0335◎観かん経ぎょう0458序分じょぶん義ぎ 巻かん第だい二に

沙門しゃもん*善導ぜんどう集記しゅうき

一 通裁節一経【一経大科】
  Ⅰ 承上総標

【1】 ◎^これより以下いげは文もんにつきて*料りょう簡けんするに、 略りゃくして*五ご門もんを作つくりて義ぎを明あかす。

◎従ヨ0680リ↠此 レ以イ下ハ▲就ツキテ↠文ニ料簡スルニ、略シテ作リテ↢五門ヲ↡明アカス↠義ヲ。

一 Ⅱ 随標分章
    ⅰ 明王宮四分
      a 分文
        イ 序分

^▽一いちに ▲「如にょ是ぜ我が聞もん」 より下しも 「五苦ごく所逼しょひつ云うん何が見けん極楽ごくらく世せ界かい」▲ に至いたるこのかたは、 その▽↓*序分じょぶんを明あかす。

▲一ニ従リ↢「如是我聞ト云」↡下 モ至ルマデ↢「五苦ク所逼云ウン何ガ見極楽世界ト云ニ」↡已来タハ、明ス↢其ノ序ジヨ分ヲ↡。

一 Ⅱ ⅰ a ロ 正宗分

^二にに日観にっかんの初はじめの句くの ▲「仏告ぶつごう韋い提だい汝にょ及ぎゅう衆しゅ生じょう」 より下しも下げ品ぼん下げ生しょう▲に至いたるこのかたは、 ▽↓*正宗しょうしゅう分ぶんを明あかす。

~二ニ従リ↢日観ノ初ノ句ノ「仏告韋提汝及衆生ト云」↡下至ル↢下品下生ニ↡已来タハ、明ス↢正宗シユ分ヲ↡。

一 Ⅱ ⅰ a ハ 得益分

^三さんに ▲「説せつ是語ぜご時じ」 より下しも 「諸天しょてん発心ほっしん」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく▽*得益とくやく分ぶんを明あかす。

~三ニ従リ↢「説是語時ト云」↡下至ル↢「諸天発心ニ」↡已来タハ、正シク明ス↢得益分ヲ↡。

一 Ⅱ ⅰ a ニ 流通分

^四しに ▲「阿あ難なん白びゃく仏ぶつ」 より下しも 「韋い提だい等とう歓かん喜ぎ」▲ に至いたるこのかたは、 ▽↓*流る通分ずうぶんを明あかす。

~四ニ従リ↢「阿難白仏ト云」↡下至ル↢「韋提等ノ歓喜ニ」↡已来タハ、明ス↢流通分ヲ↡。

一 Ⅱ ⅰ b 示会

^この四し義ぎは仏ぶつ*王おう宮ぐにまします一いち会えの正しょう説せつなり。

~此コ之ノツノ四義ハ仏在マシマス↢王宮ニ↡一会ヱノ正説ナリ。

一 Ⅱ ⅱ 明耆闍一分

^五ごに ▲「阿あ難なん耆ぎ闍しゃの大衆だいしゅのために伝説でんせつする」 よりはまたこれ*一いち会えなり。 また*三分さんぶんあり。 一いちに ▲「爾時にじ世せ尊そん足そく歩ぶ虚こ空くう還げん耆ぎ闍しゃ崛山くっせん」 よりこのかたは、 その序分じょぶんを明あかす。 二にに ▲「阿あ難なん広こう為い大衆だいしゅ説せつ如上にょじょう事じ」 よりこのかたは、 正宗しょうしゅう分ぶんを明あかす。 三さんに ▲「一切いっさい大衆だいしゅ歓かん喜ぎ奉ぶ行ぎょう」 よりこのかたは、 流る通分ずうぶんを明あかす。

~五ニ従リハ↧「阿難為ニ↢耆ギ闍シヤノ大衆ノ↡伝デン説スル」↥復是 レ一会ナリ。▲亦有リ↢三分↡。一ニ従リ↢「爾時世尊足ソク歩ブ虚空還グヱン耆ギ闍崛山」↡已来タハ、明ス↢其ノ序分ヲ↡。二ニ従リ↢「阿難広為大衆説如上事ト云」↡已来タハ、明ス↢正宗分ヲ↡。三ニ従リ↢「一切大衆歓喜奉ブ行ト云」↡已来タハ、明ス↢流通分ヲ↡。△

一 Ⅲ 摂五帰三
    ⅰ 述三分義

^しかるに化けにはかならず由ゆえあり、 ゆゑに先まづ↑序じょを明あかす。 *由ゆ序じょすでに興おこりぬればまさし0336く所説しょせつを陳のぶ。 次つぎに↑*正宗しょうしゅうを明あかす。 ために説とくことすでに周おわりて、 所説しょせつをもつて末代まつだいに伝でん持じせしめんと欲ほっして、 *勝しょうを歎たんじて学がくを勧すすむ。 後のちに↑流る通ずうを明あかす。

▲然ルニモ 化クヱニハ必ズ有リ↠由ユヱ、故ニ先ヅ明ス↠序ジヨヲ。由ユ序ジヨ既スデニ興リヌレバジテ  正シク陳チンブズ↢所説ヲ↡。次ニ明ス↢正宗ヲ↡。為ニ説クコト既ニ†周ヲハリテ、†欲シテ↧以テ↢所説ヲ↡伝↦持セシメムト*末代ニ↥、歎ジテ↠勝ヲ勧ム↠学ヲ。後ニ明ス↢流通ヲ↡。

一 Ⅲ ⅱ 結示摂帰

^上じょう来らい五義ごぎの不ふ同どうありといへども、 略りゃくして序じょ・正しょう・流る通ずう0459の義ぎを料りょう簡けんしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢五義ノ不同↡、略シテ料↢簡シ序・正・流通0681ノ義ヲ↡竟リヌ。

二 別解釈序分
  Ⅰ 標科

【2】 ^また前さきの△序じょのなかにつきてまた分わかちて二にとなす。 一いちには ▲「如にょ是ぜ我が聞もん」 より一いっ句くを名なづけて↓*証しょう信しん序じょとなす。 二にには ▲「一いち時じ」 より下しも 「云うん何が見けん極楽ごくらく世せ界かい」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく↓*発ほっ起き序じょを明あかす。

▲又就ツキテ↢前サキノ序ジヨノ中ニ↡復分ワカチテ為ス↠二ト。一ニハ従リ↢「如是我聞ト云」↡▲一句クヲ名ケテ為ス↢証信序ト↡。二ニハ従リ↢「一時ト云」↡下至ル↢「云何見極楽世界ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢発起序ヲ↡。

二 Ⅱ 随釈
    ⅰ【証信序】
      a 双釈二意
        イ 述意

【3】 ^初はじめに↑証しょう信しんといふはすなはち二義にぎあり。

▲初ハジメニ言フ↢証信ト↡者ハ即チ有リ↢二義↡。

・如是

^一いちにはいはく、 「▲↓如にょ是ぜ」 の二字にじはすなはち総そうじて教きょう主しゅ (*釈尊) を標ひょうす。 *能説のうせつの人にんなり。

~一ニハ謂イハク「如是ゼノ」二字ジハ即チ総ソウジテ標ヘウス↢教主ヲ↡。能説之ノ人ナリ。

・我聞

^二ににはいはく、 「▲↓我が聞もん」 の両りょう字じはすなはち別べつして*阿あ難なんを指さす。 *能のう聴ちょうの人にんなり。 ゆゑに如にょ是ぜ我が聞もんといふ。 これすなはちならべて二にの意こころを釈しゃくす。

~二ニハ謂イハク「我聞ノ」両字ハ即チ別シテ指サス↢阿難ヲ↡。能聴チヤウ之ノ人ナリ。故ニ言イフ↢「如是我聞ト」↡。此 レ即チ双ナラベテ釈スル↢二ノ意ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅰ a ロ 釈文
          (一)釈如是
            (Ⅰ)第一釈

^▼また 「↑如にょ是ぜ」 といふはすなはち法ほうを指さす。 *定じょう散さん両りょう門もんなり。 「是ぜ」 はすなはち定さだむる辞ことばなり。 機き、 行ぎょうずればかならず益やくす。 これは如来にょらいの所説しょせつの言ごんに*錯さく謬びゅうなきことを明あかす。 ゆゑに如にょ是ぜと名なづく。

~又言フ↢如是ト↡者ハ*即チ指サス↠法ヲ。定散両門也ナリ。是ハ即チ定ムルマレル辞コトバナリ。、機行ズレバジテ 必ズ益スルコトヲ。此ハ明ス↣如来ノ所説ノ言コトバニ無ナキコトヲ↢錯シヤク謬メウ↡。故ニ名ク↢如是ト↡。

二 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅱ)第二釈

^◆また 「如にょ」 といふは衆しゅ生じょうの意こころのごとし。 心しんの*所しょ楽ぎょうに随したがひて、 仏ぶつすなはちこれを度どしたまふ。 *機き教きょう相応そうおうするをまた称しょうして 「是ぜ」 となす。 ゆゑに如にょ是ぜといふ。

~又言イフ↠如ト者ハ如シ↢衆生ノ意ノ↡也。随ヒテ↢心ノ所楽ゲウニ↡仏即チ度シタマフニ↠之ヲ。、機キ教相応スルヲ復称シテ為ス↠是ゼト。故ニ言フ↢如是ト↡。

二 Ⅱ ⅰ a ロ (一)(Ⅲ)第三釈

^◆また 「如にょ是ぜ」 といふは、 如来にょらいの所説しょせつは、 漸ぜんを説とくこと漸ぜんのごとく、 頓とんを説とくこと頓とんの0337ごとく、 相そうを説とくこと相そうのごとく、 空くうを説とくこと空くうのごとく、

~又言フ↢如是ト↡者ハ、欲ス↠明サムト↧如来ノ所説ハ、説トクコト↠漸ゼンヲ如ク↠漸ノ、説クコト↠頓ヲ如ク↠頓ノ、説クコト↠相ヲ如クシ↠相ノ、説クコト↠空ヲ如クシ↠空ノ、

^◆*人法にんぼうを説とくこと人法にんぼうのごとく、 *天法てんぽうを説とくこと天法てんぽうのごとく、 *小しょうを説とくこと小しょうのごとく、 *大だいを説とくこと大だいのごとく、

~説クコト↢人法ヲ↡如クシ↢人法ノ↡、説クコト↢天法ヲ↡如クシ↢天法ノ↡、説クコト↠小ヲ如クシ↠小ノ、説クコト↠大ヲ如クシ↠大ノ、

^◆凡ぼんを説とくこと凡ぼんのごとく、 聖しょうを説とくこと聖しょうのごとく、 因いんを説とくこと因いんのごとく、 果かを説とくこと果かのごとく、

~説クコト↠凡ヲ如クシ↠凡ノ、説クコト↠聖ヲ如クシ↠聖ノ、説クコト↠因ヲ如クシ↠因ノ、説クコト↠果ヲ如クシ↠果ノ、

^◆苦くを説とくこと苦くのごとく、 楽らくを説とくこと楽らくのごとく、 遠おんを説とくこと遠おんのごとく、 近ごんを説とくこと近ごんのごとく、

~説クコト↠苦ヲ如クシ↠苦ノ、説クコト↠楽ヲ如クシ↠楽ノ、説クコト↠遠オンヲ如クシ↠遠ノ、説クコト↠近ゴンヲ如クシ↠近ノ、

^◆同どうを説とくこと同どうのごとく、 別べつを説とくこと別べつのごとく、 浄じょうを説とくこと浄じょうのごとく、 穢えを説とくこと穢えのごとく、

~説クコト↠同ヲ如ク↠同ノ、説クコト↠別ヲ如ク↠別ノ、説クコト↠浄ヲ如ク↠浄ノ、説クコト↠穢ヲ如ク↠穢ノ、

^◆一切いっさい諸法しょほうの千差せんじゃ万別まんべつなるを説ときたまふに、 如来にょらいの観かん知ち*歴々れきれき了然りょうねんなることを明あかさんと欲ほっす。 *随心ずいしんの起行きぎょう、 *各益かくやくの不ふ同どう、 *業ごう果かの法然ほうねんたる、 すべて*錯失さくしつなきをまた称しょうして是ぜとなす。 ゆゑに如にょ是ぜといふ。

~説キタマフニ↢一切ノ諸法ノ千差万別ナルヲ↡、如来ノ観知シテ歴歴レキレキ了然ネンナルコトヲ↥。†随心ノ起行、各益ノスルコト†不同、業果ノ法然タルトシテ、衆スベテ無†キヲ↢錯失↡又称シテ為ス↠是ゼト。故ニ言フ↢如是ト↡。

二 Ⅱ ⅰ a ロ (二)釈我聞

^「↑我が聞もん」 といふは、 阿あ難なんはこれ仏ぶつの侍じ者しゃにして、 つねに仏ぶつ後ごに随したがひて多た聞もん広こう0460識しきなり。 身み座下ざげに臨のぞみてよく聴ききよく持たもちて、 教きょう旨し親したしく承うくることを明あかして、 伝説でんせつの錯あやまりなきことを表ひょうせんと欲ほっす。 ゆゑに我が聞もんといふ。

~言フ↢我聞ト↡者ハ、†欲ホス↩明シテ↧阿難ハ是 レ仏ノ侍ジ者ニシテ、常ニ随ヒテ↢仏後ニ↡多聞広識ナリ、身ミ臨ノゾミテ↢座ザ0682下ゲニ↡能ク聴キキ能ク持タモチテ、教旨シ親シタシク承クルコトヲ↥、表セムト↝無ナキコトヲ↢伝デン説之ノ錯アヤマリ↡。故ニ曰イフ↢我聞ト↡也。

二 Ⅱ ⅰ b 就阿難解

^また 「証しょう信しん」 といふは、 阿あ難なん仏ぶっ教きょうを*稟ほん承じょうして末代まつだいに伝でん持じするに、 衆しゅ生じょうに対たいするがためのゆゑにかくのごとき観法かんぽう、 われ仏ぶつに従したがひて聞きくといふことを明あかして、 *可か信しんを証誠しょうじょうせんと欲ほっす。 ゆゑに証しょう信しん序じょと名なづく。 これは阿あ難なんにつきて解げす。

~又言フ↢証信ト↡者ハ、†欲ス↪明シテ↧阿難稟ホン↢承ジヨウシテ仏教ヲ↡伝デン↢持ヂスルニシテ 末代ダイニ↡、為 メノ↠対タイスルガ↢衆生ニ↡故ニ如キク↠是クノ観法ニ、我 レ従ヒテ↠仏ニ聞クトイフコトヲ↥、証↩誠セムト可信ヲ↨。故ニ名ク↢証信序ト↡。此 レハ就ツキテ↢阿難ニ↡解ゲスル也ナリ。△

二 Ⅱ ⅱ【発起序】
      a 標章

【03384】 ^二にに↑発ほっ起き序じょのなかにつきて細くわしく分わかちて七しちとなす。

二ニ就ツキテ↢▲発起序ノ中ニ↡細クハシク分ワカチテ為ス↠七ト。

・化前序

^初はじめに ▲「一いち時じ仏在ぶつざい」 より下しも 「法王ほうおう子じ而為にい上じょう首しゅ」▲ に至いたるこのかたは、 ↓*化け前ぜん序じょを明あかす。

~初 メニ従リ↢「一時仏在」↡下至ル↢「法王子而ニ為ヰ上首シユニ」↡已来タハ、明ス↢化ノ前ゼム序ジヨヲ↡。

・禁父縁

^二にに ▲「王舎おうしゃ大だい城じょう」 より下しも 「顔色げんしき和わ悦えつ」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく発ほっ起き序じょの↓*禁ごん父ぶの縁えんを明あかす。

~二ニ従リ↢「王舎大城」↡下至ル↢「顔色ゲンシキ和ワ悦エチニ」↡已来タハ、正シク明ス↢発起序ノ禁キム父ブ之ノ縁ヲ↡。

・禁母縁

^三さんに ▲「時じ阿あ闍じゃ世せ」 より下しも 「不ふ令りょう復ぶ出すい」▲ に至いたるこのかたは、 ↓*禁ごん母もの縁えんを明あかす。

~三ニ従リ↢「時阿闍世」↡下至ル↢「不フ令リヤウ復ブ出ニ」↡已来タハ、明ス↢禁キム母ノ縁ヲ↡。

・厭苦縁

^四しに ▲「時じ韋い提だい希け被ひ幽閉ゆうへい」 より下しも 「共為ぐい眷属けんぞく」▲ に至いたるこのかたは、 ↓*厭えん苦くの縁えんを明あかす。

~四ニ従リ↢「時韋提希被ヒ幽閉ユウヘイト云」↡下至ル↢「共グ為眷属ニ」↡已来タハ、明ス↢厭エン苦クノ縁ヲ↡。

・欣浄縁

^五ごに ▲「唯願ゆいがん為我いが広説こうせつ」 より下しも 「教きょう我が正しょう受じゅ」▲ に至いたるこのかたは、 その↓*欣ごん浄じょうの縁えんを明あかす。

~五ニ従リ↢「唯願為我広説ト云」↡下至ル↢「教我正受ニ」↡已来タハ、明ス↢其ノ欣ゴン浄ノ縁ヲ↡。

・散善顕行縁

^六ろくに ▲「爾時にじ世せ尊そん即便そくべん微み笑しょう」 より下しも 「浄じょう業ごう正しょう因いん」▲ に至いたるこのかたは、 ▼↓*散善さんぜん顕けん行ぎょう縁えんを明あかす。

~六ニ従リ↢「爾時世尊即便微ミ笑セウト云」↡下至ル↢「浄業正因ニ」↡已来タハ、明ス↢散善顕行縁ヲ↡。

・定善示観縁

^七しちに ▲「仏告ぶつごう阿あ難なん等とう諦聴たいちょう」 より下しも 「云うん何が得見とくけん極楽ごくらく国こく土ど」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく▼↓*定じょう善ぜん示じ観かん縁えんを明あかす。

~七ニ従リ↢「仏告阿難等諦聴ト云」↡下至ル↢「云何得見極楽国土ニ」↡已来タハ、正シク明ス↢定善示ジ観縁ヲ↡。

^上じょう来らい七段しちだんの不ふ同どうありといへども、 広ひろく発ほっ起き序じょを料りょう簡けんしをはりぬ。

~上来ニ雖モ↠有リト↢七段ダンノ不同↡、広ク料↢簡シ発起序ヲ↡竟リヌ。△

二 Ⅱ ⅱ b 随釈
        イ【化前序】
          (一)牒標

【5】 ^*二にに次つぎに↑化け前ぜん序じょを解げせば、 この序じょのなかにつきてすなはちその四しあり。

▲二ニ次ニ解ゲセバ↢↡化前序ヲ↡者バ、就キテ↢此ノ序ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ四↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)随釈
            (Ⅰ)釈時
              (ⅰ)約義旨釈
                (a)牒科

^初はじめに 「▲一いち時じ」 といふはまさしく*起化きけの時ときを明あかす。

~初 メニ言フ↢「一時ト」↡者ハ、正シク明ス↢起キ化之ノ時ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(b)述意

^仏ぶつまさに説法せっぽうせんとするに、 先まづ*時じ↓処しょに託たくしたまふ。 ただ衆しゅ生じょうの開かい悟ごかならず因縁いんねんによるをもつて、 化け主しゅ (釈尊) 機きに臨のぞみて時じ処しょを待まちたまふ。

~仏†将ニルニ↢説法セムト↡、先ヅ託タクシタマフ↢†於時処ニ↡。但以テ↣衆生ノヲ開悟スルコト必ズ藉ヨルヲ↢因縁ニ↡、化主臨ノゾミテ↠機キニ待マチタマフ↢†於時処ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅰ)(ⅰ)(c)釈文

^また 「一いち時じ」 といふは、 あるいは日にち夜や十じゅう二に時じ、 年月ねんがつ四時しじ等とうに就つく。 これみな0461これ如来にょらい、 機きに応おうじて*摂せっ化けしたまふ時ときな0339り。

~又言フ↢一時ト↡者ハ、或イハ就ツク↢日夜十二時、年月四時等ニ↡。此 レ皆是 レ如来0683応ジテ↠機ニ摂化シタマフ時也ナリ。

^「↑処しょ」 といふは、 かの所しょ宜ぎに随したがひて如来にょらい説法せっぽうしたまふ。 あるいは山林せんりん処しょにましまし、 あるいは王おう宮ぐ・*聚落じゅらく処しょにましまし、 あるいは曠こう野や・*塚間ちょけん処しょにましまし、 あるいは多た少しょう人天にんでん処しょにましまし、 あるいは声しょう聞もん・菩ぼ薩さつ処しょにましまし、 あるいは八はち部ぶ・人にん・天王てんのう等とうの処ところにましまし、 あるいは*純じゅん凡ぼんもしは多たと一いち二にとの処ところにましまし、 あるいは*純聖じゅんしょうもしは多たと一いち二にとの処ところにまします。

~言フ↠処ト者ハ、随ヒテ↢彼ノ所シヨ宜ギニ↡如来†説法シタマフ。或イハ在マシマシ↢山林処ニ↡、或イハ在マシマシ↢王宮・聚落ジユラク処ニ↡、或イハ在マシマシ↢曠クワウ野ヤ・塚間チヨケン処ニ↡、或イハ在シ↢多少人天処ニ↡、或イハ在シ↢声聞・菩薩処ニ↡、或イハ在シ↢八部ブ・人・天王等ノ処 ロニ↡、或イハ在シ↢純ジユン凡ボン若シハ多ト一二トノ処ニ↡、或イハ在ス↢純聖若シハ多ト一二トノ処ニ↡。

^その時じ処しょに随したがひて如来にょらい観かん知ちして増ぞうせず減げんぜず、 縁えんに随したがひて法ほうを授さずけておのおの*所しょ資しを益やくす。 これすなはち*洪こう鐘しょう響ひびくといへども、 かならず扣たたくを待まちてまさに鳴なる。 大だい聖しょう (釈尊) の慈じを垂たれたまふこと、 かならず*請しょうを待まちてまさに説とくべし。 ゆゑに一いち時じと名なづく。

~随ヒテ↢其ノ時処ニ↡如来観知シテ†不↠増セ不↠減ゼ、随ヒテ↠縁ニ授ケテク ↠法ヲ。各ノ益ヤクス↢所資シヲ↡。斯コレ乃チ洪鐘コウシユ雖モ↠響ヒビクト、必ズ待マチテ↠扣タタクヲ而方ニ鳴ナル。大聖ノ垂タレタマフコト↠慈ヲ、必ズ待マチテ↠請ヲ而当マサベ ニシ↠説ク。故ニ名ク↢一時ト↡也。

・以下形上

^また 「一いち時じ」 とは、 *阿あ闍じゃ世せまさしく*逆ぎゃくを起おこす時とき、 仏ぶついづれの処ところにかまします。 この一いち時じに当あたりて、 如来にょらい独ひとり二に衆しゅ (声聞・菩薩) とかの*耆ぎ闍しゃにまします。 これすなはち下しもをもつて上かみを形あらわす意こころなり。 ゆゑに一いち時じといふ。

~又一時ト†者、阿闍世正シク起スシヽ↠逆ギヤクヲ時ナリ、。仏在スシテ↢何イヅレノ処 ロニカ↡。、当アタリテ↢此ノ一時ニ↡、如来独ヒトリ†与↢二衆↡在ス↢彼ノ耆ギ闍シヤニ↡。此 レ即チ以テ↠下ヲ形アラハス↠上ヲ意ココロ也ナリ。故ニ曰イフ↢一時ト↡。

・以上形下

^また 「一いち時じ」 といふは、 仏ぶつ、 二に衆しゅと一いち時じのうちにおいて、 かの耆ぎ闍しゃにましまして、 すなはち阿あ闍じゃ世せのこの悪あく逆ぎゃくを起おこす因縁いんねんを聞ききたまふ。 これすなはち上かみをもつて下しもを形あらわす意こころなり。 ゆゑに一いち時じといふ。

~又言フ↢一時ト↡者ハ、仏†与↢二衆↡於シテ↢一時ノ中ニ↡、在シテ↢彼ノ耆闍ニ↡、即チ聞キキタマフカシメ下フ↧阿闍世ノ†起ス↢此ノ悪逆ヲ↡因縁ヲ↥。此 レ即チ以テ↠上ヲ形アラハス↠下シモヲ意ココロ也ナリ。故ニ曰フ↢一時ト↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)釈主

^二にに 「▲仏ぶつ」 といふは、 これすなはち化け主しゅを*標定ひょうじょうす。 余よ仏ぶつに*簡けん異いして独ひとり釈しゃ迦かを顕あらわす意こころなり。

~二ニ言イフ↢「仏ト」↡者ハ、此 レ即チ標ヘウ↢定ヂヤウスシ化主シユヲ↡。、簡↢異イシテ余仏ニ↡独ヒトリ顕ス↢釈迦ヲ↡意也ナリ。△

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅲ)釈処

^三さんに ▲「在ざい王舎おうしゃ城じょう」 より以下いげは、 ま0340さしく如来にょらい*遊化ゆげの処ところを明あかす。 すなはちその二にあり。 一いちには王おう城じょう・聚落じゅらくに遊あそびたまふは、 ↓在俗ざいぞくの衆しゅうを化けせんがためなり。 二にには*耆ぎ山せん等とうの処ところに遊あそびたまふは、 ↓出しゅっ家けの衆しゅうを化けせんがためなり。

三ニ従リ↢「在王舎城ト云」↡已下ハ、▲正シク明ス↢▲如来遊ユ化之ノ処ヲ↡。即チ有リ↢其ノ二↡。一ニハ遊アソビタマフハンデ   ↢王城・聚落ジユラクニ↡、為ナリ↠化クヱセムガ↢在俗ゾク之ノ衆ヲ↡。二ニハ遊アソビタマフハン下フ  ↢耆山等ノ処ニ↡、為ナリ↠化セムガ↢出家之ノ衆シユヲ↡。

・在家

^また↑在ざい家けといふは、 五ご欲よくを貪とん求ぐすること相続そうぞくしてこれ常つねなり。 ▼たとひ清しょう心しんを発おこせども、 なほ水みずに画えがくがごとし。 ただおもんみれば縁えんに随したがひてあまねく益やくし、 大だい悲ひを捨すてたまはざれども、 *道俗どうぞく形かたち殊ことなればともに住じゅうするに由よしなし。 これを*境きょう界がい住じゅうと名なづく。

~又在家†トイフ者、貪トン↢求グスルコト五欲ヲ↡、相続ゾクシテ是 レ常ナリ。縦タトヒ発セドモ↢清心ヲ↡、猶ナホ如シ↠画ヱガクガ↠水ミヅニ。但†以レバ随ヒテ↠縁ニ普ク益ヤクシ、不レドモ↠捨ステタマハ↢大悲ヲ↡、道俗形カタチ殊コトナレバニシテ無シ↠由ヨシ↢共トモニ住ヂユスルニ↡。此 レヲ名ク↢境キヤウ界住ヂユト↡也。

・出家

^また↑出しゅっ家けといふは、 身みを亡もうじ命いのちを捨すて、 欲よくを断だんじ真しんに帰きす。 心しん金剛こんごうのごとく円えん鏡きょうに等同とうどうなり。 *仏ぶつ地じを悕求けぐしてすなはち弘ひろく自じ0462他たを益やくす。 もし*囂塵ごうじんを絶ぜつ離りするにあらずは、 この徳とく、 証しょうすべきに由よしなし。 これを*依止えじ住じゅうと名なづく。

~又出家トイフ者ハ、*亡マウジ↠身ヲ捨ステ↠命ヲ、断ジチ↠欲ヲ帰スシテ↠真ニ。、心若クシテ↢金剛ノ↡等↢同ナリ円鏡キヤウニ↡。悕ケ↢求シテ仏地ヲ↡即チ†弘ク益ス↢自他ヲ↡。若シ非ズハザレバ↣絶ゼチ↢離リスルニ0684囂ガフ塵ヲ↡、此ノ徳無シ↠由ヨシ↠可ベキニ↠証ス。此ヲ名ク↢依止エジ住ヂユト↡也。△

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)釈衆
              (ⅰ)牒文標科

^四しに ▲「↓与よ大だい比丘びく衆しゅ」 より下しも 「而為にい上首じょうしゅ」 に至いたるこのかたは、 仏ぶつの徒と衆しゅを明あかす。

四ニ従リ↢「与ヨ大比丘衆ト云」↡下シモ至ル↢「而ニ為上首シユニ」↡已来タハ、▲明ス↢仏ノ徒ト衆シユヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)列釈二衆
                (a)標列

