1097◎六要ろくよう鈔しょう第三だいさん 旧きゅう本ほん

 

二 Ⅱ ⅲ 信

【1】 ◎△当巻とうかん大門だいもん第三だいさんに信しんを明あかす。 中なかにおいて五ごを分わかつ。

◎当巻大門第三ニ明ス↠信ヲ。於テ↠中ニ分ツ↠五ヲ。

一いちには序じょの題目だいもく、 二にには別序べつじょ、 三さんには正しょう題目だいもく、 四しには標ひょう挙こ、 五ごには正釈しょうしゃくなり。

-一ニハ▽序ノ題目、二者▽別序、三ニハ▽正題目、四者▽標挙、五者▽正釈ナリ。

二 Ⅱ ⅲ a 序題目

【2】 初はじめに序じょの題目だいもくに二にを分わかつこと前さきのごとし。

△初ニ序ノ題目ニ分コト↠二ヲ▲如シ↠前ノ。

二 Ⅱ ⅲ b 別序

【3】 二にに別序べつじょとは、 第だい一巻いっかんの最初さいしょの総序そうじょに対たいしてこれを別序べつじょと号ごうす、 これ安心あんじんの巻かん要須ようしゅたるがゆゑにこの別序べつじょあり。

△二ニ別序ト者、対シテ↢第一巻ノ最初ノ▲総序ニ↡号ス↢之ヲ別序ト↡、是 レ安心ノ巻為タルガ↢要須↡故ニ有リ↢此ノ別序↡。

問とふ。 二に序じょを用もちゐる時とき常つねに前ぜん後ごに安あんず。 よりて後のちに安あんずるをもつてこれを後ご序じょといひ、 あるいは前ぜん後ごをもつてこれを序じょ跋ばつと称しょうす。 その後ご序じょにあらずして中ちゅう間げんにこれを用もちゐる、 その例れいあるや。

-問。用ル↢二序ヲ↡時常ニ安ズ↢前後ニ↡。仍テ以テ↠安コトヲ↠後ニ謂ヒ↢之ヲ後序ト↡、或ハ以テ↢前後ヲ↡称ス↢之ヲ序ハジメ跋モトト↡。非シテ↢其ノ後序ニ↡中間ニ用ル↠之ヲ、有↢其ノ例↡耶。

答こたふ。 もし天台てんだいによらば ¬法華ほけ経きょう¼ の本ほん迹じゃく二に門もんにおいておのおのその序じょあり、 これその証しょうなり。

-答。若シ依ラバ↢天臺ニ↡於テ↢¬法華経ノ¼本迹二門ニ↡各有リ↢其ノ序↡、是 レ其ノ証也。

この序じょの中なかに就つきて、 文もんを分わかちて四しとなす。

-就テ↢此ノ序ノ中ニ↡、分テ↠文ヲ為ス↠四ト。

一いちに文もんの初はじめより 「哀あい善ぜん巧ぎょう」 に至いたるまではこれ他た力りき信心しんじんの行ぎょう相そうを顕あらわす。 上かみには 「如来にょらい」 といふ、 これ弥陀みだに約やくす。 下しもには 「大だい聖しょう」 といふ、 これ釈しゃ迦かに約やくす。

-一ニ自↢▲文ノ之初↡至マデハ↢「哀善巧ニ」↡是 レ顕ス↢他力信心ノ行相ヲ↡。上ニハ云フ↢「▲如来ト」↡、是 レ約ス↢弥陀ニ↡。下ニハ云フ↢「▲大聖ト」↡、是 レ約ス↢釈迦ニ↡。

二にに 「然ねん末代まつだい」 の下しもはこれ他師たしその本ほん宗しゅう自じ力りきの執情しゅうじょうに拘かかはつて、 本願ほんがん真実しんじつの源底げんていを顕あらわわさざることを明あかす。 これ実じつの誤あやまりにあらず。 時機じきいまだ熟じゅくせざれば、 みな後ご賢けんのその実じつ義ぎを述のべんことを待まつらくのみ。 例れいせば*天台てんだい・*浄じょう影よう等とうの師し、 みなこれ大権だいごん、 おのおの明めい哲てつなりといへども、 しばらく経きょう旨しを隠かくしてひそかに弥陀みだ如来にょらいの応おう化げ、 善導ぜんどう大だい師しの楷かい定じょうの述じゅつ記きに譲ゆずりしがごとし。

-二ニ「▲然末代ノ」下ハ是 レ明ス↧他師拘カヽハテ↢其ノ本宗自力ノ執情ニ↡、不コトヲ↞顕サ↢本願真実ノ源底ヲ↡。此レ非ズ↢実ノ誤ニ↡。時機未ダレバ↠熟セ、皆待ツラク↣後賢ノ述ノベンコトヲ↢其ノ実義ヲ↡耳ノミ。例セバ如シ↧天臺・浄影等ノ師、皆是 レ大権、各雖ヘ↢明哲ナリト↡、暫ク隠シテ↢経旨ヲ↡潜ヒ ニ譲シガ↦弥陀如来ノ応化1098、善導大師ノ楷定ノ述記ニ↥。

三さんに 「爰えん愚ぐ禿とく」 の下しもはみづからの所しょ解げあたかも経きょう論ろん釈しゃく義ぎの深じん旨しを得え、 かねて謗難ほうなんを顧かえりみて自じ謙けんの言ことばを述のぶることを顕あらわす。

-三ニ「▲爰愚禿ノ」下ハ顕ス↧自ミ ノ所解宛モ得エ↢経論釈義ノ深旨ヲ↡、兼テ顧テ↢謗難ヲ↡述コトヲ↦自謙ノ言ヲ↥。

四しに 「欣ごん浄じょう邦ほう」 の下しもは総結そうけつの文もんなり。

-四ニ「▲*欣浄邦ノ」下ハ総結ノ文也。

二 Ⅱ ⅲ c 正題目

【4】 三さんに正しょう題目だいもくとは、 二にに分わかつことまた同おなじ。 序じょの題目だいもくに対たいして正しょう題目だいもくといふ、 行ぎょう信しん鉤こう鎖さして二に三さん次ついでを成じょうず。

三ニ△正題目ト者、分コト↠二ニ又同ジ。対シテ↢序ノ題目ニ↡云フ↢正題目ト↡、行信鉤鎖シテ二三成ズ↠次ヲ。

二 Ⅱ ⅲ d 標挙

【5】 四しに標ひょう挙こといふは、 題だいの後のちの一いち行ぎょう第だい十じゅう八はちの願がん、 「至し心しん信しん楽ぎょうの願がん」 これなり。 註ちゅうに 「正定しょうじょう聚じゅの機き」 といふは、 これ至し心しん信しん楽ぎょうの行ぎょう人にん、 すなはち摂取せっしゅ不ふ捨しゃの益やくを蒙こうぶるがゆゑに、 現げんに生しょう死じと流ながれを分わかつ義ぎを明あかすなり。

四ニ言↢△標挙ト↡者、題ノ後ノ一行第十八ノ願、「至心信楽ノ之願」是也。註言↢「▲正定聚ノ之機」↡者、是 レ明ス↧至心信楽ノ行人、即蒙ブルガ↢摂取不捨ノ益ヲ↡故ニ、現ニ与↢生死↡分ツ↠流ヲ義ヲ↥也。

二 Ⅱ ⅲ e 正釈

【6】 △五ごに正釈しょうしゃくの中なかに、 また分わかちて二にとなす。 ▽文もんの初はじめより下しも 「重じゅう愛あい也や」 に至いたるまでは、 まづ信相しんそうを標ひょうし、 かねて願がん名みょうを挙あぐ。 二にに 「至し心しん信しん」 の下しもはまさしく諸文しょもんを引ひく。

五ニ正釈ノ中ニ、又分テ為ス↠二ト。自↢文ノ初↡下至マデハ↢「重愛也ニ」↡、先ヅ標シ↢信相ヲ↡兼テ挙グ↢願名ヲ↡。▽二ニ「至心信ノ」下ハ正ク引ク↢諸文ヲ↡。

二 Ⅱ ⅲ e イ 信相願名

【7】 △初はじめの文もんの中なかにおいて 「つつしんで按あんず」 とらは、 第だい二に巻かんの初はじめにならべて行ぎょう信しんを標ひょうしてその中なかに行ぎょうを明あかす。 このゆゑに当巻とうかんには二にを標ひょうするにおよばず、 ただちに信しんを明あかすなり。

於テ↢初ノ文ノ中ニ↡「▲謹按ズト」等者、第二巻ノ初ニ▲双ベテ標シテ↢行信ヲ↡其ノ中ニ明ス↠行ヲ。是ノ故ニ当巻ニハ不↠及バ↠標スルニ↠二ヲ、直タヾチニ明ス↠信ヲ也。

この信心しんじんを嘆たんずるに、 十じゅう二句にくあり。 その文もん見みつべし。

-嘆ズルニ↢▲此ノ信心ヲ↡、有リ↢十二句。其ノ文可シ↠見ツ。

「不ふ顛倒てんどう」 といひ 「不ふ虚偽こぎ」 といふ、 ▲¬論ろんの註ちゅう¼ の言ことばを借かる。

-云ヒ↢「▲不顛倒ト」↡云↢「▲不虚偽ト」↡、借ル↢¬論ノ註ノ¼↡言ヲ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ 引文

【8】 二にに引文いんもんの中なかに、

二ニ△引文ノ中ニ、

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・ 因願成就文

因願いんがんと成じょう就じゅと、 ¬大だい経きょう¼ と ¬宝ほう積しゃく¼ とおのおのもつてこれを引ひく。 その義ぎ見みつべし。

-▲因願ト▲成就ト、¬大経ト¼¬宝積ト¼各以テ引ク↠之ヲ。其ノ義可シ↠見ツ。

「又う言ごん聞法もんぼう能のう不ふ」 とらは、 ¬大だい経きょう¼ の下げ巻かん三さん十じゅう偈げの文もん、 これ聞法もんぼう不ふ忘もうの徳とくを嘆たんず。

-「▲又言聞法能不ト」等者、¬大経ノ¼下巻三十偈ノ文、是 レ嘆ズ↢聞法不忘ノ之徳ヲ↡。

問とふ。 次上つぎかみの文もんは ¬如来にょらい会え¼ の説せつ、 いまの文もんは ¬大だい経きょう¼。 両りょう経きょう各別かくべつなり。 なんぞ 「又う」 といふや。 また下しもの二に文もんは ¬如来にょらい会え¼ の文もん、 なんぞ ¬大だい経きょう¼ に対たいしてまた 「又う」 といふや。 前ぜん後ご錯乱さくらん思おもひがたし。 いかん。

-▼問。次上ノ文者¬如来会ノ¼説、今ノ文ハ¬大経¼。両経各別ナリ。何ゾ云↠「又ト」耶。又下ノ二文ハ¬如来会ノ¼文1099、何ゾ対シテ↢¬大経ニ¼↡亦云↠「又ト」耶。前後錯乱難シ↠思ヒ。如何。

答こたふ。 まことにもつて思おもひがたし。 この書しょ大概たいがい類聚るいじゅの後のち、 上しょう人にんいくばくならず帰き寂じゃくの間あいだ、 再さい治ちに及およばず、 少々しょうしょうかくのごとき事ことらなきにあらず。 かつはまた翻訳ほんやくの異いありといへども、 梵本ぼんぽん同おなじきがゆゑその義ぎ辺へんによるにあながちに苦くなきか。

-答。誠ニ以テ難シ↠思ヒ。此ノ書大概類聚ノ之後、上人不↠幾帰寂ノ之間、不↠及↢再治ニ↡、少々非ズ↠無ニ↢如↠此ノ事等↡。且ハ又雖↠有↢翻訳ノ之異↡、梵本同ジキガ故依ニ↢其ノ義辺ニ↡強ニ無↠苦歟。

「聞法もんぼう不ふ忘もう即そく我が親しん友ぬ」 は称しょう誉よの義ぎ、 ↓浄じょう影よう・↓*憬きょう興ごうはともにかの土どに約やくす、 ↓*義ぎ寂じゃくはここに約やくす。 殿最でんさい知しりがたし。 ただし次つぎの所引しょいん異い訳やくの ¬経きょう¼ の文もんに、 あるいは 「当とう獲ぎゃく重じゅう愛あい聖しょう尊そん」 といひ、 あるいは 「常令じょうりょう諸仏しょぶつ生しょう喜き」 といふ。 文勢もんぜい義ぎ趣しゅこの土どに約やくする義ぎ、 もつともその理りを得えたり。 よろしく寂じゃくの意こころによるべし。

-「▲聞法不忘▲即我親友ハ」称誉ノ之義、浄影・憬興ハ共ニ約ス↢彼ノ土ニ↡、義寂ハ約ス↠此ニ。殿最難シ↠知リ。但シ次ノ所引異訳ノ¬経ノ¼文ニ、或ハ云ヒ↢「▲当獲重愛聖尊ト」↡、或ハ云フ↢「▲常令諸*仏生喜ト」↡。文勢義趣約スル↢比ノ土ニ↡義、尤得タリ↢其ノ理ヲ↡。宜ク↠依↢寂ノ意ニ↡。

問とふ。 諸しょ師しの異解いげその釈しゃくを聞きかんと欲おもふ。

-問。諸師ノ異解欲フ↠聞ント↢其ノ釈ヲ↡。

答こたふ。 ↑浄じょう影よう師し (大経義疏巻下) のいはく、 「聞もん不ふ忘もうとは、 弥陀みだ仏所ぶっしょにして法ほうを聞ききて忘わすれず。 見けん敬きょうといふは、 弥陀みだ仏ぶつを見みて心しんに敬重きょうじゅうを生しょうず。 得とく大だい慶きょうとは、 前さきに法ほうを聞きき仏ぶつを見みて恭く敬ぎょうして善ぜん利りを得うることを明あかすなり。 乃至 行ぎょう釈しゃ迦かに順じゅんずるをわが善ぜん友ぬと名なづく。」 以上

-答。浄影師ノ云、「聞不忘ト者、弥陀仏所ニシテ聞テ↠法ヲ不↠忘。言↢見敬ト↡者、見テ↢弥陀仏ヲ↡心ニ生ズ↢敬重ヲ↡。得大慶ト者、明ス↣前ニ聞キヽ↠法ヲ見テ↠仏ヲ恭敬シテ得コトヲ↢善利ヲ↡也。 乃至 行順ズルヲ↢釈迦ニ↡名↢我善友ト↡。」 已上

↑憬きょう興ごう師し (述文賛巻下) のいはく、 「すなはち弥陀みだの所説しょせつを忘わすれず、 またかの仏ぶつを見みて心しんに敬重きょうじゅうを生しょうじてもつて大だい喜きをなす。 行ぎょう釈しゃ迦かに順じゅんじて釈しゃ迦かに摂せっせらる。 ゆゑに善ぜん友ぬといふ。」 以上

-憬興師ノ云、「即不↠忘↢弥陀ノ所説ヲ↡、亦見テ↢彼ノ仏ヲ↡心ニ生ジテ↢敬重ヲ↡以テ為ナス↢大喜ヲ↡。行順ジテ↢釈迦ニ↡釈迦ニ所ラル↠摂セ。故ニ云フ↢善友ト↡。」 已上

↑義ぎ寂じゃく師し (大乗義記巻下) のいはく、 「聞法もんぼう能のう不ふ忘もうとは、 聞ききてよく思おもふ。 ゆゑに忘わすれず。 見けん敬きょう得とく大だい慶きょうとは、 思し択ちゃくの時ときにおいて、 その深趣じんしゅを見みてしかも敬重きょうじゅうし、 その滋味じみを得えてしかもおほきに慶よろこぶ。 もしよくかくのごとくすれば、 すなはち仏ぶつと志こころざしを同おなじくす。 ゆゑに即そく我が親しん善ぜん友ぬなりといふなり。」 以上

-義寂師ノ云、「聞法能不忘ト者、聞テ而能ク思フ。故ニ不↠忘也。見敬得大慶ト者、於テ↢思択ノ時ニ↡、見テ↢其ノ深趣ヲ↡而モ敬重シ、得テ↢其ノ滋味ヲ↡而モ大ニ慶ブ。若シ能ク如クスレバ↠此ノ、則与↠仏同ス↠志ヲ。故ニ云フ↢即我親善友也ト↡也。 已上

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・『如来会』両文

【9】 次下つぎしもの両りょう文もん、 おほきに ¬大だい経きょう¼ に同おなじ。

▲次下ノ両文、大ニ同ジ↢¬大経ニ¼↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・『論註』文

【10】次つぎに ¬論ろんの註ちゅう¼ の文もんは、 五ご念ねん門もんの中なかの讃嘆さんだん門もんの釈しゃくなり。

次1100ニ▲¬論ノ註ノ¼文ハ、五念門ノ中ノ讃嘆門ノ釈ナリ。

いまの所引しょいんの中なかに、 初はじめ 「称しょう彼ひ」 より 「相応そうおう故こ」 に至いたるまでの二に十じゅう五字ごじは、 これ本論ほんろんの文もん。 「称しょう彼ひ如来にょらい名みょう者しゃ」 以下いげは、 論文ろんもんを三さんに分わかちてこれを牒でっ釈しゃくすらくのみ。

-今ノ所引ノ中ニ、初自↢「▲称彼」↡至マデノ↢「相応故ニ」↡二十五字ハ、是 レ本論ノ文。「▲称彼如来名者」以下ハ、論文ヲ分↠三ニ牒↢釈スラク之ヲ↡耳ノミ。

第一だいいちの句くに就つきて、

-就テ↢第一ノ句ニ↡、

問とふ。 「称しょう彼ひ」 とらは、 いふところの 「称しょう」 は、 称しょう念ねんの義ぎか、 称しょう揚ようの義ぎか。

-問。「称彼ト」等者、所ノ↠言之「称ハ」、称念ノ義歟、称揚ノ義歟。

答こたふ。 総そうじてこれをいはば二義にぎに通つうずべし。 別べっしてこれを論ろんぜば称しょう念ねんを本ほんとなす。

-答。総ジテ而言イハヾ↠之ヲ可シ↠通ズ↢二義ニ↡。別シテ而論ゼバ↠之ヲ称念ヲ為ス↠本ト。

問とふ。 いまの ¬論ろん¼ に立たつるところの五ご念ねん門もんの中なかに、 名みょう号ごう称しょう念ねんの一門いちもんを立たてず、 すなはち観察かんざつをもつて ¬論ろん¼ の正しょう意いとなす。

-*問。今ノ¬論ニ¼所ノ↠立ル五念門ノ中ニ、不↠立↢名号称念ノ一門ヲ↡、即以テ↢観察ヲ↡為ス↢¬論ノ¼正意ト↡。

随したがひて ¬註ちゅう¼ (論註巻下) の文もんを見みるに、 讃嘆さんだんを釈しゃくしていはく、 「讃さんとは讃揚さんようなり、 嘆たんとは歌か嘆たんなり」 と。

-随テ見ルニ↢¬註ノ¼文ヲ↡、釈シテ↢讃嘆ヲ↡云ク、「▲讃ト者讃揚也、嘆ト者歌嘆也ト。」

すべからく称しょう揚ように約やくすべし、 なんぞ二義にぎに通つうぜん。 いはんや称しょう念ねんをもつて論ろんの正しょう意いとすること、 その理りいかん。

-須クシ↠約ス↢称揚ニ↡、何ゾ通ゼン↢二義ニ↡。況ヤ以テ↢称念ヲ↡為スルコト↢¬論ノ¼正意ト↡、其ノ理如何。

答こたふ。 あに前さきにいはずや、 総そうじて二義にぎに通つうずとは。 いまの讃嘆さんだんの釈しゃくはすなはち一辺いっぺんの義ぎなり。 ただし別べつに称しょう念ねんの門もんを立たてざることは、 讃嘆さんだんといふはこれすなはち称しょうの義ぎ、 称しょうに称しょう揚よう・称しょう念ねんの二義にぎあり、 ゆゑに別べっに立たてず。 おほよそ称しょうの字じ二に辺へんに通つうずる義ぎにおいて、 もし所讃しょさんに約やくせばこれすなはち名みょう号ごうを称しょう念ねんするこれなり。 もし能讃のうさんに約やくせば称しょう揚ようの義ぎなり。 しかるに能讃のうさんとは、 所讃しょさんの法ほうにおいて勝しょう徳とくあるがゆゑなり。 もし所讃しょさんなくはなんぞ能讃のうさんあらん。 その所讃しょさんとは名みょう号ごう、 光こう明みょう第一だいいちの句くに明あかすところ、 すなはちこれ名みょう号ごうの法ほうなり。

-答。豈不ヤ↢前ニ云ハ↡、総ジテ通ズトハ↢二義ニ↡。今ノ讃嘆ノ釈ハ則一辺ノ義ナリ。但シ別ニ不コト↠立↢称念ノ門ヲ↡者、言↢讃嘆ト↡者是則称ノ義、称ニ有リ↢称揚・称念ノ二義↡、故ニ不↢別ニ立↡。凡ソ於テ↧称ノ字通ズル↢二辺ニ↡義ニ↥、若シ約セバ↢所讃ニ↡是 レ則称↢念スル名号ヲ↡是也。若シ約セバ↢能讃ニ↡称揚之義ナリ。而ニ能讃ト者、於テ↢所讃ノ法ニ↡有ルガ↢勝徳↡故ナリ。若シ无クハ↢所讃↡何ゾ有ラン↢能讃↡。其ノ所讃ト者名号、光明第一ノ之句ニ所↠明、即是 レ名号ノ法也。

第だい二にの句くに就つきて 「仏光ぶっこう」 とらは、 仏ぶつの光こう明みょうは智慧ちえの所しょ生しょうなり。 ゆゑに 「如来にょらいの光こう明みょう智ち相そう」 といふ。

-就テ↢▲第二ノ句ニ↡「▲仏光ト」等者、仏ノ之光明ハ智恵ノ所生ナリ。故ニ云フ↢「▲如来ノ光明智相ト」↡。

第三だいさんの句くに就つきて「能のう破は」 とらは、 滅罪めつざいの徳とくを明あかす。 「一切いっさい」 の言ことばの中なかに、 惑わく障しょう・業ごっ障しょう・報ほう障しょう、 もろもろの不ふ善ぜんを摂せっすべし。 「能満のうまん」 とらは、 往おう生じょうの益やくを明あかす。 また 「一切いっさい」 の言ことばに護ご念ねん・見仏けんぶつ等とうを摂せっすべし。

-就テ↢▲第三ノ句ニ↡「▲能破ト」等者、明ス↢滅罪ノ徳ヲ↡。「▲一切ノ」言ノ中ニ、応シ↠摂ス↢惑障・業障・報障、諸ノ不善ヲ↡也。「▲能満ト」等者、明ス↢往生ノ益ヲ↡。又「▲一切ノ」言ニ可↠摂ス↢護念・見仏等ヲ↡也。

「然ねん有う」 とらは、 これその問といなり。 「由不ゆふ」 とらは、 これその答こたえなり。 「云うん何が」 とらは、 これ徴ちょう問もんなり。 「為い」 の下しも 「如にょ」 の上かみに、 本ほんに 「▲不ふ」 の字じあり、 これ脱落だつらくか。 「謂不いふ」 とらは、 これその答こたえなり。 これに二にの意こころあり、 一いちにはいはく↓二に種しゅの身しんを知しらざるをもつて判はんじて名みょう義ぎ不ふ相応そうおう義ぎとなす。 二ににはいはく三種さんしゅ不ふ相応そうおうの義ぎに違いするを称しょうして如実にょじつ修しゅ行ぎょう相応そうおうとなす。

-「▲然有ト」等者、是 レ其ノ問也。「▲由1101不ト」等者、是 レ其ノ答也。「▲云何ト」等者、是 レ徴問也。「為ノ」下「如ノ」上ニ、本ニ有リ↢「不ノ」字↡、是 レ脱落歟。「▲謂不ト」等者、是 レ其ノ答也。此ニ有リ↢二ノ意↡、一ニハ謂ク以テ↠不ルヲ↠知ラ↢二種ノ之身ヲ↡判ジテ為ス↢名義不相応義ト↡。二ニハ謂ク違スルヲ↢三種不相応ノ義ニ↡称シテ為ス↢如実修行相応ト↡。

