無量寿経優婆提舎願生偈註 巻上
*婆藪槃頭菩薩造 *曇鸞法師註解
◎浄土論大綱 ○本論分斉
【1】 ▼つつしみて*龍樹菩薩の ¬十住毘婆沙¼ (*易行品・意) を案ずるに、 いはく、 「▲菩薩、 ▼*阿毘跋致を求むるに、 二種の道あり。 一には↓*難行道、 二には↓*易行道なり」 と。
◎謹案↢龍樹菩薩¬十住婆沙¼↡云。菩薩求↢阿跋致↡有↢二種道↡。一者難行道、二者易行道。
◎ 原漢文 (真宗聖教全書) の底本は本派本願寺蔵建長八年宗祖加点本。 本派本願寺蔵鎌倉時代刊本、 宗教大学蔵嘉永年間刊本、 本派本願寺蔵版、 大派依用十行本と対校。
・ 難行道
▼「↑難行道」 とは、 いはく、 *五濁の世、 *無仏の時において阿毘跋致を求むるを難となす。 この難にすなはち多途あり。 ほぼ*五三をいひて、 もつて義の意を示さん。 一には*外道の*相善は*菩薩の法を乱る。 二には*声聞は自利にして大慈悲を障ふ。 三には無顧の悪人は他の勝徳を破る。 四には*顛倒の善果はよく*梵行を壊つ。 五にはただこれ自力にして他力の持つなし。 かくのごとき等の事、 目に触るるにみなこれなり。 たとへば陸路の歩行はすなはち苦しきがごとし。
無仏の時 すでに釈尊が入滅されて仏がおられない時代。
五三 少々。 若干。
菩薩の法 自利利他の行法。
顛倒の善果 人間・天上界に生れる果報。 迷いの中の善果であるので顛倒という。
難行道者、謂於↣五濁之世於↢*无仏時↡求↢阿跋致↡為↠難。此難乃有↢多途↡、粗言↢五三↡以示↢義意↡。一者外道相修*醤反善*亂↢菩薩法↡、二者声聞自利鄣↢大慈悲↡、三者*无↠顧↠悪人破↢他勝徳↡、四者顛倒善果能壊↢梵行↡、五者唯是自力无↢他力持↡。如↠斯等事触↠目皆是。譬如↢陸路歩行則苦↡。
无 聖教全書まま。 註なし。 以下同。
醤 本願寺本、 大派依用本では 将。
乱 略字 (新字) は底本まま。 以下同。 (原漢文中での 「乱」 は旧字 「亂」 の文字コードを使用)
無顧悪人 返り点は聖教全書まま。 「悪を顧みることなき人」
・ 易行道
▼「↑易行道」 とは、 いはく、 ▼ただ*信仏の因縁をもつて浄土に生ぜんと願ずれば、 仏願力に乗じて、 すなはちかの清浄の土に往生を得、 *仏力住持して、 すなはち▼*大乗*正定の聚に入る。 正定はすなはちこれ阿毘跋致なり。 たとへば水路に船に乗ずればすなはち楽しきがごとし。
仏力住持して 仏の本願力が支えたもってという意。
易行道者、謂但以↢信仏因縁↡願↠生↢浄土↡。乗↢仏願力↡便得↣往↢生彼清浄土↡。仏力住持即入↢大乗正定之聚↡、正定即是阿跋致。譬如↢水路乗↠船則楽↡。
▼この ¬↓無量寿経↓優婆提舎¼ (浄土論) は、 けだし*上衍の極致、 *不退の風航なるものなり。
上衍 衍は梵語ヤーナ (yāna) の音写。 乗り物の意。 上乗とも漢訳される。 大乗のこと。 →
大乗
不退の風航 風航は帆かけ船のこと。 退転することなくかならず仏にならしめる教法を船に喩えたもの。
此¬无量寿経優*波提舎¼盖上*之極致不退之風航者也。
波 諸本では 婆。 以下同。
(外字) 本願寺本、 大派依用本では 衍。
◎浄土論大綱 ○興起体製
【2】 ▼「↑無量寿」 はこれ安楽浄土の如来の別号なり。*釈迦牟尼仏、 *王舎城および*舎衛国にましまして、 大衆のなかにおいて*無量寿仏の*荘厳功徳を説きたまへり。 すなはち仏 (阿弥陀仏) の*名号をもつて*経の体となす。 後の聖者婆藪槃頭菩薩 (天親)、 如来大悲の教を*服膺して経に傍へて願生の*偈を作れり。 また*長行を造りてかさねて釈す。
経 浄土の三部経を指す。
服膺 心にしっかりとめて忘れないこと。
「无量寿」是安楽浄土如来別*號。釈迦牟尼仏在↢王舎城及舎衛国↡於↢大衆之中↡説↢无量寿仏荘厳功徳↡。即以↢仏名號↡為↢経躰↡。後聖者婆*数槃頭菩薩、服↢膺一升反如来大悲之教↡、傍↠経作↢願生偈↡。復造↢長行↡重*釈↢梵言↡。
号 略字 (新字) は底本まま。 以下同。 (原漢文中での 「号」 には旧字 「號」 の文字コードを使用)
数 諸本では 薮。 以下同。
釈梵言 返り点は聖教全書まま。 「梵言を釈す」。 このときの 「梵言」 は天神菩薩の偈を指す。
*梵に 「↑優婆提舎」 といふは、 この間 (中国) に正名あひ訳せるなし。 もしは*一隅を挙げて名づけて論となすべし。 正名訳せることなき所以は、 この間に本仏ましまさざるをもつてのゆゑなり。 この間の書のごときは、 *孔子につきて 「経」 と称す。 余人の制作みな名づけて 「子」 となす。 *国史・国紀の徒*各別の体例なり。 しかるに仏の所説の*十二部経のなかに論議経あり、 「*優婆提舎」 と名づく。 もしまた仏のもろもろの弟子、 仏の経教を解して仏義と相応すれば、 仏また許して 「優婆提舎」 と名づく。 仏法の相に入るをもつてのゆゑなり。 この間に論といふは、 ただこれ論議のみ。 あにまさしくかの名を訳することを得んや。
梵 梵語 (サンスクリット)。 インドの古典語。
一隅を挙げて 一部分の意味によって。
国史国紀 国史は国王の命などによって公的に記された国の歴史書。 国紀は私人によって私的に記された国の歴史書。
各別の体例 それぞれちがった体裁である。
「優婆提舎」此間无↢正名相訳↡、若挙↢一隅↡可↢名為↟論。所↣以无↢正名訳↡者、以↢此間本无↟仏故。如↢此間書↡、就↢孔子↡而称↠経、余人制作皆名為↠子。国史・国紀之徒各別躰例*然。仏所説十二部経中有↢論議経↡、名↢優波提舎↡。若復仏諸弟子、解↢仏経教↡与↢仏義↡相応者、仏亦許名↢優波提舎↡、以↠入↢仏法相↡故。此間云↠論、直是論議而已、豈得↣正訳↢彼名↡耶。
然 句点位置は聖教全書まま。 「各別の体例しかなり」
また女人を、 子において母と称し、 兄において妹といふがごとし。 かくのごとき等の事、 みな義に随ひて名別なり。 もしただ女の名をもつて汎く母妹を談ずるに、 すなはち*女の大体を失せざれども、 あに尊卑の義を含まんや。
女の大体… 女性の一般的性質はあらわしているけれども。
又如↢女人於↠子称↠母、於↠兄云↟妹。如↠是等事皆随↠義名別、若但以↢女名↡汎談↢母妹↡乃不↠失↢女之大躰↡、豈含↢尊卑之義↡乎。
ここにいふところの論もまたかくのごとし。 ここをもつて仍 因なり りて*梵音を存じて優婆提舎といふ。
梵音を存じて 梵語 (サンスクリット) を音写してという意。
此所↠云論亦復如↠是、是以仍因而音存↢梵音↡曰↢優波提舎↡。
・ 本論大科
【3】 この ¬論¼ (浄土論) の始終におほよそ二重あり。 一にはこれ総説分、 二にはこれ解義分なり。 総説分とは、 前の五言の偈尽くるまでこれなり。 解義分とは、 「▲論じて曰はく」 以下長行尽くるまでこれなり。
此論始終凡有↢二重↡。一是捴説分、二是解義分。捴説分者前五言偈尽是、解義分者論曰已下長行尽是。
二重となす所以は二義あり。 偈はもつて経を誦す。 総摂せんがためのゆゑなり。 論はもつて偈を釈す。 解義のためのゆゑなり。
所↣以為↢二重↡者、有↢二義↡。*偈以↢誦経↡為↢捴摂↡故、論以↢釈偈↡為↢解義↡故。
偈~故 返り点は聖教全書まま。 「偈は誦経をもって総摂とするがゆゑに、 論は釈偈をもって解義するがゆゑなり」
◎浄土論大綱 ○題号
【4】 「無量寿」 とは無量寿如来をいふ。 寿命長遠にして思量すべからず。 「経」 とは常なり。 いふこころは安楽国土の仏および菩薩の清浄荘厳功徳と国土の清浄荘厳功徳とは、 よく衆生のために*大饒益をなす。 つねに世に行はるべきがゆゑに名づけて経といふ。 「優婆提舎」 はこれ仏の論議経の名なり。 「願」 はこれ*欲楽の義なり。 「生」 は天親菩薩、 かの安楽浄土の如来の浄華のなかに生ぜんと願ずる生なり。 ゆゑに願生といふ。 「偈」 はこれ句数の義、 五言の句をもつて略して仏経を誦するがゆゑに名づけて偈となす。
大饒益 大きな利益。
欲楽 ねがいもとめるという意。
「無量寿」者、*言无量寿如来寿命長遠不↠可↢思量↡也。「経」者常也、言安楽国土仏及菩薩清浄荘厳功徳・国土清浄荘厳功徳、能与↢衆生↡作↢大饒益↡、可↣常行↢于世↡故名曰↠経。「優波提舎」是仏論議経名。「願」是欲楽義、「生」者天親菩薩*願↠生↢彼安楽浄土↡、如来浄花中生故曰↢願生↡。「偈」是句数義、以↢五言句↡略誦↢仏経↡故名為↠偈。
言… 返り点まま。 「言ふこころは…」
願生ab生故 返り点まま。 「aに生ぜんと願じ、 bに生ずるがゆゑに」
◎浄土論大綱 ○撰号
「婆藪」 を訳して 「天」 といふ。 「槃頭」 を訳して 「親」 といふ。 この人を*天親と字く。 *事は ¬*付法蔵経¼ にあり。 「菩薩」 とは、 もしつぶさに*梵音を存ぜば「*菩提薩埵」 といふべし。 「菩提」 は、 これ仏道の名なり。 「薩埵」 は、 あるいは衆生といひ、 あるいは勇健といふ。 仏道を求むる衆生、 *勇猛の健志あるがゆゑに菩提薩埵と名づく。 いまただ菩薩といふは訳者 (菩提流支) の略せるのみ。 「造」 はまた作なり。 人によりて法を重んずることを庶ふがゆゑに某造といふ。
事 一代の事跡。
梵音を存ぜば 梵語 (サンスクリット) を音写すればという意。
菩提薩埵 梵語ボーディサットヴァ (bodhisattva) の音写。 →
菩薩
勇猛 心をはげましてつとめること。
訳↢「婆*藪」↡云↠天、訳↢「槃頭」↡言↠親、此人字↢天親↡事在↢¬付法蔵経¼↡。「菩薩」者、若具存↢梵音↡応↠云↢菩提薩埵↡。菩提者是仏道名、薩埵或云↢衆生↡、或云↢勇*揵↡、求↢仏道↡衆生有↢勇猛健志↡故名↢菩提薩埵↡。今但言↢菩薩↡訳者略耳。「造」亦作也、庶↢因↠人重↟法故云↢某造↡、
藪 鎌倉時代刊本では 数。
揵 諸本では 健。
このゆゑに 「無量寿経優婆提舎願生偈婆藪槃頭菩薩造」 といへり。 ¬論¼ (浄土論) の名目を解しをはりぬ。
是故言↢「无量寿経優波提舎願生偈婆*数槃頭菩薩造」↡。解↢論名目↡竟。
数 諸本では 藪。
◎総説分 ○章門分別
【5】 偈のなかを分ちて*五念門となす。 下の長行に釈するところのごとし。 第一行の四句にあひ含みて三念門あり。 上の三句はこれ礼拝・讃嘆門なり。 下の一句はこれ作願門なり。 第二行は論主 (天親) みづから、 「われ仏経 (浄土三部経) によりて ¬論¼ を造りて仏教と相応す、 服するところ*宗ある」 ことを述ぶ。 なんがゆゑぞいふとならば、 これ優婆提舎の名を成ぜんがためのゆゑなり。 またこれ上の三門を成じて下の二門を起す。 ゆゑにこれに次いで説けり。 第三行より二十一行尽くるまで、 これ観察門なり。 末後の一行はこれ回向門なり。 偈の章門を分ちをはりぬ。
宗 もとづくところ。 本源。 帰趣。
偈中分為↢五念門↡、如↢下長行所↟釈。第一行四句相含有↢三念門↡、上三句是*拝・讃嘆門、下一句是作願門。第二行論主自述↧我依↢仏経↡造↠論与↢仏教↡相応所↠服有↞宗。何故云、此為↠成↢優波提舎名↡故。亦是成↢上三門↡起↢下二門↡、所以次↠之説。従↢第三行↡尽↢廿一行↡是観察門。末後一行是迴向門。分↢偈章門↡竟。
(外字) 略字は聖教全書まま。
◎総説分 ○相含三念門
【6】 ▲↓世尊↓我一心 ↓帰命尽十方 無礙光如来 ↓願生安楽国
「↑世尊」 とは諸仏の通号なり。 智を論ずればすなはち義として達せざるはなし。 断を語ればすなはち*習気余りなし。 *智断具足してよく世間を利し、 世のために尊重せらるるゆゑに世尊といふ。 ここにいふ意は、 釈迦如来に帰したてまつるなり。 なにをもつてか知ることを得となれば、 下の句に 「▲我依修多羅」 といへばなり。 天親菩薩、 釈迦如来の*像法のなかにありて釈迦如来の経教に順ず。 ゆゑに生ぜんと願ず。 生ぜんと願ずるに宗あり。 ゆゑにこの言は釈迦に帰したてまつると知るなり。 もしこの意を謂ふに、 あまねく諸仏に告ぐることまた嫌ふことなし。 ▼それ菩薩の仏に帰することは、 孝子の父母に帰し、 忠臣の君后に帰して、 *動静おのれにあらず、 *出没かならず由あるがごとし。 恩を知りて徳を報ず、 理よろしく先づ*啓すべし。 ▼また所願軽からず。 もし如来、 威神を加したまはずは、 まさになにをもつてか達せんとする。 *神力を加することを乞ふ。 ゆゑに仰ぎて告ぐるなり。
智断 智徳と断徳。 智徳はあらゆる道理に達しているという徳。 断徳は煩悩を余すところなく断じているという徳。
動静おのれにあらず 身勝手な立居振舞をしない。
出没 出処進退のこと。
啓す 申す。 申し上げる。
世尊我一心 帰↢命尽十方 无光如来↡ 願↠生↢安楽国↡。
「世尊」者、諸仏通號、論↠智則義无↠不↠達、語↠断則習気无↠余、智断具足能利↢世間↡、為↠世尊重故曰↢世尊↡。此言意帰↢釈迦如来↡。何以得↠知、下句言↢「我依修多羅」↡。天親菩薩、在↢釈迦如来像法之中↡、順↢釈迦如来経教↡、所以願↠生。願生有↠宗、故知此言帰↠於↢釈迦↡。若謂↢此意↡、遍告↢諸仏↡亦復无↠嫌。夫菩薩帰↠仏、*如↧孝子之帰↢父母↡忠臣之帰↢君后↡、動静非↠己出没必由↦知↠恩報↞徳、理宜↢先啓↡。又所願不↠軽、若如来不↠加↢威神↡将↢何以達↡、乞↠加↢神力↡、所以仰告。
如~由知恩報徳 返り点まま。 「~恩を知りて徳を報ずるによるがごとし」
・ 論主自督
▼「↑我一心」 とは、 天親菩薩の*自督の詞なり。 いふこころは、 無礙光如来を念じて安楽に生ぜんと願ず。 心々相続して他の想*間雑することなしとなり。
自督 みずからをすすめ (勧)、 ひきい (率)、 正してゆく (正) ようなはたらきをもつ信心のこと。
「我一心」者、天親菩薩自督之詞、言念↢无光如来↡願↠生↢安楽↡、心心相続无↢他想間雑↡。
▼問ひていはく、 仏法のなかには我なし。 このなかになにをもつてか我と称する。 答へていはく、 「我」 といふに三の根本あり。 一にはこれ*邪見語、 二にはこれ*自大語、 三にはこれ*流布語なり。 いま 「我」 といふは、 天親菩薩の自指の言にして、 流布語を用ゐる。 邪見と自大とにはあらず。
邪見語 我を実体視し、 それにとらわれるよこしまな見解を表す言葉。 →
邪見
自大語 自分が他よりすぐれていると思う慢心を表す言葉。
流布語 世間一般に使われる言葉。 日常語。
問曰。仏法中无↠我、此中何以称↠我。答曰。言↠我有↢三根本↡。一是邪見語、二是自大語、三是流布語。今言↠我者天親菩薩*自指↠之言、用↢流布語↡、非↢邪見自大↡也。
自指之言 返り点まま。 「自らこれを指しふる言なり」
▼「↑帰命尽十方無礙光如来」 とは、 「↓帰命」 はすなはちこれ礼拝門なり。 「↓尽十方無礙光如来」 はすなはちこれ讃嘆門なり。
「帰命尽十方无光如来」者、帰命即是拝門、尽十方无光如来即是讃嘆門。
・ 礼拝門
▼なにをもつてか 「↑帰命」 はこれ礼拝なりと知るとなれば、 龍樹菩薩の、 阿弥陀如来の讃 (易行品) を造れるなかに、 あるいは 「▲*稽首礼」 といひ、 あるいは 「▲我帰命」 といひ、 あるいは 「▲帰命礼」 といへり。 この ¬論¼ (浄土論) の長行のなかにまた 「▲五念門を修す」 といへり。 五念門のなかに礼拝はこれ一なり。 天親菩薩すでに往生を願ず。 あに礼せざるべけんや。 ゆゑに知りぬ、 帰命はすなはちこれ礼拝なり。 しかるに礼拝はただこれ*恭敬にして、 かならずしも帰命にあらず。 帰命はかならずこれ礼拝なり。 もしこれをもつて推せば、 帰命を重しとなす。 偈は*己心を申ぶ。 よろしく帰命といふべし。 論は偈の義を解す。 汎く礼拝を談ず。 *彼此あひ成じて義においていよいよ顕れたり。
稽首礼 頭を地につけて礼拝すること。
己心 自己の領解。 みずからの信心。
彼此 長行とこの偈頌のこと。
何以*知、帰命是拝。龍樹菩薩造↢阿弥陀如来讃↡中、或言↢「稽首」↡、或言↢「我帰命」↡、或言↢「帰命」↡。此論長行中、亦言↠修↢五念門↡。五念門中、拝是一。天親菩薩既願↢往生↡、豈容↠不↠、故知帰命即是拝。然拝但是恭敬、不↢必帰命↡、帰命必是拝。若以↠此推↢帰命↡為↠重。偈申↢己心↡、宜↠言↢帰命↡。論解↢偈義↡、汎談↢拝↡。彼此相成、於↠義弥顕。
知…礼拝 返り点まま。 (内容的には知↢…礼拝↡が適切か)
・ 讃嘆門
▼なにをもつてか 「↑▼尽十方無礙光如来」 はこれ讃嘆門なりと知るとならば、 下の長行のなかに、 「▲いかんが讃嘆門。 いはく、 かの如来の名を称するに、 かの如来の光明智相のごとく、 かの*名義のごとく、 如実に修行して相応せんと欲するがゆゑなり」 といへり。 ▼*舎衛国所説の ¬無量寿経¼ (小経) によらば、 仏、 阿弥陀如来の名号を解したまはく、 「▲なんがゆゑぞ阿弥陀と号する。 かの仏の光明無量にして、 十方国を照らしたまふに*障礙するところなし。 このゆゑに阿弥陀と号す。 またかの仏の寿命およびその人民も、 無量無辺*阿僧祇なり。 ゆゑに阿弥陀と名づく」 と。
名義 名号の意義、 いわれ。
何以知↢尽十方无光如来是讃嘆門↡、下長行中言。「云何讃嘆門、謂称↢彼如来名↡、如↢彼如来光明智相↡、如↢彼名義↡、欲↢如↠実修行相応↡故」。依↢舎衛国所説¬无量寿経¼↡、仏解↢阿弥陀如来名號↡「何故號↢阿弥陀↡、彼仏光明无量照↢十方国↡无↠所鄣↡、是故號↢阿弥陀↡」。又「彼仏寿命及其人民、无量无辺阿僧祇、故名↢阿弥陀↡」。
▼問ひていはく、 もし無礙光如来の光明無量にして、 十方国土を照らしたまふに障礙するところなしといはば、 この間の衆生、 なにをもつてか光照を蒙らざる。 光の照らさざるところあらば、 あに礙あるにあらずや。 答へていはく、 礙は衆生に属す。 光の礙にはあらず。 たとへば日光は*四天下にあまねけれども、 *盲者は見ざるがごとし。 日光のあまねからざるにはあらず。 また▼*密雲の洪きに 潅なり げども、 *頑石の潤はざるがごとし。 雨の洽 なり さざるにはあらず。
密雲 深くたれこめた雨雲。
頑石 固い石。
