往生要集 巻下
天台*首楞厳院沙門源信撰
◎念仏利益
【58】大文第七に、 念仏利益を明かさば、 大きに分ちて七あり。 一には滅罪生善、 二には冥得護持、 三には現身見仏、 四には当来勝利、 五には弥陀別益、 六には引例勧信、 七には悪趣利益なり。 その文おのおの多し、 いま略して要を挙ぐ。
大文第七明↢念仏利益↡者、大分有↠七。一滅罪生善、二冥得護持、三現身見仏、四当来勝利、五弥陀別益、六引例勧信、七悪趣利益。其文各多、今略挙↠要。
◎念仏利益 ○滅罪生善
【59】第一に滅罪生善といふは、
第一滅罪生善者、
・滅罪
¬*観仏経¼ の第二にのたまはく、 「一時のなかにおいて分ちて少分となして、 少分のなかによく*須臾のあひだも仏の*白毫を念じて、 心をして*了々ならしめ、 謬乱の想なく、 分明*正住にして、 意を注くること息まずして白毫を念ずるものは、 もしは相好を見、 もしは見ることを得ずとも、 かくのごとき等の人は、 九十六億那由他恒河沙*微塵数劫の生死の罪を除却せん。 たとひまた人ありて、 ただ白毫を聞きて心に驚疑せず、 歓喜し信受せん。 この人もまた八十億劫の生死の罪を却けん」 と。
正住 心を一処に止めること。
微塵数 無数の意。 微塵は仏教でいう物質の最小単位。
¬観仏経¼第二云。「於↢一時中↡分為↢少分↡、少分之中能須臾間念↢仏白毫↡、令↢心了了↡、無↢謬乱想↡、分明正住注↠意不↠息、念↢白毫↡者、若見↢相好↡、若不↠得↠見、如↠是等人、除↢却九十六億那由他恒河沙微塵数劫生死之罪↡。設復有↠人、但聞↢白毫↡心不↢驚疑↡、歓喜信受、此人亦却↢八十億劫生死之罪↡。」
またのたまはく (*同)、 「仏、 世を去りたまひて後、 三昧正受して仏の*行を想ふものは、 また千劫の極重の悪業を除かん」 と。 仏の行歩の相は、 *上の助念方法門のごとし。
行 ここでは歩く姿の意。
上の助念方法門 大文第五助念方法の対治懈怠のうちの飛行自在を指す。
又云。「仏去↠世後、三昧正受想↢仏行↡者、亦除↢千劫極重悪業↡。」仏行歩相如↢上助念方法門↡
またのたまはく (*観仏経)、 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªなんぢ、 今日より如来の語を持ちて、 あまねく弟子に告げよ。 仏の滅度の後に、 好き形像を造りて、 身相をして具足せしめ、 また無量の化仏の色像および*通身の色を作り、 および*仏跡を画き、 微妙の糸および*頗梨珠をもつて白毫の処に安きて、 もろもろの衆生をしてこの相を見ることを得しめよ。 ただこの相を見て心に歓喜をなさば、 この人は百億那由他恒河沙劫の生死の罪を除却せんº」 と。
通身の色 光背 (後光) のこと。 仏の全身から放たれる光明を形象化したもの。
仏跡 仏足跡のこと。
頗梨珠 水晶の玉。
又云。「仏告↢阿難↡。汝従↢今日↡持↢如来語↡、遍告↢弟子↡。仏滅度後造↢好形像↡、令↢身相*足↡、亦作↢无量化仏色像及通身色↡、及画↢仏跡↡、以↢微妙糸、及頗梨珠↡安↢白毫処↡、令↢諸衆生得↟見↢是相↡。但見↢此相↡心生↢歓喜↡、此人除↢却百億那由他恒河沙劫生死之罪↡。」*¬優填王作仏形像経¼云「作↢仏形像↡功徳无量世世所↠生不↠堕↢悪道↡後皆得↠生↢无量寿仏国↡作↢菩薩↡当↠得↢成仏↡」云云略抄
足 青蓮院本では 「具足」。
優~抄 他本にはこの割註四十五字を欠く。
またのたまはく (*同)、 「老女の、 仏を見て、 邪見にして信ぜざるすら、 なほよく八十万億劫の生死の罪を除却しき。 いはんや、 また善き意をもつて恭敬し礼拝せんをや」 と。 *須達が家の老女の因縁は、 かの ¬経¼ (同) に広く説くがごとし。
須達が家の老女の因縁 須達長者に仕える老女毘佉羅はものおしみの心が強く、 長者が布施をするのを好まなかったが、 釈尊と羅睺羅の教化によって、 聖者のさとりを得たという。
又云。「老女見↠仏、邪見不↠信、猶能除↢却八十万億劫生死之罪↡、況復善意恭敬礼拝。」須達家老女因縁如↢彼経広説↡
またのたまはく (*同)、 「もろもろの凡夫および*四部の弟子、 *方等経を謗り、 *五逆罪を作り、 *四重禁を犯し、 *僧祇物を偸み、 *比丘尼を婬し、 *八戒斎を破り、 もろもろの悪事をなし、 種々の邪見あらん。 かくのごとき等の人、 もしよく心を至して一日一夜、 繋念在前して、 仏如来の一の相好を観ぜば、 もろもろの悪・罪障も、 みなことごとく尽滅しなん」 と。
方等経 普遍平等の真理を説きあらわした経典。 大乗経典の総称。
又云。「諸凡夫、及四部弟子、謗↢方等経↡作↢五逆罪↡犯↢四重禁↡偸↢僧祇物↡、婬↢比丘尼↡、破↢八戒斎↡、作↢諸悪事種種邪見↡、如↠是等人、若能至↠心一日一夜、繋↠念在↠前観↢仏如来一相好↡者、諸悪罪障皆悉尽滅。」
またのたまはく (*観仏経)、 「もしは仏世尊に帰依することあるもの、 もしは名を称するものは、 百千劫の煩悩の重障を除く。 いかにいはんや、 正心に*念仏定を修せんをや」 と。
又云。「若有↣帰↢依仏世尊↡者、若称↠名者、除↢百千劫煩悩重障↡。何況正心修↢念仏定↡。」
¬*宝積経¼ の第五にのたまはく、 「宝珠あり、 種々色と名づく。 大海のなかにあり、 無量衆多の駃き流ありて大海に入るといへども、 珠火の力をもつて水をして消滅せしめて、 盈溢せざらしむるがごとく、 かくのごとく如来・*応・*正等覚は菩提を証しをはりて、 智火の力によりて、 よく衆生の煩悩をして消滅せしめたまふことも、 またかくのごとし。 乃至 もしまた人ありて、 日々のうちにおいて如来の名号功徳を*称説せば、 このもろもろの衆生はよく黒闇を離れて、 漸次にまさにもろもろの煩悩を焼くことを得べし。 かくのごとくして ª南無仏º と称念するもの、 *語業空しからじ。 かくのごとき語業を、 *大炬を執りてよく煩悩を焼くと名づく」 と。
大炬 大きなたいまつ。
¬宝積経¼第五云。「如↧有↢宝珠↡名↢種種色↡、在↢大海中↡、雖↠有↣无量衆多駃流入↢於大海↡、以↢珠火力↡、令↪水銷滅而不↩盈溢↨、如↠是如来・応・正等覚、証↢菩提↡已由↢智火力↡、能令↢衆生煩悩*銷滅↡、亦復如↠是。乃至 若復有↠人、於↢日日中↡、称↢説如来名号功徳↡、是諸衆生、能離↢黒闇↡漸次当↠得↠焼↢諸煩悩↡。如↠是称↢念南无仏↡者、語業不↠空。如↠是語業、名↧執↢大炬↡能焼↦煩悩↥。」
銷 青蓮院本では 「消」。
・生善
¬*遺日摩尼経¼ にのたまはく、 「菩薩は、 また数千巨億万劫、 愛欲のなかにありて罪のために覆はれたりといへども、 もし仏経を聞きて一反も善を念ずれば、 罪すなはち消尽す」 と。 以上のもろもろの文は滅罪なり。
¬*遺摩尼経¼云。「菩薩雖↧復数千巨億万劫、在↢愛欲中↡為↠罪所↞覆、若聞↢仏経↡一反念↠善、罪即消尽。」已上諸文滅罪
遺摩尼経 青蓮院本、 建長五年刊本では 「遺日摩尼経」。
¬*大悲経¼ の第二にのたまはく、 「もし三千大千世界のなかに満てらん*須陀洹・*斯陀含・*阿那含・*阿羅漢を、 もし善男子・善女人ありて、 もしは一劫、 もしは*減一劫、 もろもろの種々の*称意の一切の楽具をもつて、 *恭敬し尊重し*謙下して供養せん。 もしまた人ありて、 諸仏の所にして、 ただ一たび掌を合せ、 一たび名を称せん。 かくのごとき福徳を、 前の福徳に比ぶるに、 百分にして一にも及ばず。 百千億分にして一にも及ばず。 *迦羅分にして一にも及ばず。 なにをもつてのゆゑに。 仏如来はもろもろの*福田のなかに最無上たるをもつてなり。 このゆゑに仏に施するは大功徳を成ず」 と。 略して抄す。 *三千世界に満てる辟支仏をもつて*校量することまたしかり。
減一劫 一劫に満たない期間。 一劫未満。
称意 心にかなうこと。
謙下 へりくだること。
迦羅分 迦羅は梵語カーラ (kāla) の音写。 人間の体毛の百分の一、 また十六分の一ともいい、 きわめて小さな数量を指す。
¬大悲経¼第二云。「若三千大千世界満↠中、須陀洹・斯陀含・阿那含・阿羅漢、若有↢善男子・善女人↡、若一劫若減一劫、以↢諸種種称↠意一切楽具↡、恭敬尊重、謙下供養。若復有↠人、於↢諸仏所↡、但一合掌一称↠名。如↠是福徳比↢前福徳↡、百分不↠及↠一、百千億分不↠及↠一。迦羅分不↠及↠一。何以故、以↣仏如来諸福田中為↢無上↡。是故施↠仏成↢大功徳↡。」略抄以↧満↢三千*界↡辟支仏↥挍量亦爾
界 青蓮院本では 「世界」。
¬*普曜経¼ の偈にのたまはく、
「一切衆生の、 *縁覚とならんに、 もし供養すること億数劫にして、
飲食・衣服・床臥具、 *檮香・雑香および名華をもつてすることあらんも、
檮香 つきくだいた香料。
もし心を一にして十の指を叉へ、 心をもつぱらにしてみづから一の如来に帰したてまつり、
口にみづから言を発して ª南無仏º といふことあらば、 この功徳の福をば最上なりとなす」 と。
¬普曜経¼偈云。「一切衆生成↢縁覚↡、若有↣供↢養億数劫、飲食・衣服・床臥具・梼香・雑香及名華↡、若有↧一心叉↢十指↡専心自帰↢一如来↡口自発↦言南無仏↥、是功徳福為↢上↡。」
¬*般舟経¼ に念仏三昧を説く偈にのたまはく、
「たとひ一切みな仏となりて、 聖智清浄にして慧第一ならん。
みな億劫よりその数を過ぐすまで、 一偈の功徳を講説し、
*泥洹に至るまで*福を誦詠し、 無数億劫にことごとく嘆誦すとも、
泥洹 梵語ニルヴァーナ (nirvāņa) の俗語形の音写。 涅槃に同じ。 ここでは入滅のこと。
福 福徳のこと。 功徳。
その功徳を究め尽すことあたはじ。 この三昧の一偈の事においてするを、
一切の仏国のあらゆる地、 四方四隅および上下の、
なかに満てらん珍宝をもつて布施し、 用ゐて仏*天中の天に供養せんも、
天中の天 仏の称。 諸天のうちの最勝の者の意。
もしこの三昧を聞くことあるものは、 その*福祐を得ること、 かれに過ぎたらん。
*安諦に*諷誦し説講するものは、 譬へを引くとも功徳喩ふべからず」 と。 *一仏の刹を破して*塵となして、 一々の塵を取りて、 また砕くこと、 一仏刹の塵数においてするがごとくして、 この一塵をもつて一仏刹となして、 そこばくの仏刹の、 なかに満てらん珍宝を諸仏に供養せん。 これをもつて比となせり。 以上生善。
福祐 福徳に同じ。 功徳。
安諦 心を落ち着けて安らかなこと。
諷誦 となえること。
一仏の刹 刹は梵語クシェートラ (kşetra) の音写で、 国土のこと。 一仏国土。
塵 微塵。 物質の最小単位。
¬般舟経¼説↢念仏三昧↡偈云。「仮使一切皆為↠仏、聖智清浄慧第一。皆於↢億劫↡過↢其数↡、講↢説一偈↡之功徳、至↢於泥洹↡誦↢詠福↡、无数億劫悉歎誦、不↠能↣究↢尽其功徳↡。於↢是三昧一偈事↡、一切仏国所有地、四方・四隅及上下、満↠中珍宝以布施、用供↢養仏天中天↡、若有↠聞↢是三昧↡者、得↢其福祐↡過↢於彼↡。安諦諷誦説講者、引↠譬功徳不↠可↠喩。」破↢一仏刹↡為↠塵取↢一一塵↡亦砕如↢一仏刹塵数↡以↢此一塵↡為↢一仏刹↡若干仏刹満↠中珍宝供↢養諸仏↡以↠之為↠比也已上生善
・滅罪生善
¬*度諸仏境界経¼ に説かく、 「もしもろもろの衆生の、 如来を縁じて、 もろもろの行を生ずるものは、 無数劫の地獄・畜生・餓鬼・*閻魔王の生を断ず。 もし衆生ありて、 一念も*作意して如来を縁ずるものは、 所得の功徳限極あることなし。 称量すべからず。 百千万億那由他のもろもろの大菩薩の、 ことごとく不可思議の解脱定を得んも、 *計校してその辺際を知ることあたはじ」 と。
作意 心をはたらかせること。
¬度諸仏境界経¼説。「若諸衆生縁↢於如来↡生↢諸行↡者、断↢无数劫地獄・畜生・餓鬼・*閻羅王生↡。若有↢衆生↡、一念作意縁↢如来↡者、所得功徳、无↠有↢限極↡、不↠可↢称量↡。百千万億那由他、諸大菩薩、悉得↢不可思議解脱定↡、不↠能↣計挍知↢其辺際↡。」
閻羅王 青蓮院本、 建長五年刊本では 「閻魔王」。
¬*観仏経¼ に、 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªわれ*涅槃しなん後に、 諸天・世人、 もしわが名を称し、 および «南無諸仏» と称せば、 獲るところの福徳無量無辺ならん。 いはんやまた*繋念して諸仏を念ずるものは、 しかももろもろの*障礙を滅除せざらんやº」 と。 以上、 滅罪生善。 その余は*上の正修念仏門のごとし。
涅槃 ここでは入滅の意。
繋念 係念、 懸念とも書く。 想いをかけること。
上の正修念仏門 大文第四正修念仏の観察門を指す。
¬観仏経¼*説。「仏告↢阿難↡。我涅槃後、諸天・世人、若称↢我名↡、及称↢南无諸仏↡、所↠獲福徳无量无辺。況復繋↠念念↢諸仏↡者、而不↣滅↢除諸障↡耶。」已上滅罪生善其余如↢上正修念仏門↡
説 他本では欠く。
◎念仏利益 ○冥得護持
【60】第二に*冥得護持といふは、
冥得護持 諸天の加護を得ること。
第二冥得護持者、
¬*護身呪経¼ (意) にのたまはく、 「*三十六部の神王に、 万億恒沙の鬼神ありて*眷属となして、 *三帰を受けたるものを護る」 と。
三十六部の神王 多くの鬼神を眷属とし、 三宝に帰依する男女を守護するという三十六の善神。
¬護身咒経¼云。「三十六部神王、有↢万億恒沙鬼神↡為↢眷属↡、護↧受↢三帰↡者↥。」
¬*般舟経¼ にのたまはく、 「*劫尽き壊焼する時に、 この三昧を持てる菩薩は、 たとひこの火のなかに堕つとも、 火すなはちために滅しなんこと、 たとへば、 大きなる*甖の水の、 小火を滅するがごとし。 仏、 跋陀和に告げたまはく、 ªわが語るところは異あることなし。 この菩薩は、 この三昧を持てるに、 もしは帝王、 もしは賊、 もしは火、 もしは水、 もしは竜、 もしは蛇、 もしは*閲叉・鬼神、 もしは猛獣、 乃至 もしは人の禅を壊り、 人の念を奪ふものも、 たとひこの菩薩を中らんと欲せば、 つひに中ることあたはじº と。 仏ののたまはく、 ªわが語るところのごときは異あることなし。 その*宿命をば除きて、 その余はよく中るものあることなしº」 と。
甖 かめ。
宿命 過去世よりの因縁。
¬般舟経¼云。「劫尽壊焼時、持↢是三昧↡菩薩者、*正仮堕↢是火中↡、火即為滅、譬如↣大甖水滅↢小火↡。仏告↢跋陀和↡。我所↠語无↠有↠異。是菩薩者、持↢是三昧↡、若帝王若賊、若火若水、若竜若虵、若閲*又鬼神、若猛獣 乃至 若壊↢人禅↡奪↢人念↡、設欲↠中↢是菩薩↡者、終不↠能↠中。仏言。如↢我所↟語无↠有↠異。除↢其宿命↡。其余无↠有↢能中者↡。」
正仮 他本では 「正使」。
又 他本では 「叉」。
偈 (般舟経) にのたまはく、
「鬼神・*乾陀ともに擁護し、 諸天・人民もまたかくのごとくせん。
ならびに*阿須輪・摩睺勒も、 この三昧を行ぜば、 かくのごときことを得ん。
諸天ことごとくともにその徳を頌め、 天・人・竜神・*甄陀羅、
諸仏も、 *嗟嘆して願のごとくならしめたまはん。 経を*諷誦し説きて人のためにせんがゆゑなり。
嗟嘆 ほめたたえること。
国々あひ伐ちて民荒乱し、 飢饉しきりに臻りて苦窮を懐くとも、
つひにその命を*中夭せじ。 よくこの経を誦して人を化するものは、
中夭 不慮の死。 または早死のこと。
勇猛にしてもろもろの魔事を*降伏し、 心に畏るるところなく毛竪たじ。
その功徳行も不可議ならん。 この三昧を行ずるものは、 かくのごときことを得ん」 と。 ¬*十住婆沙¼ に、 これらの文を引きをはりていはく、 「ただ*業報かならず受くべきものをば除く」 と、 云々。
業報 善悪の行為を因として受ける苦楽の報い。 →
補註6
¬偈¼曰。「鬼神・乾陀共擁護、諸天・人民亦如↠是。并*阿須倫・摩睺勒、行↢此三昧↡、得↠如↠是。諸天悉共頌↢其徳↡、天・人・竜・神・甄陀羅・諸仏嗟歎令↠如↠願。諷↢誦説↣経↡為↠人故。国国相伐民荒乱、飢饉荐臻懐苦窮、終不↣於中↢夭其命↡。能誦↢此経↡化↠人者。勇猛降↢伏諸魔事↡、心无↠所↠畏、毛不↠竪、其功徳行不↠可↠議。行↢此三昧↡得↠如↠是。」¬十住婆娑¼引↢此等文↡已云「唯除↢業報必応↠受者↡」*
阿須倫 青蓮院本では 「阿須輪」。
◇ 青蓮院本には 「云云」 とあり。
¬*十二仏名経¼ の偈にのたまはく、
「もし人、 仏の名を持てば、 衆魔および*波旬、
*行住坐臥の処に、 その便りを得ることあたはじ」 と。
¬十二仏名経¼偈云。「若人持↢仏名↡、衆魔及波旬、行住坐臥処不↠能↠得↢其便↡。」
◎念仏利益 ○現身見仏
【61】第三に現身見仏といふは、
第三現身見仏者、
¬*文殊般若経¼ の下巻にのたまはく、 「仏ののたまはく、 ªもし善男子・善女人、 *一行三昧に入らんと欲はば、 *空閑に処してもろもろの乱意を捨て、 *相貌を取らずして、 心を一仏に繋けて、 もつぱら名字を称すべし。 仏の*方所に随ひて身を端くして正しく向かひて、 よく一仏において念々に相続せよ。 すなはち念のうちにおいて、 よく過去・未来・現在の諸仏を見たてまつらんº」 と。
空閑 静かなところ。
¬文殊般若経¼下巻云。「仏*云。若善男子・善女人、欲↠入↢一行三昧↡、応↧処↢*至閑↡捨↢諸乱意↡不↠取↢相貌↡繋↢心一仏↡、専称↢名字↡、随↢仏方所↡端↠身正向、能於↢一仏↡念念相続↥。即於↢念中↡能見↢過去・未来・現在諸仏↡。」
云 青蓮院本では 「言」。
至閑 他本では 「空閑」。
