅうして人にん中ちゅうに生うまるることを得えてき。 その仏ぶつの所みもとにして、 法ほうを聞きき、 出しゅっ家けして、 善ぜん知ぢ識しきに近ちかづきて、 阿羅あら漢かんを得えてき。

時ニ摩*渇魚聞キテ↢仏ノ音声ヲ↡心ニ生ナシテ↢喜楽ヲ↡、更ニ不リキ↣食↢*敢セ余ノ諸ノ衆生ヲモ↡。因リテ↠是ニ命終シテ得テキ↠生ルルコトヲ↢人中ニ↡。於テ↢其ノ仏ノ所ニ↡聞キテ↠法ヲ、出家シテ近ヅキテ↢善知識ニ↡、得テキ↢阿羅漢ヲ↡。

^阿あ難なん、 なんぢ、 かの魚うおの、 畜ちく生しょう道どうに生うまれて、 仏ぶつの名みなを聞きくことを得え、 仏ぶつの名みなを聞ききをはりて、 乃ない至し、 涅ね槃はんせることを観かんぜよ。 いかにいはんや、 人ひとありて、 仏ぶつの名みなを聞きくことを得え、 正しょう法ぼうを聴ちょう聞もんせんをや」 と。 略抄

阿難、汝観ゼヨ↧彼ノ魚ノ生レテ↢畜生道ニ↡、得↠聞クコトヲ↢仏1193ノ名ヲ↡、*聞クコト↢仏ノ名ヲ↡已リテ、乃至涅槃セルコトヲ↥。何ニ況ヤ有リテ↠人得↠聞クコトヲ↢仏ノ名ヲ↡、聴↢聞セムヲヤト正法ヲ↡。略抄

^また ¬*菩ぼ薩さつ処胎しょたい経きょう¼ の 「八はち斎品さいぼん」 にのたまはく、 「竜りゅうの子こ、 *金こん翅じ鳥ちょうのために、 *頌じゅを説ときていはく、

又¬菩薩処胎経ノ¼「八斎品ニ」云ク、「竜ノ子与ニ↢金翅鳥ノ↡而説キテ↠頌ヲ曰ク、

^ª殺せつはこれ不ふ善ぜんの行ぎょうなり。 寿じゅ命みょうを減げんじて*中ちゅう夭ようあり。
身みは、 *朝ちょう露ろの虫むしの、 光ひかりを見みてすなはち命終みょうじゅうするがごとし。

殺ハ是不善ノ行ナリ*減ジテ↢寿命ヲ↡中夭アリ
身ハ如シ↢朝露ノ虫ノ見テ↠光ヲ則チ命終スルガ↡

^戒かいを持たもち仏ぶつ語ごを奉ほうずれば、 長ちょう寿じゅ天てんに生うまるることを得えて、
*累劫るいこうに福徳ふくとくを積つみて、 畜ちく生しょう道どうに堕おちず。

持チ↠戒ヲ奉タモテバ↢仏語ヲ↡得テ↠生ルルコトヲ↢長寿天ニ↡
累劫ニ積ミテ↢福徳ヲ↡不↠堕チ↢畜生道ニ↡

^いまの身みは竜りゅう身しんたれども、 戒徳かいとく清明しょうみょうにして行ぎょうず。
1096*六畜ろくちくのなかに堕だせりといへども、 かならずみづから済さい度どすることを望のぞまんº と。

今ノ身ハ為テ↢竜身ト↡戒徳清明ニシテ行ズ
雖モ↠堕セリト↢六畜ノ中ニ↡必ズ望マムト↢自ラ済度セムコトヲ↡

^この時ときに、 竜りゅうの子こ、 この頌じゅを説とく時ときに、 竜りゅう子し・竜りゅう女にょ、 心しん意い開かい解げして、 寿じゅ終おわりて後のちに、 みなまさに阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに生うまるべし」 と。 以い上じょう、 八はっ斎戒さいかいの竜りゅうの子こなり。

是ノ時ニ竜ノ子説ク↢此ノ頌ヲ↡時ニ、竜子・竜女、心意*開解シテ寿終リテ之後ニ、皆当ニシト↠生ル↢阿弥陀仏ノ国ニ↡。」已上八斎戒ノ竜ノ子也

^*余よ趣しゅの、 仏ぶつ語ごを信しんじて浄じょう土どに生うまるること、 これに准なぞらへよ。 地じ獄ごくの利り益やくは、 △前さきの国王こくおうの因縁いんねん、 ならびに▽下しもの粗そ心しんの妙果みょうかのごとし。

余趣ノ信ジテ↢仏語ヲ↡生ルルコト↢浄土ニ↡、准ヘヨ↠之ニ。地獄ノ利益ハ如シ↢前ノ国王ノ因縁、并アハセテ下ノ麁心ノ妙果ノ↡。

^諸しょ余よの利り益やくは、 ▽下しもの念仏ねんぶつの功く能のうのごとし。

諸余ノ利益ハ如シ↢下ノ念仏ノ功*能ノ↡。

二 Ⅷ 念仏証拠

【66】^大文だいもん第だい八はちに、 △*念仏ねんぶつ証しょう拠こといふは、

大文第八ニ▼念仏ノ証拠トイフ者、

・第一問答

^▼問とふ、 一切いっさいの善業ぜんごうはおのおの利り益やくあり、 おのおの往おう生じょうすることを得えてん。 なんがゆゑぞ、 ただ念仏ねんぶつの一門いちもんを勧すすむる。

▼問フ。▼一切ノ善業ハ各 ノ有リ↢利益↡、各 ノ得テム↢往生スルコトヲ↡。▼何ガ故ゾ唯勧ムル↢念仏ノ一門ヲ↡。

^◆答こたふ。 いま念仏ねんぶつを勧すすむることは、 これ余よの種々しゅじゅの妙行みょうぎょうを*遮しゃするにはあらず。 ただこれ、 ▼男女なんにょ・貴き賎せん、 ▼行住ぎょうじゅう坐臥ざがを*簡えらばず、 時じ処しょ諸縁しょえんを論ろんぜずして、 これを修しゅするに難かたからず、 乃ない至し、 臨りん終じゅうに往おう生じょうを願がん求ぐするに、 その便びん宜ぎを得えたるは念仏ねんぶつにはしかじ。

◆答フ。▼今勧ムルコトハ↢念仏ヲ↡、非ズ↣是遮スルニハ↢余ノ種々ノ妙行ヲ↡。只是、▼男女・貴賎、不↠簡バ↢行住坐臥ヲ↡、▼不シテ↠論ゼ↢時処諸縁ヲ↡、修スルニ↠之ヲ不↠難カラ、乃至臨終ニ願↢求スルニ往生ヲ↡、得タルハ↢其ノ便宜ヲ↡不↠如カ↢念仏ニハ↡。

^ゆゑに ¬*木槵もくげん経きょう¼ にのたまはく、 「△難なん陀だ国こくの波瑠璃はるり王おう、 使つかひを遣つかはして、 仏ぶつにまうしてまうさく、 ª◆ただ願ねがはくは、 世せ尊そん、 ことに*慈じ愍みんを垂たれて、 われに*要法ようぼうを賜たまひて、 われをして日にち夜やに修しゅ行ぎょうすることを得えやすく、 未み来らい世せのうち1097にもろもろの苦くを遠おん離りせしめたまへº と。

◆故ニ¬木槵経ニ¼云ク、「難陀国ノ波瑠璃王遣マダシテ↠使ヲ白シテ↠仏ニ言ク、唯願クハ世尊、特ニ垂レテ↢慈愍ヲ↡、賜ヒテ↢我ニ要法ヲ↡、使メタマヘト↧我ヲシテ日夜ニ易ク得↢修行スルコトヲ↡、未来世ノ中ニ遠↦離セ衆ノ苦ヲ↥。

^◆仏ぶつ告つげてのたまはく、 ª大王だいおう、 もし煩悩ぼんのう障しょう・報ほう障しょうを滅めっせんと欲おもはば、 まさに木槵もくげん子し一いっ百ぴゃく八はちを貫つらぬきて、 もつてつねにみづから随したがへて、 もしは行ぎょう、 もしは坐ざ、 もしは臥がに、 つねにまさに心しんを至いたして分散ふんさんの意こころなくして、 仏ぶっ陀だ・達だつ摩ま・僧そう伽ぎゃの名なを称しょうしては、 すなはち一いちの木槵もくげん子しを過すぐすべし。 かくのごとくして、 もしは十じゅう、 もしは二に十じゅう、 もしは百ひゃく、 もしは千せん、 乃ない至し、 百ひゃく千万せんまんせよ。

◆仏告ゲテ言ク、大*王、若シ欲ハバ↠滅セムト↢煩悩障・報障ヲ↡者、当ニ貫キテ↢木槵子一百八ヲ↡、以テ常ニ自ラ随ヘテ、若シハ行、若シハ坐、若シハ臥ニ、恒ニ当ニシ↧至シテ↠心ヲ無クシテ↢分散ノ意↡、称シテハ↢仏陀・達*摩・僧1194伽ノ名ヲ↡、乃チ過グス↦一ノ木槵子ヲ↥。如クシテ↠是クノ、若シハ十、若シハ廿、若シハ百、若シハ千、乃至百千万セヨ。

^◆もしよく二に十じゅう万遍まんべんを満みてんに、 身心しんしん乱みだれず、 もろもろの諂曲てんごくなくは、 命いのちを捨すてて第だい三さんの炎えん摩ま天てんに生うまるることを得えて、 衣え食じき自じ然ねんにして、 つねに安楽あんらくなることを受うけん。

◆若シ能ク満テムニ↢廿万遍ヲ↡、身心不↠乱レ無クハ↢諸ノ諂曲↡者、捨テテ↠命ヲ得テ↠生ルルコトヲ↢第三ノ炎*摩天ニ↡、衣食自然ニシテ、常ニ受ケム↢安楽ナルコトヲ↡。

^もしまたよく一いっ百ぴゃく万遍まんべんを満みたさば、 まさに▲百ひゃく八はちの結業けつごうを除断じょだんすることを得えて、 生しょう死じの流ながれを背そむきて、 涅ね槃はんの道どうに趣おもむき、 無む上じょうの果かを獲うべしº」 と。 略抄

◆若シ復能ク満テテハ↢一百万遍ヲ↡者、当ニシト↧得テ↣除↢断スルコトヲ百八ノ結業ヲ↡、背キテ↢生死ノ流ヲ↡、趣キ↢涅槃ノ道ニ↡、獲↦无上ノ果ヲ↥。」略*抄

^いはんやまた、 もろもろの聖教しょうぎょうのなかに、 多おおく念仏ねんぶつをもつて往おう生じょうの業ごうとなせり。 その文もん、 はなはだ多おおし。 略りゃくして十じゅうの文もんを出いださん。

◆況ヤ復▼諸ノ聖教ノ中ニ、多ク以テ↢念仏ヲ↡為セリ↢往生ノ業ト↡。其ノ文甚ダ多シ。略シテ出サム↢十ノ文ヲ↡。

^一いちには、 ¬*占察せんざつ経きょう¼ の下げ巻かんにのたまはく、 「もし人ひと、 他た方ほうの現在げんざいの浄国じょうこくに生うまれんと欲おもはば、 まさにかの世せ界かいの仏ぶつの名みょう字じに随したがひて、 意こころをもつぱらにして誦念じゅねんすべし。 一心いっしんに乱みだれずして↓上かみのごとく観察かんざつせば、 決けつ定じょうしてかの仏ぶつの浄国じょうこくに生うまるることを得え、 善根ぜんごん増ぞう長じょうして、 すみやかに不ふ退たいを成じょうぜん」 と。

◆一ニハ▼¬占察経ノ¼下巻ニ云ク、「若シ人欲ハバ↠生レムト↢他方ノ現在ノ浄国ニ↡者、応ニ当シ↧随ヒテ↢彼ノ世界ノ仏之名字ニ↡、専ニシテ↠意ヲ誦念ス↥。一心ニ不シテ↠乱レ如ク↠上ノ観察セバ者、決定シテ得テム↠生ルルコトヲ↢彼ノ仏ノ浄国ニ↡。善根増長シテ、速ニ成ラムト↢不退ト↡。」

^「↑上かみのごとき観察かんざつ」 とは、 地じ蔵ぞう菩ぼ薩さつの1098法身ほっしんおよび諸仏しょぶつの法身ほっしんと、 おのが自じ身しんと、 平びょう等どう無二むににして、 不ふ生しょう不ふ滅めつなり、 常じょう楽らく我が浄じょうなり、 功く徳どく円満えんまんせりと観かんずるなり。 また己こ身しん無む常じょうなること、 幻まぼろしのごとし、 厭いとふべしと観かんずる等らなり。

◆*如キ↠上ノ観察ト者、観ズルナリ↧於地蔵菩薩ノ法身及ビ諸仏ノ法身ハ、与↢己ガ自身↡平等无二ニシテ、不生不滅ナリ、常楽我浄ナリ、功徳円満セリト↥。又観ズル↢己身无常ナルコト如シ↠幻ノ、可シト↟厭フ等也。

^二にには、 ▼¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) の三さん輩ぱいの業ごう、 浅深せんじんありといへども、 しかも通つうじてみな 「▲一向いっこうにもつぱら無む量りょう寿じゅ仏ぶつを念ねんじたてまつれ」 とのたまへり。

▼二ニハ¬双巻経ノ¼三輩之業雖モ↠有リト↢浅深↡、然モ通ジテ皆云ヘリ↣「一向ニ専ラ念ジタテマツレト↢无量寿仏ヲ↡。」

^▼三さんには、 四し十じゅう八はち願がんのなかに、 念仏ねんぶつ門もんにおいて別べつに一いちの願がんを発おこしてのたまはく (大経・上意)、 「▲乃ない至し十じゅう念ねんせん。 ▽もし生しょうぜずは、 正しょう覚がくを取とらじ」 (第十八願) と。

◆三ニハ▼八願ノ中ニ於テ↢念仏門ニ↡別ニ発シテ↢一ノ願ヲ↡云ク、「乃至十念セン、若シ不ハ↠生ゼ者、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」

^▼四しには、 ¬観かん経ぎょう¼ (意) に、 「▼極ごく重じゅうの悪人あくにんは、 他たの方便ほうべんなし。 ただ仏ぶつを称しょう念ねんして、 極楽ごくらくに生しょうずることを得う」 と。

◆四ニハ¬観*経ニ¼、「▼極重ノ悪人ハ無クシテ↢他ノ方便↡、唯称↢念シテ仏ヲ↡得ト↠生ズルコトヲ↢極楽ニ↡。」

^五ごには、 同どう経きょうにのたまはく、 「▲もし心しんを至いたして西方さいほうに生うまれんと欲おもはば、 先まづまさに一いちの丈じょう六ろくの像ぞうの、 池いけの水みずの上うえにましますと観かんずべし」 と。

◆五ニハ同ジキ¬経ニ¼云ク、「若シ欲ハバ↣至シテ↠心ヲ生レムト↢西方ニ↡*者、先ヅ当ニシト↠観ズ↣於一ノ丈六ノ像ノ在スト↢池ノ水ノ上ニ↡。」

^六ろくには、 同どう経きょうにのたまはく、 「▲光こう明みょうあまねく十方じっぽう世せ界かいの念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうを照てらして、 摂取せっしゅして捨すてたまはず」 と。

◆六ニハ同ジキ¬経ニ¼云ク、「▲光明遍ク照シテ↢十方世界ノ念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不ト↠捨テタマハ。」

^七しちには、 ¬*阿あ弥陀みだ経きょう¼ にのたまはく、 「▲少しょう善根ぜんごんの福徳ふくとく因縁いんねんをもつて、 かの国くにに生しょうずることを得うべからず。

◆七ニハ¬阿弥陀経ニ¼云ク、「不↠可カラ↧以テ↢少善根ノ福徳因縁ヲ↡、得↞生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。

^◆もし善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにんありて、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを説とくを聞ききて、 名みょう号ごうを執持しゅうじして、 もしは一日いちにち 乃至 もしは七日しちにちすること、 一心いっしんに乱みだれずは、 ◆その人ひと命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて、 阿あ弥陀みだ仏ぶつ、 もろもろの聖しょう衆じゅと現げんじて、 その前まえにましまさん。 この人ひと終おわる時ときに、 心しん、 顛てん1099倒どうせずしてすなはち往おう生じょうすることを得えてん」 と。

◆若シ有リテ↢善男子・善女人↡、聞キテ↠説クヲ↢阿弥陀仏ヲ↡、執↢持シテ名号ヲ↡、若シハ一日 乃至 若1195ハ七日スルコト一心ニシテ不ハ↠乱レ、其ノ人臨↢命終ノ時ニ↡、阿弥陀仏与↢諸ノ聖衆↡現ジテ在シテ↢其ノ前ニ↡、是ノ人終ラム時ニ、心不シテ↢顛倒セ↡即チ得テムト↢往生スルコトヲ↡。」

^八はちには、 ¬般舟はんじゅ経きょう¼ にのたまはく、 「阿あ弥陀みだ仏ぶつののたまはく、 ªわが国くにに来生らいしょうせんと欲おもはば、 ▽つねにわれを念ねんぜよ。 しばしば、 つねに念おもいをもつぱらにして休く息そくあることなかれ。 かくのごとくせば、 わが国くにに来生らいしょうすることを得えんº」 と。

◆八ニハ¬般舟経ニ¼云ク、「阿弥陀仏ノ言ク、▼欲ハバ↣来↢生セムト我ガ国ニ↡者、*常ニ念ゼヨ↠我ヲ。数数*常ニ専ニシテ↠念ヲ莫レ↠有ルコト↢休息↡。如クセバ↠是クノ、得ムト↣来↢生スルコトヲ我ガ国ニ↡。」

^九くには、 ¬*鼓く音おん声じょう経きょう¼ にのたまはく、 「もし四し衆しゅありて、 よくまさしくかの仏ぶつの名みょう号ごうを受じゅ持じせば、 この功く徳どくをもつて、 終おわらんと欲ほっする時ときに臨のぞみて、 阿あ弥陀みだ、 すなはち大衆だいしゅとこの人ひとの所ところに往ゆきて、 それをして見みることを得えしめ、 見みをはりて尋ついで生しょうぜん」 と。

◆九ニハ¬鼓音声経ニ¼云ク、「若シ有リテ↢四衆↡能ク正シク受↢持セバ彼ノ仏ノ名号ヲ↡、以テ↢此ノ功徳ヲ↡、臨ミテ↢欲セム↠終ラムト時ニ↡、阿弥*陀即チ与↢大衆↡往キテ↢此ノ人ノ所ニ↡、令メ↢其ヲシテ得↟見ルコトヲ、見已リテ尋ギテ生ゼムト。」

^十じゅうには、 ¬往おう生じょう論ろん¼ (天親の浄土論・意) に、 「かの仏ぶつの*依え正しょうの功く徳どくを観念かんねんするをもつて、 往おう生じょうの業ごうとなせり」 と。 以上

◆十ニハ¬往生論ニ¼、「以テ↣観↢念スルヲ彼ノ仏ノ依正ノ功徳ヲ↡為セリト↢往生ノ業ト↡。」 已上

^このなかに、 ¬観かん経ぎょう¼ の下下げげ品ぼん・¬阿あ弥陀みだ経きょう¼・¬鼓く音おん声じょう経きょう¼ は、 ただ名みょう号ごうを念ねんずるをもつて往おう生じょうの業ごうとなせり。 いかにいはんや、 相好そうごう・功く徳どくを観念かんねんせんをや。

◆此ノ中ニ、¬観経ノ¼下下品・¬阿弥陀経¼・¬鼓音声経ハ¼、▼但シ以テ↠念ズルヲ↢名号ヲ↡為セリ↢往生ノ業ト↡。何ニ況ヤ観↢念セムヲ相好・功徳ヲ↡耶。

・第二問答

 ^問とふ。 余よの行ぎょうに、 いづくんぞ勧信かんしんの文もんなからんや。

◆問フ。▼余ノ行ニ寧ゾ無カラム↢勧信ノ文↡耶。

^答こたふ。 その余よの行ぎょう法ほうは、 ちなみにかの法ほうの種々しゅじゅの功く能のうを明あかす。 そのなかにおのづから往おう生じょうの事じを説とくなり。 ただちに往おう生じょうの要ようを弁べんずるに、 多おおく 「念仏ねんぶつ」 といふがごとくにあらず。 いかにいはんや、 仏ぶつみづからすでにのたまへり、 「△まさにわれを念ねんずべし」 と。 ま1100た仏ぶつの光こう明みょう、 余よの行ぎょう人にんを摂取せっしゅすとはいはず。

◆答フ。▼其ノ余ノ行法ハ、因ニ明ス↢彼ノ法ノ種々ノ功能ヲ↡。其ノ中ニ自ラ説クナリ↢往*生ノ事ヲ↡。▼不ズ↠如クニ↧直ニ*弁ズルニ↢往生之要ヲ↡、多ク云フガ↦念仏ト↥。何ニ況ヤ▼仏自ラ既ニ言ヘリ、当ニシト↠念ズ↠我ヲ乎。▼亦不↠云ハ↣仏ノ光明摂↢取ストハ余ノ行人ヲ↡。

^これらの文もん、 分ぶん明みょうなり。 なんぞかさねて疑うたがいをなさんや。

◆此等ノ文分明ナリ。何ゾ重ネテ生ナサム↠疑ヲ耶。

・第三問答

 ^問とふ。 諸しょ経きょうの所説しょせつは、 機きに随したがひて*万品まんぼんなり。 なんぞ*管見かんけんをもつて一いちの文もんを執しゅうせんや。

▼問フ。諸経ノ所説ハ随ヒテ↠機ニ万品ナリ。何ゾ以テ↢管見ヲ↡執セム↢一ノ文ヲ↡耶。

^答こたふ。 *馬鳴めみょう菩ぼ薩さつの ¬*大だい乗じょう起き信しん論ろん¼ (意) にいはく、 「また次つぎに、 衆しゅ生じょうはじめてこの法ほうを学がくせんに、 その心しん怯こう弱にゃくにして、 信心しんじん成じょう就じゅすべきこと難かたきことを*懼畏くいして、 意こころに、 退たいしなんと欲ほっせば、 まさに知しるべし、 如来にょらいに*勝しょう方便ほうべんましまして、 信心しんじんを摂しょう護ごしたまふ。 随したがひて心しんをもつぱらにして仏ぶつを念ねんずる因縁いんねんをもつて、 願がんに随したがひて、 他た方ほうの仏ぶつ土どに往おう生じょうすることを得うるなり。

◆答フ。▼馬鳴菩薩ノ¬大乗起信論ニ¼云ク、「復次ニ、衆生初テ学セムニ↢是ノ法ヲ↡、其ノ心怯*弱ニシテ懼↢畏シテ信心難キコトヲ↟可キコト↢成*就ス↡、意ニ欲セバ↠退シナムト者、当ニシ↠知ル、如来ニ有シテ↢勝方便↡摂↢護シタマフ信心ヲ↡。*随ヒテ以テ↢専ニシテ↠心ヲ念ズル↠仏ヲ因縁ヲ↡、随ヒテ↠願ニ得ルナリ↣往↢生スルコトヲ他方ノ仏土ニ↡。

^*修しゅ多羅たらに説とくがごとし。 ªもし人ひともつぱらにして西方さいほうの阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじて、 所しょ作さの善業ぜんごうをもつて回え向こうして、 かの世せ界かいに生うまれんと願がん求ぐすれば、 すなはち往おう生じょうすることを得うº」 と。 以上

◆如シ↢修多羅ニ説クガ↡。若シ人専ニシテ念ジテ↢西方ノ阿弥陀仏ヲ↡、所作ノ善業ヲモテ廻向1196シテ、願↣求セバ生レムト↢彼ノ世界ニ↡、即チ得テムト↢往生スルコトヲ↡。 已上

^あきらかに知しりぬ、 *契かい経きょうに、 多おおく念仏ねんぶつをもつて往おう生じょうの要ようとなせり。 もししからずは、 *四し依えの菩ぼ薩さつはすなはち*理り尽じんにあらじ。

▼明カニ知リヌ契経ニ多ク以テ↢念仏ヲ↡為セリ↢往生ノ要ト↡。若シ不ハ↠爾ラ者、四依ノ菩薩ハ即チ非ジ↢理尽ニ↡。

二 Ⅸ 往生諸行

【67】^大文だいもん第だい九くに、 △*往おう生じょう諸しょ行ぎょうを明あかさば、 いはく、 極楽ごくらくを求もとむるものは、 かならずしももつぱら仏ぶつを念ねんぜず。 すべからく余よの行ぎょうを明あかしておのおのの*楽ぎょう欲よくに任まかすべし。 これにまた二にあり。 初はじめには、 ▽別べっして諸しょ経きょうの文もんを明あかす。 次つぎには、 ▽総そう1101じて諸業しょごうを結けっす。

大文第九ニ明サバ↢▼往生ノ諸行ヲ↡者、謂ク▼求ムル↢極楽ヲ↡者ハ不↢必ズシモ専ラ念ゼ↟仏ヲ。須クシ↧明シテ↢余ノ行ヲ↡任ス↦各ノ楽欲ニ↥。此ニ亦有リ↠二。▼初ニハ別シテ明ス↢諸経ノ文ヲ↡。次ニハ総ジテ結ス↢諸業ヲ↡。

二 Ⅸ ⅰ 明諸経

【68】^第一だいいちに△諸しょ経きょうを明あかすといふは、 ▼*¬四し十じゅう華け厳ごん経ぎょう¼ の普ふ賢げん願がん、 ¬*三千さんぜん仏ぶつ名みょう経きょう¼・¬*無字むじ宝ほう篋きょう経きょう¼・¬*法華ほけ経きょう¼ 等とうの諸しょ大だい乗じょう経きょう、 ¬*随ずい求ぐ¼・¬*尊そん勝しょう¼・¬*無垢むく浄じょう光こう¼・¬*如にょ意い輪りん¼・¬*阿嚕あろ力りき迦か¼・¬*不ふ空くう羂けん索じゃく¼・¬*光こう明みょう¼・¬*阿あ弥陀みだ¼、 および*龍りゅう樹じゅの所感しょかんの往おう生じょう浄じょう土ど等とうの呪しゅなり。 これらの顕密けんみつの諸しょ大だい乗じょうのなかに、 みな受じゅ持じ・読誦どくじゅ等とうをもつて、 往おう生じょう極楽ごくらくの業ごうとなせり。

第一ニ明ストイフ↢諸経ヲ↡者、¬華厳経ノ¼普賢願・¬三千仏名経¼・¬無字宝篋経¼・¬法華経¼等ノ諸大乗経、¬随求¼・¬尊勝¼・¬無垢浄光¼・¬如意輪¼・¬阿嚕力迦¼・¬不空羂索¼・¬光明¼・¬阿弥陀¼、及ビ龍樹ノ所感ノ往生浄土等ノ呪ナリ、此等ノ顕密ノ諸大乗ノ中ニ、皆以テ↢受*持・読誦等ヲ↡為セリ↢往生極*楽ノ業ト↡也。

^¬*大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ (下) にのたまはく、 「▲まさに斎戒さいかいし、 一心いっしん清浄しょうじょうにして、 昼ちゅう夜やにまさに念ねんじて阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに生うまれんと欲ほっすべし。 十じゅう日にち十じゅう夜や、 断絶だんぜつせずは、 われみなこれを慈じ愍みんしてことごとく阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうせしめん。 たとひしかするにあたはずは、 みづから思し惟ゆいし、 よく校きょう計けせよ。

¬大阿弥陀経ニ¼云ク、「当ニ斎戒シ、一心清浄ニシテ、昼夜ニ当ニシ↢念ジテ欲ス↟生レムト↢阿弥陀仏ノ国ニ↡。十日十夜不ハ↢断絶セ↡、我皆慈↢愍シテ之ヲ↡悉ク令メム↣往↢生セ阿弥陀仏ノ国ニ↡。殊使 タトヒ 不ハ↠能ハ↠爾スルニ、自ラ思惟シ熟ク*校計シテ、

^◆身みを度ど脱だつせんと欲ほっするものは、 まさに念ねんを絶たつべからず。 愛あいを去さりて、 家事けじを念おもふことなかれ。 婦ふ女にょと床ゆかを同おなじくすることなかれ。 みづから身心しんしんを端なおく正ただしくして、 愛欲あいよくを断だんじて、 一心いっしんに斎戒さいかい清浄しょうじょうにして、 至し専せんに阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくに生うまれんと念ねんじて、 一日いちにち一いち夜や、 断絶だんぜつせずは、 寿じゅ終じゅうしてみなその国くにに往おう生じょうして、 七宝しっぽうの浴よく池ちの蓮れん華げのなかにありて化け生しょうせん」 と。 この ¬経きょう¼ (大阿弥陀経) は持じ戒かいをもつて首しゅとなせり。

欲セム↣度↢脱セムト身ヲ↡者ハ、不↠当ニカラ↠絶ツ↠念ヲ。去リテ↠愛ヲ、勿レ↠念フコト↢家事ヲ↡。莫レ↧与↢婦女↡同ジクスルコト↞床ヲ。自ラ端ナホク↢正シクシテ身心ヲ↡、断ジテ↢於愛欲ヲ↡、一心ニ斎戒清浄ニシテ、至シテ↠専ラヲ念ゼム。生レムトシテ↢阿弥陀*仏国ニ↡一日一夜不ハ↢断絶セ↡者、寿終シテ皆往↢生シテ其ノ国ニ↡、在リテ↢七宝ノ浴池ノ蓮華ノ中ニ↡化生セムト。」此ノ¬経ハ¼以テ↢持戒ヲ↡為セリ↠首ト

^¬*十じゅう往おう生じょう弥陀みだ仏国ぶっこく経きょう¼ (意) にのたまはく、 「われいま、 な1102んぢがために説とく、 十じゅうの往おう生じょうあり。 いかなるか十じゅうの往おう生じょう。

¬十往*生弥陀仏国経ニ¼云ク、「吾今為ニ↠汝ガ説ク、有リ↢十ノ往生↡。云何ナルガ十ノ往生。

^一いちには身みを観かんじて正しょう念ねんにして、 つねに歓かん喜ぎを懐いだきて、 飲食おんじき・衣え服ぶくをもつて仏ぶつおよび僧そうに施ほどこせば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

一ニ者1197観ジテ↠身ヲ正念ニシテ常ニ懐キテ↢歓喜ヲ↡、以テ↢飲食・衣服ヲ↡施セバ↢仏及ビ僧ニ↡、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^二にには正しょう念ねんにして、 世よの妙みょう良りょう薬やくをもつて一いちの病びょう比丘びくおよび一切いっさい衆しゅ生じょうに施ほどこせば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

二ニ者正念ニシテ、世ノ妙良薬ヲモテ施セバ↢一ノ病比丘及以 オヨビ 一切衆生ニ↡、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^三さんには正しょう念ねんにして、 一いちの生命しょうみょうをも害がいせず、 一切いっさいを慈悲じひすれば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

三ニ者正念ニシテ、不↠害セ↢一ノ生命ヲモ↡慈↢悲セバ於一切ヲ↡、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^四しには正しょう念ねんにして、 師しの所ところに従したがひて戒かいを受うけ、 *浄じょう慧えをもつて*梵ぼん行ぎょうを修しゅし、 心しんにつねに喜よろこびを懐いだけば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

四ニ者正念ニシテ、従ヒテ↠師ニ所ノ↠受ケタル戒ヲ浄ク*慧アリテ修シ↢梵行ヲ↡、心ニ常ニ懐カバ↠喜ビヲ、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^五ごには正しょう念ねんにして、 父母ぶもに孝順きょうじゅんし師し長ちょうを敬重きょうじゅうし、 憍きょう慢まんの心しんを懐いだかざれば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

五ニ者正念ニシテ、孝↢順シ於父母ニ↡敬↢重シ於師長ヲ↡、不ハ↠懐カ↢憍慢ノ心ヲ↡、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^六ろくには正しょう念ねんにして、 僧房そうぼうに往詣おうげいし塔とう寺じに恭く敬ぎょうし、 法ほうを聞ききて一いちの義ぎをも解さとれば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

六ニ者正念ニシテ、往↢詣シ於僧*房ニ↡恭↢敬シ於塔寺ニ↡、聞キテ↠法ヲ解サトラバ↢一ノ義ヲモ↡、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^七しちには正しょう念ねんにして、 *一日いちにち一いっ宿しゅくのうちに八はっ戒斎かいさいを受じゅ持じし、 一日いちにち一いっ宿しゅくのうちに受じゅ持じして一いちも破やぶらざれば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

七ニ者正念ニシテ、一日一宿ノ中ニ受↢持シ八戒斎ヲ↡、一日一宿ノ中ニ受持シテ不ハ↠破ラ↠一モ、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^八はちには正しょう念ねんにして、 もしよく斎月さいがつ・斎日さいにちのうちに房舎ぼうしゃを遠おん離りしてつねに善ぜん師しに詣いたれば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

八ニ者正念ニシテ、若シ能ク斎月・斎日ノ中ニ遠↢離シテ於房舎ヲ↡常ニ詣セバ↢於善師ニ↡、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^九くには正しょう念ねんにして、 つねによく浄じょう戒かいを持たもち、 勤修ごんしゅして禅ぜん定じょうを楽ねがひ、 法ほうを護まもり悪あっ口くせず、 もしよくかくのごとく行ぎょうずれば、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうす。

九ニ者正念ニシテ、常ニ能ク持チ↢浄戒ヲ↡、勤修シテ楽ヒ↢禅定ヲ↡、護リ↠法ヲ不↢悪口セ↡、若シ能ク如ク↠是クノ行ゼバ、往↢生ス阿弥陀仏ノ国ニ↡。

^十じゅうには正しょう念ねんにして、 もし無む上じょう道どうにおいて誹ひ謗ほうの心しんを起おこさず、 精しょう進じんして浄じょう戒かいを持たもちて、 また無む智ち1103のものを教おしへてこの経きょう法ぼうを流布るふし、 無む量りょうの衆しゅうを教きょう化けす。 かくのごときもろもろの人ひと等ら、 ことごとくみな阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに往おう生じょうすることを得う」 と。 以上

十ニ者正念ニシテ、若シ於テ↢無上道ニ↡不↠起サ↢誹謗ノ心ヲ↡、精進シテ持チテ↢浄戒ヲ↡、復教ヘテ↢無智ノ者ヲ↡流↢布シ是ノ経法ヲ↡教↢化スル無量ノ*衆ヲ↡、如キ↠是クノ諸ノ人等、*悉ク皆得トイヘリ↣往↢生スルコトヲ阿弥陀仏ノ国ニ↡。」 *已上

^¬*弥み勒ろく問もん経きょう¼ にのたまはく、 「仏ぶつの説ときたまへるところのごとく、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの功く徳どく利り益やくを願がんじて、 もしよく十じゅう念ねん相続そうぞくして、 不ふ断だんに仏ぶつを念ねんずるものは、 すなはち往おう生じょうすることを得う。 まさにいかんが念ねんずべし。 仏ぶつののたまはく、 ª▽おほよそ十じゅうの念ねんあり。 なんらをか十じゅうとなす。

¬弥*勒問経ニ¼云ク、「如ク↢仏ノ所ノ↟説キタマヘル、願ジテ↢阿弥陀仏ノ功徳・利益ヲ↡、若シ能ク十念シ相続シテ不↠断ゼ、念ズル↠仏ヲ者ハ、即チ得ム↢往生スルコトヲ↡。当ニシ↢云何ガ念ズ↡。仏ノ言ク、凡ソ有リ↢十ノ念↡。何等ヲカ為ス↠十トハ。

^一いちには、 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて、 つねに慈じ心しんを生しょうじてその行ぎょうを毀やぶらざること、 もしその行ぎょうを毀やぶればつひに往おう生じょうせず。

一ニ者於テ↢諸ノ衆生ニ↡常ニ生ジテ↢慈心ヲ↡不ルコト↠毀ヤブラ↢其1198ノ行ヲ↡、若シ毀ヤブレバ↢其ノ行ヲ↡終ニ不↢往生セ↡。

^二にには、 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて、 つねに悲ひ心しんを起おこして残害ざんがいの意こころを除のぞくこと、

二ニ者於テ↢諸ノ衆生ニ↡常ニ起シテ↢悲心ヲ↡除クコト↢残害ノ意ヲ↡。

^三さんには、 護ご法心ほうしんを発おこして身しん命みょうを惜おしまざること、 一切いっさいの法ほうにおいて誹ひ謗ほうをなさざること、

三ニ者発シテ↢護法心ヲ↡不ルコト↠惜マ↢身命ヲ↡、於テ↢一切ノ法ニ↡不ルコト↠生ナサ↢誹謗ヲ↡、

^四しには、 忍辱にんにくのなかにおいて決けつ定じょう心しんを生しょうずること、

四ニ者於テ↢忍辱ノ中ニ↡生ズルコト↢決定心ヲ↡、

^五ごには、 深心じんしん清浄しょうじょうにして利り養ように染ぜんせざること、

五ニ者深心清浄ニシテ不ルコト↠染セ↢利養ニ↡、

^六ろくには、 一切いっさい智ちの心しんを発おこして日々にちにちにつねに念ねんじて、 廃忘はいもうあることなきこと、

六ニ者発シテ↢一切智ノ心ヲ↡日々ニ常ニ念ジテ無キコト↠有ルコト↢*癈忘↡、

^七しちには、 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて、 尊そん重じゅうの心しんを起おこし、 *我が慢まんの心しんを除のぞき、 謙けん下げして言説ごんせつすること、

七ニ者於テ↢諸ノ衆生ニ↡起シ↢尊重ノ心ヲ↡、除キ↢我慢ノ心ヲ↡、謙下シテ言説スルコト、

^八はちには、 *世よの談話たんかいにおいて味み着じゃくをなさざること、

八ニ者於テ↢世ノ談話ニ↡不ルコト↠生ナサ↢味著ヲ↡、

^九くには、 覚かく意いに近ちかづき、 深ふかく種々しゅじゅの善根ぜんごんの因縁いんねんを起おこし、 *憒かい閙にょう・散乱さんらんの心しんを遠おん離りすること、

九ニ者近ヅキテ↢於覚ニ↡意ヲモテ深ク起シ↢種々ノ善根ノ因縁ヲ↡、遠↢離スルコト憒鬧・散乱之心ヲ↡、

^十じゅうには、 正しょう念ねんにして仏ぶつを観かんじて諸想しょそうを除じょ去こすることなりº」 と1104。

十ニ者正念ニシテ観ジテ↠仏ヲ除↢去スルコトナリト諸想ヲ↡。」

^¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の第だい九く十じゅう二にに、 仏ぶつまたこの十じっ心しんをもつて弥み勒ろくの問といに答こたへたまへり。 そのなかの第だい六ろくの心しんにいはく、 「*仏ぶつの種しゅ智ちを求もとめて、 一切いっさいの時ときにおいて忘失もうしつする心しんなし」 と。 その余よの九く種しゅは、 文もん少すこし異ことなりといへども、 意こころは前さきの ¬経きょう¼ (弥勒問経) に同おなじ。

¬宝積経ノ¼第九十二ニ、仏亦以テ↢此ノ十心ヲ↡答ヘタマヘリ↢弥勒ノ問ヲ↡。其ノ中ノ第六ノ心ニ云ク、「求メテ↢仏ノ種智ヲ↡、於テ↢一切ノ時ニ↡無シトイヘリト↣忘↢失スルコト心↡。」其ノ余ノ九種ハ、文雖モ↢少シ異ナリト↡、意ハ同ジ↢前ノ¬経ニ¼↡。

^ただ ¬経きょう¼ (宝積経) の文もんにのたまはく、 「もし人ひと、 この十じっ種しゅの心しんのうちにおいて、 随したがひて一心いっしんを成じょうじて、 かの仏ぶつの世せ界かいに往おう生じょうせんと楽ぎょう欲よくせんに、 もし生しょうずることを得えずといはば、 この処ことわりあることなからん」 と。 云々 明あきらけし、 かならずしも十じゅうを具ぐして往おう生じょうの業ごうとなすにはあらざるなり。

但シ¬*経ノ¼文ニ云ク、「若シ人於テ↢此ノ十種ノ心ノ中ニ↡、随ヒテ成ジテ↢一心ヲ↡楽↣欲セムニ往↢生セムト彼ノ仏ノ世界ニ↡、若シ不トイハバ↠得↠生ズルコトヲ、無ケムトイヘリ↠有ルコト↢是ノ処コトワリ↡。」云々 明ケシ非ザル↣必ズシモ具シテ↠十ヲ為ルニハ↢往生ノ業ト↡也。

^¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「▲かの国くにに生うまれんと欲おもはば、 まさに三さん福ぷくを修しゅすべし。 ◆一いちには父母ぶもに孝きょう養ようし、 師し長ちょうに奉事ぶじし、 慈じ心しんをもつて殺せっせず、 十じゅう善業ぜんごうを修しゅすること、 ◆二にには三さん帰きを受じゅ持じし、 衆戒しゅかいを具ぐ足そくし、 威儀いぎを犯ぼんせざること、 ◆三さんには菩ぼ提心だいしんを発おこし、 深ふかく因いん果がを信しんじ、 大だい乗じょうを読誦どくじゅし、 行ぎょう者じゃを勧進かんじんすることなり。 ◆かくのごとき三さん事じを名なづけて浄じょう業ごうとなす。

¬観経ニ¼云ク、「欲ハバ↠生レムト↢彼ノ国ニ↡者、当ニシ↠修ス↢三ノ福ヲ↡。一ニ者孝↢養シ父母ニ↡、奉↢事シ師長ニ↡、慈心ヲモテ不↠殺セ、修スルコト↢十善業ヲ↡、二ニ者受↢持シ三帰ヲ↡、具↢足シ衆戒ヲ↡、不ルコト↠犯セ↢威儀ヲ↡、三ニ者発シ↢菩提心ヲ↡、深ク信ジ↢因果ヲ↡、読↢誦シ大乗ヲ↡、勧↢進スルコトナリ行者ヲ↡、如キ↠此クノ三事ヲ名ケテ為ス↢浄業ト↡。

^◆仏ぶつ、 韋い提だい希けに告つげたまはく、 ªなんぢいま知しるやいなや。 この三種さんしゅの業ごうは、 過去かこ・未み来らい・現在げんざいの三さん世ぜの諸仏しょぶつの浄業じょうごうの正しょう因いんなりº」 と。

仏告ゲタマハク↢韋提希ニ↡、汝今知ルヤ不ヤ。此ノ三種ノ業ハ過去・未来・現在ノ三世ノ諸仏ノ浄業ノ正因ナリト。」

^またのたまはく (観経・意)、 「▲上じょう品ぼん上生じょうしょうといふは、 ◆もし衆しゅ生じょうありて、 かの国くにに生しょうぜんと願がんぜば、 三種さんしゅの心しんを発おこして即便すなわち往おう生じょうす。 ◆なんらをか三さんとなす。 一いちには至し誠じょう心しん、 二にには深心じんしん、 三さんには回え向こう発願心ほつがんしんなり。 三さん心しんを具ぐせるものはかならずかの国くにに生うまる。

又云ク、「上品上生トイフ者、若シ有リテ↢衆生↡願ゼバ↠生ゼムト↢彼ノ国ニ↡者1199、発シテ↢三種ノ心ヲ↡即便チ往生ス。何等ヲカ為ル↠三ト。一ニ者至誠心、二ニ者深心、三ニ者廻向発願心ナリ。具セル↢三心ヲ↡者ハ必ズ生ル↢彼ノ国ニ↡。

^◆また三種さんしゅの衆しゅ生じょうありて、 まさに往おう生じょうすることを得うべし。 ◆なんらをか三さんとなす。 一いち1105には慈じ心しんにして殺せっせず、 もろもろの戒かい行ぎょうを具ぐすること、 二にには大だい乗じょう方等ほうどう経きょう典てんを読誦どくじゅすること、 三さんには六念ろくねんを修しゅ行ぎょうして、 ◆回え向こう発願ほつがんしてかの国くにに生うまれんと願がんずることなり。 この功く徳どくを具ぐすること、 一日いちにち乃ない至し七日しちにちにして、 すなはち往おう生じょうすることを得う。

復有リテ↢三種ノ衆生↡、当ニシ↠得↢往生スルコトヲ↡。何等ヲカ為ル↠三ト。一ニ者慈心ニシテ不↠殺セ、具スルコト↢諸ノ戒行ヲ↡、二ニ者読↢誦スルコト大乗方等経典ヲ↡、三ニ者修↢行シテ六念ヲ↡、廻向発願シテ願ズルコトナリ↠生レムト↢彼ノ国ニ↡。具スルコト↢此ノ功徳ヲ↡一日乃至七日スルハ即チ得ム↢往生スルコトヲ↡。

^▲上じょう品ぼん中生ちゅうしょうといふは、 ◆かならずしも方等ほうどう経きょう典てんを受じゅ持じせざれども、 よく義ぎ趣しゅを解さとりて、 第一だいいち義ぎにおいて心しん驚きょう動どうせず、 深ふかく因いん果がを信しんじ大だい乗じょうを謗ほうぜず。 この功く徳どくをもつて、 回え向こうして極楽ごくらく国こくに生うまれんと願がん求ぐするなり。

上品中生トイフ者、不シテ↣必ズシモ受↢持セ方等経典ヲ↡、善ク解サトリテ↢義趣ヲ↡、於テ↢第一義ニ↡心不↢驚動セ↡、深ク信ジ↢因果ヲ↡不シテ↠謗ゼ↢大乗ヲ↡、以テ↢此ノ功徳ヲ↡廻向シテ願↣求スルナリ生レムト↢極楽国ニ↡。

^▲上じょう品ぼん下げ生しょうといふは、 ◆また因いん果がを信しんじ大だい乗じょうを謗ほうぜず。 ただ無む上じょう道どうの心しんを発おこして、 ◆この功く徳どくをもつて、 回え向こうして極楽ごくらくに生うまれんと願がん求ぐするなり。

上品下生トイフ者、亦信ジ↢因果ヲ↡不シテ↠謗ゼ↢大乗ヲ↡、但発シテ↢无上道ノ心ヲ↡、以テ↢此ノ功徳ヲ↡廻向シテ願↣求スルナリ生レムト↢極楽ニ↡。

^▲中ちゅう品ぼん上生じょうしょうといふは、 ◆もし衆しゅ生じょうありて、 五ご戒かいを受じゅ持じし、 八はっ戒斎かいさいを持たもち、 もろもろの戒かいを修しゅ行ぎょうして五ご逆ぎゃくを造つくらず、 もろもろの過か患げんなからん。 ◆この善根ぜんごんをもつて、 回え向こうして願がん求ぐするなり。

中品上生トイフ者、若シ有リテ↢衆生↡受↢持シ五戒ヲ↡、持チ↢八戒斎ヲ↡、修↢行シテ諸ノ戒ヲ↡、不↠造ラ↢五逆ヲ↡、无クシテ↢*諸ノ過*患↡、以テ↢此ノ善根ヲ↡廻向シテ願求スルナリ。

^▲中ちゅう品ぼん中生ちゅうしょうといふは、 ◆もし衆しゅ生じょうありて、 もしは一日いちにち一いち夜や八はっ戒斎かいさいを受うけ、 もしは一日いちにち一いち夜や沙しゃ弥み戒かいを持たもち、 一日いちにち一いち夜や具ぐ足そく戒かいを持たもち、 威儀いぎ欠かくることなし。 ◆この功く徳どくをもつて、 回え向こうして願がん求ぐするなり。

中品中生トイフ者、若シ有リテ↢衆生↡若シハ一日一夜受ケ↢八戒斎ヲ↡、若シハ一日一夜持チ↢*沙弥*戒ヲ↡、一日一夜持チ↢具足戒ヲ↡、威儀无クシテ↠欠クルコト、以テ↢此ノ功徳ヲ↡廻向シテ願求スルナリ。

^▲中ちゅう品ぼん下げ生しょうといふは、 ◆もし善ぜん1106男なん子し・善ぜん女人にょにんありて、 父母ぶもに孝きょう養ようし、 世よの仁にん慈じを行ぎょうずるなり。

中品下生トイフ者、若シ有リテ↢善男子・善女人↡孝↢養シ父母ニ↡、行ズルナリ↢世ノ仁慈ヲ↡。

^▲下げ品ぼん上生じょうしょうといふは、 ◆あるいは衆しゅ生じょうありて、 もろもろの悪業あくごうを作つくらん。 方等ほうどう経きょう典てんを誹ひ謗ほうせずといへども、 かくのごとき愚ぐ人にん、 多おおくもろもろの悪法あくほうを造つくりて慚ざん愧ぎあることなからん。 ◆終おわりに臨のぞみて十じゅう二に部ぶ経きょうの首題しゅだいの名みょう字じを聞きき、 および合がっ掌しょうして ª南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつº と称しょうするなり。

下品上生トイフ者、或イハ有リテ↢衆生↡作リ↢衆ノ悪業ヲ↡、雖モ↠不ト↣誹↢謗セ方等経典ヲバ↡、如キ↠此クノ愚人ハ、多ク造リテ↢衆ノ悪法ヲ↡無カラム↠有ルコト↢慚愧↡。臨ミテ↠終ニ聞キ↢十二部経ノ首題ノ名字ヲ↡、及ビ合掌シテ称スルナリ↢南無阿弥陀仏ト↡。

^▲下げ品ぼん中生ちゅうしょうといふは、 ◆あるいは衆しゅ生じょうありて、 五ご戒かい・八はっ戒かいおよび具ぐ足そく戒かいを毀き犯ぼんせらん。 かくのごとき愚ぐ人にん、 ▲命いのち終おわらんと欲ほっする時ときに、 地じ獄ごくの衆しゅ火か、 一いち時じにともに至いたらん。 善ぜん知ぢ識しきの、 大だい慈悲じひをもつて、 ために阿あ弥陀みだ仏ぶつの十じゅう力りき威い徳とくを説とき、 広ひろくかの仏ぶつの光こう明みょう神力じんりきを説とき、 また戒かい・定じょう・慧え・解げ脱だつ・知ち見けんを讃さんずるに遇あはん。 ◆この人ひと聞ききをはりて八はち十じゅう億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞくなり。

下品中生トイフ者、或イハ有リテ↢衆生↡毀↢犯セラム五戒・八戒及1200ビ具足戒ヲ↡。如キ↠此クノ愚人、命欲セム↠終ラムト時ニ、地獄ノ衆火一時ニ倶ニ至ラム。遇ヒテ↧善知識ノ以テ↢大慈悲ヲ↡為ニ説キ↢阿弥陀仏ノ十力威徳ヲ↡、広ク説キ↢彼ノ仏ノ光明神力ヲ↡、亦讃ズルニ↦戒・定・*恵・解脱・知見ヲ↥、此ノ人聞キ已リテ除クナリ↢八十億劫ノ生死之罪ヲ↡。