問曰。若言↧无光如来光明无量照↢十方国土↡无↞所↢鄣↡者、此間衆生何以不↠蒙↢光照↡、光有↠所↠不↠照、豈非↠有↠耶。答曰。属↢衆生↡非↢光↡也。譬如↧日光周↢四天下↡而、盲者不↠見↥、非↢日光不↟周也。亦如↢密雲洪潅之句反而頑石不↟潤、非↢雨不↟洽下捨反也。
▼もし一仏、 *三千大千世界を主領すといはば、 これ声聞論のなかの説なり。 もし諸仏あまねく十方無量無辺世界を領すといはば、 これ大乗論のなかの説なり。 ▼天親菩薩、 いま、 「尽十方無礙光如来」 といふは、 すなはちこれかの如来の名により、 かの如来の光明智相のごとく讃嘆するなり。 ゆゑに知りぬ、 この句はこれ讃嘆門なり。
若言↣一仏主↢領三千大千世界↡、是声聞論中説。若言↣諸仏遍領↢十方无量无辺世界↡、是大乗論中説。天親菩薩、今言↢尽十方无光如来↡、即是依↢彼如来名↡、如↢彼如来光明智相↡讃嘆。故知此句是讃嘆門。
・ 作願門
▼「↑願生安楽国」 とは、 この一句はこれ作願門なり。 天親菩薩の*帰命の意なり。 ▼それ 「安楽」 の義は、 つぶさに下の観察門のなかにあり。
「願生安楽国」者、此一句是作願門、天親菩薩帰命之意也。其安楽義具在↢下観察門中↡。
・ 願生問答
▼問ひていはく、 *大乗経論のなかに、 処々に 「衆生は*畢竟無生にして*虚空のごとし」 と説けり。 いかんが天親菩薩 「願生」 といふや。 答へていはく、 「衆生は無生にして虚空のごとし」 と説くに二種あり。 一には、 凡夫の謂ふところのごとき実の衆生、 凡夫の見るところのごとき実の生死は、 この所見の事、 畢竟じて所有なきこと、 *亀毛のごとく、 虚空のごとし。 二には、 いはく、 諸法は*因縁生のゆゑにすなはちこれ不生なり。 所有なきこと虚空のごとし。 天親菩薩の願ずるところの生は、 これ*因縁の義なり。 因縁の義のゆゑに仮に生と名づく。 凡夫の、 実の衆生、 実の生死ありと謂ふがごときにはあらず。
大乗経論 ¬維摩経¼ ¬大智度論¼ 等の経論のこと。
畢竟無生 本来、 消滅変化のないこと。
亀毛 亀の甲羅についた藻を毛と誤認するように、 本来ないものが実在するかのようにあるあり方。
問曰。大乗経論中、処処説↣衆生畢竟无生如↢虚空↡、云何天親菩薩言↢願生↡耶。答曰。説↣衆生无生如↢虚空↡有↢二種↡。一者*如↢凡夫↡所↠謂実衆生、*如↢凡夫所↠見実生死↡、此所見事畢竟无↠所↠有如↢亀毛↡如↢虚空↡。二者謂諸法因縁生故即是不生、无↠所↠有如↢虚空↡。天親菩薩所↠願生者是因縁義、因縁義故仮名↠生、非↠如↢凡夫謂↟有↢実衆生実生死↡也。
如a所謂b 返り点まま。 「aのごとき所謂b」
如a所見b 返り点まま。 「aの見るところのbのごとき」
・ 往生問答
▼問ひていはく、 なんの義によりてか*往生と説く。 答へていはく、 この間の*仮名人のなかにおいて五念門を修するに、 前念は後念のために因となる。 *穢土の仮名人と浄土の仮名人と、 決定して一なるを得ず、 決定して異なるを得ず。 前心後心またかくのごとし。 なにをもつてのゆゑに。 もし一ならばすなはち因果なく、 もし異ならばすなはち相続にあらざればなり。 この義は*一異の門を観ずる論のなかに*委曲なり。
仮名人 仮名とは実体のないものに仮につけた名という意で、 人といっても
五蘊 (五陰) が
因縁によって仮に和合したものであるから仮名人という。 →
五陰
一異の門を観ずる論 龍樹菩薩の ¬中論¼ 等のこと。
委曲 くわしいこと。
問曰。依↢何義↡説↢往生↡。答曰。於↢此間仮名人中↡修↢五念門↡、前念与↢後念↡作↠因。穢土仮名人、浄土仮名人、不↠得↢決定一↡不↠得↢決定異↡、前心・後心、*亦如↠是。何以故、若一則无↢因果↡、若異則非↢相続↡、是義観↢一異門↡論中委曲、
亦 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「亦復」。
▼第一行の三念門を釈しをはりぬ。
釈↢第一行三念門↡竟。
◎総説分 ○成上起下偈
【7】 ▼次は 「優婆提舎」 の名を成じ、 また上を成じて下を起す偈なり。
次成↢優波提舎名↡、又成↠上起↢下偈↡。
▲我依↓修多羅 ↓真実功徳相 ↓説願偈総持 与仏教相応
▼この一行、 いかんが 「*優婆提舎」 の名を成じ、 いかんが*上の三門を成じ*下の二門を起す。 偈に 「我依修多羅 与仏教相応」 といふ。 「*修多羅」 はこれ仏経の名なり。 われ仏経の義を論じて、 経と相応す。 仏法の相に入るをもつてのゆゑに優婆提舎と名づく。 名、 成じをはりぬ。 上の三門を成じて下の二門を起すとは、 ▼いづれのところにか依り、 なんのゆゑにか依り、 いかんが依る。 いづれのところにか依るとは、 修多羅に依る。 なんのゆゑにか依るとは、 如来はすなはち*真実*功徳の相なるをもつてのゆゑなり。 いかんが依るとは、 五念門を修して相応するがゆゑなり。 上を成じ下を起しをはりぬ。
上の三門 五念門の中の
礼拝・
讃嘆・
作願の三門。 →
五念門
我依↢修多羅 真実功徳相↡ 説↢願偈↡捴持 与↢仏教↡相応。
此一行云何成↢優波提舎名↡、云何成↢上三門↡起↢下二門↡。偈言↢「我依修多羅与仏教相応」↡。修多羅是仏経名、我論↢仏経義↡与↠経相応、以↠入↢仏法相↡故*得↠名↢*憂波提舎↡。名成竟。成↢上三門↡起↢下二門↡。何所依、何故依、云何依。何所依者、依↢修多羅↡。何故依者、以↢如来即真実功徳相↡故。云何依者、修↢五念門↡相応故成↠上起↠下竟。
得 鎌倉時代刊本では欠く。
憂 諸本では 「優」。
▼「↑修多羅」 とは、 *十二部経のなかの直説のものを修多羅と名づく。 いはく、 *四阿含・三蔵等、 三蔵のほかの大乗の諸経もまた修多羅と名づく。 このなかに 「依修多羅」 といふは、 これ三蔵のほかの大乗の修多羅なり。 阿含等の経にはあらず。
「修多羅」者、十二部経中直説者名↢修多羅↡。謂四阿含・三蔵等。三蔵外大乗諸経亦名↢修多羅↡。此中言↢「依修多羅」↡者、是三蔵外大乗修多羅、非↢阿含等経↡也。
四阿含三蔵 四阿含などの清浄の教えのこと。 三蔵とは経・律・論のことで、 仏教経典の総称。 原始仏教の経典のことであるが、 大乗経典の成立以後は小乗とその経典の呼称となった。 →
四阿含、
三蔵
・ 真実功徳釈
▼「↑真実功徳相」 とは、 ▼二種の功徳あり。 一には*有漏の心より生じて*法性に順ぜず。 いはゆる凡夫人天の諸善、 ▼人天の果報、 もしは因もしは果、 みなこれ顛倒、 みなこれ虚偽なり。 このゆゑに不実の功徳と名づく。 二には菩薩の智慧清浄の業より起りて*仏事を荘厳す。 法性によりて清浄の相に入る。 この法顛倒せず、 虚偽ならず。 名づけて真実功徳となす。 いかんが顛倒せざる。 法性によりて*二諦に順ずるがゆゑなり。 いかんが虚偽ならざる。 衆生を摂して*畢竟浄に入らしむるがゆゑなり。
畢竟浄 完全に煩悩を浄化した究極のさとりの境地。
「真実功徳相」者、有↢二種功徳↡。一者従↢有漏心↡生不↠順↢法性↡。所↠謂凡夫人天諸善、人天果報、若因若果、皆是顛倒皆是虚偽、是故名↢不実功徳↡。二者従↢菩薩智*恵清浄業↡起荘↢厳仏事↡。依↢法性↡入↢清浄相↡。是法不↢顛倒↡不↢虚偽↡、名為↢真実功徳↡。云何不↢顛倒↡、依↢法性↡順↢二諦↡故。云何不↢虚偽↡、摂↢衆生↡入↢畢竟浄↡故。
恵 鎌倉時代刊本・嘉永年間刊本では 慧。
▼「↑説願偈総持 与仏教相応」 とは、 「持」 は不散不失に名づく。 「総」 は少をもつて多を摂するに名づく。 ▼「偈」 の言は五言の句数なり。 「願」 は往生を*欲楽するに名づく。 ▼「説」 はいはく、 もろもろの偈と論を説くなり。 総じてこれをいふに、 願生するところの偈を説きて、 仏経を*総持し、 仏教と相応するなり。 「相応」 とは、 たとへば*函と蓋とあひ称へるがごとし。
欲楽 ねがいもとめるという意。
総持 ここでは広博な経の文意を総摂して短い偈のなかにおさめたもつという意。
函と蓋 はことふた。
「説願偈捴持与仏教相応」者、持名↢不散不失↡。捴名↢以↠少摂↟多。偈言五言句数。願名↣欲↢楽往生↡。説謂説↢諸偈論↡。捴而言↠之、説↧所↢願生↡偈↥捴↢持仏経↡与↢仏教↡相応。相応者譬如↢*凾盖相称↡也。
凾盖 ともに聖教全書まま。 註なし。
◎総説分 ○観察門
【8】 ▲↓観↓彼↓世界相 ↓勝過三界道
これより以下は、 これ第四の観察門なり。 この門のなかを分ちて二の別となす。 一には*器世間*荘厳成就を観察す。 二には*衆生世間荘厳成就を観察す。
観↢彼世界相↡ 勝↢過三界道↡。
此已下是第四観察門。此門中分為↢二別↡。一者観↢察器世間荘厳成就↡。二者観↢察衆生世間荘厳成就↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間
この句より以下「願生彼阿弥陀仏国▲」 に至るまでは、 これ器世間荘厳成就を観ずるなり。器世間を観ずるなかに、 また分ちて十七の別となす。 文に至りてまさに目くべし。
此句已下至↢「願生彼阿弥陀仏国」↡、是観↢器世間荘厳成就↡。観↢器世間↡中、復分為↢十七別↡、至↠文当↠目。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 1 清浄功徳
▲この二句はすなはちこれ第一の事なり。 名づけて観察荘厳清浄功徳成就となす。 この清浄はこれ*総相なり。
総相 器世間の十七種だけでなく二十九種荘厳のすべてにわたるすがた。
此二句即是第一事、名為↢観察荘厳清浄功徳成就↡。此清浄是捴相。
・ 所為の境
仏本この荘厳清浄功徳を起したまへる所以は、 *三界を見そなはすに、 これ虚偽の相、 これ*輪転の相、 これ*無窮の相にして、 *蠖 屈まり伸ぶる虫なり の循環するがごとく、 *蚕繭 蚕衣なり の自縛するがごとし。 あはれなるかな衆生、 この三界に締 結びて解けず られて、 顛倒・不浄なり。
輪転の相 三界を車輪がまわるようにめぐり迷うこと。
無窮の相 三界を輪転することがはてしないこと。
蠖 尺とり虫。
蚕繭 かいこのまゆ。
仏本所↣以起↢此荘厳清浄功徳↡者、*見↧三界是虚偽相、是輪転相、是无窮相、如↢尺音*屈*申虫一郭反循環↡、如↢蚕才含反繭蚕衣公殄反自縳↡、哀哉衆生*締↦結不解帝音此三界顛倒不浄↥、
見…締a 返り点まま。 「…aに締わるるを見そなわして」
諸本では 蠖。
申 諸本では 「伸」。
・ 能為の願
衆生を不虚偽の処、 不輪転の処、 不無窮の処に置きて、 畢竟安楽の大清浄処を得しめんと欲しめす。 このゆゑにこの清浄荘厳功徳を起したまへり。
欲↧置↣衆生於↢不虚偽処↡於↢不輪転処↡於↢不无窮処↡得↦畢竟安楽大清浄処↥。是故起↢此清浄荘厳功徳↡也。
・ 成就の相
「成就」 とは、 いふこころは、 この清浄は破壊すべからず、 汚染すべからず。 三界の、 これ汚染の相、 これ破壊の相なるがごときにはあらず。
成就者、言此清浄不↠可↢破壊↡不↠可↢汙染↡。非↠如↢三界是汙染相是破壊相↡也。
↑「観」 とは観察なり。 「↑彼」 とはかの安楽国なり。 「↑世界相」 とはかの安楽世界の清浄の相なり。 その相、 別に下にあり。
「観」者観察也。「彼」者彼安楽国也。「世界相」者彼安楽世界清浄相也、其相別在↠下。
「↑勝過三界道」 の 「道」 とは通なり。 かくのごとき因をもつて、 かくのごとき果を得。 かくのごとき果をもつて、 かくのごとき因に酬ゆ。 因に通じて果に至る。 果に通じて因に酬ゆ。 ゆゑに名づけて道となす。 ▼「三界」 とは、 一にはこれ*欲界、 いはゆる*六欲天・*四天下の人・畜生・餓鬼・地獄等これなり。 二にはこれ*色界、 いはゆる初禅・二禅・三禅・四禅の天等これなり。 三にはこれ*無色界、 いはゆる空処・識処・無所有処・非想非非想処の天等これなり。 ▼この三界はけだしこれ生死の凡夫の流転の闇宅なり。 また苦楽小しき殊なり、 *修短しばらく異なりといへども、 統べてこれを観ずるに*有漏にあらざるはなし。 *倚伏あひ乗じ、 循環無際なり。 *雑生触受し、 *四倒長く拘はる。 かつは因、 かつは果、 虚偽あひ襲ふ。 安楽はこれ菩薩 (法蔵) の慈悲・*正観の由生、 如来 (阿弥陀仏) の神力本願の所建なり。 *胎・卵・湿の生、 これによりて*高く揖め、 *業繋の長き維、 これより永く断つ。 *続括の権、 勧めを待たずして弓を彎く。 *労謙善譲、 *普賢に斉しくして徳を同じくす。 「勝過三界」 とは、 ▼そもそもこれ近言なり。
修短 長短。 ここでは寿命の長短のこと。
雑生触受 雑多な生を経て、 さまざまな苦にふれ、 その苦を受けること。
正観の由生 正しくものをみる智慧より生ずるところ。
胎卵湿の生 四生のうちの
胎生・
卵生・
湿生。 →
四生
高く揖め 高は遠の意で、 揖はあいさつをすること。 礼をして遠くへ去りはなれて。
業繋 煩悩にもとづく行為によって迷界につなぎとめられること。
続括の権… 続括はつづけて矢を射ること。 権は権術の意。 菩薩が退転もせず、 諸仏の勧めもまたずに利他行をなすことを、 名人の連続して射る矢が、 次々と前の矢を支えていっておちることがないのに喩える。
労謙善譲 功労があってもみずから誇らず、 へりくだること。
「勝過三界道」、道者通也。以↢如↠此因↡得↢如↠此果↡、以↢如↠此果↡酬↢如↠此因↡。通↠因至↠果、通↠果酬↠因、故名為↠道。三界者、一是欲界、所↠謂六欲天、四天下人・畜生・餓鬼・地獄等是也。二是色界、所↠謂初禅・二禅・三禅・四禅天等是也。三是无色界、所↠謂空処・識処・无所有処・非想非非想処天等是也。此三界盖是生死凡夫流転之闇宅。雖↢復苦楽小殊修短暫異↡統而観↠之莫↠非↢有漏↡。倚伏相乗循環无↠際、雑生触受四倒長拘。且因且果虚偽相襲。安楽是菩薩慈悲正観之由生、如来神力本願之所建。胎・卵・湿生縁↠茲高揖業繋長維従↠此永断。続括之権、不↠待↠勧而彎↠弓、労謙善譲斉↢普賢↡而同↠徳。勝↢過三界↡抑↢是近言↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 2 量功徳
【9】 ▲究竟↓如虚空 ↓広大無辺際
この二句は荘厳量功徳成就と名づく。
究竟如↢虚空↡ 広大无↢辺際↡。
此二句名↢荘厳量功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本この荘厳量功徳を起したまへる所以は、 三界を見そなはすに陜小にして*堕 敗城の阜なり 陘 山の絶坎なり *陪 土を重ぬるなり。 一にはいはく備なり 陼 渚のごときもの、 陼丘なり なり。 あるいは*宮観迫迮し、 あるいは*土田逼隘 陋なり す。 あるいは志求するに路促まり、 あるいは山河隔 塞なり ち障ふ。 あるいは*国界分部せり。 かくのごとき等の種々の*挙急の事あり。
堕陘 くずれた丘やけわしい谷。
陪陼 小さな山や中洲のような丘。
宮観迫迮 宮殿や楼観が狭い範囲にたてこんでいること。
土田逼隘 土地や田が狭くせせこましいこと。
国界分部せり 国境でへだてられている。
挙急 あわただしく、 うろたえること。
仏本所↣以起↢此荘厳量功徳↡者、見↢三界↡*戸甲反小堕敗*成阜*式垂反陘*小絶坎形音陪重土一曰備文才反陼如緒者陼丘之与反或宮観迫伯音迮子格反或土田逼隘陋或志求路促、或山河隔塞公厄反鄣、或国界分部。有↢如↠此等種種挙急事↡。
(外字) 諸本では 陜。
成 諸本では 「城」。
式 他本では 「或」。
小 諸本では 「山」。
・ 能為の願
このゆゑに菩薩、 この荘厳量功徳の願を興したまへり。「願はくはわが国土虚空のごとく広大にして無際ならん」 と。
是故菩薩興↢此荘厳量功徳願↡、願我国土如↢虚空↡広大无際。
・ 成就の相
「↑虚空のごとく」 とは、 いふこころは、 来生のもの衆しといへども、 なほなきがごとくならんとなり。
「如虚空」者、言来生者雖↠衆猶若↠无也。
「↑広大にして無際ならん」 とは、 上の 「如虚空」 の義を成ず。 なんがゆゑぞ 「如虚空」 といふ。 広大にして無際なるをもつてのゆゑなり。
「広大无際」者成↢上如虚空義↡。何故如↢虚空↡、以↢広大无↟際故。
「成就」 とは、 いふこころは、 十方衆生の往生するもの、 もしはすでに生じ、 もしはいまに生じ、 もしはまさに生ぜん。 無量無辺なりといへども畢竟じてつねに虚空のごとく、 広大にして無際にして、 つひに満つ時なからん。 このゆゑに 「究竟如虚空 広大無辺際」 といへり。
成就者、言十方衆生往生者、若已生若今生若当生、雖↢无量无辺↡畢竟常如↢虚空↡広大无↠際終无↢満時↡。是故言↢「究竟如虚空広大无辺際」↡。
問ひていはく、 維摩のごときは、 *方丈に苞容して余りあり。 なんぞかならず国界*無貲なるをすなはち広大と称する。 答へていはく、 いふところの広大は、 かならずしも*畦 五十畝なり 畹 三十畝なり をもつて喩へとなすにあらず。 ただ空のごとしといふ。 またなんぞ方丈を累はさんや。 また方丈の苞容するところは陜にありて広なり。 覈 実なり に果報を論ずるに、 あに広にありて広なるにしかんや。
方丈に… 方丈は一丈四方の部屋のこと。 ここでは維摩がこの狭い部屋に三万二千人の座を設けておさめ入れたという ¬維摩経¼ の説を出したもの。 →
維摩経
無貲 はかりしれないこと。 限りがないこと。
畦畹 田畑や土地の広さをあらわす単位。
問曰。如↢維摩↡方丈苞容有↠余。何必国界无貲子*支反乃称↢広大↡。答曰。所↠言広大非↧必以↢畦五十畝下圭反畹↡三十畝一遠一万反為↞喩、但言↠如↠空亦何累↢方丈↡。又方丈之所↢苞容↡在↠陜而広。覈実下革反論↢果報↡豈若↢在↠広而広↡耶。
支 諸本に従って訂正。 (聖教全書では 「友」、 そうすると 「貲」 の音がシュウになる)
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 3 性功徳
【10】 ▲正道大慈悲 出世善根生