導禅師 (善導) 釈していはく (礼讃・意)、 「▲衆生障重くして、 観成就しがたし。 ここをもつて大聖 (釈尊) 悲憐して、 ただもつぱら名字を称せよと勧めたまふ」 と。
導禅師釈云。「衆生障重観難↢成就↡。是以大聖悲憐直勧↣専称↢名字↡。」
¬*般舟経¼ にのたまはく、 「前に聞かざるところの経巻を、 この菩薩、 この三昧を持てる威神をもつて、 夢のうちにことごとくみづからその経巻を得て、 おのおのことごとく見、 ことごとく経の声を聞かん。 もし昼日に得ずは、 もしは夜、 夢のうちにしてことごとく仏を見たてまつることを得ん。 仏、 跋陀和に告げたまはく、 ªもしは一劫、 もしは一劫を過ぎて、 われ、 この菩薩の、 この三昧を持てるものを説き、 その功徳を説かんに、 尽しをはるべからず。 いかにいはんや、 よくこの三昧を求め得たるものをやº」 と。
¬般舟経¼云。「前所↠不↠聞経巻、是菩薩持↢是三昧↡威神、夢中悉自得↢其経巻↡、各各悉見悉聞↢経声↡。若昼日不↠得者若夜於↢夢中↡、悉得↠見↠仏。仏告↢跋陀和↡。若一劫若過↢一劫↡、我説↧是菩薩持↢三昧↡者↥、説↢其功徳↡不↠可↢尽竟↡。何況能求↢得是三昧↡者。」
また同経の偈にのたまはく、
「*阿弥陀の国の菩薩の、 *無央数百千の仏を見たてまつるがごとく、
阿弥陀の…見たてまつるべし 現存する ¬般舟三昧経¼ にはこの部分に相当する文はない。
この三昧を得たる菩薩もしかなり。 まさに無数百千の仏を見たてまつるべし。 乃至
それこの三昧を誦受することあらば、 すでにまのあたり百千の仏を見たてまつるとなす。
たとひ最後の大恐懼においても、 この三昧を持たば畏るるところなからん」 と。
又同¬経¼偈云。「如↣阿弥陀国菩薩見↢无央数百千仏↡、得↢是三昧↡菩薩然、当↠見↢无央百千仏↡。乃至 其有↣誦↢受是三昧↡、已為↣面見↢百千仏↡。仮使後大恐懼持↢此三昧↡无↠所↠畏。」
¬*念仏三昧経¼ の第九の偈にのたまはく、
「もしはことごとく一切の仏、 現在・未来および十方を見んと欲し、
あるいはまた*妙法輪を転ずることを求めんには、 また先づこの三昧を修習せよ」 と。
妙法輪を転ずる こよなくすぐれた教えを説く。 仏の説かれた教えは、 衆生の煩悩をうちくだき、 次々とひろまってゆくので、 これを車輪に喩えていう。
¬念仏三昧経¼第九偈云。「若欲↣尽見↢一切仏、現在・未来及十方↡、或復求↠転↢妙法輪↡、亦先修↢習此三昧↡。」
¬*十二仏名経¼ の偈にのたまはく、
「もし人よく心を至して、 七日仏の名を誦せば、
清浄の眼を得て、 よく無量の仏を見たてまつらん」 と。
¬十二仏名経¼偈云。「若人能至↠心、七日誦↢仏名↡、得↢於清浄眼↡能見↢无量仏↡。」
◎念仏利益 ○当来勝利
【62】第四に*当来勝利といふは、
当来勝利 来世で得るすぐれた利益。
第四当来勝利者、
・離悪趣
¬*華厳¼ の偈にのたまはく、
「もし如来の小の功徳をも念じ、 乃至一念の心にも専仰したてまつらば、
もろもろの悪道の怖れ、 ことごとく永く除こり、 智眼はここにおいてよく深く悟れり」 と。 智眼天王の頌なり。
¬華厳¼偈云。「若念↢如来*少功徳↡、乃至一念心専仰、諸悪道怖悉永除、智眼於↠此能深悟。」智眼天王頌
少 青蓮院本では 「小」。
¬*般舟経¼ の偈にのたまはく、
「その人つひに地獄に堕せじ。 餓鬼道および畜生を離れん。
世々に生るるところにて*宿命を識らん。 この三昧を学せば、 かくのごときことを得てん」 と。
宿命 過去世の境界。
¬般舟経¼偈云。「其人終不↠堕↢地獄↡、離↢餓鬼道及畜生↡、世世所↠生識↢宿命↡。学↢是三昧↡得↠如↠是。」
¬*観仏経¼ にのたまはく、 「もし衆生ありて、 一たびも仏身の、 上のごとき功徳・相好・光明を聞かば、 億々千劫にも悪道に堕ちず、 邪見・雑穢の処に生れず、 つねに正見を得て、 勤修すること息まざらん。 ただ仏の名を聞くに、 かくのごとき福を獲。 いかにいはんや、 念を*観仏三昧に繋けんをや」 と。
¬観仏経¼云。「若有↢衆生↡一聞↢仏身如↠上功徳・相好・光明↡、億億千劫不↠堕↢悪道↡、不↠生↢邪見雑穢之処↡、常得↢正見↡勤修不↠息。但聞↢仏名↡獲↢如↠是福↡。何況繋↢念観仏三昧↡。」
¬*安楽集¼ (上) にいはく、 「▲¬*大集経¼ にのたまはく、 ª諸仏、 世に出でたまふに、 四種の法ありて、 衆生を度したまふ。 なんらをか四となす。 一には、 口に*十二部経を説きたまふ。 すなはちこれ、 *法施をもつて衆生を度したまふなり。 二には、 諸仏如来には無量の*光明・*相好まします。 一切の衆生、 ただよく心を繋けて観察すれば、 益を獲ずといふことなし。 すなはちこれ、 身業をもつて衆生を度するなり。 三には、 無量の徳用・神通道力・種々の*神変まします。 すなはちこれ、 神通道力をもつて衆生を度するなり。 四には、 諸仏如来には無量の*名号まします。 もしは*総、 もしは*別なり。 それ衆生ありて、 心を繋けて称念すれば、 障を除き、 益を獲て、 みな仏前に生れずといふことなし。 すなはちこれ、 名号をもつて衆生を度するなりº」 と。 云々
法施 人々に教えを説いて聞かせること。
神変 超人間的な力によってあらわされたさまざまなすがたや動作。
総・別 総は如来の十号を指し、 別は阿弥陀如来は薬師如来等の個々の名号を指す。
¬安楽集¼云。「大集経云。諸仏出↠世有↢四種法↡度↢衆生↡。何等為↠四。一者口説↢十二部経↡。即是法施度↢衆生↡。二者諸仏如来、有↢无量光明・相好↡。一切衆生、但能繋↠心観察、無↠不↠*得↠益。即是身業度↢衆生↡。三者有↢无量徳用・神通道力・種種神変↡。即是神通道力度↢衆生↡。四者諸仏如来有↢无量名号↡。若捴若別。其有↢衆生↡繋↠心称念、莫↠不↣除↠障獲↠益皆生↢仏前↡。即是名号度↢衆生↡。」云云
得 他本では 「獲」。
*あるがいはく、 「¬*正法念経¼ にこの文あり」 と。
有云。¬正法念経¼有↢此文↡。
¬*十二仏名経¼ の偈にのたまはく、
「もし人、 仏の名を持てば、 *怯弱の心を生ぜず、
智慧ありて*諂曲なきは、 つねに諸仏の前にあり。
諂曲 へつらうこと。
もし人、 仏の名を持てば、 七宝の華のなかに生ず。
その華千億葉にして、 威光の相具足せり」 と。 以上諸文、 永く悪趣を離れて浄土に往生するなり。
¬十二仏名経¼偈云。「若人持↢仏名↡不↠生↢怯弱心↡、智慧无↢諂曲↡、常在↢諸仏前↡。若人持↢仏名↡、七宝華中生。其華千億葉威光相具足。」已上諸文永離↢悪趣↡往↢生浄土↡
・得菩提
¬*観仏経¼ にのたまはく、 「もしよく心を至して、 繋念うちにあり、 *端坐し*正受して仏の色身を観ぜば、 まさに知るべし、 この人の心は仏の心のごとくにして、 仏と異なることなからん。 煩悩ありといへども、 もろもろの悪のために*覆蔽せられじ。 未来世に大法の雨を雨らさん」 と。
端坐 姿勢をととのえてすわること。
正受 心を静めること。
覆蔽 おおいかくすこと。
¬観仏経¼云。「若能至↠心繋念在↠内、端坐正受観↢仏色身↡、当↠知、是人心如↢仏心↡、与↠仏无↠異。雖↠在↢煩悩↡不↧為↢諸悪↡之所↦覆蔽↥、於↢未来世↡雨↢大法雨↡。」
¬*大集の念仏三昧経¼ の第七にのたまはく、 「まさに知るべし、 かくのごとき*念仏三昧は、 すなはち一切の諸法を総摂することをなす。 このゆゑに、 かの*声聞・*縁覚の二乗の境界にあらず。 もし人、 しばらくもこの法を説くを聞かば、 この人は*当来に決定して仏になること疑あることなからん」 と。
¬大集念仏三昧経¼第七云。「当↠知、如↠是念仏三昧、則為↣捴摂↢一切諸法↡。是故非↢彼声聞・縁覚二乗境界↡。若人暫聞↠説↢此法↡者、是人当来決定成↠仏无↠有↠疑也。」
第九にのたまはく (同)、 「ただよく耳にこの三昧の名を聞かば、 たとひ読せず誦せず、 受せず持せず、 修せず習せず、 他のために転ぜず、 他のために説かず、 また広く分別し釈することあたはずとも、 しかもかのもろもろの善男子・善女人、 みなまさに次第に*阿耨菩提を成就すべし」 と。
同¬経¼第九云。「但能耳聞↢此三昧名↡、仮令不↠読不↠誦、不↠受不↠持、不↠修不↠習、不↢為↠他転↡、不↢為↠他説↡、亦復不↠能↢広分別釈↡、然彼諸善男子・善女人、皆当↣次第成↢就阿耨菩提↡。」
同偈にのたまはく、
「もしもろもろの妙相を円満し、 もろもろの好上の荘厳を具足せんと欲ひ、
および清浄の処に転生することを求めんものは、 かならず先づこの三昧を受持せよ」 と。
同¬*経¼偈云。「*欲↧円↢満諸妙相↡具↦足衆*妙上荘厳↥、及求↣転↢生清浄*家↡、必先受↢持此三昧↡。」
経 青蓮院本、 建長五年刊本では欠く。
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「若」 の字あり。
妙上 青蓮院本では 「好上」。
家 青蓮院本では 「処」。
またある ¬経¼ (*倶舎論) にのたまはく、
「もし仏の*福田において、 よく少分の善を殖ゑつれば、
初めには*勝善趣を獲、 後にはかならず涅槃を得」 と。
勝善趣 六道のうちの人・天。
又有¬経¼言。「若於↢仏福田↡、能殖↢少分善↡、初獲↢勝善趣↡、後必得↢涅槃↡。」
¬*大般若経¼ にのたまはく、 「仏を敬ひ憶ふによりて、 かならず生死を出でて涅槃に至る。 これを置きて、 乃至、 仏を供養せんがために、 一華をもつて虚空に散ずるもまたかくのごとし。 またこれを置きて、 もし善男子・善女人等、 下一たび ª南無仏陀大慈悲者º と称するに至らば、 この善男子・善女人等は、 生死の際を窮むるまで善根尽くることなくして、 天・人のなかにしてつねに富楽を受け、 乃至、 最後には*般涅槃を得ん」 と。 略して抄す。 ¬*大悲経¼ の第二、 これに同じ。 ¬*宝積経¼ 以下、 粗なり。
般涅槃 完全な仏のさとり。
¬大般若経¼云。「依↣敬↢憶仏↡、必出↢生死↡至↢涅槃↡。置↠此。乃至為↣供↢養仏↡、以↢一花↡散↢虚空↡、亦如↠是。又置↠此。若善男子・善女人等、下至↣一称↢*南謨仏陀大慈悲↡者、是善男子・善女人等、窮↢生死際↡善根无↠尽、於↢天人中↡恒受↢富楽↡、乃至後得↢般涅槃↡。」略抄¬大悲経¼第二同↠之*
南謨 建長五年刊本、 大派依用本では 「南无」。
◇ 青蓮院本では 「宝積経已下麁也経不可尽之」 と続く。
¬*宝積経¼ にのたまはく、 「もし衆生ありて、 如来の所にして微善を起さば、 *苦際を尽すまで*畢竟じて壊せず」 と。
苦際 苦しみの終り。
¬宝積経¼云。「*有↢衆生↡、於↢如来所↡起↢微善↡者、尽↢於苦際↡、畢竟不↠壊。」
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本では 「若」 の字あり。
またのたまはく (同)、 「もし菩薩ありて、 *勝意楽をもつてよくわが所において父の想を起さば、 かの人はまさに如来の数に入ることを得て、 わがごとくにして異なることなからん」 と。
勝意楽 すぐれた意向、 望み。
又云。「若有↢菩薩↡、以↢勝意楽↡能於↢我所↡起↢於父想↡、彼人当↧得↠入↢如来数↡如↠我無↞異。」
¬十二仏名経¼ の偈にのたまはく、
「もし人、 仏の名を持たば、 世々所生の処に、
*身通をもつて虚空に遊び、 よく無辺の*刹に至りて、
まのあたり諸仏を覩たてまつりて、 よく甚深の義を問ふ。 乃至
ために*微妙の法を説きて、 かれに*菩提の記を授けたまふ」 と。
微妙 奥深くすばらしいこと。
¬十二仏名経¼偈云。「若人持↢仏名↡、世世所↠生処、身通遊↢虚空↡、能至↢无辺刹↡。面覩↢於諸仏↡、能問↢甚深義↡、乃至 為説↢微妙法↡、授↢彼菩提記↡。」
¬*法華経¼ の偈にのたまはく、
「もし人、 散乱の心にして、 *塔廟のなかに入り、
一たび ª南無仏º と称すれば、 みなすでに仏道を成ず」 と。
塔廟 仏の遺骨を安置し供養するところ。
¬法華経¼偈云。「若人散乱心、入↢於塔廟中↡、一称↢南无仏↡、皆已成↢仏道↡。」
¬大悲経¼ の第三に、 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªもし衆生ありて、 仏の名を聞かば、 われ説かく、 «この人は*畢定してまさに般涅槃に入ることを得べし»º」 と。
畢定して 必ず定めて。
¬大悲経¼第三「仏告↢阿難↡。若有↢衆生↡、聞↢仏名↡者、我説、是人畢定当↠得↠入↢般涅槃↡。」
¬華厳経¼ の法幢菩薩の偈にのたまはく、
「もしもろもろの衆生ありて、 いまだ菩提心を発さざらんも、
一たび仏の名を聞くことを得ば、 決定して菩提を成ぜん」 と。 以上のもろもろの文、 菩提を得ることなり。
¬華厳経¼法幢菩薩偈云。「若有↢諸衆生↡、未↠発↢菩提心↡、一得↠聞↢仏名↡、決定成↢菩提↡。」已上諸文得↢菩提↡
ただ名号を聞くすら、 *勝利かくのごとし。 いはんやしばらくも相好・功徳を観念し、 あるいはまた一華・一香を供養せんをや。 いはんや一生に勤修する功徳、 つひに虚しからじ。 すなはち知りぬ、 仏法に値ひ、 仏号を聞くことは、 これ少縁にあらず。
但聞↢名号↡勝利如↠是。況暫観↢念相好・功徳↡、或復供↢養一華・一香↡。況一生勤修功徳終不↠虚。則知、値↢仏法↡聞↢仏号↡、非↢是少縁↡。
このゆゑに ¬華厳経¼ の真実慧菩薩の偈にのたまはく、
「むしろ地獄の苦を受くとも、 諸仏の名を聞くことを得よ。
無量の楽を受くとも、 仏の名を聞かざることなかれ」 と。
是故¬華厳経¼真実慧菩薩偈云。「寧受↢地獄苦↡得↠聞↢諸仏名↡、不↧受↢无量楽↡而不↞聞↢仏名↡。」
以上の*四の門は、 総じて諸仏を念ずる利益を明かす。 そのなかに、 ¬*観仏経¼ には釈迦をもつて首めとなす。 ¬般舟経¼ は多く弥陀をもつて首めとなす。 理、 実にはともに一切の諸仏に通ず。 ¬*念仏経¼ は三世の諸仏に通ず。
四の門 滅罪生善・冥得護持・現身見仏・当来勝利の四。
已上四門、惣明↧念↢諸仏↡之利益↥。其中¬観仏経¼以↢釈迦↡為↠首、¬般舟経¼多以↢弥陀↡為↠首、理実倶通↢一切諸仏↡。¬念仏経¼通↢三世*仏↡。
仏 青蓮院本では 「諸仏」。
問ふ。 ¬*観仏経¼ にのたまはく、 「この人の心は、 仏の心のごとくにして、 仏と異なることなし」 と。 また ¬観経¼ にのたまはく、 「▲仏、 阿難に告げたまはく、 ª諸仏はこれ法界の身なり、 一切衆生の心想のうちに入りたまふ。 このゆゑに、 なんぢら心に仏を想ふ時、 この心すなはちこれ*三十二相・*八十随形好なり。 是の心、 仏に作る。 是の心、 是仏なり。 *諸仏の正遍知海は、 心想より生じたまふº」 と。 以上 この義いかん。
諸仏の正遍知海 真理を正しくさとったさまざまな仏たちの意。 正遍知は如来の十号の一。 海は仏の智慧の広大なことを喩える。
問。¬観仏経¼云。「是人心如↢仏心↡、与↠仏无↠異。」又¬観経¼云。「仏告↢阿難↡。諸仏*如来是法界身、入↢一切衆生心想之中↡。是故汝等心想↠仏時、是心即是三十二相・八十随形好。是心作仏。是心是仏。諸仏正遍知海、従↢心想↡生。」 已上 此義云何。
如来 他本では欠く。
答ふ。 ¬*往生論¼ (天親の浄土論) の*智光の ¬疏¼ にこの文を釈していはく、 「衆生の心に仏を想ふ時に当りて、 仏の身相みな衆生の心のなかに顕現す。 たとへば、 水清ければすなはち色像現ず。 しかも水と像とは、 一ならず異ならざるがごとし。 ゆゑにいふ、 仏の相好の身は、 すなはちこれ心想なりと。 ª是心作仏º とは、 心よく仏に作るなり。 ª是心是仏º とは、 心がほかに仏なきなり。 たとへば、 火の木より出づれども、 木を離るることを得ず、 木を離れざるをもつてのゆゑに、 すなはちよく木を焼きて火となる。 木を焼けば、 すなはちこれ火たるがごとし」 と。 以上
智光の疏 ¬無量寿経論釈¼ 五巻のこと。 天親菩薩の ¬浄土論¼ を曇鸞大師の ¬論註¼ に依拠して註釈した書。 現存しないが、 ¬安養集¼ などに引用された文を集成することによってほぼ復元されている。
答。¬往生論¼智光¬疏¼釈↢此文↡云。「当衆生心想↠仏時、仏身相皆顕↢現衆生心中↡。譬如↢水清即色像現、而水与↠像不↠一不↟異。故言↢仏相好身、即是心想↡。是心作仏者、心能作仏。是心是仏者、心外无↠仏。譬如↧火従↠木出、不↠得↠離↠木、以↠不↠離↠木故即能焼↠木為↠火、焼↠木即是火↥。」已上
また余の釈あり。 学者さらに勘へよ。
亦有↢余釈↡、学者更勘。
わたくしにいはく、 ¬*大集経¼ の 「日蔵分」 (意) にのたまはく、 「行者、 この念をなさく、 これらの諸仏は従りて来るところなし。 去りて至るところなし。 ただわが心の作なり。 三界のなかにおいて、 この身は因縁なり。 ただこれ心の作なり。 われ、 *覚観に随ひて、 多を欲すれば多を見、 少を欲すれば少を見る。 諸仏如来は、 すなはちこれわが心なり。 なにをもつてのゆゑに。 心に随ひて見るがゆゑに。 心、 すなはちわが身なり。 すなはちこれ虚空なり。 われ、 覚観によりて無量の仏を見たてまつる。 われ、 覚心をもつて仏を見たてまつり、 仏を知る。 心は心を見ず、 心は心を知らず。 われ、 法界を観ずるに、 性、 牢固なることなし。 一切の諸仏はみな覚観の因縁より生れたまふ。 このゆゑに、 法性はすなはちこれ虚空なり、 虚空の性もまたこれ空なり」 と。 以上 この文の意 ¬観経¼ に同じ。 光師 (智光) の釈また違ふことなし。