問とふ。 ↑実相じっそう・為い物もつ二に種しゅの身しん、 その義ぎいかん。

-問。実相・為物二種ノ之身、其ノ義如何。

答こたふ。 これに二義にぎあり。 一いち義ぎにいはく、 実相じっそうの身しんとはこれはこれ理り仏ぶつ、 すなはち法ほっ性しょう法身ほっしんといふこれなり。 為い物もつの身しんとはこれはこれ事じ仏ぶつ、 すなはち方便ほうべん法身ほっしんといふこれなり。 ↓一いち義ぎにいはく、 実相じっそう・為い物もつ二に種しゅの法身ほっしん、 ともにこれ事じ仏ぶつ、 二に種しゅの法身ほっしんこれ自利じり利他りたの徳とくに約やくす。 すなはち名みょうと義ぎとなり。 実相じっそうは義ぎに約やくす。 すなはちこれ光こう明みょう、 摂しょう法身ほっしんのゆゑに。 為い物もつはこれ名な、 すなはちこれ名みょう号ごう、 摂しょう衆しゅ生じょうのゆゑに。

-答。此ニ有リ↢二義↡。一義ニ云、実相ノ身ト者此ハ是 レ理仏、即云↢法性法身ト↡是也。為物ノ身ト者此ハ是 レ事仏、即云↢方便法身ト↡是也。一義ニ云ク、実相・為物二種ノ法身、共ニ是 レ事仏、二種ノ法身是 レ約ス↢自利利他之徳ニ↡。即名ト与 トナリ↠義。実相ハ約ス↠義ニ。即是 レ光明、摂法身ノ故ニ。為物ハ是名、即是 レ名号、摂衆生ノ故ニ。

問とふ。 ↑しばらく後のちの義ぎに就つきてすでに実相じっそうといふ、 なんぞ事じ仏ぶつたらん。

-問。且ク就テ↢後ノ義ニ↡既ニ云フ↢実相ト↡、何ゾ為タラン↢事仏↡。

答こたふ。 いふところの実相じっそうは無む相そうの義ぎにあらず、 これ虚こ実じつの義ぎなり。 すなはち生しょう仏ぶつに約やくす。 いはく仏ぶつを実じつとなし衆しゅ生じょうを虚ことなし、 悟ごをもつて実じつとなし迷めいをもつて虚ことなす。

-答。所ノ↠言フ実相ハ非ズ↢無相ノ義ニ↡、是 レ虚実ノ義ナリ。即約ス↢生仏ニ↡。謂ク仏ヲ為シ↠実ト衆生ヲ為シ↠虚ト、以テ↠悟ヲ為シ↠実ト以テ↠迷ヲ為ス↠虚ト。

問とふ。 二義にぎの中なかに、 いづれをもつてか正しょうとする。

-問。二義ノ之中ニ、以テカ↠何ヲ為ル↠正ト。

答こたふ。 二義にぎともに存ぞんず、 用捨ようしゃ学者がくしゃの意こころにあるべし。 ただし名みょう義ぎに約やくする、 なほ文もんに親したしきか。

-答。二義共ニ存ズ、用捨可シ↠在ル↢学者ノ之意ニ↡。但シ約スル↢名義ニ↡、猶親シキ↠文ニ歟。

「又有うう」 とらは、 これ如実にょじつ・不ふ如実にょじつの義ぎを釈しゃくす。

-「▲又有ト」等者、是 レ釈ス↢如実・不如実ノ義ヲ↡。

「一者いっしゃ」 とらは、 第一だいいちの不ふ信しんは、 これ心しん弱にゃくに約やくす。 心しん弱にゃくによるがゆゑにあるいは行ぎょうずる時ときあり、 ある時ときは行ぎょうぜず。

-「▲一者ト」等者、第一ノ不信ハ、是 レ約ス↢心弱ニ↡。由ルガ↢心弱ニ↡故ニ或ハ有リ↢行ズル時↡、或時ハ不↠行ゼ。

また字じ訓くんを窺うかがふに、 「淳じゅん」 ¬玉ぎょく篇へん¼ にいはく、 「之し純じゅん、 是ぜ倫りん二にの切せつ、 淑しゅくなり。」 ¬広韻こういん¼ にいはく、 「常じょう倫りん切せつ、 清しょうなり、 朴ぼくなり。」 これらの訓くんによるに、 不ふ善ぜん・不ふ浄じょう・不ふ直じき等とうの義ぎに通つうずべきか。 註ちゅうの 「常じょう偸ゆ反はん」、 「偸ゆ」 の字じおそらくは非ひなり、 書しょ生しょうの誤あやまりか。 ¬広韻こういん¼ のごとくなるべし。

-又窺フニ↢字訓ヲ↡、「▲淳」¬玉篇ニ¼云ク、「之純、是倫二切、淑也。」¬広韻ニ¼云ク、「▲常倫切、清也、朴也。」依ニ↢此等ノ訓ニ↡、可キ↠通↢不善・不浄・不直等ノ之義ニ↡歟。註ノ「常偸反」、「偸ノ」字恐ハ非ナリ、書1102生ノ誤歟。可シ↠如ナル↢¬広韻ノ¼↡。

第だい二にの不ふ信しん、 すでに 「不ふ一いち」 といふ、 不ふ一いちによるがゆゑに行ぎょう一いち準じゅんならざるを 「不ふ相続そうぞく」 といふ。 余よ行ぎょうを雑ぞうするがゆゑに弥陀みだを念ねんずる心しん、 念々ねんねんに間断けんだんす、 釈しゃくに 「余よ念ねん間けん故こ」 といふこれなり。

-▲第二ノ不信、既ニ云フ↢「▲不一ト」↡、由ガ↢不一ニ↡故ニ行不ルヲ↢一准ナラ↡云フ↢「▲不相続ト」↡。雑スルガ↢余行ヲ↡故ニ念ズル↢弥陀ヲ↡心、念々ニ間断ス。釈ニ云フ↢「▲余念間故ト」↡是也。

「是故ぜこ」 とらは、

-「▲是故ト」等者、

問とふ。 上かみに三信さんしんを挙あげてさらに一いちといはず。 一心いっしんの文もんをもつて三信さんしんの義ぎを結けっす。 註釈ちゅうしゃくの引文いんもんはなはだあひ順じゅんせず、 いかん。

-問。上ニ挙テ↢三信ヲ↡更ニ不↠云↠一ト。以テ↢一心ノ文ヲ↡結ス↢三信ノ義ヲ↡。註釈ノ引文甚不↢相順セ↡、如何。

答こたふ。 上かみに三信さんしんを挙あげてその心しんを開かいすといへども、 三信さんしんあひ成じょうじてつひに別心べっしんにあらず。 これをもつてこれをいふにただこれ開合かいごう、 その意こころを顕あらわさんがために、 ゆゑにこの義ぎを結けっするにこの文もんを引ひくなり。 よりて下しものわたくしの釈しゃく、 もつぱら三心さんしん一心いっしんの義ぎを成じょうず。 もつともこの理りに叶かなふ、 ことに信受しんじゅすべし。

-答。上ニ挙テ↢三信ヲ↡雖ヘ↠開スト↢其ノ心ヲ↡、三信相成ジテ遂ニ非ズ↢別心ニ↡。以テ↠之ヲ謂ニ↠之ヲ只是開合、為ニ↠顕ンガ↢其ノ意ヲ↡、故ニ結スルニ↢此ノ義ヲ↡引ク↢此ノ文ヲ↡也。仍テ▲下ノ私ノ釈、専ラ成ズ↢三心一心ノ之義ヲ↡。尤叶フ↢此ノ理ニ↡、殊ニ可シ↢信受ス↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・『讃弥陀偈』文

【11】次つぎに ¬讃さん弥陀みだの偈げ¼、 この文もん第だい十じゅう八はちの願がんを讃さんずる文もんたるがゆゑに、 この偈げを引ひくなり。

▲次ニ¬讃弥陀ノ偈¼、此ノ文為タルガ↧讃ズル↢第十八ノ願ヲ↡文↥故ニ、引↢此ノ偈ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・「定善義」文

【12】次つぎの所引しょいんの文もんは 「定じょう善ぜん義ぎ」 の釈しゃく、 雑想ざっそう観かん (観経) の 「阿あ弥陀みだ仏ぶつ神通じんずう如にょ意い、 於お十方じっぽう国こく変現へんげん自じ在ざい」 の文もんを解げする釈しゃくなり。

-▲次ノ所引ノ文ハ「定善義ノ」釈、解スル↢雑想観ノ「▲阿弥陀仏神通如意、於十方国変現自在ノ」之文ヲ↡釈也。

「言如ごんにょ」 とらは、 如にょ意いの言ことばにおいて二義にぎある中なかに、 後のちの義ぎほぼ他た力りきの利り益やくを標ひょうす。 これ造悪ぞうあく流る転てんの凡ぼん夫ぶ、 開かい悟ご得脱とくだつおのれが所堪しょかんにあらず、 ひとへに仏徳ぶっとくたることを顕あらわす。 定じょう善ぜん観門かんもんの説せつたりといへども、 所観しょかんの仏ぶつに就つきてその益やくを明あかすなり。

-「▲言如ト」等者、於テ↢如意ノ言ニ↡有ル↢二義↡中ニ、後ノ義粗標ス↢他力ノ利益ヲ↡。是 レ顕ス↧造悪流転ノ凡夫、開悟得脱非ズ↢己ガ所堪ニ↡、偏ニ為コトヲ↦仏徳↥。雖ヘ↠為ト↢定善観門之説↡、就テ↢所観ノ仏ニ↡明↢其ノ益ヲ↡也。

「五ご眼げん」 といふは第だい一巻いっかんに載のす。

-言↢「▲五眼ト」↡者載ス↢▲第一巻ニ↡。

「六通ろくつう」 といふは ¬倶く舎しゃ論ろん¼ の第だい二に十じゅう七しち (玄奘訳智品) にいはく、 「一いちには神じん境きょう智ち証しょう通つう、 二にには天眼てんげん智ち証しょう通つう、 三さんには天てん耳に智ち証しょう通つう、 四しには他た心しん智ち証しょう通つう、 五ごには宿住しゅくじゅう随念ずいねん智ち証しょう通つう、 六ろくには漏ろ尽じん智ち証しょう通つう。 六通ろくつうの中なかに第六だいろくはただ聖しょうなり、 しかれどもその前さきの五ごは異い生しょうまた得うといへども、 総想そうそうによりてまたともに異い生しょうなりと説とく。」 以上

言↢「▲六通ト」↡者¬倶舎論ノ¼第二十七ニ云、「一ニハ神境智証通、二ニハ天眼智証通、三ニハ天耳智証通、四ニハ他心智証通、五ニハ宿住随念智証通、六ニハ漏尽智証通。雖ヘ↢六通ノ中ニ第六ハ唯聖ナリ、然モ其ノ前ノ五ハ異生亦得ウト↡、依テ↢総*想ニ↡説ク↢亦共ニ異生ナリト↡。」 已上

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・「序分義」文

【13】次つぎの所引しょいんの文もんは 「序分じょぶん義ぎ」 の釈しゃくなり。

▲次1103ノ所引ノ文ハ「序分義ノ」釈ナリ。

問とふ。 いまこの文もんを引ひくなんの由ゆえかあるや。

-問。今引ク↢此ノ文ヲ↡有↢何ノ由カ↡耶。

答こたふ。 上じょう来らいの引文いんもん明あかすところ、 みなこれ如来にょらい済さい度どの利り生しょう方便ほうべん、 如実にょじつ相応そうおう真実しんじつの信心しんじんなり。 その所しょ被ひの機きは、 これ罪悪ざいあく生しょう死じの凡ぼん夫ぶ、 煩悩ぼんのう賊害ぞくがいの衆しゅ生じょうたるがゆゑに、 五ご濁じょく・五苦ごく・八はっ苦く逼悩ひつのうの有う情じょう、 もつぱらその機きたることを顕あらわさんがためにことさらにこれを引ひく。

-答。上来ノ引文所↠明、皆是 レ如来済度ノ利生方便、如実相応真実ノ信心ナリ。其ノ所被ノ機ハ、是 レ為タルガ↢罪悪生死ノ凡夫、煩悩賊害ノ之衆生↡故ニ、為ニ↠顕サンガ↣五濁・五苦・八苦逼悩ノ有情、専為コトヲ↢其ノ機↡故コ ニ引ク↠之ヲ也。

現げん行こうの本ほん、 「五苦ごく」 (序分義) の下しもに 「八はっ苦く」 の二字にじあり、 いま除のぞかるるか、 また異いあるか。

-現行ノ之本、 「五苦ノ」下ニ有リ↢「八苦ノ」二字↡、今被↠除歟、又有↠異歟。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・「散善義」五文

【14】次つぎの所引しょいんは 「散善さんぜん義ぎ」 の文もん、 三心さんしんの釈しゃくなり。 この三心さんしんは、 出しゅつ離りの直因じきいん、 行ぎょう者じゃの最要さいよう、 解げ信しん仰ごう信しんよろしく機き根こんによるべし。 ともに仏ぶっ智ちに帰きすれば往おう生じょう疑うたがいなし。 この三心さんしんにおいて二にの意こころを存ぞんずべし。

▲次ノ所引者「散善義ノ」文、三心ノ釈也。此ノ三心者、出離ノ直因、行者ノ最要、解信仰信宜ク↠依↢機根ニ↡。共ニ帰スレバ↢仏智ニ↡往生無シ↠疑。於テ↢此ノ三心ニ↡可シ↠存ズ↢二ノ意ヲ↡。

↓一いちにはこれ定じょう散さん諸しょ機きの発ほっ起きするところなるがゆゑに、 まづ行ぎょう者じゃに被かぶらしめてその信相しんそうを明あかす。 ゆゑに初心しょしんの勧門かんもんを明あかす時とき、 まづその機きに約やくして解げ行ぎょう真実しんじつなるべき義ぎを勧すすむ。 誡門かいもんの時とき、 同おなじくその機きに約やくして貪瞋とんじんを侵やめ虚仮こけを離はなるべしと誡いましむ。 内ない外げ相応そうおうする、 これを真実しんじつといふ。 しかるにいまだ自じ力りき・他た力りきを分わかたず。 下しもの二に心しんこれに準じゅんじて知しるべし。

-一者是 レ為ルガ↣定散諸機ノ所↢発起スル↡故ニ、先ヅ被シメテ↢行者ニ↡明ス↢其ノ信相ヲ↡。故ニ明ス↢初心ノ勧門ヲ↡之時、先ヅ約シテ↢其ノ機ニ↡勧ム↧可キ↢解行真実ナル↡之義ヲ↥。誡門之時、同ク約シテ↢其ノ機ニ↡誡シム↧侵ヤメ↢貪嗔ヲ↡可ト↞離ル↢虚仮ヲ↡。内外相応スル、謂フ↢之ヲ真実ト↡。然而未ダ↠分↢自力・他力ヲ↡。下ノ之二心准ジテ↠之ニ応シ↠知ル。

↓二にには三心さんしんみなこれ加来にょらい回え向こう成じょう就じゅの利り益やくなり。 さらに凡ぼん夫ぶ自じ力りきの心しんにあらず。 凡心ぼんしんさらに真実しんじつの義ぎなし。 ひとへに他た力りきに帰きすればその仏徳ぶっとくをもつて往おう生じょうを証しょう得とくす。 このゆゑに機きにおいて信相しんそうを論ろんぜず。 この義ぎ辺へんに約やくして ¬大だい経きょう¼ ¬観かん経ぎょう¼ 三信さんしん・三心さんしん、 もとこれ一いち意いなり。 いまの至し誠じょう心しん、 勧誡かんかいの二に門もんその文点もんてんを読よみてよろしく領りょう解げせしむべし。 口く伝でんにあるべし。 またその文もんに至いたりてほぼ解げすべからくのみ。

-二者三心皆是 レ加来廻向成就ノ之利益也。更ニ非ズ↢凡夫自力ノ之心ニ↡。凡心更ニ無シ↢真実ノ之義↡。偏ニ帰スレバ↢他力ニ↡以テ↢其ノ仏徳ヲ↡証↢得ス往生ヲ↡。是ノ故ニ於テ↠機ニ不↠論ゼ↢信相ヲ↡。約シテ↢此ノ義辺ニ↡¬大経¼¬観経¼三信・三心、本是 レ一意ナリ。今ノ至誠心、勧誡ノ二門読テ↢其ノ文点ヲ↡宜クシ↠令シム↢領解セ↡。可シ↠在↢口伝ニ↡。又至テ↢其ノ文ニ↡粗可ラク↠解ス耳ノミ。

二義にぎの中なかに、 ↑初はじめの義ぎは常じょうの義ぎ、 ↑後のちの義ぎは今こん師し相伝そうでんの義ぎなり。 次下つぎしもの三心さんしん・一心いっしんの釈しゃくの中なかにつぶさにこの意こころあり。

-二1104義ノ之中ニ、初ノ義ハ常ノ義、後ノ義ハ今師相伝ノ之義ナリ。次下ノ三心・一心ノ釈ノ中ニ具ニ有リ↢此ノ意↡。

「弁べん定じょう」 とらは、 いまのこの三心さんしん 「正しょう因いん」 といふに就つきて、 正しょうとは邪じゃに対たいし、 また傍ぼうに対たいする言ことばなり。 いまここに正しょうといふその義ぎ知しんぬべし。 因いんとは果かに対たいし、 また縁えんに対たいする言ことばなり。

-「▲辨定ト」等者、今ノ此ノ三心就テ↠云ニ↢「▲正因ト」↡、正ト者対シ↠邪ニ、又対スル↠傍ニ言ナリ。今此コヽニ言フ↠正ト其ノ義可↠知ヌ。因ト者対シ↠果ニ、又対スル↠縁ニ言ナリ。

これすなはち ¬観念かんねん法門ぼうもん¼ の中なかに見仏けんぶつ縁えんを釈しゃくしていはく、 「至し誠じょう心しん・信心しんじん・願心がんしんを内因ないいんとなし、 また弥陀みだの↓三種さんしゅの願力がんりきに藉よりてもつて外げ縁えんとなして、 外げ内ないの因縁いんねん和わ合ごうす。 ゆゑにすなはち仏ぶつを見みる。」 以上

-是則¬観念法門ノ¼中ニ釈シテ↢見仏縁ヲ↡云ク、「▲至誠心・信心・願心ヲ為シ↢内因ト↡、又籍テ↢弥陀ノ三種ノ願力ニ↡以テ為シテ↢外縁ト↡、外内ノ因縁和合ス。故ニ即見↠仏。」 已上

↑三力さんりきといふは、 同おなじき縁えんの中なかに、 ¬般舟はんじゅ経きょう¼ の説せつによりて引ひき截のするところの大だい誓願せいがん力りき・三味さんまい定じょう力りき・本ほん功く徳どく力りき、 これその三さんなり。 見仏けんぶつの益やくすでに内ない外げ因縁いんねんによりてこれを得う。 往おう生じょうの益やくもつとも準じゅん知ちすべし。

-言↢三力ト↡者、同キ縁ノ中ニ、依テ↢¬般舟経ノ¼説ニ↡所ノ↢引キ截スル↡之▲大誓願力・三味定力・本功徳力、是 レ其ノ三也。見仏ノ之益既ニ由テ↢内外因縁ニ↡得ウ↠之ヲ。往生ノ之益尤可シ↢准知ス↡。

これによりてこの書しょの第だい二に巻かん (行巻) に 「真実しんじつ信しんの業識ごっしき、 これすなはち内因ないいんとす。 光こう明みょう・名みょうの父母ぶも、 これすなはち外げ縁えんとす。 内ない外げの因縁いんねん和わ合ごうして報ほう土どの真身しんしんを得とく証しょうす」 といへる、 けだしこの義ぎなり。

-因テ↠茲ニ此ノ書ノ第二巻ニ云ヘル↧「▲真実信ノ業識、斯則為ス↢内因ト↡。光明・名ノ父母、斯則為↢外縁ト↡。内外ノ因縁和合シテ得↦証スト報土ノ真身ヲ↥」、蓋シ此ノ義也。

「随ずい機き」 とらは、 「機き」 とはすなはちこれ定じょう散さんの諸しょ機き、 「益やく」 とはすなはちこれ諸しょ機きの往おう生じょう、 その往おう生じょうを得うることひとへに仏願ぶつがん難なん思じの利り益やく、 名みょう号ごうの一法いっぽうによる。 しかるに仏ぶついまだその勝しょう利りを顕あらわしたまはず、 これを 「意い密みつ」 といふ。 このゆゑに自じ問もん・自じ懲ちょう・自じ答とうしたまふ。 もしかくのごとくならずは、 衆しゅ生じょうなにをもつてかこの要よう義ぎを聞きかん。 慇懃おんごんの意こころ、 その義ぎ貴たっとむべし。

-「▲随機ト」等者、「機ト」者即是定散諸機、「▲益ト」者即是諸機ノ往生、得コト↢其ノ往生ヲ↡偏ニ由ル↢仏願難思ノ利益、名号ノ一法ニ↡。而ニ仏未 ズ ダ↠顕ハシタマハ↢其ノ勝利ヲ↡、言フ↢之ヲ「▲意密ト」↡。是ノ故ニ自問・自懲・自答シタマフ。若シ不ズハ↠如ナラ↠是ノ、衆生何ヲ以モテカ聞カン↢此ノ要義ヲ↡。慇懃ノ之意、其ノ義可シ↠貴。

【15】「経きょうにいはく一者いっしゃ至し誠じょう心しん」 とは、 これ経きょう文もんを牒でっす。

「▲経ニ云ク一者至誠心ト」者、是 レ牒ス↢経文ヲ↡。

問とふ。 依え文もんの三巻さんかん、 一々いちいちに ¬経きょう¼ を釈しゃくす。 なんぞこの文もんに限かぎりてこの言ことばを置おくや。

-問。依文ノ三巻、一々ニ釈ス↠¬経ヲ¼。何ゾ限テ↢此ノ文ニ↡置ク↢此ノ言ヲ↡耶。

答こたふ。 いふところの三心さんしんは、 一いっ経きょうの眼目げんもく、 出しゅつ離りの要道ようどうなり。 ゆゑに仏言ぶつごんを挙あげて信しん順じゅんを勧すすむるなり。

-答。所ノ↠言三心ハ、一経ノ眼目、出離ノ要道ナリ。故ニ挙テ↢仏言ヲ↡勧ル↢信順1105ヲ↡也。

「至し者しゃ」 とらは、 これ字じ釈しゃくなり。 「至し」 の字じ 「真しん」 の訓くん、 管見かんけんいまだ覃およばず。 ただしかくのごときの例れい、 聖しょう典てんにこれ多おおし。 いはんや大権だいごんの釈しゃく、 仰あおいでこれを信しんずべし。 天台てんだいのごときは 「専せん」 をもつて 「至し」 に訓くんず。 これまたいまだ知しらず、 おのおの拠よりどころあるか。

-「▲至者ト」等者、是 レ字釈也。「至ノ」字「真ノ」訓、管見未 ズ ダ↠覃。但シ如ノ↠此ノ例、聖典ニ多シ↠之。況ヤ大権ノ釈、仰テ可シ↠信ズ↠之ヲ。如↢天臺ノ↡者以テ↠「専ヲ」訓ズ↠「至ニ」。是又未ダ↠知、各有↠拠歟。

「欲よく明みょう」 とらは、 勧門かんもんの釈しゃくなり。 「須しゅ」 の字じの訓くん、 「用よう」 の訓くんを用もちゐるべし。

-「▲欲明ト」等者、勧門ノ釈也。「▲須ノ」字ノ之訓、可シ↠用↢「用ノ」訓ヲ↡。

「心しん中ちゅう作さ」 とは行ぎょう者じゃの作さにあらず。 仏ぶつの所しょ作さに約やくす、 これすなはち凡心ぼんしんは真実しんじつにあらざるがゆゑに。 仏心ぶっしん真実しんじつの徳とくに帰きするによりてその仏徳ぶっとくとなして往おう生じょうの益やくを得う。 その所しょ帰きに就つきて真実しんじつ心しんといふ、 依え主しゅ釈しゃくなり。

