往生要集 巻中 *尽第六別時念仏門
尽第六別時念仏門 本書の巻中が大文第六の別時念仏までであるという意。
天台*首楞厳院沙門源信撰
◎正修念仏 4 観察門
【42】第四に観察門とは、 初心の観行は深奥に堪へず。 ¬*十住毘婆沙¼ (意) にいふがごとし。 「*新発意の菩薩は先づ仏の色相を念ず」 と。 また*諸経のなかに、 初心の人のためには、 多く相好の功徳を説けり。 このゆゑにいままさに色相の観を修すべし。
諸経 以下の第四観察門に引用される経典を指す。
第四観察門者、初心観行不↠堪↢深奥↡。如↢¬十住婆娑¼云↡、「新発意菩薩先念↢仏色相↡。」又諸経中、為↢初心人↡多説↢相好功徳↡。是故今当↠修↢色相観↡。
これを分ちて三となす。 一には*別相観、 二には*総相観、 三には*雑略観なり。 *意楽に随ひてこれを用ゐるべし。
別相観 仏の華座および仏身の相好の一々を観想すること。
総相観 仏身の全体を観想すること。
雑略観 種々の相好を略して、 白毫相 (眉間にある白色の旋毛) のみを観想すること。
意楽 望み。
此分為↠三。一別相観、二総相観、三雑略観。随↢意楽↡応↠用↠之。
◎正宗念仏 ○観察門 1 別相観
【43】初めに別相観とは、 また二あり。
初別相観者亦有↠二。
・華座
先づ*華座を観ず。
華座 阿弥陀仏が座る蓮華の台座。
先観↢華座↡。
¬観経¼ にのたまはく、 「▲かの仏を観ぜんと欲はば、 まさに想念を起すべし。 七宝の地の上において蓮華の想をなし、 その蓮華の一々の葉をして百宝色〔ありとの想〕をなさしめよ。 〔その葉に〕八万四千の脈ありて、 なほ天の画のごとし。 脈に八万四千の光あり。 *了々分明にして、 みな見ることを得しめよ。 華葉の小さきものは、 縦広二百五十由旬なり。 かくのごとき華に八万四千の葉あり。 一々の葉のあひだに百億の*摩尼珠王ありて、 もつて映飾となせり。 一々の摩尼珠は、 千の光明を放つ。 その光〔天〕蓋のごとくして、 七宝合成して、 あまねく地の上に布けり。 *釈迦毘楞伽宝、 もつてその台となせり。 この蓮華台は、 八万の金剛・*甄叔迦宝・*梵摩尼宝・妙真珠網、 もつて交飾となせり。 その台上において、 自然にして*四柱の宝幢あり。 一々の宝幢は、 百千万億の須弥山のごとし。 幢の上の*宝縵は、 *夜摩天宮のごとし。 五百億の微妙の宝珠ありて、 もつて映飾となせり。 一一の宝珠に八万四千の光あり。 一々の光、 八万四千の異種の金色をなす。 一々の金光、 その宝土にあまねくして、 処々に変化して、 おのおの異相をなす。 あるいは金剛台となり、 あるいは真珠網となり、 あるいは*雑華雲となる。 十方の面において、 意に随ひて変現して仏事を施作す。 これを華座の想となす。
了々分明にして あきらかに。 はっきりと。
摩尼珠王 摩尼は梵語マニ (maņi) の音写。 意のままに財宝や衣服・飲食などを出す徳をもつ宝珠。 また悪を去り、 濁水をきよらかにし、 禍を去る徳をもつともいう。
甄叔迦宝 甄叔迦は梵語キンシュカ (kiſśuka) の音写。 甄叔迦という木に咲く赤い花の色に似た宝石。
梵摩尼宝 梵は清浄の意。 摩尼は梵語マニ (maņi) の音写で、 きよらかな摩尼宝珠 (如意宝珠) のこと。
四柱の宝幢 蓮華台の四方にある宝でできた柱。
雑華雲 種々の色をした花で飾られた雲。
¬観経¼云。「欲↠観↢彼仏↡者、当↠起↢想念↡。於↢七宝地上↡、作↢蓮華想↡、令↣其蓮華一一葉作↢百宝色↡。有↢八万四千脈↡、猶如↢天画↡。脈有↢八万四千光↡、了了分明皆令↠得↠見。華葉小者、縦広二百五十由旬。如↠是華有↢八万四千葉↡、一一葉間有↢百億摩尼珠王↡、以為↢暎飾↡。一一摩尼珠、放↢千光明↡。其光如↠蓋、七宝合成、遍布↢地上↡。釈迦楞伽宝以為↢其台↡。此蓮華台八万金剛・甄叔迦宝・梵摩尼宝・妙真珠網以為↢交飾↡。於↢其台上↡、自然而有↢四柱宝幢↡。一一宝幢如↢百千万億須弥山↡。幢上宝縵、如↢夜摩天宮↡、有↢五百億微妙宝珠↡、以為↢暎飾↡。一一宝珠有↢八万四千光↡。一一光、作↢八万四千異種金色↡。一一金光、遍↢其宝土↡、処処変化各各作↢異相↡。或為↢金剛台↡、或作↢真珠網↡、或作↢雑華雲↡。於↢十方面↡、随↠意変現施↢作仏事↡。是為↢華座想↡。
かくのごとき妙華は、 これ本法蔵比丘の願力の所成なり。 もしかの仏を念ぜんと欲ふものは、 まさに先づこの華座の想をなすべし。 この想をなす時には*雑観することを得ざれ。 みな一々にこれを観ずべし。 一々の葉、 一々の珠、 一々の光、 一々の台、 一々の幢、 みな分明ならしめて、 鏡のなかにみづから面像を見るがごとくせよ。
雑観 順序次第を乱して観想すること。
如↠此妙華、是本、法蔵比丘願力所成。若欲↠念↢彼仏↡者、当↣先作↢此華座想↡。作↢此想↡時、不↠得↢雑観↡。皆応↢一一観↟之。一一葉、一一珠、一一光、一一台、一一幢、皆令↢分明↡、如↧於↢鏡中↡自見↦面像↥。
この観をなすを、 名づけて正観となす。 もし他観するを、 名づけて邪観となす」 と。 以上、 この座の相を観ずるものは、 五万劫の生死の罪を滅除して、 必定してまさに極楽世界に生るべし。
作↢此観↡者名為↢正観↡。若他観者名為↢邪観↡。」已上観↢此座相↡者滅↢除五万劫生死之罪↡必定当↠生↢極楽世界↡
・相好
次にまさしく*相好を観ず。 いはく、 阿弥陀仏は*華台の上に坐して、 相好*炳然として、 その身を荘厳したまへり。
炳然 明らかなさま。
次正観↢相好↡。謂阿弥陀仏坐↢華台上↡、相好炳然、荘厳其身↡。
・相好 1. 頂上肉髻
一には、 頂の上の*肉髻はよく見るものなし。 高顕周円なること、 なほ*天蓋のごとし。 あるいは広く観ずることを楽ふものは、 次に観ずべし。 かの頂の上に大光明あり。 千の色を具足せり。 一々の色は、 八万四千の支となり、 一々の支のなかに八万四千の化仏まします。 化仏の頂の上より、 またこの光を放ちたまふ。 この光あひ次いで、 すなはち上方の無量の世界に至る。 上方界においても、 化の菩薩ありて、 雲のごとくして下りて諸仏を*囲繞したてまつれり。 ¬*大集経¼ にのたまはく、 「父母・師僧・和上を*恭敬して、 肉髻の相を得たり」 と云々。 もしこの相において随喜を生ずるものは、 千億劫の極重の悪業を除却して、 三途に堕せず。
天蓋 仏を荘厳するために頭上をおおうかさ。
圍繞 とりかこむこと。
一頂上肉髻、無↢能見者↡。高顕周円猶如↢天蓋↡。或楽↢広観↡者、次応↠観。彼頂上有↢大光明↡具↢足千色↡。一一色作↢八万四千支↡、一一支中有↢八万四千化仏↡。化仏頂上亦放↢此光↡。此光、相次乃至↢上方無量世界↡。於↢上方界↡有↢化菩薩↡、如↠雲而下囲↢遶諸仏↡。¬大集経¼云「恭↢敬父母・師僧・和上↡得↢肉髻相↡」云云若於↢此相↡生↢随喜↡者除↢却千億劫極重悪業↡不↠堕↢三途↡
・相好 2. 頂上髪毛
二には、 頂の上に八万四千の髪毛あり。 みな上に向かひて靡き、 右に旋りて生ひたり。 永く*褫落することなく、 また雑乱せず。 紺青稠密にして、 香潔細軟なり。 もし広く観ずることを楽ふものは、 観ずべし。 一々の毛孔より旋りて五の光をなせり。 もしこれを申ぶる時には、 修長にして量りがたし。 釈尊の髪のごときは、 長さ*尼楼陀精舎より父王の宮に至りて、 城を繞ること*七帀せり。 無量の光あまねく照らして、 *紺琉璃の色をなし、 色のなかに化仏あり、 称数すべからず。 この相を現じをはりて、 還りて仏の頂に住して、 右に旋りて宛転して、 すなはち*蠡文となる。 ¬大集経¼ にのたまはく、 「悪事をもつて衆生に加へざるがゆゑに、 髪毛金精の相を得たり」 と。
褫落 脱け落ちること。
尼楼陀精舎 (釈尊の生国) の南にあった庭園。 釈尊がここで父王のために法を説いたので、 精舎 (僧院の意) の語を付して呼ばれる。
七帀 七周。
紺琉璃 琉璃は青色の宝玉で、 瑠璃とも書く。
蠡文 螺文のこと。 渦巻きの文様。
二頂上八万四千髪毛、皆上向靡右旋而生。永無↢*落↡、亦不↢雑乱↡。紺青稠密、香潔細軟。或楽↢広観↡者、応↠観。一一毛孔旋生↢五光↡。若申↠之時、脩長難↠量。如↢釈尊↡髪長従↢尼楼陀精舎↡至↢父王宮↡遶↠城七匝 無量光普照作↢紺琉璃色↡。色中化仏、不↠可↢称数↡。現↢此相↡已還住↢仏頂↡、右旋宛転即成↢蠡文↡。¬大集経¼云「不↧以↢悪事↡加↦衆生↥故得↢髪毛金精相↡」
青蓮院本では 褫。
・相好 3. 髪際有光
三には、 その髪の際に五千の光あり。 *間錯分明なり。 みな上に向かひて靡きて、 もろもろの髪を囲繞せり。 頂を繞ること五帀せり。 天の画師の所作の画法のごとし。 *団円正等にして、 細きこと一糸のごとし。 その糸のあひだにもろもろの化仏を生じ、 化の菩薩ありて、 もつて眷属たり。 一切の*色像またなかにおいて見ゆ。 広く観ずることを楽ふものは、 この観を用ゐるべし。
間錯 まじわること。
団円正等 円くふくよかで大きさが等しい。
色像 すがたかたち。
三於↢其髪際↡有↢五千光↡、間錯分明。皆上向靡囲↢遶諸髪↡、遶↠頂五匝。如↢天画師所作画法↡。団円正等細如↢一糸↡。於↢其糸間↡生↢諸化仏↡、有↢化菩薩↡以為↢眷属↡。一切色像亦於↠中見。楽↢広観↡者可↠用↢此観↡
・相好 4. 広長輪埵
四には、 耳厚く、 広く長くして、 *輪埵成就せり。 あるいは広く観ずべし。 七の毛を旋り生じて、 五の光を流出す。 その光に千の色あり。 色ごとに千の化仏まします。 仏ごとに千の光を放ちて、 あまねく十方の無量の世界を照らしたまふ。 この*随好の*業因は勘ふべし。 ¬*観仏三昧経¼ (意) にのたまはく、 「この好を観ずるものは、 八十劫の生死の罪を滅し、 後世にはつねに*陀羅尼の人と眷属たり」 と云々。 下去もろもろの利益、 みなまた ¬観仏三昧経¼ によりて注す。
輪埵 円く盛り上がった耳たぶ。
業因 果をもたらす因となる行為。
四耳厚広長輪埵成就。或応↢広観↡。旋↢生七毛↡流↢出五光↡。其光千色、色千化仏。仏放↢千光↡遍照↢十方無量世界↡。此随好之業因可↠勘¬観仏三昧経¼云「観↢此好↡者滅↢八十*億劫生死之罪↡後世常*為↢陁羅尼人↡為↢眷属↡」云云下去諸利益皆*依↢¬観仏三昧経¼↡而注
億 他本では欠く。
為 他本では 「於」。
◇ 他本では 「亦」 の字あり。
・相好 5. 額広平正
五には、 額広く平正にして、 形相殊妙なり。 この*好の*業因ならびに利益は勘ふべし。
好 随形好のこと。
業因 果をもたらす因となる行為。
五額広平正形相殊妙。此*妙業因并利益可↠勘
妙 他本では 「好」。
・相好 6. 面輪円満
六には、 *面輪円満にして、 *光沢熙怡なり。 *端正皎潔なること、 なほ秋の月のごとし。 双べる眉の皎浄なること、 *天帝の弓に似たり。 その色比なくして、 紺琉璃の光あり。 来り求むるものを見て歓喜を生ずるがゆゑに、 面輪円満なり。 この相を観ずるものは億劫の生死の罪を除却して、 後身の生処に、 まのあたり諸仏を見たてまつる。
面輪 面容のこと。 顔。
光沢熙怡 つややかで柔和なこと。
端正皎潔 よくととのって、 きよらかに澄みわたっていること。
六面輪円満、光沢熙怡。端正皎潔猶如↢秋月↡。双眉皎浄、似↢天帝弓↡。其色無比紺流璃光。見↢来求者↡生↢歓喜↡故面輪円満観↢此相↡者除↢却億劫生死之罪↡後身生処面見↢諸仏↡
・相好 7. 眉間白毫
七には、 眉間の*白毫、 右に旋りて宛転せり。 柔軟なること*覩羅綿のごとく、 鮮白なること*珂雪に逾えたり。 あるいは次に広く観ずべし。 これを舒ぶれば、 直くして長大なること白琉璃の筒のごとく、 放ちをはれば、 右に旋りて*頗梨珠のごとし。 丈六の仏の白毫は*五丈なり。 右に旋ること経一寸、 周囲三寸。 十方の面において、 無量の光を現ずること、 万億の日のごとくして、 つぶさに見るべからず。 ただ光のなかに、 もろもろの蓮華を現ず。 上は*無量塵数の世界を過ぐるまで、 華々あひ次いで、 *団円正等なり。 一々の華の上に、 一の化仏坐したまへり。 相好荘厳し、 眷属*囲繞せり。 一々の化仏また無量の光を出し、 一々の光のなかにまた無量の化仏まします。 このもろもろの世尊は、 行ずるもの無数、 住するもの無数、 坐するもの無数、 臥するもの無数にして、 あるいは大慈大悲を説き、 あるいは*三十七品、 あるいは六波羅蜜、 あるいはもろもろの*不共の法を説く。 もし広く説かば、 一切衆生より十地の菩薩に至るまで、 またこれを知ることあたはじ。 ¬大集経¼ (意) にのたまはく、 「他の徳を隠さず、 その徳を*称揚して、 この相を得たり」 と。 ¬*観仏経¼ (意) にのたまはく、 「無量劫より昼夜に精進して身心懈ることなきこと、 *頭燃を救ふがごとくして、 六度・三十七品・十力・無畏・大慈大悲のもろもろの妙功徳を勤修して、 この白毫を得たり。 この相を観ずるものは、 九十六億那由他恒河沙*微塵数劫の生死の罪を除却す」 と。
珂雪 白雪。
頗梨珠 水晶の玉。
五丈 諸本には 「長丈五」 とある。 丈五は一丈五尺。
無量塵数 数限りないこと。
団円正等 円くふくよかで大きさが等しい。
微塵数 無数の意。 微塵は仏教でいう物質の最小単位。
七眉間白毫、右旋宛転。柔軟如↢*都覩羅綿↡、鮮白逾↢珂雪↡。或次応↢広観↡。舒↠之直長大如↢白琉璃筒↡、放已右旋如↢頗梨珠↡。丈六仏白毫*長*丈五右旋*径一寸周囲*二寸 於↢十方面↡現↢無量光↡、如↢万億日↡、不↠可↢具見↡。但於↢光中↡現↢諸蓮華↡。上過↢无量塵数世界↡、華華相次、団円正等。一一花上一化仏坐、相好荘厳眷属囲遶。一一化仏復出↢无量光↡、一一光中亦无量化仏。是諸世尊、行者無数、住者無数、坐者无数、臥者无数。或説↢大慈大悲↡、或説↢三十七品↡、或*説↢六波羅*密↡、或*説↢諸不共法↡。若広説者、一切衆生至↢十地菩薩↡、亦不↠能↠知↠之。¬大集経¼云「不↠隠↢他徳↡称↢揚其徳↡得↢此相↡」¬観仏経¼云「従↢无量劫↡昼夜精進身心无↠懈如↠救↢頭燃↡勤↢修六度・七品・十力・无畏・大慈・大悲諸妙功徳↡得↢此白毫↡観↢此相↡者除↢却九十六億那由他恒河沙微塵数劫生死之罪↡」
都羅綿 他本では 「覩羅綿」。
長 青蓮院本では欠く。
丈五 青蓮院本では 「五丈」。
径 青蓮院本では 「経」。
二寸 他本では 「三寸」。
説 青蓮院本では欠く。
密 他本では 「蜜」。 以下同。
説 青蓮院本では欠く。
・相好 8. 牛王眼睫
八には、 如来の*眼睫はなほ牛王のごとし。 紺青にして斉しく整ほりて、 あひ雑乱せず。 あるいは次に広く観ずべし。 上下におのおの生じて、 五百の毛あり。 *優曇華の鬚のごとくして、 柔軟にして愛楽すべし。 一々の毛端より一の光を流出す。 頗梨の色のごとくして、 頭を繞ること一帀し、 もつぱらに微妙のもろもろの青蓮華を生ず。 一々の*華台に*梵天王ありて、 青色の*蓋を執れり。 ¬大集経¼ にのたまはく、 「心を至して*無上菩提を求めしがゆゑに、 牛王の睫の相を得たり」 と。 ¬大経¼ (*大般涅槃経) にのたまはく、 「怨憎を見て善心をなすがゆゑに」 と。
眼睫 まつげ。
優曇華 優曇は梵語ウドゥンバラ (udumbara) の音写の略。 霊端華と漢訳する。 優曇鉢樹の花。 三千年に一度花が咲くという。
蓋 かさ。
八如来眼睫、猶*若↢牛王↡。紺青斉整不↢相雑乱↡。或次応↢広観↡。上下各生有↢五百毛↡。如↢優曇華鬚↡、柔軟可↢愛楽↡。一一毛端流↢出一光↡。如↢頗梨色↡、遶↠頭一匝、純生↢微妙諸青蓮華↡。一一華台有↢梵天王↡、執↢青色蓋↡。¬大集経¼云「至↠心求↢於无上菩提↡故得↢牛王睫相↡」¬大経¼云「見↢於怨増↡生↢於善心↡故」
若 青蓮院本、 建長五年刊本では 「如」。
・相好 9. 青白眼相
九には、 仏眼は青白にして上下ともに眴く。 白きものは白宝に過ぎたり。 青きものは青蓮華に勝れたり。 あるいは次に広く観ずべし。 眼より光明を出したまふに、 分れて四支となりて、 あまねく十方の無量の世界を照らす。 青き光のなかには青き色の化仏ましまし、 白き光のなかには白き色の化仏まします。 この青白の化仏、 またもろもろの神通を現じたまふ。 ¬大集経¼ (意) にのたまはく、 「慈心を修集し、 衆生を愛視して、 紺色の目の相を得たり」 と云々。 小時のあひだにおいても、 この相を観ずるものは、 未来の生処に、 眼つねに明浄にして、 眼根に病なく、 七劫の生死の罪を除却す。
九仏眼青白上下倶眴。白者過↢白宝↡、青者勝↢青蓮華↡。或次応↢広観↡。眼出↢光明↡、分為↢四支↡、遍照↢十方无量世界↡。於↢青光中↡有↢青色化仏↡、於↢白光中↡有↢白色化仏↡。此青・白化仏、復現↢諸神通↡。¬大集経¼云「修↢集慈心↡愛↢視衆生↡得↢紺色目相↡」云云於↢*少時間↡観↢此相↡者未来生処眼常明浄眼根無↠病除↢却七劫生死之罪↡
少 青蓮院本では 「小」。
・相好 10. 鼻修高直
十には、 鼻修く、 高く直くして、 その孔現ぜず。 鋳たる*金鋌のごとく、 鸚鵡の嘴のごとし。 表裏清浄にしてもろもろの*塵翳なし。 二の光明を出してあまねく十方を照らし、 変じて種々の無量の*仏事をなす。 この*随好を観ずるものは千劫の罪を滅し、 未来の生処にて上妙の香を聞ぎ、 つねに*戒香をもつて身の*瓔珞となす。
金鋌 金を鋳てつくった折釘状の金具。
塵翳 不浄のもの。
戒香 戒をたもった功徳が四方に薫ずるのを、 香に喩えていう。
十鼻脩高直其孔不↠現。如↢鋳金*挺↡、如↢鸚鵡觜↡。表裏清浄无↢諸塵翳↡。出↢二光明↡、遍照↢十方↡、変作↢種種无量仏事↡。観↢此随好↡者滅↢千劫罪↡未来生処聞↢上妙香↡常以↢戒香↡為↢身瓔珞↡
挺 青蓮院本、 大派依用本では 「鋌」。
・相好 11. 脣色赤好