覚観 覚はものごとをおおまかに推し測る心、 観は覚よりも細密に尋ね知る心。
私云。¬大集経¼日蔵分云。「行者作↢是念↡。是等諸仏、无↠所↢従来↡、去无↠所↠至。唯我心作。於↢三界中↡、是身因縁、唯是心作。我随↢覚観↡、欲↠多見↠多、欲↠*小見↠小。諸仏如来即是我心。何以故、随↠心見故。心即我身、即是虚空。我因↢覚観↡見↢无量仏↡、我以↢覚心↡見↠仏知↠仏。心不↠見↠心、心不↠知↠心。我観↢法界↡性无↢牢固↡。一切諸仏皆従↢覚観因縁↡而生。是故法性即是虚空虚空之性亦復是空。」已上 此文意同↢¬観経¼↡。光師釈亦无↠違。
小 青蓮院本では 「少」。 以下同。
問ふ。 心、 仏に作ることを知るに、 なんの*勝利かある。
問。知↢心作↟仏、有↢何勝利↡。
答ふ。 もしこの理を観ずれば、 よく三世の一切の仏法を了す。 乃至、 一たびも聞かば、 すなはち三途の苦難を解脱することを得。
答。若観↢此理↡、能了↢三世一切仏法↡。乃至一聞即得↣解↢脱三途苦難↡。
¬華厳経¼ の如来林菩薩の偈にのたまふがごとし。
「もし人、 三世の一切の仏を知らんと欲求せば、
まさにかくのごとく観ずべし。 心もろもろの如来を造る」 と。
如↢¬華厳経¼如来林菩薩偈云↡。「若人欲↣求知↢三世一切仏↡、応↢当如↠是観↡。心造↢諸如来↡。」
¬*華厳の伝¼ にいはく、 「*文明元年に、 *京師の人、 姓は王、 その名を失せり。 すでに戒行なく、 かつて善を修せず。 患によりて死を致す。 二人に引かれて地獄の門の前に至りぬ。 見れば一の僧あり。 これ*地蔵菩薩なりといふ。 すなはち王氏に教へて、 *この一の偈を誦せしむ。 これに謂らひていはく、 ªこの偈を誦し得ては、 よく地獄を排ひてんº と。 王氏つひに入りて閻羅王に見ゆ。 王、 この人に問ふ、 ª功徳ありやº と。 答へていはく、 ªただ一の四句の偈を受持せりº と。 つぶさに上に説くがごとし。〔閻羅〕王、 つひに〔王氏を〕*放勉しつ。 この偈を誦する時に当りて、 声の及ぶところの受苦の人はみな解脱することを得つ。 王氏、 三日ありてはじめて蘇りぬ。 この偈を*憶持して、 もろもろの沙門に向かひてこれを説く。 偈の文を示験するに、 まさに知りぬ、 これ ¬華厳経¼ の第十二巻の ª夜摩天宮無量諸菩薩雲集説法品º なり。 王氏みづから、 空観寺の僧定法師に向かひて、 説きてしかりといふ」 と。 略抄
文明元年 684年。
京師 都。
この一の偈 前引の ¬華厳経¼ 如来林菩薩の偈。 破地獄の文とされる。
放勉しつ 底本 (青蓮院本) には 「故放勉」 (なお放勉れぬ) とある。
憶持 記憶し保持すること。
¬華厳伝¼曰。「文明元年、京師人、姓王、失↢其名↡。既无↢戒行↡、曾不↠修↠善、因↠患致↠死。被↢二人引↡至↢地獄門前↡。見有↢一僧↡。云↢是地蔵菩薩↡。乃教↢王氏↡、誦↢此一偈↡、謂↠之曰、誦↢得此偈↡能排↢地獄↡。王氏遂入、見↢閻羅王↡。王問↢此人↡、有↢功徳↡。答云。唯受↢持一四句偈↡。具如↠上説。王*遂放勉。当↧誦↢此偈↡時↥、声所↠及処受↠苦之人皆得↢解脱↡。王氏三日始蘇、憶↢持此偈↡向↢諸沙門↡説↠之。示↢験偈文↡、方知、是花厳経第十二巻夜摩天宮、无量諸菩薩雲集説法品。王氏自向↢空観寺僧定法師↡、説云↠然也。」略抄
遂 青蓮院本では 「故」。
◎念仏利益 ○弥陀別益
【63】第五に弥陀を念ずる別益をいはば、
第五弥陀別益者、
行者をしてその心決定せしめんがためのゆゑに、 別にこれを明かす。 滅罪生善と冥得護持と現身見仏と将来勝利とは、 次いでのごとし。
為↠令↢行者其心決定↡故別明↠之。*滅罪生善・冥得*護念・現身見仏・将来勝利如↠次。
滅罪~如次 底本まま。 青蓮院本では割註か。
護念 青蓮院本では 「護持」。
・滅罪生善
¬観経¼ の*像想観に説きてのたまはく、 「▲この観をなすものは、 無量億劫の生死の罪を除きて、 現身のなかに念仏三昧を得」 と。
像想観 定善十三観の第八。 阿弥陀仏・観音・勢至の真身を観ずる方便として、 その形像を観想すること。
¬観経¼像想観云。「作↢是観↡者、除↢无量億劫生死之罪↡、於↢現身中↡得↢念仏三昧↡。」
またのたまはく (同)、 「▲ただ仏 (阿弥陀仏) の名・二菩薩 (観音・勢至) の名を聞くに、 無量劫の生死の罪を除く。 いかにいはんや憶念せんをや」 と。
又云。「但聞↢仏名二菩薩名↡除↢无量劫生死之罪↡、何況憶念。」
またのたまはく (同)、 「▲ただ仏像を想ふに、 無量の福を得。 いはんやまた仏の具足せる身相を観ぜんをや」 と。
又云。「但想↢仏像↡得↢无量福↡、況復観↢仏具足身相↡。」
¬*阿弥陀思惟経¼ にのたまはく、 「もし*転輪王、 千万歳のうちに四天下に満てる七宝をもつて十方の諸仏に布施せんも、 *苾蒭・苾蒭尼・*優婆塞・*優婆夷等の、 一たび*弾指するあひだも坐禅して、 平等心をもつて一切衆生を憐愍して、 阿弥陀仏を念ずる功徳にはしかじ」 と。 以上、 滅罪生善。
弾指するあひだ 指をはじくほどの短い時間。
¬阿弥陀思惟経¼云。「若転輪王千万歳中、満↢四天下↡七宝、布↢施十方諸仏↡、不↠如↧苾蒭・苾蒭尼・優婆塞・優婆夷等、一弾指頃坐禅、以↢平等心↡憐↢愍一切衆生↡、念↢阿弥陀仏↡功徳↥。」已上滅罪生善
・冥得護持
¬*称讃浄土経¼ にのたまはく、 「あるいは善男子、 あるいは善女人、 無量寿の極楽世界の清浄の仏土の功徳荘厳において、 もしはすでに願を発し、 もしはまさに願を発すべく、 もしはいま願を発すは、 かならずかくのごとく、 十方の面に住したまへる十恒河沙の諸仏世尊の、 *摂受したまふところたらん。 説のごとく行ずるものは、 一切さだめて*阿耨菩提において退転せざることを得。 一切さだめて無量寿仏の極楽世界に生れん」 と。
¬称讃浄土経¼云。「或善男子或善女人、於↢无量寿極楽世界、清浄仏土功徳荘厳↡、若已発願、若当発願、若今発願、必為↧如↠是住↢十方面↡十兢伽沙諸仏世尊之所↦摂受↥。如↠説行者、一切定於↢阿耨菩提↡得↠不↢退転↡、一切定生↢无量寿仏極楽世界↡。」
¬観経¼ にのたまはく、 「▲光明あまねく十方世界の念仏の衆生を照らして、 *摂取して捨てたまはず」 と。
¬観経¼云。「光明遍照↢十方世界↡、念仏衆生摂取不↠捨。」
またのたまはく (同)、 「▲無量寿仏の化身無数にして、 観世音・大勢至と、 つねにこの行人の所に来至したまふ」 と。
又云。「無量寿仏、化身无数、与↢観世音・大勢至↡、常来↢至此行人之所↡。」
¬*十往生経¼ (意) に、 釈尊、 阿弥陀仏の功徳、 国土の荘厳等を説きをはりてのたまはく、 「*清信士・清信女、 この経を読誦し、 この経を流布し、 この経を*恭敬し、 この経を謗ぜず、 この経を信楽し、 この経を供養せん。 かくのごとき人の輩は、 この信敬によりて、 われ、 今日よりつねに前の*二十五の菩薩をしてこの人を護持せしめ、 つねにこの人をして病なく悩みなく、 悪鬼・悪神、 また中害せず。 またこれを悩まさず、 また便りを得ざらしめん」 と。 以上乃至、 *睡寤・行住・所至の処、 みなことごとく安穏ならしめん、 云々。
睡寤行住 眠る、 さめる、 歩く、 とどまること。
¬十往生経¼釈尊説↢阿弥陀仏功徳、国土荘厳等↡已云。「清信士・清信女、読↢誦是経↡、流↢布是経↡、恭↢敬是経↡、不↠謗↢是経↡、信↢楽是経↡、供↢養是経↡。如↠是人輩縁↢是信敬↡、我従↢今日↡、常使↧前二十五菩薩護↦持是人↥、常使↧是人无↠病无↠悩、悪鬼・悪神亦不↢中害↡、亦不↠悩↠之、亦不↞得↠便。」已上乃至睡寤行住所至之処皆悉安穏云云
*唐土 (中国) の諸師のいはく、 「二十五の菩薩、 阿弥陀仏を念じ、 往生を願ふものを擁護せん」 と。 云々
唐土の諸師 善導大師・懐感禅師など。
唐土諸師云。二十五菩薩、擁↧護念↢阿弥陀仏↡、願↢往生↡者↥。*
◇ 青蓮院本には 「云云」 と割註あり。
これまたかの ¬経¼ (十往生経) の意に違はず。 二十五の菩薩とは、 観世音菩薩・大勢至菩薩・薬王菩薩・薬上菩薩・普賢菩薩・法自在菩薩・師子吼菩薩・陀羅尼菩薩・虚空蔵菩薩・徳蔵菩薩・宝蔵菩薩・金蔵菩薩・金剛蔵菩薩・光明王菩薩・山海慧菩薩・華厳王菩薩・衆宝王菩薩・月光王菩薩・日照王菩薩・三昧王菩薩・定自在王菩薩・大自在王菩薩・白象王菩薩・大威徳王菩薩・無辺身菩薩なり。
此亦不↠違↢彼経意↡也。二十五*者観世音菩薩・大勢至菩薩・薬王菩薩・薬上菩薩・普賢菩薩・法自在菩薩・師子*孔菩薩・陀羅尼菩薩・虚空蔵菩薩・徳蔵菩薩・宝蔵菩薩・金光蔵菩薩・金剛蔵菩薩・光明王菩薩・山海慧菩薩・華厳王菩薩・衆宝王菩薩・月光王菩薩・日照王菩薩・三昧王菩薩・定自在王菩薩・大自在王菩薩・白象王菩薩・大威徳王菩薩・無辺身菩薩也
◇ 青蓮院本には 「菩薩」 とあり。
孔 他本では 「吼」。 以下同。
¬*双巻経¼ (大経・上) に、 かの仏の本願 (第三十七願) にのたまはく、 「▲諸天・人民、 わが名字を聞きて、 五体を地に投げて、 *稽首し礼をなして、 歓喜し信楽して、 菩薩の行を修せば、 諸天・世人、 敬を致さずといふことなからん。 もししからずは、 正覚を取らじ」 と。 以上、 冥得護持。
¬双巻経¼彼仏本願云。「諸天人民、聞↢我名字↡五躰投↠地稽首作↠礼、歓喜信楽修↢菩薩行↡、諸天世人莫↠不↢致敬↡。若不↠爾者不↠取↢正覚↡。」已上冥得護持
・見仏
*¬大集経¼ の 「賢護分」 にのたまはく、 「善男子・善女人、 *端坐繋念し、 心をもつぱらにして、 かの阿弥陀如来・応供・*等正覚を想ひ、 かくのごとき相好、 かくのごとき*威儀、 かくのごとき大衆、 かくのごとき説法を、 聞くがごとく繋念し、 一心に相続して次第乱れず、 あるいは一日を経、 あるいはまた一夜せん。 かくのごとくして、 あるいは七日七夜に至るまで、 わが所聞のごとく具足して念ぜんがゆゑに、 この人、 かならず阿弥陀如来・応供・等正覚を覩たてまつらん。 もし昼の時に見たてまつることあたはずは、 もしは夜分において、 あるいは夢のうちに、 阿弥陀仏はかならずまさに現じたまふべし」 と。
端坐繋念 姿勢をととのえてすわり、 想いをかけること。
等正覚 底本 (青蓮院本) には 「等覚」 とある。
威儀 威厳にみちた態度。
¬大集経賢護分¼云。「善男子・善女人、端坐繋念、専↠心想↢彼阿弥陀如来・応供・*等正覚↡、如↠是相好、如↠是威儀、如↠是大衆、如↠是説法、如↠聞繋念一心相続、次第不↠乱、或経↢一日↡、或復一夜。如↠是、或至↢七日七夜↡、如↢我所↟聞具足念故、是人必覩↢阿弥陀如来・応供・等正覚↡。若於↢昼時↡不↠能↠見者、若於↢夜分↡、或夢中、阿弥陀仏必当↠現也。」
等正覚 青蓮院本では 「等覚」。
¬観経¼ にのたまはく、 「▲眉間の*白毫を見るものは、 八万四千の相好、 自然にまさに見つべし。 無量寿仏を見るものは、 すなはち十方の無量の諸仏を見たてまつるなり。 十方無量の諸仏を見たてまつることを得るがゆゑに、 諸仏、 現前に授記せん。 これをあまねく一切色相を観ずとなす」 と。 以上見仏。
¬観経¼云。「見↢眉間白毫↡者、八万四千相好、自然当↠見。見↢无量寿仏↡者、即見↢十方无量諸仏↡。得↠見↢*无量諸仏↡故、諸仏現前授記。是為↢遍観一切色相↡。已上見仏
◇ 青蓮院本には 「十方」 とあり。
・将来勝利
¬*鼓音声王経¼ にのたまはく、 「十日十夜、 *六時に念をもつぱらにし、 五体を地に投げてかの仏を*礼敬し、 堅固正念にしてことごとく散乱を除き、 もしはよく心に念じ、 念々に絶えずは、 十日のうちにかならずかの阿弥陀仏を見たてまつることを得、 ならびに十方世界の如来および所住の処を見たてまつらん。 ただ*重障・鈍根の人をば除く。 いまの少時において覩たてまつることあたはざるところなり。 一切のもろもろの善をみなことごとく回向して、 安楽世界に往生することを得んと願ぜば、 終らんとする日に、 阿弥陀仏、 もろもろの大衆とその人の前に現じて、 *安喩し*称善したまはん。 この人、 すなはちの時にはなはだ慶悦をなさん。 この因縁をもつて、 その所願のごとく、 すなはち往生することを得ん」 と。
重障鈍根の人 重い障りをもった人と根機 (素質能力) の劣った人。
安喩 なぐさめること。
称善 善根をほめたたえること。
¬鼓音声王経¼云。「十日十夜、六時専↠念、五体投↠地礼↢敬彼仏↡、堅固正念悉除↢散乱↡、若能念↠心、念念不↠絶、十日之中必得↠見↢彼阿弥陀仏↡、并見↢十方世界如来及所住処↡。唯除↢重障鈍根之人↡。於↢今少時↡所↠不↠能↠覩。一切諸善、皆悉廻向願↠得↣往↢生安楽世界↡、垂↠終之日、阿弥陀仏与↢諸大衆↡現↢其人前↡、安喩称善。是人即時、甚生↢慶悦↡。以↢是因縁↡、如↢其所願↡即得↢往生↡。」
¬*平等覚経¼ (三) にのたまはく、 「仏ののたまはく、 ªかならずまさに斎戒して、 一心清浄にして昼夜につねに念じ、 無量清浄仏の国に生れんと欲ひて、 十日十夜、 断絶せざるべし。 われ、 みなこれを*慈愍して、 ことごとく無量清浄仏の国に生ぜしめんº」 と。 乃至、 一日一夜もまたかくのごとし。 あるいは、 この文をもつて*下の諸行門のなかに置くべし。
下の諸行門 大文第九往生諸行を指す。
¬平等覚経¼云。「仏言。要当↧*斉戒一心清浄昼夜常念、欲↠生↢无量清浄仏国↡、十日十夜不↦断絶↥。我皆慈↢愍之↡、悉令↠生↢无量清浄仏国↡。」乃至一日一夜亦如↠是或可↧以↢此文↡置↦下諸行門中↥
斉 建長五年刊本では 斎。
¬*双巻経¼ (大経・下) の偈にのたまはく、
「▲その仏の本願力ありて、 名を聞きて往生せんと欲へば、
みなことごとくかの国に到りて、 おのづから不退転に致る」 と。
¬双巻経¼偈云。「其仏本願力、聞↠名欲↢往生↡、皆悉到↢彼国↡、自致↢不退転↡。」
¬観経¼ の下品上生の人は、 ▲命終の時に臨みて、 *掌を合せ手を叉へて 「南無阿弥陀仏」 と称すれば、 仏の名を称するがゆゑに、 五十億劫の生死の罪を除き、 化仏の後に従ひて、 宝池のなかに生る。
¬観経¼下品上生人、臨↢命終時↡、合掌叉手称↢南无阿弥陀仏↡、称↢仏名↡故、除↢五十億劫生死之罪↡、従↢化仏後↡生↢宝池中↡。
同じき品の中生の人は、 ▲命終の時に臨みて、 地獄の猛火一時にともに至らんに、 弥陀仏の*十力威徳、 *光明神力、 *戒・定・慧・解脱・知見を聞けば、 八十億劫の生死の罪を除き、 地獄の猛火、 化して清涼の風となりて、 もろもろの天の華を吹く。 華の上にみな化仏・菩薩ましまして、 この人を*迎接して、 すなはち往生することを得しめたまふ。
同品中生人、臨↢命終時↡、地獄猛火、一時倶至、聞↢弥陀仏十力威徳・光明神力・戒・定・恵・解脱・知見↡、除↢八十億劫生死之罪↡、地獄猛火、化為↢清涼風↡、吹↢諸天華↡。華上皆有↢化仏・菩薩↡、迎↢接此人↡、即得↢往生↡。
同じき品の下生の人は、 ▲命終の時に臨みて、 苦に逼められて仏を念ずることあたはず。 善友の教に随ひて、 ただ心を至して声をして絶えざらしめ、 *十念を具足して 「南無無量寿仏」 と称すれば、 仏の名を称するがゆゑに、 念々のうちに八十億劫の生死の罪を除き、 *一念のあひだのごときにすなはち往生することを得。
掌を合せ手を叉へ 両掌を胸のあたりで組み合わせて。
光明神力 光明の不可思議な力。
戒定慧解脱知見 戒をたもち、 禅定に入り、 智慧をひらき、 すべての煩悩から解放されて、 心の安らかさを自覚するという五つの功徳。 この功徳を備える者を五分法身という。
同品下生人、臨↢命終時↡、苦逼不↠能↠念↠仏。随↢善友教↡、但至↠心令↢声不↟絶、具↢足十念↡称↢南無无量寿仏↡。称↢仏名↡故、於↢念念中↡、除↢八十億劫生死之罪↡、如↢一念頃↡、即得↢往生↡。
¬*双巻経¼ (大経・上) に、 かの仏の本願にのたまはく、 「ª▲諸仏の世界の衆生の類、 わが名字を聞きて、 菩薩の*無生法忍、 もろもろの*深総持を得ずといはば、 正覚を取らじº (第三十四願) と。 ª▲他方の国土のもろもろの菩薩衆、 わが名字を聞きて、 すなはち*不退転に至ることを得ずといはば、 正覚を取らじº (第四十七願)」 と。
深総持 深いさとりの智慧。
¬双巻経¼彼仏本願云。「諸仏世界衆生之類、聞↢我名字↡、不↠得↢菩薩无生法忍、諸深捴持↡者、不↠取↢正覚↡。他方国土諸菩薩衆、聞↢我名字↡、不↢即得↟至↢不退転↡者、不↠取↢正覚↡。」
¬観経¼ にのたまはく、 「▲もし仏を念ずるものは、 まさに知るべし、 この人はこれ人中の*分陀利華なり。 *観世音菩薩・*大勢至菩薩、 その勝友とならん。 まさに道場に坐し、 *諸仏の家に生るべし」 と。 以上、 将来の勝利なり。 余は上の別時念仏門のごとし。
諸仏の家 阿弥陀仏の浄土のこと。
¬観経¼云。「若念仏者、当↠知、此人是人中分陀利華。観世音菩薩・大勢至菩薩、為↢其勝友↡。当↧坐↢道場↡生↦諸仏家↥。」已上将来勝利、余如↢上別時念仏門↡
◎念仏利益 ○引例勧信
【64】第六に*引例勧信といふは、
引例勧信 例を引いて念仏の信を勧めること。
第六引例勧信者、