-「▲心中作ト」者非ズ↢行者ノ作ニ↡。約ス↢仏ノ所作ニ↡、是則凡心ハ非ガ↢真実ニ↡故ニ。依テ↠帰スルニ↢仏心真実ノ之徳ニ↡為シテ↢其ノ仏徳ト↡得↢往生ノ益ヲ↡。就テ↢其ノ所帰ニ↡云フ↢真実心ト↡、依主釈也。

「不ふ得とく」 とらは、 誡門かいもんの釈しゃくなり。 ▼この句くの文点もんてん 「現げん」 より 「得とく」 に還かえる、 当とう流りゅうの学者がくしゃ定さだめて存ぞん知ちせるか。

-「▲不得ト」等者、誡門ノ釈也。此ノ句ノ文点自↠「▲現」還ル↠「▲得ニ」、当流ノ学者定テ存知歟。

いまこの釈しゃく意い雑ぞう行ぎょうを誡いましむるなり。 しかるゆゑは、 凡ぼん夫ぶの心しんさらに賢善けんぜん精しょう進じんの義ぎなし。 ただこれ愚ぐ悪あく懈け怠だいの機きなり。 しかるに人ひと自じ心しんの愚ぐ悪あくを顧かえりみず、 随縁ずいえん起き行ぎょうして、 もし賢善けんぜん精しょう進じんの諸しょ行ぎょうを修しゅすることを求もとめんと欲ほっせば、 悪あく性しょうの心しんなるがゆゑに煩悩ぼんのう賊害ぞくがいして、 かならずこれ虚仮こけ雑毒ぞうどくを免まぬかれじ、 「内ない懐え虚仮こけ」 これその義ぎなり。 しかれば賢善けんぜん等とうの相そうを現げんぜず、 自じ心しん三毒さんどくの悪あく性しょうを識しき知ちして自じ力りきの行ぎょうを捨すて他た力りきの行ぎょうに帰きして、 真実しんじつ清浄しょうじょうの業ごうを得うべきなり。 この心しんを勧すすむるをもつていまの釈しゃくの要ようとなす。

-今此ノ釈意誡↢雑行ヲ↡也。所↢以然↡者、凡夫ノ之心更ニ无シ↢賢善精進ノ之義↡。只是愚悪懈怠ノ機也。而ニ人不↠顧↢自心ノ愚悪ヲ↡、随縁起行シテ、若シ欲セ↠求メント↠修スルコトヲ↢賢善精進之諸行ヲ↡者、悪性ノ心ナルガ故ニ煩悩賊害シテ、必是 レ不ジ↠免レ↢虚仮雑毒ヲ↡、「▲内懐虚仮」是 レ其ノ義也。然者不↠現ゼ↢賢善等ノ相ヲ↡、識↢知シテ自心三毒ノ悪性ヲ↡捨ステ↢自力ノ行ヲ↡帰シテ↢他力ノ行ニ↡、可キ↠得↢真実清浄ノ業ヲ↡也。以テ↠勧ムルヲ↢此ノ心ヲ↡為ス↢今ノ釈ノ要ト↡。

「雖すい起き」 とらは、 三業さんごうを外げとなし悪あく性しょうを内ないとなす。 常じょうの義ぎのごときは、 外げをば身しん・口くに名なづけ、 内ないをば意い業ごうに名なづく。 しかのごとくならば雖すい起き二に業ごうといふべし。 すでに三業さんごうといふ。 知しるべし、 三業さんごうはただこれ外げなり。 内ないは悪あく性しょうなり。

-「▲雖起ト」等者、三業ヲ為シ↠外ト悪性ヲ為ス↠内ト。如↢常ノ義↡者、外ヲバ名ケ↢身・口ニ↡、内ヲバ名ク↢意業ニ↡。如ナラバ↠然ノ可シ↠云↢雖起二業ト↡。既ニ云フ↢三業ト↡。可シ↠知ル、三業ハ只是外也。内ハ悪性也。

「若にゃく作さ」 とらは、 自じ力りきの善ぜん雑毒ぞうどくたるがゆゑに身心しんしんを励はげますといへども往おう生じょうを得えざることを明あかす。

-「▲若作ト」等者、明ス↧自力ノ善為タルガ↢雑毒↡故ニ雖↠励スト↢身心ヲ↡不コトヲ↞得↢往生ヲ↡。

「何以がい故こ」 とは、 徴ちょう問もんの言ことばなり。 これ雑毒ぞうどく虚仮こけの行ぎょう不ふ生しょうの由ゆえを徴ちょうす。

-「▲何以故ト」者、懲問ノ言也。是 レ懲ス↢雑毒虚仮ノ之行不生ノ之由ヲ↡。

「正しょう由ゆ」 とらは、 これその答こたえなり。 いふこころはかの浄じょう土ど弥陀みだの因いん行ぎょう・果か報ほうより起おこる、 因いん中ちゅうの所修しょしゅみなこれ真実しんじつなり。 ゆゑに生しょうぜんと欲おもはんものは真実しんじつなるべしとなり。

-「▲正1106由ト」等者、是 レ其ノ答也。言コヽロハ彼ノ浄土起ル↠自↢弥陀ノ因行・果報↡、因中ノ所修皆是 レ真実ナリ。故ニ欲ハン↠生ゼント者ハ可シト↢真実ナル↡也。

問とふ。 凡ぼん夫ぶの心しんはもとこれ不ふ実じつなり、 いかでかかの仏ぶつの所しょ行ぎょうの真実しんじつに斉ひとしからん。

-問。凡夫ノ心者本是 レ不実ナリ、争デカ斉カラン↢彼ノ仏ノ所行ノ真実ニ↡。

答こたふ。 仏願ぶつがんに帰きするをもつて真実しんじつと名なづくるなり。 仏ぶつの因いん中ちゅうの真実しんじつ心しんの相そうを尋たずぬるに、 ただ仏心ぶっしんに帰きす。 いまもまた同おなじかるべし。 能修のうしゅの行ぎょう者じゃ、 その心しんにおいては、 かの仏心ぶっしんに比ひするに、 浄じょう穢え・善悪ぜんあく等とうの差しゃありといへども、 仏願ぶつがんに帰きするは真実しんじつ心しんを発おこす。 この心しん凡ぼん夫ぶの所発しょほつに似にたりといへども、 これ仏ぶっ智ち所しょ施せの心しんたるがゆゑに真実しんじつ心しんといふ。 さらに衆しゅ生じょう随ずい情じょうの心しんにあらず。 ゆゑに等同とうどうならしむるなり。

-答。以テ↠帰スルヲ↢仏願ニ↡名ク↢真実ト↡也。尋ヌルニ↢仏ノ因中ノ真実心ノ相ヲ↡、唯 ヾ帰ス↢仏心ニ↡。今モ又可シ↠同カル。能修ノ行者、於↢其ノ心ニ↡者、比スルニ↢彼ノ仏心ニ↡、雖↠有ト↢浄穢・善悪等ノ差↡、帰スル↢仏願ニ↡者発ス↢真実心ヲ↡。此ノ心雖↠似タリト↢凡夫ノ所発ニ↡、是 レ為タルガ↢仏智所施ノ心↡故ニ云フ↢真実心ト↡。更ニ非ズ↢衆生随情ノ心ニ↡。故ニ令ムル↢等同ナラ↡也。

おほよそいまの文もんにおいてその真実しんじつを解げするに二に重じゅうの釈しゃくあり。 一いちには因いん中ちゅうの行ぎょう道どう真実しんじつ、 二ににはおほよそ施ほどこしたまふところ趣しゅ求ぐをなすなり。 初はじめは兆ちょう載さいの行ぎょう、 次つぎはかの行ぎょうをもつて衆しゅ生じょうに施ほどこしたまふゆゑに、 衆しゅ生じょうこれを行ぎょうずれば、 如来にょらい因いん中ちゅうの願がんに契当かいとうするがゆゑに、 これ凡ぼん夫ぶ所発しょほつの心しんにあらず。 しかしながら如来にょらい利他りたの心しんたり。 このゆゑに生しょうぜんと欲おもはば、 仏ぶつに帰きして自じ力りき虚仮こけ雑毒ぞうどくの善ぜんを用もちゐざれ。

-凡ソ於テ↢今ノ文ニ↡解スルニ↢其ノ真実ヲ↡有リ↢二重ノ釈↡。一者因中ノ行道真実、二者凡所↠施シタマフ為ナス↢趣求ヲ↡也。初ハ兆載ノ行、次ハ以テ↢彼ノ行ヲ↡施シタマフガ↢衆生ニ↡故ニ、衆生行ズレバ↠之ヲ、契↢当スルガ如来因中ノ願ニ↡故ニ、是 レ非ズ↢凡夫所発ノ之心ニ↡。併ラ為タリ↢如来利他ノ之心↡。是ノ故ニ欲ハヾ↠生ゼント、帰シテ↠仏ニ不レ↠用↢自力虚仮雑毒ノ之善ヲ↡。

「施為せい趣しゅ求ぐ」 は二利にりに配当はいとうす、 「施為せい」 は利他りた、 「趣しゅ求ぐ」 は自利じり、 これ常じょうの義ぎなり。 いま文点もんてんあり、 施為せいの名みょう目もくこれを依え用ようせず。 「凡ぼん所しょ施せ」 とは、 これ如来にょらいの施せ、 仏ぶつはこれ能のう施せ。 「為い趣しゅ求ぐ」 とは、 これ行ぎょう者じゃに約やくす、 仏道ぶつどうの趣しゅ求ぐなり。 これすなはち仏ぶつに対たいして衆しゅ生じょうは所しょ施せなり。 これ如来にょらい施与せよの行ぎょうをもつてすなはち衆しゅ生じょう趣しゅ求ぐの行ぎょうとなす。 能所のうしょ異ことなりといへどもともにこれ如来にょらい利他りたの行ぎょうなるがゆゑにこれを真実しんじつといふ。

-「施為趣求ハ」配↢当ス二利ニ↡、「施為ハ」利他、「趣求ハ」自利、是 レ常ノ義也。今有リ↢文点↡、施為ノ名目不↣依↢用セ之ヲ↡。「▲凡所施ト」者、是 レ如来ノ施、仏ハ是 レ能施。「▲為趣求ト」者、是 レ約ス↢行者ニ↡、仏道ノ趣求ナリ。是則対シテ↠仏ニ衆生ハ所施ナリ。是 レ以テ↢如来施与ノ之行ヲ↡即為ス↢衆生趣求ノ之行ト↡。能所雖↠異ナリト倶ニ是 レ如来利他ノ行ナルガ故ニ謂↢之ヲ真実ト↡。

「亦皆やくかい」 といふは、 上かみの因いん位にの行ぎょう、 すなはちいまの所しょ施せなり。 上かみには 「仏ぶつ行ぎょう」 といひいまは 「所しょ施せ」 といふ、 能のう施せの仏ぶつ行ぎょう、 所しょ施せの行ぎょう体たい、 ともにこれ真実しんじつなり、 ゆゑに 「亦やく」 といふなり。

-言↢「▲亦皆ト」↡者、上ノ因位ノ行、即今ノ所施ナリ。上ニハ云ヒ↢「▲仏行ト」↡今ハ云フ↢「▲所施ト」↡、能施ノ仏行、所1107施ノ行体、共ニ是 レ真実ナリ、故ニ云↠「亦ト」也。

「又う真しん」 とらは、 重かさねて真実しんじつを釈しゃくす。 中なかにおいて三さんあり。 一いちには総そうじて捨悪しゃあく修善しゅぜんに就つきて真実しんじつの義ぎを解げす。 二にには三業さんごうに就つきて別べっに欣厭ごんえんを明あかす。 三さんには善悪ぜんあくに就つきて真実しんじつの義ぎを結けっす。 その文もん見みやすし。

-「▲又真ト」等者、重テ釈ス↢真実ヲ↡。於テ↠中ニ有リ↠三。一者▲総ジテ就テ↢捨悪修善ニ↡解ス↢真実ノ義ヲ↡。二ニハ▲就テ↢三業ニ↡別ニ明ス↢欣厭ヲ↡。三ニハ▲就テ↢善悪ニ↡結ス↢真実ノ義ヲ↡。其ノ文易シ↠見。

問とふ。 二に種しゅありと標ひょうして、 利他りた真実しんじつを釈しゃくせず、 いかん。

-問。標シテ↠有ト↢二種↡、不↠釈セ↢利他真実ヲ↡、云何。

答こたふ。 学者がくしゃ種々しゅじゅの義ぎを存ぞんずといへども、 しばらく当ろう流りゅう一いち義ぎの意こころによらば、 上じょう来らいにいふところの所しょ施せ真実しんじつ・趣しゅ求ぐ真実しんじつは、 いま標ひょうするところの 「利他りた真実しんじつ」 なり。 ゆゑに別べつに解げせず。 いまいふところの 「自利じり真実しんじつ」 は、 これ尋じん常じょうの真実しんじつの相そうを明あかす。 これすなはち機きに上中じょうちゅう下げの差しゃあり。 もしその上じょう機きは上かみの安心あんじんの上うえにこの所しょ為いあり。 虎とらの角つのを戴いただくがごとし。 ただしこの行ぎょう儀ぎ諸しょ機きに通つうじがたし。 たとひかくのごとくならざれども上かみの利他りた真実しんじつの相そうに契かなひ、 帰き仏ぶつの心しんあればまた往おう生じょうを得う。 煩悩ぼんのう賊害ぞくがいの下機げき、 もつぱら正しょう機きたるゆゑなり。

-答。学者雖↠存ズト↢種々之義ヲ↡、且ク依ラ↢当流一義ノ意ニ↡者、上来ニ所ノ↠言フ所施真実・趣求真実ハ、今所ノ↠標スル之「▲利他真実ナリ」。故ニ別ニ不↠解セ。今所ノ↠言之「▲自利真実ハ」、是 レ明ス↢尋常ノ真実ノ之相ヲ↡。是則機ニ有リ↢上中下ノ差↡。若シ其ノ上機ハ上ノ安心ノ上ニ有リ↢此ノ所為↡。如シ↢虎ノ戴クガ↟角ヲ。但シ此ノ行儀難↠通ジ↢諸機ニ↡。縦ヒ不ザレドモ↠如クナラ↠此ノ契ヒ↢上ノ利他真実ノ之相ニ↡、有レバ↢帰仏ノ心↡亦得↢往生↡。煩悩賊害ノ下機、専為↢正機↡故也。

「不ふ簡けん」 とらは、 下しものわたくしの解げ釈しゃくに ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ を引ひきてその内ない外げ明みょう闇あんの義ぎを明あかす。 その解げを待まつべし。

-「▲不簡ト」等者、▲下ノ私ノ解釈ニ引テ↢¬涅槃経ヲ¼↡明ス↢其ノ内外明闇ノ之義ヲ↡。可シ↠待ツ↢其ノ解ヲ↡。

【16】次つぎに深心じんしんを釈しゃくする中なかに、

次ニ釈スル↢深心ヲ↡中ニ、

「二に者しゃ」 とらは、 これ経きょう文もんを牒でっす。 「深じん」 等とうといふは、 能信のうしんの相そうを明あかす。 「亦やく有う」 とらは、 所信しょしんの事じを顕あらわす。 これすなはち機き法ほう二に種しゅの信心しんじんなり。

-「▲二者ト」等者、是 レ牒ス↢経文ヲ↡。言↢「▲深」等ト↡者、明ス↢能信ノ相ヲ↡。「▲亦有ト」等者、顕ス↢所信ノ事ヲ↡。是則機法二種ノ信心ナリ。

「無有むう」 とらは、 まさしく有う善ぜん・無む善ぜんを論ろんぜず、 自じの功こうを仮からず、 出しゅつ離りひとへに他た力りきにあることを明あかす。 聖しょう道どうの諸しょ教きょうさかんに生しょう仏ぶつ一如いちにょの理りを談だんず。 いまの教きょうは自じ力りきの功こうなきことを知しるによりてひとへに仏力ぶつりきに帰きす。 これによりてこの信しんことに最要さいようなり。

-「▲無有ト」等者、正ク明ス↧不↠論ゼ↢有善・無善ヲ↡、不↠仮ラ↢自ノ功ヲ↡、出離偏ニ在コトヲ↦他力ニ↥。聖道ノ諸教盛ニ談ズ↢生仏一如ノ之理ヲ↡。今ノ教ハ依テ↠知ニ↢自力ノ無コトヲ↟功偏ニ帰ス↢仏力ニ↡。依テ↠之ニ此ノ信殊ニ最要也。

「無疑むぎ」 とらは、 「若にゃく不ふ生しょう者じゃ不ふ取しゅ正しょう覚がく」 (大経巻上)、 正しょう覚がくすでに成じょうず、 ゆゑに 「無疑むぎ」 といふ。 「即得そくとく往おう生じょう住じゅ不ふ退転たいてん」 (大経巻下)、 一念いちねん誤あやまることなし、 ゆゑに 「無む慮りょ」 といふ。

「▲无疑ト」等者、「▲若不生者不取正覚」、正覚既ニ成ズ、故ニ云フ↢「無疑ト」↡。「▲即得往生住往不退転」、一1108念无シ↠誤コト、故ニ云↢「▲無慮ト」↡。

また二にの釈しゃくあり。

-又有リ↢二ノ釈↡。

初はじめに「又う決けつ定じょう深信じんしん」 とらは、 これ ¬観かん経ぎょう¼ によりて釈しゃ迦かの説せつを信しんず。

-初ニ「▲又決定深信ト」等者、是 レ依テ↢¬観経ニ¼↡信ズ↢釈迦ノ説ヲ↡。

次つぎに「又う決けつ定じょう深信じんしん」 とらは、 ¬弥陀みだ経きょう¼ によりて諸仏しょぶつの証しょうを信しんず。 すなはちこれ三さん経ぎょう具ぐ足そくして信心しんじん決けつ了りょうすることを信しんずることを明あかす。

-次ニ「▲又決定深信ト」等者、依テ↢¬弥陀経ニ¼↡信ズ↢諸仏ノ証ヲ↡。即是 レ明ス↠信ズルコトヲ↢三経具足シテ信心決了スルコトヲ↡。

「又う深じん」 とらは、 この文もんの中なかにおいて、 「仏ぶつ弟子でし」 に至いたるまでは三さん経ぎょうによりてかくのごとく信しんずる者ものは二に尊そんおよび諸仏しょぶつの意こころに信しん順じゅんしてすなはち自利じりを得うることを明あかす。

-「▲又深ト」等者、於テ↢此ノ文ノ中ニ↡、至マデハ↢「仏弟子ニ」↡明ス↧依テ↢三経ニ↡如ク↠此ノ信ズル者 ノハ信↢順シテ二尊及ビ諸仏ノ意ニ↡即得コトヲ↦自利ヲ↥。

「又う一切いっさい」 の下しもは利他りたの徳とくを明あかす。

-「▲又一切ノ」下ハ明ス↢利他ノ徳ヲ↡。

「若にゃく仏ぶつ」 とらは、 了教りょうきょう・不ふ了りょう経きょう論ろん釈しゃく義ぎ、 その説せつ同おなじからず。 おのおのもつて義ぎあり。 いま分満ぶんまんに就つきて、 その不ふ了りょう・了りょう義ぎの別べつを明あかす。

-「▲若仏ト」等者、了教・不了経論釈義、其ノ説不↠同。各以テ有リ↠義。今就テ↢分満ニ↡、明ス↢其ノ不了・了義之別ヲ↡。

「乃ない至し」 といふは、 「又う深心じんしん深信じんしん者しゃ」 より下しも四し十じゅう余よ行ぎょう、 これ四し重じゅうの難なん破ぱの文もんの中なか、 初はじめの三さん重じゅうおよび四し重じゅうの初はじめを除のぞく。 これ仏ぶつ語ごによりて道同どうどうの義ぎを験あきらむるに、 たとひ報仏ほうぶつ・化け仏ぶつの説せつなりといへども、 いまの仏説ぶっせつに違いせばあへて依え信しんせじ、 これ極ごく成じょうの理りなり。 ゆゑに三さん重じゅうを除のぞきて第だい四し重じゅう肝要かんようの文もんを出いだすに、 その理り足たりぬとなす。 ゆゑに省略しょうりゃくすらくのみ。

-言↢「▲乃至ト」↡者、自↢「▲又深心深信者」↡下四十余行、是 レ除ク↢四重ノ難破ノ文ノ中、初ノ之三重及ビ四重ノ初ヲ↡。是 レ依テ↢仏語ニ↡験ルニ↢道同ノ義ヲ↡、縦ヒ雖↢報仏・化仏ノ之説ナリト↡、違セバ↢今ノ仏説ニ↡敢テ不ジ↢依信セ↡、是 レ極成ノ理ナリ。故ニ除テ↢三重ヲ↡出スニ↢第四重肝要ノ之文ヲ↡、其ノ理為ス↠足ヌト。故省略スラク耳ノミ。

「釈しゃ迦か」 とらは、 この文もん以下いげはこれ教証きょうしょうを引ひく。 その文もんに四しあり。 初はじめの二に文もんは釈しゃ迦かの讃勧さんかん、 次つぎの二に文もんは諸仏しょぶつの讃勧さんかん。

-「▲釈迦ト」等者、此ノ文以下ハ是引ク↢教証ヲ↡。其ノ文ニ有リ↠四。初ノ二文者釈迦ノ讃勧、▲次ノ二文者諸仏ノ讃勧。

「此し名みょう*就じゅ↓人にん立りっ信しん」 とらは、

-「▲此名就人立信ト」等者、

問とふ。 いふところの 「↑人にん」 とは何人なんぴとを指さすや。

-問。所ノ↠言「人ト」者指↢何人ヲ↡耶。

答こたふ。 解げするに二義にぎあり。 一いち義ぎにいはく、 四し重じゅうの難なん破ぱを受うけざる意こころ、 還かえりてその難なんに就つきてなほ信心しんじんを増ます。 ゆゑに人にんといふはかの別べつ解げ異い学がくの人ひとを指さすなり。 一いち義ぎにいはく、 因いん位に不ふ了りょうの説せつを信しんぜず、 ひとへに仏ぶっ智ち決けつ了りょうの語ごを信しんじて、 永ながく疑ぎ殆だいを除のぞき信心しんじんを建こん立りゅうす。 もしこの義ぎによらば仏ぶつをもつて人にんとなす。 これ能説のうせつの人にんたるがゆゑなり。

-答。解スルニ有↢二義↡。一義ニ云、不ル↠受↢四重ノ難破ヲ↡之意、還テ就テ↢其ノ難ニ↡猶増ス↢信心ヲ↡。故ニ言↠人ト者指ス↢彼ノ別解異学ノ人ヲ↡也。一義ニ云ク、不↠信ゼ↢因位不了ノ之説ヲ↡、偏ニ信ジテ↢仏智決了ノ之語ヲ↡、永ク除キ↢疑殆ヲ↡建↢立ス信心ヲ↡。若シ依ラバ↢此ノ義ニ↡以テ↠仏ヲ為ス↠人ト。是 レ為タルガ↢能説ノ之人↡故也。

「乃ない至し」 といふは、 「就じゅ行ぎょう」 以下いげ六ろく行ぎょう余よなり。 二に行ぎょうを標ひょうすといへども、 五ご種しゅを挙あぐといへども、 立りっ信しんの行ぎょうにあらず。 このゆゑに除のぞく。 いま立りっ信しんの正しょう意い正定しょうじょうの業ごうにあることを顕けん明みょうせんがために「又う就じゅ」 以下いげの文もんを引ひくところなり。

-言↢「▲乃至ト」↡者、「▲就行」已1109下六行余也。雖↠標スト↢二行ヲ↡、雖↠挙ト↢五種ヲ↡、非ズ↢立信ノ行ニ↡。是ノ故ニ除ク也。今為ニ↤顕↣明センガ立信ノ正意在コトヲ↢正定ノ業ニ↡所↠引↢「▲又就」以下ノ文ヲ↡也。