十一には、 唇の色、 赤好なること*頻婆菓のごとし。 上下あひ称へること、 *量りのごとくにして厳麗なり。 あるいは次に広く観ずべし。 *団円の光明、 仏の口より出でて、 なほ百千の赤き真珠の貫くがごとくして、 鼻と*白毫と髪とのあひだに入出す。 かくのごとく*展転して、 *円光のなかに入る。 この唇の随好の業等は勘ふべし。
頻婆菓 頻婆は梵語ビンバ (bhimba) の音写。 鮮やかな赤色の果実を結ぶ植物。
量りのごとくにして 天秤のようにつりあいがとれているという意。
団円 完全な円形。
白毫 白色の旋毛。
展転 めぐりうつること。
十一脣色赤好如↢頻婆菓↡、上下相称如↠量厳麗。或次応↢広観↡。団円光明、従↢仏口↡出、猶如↢百千赤真珠貫↡、入↢出於鼻白毫髪間↡。如↠是展転入↢円光中↡。此脣随好業等可↠勘
・相好 12. 歯斉浄密
十二には、 四十の歯は、 斉しく、 浄く密にして根深く、 白きこと*珂雪に逾えたり。 つねに光明あり。 その光紅白にして、 人の目を映耀す。 ¬*大経¼ (大般涅槃経) にのたまはく、 「*両舌・悪口・*恚心を遠離して、 四十の歯、 鮮白斉密なる相を得たり」 と云々。
珂雪 白雪。
大経 底本 (青蓮院本) には 「大集経」 とある。
恚心 いかりの心。
十二四十歯斉浄密根深、白逾↢珂雪↡。常有↢光明↡、其光紅白映↢耀人目↡。¬*大経¼云「遠↢離両舌・悪口・恚心↡得↢四十歯鮮白斉密相」*
大経 青蓮院本では 「大集経」。
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「云云」 とあり。
・相好 13. 四牙鮮白
十三には、 四の牙、 鮮白光潔にして鋒利なること、 月のはじめて生づるがごとし。 ¬大集¼ にのたまはく、 「身口意浄きがゆゑに、 四牙、 白の相を得たり」 と云々。 この唇・口・歯の相を観ずるものは、 二千劫の罪を滅す。
十三四牙鮮白光潔鋒利如↢月初*出↡。¬*大集経¼云「身口意浄故得↢四牙白相↡」云云観↢此脣口歯相↡者滅↢二千劫罪↡
出 底本まま。 註なし。
大集経 青蓮院本では 「大集」。 以下同。
・相好 14. 広長舌相
十四には、 世尊の舌相は、 薄く浄くして、 広く長し。 よく*面輪を覆ひて、 耳髪の際より、 乃至梵天に至る。 その色、 赤銅のごとし。 あるいは次に広く観ずべし。 舌の上に五の画あり、 なほ*印文のごとし。 笑みたまふ時、 舌を動かすに五の色光を出し、 仏を繞ること七帀して、 還りて頂より入る。 あらゆる*神変は無量無辺なり。 ¬大集¼ にのたまはく、 「*口の四の過を護りて、 広長の舌相を得たり」 と云々。 この相を観ずるものは、 百億八万四千劫の罪を除きて、 他世に八十億の仏に値ふ。
面輪 面容のこと。 顔。
印文 印章に刻まれた文様。
神変 不可思議なはたらき。
口の四の過 妄語・両舌・悪口・綺語の口業の四悪。
十四世尊舌相、薄浄、広長、能覆↢面輪↡、至↢耳髪際乃至梵天↡。其色如↢赤銅↡。或次可↢広観↡。舌上五画、猶如↢印文↡。*咲時動↠舌出↢五色光↡、遶↠仏七匝還従↠頂入。所有神変无量无辺。¬大集経¼云「護↢口四過↡得↢広長舌相↡」云云観↢此相↡者除↢百億八万四千劫罪↡他世値↢八十億仏↡
咲 大派依用本では 「笑」。
・相好 15. 舌下宝珠
十五には、 舌の下の両辺に二の宝珠あり。 甘露を流注して、 舌根の上に滴づ。 諸天・世人・十地の菩薩もこの舌根なく、 またこの味はひなし。 ¬*大般若¼ に異説あり。 勘ふべし。 ¬大経¼ (大般涅槃経・意) にのたまはく、 「飲食を施与するがゆゑに、 上味の相を得たり」 と。
大般若 底本 (青蓮院本) には 「大集般若」 とある。
十五舌下両辺有↢二宝珠↡、流↢注甘露↡滴↢舌根上↡。諸天・世人・十地菩薩、无↢此舌根↡、亦无↢此味↡。¬*大般若¼有↢異説↡可↠勘¬大経¼云「飲食施与故得↢上味相↡」
大般若 青蓮院本では 「大集般若」。
・相好 16. 瑠璃咽喉
十六には、 如来の咽喉は*瑠璃の筒のごとし。 状は蓮華を累ねたるがごとし。 出したまふところの音声は*詞韻和雅にして、 等しく聞えずといふことなし。 その声洪きに震ひて、 なほ天の鼓のごとく、 発したまふところの言は、 *均として*迦陵頻の音のごとし。 *任運によく*大千世界に遍す。 もし*作意したまふ時には無量無辺なり。 しかも衆生を利せんがために、 類に随ひて増減せず。 ¬大経¼ (同・意) にのたまはく、 「かの短を訟はず、 正法を謗ぜずして、 *梵音声の相を得たり」 と。 ¬大集¼ にのたまはく、 「もろもろの衆生において、 つねに柔軟に語りしがゆゑに」 と云々。
詞韻和雅 言葉のひびきが柔和・優雅であること。
均 婉約。 おだやかで、 つつしみ深いこと。
作意 心をはたらかせること。
梵音声 仏のきよらかな声。
十六如来咽喉如↢瑠璃筒↡、状如↠累↢蓮華↡。所↠出音声詞韻和雅无↠不↢等聞↡。其声洪震、猶如↢天皷↡、所↠発言均、如↢伽陵頻音↡。任運能遍↢大千世界↡。若作意時无量无辺。然為↠利↢衆生↡、随↠類不↢増減↡。¬大経¼云「不↠訟↢彼短↡不↠謗↢正法↡得↢梵音声相↡」¬大集経¼云「於↢諸衆生↡常柔軟語故」云云
・相好 17. 頚出円光
十七には、 頚より円光を出したまふ。 咽喉の上に*点相ありて分明なり。 一々の点のなかに一々の光を出す。 その一々の光、 前の円光を繞りて七帀を満足して、 衆画分明なり。 一々の画のあひだに妙蓮華あり。 華の上に七仏まします。 一々の化仏におのおの七菩薩ありて、 もつて侍者となせり。 一々の菩薩、 *如意珠を執れり。 その珠に金光あり。 青・黄・赤・白および*摩尼の色、 みなことごとく具足して、 諸光を囲繞せり。 上下・左右、 おのおの*一尋にして、 仏の頸を囲繞して、 了々なること画のごとし。 ¬*無上依経¼ (意) にのたまはく、 「衣服・飲食・車乗・臥具、 もろもろの荘厳の物を歓喜して施与し、 身金色にして、 円光一丈なる相を得たり」 と。
点相 梵字の伊字の三点に似た形。 「∵」 の形のこと。
摩尼 梵語マニ (maņi) の音写。 如意珠に同じ。
一尋 尋は長さの単位。 両手を左右にひろげたときの長さを一尋とする。
十七頚出↢円光↡。咽喉上有↢点相分明↡、一一点中出↢一一光↡。其一一光遶↢前円光↡満↢足七匝↡、衆画分明。一一画間、有↢妙蓮華、華上有↢七仏↡。一一化仏各有↢七菩薩↡、以為↢侍者↡。一一菩薩執↢如意珠↡、其珠金光。青・黄・赤・白及摩尼色皆悉具足囲↢遶諸光↡。上下左右各各一尋囲↢遶仏頚↡、了了如↠画。¬无上依経¼云「衣服飲食車乗臥具諸荘厳物歓喜施与得↢身金色円光一丈相↡」
・相好 18. 頚出二光
十八には、 頚より二の光を出す。 その光万色ありて、 あまねく十方の一切の世界を照らす。 この光に遇ふものは*辟支仏となる。 この光、 もろもろの辟支仏の頸を照らす。 この相現ずる時、 行者、 あまねく十方一切のもろもろの辟支仏の、 鉢を虚空に擲げて十八変をなし、 一々の足の下にみな文字ありて、 その字、 *十二因縁を宣説するを見る。
十八頚出↢二光↡。其光万色、遍照↢十方一切世界↡。遇↢此光↡者、成↢辟支仏↡。此光照↢諸辟支仏頚↡。此相現時、行者遍見↧十方一切諸辟支仏擲↢鉢虚空↡作↢十八変↡、一一足下皆有↢文字↡、其字宣↦説十二因縁↥。
・相好 19. 欠瓫骨満相
十九には、 *欠瓫骨満の相あり。 光十方を照らすに、 *虎魄の色をなす。 この光に遇ふものは声聞の意を発す。 このもろもろの声聞、 この光明を見るに、 分れて十支となる。 一支に千の色、 十千の光明あり。 光ごとに化仏まします。 一々の化仏に四の比丘ありて、 もつて侍者となり、 一々の比丘はみな、 苦・空・無常・無我を説く。 以上三種は、 広く観ずることを楽ふもの、 これを用ゐるべし。
欠瓫骨満 のどぼとけの突起がないという意。 あるいは両肩のくぼみがないという意か。
虎魄 琥珀。 紅黄色の宝石。
十九*鈌盆骨満相。光照↢十方↡作↢虎魄色↡。遇↢此光↡者発↢声聞意↡。是諸声聞、見↢此光明↡、*光分為↢十支↡、一支千色、十千光明。光有↢化仏↡。一一化仏有↢四比丘↡、以為↢侍者↡。一一比丘皆説↢苦・空・无常・无我↡。已上三種楽↢広観↡者応↠用↠之
鈌 他本では 欠。
光 他本では欠く。
・相好 20. 肩項円満
二十には、 世尊の肩・項は円満殊妙なり。 ¬*法華の文句¼ (意) にいはく、 「つねに施をして増長せしめたるがゆゑに、 この相を得たり」 と。
二十世尊肩項円満殊妙。¬法華文句¼云「恒令↢施増長↡故得↢此相↡」
・相好 21. 腋下充実
二十一には、 如来の腋の下はことごとくみな充実なり。 紅紫の光を放ちて、 もろもろの仏事をなし、 衆生を利益す。 ¬無上依経¼ (意) にのたまはく、 「衆生のなかにおいて利益の事をなし、 *四正勤を修して、 心に畏るるところなくして、 両の肩平整にして、 腋の下満てる相を得たり」 と。
二十一如来腋下、悉皆充実、放↢紅紫光↡、作↢諸仏事↡利↢益衆生↡。¬无上依経¼云「於↢衆生中↡為↢利益事↡修↢四正勤↡心无↠所↠畏得↢両肩平整而腋下満相↡」
・相好 22. 臂肘明直
二十二には、 仏の*双臂肘、 明直にして*円なること象王の鼻のごとく、 平立せるに膝を摩づ。 あるいは次に広く観ずべし。 手掌に*千輻の理あり。 おのおの百千の光を放ちてあまねく十方を照らすに、 化して金水となる。 金水のなかに一の妙水あり、 水精の色のごとし。 餓鬼は見て熱を除き、 畜生は*宿命を識り、 狂象の見るは獅子王となり、 獅子は*金翅鳥と見、 諸竜もまた金翅鳥王と見る。 このもろもろの畜生、 おのおの尊ぶところと見て、 心に恐怖を生じて、 合掌し*恭敬す。 恭敬するをもつてのゆゑに、 命終して天に生る。 ¬大集¼ にのたまはく、 「怖畏あるを救護して、 臂肘、 なることを得、 他の事業を見て佐助せしがゆゑに、 *手摩膝の相を得たり」 と。
双臂肘 両ひじ。
円 まるみを帯びていること。
千輻の理 千の放射状の輻 (車輪の輻) のような模様。 千輻輪相のこと。
宿命 過去世の境界。
金翅鳥 竜を食べるという大鳥。
妙翅鳥ともいう。 八部鬼神のうちの
迦楼羅に同じ。 →
八部鬼神
手摩膝の相 手がひざにまでとどく相。
二十二仏双臂肘明直円如↢象王鼻↡、平立摩↠膝。或次応↢広観↡。手掌千*軸理、各放↢百千光↡、遍照↢十方↡、化成↢金水↡。金水之中有↢一妙水↡、如↢水精色↡。餓鬼見除↠熱、畜生識↢宿命↡。狂*象見者為↢師子王↡、師子見↢金翅鳥↡、諸竜亦見↢金翅鳥王↡。是諸畜生各見↢*諸尊↡、心生↢恐怖↡合掌恭敬。以↢恭敬↡故、命終生↠天。¬大集経¼云「救↢護怖畏↡得↢臂肘↡見↢他事業↡佐助故得↢手摩膝相↡」
軸 他本では 「輻」。
象 他本では 「像」。
諸尊 他本では 「所尊」。
・相好 23. 諸指円満
二十三には、 もろもろの指円満し、 充密繊長にして、 はなはだ愛楽すべし。 一々の端に、 おのおの*万字を生ぜり。 その爪光潔なること、 華赤銅のごとし。 ¬瑜伽¼ (*瑜伽論・意) にいはく、 「もろもろの尊長において、 恭敬し、 礼拝し、 合掌し、 起立せしがゆゑに、 指繊長なる相を得たり」 と。
万字 卍。 吉祥の印。
二十三諸指円満、充密繊長甚可↢愛楽↡。於↢一一端↡、各生↢*万字↡。其爪光潔如↢花赤銅↡。¬瑜伽¼云「於↢諸尊長↡恭敬礼拝合掌起立故得↢指繊長相↡」
万字 大派依用本では 「卍」。
・相好 24. 指間網
二十四には、 一々の指のあひだは、 なほ雁王のごとく、 ことごとく*網あり。 金色交絡して、 *文、 綺画に同じ。 *閻浮金に勝れたること百千万億なり。 その色明達にして、 眼界に過ぎたり。 張れる時にはすなはち見ゆれども、 指を斂むれば見えず。 ¬大経¼ (大般涅槃経・意) にのたまはく、 「四摂の法を修して、 衆生を摂取せしがゆゑに、 この相を得たり」 と。
網 網縵のこと。 指の間の水かき状の膜。
文綺画に同じ 文様はあやぎぬの画と同じ。
閻浮金 閻浮は梵語ジャンブー・ナダ (jambhū-nada) の音写の略。 閻浮樹の間を流れる河の意。 その河の底からとれる砂金を閻浮金 (閻浮檀金) といい、 最高の金とされる。
二十四一一指間、猶如↢雁王↡、咸有↢網↡。金色交絡文同↢綺画↡。勝↢閻浮金↡百千万億。其色明達過↢於眼界↡。張時則見、斂↠指不↠見。¬*大集経¼云「修↢四摂法↡摂↢取衆生↡故得↢此相↡」
大経 青蓮院本では 「大集経」。 以下同。
・相好 25. 其手柔軟
二十五には、 その手柔軟なること*覩羅綿のごとくして、 一切に勝過して、 内外にともに握る。 ¬大経¼ (大般涅槃経・意) にのたまはく、 「父母・*師長の、 もし病苦するに、 みづから手をもつて洗ひ拭ひ、 捉持し、 *安摩せしがゆゑに、 手軟の相を得たり」 と。
安摩 なでること。 さすること。
二十五其手柔軟如↢覩羅綿↡、勝↢過一切↡内外倶握。¬大集経¼云「父母・師長若病苦自手洗拭捉持安摩故得↢手軟相↡」
・相好 26. 頷臆広大
二十六には、 世尊の頷・臆、 ならびに身の上半の、 威容広大なること獅子王のごとし。 ¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「もろもろの有情の、 如法の所作においてよく上首たれども、 しかも助伴となりて*我慢を離れ、 もろもろの*獷捩なかりしがゆゑに、 この相を得たり」 と。
我慢 自らをたのんで、 おごりたかぶる心。
獷捩 あらあらしい (ふるまい)。
二十六世尊頷・臆、并身上半威容広大如↢師子王↡。¬瑜伽¼云「於↢諸有情如法所作↡能為↢上首↡而作↢助伴↡離↢於我慢↡无↢諸*儣*悷↡故得↢此相↡」
儣 他本では 獷。
悷 青蓮院本では 捩。
・相好 27. 胸有万字
二十七には、 胸に*万字あり。 実相の印と名づけ、 大光明を放つ。 あるいは次に広く観ずべし。 光のなかに無量百千のもろもろの華ありて、 一々の華の上に無量の化仏まします。 このもろもろの化仏、 おのおの千の光ありて、 衆生を利益す。 乃至、 あまねく十方の仏の頂に入る。 時に、 もろもろの仏の胸より百千の光を出し、 一々の光、 六波羅蜜を説く。 一々の化仏、 一の化人の、 *端正微妙にして状弥勒のごときを遣はして、 行者を安慰せしむ。 この相の光を見るものは、 十二億劫の生死の罪を除く。
万字 卍。 吉祥の印。
端正微妙にして 容姿が美しくととのっているという意。
二十七胸有↢*万字↡、名↢実相印↡、放↢大光明↡。或次応↢広観↡。光中有↢无量百千衆花↡、一一花上有↢无量化仏↡。是諸化仏、各有↢千光↡利↢益衆生↡、乃至遍入↢十方仏頂↡。時諸仏胸出↢百千光↡、一一光説↢六波羅密↡。一一化仏、遣↢一化人端正微妙状如↢弥勒↡、安↢慰行者↡。見↢此相光↡者除↢十二億劫生死之罪↡
万字 大派依用本では 「卍」。
・相好 28. 心紅蓮華
二十八には、 如来の*心相は、 紅蓮華のごとし。 妙なる紫金の光、 もつて*間錯をなして、 *瑠璃の筒のごとくして、 懸りて仏の胸にあり。 合せず、 開せず、 *団円なること、 心のごとし。 万億の化仏、 仏の心のあひだに遊ぶ。 また*無量塵数の化仏、 仏の心のなかにましまして、 金剛台に坐して、 無量の光を放ちたまふ。 一々の光のなかに、 また無量塵数の化仏ましまして、 広長の舌を出し、 万億の光を放ちてもろもろの*仏事をなしたまふ。 仏の心を念ふものは、 十二億劫の生死の罪を除き、 生々に無量の菩薩に値ふことを得と云々。 広く観ずることを楽ふものは、 この観をなすべし。
心相 心臓のありさま。
間錯 まじわること。
団円 完全な円形。
無量塵数 数限りないこと。
二十八如来心相、如↢紅蓮華↡。妙紫金光、以為↢間錯↡、如↢瑠璃筒↡懸在↢仏胸↡。不↠合不↠開団円如↠心。万億化仏、遊↢仏心間↡。又无量塵数化仏、在↢仏心中↡、坐↢金剛台↡放↢无量光↡。一一光中、亦有↢无量塵数化仏↡、出↢広長舌↡、放↢万億光↡作↢諸仏事↡。念↢仏心↡者除↢十二億劫生死之罪↡生生得↠値↢无量菩薩↡云云楽↢広観↡者応↠作↢此観↡
・相好 29. 身皮金色
二十九には、 世尊の身の皮は、 みな真金の色なり。 光潔*晃耀すること、 妙金台のごとし。 衆宝をもつて荘厳し、 衆の見んと楽ふところなり。 ¬大経¼ (大般涅槃経・意) にのたまはく、 「衣服・臥具を施して、 この相を得たり」 と。
晃耀 盛んに輝くこと。
二十九世尊身皮、皆真金色。光潔晃耀如↢妙金台↡。衆宝荘厳、衆所↠楽↠見。¬大経¼云「施↢衣服臥具↡得↢此相↡」
・相好 30. 身光無量
三十には、 身光、 *任運に*三千界を照らす。 もし*作意したまふ時には無量無辺なり。 しかももろもろの有情を憐愍せんがためのゆゑに、 光を摂してつねに照らしたまふこと、 面ごとにおのおの*一尋なり。 ¬大経¼ (同・意) にのたまはく、 「香・華・灯明等をもつて人に施して、 この相を得たり」 と云々。 大光を観ずるものは、 ただ心に見ることを発すに、 衆罪を*除却すと。
作意 心をはたらかせること。
一尋 尋は長さの単位。 両手を左右にひろげたときの長さを一尋とする。
除却すと 底本 (青蓮院本) には下に 「云々」 の二字がある。
三十身光任運照↢三千界↡。若作意時无量无辺。然為↣憐↢愍諸有情↡故摂↠光常照面各一尋。¬大経¼云「以↢香華灯明等↡施↠人得↢此相↡」云云観↢大光↡者但発↢心見↡除↢却衆罪↡*
◇ 青蓮院本には 「云云」 と割註あり。
・相好 31. 身相端厳
三十一には、 世尊の身相は、 修く広くして端厳なり。 ¬大論¼ (*大智度論) にいはく、 「尊長を*恭敬し、 迎送し、 侍繞して、 身の直くして広き相を得たり」 と云々。
三十一世尊身相、修広端厳。¬大論¼云「恭↢敬尊長↡迎送侍遶得↢身直広相↡」*