^▲下げ品ぼん下げ生しょうといふは、 ◆あるいは衆しゅ生じょうありて、 不ふ善業ぜんごうたる五ご逆ぎゃく・十じゅう悪あくを作つくり、 もろもろの不ふ善ぜんを具ぐせん。 かくのごとき愚ぐ人にん、 悪業あくごうをもつてのゆゑに悪道あくどうに堕おつべからん。 ▲命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて、 善ぜん知ぢ識しきに遇あひて、 仏ぶつを念ねんずることあたはずといへども、 ◆ただ心しんを至いたして声こえをして絶たえざらしめて、 十じゅう念ねんを具ぐ足そくして ª南無なも無む量りょう寿じゅ仏ぶつº と称しょうせん。 仏ぶつの名みなを称しょうせんがゆゑに、 念々ねんねんのうちに八はち十じゅう億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞくなり」 と。

下品下生トイフ者、或イハ有リテ↢衆生↡作リ↢不善業タル・五逆・十悪ヲ↡、具セラム↢諸ノ不善ヲ↡。如キ↠此クノ愚人、以テノ↢悪業ヲ↡故ニ応カラム↠堕ツ↢悪道ニ↡。臨ム↢命終ニ↡時ニ遇ヒテ↢善知識ニ↡、雖モ↠不ト↠*能ハ↠念ズルコト↠仏ヲ、但至シテ↠心ヲ令メテ↢声ヲシテ不ラ↟絶エ、具↢足シテ十念ヲ↡称セム↢南無無量寿仏ト↡。称スルガ↢仏ノ名ヲ↡故ニ、於テ↢念々ノ中ニ↡除クナリト↢八十億劫ノ生死之罪ヲ↡。」

^▼¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) の三さん輩ぱいの業ごうもまたこれを出いでず。

▼¬双巻経ノ¼三輩ノ業モ亦不↠出デ↠此ヲ。

^¬観かん経ぎょう¼ に1107は、 *十じゅう六ろっ観かんをもつて往おう生じょうの因いんとなせり。

¬*観経ニハ¼以テ↢十六観ヲ↡為セリ↢往生ノ因ト↡。

^¬宝ほう積しゃく経きょう¼ に説とかく、 仏前ぶつぜんの蓮れん華げに化け生しょうするに、 四しの因縁いんねんありと。 偈げ (同) にのたまはく、

¬宝積経ニ¼説カク、仏前ニシテ蓮華ヨリ化生スルニ有リト↢四ノ因縁↡。偈ニ云ク、

^「華け香こうをもつて仏ぶつおよび*支し提だいに散さんずると、 他たを害がいせざると、 ならびに像ぞうを造つくると、
大だい菩ぼ提だいにおいて深ふかく信しん解げするとは、 蓮れん華げに処しょして仏前ぶつぜんに生うまるることを得う」 と。 以上

「華香ヲモテ散ジテ↢仏及ビ支提ニ↡不ルト↠害セ↢於他ヲ↡并ニ造ルト↠像ヲ
於テ↢大菩提ニ↡深ク信解スルトハ得トイヘリ↧処シテ↢蓮華ニ↡生ズルコトヲ↦仏前ニ↥」 已上

^余よは繁しげく出いださず。

余ハ不↢*繁ニ*出サ↡。

二 Ⅸ ⅱ 総結諸業

【69】^第だい二にに△総そうじて諸業しょごうを結けっすといふは、 ˆ浄じょう影よう寺じˇ *慧え遠おん法ほっ師し、 浄じょう土どの因要いんようを出いだせるに、 四しあり。 「一いちには観かんを修しゅして往おう生じょうすること、 十じゅう六ろっ観かんのごときなり。 二にには業ごうを修しゅして往おう生じょうすること、 三さん福業ぷくごうのごときなり。 三さんには心しんを修しゅして往おう生じょうすること、 至し誠じょう等とうの三さん心しんなり。 四しには帰き向こうして往おう生じょうする、 浄じょう土どの事じを聞ききて帰き向こうし、 称しょう念ねんし、 讃嘆さんだんすること等らなり」 (観経義疏・意) と。

第二ニ▼総ジテ結ストイフ↢諸業ヲ↡者、*恵遠法師出スニ↢浄土ノ因ヲ↡要ズ有リ↠四。「一ニハ修シテ↠観ヲ往生スルコト、如キナリ↢十六観ノ↡。二ニハ修シテ↠業ヲ往生スルコト、如キナリ↢三福業ノ↡。三ニハ修シテ↠心ヲ往生スルコト、至誠等ノ三ノ心ナリ。四ニハ帰向シテ往生スル、聞キテ↢浄土ノ事ヲ↡帰向シ、称念シ、讃嘆スルコト等也トイヘリ。」

^いまわたくしにいはく、 諸しょ経きょうの行ぎょう業ごう、 総そうじてこれをいへば、 *¬梵網ぼんもう¼ 戒品かいぼんを出いでず。 別べっしてこれを論ろんずれば、 六ろく度どを出いでず。 細くわしくその相そうを明あかせば、 その十じゅう三さんあり。

今私ニ云ク、▼諸経ノ行業、総ジテ而言ヘバ↠之ヲ、不↠出デ↢¬梵網¼「戒品ヲ」↡。別シテ而論ズレバ↠之ヲ、不↠出デ↢六度ヲ↡。細クハシク明サバ↢其ノ相ヲ↡、有リ↢其ノ十三↡。

^一いちには*財ざい・法ほう等とうの施せ、 二にには三さん帰き・五ご戒かい・八はっ戒かい・十じっ戒かい等とうの多た少しょうの戒かい行ぎょう、 三さんには忍辱にんにく、 四しには精しょう1108進じん、 五ごには禅ぜん定じょう、 六ろくには般若はんにゃ、 第一だいいち義ぎを信しんずること等らこれなり。 七しちには菩ぼ提心だいしんを発おこすこと、 八はちには六念ろくねんを修しゅ行ぎょうすること、 仏ぶつ・法ぽう・僧そう・戒かい・施せ・天てん、 これを六念ろくねんといふ。 十じゅう六ろく想観そうかんはまたこれを出いでず。 九くには大だい乗じょうを読誦どくじゅすること、 十じゅうには仏法ぶっぽうを守しゅ護ごすること、 十じゅう一いちには父母ぶもに孝順きょうじゅんし師し長ちょうに奉事ぶじすること、 十じゅう二にには憍きょう慢まんをなさざること、 十じゅう三さんには利り養ように染ぜんせざることなり。

▼一ニ者財・法等ノ施。二ニ者三帰・五戒・八戒・十戒*等ノ多少ノ戒行。三ニ者忍辱1201。*四ニハ精進。五ニハ禅定。六ニハ般若。信ズルコト↢第一義ヲ↡等是也。七ニハ発スコト↢菩提心ヲ↡。八ニハ修↢行スルコト六念ヲ↡、*仏・法・僧・*戒・施・天、謂フ↢之ヲ六念ト↡。十六想観ハ亦不↠出デ↠之ヲ 九ニハ読↢誦スルコト大乗↡。十ニハ守↢護スルコト仏法ヲ↡。十一ニハ孝↢順シ父母ニ↡奉↢事スルコト師長ニ↡。十二ニハ不ルコト↠生ナサ↢憍慢ヲ↡。十三ニハ不ルコト↠染セ↢利養ニ↡也。

^*¬大だい集じゅう¼ の 「月蔵がつぞう分ぶん」 の偈げにのたまはく、

¬大集ノ¼「月蔵分ノ」偈ニ云ク、

^「樹きの菓このみ繁しげければ、 すみやかにみづから害がいするがごとし。 竹ちく籚ろの実みを結むすぶもまたかくのごとし。
*任にん騾らの懐かいすれば、 自じ身しんを喪ほろぼすがごとし。 無智むちにして利りを求もとむるもまたしかり。

「如シ↢樹ノ菓繁ケレバ速ニ自ラ害スルガ↡竹*籚ノ結ブモ↠実ヲ亦如シ↠是クノ
如シ↣任騾ノ*懐ハラメル喪ボスガ↢自身ヲ↡無智ニシテ求ムルモ↠利ヲ亦復然リ

^もし比丘びくありて、 供く養ようを得え、 利り養ようを楽ぎょう求ぐし堅かたく着じゃくするものは、
世よにおいてさらにかくのごとき悪あくはなし。 ゆゑに解げ脱だつの道どうを得えざらしむ。
^かくのごとくして利り養ようを貪とん求ぐするものは、 すでに道どうを得えをはりぬれども、 還かえりてまた失うしなふ」 と。

若シ有リテ↢比丘↡得↢供養ヲ↡楽↢求シ利養ヲ↡堅ク著スル者ハ
於テ↠世ニ更ニ无シ↢如キ↠此クノ悪ハ↡故ニ令ム↠不ラ↠得↢解脱ノ道ヲ↡
如クシテ↠是クノ貪↢求スル利養ヲ↡者ハ既ニ得↠道ヲ已リヌレドモ還リテ復失フト」

^また ¬*仏蔵ぶつぞう経きょう¼ に、 *迦か葉しょう仏ぶつ、 記きしてのたまはく、 「釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつは多おおく供く養ようを受うけ1109たまはんがゆゑに、 法ほうまさに疾とく滅めっすべし」 と。 云々

*又¬仏蔵経ニ¼、迦葉仏記シテ云ク、「釈迦牟尼仏ハ多ク受ケタマハムガ↢供養ヲ↡故ニ、法当ニシト↢疾ク滅ス↡。」云々

^如来にょらいなほしかり。 いかにいはんや凡ぼん夫ぶをや。 大象だいぞう窓まどを出いづるに、 つひに一いちの尾おのために礙さへらる。 行ぎょう人にん家いえを出いでたれども、 つひに*名みょう利りのために縛ばくせらる。 すなはち知しりぬ、 出しゅつ離りの最さい後ごの怨あだは、 名みょう利りより大だいなるものはなし。

如来尚爾リ。何ニ況ヤ凡夫ヲヤ。大象出ヅルニ↠窓ヲ、遂ニ為ニ↢一ノ尾ノ↡所ル↠礙ヘ。行人出デタレドモ↠家ヲ、遂ニ為ニ↢名利ノ↡所ル↠縛セ。則チ知リヌ出離ノ最後之怨ハ莫シ↧大ナル↢名利ヨリ↡者ハ↥也。

^ただ浄名じょうみょう大だい士じ (*維摩詰) は、 身みは家いえにあれども心しんは家いえを出いで、 *薬王やくおうの本ほん事じは、 *塵寰じんかんを避さりて*雪山せっせんに居こせり。 いまの世よの行ぎょう人にんもまたかくのごとくすべし。 みづから*根こん性じょうを料はかりて、 これを進しん止しせよ。 もしその心しんを制せいすることあたはずは、 なほすべからくその地じを避さるべし。 *麻あさのなかの蓬よもぎ、 *屠と辺へんの廏うまや、 好こう悪おいづれにかよれるや。 ¬仏蔵ぶつぞう経きょう¼ を見みて是非ぜひを知しるべし。

但シ浄名大士ハ、身ハ在リテ↠家ニ心ハ出デタリ↠家ヲ。薬王ノ、本事ハ避サリテ↢塵寰ヲ↡居セリ↢*雪山ニ↡。今ノ世ノ行人モ亦応シ↠如クス↠是クノ。自ラ料ハカリテ↢根性ヲ↡而シテ進↢止セヨ之ヲ↡。若シ不ハ↠能ハ↠制スルコト↢其ノ心ヲ↡、猶須クシ↠避サル↢於其ノ地ヲ↡。麻ノ中之蓬、屠辺之廏キサヤ、好悪由レル↠何レニカ乎。可シ↧見テ↢¬仏蔵経ヲ¼↡知ル↦是*非ヲ↥

二 Ⅹ 問答料簡

【70】^大文だいもん第だい十じゅうに、 △*問答もんどう料りょう簡けんといふは、 略りゃくして十じゅうの事じあり。 一いちには▽極楽ごくらくの依え正しょう、 二にには▽往おう生じょうの階かい位い、 三さんには▽往おう生じょうの多た少しょう、 四しには▽尋じん常じょうの念相ねんそう、 五ごには▽臨りん終じゅうの念相ねんそう、 六ろくには▽粗そ心しんの妙みょう果か、 七しちには▽諸しょ行ぎょうの勝しょう劣れつ、 八はちには▽信しん毀きの因縁いんねん、 九くには▽助道じょどうの資し縁えん、 十じゅうには▽助道じょどうの人法にんぼうなり。

大文第十ニ、▼問答料簡セバ者、略シテ有リ↢十ノ事↡。▼一ニハ極楽ノ依正。二ニハ往生ノ階位。三ニハ往生ノ多少。四ニハ尋常ノ念相。五ニハ臨終ノ念相。六ニハ麁心ノ妙果。七ニハ諸行ノ勝劣。八ニハ信毀1202ノ因縁。九ニハ助道ノ資縁。十ニハ助道ノ人法ナリ。

二 Ⅹ ⅰ 極楽依正

【71】^第一だいいちに△極楽ごくらくの依え正しょうといふは、

第一ニ極楽ノ依正トイフ者、

^問とふ、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの極楽ごくらく浄じょう土どは、 これいづれの身しん、 いづれの土どぞや。

▼問フ。阿弥陀仏ノ極楽浄土ハ是何レノ身何レノ土ゾ耶。

^答こたふ。 天台てんだい (*智顗) のいはく (観経天台疏・意)、 「応身おうじんの仏ぶつ、 *同どう居ごの土どなり」 と。

◆答フ。天臺ノ云ク、「応身ノ仏、同居ノ土ナリト。」

^*遠おん法ほっ師し (浄影寺*慧遠) のいはく、 「これ応身おうじん・応おう土どなり1110」 と。

◆遠法師ノ云ク、「是応身応土ナリト。」

^綽しゃく法ほっ師し (*道綽) のいはく、 「▲これ報仏ほうぶつ・報ほう土どなり。 ◆古こ旧きゅう等ら、 あひ伝つたへて、 みな ª化土けど・化け身しんなりº といふ。 これを大おおきに失しっせりとなす。 ▲¬*大だい乗じょう同どう性しょう経きょう¼ によりていはく、 ª浄じょう土どのなかにして成じょう仏ぶつするものは、 ことごとくこれ報身ほうじんなり。 穢土えどのなかにして成じょう仏ぶつするものは、 ことごとくこれ化け身しんなりº と。

◆綽法師ノ云ク、「是報仏報土ナリ。古旧等相伝ヘテ、皆云フ↢化土化身ナリト↡。此ヲ為ス↢大ニ失セリト↡。依リテ↢¬大乗同性経ニ¼↡云ク、浄土ノ中ニシテ成仏スル者ハ悉ク是報身ナリ。穢土ノ中ニシテ成仏スル者ハ悉ク是化身ナリト。

^◆またかの ¬経きょう¼ (大乗同性経) にのたまはく、 ª阿あ弥陀みだ如来にょらい・蓮れん華げ開かい敷ふ星しょう王おう如来にょらい・竜りゅう主しゅ如来にょらい・宝徳ほうとく如来にょらい等とうの、 もろもろの如来にょらいの清浄しょうじょうの仏刹ぶっせつにして、 現げんに得道とくどうするもの、 まさに得道とくどうすべきもの、 かくのごとき一切いっさいはみなこれ報身ほうじんの仏ぶつなり。 ◆何者なにものか如来にょらいの化け身しんとならば、 なほ今日こんにちの踊歩ゆぶ健ごん如来にょらい・魔ま恐怖くふ如来にょらい等とうのごときなりº」 と。 以い上じょう ¬安楽あんらく集しゅう¼ (上・意)。

◆又彼ノ¬経ニ¼云ク、阿弥陀如来・蓮花開敷星王如来・竜主如来・宝徳如来等ノ、諸ノ如来ノ清浄ノ仏刹ニシテ現ニ得道スル者、当ニキ↢得道シタマフ↡者、如キ↠是クノ一切ハ皆是報身ノ仏也。何者カ如来ノ化身トナラバ、由ナホ如キナリト↢今日ノ踊歩健如来・魔恐怖如来等ノ↡。」已上¬安楽集¼

 ^問とふ。 かの仏ぶつ成じょう道どうしたまひて、 すでに久如いくひさしとかせん。

問フ。彼ノ仏成道シタマヒテ、為ム↢已ニ久如イクヒサシトカ↡。

^答こたふ。 *諸しょ経きょうに 「▲十じっ劫こう」 とのたまひ、 ¬大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ (上) には 「▲十じっ小しょう劫こう」 とのたまひ、 ¬平びょう等覚どうがく経きょう¼ (一) には 「▲十じゅう八はち劫こう」 とのたまひ、 ¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ には 「▲十じゅう大劫だいこう」 とのたまへり。 邪じゃ正しょう、 知しりがたし。 ただ ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経) の*憬きょう興ごう師しの ¬疏しょ¼ (*述文賛) に、 ¬平びょう等どう経きょう¼ を会えしていはく、 「十じゅう八はち劫こうとは、 それ小しょうの字じの、 そのなかの点てんを闕けっせるなり」 と。

答フ。諸*経ニ云ヘリ↢十劫ト↡。¬大阿弥陀経ニハ¼云ヘリ↢「十小劫ト」↡。¬平等覚経ニハ¼云ヘリ↢「十八劫ト」↡。¬称讃浄土経ニハ¼云ヘリ↢「十大劫ト」↡。邪正難シ↠知リ。但¬双巻経ノ¼*憬興師ノ¬疏ニ¼、会シテ↢¬平等経ヲ¼↡云ク、「十八劫ト者、其レ小ノ字ノ闕セルナリトイヘリ↢其ノ中ノ点ヲ↡矣。」

 ^1111問とふ。 未み来らいの寿じゅはいくばくぞ。

問フ。未来ノ寿ハ幾何イクバクゾ。

^答こたふ。 ¬*小経しょうきょう¼ に、 「▲無む量りょう無む辺へん阿あ僧そう祇ぎ劫こう」 とのたまへり。

答フ。¬小経ニ¼云リ↢「无量无辺阿僧祇劫ト」↡。

^¬*観音かんのん授じゅ記き経きょう¼ (意) にのたまへり、 「阿あ弥陀みだ仏ぶつの寿じゅ命みょう、 無む量りょう百ひゃく千億せんおく劫こうにして、 まさに終しゅう極ごくあるべし。 仏ぶつ涅ね槃はんの後のちに、 正しょう法ぼうの世よに住じゅうすること、 仏ぶつの寿じゅ命みょうに等ひとしからん。

¬観音授記経ニ¼云ハク、「阿弥陀仏ノ寿命無量百千億劫ニシテ、当ニシ↠有ル↢終極↡。仏涅槃ノ後ニ正法ノ住セムコト↠世ニ、等シカラム↢仏ノ寿命ニ↡。

^善男ぜんなん子し、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの正しょう法ぼうの滅めっして後のちに、 *中ちゅう夜やの分ぶんを過すぐして明みょう相そうの出いづる時ときに、 観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつ、 菩ぼ提だい樹じゅ下げにして等とう正しょう覚がくを成じょうじ、 普ふ光こう功く徳どく山王せんのう如来にょらいと号ごうせん。 その仏ぶつの国こく土どには、 声しょう聞もん・縁覚えんがくの名なあることなからん。 その仏ぶつの国こく土どを、 衆宝しゅぼう普ふ集じゅう荘しょう厳ごんと号ごうせん。

善男*子、阿弥陀仏ノ正法ノ滅シテ後ニ、過グシテ↢中夜ノ分ヲ↡明相ノ出1203デム時ニ、観世音菩薩於テ↢菩提樹下ニ↡成ラム↢等正覚ヲ↡。号セム↢普光功徳山王如来ト↡。其ノ仏ノ国土ニハ、無ケム↠有ルコト↢声聞・縁覚之名↡。其ノ仏ノ国土ヲバ号セム↢衆宝普集荘厳ト↡。

^普ふ光こう功く徳どく如来にょらい涅ね槃はんしたまひて、 正しょう法ぼうの滅めっして後のちに、 大勢だいせい至し菩ぼ薩さつ、 すなはちその国くににして成じょう仏ぶつし、 善ぜん住じゅう功く徳どく宝王ほうおう如来にょらいと号ごうせん。 国こく土ど・光こう明みょう・寿じゅ命みょう、 乃ない至し、 法ほうの住じゅうすること、 等ひとしくして異ことなることあることなからん」 と。

普光功徳如来涅槃シタマヒテ、正法ノ滅シテ後ニ、大勢至菩薩即チ於テ↢其ノ国ニ↡成ラム↠仏ニ。号セム↢善住功徳宝王如来ト↡。国土・光明・寿命、乃至法ノ住セムコト、等シクシテ無ケムト↠有ルコト↠異ナルコト。」

 ^問とふ。 ↓¬*同どう性経しょうきょう¼ には 「報身ほうじん」 とのたまひ、 ↓¬*授じゅ記き経きょう¼ には 「入にゅう滅めつ」 とのたまふ。 二にの経きょうの相そう違い、 諸しょ師しいかんが*会えする。

問フ。¬同性経ニハ¼云フ↢「報身ト」↡。¬授記経ニハ¼云フ↢「入滅ト」↡。二ノ経ノ相違諸師何ガ会スル。

^答こたふ。 綽しゃく禅ぜん師じ (道綽)、 ↑¬授じゅ記き経きょう¼ を会えしていはく (安楽集・上)、 「▲これはこれ報身ほうじんの、 隠没おんもつの相そうを現げんずるなり。 滅めつ度どにはあらず」 と。

答フ。*綽禅師会シテ↢¬授記経ヲ¼↡云ク、「此ハ是報身ノ現ズルナリ↢隠没ノ相ヲ↡。非ズト↢滅度ニハ↡也。」

^*迦か才ざい、 ↑¬同どう性経しょうきょう¼ を会えしていはく (浄土論)、 「浄じょう土どのなかにして仏ぶつになるを判はんじて報ほうとなすことは、 これ*受用じゅゆう事じ身しんなり。 実じつの報身ほうじんにはあ1112らず」 と。

迦才会シテ↢¬同性経ヲ¼↡云ク、「浄土ノ中ニシテ成ルヲ↠仏ニ判ジテ為ルコト↠報ト者、是受用事身ナリ。非ズト↢実ノ報身ニハ↡也。」

 ^問とふ。 何者なにものをか正しょうとなすや。

問フ。何者ヲカ為ル↠正ト耶。

^答こたふ。 迦か才ざいのいはく (浄土論)、 「衆しゅ生じょうの起き行ぎょうにすでに*千せん殊じゅあれば、 往おう生じょうして土どを見みることまた万別まんべつあるなり。 もしこの解げを作つくらば、 諸しょ経きょう論ろんのなかに、 あるいは判はんじて報ほうとなし、 あるいは判はんじて化けとなすこと、 みな妨難ぼうなんなし。 ただ諸仏しょぶつの修しゅ行ぎょう、 つぶさに報ほう化けの二にの土どを感かんずることを知しれ。

答フ。▼迦才ノ云ク、「衆生ノ起行ニ既ニ有レバ↢千殊↡、往生シテ見ルコト↠土ヲ亦有ル↢万別↡也。若シ作ラバ↢此ノ解ヲ↡者、諸経論ノ中ニ或イハ判ジテ為シ↠報ト、或イハ判ジテ為ルコト↠化ト、皆無シ↢妨難↡也。但知レ↣諸仏ノ修行具ニ感ズルコトヲ↢報・化ノ二ノ土ヲ↡也。

^¬*摂しょう論ろん¼ のごときには ª*加け行ぎょうは化けを感かんず、 正しょう体たいは報ほうを感かんずº といへり。 *もしは報ほう、 もしは化け、 みな衆しゅ生じょうを成じょう就じゅせんと欲ほっすなり。 これすなはち、 土どは虚むなしく設もうけず、 行ぎょうは空むなしく修しゅせず。 ただ仏ぶつ語ごを信しんじて、 経きょうによりて専せんにして念ねんずれば、 すなはち往おう生じょうすることを得う。 またすべからく報ほうと化けとを図度はかるべからず」 と。 以上

如キニハ↢¬摂論ノ¼↡加行ハ感ズ↠化ヲ、正体ハ感ズトイヘリ↠報ヲ。若シハ報若シハ化、皆欲スナリ↣成↢*就セムト衆生ヲ↡。此則チ土ハ不↢虚シク設ケ↡、行ハ不↢空シク修セ↡。但信ジテ↢仏語ヲ↡依リテ↠経ニ専スルニ↠念ヲ、即チ得↢往生スルコトヲ↡。亦不ト↠須クカラ↣図↢度  ハカ  ル報ト之与ヲ↟化也。」 已上

^この釈しゃく、 善よし。 すべからくもつぱらにして称しょう念ねんすべし。 労いたわしく分別ふんべつすることなかれ。

此ノ釈善シ矣。須クシ↢専ニシテ称念ス↡。勿レ↢労イタハシク分別スルコト↡。

 ^問とふ。 かの仏ぶつの相好そうごう、 なにをもつてか不ふ同どうなる。

問フ。彼ノ仏ノ相好何ヲ以テカ不同ナル。

^答こたふ。 ¬観仏かんぶつ経きょう¼ に、 諸仏しょぶつの相好そうごうを説ときてのたまはく、 「人にんの相そうに同どうずるがゆゑに*三さん十じゅう二にと説とき、 もろもろの天てんに勝すぐれたるがゆゑに*八はち十じゅうの好こうと説とく。 もろもろの菩ぼ薩さつのためには、 八万はちまん四し千せんのもろもろの妙みょう相好そうごうを説とく」 と。 以上 かの仏ぶつこれに准なぞらへよ。

答フ。¬観仏経ニ¼*説キテ↢諸仏ノ相好ヲ↡云ク、「同ズルガ↢人ノ相ニ↡故ニ説ク↢卅二ト↡。勝レタルガ↢諸ノ天ニ↡故ニ説ク↢八*十ノ好ト↡。為ニハ↢諸ノ菩薩ノ↡説クトイヘリ↢八万1204四千ノ諸ノ妙相好ヲ↡。」 已上 彼ノ仏准ヘヨ↠之ニ。

 ^1113問とふ。 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・上) にのたまはく、 「▲かの仏ぶつの*道樹どうじゅは高たかさ四し百ひゃく万まん里りなり」 と。 *¬宝ほう積しゃく経きょう¼ にのたまはく、 「▲道樹どうじゅの高たかさ十じゅう六ろく億おく由ゆ旬じゅんなり」 と。 ¬十じゅう往おう生じょう経きょう¼ にのたまはく、 「道樹どうじゅの高たかさ四し十じゅう万まん由ゆ旬じゅんなり。 樹じゅ下げに獅子しし座ざあり、 高たかさ五ご百ひゃく由ゆ旬じゅんなり」 と。 ¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「▲仏ぶつの身量しんりょう、 六ろく十じゅう万億まんおく那由なゆ他た恒ごう河が沙しゃ由ゆ旬じゅんなり」 と。 云々 *樹じゅと座ざと仏身ぶっしんと、 なんぞあひ称かなはざる。

問フ。¬双巻経ニ¼云ク、「彼ノ仏ノ道樹ハ高サ四百万里ナリト。」¬宝積経ニ¼云ク、「道樹ノ高サ十六億由旬ナリト。」¬十往生経ニ¼云ク、「道樹ノ高サ万由旬ナリ。樹下ニ有リ↢師子座↡、高サ五百由旬ナリト。」¬観経ニ¼云ク、「仏ノ身ノ量六十万億那由他恒河沙由旬ナリト。」云々 樹ト座ト仏身ト何ゾ不ル↢相称カナハ↡。

^答こたふ。 異解いげ不ふ同どうなり。 あるいは釈しゃくすらく、 「*仏ぶつの境きょう界がいは大だい小しょうあひ礙さへず」 と。 あるいは釈しゃくすらく、 「*応仏おうぶつに寄よせて樹じゅ量りょうを説とき、 真仏しんぶつに寄よせて身しん量りょうを説とく」 と。 また多おおくの釈しゃくあり。 つぶさに述のぶべからずと。

答フ。異解不同ナリ。或イハ釈スラク、仏ノ境界ハ大小不ト↢相礙ヘ↡。或イハ釈スラク、寄セテ↢応仏ニ↡説ク↢樹量ヲ↡。寄セテ↢真仏ニ↡説クト↢身量ヲ↡。又有リ↢多クノ釈↡。不ト↠可カラ↢具ニ述ブ↡。

 ^問とふ。 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ (意) にのたまはく、 「娑しゃ婆ば世せ界かいの一劫いっこうを極楽ごくらく国こくの一日いちにち一いち夜やとなす」 と等らいへり。 云々 これによりてまさに知しるべし、 上じょう品ぼん中生ちゅうしょうの、 ▲宿しゅくを経へて華はな開ひらくるは、 この間けんの半劫はんこうに当あたれり。 乃ない至し、 下下げげ生しょうの▲十じゅう二に劫こうは、 この間けんの恒ごう河が沙しゃ塵数じんじゅの劫こうに当あたれり。 なんぞ極楽ごくらくと名なづけん。

問フ。¬華厳経ニ¼云ク、「娑婆世界ノ一劫ヲ為スト↢極楽国ノ一日一夜ト↡」等イヘリ。云々 由リテ↠此ニ当ニシ↠知ル、上品中生ノ逕テ↠宿ヲ華開クルハ、当レリ↢此ノ間ノ半劫ニ↡。乃至下々生ノ十二劫ハ、当レリ↢此ノ間ノ恒*河沙塵数ノ劫ニ↡。何ゾ名ケム↢極楽ト↡。

^答こたふ。 たとひ恒沙ごうじゃ劫こうを経へて蓮れん華げ開ひらけずとも、 すでに微すこしき苦くなし、 あに極楽ごくらくにあらずや。

答フ。設ヒ経テ↢恒*沙劫ヲ↡蓮花不トモ↠開ケ、既ニ无シ↢微シノ苦↡、豈ニ非ズヤ↢極楽ニ↡。

^¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) にのたまふがごとし、 「▲その*胎たい生しょうのものの処ところするところの宮く殿でんは、 あるいは百ひゃく由ゆ旬じゅん、 あるいは五ご百ひゃく由ゆ旬じゅんなり。 おのおのそのなかにしてもろもろの快け楽らく1114を受うくること、 忉とう利り天てんのごとし」 と。 以上

如シ↢¬双巻経ニ¼云フガ↡、「其ノ胎生ノ者ノ所ノ↠処スル宮殿ハ、或イハ百由旬、或イハ五百由旬ナリ。各 ノ於テ↢其ノ中ニ↡受クルコト↢諸ノ快楽ヲ↡如シト↢忉利天ノ↡。」 已上

^ある師しのいはく、 「*胎たい生しょうは、 これ*中ちゅう品ぼん・下げ品ぼんなり」 と。

有ル師ノ云ク、「胎生ハ是中品下*生ナリト。」

^ある師しはいはく、 「*九く品ぼんに摂せっせざるところなり」 と。

有ル師ハ云ク、「九品ニ所ナリト↠不ル↠摂セ。」

^異い説せつありといへども快け楽らくは別べつならず。 いかにいはんや、 かの九く品ぼんの経ふるところの日にち時じを判はんずること、 諸しょ師し不ふ同どうなるをや。 懐え感かん・智ち憬きょう等とうの諸しょ師しは、 かの国こく土どの日にち夜や劫数こうしゅなりと許ゆるすは、 まことに責せむるところに当あたれり。 ある師しのいはく、 「*▲仏ぶつ、 この土どの日にち夜やをもつて、 これを説ときて、 衆しゅ生じょうをして知しらしめたまふ」 と。 云々

雖モ↠有リト↢異説↡快楽ハ不↠別ナラ。何ニ況ヤ判ズルコト↢彼ノ九品ノ所逕ノ日時ヲ↡、諸師不同ナリ。懐感・智憬等ノ諸師ハ、許スハ↢彼ノ国土ノ日夜劫数ナリト↡。誠ニ当レリ↠所ニ↠責ムル。有ル師ノ云ク、「仏以テ↢*此ノ土ノ日夜ヲ↡説キテ↠之ヲ、令メタマフト↢衆生ヲシテ知ラ↡。」云々

^いまいはく、 後のちの釈しゃく、 失とがなし。 しばらく四しの例れいをもつて*助じょ成じょうせん。

今謂ク、後ノ釈無シ↠失。且ク以テ↢四ノ例ヲ↡助成セム。

^一いちには、 かの仏ぶつの身しん量りょう、 そこばく由ゆ旬じゅんといふは、 かの仏ぶつの指し分ぶんをもつて、 畳かさねてかの由ゆ旬じゅんとなせるにあらず。 もししからずは、 須しゅ弥み山せんのごとき長ちょう大だいの人にんの、 一いち毛端もうたんをもつて、 その指ゆびの節ふしとなさんに似にたるべし。 ゆゑに知しりぬ、 仏ぶつの指ゆびの量りょうをもつて仏身ぶっしんの長ちょう短たんを説とかずといふことを。 なんぞかならずしも、 浄じょう土どの*時じ剋こくをもつて華はなの開ひらくる遅ち速そくを説とかんや。

一ニ者彼ノ仏ノ身量ノ若干ソコバクノ由1205旬ヲ、不ジ↧以テ↢彼ノ仏ノ指ノ分ヲ↡畳ムデ為ムニ↦彼ノ由旬ト↥也。若シ不ハ↠爾ラ者、応シ↠似タル↧如キ↢須弥山ノ↡長大之人ノ以テ↢一毛端ヲ↡為ムニ↦其ノ指ノ節ト↥。故ニ*知リヌ不トイフコトヲ↧以テ↢仏ノ指ノ量ヲ↡説カ↦仏身ノ長短ヲ↥。何ゾ必ズシモ以テ↢浄土ノ時剋ヲ↡説カム↢華ノ開クル遅速ヲ↡耶。

^二にには、 ¬*尊そん勝しょう陀羅だら尼に経きょう¼ に説とくがごとし。 「忉とう利り天てん上じょうの善ぜん住じゅう天てん子し、 空そらの声こえの告つぐるを聞きくに、 ªなんぢ、 まさに七日しちにちありて死しぬべしº と。 時ときに*天てん帝たい釈しゃく、 仏ぶつの教勅きょうちょくを承うけて、 かの天てん子しをして七日しちにち勤修ごんしゅせしむ。 七日しちにちを過すぎて後のちに、 寿じゅ命みょう延のぶることを得えたり」 と。 取意

二ニ者如シ↢¬尊勝陀羅尼経ニ¼説クガ↡。「忉利天上ノ善住天子、聞クニ↢空ノ声ノ告グルヲ↡、汝当ニシト↢七日アリテ死ヌ↡。時ニ天帝釈、承ケテ↢仏ノ教勅ヲ↡、令ム↢彼ノ天子ヲシテ七日勤修セ↡。過ギテ↢七日ヲ↡後ニ寿命得タリト↠延ブルコトヲ。」取意

^これはこれ、 人にん中ちゅうの日にち夜や1115をもつて説とけるなり。 もし天てん上じょうの七日しちにちによらば、 人にん中ちゅうの七しち百ひゃく歳さいに当あたれり。 *仏ぶつ世せの八はち十じゅう年ねんのうちに、 その事じを決けつ了りょうすべきにあらず。 九く品ぼんの日にち夜やもまたこれに同おなじかるべし。

此ハ是人中ノ日夜ヲモテ而説ケルナリ。若シ拠ラバ↢天上ノ七*日ニ↡、当レリ↢於人中ノ七百歳ニ↡。不ズ↠応キニ↣仏世ノ八十年ノ中ニ、決↢了ス其ノ事ヲ↡。九品ノ日夜モ亦応シ↠同カル↠之ニ。

^三さんには、 *法ほう護ご所訳しょやくの ¬経きょう¼ にのたまはく、 「▲胎たい生しょうの人にんは、 五ご百ひゃく歳さいを過すぎて仏ぶつを見みたてまつることを得う」 と。 ¬平びょう等覚どうがく経きょう¼ (三) にのたまはく、 「▲蓮れん華げのなかに*化け生しょうして、 城しろのなかにあり。 この間けんの五ご百ひゃく歳さいにして、 出いづることを得うることあたはず」 と。 取意

三ニ者法護所訳ノ¬経ニ¼云ク、「胎生之人ハ過ギテ↢五百歳ヲ↡得ト↠見タテマツルコトヲ↢於仏ヲ↡。」¬平等覚経ニ¼云ク、「於リ↢蓮華ノ*中↡化生シテ、在リテ↢城ノ中ニ↡、於テ↢是ノ間ノ五百歳ニ↡不ト↠能ハ↠得ルコト↠出ヅルコトヲ。」取意

^憬きょう興ごう等とうの師し、 この文もんをもつて、 この方ほうの五ご百ひゃく歳さいなりといふことを証しょうす。 いまいはく、 かの胎たい生しょうの歳数さいしゅ、 すでにこの間けんによりて説とく。 九く品ぼんの時じ剋こく、 なんの別べつ義ぎありてか、 かれに同おなじからざらんや。

憬興等ノ師以テ↢此ノ文ヲ↡証ス↢此ノ方ノ五百歳ナリトイフコトヲ↡也。今云ク、彼ノ胎生ノ歳数既ニ依リテ↢此ノ間ニ↡説ク。九品ノ時剋有リテカ↢何ノ別義↡不ラム↠同カラ↠彼ニ耶。

^四しには、 もしかの界さかいによりて九く品ぼんを説とけりとせば、 上じょう品ぼん中生ちゅうしょうの一いっ宿しゅく、 上じょう品ぼん下げ生しょうの一日いちにち一いち夜やは、 すなはちこの界さかいの半劫はんこう・一劫いっこうに当あたれり。 もししかなりと許ゆるさば、 胎たい生しょうの疑ぎ心しんのものすら、 なほ娑しゃ婆ばの五ご百ひゃく歳さいを経へて、 すみやかに仏ぶつを見みたてまつることを得うるに、 上じょう品ぼんの信しん行ぎょうのもの、 あに半劫はんこう・一劫いっこうを過すぎて、 遅おそく蓮れん華げを開ひらかんや。 この理ことわりあるがゆゑに、 後のちの釈しゃくは失とがなし。

四ニ者若シ拠リテ↢彼ノ界ニ↡説カバ↢九品ヲ↡者、上品中生ノ一宿、上品下生ノ一日*一夜ハ、即チ当レリ↢此ノ界ノ半劫・一劫ニ↡。若シ許サバ↠爾ナリト者、胎生ノ疑心ノ者スラ尚シ逕テ↢娑婆ノ五百歳ヲ↡而速ニ得ルニ↠見タテマツルコトヲ↠仏ヲ。上品ノ信行ノ者豈ニ過ギテ↢半劫・一劫ヲ↡而遅ク開カム↢蓮華ヲ↡耶。有ルガ↢此ノ理↡故ニ後ノ釈ハ无シ↠失。

 ^問とふ。 もしこの界さかいの日にち夜やの時じ剋こくをもつてかの相そうを説とかば、 かの上上じょうじょう品ぼんは、 かの国くにに生うまれをはりて、 すなはち無む生しょう法忍ぼうにんを悟さとるべからず。 しかる所以ゆえんは、 この1116界さかいの少時しょうじの修しゅ行ぎょうをば勝すぐれたりとなし、 かの国くにの多時たじの善根ぜんごんをば劣れつなりとなす。

問フ。若シ以テ↢此ノ界ノ日夜ノ時剋ヲ↡説カバ↢彼ノ相ヲ↡者、彼ノ上々品ハ、生レ↢彼ノ国ニ↡已リテ、不↠応カラ↣即チ悟ル↢无生1206法忍ヲ↡。所↢以然ル↡者、此ノ界ノ少時ノ修行ヲバ為シ↠勝レタリト。彼ノ国ノ多時ノ善根ヲバ為ス↠劣ナリト。

^すでにしからば、 上上じょうじょう品ぼんの人にんは、 この世せ界かいにして、 一日いちにちより七日しちにちに至いたるまで、 *三さん福業ぷくごうを具ぐ足そくするに、 なほ無む生しょう法忍ぼうにんを証しょうすることあたはざりき。 いかんぞ、 かしこに生うまれて、 法ほうを聞ききてすなはち悟さとらんや。 ゆゑに知しりぬ、 かの国こく土どの長じょう遠おんの時じ剋こくを経へて、 無む生しょう忍にんを悟さとるなり。

既ニ爾ラバ、上々品ノ人ハ、於テ↢此ノ*世界ニ↡一日ヨリ至ルマデニ↢七日ニ↡具↢足スルニ三福業ヲ↡、尚不リキ↠能ハ↠証スルコト↢無生法忍ヲ↡。云何ゾ生レテ↠彼ニ聞キテ↠法ヲ即チ悟ラムヤ。故ニ知リヌ経テ↢彼ノ国土ノ長遠ノ時剋ヲ↡、悟ルナリ↢無*生忍ヲ↡。

^しかも、 かしこに約やくして、 すなはち悟さとると名なづくるも、 ここに望のぞむれば、 すなはち億千おくせん歳ざいなり。 あるいは上上じょうじょうの人にんは、 かならずこれ*方便ほうべんの後ご心しんの行ぎょう、 円満えんまんせるものなるべし。 もししからずは、 諸文しょもん*桙む楯じゅんせん。

然モ約シテ↠彼ニ名クルナリ↢即チ悟ルト↡。望ムレバ↠此ニ即チ億千歳ナリ。或イハ可シ↢上々ノ人ハ必ズ是方便ノ後心ノ*行円満ノ者ナル↡。若シ不ハ↠爾ラ者、諸文桙楯ナリ。

^答こたふ。 いまだ、 かの国くにの多た善ぜんは劣れつなり、 この界さかいの少しょう善ぜんは勝すぐれたりといふことを知しらず。

答フ。未ダ↠知ラ↢彼ノ国ノ多善ハ劣ナリ、此ノ界ノ少善ハ勝レタリトイフコトヲ↡。

 ^問とふ。 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) に説とかく、 「▲↓ここにして広ひろく徳本とくほんを殖うゑ、 恩おんを敷しき恵えを施ほどこし、 道禁どうきんを犯ぼんすることなく、 忍辱にんにくし、 精しょう進じんし、 一心いっしんし、 智慧ちえありて、 うたたあひ教きょう化けして、 善ぜんを立りゅうし、 意こころを正ただしくし、 斎戒さいかい清浄しょうじょうにして一日いちにち一いち夜やすれば、 無む量りょう寿じゅ仏ぶつの国くににありて、 善ぜんをなすこと百ひゃく歳さいするに勝すぐれたり。 ◆所以ゆえんはいかん。 かの仏ぶっ国こく土どは無為むい自じ然ねんにして、 みなもろもろの善ぜんを積つみて毛髪もうはつの悪あくもなし。 ◆ここにして善ぜんを修しゅすること十じゅう日にち十じゅう夜やすれば、 他た方ほうの諸仏しょぶつの国くにのなかにして善ぜんをな1117すこと千歳せんざいするに勝すぐれたり」 と。 以上

問フ。¬双巻経ニ¼説カク、「於テ↠是ニ広ク*殖エ↢徳ノ本ヲ↡、*敷キ↠恩ヲ施シ↠*恵ヲ、勿ク↠犯スルコト↢道禁ヲ↡、忍辱シ精進シ一心シ智*恵アリテ、転タ相教化シテ、立シ↠善ヲ正シクシ↠意ヲ、斎戒清浄ニシテ一日一夜スル、勝レタリ↧在リテ↢无量寿仏ノ国ニ↡為ツクルコト↠善ヲ百歳スルニ↥。所以者何ン。彼ノ*仏国土ハ無為自然ニシテ、皆積ミテ↢衆ノ善ヲ↡无シ↢毛髪之悪モ↡。於テ↠此ニ修スルコト↠善ヲ十日十夜スルハ、勝レタリト↧於テ↢他方ノ諸仏ノ国ノ中ニ↡為ルコト↠善ヲ千*歳スルニハ↥。」 已上

^これその勝しょう劣れつなり。

是其ノ勝劣ナリ。

^答こたふ。 二に界かいの善根ぜんごんを*剋対こくたいするにはしかるべし。 しかも、 値ち仏ぶつの縁えん勝すぐれたれば、 すみやかに悟さとるに失とがなし。 あるいは↑この ¬経きょう¼ (大経・下) は、 ただ修しゅ行ぎょうの難なん易いを顕あらわし、 善根ぜんごんの勝しょう劣れつを顕あらわすにはあらず。 たとへば、 貧賎びんせんなるものの一銭いっせんを施せするをば、 称しょう美みすべしといへども、 しかも衆しゅ事じを弁べんぜず、 富貴ふきの千金せんきんを捨すつるは称しょうすべからずといへども、 しかもよく万まん事じを弁べんずるがごとし。 二に界かいの修しゅ行ぎょうもまたかくのごとし。

答フ。二界ノ善根ヲ剋対スルニハ可シ↠爾ル。然モ値仏ノ縁勝レタレバ、速ニ悟ルニ無シ↠失。或イハ此ノ¬経ハ¼但顕スナリ↢修行ノ難易ヲ↡。非ズ↠顕スニハ↢善根ノ勝劣ヲ↡。譬ヘバ如シ↧貧賎ナルモノ施スルヲバ↢一銭ヲ↡雖モ↠可シト↢称美ス↡、而モ不↠*弁ゼ↢衆事ヲ↡、富貴ノ捨ツルハ↢千金ヲ↡雖モ↠不ト↠可カラ↠称ス、而モ能ク*弁ズルガ↦万事ヲ↥。二界ノ修行モ亦復如シ↠是クノ。

^¬*金剛こんごう般若はんにゃ経きょう¼ (意) にのたまへるがごとし。 「*仏ぶっ世せにして信しん解げするをば、 いまだ勝すぐれたりとなすに足たらず。 滅めつ後ごをば勝すぐれたりとなす」 と。

如シ↢¬金剛般若経ニ¼云ヘルガ↡。「仏世ニシテ信解スルヲバ未ダ↠足ラ↠為ルニ↠勝レタリト。滅後ノヲバ為スト↠勝レタリト。」

^あるいは余よの義ぎあり。 *委い曲きょくすることあたはず。

或イハ有リ↢余ノ義↡。不↠能ハ↢委曲スルニ↡。

 ^問とふ。 娑しゃ婆ばの行ぎょう因いんに随したがひて、 極楽ごくらくの階かい位いに別べつあるがごとく、 所感しょかんの福報ふくほうもまた別べつありや。

問フ。如ク↧随ヒテ↢娑婆ノ行因ニ↡極楽ノ階位ニ有ルガ↞別、所感ノ福報モ亦有リ↠別耶1207。

^答こたふ。 *大たい都とは別べつなきも、 *細分さいぶんは差しゃあり。

答フ。大都ハ無シ↠別。細分ハ有リナム↠差。

^¬*陀羅尼だらに集じっ経きょう¼ の第だい二ににのたまふがごとし。 「もし人ひと、 香こう華げ・衣え食じき等とうをもつて供く養ようせざるものは、 かの浄じょう土どに生うまれたりといへども、 しかも香こう華げ・衣え食じき等とうの種々しゅじゅの供く養ようの報ほうを得えず」 と。 この文もんは、 ▲かの仏ぶつの本願ほんがんに違たがへり。 さらにこれを思し釈しゃくせよ。

如シ↢¬陀羅尼集経ノ¼第二ニ云フガ↡。「若シ人不ル↧以テ↢香花・衣食等ヲ↡供養セ↥者ハ、雖モ↠生レタリト↢彼ノ浄土ニ↡、而モ不トイヘリ↠得↢香花・衣食等ノ種々ノ供養之報ヲ↡。」*此ノ文ハ*違ヘリ↢彼ノ仏ノ本願ニ↡。更ニ思↢*釈セヨ之ヲ↡。

^*玄一げんいち師し・*因いん法ほっ師し、 同おなじくいはく、 「*実じつに約やくして論ろんずれば、 また勝しょう劣れつあり。 しかもその状かたち相そう似じせるがゆゑに1118好醜こうしゅなしと説とく」 と。

*玄一師・因法師同ジク云ク、「約シテ↠実ニ而モ論ズレバ、亦有リ↢勝劣↡。然モ其ノ状相似セルガ故ニ説クト↠無シト↢好醜↡。」

 ^問とふ。 極楽ごくらく世せ界かいは、 ここを去さることいくばくぞ。

▼問フ。極楽世界ハ去ルコト↠此ヲ幾処イクバクゾ。

^答こたふ。 ¬*経きょう¼ にのたまはく、 「▲ここより西方さいほうに、 十じゅう万億まんおくの仏ぶつ土どを過すぎて極楽ごくらく世せ界かいあり」 と。

◆答フ。¬経ニ¼云ク、「従リ↠此西方ニ過ギテ↢十万億ノ仏土ヲ↡有リト↢極楽世界↡。」

^ある ¬経きょう¼ (称讃浄土経) にのたまはく、 「▲これより西方さいほうに、 この世せ界かいを去さること百ひゃく千せん倶く胝てい那由なゆ他たの仏ぶつ土どを過すぎて仏ぶつの世せ界かいあり。 名なづけて極楽ごくらくといへり」 と。

◆有ル¬経ニ¼云ク、「於リ↠是西方ニ去ルコト↢此ノ世界ヲ↡過ギテ↢百千倶胝那庾多ノ仏土ヲ↡有リ↢仏ノ世界↡。名ケテ曰リト↢極楽ト↡。」

 ^問とふ。 二にの経きょう、 なんがゆゑぞ不ふ同どうなる。

◆問フ。二ノ経何ガ故ゾ不同ナル。

^答こたふ。 ¬論ろん¼ (浄土論) の*智ち光こうの ¬疏しょ¼ の意こころにいはく、 「倶く胝ていといふは、 ここには億おくとなす。 那由なゆ他たといふは、 この間けんの垓がいの数かずに当あたれり。 世せ俗ぞくにいはく、 十じゅうの千せんを万まんといひ、 十じゅう万まんを億おくといひ、 十じゅう億おくを兆ちょうといひ、 十じっ兆ちょうを経けいといひ、 十じっ経けいを垓がいといふ。 垓がいはなほこれ大数だいしゅなり。 百ひゃく千せん倶く胝ていはすなはち十じゅう万億まんおくなり。 億おくに四しの位くらいあり。 一いちには十じゅう万まん、 二にには百万ひゃくまん、 三さんには千万せんまん、 四しには万万まんまんなり。 いま億おくといふはすなはちこれ万万まんまんなり。 この義ぎを顕あらわさんがために那由なゆ他たを挙あぐ」 と。 以上

◆答フ。¬論ノ¼智光ノ¬疏ノ¼意ノ云ク、「言フ↢倶胝ト↡者、此ニハ為ス↠億ト也。那*庾多トイフ者、当レリ↢此ノ間ノ*欬ノ数ニ↡也。世俗ニ言ク、十ノ千ヲ曰フ↠万ト。十万ヲ曰フ↠億ト。十億ヲ曰フ↠兆ト。十兆ヲ曰フ↠*経ト。十*経ヲ曰フ↠*欬ト。*欬ハ猶是大数也。百千倶胝ハ即チ十万億ナリ。億ニ有リ↢四ノ位↡。一ニ者十万、二ニ者百万、三ニ者千万、四ニ者万々ナリ。今言フ↠億ト者即チ是万々ナリ。為ニ↠顕サムガ↢此ノ義ヲ↡挙グト↢那*庾多ヲ↡。」 已上