「一心いっしん」 とらは、 総そうじて常じょう念ねん相続そうぞくの相そうを勧すすむ。

-「▲一心ト」等者、総ジテ勧ム↢常念相続ノ之相↡。

「行住ぎょうじゅう」 とらは、 別べっして他た力りき相続そうぞくの徳とくを明あかす。 ただし 「念々ねんねん不ふ捨しゃ者しゃ」 の句くに就つきてその二義にぎあり。

-「▲行住ト」等者、別シテ明ス↢他力相続之徳ヲ↡。但シ就テ↢「▲念々不捨者ノ」句ニ↡有リ↢其ノ二義↡。

一いち義ぎにいはく、 これ行ぎょう者じゃの用心ようじん意い楽ぎょうを釈しゃくす、 すみやかに衆しゅ事じを抛なげうちて一心いっしんに称名しょうみょうを励はげむべき義ぎなり。

-一義ニ云、此レ釈ス↢行者ノ用心意楽ヲ↡、速ニ抛テ↢衆事ヲ↡一心ニ可キ↠励↢称名ヲ↡義也。

↓一いち義ぎにいはく、 凡ぼん夫ぶの行ぎょう者じゃこの義ぎ得えがたし。 一食いちじきの間けんなほその間あいだあり、 一いち期ご念々ねんねんいかでか相続そうぞくすることを獲えん。 すでに仏願ぶつがんに帰きすれば機き法ほう一体いったい、 能所のうじょ不二ふににて、 おのづから不ふ行ぎょう而に行ぎょうの理りあり、 ゆゑに不ふ捨しゃといふ。 機きの策しゃく励れいにあらず、 これ法ほうの徳とくなり。

-一義ニ云、凡夫ノ行者此ノ義難シ↠得、一食ノ之間猶有リ↢其ノ間↡、一期念々争デカ獲ン↢相続スルコトヲ↡。既ニ帰スレバ↢仏願ニ↡機法一体、能所不二ニシテ、自有リ↢不行而行ノ之理↡、故ニ言フ↢不捨ト↡。非ズ↢機ノ策励ニ↡、是 レ法ノ徳也。

当とう流りゅうの意こころによらば↑後のちの義ぎを本ほんとなす。

-依ラバ↢当流ノ意ニ↡後ノ義ヲ為ス↠本ト。

次つぎに 「乃ない至し」 とは、 これ正しょう助じょ二に行ぎょうの得失とくしつを判はんずる二に行ぎょう余よなり。 正行しょうぎょうの中なかにおいて、 上かみに正しょう助じょを分わかちて、 その称名しょうみょうをもつて正定しょうじょうの業ごうとなして仏願ぶつがんに順じゅんずと嘆たんず。 ゆゑに正行しょうぎょうの徳とくこれその最要さいようなり。 ゆゑにいまこれを略りゃくす。 次つぎに雑ぞう行ぎょうの失しつ、 義ぎ趣しゅまちまちなりといへども疎そ雑ぞうの行ぎょうと名なづくるにその義ぎ足たりぬべし。 ゆゑに中ちゅう間げんを略りゃくして結文けつもんを引ひくなり。

-次ニ「▲乃至ト」者、是 レ判ズル↢正助二行ノ得失ヲ↡二行余也。於テ↢正行ノ中ニ↡、▲上ニ分テ↢正助ヲ↡、以テ↢其ノ称名ヲ↡為シテ↢正定ノ業ト↡嘆ズ↠順ズト↢仏願ニ↡。故ニ正行ノ徳是 レ其ノ最要ナリ。故ニ今略ス↠之ヲ。次ニ雑行ノ失、義趣雖↠区也ト名ルニ↢疎雑ノ行ト↡其ノ義可シ↠足ヌ。故ニ略シテ↢中間ヲ↡引ク↢結文ヲ↡也。

【17】次つぎに回え向こう発願ほつがん心しんを解げする中なかに、

次ニ解スル↢回向発願心ヲ↡中ニ、

「三者さんじゃ」 とらは、 また経きょう文もんを牒でっす。 まづこの心しんを釈しゃくするに二に種しゅの意こころあり。

-「▲三者ト」等者、亦牒ス↢経文ヲ↡。先ヅ釈スルニ↢此ノ心ヲ↡有リ↢二種ノ意↡。

「▲回え向こう」 といふより 「願心がんしん也や」 に至いたるまで五ご行ぎょう余よは回え因いん向こう果か、 いま 「乃ない至し」 といひて略りゃくするところこれなり。 これ自じ力りきに約やくす、 ゆゑにしばらくこれを除のぞく。

-自↠言↢「廻向ト」↡至マデ↢「願心也ニ」↡五行余者廻因向果、今言テ↢「▲乃至ト」↡所↠略スル是也。是 レ約ス↢自力ニ↡、故ニ且ク除ク↠之ヲ。

いまの所引しょいん 「又う回え向こう」 の下しも 「大益だいやく也や」 に至いたるまでは回え思し向こう道どう、 これ他た力りきに約やくして証しょう得とくの義ぎを明あかす。

-今ノ之所引「▲又廻向ノ」下至マデハ↢「大益也ニ▲」↡廻思向道、是約シテ↢他力ニ↡明ス↢証得ノ義ヲ↡。

「問曰もんわつ」 以下いげ 「得益とくやく也や」 に至いたるまではこれ問答もんどうなり。

-「▲問曰」已下至マデハ↢「得益也ニ▲」↡是 レ問答也。

問とふ。 いまこの問答もんどう、 ▲深心じんしんの中なかに致いたすところの問答もんどうとなんの別べつかあるや。

-問。今此ノ問1110答、与 ト ↢▲深心ノ中ニ所ノ↠致問答↡有↢何ノ別カ↡耶。

答こたふ。 上かみは無有むう出しゅつ離り之し縁えんの機きに約やくしてこれをいふ。 ゆゑに凡ぼん夫ぶ難なん生しょうの義ぎに就つきてその四し重しゅ問答もんどうの釈しゃくあり。 いまは一いっ生しょう修福しゅふくの念仏ねんぶつ、 過か現げん三業さんごうの悪業あくごうを消けしがたきことを問ただして、 答こたふるに仏力ぶつりき不ふ思議しぎの益やくを明あかす。 上下かみしもの問答もんどうの差しゃ異いここにあり。

-答。上ハ約シテ↢無有出離之縁ノ之機ニ↡言フ↠之ヲ。故ニ就テ↢凡夫難生ノ之義ニ↡有リ↢其ノ四重問答ノ之釈↡。今ハ問シテ↢一生修福ノ念仏、難コトヲ↟消シ↢過現三業ノ悪業ヲ↡、答フルニ明ス↢仏力不思議ノ益ヲ↡。上下ノ問答差異在リ↠斯ニ。

「諸仏しょぶつ」 とらは、 まづ疑ぎ者しゃの偏見へんけんを対たい治じせんがために、 仏ぶっ教きょうにおいて多た門もんあることを述のぶ。

-「▲諸仏ト」等者、先ヅ為ニ↣対↢治センガ疑者ノ偏見ヲ↡、述ブ↧於テ↢仏教ニ↡有コトヲ↦多門↥也。

「譬ひ如にょ」 とらは、 これ世せ間けん浅近せんごんの事じ相そうを挙あげて、 かの仏力ぶつりき難なん思じの益やくに況きょうす。

-「▲譬如ト」等者、是 レ挙テ↢世間浅近ノ事相ヲ↡、況ス↢彼ノ仏力難思ノ之益ニ↡。

「随ずい出しゅつ」 とらは、 これ所しょ治ちの八万はちまん四し千せんの塵労じんろう門もんの中なかに、 その一門いちもんを出いづればすなはちよくつひに余よの煩悩ぼんのうの門もんを出いづることを明あかす。

-「▲随出ト」等者、是 レ明ス↧所治ノ八万四千ノ塵労門ノ中ニ、出レバ↢其ノ一門ヲ↡即能ク遂ニ出コトヲ↦余ノ煩悩ノ門ヲ↥。

「随ずい入にゅう」 とらは、 これ能のう治ちの八万はちまん四し千せんの解げ脱だつ門もんの中なかに、 その一門いちもんに入いればすなはちよくつひに余よの解げ脱だつの門もんに入いることを明あかす。 いはく三毒さんどくの中なかにもし多た貪とんの人ひとは、 無む貪とんの善ぜんをもつて貪とん煩悩ぼんのうを治ちして、 しかして後のち自じ然ねんに瞋しんと痴ちと治ちす。 多た瞋しん・多痴たち、 また無む瞋しん・無痴むちの善根ぜんごんをもつて対たい治ちしてしかして後のちまたその余よを治ちすること例れいしてもつて知しるべし。

-「▲随入ト」等者、是 レ明ス↧能治ノ八万四千ノ解脱門ノ中ニ、入レバ↢其ノ一門ニ↡即能ク遂ニ入コトヲ↦余ノ解脱ノ門ニ↥。謂ク三毒ノ中ニ若シ多貪ノ人ハ、以テ↢无貪ノ善ヲ↡治シテ↢貪煩悩ヲ↡、然シテ後自然ニ治ス↢嗔ト与 トヲ↟痴。多嗔・多痴、又以テ↢無嗔・無痴ノ善根ヲ↡対治シテ而後又治スルコト↢其ノ余ヲ↡例シテ以テ応シ↠知ル。

「若にゃく欲よく学がく解げ」 とらは、 学がくは初心しょしん究く竟きょうの一切いっさい諸しょ位いに通つうずべきことを明あかす。

-「▲若欲学解ト」等者、明ス↢学ハ可コトヲ↟通ズ↢初心究竟一切ノ諸位ニ↡。

「若にゃく欲よく学がく行ぎょう」 とらは、 行ぎょうはすべからく有う縁えんの法ほうによるべきことを明あかす。 「有う縁えんの法ほう」 とは意こころは念仏ねんぶつにあり。

-「▲若欲学行ト」等者、明ス↢行ハ須クコトヲ↟依↢有縁之法ニ↡。「▲有縁ノ法ト」者意ハ在リ↢念仏ニ↡。

「又う白びゃく」 以下いげはこれ譬喩ひゆを明あかす。 この譬喩ひゆをいふにあるいは二河にがの譬喩ひゆといひ、 あるいは守しゅ護ご心しんの釈しゃくといふ。

-「▲又白」以下ハ是 レ明ス↢譬喩ヲ↡。言ニ↢此ノ譬喩ヲ↡或ハ云ヒ↢二河ノ譬喩ト↡、或ハ云フ↢守護心ノ釈ト↡。

中なかにおいて二にあり。 初はじめに標ひょう、 次つぎに説せつ。 説せつの中なかにまた三さん、 喩ゆと合ごうと結けつとなり。 一々いちいちの文もん義ぎ、 つぶさに述のぶることあたはず。

-於テ↠中ニ有リ↠二。初ニ標、次ニ説。説ノ中ニ亦三、▲喩ト▲合ト▲結ト也。一々ノ文義、不↠能↢具述↡。

「又う言ごん」 とらは、 重かさねて回え向こうを釈しゃくす。 これすなはち還相げんそう回え向こうの意こころなり。

-「▲又言ト」等者、重テ釈ス↢廻向ヲ↡。斯乃還相廻向ノ意也。

【18】「三心さんしん」 以下いげはこれ総結そうけつの文もんなり。 これに二にの意こころあり。

「▲三心」已下ハ是 レ総結ノ文ナリ。此ニ有リ↢二ノ意↡。

一いちにいはく、 三心さんしん広ひろく万善まんぜん諸しょ行ぎょうにわたる義ぎなり。 これによりてこれをいへば、 もし三心さんしんを具ぐすれば諸しょ行ぎょうみな成じょうず。

-一ニ云ク、三心広ク亘ル↢万善諸行ニ↡義也。依テ↠之1111ニ言ヘバ↠之ヲ、若シ具スレバ↢三心ヲ↡諸行皆成ズ。

¬選せん択じゃく集しゅう¼ に 「総そうじてこれをいへば、 もろもろの行ぎょう法ほうに通つうず」 といへる、 すなはちその意こころなり。

-¬選択集ニ¼云ヘル↣「▲総ジテ而言ヘバ↠之ヲ、通ズト↢諸ノ行法ニ↡」、即其ノ意也。

↓一いちにいはく、 いまこの三心さんしんはこれ念仏ねんぶつに約やくす。 一往いちおう諸しょ行ぎょうに通つうずる辺へんありといへども、 実じつに拠よりてこれを論ろんずれば、 自じ力りきの諸しょ行ぎょうは作さ業ごう成じょうじがたし。 たやすく願がん行ぎょうすでに成じょうずといふべからず。 また往おう生じょうを得うることはひとへにこれ他た力りき念仏ねんぶつの利り益やくなり。 もし諸しょ行ぎょうに約やくせばすなはち若にゃく不ふ生しょう者じゃといふべからず。 ゆゑにいまいふところは、 三心さんしんを具ぐすればすなはち正しょう業ごうを成じょうじてかならず往益おうやくを得うる宗しゅう旨しなり。

-一ニ云、今此ノ三心ハ是 レ約ス↢念仏ニ↡。一往雖↠有ト↧通ズル↢諸行ニ↡辺↥、拠テ↠実ニ論ズレバ↠之ヲ、自力ノ諸行ハ作業難シ↠成ジ。輒ク不↠可↠云↢願行既成ト↡。又得コトハ↢往生ヲ↡偏ニ是 レ他力念仏ノ之利益也。若シ約セバ↢諸行ニ↡即不↠可↠云↢▲若不生者ト↡。故ニ今所ハ↠言、具スレ↢三心ヲ↡者即成ジテ↢正業ヲ↡必得ル↢往益ヲ↡之宗旨也。

同おなじき (選択集意) 次つぎの句くに 「別べっしてこれをいへば、 念仏ねんぶつの行ぎょうにあり」 といへる、 これその義ぎなり。

-同キ次ノ句ニ云ヘル↣「▲別シテ而言ヘバ↠之ヲ、在ト↢念仏ノ行ニ↡」、是 レ其ノ義也。

問とふ。 二義にぎの中なかにいづれをもつてか正しょうとする。

-問。二義ノ之中ニ以テカ↠何ヲ為スル↠正ト。

答こたふ。 当とう流りゅうの意こころによらば、 ↑後のちの義ぎを本ほんとなす。

-答。依ラバ↢当流ノ意ニ↡、後ノ義ヲ為ス↠本ト。

「またこれ」 等とうは、 もし広ひろく諸しょ行ぎょうに通つうずる義ぎによらば、 散さんに限かぎらずまた定じょう善ぜんに通つうずることを顕あらわす。 おほよそ三心さんしんにおいてその二にの意こころあり。 初はじめの義ぎはこれ定じょう散さん諸しょ機き、 自じ力りき各別かくべつ発心ほっしんの義ぎに約やくす。 後のちの義ぎはこれ如来にょらい利他りた、 他た力りき成じょう就じゅ仏願ぶつがんの利り益やくに約やくす。 三心さんしんの大綱たいこうただ一端いったんを示しめす。

-「▲又此レ」等者、若シ依ラ↧広ク通ズル↢諸行ニ↡義ニ↥者、顕ス↣不↠限↠散ニ亦通コトヲ↢定善ニ↡。凡ソ於テ↢三心ニ↡有リ↢其ノ二ノ意↡。初ノ義ハ是 レ約ス↢定散諸機、自力各別発心ノ之義ニ↡。後ノ義ハ是 レ約ス↢如来利他、他力成就仏願ノ利益ニ↡。三心ノ大綱只示シメス↢一端ヲ↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・『般舟讃』文

【19】次つぎの所引しょいんの文もん、 「敬けい白びゃく」 とらは、 ¬般舟はんじゅ讃さん¼ の序じょの最初さいしょの文もんなり。

次ノ所引ノ文、「▲敬白ト」等者、¬般舟讃ノ¼序ノ最初ノ文也。

いふところの三心さんしんは、 これ凡ぼん夫ぶ発ほっ起きの心しんにあらず。 ひとへに如来にょらい利他りたの善ぜん巧ぎょうにあり。 また釈しゃく尊そん種々しゅじゅの方便ほうべんによりてわれらが無む上じょうの信心しんじんを発ほっ起きす。 これすなはち東岸とうがん・西岸さいがん、 発遣はっけん・招しょう喚かんの義ぎなり。 この義ぎを顕あらわさんがためにいまこの文もんを引ひく。

-所ノ↠言三心ハ、此レ非ズ↢凡夫発起ノ之心ニ↡。偏ニ在リ↢如来利他ノ善巧ニ↡。又依テ↢釈尊種々ノ方便ニ↡発↢起ス我等ガ無上ノ信心ヲ↡。是則東岸・西岸、発遣・招喚ノ義也。為ニ↠顕サンガ↢此ノ義ヲ↡今引ク↢此ノ文ヲ↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・『礼讃』文

【20】次つぎの所引しょいんの文もん。

▲次ノ所引ノ文。

問とふ。 上かみの第だい二に巻かんにすでにいまの文もんを引ひく。 なんぞ重かさねて出いだすや。

-問。上ノ▲第二巻ニ已ニ引ク↢今ノ文ヲ↡。何ゾ重テ出耶。

答こたふ。 同文どうもんたりといへども、 所用しょようすでに異いなり。 このゆゑに重かさねて引ひく。

-答。雖↠為↢同文↡、所用既ニ異ナリ。是ノ故ニ重テ引ク。

そのゆゑに前さきの巻かんには行ぎょうに就つきてこれを引ひく。 「及ぎゅう称しょう名みょう号ごう下至げし十じっ声しょう一いっ声しょう」 (行巻) 等とうなり。 当巻とうかんの中なかには信しんに就つきてこれを引ひく。 あるいは 「即そく是ぜ真実しんじつ信心しんじん」 といひ、 あるいは 「信しん知ち弥陀みだ本ほん弘ぐ誓ぜい願がん」 といひ、 あるいは「乃ない至し一念いちねん無有むう疑ぎ心しん」 といふ等とうなり。

-所以ソヘニ前ノ巻ニハ就テ↠行ニ引ク↠之ヲ。「▲及称名号下至十声一声」等1112也。当巻之中ニハ就テ↠信ニ引ク↠之ヲ。或ハ云ヒ↢「▲即是真実信心ト」↡、或ハ云ヒ↢「▲信知弥陀本弘誓願ト」↡、或ハ云フ↢「▲乃至一念無有疑心ト」↡等也。

おほよそこの鈔しょうのごときの、 あるいは経釈きょうしゃくの文もん、 あるいは譬喩ひゆ等とう、 その所用しょように就つきて重かさねて引用いんようするところその例れいなきにあらず。 かの ¬要よう集しゅう¼ の住じゅう水すい宝珠ほうしゅの譬たとえ、 広こう略りゃくありといへども再ふたたびもつてこれを出いだすがごとし。 また観察かんざつ門もんの総相そうそう・雑ぞう略りゃくの両りょう観かんに、 同おなじく 「光こう明みょう遍へん照じょう十方じっぽう世せ界かい念仏ねんぶつ衆しゅ生じょう摂取せっしゅ不ふ捨しゃ」 (観経) の文もんを挙あげて、 わたくしの釈しゃくに同おなじく 「七しち百ひゃく五ご倶く胝てい六ろっ百ぴゃく万まんの光こう明みょう」 (要集巻中) の計け校きょうを載のする等とうこれなり。

-凡ソ如ノ↢此ノ鈔↡、或ハ経釈ノ文、或ハ譬喩等、就テ↢其ノ所用ニ↡重テ所↢引用スル↡非ズ↠無ニ↢其ノ例↡。如シ↧彼ノ¬要集ノ¼▲住水宝珠ノ之譬、雖↠有ト↢広略↡再以テ出ガ↞之ヲ。又観察門ノ総相・雑略ノ両観ニ、同ク挙テ↢「▲光明遍照十方世界念仏衆生摂取不捨」之文ヲ↡、私ノ釈ニ同ク載スル↢「▲七百五倶胝六百万ノ光明ノ」之計校ヲ↡等是也。

「其有ごう得聞とくもん」 とらは、 ¬大だい経きょう¼ の流る通ずうの文もんの意こころ、 「歓かん喜ぎ至し一念いちねん」 とは、 これ信心しんじんを顕あらわす貌かおばせなり。 このゆゑにこの次つぎにこれを出いだす。

-「▲其有得聞ト」等者、¬大経ノ¼流通ノ文ノ意、「▲歓喜至一念ト」者、是 レ顕ス↢信心ヲ↡貌也。是ノ故ニ此ノ次ニ出ス↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ・『要集』二文

【21】次つぎに ¬要よう集しゅう¼ の文もんは、 上じょう巻かんの釈しゃくなり。

▲次ニ¬要集ノ¼文ハ、上巻ノ釈也。

大文だいもん第だい四し正しょう修しゅ念仏ねんぶつ作さ願がん門もんの中なかに、 菩ぼ提だい心しんの行ぎょう相そうを明あかす文もんなり。 前ぜん後ごに挙あぐるところ多おおくの譬喩ひゆあり。 いまはその二にを出いだす。 前さきの巻かんに出いだすところの波利はり質多した樹じゅの譬喩ひゆ、 すなはちその類たぐいなり。

-大文第四正修念仏作願門ノ中ニ、明ス↢菩提心ノ行相ヲ↡文也。前後ニ所↠挙ル有リ↢多ノ譬喩↡。今出ス↢其ノ二ヲ↡。▲前ノ巻ニ所ノ↠出波利質多樹之譬喩、即其ノ類也。

【22】次つぎの所引しょいんの釈しゃくは、 中ちゅう巻かんの初はじめの文もん。

▲次ノ所引ノ釈ハ、中巻ノ初ノ文。

同おなじき観察かんざつ門もんに分わかちてもつて三さんとなす。 一いちには別相べっそう観かん、 二にには総相そうそう観かん、 三さんには雑ぞう略りゃく観かんなり。 いまの釈しゃくは第三だいさんの雑ぞう略りゃく観かんの文もん、 真身しんしん観かん (観経) の 「光こう明みょう遍へん照じょう十方じっぽう世せ界かい念仏ねんぶつ衆しゅ生じょう摂取せっしゅ不ふ捨しゃ」 の意こころによりてこれを釈しゃくす。 経きょう文もん定じょう善ぜんの文もんの中なかにありといへども、 これ称名しょうみょう念仏ねんぶつの利り益やくを顕あらわす。 かの ¬疏しょ¼ (定善義) の釈しゃくに 「唯ゆい標ひょう専念せんねん名みょう号ごう得とく生しょう」 といひて、 広ひろく三さん経ぎょうを引ひきて名みょう号ごうの義ぎを成じょうず。 いまの釈しゃくまた同おなじ。 この文もん観察かんざつ門もんの中なかにありといへども、 念仏ねんぶつの益やくを明あかすことかれに準じゅんじて知しるべし。

-同キ観察門ニ分テ以テ為ス↠三ト。一ニハ別相観、二ニハ総相観、三ニハ雑略観ナリ。今ノ釈ハ第三ノ雑略観ノ文、依テ↢真身観ノ「▲光明遍照十方世界念仏衆生摂取不捨ノ」之意ニ↡釈ス↠之ヲ。経文雖↠在ト↢定善ノ文ノ中ニ↡、是顕ス↢称名念仏ノ利益ヲ↡。彼ノ¬疏ノ¼釈ニ云テ↢「▲唯標専念名号得生ト」↡、広ク引テ↢三経ヲ↡成ズ↢名号ノ義ヲ↡。今ノ釈1113又同ジ。此ノ文雖↠在ト↢観察門ノ中ニ↡、明コト↢念仏ノ益ヲ↡*准ジテ↠彼ニ応シ↠知。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ 総結

【23】次つぎにわたくしの御おん釈しゃく。

次ニ私ノ御釈。

「爾に者しゃ」 とらは、 総そうじて上じょう来らいの諸文しょもんを結けっして、 みな如来にょらいの回え向こう成じょう就じゅの義ぎを顕あらわすらくのみ。

-「▲爾者ト」等者、総ジテ結シテ↢上来ノ諸文ヲ↡、皆顕スラク↢如来ノ廻向成就ノ義ヲ↡耳ノミ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ 初問答(字訓釈)

