無量寿経優婆提舎願生偈註 巻上
*婆藪槃頭菩薩造 *曇鸞法師註解
◎浄土論大綱 ○本論分斉
【1】 ▼つつしみて*龍樹菩薩の ¬十住毘婆沙¼ (*易行品・意) を案ずるに、 いはく、 「▲菩薩、 ▼*阿毘跋致を求むるに、 二種の道あり。 一には↓*難行道、 二には↓*易行道なり」 と。
◎謹案↢龍樹菩薩¬十住婆沙¼↡云。菩薩求↢阿跋致↡有↢二種道↡。一者難行道、二者易行道。
◎ 原漢文 (真宗聖教全書) の底本は本派本願寺蔵建長八年宗祖加点本。 本派本願寺蔵鎌倉時代刊本、 宗教大学蔵嘉永年間刊本、 本派本願寺蔵版、 大派依用十行本と対校。
・ 難行道
▼「↑難行道」 とは、 いはく、 *五濁の世、 *無仏の時において阿毘跋致を求むるを難となす。 この難にすなはち多途あり。 ほぼ*五三をいひて、 もつて義の意を示さん。 一には*外道の*相善は*菩薩の法を乱る。 二には*声聞は自利にして大慈悲を障ふ。 三には無顧の悪人は他の勝徳を破る。 四には*顛倒の善果はよく*梵行を壊つ。 五にはただこれ自力にして他力の持つなし。 かくのごとき等の事、 目に触るるにみなこれなり。 たとへば陸路の歩行はすなはち苦しきがごとし。
無仏の時 すでに釈尊が入滅されて仏がおられない時代。
五三 少々。 若干。
菩薩の法 自利利他の行法。
顛倒の善果 人間・天上界に生れる果報。 迷いの中の善果であるので顛倒という。
難行道者、謂於↣五濁之世於↢*无仏時↡求↢阿跋致↡為↠難。此難乃有↢多途↡、粗言↢五三↡以示↢義意↡。一者外道相修*醤反善*亂↢菩薩法↡、二者声聞自利鄣↢大慈悲↡、三者*无↠顧↠悪人破↢他勝徳↡、四者顛倒善果能壊↢梵行↡、五者唯是自力无↢他力持↡。如↠斯等事触↠目皆是。譬如↢陸路歩行則苦↡。
无 聖教全書まま。 註なし。 以下同。
醤 本願寺本、 大派依用本では 将。
乱 略字 (新字) は底本まま。 以下同。 (原漢文中での 「乱」 は旧字 「亂」 の文字コードを使用)
無顧悪人 返り点は聖教全書まま。 「悪を顧みることなき人」
・ 易行道
▼「↑易行道」 とは、 いはく、 ただ*信仏の因縁をもつて浄土に生ぜんと願ずれば、 仏願力に乗じて、 すなはちかの清浄の土に往生を得、 *仏力住持して、 すなはち▼*大乗*正定の聚に入る。 正定はすなはちこれ阿毘跋致なり。 たとへば水路に船に乗ずればすなはち楽しきがごとし。
仏力住持して 仏の本願力が支えたもってという意。
易行道者、謂但以↢信仏因縁↡願↠生↢浄土↡。乗↢仏願力↡便得↣往↢生彼清浄土↡。仏力住持即入↢大乗正定之聚↡、正定即是阿跋致。譬如↢水路乗↠船則楽↡。
▼この ¬↓無量寿経↓優婆提舎¼ (浄土論) は、 けだし*上衍の極致、 *不退の風航なるものなり。
上衍 衍は梵語ヤーナ (yāna) の音写。 乗り物の意。 上乗とも漢訳される。 大乗のこと。 →
大乗
不退の風航 風航は帆かけ船のこと。 退転することなくかならず仏にならしめる教法を船に喩えたもの。
此¬无量寿経優*波提舎¼盖上*之極致不退之風航者也。
波 諸本では 婆。 以下同。
(外字) 本願寺本、 大派依用本では 衍。
◎浄土論大綱 ○興起体製
【2】 ▼「↑無量寿」 はこれ安楽浄土の如来の別号なり。*釈迦牟尼仏、 *王舎城および*舎衛国にましまして、 大衆のなかにおいて*無量寿仏の*荘厳功徳を説きたまへり。 すなはち仏 (阿弥陀仏) の*名号をもつて*経の体となす。 後の聖者婆藪槃頭菩薩 (天親)、 如来大悲の教を*服膺して経に傍へて願生の*偈を作れり。 また*長行を造りてかさねて釈す。
経 浄土の三部経を指す。
服膺 心にしっかりとめて忘れないこと。
「无量寿」是安楽浄土如来別*號。釈迦牟尼仏在↢王舎城及舎衛国↡於↢大衆之中↡説↢无量寿仏荘厳功徳↡。即以↢仏名號↡為↢経躰↡。後聖者婆*数槃頭菩薩、服↢膺一升反如来大悲之教↡、傍↠経作↢願生偈↡。復造↢長行↡重*釈↢梵言↡。
号 略字 (新字) は底本まま。 以下同。 (原漢文中での 「号」 には旧字 「號」 の文字コードを使用)
数 諸本では 薮。 以下同。
釈梵言 返り点は聖教全書まま。 「梵言を釈す」。 このときの 「梵言」 は天神菩薩の偈を指す。