^この釈しゃく思おもふべし。

此ノ釈可シ↠思フ。

 ^問とふ。 かの仏ぶつの*所しょ化けはただ極楽ごくらくとやせん、 また余よありとやせん。

問フ。彼ノ仏ノ所化ハ為ム↢唯極楽トヤ↡、為ム↢亦有リトヤ↟余。

^答こたふ。 ¬大論だいろん¼ (*大智度論) にいはく、 「阿あ弥陀みだ仏ぶつにもまた厳ごん浄じょう・不ふ厳ごん浄じょうの土どあること、 *釈しゃ迦か文もんのごとし」 と。

答フ。¬大論ニ¼云ク、「阿弥陀仏ニモ亦有ルコト↢厳浄・不厳浄ノ土↡如シト↢釈迦*文ノ↡。」

 ^1119問とふ。 なんらかこれなるや。

問フ。何等カ是ナル耶。

^答こたふ。 極楽ごくらく世せ界かいはすなはちこれ浄じょう土どなり。 しかも、 その ˆ阿あ弥陀みだ仏ぶつのˇ 穢土えどはいまだいづれの処ところなるかを知しらず。 ただし道どう綽しゃく等とうの諸しょ師し、 ¬鼓く音おん声じょう経きょう¼ の所説しょせつの国こく土どをもつてかの穢土えどとなす。

答フ。極楽世界ハ即チ是浄土ナリ。然モ其ノ穢土ハ未ダ↠知ラ↢何レノ処ト↡。但シ道綽等ノ諸師以テ↢¬鼓音声経ノ¼所説ノ国土ヲ↡為ス↢彼ノ穢土ト↡。

^かの ¬経きょう¼ (鼓音声経) にのたまふがごとし。 「▲阿あ弥陀みだ仏ぶつは声しょう聞もんとともなり。 その国くにを号ごうして*清しょう泰たいといふ。 聖じょう王おうの住すむところなり。 その城しろは縦じゅう広こう十じゅう千せん由ゆ旬じゅんなり。 なかにおいて*刹せつ利りの種しゅを充じゅう満まんせり。

如シ↢彼ノ¬経ニ¼云1208フガ↡。「阿弥陀仏ハ与↢声聞↡倶ナリ。其ノ国ヲバ号シテ曰フ↢清泰ト↡。聖王ノ所住ナリ。其ノ城ハ縦*広十千由旬ナリ。於テ↠中ニ充↢満セシメタリ刹利之種ヲ↡。

^◆阿あ弥陀みだ仏ぶつ・如来にょらい・応おう・正しょう遍へん知ちの父ちちを月上がつじょう転輪てんりん聖じょう王おうと名なづく。 その母ははを名なづけて殊しゅ勝しょう妙みょう顔げんといふ。 *子こを月がつ明みょうと名なづく。 *奉事ぶじの弟子でしを無垢むく称しょうと名なづく。 *智慧ちえの弟子でしを名なづけて攬光らんこうといふ。 *神足じんそく精勤しょうごんのものを名なづけて大だい化けといふ。 その時ときの魔ま王おうを名なづけて無む勝しょうといふ。 提だい婆ば達だっ多たあり、 名なづけて寂じゃくといふ。 阿あ弥陀みだ仏ぶつ、 大だい比丘びく六万ろくまんの人ひととともなり」 と。

阿弥陀*仏・如来・応・正遍知ノ父ヲバ名ク↢月上転輪聖王ト↡。其ノ母ヲバ名ケテ曰フ↢殊勝妙顔ト↡。子ヲバ名ク↢月明ト↡。奉事ノ弟子ヲバ名ク↢無垢称ト↡。智慧ノ弟子ヲバ*名ケテ曰フ↢攬光ト↡。神足精勤ノモノヲバ名ケテ曰フ↢大化ト↡。爾ノ時ノ魔王ヲバ名ケテ曰フ↢無勝ト↡。有リ↢提婆達多↡、名ケテ曰フ↢*寂ト↡。阿弥陀仏与↢大比丘六万ノ人↡*倶ナリトイヘリ。」

 ^問とふ。 かの仏ぶつの所しょ化けは、 ただ極楽ごくらく・清しょう泰たいとの二にの国くにとのみやせん。

問フ。彼ノ仏ノ所化ハ、為ム↢唯極楽・清泰トノ二ノ国トノミヤ↡。

^答こたふ。 教きょう文もんは、 縁えんに随したがひてしばらく一隅いちぐうを挙あぐ。 その実処じっしょを論ろんずれば不可ふか思議しぎなり。

答フ。教文ハ随ヒテ↠縁ニ且ク挙グ↢一*隅ヲ↡。論ズレバ↢其ノ実処ヲ↡不可思議ナリ。

^¬華け厳ごん経ぎょう¼ の偈げにのたまふがごとし。

如シ↢¬華厳経ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「菩ぼ薩さつもろもろの願海がんかいを修しゅ行ぎょうして、 あまねく衆しゅ生じょうの心しんの所欲しょよくに随したがふ。
衆しゅ生じょうの*心しん行ぎょう広ひろくして無む辺へんなれば、 菩ぼ薩さつの国こく土ども十方じっぽうに遍へんせり」 と。

「菩薩修↢行シテ諸ノ願海ヲバ↡普ク随フ↢衆生ノ心ノ所欲ニ↡
衆生ノ心行広クシテ無辺ナレバ菩薩ノ国土モ遍セリト↢十方ニ↡」

^ま1120たのたまはく (華厳経)、

又云ク、

^「如来にょらい出しゅつ現げんしたまひて十方じっぽうに遍へんし、 一々いちいちの塵じんのなかに無む量りょうの土どあり。
そのなかの境きょう界がいまた無む量りょうなるに、 ことごとく無む辺へん無む尽じんの劫こうに住じゅうしたまふ」 と。

「如来出現シタマヒテ遍シタマフ↢十方ノ一々ノ塵ノ中ノ無量ノ土ニ↡
*其ノ中ノ境界亦無量ナルニ悉ク住シタマフト↢無*辺无尽ノ劫ニ↡」

 ^問とふ。 如来にょらいの*施化せけは、 事じ孤ひとり起おこりたまはず。 かならず機き縁えんに対たいす。 なんぞ十方じっぽうに遍へんする。

問フ。如来ノ施化ハ、事不↢孤ヒトリ起リタマハ↡。要ズ対ス↢機縁ニ↡。何ゾ遍スル↢十方ニ↡。

^答こたふ。 広劫こうごうに修しゅ行ぎょうして無む量りょうの衆しゅうを成じょう就じゅしたまへり。 ゆゑにかの機き縁えん、 また十方じっぽうの界さかいに遍へんせり。

答フ。広劫ニ修行シテ成↢*就シタマヘリ無量ノ衆ヲ↡。故ニ彼ノ機縁、亦遍セリ↢十方ノ界ニ↡。

^¬華け厳ごん¼ の偈げにのたまふがごとし。

如シ↢¬華厳ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「往おう昔じゃくに勤修ごんしゅしたまふこと多た劫海こうかいにして、 よく衆しゅ生じょうの深じん重じゅうの障さわりを転てんじたまへり。
ゆゑによく身みを分わかつこと十方じっぽうに遍へんして、 ことごとく菩ぼ提だい樹王じゅおうの下もとに現げんじたまふ」 と。

「往昔ニ勤修シタマフコト多劫海ニシテ能ク転ジタマヘリ↢衆生ノ深重ノ障ヲ↡
故ニ能ク分身遍シテ↢十方ニ↡悉ク現ジタマフト↢菩提樹王ノ下ニ↡」

二 Ⅹ ⅱ 往生階位

【72】^第だい二にに△往おう生じょうの階かい位いといふは、

第二ニ往生ノ階位トイフ者、

・第一問答

^問とふ、 ¬*瑜伽ゆが論ろん¼ (意) にいはく、 「*三さん地じの菩ぼ薩さつ、 まさに浄じょう土どに生うまる」 と。 いま*地じ前ぜんの凡ぼん夫ぶ・声しょう聞もんを勧すすむるに、 なんの意こころかある。

問フ。¬瑜伽論ニ¼云ク、「三地ノ菩薩方ニ生ルト↢浄土ニ↡。」今勧ムルニ↢地前ノ凡夫・声聞ヲ↡有ル↢何ノ意カ↡。

^答こたふ。 浄じょう土どに差別しゃべつあるがゆゑに過とがあることなし。

答フ。浄土ニ差別アルガ故ニ無シ↠有ルコト↠過。

^感かん師し (懐感) の釈しゃく (群疑論・意) にいふがごとし。 「もろもろの経きょう論ろんの文もんに、 浄じょう土どに生しょうずることを説とくに1121、 おのおの一いちの義ぎによれり。 浄じょう土どすでに粗そ妙みょう・勝しょう劣れつあれば、 生しょうずることを得うることもまた上じょう下げ階降かいごうあり」 と。

如シ↢感師ノ釈ニ云1209フガ↡。「諸ノ経論ノ文ニ説クニ↠生ズルコトヲ↢浄土ニ↡、各 ノ拠レリ↢一ノ義ニ↡。浄土既ニ有レバ↢麁妙・勝劣↡、得ルコトモ↠生ズルコトヲ亦有リト↢上下階*降↡。」

^また*道宣どうせん律りっ師しのいはく、 「三さん地じの菩ぼ薩さつ、 はじめて報仏ほうぶつの浄じょう土どを見みる」 と。

又道宣律*師ノ云ク、「三地ノ菩薩始テ見ルト↢報仏ノ浄土ヲ↡。」

・第二問答

 ^問とふ。 たとひ報ほう土どにあらずとも、 *惑業わくごう重おもきもの、 あに浄じょう土どを得えんや。

▼問フ。設ヒ非ズトモ↢報土ニ↡、惑業重キ者豈ニ得ムヤ↢浄土ヲ↡。

^答こたふ。 天台てんだい (智顗) ののたまはく (維摩経略疏・意)、 「無む量りょう寿じゅの国くには果か報ほう殊しゅ勝しょうなりといへども、 臨りん終じゅうの時ときに懴さん悔げし念仏ねんぶつすれば、 *業ごっ障しょうすなはち転てんじて、 すなはち往おう生じょうを得う。 惑染わくぜんを具ぐせりといへども、 願力がんりきをもつて心しんを持たもちて、 また ˆ浄じょう土どにˇ 居こすることを得う」 と。

◆答フ。天臺ノ云ク、「無量*寿ノ国ハ雖モ↢果報殊勝ナリト↡、臨終之時ニ懴悔シ念仏スレバ、業障便チ転ジテ即チ得↢往生ヲ↡。雖モ↠具セリト↢惑染ヲ↡、願力ヲモテ持チテ↠心ヲ亦得ト↠居スルコトヲ也。」

・第三問答

 ^問とふ。 もし凡ぼん夫ぶまた往おう生じょうすることを得うと許ゆるさば、 ¬弥み勒ろく問もん経きょう¼ をいかんが通つう会えせん。 ¬*経きょう¼ (同) にのたまはく、 「仏ぶつを念ねんずるは凡ぼん愚ぐの念ねんにあらず。 *結けっ使しを雑ぞうせずして、 弥陀みだ仏国ぶっこくに生うまるることを得う」 と。

問フ。若シ許サバ↣凡夫亦得ト↢往生スルコトヲ↡、¬弥勒問経¼ヲ如何ガ通会セム。¬経ニ¼云ク、「念ズル↠仏ヲ者非ズ↢凡愚ノ念ニ↡。不シテ↠雑セ↢結使ヲ↡、得ト↠生ルルコトヲ↢弥陀仏*国ニ↡。」

^答こたふ。 ¬*西方さいほう要決ようけつ¼ に釈しゃくしていはく、 「娑しゃ婆ばは苦くなりと知しりて永ながく*染界ぜんかいを辞じするは、 すなはち*薄浅はくせんの汎はんにあらず。 *当来とうらいに仏ぶつに作なりて、 意こころもつぱら広ひろく、 法界ほうかいの衆しゅ生じょうを度どせんとす。 この勝しょう解げあるがゆゑに愚ぐならず。 正しょう念ねんする時ときに結けっ使し*眠伏めんぶくす。 ゆゑに結けっ使しの念ねんを雑まじへずといふ」 と。 略抄

答フ。¬西方要決ニ¼釈シテ云ク、「知リテ↢娑婆ハ苦ナリト↡永ク辞スレバ↢染界ヲ↡、*即チ非ズ↢薄浅ノ*汎ニ↡。当来ニ作ラムトイヒ↠仏ニ、意ヲモテ専ニス、広ク度セムトイフ↢法界ノ衆生ヲ↡、有ルガ↢*此ノ勝解↡故ニ非↠愚ナラ也。正念スル時ニ結使眠伏ス。故ニ言フト↢不雑結使念ト↡也。」略抄

^意こころのいはく、 凡ぼん夫ぶの行ぎょう人にんの、 この徳とくを具ぐせるなり。

意ノ云ク、凡夫ノ行人ノ具セル↢此ノ*徳ヲ↡也。

・第四問答

 ^1122問とふ。 かの国くにの衆しゅ生じょうはみな不ふ退転たいてんなり。 あきらかに知しりぬ、 これ凡ぼん夫ぶの生処しょうじょにあらずといふことを。

問フ。彼ノ国ノ衆生ハ皆不退転ナリ。明カニ知リヌ非ズトイフコトヲ↢是凡夫ノ生処ニ↡。

^答こたふ。 いふところの不ふ退たいとは、 かならずしもこれ聖しょうの徳とくにあらじ。

答フ。所ノ↠言フ不退ト者非ジ↢必ズシモ是聖ノ徳ニ↡。

^¬要決ようけつ¼ (西方要決) にいふがごとし。 「いま不ふ退たいを明あかすに、 その四し種しゅあり。 ¬*十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ¼ にいはく、

如シ↢¬要決ニ¼云フガ↡。「今明スニ↢不退ヲ↡、有リ↢其ノ四種↡。¬十住毘婆*娑ニ¼云ク、

^ª一いちには位い不ふ退たい、 すなはち因いんを修しゅすること万劫まんごうありて、 また、 *悪律あくりつ儀ぎの行ぎょうに退たい堕だし生しょう死じに流る転てんせざるなり。

一ニハ位不退、即チ修スルコト↠因ヲ万劫アリテ、不ルナリ↧復退↢堕シ悪律儀ノ行ニ↡流↦転セ生死ニ↥。

^二にには行ぎょう不ふ退たい、 すでに初しょ地じを得えて、 利他りたの行ぎょう退たいせざるなり。

二ニハ行不退、已ニ得テ↢初地ヲ↡利他ノ行不ルナリ↠退セ。

^三さんには念ねん不ふ退たい、 *八はち地じ以去いこは無む功く用ゆうにして、 意こころに自じ在ざいを得うるがゆゑに。

三ニハ念不退、八地已去ノ無功用ノ意ニ得タルガ↢自在ヲ↡故ニ。

^四しには処しょ不ふ退たい、 文もん証しょうなしといへども、 理りに約やくしてもつて成じょうず。 いかんとならば、 天てんのなかに果かを得うれば、 すなはち不ふ退たいを得うるがごとく、 浄じょう土どまたしかなり。 命いのち長ながくして病やまいなく、 勝すぐれたる侶ともと提携ていけいし、 純正じゅんしょうにして邪じゃなく、 ただ浄じょうにして染ぜんなく、 つねに聖しょう尊そんに事つかへまつる、 この五ごの縁えんによりてその処ところに退しりぞくことなしº」 と。 以上略抄

四ニハ▼処不退、雖モ↠無シト↢文証↡、約シテ↠理ニ以テ成ズ。何トナラバ者、如ク↢天ノ中ノ得レバ↠果ヲ、即チ得ルガ↟不コトヲ↠退セ、浄土亦爾ナリ。命長クシテ無ク↠病、勝レタル侶ト提携シ、純1210正ニシテ无ク↠邪、唯浄ニシテ無ク↠染、恒ニ事ツカヘマツル↢聖尊ニ↡、由リテ↢此ノ五ノ縁ニ↡其ノ処ニ無シト↠退クコト。」 已上略抄

・第五問答

 ^問とふ。 九く品ぼんの階かい位い、 異解いげ不ふ同どうなり。

問フ。九品ノ階位、異解不同ナリ。

^*遠おん法ほっ師し (浄影寺慧遠) のいふがごとし。 「▲上じょうが上生じょうしょうは*四し・五ご・六ろく地じなり。 ▲上じょうが中生ちゅうしょうは*初しょ・二に・三さん地じなり。 ▲上じょうが下げ生しょうは*地じ前ぜんの三さん十じっ心しんなり」 と。

如シ↢遠法師ノ云フガ↡。「上ガ上生ハ四・五・六地ナリ。上ガ中生ハ初・二・三地ナリ。上ガ下生ハ地前ノ卅心也ト。」

^*力りき法ほっ師しのいはく、 「上上じょうじょうは*行ぎょう・向こうなり、 上中じょうちゅうは*十じゅう解げなり、 上じょう下げは十じっ信しんなり」 と。

力法師ノ云ク、「上々ハ行・向ナリ、上中ハ*十解ナリ、上下ハ十信ナリト。」

^*基師きしのいはく、 「上上じょうじょうは十じゅう回え向こう、 上中じょうちゅうは*解げ行ぎょうなり1123、 上じょう下げは十じっ信しんなり」 と。

基師ノ云ク、「上々ハ十廻向、上中ハ解・行ナリ、上下ハ十信ナリト。」

^あるがいはく、 「上上じょうじょうは十住じゅうじゅうの初心しょしんなり、 上中じょうちゅうは十じっ信しんの後ご心しんなり、 上じょう下げは十じっ信しんの初しょ位いなり」 と。

有ルガ云ク、「上々ハ十住ノ初心ナリ、上中ハ十信ノ後心ナリ、上下ハ十信ノ初位ナリト。」

^あるがいはく、 「上上じょうじょうは↓十じっ信しんおよび以い前ぜんの、 よく三さん心しんを発おこして、 よく*三さん行ぎょうを修しゅするものなり。 上中じょうちゅう・上じょう下げは、 ただ十じっ信しん以い前ぜんの、 菩ぼ提心だいしんを発おこして、 善ぜんを修しゅする凡ぼん夫ぶを取とる。 起き行ぎょうの浅深せんじんにより、 もつて二に品ほんを分わかつ」 と。

有ルガ云ク、「上々ハ十信及ビ以前ニ能ク発シテ↢三ノ心ヲ↡、能ク修スル↢三行ヲ↡者也。上中・上下ハ、唯取ル↧十信以前ニ発シテ↢菩提心ヲ↡修スル↠善ヲ凡夫ヲ↥。起行ノ浅深ニヨリ以テ分ツト↢*二品ヲ↡也。」

^諸しょ師しの所判しょはんの不ふ同どうなる所以ゆえんは、 無む生しょう忍にんの位くらいの不ふ同どうなるをもつてのゆゑなりと。 *¬*仁王にんのう経きょう¼ には、 無む生しょう忍にんは七しち・八はち・九く地じにあり。 諸論しょろんには、 初しょ地じにあるいは*忍にん位いにあり。 ¬*本業ほんごう瓔珞ようらく経きょう¼ には、 十住じゅうじゅうにあり。 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ には、 十じっ信しんにあり。 ¬占察せんざつ経きょう¼ には、 *一いち行ぎょう三昧ざんまいを修しゅして相そう似じの無む生しょう法忍ぼうにんを得うるものを説とけり。 ゆゑに諸しょ師しおのおの一いちの義ぎによるなり。

所↢以諸師ノ所判ノ不同ナル↡者、以テノ↢無生忍ノ位ノ不同ナルヲ↡故ナリ。¬仁王経ニハ¼无生忍ハ在リ↢七・八・九地ニ↡。諸論ニハ在リ↢初地ニ或イハ忍位ニ↡。¬本業瓔珞経ニハ¼在リ↢十住ニ↡。¬花厳経ニハ¼在リ↢十信ニ↡。¬占察経ニハ¼説ケリ↧修シテ↢一行三昧ヲ↡得ル↢相似ノ無生法忍ヲ↡者ヲ↥也。故ニ諸師各 ノ拠ル↢一ノ義ニ↡也。

^中ちゅう品ぼんの三さん生しょうは、 遠おん (浄影寺慧遠) のいはく、 「▲中上ちゅうじょうはこれ*前ぜん三さん果かなり、 ▲中中ちゅうちゅうはこれ*七しち方便ほうべんなり、 ▲中ちゅう下げはこれ*解げ脱だつ分ぶんの善ぜんを種うゑたる人ひとなり」 と。 力りき法ほっ師しこれに同おなじ。

中品ノ三生ハ、遠ノ云ク、「中上ハ是前三果ナリ、中々ハ是七方便ナリ、中下ハ是種ヱタル↢解脱分ノ善ヲ↡人ナリト。」力法師同ジ↠之ニ。

^基き法ほっ師しのいはく、 「中上ちゅうじょうは*四し善根ぜんごん、 中中ちゅうちゅうは*三さん賢げん、 中ちゅう下げは*方便ほうべんの前まえの人ひとなり」 と。

基*法師ノ云ク、「中上ハ四善根、中々ハ三賢、中下ハ方便ノ前ノ人ナリト。」

^あるがいはく、 「次ついでのごとく、 *忍にん・頂ちょう・煖なんなり」 と。

有ルガ云ク、「如ク↠次デノ忍・頂・*煖ナリト。」

^あるがいはく、 「*三さん生しょうはならびにこれ解げ脱だつ分ぶんの善根ぜんごんを種うゑたる人ひとなり」 と。

有ルガ云ク、「三生ハ並ニ是種ヱタル↢解脱分ノ善根ヲ↡人也ト。」

^以い上じょう六品ろくほんにまた余よの釈しゃくあり。 感かん禅ぜん師じ (懐感) の ¬論ろん¼ (群疑論)、 龍興りゅうこうの ¬記き¼ (観無量寿経記) 等とうに見みえたり。

已上六品ニ亦有リ↢余ノ釈↡。見エタリ↢*感禅師ノ¬論¼、龍興ノ¬記¼等ニ↡

^下げ1124品ぼんの三さん生しょうは別べつの階かい位いなし。 ただこれ具ぐ縛ばく造悪ぞうあくの人にんなり。

下品ノ三生ハ无シ↢別ノ階位↡。但是具縛造悪ノ人也。

^明あきらけし、 往おう生じょうの人にんはその位くらい限かぎりあり。 いかんぞ、 なほこれわれらが分ぶんなりとは知しるや。

*明ケシ、往生ノ人ハ其ノ位有リ↠限リ。寧イカンゾ知ル↢猶是我等ガ分ナリトハ↡耶。

^答こたふ。 上じょう品ぼんの人にん、 階かい位いたとひ深ふかくとも、 下げ品ぼんの三さん生しょう、 あにわれらが分ぶんにあらざらんや。 いはんや、 ↑かの後のちの釈しゃくに、 すでに十じっ信しん以い前ぜんの凡ぼん夫ぶを取とりて上じょう品ぼんの三さんとなせるをや。

答フ。上品之人1211階位設ヒ深クトモ、下品ノ三生豈ニ非ザラム↢我等ガ*分ニ↡耶。況ヤ彼ノ後ノ釈ニ、既ニ取リテ↢十信以前ノ凡夫ヲ↡為セルヲヤ↢上品ノ三ト↡。

^また ¬観かん経ぎょう¼ の善導ぜんどう禅ぜん師じの 「玄げん義ぎ」 (*玄義分) に、 大だい小乗しょうじょうの*方便ほうべん以い前ぜんの凡ぼん夫ぶをもつて九く品ぼんの位くらいを判はんじて、 諸しょ師しの所判しょはんの深高じんこうなることを許ゆるさず。 また経きょう論ろんは、 多おおく文もんによりて義ぎを判はんず。 いまの ¬経きょう¼ (観経) の所説しょせつの上じょうの三さん品ぼんの業ごうを、 なんぞかならずしも執しゅうして深じん位いの行ぎょうとなさんや。

又¬観経ノ¼善*導禅師ノ「玄義ニ」、以テ↢大小乗ノ方便以前ノ凡夫ヲ↡判ジテ↢九品ノ位ヲ↡、不↠許サ↢諸師ノ所判ノ深高ナルコトヲ↡。又経論ハ多ク依リテ↠文ニ判ズ↠義ヲ。今ノ¬経ノ¼所説ノ上ノ*三品ノ業ヲ、何ゾ必ズシモ執シテ為サム↢深位ノ行ト↡耶。

・第六問答

 ^問とふ。 もししからば、 かしこに生しょうじて、 早はやく無む生しょう法忍ぼうにんを悟さとるべからず。

問フ。若シ爾ラバ生ジテ↠彼ニ不↠応カラ↣早ク悟ル↢無生法忍ヲ↡。

^答こたふ。 天台てんだいには二にの無む生しょう忍にんの位くらいあり。 もし*別べっ教きょうの人にんならば、 歴りゃく劫こう修しゅ行ぎょうして無む生しょう忍にんを悟さとり、 もし*円えん教ぎょうの人にんならば、 乃ない至し、 悪趣あくしゅの身しんにしてまた頓とんに証しょうするものあり。 穢土えどなほしかなり、 いかにいはんや浄じょう土どをや。 かの土どの諸しょ事じをば、 余よ処しょに例れいすることなかれ。

答フ。天臺ニハ有リ↢二ノ無生忍ノ位↡。若シハ別教ノ人ハ歴劫修行シテ悟ル↢无生忍ヲ↡。若シハ円教ノ人ハ、乃至*悪趣ノ身ニシテ亦有リ↢頓ニ証スル者↡。穢土尚シ爾ナリ。何ニ況ヤ浄土ヲヤ。彼ノ土ノ諸事ヲバ莫レ↠例スルコト↢余処ニ↡。

^いづれの処ところにか、 一切いっさいの凡ぼん夫ぶ、 いまだその位くらいに至いたらざるに、 つひに退たい堕だすることなく、 いづれの処ところにか、 一切いっさいの凡ぼん夫ぶ、 ことごとく五ご神通じんずうを得えて妙みょう用ゆう無礙むげならんや。 証しょう果かの遅ち速そく、 例れいしてまたしかるべし。

何レノ処ノ一切ノ凡夫カ、未ダルニ↠至ラ↢其ノ位ニ↡、終ニ無キヤ↢退堕スルコト↡。何レノ処ノ一切ノ凡夫カ、悉ク得テ↢五神通ヲ↡妙用无礙ナル耶。証果ノ遅速、例シテ亦可シ↠然ル。

・第七問答

 ^1125問とふ。 上じょう品ぼん生しょうの人にんの、 得益とくやくの*早晩そうばんは一向いっこうにしかるか。

問フ。上品生ノ人ノ得益ノ早晩ハ、一向ニ爾ル耶。

^答こたふ。 ¬経きょう¼ (観経) のなかにはしばらく一類いちるいを挙あぐるなり。

答フ。¬経ノ¼中ニハ且ク挙グルナリ↢一類ヲ↡。

^ゆゑに ˆ浄じょう影よう寺じˇ 慧え遠おん和か尚しょうの ¬観かん経ぎょうの義記ぎき¼ (観経義疏) にいはく、 「九く品ぼんの人にんの、 かの国くにに生うまれをはりて、 益やくを得うる劫数こうしゅは、 ↓勝すぐれたるによりて説とく。 理りまたこれに過すぎたるものもあるべし」 と。 取意

故ニ*恵遠和尚ノ¬観経ノ義記ニ¼云ク、「九品ノ人ノ生レ↢彼ノ国ニ↡已リテ得ル↠益ヲ之劫数ハ、依リテ↠勝レタルニ而説ク。理亦有ルベシト↢過ギタル↠之ニ者モ↡。」取*意

^いまいはく、 ひろく九く品ぼんを論ろんぜば、 あるいはまた少しょう分ぶんこれよりすみやかなるものもあるべし。

今謂ク汎ソ論ゼバ↢九品ヲ↡、或イハ復可シ↠有ル↧少分速ナル↢於此ヨリ↡者モ↥。

・第八問答

 ^問とふ。 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経) のなかに、 また弥み勒ろく等とうのごとき、 もろもろの大だい菩ぼ薩さつの、 まさに極楽ごくらくに生しょうずべきあり。 ゆゑに知しりぬ、 ¬経きょう¼ (観経) のなかの九く品ぼんの得益とくやくは劣れつなるによりてしかも説とけるなり。 いかんぞ 「↑勝すぐれたるによる」 とはいふや。

問フ。¬双巻経ノ¼中ニ、亦有リ↧如キ↢弥勒等ノ↡諸ノ大菩薩ノ当ニキ↞生ズ↢極楽ニ↡。故ニ知リヌ¬経ノ¼中ノ九品ノ得益ハ依リテ↠劣ナルニ而モ説ケルナリ。何ゾ言フ↠依レルトハ↠勝レタルニ耶。

^答こたふ。 かの国くにに生うまれてはじめて無む生しょうを悟さとる、 前ぜん後ご・早晩そうばんに約やくして、 これを 「勝すぐれたるによる」 といふなり。 さらにかの上じょう位いの大だい士じをば論ろんぜず。 しかも、 かの大だい士じ、 九く品ぼんのなかにおいて摂しょうと不摂ふしょうとを、 別べつに思し択ちゃくすべし。

答フ。*約シテ↧生ジテ↢彼ノ国ニ↡始テ悟ル↢無生ヲ↡前後ノ早晩ニ↥、謂フナリ↢之ヲ依ルト↟勝レタルニ。更ニ不↠論ゼ↢彼ノ上位ノ大士ヲバ↡。然モ彼ノ大士於テ↢九品ノ中ニ↡摂ト与ヲ↢不摂↡別ニ応シ↢思択ス↡。

・第九問答

 ^問とふ。 もし凡ぼん下げの輩やからもまた往おう生じょうすることを得えば、 いかんぞ、 近代ごんだい、 かの国こく土どにおいて求もとむるものは千万せんまんなるも、 得うることは一いち二にもなきや。

▼問フ。若シ凡下ノ輩ハ亦得バ↢往生1212スルコトヲ↡。云何ゾ、近代於テ↢彼ノ国土ニ↡求ムル者ハ千万ナリ。得ルコトハ無キヤ↢一二モ↡。

^答こたふ。 綽しゃく和か尚しょう (道綽) のいはく (安楽集・上意)、 「▲信心しんじん深ふかからずして、 存ぞんぜるがごとく、 亡もうぜる1126がごときゆゑに。 信心しんじん一いちならずして、 決けつ定じょうせざるがゆゑに。 信心しんじん相続そうぞくせずして、 余よ念ねん間へだつるがゆゑに。 この三さん、 相応そうおうせざるものは、 往おう生じょうすることあたはざるなり。 ▲もし三さん心しんを具ぐして往おう生じょうせずといはば、 この処ことわりあることなからん」 と。

◆答フ。綽和尚ノ云ク、「信心不シテ↠深カラ、若ク↠存ゼルガ若キ↠亡ゼルガ故ニ。信心不シテ↠一ナラ、不ルガ↢決定セ↡故ニ。信心不シテ↢相続セ↡、余念間マジハレルガ故ニ。此ノ三不ル↢相応セ↡者ハ不ルナリ↠能ハ↢往生スルコト↡。若シ具シテ↢三心ヲ↡不トイハバ↢往生セ↡者、无ケムト↠有ルコト↢是ノ処コトワリ↡。」

^導どう和か尚しょう (善導) のいはく (礼讃)、 「▲もしよく↓上かみのごとく念々ねんねん相続そうぞくして命いのちを畢おふるを期ごとなすものは、 十じゅうはすなはち十じゅう生しょうじ、 百ひゃくはすなはち百ひゃく生しょうず。 ▲もし専せんを捨すてて雑業ぞうごうを修しゅせんと欲ほっするものは、 百ひゃくにして時ときに希まれに一いち二にを得え、 千せんにして時ときに希まれに三さん五ごを得う」 と。 「↑上かみのごとく」 といふは、 礼らい・讃さん等とうの五ご念門ねんもん、 至し誠じょう等とうの三さん心しん、 長じょう時じ等とうの四し修しゅを指さすなり。

▼導和尚ノ云ク、「若シ能ク如ク↠上ノ念々相続シテ畢フルヲ↠命ヲ為ル↠期ト者ハ、十ハ即チ十生ス、百ハ即チ百生ス。若シ欲セム↣捨テテ↠専スルコトヲ修セムト↢雑業ヲ↡者ハ、百ニシテ時ニ希ニ得ト↢一二ヲ↡。千ニシテ時ニ希ニ得ト↢三五ヲ↡。」言フ↢如上ト↡者指ス↢礼・讃等ノ五念門、至誠等ノ三心、長時等ノ四修ヲ↡也

・第十問答

 ^問とふ。 もしかならず命いのちを畢おふるを期ごとなさば、 いかんぞ、 感かん和か尚しょう (懐感) の、 「長じょう時じ・短たん時じ、 多た修しゅ・少しょう修しゅ、 みな往おう生じょうすることを得う」 (群疑論) といへるや。

問フ。若シ*必ズ畢スルヲ↠命ヲ為サバ↠期ト者、如何ゾ感和尚ノ云ヘル↣「長時・短時、多修・少修、皆得ト↢往生スルコトヲ↡」耶。

^答こたふ。 *業類ごうるい一いちにあらざるがゆゑに、 二にの師しともに過とがなし。 しかも、 命いのちを畢おふるを期ごとなして、 勤修ごんしゅして怠おこたることなくは、 業ごうをして決けつ定じょうせしむるに、 これを*張ちょう本ほんとなす。

答フ。業類非ザルガ↠一ニ故ニ二ノ師倶ニ無シ↠過。然モ畢フルヲ↠命ヲ為シテ↠期ト、勤修シテ无クシテ↠怠スルコト、令ムルニ↢業ヲシテ決定セ↡、是ヲ為ス↢張本ト↡。

・第十一問答

 ^▼問とふ。 *¬*菩ぼ薩さつ処胎しょたい経きょう¼ の第だい二にに説とかく、 「西方さいほうにこの閻えん浮ぶ提だいを去さること十じゅう二に億おく那由なゆ他たして懈け慢まん界がいあり。 国こく土ど快け楽らくにして、 *倡しょう妓ぎ楽がくを作つくり、 衣被えび・服飾ぶくじき・香こう華げを1127もつて荘しょう厳ごんせり。 七宝しっぽう転開てんかいの床ゆかあり。 目めを挙あげて東ひがしを視みれば、 宝ほう床じょう随したがひて転てんず。 北きたを視み、 西にしを視み、 南みなみを視みるにもまたかくのごとく転てんず。

▼問フ。¬菩薩処胎経ノ¼第二ニ説カク、「西方ニ去レルコト↢此ノ閻浮提ヲ↡十二億那由他シテ有リ↢▼懈慢界↡。▼国土快楽ナリ。作リ↢*倡妓楽ヲ↡、衣被・服飾・香花ヲモテ荘厳セリ。七宝転開ノ床アリ。挙ゲテ↠目ヲ東ヲ視レバ、宝床随ヒテ転ズ。北ヲ視西ヲ視南ヲ視ルニモ亦如ク↠是クノ転ズ。

^前ぜん後ごに▼意こころを発おこせる衆しゅ生じょうの、 阿あ弥陀みだ仏国ぶっこくに生うまれんと欲ほっするもの、 みな深ふかく懈け慢まん国こく土どに着じゃくして、 前進ぜんしんして、 阿あ弥陀みだ国こくに生うまるることあたはず。 億おく千万せんまんの衆しゅう、 時ときに一人いちにんありてよく阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに生しょうず」 と。 以上

▼前後ニ発セル↠意ヲ衆生ノ欲スル↠生レムト↢阿弥陀仏国ニ↡者、皆深ク著シテ↢懈慢国土ニ↡、不↠能ハ↣前進シテ生ルルコト↢阿弥*陀国ニ↡。億千万ノ衆、時ニ有リテ↢一人↡能ク生ズト↢阿弥陀仏ノ国ニ↡。」 已上

^◆この ¬経きょう¼ (菩薩処胎経) をもつて准じゅんずるに、 生しょうずることを得うべきこと難かたし。

◆以テ↢此ノ¬経ヲ¼↡*准ズルニ、難シ↠可キコト↠得↠生ズルコトヲ。

^▼答こたふ。 ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ に、 善導ぜんどう和か尚しょうの*前さきの文もんを引ひきて、 この難なんを釈しゃくして、 またみづから助じょ成じょうしていはく、 「この ¬経きょう¼ (菩薩処胎経) の下しもの文もんにのたまはく、 ªなにをもつてのゆゑに。 みな*懈け慢まんによりて*執しゅう心しん牢ろう固こならずº と。

▼答フ。¬群疑論ニ¼、引キテ↢善導和尚ノ前ノ文ヲ↡而釈セリ↢此ノ難ヲ↡。又自ラ助成シテ云ク、「此ノ¬経ノ¼下ノ文ニ*云ク、何ヲ以テノ故ニ。皆由ルナリト↣懈慢ニシテ執心不ルニ↢牢*固ナラ↡。

^▼ここをもつて知しりぬ、 雑修ざっしゅのものは執しゅう心しん不ふ牢ろうの人にんとなすなり。 ゆゑに懈け慢まん国こくに生しょうず。 もし雑修ざっしゅせずして、 もつぱらにしてこの業ごうを行ぎょうぜば、 これすなはち執しゅう心しん牢ろう固こにして、 さだめて極楽ごくらく国こくに生しょうぜん。 乃至

◆是ヲモテ知リヌ雑修1213之者ヲ為ルナリ↢執心不牢之人ト↡。故ニ生ズ↢懈慢国ニ↡也。若シ不シテ↢雑修セ↡専ニシテ行ズルハ↢此ノ業ヲ↡、此即チ執心牢固ナルナリ、定メテ生ル↢極楽国ニ↡。乃至

^▼また*報ほうの浄じょう土どに生うまるるものはきはめて少すくなし。 *化けの浄じょう土どのなかに生うまるるもの少すくなからず。 ゆゑに経きょうに別べつに説とけり。 実じつには相そう違いせず」 と。 以上

▼又報ノ浄土ニ生ルル者ハ極テ少シ。化ノ浄土ノ中ニ生ルル者不↠少カラ。故ニ経ニ別ニ説ケリ。実ニハ不ト↢相違セ↡也。」 已上

・第十二問答

 ^問とふ。 たとひ三さん心しんを具ぐせずといへども、 命いのちを畢おふることを期ごせずといへども、 かの一ひとたび名みなを聞きくすら、 なほ仏ぶつになることを得う。 いはんやしばらくも称しょう念ねんする1128、 なんぞ*唐捐とうえんならんや。

問フ。設ヒ雖モ↠不ト↠具セ↢三心ヲ↡、雖モ↠不ト↠期セ↠畢フルコトヲ↠命ヲ、彼ノ一タビ聞クスラ↠名ヲ、尚得↠成ルコトヲ↠仏ニ。況ヤ暫モ称念スル、何ゾ唐捐ナラム耶。

^答こたふ。 しばらくは唐捐とうえんなるに似にたれども、 つひには*虚こ設せつならず。

答フ。暫クハ似タレドモ↢唐捐ナルニ↡、終ニハ非↢虚設ナラ↡。

^¬華け厳ごん¼ の偈げに、 経きょうを聞きくものの、 転てん生しょうの時じの益やくを説ときてのたまふがごとし。

如シ↧¬花厳ノ¼偈ニ、説キテ↢聞経者転生ノ時ノ益ヲ↡云フガ↥。

^「もし人ひと、 聞きくに堪任かんにんせるものは、 大海だいかいおよび、
*劫尽こうじんの火ひのなかにありといへども、 かならずこの経きょうを聞きくことを得えん」 と。 「大海だいかい」 とは、 これ竜りゅう界かいなり。

「若シ人堪↢任セルモノハ聞クニ↡雖モ↠在リト↢於大海
及ビ劫尽ノ火ノ中ニ↡必ズ得ント↠聞クコトヲ↢此ノ経ヲ↡」 大海ト者是竜界ナリ

^釈しゃくしていはく (*探玄記・意)、 「余よの業ごうによるがゆゑにかの難処なんしょに生うまる。 *前さきの信しんによるがゆゑにこの*根こん器きを成じょうぜり」 と。 云々

釈シテ云ク、「由ルガ↢余ノ業ニ↡故ニ生ル↢彼ノ難処ニ↡。由ルガ↢前ノ信ニ↡故ニ成ゼリト↢此ノ根器ヲ↡。」云々

^¬華け厳ごん¼ を信しんずるもの、 すでにかくのごとし。 念仏ねんぶつを信しんずるもの、 あにこの益やくなからんや。 かの一いっ生しょうに悪業あくごうを作つくりて、 臨りん終じゅうに善ぜん友ぬに遇あひて、 わづかに十とたび仏ぶつを念ねんじて、 すなはち往おう生じょうすることを得う。 かくのごとき等らの類たぐいは、 多おおくこれ前ぜん世せに、 浄じょう土どを欣ごん求ぐしてかの仏ぶつを念ねんぜるものの、 *宿しゅく善ぜんうちに熟じゅくしていま開発かいほつするのみ。

信ズル↢¬花厳ヲ¼↡者既ニ而如シ↠是クノ。信ゼム↢念仏ヲ↡者豈ニ無カラムヤ↢此ノ益↡。彼ノ一生ニ作リテ↢悪業ヲ↡、臨終ニ遇ヒテ↢善友ニ↡、纔ニ十タビ念ジテ↠仏ヲ、即チ得ル↢往生スルコトヲ↡、如キ↠是クノ等ノ類ハ、多ク是前世ニ欣↢求シテ浄土ヲ↡念ゼル↢彼ノ仏ヲ↡者ノ、宿善内ニ熟シテ今開発スル耳。

^ゆゑに ¬*十じゅう疑ぎ¼ にいはく、 「臨りん終じゅうに善ぜん知ぢ識しきに遇あひて十じゅう念ねん成じょう就じゅするものは、 ならびにこれ宿しゅく善ぜん強こわくして、 善ぜん知ぢ識しきを得えて十じゅう念ねん成じょう就じゅするなり」 と。 云々

故ニ¬十疑ニ¼云ク、「臨終ニ遇ヒテ↢善知識ニ↡十念成*就スル者ハ、並ニ是宿善強コハクシテ、得テ↢善知識ヲ↡十念成*就スルナリトイヘリ。」云々

^感かん師し (懐感) の意こころもまたこれに同おなじ。

感師ノ意モ亦同ジ↠之ニ。

・第十三問答

 ^問とふ。 下下げげ品ぼんの人にん、 もし宿しゅく善ぜんによらば、 十じゅう念ねん生しょうの本願ほんがん (第十八願)、 すなはち名な1129ありて実じつなからん。

問フ。下々品ノ*人若シ依ラバ↢宿善ニ↡、十念生ノ本願即チ有リテ↠名無ケム↠実。

^答こたふ。 たとひ宿しゅく善ぜんありとも、 もし十じゅう念ねんなくは、 さだめて*無む間けんに堕おち、 受じゅ苦く窮きわまりなからん。 明あきらけし、 臨りん終じゅうの十じゅう念ねんこれ往おう生じょうの勝しょう縁えんなり。

答フ。設ヒ有レドモ↢宿善↡、若シ无クハ↢十念↡、定メテ堕チ↢無間ニ↡受苦无ケム↠窮リ。明ケシ、臨終ノ十念是往生ノ勝縁ナリ。

二 Ⅹ ⅲ 往生多少

【73】^第だい三さんに△*往おう生じょうの多た少しょうといふは、

第*三ニ往生ノ多少トイフ者、

^¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下意) にのたまはく、 「▲仏ぶつ、 *弥み勒ろくに告つげたまはく、 ªこの世せ界かいより、 六ろく十じゅう七しち億おくの不ふ退たいの菩ぼ薩さつありて、 かの国くにに往おう生じょうす。 一々いちいちの菩ぼ薩さつは、 すでにかつて無む数しゅの諸仏しょぶつを供く養ようして、 次ついで弥み勒ろくのごとし。 もろもろの小行しょうぎょうの菩ぼ薩さつおよび少しょう功く徳どくを修しゅせるものも、 称しょう計げすべからず。 みなまさに往おう生じょうすべし。

¬双巻経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢弥勒ニ↡、於リ↢此ノ世界↡六十七億1214ノ不退ノ菩薩アリテ往↢生ス彼ノ国ニ↡。一々ノ菩薩ハ、已ニ曽ムカシ供↢養シテ無数ノ諸仏ヲ↡、次ギテ如キナリ↢弥勒ノ↡。諸ノ小行ノ菩薩及ビ修セル↢少功徳ヲ↡者モ、不ル↠可カラ↢称計ス↡、皆当ニシ↢往生ス↡。

^▲他た方ほうの仏ぶつ土どもまたかくのごとし。 ◆その遠おん照しょう仏国ぶっこくの百ひゃく八はち十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆宝蔵ほうぞう仏国ぶっこくの九く十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆無む量りょう意い仏国ぶっこくの二に百ひゃく二に十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆甘かん露味ろみ仏国ぶっこくの二に百ひゃく五ご十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆竜勝りゅうしょう仏国ぶっこくの十じゅう四し億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆勝しょう力りき仏国ぶっこくの万まん四し千せんの菩ぼ薩さつ、 ◆師子しし仏国ぶっこくの五ご百ひゃくの菩ぼ薩さつ、 ◆離垢りく光こう仏国ぶっこくの八はち十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆徳首とくしゅ仏国ぶっこくの六ろく十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆妙みょう徳山とくせん仏国ぶっこくの六ろく十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、 ◆人王にんのう仏国ぶっこくの十じゅう億おくの菩ぼ薩さつ、

他方ノ仏土ノモ亦復如シ↠是クノ。其ノ遠照仏国ノ百八十億ノ菩薩、宝蔵仏国ノ九十億ノ菩薩、无量*意仏国ノ二百廿億ノ菩薩、甘*露味仏国ノ二百五十億ノ菩薩、竜勝仏国ノ十四億ノ菩薩、勝力仏国ノ万四千ノ菩薩、師子仏国ノ五百ノ菩薩、離垢光仏国ノ八十億ノ菩薩、徳首仏国ノ六十億ノ菩薩、妙徳山仏国ノ六十億ノ菩薩、人王仏国ノ十億ノ菩薩、

^◆無む上じょう華け仏国ぶっこくの無む数しゅ不可ふか称しょう計げの不ふ退たいのもろもろの菩ぼ薩さつ、 智慧ちえ勇ゆう猛みょうにして、 すでにかつて無む量りょうの諸仏しょぶつを供く養ようしたてまつり、 七日しちにちのうちに、 すなはちよく百ひゃく千億せんおく劫こうの大だい士じの所修しょしゅの堅けん固ごの法ほうを摂取せっしゅす。 ◆無畏むい仏国ぶっこくの七しち百ひゃく九く十じゅう億おくの大だい菩ぼ薩さつ衆しゅ、 もろもろの小しょう菩ぼ薩さつおよび比丘びく等とうは、 称しょう計げすべからず。 みなまさに往おう生じょうすべし。

無上華仏国ノ无数不可称計ノ不退ノ諸ノ菩薩、智*慧勇猛ニシテ、已ニ曽ムカシ供↢養シタテマツリ无量ノ諸仏ヲ↡、於テ↢七日ノ中ニ↡即チ能ク摂↢取ス百千億劫ノ大士ノ所修ノ堅固之法ヲ↡。無畏仏国ノ七百九十億大ノ菩薩衆、諸ノ小菩薩及ビ比丘等ハ、不ル↠可カラ↢称計ス↡、皆当ニシ↢往生ス↡。

^▲ただこの十じゅう四し仏ぶつの国くに1130のなかのもろもろの菩ぼ薩さつ等とうの、 まさに往おう生じょうすべきのみにあらず。 十方じっぽう世せ界かいの無む量りょうの仏国ぶっこくより、 その往おう生じょうするものもまたかくのごとく、 はなはだ多おおくして無む数しゅなり。 ◆われ、 ただ十方じっぽうの諸仏しょぶつの名みょう号ごうおよび菩ぼ薩さつ・比丘びくのかの国くにに生うまるるものを説とかば、 昼ちゅう夜やにして一劫いっこうすともなほいまだ竟おわることあたはじº」 と。 以上

不ズ↣但此ノ十四仏ノ*国ノ中ノ諸ノ菩薩等ノミ当ニキノミニ↢往生ス↡也。十方*世界ノ无量ノ仏国ヨリ其ノ往生スル者モ亦復如シ↠是クノ。甚ダ多クシテ无数ナリ。我但シ説カバ↧十方ノ諸仏ノ名号及ビ菩薩・比丘ノ生ルル↢彼ノ国ニ↡者ヲ↥、昼夜ニシテ一劫ストモ尚未ダト↠能ハ↠竟ルコト。」 *已上

^この諸仏しょぶつの土どのなかに、 いまの娑しゃ婆ば世せ界かいに少しょう善ぜんを修しゅして、 まさに往おう生じょうすべきものあり。 われら、 いま幸さいわひに釈しゃく尊そんの遺法ゆいほうに遇あひて、 億劫おくこうの時ときに一ひとたびたまたま少しょう善ぜん往おう生じょうの流ながれに預あずかれり。 務いそぎて勤修ごんしゅすべし。 時ときを失うしなふことなかれ。

此ノ諸仏ノ土ノ中ニ、今ノ娑婆世界ニ有リ↧修シテ↢少善ヲ↡当ニキ↢往生ス↡者↥。我等*今幸ニ遇ヒテ↢釈尊ノ*遺法ニ↡、億劫ニ時ニ一タビ*適マ預レリ↢少善往生ノ流トモニ↡。応シ↢務イソギテ勤修ス↡。莫レ↠失フコト↠時ヲ焉。

 ^問とふ。 もし少しょう善根ぜんごんまた往おう生じょうすることを得えば、 いかんぞ、 ¬経きょう¼ (小経) に 「▲少しょう善根ぜんごん福徳ふくとくの因縁いんねんをもつて、 かの国くにに生うまるることを得うべからず」 とはのたまへる。

問フ。若シ少善根亦1215得バ↢往生スルコトヲ↡、如何ゾ¬経ニ¼云ヘル↠「不トハ↠可カラ↧以テ↢少善根・福徳ノ因縁ヲ↡得↞生ルルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。」

^答こたふ。 これに異解いげあり、 繁しげく出いだすことあたはず。 いまわたくしに案あんじていはく、 大だい小しょうは定さだまれることなし。 相待そうたいして名なを得う。 大だい菩ぼ薩さつに望のぞむれば、 これを少しょう善ぜんと名なづくと。 輪りん廻ねの業ごうに望のぞむれば、 これを名なづけて大だいとなす。 このゆゑに、 *二に経きょうの義ぎ、 違い害がいせず。

