観念阿弥陀仏相海三昧功徳法門 一巻
比丘善導集記
◎三昧行相分
【1】 ¬*観経¼ によりて観仏三昧の法を明かす一。
依↢¬観経¼↡明↢観仏三昧法↡一。
¬*般舟経¼ によりて念仏三昧の法を明かす二。
依↢¬般舟経¼↡明↢念仏三昧法↡二。
*経によりて入道場念仏三昧の法を明かす三。
経 ¬般舟三昧経¼ 等の諸経を指す。
依↠経明↢入道場念仏三昧法↡三。
経によりて道場内懺悔発願の法を明かす四。
依↠経明↢道場内懺悔発願法↡四。
◎三昧行相分 ○観仏三昧法
【2】 ¬観経¼ によりて観仏三昧の法を明かす。 ¬観経¼・¬*観仏三昧海経¼ に出でたり。
依↠¬観経¼明↢観仏三昧法↡。出↢¬観経¼¬観仏三昧海経¼↡
阿弥陀仏の真金色の身、 *円光徹照し*端正無比なるを観ずべし。 行者等、 一切の時処、 昼夜につねにこの想をなし、 *行住坐臥にもまたこの想をなせ。 つねに意を住めて西に向かひて、 かの*聖衆、 一切の雑宝荘厳等の相に及ぶまで、 目前に対するがごとくせよ、 知るべし。
聖衆 観音・勢至等の浄土の菩薩たち。
観↢阿弥陀仏真金色身、円光徹照、端正無比↡。行者等、一切時処、昼夜常作↢此想↡、行住坐臥亦作↢此想↡。毎常住↠意向↠西、及↢彼聖衆一切雑宝荘厳等相↡、如↠対↢目前↡。応↠知。
【3】 また行者、 もし坐せんと欲せば、 先づすべからく*結跏趺坐すべし。 左の足、 右のの上に安きてほかと斉しくし、 右の足、 左のの上に安きてほかと斉しくせよ。 右の手、 左の手掌のなかに安きて、 二大指の面あひ合せよ。 次に身を端し正坐して、 口を合し、 眼を閉ぢよ。 開くに似て開かず、 合するに似て合せざれ。
又行者、若欲↠坐、先須↢結跏趺坐↡、左足安↢右上↡与↠外斉、右足安↢左上↡与↠外斉。右手安↢左手掌中↡、二大指面相合。次端身正坐、合↠口閉↠眼。似↠開不↠開、似↠合不↠合。
すなはち心眼をもつて、 先づ仏の頂上の*螺髻よりこれを観ぜよ。 頭皮は金色をなし、 髪は紺青色をなす。 一髪一螺巻きて頭上にあり。 頭骨は雪色をなして内外明徹す。 脳は*玻瓈色のごとし。
螺髻 頭髪をたばねて結んだ髪型。 形が螺 (ほらがい) の突起に似ていることからいう。 仏の三十二相の一。
玻瓈 水晶のこと。
即以↢心眼↡先従↢仏頂上蠃髻↡観↠之。頭皮作↢金色↡、髪作↢紺青色↡。一髪一蠃巻在↢頭上↡。頭骨作↢雪色↡、内外明徹。脳如↢玻瓈色↡。
次に脳に十四の脈あり、 一々の脈に十四道の光あり、 髪根の孔よりほかに出でて*髪螺を繞ること*七帀して、 還りて毛端の孔のなかより入ると想へ。
髪螺 髪のうずまき。
七帀 七周。
次想↧脳有↢十四脈↡、一一脈有↢十四道光↡、従↢髪根孔↡出↠外、繞↢髪蠃↡七帀還従↢毛端孔中↡入↥。
次に前の光二の眉の毛根の孔のなかより出でてほかに向かふと想へ。
次想↧前光従↢二眉毛根孔中↡出向↞外。
次に額広くして平正なる相を想へ。
次想↢額広平正相↡。
次に眉高くして長き相を想へ。 なほ*初月のごとし。
初月 三日月。
次想↢眉高而長相↡、由如↢初月↡。
次に眉間の*白毫相を想へ。 巻きて眉間にあり、 その毛白く外実内虚にして金色の光を出し、 毛端よりして出でてただちに自身を照らし来る。 ¬*観仏三昧経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「もし人ありて一*須臾のあひだも白毫相を観ずれば、 もしは見、 もしは見ざるも、 すなはち九十六億*那由他*恒河沙*微塵数劫の生死の重罪を除却す」 と。 つねにこの想をなせば、 はなはだ障を除き罪を滅す。 また無量の功徳を得て、 諸仏歓喜したまふ。
微塵数 無数の意。 微塵は仏教でいう物質の最小単位。
次想↧眉間白毫相、巻在↢眉間↡、其毛白、外実内虚出↢金色光↡、従↢毛端↡而出直照↢自身↡来↥。如↢¬観仏三昧経¼説↡。「若有↠人一須臾頃、観↢白毫相↡、若見若不見、即除↢却九十六億那由他恒河沙微塵数劫生死重罪↡。」常作↢此想↡太除↠障滅↠罪。又得↢無量功徳↡、諸仏歓喜。
次に二の眼広長にして黒白分明なり、 光明徹照すと想へ。
次想↢二眼広長、黒白分明、光明徹照↡。
次に鼻修く高く直きこと、 鋳たる*金鋌のごとしと想へ。
金鋌 金ののべ棒。
次想↣鼻脩高直、如↢鋳金鋌↡。
次に*面部平満にして*唱あることなしと想へ。
面部 顔。
唱あることなし 言葉でいいあらわせないという意。
次想↢面部平満無↟有↢唱↡。
次に*耳輪垂して孔に七毛あり、 光毛内より出でてあまねく仏身を照らすと想へ。
耳輪垂して 耳たぶが垂れさがって。
次想↧耳輪垂、孔有↢七毛↡、光従↢毛内↡出徧照↦仏身↥。
次に唇色赤好にして光明潤沢なりと想へ。
次想↢脣色赤好光明潤沢↡。
次に歯白く斉密にして、 白きこと*珂月のごとくして内外*映徹すと想へ。
珂月 雪のように白く光る貝。
次想↧歯白斉密白如↢珂月↡内外映徹↥。
次に舌薄く広長にして柔軟なりと想へ。 舌根の下に二の道あり、 津液注ぎて咽筒に入りてただちに*心王に入る。 *仏心は紅蓮華のごとし、 開して開せず、 合して合せず。 八万四千の*葉あり、 葉々あひ重なる。 一々の葉に八万四千の脈あり、 一々の脈に八万四千の光あり、 一々の光百宝の蓮華をなす。 一々の華の上に一の十地の菩薩あり、 身みな金色なり、 手に香華を持して心王を供養し、 異口同音に心王を歌讃す。 行者等この想をなす時、 罪障を除滅し無量の功徳を得、 諸仏・菩薩歓喜し、 天神・鬼神も歓喜す。
心王 心臓。
仏心 仏の心臓。
葉 はなびら。
次想↢舌薄広長柔輭↡。舌根下有↢二道↡、津液注入↢咽筒↡、直入↢心王↡。仏心如↢紅蓮華↡、開而不↠開、合而不↠合。有↢八万四千葉↡、葉葉相重、一一葉有↢八万四千脈↡、一一脈有↢八万四千光↡、一一光作↢百宝蓮華↡。一一華上有↢一十地菩薩↡、身皆金色、手持↢香華↡供↢養心王↡、異口同音歌↢讃心王↡。行者等、作↢此想↡時、除↢滅罪障↡、得↢無量功徳↡。諸仏・菩薩歓喜、天神・鬼神歓喜。
また心を抽きて上に向かひて、 次に咽項の円かなる相、 二の肩の円かなる相を想へ。
又抽↠心向↠上、次想↢咽項円相、二肩円相↡。
次に両臂のく円かなる相を想へ。
次想↢両臂円相↡。
次に二の手掌平満にして*千輻輪の相あり、 十指繊長にして指間に*網縵の相あり、 甲赤銅の色をなせる相を想へ。
網縵の相 仏の手足の指の間にある鳥の水かきのようなもの。 仏の三十二相の一。
次想↧二手掌平満、千輻輪相、十指繊長、指間網縵相、甲作↢赤銅色↡相↥。
また心を抽きて上に向かひて、 次に仏の胸前平満の相を想へ。 *万徳の字朗然なり。
万徳の字 卍。 吉祥の印。
又抽↠心向↠上、次想↢仏胸前平満相↡、万徳之字朗然。
次に*腹平不現の相を想へ。
腹平不現 腹が平らで出ていないこと。
次想↢腹平不現相↡。
次に*臍円孔深の相を想へ。 光明内外につねに照らす。
臍円孔深 へそがまるくて、 そのあなが深いこと。
次想↢臍円孔相↡、光明内外常照。
次に*陰蔵の相を想へ。 平満にしてなほ十五日の夜の月のごとし、 また腹背のごとく平処にして別なし。 ▼仏のたまはく、 「もし男子・女人ありて多く色を貪欲するもの、 すなはち如来の陰蔵の相を想へば、 欲心すなはち止みて、 罪障除滅し無量の功徳を得、 諸仏歓喜し、 天神・鬼神好心をもつて*影護して、 長命安楽にして永く病痛なし」 (*観仏三昧経・意) と。
陰蔵の相 仏の男根のこと。 馬の男根のように常に腹中に隠れていて見えないので、 陰馬蔵ともいう。 仏の三十二相の一。
次想↢陰蔵相↡、平満由如↢十五日夜月↡、亦如↢腹背↡平処無↠別。仏言。若有↢男子・女人↡、多貪↢欲色↡者、即想↢如来陰蔵相↡者、欲心即止罪障除滅、得↢無量功徳↡、諸仏歓喜、天神・鬼神好心影護、長命安楽永無↢病痛↡。
次に両の、 膝、 膝骨円満なりと想へ。
次想↢両膝、膝骨円満↡。
次に二の脛鹿王ののごとしと想へ。
次想↣二脛如↢鹿王膊↡。
次に二の*足跟象王の鼻のごとしと想へ。
足跟 くびす。
次想↣二足跟如↢象王鼻↡。
次に二の*足趺高きこと亀王の背のごとしと想へ。
足趺 足の甲。
次想↣二足趺高如↢亀王背↡。
次に足の十指長くして指間に網縵あり、 甲赤銅の色をなすと想へ。
次想↧足十指長指間有↢網縵↡甲作↦赤銅色↥。
次に仏の*結跏趺坐の相を想へ。 左の足、 右のの上に安きてほかと斉しくし、 右の足、 左のの上に安きてほかと斉しと。
次想↢仏結跏趺坐相↡、左足安↢右上↡、与↠外斉、右足安↢左上↡与↠外斉。
次に二の足の下平らかにして*千輻輪相あり、 *輻輞具足し、 みな光明ありてあまねく十方の*刹を照らすと想へ。
輻輞 車輪の部品の名。 輻は車輪と輪をつなぐ多数の棒。 輞は輪の外周をつつむたが。
次想↧二足下平有↢千輻輪↡相↥。輻輞具足皆有↢光明↡徧照↢十方刹↡。
頂上より下足の千輻輪相に至るこのかたを、 名づけて 「具足して仏の色身荘厳功徳を観ず」 となす。 これを*順観と名づく。
順観 仏の相好を上から下の順に観想すること。 これと反対に、 下から上の順に観想することを逆観という。
従↢頂上↡下至↢足千輻輪相↡已来、名為↣具足観↢仏色身荘厳功徳↡、是名↢順観↡。
【4】 また次に*華座の法を想へ。
華座 仏が座る蓮華の台座。
又次想↢華座法↡。
次に華台の相を想へ。
次想↢華台相↡。
次に華葉を想へ。 *葉々あひ重なりて八万四千重なり、 一々の葉の上に百億の宝王ありて荘厳し、 一々の宝のなかに八万四千の光明ありて、 上仏身を照らすと想へ。
葉々 はなびらのこと。
次想↢華葉↡。葉葉相重八万四千重。一一葉上想↧有↢百億宝王↡荘厳、一一宝中有↢八万四千光明↡、上照↧仏身↥。
次に宝華の茎八面にして、 一々の方面に百千の衆宝をもつて荘厳し、 大光明を放ちて上下ともに照らすと想へ。
次想↧宝華茎八面、一一方面百千衆宝荘厳、放↢大光明↡上下倶照↥。
次に華の茎の下宝地により、 地上の衆宝はみな八万四千の光明を放ち、 一々の光明は仏身を照らし、 および十方の六道を照らすと想へ。
次想↧華茎下依↢宝地↡、地上衆宝皆放↢八万四千光明↡、一一光明照↢仏身↡及照↦十方六道↥。
また一切の光明、 行者の自身を照触して来ると想へ。
亦想↧一切光明、照↢触行者自身↡来↥。
この想をなす時、 罪障を除滅し無量の功徳を得、 諸仏・菩薩歓喜し、 天神・鬼神もまた喜びて、 日夜に身に随ひて行者を影護す。 *行住坐臥につねに安穏を得、 長命富楽にして永く病痛なし。 仏の教に準ずれば、 浄土のなかの事を見ることを得。
作↢此想↡時、除↢滅罪障↡得↢無量功徳↡。 諸仏・菩薩歓喜、天神・鬼神亦喜、日夜随↠身影↢護行者↡。行住坐臥常得↢安穏↡。長命富楽永無↢病痛↡。準↢仏教↡得↠見↢浄土中事↡。
もし見ば、 ただみづから知りて人に向かひて説くことを得ざれ。 すなはち大きに罪ありて、 横に悪病・短命の報を招く。 もし教門に順ずれば、 命終の時に臨みて阿弥陀仏国に*上品往生す。
上品往生 ¬観経¼に説く九品の往生のうちの上品上生・上品中生・上品下生の三を指す。 →
九品
若見但自知不↠得↢向↠人説↡。即大有↠罪、横招↢悪病短命之報↡。若順↢教門↡者、臨↢命終↡時、上↢品往↣生阿弥陀仏国↡。
かくのごとく上下、 前によりて*十六遍観じて、 しかして後心を住めて眉間の*白毫に向かひて、 きはめてすべからく心を捉へて正しからしむべし。 さらに雑乱することを得ざれ。 すなはち定心を失して三昧成じがたし、 知るべし。
十六遍 ¬観仏三昧経¼ に順観・逆観の観想を十六遍反覆すべきことを説いているのを承けていう。
如↠是上下依↠前十六徧観、然後住↠心向↢眉間白毫↡、極須↢捉↠心令↟正。更不↠得↢雑乱↡。即失↢定心↡三昧難↠成。応↠知。
これを*観仏三昧の観法と名づく。 一切の時中につねに回すれば浄土に生ず。 ただ ¬観経¼ の*十三観によりて、 安心してかならず疑はざることを得よ。
是名↢観仏三昧観法↡。一切時中常迴生↢浄土↡。但依↢¬観経¼十三観↡、安心必得↠不↠疑。
【5】 またまうさく、 行者浄土に生ぜんと欲せば、 ただすべからく持戒・念仏し、 ¬弥陀経¼ を誦すべし。 *日別に十五遍すれば二年に一万を得、 日別に三十遍すれば一年に一万なり。 ▼日別に一万遍仏を念ぜよ。 またすべからく時によりて浄土の荘厳の事を*礼讃すべし。 大きにすべからく精進すべし。 あるいは三万・六万・十万を得るものは、 みなこれ上品上生の人なり。 自余の功徳もことごとく回して往生せよ、 知るべし。 以前は観仏三昧の法を明かす。
又白。行者欲↠生↢浄土↡、唯須↣持戒念仏誦↢¬弥陀経¼↡。日別十五徧二年得↢一万↡、日別三十徧、一年一万。日別念↢一万徧仏↡、亦須↣依↠時礼↢讃浄土荘厳事↡、大須↢精進↡。或得↢三万・六万・十万↡者、皆是上品上生人。自余功徳尽迴↢往生↡。応↠知。已前明↢観仏三昧法↡。
◎三昧行相分 ○念仏三昧法
【6】 ¬般舟三昧経¼ の 「*請問品」 (意) に、 七日七夜入道場念仏三昧の法を明かしたまふ。 ¬般舟三昧経¼ に出でたり。
請問品 現行の ¬般舟三昧経¼ (一巻本) では、 「問事品」。
¬般舟三昧経¼請問品、明↢七日七夜入道場念仏三昧法↡。出↢¬般舟三昧経¼↡
「仏、 跋陀和に告げたまはく、 ª三昧あり、 *十方諸仏悉在前立と名づく。 よくこの法を行ぜば、 なんぢの所聞ことごとく得べしº と。 跋陀和、 仏にまうさく、 ª願はくはためにこれを説きたまへ。 *過度するところ多くして十方を安穏ならしめん。 もろもろの衆生のために*大明相を現じたまへº と。 仏、 跋陀和に告げたまはく、 ª三昧あり、 *定意と名づく。 学者つねにまさに守りて習持して、 また余法に随ふことを得ざるべし。 功徳のなかにもつとも第一なりº」 と。
過度 迷いの世界を離れて、 さとりの世界にわたること。
大明相 般舟三昧が成就したありさまを指していう。
定意 般舟三昧の異名。
「仏告↢跋陀和↡。有↢三昧↡、名↢十方諸仏悉在前立↡。能行↢是法↡、汝之所聞悉可↠得也。跋陀和白↠仏。願為説↠之。多↠所↢過度↡安↢穏十方↡。為↢諸衆生↡現↢大明相↡。仏告↢跋陀和↡。有↢三昧↡、名↢定意↡。学者常当↢守習持、不↟得↣復随↢余法↡。功徳中最第一。」