^この衆しゅうのなかにつきてすなはち分わかちて二にとなす。 一いちには↓声しょう聞もん衆しゅ、 二にには↓菩ぼ薩さつ衆しゅなり。

~就ツキテ↢此ノ衆ノ中ニ↡即チ分ワカチテ為ス↠二ト。一ニ者ハ声聞衆、二ニ者ハ菩薩衆シユナリ。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)随釈
                  (イ)声聞衆
                    [一]標

^↑声しょう聞もん衆しゅのなかにつきてすなはちその九くあり。

▲就キテ↢声聞衆ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ九ツ↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二]釈
                      [Ⅰ]標列文義

^初はじめに 「↑与よ」 といふは仏身ぶっしん、 衆しゅうを兼かぬ。 ゆゑに名なづけて与よとなす。 *▲二にには*総大そうだい、 三さんには*相大そうだい、 四しには*衆大しゅだい、 五ごには*耆ぎ年大ねんだい、 六ろくには*数大しゅだい、 七しちには*尊そん宿しゅく大だい、 八はちには*内ない有う実徳じっとく大だい、 九くには*果か証しょう大だいなり。

~初ニ言フ↢「与ト」↡者ハ仏身兼カヌネタリ↠衆ヲ。故ニ名ケテ為ス↠与ト。二ニ者総ソウ大、三ニ者ハ相大、四ニ者ハ衆大、五ニ者ハ耆ギ年ネム大、六ニ者数大、七ニ者尊宿シフ大、八ニ者内有実徳大、九ニ者果証大ナリ。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ]問答料簡
                        [ⅰ]料簡標数
                          [a]正釈標数
                            イ問

 ^問とひていはく、 一切いっさいの経きょうの首はじめにみなこれらの声しょう聞もんありて、 もつて*猶置ゆちとなせ0341るはなんの所以ゆえんかある。

~問ヒテ曰ク、一切ノ経ノ首ハジメニ皆有リテ↢此 レ等ラノ声聞↡、以テ為セルハ↢猶置ユチト↡有ルヤ↢何ナンノ所以 ユヘ カ↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][a]ロ答

^答こたへていはく、 これに*別べっ意ちあり。 いかなるか別べっ意ち。 これらの声しょう聞もん多おおくはこれ外げ道どうなり。 ¬*賢げん愚ぐ経きょう¼ (意) に説ときたまふがごとし。

~答ヘテ曰ク、此ニ有リ↢別意↡。云何ナルカガ  別意ナル。此等ノ声聞多クハ是 レ外道ナリ。如シキ↢¬賢ゲン愚グ経ニ¼説キタマフガ↡。、△

^「*優楼うる頻びん螺ら迦か葉しょうは、 五ご百ひゃくの弟子でしを領りょうして邪法じゃほうを修しゅ事じす。 *伽耶がや迦か葉しょうは、 二に百ひゃく五ご十じゅうの弟子でしを領りょうして邪法じゃほうを修しゅ事じす。 *那な提だい迦か葉しょうは、 二に百ひゃく五ご十じゅうの弟子でしを領りょうして邪法じゃほうを修しゅ事じす。 総そうじて一千いっせんあり。 みな*仏ぶっ化けを受うけて*羅ら漢かん道どうを得えたり。

▲優楼ウル頻ビン*螺ラ迦葉ハ領リヤウシテ↢五百ノ弟子ヲ↡修↢事ジス邪ジヤ法ヲ↡。伽耶迦葉ハ領シテ↢二百五十ノ弟子ヲ↡修↢事ス邪法ヲ↡。那ナ提迦葉ハ領シテ↢二百五十ノ弟子ヲ↡修↢事ス邪法ヲ↡。総ジテ有リ↢一千↡。皆受ウケテ↢仏化ヲ↡得タリ↢羅漢カン道ヲ↡。

^その二に百ひゃく五ご十じゅうといふは、 すなはちこれ*舎しゃ利りと*目連もくれんとの弟子でしなり。 ともに一処いっしょに領りょうして邪法じゃほうを修しゅ事じす。 また仏ぶっ化けを受うけてみな*道どう果かを得えたり。 これらの四し衆しゅを合がっして一処いっしょとなす。 ゆゑに▲千せん二に百ひゃく五ご十じゅう人にんあり」 と。

~其ノレ二百五十トイフ者ハ、即チ是 レ舎利ト目連トノ弟子ナリ。共トモニ†領シテ↢一処ニ↡修シユ↢事ジス邪法ヲ↡。亦受ウケテ↢仏化ヲ↡皆得タリ↢道果ヲ↡。此 レ等ラノ四衆ヲ合シテ為ス↢一処ト↡。故ニ有リト↢千二百五十人↡也。」

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b]弁総標意
                            イ問

 ^問とひていはく、 この衆しゅうのなかにまた外げ道どうにあらざるものあり。 なんがゆゑぞ総そうじて標ひょうする。

▲問ヒテ曰ク、此ノ衆ノ中ニ亦有リ↧†非ザル↢外道ニ↡者 ノ↥。何ナンガ故ゾ総ソウジテ標ヘウスル。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅰ][b]ロ答

^答こたへていはく、 ¬経きょう¼ (賢愚経・意) のなかに説ときたまふがごとし。 「このもろもろの外げ道どうつねに世せ尊そんに随したがひてあひ捨しゃ離りせず」 と。 しかるに*結けつ集じゅうの家いえ、 外げ徳とくを*簡えらび取とる。 ゆゑに異い名みょうあり。 これ外げ道どうなるものは多おおく、 あらざるものは少すくなし。

~答ヘテ曰ク、如シキ↢¬経ノ¼中ニ説キタマフガ↡。、「此ノ諸ノ外道ハ常ニ随ヒテ↢世尊ニ↡不ズト↢相 ヒ捨シヤ離リセ↡。」然ルニヲ結集ケツジフ之家イヘ、簡エラビ↢取トル外徳ヲ↡。故ニ有リ↢異イ名↡。是 レ外道ナル者 ノハ多ク、非アラザル者 ノハ少スクナシ。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]弁常随意
                          [a]問

 ^また問とひていはく、 いぶかし、 これらの外げ道どうつねに仏ぶつ後ごに随したがへるは、 なんの意こころかあるや。

~又問ヒテ曰ク、未審イブカシ、此等ノ外道常ニ随ヘルハ↢仏後ニ↡、有ル↢何ナニノ意ココロカ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]答

^答こたへていはく、 解げするに二義にぎあり。 一いちには↓仏ぶつ0463につきて解げす。 二にには0342↓外げ道どうにつきて解げす。

~答ヘテ曰ク、解ゲスルニ有リ↢二義↡。一ニハ就キテ↠仏ニ解スシ。、二ニハ就キテ↢外道ニ↡解ス。

・就仏解

^↑仏ぶつにつきて解げすとは、 このもろもろの外げ道どう邪風じゃふう久ひさしく扇あおぐこと、 これ一いっ生しょうのみにあらず。 *真門しんもんに入いるといへども、 *気け習じゅうなほあり。 ゆゑに如来にょらい知ち覚かくして*外化げけせしめざらしむ。 衆しゅ生じょうの正しょう見けんの根こん芽げを損そんじ、 悪業あくごう増ぞう長じょうして、 此世しせ・後ご生しょうに果か実じつを収おさめざることを畏おそるればなり。 この因縁いんねんのために摂せっしてみづから近ちかづかしめて、 *外げ益やくを聴ゆるしたまはず。 これすなはち仏ぶつにつきて解げしをはりぬ。

~就キテ↠仏0685ニ解†スト者、此ノレ諸ノ外道邪ジヤ風久ヒサシク扇アフグコト、非ズ↢是 レ一生ノミニ↡。雖モ↠入ルト↢真門ニ↡、気ケ習ジフ由ナホ在アリ。故ニ使シム↢如来知覚シテセシメテ不ザラ↟令メ↢外化セ↡。†畏ルレバナリ↧損ソンシテ↢衆生ノ正見ノ根コン芽ゲヲ↡悪業増ゾウ長シテ、此世シセ・後ゴ生ニ不ザルコトヲ↞収オサメ↢果実ヲ↡。為ニ↢此ノ因縁ノ↡摂セフシテ†令メテ↢自ラ近ヅカ↡、不↠聴シタマハ↢外益ヲ↡。此 レ即チ就ツキテ↠仏ニ解ゲシ竟リヌ。

・就外道解

^次つぎに↑外げ道どうにつきて解げすとは、 迦か葉しょう等とうの意こころ、 みづからただ曠劫こうごうより久ひさしく生しょう死じに沈しずみ六道ろくどうに*循じゅん還かんして、 苦くるしみいふべからず。 愚痴ぐち・悪見あくけんにして邪風じゃふうに*封ふう執しゅうし、 *明みょう師しに値あはずして永ながく苦く海かいに流ながる。 ただ*宿しゅく縁えんをもつてたまたま慈じ尊そん (釈尊) に会あふことを得うることあり。 *法沢ほうたくわたくしなし。 わが曹ともがら、 潤にんを蒙こうむり、 仏ぶつの恩徳おんどくを尋じん思しするに、 *砕身さいしんの極ごく*惘然もうねんたり。 親したしく*霊りょう儀ぎに事つかへて、 しばらくも替かわるに由よしなからしむることを致いたす。 これすなはち外げ道どうにつきて解げしをはりぬ。

~次ニ就ツキテ↢外道ニ↡解ゲ†スト者、▼迦葉等ノ意ココロ、自ラ唯タダ曠劫ヨリニ 久ヒサシク沈シヅミテ↢生死ニ↡循ジユ↢還グヱンシテ六道ニ↡、苦クルシミ不ズ↠可ベカラ↠言フ。愚痴グチ・悪見ニシテ封フ↢執シフシ邪風ジヤフウニ↡、不ズシテ↠値アハ↢明メイ師シニ↡永ナガク流ナガルレタリ↢於苦ク海ニ↡。但タダシ以テ↢宿シウ縁ヲ↡有リテ↢遇タマタマ得ルコト↟会アフコトヲヒ下フコト↢慈尊ニ↡。法沢タク無シ↠私ワタクシ。我ワガ曹トモガラ蒙カブリテ↠潤ウルオヒヲ†尋↢思スルニ仏之ノ恩オン徳ヲ↡、†砕身之極惘然バウゼンナリタリ。致イタス↠使シムルコトヲ↧親マノアタシクリ 事ツカヘテ↢霊レイ儀ギニ↡、無ナカラ↞由ヨシ↢暫シバラクモ替カハルニ↡。此 レ即チ就キテ↢外道ニ↡解シ竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ]料簡嘆徳
                          [a]問

 ^また問とひていはく、 これらの尊そん宿しゅくいかんが▲衆所しゅしょ知ち識しきと名なづくる。

~又問ヒテ曰ク、此 レ等ノ尊宿ソンシフ云何ガゾ名クル↢衆シユ所シヨ知識ト↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]答

^答こたへていはく、 徳とく高たかきを尊そんといひ、 耆ぎ年ねんなるを宿しゅくといふ。 一切いっさいの*凡ぼん聖しょうかの内徳ないとくの、 人ひとに過すぎたることを知しり、 その外げ相そうの殊しゅ異いなるを識しる。 ゆゑに衆所しゅしょ知ち識しきと名なづく。

~答ヘテ曰ク、徳高タカキヲ曰イヒフ↠尊ト、耆ギオイタル年ネムナルヲ曰イフ↠宿シウト。一切ノ凡聖知シリ↢彼ノ内徳ノ過スギタルコトヲグレタルコトヲ↟人ニ、識シル↢其ノ外相ノ殊シユ異イナルコトヲ↡。故ニ名ク↢衆所知識ト↡。△

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(イ)[三]結

 ^上じょう来らい九句くくの不ふ同どうありといへども、 声しょう聞もん衆しゅを解げしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢九句クノ不同↡、解シ↢声聞衆ヲ↡竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)菩薩衆
                    [一]標

^次つぎに↑菩ぼ薩さつ衆しゅを解げす。 こ0343の衆しゅうのなかにつきてすなはちその七しちあり。

▲次ニ解ゲスルニ↢菩薩衆ヲ↡。、就キテ↢此ノ衆ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ七↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二]釈
                      [Ⅰ]標列文義

^▲一いちには相そうを標ひょうす。 二にには数しゅを標ひょうす。 三さんには位くらいを標ひょうす。 四しには果かを標ひょうす。 五ごには徳とくを標ひょうす。 六ろくには別べつして*文殊もんじゅの高徳こうとくの位くらいを顕あらわす。 七しちには総そうじて結けっす。

~一ニ者ハ標ヘウスシ↠相ヲ。、二ニ者標ヘウスシ↠数ヲ。、三ニ者標スシ↠位 ヰヲ。、四ニ者標スシ↠果ヲ。、五ニ者標ス↠徳ヲ。、六ニ者ベチ別シテ顕ス↢文殊ノ高徳之ノ位クラヒヲ↡。、七ニ者総ソウジテ結ケツス。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ]広嘆衆徳
                        [ⅰ]総嘆

^またこれらの菩ぼ薩さつ無む量りょうの行ぎょう願がんを具ぐし、 一切いっさいの功く徳どくの法ほうに安あん住じゅうす。 ▲十方じっぽうに遊歩ゆぶして*権ごん方便ほうべんを行ぎょうじ、

又此等ノ菩薩具グシテ↢無量ノ行願ヲ↡、安アン↢住ヂユスシ一切ノ功徳之ノ法ニヲ↡。、遊ユ↢歩ブシテ十方ニ↡行ジ↢権ゴム方便ヲ↡、

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ]別嘆
                          [a]約果嘆

^仏ぶつの法蔵ほうぞうに入いりて彼ひ岸がんを究く竟きょうす。 無む量りょうの世せ界かいにおいて、 化けして*等覚とうがくを成じょうず。 光こう明みょう*顕曜けんようにしてあまねく十方じっぽうを照てらす。 無む量りょうの仏ぶつ土ど*六種ろくしゅに震動しんどうす。

入リテ↢仏ノ法蔵ニ↡究↢竟ス彼ヒ岸ガンヲ↡。於テ↢無量ノ世界ニ↡、化シテ成ズル↢等覚ヲ↡。光明顕曜ニシテ普ク照ス↢†十方ヲ↡。無量ノ仏土六種ニ震動スシテ。、

^縁えんに随したがひて開かい示じしてすなはち*法輪ほうりんを転てん0464ず。 法ほう鼓くを扣たたき、 法剣ほうけんを執とり、 法ほう雷らいを震ふるひ、 法ほう雨うを雨あめふらし、 法ほう施せを演のぶ。 つねに法音ほうおんをもつてもろもろの世せ間けんを覚かくせしむ。 *邪網じゃもうを掴裂かくれつし、 *諸見しょけんを消しょう滅めつし、 もろもろの*塵労じんろうを散さんじ、 もろもろの*欲塹よくぜんを壊やぶり、 *清白しょうびゃくを顕けん明みょうし、 仏法ぶっぽうを*光こう融ゆし、 正しょう化けを*宣せん流るす。

随ヒテ↠縁ニ開示シテス 。即チ転テンズジ↢法輪ヲ↡。、扣キ↢法鼓クヲ↡、執トリテ↢法剣ヲ↡、震フルヒ↢法ノ雷ライヲ↡、雨フラシテ↢法雨0686ヲ↡、演ノブベテ↢法施ヲ↡。常ニ以テ↢法音オンヲ↡覚サトセシムラシメ↢諸ノ世間ヲ↡。、掴クワクツカミ↢裂レチサクシ邪網ジヤマウアミヲ↡、消↢滅シス諸見ヲ↡、。散サンジ↢諸ノ塵労ヂンラウヲ↡、壊ヤブリ↢諸ノ欲塹ヨクゼムヲ↡、顕↢明シテ清白ヲ↡、光↢融ユシ仏法ヲ↡、宣セン↢流ルスシ正化ヲ↡。、

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅱ][b]約因嘆

^衆しゅ生じょうを愍みん傷しょうしていまだかつて*慢まん恣しせず。 平びょう等どうの法ほうを得えて無む量りょう百ひゃく千せん三昧ざんまいを具ぐ足そくす。 一念いちねんのあひだにおいて周しゅう遍へんせざるはなし。 *群ぐん生じょうを荷負かぶしてこれを愛あいすること子このごとし。 一切いっさいの*善本ぜんぽんみな彼ひ岸がんに度どす。

愍ミン↢傷シヤウシテ衆生ヲ↡未ズ ダ↢曽カツテ慢マム恣シセ↡。得エテ↢平等ノ法ヲ↡具↢足スシ無量百千三昧ヲ↡。、於オイテ↢一念ノ頃アヒダニ↡無シ↠不ルハト云コト↢周遍シユヘンセ↡。荷カ↢負ブシテ群グン生ヲ↡愛アイスルコト↠之ヲ如シク↠子コノ。、一切ノ善本、皆度スシ↢彼岸ニ↡。、

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[二][Ⅱ][ⅲ]結嘆

^ことごとく諸仏しょぶつの無む量りょうの功く徳どくを獲えて、 智慧ちえ開朗かいろうなること思議しぎすべからず。

悉ク獲エテ↢諸仏ノ無量ノ功徳ヲ↡、智慧開朗ラウナルコトニシテ †不↠可カラ↢思議ス↡。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)[三]結

^七しち句くの不ふ同どうありといへども、 菩ぼ薩さつ衆しゅを解げしをはりぬ。

雖モ↠有リト↢七句クノ不同↡、解シ↢菩薩衆ヲ↡訖オハリヌ。

二 Ⅱ ⅱ b イ (三)総結

^上じょう来らい二に衆しゅの不ふ同どうありといへども、 広ひろく化け前ぜん序じょを明あかしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢二衆シユノ不同↡、広ク明シ↢化ノ前サキノ序ジヨヲ↡竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b ロ【禁父縁】
          (一)標

【03446】 ^二にに↑禁ごん父ぶの縁えんのなかにつきてすなはちその七しちあり。

▲二ニ就キテ↢†禁父ノ縁ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ七↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)釈
            (Ⅰ)釈王舎大城文
              (ⅰ)科節

^一いちに ▲「爾時にじ王舎おうしゃ大城だいじょう」 より以下いげは、 総そうじて↓起化きけの処ところを明あかす。

一ニ従リ↢「爾時王舎大城ト云」↡以下、▲総ジテ明ス↢起キ化ノ処 ロヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)釈文
                (a)釈名

・王舎

^▲これ往おう古この*百ひゃく姓せい、 ただ城じょう中ちゅうに舎しゃを造つくるにすなはち天てん火かのために焼やかる。 もしこれ王おう家けの舎宅しゃたくには、 ことごとく火ひ近ちかづくことなし。 後のちの時ときに百ひゃく姓せいともに王おうに奏そうす。 「臣しん等ら宅たくを造つくればしばしば天てん火かのために焼やかる、 ただこれ*王舎おうしゃのみことごとく火ひ近ちかづくことなし。 なんの所以ゆえんかあるといふことを知しらず」 と。

▲此 レ明ス↧往古コノ百姓シヤウ、但タダシ城ノ中ニ造ツクルニ↠舎シヤヲ即チ為ニ↢天火クワノ↡所ル↠焼ヤカ、若シ是 レ王家ノ舎宅タクニハ、悉ク無シ↢火ヒ近チカヅクコト↡、後ノ時ニ百姓共トモニ奏ソウスラク↢於王ニ↡、臣シン等造レバ↠宅ヲ数シバシバ為ニ↢天火ノ↡所ル↠焼ヤカ、但シ是 レ王ノ舎ノミ悉ク無シ↢火ヒ近ヅクコト↡、不ズト↠知ラ↠有ルトイフコトヲ↢何ナンノ所以カ↡、

^王おう、 *奏人そうにんに告つげたまはく、 「いまより以後いごなんぢら宅たくを造つくる時とき、 ªただわれいま王おうのために舎しゃを造つくるº といふべし」 と。 奏人そうにん等らおのおの王おうの勅ちょくを奉うけたまわりて、 帰還かえりて舎しゃを造つくるにさらに焼やかれず。 これによりて相伝そうでんして、 ことさらに王舎おうしゃと名なづくることを明あかす。

~王告ツゲタマハク↢奏ソウ人ニ↡、自リ↠今以後イゴ卿ナンヂ等造ルラム↠宅ヲ之時ハ、但タダ†言フベシト↢我 レ今 マ為ニ↠王ノ造ルト↟舎ヲ、奏人等ラ各オノオノ奉ウリテケテ↢王ノ勅チヨクヲ↡、帰還 カヘ リテ造ルニ↠舎ヲ更サラニ不ズ↠被レ↠焼ヤカ、因ヨリテ↠此 レニ相 ヒ伝ツタシテヘテ、†故ラニ名クルコトヲ↦「王舎ト」↥。

・大城

^「▲大だい城じょう」 といふは、 この城しろきはめて大だいにして、 *居こ民みん九く億おくなり。 ゆゑに王舎おうしゃ大だい城じょうといふ。

~言フ↢「大城ト」↡者ハ、此ノ城極テ大ニシテ、居コ民ミン九億ナリアリ。故ニ*道イフ↢王舎大城ト↡也ナリ。△

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)弁義

^↑起化きけの処ところといふはすなはちその二にあり。

▲†言フ↢起化キケノ処 ロト↡者、即チ有リ↢其ノレ二↡。

・機相

^一いちにはいはく、 *闍王じゃおう悪あくを起おこしてすなはち父母ぶもを禁きんずる縁えんあり。 禁きんによりてすなはちこの娑しゃ婆ばを厭いとひて、 *無憂むうの世せ界かいに託たくせんと願がんず。

~一ニハ謂イハク闍王起オコシテ↠悪ヲ即チ有リ↧禁キンズル↢父母ヲ↡之縁↥。因ヨリテ↠禁ズルニ則チ厭イトヒテ↢此ノ娑婆ヲ↡、願ズフ↠託タクセムト↢†無憂之世界ニ↡。

・法益

^二ににはすなはち如来にょらい (釈尊) 請しょうに赴おもむき、 ▽光ひかり変へんじて台だいとなりて*霊りょう儀ぎを影よう0465現げんしたまふに、 ▽夫ぶ人にんすなはち安楽あんらくに生しょうずることを求もとむ。 また▽心しんを傾かたむけて行ぎょうを請こひ、 仏ぶつは▽*三福さんぷくの因いんを開ひらきたまふ。 正しょう観かんはすなはちこれ*定じょう門もんなり。 さらに*九く章しょうの益やくを顕あらわ0345す。 この因縁いんねんのためのゆゑに起化きけの処ところと名なづく。

~二ニハ則チ如来赴オモムキテ↠請シヤウニ、光 リ変ヘンジテ為ナリテ↠台ダイト影ヤウ↢現シタマフニス    霊レイ0687儀ギヲ↡、。夫人即チ求モトム↠生ズルコトヲ↢安楽ニ↡。又傾カタブケテ↠心ヲ請ヒズルニ↠行ヲ、仏ハ開キタマフ↢三福之ノ因インヲ↡。正観ハ即チ是 レ定門ナリ。更ニ顕ス↢九章シヤウ之ノ益ヲ↡。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ名ク↢起化キケノ処 ロト↡也。△

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)釈随順悪友文
              (ⅰ)科節

^二にに ▲「有う一いっ太たい子し」 より下しも 「悪あく友う之し教きょう」 に至いたるこのかたは、 まさしく闍王じゃおう*怳忽こうこつのあひだに悪人あくにんの誤あやまるところを信受しんじゅすることを明あかす。

二ニ従リ↢「有一太子ト云」↡下至ル↢「悪友ウ之シ教ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↣闍王怳クヤウ忽コツ之ノ間ニ信↢受スルコトヲ悪人ノ†所ヲ↟悞ル。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)釈文
                (a)弁位釈名

・太子

^「▲太たい子し」 といふはその位くらいを彰あらわす。 「▲阿あ闍じゃ世せ」 といふはその名なを顕あらわす。 また 「阿あ闍じゃ世せ」 といふはすなはちこれ*西国さいこくの正しょう音おんなり。 *この地じの往翻おうほんには↓*未み生しょう怨おんと名なづけ、 また↓折せっ指しと名なづく。

言フ↢「太子ト」↡者ハ▲彰アラハス↢其ノ位クラヰヲ↡也ナリ。言イフ↢▼「阿闍世ト」↡者ハ▲顕ス↢其ノ名ヲ↡也。▲又阿闍世†トイフ者乃チ是 レ西国ノ正音オンナリ。此ノ地チノニハ往翻ホンニハ名ケ↢未ミ生怨オント↡、亦名ク↢折セフ指シト↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)問答料簡
                  (イ)問

 ^問とひていはく、 なんがゆゑぞ 「未み生しょう怨おん」 と名なづけ、 および 「折せっ指し」 と名なづくるや。

▲問ヒテ曰ク、何ナンガ故ゾ名ケ↢未生怨ト↡、及ビ名クル↢折指ト↡也ヤ。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)(ロ)答

^答こたへていはく、 これみな昔しゃく日にちの因縁いんねんを挙あぐ。 ゆゑにこの名なあり。

~答ヘテ曰ク、此 レ皆 ナ挙アグ↢昔シヤク日ニチノ因縁ヲ↡。故ニ有リ↢此ノ名ナ↡。

・折指

^▼ˆ「↑折せっ指し」 のˇ 因縁いんねんといふは、 元本もと父ちちの王おう、 子し息そくあることなし。 処々しょしょに*神じんに求もとむれども、 つひに得うることあたはず。

~言フ↢因縁ト↡者ハ、元本 モト 父ノ王無シ↠有ルコト↢子シ息ソク↡。処処シヨシヨニ求ムレドモルニ ↠神ニ、竟ツイニ不ズ↠能ハ↠得ルコト。

^たちまちに*相そう師しありて、 王おうに奏そうしてまうさく、 「臣しん知しれり。 山やまのなかに一いちの仙人せんにんあり。 久ひさしからずして寿いのちを捨すて、 命終みょうじゅうしをはりて後のちかならずまさに王おうのために子ことなるべし」 と。

~忽タチマチニ有リテ↢相師↡而奏ソウシテ↠王ニ言サク、臣シン知シレリヤ。山ノ中ニ有リ↢一ノ仙人↡。不ズシテ↠久ヒサシカラ捨テツベシ↠寿 チヲ、†命終シ已リテ後必ズ当ベ ニシト↢与タメニ↠王ノ作ル↟子ト。

^王おう聞ききて歓かん喜ぎす。 「この人ひといづれの時ときにか捨しゃ命みょうする」 と。 相そう師し、 王おうに答こたふ。 「さらに三年さんねんを経へてはじめて命終みょうじゅうすべし」 と。 王おういはく、 「われいま年とし老おいて国くにに*継けい祀しなし。 さらに三年さんねんを満みつるまでなにによりてか待まつべき」 と。

~王聞キキテ歓喜ス。此ノ人何イヅレノ時ニカ†捨命スルト。相師答フラク↠王ニ。、更ニ経ヘテ↢三年ヲ↡始ハジメテ可ベシト↢命終ス↡。王ノ言ク、我 レ今 マ年老オイテ国ニ無シ↢継ケイ祀シ↡。更ニ満ミツルマデ↢三年ヲ↡何ナニニ由ヨリテカ可ベキヤト↠待マツ。

^王おうすなはち使つかひを遣つかはして山やまに入いらしめ、 往ゆきて仙人せんにんに請しょうじていはしむ。 「大王だいおう子こなく、 闕かけて*紹じょう継けいなし。 処々しょしょに神じんに求もとむる0346に、得うることあたはざるに困くるしむ。 すなはち相そう師しありて大仙だいせんを瞻見みるに、 久ひさしからずして捨しゃ命みょうして、 王おうのために子ことなるべしと。 請こひ願ねがはくは大仙だいせん、 恩おんを垂たれて早はやく赴ゆきたまへ」 と。

~王即チ遣ツカハシテ↠使ツカヒヲ入ラシメリテ ↠山ニ、往ユキテカシメテ請ジテ↢仙人ニヲ↡曰ハシムク  。、大王無クシ↠子、闕カケテ無シ↢紹ゼウ継ケイ↡。処処シヨシヨニ求ムルニレドモ↠神ニ、†困クルシム↠不ルニ↠能ハ↠得ルコト。乃イマチシ有リテ↢相師↡瞻↢見ミルニ大仙ヲ↡、不ズシテ↠久シカラ†捨命シテ、与タメニ↠王ノ作ナルベシト云リ↠子ト。請コヒ願クハ大仙垂タレテ↠恩オンヲ早ハヤク赴オモムキタマヘト。

^使し人にん、 教きょうを受うけて山やまに入いり、 仙人せんにんの所ところに到いたりて、 つぶさに王おう請しょうの因縁いんねんを説とく。 仙人せんにん、 使し者しゃに報こたへていはく、 「われさらに三年さんねんを経へてはじめて命終みょうじゅうすべし。 王おうのすなはち赴ゆけと勅ちょくするは、 この事じ不可ふかなり」 と。