答フ。此ニ有リ↢異解↡、不↠能ハ↢繁ク出スルコト↡。今私ニ案ジテ云ク、大少ハ无シ↠定マレルコト。相待シテ得↠名ヲ。望メテ↢大菩薩ニ↡名クト↢之ヲ少善ト↡。望ムレバ↢輪廻ノ業ニ↡名ケテ↠之ヲ為ス↠大ト。是ノ故ニ二経ノ義不↢違害セ↡。

二 Ⅹ ⅳ 尋常念相

【74】^第だい四しに△*尋じん常じょうの念相ねんそうを明あかさば、 これに多た種しゅあり。 大おおきに分わかちて四しとなす。

第四ニ明サバ↢尋常ノ念相ヲ↡者、此ニ有リ↢多種↡。大ニ分チテ為ス↠四ト。

^一いちには定じょう業ごう、 いはく、 坐ざ禅ぜん入定にゅうじょうして仏ぶつを観かんずるなり。

一ニハ定業、謂ク坐禅入定シテ観ズルナリ↠仏ヲ。

^二にには散業さんごう、 いはく、 行ぎょう1131住じゅう坐臥ざがに、 散心さんしんに仏ぶつを念ねんずるなり。

二ニハ散業、謂ク行住坐臥ノ散心ニ念ズルナリ↠仏ヲ。

^三さんには有う相そうの業ごう、 いはく、 あるいは相好そうごうを観かんじ、 あるいは名みょう号ごうを念ねんじて、 ひとへに穢土えどを厭いとひて、 もつぱらにして浄じょう土どを求もとむるなり。

三ニハ有相ノ業、謂ク或イハ観ジ↢相好ヲ↡或イハ念ジテ↢名号ヲ↡、偏ニ厭ヒテ↢穢土ヲ↡、専ニシテ求ムルナリ↢浄土ヲ↡。

^四しには無む相そうの業ごう、 いはく、 仏ぶつを称しょう念ねんし浄じょう土どを欣ごん求ぐすといへども、 しかも身しん土どすなはち畢ひっ竟きょう空くうにして、 幻まぼろしのごとく夢ゆめのごとし、 体たいに即そくして空くうなり、 空くうなりといへども有うなり、 非有ひう非ひ空くうなりと観かんじて、 この無二むにを通達つうだつして、 真しんに第一だいいち義ぎに入いるなり。 これを無む相そうの業ごうと名なづく。 これ最さい上じょうの三昧さんまいなり。

四ニハ无相ノ業、謂ク雖モ↧称↢念シ仏ヲ↡欣↦求スト浄土ヲ↥、而モ観ジテ↢身土即チ畢竟空ナリ、如ク↠幻ノ如シ↠夢ノ、即シテ↠体ニ而空ナリ、雖モ↠空ナリト而有ナリ、非有非空ナリト↡、通↢達シテ此ノ无二ヲ↡、真ニ入ルナリ↢第一義ニ↡、是ヲ名ク↢無相ノ業ト↡。是最上ノ三昧ナリ。

^ゆゑに ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) に、 阿あ弥陀みだ仏ぶつののたまはく、

故ニ¬双巻経ニ¼阿弥陀仏ノ言ク、

^「▲諸法しょほうの性しょうは、 一切いっさい空くう・無我むがなりと通達つうだつすれども、
もつぱら浄じょう仏ぶつ土どを求もとめて、 かならずかくのごとき刹せつを成じょうぜん」 と。

「通↢達シテ諸法ノ性ハ一切空无我ナリト↡
専ラ求ムル↢浄仏土ヲ↡必ズ成ズト↢如キ↠是クノ刹ヲ↡」

^また ¬*止し観かん¼ の常行じょうぎょう三昧ざんまいのなかに、 三さん段だんの文もんあり。 つぶさには△上かみの別べつ行ぎょうのなかに引ひくがごとし。

又¬止観ノ¼常行三昧ノ中ニ有リ↢三段ノ文↡。具ニハ如シ↢上ノ別行ノ中ニ引クガ↡。

 ^問とふ。 定じょう散さんの念仏ねんぶつは、 ともに往おう生じょうするや。

問フ。定散ノ念仏ハ倶ニ往生スル耶。

^答こたふ。 慇おん重じゅうの心しんをもつて念ねんずれば、 往おう生じょうせずといふことなし。

答フ。慇重ノ心ヲモテ念ズルハ、無シ↠不トイフコト↢往生セ↡。

^ゆゑに感かん師し (懐感)、 念仏ねんぶつの差別しゃべつを説ときていはく (群疑論・意)、 「あるいは深じん、 あるいは浅せん、 定じょうに通つうじ散さんに通つうず。 定じょうといふはすなはち凡ぼん夫ぶより十じゅう地じに終おわる。 *善財ぜんざい童どう子じの、 *功く徳どく雲うん比丘びくの所ところにして念仏ねんぶつ三昧ざんまいを請うけ学まなび1132しごとき、 これすなはち甚深じんじんの法ほうなり。 散さんといふはすなはち一切いっさい衆しゅ生じょうの、 もしは行ぎょう、 もしは坐ざ、 一切いっさいの時じ処しょにみな仏ぶつを念ねんずることを得えて、 諸しょ務むも妨さまたげず、 乃ない至し、 命終みょうじゅうにまたその行ぎょうを成じょうずるなり」 と。 以上

故ニ感師説キテ↢念仏ノ差別ヲ↡云ク、「或イハ深或イハ浅、通ジ↠定ニ通ズ↠散ニ。定トイフハ即チ於凡夫ヨリ終ル↢于十地ニ↡。如キ↧善財童子ノ於テ↢功徳雲比丘ノ所ニ↡請ケ↦学ブ念仏三昧ヲ↥、此即チ甚深ノ法也。散トイフハ即チ一切衆生ノ、若シハ行若シハ坐、一切ノ時処ニ皆得テ↠念ズルコトヲ↠仏ヲ。不↠妨セ↢諸務モ↡、乃至命終ニ亦成ズルナリト↢其ノ行ヲ↡。 已上

 ^問とふ。 有う相そう・無む相そうの業ごうは、 ともに往おう生じょうすることを得うるや。

問フ。有相・无相1216ノ業ハ倶ニ得ル↢往生スルコトヲ↡耶。

^答こたふ。 綽しゃく和か尚しょう (道綽) のいはく (安楽集・上)、 「▲もし始し学がくのものは、 いまだ相そうを破はすることあたはず、 ただよく相そうによりて専せん至しせば、 往おう生じょうせずといふことなし。 疑うたがふべからず」 と。

答フ。綽和尚ノ云ク、「若シ始*学ノ者ハ未ダシテ↠能ハ↠破スルコト↠相ヲ、但能ク依リテ↠相ニ*専至スルニ無シ↠不トイフコト↢往生セ↡。不ト↠須カラ↠疑フ也。」

^また感かん和か尚しょう (懐感) のいはく (群疑論)、 「往おう生じょうすでに*品類ほんるい差殊しゃしゅなれば、 修因しゅいんまた浅深せんじんありて各別かくべつなり。 ただいふべからず、 ただ*無む所得しょとくを修しゅして往おう生じょうすることを得え、 有う所得しょとくの心しんは生しょうずることを得えず」 と。

又感和尚ノ云ク、「往生既ニ品類差殊ナレバ、修因亦有リ↢浅深各別ナルコト↡。不↠可カラ↢但言フ↡、唯シ修シテ↢無所得ヲ↡而シテ*得↢往生スルコトヲ↡、有所得ノ心ハ不ト↠得↠生ズルコトヲ也。」

 ^問とふ。 もししからば、 いかんぞ *¬仏蔵ぶつぞう経きょう¼ (意) に説とかく、 「もし比丘びくありて、 余よの比丘びくに教おしへて、 ªなんぢまさに*仏ぶつを念ねんじ、 法ほうを念ねんじ、 僧そうを念ねんじ、 戒かいを念ねんじ、 施せを念ねんじ、 天てんを念ねんずべし。 かくのごとき等らの思し惟ゆいをもつて、 涅ね槃はんの安楽あんらく寂じゃく滅めつなることを観かんじ、 ただ涅ね槃はんの畢ひっ竟きょう清浄しょうじょうなることを愛あいせよº と。 かくのごとく教おしふるものを名なづけて邪じゃ教きょうとなし、 *悪あく知ち識しきと名なづく。 この人ひとを名なづけて、 われを誹ひ謗ほうして外げ道どうを助たすくとなす。 かくのごとき悪人あくにんは、 われすなはち一飲いちおんの水みずをも受う1133くることを聴ゆるさず」 と。

問フ。若シ爾ラバ、如何ゾ¬仏蔵経ニ¼説カク、「若シ有リテ↢比丘↡教ヘマク↢余ノ比丘ニ↡、汝当ニシ↢念ジ↠仏ヲ念ジ↠法ヲ念ジ↠僧ヲ念ジ↠戒ヲ念ジ↠施ヲ念ズ↟天ヲ。如キ↠是クノ等ノ思惟ヲモテ観ジ↢涅槃ノ安楽寂滅ナルコトヲ↡、唯愛セヨト↢涅槃ノ畢竟清浄ナルコトヲ↡。如ク↠是クノ教フル者ヲ名ケテ為シ↢邪教ト↡。名ク↢悪知識ト↡。是ノ人ヲバ名ケテ為ス↧誹↢謗シテ於我ヲ↡助クト↦於外道ヲ↥。如キ↠是クノ悪人ヲバ、我乃チ不ト↠聴ユルサ↠受ケムコトヲ↢一飲ノ水ヲモ↡。」

^またのたまはく (仏蔵経)、 「むしろ五ご逆ぎゃく重じゅう悪あくを成じょう就じゅすとも、 我が見けん・衆しゅ生じょう見けん・寿見じゅけん・命みょう見けん・陰おん入にゅう界かい見けん等とうをば成じょう就じゅせざれ」 と。 以上略抄

又言ク、「寧ロ成↢*就ストモ五逆重悪ヲ↡、不レト↣成↢*就セ我見・衆生見・寿見・命見・陰入界見等ヲバ↡」耶。 已上略抄

^答こたふ。 感かん師し (懐感) 釈しゃくしていはく (群疑論・意)、 「ある聖教しょうぎょう (*無上依経) にまたのたまはく、 ª▲むしろ我が見けんを起おこすこと須しゅ弥み山せんのごとくにすとも、 空見くうけんを起おこすこと芥子けしばかりのごとくもせざれº と。 かくのごとき等らの諸しょ大だい乗じょう経きょうに、 有うを*訶かし空くうを訶かし、 *大だいを讃さんじ*小しょうを讃さんずること、 ならびにすなはち機きに*逗とうじて不ふ同どうなり。

答フ。感師釈シテ云ク、「有ル聖教ニハ復言ヘルコト、寧ロ起サムコト↢我見ヲ↡如クニストモ↢須弥山ノ↡、不レト↧起スコト↢空見ヲ↡如クモセ↦芥子許バカリノ↥。如キ↠是クノ等ノ諸大乗経ニ、訶シ↠有ヲ訶シ↠空ヲ、讃ジ↠大ヲ讃ズルコト↠小ヲ、並ニ乃チ逗ジテ↠機ニ不同ナルナリ。

^またある ¬経きょう¼ (大集経) にのたまはく、 ªいま阿あ弥陀みだ如来にょらい・応おう・正しょう等覚とうがくは、 つぶさにかくのごとき三さん十じゅう二に相そう・八はち十じゅう随ずい形ぎょう好こうまします。 身色しんじき・光こう明みょうは聚金じゅこんの融とけたるがごとし。 かくのごとくおもひて、 乃ない至し、 かの如来にょらいを念ねんぜず。 またかの如来にょらいを得えざれ、 すでに↓かくのごとくして次し第だいに空くう三昧ざんまいを得うº と。

又有ル¬経ニ¼言ク、今者 イマ 阿弥陀如来・応・正等覚ハ、具ニ有ス↢如キ↠是クノ卅二相・八十随形ノ好↡。身色光明ハ如シ↠聚アツメタルガ↢金融ヲ↡。如クオモヒテ↠是クノ、乃至不↠念ゼ↢彼ノ如来ヲ↡。亦不ルコト↠得↢彼ノ如来ヲ↡已リテ、如クシテ↠是クノ次第ニ得トイヘリ↢空三昧↡。

^また ¬観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ にのたまはく、 ª如来にょらいにまた法身ほっしん・十じゅう力りき・無畏むい・三昧さんまい・解げ脱だつ、 もろもろの神通じんずうの事じまします。 かくのごとき妙みょう処しょは、 なんぢ凡ぼん夫ぶの覚さとるところの境きょう界がいにあらず。 ただまさに深心じんしんにして随ずい喜きの想おもいを起おこすべし。 この想おもいを起おこしをはりて、 まさにまた念ねんを繋かけて仏ぶつの功く徳どくを念ねんずべしº と。

又¬観仏三昧経ニ¼云ク、如来ニ亦有ス↢法身・十力・無畏・三昧・解脱、諸ノ神通ノ事↡。如キ↠此クノ妙処ハ、非ズ↢汝凡夫ノ所ノ↠覚ル境界ニ↡。但当ニシ↣深1217心ニシテ起ス↢随喜ノ想ヲ↡。起シ↢是ノ想ヲ↡已リテ、当ニシトイヘリ↣復繋ケテ↠念ヲ念ズ↢仏ノ功徳ヲ↡。

^ゆゑに知しりぬ、 初学しょがくの輩ともがらはかの色身しきしんを観かんじ、 後ご学がくの徒ともがらは法身ほっしんを念ねんずるなり。 ゆゑに、 ª↑かくのごとくして次し第だいに1134空くう三昧ざんまいを得うº といへり。 まさにすべからくよく経きょうの意こころを会えすべし、 毀き讃さんの心しんをなすことなかれ。 妙たえに知しる、 大だい聖しょう (釈尊) は巧たくみに根こん機きに逗とうじたまへることを」 と。 以い上じょう、 ¬観仏かんぶつ経きょう¼ の第だい九くに、 仏ぶつの一毛もうを観かんじ、 乃ない至し、 具ぐ足そくの色身しきしんを観かんずることを説ときをはりて、 引ひくところの十じゅう力りき・無畏むい・三昧さんまい等とうの文もんあり。

故ニ知リヌ初学之輩ハ観ジ↢彼ノ色身ヲ↡、後学之徒ハ念ズル↢法身ヲ↡也。故ニ言ヘリ↣如クシテ↠是クノ次第ニ得ト↢空三昧ヲ↡。当ニシ↣須ク善ク会ス↢経ノ意ヲ↡、勿レ↠生ナスコト↢毀讃之心ヲ↡。妙ニ知レト↧大聖ノ巧ニ逗リタマヘル↢根機ニ↡者ヲ↥。」已上¬観仏経ノ¼第九ニ説カク、観ズ↢仏ノ一毛ヲ↡、乃至観ズルコト↢具足ノ色身ヲ↡已リテ、有リ↢所↠引ク之十力・无畏・三昧等ノ*文↡

 ^▼問とふ。 念仏ねんぶつの行ぎょうは、 九く品ぼんのなかにおいては、 これいづれの品ほんの摂しょうぞ。

問フ。念仏之行ハ於テハ↢九品ノ中ニ↡、是何レノ品ノ摂ゾ。

^◆答こたふ。 もし説せつのごとく行ぎょうずるは、 理り、 *上上じょうじょうに当あたれり。 かくのごとくして、 その勝しょう劣れつに随したがひて九く品ぼんを分わかつべし。 しかも ¬経きょう¼ (観経) の所説しょせつの九く品ぼんの行ぎょう業ごうは、 これ一端いったんを示しめすなり。 理り、 実じつには無む量りょうなり。

答フ。若シ如ク↠説ノ行ズルハ、理当レリ↢*上々ニ↡。如クシテ↠是クノ随ヒテ↢其ノ勝劣ニ↡応シ↠分ツ↢九品ヲ↡。然モ¬経ノ¼所説ノ九品ノ行業ハ、是示スナリ↢一端ヲ↡。理実ニハ無量ナリ。

 ^問とふ。 もし定じょう散さんともに往おう生じょうすることを得うるがごとく、 また現身げんしんにともに仏ぶつを見みたてまつるとせんや。

問フ。為モシ如ク↣定散倶ニ得ルガ↢往生スルコトヲ↡、亦為モシ現身ニ倶ニ見ル↠仏ヲ耶。

^答こたふ。 *経きょう論ろんに多おおく、 「三昧さんまい成じょう就じゅして、 すなはち仏ぶつを見みたてまつることを得う」 と説とけり。 あきらかに知しりぬ、 散業さんごうは見みたてまつることを得うべからずといふことを。 ただ別縁べつえんをば除のぞく。

答フ。経論ニ多ク説ケリ、三昧成*就シテ、即チ得ト↠見タテマツルコトヲ↠仏ヲ。明カニ知リヌ散業ハ不トイフコトヲ↠可カラ↠得↠見タテマツルコトヲ。唯シ除オク↢別縁ヲバ↡。

 ^問とふ。 *有う相そう・無む相そうの観かん、 ともに仏ぶつを見みたてまつることを得うるや。

問フ。有相・无相ノ観、倶ニ得ル↠見タテマツルコトヲ↠仏ヲ耶。

^答こたふ。 無む相そうの、 仏ぶつを見みたてまつることは、 理り疑うたがはざるにあり。 その有う相そうの観かんも、 あるいはまた仏ぶつを見みたてまつる。 ゆゑに ¬観かん経ぎょう¼ 等とうに色相しきそうを観かんずることを勧すすめたり。

答フ。無*相ノ見タテマツルコトハ↠仏ヲ、理在リ↠不ルニ↠疑ハ。其ノ有相ノ観モ、或イハ亦見タテマツル↠仏ヲ。故ニ¬観経¼等ニ勧メタリ↠観ズルコトヲ↢色相ヲ↡。

 ^1135問とふ。 もし有う相そう観かんまた仏ぶつを見みたてまつらば、 いかんぞ ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の偈げに、

問フ。若シ有相観亦見タテマツラバ↠仏ヲ者、云何ゾ¬花厳経ノ¼偈ニ云ヘリ、

^「凡ぼん夫ぶの諸法しょほうを見みること、 ただ相そうに随したがひて転てんず。
法ほうの無む相そうを了りょうせず、 これをもつて仏ぶつを見みたてまつらざるなり。

「凡夫ハ見ルコト↢諸法ヲ↡但随ヒテ↢於相ニ↡転ズト
不↠了セ↢法ノ无相ヲ↡以テ↠是ヲ不ルナリ↠見タテマツラ↠仏ヲ

^見みることあるをばすなはち*垢くとなす。 これはすなはちいまだ見みるとなさず。
諸見しょけんを遠おん離りし、 かくのごとくしてすなはち仏ぶつを見みたてまつる」

とのたまひ、

有ルヲバ↠見ルコト則チ為ス↠垢ト此ハ則チ未ダ↠為サ↠見ルト
遠↢離セル於諸見ヲ↡如クシテ↠是クノ乃チ見タテマツルト↞仏ヲ」

^また (華厳経)、

又云ク、

^「一切いっさいの法ほうは*自性じしょう無む所しょ有うなりと了知りょうちする、
かくのごとく法ほっ性しょうを解げすれば、 すなはち*盧る舎しゃ那なを見みたてまつる」

とのたまひ、

「了↢知スル一切ノ法ハ自性无所有ナリト↡
如ク↠是クノ解スル↢法性ヲ↡即チ見タテマツルト↢盧*舎那ヲ↡」

^また ¬*金剛こんごう経きょう¼ に、

*又¬金剛経ニ¼云ク、

^「もし色しきをもつてわれを見み、 音おん声じょうをもつてわれを求もとむるは、
この人ひとは邪道じゃどうを行ぎょうじて、 如来にょらいを見みたてまつることあたはず」

とのたまへるや。

「若シ以テ↠色ヲ見↠我ヲ以テ↢音声ヲ↡求ムルハ↠我ヲ
是ノ人ハ行ズ↢邪道ヲ↡不ト↠能ハ↠見タテマツルコト↢如来ヲ↡」

^答こたふ。 ¬要決ようけつ¼ (西方要決) に通つうじていはく、 「大だい師し (釈尊) の、 教きょうを説ときたまふことは、 義ぎに多た門もんあり。 おのおの時機じきに称かなひ、 等ひとしくして差しゃ異いなし。 ª般若はんにゃ経きょうº はおのづからこれ一門いちもんなり。

答フ。¬要決ニ¼通ジテ云ク、「大師ノ説キタマフコトハ↠教ヲ義ニ有リ↢多門↡。各 ノ称カナフコト↢時ノ機ニ↡等シクシテ無シ↢差1218異↡。般若経ハ自ラ是一門ナリ。

^*¬弥陀みだ¼ 等とうの経きょうもまた一いち理りなりとなす。 なんとならば、 一切いっさいの諸仏しょぶつにならびに三さん身しんまします。 *法仏ほうぶつには形ぎょう体たい1136なく、 色しき・声しょうなし。 まことに二に乗じょうおよび小しょう菩ぼ薩さつの、 三さん身しん不異ふいなりと説ときたまふを聞ききて、 すなはち同おなじく色しき・声しょうありと謂おもひて、 ただ化け身しんの色相しきそうを見みて、 つひに法身ほっしんもまたしかなりと執しゅうするがためのゆゑに、 説ときて邪じゃとなす。

¬弥陀¼等ノ経ハ復為ス↢一理ナリト↡。何トナラバ者一切ノ諸仏ニ並ニ有ス↢三身↡。法仏ニハ無シ↠形、体非ズ↢色声ニ↡。良マコトニ為ノ↧二乗及ビ少菩薩ノ聞キテ↠説キタマフヲ↢三身不異ナリト↡、即チ謂ヒテ↣同ジク有リト↢色声↡、但シ見テ↢化身ノ色相ヲ↡遂ニ執スルガ↦法身モ亦爾ナリト↥故ニ、説キテ為ス↠邪ト。

^¬弥陀みだ経きょう¼ 等とうに、 仏ぶつの名みなを念ねんじ、 相そうを観かんじ、 浄じょう土どに生うまるることを求もとめよと勧すすめたることは、 ただ凡ぼん夫ぶの障さわり重おもくして、 法身ほっしんの幽ゆう微みにして、 *法体ほったい縁えんずること難かたきをもつて、 しばらく仏ぶつを念ねんじ、 形かたちを観かんじ、 *礼讃らいさんせよと教おしへたまふなり」 と。 略抄

¬弥陀経¼等ニ、勧メタルコトハ↧念ジ↢仏ノ名ヲ↡観ジ↠相ヲ、求メヨト↞生レヨト↢浄土ニ↡者、但シ以テ↢凡夫ノ障重クシテ、法身ノ幽微ニシテ、法体難キヲ↟縁ズルコト、且ク教ヘタマフナリ↢念ジ↠仏ヲ観ジ↠形ヲ礼讃セヨト↡。」略抄

 ^問とふ。 凡ぼん夫ぶの行ぎょう者じゃは、 つとめて修しゅ習じゅうすといへども、 心しん純浄じゅんじょうならず。 なんぞたやすく仏ぶつを見みん。

問フ。凡夫ノ行者ハ、雖モ↢勤メテ修習スト↡心不↢純浄ナラ↡。何ゾ輒タヤスク見ム↠仏ヲ。

^答こたふ。 衆縁しゅえん合がっして見みるなり。 ただ自じ力りきのみにはあらじ。 ¬般舟はんじゅ経きょう¼ に*三さんの縁えんあり。 △上かみの九く十じゅう日にちの行ぎょうに引ひくところの ¬止し観かん¼ の文もんのごとし。

答フ。衆縁合シテ見ルナリ。非ジ↢唯自力ノミニハ↡。¬般*舟経ニ¼有リ↢三ノ縁↡。如シ↢上ノ九十日ノ行ニ所ノ↠引ク¬止観ノ¼文ノ↡。

 ^問とふ。 いくばくの因縁いんねんをもつてか、 かの国くにに生うまるることを得うる。

問フ。以テカ↢幾クノ因縁ヲ↡得ル↠*生ルルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。

^答こたふ。 経きょうによりてこれを案あんずるに、 四しの因縁いんねんを具ぐす。 一いちは自じ善根ぜんごんの因力いんりき、 二には自じ願がん求ぐの因力いんりき、 三さんは阿あ弥陀みだの本願ほんがんの縁えん、 四しは衆聖しゅしょう助念じょねんの縁えんなり。 釈しゃ迦かの護ご助じょは ▲¬平びょう等覚どうがく経きょう¼ に出いでたり。 六方ろっぽうの仏ぶつの護ご念ねんは ▲¬小しょう経きょう¼ に出いでたり。 山海さんかい恵え菩ぼ薩さつ等とうの護持ごじは ▲¬十じゅう往おう生じょう経きょう¼ に出いでたり。

答フ。依リテ↠経ニ案ズルニ↠之ヲ、具ス↢四ノ因縁ヲ↡。一ハ自善根ノ因力、二ハ自願求ノ因力、三ハ*阿弥陀ノ本願ノ縁、四ハ衆聖助念ノ縁ナリ。釈迦ノ護助ハ出デタリ↢¬平等覚経ニ¼↡。六方ノ仏ノ*護念ハ出デタリ↢¬小経ニ¼↡。山海*恵菩薩等ノ護持ハ出デタリ↢¬十往生*経ニ¼↡

二 Ⅹ ⅴ 臨終念相

【75】^第だい五ごに△*臨りん終じゅうの念相ねんそうを明あかさば、

第五ニ明サバ↢臨終ノ念相ヲ↡、

^問とふ、 ▽下下げげ品ぼんの人にん、 臨りん終じゅうに十じゅう念ねんして、 すな1137はち往おう生じょうすることを得う。 いふところの十じゅう念ねんは、 なんらの念ねんぞや。

問フ。下々品ノ人、臨終ニ十念シテ即チ得↢往生スルコトヲ↡。所ノ↠言フ十念ハ何等ノ念ゾ耶。

^答こたふ。 綽しゃく和か尚しょう (道綽) のいはく (安楽集・上)、 「▲ただ阿あ弥陀みだ仏ぶつの、 もしは総相そうそう、 もしは別相べっそうを憶念おくねんして、 所縁しょえんに随したがひて観かんじ、 十じゅう念ねんを経へて他たの念想ねんそう間雑けんぞうすることなき、 これを十じゅう念ねんと名なづく。

答フ。綽和尚ノ云ク、「但憶↢念シテ阿弥陀仏ノ若シハ総*想若シハ別相ヲ↡、随ヒテ↠所ニ↢縁観スル↡、逕テ↢於十念ヲ↡无キ↢他ノ念*相間雑スルコト↡、是ヲ名ク↢十念ト↡。

^◆また十じゅう念ねん相続そうぞくといふは、 これ聖しょう者じゃの一いちの数かずの名なのみ。 ただよく念ねんを積つみ、 思おもいを凝こらして、 他たの事じを縁えんぜざれば、 すなはち*業道ごうどう成じょう弁べんす。 またいまだ労わずらはしくこれが頭ず数しゅをしも記きせず。

又云ク、十念相続スル者、是聖者ノ一ノ数之名耳。但能ク積ミ↠念ヲ、凝シテ↠思ヲ、不シテ↠縁ゼ↢他ノ事ヲ↡、便チ業道成*辨ス。亦未ダト↣労イタハシク記セ↢之ガ頭数ヲシモ↡也。

^◆またいはく、 もし久く行ぎょうの人にんの念ねんは、 多おおくこれによるべし。 もし始し行ぎょうの人にんの念ねんは、 数かずを記きするもまた好よし。 これまた聖教しょうぎょうによれり」 と。 以上

又云ク、若シ久行ノ人ノ念ハ、多ク応シ↠依ル↠此ニ。若シ始行ノ人ノ念者、記スルモ↠数ヲ亦1219好シ。此亦依レリト↢聖教ニ↡。」 已上

^*あるがいはく、 「一心いっしんに ª南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつº と称しょう念ねんして、 この六ろく字じを経ふるあひだを一念いちねんと名なづく」 と。

有ルガ云ク、「一心ニ称↢念シテ南無阿弥陀仏ト↡、逕ル↢此ノ*六字ヲ↡之*項アヒダヲ名クト↢一念ト↡*也。」

 ^問とふ。 ¬*弥み勒ろく所問しょもん経ぎょう¼ の十じゅう念ねん往おう生じょうは、 △かの一々いちいちの念ねん、 深広じんこうなり。 いかんぞ、 いま十じっ声しょう仏ぶつを念ねんじて往おう生じょうを得うといふや。

問フ。¬弥勒所問経ノ¼十念往生ハ、彼ノ一々ノ念深広ナリ。如何ゾ今云フ↣十声念ジテ↠仏ヲ得ト↢往生ヲ↡耶。

^答こたふ。 諸しょ師しの所しょ釈しゃく、 不ふ同どうなり。

答フ。諸師ノ所釈不同ナリ。

^*寂じゃく法ほっ師し (義寂) のいはく、 「これは、 心しんをもつぱらにして仏ぶつの名みなを称しょうする時ときに、 自じ然ねんにかくのごとき十じゅうを具ぐ足そくすと説とくなり。 かならずしも一々いちいちに、 別べつに慈じ等とうを縁えんずるにはあらず。 またかの慈じ等とうを数かぞへて十じゅうとなすにはあらず。

寂法師ノ云ク、「此ハ説クナリ↧専ニシテ↠心ヲ称スル↢仏ノ名ヲ↡時ニ、自然ニ具↦足スト如キ↠是クノ十ヲ↥。非ズ↣必ズシモ一々ニ別ニ縁ズルニハ↢慈等ヲ↡。亦非ズ↧数ヘテ↢彼ノ慈等ヲ↡為ルニハ↞十ト。

^いかんぞ、 別べつに縁えんぜざるに、 しかも十じゅうを具ぐ足そくするとならば、 戒かいを受うけんと欲ほっして*三さん帰きを称しょうする時ときに1138、 別べつに離り殺せつ等とうの事じを縁えんぜずといへども、 しかもよくつぶさに*離り殺せつ等とうの戒かいを得うるがごとし。 まさに知しるべし、 このなかの道どう理りもまたしかなり。

云何ゾ不ルニ↢別ニ縁ゼ↡而モ具↢足スルトナラバ十ヲ↡、如ク↧欲シテ↠受ケムト↠戒ヲ称スル↢三帰ヲ↡時ニ、雖モ↠不ト↣別ニ縁ゼ↢離殺等ノ事ヲ↡、而モ能ク具ニ得ルガ↦離殺等ノ戒ヲ↥、当ニシ↠知ル、此ノ中ノ道理モ*亦爾ナリ。

^また十じゅう念ねんを具ぐ足そくして ª南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつº と称しょうすべしといふは、 いはく、 よく慈じ等とうの十じゅう念ねんを具ぐ足そくして ª南無なも仏ぶつº と称しょうするなり。 もしよくかくのごとくすれば、 称しょう念ねんするところに随したがひて、 もしは一いっ称しょう、 もしは多た称しょう、 みな往おう生じょうすることを得う」 と。

又可イフベシ、具↢足シテ十念ヲ↡*称ストイフ↢南无阿弥陀仏ト↡者、謂ク能ク具↢足シテ慈等ノ十念ヲ↡称スルナリ↢南無仏ト↡。若シ能ク如クスレバ↠是クノ、随ヒテ↠所ニ↢称念スル↡、若シハ一称ニマレ、*若シハ多称ニマレ、皆得ト↢往生スルコトヲ↡。」

^感かん法ほっ師し (懐感) のいはく (群疑論)、 「おのおのこれ聖教しょうぎょうにして、 たがひに往おう生じょう浄じょう土どの法門ほうもんを説とけば、 みな*浄業じょうごうを成じょうず。 なにによりてか、 かれをもつて是ぜとなし、 これを斥しりぞけて非ひといはん。 ただしみづから経きょうを解さとらず、 またすなはちもろもろの学者がくしゃを惑まどはす」 と。

感法師ノ云ク、「各 ノ是聖教トシテ互ニ説ケルナリ↢往生浄土ノ法門ヲ↡。皆成ル↢浄業ト↡。何ニ因リテカ、将モテハ↠彼ヲ為シ↠是ト、斥キラヒテ↠此ヲ言ハム↠非ト。但シ自ラ不↠解サトラ↠経ヲ、亦乃チ惑スト↢諸ノ学者ヲ↡。」

^迦か才ざい師しのいはく (浄土論)、 「この十じゅう念ねんは、 現在げんざいの時ときになすなり。 ▲¬観かん経ぎょう¼ のなかの十じゅう念ねんは、 命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみてなすなり」 と。 以上 意こころ、 感かん師し (懐感) に同おなじ。

迦才師ノ云ク、「此之十念ハ現在ノ時ニ作スナリ。¬観経ノ¼中ノ十念ハ臨命終ノ時ニ作スナリト。」 已上 意同ジ↢感師ニ↡。

 ^問とふ。 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下意) にのたまはく、 「▲乃ない至し一念いちねんするに、 往おう生じょうすることを得う」 と。 これ十じゅう念ねんと、 いかんが*乖け角かくせる。

問フ。¬双巻経ニ¼云ク、「乃至一念モ得ト↢往生スルコトヲ↡。」此与↢十念↡云何ガ乖角セル。

^答こたふ。 感かん師しのいはく (群疑論・意)、 「極悪ごくあく業ごうのものは十じゅうを満みてて生しょうずることを得え、 余よのものは、 乃ない至し一念いちねんしてもまた生しょうず」 と。

答フ。感師ノ云ク、「極悪業ノ者ハ満テテ↠十ヲ得↠生ズルコトヲ、余ノ者ハ乃至一念シテモ亦生ズト。」

 ^1139問とふ。 生うまれてよりこのかた、 もろもろの悪あくを作つくりて一善いちぜんをも修しゅせざるもの、 命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみてわづかに十じっ声しょう念ねんずるに、 なんぞよく罪つみを滅めっして、 永ながく三界さんがいを出いでて、 すなはち浄じょう土どに生うまれん。

問フ。生レテヨリ来コノカタ作リテ↢諸ノ*悪ヲ↡不ル↠修セ↢一善ヲモ↡者、臨命終ノ時ニ纔ニ十声念ズルニ、何ゾ能ク滅シテ↠罪ヲ、永ク出デテ↢三界ヲ↡、即チ生レム↢浄土ニ↡。

^答こたふ。 ¬*那な先せん比丘びく問仏もんぶつ経きょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「時ときに*弥み蘭らん王おうありて、 羅ら漢かん*那な先せん比丘びくに問とひていはく、 ª人ひと、 世せ間けんにありて悪あくを作つくること百ひゃく歳さいに至いたるまです。 死しの時ときに臨のぞみて仏ぶつを念ねんぜば、 死しして後のちに天てんに生うまるとは、 われこの説せつを信しんぜずº と。 またいはく、 ª一いちの生命しょうみょうを殺ころさば、 死しして泥ない梨りのなかに入いるとは、 われまた信しんぜずº と。

答フ。如シ↢¬那先比丘1220問仏経ニ¼言フガ↡。「時ニ有リテ↢弥蘭王↡問ヒテ↢羅漢那先比丘ニ↡言ク、人在リテ↢世間ニ↡作ルコト↠悪ヲ至ルマデニス↢百歳ニ↡。臨ム↠死ニ時ニ念ズレバ↠仏ヲ、死シテ後ニ生ルトハ↠天ニ。我不ト↠信ゼ↢是ノ説ヲ↡。復言ク、殺シテ↢一ノ生命ヲ↡、*死シテ入ルトハ↢泥*梨ノ中ニ↡。我亦不ト↠信ゼ也。

^比丘びく、 王おうに問とはく、 ª▽もし人ひと、 小ちいさき石いしを持もちて、 水みずのなかに置在おかば、 石いしは浮うかぶや没しずむやº と。 王おうのいはく、 ª石いし没しずむº と。 那な先せんのいはく、 ªもしいま、 百丈ひゃくじょうの大おおきなる石いしを持もちて、 船ふねの上うえに置在おかば、 没もっしなんやいなやº と。 王おうのいはく、 ª没しずまじº と。

比丘問ハク↠王ニ、如キ↧人ノ持チテ↢小キ石ヲ↡置↦在スルガ水ノ中ニ↥、石ハ浮ブ耶没ム耶ト。王ノ言ク、石没ムト也。那*先ノ言ク、如キ↧今持チテ↢百丈ノ大ナル石ヲ↡置↦在スルガ船ノ上ニ↥、没シナムヤ不ヤト。王ノ言ク、不ト↠没セ。

^那な先せんのいはく、 ª船ふねのなかの百丈ひゃくじょうの大おおきなる石いしは、 船ふねによりて没もっすることを得えず。 人ひと、 本もとの悪あくありといへども、 一いち時じも仏ぶつを念ねんずれば、 泥ない梨りに没もっせずしてすなはち天てん上じょうに生うまるること、 なんぞ信しんぜざらんや。 その小ちいさき石いしの没もっするといふは、 人ひとの悪あくを作つくり、 経きょう法ぼうを知しらずして、 死しして後のちにすなはち泥ない梨りに入いるがごとし。 なんぞ信しんぜざらんやº と。 王おうのいはく、 ª善よきかな、 善よきかなº と。

那先ノ言ク、船ノ中ノ百丈ノ大ナル石ハ、因リテ↠船ニ不↠得↠没スルコトヲ。人雖モ↠有リト↢本ノ悪↡、一時モ念ズレバ↠仏ヲ、不シテ↠没セ↢泥*梨ニ↡便チ生ルルコト↢天上ニ↡、何ゾ不ラム↠信ゼ耶。其ノ少キ石ノ没スルトイフ者、如シ↧人ノ作リテ↠悪ヲ不シテ↠知ラ↢経法ヲ↡、死シテ後ニ便チ入ルガ↦泥*梨ニ↥。何ゾ不ラム↠信ゼ耶ト。王ノ言ク、善キ哉善キ哉ト。

^比び1140丘くのいはく、 ª両ふたりの人ひとともに死しして、 一人いちにんは*第だい七しちの梵天ぼんてんに生うまれ、 一人いちにんは*罽賓国けいひんこくに生うまるるがごとき、 この二に人にんは、 遠近おんごん異ことなりといへども、 死しすればすなはち一いち時じに到いたる。 一ひと双つがいの飛ひ鳥ちょうありて、 一いちは高たかき樹きの上うえにして止とまり、 一いちは卑みじかき樹きの上うえに止とまらんに、 両ふたつの鳥とり一いち時じにともに飛とぶに、 その影かげともに到いたるがごときのみ。

比丘ノ言ク、如キ↧両ノ人倶ニ死シテ、一人ハ生ル↢第七ノ梵天ニ↡、一人ハ生ルルガ↦罽賓国ニ↥、此ノ二人ハ、遠近雖モ↠異ナリト、死スレバ則チ一時ニ到ル。如キ↧有リテ↢一双ヒトツガヒノ飛鳥↡、一ハ於テ↢高キ樹ノ上ニ↡止ヰル、一ハ於テ↢卑ミジカキ樹ノ上ニ↡止ヲリ、両ノ鳥一時ニ倶ニ飛ブニ、其ノ影ハ倶ニ到ルガ↥耳。

^愚ぐ人にんのごときは悪あくを作つくりて殃つみを得うること大だいなり、 智ち人にんは悪あくを作つくりても殃つみを得うること小しょうなるがごとし。

如キハ↢愚人ノ↡作リテ↠悪ヲ得ルコト↠殃ツミヲ大ナリ。智人ハ作リテモ↠悪ヲ得ルコト↠殃ツミヲ小スクナシ。

^焼やけたる鉄てつを地じに在おけるを、 一人いちにんは焼やけたりと知しれり、 一人いちにんは知しらずして、 両ふたりの人ひとともに取とるに、 しかも知しらざるものは手てを爛ただるること大だいにして、 知しれるものは少すこし壊やぶるるがごとし。 悪あくを作つくることもまたしかなり。

如ク↢焼キテ↠鉄ヲ在オケルヲ↠地ニ、一人ハ知レリ↠焼ケタリト、一人ハ不シテ↠知ラ、両ノ人倶ニ取ルニ、然モ不ル↠知ラ者ハ手ヲ爛タダスコト大ナリ、知レル者ハ少シ壊ヤブルルガ↡、作ルコトモ↠悪ヲ亦爾ナリ。

^愚ぐ者しゃはみづから悔くゆることあたはざるがゆゑに、 殃つみを得うること大だいなり。 智ち者しゃは悪あくを作つくれども不ふ当とうなりと知しるがゆゑに、 日々にちにちにみづから悔くゆることをなせば、 その罪つみ小しょうなりº」 と。 以上

愚者ハ不ルガ↠能ハ↢自ラ悔ユルコト↡。故ニ得ルコト↠殃ヲ大ナリ。智者ハ作レドモ↠悪ヲ知ルガ↢不当ナリト↡故ニ、為セバ↢日*々ニ自ラ*悔ユルコトヲ↡、其ノ罪小スクナシト。」 已上

^十じゅう念ねんにもろもろの罪つみを滅めっして、 仏ぶつの悲ひ願がんの船ふねに乗のりて、 須しゅ臾ゆに往おう生じょうすることを得うることも、 その理りまたしかるべし。

十念ニ滅シテ↢衆ノ罪ヲ↡、乗リテ↢仏ノ悲願ノ船ニ↡、須臾ニ得ルコトモ↢往生スルコトヲ↡、其ノ理亦可シ↠然ル。

^また ¬*十じゅう疑ぎ¼ に釈しゃくしていはく、 「^▲いま三種さんしゅの道どう理りをもつて校量きょうりょうするに、 軽重きょうじゅうは不ふ定じょうなり。 時じ節せつの久く近ごん・多た少しょうには在あらず。 いかなるをか三さんとなす。 一いちには心しんに在あり、 二にには縁えんに在あり、 三さんには決けつ定じょうに在あるなり。

▲又¬十疑ニ¼釈シテ云ク、「*今以テ↢三種ノ道理ヲ↡校量スルニ、軽重ハ不定ナリ。不↠在ラ↢時節ノ久*近・多少1221ニハ↡。云何ナルヲカ為ル↠三ト。一ニ者在リ↠心ニ、二ニ者在リ↠縁ニ、三ニ者在ルナリ↢決定ニ↡。

^◆ª心しんに在ありº といふは、 罪つみを造つくる時ときはみづ1141からの虚こ妄もう顛倒てんどうの心しんより生しょうずるも、 念仏ねんぶつの心しんは、 善ぜん知ぢ識しきに従したがひて阿あ弥陀みだ仏ぶつの真実しんじつの功く徳どく名みょう号ごうを説とくを聞きく心しんより生しょうず。 一いちは虚こ、 一いちは実じつなり。 あにあひ比くらぶることを得えんや。

◆在リトイフ↠心ニ者、造ル↠罪ヲ之時ニハ従リ↢自ラノ虚*妄顛倒ノ心↡生ズルモ。念仏ノ心者、従ヒテ↢善知識ニ↡聞ク↠説クヲ↢阿弥陀仏ノ真実ノ功徳名号ヲ↡心ヨリ生ズ。一ハ虚、一ハ実ナリ。豈ニ得ムヤ↢相比ブルコトヲ↡。

^◆たとへば、 万年まんねんの暗くらき室しつに日ひの光ひかりしばらくも至いたりぬれば、 しかも暗やみたちまちに除のぞこるがごとし。 あに久ひさしきよりこのかたの暗やみといひて、 あへて滅めっせざることあらんや。

譬ヘバ如キハ↢万年ノ暗キ室ニ日ノ光暫モ至リヌレバ、而モ暗頓ニ除コルガ↡、豈ニ有リテ久シクヨリ来コノカタ之暗トイフテ不ラム↢肯アヘテ滅セ↡耶。

^▲ª縁えんに在ありº といふは、 罪つみを造つくる時ときには、 虚こ妄もう痴ち暗あんの心しんの、 虚こ妄もうの境きょう界がいを縁えんずる顛倒てんどうの心しんより生しょうずるも、 念仏ねんぶつの心しんは、 仏ぶつの清浄しょうじょう真実しんじつの功く徳どく名みょう号ごうを聞ききて、 *無む上じょう菩ぼ提だいを縁えんずる心しんより生しょうず。 一いちは真しん、 一いちは偽ぎなり。 あにあひ比くらぶることを得えんや。

在リトイフ↠縁ニ者、造ル↠罪ヲ之時ニハ、従ヒテ↢虚妄痴暗ノ心ニ↡縁ズル↢虚妄ノ境界ヲ↡顛倒ノ心ヨリ生ズルモ。念仏之心ハ従ヒテ↠聞クニ↢仏ノ清浄真実ノ功徳名号ヲ↡縁ズル↢无上菩提ヲ↡心ヨリ生ズ。一ハ真一ハ偽ナリ。豈ニ得ムヤ↢相比ブルコトヲ↡。

^▽たとへば、 人ひとありて毒どくの箭やに中あてられて、 箭や深ふかく、 毒どくいたましくて、 肌はだを傷やぶり、 骨ほねに致いたるときに、 一ひとたび滅除めつじょ薬やくの鼓つづみの声こえを聞きけば、 すなはち毒どくの箭や除のぞこるがごとし。 ▲あに深毒じんどくなるをもつてあへて出いでざらんや。

譬ヘバ如シ↧有リテ↠人被テ↢毒ノ箭ニ中カブラ↡、箭深ク毒イタマシクテ、傷ヤブリ↠肌カハベヲ致ルトキニ↠骨ニ、一タビ聞ケバ↢滅除薬ノ鼓ノ声ヲ↡、即チ毒ノ箭除コリヌルガ↥。豈ニ以テ↢深毒ナルヲ↡不ラム↢肯アヘテ出デ↡也。

^▲ª決けつ定じょうに在ありº といふは、 罪つみを造つくる時ときは*有う間心けんしん・*有後うご心しんをもつてす。 仏ぶつを念ねんずる時ときは無む間けん心しん・無後むご心しんをもつてし、 つひにすなはち命いのちを捨すつるまで善心ぜんしん猛みょう利りなり。 ここをもつてすなはち生しょうず。

▲在リトイフ↢決定ニ↡者、造ル↠罪ヲ之時ニハ以テス↢有間心ヲ↡有ル↢後心↡也。念ズル↠仏ヲ之時ニハ以テシテ↢无間ノ心ヲ↡无クシテ↢後心↡、遂ニ即チ捨ツルニ↠命ヲ善心猛利ナリ。是ヲ以テ即チ生ズ。

^▲たとへば*十じゅう囲いの索なわは千せん夫ぷも制せいせざれども、 童どう子じ剣けんを揮ふるひて須しゅ臾ゆに両りょう段だんするがごとし。

譬ヘバ如シ↢十囲之索ナハヲ千夫ニ不シテ↠制タタ、童子揮フルヒテ↠剣ヲ須臾ニ両段スルガ↡。

^▲また千年せんねん積つめる草くさに、 大おおきさ豆まめばかりの火ひをもつてこれを焚やくに、 小しょう時じにすなはち尽つくるがごとし。

又如シ↧千年積メル草ニ、以テ↢大キサ豆バカリノ火ヲ↡焚クニ↠之ヲ、小時ニ即チ尽クルガ↥。

^また人ひとありて、 一いっ1142生しょうよりこのかた、 十じゅう善業ぜんごうを修しゅして天てんに生うまるることを得うべきに、 臨りん終じゅうの時ときに一念いちねんの決けつ定じょうの邪見じゃけんを起おこさば、 すなはち阿鼻あび地じ獄ごくに堕だするがごとし。

又如シ↧有リテ↠人一生ヨリ已来タ修シテ↢十善*業ヲ↡応キガ↠得↠生ルルコトヲ↠天ニ、臨終之時ニ起サバ↢一念ノ決定ノ邪見ヲ↡、即チ堕スルガ↦阿鼻地獄ニ↥。

^悪業あくごうの虚こ妄もうなるすら猛みょう利りなるをもつてのゆゑに、 なほよく一いっ生しょうの善業ぜんごうを排はらひて悪道あくどうに堕だせしむ。 あにいはんや、 臨りん終じゅうに猛みょう利りの心しんに仏ぶつを念ねんずる、 真実しんじつ無む間けんの善業ぜんごうをや。 無始むしの悪業あくごうを排はらふことあたはずして、 浄じょう土どに生うまるることを得えずといはば、 この処ことわりあることなからん」 と。 以上

悪業ノ虚妄ナルスラ以テノ↢猛利ナルヲ↡故ニ、尚能ク排ヒテ↢一生ノ善ノ業ヲ↡令ム↠堕セ↢悪道ニ↡。豈ニ況ヤ臨終ニ猛利ノ心ニ念ズル↠仏ヲ真実無間ノ善業ヲヤ、不シテ↠能ハ↠排フコト↢無始ノ悪業ヲ↡不トイハバ↠得↠生ズルコトヲ↢浄土ニ↡者、无ケムト↠有ルコト↢是ノ処コトワリ↡。」 已上

^また ¬安楽あんらく集しゅう¼ (上) に、 七しちの喩たとへをもつてこの義ぎを顕あらわせり。

又¬安楽集ニ¼以テ↢七ノ喩ヲ↡顕セリ↢此ノ義1222ヲ↡。

^「△一いちには少しょう火かの喩たとへ、 前さきのごとし。

「一ニハ少火ノ喩如シ↠前ノ。

^▲二にには、 *躄あしなえなるものも他たの船ふねに寄き載さいすれば、 風帆ふうはんの勢いきおひによりて一日いちにちに千せん里りに至いたる。

二ニハ*躄アシナヘナル者モ寄ヤドリ↢載リテ他ノ船ニ↡、因リテ↢風帆ノ勢ニ↡一日ニ至ル↢千里ニ↡。

^▲三さんには、 貧人びんにん、 一端いったんの物ものを獲えてもつて王おうに貢たてまつるに、 王おう慶よろこびて重おもく賞しょうするに、 しばらくのあひだに、 富貴ふき、 望のぞみに盈みつ。

三ニハ貧人獲テ↢一*端ノ物ヲ↡而シテ以テ貢ルニ↠王ニ。王慶ビテ重ク賞ルニ、斯須シバラク之*項アヒダニ富貴盈ミツ↠望ニ。

^▲四しには、 劣れっ夫ぷも、 もし輪王りんのうの行みゆきに従したがへば、 すなはち虚こ空くうに乗じょうじて、 飛ひ騰とう自じ在ざいなり。

四ニハ劣夫モ若シ従ヒヌレバ↢輪王ノ行ニ↡、便チ乗ノボリテ↢虚空ニ↡飛騰自在ナリ。

^△五ごには十じゅう囲いの索なわの喩たとへ、 前さきのごとし。

五ニハ十囲ノ索ナハノ喩如シ↠前ノ。

^▲六ろくには、 鴆ちん鳥ちょう水みずに入いれば魚蚌ぎょぼうことごとく斃しぬ。 みな犀角さいかくをもつてこれに触ふるれば、 死ししたるもの還かえりて活よみがえる。