【7】 次に 「行品」 (般舟三昧経・意) にのたまはく、 「仏、 跋陀和菩薩に告げたまはく、 ª疾くこの定を得んと欲せば、 つねに大信を立て法のごとくにこれを行ぜばすなはち得べし。 疑想、 毛髪のごときばかりもあることなかれ。 この定意の法を、 名づけて «菩薩の*超衆行» となす。
超衆行 すべての行法に超えすぐれたもの。
「仏告↢跋陀和菩薩↡、欲↣疾得↢是定↡者、常立↢大信↡如法行↠之、則可↠得也。勿↠有↧疑相如↢毛髪↡許↥。是定意法、名為↢菩薩超衆行↡。
*一念を立して この法を信じ
一念を立して 専一のおもいをおこして。 あるいは、 真実心をもって、 という意。
立↢一念↡ 信↢是法↡
所聞に随ひて *その方を念じ
その方 西方浄土。
随↢所聞↡ 念↢其方↡
よろしく念を一にして 諸想を断ずべし
宜↣一念 断↢諸想↡
定信を立して 孤疑することなかれ
立↢定信↡ 勿↢孤疑↡
精進に行じて *懈怠することなかれ
精進行 勿↢懈怠↡
想を有と無とに 起すことなかれ
勿↠起↢想 有与↠無
進を念ずることなかれ 退を念ずることなかれ
勿↠念↠進 勿↠念↠退
前を念ずることなかれ 後を念ずることなかれ
勿↠念↠前 勿↠念↠後
左を念ずることなかれ 右を念ずることなかれ
勿↠念↠左 勿↠念↠右
無を念ずることなかれ 有を念ずることなかれ
勿↠念↠無 勿↠念↠有
遠を念ずることなかれ 近を念ずることなかれ
勿↠念↠遠 勿↠念↠近
痛を念ずることなかれ 痒を念ずることなかれ
勿↠念↠痛 勿↠念↠痒
飢を念ずることなかれ 渇を念ずることなかれ
勿↠念↠飢 勿↠念↠渇
寒を念ずることなかれ 熱を念ずることなかれ
勿↠念↠寒 勿↠念↠熱
苦を念ずることなかれ 楽を念ずることなかれ
勿↠念↠苦 勿↠念↠楽
生を念ずることなかれ 老を念ずることなかれ
勿↠念↠生 勿↠念↠老
病を念ずることなかれ 死を念ずることなかれ
勿↠念↠病 勿↠念↠死
命を念ずることなかれ 寿を念ずることなかれ
勿↠念↠命 勿↠念↠寿
貧を念ずることなかれ 富を念ずることなかれ
勿↠念↠貧 勿↠念↠富
貴を念ずることなかれ 賤を念ずることなかれ
勿↠念↠貴 勿↠念↠賤
色を念ずることなかれ 欲を念ずることなかれ
勿↠念↠色 勿↠念↠欲
小を念ずることなかれ 大を念ずることなかれ
勿↠念↠小 勿↠念↠大
長を念ずることなかれ 短を念ずることなかれ
勿↠念↠長 勿↠念↠短
好を念ずることなかれ 醜を念ずることなかれ
勿↠念↠好 勿↠念↠醜
悪を念ずることなかれ 善を念ずることなかれ
勿↠念↠悪 勿↠念↠善
瞋を念ずることなかれ 喜を念ずることなかれ
勿↠念↠瞋 勿↠念↠喜
坐を念ずることなかれ 起を念ずることなかれ
勿↠念↠坐 勿↠念↠起
行を念ずることなかれ 止を念ずることなかれ
勿↠念↠行 勿↠念↠止
経を念ずることなかれ 法を念ずることなかれ
勿↠念↠経 勿↠念↠法
是を念ずることなかれ 非を念ずることなかれ
勿↠念↠是 勿↠念↠非
捨を念ずることなかれ 取を念ずることなかれ
勿↠念↠捨 勿↠念↠取
想を念ずることなかれ 識を念ずることなかれ
勿↠念↠想 勿↠念↠識
断を念ずることなかれ 着を念ずることなかれ
勿↠念↠断 勿↠念↠著
空を念ずることなかれ 実を念ずることなかれ
勿↠念↠空 勿↠念↠実
軽を念ずることなかれ 重を念ずることなかれ
勿↠念↠軽 勿↠念↠重
難を念ずることなかれ 易を念ずることなかれ
勿↠念↠難 勿↠念↠易
深を念ずることなかれ 浅を念ずることなかれ
勿↠念↠深 勿↠念↠浅
広を念ずることなかれ 狭を念ずることなかれ
勿↠念↠広 勿↠念↠狭
父を念ずることなかれ 母を念ずることなかれ
勿↠念↠父 勿↠念↠母
妻を念ずることなかれ 子を念ずることなかれ
勿↠念↠妻 勿↠念↠子
親を念ずることなかれ 疎を念ずることなかれ
勿↠念↠親 勿↠念↠疎
憎を念ずることなかれ 愛を念ずることなかれ
勿↠念↠憎 勿↠念↠愛
得を念ずることなかれ 失を念ずることなかれ
勿↠念↠得 勿↠念↠失
成を念ずることなかれ 敗を念ずることなかれ
勿↠念↠成 勿↠念↠敗
清を念ずることなかれ 濁を念ずることなかれ
勿↠念↠清 勿↠念↠濁
諸念を断ちて 一期の念
断↢諸念↡ 一期念
意乱るることなかれ つねに精進にして
意勿↠乱 常精進
歳計することなかれ 日に倦むことなかれ
勿↢歳計↡ 勿↢日倦↡
*一念を立して *中忽することなかれ
中忽 中途でやめること。
立↢一念↡ 勿↢中忽↡
睡眠を除きて その意を精にせよ
除↢睡眠↡ 精↢其意↡
つねに独り処して *聚会することなかれ
聚会 多くの人々と生活を共にすること。
常独処 勿↢聚会↡
悪人を避け 善友に近づき
避↢悪人↡ 近↢善友↡
*明師に親しみて 視ること仏のごとくせよ
親↢明師↡ 視如↠仏
その志を執りて つねに柔弱なれ
執↢其志↡ 常柔弱
平等を 一切に観ぜよ
観↢平等 於一切↡
郷里を避け 親族を遠ざけ
避↢郷里↡ 遠↢親族↡
愛欲を棄てて 清浄を履み
棄↢愛欲↡ 履↢清浄↡
無為を行じて 諸欲を断じ
行↢無為↡ 断↢諸欲↡
乱意を捨てて *定行を習ひ
定行 心を一つの対象にとどめること。
捨↢乱意↡ 習↢定行↡
*文慧を学すること かならず禅のごとくせよ
文慧 経典の文を開いて生ずる智慧。
学↢文慧↡ 必如↢禅
*三穢を除き *六入を去れ
六入 眼・耳・鼻・舌・身・意の六根。 または、 色・声・香・味・触・法の六境のこと。 六根を内の六入といい、 六境を外の六入という。
除↢三穢↡ 去↢六入↡
*婬色を絶ち 衆愛を離るべし
婬色 性欲。
絶↢婬色↡ 離↢衆愛↡
財を貪じて 多く畜積することなかれ
勿↢貪↠財 多畜積↡
*知足を念じて 味を貪ることなかれ
知足を念じて 異本には 「食知足」 (食は足ることを知りて) とある。
食知↠足 勿↠貪↠味
衆生の命 つつしみて食することなかれ
衆生命 慎勿↠食
衣は法のごとくにして *綺飾することなかれ
綺飾 いたずらに飾りたてること。
衣如↠法 勿↢綺飾↡
*調戯することなかれ 憍慢することなかれ
調戯 他人をからかうこと。
勿↢調戯↡ 勿↢驕慢↡
*自大することなかれ *貢高することなかれ
自大 おごりたかぶること。
貢高 おごりたかぶること。
勿↢自大↡ 勿↢貢高↡
もし経を説かば まさに法のごとくすべし
若説↠経 当↠如↠法
身の本を了するに なほ幻のごとし
了↢身本↡ 由如↠幻
*受陰することなかれ *入界することなかれ
受陰 五陰を受用して、 自我にとらわれること。→
五陰
入界 六根・六境・六識の十八界 (個人存在の構成要素) に順入して、 自我にとらわれること。
勿↠受↠陰 勿↠入↠界
*陰は賊のごとし *四は蛇のごとし
陰如↠賊 四如↠蛇
無常となし *怳忽となす
怳忽 かりそめのものであること。
為↢無常↡ 為↢怳忽↡
常の主なし *本無なりと了す
本無 すべての事物事象は本来、 空無であること。
無↢常主↡ 了本無
因縁をもつて会し 因縁をもつて散ず
因縁会 因縁散
ことごとくこれを了するに 本無なりと知れども
悉了是 知↢本無↡
慈哀を 一切に加へ
加↢慈哀 於一切↡
貧窮に施し *不還を済ふ
不還 迷いの凡夫の意。
施↢貧窮↡ 済↢不還↡
これを定となす 菩薩行の
是為↠定 菩薩行
至要の慧なり 衆行に超えたりº と
至要慧 超衆行
【8】 ▼仏、 跋陀和に告げたまはく、 ªこの行法を持てばすなはち三昧を得て、 現在の諸仏ことごとく前にましまして立ちたまふ。 それ*比丘・*比丘尼・*優婆塞・*優婆夷ありて、 法のごとく修行せんとせば、 持戒まつたく具し、 独り一処に止まりて西方の阿弥陀仏を念ぜよ。 いま現にかしこにまします。 所聞に随ひてまさに念ずべし。 ここを去ること十万億の*仏刹なり、 その国を*須摩提と名づく。 一心にこれを念ずること一日一夜、 もしは七日七夜すべし。 七日を過ぎをはりて後これを見たてまつらん。 たとへば人の夢のうちに見るところのごとし。 昼夜を知らず、 また内外を知らず。 冥きなかにありて*蔽礙するところあるがゆゑに見ざるがごとくにはあらず。 跋陀和、 *四衆つねにこの念をなす時、 諸仏の境界のなかのもろもろの大山・須弥山、 そのあらゆる*幽冥の処、 ことごとくために*開避して蔽礙するところなし。 この四衆は天眼を持ちて徹視するにあらず。 天耳を持ちて徹聴するにあらず、 神足を持ちてその仏刹に到るにあらず、 この間において終りてかの間に生ずるにあらず、 すなはちここにおいて坐してこれを見るº と。
仏刹 刹は梵語クシェートラ (sşetra) の音写で、 国土のこと。 仏国土。
蔽礙 おおいかくすこと。
幽冥の処 くらやみの場所。
開避 開け放すこと。
仏告↢跋陀和↡。持↢是行法↡便得↢三昧↡、現在諸仏悉在↠前立。其有↢比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷↡、如↠法修行、持戒完具、独一処止念↢西方阿弥陀仏↡、今現在↠彼。随↢所聞↡当↠念、去↠此十万億仏刹、其国名↢須摩提↡。一心念↠之一日一夜、若七日七夜。過↢七日↡已後見↠之。譬如↪人夢中所↠見不↠知↢昼夜↡亦不↠知↢内外↡、不↩由↧在↢冥中↡有↞所↢蔽礙↡故不↝見。跋陀和、四衆常作↢是念↡時、諸仏境界中、諸大山、須弥山、其有↢幽冥↡之処、悉為開避、無↠所↢蔽礙↡。是四衆不↧持↢天眼↡徹視↥、不↧持↢天耳↡徹聴↥、不↧持↢神足↡到↦其仏刹↥、不↧於↢此間↡終生↦彼間↥、便於↠此坐見↠之。
▼仏のたまはく、 ª四衆この間の国土において阿弥陀仏を念ぜよ。 もつぱら念ずるがゆゑにこれを見たてまつることを得。 すなはち問へ。 «いかなる法を持ちてかこの国に生ずることを得る» と。 阿弥陀仏報へてのたまはく、 «来生せんと欲せば、 まさにわが名を念ずべし。 休息することあることなくは、 すなはち来生することを得ん» º と。
仏言。四衆於↢此間国土↡、念↢阿弥陀仏↡、専念故得↠見↠之。即問、持↢何法↡得↠生↢此国↡。阿弥陀仏報言。欲↢来生↡者、当↧念↢我名↡、莫↠有↢休息↡、即得↦来生↥。
▼仏のたまはく、 ª専念するがゆゑに往生を得。 つねに、 仏身には三十二相・*八十種好ありて、 巨億の光明徹照し、 *端正無比にして、 菩薩僧のなかにましまして法を説きたまふことを念ずべし。 色を壊することなかれ。 なにをもつてのゆゑに。 色を壊せざるがゆゑに、 仏の色身を念ずるによるがゆゑに、 この三昧を得º」 と。
仏言。専念故得↢往生↡。常念仏身三十二相・八十種好、巨億光明徹照、端正無比在↢菩薩僧中↡説法。莫↠壊↠色。何以故、不↠壊↠色故、由↠念↢仏色身↡故、得↢是三昧↡。」
以上は念仏三昧の法を明かす。
已上明↢念仏三昧法↡。
◎三昧行相分 ○入道場法
【9】 ▼三昧の道場に入らんと欲する時は、 もつぱら仏教の方法によれ。 先づすべからく道場を*料理し、 尊像を安置して、 香湯をもつて*掃灑すべし。 もし仏堂なきも、 浄房あらばまた得たり。 掃灑すること法のごとくし、 一の仏像を取りて西の壁に安置せよ。
料理 ととのえること。
掃灑 拭き清めること。
欲↠入↢三昧道場↡時、一依↢仏教方法↡。先須↧料↢理道場↡、安↢置尊像↡、香湯掃灑↥。若無↢仏堂↡有↢浄房↡亦得、掃灑如↠法、取↢一仏像↡西壁安置。
▼行者等、 月の一日より八日に至り、 あるいは八日より十五日に至り、 あるいは十五日より二十三日に至り、 あるいは二十三日より三十日に至るまで、 月を四時に別つは*佳なり。 行者等みづから*家業の軽重を量り、 この時のうちにおいて浄に入りて道を行ぜよ。 もしは一日よりすなはち七日に至るまで、 ことごとく浄衣を須ゐ、 *鞋靺もまた新浄なるを須ゐよ。 七日のうちみな、 *一食長斎を須ゐよ。 軟餠・粗飯、 随時の醤菜は*倹素節量すべし。
佳 よいこと。
家業 生活の糧を得るためのつとめ。
鞋靺 はきもの。
一食長斎 正午前に一日一回だけ食事をし、 午後は食事をとらないということ。
倹素節量 質素で、 適度の分量をこえないこと。
行者等、従↢月一日↡至↢八日↡、或従↢八日↡至↢十五日↡、或従↢十五日↡至↢二十三日↡、或従↢二十三日↡至↢三十日↡、月別四時佳。行者等、自量↢家業軽重↡、於↢此時中↡入↢浄行道↡。若一日乃至七日、尽須↢浄衣↡、鞋靺亦須↢新浄↡。七日之中皆須↢一食長斎↡。軟餅・麤飯、随時醤菜倹素節量。
▼道場のなかにおいて、 昼夜に心を束ね、 相続して専心に阿弥陀仏を念ぜよ。 心と声と相続して、 ただ坐し、 ただ立し、 七日のあひだ睡眠することを得ざれ。 また時によりて仏を礼し、 経を誦すべからず。 数珠もまた捉るべからず。 ただ合掌して仏を念ずと知り、 念々に見仏の想をなせ。 仏のたまはく、 「阿弥陀仏の真金色の身、 光明徹照し、 端正無比にして、 心眼の前にましますと想念せよ」 と。 まさしく仏を念ずる時、 もし立せばすなはち立して一万・二万を念じ、 もし坐せばすなはち坐して一万・二万を念ぜよ。 道場のうちにおいては、 頭を交へてひそかに語ることを得ざれ。
於↢道場中↡、昼夜束↠心、相続専心念↢阿弥陀仏↡。心与↠声相続、唯坐唯立、七日之間不↠得↢睡眠↡。亦不↠須↢依↠時礼↠仏誦↟経、数珠亦不↠須↠捉。但知↢合掌念↟仏、念念作↢見仏想↡。仏言。想↢念阿弥陀仏真金色身、光明徹照、端正無比、在↢心眼前↡。正念↠仏時、若立即立念一万・二万、若坐即坐念一万・二万。於↢道場内↡、不↠得↢交↠頭窃語↡。
【10】▼昼夜あるいは*三時・六時に、 諸仏、 一切の*賢聖、 *天曹・*地府、 一切の*業道に表白して、 一生よりこのかた*身口意業の所造の衆罪を*発露懺悔せよ。 事、 実によりて懺悔しをはりて、 また法によりて仏を念ぜよ。 所見の境界はたやすく説くことを得ず。 善ならばみづから知り、 悪ならば懺悔せよ。 酒・肉・*五辛は、 誓ひて願を発して手に捉らざれ、 口に喫らはざれ。 もしこの語に違せば、 すなはち身口にともに悪瘡を着けんと願ぜよ。
