無量寿経むりょうじゅきょう優婆うば提舎だいしゃ願生偈がんしょうげちゅう かんじょう

*婆藪ばそばんさつぞう *曇鸞どんらんほっ註解ちゅうげ

浄土論大綱 本論分斉

【1】 つつしみて*龍樹りゅうじゅさつの ¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃ¼ (*易行品・意)あんずるに、 いはく、 「さつ*阿毘あびばっもとむるに、 二しゅどうあり。 一には*難行なんぎょうどう、 二には*易行道いぎょうどうなり」 と

謹案↢龍樹菩薩¬十住婆沙¼↡云。菩薩求↢阿跋致↡有↢二種道↡。一者難行道、二者易行道。

 原漢文 (真宗聖教全書) の底本は本派本願寺蔵建長八年宗祖加点本。 本派本願寺蔵鎌倉時代刊本、 宗教大学蔵嘉永年間刊本、 本派本願寺蔵版、 大派依用十行本と対校。

難行道

難行なんぎょうどう」 とは、 いはく、 *五濁ごじょく*ぶつときにおいて阿毘あびばっもとむるをなんとなす。 このなんにすなはち多途たずあり。 ほぼ*さんをいひて、 もつてこころしめさん。 一には*どう*相善しょうぜん*さつほうみだる。 二には*しょうもん自利じりにしてだい慈悲じひふ。 三には無顧むこ悪人あくにん勝徳しょうとくやぶる。 四には*顛倒てんどうぜんはよく*梵行ぼんぎょうこぼつ。 五にはただこれりきにしてりきたもつなし。 かくのごときるるにみなこれなり。 たとへばろく歩行ぶぎょうはすなはちくるしきがごとし

無仏の時 すでに釈尊がにゅうめつされて仏がおられない時代。
五三 少々。 若干。
菩薩の法 自利利他の行法。
顛倒の善果 人間・天上界に生れる果報。 迷いの中の善果であるので顛倒という。

難行道者、謂於↣五濁之世於↢无仏時↡求↢阿跋致↡為↠難。此難乃有↢多途↡、粗言↢五三↡以示↢義意↡。一者外道相亂↢菩薩法↡、二者声聞自利鄣↢大慈悲↡、三者无↠顧↠悪人破↢他勝徳↡、四者顛倒善果能壊↢梵行↡、五者唯是自力无↢他力持↡。如↠斯等事触↠目皆是。譬如↢陸路歩行則苦↡。

 聖教全書まま。 註なし。 以下同。
 本願寺本、 大派依用本では
 略字 (新字) は底本まま。 以下同。 (原漢文中での 「乱」 は旧字 「亂」 の文字コードを使用)
無顧悪人 返り点は聖教全書まま。 「悪を顧みることなき人」

易行道

易行道いぎょうどう」 とは、 いはく、 ただ*信仏しんぶつ因縁いんねんをもつてじょうしょうぜんとがんずれば、 仏願力ぶつがんりきじょうじて、 すなはちかの清浄しょうじょうおうじょう*仏力ぶつりき住持じゅうじして、 すなはち*大乗だいじょう*正定しょうじょうじゅる。 正定しょうじょうはすなはちこれ阿毘あびばっなり。 たとへばすいふねじょうずればすなはちたのしきがごとし

仏力住持して 仏の本願力が支えたもってという意。
正定の聚 →正定聚しょうじょうじゅ

易行道者、謂但以↢信仏因縁↡願↠生↢浄土↡。乗↢仏願力↡便得↣往↢生彼清浄土↡。仏力住持即入↢大乗正定之聚↡、正定即是阿跋致。譬如↢水路乗↠船則楽↡。

この ¬りょう寿じゅきょう優婆うば提舎だいしゃ¼ (浄土論) は、 けだし*上衍じょうえんごく*退たい風航ふうこうなるものなり

上衍 衍は梵語ヤーナ (yāna) の音写。 乗り物の意。 上乗とも漢訳される。 大乗のこと。 →大乗だいじょう
不退の風航 風航はかけ船のこと。 退転することなくかならず仏にならしめる教法を船に喩えたもの。

此¬无量寿経優波提舎¼盖上之極致不退之風航者也。

 諸本では 。 以下同。
(外字) 本願寺本、 大派依用本では

◎浄土論大綱 興起体製

【2】 無量寿むりょうじゅ」 はこれ安楽あんらくじょう如来にょらい別号べつごうなり。*しゃ迦牟尼かむにぶつ*王舎おうしゃじょうおよび*しゃこくにましまして、 大衆だいしゅのなかにおいて*無量寿仏むりょうじゅぶつ*荘厳しょうごんどくきたまへり。 すなはちぶつ (阿弥陀仏)*名号みょうごうをもつて*きょうたいとなす。 のち聖者しょうじゃ婆藪ばそばんさつ (天親)如来にょらいだいきょう*服膺ぶくようしてきょうへて願生がんしょう*つくれり。 また*長行じょうごうつくりてかさねてしゃく

 浄土の三部経を指す。
服膺 心にしっかりとめて忘れないこと。

「无量寿」是安楽浄土如来別號。釈迦牟尼仏在↢王舎城及舎衛国↡於↢大衆之中↡説↢无量寿仏荘厳功徳↡。即以↢仏名號↡為↢経躰↡。後聖者婆数槃頭菩薩、服↢膺一升如来大悲之教↡、傍↠経作↢願生偈↡。復造↢長行↡重釈↢梵言↡。

 略字 (新字) は底本まま。 以下同。 (原漢文中での 「号」 には旧字 「號」 の文字コードを使用)
 諸本では 。 以下同。
釈梵言 返り点は聖教全書まま。 「梵言を釈す」。 このときの 「梵言」 は天神菩薩の偈を指す。

*ぼんに 「優婆うば提舎だいしゃ」 といふは、 このけん (中国)正名しょうみょうあひやくせるなし。 もしは*ぐうげてづけてろんとなすべし。 正名しょうみょうやくせることなき所以ゆえんは、 このけんもとぶつましまさざるをもつてのゆゑなり。 このけんしょのごときは、 *こうにつきて 「けい」 としょうす。 にん制作せいさくみなづけて 「」 となす。 *こくこったぐい*各別かくべつ体例たいれいなり。 しかるにぶつ所説しょせつ*十二部じゅうにぶきょうのなかに論議経ろんぎきょうあり、 「*優婆うば提舎だいしゃ」 とづく。 もしまたぶつのもろもろの弟子でしぶつ経教きょうきょうしてぶつ相応そうおうすれば、 ぶつまたゆるして 「優婆うば提舎だいしゃ」 とづく。 仏法ぶっぽうそうるをもつてのゆゑなり。 このけんろんといふは、 ただこれろんのみ。 あにまさしくかのやくすることをんや

 梵語 (サンスクリット)。 インドの古典語。
一隅を挙げて 一部分の意味によって。
国史国紀 国史は国王の命などによって公的に記された国の歴史書。 国紀は私人によって私的に記された国の歴史書。
各別の体例 それぞれちがった体裁である。

「優婆提舎」此間无↢正名相訳↡、若挙↢一隅↡可↢名為↟論。所↣以无↢正名訳↡者、以↢此間本无↟仏故。如↢此間書↡、就↢孔子↡而称↠経、余人制作皆名為↠子。国史・国紀之徒各別躰例然。仏所説十二部経中有↢論議経↡、名↢優波提舎↡。若復仏諸弟子、解↢仏経教↡与↢仏義↡相応者、仏亦許名↢優波提舎↡、以↠入↢仏法相↡故。此間云↠論、直是論議而已、豈得↣正訳↢彼名↡耶。

 句点位置は聖教全書まま。 「各別の体例しかなり」

また女人にょにんを、 においてははしょうし、 あににおいていもうとといふがごとし。 かくのごとき、 みなしたがひてべつなり。 もしただおんなをもつてひろまいだんずるに、 すなはち*おんな大体だいたいしっせざれども、 あにそんふくまんや

女の大体… 女性の一般的性質はあらわしているけれども。

又如↢女人於↠子称↠母、於↠兄云↟妹。如↠是等事皆随↠義名別、若但以↢女名↡汎談↢母妹↡乃不↠失↢女之大躰↡、豈含↢尊卑之義↡乎。

ここにいふところのろんもまたかくのごとし。 ここをもつて いんなり りて*梵音ぼんのんぞんじて優婆うば提舎だいしゃといふ

梵音を存じて 梵語 (サンスクリット) を音写してという意。

此所↠云論亦復如↠是、是以仍因而存↢梵音↡曰↢優波提舎↡。

本論大科

【3】 この ¬ろん¼ (浄土論)始終しじゅうにおほよそ二じゅうあり。 一にはこれ総説分そうせつぶん、 二にはこれ解義げぎぶんなり。 総説分そうせつぶんとは、 まえの五ごんくるまでこれなり。 解義げぎぶんとは、 「ろんじてはく」 以下いか長行じょうごうくるまでこれなり

此論始終凡有↢二重↡。一是捴説分、二是解義分。捴説分者前五言偈尽是、解義分者論曰已下長行尽是。

じゅうとなす所以ゆえんは二あり。 はもつてきょうじゅす。 総摂そうしょうせんがためのゆゑなり。 ろんはもつてしゃくす。 解義げぎのためのゆゑなり

所↣以為↢二重↡者、有↢二義↡。偈以↢誦経↡為↢捴摂↡故、論以↢釈偈↡為↢解義↡故。

偈~故 返り点は聖教全書まま。 「偈は誦経をもって総摂とするがゆゑに、 論は釈偈をもって解義するがゆゑなり」

◎浄土論大綱 題号

【4】 「無量寿むりょうじゅ」 とは無量寿むりょうじゅ如来にょらいをいふ。 寿命じゅみょう長遠じょうおんにして思量しりょうすべからず。 「きょう」 とはじょうなり。 いふこころは安楽国あんらくこくぶつおよびさつ清浄しょうじょう荘厳しょうごんどくこく清浄しょうじょう荘厳しょうごんどくとは、 よくしゅじょうのために*大饒益だいにょうやくをなす。 つねにおこなはるべきがゆゑにづけてきょうといふ。 「優婆うば提舎だいしゃ」 はこれぶつ論議経ろんぎきょうなり。 「がん」 はこれ*欲楽よくぎょうなり。 「しょう」 は天親てんじんさつ、 かの安楽あんらくじょう如来にょらい浄華じょうけのなかにしょうぜんとがんずるしょうなり。 ゆゑに願生がんしょうといふ。 「」 はこれしゅ、 五ごんをもつてりゃくして仏経ぶっきょうじゅするがゆゑにづけてとなす

大饒益 大きなやく
欲楽 ねがいもとめるという意。

「無量寿」者、言无量寿如来寿命長遠不↠可↢思量↡也。「経」者常也、言安楽国土仏及菩薩清浄荘厳功徳・国土清浄荘厳功徳、能与↢衆生↡作↢大饒益↡、可↣常行↢于世↡故名曰↠経。「優波提舎」是仏論議経名。「願」是欲楽義、「生」者天親菩薩願↠生↢彼安楽浄土↡、如来浄花中生故曰↢願生↡。「偈」是句数義、以↢五言句↡略誦↢仏経↡故名為↠偈。

言… 返り点まま。 「言ふこころは…」
願生ab生故 返り点まま。 「aに生ぜんと願じ、 bに生ずるがゆゑに」

◎浄土論大綱 撰号

婆藪ばそ」 をやくして 「てん」 といふ。 「ばん」 をやくして 「しん」 といふ。 このひと*天親てんじんなづく。 *は ¬*法蔵ほうぞうきょう¼ にあり。 「さつ」 とは、 もしつぶさに*梵音ぼんのんぞんぜば「*だいさっ」 といふべし。 「だい」 は、 これ仏道ぶつどうなり。 「さっ」 は、 あるいはしゅじょうといひ、 あるいは勇健ゆうごんといふ。 仏道ぶつどうもとむるしゅじょう*勇猛ゆうみょうごんあるがゆゑにだいさっづく。 いまたださつといふは訳者やくしゃ (菩提流支)りゃくせるのみ。 「ぞう」 はまたさくなり。 ひとによりてほうおもんずることをねがふがゆゑに某造ぼうぞうといふ

 一代の事跡。
梵音を存ぜば 梵語 (サンスクリット) を音写すればという意。
菩提薩埵 梵語ボーディサットヴァ (bodhisattva) の音写。 →さつ
勇猛 心をはげましてつとめること。

訳↢「婆藪」↡云↠天、訳↢「槃頭」↡言↠親、此人字↢天親↡事在↢¬付法蔵経¼↡。「菩薩」者、若具存↢梵音↡応↠云↢菩提薩埵↡。菩提者是仏道名、薩埵或云↢衆生↡、或云↢勇揵↡、求↢仏道↡衆生有↢勇猛健志↡故名↢菩提薩埵↡。今但言↢菩薩↡訳者略耳。「造」亦作也、庶↢因↠人重↟法故云↢某造↡、

 鎌倉時代刊本では
 諸本では

このゆゑに 「無量寿むりょうじゅきょう優婆うば提舎だいしゃ願生偈がんしょうげ婆藪ばそばんさつぞう」 といへり。 ¬ろん¼ (浄土論)名目みょうもくしをはりぬ

是故言↢「无量寿経優波提舎願生偈婆数槃頭菩薩造」↡。解↢論名目↡竟。

 諸本では

総説分 章門分別

【5】 のなかをわかちて*念門ねんもんとなす。 しも長行じょうごうしゃくするところのごとし。 だいぎょうの四にあひふくみて三念門ねんもんあり。 かみの三はこれ礼拝らいはい讃嘆さんだんもんなり。 しもの一はこれがんもんなり。 だいぎょう論主ろんじゅ (天親) みづから、 「われ仏経ぶっきょう (浄土三部経) によりて ¬ろん¼ をつくりて仏教ぶっきょう相応そうおうす、 ぶくするところ*しゅうある」 ことをぶ。 なんがゆゑぞいふとならば、 これ優婆うば提舎だいしゃじょうぜんがためのゆゑなり。 またこれかみの三もんじょうじてしもの二もんおこす。 ゆゑにこれにいでけり。 だいぎょうより二十一ぎょうくるまで、 これ観察かんざつもんなり。 まつの一ぎょうはこれこうもんなり。 章門しょうもんわかちをはりぬ

 もとづくところ。 本源。 帰趣。

偈中分為↢五念門↡、如↢下長行所↟釈。第一行四句相含有↢三念門↡、上三句是拝・讃嘆門、下一句是作願門。第二行論主自述↧我依↢仏経↡造↠論与↢仏教↡相応所↠服有↞宗。何故云、此為↠成↢優波提舎名↡故。亦是成↢上三門↡起↢下二門↡、所以次↠之説。従↢第三行↡尽↢廿一行↡是観察門。末後一行是迴向門。分↢偈章門↡竟。

(外字) 略字は聖教全書まま。

◎総説分 相含三念門

【6】  そん一心いっしん みょう尽十方じんじっぽう 無礙むげこう如来にょらい 願生がんしょう安楽国あんらくこく

 「そん」 とは諸仏しょぶつ通号つうごうなり。 ろんずればすなはちとしてたっせざるはなし。 だんかたればすなはち*じっあまりなし。 *だんそくしてよくけんし、 のために尊重そんじゅうせらるるゆゑにそんといふ。 ここにいふこころは、 しゃ如来にょらいしたてまつるなり。 なにをもつてかることをとなれば、 しもに 「我依がえしゅ多羅たら」 といへばなり。 天親てんじんさつしゃ如来にょらい*像法ぞうぼうのなかにありてしゃ如来にょらい経教きょうきょうじゅんず。 ゆゑにしょうぜんとがんず。 しょうぜんとがんずるにしゅうあり。 ゆゑにこのごんしゃしたてまつるとるなり。 もしこのこころおもふに、 あまねく諸仏しょぶつぐることまたきらふことなし。 それさつぶつすることは、 こう父母ぶもし、 忠臣ちゅうしん君后くんこうして、 *動静どうせいおのれにあらず、 *出没しゅつもつかならずゆえあるがごとし。 おんりてとくほうず、 よろしく*けいすべし。 また所願しょがんかろからず。 もし如来にょらいじんしたまはずは、 まさになにをもつてかたっせんとする。 *神力じんりきすることをふ。 ゆゑにあおぎてぐるなり

智断 智徳と断徳。 智徳はあらゆる道理に達しているという徳。 断徳は煩悩ぼんのうを余すところなく断じているという徳。
動静おのれにあらず 身勝手な立居振舞をしない。
出没 出処進退のこと。
啓す 申す。 申し上げる。

世尊我一心 帰↢命尽十方 无光如来↡ 願↠生↢安楽国↡。

「世尊」者、諸仏通號、論↠智則義无↠不↠達、語↠断則習気无↠余、智断具足能利↢世間↡、為↠世尊重故曰↢世尊↡。此言意帰↢釈迦如来↡。何以得↠知、下句言↢「我依修多羅」↡。天親菩薩、在↢釈迦如来像法之中↡、順↢釈迦如来経教↡、所以願↠生。願生有↠宗、故知此言帰↠於↢釈迦↡。若謂↢此意↡、遍告↢諸仏↡亦復无↠嫌。夫菩薩帰↠仏、如↧孝子之帰↢父母↡忠臣之帰↢君后↡、動静非↠己出没必由↦知↠恩報↞徳、理宜↢先啓↡。又所願不↠軽、若如来不↠加↢威神↡将↢何以達↡、乞↠加↢神力↡、所以仰告。

如~由知恩報徳 返り点まま。 「~恩を知りて徳を報ずるによるがごとし」

論主自督

一心いっしん」 とは、 天親てんじんさつ*とくことばなり。 いふこころは、 無礙むげこう如来にょらいねんじて安楽あんらくしょうぜんとがんず。 心々しんしん相続そうぞくしておもい*間雑けんぞうすることなしとなり

自督 みずからをすすめ (勧)、 ひきい (率)、 正してゆく (正) ようなはたらきをもつ信心のこと。

「我一心」者、天親菩薩自督之詞、言念↢无光如来↡願↠生↢安楽↡、心心相続无↢他想間雑↡。

 ひていはく、 仏法ぶっぽうのなかにはなし。 このなかになにをもつてかしょうする。 こたへていはく、 「」 といふに三の根本こんぽんあり。 一にはこれ*邪見じゃけん、 二にはこれ*だい、 三にはこれ*流布語るふごなり。 いま 「」 といふは、 天親てんじんさつ自指じしことばにして、 流布語るふごもちゐる。 邪見じゃけんだいとにはあらず

邪見語 我を実体視し、 それにとらわれるよこしまな見解を表す言葉。 →邪見じゃけん
自大語 自分が他よりすぐれていると思う慢心を表す言葉。
流布語 世間一般に使われる言葉。 日常語。

問曰。仏法中无↠我、此中何以称↠我。答曰。言↠我有↢三根本↡。一是邪見語、二是自大語、三是流布語。今言↠我者天親菩薩自指↠之言、用↢流布語↡、非↢邪見自大↡也。

自指之言 返り点まま。 「自らこれを指しふる言なり」

 みょう尽十方じんじっぽう無礙むげこう如来にょらい」 とは、 「みょう」 はすなはちこれ礼拝らいはいもんなり。 「尽十方じんじっぽう無礙むげこう如来にょらい」 はすなはちこれ讃嘆さんだんもんなり。

「帰命尽十方无光如来」者、帰命即是拝門、尽十方无光如来即是讃嘆門。

礼拝門

なにをもつてか 「みょう」 はこれ礼拝らいはいなりとるとなれば、 龍樹りゅうじゅさつの、 阿弥陀あみだ如来にょらいさん (易行品)つくれるなかに、 あるいは 「*稽首礼けいしゅらい」 といひ、 あるいは 「みょう」 といひ、 あるいは 「帰命礼きみょうらい」 といへり。 この ¬ろん¼ (浄土論)長行じょうごうのなかにまた 「念門ねんもんしゅす」 といへり。 念門ねんもんのなかに礼拝らいはいはこれはじめなり。 天親てんじんさつすでにおうじょうがんず。 あにらいせざるべけんや。 ゆゑにりぬ、 みょうはすなはちこれ礼拝らいはいなり。 しかるに礼拝らいはいはただこれ*恭敬くぎょうにして、 かならずしもみょうにあらず。 みょうはかならずこれ礼拝らいはいなり。 もしこれをもつてすいせば、 みょうおもしとなす。 *しんぶ。 よろしくみょうといふべし。 ろんす。 ひろ礼拝らいはいだんず。 *彼此ひしあひじょうじてにおいていよいよあらわれたり

稽首礼 頭を地につけてらいはいすること。
己心 自己の領解りょうげ。 みずからの信心。
彼此 長行じょうごうとこのじゅのこと。

何以知、帰命是拝。龍樹菩薩造↢阿弥陀如来讃↡中、或言↢「稽首」↡、或言↢「我帰命」↡、或言↢「帰命」↡。此論長行中、亦言↠修↢五念門↡。五念門中、拝是一。天親菩薩既願↢往生↡、豈容↠不↠、故知帰命即是拝。然拝但是恭敬、不↢必帰命↡、帰命必是拝。若以↠此推↢帰命↡為↠重。偈申↢己心↡、宜↠言↢帰命↡。論解↢偈義↡、汎談↢拝↡。彼此相成、於↠義弥顕。

知…礼拝 返り点まま。 (内容的には知↢…礼拝↡が適切か)