▼¬*観仏経¼ の第三 (意) に、 仏、 もろもろの*釈子に告げてのたまはく、 「*毘婆尸仏の像法のうちに一の長者ありき、 名づけて月徳といひき。 五百の子ありき、 同じく重き病に遇へり。 父、 子の前に致りて涕涙し合掌して、 もろもろの子に語らひていはく、 ªなんぢら、 邪見にして正法を信ぜず。 いま無常の刀、 なんぢが身を截り切むとも、 なんの怙むところありとかせん。 仏世尊まします、 毘婆尸と名づく。 なんぢ、 仏を称すべしº と。 もろもろの子聞きをはりて、 その父を敬ふがゆゑに ª南無仏º と称しき。 父また告げていはく、 ªなんぢ、 法を称すべし、 なんぢ、 僧を称すべしº と。 いまだ三たび称するに及ばずして、 その子命終しき。 仏を称せしをもつてのゆゑに*四天王の所に生れき。 天上の寿尽きて、 前の邪見の業をもつて大地獄に堕ちき。 獄率羅刹、 熱鉄の扠をもつてその眼を刺し壊りき。 この苦を受けし時に、 父の長者の教誨せしところの事を憶して、 仏を念ぜしをもつてのゆゑに、 還りて人中に生じき。 *尸棄仏の出でたまへりしに、 ただ仏の名を聞きて、 仏の形を覩たてまつらざりき。 乃至、 *迦葉仏の時にもまたその名を聞きき。 六仏の名を聞きし因縁をもつてのゆゑに、 われ (釈尊) と同じく生ぜり。 このもろもろの比丘、 前世の時に、 悪心をもつてのゆゑに仏の正法を謗ぜしも、 ただ父のためのゆゑに ª南無仏º と称せしをもつて、 生々につねに諸仏の名を聞くことを得、 乃至、 今世にわが出でたるに値遇して、 もろもろの障除こるがゆゑに阿羅漢となれり」 と。
釈子 釈迦族の人々。
¬観仏経¼第三仏告↢諸釈子↡言。「婆尸仏像法中有↢一長者↡、名曰↢月徳↡、有↢五百子↡、同遇↢重病↡。父致↢子前↡涕涙合掌、語↢諸子↡言。汝等邪見不↠信↢正法↡。今无常刀截↢切汝身↡、為↢何所↟怙。有↢仏世尊↡、名↢婆尸↡、汝可↠称↠仏。諸子聞已敬↢其父↡故称↢南无仏↡。父復告言。汝可↠称↠法、汝可↠称↠僧、未↠及↢三称↡、其子命終、以↠称↠仏故生↢四天王所↡。天上寿尽、前邪見業堕↢大地獄↡。獄卒羅刹、以↢熱鉄*杈↡刺↢壊其眼↡。受↢是苦↡時、憶↧父長者所↢教誨↡事↥、以↠念↠仏故、還生↢人中↡。尸棄仏出、但聞↢仏名↡不↠覩↢仏形↡、乃至迦葉仏時、亦聞↢其名↡。以↧聞↢六仏名↡因縁↥故与↠我同生。是諸比丘、前世之時、以↢悪心↡故、謗↢仏正法↡、但為↠父故称↢南无仏↡、生生常得↠聞↢諸仏名↡、乃至今世値↢遇我出↡諸障除故、成↢阿羅漢↡。」
杈 青蓮院本では 扠。
またのたまはく (*観仏経・意)、 「*燃灯仏の末法のうちに一の羅漢ありき。 その千の弟子、 羅漢の説を聞きて、 心に瞋恨を生じき。 寿の*修短に随ひておのおの命終せんと欲せしに、 羅漢、 教へて ª南無諸仏º と称せしめき。 すでに仏を称しをはりて*忉利天に生ずることを得てき。 乃至 未来世にまさに仏に作ることを得べし、 南無光照と号せん」 と。
修短 長短。
又云。「燃灯仏、末法之中有↢一羅漢↡。其千弟子、聞↢羅漢説↡心生↢瞋恨↡。随↢寿修短↡各欲↢命終↡、羅漢教称↢南无諸仏↡。既称↠仏已得↠生↢忉利天↡。乃至 於↢未来世↡当↧得↢作仏↡、号↦南无光照↥。」
第七巻 (*観仏経・意) に、 文殊みづから説けり、 過去の宝威徳仏に値遇し礼拝せしことを。 「その時に、 *釈迦文仏讃じてのたまはく、 ª善きかな、 善きかな。 文殊師利、 すなはち昔の時に一たび仏を礼せしがゆゑに、 そこばくの無数の諸仏に値ふことを得てき。 いかにいはんや、 未来にわがもろもろの弟子の、 つとめて仏を観ずるものをやº と。 仏、 阿難に勅したまはく、 ªなんぢ、 文殊師利の語を持ちて、 あまねく大衆および未来世の衆生に告げよ。 もしはよく礼拝するもの、 もしはよく仏を念ずるもの、 もしはよく仏を観ずるもの、 まさに知るべし、 この人は、 文殊師利と等しくして異なることあることなからん。 身を捨てて、 他世に、 文殊師利等のもろもろの大菩薩、 その和上となりたまはんº」 と。
第七巻文殊自説↤値↢遇礼↣拝過去宝威徳仏↡。「爾時釈迦文仏讃言。善哉善哉。文殊師利、乃於↢昔時↡一礼↠仏故、得↠値↢爾許无数諸仏↡。何況未来我諸弟子、勤観↠仏者。仏勅↢阿難↡。汝持↢文殊師利語↡、遍告↢大衆及未来世衆生↡。若能礼拝者、若能念仏者、若能観↠仏者、当↠知、此人与↢文殊師利↡等无↠有↠異。捨↢身他世↡、文殊師利等諸大菩薩、為↢其和上↡。」
またのたまはく (*同・意)、 「時に、 十方の仏、 来りて*跏趺して坐したまへり。 東方の善徳仏、 大衆に告げてのたまはく、 ªわれ、 過去の無量世の時を念へば、 仏の、 世に出でたまへることありき。 宝威徳上王仏と号しき。 時に比丘ありき。 九弟子と*仏塔に往詣して、 仏像を礼拝しき。 一の宝像の厳顕にして観じつべきを見て、 礼しをはりて、 あきらかに視て、 偈を説きて讃嘆しき。 後の時に命終して、 ことごとく東方の宝威徳上王仏の国に生れて、 大蓮華のなかに結跏趺坐して、 忽然として化生しき。 これより以後、 つねに仏に値ふことを得、 諸仏の所にして浄く*梵行を修し、 念仏三昧を得てき。 三昧を得をはりしかば、 仏、 ために授記したまひき。 «十方の面におのおの仏になることを得ん» と。 東方の善徳仏はすなはちわが身これなり。 東南方の無憂徳仏、 南方の栴檀徳仏、 西南方の宝施仏、 西方の無量明仏、 西北方の華徳仏、 北方の相徳仏、 東北方の三乗行仏、 上方の広衆徳仏、 下方の明徳仏、 かくのごとき十仏は、 過去に塔を礼し、 像を観じ、 一偈をもつて讃嘆せるによりて、 いま十方にしておのおの仏になることを得たるなりº と。 この語を説きをはりて、 釈迦文仏を問訊したまふ。 すでに問訊しをはりて、 大光明を放ちて、 おのおの本国に還りたまひぬ」 と。
跏趺 結跏趺坐の略。 足の甲を左右のももの上に置くすわり方。
仏塔 塔は梵語ストゥーパ (stūpa) の音写の略。 仏の遺骨を安置し供養する築造物。
又云。「時十方仏、来跏趺坐。東方善徳仏、告↢大衆↡言。我念↢過去无量世時↡、有↢仏出↟世。号↢宝威徳上王*↡。時有↢比丘↡。与↢九弟子↡往↢詣仏塔↡、礼↢拝仏像↡。見↢一宝像厳顕可↟観、礼已諦視、説↠偈讃歎。後時命終悉生↢東方宝威徳上王仏国↡、大蓮華中結跏趺坐、忽然化生。従↠此已後恒得↠値↠仏、於↢諸仏所↡、浄修↢梵行↡、得↢念仏三昧↡。得↢三昧↡已、仏為授記、於↢十方面↡各得↢成仏↡。東方善徳仏者、則我身是。東南方无憂徳仏、南方*栴檀徳仏、西南方宝施仏、西方无量明仏、西北方華徳仏、北方相徳仏、東北方三乗行仏、上方広衆徳仏、下方明徳仏、如↠是十仏、由↢過去礼↠塔観↠像一偈讃歎↡、今於↢十方↡各得↢成仏↡。説↢是語↡已、問↢訊釈迦文仏↡。既問訊已、放↢大光明↡、各還↢本国↡。」
◇ 青蓮院本には 「仏」 の字あり。
栴 青蓮院本では 「旃」。
またのたまはく (*観仏経)、 「*四仏世尊、 空より下りて釈迦文仏の床に坐して、 讃じてのたまはく、 ª善きかな、 善きかな。 すなはちよく未来の時の濁悪の衆生のために、 三世の仏の*白毫の光明を説きて、 もろもろの衆生をして罪咎を滅することを得しめたまふ。 所以はいかん。 われ昔曾をおもんみれば、 空王仏の所にして出家して道を学しき。 時に四の比丘あり。 ともに同学となりて、 仏の正法を習ひき。 煩悩、 心を覆ひて、 堅く仏法の宝蔵を持つことあたはず、 不善の業多くして、 まさに悪道に堕つべし。 空中に声ありて、 比丘に語りていはく、 «空王如来はまた*涅槃したまひにき。 なんぢが所犯を救ふものなしと謂へりといへども、 なんぢら、 いま*塔に入りて像を観ずべし。 仏の在世と等しくして異あることなからん» と。 われ、 空の声に従ひて塔に入り、 像の眉間の白毫を観じて、 すなはちこの念をなさく、 «如来の在世の光明・色身は、 これとなんぞ異ならん。 仏の大人相、 願はくはわが罪を除きたまへ» と。 この語をなしをはりて、 大山の崩るるがごとくにして五体を地に投げて、 もろもろの罪を懺悔しき。 これより以後、 八十億阿僧祇劫に悪道に堕ちず、 生々につねに十方の諸仏を見たてまつり、 諸仏の所にして甚深の念仏三昧を受持しき。 三昧を得をはりて、 諸仏現前して、 われに*記別を授けたまひき。 東方の妙喜国の阿閦仏は、 すなはち第一の比丘これなり。 南方の歓喜国の宝相仏は、 すなはち第二の比丘これなり。 西方の極楽国の無量寿仏は、 第三の比丘これなり。 北方の蓮華荘厳国の微妙声仏は、 第四の比丘これなりº と。 時に、 四の如来おのおの右の手を申べて、 阿難が頂を摩で、 告げてのたまはく、 ªなんぢ、 仏語を持ちて、 広く未来のもろもろの衆生のために説けº と。 三たびこれを説きをはりて、 おのおの光明を放ちて、 本国に還帰したまひにき」 と。
四仏世尊 阿閦・法相・無量寿・微妙声の四仏。
涅槃 ここでは入滅の意。
塔 梵語ストゥーパ (stūpa) の音写の略。 仏の遺骨を安置し供養する築造物。
又云。「四仏世尊、従↠空而下坐↢釈迦文仏床↡讃言。善哉善哉、乃能為↢於未来之時濁悪衆生↡、説↢三世仏白毫*光相↡、令↢諸衆生得↟滅↢罪咎↡。所以者何、念↢我昔曾↡、空王仏所出家学↠道。時四比丘。共為↢同学↡習↢仏正法↡、煩悩覆↠心不↠能↣堅持↢仏法宝蔵↡、多↢不善業↡当↠堕↢悪道↡。空中有↠声語↢比丘↡言。空王如来、雖↢復涅槃、汝之所↠犯、謂↟无↢救者↡、汝等今可↢入↠塔観↟像。与↢仏在世↡等无↠有↠異。我従↢空声↡、入↠塔観↢像眉間白毫↡、即作↢是念↡、如来在世光明色身、与↠此何異。仏大人相、願除↢我罪↡。作↢是語↡已、如↢大山崩↡、五体投↠地懺↢悔諸罪↡。従↠是已後、八十億阿僧祇劫、不↠堕↢悪道↡、生生常見↢十方諸仏↡、於↢諸仏所↡受↢持甚深念仏三昧↡。得↢三昧↡已、諸仏現前授↢我記別↡。東方妙喜国阿閦仏、即第一比丘是。南方歓喜国宝相仏、即第二比丘是。西方極楽国无量寿仏、第三比丘是。北方蓮華荘厳国微妙声仏、第四比丘是。時四如来、各申↢右手↡摩↢阿難頂↡、告言。汝持↢仏語↡広為↢未来諸衆生↡説。三説↠此已、各放↢光明↡還↢帰本国↡。」
光相 青蓮院本では 「光明」。
またのたまはく (*観仏経)、 「財首菩薩、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 われ過去の無量世の時を念へば、 仏世尊ましましき、 また釈迦牟尼と名づけたてまつりき。 かの仏の滅後に一の王子ありき、 名づけて金幢といひき。 憍慢・邪見にして正法を信ぜざりき。 *知識の比丘ありき、 定自在と名づくるもの、 王子に告げていはく、 «世に仏像まします、 衆宝をもつて*厳飾せり。 しばらく塔に入りて、 仏の形像を観ずべし» と。 時にかの王子、 善友の語に随ひて、 塔に入りて像を観じき。 像の相好を見て、 比丘にまうさく、 «仏像の端厳なること、 なほかくのごとし。 いはんや仏の真身をや» と。 比丘、 告げていはく、 «なんぢ、 いま像を見るに、 礼することあたはずは、 まさに“南無仏”と称すべし» と。 この時に、 王子、 合掌し*恭敬して、“南無仏”と称しき。 宮に還りて、 念を繋けて塔のなかの像を念ずるに、 すなはち*後夜に夢に仏像を見き。 仏像を見しがゆゑに、 心大きに歓喜し、 邪見を捨離して、 三宝に帰依しき。 寿命終るに随ひて、 前に塔に入りて“南無仏”と称せし因縁の功徳によりて、 九百万億那由他の仏に値ひて、 甚深の念仏三昧を*逮得せり。 三昧力のゆゑに、 諸仏現前して、 それがために記を授けたまひき。 これよりこのかた百万阿僧祇劫、 悪道に堕せざりき。 乃至今日、 甚深の*首楞厳三昧を獲得せり。 その時の王子は、 いまのわれ、 財首これなりº」 と。
後夜 夜の終り。 夜明けに近いころ。 →
六時
逮得 完全に得ること。
又云。「財首菩薩白↠仏言。世尊、我念↢過去无量世時↡、有↢仏世尊↡、亦名↢釈迦牟尼↡。彼仏滅後有↢一王子↡、名曰↢金幢↡。驕慢邪見、不↠信↢正法↡。知識比丘、名↢定自在↡。告↢王子↡言。世有↢仏像↡、衆宝厳飾、可↣暫入↠塔観↢仏形像↡。時彼王子随↢善友*教↡、入↠塔観↠像見↢像相好↡白↢言比丘↡。仏像端厳猶尚如↠此、況仏真身。比丘告言。汝今見↠像。不↠能↠礼、*然者、当↠称↢南无仏↡。是時王子、合掌恭敬称↢南無仏↡。還↠宮繋↠念念↢塔中像↡、即於↢後夜↡夢見↢仏像↡。見↢仏像↡故、心大歓喜、捨↢離邪見↡帰↢依三宝↡、随寿命終。由↧前入↠塔称↢南无仏↡因縁功徳↥、値↢九百万億那由他仏↡、逮↢得甚深念仏三昧↡。三昧力故、諸仏現前為↠其授↠記。従↠是已来、百万阿僧祇劫不↠堕↢悪道↡、乃至今日獲↢得甚深首楞厳三昧↡。爾時王子、今我財首是也。」
教 他本では 「語」。
然 他本では欠く。
またのたまはく (*観仏経)、 「仏ののたまはく、 ªわれ、 *賢劫のもろもろの菩薩と、 曾、 過去の栴檀窟仏の所にして、 この諸仏の色身・変化の観仏三昧海を聞けり。 この因縁の功徳力をもつてのゆゑに、 九百万億阿僧祇劫の生死の罪を超越して、 この賢劫にして次第に仏になる。 乃至 かくのごとく、 十方の無量の諸仏もみなこの法によりて*三菩提を成じたまふº」 と。
又云。「仏言。我与↢賢劫諸菩薩↡、曾於↢過去栴檀窟仏所↡、聞↢是諸仏色身変化観仏三昧海↡。以↢是因縁功徳力↡故、超↢越九百万億阿僧祇劫生死之罪↡、於↢此賢劫↡次第成仏。乃至 如↠是十方无量諸仏、皆由↢此法↡成↢三菩提↡。」
*¬*迦葉経¼ (意) にのたまはく、 「昔、 過去久遠の阿僧祇劫に、 仏、 世に出でたまへることありき。 号して光明とまうしき。 *入涅槃の後に、 一の菩薩ありき。 大精進と名づけき。 年はじめて十六にして、 *婆羅門種なり。 *端正なること比びなし。 一の比丘ありて、 白畳の上に仏の形像を画きて、 持ちて精進に与へき。 精進、 像を見て、 心大きに歓喜して、 かくのごとき言をなさく、 ª如来の形像すら妙好なること、 なほしかり。 いはんやまた仏の身をや。 願はくは、 われ、 未来にまたかくのごとき妙身を成就することを得んº と。 いひをはりて思念すらく、 ªわれもし家にあらば、 この身は得ること叵しº と。 すなはち父母にまうして、 哀れみを求め、 出家せんとせしに、 父母答へていはく、 ªわれいま年老いたり、 ただなんぢ一子あるのみ。 なんぢもし出家しなば、 われらまさに死ぬべしº と。 子、 父母にまうさく、 ªもしわれを聴したまはずは、 われ今日より飲せじ、 食せじ、 床座に昇らじ、 また言説せじº と。 この誓をなしをはりて、 一日食せずして、 すなはち六日に至る。 父母・*知識・八万四千のもろもろの*婇女等、 同時に悲泣して、 大精進を礼して、 尋いで出家を聴しき。 すでに出家することを得、 像を持して山に入り、 草を取りて座となし、 画像の前にありて*結跏趺坐し、 一心にあきらかに観ぜり。 ªこの画像は如来に異ならず。 像は覚にあらず、 知にあらず。 一切の諸法もまたかくのごとし。 相なく、 相を離れたり。 体性空寂なりº と。 この観をなしをはりて日夜を経て、 *五通を成就し、 *無量を具足し、 *無礙弁を得、 *普光三昧を得て、 大光明を具せり。 浄天眼をもつて東方の阿僧祇の仏を見たてまつり、 浄天耳をもつて仏の所説を聞きて、 ことごとくよく聴受しき。 七月を満足するまで、 智をもつて食となしき。 一切の諸天、 華を散じて供養しき。 山より出でて村落に来至して、 人のために法を説くに、 二万の衆生、 菩提心を発し、 無量阿僧祇の人は、 声聞・縁覚の功徳に住し、 父母・親眷もみな、 *不退の無上菩提に住しき。 仏、 迦葉に告げたまはく、 ª昔の大精進は、 いまのわが身これなり。 この像を観ぜしによりて、 いま仏になることを得たり。 もし人ありて、 よくかくのごとき観を学せば、 未来にかならずまさに*無上道を成ずべしº」 と。
迦葉経にのたまわく… ここでの引用は道世編の ¬諸経要集¼ 巻一の文に依拠している。
入涅槃 仏がなくなること。
婆羅門種 婆羅門は梵語ブラーフマナ (brāhmaņa) の音写。 種は家柄のこと。 古代インドの四姓制度の中の僧侶・司祭の身分をいう。 →
四姓
知識 ここでは友人の意。
婇女 采女。 侍女。
無量 異本には 「四無量」 とある。
無礙弁 自由自在な弁説の才能。
普光三昧 あまねく光明を放って、 すべてのものを照らし出す禅定の境地。
不退の無上菩提 仏のさとりを得ることが決定していて、 迷いの世界に退転することがないという位。
¬迦葉経¼云。「昔過去久遠阿僧祇劫、有↢仏出↟世、号曰↢光明↡。入涅槃後、有↢一菩薩↡*。年始十六、婆羅門種、端正无↠比。有↢一比丘↡、於↢白畳上↡画↢仏形像↡、持与↢精進↡。精進見↠像心大歓喜、作↢如↠是言↡。如来形像妙好乃爾、況復仏身。願我未来、亦得↣成↢就如↠是妙身↡。言已思念。我若在↠家、此身叵↠得。即啓↢父母↡求↠哀出家、父母答言。我今年老、唯汝一子。汝若出家我等当↠死。子白↢父母↡、若不↠聴↠我者、我従↢今日↡不↠飲不↠食、不↠昇↢床座↡、亦不↢言説↡。作↢是誓↡已一日不↠食、乃至六日。父母・知識、八万四千諸婇女等、同時悲泣礼↢大精進↡、尋聴↢出家↡。既得↢出家↡、持↠像入↠山、取↠草為↠座在↢画像前↡結跏趺坐一心諦観、此画像不↠異↢如来↡。像者*不↠覚非↠知、一切諸法亦復如↠是。无↠相離↠相、体性空寂。作↢是観↡已、経↢於日夜↡成↢就五通↡、具↢足*四无量↡、得↢无礙弁↡、得↢普光三昧↡、具↢大光明↡。以↢浄天眼↡見↢於東方阿僧祇仏↡、以↢浄天耳↡聞↢仏所説↡、悉能聴受。満↢足七月↡、以↠智為↠食、一切諸天散↠華供養。従↠山而出来↢至村落↡、為↠人説↠法。二万衆生発↢菩提心↡、无量阿僧祇人住↢於声聞・縁覚功徳↡、父母・親眷皆住↢不退无上菩提↡。仏告↢迦葉↡。昔大精進、今我身是。由↢此観像↡、今得↢成仏↡。若有↠人能学↢如↠此観↡、未来必当↠成↢无上道↡。」