三時六時 三回あるいは六回。
業道 五道の冥官。 地獄にあって五道の衆生の罪を裁く。
昼夜或三時・六時、表↢白諸仏、一切賢聖、天曹・地府、一切業道↡、発↢露懺↣悔一生已来、身口意業所造衆罪↡。事依↠実懺悔竟、還依↠法念↠仏。所見境界不↠得↢輒説↡、善者自知、悪者懺悔。酒・肉・五辛、誓発願手不↠捉、口不↠喫。若違↢此語↡即願↣身口倶著↢悪瘡↡。
▼あるいは ¬阿弥陀経¼ を誦すること十万遍を満たさんと願ぜよ。 *日別に仏を念ずること一万遍、 経を誦すること日別に十五遍、 あるいは誦すること二十遍・三十遍、 力の多少に任すべし。 浄土に生ずることを誓ひ、 仏の*摂受を願ぜよ。
或願誦↢¬阿弥陀経¼↡満↢十万徧↡、日別念↠仏一万徧。誦↠経日別十五徧、或誦二十徧・三十徧、任↢力多少↡。誓↠生↢浄土↡、願↢仏摂受↡。
◎三昧行相分 ○臨終行儀
【11】▼また行者等もしは病み、 病まざるも、 命終せんと欲する時、 もつぱら上の念仏三昧の法によりて、 身心を正当にして、 面を回らして西に向かへて、 心もまた専注して阿弥陀仏を観想し、 心口相応して声々絶ゆることなく、 決定して往生の想、 *華台の聖衆来りて*迎接する想をなせ。 病人もし前の境を見ば、 すなはち看病の人に向かひて説け。 すでに説くを聞きをはらば、 すなはち説によりて録記せよ。 また病人もし語ることあたはずは、 看病の人かならずすべからくしばしば病人に問ふべし、 いかなる境界をか見たると。 もし罪相を説かば、 傍人すなはちために念仏し、 助けて同じく懺悔してかならず罪滅せしめよ。 もし罪滅することを得ば、 華台の聖衆念に応じて現前したまはん。 前に準じて抄記すべし。
華台の聖衆 蓮華の台にのった浄土の菩薩たち。
又行者等、若病不↠病、欲↢命終↡時、一依↢上念仏三昧法↡、正当↢身心↡迴↠面向↠西、心亦専注、観↢想阿弥陀仏↡、心口相応声声莫↠絶、決定作↢往生想、華台聖衆来迎接想↡。病人若見↢前境↡、即向↢看病人↡説。既聞↠説已、即依↠説録記。又病人若不↠能↠語者、看病人必須↣数数問↢病人↡、見↢何境界↡。若説↢罪相↡、傍人即為念仏、助同懺悔、必令↢罪滅↡。若得↢罪滅↡華台聖衆応↠念現前、準↠前抄記。
▼また行者等、 *眷属六親もし来りて看病せば、 酒・肉・*五辛を食せる人をあらしむることなかれ。 もしあらば、 かならず病人の辺に向かふことを得ざれ。 すなはち正念を失ひ、 鬼神交乱し、 *病人狂死して三悪道に堕せん。 願はくは行者等よくみづからつつしみて仏教を奉持し、 同じく見仏の因縁をなせ。
眷属六親 父・母・兄・弟・妻・子の六種の親族やその他の親族。
又行者等眷属六親、若来看病、勿↠令↠有↧食↢酒・肉・五辛↡人↥。若有必不↠得↠向↢病人辺↡。即失↢正念↡、鬼神交乱、病人狂死堕↢三悪道↡。願行者等、好自謹慎奉↢持仏教↡、同作↢見仏因縁↡。
以前はこれ入道場および看病人の法用なり。
已前是入道場、及看病人法用。
◎五縁功徳分
【12】経によりて*五種増上縁の義を明かす一巻。
五種増上縁 念仏の行者が得る五種類のすぐれた功徳の因縁。 滅罪・護念・見仏・摂生・証生の五をいう。
依↠経明↢五種増上縁義↡一巻。
¬*無量寿経¼ による一。
依↢¬無量寿経¼↡一。
¬*十六観経¼ による二。
十六観経 ¬観無量寿経¼ のこと。 定善十三観・散善三観を説くところからいう。
依↢¬十六観経¼↡二。
¬*四紙阿弥陀経¼ による三。
四紙阿弥陀経 ¬阿弥陀経¼ は四枚の料紙に書写できるのでこの称がある。
依↢¬四紙阿弥陀経¼↡三。
¬*般舟三昧経¼ による四。
依↢¬般舟三昧経¼↡四。
¬*十往生経¼ による五。
依↢¬十往生経¼↡五。
¬*浄土三昧経¼ による六。
依↢¬浄土三昧経¼↡六。
◎五縁功徳分 ○述意
【13】つつしみて釈迦仏の教、 六部の往生経等によりて、 阿弥陀仏を称念して浄土に生ぜんと願ずるもの、 現生にすなはち*延年転寿を得て、 *九横の難に遭はざることを顕明す。 一々つぶさには下の五縁義のなかに説くがごとし。
延年転寿 寿命をのばすこと。
九横の難 九種の原因による尋常でない死。 ①医療が得られないことによる死。 また誤った療法による死。 ②刑死。 ③不節制による死。 ④焼死。 ⑤溺死。 ⑥悪獣による死。 ⑦転落死。 ⑧毒薬・呪詛による死。 ⑨餓死。 以上 ¬薬師経¼ に説く九横。 ¬九横死経¼ ¬潅頂経¼ には異説を説く。
謹依↢釈迦仏教、六部往生経等↡、顕↧明称↢念阿弥陀仏↡、願↠生↢浄土↡者、現生即得↢延年転寿↡、不↞遭↢九横之難↡。一一具如↢下五縁義中説↡。
問ひていはく、 仏、 一切の衆生に菩提心を発して西方の阿弥陀仏国に生ぜんと願ぜよと勧めたまふ。 また阿弥陀の像を造りて*称揚・礼拝し、 香華供養し、 日夜観想して絶えざれと勧めたまふ。 またもつぱら弥陀仏の名を念ぜよと勧めたまふに、 一万・二万・三万・五万、 乃至十万するものあり、 あるいは ¬弥陀経¼ を誦せよと勧めたまふに、 十五・二十・三十・五十、 乃至一百して、 十万遍を満つるものあり。 現生になんの功徳をか得る。 百年捨報の以後、 なんの利益かある。 浄土に生ずることを得やいなや。
問曰。仏勧↢一切衆生↡、発↢菩提心↡願↠生↢西方阿弥陀仏国↡。又勧、造↢阿弥陀像↡称揚礼拝、香華供養、日夜観想不↠絶。又勧専念↢弥陀仏名↡、一万・二万・三万・五万、乃至十万者、或勧誦↢¬弥陀経¼↡、十五・二十・三十・五十乃至一百満↢十万徧↡者、現生得↢何功徳↡。百年捨報已後有↢何利益↡。得↠生↢浄土↡以不。
答へていはく、 現生および捨報に決定して大功徳利益あり。
答曰。現生及捨報、決定有↢大功徳利益↡。准↢依仏教↡顕↢明五種増上利益因縁↡。
仏教に准依して五種の増上利益の因縁を顕明せん。 一には滅罪増上縁、 二には護念得長命増上縁、 三には見仏増上縁、 四には*摂生増上縁、 五には*証生増上縁なり。
摂生増上縁 念仏の行者をおさめとって、 浄土に往生させるというすぐれた功徳の因縁。
証生増上縁 念仏の行者の往生を保証するというすぐれた功徳の因縁。
一者滅罪増上縁。二者護念得長命増上縁。三者見仏増上縁。四者摂生増上縁。五者証生増上縁。
◎五縁功徳分 ○滅罪縁
【14】滅罪増上縁といふは、 すなはち ¬観経¼ の▲下品上生の人のごときは、 一生つぶさに十悪の重罪を造る。 その人病を得て死せんと欲するに、 善知識の、 教へて弥陀仏を称すること一声せしむるに遇ふ。 すなはち五十億劫の生死の重罪を除滅す。 すなはちこれ現生滅罪増上縁なり。
言↢滅罪増上縁↡者、即如↢¬観経¼下品上生人↡、一生具造↢十悪重罪↡。其人得↠病欲↠死、遇↧善知識教称↢弥陀仏↡一声↥。即除↢滅五十億劫生死重罪↡。即是現生滅罪増上縁。
また▲下品中生の人のごときは、 一生つぶさに仏法のなかの罪を造る。 *斎を破し戒を破し、 仏法僧物を食用して懺愧を生ぜず。 その人病を得て死せんと欲するに、 地獄の衆火一時にともに至る。 善知識の、 ために弥陀仏の身相功徳、 国土の荘厳を説くに遇ふ。 罪人聞きをはりてすなはち八十億劫の生死の罪を除き、 地獄すなはち滅す。 またこれ現生滅罪増上縁なり。
又如↢下品中生人↡、一生具造↢仏法中罪↡。破↠斎破↠戒、食↢用仏法僧物↡不↠生↢慚愧↡。其人得↠病欲↠死、地獄衆火一時倶至。遇↣善知識為説↢弥陀仏身相功徳、国土荘厳↡。罪人聞已、即除↢八十億劫生死之罪↡、地獄即滅。亦是現生滅罪増上縁。
また▲下品下生の人のごときは、 一生つぶさに*五逆極重の罪を造る。 地獄を*経歴して苦を受くること窮まりなし。 罪人病を得て死せんと欲するに、 善知識の、 教へて弥陀仏の名を称すること十声せしむるに遇ふ。 声々のうちにおいて八十億劫の生死の重罪を除滅す。 これまたこれ現生滅罪増上縁なり。
又如↢下品下生人↡、一生具造↢五逆極重之罪↡。経↢歴地獄↡受↠苦無↠窮。罪人得↠病欲↠死、遇↧善知識教称↢弥陀仏名↡十声↥。於↢声声中↡除↢滅八十億劫生死重罪↡。此亦是現生滅罪増上縁。
【15】またもし人ありて、 ¬観経¼ 等によりて*浄土荘厳の変を画造して、 日夜に宝地を観想すれば、 現生に念々に八十億劫の生死の罪を除滅す。
浄土荘厳の変 浄土変相のこと。 浄土のありさまを描いた図絵。
又若有↠人、依↢¬観経¼等↡画↢造浄土荘厳変↡、日夜観↢想宝地↡者、現生念念除↢滅八十億劫生死之罪↡。
また経によりて変を画き、 宝樹・宝池・宝楼の荘厳を観想すれば、 現生に無量億阿僧祇劫の生死の罪を除滅す。
又依↠経画↠変、観↢想宝樹・宝池・宝楼荘厳↡者、現生除↢滅無量億阿僧祇劫生死之罪↡。
また*華座荘厳観によりて、 日夜に観想すれば、 現生に念々に五十億劫の生死の罪を除滅す。
華座荘厳観 阿弥陀仏の座る蓮華の台座を観想すること。 定善十三観の第七観。
又依↢華座荘厳観↡、日夜観想者、現生念念除↢滅五十億劫生死之罪↡。
また経によりて*像観・*真身観、 *観音・勢至等の観を観想すれば、 現生に念々のうちにおいて無量億劫の生死の罪を除滅す。
像観 像想観の略。 阿弥陀仏・観音・勢至の真身を観ずる方便として、 その形像を観想すること。 定善十三観の第八観。
真身観 阿弥陀仏の真身を直接、 観想すること。 定善十三観の第九観。
観音勢至等の観 観世音菩薩・大勢至菩薩の色身を観想すること。 定善十三観の大十観および第十一観。
又依↠経観↢想像観・真身観・観音・勢至等観↡、現生於↢念念中↡、除↢滅無量億劫生死之罪↡。
上の所引のごときは、 ならびにこれ現生滅罪増上縁なり。
如↢上所引↡、並是現生滅罪増上縁。
◎五縁功徳分 ○護念縁
【16】また▼護念増上縁といふは、 すなはち*第十二の観 (観経・意) のなかに説きてのたまふがごとし。 「もし人ありて、 一切の時処、 日夜に心を至して弥陀の浄土の*二報荘厳を観想し、 もしは見、 見ざるも、 無量寿仏無数の化仏を化作し、 観音・大勢至また無数の化身をなして、 つねにこの行人の所に来至したまふ」 と。 またこれ現生護念増上縁なり。
第十二の観 普観。 みずから往生したときに見る極楽の国土と仏の荘厳についてあまねく観想すること。
又言↢護念増上縁↡者、即如↢第十二観中説云↡、若有↠人一切時処日夜、至↠心観↢想弥陀浄土二報荘厳↡、若見・不見、無量寿仏化↢作無数化仏↡、観音・大勢至亦作↢無数化身↡、常来↢至此行人之所↡。亦是現生護念増上縁。
▼また ¬観経¼ (意) の下の文のごとし。 「もし人ありて、 心を至してつねに阿弥陀仏および二菩薩を念ずれば、 観音・勢至つねに行人のために*勝友知識となりて*随逐影護したまふ」 と。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
勝友知識 正しい道に導くすぐれた友人。
随逐影護 影が形につきしたがうように、 行者の身を離れずまもること。
又如↢¬観経¼下文↡。「若有↠人至↠心常念↢阿弥陀仏及二菩薩↡、観音・勢至常与↢行人↡、作↢勝友知識↡、随逐影護。」此亦是現生護念増上縁。
また第九の真身観 (同・意) に説きてのたまふがごとし。 「弥陀仏は金色の身なり。 *毫相の光明あまねく十方の衆生を照らす。 身の毛孔の光またあまねく衆生を照らす。 *円光またあまねく衆生を照らす。 八万四千の相好等の光またあまねく衆生を照らす。 ▼また前のごとき身相等の光、 一々にあまねく十方世界を照らすに、 ▼ただもつぱら阿弥陀仏を念ずる衆生のみありて、 ▼かの仏の心光つねにこの人を照らして、 *摂護して捨てたまはず」 と。 ▼総じて余の雑業の行者を照摂することを論ぜず。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
又如↢第九真身観説云↡。「弥陀仏金色身、毫相光明徧照↢十方衆生↡。身毛孔光、亦徧照↢衆生↡。円光亦徧照↢衆生↡。八万四千相好等光、亦徧照↢衆生↡。又如↠前身相等光、一一徧照↢十方世界↡、但有↧専↢念阿弥陀仏↡衆生↥、彼仏心光常照↢是人↡摂護不↠捨。総不↠論↣照↢摂余雑業行者↡。」此亦是現生護念増上縁。
【17】また ¬*十往生経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「仏、 山海慧菩薩および阿難に告げたまはく、 ªもし人ありてもつぱら西方の阿弥陀仏を念じて往生を願ずれば、 われいまより以去、 つねに*二十五の菩薩をして行者を影護せしめて、 悪鬼・悪神をして行者を悩乱せしめず、 日夜につねに安穏なることを得しむº」 と。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
又如↢¬十往生経¼説↡。「仏告↢山海慧菩薩及以阿難↡、若有↠人専念↢西方阿弥陀仏↡、願↢往生↡者、我従↠今已去常使↢二十五菩薩影↢護行者↡、不↠令↣悪鬼・悪神悩↢乱行者↡、日夜常得↢安穏↡。」此亦是現生護念増上縁。
【18】▼また ¬弥陀経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「もし男子・女人ありて、 七日七夜および一生を尽して、 一心にもつぱら阿弥陀仏を念じて往生を願ずれば、 この人、 つねに六方恒河沙等の仏、 ともに来りて*護念したまふことを得。 ゆゑに護念経と名づく」 と。 護念経の意は、 またもろもろの*悪鬼神をして*便りを得しめず、 また*横病、 横死、 横に厄難あることなく、 一切の災障自然に消散す。 至心ならざるを除く。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
便り 機会。 関係を持つこと。
横病横死 不慮の病や不慮の死。
又如↢¬弥陀経¼説↡。「若有↢男子・女人↡、七日七夜、及尽↢一生↡、一心専↢念阿弥陀仏↡、願↢往生↡者、此人常得↢六方恒河沙等仏、共来護念↡、故名↢護念経↡。」護念経意者、亦不↠令↢諸悪鬼神得↟便、亦無↣横病・横死、横有↢厄難↡、一切災障自然消散、除↠不↢至心↡。此亦是現生護念増上縁。