讃嘆門

 なにをもつてか 「尽十方じんじっぽう無礙むげこう如来にょらい」 はこれ讃嘆さんだんもんなりとるとならば、 しも長行じょうごうのなかに、 「いかんが讃嘆さんだんもん。 いはく、 かの如来にょらいみなしょうするに、 かの如来にょらいこうみょうそうのごとく、 かの*名義みょうぎのごとく、 如実にょじつ修行しゅぎょうして相応そうおうせんとほっするがゆゑなり」 といへり。 *しゃこく所説しょせつの ¬無量寿むりょうじゅ経¼ (小経) によらば、 ぶつ阿弥陀あみだ如来にょらいみょうごうしたまはく、 「なんがゆゑぞ阿弥陀あみだごうする。 かのぶつこうみょうりょうにして、 十方国じっぽうこくらしたまふに*障礙しょうげするところなし。 このゆゑに阿弥陀あみだごうす。 またかのぶつ寿命じゅみょうおよびその人民にんみんも、 りょうへん*そうなり。 ゆゑに阿弥陀あみだづく」 と

名義 名号の意義、 いわれ。

何以知↢尽十方无光如来是讃嘆門↡、下長行中言。「云何讃嘆門、謂称↢彼如来名↡、如↢彼如来光明智相↡、如↢彼名義↡、欲↢如↠実修行相応↡故」。依↢舎衛国所説¬无量寿経¼↡、仏解↢阿弥陀如来名號↡「何故號↢阿弥陀↡、彼仏光明无量照↢十方国↡无↠所鄣↡、是故號↢阿弥陀↡」。又「彼仏寿命及其人民、无量无辺阿僧祇、故名↢阿弥陀↡」。

 ひていはく、 もし無礙むげこう如来にょらいこうみょうりょうにして、 十方じっぽうこくらしたまふに障礙しょうげするところなしといはば、 このけんしゅじょう、 なにをもつてか光照こうしょうこうむらざる。 ひかりらさざるところあらば、 あにあるにあらずや。 こたへていはく、 しゅじょうぞくす。 ひかりにはあらず。 たとへば日光にっこう*てんにあまねけれども、 *盲者もうじゃざるがごとし。 日光にっこうのあまねからざるにはあらず。 また*密雲みつうんおおきにそそ かんなり げども、 *頑石がんせきうるおはざるがごとし。 あめうるお しゅなり さざるにはあらず

盲者 →補註10
密雲 深くたれこめた雨雲。
頑石 固い石。

問曰。若言↧无光如来光明无量照↢十方国土↡无↞所↢鄣↡者、此間衆生何以不↠蒙↢光照↡、光有↠所↠不↠照、豈非↠有↠耶。答曰。属↢衆生↡非↢光↡也。譬如↧日光周↢四天下↡而、盲者不↠見↥、非↢日光不↟周也。亦如↢密雲洪潅之句反而頑石不↟潤、非↢雨不↟洽下捨反也。

 もし一ぶつ*三千さんぜん大千だいせんかい主領しゅりょうすといはば、 これしょうもんろんのなかのせつなり。 もし諸仏しょぶつあまねく十方じっぽうりょうへんかいりょうすといはば、 これ大乗だいじょうろんのなかのせつなり。 天親てんじんさつ、 いま、 「尽十方じんじっぽう無礙むげこう如来にょらい」 といふは、 すなはちこれかの如来にょらいみなにより、 かの如来にょらいこうみょうそうのごとく讃嘆さんだんするなり。 ゆゑにりぬ、 このはこれ讃嘆さんだんもんなり

若言↣一仏主↢領三千大千世界↡、是声聞論中説。若言↣諸仏遍領↢十方无量无辺世界↡、是大乗論中説。天親菩薩、今言↢尽十方无光如来↡、即是依↢彼如来名↡、如↢彼如来光明智相↡讃嘆。故知此句是讃嘆門。

作願門

 願生がんしょう安楽国あんらくこく」 とは、 この一はこれがんもんなり。 天親てんじんさつ*みょうこころなり。 それ 「安楽あんらく」 のは、 つぶさにした観察かんざつもんのなかにあり

「願生安楽国」者、此一句是作願門、天親菩薩帰命之意也。其安楽義具在↢下観察門中↡。

願生問答

 ひていはく、 *大乗だいじょう経論きょうろんのなかに、 処々しょしょに 「しゅじょう*畢竟ひっきょうしょうにして*くうのごとし」 とけり。 いかんが天親てんじんさつ願生がんしょう」 といふや。 こたへていはく、 「しゅじょうしょうにしてくうのごとし」 とくに二しゅあり。 一には、 ぼんおもふところのごときじつしゅじょうぼんるところのごときじつしょうは、 この所見しょけん畢竟ひっきょうじてしょなきこと、 *もうのごとく、 くうのごとし。 二には、 いはく、 諸法しょほう*因縁いんねんしょうのゆゑにすなはちこれ不生ふしょうなり。 しょなきことくうのごとし。 天親てんじんさつがんずるところのしょうは、 これ*因縁いんねんなり。 因縁いんねんのゆゑにかりしょうづく。 ぼんの、 じつしゅじょうじつしょうありとおもふがごときにはあらず

大乗経論 ¬ゆいぎょう¼ ¬だい智度ちどろん¼ 等の経論のこと。
畢竟無生 本来、 消滅しょうめつ変化のないこと。
亀毛 亀の甲羅についた藻を毛と誤認するように、 本来ないものが実在するかのようにあるあり方。

問曰。大乗経論中、処処説↣衆生畢竟无生如↢虚空↡、云何天親菩薩言↢願生↡耶。答曰。説↣衆生无生如↢虚空↡有↢二種↡。一者如↢凡夫↡所↠謂実衆生、如↢凡夫所↠見実生死↡、此所見事畢竟无↠所↠有如↢亀毛↡如↢虚空↡。二者謂諸法因縁生故即是不生、无↠所↠有如↢虚空↡。天親菩薩所↠願生者是因縁義、因縁義故仮名↠生、非↠如↢凡夫謂↟有↢実衆生実生死↡也。

如a所謂b 返り点まま。 「aのごとき所謂いわゆるb」
如a所見b 返り点まま。 「aの見るところのbのごとき」

往生問答

 ひていはく、 なんのによりてか*おうじょうく。 こたへていはく、 このけん*仮名人けみょうにんのなかにおいて念門ねんもんしゅするに、 前念ぜんねんねんのためにいんとなる。 *穢土えど仮名人けみょうにんじょう仮名人けみょうにんと、 けつじょうしていちなるをず、 けつじょうしてなるをず。 前心ぜんしんしんまたかくのごとし。 なにをもつてのゆゑに。 もしいちならばすなはちいんなく、 もしならばすなはち相続そうぞくにあらざればなり。 この*いちもんかんずるろんのなかに*委曲いきょくなり

仮名人 仮名とは実体のないものに仮につけた名という意で、 人といっても五蘊ごうん (五陰) が因縁いんねんによって仮に和合したものであるから仮名人という。 →おん
一異の門を観ずる論 龍樹りゅうじゅ菩薩の ¬中論ちゅうろん¼ 等のこと。
委曲 くわしいこと。

問曰。依↢何義↡説↢往生↡。答曰。於↢此間仮名人中↡修↢五念門↡、前念与↢後念↡作↠因。穢土仮名人、浄土仮名人、不↠得↢決定一↡不↠得↢決定異↡、前心・後心、亦如↠是。何以故、若一則无↢因果↡、若異則非↢相続↡、是義観↢一異門↡論中委曲、

 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「亦復」。

だいぎょうの三念門ねんもんしゃくしをはりぬ

釈↢第一行三念門↡竟。

◎総説分 成上起下偈

【7】 つぎは 「優婆うば提舎だいしゃ」 のじょうじ、 またかみじょうじてしもおこなり。

次成↢優波提舎名↡、又成↠上起↢下偈↡。

我依がえしゅ多羅たら 真実しんじつどくそう せつがんそう 仏教ぶっきょう相応そうおう

 この一ぎょう、 いかんが 「*優婆うば提舎だいしゃ」 のじょうじ、 いかんが*かみの三もんじょう*しもの二もんおこす。 に 「我依がえしゅ多羅たら 仏教ぶっきょう相応そうおう」 といふ。 「*しゅ多羅たら」 はこれ仏経ぶっきょうなり。 われ仏経ぶっきょうろんじて、 きょう相応そうおうす。 仏法ぶっぽうそうるをもつてのゆゑに優婆うば提舎だいしゃづく。 じょうじをはりぬ。 かみの三もんじょうじてしもの二もんおこすとは、 いづれのところにかり、 なんのゆゑにかり、 いかんがる。 いづれのところにかるとは、 しゅ多羅たらる。 なんのゆゑにかるとは、 如来にょらいはすなはち*真実しんじつ*どくそうなるをもつてのゆゑなり。 いかんがるとは、 念門ねんもんしゅして相応そうおうするがゆゑなり。 かみじょうしもおこしをはりぬ

上の三門 五念門の中のらいはい讃嘆さんだんがんの三門。 →ねんもん
下の二門 五念門の中のかんざつこうの二門。 →ねんもん

我依↢修多羅 真実功徳相↡ 説↢願偈↡捴持 与↢仏教↡相応。

此一行云何成↢優波提舎名↡、云何成↢上三門↡起↢下二門↡。偈言↢「我依修多羅与仏教相応」↡。修多羅是仏経名、我論↢仏経義↡与↠経相応、以↠入↢仏法相↡故得↠名↢憂波提舎↡。名成竟。成↢上三門↡起↢下二門↡。何所依、何故依、云何依。何所依者、依↢修多羅↡。何故依者、以↢如来即真実功徳相↡故。云何依者、修↢五念門↡相応故成↠上起↠下竟。

 鎌倉時代刊本では欠く。
 諸本では 「優」。

しゅ多羅たら」 とは、 *十二きょうのなかの直説じきせつのものをしゅ多羅たらづく。 いはく、 *四阿しあごん三蔵さんぞうとう三蔵さんぞうのほかの大乗だいじょう諸経しょきょうもまたしゅ多羅たらづく。 このなかに 「しゅ多羅たら」 といふは、 これ三蔵さんぞうのほかの大乗だいじょうしゅ多羅たらなり。 含等ごんとうきょうにはあらず

「修多羅」者、十二部経中直説者名↢修多羅↡。謂四阿含・三蔵等。三蔵外大乗諸経亦名↢修多羅↡。此中言↢「依修多羅」↡者、是三蔵外大乗修多羅、非↢阿含等経↡也。

四阿含三蔵 四阿含などの清浄の教えのこと。 三蔵とは経・律・論のことで、 仏教経典の総称。 原始仏教の経典のことであるが、 大乗経典の成立以後は小乗とその経典の呼称となった。 →四阿しあごん三蔵さんぞう

真実功徳釈

真実しんじつどくそう」 とは、 しゅどくあり。 一には*有漏うろしんよりしょうじて*ほっしょうじゅんぜず。 いはゆるぼん人天にんでん諸善しょぜん人天にんでんほう、 もしはいんもしは、 みなこれ顛倒てんどう、 みなこれ虚偽こぎなり。 このゆゑにじつどくづく。 二にはさつ智慧ちえ清浄しょうじょうごうよりおこりて*ぶつ荘厳しょうごんす。 ほっしょうによりて清浄しょうじょうそうる。 このほう顛倒てんどうせず、 虚偽こぎならず。 づけて真実しんじつどくとなす。 いかんが顛倒てんどうせざる。 ほっしょうによりて*たいじゅんずるがゆゑなり。 いかんが虚偽こぎならざる。 しゅじょうせっして*畢竟ひっきょうじょうらしむるがゆゑなり

畢竟浄 完全に煩悩ぼんのうを浄化した究極のさとりの境地。

「真実功徳相」者、有↢二種功徳↡。一者従↢有漏心↡生不↠順↢法性↡。所↠謂凡夫人天諸善、人天果報、若因若果、皆是顛倒皆是虚偽、是故名↢不実功徳↡。二者従↢菩薩智恵清浄業↡起荘↢厳仏事↡。依↢法性↡入↢清浄相↡。是法不↢顛倒↡不↢虚偽↡、名為↢真実功徳↡。云何不↢顛倒↡、依↢法性↡順↢二諦↡故。云何不↢虚偽↡、摂↢衆生↡入↢畢竟浄↡故。

 鎌倉時代刊本・嘉永年間刊本では

せつがんそう ぶっきょう相応そうおう」 とは、 「」 はさんしつづく。 「そう」 はしょうをもつてせっするにづく。 」 のごんは五ごんしゅなり。 がん」 はおうじょう*欲楽よくぎょうするにづく。 せつ」 はいはく、 もろもろのろんくなり。 そうじてこれをいふに、 願生がんしょうするところのきて、 仏経ぶっきょう*そうし、 仏教ぶっきょう相応そうおうするなり。 相応そうおう」 とは、 たとへば*かんがいとあひかなへるがごとし

欲楽 ねがいもとめるという意。
総持 ここでは広博な経の文意を総摂そうしょうして短いのなかにおさめたもつという意。
函と蓋 はことふた。

「説願偈捴持与仏教相応」者、持名↢不散不失↡。捴名↢以↠少摂↟多。偈言五言句数。願名↣欲↢楽往生↡。説謂説↢諸偈論↡。捴而言↠之、説↧所↢願生↡偈↥捴↢持仏経↡与↢仏教↡相応。相応者譬如↢凾盖相称↡也。

凾盖 ともに聖教全書まま。 註なし。

◎総説分 観察門

【8】  かんかいそう 勝過しょうか三界道さんがいどう

 これより以下いげは、 これだい四の観察かんざつもんなり。 このもんのなかをわかちて二のべつとなす。 一には*けん*荘厳しょうごん成就じょうじゅ観察かんざつす。 二には*しゅじょうけん荘厳しょうごん成就じょうじゅ観察かんざつ

観↢彼世界相↡ 勝↢過三界道↡。

此已下是第四観察門。此門中分為↢二別↡。一者観↢察器世間荘厳成就↡。二者観↢察衆生世間荘厳成就↡。

◎総説分 ○観察門  器世間

このより以下いげ願生がんしょう阿弥陀あみだ仏国ぶつこく」 にいたるまでは、 これけん荘厳しょうごん成就じょうじゅかんずるなり。けんかんずるなかに、 またわかちて十七のべつとなす。 もんいたりてまさになづくべし

此句已下至↢「願生彼阿弥陀仏国」↡、是観↢器世間荘厳成就↡。観↢器世間↡中、復分為↢十七別↡、至↠文当↠目。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  清浄功徳

この二はすなはちこれだい一のなり。 づけて観察かんざつ荘厳しょうごん清浄しょうじょうどく成就じょうじゅとなす。 この清浄しょうじょうはこれ*総相そうそうなり

総相 器世間の十七種だけでなく二十九種荘厳しょうごんのすべてにわたるすがた。

此二句即是第一事、名為↢観察荘厳清浄功徳成就↡。此清浄是捴相。

所為の境

ぶつもとこの荘厳しょうごん清浄しょうじょうどくおこしたまへる所以ゆえんは、 *三界さんがいそなはすに、 これ虚偽こぎそう、 これ*輪転りんでんそう、 これ*ぐうそうにして、 *蠖しゃっかく かがまりぶるむしなり循環じゅんかんするがごとく、 *蚕繭さんけん さんなりばくするがごとし。 あはれなるかなしゅじょう、 この三界さんがいしば むすびてけず られて、 顛倒てんどう不浄ふじょうなり

輪転の相 三界さんがいを車輪がまわるようにめぐり迷うこと。
無窮の相 三界を輪転することがはてしないこと。
蠖 尺とり虫。
蚕繭 かいこのまゆ。

仏本所↣以起↢此荘厳清浄功徳↡者、見↧三界是虚偽相、是輪転相、是无窮相、如↢申虫一郭反循環↡、如↢蚕才含蚕衣公殄反自縳↡、哀哉衆生締↦結不解帝音此三界顛倒不浄↥、

見…締a 返り点まま。 「…aにまつわるるを見そなわして」
 諸本では
 諸本では 「伸」。

能為の願

しゅじょう不虚偽ふこぎところ輪転りんでんところ不無ふむぐうところきて、 畢竟ひっきょう安楽あんらく大清浄処だいしょうじょうしょしめんとおぼしめす。 このゆゑにこの清浄しょうじょう荘厳しょうごんどくおこしたまへり

欲↧置↣衆生於↢不虚偽処↡於↢不輪転処↡於↢不无窮処↡得↦畢竟安楽大清浄処↥。是故起↢此清浄荘厳功徳↡也。

成就の相

成就じょうじゅ」 とは、 いふこころは、 この清浄しょうじょう破壊はえすべからず、 ぜんすべからず。 三界さんがいの、 これぜんそう、 これ破壊はえそうなるがごときにはあらず

成就者、言此清浄不↠可↢破壊↡不↠可↢汙染↡。非↠如↢三界是汙染相是破壊相↡也。

かん」 とは観察かんざつなり。 「」 とはかの安楽国あんらくこくなり。 「かいそう」 とはかの安楽あんらくかい清浄しょうじょうそうなり。 そのそうべつしもにあり

「観」者観察也。「彼」者彼安楽国也。「世界相」者彼安楽世界清浄相也、其相別在↠下。

勝過しょうか三界道さんがいどう」 の 「どう」 とはつうなり。 かくのごときいんをもつて、 かくのごとき。 かくのごときをもつて、 かくのごときいんむくゆ。 いんつうじていたる。 つうじていんむくゆ。 ゆゑにづけてどうとなす。 三界さんがい」 とは、 一にはこれ*欲界よくかい、 いはゆる*六欲天ろくよくてん*てんにん畜生ちくしょう餓鬼がきごくとうこれなり。 二にはこれ*色界しきかい、 いはゆる初禅しょぜん・二ぜん・三ぜん・四ぜん天等てんとうこれなり。 三にはこれ*色界しきかい、 いはゆる空処くうしょ識処しきしょしょしょそう非非ひひ想処そうしょ天等てんとうこれなり。 この三界さんがいはけだしこれしょうぼんてん闇宅あんたくなり。 またらくすこしきことなり、 *修短しゅたんしばらくことなりといへども、 べてこれをかんずるに*有漏うろにあらざるはなし。 *ぶくあひじょうじ、 循環じゅんかんさいなり。 *雑生ざっしょう触受そくじゅし、 *とうながかかはる。 かつはいん、 かつは虚偽こぎあひおそふ。 安楽あんらくはこれさつ (法蔵)慈悲じひ*正観しょうかん由生ゆしょう如来にょらい (阿弥陀仏)神力じんりき本願ほんがん所建しょこんなり。 *たいらん湿しつしょう、 これによりて*たかおさめ、 *ごうながつな、 これよりながつ。 *続括ぞくかつはかりごとすすめをたずしてゆみく。 *労謙ろうけん善譲ぜんじょう*げんひとしくしてとくおなじくす。 「勝過しょうか三界さんがい」 とは、 そもそもこれ近言ごんごんなり

修短 長短。 ここでは寿命の長短のこと。
雑生触受 雑多な生を経て、 さまざまな苦にふれ、 その苦を受けること。
正観の由生 正しくものをみる智慧ちえより生ずるところ。
胎卵湿の生 四生のうちの胎生たいしょう卵生らんしょう湿生しっしょう。 →四生ししょう
高く揖め 高は遠の意で、 揖はあいさつをすること。 礼をして遠くへ去りはなれて。
業繋 煩悩ぼんのうにもとづく行為によって迷界につなぎとめられること。
続括の権… 続括はつづけて矢を射ること。 権は権術ごんじゅつの意。 菩薩が退転もせず、 諸仏の勧めもまたずに利他行をなすことを、 名人の連続して射る矢が、 次々と前の矢を支えていっておちることがないのに喩える。
労謙善譲 功労があってもみずから誇らず、 へりくだること。
普賢 →げんさつ

「勝過三界道」、道者通也。以↢如↠此因↡得↢如↠此果↡、以↢如↠此果↡酬↢如↠此因↡。通↠因至↠果、通↠果酬↠因、故名為↠道。三界者、一是欲界、所↠謂六欲天、四天下人・畜生・餓鬼・地獄等是也。二是色界、所↠謂初禅・二禅・三禅・四禅天等是也。三是无色界、所↠謂空処・識処・无所有処・非想非非想処天等是也。此三界盖是生死凡夫流転之闇宅。雖↢復苦楽小殊修短暫異↡統而観↠之莫↠非↢有漏↡。倚伏相乗循環无↠際、雑生触受四倒長拘。且因且果虚偽相襲。安楽是菩薩慈悲正観之由生、如来神力本願之所建。胎・卵・湿生縁↠茲高揖業繋長維従↠此永断。続括之権、不↠待↠勧而彎↠弓、労謙善譲斉↢普賢↡而同↠徳。勝↢過三界↡抑↢是近言↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  量功徳

【9】  究竟くきょうにょくう 広大こうだい辺際へんざい

 この二荘厳しょうごんりょうどく成就じょうじゅづく

究竟如↢虚空↡ 広大无↢辺際↡。

此二句名↢荘厳量功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとこの荘厳しょうごんりょうどくおこしたまへる所以ゆえんは、 三界さんがいそなはすに陜小きょうしょうにして* 敗城はいじょうおかなり けい やま絶坎ぜっかんなり *はい つちかさぬるなり。 一にはいはくなり しょ しょのごときもの、 陼丘しょきゅうなり なり。 あるいは*かん迫迮はくさくし、 あるいは*でん逼隘ひつあい ろうなり す。 あるいは志求しぐするにみちつづまり、 あるいはせんへだ そくなりふ。 あるいは*国界こくかいぶんせり。 かくのごとき種々しゅじゅ*挙急こきゅうあり

堕陘 くずれた丘やけわしい谷。
陪陼 小さな山やなかのような丘。
宮観迫迮 宮殿や楼観ろうかんが狭い範囲にたてこんでいること。
土田逼隘 土地や田が狭くせせこましいこと。
国界分部せり 国境でへだてられている。
挙急 あわただしく、 うろたえること。

仏本所↣以起↢此荘厳量功徳↡者、見↢三界↡戸甲小堕成阜式垂反小絶坎形音重土一曰備文才反如緒者陼丘之与反或宮観迫子格或土田逼隘或志求路促、或山河隔公厄反鄣、或国界分部。有↢如↠此等種種挙急事↡。