~使人 ツカヒ 受ウケテ↠教ヲ入リテ↠山ニ、到イタリテ↢仙人ノ所 ロニ↡、具ツブサニ説トク↢王ノ請ノズル因縁ヲ↡。仙人報コタヘテ↢使シ者シヤニ↡言ク、我更ニ経ヘテ↢三年ヲ↡始ハジメテ可ベシ↢命終ス↡。王ノ†勅スル↢即チ赴ケト↡者、是ノ事ジ不可フカナリト。

^使つかひ、 仙せんの教きょうを奉うけて、 還かえりて大王だいおうに報ほうずるに、 つぶさに仙せんの意こころを述のぶ。 王おういはく、 「われはこれ一国いっこくの主あるじなり。 あらゆる0466人物にんもつみなわれに帰き属ぞくす。 いまことさらに礼れいをもつてあひ屈くっするに、 すなはちわが意こころを承うけざるや」 と。

~使ツカヒ奉ウケテ↢仙ノ教ヲ↡、還カヘリテ報ズルニ↢大王ニ↡、具ツブサニ述ノブ↢仙ノ意ココロヲ↡。王ノ曰ク、我ハ是 レ一国之ノ主ヌシナリ。†所有ル人物皆帰クヰ↢属ゾクス我ニ↡。今 マ0688故コトサラニ以テ↠礼レイヲ相 ヒ屈クツスルニ、乃チ†不ルヤト↠承ウケ↢我ガ意ヲ↡。

^王おうさらに使し者しゃに勅ちょくす。 「なんぢ往ゆきてかさねて請しょうぜよ。 請しょうぜんにもし得えずは、 まさにすなはちこれを殺ころすべし。 すでに命終みょうじゅうしをはりなば、 わがために子ことならざるべけんや」 と。

~王更ニ勅スラク↢使シ者シヤニ↡。、卿ナンヂ往ユキテ重カサネテ請シヤウゼヨ。請ゼムニハムニ若シ不ズハ↠得ヘ、当ベ ニシ↢即チ殺コロス↟之ヲ。既スデニ命終シ已ヲハリナバ、可ベケム↠不ザル↢与タメニ↠我ガ作ナラ↟子コト也ヤト。

^使し人にん、 勅ちょくを受うけて、 仙人せんにんの所ところに至いたりて、 つぶさに王おうの意こころをいふ。 仙人せんにん、 使つかひの説せつを聞きくといへども、 意こころにまた受うけず。

~使人 ツカヒ 受ウケテ↠勅チヨクヲ、至リテ↢仙人ノ所 ロニ↡、具ツブサニ噵イフ↢王ノ意ココロヲ↡。仙人雖モ↠聞キクト↢使ツカヒノ説ヲ↡、意ココロニ亦不ズ↠受ウケ。

^▼使し人にん、 勅ちょくを奉うけてすなはちこれを殺ころさんと欲ほっす。 仙人せんにんいはく、 「なんぢまさに王おうに語かたるべし。 ªわが命いのちいまだ尽つきざるに、 王おう、 *心しん口くをもつて人ひとをしてわれを殺ころさしむ。 われもし王おうのために児ことならば、 また心しん口くをもつて人ひとをして王おうを殺ころさしめんº」 と。 仙せん人にん0347この語ごをいひをはりてすなはち死しを受うく。

~使人 ツカヒ 奉ケテ↠勅ヲ即チ欲スルニ↠殺コロサムト↠之ヲ。、仙人曰ク、卿ナンヂ当ベ ニシ↠語カタル↠王ニ。我ガ命 チ未ダルニ↠尽ツキ、王以テ↢心口クヲ↡†遣ム↢人ヲシテ殺サ↟我ヲ。我 レ若シ与タメニ↠王ノ作ナラバ↠児コト者バ、†還タ以テ↢心口クヲ↡†遣メムト↢人ヲシテ殺サ↟王ヲ。仙人噵イヒ↢此ノ語ヲ↡已 ハリテ即チ受クケツ↠死ヲ。

^すでに死ししをはりて、 すなはち王おう宮ぐに託たくして生しょうを受うく。 その日ひの夜よるに当あたりて夫ぶ人にんすなはち*有う身しんすと覚おぼゆ。 王おう聞ききて歓かん喜ぎす。

~既ニ死シ已 ハリテ、即チ託タクシテ↢王宮ニ↡受ウク↠生ヲ。当アタリテ↢其ノ日ノ夜ニ↡夫人即チ覚オボユ↢有身 ハラ ストミヌト↡。王聞キキテ歓喜ス。

^天てん明あけてすなはち相そう師しを喚よびて、 もつて夫ぶ人にんを観みしむ。 これ男おとこなりやこれ女おんななりや。 相そう師し観みをはりて王おうに報こたへていはく、 「この児こは女おんなにあらず。 この児こ、 *王おうにおいて損そんあるべし」 と。 王おういはく、 「わが国こく土どはみなこれを*捨属しゃぞくすべし。 たとひ損そんずるところありとも、 われまた畏おそれなし」 と。 王おうこの語ごを聞ききて憂喜うき交まじはり懐いだく。

~天テン明アケテ即チ喚ヨビテ↢相師ヲ↡、以テ観ミセシム↢夫人ヲ↡。是 レ男ナンナリヤ是 レ女ナリヤ。相師観ミ已 ハリテ而報コタヘテ↠王ニ言ク、是ノレ児ハニシテ非ズ↠女ニ。此ノ児ニ於オイテ↠王ニ有ルベシトラム  ↠損ソン。王曰ク、我ガ之国土ハ皆 ナ捨シヤ↢属ゾクスベシ之 レヲ↡。縦タトヒ有アリトモ↠所 ロ↠損ソンスル、吾ワレ亦無シト↠畏オソレ。王聞キキテ↢此ノ語ヲ↡憂喜ウキ交マジハリ懐イダクイテ。、

^王おう、 夫ぶ人にんにまうしてまうさく、 「われ夫ぶ人にんとともにひそかにみづから*平章びょうしょうせん。 相そう師し、 児こわれにおいて損そんあるべしといふ。 夫ぶ人にんこれを生うむ日ひを待まちて、 高楼こうろうの上うえにありて天てん井じょうのなかに当あたりてこれを生うみ、 人ひとをして承うけ接とらしむることなかれ。 落おとして地じにあらんに、 あに死しせざるべけんや。 われまた憂うれふることなく、 *声なもまた露あらわれじ」 と。

~王白シテ↢夫人ニ↡言ク、吾 レ共トモニ↢夫人ト↡私ヒソカニ自ラ†平章セム。相師噵イフヘリ↢児ニ於オイテ↠吾 レニ有アルベシト↟損ソン。夫人待マチテ↢生ム↠之ヲ日ヒヲ↡、在アリテ↢高楼カウロウノ上 ヘニ↡当アタリテ↢天井ノ中ニ↡生ミテ↠之ヲ、勿ナカレ↠令シムルコト↢人ヲシテ承ウケ接トラ↡。†落シテ在ラムニ↢於地ニ↡、豈アニ容ベケム↠不ル↠死セ也ヤ。吾ワレ亦無ナク↠†憂フルコト、声ナコヘモ亦マタ不ジト↠露アラハレ。

^夫ぶ人にんすなはち王おうの計はかりごとを可かとし、 その生うむ時ときにおよびてもつぱら前さきの法ほうのごとくす。 生うみをはりて地じに堕おつるに、 命いのちすなはち断たえず、 ただ手ての小しょう指しを損そんず。 よりてすなはち*外げ人にん同おなじく唱となへて 「折せっ指し太たい子し」 といふ。

~夫人即チ可カトシ↢王之ノ計ハカリゴトヲ↡、及 ヨビテ↢其ノ生ムメル時ニ↡一ラ如クス↢前サキノ法ノ↡。生ミマレ已 ハリテ堕ツルニチテ ↠地ヂニ、命便チ不ズ↠断タエ、唯タダ損ソンス↢手ノ小指ユビヲ↡。因ヨリテ即チ外グワイ人ニン同ジク唱トナヘテ言フ↢折セツ指シ太子ト↡也。

・未生怨

^「↑未み生しょう怨おん」 といふは、 これ▲*提だい婆ば達だっ多た悪あく妬との心しんを起おこすがゆゑにかの太たい子しに対たいして昔しゃく日にちの悪縁あくえんを顕発けんぽつするによる。

~言イフ↢未ミ生怨オンアダト↡者ハ、此 レ†因ル↧提婆達多ノ起スガ↢悪妬トソネム之ノ心ヲ↡故ニ対シテ↢彼ノ太子ニ↡顕↦発スルニ昔シヤクムカシ日ニチノ悪縁ヲ↥。

^いかんが妬と心しんして悪縁あくえんを起おこ0348す。 提だい婆ば悪あく性しょうにして、 *為人ひととなり匈きょう猛もうなり。 また0467出しゅっ家けすといへども、 つねに仏ぶつの名みょう聞もん・利り養ようを妬ねたむ。

~云何ガゾ妬ト心シテ而起オコス↢悪縁ヲ↡。提婆悪性ニシテ為人ヒトトナリ匈クヰヨウアシク 猛マウタケシナリ。雖モ↢復出家スト↡、恒常 ツネ ニ妬ソネム↢仏ノ名聞利養ヲ↡。

^しかるに父ちちの王おうはこれ仏ぶつの*檀越だんおつなり。 一いち時じのうちにおいて多おおく供く養ようをもつて如来にょらいに奉ぶ上じょうす。 いはく、 金こん・銀ごん・七宝しっぽう・名みょう衣え・上じょう服ぶく・百ひゃく味みの菓か食じき等とう、 一々いちいち色々しきしきみな五ご百ひゃく車しゃなり。 香こう・華け・*伎ぎ楽がくし、 百ひゃく千万せんまんの衆しゅう、 讃歎さんだん*囲い繞にょうして*仏ぶつ会えに送向そうこうして、 仏ぶつおよび僧そうに施ほどこす。

~然ルニ父ノ王0689ハ是 レ仏ノ檀越ダンオチナリ。於テ↢一時ノ中ニ↡多ク将モテ↢供ク養ヤウヲ↡奉↢上タテマツスル如来ニ↡。謂イハク金・銀ゴム・七宝・名ナアル衣コロモ・上スグレタル服キモノ・百味ミノ菓食クワジキ等ナリ、。一一色色ニ皆 ナ五百車シヤナリ。香カウ・華クヱ・伎ギ楽ガクシ、百千万ノ衆シユニシテ讃歎サンダンシ囲ヰ遶ネウシテ†送↢向シテ仏会ニ↡、施セス↢仏及ビ僧ソウニ↡。

^時ときに調じょう達だつ (提婆達多) 見みをはりて妬と心しんさらに盛さかりなり。 すなはち*舎しゃ利り弗ほつの所ところに向むかひて*身通しんつうを学がくせんと求もとむ。 尊者そんじゃ語かたりていはく、 「なんぢしばらく四し念処ねんじょを学がくせよ。 身通しんつうを学がくすべからず」 と。 すでに請しょうずれども心しんを遂とげず。 さらに余よの尊者そんじゃの辺へんに向むかひて求もとむ。 乃ない至し五ご百ひゃくの弟子でし等とうことごとく人ひととして教おしふるものなし、 みな四し念処ねんじょを学がくせしむ。

~時ニ調達デウダチ見已 ハリテ妬ト心更ニ盛サカリナリ。即チ向ムカヒテ↢舎利弗ノ所 ロニ↡求ム↠学ガクセムトコトヲ↢身シン通ヲ↡。尊ソン者語カタリテ言ク、人者 キミ ナンヂ且シバラク学ガクセヨ↢四念処ヲ↡。不ズト↠須ベカラ↠学ス↢身シン通ヲ↡也。既スデニ請シヤウズレドモ不ズ↠遂トゲ↠心ヲ。更ニ向ヒテ↢余ヨノ尊者ノ辺ヘンホトリニ↡求モトム。乃至五百ノ弟子等悉ク†無シ↢人トシテ教フルモノ↡、皆遣シム↠学セ↢四念処ヲ↡。

^請しょうずること已やむことを得えずして、 つひに阿あ難なんの辺へんに向むかひて学がくす。 阿あ難なんに語かたりていはく、 「なんぢはこれわが弟おとうとなり。 われ通つうを学がくせんと欲ほっす。 一々いちいち次し第だいにわれに教おしへよ」 と。 しかるに阿あ難なん*初しょ果かを得えたりといへども、 いまだ*他た心しんを証しょうせず。 *阿あ兄きょうのひそかに通つうを学がくして、 仏ぶつの所みもとにおいて*悪計あくけいを起おこさんと欲ほっすることを知しらず。 阿あ難なんつひにすなはち喚よびて静じょう処しょに向むかひて、 次し第だいにこれを教おしふ。

~請ズルコト不シテ↠得↠已ヤムコトヲ、遂ツイニ向ヒテ↢阿難ノ辺ホトリニ↡学ス。語リテ↢阿難ニ↡言ク、汝ナンヂハ是 レ我ガ弟オトトナリ。我 レ欲スフ↠学セムト↠通ヲ。一一次第ニ教ヘ玉ヘヨト↠我ニ。然ルニ阿難雖モ↠得タリト↢初果シヨクワヲ↡、未ズ ダ↠証セ↢他タ心ヲ↡。不シテ↠知ラ↫阿ア兄クヰヤウノ私密 ヒソカ ニ学シテ↠通ヲ、欲ホスルコトヲ↪於シテ↢仏ノ所ニ↡起オコサムト↩於悪ノ計ハカリゴトヲ↨。、阿難遂ツイニ即チ喚ヨバビテヒテ向ヒテ↢静処ニ↡、次第ニ教フ↠之ヲ。△

^*跏趺かふ正しょう坐ざせしめて、 先まづ心しんをもつて身みを挙あぐることを教おしふ。 動うごくに似にたりと想おもへ。 地じを去さること一分いちぶん・一寸いっすんすると想おもへ。 一いっ尺しゃく・一いち丈じょうすると想おもへ。 舎しゃに至いたるに、 *空くう無礙むげの想おもいをなし、 ただちに過すぎて空くう中ちゅうに上のぼると想おもへ。 また心しんを摂せっして下くだり、 本もとの坐ざ処しょに至いたると想おもへ。

~跏趺カフ正坐セシメテシテ  、先ヅ†教フ↢将テ↠心ヲ挙グルコトヲ↟身ヲ。†似タリト↠動クニ想ヘ。去サルコト↠地ヂヲ一分・一寸スンスルト想オモヘ。一尺・一丈ヂヤウスルト想ヘ。、至ルニ↠舎シヤニ、作シス↢空無礙ゲノ想ヲ↡、直タダチニ過スギテ上ノボルト↢空ノ中ニ↡想ヘ。†還タ摂セフシテ↠心ヲ下リテ、至ルト↢本 トノ坐ザ処シヨニ↡想ヘ。

^次つぎに身みをもつて心しんを挙あげ、 初はじめの時ときに地じを去さること0349一分いちぶん・一寸いっすんする等とう、 また前さきの法ほうのごとくせよ。 身みをもつて心しんを挙あげ、 心しんをもつて身みを挙あぐるに、 また随したがひてすでに至いたる。 空くうに上のぼりをはりて、 また身みを*摂取せっしゅして下くだり、 本もとの坐ざ処しょに至いたれ。

次ニ将モテ↠身ヲ挙アゲヨ↠心ヲ、。初ハジメノ時ニ去サルコト↠地ヲ一分・一寸スル等、亦如クセヨスベシ↢前ノ法ノ↡。以テ↠身ヲ挙ゲ↠心ヲ、以テ↠心ヲ挙グルニベシ↠身ヲ、。亦随ヒテ既ニ†至ル。上リ↠空ニ已リテ、†還タ摂セフ↢取シユシテ身ミヲ↡下リテ、至レルベシ↢本ホンノ坐ザ処ニ↡。

^次つぎに身心しんしん合がっして挙あぐと想おもへ。 また前さきの法ほうに同おなじく、 一分いちぶん・一寸いっすんする等とう、 周おわりてまた始はじめよ。

次ニ想ヘ↢身心合ガフシテ挙アグト↡。†還タ同ジク↢前ノ法ニ↡、一分・一寸スル等、周ヲハリテ而復始ハジメヨ。

^次つぎに身心しんしん一切いっさいの*質ぜつ礙げ*色しき境きょうのなかに入いると想おもひ、 不ふ質ぜつ礙げの想おもいをなせ。 次つぎに一切いっさいの山せん河が大だい地じ等とうの色しき、 自じ身しん0468のなかに入いるに、 空くうのごとく*無礙むげにして色相しきそうを見みずと想おもへ。

次ニ†想ヒ↣身心入ルト↢一切ノ質ゼツサヘ ゲサヘラル色シキ境キヤウノ中ニ↡、作ナセ↢不フ質ゼツゲノ想ヲ↡。次ニ†想ヘ↧一切ノ山・河ガ・大地等ノ色入ルニ↢自ジ身ノ中ニ↡、如ク↠空ノ無礙ゲニシテ不ト↞見ミ↢色相ヲ↡。

^次つぎに自じ身しん、 あるいは大だいにして虚こ空くうに*遍満へんまんして坐臥ざが自じ在ざいなり、 あるいは坐ざし、 あるいは臥がして、 手てをもつて日月にちがつを捉とり動うごかすと想おもへ。 あるいは小しょう身しんとなりて*微み塵じんのなかに入いるに、 一切いっさいみな無礙むげの想おもいをなせと。

次ニ†想ヘ↧自身ハ或イハ大ニシテ遍ヘン↢満シテ虚空ニ↡坐ザ0690臥グワ自ジ在ナリ、或イハ坐シ或イハ臥フシテ、以テ↠手ヲ捉リ↦動スト日月ヲ↥。或イハ作ナリテ↢小身ト↡入ルニ↢微ミ塵ヂンノ中ニ↡、一切皆作セト↢無礙ムゲノナル想ヲ↡。

^阿あ難なんかくのごとく次し第だいに教おしへをはりぬ。 時ときに調じょう達だつ (提婆達多) すでに法ほうを受得じゅとくしをはりて、 すなはち別べつして静じょう処しょに向むかひて七日しちにち七しち夜や一心いっしん専せん注ちゅうして、 すなはち身通しんつうを得えたり。 一切いっさい自じ在ざいにしてみな成じょう就じゅすることを得えたり。

▲阿難如ク↠是クノ次第ニ教ヘ已 ハリヌ。時ニ調達ダウダツ既ニ受ジユ↢得シ法ヲ↡已 ハリテ、即チ別シテニ 向ムカヒテ↢静処ニ↡七日七夜一心専注チユシテ、即チ得タリテ ↢身通ヲ↡。、一切自在ニシテ皆得タリ↢成就スルコトヲ↡。

^すでに通つうを得えをはりてすなはち太たい子しの殿でんの前まえに向むかひて、 空くう中ちゅうにありて大だい神変じんぺんを現げんず。 身しん上じょうより火ひを出いだ0350し、 身しん下げより水みずを出いだす。 あるいは左さ辺へんに水みずを出いだし、 右う辺へんに火ひを出いだす。 あるいは大身だいしんを現げんじ、 あるいは小しょう身しんを現げんず。 あるいは空くう中ちゅうに坐臥ざがし、 意こころに随したがひて自じ在ざいなり。

~既ニ得エ↠通ヲ已 ハリテ即チ向ヒテ↢太子ノ殿デンノ前マヘニ↡、在アリテ↢於空ノ中ニ↡現ズ↢大神変ペンヲ↡。身ノ上ヨリ出シ↠火ヲ、身ノ下ヨリ出ス↠水ヲ。或イハ左サ辺ヘンニ出シ↠水ヲ、右辺ニ出ス↠火ヲ。或イハ現ジ↢大身ヲ↡、或イハ現ズジ↢小身ヲ↡。、或イハ坐ザ↢臥グワシ空中ニ↡、随ヒテ↠意ニ自在ナリ。

^太たい子し見みをはりて左右さうに問とひていはく、 「これはこれ何人なんぴとぞ」 と。 左右さう、 太たい子しに答こたへてまうさく、 「これはこれ尊者そんじゃ提だい婆ばなり」 と。

~太子見ミ已 ハリテ問ヒテ↢左右ニ↡曰ク、此 レハ是 レ何ナニ人ゾヤト。左右答ヘテ↢太子ニ↡言ク、此 レハ是 レ尊者提婆ナリト。

^太たい子し聞ききをはりて心しん大おおきに歓かん喜ぎす。 つひにすなはち手てを挙あげて喚よびていはく、 「尊者そんじゃなんぞ下くだり来きたらざる」 と。 提だい婆ばすでに喚よぶを見みをはりてすなはち化けして嬰よう児にとなり、 ただちに太たい子しの膝ひざの上うえに向むかふ。 太たい子しすなはち抱いだきて、 口くちを嗚すひてこれを弄もてあそび、 また口くちのなかに唾つばきはく。 ▼嬰よう児につひにこれを咽のむ。 須しゅ臾ゆに還かえりて本身ほんしんに復ぶくす。 太たい子しすでに提だい婆ばの種々しゅじゅの神変じんぺんを見みて*うたた敬重きょうじゅうを加くわふ。

~太子聞キキ已 ハリテ心大 キニ歓喜スシ。、遂ツイニ即チ挙アゲテ↠手ヲ喚ヨバビテヒテ言ク、尊者何ナンゾ不ザルト↢下リ来キタラ↡。提婆既ニ見ミ↠喚ブヲフヲ已リテ即チ化シテ作リテ↢嬰ヤウ児ニト↡、直タダチニ向フ↢太子ノ膝ヒザノ上 ヘニ↡。太子即チ抱イダキテ、嗚スシテヒテ↠口ヲ弄モテアソビブ↠之ヲ、又唾ツバキハク↢口ノ中ニ↡。嬰エウ児ニ遂ツイニ咽ノム↠之ヲ。須シユ臾ユニ還カヘリテ復ブクス↢本身ニ↡。太子既ニ見テ↢提婆ノガ種種ノ神変ヲ↡転ウタタ加クハフ↢敬キヤウ重ヂウヲ↡。

^すでに太たい子しの心しん敬重きょうじゅうせるを見みをはりて、 すなはち父ちちの王おうの供く養ようの因縁いんねんを説とく。 「色別しきべつに五ご百ひゃく乗じょうの車くるまに載のせ、 仏ぶつの所みもとに向むかひて仏ぶつおよび僧そうにたてまつる」 と。 太たい子し聞ききをはりてすなはち尊者そんじゃに語かたる。 「弟子でしまたよく色しきおのおの五ご百ひゃく車しゃを備ととのへ具そなへて、 尊者そんじゃを供く養ようし、 および衆僧しゅそうに施ほどこすこと、 かれのごとくならざるべけんや」 と。 提だい婆ばいはく、 「太たい子し、 この意こころ大おおきに善よし」 と。

~既ニ見ミ↢太子ノ心ニ敬重ナルヲスルヲ↡已リテ、即チ説ク↢父ノ王ノ供ク養ノ因縁ヲ↡。色別シキベチニ五百乗ノ車 マニ載ノセテ、向ヒテ↢仏ノ所ニ↡奉上ルトコトヲ↢仏及ビ僧ニ↡。太子聞キキ已リテ即チ語ルラク↢尊者ニ↡。、弟子亦能ク備トトノヘ↢具ソナヘテ色各カクノ五百車ヲ↡、供↢養シ尊者ヲニ↡、及ビ施スコトセムコト↢衆僧シユソウニ↡、可ベケム↠†不ル↠如クナラ↠彼ノ也ヤト。提婆言ク、太子、此ノ意大ニ善ヨシト。

^これより以後いご大おおきに供く養ようを得え、 心しんうたた高慢こうまんなり。 たとへば杖つえをもつて悪あく狗くの鼻はなを打うつに、 うたた狗くの悪あくを増ますがごとし。 これまた0351かくのごとし。 太たい子しいま*利り養ようの杖つえ0469をもつて提だい婆ばが貪心とんしんの狗くの鼻はなを打うつに、 うたた悪あくを加ますこと盛さかりなり。 これによりて僧そうを破はし、 仏法ぶっぽうの戒かいを改あらためて、 教きょう戒かい不ふ同どうなり。

~自ヨリ↠此已後ニ大 キニ得エテ↢供養ヲ↡、心転ウタタ高慢カウマンナリアナヅル。譬タトヘバ如シ↧以テ↠杖ツエヲ打ウツニテバ↢悪アシキ狗イヌノ鼻ハナヲ↡、転ウタタ増マスガ↦狗イヌノ悪アシキコトヲ↥。此 レ亦如シ↠是クノ。太子今将モテ↢利養之ノ杖ツエヲ↡打ウツニ↢提婆ガ貪トム心ノ狗イヌノ鼻ハナヲ↡、転ウタタ加マスコト↠悪ヲ盛サカリナリニス。因リテ↠此ニ破ハシ↠僧ヲ、改アラタメテ↢仏法ノ戒ヲ↡、教戒不同0691ナリ。

^仏ぶつあまねく凡ぼん聖しょう大衆だいしゅのために法ほうを説ときたまふ時ときを待まちて、 すなはち*会え中ちゅうに来きたりて仏ぶつに従したがひ、 *徒と衆しゅならびにもろもろの*法蔵ほうぞうことごとくわれに付ふ嘱ぞくしたまへと索もとむ。 「世せ尊そんは年としまさに老邁ろうまいしたまへり。 よろしく静じょう内ないにつきてみづから*将しょう養ようしたまふべし」 と。 一切いっさいの大衆だいしゅ、 提だい婆ばがこの語ごを聞ききて、 *愕がく爾にとしてたがひにあひ看みてはなはだ*驚きょう怪けを生しょうず。

~待マチテ↧仏普ク為ニ↢凡聖大衆ノ↡説キタマフ↠法ヲ之時ヲ↥、即チ来キタリテ↢会ヱノ中ニ↡従シタガヒテ↠仏ニ、†索ム↣於徒衆并ナラビニ諸ノ法蔵ヲ尽コトゴトク付↢嘱シタマヘト我ニ↡。世尊ハ年トシ将サラニ老邁ラウマイシタマヘリ。宜ヨロシク可ベシト↧就ツキテ↢静ジヤウ内ナイニ↡自ラ†将養シタマフ↥。一切ノ大衆聞キキテ↢提婆ガ此ノ語コトバヲ↡、愕ガク爾ジサハイデトシテ迭互 タガヒ ニ相 ヒ看テ甚ハナハダ生ズ↢驚キヤウオドロキ怪クヱヲ↡アヤシム。

^その時とき世せ尊そん、 すなはち大衆だいしゅに対たいして提だい婆ばに語かたりてのたまはく、 「舎しゃ利り・目連もくれん等とうのすなはち大だい*法ほう将しょうなるすら、 われなほ仏法ぶっぽうをもつて付ふ嘱ぞくせず、 いはんやなんぢ痴ち人にん唾つばきを食くらへるものをや」 と。

~爾ノ時世尊、即チ対タイシテ↢大衆ニ↡語カタリテ↢提婆ニ↡言ク、舎利・目連レン等ノ即チ大法将シヤウナルニスラ、我ワレ尚ナヲ不ズ↧将モテ↢仏法ヲ↡付嘱セ↥。況イハムヤ汝 ヂ痴チ人ノ、食クラヘル↠唾ツバキヲ者 ノヲ乎ヤト。

^時ときに提だい婆ば、 仏ぶつの、 衆しゅうに対たいして*毀き辱にくしたまふを聞きき、 なほ*毒箭どくせんの心むねに入いるがごとし、 さらに痴ち狂きょうの意こころを発おこす。 この因縁いんねんによりてすなはち太たい子しの所ところに向むかひてともに悪計あくけいを論ろんず。 太たい子しすでに尊者そんじゃを見みて、 敬きょう心しんをもつて承じょう問もんしていはく、 「尊者そんじゃ、 今日こんにち顔色げんしき憔しょう悴すいせること、 往おう昔じゃくに同おなじからず」 と。

~時ニ提婆聞キキテ↢仏ノ対シテ↠衆ニ毀クヰ辱ニクシタマフヲヘルヲ↡、由ナホシ如シクニシテ↢毒ノ箭ヤノ入ルガ↟心ムネニ、更ニ発ス↢痴チ狂ワウ之ノ意ヲ↡。藉ヨリテ↢此ノ因縁ニ↡即チ向ヒテ↢太子ノ所 ロニ↡共トモニ論ロンズ↢悪ノ計ハカリゴトヲ↡。太子既ニ見テ↢尊者ヲ↡、敬キヤウ心ヲモテ承ジヨウ問モンシテス。言ク、尊者、今日 ケフ 顔ゲンカヲノ色シキ憔セウ悴スイカシケ セルコトセリ  不ズヤト↠同ジカラ↢往ワウ昔ジヤクニ↡。