◇ 青蓮院本には 「云云」 と割註あり。
・相好 32. 躰相円満
三十二には、 世尊の体相は、 縦広の量等しくして周帀円満せること、 *尼陀樹のごとし。 ¬大集¼ (意) にのたまはく、 「つねに衆生を勧めて、 三昧を修せしめて、 この相を得たり」 と。 ¬*報恩経¼ (意) にのたまはく、 「もし衆生ありて、 *四大不調なるを、 よく療治することをなせしがゆゑに、 身の*方円なる相を得たり」 と。
尼陀樹 尼陀は梵語ニヤグローダ (nyagrodha) の音写。 インドの無花果の樹、 バニヤン樹のこと。
四大不調 病気のこと。 身体を構成する地・水・火・風の四大が調和しないと病気になるという。
方円 完全に円満であること。
三十二世尊躰相縦広量等周匝円満、如↢尼陀樹↡。¬大集経¼云「常勧↢衆生↡修↢三昧↡得↢此相↡」¬報恩経¼云「若有↢衆生↡四大不調能為↢療治↡故得↢身方円相↡」
・相好 33. 容儀洪満
三十三には、 世尊の容儀は洪満にして端直なり。 ¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「疾病のものにおいて、 卑屈して瞻侍し、 良薬を給施せしがゆゑに、 身、 僂曲せざる相を得たり」 と。
三十三世尊容儀洪満端直。¬瑜伽¼云「於↢疾病者↡卑屈瞻侍給↢施良薬↡故得↢身不僂曲相↡」
・相好 34. 陰蔵平満
三十四には、 如来の*陰蔵は平らかなること満月のごとし。 金色の光ありて、 なほ日輪のごとく、 金剛の器のごとく、 中外ともに浄し。 ¬大経¼ (大般涅槃経・意) にのたまはく、 「裸なるを見て衣服を施せしがゆゑに、 陰蔵の相を得たり」 と。 ¬大集¼ にのたまはく、 「他の過を*覆蔵せしがゆゑに」 と。 ¬大論¼ (大智度論) にいはく、 「多く慚愧を修し、 および*邪婬を断ぜしがゆゑに」 と云々。 導禅師 (善導) のいはく (*観念法門)、 「▲仏ののたまはく、 ªもし欲色に貪ずること多きものは、 すなはち如来の陰蔵の相を想へば、 欲心すなはち息み、 罪障除滅して、 無量の功徳を得たりº」 と。
陰蔵 仏の男根のこと。 馬の男根のように常に腹中に隠れていて見えないので、 陰馬蔵ともいう。
三十四如来陰蔵平如↢満月↡。有↢金色光↡、猶如↢日輪↡。如↢金剛器↡中外倶浄。¬大経¼云「見↠裸施↢衣服↡故得↢*陰蔵相↡」¬大集経¼云「覆↢蔵他過↡故」¬大論¼云「*亦修↢慚愧↡及断↢邪婬↡故*」導禅師云「仏言若多貪↢欲色↡者即想↢如来陰蔵相↡者欲心即*止罪障除滅得↢无量功徳↡」
陰蔵 建長五年刊本では 「陰馬蔵」。
亦 他本では 「多」。
◇ 青蓮院本には 「云云」 と割註あり。
止 青蓮院本では 「息」。
・相好 35. 七処充満
三十五には、 世尊の両足、 二手の掌中、 項および双べる肩の七処は充満せり。 ¬大経¼ (大般涅槃経・意) にのたまはく、 「施を行ぜし時に、 所珍の物をよく捨てて吝せず、 *福田および非福田を観ざりしかば、 七処満の相を得たり」 と。
三十五世尊両足、二手掌中、項及双肩七処充満。¬大経¼云「行↠施之時所↠珍之物能捨不↠恡不↠*視↢福田及非福田↡得↢*七所満相↡」
視 青蓮院本、 建長五年刊本では 「観」。
七所 他本では 「七処」。
・相好 36. 双腨繊円
三十六には、 世尊の*双腨は漸次に繊円なること、 *翳泥耶仙鹿王の腨のごとし。 膊の鉤璅の骨の、 盤結せるあひだよりもろもろの金光を出す。 ¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「みづから正法において、 実のごとく摂受し、 広く他人のために説き、 およびまさしく他のためによく給使をなして、 翳泥耶の膊の相を得たり」 と。
双腨 両足のふくらはぎ。
翳泥耶仙鹿王 翳泥耶は梵語アイネーヤ (aineya) の音写。 鹿のこと。
三十六世尊双腨、漸次繊円、如↢翳泥耶仙鹿王腨↡。膊鉤璅骨、盤結之間出↢諸金光↡。¬瑜伽¼云「自於↢正法↡如↠実摂受広為↠*他説及正為↠他善作↢給使↡得↢翳泥耶膊相↡」
他 青蓮院本では 「他人」。
・相好 37. 跟趺相称
三十七には、 世尊の*足跟は広く長く円満して、 *趺とあひ称ひて、 もろもろの有情に勝れたり。
足跟 くびす。
趺 足の甲。
三十七世尊足跟、広長円満、与↠趺相称勝↢諸有情↡。
・相好 38. 足趺修高
三十八には、 足趺は修く高くして、 なほ亀の背のごとし。 柔軟妙好にして、 跟とあひ称へり。 ¬瑜伽¼ (瑜伽論・意) にいはく、 「足下平満と、 *千輻輪と、 繊長指との三の相を感ずる業、 総じてよく跟・趺の二の相を感得す。 これ前の三相の依止するところなるがゆゑに」 と。
三十八足趺修高、猶如↢亀背↡。柔軟妙好与↠跟相称。¬瑜伽¼云「感↢足下平満・千輻輪・繊長指三相之業↡総能感↢得跟趺二相↡是前三相所↢依止↡故」
・相好 39. 柔潤毛相
三十九には、 如来の身の前後左右および頂の上に、 おのおの八万四千の毛ありて生ひたり。 柔潤・紺青にして、 右に旋りて宛転せり。 あるいは次に広く観ずべし。 一々の毛端に百千万塵数の蓮華あり。 一々の蓮華に無量の化仏を生じ、 一々の化仏はもろもろの偈頌を現じて、 声々あひ次げること、 なほ雨の渧るがごとし。 ¬無上依経¼ (意) にのたまはく、 「もろもろの勝善の法を修して、 中・下品なく、 つねに増上せしめて、 身毛上に靡き、 右に旋りて宛転せる相を得たり」 と。 ¬*優婆塞戒経¼ にのたまはく、 「智者に親近して、 楽ひて聞き、 楽ひて論じ、 聞きをはりて楽ひて修し、 楽ひて道路を治し、 *棘刺を除去せるがゆゑに」 と。
棘刺 いばら・とげ。
三十九如来之身、前後左右、及以頂上、各有↢八万四千毛↡生、柔潤紺青右旋宛転。或次応↢広観↡。一一毛端有↢百千万塵数蓮華↡、一一蓮華生↢无量化仏↡、一一化仏現↢諸偈頌↡、声声相次猶如↢雨渧↡。¬無上依経¼云「修↢諸勝善法↡无↢中下品↡恒令↢増上↡得↢身毛上靡右旋宛転相↡」¬優婆塞戒経¼*曰「親↢近智者↡楽↠聞楽↠論聞已楽↠修楽↧治↢道路↡除↦*失棘刺↥故」
曰 他本では 「云」。
失 青蓮院本、 建長五年刊本では 「去」。
・相好 40. 千輻輪文
四十には、 世尊の足の下に*千輻輪の文あり。 *網轂衆相、 円満せざることなし。 ¬瑜伽¼ (瑜伽論) にいはく、 「その父母において種々に供養し、 もろもろの有情のもろもろの苦悩の事において、 種々に救護して、 往来等の動転の業によるがゆゑに、 この相を得たり」 と云々。 千輻輪の相を見るは、 千劫の極重悪業を却く。
千輻輪の文 千の放射状の輻 (車輪の輻) のような模様。 千輻輪相のこと。
網轂 網は異本には 「輞」 (車の輪) とある。 轂は車のこしき。
四十世尊足下千輻輪文。網*縠衆相、无↠不↢円満↡。¬瑜伽¼云「於↢其父母↡種種供養於↢諸有情諸苦悩事↡種種救護由↢往来等動転業↡故得↢此相↡」云云見↢千輻輪相↡*除↢却千劫極重悪業↡
縠 青蓮院本、 建長五年刊本では 轂。
除却 青蓮院本、 建長五年刊本では 「却」。
・相好 41. 足下平満
四十一には、 世尊の足の下には平満の相あり。 妙善安住せること、 なほ*奩底のごとし。 地は*高下なりといへども、 足の蹈むところに随ひて、 みなことごとく*怛然として、 等しく触れずといふことなし。 ¬大経¼ (大般涅槃経・意) にのたまはく、 「持戒して動ぜず、 施心移らず、 *実語に安住せるがゆゑに、 この相を得たり」 と云々。 その足柔軟なり。 もろもろの指繊長なり。 *網具足し、 内外に握る等の相、 および*業因は、 前の手相に同じ。
奩底 箱の底。
高下 高低や起伏。
怛 異本には 「坦」 とある。
実語 真実の言葉。
網 網縵のこと。 指の間の水かき状の膜。
業因 果をもたらす因となる行為。
四十一世尊足下有↢平満相↡。妙善安住猶如↢匲底↡。地雖↢高下↡随↢足所↟蹈、皆悉*怛然无↠不↢等触↡。¬大経¼云「持戒不↠動施心不↠移安↢住実語↡故得↢此相↡」云云其足柔軟諸指繊長網具足内外握等相及業因同↢前手相↡
怛然 建長五年刊本では 「坦然」。
・相好 42. 足下一花
四十二には、 広きを楽ふものは観ずべし。 足下および跟に、 おのおの一の華を生じ、 もろもろの光を囲繞して十帀を満足す。 華々あひ次いで、 一々の華の上に五の化仏まします。 一々の化仏、 五十五の菩薩をもつて侍者となして、 一一の菩薩の頂に*摩尼珠の光を生ず。 この相現ずる時に、 仏のもろもろの毛孔より八万四千の微細の少光明を生じて、 身光を厳飾して、 きはめて可愛ならしむ。 この光一尋にして、 その相衆多なり。 乃至、 他方のもろもろの大菩薩、 これを観ずる時に、 この光随ひて大なり。 以上
摩尼珠 摩尼は梵語マニ (maņi) の音写。 意のままに財宝や衣服・飲食などを出す徳をもつ宝珠。 また悪を去り、 濁水をきよらかにし、 禍を去る徳をもつという。
四十二楽↠広者応↠観。足下及跟、各生↢一花↡、囲↢遶諸光↡満↢足十匝↡。花花相次、一一花上有↢五化仏↡、一一化仏五十五菩薩以為↢侍者↡。一一菩薩頂生↢摩尼珠光↡。此相現時、仏諸毛孔生↢八万四千微細少光明↡、厳↢餝身光↡、極令↠可↠愛。此光一尋、其相衆多。乃至他方諸大菩薩、観↠此之時此光随大。已上
このもろもろの相好の行相・利益・廃立等の事、 諸文不同なり。 しかるにいま三十二の略相は、 多く ¬大般若¼ による。 *広相と随好とおよびもろもろの利益とは、 ¬観仏経¼ による。
広相と随好 仏のすぐれた形相の特徴のうち顕著なもの (広相) と微細なもの (随好)。 →
相好
是諸相好行相・利益・*廃立等事、諸文不同。然今三十二略相多依↢¬大般若¼↡、広相随好及諸利益依↢¬観仏経¼↡。
廃 他本では 癈。
また*相好の業に、 その総別あり。
相好の業 相好を得るための業因。
又相好業有↢其総別↡。
・相好 ・総因
総因といふは、 ¬瑜伽¼ (瑜伽論) の四十九にいはく、 「*始め、 *清浄勝意楽地より、 一切所有の*菩提の資糧は、 差別することあることなくして、 よく一切の相および随好を感ず」 と。 云々
始 底本 (青蓮院本) には 「如」 とある。
清浄勝意楽地 ¬瑜伽論¼ で菩薩の修道階位を七地に分けるうちの第三の浄心地。 十地の位では初地に相当する。
菩提の資糧 さとりに至るためのもととなる善根功徳。
言↢*惣因↡者、¬瑜伽¼四十九云。「*始従↢清浄勝意楽地↡、一切所有菩提資糧、无↠有↢差別↡、能感↢一切相及*好↡。」云云
惣 底本まま。 註なし。
始 青蓮院本では 「如」。
好 他本では 「随好」。
・相好 ・別因
別因といふは、 かの ¬論¼ (同) に三種あり。
言↢別因↡者、彼¬論¼有↢三種↡。
一には*六十二の因。 つぶさには ¬論¼ (瑜伽論) の文のごとし。
六十二の因 父母に供養をし、 有情を救護する、 尊長を敬い礼拝する、 などの六十二種の善因。
一者六十二因。具如↢¬論¼文↡。
二には浄戒。 もしもろもろの菩薩、 浄戒を毀犯するは、 なほ下賤の人身をすら得ることあたはず。 いかにいはんや、 よく*大丈夫の相を感ぜんや。
大丈夫 立派な人。 ここでは仏のこと。
二者浄戒。若諸菩薩毀↢犯浄戒↡。尚不↠能↠得↢下賤人身↡。何況能感↢大丈夫相↡。
三には四種の善修。 一は善修事業、 二は*善巧方便、 三は*饒益有情、 四は*無倒回向なり。 以上
善巧方便 たくみな手段、 方法。
饒益 教化利益すること。
無倒回向 真如法性の理にかなったなにものにもとらわれない回向。
三者四種善修。一善修↢事業↡、二善巧方便、三饒↢益有情↡、四无倒廻向。已上
別因のなかにまた多くの差別あり。 いまはしばらく因果のあひ順ぜるものを取る。
別因之中、亦有↢多差別↡、今者且取↢因果相順者↡*也。
也 青蓮院本では欠く。
前後の次第は、 諸文また不同なり。 いまはよろしきに随ひて、 取りて次第となすなり。 *相・好間雑してもつて観法をなすこと、 またこれ ¬*観仏経¼ の例なり。 順観の次第は、 大途かくのごとし。 逆観は、 これに反して、 足より頂に至る。
相好間雑して 広相と随好とをまじえて。
前後次第諸文亦不同、今者随↠宜取為↢次第↡也。相好間雑以為↢観法↡、亦是¬観仏経¼之例也。順観次第、大途如↠是。逆観反↠之、従↠足至↠頂。
¬*観仏三昧経¼ にのたまはく、 「眼を閉ぢて見ることを得んには、 心想の力をもつてせよ。 *了々にして分明なること、 仏の在世のごとくせよ。 この相を観ずといへども、 衆多にすることを得ざれ。 一事より起してまた一事を想ひ、 一事を想ひをはればまた一事を想へ。 逆順反覆すること、 十六反を経よ。 かくのごとくして、 心想きはめて明利ならしめ、 しかして後に、 心を住めて念を一処に繋けよ。 かくのごとくして、 *漸々に舌を挙げて齶に向かへ、 舌をしてまさしく住せしめよ。 二七日を経て、 しかして後に、 身心安穏なることを得べし」 と。
¬観仏三昧経¼云。「*閇↠眼得↠見、以↢心想力↡。了了分明如↢仏在世↡。雖↠観↢是相↡不↠得↢衆多↡。従↢一事↡起復想↢一事↡。*一事想已復想↢一事↡。逆順反覆経↢十六反↡。如↠是心想極令↢明利↡、然後住↠心繋↢念一処↡。如↠是漸漸挙↠舌向↠*腭、令↢舌政住↡、経↢二七日↡。然後身心可↠得↢安穏道↡。
閇 底本まま。 註なし。
一事想 青蓮院本、 建長五年刊本では 「想一事」。
腭 底本まま。 註なし。 他本ではは 齶 か。
導和尚 (善導) のいはく (*観念法門・意)、 「十六遍の後には、 心を住めて*白毫相を観ぜよ。 雑乱することを得ざれ」 と。
導和尚云。「十六遍後住↠心観↢白毫相↡。不↠得↢雑乱↡。」
◎正宗念仏 ○観察門 2 総相観
【44】二に*総相観とは、 先づ〔前のごとく〕衆宝荘厳の広大の蓮華を観じ、 次に阿弥陀仏の、 *華台の上に坐したまへるを観ぜよ。 身の色は、 百千万億の*閻浮檀金のごとし。 身の高さは、 六十万億那由他恒河沙由旬なり。 眉間の白毫は、 右に旋りて婉転せること五須弥山のごとし。 眼は四大海水のごとくして、 清白分明なり。 身のもろもろの毛孔より光明を演出すること、 須弥山のごとし。 *円光は、 百億の*大千界のごとし。 光のなかに無量恒河沙の化仏ましまし、 一々の化仏は、 無数の菩薩をもつて侍者となせり。
総相観 仏身の全体を観想すること。
二総相観者、先観↢*如↠前衆宝荘厳広大蓮華↡、次観↣阿弥陀仏坐↢華台上↡。身色如↢百千万億閻浮檀金↡、身高六十万億那由他恒河沙由旬。眉間白毫右旋婉転如↢五須弥山↡、眼如↢四大海水↡、清白分明。身諸毛孔演↢出光明↡如↢須弥山↡、円光如↢百億大千界↡。光中有↢无量恒河沙化仏↡、一一化仏以↢无数菩薩↡為↢侍者↡。
如前 青蓮院本では欠く。
かくのごとくして八万四千の相あり。 一々の相におのおの八万四千の随好あり。 一々の好にまた八万四千の光明あり。 一々の▼光明あまねく十方世界の念仏の衆生を照らして、 *摂取して捨てたまはず。 まさに知るべし。 ▼一々の相のなかに、 おのおの▼七百五倶胝六百万の光明を具して、 *熾然赫奕として*神徳巍々たること、 金山王の大海のなかにあるがごとし。 無量の化仏・菩薩、 光のなかに充満して、 おのおの神通を現じて、 弥陀仏を*囲繞したてまつれり。 かの仏、 かくのごとく無量の功徳・相好を具足して、 菩薩衆会のなかにましまして、 正法を演説したまふ。 行者、 この時にすべて余の色相なく、 *須弥・鉄囲、 大小のもろもろの山もことごとく現ぜず、 大海・江河・土地・樹林もことごとく現ぜず。 目に溢てるものは、 ただこれ弥陀仏の相好、 世界に周遍せるものは、 またこれ*閻浮檀金の光明なり。 たとへば、 *劫水の、 世界に*弥満せるに、 そのなかの万物は沈没して現ぜず、 *滉瀁浩汗として、 ただ大きなる水のみを見るがごとし。 かの仏の光明もまたかくのごとし。 高く一切世界の上に出でて、 相好・光明、 照曜せずといふことなし。 行者は心眼をもつておのが身を見るに、 またかの光明の所照のなかにあり。 以上、 ¬観経¼・¬*双巻経¼ (大経)・¬*般舟経¼・¬大論¼ (大智度論) 等の意による。 この観、 成じて後に楽に随ひて次の観をなせ。
熾然赫奕 さかんに光り輝くさま。
神徳巍々 威神の功徳がけだかくおごそかであること。
劫水 壊劫 (世界の破滅期) の終りの一中劫におこる水害。 これによって色界第二禅天までが流出するという。
滉瀁浩汗 水が満ちひろがったさま。
如↠是有↢八万四千相↡、一一相各有↢八万四千随好↡。一一好復有↢八万四千光明↡、一一光明遍照↢十方世界↡、念仏衆生摂取不↠捨。当↠知、一一相中、各具↢七百五倶胝六百万光明↡、熾然赫奕、神徳巍巍如↣金山王在↢大海中↡。无量化仏・菩薩、充↢満光中↡各現↢神通↡、囲↢遶弥陀仏↡。彼仏如↠是具↢足无量功徳相好↡、在↢於菩薩衆会之中↡、演↢説正法↡。行者是時都无↢余色相↡、須弥・鉄囲、大小諸山悉不↠現、大海・江河・土地・樹林悉不↠現。溢↠目之者、但是弥陀仏相好、周↢遍世界↡之者、亦是閻浮檀金光明。譬如↧劫水弥↢満世界↡、其中万物沈没不↠現、滉瀁浩汗*只見↦大水↥、彼仏光明亦復如↠是。高出↢一切世界上↡、相好光明靡↠不↢照曜↡。行者以↢心眼↡見↢於己身↡、*在↢於彼光明所照之中↡。已上依↢¬観経¼¬双巻経¼¬般舟経¼¬大論¼等意↡此観成後随↠楽作↢次観↡耳
只 他本では 「唯」。
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本では 「亦」 の字あり。
あるいは観ずべし。 かの仏はこれ*三身一体の身なり。
三身一体の身 法・報・応の三身の
功徳をそなえた身体。 →
三身
或応↠観。彼仏是三身一躰之身也。
・応化身