(外字) 諸本では
 諸本では 「城」。
 他本では 「或」。
 諸本では 「山」。

能為の願

このゆゑにさつ、 この荘厳しょうごんりょうどくがんおこしたまへり。「ねがはくはわがこくくうのごとく広大こうだいにしてさいならん」 と

是故菩薩興↢此荘厳量功徳願↡、願我国土如↢虚空↡広大无際。

成就の相

くうのごとく」 とは、 いふこころは、 来生らいしょうのものおおしといへども、 なほなきがごとくならんとなり

「如虚空」者、言来生者雖↠衆猶若↠无也。

広大こうだいにしてさいならん」 とは、 かみの 「にょくう」 のじょうず。 なんがゆゑぞ 「にょくう」 といふ。 広大こうだいにしてさいなるをもつてのゆゑなり

「広大无際」者成↢上如虚空義↡。何故如↢虚空↡、以↢広大无↟際故。

成就じょうじゅ」 とは、 いふこころは、 十方じっぽうしゅじょうおうじょうするもの、 もしはすでにしょうじ、 もしはいまにしょうじ、 もしはまさにしょうぜん。 りょうへんなりといへども畢竟ひっきょうじてつねにくうのごとく、 広大こうだいにしてさいにして、 つひにときなからん。 このゆゑに 「究竟くきょうにょくう 広大こうだい辺際へんざい」 といへり

成就者、言十方衆生往生者、若已生若今生若当生、雖↢无量无辺↡畢竟常如↢虚空↡広大无↠際終无↢満時↡。是故言↢「究竟如虚空広大无辺際」↡。

 ひていはく、 ゆいのごときは、 *方丈ほうじょう苞容ほうようしてあまりあり。 なんぞかならず国界こくかい*無貲むしなるをすなはち広大こうだいしょうする。 こたへていはく、 いふところの広大こうだいは、 かならずしも*けい 五十なり えん 三十なり をもつてたとへとなすにあらず。 ただくうのごとしといふ。 またなんぞ方丈ほうじょうわずらはさんや。 また方丈ほうじょう苞容ほうようするところはきょうにありてこうなり。 まこと じつなりほうろんずるに、 あにこうにありてこうなるにしかんや

方丈に… 方丈は一丈四方の部屋のこと。 ここでは維摩がこの狭い部屋に三万二千人の座を設けておさめ入れたという ¬維摩経¼ の説を出したもの。 →維摩経ゆいまぎょう
無貲 はかりしれないこと。 限りがないこと。
畦畹 田畑や土地の広さをあらわす単位。

問曰。如↢維摩↡方丈苞容有↠余。何必国界无貲乃称↢広大↡。答曰。所↠言広大非↧必以↢畦五十畝下圭反畹↡三十畝一遠一万反為↞喩、但言↠如↠空亦何累↢方丈↡。又方丈之所↢苞容↡在↠陜而広。覈下革反論↢果報↡豈若↢在↠広而広↡耶。

 諸本に従って訂正。 (聖教全書では 「友」、 そうすると 「貲」 の音がシュウになる)

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  性功徳

【10】 正道しょうどうだい慈悲じひ しゅっ善根生ぜんごんしょう

 この二荘厳しょうごんしょうどく成就じょうじゅづく

正道大慈悲 出世善根生。

此二句名↢荘厳性功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 愛欲あいよくをもつてのゆゑにすなはち欲界よくかいあり。 *攀厭へんえん禅定ぜんじょうをもつてのゆゑにすなはちしき色界しきかいあり。 この三界さんがいはみなこれ*有漏うろなり。 邪道じゃどう所生しょしょうなり。 ながだいねてでんとねがふをることなし

攀厭禅定 下位を厭い、 上位の天上界にのぼることをめざして禅定ぜんじょうを修すること。 ぼんどうの観法。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、以↢愛欲↡故則有↢欲界↡、以↠攀↢厭禅定↡故則有↢色・无色界↡。此三界皆是有漏、邪道所生。長寝↢大夢↡莫↠知↢悕出↡、

能為の願

このゆゑにだいしんおこしたまへり。 「ねがはくはわれ成仏じょうぶつせんに、 *無上むじょう正見道しょうけんどうをもつて清浄しょうじょうおこして三界さんがいいださん」 と

無上の正見道 最高の真実を見る智慧ちえ。 →のく多羅たらさん藐三菩提みゃくさんぼだい

是故興↢大悲心↡。願我成仏、以↢无上正見道↡起↢清浄土↡出↠于↢三界↡。

成就の相

しょう」 はこれほんなり。 いふこころは、 このじょうほっしょう随順ずいじゅんして法本ほうほんそむかず。 、 ¬*ごんぎょう¼ の*宝王ほうおう如来にょらい性起しょうきおな

宝王如来の性起の義 ¬ごんぎょう¼ 「宝王如来性起品」 に説かれる意を指す。 仏果はほっしょうの理に順じて起ったものであるということ。 ここでは阿弥陀仏の浄土も同じく真如しんにょほっしょうの顕現したものであるという意を示す。

性是本義、言此浄土随↢順法性↡不↠乖↢法本↡、事同↢¬花厳経¼寳王如来性起義↡。

またいふこころは、 積習しゃくじゅうしてしょうじょうず。 *法蔵ほうぞうさつしょ*波羅はらみつあつめて積習しゃくじゅうしてじょうずるところを

又言積習成↠性、指↢法蔵菩薩↡、集↢諸波羅蜜↡積習所↠成。

指法蔵菩薩 返り点まま。 「法蔵比丘を指す」

また 「しょう」 といふは、 これ*聖種性しょうしゅしょうなり。 はじ法蔵ほうぞうさつ*世自せじ在王ざいおうぶつみもとにおいて、 *しょう法忍ぼうにんさとりたまへり。 そのときくらい聖種性しょうしゅしょうづく。 このしょうのなかにおいて四十八の大願だいがんおこしてこの*しゅせり。 すなはち安楽あんらくじょうといふ。 これかのいん所得しょとくなり。 のなかにいんく。 ゆゑにづけてしょうとなす

修起 修行してその結果を成就すること。

亦言↠性者是聖種性。序法蔵菩薩於↢世自在王仏所↡悟↢无生法忍↡、爾時位名↢聖種性↡。於↢是性中↡発↢八大願↡修↢起此土↡、即曰↢安楽浄土↡。是彼因所得、果中説↠因故名為↠性。

またいふこころは、 「しょう」 はこれ必然ひつねんなり、 がいなり。 うみしょうの一にして、 しゅればかならず一となりて、 うみあじはひ、 かれにしたがひてあらたまらざるがごとし。 またひとしょう不浄ふじょうなるがゆゑに、 種々しゅじゅ妙好みょうこう*しきこう美味みみればみな不浄ふじょうとなるがごとし。 安楽あんらくじょうはもろもろのおうじょうするもの、 不浄ふじょうしきなく、 不浄ふじょうしんなし。 畢竟ひっきょうじてみな清浄しょうじょう平等びょうどう*無為むい法身ほっしんることは、 安楽あんらくこく清浄しょうじょうしょう成就じょうじゅせるをもつてのゆゑなり

 すがた。 身体。

又言性是必然義、不改義。如↧海性一味衆流入者必為↢一味↡海味不↦随↠彼改↥也。又如↣人身性不浄故種種妙好色・香・美味入↠身皆為↢不浄↡。安楽浄土諸往生者、无↢不浄色↡无↢不浄心↡、畢竟皆得↢清浄平等无為法身↡、以↢安楽国土清浄性成就↡故。

正道しょうどうだい慈悲じひ しゅっ善根生ぜんごんしょう」 とは、 *平等びょうどう大道だいどうなり。 平等びょうどうみちづけて正道しょうどうとなす所以ゆえんは、 平等びょうどうはこれ諸法しょほう*体相たいそうなり。 諸法しょほう平等びょうどうなるをもつてのゆゑに*発心ほっしんひとし。 発心ほっしんひとしきがゆゑにどうひとし。 どうひとしきがゆゑにだい慈悲じひひとし。 だい慈悲じひはこれ仏道ぶつどうしょういんなるがゆゑに 「正道しょうどうだい慈悲じひ」 といへり

体相 本体。 本質的なすがた。
発心 法蔵菩薩のおこされた願心。

「正道大慈悲出世善根生」者、平等大道也、平等道。所↣以名為↢正道↡者、平等是諸法躰相。以↢諸法平等↡故発心等、発心等故道等、道等故大慈悲等。大慈悲是仏道正因故。言↢正道大慈悲↡、

慈悲じひ*えんあり。 一にはしゅじょうえん、 これ小悲しょうひなり。 二には法縁ほうえん、 これ中悲ちゅうひなり。 三にはえん、 これだいなり。 だいはすなはち*しゅっぜんなり。 安楽あんらくじょうはこのだいよりしょうぜるがゆゑなり。 ゆゑにこのだいをいひてじょうこんとなす。 ゆゑに 「しゅっ善根生ぜんごんしょう」 といへり

慈悲有↢三縁↡。一者衆生縁、是小悲。二者法縁、是中悲。三者无縁、是大悲。大悲即出世善也。安楽浄土従↢此大悲↡生故。故謂↢此大悲↡為↢浄土之根↡故曰↢「出世善根生」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  形相功徳

【11】 浄光明じょうこうみょう満足まんぞく 如鏡にょきょう日月輪にちがつりん

 この二荘厳しょうごん形相ぎょうそうどく成就じょうじゅづく

浄光明満足 如↢鏡日月輪↡。

此二句名↢荘厳形相功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとこの荘厳しょうごんどくおこしたまへる所以ゆえんは、 *いきくをそなはすに、 ひかり*ぽうにあまねからず。 *庭燎ていりょうたくにあるにあきらかなること*じんたず

四域 しゅせんの四方にあるだいしゅうのこと。 →てん
三方にあまねからず 日は須弥山の回りをめぐっているので、一方を照らせば他の三方を照らさない。
庭燎 庭のかがり火。
十仞 仞は長さの単位。 一仞は両手を左右に広げたときの長さ。

仏本所↣以起↢此荘厳功徳↡者、見↣日行↢四域↡光不↠周↢三方↡、庭燎力小在↠宅明不↠満↢十刃↡。

 諸本では

能為の願

これをもつてのゆゑに浄光明じょうこうみょうたさんとがんおこしたまへり

以↠是故起↧満↢浄光明↡願↥。

成就の相

日月光輪にちがつこうりんの、 たい満足まんぞくせるがごとく、 かの安楽あんらくじょうもまた広大こうだいにしてほとりなしといへども、 清浄しょうじょうこうみょう充塞じゅうそくせざるはなからん。 ゆゑに 「浄光明じょうこうみょう満足まんぞく 如鏡にょきょう日月輪にちがつりん」 といへり

如↣日月光輪満↢足自躰↡、彼安楽浄土雖↢復広大无↟辺、清浄光明无↠不↢充塞↡。故曰↢「浄光明満足如鏡日月輪」↡也。

 諸本では欠く。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  種々事功徳

【12】 諸珍宝しょちんぽうしょう そくみょう荘厳しょうごん

 この二荘厳しょうごん種々しゅじゅどく成就じょうじゅづく

備↢諸珍寳性↡ 具↢足妙荘厳↡。

此二句名↢荘厳種種事功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんを起したまへる。 あるこくそなはすに、 でいをもつてかざりとなし、 木石ぼくせきをもつて*かんとなす。 あるいはこがねたまちりばむもがんたず。 あるいはいとなみて百千ひゃくせんそなふれば、 つぶさにしん

華観 はなやかな楼閣ろうかく

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、以↢埿土↡為↢宮餝↡、以↢木石↡為↢花観↡。或彫↠金鏤↠玉、意願不↠充。或営備↢百千↡具受↢辛苦↡。

能為の願

これをもつてのゆゑにだいしんおこしたまへり。 「ねがはくはわれ成仏じょうぶつせんに、 かならず珍宝ちんぽうそくし、 厳麗ごんらいねんにして*有余うよにあひわすれ、 おのづから仏道ぶつどうしめん」 と

有余にあひ忘れ 充分すぎるほどあるので、あることさえ忘れて。

以↠此故興↢大悲心↡、願我成仏、必使↧珍寳具足厳麗自然相↢忘於↟有↠余自得↞於↢仏道↡。

相忘於有余 返り点は聖教全書まま。 「余りあることをあひ忘れ」

成就の相

この荘厳しょうごん、 たとひ*首羯しゅかつたくみ妙絶みょうぜつしょうすとも、 おもいおもいつくすとも、 あによくりてうつさんや。 「しょう」 とはほんなり。 能生のうしょうすでにきよし、 所生しょしょういづくんぞ不浄ふじょうん。 ゆゑに ¬きょう¼ (維摩経) にのたまはく、 「そのしんきよきにしたがひてすなはちぶつきよし」 と。 このゆゑに 「諸珍宝しょちんぽうしょう そくみょう荘厳しょうごん」 といへり

此荘厳事、縦使首羯磨工称↢妙絶↡、積↠思竭↠想、豈能取図。「性」者本義也、能生既浄、所生焉得↢不浄↡。故経言。「随↢其心浄↡則仏土浄」、是故言↢「備諸珍寳性具足妙荘厳」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  妙色功徳

【13】 無垢むく光炎こうえん 明浄みょうじょうようけん

 この二荘厳しょうごん妙色みょうしきどく成就じょうじゅづく

无垢光炎熾 明浄曜↢世間↡。

此二句名↢荘厳妙色功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 れつどうなり。 どうなるをもつてのゆゑに*こうもつてあらわる。 こうすでにあらわるれば、 是非ぜひもつておこる。 是非ぜひすでにおこれば、 なが*さんしず もつなり

高下 上下の意。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、優劣不同、以↢不同↡故高下以形、高下既形是非以起、是非既起長淪↢没倫三有↡。

能為の願

このゆゑにだいしんおこして平等びょうどうがんおこしたまへり。 「ねがはくはわがこく光炎こうえん熾盛しじょうにしてだい無比むひならん。 人天にんでん金色こんじきよくうばふものあるがごとくならじ」 と

是故興↢大悲心↡起↢平等願↡。願我国土光炎熾盛第一无比、不↠如↣人天金色能有↢奪者↡。

成就の相

いかんがあひうばふ。 明鏡みょうきょうのごときを金辺こんぺんけばすなはちげんぜず。 今日こんにち時中じちゅうこがねぶつ (釈尊)ざいこがねするにすなはちげんぜず。 ぶつ (釈尊)ざいこがね*えん浮那ぶなごんするにすなはちげんぜず。 えん浮那ぶなごん大海だいかいのなかの転輪王てんりんのう道中どうちゅう*金沙こんしゃするにすなはちげんぜず。 転輪王てんりんのう道中どうちゅう金沙こんしゃ*金山こんぜんするにすなはちげんぜず。 金山こんぜんしゅせんこがねするにすなはちげんぜず。 しゅせんこがねを三十三てん*瓔珞ようらくこがねするにすなはちげんぜず。 三十三てん瓔珞ようらくこがね*炎摩天えんまてんこがねするにすなはちげんぜず。 炎摩天えんまてんこがね*そつてんこがねするにすなはちげんぜず。 そつてんこがね*化自けじ在天ざいてんこがねするにすなはちげんぜず。 化自けじ在天ざいてんこがね*他化自たけじ在天ざいてんこがねするにすなはちげんぜず。 他化自たけじ在天ざいてんこがね安楽国あんらくこくちゅうこうみょうするにすなはちげんぜず

閻浮那金 閻浮那は梵語ジャンブー・ナダ (jambū-nada) の音写。 閻浮樹えんぶじゅの間を流れる河の意。 その河の底からとれる美しい砂金を閻浮那金という。
金沙 転輪王てんりんのうが世に出るときは海の水が減じ、 底に金の道ができるとされる。 ここではこの道の金砂のこと。
金山 須弥山の周囲をかこむ七重の山脈。 七金山しちこんぜん。 →しゅせん
炎摩天 夜摩天に同じ。 →夜摩やまてん
化自在天 化楽天に同じ。 →化楽天けらくてん

若為相奪、如↢明鏡↡在↢金辺↡則不↠現、今日時中金比↢仏在時金↡則不↠現、仏在時金比↢閻浮那金↡則不↠現、閻浮那金比↢大海中転輪王道中金沙↡則不↠現、転輪王道中金沙比↢金山↡則不↠現、金山比↢須弥山金↡則不↠現、須弥山金比↢三十三天瓔珞金↡則不↠現、三十三天瓔珞金比↢炎摩天金↡則不↠現、炎摩天金比↢兜卛陀天金↡則不↠現、兜卛陀天金比↢化自在天金↡則不↠現、化自在天金比↢他化自在天金↡則不↠現、他化自在天金比↢安楽国中光明↡則不↠現。

所以ゆえんはいかんとなれば、 かの金光こんこう*ごうよりしょうずることをつがゆゑなり。 清浄しょうじょうにして成就じょうじゅせざるはなきゆゑなり。 安楽あんらくじょうはこれ*無生忍むしょうにんさつ浄業じょうごうしょなり。 阿弥陀あみだ如来にょらい法王ほうおう所領しょりょうなり。 阿弥陀あみだ如来にょらい*増上縁ぞうじょうえんとなしたまふがゆゑなり。 このゆゑに 「無垢むく光炎こうえん 明浄みょうじょうようけん」 といへり。 「ようけん」 とは*しゅけんかがやかすなり

垢業 煩悩ぼんのうの垢のついた行い。
増上縁 →増上縁ぞうじょうえん❷。

所以者何、彼土金光絶↧従↢垢業↡生↥故、清浄无↠不↢成就↡。故安楽浄土是无生忍菩薩浄業所起、阿弥陀如来法王所領。阿弥陀如来為↢増上縁↡故、是故言↢「无垢光炎熾明浄曜世間」↡。「曜世間」者曜↢二種世間↡也。

 句点位置は聖教全書まま。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  触功徳

【14】 宝性ほうしょうどくそう 柔軟にゅうなん左右さうせん 触者そくしゃしょう勝楽しょうらく 過迦かか旃隣せんりん

 この四荘厳しょうごんそくどく成就じょうじゅづく

寳性功徳草 柔左右旋。 触者生↢勝楽↡ 過↢迦旃隣陀↡。

 嘉永年間刊本、 本派本願寺蔵版、 大派依用本では 。 以下同。 ただし ¬論註¼ では略字の 「軟」 も混在。

此四句名↢荘厳触功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 こんぎょく宝重ほうじゅうすといへどもぶくとなすことをず。 明鏡みょうきょう珍翫ちんがんすれども*敷具ふぐによろしきことなし。 これによりてよろこばしむれども、 *便たよりならず。 しんげんの二じょうあに鉾楯むじゅんせざらんや

敷具 しきもの。
便りならず 不便である。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、雖↣寳重↢金玉↡不↠得↠為↢衣服↡、珍翫↢明鏡↡无↠議↠於↢敷具↡。斯縁悦↠於↠目不↠便↠於↠身也、身・眼二情豈弗↢鉾楯↡乎。

寳重△ 返り点は聖教全書まま。 「宝△を重くす」

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「わがこく人天にんでん*じょう*水乳すいにゅうして、 つひに*えつろうらしめん」 と

六情 六根に同じ。 →六根ろっこん
水乳 よく調和し融合することを水と乳がよく融和することに喩えていう。
楚越 ¬荘子そうじ¼ に出る故事。 楚の国と越の国は隣接していたが、 たがいに利害が対立し、 争いがたえなかったという。 ここでは、 六根が同じ体にあっても必ずしも調和がとれていないことに喩える。

是故願言。使↧我国土人天六情和↠於↢水乳↡卒去↦楚越之労↥。

成就の相

ゆゑに*七宝しっぽう柔軟にゅうなんにしてよろこばしめ便たよりなるなり。 「旃隣せんりん」 とは、 天竺てんじく (印度)柔軟にゅうなんそうなり。 これにるればよく*楽受らくじゅしょうず。 ゆゑにもつてたとへとなす

楽受 受は感覚のこと。 身心をこころよくさせる感覚。

所以七寳柔軟悦↠目便↠身。「迦旃隣陀」者、天竺柔軟草名也。触↠之者能生↢楽受↡、故以為↠喩。

註者ちゅうしゃ (曇鸞) のいはく、 このけんせきそうもくはおのおの定体じょうたいあり。 訳者やくしゃ (菩提流支) なにによりてか、 かのたからなづけてくさとなすや。 まさにその*ふう くさかぜかたちなり ねんえい くさめぐかたちなり びょう ほそくさびょうといふ なるをもつてのゆゑに、 くさをもつてこれになづくるのみ。 もし*参訳さんやくせばまさにべつみちあるべし

然 草が風になびくさま。
参訳 翻訳に参加すること。

註者言。此間土・石・草木各有↢定躰↡、訳者何縁目↢彼寳↡為↠草耶。当以↧其草得風父虫反能草旋皃一焭反↥細草曰亡小反故以↠草目↠之耳。余若参訳当↢別有↟途。

 聖教全書まま。 註なし。
 鎌倉時代刊本では 「然」。

しょう勝楽しょうらく」 とは、 旃隣せんりんるれば*染着ぜんじゃくらくしょうず。 かの軟宝なんぽうるればほうらくしょうず。 二あひはるかなり。 しょうにあらずはいかん。 このゆゑに 「宝性ほうしょうどくそう 柔軟にゅうなん左右さうせん 触者そくしゃしょう勝楽しょうらく 過迦かか旃隣せんりん」 といへり