この二句は荘厳性功徳成就と名づく。
正道大慈悲 出世善根生。
此二句名↢荘厳性功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 愛欲をもつてのゆゑにすなはち欲界あり。 *攀厭禅定をもつてのゆゑにすなはち色・無色界あり。 この三界はみなこれ*有漏なり。 邪道の所生なり。 長く大夢に寝ねて出でんと悕ふを知ることなし。
攀厭禅定 下位を厭い、 上位の天上界にのぼることをめざして禅定を修すること。 凡夫・外道の観法。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、以↢愛欲↡故則有↢欲界↡、以↠攀↢厭禅定↡故則有↢色・无色界↡。此三界皆是有漏、邪道所生。長寝↢大夢↡莫↠知↢悕出↡、
・ 能為の願
このゆゑに大悲心を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 *無上の正見道をもつて清浄の土を起して三界を出さん」 と。
是故興↢大悲心↡。願我成仏、以↢无上正見道↡起↢清浄土↡出↠于↢三界↡。
・ 成就の相
▼「性」 はこれ本の義なり。 いふこころは、 この浄土は法性に随順して法本に乖かず。 事、 ¬*華厳経¼ の*宝王如来の性起の義に同じ。
宝王如来の性起の義 ¬華厳経¼ 「宝王如来性起品」 に説かれる意を指す。 仏果は法性の理に順じて起ったものであるということ。 ここでは阿弥陀仏の浄土も同じく真如法性の顕現したものであるという意を示す。
性是本義、言此浄土随↢順法性↡不↠乖↢法本↡、事同↢¬花厳経¼寳王如来性起義↡。
▼またいふこころは、 積習して性を成ず。 *法蔵菩薩、 諸*波羅蜜を集めて積習して成ずるところを指す。
又言積習成↠性、*指↢法蔵菩薩↡、集↢諸波羅蜜↡積習所↠成。
指法蔵菩薩 返り点まま。 「法蔵比丘を指す」
▼また 「性」 といふは、 これ*聖種性なり。 序め法蔵菩薩、 *世自在王仏の所において、 *無生法忍を悟りたまへり。 その時の位を聖種性と名づく。 この性のなかにおいて四十八の大願を発してこの土を*修起せり。 すなはち安楽浄土といふ。 これかの因の所得なり。 果のなかに因を説く。 ゆゑに名づけて性となす。
修起 修行してその結果を成就すること。
亦言↠性者是聖種性。序法蔵菩薩於↢世自在王仏所↡悟↢无生法忍↡、爾時位名↢聖種性↡。於↢是性中↡発↢八大願↡修↢起此土↡、即曰↢安楽浄土↡。是彼因所得、果中説↠因故名為↠性。
▼またいふこころは、 「性」 はこれ必然の義なり、 不改の義なり。 ▼海の性の一味にして、 衆流入ればかならず一味となりて、 海の味はひ、 かれに随ひて改まらざるがごとし。 また人の身の性は不浄なるがゆゑに、 種々の妙好の*色・香・美味、 身に入ればみな不浄となるがごとし。 安楽浄土はもろもろの往生するもの、 不浄の色なく、 不浄の心なし。 畢竟じてみな清浄平等*無為法身を得ることは、 安楽国土清浄の性、 成就せるをもつてのゆゑなり。
色 すがた。 身体。
又言性是必然義、不改義。如↧海性一味衆流入者必為↢一味↡海味不↦随↠彼改↥也。又如↣人身性不浄故種種妙好色・香・美味入↠身皆為↢不浄↡。安楽浄土諸往生者、无↢不浄色↡无↢不浄心↡、畢竟皆得↢清浄平等无為法身↡、以↢安楽国土清浄性成就↡故。
▼「正道大慈悲 出世善根生」 とは、 *平等の大道なり。 平等の道を名づけて正道となす所以は、 平等はこれ諸法の*体相なり。 諸法平等なるをもつてのゆゑに*発心等し。 発心等しきがゆゑに道等し。 道等しきがゆゑに大慈悲等し。 大慈悲はこれ仏道の正因なるがゆゑに 「正道大慈悲」 といへり。
体相 本体。 本質的なすがた。
発心 法蔵菩薩のおこされた願心。
「正道大慈悲出世善根生」者、平等大道也、平等道。所↣以名為↢正道↡者、平等是諸法躰相。以↢諸法平等↡故発心等、発心等故道等、道等故大慈悲等。大慈悲是仏道正因故。言↢正道大慈悲↡、
▼慈悲に*三縁あり。 一には衆生縁、 これ小悲なり。 二には法縁、 これ中悲なり。 三には無縁、 これ大悲なり。 大悲はすなはち*出世の善なり。 安楽浄土はこの大悲より生ぜるがゆゑなり。 ゆゑにこの大悲をいひて浄土の根となす。 ゆゑに 「出世善根生」 といへり。
慈悲有↢三縁↡。一者衆生縁、是小悲。二者法縁、是中悲。三者无縁、是大悲。大悲即出世善也。安楽浄土従↢此大悲↡生故。故謂↢此大悲↡為↢浄土之根↡故曰↢「出世善根生」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 4 形相功徳
【11】 ▲浄光明満足 如鏡日月輪
この二句は荘厳形相功徳成就と名づく。
浄光明満足 如↢鏡日月輪↡。
此二句名↢荘厳形相功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本この荘厳功徳を起したまへる所以は、 日の*四域に行くを見そなはすに、 光*三方にあまねからず。 *庭燎、 宅にあるにあきらかなること*十仞に満たず。
四域 須弥山の四方にある
四大州のこと。 →
四天下
三方にあまねからず 日は須弥山の回りをめぐっているので、一方を照らせば他の三方を照らさない。
庭燎 庭のかがり火。
十仞 仞は長さの単位。 一仞は両手を左右に広げたときの長さ。
仏本所↣以起↢此荘厳功徳↡者、見↣日行↢四域↡光不↠周↢三方↡、庭燎力小反在↠宅明不↠満↢十*刃↡。
刃 諸本では 仞。
・ 能為の願
これをもつてのゆゑに浄光明を満たさんと願を起したまへり。
以↠是故起↧満↢浄光明↡願↥。
・ 成就の相
日月光輪の、 自体に満足せるがごとく、 かの安楽浄土もまた広大にして辺なしといへども、 清浄の光明、 充塞せざるはなからん。 ゆゑに 「浄光明満足 如鏡日月輪」 といへり。
如↣日月光輪満↢足自躰↡、彼安楽浄土雖↢復広大无↟辺、清浄光明无↠不↢充塞↡。故曰↢「浄光明満足如鏡日月輪」↡*也。
也 諸本では欠く。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 5 種々事功徳
【12】 ▲備諸珍宝性 具足妙荘厳
この二句は荘厳種々事功徳成就と名づく。
備↢諸珍寳性↡ 具↢足妙荘厳↡。
此二句名↢荘厳種種事功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 泥土をもつて宮の飾りとなし、 木石をもつて*華観となす。 あるいは金を彫り玉を鏤むも意願充たず。 あるいは営みて百千を備ふれば、 つぶさに辛苦を受く。
華観 はなやかな楼閣。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、以↢埿土↡為↢宮餝↡、以↢木石↡為↢花観↡。或彫↠金鏤↠玉、意願不↠充。或営備↢百千↡具受↢辛苦↡。
・ 能為の願
これをもつてのゆゑに大悲心を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 かならず珍宝具足し、 厳麗自然にして*有余にあひ忘れ、 おのづから仏道を得しめん」 と。
有余にあひ忘れ 充分すぎるほどあるので、あることさえ忘れて。
以↠此故興↢大悲心↡、願我成仏、必使↧珍寳具足厳麗自然*相↢忘於↟有↠余自得↞於↢仏道↡。
相忘於有余 返り点は聖教全書まま。 「余りあることをあひ忘れ」
・ 成就の相
この荘厳の事、 たとひ*毘首羯磨が工妙絶と称すとも、 思を積み想を竭すとも、 あによく取りて図さんや。 「性」 とは本の義なり。 能生すでに浄し、 所生いづくんぞ不浄を得ん。 ゆゑに ¬経¼ (維摩経) にのたまはく、 「その心浄きに随ひてすなはち仏土浄し」 と。 このゆゑに 「備諸珍宝性 具足妙荘厳」 といへり。
此荘厳事、縦使首羯磨工称↢妙絶↡、積↠思竭↠想、豈能取図。「性」者本義也、能生既浄、所生焉得↢不浄↡。故経言。「随↢其心浄↡則仏土浄」、是故言↢「備諸珍寳性具足妙荘厳」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 6 妙色功徳
【13】 ▲無垢光炎熾 明浄曜世間
この二句は荘厳妙色功徳成就と名づく。
无垢光炎熾 明浄曜↢世間↡。
此二句名↢荘厳妙色功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 優劣不同なり。 不同なるをもつてのゆゑに*高下もつて形る。 高下すでに形るれば、 是非もつて起る。 是非すでに起れば、 長く*三有に淪 没なり む。
高下 上下の意。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、優劣不同、以↢不同↡故高下以形、高下既形是非以起、是非既起長淪↢没倫音三有↡。
・ 能為の願
このゆゑに大悲心を興して平等の願を起したまへり。 「願はくはわが国土は光炎熾盛にして第一無比ならん。 人天の金色よく奪ふものあるがごとくならじ」 と。
是故興↢大悲心↡起↢平等願↡。願我国土光炎熾盛第一无比、不↠如↣人天金色能有↢奪者↡。
・ 成就の相
いかんがあひ奪ふ。 明鏡のごときを金辺に在けばすなはち現ぜず。 今日の時中の金を仏 (釈尊) の在時の金に比するにすなはち現ぜず。 仏 (釈尊) の在時の金を*閻浮那金に比するにすなはち現ぜず。 閻浮那金を大海のなかの転輪王の道中の*金沙に比するにすなはち現ぜず。 転輪王の道中の金沙を*金山に比するにすなはち現ぜず。 金山を須弥山の金に比するにすなはち現ぜず。 須弥山の金を三十三天の*瓔珞の金に比するにすなはち現ぜず。 三十三天の瓔珞の金を*炎摩天の金に比するにすなはち現ぜず。 炎摩天の金を*兜率陀天の金に比するにすなはち現ぜず。 兜率陀天の金を*化自在天の金に比するにすなはち現ぜず。 化自在天の金を*他化自在天の金に比するにすなはち現ぜず。 他化自在天の金を安楽国中の光明に比するにすなはち現ぜず。
閻浮那金 閻浮那は梵語ジャンブー・ナダ (jambū-nada) の音写。 閻浮樹の間を流れる河の意。 その河の底からとれる美しい砂金を閻浮那金という。
金沙 転輪王が世に出るときは海の水が減じ、 底に金の道ができるとされる。 ここではこの道の金砂のこと。
金山 須弥山の周囲をかこむ七重の山脈。
七金山。 →
須弥山
若為相奪、如↢明鏡↡在↢金辺↡則不↠現、今日時中金比↢仏在時金↡則不↠現、仏在時金比↢閻浮那金↡則不↠現、閻浮那金比↢大海中転輪王道中金沙↡則不↠現、転輪王道中金沙比↢金山↡則不↠現、金山比↢須弥山金↡則不↠現、須弥山金比↢三十三天瓔珞金↡則不↠現、三十三天瓔珞金比↢炎摩天金↡則不↠現、炎摩天金比↢兜卛陀天金↡則不↠現、兜卛陀天金比↢化自在天金↡則不↠現、化自在天金比↢他化自在天金↡則不↠現、他化自在天金比↢安楽国中光明↡則不↠現。
所以はいかんとなれば、 かの土の金光は*垢業より生ずることを絶つがゆゑなり。 清浄にして成就せざるはなきゆゑなり。 安楽浄土はこれ*無生忍の菩薩の浄業の所起なり。 阿弥陀如来法王の所領なり。 阿弥陀如来を*増上縁となしたまふがゆゑなり。 このゆゑに 「無垢光炎熾 明浄曜世間」 といへり。 「曜世間」 とは*二種世間を曜かすなり。
垢業 煩悩の垢のついた行い。
所以者何、彼土金光絶↧従↢垢業↡生↥故、清浄无↠不↢成就↡。*故安楽浄土是无生忍菩薩浄業所起、阿弥陀如来法王所領。阿弥陀如来為↢増上縁↡故、是故言↢「无垢光炎熾明浄曜世間」↡。「曜世間」者曜↢二種世間↡也。
故 句点位置は聖教全書まま。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 7 触功徳
【14】 ▲宝性功徳草 柔軟左右旋 触者生勝楽 過迦旃隣陀
この四句は荘厳触功徳成就と名づく。
寳性功徳草 柔*左右旋。 触者生↢勝楽↡ 過↢迦旃隣陀↡。
嘉永年間刊本、 本派本願寺蔵版、 大派依用本では 輭。 以下同。 ただし ¬論註¼ では略字の 「軟」 も混在。
此四句名↢荘厳触功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 金・玉を宝重すといへども衣服となすことを得ず。 明鏡を珍翫すれども*敷具によろしきことなし。 これによりて目を悦ばしむれども、 身に*便りならず。 身・眼の二情あに鉾楯せざらんや。
敷具 しきもの。
便りならず 不便である。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、雖↣*寳重↢金玉↡不↠得↠為↢衣服↡、珍翫↢明鏡↡无↠議↠於↢敷具↡。斯縁悦↠於↠目不↠便↠於↠身也、身・眼二情豈弗↢鉾楯↡乎。
寳重△ 返り点は聖教全書まま。 「宝△を重くす」
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土の人天の*六情、 *水乳に和して、 つひに*楚越の労を去らしめん」 と。
水乳 よく調和し融合することを水と乳がよく融和することに喩えていう。
楚越 ¬荘子¼ に出る故事。 楚の国と越の国は隣接していたが、 たがいに利害が対立し、 争いがたえなかったという。 ここでは、 六根が同じ体にあっても必ずしも調和がとれていないことに喩える。
是故願言。使↧我国土人天六情和↠於↢水乳↡卒去↦楚越之労↥。
・ 成就の相
ゆゑに*七宝柔軟にして目を悦ばしめ身に便りなるなり。 「迦旃隣陀」 とは、 天竺 (印度) の柔軟草の名なり。 これに触るればよく*楽受を生ず。 ゆゑにもつて喩へとなす。
楽受 受は感覚のこと。 身心をこころよくさせる感覚。
所以七寳柔軟悦↠目便↠身。「迦旃隣陀」者、天竺柔軟草名也。触↠之者能生↢楽受↡、故以為↠喩。
註者 (曇鸞) のいはく、 この間の土・石・草・木はおのおの定体あり。 訳者 (菩提流支) なにによりてか、 かの宝を目けて草となすや。 まさにその* 草風を得る貌なり 然 草の旋る貌なり 細き草をといふ なるをもつてのゆゑに、 草をもつてこれに目くるのみ。 余もし*参訳せばまさに別に途あるべし。
然 草が風になびくさま。
参訳 翻訳に参加すること。
註者言。此間土・石・草木各有↢定躰↡、訳者何縁目↢彼寳↡為↠草耶。当以↧其草得風*皃父虫反*能草旋皃一焭反↥細草曰亡小反故以↠草目↠之耳。余若参訳当↢別有↟途。
皃 聖教全書まま。 註なし。
能 鎌倉時代刊本では 「然」。
「生勝楽」 とは、 迦旃隣陀に触るれば*染着の楽を生ず。 かの軟宝に触るれば法喜の楽を生ず。 二事あひはるかなり。 勝にあらずはいかん。 このゆゑに 「宝性功徳草 柔軟左右旋 触者生勝楽 過迦旃隣陀」 といへり。
染着 執着のこと。 心が対象に染みついて離れないこと。
「生勝楽」者、触↢迦旃隣陀↡生↢染着楽↡、触↢彼軟寳↡生↢法喜楽↡。二事相玄。非↠勝*如何是。故言↢「寳性功徳草柔左右旋触者生勝楽過迦旃隣陀」↡。
如何是 句点位置は聖教全書まま。 「いかんぞ是せん」
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 8 三種功徳 1. 水功徳
【15】 ▲宝華千万種 弥覆池流泉 微風動華葉 交錯光乱転
この四句は荘厳水功徳成就と名づく。
寳華千万種 弥↢覆池流泉↡、 微風動↢華葉↡ 交錯光亂転。
此四句名↢荘厳水功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは澐溺 江の水の大きなる波、 これを澐溺といふ 洪濤 海の波の上がる して*滓沫人を驚かす。 あるいは*凝凘 氷を流す * 凍りてあひ着く して、 *蹙 迫る 架し、 常を失す を懐く。 向に安悦の情なし。 背ろに恐値の慮りあり。
滓沫 滓はにごった泥水、 沫はしぶきやあわのこと。
凝凘 氷塊が流れること。 流氷。
流氷がはりつめること。 結氷。
蹙架しを懐く 蹙架は迫りきて自由をうばうこと。 を懐くとは、 平常の心を失わせるという意。
仏本何故起↢此願↡。見↢有国土↡、或澐溺江水大波謂之澐溺亡音洪涛海波上大窂反滓沫驚↠人、或凝凘流氷上支反*古甲反凍相著大甲反蹙迫子六反架*壊。失常他則反向无↢安悦之情↡、背有↢恐値之慮↡。
(外字) 嘉永年間刊本・本願寺本では 浹、 鎌倉時代刊本・大派依用本では 。
壊 「壊」 は嘉永年間刊本では 「懐」。 返り点は聖教全書まま。 「壊す」
・ 能為の願
菩薩これを見そなはして大悲心を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 ▲あらゆる流・泉・池・沼 池なり 宮殿とあひ称ひ 事、 ¬経¼ (大経・上) 中に出づ。 種々の宝華布きて水の飾りとなり、 微風*やうやく扇ぎて*映発するに*序あり、 *神を開き体を悦ばしめて、 一として可ならずといふことなからん」 と。
映発 照らし合うこと。
序 一定の順序。
神 神識。 こころ。
菩薩見↠此興↢大悲心↡。願我成仏、所有流・泉・池・沼池之小反与↢宮殿↡相称事出経中種種寳花布為↢水餝↡、微風徐扇暎発有↠序開↠神悦↠躰无↢一不可↡。
・ 成就の相
このゆゑに 「宝華千万種 弥覆池流泉 微風動華葉 交錯光乱転」 といへり。
是故言↢「寳花千万種弥覆池・流・泉微風動花葉交錯光亂転」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 8 三種功徳 2. 地功徳
【16】 ▲宮殿諸楼閣 観十方無礙 雑樹異光色 宝欄遍囲繞
この四句は荘厳地功徳成就と名づく。
宮殿諸楼閣 観↢十方↡无。 雑樹異光色 寳*蘭遍囲繞。
蘭 他本では 欄。 以下同。