*梵に 「↑優婆提舎」 といふは、 この間 (中国) に正名あひ訳せるなし。 もしは*一隅を挙げて名づけて論となすべし。 正名訳せることなき所以は、 この間に本仏ましまさざるをもつてのゆゑなり。 この間の書のごときは、 *孔子につきて 「経」 と称す。 余人の制作みな名づけて 「子」 となす。 *国史・国紀の徒*各別の体例なり。 しかるに仏の所説の*十二部経のなかに論議経あり、 「*優婆提舎」 と名づく。 もしまた仏のもろもろの弟子、 仏の経教を解して仏義と相応すれば、 仏また許して 「優婆提舎」 と名づく。 仏法の相に入るをもつてのゆゑなり。 この間に論といふは、 ただこれ論議のみ。 あにまさしくかの名を訳することを得んや。
梵 梵語 (サンスクリット)。 インドの古典語。
一隅を挙げて 一部分の意味によって。
国史国紀 国史は国王の命などによって公的に記された国の歴史書。 国紀は私人によって私的に記された国の歴史書。
各別の体例 それぞれちがった体裁である。
「優婆提舎」此間无↢正名相訳↡、若挙↢一隅↡可↢名為↟論。所↣以无↢正名訳↡者、以↢此間本无↟仏故。如↢此間書↡、就↢孔子↡而称↠経、余人制作皆名為↠子。国史・国紀之徒各別躰例*然。仏所説十二部経中有↢論議経↡、名↢優波提舎↡。若復仏諸弟子、解↢仏経教↡与↢仏義↡相応者、仏亦許名↢優波提舎↡、以↠入↢仏法相↡故。此間云↠論、直是論議而已、豈得↣正訳↢彼名↡耶。
然 句点位置は聖教全書まま。 「各別の体例しかなり」
また女人を、 子において母と称し、 兄において妹といふがごとし。 かくのごとき等の事、 みな義に随ひて名別なり。 もしただ女の名をもつて汎く母妹を談ずるに、 すなはち*女の大体を失せざれども、 あに尊卑の義を含まんや。
女の大体… 女性の一般的性質はあらわしているけれども。
又如↢女人於↠子称↠母、於↠兄云↟妹。如↠是等事皆随↠義名別、若但以↢女名↡汎談↢母妹↡乃不↠失↢女之大躰↡、豈含↢尊卑之義↡乎。
ここにいふところの論もまたかくのごとし。 ここをもつて仍 因なり りて*梵音を存じて優婆提舎といふ。
梵音を存じて 梵語 (サンスクリット) を音写してという意。
此所↠云論亦復如↠是、是以仍因而音存↢梵音↡曰↢優波提舎↡。
・ 本論大科
【3】 この ¬論¼ (浄土論) の始終におほよそ二重あり。 一にはこれ総説分、 二にはこれ解義分なり。 総説分とは、 前の五言の偈尽くるまでこれなり。 解義分とは、 「▲論じて曰はく」 以下長行尽くるまでこれなり。
此論始終凡有↢二重↡。一是捴説分、二是解義分。捴説分者前五言偈尽是、解義分者論曰已下長行尽是。
二重となす所以は二義あり。 偈はもつて経を誦す。 総摂せんがためのゆゑなり。 論はもつて偈を釈す。 解義のためのゆゑなり。
所↣以為↢二重↡者、有↢二義↡。*偈以↢誦経↡為↢捴摂↡故、論以↢釈偈↡為↢解義↡故。
偈~故 返り点は聖教全書まま。 「偈は誦経をもって総摂とするがゆゑに、 論は釈偈をもって解義するがゆゑなり」
◎浄土論大綱 ○題号
【4】 「無量寿」 とは無量寿如来をいふ。 寿命長遠にして思量すべからず。 「経」 とは常なり。 いふこころは安楽国土の仏および菩薩の清浄荘厳功徳と国土の清浄荘厳功徳とは、 よく衆生のために*大饒益をなす。 つねに世に行はるべきがゆゑに名づけて経といふ。 「優婆提舎」 はこれ仏の論議経の名なり。 「願」 はこれ*欲楽の義なり。 「生」 は天親菩薩、 かの安楽浄土の如来の浄華のなかに生ぜんと願ずる生なり。 ゆゑに願生といふ。 「偈」 はこれ句数の義、 五言の句をもつて略して仏経を誦するがゆゑに名づけて偈となす。
大饒益 大きな利益。
欲楽 ねがいもとめるという意。
「無量寿」者、*言无量寿如来寿命長遠不↠可↢思量↡也。「経」者常也、言安楽国土仏及菩薩清浄荘厳功徳・国土清浄荘厳功徳、能与↢衆生↡作↢大饒益↡、可↣常行↢于世↡故名曰↠経。「優波提舎」是仏論議経名。「願」是欲楽義、「生」者天親菩薩*願↠生↢彼安楽浄土↡、如来浄花中生故曰↢願生↡。「偈」是句数義、以↢五言句↡略誦↢仏経↡故名為↠偈。
言… 返り点まま。 「言ふこころは…」
願生ab生故 返り点まま。 「aに生ぜんと願じ、 bに生ずるがゆゑに」
◎浄土論大綱 ○撰号
「婆藪」 を訳して 「天」 といふ。 「槃頭」 を訳して 「親」 といふ。 この人を*天親と字く。 *事は ¬*付法蔵経¼ にあり。 「菩薩」 とは、 もしつぶさに*梵音を存ぜば「*菩提薩埵」 といふべし。 「菩提」 は、 これ仏道の名なり。 「薩埵」 は、 あるいは衆生といひ、 あるいは勇健といふ。 仏道を求むる衆生、 *勇猛の健志あるがゆゑに菩提薩埵と名づく。 いまただ菩薩といふは訳者 (菩提流支) の略せるのみ。 「造」 はまた作なり。 人によりて法を重んずることを庶ふがゆゑに某造といふ。