◇ 他本では 「名大精進」 とあり。
不 他本では 「非」。
四無量 青蓮院本、 承元元年刊本では 「無量」。
*¬譬喩経¼ の第二にのたまはく、 「昔、 比丘ありき。 その母を度せんと欲せしに、 母すでに命過しぬ。 すなはち*道眼をもつて天上・人中・*擒狩・*薜茘のなかに求索するに、 つひにこれを見ず。 *泥梨を観ずるに、 母がなかにあるを見て、 すなはち*懊惋し悲哀して、 広く方便を求めて、 その苦を脱せんと欲ひき。 時に辺境に王ありき。 父を害して国を奪ひてき。 比丘、 この王の命、 余り七日ありて、 罪を受くる地は、 比丘の母と同じく一処にあらんと知りて、 夜の*安靖の時に、 王の寝れる処に到りて、 壁を穿ちて半身を現ず。 王、 怖ぢて刀を抜きて頭を斫る。 頭すなはち地に落ちぬれども、 その処は故のごとし。 これを斫ること数反するに、 *化の頭、 地に満つれども、 比丘は動かず。 王、 意にすなはち解りて、 その*非常なることを知りぬ。 *頭を叩きて過を謝す。 比丘のいはく、 ª恐るることなかれ、 怖づることなかれ。 あひ度せんと欲するのみ。 なんぢ、 父を害して国を奪へりやいなやº と。 対へていはく、 ª実にしかり。 願はくは慈救せられよº と。 比丘のいはく、 ª大功徳をなすとも、 おそらくはあひ及ばざらんか。 王、 まさに南無仏と称すべし。 七日絶えずは、 すなはち罪を免るることを得てんº と。 かさねて、 これに告げていはく、 ªつつしみてこの法を忘るることなかれº と。 すなはち飛びて去りぬ。 王すなはち*手を叉へて一心に ª南無仏º と称説すること、 昼夜に懈らず、 七日ありて命終して、〔王の〕*魂神、 泥梨の門に向かひて ª南無仏º と称す。 泥梨のなかの人、 仏といふ音声を聞きて、 みな一時に ª南無仏º といひしかば、 泥梨すなはち冷めにき。 比丘、 ために法を説きしかば、 比丘の母、 王、 および泥梨のなかの人、 みな度脱を得き。 後に大きに精進して、 須陀洹道を得き」 と。 以上諸文、 略して抄す。
比喩経の第二に… 現存しない。 引用の文と同じ内容のものが ¬経律異相¼、 ¬諸経要集¼、 ¬法苑珠林¼ にある。
道眼 修行によって得たすぐれた眼。
擒狩 畜生のこと。
薜茘 梵語プレータ (preta) の音写。 餓鬼のこと。
泥梨 梵語ナラカ (naraka) の音写。 地獄のこと。 →
地獄
懊惋 苦しみ悩むこと。
安靖の時 静かな時。
化の頭 神通力で表し出した幻の頭。
非常 ただごとでない。
頭を叩きて 頭を地につけて。
手を叉へ 両掌を胸のあたりで組み合わせて。
魂神 たましい。
¬譬喩経¼第二云。「昔有↢比丘↡。欲↠度↢其母↡、母已命過。便以↢道眼↡天上・人中・擒狩・薜茘中求索、了不↠見↠之、観↢於泥*↡見↢母在↟中。便懊惋悲哀広求↢方便↡、欲↠脱↢其苦↡。時辺境有↠王、害↠父奪↠国。比丘知↧此王命余有↢七日↡、受↠罪之地、与↢比丘母↡同在↦一処↥、夜安靖時、到↢王*寝殿処↡、穿↠壁現↢半身↡。王怖抜↠刀斫↠頭。頭即落↠地、其処如↠故。斫↠之数反、化頭満↠地、比丘不↠動。王意即解、知↢其非常↡、叩頭謝↠過。比丘言。莫↠恐莫↠怖、欲↢相度↡耳。汝害↠父奪↠国不耶。対曰。実爾。願見↢慈救↡。比丘曰。作↢大功徳↡、恐不↢相及↡。王当↠称↢南无仏↡。七日不↠絶、便得↠*勉免↠罪。重告↠之曰。慎莫↠忘↢此法↡。即便飛去。王便叉↠手一心称↢説南無仏↡、昼夜不↠懈、七日命終。魂神向↢*泥門↡称↢南无仏↡、泥中人聞↢仏音声↡、皆一時言↢南無仏↡、泥即冷。比丘為説↠法、比丘母・王、及泥中人、皆得↢度脱↡、後大精進、得↢須陀洹道↡。」已上諸文略抄
底本まま。 註なし。
寝殿処 他本では 「寝処」。
勉 他本では 「免」。
泥 青蓮院本では 「泥梨」。 以下同。
*¬*優婆塞戒経¼ にのたまはく、 「善男子、 われ本往、 邪見の家に堕ちたりき、 *惑網おのづからわれを蓋へり。 われ、 その時に名を広利といへり。 妻は名女にして、 *精進勇猛し度脱すること無量にして、 十善をもつて化導しき。 われその時に、 心に殺猟をなしき。 酒肉を貪嗜し、 *懶惰懈怠にして、 精進することあたはざりき。 妻時にわれに語らはく、 ªその猟殺を止め、 戒めて酒肉を断ち、 つとめて精進を加へて、 地獄の苦悩の患ひを脱して、 天宮に上生して、 一処に与することを得よº と。 われその時においても殺心止まず、 酒肉の美味をも割捨することあたはず、 精進の心も懶惰にして前まず、 天宮は意みを息め、 地獄の分を受けたり。 われその時に*聚落のうちに居し、 *僧伽藍に近くして、 しばしば鍾を槌つを聞きき。 妻われに語りていはく、 ª事々あたはずは、 *健鍾の声を聞くとき、 三たび弾指して一たび仏を称せよ。 身を斂めてみづから恭まり、 憍慢を生ずることなかれ。 その夜半のごときも、 この法廃することなかれº と。 われすなはちこれを用ゐて、 また捨失することなかりき。 十二年を経て、 その妻命終して、 忉利天に生れき。 かへりて後三年ありて、 われまた寿尽きて、 *断事に経至せしに、 われを判じて罪に入れて、 地獄の門に向かへき。 門に入る時に当りて、 鍾の三声を声きしに、 われすなはち住立して、 心に歓喜をなし、 愛楽して厭はず。 法のごとく三たび弾指して、 長き声をもつて仏を唱へき。 声ごとにみな慈悲ありて、 *梵音朗らかに徹れりき。 *主事、 聞きをはりて、 心はなはだ*愧感すらく、 ªこれ真の菩薩なりけり。 いかんぞ錯りて判ぜるº と。 すなはち*遣追・還送して、 天上に往かしめき。 すでに往き、 到りをはりて、 五体を地に投げて、 わが妻を礼敬して、 まうさく、 ª大師、 幸ひにして大恩を義けて、 いま済抜せらる。 すなはち菩提に至るまで教勅に違はじº」 と。 以上
優婆塞戒経にのたまはく… 引用に該当する文は現存の ¬優婆塞戒経¼ にはない。
惑網 煩悩を網に喩えたもの。
精進勇猛 心をはげまして努力すること。
懶惰懈怠 おこたりなまけること。
聚落 集落。
僧伽藍 梵語サンガーラーマ (saſghārāma) の音写。 僧院・僧園などと漢訳する。 出家僧侶が集って修行するところ。 寺院を指す。
健 異本には 「」 「搥」 とある。
断事 閻羅王の法廷。
梵音 ここでは 「南無仏」 と称える声のこと。
愧感 恥じいること。
遣追還送 送り返すこと。
¬優婆塞戒経¼云。「善男子、我本往堕↢邪見家↡、惑網自我蓋。我於↢爾時↡、名曰↢広利↡。妻名女、精進勇猛度脱无量、十善化導。我於↢爾時↡心生↢殺猟↡、貪↢嗜酒肉↡、懶*惰懈怠不↠能↢精進↡。妻時語↠我、止↢其猟殺↡、戒断↢酒肉↡、勤加↢精進↡、得↧脱↢地獄苦悩之患↡、上↢生天宮↡与↦一処↥。我於↢爾時↡殺心不↠止、酒肉美味不↠能↢割捨↡、精進之心懶惰不↠前、天宮息↠意地獄分受。我於↢爾時↡居↢聚落内↡、近↢僧伽藍↡、数聞↢槌鍾↡。妻語↠我言。事事不↠能、聞↢*槌鍾声↡、三弾指一称↠仏。斂↠身自恭、莫↠生↢驕慢↡。如↢其夜半↡此法莫↠癈。我即用↠之无↢復捨失↡。経↢十二年↡、其妻命終生↢忉利天↡、却後三年我亦寿尽。経↢至断事↡、判↠我入↠罪向↢地獄門↡。当入↠門時*聞↢鍾三声↡、我即住立心生↢歓喜↡、愛楽不↠厭、如↠法三弾指、長声唱↠仏。声皆慈悲梵音朗徹。主事聞已心甚愧感、此真菩薩、云何錯判。即遣追還送往↢天上↡。既往到已五躰投↠地、礼↢敬我妻↡白言。大師幸義↢大恩↡、如見↢済抜↡。乃至菩提不↠違↢教勅↡。已上
惰 他本では 「堕」。 以下同。
槌 他本では 「健」。
聞 青蓮院本、 建長五年刊本では 「声」。
また震旦 (中国) には、 *東晋よりこのかた*唐朝に至るまで、 阿弥陀仏を念じて浄土に往生せるもの、 *道俗・男女、 合せて五十余人なり。 僧二十三人、 尼六人、 沙弥二人、 在家男女合せて二十四人。 ¬*浄土論¼ ならびに ¬*瑞応伝¼ に出でたり。 わが朝に往生せるもの、 またその数あり。 つぶさには*慶氏の ¬*日本往生の記¼ にあり。 いかにいはんや、 朝市にありて徳を隠し、 山林に名を逃れたるもの、 独り修して独り去る、 たれか知ることを得んや。
東晋 南北朝時代の南朝の一 (317-420)。
唐朝 618-907年。
慶氏 慶滋保胤 (931頃-1002) のこと。 平安時代の文人貴族。 西方往生を願って念仏結社二十五三昧会を創設し、 ¬日本往生極楽記¼ などを著した。
又震旦*国東晋已来、至↢于唐朝↡、念↢阿弥陀仏↡往↢生浄土↡者、道俗男女合五十余人、*出↢¬浄土論¼并¬瑞応伝¼↡。我朝往生者亦有↢其数↡。具在↢慶氏¬日本往生記¼↡。何況朝市隠↠徳、山林逃↠名之者、独修独去、誰得↠知耶。
国 他本では欠く。
◇ 青蓮院本には 「僧廿三人尼六人沙弥二人在家男女合廿四人」 と割註あり。
*問ふ。 下下品の人と五百の釈子とは、 臨終に同じく念じたるに、 昇沈なんぞ別なる。
問ふ… ¬観経¼ の下下品の人と ¬観仏三昧経¼ の五百の釈子とは、 臨終に同じく念仏したのに、 前者は浄土に往生し、 後者は生天ののち堕獄したことを問うたもの。
問。下下品人、五百釈子、臨終同念、昇沈何別。
答ふ。 ¬*群疑論¼ に会していはく、 「五百の釈子は、 ただ父が教によりて一たび仏を念ぜしかども、 しかも菩提心を発し浄土に生るることを求めて、 慇懃に慚愧せざりき。 またかれは心を至さず、 またただ一念にして十念を具せざるがゆゑなり」 と。 略抄
答。¬群疑論¼会云。「五百釈子、但依↢父教↡一念↠仏、而不↧発↢菩提心↡求↠生↢浄土↡慇懃慙愧↥。又彼不↢至心↡。復唯一念不↠具↢十念↡故。」略抄
◎念仏利益 ○悪趣利益
【65】第七に*悪趣の利益を明かさば、
悪趣の利益 三悪趣 (地獄・餓鬼・畜生) において得る利益。
第七明↢悪趣利益↡者、
¬*大悲経¼ の第二にのたまはく、 「もしまた人ありて、 ただ心に仏を念じて一たびも敬信をなさば、 われ説かく、 この人はまさに涅槃の果を得て、 涅槃の際を尽すべし。 阿難、 しばらく人中の念仏の功徳をば置きて、 もし畜生ありて、 仏世尊においてよく念をなすものをば、 われまた説かく、 その善根の福報、 まさに涅槃を得べし」 と。
¬大悲経¼第二云。「若復有↠人、但心念↠仏一生↢敬信↡、我説、是人、当↧得↢涅槃果↡尽↦涅槃際↥。阿難且置↢人中念仏功徳↡。若有↢畜生↡、於↢仏世尊↡、能生↠念者、我亦説、其善根福報当↠得↢涅槃↡。」
問ふ。 なんらかこれなるや。
問。何等是耶。
答ふ。 同経の第三に、 仏、 阿難に告げたまはく、 「過去に大商主ありき。 もろもろの商人を将て大海に入りしに、 その船、 にはかに*摩竭大魚のために、 来りて呑み噬らはれんとす。 その時に、 商主およびもろもろの商人、 心驚き毛竪ちて、 おのおのみな悲しみ泣きて、 *嗚呼す。 ª奇しきかな、 かの*閻浮提はかくのごとく楽しむべく、 かくのごとく*希有なり。 世間の人身、 かくのごとく得がたし。 われいままさに父母と離別しぬ。 姉妹・婦児・親戚・朋友にも別離して、 われさらに見ざるべし。 また仏・法・衆僧をも見たてまつることを得まじくなりぬº と。 きはめて大きに悲哭しき。 その時に、 商主ひとへに右の肩を袒し、 右の膝を地に着けて、 船の上に住して、 一心に仏を念じ、 掌を合せて礼拝して、 声を高くして唱へていはく、 ª南無諸仏、 *得大無畏者、 大慈悲者、 *憐愍一切衆生者º と。 かくのごとく三たび称する時に、 もろもろの商人、 また同時にかくのごとく三たび称しき。 時に摩竭魚、 仏の名号、 礼拝の音声を聞きて、 大愛敬をなし、 聞きてすなはち口を閉ぢてき。 その時に、 商主およびもろもろの商人、 みなことごとく安穏にして、 魚の難を免るることを得てき。 時に摩竭魚、 仏の音声を聞きて、 心に喜楽をなし、 さらに余のもろもろの衆生をも食噉せざりき。 これによりて命終して人中に生るることを得てき。 その仏の所にして、 法を聞き、 出家して、 善知識に近づきて、 阿羅漢を得てき。 阿難、 なんぢ、 かの魚の、 畜生道に生れて、 仏の名を聞くことを得、 仏の名を聞きをはりて、 乃至、 涅槃せることを観ぜよ。 いかにいはんや、 人ありて、 仏の名を聞くことを得、 正法を聴聞せんをや」 と。 略抄
摩竭大魚 鯨。
嗚呼 泣きさけぶこと。
希有 きわめてまれであること。
得大無畏者 大無畏 (安穏でいかなるおそれもないこと) を得た者。
憐愍一切衆生者 すべての衆生をあわれみいつくしむ者。
答。同¬経¼第三、仏告↢阿難↡。「過去有↢大商主↡。将↢諸商人↡入↢於大海↡、其船卒為↢摩竭大魚↡、欲↢来呑*噛↡。爾時商主、及諸商人、心驚毛竪各皆悲泣。嗚呼奇哉、彼閻浮提如↠是可↠楽、如↠是希有。世間人身如↠是難↠得、我今当↧与↢父母↡離別↥。姉妹・婦児・親戚・朋友別離、我更不↠見。亦不↠得↠見↢仏・法・衆僧↡。極大悲哭。爾時商主、偏↢袒右肩↡、右膝着↠地、住↢於船上↡、一心念↠仏、合掌礼拝高声唱、言↧南↦无諸仏得↢大无畏↡者、大慈悲者、憐↢愍一切衆生↡者↥。如↠是三称。時諸商人、亦復同時如↠是三称。時摩竭魚、聞↢仏名号、礼拝音声↡、生↢大愛敬↡、聞即閉↠口。爾時商主、及諸商人、皆悉安穏得↠免↢魚難↡。時摩竭魚聞↢仏音声↡、心生↢喜楽↡、更不↣食↢噉余諸衆生↡。因↠是命終得↠生↢人中↡、於↢其仏所↡、聞↠法出家、近↢善知識↡得↢阿羅漢↡。阿難、汝観↢彼魚↡、生↢畜生道↡得↠聞↢仏名↡、聞↢仏名↡已乃至涅槃。何況有↠人、得↠聞↢仏名↡聴↢聞正法↡。略抄
噛 他本では 噬。
また ¬*菩薩処胎経¼ の 「八斎品」 にのたまはく、 「竜の子、 *金翅鳥のために、 *頌を説きていはく、
金翅鳥 竜を食べるという大鳥。
妙翅鳥ともいう。 八部鬼神のうちの
迦楼羅に同じ。 →
八部鬼神
頌 偈頌 (詩句)。
ª殺はこれ不善の行なり。 寿命を減じて*中夭あり。
中夭 不慮の死。 または早死のこと。
身は、 *朝露の虫の、 光を見てすなはち命終するがごとし。
朝露の虫 朝露のように命の短い虫。
戒を持ち仏語を奉ずれば、 長寿天に生るることを得て、
*累劫に福徳を積みて、 畜生道に堕ちず。
累劫 幾多の劫。 きわめて長い時。
いまの身は竜身たれども、 戒徳清明にして行ず。
*六畜のなかに堕せりといへども、 かならずみづから済度することを望まんº と。
この時に、 竜の子、 この頌を説く時に、 竜子・竜女、 心意開解して、 寿終りて後に、 みなまさに阿弥陀仏の国に生るべし」 と。 以上、 八斎戒の竜の子なり。
又¬菩薩処胎経¼八斎品云。「竜子与↢金翅鳥↡、而説↠頌曰。殺是不善行、*滅↢寿命↡中夭。身如↢朝露虫↡、見↠光則命終。持↠戒奉↢仏語↡、得↠生↢長寿天↡、累劫積↢福徳↡、不↠堕↢畜生道↡。今身為↢竜身↡、戒徳清明行、雖↠堕↢六畜中↡、必望自済度。是時竜子説↢此頌↡時、竜子・竜女、心意開解。寿終之後、皆当↠生↢阿弥陀仏国↡。」已上八斎戒竜子也
滅 青蓮院本、 承元元年刊本では 「減」。
*余趣の、 仏語を信じて浄土に生るること、 これに准へよ。 地獄の利益は、 *前の国王の因縁、 ならびに*下の粗心の妙果のごとし。
余趣 他の悪趣。
前の国王の因縁 296頁 (1090頁) 以下の ¬比喩経¼ の引文。
下の粗心の妙果 大文第十問答料簡の第六を指す。
余趣信↢仏語↡生↢浄土↡准↠之。地獄利益如↢前国王因縁、并下麄心妙果↡。
諸余の利益は、 下の念仏の功能のごとし。
余趣 他の悪趣。
前の国王の因縁 296頁 (1090頁) 以下の ¬比喩経¼ の引文。
下の粗心の妙果 大文第十問答料簡の第六を指す。
諸余利益、如↢下念仏*功徳↡。
功徳 青蓮院本、 建長五年刊本では 「功能」。
◎念仏証拠
【66】大文第八に、 *念仏証拠といふは、
念仏証拠 往生行として専ら念仏を勧める証拠。
大文第八念仏証拠者、
▼問ふ、 一切の善業はおのおの利益あり、 おのおの往生することを得てん。 なんがゆゑぞ、 ただ念仏の一門を勧むる。
問。一切善業各有↢利益↡、各得↢往生↡、何故唯勧↢念仏一門↡。
答ふ。 ▼いま念仏を勧むることは、 これ余の種々の妙行を*遮するにはあらず。 ただこれ、 男女・貴賤、 *行住坐臥を*簡ばず、 *時処諸縁を論ぜずして、 これを修するに難からず、 乃至、 臨終に往生を願求するに、 その便宜を得たるは念仏にはしかじ。
遮 排すること。
簡ばず 区別しない。
時処諸縁 時間や場所、 さまざまな条件。
答。今勧↢念仏↡、非↣是遮↢余種種妙行↡。只是男女・貴賤、不↠簡↢行住坐臥↡、不↠論↢時処諸縁↡、修↠之不↠難。乃至臨終願↢求往生↡、得↢其便宜↡不↠如↢念仏↡。