【24】次つぎに二に重じゅうの問答もんどうある中なかに、 初はじめの問答もんどうは、

次ニ有ル↢二重ノ問答↡之中ニ、▲初ノ問答者、

広ひろく字じ訓くんを挙あげて三心さんしん一心いっしんの義ぎを成じょうずることを明あかす。 字じ訓くんいまだことごとく本文ほんもんを勘かんがへ得えず。 ▼博覧はくらんの宏才こうさい仰あおぐべし、 信しんずべし。

-▲広ク挙テ↢字訓ヲ↡明ス↠成ズルコトヲ↢三心一心ノ之義ヲ↡。字訓未ダ↣悉ク勘↢得本文ヲ↡。博覧ノ宏才可シ↠仰、可シ↠信。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ 次問答(法義釈)

【25】次つぎの問答もんどうは、

▲次ノ問答者、

この三心さんしんさらに凡ぼん夫ぶ発ほっ起きの心しんにあらず、 如来にょらいの回え向こう成じょう就じゅのゆゑに、 この信心しんじんを得う、 このゆゑに名なづけて真実しんじつ心しんとなすことを明あかすなり。

-明ス↧此ノ三心更ニ非ズ↢凡夫発起ノ之心ニ↡、如来ノ廻向成就ノ之故ニ、得ウ↢此ノ信心ヲ↡、是ノ故ニ名テ為コトヲ↦真実心ト↥也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ 至心

【26】次つぎに 「答とう」 言ごんの下しもに、 至し心しんを解げする中なかに、

次ニ「▲答」言ノ下ニ、▲解スル↢至心ヲ↡中ニ、

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『大経』文

引ひくところの ¬大だい経きょう¼ の上じょう巻かんの文もんは、

-所ノ↠引ク▲¬大経ノ¼上巻ノ文者、

これ法蔵ほうぞう菩ぼ薩さつ因いん中ちゅう所修しょしゅの行ぎょう、 みな衆しゅ生じょう得脱とくだつの因いん、 大だい悲ひ回え向こう成じょう就じゅの相そうたることを説とく。

-是 レ説ク↣法蔵菩薩因中所修ノ之行、皆為コトヲ↢衆生得脱ノ之因、大悲廻向成就ノ之相↡。

「不ふ生しょう」 とらは、 離り煩悩ぼんのうを明あかす。

-「▲不生ト」等者、明ス↢離煩悩ヲ↡。

これに就つきて二にあり、 初はじめには自じ行ぎょうを明あかし、 次つぎには↓利他りたを明あかす。 自じ行ぎょうを明あかす中なかにまた四事しじあり。 いまの文もん以下いげの六ろっ句くは離り煩悩ぼんのうの因縁いんねんを明あかす。

-就テ↠此ニ有リ↠二、初ニハ明シ↢自行ヲ↡、次ニハ明ス↢利他ヲ↡。明ス↢自行ヲ↡中ニ又有リ↢四事↡。今ノ文以下ノ六句ハ明ス↢離煩悩ノ因縁ヲ↡。

「不ふ生しょう」 とらは、 浄じょう影よう師し (大経義疏巻上) のいはく、 「覚かくに八種はっしゅあり、 ¬地持じじ¼ に説とくがごとし。 一いちにはこれ欲覚よくかく、 財ざいを思おもひ色しきを思おもふ。 二ににはこれ瞋覚しんかくまたは恚い覚かくと名なづく、 思おもひ他たを瞋いからんと欲ほっす。 三さんには害覚がいかくまた悩覚のうかくと名なづく、 他た人にんの所ところにおいて念おもひ害がいを加くわへんと欲ほっす。 四しには親覚しんかく、 追おひて親縁しんえんを憶おもふ。 五ごには国こく土ど覚かく、 世よの安あん危きを念おもふ。 六ろくには不死ふし覚かく、 身み死しせじと謂おもつて広ひろく資し生しょうを集あつむ。 七しちには族ぞく姓しょう覚かく、 氏し族ぞくの下くだれることを念おもふ。 八はちには軽きょう誣ふ覚かく、 他た人にんを陵しのがんことを念おもふ。 この八種はっしゅの中なかに、 初はじめの三さんは過とが重おもし、 これがためにひとへに挙あぐ。」 以上

-「不生ト」等者、浄影師ノ云ク、「覚ニ有リ↢八種↡、如シ↢¬地持ニ¼説ガ↡。一ニハ是 レ欲覚、思ヒ↠財ヲ思フ↠色ヲ。二ニハ是 レ瞋覚亦ハ名ク↢恚覚ト↡、思ヒ欲ス↠瞋ント↠他ヲ。三者害覚亦ハ名ク↢悩覚ト↡、於テ↢他人ノ所ニ↡念欲ス↠加ント↠害ヲ。四者親覚、追テ憶フ↢親縁ヲ↡。五ニハ国土覚、念フ↢世ノ安危ヲ↡。六ニハ不死覚、謂オモテ↢身不ジト↟死セ広ク集ム↢資生ヲ↡。七ニハ族姓覚、念フ↢氏族ノ下クダレルコトヲ↡。八ニハ軽誣 フ シコツ覚、念フ↠陵シノガンコトヲ↢他人ヲ↡。此ノ八種ノ中ニ、初ノ三ハ過重シ、為ニ↠是ガ偏ニ挙グ。」 已上

「欲想よくそう」 とらは、

-「▲欲想ト」等者1114、

また同どう師し (浄影観経義疏巻上) いはく、 「不起ふき欲想よくそう・瞋想しんそう・害想がいそうは、 重かさねてまたこれを顕あらわす。」 以上

-又同師云、「不起欲想・瞋想・害想ハ、重テ復顕ス↠之ヲ。」 已上

憬きょう興ごう師し (述文賛巻中) いはく、 「いまはすなはち三覚さんかくの因いん、 次ついでのごとく三想さんそう、 境きょうの分斉ぶんざいを取とりて、 まさに欲等よくとうを生しょうずるがゆゑに、 しかもすなはち名みょう利りを貪とんせざるがゆゑに欲覚よくかくを生しょうぜず。 衆しゅ生じょうを悩なやまさざるがゆゑに瞋覚しんかくを生しょうぜず。 物ものの命いのちを損そんせざるがゆゑに害覚がいかくを生しょうぜず。 三覚さんかく生しょうぜざればかならず三想さんそうを絶たつ。」 以上

-憬興師云、「今ハ即三覚ノ之因、如ク↠次ノ三想、取テ↢境ノ分斉ヲ↡、方ニ生ズルガ↢欲等ヲ↡故ニ、然モ即不ルガ↠貪セ↢名利ヲ↡故ニ不↠生ゼ↢欲覚ヲ↡。不ルガ↠悩サ↢衆生ヲ↡故ニ不↠生ゼ↢嗔覚ヲ↡。不ルガ↠損セ↢物ノ命ヲ↡故ニ不↠生ゼ↢害覚ヲ↡。三覚不レバ↠生必絶ツ↢三想ヲ↡。」 已上

「不ふ著じゃく」 とらは、

-「▲不著ト」等者、

また同おなじき師し (述文賛巻中) のいはく、 「内因ないいんすでに離はなれ外げ縁えんここに止やむ、 ゆゑに不ふ著じゃくといふ。」 以上

-又同キ師ノ云、「内因既ニ離レ外縁斯ニ止ム、故ニ云フ↢不著ト↡。」 已上

「忍力にんりき成じょう就じゅ」 以下いげの二句にくは法ほうの対たい治じを明あかす。

-「▲忍力成就」以下ノ二句ハ明ス↢法ノ対治ヲ↡。

同どう師し (述文賛巻中) のいはく、 「忍力にんりきとは、 安受あんじゅ苦くと、 耐ない怨害おんがいと察さつ法忍ほうにんとなり。 この忍力にんりきをもつてよく損悩そんのうを忍しのぶ、 ゆゑに三覚さんかくと三想さんそうとを離はなる。」 以上

-同師ノ云、「忍力ト者、安受苦ト、耐ナイタヘタリ怨害ト、察法忍ト也。以テ↢此ノ忍力ヲ↡能ク忍ブ↢損悩ヲ↡、故ニ離ル↢三覚ト三想トヲ↡。」 已上

「少しょう欲よく」 とらは、

-「▲少欲ト」等者、

法ほう位い師し (大経義疏巻上) のいはく、 「未み来らいにおいて多おおく求もとめざるを少しょう欲よくと名なづく。 現在げんざいにおいて希け望もう満まんずるを知ち足そくと名なづく。」 以上

-法位師ノ云ク、「於テ↢未来ニ↡不ルヲ↢多ク求メ↡名ク↢少欲ト↡。於テ↢現在ニ↡希望満ズルヲ名ク↢知足ト↡。」 已上

「無む染ぜん恚痴いち」 とは、 煩悩ぼんのうの体たいを離はなるることを明あかす。 煩悩ぼんのうの体たいとはすなはちこれ三毒さんどく、 いはく貪とん・瞋しん・痴ち、 また婬いん・怒ぬ・痴ちなり。

-「▲无染恚痴ト」者、明ス↠離コトヲ↢煩悩ノ体ヲ↡。煩悩ノ体ト者即是三毒、謂ク貪・嗔・痴、又婬・怒・痴ナリ。

ゆゑに法ほう位い (大経義疏) のいはく、 「無む染ぜん恚痴いちとは三毒さんどくを絶たつ。」 以上

-故ニ法位ノ云ク、「无染恚痴ト者絶ツ↢三毒ヲ↡。」 已上

また義ぎ寂じゃく師し (大経義記巻中) ¬般若はんにゃ¼ を引ひきていはく、 「菩ぼ薩さつは婬いん・怒ぬ・痴ちを遠おん離りす、 婬いん・怒ぬ・痴ち不可ふか見けんのゆゑにこれを婬いん・怒ぬ・痴ちを遠おん離りすと名なづく。」 以上

-又義寂師引テ↢¬般若ヲ¼↡云、「菩薩ハ遠↢離ス婬・怒・痴ヲ↡、婬・怒・痴不可見ノ故ニ是ヲ名ク↣遠↢離スト婬・怒・痴ヲ↡。」 已上

「三昧さんまい」 とらは、

-「▲三昧ト」等者、

浄じょう影ようの意こころによるに、 「三昧さんまい」 は止しに約やくし、 「智慧ちえ」 は観かんに約やくす。 「常寂じょうじゃく」 を深じんといひ 「無礙むげ」 を勝しょうといふ。

-依ニ↢浄影ノ意ニ↡、「三昧ハ」約シ↠止ニ「▲智恵ハ」約ス↠観ニ。「▲常寂ヲ」云ヒ↠深ト「▲無ヲ」云フ↠勝ト。

「無有むう虚偽こぎ」 以下いげの四句しくは、 これ↑化他けたを明あかす。

-「▲无有虚偽」以下ノ四句ハ、是 レ明ス↢化他ヲ↡。

浄じょう影よう・憬きょう興ごう同おなじく三業さんごうに約やくす。 ゆゑに浄じょう影よう (大経義疏巻下) のいはく、 「無有むう諂曲てんごくは心しん過かを離はなるることを明あかす、 和わ顔げんといふは身しん過かを離はなるることを明あかす、 愛あい語ご先問せんもんは口過くかを離はなるることを明あかす。」 以上

-浄影・憬興同ク約ス↢三業ニ↡。故ニ浄影ノ云ク、「無有諂曲ハ明ス↠離コトヲ↢心過ヲ↡、言↢和顔ト↡者明ス↠離コトヲ↢身過ヲ↡、愛語先問ハ明ス↠離コトヲ↢口過ヲ↡。」 已上

「勇ゆう猛みょう」 の下しもは善法ぜんぽうを修しゅすることを明あかす。

-「▲勇猛ノ」之下ハ明ス↠修スルコトヲ↢善法ヲ↡。

中なかにおいて三さんあり。 初はじめの四句しくは無む間けん修しゅを明あかす。 「恭く敬ぎょう三宝さんぼう」 以下いげの六ろっ句くは恭く敬ぎょう修しゅを明あかす。 「住じゅう空くう」 以下いげは行成ぎょうじょう修礼しゅらい、 ただしいまの所引しょいんは恭く敬ぎょう修しゅに至いたる第三だいさんを除のぞくなり。

-於テ↠中ニ有リ↠三。▲初ノ之四句1115ハ明ス↢無間修ヲ↡。「▲恭敬三宝」以下ノ六句ハ明ス↢恭敬修ヲ↡。▲「住空」已下ハ行成修礼、但シ今ノ所引ハ至ル↢恭敬修ニ↡除ノゾク↢第三ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『如来会』文

【27】次つぎに ¬無む量りょう寿じゅ如来にょらい会え¼ の文もん。 文言もんごんいささか異ことなれども意こころ ¬大だい経きょう¼ に同おなじ。

▲次ニ¬無量寿如来会ノ¼文。文言聊異ナレドモ意同ジ↢¬大経ニ¼↡。

「法処ほうしょ」 といふはすなはちこれ法蔵ほうぞう。 「世せ間けん自じ在ざい王おう如来にょらい」 とはすなはち世せ自じ在ざい王おう仏ぶつこれなり。 「間けん」 の字じの有無うむ、 両りょう経きょうの異いならくのみ。

-言↢「▲法処ト」↡者即是 レ法蔵。「▲世間自在王如来ト」者即世自在王仏是 レ也。「間ノ」字ノ有無、両経ノ異ナラク耳ノミ。

問とふ。 至し心しんを釈しゃくする中なかに両経りょうきょうの文もんを引ひく。 これなんの意こころや。

-問。釈スル↢至心ヲ↡中ニ引ク↢両経ノ文ヲ↡。是 レ何ノ意耶。

答こたふ。 如来にょらいの至し心しんを真実しんじつ心しんとなす。 その真心しんしんをもつて衆しゅ生じょうに回施えせす。 仏ぶつの因いん中ちゅうの真実しんじつ心しんの相そうを説とき、 また回施えせ功く徳どくの義ぎを説とくこと、 これらの経きょう説せつともにもつて分ぶん明みょうなり。 ゆゑにこれを引ひくなり。

-答。如来ノ至心ヲ為ス↢真実心ト↡。以テ↢其ノ真心ヲ↡廻↢施ス衆生ニ↡。説キ↢仏ノ因中ノ真実心ノ相ヲ↡、又説コト↢廻施功徳之義ヲ↡、此等ノ経説共ニ以テ分明ナリ。故ニ引↠之ヲ也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・「散善義」文

【28】次つぎの所引しょいんの文もんは、 ¬観かん経ぎょう義ぎ¼ (散善義) の釈しゃく。

▲次ノ所引ノ文ハ、¬観経義ノ¼釈。

いまの文もん前さきにあり。 なんぞ重かさねて引ひくや。

-*今ノ文在リ↠▲前ニ。何ゾ重テ引耶。

答こたふ。 その当要とうように就つきて重じゅう引いんを憚はばからざること子し細さい▲上かみに述のぶ。 いままた同前どうぜん。 いはんや広こう略りゃくを存ぞんず。 異いなきにあらざるか。 いはく上かみの所引しょいんは三心さんしんの総そう釈しゃく、 わたくしの釈しゃくを加くわへず。 いまは別べつにみづから三心さんしんの義ぎを解げす。 その中なかにほぼ本文ほんもんの言ことばを引ひきて広博こうはくに及およばず。 これ前さきと異いなり。

-答。就テ↢其ノ当要ニ↡不コト↠憚↢重引ヲ↡子細述ブ↠上ニ。今又同前。況ヤ存ズ↢広略ヲ↡。非ル↠無ニ↠異歟。謂ク上ノ所引ハ三心ノ総釈、不↠加↢私ノ釈ヲ↡。今ハ▲別ニ自ミ 解ス↢三心ノ之義ヲ↡。其ノ中ニ粗 ヾ引テ↢本文ノ之言ヲ↡不↠及↢広博ニ↡。是与↠前異ナリ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『涅槃経』文

【29】問とふ。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ を引ひきて何事なにごとを証しょうするをや。

問。▲引テ↢¬涅槃経ヲ¼↡証スルヲ↢何事ヲ↡耶。

答こたふ。 真実しんじつ心しんとは、 如来にょらいの意こころ、 衆しゅ生じょうに関あずからず、 この義ぎを証しょうせんがためにこの文もんを引ひくなり。

-答。真実心ト者、如来之意、不↠関カラ↢衆生ニ↡、為ニ↠証センガ↢此ノ義ヲ↡引ク↢此ノ文ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ○ 私釈(内外明暗釈)

【30】「釈しゃくに不ふ簡けん明みょう闇あんといふ」 とらは、 これまた同おなじく ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の説せつによりてその内ない外げ明みょう闇あんの義ぎを解げす。

「▲*釈ニ云↢不簡明闇ト↡」等者、是 レ又同ク依テ↢¬涅槃経ノ¼説ニ↡解ス↢其ノ内外明闇之義ヲ↡。

弥陀みだの妙みょう果かは無む上じょう涅ね槃はん、 念仏ねんぶつはすなはちこれ涅ね槃まんの門もんなり。 このゆゑに聖しょう道どうの教きょう理りを説とくといへども、 悉しつ有う仏ぶっ性しょう、 如来にょらい常住じょうじゅう、 甚深じんじんの極ごく理り、 ただこれ弥陀みだ如来にょらいの果か徳とくなり。 聖しょう人にんの賢慮けんりょしかしながらこの義ぎを存ぞんじたまふ。 仰あおぎて依え信しんすべし、 疑ぎ慮りょを懐いだくことなかれ。

-弥1116陀ノ妙果ハ無上涅槃、念仏ハ即是涅槃ノ之門ナリ。是ノ故ニ雖↠説ト↢聖道ノ教理ヲ↡、悉有仏性、如来常住、甚深ノ極理、唯是弥陀如来ノ果徳ナリ。聖人ノ賢慮併ラ存ジタマフ↢此ノ義ヲ↡。仰テ可シ↢依信ス↡、勿レ↠懐コト↢疑慮ヲ↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ 信楽

【31】次つぎに信しん楽ぎょうの中なかに、

▲次ニ信楽ノ中ニ、

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ○ 私釈

「即そく以い利他りた回え向こう」 とらは、

-「▲即以利他廻向ト」等者、

問とふ。 至し心しん・信しん楽ぎょう・欲よく生しょうの三信さんしんその相そう各別かくべつなり、 なんぞ至し心しんを釈しゃくして信しん楽ぎょうの体たいとする。 また 「貪愛とんない之し心しん常じょう能のう」 とらは、 これ回え向こう心しんの譬喩ひゆなり。 また下しもにあるいは 「急きゅう作さ急きゅう修しゅ」 といひ、 あるいは 「衆しゅ名みょう雑毒ぞうどく」 とらいふは至し誠じょう心しんの釈しゃくなり。 なんぞ猥みだりがはしく三心さんしんの解げ釈しゃくを混乱こんらんする。

-問。至心・信楽・欲生ノ三信其ノ相各別ナリ、何ゾ釈シテ↢至心ヲ↡為スル↢信楽ノ体ト↡。又「▲貪愛之心常能ト」等者、是 レ廻向心ノ之譬喩也。又下ニ或ハ云ヒ↢「▲急作急修ト」↡、或ハ云↢「▲衆名雑毒ト」等↡者至誠心ノ釈ナリ。何ゾ猥ク混↢乱スル三心ノ解釈ヲ↡。

答こたふ。 開かいすれば三信さんしんたり、 合がっすれば一心いっしんたり。 よりて三心さんしん一いち異いの義ぎあり。 このゆゑに三心さんしんすなはちこれ一心いっしんなる義ぎを標ひょうせんがために、 ことさらに三信さんしん彼此ひしの文もんを綺いろへて釈しゃくせらるところなり。

答。開スレバ為タリ↢三信↡、合スレバ為タリ↢一心↡。仍テ有リ↢三心一異之義↡。是ノ故ニ為ニ↠標センガ↢三心即是一心ナル之義ヲ↡、故ニ綺イロヘテ↢三信彼此ノ之文ヲ↡所↠被↠釈セ也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『大経』¬如来会』文

【32】次つぎの所引しょいん二に文もんの中なかに、

▲次ノ之所引二文ノ*之中ニ、

後のちの文もんは異い訳やくの経きょう説せつたりといへども、 *前さきの巻かんに述のぶるがごとく、 梵本ぼんぽん同おなじきによりて 「又う云うん」 といふか。

-▲後ノ文ハ雖↠為ト↢異訳ノ経説↡、如ク↢△前ノ巻ニ述ルガ↡、依テ↢梵本同キニ↡言↢「又云ト」↡歟。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『涅槃経』三文

【33】次つぎに ¬涅ね槃はん経ぎょう¼、 文もんに三段さんだんあり。 初はじめの文もんの中なかに就つきて、

▲次ニ¬涅槃経¼、文ニ有リ↢三段↡。就テ↢初ノ文ノ中ニ↡、

「仏ぶっ性しょう」 といふは大だい信心しんじんに名なづく。 また下しもに説ときて 「大だい信心しんじんとはすなはちこれ仏ぶっ性しょうなり」 といふ。 その大だい信心しんじんはすなはちこれ如来にょらい回え向こう利他りたの信心しんじん、 これはこれ証しょう得とく往おう生じょう必ひっ至し涅ね槃はんの真因しんいんなり。 一切いっさいこの他た力りき往おう生じょう清しょう閑げんの一道いちどうによりて、 ことごとくみな凡ぼん聖しょう斉円さいえんの妙みょう理りを顕あらわすべし。 ゆゑに一切いっさい衆しゅ生じょうことごとく仏ぶっ性しょうあり。 その仏ぶっ性しょうとはすなはちいまの信心しんじんなり。 深ふかくこの義ぎを得えてこの文もんを引用いんようす。

-云↢「▲仏性」↡者名ク↢大信心ニ↡。又下ニ説テ云↢「▲大信心者即是仏性也ト」↡。其ノ大信心ハ即是如来廻向利他ノ信心、此ハ是 レ証得往生必至涅槃ノ之真因也。一切依テ↢此ノ他力往生清閑ノ一道ニ↡、咸ク皆可↠顕ス↢凡聖斉円ノ之妙理ヲ↡。故ニ一切衆生悉ク有リ↢仏性↡。其ノ仏性ト者即今ノ1117信心ナリ。深ク得テ↢此ノ義ヲ↡引↢用ス此ノ文ヲ↡。

「一いっ子し地じ」 とは初しょ歓かん喜ぎ地じ、 安あん養にょうの報ほう土ど、 衆しゅ生じょう生しょうずる者ものみなこれ阿鞞あび跋ばっ致ちの位くらい、 往おう生じょうの人ひとすなはち初しょ地じに登のぼりて無む生しょうを証しょう悟ごす。 涅ね槃はん醒だい醐ご真しん常じょうの説せつ、 ひそかにこの義ぎに契かなふ。

-「▲一子地ト」者初歓喜地、安養ノ報土、衆生生ズル者皆是阿鞞跋致之位、往生之人即登テ↢初地ニ↡証↢悟ス無生ヲ↡。涅槃醒醐真常ノ之説、潜ニ契フ↢其ノ義ニ↡。

【34】次つぎの所引しょいんの文もん、 菩ぼ提だいの妙みょう果か、 信心しんじんを因いんとなす。 また浄じょう土ど真実しんじつの信心しんじんを顕あらわす。

▲次ノ所引ノ文、菩提ノ妙果、信心ヲ為ス↠因ト。又顕ス↢浄土真実ノ信心ヲ↡。

【35】後のちの所引しょいんの文もん、

▲後ノ所引ノ文、

これに二に重じゅうあり。 ともに信しん不ふ具ぐ足そくの義ぎを明あかす。 ここに翻ひるがえして信心しんじん具ぐ足そくを知りるべし。 ゆゑに文もんの意こころを案あんずるに、

-此ニ有リ↢二重↡。共ニ明ス↢信不具足ノ之義ヲ↡。翻シテ↠此ニ可シ↠知↢信心具足ヲ↡。故ニ案ズルニ↢文ノ意ヲ↡、

上かみは聞もん思しの所しょ生しょうに就つきて信しん具不ぐふの義ぎを解げす。 信心しんじんもし思しより生しょうぜば、 信心しんじん具ぐ足そくと名なづくべし。

-▲上ハ就テ↢聞思ノ所生ニ↡解ス↢信具不ノ之義ヲ↡。信心若シ従↠思生ゼバ、可シ↠名ク↢信心具足ト↡。

下しもの文もんの意こころは、 所得しょとくの道どうと能得のうとくの人にんとに就つきて具不ぐふの義ぎを解げす。 またもし得道とくどうの人ひとありと信しんぜば、 これを名なづけて信心しんじん具ぐ足そくといふべし。