此四句名↢荘厳地功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 *嶕嶢 高き貌なり 峻 高なり 嶺にして枯木岑に横たはり、 *岝峉 岝峉は山斉しからず 深き山谷または山消の貌なり 嶙 深くして崖りなし にして莦 悪き草の貌なり *茅 道に草多くして行くべからず 壑に盈てり。 *茫々たる滄海、 *絶目の川たり。 *々たる広沢、 *無蹤の所たり。
嶕嶢峻嶺 山やみねがひときわ高くけわしいさま。 嶕嶢の註 「高き貌なり」 は底本では嶕の字註として付されてある。
岝峉嶙 山に高低があり、谷やがけが深いさま。
茅 底本には 「茀」 とある。
茫々 広々としたさま。 広大なさま。
絶目の川 一時に視界に入ってこないほどの広い水の流れ。
々 は草が風になびくさま。 荒れはてて淋しいようす。
無蹤 人跡がおよばないこと。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、嶕高皃才消反嶢牛消反峻高俊音嶺枯木横↠岑、岝山不斉才白反峉岝峉五百反峌深山谷亦山消皃形音嶙深无崖力人反莦悪草皃消音茅道多草不可行方交反盈↠壑。茫茫*蒼海為↢絶目之川↡、広沢為↢无蹤之所↡。
蒼 聖教全書まま。 註なし。
・ 能為の願
菩薩これを見そなはして大悲の願を興したまへり。 「願はくはわが国土は地平らかにして掌のごとく、 宮殿・楼閣は鏡のごとくして、 十方を納めんにあきらかにして属するところなく、 また属せざるにあらざらん。 宝樹・宝欄たがひに映飾とならん」 と。
菩薩見↠此興↢大悲願↡。願我国土地平如↠掌、宮殿・楼閣鏡納↢十方↡、的无↠所↠属亦非↠不↠属。寳樹寳蘭互為↢暎餝↡。
・ 成就の相
このゆゑに 「宮殿諸楼閣 観十方無礙 雑樹異光色 宝欄遍囲繞」 といへり。
是故言↢「宮殿諸楼閣観十方无雑樹異光色寳蘭遍囲繞」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 8 三種功徳 3. 虚空功徳
【17】 ▲無量宝交絡 羅網遍虚空 種種鈴発響 宣吐妙法音
この四句は荘厳虚空功徳成就と名づく。
无量寳交絡 羅網遍↢虚空↡。 種種鈴発↠響 宣↢吐妙法音↡。
此四句名↢荘厳虚空功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある国土を見そなはすに、 煙・雲・塵・霧、 *太虚を蔽障し、 *震烈 雨の声なり 大雨なり 上よりして堕つ。 *不祥の烖 天の火なり 霓 屈れる虹、 青赤あるいは白色の陰気なり つねに空より来りて、 憂慮百端にしてこれがために毛竪つ。
太虚 大空。
震烈 天地をふるわすような大雨。
不祥の烖霓 不吉な天火や虹。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、煙・雲・塵・霧蔽↢鄣太虚↡、震↢烈雨声士林反↡大雨下郭反従↠上而堕。不祥烖天火葬才反霓屈虹青赤或白色陰気五結反毎自↠空来憂慮百端、為↠之毛竪。
・ 能為の願
菩薩これを見そなはして大悲心を興したまへり。 「願はくはわが国土には*宝網*交絡して、 *羅は虚空に遍し、 鈴鐸 大鈴なり *宮商鳴りて道法を宣べん。 これを視て厭ふことなく、 道を懐ひて徳を見さん」 と。
宝網 珠をつらねた飾りあみ。
交絡 張りめぐらすこと。
羅 羅網のこと。 珠玉をつらねた飾りあみ。
宮商 宮・商・角・微・羽の五音 (五種の音階) を略していったもの。
菩薩見↠此興↢大悲心↡。願我国土寳網交絡羅遍↢虚空↡、鈴・鐸大鈴大各反宮・商鳴宣↢道法↡。視↠之无↠厭懐↠道見↠徳。
・ 成就の相
このゆゑに 「無量宝交絡 羅網遍虚空 種種鈴発響 宣吐妙法音」 といへり。
是故言↢「无量寳交絡羅網遍虚空種種鈴発響宣吐妙法音」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 9 雨功徳
【18】 ▲雨華衣荘厳 無量香普薫
この二句は荘厳雨功徳成就と名づく。
雨↢花衣荘厳↡ 无量香普*勲。
勲 諸本では 薫。
此二句名↢荘厳雨功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 服飾をもつて地に布き、 *所尊を延請せんと欲す。 あるいは香・華・名宝をもつて、 用ゐて*恭敬を表せんと欲す。 しかも*業貧しく感薄きものはこの事果さず。
所尊を延請せんと欲す 人々に尊ばれる仏を招こうと請い願うこと。
業貧しく感薄きもの 善業が少なく、 よい結果を招きがたい者。
仏本何故興↢此荘厳↡。見↢有国土↡、欲↧以↢服餝↡布↠地延↦請所尊↥、或欲↧以↢香花名寳↡用表↦恭敬↥。而業貧感薄是事不↠果。
・ 能為の願
このゆゑに大悲の願を興したまへり。 「願はくはわが国土にはつねにこの物を雨らして衆生の意に満てん」 と。
是故興↢大悲願↡。願我国土常雨↢此物↡満↢衆生意↡。
・ 成就の相
なんがゆゑぞ雨をもつて言をなすとならば、 おそらくは*取者のいはん。 「もしつねに華と衣とを雨らさば、 また虚空に填ち塞ぐべし。 なにによりてか妨げざらん」 と。 このゆゑに雨をもつて喩へとなす。 雨、 時に適ひぬれば、 すなはち*洪滔 水漫ちて大し の患ひなし。 安楽の報、 あに*累情の物あらんや。
取者 文字にとらわれる者。
洪滔 大水。 洪水。
累情の物 こころをわずらわせるもの。
何故以↠雨為↠言、恐取者云、若常雨↢花衣↡亦応↣填↢塞虚空↡、何縁不↠妨、是故以↠雨為↠喩。雨適↠時則无↢洪滔水漫大他高反之患↡。安楽報豈有↢累情之物↡乎。
*経にのたまはく、 「▲日夜*六時に宝衣を雨り宝華を雨る。 宝質柔軟にしてその上を履み践むにすなはち下ること四寸、 足を挙ぐる時に随ひて還復すること故のごとし。 用ゐること訖りぬれば、 宝地に入ること水の坎に入るがごとし」 と。 このゆゑに 「雨華衣荘厳 無量香普薫」 といへり。
経 ¬大経¼ ¬小経¼ の主意の文。
¬経¼言。日夜六時雨↢寳衣↡雨↢寳華↡、寳質柔軟履↢践其上↡則下四寸、随↢挙↠足時↡還復如↠故。用訖入↢寳地↡如↢水入↟坎。是故言↢「雨花衣荘厳无量香普薫」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 10 光明功徳
【19】 ▲仏慧明浄日 除世痴闇冥
▼この二句は荘厳光明功徳成就と名づく。
仏*恵明浄日 除↢世痴闇冥↡。
此二句名↢荘厳光明功徳成就↡。
恵 本願寺本では 慧。 以下同。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 また*項背に*日光ありといへども愚痴のために闇まさる。
項背 うなじとせなか。
日光 仏・菩薩の頭頂から放たれる光明。
仏本何故興↢此荘厳↡。見↢有国土↡、雖↢復項背日光↡而為↢愚痴↡所↠闇、
・ 能為の願
このゆゑに▼願じてのたまはく、 「わが国土のあらゆる光明、 よく痴闇を除きて仏の智慧に入り、 *無記の事をなさざらしめん」 と。
無記 意味のないこと。 役に立たないこと。
是故願言。*使↧我国土所有光明能除↢痴闇↡入↦仏智慧↥、不↠為↢无記之事↡。
使…入仏智慧 返り点は聖教全書まま。 「无記の事をなさじ」 は使役からはずれる。
・ 成就の相
またいはく、 安楽国土の光明は如来の智慧の報より起るがゆゑに、 よく世の闇冥を除く。
亦云。安楽国土光明従↢如来智慧報↡起故能除↢世闇冥↡。
¬経¼ (維摩経) にのたまはく、 「あるいは仏土あり。 光明をもつて*仏事をなす」 と。 すなはちこれはこれなり。 このゆゑに 「仏慧明浄日 除世痴闇冥」 といへり。
¬経¼言。「或有↢仏土↡以↢光明↡為↢仏事↡」。即是此也。是故言↢「仏恵明浄日除世痴闇冥」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 11 妙声功徳
【20】 ▲梵声悟深遠 微妙聞十方
この二句は荘厳妙声功徳成就と名づく。
梵声悟深遠 微妙聞↢十方↡。
此二句名↢荘厳妙声功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 善法ありといへども名声遠からず。 名声ありて遠しといへどもまた*微妙ならず。 名声ありて妙遠なれども、 また*物を悟らしむることあたはず。
微妙 はかりしれないほど奥深くすばらしこと。
仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、雖↠有↢善法↡而名声不↠遠、有↢名声↡雖↠遠復不↢微妙↡、有↢名声↡妙遠復不↠能↠悟↠物、
・ 能為の願
このゆゑにこの荘厳を起したまへり。 天竺国 (印度) には浄行を称して 「梵行」 となす。 *妙辞を称して 「梵言」 となす。 かの国には*梵天を貴重すれば、 多く 「梵」 をもつて讃をなす。 またいはく、 *中国の法、 梵天と通ずるがゆゑなり。 「声」 とは名なり。 名はいはく、 安楽土の名なり。
妙辞 尊い言葉。
中国 ここではインドを世界の中心地とみて中国と呼んでいる。
是故起↢此荘厳↡。天竺国称↢浄行↡為↢梵行↡、称↢妙辞↡為↢梵言↡。彼国貴↢重梵天↡、多以↠梵為↠讃。亦言、中国法与↢梵天↡通故也。「声」者名也。名謂安楽土名。
・ 成就の相
*経にのたまはく、 「▲もし人ただ安楽浄土の名を聞きて往生を欲願するに、 また願のごとくなることを得」 と。 これは名の物を悟らしむる証なり。
経 引用は ¬大経¼ の第十八願成就文および ¬平等覚経¼ ¬大阿弥陀経¼ 等の取意の文。
¬経¼言。「若人但聞↢安楽浄土之名↡欲↢願往生↡亦得↠如↠願。」此名悟↠物之証也。
¬釈論¼ (大智度論・意) にいはく、 「かくのごとき浄土は*三界の所摂にあらず。 なにをもつてこれをいふとならば、 ▼欲なきがゆゑに欲界にあらず。 *地居なるがゆゑに色界にあらず。 色あるがゆゑに無色界にあらざればなり。 けだし菩薩の*別業の致すところのみ」 と。
地居 地の上にあること。 色界は空中にあるが、 極楽は七宝の大地の上にある。
別業 特別な行業。 とくにすぐれた因位の行い。
¬釈論¼言。「如↠斯浄土非↢三界所摂↡。何以言↠之、无↠欲故非↢欲界↡、地居故非↢色界↡、有↠色故非↢无色界↡。盖菩薩別業所↠致耳。」
有を出でてしかうして有なるを 「有を出でて」 とは、 いはく、 三有を出づるなり。 「しかうして有なる」 とはいはく、 浄土の有なり 微といふ。 名よく開悟せしむるを妙 妙は好なり。 名をもつて、 よく物を悟らしむるゆゑに妙と称す といふ。 このゆゑに 「梵声悟深遠 微妙聞十方」 といへり。
出↠有而有曰↠微。出有者謂出三有而有者謂浄土有也名能開悟曰↠妙。妙好也以名能悟物故称妙是故言↢「梵声悟深遠微妙聞十方」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 12 主功徳
【21】 ▲正覚阿弥陀 法王善住持
この二句は荘厳主功徳成就と名づく。
正覚阿弥陀 法王善住持。
此二句名↢荘厳主功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 *羅刹君となれば、 すなはち*率土あひ*噉す。 *宝輪、 殿に駐 馬を立む まればすなはち*四域虞ひなし。 これを風の靡くに譬ふ。 あに本なからんや。
率土 王の率いる国土。 ここではその民のこと。
噉す くう、 くらうの意。
宝輪殿に… 宝輪は転輪聖王の乗る車。 転輪聖王が車を宮殿に駐め、そこにいて国を治めると、 世は平和におさまるということ。
四域 ここは四方の意。
仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、羅刹為↠君、則卛土相噉。寳輪駐↠立馬長句反殿、則四域无↠虞。 譬↢之風靡↡、豈无↠本耶。
・ 能為の願
このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわが国土にはつねに法王ましまして、 法王の善力に住持せられん」 と。
是故興↠願。願我国土常有↢法王↡、法王善力之所↢住持↡。
・ 成就の相
▽「住持」 とは、 ▼*黄鵠、 子安を持てば、 千齢かへりて起り、 魚母、 子を念持すれば、 * 夏水ありて冬水なきをといふ を経て壊せざるがごとし。 安楽国は〔阿弥陀仏の〕*正覚のためによくその国を持せらる。 あに正覚の事にあらざることあらんや。 このゆゑに 「正覚阿弥陀 法王善住持」 といへり。
黄鵠… ¬列異伝¼ に出る故事。 子安にたすけられた鶴 (黄鵠) が、 子安の死後、 三年間その墓の上でかれを思って鳴きつづけ、 鶴は死んだが子安は蘇って千年の寿命を保ったという。 ここでは、 鶴が命の恩人である子安を思う心の強さを住持に喩えたもの。
冬になると枯れる泉。
「住持」者如↧黄鵠持↢子安↡千齢更起、魚母念↢持子↡逕↠*夏有水冬无水曰火岳反不↞壊。安楽国為↢正覚↡善持↢其国↡、豈有↠非↢正覚事↡耶。是故言↢「正覚阿弥陀法王善住持」↡。
夏有… 聖教全書ではこの割註は 「不壊」 の後に入っており、 かつ 「无」 と 「」 の位置が入れ替わっている。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 13 眷属功徳
【22】 ▲如来浄華衆 正覚華化生
この二句は荘厳眷属功徳成就と名づく。
如来浄華衆 正覚花化生。
此二句名↢荘厳眷属功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは*胞血をもつて身器となす。 あるいは糞尿をもつて生の元となす。 あるいは*槐棘の高き圻より猜狂の子を出す。 あるいは*竪子が婢腹より*卓犖の才を出す。 *譏誚これによりて火を懐き、 *恥辱これによりて氷を抱く。
胞血 胞は胎児をつつむ皮膜。 血は父母の血のこと。
槐棘の… 槐棘はえんじゅといばらの木で、 中国の官位である三公と
九卿 (三槐九棘) のこと。 朝廷に仕える身分を指す。 →
補註8
竪子 召使いのこと。
卓犖 ものごとに明らかですぐれていること。
譏誚これによりて… 人のそしりをうけて、 全身があつくなるような恥ずかしい思いをすること。
恥辱これによりて… はずかしめられて、 氷を抱くように冷汗をかくこと。
仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或以↢胞血↡為↢身器↡、或以↢糞*屎↡為↢生元↡、或槐棘高圻出↢猜狂之子↡、或竪子婢腹出↢卓犖零角反之才↡。譏誚才召反由↠之懐↠火、恥辱縁以抱↠氷。
屎 聖教全書まま。 本願寺本・大派依用本では 尿。
・ 能為の願
ゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土にはことごとく如来浄華のなかより生じて、 眷属平等にして*与奪路なからしめん」 と。
与奪 ほめたりそしったりすること。
所以願言。使↧我国土悉於↢如来浄花中↡生、眷属平等与奪无↞路。
・ 成就の相
このゆゑに 「如来浄華衆 正覚華化生」 といへり。
是故言↢「如来浄花衆正覚花化生」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 14 受用功徳
【23】 ▲↓愛楽仏法味 ↓禅三昧為食
この二句は荘厳受用功徳成就と名づく。
愛↢楽仏法味↡ 禅三昧為↠食。
此二句名↢荘厳受用功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは巣を探りて卵を破り、 *饛 食を盛り満ちたる貌なり 饒 飽なり、 多し の饍となす。 あるいは*沙を懸けて帒を指すをあひ慰むる方となす。 ああ、 諸子実に痛心すべし。
饛饒 山盛りのごちそう。
沙を懸けて帒を指すを… 砂を入れた袋を壁にかけ、 その中に食ありと教えて、 空腹をしのぐ一時の慰めとするという喩え。
仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或探↠巣破↠卵為↢饛盛食満皃亡公反饒飽也多人消反之饍↡。或懸↠沙指↠帒為↢相慰之方↡。嗚呼諸子実可↢痛心↡。
・ 能為の願
このゆゑに大悲の願を興したまへり。 「願はくはわが国土、 仏法をもつて、 禅定をもつて、 三昧をもつて食となして、 永く他食の労ひを絶たん」 と。
是故興↢大悲願↡。願我国土、以↢仏法↡、以↢禅定↡、以↢三昧↡為↠食、永絶↢他食之労↡。
・ 成就の相
「↑愛楽仏法味」 とは、 日月灯明仏、 ¬法華経¼ を説きしに六十小劫なり。 時会の聴者また一処に坐して六十小劫なるも食のあひだのごとしと謂ふ。 一人としてもしは身、 もしは心をして*懈惓を生ずることあることなきがごとし。
懈惓 疲れ、 うとましく思うこと。
「愛楽仏法味」者、如日月灯明仏説↢¬法華経¼↡六十小劫、時会聴者亦坐↢一処↡六十小劫、謂↠如↢食*頃↡。无↠有↧一人若身若心而生↦懈惓↥。
頃 宗祖加点本・鎌倉時代刊本では 項。 聖教全書では他書によって訂正されている。 以下同。
「↑禅定をもつて食となす」 とは、 いはく、 もろもろの大菩薩はつねに三昧にありて他の食なし。 「三昧」 とは、 かのもろもろの人天、 もし食を須ゐる時、 *百味の嘉餚羅列して前にあり。 眼に色を見、 鼻に香りを聞ぎ、 身に*適悦を受けて自然に飽足す。 訖已りぬれば化して去り、 もし須ゐるにはまた現ず。 その事、 ¬経¼ (大経・上) にあり▲。 このゆゑに 「愛楽仏法味 禅三昧」 といへり。
百味の嘉餚 種々さまざまな美食。
適悦 よろこびのこころ。
「以↢禅定↡為↠食」者、謂諸大菩薩、常在↢三昧↡无↢他食↡也。「三昧」者彼諸人天若須↠食時、百味嘉餚羅列在↠前。眼見↠色鼻聞↠香身受↢適悦↡自然飽足。訖已化去、若須復現、其事在↠¬経¼。是故言↢愛楽仏法味禅三昧為食」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 15 無諸難功徳