^提だい婆ば答こたへていはく、 「われいま憔しょう悴すいすることはまさしく太たい子しのためなり」 と。

~提婆答ヘテ曰ク、我今憔悴セウスイスルコトハセルコトハ正シク為↢太子ノ↡也ナリト。

^太たい子し敬うやまひて問とはく、 「尊者そんじゃ、 わがためになんの意こころかあるや」 と。

~太子敬ウヤマヒテ問トハク、尊者、為ニ↠我ガ有ル↢何ナニノ意カ↡也ヤト。

^提だい婆ばすなはち答こたへていはく、 「太たい子し知しるやい0352なや。 世せ尊そん年とし老おいて*堪任かんにんするところなし。 まさにこれを除のぞきてわれみづから仏ぶつと作なるべし。 父ちちの王おう年とし老おいたり。 またこれを除のぞきて太たい子しみづから正しょう位いに坐ざすべし。 新王しんおうと新仏しんぶつと治化じけせんに、 あに楽たのしからざらんや」 と。

~提婆即チ答ヘテ云ク、太子知ルヤレリヤ不イナヤ。世尊年トシ老オイテ無シ↠所 ロ↢堪任カンニンスルセル↡。当ニ可ベシ↢除ノゾキテ↠之ヲ我自ラ作ル↟仏ト。父ノ王年老イタリ玉ヘリ。亦可ベシ↣除ノゾキテ↠之ヲ太子自ラ坐ザスシ玉ウ↢正位ヰニ↡。新シン王ト新仏ト治ヂ化セムニ、豈アニ不ザラム↠楽タノシカラ乎ヤト。

^太たい子しこれを聞ききてきはめて大おおきに瞋しん怒ぬして、 「この説せつをなすことなかれ」 といふ。

~太子聞キキテ↠之ヲ極 メテ大ニ瞋シン怒ヌシテ、勿レトイフ↠作ナスコト↢是ノ説ヲ↡。

^またいはく、 「太たい子し瞋いかることなかれ。 父ちちの王おう、 太たい子しにおいてまつたく恩徳おんどくなし。 はじめて太たい子しを生しょうぜんと欲ほっせし時とき、 父ちちの王おうすなはち夫ぶ人にんをして百尺ひゃくしゃくの楼ろうの上うえにありて天てん井じょうのなかに当あたりて生しょうぜしめて、 すなはち地じに堕おとして死しせしめんと望のぞむ。 まさしく太たい子しの福力ふくりきをもつてのゆゑに命みょう根こん断たえず、 ただ小しょう指しを損そんず。 もし信しんぜずは、 みづから小しょう指しを看みたまへ。 もつて験げんとなすに足たれり」 と。

~又言ク、太子莫ナカレ↠瞋イカルコト。父ノ王於オイテ↢太子ニ↡全マタク無シ↢恩オム徳↡。初テニ欲ホセシ↠生ゼムト↢太子ヲ↡時、父ノ王即チ†遣メテ↧夫人ヲシテ在リテ↢百尺シヤクノ楼ロウノ上ニ↡当アタリテ↢天*井ジヤウノ中ニ↡生ゼ↥、即チ望ムメシカドモ↢堕シテ↠地ニ令メムトムルコト↟死セ。、正シク以テノ↢太子ノ福力ヲ↡故ニ命ミヤウ根コン不ズ↠断タエ、但タダ損ソンスセリ↢小指ノミヲ↡。若シ不ハ↠信ゼ者ハ、自ラ看タマヘヨ  ↢小指シヲ↡。足タレリト↢以テ為スニルニ↟験シルシト。

^太たい子しすで0470にこの語ごを聞ききて、 さらにかさねて審あきらめていはく、 「実じつにしかりやいなや」 と。

~太子既ニ聞キキテ↢此ノ語ゴヲ↡、更ニ重カサネテ審アキラメテ言ク、実ニ爾已 シカリ ヤ不 ナヤト。

^提だい婆ば答こたへていはく、 「これもし不ふ実じつならば、 われことさらに来きたりて*漫まん語ごをなすべけんや」 と。

~提婆答ヘテ言ク、此 レ若シ†不実ナラバ、我レ可ケム↣故コトサラニ来キタリテ作ナス↢漫マン語ゴヲ↡ミダレガハシキ也ヤト。

^この語ごによりをはりてつひにすなはち提だい婆ばが悪見あくけんの計はかりごとを信用しんようす。

~因ヨリ↢此ノ語ニ↡已 ハリテ遂ツイ0692ニ即チ信↢用ヨウス提婆ガ悪見之ノ計 ゴトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)結示順教

^ゆゑに 「随ずい順じゅん調じょう達だつ悪あく友う之し教きょう」 といふ。

~故ニ噵イフ↢「†随順調達悪友之教ト」↡也。△

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)釈父王幽禁文
              (ⅰ)科節

 ^三さんに ▲「収執しゅうしゅう父ぶ王おう」 より下しも 「一いち不ふ得往とくおう」 に至いたるこのかたは、 まさしく父ちちの王おう子このために幽禁ゆうきんせらるることを明あかす。

三ニ従ヨリ↢「収執シユシフ父ブ王ト云」↡下至ル↢「一不得往ト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢父ノ王為ニ↠子ノ幽禁エウキンセラルルコトヲスルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これ闍じゃ世せ、 提だい婆ばの悪計あくけいを取とりて、 たちま0353ちに父子ぶしの情じょうを捨すつることを明あかす。 ただ*罔極もうごくの恩おんを失しっするのみにあらず、 *逆ぎゃくの響ひびきこれによりて路みちに満みてり。

~此ハ明スナリ↧闍世取トリテ↢提婆之ガ悪ノ計 ゴトヲ↡、。頓タチマチニ捨スツルコトヲ↦父子フシ之ノ情ナサケヲ↥。非ズ↣直タヾチニ失スルノミニナウノミニ↢於†罔極之恩オンヲ↡。逆ギヤクノ響ヒビキ因ヨリテ↠茲コレニ満ミテリツコトヲ↠路ミチニ。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

・収執

^▲たちまちに王おうの身みを掩おおふを 「収しゅう」 といひ、 すでに得えて捨すてざるを 「執しゅう」 といふ。 ゆゑに収執しゅうしゅうと名なづく。

~忽タチマチニ掩オホフヲ↢王ノ身ミヲ↡曰イヒフ↠収シユト、既ニ得テ不ザルヲ↠捨ステ曰イフ↠執シフト。故ニ名ク↢「収執シユシフト」↡也。△

・父王

^▲「父ぶ」 といふは別べつして親しんの極ごくを顕あらわす。 「王おう」 とはその位くらいを彰あらわす。 「頻びん婆ば」 とはその名なを彰あらわす。

▲†言フ↢「父ト」↡者別ベチシテ顕ス↢親シン之ノ極 マリヲ↡也。「王ト」†者彰アラハス↢其ノ位クラヰヲ↡也。「頻ビン婆バト」†者彰 ハス↢其ノ名ヲ↡也。

・幽閉

^▲「幽閉ゆうへい七しち重じゅう室内しつない」 といふは、 所しょ為いすでに重おもし、 事じまた軽かろきにあらず。 浅あさく*人間にんげんに禁きんずべからず、 まつたく守しゅ護ごなければなり。 ただ王おうの*宮く閤こうは理りとして*外げ人にんを絶たつとも、 ただ群臣ぐんしんあればすなはち久ひさしきよりこのかた*承じょう奉ぶせるをもつて、 もし厳制ごんせいせずはおそらくは*情じょう通つうあらん。 ゆゑに内ない外げをして交まじはりを絶たたしめて、 閉とぢて七しち重じゅうのうちに在おく。

言フ↢「幽閉エウヘイ七重室内ト」↡者ハ、所シヨ為ヰ既ニ重シ、事コト亦非ズ↠軽カロキニ。不ズ↠†可カラ↣浅ク禁ズ↢人間ニ↡、全マタク無ケレバナリ↢守シユ護ゴ↡。但タダ以テ↧王之ノ宮閤ハ†理トシテ絶ツトモ↢外グワイ人ジンヲ↡、唯タダ有レバリテ↢群臣グンシンノミ↡則チ久ヒサシキヨリク…来コノカタ承ジヨウ奉ブセルヲ↥、若シ不ズハ↢厳ゴンキビシク制セイセ↡恐オソラクハ有アラムコトヲ↢情ココロノ通スルコトカヨウ   ↡。故ニ使シメテキ↢内外ヲシテ絶タヘ↟交マジハリヲ、。閉トヂテ在オク↢七重之ノ内ウチニ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)釈夫人奉食文
              (ⅰ)科節

^四しに ▲「国大こくだい夫ぶ人にん」 より下しも 「密みつ以い上じょう王おう」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん密ひそかに王おうに食じきをたてまつることを明あかす。

四ニ従リ↢「国大夫人ト云」↡下至ル↢「密ミチ以イ上王ト云ニ」↡已来タハ、正シク明ス↣夫人密ヒソカニ奉上ルコトヲ↢王ニ食ジキヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅳ)(ⅱ)釈文

・国大夫人

^「▲国大こくだい夫ぶ人にん」 といふは、 これ最大さいだいなることを明あかす。 「夫ぶ人にん」 といふはその位くらいを標ひょうす。 「韋い提だい」 といふはその名なを彰あらわす。

言フ↢「国大夫人ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↢最サイ大ナルコトヲ↡也。言イフ↢夫人ト↡者ハ標ヘウス↢其ノ位ヲ↡也。言フ↢「韋提ト」↡者ハ彰 ハス↢其ノ名ヲ↡也。

・恭敬大王

^「▲恭く敬ぎょう大王だいおう」 といふは、 これ夫ぶ人にんすでに王おうの身み禁きんぜらるるを見みるに、 門もん戸こきはめて難かたくして、 音信いんしん通つうぜず、 おそらくは王おうの身しん命みょうを絶たつことを。

言フ↢「恭ク敬大王ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↧夫人既スデニ見ルニ↢王ノ身被ラルルヲ↟禁キンゼ、門戸コト 極キワメテ難カタクシテ音イムオム信シン不ズ↠通ゼ、恐オソラクハ絶タツタムコトヲ…  ↢王ノ身命ヲ↡、

^▲つひにすなはち香湯こうとう*滲浴しんよくして身みをして清浄しょうじょうならしめて、 すなはち*酥そ蜜みつを取とりて先まづその身みに塗ぬり、 後のちに*乾かん麨しょうを取とりてはじめて酥そ蜜みつの上うえに安おき、 すなはち0354浄じょう衣えを着きてこれを覆おおひて、 外衣げえの上うえにありてはじめて*瓔珞ようらくを着きること、 常つね0471の服法ぶくほうのごとくにして、 *外げ人にんをして怪あやしまざらしむ。

遂ツイニ即チ香湯カウタウヲシテ滲浴シンヨクシテ令シメテ↢身ヲシテ清浄ナラ↡、即チ取トリテ↢酥ソ蜜ミチヲ↡先マヅ塗ヌリ↢其ノ身ニ↡、後ニ取トリテ↢乾カハケル麨セウヲ↡始ハジメテ安オキク↢酥ソ蜜ミチ之ノ上 ヘニ↡、即チ著キテ↢浄ジヤウ衣エヲ↡覆オホヒテフ ↠之 レヲ、在アリテ↢外グヱ衣エノ上 ヘニ↡始 メテ著キルコト↢瓔珞ヤウラクヲ↡、如クニシテ↢常ノ服ブクキモノ法ノ↡、令シム↢外グワイ人ジンヲシテ不ザラ↟怪アヤシマ、

^▲また瓔珞ようらくを取とりて孔あなの一いち頭ず*蝋ろうをもつてこれを塞ふさぎ、 一いち頭ずの孔あなのなかに蒲ぶ桃どうの*漿しょうを盛もりて、 満みてをはりてまた塞ふさぐに、 ただこれ瓔珞ようらくなり。 ことごとくみなかくのごとくす。

又取トリテ↢†瓔珞ヲ↡孔ノ一頭以テ↠*臘ラウヲ塞フサギイデ↠之ヲ、一頭ヅノ孔アナノ中ニ盛モリテ↢蒲ブ桃ダウノ漿コムヅヲ↡、満ミテ已 ハリテ†還タ塞フサグニ、但タダ是 レ瓔珞ナリ、悉ク皆 ナ如クニス↠此クノ、

^▲荘しょう厳ごんすることすでに竟おわりて、 *やうやく歩あゆみて宮くに入いりて、 王おうとあひ見まみゆることを明あかす。

荘厳0693スルコト既スデニ竟オハリテ、徐ヤウヤク歩アユミテ入イリテ↠宮ミヤニ与ト↠王相 ヒ見ミユルコトヲル …  ↥。

 ^問とひていはく、 諸しょ臣しんは勅ちょくを奉うけて王おうに見まみゆることを許ゆるさず。 いぶかし、 夫ぶ人にんは*門もん家け制せいせずしてほしいままに入いることを得えしむるは、 なんの意こころかあるや。

▲問ヒテ曰ク、諸ノ臣シムハ奉ウケ下ハリテ↠勅チヨクヲ不ズ↠許ユルサ↠見ミユルコトヲル …  ↠王ニヲ。未審イブカシ、夫人ハヲバ門家ケ不ズシテ↠制セイセ放ホシイママニ令ムルハ↠得↠入イルコトヲ者ハ、有ル↢何ナニノ意カ↡也ヤ。

^答こたへていはく、 諸臣しょしんは身み異ことなりて、 またこれ*外げ人にんなり。 情じょう通つうあることを恐おそれて、 厳きびしく重じゅう制せいを加くわへしむることを致いたす。 また夫ぶ人にんは身みこれ女人にょにんにして、 心しんに*異い計けいなし。 王おうと*宿しゅく縁えん業ごう重おもくして、 久ひさしく近ちかづきて夫ふ妻さいなり。 別体べったい同心どうしんにして、 人ひとをして外げ慮りょなからしむることを致いたす。 ここをもつて入いりて、 王おうとあひ見まみゆることを得えしむ。

~答ヘテ曰ク、諸シヨノ臣シンハ身異コトナリテニ  、復是 レ外人ジンナリ。恐レテバ↠有ルコトヲ↢情通↡、致イタス↠使シムルコトヲ↣厳イツクシク加クハヘ↢重制ヂウセイヲ↡。又夫人者ハ身ハ是女人ニシテナリ 、心ニ無シ↢異コトナル計ハカリゴト↡。与ト↠王宿シフ縁ノ業ゴフ重オモクシテシ  、久ヒサシク近チカヅキテ夫フ妻サイナリ。†別体同心ニシテ、致ス↠使シムルコトヲ↣人ヲシテ無ナカラ↢外慮グヱリヨ↡。是ココヲ以テ得エシム↢入イリテ与ト↠王 ヒ相見ミユルコトヲル …  ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)釈父王請法文
              (ⅰ)科節

 ^五ごに ▲「爾時にじ大王だいおう食じき麨しょう」 より下しも 「授じゅ我が八戒はっかい」 に至いたるこのかたは、 まさしく父ちちの王おう、 禁きんによりて法ほうを請しょうずることを明あかす。

五ニ従リ↢「爾ニ時ジ大王食麨ジキセウト云」↡下至ル↢「授ジユ我八戒ト云ニ」↡已来タハ、正シク明ス↢父ノ王因ヨリテ↠禁キンニ請シヨウズルコトヲ↟法ヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

・王得食

^これ夫ぶ人にんすでに王おうに見まみえをはりて、 すなはち身しん上じょうの*酥そを刮けずり取とりて、 *麨しょう団だんをもつて王おうに授じゅ与よす。 ▲王おう得えてすなはち食じきす0355。 麨しょうを食じきすることすでに竟おわりて、 すなはち宮く内ないにおいて夫ぶ人にん浄じょう水すいを求もとめ得えて、 王おうに与あたへて口くちを漱すすがしむ。

此 レ明ス↧夫人既ニ見エ↠王ニヲ已 ハリテ、即チ†刮リ↢取トリテ身ノ上ノ酥ソヲ↡、麨団セウダンヲモテシテ授ジユ↢与ヨスルニ王ニ↡、王得エテツ即チ食スルコトヲ、食スルコト↠麨セウヲ既ニ竟オハリテ、即チ於シテ↢宮ノ内ニ↡夫人求メ↢得テ浄水ヲ↡、与アタヘテ↠王ニ漱ススガシム↠口ヲ、

・請求加護

^▲口くちを浄きよめをはりて虚むなしく時ときを引ひくべからず。 *朝ちょう心しん寄よるところなし。 ここをもつて*虔けん恭く合がっ掌しょうして、 面おもてを回めぐらして耆ぎ闍しゃに向むかひ、 敬きょうを如来にょらいに致いたして*加護かごを請しょう求ぐすることを明あかす。

浄キヨメ↠口ヲ已竟 ヲハ リテ不ズ↠可カラ↢虚ムナシク引ヒク↟時ヲ、朝テウ心シバラク無シ↠所 ロ↠寄ヨル、是ココヲ以テ虔ケンツツシミ恭キヤウ合掌シテ、廻メグラシテ↠面オモテヲ向ムカヒヘテ↢於耆ギ闍シヤニ↡、致シテ↢敬キヤウヲ如来ニ↡請シヤウ↦求グスルコトヲ加護カゴヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文
                (a)正釈

・身業敬

^これ身業しんごうの敬きょうを明あかす、 また通つうじて意い業ごうあり。

此 レ明ス↢身業ノ敬ヲ↡、亦通ジテ有リ↢意イ業↡也。

・口業請

^▲「而作是にさぜ言ごん」 以下いげは、 まさしく口く業ごうの請しょうを明あかす、 また通つうじて意い業ごうあり。

「而ニ作是言ト云ヨリ」已下ハ、正シク明ス↢口業ノ請ヲ↡、亦通ジテ有リ↢意業↡也。

・目連親友

^「▲大目連だいもくれん是吾ぜご親しん友ぬ」 といふはその二意にいあり。 ただ目連もくれん俗ぞくにありてはこれ王おうの*別親べっしんなり。 すでに出しゅっ家けを得えてすなはちこれ*門もん師しなり。 宮く閤こうに往来おうらいすることすべて*障しょう礙げなし。 しかるに俗ぞくにありては親しんとなし、 出しゅっ家けしては友うと名なづく。 ゆゑに親しん友ぬと名なづく。

言フ↢「大目連是吾ゴ親シン友ウト」↡者ハ有リ↢其ノ二意↡。但目連ハ在アリテハ↠俗ゾクニ是 レ王ノ別親ベチシンナリ。既ニ得エテ↢出家スルコトヲ↡即チ是 レ門師シナリ。往ワウ↢来ライスルコトニ 宮閤カクニ↡都スベテ無ナシ↢障シヤウ礙ゲ↡。▲然ルニモ 在アリテハ↠俗ゾクニ為シ↠親シント、出家シテハセルヲ名ク↠友ウト。故ニ名ク↢親友ト↡也。

・授我八戒

^「▲願興がんこう慈悲じひ授じゅ我が八戒はっかい」 といふは、 これ父ちちの王おう、 法ほう0472を敬うやまふ情じょう深ふかくして、 人ひとを重おもんずることおのれに過すぎたることを明あかす。 もしいまだ*幽難ゆうなんに逢あはずは、 仏僧ぶっそうを奉ぶ請じょうするに難かたしとなすに足たらず。 いますでに囚とらはれて*屈くつを致いたすに由よしなし。 ここをもつてただ目連もくれんを請しょうじて八戒はっかいを受うく。

言フ↢「願興コウ慈悲授ジユ我八戒ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↢父ノ王敬ウヤマフ↠法ヲ情コヽロ深フカクシテ、重オモンズルコトクスル… ↠人ヲ過ギタルコトヲ↟己 ノレニ。若シ未ズ ダハ↠逢アハ↢幽難エウナンニ↡、†奉↢請スルニ仏僧ソウヲ↡不ズ↠足タラ↠為スニル…↠難シト。今 マ既ニ被レテ↠囚トラハシフセ無シ↠由ヨシ↠致スニ↠屈クツヲ。是ヲ以テ但タダ請ジテ↢目連ヲ↡受ウク↢於八戒ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅴ)(ⅲ)(b)料簡

・礼世尊請目連意

 ^問とひていはく、 父ちちの王おうはるかに敬うやまふには、 先まづ世せ尊そんを礼らいし、 その受戒じゅかいに及およびてすなはち目連もくれんを請しょうずるは、 なんの意こころかあるや。

▲問ヒテ曰ク、父ノ王遥ハルカニ敬ウヤマキヤウフニハ、先ズ礼ライシ↢世尊0694ヲ↡、及ビテハ↢其ノ†受戒ニ↡即チ請ズルハ↢目連ヲ↡、有ル↢何ナニノ意カ↡也ヤ。

^答こたへていはく、 凡ぼん聖しょうの極尊ごくそん、 仏ぶつに過すぎたるはなし。 心しんを傾かたむけて願がんを発おこすにはすなはち先まづ大だい師し (釈尊) を礼らいす0356。 戒かいはこれ小しょう縁えんなり。 ここをもつてただ目連もくれんの来きたりて授さずくることを請しょうず。 しかるに王おうの意こころは貴とうとぶこと得戒とくかいに存ぞんず。 すなはちこれ義ぎあまねし。 なんぞ労いたわしく迂まげて世せ尊そんを屈くっせんや。

~答ヘテ曰ク、凡聖ノ極ゴク尊ナルコト無シ↠過スギタルハ↢於仏ニ↡。傾カタブケテ↠心ヲ発スニハシテ ↠願ヲ即チ先ヅ礼ス↢大師ヲ↡。戒ハ是 レ小縁エンナリ。是ヲ以テ唯タダ請ズ↢目連ノ来リテ授サズクルコトヲ↡。然ルニ王ノ意者ハ貴タントブコト存ゾンズ↢得戒ニヲ↡。即チ是ノ義ギ周アマネシ。何ナンゾ労ワヅラハシク迂マゲテ屈クツセム↢世尊ヲ↡也。

・請八戒不請余意

 ^問とひていはく、 如来にょらいの戒法かいほうすなはちあること無む量りょうなるに、 父ちちの王おうただ八戒はっかいのみを請しょうじて余よを請しょうぜずや。

~問ヒテ曰ク、如来ノ戒法ニ†乃チ有ルコト無量ナルニ、父ノ王唯タダ請ジテ↢八戒ノミヲ↡不ル↠請ゼ↠余ヨヲ也ヤ。

^答こたへていはく、 余よ戒かいはやや寛ひろくして*時じ節せつ長じょう遠おんなり。 おそらくは中ちゅう間げんに失念しつねんして生しょう死じに流る転てんすることを。 その八戒はっかいとは*余よの仏ぶっ経きょうに説ときたまふがごとし。 在ざい家けの人ひと、 出しゅっ家けの戒かいを持たもつ。 この戒かいの*持じ心しん極細ごくさい極ごく急きゅうなり。 なんの意こころぞしかるとなれば、 ただ時じ節せつやや促つづまりて、 ただ一日いちにち一いち夜やを限かぎりて作さ法ほうしてすなはち捨すつ。

~答ヘテ曰ク、余ノ戒ハ稍ヤヤ寛ヒロクシテ時節長遠オンナリ。恐畏オソラクハ中間ニ失シチ念シテ流↢転スルコトヲセム…  生死ニ↡。其ノ八戒ト†者如シ↢余ヨノ†仏経ニ説キタマフガ↡。在家ノ人ノ持タモツナリ↢出家ノ戒ヲ↡。此ノ戒ノハ持ヂ心†極細極急ナリ。何ナニノ意ゾ然シカルトナラバ者、但タダ時節稍ヤヤ促ツヅマリテ、唯タダ限リテ↢一日一夜ヲニ↡作サ法シテ即チ捨スツ。

^いかんがこの戒かいの*用心ようじんと行ぎょうとの*細さいなることを知しる。 *戒文かいもんのなかにつぶさに顕あらわしていふがごとし。 「*仏ぶっ子し、 *今旦こんたんより*明みょう旦たんに至いたるまで一日いちにち一いち夜や、 諸仏しょぶつの殺せっ生しょうしたまはざるがごとくよく持たもつやいなや」 と。 答こたへていはく、 「よく持たもつ」 と。

~云何 イカン ガゾ知シル↢此ノ戒ノ用ヨウ心ト†行トノ細ナルコトヲ↡。如シ↢戒文ノ中ニ具ツブサニ顕 ハシテ云フガ↡。仏子従ヨリ↢今旦コンタン↡至ルマデリテ ↢明旦タンニ↡一日一夜、†如ク↣諸仏ノ不ルガ↢殺生シタマハ↡能ク持ツヤナラムヤ不 ナヤト。答ヘテ言ク、能ク持ツトテ□□。

^第だい二ににまたいはく、 「仏ぶっ子し、 今旦こんたんより明みょう旦たんに至いたるまで一日いちにち一いち夜や、 諸仏しょぶつの、 偸ちゅう盗とうせず、 婬いんを行ぎょうぜず、 妄もう語ごせず、 飲酒おんじゅせず、 脂し粉ふんを身みに塗ぬることを得えず、 歌舞かぶ唱しょう伎ぎしおよび往ゆきて観かん聴ちょうすることを得えず、 高広こうこうの大だい床じょうに上のぼることを得えたまはざるがごとくすべし」 と。

~第二ニ又云ク、仏子シ従リ↢今旦コンタン↡至ルマデリテ ↢明旦ニ↡一日一夜、如クスベシト↧諸仏ノ不ズ↢偸盗チウタウセシ下ハ↡、不ズ↠行ゼ↠婬インヲ、不ズ↢妄マウ語ゴセ↡、不ズ↢飲酒オンジユサケ セ↡、不ズ↠得エ↢脂シ粉フンヲ塗ヌルコトヲ↟身ニ、不ズ↠得↢歌カウタイ舞ブマウヲ唱シヤウトナフ伎ギシギカク及ビ往ユキテ観ミル聴チヤウキク スルコトヲ↡、不ザルガ↞得エタマハ↠上ノボルコトヲ↢高カウ広クワウノ大床シヤウユカ ニ↡。

^この上かみの八はちはこれ戒かいにして斎さいにあらず。 *中ちゅう0357を過すぎて食じきすることを得えず、 この一いちはこれ斎さいにして戒かいにあらず。 これらの諸戒しょかいみな諸仏しょぶつを引ひきて証しょうとなす。 なにをもつてのゆゑに。 ただ仏ぶつと仏ぶつとのみ*正習しょうじゅうともに尽つくしたまへり。 仏ぶつを除のぞきて以い還げんは*悪あく習じゅう等とうなほあり0473。 このゆゑに引ひきて証しょうとなさず。 ここをもつて知しることを得う。 この戒かいの用心ようじんと起き行ぎょうときはめてこれ*細さい急きゅうなり。

~此ノ上 ミノ八ハ是 レ戒ニシテ非ズ↠斎サイニ。不レ↠得エ↢過スギテ↠中ヲ食ジキスルコトヲ↡、此ノ一ハ是 レ斎ニシテ非ズ↠戒ニ。此等ノ諸戒皆引ヒキテ↢諸仏ヲ↡為ス↠証ト。何 ニヲ以テノ故ニ。唯タダ仏ト与トノミ↠仏正習ジフ倶トモニ尽ツクシタマヘリ。除キテ↠仏ヲ已還コノカタハ悪習ジフ†等由ナホ在アリ。是ノ故ニ不ズ↢引ヒキテ†為サ↟証ト也。是ヲ以テ得ルニ↠知ルコトヲ。、此ノ戒ノ用心ヨウジント起キ行ト極 メテ是 レ細急サイキウナリ。

^またこの戒かいには、 仏ぶつ八種はっしゅの*勝しょう法ぼうありと説ときたまへり。 もし人ひと一日いちにち一いち夜やつぶさに持たもちて犯おかさざれば、 所得しょとくの功く徳どく、 人にん・天てん・二に乗じょうの境きょう界がいに超ちょう過かせり。 *経きょうに広ひろく説ときたまふがごとし。 この益やくあるがゆゑに、 父ちちの王おうをして日々にちにちにこれを受うけしむることを致いたす。

~又此ノレ戒ニハ仏説キタマヘリ↠有リト↢八種ノ勝法↡。若シ人一日一夜具ツブサニ持タモチテ不ザレバ↠犯ボンサセ、所シヨ得ノ功徳超テウ↢過クワセリ人・天・二乗ノ境界ニ↡。如シ↢経ニ広0695ク説キタマフガ↡。有ルガ↢斯コノ益↡故ニ、致ス↠使ムルコトヲ↢父ノ王ヲシテ日日ニ受ウケ↟之ヲ。△