-▲下ノ文ノ意者、就テ↣所得ノ道ト与 トニ↢能得ノ人↡解ス↢具不ノ義ヲ↡。又若シ信ゼバ↠有ト↢得道ノ之人↡、名テ↠之ヲ応シ↠言フ↢信心具足ト↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『華厳経』三文

【36】次つぎに ¬華け厳ごん経ぎょう¼ に、 また三段さんだんあり。

次ニ▲¬*花厳経ニ¼、又有リ↢三段↡。

初はじめに五ご言ごんの一いち四し句く偈げあり。

-▲初ニ有リ↢五言ノ一四句偈↡。

問とふ。 この経きょう文もんを引ひくなんの要ようかあるや。

-問。引ク↢此ノ経文ヲ↡有↢何ノ要カ↡乎。

答こたふ。 いまの経きょう文もんの意こころ、 ほぼ歓かん喜ぎ信しん楽ぎょうの説せつに会えし、 また無疑むぎ無む慮りょの信しんに順じゅんず。 このゆゑに歓かん喜ぎ・信しん楽ぎょう・深信じんしんの義ぎを助たすけんがためにこれを引ひかるるか。

-答。今ノ経文ノ意、粗会シ↢歓喜信楽ノ之説ニ↡、又順ズ↢無疑無慮ノ之信ニ↡。是ノ故ニ為ニ↠助ンガ↢歓喜・信楽・深信ノ之義ヲ↡被↠引↠之ヲ歟。

ただし彰しょう灼しゃくに弥陀みだ浄じょう土どの利り生しょうを説とかずといへどもその意こころひそかに通つうず。 また天台てんだい (法華玄義巻十下) のいはく、 「初しょ後ごの仏ぶっ慧て、 円頓えんどん義ぎ斉ひとし。」 以上 ¬華け厳ごん¼ の意こころ、 また違いすべからず。 随したがひて普ふ賢げんの十じゅう願がんの意こころ、 勧すすむるところもつぱら安あん養にょうの往詣おうげいにあり。

-但シ雖↢彰灼アキラカニ不ト↟説↢弥陀浄土ノ利生ヲ↡其ノ意潜ニ通ズ。又天臺ノ云、「初後ノ仏恵、円頓義斉シ。」 已上 ¬*花厳ノ¼之意、又不↠可↠違ス。随而普賢ノ十願ノ之意、所↠勧ル専在リ↢安養ノ往詣ニ↡。

これらの意こころによるに、 ¬法ほっ華け¼・¬華け厳ごん¼ 以下いげの諸しょ経きょう、 みな隠おんにかの弥陀みだの利り生しょうを顕あらわす。 上しょう人にん深ふかく一代いちだいの諸しょ教きょう、 みな弥陀みだ大だい悲ひの利り益やくを顕あらわすことを解げしたまふ。 これらの意こころを得えて諸文しょもんを見みつべし。

-依ニ↢此レ等ノ意ニ↡¬法*花¼・¬華厳¼以下ノ諸経、皆隠ニ顕ス↢彼ノ弥陀ノ利生ヲ↡。上人深ク解シタマフ↣一代ノ諸教、皆顕コトヲ↢弥陀1118大悲ノ利益ヲ↡。得テ↢此等ノ意ヲ↡可シ↠見↢諸文ヲ↡。

【37】後のちの所引しょいんの文もん、 これに七言しちごん四し十じゅう七しち行ぎょう九く十じゅう四句しくあり。

▲後ノ所引ノ文、此ニ有リ↢七言四十七行九十四句↡。

挙あぐるところの偈げ頌じゅ句く数しゅ多おおしといへども、 信しんを根本こんぽんとなしてみなその徳とくを嘆たんず。 いまこの文もんを引ひく。 その意こころここにあり。 ただし諸しょ句くの中なかに嘆たんずるところその信心しんじんにあらざるありといへども、 展転てんでんの勝しょう利りしかしながら信しんの功こうたり。 一々いちいちの句義くぎ、 その意こころ見みつべし。

-所ノ↠挙ル偈頌句数雖↠多ト、信ヲ為シテ↢根本ト↡皆嘆ズ↢其ノ徳ヲ↡。今引ク↢此ノ文ヲ↡。其ノ意在リ↠斯ニ。但シ諸句ノ中ニ雖↠有ト↣所↠嘆ズル非ザル↢其ノ信心ニ↡、展転ノ勝利併ラ為タリ↢信ノ功↡。一々ノ句義、其ノ意可シ↠見ツ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『論註』文

【38】次つぎに ¬論ろんの註ちゅう¼ の文もん、 文言もんごん少すくなしといへどもこれに二に段だんあり。 二に文もんともにこれ下げ巻かんの釈しゃくなり。

次ニ▲¬論ノ註ノ¼文、文言雖↠少シト此ニ有リ↢二段↡。二文共ニ是 レ下巻ノ釈也。

その中なかに上かみの文もんは讃嘆さんだん門もんの釈しゃく、 下しもの文もんは末まつ後ごの結文けつもんならくのみ。

-其ノ中ニ▲上ノ文ハ讃嘆門ノ釈、▲下ノ文ハ末後ノ結文而已ナラクノミ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ 欲生
              ・ 願成就文

【39】次つぎに願がん成じょう就じゅの文もん、 これ全文ぜんもんにあらず。

▲次ニ願成就ノ文、此レ非ズ↢全文ニ↡。

次つぎの所引しょいんの文もん、 「又う言ごん」 前さきのごとし。

-▲次ノ所引ノ文、「又言」△如シ↠前ノ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・『論註』三文

【40】次つぎに ¬浄じょう土ど論ろん¼ (論註)、 これに三段さんだんあり。

次ニ▲¬浄土論¼、此ニ有リ↢三段↡。

初はじめの文もんは引ひきて第だい二に巻かんの中なかにあり。 ただし「還相げんそうとは」 以下いげの釈しゃく文もん、 いまこれを引ひき加くわふ。

-初ノ文ハ引テ在リ↢▲第二巻ノ中ニ↡。但シ「▲還相ト者」以下ノ釈文、今引↢加フ之ヲ↡。

中なかにおいて、 初はじめより 「悲ひ心しん故こ」 に至いたるまではこれ本論ほんろんの文もん。 「回え向こう」 以下いげはこれ ¬註ちゅう¼ の釈しゃくなり。

-於テ↠中ニ自↠初至マデハ↢「悲心故ニ」↡是 レ本論ノ文。「▲廻向」以下ハ是 レ¬註ノ¼釈也。

【41】次つぎの所引しょいんの文もんは、 下げ巻かんの十重じゅうじゅう解義げぎ分ぶんの中なかに、 第だい四しの浄入じょうにゅう願心がんしんの釈しゃくなり。

▲次ノ所引ノ文ハ、下巻ノ十重解義分ノ中ニ、第四ノ浄入願心ノ釈也。

「又う向説こうせつ」 の下しも 「応おう知ち」 といふに至いたるまではこれ本論ほんろんの文もん。 「応おう知ち者しゃ」 の下しもはまた ¬註ちゅう¼ の釈しゃくなり。

-「▲又向説ノ」下至マデハ↠云ニ↢「応知ト」↡是 レ本論ノ文。「▲応知者ノ」下ハ又¬註ノ¼釈也。

「浄入じょうにゅう願心がんしん」 といふは、 「浄じょう」 とは三種さんしゅの荘しょう厳ごん、 その体たい無漏むろなり。 すなはちこれ果か浄じょう、 「入にゅう」 といふは因いん位にの願心がんしんに酬入しゅうにゅうする義ぎなり。 「願心がんしん」 はすなはちこれ四し十じゅう八願はちがん、 体たいまた無漏むろなり。 すなはちこれ因いん浄じょう、 六八ろくはちの願心がんしんその因いん浄じょうなるがゆゑに、 三種さんしゅの荘しょう厳ごんその果かまた浄じょうなり。

-言↢「▲浄入願心ト」↡者、「浄ト」者三種ノ荘厳、其ノ体無漏ナリ。即是果浄、言フ↠「入ト」意者酬↢入スル因位ノ願心ニ↡義也。「願心ハ」即是 レ四十八願、体亦無漏ナリ。即是因浄、六八ノ願心其ノ因浄ナルガ故ニ、*三種ノ荘厳其ノ果亦浄ナリ。

【42】後のちの所引しょいんの文もんは、 同おなじき第だい十重じゅうじゅうの利り行ぎょう満足まんぞく、 本論ほんろんの文もんなり。

▲後1119ノ所引ノ文ハ、同キ第十重ノ利行満足、本論ノ文也。

この文もんの註釈ちゅうしゃく、 第だい二に巻かんの重釈じゅうしゃくの初はじめにあり。 ゆゑにかの文もんに就つきて▲愚解ぐげを加くわへ訖おわんぬ。

-此ノ文ノ註釈、在リ↢▲第二巻ノ重釈ノ之初ニ↡。故ニ就テ↢彼ノ文ニ↡加↢愚解ヲ↡訖ヌ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・「散善義」文

【43】次つぎの所引しょいんの文もんは、 回え向こう心しんの釈しゃく。

▲次ノ所引ノ文ハ、廻向心ノ釈。

上かみの所引しょいんの三心さんしんの釈しゃくの中なかにあり、 上かみは総引そういん、 広ひろく三心さんしんに亘わたる。 いまは別引べついん、 回え向こう心しんに限かぎる。

-在リ↢▲上ノ所引ノ三心ノ釈ノ中ニ↡。上者総引、広ク亘ル↢三心ニ↡。今者別引、限ル↢廻向心ニ↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ○ 私釈

【44】「真しん知ち」 以下いげわたくしの御おん釈しゃくの中なかに、

「▲真知」以下私ノ御釈ノ中ニ、

問とふ。 「道どう」 「路ろ」 の差別しゃべつ大だい小しょう思おもひがたし。 字じ訓くんのごときは、 *路ろに大だいの訓くんあり。 ほとんど勝しょうの義ぎに配当はいとうすべし、 いかん。

-問。「▲道」「路ノ」差別大小難シ↠思ヒ。如↢字訓ノ↡者、路ニ有↢大ノ訓↡。殆可シ↣配↢当ス勝ノ義ニ↡、云何。

答こたふ。 かくのごときの解げ釈しゃく、 一分いちぶんの理りによりて一往いちおうの配はい釈しゃく、 これ常つねの事じなり、 一概いちがいすべからず。 ただいまの釈しゃくを思おもふに、 道どうとは理りなり。 またいはく、 *道どうの義ぎにまた衆しゅ妙みょう所しょ寄きの文もんあり。 この義ぎによるがゆゑに釈しゃくに 「本願ほんがん一実いちじつの直道じきどう」 といふ。 路ろの字じ大だいの訓くんありといへども、 いまだ道どうの字じの訓くんに及およばず、 ゆゑにこの釈しゃくあり。

-答。如ノ↠比ノ解釈、依テ↢一分ノ理ニ↡一往ノ配釈、是 レ常ノ事也、不↠可↢一概ス↡。但思ニ↢今ノ釈ヲ↡、道ト者理也。又云ク、道ノ義ニ又有リ↢衆妙所寄之文↡。依ガ↢此ノ義ニ↡故ニ釈ニ云↢「▲本願一実ノ直道ト」↡。路ノ字雖↠有↢大ノ訓↡、未ダ↠及↢道ノ字ノ之訓ニ↡。故ニ有リ↢此ノ釈↡。

「言ごん四五しご寸すん」 とらいふは、

-言↢「▲言四五寸ト」等↡者、

問とふ。 「四五しご寸すん」 とは白びゃく道どうの分ぶん量りょう、 その 「白びゃく道どう」 とはこれ信心しんじんなり。 その体たい清浄しょうじょうなり。 その性しょう真実しんじつなり。 五ご陰おん四し大だいは体たい・性しょう相そう異いなり。 法ほう・譬ゆ不ふ斉さいの過とがあるに似にたり、 いかん。

-問。「四五寸ト」者白道ノ分量、其ノ「白道ト」者是 レ信心也。其ノ体清浄ナリ。其ノ性真実ナリ。五陰四大ハ体・性相異ナリ。似タリ↠有ニ↢法・譬不斉ノ之過↡、云何。

答こたふ。 この疑うたがい決けっしがたし。 しばらく一いち義ぎを述のぶ。

-答。此ノ疑難シ↠决シ。且ク述ブ↢一義ヲ↡。

弥陀みだの名みょう号ごう念仏ねんぶつ三昧ざんまいは、 広大こうだいの善根ぜんごん無む上じょうの法ほうなり、 ゆゑに ¬華け厳ごん¼ (晋訳巻三一不思議法品) には 「修しゅ大だい善根ぜんごん念仏ねんぶつ三昧ざんまい」 といひ、 ¬大だい経きょう¼ (巻下意) には説ときて 「一念いちねん大だい利り無む上じょう功く徳どく」 といひ、 ¬要決ようけつ¼ (西方要決) には釈しゃくして 「故こ成じょう大善だいぜん不ふ廃はい往おう生じょう」 といひ、 ¬十じゅう因いん¼ (往生拾因) には判はんじて 「即そく成じょう広大こうだい無む尽じん善根ぜんごん」 といふ。 自余じよの文もん証しょうつぶさに挙あぐるに遑いとまあらず。

-弥陀ノ名号念仏三昧ハ広大ノ善根無上ノ法也。故ニ¬*花厳ニハ¼云ヒ↢「修大善根念仏三昧ト」↡、¬大経ニハ¼説テ云ヒ↢「▲一念大利無上功徳ト」↡、¬要决ニハ¼釈シテ云ヒ↢「故成大善不*廃往生ト」↡、¬十因ニハ¼判ジテ云フ↢「即成広大無尽善根ト」↡。自余ノ文証不↠遑アラ↢具ニ挙ニ↡。

これによりて今こん師し 「大だい信心しんじん」 といひ 「大だい信海しんかい」 といふ。 所しょ行ぎょうの行ぎょう体たいこれ大善だいぜんなるがゆゑに、 能信のうしんの信心しんじんまた広大こうだいなり。 いかにいはんや三心さんしんすなはち菩ぼ提だい心しんなり。

-依テ↠之1120ニ今師云ヒ↢「▲大信心ト」↡云フ↢「▲大信海ト」↡。所行ノ々体是 レ大善ナルガ故ニ、能信ノ々心亦復広大ナリ。何ニ況ヤ三心即菩提心ナリ。

¬安楽あんらく集しゅう¼ (巻上) に菩ぼ提だい心しんを釈しゃくしていはく、 「この心しん広大こうだいにして法界ほうかいに周しゅう遍へんす。 この心しん長じょう遠おんにして未み来らい際ざいを尽つくす」 と。 以上

-¬安楽集ニ¼釈シテ↢菩提心ヲ↡云ク、「▲此ノ心広大ニシテ周↢遍ス法界ニ↡。▲此ノ心長遠ニシテ尽スト↢未来際ヲ↡。」 已上

まさに知しるべし、 いふところの信心しんじんの白びゃく道どう、 広大こうだい無む辺へんにして実じつに辺際へんざいなし。 これに就つきてこれを思おもふに、 凡ぼん夫ぶの行ぎょう者じゃ所発しょほつの信心しんじん、 他た力りきによるがゆゑにこれ広大こうだいなりといへども、 貪瞋とんじん覆おおふがゆゑにその心しん微みなりといふ。 実じつには狭小きょうしょうにあらず。 これ四し大だい五ご陰おん所しょ成じょうの凡身ぼんしんの上うえにおいて発おこすところの心しんなるがゆゑに四五しご寸すんといふ。

-当ニ↠知ル、所ノ↠言信心ノ白道、広大無辺ニシテ実ニ無シ↢辺際↡。就テ↠此ニ思ニ↠之ヲ、凡夫ノ行者所発ノ信心、由ガ↢他力ニ↡故ニ是 レ雖↢広大也ト↡、貪嗔覆フガ故ニ謂フ↢其ノ心微也ト↡。実ニハ非ズ↢狭小ニ↡。是 レ於テ↢四大五陰所成ノ凡*身ノ上ニ↡所ノ↠発ス心ナルガ故ニ云フ↢四五寸ト↡。

もしこの義ぎによりてこの釈しゃくあるか。 これ愚ぐ推すいをもつてこの料りょう簡けんを致いたす。 請こふ、 後のちの学者がくしゃ、 用よう否ひ心こころにあるべし。

-若シ依テ↢此ノ義ニ↡有↢此ノ釈↡歟。是 レ以テ↢愚推ヲ↡致ス↢此ノ料簡ヲ↡。請フ、後ノ学者、用否在ベシ↠心ニ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・「玄義分」文

【45】次つぎに ¬観かん経ぎょう義ぎ¼、 文もんに三段さんだんあり。 いまの信心しんじんを金剛こんごう心しんと名なづくるに就つきてみなその証しょうをひく。

次ニ▲¬観経義¼、文ニ有リ↢三段↡。就テ↣今ノ信心ヲ名ルニ↢金剛心ト↡皆引ク↢其ノ証ヲ↡。

中なかにおいて初はじめの文もんはこれ 「玄げん義ぎ分ぶん」 勧衆かんしゅ偈げの文もんなり。

-於テ↠中ニ▲初ノ文ハ是 レ「玄義分」勧衆偈ノ文ナリ。

「金剛こんごう志し」 とは、 総そうじてこれをいはば広ひろく三心さんしんに通つうず。 三心さんしんを具ぐする者ものはかならず横おう超ちょう四流しるの益やくを得うるがゆゑに。 別べっしてこれをいはばこれ深心じんしんに約やくす。 *深心じんしんの釈しゃくに 「この心しん深ふかく信しんぜることなほし金剛こんごうのごとし」 といふこれその証しょうなり。

-「▲金剛志ト」者、総ジテ而言ハヾ↠之ヲ広ク通ズ↢三心ニ↡。具スル↢三心ヲ↡者ハ必得ガ↢横超四流ノ益ヲ↡故ニ。別シテ而言ハヾ↠之ヲ此レ約ス↢深心ニ↡。深心ノ釈ニ云フ↣「▲此ノ心深ク信ゼルコト由シ若シト↢金剛ノ↡」是 レ其ノ証也。

「四流しる」 といふは、 三界さんがい見けん思しの諸惑しょわくこれなり。 一いちには欲よく爆流ぼる、 二に十じゅう九く物もつあり。 五部ごぶの三毒さんどくと、 四し諦たいの下もとの疑ぎと、 十纏じってんとこれなり。 十纏じってんといふは、 無む慚ざんと無愧むぎと嫉しつと慳けんと悔けと眠めんと掉じょう挙こと惛沈こんちんと、 これを八纏はってんといふ。 忿ふんと覆ふとを加くわへて十纏じってんといふなり。 二にには有う瀑流ぼる、 二に十じゅう八物はちもつあり。 色しき・無む色しき界かいの五部ごぶの貪とんと慢まんと、 同おなじき界かいの四し諦たいにおのおの疑ぎあるなり。 三さんには見けん爆流ぼる、 三さん十じゅう六ろく物もつあり。 苦くの下もとに五ごあり、 いはゆる身見しんけんと辺見へんけんと戒取かいしゅと見取けんしゅと邪見じゃけんとなり。 集じゅうの下もとに二にあり、 身しんと辺へんと戒かいとを除のぞく。 滅諦めったいに除のぞくところ、 まつたく集諦じったいのごとし。 道どうの下もとに三さんあり、 戒かいを加くわふるを異いとなす。 合がっして十じゅう二にとなす。 三界さんがいみな同おなじ。 ゆゑにこの数かずあり。 四しには無む明みょう瀑流ぼる、 十じゅう五ご物もつあり。 これ三界さんがい五部ごぶの痴ちをもつて合がっしてこの数かずを成じょうず。 これを百ひゃく八はち煩悩ぼんのうといふならくのみ。 これを四し瀑流ぼると名なづく。 ¬倶く舎しゃ論ろん¼ の意こころなり。

-言↢「▲四流ト」↡者、三界見思ノ諸惑是也。一者欲爆流、有リ↢二十九物↡。五部ノ三毒ト、四諦ノ下ノ疑ト、十纏ト是也。言↢十纏ト↡者、無慚ト無愧ト嫉ト慳ト悔ト眠ト掉挙ト惛沈ト、謂フ↢之ヲ八纏ト↡。加テ↢忿ト与 トヲ↟覆云↢十纏ト↡也。二者有瀑流、有リ↢二十八物↡。色・無色界ノ五部ノ貪ト慢ト、同キ界ノ四諦ニ各有↠疑也。三者見爆流1121、有リ↢三十六物↡。苦ノ下ニ有↠五、所謂身見ト辺見ト戒取ト見取ト邪見トナリ。集ノ下ニ有↠二、除ク↢身ト辺ト戒トヲ↡。滅諦ニ所↠除ク、全ク如シ↢集諦ノ↡。道ノ下ニ有↠三、加ルヲ↠戒ヲ為↠異ト。合シテ為ス↢十二ト↡。三界皆同ジ。故ニ有リ↢此ノ数↡。四ニハ無明瀑流、有リ↢十五物↡。是 レ以テ↢三界五部ノ之痴ヲ↡合シテ成ズ↢此ノ数ヲ↡。謂フナラク↢之ヲ百八煩悩ト↡而已ノミ。是ヲ名ク↢四瀑流ト↡。¬倶舎論ノ¼意也。

「正しょう受じゅ」 とらは、 同おなじき偈げの文もんなり。

-「▲正受ト」等者、同キ偈ノ文也。

問とふ。 帰き三宝さんぽうの偈げにあまねく因分いんぶん・果か分ぶんの諸しょ位いを挙あぐとして、 仏ぶつ・僧そうに帰きする中なかに、 極ごく果かを挙あげんがために、 まづ因いん位にを挙あげてその転てん勝しょうを顕あらわす。 「果か得とく」 とらは、 その極ごく位いを指さす。 すなはち妙みょう覚がくなり。 「正しょう受じゅ」 とらは、 その因いん位にを挙あぐ。 いはゆる 「正しょう受じゅ金剛こんごう心しん」 とは、 金剛こんごう喩ゆ定じょう、 これ妙みょう覚がくに入いる無礙むげ道どう。 「相応そうおう」 とらは、 ¬大品だいぼん¼ の意こころによるに、 すなはち一念いちねん相応そうおうの恵えをもつて余よ残ざんの習しゅうを断だんずるを 「正しょう受じゅ」 とらいひ 「相応そうおう」 とらいふ。 みなこれかの等覚とうがくの後ご心しんを指さす。 「果か得とく」 とらは、 これすなはち妙みょう覚がく、 これ解げ脱だつ道どうなり。 しかるにいまなんぞ薄はく地じの凡ぼん夫ぶ所発しょほつの信心しんじんを証しょうすとして、 この等覚とうがくの金剛こんごう心しんに類るいするや。

-問。帰三宝ノ偈ニ普ク挙グトシテ↢因分・果分ノ諸位ヲ↡、帰スル↢仏・僧ニ↡中ニ、為ニ↠挙ンガ↢極果ヲ↡、先ヅ挙テ↢因位ヲ↡顕ス↢其ノ転勝ヲ↡。「▲果得ト」等者、指ス↢其ノ極位ヲ↡。即妙覚也。「正受ト」等者、挙グ↢其ノ因位ヲ↡。所謂「▲正受金剛心ト」者、金剛喩定、是 レ入ル↢妙覚ニ↡之無道。「相応ト」等者、依ニ↢¬大品ノ¼意ニ↡、即以テ↢一念相応ノ之恵ヲ↡断ズルヲ↢余残ノ習ヲ↡云ヒ↢「正受ト」等↡云フ↢「▲相応ト」等↡。皆是 レ指ス↢彼ノ等覚ノ後心ヲ↡。「果得ト」等者、此即妙覚、是 レ解脱道ナリ。而ニ今何ゾ証ストシテ↢薄地ノ凡夫所発ノ信心ヲ↡、類スル↢此ノ等覚ノ金剛心ニ↡乎。