六ニハ*鴆鳥入レバ↠水ニ魚蚌斯コトゴトク斃シヌ。*皆犀角ヲモテ触ルレバ↢諸ノ死シタル者ニ↡還リテ活ヨミガヘル。

^▲七しちには、 黄鵠こうこく、 ª子し安あん子し安あんº と喚よべば、 還かえりて活よみがえる。 あに墳ふん下げの千齢せんれい決さだめて甦よみがえるべきことなしといふことを得うべけんや。

七ニハ黄鵠喚ベバ↢子安子*安ト↡還リテ活ヨミガヘル。豈ニ可ケム↠得↠言フコトヲ↢墳ノ下ノ千齢決サダメテ无シト↟可キコト↠甦ル也。

^▲一切いっさいの万法まんぽうにみな自じ力りき・他た力りき、 自摂じしょう・他た摂しょうありて、 千開せんかい万閉まんぺい無む量りょう無む辺へんなり。 ◆あに有礙うげの識しきをもつて、 かの1143無礙むげの法ほうを疑うたがふことを得えんや。 ◆また五ご不思議ふしぎのなかには仏法ぶっぽうもつとも不可ふか思議しぎなり。 あに三界さんがいの繋け業ごうをもつて重おもしとなし、 かの少時しょうじの念法ねんぽうを疑うたがひて軽かろしとなさんや」 と。 以上略抄

▼一切ノ万法ニ皆*有リテ↢自力・他力、自摂・他摂↡。千開万閉、無量无辺ナリ。豈ニ得ム↧以テ↢有礙之識ヲ↡疑フコトヲ↦彼ノ无礙之法ヲ↥乎。又五不思議ノ中ニハ仏法最モ不可思議ナリ。豈ニ以テ↢三界ノ繋ノ業ヲ↡為シテ↠重シト、疑ヒテ↢彼ノ少時ノ念法ヲ↡為サムヤト↠*軽シト。」 已上略抄

^いまこれに加くわへていはく、 ▲一いちには、 *栴檀せんだんの樹き出成しゅつじょうする時ときに、 よく四し十じゅう由ゆ旬じゅんの*伊い蘭らんの林はやしを変へんじて、 あまねくみな香こう美みならしむ。

今加ヘテ↠之ニ云ク、▼一ニハ*旃檀ノ樹出成スル時ニ、能ク変ジテ↢由旬ノ伊蘭ノ林ヲ↡普ク皆香美ナリ。

^▲二にには、 獅子ししの筋すじを用もちゐて、 もつて琴ことの絃げんとなせば、 音おん声じょう一ひとたび奏そうするに、 一切いっさいの余よの絃げん、 ことごとくみな断だん壊えしぬ。

◆二ニハ用ヰテ↢師子ノ筋ヲ↡以テ為レバ↢琴ノ絃ト↡、音声一タビ奏スルニ、一切ノ余ノ絃ヲ悉ク皆断壊シヌ。

^三さんには、 ▼一斤いっこんの*石汁しゃくじゅう、 よく千斤せんこんの銅あかがねを変へんじて金こがねとなす。

◆三ニハ一斤ノ石ノ汁能ク変ジテ↢千斤ノ銅ヲ↡為ス↠金ト。

^四しには、 金剛こんごう堅けん固ごなりといへども、 *羖羊こうようの角つのをもつてこれを扣たたけば、 すなはち潅然かんねんとして氷こおりのごとく泮とけぬ。 以い上じょう、 滅罪めつざいの譬たとへ。

◆四ニハ金剛雖モ↢堅固ナリト↡、以テ↢羖羊ノ角ヲ↡扣タタケバ↠之ヲ、則チ潅然トシテ氷ノゴトク泮トケヌ。*已上滅罪ノ*譬

^五ごには、 ▼雪山せっせんに草くさあり、 名なづけて*忍辱にんにくとなす。 牛うしもし食じきすれば、 すなはち*醍だい醐ごを得う。

◆五ニハ雪山ニ有リ↠草、名ケテ為ス↢忍辱ト↡。牛若シ食スレバ*者即チ得↢醍醐ヲ↡。

^六ろくには、 *沙しゃ訶陀かだ薬やくにおいて、 ただ見みることあるものは、 寿じゅを得うること無む量りょうなり。 乃ない至し、 念ねんずるものは*宿命しゅくみょう智ちを得う。

◆六ニハ於テ↢沙訶*陀薬ニ↡但有ル↠見ルコト者、得ルコト↠寿ヲ*无量ナリ。乃至念ズル者ハ得↢宿命智ヲ↡。

^▽七しちには、 孔雀くじゃく、 雷いかずちの声こえを聞ききてすなはち*身しんあることを得う。

◆七ニハ孔雀聞キテ↢雷ノ声ヲ↡即チ得↠有ルコトヲ↠身。

^八はちには、 ▼*尸利しり沙しゃ、 *昴星ぼうせいを見みてすなはち菓か実じつを出生しゅっしょうす。 以い上じょう、 生しょう善ぜんの譬たとへ。

◆八ニハ尸利沙見テ↢昴星ヲ↡則チ出↢生ス菓実ヲ↡。已上生善ノ*譬

^▲九くには、 住水じゅうすい宝ほうをもつてその身みに瓔珞ようらくとすれば、 深ふかき水みずのなかに入いれども、 しかも没しずみ溺にゃくせず。

◆九ニハ以テ↢▼住水宝ヲ↡瓔↢珞トスレバ其ノ身ニ↡入レドモ↢深キ水ノ中ニ↡而モ不↢没ミ*弱セ↡。

^△十じゅうには、 *沙礫しゃりゃく少すくなしといへども、 なほ浮うかぶことあたはず。 *磐ばん石じゃく大だいなりといへども、 船ふねに寄よすればよく浮うかぶ。 以い上じょう、 総そうの譬たとへ。

◆十ニハ沙礫雖モ↠少シト尚不↠能ハ↠浮ブコト。*磐石雖モ↠大ナリト寄1223スレバ↠船ニ能ク浮ブ。已上総ノ譬

^諸法しょほうの力用りきゆう、 思おも1144ひがたきことかくのごとし。 念仏ねんぶつの功く力りき、 これに准なぞらへて疑うたがふことなかれ。

◆諸法ノ力用、難キコト↠思ヒ如シ↠是クノ。念仏ノ功*力、准ヘテ↠之ニ莫レ↠疑フコト。

 ^問とふ。 臨りん終じゅうの心念しんねんは、 その力りきいくばくなればか、 よく大だい事じを成じょうずる。

問フ。臨終ノ心念ハ、其ノ力幾許イクラバカリアレバカ、能ク成ズル↢大事ヲ↡。

^答こたふ。 その力りき、 百ひゃく年ねんの業ごうに勝すぐれたり。

答フ。其ノ力勝レタリ↢百年ノ業ニ↡。

^ゆゑに ¬大論だいろん¼ (大智度論) にいはく、 「この心しんは時ときのあひだ少すくなしといへども、 しかも心力しんりき猛みょう利りなること、 火ひのごとく毒どくのごとくなれば、 少すくなしといへどもよく大だい事じを成じょうず。 これ死しなんとする時ときの心しんも、 決けつ定じょうして勇健ゆうごんなるがゆゑに、 百ひゃく歳さいの行ぎょう力りきに勝すぐれたり。

故ニ¬大論ニ¼云ク、「是ノ心ハ雖モ↢時ノ*項アヒダ少シト↡、而モ心力*猛利ナルコト如ク↠火ノ如シ↠毒ノ。雖モ↠少シト能ク成ズ↢大事ヲ↡。是垂スル↠死ナムト時ノ心モ、決定シテ勇健ナルガ故ニ勝レタリ↢百歳ノ行力ニ↡。

^この後ご心しんを名なづけて大心だいしんとなす。 身しんおよびもろもろの根こんを捨すつるをもつて、 事こと急きゅうなるがゆゑに。 人ひとの、 陣じんに入いるに身しん命みょうを惜おしまざるを、 名なづけて健ごんとなすがごとし。 阿羅あら漢かんのこの身みの着じゃくを捨すつるがゆゑに阿羅あら漢かんの道どうを得うるがごとし」 と。 以上

是ノ後心ヲ名ケテ為ス↢大心ト↡。以テ↠捨ツルヲ↢身及ビ諸ノ*根ヲ↡事*急ナルガ故ニ。如シ↧人ノ入ルニ↠陳ニ不ルヲ↠惜マ↢身命ヲ↡名ケテ*為ルガ↞健ト。如シト↧阿羅漢ノ捨ツルガ↢是ノ身ノ著ヲ↡故ニ得ルガ↦阿羅漢ノ道ヲ↥。」 已上

^これによりて ¬安楽あんらく集しゅう¼ (上) にいはく、 「▲一切いっさい衆しゅ生じょう、 臨りん終じゅうの時ときには、 刀風とうふう形かたちを解とき、 死苦しく来きたり逼せむるに、 大だい怖畏ふいを生しょうじて、 乃ない至し、 すなはち往おう生じょうすることを得う」 と。

由リテ↠此ニ¬安楽集ニ¼云ク、「一切衆生臨終之時ニハ、刀風解キ↠形ヲ、死苦来リ逼ムルニ、生ジテ↢大怖畏ヲ↡、乃至便チ得ト↢往生スルコトヲ↡。」

 ^問とふ。 深ふかき観念かんねんの力ちから、 罪つみを滅めっすることはしかるべし。 いかんぞ、 仏号ぶつごうを称しょう念ねんするに無む量りょうの罪つみを滅めっする。 もししからば、 指ゆびをもつて月つきを指さすに、 この指ゆびよく闇やみを破はすべし。

問フ。深キ観念ノ力滅スルコトハ↠罪ヲ可シ↠然ル。云何ゾ称↢念スルニ仏号ヲ↡滅スル↢无量ノ罪ヲ↡。若シ爾ラバ、以テ↠指ヲ指スニ↠月ヲ、此ノ指応シ↢能ク*破ス↟闇ヲ。

^答こたふ。 綽しゃく和か尚しょう (道綽) 釈しゃくしていはく (安楽集・上意)、 「▲諸法しょほうは万差まんじゃなり。 一概いちがいすべからず。 おのづから名なの法ほうに即そくするあり。 おのづから名なの法ほうに1145異いするあり。

答フ。綽和尚釈シテ云ク、「諸法ハ万差ナリ。不↠可カラ↢一概ス↡。自ラ有リ↢名即法ナル↡。自ラ有リ↢名異法↡。

^◆名なの法ほうに即そくするといふは、 諸仏しょぶつ・菩ぼ薩さつの名みょう号ごう、 禁呪きんじゅの音おん辞じ、 修しゅ多羅たらの章しょう句く等とうのごとき、 これなり。

名即法トイフ者、如キ↢諸仏・菩薩ノ名号、禁呪ノ音辞、修多羅ノ章句等ノ↡是也。

^◆禁呪きんじゅの辞じに、 ª日にっ出しゅつ東方とうぼう乍さ赤しゃく乍さ黄おうº といはんに、 たとひ酉亥ゆうがいに禁きんを行ぎょうずるも、 患わずらへるものまた愈いゆるがごとし。

如シ↢禁呪ノ辞ニ曰フガ↡、日出デヌレバ↢東方ニ↡乍タチマチニ赤ク乍タチマチニ黄ナリト。仮令 タトヒ 酉亥ニ行ズトモ↠禁ヲ患スル者亦愈ユ。

^◆また人ひとありて、 狗いぬに噛くはるることを被こうむるに、 虎とらの骨ほねを炙あぶりてこれを熨のせば、 患わずらへるものすなはち愈いゆるがごとし。 もし時ときに骨ほねなくは、 よく掌たなごころをひろげてこれを磨すりて、 口くちのなかに喚よびて、 ª虎こ来らい虎こ来らいº といへば、 患わずらへるものまた愈いえぬ。

又如シ↧有リテ↠人被ルニ↢狗ニ所ルコトヲ↟*噛ハ、炙リテ↢虎ノ骨ヲ↡*熨セバ↠之ヲ、患スル者*即チ愈ユルガ↥。或モシ時ニ无クハ↠骨、好ク*ヒロゲテ↠掌ヲ磨リテ↠之ヲ、口ノ中ニ喚ビテ言ヘバ↢虎来虎来ト↡、患スル者亦愈エヌ。

^◆あるいはまた人ひとありて、 脚転筋こむらがえりを患わずらはんに、 木瓜ぼけの杖つえを炙あぶりてこれを熨のせば、 患わずらへるものすなはち愈いえぬ。 もし木瓜ぼけなければ、 手てを炙あぶりてこれを磨すり、 口くちに ª木瓜ぼけº と喚よべば、 患わずらへるものまた愈いえぬ。

或イハ*復有リテ↠人、患スルニ↢*脚転筋ヲ↡、炙リテ↢木瓜ノ杖ヲ↡*熨セバ↠之ヲ、患スル者即チ愈エヌ。或モシ无ケレバ↢木瓜↡、炙リテ↠手ヲ磨リ↠之ヲ、口ニ喚ベバ↢木瓜ト↡、患スル者亦愈エヌ也。

^◆名なの法ほうに異いするといふは、 指ゆびをもつて月つきを指さすがごとき、 これなり」 と。 以上

名ノ異ナルトイフ↠法ニ者、如キ↢以テ↠指ヲ指1224スガ↞月ヲ是ナリト。」 已上

^¬要決ようけつ¼ (西方要決) にいはく、 「諸仏しょぶつは、 願がん行ぎょうをもつてこの果か名みょうを成じょうずれば、 ただよく号ごうを念ねんずるに、 つぶさに衆徳しゅとくを苞かねたり。 ゆゑに大善だいぜんを成じょうず」 と。 以い上じょう、 かの文もんに ¬浄名じょうみょう¼ (*維摩経)・¬*成じょう実じつ¼ の文もんを引ひけり。 つぶさには△上かみの助念じょねん方法ほうほうのごとし。

¬要*決ニ¼云ク、「▼諸仏ノ願行ヲモテ成ズレバ↢此ノ果ノ名ヲ↡、但能ク念ズルニ↠号ヲ具ニ苞カネタリ↢衆徳ヲ↡。故ニ成ズト↢大善ヲ↡。」已上彼ノ文ニ引ケリ↢¬浄名¼・¬成実ノ¼文ヲ↡。具ニハ如シ↢上ノ助念方法ノ↡

 ^問とふ。 もし下下げげ品ぼんの五ご逆ぎゃく罪ざいを造つくれるもの、 十とたび仏ぶつを念ねんずるによりて往おう生じょうすることを得うといはば、 いかんぞ、 *¬仏蔵ぶつぞう経きょう¼ の第だい三さんにのたまはく、 「大だい荘しょう厳ごん仏ぶつの1146滅めつ後ごに↓四しの悪あく比丘びくありき。 第一だいいち義ぎ・無む所しょ有う・畢ひっ竟きょう空くうの法ほうを捨すてて、 外げ道どう*尼に健けん子しの論ろんを貪とん楽ぎょうしき。

問フ。若シ下々品ノ造レルモノ↢五逆罪ヲ↡、由リテ↢十タビ念ズルニ↟仏ヲ得トイハバ↢往生スルコトヲ↡者、云何ゾ¬仏蔵経ノ¼第三ニ云ク、「大荘厳仏ノ滅後ニ有リキ↢四ノ*悪比丘↡。捨テテ↢第一義・无所有・畢竟空ノ法ヲ↡、貪↢楽シキ外道尼*健子ノ論ヲ↡。

^この人ひと、 命終みょうじゅうして阿鼻あび地じ獄ごくに堕おちて、 仰あおぎて臥ふし、 伏うつぶきて臥ふし、 左さ脇きょうにして臥ふし、 右う脇きょうにして臥ふすこと、 おのおの九く百ひゃく万まん億歳おくさい、 熱鉄ねつてつの上うえにして焼やき燃やかれ、 こがれ爛ただれき。 死ししをはりて、 さらに灰け地じ獄ごく・大だい灰け地じ獄ごく・等活とうかつ地じ獄ごく・黒こく縄じょう地じ獄ごくに生うまれて、 みな上かみのごとき歳数さいしゅ、 苦くを受うく。 黒こく縄じょうより死ししては還かえりて阿鼻あび獄ごくに生うまる。

是ノ人命終シテ堕チテ↢阿鼻*地獄ニ↡、仰ギテ臥シ、伏ウツブキテ臥シ、左脇ニシテ臥シ、右脇ニシテ臥シテ、各 ノ九百万億歳於テ↢熱鉄ノ上ニ↡焼キ燃カレ*ガレ爛タダレキ。死シ已リテ更ニ生レテ↢灰地獄・大灰地獄・*等活地獄・黒縄地獄ニ↡、皆如クシテ↢上ノ歳数ノ↡受ク↠苦ヲ。於リ↢黒縄↡死シテハ還リテ生ル↢阿鼻獄ニ↡。

^かの、 家けと出しゅっ家けにして親近しんごんせしもの、 ならびにもろもろの*檀越だんおつ、 おほよそ六ろっ百ひゃく四し万億まんおくの人にん、 この四しの師しとともに生しょうじともに死しして、 大だい地じ獄ごくにありてもろもろの焼しょう煮しょを受うけき。 劫こう尽つきては他た方ほうの地じ獄ごくに転てん生しょうし、 劫こう成じょうじては還かえりてこの間けんの地じ獄ごくに生うまる。

彼ノ家ト・出家ノ親近セシモノ并ニ諸ノ檀越、凡ソ六百*四万億ノ人、与↢此ノ四ノ師↡倶ニ生ジ倶ニ死シテ、在リテ↢大地獄ニ↡受ケキ↢諸ノ焼煮ヲ↡。劫尽キテハ転↢生シテ他方ノ地獄ニ↡、劫成ジテハ還リテ生ル↢此ノ間ノ地獄ニ↡。

^久々くくにして地じ獄ごくを免まぬかれて人にん中ちゅうに生うまれては、 *五ご百ひゃく世せ、 生うまれてより盲めしいなり。 後のちに一切いっさい明みょう王おう仏ぶつに値あひて出しゅっ家けして、 十じゅう万億まんおく歳さい、 勤修ごんしゅ精しょう進じんすること*頭ず燃ねんを救はらふがごとくせしかども、 *順じゅん忍にんすら得えざりき。 いはんや、 *道どう果かを得えんや。 命終みょうじゅうしては還かえりて阿鼻あび地じ獄ごくに生うまれにき。

久々ニシテ免レテ↢地獄ヲ↡生レテハ↢人中ニ↡、五百世従リシテ↠生レテ而盲ナリ。後ニ値ヒテ↢一切明王仏ニ↡出家シテ、十万億歳勤修精進コト如クセシカドモ↠救フガ↢頭燃ヲ↡、不リキ↠得↢順忍ヲダモ↡。況ヤ得ムヤ↢道果ヲ↡。命終シテハ還リテ生レニキ↢阿鼻地獄ニ↡。

^後のちに九く十じゅう九く億おくの仏ぶつに値あひても、 順じゅん忍にんすら得えざりき。 なにをもつてのゆゑに。 仏ぶつの、 深法じんぽうを説ときたまひしに、 この人ひと信しんぜずして、 破壊はえし違い逆ぎゃくし、 *賢げん聖じょう・持じ戒かいの比丘びくを破毀はきして、 その過か悪あくを出いだせる破は法ほうの因縁いんねんもつて、 法ほうとしてまさにしかるべし」 と。 以い1147上じょう、 略りゃくして抄しょうす。 「↑四しの比丘びく」 とは苦く岸がん比丘びく・薩さつ和多わた比丘びく・将しょう去こ比丘びく・跋難ばつなん陀だ比丘びくなり。

於テ↠後ニ値ヒテモ↢九十九億ノ仏ニ↡、不リキ↠得↢順忍ヲダニモ↡。何ヲ以テノ故ニ。仏ノ説キタマヒシニ↢深法ヲ↡、是ノ人不シテ↠信ゼ、破↢壊シ違↣逆シ破↤毀シテ賢聖・持戒ノ比丘ヲ↡、出セル↢其ノ過悪ヲ↡破法ノ因縁ヲモテ法トシテ応ニ当シト↠爾ル。」已上略シテ抄ス。四ノ比丘ト者苦岸比丘・薩和多比丘・将去比丘・跋難陀比丘ナリ

^十じゅう万億まんおく歳さい、 頭ず燃ねんを救はらふがごとくせしも、 なほ罪つみを滅めっせずして、 還かえりて地じ獄ごくに生しょうじき。 いかんぞ、 仏ぶつを念ねんずること一いっ声しょう・十じっ声しょうしてすなはち罪つみを滅めっして、 浄じょう土どに往おう生じょうすることを得うるや。

十万億歳如クセシモ↠救フガ↢頭燃ヲ↡、尚不シテ↠滅セ↠罪ヲ、還リテ生ジキ↢地獄ニ↡。如何ゾ念ズルコト↠仏ヲ一声・十声シテ即チ得テ↠滅スルコトヲ↠罪ヲ往↢生スルコトヲ浄1225土ニ↡*耶。

^答こたふ。 感かん師し (懐感) 釈しゃくしていはく (群疑論)、 「仏ぶつを念ねんずるは、 五ごの縁えんによるがゆゑに罪つみを滅めっす。

答フ。感師釈シテ云ク、「念ズルハ↠仏ヲ由ルガ↢五ノ縁ニ↡故ニ滅ス↠罪ヲ。

^一いちには、 大だい乗じょうの心しんを発おこす縁えん。 二にには、 浄じょう土どに生しょうぜんと願がんずる縁えん。 小乗しょうじょうの人にんは、 十方じっぽうの仏ぶつましますと信しんぜざるがゆゑに。 三さんには、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの本願ほんがんの縁えん。 四しには、 念仏ねんぶつの功く徳どくの縁えん。 かの比丘びくは、 ただ四し念処ねんじょの観かんをなせしがゆゑに。 五ごには、 仏ぶつの威い力りきをもつて加持かじしたまふ縁えんなり。 このゆゑに、 罪つみを滅めっして浄じょう土どに生しょうずることを得う。 かの小乗しょうじょうの人にんは、 しからざりき。 ゆゑに罪つみを滅めっすることあたはず」 と。 略抄

一ニハ発ス↢大乗ノ心ヲ↡縁。二ニハ願ズル↠生レムト↢浄土ニ↡縁。小乗ノ人ハ不ルガ↠信ゼ↠有スト↢十方ノ仏↡故ニ。三ニハ阿弥陀仏ノ本願ノ縁。四ニハ念仏ノ功徳ノ縁。彼ノ比丘ハ但シ作セシガ↢四念処ノ観ヲ↡故ニ。五ニハ仏ノ威力ヲモテ加持ノ縁ナリ。是ノ故ニ滅シテ↠罪ヲ得↠生ズルコトヲ↢浄土ニ↡。彼ノ小乗ノ人ハ不リキ↠爾ラ。故ニ不ト↠能ハ↠滅スルコト↠罪ヲ。」略抄

 ^問とふ。 もししからば、 いかんぞ、 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・上) に十じゅう念ねん往おう生じょうを説ときて、 「▲ただ五ご逆ぎゃくと誹ひ謗ほう正しょう法ぼうをば↓除のぞく」 とのたまへる。

問フ。若シ爾ラバ云何ゾ¬双巻経ニ¼説キテ↢十念往生ヲ↡、云ヘル↣「唯除クト↢五逆ト・誹謗正法ヲバ↡。」

^答こたふ。 *智ち憬きょう等とうの諸しょ師しのいはく、 「もしただ五ご逆ぎゃくを造つくれるものは、 十じゅう念ねんによるがゆゑに生しょうずることを得う。 もし逆ぎゃく罪ざいをも造つくり、 また法ほうをも謗そしれるものは、 往おう生じょうすることを得えず」 と。

答フ。智憬等ノ諸師ノ云ク、「若シ唯造レル↢*五逆ヲ↡者ハ、由ガ↢十念ニ↡故ニ得↠生ズルコトヲ。若シ造リ↢逆罪ヲモ↡亦謗レル↠法ヲモ者ハ、不ト↠得↢往生スルコトヲ↡。」

^*あるがいはく、 「五ご逆ぎゃくの*不ふ定じょう業ごうを造つくれるものは往おう生じょうすることを得うるも、 五ご逆ぎゃくの*定じょう業ごうを造つくれる1148ものは往おう生じょうせず」 と。

有ルガ云ク、「造レルモノハ↢五逆ノ不定業ヲ↡得ルモ↢往生スルコトヲ↡。造レルモノハ↢五逆ノ定業ヲ↡不ト↢往生セ↡。」

^かくのごとく十じゅう五ご家けの釈しゃくあり。 感かん法ほっ師し (懐感)、 諸しょ師しの釈しゃくを用もちゐずして、 みづからいはく (群疑論)、 「もし逆ぎゃくを造つくらざる人ひとは、 念ねんの多た少しょうを論ろんずるにあらず、 一いっ声しょう・十じっ声しょうともに浄じょう土どに生うまる。 もし逆ぎゃくを造つくれる人ひとは、 かならずすべからく十じゅうを満みつべし。 一いちをも闕かけつれば生しょうぜず。 ゆゑに ª↑除のぞくº といふなり」 と。 以上

如クシテ↠是クノ有リ↢十五家ノ釈↡。感法師不シテ↠用ヰ↢諸師ノ釈ヲ↡自ラ云ク、「若シ不ル↠造ラ↠逆ヲ人ハ*不ズ↠論ズルニ↢念之多少ヲ↡。一声・十声倶ニ生ル↢浄土ニ↡。*若シ造レル↠逆ヲ人ハ必ズ須クシ↠満ツ↠十ヲ。闕ケツレバ↠一ヲモ不↠生ゼ。故ニ言フ↠除クト也ト。」 已上

^いま試こころみに釈しゃくを加くわへば、 *余よ処しょにはあまねく往おう生じょうの種類しゅるいを顕あらわすも、 本願ほんがんにはただ*定生じょうしょうの人にんのみを挙あぐ。 ゆゑにいへり、 「△しからずは、 正しょう覚がくを取とらじ」 と。

今試ニ加ヘム↠釈ヲ。余処ニハ遍ク顕スモ↢往生ノ種類ヲ↡。本願ニハ唯挙グ↢定生之人ノミヲ↡。故ニ云ヘリ、「不ハ↠爾ラ不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」

^*余よ人にんの十じゅう念ねんはさだめて往おう生じょうすることを得え、 逆ぎゃく者しゃの一念いちねんはさだめて生しょうずることあたはず。 逆ぎゃくの十じゅうと余よの一いちとは、 みなこれ不ふ定じょうなり。 ゆゑに、 願がん (第十八願) にはただ余よ人にんの十じゅう念ねんを挙あげて、 余よ処しょには、 兼かねて逆ぎゃくの十じゅうと余よの一いちとを取とれり。 この義ぎいまだ決けっせず。 別べつに思し択ちゃくすべし。

余人ノ十念ハ定メテ得↢往生スルコトヲ↡、逆者ノ一念ハ定メテ不↠能ハ↠生ズルコト。逆ノ十ト余ノ一トハ皆是不定ナリ。故ニ願ニハ唯挙ゲテ↢余人ノ十念ヲ↡、余処ニハ兼ネテ取レリ↢逆ノ十ト余ノ一トヲ↡。此ノ義未ダ↠決セ。別ニ応シ↢思*択ス↡。

 ^問とふ。 逆ぎゃく者しゃの十じゅう念ねん、 なんがゆゑぞ不ふ定じょうなる。

問フ。逆者ノ十念何ガ故ゾ不定ナル。

^答こたふ。 宿しゅく善ぜんの有無うむによりて念力ねんりき別べつなるがゆゑに。 また臨りん終じゅうと尋じん常じょうと、 念ねんずる時とき別べつなるがゆゑに。

答フ。由リテ↢宿善ノ有无ニ↡念力別ナルガ故ニ。又臨終ト尋常ト念ズル時別ナルガ故ニ。

 ^問とふ。 五ご逆ぎゃくはこれ*順生じゅんしょうの業ごうなり。 報ほう・時じともに定さだまれり。 いかんぞ滅めっすることを得えん。

問フ。五逆ハ是順生ノ業ナリ。報・時倶ニ定レリ。云何ゾ得ム↠滅スルコトヲ。

^答こたふ。 感かん師し (懐感)、 これを釈しゃくしていはく (群疑論)、 「*九部くぶの*不ふ了りょうの教きょうのなかには、 もろもろの*不ふ信しん業ごう果かの凡ぼん夫ぶのために、 *密みつ意いをもつて説ときて ª定じょう1149報ほうの業ごうありº といふ。 もろもろの大だい乗じょうの*了りょう義ぎの教きょうのなかには、 ª一切いっさいの業ごうことごとくみな不ふ定じょうなりº と説ときたまふ。

答フ。感師釈シテ↠之ヲ云1226ク、「九部ノ不了ノ教ノ中ニハ、為ニ↢諸ノ不信業果ノ凡夫ノ↡、密意ヲモテ説キテ言フ↠有リト↢定報ノ業↡。於テ↢諸ノ大乗ノ了義ノ教ノ中ニ↡ハ、説キタマフ↢一切ノ業悉ク皆不定ナリト↡。

^¬*涅ね槃はん経ぎょう¼ の*第だい十じゅう八はっ巻かんにのたまふがごとし。 *耆婆ぎば、 *阿あ闍じゃ世せ王おうのために懴さん悔げの法ほうを説とくに、 ª罪つみ滅めっすることを得えたりº と。

如シ↢¬涅槃経ノ¼第十八巻ニ云フガ↡。耆婆為ニ↢阿闍世王ノ↡説クニ↢懴悔ノ法ヲ↡、罪得タリト↠滅スルコトヲ。

^またのたまはく (涅槃経)、 ª臣しん、 仏ぶつの説せつを聞きくに、 «一いちの善心ぜんしんを修しゅすれば百ひゃく種しゅの悪あくを破はす» と。 少すこしき毒薬どくやくのよく衆しゅ生じょうを害がいするがごとし。 少しょう善ぜんもまたしかり。 よく大悪だいあくを破はすº と。

又云ク、臣聞クニ、仏ハ説キタマフ↧修シテ↢一ノ善心ヲ↡破スルコト↢百種ノ悪ヲ↡、如シ↣少シノ毒薬ノ能ク害ルガ↢衆生ヲ↡、少善モ亦爾リ、能ク破スト↦大悪ヲ↥。

^また三さん十じゅう一いちにのたまはく (涅槃経)、 ª善男ぜんなん子し、 もろもろの衆しゅ生じょうありて、 *業縁ごうえんのなかにおいて心しん軽かろんじて信しんぜず。 かれを度どせんがためのゆゑにかくのごとき説せつをなしたまふ。 善男ぜんなん子し、 一切いっさいの作さ業ごうは軽きょうあり重じゅうあり。 軽重きょうじゅうの二に業ごうにまたおのおの二にあり。 一いちには決けつ定じょう、 二にには不ふ決けつ定じょうなりº と。

又*卅一ニ云ク、善男子、有リテ↢諸ノ衆生↡於テ↢業縁ノ中ニ↡心軽ジテ不↠信ゼ。為ノ↠度セムガ↠彼ヲ故ニ作シタマフ↢如キ↠是クノ説ヲ↡。善男子、一切ノ作業ハ有リ↠軽有リ↠重。軽重ノ二業ニ復各 ノ有リ↠二。一ニハ決定、二ニハ不決定ナリト。

^またのたまはく (涅槃経)、 ªあるいは重じゅう業ごうの、 軽きょうとなし得うべきことあり。 あるいは軽きょう業ごうの、 重じゅうとなし得うべきことあり。 ↓有う智ちの人にんは、 智慧ちえの力ちからをもつて、 よく地じ獄ごくの極ごく重じゅうの業ごうをして現げん世ぜに軽かろく受じゅせしむるも、 愚痴ぐちの人にんは、 現げん世ぜの軽きょう業ごうを地じ獄ごくに重おもく受うくº と。 阿あ闍じゃ世せ王おうは罪つみを懴さん悔げしをはりて地じ獄ごくに入いらず。 *鴦掘おうくつ摩羅まらは阿羅あら漢かんを得えたり。

又言ク、或イハ有リ↢重業ノ可キコト↟得↠作ルコトヲ↠軽ト。或イハ有リ↢軽業ノ可キコト↟得↠作ルコトヲ↠重ト。有智*之人ハ、以テ↢智*恵ノ力ヲ↡能ク令ムルモ↢地獄ノ極重之業ヲシテ現世ニ軽ク受セ↡。愚痴之人ハ現世ノ軽業ヲシテ地獄ニシテ重クシテ受クト。阿闍世王ハ懴↢悔シ罪ヲ↡已リテ不↠入ラ↢地獄ニ↡。鴦*掘摩羅ハ*得タリ↢阿羅漢ヲ↡。

^*¬瑜伽ゆが論ろん¼ に説とかく、 ªいまだ解げ脱だつを得えざるを、 決けつ定じょう業ごうと説とき、 すでに解げ脱だつを得えたるを、 不ふ定じょう業ごうと名なづくº と。 かくのごとき等らのもろもろの大だい乗じょう経きょう論ろん1150には、 五ご逆ぎゃく罪ざい等とうを説ときてみな不ふ定じょうと名なづけて、 ことごとく消しょう滅めつすることを得う」 と。 転てん重じゅう軽きょう受じゅの相そうは、 つぶさに ¬*放鉢ほうはつ経きょう¼ に出いでたり。

¬*瑜伽論ニ¼説カク、未ダルニ↠得↢解脱ヲ↡*説ク↢決定業ヲ↡。已ニ得ツレバ↢解脱ヲ↡名クトイヘリ↢不定業ト↡。如キ↠是クノ等ノ諸ノ大乗経論ニハ、説キテ↢五逆罪等ヲ↡皆名ケテ↢不定ト↡、悉ク得トイフ↢消滅スルコトヲ↡。」転重軽受ノ相ハ、具ニ出デタリ↢¬放鉢経ニ¼↡

 ^問とふ。 引ひくところの文もんにのたまはく、 「↑智ち者しゃは重おもきを転てんじて軽かろくして受じゅす」 と。 △下げ品ぼん生しょうの人にんは、 ただ十じゅう念ねんしをはりてすなはち浄じょう土どに生うまるるは、 いづれの処ところにしてか軽きょう受じゅする。

問フ。所ノ↠引ク文ニ云ク、智者ハ転ジテ↠重キヲ軽クシテ受スト。下品生ノ人ハ但シ十念シ已リテ即チ生ルルハ↢浄土ニ↡、何レノ処ニシテカ軽受スル。

^答こたふ。 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) に、 かの土どの*胎たい生しょうのものを説ときてのたまはく、 「▲五ご百ひゃく歳さいのうちに三宝さんぼうを見みたてまつらず、 供く養ようしたてまつりて、 もろもろの善本ぜんぽんを修しゅすることを得えず。 しかもこれをもつて苦くとなす。 余よの楽らくありといへども、 なほかの処ところをば楽ねがはず」 と。 以上

答フ。¬双巻経ニ¼説キテ↢彼ノ土ノ胎生ノ者ヲ↡云ク、「五百歳ノ中ニ不↠見タテマツラ↢三宝ヲ↡、不↠得↤供↢養シタテマツリテ修スルコトヲ↣諸ノ善本ヲ↡。而モ以テ↠此ヲ為ス↠苦ト。雖モ↠有リト↢余ノ楽↡猶不ト↠楽ハ↢彼ノ処ヲバ↡。」 已上

^これに准じゅんずるに、 ▲七しち七日しちにち・▲六劫ろっこう・▲十じゅう二に劫こう、 仏ぶつを見みず、 法ほうを聞きかざる等らをもつて、 軽きょう受じゅの苦くとなすべきのみ。

准ルニ↠之ニ、*応シ↧以テ↢七々日・六劫・十二劫、不1227↠見↠仏ヲ不ル↠聞カ↠法ヲ等ヲ↡為ス↦軽受ノ苦ト↥耳。

 ^問とふ。 もし臨りん終じゅうに一ひとたび仏ぶつの名みなを念ねんずるに、 よく八はち十じゅう億劫おくこうのもろもろの罪つみを滅めっするがごとし、 尋じん常じょうの行ぎょう者じゃもまたしかるべきや。

問フ。為モシ如ク↧臨終ニ一タビ念ズルニ↢仏ノ名ヲ↡能ク滅スルガ↦八十億劫ノ衆ノ罪ヲ↥、尋常ノ行者モ亦可シ↠然ル耶。

^答こたふ。 臨りん終じゅうの心しん、 力りきは強こわくしてよく無む量りょうの罪つみを滅めっす。 尋じん常じょうに名みなを称しょうするは、 かれがごとくなるべからず。 しかも、 もし観念かんねん成じょうずれば、 また無む量りょうの罪つみを滅めっす。 もしただ名みなを称しょうするのみならば、 心しんの浅深せんじんに随したがひてその利り益やくを得うること、 差別しゃべつあるべし。 つぶさには△前さきの利り1151益やく門もんのごとし。

答フ。臨終ノ心、力ハ強コハクシテ能ク滅ス↢无量ノ罪ヲ↡。尋常ニ称スルハ↠名ヲ不↠応カラ↠如クナル↠彼ガ。然モ若シ観念成ゼバ亦滅ス↢无量ノ罪ヲ↡。若シ但称スルハ↠名ヲ、随ヒテ↢心ノ浅深ニ↡得ルコト↢其ノ利益ヲ↡応シ↠有ル↢差別↡。具ニハ如シ↢前ノ利益門ノ↡。

 ^問とふ。 なにをもつてか、 浅心せんしんの念仏ねんぶつもまた利り益やくありとは知しることを得うる。

問フ。何ヲ以テカ得ル↠知ルコトヲ↣浅心ノ念仏モ亦有リトハ↢利益↡。

^答こたふ。 ¬*首しゅ楞りょう厳ごん三昧ざんまい経きょう¼ にのたまはく、 「△大だい薬王やくおうあり、 名なを滅除めつじょといふ。 もし闘戦とうせんの時ときに、 もつて鼓つづみに塗ぬりつれば、 もろもろの、 箭やに射いられ刀かたな・矛ほこに傷やぶられたるもの、 鼓つづみの声こえを聞きくことを得えつれば、 箭や出いでて毒どく除のぞこるがごとし。 かくのごとく、 菩ぼ薩さつの*首しゅ楞りょう厳ごん三昧ざんまいに住じゅうする時ときには、 名みなを聞きくことあるものは、 *貪とん・恚い・痴ちの箭や自じ然ねんに抜ぬけ出いでて、 もろもろの邪見じゃけんの毒どくみなことごとく除滅じょめつし、 一切いっさいの煩悩ぼんのうまた発動ほつどうせず」 と。

*答フ。¬首楞厳三昧経ニ¼云ク、「*如ク↧大薬王アリ、名ヲバ曰フ↢滅除ト↡、若シ闘戦ノ時ニ以用モテ塗リツレバ↠鼓ニ、諸ノ被レ↢箭ニ射↡刀・矛ニ所タルモノ↠傷ヤブラ、得ツレバ↠聞クコトヲ↢鼓ノ声ヲ↡箭出デテ毒除コルガ↥、如キ↠是クノ菩薩ノ住スル↢首楞厳三昧ニ↡時ニハ、有ル↠聞クコト↠名ヲ者ハ、貪・恚・痴ノ箭自然ニ抜ケ出デテ、諸ノ邪見ノ毒皆悉ク除滅シ、一切ノ煩悩不ト↢復*発動セ↡。」

^以い上じょう、 諸法しょほうの真如しんにょ実相じっそうを観かんじ、 凡ぼん夫ぶの法ほうと仏法ぶっぽうと不二ふになりと見みる、 これを首しゅ楞りょう厳ごん三昧ざんまいを修しゅ習じゅうすと名なづく。

*已上*観ジ↢諸法ノ真如・実相ヲ↡、見ル↢凡夫ノ法ト仏法ト不二ナリト↡、是ヲ名ク↣修↢習スト首楞厳三昧ヲ↡

^菩ぼ薩さつすでにしかり、 いかにいはんや仏ぶつをや。 名みなを聞きく、 すでにしかり、 いかにいはんや念ねんずるをや。 これによりて知しりぬべし、 たとひ浅心せんしんの念ねんも利り益やく虚むなしからず。

菩薩既ニ爾リ、何ニ況ヤ仏ヲヤ。聞ク↠名ヲ既ニ爾リ、何ニ況ヤ念ズルヲヤ。*由リテ↠此ニ応シ↠知リヌ、*設ヒ浅心ノ念モ利*益不↠虚シカラ。

二 Ⅹ ⅵ 粗心妙果

【76】^第だい六ろくに△*粗そ心しんの妙みょう果かといふは、

第六ニ麁心ノ妙果トイフ者、

^問とふ、 もし菩ぼ提だいのために、 仏ぶつにおいて善ぜんをなすは、 妙みょう果かを証しょう得とくすといふこと、 理りかならずしかるべし。 もし人天にんでんの果かのために善根ぜんごんを修しゅせば、 いかんぞ。

問フ。若シ為ニ↢菩*提ノ↡於テ↠仏ニ作スハ↠善ヲ、証↢得ストイフコト妙果ヲ↡理必ズ可シ↠然ル。若シ為ニ↢人天ノ果ノ↡修スルハ↢善根ヲ↡云何ゾ。

^答こたふ。 あるいは*染ぜん、 あるいは*浄じょう、 仏ぶつにおいて善ぜんを修しゅせば、 *遠近おんごんありといへどもかならず涅ね槃はんに至いたる。

答フ。或イハ染或イハ浄、於テ↠仏ニ修スルハ↠善ヲ雖モ↠有リト↢遠近↡必ズ至ル↢涅槃ニ↡。

^ゆゑに ¬大だい悲ひ経きょう¼ の第だい三さんに1152、 仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげてのたまはく、 「もし衆しゅ生じょうありて、 生しょう死じ三さん有ぬの愛あい果かに楽着ぎょうじゃくして、 仏ぶつの福田ふくでんにおいて善根ぜんごんを種ううるもの、 かくのごとき言ごんをなさく、 ªこの善根ぜんごんをもつて、 願ねがはくはわれ*般はつ涅ね槃はんすることなからんº と。

故ニ¬大悲経ノ¼第三ニ、仏告ゲテ↢阿難ニ↡言ク、「若シ有リテ↢衆生↡楽↢著シテ生死三有ノ愛果ニ↡、於テ↢仏ノ福田ニ↡種ウル↢善根ヲ↡者、作ラマク↢如キ↠是クノ言ヲ↡、以テ↢此ノ善根ヲ↡願クハ我莫ケムト↢般涅槃スルコト↡。

^阿あ難なん、 この人ひともし涅ね槃はんせずといはば、 この処ことわりあることなからん。 阿あ難なん、 この人ひと、 涅ね槃はんを楽ぎょう求ぐせずといへども、 しかも仏所ぶっしょにしてもろもろの善根ぜんごんを種うゑたれば、 われ説とく、 この人ひとはかならず涅ね槃はんを得えん」 と。

阿難、是ノ人若シ不トイハバ↢涅槃セ↡、无ケム↠有ルコト↢是ノ処コトワリ↡。阿難、是ノ人雖モ↠不ト↣楽↢求セ涅槃ヲ↡、然モ於テ↢仏所ニ↡種1228ヱタレバ↢諸ノ善根ヲ↡、我説ク、是ノ人ハ必ズ得ムト↢涅槃ヲ↡。」

 ^問とふ。 所しょ作さの業ごうは願がんに随したがひて果かを感かんず。 なんぞ、 *世せ報ほうを楽ねがふに*出しゅっ世せの果かを得えん。

問フ。所作之業ハ随ヒテ↠願ニ感ズベシ↠果ヲ。何ゾ楽フニ↢世報ヲ↡得ム↢出世ノ果ヲ↡。

^答こたふ。 *業ごう果かの理りは、 かならずしも一同いちどうならず。 もろもろの善業ぜんごうをもつて仏道ぶつどうに回え向こうするは、 これすなはち作さ業ごうなれば、 心しんに随したがひて転てんず。 *鶏けい狗くの業ごうをもつて天てんの楽らくを楽ぎょう求ぐするは、 これすなはち悪見あくけんなれば、 業ごうをして転てんぜしめず。 このゆゑに、 仏ぶつにおいてもろもろの善業ぜんごうを修しゅせば、 *意い楽ぎょうは異ことなりといへどもかならず涅ね槃はんに至いたる。

答フ。業果之理ハ不↢必ズシモ一同ナラ↡。以テ↢諸ノ善業ヲ↡廻↢向スレバ仏道ニ↡、是即チ作リテ↠業ト随ヒテ↠心ニ而転ズ。以テ↢鶏狗ノ業ヲ↡楽↢求スルハ天ノ楽ヲ↡、是即チ悪見ナリ。不↠令メ↢業ヲシテ転ゼ↡。是ノ故ニ於テ↠仏ニ修スルハ↢諸ノ善業ヲ↡、意楽ハ雖モ↠異ナリト必ズ至ル↢涅槃ニ↡。

^ゆゑにかの ¬経きょう¼ (大悲経) に譬たとへを挙あげてのたまはく、 「たとへば、 長ちょう者じゃの、 時ときによりて種たねを良りょう田でんのなかに下くだし、 時ときに随したがひて漑そそぎ潅そそぎて、 つねによく護持ごじせん。 もしこの長ちょう者じゃ、 余よの時ときのうちに、 かの田所でんしょに到いたりてかくのごとき言ごんをなさく、 ª*咄とつなるかな、 種しゅ子し。 なんぢ種たねとなることなかれ、 生しょうずるこ1153となかれ、 長ちょうずることなかれº と。 しかも、 かれ、 種たねを種うゑつれば、 かならず果かをなすべし、 果か実じつなきにあらざらんがごとし」 と。 取意略抄

故ニ彼ノ¬経ニ¼挙ゲテ↠譬ヲ言ク、「譬ヘバ如シト↧長者ノ依リテ↠時ニ下シテ↢種ヲ於良田ノ中ニ↡、随ヒテ↠時ニ漑ギ潅ギテ、常ニ善ク護持セム、若シ是ノ長者於テ↢余ノ時ノ中ニ↡、到リテ↢彼ノ田所ニ↡作サマク↢如キ↠是クノ言ヲ↡、*咄哉ヤア種子、汝莫レ↠作ルコト↠種ト、莫レト↠生ズルコト、*莫レト↠長ズルコト↡、然モ彼ノ種ヱツレバ↠種ヲ必ズ応シ↠作ス↠果ヲ、非ザラムガ↞无キニ↢果実↡。」取意略抄

 ^問とふ。 かれ、 いづれの時ときにおいてか般はつ涅ね槃はんを得えん。

問フ。彼於テカ↢何レノ時ニ↡得ム↢般涅槃ヲ↡。

^答こたふ。 たとひ、 久々くくに生しょう死じに輪りん廻ねすといへども、 善根ぜんごん亡もうぜずしてかならず般はつ涅ね槃はんを得う。

答フ。設ヒ雖モ↣久々ニ輪↢廻スト生死ニ↡、善根不シテ↠*忘ゼ必ズ得ル↢*般涅槃ヲ↡。

^ゆゑにかの ¬経きょう¼ (大悲経) にのたまはく、 「仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 ª捕ふ魚ぎょの師し、 魚うおを得えんがためのゆゑに、 大おおきなる池いけの水みずにありて、 鉤こう餌じを安あん置ちして、 魚うおをして呑のみ食くはしめつ。 魚うお呑食どんじきしをはりて、 池いけのなかにありといへども、 久ひさしからずしてまさに出いづべきがごとし。 乃至

故ニ、彼ノ¬経ニ¼云ク、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、如シ↧捕魚ノ師為ノ↠得ムガ↠魚ヲ故ニ、在リテ↢大ナル池ノ水ニ↡安↢置シテ*鉤餌ヲ↡、令メツ↢魚ヲシテ呑ミ食ハ↡、魚呑食シ已リテ、雖モ↠在リト↢池ノ中ニ↡、不シテ↠久シカラ当ニキガ↞出ヅ。乃至

^阿あ難なん、 一切いっさい衆しゅ生じょう、 諸仏しょぶつの所みもとにして敬きょう信しんを生しょうずることを得え、 もろもろの善根ぜんごんを種うゑ、 布施ふせを修しゅ行ぎょうし、 乃ない至し、 心しんを発おこして、 一念いちねんの信しんをも得うれば、 また余よの悪あく・不ふ善業ぜんごうのために覆ふ障しょうせられて、 地じ獄ごく・畜ちく生しょう・餓鬼がきに堕だ在ざいすといへども、 乃至

阿難、一切衆生、於テ↢諸仏ノ所ニ↡得↠生ズルコトヲ↢敬信ヲ↡、種ヱ↢諸ノ善根ヲ↡、修↢行シ布施ヲ↡、乃至発シテ↠心ヲ得レバ↢一念ノ信ヲモ↡、雖モ↧*復為ニ↢余ノ悪・不善業ノ↡之所レテ↢覆障セ↡、堕↦在スト地獄・畜生・餓鬼ニ↥、乃至

^諸仏しょぶつ世せ尊そん、 仏眼ぶつげんをもつてこの衆しゅ生じょうの発心ほっしんの勝すぐれたるを観見かんけんしたまふがゆゑに、 地じ獄ごくよりこれを抜ぬきて出いださしむ。 すでに抜ぬき出いだしをはりて、 涅ね槃はんの岸きしに置おきたまふº」 と。

諸仏世尊以テ↢仏眼ヲ↡観↢見シタマフガ此ノ衆生ノ発心ノ勝レタルヲ↡故ニ、従リ↢於地獄↡抜キテ↠之ヲ令ム↠出サ。既ニ抜キ出シ已リテ、置キタマフト↢涅槃ノ岸ニ↡。」

 ^問とふ。 かくのごとき ¬経きょう¼ (大悲経) の意こころは、 敬きょう信しんせるをもつてのゆゑに、 つひに涅ね槃はんを得うるなり。 もししからば、 ただ一ひとたび聞きくは、 涅ね槃はんの因いんにあらざるべし1154。

問フ。如キ↠*此クノ¬経ノ¼意ハ、以テノ↢敬信セルヲ↡故ニ遂ニ得ルナリ↢涅槃ヲ↡。若シ爾ラバ但一タビ聞クハ応シ↠非ザル↢涅槃ノ因ニ↡。

^すでにしからば、 いかんぞ ¬華け厳ごん¼ の偈げにのたまふ、

既ニ爾ラバ云何ゾ¬華厳ノ¼偈1229ニ云フ、

^「もしもろもろの衆しゅ生じょうありて、 いまだ菩ぼ提心だいしんを発おこさざれども、
一ひとたび仏ぶつの名みなを聞きくことを得うれば、 決けつ定じょうして菩ぼ提だいを成じょうず」 と。