かの一身において、 見るところ不同なり。 あるいは*丈六、 あるいは八尺、 あるいは広大の身なり。 所現の身はみな金色にして、 利益したまふところはおのおの無量なり。 一切の諸仏と、 その事同一なり。 応化身なり。
於↢彼一身↡所↠見不同。或丈六、或八尺、或広大身。所現身皆金色所↢利益↡各無量。与↢一切諸仏↡其事同一。応化身
・報身
また一々の相好は、 *凡聖その辺を得ず、 梵天もその頂を見ず、 目連もその声を窮めず、 無形第一の体なり。 荘厳にあらずして荘厳せり。 十力・四無畏・*三念住・大悲、 八万四千の三昧門、 八万四千の波羅蜜門、 恒沙塵数の法門、 究竟円満したまふ。 一切の諸仏と、 その意同一なり。 報身。
三念住 三種の、 心静かな状態に安住すること。
又一一相好凡聖不↠得↢其辺↡、梵天不↠見↢其頂↡、目連不↠窮↢其声↡、無形第一躰。非↢荘厳↡荘厳。十力・四无畏・三念住・大悲・八万四千三昧門・八万四千波羅密門・恒沙塵数法門、究竟円満。与↢一切諸仏↡其意同一。報身
・法身
微妙の浄法身に、 もろもろの相好を具足せり。 一々の相好は、 すなはちこれ実相なり。 実相は、 法界具足して減ずることなし。 *生ぜず滅せず、 去・来なし。 一にあらず異にあらず、 断・常にあらず。 有為・無為のもろもろの功徳は、 この法身によりてつねに清浄なり。 一切の諸仏と、 その体同一なり。 法身。
生ぜず滅せず… 以下の八種の否定は龍樹菩薩の ¬中論¼ によったもので、 八不とよばれる。
微妙浄法身、具↢足諸相好↡。一一相好即是実相。実相法界、具足无↠減。不↠生不↠滅、无↢去来↡。不↠一不↠異、非↢断・常↡。有為・無為諸功徳、依↢此法身↡常清浄。与↢一切諸仏↡其躰同一。法身
このゆゑに三世十方の諸仏の三身、 *普門塵数の無量の法門、 仏衆法海の*円融の万徳、 おほよそ*無尽の法界は、 つぶさに弥陀の一身にあり。 縦ならず横ならず、 また一・異にあらず。 実にもあらず虚にもあらず、 また有・無にもあらず。 本性清浄にして、 *心言の路絶えたり。 たとへば、 *如意珠のなかに、 宝あるにもあらず、 宝なきにもあらざるがごとし。 仏身の万徳もまたかくのごとし。
普門塵数 普門はすべて、 あらゆるの意。 塵数は無数の意。
円融 少しのさまたげもなく、 完全に一つに融けあっていること。
無尽の法界 すべての存在世界。
心言の路絶えたり 思慮や言語を超えている。
是故三世十方諸仏三身、普門塵数無量法門、仏衆法海、円融万徳、凡无尽法界備在↢弥陀一身↡。不↠縦不↠横、亦*非↠一非↠異。非↠実非↠虚、亦非↢有無↡。本性清浄心言路絶。譬如↢如意珠中、非↠有↠宝非↟无↠宝。仏身万徳亦復如↠是。
非一非異 他本では 「非一異」。
また*陰入界に即して、 名づけて如来となすにあらず。 かのもろもろの衆生は、 みなことごとくこれあるがゆゑに、 陰入界を離れて、 名づけて如来となすにもあらず。 これを離れては、 すなはちこれ無因縁の法なるがゆゑに、 即にもあらず、 また離にもあらず。 寂静にしてただ名のみあり。 このゆゑにまさに知るべし。 所観の衆相は、 すなはちこれ*三身即一の相好・光明なり、 諸仏同体の相好・光明なり、 万徳円融の相好・光明なり。 色すなはちこれ空なるがゆゑに、 これを真如実相といふ。 空すなはちこれ色なるがゆゑに、 これを相好・光明といふ。 *一色・一香、 中道にあらずといふことなし。 *受・想・行・識もまたかくのごとし。 わが所有の*三道と弥陀仏の万徳と、 本来空寂にして*一体無礙なり。 願はくはわれ仏を得て、 聖法の王と斉しからん。 以上、 ¬*観経¼・¬*心地観経¼・¬*金光明経¼・¬念仏三昧経¼・¬般若経¼・¬*止観¼ 等の意による。
三身即一 法・報・応の三身がそのまま一であるとの意。 →
三身
一色一香… すべてのものはことごとく中道実相の理のあらわれであるという意。 天台大師智顗の ¬摩訶止観¼ に見える語。
受想行識 五陰 (
五蘊) のうちの精神面の四。 →
五陰
一体無礙 さわりなく一つに融けあっていること。
又非↧即↢陰入界↡名為↦如来↥。彼諸衆生皆悉有↠之故、非↧離↢陰入界↡名為↦如来↥。離↠之則是无因縁法故。非↠即亦非↠離、寂静但有↠名。是故当↠知、所観衆相、即是三身即一之相好光明也、諸仏同躰之相好光明也、万徳円融之相好光明也。色即是空故、謂↢之真如実相↡、空即是色故、謂↢之相好光明↡。一色一香、无↠*不↢中道↡。受・想・行・識、亦復如↠是。我所有*三悪道、与↢弥陀仏万徳↡、本来空寂、一体无。願我得↠仏、斉↢聖法王↡。已上依↢¬観経¼¬心地観経¼¬金光明経¼¬念仏三昧経¼¬般若経¼¬止観¼等意↡
不 他本では 「非」。
三悪道 青蓮院本、 建長五年刊本では 「三道」。
◎正宗念仏 ○観察門 3 雑略観
【45】三に*雑略観とは、 かの仏の眉間に一の白毫あり。 右に旋りて宛転せること、 五須弥のごとし。 なかにおいて、 また八万四千の好あり。 一々の好に八万四千の光あり。 その光微妙にして、 衆宝の色を具せり。 総じてこれをいへば、 ▼七百五倶胝六百万の光明なり。 十方の面に*赫奕たること、 億千の日月のごとし。 その光のなかに一切の仏身を現じ、 無数の菩薩、 衆会して囲繞せり。 また微妙の音を出して、 もろもろの法海を*宣暢す。 またかの一々の▼光明、 あまねく十方世界の念仏の衆生を照らして、 摂取して捨てたまはず。 ▼*われまたかの摂取のなかにあれども、 ▼煩悩、 眼を障へて、 見たてまつることあたはずといへども、 大悲倦むことなくして、 つねにわが身を照らしたまふ。 あるいは自心を起して極楽国に生じて、 蓮華のなかに*結跏趺坐し、 蓮華の合する想をなすべし。 尋いで、 蓮華開くる時に、 尊顔を*瞻仰したてまつり、 白毫の相を観ず。 時に五百色の光ありて、 来りてわが身を照らすに、 すなはち無量の化仏・菩薩の、 虚空のなかに満てるを見たてまつる。 水・鳥・樹林および諸仏の出したまふところの音声は、 みな妙法を演ぶと。 かくのごとく思想して、 心をして*欣悦せしめよ。 願はくは、 もろもろの衆生とともに安楽国に往生せん。 以上、 ¬観経¼・¬華厳経¼ 等の意による。 つぶさには*別巻にあり。
雑略観 種々の相好を略して白毫相 (眉間にある白色の旋毛) のみを観想すること。
赫奕 さかんに光り輝くこと。
われ…照らしたまふ 親鸞聖人はこの文によって 「正信偈」 源信章の 「我亦在彼摂取せっしゅ中、 煩悩障眼雖不見、 大悲無倦常照我」 の句を作成された。
欣悦 よろこぶこと。
別巻 源信和尚撰 ¬阿弥陀仏白毫観¼ のこと。
三雑略観者、彼仏眉間有↢一白毫↡。右旋宛転、如↢五須弥↡。於↠中復有↢八万四千好↡、一一好有↢八万四千光↡。其光微妙具↢衆宝色↡。惣而言↠之、七百五倶胝六百万光明。十方面赫奕如↢億千日月↡。其光中現↢一切仏身↡。无数菩薩、衆会囲遶。復出↢微妙音↡、宣↢暢諸法海↡。又彼一一光明、遍照↢十方世界↡、念仏衆生摂取不↠捨。我亦在↢彼摂取之中↡煩悩障↠眼雖↠不↠能↠見、大悲无↠惓常照↢我身↡。或応起↢自心↡生↢極楽国↡、於↢蓮華中↡、結跏趺坐、作↢蓮華合想↡。尋蓮華開時瞻↢仰尊顔↡、観↢白毫相↡。時有↢五百色光↡、来照↢我身↡、即見↢无量化仏・菩薩満↢虚空中↡。水鳥・樹林及与諸仏所↠出音声皆演↢妙法↡。如↠是思想令↢心欣悦↡。願共↢諸衆生↡往↢生安楽国↡。已上依↢¬観経¼¬花厳経¼等意↡具在↢別巻↡
もし*極略を楽ふものは、 念ふべし。 かの仏の眉間の白毫の相は、 *旋転せること、 なほ*頗梨珠のごとし。 光明あまねく照らしてわれらを摂めたまふ。 願はくは、 衆生とともにかの国に生れんと。
極略 きわめて簡略な観想のこと。
旋転 渦巻状にまわること。
頗梨珠 水晶の玉。
若楽↢極略↡者、応↠念、彼仏眉間白毫相、旋転猶如↢頗梨珠↡。光明遍照摂↢我等↡。願共↢衆生↡生↢彼国↡。
もし相好を観念するに堪へざることあらば、 あるいは帰命の想により、 あるいは*引摂の想により、 あるいは往生の想によりて、 一心に称念すべし。 以上、 *意楽不同なり。 ゆゑに種々の観を明かす。
引接の想 阿弥陀仏が浄土に導いてくださるという想い。
意楽 望み。
若楽↢極略↡者、応↠念、彼仏眉間白毫相、旋転猶如↢頗梨珠↡。光明遍照摂↢我等↡。願共↢衆生↡生↢彼国↡。若有↠不↠堪↣観↢念相好↡、或依↢帰命想↡、或依↢引摂想↡、或依↢往生想↡、応↢一心称念↡。已上意楽不同故明↢種種観↡
*行住坐臥、 語黙作々に、 つねにこの念をもつて胸のなかに在くこと、 飢して食を念ふがごとくし、 渇して水を追ふがごとくせよ。 あるいは頭を低れ手を挙げ、 あるいは声を挙げて名を称せよ。 ▼*外儀は異なりといへども、 心念はつねに存ぜよ。 念々に相続して、 *寤寐に忘るることなかれ。
行住坐臥語黙作々 歩く、 とどまる、 すわる、 臥す、 話す、 黙る。 いかなる場合にもの意。
外儀 身体のふるまい。
寤寐 寝ても覚めても。
行住坐臥、語黙作作、常以↢此念↡在↢於胸中↡、如↢飢念↟食、如↢渇追↟水。或低↠頭挙↠手、或挙↠声称↠名、外儀雖↠異、心念常存。念念相続、寤寐莫↠忘。
問ふ。 かの仏の*真身は、 これ凡夫の心力の及ぶところにあらず。 ただ像を観ずべし。 なんぞ大身を観ぜん。
真身 真実の身体、 すがた。
問。彼仏真身、非↢是凡夫心力所↠及、但応↠観↠像、何観↢大身↡。
答ふ。 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲無量寿仏は身量無辺にして、 これ凡夫の心力の及ぶところにあらず。 しかもかの如来の*宿願力のゆゑに、 *憶想することあるものは、 かならず成就することを得。 ただ仏像を想ふすら、 無量の福を得。 いはんやまた仏の具足せる身相を観ぜんをや」 と。 以上
宿願力 過去の誓願の力。
答。¬観経¼云。「无量寿仏身量无辺、非↢是凡夫心力所↟及。然彼如来宿願力故、有↢憶想↡者、必得↢成就↡。但想↢仏像↡得↢無量福↡、況復観↢仏具足身相↡。」已上
あきらかに知りぬ、 初心もまた*楽欲に随ひて真身を観ずることを得るなり。
楽欲 意向。 望み。
明知、初心亦随↢楽欲↡得↠観↢真身↡。
問ふ。 いふところの弥陀の一身は、 すなはち一切仏の身なりとは、 なんの証拠かある。
問。所↠言弥陀一身、即一切仏身者、有↢何証拠↡。
答ふ。 *天台大師 (智顗) のいはく (*十疑論)、 「阿弥陀仏を念ずるは、 すなはち一切の仏を念ずるなり。 ゆゑに ¬華厳経¼ にのたまはく、
ª一切の諸仏の身は、 すなはちこれ一仏の身なり。
一心なり、 一智慧なり。 *力・無畏もまたしかなりº」 と。 以上
答。天台大師云。「念↢阿弥陀仏↡、即*是念↢一切仏↡。故華厳経云。一切諸仏身、即是一仏身。一心・一智慧、力・无畏亦然。」已上
是 青蓮院本では欠く。
また ¬*観仏三昧経¼ にのたまはく、 「もし一仏を思惟すれば、 すなはち一切の仏を見たてまつる」 と。 云々
又¬観仏三昧経¼云。「若思↢惟一仏↡即見↢一切仏↡。」云云
問ふ。 もし諸仏の*体性の無二なるがごとく、 念者の功徳もまた別なきや。
体性 本性。
問。為↧如↢諸仏躰性无二↡、念者功徳亦无↞別耶。
答ふ。 等しくして差別なし。 ゆゑに ¬*文殊般若経¼ の下巻にのたまはく、 「一仏を念ずるは、 功徳無量無辺なり。 また無量の諸仏の功徳と無二なり。 不思議の仏法は等しくして分別なし。 みな一如に乗じて*最正覚を成じ、 ことごとく無量の功徳、 無量の弁才を具したまへり。 かくのごとくして*一行三昧に入るものは、 ことごとく恒沙の諸仏の法界の、 無差別の相を知る」 と。 以上
最正覚 もっともすぐれた仏のさとり。
答。等无↢差別↡。故¬文殊般若経¼下巻云。「念↢一仏↡功徳无量无辺、亦与↢无量諸仏功徳↡无二。不思議仏法、等无↢分別↡、皆乗↢一如↡成↢最正覚↡、悉具↢无量功徳弁才↡。如↠是入↢一行三昧↡者、尽知↢恒沙諸仏法界无差別相↡。」*
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「已上」 の割註あり。
問ふ。 諸相の功徳は、 *肉髻と*梵音と、 これを最勝なりとなす。 いま多く*白毫を勧むること、 なんの証拠かある。
梵音 仏のきよらかな声。
問。諸相功徳、肉髻梵音、是為↢最勝↡。今多勧↢白毫↡有↢何証拠↡耶。
答ふ。 その証はなはだ多し。 略して*一両を出さん。 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲無量寿仏を観ずるものは、 一の相好より入れ。 ただ眉間の白毫を観じて、 きはめて明了ならしめよ。 眉間の白毫を見るものは、 八万四千の相好、 自然にまさに見つべし」 と。
一両 一つ二つ。
答。其証甚多。略出↢一両↡。¬観経¼云。「観↢無量寿仏↡者、従↢一相好↡入。但観↢眉間白毫↡、極令↢明了↡。見↢眉間白毫↡者、八万四千相好、自然当↠見。
また ¬*観仏経¼ にのたまはく、 「如来に無量の相好まします。 一々の相のなかに、 八万四千のもろもろの小相好あり。 かくのごとき相好は、 白毫の少分の功徳に及ばず。 このゆゑに今日、 *来世のもろもろの悪の衆生のために、 白毫相の大慧光明の、 消悪の観法を説く。 もし邪見の極重の悪人ありて、 この観法は*相貌を具足すと聞きて、 瞋恨の心をなさば、 この処あることなからん。 たとひ瞋りをなすとも、 白毫相の光、 また覆護せん。 しばらくこの語を聞かば、 三劫の罪を除き、 後身の生処は、 諸仏の前に生ぜん。 かくのごとく、 種々の百千億種のもろもろの、 光明を観る微妙の境界は、 ことごとく説くべからず。 *白毫を念ふ時、 自然にまさに生ずべし」 と。
来世 未来世。 将来。
又¬観仏経¼云。「如来有↢无量相好↡、一一相中、八万四千諸小相好。如↠是相好、不↠及↢白毫*小分功徳↡。是故今日、為↢於来世諸悪衆生↡、説↢白毫相大*恵光明消↠悪観法↡。若有↢邪見極重悪人↡、聞↣此観法具↢足相貌↡、生↢瞋恨心↡、无↠有↢是処↡。縦使生↠瞋白毫相光亦復覆護。暫聞↢是語↡、除↢三劫罪↡、後身生処、生↢諸仏前↡。如↠是種種百千億種諸観↢光明↡微妙境界、不↠可↢悉説↡。念↢白毫↡時、自然当↠生。」
小 青蓮院本、 建長五年刊本では 「少」。
恵 青蓮院本では 「慧」、 建長五年刊本では 「悲」。
またのたまはく (*観仏経)、 「*粗心にして像を観ずるに、 なほかくのごとき無量の功徳を得。 いはんやまた念を繋けて、 仏の眉間の白毫相の光を観ぜんをや」 と。
粗心 乱れやすい粗雑な心。
又云。「麁心観↠像尚得↢如↠是无量功徳↡。況復繋↠念観↢仏眉間白毫相光↡。」
またのたまはく (*同)、 「*釈迦文仏、 行者の前に現じて、 告げてのたまはく、 ªなんぢ、 観仏三昧力を修す。 ゆゑに、 われ涅槃相の力をもつて、 なんぢに色身を示して、 なんぢをしてあきらかに観ぜしめん。 なんぢ、 いま坐禅して多く観ずることを得ざれ。 なんぢ、 後の世の人、 多くもろもろの悪を作れり。 ただ眉間の白毫の相の光を観ぜよ。 この観をなす時に見るところの境界は、 上の所説のごとしº」 と。 以上、 これを略抄す。
又云。「釈迦文仏、現↢行者前↡、告言。汝修↢観仏三昧力↡。故我以↢涅槃相力↡、示↢汝色身↡、令↢汝諦観↡。汝今坐禅、不↠得↢多観↡。汝後世人、多作↢諸悪↡、但観↢眉間白毫相光↡。作↢此観↡時、所↠見境界如↢上所説↡。已上略抄
「上の所説」 とは、 仏の種々の境界を見るなり。 もろもろの余の利益は、 *下の別時の行および利益門に至りて知りぬべし。
下の別時の… 大文第六別時念仏および大文第七念仏利益を指す。
上所説者、見↢仏種種境界↡也。諸余利益、至↢下別時行及利益門↡応↠知。
問ふ。 白毫の一相を観ずるをもまた三昧と名づくるや。
問。観↢白毫一相↡、亦名↢三昧↡耶。
答ふ。 しかなり。 ゆゑに ¬*観仏経¼ の第九にのたまはく、 「もしよく心を繋けて一の毛孔を観ずる、 この人は名づけて*念仏定を行ずとなす。 仏を念ずるをもつてのゆゑに、 十方の諸仏、 つねにその前に立ちて、 ために正法を説きたまふ。 この人、 すなはちよく三世のもろもろの如来を生ずる種となす。 いかにいはんや、 具足して仏の色身を念ぜんをや」 と。
答。爾。故¬観仏経¼第九云。「若能繋↠心観↢一毛孔↡、是人名為↠行↢念仏定↡。以↠念↠仏故、十方諸仏常立↢其前↡、為説↢正法↡。此人即為↣能生↢三世諸如来種↡。何況具足念↢仏色身↡。」
問ふ。 なんがゆゑぞ浄土の荘厳を観ぜざるや。
問。何故不↠観↢浄土荘厳↡耶。
答ふ。 いま広行に堪へざるもののために、 ただ略観を勧む。 もし観ぜんと欲ふものは、 ¬観経¼ を読むべし。 いかにいはんや前に*十種の事明かしつ。 すなはちこれ浄土の荘厳なり。
十種の事 大文第二欣求浄土に示される十種の楽事。
答。今為↧不↠堪↢広行↡之者↥、唯勧↢略観↡。若欲↠観者、応↠読↢¬観経¼↡。何況前明↢十種事↡。即是浄土荘厳也。
問ふ。 なんがゆゑぞ観音・勢至を観ぜざるや。
問。何故不↠観↢観音・勢至↡耶。
答ふ。 略せるがゆゑに述せず。 仏を念じをはりて後は、 二菩薩を観ずべし。 あるいは名号を称せよ。 多少は意に随へ。
答。略故不↠述、念↠仏已後、応↠観↢二菩薩↡。或称↢名号↡。多少随↠意。
◎正修念仏 5 回向門
【46】第五に回向門を明かすとは、 五の義具足せるもの、 これ真の回向なり。
第五明↢廻向門↡者、五義具足、是真廻向。
一には、 三世の一切の善根を聚集すること、 ¬華厳経¼ の意。
一聚↢集三世一切善根↡。¬華厳経¼意
二には、 *薩婆若の心と相応すること、
二薩婆若心相応。
三には、 この善根をもつて一切衆生とともにすること、
三以↣此善根↡共↢一切衆生↡。