【24】 ▲永離身心悩 受楽常無間
この二句は荘厳無諸難功徳成就と名づく。
永離↢身心悩↡ 受↠楽常无↠間。
此二句名↢荘厳无諸難功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは朝には*袞寵に預びて、 夕には*斧鉞に惶く。 あるいは幼くしては*蓬藜に捨てられ、 長じては*方丈を列ぬ。 あるいは*鳴笳して出づることをいひ、 麻絰して還ることを催す。 かくのごとき等の種々の*違奪あり。
袞寵 袞は天子の礼服、 転じて天子のこと。 天子の恩寵。
斧鉞 おのとまさかり。 刑罰の道具をあらわす。 転じて重刑のこと。
蓬藜 よもぎとあかざ。 あれはてた草むら、 または貧しい家の意。
方丈を列ぬ 一丈四方にごちそうを並べるほど豪華な食事ができる身分になる。
鳴笳して… 笳はあしぶえのこと。 麻絰は喪服のこと。 出発するときは笳を吹いてにぎやかであったが、 喪服を着てかえることになってしまったという意。
違奪 心にたがう、 ちぐはぐな行き違い。
仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或朝預↢袞寵↡夕惶↢斧鉞↡。或幼捨↢蓬藜↡長列↢方丈↡。或*鳴↠笳噵↢出↠麻歴経催還↡。有↢如↠是等種種違奪↡。
鳴笳噵出麻歴経催還 返り点、 文字とも聖教全書まま。 「笳を鳴らして麻を出で歴経し催還すと噵ふ」。 「噵」 は諸本では 「道」、 「麻」 は鎌倉時代刊本で脱落、 「歴」 は本願寺本・大派依用本で脱落、 「経」 は本願寺本では 「絰」。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土は安楽相続して畢竟じて間なからしめん」 と。
是故願言。使↢我国土安楽相続畢竟无↟間。身悩者飢渇・寒熱・殺害等也。
・ 成就の相
「身悩」 とは飢渇・寒熱・殺害等なり。 「心悩」 とは是非・得失・*三毒等なり。 このゆゑに 「永離身心悩 受楽常無間」 といへり。
心悩者是非・得失・三毒等也。是故言↢「永離身心悩受楽常无間」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 16 大義門功徳
【25】 ▲大乗善根界 等無譏嫌名 *女人及根欠 ▼二乗種不生
この四句は荘厳大義門功徳成就と名づく。 「門」 とは大義に通ずる門なり。 「大義」 とは*大乗の*所以なり。 人、 城に造りて門を得れば、 すなはち入るがごとし。 もし人安楽に生ずることを得れば、 これすなはち大乗を成就する門なり。
所以 いわれ。 本旨。
大乗善根界 等无↢譏嫌名↡、 女人及根欠 二乗種不↠生。
此四句名↢荘厳大義門功徳成就↡。門者*通↢大義之門↡也。大義者大乗所以也。如↢人造↠城得↠門則入↡。若人得↠生↢安楽↡者是則*成↢就大乗之門↡也。
通大義之門・成就大乗之門 ともに返り点まま。 「大義の門に通ず」、 「大乗の門を成就す」
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 仏如来・賢聖等の衆ましますといへども、 国、 濁せるによるがゆゑに、 *一を分ちて三と説く。 あるいは*眉を拓くをもつて誚りを致し、 あるいは*指語によりて譏りを招く。
眉を… 女性が眉をひらいて媚態を呈し、誚りを受けるという意。
仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、雖↠有↢仏如来賢聖等衆↡、由↢国濁↡故分↠一説↠三、或*以↧拓↢聴各反眉↡致↞誚、或縁↢指語↡招↠譏。
以拓眉致誚 返り点まま。 「眉を拓げて誚を致すをもってし」
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土をしてみなこれ大乗一味、 平等一味ならしめん。 *根敗の種子畢竟じて生ぜじ、 女人・*残欠の名字また断たん」 と。
根敗の種子 芽の出ない、 腐敗した種子。 ここでは仏果を証すべき因 (種子) のない
声聞、
縁覚の二乗を喩えていう。 →
二乗
残欠 根欠に同じ。
是故願言。使↢我国土皆是大乗一味平等一味↡。根敗種子畢竟不↠生、女人残欠名字亦断。
・ 成就の相
このゆゑに 「大乗善根界 等無譏嫌名 女人及根欠 二乗種不生」 といへり。
是故言↢「大乗善根界等无譏嫌名女人及根欠二乗種不生」↡。
問ひていはく、 *王舎城所説の ¬無量寿経¼ (上・意) を案ずるに、 法蔵菩薩の四十八願のなかにのたまはく、 「▲たとひわれ仏を得んに、 国のうちの声聞、 よく計量してその数を知ることあらば、 正覚を取らじ」 (第十四願) と。 これ声聞ある一の証なり。
問曰。案↢王舎城所説¬无量寿経¼↡、法蔵菩薩四十八願中言。「設我得↠仏国中声聞有↢能計量↡知↢其数↡者、不↠取↢正覚↡。」是有↢声聞↡一証也。
また ¬十住毘婆沙¼ (*易行品) のなかに龍樹菩薩、 阿弥陀の讃を造りていはく、 「▲三界の獄を超出して、 目は*蓮華葉のごとし。 声聞衆無量なり。 このゆゑに*稽首し礼したてまつる」 と。 これ声聞ある二の証なり。
蓮華葉 蓮華のはなびら。
又¬十住婆沙¼中龍樹菩薩造↢阿弥陀讃↡云。「超↢出三界獄↡目如↢蓮花葉↡。声聞衆无量、是故稽首。」是有↢声聞↡二証也。
また ¬摩訶衍論¼ (*大智度論・意) のなかにいはく、 「仏土種々不同なり。 あるいは仏土あり、 もつぱらにこれ声聞僧なり。 あるいは仏土あり、 もつぱらにこれ菩薩僧なり。 あるいは仏土あり、 菩薩・声聞会して僧となす。 阿弥陀の安楽国等のごときはこれなり」 と。 これ声聞ある三の証なり。
又¬摩訶衍論¼中言。「仏土種種不同。或有↢仏土↡、純是声聞僧。或有↢仏土↡、純是菩薩僧。或有↢仏土↡、菩薩・声聞会為↠僧、如↢阿弥陀安楽国等↡是也。」是有↢声聞↡三証也。
諸経のなかに安楽国を説くところありて、 多く声聞ありとのたまひて声聞なしとのたまはず。 声聞はすなはちこれ*二乗の一なり。 ¬論¼ (浄土論) に 「▲乃至無二乗名」 といへり。 これいかんが*会する。
会する 会通すること。 一見矛盾したように見える記述を道理に照らしあわせて、 趣意の一貫したものとして説明すること。
諸経中有↠説↢安楽国↡処、多言↠有↢声聞↡不↠言↠无↢声聞↡。声聞即是二乗之一。¬論¼言↣「乃至无↢二乗名↡。」此云何会。
答へていはく、 理をもつてこれを推するに、 安楽浄土には二乗あるべからず。 なにをもつてこれをいふとならば、 それ病あるにはすなはち薬あり。 *理数の常なり。
理数 自然の道理。
答曰。以↠理推↠之安楽浄土不↠応↠有↢二乗↡。何以言↠之、夫有↠病則有↠薬、理数之常也。
¬法華経¼ (意) にのたまはく、 「釈迦牟尼如来、 *五濁の世に出でたまへるをもつてのゆゑに、 一を分ちて三となす」 と。 浄土すでに五濁にあらず。 三乗なきことあきらかなり。
¬法花経¼言。「釈迦牟尼如来以↠出↢五濁世↡故、分↠一為↠三。」浄土既非↢五濁↡无↢三乗↡明矣。
¬法華経¼ (意) にのたまはく、 「もろもろの声聞、 この人いづこにおいてか*解脱を得ん。 ただ虚妄を離るるを名づけて解脱となす。 この人実にいまだ一切解脱を得ず。 いまだ*無上道を得ざるをもつてのゆゑなり」 と。 あきらかにこの理を推するに、 *阿羅漢すでにいまだ一切解脱を得ず。 かならず生ずることあるべし。 この人更りて三界に生ぜず。 三界のほかに、 浄土を除きてまた*生処なし。 ここをもつてただ浄土に生ずべし。
生処 生まれるべきところ。
¬法花経¼噵。「諸声聞是人於↠何而得↢解脱↡。但離↢虚妄↡名為↢解脱↡。是人実未↠得↢一切解脱↡。以↠未↠得↢无上道↡故。」竅推↢此理↡、阿羅漢既未↠得↢一切解脱↡。必応↠有↠生。此人更不↠生↢三界↡。三界外除↢浄土↡更无↢生処↡。是以唯応↧於↢浄土↡生↥。
「声聞」 といふがごときは、 これ他方の声聞来生せるを、 本の名によるがゆゑに称して声聞となす。 *天帝釈の人中に生るる時、 *憍尸迦を姓とせり。 後に天主となるといへども、 仏 (釈尊)、 人をしてその由来を知らしめんと欲して、 帝釈と語らひたまふ時、 なほ憍尸迦と称するがごとし。 それこの類なり。
憍尸迦 梵語カウシカ (kauśika) の音写。 帝釈天のもとの姓。
如言↢声聞↡者是他方声聞来生、仍↢本名↡故称為↢声聞↡。如↪天帝釈生↢人中↡時姓↢驕尸迦↡、後雖↠為↢天主↡、仏欲↠使↧人知↦其由来↥、与↢帝釈↡語時、猶称驕尸迦↨。其此類也。
またこの ¬論¼ (浄土論) にはただ 「▲二乗種不生」 といへり。 いはく安楽国に二乗の種子を生ぜずとなり。 またなんぞ二乗の来生を妨げんや。
又此¬論¼但言↢「二乗種不↟生」。謂安楽国不↠生↢二乗種子↡。亦何妨↢二乗来生↡耶。
たとへば*橘栽は*江北に生ぜざれども、 *河洛の*菓肆にまた橘ありと見るがごとし。 また鸚鵡は*壟西を渡らざれども、 *趙魏の*架桁にまた鸚鵡ありといふ。 この二の物、 ただその種渡らずといふ。
橘栽 たちばな、 またはみかんの類 (柑橘類) の総称。
江北 江蘇省北部の地。 広義で長江 (揚子江) より北の地域。
河洛 黄河と洛水にはさまれた流域。 具体的には洛陽の都。
菓肆 肆は店の意。 くだものを売る店のこと。
壟西 隴山の西、隴西郡の地。 現在の甘粛省隴西。
趙魏 戦国七雄の趙国と魏国。 現在の河北省南部、 山西省の南部と北部、 河南省の北部一帯をいう。
架桁 鳥かごのとまり木。
譬如↧橘栽不↠生↢江北↡、河洛菓肆亦見↞有↠橘。又言↧鸚鵡不↠渡↢壟西↡、趙魏架桁亦有↦鸚鵡↥。此二物但言↢其種不↟*渡↠彼、
渡彼 返り点、 読点は聖教全書まま。 「かしこに渡 (さず)」。
かしこに声聞のあることまたかくのごとし。 かくのごとき解をなさば、 経論すなはち会しぬ。
有↢声聞↡亦如↠是。作↢如↠是解↡、経論則会。
問ひていはく、 名はもつて事を召く。 事あればすなはち名あり。 安楽国にはすでに*二乗・女人・根欠の事なし。 またなんぞまたこの三の名なしといふべけんや。
問曰。名以召↠事、有↠事乃有↠名。安楽国既无↢二乗・女人・根欠之事↡。亦何須↣復言↠无↢此三名↡耶。
答へていはく、 軟心の菩薩のはなはだしくは勇猛ならざるを、 譏りて声聞といふがごとし。 人の*諂曲なると、 あるいはまた*儜弱なるを、 譏りて女人といふがごとし。 また眼あきらかなりといへども事を識らざるを、 譏りて盲人といふがごとし。 また耳聴くといへども義を聴きて解らざるを、 譏りて聾人といふがごとし。 また舌語ふといへども*訥口蹇吃なるを、 譏りて人といふがごとし。 かくのごとき等ありて、 根具足せりといへども*譏嫌の名あり。 このゆゑにすべからく 「乃至名なし」 といふべし。 浄土にはかくのごとき等の*与奪の名なきことあきらかなり。
諂曲 へつらうこと。
儜弱 弱々しいこと。
訥口蹇吃 口ごもってなめらかでないこと。
譏嫌の名 不快なそしりの名。
与奪の名… 与はほめること、 奪はそしり、 しりぞけること。 ここでは浄土にはそしりの名さえないという意。
答曰。如↧軟心菩薩不↢甚勇猛↡譏言↦声聞↥。如↧人諂曲、或復儜弱譏言↦女人↥。又如↧眼雖↠明而不↠識↠事譏言↦盲人↥。又如↧耳雖↠聴而聴↠義不↠解譏言↦聾人↥。又如↧舌雖↠語而訥口蹇*乏譏言↦人↥。*有↢如↠是等根↡雖↢具足↡而有↢譏嫌之名↡。是故須↠言↢乃至无↟名*明。浄土无↢如↠是等与奪之名↡。
乏 他本では 「吃」。
有△根 返り点は聖教全書まま。 「△を根有りて(具足せりと雖も…)」。
明 句点位置は聖教全書まま。
▼問ひていはく、 法蔵菩薩の本願 (第十四願)、 および龍樹菩薩の所讃 (易行品) を尋ぬるに、 みなかの国に声聞衆多なるをもつて*奇となすに似たり。 これなんの義かある。
奇 すぐれていること。
問曰。尋↢法蔵菩薩本願及龍樹菩薩所讃↡、皆似↧以↢彼国声聞衆多↡為↟奇。此有↢何義↡。
▼答へていはく、 声聞は*実際をもつて証となす。 計るにさらによく仏道の根芽を生ずべからず。 しかるに仏、 本願の不可思議の神力をもつて、 摂してかしこに生ぜしめ、 かならずまさにまた神力をもつてその*無上道心を生ずべし。 ▼たとへば*鴆鳥の水に入れば*魚蚌ことごとく死し、 *犀牛これに触るれば死せるものみな活るがごとし。 かくのごとく生ずべからずして生ず。 ゆゑに奇とすべし。
実際 真実の際限の意で涅槃の異名。 ここでは、 声聞乗の究極目的であるところの身心ともに滅する無余涅槃のこと。
鴆鳥 中国に伝えられる毒鳥の名。 毒蛇を食べるといい、 その羽根を酒に浸すと毒酒になるという。
魚蚌 魚介類。 蚌は、 どぶ貝、 またははまぐり。
犀牛 さい。
答曰。声聞以↢実際↡為↠証。計不↠応↣更能生↢仏道根*芽↡。而仏以↢本願不可思議神力↡摂令↠生↠彼、必当↧復以↢神力↡生↦其无上道心↥。譬如↧鴆鳥入↠水魚*蜯咸死、犀牛触↠之死者皆活↥。如↠此不↠応↠生而生、所以可↠奇。
芽 宗祖加点本・鎌倉時代刊本・嘉永年間刊本では 牙。
蜯 聖教全書まま。 註なし。
▼しかるに*五不思議のなかに、 仏法もつとも不可思議なり。 仏よく声聞をしてまた無上道心を生ぜしむ。 まことに不可思議の至りなり。
然五不思議中仏法不可思議。仏能使↧声聞復生↦无上道心↥、真不可思議之至也。
◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 17 一切所求満足功徳
【26】 ▲衆生所願楽 一切能満足
この二句は荘厳一切所求満足功徳成就と名づく。
衆生所↢願楽↡ 一切能満足。
此二句名↢荘厳一切所求満足功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を興したまへる。 ある国土を見そなはすに、 あるいは名高く位重くして、 *潜処するに由なし。 あるいは人凡に性鄙しくして、 出でんと悕ふに路なし。 あるいは*修短、 業に繋がれて、 制することおのれにあらず。*阿私陀仙人のごとき類なり。 かくのごとき等の、 *業風のために吹かれて自在を得ざることあり。
潜処 かくれ住むこと。
修短業に繋がれて 寿命の長短がそれぞれの業報として決定しているという意。
業風 業力を風に喩えたもの。 善悪業が苦楽の果報をもたらす様を、 風が塵を吹き飛ばすのに喩えていう。
仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或名高位重潜処无↠由、或人凡性鄙悕↠出靡↠路、或修短繋業制不↠在↠己、如↢阿私陀仙人↡類也。有↧如↠是等為↢業風↡所↠吹不↠得↦自在↥。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「わが国土をしておのおの所求に称ひて、 情願を満足せしめん」 と。
是故願言。使↧我国土各称↢所求↡満↦足情願↥。
・ 成就の相
このゆゑに 「衆生所願楽 一切能満足」 といへり。
是故言↢「衆生所願楽一切能満足」↡。
・ 結成
【27】 ▲是故願生彼 阿弥陀仏国
この二句は上に十七種荘厳国土成就を観察するは、 願生する所以なることを結成す。 器世間清浄を釈すること、 これ上に訖りぬ。
是故願生↢彼 阿弥陀仏国↡。
此二句結↣成上観↢察十七種荘厳国土成就↡。*所↢以願生↡釈↢器世間清浄↡訖↢之于↟上。
所以願生 句点は聖教全書まま。 「願生の所以に (…を釈す)」
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間
【28】次に衆生世間清浄を観ず。 この門のなかを分ちて二の別となす。 一には阿弥陀如来の荘厳功徳を観察す。 二にはかのもろもろの菩薩の荘厳功徳を観察す。 如来の荘厳功徳を観察するなかに八種あり。 文に至りてまさに目くべし。
次観↢衆生世間清浄↡、此門中分為↢二別↡。一者観↢察阿弥陀如来荘厳功徳↡。二者観↢察彼諸菩薩荘厳功徳↡。観↢察如来荘厳功徳↡中有↢八種↡、至↠文当↠目。
・ 衆生名義
問ひていはく、 *ある論師、 汎く衆生の*名義を解するに、 それ*三有に輪転して衆多の*生死を受くるをもつてのゆゑに*衆生と名づくと。 いま仏・菩薩を名づけて衆生となす。 この義いかん。
ある論師 小乗の論師を指す。
名義 名の意味。
問曰。有論師汎解↢衆生名義↡、以↧其輪↢転三有↡受↦衆多生死↥故名↢衆生↡。今名↢仏・菩薩↡為↢衆生↡、是義云何。
答へていはく、 ¬経¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「一法に無量の名あり、 一名に無量の義あり」 と。 衆多の生死を受くるをもつてのゆゑに名づけて衆生となすがごときは、 これはこれ小乗家の三界のなかの衆生の名義を釈するなり。 大乗家の衆生の名義にはあらず。 大乗家にいふところの衆生とは、 ¬*不増不減経¼ にのたまふがごとし。 「衆生といふはすなはちこれ不生不滅の義なり」 と。 なにをもつてのゆゑに。 もし生あらば生じをはりてまた生じ、 *無窮の過あるがゆゑに、 不生にして生ずる過あるがゆゑなり。 このゆゑに無生なり。 もし生あらば滅あるべし。 すでに生なし。 なんぞ滅あることを得ん。 このゆゑに無生無滅はこれ衆生の義なり。 ¬経¼ (維摩経・意) のなかに、 「*五受陰、 通達するに*空にして所有なし。 これ苦の義なり」 とのたまふがごとし。 これその類なり。
無窮の過 無限にくりかえして論証が成立しない過失。
答曰。¬経¼言。「一法有↢无量名↡、一名有↢无量義↡。」如↧以↠受↢衆多生死↡故名為↦衆生↥者、此是小乗家釈↢三界中衆生名義↡、非↢大乗家衆生名義↡也。大乗家所↠言衆生者、如↢¬不増不*減経¼言↡。「言↢衆生↡者即是不生不滅義。」何以故、若有↠生生已復生有↢无窮過↡故、有↢不生而生過↡故。是故无生。若有↠生可↠有↠滅。既无↠生何得↠有↠滅。是故无生无滅是衆生義。如↧¬経¼中言↦「五受陰通達空无↠所有↡是*名義」↥。斯其類也。