ゆゑに ¬*木槵経¼ にのたまはく、 「難陀国の波瑠璃王、 使ひを遣はして、 仏にまうしてまうさく、 ªただ願はくは、 世尊、 ことに*慈愍を垂れて、 われに*要法を賜ひて、 われをして日夜に修行することを得やすく、 未来世のうちにもろもろの苦を遠離せしめたまへº と。 仏告げてのたまはく、 ª大王、 もし*煩悩障・報障を滅せんと欲はば、 まさに*木槵子一百八を貫きて、 もつてつねにみづから随へて、 もしは行、 もしは坐、 もしは臥に、 つねにまさに心を至して分散の意なくして、 *仏陀・達摩・僧伽の名を称しては、 すなはち一の木槵子を過ぐすべし。 かくのごとくして、 もしは十、 もしは二十、 もしは百、 もしは千、 乃至、 百千万せよ。 もしよく二十万遍を満てんに、 身心乱れず、 もろもろの*諂曲なくは、 命を捨てて*第三の炎摩天に生るることを得て、 衣食自然にして、 つねに安楽なることを受けん。 もしまたよく一百万遍を満たさば、 まさに百八の*結業を除断することを得て、 生死の流を背きて、 涅槃の道に趣き、 無上の果を獲べしº」 と。 略抄
木槵子 むくろじの種子。
諂曲 いつわり。
結業 結は煩悩の意。 煩悩のはたらき。
故¬木槵経¼云。「難陀国波瑠璃王、遣↠使白↠仏言。唯願世尊、特垂↢慈愍↡賜↢我要法↡、使↧我日夜易↠得↢修行↡、未来世中遠↦離衆苦↥。仏告言。大王、若欲↠滅↢煩悩障・報障↡者、当↧貫↢木槵子一百八↡以常自随↥。若行若坐若臥、恒当↧至↠心无↢分散意↡、称↢仏陀・達摩・僧伽名↡、乃過↦一木槵子↥。如↠是若十若廿、若百若千、乃至百千万。若能満↢廿万遍↡、身心不↠乱、无↢諸諂曲↡者、捨命得↠生↢第三炎摩天↡、衣食自然常受↢安楽↡。若復能満↢一百万遍↡者、当↧得↣除↢断百八結業↡、背↢生死流↡趣↢涅槃道↡獲↦无上果↥。」略抄
いはんやまた、 もろもろの聖教のなかに、 多く念仏をもつて往生の業となせり。 その文、 はなはだ多し。 略して十の文を出さん。
況復諸聖教中、多以↢念仏↡為↢往生業↡。其文甚多。略出↢十文↡。
一には、 ¬*占察経¼ の下巻にのたまはく、 「もし人、 他方の現在の浄国に生れんと欲はば、 まさにかの世界の仏の名字に随ひて、 意をもつぱらにして誦念すべし。 一心に乱れずして上のごとく観察せば、 決定してかの仏の浄国に生るることを得、 善根増長して、 すみやかに不退を成ぜん」 と。 「上のごとき観察」 とは、 地蔵菩薩の法身および諸仏の法身と、 おのが自身と、 平等無二にして、 不生不滅なり、 常楽我浄なり、 功徳円満せりと観ずるなり。 また己身無常なること、 幻のごとし、 厭ふべしと観ずる等なり。
一¬占察経¼下巻云。「若人欲↠生↢他方現在浄国↡者、応↧当随↢彼世界仏之名字↡、専↠意誦念↥。一心不乱如↠上観察者、決定得↠生↢彼仏浄国↡、善根増長速成↢不退↡。」如↠上観察者観↧於地蔵菩薩法身及諸仏法身与↢己自身↡平等无↠二不生不滅・常楽我浄・功徳円満↥又観↢己身无常如↠幻可↟厭等也
二には、 ▼¬双巻経¼ (大経・下) の三輩の業、 浅深ありといへども、 しかも通じてみな 「*一向にもつぱら無量寿仏を念じたてまつれ」 とのたまへり。
一向に 他に心をかけず、 ひたすらに。
二¬双巻経¼三輩之業、雖↠有↢浅深↡、然通皆云↢「一向専念无量寿仏」↡。
▼三には、 ▼四十八願のなかに、 念仏門において別に一の願を発してのたまはく (*同・上意)、 「▲乃至十念せん。 もし生ぜずは、 正覚を取らじ」 (第十八願) と。
三四十八願中、於↢念仏門↡別発↢一願↡云。「乃至十念、若不生者、不取正覚。」
▼四には、 ¬観経¼ (意) に、 「▼極重の悪人は、 他の方便なし。 ただ仏を称念して、 極楽に生ずることを得」 と。
四¬観経¼*云。「極重悪人无↢他方便↡、唯称↢念仏↡得↠生↢極楽↡。」
云 青蓮院本、 建長五年刊本では欠く。
五には、 同経にのたまはく、 「▲もし心を至して西方に生れんと欲はば、 先づまさに一の*丈六の像の、 池の水の上にましますと観ずべし」 と。
五同¬経¼云。「若欲↣至↠心生↢西方↡、先当↠観↣於一丈六像在↢池水上↡。」
六には、 同経にのたまはく、 「▲光明あまねく十方世界の念仏の衆生を照らして、 *摂取して捨てたまはず」 と。
六同¬経¼云。「光明遍照↢十方世界↡、念仏衆生摂取不↠捨。」
七には、 ¬阿弥陀経¼ にのたまはく、 「▲少善根の福徳因縁をもつて、 かの国に生ずることを得べからず。 ▲もし善男子・善女人ありて、 阿弥陀仏を説くを聞きて、 名号を*執持して、 もしは一日 乃至 もしは七日すること、 一心に乱れずは、 その人命終の時に臨みて、 阿弥陀仏、 もろもろの聖衆と現じて、 その前にましまさん。 この人終る時に、 心、 顛倒せずしてすなはち往生することを得てん」 と。
七¬阿弥陀経¼云。「不↠可↧以↢少善根福徳因縁↡得↞生↢彼国↡。若有↢善男子・善女人↡、聞↠説↢阿弥陀仏↡、執↢持名号↡、若一日 乃至 若七日、一心不↠乱、其人臨↢命終時↡、阿弥陀仏、与↢諸聖衆↡現在↢其前↡。是人終時、心不↢顛倒↡、即得↢往生↡。」
八には、 ¬*般舟経¼ にのたまはく、 「阿弥陀仏ののたまはく、 ªわが国に来生せんと欲はば、 つねにわれを念ぜよ。 しばしば、 つねに念をもつぱらにして休息あることなかれ。 かくのごとくせば、 わが国に来生することを得んº」 と。
八¬般舟経¼云。「阿弥陀仏言。欲↣来↢生我国↡者、*当念↠我数数。常*当↢専↠念莫↟有↢休息↡。如↠是得↠来↢生我国↡。」
当 他本では 「常」。
当 青蓮院本では欠く。
九には、 ¬*鼓音声経¼ にのたまはく、 「もし四衆ありて、 よくまさしくかの仏の名号を受持せば、 この功徳をもつて、 終らんと欲する時に臨みて、 阿弥陀、 すなはち大衆とこの人の所に往きて、 それをして見ることを得しめ、 見をはりて尋いで生ぜん」 と。
九¬鼓音声経¼云。「若有↢四衆↡、能正受↢持彼仏名号↡、以↢此功徳↡、臨↢欲↠終時↡、阿弥陀*仏、即与↢大衆↡往↢此人所↡、令↢其得↟見、見已尋生。」
仏 青蓮院本では欠く。
十には、 ¬*往生論¼ (天親の浄土論・意) に、 「かの仏の*依正の功徳を観念するをもつて、 往生の業となせり」 と。 以上
十¬往生論¼「以↣観↢念彼仏依正功徳↡、為↢往生業↡。」已上
このなかに、 ¬観経¼ の下下品・¬阿弥陀経¼・¬*鼓音声経¼ は、 ただ名号を念ずるをもつて往生の業となせり。 いかにいはんや、 相好・功徳を観念せんをや。
此中¬観経¼下下品・¬阿弥陀経¼・¬鼓音声経¼但以↠念↢名号↡為↢往生業↡。何況観↢念相好・功徳↡耶。
問ふ。 余の行に、 いづくんぞ勧信の文なからんや。
問。余行寧无↢勧信文↡耶。
答ふ。 その余の行法は、 ちなみにかの法の種々の*功能を明かす。 そのなかにおのづから往生の事を説くなり。 ただちに往生の要を弁ずるに、 多く 「念仏」 といふがごとくにあらず。 いかにいはんや、 仏みづからすでにのたまへり、 「まさにわれを念ずべし」 と。 また仏の光明、 余の行人を*摂取すとはいはず。
効能 作用。 はたらき。
答。其余行法、因↠明↢彼法種種功能↡、其中自説↢往生之事↡。不↠如↧直弁↢往生之要↡、多云↞念↠仏。何況仏自既言↠当↠念↠我乎。亦不↠云↣仏光明摂↢取余行人↡。
これらの文、 分明なり。 なんぞかさねて疑をなさんや。
此等文分明、何重生↠疑耶。
問ふ。 諸経の所説は、 機に随ひて*万品なり。 なんぞ*管見をもつて一の文を執せんや。
万品 さまざまなありさま。 千差万別。
管見 狭い見識。
問。諸経所説随↠機万品、何以↢管見↡執↢一文↡耶。
答ふ。 *馬鳴菩薩の ¬*大乗起信論¼ (意) にいはく、 「また次に、 衆生はじめてこの法を学せんに、 その心*怯弱にして、 信心成就すべきこと難きことを*懼畏して、 意に、 退しなんと欲せば、 まさに知るべし、 如来に*勝方便ましまして、 信心を摂護したまふ。 随ひて心をもつぱらにして仏を念ずる因縁をもつて、 願に随ひて、 他方の仏土に往生することを得るなり。 *修多羅に説くがごとし。 ªもし人もつぱらにして西方の阿弥陀仏を念じて、 所作の善業をもつて回向して、 かの世界に生れんと願求すれば、 すなはち往生することを得º」 と。 以上
懼畏 危惧すること。
勝方便 すぐれた方法。
修多羅 梵語スートラ (sūtra) の音写。 経のこと。 ここでは ¬大経¼ 等の経典の取意を指す。
答。馬鳴菩薩¬大乗起信論¼云。「復次衆生、初学↢是法↡、其心怯弱懼↢畏信心難↟可↢成就↡、意欲↠退者、当↠知、如来有↢勝方便↡、摂↢護信心↡。随以↢専心念仏因縁↡、随↠願得↣往↢生他方仏土↡。如↫修多羅説↪若人専念↢西方阿弥陀仏↡、所↠作善業迴向願↣求生↢彼世界↡、即得↩往生↨。已上
あきらかに知りぬ、 *契経に、 多く念仏をもつて往生の要となせり。 もししからずは、 *四依の菩薩はすなはち*理尽にあらじ。
契経 経のこと。 仏の教説は衆生の素質に契い、 真理に合致するから契経という。
四依の菩薩 ここでは馬鳴菩薩のこと。
理尽 道理を究め尽すこと。
明知、契経多以↢念仏↡為↢往生要↡。若不↠爾者、四依菩薩即非↢理尽↡。
◎往生諸行
【67】大文第九に、 *往生諸行を明かさば、 いはく、 極楽を求むるものは、 かならずしももつぱら仏を念ぜず。 すべからく余の行を明かしておのおのの*楽欲に任すべし。 これにまた二あり。 初めには、 別して諸経の文を明かす。 次には、 総じて諸業を結す。
往生諸行 往生浄土のためのさまざまな行業。
楽欲 意向。 望み。
大文第九明↢往生諸行↡者謂求↢極楽↡者、不↣必専↢念仏↡、須↧明↢余行↡、任↦各楽欲↥。此亦有↠二。初別明↢諸経文↡、次惣結↢諸業↡。
◎往生諸行 ○明諸経
【68】第一に諸経を明かすといふは、*¬四十華厳経¼ の普賢願、 ¬*三千仏名経¼・¬*無字宝篋経¼・¬*法華経¼ 等の諸大乗経、 ¬*随求¼・¬*尊勝¼・¬*無垢浄光¼・¬*如意輪¼・¬*阿嚕力迦¼・¬*不空羂索¼・¬*光明¼・¬*阿弥陀¼、 および*龍樹の所感の往生浄土等の呪なり。 これらの*顕密の諸大乗のなかに、 みな受持・読誦等をもつて、 往生極楽の業となせり。
四十華厳経の普賢願 四十巻本 ¬華厳経¼ に説かれる普賢菩薩の十大願。 →
華厳経
光明 ¬不空羂索毘盧遮那仏大潅頂光真言¼ (光明真言経) 一巻のこと。 唐の不空訳。
龍樹… ¬楽邦文類¼ 巻一に龍樹菩薩の呪として記す抜一切業障根本得生浄土呪。
第一明↢諸経↡者、¬四十華厳経¼普賢願・¬三千仏名経¼・¬无字宝篋経¼・¬法華経¼等諸大乗経、¬随求¼・¬尊勝¼・¬无垢浄光¼・¬如意輪¼・¬阿嚕力迦¼・¬不空羂索¼・¬光明¼・¬阿弥陀¼及龍樹¬所感往生浄土¼等咒。此等顕密諸大乗中、皆以↢受持・読誦等↡、為↢往生極楽業↡也。
¬*大阿弥陀経¼ (下) にのたまはく、 「まさに斎戒し、 一心清浄にして、 昼夜にまさに念じて阿弥陀仏の国に生れんと欲すべし。 十日十夜、 断絶せずは、 われみなこれを*慈愍してことごとく阿弥陀仏の国に往生せしめん。 たとひしかするにあたはずは、 みづから思惟し、 よく*校計せよ。 身を*度脱せんと欲するものは、 まさに念を絶つべからず。 愛を去りて、 家事を念ふことなかれ。 婦女と床を同じくすることなかれ。 みづから身心を端く正しくして、 愛欲を断じて、 一心に斎戒清浄にして、 至専に阿弥陀仏国に生れんと念じて、 一日一夜、 断絶せずは、 寿終してみなその国に往生して、 七宝の浴池の蓮華のなかにありて化生せん」 と。 この ¬経¼ (大阿弥陀経) は持戒をもつて首となせり。
校計 思いはからうこと。
¬大阿弥陀経¼云。「当↧斎戒、一心清浄、昼夜当念、欲↠生↢阿弥陀仏国↡、十日十夜不↦断絶↥。我皆慈↢愍之↡、悉令↣往↢生阿弥陀仏国↡。殊使不↠能↠爾、自思惟熟*授計。欲↣度↢脱身↡者、不↠当↠絶↠念。去↠愛勿↠念↢家事↡、莫↧与↢婦女↡同牀↥、自端↢正身心↡断↢於愛欲↡、一心斎戒清浄、至専念↠生↢阿弥陀仏国↡、一日一夜不↢断絶↡者、寿終皆往↢生其国↡、在↢七宝浴池蓮華中↡化生。」此経以↢持戒↡為↠首
授 他本では 「校」。
¬*十往生弥陀仏国経¼ (意) にのたまはく、 「われいま、 なんぢがために説く、 十の往生あり。 いかなるか十の往生。 一には身を観じて正念にして、 つねに歓喜を懐きて、 飲食・衣服をもつて仏および僧に施せば、 阿弥陀仏の国に往生す。 二には正念にして、 世の妙良薬をもつて一の病比丘および一切衆生に施せば、 阿弥陀仏の国に往生す。 三には正念にして、 一の生命をも害せず、 一切を慈悲すれば、 阿弥陀仏の国に往生す。 四には正念にして、 師の所に従ひて戒を受け、 *浄慧をもつて*梵行を修し、 心につねに喜びを懐けば、 阿弥陀仏の国に往生す。 五には正念にして、 父母に孝順し*師長を敬重し、 憍慢の心を懐かざれば、 阿弥陀仏の国に往生す。 六には正念にして、 僧房に往詣し塔寺に*恭敬し、 法を聞きて一の義をも解れば、 阿弥陀仏の国に往生す。 七には正念にして、 *一日一宿のうちに*八戒斎を受持し、 一日一宿のうちに受持して一も破らざれば、 阿弥陀仏の国に往生す。 八には正念にして、 もしよく斎月・斎日のうちに房舎を遠離してつねに善師に詣れば、 阿弥陀仏の国に往生す。 九には正念にして、 つねによく浄戒を持ち、 勤修して禅定を楽ひ、 法を護り悪口せず、 もしよくかくのごとく行ずれば、 阿弥陀仏の国に往生す。 十には正念にして、 もし*無上道において誹謗の心を起さず、 精進して浄戒を持ちて、 また無智のものを教へてこの経法を流布し、 無量の衆を教化す。 かくのごときもろもろの人等、 ことごとくみな阿弥陀仏の国に往生することを得」 と。 以上
浄慧 煩悩のけがれのない清浄の智慧。
一日一宿 一日一夜に同じ。
¬十往生*阿弥陀仏国経¼云。「吾今為↠汝説。有↢十往生↡。云何十往生。一者観↠身正念常懐↢歓喜↡、以↢飲食・衣服↡、施↢仏及僧↡、往↢生阿弥陀仏国↡。二者正念世妙良薬施↢一病比丘及以一切衆生↡、往↢生阿弥陀仏国↡。三者正念不↠害↢一生命↡慈↢悲於一切↡、往↢生阿弥陀仏国↡。四者正念従↢師所↡受↠戒、浄恵修↢梵行↡、心常懐↠喜、往↢生阿弥陀仏国↡。五者正念孝↢順於父母↡、敬↢重於師長↡不↠懐↢驕慢心↡、往↢生阿弥陀仏国↡。六者正念往↢詣於*僧坊↡、恭↢敬於塔寺↡、聞↠法解↢一義↡、往↢生阿弥陀仏国↡。七者正念一日一宿中受↢持八戒斎↡、一日一宿中受持不↠破↠一、往↢生阿弥陀仏国↡。八者正念若能斎月斎日中遠↢離於房舎↡、常詣↢於善師↡、往↢生阿弥陀仏国↡。九者正念常能持↢浄戒↡、勤修楽↢禅定↡、護↠法不↢悪口↡。若能如↠是行、往↢生阿弥陀仏国↡。十者正念若於↢无上道↡不↠起↢誹謗心↡、精進持↢浄戒↡、復教↢无智者↡流↢布是経法↡、教↢化無量*衆生↡。如↠是諸人等、*皆悉得↣往↢生阿弥陀仏国↡。*」
阿 他本では欠く。
僧坊 青蓮院本では 「僧房」。
衆生 他本では 「衆」。
皆悉 青蓮院本、 承元元年刊本では 「悉皆」。
◇ 青蓮院本では 「已上」 と割註あり。
¬*弥勒問経¼ にのたまはく、 「仏の説きたまへるところのごとく、 阿弥陀仏の功徳利益を願じて、 もしよく十念相続して、 不断に仏を念ずるものは、 すなはち往生することを得。 まさにいかんが念ずべし。 仏ののたまはく、 ªおほよそ十の念あり。 なんらをか十となす。 一には、 もろもろの衆生において、 つねに慈心を生じてその行を毀らざること、 もしその行を毀ればつひに往生せず。 二には、 もろもろの衆生において、 つねに悲心を起して残害の意を除くこと、 三には、 護法心を発して身命を惜しまざること、 一切の法において誹謗をなさざること、 四には、 忍辱のなかにおいて決定心を生ずること、 五には、 深心清浄にして*利養に染せざること、 六には、 *一切智の心を発して日々につねに念じて、 廃忘あることなきこと、 七には、 もろもろの衆生において、 尊重の心を起し、 *我慢の心を除き、 *謙下して言説すること、 八には、 *世の談話において味着をなさざること、 九には、 覚意に近づき、 深く種々の善根の因縁を起し、 *憒閙・散乱の心を遠離すること、 十には、 正念にして仏を観じて諸想を除去することなりº」 と。
弥勒問経 引用は千観 (918-984) の ¬十願発心記¼ 所引の ¬弥勒問経¼ の文に依拠したもの。
利養 自己の利益。
我慢 自らをたのんで、 おごりたかぶること。
謙下 へりくだること。
世の談話 世間話。
憒閙 乱れさわぐこと。
¬弥勒問経¼云。「如↢仏所↟説、願↢阿弥陀仏功徳利益↡、若能十念相続、不断念↠仏者、即得↢往生↡。当↢云何念↡。仏言。凡有↢十念↡。何等為↠十。一者於↢諸衆生↡、常生↢慈心↡不↠毀↢其行↡、若毀↢其行↡、終不↢往生↡。二者於↢諸衆生↡、常起↢悲心↡除↢残害意↡。三者発↢護法心↡、不↠惜↢身命↡、於↢一切法↡不↠生↢誹謗↡。四者於↢忍辱中↡生↢決定心↡。五者深心清浄不↠染↢利養↡。六者発↢一切智心↡、日日常念无↠有↢*廃忘↡。七者於↢諸衆生↡起↢尊重心↡、除↢我慢心↡、謙下言説。八者於↢世談話↡、不↠生↢味着↡。九者近↢於覚意↡、深起↢種種善根因縁↡、遠↢離憒鬧散乱之心↡。十者正念観↠仏除↢去諸想↡。」
廃 青蓮院本では 「癈」。
¬*宝積経¼ の第九十二に、 仏またこの十心をもつて弥勒の問に答へたまへり。 そのなかの第六の心にいはく、 「*仏の種智を求めて、 一切の時において忘失する心なし」 と。 その余の九種は、 文少し異なりといへども、 意は前の ¬経¼ (弥勒問経) に同じ。 ただ ¬経¼ (宝積経) の文にのたまはく、 「もし人、 この十種の心のうちにおいて、 随ひて一心を成じて、 かの仏の世界に往生せんと*楽欲せんに、 もし生ずることを得ずといはば、 この処あることなからん」 と。 云々 明らけし、 かならずしも十を具して往生の業となすにはあらざるなり。