四には、 *無上菩提に回向すること、
四廻↢向無上菩提↡。
五には、 *能施・所施・施物はみな*不可得なりと観じて、 よく*諸法の実相と和合せしむることなり。 ¬大論¼ (大智度論) の意。
能施所施 能施は施し与える人、 所施は施しを受ける人。
不可得 固定的な対象として認識しないの意。
五観↢能施・所施・施物皆不可得↡、能令↢諸法実相和合↡。¬大論¼意
これらの義によりて、 心に念ひ、 口にいへ。 修するところの功徳と、 および*三際の一切善根とを、 その一。 自他法界の一切衆生に回向して、 平等に利益し、 その二。 罪を滅し、 善を生じて、 ともに極楽に生じて、 *普賢の行願を速疾に円満し、 自他同じく無上菩提を証して、 *未来際を尽すまで衆生を利益し、 その三。 法界に*回施して、 その四。 大菩提に回向するなり。 その五。
三際 前際 (過去)・中際 (現在)・
後際 (未来)。 三世に同じ。 →
三世
普賢の行願 ¬華厳経¼ 「普賢行願品」 に説かれる普賢菩薩の十種の大願のこと。
未来際を尽すまで 未来永劫に。
依↢此等義↡、心念口言、所↠修功徳、及以三際一切善根、其一 廻↢向自他法界一切衆生↡、平等利益、其二 滅罪生善共生↢極楽↡、普賢行願速疾円満、自他同証↢無上菩提↡、尽↢未来際↡利↢益衆生↡、其三 廻↢施法界↡、其四 廻↢向大菩提。其五
問ふ。 未来の善いまだあらず。 なにをもつてか回向する。
問。未来*善根未↠有、以↠何廻向。
善根 青蓮院本では 「善」。
答ふ。 ¬華厳経¼ に、 *第三の回向の*菩薩の行相を説きてのたまはく、 「三世の善根をもつて、 所着なく、 相なく相を離れて、 ことごとくもつて回向す」 (意) と。
第三の回向 三種回向 (
菩提回向・
衆生回向・
実際回向) のうちの第三、 実際回向のこと。 →
回向
菩薩 底本 (青蓮院本) には 「菩提」 とある。
答。¬華厳経¼説↢第三廻向*菩薩行相↡云。「以↢三世善根↡、而無↢所着↡、無↠相離↠相悉以廻向。」
菩薩 青蓮院本では 「菩提」。
¬*刊定記¼ に二の釈あり。 一には、 未来の善根はいまだあらずといへども、 いまもし願を発しつれば、 *願薫じて種となり、 摂持する力のゆゑに、 未来の所修*任運に衆生と菩提とに注向して、 さらに回向することを待たず。 二には、 この教のなかによれば、 菩薩は、 乃至、 一念の善を修するに、 法性を摂するがゆゑに*九世に遍す。 ゆゑにかの善根をもつて回向すと。 云々
願薫じて種となり 願の香りが移り付いて善根の種になるという意。
九世 華厳教学では、 過去・現在・未来の三世におのおの三世を認めて九世とし、 それらが一つに融合しているという。
¬刊定記¼有↢二釈↡。一未来善根、雖↠未↠有、今若発願願薫成↠種、摂持力故、未来所修任運注↢向衆生菩提↡、不↠待↢更廻向↡也。二依↢此教中↡、菩薩乃至修↢一念善↡、摂↢法性↡故遍↢於九世↡、故用↢彼善根↡廻向也。*
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「云云」 と割註あり。
問ふ。 第二に、 いかなるをや薩婆若相応の心と名づくる。
問。第二何名↢薩婆若相応心↡。
答ふ。 ¬論¼ (大智度論) にいはく、 「*阿耨菩提の意、 すなはちこれ薩婆若に応ずる心なりと。 ª応º といふは、 心を繋けて、 われまさに仏に作るべしと願ずるなり」 と。
答。¬論¼云。「阿耨菩提意、即是応↢薩婆若↡心。応者繋↠心願↣我当↢作仏↡。」
問ふ。 第三・第四は、 なんがゆゑぞかならず一切衆生とともにし、 および無上菩提に回向する。
問。第三第四、何故要共↢一切衆生↡、及以廻↢向无上菩提↡。
答ふ。 ¬*六波羅蜜経¼ にのたまはく、 「いかんぞ少施の功徳多なるや。 方便の力をもつて、 少分の布施をもつて回向し発願すらく、 ª一切衆生と同じく*無上正等菩提を証せんº と。 これをもつて功徳の無量無辺なること、 なほ小雲の、 やうやく法界に遍するがごとし」 と。 乃至、 一華・一菓をもつて施するもまたしかり。 ¬大論¼ (大智度論) の意またこれに同じ。
答。¬六波羅密経¼云。「云何少施功徳多耶。以↢方便力↡、*小分布施廻向発願、与↢一切衆生↡同証↢无上正等菩提↡。以↠是功徳无量无辺、猶如↣小雲漸遍↢法界↡。」乃至以↢一華一菓↡施亦爾¬大論¼意亦同↠之
小 青蓮院本、 建長五年刊本では 「少」。
また ¬*宝積経¼ の四十六にのたまはく、 「*菩薩摩訶薩は、 所有の*已生のもろもろの妙善根を、 一切、 無上菩提に回向して、 この善根をして畢竟じて無尽ならしむ。 たとへば、 小水を大海に投げつれば、 乃至、 *劫焼のなかにも尽くることあることなからんがごとし」 と。
已生 すでになしおえた。
劫焼 壊劫 (世界の破滅期) の終りの一中劫におこる火災。 これによって色界初禅天までが焼尽するという。
*¬宝積経¼四十六云。「菩薩摩訶薩、所有已生諸妙善根、一切廻↢向无上菩提↡、令↢此善根畢竟无尽↡。譬如↧小水投↢于大海↡、乃至劫焼中无↞有↠尽。」
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「又」 の字あり。
また ¬*大荘厳論¼ の偈にいはく、
大荘厳論 現存の ¬大荘厳論¼ に該当する文はない。 道世編の ¬諸経要集¼ 巻十に引く ¬大菩薩蔵経¼ の文によったものか。
「施を行じて*妙色・財を求めず、 また天・人趣を感ずることを願ぜざれ、
妙色財 すぐれた容色と財物。
もつぱら無上勝菩提を求むれば、 施は微なれどもすなはち無量の福を感ず」 と。 以上
又¬大荘厳論¼偈云。「行↠施不↠求↢妙色財↡、亦不↠願↠感↢天人趣↡。専求↢无上勝菩提↡、施微便感↢无量福↡。」已上
ゆゑにもろもろの善根をもつてことごとく仏道に回向するなり。
故以↢諸善根↡、尽廻↢向仏道↡。
また ¬大論¼ (*大智度論) にいはく、 「たとへば、 *慳貪の人の、 因縁なくしては、 乃至一銭をも施せず、 *貪慳積聚してただ増長することを望むがごとく、 菩薩もまたかくのごとし。 福徳の、 もしは多もしは少、 余事には向かへず、 ただ愛惜積集して*薩婆若に向かふ」 と。 以上
貪慳積聚して むさぼり、 ものおしみをして (財を) 集めて。
又¬大論¼云。「譬如↧慳貪人、无↢因縁↡乃至一銭不↠施、貪慳積聚、但望↦増長↥。菩薩亦如↠是。福徳若多若少、不↠向↢余事↡、但愛惜積集、向↢薩婆若↡。」已上
問ふ。 もししからば、 ただ菩提に回向すべし。 なんがゆゑぞ、 さらに往生極楽とはいふ。
問。若爾唯応↣廻↢向菩提↡。何故更云↣往↢生極楽↡。
答ふ。 菩提はこれ果報なり。 極楽はこれ華報なり。 果を求むる人、 いかんぞ華を期せざらんや。 このゆゑに*九品の業にみないはく、 「回向して極楽国に生ぜんと願求す」 と。
答。菩提是果報、極楽是花報。求↠果之人、盍↠期↠花耶。是故九品業皆云↤廻向願↣求生↢極楽国↡。
問ふ。 発願と回向とは、 なんの差別かある。
問。発願廻向有↢何差別↡。
答ふ。 誓ひて求むるところを期する、 これを名づけて願となす。 所作の業を回してかしこに趣向する、 これを回向といふ。
答。誓期↠所↠求、名↠之為↠願、廻↢所作業↡、趣↢向於彼↡、謂↢之廻向↡。
問ふ。 薩婆若と*無上菩提と、 二は差別なし。 なんぞ分ちて二とはなす。
問。薩婆若与↢无上菩提↡、二无↢差別↡。何分為↠二。
答ふ。 ¬論¼ (同) に回向を明かすに、 これを分ちて二となせり。 ゆゑにいまこれに順ず。 さらに*¬論¼ (同) の文を撿へよ。
論の文 ¬大智度論¼ 巻四六に記す問答の第十を指すものか。
答。¬論¼明↢廻向↡、分↠之為↠二。故今順↠之。更撿↢¬論¼文↡。
問ふ。 次に、 なんがゆゑぞ、 あらゆる事を観じて、 ことごとく空ならしむるや。
問。次何故観↢所有事↡、悉令↠空耶。
答ふ。 ¬論¼ (*大智度論) にいはく、 「*着心取相の菩薩の修する福徳は、 草より生ずる火の、 滅することを得べきこと易きがごとし。 もし実相を体得せる菩薩の、 大悲心をもつて行ずる衆行は、 破することを得べきこと難きこと、 水のなかの火の、 よく滅するものなきがごとし」 と。 云々
着心取相 自己の心に執着し、 もののすがたにとらわれること。
答。¬論¼云。「着心取相菩薩修福徳、如↢草生火易↟可↠得↠滅。若躰↢得実相↡菩薩、以↢大悲心↡行衆行、難↠可↠得↠破、如↣水中火无↢能滅者↡。」*
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「云云」 と割註あり。
問ふ。 もししからば、 唱へて 「空*無所得」 といふべし。 なんがゆゑぞいま 「*回施法界」 とはいふ。
無所得 固定的な対象として認識しないの意。
回施法界 法界に回施 (回向) すること。
問。若爾応↤唱言↣空无↢所得↡。何故今云↣廻↢施法界↡。
答ふ。 理、 実にはしかるべし。 しかれども、 いまは国土の風俗に順ずるがゆゑに 「法界」 といふに、 理また違することなし。 しかる所以は、 法界はすなはちこれ*円融無作の第一義空なり。 所修の善をもつて*回趣し、 かの第一義空に相応するを回施法界と名づく。
円融無作 無差別平等で、 一切の作為を超え離れていること。
答。理、実可↠然。然今順↢於国土風俗↡故云↢法界↡。理亦无↠違。所↢以然↡者、法界即是円融无作第一義空。以↢所修善↡廻趣相↢応彼第一義空↡、名↣廻↢施法界↡。
問ふ。 最後に、 なんの意ぞ唱へて 「回向大菩提」 といふや。
問。後何意、唱言↣廻↢向大菩提↡耶。
答ふ。 これはこれ、 薩婆若と相応せしむるなり。 これまた*土風に順じて、 これを末後に置く。 「薩婆若」 といふは、 すなはちこれ菩提なり。 前の ¬論¼ (同) の文のごとし。
土風に… 日本の仏事法会では、 回向の次第を 「回施法界」 「回向大菩提」 の順とする。
答。此是令↧与↢薩婆若↡相応↥也。此亦順↢土風↡置↢之末後↡。言↢薩婆若↡、即是菩提。如↢前¬論¼文↡。
問ふ。 *有相の回向には利益なきや。
有相の回向 差別の相にとらわれた回向。
問。有相廻向无↢利益↡耶。
答ふ。 上にしばしば論ずるがごとし。 勝劣はありといへども、 なほ巨益あり。
答。如↢上数論↡。雖↠有↢勝劣↡、猶有↢巨益↡。
¬大論¼ (同) の第七にいふがごとし。 「小因の大果、 小縁の大報あり。 仏道を求めて一偈を讃じ、 一たび ª南無仏º と称し、 一捻の香を焼きて、 かならず仏に作ることを得るがごときなり。 いかにいはんや、 聞知せんをや。 ª*諸法の実相は不生不滅にして、 不生にもあらず、 不滅にもあらざれども、 しかも因縁の業を行ずれば、 また失せざるなりº」 と。 以上
如↢¬大論¼第七云↡。「有↢小因大果、小縁大報↡。如↧求↢仏道↡讃↢一偈↡、一称↢南无仏↡、焼↢一捻香↡、必得↦作仏↥。何況聞↧知諸法実相、不生不滅、不↢不生↡不↦不滅↥、而行↢因縁業↡亦不↠失。」已上
この文深妙なり。 髻のなかの明珠なり。 すなはち知りぬ、 われらも仏になること疑なしと。
此文深妙、髻中明珠。則知、我等成仏无↠疑。
龍樹尊に帰命したてまつる。 わが心願を証明したまへ。
帰↢命龍樹尊↡、*証↢成我心願↡。
証成 青蓮院本では 「証明」。
◎助念方法
【47】大文第五に、 *助念方法といふは、 *一目の羅は鳥を得ることあたはず、 万術をもつて観念を助けて、 往生の大事を成ず。 いま七事をもつて、 略して方法を示さん。 一には方処供具、 二には修行相貌、 三には対治懈怠、 四には止悪修善、 五には懺悔衆罪、 六には対治魔事、 七には総結要行なり。
助念方法 念仏を助ける方法。
一目の羅… 目の一つしかない網では鳥を捕らえることはできない。 天台大師智顗の ¬摩訶止観¼ 巻五にもとづく語。
大文第五助念方法者、一目之羅、不↠能↠得↠鳥、万術助↢観念↡成↢往生大事↡。今以↢七事↡略示↢方法↡。一方処供具、二修行相貌、三対治懈怠、四止悪修善、五懺悔衆罪、六対治魔事、七総結行要。
◎助念方法 ○方処供具
【48】第一に*方処供具とは、 *内外ともに浄くして一の閑処を卜めて、 力に随ひて香華供具を弁ぜよ。
方処供具 念仏を修する際の場所や供物・道具。
内外 心と身体。
第一方処・供具者、内外倶浄、卜↢一閑処↡、随↠力弁↢於*華香・供具↡。
華香 青蓮院本では 「香華」。
もし華香等の事を闕少せることあらば、 ただもつぱら仏の功徳威神を念ぜよ。
若有↣闕↢少華香等事↡、但専念↢仏功徳威神↡。
もし親しく仏像に対はば、 すべからく灯明を弁ずべし。
若親対↢仏像↡、須↠弁↢灯明↡。
もしはるかに西方を観ぜば、 あるいは闇室を須ゐよ。 *感禅師 (懐感) は闇室を許す。
感禅師は… ¬群疑論¼ 巻七に見える説。
若遥観↢西方↡、或須↢闇室↡。感禅師許↢闇室↡
もし華香を供する時には、 すべからく ¬*観仏三昧経¼ の供養の文の意によるべし。 その得るところの福、 無量無辺なり。 煩悩おのづから減少し、 *六度おのづから円満す。 その文、 *通途の所用に異ならず。 ゆゑにさらに抄せず。
通途の所用 通常、 用いられるもの。
若供↢華香↡時、須↠依↢¬観仏三昧経¼供養文意↡。其所↠得福、无量无辺、煩悩自減少、六度自円満。其文不↠異↢通途所用↡故不↢更抄↡
もし念珠を用ゐん時には、 浄土を求めんと欲はば、 *木槵子を用ゐ、 多功徳を欲はば、 *菩提子、 乃至、 あるいは*水精・蓮子等を用ゐよ。 ¬*念珠功徳経¼ に見えたり。
木槵子 むくろじの実。
菩提子 菩提樹の実。
水精蓮子 水晶、 蓮の実。
若用↢念珠↡時、欲↠求↢浄土↡、用↢木槵子↡、欲↠多↢功徳↡、用↢菩提子乃至或水精・蓮子等↡。見↢¬念珠功徳経¼↡
◎助念方法 ○修行相貌
【49】第二に*修行相貌とは、 ¬*摂論¼ 等によりて*四修の相を用ゐよ。
修行相貌 念仏行のすがた。
摂論等 ¬摂大乗論¼ 巻八、 ¬倶舎論¼ 巻二十七など。
第二修行相*皃者、依↢¬摂論¼等↡用↢四修相↡。
皃 底本まま。 註なし。
一には長時修。
一者長時修。
¬要決¼ (*西方要決) にいはく、 「▼*初発心よりすなはち菩提に至るまで、 つねに*浄因をなして、 つひに退転なかれ」 と。
初発心 はじめて仏道に進もうという志をおこすこと。
浄因 往生浄土の因業。
¬要决¼云。「従↢初発心↡乃至菩提、恒作↢浄因↡、終无↢退転↡。」
善導禅師のいはく (礼讃)、 「▲命を畢ふるを期となして、 誓ひて中止せざれ」 と。
善導禅師云。「畢命為↠期、誓不↢中止↡。」
二には慇重修。 いはく、 極楽の*仏法僧宝において、 心につねに憶念して、 もつぱら尊重をなせ。
二者慇重修。謂於↢極楽仏・法・僧宝↡、心常憶念、専生↢尊重↡。
¬要決¼ (同) にいはく、 「▼*行住坐臥に、 西方を背かざれ。 *啼・唾・便痢は、 西方に向かはざれ」 と。
啼唾便痢 涙・つば・大小便。
¬要决¼云。「行住坐臥、不↠背↢西方↡、*涕唾便*利、不↠向↢西方↡。」
涕 他本では 「口+弟」。
利 他本では 「痢」。
導師 (善導) のいはく (礼讃)、 「▲面を西方に向かふるものは最勝なり。 樹の先より傾けるは倒るるに、 かならず曲れるに随ふがごとし。 かならず事の礙ありて西に向かふこと及ばずは、 ただ西に向かふ想をなすにまた得たり」 と。
導*禅師云。「面向↢西方↡者勝。如↢樹先傾倒必随↟曲。必有↢事礙↡不↠及↠向↢*西方↡者、但作↢向↠西想↡亦得。」
禅師 青蓮院本、 建長五年刊本では 「師」。
西方 他本では 「西」。
三には無間修。
三者无間修。
¬要決¼ (同) にいはく、 「▼いはく、 つねに仏を念じて往生の心をなせ。 一切の時において、 心につねに想ひ巧め。 たとへば、 人ありて、 *他に抄掠せられ、 身、 下賤となりてつぶさに*艱辛を受けん。 たちまちに父母を思ひ、 走りて国に帰らんと欲するに、 *行装いまだ弁ぜずして、 なほ他の郷にありて日夜に思惟し、 苦堪忍せず。 時としてしばらくも捨てて*耶嬢を念はざることなし。 計をなすことすでに成じて、 すなはち帰りて達することを得て、 父母に親近し、 ほしいままに歓娯せんがごとし。 行者もまたしかなり。 往、 煩悩によりて善心を壊乱し、 *福智の珍財、 ならびにみな散失せり。 久しく生死に沈みて制すること自由ならず。 つねに魔王のためにしかも*僕使となりて、 六道に駆馳せられ、 身心を苦切す。 いま善縁に遇ひて、 たちまちに弥陀の慈父の、 弘願に違はずして*群生を*済抜したまふことを聞き、 日夜に*驚忙し、 心を発して往くことを願ふ。 ゆゑに*精勤すること倦まずして、 まさに仏恩を念じて、 *報の尽くるを期となして、 心につねに計念すべし」 と。 云々
他に抄掠せられ 他人にさらわれて。
艱辛 苦労。 苦難。
行装 旅の用意。
耶嬢 耶は父、 嬢は母。 両親のこと。
福智の珍財 福徳や
智慧の尊い財宝。 福徳は六波羅蜜のうちの
布施・
持戒・
忍辱・
精進・
禅定の五をいい、 智慧は第六の
般若を指す。 →
六波羅蜜
僕使 従属する者。
済抜 苦を抜き、 迷いの世界から救うこと。
驚忙 おどろきあわてること。
報の尽くるを期となして 現在のこの身 (報) が尽きるまでという意。
¬要决¼云。「謂常念↠仏作↢往生心↡、於↢一切時↡、心恒想巧。譬若↧有↠人、被↢他抄掠↡、身為↢下賤↡、備受↢艱辛↡、忽思↢父母↡、欲↣走帰↢*本国↡、行装未↠弁、由在↢他郷↡日夜思惟。苦不↠堪↠忍、无↢時暫捨不↟念↢耶嬢↡。為↠計既成、便帰得↠達、親↢近父母↡、縦任歓娯↥。行者亦爾。往因↢煩悩↡、壊↢乱善心↡、福智珍財、并皆散失。久沈↢生死↡制不↢自由↡。恒与↢魔王↡而作↢僕使↡駈↢馳六道↡、苦↢切身心↡。今遇↢善縁↡、忽聞↧弥陀慈父不↠違↢弘願↡済↦抜羣生↥、日夜驚忙発心願↠往。所以精勤不↠倦、当↧念↢仏恩↡報尽為↠期、心恒計念↥。」*