【19】▼また ¬*般舟三昧経¼ の 「行品」 (意) のなかに説きてのたまふがごとし。 「仏、 跋陀和に告げたまはく、 ªもし人ありて、 七日七夜道場のうちにありて、 諸縁の事を捨て、 睡臥を除去し、 一心にもつぱら阿弥陀仏の真金色の身を念じて、 あるいは一日・三日・七日、 あるいは二七日・五・六・七七日、 あるいは百日に至り、 あるいは一生を尽して、 心を至して観仏し、 および口称心念すれば、 仏すなはち*摂受したまふº」 と。 すでに摂受を蒙る。 さだめて知りぬ、 罪滅して浄土に生ずることを得。 「▼仏のたまはく、 ªもし人もつぱらこの念弥陀仏三昧を行ずれば、 つねに一切の諸天および*四天大王・*竜神八部の随逐影護し、 *愛楽相見することを得て、 永くもろもろの悪鬼神、 災障・厄難をもつて横に悩乱を加ふることなしº」 (般舟三昧経・意) と。 つぶさに 「*護持品」 のなかに説きたまふがごとし。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
愛楽相見 慈愛をもって行者とあいまみえること。
護持品 現行の ¬般舟三昧経¼ では、 「擁護品」。
又如↢¬般舟三昧経¼行品中説云↡。「仏告↢跋陀和↡。若有↠人七日七夜、在↢道場内↡捨↢諸縁事↡、除↢去睡臥↡一心専↢念阿弥陀仏真金色身↡、或一日・三日・七日、或二七日・五・六・七七日、或至↢百日↡、或尽↢一生↡、至心観仏、及口称・心念者、仏即摂受。既蒙↢摂受↡、定知罪滅得↠生↢浄土↡。仏言。若人専行↢此念弥陀仏三昧↡者、常得↢一切諸天及四天大王・竜神八部、随逐影護愛楽相見↡、永無↣諸悪鬼神、灾障厄難横加↢悩乱↡。」具如↢護持品中説↡。此亦是現生護念増上縁。
【20】▼また ¬*潅頂経¼ によるに、 第三巻 (意) に説きてのたまはく、 「もし人*三帰五戒を受持すれば、 仏、 *天帝に勅したまはく、 ªなんぢ、 天神六十一人を差はして日夜年月に受戒の人を*随逐し守護して、 もろもろの悪鬼神をして横にあひ悩害することを獲しむることなかれº」 と。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
三帰五戒 仏法僧の三宝に帰依し、 五戒を受けること。 →
五戒
又依↢¬潅頂経¼↡、第三巻説云。「若人受↢持三帰・五戒↡者、仏勅↢天帝↡。汝差↢天人六十一人↡、日夜年月随↢逐守護受戒之人↡、勿↠令↠獲↢諸悪鬼神横相悩害↡。」此亦是現生護念増上縁。
【21】また ¬*浄度三昧経¼ に説きてのたまふがごとし。 「仏、 瓶沙 (頻婆娑羅) 大王に告げたまはく、 ªもし男子・女人ありて、 月々の六斎日および*八王日において、 *天曹・*地府、 一切の*業道に向かひて、 しばしば過を首して斎戒を受持すれば、 仏、 *六欲天王に勅したまはく、 «おのおの二十五の善神を差はして、 つねに来りて持戒の人を随逐し守護せしむ。 またもろもろの悪鬼神の横に来りて悩害することあらしめず。 また横病・死亡・災障なく、 つねに安穏を得しむ»º」 と。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
八王日 立春・春分・立夏・夏至・立秋・秋分・立冬・冬至のこと。 は地節日ともいう。 中国では、 この八日は天地の諸神・陰陽の交代の日とみなされていた。
六欲天王 六欲天 (四天王天・忉利天・夜摩天・兜率天・化楽天・他化自在天) の各王のこと。
又如↢¬浄度三昧経¼説云↡。「仏告↢瓶沙大王↡。若有↢男子・女人↡、於↢月月六斎日、及八王日↡、向↢天曹・地府、一切業道↡、数数首↠過受↢持斎戒↡者、仏勅↢六欲天王↡、各差↢二十五善神↡、常来随↢逐守↣護持戒之人↡、亦不↠令↠有↢諸悪鬼神、横来悩害↡。亦無↢横病・死亡・灾障↡、常得↢安穏↡。」此亦是現生護念増上縁。
【22】またもろもろの行者にまうさく、 ただ今生に日夜相続してもつぱら弥陀仏を念じ、 もつぱら ¬弥陀経¼ を誦し、 浄土の聖衆・荘厳を*称揚し*礼讃して生ずることを願ぜんと欲するものにして、 *日別に経を誦すること十五遍、 二十・三十遍以上のもの、 あるいは誦すること四十・五十・百遍以上のものは、 願じて十万遍を満たせ。
又白↢諸行者↡。但欲↧今生日夜相続専念↢弥陀仏↡、専誦↢¬弥陀経¼↡、称↢揚礼↣讃浄土聖衆荘厳↡、願↞生者、日別誦経十五徧、二十・三十徧已上者、或誦四十・五十・百徧已上者、願満↢十万遍↡、
また弥陀の浄土の*依正二報の荘厳を称揚し礼讃し、 また▼三昧の道場に入るを除きて、 日別に弥陀仏を念ずること一万して、 *畢命相続するものは、 すなはち弥陀の加念を蒙りて罪障を除くことを得。 また仏、 聖衆とつねに来りて*護念したまふことを蒙る。 すでに護念を蒙りぬれば、 すなはち*延年転寿、 長命安楽なることを得。 因縁の一々つぶさには ¬*譬喩経¼・¬*惟無三昧経¼・¬浄度三昧経¼ 等に説きたまふがごとし。 これまたこれ現生護念増上縁なり。
畢命相続 命がおわるまで行じ続けること。
又称↢揚礼↣讃弥陀浄土依正二報荘厳↡、又除↠入↢三昧道場↡、日別念↢弥陀仏↡一万、畢↠命相続者、即蒙↢弥陀加念↡、得↠除↢罪障↡。又蒙↧仏与↢聖衆↡、常来護念↥。既蒙↢護念↡、即得↢延年転寿、長命安楽↡。因縁一一具如↢¬譬喩経¼・¬惟無三昧経¼・¬浄度三昧経¼等説↡。此亦是現生護念増上縁。
◎五縁功徳分 ○見仏縁
【23】また見仏三昧増上縁といふは、 すなはち ¬観経¼ (意) に説きてのたまふがごとし。 「摩竭提国王の夫人を韋提希と名づく。 つねに宮内にありて、 つねに仏 (釈尊) を見たてまつらんと願じて、 はるかに耆闍崛山に向かひて、 悲泣して敬礼す。 仏はるかに念を知りて、 すなはち耆山より没して王宮に出現したまふ。 夫人すでに頭を挙げてすなはち世尊を見たてまつるに、 身紫金色にして宝蓮華に坐したまひ、 目連・阿難左右に*立侍し、 *釈・梵空に臨みて華を散じて供養す。 夫人、 仏を見たてまつりて、 身を挙げて地に投げ、 号泣して仏に向かひて哀れみを求めて懺悔す。 ªただ願はくは如来 (釈尊)、 われを教へて*清浄業処を観ぜしめたまへº」 と。
立侍 そばに立つこと。
清浄業処 清浄の業因によって報い現れた世界。 阿弥陀仏の浄土を指す。
又言↢見仏三昧増上縁↡者、即如↢¬観経¼説云↡。 「摩竭提国王夫人名↢韋提希↡。毎在↢宮内↡、願常見↠仏。遥向↢耆闍崛山↡、悲泣敬礼。仏遥知↠念、即於↢耆山↡没王宮出現。夫人已挙↠頭即見↢世尊↡。身紫金色、坐↢宝蓮華↡、目連・阿難立↢侍左右↡。釈・梵臨↠空散↠華供養。夫人見↠仏挙↠身投↠地、号泣向↠仏求哀懺悔。唯願如来、教↠我観↢於清浄業処↡。」
またこの経証のごときは、 ただ夫人のみ心至りて見仏するにあらず、 また未来の凡夫のために教を起せり。 ただ心に見たてまつらんと願ずるものありて、 もつぱら夫人によりて心を至して仏を憶すれば、 さだめて見たてまつること疑なし。 これすなはちこれ弥陀仏の三念願力ほかに加するがゆゑに見仏せしめたまふことを得。
又如↢此経証↡、非↢直夫人心至見仏↡、亦与↢未来凡夫↡起↠教。但使↧有↢心願↟見者、一依↢夫人↡至↠心憶↞仏、定見無↠疑。此即是弥陀仏、三念願力外加故、得↠令↢見仏↡。
▼三力といふは、 すなはち ¬般舟三昧経¼ (意) に説きてのたまふがごとし。 「一には大誓願力をもつて念を加したまふがゆゑに見仏することを得。 二には三昧定力をもつて念を加したまふがゆゑに見仏することを得。 三には本功徳力をもつて念を加したまふがゆゑに見仏することを得」 と。 以下の見仏縁のなかも、 この義に例同す。 ゆゑに見仏三昧増上縁と名づく。
言↢三力↡者、即如↢¬般舟三昧経¼説云↡。一者以↢大誓願力↡加念故得↢見仏↡。二者以↢三昧定力↡加念故得↢見仏↡。三者以↢本功徳力↡加念故得↢見仏↡。已下見仏縁中、例↢同此義↡。故名↢見仏三昧増上縁↡。
【24】問ひていはく、 夫人は福力強勝にして、 仏の加念を蒙るがゆゑに見仏す。 末法の衆生は*罪深重なり、 なにによりてか夫人と同例することを得ん。 またこの義は甚深広大なり。 一々につぶさに仏経を引きてもつて明証となせ。
問曰。夫人福力強勝蒙↢仏加念↡故見仏、末法衆生罪重、何由得↧与↢夫人↡同例↥。又此義者甚広大、一一具引↢仏経↡以為↢明証↡。
答へていはく、 仏はこれ*三達の聖人、 *六通無障なり。 機を観じて教を備へ、 浅深を択びたまはず。 ただまことに帰すれば、 なんぞ見たてまつらざることを疑はん。 すなはち ¬観経¼ (意) の下に説きてのたまふがごとし。 「仏、 韋提を讃じたまはく、 ª快くこの事を問へり。 阿難、 受持して広く多衆のために仏語を宣説すべし。 如来 (釈尊) いま韋提希および未来世の一切衆生を教へて西方極楽世界を観ぜしむ。 仏願力をもつてのゆゑにかの国土を見ること、 明鏡を執りてみづから面像を見るがごとくならんº」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ弥陀仏の三力ほかに加するがゆゑに見仏することを得。 ゆゑに見仏浄土三昧増上縁と名づく。
答曰。仏是三達聖人、六通無障、観↠機備↠教、不↠択↢浅↡、但使↠帰↠誠、何疑↠不↠見。即如↢¬観経¼下説云↡。「仏讃↢韋提↡、快問↢此事↡、阿難受持広為↢多衆↡宣↢説仏語↡。如来今者教↢韋提希及未来世一切衆生↡、観↢於西方極楽世界↡。以↢仏願力↡故見↢彼国土↡。如↧執↢明鏡↡自見↦面像↥。」又以↢此経↡証。亦是弥陀仏三力外加故得↢見仏↡。故名↢見仏浄土三昧増上縁↡。
【25】また下の ¬経¼ (同・意) にのたまふがごとし。 「仏、 韋提に告げたまはく、 ªなんぢはこれ凡夫にして心想また劣なり、 遠く見ることあたはず。 諸仏如来に*善方便ましまして、 なんぢらをして見しむることを致すº と。 夫人、 仏にまうしてまうさく、 ªわれいま仏力によるがゆゑにかの国土を見たてまつる。 仏滅後のもろもろの衆生等のごときは、 濁悪不善にして五苦に逼めらる。 いかんが極楽世界を見ることを得んº と。 仏すなはち告げてのたまはく、 ª韋提、 なんぢおよび衆生、 専心に念を計けて、 西方の*瑠璃地下の一切の*宝幢、 地上の衆宝、 室内の荘厳等を想ふべしº」 と。 専心に意を注むれば、 また上の夫人に同じて見ることを得べし。
善方便 すぐれた方法。 異本には 「異方便」 とある。
又如↢下¬経¼云↡。「仏告↢韋提↡。汝是凡夫、心想又劣、不↠能↢遠見↡、致↠使↧諸仏如来有↢異方便↡、令↢汝等↡見↥。夫人白↠仏言。我今因↢仏力↡故見↢彼国土↡。若仏滅後諸衆生等、濁悪不善五苦所↠逼。云何得↠見↢極楽世界↡。仏即告言。韋提、汝及衆生、専心計念想↢於西方瑠璃地下一切宝幢、地上衆宝、室内荘厳等↡。専心注↠意、亦同↢上夫人↡得↠見。
すなはちのたまはく (観経・意)、 「一々にこれを観じてきはめて*了々ならしめよ。 閉目開目にみな見ることを得しむ。 かくのごとく想ふものを名づけて粗見となす。 これを*覚想中の見といふ。 ゆゑに粗見といふ。 ▼もし定心三昧および▼口称三昧を得れば、 心眼すなはち開けてかの浄土の一切の荘厳を見ること、 説くとも窮尽することなし」 と。 またこの経をもつて証す。 一切の凡夫ただ心を傾くれば、 さだめて見の義あり、 知るべし。 たとひ見聞のものありとも、 *驚怪するを須ゐず。 なにをもつてのゆゑに。 すなはち弥陀仏の三昧力ほかに加するによるがゆゑに見ることを得。 ゆゑに見仏浄土三昧増上縁と名づく。
覚想中の見 精神をはたらかせて浄土のありさまを思いうかべている状態。 三昧の前段階。
驚怪するを須ゐず (当然のことであるから) 驚きあやしむにおよばない。
即云。一一観↠之極令↢了了↡。閉目開目皆令↠得↠見。如↠此想者名為↢粗見↡。此謂↢覚想中見↡、故云↢粗見↡。若得↢定心三昧、及口称三昧↡者、心眼即開見↢彼浄土一切荘厳↡、説無↢窮尽↡也。」又以↢此経↡証。一切凡夫、但使↠傾↠心定有↢見義↡、応↠知。設有↢見聞者↡、不↠須↢驚怪↡也。何以故、乃由↢弥陀仏三昧力外加↡故得↠見。故名↢見仏浄土三昧増上縁↡。
【26】また下の華座観 (同・意) のなかに説きてのたまふがごとし。 「仏、 阿難・韋提に告げたまはく、 ª仏まさになんぢがために苦悩を除く法を説くべし。 なんぢまさに広く大衆のために分別し解説すべしº と。 この語を説きたまふ時、 無量寿仏、 観音・勢至声に応じて来現して空中に住立したまふ。 韋提見たてまつりてすなはち礼す。 礼しをはりて釈迦仏にまうしてまうさく、 ªわれいま仏力によるがゆゑに無量寿仏および二菩薩を見たてまつることを得たり。 仏滅後のもろもろの衆生等のごときは、 いかんが阿弥陀仏および二菩薩を観見したてまつるべきº と。 仏すなはち告げてのたまはく、 ªなんぢおよび衆生かの仏を観たてまつらんと欲せば、 まさに想念を起すべし。 七宝の地の上に蓮華の想をなせ。 華想成じをはりなば、 次にまさに仏 (阿弥陀仏) を想ふべし。 仏を想ふ時、 この心すなはち三十二相になると想へ。 頂上より下*跏趺坐に至るこのかた、 *一々の身分またみなこれを想へ。 心想に随ひて、 時に仏身すなはち現ずº」 と。 これはこれ弥陀の*三力ほかに加してすなはち見仏することを得。 また見仏三昧増上縁と名づく。
跏趺坐 結跏趺坐の略。 足の甲を左右のももの上に置くすわり方。
一々の身分 仏の三十二相のひとつひとつのすがた。
三力 大誓願力・三昧定力・本功徳力のこと。
又如↢下華座観中説云↡。「仏告↢阿難・韋提↡。仏当↧為↠汝説↦除↢苦悩↡法↥。汝当↧広為↢大衆↡分別解説↥。説↢是語↡時、無量寿仏・観音・勢至、応↠声来現、住↢立空中↡。韋提見即礼。礼已白↢釈迦仏↡言。我今因↢仏力↡故得↠見↢無量寿仏及二菩薩↡。若仏滅後諸衆生等、云何観↢見阿弥陀仏及二菩薩↡。仏即告言。汝及衆生、欲↠観↢彼仏↡者、当↠起↢想念↡。七宝地上作↢蓮華想↡。華想成已、次当↠想↠仏。想↠仏時、是心即想↠作↢三十二相↡。従↢頂上↡下至↢跏趺坐↡已来、一一身分亦皆想↠之。随↢心想↡時、仏身即現。」此是弥陀三力外加、即得↢見仏↡。亦名↢見仏三昧増上縁↡。