事 一代の事跡。
梵音を存ぜば 梵語 (サンスクリット) を音写すればという意。
菩提薩埵 梵語ボーディサットヴァ (bodhisattva) の音写。 →
菩薩
勇猛 心をはげましてつとめること。
訳↢「婆*藪」↡云↠天、訳↢「槃頭」↡言↠親、此人字↢天親↡事在↢¬付法蔵経¼↡。「菩薩」者、若具存↢梵音↡応↠云↢菩提薩埵↡。菩提者是仏道名、薩埵或云↢衆生↡、或云↢勇*揵↡、求↢仏道↡衆生有↢勇猛健志↡故名↢菩提薩埵↡。今但言↢菩薩↡訳者略耳。「造」亦作也、庶↢因↠人重↟法故云↢某造↡、
藪 鎌倉時代刊本では 数。
揵 諸本では 健。
このゆゑに 「無量寿経優婆提舎願生偈婆藪槃頭菩薩造」 といへり。 ¬論¼ (浄土論) の名目を解しをはりぬ。
是故言↢「无量寿経優波提舎願生偈婆*数槃頭菩薩造」↡。解↢論名目↡竟。
数 諸本では 藪。
◎総説分 ○章門分別
【5】 偈のなかを分ちて*五念門となす。 下の長行に釈するところのごとし。 第一行の四句にあひ含みて三念門あり。 上の三句はこれ礼拝・讃嘆門なり。 下の一句はこれ作願門なり。 第二行は論主 (天親) みづから、 「われ仏経 (浄土三部経) によりて ¬論¼ を造りて仏教と相応す、 服するところ*宗ある」 ことを述ぶ。 なんがゆゑぞいふとならば、 これ優婆提舎の名を成ぜんがためのゆゑなり。 またこれ上の三門を成じて下の二門を起す。 ゆゑにこれに次いで説けり。 第三行より二十一行尽くるまで、 これ観察門なり。 末後の一行はこれ回向門なり。 偈の章門を分ちをはりぬ。
宗 もとづくところ。 本源。 帰趣。
偈中分為↢五念門↡、如↢下長行所↟釈。第一行四句相含有↢三念門↡、上三句是*拝・讃嘆門、下一句是作願門。第二行論主自述↧我依↢仏経↡造↠論与↢仏教↡相応所↠服有↞宗。何故云、此為↠成↢優波提舎名↡故。亦是成↢上三門↡起↢下二門↡、所以次↠之説。従↢第三行↡尽↢廿一行↡是観察門。末後一行是迴向門。分↢偈章門↡竟。
(外字) 略字は聖教全書まま。
◎総説分 ○相含三念門
【6】 ▲↓世尊↓我一心 ↓帰命尽十方 無礙光如来 ↓願生安楽国
「↑世尊」 とは諸仏の通号なり。 智を論ずればすなはち義として達せざるはなし。 断を語ればすなはち*習気余りなし。 *智断具足してよく世間を利し、 世のために尊重せらるるゆゑに世尊といふ。 ここにいふ意は、 釈迦如来に帰したてまつるなり。 なにをもつてか知ることを得となれば、 下の句に 「▲我依修多羅」 といへばなり。 天親菩薩、 釈迦如来の*像法のなかにありて釈迦如来の経教に順ず。 ゆゑに生ぜんと願ず。 生ぜんと願ずるに宗あり。 ゆゑにこの言は釈迦に帰したてまつると知るなり。 もしこの意を謂ふに、 あまねく諸仏に告ぐることまた嫌ふことなし。 ▼それ菩薩の仏に帰することは、 孝子の父母に帰し、 忠臣の君后に帰して、 *動静おのれにあらず、 *出没かならず由あるがごとし。 恩を知りて徳を報ず、 理よろしく先づ*啓すべし。 ▼また所願軽からず。 もし如来、 威神を加したまはずは、 まさになにをもつてか達せんとする。 *神力を加することを乞ふ。 ゆゑに仰ぎて告ぐるなり。
智断 智徳と断徳。 智徳はあらゆる道理に達しているという徳。 断徳は煩悩を余すところなく断じているという徳。
動静おのれにあらず 身勝手な立居振舞をしない。
出没 出処進退のこと。
啓す 申す。 申し上げる。
世尊我一心 帰↢命尽十方 无光如来↡ 願↠生↢安楽国↡。
「世尊」者、諸仏通號、論↠智則義无↠不↠達、語↠断則習気无↠余、智断具足能利↢世間↡、為↠世尊重故曰↢世尊↡。此言意帰↢釈迦如来↡。何以得↠知、下句言↢「我依修多羅」↡。天親菩薩、在↢釈迦如来像法之中↡、順↢釈迦如来経教↡、所以願↠生。願生有↠宗、故知此言帰↠於↢釈迦↡。若謂↢此意↡、遍告↢諸仏↡亦復无↠嫌。夫菩薩帰↠仏、*如↧孝子之帰↢父母↡忠臣之帰↢君后↡、動静非↠己出没必由↦知↠恩報↞徳、理宜↢先啓↡。又所願不↠軽、若如来不↠加↢威神↡将↢何以達↡、乞↠加↢神力↡、所以仰告。
如~由知恩報徳 返り点まま。 「~恩を知りて徳を報ずるによるがごとし」
・ 論主自督