染着 執着のこと。 心が対象に染みついて離れないこと。

「生勝楽」者、触↢迦旃隣陀↡生↢染着楽↡、触↢彼軟寳↡生↢法喜楽↡。二事相玄。非↠勝如何是。故言↢「寳性功徳草柔左右旋触者生勝楽過迦旃隣陀」↡。

如何是 句点位置は聖教全書まま。 「いかんぞ是せん」

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  三種功徳 1. 水功徳

【15】 ほう千万種せんまんじゅ 弥覆池流みふちるせん 風動ふうどうよう 交錯きょうさく光乱転こうらんでん

 この四荘厳しょうごんすいどく成就じょうじゅづく

寳華千万種 弥↢覆池流泉↡、 微風動↢華葉↡ 交錯光亂転。

此四句名↢荘厳水功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 あるいは澐溺うんにゃく かわみずおおきなるなみ、 これを澐溺うんにゃくといふ 洪濤こうとう うみなみがる して*まつひとおどろかす。 あるいは*凝凘ぎょうし こおりなが *きょうとう こおりてあひ して、 *しゅく せま し、 とく つねしっいだく。 さき安悦あんえつこころなし。 うしろに恐値くちおもんぱかりあり

滓沫 滓はにごった泥水、 沫はしぶきやあわのこと。
凝凘 氷塊が流れること。 流氷。
 流氷がはりつめること。 結氷。
蹙架しを懐く 蹙架は迫りきて自由をうばうこと。 を懐くとは、 平常の心を失わせるという意。

仏本何故起↢此願↡。見↢有国土↡、或澐溺江水大波謂之澐溺亡音洪涛海波上大窂反滓沫驚↠人、或凝凘流氷上支反古甲凍相著大甲反子六反壊。失常他則反向无↢安悦之情↡、背有↢恐値之慮↡。

(外字) 嘉永年間刊本・本願寺本では 、 鎌倉時代刊本・大派依用本では
壊 「壊」 は嘉永年間刊本では 「懐」。 返り点は聖教全書まま。 「とくす」

能為の願

さつこれをそなはしてだいしんおこしたまへり。 「ねがはくはわれ成仏じょうぶつせんに、 あらゆるせんしょう いけなり 殿でんとあひかな、 ¬きょう¼ (大経・上) ちゅうづ。 種々しゅじゅほうきてみずかざりとなり、 ふう*やうやくあおぎて*映発ようほつするに*じょあり、 *じんひらたいよろこばしめて、 一としてならずといふことなからん」 と

映発 照らし合うこと。
 一定の順序。
 神識じんしき。 こころ。

菩薩見↠此興↢大悲心↡。願我成仏、所有流・泉・池・沼之小反与↢宮殿↡相称事出経中種種寳花布為↢水餝↡、微風徐扇暎発有↠序開↠神悦↠躰无↢一不可↡。

成就の相

このゆゑに 「ほう千万種せんまんじゅ 弥覆池流みふちるせん 風動ふうどうよう 交錯きょうさく光乱転こうらんでん」 といへり

是故言↢「寳花千万種弥覆池・流・泉微風動花葉交錯光亂転」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 8 三種功徳 2. 地功徳

【16】 殿でん諸楼閣しょろうかく かん十方じっぽう無礙むげ 雑樹ぞうじゅ光色こうしき 宝欄ほうらん遍囲繞へんいにょう

 この四荘厳しょうごんどく成就じょうじゅづく

宮殿諸楼閣 観↢十方↡无。 雑樹異光色 寳蘭遍囲繞。

 他本では 。 以下同。

此四句名↢荘厳地功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 *嶕嶢しょうぎょう たかかたちなり しゅん こうなり れいにしてぼくみねよこたはり、 *岝峉さくがく 岝峉さくがくやまひとしからず けい ふか山谷せんこくまたは山消せんしょうかたちなり りん ふかくしてかぎりなし にしてしょう わるくさかたちなり *ぼう みちくさおおくしてくべからず たにてり。 *茫々ぼうぼうたる滄海そうかい*絶目ぜつもくせんたり。 *々らんらんたる広沢こうたく*無蹤むしょうところたり

嶕嶢峻嶺 山やみねがひときわ高くけわしいさま。 嶕嶢の註 「高き貌なり」 は底本では嶕の字註として付されてある。
岝峉嶙 山に高低があり、谷やがけが深いさま。
 底本には 「茀」 とある。
茫々 広々としたさま。 広大なさま。
絶目の川 一時に視界に入ってこないほどの広い水の流れ。
々 は草が風になびくさま。 荒れはてて淋しいようす。
無蹤 人跡がおよばないこと。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、嶕高皃才消反牛消俊音嶺枯木横↠岑、岝山不斉才白反岝峉五百反深山谷亦山消皃形音深无崖力人反悪草皃消音道多草不可行方交反盈↠壑。茫茫蒼海為↢絶目之川↡、広沢為↢无蹤之所↡。

 聖教全書まま。 註なし。

能為の願

さつこれをそなはしてだいがんおこしたまへり。 「ねがはくはわがこくたいらかにしてたなごころのごとく、 殿でん楼閣ろうかくかがみのごとくして、 十方じっぽうおさめんにあきらかにしてぞくするところなく、 またぞくせざるにあらざらん。 宝樹ほうじゅ宝欄ほうらんたがひに映飾ようじきとならん」 と

菩薩見↠此興↢大悲願↡。願我国土地平如↠掌、宮殿・楼閣鏡納↢十方↡、的无↠所↠属亦非↠不↠属。寳樹寳蘭互為↢暎餝↡。

成就の相

このゆゑに 「殿でん諸楼閣しょろうかく かん十方じっぽう無礙むげ 雑樹ぞうじゅ光色こうしき 宝欄ほうらん遍囲繞へんいにょう」 といへり

是故言↢「宮殿諸楼閣観十方无雑樹異光色寳蘭遍囲繞」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 8 三種功徳 3. 虚空功徳

【17】 りょうほう交絡きょうらく 網遍もうへんくう 種種しゅじゅりょう発響ほっこう せんみょう法音ほうおん

 この四荘厳しょうごんくうどく成就じょうじゅづく

无量寳交絡 羅網遍↢虚空↡。 種種鈴発↠響 宣↢吐妙法音↡。

此四句名↢荘厳虚空功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 えんうんじん*たい蔽障へいしょうし、 *震烈しんれつしん あめこえなり かく 大雨おおあめなり うえよりしてつ。 *不祥ふしょうさい てんなり げつ まがれるにじ青赤あおあかあるいは白色しろいろおんなり つねにそらよりきたりて、 りょ百端ひゃくたんにしてこれがためにいよだ

太虚 大空。
震烈 天地をふるわすような大雨。
不祥の烖霓 不吉な天火や虹。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有国土↡、煙・雲・塵・霧蔽↢鄣太虚↡、震↢烈雨声士林反↡大雨下郭反従↠上而堕。不祥烖天火葬才反屈虹青赤或白色陰気五結反毎自↠空来憂慮百端、為↠之毛竪。

能為の願

さつこれをそなはしてだいしんおこしたまへり。 「ねがはくはわがこくには*宝網ほうもう*交絡きょうらくして、 *くうへんし、 鈴鐸りょうたく 大鈴おおすずなり *宮商きゅうしょうりて道法どうほうべん。 これをいとふことなく、 どうおもひてとくあらわさん」 と

宝網 珠をつらねた飾りあみ。
交絡 張りめぐらすこと。
 もうのこと。 珠玉をつらねた飾りあみ。
宮商 きゅうしょうかくの五音 (五種の音階) を略していったもの。

菩薩見↠此興↢大悲心↡。願我国土寳網交絡羅遍↢虚空↡、鈴・鐸大鈴大各反宮・商鳴宣↢道法↡。視↠之无↠厭懐↠道見↠徳。

成就の相

このゆゑに 「りょうほう交絡きょうらく 網遍もうへんくう 種種しゅじゅりょう発響ほっこう せんみょう法音ほうおん」 といへり

是故言↢「无量寳交絡羅網遍虚空種種鈴発響宣吐妙法音」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間  雨功徳

【18】 雨華衣うけえ荘厳しょうごん りょうこうくん

 この二荘厳しょうごんどく成就じょうじゅづく

雨↢花衣荘厳↡ 无量香普勲。

 諸本では

此二句名↢荘厳雨功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 服飾ぶくじきをもつてき、 *所尊しょそん延請えんしょうせんとほっす。 あるいはこう名宝みょうほうをもつて、 もちゐて*恭敬くぎょうひょうせんとほっす。 しかも*ごうまずしくかんうすきものはこのはたさず

所尊を延請せんと欲す 人々に尊ばれる仏を招こうと請い願うこと。
業貧しく感薄きもの 善業が少なく、 よい結果を招きがたい者。

仏本何故興↢此荘厳↡。見↢有国土↡、欲↧以↢服餝↡布↠地延↦請所尊↥、或欲↧以↢香花名寳↡用表↦恭敬↥。而業貧感薄是事不↠果。

能為の願

このゆゑにだいがんおこしたまへり。 「ねがはくはわがこくにはつねにこのものあめふらしてしゅじょうこころてん」 と

是故興↢大悲願↡。願我国土常雨↢此物↡満↢衆生意↡。

成就の相

なんがゆゑぞあめをもつてことばをなすとならば、 おそらくは*取者しゅしゃのいはん。 「もしつねにとをあめふらさば、 またくうふさぐべし。 なにによりてかさまたげざらん」 と。 このゆゑにあめをもつてたとへとなす。 あめときかなひぬれば、 すなはち*洪滔こうとう みずちておおうれひなし。 安楽あんらくほう、 あに*累情るいじょうものあらんや

取者 文字にとらわれる者。
洪滔 大水。 洪水。
累情の物 こころをわずらわせるもの。

何故以↠雨為↠言、恐取者云、若常雨↢花衣↡亦応↣填↢塞虚空↡、何縁不↠妨、是故以↠雨為↠喩。雨適↠時則无↢洪滔水漫大他高反之患↡。安楽報豈有↢累情之物↡乎。

*きょうにのたまはく、 「にち*ほうあめふほうあめふる。 宝質ほうしつ柔軟にゅうなんにしてそのうえむにすなはちくだること四すんあしぐるときしたがひて還復げんぶくすることもとのごとし。 もちゐることおわりぬれば、 ほうることみずあなるがごとし」 と。 このゆゑに 「雨華衣うけえ荘厳しょうごん りょうこうくん」 といへり

 ¬大経¼ ¬小経¼ の主意の文。

¬経¼言。日夜六時雨↢寳衣↡雨↢寳華↡、寳質柔軟履↢践其上↡則下四寸、随↢挙↠足時↡還復如↠故。用訖入↢寳地↡如↢水入↟坎。是故言↢「雨花衣荘厳无量香普薫」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 10 光明功徳

【19】 ぶっ明浄みょうじょうにち じょ世痴せち闇冥あんみょう

 この二荘厳しょうごんこうみょうどく成就じょうじゅづく

恵明浄日 除↢世痴闇冥↡。

此二句名↢荘厳光明功徳成就↡。

 本願寺本では 。 以下同。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 また*項背こうはい*日光にっこうありといへども愚痴ぐちのためにくらまさる

項背 うなじとせなか。
日光 仏・菩薩の頭頂から放たれるこうみょう

仏本何故興↢此荘厳↡。見↢有国土↡、雖↢復項背日光↡而為↢愚痴↡所↠闇、

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「わがこくのあらゆるこうみょう、 よくあんのぞきてぶつ智慧ちえり、 *無記むきをなさざらしめん」 と

無記 意味のないこと。 役に立たないこと。

是故願言。使↧我国土所有光明能除↢痴闇↡入↦仏智慧↥、不↠為↢无記之事↡。

使…入仏智慧 返り点は聖教全書まま。 「无記の事をなさじ」 は使役からはずれる。

成就の相

またいはく、 安楽あんらくこくこうみょう如来にょらい智慧ちえほうよりおこるがゆゑに、 よく闇冥あんみょうのぞ

亦云。安楽国土光明従↢如来智慧報↡起故能除↢世闇冥↡。

¬きょう¼ (維摩経) にのたまはく、 「あるいはぶつあり。 こうみょうをもつて*ぶつをなす」 と。 すなはちこれはこれなり。 このゆゑに 「ぶっ明浄みょうじょうにち じょ世痴せち闇冥あんみょう」 といへり

¬経¼言。「或有↢仏土↡以↢光明↡為↢仏事↡」。即是此也。是故言↢「仏恵明浄日除世痴闇冥」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 11 妙声功徳

【20】 梵声ぼんしょう深遠じんのん 微妙みみょうもん十方じっぽう

 この二荘厳しょうごん妙声みょうしょうどく成就じょうじゅづく

梵声悟深遠 微妙聞↢十方↡。

此二句名↢荘厳妙声功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 善法ぜんぽうありといへども名声みょうしょうとおからず。 名声みょうしょうありてとおしといへどもまた*微妙みみょうならず。 名声みょうしょうありて妙遠みょうおんなれども、 また*ものさとらしむることあたはず

微妙 はかりしれないほど奥深くすばらしこと。

仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、雖↠有↢善法↡而名声不↠遠、有↢名声↡雖↠遠復不↢微妙↡、有↢名声↡妙遠復不↠能↠悟↠物、

能為の願

このゆゑにこの荘厳しょうごんおこしたまへり。 天竺国てんじくこく (印度) には浄行じょうぎょうしょうして 「梵行ぼんぎょう」 となす。 *妙辞みょうじしょうして 「梵言ぼんごん」 となす。 かのくにには*梵天ぼんてん貴重きじゅうすれば、 おおく 「ぼん」 をもつてさんをなす。 またいはく、 *中国ちゅうごくほう梵天ぼんてんつうずるがゆゑなり。 「しょう」 とはみょうなり。 みょうはいはく、 安楽あんらくなり

妙辞 尊い言葉。
中国 ここではインドを世界の中心地とみて中国と呼んでいる。

是故起↢此荘厳↡。天竺国称↢浄行↡為↢梵行↡、称↢妙辞↡為↢梵言↡。彼国貴↢重梵天↡、多以↠梵為↠讃。亦言、中国法与↢梵天↡通故也。「声」者名也。名謂安楽土名。

成就の相

*きょうにのたまはく、 「もしひとただ安楽あんらくじょうきておうじょう欲願よくがんするに、 またがんのごとくなることを」 と。 これはものさとらしむるしょうなり

 引用は ¬大経¼ の第十八願成就文および ¬平等覚びょうどうがくきょう¼ ¬大阿弥陀経¼ 等の取意の文。

¬経¼言。「若人但聞↢安楽浄土之名↡欲↢願往生↡亦得↠如↠願。」此名悟↠物之証也。

¬釈論しゃくろん¼ (大智度論・意) にいはく、 「かくのごときじょう*三界さんがい所摂しょしょうにあらず。 なにをもつてこれをいふとならば、 よくなきがゆゑに欲界よくかいにあらず。 *地居じこなるがゆゑに色界しきかいにあらず。 しきあるがゆゑに色界しきかいにあらざればなり。 けだしさつ*別業べつごういたすところのみ」 と

地居 地の上にあること。 色界しきかいは空中にあるが、 極楽は七宝の大地の上にある。
別業 特別な行業ぎょうごう。 とくにすぐれたいんの行い。

¬釈論¼言。「如↠斯浄土非↢三界所摂↡。何以言↠之、无↠欲故非↢欲界↡、地居故非↢色界↡、有↠色故非↢无色界↡。盖菩薩別業所↠致耳。」

でてしかうしてなるを でて」 とは、 いはく、 さんづるなり。 「しかうしてなる」 とはいはく、 じょうなり といふ。 よくかいせしむるをみょう みょうこうなり。 をもつて、 よくものさとらしむるゆゑにみょうしょう といふ。 このゆゑに 「梵声ぼんしょう深遠じんのん 微妙みみょうもん十方じっぽう」 といへり

出↠有而有曰↠微。出有者謂出三有而有者謂浄土有也名能開悟曰↠妙。妙好也以名能悟物故称妙是故言↢「梵声悟深遠微妙聞十方」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 12 主功徳

【21】 しょうがく阿弥陀あみだ 法王ほうおう善住持ぜんじゅうじ

 この二荘厳しょうごんしゅどく成就じょうじゅづく

正覚阿弥陀 法王善住持。

此二句名↢荘厳主功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 *せつきみとなれば、 すなはち*そつあひ*だんす。 *宝輪ほうりん殿でんとど うまとど まればすなはち*いきうれひなし。 これをかぜなびくにたとふ。 あにもとなからんや

率土 王の率いる国土。 ここではその民のこと。
噉す くう、 くらうの意。
宝輪殿に… 宝輪は転輪てんりんじょうおうの乗る車。 転輪聖王が車を宮殿に駐め、そこにいて国を治めると、 世は平和におさまるということ。
四域 ここは四方の意。

仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、羅刹為↠君、則卛土相噉。寳輪駐↠立馬長句反殿、則四域无↠虞。 譬↢之風靡↡、豈无↠本耶。

能為の願

このゆゑにがんおこしたまへり。 「ねがはくはわがこくにはつねに法王ほうおうましまして、 法王ほうおう善力ぜんりき住持じゅうじせられん」 と

是故興↠願。願我国土常有↢法王↡、法王善力之所↢住持↡。

成就の相

住持じゅうじ」 とは、 *黄鵠こうこくあんたもてば、 千齢せんれいかへりておこり、 ぎょねんすれば、 *がく なつみずありてふゆみずなきをがくといふせざるがごとし。 安楽あんらくこくは〔阿弥陀あみだぶつの〕*しょうがくのためによくそのくにせらる。 あにしょうがくにあらざることあらんや。 このゆゑに 「しょうがく阿弥陀あみだ 法王ほうおう善住持ぜんじゅうじ」 といへり

黄鵠… ¬れつでん¼ に出る故事。 子安にたすけられた鶴 (黄鵠) が、 子安の死後、 三年間その墓の上でかれを思って鳴きつづけ、 鶴は死んだが子安は蘇って千年の寿命を保ったという。 ここでは、 鶴が命の恩人である子安を思う心の強さを住持に喩えたもの。
 冬になると枯れる泉。

「住持」者如↧黄鵠持↢子安↡千齢更起、魚母念↢持子↡逕↠夏有水冬无水曰火岳反不↞壊。安楽国為↢正覚↡善持↢其国↡、豈有↠非↢正覚事↡耶。是故言↢「正覚阿弥陀法王善住持」↡。

夏有… 聖教全書ではこの割註は 「不壊」 の後に入っており、 かつ 「无」 と 「」 の位置が入れ替わっている。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 13 眷属功徳

【22】 如来にょらい浄華衆じょうけしゅ しょうがく化生けしょう

 この二荘厳しょうごん眷属けんぞくどく成就じょうじゅづく

如来浄華衆 正覚花化生。

此二句名↢荘厳眷属功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 あるいは*胞血ほうけつをもつてしんとなす。 あるいは糞尿ふんにょうをもつてしょうもととなす。 あるいは*槐棘かいきょくたかほとりより猜狂さいきょういだす。 あるいは*しゅふくより*卓犖たくらくさいいだす。 *しょうこれによりていだき、 *恥辱ちじょくこれによりてこおりいだ

胞血 胞は胎児をつつむ皮膜。 血は父母の血のこと。
槐棘の… 槐棘はえんじゅといばらの木で、 中国の官位である三公と九卿きゅうけい (三槐九棘) のこと。 朝廷に仕える身分を指す。 →補註8
竪子 召使いのこと。
卓犖 ものごとに明らかですぐれていること。
譏誚これによりて… 人のそしりをうけて、 全身があつくなるような恥ずかしい思いをすること。
恥辱これによりて… はずかしめられて、 氷を抱くように冷汗をかくこと。

仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或以↢胞血↡為↢身器↡、或以↢糞屎↡為↢生元↡、或槐棘高圻出↢猜狂之子↡、或竪子婢腹出↢卓犖零角之才↡。譏誚才召由↠之懐↠火、恥辱縁以抱↠氷。

 聖教全書まま。 本願寺本・大派依用本では 尿

能為の願

ゆゑにがんじてのたまはく、 「わがこくにはことごとく如来にょらい浄華じょうけのなかよりしょうじて、 眷属けんぞく平等びょうどうにして*だつみちなからしめん」 と

与奪 ほめたりそしったりすること。

所以願言。使↧我国土悉於↢如来浄花中↡生、眷属平等与奪无↞路。

成就の相

このゆゑに 「如来にょらい浄華衆じょうけしゅ しょうがく化生けしょう」 といへり

是故言↢「如来浄花衆正覚花化生」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 14 受用功徳

【23】 愛楽あいぎょう仏法ぶっぽう 禅三昧ぜんざんまい為食

 この二荘厳しょうごん受用じゅゆうどく成就じょうじゅづく

愛↢楽仏法味↡ 禅三昧為↠食。

此二句名↢荘厳受用功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 あるいはさぐりてらんやぶり、 *もう じきちたるかたちなり にょう ほうなり、 おおそなえとなす。 あるいは*すなけてこしぶくろすをあひなぐさむるほうとなす。 ああ、 しょじつ痛心つうしんすべし

饛饒 山盛りのごちそう。
沙を懸けて帒を指すを… 砂を入れた袋を壁にかけ、 その中に食ありと教えて、 空腹をしのぐ一時の慰めとするという喩え。

仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或探↠巣破↠卵為↢饛盛食満皃亡公反飽也多人消反之饍↡。或懸↠沙指↠帒為↢相慰之方↡。嗚呼諸子実可↢痛心↡。

能為の願

このゆゑにだいがんおこしたまへり。 「ねがはくはわがこく仏法ぶっぽうをもつて、 禅定ぜんじょうをもつて、 三昧さんまいをもつてじきとなして、 ながじきわずらひをたん」 と

是故興↢大悲願↡。願我国土、以↢仏法↡、以↢禅定↡、以↢三昧↡為↠食、永絶↢他食之労↡。

成就の相

愛楽あいぎょう仏法ぶっぽう」 とは、 日月にちがつ灯明とうみょうぶつ、 ¬法華ほけきょう¼ をきしに六十小劫しょうこうなり。 時会じえ聴者ちょうしゃまた一処いっしょして六十小劫しょうこうなるもじきのあひだのごとしとおもふ。 一にんとしてもしはしん、 もしはしんをして*けんしょうずることあることなきがごとし