減 宗祖加点本、 鎌倉時代刊本では 「咸」。 聖教全書では諸本により訂正されている。
名 宗祖加点本、 鎌倉時代刊本を除く諸本では 「苦」。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 1 座功徳
【29】 ▲無量大宝王 微妙浄華台
この二句は荘厳座功徳成就と名づく。
无量大寳王 微妙浄花台。
此二句名↢荘厳座功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの座を荘厳したまへる。 ある菩薩を見そなはすに、 *末後の身において、 草を敷きて坐して*阿耨多羅三藐三菩提を成じたまふ。 人天の見るもの、 増上の信、 増上の*恭敬、 増上の*愛楽、 増上の修行を生ぜず。
末後の身 菩薩が成仏する直前の身。 迷いの尽きる最後の身。
愛楽 喜び好むこと。
仏本何故荘↢厳此座↡。見↢有菩薩↡、於↢末後身↡敷↠草而坐成↢阿耨多羅三藐三菩提↡、人天見者不↠生↢増上信・増上恭敬・増上愛楽・増上修行↡。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏する時、 無量の大宝王の*微妙の浄華台をして、 もつて仏の座となさしめん」 と。
微妙 はかりしれないほど奥深くすばらしいこと。
是故願言。我成仏時使↢无量大寳王微妙浄花台↡以為↢仏*座↡。
座 宗祖加点本 (聖教全書も) では 「坐」。 ¬大経¼ 等で名詞=「座」、 動詞=「坐」 とされているのに合わせ修正。 以下同。
・ 成就の相
「無量」 とは、 ¬観無量寿経¼ にのたまふがごとし。 「▲七宝の地の上に大宝蓮華王の座あり。 蓮華の一々の*葉、 百宝色をなす。 八万四千の*脈あり。 なほ天の画のごとし。 脈に八万四千の光あり。 華葉の小さきものは*縦広二百五十*由旬なり。 かくのごとき華に八万四千の葉あり。 一々の葉のあひだに百億の*摩尼珠王あり、 もつて映飾となす。 一々の摩尼は、 千の光明を放つ。 その光は蓋のごとし。 七宝合成してあまねく地の上に覆ふ。 *釈迦毘楞伽宝、 もつてその台となす。 この蓮華台は八万の金剛・*甄叔迦宝・*梵摩尼宝・*妙真珠網、 もつて厳飾となす。 その台の上において、 自然にして*四柱の宝幢あり。 一々の宝幢は、 八万四千億の*須弥山のごとし。 幢の上の宝幔は、 *夜摩天宮のごとし。 五百億の微妙の宝珠あり、 もつて映飾となす。 一々の宝珠に八万四千の光あり。 一々の光、 八万四千の異種の金色をなす。 一々の金光、 安楽宝土に遍す。 処々に変化しておのおの異相をなす。 あるいは金剛台となり、 あるいは真珠網となり、 あるいは*雑華雲となる。 十方面において意に随ひて変現し、 仏事を化作す」 と。 かくのごとき等の事、 数量に出過せり。 このゆゑに 「無量大宝王 微妙浄華台」 といへり。
葉 はなびら。
脈 はなびらのすじ。
摩尼珠王 摩尼は梵語マニ (maņi) の音写。 意のままに財宝や衣服・飲食などを出す徳をもつ宝珠。 また悪を去り、 濁水をきよらかにし、 禍を去る徳をもつともいう。
甄叔迦宝 甄叔迦は梵語キンシュカ (kiņśka) の音写。 甄叔迦という木に咲く赤い花の色に似た宝石。
梵摩尼宝 梵は清浄の意、 きよらかな摩尼宝珠 (如意宝珠) のこと。
妙真珠網 すぐれた真珠をちりばめた飾りあみ。
四柱の宝幢 蓮華台の四方にある宝でできた柱。
雑華雲 種々の色をした花で飾られた雲。
「无量」者如↢¬観无量寿経¼言↡。「七寳地上有↢大寳蓮花王座↡。蓮花一一葉作↢百寳色↡。有↢八*萬四千脉↡、猶↢如天画↡。脉有↢八萬四千光↡、花葉小者縦広二百五十由旬。如↠是花有↢八萬四千葉↡。一一葉間有↢百億摩尼珠王↡、以為↢暎餝↡。一一摩尼放↢千光明↡、其光如↠盖、七寳合成遍覆↢地上↡。釈迦楞伽寳、以為↢其台↡。此蓮花台八萬金剛甄叔迦寳・梵摩尼寳・妙真珠網、以為↢厳餝↡。於↢其台上↡、自然而有↢四柱寳幢↡。一一寳幢如↢八萬四千億須弥山↡。幢上寳幔如↢夜摩天宮↡、有↢五百億微妙寳珠↡、以為↢暎餝↡。一一寳珠有↢八萬四千光↡、一一光作↢八萬四千異種金色↡。一一金光遍↢安楽寳土↡、処処変化各作↢異相↡。或為↢金剛台↡、或作↢真珠網↡、或作↢雑花雲↡。於↢十方面↡随↠意変現、化作↢仏事↡。」如↠是等事出↢過数量↡是故言↢「无量大寳王微妙浄花台」↡。
万 略字は聖教全書まま (原漢文中での 「万」 には旧字 「萬」 の文字コード使用)。 以下同。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 2 身業功徳
【30】 ▲相好光一尋 色像超群生
この二句は荘厳身業功徳成就と名づく。
相好光一尋 色像超↢群生↡。
此二句名↢荘厳身業功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞかくのごとき身業を荘厳したまへる。 ある仏身を見そなはすに、 一丈の光明を受けたり。 人の身光においてはなはだしくは超絶せず。*転輪王の相のごとし。 そもそもまた大きに*提婆達多に同じ。 *減ずるところ唯一なれば、 *阿闍世王をして、 ここをもつて乱を懐かしむることを致す。*刪闍耶等あへて*蟷螂のごとくするも、 あるいはかくのごとき類なり。
減ずるところ唯一なれば 仏身の三十二相より、 ただ一相を欠いただけということ。 提婆達多は一般には、 白毫相と千輻輪相の二相を欠くとされる。 またこれにより 「減ずるところ唯二」 とする異本もある。
蟷螂 かまきりのこと。 ¬荘子¼ に、 かまきりが車輪に向かっていく喩えがある。
仏本何故荘↢厳如↠此身業↡。見↢有仏身↡、受↢一丈光明↡、於↢人身光↡不↢甚超絶↡、如↢転輪王相↡。抑亦大*同↢提婆達多所↟減唯一。致↠令↢阿闍世王以↠茲懐↟亂。刪闍耶等敢如↠蟷蜋↡、或如↠此類也。
同…所減唯一 句点、 返り点は聖教全書まま。 「…の減ずるところに同じ唯一なり」
・ 能為の願
このゆゑにかくのごとき身業を荘厳したまへり。
是故荘↢厳如↠此身業↡。
・ 成就の相
この間 (中国) の*詁訓を案ずるに、 六尺を尋といふ。 ¬観無量寿経¼ (意) にのたまへるがごとし。 「▲阿弥陀如来の身の高さ六十万億*那由他*恒河沙由旬なり。 ▲仏の*円光は百億の*三千大千世界のごとし」 と。
詁訓 字句の解釈。
案↢此間詁訓↡六尺曰↠尋。如↢¬観无量寿経¼言↡。「阿弥陀如来身高六十萬億那由他恒河沙由旬。仏円光如↢百億三千大千世界↡。」
訳者 (菩提流支)、 尋をもつてしていへり。 なんぞそれ晦きや。 *里舎の間の人、 縦横長短を*簡ばず、 ことごとく横に両手の臂を舒べて尋となすといへり。 もし訳者、 あるいはこの類を取りて用ゐて、 阿弥陀如来の、 臂を舒べたまふに准じて言をなす。 ゆゑに一尋と称せば、 円光また径六十万億那由他恒河沙由旬なるべし。 このゆゑに 「相好光一尋 色像超群生」 といへり。
里舎の間 むらざと。
簡ばず 区別しない。
訳者以↠尋而言、何其晦禾代反乎。里舎間人不↠簡↢縦横長短↡、咸謂↧横舒↢両手臂↡為↞尋。若訳者或取↢此類↡用准↢阿弥陀如来舒臂↡為↠言故、称↢一尋↡者円光亦応↢径六十萬億那由他恒河沙由旬↡。是故言↢「相好光一尋色像超群生」↡。
・ 法界身義
問ひていはく、 ¬観無量寿経¼ にのたまはく、 「▲↓諸仏如来はこれ*法界身なり。 一切衆生の心想のうちに入る。 このゆゑに、 なんぢら↓心に仏を想ふ時、 この心すなはちこれ*三十二相・*八十随形好なり。 ↓この心作仏す。 ↓この心これ仏なり。 ↓*諸仏正遍知海は心想より生ず」 と。 この義いかん。
諸仏正遍知海 正しく完全に真理をさとったあらゆる仏陀たちの意。
問曰。¬観无量寿経¼言。「諸仏如来是法界身、入↢一切衆生心想中↡。是故汝等心想↠仏時、是心即是三十二相・八十随形好。是心作仏、是心是仏。諸仏正遍知海従↢心想↡生。」是義云何。
答へていはく、 「身」 を*集成と名づく。 「界」 を事別と名づく。 眼界のごときは*根・色・空・明・作意の五の因縁によりて生ずるを名づけて眼界となす。 これ*眼ただみづからおのが縁を行じて他縁を行ぜず。 *事別なるをもつてのゆゑなり。 耳・鼻等の界もまたかくのごとし。
集成 さまざまな要素、 作用、 性徳などが集まってできていること。
根色空明作意 眼という器官 (根)、 対象の事物 (色)、 空間 (空)、 明り (明)、 見ようという意思 (意) のこと。
眼ただ… 眼はただ色境 (もの、 すがた、 かたち) という対象 (所縁) を見るだけで、 声を聞く、 香を嗅ぐなどということはない。 ここにいう 「行ず」 は心が対象を認識するはたらきのこと。
事別 事物の区別、 事物の別々の相のこと。
答曰。身名↢集成↡、界名↢事別↡。如↢眼界↡縁↢根・色・空・明・作意五因縁↡生名為↢眼界↡。是眼但自行↢己縁↡不↠行↢他縁↡。以↢事別↡故。耳・鼻等界亦如↠是。
「↑諸仏如来はこれ法界身なり」 といふは、 「法界」 はこれ衆生の心法なり。 心よく世間・出世間の一切諸法を生ずるをもつてのゆゑに、 心を名づけて法界となす。 法界よくもろもろの如来の相好の身を生ず。 また色等のよく眼識を生ずるがごとし。 このゆゑに仏身を法界身と名づく。 この身、 他の縁を行ぜず。 このゆゑに 「一切衆生の心想のうちに入る」 となり。
言↢諸仏如来是法界身↡者、法界是衆生心法也。以↣心能生↢世間・出世間一切諸法↡故、名↠心為↢法界↡。法界能生↢諸如来相好身↡。亦如↣色等能生↢眼識↡。是故仏身名↢法界身↡。是身不↠行↢他縁↡。是故入↢一切衆生心想中↡。
「↑心に仏を想ふ時、 この心すなはちこれ三十二相・八十随形好なり」 といふは、 衆生の心に仏を想ふ時に当りて、 仏身の相好、 衆生の心中に顕現するなり。 ▼たとへば水清ければすなはち*色像現ず、 水と像と一ならず異ならざるがごとし。 ゆゑに仏の相好の身すなはちこれ心想とのたまへるなり。
色像 すがた、 かたち。
心想↠仏時是心即是三十二相八十随形好者、*当衆生心想↠仏時、仏身相好顕↢現衆生心中↡也。譬如↢水清則色像現、水之与↠像不↠一不↟異。故言↢仏相好身即是心想↡也。
当 返り点は聖教全書まま。 「まさに…」
▼「↑この心作仏す」 といふは、 心よく仏を作るといふなり。
是心作仏者、言↢心能作仏↡也。
▼「↑この心これ仏」 といふは、 心のほかに仏ましまさず。 たとへば火は木より出でて、 火、 木を離るることを得ず。 木を離れざるをもつてのゆゑにすなはちよく木を焼く。 木、 火のために焼かれて、 木すなはち火となるがごとし。
是心是仏者、心外无↠仏也。譬如↢火従↠木出火不↠得↠離↠木也、以↠不↠離↠木故則能焼↠木、木為↠火焼↠木即為↟火也。
「↑諸仏正遍知海は心想より生ず」 といふは、 「正遍知」 とは真正に*法界のごとくにして知るなり。 法界*無相なるがゆゑに諸仏は*無知なり。 無知をもつてのゆゑに知らざるはなし。 無知にして知るはこれ正遍知なり。 この知、 深広にして*測量すべからず。 ゆゑに海に譬ふ。
無知 思慮分別をはなれた無分別智のこと。
諸仏正遍知海従↢心想↡生者、正遍知者真正、如↢法界↡而知也。法界无相故諸仏无知也。以↢无知↡故无↠不↠知也。无知而知者是正遍知也。是知深広不↠可↢測量↡、故譬↠海也。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 3 口業功徳
【31】 ▲如来微妙声 梵響聞十方
この二句は荘厳口業功徳成就と名づく。
如来微妙声 梵響聞↢十方↡。
此二句名↢荘厳口業功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある如来を見そなはすに、 名の尊からざるに似る。 外道人を* 車を推す して、 *瞿曇姓と称するがごとし。 *道を成ずる日、 声はただ梵天に徹る。
して は車をおしかえすこと。 ここでは転じて軽んずる、 けなしおとしめるという意。
瞿曇 梵語ガウタマ (Gautama) の音写。 釈尊の本姓。 ここでは外道が釈尊を軽んじていういい方。
道を成ずる… 釈尊成道の時、 その名声は色界の初禅天にとどいたにすぎなかったという意。
仏本何故興↢此荘厳↡。*見↧有如来名似↠不↠尊、如↣外道*推車人家反人称↢瞿曇姓↡、成↠道*曰↠声唯徹↦梵天↥。
見…徹△ 返り点は聖教全書まま。 「…△を徹すを見る」
人 返り点は聖教全書まま。 「(外道の)人」
曰声 「曰」 は他本では 「日」。 「声をいふに」。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏せんに、 妙声はるかに布きて、 聞くものをして*忍を悟らしめん」 と。
是故願言。使↧我成仏妙声遐布聞者悟↞忍。
・ 成就の相
このゆゑに 「如来微妙声 梵響聞十方」 といへり。
是故言↢「如来微妙声梵響聞十方」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 4 心業功徳
【32】 ▲同地水火風 虚空無分別
この二句は荘厳心業功徳成就と名づく。
同↢地・水・火・風・ 虚空↡无↢分別↡。
此二句名↢荘厳心業功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を興したまへる。 ある如来を見そなはすに、 法を説くに、 *これは黒、 これは白、 これは不黒・不白、 下法・中法・上法・上上法とのたまふ。 かくのごとき等の無量差別の品あり。 分別あるに似たり。
これは黒これは白 黒は悪法・悪業、 白は善法・善業の意。
仏本何故興↢此荘厳↡。見↢有如来↡説↠法云↢此黒此白、此不黒・不白・下法・中法・上法・上上法↡、有↢如↠是等无量差別品↡、似↠有↢分別↡。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏せんに、 地の荷負するに軽重の殊なきがごとく、 水の潤長するに*莦 悪草 瑞草なり の異なきがごとく、 火の成*就するに芳臭の別なきがごとく、 風の起発するに眠悟の差なきがごとく、 空の苞受するに開塞の念なきがごとくならしめん」 と。
莦 悪い草と善い草。
就 異本には 「熟」 とある。
是故願言。使我成仏、如↣地荷負无↢軽重之殊↡、如↣水潤長无↢莦悪草瑞草括音之異↡、如↣火成*就无↢芳臰之別↡、如↣風起発无↢眠悟之差↡、如↣空苞受无↢開塞之念↡、
就 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「熟」。
・ 成就の相
これを内に得て、 物を外に安んず。 *虚しく往きて実ちて帰り、 ここにおいて息む。 このゆゑに 「同地水火風 虚空無分別」 といへり。
虚しく往きて実ちて帰り 何ももたずに出かけて、 満ちたりて帰り。 ここでは、 心を虚しくして仏に向かえば、 仏の功徳が満ち入るという意。
得↢之于↟内物安↠於↠外。虚往実帰*於↢是于↟息。是故言↢「同地水火風虚空无分別」↡。
於是于息 返り点は聖教全書まま。 「これ息においてをや」
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 5 大衆功徳
【33】 ▲天人不動衆 清浄智海生
この二句は荘厳*衆功徳成就と名づく。
衆 異本には 「大衆」 とある。
天人不動衆 清浄智海生。
此二句名↢荘厳*衆功徳成就↡。
衆 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「大衆」。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある如来を見そなはすに、 説法輪下のあらゆる大衆、 もろもろの*根・性・欲は種々不同なり。 仏の智慧において、 もしは退きもしは没す。 等しからざるをもつてのゆゑに、 衆、 純浄ならず。
根性欲 人々の素質 (機根)、 習性、 望み。
仏本何故起↢此荘厳↡。*見↧有如来説↢法輪↡下、所有大衆諸根性欲種種不同、於↢仏智*慧↡、若退若没、以↠不↠等故、衆不↦純浄↥。
見…不純浄 返り点は聖教全書まま。 「…純浄ならざるを見そなはす」
慧 宗祖加点本では 恵。 聖教全書では諸本によって訂正されている。 以下同。
・ 能為の願
ゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわれ成仏せんに、 あらゆる天・人みな如来の智慧清浄海より生ぜん」 と。
所以興↠願。願我成仏、所有天人皆従↢如来智慧清浄海↡生。
・ 成就の相
▼「海」 とは、 仏の*一切種智は深広にして崖りなく、 *二乗雑善の*中・下の死尸を宿さざることをいひて、 これを海のごとしと喩ふ。 このゆゑに 「天人不動衆 清浄智海生」 といへり。
中下の死尸 声聞・
縁覚の二乗のこと。 声聞乗を下乗、 縁覚乗を中乗、 菩薩乗を上乗という。 このうちの声聞 (下)・縁覚 (中) の二乗は、 最高のさとりを求める意志がなく、 仏になれないので、 死尸 (死骸の意) という。 →
二乗
「海」者言↣仏一切種智深広无↠崖、不↠宿↢二乗雑善中下死尸↡。喩↢之如↟海。是故言↢天人不動衆清浄智海生」↡。
▼「不動」 とは、 かの天・人、 大乗の根を成就して*傾動すべからざるをいふなり。
「不動」者言↧彼天人成↢就大乗根↡不↞可↢傾動↡也。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 6 上首功徳
【34】 ▲如須弥山王 勝妙無過者
この二句は荘厳上首功徳成就と名づく。
如↢須弥山王↡ 勝妙无↢過者↡。