楽欲 ねがうこと。
¬宝積経¼第九十二、仏亦以↢此十心↡、答↢弥勒問↡。其中第六心云。「求↢仏種智↡、於↢一切時↡无↢忘失心↡。」其余九種文雖↢少異↡、意同↢前¬経¼↡。但*結経文云。「若人於↢此十種心中↡、随成↢一心↡、楽↣欲往↢生彼仏世界↡、若不↠得↠生无↠有↢是処↡。」云云。明、非↣必具↠十為↢往生業↡也。
結 青蓮院本では 「経」。
¬観経¼ にのたまはく、 「▲かの国に生れんと欲はば、 まさに*三福を修すべし。 一には父母に孝養し、 *師長に*奉事し、 慈心をもつて殺せず、 *十善業を修すること、 二には*三帰を受持し、 *衆戒を具足し、 *威儀を犯せざること、 三には菩提心を発し、 深く因果を信じ、 大乗を読誦し、 行者を*勧進することなり。 かくのごとき三事を名づけて*浄業となす。 仏、 韋提希に告げたまはく、 ªなんぢいま知るやいなや。 この三種の業は、 過去・未来・現在の三世の諸仏の浄業の正因なりº」 と。
衆戒 五戒、 八斎戒、 十戒、 具足戒など。
威儀 仏弟子としての規律にかなった起居動作、 ふるまいのこと。
勧進 仏道への帰入・実践をすすめること。
浄業 仏果を成就するための清浄な行業。
¬観経¼云。「欲↠生↢彼国↡者、当↠修↢三福↡。一者孝↢養父母↡、奉↢事師長↡、慈心不↠殺、修↢十善業↡。二者受↢持三帰↡、具↢足衆戒↡、不↠犯↢威儀↡。三者発↢菩提心↡、深信↢因果↡、読↢誦大乗↡、勧↢進行者↡。如↠此三事名為↢浄業↡。仏告↢韋提希↡。汝今知不。此三種業、過去・未来・現在三世諸仏浄業正因。」
またのたまはく (同・意)、 「▲上品上生といふは、 もし衆生ありて、 かの国に生ぜんと願ぜば、 三種の心を発して即便往生す。 なんらをか三となす。 一には*至誠心、 二には*深心、 三には*回向発願心なり。 三心を具せるものはかならずかの国に生る。
又云。「上品上生者、若有↢衆生↡、願↠生↢彼国↡者、発↢三種心↡、即便往生。何等為↠三。一者至誠心、二者深心、三者迴向発願心。具↢三心↡者、必生↢彼国↡。
▲また三種の衆生ありて、 まさに往生することを得べし。 なんらをか三となす。 一には慈心にして殺せず、 もろもろの戒行を具すること、 二には*大乗方等経典を読誦すること、 三には*六念を修行して、 回向発願してかの国に生れんと願ずることなり。 この功徳を具すること、 一日乃至七日にして、 すなはち往生することを得。
大乗方等経典 不変平等の真理を説きあらわした経典。 大乗経典の総称。
復有↢三種衆生↡、当↣得↢往生↡。何等為↠三。一者慈心不↠殺具↢諸戒行↡。二者読↢誦大乗方等経典↡。三者修↢行六念↡、迴向発願願↠生↢彼国↡。具↢此功徳↡、一日乃至七日、即得↢往生↡。
▲上品中生といふは、 かならずしも方等経典を受持せざれども、 よく義趣を解りて、 *第一義において心驚動せず、 深く因果を信じ大乗を謗ぜず。 この功徳をもつて、 回向して極楽国に生れんと願求するなり。
上品中生者、不↣必受↢持方等経典↡、善解↢義趣↡、於↢第一義↡心不↢驚動↡、深信↢因果↡不↠謗↢大乗↡、以↢此功徳↡、迴向願↣求生↢極楽国↡。
▲上品下生といふは、 また因果を信じ大乗を謗ぜず。 ただ*無上道の心を発して、 この功徳をもつて、 回向して極楽に生れんと願求するなり。
上品下生者、亦信↢因果↡不↠謗↢大乗↡、但発↢無上道心↡。以↢此功徳↡、迴向願↣求生↢極楽↡。
▲中品上生といふは、 もし衆生ありて、 *五戒を受持し、 *八戒斎を持ち、 もろもろの戒を修行して*五逆を造らず、 もろもろの*過患なからん。 この善根をもつて、 回向して願求するなり。
過患 つみとが、 あやまち。
中品上生者、若有↢衆生↡、受↢持五戒↡持↢八戒斎↡、修↢行諸戒↡不↠造↢五逆↡、無↢*衆過患↡。以↢此善根↡、迴向願求。
衆 他本では 「諸」。
▲中品中生といふは、 もし衆生ありて、 もしは一日一夜八戒斎を受け、 もしは一日一夜*沙弥戒を持ち、 一日一夜*具足戒を持ち、 威儀欠くることなし。 この功徳をもつて、 回向して願求するなり。
中品中生者、若有↢衆生↡、若一日一夜受↢八戒斎↡、若一日一夜持↢沙弥戒↡、*若一日一夜持↢具足戒↡、威儀無↠欠。以↢此功徳↡迴向願求。
若 他本では欠く。
▲中品下生といふは、 もし善男子・善女人ありて、 父母に孝養し、 世の仁慈を行ずるなり。
中品下生者、若有↢善男子・善女人↡、孝↢養父母↡行↢世仁慈↡。
▲下品上生といふは、 あるいは衆生ありて、 もろもろの悪業を作らん。 *方等経典を誹謗せずといへども、 かくのごとき愚人、 多くもろもろの悪法を造りて慚愧あることなからん。 終りに臨みて*十二部経の*首題の名字を聞き、 および合掌して ª南無阿弥陀仏º と称するなり。
方等経典 不変平等の真理を説きあらわした経典。 大乗経典の総称。
首題の名字 経の題名。
下品上生者、或有↢衆生↡、作↢衆悪業↡、雖↠不↣誹↢謗方等経典↡、如↠此愚人、多造↢衆悪法↡、無↠有↢慙愧↡。臨終聞↢十二部経首題名字↡、及合掌称↢南無阿弥陀仏↡。
▲下品中生といふは、 あるいは衆生ありて、 五戒・八戒および具足戒を毀犯せらん。 かくのごとき愚人、 命終らんと欲する時に、 地獄の衆火、 一時にともに至らん。 善知識の、 大慈悲をもつて、 ために阿弥陀仏の*十力威徳を説き、 広くかの仏の*光明神力を説き、 また*戒・定・慧・解脱・知見を讃ずるに遇はん。 この人聞きをはりて八十億劫の生死の罪を除くなり。
光明神力 光明の不可思議な力。
戒定慧解脱知見 戒をたもち、 禅定に入り、 智慧をひらき、 すべての煩悩から解放されて、 心の安らかさを自覚するという五つの功徳。 この功徳を備える者を五分法身という。
下品中生者、或有↢衆生↡、毀↢犯五戒・八戒及具足戒↡。如↠此愚人、命欲↠終時、地獄衆火一時倶至。遇↧善知識以↢大慈悲↡、為説↢阿弥陀仏十力威徳↡、広説↢彼仏光明神力↡、亦讃↦戒・定・慧・解脱・知見↥。此人聞已、除↢八十億劫生死之罪↡。
▲下品下生といふは、 あるいは衆生ありて、 不善業たる*五逆・*十悪を作り、 もろもろの不善を具せん。 かくのごとき愚人、 悪業をもつてのゆゑに悪道に堕つべからん。 命終の時に臨みて、 善知識に遇ひて、 仏を念ずることあたはずといへども、 ただ心を至して声をして絶えざらしめて、 十念を具足して ª南無無量寿仏º と称せん。 仏の名を称せんがゆゑに、 念々のうちに八十億劫の生死の罪を除くなり」 と。
下品下生者、或有↢衆生↡、作↢不善業五逆・十悪↡、具↢諸不善↡。如↠此愚人、以↢悪業↡故、応↠堕↢悪道↡。臨↢命終時↡遇↢善知識↡、雖↠不↠*念↠仏、但至↠心令↢声不↟絶、具↢足十念↡称↢南无无量寿仏↡。称↢仏名↡故、於↢念念中↡除↢八十億劫生死之罪↡。」
◇ 他本には 「能」 の字あり。
▼¬*双巻経¼ (大経・下) の*三輩の業もまたこれを出でず。
¬双巻経¼三輩業亦不↠出↠此。
¬観経¼ には、 *十六観をもつて往生の因となせり。
十六観 ¬観経¼ に説かれる定善十三観と散善三観のこと。
¬観経¼以↢十六観↡為↢往生因↡。
¬宝積経¼ に説かく、 仏前の蓮華に化生するに、 四の因縁ありと。 偈 (同) にのたまはく、
「華香をもつて仏および*支提に散ずると、 他を害せざると、 ならびに像を造ると、
支提 梵語チャイトヤ (caitya) の音写。 仏の遺跡などに建てられた廟。
大菩提において深く信解するとは、 蓮華に処して仏前に生るることを得」 と。 以上
¬双巻経¼三輩業亦不↠出↠此。¬観経¼以↢十六観↡為↢往生因↡。¬宝積経¼説↣仏前蓮華化生、有↢四因縁↡。偈云。「花香散↢仏及支提↡、不↠害↢於他↡并造↠像、於↢大菩提↡深信解、得↧処↢蓮華↡生↦仏前↥。」已上
余は繁く出さず。
余不↢繁出。*私云支提者塔廟異名也
私云支提者塔廟異名也 他本ではこの割註を欠く。
◎往生諸行 ○総結諸業
【69】第二に総じて諸業を結すといふは、〔浄影寺〕*慧遠法師、 浄土の因要を出せるに、 四あり。 「一には観を修して往生すること、 十六観のごときなり。 二には業を修して往生すること、 *三福業のごときなり。 三には心を修して往生すること、 至誠等の三心なり。 四には帰向して往生する、 浄土の事を聞きて帰向し、 称念し、 讃嘆すること等なり」 (観経義疏・意) と。
第二惣結↢諸業↡者、恵遠法師出↢浄土因要↡有↠四。「一修↠観往生、如↢十六観↡。二修↠業往生、如↢三福業↡。三修↠心往生、至誠等三心。四帰向往生、聞↢浄土事↡帰向称念讃嘆等也。」
いまわたくしにいはく、 諸経の行業、 総じてこれをいへば、*¬梵網¼ 戒品を出でず。 別してこれを論ずれば、 *六度を出でず。 細しくその相を明かせば、 その十三あり。 一には*財・法等の施、 二には*三帰・*五戒・*八戒・*十戒等の多少の戒行、 三には*忍辱、 四には*精進、 五には*禅定、 六には*般若、 第一義を信ずること等これなり。 七には菩提心を発すこと、 八には六念を修行すること、 仏・法・僧・戒・施・天、 これを六念といふ。 十六想観はまたこれを出でず。 九には大乗を読誦すること、 十には仏法を守護すること、 十一には父母に孝順し*師長に*奉事すること、 十二には憍慢をなさざること、 十三には*利養に染せざることなり。
梵網戒品 ¬梵網経¼ に説かれる十重四十八軽戒。
財宝等の施 財施 (物質的な財を施すこと)・宝施 (教えを説いて聞かせること) など。
利養 自己の利益。
今私云。諸経行業惣而言↠之、不↠出↢¬梵網¼戒品↡、別而論↠之不↠出↢六度↡。細明↢其相↡有↢其十三↡。一者財法等施。二者三帰・五戒・八戒・十戒*多少戒行。三者忍辱。四者精進。五禅定。六般若。信↢第一義等↡是也 七発↢菩提心↡。八修↢行六念↡。*念↢仏・法・僧・戒・施・天↡謂↢之六念↡十六想観亦不↠出↠之}九読↢誦大乗↡。十守↢護仏法↡。十一孝↢順父母↡奉↢事師長↡。十二不↠生↢驕慢↡。十三不↠染↢利養↡也。
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「等」 の字あり。
念 青蓮院本、 承元元年刊本では欠く。
*¬大集¼ の 「月蔵分」 の偈にのたまはく、
「樹の菓繁ければ、 すみやかにみづから害するがごとし。 竹籚の実を結ぶもまたかくのごとし。
*任騾の懐すれば、 自身を喪ぼすがごとし。 無智にして利を求むるもまたしかり。
任騾…ごとし ¬大集経¼ の原文は 「如騾懐任自喪身」 (騾の懐任すればおのずから身を喪ふがごとし)。
もし比丘ありて、 供養を得、 利養を楽求し堅く着するものは、
世においてさらにかくのごとき悪はなし。 ゆゑに解脱の道を得ざらしむ。
かくのごとくして利養を貪求するものは、 すでに道を得をはりぬれども、 還りてまた失ふ」 と。
¬大集¼月蔵分偈云。「如↢樹菓繁速自害↡、竹*蘆結↠実亦如↠是。如↣任騾*喪↢自身↡、无智求↠利亦復然。若有↢比丘↡得↢供養↡、楽↢求利養↡堅著者、於↠世更无↢如↠此悪↡。故令↠不↠得↢解脱道↡。如↠是貪↢求利養↡者、既得↠道已還復失。」
蘆 青蓮院本、 建長五年刊本では 籚。
青蓮院本では 懐。
また ¬*仏蔵経¼ に、 *迦葉仏、 記してのたまはく、 「釈迦牟尼仏は多く供養を受けたまはんがゆゑに、 法まさに疾く滅すべし」 と。 云々
*¬仏蔵経¼迦葉仏、記云。「釈迦牟尼仏、多受↢供養↡故、法当↢疾滅↡」云云。
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「又」 の字あり。
如来なほしかり。 いかにいはんや凡夫をや。 大象窓を出づるに、 つひに一の尾のために礙へらる。 行人家を出でたれども、 つひに*名利のために縛せらる。 すなはち知りぬ、 出離の最後の怨は、 名利より大なるものはなし。 ただ浄名大士 (維摩詰) は、 身は家にあれども心は家を出で、 *薬王の本事は、 *塵寰を避りて*雪山に居せり。 いまの世の行人もまたかくのごとくすべし。 みづから*根性を料りて、 これを進止せよ。 もしその心を制することあたはずは、 なほすべからくその地を避るべし。 *麻のなかの蓬、 *屠辺の廏、 好悪いづれにかよれるや。 ¬仏蔵経¼ を見て是非を知るべし。
薬王の本事 薬王菩薩の前世の因縁。
塵寰 世俗のけがれ。
麻のなかの蓬 麻の中に生えている蓬は自然にまっすぐになるということ。
屠辺の廏 屠所の近くにつながれた象は自然と気が荒くなるということ。 ¬付法蔵因縁伝¼ 巻六の説話による。
如来尚爾。何況凡夫。大象出↠窓遂為↢一尾↡所↠、行人出↠家遂為↢名利↡所↠縛。則知、出離最後之怨、莫↧大↢名利↡者↥也。但浄名大士、身在↠家心出↠家、薬王本事、避↢塵寰↡居↢*雲山↡。今世行人亦応↠如↠是。自料↢根性↡、而進↢止之↡。若不↠能↠制↢其心↡、猶須↠避↢於其地↡。麻中之蓬、屠辺之廏、好悪由↠何乎。可↧見↢¬仏蔵経¼↡知↦是非↥也
雲山 青蓮院本では 「雪山」。
◎問答料簡
【70】大文第十に、 *問答料簡といふは、 略して十の事あり。 一には極楽の依正、 二には往生の階位、 三には往生の多少、 四には尋常の念相、 五には臨終の念相、 六には粗心の妙果、 七には諸行の勝劣、 八には信毀の因縁、 九には助道の資縁、 十には助道の人法なり。
問答料簡 問答を設けて解釈し、 判断すること。
大文第十問答料簡者、略有↢十事↡。一極楽依正、二往生階位、三往生多少、四尋常念相、五臨終念相、六麁心妙果、七諸行勝劣、八信毀因縁、九助道資縁、十助道人法。
◎問答料簡 ○極楽依正
【71】第一に極楽の*依正といふは、
第一極楽依正者、
問ふ、 阿弥陀仏の極楽浄土は、 これいづれの身、 いづれの土ぞや。
問。阿弥陀仏極楽浄土、是何身何土耶。
答ふ。 *天台 (智顗) のいはく (観経天台疏・意)、 「*応身の仏、 *同居の土なり」 と。
同居の土 凡聖同居土のこと。 凡夫と聖者が雑居する世界。 天台大姉智顗 (538-597) は仏国土を凡聖同居土・方便有余土・実報無障碍土・常寂光土の四土に分類し、 極楽をこのうちもっとも低劣な凡聖同居土と論定した。
答。天臺云。「応身仏同居土。」
*遠法師 (浄影寺慧遠) のいはく、 「これ応身・応土なり」 と。
遠法師のいはく… ¬大経義疏¼ ¬観経義疏¼ ¬大乗義章¼ などの取意の文。
遠法師云。「是応身応土。」
綽法師 (道綽) のいはく、 「▲これ報仏・報土なり。 古旧等、 あひ伝へて、 みな ª化土・化身なりº といふ。 これを大きに失せりとなす。 ¬*大乗同性経¼ によりていはく、 ª浄土のなかにして成仏するものは、 ことごとくこれ*報身なり。 穢土のなかにして成仏するものは、 ことごとくこれ*化身なりº と。 またかの ¬経¼ (同) にのたまはく、 ª阿弥陀如来・蓮華開敷星王如来・竜主如来・宝徳如来等の、 もろもろの如来の清浄の*仏刹にして、 現に得道するもの、 まさに得道すべきもの、 かくのごとき一切はみなこれ報身の仏なり。 何者か如来の化身とならば、 なほ今日の踊歩健如来・魔恐怖如来等のごときなりº」 と。 以上 ¬*安楽集¼ (上・意)。
綽法師云。「是報仏報土。古旧等相伝皆云↢化土化身↡、此為↢大失↡。依↢大乗同性経↡云。浄土中成仏者悉是報身、穢土中成仏者悉是化身。又彼経云。阿弥陀如来・蓮華開敷星王如来・竜主如来・宝徳如来等、諸如来清浄仏刹、現得↠道者、当↠得↠道者、如↠是一切皆是報身仏也。何者如来化身。由如↢今日踊歩健如来・魔恐怖如来等↡。」已上¬安楽集¼
問ふ。 かの仏成道したまひて、 すでに久如しとかせん。
問。彼仏成道為↢已久↡如。
答ふ。 *諸経に 「▲十劫」 とのたまひ、 ¬*大阿弥陀経¼ (上) には 「十小劫」 とのたまひ、 ¬*平等覚経¼ (一) には 「十八劫」 とのたまひ、 ¬*称讃浄土経¼ には 「十大劫」 とのたまへり。 邪正、 知りがたし。 ただ ¬双巻経¼ (大経) の*憬興師の ¬疏¼ (*述文賛) に、 ¬平等経¼ を会していはく、 「十八劫とは、 それ小の字の、 そのなかの点を闕せるなり」 と。
諸経 ¬大経¼ および ¬小経¼。
答。諸経云↢十劫↡、¬大阿弥陀経¼云↢「十小劫」↡、¬平等覚経¼云↢「十八劫」↡、¬称讃浄土経¼云↢「十大劫」↡。邪正難↠知。但¬双巻経¼憬興師¬疏¼会↢¬平等経¼↡云。「十八劫者、其小字闕↢其中点↡矣。」
問ふ。 未来の寿はいくばくぞ。
問。未来寿幾何。
答ふ。 ¬小経¼ に、 「▲無量無辺阿僧祇劫」 とのたまへり。
答。¬小経¼云。「无量无辺阿僧祇劫。」
¬*観音授記経¼ (意) にのたまへり、 「阿弥陀仏の寿命、 無量百千億劫にして、 まさに終極あるべし。 仏*涅槃の後に、 正法の世に住すること、 仏の寿命に等しからん。 善男子、 阿弥陀仏の正法の滅して後に、 *中夜の分を過ぐして明相の出づる時に、 *観世音菩薩、 菩提樹下にして等正覚を成じ、 普光功徳山王如来と号せん。 その仏の国土には、 声聞・縁覚の名あることなからん。 その仏の国土を、 衆宝普集荘厳と号せん。 普光功徳如来涅槃したまひて、 正法の滅して後に、 *大勢至菩薩、 すなはちその国にして成仏し、 善住功徳宝王如来と号せん。 国土・光明・寿命、 乃至、 法の住すること、 等しくして異なることあることなからん」 と。