懈惓 疲れ、 うとましく思うこと。

「愛楽仏法味」者、如日月灯明仏説↢¬法華経¼↡六十小劫、時会聴者亦坐↢一処↡六十小劫、謂↠如↢食頃↡。无↠有↧一人若身若心而生↦懈惓↥。

 宗祖加点本・鎌倉時代刊本では 。 聖教全書では他書によって訂正されている。 以下同。

禅定ぜんじょうをもつてじきとなす」 とは、 いはく、 もろもろのだいさつはつねに三昧さんまいにありてじきなし。 「三昧さんまい」 とは、 かのもろもろの人天にんでん、 もしじきもちゐるとき*百味ひゃくみこうれつしてまえにあり。 いろはなかおりをぎ、 *適悦ちゃくえつけてねん飽足ほうそくす。 訖已おわりぬればしてり、 もしもちゐるにはまたげんず。 その、 ¬きょう¼ (大経・上) にあり。 このゆゑに 「愛楽あいぎょう仏法ぶっぽう 禅三昧ぜんざんまい」 といへり

百味の嘉餚 種々さまざまな美食。
適悦 よろこびのこころ。

「以↢禅定↡為↠食」者、謂諸大菩薩、常在↢三昧↡无↢他食↡也。「三昧」者彼諸人天若須↠食時、百味嘉餚羅列在↠前。眼見↠色鼻聞↠香身受↢適悦↡自然飽足。訖已化去、若須復現、其事在↠¬経¼。是故言↢愛楽仏法味禅三昧為食」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 15 無諸難功徳

【24】 よう身心悩しんしんのう 受楽じゅらくじょうけん

 この二荘厳しょうごん諸難しょなんどく成就じょうじゅづく

永離↢身心悩↡ 受↠楽常无↠間。

此二句名↢荘厳无諸難功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 あるいはあしたには*袞寵こんちょうよろこびて、 ゆうべには*えつおののく。 あるいはいとけなくしては*蓬藜ほうれいてられ、 ちょうじては*方丈ほうじょうつらぬ。 あるいは*めいしてづることをいひ、 てつしてかえることをもよおす。 かくのごとき種々しゅじゅ*だつあり

袞寵 袞は天子の礼服、 転じて天子のこと。 天子の恩寵。
斧鉞 おのとまさかり。 刑罰の道具をあらわす。 転じて重刑のこと。
蓬藜 よもぎとあかざ。 あれはてた草むら、 または貧しい家の意。
方丈を列ぬ 一丈四方にごちそうを並べるほど豪華な食事ができる身分になる。
鳴笳して… 笳はあしぶえのこと。 麻絰は喪服のこと。 出発するときは笳を吹いてにぎやかであったが、 喪服を着てかえることになってしまったという意。
違奪 心にたがう、 ちぐはぐな行き違い。

仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或朝預↢袞寵↡夕惶↢斧鉞↡。或幼捨↢蓬藜↡長列↢方丈↡。或鳴↠笳噵↢出↠麻歴経催還↡。有↢如↠是等種種違奪↡。

鳴笳噵出麻歴経催還 返り点、 文字とも聖教全書まま。 「笳を鳴らして麻を出で歴経し催還すとふ」。 「噵」 は諸本では 「道」、 「麻」 は鎌倉時代刊本で脱落、 「歴」 は本願寺本・大派依用本で脱落、 「経」 は本願寺本では 「絰」。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「わがこく安楽あんらく相続そうぞくして畢竟ひっきょうじてひまなからしめん」 と

是故願言。使↢我国土安楽相続畢竟无↟間。身悩者飢渇・寒熱・殺害等也。

成就の相

身悩しんのう」 とはかつ寒熱かんねつ殺害等せつがいとうなり。 「心悩しんのう」 とは是非ぜひ得失とくしつ*三毒さんどくとうなり。 このゆゑに 「よう身心悩しんしんのう 受楽じゅらくじょうけん」 といへり

心悩者是非・得失・三毒等也。是故言↢「永離身心悩受楽常无間」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 16 大義門功徳

【25】 大乗だいじょう善根界ぜんごんかい とう無譏むきげんみょう *女人にょにんぎゅう根欠こんけつ 二乗種にじょうしゅ不生ふしょう

女人及根欠二乗種不生 →補註10

 この四荘厳しょうごんだいもんどく成就じょうじゅづく。 「もん」 とはだいつうずるもんなり。 「だい」 とは*大乗だいじょう*所以ゆえんなり。 ひとしろいたりてもんれば、 すなはちるがごとし。 もしひと安楽あんらくしょうずることをれば、 これすなはち大乗だいじょう成就じょうじゅするもんなり

所以 いわれ。 本旨。

大乗善根界 等无↢譏嫌名↡、 女人及根欠 二乗種不↠生。

此四句名↢荘厳大義門功徳成就↡。門者通↢大義之門↡也。大義者大乗所以也。如↢人造↠城得↠門則入↡。若人得↠生↢安楽↡者是則成↢就大乗之門↡也。

通大義之門・成就大乗之門 ともに返り点まま。 「大義の門に通ず」、 「大乗の門を成就す」

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 ぶつ如来にょらい賢聖げんじょうとうしゅうましますといへども、 くにじょくせるによるがゆゑに、 *一をわかちて三とく。 あるいは*まゆひらくをもつてあざけりをいたし、 あるいは*指語しごによりてそしりをまね

一を分ちて三と説く 一乗の法を分けて三乗の法を説くということ。 →一乗いちじょうさんじょう
眉を… 女性が眉をひらいて媚態びたいを呈し、あざけりを受けるという意。
指語に… 指語は指の動作で語ること。 →補註10

仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、雖↠有↢仏如来賢聖等衆↡、由↢国濁↡故分↠一説↠三、或以↧拓↢聴各眉↡致↞誚、或縁↢指語↡招↠譏。

以拓眉致誚 返り点まま。 「眉をげてあざけりを致すをもってし」

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「わがこくをしてみなこれ大乗だいじょう平等びょうどうならしめん。 *根敗こんぱいしゅ畢竟ひっきょうじてしょうぜじ、 女人にょにん*残欠ざんけつ名字みょうじまたたん」 と

根敗の種子 芽の出ない、 腐敗した種子。 ここでは仏果を証すべき因 (種子) のないしょうもん縁覚えんがくの二乗を喩えていう。 →二乗にじょう
残欠 根欠に同じ。

是故願言。使↢我国土皆是大乗一味平等一味↡。根敗種子畢竟不↠生、女人残欠名字亦断。

成就の相

このゆゑに 「大乗だいじょう善根界ぜんごんかい とう無譏むきげんみょう 女人にょにんぎゅう根欠こんけつ 二乗種にじょうしゅ不生ふしょう」 といへり

是故言↢「大乗善根界等无譏嫌名女人及根欠二乗種不生」↡。

 ひていはく、 *王舎城おうしゃじょう所説しょせつの ¬りょう寿じゅきょう¼ (上・意)あんずるに、 法蔵ほうぞうさつの四十八がんのなかにのたまはく、 「たとひわれぶつんに、 くにのうちのしょうもん、 よく計量けりょうしてそのかずることあらば、 しょうがくらじ」 (第十四願) と。 これしょうもんある一のしょうなり

問曰。案↢王舎城所説¬无量寿経¼↡、法蔵菩薩四十八願中言。「設我得↠仏国中声聞有↢能計量↡知↢其数↡者、不↠取↢正覚↡。」是有↢声聞↡一証也。

また ¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃ¼ (*易行品) のなかに龍樹りゅうじゅさつ阿弥陀あみださんつくりていはく、 「三界さんがいごく超出ちょうしゅつして、 *れんようのごとし。 しょうもんしゅりょうなり。 このゆゑに*稽首けいしゅらいしたてまつる」 と。 これしょうもんある二のしょうなり

蓮華葉 蓮華のはなびら。

又¬十住婆沙¼中龍樹菩薩造↢阿弥陀讃↡云。「超↢出三界獄↡目如↢蓮花葉↡。声聞衆无量、是故稽首。」是有↢声聞↡二証也。

また ¬摩訶まか衍論えんろん¼ (*大智度論・意) のなかにいはく、 「ぶつ種々しゅじゅどうなり。 あるいはぶつあり、 もつぱらにこれしょうもんそうなり。 あるいはぶつあり、 もつぱらにこれさつそうなり。 あるいはぶつあり、 さつしょうもんしてそうとなす。 阿弥陀あみだ安楽あんらくこくとうのごときはこれなり」 と。 これしょうもんある三のしょうなり

又¬摩訶衍論¼中言。「仏土種種不同。或有↢仏土↡、純是声聞僧。或有↢仏土↡、純是菩薩僧。或有↢仏土↡、菩薩・声聞会為↠僧、如↢阿弥陀安楽国等↡是也。」是有↢声聞↡三証也。

諸経しょきょうのなかに安楽あんらくこくくところありて、 おおしょうもんありとのたまひてしょうもんなしとのたまはず。 しょうもんはすなはちこれ*二乗にじょうの一なり。 ¬ろん¼ (浄土論) に 「ない至無しむ二乗にじょうみょう」 といへり。 これいかんが*する

会する 会通すること。 一見矛盾したように見える記述を道理に照らしあわせて、 趣意の一貫したものとして説明すること。

諸経中有↠説↢安楽国↡処、多言↠有↢声聞↡不↠言↠无↢声聞↡。声聞即是二乗之一。¬論¼言↣「乃至无↢二乗名↡。」此云何会。

こたへていはく、 をもつてこれをすいするに、 安楽あんらくじょうには二乗にじょうあるべからず。 なにをもつてこれをいふとならば、 それやまいあるにはすなはちくすりあり。 *しゅつねなり

理数 自然の道理。

答曰。以↠理推↠之安楽浄土不↠応↠有↢二乗↡。何以言↠之、夫有↠病則有↠薬、理数之常也。

¬法華ほけきょう¼ (意) にのたまはく、 「しゃ迦牟尼かむに如来にょらい*五濁ごじょくでたまへるをもつてのゆゑに、 一をわかちて三となす」 と。 じょうすでに五濁ごじょくにあらず。 三乗さんじょうなきことあきらかなり

¬法花経¼言。「釈迦牟尼如来以↠出↢五濁世↡故、分↠一為↠三。」浄土既非↢五濁↡无↢三乗↡明矣。

¬法華ほけきょう¼ (意) にのたまはく、 「もろもろのしょうもん、 このひといづこにおいてか*だつん。 ただもうはなるるをづけてだつとなす。 この人実にいまだ一切だつず。 いまだ*無上道むじょうどうざるをもつてのゆゑなり」 と。 あきらかにこのすいするに、 *阿羅あらかんすでにいまだ一切いっさいだつず。 かならずしょうずることあるべし。 このひとかえりて三界さんがいしょうぜず。 三界さんがいのほかに、 じょうのぞきてまた*生処しょうしょなし。 ここをもつてただじょうしょうずべし

生処 生まれるべきところ。

¬法花経¼噵。「諸声聞是人於↠何而得↢解脱↡。但離↢虚妄↡名為↢解脱↡。是人実未↠得↢一切解脱↡。以↠未↠得↢无上道↡故。」竅推↢此理↡、阿羅漢既未↠得↢一切解脱↡。必応↠有↠生。此人更不↠生↢三界↡。三界外除↢浄土↡更无↢生処↡。是以唯応↧於↢浄土↡生↥。

しょうもん」 といふがごときは、 これほうしょうもん来生らいしょうせるを、 もとによるがゆゑにしょうしてしょうもんとなす。 *天帝釈てんたいしゃく人中にんちゅううまるるとき*きょう尸迦しかせいとせり。 のち天主てんしゅとなるといへども、 ぶつ (釈尊)ひとをしてそのらいらしめんとほっして、 帝釈たいしゃくかたらひたまふとき、 なほきょう尸迦しかしょうするがごとし。 それこのたぐいなり

天帝釈 帝釈天のこと。 →帝釈たいしゃく
憍尸迦 梵語カウシカ (kauśika) の音写。 帝釈天のもとの姓。

如言↢声聞↡者是他方声聞来生、仍↢本名↡故称為↢声聞↡。如↪天帝釈生↢人中↡時姓↢驕尸迦↡、後雖↠為↢天主↡、仏欲↠使↧人知↦其由来↥、与↢帝釈↡語時、猶称驕尸迦↨。其此類也。

またこの ¬ろん¼ (浄土論) にはただ 「二乗種にじょうしゅ不生ふしょう」 といへり。 いはく安楽あんらくこく二乗にじょうしゅしょうぜずとなり。 またなんぞ二乗にじょう来生らいしょうさまたげんや

又此¬論¼但言↢「二乗種不↟生」。謂安楽国不↠生↢二乗種子↡。亦何妨↢二乗来生↡耶。

たとへば*橘栽きっさい*江北こうほくしょうぜざれども、 *らく*菓肆かしにまたきつありとるがごとし。 またおう*壟西ろうせいわたらざれども、 *ちょう*こうにまたおうありといふ。 この二のもの、 ただそのたねわたらずといふ

橘栽 たちばな、 またはみかんの類 (柑橘類) の総称。
江北 江蘇こうそ省北部の地。 広義で長江 (揚子江) より北の地域。
河洛 黄河と洛水にはさまれた流域。 具体的には洛陽らくようの都。
菓肆 肆は店の意。 くだものを売る店のこと。
壟西 隴山ろうざんの西、隴西郡の地。 現在の甘粛かんしゅく省隴西。
趙魏 戦国七雄の趙国と魏国。 現在の河北かほく省南部、 さん西せい省の南部と北部、 河南かなん省の北部一帯をいう。
架桁 鳥かごのとまり木。

譬如↧橘栽不↠生↢江北↡、河洛菓肆亦見↞有↠橘。又言↧鸚鵡不↠渡↢壟西↡、趙魏架桁亦有↦鸚鵡↥。此二物但言↢其種不↟渡↠彼、

渡彼 返り点、 読点は聖教全書まま。 「かしこに渡 (さず)」。

かしこにしょうもんのあることまたかくのごとし。 かくのごときをなさば、 経論きょうろんすなはちしぬ

有↢声聞↡亦如↠是。作↢如↠是解↡、経論則会。

 ひていはく、 はもつてまねく。 あればすなはちあり。 安楽あんらくこくにはすでに*二乗にじょう女人にょにん根欠こんけつなし。 またなんぞまたこの三のなしといふべけんや

二乗女人根欠の事なし →補註10

問曰。名以召↠事、有↠事乃有↠名。安楽国既无↢二乗・女人・根欠之事↡。亦何須↣復言↠无↢此三名↡耶。

こたへていはく、 軟心なんしんさつのはなはだしくは勇猛ゆうみょうならざるを、 そしりてしょうもんといふがごとし。 ひと*諂曲てんごくなると、 あるいはまた*儜弱にょうにゃくなるを、 そしりて女人にょにんといふがごとし。 またまなこあきらかなりといへどもらざるを、 そしりて盲人もうにんといふがごとし。 またみみくといへどもきてさとらざるを、 そしりて聾人ろうにんといふがごとし。 またしたものいふといへども*訥口とつこう蹇吃けんきつなるを、 そしりてにんといふがごとし。 かくのごときありて、 こんそくせりといへども*げんあり。 このゆゑにすべからく 「ないなし」 といふべし。 じょうにはかくのごとき*だつなきことあきらかなり

諂曲 へつらうこと。
儜弱 弱々しいこと。
訥口蹇吃 口ごもってなめらかでないこと。
譏嫌の名 不快なそしりの名。
与奪の名… 与はほめること、 奪はそしり、 しりぞけること。 ここでは浄土にはそしりの名さえないという意。

答曰。如↧軟心菩薩不↢甚勇猛↡譏言↦声聞↥。如↧人諂曲、或復儜弱譏言↦女人↥。又如↧眼雖↠明而不↠識↠事譏言↦盲人↥。又如↧耳雖↠聴而聴↠義不↠解譏言↦聾人↥。又如↧舌雖↠語而訥口蹇乏譏言↦人↥。有↢如↠是等根↡雖↢具足↡而有↢譏嫌之名↡。是故須↠言↢乃至无↟名明。浄土无↢如↠是等与奪之名↡。

 他本では 「吃」。
有△根 返り点は聖教全書まま。 「△を根有りて(具足せりと雖も…)」。
 句点位置は聖教全書まま。

 ひていはく、 法蔵ほうぞうさつ本願ほんがん (第十四願)、 および龍樹りゅうじゅさつ所讃しょさん (易行品)たずぬるに、 みなかのくにしょうもんしゅなるをもつて*となすにたり。 これなんのかある

 すぐれていること。

問曰。尋↢法蔵菩薩本願及龍樹菩薩所讃↡、皆似↧以↢彼国声聞衆多↡為↟奇。此有↢何義↡。

こたへていはく、 しょうもん*実際じっさいをもつてしょうとなす。 はかるにさらによく仏道ぶつどうこんしょうずべからず。 しかるにぶつ本願ほんがん不可思議ふかしぎ神力じんりきをもつて、 せっしてかしこにしょうぜしめ、 かならずまさにまた神力じんりきをもつてその*無上むじょう道心どうしんしょうずべし。 たとへば*鴆鳥ちんちょうみずれば*魚蚌ぎょぼうことごとくし、 *犀牛さいぎゅうこれにるればせるものみなよみがえるがごとし。 かくのごとくしょうずべからずしてしょうず。 ゆゑにとすべし

実際 真実の際限の意ではんの異名。 ここでは、 しょうもんじょうの究極目的であるところの身心ともに滅する無余涅むよねはんのこと。
鴆鳥 中国に伝えられる毒鳥の名。 毒蛇を食べるといい、 その羽根を酒に浸すと毒酒になるという。
魚蚌 魚介類。 蚌は、 どぶ貝、 またははまぐり。
犀牛 さい。

答曰。声聞以↢実際↡為↠証。計不↠応↣更能生↢仏道根芽↡。而仏以↢本願不可思議神力↡摂令↠生↠彼、必当↧復以↢神力↡生↦其无上道心↥。譬如↧鴆鳥入↠水魚蜯咸死、犀牛触↠之死者皆活↥。如↠此不↠応↠生而生、所以可↠奇。

 宗祖加点本・鎌倉時代刊本・嘉永年間刊本では
 聖教全書まま。 註なし。

しかるに*五不思議ごふしぎのなかに、 仏法ぶっぽうもつとも不可思議ふかしぎなり。 ぶつよくしょうもんをしてまた無上むじょう道心どうしんしょうぜしむ。 まことに不可思議ふかしぎいたりなり

然五不思議中仏法不可思議。仏能使↧声聞復生↦无上道心↥、真不可思議之至也。

◎総説分 ○観察門 Ⅰ 器世間 17 一切所求満足功徳

【26】 しゅじょうしょ願楽がんぎょう 一切いっさい能満足のうまんぞく

 この二荘厳しょうごん一切いっさいしょ満足まんぞくどく成就じょうじゅづく

衆生所↢願楽↡ 一切能満足。

此二句名↢荘厳一切所求満足功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 あるこくそなはすに、 あるいはたかくらいおもくして、 *潜処せんしょするによしなし。 あるいはひとぼんしょういやしくして、 でんとねがふにみちなし。 あるいは*修短しゅたんごうつながれて、 せいすることおのれにあらず。*阿私陀あしだ仙人せんにんのごときたぐいなり。 かくのごときの、 *業風ごうふうのためにかれてざいざることあり

潜処 かくれ住むこと。
修短業に繋がれて 寿命の長短がそれぞれの業報として決定しているという意。
業風 業力ごうりきを風に喩えたもの。 善悪業が苦楽の果報をもたらす様を、 風が塵を吹き飛ばすのに喩えていう。

仏本何故興↢此願↡。見↢有国土↡、或名高位重潜処无↠由、或人凡性鄙悕↠出靡↠路、或修短繋業制不↠在↠己、如↢阿私陀仙人↡類也。有↧如↠是等為↢業風↡所↠吹不↠得↦自在↥。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「わがこくをしておのおのしょかなひて、 情願じょうがん満足まんぞくせしめん」 と

是故願言。使↧我国土各称↢所求↡満↦足情願↥。

成就の相

このゆゑに 「しゅじょうしょ願楽がんぎょう 一切いっさい能満足のうまんぞく」 といへり

是故言↢「衆生所願楽一切能満足」↡。

結成

【27】 是故ぜこ願生がんしょう 阿弥陀あみだ仏国ぶつこく

 この二かみに十七しゅ荘厳しょうごんこく成就じょうじゅ観察かんざつするは、 願生がんしょうする所以ゆえんなることを結成けつじょうす。 けん清浄しょうじょうしゃくすること、 これかみおわりぬ

是故願生↢彼 阿弥陀仏国↡。

此二句結↣成上観↢察十七種荘厳国土成就↡。所↢以願生↡釈↢器世間清浄↡訖↢之于↟上。

所以願生 句点は聖教全書まま。 「願生の所以ゆえに (…を釈す)」

◎総説分 ○観察門  衆生世間

【28】次にしゅじょうけん清浄しょうじょうかんず。 このもんのなかをわかちて二のべつとなす。 一には阿弥陀あみだ如来にょらい荘厳しょうごんどく観察かんざつす。 二にはかのもろもろのさつ荘厳しょうごんどく観察かんざつす。 如来にょらい荘厳しょうごんどく観察かんざつするなかに八しゅあり。 もんいたりてまさになづくべし

次観↢衆生世間清浄↡、此門中分為↢二別↡。一者観↢察阿弥陀如来荘厳功徳↡。二者観↢察彼諸菩薩荘厳功徳↡。観↢察如来荘厳功徳↡中有↢八種↡、至↠文当↠目。

衆生名義

 ひていはく、 *あるろんひろしゅじょう*名義みょうぎするに、 それ*さん輪転りんでんしてしゅ*しょうくるをもつてのゆゑに*しゅじょうづくと。 いまぶつさつづけてしゅじょうとなす。 このいかん