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)釈父王受法文
              (ⅰ)科節

 ^六ろくに ▲「時じ大だい目連もくれん」 より下しも 「為い王おう説法せっぽう」 に至いたるこのかたは、 その父ちちの王おう請しょうによりて聖しょう法ぼうを蒙こうむることを得うることを明あかす。

六ニ従リ↢「時大目連ト云」↡下至ル↢「為王説法ト云ニ」↡已来タハ、明ス↢其ノ父ノ王ノ因ヨリテ↠請ニ得ルコトヲ↟蒙カブルコトヲ↢聖法ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これ目連もくれん、 他た心しん智ちを得えてはるかに父ちちの王おうの請しょう意いを知しりて、 すなはち神通じんずうを発おこして*弾だん指しのあひだのごとくに王おうの所ところに到いたることを明あかす。

此 レ明ス↧目連得テ↢他タ心智チヲ↡遥ハルカニ知リテ↢父ノ王ノ請ノ意ヲ↡、即チ発シテ↢神通ヲ↡如クニ↢弾ダン指シノ頃アヒダノ↡到イタルコトヲ↦於王ノ所 ロニ↥。

^▲またおそらくは人ひと神通じんずうの相そうを識しらざらん。 ゆゑに*快け鷹おうを引ひきて喩たとへとなす。 しかるに目連もくれんの通力つうりきは、 一念いちねんのあひだに四し天てん下げを繞めぐること百ひゃく千せんの帀そうなり。 あに鷹おうと類るいをなすことを得えんや。 かくのごとき*比ひ校きょうはすなはち衆しゅ多たあり。 つぶさに引ひくべからず。 ¬賢げん愚ぐ経きょう¼ につぶさに説ときたまふがごとし。

又恐オソクハ人不ラム↠識ラ↢神通之ノ相ヲ↡。故ニ▲引ヒキテ↢快トキ鷹タカヲ↡為ス↠喩タトヒト。然ルニモ 目連ノガ通力ハ、一念之ノ頃アヒダニ遶メグルコト↢四天下ヲ↡百千之ノ帀サウナリ。豈アニ得エム↢与ト↠鷹為スコトヲル…  ↟類タグヒト也。如キノ↠是クノ比ヒ校ケウハニ乃チ有リ↢衆多↡。不ズ↠可カラ↢具ツブサニ引ヒク↡。如シ↢¬賢ゲン愚グ経ニ¼具ニ説キタマフガ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅵ)(ⅲ)釈文

・受戒

^「▲日にち0358日にち如にょ是ぜ授王じゅおう八戒はっかい」 といふは、 これ父ちちの王おう命いのちを延のべて、 目連もくれんしばしば来きたりて戒かいを受うけしむることを致いたすことを明あかす。

言フ↢「日日如是授ジユ王八戒ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↧父ノ王ノ延ノベテ↠命イノチヲ致スコトヲ↞使ムルコトヲ↢目連ヲシテ数シバシバ来キタリテ受ウケ↟戒ヲ。

 ^問とひていはく、 八戒はっかいすでに勝すぐれたりといふは、 一ひとたび受うくるにすなはち足たりぬ。 なんぞ日々にちにちにこれを受うくるを須もちゐん。

▲問ヒテ曰ク、八戒既ニ言フ↠勝スグレタリト者ハ、一タビ受ウクルニ即チ足タリヌ。何ナンゾ†須ヰム↢日日ニ受クルヲ↟之ヲ。

^答こたへていはく、 山やまは高たかきを厭いとはず、 海うみは深ふかきを厭いとはず、 刀かたなは利ときを厭いとはず、 日ひは明あかきを厭いとはず、 人ひとは善ぜんを厭いとはず、 罪つみは除のぞこるを厭いとはず、 賢げんは徳とくを厭いとはず、 仏ぶつは聖しょうを厭いとはず。

~答ヘテ曰ク、山ハ不ズ↠厭イトハ↠高タカキコトヲ、海 ミハ不ズ↠厭ハ↠深フカキコトヲ、刀カタナハ不ズ↠厭ハ↠利トキコトヲ、日ハ不ズ↠厭ハ↠明キヲ、人ハ不ズ↠厭ハ↠善ゼンヨキヲ、罪 ミハ不ズ↠厭ハ↠除ノゾコルヲ、賢ケンハカシコシ不↠厭ハ↠徳ヲ、仏ハ不↠厭ハ↠聖ヲ。

^しかるに王おうの意こころはすでに囚しゅう禁きんせられて、 さらに進しん止しを蒙こうむらず。 念々ねんねんのうちに人ひとの喚よび殺ころすことを畏おそる。 これがために昼ちゅう夜やに心しんを傾かたむけ、 仰あおぎて八戒はっかいを憑たのむ。 善ぜんを積つむことますます高たかきことを望欲もうよくして*来業らいごうを資しせんと擬ぎす。

~然ルニモ 王ノ意者ハ既ニ被ラレテ↢囚禁シユキンイマシメセ↡、更ニ不ズ↠蒙カブラ↢進止シヲ↡。念念之ノ中ニ畏オソル↢人ノ喚ヨバビイ殺コロスサムコトヲ…  ↡。為ニ↠此 レガ昼夜ニ傾カタブケテ↠心ヲ、仰アオギテ憑タノム↢八戒ヲ↡。†望↢欲シテ積ムコト↠善ヲ増ス高キコトヲ↡擬ス↠資セムト↢来業ヲ↡。△

・説法

 ^「▲世せ尊そん亦遣やくけん富楼那ふるな為い王おう説法せっぽう」 といふは、 これ世せ尊そん慈悲じひの意こころ重おもくして、 王おうの身みを愍念みんねんしたまふに、 たちまちに囚しゅう労ろうに遇あひて、 おそらくは憂う悴すいを生しょうずることを。

言フ↢「世尊亦遣ケン富楼那フルナ為王説法ト」↡者ハ、▲此 レ†明ス↧世尊ノ慈悲ノ意重オモクシテ、愍ミン↢念シタマフニ王ノ身ヲ↡、忽タチマチニ遇アヒテ↢囚シユイマシメ 労ラウニワヅラフ↡、恐オソラクハ生ズルコトヲゼム…  ↢憂悴ヲ↡、

^しかるに*富楼那ふるなは聖しょう弟子でし0474のなかにおいてもつともよく説法せっぽうし、 よく方便ほうべんありて人ひとの心しんを開発かいほつす。 この因縁いんねんのために、 如来にょらい*発遣はっけんして王おうのために法ほうを説ときて、 もつて憂う悩のうを除のぞかしめたまふことを明あかす。

~然ルニモ 富楼フル那者ハ於オイテ↢聖弟子シノ中ニ↡最モトモ能ク†説法シ、善ヨク有リテ↢方便↡開↢発ス人ノ心ヲ↡、為ニ↢此ノ因イン縁ノ↡、如来発遣ハチケンシテ為ニ↠王ノ説キカシメテ…↠法ヲ、以テ除カシメタマフコトヲ↦憂ウ悩ナウヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)釈多日不死文
              (ⅰ)科節

^七しちに ▲「如にょ是ぜ時じ間けん」 より下しも 「顔色げんしき和わ悦えつ」 に至いたるこのかたは、 まさしく父ちちの王おう、 食じきと聞法もんぼうとによりて多た日にち死しせざること0359を明あかす。

七ニ従リ↢「如是時間ト云」↡下至ル↢「顔色ゲンシキ和ワ悦エチト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↧父ノ王因ヨリテ↢食ジキト聞モン法トニ↡多日マデ不ザルコトヲ↞死セ。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

^これまさしく夫ぶ人にん多時たじに食じきをたてまつりて、 もつて飢き渇かつを除のぞき、 二に聖しょう (目連・富楼那) また戒法かいほうをもつてうちに資たすけてよく王おうの意こころを開ひらく。 食じきはよく命いのちを延のべ、 戒法かいほうは*神じんを養やしなひて、 苦くを失しっし憂うれひを亡もうじて、 顔容げんよう和わ悦えつならしむることを致いたすことを明あかす。

~此ハ正シク†明0696ス↧夫人多時ニ奉リテ↠食ヲ以テ除ノゾキ↢飢ケ渇カツヲ↡、二聖又以テ↢戒法ヲ↡内ナイニヨリ資タスケテ善ヨク開ク↢王ノ意ヲ↡、食ジキハ能ク延ノベ↠命ヲ、戒法ハ養ヤシナヒテ↠神ジンヲ、失シチシ↠苦クヲ亡マウジテ↠憂ウレヘヲ、致スコトヲ↞使ムルコトヲ↢顔容ゲンヨウ和ワ悦エチナラ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (三)結

^上じょう来らい七しち句くの不ふ同どうありといへども、 広ひろく禁ごん父ぶの縁えんを明あかしをはりぬ。

上来雖モ↠有リト↢七句クノ不同↡、広ク明シ↢禁キン父ブノ縁ヲ↡竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b ハ【禁母縁】
          (一)標

【7】 ^三さんに↑禁ごん母もの縁えんのなかにつきてすなはちその八はちあり。

▲三ニ就ツキテ↢禁キン母モノ縁ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ八↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)釈
            (Ⅰ)釈問父音信文
              (ⅰ)科節

^一いちには ▲「時じ阿あ闍じゃ世せ」 より下しも 「由ゆ存在ぞんざい耶や」 に至いたるこのかたは、 まさしく父ちちの音信いんしんを問とふことを明あかす。

一ニハ従リ↢「時阿闍世ト云」↡下至ル↢「由ユ存ゾン在耶ヤト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↠問フコトヲ↢父ノ音イム信ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これ闍王じゃおう、 父ちちを禁きんずること日数にっしゅすでに多おおし。 人ひとの交まじはりすべて絶たえ、 水食すいじき通つうぜずして*二に七しち有余うよなり。 命いのち終おわるべし。 この念ねんをなしをはりて、 すなはち宮く門もんに致いたりて守門しゅもんのものに問とひて、 「父ちちの王おういまなほ存在ぞんざいせりや」 といふことを明あかす。

~此 レ†明ス↧闍王禁キンズルコト↠父ヲ日数既ニ多オオシ、人ノ交マジハリ総ソウテジテ絶タエ、水食ジキ不ズシテ↠通ゼ二七有余ウヨナリ、命 チ応シ↠終ル也、作ナシ↢是ノ念ヲ↡已 ハリテ即チ*致リテ↢宮門キウモンニ↡問ヒテハク↢守門ノ者 ノニ↡、父ノ王†今者 イマ 猶存在セリ耶トイフコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)料簡
                (a)問

 ^問とひていはく、 もし人ひと一餐いちざんの飯いいを食じきして、 限かぎり七日しちにちに至いたりぬればすなはち死しす。 父ちちの王おう*三七さんしちを経へたるをもつて計はかるに、 命いのち断たゆべきこと疑うたがいなし。 闍王じゃおうなにをもつてかただちに問とひて、 「門もん家け、 父ちちの王おういま死ししをはれりや」 といはずして、 いかんぞ疑ぎを致いたして「なほ存在ぞんざいせりや」 と問とへるは、 なんの意こころかあるや。

問ヒテ曰ク、若シ人食ジキシテ↢一餐ザム之ノ飯ボンイヒヲ↡、限カギリ至リヌレバ↢七日ニ↡即チ死ス。父ノ王以テ↠経ヘタルヲ↢三七ヲ↡計ハカルニ、合ベキコト↢命 チ断タユ↡無シ↠疑 ヒ。闍王何ナニヲ以モテカ不ズシテ↣直タダチニ問ヒテ、曰イハ↢門家、ノ父ノ王今者 イマ 死シ竟オハレリ耶ヤト↡、云何 イカヾ ゾ致イタシテ↠疑 ヒヲ而シカモ問トヘル↢猶ナホ存在セリヤトセルカ…↡者、有ル↢何 ニノ意カ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅰ)(ⅲ)(b)答

^答こたへていはく、 これはこれ闍王じゃおう*意い密みつの問といなり。 ただおもんみれば*万ばん基きの主しゅなれば、 *挙こ0360動どう随ずい宜ぎなるべからず。 父ちちの王おうすでにこれ天てん性しょう情こころ親したし、 いひて 「死しせりや」 と問とふべきことなし。 おそらくは失とが、 当とう時じにありて、 もつて*譏過きかを成じょうずることを。 ただおもんみれば内心ないしんに死しを標ひょうして、 口くちに 「ありや」 と問とへるは、 永ながき*悪あく逆ぎゃくの声なを息やめんと欲ほっするがためなり。

答ヘテ曰ク、此 レハ是 レ闍王意イ密ミチノ問モン也ナリ。但シ†以レバ万マム基キ之ノ主ナレバ、挙コ動ドウ不ズ↠†可カラ↢随宜ナル↡。父ノ王既ニ是 レ天性セイ情ココロ親シタシ、無シ↠容ベキコト↢†言ヒテ問フ↟死セリヤト。恐オソラクハ失トガ在アリテ↢当タウ時ジニ↡、以テ成ズルコトヲゼム…  ↢譏キソシリ過クワトガヲ↡。但以オモムミレバ内心ニ標ヘウシテアラハス ↠死ヲ、口ニ問トヘルフ ↠在アリヤト者ハ、為タメ↠欲ホツスルガ↠息ヤメムト↢永ナガキ悪逆之ノ声ナヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)釈門家具答文
              (ⅰ)科節

 ^二にに ▲「時じ守門しゅもん人にん白びゃく言ごん」 より下しも 「不可ふか禁制きんぜい」 に至いたるこのかた0475は、 まさしく門もん家け事じをもつてつぶさに答こたふることを明あかす。

二ニ従リ↢「時守門人白言ゴント云」↡下至ル↢「不可禁制キンゼイト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢門家以テ↠事ジヲ具ツブサニ答コタフルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これ闍じゃ世せ前さきに 「父ちちの王おうありや」 と問とへば、 いま次つぎに門もん家け奉ぶ答とうすることを明あかす。

此ハ明ス↧闍世前 キニ†問ヘバ↢父ノ王在リヤト↡者、今 マ次ニ門家奉ホウ答タウスルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

・奉食事

^▲「白びゃく言ごん大王だいおう国大こくだい夫ぶ人にん」 といふ以下いげは、 まさしく夫ぶ人にん↓密ひそかに王おうに食じきをたてまつるに、 王おうすでに食じきを得う。 食じきよく命いのちを延のべて、 多た日にちを経ふといへども父ちちの命いのちなほ存ぞんず。 これすなはち夫ぶ人にんの意こころにして、 この門もん家けの過とがにはあらずといふことを明あかす。

「白言大王国大夫人トイフヨリ」已下ハ、▲正シク†明ス↧夫人密ヒソカニ奉ルニ↢王ニ食ジキヲ↡、王既ニ得テ↠食ヲ、食能ク延ノベテ↠命ヲ、雖モ↠経フト↢多日ヲ↡父ノ命0697猶ナホ存ズ、此 レ乃チ夫人之ノ意ニシテナリ 、非ズトイフコトヲ↦是ノレ門家之過トガニハ↥。

 ^問とひていはく、 夫ぶ人にん食じきをたてまつるに、 身みの上うえに麨しょうを塗ぬりて衣ころもの下したに密ひそかに覆おおふ。 出入しゅつにゅう往還おうげんするに、 人ひとの見みることを得うることなし。 なんがゆゑぞ門もん家けつぶさに夫ぶ人にん食じきをたてまつる事じを顕あらわす。

問ヒテ曰ク、夫人奉ルニ↠食ヲ、身ノ上 ヘニ塗ヌリテ↠麨セウヲ衣キヌノ下シタニ密ヒソカニ覆フテ。、出入往ユキ還カヘルスルニ、無シ↢人ノ得ルコト↟見ルコトヲ。何ガ故ゾ門家具ツブサニ顕スヤ↢夫人ノ奉ル↠食ヲ之事コトヲ↡。

^答こたへていはく、 一切いっさいの*私し密みつ久ひさしく行ぎょうずべからず。 たとひ巧たくみに牢かたく蔵かくせども、 事じ還かえりて彰露あらわる。 父ちちの王おうすでに禁きんぜられて宮く内ないにあり、 夫ぶ人にん日々にちにちに往還おうげんす。 もし密ひそかに麨しょうを持もちて食じきせしめずは、 王おうの命いのち0361活いくること得うるに由よしなし。

答ヘテ曰ク、一切ノ*私密不ズ↠可カラ↢久シク行ズ↡。縦タトヒ巧タクミニ牢カタク蔵カクセドモ、事ジ還カヘリテ彰露 アラハ アラハレアラハルルレヌ。父ノ王既ニ禁キンゼラレテ在アリ↢宮内ニ↡、夫人日日ニ往還ス。若シ不ズハ↢密ヒソカニ持モチテ↠麨セウヲ食ジキセシメ↡、王ノ命 チ無シ↠由ヨシ↠得ルニ↠活イクルコト。

^いま 「↑密みつ」 といふは、 門もん家けに望のぞめて夫ぶ人にんの意こころを述のぶるなり。 夫ぶ人にん密かくして*外げ人にん知しらずと謂おもへども、 その門もん家けことごとくもつてこれを覚さとらざらんや。 いますでに事じ窮きわまりて、 あひ隠かくすに由よしなし。 ここをもつて一々いちいちつぶさに王おうに向むかひて説とく。

今 マ言フ↠密ミツト者ハ、望ノゾメテ↢門家ニ↡述ノブル↢夫人ノ意ヲ↡也。夫人謂オモヘドモ↢密カクシテ外グワイ人ジンニ不ズト↟知ラレ、不ザラムヤ↢其ノ門家尽コトゴトク以テ覚サトラ↟之ヲ。今 マ既ニ事コト窮リテメ…、無シ↠由ヨシ↢相 ヒ隠カクスニ↡。是ヲ以テ一一ニ具ツブサニ向ヒテ↠王ニ説トク。

・説法事

 ^▲「沙門しゃもん目連もくれん」 といふ以下いげは、 まさしく二に聖しょう (目連・富楼那) 空くうに騰あがりて来らい去こし、 門もん路ろによらず。 日々にちにちに往還おうげんして王おうのために法ほうを説とく。 大王だいおうまさに知しるべし。 *夫ぶ人にんの進食しんじき先さきに王おうの教きょうを奉うけず、 ゆゑにあへて*遮約しゃやくせず。 二に聖しょう空くうに乗じょうず、 これまた*門制もんせいによらずといふことを明あかす。

言フ↢「沙門目連ト」↡已下ハ、正シク†明ス↧二聖騰ノボリテ↠空ニ来ライ去コシスルコト、不ズ↠由ヨラ↢門路ロニ↡、日日ニ往還シテ為ニ↠王ノ説ク↠法ヲ、大王当ベ ニシ↠知ル、夫人ノ†進食先サキニ不ズ↠奉ケ下ハラ↢王ノ教ヲ↡、所以コノユヘニ不↢敢アヘテ遮シヤサヘギリ約ヤクセ↡トドメズ、二聖乗ジヨウズ↠空ニ、此 レ亦不ズトイフコトヲ↞猶ヨラ↢門制セイニ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)釈闍王瞋怒文
              (ⅰ)科節

^三さんに ▲「時じ阿あ闍じゃ世せ聞もん此語しご」 より下しも 「欲害よくがい其母ごも」 に至いたるこのかたは、 まさしく世せ王おうの瞋しん怒ぬを明あかす。

三ニ従リ↢「時阿闍世聞此語ゴト云」↡下至ル↢「欲害ガイ其ゴ母ト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢世王ノ瞋怒イカルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これ闍王じゃおうすでに門もん家けの*分疏ぶんしょを聞ききをはりて、 すなはち夫ぶ人にんにおいて心しんに悪あく怒ぬを起おこし、 口くちに悪あく辞じを陳のぶることを明あかす。

~此 レ明スシ↧闍王既ニ聞キキ↢門家ノ分疏シヨヲ↡已オハリテ、即チ於シテ↢夫人ニ↡心ニ起オコシ↢悪怒ヌヲ↡、口ニ陳ノブルコトヲ↦悪アシキ辞コトバヲ↥。、

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

・逆悪

^また三業さんごうの逆ぎゃくと三業さんごうの悪あくとを起おこす。 父母ぶもを罵ののしりて賊ぞくとなすを口く業ごうの逆ぎゃくと名なづく。 沙門しゃもんを罵ののしるを口く業ごうの悪あくと名なづく。 剣けんを執とりて母ははを殺ころさんとするを身業しんごうの逆ぎゃくと名なづく。 身しん口くの所しょ為い、 心しんをもつて主しゅとなすを、 すなはち意い0476業ごうの逆ぎゃくと名なづく。 また*前ぜん方便ほうべんを悪あくとなし、 *後のちの正行しょうぎょうを逆ぎゃくとなす。

~又†起オコス↢三業ノ逆ト三業ノ悪トヲ↡。罵ノリテ↢父母ヲ↡為スヲル…↠賊ゾクト名ナヅクケ↢口業ノ逆ギヤクト↡。、罵ノルヲ↢沙門ヲ↡者バ名クケ↢口業ノ悪ト↡。、執トリテ↠剣ケンヲ殺サムトスルヲ↠母ヲ名ク↢身業ノ逆ト↡。身口ノ†所為以テ↠心ヲ為スヲ↠主シユト、即チ名ク↢意業ノ逆ト↡。又復前ゼン方便ヲ為シ↠悪ト、後ノ正行ヲ為ス↠逆ト。△

・罵其母

^▲「我母がも是ぜ賊ぞく」 といふ以下いげは、 まさしく口くちに悪あく辞じを出いだすことを明あかす。 いかんぞ母ははを罵ののしりて、 「賊ぞく0362なり、 賊ぞくの伴ともなればなり」 となす。 ただ闍王じゃおうの元もとの心しん怨あだを父ちちに致いたし、 早はやく終おわらざることを恨うらむに、 母ははすなはち和わしてために糧かてを進すすむるがゆゑに死しせざらしむ。 このゆゑに罵ののしりて、 「わが母はははこれ賊ぞくなり、 賊ぞくの伴ともなればなり」 といふ。

言フヨリ↢「我母是賊ゾクト云」↡已下ハ、▲正シク明ス↣口ニ出スコトヲ↢悪ノ辞コトバヲ↡。云何ゾ罵ノリテ↠母ヲ、†為ス↢賊ナリ賊之伴ナレバナリト↡也。但シ闍王ノ元モトノ心致シス↢怨ウラミヲ於父ニ↡、†恨ムニ↠不ルコトヲ↢早ハヤク終オハラ↡、母ノ乃チ*和ワシテ†為ニ進ムルガ↠糧カテヲ故ニ令シム↠不ザラ↠死0698セ。是ノ故ニ罵ノリテ言イフ↢我ガ母ハ是 レ賊ゾクナリ、賊ゾク之ノ伴トモナレバナリト↡也ナリ。

・瞋二聖

^▲「沙門しゃもん悪人あくにん」 といふ以下いげは、 これ闍じゃ世せ、 母ははの食じきを進すすむることを瞋いかり、 また*沙門しゃもん、 王おうのために来らい去こすることを聞ききて、 さらに瞋心しんしんを発おこさしむることを致いたすことを明あかす。 「ゆゑになんの呪しゅ術じゅつありてか悪王あくおうをして多た日にちに死しせざらしむ」 といふ。

言イフ↢「沙門悪人ト」↡已下ハ、▲此ハ†明ス↧闍世瞋リ↢母ノ進ムルコトヲ↟食ヲ、復聞キキテ↢沙門与タメニ↠王ノ来ライ去コスルコトヲ↡、致スコトヲ↞使ムルコトヲ↣更ニ発サ↢瞋シン心ヲ↡。故ニ云イフ↧有リテカ↢何ノナル呪ジユ術ジユツ↡而令シムルト↦悪王ヲシテ多日ニ不ザラ↞死セ。

・欲害母

^▲「即そく執しゅう利り剣けん」 といふ以下いげは、 これ世せ王おうの瞋いかり盛さかりにして、 逆ぎゃく母ははに及およぶことを明あかす。 なんぞそれ痛いたましきかな。 頭こうべを撮とりて剣けんを擬ぎす。 身しん命みょうたちまちに須しゅ臾ゆにあり。 *慈母じも合がっ掌しょうして身みを曲まげ頭こうべを低たれ、 *児この手てに就つく。 夫ぶ人にんその時とき熱あつき汗あせあまねく流ながれて、 *心神しんじん悶絶もんぜつす。 ああ哀あわれなるかな、 *怳忽こうこつのあひだにこの苦く難なんに逢あへること。

言イフ↢「即ソク執シツ利リ剣ケント」↡已下ハ、▲此 レ明ス↣世王ノ瞋イカリ盛サカリニシテ、逆ギヤク及オヨブコトヲ↢於母ニ↡。何ゾ其ソレ痛イタマシキ哉カナヤ。撮トリテ↠頭カウベヲ擬アスツ↠剣ケンヲ。身命頓タチマチニ在アリ↢須シユ臾ユニ↡。慈母合掌シテ曲マゲ↠身ヲ*低タレ↠頭ヲ、就ツク↢児ニ之ノ手テニ↡。夫人爾ノ時熱アツキ汗アセ遍アマネク流ナガレテ、心神悶絶モンゼツス。嗚呼 ア哀アハレナル哉カナ、怳クヰウ忽コツ之ノ間ニ逢アヘルコト↢斯コノ苦ク難ナンニ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)釈二臣切諌文
              (ⅰ)科節

^四しに ▲「時じ有う一臣しん名みょう曰わつ月光がっこう」 より下しも 「却行きゃくぎょう而に退たい」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく二に臣しん (*月光・*耆婆) *切諌せっかんして聴ゆるさざることを明あかす。

四ニ従リ↢「時有一臣シン名曰月光ト云」↡下至ル↢「却キヤク行而ニ退ト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢二臣シン切諌セツカンオシフシテ不ザルコトヲ↟聴ユルサ。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^これ二に臣しんはすなはちこれ国くにの輔ほ相しょう、 立政りっせいの綱こう紀きなり。 万国ばんこくに名なを揚あげ、 *八方はっぽう*昉ほう習じゅうすることを得えんと望のぞむ。 たちまちに闍王じゃおうの*勃ぼつ逆ぎゃくを起おこして、 剣けんを執とりてその母ははを殺ころさんと欲ほっするを見みて、 この悪あく事じを見みるに忍しのびず。 つひに耆婆ぎばと*顔かおを犯おかして諌かんを設もうくることを0363明あかす。

▲此ハ明ス↩二臣ハ乃チ是 レ国之ノ輔フ相、立政リウセイマツリゴト之 綱カウオホツナ*記キナリ、望ノゾム↠得ムト↢万バン国ニ揚アゲ↠名ヲ、八方ニ昉習ハウジフスルコトヲ↡、忽タチマチニ†見テ↧闍王ノ起シテ↢於勃ボツニワカニ逆ギヤクヲ↡執トリテ↠剣ヲ欲スルヲ↞殺サムト↢其ノ母ヲ↡、†不↠忍ビ↠見ルニ↢斯コノ悪事ヲ↡、遂ツイニ与ト↢耆婆ギバ↡犯オカシテ↠顔カホヲ設マウクルコトヲ↝諌カンヲイサミ也。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

^「▲時じ」 といふは、 闍王じゃおう母ははを殺ころさんと欲ほっする時ときに当あたれり。 「▲有う一いち大臣だいじん」 といふはその位くらいを彰あらわす。 「▲月光がっこう」 といふはその名なを彰あらわす。 「▲聡そう明みょう多智たち」 といふはその徳とくを彰あらわす。

▲言イフ↢「時ト」↡者ハ、†当レリ↢闍王欲スル↠殺コロサムト↠母ヲ時ニ↡也。言フ↢「有ウ一大臣ト」↡者ハ彰アラハス↢其ノ位ヲ↡也。言フ↢「月光ト」↡者ハ、▲彰ス↢其ノ名ヲ↡也。言フ↢「聡ソウ明多智チト」↡者ハ▲彰ス↢其ノ徳ヲ↡也。

^「▲及ぎゅう与よ耆婆ぎば」 といふは、 耆婆ぎばはまたこれ父ちちの王おうの子こにして、 *奈な女にょの児こなり。 たちまちに*家け兄きょうの母ははにおいて逆ぎゃくを起おこすを見みて、 つひに月光がっこうと同おなじく諌いさ0477む。