【27】また下の ¬経¼ (観経・意) にのたまふがごとし。 「かの仏を想ふものは、 先づまさに像を想ふべし。 一の金像を見るに、 かの華上に坐したまへり。 すでに想見しをはりて、 心眼すなはち開き、 *了々分明にかの国の一切の荘厳を見るに及ぶ」 と。 これまたこれ弥陀の*三力ほかに加するがゆゑに見仏す。 ゆゑに見仏三昧増上縁と名づく。
又如↢下経云↡。「想↢彼仏↡者、先当↠想↠像。見↢一金像↡、坐↢彼華上↡。既想見已心眼即開。了了分明、及見↢彼国一切荘厳↡。」此亦是弥陀三力外加故見仏。故名↢見仏三昧増上縁↡。
また下の ¬経¼ (観経・意) にのたまふがごとし。 「次に二菩薩 (観音・勢至) およびもろもろの光明を想へ。 *了々として見る。 この事を見る時、 行者すなはち三昧定中において、 まさに水流・光明・荘厳等の説法の声を聞くべし。 出定・入定に、 行者つねに妙法を聞く」 と。 これまたこれ弥陀仏の三力ほかに加するがゆゑに見仏す。 ゆゑに見仏三昧増上縁と名づく。
又如↢下¬経¼云↡。「次想↢二菩薩及諸光明↡。了了而見、見↢此事↡時、行者即於↢三昧定中↡当↠聞↢水流・光明・荘厳等説法之声↡。出定・入定行者常聞↢妙法↡。」此亦是弥陀仏三力外加故見仏。故名↢見仏三昧増上縁↡。
【28】また下の真身観 (同・意) のなかに説きてのたまふがごとし。 「仏、 阿難に告げたまはく、 ª像観成じをはりて、 次にさらに無量寿仏の身の真金色、 眉間の*毫相、 *円光の化仏および相好等の光を観ずべし。 ただまさに*憶想して、 心眼をもつて見たてまつらしむべし。 見をはりて、 すなはち十方一切の諸仏を見たてまつる。 ゆゑに念仏三昧と名づくº」 と。 この文をもつて証す。 またこれ弥陀仏の三力ほかに加するがゆゑに見仏す。 ゆゑに見仏三昧増上縁と名づく。
又如↢下真身観中説云↡。「仏告↢阿難↡。像観成已、次更観↢無量寿仏↡。身真金色、眉間毫相・円光・化仏、及相好等光、但当↣憶想令↢心眼見↡。見已即見↢十方一切諸仏↡、故名↢念仏三昧↡。」以↢此文↡証。亦是弥陀仏三力外加故見仏。故名↢見仏三昧増上縁↡。
また下の ¬経¼ (同・意) にのたまふがごとし。 「仏のたまはく、 ªこのゆゑに智者一心にあきらかに無量寿仏を観ぜば、 一の相好より入れ。 ただ眉間の白毫を観じてきはめて明了ならしむれば、 八万四千の相好自然にこれを見る。 見をはりて、 すなはち十方一切の諸仏を見たてまつる。 諸仏の前において次第に授記せらるº」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ弥陀仏の三力ほかに加するがゆゑに、 凡夫をして専心に想はしむることを得れば、 さだめて見仏することを得。 また見仏三昧増上縁と名づく。
又如↢下¬経¼云↡。「仏言。是故智者一心諦観↢無量寿仏↡。従↢一相好↡入、但観↢眉間白毫↡極令↢明了↡者、八万四千相好自然見↠之。見已即見↢十方一切諸仏↡。於↢諸仏前↡次第授記。」又以↢此経↡証。亦是弥陀仏三力外加故、得↠令↧凡夫専心想↥者、定得↢見仏↡。亦名↢見仏三昧増上縁↡。
【29】また*観音・勢至・普・雑等の観、 および下の九品の人のごとし。 「一生起行しすなはち七日・一日、 十声・一声等に至るまで、 命終らんと欲する時仏を見たてまつらんと願ずるもの、 もしは現生にすなはち善知識に遇ひ、 行人みづからよく心口に弥陀仏を称念すれば、 仏、 すなはち聖衆・*華台と来現したまふ。 行人、 仏を見たてまつり、 また聖衆・華台等を見ん」 (観経・意) と。 またこの経をもつて証す。 またこれ弥陀仏の三力ほかに加するがゆゑに見仏することを得。 ゆゑに見仏三昧増上縁と名づく。
観音…雑等の観 定善十三観の第十・十一・十二・十三観。 →
定善
「又如↢観音・勢至・普・雑等観、及下九品人↡、一生起行乃至七日・一日、十声・一声等、命欲↠終時、願↢見仏↡者、若現生乃遇↢善知識↡、行人自能心口称↢念弥陀仏↡、仏即与↢聖衆↡華台来現、行人見↠仏亦見↢聖衆・華台等↡。」又以↢此経↡証。亦是弥陀仏三力外加故得↢見仏↡。故名↢見仏三昧増上縁↡。
【30】また下の ¬経¼ (同・意) にのたまふがごとし。 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªこの経を観極楽国土無量寿仏及観世音大勢至菩薩経と名づく。 なんぢまさに受持して忘失せしむることなかるべし。 この三昧を行ずるものは、 現身に無量寿仏および二菩薩を見たてまつることを得º」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ弥陀仏の*三力ほかに加して、 凡夫の念ずるものをして*自の三心力に乗ずるがゆゑに見仏することを得しむることを致す。 ▼*至誠心・信心・願心を内因となし、 また弥陀の*三種の願力を藉りてもつて外縁となす。 外内の因縁和合するがゆゑにすなはち見仏することを得。 ゆゑに見仏三昧増上縁と名づく。
自の三心力 次行の至誠心・信心・願心を指す。
至誠心信心願心 。
三種の願力 大誓願力・三昧定力・本功徳力のこと。
又如↢下¬経¼云↡。「仏告↢阿難↡。此経名↢観極楽国土無量寿仏及観世音大勢至菩薩経↡。汝当↢受持無↟令↢忘失↡。行↢此三昧↡者、現身得↠見↢無量寿仏及二菩薩↡。」又以↢此経↡証。亦是弥陀仏三力外加、致↠使↧凡夫念者、乗↢自三心力↡故得↦見仏↥。至誠心・信心・願心為↢内因↡、又藉↢弥陀三種願力↡以為↢外縁↡。外内因縁和合故、即得↢見仏↡。故名↢見仏三昧増上縁↡。
【31】また ¬般舟三昧経¼ (意) にのたまふがごとし。 「仏、 跋陀和菩薩に告げたまはく、 ª三昧あり、 *十方諸仏悉在前立と名づく。 もし疾くこの三昧を得んと欲するものは、 つねにまさに守りて習持して疑想毛髪のごときばかりもあることを得ざるべし。 *もし比丘・*比丘尼・*優婆塞・*優婆夷この三昧を行学せんと欲するものは、 七日七夜睡眠を除去して、 もろもろの乱想を捨て、 独り一処に止まりて、 西方の阿弥陀仏の身、 真金色にして三十二相あり、 光明徹照して*端正無比なるを念ずべしº と。 一心に観想して心念口称し、 念々に絶えざるものは、 仏のたまはく、 ª七日以後にこれを見るº と。 たとへば人ありて夜星宿を観るがごとし。 一星すなはちこれ一仏なり。 もし四衆ありてこの観をなさば、 一切の星を見るがごとく、 すなはち一切の仏を見たてまつらん」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ弥陀仏の三力ほかに加するがゆゑに見仏す。
又如↢¬般舟三昧経¼云↡。「仏告↢跋陀和菩薩↡。有↢三昧↡、名↢十方諸仏悉在前立↡。若欲↣疾得↢是三昧↡者、常当↢守習持↟不↠得↠有↧疑想如↢毛髪↡許↥。若比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷、欲↣行↢学是三昧↡者、七日七夜、除↢去睡眠↡、捨↢諸乱想↡、独一処止、念↢西方阿弥陀仏身、真金色三十二相、光明徹照、端正無↟比。一心観想、心念口称、念念不↠絶者、仏言、七日已後見↠之。譬如↣有↠人夜観↢星宿↡、一星即是一仏↡、若有↢四衆↡作↢是観↡者、見↢一切星↡、即見↢一切仏↡。」又以↢此経↡証。又以↢此経↡証。亦是弥陀仏三力外加故見仏。
▼「三昧」 といふは、 すなはちこれ念仏の行人心口に称念してさらに雑想なく、 念々心を住め声々相続すれば、 心眼すなはち開けて、 かの仏*了然として現じたまふを見たてまつることを得。 すなはち名づけて定となし、 また三昧と名づく。 まさしく見仏する時、 また聖衆およびもろもろの荘厳を見る。 ゆゑに見仏浄土三昧増上縁と名づく。
了然 あきらかなさま。
言↢三昧↡者、即是念仏行人、心口称念更無↢雑想↡、念念住↠心、声声相続、心眼即開得↠見↢彼仏了然而現↡、即名為↠定、亦名↢三昧↡。正見仏時、亦見↢聖衆及諸荘厳↡。故名↢見仏浄土三昧増上縁↡。
【32】また ¬*月灯三昧経¼ にのたまふがごとし。 「仏の相好および徳行を念じて、 よく*諸根をして乱動せざらしめ、 心に迷惑なく法と合して聞くことを得れば、 知を得ること大海のごとし。 智者この三昧に住して、 念を摂して行ずれば、 *経行の所においてよく千億のもろもろの如来を見たてまつり、 また無量恒沙の仏に遇ひたてまつる」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ見仏三昧増上縁なり。
経行 歩み行くこと。
又如↢¬月灯三昧経¼云↡。「念↢仏相好及徳行↡、能使↣諸根不↢乱動↡、心無↢迷惑↡与↠法合、得↠聞得↠知、如↢大海↡。智者住↢於是三昧↡、摂↠念行、於↢経行所↡、能見↢千億諸如来↡、亦遇↢無量恒沙仏↡。」又以↢此経↡証。亦是見仏三昧増上縁↡。
【33】また ¬*文殊波若経¼ (意) にのたまふがごとし。 「文殊、 仏にまうしてまうさく、 ªいかんが*一行三昧と名づくるº と。 仏のたまはく、 ªもし男子・女人*空閑の処にありて、 もろもろの乱意を捨て、 仏の*方所に随ひて身を端し正向して、 *相貌を取らずもつぱら仏名を称して、 念休息することなければ、 すなはち念のうちにおいてよく過・現・未来の三世の諸仏を見たてまつるº」 と。 またこの経をもつて証す。 すなはちこれ諸仏*同体の大悲、 念力*加備して見しめたまふ。 これまたこれ凡夫の見仏三昧増上縁なり。
空閑の処 静かなところ。
又如↢¬文殊般若経¼云↡。「文殊白↠仏言。云何名↢一行三昧↡。仏言。若男子・女人、在↢空閒処↡、捨↢諸乱意↡、随↢仏方所↡、端身正向、不↠取↢相貌↡、専称↢仏名↡、念無↢休息↡、即於↢念中↡能見↢過・現・未来三世諸仏↡。」又以↢此経↡証。即是諸仏同体大悲、念力加備令↠見。此亦是凡夫見仏三昧増上縁↡。
◎五縁功徳分 ○摂生縁
【34】また▼*摂生増上縁といふは、 すなはち *¬無量寿経¼ (上・意) の四十八願のなかに説きたまふがごとし。 「仏のたまはく、 ª▼もしわれ成仏せんに、 十方の衆生、 わが国に生ぜんと願じて、 わが*名字を称すること、 下十声に至るまで、 わが願力に乗じて、 もし生ぜずは、 正覚を取らじº」 第十八願)と。 これすなはちこれ往生を願ずる行人、 命終らんと欲する時、 願力摂して往生を得しむ。 ゆゑに摂生増上縁と名づく。
名字 名号のこと。
又言↢摂生増上縁↡者、即如↢¬無量寿経¼四十八願中説↡。「仏言。若我成仏、十方衆生、願↠生↢我国↡、称↢我名字↡、下至↢十声↡、乗↢我願力↡、若不↠生者、不↠取↢正覚↡。」此即是願↢往生↡行人、命欲↠終時、願力摂得↢往生↡。故名↢摂生増上縁↡。
またこの ¬経¼ (大経) の上巻 (意) にのたまはく、 「もし衆生ありて西方の無量寿仏国に生ずることを得るものは、 みな弥陀仏の大願等の業力に乗じて増上縁となす」 と。 すなはち証となす。 またこれ摂生増上縁なり。
又此¬経¼上巻云。「若有↢衆生↡、得↠生↢西方無量寿仏国↡者、皆乗↢弥陀仏大願等業力↡為↢増上縁↡。」即為↠証也。亦是摂生増上縁。
▼またこの ¬経¼ (同) の下巻 (意) の初めにのたまはく、 「仏説きたまはく、 ª一切衆生の*根性不同にして*上・中・下あり。 その根性に随ひて、 仏 (釈尊)、 みな勧めてもつぱら無量寿仏の名を念ぜしめたまふ。 その人、 命終らんと欲する時、 仏 (阿弥陀仏)、 聖衆とみづから来りて*迎接して、 ことごとく往生を得しむº」 と。 これまたこれ摂生増上縁なり。
又此¬経¼下巻初云。「仏説。一切衆生、根性不同、有↢上中下↡。随↢其根性↡仏皆勧専↢念無量寿仏名↡。其人命欲↠終時、仏与↢聖衆↡自来迎接、尽得↢往生↡。」此亦是摂生増上縁。
【35】また ¬観経¼ の第十一観および下の九品のごとし。 みなこれ仏の自説なり。 *定散二行を修する人、 命終の時、 一々にことごとくこれ弥陀世尊、 みづから聖衆・*華台とともに授手迎接して、 往生せしめたまふ。 これまたこれ摂生増上縁なり。
又如↢¬観経¼第十一観、及下九品↡。皆是仏自説、修↢定散二行↡人、命終時一一尽是弥陀世尊、自与↢聖衆↡、華台授手迎接往生。此亦是摂生増上縁。
【36】また ¬*四紙弥陀経¼ (意) のなかに説きたまふがごとし。 「仏のたまはく、 ªもし男子・女人ありて、 あるいは一日七日、 一心にもつぱら弥陀仏の名を念ずれば、 その人、 命終らんと欲する時、 阿弥陀仏、 もろもろの聖衆とみづから来り迎接して、 すなはち西方極楽世界に往生することを得しめたまふº と。 釈迦仏のたまはく、 ªわれこの利を見るがゆゑにこの言を説くº」 と。 すなはち証となす。 これまたこれ摂生増上縁なり。
又如↢¬四紙弥陀経¼中説↡。「仏言。若有↢男子・女人↡、或一日・七日、一心専↢念弥陀仏名↡、其人命欲↠終時、阿弥陀仏与↢諸聖衆↡、自来迎接、即得↣往↢生西方極楽世界↡。釈迦仏言。我見↢是利↡故説↢此言↡。」即為↠証也。此亦是摂生増上縁。
【37】また四十八願 (大経・上意) のなかに説きてのたまふがごとし。 「たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 菩提心を発し、 もろもろの功徳を修し、 心を至して*発願してわが国に生ぜんと欲せん。 命終の時に臨みて、 われ大衆とその前に現ぜずは、 正覚を取らじ」 (第十九願) と。 これまたこれ摂生増上縁なり。
又如↢四十八願中説云↡。「設我得↠仏、十方衆生、発↢菩提心↡、修↢諸功徳↡、至心発願、欲↠生↢我国↡、臨↢命終時↡、我不↧与↢大衆↡現↦其前↥者、不↠取↢正覚↡。此亦是摂生増上縁↡。
また下の願 (大経・上意) にのたまふがごとし。 「たとひわれ仏を得たらんに、 十方の衆生、 わが名号を聞きて、 念をわが国に計け、 心を至して回向してわが国に生ぜんと願ぜん。 *果遂せずは、 正覚を取らじ」 (第二十願) と。 これまたこれ摂生増上縁なり。
果遂 (往生を) はたしとげること。