ある論師 小乗の論師を指す。
名義 名の意味。

問曰。有論師汎解↢衆生名義↡、以↧其輪↢転三有↡受↦衆多生死↥故名↢衆生↡。今名↢仏・菩薩↡為↢衆生↡、是義云何。

こたへていはく、 ¬きょう¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「一ぽうりょうあり、 一みょうりょうあり」 と。 しゅしょうくるをもつてのゆゑにづけてしゅじょうとなすがごときは、 これはこれ小乗しょうじょう三界さんがいのなかのしゅじょう名義みょうぎしゃくするなり。 大乗だいじょうしゅじょう名義みょうぎにはあらず。 大乗だいじょうにいふところのしゅじょうとは、 ¬*ぞうげんぎょう¼ にのたまふがごとし。 「しゅじょうといふはすなはちこれ不生ふしょうめつなり」 と。 なにをもつてのゆゑに。 もししょうあらばしょうじをはりてまたしょうじ、 *無窮むきゅうとがあるがゆゑに、 不生ふしょうにしてしょうずるとがあるがゆゑなり。 このゆゑにしょうなり。 もししょうあらばめつあるべし。 すでにしょうなし。 なんぞめつあることをん。 このゆゑにしょうめつはこれしゅじょうなり。 ¬きょう¼ (維摩経・意) のなかに、 「*受陰じゅおん通達つうだつするに*くうにしてしょなし。 これなり」 とのたまふがごとし。 これそのたぐいなり

無窮の過 無限にくりかえして論証が成立しない過失。
五受陰 五陰に同じ。 →おん

答曰。¬経¼言。「一法有↢无量名↡、一名有↢无量義↡。」如↧以↠受↢衆多生死↡故名為↦衆生↥者、此是小乗家釈↢三界中衆生名義↡、非↢大乗家衆生名義↡也。大乗家所↠言衆生者、如↢¬不増不減経¼言↡。「言↢衆生↡者即是不生不滅義。」何以故、若有↠生生已復生有↢无窮過↡故、有↢不生而生過↡故。是故无生。若有↠生可↠有↠滅。既无↠生何得↠有↠滅。是故无生无滅是衆生義。如↧¬経¼中言↦「五受陰通達空无↠所有↡是名義」↥。斯其類也。

 宗祖加点本、 鎌倉時代刊本では 「咸」。 聖教全書では諸本により訂正されている。
 宗祖加点本、 鎌倉時代刊本を除く諸本では 「苦」。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間  仏  座功徳

【29】 りょう大宝王だいほうおう 微妙みみょうじょうだい

 この二荘厳しょうごんどく成就じょうじゅづく

无量大寳王 微妙浄花台。

此二句名↢荘厳座功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんしたまへる。 あるさつそなはすに、 *まつしんにおいて、 くさきてして*のく多羅たら三藐三さんみゃくさんだいじょうじたまふ。 人天にんでんるもの、 増上ぞうじょうしん増上ぞうじょう*恭敬くぎょう増上ぞうじょう*愛楽あいぎょう増上ぞうじょう修行しゅぎょうしょうぜず

末後の身 菩薩が成仏する直前の身。 迷いの尽きる最後の身。
愛楽 喜び好むこと。

仏本何故荘↢厳此座↡。見↢有菩薩↡、於↢末後身↡敷↠草而坐成↢阿耨多羅三藐三菩提↡、人天見者不↠生↢増上信・増上恭敬・増上愛楽・増上修行↡。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「われ成仏じょうぶつするときりょう大宝王だいほうおう*微妙みみょうじょうだいをして、 もつてぶつとなさしめん」 と

微妙 はかりしれないほど奥深くすばらしいこと。

是故願言。我成仏時使↢无量大寳王微妙浄花台↡以為↢仏座↡。

 宗祖加点本 (聖教全書も) では 「坐」。 ¬大経¼ 等で名詞=「座」、 動詞=「坐」 とされているのに合わせ修正。 以下同。

成就の相

りょう」 とは、 ¬かん無量寿むりょうじゅきょう¼ にのたまふがごとし。 「七宝しっぽううえ大宝だいほうれんおうの座あり。 れんの一々の*よう百宝ひゃっぽうしきをなす。 八まんせん*みゃくあり。 なほてんのごとし。 みゃくに八まんせんひかりあり。 ようちいさきものは*縦広じゅうこうひゃく五十*由旬ゆじゅんなり。 かくのごときに八まんせんようあり。 一々のようのあひだに百億ひゃくおく*摩尼まに珠王しゅおうあり、 もつて映飾ようじきとなす。 一々の摩尼まには、 せんこうみょうはなつ。 そのひかりがいのごとし。 七宝しっぽう合成ごうじょうしてあまねくうえおおふ。 *しゃ迦毘かび楞伽りょうがほう、 もつてそのだいとなす。 このれんだいは八まん金剛こんごう*甄叔迦けんしゅくがほう*ぼん摩尼まにほう*みょう真珠網しんじゅもう、 もつて厳飾ごんじきとなす。 そのだいうえにおいて、 ねんにして*ちゅう宝幢ほうどうあり。 一々の宝幢ほうどうは、 八まん千億せんおく*しゅせんのごとし。 どううえ宝幔ほうまんは、 *夜摩やまてんのごとし。 五百億ひゃくおく微妙みみょう宝珠ほうしゅあり、 もつて映飾ようじきとなす。 一々の宝珠ほうしゅに八まんせんひかりあり。 一々のひかり、 八まんせんしゅ金色こんじきをなす。 一々の金光こんこう安楽あんらくほうへんす。 処々しょしょへんしておのおのそうをなす。 あるいは金剛台こんごうだいとなり、 あるいは真珠網しんじゅもうとなり、 あるいは*ざっうんとなる。 十方面じっぽうめんにおいてこころしたがひて変現へんげんし、 ぶつ化作けさす」 と。 かくのごとき数量しゅりょう出過しゅっかせり。 このゆゑに 「りょう大宝王だいほうおう 微妙みみょうじょうだい」 といへり

 はなびら。
 はなびらのすじ。
摩尼珠王 摩尼は梵語マニ (maņi) の音写。 意のままに財宝や衣服・飲食などを出す徳をもつ宝珠。 また悪を去り、 濁水をきよらかにし、 わざわいを去る徳をもつともいう。
甄叔迦宝 甄叔迦は梵語キンシュカ (kiņśka) の音写。 甄叔迦という木に咲く赤い花の色に似た宝石。
梵摩尼宝 梵は清浄しょうじょうの意、 きよらかな摩尼宝珠 (如意宝珠) のこと。
妙真珠網 すぐれた真珠をちりばめた飾りあみ。
四柱の宝幢 れんだいの四方にある宝でできた柱。
夜摩天宮 夜摩天にある宮殿。 →夜摩天
雑華雲 種々の色をした花で飾られた雲。

「无量」者如↢¬観无量寿経¼言↡。「七寳地上有↢大寳蓮花王座↡。蓮花一一葉作↢百寳色↡。有↢八萬四千脉↡、猶↢如天画↡。脉有↢八萬四千光↡、花葉小者縦広二百五十由旬。如↠是花有↢八萬四千葉↡。一一葉間有↢百億摩尼珠王↡、以為↢暎餝↡。一一摩尼放↢千光明↡、其光如↠盖、七寳合成遍覆↢地上↡。釈迦楞伽寳、以為↢其台↡。此蓮花台八萬金剛甄叔迦寳・梵摩尼寳・妙真珠網、以為↢厳餝↡。於↢其台上↡、自然而有↢四柱寳幢↡。一一寳幢如↢八萬四千億須弥山↡。幢上寳幔如↢夜摩天宮↡、有↢五百億微妙寳珠↡、以為↢暎餝↡。一一寳珠有↢八萬四千光↡、一一光作↢八萬四千異種金色↡。一一金光遍↢安楽寳土↡、処処変化各作↢異相↡。或為↢金剛台↡、或作↢真珠網↡、或作↢雑花雲↡。於↢十方面↡随↠意変現、化作↢仏事↡。」如↠是等事出↢過数量↡是故言↢「无量大寳王微妙浄花台」↡。

 略字は聖教全書まま (原漢文中での 「万」 には旧字 「萬」 の文字コード使用)。 以下同。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏  身業功徳

【30】 相好光そうごうこうじん 色像しきぞう超群生ちょうぐんじょう

 この二荘厳しょうごん身業しんごうどく成就じょうじゅづく

相好光一尋 色像超↢群生↡。

此二句名↢荘厳身業功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞかくのごとき身業しんごう荘厳しょうごんしたまへる。 ある仏身ぶっしんそなはすに、 一じょうこうみょうけたり。 ひと身光しんこうにおいてはなはだしくは超絶ちょうぜつせず。*転輪王てんりんのうそうのごとし。 そもそもまたおおきに*だいだっおなじ。 *げんずるところ唯一ゆいいつなれば、 *じゃおうをして、 ここをもつてらんいだかしむることをいたす。*刪闍さんじゃとうあへて*蟷螂とうろうのごとくするも、 あるいはかくのごときたぐいなり

減ずるところ唯一なれば 仏身の三十二相より、 ただ一相を欠いただけということ。 だいだっは一般には、 白毫相びゃくごうそう千輻輪相せんぷくりんそうの二相を欠くとされる。 またこれにより 「減ずるところ唯二」 とする異本もある。
蟷螂 かまきりのこと。 ¬荘子そうじ¼ に、 かまきりが車輪に向かっていく喩えがある。

仏本何故荘↢厳如↠此身業↡。見↢有仏身↡、受↢一丈光明↡、於↢人身光↡不↢甚超絶↡、如↢転輪王相↡。抑亦大同↢提婆達多所↟減唯一。致↠令↢阿闍世王以↠茲懐↟亂。刪闍耶等敢如↠蟷蜋↡、或如↠此類也。

同…所減唯一 句点、 返り点は聖教全書まま。 「…の減ずるところに同じ唯一なり」

能為の願

このゆゑにかくのごとき身業しんごう荘厳しょうごんしたまへり

是故荘↢厳如↠此身業↡。

成就の相

このけん (中国)*くんあんずるに、 六しゃくじんといふ。 ¬かん無量寿むりょうじゅきょう¼ (意) にのたまへるがごとし。 「阿弥陀あみだ如来にょらいしんたかさ六十万億まんおく*那由他なゆた*ごうしゃ由旬ゆじゅんなり。 ぶつ*円光えんこう百億ひゃくおく*三千さんぜん大千だいせんかいのごとし」 と

詁訓 字句の解釈。

案↢此間詁訓↡六尺曰↠尋。如↢¬観无量寿経¼言↡。「阿弥陀如来身高六十萬億那由他恒河沙由旬。仏円光如↢百億三千大千世界↡。」

訳者やくしゃ (菩提流支)じんをもつてしていへり。 なんぞそれくらきや。 *しゃけんひと縦横じゅうおう長短ちょうたん*えらばず、 ことごとくよこさま両手りょうてひじべてじんとなすといへり。 もし訳者やくしゃ、 あるいはこのたぐいりてもちゐて、 阿弥陀あみだ如来にょらいの、 ひじべたまふにじゅんじてごんをなす。 ゆゑに一じんしょうせば、 円光えんこうまたさしわたし六十万億まんおく那由他なゆたごうしゃ由旬ゆじゅんなるべし。 このゆゑに 「相好光そうごうこうじん 色像しきぞう超群生ちょうぐんじょう」 といへり

里舎の間 むらざと。
簡ばず 区別しない。

訳者以↠尋而言、何其晦禾代乎。里舎間人不↠簡↢縦横長短↡、咸謂↧横舒↢両手臂↡為↞尋。若訳者或取↢此類↡用准↢阿弥陀如来舒臂↡為↠言故、称↢一尋↡者円光亦応↢径六十萬億那由他恒河沙由旬↡。是故言↢「相好光一尋色像超群生」↡。

法界身義

 ひていはく、 ¬かん無量寿むりょうじゅきょう¼ にのたまはく、 「諸仏しょぶつ如来にょらいはこれ*法界身ほうかいしんなり。 一切いっさいしゅじょう心想しんそうのうちにる。 このゆゑに、 なんぢらしんぶつおもとき、 このしんすなはちこれ*三十二そう*八十随形好ずいぎょうこうなり。 このしんぶつす。 このしんこれぶつなり。 *諸仏しょぶつしょうへんかい心想しんそうよりしょうず」 と。 このいかん

諸仏正遍知海 正しく完全に真理をさとったあらゆる仏陀たちの意。

問曰。¬観无量寿経¼言。「諸仏如来是法界身、入↢一切衆生心想中↡。是故汝等心想↠仏時、是心即是三十二相・八十随形好。是心作仏、是心是仏。諸仏正遍知海従↢心想↡生。」是義云何。

こたへていはく、 「しん」 を*集成しゅうじょうづく。 「かい」 をべつづく。 眼界がんかいのごときは*こんしきくうみょう作意さいの五の因縁いんねんによりてしょうずるをづけて眼界げんかいとなす。 これ*げんただみづからおのがえんぎょうじてえんぎょうぜず。 *べつなるをもつてのゆゑなり。 とうかいもまたかくのごとし

集成 さまざまな要素、 作用、 性徳などが集まってできていること。
根色空明作意 眼という器官 (根)、 対象の事物 (色)、 空間 (空)、 明り (明)、 見ようという意思 (意) のこと。
眼ただ… 眼はただしききょう (もの、 すがた、 かたち) という対象 (所縁) を見るだけで、 声を聞く、 香を嗅ぐなどということはない。 ここにいう 「行ず」 は心が対象を認識するはたらきのこと。
事別 事物の区別、 事物の別々の相のこと。

答曰。身名↢集成↡、界名↢事別↡。如↢眼界↡縁↢根・色・空・明・作意五因縁↡生名為↢眼界↡。是眼但自行↢己縁↡不↠行↢他縁↡。以↢事別↡故。耳・鼻等界亦如↠是。

諸仏しょぶつ如来にょらいはこれ法界身ほうかいしんなり」 といふは、 「法界ほうかい」 はこれしゅじょう心法しんぽうなり。 しんよくけんしゅっけん一切いっさい諸法しょほうしょうずるをもつてのゆゑに、 しんづけて法界ほうかいとなす。 法界ほうかいよくもろもろの如来にょらい相好そうごうしんしょうず。 また色等しきとうのよく眼識げんしきしょうずるがごとし。 このゆゑに仏身ぶっしん法界身ほうかいしんづく。 このしんえんぎょうぜず。 このゆゑに 「一切いっさいしゅじょうの心想のうちに入る」 となり

言↢諸仏如来是法界身↡者、法界是衆生心法也。以↣心能生↢世間・出世間一切諸法↡故、名↠心為↢法界↡。法界能生↢諸如来相好身↡。亦如↣色等能生↢眼識↡。是故仏身名↢法界身↡。是身不↠行↢他縁↡。是故入↢一切衆生心想中↡。

しんぶつおもとき、 このしんすなはちこれ三十二そう・八十随形好ずいぎょうこうなり」 といふは、 しゅじょうしんぶつおもときあたりて、 仏身ぶっしん相好そうごうしゅじょう心中しんちゅう顕現けんげんするなり。 たとへばみずきよければすなはち*色像しきぞうげんず、 みずぞうと一ならずならざるがごとし。 ゆゑにぶつ相好そうごうしんすなはちこれ心想しんそうとのたまへるなり

色像 すがた、 かたち。

心想↠仏時是心即是三十二相八十随形好者、当衆生心想↠仏時、仏身相好顕↢現衆生心中↡也。譬如↢水清則色像現、水之与↠像不↠一不↟異。故言↢仏相好身即是心想↡也。

 返り点は聖教全書まま。 「まさに…」

このしんぶつす」 といふは、 しんよくぶつつくるといふなり

是心作仏者、言↢心能作仏↡也。

このしんこれぶつ」 といふは、 しんのほかにぶつましまさず。 たとへばよりでて、 はなるることをず。 はなれざるをもつてのゆゑにすなはちよくく。 のためにかれて、 すなはちとなるがごとし

是心是仏者、心外无↠仏也。譬如↢火従↠木出火不↠得↠離↠木也、以↠不↠離↠木故則能焼↠木、木為↠火焼↠木即為↟火也。

諸仏しょぶつしょうへんかい心想しんそうよりしょうず」 といふは、 「しょうへん」 とは真正しんしょう*法界ほうかいのごとくにしてるなり。 法界ほうかい*そうなるがゆゑに諸仏しょぶつ*無知むちなり。 無知むちをもつてのゆゑにらざるはなし。 無知むちにしてるはこれしょうへんなり。 この深広じんこうにして*測量しきりょうすべからず。 ゆゑにうみたと

無知 思慮分別をはなれた分別ふんべつのこと。

諸仏正遍知海従↢心想↡生者、正遍知者真正、如↢法界↡而知也。法界无相故諸仏无知也。以↢无知↡故无↠不↠知也。无知而知者是正遍知也。是知深広不↠可↢測量↡、故譬↠海也。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏  口業功徳

【31】 如来にょらい微妙みみょうしょう 梵響ぼんこうもん十方じっぽう

 この二荘厳しょうごんごうどく成就じょうじゅづく

如来微妙声 梵響聞↢十方↡。

此二句名↢荘厳口業功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 ある如来にょらいそなはすに、 とうとからざるにる。 どうひと*じょう くるま して、 *どんしょうしょうするがごとし。 *どうじょうずるみこえはただ梵天ぼんてんとお

して は車をおしかえすこと。 ここでは転じて軽んずる、 けなしおとしめるという意。
瞿曇 梵語ガウタマ (Gautama) の音写。 釈尊の本姓。 ここではどうが釈尊を軽んじていういい方。
道を成ずる… 釈尊成道の時、 その名声は色界しきかい初禅しょぜんてんにとどいたにすぎなかったという意。

仏本何故興↢此荘厳↡。見↧有如来名似↠不↠尊、如↣外道推車人家反人称↢瞿曇姓↡、成↠道曰↠声唯徹↦梵天↥。

見…徹△ 返り点は聖教全書まま。 「…△を徹すを見る」
人 返り点は聖教全書まま。 「(外道の)しゃ人」
曰声 「曰」 は他本では 「日」。 「をいふに」。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「われ成仏じょうぶつせんに、 妙声みょうしょうはるかにきて、 くものをして*にんさとらしめん」 と

 無生法忍のこと。 →しょう法忍ぼうにん

是故願言。使↧我成仏妙声遐布聞者悟↞忍。

成就の相

このゆゑに 「如来にょらい微妙みみょうしょう 梵響ぼんこうもん十方じっぽう」 といへり

是故言↢「如来微妙声梵響聞十方」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏  心業功徳

【32】 どうすいふう くう分別ふんべつ

 この二荘厳しょうごん心業しんごうどく成就じょうじゅづく

同↢地・水・火・風・ 虚空↡无↢分別↡。

此二句名↢荘厳心業功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 ある如来にょらいそなはすに、 ほうくに、 *これはこく、 これはびゃく、 これはこくびゃくほう中法ちゅうほう上法じょうほう上上じょうじょうほうとのたまふ。 かくのごときりょう差別しゃべつしなあり。 分別ふんべつあるにたり

これは黒これは白 黒は悪法・悪業、 白は善法・善業の意。

仏本何故興↢此荘厳↡。見↢有如来↡説↠法云↢此黒此白、此不黒・不白・下法・中法・上法・上上法↡、有↢如↠是等无量差別品↡、似↠有↢分別↡。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「われ成仏じょうぶつせんに、 荷負かぶするに軽重きょうじゅうしゅなきがごとく、 すい潤長じゅんちょうするに*しょう 悪草あくそう かつ 瑞草ずいそうなりなきがごとく、 じょう*じゅするに芳臭ほうしゅうべつなきがごとく、 ふうほつするにめんしゃなきがごとく、 くう苞受ほうじゅするに開塞かいそくおもいなきがごとくならしめん」 と

莦 悪い草と善い草。
 異本には 「熟」 とある。

是故願言。使我成仏、如↣地荷負无↢軽重之殊↡、如↣水潤長无↢莦悪草瑞草括音之異↡、如↣火成就无↢芳臰之別↡、如↣風起発无↢眠悟之差↡、如↣空苞受无↢開塞之念↡、

 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「熟」。

成就の相

これをうちて、 ものほかやすんず。 *むなしくきてちてかえり、 ここにおいてむ。 このゆゑに 「どうすいふう くう分別ふんべつ」 といへり

虚しく往きて実ちて帰り 何ももたずに出かけて、 満ちたりて帰り。 ここでは、 心を虚しくして仏に向かえば、 仏のどくが満ち入るという意。

得↢之于↟内物安↠於↠外。虚往実帰於↢是于↟息。是故言↢「同地水火風虚空无分別」↡。

於是于息 返り点は聖教全書まま。 「これ息においてをや」

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏  大衆功徳

【33】 天人てんにん動衆どうしゅ 清浄しょうじょうかいしょう

 この二荘厳しょうごん*しゅどく成就じょうじゅづく

 異本には 「大衆」 とある。

天人不動衆 清浄智海生。

此二句名↢荘厳衆功徳成就↡。

 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「大衆」。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 ある如来にょらいそなはすに、 説法輪せっぽうりんのあらゆる大衆だいしゅ、 もろもろの*こんしょうよく種々しゅじゅどうなり。 ぶつ智慧ちえにおいて、 もしは退しりぞきもしはもっす。 ひとしからざるをもつてのゆゑに、 しゅう純浄じゅんじょうならず

根性欲 人々の素質 (こん)、 習性、 望み。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↧有如来説↢法輪↡下、所有大衆諸根性欲種種不同、於↢仏智慧↡、若退若没、以↠不↠等故、衆不↦純浄↥。