言フ↢「及ギウ与ヨ耆婆ギバト」↡者ハ、耆婆ハ▲亦是 レ父ノ王之ノ子ニシテ、奈ナ女之ノ児ニナリ。忽タチマチニ見テ↢家ケ兄キヤウ アニ ノ於オイテ↠母ニ起スヲ↟逆ヲ、遂ツイニ与ト↢月光↡同ジク諌ム。、

^「▲為い王おう作さ礼らい」 といふは、 おほよそ*大人だいにんを*諮し諌かんせんと欲ほっする法ほうは、 かならずすべからく拝はいを設もうけて、 もつて身しん敬きょうを表あらわすべし。 いまこの二に臣しん (月光・耆婆) もまたしかなり。 先まづ身しん敬きょうを設もうけて王おうの心しんを覚動かくどうし、 手てを斂おさめ躬くを曲まげてまさに本ほん意いを陳のぶ。

言イフ↢「為王作礼ト」↡者ハ、凡オホヨソ欲スル↣諮シ↢トブラヒ諌カンセムトオソフ  大人ニンヲ↡之法ハフハ、要カナラズ須スベカラベ  クシ↣設マウケテ↠拝ハイヲ、以テ表ヘウス↢身敬キヤウヲ↡。今此ノ二臣シンモ亦爾シカナリ。先ヅ設ケテ↢身敬ヲ↡覚カク↢動ドウシス王ノ心ヲ↡、斂オサメ↠手ヲ曲マゲテ↠躬ミヲ方マサニ陳ノブ↢本意ヲ↡也。

^また 「▲白びゃく言ごん大王だいおう」 といふは、 これ月光がっこうまさしく辞ことばを陳のべんと欲ほっして、 闍王じゃおう、 心しんを開ひらき*聴ちょう攬らんすることを得えんと望のぞむことを明あかす。 この因縁いんねんのためのゆゑに、 先まづ 「白びゃく」 を須もちゐる。

又「白言大王トイフ」者ハ、此 レハ明ス↢月光正シク†欲シテ↠陳ノベムト↠辞コトバヲ、望ノゾムコトヲ↟得エムト↢闍王開キテ↠心ヲ聴チヤウ キキ 0699攬ランミルスルコトヲセム…  ↡。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ、†須ヰル↢先ヅ白スヲ↡。

^「▲臣聞しんもん毘陀びだ論ろん経きょう説せつ」 といふは、 これ広ひろく*古こ今こんの書しょ史し、 歴帝れきていの文もん記きを引ひくことを明あかす。 古こ人じんいはく、 「▼いふこと典てんに関あずからざるは君くん子しの慚はづるところなり」 と。 いますでに諌かん事じ軽かろからず、 あに虚こ言ごんをもつて妄説もうせつすべけんや。

言イフ↢「臣シン聞モン毘陀論経説ト」↡者ハ、▲此ハ明ス↣広ク引ヒクコトヲ↢古コ今コムノ書シヨフミ史シ・歴帝レキテイ之文ブン記キヲシルス↡。古コイニシヘ人ジンノ云ク、言イフコト不ザルハ↠関アヅカラ↠典テンニ君クン子シノ所 ロナリト↠慚ハヅル。今 マ既ニ諌カンズル事コト不ズ↠軽カロカラ。豈アニ可ケムヤ↢虚コ言ゴンヲモテ妄マウ説ス↡。

^「▲劫初こうしょ以い来らい」 といふはその時ときを彰あらわす。

言イフ↢「劫初コフシヨ已イ来ライト」↡者ハ▲彰ス↢其ノ時ヲ↡也。

^「▲有う諸しょ悪王あくおう」 といふは、 これ総そうじて非ひ礼れい暴ぼう逆ぎゃくの人ひとを標ひょうすることを明あかす。

言フ↢「有ウ諸悪王ト」↡者ハ、▲此 レハ明ス↣総ソウジテ*標スルコトヲ↢非ヒ礼レイ暴ボアラキ逆之ノ人ヲ↡也。

^「▲貪国とんごく位故いこ」 といふは、 これ*非意ひいに父ちちの坐ざ処しょを貪奪とんだつするところを明あかす。

言フ↢「貪トム国位ヰ故コト」↡者ハ、▲此ハ明ス↤非意ヒイニ所 ロヲ↣貪トン↢奪ダツウバウスル父ノ坐処ヲ↡也。

^「▲殺害せつがい其父ごぶ」 といふは、 こ0364れすでに父ちちにおいて悪あくを起おこすことは久ひさしく留とどむべからず。 ゆゑにすべからく命いのちを断だんずべしといふことを明あかす。

言フ↢「殺害セチガイ其父ゴブト」↡者ハ、▲此ハ明ス↧既ニ於オイテ↠父ニ起スコトハニ  ↠悪ヲ不ズ↠可カラ↢久シク留トドムマル↡、故ニ須ベ クシトイフコトヲ↞断ズツ↠命ヲ也。

^「▲一万いちまん八千はっせん」 といふは、 これ王おういま父ちちを殺ころすことは、 かれと類同るいどうすることを明あかす。

言フ↢「一万八千ト」↡者ハ、▲此明ス↢王今殺ス コトハセルコト ↠父ヲ、与ト↠彼カレ類ルイ同スルコトヲ↡也。

^「▲未み曽聞ぞうもん有無うむ道害どうがい母も」 といふは、 これ古いにしえより今いまに至いたるまで、 父ちちを害がいして位くらいを取とることは*史し籍じゃくやや談だんずるも、 国くにを貪とんじて母ははを殺ころすことはすべて記きせる処ところなきことを明あかす。 もし劫初こうしょ以い来らいを論ろんぜば、 悪王あくおう国くにを貪とんぜしに、 ただその父ちちを殺ころして慈母じもに加くわへず。

言フ↢「未ミ曽ゾウ聞有無道害ガイ母ト」↡者ハ、▲此明ス↣自ヨリ↠古イニシヘ至ルマデリテ ↠今ニ、害シテ↠父ヲ取ル コトハレル…  ↠位ヲ史シ籍ジヤクノ†良ヤヤ談ズルモ、貪トムジテ↠国ヲ殺スルコトハ↠母ヲ都スベテ無キコトヲ↢記キセル処 ロ↡。若シ論ロンゼバ↢劫初ヨリ已来コノカタヲ↡、悪王ノ貪ゼシニゼン ↠国ヲ、但タダ殺シテ↢其ノ父ヲ↡不ズ↠加クワヘ↢慈母ニヲ↡。

^▲これすなはち古いにしえの今いまに異ことなるを引ひく。 大王だいおういま国くにを貪とんじて父ちちを殺ころす。 父ちちはすなはち位くらいの貪とんずべきことあり。 古いにしえに類同るいどうせしむべし。 母はははすなはち位くらいの求もとむべきなし。 横よこさまに逆ぎゃく害がいを加くわふ。 ここをもつて今いまをもつて昔むかしに異いす。

此 レ則チ†引ク↢古ノ異ナルヲ↟今ニ。大王今者 イマ 貪ジテ↠国ヲ殺ス↠父ヲ。父ハ則チ有リ↢位クラヰノ可ベキコト↟貪トムズ。可ベシ↠使シム↣類ルイ↢同セ於古イニシヘニ↡。母ハ即チ無シ↢位ノトシテ可ベキ↟求モトム。横ワウニ加クワフ↢逆ギヤク害ヲ↡。是ココヲ以テ†将テ↠今ヲ異ス↠昔ムカシニ也。

^「▲王おういまこの殺せつ母もをなさば、 刹せつ利り種しゅを汚けがさん」 といふ。 「刹せつ利り」 といふは、 すなはちこれ四し姓しょうの高元こうげん、 王者おうじゃの種しゅなり、 代々だいだい相そう承じょうす。 あに凡砕ぼんさいに同おなじからんや。

言フ↧「王今為ナサバ↢此ノ殺セチ母モヲ↡者バ、汚サム トシテム…↦刹セツ利リノ種シユヲ↥」也。▲言フ↢「刹利ト」↡者ハ、乃チ是 レ四シ姓シヤウノ高元グヱン モト 、王者ジヤ之ノ種ナリ、代代ダイダイ相承ジヨウス。豈アニ同ジカラムヤ↢凡砕ニ↡。

^「▲臣しん不ふ忍聞にんもん」 といふ0478は、 王おう、 悪あくを起おこして宗親そうしんを損辱そんにくするを見みば、 悪あく声しょう流布るふせん。 わが性しょう望もう恥ち慚ざんするに地ところなし。

言フ↢「臣シン不プ忍聞ト」↡者ハ、▲†見バ↣王起シテ↠悪ヲ損↢辱スルヲ宗親ヲ↡、悪声流布セム。我ガ之性セイ望バウノゾム恥ハヂ慚ハスルニズル…無シ↠地トコロ。

^「▲是ぜ旃せん陀羅だら」 といふはすなはちこれ四し姓しょうの下流げるなり。 これすなはち性しょう、 匈きょう悪あくを懐いだきて仁じん義ぎを閑ならはず。 人ひとの皮かわを着きたりといへども、 行おこなひ禽きん獣じゅうに同おなじ。 王おうは上じょう族ぞくに居こして、 押おして万ばん基きに臨のぞむ主しゅなり。 いますでに悪あくを起おこして恩おんに加くわふ、 かの下流げるとなんぞ異こと0365ならんや。

言フ↢「是旃陀羅ト」↡者ハ▲乃チ是 レ四姓之ノ下カ流リウ也ナリ。此 レ乃チ性セイ懐イダキテ↢匈クヰヨウアシク悪ヲ↡不ズ↠閑ナラハ↢仁ジム義ヲ↡。雖モ↠著キタリト↢人ノ皮カハヲ↡、行ヒ同ジ↢禽獣キンジユニ↡。王ハ居コシテ↢上族ゾクヤカラニ↡、押オシテ臨ノゾム↢†万基ニ↡之主ナリ。今既ニ起オコシテ↠悪ヲ加クワフ↠恩オム0700ニ、与ト↢彼ノ下ゲ流リウ↡何ゾ異コトナラム也ヤ。

^「▲不宜ふぎ住じゅう此し」 といふはすなはち二義にぎあり。 一いちには王おういま悪あくを造つくりて*風礼ふうれいを存ぞんぜず。 *京きょう邑おう神しん州しゅう、 あに旃せん陀羅だらをして主しゅたらしめんや。 これすなはち宮く城じょうを擯ひん出しゅつする意こころなり。 二にには王おう国くににありといへどもわが宗親そうしんを損そんぜば、 遠とおく他た方ほうに擯ひんして永ながく*無む聞もんの地じに絶たたんにはしかず。 ゆゑに不宜ふぎ住じゅう此しといふ。

言フ↢「不宜フギ住此ト」↡者ハ▲即チ有リ↢二義↡。一ニ者王今造リテ↠悪ヲ不ズ↠存ゾンゼ↢風礼ヲ↡。京ケイキヤウ邑ヲフサト神州シフニ、豈アニ†遣メム↢旃セン陀羅ヲシテ為ラ↟主也シユ。此即チ擯ヒンヤリ↢出スルイダス 宮城ヲ↡意也ナリ。二ニ者王雖モ↠在リト↠国ニ損セバス ↢我ガ宗親ソウシムヲ↡、†不↠如カ↧遠トヲク擯ヒンシテ↢他方ニ↡永ナガク絶タムニハ↦無ム聞之地ヂニ↥。故ニ云イフ↢「不宜フギ住此ト」↡也。

^▲「時じ二に大臣だいじん説せつ此語しご」 といふ以下いげは、 これ二に臣しん (月光・耆婆) の直諌じきかん切せつにして、 語ことばきはめて粗あらくして、 広ひろく古こ今こんを引ひきて、 王おうの心しん開かい悟ごすることを得えんと望のぞむことを明あかす。

言フ↢「時二大臣説此語ト」↡已下ハ、▲此 レハ明ス↧二臣ノ直ヂキニ諌イサムルコト切セツニシテ、語コトバ極テ麁アラクシテ、広ヒロク引ヒキテ↢古コ今コムヲ↡、望ノゾムコトヲ↞得ムトルコトヲ↢王ノ心開悟ゴスルコトヲ↡。

^「▲以い手しゅ按剣あんけん」 といふは、 臣しんみづから手しゅ中ちゅうの*剣けんを按あんずるなり。

言フ↢「以イ手シユ按剣アムケント」↡者ハ、▲臣シン自ラ†按ズル↢手中ノ剣ヲ↡也。

 ^問とひていはく、 *諌かん辞じ粗そ悪あくにして顔かおを犯おかすことを避さけず、 君臣くんしんの義ぎすでに乖そむけり。 なにをもつてか身みを回めぐらしてただちに去さらずして、 すなはち*却行きゃくぎょう而に退たいすといふや。

~問ヒテ曰ク、諌カン辞ジコトバ麁ソ悪ニシテ†不↠避ケ↠犯オカスコトヲ↠顔ガンヲ、君臣クンシン之ノ義既ニ*乖ソムケリ。何ヲ以テカ不ズシテ↢廻ヱシテ↠身ヲ直ニ去サラ↡、乃チ言フ↢「却キヤク行而ニ退タイスト」↡也ヤ。

^答こたへていはく、 粗そ言ごん王おうに逆さからふといへども、 害がい母もの心しんを息やむることを望のぞむ。 またおそらくは*瞋毒しんどくいまだ除のぞこらず、 繋かけたる剣けんおのれを危あやふくすることを。 ここをもつて剣けんを按あんじてみづから防ふせぎて、 却行きゃくぎょうして退しりぞく。

~答ヘテ曰ク、麁ソアラキ言ゴン雖モ↠逆サカフト↠王ニ、望ノゾム↠息ムルコトヲメム…  ↢†害母之心ヲ↡。又恐オソラクハ瞋シンイカリ毒ドク未ズ ダ↠除コラカ 、†繋ケタル剣危アヤウクスルコセム…トヲ↠己オノレヲ。是ココヲ以テ按オジテキテ↠剣ツルギヲ自ラ防フセギテ、却キヤク行シテ而退シリゾク。△

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)釈世王生怖文
              (ⅰ)科節

 ^五ごに ▲「時じ阿あ闍じゃ世せ驚きょう怖ふ」 より下しも 「汝にょ不為ふい我耶がや」 に至いたるこのかたは、 まさしく世せ王おう怖おそれを生しょうずることを明あかす。

五ニ従リ↢「時阿闍世 驚オドロキ 怖フオソルト云」↡下至ル↢「汝ニヨ不フ為我耶ヤト云ニ」↡已来タハ、正シク明ス↢世王生ズルコトヲ↟怖ヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^▲これ闍じゃ世せすでに二に臣しんの諌かん辞じ粗そ切せつなるを見み、 また剣けんを按あんじて去さるを覩みて、 臣しんわれを背そむきてかの父ちちの王おうに向むかひてさらに*異い計けいを生しょうず0366ることを恐おそれ、 *情じょう地じをして安やすからざらしむることを致いたすことを明あかす。

此†明ス↩闍世既ニ見↢二臣シンノ諌カン辞ジ麁ソ切セツナルヲ↡、又覩ミテ↢按オジテシ…↠剣ヲ而去サルヲ↡、恐レ↧臣背キテ↠我ヲ向ヒテ↢彼ノ父ノ王ニ↡更ニ生ズルコトヲ↦異計ヲ↥、致スコトヲ↝使ムルコトヲ↢情地チヲシテ不ザラ↟安ヤスカラ。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文

^ゆゑに 「▲惶こう懼く」 と称しょうす。 かれすでにわれを捨すつ、 たれがためにすといふことを知しらず。 心しん疑うたがひて決けっせず。 つひ0479にすなはち口くちに問とひてこれを審つまびらかにす。 ゆゑに 「耆婆ぎば▲汝にょ不為我ふいが」 といふ。

故ニ称シヨウス↢ 惶ワウオノノキ懼クヲツト↡。彼 レ既ニ捨ツテヽ↠我ヲ、不ズ↠知ラ↠為ニストイフコトヲ↠誰タレガ。心ニ疑ウタガヒテ不ズ↠決クヱツセ。遂ツイニ即チ口ニ問ヒテ審アキラカニスム  ↠之ヲ。故ニ云イフ↢「耆婆汝ニヨ不為我也ト」↡。

^「▲耆婆ぎば」 といふはこれ王おうの弟おとうとなり。 古こ人じんいはく、 「家いえに衰すい禍かあるときは、 親しんにあらざれば救すくはず」 と。 なんぢすでにこれわが弟おとうとなれば、 あに月光がっこうに同どうぜんや。

▲言フ↢耆婆ト↡者ハ是 レ王之ノ弟オトト也。古コ人ノ云ク、家イエニ有ルトキハ↢衰禍スイクワワザワイ↡、非ザレバ↠親シンニ不ズト↠救スクハ。汝 ヂ既ニ是 レ我ガ弟オトトナレバ者、豈アニ同ゼムジカラム↢月光ニ↡也ヤ。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅵ)釈二臣重諌文
              (ⅰ)科節

^六ろくに ▲「耆婆ぎば白びゃく言ごん」 より下しも 「慎しん莫害まくがい母も」 に至いたるこのかたは、 二に臣しん (月光・耆婆) かさねて諌いさむることを明あかす。

六ニ従リ↢「耆婆白言ト云」↡下至ル↢「慎シン莫マク害母ト云ニ」↡已来タハ、明ス↢▲二臣重カサネテ諌ムルコトヲズル…  ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これ耆婆ぎば実まことをもつて大王だいおうに答こたふることを明あかす。 「もしわれらを得えて*相しょうとなさんと欲ほっせば、 願ねがはくは母ははを害がいすることなかれ」 となり。 ここに直諌じきかんすること竟おはりぬ。

~此ハ明ス↣耆婆実マコトヲモテ答フルコトヲ↢大王ニ↡。若シ†欲セバ↧得テ↢我等ヲ↡為0701サムト↞相ト者、願クハ勿ナカレト↠害スルコト↠母ヲ也。此ニハ直タヾチニ諌イサムスルコト竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅶ)釈闍王受諌文
              (ⅰ)科節

^七しちに ▲「王聞おうもん此語しご」 より下しも 「止不しふ害がい母も」 に至いたるこのかたは、 まさしく闍王じゃおう諌かんを受うけて母ははの*残ざん命みょうを放ゆるすことを明あかす。

七ニ従リ↢「王聞此語シゴト云」↡下至ル↢「止シ不害母ト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↣闍王受ウケテ↠諌カンイサムヲ放ユルスコトヲ↢母ノ残命ザンメイヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

^これ世せ王おうすでに耆婆ぎばが諌かんを得えをはりて、 心しんに悔け恨こんを生しょうじ、 前さきの所造しょぞうを愧はぢて、 すなはち二に臣しんに向むかひて哀あわれみを求もとめ命いのちを乞こふ。 よりてすなはち母ははを放ゆるして死しの難なんを脱のがれしめ、 手しゅ中ちゅうの剣けん本もとの匣はこに還げん帰きすることを明あかす。

~此 レハ明ス↧世王既ニ得エ↢耆婆ガ諌ヲ↡已 ハリテ、心ニ生ジテ↢悔クヱクヰ恨コンヲウラミ↡、愧ハヂテ↢前 キノ所造シヨザウヲ↡、即チ向ヒテ↢二臣シムニ↡求メテ↠哀アハレミヲ乞コフコト↠命ヲ、因ヨリテ即チ放ユルシテ↠母ヲ脱ノガレシメラ… ツ↢於死ノ難ナムヲ↡、手ノ中之ノ剣ヲ†還↦帰スルコトヲ本 トノ匣ハコニ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅷ)釈闍王禁母文
              (ⅰ)科節

^八はちに ▲「勅ちょく語ご内官ないかん」 より下しも 「不ふ令りょう復ぶ出すい」 に至いたるこのかたは、 その世せ王おうの余よ瞋しん母ははを禁きんずることを明あかす。

八ニ従リ↢「勅チヨク語内官クワント云」↡下至ル↢「不令復出ト云ニ」↡已来タハ、▲明ス↢其ノ世王ノ余ヨ瞋イカル禁キンズルコトヲ↟母ヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (二)(Ⅷ)(ⅱ)述意

^これ世せ王おう、 臣しんの諌かんを受うけて母ははを放ゆるすといへども、 なほ余よ瞋しん0367ありてほかにあらしめず。 内官ないかんに勅ちょく語ごし深じん宮ぐに閉へい置ちして、 さらに出いだして父ちちの王おうとあひ見まみえしむることなきことを明あかす。

此ハ明ス↩世王雖モ↧受ウケテ↢臣シンノ諌ヲ↡放ユルスト↞母ヲ、猶ナヲ有リテ↢余瞋↡不ズ↠令シメ↠在アラ↠外ホカニ、勅↢語シテ内官ニ↡閉トジ↢置オシテイ…深ジム宮ニ↡、更ニ莫ナキコトヲ↝令シムルコト↧出シテ与ト↢父ノ王↡相 ヒ見ミエセ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ハ (三)結

^上じょう来らい八はっ句くの不ふ同どうありといへども、 広ひろく禁ごん母もの縁えんを明あかしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢八句ノ不同↡、広ク明シ↢禁母ノ縁ヲ↡竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b ニ【厭苦縁】
          (一)標

【8】 ^四しに↑厭えん苦くの縁えんのなかにつきてすなはちその四しあり。

▲四ニ就キテ↢厭エンイトフ苦クノ縁ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ四↡。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)釈
            (Ⅰ)釈為子幽禁文
              (ⅰ)科節

^一いちには ▲「時じ韋い提だい希け」 より下しも 「憔悴しょうすい」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん子このために幽禁ゆうきんせらるることを明あかす。

一ニハ従リ↢「時韋提希ケト云」↡下至ル↢「憔悴セウスイト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢夫人為ニ↠子ノ幽禁エウキンセラルルコトヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これ夫ぶ人にん死しの難なんを勉まぬかるといへども、 さらに深じん宮ぐに閉とぢ在おかれて、 *守当しゅとうきはめて牢かたくして出いづることを得うるに由よしなし。 ただ念々ねんねんに憂うれひを懐いだくことのみありて、 自じ然ねんに憔しょう悴すいすることを明あかす。

~此明ス↧夫人雖モ↠勉ノガルト↢死ノ難ナンヲ↡、更ニ*閉トヂ↢在オカレテ深ジムフカキ宮ミヤニ↡、守シユマモル当タウ極テ牢カタクシテ無シ↠由ヨシ↠得ルニ↠出ヅルコトヲ、唯タダ有リテ↢念念ニ懐イダクコトノミ↟憂ウレエヲ、自然ニ憔セウカシケ悴スイヲトロフスルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅲ)傷歎

^傷しょう歎たんしていはく、 「禍わざわいなるかな今日こんにちの苦く、 闍王じゃおう喚よびて利り刃じんの中ちゅう間げんに結つなぎ、 また深じん宮ぐに置おく難なんに遇値あふ」 と。

~傷シヤウ歎タンシテ曰ク、禍ワザワイナル哉カナ今日 ケフ ノ苦クルシミ、遇↧値 ア フトテ闍王ノ喚ヨビテ利リ刃ジムノ中チウ間ニ*結ツナギ、復置オク↢深宮ニ↡難ナンニ↥。△

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅰ)(ⅳ)料簡

 ^問とひていはく、 夫ぶ人にんすでに死しを勉まぬかれて宮く0480に入いることを得う。 よろしく*訝げ楽らくすべし、 なにによりてかかへりてさらに愁しゅう憂うするや。

▲問ヒテ曰ク、夫人既ニ得タリ↢勉マヌカレテ↠死ヲ入ルコトヲ↟宮ニ。宜ヨロシク応ベシ↢訝ゲイサミ楽ラクス↡、何ナニニ因ヨリテカ反カヘリテ更ニ愁シユウレヘ 憂ウレフスル也。

^答こたへていはく、 すなはち三さん義ぎの不ふ同どうあり。

~答ヘテ曰ク、即チ有リ↢三ノ義ノ不同↡。

^一いちには夫ぶ人にんすでにみづから閉とぢられて、 さらに人ひとの食じきを進すすめて王おうに与あたふるなし。 王おうまたわが難なんにあるを聞ききてうたたさらに愁しゅう憂うせん。 いますでに食じきなくして憂うれひを加くわへば、 王おうの身しん命みょうさだめて久ひさしからざるべきことを明あかす。

~一ニハ明ス↧夫人既ニ自ラ被ラレテ↠閉トヂ、更ニ無シ↢人ノヲシテ進ススメテ↠食ヲ与アタフルモノ↟王ニ、王又聞キキテ↢我ガ在アルヲ↟難ナンニ転ウタタ更ニ愁憂セムコトヲ、今既ニ無クシテ↠食加クワヘバ↠憂ウレヘヲ者バ、王之ノ身命定メテ応ベキコトヲ↞不ザル↠久ヒサシカラ。

^二にには夫ぶ人にんすでに囚しゅう難なんを被こうむる、 いづれの時ときにかさらに如来にょらい (釈尊) の面みかおおよびも0368ろもろの弟子でしを見みたてまつらんといふことを明あかす。

~二ニハ明ス↧夫人既ニ被カブルリテ↢囚シユイマシメ難ナンヲ↡、何イヅレノ時ニカ更ニ見タテマツラムトイフコトヲ↦如来之ノ面 テ0702及ビ諸ノ弟子ヲ↥。

^三さんには夫ぶ人にん教きょうを奉うけて禁きんぜられて深じん宮ぐにあり。 内官ないかん守当しゅとうして*水泄すいせつすら通つうぜず。 *旦夕たんせきのあひだ、 ただ死路しろのみを愁うれふることを明あかす。

~三ニハ明ス↧夫人奉ウケテ↠教ヲ禁キンゼラレテジ  …在リ↢深ジム宮ニ↡、内官ニ守当シユタウシテ†水泄スラ不ズ↠通ゼ、旦タンアシタ夕セキユフベ之ノ間ニ唯タダ愁ウレフルコトヲ↦死路シロノミヲ↥。

^この三さん義ぎありて身心しんしんを切逼せっぴつす。 憔しょう悴すいすることなきことを得えんや。

~有リテ↢斯コノ三ノ義↡切セツ↢逼ヒツス身心ヲ↡。得エム↠無キコトヲ↢憔悴セウスイスルコト↡也。△

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)釈夫人請仏文
              (ⅰ)科節

 ^二にに ▲「遥向ようこう耆ぎ闍しゃ崛山くっせん」 より下しも 「未み挙頭こず頃きょう」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん禁きんによりて仏ぶつを請しょうじ、 意こころに陳のぶるところあることを明あかす。

二ニ従リ↢「遥向エウカウ耆ギ闍崛山ト云」↡下至ル↢「未ミ挙頭コヅ頃クヰヤウト云ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢夫人因ヨリテ↠禁キンニ請ジ↠仏ヲ、意ニ有ルコトヲ↟所 ロ↠陳ノブル。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これ夫ぶ人にんすでに囚しゅう禁きんにありて、 自じ身しん仏辺ぶっぺんに到いたることを得うるに由よしなし。 ただ*単心たんしんのみありて、 面おもてを耆ぎ闍しゃに向むかへ、 はるかに世せ尊そんを礼らいしたてまつりて、 「願ねがはくは仏ぶつの慈悲じひ、 弟子でしが愁しゅう憂うの意こころを*表ひょう知ちしたまへ」 といふことを明あかす。

~此 レ明ス↧夫人既ニ在アリテ↢囚禁シウキンニ↡、自身無シ↠由ヨシ↠得ルニ↠到イタルコトヲ↢仏辺ペンニ↡、唯タダ有アリテ↢単タン心ノミ↡、面 テヲ向ヘテ↢耆闍ニ↡、遥ハルカニ礼シタテマツリテ↢世尊ヲ↡、願クハ仏ノ慈悲、表ヘウ↦知チシタマヘトイフコトヲ弟子ガ愁憂之ノ意ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

^▲「如来にょらい在ざい昔しゃく之時しじ」 といふ以下いげは、 これに二義にぎあり。

言イフ↢「如来在昔シヤク之時シジト」↡已下ハ、▲此 レニ有リ↢二義↡。

^一いちには父ちちの王おういまだ禁きんぜられざる時ときは、 あるいは王おうおよびわが身み親したしく仏辺ぶっぺんに到いたるべし、 あるいは如来にょらいおよびもろもろの弟子でし親したしく王おうの請しょうを受うくべし。 しかるにわれおよび王おうの身みともに囚しゅう禁きんにありて、 因縁いんねん断絶だんぜつし、 *彼此ひし情こころ乖そむけることを明あかす。