此二句名↢荘厳上首功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を起したまへる。 ある如来を見そなはすに、 衆のなかにあるいは*強梁のものあり。 *提婆達多の流比のごとし。 あるいは国王、 仏と並び治めて、 はなはだ仏に推ることを知らざるあり。 あるいは仏を請じて*他縁をもつて廃忘することあり。 かくのごとき等の上首の力成就せざるに似たるあり。
強梁のもの 自然の理にさからうような強さ、 不自然な強さのもの。 梁は屋根をささえる横木であるが、 梁ばかりが強いと柱をこわし、 全体を破壊してしまうことからいう。
他縁をもつて廃忘する 他のことに気をとられすっかり忘れてしまう。
仏本何故起↢此願↡。見↢有如来↡、衆中或有↢強梁者↡、如↢提婆達多流比↡。或有↢国王与↠仏*竝治不↟知↢甚推↟仏、或有↧請↠仏以↢他縁↡*廃忘↥。有↤如↠是等似↣上首力不↢成就↡。
並 略字は聖教全書まま。 (原漢文中の 「並」 には旧字 「竝」 の文字コード使用)
廃 宗祖加点本・鎌倉時代刊本では 癈。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「われ仏となる時、 願はくは一切の大衆、 よく心を生じて、 あへてわれと等しきことなく、 ただひとり法王としてさらに俗王なからん」 と。
是故願言。我為↠仏時、願一切大衆、*无↢能生心↡、敢与↠我等、唯一法王更无↢俗王↡。
无能生心敢与我等 返り点は聖教全書まま。 「能生の心なくして、 敢て我と等しからむ」
・ 成就の相
このゆゑに 「如須弥山王 勝妙無過者」 といへり。
是故言↢「如須弥山王勝妙无過者」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 7 主功徳
【35】 ▲天人丈夫衆 恭敬繞瞻仰
この二句は荘厳主功徳成就と名づく。
天人丈夫衆 恭敬遶瞻仰。
此二句名↢荘厳主功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある仏如来を見そなはすに、 大衆ありといへども、 衆のなかにまたはなはだ*恭敬せざるあり。 一の比丘、 釈迦牟尼仏に、 「もしわがために十四の難を解せずは、 われまさにさらに余道を学すべし」 と語りしがごとし。 また*居迦離、 舎利弗を謗じて、 *仏三たび語りたまひしに三たび受けざりしがごとし。 またもろもろの*外道の輩、 かりに仏衆に入りてつねに仏の短を伺ひ求めしがごとし。 また*第六天の魔、 つねに仏の所においてもろもろの留難をなししがごとし。 かくのごとき等の種々の恭敬せざる相あり。
仏三たび語りたまひしに… 仏は居迦離が舎利弗を謗るのを三度いさめられるが、 居迦離はいずれもききいれなかったために、 ついに地獄に堕ちたという。
第六天の魔 三界のうち
欲界の最高天である他化自在天の王のこと。 仏道修行にはげむものを誘惑するので魔といわれる。 →
他化自在天
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有仏如来↡、雖↠有↢大衆↡、衆中亦有↠不↢甚恭敬↡。如↧一比丘語↢釈迦牟尼仏↡、若不↣与↠我解↢十四難↡、我当更学↦余道↥。亦如↧居迦離謗↢舎利弗↡仏三語而三不↞受。又如↧諸外道輩仮入↢仏衆↡而常伺↦求仏短↥。又如↧第六天魔常於↢仏所↡作↦諸畱難↥。有↧如↠是等種種不↢恭敬↡相↥。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏せんに、 天・人大衆、 恭敬して惓むことなからしめん」 と。
是故願言。使↢我成仏、天人大衆恭敬无↟惓。
・ 成就の相
ただ 「天・人」 といふ所以は、 浄土には女人および*八部鬼神なきがゆゑなり。 このゆゑに 「天人丈夫衆 恭敬繞瞻仰」 といへり。
所以但言↢天人↡者、浄土无↢女人及八部鬼神↡故也。是故言↢「天人丈夫衆恭敬遶瞻仰」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏 8 不虚作住持功徳
【36】 ▲観仏本願力 遇無空過者 能令速満足 功徳大宝海
▼この四句は荘厳不虚作住持功徳成就と名づく。
観↢仏本願力↡ 遇无↢空過者↡ 能令↧速満↢足 功徳大寳海↡。
此四句名↢荘厳不虚作住持功徳成就↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある如来を見そなはすに、 ただ声聞をもつて僧となし、 仏道を求むるものなし。 あるいは仏に値へども、 *三塗を勉れざるあり。*善星・*提婆達多・*居迦離等これなり。 また人、 仏 (釈尊) の名号を聞きて*無上道心を発せども、 悪の因縁に遇ひて、 退して声聞・*辟支仏地に入るものあり。 かくのごとき等の空過のもの、 退没のものあり。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有如来↡但以↢声聞↡為↠僧、无↧求↢仏道↡者↥。或有↢値↠仏而不↟勉↢三塗↡。善星・提婆達多・居迦離等是也。又人聞↢仏名號↡発↢无上道心↡遇↢悪因縁↡退入↢声聞・辟支仏地↡者。有↢如↠是等空過者退没者↡。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「▼われ成仏する時、 われに値遇するものをして、 みな速疾に*無上大宝を満足せしめん」 と。
無上大宝 この上ないさとりの功徳のことを宝に喩えていう。
是故願言。使↧我成仏時、値↢遇我↡者、皆速疾満↦足无上大寳↥。
・ 成就の相
このゆゑに 「観仏本願力 遇無空過者 能令速満足 功徳大宝海」 といへり。 「住持」 の義は△上のごとし。
是故言↢「観仏本願力遇无空過者能令速満足功徳大寳海」↡。住持義如↠上。
仏の荘厳八種の功徳を観ずること、 これ上に訖りぬ。
観↢仏荘厳八種功徳↡訖↢之于↟上。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩
【37】▼次に安楽国のもろもろの大菩薩の四種の荘厳功徳成就を観ず。
次観↢安楽国諸大菩薩四種荘厳功徳成就↡。
問ひていはく、 如来 (阿弥陀仏) の荘厳功徳を観ずるに、 なんの闕少せるところありてか、 また〔浄土の〕菩薩の功徳を観ずることを須ゐるや。
問曰。観↢如来荘厳功徳↡、何所↢闕少↡復須↠観↢菩薩功徳↡耶。
答へていはく、 明君ましますときにはすなはち賢臣あるがごとし。 *堯・舜の無為と称せしは、 これその比なり。 もしただ如来法王ましませども、 大菩薩の法臣なからしめば、 道を*翼讃するにおいてあに満つといふに足らんや。 また薪を積みて小なきときには、 すなはち火大きならざるがごとし。
堯舜の無為と称せしは 堯・舜は中国の伝説上の王の名。 それぞれ、 すぐれた臣下を持ちみずから何事もしないで天下を泰平におさめたとされることから無為といい、 中国における政事の理想とされる。
翼讃 あいたすけほめること。
答曰。如↧有↢明君↡則有↦賢臣↥。尭舜之称↢无為↡、是其比也。若使↧但有↢如来法王↡而无↦大菩薩法臣↥、於↣翼↢讃道↡豈足↠云↠満。亦如↢薪小則火不↟大。
*経にのたまふがごとし。 「▲阿弥陀仏国に無量無辺のもろもろの大菩薩あり。*観世音・*大勢至等のごときは、 みなまさに一生に他方において*次いで仏処に補すべし」 と。 もし人、 名を称して憶念するもの、 帰依するもの、 観察するものは、 ¬法華経¼ の 「*普門品」 に説くがごとく、 願として満たざることなし。 しかるに菩薩の功徳を*愛楽することは、 海の、 流を呑みて*止足の情なきがごとし。
経 引用は ¬大経¼ の上巻、 下巻および ¬小経¼ からの取意の文。
愛楽 喜び好むこと。
止足の情 満ち足りた気持ち。
如↢¬経¼言↡。阿弥陀仏国有↢无量无辺諸大菩薩↡。如↢観世音大勢至等↡。皆当↧一生於↢他方↡次補↦仏処↥。若人称↠名憶念者、帰依者、観察者、如↢¬法花経¼普門品説↡、无↢願不↟満。然菩薩愛↢楽功徳↡、如↣海呑↠流无↢止足情↡。
また釈迦牟尼如来、 一の*目闇の比丘 (*阿楼駄) の吁へてまうすを聞しめすがごとし。 「たれか功徳を愛するもの、 わがために針を維げ」 と。 その時に如来、 禅定より起ちて、 その所に来到して語りてのたまはく、 「われ福徳を愛す」 と。 つひにそれがために針を維ぎたまふ。 その時に*失明の比丘、 暗に仏語の声を聞きて、 驚喜こもごも集まりて仏にまうしてまうさく、 「世尊、 世尊の功徳はなほいまだ満たずや」 と。 仏報へてのたまはく、 「わが功徳は円満せり。 また須むべきところなし。 ただわがこの身は功徳より生ず。 功徳の恩分を知るがゆゑに、 このゆゑに愛すといふ」 と。
亦如↣釈迦牟尼如来、聞↢一目闇比丘吁言↡。誰愛↢功徳↡*為↢我維針↡。爾時如来従↢禅定↡起、来↢到其所↡語言。我愛↢福徳↡遂為↢其維針↡。爾時失明比丘、聞↢暗仏語声↡驚喜交集白↠仏言。世尊、世尊功徳猶未↠満耶。仏報言。我功徳円満、无↠所↢復須↡。但我此身従↢功徳↡生。知↢功徳恩分↡故、是故言↠愛。
為我維針 返り点は聖教全書まま。 「我が維針せらん」。
問ふところのごとく、 仏 (阿弥陀仏) の功徳を観ずるに、 実に願として充たざるはなし。 また諸菩薩の功徳を観ずる所以は、 上のごとく種々の義あるがゆゑなるのみ。
如↠所↠問観↢仏功徳↡、実无↢願不↟充。所↣以復観↢諸菩薩功徳↡者、有↢如↠上種種義↡故耳。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩 1 不動而至功徳
【38】 ▲安楽国清浄 常転無垢輪 化仏菩薩日 如須弥住持.
安楽国清浄 常転↢无垢輪↡。 化仏菩薩日 如↢須弥住持↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある仏土を見そなはすに、 ただこれ*小菩薩のみにして十方世界において広く*仏事をなすことあたはず。 あるいはただ声聞・人・天のみにして利するところ狭小なり。
小菩薩 七地以前の菩薩のこと。 自在無礙の二利行ができないから小菩薩という。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有仏土↡但是小菩薩不↠能↧於↢十方世界↡広作↦仏事↥。或但声聞・人・天所↠利狭小。
・ 能為の願
このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわが国のうちには無量の大菩薩衆ありて、 ▽本処を動ぜずしてあまねく十方に至りて種々に*応化して、 如実に修行してつねに仏事をなさん」 と。
是故興↠願。願我国中有↢无量大菩薩衆↡、不↠動↢本処↡遍至↢十方↡種種応化如↠実修行常作↢仏事↡。
・ 成就の相
たとへば、 日の天上にありて、 *影は百川に現ずるがごとし。 日あに来らんや、 あに来らざらんや。
影 水面にうつった太陽のすがた。
譬如↧日在↢天上↡而影現↦百川↥、日豈来耶、豈不↠来耶。
¬*大集経¼ (意) にのたまふがごとし。 「たとへば、 人ありてよく*堤塘を治して、 その*所宜を量りて水を放つ時に及びて、 心力を加へざるがごとし。
堤塘 つつみ、 土手のこと。
所宜を量りて ちょうどよい時をはかって。
如↢¬大集経¼言↡。譬如↧有↠人善治↢堤塘↡量↢其所宜↡及↢放↠水時↡不↠加↦心力↥。
菩薩もまたかくのごとし。 先づ一切諸仏および衆生の供養すべく、 教化すべき種々の堤塘を治すれば、 三昧に入るに及びて身心動ぜざれども、 如実に修行してつねに仏事をなす」 と。
菩薩亦如↠是。先治↧一切諸仏及衆生、応↢供養↡応↢教化↡種種堤塘↥、及↠入↢三昧↡身心不↠動、如↠実修行常作↢仏事↡。
「如実に修行す」 とは、 つねに修行すといへども、 *実に修行するところなし。
実に修行… 修行したことに少しのとらわれもないということ。
如実修行者、雖↢常修行↡実无↠所↢修行↡也。
このゆゑに 「安楽国清浄 常転無垢輪 化仏菩薩日 如須弥住持」 といへり。
是故言↢「安楽国清浄常転无垢輪化仏菩薩日如須弥住持」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩 2 一念遍至功徳
【39】 ▲無垢荘厳光 一念及一時 普照諸仏会 利益諸群生.
无垢荘厳光 一念及一時 普照↢諸仏会↡ 利↢益諸群生↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある如来の*眷属を見そなはすに、 他方無量の諸仏を供養せんと欲し、 あるいは無量の衆生を教化せんと欲するに、 ここに没してかしこに出づ。 南を先にして北を後にす。 一念一時をもつて光を放ちてあまねく照らし、 あまねく十方世界に至りて衆生を教化することあたはず。 出没前後の相あるがゆゑなり。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有如来↡眷属欲↣供↢養他方无量諸仏↡、或欲↣教↢化无量衆生↡。此没彼出、先↠南後↠北。不↠能↧以↢一念一時↡放↠光普照↥。遍至↢十方世界↡教↢化衆生↡有↢出没前後相↡故。
・ 能為の願
このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわが仏土のもろもろの大菩薩、 一念の時のあひだにおいて、 あまねく十方に至りて種々の*仏事をなさん」 と。
是故興↠願。願我仏土諸大菩薩、於↢一念時頃↡遍至↢十方↡作↢種種仏事↡。
・ 成就の相
このゆゑに 「無垢荘厳光、 一念及一時 普照諸仏会 利益諸群生」 といへり。
是故言↢「无垢荘厳光一念及一時普照諸仏会利益諸群生」↡。
問ひていはく、 上の章に、 △身は動揺せずしてあまねく十方に至るといふ。 不動にして至る、 あにこれ一時の義にあらずや。 これといかんが差別する。
問曰。上章云↧身不↢動揺↡而遍至↦十方↥。不↠動而至、豈非↢是一時義↡耶。与↠此若為差別。
答へていはく、 上にはただ不動にして至るといへども、 あるいは前後あるべし。 ここには無前無後といふ。 これ差別となす。 またこれ上の不動の義を成ずるなり。 もし一時ならずはすなはちこれ往来なり。 もし往来あらばすなはち不動にあらず。 このゆゑに上の不動の義を成ぜんためのゆゑに、 すべからく一時を観ずべし。
答曰。上但言↢不動而至↡、或容↠有↢前後↡。此言↢无前无後↡、是為↢差別↡。亦是成↢上不動義↡。若不↢一時↡則是往来。若有↢往来↡則非↢不動↡。是故為↠成↢上不動義↡故須↠観↢一時↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩 3 無相供養功徳
【40】 ▲雨天楽華衣 妙香等供養 讃諸仏功徳 無有分別心.
雨↢天楽花衣 妙香等↡供養 讃↢諸仏功徳↡ 无↠有↢分別心↡。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの荘厳を起したまへる。 ある仏土を見そなはすに、 菩薩・人・天、 *志趣広からず、 あまねく十方無窮の世界に至りて諸仏如来・大衆を供養することあたはず。 あるいはおのが土の穢濁なるをもつて、 あへて浄郷に向詣せず。 あるいは居するところの清浄なるをもつて穢土を*鄙薄す。 かくのごとき等の種々の*局分をもつて、 諸仏如来の所において周遍供養して広大の善根を発起することあたはず。
志趣 願いのこと。
鄙薄 いやしみきらうこと。
局分 分を局る。 分別・区別して一方にとらわれること。
仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有仏土↡、菩薩・人・天志趣不↠広、不↠能↧遍至↢十方无窮世界↡供↦養諸仏如来大衆↥、或以↢己土穢濁↡不↣敢向↢詣浄郷↡、或以↢所居清浄↡鄙↢薄穢土↡。以↢如↠此等種種局分↡、於↢諸仏如来所↡不↠能↣周遍供養発↢起広大善根↡。
・ 能為の願
このゆゑに願じてのたまはく、 「われ成仏する時、 願はくはわが国土の一切の菩薩・声聞・天・人大衆、 あまねく十方の*一切諸仏の大会の処所に至りて、 天の楽・天の華・天の衣・天の香を雨らして、 *巧妙の弁辞をもつて諸仏の功徳を供養し讃嘆せん」 と。
一切諸仏の大会 あらゆる仏たちの説法の会座。
巧妙の弁辞 たくみな弁才。 理解・表現の能力が自由自在であること。
是故願言。我成仏時、願我国土一切菩薩・声聞・天人大衆、遍至↢十方一切諸仏大会処所↡、雨↢天楽・天花・天衣・天香↡、以↢巧妙弁辞↡供↢養讃↣嘆諸仏功徳↡。
・ 成就の相
穢土の如来の*大慈謙忍を嘆ずといへども、 仏土に雑穢の相あることを見ず。 浄土の如来の無量の荘厳を嘆ずといへども、 仏土に清浄の相あることを見ず。
大慈謙忍 衆生救済のために、 忍んで身をへりくだること。
雖↠嘆↢穢土如来大慈謙忍↡、不↠見↣仏土有↢雑穢相↡。雖↠嘆↢浄土如来无量荘厳↡、不↠見↣仏土有↢清浄相↡。
なにをもつてのゆゑに。 諸法等しきをもつてのゆゑに、 もろもろの如来等し。 このゆゑに諸仏如来を名づけて*等覚となす。 もし仏土において優劣の心を起さば、 たとひ如来を供養すれども、 法の供養にはあらず。 このゆゑに 「雨天楽華衣 妙香等供養 讃諸仏功徳 無有分別心」 といへり。
何以故、以↢諸法等↡故諸如来等。是故諸仏如来名為↢等覚↡。若於↢仏土↡起↢優劣心↡。仮使供↢養如来↡非↢法供養↡也。是故言↢「雨天楽花衣妙香等供養讃諸仏功徳无有分別心」↡。
◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩 4 示法如仏功徳
【41】 ▲何等世界無 仏法功徳宝 我願皆往生 示仏法如仏.