答こたふ。 難勢なんぜいに載のるがごとく、 等とう・妙みょう二に覚かく、 仏ぶつ・僧そう二に宝ほう、 説相せっそうみなしかなり。 ただいま出いだすところはさらに等覚とうがくの菩ぼ薩さつ四し十じゅう一品いちぼんの無む明みょうを断除だんじょし、 四し十じゅう一分いちぶんの法ほっ性しょうを証しょう悟ごして、 金剛こんごう心しんに住じゅうし、 一念いちねんに相応そうおうして、 その妙みょう覚がく極ごく果かの位くらいに入いることを混乱こんらんするにはあらず。 凡ぼん聖しょう異ことなりといへども浅深せんじん殊ことなりといへども、 その功く用ゆうを論ろんずるにともに金剛こんごう心しんの勝しょう利りたり。 よりていまこれを引ひく、 よろしくその意こころを得うべし。

-答。如ク↠載ルガ↢難勢ニ↡、等・妙二覚、仏・僧二宝、説相皆然ナリ。但今所ハ↠出ス更ニ非ズ↫混↪乱スルニハ等覚ノ菩薩断↢除シ四十一品ノ無明ヲ↡、証↢悟シテ四十一分ノ法性ヲ↡、住シ↢金剛心ニ↡、相↢応シテ一念ニ↡、入コトヲ↩其ノ妙覚極果ノ之位ニ↨。凡聖雖↠異也ト浅深雖↠殊也ト、論ズルニ↢其ノ功用ヲ↡共ニ為タリ↢金剛心ノ之勝利↡。仍今引ク↠之ヲ、宜クシ↠得↢其ノ意ヲ↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・「序分義」文

【46】次つぎの所引しょいんの文もんは、 ¬疏しょ¼ の 「序分じょぶん義ぎ」 欣ごん浄じょう縁えんの釈しゃくなり。

▲次1122ノ所引ノ文ハ、¬疏ノ¼「序分義」欣浄縁ノ釈ナリ。

これ ¬観かん経ぎょう¼ の 「願がん我が未み来らい」 以下いげの経きょう文もんを釈しゃくする解げ釈しゃくなり。 この 「金剛こんごう志し」 は釈しゃく尊そんに帰きする心しん、 かの三心さんしんは弥陀みだに帰きする心しん、 二に尊そん殊ことなりといへども、 その心しんこれ同おなじ。 ゆゑにいまこれを引ひく。

-此レ釈スル↢¬観経ノ¼「▲願我未来」以下ノ経文ヲ↡之解釈也。此ノ「▲金剛志ハ」帰スル↢釈尊ニ↡心、彼ノ三心者帰スル↢弥陀ニ↡心、二尊雖↠殊也ト、其ノ心是 レ同ジ。故ニ今引ク↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ ・「定善義」文

【47】後のちの一いっ句くは、 「定じょう善ぜん義ぎ」 の釈しゃく、

▲後ノ一句者、「定善義ノ」釈、

宝ほう地ち観かん (観経) の 「渠こ下げ皆かい以い雑色ざっしき金剛こんごう以為いい底沙たいしゃ」 の文もんを解げする釈しゃくなり。 上かみのつぶさなる文もん (定善義) にいはく、 「渠下こげの底沙たいしゃ雑宝ざっぽうの色いろをなすことを明あかす。」 所引しょいんの文もんこの次つぎなり この文もん依え報ほうの勝しょう徳とくを釈しゃくすといへども、 金剛こんごうの体たい性しょう彼此ひし異ことならず。 このゆゑにこれを引ひく。

-解スル↢宝地観ノ「▲渠下皆以雑色金剛以為底沙ノ」之文ヲ↡釈也。上ノ具ナル文ニ云ク、「▲明ス↣渠下ノ底沙作ナスコトヲ↢雑宝ノ色ヲ↡。」 ▲所引文此次也 此ノ文雖↠釈スト↢依報ノ勝徳ヲ↡、金剛ノ体性彼此不↠異ナラ。是ノ故ニ引ク↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ 私釈(三心結釈)

【48】わたくしの料りょう簡けんの中なかに

▲私ノ料簡ノ中ニ

「真実しんじつ信心しんじん必ひつ具ぐ」 とらは、

-「▲真実信心必具ト」等者、

問とふ。 所発しょほつの信心しんじんたとひ真実しんじつたりとも、 なんぞかならずしもその中なかに名みょう号ごうを具ぐ足そくせん。 また六ろく字じの中なかに南無なもといふは、 すなはちこれ帰き命みょう、 すなはちこれ安心あんじんなり。 なんぞ名みょう号ごう願力がんりきの信心しんじんを具ぐせずといふや。

-問。所発ノ信心縦ヒ為タリトモ↢真実↡、何ゾ必シモ其ノ中ニ具↢足セン名号ヲ↡。*又六字ノ中ニ言↢南無ト↡者、即是 レ帰命、即是 レ安心ナリ。何ゾ云↢名号不ト↟具↢願力ノ信心ヲ↡。

答こたふ。 信心しんじんといふはこれ能のう帰きの心しん、 所しょ帰きの法ほうに対たいして発ほっするところの信しんなり。 ゆゑに信心しんじんを発ほっせばかならず名みょう号ごうを具ぐす。 これすなはち ¬経きょう¼ (観経) に 「▲発ほつ三種さんしゅ心しん即便そくべん往おう生じょう」 といへる、 これその義ぎなり。

-答。言↢信心ト↡者是 レ能帰ノ心、対シテ↢所帰ノ法ニ↡所ノ↠発ル信也。故ニ発セバ↢信心ヲ↡必ズ具ス↢名号ヲ↡。是 レ則¬経ニ¼云ヘル↢「発三種心即便往生ト」↡、是 レ其ノ義也。

もし行ぎょうを具ぐせずはすでに唯願ゆいがんに同おなじ。 なんぞ往おう生じょうを得えん。 すでに往おう生じょうの因いんなり。 まさに知しんぬ、 発心ほっしんすればかならず名みょう号ごうを具ぐすといふことを。 このゆゑにいま 「真実しんじつ信心しんじん必ひつ具ぐ名みょう号ごう」 といふ。

若シ不ズハ↠具セ↠行ヲ既ニ同ジ↢唯願ニ↡。何ゾ得ン↢往生ヲ↡。既ニ往生ノ因ナリ。方ニ知ヌ、発心スレバ必具スト云コトヲ↢名号ヲ↡。是ノ故ニ今云フ↢「真実信心必具名号ト」↡。

またたとひ名みなを唱となふとも、 もし信心しんじんなくは往おう生じょうを得えがたし。 ¬経きょう¼ (大経巻上) に 「至し心しん信しん楽ぎょう欲よく生しょう」 といふ、 信しんによりて生しょうずべきことその理り灼しゃく然ねんなり。 称名しょうみょうの人ひといまだかならずしもことごとく真実しんじつ信心しんじんを具ぐせず。 またこれ現げん量りょうなり、 ゆゑにこの釈しゃくあり。

-又縦ヒ唱フトモ↠名ヲ、若シ無クハ↢信心↡難シ↠得↢往生ヲ↡。¬経ニ¼云フ↢「▲至心信楽欲生ト」↡、依テ↠信ニ可コト↠生ズ其ノ理灼然ナリ。称名ノ之人未ダ↣必シモ悉ク具セ↢真実信心ヲ↡。又是 レ現量ナリ、故ニ有リ↢此ノ釈↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ 大信海

【49】「不ふ簡けん」 とらいひ「不謂ふい」 とらいふは、 機きを簡えらばざることを明あかす。 十方じっぽう衆しゅ生じょう簡えらぶところなきがゆゑに。

云1123ヒ↢「▲不簡ト」等↡云ハ↢「▲不謂」等↡、明ス↠不コトヲ↠簡↠機ヲ。十方衆生無ガ↠所↠簡ブ故ニ。

「不ふ問もん」 とらは、 罪つみによりて往おう生じょうを得えざるにあらざることを明あかす。

-「▲不問ト」等者、明ス↠非コトヲ↧依テ↠罪ニ不ルニ↞得↢往生ヲ↡。

「不ふ論ろん」 とらは、 生しょうずること自じ力りきの功こうによらざることを明あかす。

-「▲不論ト」等者、明ス↢生ズルコト不コトヲ↟由↢自力ノ之功ニ↡。

「散善さんぜん義ぎ」 には 「不ふ問もん時じ節せつ久く遠ごん」 といひ、 ¬法ほう事じ讃さん¼ (巻下) には 「無む問もん罪福ざいふく時じ多た少しょう」 とらいふ、 これその意ぎなり。

-「散善義ニハ」云ヒ↢「▲不問時節久遠ト」↡、¬法事讃ニハ¼云フ↢「▲無問罪福時多少ト」等↡、是 レ其ノ意也。

「非ひ行ぎょう」 とらは、

-「▲非行ト」等者、

問とふ。 称名しょうみょう念仏ねんぶつはすでにこれ正行しょうぎょう、 またこれ大だい行ぎょうなり。 なんぞ 「行ぎょうにあらず」 といふ。 すでにこれ勝しょう善ぜんまたこれ大善だいぜんなり、 なんぞ 「善ぜんにあらず」 といふ。 すでにこれ頓とん教ぎょうなり、 なんぞ 「頓とんにあらず」 といふ。 すでにこれ散さん称しょうなり、 なんぞ 「散さんにあらず」 といふ。 ▽もと観念かんねんにあらず、 なんぞ邪じゃ正しょうを諭ろんぜん。 すでに所念しょねんあり、 なんぞ有う念ねんにあらざらん。 尋じん常じょう・臨りん終じゅうともに修しゅ行ぎょうの時ときなり、 なんぞみな非あらずといふ。 多た念ねん・一念いちねんともに往おう生じょうを許ゆるす、 なんぞおのおの非あらずといふ。

-問。称名念仏ハ既ニ是 レ正行、又是 レ大行ナリ。何ゾ云フ↠「非ト↠行ニ」。既ニ是 レ勝善又是 レ大善ナリ、何ゾ云フ↠「非ト↠善ニ」。既ニ是 レ頓教ナリ、何ゾ云フ↠「非ト↠頓ニ」。既ニ是 レ散称ナリ、何ゾ云フ↠「非ト↠散ニ」。本非ズ↢観念ニ↡、何ゾ論ゼン↢邪正ヲ↡。既ニ有リ↢所念↡、何ゾ非ラン↢有念ニ↡。尋常・臨終共ニ修行ノ時ナリ、何ゾ皆云フ↠非ト。多念・一念倶ニ許ス↢往生ヲ↡、何ゾ各云フ↠非ト。

答こたふ。 名みょう号ごうは大だい行ぎょう大善だいぜんたりといへども、 これ所しょ行ぎょうの法ほうなり。 いまは能信のうしんの心しんなり。 このゆゑにしばらく行ぎょうにあらず善ぜんにあらずといふ。

-答。名号ハ雖↠為タリト↢大行大善↡、是 レ所行ノ法ナリ。今ハ能信ノ心ナリ。是ノ故ニ且ク云フ↢非↠行ニ非ト↟善ニ。

漸頓ぜんとんといふはこれ宗しゅう旨しに約やくす。 信心しんじんに関あずからざるがゆゑにまた非あらずといふ。

-▲言↢漸頓ト↡者是 レ約ス↢宗旨ニ↡。不ガ↠関カラ↢信心ニ↡故ニ亦云フ↠非ト。

定じょう散さんといふはこれに二にの意こころあり。 一いちには法ほうを指さす、 二にには心しんを指さす。 いまはまた心しんを指さす。

-▲言↢定散ト↡者此ニ有リ↢二ノ意↡。一者指ス↠法ヲ、二者指ス↠心ヲ。今ハ亦指ス↠心ヲ。

ただし心しんを指さすに就つきて 「定じょう散さんにあらず」 とは、 いふところの信心しんじんは散心さんしんたるがゆゑにしばらく定じょうにあらずといふ。 しかも念仏ねんぶつ三昧ざんまいの名なあり。 三昧さんまいは定じょうなるがゆゑにしばらく散さんにあらずといふ。

-但シ就テ↠指スニ↠心ヲ「非ト↢定散ニ↡」者、所ノ↠言信心ハ為ガ↢散心↡故ニ且ク云フ↠非ト↠定ニ。而モ有リ↢念仏三昧ノ之名↡。三昧ハ定ナルガ故ニ且ク云フ↠非ト↠散ニ。

ゆゑに ¬観念かんねん法門ぼうもん¼ にいはく、 「もし定じょう心しん三昧ざんまいおよび口く称しょう三昧ざんまいを得えつれば、 心眼しんげんすなはち開ひらけてかの浄じょう土どの一切いっさいの荘しょう厳ごんを見みる、 説とくとも窮ぐ尽じんすることなけん。」 以上

-故ニ¬観念法門ニ¼云、「▲若シ得ツレ↢定心三昧及ビ口称三昧ヲ↡者、心眼即開ケテ見ル↢彼ノ浄土ノ一切ノ荘厳ヲ↡、説クトモ無ケン↢窮尽スルコト↡也。」 *已上

また (観念法門) いはく、 「三昧さんまいといふは、 すなはちこれ念仏ねんぶつの行ぎょう人にん心しん口くに称しょう念ねんしてさらに雑想ざっそうなく、 念々ねんねんに心しんを住じゅうし声々しょうしょうに相続そうぞくして、 心眼しんげんすなはち開ひらけて、 かの仏ぶつを見みることを得えて了りょう然ねんとして現げんずるをすなはち名なづけて定じょうとなす。 また三昧さんまいと名なづく。」 以上

-又云ク、「▲言↢三昧ト↡者、即是 レ念仏ノ行人心口ニ称念シテ更ニ無ク↢雑想↡、念念ニ住シ↠心ヲ声声ニ相続シテ、心眼即開ケテ、得テ↠見コトヲ↢彼ノ仏ヲ↡了然トシテ而現ズルヲ即名テ為ス↠定ト。亦名ク↢三昧ト↡。」 已上

口く称しょうの力ちからすでにかの土どの依え正しょう二に報ほうを見みる。 ゆゑに見仏けんぶつに約やくすれば非ひ散さんの義ぎあり。 たとひ眼見げんけんなけれどもかならず心見しんけんあり。 たとひ現げんに見みざれども臨りん終じゅうの時ときおよび順じゅん次じ生しょうに必ひつ定じょうして見仏けんぶつす。 この義ぎあるがゆゑに三昧さんまいの名なあり。 この理りに約やくするがゆゑに非ひ散さんといふなり。

-口称ノ之1124力已ニ見ル↢彼ノ土ノ依正二報ヲ↡。故ニ約スレバ↢見仏ニ↡有リ↢非散ノ義↡。縦ヒ无ケレドモ↢眼見↡必有リ↢心見↡。縦ヒ現ニ不レドモ↠見臨終ノ之時及ビ順次生ニ必定シテ見仏ス。有ガ↢此ノ義↡故ニ有リ↢三昧ノ名↡。約スルガ↢此ノ理ニ↡故ニ云↢非散ト↡也。

「正しょう観かんにあらず邪観じゃかんにあらず」 といふは、 △問端もんたんに載のするがごとくもと観心かんしんにあらず。 ゆゑに邪じゃ正しょうに関あずからざる義ぎを顕あらわす。

-言↧「▲非ズ↢正観ニ↡非ズト↦邪観ニ↥」者、如ク↠載ルガ↢問端ニ↡本非ズ↢観心ニ↡。故ニ顕ス↧不ル↠関↢邪正ニ↡之義ヲ↥。

「有う念ねんにあらず無む念ねんにあらず」 といふは、 有う念ねんたりといへどもひとへに有うに拘かかわらず。 無む念ねんにあらずといへども有う念ねんに滞とどまらず。 これすなはち世せ俗ぞくの人ひとの浄じょう土ど宗しゅうの意こころはこれ有う相そうの教きょうなり、 ゆゑに権ごん乗じょうたりと謂おもへる邪見じゃけんを遣やらんがためのゆゑに、 「有う念ねんにあらず無む念ねんにあらず」 といふなり。

-言↧「▲非ズ↢有念ニ↡非ズト↦無念ニ↥」者、雖↠為タリト↢有念↡不↢偏ニ拘カヽハラ↟有ニ。雖↠非ト↢无念ニ↡不↠滞↢有念ニ↡。是則為ノ↠遣ンガ↧世俗ノ人ノ謂オモヘル↣浄土宗ノ意ハ是 レ有相ノ教ナリ、故ニ為タリト↢権乗↡之邪見ヲ↥故ニ、言↧「非↢有念ニ↡非ト↦無念ニ↥」也。

これによりて長じょう盧ろの𦣱さく禅ぜん師じの蓮れん華げ勝しょう会えの序じょにいはく、 「それ念ねんをもつて念ねんとし生しょうをもつて生しょうとするは常じょう見けんの失しっするところなり。 無む念ねんをもつて無む念ねんとし無む生しょうをもつて無む生しょうとなすは邪見じゃけんの惑まどふところなり。 念ねんにして念ねんなく生しょうにして無む生しょうなるは第一だいいち義ぎ諦たいなり。 以上 「けだし念仏ねんぶつ三昧ざんまい還源げんげんの要よう術じゅつありて往おう生じょうの一門いちもんを示じ開かいす。 ゆゑに終日ひねもすに念仏ねんぶつすれどもしかも無む念ねんに乖そむかず。 熾し然ねんに往おう生じょうすともしかも無む生しょうに乖そむかず。」 以上

-依テ↠之ニ長盧ノ𦣱禅師ノ蓮華勝会ノ序ニ云ク、「夫レ以テ↠念ヲ為シ↠念ト以テ↠生ヲ為スル↠生ト者常見ノ之所↠失スル也。以テ↢无念ヲ↡為シ↢無念ト↡以テ↢無生ヲ↡為↢無生ト↡者邪見ノ之所↠惑也。念ニシテ而無ク↠念生ニシテ而無生ナル者第一義諦也。 已上 「蓋シ有テ↢念仏三昧還源ノ要術↡示↢開ス往生ノ一門ヲ↡。所以ニ終日ニ念仏スレドモ而モ不↠乖カ↢於無念ニ↡。熾然ニ往生ストモ而モ不↠乖カ↢於無生ニ↡。」 已上

また ¬正しょう観かん記き¼ に ¬経きょう¼ の一心いっしん不ふ乱らんの義ぎを解げするに、 事じの一心いっしんおよび理りの一心いっしんを出いだす。 事じの一心いっしんに約やくすればこれ散心さんしんたり、 理りの一心いっしんに約やくすればこれ定じょう心しんたり。 これ非ひ定じょう非ひ散さんの義ぎに叶かなふ、 またすなはち亦やく定じょう亦散やくさんの義ぎなり。 甚深じんじんの義ぎ、 和会わえして意こころを得えよ。

-又¬正観記ニ¼解スルニ↢¬経ノ¼一心不乱ノ之義ヲ↡、出ス↢事ノ一心及ビ理ノ一心ヲ↡。約スレバ↢事ノ一心ニ↡是 レ為↢散心↡、約スレバ↢理ノ一心ニ↡是 レ為タリ↢定心↡。是 レ叶フ↢非定非散ノ之義ニ↡、又則亦定亦散ノ義也。甚深ノ之義、和会シテ得ヨ↠意ヲ。

「尋じん常じょうにあらず臨りん終じゅうにあらず」 といふは、 もし臨りん終じゅう遇善ぐうぜんの機きに約やくすればこれ尋じん常じょうにあらず。 もし平生へいぜい業ごう成じょうの機きに約やくすればこれ臨りん終じゅうにあらず。 尋じん常じょうをいはず臨りん終じゅうを論ろんぜず。 ただ仏法ぶっぽうに逢あふ時じ節せつの分済ぶんざいなり。 ゆゑにともに非あらずといふ。

-言↧「▲非ズ↢尋常ニ↡非ズト↦*臨終ニ↥」者、若シ約スレバ↢臨終遇善之機ニ↡此レ非ズ↢尋常ニ↡。若シ約スレバ↢平生業成ノ之機ニ↡是 レ非ズ↢臨終ニ↡。不↠謂↢尋常ヲ↡不↠論ゼ↢臨終ヲ↡。只逢フ↢仏法ニ↡時節ノ分1125済ナリ。故ニ共ニ云↠非ト。

「多た念ねんにあらず一念いちねんにあらず」 といふは、 その多た念ねんとはこれ尋じん常じょうの機き、 その一念いちねんとはこれ臨りん終じゅうの機き、 その機きに望のぞむるがゆゑにこれをたがひに非あらずといふ。 上かみに準じゅんじて知しるべし。

-言↧「▲非ズ↢多念ニ↡非ト↦一念ニ↥」者、其ノ多念ト者是 レ尋常ノ機、其ノ一念ト者是 レ臨終ノ機、望ルガ↢其ノ機ニ↡故ニ言フ↢之ヲ互ニ非ズト↡。准ジテ↠上ニ応シ↠知。

「智愚ちぐの毒どくを滅めっす」 とは、

-「▲滅スト↢智愚ノ毒ヲ↡」者、

問とふ。 毒どくは愚ぐに限かぎるべし、 なんぞ智ちに亘わたらんや。

-問。毒ハ可シ↠限↠愚ニ、何ゾ亘ラン↠智ニ耶。

答こたふ。 一向いっこうの無智むちは平びょう信しんなほ足たりぬ。 もし小しょう智ちに対たいしまた邪じゃ智ちあるは還かえりて謬びゅう解げを生しょうじてみづから往おう生じょうを障さふ。 この障さわりを嫌きらふがゆゑにかくのごとく釈しゃくするなり。

-答。一向ノ無智ハ平信尚足ヌ。若シ対シ↢小智ニ↡又有ルハ↢邪智↡還テ生ジテ↢謬解ヲ↡自ミ 障フ↢往生ヲ↡。嫌フガ↢此ノ障ヲ↡故ニ如ク↠此ノ釈スル也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ○ 菩提心

【50】「然ねん就じゅ」 とらは、 これに二に双そう四し重じゅうの釈しゃくあり。 いはゆる竪しゅ出しゅつ・竪しゅ超ちょう、 横おう出しゅつ・横おう超ちょうこれなり。 所しょ立りゅうの差しゃ異い文もんにありて見みつべし。

「▲然就ト」等者、▲此ニ有リ↢二双四重ノ之釈↡。所謂竪出・竪超、横出・横超是 レ也。所立ノ差異在テ↠文ニ可シ↠見ツ。

また第六だいろく巻かんおよび ¬愚ぐ禿とく鈔しょう¼ にくはしくこの事じあり。 かの文もんを見みるべし。

-又▲第六巻及ビ▲¬愚禿鈔ニ¼委ク有リ↢此ノ事↡。可↠見ル↢彼ノ文ヲ↡。

問とふ。 いまの名みょう目もくなんの典てんに出いでたりや。

-問。今ノ之名目出タリ↢何ノ典ニ↡耶。

答こたふ。 ¬楽邦らくほう文類もんるい¼ の第だい四し、 桐江とうこうの択ちゃく瑛えい法ほっ師し横竪おうしゅ二に出しゅつを弁べんずる文もんにいはく、

-答。¬楽邦文類ノ¼第四、桐江ノ択瑛法師弁ズル↢横竪二出ヲ↡文ニ云ク、

「竪しゅ出しゅつとは、 声しょう聞もんは四し諦たいを修しゅし、 縁覚えんがくは十じゅう二に因縁いんねんを修しゅし、 菩ぼ薩さつは六ろく度ど万まん行ぎょうを修しゅす。 これ地位じいを渉わたる。 たとへば及きゅう第だいのすべからくみづから才学さいかくあるべきがごとし。 また歴りゃく任にん転官てんかんのすべからく功く効こうあるべきがごとし。

-「竪出ト者、声聞ハ修シ↢四諦ヲ↡、縁覚ハ修シ↢十二因縁ヲ↡、菩薩ハ修ス↢六度万行ヲ↡。此レ渉ル↢地位ヲ↡。譬ヘバ如シ↤及第ノ須 ベ クキガ↣自ミ 有ル↢才学↡。又如シ↢歴任転官ノ須クキガ↟有ル↢功効↡。