本国 他本では 「国」。
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「云々」 と割註あり。
導師 (善導) のいはく (礼讃)、 「▲心々相続して余業をもつて間へざれ。 また*貪瞋等をもつて間へざれ。 随ひて犯せば、 随ひて懺せよ。 念を隔て時を隔て日を隔てしめずして、 つねに清浄ならしめよ」 と。 云々
導師云。「心心相続不↧以↢余業↡間↥、又不↧以↢貪瞋等↡間↥、随犯随懺、不↠令↢隔↠念隔↠時隔↟日、常令↢清浄↡。*」
◇ 青蓮院本には 「云々」 と割註あり。
わたくしにいはく、 日夜六時、 あるいは三時・二時に、 かならず方法を具して、 精勤修習せよ。 その余の時処には*威儀を求めず、 方法を論ぜず、 心口に廃することなくして、 つねに仏を念ずべし。
威儀 規律にかなった起居動作、 ふるまいのこと。
私云。昼夜六時、或三時・二時、要具↢方法↡、精勤修習。其余時処、不↠求↢威儀↡、不↠論↢方法↡、心口无↠*廃、常応↠念↠仏。
廃 青蓮院本、 建長五年刊本では 「癈」。
四には無余修。
四者无余修。
¬要決¼ (西方要決) にいはく、 「▼もつぱら極楽を求めて弥陀を*礼念せよ。 ただし諸余の業行は雑起せしめざれ。 所作の業は、 *日別に、 すべからく念仏・読経を修して、 *余課を留めざるべし」 と。
礼念 礼拝し念ずること。
余課を留めざるべし 課は一日に行うべき仕事を定め置くこと。 念仏と読経以外はこの課に入れないようにせよという意。
¬要决¼云。「専求↢極楽↡、礼↢念弥陀↡、但諸余業行、不↠令↢雑起↡。所作之業、日別須↧修↢念仏読経↡不↞留↢余課↡耳。」
導師 (善導) のいはく (礼讃)、 「▲かの仏の名をもつぱら称し、 かの仏および一切の聖衆等をもつぱら念じ、 もつぱら想ひ、 もつぱら礼し、 もつぱら讃じて、 余業を雑へざれ」 と。 以上
導師云。「専称↢彼仏名↡、専↢念専↣想専↤礼専↯讃彼仏及一切聖衆等↡、不↠雑↢余業↡。」已上
問ふ。 その余の事業は、 なんの過失かある。
問。其余事業、有↢何過失↡。
答ふ。 ¬*宝積経¼ の九十二にのたまはく、 「もし菩薩ありて、 楽ひて*世業をなし、 *衆務を営まんを、 応ぜざるところなりとなす。 われ説かく、 ªこの人は生死に住すº」 と。
世業 世俗のいとなみ、 仕事。
衆務 さまざまなつとめ。
答。¬宝積経¼九十二云。「若有↢菩薩↡楽作↢世業↡、営↢於衆務↡、為↠所↠不↠応。我説、是人住↢於生死↡。」
また同偈にのたまはく、
「*戯論・諍論の処は、 多くもろもろの煩悩を起す。
戯論諍論 無意味な会話や論争。
智者は遠離すべきこと、 まさに百由旬を去るべし」 と。 云々
又同¬偈¼云。「戯論諍論処、多起↢諸煩悩↡。智者応遠離当↠去↢百由旬↡。」云云
自余の方法は、 つぶさに ¬*止観¼ のごとし。
自余方法、具如↢¬止観¼↡。
問ふ。 もししからば、 在家の人は念仏の行に堪へがたし。
問。若爾、在家人、難↠堪↢念仏行↡。
答ふ。 もし世俗の人は、 *縁務を棄てがたくは、 ただつねに念を西方に繋けて、 誠心にしてかの仏を念ずべし。 ¬*木槵経¼ の*瑠璃王の行のごとくせよ。
縁務 自分に関係した世俗のいとなみ。
瑠璃王の行 政務のために修行に専念できない瑠璃王 (波瑠璃王) は、 釈尊の教えによって、 常に木槵子の数珠を携え、 戦場にあっても仏を念じつづけたという。
答。*世俗人、難↠棄↢縁務↡、但常繋↢念西方↡、誠心応↧念↢彼仏↡、如↦¬木槵経¼瑠璃王行↥。
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本には 「若」 の字あり。
また迦才の ¬*浄土論¼ にいはく、 「たとへば、 竜の行くに、 雲すなはちこれに随ふがごとく、 心もし西に逝けば、 業またこれに随ふ」 と。
又迦才¬浄土論¼云。「譬如↢竜行雲即随↟之、心若西逝、業亦随↠之。」*云云
云云 青蓮院本では欠く。
問ふ。 すでに知りぬ、 修行に総じて*四の相ありと。 その修行の時の用心いかんぞ。
問。既知、修行惣有↢四相↡。其修行時用心云何。
答ふ。 ¬観経¼ にのたまはく、 「▲もし衆生ありて、 かの国に生れんと願ずるものは、 三種の心を発して即便往生す。 一には至誠心、 二には深心、 三には回向発願心なり」 と。
答。¬観経¼云。「若有↢衆生↡、願↠生↢彼国↡者、発↢三種心↡、即便往生。一至誠心、二深心、三廻向発願心。」
善導禅師のいはく (礼讃)、 「▲一に至誠心といふは、 いはく、 礼拝・讃嘆・*念観の三業はかならず真実を須ゐるがゆゑなり。 二に深心といふは、 いはく、 自身はこれ煩悩を具足せる凡夫なり。 善根薄少にして三界に流転して、 いまだ火宅を出でずと信知し、 いま弥陀の*本弘誓願は、 名号を称すること下十声・一声等に至るに及ぶまで、 さだめて往生を得と信知して、 乃至一念も疑心あることなきなり。 三に回向発願心といふは、 いはく、 所作の一切の善根をことごとくみな回向して、 往生せんと願ずるがゆゑなり。 この三心を具すれば、 かならず往生することを得。 もし一心も少けぬれば、 すなはち生ずることを得ず」 と。 略してこれを抄す。 経文は上品上生にありといへども、 禅師 (善導) の釈のごとくは、 理九品に通ず。 余師の釈つぶさにすることあたはず。
本弘誓願 阿弥陀仏が因位において弘く一切の衆生を救おうと誓われた願。
善導禅師云。「一至誠心、謂礼拝・讃歎・念観三業、必須↢真実↡故。二深心、謂信↧知自身是具↢足煩悩↡凡夫、善根薄少流↢転三界↡、未↞出↢火宅↡。今信↪知弥陀本弘誓願、及↧称↢名号↡下至十声・一声等↥、定得↩往生↨、乃至↢一念↡无↠有↢疑心↡。三廻向発願心、謂所作一切善根、悉皆廻向、願↢往生↡故。具↢此三心↡必得↢往生↡。若少↢一心↡即不↠得↠生。」略↢抄之↡経文雖↠在↢上品上生↡如↢禅師釈↡者理通↢九品↡余師釈不↠能↠具
¬*鼓音声王経¼ にのたまはく、 「もしよく深く信じて狐疑なきものは、 かならず阿弥陀の国に往生することを得」 と。
¬鼓音声経¼云。「若能深信无↢狐疑↡者、必得↣往↢生阿弥陀*仏国↡。」
仏国 青蓮院本、 建長五年刊本では 「国」 のみ。
¬涅槃経¼ にのたまはく、 「*阿耨菩提は信心を因となす。 この菩提の因また無量なりといへども、 もし信心を説きつればすなはちすでに摂尽しつ」 と。 以上
¬涅槃経¼云。「阿耨菩提信心為↠因。是菩提因、雖↢復无量↡、若説↢信心↡、則已摂尽。」已上
あきらかに知りぬ、 道を修するには信をもつて首めとなす。
明知、修↠道以↠信為↠首。
また善導和尚のいはく (礼讃・意)、 「▲もしは入観および睡りの時には、 この願を発すべし。 もしは坐し、 もしは立ちて、 一心に合掌して、 まさしく面を西に向かへて、 十声、 ª阿弥陀仏・観音・勢至・もろもろの菩薩・*清浄大海衆º と称しをはりて、 仏・菩薩および極楽界の相を見たてまつらんといふ願を発せ。 すなはち意に随ひて入観し、 および睡りても見ることを得。 心をば至さざるを除く」 と。
清浄大海衆 清浄で海のように広大な浄土の聖者たち。
又善導和尚云。「若入観及睡時、応↠発↢此願↡。若坐若立、一心合掌、正面向↠西、十声称↢阿弥陀仏・観音・勢至・諸菩薩・清浄大海衆↡竟、而発↧見↢仏・菩薩及極楽界相↡之願↥。即随↠意入観、及唾得↠見。除↠不↢至心↡。」
問ふ。 行者、 *常途に往生を計念すること、 その相、 なににか似たる。
常途 平生。
問。行者常途、計↢念往生↡、其相似何。
答ふ。 △前に引くところの ¬要決¼ (*西方要決) に、 本国に帰らんと欲ふ譬へ、 これその相なり。
答。前所↠引¬要决¼欲↠帰↢本国↡之譬、是其相也。
また綽和尚 (道綽) の ¬*安楽集¼ (上) にいはく、 「▲たとへば、 人ありて*空曠のはるかなる処にして、 怨賊の、 剣を抜き勇を奮ひて、 ただちに来りて殺さんと欲せんに値遇ひなん。 この人ただちに走るに、 一の河を渡らんと観る。 いまだ河に到るに及ばざるに、 すなはちこの念をなす。 ªわれ河の岸に至りては、 衣を脱ぎてや渡るとやせん、 衣を着てや浮ぐとやせん。 もし衣を脱ぎて渡らば、 ただおそらくは暇なきことを。 もし衣を着て浮がば、 またおそらくは*首領を全くすること難しº と。 その時に、 ただ一心に河を渡る方便をなすことのみありて、 余の心想*間雑することなからんがごとし。 行者またしかり。 阿弥陀仏を念ずる時には、 またかの人の渡ることを念ふがごとくして、 念々にあひ次いで、 余の心想間雑することなし。 あるいは仏の法身を念ひ、 あるいは仏の*神力を念ひ、 あるいは仏の智慧を念ひ、 あるいは仏の*毫相を念ひ、 あるいは仏の相好を念ひ、 あるいは仏の本願を念へ。 名を称することもまたしかなり。 ただよくもつぱら至して、 相続して断ぜざるは、 さだめて仏前に生る」 と。 以上
空曠のはるかなる処 何もなくて、 どこまでも広がっている場所。
首領を… 命を全うすることができないであろう。 ここでは、 溺れ死ぬであろうの意。
又*¬安楽集¼云。「譬如↧有↠人於↢空曠逈処↡、値↢遇怨賊抜↠劒奮↠勇直来欲↟殺。此人径走観↠渡↢一河↡。未↠及↠到↠河、即作↢此念↡。我至↢河岸↡、為↢脱↠衣渡↡、為↢著↠衣浮↡。若脱↠衣渡、唯恐无↠暇。若著↠衣浮、復畏↢首領難↟全。爾時、但有↣一心作↢渡↠河方便↡、无↦余心想間雑↥。行者亦爾。念↢阿弥陀仏↡時、亦如↢彼人念↟渡、念念相次無↢余心想間雑↡、或念↢仏法身↡、或念↢仏神力↡、或念↢仏智慧↡、或念↢仏毫相↡、或念↢仏相好↡、或念↢仏本願↡。称↠名亦爾。但能専至相続不↠断、定生↢仏前↡。」已上
◇ 青蓮院本には 「綽和尚」 とある。
*元暁師これに同じ。
元暁師同↠之。
問ふ。 念仏三昧は、 ただ心に念ずとやせん、 また口に唱ふとやせん。
問。念仏三昧為↢唯心念↡、為↢亦口唱↡。
答ふ。 ¬*止観¼ の第二 (意) にいふがごとし。 「あるいは〔唱・念〕ともに運び、 あるいは先づ念じ後に唱へ、 あるいは先づ唱へ後に念じて、 唱・念あひ継ぎて休息する時なし。 声々・念々ただ阿弥陀にあり」 と。
答。如↢¬止観¼第二云↡。「或*唱念倶運、或先念後唱、或先唱後念、唱念相継无↢休息時↡。声声念念、唯在↢阿弥陀↡。」
唱念 青蓮院本では欠く。
また感禅師 (*懐感) のいはく (群疑論)、 「¬観経¼ にのたまはく、 ªこの人、 苦に逼められて念仏に遑あらず。 *善友、 教令すらく、 «阿弥陀仏を称すべし» と。 かくのごとく心を至して、 声をして絶えざらしむº と。 あに苦悩に逼められて念想成じがたきには、 声をして絶えざらしむるに、 至心にすなはち得るにあらずや。 いまこの声を出して、 *念仏定を学することもまたかくのごとし。 声をして絶えざらしむれば、 つひに三昧を得て、 仏・聖衆の*皎然として目の前にましますを見る。 ゆゑに ¬*大集¼ の ª日蔵分º にのたまはく、 ª大念は大仏を見る、 小念は小仏を見るº と。 ª大念º とは大声に仏を称するなり。 ª小念º とは小声に仏を称するなり。 これすなはち聖教なり。 なんの惑ひかあらん。 現に見るにすなはちいまのもろもろの修学者、 ただすべからく声を励まして仏を念ずべし。 三昧成じやすし。 小声に仏を称するに、 つひに*馳散多し。 これすなはち学者の知るところにして、 *外人の暁るにあらず」 と。 以上、 かの ¬経¼ (大集経) にのたまはく、 「ただ多を欲するは多を見、 小を欲するは小を見る」 等と。 しかるに感師 (懐感)、 すでに三昧を得たり。 かの釈するところ、 仰ぎて信ずべし。 さらに諸本を勘へよ。 「小念は小を見、 大念は大を見る」 の文、 ¬*日蔵経¼ の第九に出でたり。
皎然 明らかなさま。
馳散 心のみだれ。
外人 余地の人。
日蔵経 ¬大集経¼ 日蔵分のこと。 引用はその取意の文。
又感禅師云。「観経言。是人苦逼、不↠遑↢念仏↡。善友教令、可↠称↢阿弥陀仏↡。如↠是至↠心令↢声不↟絶。豈非↧苦悩所↠逼、念想難↠成、令↢声不↟絶、至心便得↥。今此出↠声、学↢念仏定↡、亦復如↠是。令↢声不↟絶、遂得↢三昧↡、見↢仏・聖衆皎然目前↡。故大集日蔵分言。大念見↢大仏↡、小念見↢小仏↡。大念者大声称↠仏也、小念者小声称↠仏也。斯即聖教、有↢何*惑↡哉。現見即今諸修学者、唯須↢励↠声念仏↡、三昧易↠成。小声称↠仏遂多↢馳散↡。此乃学者所↠知、非↢外人之暁↡矣。」已上彼¬経¼*但云「欲↠多見↠多欲↠小見↠小」等*云云然感師既得↢三昧↡彼所↠釈応↢仰*信受↡更勘↢諸本↡小念見↠小大念見↠大文出↢日蔵経第九↡
惑 青蓮院本では 「或」。
但云 青蓮院本では 「云但」。
云云 青蓮院本では欠く。
信受 青蓮院本、 建長五年刊本では 「信」。
◎助念方法 ○対治懈怠
【50】第三に*対治懈怠とは、 *行人、 *恒時に勇進することあたはず。 あるいは心蒙昧となり、 あるいは心*退屈す。 その時に種々の勝れたる事に寄せて自心を勧励すべし。
対治懈怠 おこたりなまける心を制すること。
行人 (念仏三昧の) 行者。
恒時 つねに。 いつも。
退屈 (仏道を求める心が) くじけること。
第三対治懈怠者、行人不↠能↢恒時勇進↡。或心蒙昧、或心退屈。爾時応↧寄↢種種勝事↡勧↦励自心↥。
あるいは三途の苦果をもつて浄土の功徳に比べて、 この念をなすべし。 「われすでに悪道にして多劫を経き。 *無利の勤苦すら、 なほよく超えたり。 小行を修行して菩提を得んは大利なり。 退屈をなすべからず」 と。 悪趣の苦、 浄土の相、 一々に*前のごとし。
無利の勤苦 なんの利益もない苦しい勤め。
前 大文第一厭離穢土、 大文第二欣求浄土を指す。
或以↢三途苦果↡比↢浄土功徳↡、応↠作↢是念↡。我已悪道経↢多劫↡、无利勤苦尚能超。修↢行*少行↡得↢菩提大利↡、不↠応↠生↢退屈↡。悪趣苦浄土相一一如↠前
少 建長五年刊本では 「小」。
あるいは往生浄土の衆生を縁じて、 この念をなすべし。 「十方世界のもろもろの有情、 念々に安楽国に往生す。 かれすでに*丈夫なり。 われもまたしかなり。 みづから軽みて退屈をなすべからず」 と。 往生の人は*下の利益門・料簡門のごとし。
丈夫 すぐれた人。 立派な人。
下の利益門料簡門 大文第七念仏利益、 大文第十問答料簡を指す。
或縁↧往↢生浄土↡衆生↥、応↠作↢是念↡。十方世界諸有情、念念往↢生安楽国↡。彼既丈夫、我亦爾。不↠応↣自軽生↢退屈↡。往生人如↢下利益門料簡門↡
あるいは仏の奇妙の功徳を縁ずべし。
或応↠縁↢仏奇妙功徳↡。
問ふ。 なんらの功徳ぞ。
問。何等功徳。
答ふ。 その事、 無量なり。 略してその要を挙げん。
答。其事无*辺、略挙↢其要↡。
辺 青蓮院本では 「量」。
・四十八願
一には四十八の本願を思念すべし。
一応↣思↢念四十八*本願↡。
本願 青蓮院本では 「大願」。
また*¬無量清浄覚経¼ にのたまはく、 「阿弥陀仏、 観世音・大勢至と、 大願の船に乗りて生死の海に汎びて、 この娑婆世界につきて、 衆生を呼喚して大願の船に上せて、 西方に送り着けしめたまふ。 もし衆生の、 あへて大願の船に上らば、 ならびにみな去ることを得。 これはこれ往きやすきなり」 と。
無量清浄覚経に… 引用は ¬
無量清浄平等覚経¼ 巻二の文にもとづいた
迦才の ¬
浄土論¼ 巻下の文。
又¬无量清浄覚経¼云。「阿弥陀仏与↢観世音・大勢至↡、乗↢大願船↡、汎↢生死海↡、就↢此娑婆世界↡、呼↢喚衆生↡令↠上↢大願船↡、送↢著西方↡。若衆生肯上↢大願船↡者、並皆得↠去。」此是易↠往也。
¬*心地観経¼ の偈にのたまはく、
「衆生は生死海に没在して、 *五趣に輪廻して出づる期なし。
五趣 五悪趣の略。 地獄・餓鬼・畜生・人・天の五道。
*善逝つねに妙法の船となり、 よく*愛流を截りて彼岸に超えしめたまふ」 と。
愛流 人の心を溺れさせる貪愛を水の流れに喩えていう。
¬心地観経¼偈云。「衆生没↢在生死海↡、輪↢廻五趣↡、无↢出期↡。善逝恒為↢妙法船↡、能截↢愛流↡、超↢彼岸↡。」
念ふべし、 「われ、 いづれの時にか悲願の船に乗りて去らん」 と。
応↠念、我何時乗↢悲願船↡去。
・名号
二には*名号の功徳なり。
二名号功徳。
¬*維摩経¼ にのたまふがごとし。 「諸仏の色身の威相・種性、 *戒・定・智慧・解脱・知見、 *力・無所畏・不共の法、 大慈大悲、 威儀所行、 およびその寿命、 説法教化し、 衆生を成就し、 仏の国土を浄め、 もろもろの仏法を具したまへること、 ことごとくみな同等なり。 このゆゑに名づけて*三藐三仏陀となし、 名づけて*多陀阿伽度となし、 名づけて仏陀となす。 阿難、 もしわれ広くこの三句の義を説かば、 なんぢ*劫寿をもつてすとも、 尽して受くることあたはじ。 たとひ三千大千世界のなかに満てらん衆生をして、 みな阿難のごとく多聞第一にして*念総持を得しむとも、 このもろもろの人等も、 劫の寿をもつてすともまた受くることあたはじ」 と。 以上
戒定智慧解脱知見 戒・定・慧・解脱・解脱知見の五分法身のこと。 戒をたもち、 禅定に入り、 智慧をひらき、 すべての煩悩から解放されて、 心の安らかさを自覚するという五つの功徳。
三藐三仏陀 梵語サムヤック・サンブッダ (samyak-saſbuddha) の音写。 正遍知・等正覚・正等覚などと漢訳する。 絶対平等のさとりを得た仏のこと。
多陀阿伽度 梵語タターガタ (tathāgata) の音写。 如来と漢訳する。 →
如来
劫寿 一劫の寿命。
念総持 学び聞いたところをすべて保持記憶する能力。