見…不純浄 返り点は聖教全書まま。 「…純浄ならざるを見そなはす」
 宗祖加点本では 。 聖教全書では諸本によって訂正されている。 以下同。

能為の願

ゆゑにがんおこしたまへり。 「ねがはくはわれ成仏じょうぶつせんに、 あらゆるてんにんみな如来にょらい智慧ちえ清浄しょうじょうかいよりしょうぜん」 と

所以興↠願。願我成仏、所有天人皆従↢如来智慧清浄海↡生。

成就の相

かい」 とは、 ぶつ*一切種いっさいしゅ深広じんこうにしてかぎりなく、 *二乗にじょう雑善ぞうぜん*ちゅう死尸しし宿やどさざることをいひて、 これをうみのごとしとたとふ。 このゆゑに 「天人てんにん動衆どうしゅ 清浄しょうじょうかいしょう」 といへり

中下の死尸 しょうもん縁覚えんがくの二乗のこと。 声聞乗を下乗、 縁覚乗を中乗、 菩薩乗を上乗という。 このうちの声聞 (下)・縁覚 (中) の二乗は、 最高のさとりを求める意志がなく、 仏になれないので、 死尸 (死骸の意) という。 →二乗にじょう

「海」者言↣仏一切種智深広无↠崖、不↠宿↢二乗雑善中下死尸↡。喩↢之如↟海。是故言↢天人不動衆清浄智海生」↡。

どう」 とは、 かのえんにん大乗だいじょうこん成就じょうじゅして*傾動きょうどうすべからざるをいふなり

「不動」者言↧彼天人成↢就大乗根↡不↞可↢傾動↡也。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏  上首功徳

【34】 如須にょしゅ山王せんのう 勝妙しょうみょう無過むかしゃ

 この二荘厳しょうごん上首じょうしゅどく成就じょうじゅづく

如↢須弥山王↡ 勝妙无↢過者↡。

此二句名↢荘厳上首功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 ある如来にょらいそなはすに、 しゅうのなかにあるいは*強梁ごうりょうのものあり。 *だいだっ流比たぐいのごとし。 あるいは国王こくおうぶつならおさめて、 はなはだぶつゆずることをらざるあり。 あるいはぶつしょうじて*えんをもつて廃忘はいもうすることあり。 かくのごとき上首じょうしゅちから成就じょうじゅせざるにたるあり

強梁のもの 自然の理にさからうような強さ、 不自然な強さのもの。 梁は屋根をささえる横木であるが、 梁ばかりが強いと柱をこわし、 全体を破壊してしまうことからいう。
他縁をもつて廃忘する 他のことに気をとられすっかり忘れてしまう。

仏本何故起↢此願↡。見↢有如来↡、衆中或有↢強梁者↡、如↢提婆達多流比↡。或有↢国王与↠仏竝治不↟知↢甚推↟仏、或有↧請↠仏以↢他縁↡廃忘↥。有↤如↠是等似↣上首力不↢成就↡。

 略字は聖教全書まま。 (原漢文中の 「並」 には旧字 「竝」 の文字コード使用)
 宗祖加点本・鎌倉時代刊本では

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「われぶつとなるときねがはくは一切いっさい大衆だいしゅ、 よくしんしょうじて、 あへてわれとひとしきことなく、 ただひとり法王ほうおうとしてさらに俗王ぞくおうなからん」 と

是故願言。我為↠仏時、願一切大衆、无↢能生心↡、敢与↠我等、唯一法王更无↢俗王↡。

无能生心敢与我等 返り点は聖教全書まま。 「能生の心なくして、 敢て我と等しからむ」

成就の相

このゆゑに 「如須にょしゅ山王せんのう 勝妙しょうみょう無過むかしゃ」 といへり

是故言↢「如須弥山王勝妙无過者」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏  主功徳

【35】 天人てんにん丈夫じょうぶしゅ 恭敬くぎょうにょう瞻仰せんごう

 この二荘厳しょうごんしゅどく成就じょうじゅづく

天人丈夫衆 恭敬遶瞻仰。

此二句名↢荘厳主功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるぶつ如来にょらいそなはすに、 大衆だいしゅありといへども、 しゅうのなかにまたはなはだ*恭敬くぎょうせざるあり。 一の比丘びくしゃ牟尼むにぶつに、 「もしわがために十四のなんせずは、 われまさにさらにどうがくすべし」 とかたりしがごとし。 また*居迦離こかりしゃほつほうじて、 *ぶつ三たびかたりたまひしに三たびけざりしがごとし。 またもろもろの*どうやから、 かりに仏衆ぶつしゅりてつねにぶつたんうかがもとめしがごとし。 また*第六天だいろくてん、 つねにぶつみもとにおいてもろもろのなんをなししがごとし。 かくのごとき種々しゅじゅ恭敬くぎょうせざるそうあり

仏三たび語りたまひしに  仏は居迦離が舎利弗を謗るのを三度いさめられるが、 居迦離はいずれもききいれなかったために、 ついに地獄に堕ちたという。
第六天の魔 三界さんがいのうちよくかいの最高天である他化自在天の王のこと。 仏道修行にはげむものを誘惑するので魔といわれる。 →他化たけざいてん

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有仏如来↡、雖↠有↢大衆↡、衆中亦有↠不↢甚恭敬↡。如↧一比丘語↢釈迦牟尼仏↡、若不↣与↠我解↢十四難↡、我当更学↦余道↥。亦如↧居迦離謗↢舎利弗↡仏三語而三不↞受。又如↧諸外道輩仮入↢仏衆↡而常伺↦求仏短↥。又如↧第六天魔常於↢仏所↡作↦諸畱難↥。有↧如↠是等種種不↢恭敬↡相↥。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「われ成仏じょうぶつせんに、 てんにん大衆だいしゅ恭敬くぎょうしてむことなからしめん」 と

是故願言。使↢我成仏、天人大衆恭敬无↟惓。

成就の相

ただ 「てんにん」 といふ所以ゆえんは、 じょうには女人にょにんおよび*じんなきがゆゑなり。 このゆゑに 「天人てんにん丈夫じょうぶしゅ 恭敬くぎょうにょう瞻仰せんごう」 といへり

所以但言↢天人↡者、浄土无↢女人及八部鬼神↡故也。是故言↢「天人丈夫衆恭敬遶瞻仰」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 A 仏  不虚作住持功徳

【36】 観仏かんぶつ本願力ほんがんりき ぐうくうしゃ のうりょう速満足そくまんぞく どく大宝海だいほうかい

 この四荘厳しょうごん不虚作ふこさ住持じゅうじどく成就じょうじゅづく

観↢仏本願力↡ 遇无↢空過者↡ 能令↧速満↢足 功徳大寳海↡。

此四句名↢荘厳不虚作住持功徳成就↡。

所為の境

ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 ある如来にょらいそなはすに、 ただしょうもんをもつてそうとなし、 仏道ぶつどうもとむるものなし。 あるいはぶつへども、 *さんまぬかれざるあり。*善星ぜんしょう*だいだっ*居迦離こかりとうこれなり。 またひとぶつ (釈尊)みょうごうきて*無上むじょう道心どうしんおこせども、 あく因縁いんねんひて、 退たいしてしょうもん*辟支仏びゃくしぶつるものあり。 かくのごときくうのもの、 退没たいもつのものあり

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有如来↡但以↢声聞↡為↠僧、无↧求↢仏道↡者↥。或有↢値↠仏而不↟勉↢三塗↡。善星・提婆達多・居迦離等是也。又人聞↢仏名號↡発↢无上道心↡遇↢悪因縁↡退入↢声聞・辟支仏地↡者。有↢如↠是等空過者退没者↡。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「われ成仏じょうぶつするとき、 われにぐうするものをして、 みな速疾そくしつ*無上むじょう大宝だいほう満足まんぞくせしめん」 と

無上大宝 この上ないさとりのどくのことを宝に喩えていう。

是故願言。使↧我成仏時、値↢遇我↡者、皆速疾満↦足无上大寳↥。

成就の相

このゆゑに 「観仏かんぶつ本願力ほんがんりき ぐうくうしゃ のうりょう速満足そくまんぞく どく大宝海だいほうかい」 といへり。 「住持じゅうじ」 のかみのごとし

是故言↢「観仏本願力遇无空過者能令速満足功徳大寳海」↡。住持義如↠上。

ぶつ荘厳しょうごんしゅどくかんずること、 これかみおわりぬ

観↢仏荘厳八種功徳↡訖↢之于↟上。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間  菩薩

【37】次に安楽国あんらくこくのもろもろのだいさつの四しゅ荘厳しょうごんどく成就じょうじゅかん

次観↢安楽国諸大菩薩四種荘厳功徳成就↡。

 ひていはく、 如来にょらい (阿弥陀仏)荘厳しょうごんどくかんずるに、 なんの闕少けっしょうせるところありてか、 また〔じょうの〕さつどくかんずることをもちゐるや

問曰。観↢如来荘厳功徳↡、何所↢闕少↡復須↠観↢菩薩功徳↡耶。

こたへていはく、 明君めいくんましますときにはすなはち賢臣けんしんあるがごとし。 *ぎょうしゅん無為むいしょうせしは、 これそのたぐいなり。 もしただ如来にょらい法王ほうおうましませども、 だいさつ法臣ほうしんなからしめば、 どう*翼讃よくさんするにおいてあにつといふにらんや。 またたきぎみてすくなきときには、 すなはちおおきならざるがごとし

堯舜の無為と称せしは 堯・舜は中国の伝説上の王の名。 それぞれ、 すぐれた臣下を持ちみずから何事もしないで天下を泰平におさめたとされることから無為といい、 中国における政事の理想とされる。
翼讃 あいたすけほめること。

答曰。如↧有↢明君↡則有↦賢臣↥。尭舜之称↢无為↡、是其比也。若使↧但有↢如来法王↡而无↦大菩薩法臣↥、於↣翼↢讃道↡豈足↠云↠満。亦如↢薪小則火不↟大。

*きょうにのたまふがごとし。 「阿弥陀あみだ仏国ぶつこくりょうへんのもろもろのだいさつあり。*かんおん*大勢だいせいとうのごときは、 みなまさに一しょうほうにおいて*いで仏処ぶっしょすべし」 と。 もしひとしょうして憶念おくねんするもの、 帰依きえするもの、 観察かんざつするものは、 ¬法華ほけきょう¼ の 「*門品もんぼん」 にくがごとく、 がんとしてたざることなし。 しかるにさつどく*愛楽あいぎょうすることは、 うみの、 ながれみて*そくじょうなきがごとし

 引用は ¬大経¼ の上巻、 下巻および ¬小経¼ からの取意の文。
次いで仏処に補す 次に仏の位をおぎなう。 →一生いっしょうしょ
愛楽 喜び好むこと。
止足の情 満ち足りた気持ち。

如↢¬経¼言↡。阿弥陀仏国有↢无量无辺諸大菩薩↡。如↢観世音大勢至等↡。皆当↧一生於↢他方↡次補↦仏処↥。若人称↠名憶念者、帰依者、観察者、如↢¬法花経¼普門品説↡、无↢願不↟満。然菩薩愛↢楽功徳↡、如↣海呑↠流无↢止足情↡。

またしゃ迦牟尼かむに如来にょらい、 一の*目闇もくあん比丘びく (*阿楼駄)うれへてまうすをきこしめすがごとし。 「たれかどくあいするもの、 わがためにはりつなげ」 と。 そのとき如来にょらい禅定ぜんじょうよりちて、 そのところ来到らいとうしてかたりてのたまはく、 「われ福徳ふくとくあいす」 と。 つひにそれがためにはりつなぎたまふ。 そのとき*失明しつみょう比丘びくそらぶつみこえきて、 驚喜きょうきこもごもあつままりてぶつにまうしてまうさく、 「そんそんどくはなほいまだたずや」 と。 ぶつこたへてのたまはく、 「わがどく円満えんまんせり。 またもとむべきところなし。 ただわがこのどくよりしょうず。 どく恩分おんぶんるがゆゑに、 このゆゑにあいすといふ」 と

目闇の比丘 →補註10
失明の比丘 →補註10

亦如↣釈迦牟尼如来、聞↢一目闇比丘吁言↡。誰愛↢功徳↡為↢我維針↡。爾時如来従↢禅定↡起、来↢到其所↡語言。我愛↢福徳↡遂為↢其維針↡。爾時失明比丘、聞↢暗仏語声↡驚喜交集白↠仏言。世尊、世尊功徳猶未↠満耶。仏報言。我功徳円満、无↠所↢復須↡。但我此身従↢功徳↡生。知↢功徳恩分↡故、是故言↠愛。

為我維針 返り点は聖教全書まま。 「我がしんせらん」。

ふところのごとく、 ぶつ (阿弥陀仏)どくかんずるに、 じつがんとしてたざるはなし。 またしょさつどくかんずる所以ゆえんは、 かみのごとく種々しゅじゅあるがゆゑなるのみ

如↠所↠問観↢仏功徳↡、実无↢願不↟充。所↣以復観↢諸菩薩功徳↡者、有↢如↠上種種義↡故耳。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩  不動而至功徳

【38】 安楽国あんらくこく清浄しょうじょう じょう転無てんりん垢輪むく ぶつさつにち 如須にょしゅ住持じゅうじ

安楽国清浄 常転↢无垢輪↡。 化仏菩薩日 如↢須弥住持↡。

所為の境

 ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるぶつそなはすに、 ただこれ*しょうさつのみにして十方じっぽうかいにおいてひろ*ぶつをなすことあたはず。 あるいはただしょうもんにんてんのみにしてするところ狭小きょうしょうなり

小菩薩 七地以前の菩薩のこと。 ざい無礙むげの二利行ができないから小菩薩という。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有仏土↡但是小菩薩不↠能↧於↢十方世界↡広作↦仏事↥。或但声聞・人・天所↠利狭小。

能為の願

このゆゑにがんおこしたまへり。 「ねがはくはわがくにのうちにはりょうだいさつしゅありて、 本処ほんしょどうぜずしてあまねく十方じっぽういたりて種々しゅじゅ*おうして、 如実にょじつ修行しゅぎょうしてつねにぶつをなさん」 と

是故興↠願。願我国中有↢无量大菩薩衆↡、不↠動↢本処↡遍至↢十方↡種種応化如↠実修行常作↢仏事↡。

成就の相

たとへば、 天上てんじょうにありて、 *かげ百川ひゃくせんげんずるがごとし。 あにきたらんや、 あにきたらざらんや

 水面にうつった太陽のすがた。

譬如↧日在↢天上↡而影現↦百川↥、日豈来耶、豈不↠来耶。

¬*大集だいじっきょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「たとへば、 ひとありてよく*堤塘ていとうして、 その*しょはかりてみずはなときおよびて、 心力しんりきくわへざるがごとし

堤塘 つつみ、 土手のこと。
所宜を量りて ちょうどよい時をはかって。

如↢¬大集経¼言↡。譬如↧有↠人善治↢堤塘↡量↢其所宜↡及↢放↠水時↡不↠加↦心力↥。

さつもまたかくのごとし。 一切いっさい諸仏しょぶつおよびしゅじょうようすべく、 教化きょうけすべき種々しゅじゅ堤塘ていとうすれば、 三昧さんまいるにおよびて身心しんしんどうぜざれども、 如実にょじつ修行しゅぎょうしてつねにぶつをなす」 と

菩薩亦如↠是。先治↧一切諸仏及衆生、応↢供養↡応↢教化↡種種堤塘↥、及↠入↢三昧↡身心不↠動、如↠実修行常作↢仏事↡。

如実にょじつ修行しゅぎょうす」 とは、 つねに修行しゅぎょうすといへども、 *じつ修行しゅぎょうするところなし

実に修行… 修行したことに少しのとらわれもないということ。

如実修行者、雖↢常修行↡実无↠所↢修行↡也。

このゆゑに 「安楽国あんらくこく清浄しょうじょう じょう転無てんりん垢輪むく ぶつさつにち 如須にょしゅ住持じゅうじ」 といへり

是故言↢「安楽国清浄常転无垢輪化仏菩薩日如須弥住持」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩  一念遍至功徳

【39】 無垢むく荘厳しょうごんこう 一ねんぎゅう 普照ふしょう諸仏しょぶつ やくしょ群生ぐんじょう

无垢荘厳光 一念及一時 普照↢諸仏会↡ 利↢益諸群生↡。

所為の境

 ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 ある如来にょらい*眷属けんぞくそなはすに、 ほうりょう諸仏しょぶつようせんとほっし、 あるいはりょうしゅじょう教化きょうけせんとほっするに、 ここにもっしてかしこにづ。 みなみさきにしてきたあとにす。 一ねんをもつてひかりはなちてあまねくらし、 あまねく十方じっぽうかいいたりてしゅじょう教化きょうけすることあたはず。 出没しゅつもつぜんそうあるがゆゑなり

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有如来↡眷属欲↣供↢養他方无量諸仏↡、或欲↣教↢化无量衆生↡。此没彼出、先↠南後↠北。不↠能↧以↢一念一時↡放↠光普照↥。遍至↢十方世界↡教↢化衆生↡有↢出没前後相↡故。

能為の願

このゆゑにがんおこしたまへり。 「ねがはくはわがぶつのもろもろのだいさつ、 一ねんときのあひだにおいて、 あまねく十方じっぽういたりて種々しゅじゅ*ぶつをなさん」 と

是故興↠願。願我仏土諸大菩薩、於↢一念時頃↡遍至↢十方↡作↢種種仏事↡。

成就の相

このゆゑに 「無垢むく荘厳しょうごんこう、 一ねんぎゅう 普照ふしょう諸仏しょぶつ やくしょ群生ぐんじょう」 といへり

是故言↢「无垢荘厳光一念及一時普照諸仏会利益諸群生」↡。

 ひていはく、 かみしょうに、 動揺どうようせずしてあまねく十方じっぽういたるといふ。 どうにしていたる、 あにこれ一にあらずや。 これといかんが差別しゃべつする

問曰。上章云↧身不↢動揺↡而遍至↦十方↥。不↠動而至、豈非↢是一時義↡耶。与↠此若為差別。

こたへていはく、 かみにはただどうにしていたるといへども、 あるいはぜんあるべし。 ここにはぜん無後むごといふ。 これ差別しゃべつとなす。 またこれかみどうじょうずるなり。 もし一ならずはすなはちこれ往来おうらいなり。 もし往来おうらいあらばすなはちどうにあらず。 このゆゑにかみどうじょうぜんためのゆゑに、 すべからく一かんずべし

答曰。上但言↢不動而至↡、或容↠有↢前後↡。此言↢无前无後↡、是為↢差別↡。亦是成↢上不動義↡。若不↢一時↡則是往来。若有↢往来↡則非↢不動↡。是故為↠成↢上不動義↡故須↠観↢一時↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩  無相供養功徳

【40】 天楽てんがく華衣けえ みょう香等こうとうよう さん諸仏しょぶつどく 無有むう分別心ふんべつしん

雨↢天楽花衣 妙香等↡供養 讃↢諸仏功徳↡ 无↠有↢分別心↡。

所為の境

 ぶつもとなんがゆゑぞこの荘厳しょうごんおこしたまへる。 あるぶつそなはすに、 さつにんてん*しゅひろからず、 あまねく十方じっぽうぐうかいいたりて諸仏しょぶつ如来にょらい大衆だいしゅようすることあたはず。 あるいはおのが穢濁えじょくなるをもつて、 あへて浄郷じょうきょう向詣こうげいせず。 あるいはきょするところの清浄しょうじょうなるをもつて穢土えど*はくす。 かくのごとき種々しゅじゅ*局分きょくぶんをもつて、 諸仏しょぶつ如来にょらいみもとにおいて周遍しゅうへんようして広大こうだい善根ぜんごんほっすることあたはず

志趣 願いのこと。
鄙薄 いやしみきらうこと。
局分 分をかぎる。 分別・区別して一方にとらわれること。

仏本何故起↢此荘厳↡。見↢有仏土↡、菩薩・人・天志趣不↠広、不↠能↧遍至↢十方无窮世界↡供↦養諸仏如来大衆↥、或以↢己土穢濁↡不↣敢向↢詣浄郷↡、或以↢所居清浄↡鄙↢薄穢土↡。以↢如↠此等種種局分↡、於↢諸仏如来所↡不↠能↣周遍供養発↢起広大善根↡。

能為の願

このゆゑにがんじてのたまはく、 「われ成仏じょうぶつするときねがはくはわがこく一切いっさいさつしょうもんてんにん大衆だいしゅ、 あまねく十方じっぽう*一切いっさい諸仏しょぶつだい処所しょしょいたりて、 てんがくてんてんてんこうあめふらして、 *巧妙きょうみょうべんをもつて諸仏しょぶつどくよう讃嘆さんだんせん」 と

一切諸仏の大会 あらゆる仏たちの説法の会座。
巧妙の弁辞 たくみな弁才。 理解・表現の能力が自由自在であること。

是故願言。我成仏時、願我国土一切菩薩・声聞・天人大衆、遍至↢十方一切諸仏大会処所↡、雨↢天楽・天花・天衣・天香↡、以↢巧妙弁辞↡供↢養讃↣嘆諸仏功徳↡。

成就の相

穢土えど如来にょらい*だい謙忍けんにんたんずといへども、 ぶつぞうそうあることをず。 じょう如来にょらいりょう荘厳しょうごんたんずといへども、 ぶつ清浄しょうじょうそうあることを