横おう出しゅつとは、 念仏ねんぶつして浄じょう土どに生しょうぜんことを求もとむ。 たとへば蔭叙おんじょの功こう祖父そふの他た力りきによりて学業がくごうの有無うむを問とはざるがごとし。 また恩おんを覃およぼすこと普ふ博はくにして功こう国王こくおうによりて歴りゃく任にんの浅深せんじんを論ろんぜざるがごとし。

-横出ト者、念仏シテ求ム↠生ゼンコトヲ↢浄土ニ↡。譬ヘバ如シ↧蔭叙ノ功由テ↢祖父ノ他力ニ↡不ルガ↞問ハ↢学業ノ有無ヲ↡。又如シ↧覃スコト↠恩普博ニシテ功由テ↢国王ニ↡不ルガ↞論ゼ↢歴任ノ浅深ヲ↡。

横おう出しゅつの中なかにおいて定じょう散さんの二に善ぜんあり。 ゆゑに善導ぜんどう和か尚しょう専雑せんぞう二に修しゅを立たつ。 雑修ざっしゅとは、 いはく散謾さんまんにしてもろもろの善業ぜんごうを修しゅして回え向こう荘しょう厳ごんす。 専修せんじゅとは、 身みにすべからく阿あ弥陀みだ仏ぶつを専礼せんらいして余よ礼らいを雑ぞうせざるべし。 口くちにすべからく阿あ弥陀みだ仏ぶつを専せん称しょうして、 余よ号ごうを称しょうせず、 余よの経きょう呪じゅを誦じゅせざるべし。 意こころにすべからく阿あ弥陀みだ仏ぶつを専想せんそうして余よ観かんを修しゅせざるべし。

-於テ↢横出ノ中ニ↡有リ↢定散ノ二善↡。故ニ善導和尚立ツ↢専雑二修ヲ↡。雑修ト者、謂ク散謾ニシテ修シテ↢諸ノ善業ヲ↡廻向荘厳ス也。専修ト者、身ニ須 ベ クシ↧専↢礼シテ阿弥陀仏ヲ↡不ル↞雑セ↢余礼ヲ↡。口ニ須 ベ クシ↧専↢称ス阿弥陀仏ヲ↡、不↠称セ↢余号ヲ↡、不ル↞誦セ↢余ノ経呪ヲ↡。意ニ須 ベ クシ↧専↢想シテ阿弥陀仏ヲ↡不ル↞修セ↢余観ヲ↡。

もし専修せんじゅの者ものは、 十じゅう即そく十じゅう生しょうし、 百ひゃく即そく百ひゃく生しょうす。 もし雑修ざっしゅの者ものは、 百ひゃくの中なかにあるいは一いち両りょう人にん生しょうずることを得え、 千せんの中なかにあるいは三さん五ご人にん生しょうずることを得う。

-若シ専修ノ者 ノハ、十即十生シ、百1126即百生ス。若シ雑修ノ者 ノハ、百ノ中ニ或ハ得エ↢一両人生ズルコトヲ↡、千ノ中ニ或ハ得ウ↢三五人生ズルコトヲ↡。

いま世せ人にんを見みるに一日いちにちに阿あ弥陀みだ仏ぶつを礼らいすること三千さんぜん拝はいする者もの、 日ひに阿あ弥陀みだ仏ぶつ十じゅう万まん声しょうを称しょうする者ものあり。 昼ちゅう夜やに阿あ弥陀みだ仏ぶつを専想せんそうする者ものあり。 ならびに感応かんのうあり。 ここに験ためしつべし。」 以上 もとこの釈しゃくによりてまたわたくしの義ぎを加くわふ。

-今見ニ↢世人ヲ↡、有リ↧一日ニ礼スルコト↢阿弥陀仏ヲ↡三千拝スル者、日ニ称スル↢阿弥陀仏十万声ヲ↡者↥。有リ↧昼夜ニ専↢想スル阿弥陀仏ヲ↡者↥。並ニ有リ↢感応↡。斯コヽニ可シ↠験シツ也。」 已上 本依テ↢斯ノ釈ニ↡又加フ↢私ノ義ヲ↡。

問とふ。 いまの釈しゃくのごときは、 ただ二に出しゅつありて二に超ちょうを載のせず。 ゆゑに竪しゅ出しゅつの中なかに権実ごんじつを分わかたずあまねく諸しょ教きょうを摂せっす。 横おう出しゅつの中なかに浅深せんじんを弁わかたず、 総そうじて浄教じょうきょうに約やくす。 これすなはち定じょう散さん専雑せんぞう等とうなり。 なんぞ二に超ちょうを加くわへてしかもかの説せつに違いする。

-問。如↢今ノ釈ノ↡者、唯有テ↢二出↡不↠載↢二超ヲ↡。故ニ竪出ノ中ニ不↠分↢権実ヲ↡普ク摂ス↢諸教ヲ↡。横出ノ之中ニ不↠弁↢浅深ヲ↡総ジテ約ス↢浄教ニ↡。是則定散専雑等也。何ゾ加テ↢二超ヲ↡而モ違スル↢彼ノ説ニ↡。

答こたふ。 聖しょう道どう門もんにおいて三さん乗じょう家けあり一いち乗じょう家けあり。 三さn乗じょう教きょうの意こころは権実ごんじつを分わかたず。 一いち乗じょう教きょうの意こころはもつぱら権実ごんじつを存ぞんず。 いま一いち乗じょうによりて差別しゃべつあるべし。 よりて竪しゅ超ちょうを立たてて別べつに速疾そくしつ成じょう仏ぶつの一門いちもんとなす。 また聖しょう道どうの意こころ、 浄教じょうきょうを立たつといへども定じょう散さん弘ぐ願がんの分別ふんべつに及およばず。 また正しょう助じょ二に門もんの差しゃ降ごうなし。 宗しゅう家けの意こころによるにすでにその差しゃを分わかつ。 随したがひて釈しゃくの中なかに横おう超ちょうの言ことばあり。 これによりて択ちゃく瑛えいの 「横おう出しゅつ」 の言ことばと高こう祖そ師しの 「横おう超ちょう」 の言ことばと、 彼此ひしを校きょう合ごうして、 横おうの一門いちもんの中なかに出しゅつをば権ごん教きょう迂廻うえの教きょうに名なづけ、 超ちょうをば実じっ教きょう速疾そくしつの道どうに象かたどる。 また横おう超ちょうに対たいして、 竪しゅの中なかに超ちょうの義ぎあるべきがゆゑにこの分別ふんべつあり。 本説ほんせつを守まもりながらしかも義ぎ門もんを開ひらきて巧たくみに両りょう師し所しょ立りゅうの名みょう義ぎに叶かなふ。 もつとも依え憑ひょうすべし。

-答。於テ↢聖道門ニ↡有リ↢三乗家↡有リ↢一乗家↡。三乗教ノ意ハ不↠分↢権実ヲ↡。一乗教ノ意ハ専ラ存ズ↢権実ヲ↡。今依ニ↢一乗ニ↡可シ↠有↢差別↡。仍テ立テヽ↢竪超ヲ↡別ニ為ス↢速疾成仏ノ一門ト↡。又聖道ノ意、雖↠立ト↢浄教ヲ↡不↠及↢定散弘願ノ分別ニ↡。又無シ↢正助二門ノ差降↡。依ルニ↢宗家ノ意ニ↡既ニ分ツ↢其ノ差ヲ↡。随テ而釈ノ中ニ有リ↢横超ノ言↡。依テ↠之ニ択瑛ノ「横出ノ」之言ト与 ト ↢高祖師ノ「横超ノ」之言↡、校↢合シテ彼此ヲ↡、横ノ一門ノ中ニ出ヲバ名ケ↢権教迂廻ノ之教ニ↡、超ヲバ象ドル↢実教速疾ノ之道ニ↡。又対シテ↢横超ニ↡、竪ノ中ニ可ガ↠有↢超ノ義↡之故ニ有リ↢此ノ分別↡。乍↠守↢本説ヲ↡而モ開テ↢義門ヲ↡巧ニ叶フ↢両師所立ノ名義ニ↡。尤可シ↢依*憑ス↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ・『論註』文

【51】次つぎに ¬論ろんの註ちゅう¼ の文もん。

▲次ニ¬論ノ註ノ¼文。

下げ巻かんの解義げぎ分ぶんの中なかに、 第だい五ごの善ぜん巧ぎょう摂せっ化けの章しょうの釈しゃくなり。 名なづけて善ぜん巧ぎょう摂せっ化けといふ意こころは、 巧ぎょう方便ほうべん回え向こうの善根ぜんごんをもつて衆しゅ生じょうを摂せっ化けする義ぎならくのみ。

-下巻ノ解義分ノ中ニ、第五ノ善巧摂化ノ章之釈也。名テ曰↢善巧摂化ト↡意者、以テ↢巧方便廻向ノ善根ヲ↡摂↢化スル衆生ヲ↡之義而已ナラクノミ。

「三輩さんぱい生しょうの中なか」 とらは、

-「▲三輩生ノ中ト」等者、

問とふ。 ¬寿じゅ¼・¬観かん¼ の両経りょうきょうはこれ開合かいごうの異いなり。 しかるに ¬観かん経ぎょう¼ の中なかには未み発心ほっしん往おう生じょうの人ひとを説とく、 いはく九く品ぼんの中なかに中ちゅう三さん・下げ三さんの六品ろくぼんこれなり。 ¬寿じゅ経きょう¼ の三輩さんぱいにはともに発心ほっしんと説とく、 相そう違いいかん。

-問1127。¬寿¼・¬観ノ¼両経ハ是 レ開合ノ異ナリ。而ニ¬観経ノ¼中ニハ説ク↢未発心往生ノ之人ヲ↡。謂ク九品ノ中ニ々三・下三ノ六品是也。¬寿経ノ¼三輩ニハ共ニ説ク↢発心ト↡、相違如何。

答こたふ。 異義いぎありといへどもしばらく一いち義ぎにいはく、 ¬大だい経きょう¼ の説相せっそうは常じょう途ずの説せつに順じゅんず。 聖しょう道どうの諸しょ教きょうみな発心ほっしん得道とくどうの義ぎを談だんずるがゆゑに。 ¬観かん経ぎょう¼ の中なかには未み発心ほっしんみな往おう生じょうを得うと説とく。 仏力ぶつりきによるがゆゑに。 諸しょ師しの所しょ立りゅう、 その義ぎ不ふ同どうなり。 つぶさに述のぶるにあたはず。

-答。雖↠有ト↢異義↡且ク一義ニ云ク、¬大経ノ¼説相ハ順ズ↢常途ノ説ニ↡。聖道ノ諸教皆談ズルガ↢発心得道ノ義ヲ↡故ニ。¬観経¼之中ニハ説ク↣未発心皆得ト↢往生ヲ↡。由ガ↢仏力ニ↡故ニ。諸師ノ所立、其ノ義不同ナリ。不↠能↢具ニ述ルニ↡。

問とふ。 註ちゅう家けの意こころ、 この義ぎを許ゆるすや。

-問。註家ノ之意、許↢此ノ義ヲ↡耶。

答こたふ。 これに二にの意こころあり。

-答。此ニ有リ↢二ノ意↡。

一いちには許ゆるさざるなり。 いまの釈しゃくにあるいは 「莫まく不ふ発ほつ皆かい菩ぼ提だい之し心しん」 といひ、 あるいは 「若にゃく人にん不ふ発ほつ菩ぼ提だい心しん」 といふがゆゑに。

-一ニハ不↠許也。今ノ釈ニ或ハ云ヒ↢「▲莫不発皆菩提之心ト」↡、或ハ云ガ↢「▲若人不発菩提心ト」↡故ニ。

↓二にには許ゆるすところなり。 ただ三さん不ぷを嫌きらひてまさしく三信さんしんの往おう生じょうを許ゆるすがゆゑなり。 第だい二にの義ぎに就つきて、 すなはち ¬大だい経きょう¼ 所説しょせつの菩ぼ提だい心しんはすなはち三信さんしんを指さすといふ義ぎ趣しゅあるべきなり。

-二ニハ所↠許ス也。唯嫌テ↢三不ヲ↡正ク許スガ↢三信ノ往生ヲ↡故也。就テ↢第二ノ義ニ↡、可↠有ル↧即云フ↣¬大経¼所説ノ菩提心者則指スト↢三信ヲ↡之義趣↥也。

ちなみに問とふ。 宗しゅう家けの意こころ、 なんの義ぎにかよる。

-因チナミニ問。宗家之意、依ル↢何ノ義ニカ↡耶。

答こたふ。 ↑未み発心ほっしんの人ひとの往おう生じょうを許ゆるす。 これ凡ぼん夫ぶ済さい度どの弘ぐ願がんの本ほん意いたるがゆゑなり。

-答。許ス↢未発心ノ之人ノ往生ヲ↡。是 レ為ルガ↢凡夫済度ノ弘願ノ本意↡故也。

「おほよそ回え向こうの名みょう義ぎを釈しゃくせば」 とらは、 その意こころ見みつべし。

-「▲凡ソ釈セバト↢廻向ノ名義ヲ↡」等者、其ノ意可シ↠見ツ。

¬安楽あんらく集しゅう¼ の下げにいはく、 「回え向こうの名みょう義ぎを釈しゃくせば、 ただしおもんみれば一切いっさい衆しゅ生じょうにすでに仏ぶっ性しょうあり、 人々にんにんみな願がん成じょう仏ぶつの心しんあり。 しかれども所修しょしゅの行ぎょう業ごうによりていまだ一万いちまん劫ごうを満まんぜざるこのかたはなほいまだ火か界かいを出いでず、 輪りん廻ねを免まぬかれず。 このゆゑに聖しょう者じゃこの長じょう苦くを愍あわれみて、 回えして西にしに向むかへてために大益だいやくを成なさんことを勧すすむ。

-¬安楽集ノ¼下ニ云、「▲釈セ↢廻向ノ名義ヲ↡者、◆但シ以レバ一切衆生ニ既ニ有リ↢仏性↡、人人皆有リ↢願成仏ノ心↡。然モ依テ↢所修ノ行業ニ↡未ダル↠満ゼ↢一万劫ヲ↡已来ハ猶未ダ↠出↢火界ヲ↡、不↠免レ↢輪廻ヲ↡。是ノ故ニ聖者愍テ↢斯ノ長苦ヲ↡、勧ム↣廻シテ向ヘテ↠西ニ為ニ成サンコトヲ↢大益ヲ↡。

しかるに回え向こうの功こう六ろくを越こえず。 なんらをか六ろくとする。 一いちには所修しょしゅの諸業しょごうをもつて弥陀みだに回え向こうして、 すでにかの国くにに至いたりて、 還かえりて六通ろくつうを得えて衆しゅ生じょうを済運さいうんす。 これすなはち不ふ住じゅう道どうなり。 二にには因いんを回えして果かに向むかふ。 三さんには下げを回えして上じょうに向むかふ。 四しには遅ちを回えして速そくに向むかふ。 これすなはち不ふ住じゅう世せ間けんなり。 五ごには衆しゅ生じょうに回施えせして、 悲ひ念ねんして善ぜんに向むかふ。 六ろくには分別ふんべつの心しんを回え入にゅう去こ却きゃくす。 回え向こうの功こうただこの六ろくを成じょうず。」 以上

-◆然ニ廻向ノ之功不↠越↢於六ヲ↡。何等ヲカ為ル↠六ト。◆一者将モテ↢所修ノ諸業ヲ↡廻↢向シテ弥陀ニ↡、既ニ至テ↢彼ノ国ニ↡、還テ得テ↢六通ヲ↡済↢運ス衆生ヲ↡。此即不住道也。◆二ニハ廻シテ↠因ヲ向フ↠果ニ。◆三ニハ廻シテ↠下ヲ向フ↠上1128ニ。◆四ニハ廻シテ↠遅ヲ向フ↠速ニ。此即不住世間ナリ。◆五ニハ廻↢施シテ衆生ニ↡、悲念シテ向フ↠善ニ。◆六ニハ廻↢入去↣却ス分別ノ之心ヲ↡。◆廻向ノ之功只成ズ↢斯ノ六ヲ↡。」 已上

いまの ¬論ろんの註ちゅう¼ の文もんいまの回え向こうの第だい五ごの義ぎとその意こころ同おなじなり。

-今ノ¬論ノ註ノ¼文与↢今ノ廻向ノ第五ノ之義↡其ノ意同ジ也。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ・『弥陀経義疏』三文

【52】次つぎの元がん照じょうの釈しゃく、 文もんに三段さんだんあり、 ともに ¬弥陀みだ経きょうの義ぎ疏しょ¼ の文もんなり。

▲次ノ元照ノ釈、文ニ有リ↢三段↡、共ニ¬弥陀経ノ義疏ノ¼文也。

初はじめは諸仏しょぶつ互ご讃さんの中なかに、 諸仏しょぶつ釈しゃ迦かの仏徳ぶっとくを称しょう讃さんして、 すなはち (小経) 「能のう為い甚難じんなん希有けう之事しじ」 といふ経きょう文もんを解げする釈しゃく文もんなり。

-初ハ解スル↧諸仏互讃サンノ之中ニ、諸仏称↢讃シテ釈迦ノ仏徳ヲ↡、即言フ↢「▲能為甚難希有之事ト」↡経文ヲ↥之釈文也。

【53】次つぎの文もんは、 二にの難なんある中なかに法難ほうなんを説ときて、 (小経) 「説せつ是ぜ一切いっさい世せ間けん難信なんしん之し法ほう」 といふ経きょう文もんを解げする釈しゃく文もんなり。

▲次ノ文者、解スル↧有ル↢二ノ難↡中ニ説ヲ↢法難ヲ↡、云フ↢「▲説是一切世間難信之法ト」↡経文ヲ↥之釈文也。

【54】後のちの文もんは、 すなはちかの二にの難なんを出いだす釈しゃくなり。

▲後ノ文ハ、即出ス↢彼ノ二ノ難ヲ↡釈ナリ。

問とふ。 後のちの釈しゃくはこれ初はじめの釈しゃくの次つぎの詞ことばたり。 もつともあひ隣となるべし。 承しょう前ぜんの下しもは次つぎの釈しゃくの末まつの詞ことばたり。 これ↓顕実けんじつの文もんなり。 なんぞともに一いち具ぐの文段もんだんに加くわへずして、 おのおの別べつの文もんを隔へだてて前ぜん後ごに引ひくや。

-問。後ノ釈ハ是 レ為タリ↢初ノ釈ノ次ノ詞↡。尤可シ↢相 ヒ隣トナル↡。▲承前ノ下ハ為タリ↢次ノ釈ノ末ノ詞↡。是 レ顕実ノ文ナリ。何ゾ共ニ不シテ↠加↢一具ノ文段ニ↡、各隔テヽ↢別ノ文ニ↡前後ニ引耶。

答こたふ。 まことに思おもひがたきに似にたり。 ただし推すい義ぎを加くわふるに、 まづ初はじめの文もんは、 甚難じんなん希有けうの経きょう文もんの中なかにこの二にの難なんを含ふくむ。 このゆゑに疏しょ主しゅその科かの下もとにおいてこの解げ釈しゃくあり。 しかるに第一だいいちの難なんはこれ仏ぶつの自利じり、 第だい二にの難なんはこれ仏ぶつの利他りた、 その利他りたとは、 この一切いっさい世せ間けん難信なんしんの念仏ねんぶつを説とくこれなり。 このゆゑに五ご濁じょく悪あく世せの成じょう道どう、 ただこれこの難信なんしんの法ほうを説とかんがためなり。 この義ぎを顕あらわさんがために法難ほうなんを説とく。 下しもにことさらに加くわへらるるか。

-答。誠ニ似タリ↠難ニ↠思ヒ。但シ加ルニ↢推義ヲ↡、先ヅ初ノ文者、甚難希有ノ之経文ノ中ニ含ム↢此ノ二ノ難ヲ↡。是ノ故ニ疏主於テ↢其ノ科ノ下ニ↡有リ↢此ノ解釈↡。而ニ▲第一ノ難ハ是 レ仏ノ自利、▲第二ノ之難ハ是 レ仏ノ利他、其ノ利他ト者、説ク↢此ノ一切世間難信ノ念仏ヲ↡是也。是ノ故ニ五濁悪世ノ成道、唯是為ナリ↠説ンガ↢此ノ難信ノ法ヲ↡。為ニ↠顕ンガ↢此ノ義ヲ↡説ク↢法難ヲ↡。下ニ故ニ加↠之ヘ歟。

次つぎに↑顕実けんじつの文もん、 前さきの二にの難なんを挙あぐる下しもにあひ次つぐるに便べんあり、 これを思し択ちゃくすべし。

-次ニ顕実ノ文、挙ル↢前ノ二ノ難ヲ↡下ニ相次ツルニ有リ↠便、可シ↣思↢択ス之ヲ↡。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ・『超玄記』文

【55】次つぎに*用欽ようきんの釈しゃく、

▲次1129用欽ノ釈、

上かみの ¬義ぎ疏しょ¼ に法難ほうなんを解げする文もんを釈しゃくす。 このゆゑにこれを引ひく。

-釈ス↧▲上ノ¬義疏ニ¼解スル↢法難ヲ↡文ヲ↥。是ノ故ニ引ク↠之ヲ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ・『聞持記』文

【56】次つぎに ¬*聞もん持記じき¼ は、 *戒かい度ど律りっ師しかの ¬疏しょ¼ を解げする書しょなり。

▲次ニ¬聞持記ハ¼、戒度律師解スル↢彼ノ¬疏ヲ¼↡書ナリ。

いまの所引しょいんは、 上かみに用もちゐるところの本書ほんしょの文言もんごんを釈しゃくす。 今疏こんしょを疎そとなし、 記きの釈しゃくを註ちゅうとなす。 解げしやすからしめんがために截のするところかくのごとし。

-今ノ所引者、釈ス↢▲上ニ所ノ↠用ル本書ノ文言ヲ↡。今疏ヲ為シ↠疎ト、記ノ釈ヲ為ス↠註ト。為ニ↠令ンガ↠易カラ↠解シ所↠截スル如シ↠此ノ。

二 Ⅱ ⅲ e ロ ○ ・『楽邦文類』文

【57】次つぎに ¬*楽邦らくほう文類もんるい¼ の後ご序じょ、 無為むい子しの作さく。

▲次ニ¬楽邦文類ノ¼後序、無為子ノ作。

いまの所引しょいんは最初さいしょの詞ことば、 この奥おくになほ十じゅう七しち行ぎょう余よあり。 つぶさに載のするに及およばず。 志こころざしあらん人ひとはこれを尋たずね見みるべし。

-今ノ所引者最初ノ之詞、此ノ奥ニ猶有↢十七行余↡。不↠及↢具ニ載ルニ↡。有ラン↠志之人ハ可シ↣尋↢見ル之ヲ↡。

 

六要ろくよう鈔しょう第三だいさん 旧きゅう本ほん

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
前の巻 実際には当巻。 (二末にも 「又云」 の釈があるが、 別内容)
路に大の訓 ¬広韻¼ の説。
道の義にまた衆妙所寄の文あり ¬広韻¼ の説。
深心 実際には回向発願心の釈にある。
底本は◎本派本願寺蔵明徳三年慈観上人書写本。 Ⓐ本派本願寺蔵文安四年空覚書写本、 Ⓑ興正派興正寺蔵蓮如上人書写本 と対校。
花→Ⓐ華
則→Ⓐ即
花→Ⓐ華
則→Ⓐ即
欣→ⒶⒷ忻
仏 Ⓑになし
問→Ⓑ門
想→Ⓐ相
准→Ⓑ唯
今→[問]今Ⓐ
釈云不簡明闇等→◎釈云↢不簡明闇等↡
之 Ⓐになし
三→Ⓑ[故]三
廃→◎ⒶⒷ癈
身→Ⓐ身[之]
又→Ⓐ亦
已上→Ⓐ乃至
臨終→◎ⒶⒷ平生
憑→Ⓐ馮