又如↢下願云↡。「設我得↠仏、十方衆生、聞↢我名号↡、計↢念我国↡、至心迴向願↠生↢我国↡、不↢果遂↡者、不↠取↢正覚↡。」此亦是摂生増上縁。
また下の願 (同・上意) にのたまふがごとし。 「たとひわれ仏を得たらんに、 十方世界に、 それ女人ありて、 わが名字を聞きて、 歓喜信楽し、 菩提心を発して、 女身を*厭悪せん。 命終の後に、 また女身とならば、 正覚を取らじ」 (第三十五願) と。
厭悪 厭いきらうこと。
又如↢下願云↡。「設我得↠仏、十方世界、其有↢女人↡、聞↢我名字↡、歓喜信楽、発↢菩提心↡、厭↢悪女身↡。命終之後、復為↢女身↡者、不↠取↢正覚↡。」
義にいはく、 すなはち弥陀の本願力によるがゆゑに、 女人、 ▼仏の名号を称すれば、 まさしく命終の時すなはち*女身を転じて男子となることを得。 弥陀手を接し、 菩薩身を扶けて宝華の上に坐せしむ。 仏に随ひて往生し、 仏の*大会に入りて無生を証悟す。 ▼また一切の女人もし弥陀の*名願力によらずは、 千劫・万劫・恒河沙等の劫にも、 つひに女身を転ずることを得べからず、 知るべし。 いまあるいは*道俗ありて、 女人浄土に生ずることを得ずといはば、 これはこれ妄説なり、 信ずべからず。 またこの経をもつて証す。 またこれ摂生増上縁なり。
名願力 名号願力。
義曰。乃由↢弥陀本願力↡故、女人称↢仏名号↡、正命終時、即転↢女身↡得↠成↢男子↡。弥陀接↠手菩薩扶↠身、坐↢宝華上↡。随↠仏往生、入↢仏大会↡証↢悟無生↡。又一切女人若不↠因↢弥陀名願力↡者、千劫・万劫・恒河沙等劫、終不↠可↠得↠転↢女身↡。応↠知。今或有↢道俗↡、云↢女人不↟得↠生↢浄土↡者、此是妄説、不↠可↠信也。又以↢此経↡証。亦是摂生増上縁。
◎五縁功徳分 ○証生縁
【38】また*証生増上縁といふは、 問ひていはく、 いますでに弥陀の四十八願、 一切衆生を摂して浄土に生ずることを得しむといはば、 いまだ知らず、 なんらの衆生を摂してか生ずることを得しむる。 またこれ何人か*得生を保証するや。
得生 浄土に往生すること。
又言↢証生増上縁↡者、問曰。今既言↧弥陀四十八願、摂↢一切衆生↡得↞生↢浄土↡者、未↠知、摂↢何等衆生↡得↠生、又是何人保↢証得生↡也。
答へていはく、 すなはち ¬観経¼ (意) に説きてのたまふがごとし。 「仏、 韋提に告げたまはく、 ªなんぢいま知るやいなや。 阿弥陀仏、 ここを去りたまふこと遠からず。 なんぢまさに念を計けてあきらかにかの国を観ずべし。 *浄業成ずるものなり。 また未来世の一切の凡夫をして、 西方極楽国土に生ずることを得しめんº」 と。 いまこの経をもつて証す。 ただこれ仏滅後の凡夫、 仏願力に乗じてさだめて往生を得。 すなはちこれ証生増上縁なり。
答曰。即如↢¬観経¼説云↡。「仏告↢韋提↡。汝今知不。阿弥陀仏、去↠此不↠遠、汝当↣計念諦観↢彼国浄業成者↡。亦令↧未来世一切凡夫、得↦生↢西方極楽国土↡。」今以↢此経↡証。但是仏滅後凡夫、乗↢仏願力↡定得↢往生↡。即是証生増上縁。
【39】また問ひていはく、 釈迦教を説きて衆生を*示悟したまふ。 なんがゆゑぞ一種の仏法にすなはち信不信ありて、 ともにあひ*譏毀するはなんの所以かある。
示悟 教え導いて、 さとりを得させること。
譏毀 そしりやぶること。
又問曰。釈迦説教、示↢悟衆生↡。何故一種仏法、即有↢信不信↡、共相譏毀者、有↢何所以↡。
答へていはく、 凡夫の*機性にその二種あり。 一には善性人、 二には悪性人なり。
機性 性質。
答曰。凡夫機性有↢其二種↡。一者善性人、二者悪性人。
その善性人とは、 一には聞きてすなはち悪を捨てて善を行ずる善人、 二には邪を捨てて正を行ずる善人、 三には虚を捨てて実を行ずる善人、 四には非を捨てて是を行ずる善人、 五には偽を捨てて真を行ずる善人なり。 この五種の人もしよく仏に帰すれば、 すなはちよく自利利他す。 家にありては孝を行じ、 ほかにありてはまた他人を利し、 *望にありては信を行じ、 *朝にありては君子と名づけ、 君に事へてはよく忠節を尽す。 ゆゑに自性善人と名づくるなり。
望にありては 野にあってはの意。
朝にありては 朝廷にあってはの意。
其善性人、一聞即捨↠悪行↠善善人。二者捨↠邪行↠正善人。三者捨↠虚行↠実善人。四者捨↠非行↠是善人。五者捨↠偽行↠真善人。此五種人、若能帰↠仏即能自利利他。在↠家行↠孝在↠外亦利↢他人↡、在↠望行↠信、在↠朝名↢君子↡、事↠君能尽↢忠節↡。故名↢自性善人↡也。
悪性人といふは、 一にはすなはち真を謗じて偽を行ずる悪人、 二には正を謗じて邪を行ずる悪人、 三には是を謗じて非を行ずる悪人、 四には実を謗じて虚を行ずる悪人、 五には善を謗じて悪を行ずる悪人なり。 またこの五種の人もし願じて仏に帰せんと欲するも、 自利することあたはず、 また他人を利せず。 また家にありては不孝、 望にありては信なく、 朝にありては小児と名づけ、 君に事へてはすなはちつねに*諂佞を懐く。 これを不忠といふ。 またこの人等、 他の賢徳善人の身の上において、 ただよく是を敗り非を成じ、 ただ他の悪のみを見る。 ゆゑに自性悪人と名づくるなり。 また上は諸仏・*賢聖より、 人天・六道一切の良善に至るまで、 これらの悪人をば譏りて恥辱するところなり、 もろもろの有智のもの、 知るべし。 いま一々につぶさに善悪二性の人を引く。 道理*顕然なり。 上の問に答へをはりぬ。
諂佞 へつらいおもねる心。
顕然 あきらかであるようす。
言↢悪性人↡者、一即謗↠真行↠偽悪人。二者謗↠正行↠邪悪人。三者謗↠是行↠非悪人。四者謗↠実行↠虚悪人。五者謗↠善行↠悪悪人。又此五種人、若欲↢願帰↟仏、不↠能↢自利↡、亦不↠利↢他人↡。又在↠家不↠孝、在↠望無↠信、在↠朝名↢小児↡、事↠君則常懐↢諂佞↡、謂↢之不忠↡。又此人等、於↢他賢徳善人身上↡、唯能敗↠是成↠非、但見↢他悪↡。故名↢自性悪人↡也。又上至↢諸仏賢聖↡、人天六道一切良善、此等悪人所↢譏耻辱↡也。諸有智者応↠知。今一一具引↢善悪二性人↡、道理顕然。答↢上問↡竟。
【40】また下の ¬経¼ (観経・意) にのたまはく、 「仏、 韋提に告げたまはく、 ªなんぢおよび衆生、 専心に念を一処に計けて、 西方の地下の*金幢、 地上の衆宝荘厳を想ふべしº」 と。 下十三観に至るこのかたは、 総じて上の*韋提の二請に答へ、 もつて明証となす。 ˆ釈尊はˇ ▼善悪の凡夫をして回心し起行して、 ことごとく往生を得しめんと欲す。 これまたこれ証生増上縁なり。
金幢 浄土の大地を支える黄金でできた柱。
韋提の二請 ¬観経¼ 欣浄縁においてなされた韋提希の二つの懇請。 「われに清浄業処を観ぜしめたまへ」 と 「われに思惟を教へたまへ、 われに正受を教へたまへ」 の二を指す。
又下¬経¼云。「仏告↢韋提↡。汝及衆生、専↠心計↢念一処↡、想↢於西方地下金幢、地上衆宝荘厳↡。」下至↢十三観↡已来、総答↢上韋提二請↡、以為↢明証↡。欲↠使↣善悪凡夫、迴心起行、尽得↢往生↡。此亦是証生増上縁。
また下の ¬経¼ (同・意) にのたまふがごとし。 「衆宝国土に五百億の*宝楼あり。 その楼閣のなかに無量の天人ありて、 天の*伎楽をなす。 この衆音のなかに、 みな*仏法僧を念ずることを説く。 この想成じをはれば、 命終らんと欲する時、 さだめてかの国に生ず」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ証生増上縁なり。
又如↢下¬経¼云↡。「衆宝国土、有↢五百億宝楼↡、其楼閣中、有↢無量天人↡、作↢天伎楽↡、此衆音中、皆説↢念仏法僧↡、此想成已、命欲↠終時、定生↢彼国↡。」又以↢此経↡証。亦是証生増上縁。
また下の ¬経¼ (同・意) にのたまふがごとし。 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªかくのごとき妙華はこれ本法蔵比丘の願力の所成なり。 もしかの仏を念ぜんと欲せば、 まさに先づこの*華座の想をなすべし。 一々にこれを観じてみな分明ならしめよ。 この想成ずるものは、 必定してまさに極楽世界に生ずべしº」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ証生増上縁なり。
華座の想 定善十三観の第七華座観のこと。
又如↢下¬経¼云↡。「仏告↢阿難↡、如↠此妙華、是本、法蔵比丘願力所成、若欲↠念↢彼仏↡者、当↣先作↢此華座想↡。一一観↠之皆令↢分明↡。此想成者、必定当↠生↢極楽世界↡。」又以↢此経↡証。亦是証生増上縁。
【41】また ¬無量寿経¼ (下・意) にのたまふがごとし。 「仏、 阿難に告げたまはく、 ªそれ衆生ありてかの国に生ずるものは、 みなことごとく*正定の聚に住す。 十方の諸仏みなともにかの仏を讃歎したまふ。 もし衆生ありて、 その名号を聞きて、 信心歓喜し、 すなはち一念に至るまでせん。 かの国に生ぜんと願ずれば、 すなはち往生を得て不退転に住すº」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ証生増上縁なり。
又如↢¬無量寿経¼云↡。「仏告↢阿難↡。其有↢衆生↡、生↢彼国↡者、皆悉住↢於正定之聚↡。十方諸仏皆共讃↢歎彼仏↡。若有↢衆生↡聞↢其名号↡、信心歓喜、乃至一念。願↠生↢彼国↡、即得↢往生↡住↢不退転↡。」又以↢此経↡証。亦是証生増上縁。
【42】また ¬観経¼ の九品にのたまふがごとし。 一々の品のなかに告ぐるところの衆生は、 みなこれもしは仏の在世、 もしは仏滅後の五濁の凡夫なり。 善知識の、 勧めて信を生ぜしむるに遇ひて、 持戒・念仏し、 *誦経・*礼讃して決定して往生す。 仏願力をもつてことごとく往生を得。 これまたこれ証生増上縁なり。
又如↢¬観経¼九品云↡。一一品中、所↠告衆生者、皆是若仏在世、若仏滅後五濁凡夫、遇↢善知識勧令↟生↠信、持戒念仏誦経礼讃、決定往生、以↢仏願力↡尽得↢往生↡。此亦是証生増上縁。
【43】▼また ¬弥陀経¼ (意) にのたまふがごとし。 「六方におのおの恒河沙等の諸仏ましまして、 みな*舌を舒べてあまねく*三千世界に覆ひて、 誠実の言を説きたまはく、 ªもしは仏 (釈尊) の在世、 もしは仏滅後の一切の造罪の凡夫、 ただ心を回らして阿弥陀仏を念じて、 浄土に生ぜんと願ずれば、 上百年を尽し、 下七日・一日、 十声・三声・一声等に至るまで、 命終らんと欲する時、 仏、 聖衆とみづから来り*迎接して、 すなはち往生を得しむº」 と。 上の六方等の仏の舒舌のごときは、 さだめて凡夫のために証をなしたまふ。 罪滅して生ずることを得と。 もしこの証によりて生ずることを得ずは、 六方諸仏の舒舌、 一たび口より出でて以後、 つひに口に還り入らずして、 自然に*壊爛せん。 これまたこれ証生増上縁なり。
壊爛 ただれること。 くさること。
又如↢¬弥陀経¼云↡。「六方各有↢恒河沙等諸仏↡、皆舒↠舌徧覆↢三千世界↡、説↢誠実言↡。」若仏在世、若仏滅後、一切造罪凡夫、但迴心念↢阿弥陀仏↡、願↠生↢浄土↡、上尽↢百年↡、下至↢七日・一日、十声・三声・一声等↡、命欲↠終時、仏与↢聖衆↡自来迎接即得↢往生↡。如↢上六方等仏舒舌↡、定為↢凡夫↡作↠証、罪滅得↠生。若不↧依↢此証↡得↞生者、六方諸仏舒舌、一出↠口已後、終不↣還↢入口↡、自然壊爛。此亦是証生増上縁。
【44】また敬ひて一切の往生人等にまうす。 もしこの語を聞かば、 すなはち声に応じて悲しみて涙を雨らし、 *連劫累劫に▼身を粉にし骨を砕きて仏恩の由来を報謝して、 *本心に称ふべし。 あにあへてさらに毛髪も憚る心あらんや。 またもろもろの行人等にまうす。 一切罪悪の凡夫すらなほ罪滅を蒙り、 摂して生ずることを得しむと証す、 いかにいはんや聖人生ぜんと願じて去くことを得ざらんや。
連劫累劫 幾劫をもつらねかさねるほどの長い時間。
本心 仏のみこころ。
又敬白。一切往生人等、若聞↢此語↡、即応↠声悲雨↠涙、連劫累劫粉↠身砕↠骨、報謝仏恩由来↡、称↢本心↡、豈敢更有↢毛髪憚↠之心↡。又白。諸行人等、一切罪悪凡夫、尚蒙↢罪滅↡証↢摂得生↡。何況聖人、願↠生而不↠得↠去也。
上来総じて前の問に、 「なんらの衆生を摂してか浄土に生ずることを得しむる」 といふことに答ふ。 *五種増上縁の義竟りぬ。
五種の増上縁 念仏の行者が得る五種類のすぐれた功徳の因縁。 滅罪・護念・見仏・摂生・証生の五をいう。
上来総答↧前問摂↢何等衆生↡得↞生↢浄土↡。五種増上縁義。
◎結勧修行分
【45】問ひていはく、 ▼釈迦出現して五濁の凡夫を度せんがために、 すなはち慈悲をもつて、 *十悪の因、 三塗の苦を報果することを開示したまひ、 また平等の智慧をもつて、 人天回して弥陀仏国に生ずることを悟入せしめたまふ。 諸経に*頓教の文義歴然なり。 いますなはち人ありて公然として信ぜず、 ともにあひ*誹毀するものは、 いまだ知らず、 この人現生および死後になんの罪報をか得る。 つぶさに仏経を引きて、 それがために証をなして*改悔を生じ、 仏の大乗を信じ、 回して浄土に生ぜしめて、 すなはち利益をなせ。
頓教 ここでは往生浄土の法門を指していう。
誹毀 そしりやぶること。
改悔 悔いあらためる心。
問曰。釈迦出現、為↠度↢五濁凡夫↡、即以↢慈悲↡、開↣示十悪之因報↢果三塗之苦↡、又以↢平等智慧↡、悟↣入人天迴生↢弥陀仏国↡。諸経頓教文義歴然。今乃有↠人公然不↠信、共相誹毀者、未↠知此人、現生及死後、得↢何罪報↡。具引↢仏経↡、与↠其作↠証、令↧生↢改悔↡信↢仏大乗↡迴生↦浄土↥、即為↢利益↡也。
答へていはく、 仏経によりて答ふれば、 またこの悪人は上の五悪性分のなかにすでに説きをはるがごとし。 いまただちに仏経を引きてもつて明証となさん。
答曰。依↢仏経↡答者、又此悪人如↢上五悪性分中已説竟↡。今直引↢仏経↡以為↢明証↡。
すなはち ¬*十往生経¼ (意) にのたまふがごとし。 「仏、 山海慧菩薩に告げたまはく、 ªなんぢいま一切衆生を度せんがために、 まさにこの経を受持すべしº と。