▼「↑我一心」 とは、 天親菩薩の*自督の詞なり。 いふこころは、 無礙光如来を念じて安楽に生ぜんと願ず。 心々相続して他の想*間雑することなしとなり。
自督 みずからをすすめ (勧)、 ひきい (率)、 正してゆく (正) ようなはたらきをもつ信心のこと。
「我一心」者、天親菩薩自督之詞、言念↢无光如来↡願↠生↢安楽↡、心心相続无↢他想間雑↡。
問ひていはく、 仏法のなかには我なし。 このなかになにをもつてか我と称する。 答へていはく、 「我」 といふに三の根本あり。 一にはこれ*邪見語、 二にはこれ*自大語、 三にはこれ*流布語なり。 いま 「我」 といふは、 天親菩薩の自指の言にして、 流布語を用ゐる。 邪見と自大とにはあらず。
邪見語 我を実体視し、 それにとらわれるよこしまな見解を表す言葉。 →
邪見
自大語 自分が他よりすぐれていると思う慢心を表す言葉。
流布語 世間一般に使われる言葉。 日常語。
問曰。仏法中无↠我、此中何以称↠我。答曰。言↠我有↢三根本↡。一是邪見語、二是自大語、三是流布語。今言↠我者天親菩薩*自指↠之言、用↢流布語↡、非↢邪見自大↡也。
自指之言 返り点まま。 「自らこれを指しふる言なり」
▼「↑帰命尽十方無礙光如来」 とは、 「↓帰命」 はすなはちこれ礼拝門なり。 「↓尽十方無礙光如来」 はすなはちこれ讃嘆門なり。
「帰命尽十方无光如来」者、帰命即是拝門、尽十方无光如来即是讃嘆門。
・
▼なにをもつてか 「↑帰命」 はこれ礼拝なりと知るとなれば、 龍樹菩薩の、 阿弥陀如来の讃 (易行品) を造れるなかに、 あるいは 「▲*稽首礼」 といひ、 あるいは 「▲*我帰命」 といひ、 あるいは 「▲*帰命礼」 といへり。 この ¬論¼ (浄土論) の長行のなかにまた 「▲五念門を修す」 といへり。 五念門のなかに礼拝はこれ一なり。 天親菩薩すでに往生を願ず。 あに礼せざるべけんや。 ゆゑに知りぬ、 帰命はすなはちこれ礼拝なり。 しかるに礼拝はただこれ*恭敬にして、 かならずしも帰命にあらず。 帰命はかならずこれ礼拝なり。 もしこれをもつて推せば、 帰命を重しとなす。 偈は*己心を申ぶ。 よろしく帰命といふべし。 論は偈の義を解す。 汎く礼拝を談ず。 *彼此あひ成じて義においていよいよ顕れたり。
稽首礼 頭を地につけて礼拝すること。
己心 自己の領解。 みずからの信心。
彼此 長行とこの偈頌のこと。
何以*知、帰命是拝。龍樹菩薩造↢阿弥陀如来讃↡中、或言↢「稽首」↡、或言↢「我帰命」↡、或言↢「帰命」↡。此論長行中、亦言↠修↢五念門↡。五念門中、拝是一。天親菩薩既願↢往生↡、豈容↠不↠、故知帰命即是拝。然拝但是恭敬、不↢必帰命↡、帰命必是拝。若以↠此推↢帰命↡為↠重。偈申↢己心↡、宜↠言↢帰命↡。論解↢偈義↡、汎談↢拝↡。彼此相成、於↠義弥顕。
知…礼拝 返り点まま。 (内容的には知↢…礼拝↡が適切か)
・ 讃嘆門
▼なにをもつてか 「↑▼尽十方無礙光如来」 はこれ讃嘆門なりと知るとならば、 下の長行のなかに、 「▲いかんが讃嘆門。 いはく、 かの如来の名を称するに、 かの如来の光明智相のごとく、 かの*名義のごとく、 如実に修行して相応せんと欲するがゆゑなり」 といへり。 *舎衛国所説の ¬無量寿経¼ (小経) によらば、 仏、 阿弥陀如来の名号を解したまはく、 「▲なんがゆゑぞ阿弥陀と号する。 かの仏の光明無量にして、 十方国を照らしたまふに*障礙するところなし。 このゆゑに阿弥陀と号す。 またかの仏の寿命およびその人民も、 無量無辺*阿僧祇なり。 ゆゑに阿弥陀と名づく」 と。
名義 名号の意義、 いわれ。
何以知↢尽十方无光如来是讃嘆門↡、下長行中言。「云何讃嘆門、謂称↢彼如来名↡、如↢彼如来光明智相↡、如↢彼名義↡、欲↢如↠実修行相応↡故」。依↢舎衛国所説¬无量寿経¼↡、仏解↢阿弥陀如来名號↡「何故號↢阿弥陀↡、彼仏光明无量照↢十方国↡无↠所鄣↡、是故號↢阿弥陀↡」。又「彼仏寿命及其人民、无量无辺阿僧祇、故名↢阿弥陀↡」。
問ひていはく、 もし無礙光如来の光明無量にして、 十方国土を照らしたまふに障礙するところなしといはば、 この間の衆生、 なにをもつてか光照を蒙らざる。 光の照らさざるところあらば、 あに礙あるにあらずや。 答へていはく、 礙は衆生に属す。 光の礙にはあらず。 たとへば日光は*四天下にあまねけれども、 *盲者は見ざるがごとし。 日光のあまねからざるにはあらず。 また▼*密雲の洪きに 潅なり げども、 *頑石の潤はざるがごとし。 雨の洽 なり さざるにはあらず。