如↢¬維摩経¼言↡。「諸仏色身威相・種性・戒・定・智慧・解脱・知見・力・无所畏・不共之法・大慈大悲・威儀・所行、及其寿命、説法教化、成↢就衆生↡、浄↢仏国土↡、具↢諸仏法↡、悉皆同等。是故名為↢三藐三仏陀↡、名為↢多陀阿伽度↡、名為↢仏陀↡。阿難、若我広説↢此三句義↡、汝以↢劫寿↡不↠能↢尽受↡。正使三千大千世界、満↠中衆生、皆如↢阿難↡、多聞第一、得↢念惣持↡、此諸人等、以↢劫之寿↡、亦不↠能↠受。」*
◇ 青蓮院本には 「已上」 と割註あり。
¬要決¼ (*西方要決) にいはく、 「¬維摩¼ にのたまはく、 ª仏の初めの三号をば、 仏もし広く説きたまはば、 阿難、 劫を経とも領受することあたはじº と。 ¬*成実論¼ に、 仏の号を釈するに、 *前の九号はみな別義に従ひ、 前の九号の*名義の功徳を総じて、 仏世尊となす。 初めの三号を説かんに、 劫を歴とも周めがたし。 阿難領悟するに、 よく*つぶさに悉することなし。 さらに六号を加へて、 もつて仏号を製せりといふ。 *勝徳すでに円かなれば、 それを念ずるは大善なり」 と。 以上 ¬要決¼ (西方要決)。
前の九号 如来の十号のうち仏世尊以外の九号。 →
如来
名義 名号の意義、 いわれ。
つぶさに悉する 完全に理解するの意。
勝徳 すぐれた功徳。
¬要决¼云。「維摩*経云。仏初三号、仏若広説、阿難経↠劫不↠能↢領受↡。成実論釈↢仏之号↡、前之九号皆従↢別義↡、惣↢前九号名義功徳↡為↢仏世尊↡。説↢初三号↡、歴↠劫難↠周、阿難領悟莫↢能具悉↡。更加↢六号↡以製↢仏*名↡。勝徳既円、念↠其大善也。」已上¬要决¼
経 青蓮院本では欠く。
名 青蓮院本では 「号」。
¬華厳¼ の偈にのたまはく、
「もしもろもろの衆生ありて、 いまだ菩提心を発さざらんに、
一たびも仏の名を聞くことを得ば、 決定して菩提を*成ぜん」 と。
成ぜんと 諸本には次下に細註で 「首楞厳経の文は下の料簡門のごとし」 とある。
¬華厳¼偈云。「若有↢諸衆生↡、未↠発↢菩提心↡、一得↠聞↢仏名↡、决定成↢菩提↡。」*¬首楞厳経¼文加↢下料簡門↡
首楞厳経文加下料簡門 青蓮院本では欠く。
この念をなすべし、 「われ、 いますでに仏の尊号を聞くことを得たり。 願はくは、 われまさに仏に作りて十方の諸仏のごとくあるべし」 と。
応↠作↢是念↡。我今既得↠聞↢仏尊号↡、願我当↣作仏如↢十方諸仏↡。
・相好
三には相好の功徳なり。
三仏相好功徳。
¬*六波羅蜜経¼ (意) にのたまはく、 「もろもろの世間において、 あるところの三世の一切の衆生、 *学・無学の人、 および辟支仏、 かくのごとき有情の無量無辺の所有の功徳を、 如来の一毛の功徳に比ぶるに、 百千万分がなかにその一にも及ばず。 かくのごとき一々の毛端は、 みな如来の無量の功徳より出生せるところなり。 一切の毛端のあらゆる功徳をもつて、 ともに一の髪の功徳を成ず。 かくのごとくして仏の髪は八万四千なり。 一々の髪のなかに、 おのおの上のごとき功徳を具せり。 かくのごとく合集して、 ともに一の*随好の功徳を成ず。 一切の好の功徳をともにして、 一の*相の功徳を成ず。 一切の相の功徳を合集して百千倍に至りて、 眉間の*毫相の功徳を成ず。 その相円満にして、 宛転して右に旋れること、 *頗胝迦宝のごとし。 明浄鮮白にして、 夜闇のなかに、 なほあきらかなる星のごとくなり。 毫相これを舒ぶれば、 上は*色界の*阿迦膩天までに至る。 これを巻けば、 旧のごとくしてまた毫相となりて、 眉間に住す。 毫相の功徳、 百千倍に至りて*肉髻の相を成ず。 かくのごとき肉髻の千倍の功徳は、 *梵音声の相の功徳に及ばじ」 と。
学無学の人 仏道においてなお学ぶべき余地を残す者と、 もはや学ぶべきことのない者。
相 仏のすぐれた形相の特徴のうちの顕著なもの。
頗胝迦宝 水晶のこと。
梵音声 仏のきよらかな声。
¬六波羅密経¼云。「於↢諸世間↡、所有三世一切衆生、学・无学人、及辟支仏、如↠是有情无量无辺所有功徳、比↢於如来一毛功徳↡、百千万分中不↠及↢其一↡。如↠是一一毛端、皆従↢如来矛量功徳↡之所↢出生↡。一切毛端所有功徳、共成↢一髪功徳↡。如↠是仏髪八万四千、一一髪中各具↢如↠上功徳↡。如↠是合集共成↢一随好功徳↡、一切*随好功徳共成↢一相功徳↡。一切相功徳合集至↢百千倍↡、成↢眉間毫相功徳↡。其相円満、宛転右*遶、如↢頗胝迦宝↡、明浄鮮白。夜闇之中猶如↢明星↡。毫相舒↠之、上至↢色界阿迦膩天↡、巻↠之如↠旧復為↢毫相↡、於↢眉間↡住。毫相功徳、至↢百千倍↡成↢肉髻相↡。如↠是肉髻、千倍功徳、不↠及↢梵音声相功徳↡。」
随好 他本では 「好」。
遶 青蓮院本、 建長五年刊本では 「旋」。
また ¬*宝積経¼ に無数の*校量あり。 学者、 勘ふべし。
又¬宝積経¼有↢無数挍量↡、学者可↠勘。
また ¬*大集の念仏三昧経¼ の第五にのたまはく、 「かくのごとき世界、 および十方の無量無辺のもろもろの世界のなかのあらゆる衆生、 たとひことごとくみな一時に仏となりて、 かのもろもろの世尊、 無量劫を経て、 みな還りて仏の一毛の功徳を嘆めたまふとも、 つひにまた尽さじ」 と。 云々
又¬大集念仏三昧経¼第五云。「如↠此世界、及十方無量無辺諸世界中所有衆生、仮使尽皆一時成仏、彼諸世尊、経↢無量劫↡、皆還歎↢仏一毛功徳↡、終亦不↠尽。」*已上
已上 青蓮院本では 「云云」。
¬華厳¼ の偈にのたまはく、
「清浄の*慈門、 *刹塵数にして、 ともに如来の一の妙相を生ず。
慈門 慈悲心の功徳。
刹塵数 刹は梵語クシェートラ (kşetra) の音写で、 国土の意。 国土を微塵 (物質の最小単位) にしたほど数が多いということ。
一々の諸相、 しからずといふことなし。 このゆゑに見るもの、 *厭足することなし」 と。
¬華厳¼偈云。「清浄慈門刹塵数、共生↢如来一妙相↡。一一諸相莫↠不↠然。是故見者無↢厭足↡。」
この念をなすべし、 「願はくは、 われまさに仏の無辺功徳の相を見たてまつるべし」 と。
応↠作↢是念↡。願我当見↢仏無辺功徳相↡。
・光明威神
四には*光明の威神なり。
光明の威神 光明の不可思議な力。
四光明威神。
いはく、 ¬*平等覚経¼ (一) にのたまはく、 「無量清浄仏 無量清浄仏は、 これ阿弥陀仏なり。 の光明は、 最尊第一にして比びなし。 諸仏の光明、 みな及ばざるところなり。 ある仏の頂の光明は七尺を照らす。 ある仏は一里を照らす。 ある仏は五里、 *ある仏は二十里・四十里・八十里、 乃至百万の仏国、 二百万の仏国なり。 八方上下、 *無央数の諸仏の頂の光の照らしたまふところ、 みなかくのごとし。 無量清浄仏の頂のなかの光明は、 千万の仏国を炎照す」 と。 以上取意。 わたくしにいはく、 ¬観経¼ にのたまはく、 「かの仏の*円光は百億の*大千界のごとし」 と。 この ¬経¼ (平等覚経・一) にはのたまはく、 「頂のなかの光、 千万仏の国を照らす」 と。 二経の意、 同じきのみ。
ある仏 底本 (青蓮院本) には 「仏」 の字なし。
謂¬平等覚経¼云。「無量清浄* 無量清浄仏者是阿弥陀仏也 光明尊第一无↠比、諸仏光明皆所↠不↠及也。有仏頂光明照↢七尺↡、有仏照↢一里↡、有仏五里、有仏二十里・四十里・八十里、乃至百万仏国、二百万仏国。八方・上下、無央数諸仏頂光所↠照、皆如↠是也。無量清浄仏頂中光明、炎↢照千万仏国↡。」已上取意私云¬観経¼云「彼仏円光如↢百億大千界↡」此経云「頂中光照↢千万仏国↡」二経意同耳
◇ 青蓮院本、 建長五年刊本では 「仏」 の字あり。
¬*双巻経¼ (大経) の意、 これに同じ。 ¬経¼ (同・上) にのたまはく、 「無量寿仏の威神光明は、 最勝第一にして、 諸仏の光明、 及ぶことあたはざるところなり。 あるいは仏の光の、 百仏世界あるいは千仏世界を照らすあり。 要を取りてこれをいはば、 すなはち東方の恒河沙の*仏刹を照らす。 南西北方・*四維・上下もまたかくのごとし。 このゆゑに無量寿仏を、 無量光仏・無辺光仏・無礙光仏・無対光仏 *玄一師のいはく (無量寿経記)、 ªともに等しきものなきがゆゑにº と。 炎王光仏 玄一師のいはく (同)、 ª最勝自在なるがゆゑにº と。 清浄光仏 一 (玄一) のいはく (同)、 ª三垢を滅するがゆゑにº と。 *憬興師のいはく (*述文賛)、 ª無貪の善根の所生なるがゆゑにº と。 歓喜光仏 一のいはく (無量寿経記)、 ª遇ふもの悦意するがゆゑにº と。 興 (憬興) のいはく (述文賛)、 ª無瞋所生なるがゆゑにº と。 智慧光仏 一のいはく (無量寿経記)、 ª智慧の所発なるがゆゑにº と。 興いはく (述文賛)、 ª無痴の所生なるがゆゑにº と。 不断光仏 一のいはく (無量寿経記)、 ª恒相続のゆゑにº と。 難思光仏・無称光仏 一のいはく (同)、 ª称嘆して、 その所有を尽すべからざるがゆゑにº と。 自余の名義は知りぬべし。 煩はしく記せず。 超日月光仏と号す。 もし三途勤苦の処にありて、 この光明を見るに、 また苦悩なく、 寿終りて後にはみな解脱を蒙る。 ただわれのみ、 いまその光明を称するにあらず。 一切の諸仏またかくのごとし。 もし衆生ありて、 その光明の威神の功徳を聞きて、 日夜に*称説し、 心を至して断えざれば、 意の所願に随ひて、 その国に生ずることを得ん。 われ、 無量寿仏の*光明の威神、 *巍々として殊妙なることを説かんに、 昼夜にして一劫すとも、 なほ尽すことあたはじ」 と。 以上取意。 ¬平等経¼ には、 別して、 「頂の光」 とのたまひ、 ¬観経¼ には、 総じて 「光明」 とのたまふ。
光明の威神 光明の不可思議な力。
巍々 けだかくおごそかであること。
¬双巻経¼云。「無量寿仏威神光明、最勝第一、諸仏光明所↠不↠能↠及。或有↣仏光照↢百仏世界↡、或千仏世界。取↠要言↠之、乃照↢東方恒河沙仏刹↡。南西北方・四維・上下亦復如↠是。是故無量寿仏号↢無量光仏・無辺光仏・無光仏・無対光仏・玄一師云「无↢与等↡故」 炎王光仏・*一師云「勝自在故」 清浄光仏・一云「滅↢三垢↡故」憬興師云「无貪善根所生故」 歓喜光仏・一云「遇者悦意故」興云「无瞋所生故」 智恵光仏・一云「智恵所発故」興云「无痴所生故」 不断光仏・一云「恒相続故」 難思光仏・無称光仏・一云「不↠可↣称歎尽↢其所有↡故」自余名義可↠知不↢煩記↡ 超日月光仏↡。若在↢三途勤苦之処↡、見↢此光明↡、無↢復苦悩↡。寿終之後、皆蒙↢解脱↡。非↣但我今称↢其光明↡、一切諸仏亦復如↠是。若有↢衆生↡、聞↢其光明威神功徳↡、日夜称説至↠心不↠断、随↢意所願↡、得↠生↢其国↡。我説↢無量寿仏光明威神巍巍殊妙↡、昼夜一劫尚不↠能↠尽。」已上取意¬*平等覚経¼別云↢「頂光」↡¬観経¼惣云↢「光明」↡
一 青蓮院本では 「玄一」。
平等覚経 青蓮院本、 建長五年刊本では 「平等経」。
*¬譬喩経¼ の第三に、 *釈迦文仏の光相を明かしてのたまはく、 「仏 (釈尊) 滅したまひて百年に*阿育王あり。 国のうちの民庶、 仏の遺典を歌しき。 王の、 意に信ぜずして念言すらく、 ª仏にいかなる徳の、 人に過ぎ踰えたるものありて、 しかもともに信をもつぱらにしてその文を誦習すらんº と。 すなはち大臣に問はく、 ª国のうちに、 もし仏を見たるものありやº と。 答へてまうさく、 ª聞くならく、 *波斯匿王の妹、 出家して比丘尼となれり。 年*西垂にありて、 いひて仏を見たりといふº と。 王すなはちみづから出でて往詣して、 問ひていはく、 ª*道人、 仏を見たりやいなやº と。 答へてまうさく、 ª実にしかりº と。 問ひていはく、 ªなんの殊異なることかあるº と。 道人のいはく、 ª仏の功徳は巍々として量りがたし。 わが愚浅の、 よくこれを陳ぶるところにあらず。 ほぼ一事を説かば、 殊特なることを知りぬべし。 われ時に八歳、 世尊来りて王宮に入りたまひき。 すなはち前みて足を礼せしに、 頭の上の金の釵、 堕落して地にあり。 これを求むるに得ずして、 その所以を怪しみき。 如来の過ぎ去りたまひし足の跡に、 *千輻輪ありて、 光明を現じて晃き、 七日ありてすなはち滅しにき。 *登時には、 金の釵地と同色なりき。 ここをもつて見えざりき。 光滅して後に、 釵を得き。 すなはち知りき、 殊特なることをº と。 王聞きて歓喜して、 心あきらかに開悟しき」 と。 略抄
比喩経の… 引用に該当する文は現行の ¬比喩経¼ に見出せない。
波斯匿王 波斯匿は梵語プラセーナジット (Prasena-jit) の俗語形の音写。 釈尊在世時代のコーサラ国の王。
西垂 年老いていること。
道人 仏道を修める人。
登時 その時。
¬譬喩経¼第三明↢釈迦文仏光明相↡云。「仏滅百年有↢阿育王↡、国内民庶、歌↢仏遺典↡。王意不↠信念言。仏有↣何徳過↢踰於人↡而共専信誦↢習其文↡。即問↢大臣↡。国中頗有↢見↠仏者↡。答曰。聞、波斯匿王妹、出家作↢比丘尼↡、年在↢西垂↡、云↢言見↟仏。王即自出往詣問曰。道人見↠仏不耶。答云。実爾。問曰。有↢何殊異↡。道人曰。仏之功徳巍巍難↠量。非↣我愚賎所↢能陳↟之、粗説↢一事↡可↠知↢殊特↡。我時八歳。世尊来入↢王宮↡。即前礼↠足、頭上金釵、堕落在↠地。求↠之不↠得。恠↢其所以↡、如来過去足跡有↢千輻輪↡現↢光明↡晃、七日即滅。登時、金釵与↠地同↠色、是以不↠見。光滅後得↠釵。乃知、為↢殊特↡。王聞歓喜、心煥開悟。」略抄
¬華厳¼ の偈にのたまはく、
「一々の毛孔に光雲を現じて、 あまねく虚空に遍して、 大音を発す。
もろもろの*幽冥の所、 照らさざるなし。 地獄の衆苦ことごとく減ぜしむ」 と。
幽冥 くらやみ。
¬華厳経¼偈云。「一一毛孔現↢*光明↡、普遍↢虚空↡発↢大音↡。諸幽冥所靡↠不↠照。地獄衆苦咸令↠滅。」
光明 青蓮院本、 建長五年刊本では 「光雲」。
この念をなすべし、 「願はくは、 仏の光明、 われを照らして、 生死の*業苦を滅したまへ」 と。
業苦 悪業の結果として受ける苦悩。
応↠作↢是念↡。願仏*光照↠我滅↢生死業苦↡。
光 青蓮院本では 「光明」。
・無能害者
五には*よく害するものなし。
よく害するものなし 仏は何者によってもそこなわれることがないという意。
五无↢能害者↡。
¬*宝積経¼ の三十七 (意) にのたまはく、 「*風劫起る時には、 世に大風あり。 僧伽多と名づく。 かの風、 この三千世界の*須弥・鉄囲、 および*四大洲、 八万の小洲、 大山・大海を挙ぐること、 高さ百*踰繕那、 乃至、 無量百千踰繕那にして、 すでに砕末して塵となす。 また撃ちて、 *閻魔天宮を壊滅す。 乃至、 *遍浄天のあらゆる宮殿またみな散滅す。 すなはちこの風をもつて如来の衣を吹かんに、 一の毛端の際をも、 なほ動かすことあたはず。 いかにいはんや衣の角および全き衣をや」 と。
風劫 壊劫 (世界の破滅期) の終りの一中劫におこる風害。 これによって色界第三禅天までが散滅するという。
¬宝積経¼三十七云。「風劫起時、世有↢大風↡、名↢僧伽多↡。彼風挙↢此三千世界須弥・鉄囲、及四大洲、八万小洲、大山・大海↡、高百踰繕那、乃至無量百千踰繕那、已砕末為↠塵。又撃壊↢滅焔摩天宮↡、乃至遍浄天、所有宮殿亦皆散滅。即以↢此風↡吹↢如来衣↡、一毛端際、尚不↠能↠動。何況衣角、及全衣者。」*已上
已上 青蓮院本では欠く。
¬十住論¼ (*十住毘婆沙論) にいはく、 「諸仏の不可思議なることをば、 仮喩をもつて知りぬべし。 たとひ一切十方世界の衆生みな勢力あり、 たとひ一の魔ありてそこばくの勢力あらん。 また十方の一々の衆生の力をして悪魔のごとくあらしめたらんに、 ともに仏を害せんと欲はんに、 なほ仏の一毛をすら動かすことあたはじ。 いはんや害するものあらんや」 と。
¬十住論¼云。「諸仏不可思議、仮↠喩可↠知。仮使一切十方世界衆生、皆有↢勢力↡、設有↢一魔↡、有↢爾所勢力↡、復令↣十方一一衆生力如↢悪魔↡、欲↢共害↟仏、尚不↠能↠動↢仏一毛↡。況有↢害者↡。」
偈 (同) にいはく、
「もしもろもろの世間のなかに、 仏を害することあらんと欲はば、
この事みな成ぜじ。 不殺の法を成じたまへるをもつてなり」 と。
¬偈¼云。「若諸世間中、欲↠有↠害↠仏者、是事皆不↠成。以↠成↢不殺法↡。」
この念をなすべし、 「願はくは、 われまさに仏の金剛不壊の身を得べし」 と。
応↠作↢是念↡。願我当得↢仏金剛不壊身↡。
・飛行自在
六には飛行自在なり。
六飛行自在。
同論にいはく、 「仏は虚空において、 足を挙げ、 足を下ろし、 *行住坐臥したまふこと、 みな自在を得たまへり。 大声聞のごときは、 神通自在にして、 一日に五十三億二百九十六万六千の三千大千世界を過ぐ。 かくのごとき声聞の百歳に過ぎたるところをば、 仏は一念に過ぎたまふ。 乃至、 恒河のなかの沙の、 一の沙を一の河となして、 このもろもろの恒河沙の、 大劫に過ぎたるところの国土を、 仏は一念のうちに過ぎたまふ。 もし宝の蓮華を蹈みて去らんと欲せば、 すなはちよく成弁す。 かくのごとく飛行すること一切*無礙なり」 と。
同¬論¼云。「仏於↢虚空↡挙足下足・行住坐臥、皆得↢自在↡。若↢大声聞↡、神通自在、一日過↢五十三億二百九十六万六千三千大千世界↡。如↠是声聞百歳所↠過、仏一念過。乃至恒河中沙、一沙為↢一河↡、是諸恒河沙大劫所↠過国土、仏一念中過。若欲↧蹈↢宝蓮華↡而去↥、即能成弁。如↠是飛行、一切无。」
¬*観仏経¼ にのたまはく、 「虚空において、 足を挙げて行く時に、 *千輻輪の相よりみな八万四千の蓮華を雨らす。 かくのごときもろもろの華に*塵数の仏ましまして、 また虚空を歩む」 と。 以上略抄
¬観仏経¼云。「於↢虚空↡挙↠足行時、千輻輪相、皆雨↢八万四千蓮華↡。如↠是衆華、有↢塵数仏↡亦歩↢虚空↡。」已上略抄