何等世界无↢ 仏法功徳寳↡、 我願皆往生 示↢仏法↡如↠仏。
・ 所為の境
仏本なんがゆゑぞこの願を起したまへる。 ある軟心の菩薩を見そなはすに、 ただ有仏の国土の修行を楽ひて慈悲堅牢の心なし。
仏本何故起↢此願↡。見↢有軟心菩薩↡、但楽↢有仏国土修行↡无↢慈悲堅牢心↡。
・ 能為の願
このゆゑに願を興したまへり。 「願はくはわれ成仏する時、 わが土の菩薩はみな慈悲勇猛堅固の志願ありて、 よく清浄の土を捨て、 他方の*仏法僧なき処に至りて、 仏法僧の宝を*住持し荘厳して示すこと、 仏のましますがごとくし、 *仏種をして処々に断えざらしめん」 と。
是故興↠願。願我成仏時、我土菩薩皆慈悲勇猛堅固、志願能捨↢清浄土↡、至↧他方无↢仏・法・僧↡処↥、住↢持荘↣厳仏・法・僧寳↡、示如↠有↠仏使↢仏種処処不↟断。
・ 成就の相
このゆゑに 「何等世界無 仏法功徳宝 我願皆往生 示仏法如仏」 といへり。
是故言↢「何等世界无仏法功徳寳我願皆往生示仏法如仏」↡。
菩薩の四種荘厳功徳成就を観ずること、 これ上に訖りぬ。
観↢菩薩四種荘厳功徳成就↡訖↢之于↟上。
◎総説分 ○回向門
【42】次に下の四句はこれ回向門なり。
次下四句是迴向門。
▲我作論説偈 願見弥陀仏 ▽普共諸衆生 往生安楽国
この四句はこれ論主 (天親) の回向門なり。 「回向」 とは、 おのが功徳を回してあまねく衆生に施して、 ともに阿弥陀如来を見たてまつり、 安楽国に生ぜんとなり。
我作↠論説↠偈 願↢見弥陀仏↡、 普↢共諸衆生↡ 往↢生安楽国↡。
此四句是論主迴向門。迴向者迴↢己功徳↡、普施↢衆生↡共見↢阿弥陀如来↡生↢安楽国↡。
▲無量寿修多羅の章句、 われ偈頌をもつて総じて説きをはりぬ。
无量寿修多羅章句、我以↢偈*誦↡惣説竟。
誦 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「頌」。
◎総説分 ○八番問答 1 第一問答 (所共衆生)
【43】▼*問ひていはく、 天親菩薩の回向の章のなかに、 「▲普共諸衆生 往生安楽国」 といへるは、 これはなんらの衆生とともにと指すや。
問曰。天親菩薩迴向章中言↢「普共諸衆生往生安楽国」↡、此指↠共↢何等衆生↡耶。
答へていはく、 王舎城所説の ¬無量寿経¼ (下) を案ずるに、 「仏、 阿難に告げたまはく、 ª▲十方恒河沙の諸仏如来、 みなともに無量寿仏の威神功徳不可思議なるを称嘆したまふ。 ▲諸有の衆生、 その名号を聞きて信心歓喜し、 *すなはち一念に至るまで心を至して回向して、 ▽かの国に生ぜんと願ずれば、 すなはち往生を得て、 *不退転に住せん。 ただ*五逆と誹謗正法とを除くº」 と。 これを案じていふに、 一切の*外道・凡夫人、 みな往生を得ん。
すなはち…回向して 親鸞聖人は 「乃至一念せん。 至心に回せしめたまへり」 (信文類訓) と読まれた。
外道凡夫人 異本には 「外凡夫人」 とある。 凡夫の位を内・外にわけたとき、 十住・十行・十回向の三賢位の賢者を内凡というのに対し、 十信以下の善悪の凡夫を外凡という。 また五逆謗法以外の凡夫人のこととする説もある。
答曰。案↢王舎城所説¬无量寿経¼↡「仏告↢阿難↡。十方恒河沙諸仏如来、皆共称↢嘆无量寿仏威神功徳不可思議↡。諸有衆生、聞↢其名號↡信心歓喜乃至一念、至心迴向、願↣生↢彼国↡即得↢往生↡住↢不退転↡。唯除↢五逆誹謗正法↡。」案↠此而言、一切*外道凡夫人、皆得↢往生↡。
外道 宗祖加点本・鎌倉時代刊本を除く他書では 「外」。
また ¬観無量寿経¼ のごときは*九品の往生あり。 「▲下下品の生とは、 ▽あるいは衆生ありて、 不善業たる五逆・十悪を作り、 もろもろの不善を具せん。 かくのごとき愚人、 悪業をもつてのゆゑに悪道に堕して、 多劫を*経歴して苦を受くること窮まりなかるべし。 ▲かくのごとき愚人、 命終の時に臨みて、 *善知識、 種々に安慰して、 ために妙法を説き教へて念仏せしむるに遇はん。 かの人、 苦に逼められて念仏するに遑あらず。 善友告げていはく、 ªなんぢもし念ずることあたはずは無量寿仏と称すべしº と。 かくのごとく心を至して声をして絶えざらしめて、 十念を具足して ª南無無量寿仏º と称せん。 仏の名を称するがゆゑに、 念々のうちにおいて八十億劫の生死の罪を除き、 ▲命終の後に金蓮華のなほ日輪のごとくしてその人の前に住するを見、 一念のあひだのごとくにすなはち極楽世界に往生を得ん。 ▲蓮華のなかにおいて十二大劫を満てて、 蓮華まさに開けん。 まさにこれをもつて五逆の罪を償ふべし。 観世音・大勢至、 大悲の音声をもつてそれがために広く諸法実相、 罪を除滅する法を説かん。 聞きをはりて歓喜して、 時に応じてすなはち菩提の心を発さん。 ▲これを下品下生のものと名づく」 と。 この経をもつて証するに、 あきらかに知りぬ、 下品の凡夫ただ正法を誹謗せざれば、 仏を信ずる因縁をもつてみな往生を得と。
又如↢¬観无量寿経¼↡有↢九品往生↡。「下下品生者、或有↢衆生↡作↢不善業五逆・十悪↡、具↢諸不善↡。如↠此*愚人以↢悪業↡故、応↧堕↢悪道↡逕↢歴多劫↡受↠苦无↞窮。如↠此愚人臨↢命終時↡、遇↧善知識種種安慰為説↢妙法↡、教令↦念仏↥。彼人苦逼不↠遑↢念仏↡。善友告言。汝若不↠能↠念者応↠称↢无量寿仏↡。如↠是至↠心令↢声不↟絶、具↢足十念↡称↢南无无量寿仏↡。称↢仏名↡故、於↢念念中↡除↢八十億劫生死之罪↡。命終之後見↢金蓮花↡猶↢如日輪↡住↢其人前↡。如↢一念頃↡即得↣往↢生極楽世界↡。於↢蓮花中↡満↢十二大劫↡蓮華方開、当以此償五逆罪也観世音・大勢至、以↢大悲音声↡為↠其広説↧諸法実相除↢滅罪↡法↥。聞已歓喜応↠時則発↢菩提之心↡。是名↢下品下生者↡。」以↢此経↡証、明知、下品凡夫但令↧不↣誹↢謗正法↡、信↠仏因縁皆得↦往生↥。
愚 鎌倉時代刊本では 「遇」。 以下同。
◎総説分 ○八番問答 2. 第二問答 (二経逆謗)
▼問ひていはく、 ¬無量寿経¼ (下・意) にのたまはく、 「▲往生を願ずるものみな往生を得。 ただ五逆と誹謗正法とを除く」 と。 ¬観無量寿経¼ (意) にのたまはく、 「▲五逆・十悪もろもろの不善を具するもまた往生を得」 と。 この二経、 いかんが*会する。
会する 会通すること。 一見矛盾したように見える記述を道理に照らしあわせて趣意の一貫したものとして説明すること。
問曰。¬无量寿経¼言。「願↢往生↡者皆得↢往生↡。唯除↢五逆誹謗正法↡。¬観无量寿経¼言。「五逆・十悪具↢諸不善↡亦得↢往生↡。」此二経云何会。
▼答へていはく、 一経 (大経) には二種の重罪を具するをもつてなり。 一には五逆、 二には誹謗正法なり。 この二種の罪をもつてのゆゑに、 ゆゑに往生を得ず。 一経 (観経) にはただ十悪・五逆等の罪を作るとのたまひて、 正法を誹謗すとのたまはず。 正法を謗ぜざるをもつてのゆゑに、 このゆゑに生ずることを得。
答曰。一経以↠具↢二種重罪↡。一者五逆、二者誹謗正法。以↢此二種罪↡故所以不↠得↢往生↡。一経但言↠作↢十悪・五逆等罪↡不↠言↣誹↢謗正法↡。以↠不↠謗↢正法↡故。是故得↠生。
◎総説分 ○八番問答 3. 第三問答 (二罪軽重)
▼問ひていはく、 たとひ一人ありて、 五逆罪を具すれども正法を誹謗せざれば、 ¬経¼ (観経) に生ずることを得と許す。 また一人ありて、 ただ正法を誹謗して五逆の諸罪なし。 往生を願ぜば生ずることを得やいなや。
問曰。仮使一人具↢五逆罪↡而不↣誹↢謗正法↡経許↠得↠生。復有↢一人↡但誹↢謗正法↡而无↢五逆諸罪↡。願↢往生↡者得↠生以不。
・ 逆謗除取
▼答へていはく、 ただ正法を誹謗せしめば、 さらに余の罪なしといへども、 かならず生ずることを得ず。 なにをもつてこれをいふとならば、 ¬経¼ (大品般若経・意) にのたまはく、 「五逆の罪人、 *阿鼻大地獄のなかに堕してつぶさに一劫の重罪を受く。 正法を誹謗する人は阿鼻大地獄のなかに堕して、 この劫もし尽きぬれば、 また転じて他方の阿鼻大地獄のなかに至る。 かくのごとく*展転して百千の阿鼻大地獄を経」 と。 仏 (釈尊)、 出づることを得る時節を記したまはず。 誹謗正法の罪きはめて重きをもつてのゆゑなり。 また正法はすなはちこれ仏法なり。 この*愚痴の人すでに誹謗を生ず。 いづくんぞ仏土に生ぜんと願ずる理あらんや。 たとひただかの土の安楽を貪りて生ぜんと願ずるは、 また水にあらざる氷、 煙なき火を求むるがごとし。 あに理を得ることあらんや。
答曰。但令↣誹↢謗正法↡雖↣更无↢余罪↡必不↠得↠生。何以言↠之、¬経¼言。「五逆罪人堕↢阿鼻大地獄中↡具受↢一劫重罪↡、誹↢謗正法↡人堕↢阿鼻大地獄中↡、此劫若尽復転至↢他方阿鼻大地獄中↡。如↠是展転逕↢百千阿鼻大地獄↡。仏不↠記↢得↠出時節↡。以↢誹謗正法罪極重↡故。又正法者即是仏法。此愚痴人既生↢誹謗↡。安有↧願↠生↢仏土↡之理↥。仮使但貪↣彼*生↢安楽↡而願↠生者、亦如↠求↢非↠水之氷无↠烟之火↡、豈有↠得↠理。
生 聖教全書まま。 鎌倉時代刊本・嘉永年間刊本では 「土」。 「ただかれ安楽に生を貪して」
◎総説分 ○八番問答 4. 第四問答 (謗法相状)
▼問ひていはく、 なんらの相かこれ正法を誹謗する。
問曰。何等相、是誹↢謗正法↡。
▼答へていはく、 もし仏なく、 仏の法なし、 菩薩なく、 菩薩の法なしといはん。 かくのごとき等の見、 もしは心にみづから解し、 もしは他に従ひて受け、 その心決定するをみな正法を誹謗すと名づく。
答曰。若言↧无↠仏、无↢仏法↡、无↢菩薩↡、无↦菩薩法↥。如↠是等見、若心自解、若従↠他*受↢其心↡決定皆名↢誹謗正法↡。
受其心 返り点まま。 「その心を受け」
◎総説分 ○八番問答 5. 第五問答 (謗法罪重)
▼問ひていはく、 かくのごとき等の計はただこれおのが事なり。 衆生においてなんの苦悩ありてか五逆の重罪に踰えたるや。
問曰。如↠是等計但是己事。於↢衆生↡有↢何苦悩↡踰↠於↢五逆重罪↡耶。
▼答へていはく、 もし諸仏・菩薩の、 *世間・*出世間の善道を説きて衆生を教化するものなくは、 あに*仁・義・礼・智・信あることを知らんや。 かくのごとき世間の一切の善法みな断じ、 の一切の*賢聖みな滅しなん。 なんぢただ五逆罪の重たることを知りて、 ▼五逆罪の正法なきより生ずることを知らず。 このゆゑに正法を謗ずる人、 その罪もつとも重し。
仁義礼智信 儒教に説く五種の倫理徳目。 五常のこと。
答曰。若无↧諸仏・菩薩説↢世間・出世間善道↡教↢化衆生↡者↥、豈知↠有↢仁・義・・智・信↡耶。如↠是世間一切善法皆断、出世間一切賢聖皆滅。汝但知↢五逆罪為↟重而不↠知↧五逆罪従↠无↢正法↡生↥。是故謗↢正法↡人其罪重。
◎総説分 ○八番問答 6. 第六問答 (十念往生)
・ 重者先牽
▼問ひていはく、 *業道経にのたまはく、 「*業道は称のごとし。 重きもの先づ牽く」 と。 ¬観無量寿経¼ (意) にのたまふがごとし。 「▲人ありて五逆・十悪を造りもろもろの不善を具せらん。 悪道に堕して多劫を*経歴して無量の苦を受くべし。 命終の時に臨みて、 善知識の教に遇ひて、 ª南無無量寿仏º と称せん。 かくのごとく心を至して声をして絶えざらしめて、 十念を具足してすなはち安楽浄土に往生することを得。 すなはち大乗*正定の聚に入りて、 *畢竟じて退せず。 三塗のもろもろの苦と永く隔つ」 と。 *「先づ牽く」 の義、 理においていかんぞ。
業道経 業道因果の道理を説いた経典の総称の意。 業道経という名称の経典があるのではない。
業道 善悪の業によって苦楽の果報を得るという道理。 →
補註6
先づ牽くの義 義は重い方が先に報いがあらわれるという道理。
問曰。¬業道経¼言。「業道如↠称、重者先牽」。如↢¬観无量寿経¼言↡。有↠人造↢五逆・十悪↡具↢諸不善↡。応↧堕↢悪道↡逕↢歴多劫↡受↦无量苦↥。臨↢命終時↡遇↢善知識教↡称↢南无无量寿仏↡。如↠是至↠心令↢声不↟絶、具↢足十念↡便得往↢生安楽浄土↡、即入↢大乗正定之聚↡、畢竟不↠退。与↢三塗諸苦↡永隔。先牽之義、於↠理如何。
▼また*曠劫よりこのかた、 つぶさにもろもろの行を造りて、 *有漏の法は*三界に*繋属せり。 ただ十念阿弥陀仏を念じたてまつるをもつてすなはち三界を出づ。 *繋業の義またいかんせんと欲する。
繋属 つなぎとめること。
又曠劫已来、備造↢諸行↡有漏之法繋↢属三界↡。但以↣十念念↢阿弥陀仏↡便出↢三界↡。繋業之義、復欲↢云何↡。
・ 三在釈義
▼答へていはく、 なんぢ五逆・十悪の繋業等を重となし、 下下品の人の十念をもつて軽となして、 罪のために牽かれて先づ地獄に堕して三界に繋在すべしといはば、 ▼いままさに義をもつて校量すべし。 軽重の義は心に在り、 縁に在り、 決定に在りて、 時節の久近・多少には在らず。
答曰。汝謂五逆・十悪繋業等為↠重、以↢下下品人十念↡為↠軽、応↧為↠罪所↠牽先堕↢地獄↡繋↦在三界↥者、今当↧以↠義*挍↦量軽重之義↥。在↠心在↠縁在↢決定↡、不↠在↢時節久近多少↡也。
挍量軽重之義 句点、 返り点は聖教全書まま。 「軽重の義を挍量す(べし)」
1. 在心
▼いかんが 「心に在る」。 かの造罪の人はみづから*虚妄顛倒の見に依止して生ず。 この十念は善知識の*方便安慰によりて*実相の法を聞きて生ず。 一は実なり、 一は虚なり。 あにあひ比ぶることを得んや。 ▼たとへば千歳の闇室に、 光もししばらく至らば、 すなはち明朗なるがごとし。 闇、 あに室にあること千歳にして去らじといふことを得んや。 これを心に在りと名づく。
虚妄顛倒の見に依止して 真実の理にそむいた誤った見解をよりどころにして。
方便安慰 いろいろてだてをして教え、 心を安らかにすること。
実相の法 名号には仏のさとられた諸法実相の徳が含まれているので、 仏の名号のことを実相という。
云何在↠心、彼造罪人自依↢止虚妄顛倒見↡生。此十念者依↣善知識方便安慰聞↢実相法↡生。一実一虚、豈得↢相比↡。譬如↢千歳闇室光若蹔至即便明朗↡。闇豈得↠言↢在↠室千歳而不↟去耶。是名↢在心↡。
2. 在縁
▼いかんが 「縁に在る」。 かの造罪の人はみづから妄想の心に依止し、 煩悩虚妄の果報の衆生によりて生ず。 この十念は無上の信心に依止して、 阿弥陀如来の*方便荘厳*真実清浄無量の*功徳の*名号によりて生ず。 ▼たとへば人ありて毒の箭を被りて、 中るところ筋を截り骨を破るに、 滅除薬の鼓を聞けば、 すなはち箭出で毒除こるがごとし。 ¬*首楞厳経¼ (意) にのたまはく、 「たとへば薬あり、 名づけて滅除といふ。 もし闘戦の時用ゐてもつて鼓に塗るに、 鼓の声を聞けば箭出で毒除こるがごとし。 *菩薩摩訶薩またかくのごとし。 *首楞厳三昧に住してその名を聞けば、 三毒の箭自然に抜け出づ」 と。 あにかの箭深く毒はげしくして、 鼓の音声を聞くとも、 箭を抜き毒を去ることあたはずといふことを得べけんや。 これを縁に在りと名づく。
云何在↠縁、彼造罪人自依↢止妄想心↡依↢煩悩虚妄果報衆生↡生。此十念者依↢止无上信心↡、依↢阿弥陀如来方便荘厳真実清浄无量功徳名號↡生。譬如↧有↠人被↢毒箭↡所↠中截↠筋破↠骨、聞↢滅除薬皷↡即箭出毒除↥、首楞厳経言譬如有薬名曰滅除若闘戦時用以塗皷聞皷声者箭出毒除菩薩摩訶薩亦復如是住首楞厳三昧聞其名者三毒之箭自然抜出豈可↠得↠言↧彼箭深毒厲聞↢皷音声↡不↠能↦抜↠箭去↞毒耶。是名↢在縁↡。
3. 在決定
▼いかんが 「決定に在る」。 かの造罪