涅槃 ここでは入滅の意。
中夜… 夜半を過ぎて明け方になる時。
¬観音授記経¼云。「阿弥陀仏寿命无量百千億劫、当↠有↢終極↡。仏涅槃後、正法住↠世等↢仏寿命↡。善男子、阿弥陀仏正法滅後、過↢中夜分↡明相出時、観世音菩薩、於↢菩提樹下↡、成↢等正覚↡、号↢普光功徳山王如来↡。其仏国土、无↠有↢声聞・縁覚之名↡。其仏国土、号↢衆宝普集荘厳↡。普光功徳如来涅槃、正法滅後、大勢至菩薩、即於↢其国↡成仏、号↢善住功徳宝王如来↡。国土・光明・寿命、乃至法、住等无↠有↠異。」
問ふ。 ¬同性経¼ には 「報身」 とのたまひ、 ¬授記経¼ には 「入滅」 とのたまふ。 二の経の相違、 諸師いかんが*会する。
会する 会通すること。 一見矛盾したように見える記述を道理に照らしあわせて、 趣意の一貫したものとして説明すること。
問。¬同性経¼云↢「報身」↡、¬授記経¼云↢「入滅」↡。二経相違、諸師何会。
答ふ。 綽禅師 (道綽)、 ¬授記経¼ を会していはく (*安楽集・上)、 「▲これはこれ報身の、 *隠没の相を現ずるなり。 滅度にはあらず」 と。
答。綽禅師会↢¬授記経¼↡云。「此是報身現↢隠没相↡、非↢滅度↡也。」
*迦才、 ¬同性経¼ を会していはく (*浄土論)、 「浄土のなかにして仏になるを判じて報となすことは、 これ*受用事身なり。 実の報身にはあらず」 と。
受用事身 知覚の対象となる身体。 すなわち具体的なすがたをとって現れた仏をいう。
迦才会↢¬同性経¼↡云。「浄土中成仏、判為↠報者、是受用事身。非↢実報身↡也。」
問ふ。 何者をか正となすや。
問。何者為↠正耶。
答ふ。 迦才のいはく (*浄土論)、 「衆生の起行にすでに*千殊あれば、 往生して土を見ることまた万別あるなり。 もしこの解を作らば、 諸経論のなかに、 あるいは判じて報となし、 あるいは判じて化となすこと、 みな妨難なし。 ただ諸仏の修行、 つぶさに報化の二の土を感ずることを知れ。
千殊 千のちがい。
答。迦才云。「衆生起行既有↢千殊↡、往生見↠土亦有↢万別↡也。若作↢此解↡者、諸経論中、或判為↠報、或判為↠化、皆无↢妨難↡也。但知↣諸仏修行、具感↢報化二土↡也。
¬*摂論¼ のごときには ª*加行は化を感ず、 正体は報を感ずº といへり。 *もしは報、 もしは化、 みな衆生を成就せんと欲すなり。 これすなはち、 土は虚しく設けず、 行は空しく修せず。 ただ仏語を信じて、 経によりて専にして念ずれば、 すなはち往生することを得。 またすべからく報と化とを図度るべからず」 と。 以上
摂論 迦才の ¬浄土論¼ における引用は、 世親菩薩の ¬摂大乗論釈¼ の取意の文。
加行は… ¬摂大乗論釈¼ (真諦訳) では、 無分別智に加行・正体・後得の三を立て、 加行無分別智の所得の果報を 「化身」、 正体無分別智のそれを 「応身」 としている。 なお、 同書にいう 「応身」 は三身中の第二身のことで、 報身に同じ。
もしは報… 報土であれ、 化土であれ、 人々を救い遂げたいという意。
如↢摂論加行感↠化、正躰感↟報。若報若化、皆欲↣*成↢熟衆生↡。此則土不↢虚設↡、行不↢空修↡、但信↢仏語↡、依↠経専↠念、即得↢往生↡。亦不↠須↣図↢度報之与↟化也。」已上
成熟 他本では 「成就」。 以下同
この釈、 善し。 すべからくもつぱらにして称念すべし。 労しく分別することなかれ。
此釈善矣。須↢専称念↡、勿↢労分別↡。
問ふ。 かの仏の相好、 なにをもつてか不同なる。
問。彼仏相好何以不↠同。
答ふ。 ¬*観仏経¼ に、 諸仏の相好を説きてのたまはく、 「人の相に同ずるがゆゑに*三十二と説き、 もろもろの天に勝れたるがゆゑに*八十の好と説く。 もろもろの菩薩のためには、 八万四千のもろもろの妙相好を説く」 と。 以上 かの仏これに准へよ。
答。¬観仏経¼説↢諸仏相好↡云。「同↢人相↡故説↢三十二↡、勝↢諸天↡故説↢八十*種好↡。為↢諸菩薩↡説↢八万四千諸妙相好↡。」已上 彼仏准↠之。
種 諸本では欠く。
問ふ。 ¬*双巻経¼ (大経・上) にのたまはく、 「▲かの仏の*道樹は高さ四百万里なり」 と。*¬宝積経¼ にのたまはく、 「道樹の高さ十六億由旬なり」 と。 ¬*十往生経¼ にのたまはく、 「道樹の高さ四十万由旬なり。 樹下に獅子座あり、 高さ五百由旬なり」 と。 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲仏の身量、 六十万億那由他恒河沙由旬なり」 と。 云々 *樹と座と仏身と、 なんぞあひ称はざる。
道樹 道場樹のこと。 仏がさとりをひらく場所にある樹。 菩提樹。
宝積経にのたまはく… ¬宝積経¼ 所収の ¬如来会¼ (上) の取意の文。
樹と座と仏身… ここでは仏身の量が広大すぎて、 道場樹 (菩提樹) や獅子座 (仏の座る座所) の大きさとつりあわないことを問題にしている。
問。¬双巻経¼云。「彼仏道樹高四百万里。」¬宝積経¼云。「道樹高十六億由旬。」¬十往生経¼云。「道樹高四十万由旬、樹下有↢師子座↡、高五百由旬。」¬観経¼云。「仏身量、六十万億那由他恒河沙由旬。」云云。樹座仏身何不↢相称↡。
答ふ。 異解不同なり。 あるいは釈すらく、 「*仏の境界は大小あひ礙へず」 と。 あるいは釈すらく、 「*応仏に寄せて樹量を説き、 真仏に寄せて身量を説く」 と。 また多くの釈あり。 つぶさに述ぶべからずと。
仏の境界は… ¬安養抄¼ 巻三所引の義寂 ¬無量寿経疏¼ (現存せず) の説。
応仏に… 憬興の ¬述文賛¼ 巻中にみえる説。
答。異解不同。或釈、仏境界大小不↢相↡。或釈、寄↢応仏↡説↢樹量↡、寄↢真仏↡説↢身量↡。又有↢多釈↡、不↠可↢具述↡。
問ふ。 ¬華厳経¼ (意) にのたまはく、 「娑婆世界の一劫を極楽国の一日一夜となす」 と等いへり。 云々 これによりてまさに知るべし、 上品中生の、 *宿を経て華開くるは、 この間の半劫に当れり。 乃至、 下下生の十二劫は、 この間の*恒河沙塵数の劫に当れり。 なんぞ極楽と名づけん。
宿 一夜。
恒河沙塵数 ガンジス河の砂のように多いこと。
問。¬華厳経¼云。「娑婆世界一劫為↢極楽国一日一夜↡。」等 云云 由↠此当↠知、上品中生、逕↠宿華開当↢此間半劫↡、乃至下下生十二劫、当↢此間*恒沙塵数劫↡。何名↢極楽↡。
恒沙 青蓮院本では 「恒河沙」。
答ふ。 たとひ恒沙劫を経て蓮華開けずとも、 すでに微しき苦なし、 あに極楽にあらずや。
答。設経↢*恒劫↡蓮華不↠開、既无↢微苦↡、豈非↢極楽↡。
恒劫 青蓮院本では 「恒河劫」。
¬*双巻経¼ (大経・下) にのたまふがごとし、 「▲その*胎生のものの処するところの宮殿は、 あるいは百由旬、 あるいは五百由旬なり。 おのおのそのなかにしてもろもろの快楽を受くること、 忉利天のごとし」 と。 以上
如↢¬双巻経¼云↡。「其胎生者、所↠処宮殿、或百由旬、或五百由旬。各於↢其中↡受↢諸快楽↡如↢忉利天↡。」已上
ある師のいはく、 「*胎生は、 これ*中品・下品」 と。
胎生は… 源隆国編の ¬安養集¼ 巻七および ¬安養抄¼ 巻四所引の義寂 ¬無量寿経述義記¼ (現存せず) の説。 同書では胎生を中品・下品としている。
中品下品 底本 (青蓮院本) には 「中品下生」 とある。
有師云。「胎生是中品*下品。」
下品 青蓮院本では 「下生」。
ある師はいはく、 「*九品に摂せざるところなり」 と。
九品に… 元暁の ¬遊心安楽道¼ 等の説。
有師云。「九品所↠不↠摂。」
異説ありといへども快楽は別ならず。 いかにいはんや、 かの九品の経るところの日時を判ずること、 諸師不同なるをや。 懐感・智憬等の諸師は、 かの国土の日夜劫数なりと許すは、 まことに責むるところに当れり。 ある師のいはく、 「*仏、 この土の日夜をもつて、 これを説きて、 衆生をして知らしめたまふ」 と。 云々
仏この土の… 善導大師の 「散善義」 の説か。
雖↠有↢異説↡、快楽不↠別、何況判↢彼九品所↠逕日時↡、諸師不同。懐感・智憬等諸師、許↢彼国土日夜劫数↡、誠当↠所↠責。有師云。「仏以↢此土日夜↡、説↠之令↢衆生知↡。」云云
いまいはく、 後の釈、 失なし。 しばらく四の例をもつて*助成せん。
助成 補足して義を成立させること。
今謂、後釈无↠失、且以↢四例↡助成。
一には、 かの仏の身量、 そこばく由旬といふは、 かの仏の指分をもつて、 畳ねてかの由旬となせるにあらず。 もししからずは、 須弥山のごとき長大の人の、 一毛端をもつて、 その指の節となさんに似たるべし。 ゆゑに知りぬ、 仏の指の量をもつて仏身の長短を説かずといふことを。 なんぞかならずしも、 浄土の*時剋をもつて華の開くる遅速を説かんや。
時剋 時間。
一者彼仏身量若干由旬、不↧以↢彼仏指分↡畳為↦彼由旬↥也。若不↠爾者、応↠似↧如↢須弥山↡長大之人、以↢一毛端↡為↦其指節↥。故知、不↧以↢仏指量↡説↦仏身長短↥。何必以↢浄土時剋↡説↢華開遅速↡耶。
二には、 ¬*尊勝陀羅尼経¼ に説くがごとし。 「忉利天上の善住天子、 空の声の告ぐるを聞くに、 ªなんぢ、 まさに七日ありて死ぬべしº と。 時に*天帝釈、 仏の教勅を承けて、 かの天子をして七日勤修せしむ。 七日を過ぎて後に、 寿命延ぶることを得たり」 と。 取意
二者如↢¬尊勝陀羅尼経¼説↡。「忉利天上善住天子、聞↢空声告↡、汝当↢七日死↡。時天帝釈、承↢仏教勅↡令↢彼天子七日勤修↡、過↢七日↡後、寿命得↠延。」取意
これはこれ、 人中の日夜をもつて説けるなり。 もし天上の七日によらば、 人中の七百歳に当れり。 *仏世の八十年のうちに、 その事を決了すべきにあらず。 九品の日夜もまたこれに同じかるべし。
仏世の八十年 釈尊が世におられた八十年の間。
此是人中日夜而説。若拠↢天上七日↡者、当↢於人中七百歳↡、不↠応↣仏世八十年中決↢了其事↡。九品日夜亦応↠同↠之。
三には、 *法護所訳の ¬経¼ にのたまはく、 「▲*胎生の人は、 五百歳を過ぎて仏を見たてまつることを得」 と。 ¬*平等覚経¼ (三) にのたまはく、 「蓮華のなかに*化生して、 城のなかにあり。 この間の五百歳にして、 出づることを得ることあたはず」 と。 取意 憬興等の師、 この文をもつて、 この方の五百歳なりといふことを証す。 いまいはく、 かの胎生の歳数、 すでにこの間によりて説く。 九品の時剋、 なんの別義ありてか、 かれに同じからざらんや。
法護所訳の経 天台大師智顗の撰述と伝える ¬観無量寿経疏¼ や憬興の ¬述文賛¼ 等では、 ¬大経¼ (康僧鎧訳) は法護の訳とされる。
三者法護所訳経云。「胎生之人過↢五百歳↡得↠見↢於仏↡。」¬平等覚経¼云。「於↢蓮華中↡化生在↢城中↡。於↢是間五百歳↡、不↠能↠得↠出。」取意 憬興等師、以↢此文↡証↢此方五百歳↡也。今云。彼胎生歳数、既依↢此間↡説、九品時剋、有↢何別義↡不↠同↠彼耶。
四には、 もしかの界によりて九品を説けりとせば、 上品中生の*一宿、 上品下生の一日一夜は、 すなはちこの界の半劫・一劫に当れり。 もししかなりと許さば、 胎生の疑心のものすら、 なほ娑婆の五百歳を経て、 すみやかに仏を見たてまつることを得るに、 上品の信行のもの、 あに半劫・一劫を過ぎて、 遅く蓮華を開かんや。 この理あるがゆゑに、 後の釈は失なし。
一宿 一夜。
四者若拠↢彼界↡説↢九品↡者、上品中生一宿、上品下生*一日夜、即当↢此界半劫一劫↡。若許↠爾者、胎生疑心者、尚逕↢娑婆五百歳↡、而速得↠見↠仏、上品信行者、豈過↢半劫・一劫↡、而遅開↢蓮華↡耶。有↢此理↡故、後釈无↠失。
一日夜 青蓮院本では 「一日一夜」。
問ふ。 もしこの界の日夜の時剋をもつてかの相を説かば、 かの上上品は、 かの国に生れをはりて、 すなはち*無生法忍を悟るべからず。 しかる所以は、 この界の少時の修行をば勝れたりとなし、 かの国の多時の善根をば劣なりとなす。 すでにしからば、 上上品の人は、 この世界にして、 一日より七日に至るまで、 *三福業を具足するに、 なほ無生法忍を証することあたはざりき。 いかんぞ、 かしこに生れて、 法を聞きてすなはち悟らんや。 ゆゑに知りぬ、 かの国土の長遠の*時剋を経て、 無生忍を悟るなり。 しかも、 かしこに約して、 すなはち悟ると名づくるも、 ここに望むれば、 すなはち億千歳なり。 あるいは上上の人は、 かならずこれ*方便の後心の行、 円満せるものなるべし。 もししからずは、 諸文*桙楯せん。
時剋 時間。
方便の後心の行 無生法忍をさとる直前の位。
桙楯 矛盾。
問。若以↢此界日夜時剋↡説↢彼相↡者、彼上上品、生↢彼国↡已、不↠応↣即悟↢無生法忍↡。所↢以然↡者、此界少時修行為↠勝、彼国多時善根為↠劣。既爾上上品人、於↢*此界↡一日至↢七日↡具↢足三福業↡、尚不↠能↠証↢无生法忍↡、云何生↠彼聞↠法即悟。故知、経↢彼国土長遠時剋↡、悟↢无生忍↡。然約↠彼名↢即悟↡、望↠此即億千歳。或可、上上人必是方便後心*円満者。若不↠爾者、諸文桙楯。
此界 青蓮院本、 建長五年刊本では 「此世界」。
◇ 他本では 「行」 の字あり。
答ふ。 いまだ、 かの国の多善は劣なり、 この界の少善は勝れたりといふことを知らず。
答。未↠知、彼国多善劣、此界少善勝。
問ふ。 ¬*双巻経¼ (大経・下) に説かく、 「▲ここにして*広く徳本を殖ゑ、 恩を敷き恵を施し、 *道禁を犯することなく、 忍辱し、 精進し、 一心し、 智慧ありて、 うたたあひ教化して、 善を立し、 意を正しくし、 斎戒清浄にして一日一夜すれば、 無量寿仏の国にありて、 善をなすこと百歳するに勝れたり。 所以はいかん。 かの仏国土は無為自然にして、 みなもろもろの善を積みて毛髪の悪もなし。 ここにして善を修すること十日十夜すれば、 他方の諸仏の国のなかにして善をなすこと千歳するに勝れたり」 と。 以上 これその勝劣なり。
道禁 仏道の規則。 戒のこと。
問。¬双巻経¼説。「於↠是広殖↢徳本↡、*布↠恩施↠恵、勿↠犯↢道禁↡。忍辱・精進・一心・智慧、転相教化、立↠善正↠意斎戒清浄一日一夜、勝↧在↢无量寿仏国↡為↠善百歳↥。所以者何、彼*国土、无為自然皆積↢衆善↡无↢毛髪之悪↡。於↠此修↠善十日十夜、勝↧於↢他方諸仏国中↡、為↠善千歳↥」等。已上 是其勝劣。
布 青蓮院本では 「敷」。
国土 他本では 「仏国土」。
答ふ。 二界の善根を*剋対するにはしかるべし。 しかも、 値仏の縁勝れたれば、 すみやかに悟るに失なし。 あるいはこの ¬経¼ (大経・下) は、 ただ修行の難易を顕し、 善根の勝劣を顕すにはあらず。 たとへば、 貧賤なるものの一銭を施するをば、 称美すべしといへども、 しかも衆事を弁ぜず、 富貴の千金を捨つるは称すべからずといへども、 しかもよく万事を弁ずるがごとし。 二界の修行もまたかくのごとし。
剋対 比較検討すること。
答。二界善根剋対可↠爾。然値仏縁勝速悟无↠失。或此経但顕↢修行難易↡、非↠顕↢善根勝劣↡。譬如↧貧賤施↢一銭↡雖↠可↢称美↡、而不↠弁↢衆事↡、富貴捨↢千金↡雖↠不↠可↠称、而能弁↦万事↥。二界修行亦復如↠是。
¬*金剛般若経¼ (意) にのたまへるがごとし。 「*仏世にして信解するをば、 いまだ勝れたりとなすに足らず。 滅後をば勝れたりとなす」 と。
仏世 仏の在世中。
如↢¬金剛般若経¼云↡。「仏世信解未↠足↠為↠勝。滅後為↠勝。」
あるいは余の義あり。 *委曲することあたはず。
委曲 くわしくすること。 詳述すること。
或有↢余義↡、不↠能↢委曲↡。
問ふ。 娑婆の行因に随ひて、 極楽の階位に別あるがごとく、 所感の福報もまた別ありや。
問。如↧随↢娑婆行因↡極楽階位有↞別、所感福報亦有↠別耶。
答ふ。 *大都は別なきも、 *細分は差あり。
大都 おおよそ。 だいたい。
細分 細かな点。
答。大都无↠別、細分有↠差。
¬*陀羅尼集経¼ の第二にのたまふがごとし。 「もし人、 香華・衣食等をもつて供養せざるものは、 かの浄土に生れたりといへども、 しかも香華・衣食等の種々の供養の報を得ず」 と。 この文は、 *かの仏の本願に違へり。 さらにこれを思釈せよ。
かの仏の本願 四十八願のうちの第二十四、 三十四願。
如↢¬陀羅尼集経¼第二云↡。「若人不↧以↢香華・衣食等↡供養↥者、雖↠生↢彼浄土↡、而不↠得↢香華・衣食等種種供養之報↡。」此文違↢彼仏本願↡更思↢釈之↡
*玄一師・*因法師、 同じくいはく、 「*実に約して論ずれば、 また勝劣あり。 しかもその状相似せるがゆゑに好醜なしと説く」 と。
因法師 令因 (霊因) のこと。 新羅の憬興 (7世紀) と同時代とされ、 著作に ¬無量寿経疏¼ 一巻があったといわれる。
実に約して… 玄一の ¬無量寿経記¼ 巻上所引の因法師の説。
玄一師、因法師同云。「約↠実而論亦有↢勝劣↡、然其状相似故説↠無↢好醜↡。」
問ふ。 極楽世界は、 ここを去ることいくばくぞ。
問。極楽世界去↠此幾処。
答ふ。 ¬*経¼ にのたまはく、 「▲ここより西方に、 十万億の仏土を過ぎて極楽世界あり」 と。
経 ¬大経¼ および ¬小経¼。
答。¬経¼云。「従↠此西方、過↢十万億仏土↡有↢極楽世界↡。」
ある ¬経¼ (称讃浄土経) にのたまはく、 「これより西方に、 この世界を去ること百千倶胝那由他の仏土を過