即如↢¬十往生経¼云↡。「仏告↢山海慧菩薩↡。汝今為↠度↢一切衆生↡、応↣当受↢持是経↡。
仏、 また山海慧に告げたまはく、 ªこの経を名づけて*観阿弥陀仏色身正念解脱三昧経となす。 また*度諸有流生死八難有縁衆生経と名づく。 かくのごとく受持すべし。 衆生のいまだ念仏三昧の縁あらざるものには、 この経よくために大三昧門を開することをなす。 この経よく衆生のために地獄の門を閉づ。 この経よく衆生のために人を害する悪鬼を除き*殄滅して、 *四向ことごとくみな安穏なりº と。
観阿弥陀仏… 阿弥陀仏の色身を観想して、 正念に住して解脱する三昧を説き示した経という意。
度諸有… 生死・八難の世界に沈む有縁の衆生を救いとる経という意。
殄滅 すべてうちほろぼすこと。
四向 東西南北の四方。
仏又告↢山海慧↡。是経名為↢観阿弥陀仏色身正念解脱三昧経↡。亦名↢度諸有流生死八難有縁衆生経↡。如↠是受持衆生、未↠有↢念仏三昧縁↡者、是経能与作↠開↢大三昧門↡。是経能与↢衆生↡閉↢地獄門↡。是経能与↢衆生↡、除↢害人↡悪鬼殄滅。四向悉皆安穏。
仏、 山海慧に告げたまはく、 ªわが所説のごときは、 その義かくのごとしº と。 山海慧、 仏にまうしてまうさく、 ª未来の衆生多く誹謗することあらん。 かくのごとき人、 後においていかんº と。
仏告↢山海慧↡、如↢我所説↡、其義如↠是。山海慧白↠仏言。未来衆生多有↢誹謗↡、如↠是之人於↠後云何。
仏のたまはく、 ª後において閻浮提に、 あるいは比丘・比丘尼、 もしは男、 もしは女ありて、 この経を読誦することあるを見て、 あるいはあひ瞋恚し、 心に誹謗を懐かん。 この謗正法によるがゆゑに、 この人現身にもろもろの悪重病を得て、 *身根具せず。 あるいは聾病・盲病・失陰病・鬼魅・邪狂・風冷・熱痔・水腫・失心を得ん。 かくのごとき等のもろもろの悪重病、 世々に身にあらん。 かくのごとく苦を受けて、 坐臥安からず。 大小便利またみな通ぜず。 生を求め、 死を求むるに得ず。 この経を謗ずるがゆゑに、 苦を受くることかくのごとし。 ある時は死して後に地獄に堕して八万劫のうちに大苦悩を受け、 百千万世にもいまだかつて水食の名を聞かざらん。 この経を謗ずるがゆゑに、 罪を得ることかくのごとし。 ある時は出づることを得て、 生れて人中にあるも、 牛・馬・猪・羊となりて、 人のために殺されて大苦悩を受けん。 この経を謗ずるがためのゆゑなり。 後に人身を得るも、 つねに下賤に生じて百千万世にも自在を得ず、 百千万世にも三宝の名字を見ざらん。 この経を謗ずるがためのゆゑに、 苦を受くることかくのごとし。 このゆゑに無智の人のなかにしてこの経を説くことなかれ。 正観・正念なるかくのごとき人には、 しかして後にために説け。 *彼此この経を敬はざれば、 地獄に堕す。 彼此敬重すれば、 正解脱を得て阿弥陀仏国に往生すº」 と。
彼此 誰であっても。
仏言。於↢後閻浮提↡、或有↢比丘・比丘尼、若男、若女↡、見↠有↣読↢誦是経↡、或相瞋恚心懐↢誹謗↡。縁↢是謗正法↡故、是人現身得↢諸悪重病↡、身根不具。或得↢聾病・盲病・失陰病・鬼魅・邪狂・風冷・熱痔・水腫・失心↡。如↠是等諸悪重病、世世在↠身、如↠是受↠苦、坐臥不↠安、大小便利、亦皆不↠通、求↠生求↠死不↠得、謗↢是経↡故受↠苦如↠是。或時死後堕↢於地獄↡、八万劫中受↢大苦悩↡。百千万世未↣曾聞↢水食之名↡。謗↢是経↡故得↠罪如↠是。或時得↠出生在↢人中↡、作↢牛・馬・猪・羊↡、為↠人所↠殺受↢大苦悩↡。為↠謗↢是経↡故。後得↢人身↡常生↢下賤↡、百千万世不↠得↢自在↡、百千万世不↠見↢三宝名字↡。為↠謗↢是経↡故、受↠苦如↠是。是故無智人中、莫↠説↢是経↡。正観・正念如↠是之人、然後与説。彼此不↠敬↢是経↡、堕↢於地獄↡。彼此敬重、得↢正解脱↡往↢生阿弥陀仏国↡。」
いままたこの経をもつて証す。 ゆゑに知りぬ、 *毀敬のもの、 仏記の損益虚しからず、 知るべし。 つぶさに前の問に答へをはりぬ。
毀敬の… (往生浄土の法門を) そしり破る者と敬いを致す者とについて、 仏が利益を示されることはむなしくない。
今又以↢此経↡証。故知、毀敬之者、仏記損益不↠虚。応↠知。具答↢前問↡竟。
【46】また問ふ。 もし仏滅後の一切善悪の凡夫、 菩提心を発して弥陀仏国に生ぜんと願ずるものは、 日夜に心を計けてこの一生を畢るまで、 *称・観・礼・讃し、 香華をもつて阿弥陀仏および観音聖衆、 浄土の荘厳を供養し、 念々に観想して、 三昧あるいは成じ、 いまだ成ぜざるものも、 現生になんの功徳をか得る。 つぶさに仏経を引きてもつて明証となせ。 修学の行人をして*歓喜愛楽し、 信受奉行せしめんと欲す。
称観礼讃 称名・観察・礼拝・讃嘆すること。
歓喜愛楽 よろこび好むこと。
又問。若仏滅後一切善悪凡夫、発↢菩提心↡願↠生↢弥陀仏国↡者、日夜計↠心畢↢此一生↡、称・観・礼・讃、香華供↢養阿弥陀仏、及観音聖衆、浄土荘厳↡、念念観想、三昧或成、未↠成者、現生得↢何功徳↡。具引↢仏経↡、以為↢明証↡。欲↠令↢修学行人、歓喜愛楽、信受奉行↡。
答へていはく、 快くこの義を問へり。 ▼すなはちこれ六道生死の因行を閉絶して、 永く常楽浄土の*要門を開く。 ただ弥陀の願に称ふのみにあらず、 またすなはち諸仏あまねくみな同じく慶びたまふ。 いま経によりてつぶさに答ふれば、 ▼すなはち ¬*般舟三昧経¼ (意) に説きたまふがごとし。
要門 浄土に往生するための肝要な門。
答曰。快問↢斯義↡。即是閉↢絶六道生死之因行↡、永開↢常楽浄土之要門↡也。非↢直弥陀称↟願、亦乃諸仏普皆同慶。今依↠経具答者、即如↢¬般舟三昧経¼説↡。
「仏、 跋陀和菩薩に告げたまはく、 ªこの念仏三昧のなかにおいて、 四事の供養あり。 飲食・衣服・臥具・湯薬なり。 それを助けて歓喜せしめよ。 ▼過去の諸仏もこの念阿弥陀仏三昧を持ちて、 四事をもつて助けて歓喜せしめてみな成仏を得たまへり。 現在十方の諸仏もまたこの念仏三昧を持ちて、 四事をもつて助けて歓喜せしめてみな作仏を得たまへり。 未来の諸仏もまたこの念仏三昧を持ちて、 四事をもつて助けて歓喜せしめてみな作仏を得たまふº と。
「仏告↢跋陀和菩薩↡。於↢是念仏三昧中↡、有↢四事供養↡、飲食・衣服・臥具・湯薬。助↠其歓喜。過去諸仏持↢是念阿弥陀仏三昧↡、四事助歓喜皆得↢成仏↡。現在十方諸仏亦持↢是念仏三昧↡、四事助歓喜皆得↢作仏↡。未来諸仏亦持↢是念仏三昧↡、四事助歓喜皆得↢作仏↡。
仏、 跋陀和に告げたまはく、 ªこの念阿弥陀仏三昧四事助歓喜は、 われこの三昧のなかにおいて、 その少喩を説きて念仏の功徳に*比校せん。 たとへば人寿百歳ならん、 また生れてよりすなはちよく行走すること老に至るまで疾風に過ぎたるがごとし。 人ありてよくその*道里を計るやいなやº と。 跋陀和まうさく、 ªよく計るものなしº と。
道里 みちのり。
仏告↢跋陀和↡。是念阿弥陀仏三昧四事助歓喜、我於↢是三昧中↡説↢其少喩↡比↢校念仏功徳↡。譬如↧人寿百歳、亦生即能行走至↠老過↞於↢疾風↡。有↠人能計↢其道里↡、以不。跋陀和言。無↢能計者↡。
仏のたまはく、 ªわれさらになんぢおよびもろもろの菩薩等に語る。 もし善男子・女人、 この人の行処、 なかに*著満せる珍宝を取りてもつて布施するに、 得るところの功徳は、 人ありてこの念阿弥陀仏三昧を聞きて、 四事をもつて供養して助けて歓喜せしむる功徳にはしかず。 上の布施するものに過ぎたること千万億倍なり。 また*比校にあらずº と。
著満 充満すること。
比校にあらず 比べものにならない。
仏言。我故語↢汝及諸菩薩等↡。若善男子・女人、取↢是人行処↡、著↢満↠中珍宝↡、以用布施、所↠得功徳、不↠如↧有↠人聞↢是念阿弥陀仏三昧↡、四事供養助歓喜功徳↥。過↢上布施者↡千万億倍、亦非↢比校↡。
仏のたまはく、 ª乃往久遠、 *不可計阿僧祇劫に仏ましましき、 号して私訶提といひ、 国を跋陀和と名づく。 転輪王あり、 名づけて斯琴といふ。 仏所に往至したてまつる。 仏、 王の意を知りて、 すなはちためにこの念仏三昧四事助歓喜を説きたまふ。 王聞きて歓喜して、 すなはち種々の珍宝を持ちてもつて仏の上に散ず。 王みづから願じてまうさく、 «この功徳を持ちて、 十方の人天をしてみな安穏を得しめん»º と。
不可計 はかりしることができない。
仏言。乃往久遠、不可計阿僧祇劫、有↠仏、号曰↢私訶提↡、国名↢跋陀和↡。有↢転輪王↡、名曰↢斯琴↡。往↢至仏所↡。仏知↢王意↡即為説↢是念仏三昧四事助歓喜↡。王聞歓喜、即持↢種種珍宝↡、以散↢仏上↡。王自願言。持↢是功徳↡令↣十方人天皆得↢安穏↡。
仏のたまはく、 ªその王終りて後、 またみづからその家に生れて太子となる。 梵摩達と名づく。 時に比丘あり、 名づけて珍宝といふ。 つねに*四部の弟子のためにこの念仏三昧を説く。 時に王これを聞きて四事をもつて助けて歓喜せしむ、 すなはち宝物をもつて比丘の上に散ず。 また衣服を持ちてもつてこれを供養す。 王、 千人と比丘の所において出家して、 この念仏三昧を学することを求めて、 つねに千人とともにその師に*承事す。 八千歳を経て日夜に懈ることなし。 ただ一度この念仏三昧を聞くことを得て、 すなはち高明智に入り、 かへりて後さらに六万八千の諸仏を見たてまつる。 一々の仏所においてみなこの念仏三昧を聞きて仏果を成ずることを得たりº と。
承事 つかえること。
仏言。其王終後還自生↢其家↡、作↢太子↡也。名↢梵摩達↡。時有↢比丘↡、名曰↢珍宝↡。常為↢四部弟子↡、説↢是念仏三昧↡。時王聞↠之四事助歓喜、即以↢宝物↡散↢比丘上↡。又持↢衣服↡以供↢養之↡。王与↢千人↡於↢比丘所↡出家求↠学↢是念仏三昧↡、常与↢千人↡共承↢事其師↡。経↢八千歳↡日夜無↠懈。唯得↣一度聞↢是念仏三昧↡、即入↢高明智↡、却後更見↢六万八千諸仏↡。於↢一一仏所↡、皆聞↢是念仏三昧↡、得↠成↢仏果↡。
仏のたまはく、 ªもし人百里・千里・四千里なるも、 この念仏三昧を聞かんと欲せばかならず往きてこれを求むべし。 いかにいはんや近くして学を求めざらんものをやº」 と。
仏言。若人百里・千里・四千里、欲↠聞↢是念仏三昧↡、必往求↠之。何況近而不↢求学↡者。」
またもろもろの往生人等にまうす。 上来所引の仏教をもつて明証となすものなり。 一々つぶさには 「*四事供養功徳品」 のなかに説きたまふがごとし。
四事供養功徳品 一巻本 ¬般舟三昧経¼ 「勧助品」 第七を指す。
又白。諸往生人等、上来所引仏教、以為↢明証↡者。一一具如↢四事供養功徳品中説↡。
【47】問ひていはく、 仏教に准依して*精勤苦行して、 日夜六時に*礼念・*行道・観想・*転誦し、 斎戒して一心に生死を*厭患し、 三塗の苦を畏れて、 この*一形を畢へて浄土の弥陀仏国に生ぜんと誓ふもの、 またおそらくは*残殃尽きずして、 現に十悪と相応せん。 この障ありと覚せば、 いかんが除滅せん。 つぶさに仏経を引きてその方法を示せ。
礼念 礼拝し称念すること。
行道 道場の仏座の周囲をまわり歩くこと。
転誦 経典を読誦すること。
厭患 厭いきらうこと。
問曰。准↢依仏教↡、精勤苦行、日夜六時、礼念・行道・観想・転誦、斎戒一心厭↢患生死↡、畏↢三塗苦↡畢↢此一形↡、誓↠生↢浄土弥陀仏国↡者、又恐残殃不↠尽、現与↢十悪↡相応。覚↠有↢斯障↡者、云何除滅。具引↢仏経↡示↢其方法↡。
答へていはく、 仏経によりて答ふれば、 すなはち ¬*観仏三昧海経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「仏、 父王およびもろもろの大衆のために説きたまふ。 ª過去に仏ましましき、 名づけて空王といふ。 *像法住世の時四比丘あり、 戒を破し*重を犯す。 時に空王仏、 夜空中において声を出して四比丘に告げてのたまはく、 «なんぢの犯すところを*不可救と名づく。 罪を滅せんと欲せば、 わが塔中に入りてわが形像を観じて、 心を至して懺悔すべし、 この罪を滅すべし» と。 時に四比丘万事ともに捨てて、 一心に教を奉けて塔に入り、 仏像の前においてみづから撲ち懺悔すること太山の崩るるがごとく、 地に*婉転して号哭して、 仏 (空王仏) に向かひて日夜相続して死に至るを期となす。 捨命以後、 空王仏国に生ずることを得たりº」 と。 いまこの経をもつて証す。 行者等、 懺悔せんと欲する時、 またこの教の法門によれ。
重 重罪。
不可救 救うことができない。
婉転 のたうちまわること。
答曰。依↢仏経↡答者、即如↢¬観仏三昧海経¼説↡。「仏為↢父王及諸大衆↡説。過去有↠仏、名曰↢空王↡。像法住世時、有↢四比丘↡、破戒犯重。時空王仏、於↢夜空中↡、出↠声告↢四比丘↡言。汝之所犯名↢不可救↡。欲↠滅↠罪者、可↧入↢我塔中↡観↢我形像↡、至心懺悔↥、可↠滅↢此罪↡。時四比丘万事倶捨、一心奉↠教、入↠塔於↢仏像前↡、自撲懺悔如↢大山崩↡。婉↢転於地↡号哭、向↠仏日夜相続至↠死為↠期。捨命已後得↠生↢空王仏国↡。今以↢此経↡証。行者等欲↢懺悔↡時、亦依↢此経法門↡。
「仏のたまはく、 ªもしわが滅後の仏のもろもろの弟子、 諸悪を捨離し*少語の法を楽ひて、 日夜六時に、 よく一時において分ちて少時となして、 少分のうち、 須臾のあひだにおいても仏の白毫を念ずるものは、 もしは見ずとも、 かくのごとき等の人九十六億那由他恒河沙*微塵劫の生死の罪を除却せん。 もしまた人ありてこの白毫を聞きて、 心驚疑せず歓喜信受せば、 この人また八十億劫の生死の罪を除かん。 もしはもろもろの比丘・比丘尼、 もしは男・女人、 *四の根本・十悪等の罪、 五逆罪および*謗大乗を犯さん。 かくのごとき諸人もしよく懺悔すること日夜六時に身心息まず、 五体地に投ずること太山の崩るるがごとく、 号泣して涙を雨らし、 合掌して仏に向かひて、 仏の眉間の*白毫相の光を念ずること一日より七日に至らば、 前の四種の罪軽微なることを得べし。 白毫を観ずるに、 闇くして見えずは、 塔中に入りて眉間の白毫を観ずべし。 一日より三日に至るまで合掌して啼泣せよ。 またしばらく聞くも、 また三劫の罪を除くº と。