「若シ有リテ↢諸ノ衆生↡未ダレドモ↠発サ↢菩提心ヲ↡
一タビ得レバ↠*聞クコトヲ↢仏ノ名ヲ↡決定シテ成ルト↢菩提ヲ↡」

^答こたふ。 諸法しょほうの因縁いんねんは不可ふか思議しぎなり。 △たとへば、 孔く雀じゃくの、 雷震らいしんの声こえを聞ききてすなはち身しんあることを得え、 また△尸利しり沙しゃ果かの、 先さきより形ぎょう質ぜつなけれども、 昴星ぼうせいを見みる時ときに、 果このみすなはち出生しゅっしょうして、 長ながさ五ご寸すんに足たるがごとし。

答フ。諸法ノ因縁ハ不可思議ナリ。譬ヘバ如シ↧孔雀ノ聞キテ↢雷震ノ声ヲ↡即チ得↠有ルコトヲ↠身、又尸利沙果ノ先ヨリ无ケレドモ↢形質↡、見ル↢昴星ヲ↡時ニ、果則チ出生シテ足ルガ↦長サ五寸ニ↥。

^仏ぶつの名みょう号ごうによりて、 すなはち*仏因ぶついんを結むすぶことまたかくのごとし。 この微み因いんよりつひに大だい果かを著あらわす。 かの*尼陀にくだ樹じゅの、 芥子けしばかりの種たねより枝し葉ようを生しょうじて、 あまねく五ご百両ひゃくりょうの車くるまを覆おおふがごとし。 浅近せんごんの世せ法ほうすらなほ思議しぎしがたし。 いかにいはんや、 出しゅっ世せの甚深じんじんの因いん果がをや。 ただ信仰しんごうすべし。 疑ぎ念ねんすべからず。

依リテ↢仏ノ名号ニ↡即チ結ブコト↢仏因ヲ↡亦復如シ↠是クノ。従リ↢此ノ微因↡遂ニ著ス↢大果ヲ↡。如シ↧彼ノ尼*陀樹ノ従リ↢芥子許バカリノ種↡生ジテ↢枝葉ヲ↡遍ク覆フガ↦五百両ノ車ヲ↥。浅近ノ世法スラ猶難シ↢思議シ↡。何ニ況ヤ出世ノ甚深ノ因果ヲヤ。唯応シ↢信仰ス↡。不↠可カラ↢疑念ス↡。

 ^問とふ。 *染心ぜんしんをもつて如来にょらいを縁えんずるものもまた利り益やくありや。

問フ。以テ↢染心ヲ↡縁ズル↢於如来ヲ↡者ハ亦有リ↠*利益耶。

^答こたふ。 ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の第だい八はちに、 *密みっ迹しゃく力りき士し、 寂じゃく意い菩ぼ薩さつに告つげていはく、 「▲*耆ぎ域いき医い王おう、 もろもろの薬くすりを合ごう集じゅうして、 もつて薬草やくそうを取とりて童どう子じの形かたちを作つくる。 端たん正じょう殊しゅ妙みょうにして、 世よの希有けうなり。 *所しょ作さ安諦あんたいにして、 所しょ有う究く竟きょうし、 殊しゅ異いなること比ならびなし。 往来おうらいし、 周しゅう旋せんし、 住立じゅうりゅうし、 安あん坐ざし、 臥寐がびし、 経行きょうぎょうするに、 欠けつ漏ろするところなく、 顕変けんぺんするところ1155の業ごうあり。

答フ。¬宝積経ノ¼第八ニ、密迹力士告ゲテ↢寂意菩薩ニ↡云ク、「耆域医王合↢集シテ諸ノ薬ヲ↡、以テ取リテ↢薬草ヲ↡作ル↢童子ノ形ヲ↡。端正殊*妙ニシテ世之希有ナリ。所*作安諦ナリ、所有究竟セリ、殊異ナルコト无シ↠比ビ。往来シ周旋シ住立シ安坐シ臥寐シ経行スルニ、无シ↠所↣*欠↢漏セル所顕ノ変ズル業ヲ↡。

^あるいは大豪だいごうの国王こくおう・太たい子し・大臣だいじん・百ひゃく官かん・貴き姓しょう・長ちょう者じゃありて、 耆ぎ域いき医い王おうの所みもとに来到らいとうするに、 薬くすりの童どう子じを視みて、 ともに歌うたひ戯たわむれて、 その顔色げんしきを相みるに、 病やまいみな除のぞこることを得えて、 すなはち安穏あんのん寂静じゃくじょうにして、 無む欲よくなることを致いたす。

或イハ有リテ↢大豪ノ国王・太子・大臣・百官・貴*性・長者↡、来↢到スルニ耆域医王ノ所ニ↡、*視テ↢薬ノ童子ヲ↡、与共 トモ ニ歌ヒ戯レテ、*相ミルニ↢其ノ顔色ヲ↡病皆得テ↠除コルコトヲ、便チ致ス↢安*隠ニシテ寂静无欲ナルコトヲ↡。

^寂じゃく意い、 しばらく、 その耆ぎ域いき医い王おうの、 世せ間けんを療りょう治じするに、 その余よの医師いしの及およぶことあたはざるところを観かんぜよ。 かくのごとく、 寂じゃく意い、 もし菩ぼ薩さつ、 *法身ほっしんを奉ぶ行ぎょうすれば、 たとひ衆しゅ生じょうの、 ↓*婬いん・怒ぬ・痴ち盛さかりにして、 男女なんにょ・大だい小しょう、 欲想よくそうをもつて慕ぼ楽ぎょうし、 すなはちともにあひ娯ご楽らくすれども、 貪欲とんよくの*塵労じんろうはことごとく休く息そくすることを得う」 と。 *陰種おんしゅ諸しょ入にゅうなしと信しん解げし観察かんざつするを、 すなはち 「奉ぶ行ぎょう法身ほっしん」 と名なづく。

寂意且ク観ゼヨ↧其ノ耆域医王ノ療↢治スルニ世間ヲ↡、其ノ余ノ医師ノ所ヲ↞不ル↠能ハ↠及ブコト也。如ク↠是クノ寂意、若シ菩薩奉↢行スレバ法身ヲ↡、仮使 タトヒ 衆生ノ婬・怒・痴盛ニシテ男女・大小、欲*相ヲモテ慕楽シ即チ共ニ相娯*楽スレドモ、貪欲ノ塵労ハ悉ク得ト↢休息スルコトヲ↡。」信↢解シ観↣察スルヲ无陰種諸入ヲ↡、則チ名ク↢奉行法身ト↡也

^奉ぶ行ぎょう法身ほっしんの菩ぼ薩さつすらなほしかり、 いかにいはんや*法身ほっしんを証しょう得とくせる仏ぶつをや。

奉行法身ノ菩薩スラ尚爾リ、何ニ況ヤ証得法身ノ仏1230ヲ耶。

 ^問とふ。 欲想よくそうをもつて縁えんずるに、 この利り益やくあるがごとく、 誹ひ謗ほうし悪お厭えんするもまた益やくありや。

問フ。如ク↣欲想ヲモテ縁ズルニ有ルガ↢此ノ利益↡、誹謗シ悪厭スルモ亦有リ↠益耶。

^答こたふ。 すでに↑婬いん・怒ぬ・痴ちといへり。 明あきらけし、 ただ欲想よくそうのみにはあらず。

答フ。既ニ云ヘリ↢婬・怒・痴ト↡。明ケシ非ズ↢唯欲*想ノミニハ↡。

^また ¬*如来にょらい秘ひ密蔵みつぞう経きょう¼ の下げ巻かんにのたまはく、 「むしろ如来にょらいにおいて不ふ善業ぜんごうをば起おこすとも、 外げ道どう・邪見じゃけんのものの所ところにおいて供く養ようを施作せさせざれ。 なにをもつてのゆゑに。 もし如来にょらいの所みもとにおいて不ふ善業ぜんごうを起おこさば、 まさに悔くゆる心しんありて、 究く竟きょうしてかならず涅ね槃はんに至いたることを得うべし。 外げ道どうの見けんに随したがふは、 まさに地じ獄ごく1156・餓鬼がき・畜ちく生しょうに堕おつべし」 と。

又¬如来秘密蔵経ノ¼下巻ニ云ク、「寧ロ於テ↢如来ニ↡起ストモ↢不善業ヲバ↡、非レ↧於テ↢外道・邪見ノ者ノ所ニ↡施↦作セ供養ヲ↥。何ヲ以テノ故ニ。若シ於テ↢如来ノ所ニ↡起スハ↢不善業ヲ↡、当ニシ↧有リテ↢悔ユル心↡、究竟シテ必ズ得↞至ルコトヲ↢於涅槃ニ↡。随フハ↢外道ノ見ニ↡、当ニシト↠堕ツ↢地獄・餓鬼・畜生ニ↡。」

 ^問とふ。 この文もんは、 すなはち因いん果がの道どう理りに違いせり。 また衆しゅ生じょうの妄心もうしんを増ます。 いかんぞ、 悪心あくしんをもつて*大だい涅ね槃はん楽らくを得えんや。

問フ。此ノ文ハ便チ違セリ↢因果ノ道理ニ↡。亦復増ス↢於衆生ノ妄心ヲ↡。如何ゾ以テ↢悪心ヲ↡得ム↢大涅槃楽ヲ↡耶。

^答こたふ。 悪心あくしんをもつてのゆゑに三さん悪道まくどうに堕おつ。 一ひとたび如来にょらいを縁えんずるをもつてのゆゑにかならず涅ね槃はんに至いたる。 このゆゑに因いん果がの道どう理りに違いせず。

答フ。以テノ↢悪心ヲ↡故ニ堕ツ↢三悪道ニ↡。以テノ↣一タビ縁ズルヲ↢如来ヲ↡故ニハ必ズ至ル↢涅槃ニ↡。是ノ故ニ不↠違セ↢因果ノ道理↡ニ。

^いはく、 「かの衆しゅ生じょう、 地じ獄ごくに堕だする時ときに、 仏ぶつにおいて信しんを生しょうじ、 追つい悔けの心しんを生しょうず。 これによりて、 展転てんでんしてかならず涅ね槃はんに至いたる」 と。 ¬大だい悲ひ経きょう¼ (意) に見えたり。

謂ク「彼ノ衆生堕スル↢地獄ニ↡時ニ、於テ↠仏ニ生ジ↠信ヲ、生ズ↢追悔ノ心ヲ↡。由リテ↠此ニ展転シテ必ズ至ルト↢涅槃ニ↡。」見エタリ↢¬大悲経ニ¼↡

^染心ぜんしんに如来にょらいを縁えんずる利り益やくすらなほかくのごとし。 いかにいはんや、 浄じょう心しんにして一ひとたびも称しょうせんをや。 仏ぶつの大だい恩徳おんどく、 これをもつて知しりぬべし。

染心ニ縁ズルスラ↢如来ヲ↡利益尚シ如シ↠是クノ。何ニ況ヤ浄*心ニシテ一タビモ称セムヲヤ。仏ノ大恩徳、以テ↠之ヲ可シ↠知リヌ。

 ^問とふ。 諸文しょもんに説とくところの菩ぼ提だい・涅ね槃はんは、 三さん乗じょうのなかにおいて、 これいづれの果かぞ。

問フ。諸文ニ所ノ↠説ク菩提・涅槃ハ、於テ↢三乗ノ中ニ↡是何レノ果ゾ耶。

^答こたふ。 初はじめには機きに随したがひて三さん乗じょうの果かを得うといへども、 究く竟きょうしてはかならず無む上じょうの仏ぶっ果かに至いたる。

答フ。初ニハ雖モ↣随ヒテ↠機ニ得ト↢三乗ノ果ヲ↡、究竟シテハ必ズ至ル↢无上ノ仏果ニ↡。

^¬法華ほけ経きょう¼ にのたまふがごとし。

如シ↢¬法花経ニ¼云フガ↡。

^「十方じっぽう仏ぶつ土どのなかには、 ただ一いち乗じょうの法ほうのみあり。
*二にもなくまた*三さんもなし。 仏ぶつの方便ほうべんの説せつをば除のぞく」 と。

「十方仏土ノ中ニハ唯有リ↢一乗ノ法ノミ↡
無ク↠二モ亦無シ↠三モ除クト↢仏ノ方便ノ説ヲバ↡」

^また ¬大だい経きょう¼ (涅槃経) に、 如来にょらいの決けつ定じょうの説せつ義ぎを明あかしてのたまはく、 「一いっ切さい1157衆しゅ生じょうはことごとく仏ぶっ性しょうあり。 如来にょらいは常住じょうじゅうにして*変易へんやくあることなし」 と。

又¬大経ニ¼明シテ↢如来ノ決定説ノ義ヲ↡云ク、「▼一切衆生ハ悉ク有リ↢仏性↡。如来ハ常住ニシテ无シト↠有ルコト↢変易↡。」

^またのたまはく (涅槃経)、 「一切いっさい衆しゅ生じょうは、 さだめて阿あ耨のく菩ぼ提だいを得うるがゆゑに、 このゆゑに、 われ、 一切いっさい衆しゅ生じょうはことごとく仏ぶっ性しょうありと説とく」 と。

又云ク、「一切衆生ハ*定メテ得ルガ↢阿耨菩提ヲ↡故ニ、是ノ故ニ我説クト↣一切*衆生ハ悉ク有リト↢仏性↡。」

^またのたまはく (涅槃経)、 「一切いっさい衆しゅ生じょうはことごとくみな心しんあり。 おほよそ心しんあるものは、 さだめてまさに阿あ耨のく菩ぼ提だいを成じょうずることを得うべし」 と。

又云ク、「一切衆生ハ悉ク皆有リ↠心。凡ソ有ル↠心者ハ定メテ当ニシト↠得1231↠成ルコトヲ↢阿耨菩提ヲ↡。」

 ^問とふ。 なんがゆゑぞ、 諸文しょもんの所説しょせつ不ふ同どうなる。 あるいは 「一ひとたび仏ぶつの名みなを聞きかば、 さだめて菩ぼ提だいを成じょうず」 と説とく。 あるいは 「勤修ごんしゅすること、 頭ず燃ねんを救はらふがごとくすべし」 と説とく。

問フ。何ガ故ゾ諸文ノ所説不同ナル。或イハ説ク↧一タビ聞ク↢仏ノ*名ヲ↡定メテ成ルト↦菩提ヲ↥。或イハ説ク↠応シト↢勤修スルコト如クス↟救フガ↢頭燃ヲ↡。

^また ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の偈げにのたまはく、

又¬花厳*経ノ¼偈ニ云ク、

^「人ひとの、 他たの宝たからを数かぞふるに、 みづから半銭はんせんの分ぶんなきがごとく、
法ほうにおいて修しゅ行ぎょうせざるは、 多おおく聞きくともまたかくのごとし」 と。

「如ク↧人ノ数フルニ↢他ノ宝ヲ↡自ラ无キガ↦半銭ノ分↥
於テ↠法ニ不ルハ↢修行セ↡多ク聞クトモ亦如シト↠是クノ」

^答こたふ。 もしすみやかに解げ脱だつせんと欲おもはば、 勤つとめずは分ぶんなきがごとし。 もし永劫ようごうの因いんを期ごせば、 一ひとたび聞きくともまた虚むなしからず。 このゆゑに、 諸文しょもんは、 理り、 相そう違いせず。

答フ。若シ欲フハ↢速ニ解脱セムト↡、不ルハ↠勤メ如シ↠无キガ↠分。若シ期スルニハ↢永劫ノ因ヲ↡、一タビ聞クトモ亦不↠虚シカラ。是ノ故ニ諸文ハ、理不↢相違セ↡。

二 Ⅹ ⅶ 諸行勝劣

【77】^第だい七しちに△*諸しょ行ぎょうの勝しょう劣れつといふは、

第七ニ諸行ノ勝劣トイフ者、

^問とふ、 往おう生じょうの業ごうのなかには念仏ねんぶつを最さいとなすも、 余よの業ごうのなかにおいてもまた最さいとなすや。

問フ。往生ノ業ノ中ニハ念仏ヲ為スモ↠最ト。於テモ↢余ノ業ノ中ニ↡亦為ス↠最ト耶。

^答こたふ。 余よの行ぎょう法ほうのなかにおいても1158、 これまた最さい勝しょうなり。

答フ。*於テモ↢余ノ行法ノ中ニ↡此亦最勝ナリ。

^ゆゑに ¬観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ に六種ろくしゅの譬たとへあり。

故ニ¬観仏三昧経ニ¼有リ↢六種ノ譬↡。

^「一いちにはいはく、 ª仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 «たとへば、 長ちょう者じゃの、 まさに死しなんとすること久ひさしからずして、 もろもろの庫く蔵ぞうをもつてその子こに委付いふす。 その子こ、 得えをはりて、 意こころに随したがひて遊戯ゆげす。 たちまちに一いち時じに、 王おう難なんあるに値あひて、 無む量りょうの衆賊しゅぞく、 蔵くらの物ものを競きおひ取とる。

一ニハ云ク、「仏告ゲタマハク↢阿難ニ↡、譬ヘバ如シ↧長者ノ将ニルコト↠死ナムト不シテ↠久シカラ、以テ↢諸ノ庫蔵ヲ↡委↢付ス其ノ子ニ↡、其ノ子得已リテ随ヒテ↠意ニ遊戯ス、忽ニ於テ↢一時ニ↡値ヒテ↠有ルニ↢王難↡、無量ノ衆賊競ヒ↢取ル蔵ノ物ヲ↡、

^ただ一いちの金こんあり。 すなはちこれ*閻えん浮ぶ檀だん那な紫し金こんにして、 重おもさ*十じゅう六ろく両りょうなり。 *金こん鋌じょうの長ちょう短たんまた十じゅう六ろく寸すんなり。 この金こんの一いち両りょうの価かは、 余よの宝たからの百ひゃく千万せんまん両りょうに直あたる。

唯シ有リ↢一ノ金↡、乃チ是閻浮檀那紫金ナリ、重サ十六両ナリ、金*鋌ノ長短亦十六寸ナリ、此ノ金ノ一両ハ、価直アタル↢余ノ宝ノ百千万両ニ↡、

^すなはち穢けがらはしき物ものをもつて真金しんこんを纏まつひ裹つつみて、 泥団でいだんのなかに置おきつ。 もろもろの賊ぞく見みをはりて、 これ金こんと識しらずして、 脚あしをもつて践ふみてしかも去さりぬ。 賊ぞく去さりて後のちに、 財主ざいしゅ、 金こんを得えて、 心しん大おおきに歓かん喜ぎせんがごとし。 念仏ねんぶつ三昧ざんまいもまたかくのごとし。 まさにこれを密蔵みつぞうすべし»º と。

即チ以テ↢穢ハシキ物ヲ↡纏ヒ↢裹ツツミテ真金ヲ↡、置キツ↢泥団ノ中ニ↡、衆ノ賊見已リテ、不シテ↠識ラ↢是金ト↡脚ヲモテ践フミテ而モ去リヌ、賊去リテ之後ニ財主得テ↠金ヲ、心大ニ歓喜セムガ↥。念仏三昧モ亦復如シ↠是クノ。当ニシト↣密↢蔵ス之ヲ↡。

^二ににはいはく、 ªたとへば、 貧人びんにん、 王おうの宝印ほういんを執とりて、 逃にげ走はしりて樹きに上のぼりぬ。 *六ろく兵ひょうこれを追おふに、 貧人びんにん、 見みをはりてすなはち宝印ほういんを呑のみつ。 兵ひょう衆しゅ疾とく至いたりて、 樹きをして倒とう僻びゃくせしむ。 貧人びんにん、 地じに落おちて、 身体しんたい散さん壊えしぬれども、 ただ金印きんいんはあるがごとく、 念仏ねんぶつの心印しんいんも壊やぶれざること、 またかくのごとしº と。

二ニハ云ク、譬ヘバ如ク↧貧人執リテ↢王ノ宝印ヲ↡逃ゲ走リテ上リヌ↠樹ニ、六兵追フニ↠之ヲ、貧人見已リテ即チ呑ミツ↢宝印ヲ↡、兵衆疾ク至リテ令ム↢樹ヲシテ倒僻セ↡、貧人落チテ↠地ニ、身体散壊シヌレドモ、唯シ金印ハ在ルガ↥、念仏ノ心印モ不ルコト↠壊レ*亦如シト↠是クノ。

^三さんにはいはく、 ª▼たとへば、 長ちょう者じゃの、 まさに死しなんとすること久ひさしからずして、 一いちの女にょ子しに告つぐ1159らく、 «われいま宝たからあり。 宝たからのなかに上すぐれたるものなり。 なんぢ、 この宝たからを得えて、 密蔵みつぞうして堅かたからしめよ。 王おうをして知しらしむることなかれ» と。

三ニハ云ク、譬ヘバ如シ↧長者ノ将ニルコト↠死ナムト不シテ↠久シカラ、告グラク↢一ノ女子ニ↡、我今有1232リ↠宝、宝ノ中ニ上スグレタル者ナリ、汝得テ↢此ノ宝ヲ↡密カクシ蔵メテ令メヨ↠堅カラ、莫レト↠令ムルコト↢王ヲシテ知ラ↡、

^女おんな、 父ちちが勅ちょくを受うけて、 *摩尼まに珠しゅおよびもろもろの珍宝ちんぽうを持もちて、 これを糞ふん穢えに蔵かくす。 室しつ家けの大だい小しょう、 みなまた知しらず。 世よの飢き饉きんに値あひて、 *如にょ意い珠しゅを持もちて、 語ごに随したがひて、 すなはち百ひゃく味み飲食おんじきを雨あめふらす。 かくのごとくして、 種々しゅじゅに意こころに随したがひて宝たからを得うるがごとし。 念仏ねんぶつ三昧ざんまいの堅心けんしん不ふ動どうなることまたかくのごとしº と。

女受ケテ↢父ガ勅ヲ↡持チテ↢摩尼珠及ビ諸ノ珍宝ヲ↡蔵カクス↢之ヲ糞穢ニ↡、室家ノ大小皆亦不↠知ラ、値ヒテ↢世ノ飢饉ニ↡、持チテ↢如意珠ヲ↡*随ヒテ↠*語ニ即チ雨ル↢百味飲食ヲ↡、如クシテ↠是クノ種々ニ随ヒテ↠意ニ得ルガ↞宝ヲ。念仏三昧ノ堅心ニシテ不ラムコト↠動ゼ亦復如シト↠是クノ。

^四しにはいはく、 ªたとへば、 大おおきに旱ひでりして雨あめを得うることあたはず。 一いちの仙人せんにんありて呪しゅを誦じゅす。 神通じんずう力りきのゆゑに、 天てんより*甘かん雨うを降ふらし、 地じより涌ゆ泉せんを出いだすがごとし。 念仏ねんぶつを得えたるものは善呪ぜんじゅの人にんのごとしº と。

四ニハ云ク、譬ヘバ如シ↧大ニ旱ヒデリシテ不↠能ハ↠得ルコト↠雨ヲ、有リテ↢一ノ仙人↡誦ス↠呪ヲ、神通力ノ故ニ天ヨリ降ラシ↢甘雨ヲ↡、地ヨリ出スガ↦*涌泉ヲ↥。得タル↢念仏ヲ↡者ハ如シト↢善呪ノ人ノ↡。

^五ごにはいはく、 ªたとへば、 力りき士し、 しばしば王法おうぼうを犯おかして*囹圄れいぎょに幽閉ゆうへいせらるるに、 逃にげて海辺かいへんに到いたり、 髻もとどりの明みょう珠しゅを解ときて、 持もちて船せん師しを雇やとひ、 かの岸きしに到いたりて、 安穏あんのんにして懼おそれなきがごとし。 念仏ねんぶつを行ぎょうずるものは大力だいりき士しのごとし。 心王しんのうの鎖くさりを挽まぬかれて、 かの慧えの岸きしに到いたるº と。

五ニハ云ク、譬ヘバ如ク↧力士数バ犯シテ↢王法ヲ↡幽↢閉セラレテ囹圄ニ↡、逃ゲテ到リテ↢海辺ニ↡、解キテ↢*髻ノ明珠ヲ↡、持チテ雇ヒテ↢船師ヲ↡、到リテ↢於彼ノ岸ニ↡、安*穏ニシテ無キガ↞懼レ、行ズル↢念仏ヲ↡者ハ如シ↢大力士ノ↡。挽レテ↢心王ノ鎖ヲ↡、到ルト↢*彼ノ*恵ノ岸ニ↡。

^六ろくにはいはく、 ªたとへば、 劫こう尽つきて大だい地じ*洞然どうねんするに、 ただ金剛こんごう山せんのみ*摧さい破はすべからずして、 還かえりて*本際ほんざいに住じゅうするがごとく、 念仏ねんぶつ三昧ざんまいもまたかくのごとし。 この定じょうを行ぎょうずるものは、 過去かこの仏ぶつの*実際じっさいの海うみのなかに住じゅうすº」 と。 以上略抄

六ニハ云ク、譬ヘバ如ク↧劫尽キテ大地洞燃ニシテ、唯金剛山ノミ不シテ↠可カラ↢摧破ス↡、還リテ住スルガ↦本際ニ↥、念仏三昧モ亦復如シ↠是クノ。行ズル↢是ノ定ヲ↡者ハ、住スト↢過去ノ仏ノ実際ノ海ノ中ニ↡。」 已上略抄

^また ¬般舟はんじゅ経きょう1160¼ の 「問もん事じ品ぼん」 に念仏ねんぶつ三昧ざんまいを説ときてのたまはく、 「つねにまさに習じゅう持じし、 つねにまさに守まもりて、 また余よの法ほうに随したがはざるべし。 もろもろの功く徳どくのなかに最尊さいそん第一だいいちなり」 と。 以上

又¬般舟経ノ¼「問事品ニ」説キテ↢念仏三昧ヲ↡云ク、「常ニ当ニ習持シ、常ニ当ニシ↤守リテ不ル↣復随ハ↢余ノ法ニ↡。諸ノ功徳ノ中ニ最尊第一ナリト。」 已上

^また不ふ退転たいてんの位くらいに至いたるに、 難なん易いの二にの道どうあり。 易い行ぎょう道どうといふはすなはちこれ念仏ねんぶつなり。

又至ルニ↢不退転ノ位ニ↡有リ↢難易ノ二ノ道↡。言フハ↢易行道ト↡即チ是念仏ナリ。

^ゆゑに *¬十住じゅうじゅう婆ば沙しゃ¼ の第だい三さんにいはく、 「▲世せ間けんの道どうに難なんあり易いあり。 陸道ろくどうの歩ぶ行ぎょうはすなはち苦くるしく、 水道すいどうの乗じょう船せんはすなはち楽たのしきがごとし。 ◆菩ぼ提だいの道どうもまたかくのごとし。 あるいは勤ごん行ぎょう精しょう進じんのものあり、 あるいは信しん方便ほうべんの易い行ぎょうをもつて、 疾とく阿あ惟越ゆいおっ致ちに至いたるものあり。 乃至 ◆阿あ弥陀みだ等とうの仏ぶつおよび諸しょ大だい菩ぼ薩さつ、 名みなを称しょうして一心いっしんに念ねんずれば、 また不ふ退転たいてんを得う」 と。 以上

故ニ¬十住*婆*娑ノ¼第三ニ云ク、「如シ↢世間ノ道ニ有リ↠難有リ↠易、陸*道ハ歩カチヨリ行キテ則チ苦シク、水道ハ乗リテ↠船ニ則チ楽シキガ↡。菩*提ノ道モ*亦如シ↠是クノ。或イハ有リ↢勤行精進スル↡、或イハ有リ↧以テ↢信方便ヲ↡易クシテ↠行ジ疾ク至ルモノ↦阿惟越*致ニ↥。乃至 阿弥陀等ノ仏及ビ諸大菩薩ヲ称シテ↠名ヲ一心ニ念ズレバ、亦得トイヘリ↢不退転ヲ↡。」 已上

^文もんのなかに、 ▲過去かこ・現在げんざいの一いっ百ひゃく余よの仏ぶつ、 ▲弥み勒ろく・金剛こんごう蔵ぞう・浄名じょうみょう・無む尽じん意い・跋ばつ陀婆だば羅ら・文殊もんじゅ・妙みょう音おん・師子しし吼く・香象こうぞう・常精じょうしょう進じん・観かん世ぜ音おん・勢せい至し等とうの一いっ百ひゃく余よの大だい菩ぼ薩さつを挙あげたり。 そのなかに広ひろく弥陀みだ仏ぶつを讃さんぜり。 もろもろの行ぎょうのなかにおいて、 ただ念仏ねんぶつの行ぎょうのみ修しゅしやすくして、 上じょう位いを証しょうす。 知しりぬ、 これ最さい勝しょうの行ぎょうなりといふことを。

文ノ中ニ挙ゲタリ↢過去・現在ノ一1233百余ノ仏、弥勒・金剛蔵・浄名・无尽意・跋陀婆羅・文殊・妙音・師子*孔・香象・常精進・観*世音・勢至等ノ一百余ノ大菩薩ヲ↡。其ノ中ニ広ク讃ゼリ↢弥陀仏ヲ↡也。於テ↢諸ノ行ノ中ニ↡、唯シ念仏ノ行ノミ易クシテ↠修シ証ス↢上位ヲ↡。知リヌ是最勝ノ行ナリトイフコトヲ。

^また ↓¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の九く十じゅう二ににのたまはく、 「もし菩ぼ薩さつありて、 多おおく衆しゅ務むを営いとなみ、 七宝しっぽうの塔とうを造つくること、 三千さんぜん大千だいせん世せ界かいに*遍満へんまんせんに、 かくのごとき菩ぼ薩さつは、 われをして歓かん喜ぎをなさしむることあたはず。 またわれを供く養ようし恭く敬ぎょうする1161にもあらず。 もし菩ぼ薩さつありて、 波羅はら蜜みつ相応そうおうの法ほうにおいて、 乃ない至し、 一いちの四し句くの偈げを受じゅ持じし、 読誦どくじゅし、 修しゅ行ぎょうして、 人ひとのために演説えんぜつせん。 この人ひとは、 すなはちわれを供く養ようしつとなす。 なにをもつてのゆゑに。 もろもろの仏ぶつの*菩ぼ提だいは、 多た聞もんより生しょうず。 衆しゅ務むよりはしかも生しょうずることを得えず。 乃至

又¬宝積経ノ¼九十二ニ云ク、「若シ有リテ↢菩薩↡多ク営ミ↢衆務ヲ↡、造ルコト↢七宝ノ塔ヲ↡遍↢満セムニ三千大千世界ニ↡。如キ↠是クノ菩薩ハ、不↠能ハ↠令ムルコト↣我ヲシテ而生ナサ↢歓喜ヲ↡。亦非ズ↤供↢養シ恭↣敬スルニモ於我ヲ↡。若シ有リテ↢菩薩↡、於テ↢*波羅蜜相応之法ニ↡、乃至受↢*持シ一ノ四句ノ偈ヲ↡、読誦シ修行シテ為ニ↠人ノ演説セム。是ノ人ハ乃チ為ス↣供↢養シツト於我ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。諸ノ仏ノ・菩*薩ハ従リ↢多聞↡生ズ。不↧従リハ↢衆務↡而モ得↞生ズルコトヲ也。乃至

^もし一いち閻えん浮ぶ提だいの、 営よう事じの菩ぼ薩さつは、 一いちの読誦どくじゅ・修しゅ行ぎょう・演説えんぜつの菩ぼ薩さつの所ところにおいて、 まさに親近しんごんし供く養ようし*承じょう事じすべし。 もし一いち閻えん浮ぶ提だいの、 読誦どくじゅ・修しゅ行ぎょう・演説えんぜつのもろもろの菩ぼ薩さつ等とうは、 一いちの勤修ごんしゅ禅ぜん定じょうの菩ぼ薩さつにおいて、 またまさに親近しんごんし供く養ようし承じょう事じすべし。 かくのごとき善業ぜんごうをば、 如来にょらい随ずい喜きし、 如来にょらい悦えっ可かしたまふ。 もし勤修ごんしゅ智慧ちえの菩ぼ薩さつにおいて承じょう事じし供く養ようせば、 まさに無む量りょうの福徳ふくとくの聚じゅを獲うべし。 なにをもつてのゆゑに。 智慧ちえの業ごうは無む上じょう最さい勝しょうにして、 一切いっさいの三界さんがいの所しょ行ぎょうに出しゅっ過かすればなり」 と。 云々

若シ一閻浮提ノ*営事ノ菩薩ハ、於テ↢一ノ読誦・修行・演説ノ菩薩之所ニ↡応ニ当シ↢親近シ供養シ承事ス↡。若シ一閻浮提ノ読誦・修行・演説ノ諸ノ菩薩等ハ、於テ↢一ノ勤修禅定ノ菩薩ニ↡亦当ニシ↢親近シ供養シ承事ス↡。如キ↠是クノ善業ハ、如来随喜シ、如来悦可シタマフ。若シ於テ↢勤修智*恵ノ菩薩ニ↡承事シ供養スルハ、当ニシ↠獲↢无量ノ福徳之聚ヲ↡。何ヲ以テノ故ニ。智*恵之業ハ无上最勝ニシテ、出↢過スレバナリト一切ノ三界ノ所行ニ↡。」*云々

^↓¬大だい集じゅう¼ の 「月蔵がつぞう分ぶん」 の偈げにのたまはく、

¬大集ノ¼「月蔵分ノ」偈ニ云ク、

^「もし人ひと、 百ひゃく億おくの諸仏しょぶつの所みもとにして、 多おおくの歳数さいしゅにおいてつねに供く養ようせんに、
もしよく七日しちにち、 *闌若らんにゃにありて、 *根こんを摂せっして定じょうを得えば、 福ふくかれよりも多おおし。 乃至

「若シ人百億ノ諸仏ノ所ニシテ於テ↢多クノ歳数ニ↡常ニ供養シタテマツラム
若シ能ク七日在リテ↢*闌若ニ↡摂シテ↠根ヲ得バ↠定ヲ福多ケム↠彼ヨリモ 乃至

^閑げん静じょう無為むいなるは仏ぶつの境きょう界がいなり。 かしこにおいてよく浄じょう菩ぼ提だいを得う。
1162もし人ひと、 かの住じゅう禅ぜんのものを謗そしらば、 これをもろもろの如来にょらいを毀き謗ほうすと名なづく。

閑静无為ナルハ仏ノ境界ナリ於テ↠彼ニ能ク得↢浄菩提ヲ↡
若シ人謗ルハ↢彼ノ住禅1234ノ者ヲ↡是ヲ名ク↣毀↢謗スト諸ノ如来ヲ↡

^もし人ひと、 塔とうを破やぶること多た百ひゃく千せん、 および百ひゃく千せんの寺てらを焚ぼん焼じょうせんに、
もし住じゅう禅ぜんのものを毀き謗ほうすることあらば、 その罪つみはなはだ多おおきこと、 かれより過すぎたり。

若シ人破ルコト↠塔ヲ多ノ百千ナラム及以 オヨビ 焚↢焼セムニ百千ノ寺ヲ↡
若シ有ラムハ↣毀↢謗スルコト住禅ノ者ヲ↡其ノ罪甚ダ多キコト過ギタリ↢於彼ヨリ↡

^もし住じゅう禅ぜんのものに、 飲食おんじき・衣え服ぶくおよび湯薬とうやくを供く養ようすることあらば、
この人ひと無む量りょうの罪つみを消しょう滅めつして、 また三さん悪道まくどうに堕だせじ。

若シ有ラバ↣供↢養スルコト住禅ノ者ニ飲食・衣服及ビ湯薬ヲ↡
是ノ人消↢滅シテ无量ノ罪ヲ↡亦不↠堕セ↢於三悪道ニ↡

^このゆゑにわれいまあまねくなんぢに告つぐ、 仏道ぶつどうを成じょうぜんと欲おもはばつねに禅ぜんにあれ。
もし*阿あ蘭若らんにゃに住じゅうすることあたはずは、 まさにかの人ひとを供く養ようすべし」 と。 以上

是ノ故ニ我今普ク告グ↠汝ニ欲ハバ↠成ラムト↢仏道ヲ↡常ニ在レ↠禅ニ
若シ不ハ↠能ハ↠住スルコト↢阿蘭若ニ↡応ニ当シトイヘリ↣供↢養ス於彼ノ人ヲ↡。」 已上

^*汎はん爾にの禅ぜん定じょうすら、 なほすでにかくのごとし。 いはんや、 念仏ねんぶつ三昧ざんまいはこれ*王おう三昧ざんまいなるをや。

汎爾オホヨソ禅定スラ尚既ニ如シ↠是クノ。況ヤ念仏三昧ハ是王三昧ナルヲ耶。

 ^問とふ。 もし禅ぜん定じょうの業ごうは読誦どくじゅ・解義げぎ等とうに勝すぐれたらば、 いかんぞ、 ↓¬法華ほけ経きょう¼ の 「分別ふんべつ功く徳どく品ぼん」 に、 八はち十じゅう万億まんおく那由なゆ他た劫こうの所修しょしゅの*前ぜん五ご波羅はら蜜みつの功く徳どくをもつて、 ¬法華ほけ経きょう¼ を聞ききて一念いちねん信しん解げする功く徳どくに校量きょうりょうして、 百ひゃく千せん万億まんおく分ぶんの一分ぶんなりとする。 い1163かにいはんや、 広ひろく他たのために説とかんをや。

問フ。若シ禅定ノ業ハ勝レタラバ↢読誦・解義等ニ↡、云何ゾ¬法花経ノ¼「分別功徳品ニ」、以テ↢*八十万億那由他劫ノ所修ノ前五波羅蜜ノ功徳ヲ↡、挍↧量セル聞キテ↢¬法花経ヲ¼↡一念信解スル功徳ノ百千万億分之一分ニ↥。何ニ況ヤ広ク為ニ↠他ノ説カムヲ耶。

^答こたふ。 これらのもろもろの行ぎょうに、 おのおの浅深せんじんあり。 いはく、 *偏円へんえんの教きょう、 差別しゃべつあるがゆゑに。 もし*当とう教きょうにて論ろんぜば、 勝しょう劣れつは前さきのごとし。 もし諸しょ教きょうを相対そうたいせば、 偏へん教ぎょうの禅ぜん定じょうは円えん教ぎょうの読誦どくじゅ事じ業ごうに及およばず。 ↑¬大だい集じゅう¼ と↑¬宝ほう積しゃく¼ とは一いっ教きょうに約やくして論ろんじ、 ↑¬法ほっ華け¼ の校量きょうりょうは偏円へんえん相望そうもうす。 このゆゑに諸文しょもんの義ぎ、 相そう違いせず。 念仏ねんぶつ三昧ざんまいもまたかくのごとし。 偏へん教ぎょうの三昧さんまいは当とう教きょうに勝すぐれたりとなす。 *円人えんにんの三昧さんまいはあまねく諸しょ行ぎょうに勝すぐれたり。

答フ。此等ノ諸ノ行ニ各 ノ有リ↢浅深↡。謂ク偏円ノ教有ルガ↢差別↡故ニ。若シ当教ニテ論ゼバ↢勝劣ヲ↡如シ↠前ノ。若シ*相↢対セバ諸教ニ↡、偏教ノ禅定ハ不↠及バ↢円教ノ読誦事業ニ↡。¬大集ト¼¬宝積トハ¼約シテ↢一教ニ↡論ズ。¬法華ノ¼挍量ハ偏円相望ス。是ノ故ニ諸文ノ、義不↢相違セ↡。念仏三昧モ亦復如シ↠是クノ。偏教ノ三昧ハ当教ニ為ス↠勝レタリト。円人ノ三昧ハ普ク勝レタリ↢諸行ニ↡。

^また定じょうに二にあり。 一いちは*慧え相応そうおうの定じょう。 これを最さい勝しょうなりとなす。 二には*暗禅あんぜん。 いまだ勝すぐれたりとなすべからず。 念仏ねんぶつ三昧ざんまいはこれ初はじめの摂しょうなるべし。

又定ニ有リ↠二。一者*恵相応ノ定。是ヲ為ス↢最勝ナリト↡。二者暗禅。未ダ↠可カラ↠為ス↠勝レタリト。念仏三昧ハ応シ↢是初ノ摂ナル↡。

二 Ⅹ ⅷ 信毀因縁

【78】^第だい八はちに△*信しん毀きの因縁いんねんといふは、

第八ニ信毀ノ因縁トイフ者、

^¬般舟はんじゅ経きょう¼ にのたまはく、 「◆独ひとり一仏いちぶつの所みもとにして功く徳どくを作つくるのみにあらず。 もしは二に、 もしは三さん、 もしは十じゅうにおいてせるにもあらず。 ことごとく百ひゃく仏ぶつの所みもとにしてこの三昧さんまいを聞きき、 かへりて後世ごせの時ときにこの三昧さんまいを聞きくものなり。 経きょう巻かんを書学しょがくし誦じゅ持じして、 最さい後ごに守まもること一日いちにち一いち夜やすれば、 その福ふく計はかるべからず。 おのづから阿あ惟越ゆいおっ致ちに致いたり、 願がんずるところのものを得えん」 と。

¬般舟経ニ¼云ク、「不ズ↧独リ於テ↢一仏ノ所ニ↡作ルノミニ↦功徳ヲ↥。不ズ↠於テセルニモ↢*若シハ二若シハ三若シハ十ニ↡。悉ク於テ↢百仏ノ所ニ↡聞カム↢是ノ三昧ヲ↡、却リテ後世ノ時ニ聞カム↢是ノ三昧ヲ↡者ナリ。書シ↢学1235シ▼誦↣持シテ経巻ヲ↡、最後ニ守ルコト一日一夜モスルハ、其ノ福不可計ニシテ、自ラ致リ↢阿惟越致ニ↡、所ノ↠願ゼム者ヲ得ムト。」

 ^◆問とふ。 もししからば、 聞きくものは決けつ定じょうして信しんずべし。 なんがゆゑぞ、 聞きくとい1164へども、 信しんじ信しんぜざるものある。

◆問フ。若シ爾ラバ聞カム者ハ決定シテ応シ↠信ズ。何ガ故ゾ*雖モ↠聞クト有ル↢信ジ不ルモノ↟信ゼ。

^◆答こたふ。 ¬*無む量りょう清浄しょうじょう覚がく経きょう¼ (四) にのたまはく、 「▲善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにんありて、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの名みなを聞ききて、 歓かん喜ぎし踊ゆ躍やくして、 身みの毛け起いよだつことをなし、 抜ぬけ出いづるがごとくなるものは、 みなことごとく宿しゅく世せ宿命しゅくみょうに、 すでに仏ぶつ事じをなせるなり。 ◆それ人民にんみんありて、 疑うたがひて信しんぜざるものは、 みな悪道あくどうのなかより来きたりて、 殃悪おうあくいまだ尽つきざるなり。 これいまだ解げ脱だつを得えざるなり」 と。 略抄

◆答フ。¬無量清浄覚経ニ¼云ク、「善男子・善女人アリテ聞キテ↢无量清浄仏ノ名ヲ↡、歓喜シ踊躍シテ、身ノ毛為ルコト↠起イヨダツコトヲ如クセム↢抜キ出スガ↡者ハ、皆悉ク*宿世宿命ニ已ニ作セルナリ↢仏事ヲ↡。其レ有リテ↢人民↡疑ヒテ不ラム↠信ゼ者ハ、皆従リ↢悪道ノ中↡来リテ、殃悪未ダルナリ↠尽キ。此未ダル↠得↢解脱ヲ↡*也ト。」 略抄

^◆また ¬大集だいじつ経きょう¼ の*第だい七しちにのたまはく、 「もし衆しゅ生じょうありて、 すでに無む量りょう無む辺へんの仏ぶつの所みもとにしてもろもろの*徳本とくほんを殖うゑたるものは、 すなはちこの如来にょらいの十じゅう力りき・四し無む所しょ畏い・不共ふぐの法ほう・三さん十じゅう二に相そうを聞きくことを得えん。 乃至 下げ劣れつの人にんは、 かくのごとき正しょう法ぼうを聞きくことを得うることあたはじ。 たとひ聞きくことを得うとも、 いまだかならずしもよく信しんぜず」 と。 以上

又¬大集経ノ¼第七ニ云ク、「若シ有リテ↢衆生↡已ニ於テ↢無量无辺ノ仏ノ所ニ↡殖ヱタルモノハ↢衆ノ徳ノ本ヲ↡、乃チ得ム↠聞クコトヲ↢是ノ如来ノ十力・四无所畏・不共之法・卅二相ヲ↡。乃至 下劣之人ハ不↠能ハ↠得ルコト↠聞クコトヲ↢如キ↠是クノ正法ヲ↡。仮使 タトヒ 得トモ↠聞クコトヲ、未ダト↢必ズシモ能ク信ゼ↡。」 已上

^◆まさに知しるべし、 生しょう死じの因縁いんねんは不可ふか思議しぎなり。 薄徳はくとくのものの、 聞きくことを得うるも、 その縁えん知しりがたし。 *烏豆うず聚じゅに一いちの緑あおき豆まめあらんがごとし。 ただしかれ聞きくといへどもしかも信しん解げせず。 これはすなはち薄徳はくとくの致いたすところなるのみ。

当ニシ↠知ル、生死ノ因縁ハ不可思議ナリ。薄徳ノモノノ得ルコト↠聞クコトヲ、難シ↠知リ↢其ノ縁↡。如シ↣烏豆聚ニ有ラムガ↢一ノ緑アオキ豆↡。但シ彼雖モ↠聞クト而モ不↢信解セ↡。是ハ*即チ薄徳之所ナル↠致ス耳。

 ^問とふ。 仏ぶつ、 往おう昔じゃくに、 つぶさに*諸しょ度どを修しゅしたまひしに、 なほ八はち万歳まんざいにこの法ほうを聞ききたまふことあたはざりき。 いかんぞ、 薄徳はくとくのたやすく聴ちょう聞もんすることを得うる。 た1165とひ希有けうなりと許ゆるせども、 なほ道どう理りに違いせり。

問フ。仏ノ於テ↢往昔ニ↡具ニ修シタマヒシニ↢諸度ヲ↡、尚於テ↢八万歳ニ↡不リキ↠能ハ↠聞キタマフコト↢*此ノ法ヲ↡。云何ゾ薄徳ノ輒タヤスク得ル↢聴聞スルコトヲ↡。設ヒ許セドモ↢希有ナリト↡猶違セリ↢道理ニ↡。

^答こたふ。 この義ぎ、 知しりがたし。 試こころみにこれを案あんじていはく、 衆しゅ生じょうの善悪ぜんあくに四しの位くらいの別べつあり。

答フ。此ノ義難シ↠知リ。試ニ案ジテ↠之ヲ云ク、衆生ノ善悪ニ有リ↢四ノ位ノ別↡。

^一いちには、 *悪用あくゆう偏増へんぞうなり。 この位くらいには法ほうを聞きくことなし。 ¬法ほっ華け¼ (意) にのたまふがごとし、 「増ぞう上じょう慢まんの人ひと、 二に百ひゃく億劫おくこうつねに法ほうを聞きかず」 と。

一ニハ悪用偏増ナリ。此ノ位ニハ無シ↠聞クコト↠法ヲ。如シ↢¬法華ニ¼云フガ↡、「増上慢ノ人二百億劫常ニ不ト↠聞カ↠法ヲ。」

^二にには、 *善用ぜんゆう偏増へんぞうなり。 この位くらいにはつねに法ほうを聞きく。 *地じ・住じゅう以い上じょうの大だい菩ぼ薩さつ等とうのごときなり。

二ニハ善用偏増セル、此ノ位ニハ常ニ聞ク↠法ヲ。如キナリ↢地・住以上ノ大菩薩等ノ↡。

^三さんには、 *善悪ぜんあくの交きょう際さい。 いはく、 凡ぼんを捨すてて聖しょうに入いらんとする時ときなり。 この位くらいのなかには、 一類いちるいの人ひとありて法ほうを聞きくことはなはだ難かたし。 たまたま聞ききつればすなはち悟さとる。 *常じょう啼たい菩ぼ薩さつ、 △須達しゅだつが老女ろうにょ等とうのごとし。 あるいは魔まのために障さへられ、 あるいはみづからの惑まどひのために障さへられて、 聞見もんけんを隔へだつといへども、 久ひさしからずしてすなはち悟さとる。

三ニハ善悪ノ交際。謂ク垂スル↢捨テテ↠凡ヲ入ラムト↟聖ニ之時ナリ。此ノ位ノ中ニハ有リテ↢一類之人1236ノ↡聞クコト↠法ヲ甚ダ難キ↡。適マ聞キツレバ即チ悟ル。如シ↢常啼菩薩、須達ガ老女等ノ↡。或イハ為ニ↠魔ノ所レ↠障ヘ、或イハ為ニ↢自ラノ*或マドヒノ↡障ヘラレテ、雖モ↠隔ツト↢聞見ヲ↡不シテ↠久シカラ即チ悟ル。

^四しには、 *善悪ぜんあく容よう預よなり。 この位くらいには、 善悪ぜんあくは同おなじくこれ生しょう死じ流る転てんの法ほうなるがゆゑに、 多おおく法ほうを聞きくこと難かたし。 悪増あくぞうにあらざるがゆゑに、 一向いっこうに無む聞もんなるにあらず。 交きょう際さいするにあらざるがゆゑに、 聞きくといへども巨こ益やくなし。 六趣ろくしゅ・四し生しょうに*蠢々しゅんしゅんたる類たぐい、 これなり。 ゆゑに上じょう人にんのなかにもまた聞きくこと難かたきものあり、 凡ぼん愚ぐのなかにもまた聞きくものあり。

四ニハ善悪容預ナル、此ノ位ノ善悪ハ同ジク是生死流転ノ法ナルガ故ニ、多ク難シ↠聞クコト↠法ヲ。非ヌガ↢悪増ニ↡故ニ非ズ↢一向ニ无聞ナルニ↡。非ヌガ↢交際スルニ↡故ニ雖モ↠聞クト無シ↢巨益↡。六趣・四生ノ*蠢々タル類是ナリ。故ニ上人ノ中ニモ亦有リ↠難キモノ↠聞クコト、凡愚之中ニモ亦有リ↢聞ク者↡。

^これまたいまだ決けっせず。 *後ご賢げん、 取捨しゅしゃせよ。

此*亦*未ダ↠決セ。後*賢取捨セヨ。

 ^問とふ。 不ふ信しんのもの、 なんの罪報ざいほうをか得うる。

▼問フ。不信之者得ル↢何ノ罪報ヲカ↡。

^◆答こたふ。 ¬*称しょう揚よう諸仏しょぶつ功く徳どく経きょう¼ の下げ巻かんに1166のたまはく、 「それ、 阿あ弥陀みだ仏ぶつの名みょう号ごう功く徳どくを讃嘆さんだんし*称しょう揚ようするを信しんぜざることありて、 *謗ほう毀きするものは、 五ご劫こうのうちに、 まさに地じ獄ごくに堕だして、 つぶさにもろもろの苦くを受うくべし」 と。