密雲 深くたれこめた雨雲。
頑石 固い石。
問曰。若言↧无光如来光明无量照↢十方国土↡无↞所↢鄣↡者、此間衆生何以不↠蒙↢光照↡、光有↠所↠不↠照、豈非↠有↠耶。答曰。属↢衆生↡非↢光↡也。譬如↧日光周↢四天下↡而、盲者不↠見↥、非↢日光不↟周也。亦如↢密雲洪潅之句反而頑石不↟潤、非↢雨不↟洽下捨反也。
もし一仏、 *三千大千世界を主領すといはば、 これ声聞論のなかの説なり。 もし諸仏あまねく十方無量無辺世界を領すといはば、 これ大乗論のなかの説なり。 ▼天親菩薩、 いま、 「尽十方無礙光如来」 といふは、 すなはちこれかの如来の名により、 かの如来の光明智相のごとく讃嘆するなり。 ゆゑに知りぬ、 この句はこれ讃嘆門なり。
若言↣一仏主↢領三千大千世界↡、是声聞論中説。若言↣諸仏遍領↢十方无量无辺世界↡、是大乗論中説。天親菩薩、今言↢尽十方无光如来↡、即是依↢彼如来名↡、如↢彼如来光明智相↡讃嘆。故知此句是讃嘆門。
・ 作願門
▼「↑願生安楽国」 とは、 この一句はこれ作願門なり。 天親菩薩の*帰命の意なり。 それ 「安楽」 の義は、 つぶさに下の観察門のなかにあり。
「願生安楽国」者、此一句是作願門、天親菩薩帰命之意也。其安楽義具在↢下観察門中↡。
・ 願生問答
▼問ひていはく、 *大乗経論のなかに、 処々に 「衆生は*畢竟無生にして*虚空のごとし」 と説けり。 いかんが天親菩薩 「願生」 といふや。 答へていはく、 「衆生は無生にして虚空のごとし」 と説くに二種あり。 一には、 凡夫の謂ふところのごとき実の衆生、 凡夫の見るところのごとき実の生死は、 この所見の事、 畢竟じて所有なきこと、 *亀毛のごとく、 虚空のごとし。 二には、 いはく、 諸法は*因縁生のゆゑにすなはちこれ不生なり。 所有なきこと虚空のごとし。 天親菩薩の願ずるところの生は、 これ*因縁の義なり。 因縁の義のゆゑに仮に生と名づく。 凡夫の、 実の衆生、 実の生死ありと謂ふがごときにはあらず。
大乗経論 ¬維摩経¼ ¬大智度論¼ 等の経論のこと。
畢竟無生 本来、 消滅変化のないこと。
亀毛 亀の甲羅についた藻を毛と誤認するように、 本来ないものが実在するかのようにあるあり方。
問曰。大乗経論中、処処説↣衆生畢竟无生如↢虚空↡、云何天親菩薩言↢願生↡耶。答曰。説↣衆生无生如↢虚空↡有↢二種↡。一者*如↢凡夫↡所↠謂実衆生、*如↢凡夫所↠見実生死↡、此所見事畢竟无↠所↠有如↢亀毛↡如↢虚空↡。二者謂諸法因縁生故即是不生、无↠所↠有如↢虚空↡。天親菩薩所↠願生者是因縁義、因縁義故仮名↠生、非↠如↢凡夫謂↟有↢実衆生実生死↡也。
如a所謂b 返り点まま。 「aのごとき所謂b」
如a所見b 返り点まま。 「aの見るところのbのごとき」
・ 往生問答
▼問ひていはく、 なんの義によりてか*往生と説く。 答へていはく、 この間の*仮名人のなかにおいて五念門を修するに、 前念は後念のために因となる。 *穢土の仮名人と浄土の仮名人と、 決定して一なるを得ず、 決定して異なるを得ず。 前心後心またかくのごとし。 なにをもつてのゆゑに。 もし一ならばすなはち因果なく、 もし異ならばすなはち相続にあらざればなり。 この義は*一異の門を観ずる論のなかに*委曲なり。
仮名人 仮名とは実体のないものに仮につけた名という意で、 人といっても
五蘊 (五陰) が
因縁によって仮に和合したものであるから仮名人という。 →
五陰
一異の門を観ずる論 龍樹菩薩の ¬中論¼ 等のこと。
委曲 くわしいこと。
問曰。依↢何義↡説↢往生↡。答曰。於↢此間仮名人中↡修↢五念門↡、前念与↢後念↡作↠因。穢土仮名人、浄土仮名人、不↠得↢決定一↡不↠得↢決定異↡、前心・後心、*亦如↠是。何以故、若一則无↢因果↡、若異則非↢相続↡、是義観↢一異門↡論中委曲、
亦 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「亦復」。
▼第一行の三念門を釈しをはりぬ。
釈↢第一行三念門↡竟。
◎総説分 ○成上起下偈
【7】 次は 「優婆提舎」 の名を成じ、 また上を成じて下を起す偈なり。
次成↢優波提舎名↡、又成↠上起↢下偈↡。
▲我依↓修多羅 ↓真実功徳相 ↓説願偈総持 与仏教相応