また 「空を蹈みて行きたまへども、 しかも千輻輪は*地際に現ず。 *悦意の妙香鉢特摩華、 自然に踊出して如来の足を承く。 もし畜生趣の一切の有情、 如来の足のために触れらるるものは、 七夜を極め満つるまで、 もろもろの快楽を受け、 命終の後には、 *善趣の楽世界のなかに往生す」 と。 ¬宝積経¼。
地際 地面。
悦意の妙香鉢特摩華 鉢特摩は梵語パドマ (padma) の音写。 紅蓮華と漢訳する。 快い香りをはなつ紅色の蓮華。
善趣の楽世界 六道のうちの地獄・餓鬼・畜生を悪趣、 悪世界というのに対し、 天・人・修羅を善趣、 楽世界という。
又「蹈↠空行、而千輻輪現↢於地際↡。悦意妙香鉢特摩花、自然踊出承↢如来足↡。若畜生趣一切有情、為↢如来足↡之所↠触者、極↢満七夜↡受↢諸快楽↡、命終之後、往↢生善趣楽世界中↡。」¬宝積経¼
もし四十里の盤石をもつて色究竟天より下すに、 一万八千三百八十三年を経て、 この地に到るべし。 ただちに下るすらなほしかり。 これを推して知りぬべし、 声聞の飛行、 如来の飛行は、 展転して不可思議なることを。
若以↢四十里盤石↡、従↢色究竟天↡下、経↢一万八千三百八十三年↡到↢此地↡。直下尚爾。推↠之応↠知。声聞飛行、如来飛行、展転不可思議。
¬華厳経¼ の恵林菩薩の讃仏の偈にのたまはく、
「自在神通力は、 無量にして*難思議なり。
難思議 心でおしはかることのできないこと。 不可思議。
来もなくまた去もなくして、 法を説きて衆生を度したまふ」 と。
¬花厳経¼*慧林菩薩讃仏偈云。「自在神通力、无量難↢思議↡。无↠来亦无↠去、説↠法度↢衆生↡。」
慧 青蓮院本では 「恵」。
この念をなすべし、 「願はくは、 われ神通を得て、 諸仏の土に遊戯せん」 と。
応↠作↢是念↡。願我得↢神通↡遊↢戯諸仏土↡。
・神通無礙
七には*神力無礙なり。
神力無礙 超人的な力が自由自在であること。
七*神通无。
神通 青蓮院本では 「神力」。
¬十住論¼ (*十住毘婆沙論・意) にいはく、 「仏はよく恒河沙等の世界を末して、 *微塵のごとくならしめて、 またよく還りて合したまふ。 あるいはまたよく無量無辺阿僧祇の世界を変じて、 みな金銀等となさしめたまふ。 またよく恒河沙等の世界の大海水を変じて、 みな*乳蘇等とならしめたまふ」 と。 以上
乳蘇 牛乳を精製してつくった生蘇や熟蘇。
¬十住論¼云。「仏能末↢恒河沙等世界↡、令↠如↢微塵↡、又能還合。或又能変↢无量无辺阿僧祇世界↡、皆令↠作↢金・銀等↡、又能変↢恒河沙等世界大海水↡、皆使↠為↢乳・蘇等↡。已上
¬浄名経¼ (*維摩経・意) に、 菩薩の*不思議解脱を説きてのたまはく、 「三千大千世界を断ち取りて、 *陶家の輪のごとくして、 右の掌のなかに着けて、 擲ぐるに恒河沙の世界のほかに過ぐしたまはん。 そのなかの衆生は、 おのが所住を覚せず、 知せじ。 また還りて本処に置くに、 すべて人をして往来の想あらしめじ。 しかもこの世界の本の相は、 故のごとし。 また下方過恒河沙等の諸仏世界において一仏土を取りて、 上方過恒河沙無数の世界に挙げ着くること、 *針鋒を持ちて一*棗葉を挙ぐるがごとくするも、 嬈はすことなし。 須弥山をもつて芥子のなかに納め、 四大海をもつて一毛孔に入るることまたかくのごとし。 そのなかの衆生は、 覚せず、 知せじ。 ただ度すべきものすなはちこれを知見す」 と。 以上
不思議解脱 思惟を超えたさとりの境地。
陶家の輪 陶器をつくるための轆轤。
針鋒 針の先。
棗葉 なつめの葉。
¬浄名経¼説↢菩薩不思議解脱↡云。「断↢取三千大千世界↡、如↢陶家輪↡、著↢右掌中↡、擲↢過恒河沙世界之外↡、其中衆生、不↠覚↢不↠知↣己之所↟住。又復還置↢本処↡、都不↠使↣人有↢往来想↡。而此世界本相如↠故。又於↢下方過恒河沙等諸仏世界↡、取↢一仏土↡挙↢著上方過恒河沙无数世界↡、如↧持↢針鋒↡挙↦一*稾葉↥、而*无↠所↠嬈。以↢須弥山↡、納↢芥子中↡、以↢四大海↡入↢一毛孔↡亦復如↠是。其中衆生、不↠覚不↠知。唯応↠度者、乃知↢見之↡。」已上
稾 青蓮院本、 承元元年刊本では 来。
无所嬈 「嬈ますところなし」。 青蓮院本では 「无嬈」。
菩薩なほしかり、 いかにいはんや仏力をや。 ゆゑに ¬*度諸仏境界経¼ にのたまはく、 「よく十方世界をして一毛孔に入れしめ、 乃至 一微塵においてよく無量無数不可説の世界を現ずるに、 一切衆生また*迫迮なし。 無量無数不可説劫の威儀果報の事を、 よく一念のうちにおいて現じ、 一念の威儀果報の事を、 無量無数不可説劫のうちにおいて現ず。 かくのごとき所作は、 心に*功用なく、 思惟をなさず」 と。
迫迮 おしつめられて、 ちぢまること。
菩薩尚爾。何況仏力。故¬度諸仏境界経¼云。「能令↣十方世界入↢一毛孔↡、乃至 於↢一微塵↡能現↢无量无数不可説世界↡、一切衆生、亦无↢迫迮↡。无量无数不可説劫、威儀果報事能於↢一念中↡現、一念威儀果報事於↢无量无数不可説劫中↡現。如↠是所作心无↢功用↡、不↠作↢思惟↡。」
¬華厳経¼ の真実幢菩薩の偈にのたまはく、
「一切のもろもろの如来は、 神通力自在なり。
ことごとく三世のなかにおいて、 これを求むるに不可得なり」 と。
¬華厳経¼真実幢菩薩偈云。「一切諸如来、神通力自在。悉於↢三世中↡、求↠之不↠可↠得。」
この念をなすべし、 「われいままた知らず、 仏の*神力のために転ぜられて、 いづれの仏土にかあり、 たれの毛孔にかあるといふことを。 われいづれの時にか、 これを覚知することを得ん」 と。
応↠作↢是念↡。我今亦不↠知、為↢仏神力↡転在↢何仏土↡、在↢誰毛孔↡。我於↢何時↡得↣覚↢知之↡。
・随類化現
八には*随類化現なり。
随類化現 衆生の根機 (素質能力) に応じて姿を現すこと。
八随類化現。
¬十住論¼ (*十住毘婆沙論・意) にいふがごとし。 「仏は一念のうちに、 十方の無量無辺、 恒河沙等の世界において、 無量の仏身を変化したまふ。 一々の化仏またよく種々の*仏事を施す」 と。 以上の*四事は*神境通なり。
四事 無能害者・飛行自在・神力無礙・随類化現の四。
*¬十住論¼云。「仏一念中、於↢十方无量无辺、恒河沙等世界↡、変↢化无量仏身↡。一一化仏、亦能施↢種種仏事↡。」已上四事神境通
◇ 青蓮院本には 「如」 の字あり。
¬度諸仏境界経¼ にのたまはく、 「如来の所現は異の功用なく、 異の思惟なし。 衆生の性に随ひて、 おのづから見ること不同なり。 十五日の夜、 閻浮提の人は、 おのおの月の現じて、 その上にありと見るが、 月は*作意して、 われその上に現ぜんとせざるがごとし」 と。
作意 心をはたらかせること。
¬度諸仏境界経¼云。「如来所現、无↢異功用↡无↢異思惟↡。随↢衆生性↡自見不同。如↫十五日夜、閻浮提人、各見↣月現在↢其上↡、月不↪作意我現↩其上↨。」
¬華厳¼ の偈にのたまはく、
「如来の広大の身は、 *法界を究竟したまへり。
法界を究竟し 存在世界のすべてにゆきわたり。
この座を離れずして、 一切の処に遍したまふ」 と。
¬華厳¼偈云。「如来広大身究↢竟於法界↡。不↠離↢於此座↡、而遍↢一切処↡。」
またのたまはく (同)、
「智慧甚深の功徳海、 あまねく十方の無量の国に現じたまふ。
もろもろの衆生の見るべきところに随ひて、 光明あまねく照らして*法輪を転じたまふ」 と。
又云。「智慧甚深功徳海、普現↢十方无量国↡。随↢諸衆生所↟応↠見、光明遍照転↢法輪↡。」
この念をなすべし、 「願はくは、 われまさに*遍法界の身を見たてまつるべし」 と。
遍法界の身 存在世界に遍満している身体。
応↠作↢是念↡。願我当見↢遍法界身↡。
・天眼明徹
九には*天眼明徹なり。
天眼明徹 三世十方のすべてを明らかに見通すこと。
九天眼明徹。
¬十住論¼ (*十住毘婆沙論) にいはく、 「大力の声聞は天眼をもつて*小千国土を見、 またなかの衆生の生時・死時を見る。 小力の辟支仏は十の小千国土を見、 なかの衆生の生時・死時を見る。 中力の辟支仏は百の小千国土を見、 なかの衆生の生時・死時を見る。 大力の辟支仏は三千大千国土を見、 なかの衆生の生死の所趣を見る。 諸仏世尊は無量無辺の不可思議の世間を見そなはし、 またこのなかの衆生の生時・死時を見そなはす」 と。 以上
小千国土 一須弥山世界を千集めたもの。
¬十住論¼云。「大力声聞、以↢天眼↡見↢小千国土↡、亦見↢中衆生生時・死時↡。小力辟支仏、見↢十小千国土↡、見↢中衆生生時・死時↡。中力辟支仏、見↢百小千国土↡、見↢中衆生生時・死時↡。大力辟支仏、見↢三千大千国土↡、見↢中衆生生死所趣↡。諸仏世尊、見↢无量无辺不可思議世間↡、亦見↢是中衆生生時・死時↡。」已上
¬華厳経¼ の偈にのたまはく、
「仏眼は広大にして辺際なし。 あまねく十方のもろもろの国土を見たまふ。
そのなかの衆生は不可量なり。 大神通を現じてことごとく*調伏したまふ」 と。
調伏 仏道に帰するように教え導くこと。
¬華厳経¼偈云。「仏眼広大无↢辺際↡、普見↢十方諸国土↡。其中衆生不↠可↠量、現↢大神通↡悉調伏。」
この念をなすべし、 「いま弥陀如来は、 はるかにわが身業を見そなはすらん」 と。
応↠作↢是念↡。今弥陀如来、遥見↢我身業↡。
・聞声自在
十には*聞声自在なり。
聞声自在 衆生の声を自由自在に聞きわけること。
十声聞自在。
¬十住論¼ (*十住毘婆沙論) にいはく、 「たとひ、 恒河沙等の三千大千世界の衆生、 一時に発言し、 また一時に百千種の*伎楽を作らん。 もしは遠きも、 もしは近きも、 意に随ひてよく聞きたまふ。 もしなかにおいて、 一の音声を聞かんと欲せば、 意に随ひて聞くことを得、 余をば聞かず。 また無辺世界を過ぎたるに、 最細の声をも、 みなまた聞くことを得たまふ。 もし衆生をして聞かしめんと欲せば、 よく聞くことを得しめたまふ」 と。 略抄
¬十住論¼云。「仮令恒河沙等三千大千世界衆生、一時発↠言、又一時作↢百千種伎楽↡、若遠若近、随↠意能聞。若欲↣於↠中聞↢一音声↡、随↠意得↠聞、余者不↠聞。又過↢无辺世界↡細声皆亦得↠聞。若欲↠令↢衆生聞↡、能令↠得↠聞。」略抄
¬華厳経¼ の文殊の偈にのたまはく、
「一切世間のなかのあらゆるもろもろの音声を、
仏智はみな随ひて了りたまふも、 また分別あることなし」 と。
¬*華厳¼文殊偈云。「一切世間中所有諸音声、仏智皆随了、亦无↠有↢分別↡。」已上
華厳 青蓮院本では 「華厳経」。 以下同。
この念をなすべし、 「いま弥陀如来は、 さだめてわが所有の語業を聞きたまふらん」 と。
応↠作↢是念↡。今弥陀如来、定聞↢我所有語業↡。
・知他心智
十一には*知他心智なり。
知他心智 他人の心のありさまを明らかに知る智慧。
十一知他心智。
¬十住論¼ (*十住毘婆沙論) にいはく、 「仏は、 よく無量無辺の世界の現在の衆生の心、 およびもろもろの染浄の所縁等を知りたまひ、 またよく*無色の衆生のもろもろの心を知りたまふ」 と。 略抄
¬十住論¼云。「仏能知↢无量无辺世界現在衆生心、及諸染浄所縁等↡、又能知↢无色衆生諸心↡。」略抄
¬華厳経¼ の文殊の偈にのたまはく、
「一切衆生の心、 あまねく三世にあるを、
如来は一念において、 一切ことごとくあきらかに達したまふ」 と。
¬華厳¼文殊偈云。「一切衆生心、普在↢於三世↡、如来於↢一念↡一切悉明達。」
この念をなすべし、 「いま弥陀如来は、 かならずわが意業を知りたまふらん」 と。
応↠作↢是念↡。今弥陀如来、必知↢我意業↡。
・宿住随念智
十二には*宿住随念智なり。
宿住随念智 過去世のありさまを自在に知る智慧。
十二宿住随念智。
¬十住論¼ (*同) にいはく、 「仏もし自身および一切衆生の無量無辺の*宿命の一切の事を念ぜんと欲せば、 みなことごとく知りて、 過恒河沙等の劫の事に知らずといふことあることなし。 この人はいづれの処に生ぜりき、 姓名・貴賤・飲食・*資生・苦楽、 所作の事業、 所受の果報、 心にはなんの所行ある、 本はいづこより来るといふこと、 かくのごとき等の事をすなはちよく知見したまふ」 と。
資生 生活のありさま。
¬十住論¼云。「仏若欲↠念↢自身及一切衆生、无量无辺宿命↡、一切事皆悉知、无↠有↠不↠知↢過恒河沙等劫事↡。是人何処生姓名・貴賤・飲食・資生・苦楽・所作事業、所受果報、心何所行、本従↠何来、如↠是等事、即能知見。」
偈 (*十住毘婆沙論) にいはく、
「*宿命智は無量なり。 天眼の見、 無辺なり。
一切の人天のなかには、 よくその限りを知ることなし」 と。
¬偈¼云。「宿命智无量天眼見无辺。一切人天中、无↣能知↢其限↡。」
念ずべし、 「願はくは仏、 わが宿業をして清浄ならしめたまへ」 と。
応↠念、願仏、令↢我宿業清浄↡。
・智慧無礙
十三には*智慧無礙なり。
智慧無碍 智慧のはたらきが自由自在であること。
十三智恵无。
¬宝積経¼ の三十七にのたまはく、 「たとひ人ありて、 恒河沙等の世界のあらゆる一切の草木を取り、 ことごとく焼きて墨となし、 擲げて他方の恒河沙等の世界の大海に置き、 百千歳にして、 つきてもつてこれを磨りてことごとく墨の汁となしてん。 仏、 大海のなかより一々の墨の滴りを取りて、 分別し了知したまふ。 これはその世界のかくのごとき草木の、 その根、 その茎、 その枝、 その条、 華・菓・葉等となりと。 またもし人ありて、 一毛端を持ちて水一滴を霑して、 仏の所に来至して、 この言をなさく、 ªあへて滴水をもつて、 もつてあひ寄す。 後にもし須ゐば、 まさにわれに還し賜ふべしº と。 その時に、 如来その滴水を取りて、 *恒河の河のなかに置きたまはんに、 かの河の流浪*回澓のために旋転せられて、 和合し引注して大海に至りなん。 この人、 百年を満てをはりて、 仏にまうしてまうさく、 ª先に寄せたてまつりし滴水を、 いま請ふ、 われに還したまへº と。 その時に、 仏、 一分の毛端をもつて、 大海のうちに就けて、 本の水滴を霑して、 もつてこの人に還したまはん」 と。 略抄
恒河の河 ガンジス河。
回澓 うず。
¬宝積経¼三十七云。「仮使有↠人取↢恒河沙等世界所有一切草木↡、悉焼為↠墨、擲↢置他方恒河沙等世界大海↡、於↢百千歳↡就以磨↠之尽為↢墨汁↡、仏従↢大海中↡取↢一一墨滴↡分↢別了↣知是其世界如↠是草木其根、其茎、其枝、其条・花・菓・葉等↡。又如有↠人持↣一毛端霑↢水一滴↡、来↢至仏所↡而作↢是言↡。敢以↢滴水↡持用相寄。後若須者、当↢還賜↟我。爾時如来取↢其滴水↡、置↢兢伽河中↡、而為↢彼河流浪廻*渡↡之所↢旋転↡、和合引注至↢于大海↡。是人満↢百年↡已、而白↠仏言。先寄滴水、今請、還↠我。爾時仏以↢一分毛端↡、就↢大海内↡、霑↢本水滴↡用還↢是人↡。」略抄
渡 他本では 「澓」。
また*¬六波羅蜜経¼ にのたまはく、 「無量恒河沙の十方界の草木を、 ことごとく焚きて墨灰となして、 億載海に歴ん。 十力智深妙にして滴りを取りて、 *含生に示して、 実のごとく分別して、 これ、 それの界の樹等なりと知らしめたまへり」 と。 云々
六波羅蜜経に… 引用は ¬六波羅蜜経¼ の文ではなく、 ¬宝積経¼ 巻三十七の文。
含生 衆生に同じ。
*¬六波羅蜜経¼云。*
◇ 青蓮院本には 「又」 の字あり。
◇ 青蓮院本には 無量兢河沙十方界草木尽焚成墨灰億載歴于海十力智深妙取滴示含生如実分別知此某界樹等云云 の一文がある。
またのたまはく (同・意)、 「かくのごとき*四洲およびもろもろの山王をもつて紙素となし、 八の大海の水、 もつてその墨となし、 一切の草木をもつてその筆となして、 一切の人天一劫に書写せらんを、 舎利弗の所得の智慧に比ぶれば、 十六分がなかにその一にも及ばず。 またこの三千大千世界において、 そのなかの衆生の所有の智慧をして、 舎利弗のごとく、 等しくして異なることあることなからしめんに、 菩薩の*布施波羅蜜多を了達せる所有の智慧は、 かれに過ぎたること百倍なり。 またこの三千大千世界のあらゆる衆生をして、 みな布施波羅蜜多の智慧を具せしめんに、 一の菩薩の所得の*浄戒波羅蜜多の智慧に及ばず。 乃至、 般若もまたかくのごとし。 またこの三千大千世界のあらゆる衆生をして、 みな六波羅蜜の智慧を具せしめんに、 一の初地の菩薩の智慧には及ばず。 乃至、 十地まで*展転して、 かくのごとし。 またこの十地の菩薩の智慧は、 なんぢ慈氏 (弥勒)、 一生補処の菩薩の智慧に比ぶるに、 百千分がなかにその一にも及ばず。 この三千大千世界の一切衆生の所有の智慧をして、 みな慈氏のごとく、 等しくして異なることあることなからしめんに、 かくのごとき菩薩、 道場に坐して*魔怨を*降伏して、 まさに正覚を成ぜんとする所有の智慧は、 仏の智慧の百千万分においてその一にも及ばず」 と。
魔怨 悪魔のこと。 悪魔は人々にあだをなす怨敵であるところから魔怨という。
*「如↠是四洲、及諸山王用為↢紙素↡、八大海水、以為↢其墨↡、一切草木用為↢其筆↡、一切人天一劫書写、比↢舎利弗所得智恵↡、十六分中、不↠及↢其一↡。又於↢此三千大千世界↡、其中衆生所有智恵、如↢舎利弗↡、等无↠有↠異、菩薩了達布施波羅蜜多所有智恵、過↠彼百倍。又此三千大千世界所有衆生皆具↢布施波羅蜜多智恵↡、不↠及↢一菩薩所得浄戒波羅蜜多智恵↡。乃至般若亦復如↠是。又此三千大千世界所有衆生、皆具↢六波羅蜜智恵↡、不↠及↢一初地菩薩智恵↡。乃至十地展転如↠是。又此十地菩薩智恵比↢汝慈氏一生補処菩薩智恵↡、百千分中不↠及↢其一↡。此三千大千世界一切衆生、所有智恵皆如↢慈氏↡、等无↠有↠異、如↠是菩薩、坐↢於道場↡降↢伏魔怨↡、将↠成↢正覚↡、所有智恵、於↢仏智恵↡百千万分不↠及↢其一↡。」
◇ 青蓮院本には 「又云」 とある。
¬宝積経¼ にのたまはく、 「たとひ、 十方の無量無辺の一切世