◆答フ。¬称揚諸仏功徳経ノ¼下巻ニ云ク、「其レ有リテ↠不ルコト↠信ゼ↤讃↢嘆シ称↣揚スルヲ阿弥陀仏ノ名号功徳ヲ↡、而シテ謗毀セム者ハ、五劫之中ニ当ニシト↧堕シテ↢地獄ニ↡、具ニ受ク↦衆ノ苦ヲ↥。」

 ^問とふ。 もし深信じんしんなくして疑ぎ念ねんをなすものは、 つひに往おう生じょうせざるや。

問フ。若シ无クシテ↢深信↡生ナス↢疑念ヲ↡者ハ終ニ不ルヤ↢往生セ↡。

^答こたふ。 まつたく信しんぜず、 かの業ごうを修しゅせず、 願がん求ぐせざるものは、 理りとして生うまるべからず。 もし仏ぶっ智ちを疑うたがふといへども、 しかもなほかの土どを願ねがひ、 かの業ごうを修しゅするものは、 また往おう生じょうすることを得う。

答フ。*全ク不↠信ゼ、不↠修セ↢彼ノ業ヲ↡、不ル↢願求セ↡者ハ、理トシテ不↠応カラ↠生ル。若シ雖モ↠疑フト↢仏智ヲ↡、而モ猶願ヒ↢彼ノ土ヲ↡修セム↢彼ノ業ヲ↡者ハ、亦得↢往生スルコトヲ↡。

^¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経・下) にのたまふがごとし、 「▲もし衆しゅ生じょうありて、 疑ぎ惑わくの心しんをもつてもろもろの功く徳どくを修しゅして、 かの国くにに生うまれんと願がんじて、 ↓仏ぶっ智ち・不ふ思議しぎ智ち・不可ふか称しょう智ち・大だい乗じょう広こう智ち・無む等とう無む倫りん最さい上じょう勝しょう智ちを了りょうせず、 このもろもろの智ちにおいて疑ぎ惑わくして信しんぜず、 しかもなほ罪福ざいふくを信しんじ、 善本ぜんぽんを修しゅ習じゅうして、 その国くにに生しょうぜんと願がんぜん。

如キナリ↢¬双巻経ニ¼云フガ↡。「若シ有リテ↢衆生↡以テ↢疑*或ノ心ヲ↡修シテ↢諸ノ功徳ヲ↡、願ジテ↠生レムト↢彼ノ国ニ↡、不↠了セ↢仏智・不思議智・不可称智・大乗広智・无等*无倫最上勝智ヲ↡、於テ↢此ノ諸ノ智ニ↡疑*惑シテ不トモ↠信ゼ、然モ猶信ジテ↢罪福ヲ↡、修↢習シテ善本ヲ↡、願ズル↠生レムト↢其ノ国ニ↡、

^◆このもろもろの衆しゅ生じょうは、 かの宮く殿でんに生しょうじて、 寿じゅ五ご百ひゃく歳さい、 つねに仏ぶつを見みたてまつらず、 経きょう法ぼうを聞きかず、 菩ぼ薩さつ・声しょう聞もんの衆しゅうを見みたてまつらず、 ◆このゆゑにかの国こく土どにおいては、 これを*胎たい生しょうといふ」 と。 以上

此ノ諸ノ衆生ハ生ジテ↢彼ノ宮殿ニ↡寿五百歳マデニ*常ニ不↠見タテマツラ↠仏ヲ、不↠聞カ↢経法ヲ↡、不ル↠見タテマツラ↢菩薩・声聞*之衆ヲ↡、是ノ故ニ於テハ↢彼ノ国土ニ↡謂フト↢之ヲ胎生ト↡。」 已上

^仏ぶつの智慧ちえを疑うたがふは、 罪つみ、 悪道あくどうに当あたれり。 しかも願ねがいに随したがひて往おう生じょうするは、 これ仏ぶつの悲ひ願がんの力りきなり。

疑フハ↢仏ノ智*恵ヲ↡、罪当レリ↢悪道ニ↡。然モ随ヒテ↠願ニ往生スルハ、是仏ノ悲願ノ力ナリ。

^¬清浄しょうじょう覚がく経きょう¼ (平等覚経・三) に、 この胎たい生しょうをもつて▲中ちゅう輩はい・▲下げ輩はい1167の人にんとなせり。 しかも諸しょ師しの所しょ釈しゃく、 繁しげく出いだすことあたはず。

¬清浄覚経ニ¼以テ↢此ノ胎生ヲ↡為セリ↢中輩・下1237輩ノ人ト↡。然モ諸師ノ所釈不↠能ハ↢繁ワヅラハシキニ出スコト↡。

 ^問とふ。 仏ぶっ智ちと等らいふは、 その相そういかんぞ。

問フ。言フハ↢仏智ト等↡其ノ相云何ゾ。

^答こたふ。 *憬きょう興ごう師しは、 ¬*仏ぶつ地じ経きょう¼ の五ご法ほうをもつて、 いま↑五ご智ちと名なづけたり。 いはく、 清浄しょうじょう法界ほうかいを仏ぶっ智ちと名なづけ、 *大円だいえん鏡きょう等とうの四しをもつて、 次ついでのごとく不ふ思議しぎ等とうの四しに当あつるなり。 *玄一げんいち師しは、 仏ぶっ智ちは前さきのごとくなるも、 後のちの四し智ちをもつて、 逆ぎゃくに*成じょう事智じち等とうの四しに対たいするなり。 余よの異解いげあるも、 これを煩わずらはしくすべからず。

答フ。憬興師ハ以テ↢¬仏地経ノ¼五法ヲ↡、今名ケタリ↢五智ト↡。謂ク清浄法界ヲバ名ケ↢仏智ト↡、以テ↢大円鏡等ノ四ヲ↡如ク↠次ノ当アツベシトイフ↢不思議等ノ四ニ↡也。玄一師ハ、仏智ハ如クナルモ↠前ノ、以テハ↢後ノ四智ヲ↡逆ニ対セリ↢成事智等ノ四ニ↡也。有リ↢余ノ異解↡。不↠可カラ↠煩シクス↠之ヲ。

二 Ⅹ ⅸ 助道資縁

【79】^第だい九くに△*助道じょどうの資し縁えんといふは、

第九ニ助道ノ資縁トイフ者、

^問とふ、 凡ぼん夫ぶの行ぎょう人にんはかならず衣え食じきを須もちゐる。 これ小しょう縁えんなりといへども、 よく大だい事じを弁べんず。 *裸ら・餧いにして安やすからずは、 *道法どうほういづくんぞあらん。

問フ。凡夫ノ行人ハ要ズ須ヰル↢衣食ヲ↡、此雖モ↢小縁ナリト↡、能ク*辨ズ↢大事ヲ↡。裸ニ餧ウヱテ不ハ↠安カラ、道法焉ゾ在ラム。

^答こたふ。 行ぎょう者じゃに二にあり。 いはく、 ↓家けと↓出しゅっ家けとなり。

答フ。行者ニ有リ↠二。謂ク*家ト出家トナリ。

^その↑在ざい家けの人にんは、 家け業ごう自由じゆにして、 餐飯さんぼん・衣え服ぶくあり。 なんぞ念仏ねんぶつを妨さまたげん。 △¬木槵もくげん経きょう¼ の*瑠璃るり王おうの行ぎょうのごとし。

其ノ在家ノ人ハ、家業自由ナリ。餐飯・衣服アリ、何ゾ妨ゲム↢念仏ヲ↡。如シ↢¬木槵経ノ¼瑠璃王ノ行ノ↡。

^その↑出しゅっ家けの人にんにまた三さん類るいあり。 もし*上じょう根こんのものは、 草そう座ざ・鹿ろく皮ひ、 一菜いっさい・一いっ菓かなり。 *雪山せっせんの大だい士じのごとき、 これなり。 もし*中ちゅう根こんのものは、 つねに乞食こつじき・*糞掃ふんぞう衣えなり。 もし*下げ根こんのものは、 檀越だんおつの*親しん施せなり。 ただ少すこし得うるところあれば、 すなはち足たるを知しる。 つぶさには ¬止し観かん¼ の第だい四しのごとし。 いはんやまた、 もし仏ぶつ弟子でしにして、 もつぱら正しょう道どうを修しゅして、 貪とん求ぐするところなき1168ものは、 自じ然ねんに資し縁えんを具ぐす。

其ノ出家ノ人ニ亦有リ↢三類↡。若シ上根ノ者ハ草座・鹿皮、一菜・一菓ナリ、如キ↢雪山ノ大士ノ↡是也。若シ中根ノ者ハ常ニ乞食・糞掃衣ナリ。若シ下根ノ者ハ檀越ノ*親施ナリ。但シ少シモ*有リテハ↠所↠得ル即便チ知レ↠足リヌト。具ニハ如シ↢¬止観ノ¼第四ノ↡。況ヤ復若シ仏弟子ニシテ専ラ修シテ↢正道ヲ↡无キ↠所↢貪求スル↡者ハ、自然ニ具ス↢資縁ヲ↡。

^¬大論だいろん¼ (大智度論) にいふがごとし。 「たとへば、 比丘びくの貪とん求ぐするものは供く養ようを得えず、 貪とん求ぐするところなきはすなはち乏ともしく短すくなきところなきがごとく、 心しんもまたかくのごとし。 もし分別ふんべつして相そうを取とれば、 すなはち実法じっぽうを得えず」 と。

如シ↢¬大論ニ¼云フガ↡。「譬ヘバ如ク↧比丘ノ貪求スル者ハ不↠得↢供養ヲ↡、無キハ↠所↢貪求スル↡則チ无キガ↞所↢乏シク短スクナキ↡、心モ亦如シ↠是クノ。若シ分別取相スレバ則チ不ト↠得↢実法ヲ↡。」

^また ¬大だい集じゅう¼ の 「月蔵がつぞう分ぶん」 のなかに、 欲界よくかいの六天ろくてん・日月にちがつ星宿しょうしゅく・天てん竜りゅう八はち部ぶ、 おのおの仏前ぶつぜんにして誓願せいがんを発おこしてのたまはく、 「▼もし仏ぶつの声しょう聞もんの弟子でしにして、 法ほうに住じゅうし、 法ほうに順じゅんじ、 三業さんごう相応そうおうして修しゅ行ぎょうするものをば、 われらみなともに護持ごじし養育よういくし、 *所須しょしゅを供く給きゅうして、 乏ともしきところなからしめん。 もしまた世せ尊そんの声しょう聞もんの弟子でしにして、 *積しゃく聚じゅするところなからんをば護持ごじし養育よういくせん」 と。

又¬大集ノ¼「月蔵分ノ」中ニ、欲界ノ六天・日月星宿・天竜八部各 ノ於テ↢仏前ニ↡発シテ↢*誓願ヲ↡*云ク、「若シ仏ノ声聞ノ弟子ノ、住シ↠法ニ順ジ↠法ニ、三業相応シテ而修行セム者ハ、我等皆共ニ護持シ養育シ、供↢給シテ所須ヲ↡令メム↠無カラ↠所1238↠乏シキ。若シ復世尊ノ声聞ノ弟子ノ、无カラムヲバ↠所↢積聚スル↡護持シ養育セムト。」

^またのたまはく (大集経)、 「もし世せ尊そんの声しょう聞もんの弟子でしにして、 積しゃく聚じゅに住じゅうし、 乃ない至し、 三業さんごうと法ほうと相応そうおうせざるものをば、 またまさに棄き捨しゃすべし、 また養育よういくせじ」 と。

又*言ク、「*若シ世尊ノ声聞ノ弟子ノ、住シ↢於積聚ニ↡、乃至三業ト与↠法不ラム↢相応セ↡者ヲバ、亦当ニシ↢棄捨ス↡、不トイヘリ↢復養育セ↡。」

 ^問とふ。 凡ぼん夫ぶはかならずしも三業さんごう相応そうおうせず。 もし欠けつ漏ろあらば、 *依怙えこなかるべし。

問フ。凡夫ハ不↢必ズシモ三業相応セ↡。若シ有ラバ↢*欠漏↡応シ↠无カル↢依怙↡。

^答こたふ。 かくのごとき問難もんなんは、 これすなはち*懈け怠だいにして*道心どうしんなきものの致いたすところなり。 もしまことに菩ぼ提だいを求もとめ、 浄じょう土どを欣ねがふものは、 むしろ身しん命みょうをば捨すつとも、 あに禁戒きんかいを破やぶらんや。 一いっ世せの勤労ごんろうをもつて、 永劫ようごうの妙みょう果かを期ごすべし。 いはん1169やまた、 たとひ戒かいを破やぶるといへどもその分ぶんなきにあらず。

答フ。如キ↠是クノ問難ハ、是*即チ懈怠无道心ノ者之所↠致ス也。若シ誠ニ求メ↢菩*提ヲ↡欣ハム↢浄土ヲ↡者ハ、寧ロ捨ツトモ↢身命ヲバ↡、豈ニ破ラムヤ↢禁戒ヲ↡。応シ↧以テ↢一世ノ勤労ヲ↡期ス↦永劫ノ妙果ヲ↥也。況ヤ復設ヒ雖モ↠破ルト↠戒ヲ非ズ↠无キニ↢其ノ分↡。

^同どう経きょうに、 仏ぶつののたまふがごとし。 「▼ª もし衆しゅ生じょうありて、 わがために出しゅっ家けして、 鬚髪しゅほつを剃除たいじょし袈裟けさを被ひ服ぶくせば、 たとひ戒かいを持たもたずとも、 かれらはことごとくすでに涅ね槃はんの印いんのために印いんせられたり。

如シ↢同ジキ¬経ニ¼仏ノ言フガ↡。「若シ有リテ↢衆生↡為ニ↠我ガ出家シテ、剃↢除シ*鬚髪ヲ↡被↢服セラバ袈裟ヲ↡、設ヒ不トモ↠持タ↠戒ヲ、彼等ハ悉ク已ニ為ニ↢涅槃ノ印ノ↡之所レタリ↠印セ也。

^◆もしまた出しゅっ家けして、 戒かいを持たもたざるものを、 非ひ法ほうをもつて悩乱のうらんをなし、 *罵め辱にくし*毀訾きしし、 手てに刀とう杖じょうをもつて打うち縛しばり斫さき截きりて、 もしは衣え鉢はつを奪うばひ、 および種々しゅじゅの*資し生しょうの具ぐを奪うばふことあるものは、 この人ひとはすなはち三さん世ぜの諸仏しょぶつの真実しんじつの報身ほうじんを壊やぶり、 すなはち一切いっさいの天てん・人にんの眼目げんもくを挑くじるなり。

若シ復出家シテ不ラム↠持タ↠戒ヲ者ヲ、有ラム↧以テ↢非法ヲ↡而シテ作シ↢悩乱ヲ↡、罵辱シ毀訾シ、以テ↢手ニ刀杖ヲ↡打チ縛リ斫キ截リテ、若シハ奪ヒ↢衣鉢ヲ↡、及ビ奪フコト↦種々ノ資生ノ具ヲ↥者ハ、是ノ人ハ則チ壊ル↢三世ノ諸仏ノ真実ノ報身ヲ↡。則チ挑クジルナリ↢一切ノ天人ノ眼目ヲ↡。

^◆この人ひとは、 諸仏しょぶつの所しょ有うの正しょう法ぼう、 三宝さんぼうの種たねを隠没おんもつせんと欲ほっするがためのゆゑに、 もろもろの天てん・人にんをして、 利り益やくを得えずして地じ獄ごくに堕だせしめんがゆゑに、 三さん悪道まくどうを増ぞう長じょうし盈満ようまんせしむるがためのゆゑにº と。 云々

是ノ人ハ為ノ↠欲スルガ↣隠↢没セムト諸仏ノ所有ノ正法三宝ノ種ヲ↡故ニ、令メムガ↧諸ノ天人ヲシテ不シテ↠得シメ↢利益ヲ↡堕セ↦地獄ニ↥故ニ、為ノ↢三悪道ヲシテ増長シ盈満スルガ↡故ニト。云々

^▼その時ときに、 また一切いっさいの天てん・竜りゅう、 乃ない至し、 一切いっさいの*迦かた富ふ単たん那な・人にん・非ひ人にん等とうありて、 みなことごとく合がっ掌しょうして、 かくのごとき言ごんをなさく、 ªわれら、 仏ぶつの一切いっさいの声しょう聞もんの弟子でしにおいて、 乃ない至し、 もしはまた禁戒きんかいを持じせずとも、 鬚髪しゅほつを剃除たいじょし袈裟けさの片かたはしを着きたるものをば、 師し長ちょうの想おもいをなして護持ごじし養育よういくして、 もろもろの所須しょしゅを与あたへて、 乏ぼう少しょうなることなからしめん。

「爾ノ時ニ復有リテ↢一切ノ天・竜、乃至一切ノ迦富単那・人・非人等↡、皆悉ク合掌シテ、作サク↢如キ↠是クノ言ヲ↡、我等於テ↢仏ノ一切ノ声聞ノ弟子ニ↡、乃至若シハ復不トモ↠持セ↢禁戒ヲ↡、剃↢除シ*鬢髪ヲ↡著タル↢袈裟ノ片ヲ↡者ヲバ、作シテ↢師長ノ想ヲ↡護持シ養育シテ、与ヘテ↢諸ノ所須ヲ↡令メム↠无カラ↢乏少ナルコト↡。

^◆もし余よの天てん・竜りゅう、 乃ない至し、 迦かた富ふ単たん那な等とうの、 その悩乱のうらんをなし、 乃ない至し、 悪心あくしんにして眼まなこを1170もつてこれを視みば、 われらことごとくともに、 かの天てん・竜りゅう・*富ふ単たん那な等とうの、 所しょ有うのもろもろの相そうをして欠減けつげんし醜しゅう陋るならしむ。 かれをして、 またわれらとともに住じゅうしともに食じきすることを得えざらしむ。 また同処どうしょにして戯け笑しょうすることを得えじ。 かくのごとくにして*擯罰ひんばつせんº」 と。 以上取意

若シ余ノ天・竜、乃至迦富単那等ノ、作シ↢其1239ノ悩乱ヲ↡、乃至悪心ニシテ以テ↠眼ヲ視バ↠之ヲ、我等悉ク共ニ、令ム↢彼ノ天・竜・富単那等ヲシテ所有ノ諸ノ相ヲシテ*欠減シ醜陋ナラ↡。令ム↫彼ヲシテ不ラ↪復得↩与↢我等↡共ニ住シ共ニ食スルコトヲ↨。亦復不↠得↢同処ニシテ戯笑スルコトヲ↡。如クニシテ↠是クノ*擯罰セムト。 已上取意

^またのたまはく (大集経)、 「その時ときに、 世せ尊そん、 上じょう首しゅ弥み勒ろくおよび賢劫げんごうのうちの一切いっさいの菩ぼ薩さつ*摩訶まか薩さつに告つげてのたまはく、 ªもろもろの善男ぜんなん子し、 われ、 昔むかし、 菩ぼ薩さつの道どうを行ぎょうぜし時ときに、 かつて過去かこの諸仏しょぶつ如来にょらいにおいてこの供く養ようをなし、 この善根ぜんごんをもつてわがために三さん菩ぼ提だいの因いんとなせり。

又云ク、「爾ノ時ニ世尊告ゲテ↢上首弥勒及ビ賢劫ノ中ノ一切ノ菩薩摩訶薩ニ↡言ク、諸ノ善男子、我昔行ゼシ↢菩薩ノ道ヲ↡時ニ、曽ムカシ於テ↢過去ノ諸仏如来ニ↡作シキ↢是ノ供養ヲ↡。以テ↢此ノ善根ヲ↡与ニ↠我ガ*作レリ↢三菩提ノ因ト↡。

^われ、 いまもろもろの衆しゅ生じょうを憐愍れんみんするがゆゑに、 この果か報ほうをもつて分わかちて三さん分ぶんとなし、 一分いちぶんは留とどめてみづから受うけ、 第だい二にの分ぶんをば、 わが滅めつ後ごにおいて、 禅ぜん解げ脱だつ三昧ざんまいと堅けん固ごに相応そうおうする声しょう聞もんに与あたへて、 乏ともしきところなからしめ、 第だい三さんの分ぶんをば、 かの破は戒かいにして、 経きょう典てんを読誦どくじゅし、 声しょう聞もんに相応そうおうして、 正しょう法ぼう・像法ぞうぼうに、 頭こうべを剃そり袈裟けさを着きたるものに与あたへて、 乏ともしきところなからしめん。

我今憐↢愍スルガ諸ノ衆生ヲ↡故ニ、*以テ↢此ノ*果報ヲ↡分チテ作ス↢三分ト↡。留メテ↢一分ハ↡自ラ受ケム。第二ノ分ヲバ者於テ↢我ガ滅後ニ↡与ヘテ↢*禅解脱三昧ト堅固ニ相応セラム声聞ニ↡、令ム↠无カラ↠所↠乏シキ。第三ノ分ヲバ者、与ヘテ↧彼ノ破戒ニシテ読↢誦シ経典ヲ↡、相↢応シテ声聞ノ正法・像法ニ↡、剃リ↠頭ヲ著タル↢袈裟ヲ↡者ニ↥、令メム↠无カラ↠所↠乏シキ。

^弥み勒ろく、 われ、 いままた三業さんごう相応そうおうのもろもろの声しょう聞もん衆しゅ、 比丘びく・比丘びく尼に、 優婆うば塞そく・優婆うば夷いをもつて、 なんぢが手てに寄付きふす。 乏ともしく少すくなく孤こ独どくにして終おわらしむることなかれ。 および、 正しょう法ぼう・像法ぞうぼうに、 禁戒きんかいを毀破きはして、 袈裟けさを着きたるものをも、 なんぢが手てに寄付きふす。 か1171れらをして、 もろもろの資具しぐにおいて、 乏ぼう少しょうにして終おわらしむることなかれ。 また旃せん陀羅だら王おうありて、 ともにあひ悩害のうがいし、 身心しんしんに苦くを受うけしむることなかれ。 われ、 いままたかのもろもろの施せ主しゅをもつて、 なんぢが手てに寄付きふすº」 と。 以上

弥勒、我今復以テ↢三業相応ノ諸ノ声聞衆、比丘・比*丘尼、優婆塞・優婆夷ヲ↡、寄セ↢付ク汝ガ手ニ↡。勿レ↠令ムルコト↢乏シク少ナク*孤独ニシテ而終ラ↡。及以 オヨビ 正法・像法ニ毀↢破シテ禁戒ヲ↡著タル↢袈裟ヲ↡者ヲモ、寄セ↢付ク汝ガ手ニ↡。勿レ↠令ムルコト↧彼等ヲシテ於テ↢諸ノ資具ニ↡乏少ニシテ而終ラ↥。亦勿レ↠令ムルコト↧有リテ↢*旃陀羅王↡共ニ相悩害シ、身心ニ受ケ↞苦ヲ。我今復以テ↢彼ノ*諸ノ施主ヲ↡寄↢付スト汝ガ手ニ↡。」 已上

^破は戒かいすらなほしかり。 いかにいはんや、 持じ戒かいをや。 声しょう聞もんすらなほしかなり。 いかにいはんや、 大心だいしんを発おこしてまことに念仏ねんぶつせんをや。

破戒スラ尚爾リ。何ニ況ヤ持戒ヲヤ。声聞ナラム尚爾ナリ。*何ニ況ヤ発シテ↢大心ヲ↡*誠ニ念仏セムヲ乎。

 ^問とふ。 もし破は戒かいの人にんもまた天てん・竜りゅうのために*護ご念ねんせられなば、 いかんぞ ↓¬*梵網ぼんもう経きょう¼ (意) に、 「五ご千せんの鬼き神じん、 破は戒かいの比丘びくの跡あとを払はらふ」 とのたまひ、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (意) に、 「国王こくおう・群臣ぐんしんおよび持じ戒かいの比丘びくは、 まさに破は戒かいのものを*苦治くじし駆く遣けんし呵か嘖しゃくすべし」 とのたまふや。

問フ。若シ破戒ノ人モ亦為ニ↢天・竜ノ↡所ルレバ↢護念セ↡者、云何ゾ¬梵網経ニ¼云ヘル↣「五千ノ鬼神払フト↢破戒ノ比丘ノ跡ヲ↡。」¬涅槃経ニ¼云フ↰「国王1240・群臣及ビ持戒ノ比丘ハ、応ニ当シト↯苦↢治シ駆↣遣シ呵↤嘖ス破戒ノ者ヲ↡」耶。

^答こたふ。 もし理りのごとく苦治くじせば、 すなはち仏ぶっ教きょうに順じゅんず。 もし非理ひりにして悩乱のうらんせば還かえりて*聖しょう旨しに違いす。 ゆゑに相そう違いせず。

答フ。*若シ如クシテ↠理ノ苦治セバ即チ順ズ↢仏教ニ↡。若シ非理ニシテ悩乱セバ還リテ違ス↢聖旨ニ↡。故ニ不↢相違セ↡。

^↓「月蔵がつぞう分ぶん」 (大集経) に、 仏ぶつののたまへるがごとし。 「国王こくおう・群臣ぐんしんは、 出しゅっ家けのものの、 大だい罪業ざいごうたる大だい殺せっ生しょう・大だい偸ちゅう盗とう・大だい非ひ梵ぼん行ぎょう・大だい妄もう語ごおよび余よの不ふ善ぜんをなすを見みては、 かくのごとき等らの類たぐいをば、 ただまさに法ほうのごとく、 国こく土ど・城じょう邑おう・村落そんらくを擯ひん出しゅつして、 寺てらにあることを聴ゆるさざれ。 また僧そうの事じ業ごうを同どうずることを得えしめじ。 利り養ようの分ぶん、 ことごとくともに同どうぜしめざるべし。

如シ↢「月蔵分ニ」仏ノ言ヘルガ↡。「国王・群*臣ハ見テハ↢出家ノ者ヲ↡、作リ↢大罪業ヲ↡、大殺生シ、大偸盗シ、大非梵行シ、大妄語シ、及ビ余ノ不善セム。如キ↠是クノ等ノ類ヲバ、但当ニシ↧如ク↠法ノ*擯↢出シテ国土・城邑・村落ヲ↡、不レ↠聴ユルサ↠在ルコトヲ↠寺ニ、亦復不↠得シメ↠同ズルコトヲ↢僧ノ事業ヲ↡、利養之分悉ク不ル↦共ニ同ゼシメ↥。

^鞭べん打だすることを得えじ。 もし鞭べん打だせば、 理り1172、 応おうぜざるところなり。 また口くちに罵め辱にくすべからず。 一切いっさい、 その身みに罪つみを加くわふべからず。 もしことさらに法ほうに違いして、 罪つみを讁せめば、 この人ひとはすなはち解げ脱だつにおいて退落たいらくし、 必ひつ定じょうして阿鼻あび地じ獄ごくに帰き趣しゅせん。 いかにいはんや、 仏ぶつのために出しゅっ家けして、 つぶさに戒かいを持たもつものを鞭べん打だせんをや」 と。 略抄

不↠得↢鞭打スルコトヲ↡。若シ鞭打セバ者、理所ナリ↠不ル↠応ゼ。又*亦不↠応カラ↢口ニ罵辱ス↡。一切不↠応カラ↠加フ↢其ノ身ノ罪ヲ↡。若シ故ラニ違シテ↠法ニ而讁セメバ↠罪ヲ者、是ノ人ハ便チ於テ↢解脱ニ↡退落シ、必定シテ帰↢趣セム阿鼻地獄ニ↡。何ニ況ヤ鞭↢打セムヲヤト為ニ↠仏ノ出家シテ具ニ持ツ↠戒ヲ者ヲ↡。」略抄

 ^問とふ。 人間にんげんの*擯ひん治じは、 差別しゃべつしかるべし。 非ひ人にんの行ぎょうは、 なほいまだ決けつ了りょうせず。 ↑¬梵網ぼんもう経きょう¼ には一向いっこうに跡あとを払はらふ、 ↑¬*月蔵がつぞう経きょう¼ には一向いっこうに供く給きゅうす。 なんぞたちまちに乖け角かくせる。

問フ。人間ノ*擯治ハ差別可シ↠然ル。非人之行ハ猶未ダ↢決了セ↡。¬梵網経ニハ¼一向ニ払フ↠跡ヲ。¬月蔵経ニハ¼一向ニ供給ス。那ナンゾ忽ニ*乖角セル。

^答こたふ。 罪福ざいふくの旨むねを知しらんがために、 かならずすべからく人にんの行ぎょうを決けっすべし。 かならずしも非ひ人にんの所しょ行ぎょうを決けっすべからず。 もしは制せい、 もしは開かい、 おのおの巨こ益やくをなす。 あるいはまた、 人にんの意い楽ぎょうの不ふ同どうなるがごとく、 非ひ人にんの願がん楽ぎょうもまた不ふ同どうなるのみ。 学者がくしゃ、 決けっすべし。

答フ。為ニ↠知ラムガ↢罪福ノ旨ヲ↡、要ズ須クシ↠決ス↢人ノ行ヲ↡。不↠可カラ↣必ズシモ決ス↢非人ノ所行ヲ↡。若シハ制若シハ開、各 ノ生ナス↢巨益ヲ↡。或イハ復如ク↢人ノ意楽ノ不同ナルガ↡、非人ノ願楽モ亦不同ナル耳。学者応シ↠決ス。

 ^問とふ。 *論ろんのちなみに論ろんをなさん、 かの犯戒ぼんかいの出しゅっ家けの人にんにおいて供く養ようし悩乱のうらんせば、 いくばくの罪福ざいふくを得うるや。

問フ。因ニ↠論ノ生ナサム↠論ヲ、於テ↢彼ノ犯戒ノ出家之人ニ↡供養シ悩乱スルハ、得ルヤ↢幾クノ罪福ヲカ↡。

^答こたふ。 ¬*十じゅう輪りん経ぎょう¼ の偈げにのたまはく、

答フ。¬十輪経ノ¼偈ニ云ク、

^「恒ごう河が沙しゃの仏ぶつの、 *解げ脱だつ幢相どうそう衣えを被きたり、
これにおいて悪心あくしんを起おこさば、 さだめて無む間けん獄ごくに堕おちなん」 と。
袈裟けさを名なづけて 「解げ脱だつ幢どう衣え」 となす。

「被タル↢恒河沙ノ仏ノ解脱幢相衣ヲ↡
於テ↠此ニ起スハ↢悪心ヲ↡定メテ堕ツト↢無間獄ニ↡」
袈裟ヲ名ケテ為ス↢解脱幢衣ト↡

^「月がつ1173蔵ぞう分ぶん」 (大集経) にのたまはく、 「もしかれを悩乱のうらんせば、 その罪つみ万億まんおくの仏身ぶっしんより血ちを出いだす罪つみよりも多おおし。 もしこれを供く養ようせば、 なほ無む量りょう阿あ僧そう祇ぎの大だい福徳ふくとく聚じゅを得えん」 と。 取意

「月蔵分ニ」云ク、「若シ悩↢乱スルハ彼ヲ↡、其ノ罪多シ↧於出ス↢万億ノ仏身ヨリ血ヲ↡*之罪ヨリモ↥。若シ供↢養スルハ之ヲ↡、猶得1241ムト↢无量阿僧祇ノ大福徳聚ヲ↡。」取意

 ^問とふ。 もししからば、 一向いっこうにこれを供く養ようすべし。 なんぞこれを治じして大おおきなる罪報ざいほうを招まねくべけんや。

問フ。若シ爾ラバ一向ニ応シ↣供↢養ス之ヲ↡。何ゾ可ケム↣治シテ↠之ヲ招ク↢大ナル罪報ヲ↡耶。

^答こたふ。 もしその力ちからありてこれを苦治くじせずは、 かれまた罪ざい過かを得う。 これ仏法ぶっぽうの大おおきなる怨あだなり。

答フ。*若シ有リテ↢其ノ力↡不ルハ↢苦ネンゴロニ治セ↟之ヲ、彼亦得↢罪過ヲ↡。是仏法ノ大ナル怨ナリ。

^ゆゑに ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の第だい三さんにのたまはく、 「持じ法ほうの比丘びくは、 戒かいを破やぶり正しょう法ぼうを壊えすることあるものを見みば、 すなはち駆く遣けんし、 呵か嘖しゃくし*挙こ処しょすべし。 もし善ぜん比丘びく、 壊え法ほうのものを見みて、 置おきて、 呵か嘖しゃくし駆く遣けんし挙こ処しょせずは、 まさに知しるべし、 この人ひとは仏法ぶっぽうのなかの怨あだなり。 もしよく駆く遣けんし、 呵か嘖しゃくし挙こ処しょせば、 これわが弟子でしなり、 真しんの声しょう聞もんなり。 乃至

故ニ¬涅槃経ノ¼第三ニ云ク、「持法ノ比丘ハ見バ↧有ラム↣破リ↠戒ヲ壊スルコト↢正法ヲ↡者ヲ↥、即チ応シ↢駆遣シ呵*嘖シ挙処ス↡。若シ善比丘見テ↢壊法ノ者ヲ↡、置キテ不ハ↢呵嘖シ駆遣シ挙処セ↡*者、当ニシ↠知ル、是ノ人ハ仏法ノ中ノ怨ナリ。若シ能ク駆遣シ呵嘖シ挙処スルハ、是我ガ弟子ナリ。真ノ声聞也。乃至

^もろもろの国王こくおうおよび*四部しぶの衆しゅうは、 まさにもろもろの*学人がくにん等とうを勧励かんれいして、 増ぞう上じょうの戒かい・定じょう・智慧ちえを得えしむべし。 もしこの三さん品ぼんの法ほうを学がくせずして、 懈け怠だい破は戒かいにして正しょう法ぼうを毀そしるものあらば、 王者おうじゃ・大臣だいじん、 四部しぶの衆しゅう、 まさに苦治くじすべし」 と。

諸ノ国王及ビ四部ノ衆ハ、応ニ当シ↧勧↢励シテ諸ノ学人等ヲ↡、令ム↞得↢増上ノ戒・定・智*恵ヲ↡。若シ有ラバ↧不シテ↠学セ↢是ノ三品ノ法ヲ↡、懈怠シ破戒ニシテ毀ル↢正法ヲ↡者↥、王者・大臣、四部之衆、応ニ↢当シト苦治ス↡。」

^またのたまはく (涅槃経)、 「もし比丘びくありて、 禁戒きんかいを持じすといへども、 利り養ようのためのゆゑに、 破は戒かいのものと坐ざし起きし行ぎょうじ来らいし、 ともにあひ親しん附ぷして、 その事じ業ごうを同おなじくせば、 これを破は戒かい1174と名なづく。 乃至

又云ク、「若シ有リテ↢比丘↡雖モ↠持スト↢禁戒ヲ↡、為ノ↢利養ノ↡故ニ与↢破戒ノ者↡坐シ起シ行ジ来シ、共ニ相親附シテ同ズル↢其ノ*事業ヲ↡、是ヲ名ク↢破戒ト↡。乃至

^もし比丘びくありて、 阿あ蘭若らんにゃ処しょにありて、 諸根しょこん利りならず、 *闇鈍あんどん瞢とうもうにして少しょう欲よくにして乞食こつじきし、 *説戒せっかいの日ひおよび*自恣じしの時ときに、 もろもろの弟子でしを教おしへて清浄しょうじょうに懴さん悔げせしめ、 弟子でしにあらざるもの、 多おおく禁戒きんかいを犯おかせるを見みては、 教おしへて清浄しょうじょうに懴さん悔げせしむることあたはずして、 すなはちともに説戒せっかいし自恣じしする、 これを愚痴ぐち僧そうと名なづく」 と。 以上略抄

若シ有リテ↢比丘↡在リテ↢阿蘭若処ニ↡、諸根不↠利ナラ闇鈍瞢ニシテ少欲ニシテ乞食シ、於テ↢説戒ノ日及ビ自恣ノ時ニ↡、教ヘテ↢諸ノ弟子ヲ↡清浄ニ懴悔セシメ、見テハ↧非ズシテ↢弟子ニ↡多ク犯セルヲ↦禁戒ヲ↥、不シテ↠能ハ↣教ヘテ令ムルコト↢清浄ニ懴悔セ↡而便チ与共 トモ ニ説戒シ自恣スル、是ヲ名クト↢愚痴僧ト↡。」 已上略抄

^あきらかに知しりぬ、 もしは過すぎ、 もしは及およばざるは、 みなこれ仏ぶっ勅ちょくに違いしぬ。 そのあひだの消しょう息そくすべて意こころを得うるにあり。

明カニ知リヌ、若シハ過ギ若シハ不ルハ↠及バ、皆是違シヌ↢仏勅ニ↡。其ノ間ノ消息都テ在リ↠得ルニ↠意ヲ*之。

二 Ⅹ ⅹ 助道人法

【80】^第だい十じゅうに△*助道じょどうの人法にんぼうといふは、 略りゃくして三さんあり。

第十ニ助道ノ人法トイフ者、略シテ有リ↠三。

^一いちには、 すべからく*明みょう師しの、 *内ない外げの律りつに善よくして、 よく*妨ぼう障しょうを開除かいじょするに、 恭く敬ぎょうし承習じょうじゅうすべし。 ゆゑに ¬大論だいろん¼ (大智度論) にいはく、 「雨あめの堕おつるに、 山やまの頂いただきに住とどまらずしてかならず下くだれる処ところに帰きするがごとし。 もし人ひと、 憍きょう心しんをもつてみずから高たかくすれば、 すなはち法水ほうすい入いらず。 もし善ぜん師しを恭く敬ぎょうすれば、 功く徳どくこれに帰きす」 と。

一ニハ須クシ↧明師ノ善クシテ↢内外ノ律ニ↡、能ク開↢除スルニ妨障ヲ↡恭敬シ承習ス↥。故ニ¬大論ニ¼云ク、「*如シ↧雨ノ堕ツルニ不シテ↠住ラ↢山ノ頂ニ↡必ズ帰スルガ↦下レル処ニ↥。若シ人憍心自高1242スルハ、則チ法水不↠入ラ。若シ恭↢敬スルハ善師ニ↡、功徳帰ストイヘリ↠之ニ。」

^二にには、 同どう行ぎょうの、 ともに嶮けんを渉わたるがごときを須もちゐる。 すなはち臨りん終じゅうに至いたるまで、 たがひにあひ勧励かんれいせよ。 ゆゑに ¬法ほっ華け¼ にのたまはく、 「善ぜん知ぢ識しきはこれ大だいの因縁いんねんなり」 と。 ^また 「阿あ難なんのいはく、 ª善ぜん知ぢ識しきはこれ半はんの因縁いんねんなりº と。 仏ぶつののたまはく、 ªしか1175らず、 これ全ぜんの因縁いんねんなりº」 (*付法蔵因縁伝・意) と。

二ニハ須ヰル↣同行ノ如キヲ↢共ニ渉ルガ↟*嶮ヲ、乃至臨終ニ互ニ相勧励セヨ。故ニ¬法花ニ¼云ク、「善知識者是大ノ因縁ナリト。」又「阿難ノ*言ク、善知識者是半ノ因縁ナリト。仏ノ言ク、不↠爾ラ、是全ノ因縁也ト。」

^三さんには、 念仏ねんぶつ相応そうおうの教きょう文もんにおいて、 つねに受じゅ持じし披ひ読どくし習じゅう学がくすべし。 ゆゑに ¬般舟はんじゅ経きょう¼ の偈げにのたまはく、

三ニハ於テ↢念仏相応ノ教文ニ↡常ニ応シ↢受持シ披読シ習学ス↡。故ニ¬「般舟経ノ¼偈ニ*云ク、

^「この三昧さんまい経きょうは真しんの仏ぶつ語ごなり。 たとひ↓遠方おんぽうにこの経きょうありと聞きかば、
道法どうほうを用もちゐるがゆゑに往ゆきて聴ちょう受じゅし、 一心いっしんに諷ふ誦じゅして忘捨もうしゃせざれ。

「此ノ三昧経ハ真ノ仏語ナリ設ヒ聞カバ↣遠方ニ有リト↢是ノ経↡
用ヰルガ↢道法ヲ↡故ニ往キテ聴受シ一心ニ諷誦シテ不レ↢忘捨セ↡

^たとひ往ゆきて求もとむるに聞きくことを得えずとも、 その功く徳どくの福ふくは尽つくすべからず。
よくその徳とく義ぎを称量しょうりょうすることなからん。 いかにいはんや聞ききをはりてすなはち受じゅ持じせんをや」 と。

仮使 タトヒ *往キテ求ムルニ不トモ↠得↠聞クコトヲ其ノ功徳ノ福ハ不↠可カラ↠尽ス
无ケム↣能ク称↢量スルコト其ノ徳義ヲ↡何ニ況ヤ聞キ已リテ即チ受持セムヲヤト」

四し十じゅう里り・百ひゃく里り・千せん里りをもつて 「↑遠方おんぽう」 となす。

*以テ↢四十里・*四百里・*四千里ヲ↡為ス↢遠方ト↡也

 ^問とふ。 なんらの教文きょうもんか、 念仏ねんぶつに相応そうおうする。

問フ。何等ノ教文カ、念仏ニ相応スル*耶。

^答こたふ。 前さきに引ひくところの、 △西方さいほうの証しょう拠このごときは、 みなこれその文もんなり。

答フ。如シ↢前ニ所ノ↠引ク西方ノ証拠ノ↡。皆是其ノ文ナリ。

^しかも、 まさしく西方さいほうの観かん行ぎょうならびに九く品ぼんの行ぎょう果かを明あかすことは、 ¬*観かん無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 一いっ巻かん、 *畺良きょうりょう耶や舎しゃの訳やく。 にはしかず。

然モ正シク明スコトハ↢西方ノ観行并ニ九品ノ行果ヲ↡、不↠如カ↢¬観无量寿経ニハ¼↡。一巻、*畺良耶舎ノ訳

^弥陀みだの本願ほんがんならびに極楽ごくらくの細相さいそうを説とくことは、 ¬双巻そうかん*無む量りょう寿じゅ経きょう¼ 二に巻かん、 *康こう僧鎧そうがいの訳やく。 にはしかず。

説クコトハ↢弥陀ノ本願并ニ極楽ノ細相ヲ↡、不↠如カ↢¬双巻无量寿経ニハ¼↡。二巻、康ノ僧鎧ノ訳

^諸仏しょぶつの相好そうごうならびに観相かんそうの滅罪めつざいを明あかすことは、 ¬*観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ 十じっ巻かんあるいは八はっ巻かん、 *覚賢かくけんの訳やく。 にはしかず。

明スコトハ↢諸仏ノ相好并ニ観相ノ滅罪ヲ↡、不↠如カ↢¬観仏三昧経ニハ¼↡。十巻或イハ八巻、覚賢ノ訳

^色身しきしん・法身ほっしんの相そうならびに三昧さんまいの勝しょう利りを明あかすことは、 ¬*般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ 三さん巻かんあるいは二に巻かん、 *支し婁迦るかの訳やく。 ¬*念仏ねんぶつ三ざん1176昧まい経きょう¼ 六巻ろっかんあるいは五ご巻かん、 *功く徳どく直じき、 玄げん暢ちょうとともに訳やくす。 にはしかず。

明スコトハ↢色身・法身ノ相并ニ三昧ノ勝利ヲ↡、不↠如カ↢¬般舟三昧経¼ 三巻或イハ二巻、支婁迦ノ訳 ¬念仏三昧経ニハ¼↡。六巻或イハ五巻、功徳*直共ニ↢玄暢ト↡訳ス

^修しゅ行ぎょうの方法ほうほうを明あかすことは、 上かみの三さんの経きょうならびに ¬*十じゅう往おう生じょう経きょう¼ 一巻いっかん ¬*十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼ 十じゅう四し巻かんあるいは十じゅう二に巻かん、 *龍りゅう樹じゅの造ぞう、 *羅ら什じゅうの訳やく。 にはしかず。

明スコトハ↢修行ノ方法ヲ↡、不↠如カ↢上ノ三経并ニ¬十往生経¼ 一巻 ¬十住毘婆*娑論ニハ¼↡。十四巻或イハ十二巻、龍樹ノ造リ、羅什ノ訳

^結けつ偈げ総説そうせつは、 ¬*無む量りょう寿じゅ経きょう優婆うば提舎だいしゃ願がん生しょうの偈げ¼ あるいは ¬浄じょう土ど論ろん¼ と名なづく。 あるいは ¬往おう生じょう論ろん¼ と名なづく。 *世せ親しんの造ぞう、 *菩ぼ提だい留支るしの訳やく、 一巻いっかん。 にはしかず。

*結偈総説ハ、不↠如カ↢¬无量寿経優婆提舎願生ノ偈ニハ¼↡。或イハ名ク↢¬浄土論ト¼↡。或イハ名ク↢¬往生論ト¼↡。世親ノ*造リ、菩*提留支ノ訳、一巻 △

^日々にちにちの読誦どくじゅは、 ¬*小しょう阿あ弥陀みだ経きょう¼ 一巻いっかん五ご紙し、 羅ら什じゅうの訳やく。 にはしかず。

日々ノ読誦ハ、不↠如カ↢¬小阿弥陀経ニハ¼↡。一巻*五紙、羅什ノ訳

^修しゅ行ぎょうの方法ほうほうは、 多おおく ¬*摩訶まか止し観かん¼ 十じっ巻かん および*善導ぜんどう和か尚しょうの ¬*観念かんねん法門ぼうもん¼ ならびに ¬*六ろく時じの礼讃らいさん¼ おのおの一巻いっかん。 にあり。

修行ノ方法ハ、多ク在リ↢¬摩訶*止1243観¼ 十巻 及ビ善導和尚ノ¬観念法門¼并ニ¬六時ノ礼讃ニ¼↡。各 ノ一巻

^問答もんどう料りょう簡けんは、 多おおく天台てんだい (*智顗) の ¬*十じゅう疑ぎ¼ 一巻いっかん *道どう綽しゃく和か尚しょうの ¬*安楽あんらく集しゅう¼ 二に巻かん *慈じ恩おん (窺基) の ¬*西方さいほう要決ようけつ¼ 一巻いっかん *懐え感かん和か尚しょうの ¬*群ぐん疑ぎ論ろん¼ 七巻しちかん にあり。

問答料簡ハ、多ク在リ↢天臺ノ¬十疑¼ 一巻 *道綽和尚ノ¬安楽集¼ *三巻 慈恩ノ¬西方要決¼ 一巻 懐感和尚ノ¬*群疑論ニ¼↡。七巻

^往おう生じょうの人にんを記きすることは、 多おおく*迦か才ざい師しの ¬*浄じょう土ど論ろん¼ 三さん巻かん ならびに ¬*瑞応ずいおう伝でん¼ 一巻いっかん にあり。

記スルコトハ↢往生ノ人ヲ↡、多ク在リ↢迦才師ノ¬浄土論¼ 三巻 并ニ¬瑞応伝ニ¼↡。一巻

^その余よは多おおしといへども、 要ようはこれに過すぎず。

其ノ余ハ雖モ↠多シト、要ズ不↠過ギ↠此ニ。

 ^問とふ。 行ぎょう人にんみづからかのもろもろの文もんを学がくすべし。 なんがゆゑぞ、 いま労いたわしくこの文もん (往生要集) を著あらわすや。

問フ。行人自ラ応シ↠学ス↢彼ノ諸ノ文ヲ↡。何ガ故ゾ今労イタハシク著ス↢此ノ文ヲ↡耶。

^答こたふ。 あに前さきにいはずや。 予よがごときものは、 広文こうもんを披ひらきがたし。 ゆゑにいささかにその要ようを抄しょうすと。

答フ。豈ニ不ヤ↢前ニ言ハ↡、如キ↠豫ガ之者ハ難シト↠披キ↢広文ヲ↡。故ニ聊ニ抄スト↢其ノ要ヲ↡*耶。

 ^問とふ。 ¬大集だいじっ経きょう¼ (意) にのたまはく、 「あるいは経きょう法ぼうを抄しょう写しゃするに、 文もん字じを洗せん1177脱だつし、 あるいは他たの法ほうを損そん壊えし、 あるいは他たの経きょうを闇蔵あんぞうす。 この業縁ごうえんによりて、 いま*盲もうの報ほうを得えたり」 と。 云々 しかるをいま経きょう論ろんを抄しょうするに、 あるいは多おおくの文もんを略りゃくし、 あるいは前ぜん後ごを乱みだる。 これ*生しょう盲もうの因いんなるべし。 なんぞ自じ害がいすることをなさんや。

問フ。¬大集経ニ¼云ク、「或イハ抄↢写スルニ経法ヲ↡、洗オトシ↢脱シ文字ヲ↡、或イハ損↢壊シ他ノ法ヲ↡、或イハ闇マシ↢蔵カクス他ノ経ヲ↡、由リテ↢此ノ業縁ニ↡今得タリト↢盲ノ報ヲ↡。」云々 而ルヲ今抄スルニ↢経論ヲ↡、或イハ略シ↢多クノ文ヲ↡、或イハ乱ル↢前後ヲ↡。応シ↢是生盲ノ因ナル↡。何ゾ為サム↢自害スルコトヲ↡耶。

^答こたふ。 天竺てんじく (印度)・震旦しんたん (中国) の論ろん師じ・人にん師し、 経きょう論ろんの文もんを引ひくに、 多おおく略りゃくして意こころを取とる。 ゆゑに知しりぬ、 経きょうの旨むねを錯乱さくらんするはこれ盲もうの因いんたるも、 文もん字じを省略しょうりゃくするはこれ盲もうの因いんにあらず。

答フ。天竺・震*丹ノ論師・人師、引クニ↢経論ノ文ヲ↡、多ク略シテ取ル↠意ヲ。故ニ知リヌ、錯↢乱スルハ経ノ*旨ヲ↡、是為ル↢盲ノ因ト↡。*省↢略スルハ文字ヲ↡非ズ↢是盲ノ*因ニ↡。

^いはんや、 いま抄しょうするところは、 多おおくは正しょう文もんを引ひき、 あるいはこれ諸しょ師しの所出しょすいの文もんなり。 *繁文はんもんを出いだすことあたはざるものに至いたりては、 注ちゅうして、 あるいは 「乃ない至し」 といひ、 あるいは 「略抄りゃくしょう」 といひ、 あるいは 「取しゅ意い」 といへり。 これすなはち学者がくしゃをして本文ほんもんを勘かんがへやすからしめんと欲ほっしてなり。

況ヤ今所ハ↠抄スル多クハ引ク↢正文ヲ↡、或イハ是諸師ノ所出*之文也。*至リテハ↧不ル↠能ハ↠出スコト↢繁文ヲ↡者ニ、注シテ或イハ云ヒ↢乃至ト↡、或イハ云ヒ↢略抄ト↡、或イハ云ヘリ↢取*意ト↡。是即チ欲フ↠令メムト↢学者ヲシテ易カラ↟勘ヘ↢本文ヲ↡也。

 ^問とふ。 引ひくところの正しょう文もんはまことに信しんを生しょうずべし。 ただしばしばわたくしの詞ことばを加かす。 いかんぞ人ひとの謗そしりを招まねかざらんや。