~一ニハ明ス↧父ノ王未ザ ダル↠被ラレ↠禁ゼ時トキハ、或イハ可ベシ↣王及ビ我ガ身親シタシク到イタルリヌ↢仏辺ニ↡、或イハ可ベシ↣如来及ビ諸ノ弟子ヲシテ親シク受ウクケシメツ↢王ノ請ヲ↡、然ルニモ 我 レ及ビ王ノ身倶トモニ在アリテ↢囚シユ禁ニ↡、因縁断絶ダンゼツシ、彼此ヒシ情ココロ乖ソムケル  コトヲケリト云…↥。

^二にには父ちちの王おう、 禁きんにありてよりこのかた、 しばしば世せ尊そん、 阿あ難なんを遣つかはして来きたりてわれを慰い問もんせしめたまふことを蒙こうむることを明あかす。 いかんが慰い問もんする。 父ちちの王おうの囚しゅう禁きんせらるるを見みるをもつて、 仏ぶつ、夫ぶ人にんの0369憂う悩のうすることを恐おそれたまふ。 この因縁いんねんをもつてのゆゑに慰い問もんせしめたまふ。

~二ニハ明ス↫父ノ王在アリテヨリ↠禁ニ已コノ来タ、数シバシバ蒙カウムルコトヲ↪世尊遣ツカハシテ↢阿難ヲ↡来キタリ  テラシメ…慰ヰ↩コシラヘ問モンセシメシ  タマフコトヲ…     我ヲ↨。云何ガ慰問スル。以テ↠見ルヲ↢父ノ王ノ囚禁セラルルヲ↡、仏†恐レタマフ↢夫人ノ憂ウウレヘ悩ナウナヤムスルコトヲセム…  ↡。†以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ†遣メタマフ↢慰ヰコシラヘ問セ↡也。△

^「▲世せ尊そん威い重じゅう無由むゆ得見とくけん」 といふは、 これ夫ぶ人にんうちにみづから卑ひ謙けんして、 仏ぶつ弟子でしに帰き尊そんす。 「*穢え質ぜつの女身にょしん、 *福因ふくいん尠薄せんぱくなり。 仏徳ぶっとくは威い高たかし、 軽かろがろしく触ふるるに由よしなし。 願ねがはくは目連もくれん等とう0481を遣つかはしてわれとあひ見まみえしめたまへ」 といふことを明あかす。

▲言フ↢「世尊威ヰ重ヂウ無由ムユ得見ト」↡者ハ、▲此明ス↧夫人内ウチニ自ラ卑ヒ謙ケンシテ、帰クヰ↢尊ス於仏弟子ニ↡、穢ヱ質ゼツノ女身、福因フクイン 尠センスクナク薄パクウスシナリ、仏徳ハ威ヰ高タカシ、無シ↠由ヨシ↢軽カロガロタヤスクシク触フルルニ↡、願クハ遣ツカハシテ↢目連等ヲ↡†与↠我相 ヒ見マミエシメタマヘトイフコトヲ↥。

 ^問とひていはく、 如来にょらいはすなはちこれ化け主しゅなり。 *時宜じぎを失うしなはざるべし。 夫ぶ人にんなにをもつてか*三みたび致ち請しょうを加くわへずして、 すなはち目連もくれん等とうを喚よぶはなんの意こころかあるや。

▲問ヒテ曰ク、如来ハ即チ是 レ化主ナリ。応ベシ↠不ザル↠失ウシナ トガ ハ↢時宜ジギヲ↡。夫人何 ニヲ以テカ不ズシテ↣三ミタビ加ヘ↢致チ請ヲ↡、乃チ喚ヨバブハフ ↢目連等ヲ↡有ル↢何ノ意カ↡也ヤ。

^答こたへていはく、 仏徳ぶっとくは尊厳そんごんなり。 小しょう縁えんをもつてあへてたやすく請しょうぜず。 ただ阿あ難なんを見みて、 語ことばを伝つたへて、 往ゆきて世せ尊そんにまうさしめんと欲ほっす。 仏ぶつわが意こころを知しりたまはば、 また阿あ難なんをして仏ぶつの語ことばを伝つたへて、 われに*指し授じゅせしめたまはん。 この義ぎをもつてのゆゑに阿あ難なんを見みんと願ねがふ。

~答ヘテ曰ク、仏徳ハ尊厳ゴンナリ。小縁ヲモテ不ズ↢敢アヘテ輒タヤスク請ゼ↡。但タダ見テ↢阿難ヲ↡、欲スフ↣伝ツタヘテ↠語ゴヲ、往ユキテ白サシメムト↢世尊ニ↡。仏知リタマハバヘリ↢我ガ意ヲ↡、復使シメタマハムヘ ↧阿難ヲシテ伝ツタヘテ↢仏之ノ語ゴヲ↡、指シサシ↦授ジユセサヅク†於我ニ↥。以0703テノ↢斯コノ義ヲ↡故ニ願フ↠見ミムト↢阿難ヲ↡。

 ^「▲作是さぜ語已ごい」 といふは総そうじて前さきの意こころを説ときをはるなり。

言フ↢「作是語已イト」↡者ハ総ソウジテ説キ↢前ノ意ヲ↡竟 ハル也ナリ。

^「▲悲ひ泣きゅう雨う涙るい」 といふは、 これ夫ぶ人にんみづからただ罪つみ重おもし。 仏ぶつの加か哀あいを請しょうずるに、 敬きょうを致いたす情こころ深ふかくして悲ひ涙るい目めに満みてり。

言フ↢「悲ヒ泣キウナク雨ウ涙ルイナンダト」↡者ハ、▲此明ス↧夫人自ラ唯タダシ罪ツミ重オモシ、請ズルニ↢仏ノ加カ哀アイヲアハレミ↡、致ス↠敬キヤウヲ情ココロ深フカクシテ、悲ヒ涙ルイ満ミテリ↠目メニ、

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅱ)(ⅳ)結意

^ただ霊りょう儀ぎを*渇仰かつごうするをもつて、 またますますはるかに礼らいし、 頂いただきを叩たたきて*跱じじょし、 しばらくいまだ挙あげざることを明あかす。

~但タダ以テ↣渇カツ↢仰ガウスルヲ霊レイ儀ギヲ↡、復加マスマス遥ハルカニ礼ライシ、叩タタキテ↠頂カフベヲ†跱シ、須臾シバラク未ザ ダルコトヲ↞挙アゲ。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)釈如来赴請文
              (ⅰ)科節

^三さんに ▲「爾時にじ世せ尊そん」 より下しも 「天てん華げ持じ用ゆう供く養よう」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく世せ尊そんみづから来きたりて請しょうに赴おもむ0370くことを明あかす。

三ニ従リ↢「爾時世尊ト云」↡下至ル↢「天華持ヂ用ヨウ供ク養ヨウニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢世尊自ラ来キタリテ赴ク コトヲキ下…  ↟請ニ。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これ世せ尊そん耆ぎ闍しゃにましますといへども、 すでに夫ぶ人にんの心念しんねんの意こころを知しることを明あかす。

~此明ス↧世尊雖モ↠在マシマスト↢耆闍ニ↡、已スデニ知シルコトヲ↦夫人ノ心念之ノ意ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

^「▲勅ちょく大だい目連もくれん等とう従じゅう空くう而に来らい」 といふは、 これ夫ぶ人にんの請しょうに応おうずることを明あかす。

言フ↢「勅チヨク大目連等従ジユ空而ニ来ト」↡者ハ、▲此明ス↠応ズルコトヲ↢夫人ノ請ニ↡也ナリ。

^「▲仏ぶつ従じゅう耆ぎ山せん没もつ」 といふは、 これ夫ぶ人にん宮く内ないの禁約きんやくきはめて難かたし。 仏ぶつもし身みを現げんじて来らい赴ふしたまはば、 おそらくは闍じゃ世せ知ち聞もんしてさらに*留る難なんを生しょうずることを。 この因縁いんねんをもつてのゆゑに、 すべからく*ここに没もっして*かしこに出いでたまふべきことを明あかす。

言フ↢「仏従ジユ耆ギ山没モツト」↡者ハ、▲此明ス↧夫人宮内ナイノ禁約ヤク極テ難カタシ、仏若シ現ジテ↠身ヲ来ライ赴フシタマハバオモムク   、恐畏オソラクハ闍世知チ聞モンシテ更ニ生ズルコトヲゼン…  ↢留ルトドマル難ナンヲ↡、以テノ↢是ノ因縁ヲ↡故ニ、須ベ クキコトヲ↦此ニ没モツシテ彼カシコニ出デタマフヅ   ↥也。

^「▲時じ韋い提だい礼らい已い挙頭こず」 といふは、 これ夫ぶ人にん敬きょうを致いたす時ときを明あかす。

言フ↢「時韋提礼ライ已イ挙コアゲ頭ヅトカウベ」↡者ハ、▲此明ス↢夫人ノ致ス↠敬キヤウヲ之時ヲ↡也。

^「▲見けん仏ぶつ世せ尊そん」 といふは、 これ世せ尊そん宮く中ちゅうにすでに出いでて、 夫ぶ人にんをして頭こうべを挙あげてすなはち見みしむることを致いたすことを明あかす。

言フ↢「見仏世尊ト」↡者ハ、▲此明ス↢世尊宮中ニ已スデニ出イデテ、致スコトヲ↟使ムルコトヲ↢夫人ヲシテ挙アゲテ↠頭カウベヲ即チ見セ↡。

^「▲釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつ」 といふは余よ仏ぶつに簡けん異いす。 ただ諸仏しょぶつは名みな通つうじ、 身相しんそう異ことならず。 いまことさらに釈しゃ迦かを標定ひょうじょうして疑うたがいなからしむ。

言フ↢「釈迦牟尼仏ト」↡者ハ▲簡ケン↢異イス余仏ニ↡。但シ諸仏ハノ名ミナ通ジテ、身相不ズ↠異ナラ。今 マ故コトサラニ標ヘウ↢定ヂヤウ アラハス シテ釈迦ヲ↡使シム↠無カラ↠疑 ヒ也。

^「▲身しん紫し金色こんじき」 といふはその相そうを顕あらわし定さだむ。 「▲坐ざ百ひゃっ宝ぽう華け」 といふは余座よざに簡けん異いす。 ▲「目連もくれん侍左じさ」 等とうといふ0482は、 これさらに余よの衆しゅうなくして、 ただ二に僧そう (目連・阿難) のみあることを明あかす。

言フ↢「身紫シ金色ト」↡者ハ▲顕シ↢定サダム其ノ相ヲ↡也。言フ↢「坐ザ百宝華ト」↡者ハ▲簡ケン↢異イスル余座ヨザニ↡也ナリ。言フ↢「目連侍左ジサ」等ト↡者ハ、▲此 レ明ス↧更ニ無ナクシテ↢余ヨノ衆シユ↡、唯タダ有ルコトヲ↦二僧ノミ↥。

^「▲↓釈しゃく↓梵ぼん↓護世ごせ」 といふは、 これ天王てんのう衆しゅ等とう、 仏ぶつ世せ尊そん隠かくれて王おう宮ぐに顕あらわれたまふを見みるに、 「かならず*希奇けきの法ほうを説ときたまはん、 われら天てん・人にん、 韋い提だいによるがゆゑに*未み聞もんの益やくを聴きくことを得えん」 と。 おのおの本念ほんねんに乗じょうじてあまねく空くうに住じゅう臨りんして、 天てん耳にはるかに餐さんして、 華け0371を雨あめふらして供く養ようすることを明あかす。

言フ↢「釈梵護ゴ世ト」↡者ハ、▲此明ス↧天王衆シユ等、見ルニ↣仏世尊隠カクレテ顕レタマフヲシ…   ↢王宮ニ↡、必ズ説キタマハムキ下ベシ ↢希奇ケキ之ノ法ヲ↡、我 レ等ラ天・人因ヨルガ↢韋提ニ↡故ニ得エムト↠聴キクコトヲ↢未ミ聞モン之ノ益ヲ↡、各ノ乗ジテ↢本念ニ↡普ク住ヂユ↢臨リンシテ空ニ↡、天耳ニ遥ハルカニ餐サンシテアデハウ、雨フラシテリ …↠華ヲ供ク養スルコトヲ↥。

^また 「↑釈しゃく」 といふは、 すなはちこれ*天帝てんたいなり。 「↑梵ぼん」 といふは、 すなはちこれ色界しきかいの*梵王ぼんのう等とうなり。 「↑護世ごせ」 といふは、 すなはちこれ四し天王てんのうなり。 「▲諸天しょてん」 といふは、 すなはちこれ色しき・欲界よくかい等とうの天衆てんしゅなり。 すでに天王てんのうの仏辺ぶっぺんに来きたり向むかへるを見みて、 かのもろもろの天衆てんしゅまた王おうに従したがひて来きたりて、 法ほうを聞ききて供く養ようす。

又言フ↠釈ト者ハ、即チ是 レ天0704帝タイ也ナリ。言フ↠梵ト者ハ、即チ是 レ色界ノ梵王等也ナリ。言フ↢護ゴ世ト↡者ハ、即チ是 レ四天王也ナリ。言フ↢「諸天ト」↡者ハ、即チ是 レ色シキ・欲ヨク界等ノ天衆シユナリ。既ニ見テ↣天王ノ来キタリ↢向ムカヘルヲ仏辺ペンニ↡、彼ノ諸ノ天衆亦マタ従シタガヒテ↠王ニ来 タリテ、聞キキテ↠法ヲ供ク養ス。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅳ)釈夫人傷歎文
              (ⅰ)科節

^四しに ▲「時じ韋い提だい希け見けん世せ尊そん」 より下しも 「与よ提だい婆ば共為ぐい眷属けんぞく」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん頭こうべを挙あげて仏ぶつを見みたてまつり、 口く言ごんに傷しょう歎たんし、 怨結おんけつの情こころ深ふかきことを明あかす。

四ニ従リ↢「時韋提希見世尊ト云」↡下至ル↢「与ヨ提婆バ共グ為眷属ゾクニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢夫人挙ゲテ↠頭ヲ見タテマツリテ↠仏ヲ、口言ニ傷シヤウイタミ 歎タンナゲキシ、怨オンアダ結ケツノ情ココロ深キコトヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ニ (二)(Ⅳ)(ⅱ)釈文

^「▲自じ絶ぜつ瓔珞ようらく」 といふは、 これ夫ぶ人にん身みの荘かざりの瓔珞ようらくなほ愛あいしていまだ除のぞかず、 たちまちに如来にょらいを見みたてまつりて羞はぢ慚はぢてみづから絶たつことを明あかす。

言フ↢「自ジ絶ゼツ瓔珞ヤウラクト」↡者ハ、▲此明ス↧夫人身ノ荘カザリノ瓔珞猶ナホ愛アイシテ未ズ ダ↠除ノゾカ、忽タチマチニ見タテマツリテ↢如来ヲ↡羞ハヂ*慚ハヂテヅルニ自ラ絶タツコトヲ↥。

 ^問とひていはく、 いかんぞみづから絶たつや。

▲問ヒテ曰ク、云何ゾ自ラ絶ヌツク也ヤ。

^答こたへていはく、 夫ぶ人にんはすなはちこれ貴きのなかの貴き、 尊そんのなかの尊そんなり。 身みの四し威儀いぎに多おおくの人ひと供く給きゅうし、 着きたるところの衣え服ぶくみな傍人ぼうにんを使つかふ。 いますでに仏ぶつを見みたてまつりて恥はぢ愧はづる情こころ深ふかくして、 *鉤帯こうたいによらず、 たちまちにみづから掣ひき却さく。 ゆゑに自じ絶ぜつといふ。

~答ヘテ曰ク、夫人ハ乃チ是 レ貴ノ中之ノ貴、尊ノ中之ノ尊ナリ。身ノ四シ威儀ヰギニ多クノ人供ク給キウシ、所 ロノ↠着キタル衣エ服ブク皆 ナ使ツカフ↢傍バウ人ヲ↡。今 マ既ニ見タテマツリテ↠仏ヲ恥ハヂ愧ハヅル情ココロ深フカクシテ、不ズ↠依ヨラ↢鉤コウクサリ帯タイヲビニ↡、頓トムニタチマチニ自ラ掣ヒキ却サク。故ニ云イフ↢自ジ絶ゼツト↡也。

 ^「▲挙こ身しん投とう地じ」 といふは、 これ夫ぶ人にん内心ないしん*感かん結けつして怨おん苦く堪たへがたし。 ここをもつて坐ざより身みを踊おどらして立りゅうし、 立りゅうせるより身みを踊おどらして地じに投なぐることを明あかす。 こ0372れすなはち歎恨たんごん処ことわり深ふかくして、 さらに礼拝らいはいの威儀いぎを事こととせず。

言フ↢「挙コ身シン投トウ地ヂト」↡者ハ、▲此明ス↢夫人内心ニ感結カンケツシテ怨オムアダ苦ク難ガタシ↠堪タヘ、是ココヲ以テ従ヨリ↠坐ザ踊ユウラシテ↠身ヲ而立リウシ、従ヨリ↠立リウセル踊ユウラシテ↠身ヲ投ナグルコトヲ↟地ヂニ。此 レ乃チ歎ナゲキ タン 恨ウラミ コム *処コトワリ深フカクシテ、更ニ不ズ↠事コトトセ↢礼拝ノ威儀ヲ↡也。

^「▲号ごう泣きゅう向仏こうぶつ」 といふは、 これ夫ぶ人にん仏前ぶつぜんに*婉転えんでんし、 悶絶もんぜつ号哭ごうこくすることを明あかす。

言フ↢「号テイ泣キウ向カウ仏ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↧夫人婉エン↢転デンシテ仏前ニ↡、悶モムイキドヲリ絶ゼツシ号サケブ哭コクナクスルコトヲ↥。

^▲「白びゃく仏ぶつ」 といふ以下いげは、 これ夫ぶ人にん婉転えんでん涕哭ていこくすることやや久ひさしくして、 少すこしき惺さめて0483はじめて*身みの威儀いぎを正ただしくして、 合がっ掌しょうして仏ぶつにまうすことを明あかす。 「われ一いっ生しょうよりこのかた、 いまだかつてその大罪だいざいを造つくらず。 いぶかし、 宿しゅく業ごうの因縁いんねん、 なんの*殃おう咎ぐありてかこの児ことともに母子もしたる」 と。

言フ↢「白仏ト」↡已下ハ、▲此 レ明ス↧夫人婉転涕テイナク哭コクナキスルコト量ヤヤ久ヒサシクシテ、少スコシクキ惺サメテ始ハジメテ正マサシクシテ↢身ノ威儀ヲ↡、合掌シテ白スコトヲ↞仏ニ。我自ヨリ↢一生↡已来 ノ タ、未ズ ダ↣曽カツテ造ラ↢其ノ大罪ヲ↡。未審イブカシ、宿シユク業ノ因縁有リテカ↢何ナンノ殃アフ咎グ↡而シカモ与ト↢此ノ児チゴ↡共トモニ為タルト↢母子シ↡。

^これ夫ぶ人にんすでにみづから障さわり深ふかくして*宿しゅく因いんを識しらず。 いま児こに害がいを被こうむる。 これ横よこさまに来きたれりと謂おもひて、 「願ねがはくは仏ぶつの慈悲じひ、 われに*径けい路ろを示しめしたまへ」 といふことを明あかす。

~此 レ明ス↧夫人既ニ自ラ障サワリ深フカクシテ不ズ↠識シラ↢宿シユク因ヲ↡、今被カウムル↢児チゴニノ害ガイヲ↡、謂オモヒテ↢是 レ横ワウニ来キタレリト↡、願クハ仏ノ慈悲、示シメシタマヘトイフコトヲ↦我ニ径ケイ路ロヲ↥。

^▲「世せ尊そん復有ぶう何が等とう因縁いんねん」 といふ以下いげは、 これ夫ぶ人にん仏ぶつに向むかひて陳ちん訴そす。 「われはこれ凡ぼん夫ぶなり。 罪惑ざいわく尽つきざれば、 この悪報あくほうあり。 この事じ*甘心かんしんす。 世せ尊そんは曠劫こうごうに道どうを行ぎょうじて、 正習しょうじゅうともに亡もうじたまへり。 衆しゅ智ち朗然ろうねんとして果か円まどかなるを仏ぶつと号なづけたてまつる。 いぶかし、 なんの因縁いんねんありてかすなはち提だい婆ばとともに眷属けんぞくとなりたまふ」 といふことを明あかす。

▲言フ↢「世尊復有何ガ等因イン縁ト」↡已下ハ、此 レ0705明ス↧夫人向ヒテ↠仏ニ陳ノベ訴ウタスフ、我ハ是 レ凡夫ナリ、罪惑ワクマドヒ不ザレバ↠尽ツキ、有リ↢斯コノ悪報ホウ↡、是ノ事ジ甘カン心ス、世尊ハ曠劫ニ行ジテ↠道ヲ正習ジフ倶トモニ亡マウジタマヘリ、衆智朗然ラウネントシテ果クワ円マドカナルヲ号ガウケタテマツルス     ↠仏ブチト、未審イブカシ、有アリテカ↢何ナンノ因縁↡乃チ与ト↢提婆↡共トモニ為シリタマフトイフコトヲ↦眷クヱン属ゾクト↥。

^この意こころに二にあり。 一いちには夫ぶ人にん怨あだを子こに致いたすことを明あかす。 たちまちに父母ぶもにおいて狂たぶれて逆ぎゃく心しんを起おこせばなり。 二ににはまた恨うらむらくは提だい婆ば、 わが闍じゃ世せを教おしへてこの悪計あくけいを造つくらしむ。 もし提だい婆ばによらずは、 わが児こつひにこの意こころなからんと0373いふことを明あかす。 この因縁いんねんのためのゆゑにこの問といを致いたす。

~此ノ意ニ有リ↠二。一ニハ明ス↣夫人致スコトヲ↢怨ウラミヲ於子ニ↡。忽タチマチニ於オイテ↢父母ニ↡狂タブレテ起オコセバナリス   ↢逆心ヲ↡。二ニハ明ス↧又恨ウラムラクハ提婆教ヘテ↢我ガ闍世ヲ↡造ラシム↢斯コノ悪計ケイヲ↡ハカリゴト、若シ不ズハ↠因ヨラ↢提婆ニ↡者ハ、我ガ児チゴノ終ツイニ無ナカラムシ  …トイフコトヲ↦此ノ意↥也ナリ。為ノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ致ス↢斯コノ問ヲ↡。

^また夫ぶ人にん、 仏ぶつに問とひて 「▲与よ提だい婆ば眷属けんぞく」 といふはすなはちその二にあり。 一いちには在ざい家けの眷属けんぞく、 二にには出しゅっ家けの眷属けんぞくなり。

~又夫人問ヒテ↠仏ニ云イフ↢「与ヨ提婆眷属ト」↡者ハ即チ有リ↢其ノ二↡。一ニ者ハ在家ノ眷属、二ニ者ハ出家ノ眷属ナリ。

^在ざい家けといふは、 仏ぶつの伯はく叔しゅくにその四し人にんあり。 仏ぶつはすなはちこれ白浄びゃくじょう王おう (浄飯王) の児こ、 金こん毘びは白びゃく飯ぼん王のうの児こ、 提だい婆ばは斛飯こくぼん王のうの児こ、 釈しゃく魔ま男なんはこれ甘かん露ろ飯ぼん王のうの児こなり。 これを在ざい家けの外げ眷属けんぞくと名なづく。

~言フ↢在家ト↡者ハ、仏之ノ伯ハクヲヂ叔シクニ有リ↢其ノ四人↡。仏†者即チ是 レ白ビヤク浄王ノ児コ、金毘ビ者白飯王ノ児、提婆者斛コク飯ボム王ノ児、釈魔男ナン者是 レ甘露飯ボム王ノ児コナリ。此ヲ名ク↢在家ノ外グヱ眷属ト↡也ナリ。

^出しゅっ家けの眷属けんぞくといふは、 仏ぶつのために弟子でしとなる、 ゆゑに内ない眷属けんぞくと名なづく。

~言フ↢出家ノ眷属ト↡者ハ、与タメニ↠仏ノ作ナル↢弟子ト↡、。故ニ名ク↢内ナイ眷属ト↡也。△

二 Ⅱ ⅱ b ニ (三)結

^上じょう来らい四句しくの不ふ同どうありといへども、 広ひろく厭えん苦くの縁えんを明あかしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢四句クノ不同↡、広ク明シ↢厭苦ノ縁ヲ↡竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b ホ【欣浄縁】
          (一)標

【9】 ^五ごに↑欣ごん浄じょうの縁えんのなかにつきて、 すなはちその八はちあり。

▲五ニ就ツキテ↢欣ゴン浄ノ縁ノ中ニ↡、即チ有リ↢其ノ八↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)釈
            (Ⅰ)釈通請所求文
              (ⅰ)科節

^一いちに ▲「唯願ゆいがん世せ尊そん為我いが広説こうせつ」 より下しも 「濁じょく悪あく0484世也せや」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん通つうじて*所しょ求ぐを請しょうじ、 別べつして苦く界かいを標ひょうすることを明あかす。

一ニ従リ↢「唯願世尊為我広説」↡下至ル↢「濁悪世也ヤニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↧夫人通ジテ請シヤウジ↢所シヨ求グヲ↡、別ベチシテ標ヘウスルコトヲ↦苦ク界ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これ夫ぶ人にん自じ身しんの苦くに遇あひて、 世よの*非ひ常じょうを覚さとるに、 六道ろくどう同おなじくしかなり。 安心あんじんの地ところあることなし。 ここに仏ぶつ、 浄じょう土どの無む生しょうなるを説ときたまふを聞ききて、 穢え身しんを捨すててかの無為むいの楽らくを証しょうせんと願がんずることを明あかす。

~此†明ス↫夫人遇アヒテ↢自身ノ苦クニ↡覚サトルニ↢世セノ非ヒ常ヲ↡、六道同ジク然シカナリ、無シ↠有ルコト↢†安心之地トコロ↡、此ニハ†聞キテ↣仏説キタマフヲ↢浄土ノ無生ナルヲ↡、願ズルコトヲ↪捨ステテ↢穢エ身ヲ↡証セムト↩彼ノ無為之楽ヲ↨。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)釈挙所厭境文
              (ⅰ)科節

^二にに ▲「此し濁じょく悪あく処しょ」 より下しも 「不ふ見けん悪人あくにん」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん所厭しょえんの境きょうを挙こ出すいすることを明あかす。

二ニ従リ↢「此シ濁悪処ト云」↡下至ル↢「不見悪人ニンニ」↡已来タハ、▲正シク明0706ス↣夫人†挙↢出スルコトヲ所厭シヨエム之ノ境キヤウヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これ*閻えん浮ぶはすべて悪あくにして、 いまだ一処いっしょとして貪とんずべきことあらず。 ただ幻惑げんわくの愚夫ぐふなるをもつて、 この長じょう苦くを飲のむ0374といふことを明あかす。

~此†明ス↧閻浮ハノ†総テ悪ニシテ、未ダ↠有ラ↢一処シヨトシテ可ベキコト↟貪トムス、但シ以テ↢幻グヱン惑ワクノ愚夫グフナルヲ↡、飲ムトイフコトヲ↦斯ノ長苦クヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

^「▲此し濁じょく悪あく処しょ」 といふはまさしく苦く界かいを明あかす。 また器世きせ間けんを明あかす。 またこれ衆しゅ生じょうの依え報ほうの処ところなり。 また衆しゅ生じょうの所しょ依えの処ところと名なづく。

言フ↢「此シ濁悪処ト」↡者ハ▲正シク明ス↢苦ク界ヲ↡也。又明ス↢器キ世間ヲ↡。亦是 レ衆生ノ依エ報ノ処トコロナリ。亦名ク↢衆生ノ所依†ノ処ト↡也。

^▲「地じ獄ごく」 等とうといふ以下いげは、 *三品さんぼんの悪あく果かもつとも重おもければなり。

~言フ↢「地獄」等ト↡†已下ハ、三品ノ悪果最モトモ重オモケレバ也ナリ。

^「▲盈満ようまん」 といふは、 この*三さんの苦く聚じゅはただ独ひとり閻えん浮ぶを指さすのみにあらず、 娑しゃ婆ばもまたみなあまねくあり。 ゆゑに盈満ようまんといふ。

~言フ↢「盈満ヤウマント」↡者ハ、此ノ三ノ苦ク聚ジユハ非ズ↣直タダ独ヒトリ指サスノミニ↢†閻浮ヲ↡、娑婆モ亦マタ皆 ナ遍アマネク有リ。故ニ言フ↢盈満ト↡。△

^「▲多不たふ善聚ぜんじゅ」 といふは、 これ三界さんがい・六道ろくどう不ふ同どうにして種類しゅるい恒沙ごうじゃなるは、 心しんの差別しゃべつに随したがふことを明あかす。 *経きょうにのたまはく、 「業ごうよく識しきを荘かざり、 世々せせ処々しょしょにおのおの趣おもむきて、 縁えんに随したがひて果か報ほうを受うけ、 対面たいめんすれどもあひ知しらず」 と。