この一行、 いかんが 「*優婆提舎」 の名を成じ、 いかんが*上の三門を成じ*下の二門を起す。 偈に 「我依修多羅 与仏教相応」 といふ。 「*修多羅」 はこれ仏経の名なり。 われ仏経の義を論じて、 経と相応す。 仏法の相に入るをもつてのゆゑに優婆提舎と名づく。 名、 成じをはりぬ。 上の三門を成じて下の二門を起すとは、 ▼いづれのところにか依り、 なんのゆゑにか依り、 いかんが依る。 いづれのところにか依るとは、 修多羅に依る。 なんのゆゑにか依るとは、 如来はすなはち*真実*功徳の相なるをもつてのゆゑなり。 いかんが依るとは、 五念門を修して相応するがゆゑなり。 上を成じ下を起しをはりぬ。
上の三門 五念門の中の
礼拝・
讃嘆・
作願の三門。 →
五念門
我依↢修多羅 真実功徳相↡ 説↢願偈↡捴持 与↢仏教↡相応。
此一行云何成↢優波提舎名↡、云何成↢上三門↡起↢下二門↡。偈言↢「我依修多羅与仏教相応」↡。修多羅是仏経名、我論↢仏経義↡与↠経相応、以↠入↢仏法相↡故*得↠名↢*憂波提舎↡。名成竟。成↢上三門↡起↢下二門↡。何所依、何故依、云何依。何所依者、依↢修多羅↡。何故依者、以↢如来即真実功徳相↡故。云何依者、修↢五念門↡相応故成↠上起↠下竟。
得 鎌倉時代刊本では欠く。
憂 諸本では 「優」。
▼「↑修多羅」 とは、 *十二部経のなかの直説のものを修多羅と名づく。 いはく、 *四阿含・三蔵等、 三蔵のほかの大乗の諸経もまた修多羅と名づく。 このなかに 「依修多羅」 といふは、 これ三蔵のほかの大乗の修多羅なり。 阿含等の経にはあらず。
「修多羅」者、十二部経中直説者名↢修多羅↡。謂四阿含・三蔵等。三蔵外大乗諸経亦名↢修多羅↡。此中言↢「依修多羅」↡者、是三蔵外大乗修多羅、非↢阿含等経↡也。
四阿含三蔵 四阿含などの清浄の教えのこと。 三蔵とは経・律・論のことで、 仏教経典の総称。 原始仏教の経典のことであるが、 大乗経典の成立以後は小乗とその経典の呼称となった。 →
四阿含、
三蔵
・ 真実功徳釈
▼「↑真実功徳相」 とは、 二種の功徳あり。 一には*有漏の心より生じて*法性に順ぜず。 いはゆる凡夫人天の諸善、 人天の果報、 もしは因もしは果、 みなこれ顛倒、 みなこれ虚偽なり。 このゆゑに不実の功徳と名づく。 二には菩薩の智慧清浄の業より起りて*仏事を荘厳す。 法性によりて清浄の相に入る。 この法顛倒せず、 虚偽ならず。 名づけて真実功徳となす。 いかんが顛倒せざる。 法性によりて*二諦に順ずるがゆゑなり。 いかんが虚偽ならざる。 衆生を摂して*畢竟浄に入らしむるがゆゑなり。
畢竟浄 完全に煩悩を浄化した究極のさとりの境地。
「真実功徳相」者、有↢二種功徳↡。一者従↢有漏心↡生不↠順↢法性↡。所↠謂凡夫人天諸善、人天果報、若因若果、皆是顛倒皆是虚偽、是故名↢不実功徳↡。二者従↢菩薩智*恵清浄業↡起荘↢厳仏事↡。依↢法性↡入↢清浄相↡。是法不↢顛倒↡不↢虚偽↡、名為↢真実功徳↡。云何不↢顛倒↡、依↢法性↡順↢二諦↡故。云何不↢虚偽↡、摂↢衆生↡入↢畢竟浄↡故。
恵 鎌倉時代刊本・嘉永年間刊本では 慧。
▼「↑説願偈総持 与仏教相応」 とは、 「持」 は不散不失に名づく。 「総」 は少をもつて多を摂するに名づく。 「偈」 の言は五言の句数なり。 「願」 は往生を*欲楽するに名づく。 「説」 はいはく、 もろもろの偈と論を説とくなり。 総そうじてこれをいふに、 願生がんしょうするところの偈げを説ときて、 仏経ぶっきょうを*総そう持じし、 仏教ぶっきょうと相応そうおうするなり。 「相応そうおう」 とは、 たとへば*函かんと蓋がいとあひ称かなへるがごとし。
欲楽 ねがいもとめるという意。
総持 ここでは広博な経の文意を総摂そうしょうして短い偈げのなかにおさめたもつという意。
函と蓋 はことふた。
「説願偈捴持与仏教相応」者、持名↢不散不失↡。捴名↢以↠少摂↟多。偈言五言句数。願名↣欲↢楽往生↡。説謂説↢諸偈論↡。捴而言↠之、説↧所↢願生↡偈↥捴↢持仏経↡与↢仏教↡相応。相応者譬如↢*凾盖相称↡也。
凾盖 ともに聖教全書まま。 註なし。
◎総説分 ○観察門
【8】 ▲↓観かん↓彼ひ↓世せ界かい相そう ↓勝過しょうか三界道さんがいどう
これより以下いげは、 これ第だい四の観察かんざつ門もんなり。 この門もんのなかを分わかちて二の別べつとなす。 一には*器き世せ間けん*荘厳しょうごん成就じょうじゅを観察かんざつす。 二には*衆しゅ生じょう世せ間けん荘厳しょうごん成就じょうじゅを観察かんざつす。