問フ。所ノ↠引ク正文ハ誠ニ可シ↠生ズ↠信ヲ。但シ屡シバシバ加ス↢私ノ詞ヲ↡。盍イカンゾラム↠招カ↢*人ノ謗ヲ↡耶。

^答こたふ。 正文しょうもんにあらずといへども、 理りをば失しっせず。 もしなほ謬あやまることあらば、 いやしくもこれを執しゅうせず。 見みるもの、 取捨しゅしゃして正しょう理りに順じゅんぜしめよ。 もしひとへに謗そしりをなさば、 またあへて辞じせず。

答フ。雖モ↠非ズト↢正文ニ↡而不↠失セ↠理ヲバ。若シ猶有ラバ↠謬ルコト、苟イヤシクモ不↠執セ↠之ヲ。見ム者取捨シテ令メヨ↠順ゼ↢正理ニ↡。若シ偏ニ生ナサバ↠謗ヲ、亦不↢敢テ辞セ↡。

^¬華け厳ごん経ぎょう¼ の偈げにのたまふがごとし。

如シ↢¬花厳経ノ¼偈ニ云フガ↡。

^1178「▼*もし菩ぼ薩さつの、 種々しゅじゅの行ぎょうを修しゅ行ぎょうするを見みて、
善ぜん・不ふ善ぜんの心しんを起おこすことあるを、 菩ぼ薩さつみな摂取せっしゅす
」 と。 以上

「若シ有ルヲ↧見テ↣菩薩ノ修↢行スルヲ種々ノ行ヲ↡
起スコト↦善不善ノ心ヲ↥菩薩皆摂取スト」 *已上

^まさに知しるべし、 謗そしりをなすもまたこれ結縁けちえんなり。 われもし道どうを得えば、 願ねがはくはかれを引いん摂じょうせん。 かれもし道どうを得えば、 願ねがはくはわれを引摂いんじょうせよ。 すなはち菩ぼ提だいに至いたるまで、 たがひに師し弟ていとならん。

当ニシ↠知ル、生ナスモ↠謗ヲ亦是結1244縁ナリ。我若シ得テ↠道ヲ、願クハ引↢摂ム彼ヲ↡。彼若シ得バ↠道ヲ、願クハ引↢摂セヨ我ヲ↡。乃至菩提マデニ互ニ為ラム↢師弟ト↡。

 ^問とふ。 *論ろんのちなみに論ろんをなさん、 多た日にち、 筆ふでを染そめて身心しんしんを劬く労ろうす。 その功こうなきにあらじ。 なんの事じをか期ごするや。

問フ。因ニ↠論ノ生ナサム↠論ヲ、多日染メテ↠筆ヲ劬↢労ス身心ヲ↡。其ノ功非ジ↠无キニ。期スル↢何ノ事ヲカ↡耶。

^答こたふ。

答フ。

^*このもろもろの功く徳どくによりて、 願ねがはくは命終みょうじゅうの時ときに、
弥陀みだ仏ぶつの無む辺へんの功く徳どくの身しんを見みたてまつることを得えん。

依リテ↢此ノ諸ノ功徳ニ↡願クハ於テ↢命終ノ時ニ↡
得ム↠見タテマツルコトヲ↢弥陀仏ノ无辺ノ功徳ノ身ヲ↡

^われおよび余よの信者しんじゃ、 すでにかの仏ぶつを見みたてまつりをはらば、
願ねがはくは*離垢りくの眼まなこを得えて、 無む上じょう菩ぼ提だいを証しょうせん。▼

我及ビ余ノ信者既ニ見タテマツルコト↢彼ノ仏ヲ↡已レバ
願クハ得テ↢離垢ノ眼ヲ↡証セム↢无上菩提ヲ↡

往おう生じょう要よう集しゅう 巻かん下げ

 

三 跋

【117981】^*永観えいかん二に年ねん甲きのえ申さる冬ふゆ十じゅう一いち月がつ、 天台てんだい山さん*延えん暦りゃく寺じ首しゅ楞りょう厳ごん院いんにして、 この文もんを撰せん集じゅうす。 明あくる年としの夏なつ四し月がつに、 その功こうを畢おふ。 一いちの僧そうありて夢ゆめみらく、 *毘び沙門しゃもん天てん、 両ふたりの*丱童かんどうを将いて、 来きたり告つげていはく、 「源信げんしんが撰せんせるところの ¬往おう生じょう集しゅう¼ は、 みなこれ経きょう論ろんの文もんなり。 一見いっけん・一聞いちもんの倫ともがらは、 無む上じょう菩ぼ提だいを証しょうすべし。 すべからくして一いち偈げを加くわへて、 広ひろく流布るふせしむべし」 と。 他た日にちに夢ゆめを語かたる。 ゆゑに偈げを作つくりていはく、

永1245観二年甲申冬十一月、於テ↢天臺山延暦寺首楞厳院ニ↡撰↢集ス斯ノ文ヲ↡。明クル年ノ夏四月ニ畢フ↢于其ノ功ヲ↡矣。有リテ↢一ノ僧ノ夢ニ↡。毘沙門天将ヰテ↢両フタリノ丱童ヲ↡、来リ告ゲテ云ク、源信ガ所ノ↠撰セル往生集ハ、皆是経・論ノ文也。一見・一聞之倫トモガラハ可シ↠証ス↢无上菩提ヲ↡。須クシテシト ↧加ヘテ↢一偈ヲ↡、広ク令ム↦流布セ↥。他日ニ語ル↠夢ヲ。故ニ*作シテ↠偈ヲ*曰ク、

^▼すでに聖教しょうぎょうおよび正しょう理りによりて、 衆しゅ生じょうを勧進かんじんして極楽ごくらくに生しょうぜしむ。

乃ない至し展転てんでんして一ひとたびも聞きくもの、 願ねがはくはともにすみやかに無む上じょう覚かくを証しょうせん。

已ニ依リテ↢聖教及ビ正理ニ↡勧↢進シテ衆生ヲ↡生ゼシム↢極楽ニ↡
乃至展転シテ一タビモ聞カム者願クハ共ニ速ニ証セムト↢无上覚ヲ↡

 

**延えん久きゅう二に年ねん四し月がつ十とお日か、 平びょう等どう院いん南泉なんせん房ぼうに多た本ほんを取とり集あつめ読よみあひ給たまひけるに、 そのなかの善本ぜんぽんをもって日野ひの点てんしおはる。 その衆しゅうは皇こう后ごう宮ぐうの大たい夫ふ殿どのをその張ちょう発ほつとなし、 樺尾かばのおの阿あ闍じゃ梨りをもって講こう師しとなす。 云々

*承じょう安あん元年がんねん十じゅう二に月がつ十じゅう一日いちにち書写しょしゃしをはりぬ

沙門しゃもん弘こう恵えの本ほんなり

延久二年四月十日、平等院南泉房多本取集読相給ヒケルニ、其中以善本日野点畢。其衆皇后宮大夫殿其為張発、樺尾阿闍梨以為講師。云々

承安元年十二月十一日書写畢

沙門弘恵本也

 1246

 

ª遣1247宋消息º

 

仏子源信暫離本山頭陀于西海道諸州名巌霊窟遠客著岸之日不図会面是宿因也然猶方語未通帰朝各促更封手札述以心懐側聞法公之本朝三宝興隆甚随喜矣我国東流之教仏日再中当今剋念極楽界帰依法華経者熾盛焉仏子是念極楽其一也以本習深故著往生要集三巻備于観念夫一天之下一法之中皆四部衆何親何疎故以此文敢附帰帆抑在本朝猶慚其拙況於他郷乎然而本発一願縦有誹謗者縦有讃歎者併結共我往生極楽之縁焉又先師故慈恩大僧正 諱良源 作観音讃著作郎慶保胤作十六相続及日本往生伝前進士為憲法法華経賦同亦贈欲令知異域之有此志嗟乎一生苒々両岸蒼々後会如何泣血而已不宜以状
  正月十五日天臺楞厳院 某 申状
 大宋国 某 賓旅下
返報
大宋国臺州弟子周文徳謹啓仲春漸暖和風霞散伏惟法位無動尊体有泰不審不審悚恐悚1248恐唯文徳入朝之初先向方礼拝禅室旧冬之内喜便信啓上委曲則大府貫首豊嶋才人附書状一対奉上先畢計也経披覧歟鬱望之情朝夕不休馳慣之際遇便脚重啓達唯大師撰択往生要集三巻捧持詣天臺国清寺附入既畢則其専当僧請領状餘也爰緇素喜貴賎帰依結縁男女弟子伍佰余人各発虔心投捨財施入於国請寺忽飾造五十間廊屋彩画柱壁荘厳内外供養礼拝膽仰慶讃仏日重光法灯盛朗興隆仏法之洪基往生極楽之因縁只在於斯方今文徳忝遇衰弊之時免取衣食之難仰帝皇之恩沢未隔詔勅并日之食甑重欲積塵何避飢饉之哉伏乞大師垂照鑑弟子不勝憤念之至敬表礼代状不宣謹言
  二月十一日大宋国弟子周文徳申状
謹上 天臺楞厳院源信大師禅室 法座前

 

延書の底本は京都府青蓮院蔵承安元年書写本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし訓はかなり異なり、 対校諸本によるか。
微塵数 無数の意。 微塵は仏教でいう物質の最小単位。
行 ここでは歩く姿の意。
通身の色 光背こうはい (後光) のこと。 仏の全身から放たれる光こう明みょうを形象化したもの。
仏跡 仏足跡のこと。
須達が家の老女の因縁 須達長者に仕える老女毘び佉きゃ羅らはものおしみの心が強く、 長者が布施ふせをするのを好まなかったが、 釈尊と羅睺羅らごらの教化によって、 聖者のさとりを得たという。
四部の弟子 四し衆しゅのこと。
減一劫 一劫に満たない期間。 一劫未満。
福 福徳ふくとくのこと。
天中の天 仏の称。 諸天のうちの最勝の者の意。
塵 →微み塵じん
劫尽き… 劫こう火かのこと。
甖 かめ。
阿須輪摩睺勒 阿あ修しゅ羅ら・摩ま睺ご羅伽らがに同じ。 →八はち部鬼ぶき神じん
阿弥陀の…見たてまつるべし 現存する ¬般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ にはこの部分に相当する文はない。
妙法輪を転ずる こよなくすぐれた教えを説く。 仏の説かれた教えは、 衆しゅ生じょうの煩ぼん悩のうをうちくだき、 次々とひろまってゆくので、 これを車輪に喩えていう。
あるが… 迦か才ざいの ¬浄土論¼ にみえる説。
勝善趣 六道のうちの人・天。
勝意楽 すぐれた意向、 望み。
菩提の記を授け →授じゅ記き
四の門 滅罪生善・冥得護持・現身見仏・当来勝利の四。
念仏経 ¬大方等だいほうどう大集経だいじっきょう菩ぼ薩さつ念仏ねんぶつ三昧ざんまい分ぶん¼ のこと。 →大だい集じゅう念仏ねんぶつ三昧ざんまい経きょう
智光の疏 ¬無む量りょう寿じゅ経きょう論ろん釈しゃく¼ のこと。
文明元年 684年。
京師 都。
この一の偈 前引の ¬華け厳ごん経きょう¼ 如来林菩薩の偈。 破地獄の文とされる。
放勉しつ 底本 (青蓮院本) には 「故放勉」 (なお放勉まのかれぬ) とある。
睡寤行住 眠る、 さめる、 歩く、 とどまること。
唐土の諸師 善導ぜんどう大師・懐え感かん禅師など。
大集経の賢護分 →大だい集じゅう賢げん護ご経きょう
等正覚 底本 (青蓮院本) には 「等覚」 とある。
掌を合せ手を叉へ 両掌を胸のあたりで組み合わせて。
六仏 過去かこ七仏しちぶつの前六。
四仏世尊 阿閦あしゅく・法相ほうそう・無量寿・微み妙みょう声しょうの四仏。
涅槃 ここでは入にゅう滅めつの意。
婆羅門種 婆羅ばら門もんの家柄
無量 異本には 「四無量」 とある。
無礙弁 →四無碍智しむげち
普光三昧 あまねく光こう明みょうを放って、 すべてのものを照らし出す禅ぜん定じょうの境地。
不退の無上菩提 仏のさとりを得ることが決けつ定じょうしていて、 迷いの世界に退転することがないという位。
化の頭 神通力じんずうりきで表し出した幻の頭。
優婆塞戒経にのたまはく… 引用に該当する文は現存の ¬優婆塞戒経¼ にはない。
健 異本には 「」 「搥」 とある。
梵音 ここでは 「南無仏」 と称える声のこと。
主事 閻羅王のこと。
遣追還送 送り返すこと。
東晋 南北朝時代の南朝の一 (317-420)。
唐朝 618-907年。
慶氏 慶滋よししげの保胤やすたねのこと。
問ふ… ¬観経¼ の下下品の人と ¬観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ の五百の釈子とは、 臨終に同じく念仏したのに、 前者は浄土に往生し、 後者は生天ののち堕獄したことを問うたもの。
得大無畏者 大無畏 (安穏でいかなるおそれもないこと) を得た者。
憐愍一切衆生者 すべての衆しゅ生じょうをあわれみいつくしむ者。
朝露の虫 朝露のように命の短い虫。
余趣 他の悪趣あくしゅ。
余趣 他の悪趣あくしゅ。
前の国王の因縁 296頁 (1090頁) 以下の ¬比喩ひゆ経きょう¼ の引文。
遮 排すること。
簡ばず 区別しない。
勝方便 すぐれた方法。
修多羅 ¬大経¼ 等の経典の取意を指す。
四依の菩薩 ここでは馬鳴めみょう菩薩のこと。
四十華厳経の普賢願 四十巻本 ¬華厳経¼ に説かれる普賢菩薩の十大願。 →華け厳ごん経ぎょう
光明 →光こう明みょう真言しんごん経ぎょう
龍樹… ¬楽邦らくほう文類もんるい¼ 巻一に龍りゅう樹じゅ菩薩の呪しゅとして記す抜ばつ一切いっさい業ごっ障しょう根本こんぽん得とく生しょう浄じょう土ど呪しゅ。
一日一宿 一日一夜に同じ。
弥勒問経 引用は千観せんかん (918-984) の ¬十願じゅうがん発心ほっしん記き¼ 所引の ¬弥勒問経¼ の文に依拠したもの。
世の談話 世間話。
仏の種智 一切いっさい種智しゅちのこと。
梵網戒品 ¬梵網ぼんもう経きょう¼ に説かれる十重じゅうじゅう四し十じゅう八はち軽きょう戒かい。
財宝等の施 財施 (物質的な財を施すこと)・宝施 (教えを説いて聞かせること) など。
任騾…ごとし ¬大集経¼ の原文は 「如騾懐任自喪身」 (騾の懐任すればおのずから身を喪うしなふがごとし)。
薬王の本事 薬王菩薩の前世の因縁いんねん。
麻のなかの蓬 麻の中に生えている蓬は自然にまっすぐになるということ。
屠辺の廏 屠所の近くにつながれた象は自然と気が荒くなるということ。 ¬付ふ法ほう蔵ぞう因縁伝いんねんでん¼ 巻六の説話による。
遠法師のいはく… ¬大だい経きょう義ぎ疏しょ¼ ¬観かん経ぎょう義ぎ疏しょ¼ ¬大だい乗じょう義ぎ章しょう¼ などの取意の文。
諸経 ¬大経¼ および ¬小経¼。
中夜… 夜半を過ぎて明け方になる時。
会する 会え通つうすること。
受用事身 知覚の対象となる身体。 すなわち具体的なすがたをとって現れた仏をいう。
摂論 迦か才ざいの ¬浄土論¼ における引用は、 世親せしん菩薩の ¬摂大乗論釈しょうだいじょうろんしゃく¼ の取意の文。
加行は… ¬摂大乗論釈¼ (真諦しんだい訳) では、 無む分別ふんべつ智ちに加行・正しょう体たい・後ご得とくの三を立て、 加行無分別智の所得の果報を 「化け身しん」、 正体無分別智のそれを 「応身おうじん」 としている。 なお、 同書にいう 「応身」 は三身中の第二身のことで、 報身ほうじんに同じ。
もしは報… 報ほう土どであれ、 化土であれ、 人々を救い遂げたいという意。
千殊 千のちがい。
三十二 →三さん十じゅう二に相そう
八十の好 →八十はちじゅう随形好ずいぎょうこう
宝積経にのたまはく… ¬宝積経¼ 所収の ¬如来にょらい会え¼ (上) の取意の文。
樹と座と仏身… ここでは仏身の量が広大すぎて、 道場樹 (菩提樹) や獅子座 (仏の座る座所) の大きさとつりあわないことを問題にしている。
仏の境界は… ¬安養抄あんにょうしょう¼ 巻三所引の義寂ぎじゃく ¬無む量りょう寿じゅ経疏きょうしょ¼ (現存せず) の説。
応仏に… 憬きょう興ごうの ¬述文じゅつもん賛さん¼ 巻中にみえる説。
胎生は… 源みなもとの隆国たかくに編の ¬安あん養集にょうしゅう¼ 巻七および ¬安あん養抄にょうしょう¼ 巻四所引の義ぎ寂じゃく ¬無む量りょう寿じゅ経きょう述じゅつ義記ぎき¼ (現存せず) の説。 同書では胎生を中品・下品としている。
中品下品 底本 (青蓮院本) には 「中品下生」 とある。
九品に… 元暁がんぎょうの ¬遊心ゆうしん安あん楽道らくどう¼ 等の説。
仏この土の… 善導ぜんどう大師の 「散善義」 の説か。
天帝釈 帝たい釈しゃく天てんのこと。
仏世の八十年 釈尊が世におられた八十年の間。
法護所訳の経 天台てんだい大師智ち顗ぎの撰述と伝える ¬観かん無む量りょう寿経疏じゅきょうしょ¼ や憬きょう興ごうの ¬述じゅつ文賛もんさん¼ 等では、 ¬大経¼ (康こう僧鎧そうがい訳) は法護の訳とされる。
三福業 ¬観経¼ に説く三福さんぷく。
方便の後心の行 無む生しょう法忍ぼうにんをさとる直前の位。
因法師 令因れいいん (霊因) のこと。 新羅しらぎの憬きょう興ごう (7世紀) と同時代とされ、 著作に ¬無量寿経むりょうじゅきょう疏しょ¼ 一巻があったといわれる。
実に約して… 玄一の ¬無む量りょう寿じゅ経きょう記き¼ 巻上所引の因法師の説。
経 ¬大経¼ および ¬小経¼。
智光の疏 ¬無む量りょう寿じゅ経きょう論ろん釈しゃく¼ 五巻のこと。 天親てんじん菩薩の ¬浄土論¼ を曇鸞どんらん大師の ¬論註¼ に依拠して註釈した書。 現存しないが、 ¬安あん養にょう集しゅう¼ などに引用された文を集成することによって、 ほぼ復元されている。
所化 教化を行うところ。
釈迦文 釈しゃ迦牟尼かむに仏ぶつに同じ。
刹利の種 刹利は梵語クシャトリヤ (kṣatriya) の音写である刹帝せつてい利りの略。 種は家柄のこと。 古代インドの四姓制度の中の王族、 貴族、 士族の身分をいう。 →四姓ししょう
子 釈尊に照らし合せていえば羅睺羅らごらにあたる。
奉事の弟子 釈尊に照らし合せていえば阿あ難なんにあたる。
智慧の弟子 釈尊に照らし合せていえば舎しゃ利り弗ほつにあたる。
神足精勤のもの 釈尊に照らし合せていえば目連もくれんにあたる。
三地 菩薩十地の位のうちの第三発光はっこう地じとする説、 また七地門の第三清浄しょうじょう勝意しょうい楽ぎょう地じ (十地のうちの初しょ地じに当る) とする説がある。 →十地じゅうじ
道宣律師のいはく… 引用に該当する文は、 道どう世せい編の ¬法苑ほうおん珠林じゅりん¼ 巻十六および ¬諸しょ経きょう要よう集しゅう¼ 巻一にみられる。
経 引用は ¬西方要決さいほうようけつ¼ 所引の ¬弥み勒ろく問経もんぎょう¼ の文によったもの。
薄浅の汎にあらず あさはかな凡ぼん夫ぶの心ではないの意か。 「汎」 は異本には 「凡」 とある。
悪律儀の行 律儀は時を定め事を定めておこなう行為。 これに善悪があり、 生活のための狩猟などが悪律儀の行とされた。
八地以去は無功用にして 八地以上の菩薩は、 意志をはたらかせず、 努力をしないで、 自在に菩薩の行をすることができるので無功用という。 →十地じゅうじ
遠法師…二品を分つ ここに列挙される諸師の説は、 龍興りゅうこうの ¬観かん無む量りょう寿じゅ経きょう記き¼ 巻下の記述によったものとみられる。
四五六地・初二三地 →十じゅう地じ
地前の三十心 初しょ地じ以前の十住・十行・十回向の三十の位。 →菩ぼ薩さつ
力法師 伝未詳。
行向 十行・十回向のこと。 →菩ぼ薩さつ
十解 十住のこと。
解行 十住・十行のこと。 →菩ぼ薩さつ
三行 →三福さんぷく
仁王経には… 以下の文は懐え感かんの ¬群ぐん議ぎ論ろん¼ によったもの。
忍位 十じゅう回え向こうの位。 →菩ぼ薩さつ
前三果 声聞乗しょうもんじょうの四果しかのうちの預流果よるか・一来いちらい果か・不ふ還げん果かのこと。
解脱分の善 三賢さんげん位で修める善根ぜんごん。
方便 →七しち方便ほうべん
忍頂煖 四し善根ぜんごんの前三 (煖位・頂位・忍位)。
三生 中品上生・中品中生・中品下生。
方便以前 七しち方便ほうべん以前のこと。
早晩 速い遅い。
業類 (往生を得るための) 行業ぎょうごうの種類。
菩薩処胎経の第二 引用の文は現行の ¬菩薩処胎経¼ では第三 (巻三) にある。 なお、 懐え感かんの ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ ではこれを第二の文としているので、 源信げんしん和か尚しょうは同書によられたものとみられる。
倡妓楽 歌舞音曲。
前の文 ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ 巻四の 「雑修ざっしゅのものは万に一も生ぜず、 専修せんじゅの人は千に一も失することなし」 という ¬礼讃らいさん¼ 取意の文を指す。
執心牢固 本願をとりたもつ心 (信心) がひとすじで強固であること。
劫尽の火 劫こう火かのこと。
前の信 前世における聞経の信。
二経 ¬大経¼ ¬小経¼。
功徳雲比丘 ¬華厳経¼ 「入法界品」 に説かれる五十三人の善知識の第二。
品類差殊 種々の階位があること。
仏蔵経に… 懐え感かんの ¬群ぐん議ぎ論ろん¼ に引く ¬仏蔵経¼ の文によったもの。
仏を念じ… 以下は六念ろくねんに当る。
我見… 我見は常住なる自我を認める見解、 衆生見は実体としての衆生を認める見解、 寿見は生命を個体に所属するものとする見解、 命見は生命が個体において持続してゆくものとする見解、 陰入界見は五ご陰おん・十じゅう二に入にゅう・十八界 (六根ろっこん・六ろっ境きょう・六ろく識しき) が永久に実在すると認める見解。
訶し 否定するの意。
大・小 大乗・小乗。
逗 応じる目的に合うように与えること。
上上 上品上生のこと。 →九く品ぼん
経論 ¬般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ ¬華け厳経ごんぎょう¼ などの経や龍りゅう樹じゅ菩薩の ¬大だい智度ちど論ろん¼、 ¬善導ぜんどう大師の ¬観念法門かんねんぼうもん¼ などの論。
有相無相の観 有相の観は仏の具体的なすがたかたちを認めて、 これを観想すること。 無相の観は諸法には本来、 具体的なすがたかたちがないという理に通達したうえで、 仏の相を観想すること。
自性無所有なり 固定的な実体はないという意。
盧舎那 毘盧びる舎しゃ (遮) 那な仏の略。 毘盧舎那は梵語ヴァイローチャナ (Vairocana) の音写。 光こう明みょう遍照へんじょうなどと漢訳する。 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の教主。 なお、 天台てんだい宗では、 毘盧舎那仏を法身ほっしん、 盧舎那仏を報身ほうじんとする。
弥陀等の経 ¬小経¼ ¬観経¼ のこと。
三の縁 ¬般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ (一巻本) の原文では、 持じ仏ぶつ力りき・三昧力さんまいりき・本ほん功く徳どく力りき。 ¬摩訶止まかし観かん¼ ではこれを仏ぶつ威い神じん力りき・三昧力・行者本功徳力とする。
上の九十日の行… 大文第六別べつ時じ念仏ねんぶつの尋常別行の項参照。
業道成弁 業ごう事じ成じょう弁べんのこと。
頭数 念仏の回数の意。
あるがいはく… 引用は千せん観かん (918-984) の ¬十じゅう願がん発ほっ心しん記き¼ の説によったもの。 ただし、 もとは義ぎ寂じゃくの ¬無む量りょう寿じゅ経きょう述じゅつ義記ぎき¼ に説かれている。 千観は天台てんだい宗三井みい園おん城じょう寺じ系 (寺門) の僧で、 西方浄土を願生した。
寂法師のいはく… ¬無量寿経述義記¼ の取意の文か。
離殺等の戒 殺せっ生しょうを禁じる五ご戒かい・十戒じっかいなど。
弥蘭王 パーリ語ミリンダ (Milinda) の音写。 紀元前二世紀の中頃に西北インドのシャーカラに属し、 アフガニスタンからインドまで治めたギリシア人の王。 ギリシア名はメナンドロス (Menandros) という。
那先比丘 那先はパーリ語ナーガセーナ (Nāgasena) の音写の略。 紀元前二世紀のインドの僧。 ミリンダ王と問答して、 王を仏教に帰き依えさせた。
第七の梵天 梵天の住する色界しきかいの初禅天しょぜんてん。 六欲天の上にあるので第七天という。
罽賓国 インド西北部の古国。 カシュミールまたはガンダーラに当るという。
十疑 以下の ¬十疑論¼ の文言は、 曇鸞どんらん大師の ¬論註¼ (三在釈義) に依拠している。
十囲の索は… 十重の縄は、 千人の男がかかっても自由にすることができないが、 剣をふるえば子供でもたちまちに切ることができる。
躄なるもの →補註10
沙訶陀薬 ヒマラヤに産するというすぐれた香りの薬。
成実 →成実論じょうじつろん
仏蔵経の… 懐え感かんの ¬群ぐん議ぎ論ろん¼ に引く ¬仏蔵経¼ の文によったもの。
五百世… →補註10
智憬等の諸師 ここにあげる説は、 懐え感かんの ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ 巻三に示される十五家の説の第三にほぼ相当する。
あるがいはく… この説は前掲書に示される十五家の説の第十一に相当する。
余処 ¬観経¼ 九く品ぼん段を指す。
余人 五ご逆ぎゃく罪ざい以外の人。
順生の業 次に生れかわった生で報いを受ける業。
不了の教 完全に理を尽していない方便の教え。 →不ふ了りょう義ぎ
不信業果 因いん果がの道理を信じないこと。
第十八巻 ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ の原文には 「第十九巻」 とある。
瑜伽論に説かく 引用に該当する文は ¬瑜伽論¼ に見出せない。
染・浄 染は煩悩ぼんのうにけがれていること。 浄は煩悩のけがれのないこと。
遠近 ここでは遅い速いの意。
業果の理 善因善果、 悪因悪果の道理。
鶏狗の業 にわとりや犬のまねをする行為。
咄なるかな 呼びかける声。
密迹力士 金剛杵こんごうしょを持って仏法を守護する神。
耆域医王 耆婆ぎばのこと。
所作安諦… 身のふるまいが安らかで、 すべてがととのい、 比類なくすぐれている。
法身を奉行すれば 真如しんにょ法ほっ性しょうの理を奉じて修行するならば。
陰種諸入 陰おん入にゅう界かいに同じ。 主客対立の世界を構成するすべての要素。
法身を証得せる 真如法性の理を完全にさとったという意。
大涅槃楽 大いなるさとりの楽しみ。
二・三 二乗にじょう・三乗さんじょうの法のこと。
閻浮檀那紫金 →閻えん浮ぶ檀金だんごん、 紫磨しま金ごん
十六両 両は重さの単位。 一両は約十六グラム。
六兵 兵隊の総称。
本際 もとのまま。
実際の海 実際は真実の際限の意で、 涅ね槃はんの異名。 ここでは広大なさとりの世界を海に喩えていう。
十住婆沙の第三 龍樹菩薩造の 「易い行ぎょう品ぼん」 のこと。 なお、 現行の ¬十住毘婆娑論¼ では、 「易行品」 は巻五にある。
菩提 底本 (青蓮院本) には 「菩薩」 とある。
根 →六根ろっこん
汎爾 底本 (青蓮院本) では 「おほよそ」 と読む。
前五波羅蜜 布施ふせ・持じ戒かい・忍にん辱にく・精しょう進じん・禅ぜん定じょう。 →六ろっ波ぱ羅ら蜜みつ
偏円の教 偏教へんぎょうと円教えんぎょう。 天てん台だい宗では、 仏の教説を内容のうえから、 三蔵教さんぞうきょう (小乗の教え)、 通教つうぎょう (大乗初門の教え)、 別教べっきょう (大乗特有の教え)、 円教 (完全円満な教え) の四教に分け、 そのうちの前三を偏教 (偏かたよった方便の教え) とする。
当教 ¬大集だいじっ経きょう¼ ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ を指す。
円人 円教 (完全円満な教え) の行者。
慧相応の定 真実の智慧ちえにかなった三昧さんまい禅ぜん定じょう。
暗禅 智慧をともなわない三昧禅定。
第七 現行の ¬大集経¼ では巻六。
烏豆聚 たくさんの黒豆の集まり。
諸度 度は波羅蜜の意で、 六ろっ波羅ぱら蜜みつなどのさまざまな菩薩の行。
悪用偏増 悪のはたらきのみがひとえに増す状態。
善用偏増 善のはたらきのみがひとえに増す状態。
地住 菩薩五十二位のうちの十地じゅうじ・十住じゅうじゅう。
善悪の交際 善と悪がいりまじる状態。 ここでは凡ぼん夫ぶから聖者の位に入ろうとする時のこと。
善悪容預 善と悪とがゆるやかにはたらいている状態。
大円鏡等の四 四智しちのこと。
成事智 四智の中の成所作智のこと。
道法 仏道。
瑠璃王の行 政務のために修行に専念できない瑠璃王 (波瑠璃王) は、 釈尊の教えによって、 常に木槵子むくろじの数珠を携え、 戦場にあっても仏を念じつづけたという。
上根・中根・下根 根は根こん機きのこと。
雪山の大士 →雪山せっせん童どう子じ
資生の具 生活用品。
論のちなみに論をなさん 因論いんろん生論しょうろん。 それではあえて反問するが、 という意。
四部の衆 四し衆しゅに同じ。
学人 修行者。
闇鈍瞢 にぶくぼんやりしていること。
助道の人法 念仏の助けとなる人と経論の教え。
内外の律 内外は大乗・小乗の意。 または内心・外相の意か。 律は教団の生活規則のこと。
妨障を開除する (仏道修行の) さまたげをとり除く。
支婁迦 支婁迦しるか讖せんのこと。
功徳直 中央アジアの人。五世紀後半。 玄暢げんちょうの要請によって ¬念仏ねんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ を訳出した。
羅什 鳩摩羅くまら什じゅうのこと。
小阿弥陀経 →仏説ぶっせつ阿あ弥陀みだ経きょう
六時の礼讃 ¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ のこと。
盲の報・生盲の因 →補註10
もし菩薩の… 親鸞聖人の ¬顕けん浄じょう土ど真実しんじつ教行証きょうぎょうしょう文類もんるい¼ の末尾は、 この ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の偈で結ばれている。
このもろもろの功徳… この偈げ文もんは ¬究く竟きょう一いち乗じょう宝ほう性しょう論ろん¼ 巻四の末尾に説く回え向こう文もんによったもの。
離垢の眼 煩悩ぼんのうのけがれを離れた智慧ちえの眼。
以下、 「註釈版」 にはない。「真宗聖典全書」 により補う。 また奥書の延書は有国による。
底本は◎京都府青蓮院蔵承安元年書写本。 Ⓐ神奈川県最明寺蔵平安時代書写本、 Ⓑ大阪府出口順得氏蔵建保四年刊本(上巻本末)、 愛知県専光寺蔵建保四年刊本(中巻本末・下巻本末)、 Ⓒ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)建長五年刊本、 Ⓓ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓔ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 なお、 別の読み方がされている右訓は割愛した。
具 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
是→Ⓐ此
罪→ⒹⒺ罪[優填王作仏形像経云作仏形像功徳无量世々所生不堕悪道後皆得生无量寿仏国作菩薩当得成仏云々略抄]
万→Ⓓ方
老→Ⓓ孝
彼 Ⓓになし
消→ⒶⒷⒸⒹⒺ銷
大→Ⓐ火
日 ⒹⒺになし
巨→Ⓓ臣
尽→Ⓐ滅
世 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
梼→ⒶⒷⒸⒹⒺ擣
隅 Ⓐ求と右傍註記
魔→ⒶⒹⒺ羅
経→Ⓔ経[説]
及 Ⓐになし
使→Ⓔ仮
甖→ⒶⒹ嬰
閲叉→Ⓔ又
猛獣 Ⓐ名主と右傍註記
輪→ⒷⒸⒹⒺ倫
荐→Ⓐ茬
懐→ⒷⒸ壊
夭→Ⓔ友
此→Ⓒ比
十→Ⓐ[注□]十
娑→ⒷⒸ沙
云々 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
言→ⒷⒸⒹⒺ云
空→ⒹⒺ至
念→Ⓐ命(念と右傍註記)
就→ⒶⒹ熟
数→ⒶⒷⒸⒹⒺ央
頌 ◎此五字注可書之と下に註記
是→Ⓐ此
昧→ⒷⒸ昧[已上]
安楽集云 ⒶⒷⒸになし
獲→Ⓔ得
有云 ⒷⒸになし
文→ⒷⒸ文[云云]
慧→Ⓐ恵
第 ◎同経ノと上欄註記し、 さらにその左に念仏三昧経と註記→ⒹⒺ[同経]第
就→Ⓐ熟
同→ⒷⒸⒺ同[経]
若 ⒹⒺになし
好→ⒷⒸⒹⒺ妙
処→ⒶⒷⒸⒹⒺ家
驚→ⒶⒷⒸⒹⒺ敬
謨→ⒶⒷⒸ无
宝積経已下麁也 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
也 ◎注不可書之と下に註記あり
若 ⒹⒺになし
起→ⒶⒷⒸⒹⒺ起[於]
諸 ⒷⒸⒹⒺになし
仏→Ⓔ仏[如来]
相→ⒶⒷⒸⒹⒺ想
唯→ⒶⒷⒸ唯[我]
故 ◎故字イ本无と上欄註記 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
及→ⒶⒷⒸⒹⒺ及[処]
念 ⒹⒺになし
持→ⒶⒷⒸⒹⒺ念
説 ⒹⒺになし
又…念22字 ⒷⒸになし
頃→ⒶⒷ項
兢→ⒷⒸ殑
云々 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
菩薩 ⒷⒸⒹⒺになし
吼→ⒹⒺ孔
金蔵菩薩 ◎になし(金蔵菩薩落[歟]と下欄註記)
金→ⒹⒺ金[光]
王 Ⓐになし
等→ⒶⒷⒸⒹⒺ等[正]
也→ⒷⒸ也[已上]
十方 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
喩→ⒷⒸ愈
慧→ⒶⒹⒺ恵
量→◎量[量]
項→ⒸⒹⒺ頃
即得→Ⓐ得即
勢→ⒶⒷⒸⒹⒺ勢[至]
致→ⒷⒸ到
扠→Ⓔ杈
号→Ⓐ名
於 ⒹⒺになし
若能観仏者 Ⓐになし
仏 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
仏於諸仏→Ⓐ諸仏於
憂→Ⓐ優
旃→ⒶⒷⒸⒹⒺ栴
文 ⒷⒸになし
明→ⒶⒷⒸⒹⒺ相
堕→Ⓔ随
仏 ⒶⒷⒸⒹになし
尼→Ⓐ尼[仏]
語→Ⓔ教
礼→ⒹⒺ礼[念]
百万→Ⓐ十
旃→ⒶⒷⒸⒹⒺ栴
賢→Ⓒ宝
名大精進 ⒹⒺになし
我 Ⓓになし
非→Ⓔ不
足→ⒸⒺ足[四]
弁→ⒶⒹ辦→Ⓔ辨
擒→ⒶⒷⒸⒹⒺ
梨→ⒶⒷⒸⒹⒺ黎
便 ⒷⒸになし
寝→ⒹⒺ寝[殿]
乃→ⒹⒺ即
莫恐 Ⓐになし
免→ⒶⒹⒺ勉
説→Ⓐ記
洹→◎恒
略→Ⓐ毘
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
堕→Ⓔ惰
槌◎揵イと上欄註記→ⒶⒷⒸⒹ揵
鍾→ⒷⒸ鐘
健→ⒷⒸⒹ揵→Ⓔ槌
斂→Ⓔ歛
慢 Ⓐになし
至 Ⓐになし
声→ⒹⒺ聞
鍾→ⒷⒸⒺ鐘
到 Ⓐになし
旦→Ⓔ旦[国]
僧…人19字 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
伝→ⒷⒸ伝[僧廿三人尼六人沙弥二人在家男女合二十四人]
父→Ⓓ文
但→Ⓐ但[一]
於入→ⒶⒷⒸⒹⒺ入於
噬→Ⓔ噛
憐→◎隣
穏→Ⓐ隠
渇→ⒶⒷⒸⒹⒺ竭
敢→ⒷⒸⒹⒺ噉
聞仏名 ⒷⒸになし
減→ⒸⒺ滅
開 Ⓐ聞と右傍註記
能→ⒹⒺ徳
王 ◎になし(王と下欄註記)
摩→ⒷⒸ磨
摩→ⒷⒸ魔
抄→ⒷⒸ抄[感禅師亦同之]
如→Ⓐ已
経→ⒹⒺ経[云]
者 ⒹⒺになし
常→ⒹⒺ当
常→ⒶⒷⒺ常[当]→ⒷⒸ当
陀→ⒶⒷⒸⒹⒺ陀[仏]
生→ⒶⒷⒸⒹⒺ生[之]
弁→ⒷⒺ辨→Ⓒ辦
弱 Ⓐ若と右傍註記
就→ⒶⒹ熟
随→Ⓐ随[謂]→ⒷⒸ謂
持→Ⓒ侍
楽 Ⓐになし
校→ⒹⒺ授
仏 Ⓐになし
生→ⒶⒹⒺ生[阿]
慧→ⒹⒺ恵
房→ⒶⒷⒸⒹⒺ坊
衆→Ⓔ衆[生]
悉皆→ⒹⒺ皆悉
已上 ⒷⒸⒹⒺになし
勒→Ⓔ勤
癈→ⒷⒸⒹⒺ廃
経→ⒶⒷⒸⒹⒺ結
諸→Ⓔ衆
患→ⒶⒷⒸⒹ悪
沙 Ⓓになし
戒→Ⓔ戒[若]
恵→ⒷⒸⒹⒺ慧
能 ⒹⒺになし
観→ⒶⒷⒸ[又]観
繁→Ⓐ繁[不]
出→Ⓔ出[私云支提者塔廟異名也]
恵→ⒶⒷⒸ慧
等 ⒶⒹⒺになし
四→ⒹⒺ四[者]
仏→ⒷⒸⒺ[念]仏
戒施→ⒶⒷⒸ施戒
籚→Ⓔ蘆
懐→Ⓔ
又 ⒶⒷⒺになし
雪 ◎雲イと上欄註記→ⒶⒷⒸⒹⒺ雲
非→ⒷⒸ非[之]→ⒹⒺ非[也]
経→ⒶⒷⒸ経[多]
憬→ⒶⒷⒸⒹⒺ璟
子 Ⓓになし
綽 Ⓐ尺と右傍註記
就→ⒶⒷⒺ熟
説 Ⓓになし
十→Ⓔ十[種]
河 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
沙 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
生→ⒶⒷⒸⒹⒺ品
此→Ⓒ比
知 Ⓐになし
日→ⒶⒷⒸⒹⒺ日[者]
中 Ⓓになし
一 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
世 ⒹⒺになし
生→Ⓐ生[法]
行 ⒹⒺになし
殖→ⒶⒷⒸⒹⒺ植
敷→ⒶⒷⒸⒹⒺ布
恵→ⒷⒸ慧
恵→ⒷⒸⒹⒺ慧
仏 ⒹⒺになし
歳→ⒹⒺ歳[等]
弁→Ⓒ辦→Ⓔ辨
此 ◎十一字注也と上欄註記
違→ⒷⒸ違[於]
釈→ⒶⒷⒸ択
玄→ⒷⒸ[又]玄
庾→Ⓔ由
欬→ⒷⒸ姟
経→Ⓐ俓
庾→ⒷⒸ由 Ⓐ庾と右傍註記
文→ⒷⒸ牟尼
広→Ⓔ横
仏 ⒷⒸⒹⒺになし
名 ⒹⒺになし
寂→Ⓔ寂[静]
倶→ⒷⒸⒺ倶[已上]
隅 Ⓐ求と右傍註記
其 Ⓐになし
辺→Ⓐ量
就→ⒶⒹⒺ熟
降→ⒶⒷⒸ降[已上]
師→ⒶⒷⒸⒹⒺ徳
寿→ⒷⒸ寿[仏]
国→ⒷⒸ国[已上]
即 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
汎→ⒷⒸ凡
此→ⒶⒷⒸⒹⒺ斯
徳→Ⓐ[功]徳
娑→ⒷⒸ沙
十→Ⓐ下
二→ⒹⒺ三
法師 ⒷⒸⒹⒺになし
法 Ⓐになし
煖→Ⓔ軟
感→Ⓐ威
明→ⒶⒹⒺ[問]明
分 ⒹⒺになし
導→Ⓐ道
三 Ⓐになし
悪→Ⓐ[三]悪
恵→ⒶⒹⒺ慧
意→Ⓓ奇
約→ⒹⒺ馰
必→ⒹⒺ心
倡→Ⓓ偈
陀→ⒷⒸⒺ陀[仏]
准→Ⓓ唯
云→ⒶⒷⒸⒹⒺ言
固→Ⓓ国
就→ⒶⒹ熟
人→ⒶⒷⒸⒹⒺ生
三→Ⓔ五
意→Ⓔ音
露 Ⓐになし
慧→ⒶⒹ恵
国 ⒹⒺになし
世 Ⓐになし
上→ⒶⒷⒸ上[略抄]
今 ⒶⒷⒸになし
遺 ◎述イと上欄註記
適 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
学→ⒹⒺ覚
専 Ⓐになし
得 Ⓐになし
就→ⒶⒷⒸⒹⒺ熟
就→ⒶⒷⒸ熟
文→ⒹⒺ文[也]
上々→ⒹⒺ上々[品]
就→ⒶⒹⒺ熟
相→ⒹⒺ想
舎→ⒶⒷⒸ遮
又 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
舟→Ⓔ若
生→Ⓓ壮
阿 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
護 ⒹⒺになし
恵→ⒶⒷⒸⒹⒺ慧
経→ⒷⒸ経[云云]→ⒹⒺ経[云]
想→ⒶⒷⒸⒹⒺ相
相→ⒶⒷⒸⒹⒺ想
辨→Ⓑ弁
六→Ⓒ云
項→ⒸⒺ頃
也→ⒷⒸ也[云云]
亦→Ⓔ又
称→ⒹⒺ称[念]
若 Ⓐになし
悪→ⒹⒺ悪[業]
死→ⒶⒷⒸⒹⒺ死[即]
梨→ⒶⒷⒸ黎
先→Ⓓ生
々 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
悔→ⒶⒷⒸ悔[故]
今 ⒶⒹⒺになし
近→Ⓔ遠
妄→Ⓐ忘
業 ⒹⒺになし
躄→ⒹⒺ癖
端→Ⓔ瑞
項→ⒸⒺ頃
鴆→Ⓓ雉
皆→Ⓔ皆[死]
安→ⒷⒸⒹ安[子]
有 ⒹⒺになし
軽 Ⓓになし
旃→ⒷⒸⒹⒺ栴
已→ⒹⒺ加
譬→Ⓐ喩
者 Ⓐになし
陀 ⒷⒸⒹⒺになし
无量 Ⓐになし
弱→ⒶⒷⒸⒹⒺ溺
磐→ⒶⒸⒹⒺ盤
力→Ⓐ徳
項→ⒸⒺ頃
猛→Ⓓ猛[力]
根→Ⓓ相
急→Ⓐ忽
為→ⒷⒸ為[勇]
破 ⒹⒺになし
噛→Ⓔ齧
熨→Ⓒ慰
即 ⒹⒺになし
→Ⓐ嬾→ⒷⒸ
復→Ⓔ後
脚→ⒹⒺ即
決→Ⓔ訣
悪 ⒹⒺになし
健→ⒷⒸⒹ揵→Ⓔ犍
地 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→Ⓑ燋
等 ⒷⒸⒹⒺになし
四 ⒹⒺになし
耶 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
五 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
不 ⒷⒸⒹⒺになし
若 ⒹⒺになし
択→ⒹⒺ釈
卅→Ⓓ母
之 ⒹⒺになし
恵→ⒶⒷⒸ慧
掘→Ⓐ堀
得 Ⓐになし
瑜→ⒹⒺ[如]瑜
説→Ⓔ説[名]
応→Ⓔ応[知]
答 Ⓓになし
如→ⒷⒸ如[有]
発動→ⒶⒷⒸⒹⒺ動発
已 Ⓐ經曰と左傍註記
観→ⒶⒷⒸⒹⒺ観[見]
由此 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
設 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
益→ⒶⒷⒸⒹⒺ益[亦]
提→Ⓐ薩
咄→Ⓔ拙
莫 ⒹⒺになし
忘→ⒶⒷⒸⒹⒺ亡
般 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
鉤→Ⓐ釣
復 ⒹⒺになし
此→ⒶⒹⒺ是
聞仏名→ⒹⒺ仏名聞
→Ⓓ物→Ⓔ拘
利 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
妙→ⒷⒸⒹⒺ好
作→ⒹⒺ化
欠→Ⓔ鈌
性→ⒷⒸⒺ姓
視→Ⓔ観
相→ⒶⒷⒸ相[見]
隠→ⒷⒸⒹⒺ穏
相→ⒶⒷⒸ想
楽 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
想→Ⓐ相
心→ⒶⒷⒸⒹⒺ心[一念]
定 ⒹⒺになし
衆→Ⓓ衆[定]
名 ⒷⒸⒹⒺになし
経 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
於 ⒷⒸⒹⒺになし
鋌 Ⓐ打と右傍註記
亦→ⒶⒷⒸⒹⒺ亦[復]
随→Ⓐ随[其]→Ⓔ随[意]
Ⓐ其の右傍に意とあり
語→ⒷⒸ意
涌→ⒶⒹⒺ踊
髻→Ⓐ髪
穏→ⒶⒹ隠
彼→Ⓓ被
恵→ⒷⒸⒹⒺ慧
婆→Ⓓ娑
娑→ⒷⒸⒺ沙
道→Ⓔ路
提 ◎薩イと上欄註記
亦→Ⓐ亦[復]
致 Ⓐになし
孔→ⒷⒸⒹⒺ吼
世 ⒷⒸになし
波→Ⓓ婆
持→Ⓔ得
薩→ⒶⒷⒸⒹⒺ提
営 Ⓐ永と右傍註記
恵→ⒷⒸⒹⒺ慧
恵→ⒶⒷⒸ慧
云々 ⒷⒸⒹⒺになし
闌→ⒶⒷⒸⒹⒺ蘭
八→Ⓒ一
相対諸教→ⒶⒷⒸⒹⒺ諸教相対
恵→ⒶⒷⒸ慧
若 ⒷⒸⒹになし
雖→Ⓒ声
宿世 ⒷⒸになし
也 Ⓐになし
即 ⒹⒺになし
此→Ⓐ是
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
蠢 Ⓐ順と右傍註記
亦 Ⓔになし
未 Ⓓになし
賢→ⒹⒺ賢[人]
全→ⒶⒷⒸⒹⒺ[若]全
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
无 ⒹⒺになし
常→ⒶⒷⒸⒹⒺ当
之→Ⓔ聖
恵→ⒶⒷⒸⒺ慧
辨→Ⓑ弁
家 ◎在と上欄註記→ⒷⒸⒹⒺ[在]家
親→ⒶⒷⒸ嚫→ⒹⒺ信
有→ⒹⒺ有[少有]
誓 Ⓐになし
云→ⒶⒷⒸⒹⒺ言
言→ⒶⒹⒺ云
若→ⒶⒷⒸⒹⒺ若[復]
欠→Ⓔ鈌
即→ⒹⒺ則
提→Ⓐ薩誠ⒷⒸⒹⒺ提[誠]
鬚→Ⓔ鬢
擯→ⒶⒹⒺ
作→ⒷⒸ作[於]
以此→Ⓔ此以以 Ⓓになし
果報→ⒷⒸ報果
禅→ⒹⒺ禅[定]
丘 Ⓓになし
孤→Ⓓ狐
旃→ⒶⒷⒸⒹⒺ旋
諸 ⒹⒺになし
何 ⒶⒹⒺになし
誠→ⒷⒸ[至]誠
若 ⒹⒺになし
臣→Ⓐ生
擯→Ⓐ儐→Ⓓ
亦→Ⓐ去
擯→Ⓐ浜
乖 Ⓐ化と右傍註記
之 ⒷⒸになし
若 ⒹⒺになし
嘖→ⒹⒺ責
者 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
恵→ⒷⒸⒺ慧
事 ⒹⒺになし
之 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
如→ⒷⒸ[又]如
嶮→Ⓐ噞
言→Ⓐ云
云→Ⓐ言
往 Ⓐ來と右傍註記
以 ◎或本四百无四字と右傍註記
四 ⒶⒷⒸⒹになし
四 ⒷⒸになし
耶 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
畺→ⒹⒺ薑
直→Ⓐ真
娑→Ⓐ沙
結…巻 △ 日…譯18字→ⒶⒷⒸⒹⒺ日…譯18字 結…巻 △
造→Ⓐ作
提→Ⓐ薩
五紙 ⒹⒺになし
止→Ⓓ正
道→ⒸⒺ導
三→ⒶⒸⒹⒺ二
群→Ⓓ郡
耶→Ⓐ矣
丹 ◎旦と下欄註記→ⒹⒺ旦
旨→Ⓓ盲
省 Ⓐ生と右傍註記
因→ⒹⒺ因[或復於彼十法行中初書写行脱文是過為開解等略抄非過]
之 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
至→ⒶⒷⒸⒹⒺ[又]至
意→ⒷⒸ意[也]
人→ⒹⒺ人[論]
已上 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
作 Ⓒになし
曰→ⒶⒷ云