少語の法 言葉数を少なくする生活。
微塵劫 非常に長い時間。 微塵は仏教でいう物質の最小単位。
謗大乗 大乗の教えをそしること。
仏言。若我滅後仏諸弟子、捨↢離諸悪↡楽↢少語法↡、日夜六時、能於↢一時↡分為↢少時↡、少分之中於↢須臾間↡、念↢仏白毫↡者、若不↠見、如↠是等人除↢却九十六億那由他恒河沙微塵劫生死之罪↡。若復有↠人聞↢是白毫↡、心不↢驚疑↡、歓喜信受、此人亦除↢八十億劫生死之罪↡。若諸比丘・比丘尼、若男・女人、犯↢四根本、十悪等罪、五逆罪↡、及謗↢大乗↡。如↠是諸人、若能懺悔日夜六時、身心不↠息、五体投↠地如↢大山崩↡、号泣雨↠涙、合掌向↠仏、念↢仏眉間白毫相光↡、一日至↢七日↡、前四種罪、可↠得↢軽微↡。観↢白毫↡、闇不↠見者、応↧入↢塔中↡、観↦眉間白毫↥。一日至↢三日↡、合掌啼泣。又暫聞亦除↢三劫之罪↡。
仏、 父王に告げ、 および阿難に勅したまはく、 ªわれいまなんぢがためにことごとく身相・光明を現ず。 もしは不善心あるもの、 もしは仏の禁戒を毀るもの、 仏を見たてまつることおのおの不同なりº と。 時に五百の*釈子、 仏の色身を見たてまつることなほ*灰人のごとし。 比丘千人、 仏を見たてまつることなほ赤土のごとし。 十六の*居士、 二十四の女人、 仏を見たてまつること純黒なり。 もろもろの比丘尼、 仏を見たてまつること銀色のごとし。 時にもろもろの四衆、 仏にまうさく、 ªわれいま仏の妙色を見たてまつらずº と。 みづから頭髪を抜き、 身を挙げ地に投じて、 啼泣して涙を雨らし、 みづから撲ち婉転す。
釈子 釈迦族の人々。
灰人 灰色の人。
居士 仏教に帰依した在家の男子。
仏告↢父王↡、及勅↢阿難↡。吾今為↠汝悉現↢身相光明↡。若有↢不善心↡者、若毀↢仏禁戒↡者、見↠仏各不同。時五百釈子、見↢仏色身↡猶如↢灰人↡。比丘千人、見↠仏由如↢赤土↡。十六居士、二十四女人、見↠仏純黒。諸比丘尼見↠仏如↢銀色↡。時諸四衆白↠仏。我今者不↠見↢仏妙色↡。自抜↢頭髪↡挙↠身投↠地、啼泣雨↠涙、自撲婉転。
仏のたまはく、 ª善男子、 如来の出現はまさしくなんぢらが罪咎を除滅せんがためなり。 なんぢいま*過去の七仏を称し、 仏のために礼をなすべし。 なんぢが*先世邪見の罪を説かん。 なんぢまさにもろもろの大徳僧衆に向かひて*発露悔過し、 仏語に随順して、 仏法衆のなかにおいて五体地に投ずること太山の崩るるがごとく、 仏に向かひて懺悔すべし。 すでに懺悔しをはらば、 心眼開くることを得て、 仏の色身を見たてまつりて、 心大きに歓喜せんº と。
過去の七仏 釈尊と釈尊以前に出現したという六仏をあわせていう。 毘婆尸仏・尸棄仏・毘舎浮仏・拘留孫仏・拘那含牟尼仏・迦葉仏・釈迦牟尼仏。 このうち前の三仏を過去荘厳劫の出現とし、 後の四仏を現在賢劫の出現とする。
発露悔過 罪をあらわに告白してゆるしを請うこと。
仏言。善男子、如来出現正為↣除↢滅汝等罪咎↡、汝今可↧称↢過去七仏↡、為↠仏作↞礼。説↢汝先世邪見之罪↡。汝当↧向↢諸大徳僧衆↡、発露悔過、随↢順仏語↡於↢仏法衆中↡、五体投↠地如↢大山崩↡、向↠仏懺悔↥。既懺悔已、心眼得↠開、見↢仏色身↡、心大歓喜。
仏、 もろもろの比丘に告げたまはく、 ªなんぢら先世無量劫の時、 邪見にして師を疑ひ、 無戒にして虚しく*信施を受けたり。 この因縁をもつてのゆゑに、 餓鬼・地獄に堕して八万歳苦を受け、 いま出づることを得といへども、 無量世において諸仏を見たてまつらず、 ただ仏の名を聞くのみ。 いま仏身を見たてまつること赤土色のごとし、 まさしく長五尺なりº と。 仏、 語を説きをはりたまふに、 千の比丘等仏に向かひて懺悔し、 五体地に投ずること太山の崩るるがごとく、 悲号して涙を雨らすに、 なほ風吹きて重雲四もに散ずるがごとくにして、 *金顔を顕発す。 すでに仏を見たてまつりをはりて、 比丘歓喜し菩提心を発す。
金顔 仏の金色の顔。
仏告↢諸比丘↡。汝等先世無量劫時、邪見疑↠師、無戒虚受↢信施↡。以↢此因縁↡故堕↢餓鬼・地獄↡、八万歳受↠苦。今雖↠得↠出、於↢無量世↡不↠見↢諸仏↡、但聞↢仏名↡。今見↢仏身↡如↢赤土色↡、正長五尺。仏説↠語已、千比丘等、向↠仏懺悔、五体投↠地如↢大山崩↡、悲号雨↠涙。猶如↢風吹重雲四散↡、顕↢発金顔↡。既見↠仏已、比丘歓喜発↢菩提心↡。
仏、 父王に告げたまはく、 ªこの千の比丘*慇懃に法を求めて、 心に*懈息なし。 仏、 授記を与へて、 同じく南無光照如来と号すº」 (意) と。 以前の懺悔の法は ¬観仏三昧海経¼ の第二・第三巻に出でたり。
懈息 おこたりなまける心。
仏告↢父王↡。此千比丘、慇懃求↠法心無↢懈息↡。仏与↢授記↡同号↢南無光照如来↡。」已前懺悔法、出↢¬観仏三昧海経¼第二・第三巻↡。
【48】¬*仏説観仏三昧海経¼ 「密行品」 第十二巻第十 (意) にのたまはく、 「仏、 阿難に告げたまはく、 ª未来の衆生、 それこの念仏三昧を得んとするもの、 仏のもろもろの相好を観ぜんとするもの、 *諸仏現前三昧を得んとするものあらば、 まさにこの人に教ふべし。 身口意を密にして*邪命を起すことなかれ。 *貢高を生ずることなかれ。 もし邪命および貢高の法を起さば、 まさに知るべし、 この人はこれ*増上慢なり。 仏法を破滅し、 多く衆生をして不善心を起さしむ。 和合僧を乱して、 *異を顕し衆を惑はす。 これ悪魔の伴なり。 かくのごとき悪人また念仏すといへども、 甘露の味はひを失す。 この人の生処は貢高をもつてのゆゑに、 身つねに卑小にして下賤の家に生ず。 貧窮諸衰にして無量の悪業をもつて厳飾となす。 かくのごとき種々衆多の悪事まさにみづから防護して、 永く生ぜざらしむべし。 もしかくのごとき邪命の業を起さば、 この邪命の業はなほ狂象の蓮華の池を壊するがごとく、 この邪命の業もまたかくのごとく善根を壊敗せんº と。
諸仏現前三昧 諸仏が現前に現れ、 未来の成仏を予告するのを感得することができるという禅定の境地。
邪命 よこしまな生活。
貢高 おごりたかぶること。
増上慢 いまださとりを得ていないのに、 さとったと思っておごりたかぶること。
異 異解。異説。
¬仏説観仏三昧海経¼密行品第十二巻第十。「仏告↢阿難↡。未来衆生、其有↠得↢是念仏三昧↡者、観↢仏諸相好↡者、得↢諸仏現前三昧↡者、当↠教↢是人↡。密↢身口意↡、莫↠起↢邪命↡、莫↠生↢貢高↡。若起↢邪命及貢高法↡、当↠知、此人是増上慢。破↢滅仏法↡、多使↣衆生起↢不善心↡。乱↢和合僧↡、顕↠異惑↠衆。是悪魔伴。如↠是悪人、雖↢復念仏↡、失↢甘露味↡。此人生処、以↢貢高↡故身恒卑小、生↢下賤家↡、貧窮諸衰、無量悪業以為↢厳飾↡。如↠此種種衆多悪事、当↣自防護令↢永不↟生。若起↢如↠是邪命業↡者、此邪命業、猶如↣狂象壊↢蓮華池↡。此邪命業、亦復如↠是、壊↢敗善根↡。
仏、 阿難に告げたまはく、 ª念仏することあるものは、 まさにみづから防護して、 *放逸せしむることなかるべし。 念仏三昧の人もし防護せずして貢高を生ぜば、 邪命の悪風憍慢の火を吹きて善法を焼滅せん。 善法とはいはゆる一切無量の禅定、 もろもろの念仏の法にして、 心想より生ず。 これを功徳蔵と名づくº と。
放逸 おこたりなまけること。
仏告↢阿難↡。有↢念仏↡者、当↢自防護勿↟令↢放逸↡。念仏三昧人、若不↢防護↡、生↢貢高↡者、邪命悪風吹↢驕慢火↡、焼↢滅善法↡。善法者、所謂一切無量禅定、諸念仏法、従↢心想↡生。是名↢功徳蔵↡。
仏、 阿難に告げたまはく、 ªこの経を*繋想不動と名づく。 かくのごとく受持すべし。 また観仏白毫相と名づく。 かくのごとく受持すべし。 また*逆順観如来身分と名づけ、 また*一々毛孔分別如来身分と名づけ、 また*観三十二相八十随形好諸智慧光明と名づけ、 また観仏三昧海と名づけ、 また念仏三昧門と名づけ、 また*諸仏妙華荘厳色身経と名づく。 なんぢよく受持して、 つつしみて忘失することなかれº」 と。
繋想不動 想いをかけて動かないという意。
逆順観如来身分 如来の身分を順観・逆観するという意。 順観は如来の身を上から下に観想すること、 逆観はその反対に下から上に観想することをいう。
一々毛孔分別如来身分 ひとつひとつの毛孔に如来の身をみきわめるという意。
観三十二相… 仏の三十二相・八十随形好およびもろもろの智慧の光明を観ずるという意。
諸仏… 諸仏の妙なる華で色身をかざる経という意。
仏告↢阿難↡。此経名↢繋想不動↡、如↠是受持。亦名↢観仏白毫相↡、如↠是受持。亦名↢逆順観如来身分↡、亦名↢一一毛孔分別如来身分↡、亦名↢観三十二相八十随形好諸智慧光明↡、亦名↢観仏三昧海↡、亦名↢念仏三昧門↡、亦名↢諸仏妙華荘厳色身経↡。汝好受持慎勿↢忘失↡。」
【49】また ¬大集経¼ の 「済竜品」 (意) に説きたまふがごとし。 「時に娑伽羅竜王、 仏を請じて宮に入れたてまつりて、 供を設く。 仏、 竜の請を受けたまふ。 仏、 聖衆と食しをはりたまへり。 時に大竜王、 また説法を請ふ。 時に竜王の太子あり、 名づけて華面といふ。 みづから仏前に起ち*四支を地に布きて、 悲声をもつて懺悔す。 ª過去になんの*罪業を作りてかこの竜身を受けたるº」 と。 またこの経をもつて証す。 またこれ懺悔至誠の方法なり、 知るべし。 一切の経内にみなこの文あり。 広く録すべからず。 いま*三部の経を略抄して、 もつて後学に示す。 至心ならざるを除く。 なすものはみな知れ。 仏は虚言したまはず。
四支 両手両足。
三部の経 ¬
観仏三昧経¼ ¬大集経¼ ¬木槵経¼ を指す。
又如↢¬大集経¼済竜品説↡。「時娑伽羅竜王、請↠仏入↠宮設↠供。仏受↢竜請↡。仏与↢聖衆↡食訖。時大竜王、又請↢説法↡。時竜王太子、名曰↢華面↡。自起↢仏前↡、四支布↠地悲声懺悔。過去作↢何罪業↡受↢此竜身↡。」又以↢此経↡証。亦是懺悔至誠方法。応↠知、一切経内皆有↢此文↡。不↠可↢広録↡。今略↢抄三部経↡、以示↢後学↡。除↠不↢至心↡。作者皆知。仏不↢虚言↡。
【50】また ¬*木槵経¼ (意) に説きたまふがごとし。 「時に難陀国の王あり、 波瑠璃と名づく。 使ひをして仏所に来到せしむ。 仏足を*頂礼して、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 わが国辺小にして*頻歳寇賊あり。 *五穀踊貴し疫疾流行して人民困苦す。 われつねに安臥することを得ず。 如来の*法蔵は多く、 ことごとく深広なり。 われ憂務ありて修行することを得ず。 ただ願はくは世尊、 ことに*慈愍を垂れてわれに*要法を賜ひ、 われをして日夜に易く修行することを得、 未来世のなかに衆苦を遠離せしめたまへº と。
頻歳寇賊 毎年のように賊の侵入があること。
五穀踊貴 穀物の値段が高くなること。
法蔵 仏の教えの蔵。
又如↢¬木槵経¼説↡。「時有↢難陀国王↡、名↢波瑠璃↡。遣↠使来↢到仏所↡、頂↢礼仏足↡白↠仏言。世尊、我国辺小、頻歳寇賊、五穀踊貴、疫疾流行、人民困苦。我恒不↠得↢安臥↡。如来法蔵多悉広、我有↢憂務↡不↠得↢修行↡。唯願世尊、特垂↢慈愍↡賜↢我要法↡、使↧我日夜易↠得↢修行↡、未来世中、遠↦離衆苦↥。
仏、 使ひに告げてのたまはく、 ªなんぢが大王に語れ。 もし*煩悩障・報障を滅せんと欲せば、 まさに*木槵子一百八を貫きて、 もつてつねにみづから随ふべし。 もしは行、 もしは坐、 もしは臥に、 つねにまさに心を至して分散の意なく、 口に*仏陀・達磨・僧伽の名を称してすなはち一の木槵子を過ぐるべし。 かくのごとくもしは十、 もしは二十、 もしは百、 もしは千、 乃至百千万せよ。 もしよく二十万遍を満てて身心乱れずしてもろもろの*諂曲なくは、 捨命して*第三の炎摩天に生ずることを得て、 衣食自然にしてつねに安楽を受けん。 百八の*結業を除断することを得て、 生死の流に背き涅槃の道に趣きて、 無上の果を獲んº と。
木槵子 むくろじの種子。
諂曲 いつわり。
結業 結は煩悩の意。 煩悩のはたらき。
仏告↠使言。語↢卿大王↡、若欲↠滅↢煩悩障・報障↡者、当↧貫↢木槵子一百八↡、以常自随↥。若行若坐若臥、恒当↧至↠心無↢分散意↡、口称↢仏陀・達磨・僧伽名↡、乃過↦一木槵子↥。如↠是若十、若二十、若百、若千、乃至百千万。若能満↢二十万徧↡、身心不↠乱、無↢諸諂曲↡者、捨命得↠生↢第三炎摩天↡、衣食自然常受↢安楽↡。得↣除↢断百八結業↡、背↢生死流↡、趣↢涅槃道↡、獲↢無上果↡。
使ひ還りて王にまうす。 王大きに歓喜して、 頭面をもつて仏を礼してはるかに世尊にまうさく、 ª尊教を頂受して、 われまさに奉行すべしº と。 すなはち吏民に勅して木槵子を*営弁して、 もつて千具となし、 *六親国戚にみな一具を与ふ。 王つねに誦念して、 軍旅に親しむといへどもまた廃捨せず。 またこの念をなす。 ª世尊の大慈あまねく一切に応ず。 もしわれこの善をもつて長く苦海に淪むことを免るることを得ば、 如来まさに現じてわがために法を説きたまふべしº と。 王、 *願楽をもつて心を逼めて三日食せず。 仏すなはち身を現じて、 もろもろの聖衆と宮内に来入して、 王のために法を説きたまふ」 と。
営弁 ととのえること。 用意すること。
六親国戚 国王の親族。 六親は父・母・兄・弟・妻・子をいう。
使還啓↠王。王大歓喜頭面礼↠仏遥白↢世尊↡。頂↢受尊教↡我当↢奉行↡。即勅↢吏民↡、営↢弁木槵子↡、以為↢千具↡、六親国戚皆与↢一具↡。王常誦念、雖↠親↢軍旅↡亦不↢廃捨↡。又作↢是念↡、世尊大慈、普応↢一切↡、若我此善、得↠免↣長淪↢苦海↡、如来当現為↠我説↠法。王以↠願↠楽、逼↠心三日不↠食。仏即現↠身与↢諸聖衆↡、来↢入宮内↡、為↠王説↠法。」
またこれをもつて証す。 ただこれ王の心真実なれば、 念々に障除こり、 仏、 罪滅を知りたまひて、 念に応じて現じたまふ、 知るべし。
又以↠此証。直是王心真実、念念障除、仏知↢罪滅↡、応↠念而現。応↠知。
観念阿弥陀仏相海三昧功徳法門経 一巻