観↢彼世界相↡ 勝↢過三界道↡。
此已下是第四観察門。此門中分為↢二別↡。一者観↢察器世間荘厳成就↡。二者観↢察衆生世間荘厳成就↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間
この句くより以下いげ「願生がんしょう彼ひ阿弥陀あみだ仏国ぶつこく▲」 に至いたるまでは、 これ器き世せ間けん荘厳しょうごん成就じょうじゅを観かんずるなり。器き世せ間けんを観かんずるなかに、 また分わかちて十七の別べつとなす。 文もんに至いたりてまさに目なづくべし。
此句已下至↢「願生彼阿弥陀仏国」↡、是観↢器世間荘厳成就↡。観↢器世間↡中、復分為↢十七別↡、至↠文当↠目。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 1 清浄功徳
▲この二句くはすなはちこれ第だい一の事じなり。 名なづけて観察かんざつ荘厳しょうごん清浄しょうじょう功く徳どく成就じょうじゅとなす。 この清浄しょうじょうはこれ*総相そうそうなり。
総相 器世間の十七種だけでなく二十九種荘厳しょうごんのすべてにわたるすがた。
此二句即是第一事、名為↢観察荘厳清浄功徳成就↡。此清浄是捴相。
・ 所為の境
仏ぶつ本もとこの荘厳しょうごん清浄しょうじょう功く徳どくを起おこしたまへる所以ゆえんは、 *三界さんがいを見みそなはすに、 これ虚偽こぎの相そう、 これ*輪転りんでんの相そう、 これ*無む窮ぐうの相そうにして、 *蠖しゃっかく 屈かがまり伸のぶる虫むしなり の循環じゅんかんするがごとく、 *蚕繭さんけん 蚕さん衣えなり の自じ縛ばくするがごとし。 あはれなるかな衆しゅ生じょう、 この三界さんがいに締しば 結むすびて解とけず られて、 顛倒てんどう・不浄ふじょうなり。
輪転の相 三界さんがいを車輪がまわるようにめぐり迷うこと。
無窮の相 三界を輪転することがはてしないこと。
蠖 尺とり虫。
蚕繭 かいこのまゆ。
仏本所↣以起↢此荘厳清浄功徳↡者、*見↧三界是虚偽相、是輪転相、是无窮相、如↢尺音*屈*申虫一郭反循環↡、如↢蚕才含反繭蚕衣公殄反自縳↡、哀哉衆生*締↦結不解帝音此三界顛倒不浄↥、
見…締a 返り点まま。 「…aに締まつわるるを見そなわして」
諸本では 蠖。
申 諸本では 「伸」。
・ 能為の願
衆しゅ生じょうを不虚偽ふこぎの処ところ、 不ふ輪転りんでんの処ところ、 不無ふむ窮ぐうの処ところに置おきて、 畢竟ひっきょう安楽あんらくの大清浄処だいしょうじょうしょを得えしめんと欲おぼしめす。 このゆゑにこの清浄しょうじょう荘厳しょうごん功く徳どくを起おこしたまへり。
欲↧置↣衆生於↢不虚偽処↡於↢不輪転処↡於↢不无窮処↡得↦畢竟安楽大清浄処↥。是故起↢此清浄荘厳功徳↡也。
・ 成就の相
「成就じょうじゅ」 とは、 いふこころは、 この清浄しょうじょうは破壊はえすべからず、 汚わ染ぜんすべからず。 三界さんがいの、 これ汚わ染ぜんの相そう、 これ破壊はえの相そうなるがごときにはあらず。
成就者、言此清浄不↠可↢破壊↡不↠可↢汙染↡。非↠如↢三界是汙染相是破壊相↡也。
↑「観かん」 とは観察かんざつなり。 「↑彼ひ」 とはかの安楽国あんらくこくなり。 「↑世せ界かい相そう」 とはかの安楽あんらく世せ界かいの清浄しょうじょうの相そうなり。 その相そう、 別べつに下しもにあり。
「観」者観察也。「彼」者彼安楽国也。「世界相」者彼安楽世界清浄相也、其相別在↠下。
「↑勝過しょうか三界道さんがいどう」 の 「道どう」 とは通つうなり。 かくのごとき因いんをもつて、 かくのごとき果かを得う。 かくのごとき果かをもつて、 かくのごとき因いんに酬むくゆ。 因いんに通つうじて果かに至いたる。 果かに通つうじて因いんに酬むくゆ。 ゆゑに名なづけて道どうとなす。 「三界さんがい」 とは、 一にはこれ*欲界よくかい、 いはゆる*六欲天ろくよくてん・*四し天てん下げの人にん・畜生ちくしょう・餓鬼がき・地じ獄ごく等とうこれなり。 二にはこれ*色界しきかい、 いはゆる初禅しょぜん・二禅ぜん・三禅ぜん・四禅ぜんの天等てんとうこれなり。 三にはこれ*無む色界しきかい、 いはゆる空処くうしょ・識処しきしょ・無む所しょ有う処しょ・非ひ想そう非非ひひ想処そうしょの天等てんとうこれなり。 ▼この三界さんがいはけだしこれ生しょう死じの凡ぼん夫ぶの流る転てんの闇宅あんたくなり。 また苦く楽らく小すこしき殊ことなり、 *修短しゅたんしばらく異ことなりといへども、 統すべてこれを観かんずるに*有漏うろにあらざるはなし。 *倚い伏ぶくあひ乗じょうじ、 循環じゅんかん無む際さいなり。 *雑生ざっしょう触受そくじゅし、 *四し倒とう長ながく拘かかはる。 かつは因いん、 かつは果か、 虚偽こぎあひ襲おそふ。 安楽あんらくはこれ菩ぼ薩さつ (法蔵) の慈悲じひ・*正観しょうかんの由生ゆしょう、 如来にょらい (阿弥陀仏) の神力じんりき本願ほんがんの所建しょこんなり。 *胎たい・卵らん・湿しつの生しょう、 これによりて*高たかく揖おさめ、 *業ごう繋けの長ながき維つな、 これより永ながく断たつ。 *続括ぞくかつの権はかりごと、 勧すすめを待またずして弓ゆみを彎ひく。 *労謙ろうけん善譲ぜんじょう、 *普ふ賢げんに斉ひとしくして徳とくを同おなじくす。 「勝過しょうか三界さんがい」 とは、 そもそもこれ近言ごんごんなり。
修短 長短。 ここでは寿命の長短のこと。
雑生触受 雑多な生を経て、 さまざまな苦にふれ、 その苦を受けること。
正観の由生 正しくものをみる智慧ちえより生ずるところ。
胎卵湿の生 四生のうちの
胎生たいしょう・
卵生らんしょう・
湿生しっしょう。 →
四生ししょう
高く揖め 高は遠の意で、 揖はあいさつをすること。 礼をして遠くへ去りはなれて。
業繋 煩悩ぼんのうにもとづく行為によって迷界につなぎとめられること。
続括の権… 続括はつづけて矢を射ること。 権は権術ごんじゅつの意。 菩薩が退転もせず、 諸仏の勧めもまたずに利他行をなすことを、 名人の連続して射る矢が、 次々と前の矢を支えていっておちることがないのに喩える。
労謙善譲 功労があってもみずから誇らず、 へりくだること。
「勝過三界道」、道者通也。以↢如↠此因↡得↢如↠此果↡、以↢如↠此果↡酬↢如↠此因↡。通↠因至↠果、通↠果酬↠因、故名為↠道。三界者、一是欲界、所↠謂六欲天、四天下人・畜生・餓鬼・地獄等是也。二是色界、所↠謂初禅・二禅・三禅・四禅天等是也。三是无色界、所↠謂空処・識処・无所有処・非想非非想処天等是也。此三界盖是生死凡夫流転之闇宅。雖↢復苦楽小殊修短暫異↡統而観↠之莫↠非↢有漏↡。倚伏相乗循環无↠際、雑生触受四倒長拘。且因且果虚偽相襲。安楽是菩薩慈悲正観之由生、如来神力本願之所建。胎・卵・湿生縁↠茲高揖業繋長維従↠此永断。続括之権、不↠待↠勧而彎↠弓、労謙善譲斉↢普賢↡而同↠徳。勝↢過三界↡抑↢是近言↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 2 量功徳
【9】 ▲究竟くきょう↓如にょ虚こ空くう ↓広大こうだい無む辺際へんざい
この二句くは荘厳しょうごん量りょう功く徳どく成就じょうじゅと名なづく。
究竟如↢虚空↡ 広大无↢辺際↡。
此二句名↢荘厳量功徳成就↡。
・ 所為の境
仏ぶつ本もとこの荘厳しょうごん量りょう功く徳どくを起おこしたまへる所以ゆえんは、 三界さんがいを見みそなはすに陜小きょうしょうにして*堕き 敗城はいじょうの阜おかなり 陘けい 山やまの絶坎ぜっかんなり *陪はい 土つちを重かさぬるなり。 一にはいはく備びなり 陼しょ 渚しょのごときもの、 陼丘しょきゅうなり なり。 あるいは*宮く観かん迫迮はくさくし、 あるいは*土ど田でん逼隘ひつあい 陋ろうなり す。 あるいは志求しぐするに路みち促つづまり、 あるいは山せん河が隔へだ 塞そくなり ち障さふ。 あるいは*国界こくかい分ぶん部ぶせり。 かくのごとき等らの種々しゅじゅの*挙急こきゅうの事じあり。
堕陘 くずれた丘やけわしい谷。
陪陼 小さな山や中なか洲すのような丘。
宮観迫迮 宮殿や楼観ろうかんが狭い範囲にたてこんでいること。
土田逼隘 土地や田が狭くせせこましいこと。
国界分部せり 国境でへだてられている。
挙急 あわただしく、 うろたえること。
仏本所↣以起↢此荘厳量功徳↡者、見↢三界↡*戸甲反小堕敗*成阜*式垂反陘*小絶坎形音陪重土一曰備文才反陼如緒者陼丘之与反或宮観迫伯音迮子格反或土田逼隘陋或志求路促、或山河隔塞公厄反鄣、或国界分部。有↢如↠此等種種挙急事↡。
(外字) 諸本では 陜。
成 諸本では 「城」。
式 他本では 「或」。
小 諸本では 「山」。
・ 能為の願
このゆゑに菩ぼ薩さつ、 この荘