大慈謙忍 しゅじょう救済のために、 忍んで身をへりくだること。

雖↠嘆↢穢土如来大慈謙忍↡、不↠見↣仏土有↢雑穢相↡。雖↠嘆↢浄土如来无量荘厳↡、不↠見↣仏土有↢清浄相↡。

なにをもつてのゆゑに。 諸法しょほうひとしきをもつてのゆゑに、 もろもろの如来にょらいひとし。 このゆゑに諸仏しょぶつ如来にょらいづけて*等覚とうがくとなす。 もしぶつにおいてれつしんおこさば、 たとひ如来にょらいようすれども、 ほうようにはあらず。 このゆゑに 「天楽てんがく華衣けえ みょう香等こうとうよう さん諸仏しょぶつどく 無有むう分別心ふんべつしん」 といへり

等覚 →等覚とうがく

何以故、以↢諸法等↡故諸如来等。是故諸仏如来名為↢等覚↡。若於↢仏土↡起↢優劣心↡。仮使供↢養如来↡非↢法供養↡也。是故言↢「雨天楽花衣妙香等供養讃諸仏功徳无有分別心」↡。

◎総説分 ○観察門 Ⅱ 衆生世間 B 菩薩  示法如仏功徳

【41】 とうかい 仏法ぶっぽうどくほう がんかいおうじょう 仏法ぶっぽう如仏にょぶつ

何等世界无↢ 仏法功徳寳↡、 我願皆往生 示↢仏法↡如↠仏。

所為の境

 ぶつもとなんがゆゑぞこのがんおこしたまへる。 ある軟心なんしんさつそなはすに、 ただぶつこく修行しゅぎょうねがひて慈悲じひ堅牢けんろうしんなし

仏本何故起↢此願↡。見↢有軟心菩薩↡、但楽↢有仏国土修行↡无↢慈悲堅牢心↡。

能為の願

このゆゑにがんおこしたまへり。 「ねがはくはわれ成仏じょうぶつするとき、 わがさつはみな慈悲じひ勇猛ゆうみょうけんがんありて、 よく清浄しょうじょうて、 ほう*仏法僧ぶっぽうそうなきところいたりて、 仏法僧ぶっぽうそうほう*住持じゅうじ荘厳しょうごんしてしめすこと、 ぶつのましますがごとくし、 *仏種ぶっしゅをして処々しょしょえざらしめん」 と

仏種 仏になる因種。 仏性。 →仏性ぶっしょう

是故興↠願。願我成仏時、我土菩薩皆慈悲勇猛堅固、志願能捨↢清浄土↡、至↧他方无↢仏・法・僧↡処↥、住↢持荘↣厳仏・法・僧寳↡、示如↠有↠仏使↢仏種処処不↟断。

成就の相

このゆゑに 「とうかい 仏法ぶっぽうどくほう がんかいおうじょう 仏法ぶっぽう如仏にょぶつ」 といへり

是故言↢「何等世界无仏法功徳寳我願皆往生示仏法如仏」↡。

さつの四しゅ荘厳しょうごんどく成就じょうじゅかんずること、 これかみおわりぬ

観↢菩薩四種荘厳功徳成就↡訖↢之于↟上。

◎総説分 回向門

【42】つぎしもの四はこれこうもんなり。

次下四句是迴向門。

我作がさ論説ろんせつ 願見がんけん弥陀みだぶつ 普共ふぐしょしゅじょう おうじょう安楽国あんらくこく

 この四はこれ論主ろんじゅ (天親)こうもんなり。 「こう」 とは、 おのがどくしてあまねくしゅじょうほどこして、 ともに阿弥陀あみだ如来にょらいたてまつり、 安楽国あんらくこくしょうぜんとなり

我作↠論説↠偈 願↢見弥陀仏↡、 普↢共諸衆生↡ 往↢生安楽国↡。

此四句是論主迴向門。迴向者迴↢己功徳↡、普施↢衆生↡共見↢阿弥陀如来↡生↢安楽国↡。

無量寿むりょうじゅしゅ多羅たらしょう、 われじゅをもつてそうじてきをはりぬ

无量寿修多羅章句、我以↢偈誦↡惣説竟。

 嘉永年間刊本・本願寺本・大派依用本では 「頌」。

◎総説分 八番問答  第一問答 (所共衆生)

【43】*ひていはく、 天親てんじんさつこうしょうのなかに、 「普共ふぐしょしゅじょう おうじょう安楽国あんらくこく」 といへるは、 これはなんらのしゅじょうとともにとすや

問ひていはく… →補註3

問曰。天親菩薩迴向章中言↢「普共諸衆生往生安楽国」↡、此指↠共↢何等衆生↡耶。

こたへていはく、 王舎城おうしゃじょう所説しょせつの ¬無量寿むりょうじゅ経¼ (下)あんずるに、 「ぶつなんげたまはく、 ª十方じっぽうごうしゃ諸仏しょぶつ如来にょらい、 みなともに無量寿むりょうじゅぶつじんどく不可思議ふかしぎなるを称嘆しょうたんしたまふ。 しょしゅじょう、 そのみょうごうきて信心しんじんかんし、 *すなはち一ねんいたるまでしんいたしてこうして、 かのくにしょうぜんとがんずれば、 すなはちおうじょうて、 *退転たいてんじゅうせん。 ただ*五逆ごぎゃくほうしょうぼうとをのぞくº」 と。 これをあんじていふに、 一切いっさい*どうぼんにん、 みなおうじょう

すなはち…回向して 親鸞聖人は 「乃至一念せん。 至心に回せしめたまへり」 (信文類訓) と読まれた。
外道凡夫人 異本には 「外凡夫人」 とある。 凡夫の位を内・外にわけたとき、 じゅうじゅう十行じゅうぎょうじゅうこう三賢さんげん位の賢者を内凡ないぼんというのに対し、 十信じっしん以下の善悪の凡夫をぼんという。 また五逆ほうぼう以外の凡夫人のこととする説もある。

答曰。案↢王舎城所説¬无量寿経¼↡「仏告↢阿難↡。十方恒河沙諸仏如来、皆共称↢嘆无量寿仏威神功徳不可思議↡。諸有衆生、聞↢其名號↡信心歓喜乃至一念、至心迴向、願↣生↢彼国↡即得↢往生↡住↢不退転↡。唯除↢五逆誹謗正法↡。」案↠此而言、一切外道凡夫人、皆得↢往生↡。

外道 宗祖加点本・鎌倉時代刊本を除く他書では 「外」。

また ¬かん無量寿むりょうじゅきょう¼ のごときは*ぼんおうじょうあり。 「下下げげぼんしょうとは、 あるいはしゅじょうありて、 善業ぜんごうたる五逆ごぎゃく十悪じゅうあくつくり、 もろもろのぜんせん。 かくのごときにん悪業あくごうをもつてのゆゑに悪道あくどうして、 こう*経歴きょうりゃくしてくることきわまりなかるべし。 かくのごときにん命終みょうじゅうときのぞみて、 *ぜんしき種々しゅじゅあんして、 ために妙法みょうほうおしへて念仏ねんぶつせしむるにはん。 かのひとめられて念仏ねんぶつするにいとまあらず。 ぜんげていはく、 ªなんぢもしねんずることあたはずは無量寿むりょうじゅぶつしょうすべしº と。 かくのごとくしんいたしてこえをしてえざらしめて、 十ねんそくして ª南無なも無量寿むりょうじゅぶつº としょうせん。 ぶつみなしょうするがゆゑに、 念々ねんねんのうちにおいて八十億劫おくこうしょうつみのぞき、 命終みょうじゅうのちこんれんのなほ日輪にちりんのごとくしてそのひとまえじゅうするを、 一ねんのあひだのごとくにすなはち極楽ごくらくかいおうじょうん。 れんのなかにおいて十二大劫だいこうてて、 れんまさにひらけん。 まさにこれをもつて五逆ごぎゃくつみつぐのふべし。 かんおん大勢だいせいだい音声おんじょうをもつてそれがためにひろ諸法しょほう実相じっそうつみ除滅じょめつするほうかん。 きをはりてかんして、 ときおうじてすなはちだいしんおこさん。 これをぼん下生げしょうのものとづく」 と。 このきょうをもつてしょうするに、 あきらかにりぬ、 ぼんぼんただしょうぼうほうせざれば、 ぶつしんずる因縁いんねんをもつてみなおうじょう

又如↢¬観无量寿経¼↡有↢九品往生↡。「下下品生者、或有↢衆生↡作↢不善業五逆・十悪↡、具↢諸不善↡。如↠此愚人以↢悪業↡故、応↧堕↢悪道↡逕↢歴多劫↡受↠苦无↞窮。如↠此愚人臨↢命終時↡、遇↧善知識種種安慰為説↢妙法↡、教令↦念仏↥。彼人苦逼不↠遑↢念仏↡。善友告言。汝若不↠能↠念者応↠称↢无量寿仏↡。如↠是至↠心令↢声不↟絶、具↢足十念↡称↢南无无量寿仏↡。称↢仏名↡故、於↢念念中↡除↢八十億劫生死之罪↡。命終之後見↢金蓮花↡猶↢如日輪↡住↢其人前↡。如↢一念頃↡即得↣往↢生極楽世界↡。於↢蓮花中↡満↢十二大劫↡蓮華方開、当以此償五逆罪也観世音・大勢至、以↢大悲音声↡為↠其広説↧諸法実相除↢滅罪↡法↥。聞已歓喜応↠時則発↢菩提之心↡。是名↢下品下生者↡。」以↢此経↡証、明知、下品凡夫但令↧不↣誹↢謗正法↡、信↠仏因縁皆得↦往生↥。

 鎌倉時代刊本では 「遇」。 以下同。

◎総説分 ○八番問答 2. 第二問答 (二経逆謗)

 ひていはく、 ¬無量寿むりょうじゅ経¼ (下・意) にのたまはく、 「おうじょうがんずるものみなおうじょう。 ただ五逆ごぎゃくほうしょうぼうとをのぞく」 と。 ¬かん無量寿むりょうじゅきょう¼ (意) にのたまはく、 「五逆ごぎゃく十悪じゅうあくもろもろのぜんするもまたおうじょう」 と。 この二きょう、 いかんが*する

会する つうすること。 一見矛盾したように見える記述を道理に照らしあわせて趣意の一貫したものとして説明すること。

問曰。¬无量寿経¼言。「願↢往生↡者皆得↢往生↡。唯除↢五逆誹謗正法↡。¬観无量寿経¼言。「五逆・十悪具↢諸不善↡亦得↢往生↡。」此二経云何会。

こたへていはく、 一きょう (大経) には二しゅ重罪じゅうざいするをもつてなり。 一には五逆ごぎゃく、 二にはほうしょうぼうなり。 この二しゅつみをもつてのゆゑに、 ゆゑにおうじょうず。 一きょう (観経) にはただ十悪じゅうあく五逆ごぎゃくとうつみつくるとのたまひて、 しょうぼうほうすとのたまはず。 しょうぼうほうぜざるをもつてのゆゑに、 このゆゑにしょうずることを

答曰。一経以↠具↢二種重罪↡。一者五逆、二者誹謗正法。以↢此二種罪↡故所以不↠得↢往生↡。一経但言↠作↢十悪・五逆等罪↡不↠言↣誹↢謗正法↡。以↠不↠謗↢正法↡故。是故得↠生。

◎総説分 ○八番問答 3. 第三問答 (二罪軽重)

 ひていはく、 たとひ一にんありて、 五逆罪ごぎゃくざいすれどもしょうぼうほうせざれば、 ¬きょう¼ (観経)しょうずることをゆるす。 また一にんありて、 ただしょうぼうほうして五逆ごぎゃく諸罪しょざいなし。 おうじょうがんぜばしょうずることをやいなや

問曰。仮使一人具↢五逆罪↡而不↣誹↢謗正法↡経許↠得↠生。復有↢一人↡但誹↢謗正法↡而无↢五逆諸罪↡。願↢往生↡者得↠生以不。

逆謗除取

こたへていはく、 ただしょうぼうほうせしめば、 さらにつみなしといへども、 かならずしょうずることをず。 なにをもつてこれをいふとならば、 ¬きょう¼ (大品般若経・意) にのたまはく、 「五逆ごぎゃく罪人ざいにん*阿鼻あびだいごくのなかにしてつぶさに一こう重罪じゅうざいく。 しょうぼうほうするひと阿鼻あびだいごくのなかにして、 このこうもしきぬれば、 またてんじてほう阿鼻あびだいごくのなかにいたる。 かくのごとく*展転てんでんして百千ひゃくせん阿鼻あびだいごく」 と。 ぶつ (釈尊)づることをせつしるしたまはず。 ほうしょうぼうつみきはめておもきをもつてのゆゑなり。 またしょうぼうはすなはちこれ仏法ぶっぽうなり。 この*愚痴ぐちにんすでにほうしょうず。 いづくんぞぶつしょうぜんとがんずるあらんや。 たとひただかの安楽あんらくむさぼりてしょうぜんとがんずるは、 またみずにあらざるこおりけむりなきもとむるがごとし。 あにることあらんや

答曰。但令↣誹↢謗正法↡雖↣更无↢余罪↡必不↠得↠生。何以言↠之、¬経¼言。「五逆罪人堕↢阿鼻大地獄中↡具受↢一劫重罪↡、誹↢謗正法↡人堕↢阿鼻大地獄中↡、此劫若尽復転至↢他方阿鼻大地獄中↡。如↠是展転逕↢百千阿鼻大地獄↡。仏不↠記↢得↠出時節↡。以↢誹謗正法罪極重↡故。又正法者即是仏法。此愚痴人既生↢誹謗↡。安有↧願↠生↢仏土↡之理↥。仮使但貪↣彼生↢安楽↡而願↠生者、亦如↠求↢非↠水之氷无↠烟之火↡、豈有↠得↠理。

 聖教全書まま。 鎌倉時代刊本・嘉永年間刊本では 「土」。 「ただかれ安楽に生を貪して」

◎総説分 ○八番問答 4. 第四問答 (謗法相状)

 ひていはく、 なんらのそうかこれしょうぼうほうする

問曰。何等相、是誹↢謗正法↡。

こたへていはく、 もしぶつなく、 ぶつほうなし、 さつなく、 さつほうなしといはん。 かくのごときけん、 もしはしんにみづからし、 もしはしたがひてけ、 そのしんけつじょうするをみなしょうぼうほうすとづく

答曰。若言↧无↠仏、无↢仏法↡、无↢菩薩↡、无↦菩薩法↥。如↠是等見、若心自解、若従↠他受↢其心↡決定皆名↢誹謗正法↡。

受其心 返り点まま。 「その心を受け」

◎総説分 ○八番問答 5. 第五問答 (謗法罪重)

 ひていはく、 かくのごときけいはただこれおのがなり。 しゅじょうにおいてなんののうありてか五逆ごぎゃく重罪じゅうざいえたるや

問曰。如↠是等計但是己事。於↢衆生↡有↢何苦悩↡踰↠於↢五逆重罪↡耶。

こたへていはく、 もし諸仏しょぶつさつの、 *けん*出世間しゅっせけん善道ぜんどうきてしゅじょう教化きょうけするものなくは、 あに*じんれいしんあることをらんや。 かくのごときけん一切いっさい善法ぜんぼうみなだんじ、 の一切いっさい*賢聖げんじょうみなめっしなん。 なんぢただ五逆罪ごぎゃくざいじゅうたることをりて、 五逆罪ごぎゃくざいしょうぼうなきよりしょうずることをらず。 このゆゑにしょうぼうほうずるひと、 そのつみもつともおも

仁義礼智信 儒教に説く五種の倫理徳目。 五常ごじょうのこと。

答曰。若无↧諸仏・菩薩説↢世間・出世間善道↡教↢化衆生↡者↥、豈知↠有↢仁・義・・智・信↡耶。如↠是世間一切善法皆断、出世間一切賢聖皆滅。汝但知↢五逆罪為↟重而不↠知↧五逆罪従↠无↢正法↡生↥。是故謗↢正法↡人其罪重。

◎総説分 ○八番問答 6. 第六問答 (十念往生)

重者先牽

 ひていはく、 *業道ごうどうきょうにのたまはく、 「*業道ごうどうはかりのごとし。 おもきものく」 と。 ¬かん無量寿むりょうじゅきょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「ひとありて五逆ごぎゃく十悪じゅうあくつくりもろもろのぜんせらん。 悪道あくどうしてこう*経歴きょうりゃくしてりょうくべし。 命終みょうじゅうときのぞみて、 ぜんしきおしえひて、 ª南無なも無量寿むりょうじゅぶつº としょうせん。 かくのごとくしんいたしてこえをしてえざらしめて、 十ねんそくしてすなはち安楽あんらくじょうおうじょうすることを。 すなはち大乗だいじょう*正定しょうじょうじゅりて、 *畢竟ひっきょうじて退たいせず。 さんのもろもろのながへだつ」 と。 *く」 のにおいていかんぞ

業道経 業道いんの道理を説いた経典の総称の意。 業道経という名称の経典があるのではない。
業道 善悪の業によって苦楽の果報を得るという道理。 →補註6
先づ牽くの義 義は重い方が先に報いがあらわれるという道理。

問曰。¬業道経¼言。「業道如↠称、重者先牽」。如↢¬観无量寿経¼言↡。有↠人造↢五逆・十悪↡具↢諸不善↡。応↧堕↢悪道↡逕↢歴多劫↡受↦无量苦↥。臨↢命終時↡遇↢善知識教↡称↢南无无量寿仏↡。如↠是至↠心令↢声不↟絶、具↢足十念↡便得往↢生安楽浄土↡、即入↢大乗正定之聚↡、畢竟不↠退。与↢三塗諸苦↡永隔。先牽之義、於↠理如何。

また*曠劫こうごうよりこのかた、 つぶさにもろもろのぎょうつくりて、 *有漏うろほう*三界さんがい*ぞくせり。 ただ十ねん阿弥陀あみだぶつねんじたてまつるをもつてすなはち三界さんがいづ。 *ごうまたいかんせんとほっする

繋属 つなぎとめること。

又曠劫已来、備造↢諸行↡有漏之法繋↢属三界↡。但以↣十念念↢阿弥陀仏↡便出↢三界↡。繋業之義、復欲↢云何↡。

三在釈義

こたへていはく、 なんぢ五逆ごぎゃく十悪じゅうあく業等ごうとうじゅうとなし、 下下げげぼんにんの十ねんをもつてきょうとなして、 つみのためにかれてごくして三界さんがいざいすべしといはば、 いままさにをもつて校量きょうりょうすべし。 軽重きょうじゅうしんり、 えんり、 けつじょうりて、 せつごん多少たしょうにはらず

答曰。汝謂五逆・十悪繋業等為↠重、以↢下下品人十念↡為↠軽、応↧為↠罪所↠牽先堕↢地獄↡繋↦在三界↥者、今当↧以↠義挍↦量軽重之義↥。在↠心在↠縁在↢決定↡、不↠在↢時節久近多少↡也。

挍量軽重之義 句点、 返り点は聖教全書まま。 「軽重の義を挍量す(べし)」

      1. 在心

いかんが 「しんる」。 かの造罪ぞうざいにんはみづから*もう顛倒てんどうけん依止えじしてしょうず。 この十ねんぜんしき*方便ほうべんあんによりて*実相じっそうほうきてしょうず。 一はじつなり、 一はなり。 あにあひくらぶることをんや。 たとへば千歳せんざい闇室あんしつに、 ひかりもししばらくいたらば、 すなはち明朗みょうろうなるがごとし。 やみ、 あにしつにあること千歳せんざいにしてらじといふことをんや。 これをしんりとづく

虚妄顛倒の見に依止して 真実の理にそむいた誤った見解をよりどころにして。
方便安慰 いろいろてだてをして教え、 心を安らかにすること。
実相の法 名号には仏のさとられた諸法しょほう実相じっそうの徳が含まれているので、 仏の名号のことを実相という。

云何在↠心、彼造罪人自依↢止虚妄顛倒見↡生。此十念者依↣善知識方便安慰聞↢実相法↡生。一実一虚、豈得↢相比↡。譬如↢千歳闇室光若蹔至即便明朗↡。闇豈得↠言↢在↠室千歳而不↟去耶。是名↢在心↡。

      2. 在縁

いかんが 「えんる」。 かの造罪ぞうざいひとはみづから妄想もうぞうしん依止えじし、 煩悩ぼんのうもうほうしゅじょうによりてしょうず。 この十ねん無上むじょう信心しんじん依止えじして、 阿弥陀あみだ如来にょらい*方便ほうべん荘厳しょうごん*真実しんじつ清浄しょうじょうりょう*どく*みょうごうによりてしょうず。 たとへばひとありてどくこうむりて、 あたるところすじほねやぶるに、 滅除薬めつじょやくつづみけば、 すなはち箭出やい毒除どくのぞこるがごとし。 ¬*首楞厳経しゅりょうごんぎょう¼ (意) にのたまはく、 「たとへばくすりあり、 づけて滅除めつじょといふ。 もし闘戦せんとうときもちゐてもつてつづみるに、 つづみこえけば箭出やい毒除どくのぞこるがごとし。 *さつ摩訶まかさつまたかくのごとし。 *首楞厳しゅりょうごん三昧ざんまいじゅうしてそのけば、 三どくねんづ」 と。 あにかのふかどくはげしくして、 つづみ音声おんじょうくとも、 どくることあたはずといふことをべけんや。 これをえんりとづく

云何在↠縁、彼造罪人自依↢止妄想心↡依↢煩悩虚妄果報衆生↡生。此十念者依↢止无上信心↡、依↢阿弥陀如来方便荘厳真実清浄无量功徳名號↡生。譬如↧有↠人被↢毒箭↡所↠中截↠筋破↠骨、聞↢滅除薬皷↡即箭出毒除↥、首楞厳経言譬如有薬名曰滅除若闘戦時用以塗皷聞皷声者箭出毒除菩薩摩訶薩亦復如是住首楞厳三昧聞其名者三毒之箭自然抜出豈可↠得↠言↧彼箭深毒厲聞↢皷音声↡不↠能↦抜↠箭去↞毒耶。是名↢在縁↡。

      3. 在決定

いかんが 「けつじょうる」。 かの造罪ぞうあく