言フ↢「多タ不フ善聚ト」↡者ハ、▲此†明ス↣三界・六道不同ニシテ種類ルイ恒沙ゴウジヤ†ナルハ、随フコトヲ↢心ノ差別ニ↡。経ニ云ク、「業能ク荘カザ†リ↠識ヲ、世世処処ニ各オノオノ趣オモムキテ、随ヒテ↠縁ニ受ウ†ケ↢果報ヲ↡、対面タイメン†スレドモ不ト↢相 ヒ知ラ↡。」

^▲「願がん我が未み来らい」 といふ以下いげは、 これ夫ぶ人にん▼真心しんしん徹到てっとうして苦くの娑しゃ婆ばを厭いとひ、 楽らくの無為むいを欣ねがひて永ながく常じょう楽らくに帰きすることを明あかす。 ただ無為むいの境きょう、 *軽きょう爾にとしてすなはち階かなふべからず。 苦く悩のうの娑しゃ婆ば、 *輒ちょう然ねんとして離はなるることを得うるに由よしなし。 ▼金剛こんごうの志こころざしを発おこすにあらざるよりは、 永ながく生しょう死じの元もとを絶たたんや。 もし親したしく慈じ尊そん (釈尊) に従したがはずは、 なんぞよくこの長じょう歎たんを勉まぬかれん。

▲言フ↢「願我未来ト」↡已下ハ、此 レ明ス↧夫人真心徹テツトヲリ到タウイタリシテ厭イトヒ↢苦クノ娑婆バヲ↡、欣ネガ†ヒテ↢楽ノ無為ヲ↡永ナガク帰クヰスルコトヲ↦常楽ニ↥。但無為之ノ境キヤウ、不ズ↠可カラ↢ 軽ケイカロガロシ爾ジトシテ即チ階カナフ↡。苦ク悩ナウノ娑婆、無シ↠由ヨシ↢輒テウ然ネ トシテ得ルニ↟離ハナルルコトヲ。自ヨリハ↠非†ザル↠発スニ↢金剛之ノ志ココロザシヲ↡、永ナガク絶タタムヤ↢生死之ノ†元ヲ↡。若シ†不ハ↣親シタシク従シタガハ↢慈ジ尊ニ↡、何ナンゾ能ク勉マヌカレムヤ↢斯ノ長歎タンヲナゲキ↡。

^しかして 「願がん我が未み来らい不ふ聞もん悪あく声しょう悪人あくにん」 とは、 これ闍王じゃおう・調じょう達だつ (提婆達多) がごとき、 父ちちを殺ころし僧そうを破はするもの、 および悪あく声しょう等とう、 願ねがはくはまた聞きかず、 見みざらんといふことを明あかす。 ただ闍王じゃおうはすでにこれ親しん生しょうの子こなるも、 上かみ父母ぶもにおいて殺せっ0485心しんを起おこす。 いか0375にいはんや疎うとき人ひとにしてあひ害がいせざらんや。 このゆゑに夫ぶ人にん親しん疎そを*簡えらばず、 総そうじてみなたちまちに捨すつ。

~†然シテ「願我未来不聞悪声悪人ト」†者、此 レ明ス↧如キ↢闍王・調達†ガ↡、殺コロシ↠父ヲ破スルモノ↠僧ヲ、及ビ悪声等、願クハ亦不ズ↠聞カ†不ラムトイフコトヲ↞見。但闍王ハ既ニ是 レ親シム生之ノ子†ナルモ、上 ミ於オイテ↢父母ニ↡起オコス↢於殺セツ心ヲ↡。何ニ況ヤ疎ウトキ人ニシテ而不ザラムヤ↢相 ヒ害ガイセ↡。是ノ故ニ夫人不ズ↠簡エラバ↢親シム疎ソヲ↡、総ソウジテ皆 ナ†頓チニ捨スツ。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅲ)釈求哀懴悔文

^三さんに ▲「今向こんこう世せ尊そん」 より下しも 「懴さん悔げ」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん浄じょう土どの妙みょう処しょは善ぜんにあらずは生しょうぜず、 おそらくは*余よけんありて障さへて往ゆくことを得えざることを。 ここをもつて求ぐ哀あいしてさらにすべからく懴さん悔げすべきことを明あかす。

三ニ従リ↢「今コム向カウ世尊ト云」↡下至ル↢「懴悔ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↧夫人浄土ノ妙処ハ†非ズハ↠善ニ不ズ↠生ゼ、恐オソラクハ有リテ↢余ヨケン↡ツミトガ障サヘテ†不ルコトヲ↠得↠往ユクコトヲ、是ココヲ以テ求グ哀アヒシテ更ニ須スベカラベ  クキコトヲ↦懴悔ス↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)釈通請去行文
              (ⅰ)科節

^四しに ▲「唯願ゆいがん仏日ぶつにち」 より下しも 「清浄しょうじょう業処ごっしょ」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん通つうじて*去こ行ぎょうを請しょうずることを明あかす。

四ニ従リ↢「唯ユイ願仏日‡」↡下至ル↢「清浄業処ニ」↡已来0707タハ、▲正シク明ス↣夫人通ツウジテ請シヤウズルコトヲ↢去コ行ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^これ夫ぶ人にん▲上かみにはすなはち通つうじて*生しょう処じょを請しょうじ、 いままた通つうじて*得とく生しょうの行ぎょうを請しょうずることを明あかす。

~此明ス↧夫人上ニハ即チ通ジテ請ジ↢生処ヲ↡、今亦通ジテ請ズルコトヲ↦得生之ノ行ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

^「▲仏日ぶつにち」 といふは法ほう・喩ゆならべて標ひょうす。 ▼たとへば日ひ出いでて衆闇しゅあんことごとく除のぞこるがごとく、 仏ぶっ智ち光ひかりを輝かがやかして、 無む明みょうの夜よる日ひのごとくに朗ほがらかなり。

▼言フ↢「仏日ト」↡者ハ法・喩ユタトヘ双ナラベテ標ヘウスル也ナリ。譬タトヘバ如クシ↢日ヒ出イデテ衆闇アムヤミ尽コトゴトク除ノゾコルガ↡、仏智輝カガヤカシテ↠光ヒカリヲ無明之ノ†夜日ノゴトク朗ホガラカナリ。

^▲「教きょう我が観かん於お清浄しょうじょう」 といふ以下いげは、 まさしくすでによく穢えを厭いとひ浄じょうを欣ねがふ。 いかんが安心あんじん注ちゅう想そうして清浄しょうじょうの処ところに生しょうずることを得うるといふことを明あかす。

言フ↢「*教我観於清浄ト」↡已下ハ、▲正シク明ス↢既ニ能ク厭イトヒ↠穢ヲ欣ネガフ↠浄ヲ、若為 イカン ガ安心アンジムシ注想チユサウシテ†得ルトイフコトヲ↟生ズルコトヲ↢清浄ノ処ニ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)【光台現国】
              (ⅰ)科節

^五ごに ▲「爾時にじ世せ尊そん放ほう眉み間けん光こう」 より下しも 「令りょう韋い提だい見けん」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく世せ尊そん広ひろく浄じょう土どを現げんじて▲前さきの通つう請しょうに酬こたへたまふことを明あかす。

五ニ従リ↢「爾時世尊放ハウ眉ミ間光ト云」↡下至ル↢「令リヤウ韋提見ケムニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↧世尊広ク現ジテ↢浄土ヲ↡酬コタヘタマフコトヲ↦前ノ通請ニヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^これ世せ尊そん、 夫ぶ人にんの広ひろく浄じょう土どを求もとむることを見みたまへるをもつて、 如来にょらいすなはち眉み間けんの光ひかりを放はなちて十方じっぽう国こくを照てらし、 光ひかりをもつて国くにを摂せっし、 頂上ちょうじょうに還来げんらいして化けして金台こんだいとなるに、 須しゅ弥み山せんのごとし。

~此†明ス↧世尊以テ↠見タマヘルヲ↣夫人ノ広ク求モトムルコトヲ↢浄土ヲ↡、如来即チ放ハナチテ↢眉ミ間ノ光ヲ↡照テラシ↢十方ノ国ヲ↡、以テ↠光ヲ摂セフシ↠国ヲ、†還↢来シテ頂チヤウ上ニ↡化シテ†作ルニ↢金台ダイト↡、如シ↢須弥山ノ↡、

^「▲如にょ」 の言ごんは似じな0376り、 須しゅ弥み山せんに似にたり。 この山やま腰こしは細ほそく、 上かみは闊ひろし。 あらゆる仏国ぶっこく*ならびになかにおいて現げんじ、 種々しゅじゅ不ふ同どうにして荘しょう厳ごん異ことなることあり。 仏ぶつの*神力じんりきのゆゑに*了々りょうりょうとして分ぶん明みょうなり。 韋い提だいに*加備かびしてことごとくみな見みることを得えしむることを明あかす。

~「如ニヨ」之ノ言ゴンハ似ジナリ、似ニタリ↢須弥山ニ↡、此ノ山ヤマノ腰コシハ細ホソク上 ミハ闊ヒロシ、†所有ル仏国並ナラビニ於オイテ↠中ニ現ジ、種種不同ニシテ荘厳有リ↠異コトナルコト、仏ノ神力ノ故ニ了了トシテ分明ナリ、加カ↢備ビシテ韋提ニ↡尽コトゴトク皆 ナ得シムルコトヲ↞見ルコトヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅴ)(ⅲ)料簡

 ^問とひていはく、 韋い提だい上かみには 「▲わがために広ひろく無憂むうの処ところを説ときたまへ」 と請しょうず。 仏ぶついまなんがゆゑぞために広ひろく説ときたまはずして、 すなはちために金台こんだいにあまねく現げんずるはなんの意こころかあるや。

~問ヒテ曰ク、韋提上ニハ請シヤウズ↣†為ニ↠我ガ広ク説キタマヘト↢無憂之処ヲ↡。仏今 マ何ナンガ故ゾ不ズシテ↢為ニ広ク説トキタマハ↡、乃チ†為ニ金台ニ普ク現†ズル者ハ有ル↢何ナンノ意カ↡也ヤ。

^答こたへていはく、 これ如来にょらいの*意い密みつを彰あらわす。 しかるに韋い提だい、 言ごんを発おこして請しょうを致いたすは、 すなはちこれ広ひろく浄じょう土どの門もんを開ひらけとなり。 もしこれがために総そうじて説と0486かば、 おそらくはかれ見みずして心しんなほ惑まどひを致いたすことを。 ここをもつて一々いちいちに顕現けんげんしてかの眼前げんぜんに対たいして、 かの*所須しょしゅに信まかせて心しんに随したがひみづから選えらばしむ。

~答ヘテ曰ク、此ハ彰アラハス↢如来ノ意イ密ミチヲ↡也ナリ。然ルニモ 韋提発シテ↠†言ヲ致イタスハ↠請ヲ、即チ是 レ広ク開ケトナリ↢浄土之ノ門ヲ↡。若シ為ニ↠之コレガ総ソウジテ説トカバ、恐オソラクハ彼 レ不ズシテ↠見ミ心ニ猶ナホ致イタ†スコトヲ↠惑マドヒヲ。是ヲ以テ一一ニ顕現シテ対タイシテ↢彼ノ†眼前ニ↡、信マカセテ↢彼ノ所須シヨシユニ↡随ヒ↠心ニ自ラ選エラバシム。△

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)釈総領所現文
              (ⅰ)科節

 ^六ろくに ▲「時じ韋い提だい白びゃく仏ぶつ」 より下しも 「皆かい有う光こう明みょう」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にん総そうじて*所現しょげんを領りょうして、 仏恩ぶっとんを*感かん荷がすることを明あかす。

六ニ▼従リ↢「時ジ韋提白仏ト云」↡下至ル↢「皆有光明ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↧夫人総ソウジテ領リヤウシテ↢所現ヲ↡、感カンエタリ↦荷ガニナウスルコトヲ仏恩オンヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これ夫ぶ人にん総そうじて十方じっぽうの仏国ぶっこくを見みるに、 ならびにことごとく*精しょう華けなれども、 極楽ごくらくの荘しょう厳ごんに比ひせんと欲ほっするに、 まつたく比ひ況きょうにあらざることを明あかす。 ゆゑに 「我が今こん楽生ぎょうしょう安楽あんらく国こく」 といふ。

~◆此 レ明ス↧▼夫人総ジテ見ルニ↢十方ノ仏国ヲ↡、並ナラビニ悉ク精セイ華クワナレドモ、欲ホスルニ↠比ヒセムト↢極楽ノ荘厳ニ↡、全マタク非ザルコトヲ↦比ヒ況キヤウニ↥。故ニ云0708フ↢「我今コム楽生安楽国ト」↡也ナリ。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅵ)(ⅲ)料簡

 ^0377問とひていはく、 十方じっぽうの諸仏しょぶつは*断惑だんわく殊ことなることなく、 行ぎょう畢おわり果か円まどかなること、 また二になかるべし。 なにをもつてか一種いっしゅの浄じょう土どにすなはちこの優う劣れつあるや。

~問ヒテ曰ク、十方ノ諸仏ハ断惑ダンワク無†ク↠†殊ナルコト、行畢オハリ果クワ円カナルコト、亦応ベシ↠無ナカル↠二。何ヲ以テカ一種ノ浄土ニ即チ†有ル↢斯コノ優ウマサリ劣レツ↡オトル也。

^答こたへていはく、 仏ぶつはこれ法王ほうおう、 神通じんずう自じ在ざいなり。 優うと劣れつと*凡惑ぼんわくの知しるところにあらず。 隠顕おんけん、 機きに随したがひて*化け益やくを存ぞんずることを望のぞむ。 あるいはことさらにかの優うとなすことを隠かくして、 独ひとり西方さいほうを顕あらわして勝しょうとなすべし。

~答ヘテ曰ク、仏ハ是 レ法王、神通自在ナリ。優ウト之与ト↠劣レツ非ズ↢凡惑ボムワクノ所ニ↟知ル。隠オン顕随ヒテ↠機キニ望ノゾム↠†存ズルコトヲ↢化益ヲ↡。或イハ可ベシ↧故コトサラニ隠カクシテ↢彼ノ†為スコトヲ↟優ヲ、独ヒトリ顕シテ↢西方ヲ↡為ス↞勝シヨウト。△

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅶ)釈別選所求文
              (ⅰ)科節

 ^七しちに ▲「我が今こん楽生ぎょうしょう弥陀みだ」 より以下いげは、 まさしく夫ぶ人にん*別べっして所しょ求ぐを選えらぶことを明あかす。

七ニ▼従リ↢「我今楽生弥陀」↡已下ハ、▲正シク明ス↣夫人別ベチシテ選エラブコトヲ↢所求ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

・総標

^◆これ弥陀みだの本国ほんごくは四し十じゅう八はち願がんよりす。

◆此†明ス↧弥陀ノ本国ハ四十八願ヨリス、

・別顕

^◆願々がんがんみな*増ぞう上じょうの勝しょう因いんを発おこし、 因いんによりて勝行しょうぎょうを起おこし、 行ぎょうによりて勝しょう果かを感かんじ、 果かによりて勝しょう報ほうを感かん成じょうし、 報ほうによりて極楽ごくらくを感かん成じょうし、 楽らくによりて*悲化ひけを顕通けんつうし、 悲化ひけによりて智慧ちえの門もんを顕開けんかいす。

~▼願願皆 ナ発シス↢増上ノ勝因インヲ↡、。依ヨリテ↠†因ニ起シス↢於勝行ヲ↡、依リテ↠行ニ感†ジ↢於勝果ヲ↡、依リテ↠果ニ感↢成シス勝報ヲ↡、依リテ↠報ニ感↢成シス極楽ヲ↡、依リテ↠楽ニ顕↢通シス悲化ヲ↡、依ヨリテ↢於悲化ニ↡顕↢開ス智慧之ノ門ヲ↡†、

・一代化儀

^◆しかるに悲ひ心しん無む尽じんなれば、 智ちもまた無む窮ぐうなり。 *悲智ひち双そう行ぎょうしてすなはち広ひろく*甘かん露ろを開ひらく。 これによりて*法潤ほうにんあまねく群ぐん生じょうを摂せっす。

~然シカルニ悲心無尽†ナレバ、智モ亦無ム窮グウナリ†、悲智ヒチ双サウ行シテ即チ広ク開ク↢甘露†ヲ↡、因ヨリテ↠茲コレニ法潤ニン普ク摂セフス↢群グン生ヲ↡也†、

・末仏勧讃

^◆諸しょ余よの経きょう典てんに勧すすむる処ところいよいよ多おおし。 *衆しゅ聖しょう心しんを斉ひとしくしてみな同おなじく*指し讃さんす。

~▼諸余ノ経典テンニ勧ススムル処 ロ弥イヨイヨ多シ†、衆聖斉ヒトシクシテ↠心ヲ皆 ナ同ジク指シ讃サンス†、

・別選所由

^▼この因縁いんねんありて、 如来にょらいひそかに夫ぶ人にんを遣つかはして、 別べつして選えらばしめたまふことを致いたすことを明あかす。

~◆有リテ↢此ノ因縁↡、致スコトヲ↞使†メタマフコトヲ↧如来密ヒソカニ遣ツカハシテ↢夫人ヲ↡別ベチシテ選バ↥也。△

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)釈請求別行文
              (ⅰ)科節

^八はちに ▲「唯願ゆいがん世せ尊そん」 より以下いげは、 まさしく夫ぶ人にん*別べつ行ぎょうを請しょう求ぐすることを明あかす。

八ニ従リ↢「唯願世尊ト云」↡已下ハ、▲正シク明ス↣夫人請シヤウ↢求グスルコトヲ別行ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)(ⅱ)述意

^これ韋い提だいすでに得とく生しょうの処ところを選えらびて、 還かえりて別べつ行ぎょうを修しゅして、 おのれを励はげまし心しんを注とどめて、 か0378ならず*往益おうやくを望のぞむことを明あかす。

~此明ス↧韋提既ニ選ビテ↢得生ノ処トコロヲ↡、還カヘリテ修シユシテ↢別行ヲ↡、励ハゲマシテ↠己ヲノレヲ注トドメテ↠心ヲ必ズ望ノゾムコトヲ↦往益ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (二)(Ⅷ)(ⅲ)釈文

・教我思惟

^「▲教きょう我が思し惟ゆい」 といふは、 すなはち0487これ*定じょうの前ぜん方便ほうべん、 かの国くにの依え正しょう二に報ほう・*四し種しゅの荘しょう厳ごんを思し想そうし憶念おくねんするなり。

▼言フ↢「教我思オモヒ惟ト」ハカラウ↡者ハ、即チ是定ヂヤウノ†前方便、思シ↢想シ憶↣念スル彼ノ国ノ依正二報・四種ノ荘厳ヲ↡也。

・教我正受

^「▲教きょう我が正しょう受じゅ」 といふは、 これ前さきの思し想そう漸々ぜんぜんに微み細さいにして、 *覚想かくそうともに亡もうずるによりて、 ただ定じょう心しんのみありて*前ぜん境きょうと合がっするを名なづけて正しょう受じゅとなすことを明あかす。 このなかに略りゃくしてすでに料りょう簡けんす。 *下しもの観門かんもんに至いたりてさらにまさに広ひろく弁べんずべし、 知しるべし。

▼言フ↢「教我正受ト」↡者、此 レ明ス↧†因リテ↢前ノ思想漸漸ゼンゼムニ微ミ細サイニシテ、覚想カクサウ倶トモニ亡ズルニ↡、唯タダ有リテ↢定心ノミ↡与ト↢†前境↡合ガフスルヲ名ケテ為スコトヲルコトヲ↦正受ト↥。此ノ中ニ略シテ已スデニ料レウ簡ス。至リテ↢下ノ観門ニ↡更ニ当ベ ニシ↢広ク弁ベムズ↡、応ベシ↠知ル。

二 Ⅱ ⅱ b ホ (三)結

^上じょう来らい八はっ句くの不ふ同どうありといへども、 広ひろく欣ごん浄じょうの縁えんを明あかしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢八句ノ不同↡、広ク明シ↢欣ゴム浄ノ縁ヲ↡竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ【散善顕行縁】
          (一)標

【10】^六ろくに↑散善さんぜん顕けん行ぎょう縁えんのなかにつきてすなはちその五ごあり。

▲六0709ニ就キテ↢散善顕行縁ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ五↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)釈
            (Ⅰ)釈光益父王文
              (ⅰ)科節

^一いちに ▲「爾時にじ世せ尊そん即便そくべん微み笑しょう」 より下しも 「成じょう那な含ごん」 に至いたるこのかたは、 まさしく光ひかり、 父ちちの王おうを益やくすることを明あかす。

一ニ従リ↢「爾時世尊即便微ミスコシ笑エムト云」↡下至†ル↢「成那ナ含ゴムニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↣光 リ益スルコトヲ↢父ノ王ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらい夫ぶ人にんの極楽ごくらくに生しょうぜんと願がんじ、 さらに得とく生しょうの行ぎょうを請しょうずるを見みたまふに、 仏ぶつの本心ほんしんに称かなひ、 また弥陀みだの願がん意いを顕あらわすをもつて、 この二に請しょうによりて広ひろく浄じょう土どの門もんを開ひらけば、ただ韋い提だいのみ去ゆくことを得うるにあらず、 *有う識しきこれを聞ききてみな往ゆく。 この益やくあるがゆゑに、 ゆゑに如来にょらい微み笑しょうしたまふことを明あかす。

~▲此†明ス↭如来以テ↪見タマフニ↧夫人ノ願ジ↠生ゼムト↢極楽ニ↡、更ニ請ズルヲ↦得生之行ヲ↥、称カナヒ↢仏ノ本心ニ↡、又顕スヲ↩弥陀ノ願ノ意ヲ↨、因ヨリテ↢斯コノ二請ニ↡広ク開†ケバ↢浄土之ノ門ヲ↡、非ズ↢直タダチニ韋提†ノミ得ルノミニ↟†去クコトヲ、有識聞キキテ↠之ヲ皆 ナ往ユク†、有ルガ↢*斯ノ益↡故ニ、†所以ニ如来微笑シタマフコトヲ↬也。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅲ)釈文

・光益所由

^「▲有う五ご色光しきこう従じゅう仏ぶつ口く出しゅつ」 といふは、 これ一切いっさい諸仏しょぶつの心しん口くの常つねの*威儀いぎ、 *法ほう爾にとしておほよそ出いだすところの光ひかりかならず利り益やくあることを明あかす。

言フ↢「有ウ五色光従ジユウ仏口出ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↣一切ノ諸仏ノ心口クノ常ツネノ威儀ヰギ、法爾ニトシテ凡オホヨソ所ノ↠出ス光 リ必ズ有アルコトヲ↢利益↡。

・唯照頻婆

^「▲一一いちいち光こう照しょう頻びん婆ば頂ちょう」 といふは、 まさしく口くちの光ひかり、 余よ方ほうを照てらさずして、 ただ王おう頂ちょうを照てらすことを0379明あかす。

言フ↢「一一光照セウ頻ビン婆バ頂チヤウト」↡者ハ、▲正シク明ス↧口ノ光 リ不ズシテ↠照テラサ↢余ヨ方ヲ↡、唯照スコトヲ↦王ワウ頂チヤウヲ↥。

^しかるに仏ぶつの光ひかり、 身みの出しゅっ処しょに随したがひてかならずみな益やくあり。 仏ぶつの足みあしの下したより光ひかりを放はなてば、 すなはち地じ獄ごく道どうを照しょう益やくす。 もし光ひかり膝ひざより出いづれば、 畜ちく生しょう道どうをを照しょう益やくす。 もし光ひかり*陰蔵おんぞうより出いづれば、 鬼き神じん道どうを照しょう益やくす。 もし光ひかり臍ほぞより出いづれば、 修しゅ羅ら道どうを照しょう益やくす。 光ひかり心むねより出いづれば、 人道にんどうを照しょう益やくす。 もし光ひかり口くちより出いづれば、 二に乗じょうの人ひとを照しょう益やくす。 もし光ひかり眉み間けんより出いづれば、 大だい乗じょうの人ひとを照しょう益やくす。

~然ルニ仏ノ光随ヒテ↢身ノ†出処ニ↡必ズ皆 ナ有リ↠益。仏ノ足ノ下ヨリ放ハナテバ↠光ヲ、即チ照セウ↢益ス地獄道ヲ↡。若シ光 リ従リ↠膝ヒザ出イヅレバ、照↢益ス畜生道ヲ↡。若シ光 リ従リ↢陰オム蔵↡出ヅレバ、照↢益ス鬼神道ヲ↡。若シ光 リ従リ↠臍ホゾ出ヅレバ、照↢益ス修羅道ヲ↡。光 リ従リ↠心ムネ出ヅレバ、照↢益ス於人道ヲ↡。若シ光 リ従リ↠口出ヅレバ、照↢益ス二乗之人ヒトヲ↡。若シ光 リ従リ↢眉ミ間↡出ヅレバ、照↢益ス大乗ノ†人ヲ↡。

^いまこの光ひかり口くちより出いでてただちに王おう頂ちょうを照てらすは、 すなはちその*小しょう果かを授さず0488くることを明あかす。 もし光ひかり眉み間けんより出いでてすなはち仏ぶっ頂ちょうより入いるは、 すなはち菩ぼ薩さつに*記きを授さずくるなり。 かくのごとき義ぎは広こう多たにして無む量りょうなり、 つぶさに述のぶべからず。

~今 マ明ス↧此ノ光 リ従リ↠口出イデテ直タダチニ照ス↢王頂ヲ↡者ハ、即チ授クルコトヲ↦其ノ小果ヲ↥。若シ光 リ従リ↢眉間↡出イデテ即チ従リ↢仏頂↡入イル者ハ、即チ授クル↢菩薩ニ記キヲ↡也ナリ。如キノ↠斯カクノ義ギ者ハ広クワウ多タニシテ無量ナリ、不ズ↠可カラ↢具ツブサニ述ノブ↡ジユムス。△

・頻婆得益

^▲「爾時にじ大王だいおう雖在すいざい幽閉ゆうへい」 といふ以下いげは、 まさしく父ちちの王おう、 光ひかりの頂いただきを照てらすことを蒙こうむりて心眼しんげん開ひらくることを得えて、 *障隔しょうきゃく多おおしといへども自じ然ねんにあひ見みる。 これすなはち光ひかりによりて仏ぶつを見みたてまつるは、 意こころの期ごするところにあらず、 敬きょうを致いたし帰依きえするにすなはち*第三だいさんの果かを超ちょう証しょうすることを明あかす。

言フ↢「爾時大王雖スイ在幽閉エウヘイト」↡已下ハ、▲正シク†明ス↧父ノ王蒙カムリテ↢光 リノ照スコトヲ↟頂ヲイタダキ心眼ゲン得エテ↠開クルコトヲ、障シヤウ隔キヤクヘダツ雖モ↠多シト自然ニ相 ヒ見ル、斯コレ乃チ因ヨリテ↠光ニ見タテマツルハ↠仏ヲ、非ズ↢意ノ†所ニ↟期スル、致シ↠敬キヤウヲ帰クヰカヘシ依エ†スルニ即チ超↦証スルコトヲ第三之ノ果ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)釈酬請許説文
              (ⅰ)科節

^二にに ▲「爾時にじ世せ尊そん」 より下しも 「広説こうせつ衆しゅ譬ひ」 に至いたるこのかたは、 まさしく▲前さきに夫ぶ人にん別べつして*所しょ求ぐの行ぎょうを選えらぶに答こたふることを明あかす。

二ニ従リ↢「爾時世尊ト云」↡下至ル↢「広0710説衆シユ譬ビニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↠†答フルコトヲ↣前ニ夫人別ベチシテ選ブニ↢所求之行ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらい▲上かみの耆ぎ闍しゃに没もっして王おう宮ぐに出いでをはるよりこの文もんに至いたるまで、 世せ尊そん*黙然もくねんとして坐ざして、 総そうじていまだ言説ごんせつしたまはざることを明あか0380す。

~此 レ明ス↧如来†従リ↢上ノ耆闍ニ没モツシテカクレテ王宮ニ出デ訖ル↡至†ルマデ↢此ノ文モンニ↡、世尊嘿然モクネントシテ而シカモ坐ザシテ、†総ジテ未ザ ダルコトヲ↦言ゴム説シタマハ↥。

^ただ中ちゅう間げんの夫ぶ人にんの懴さん悔げ・請しょう問もん・放光ほうこう・現国げんごく等とうは、 すなはちこれ阿あ難なん、 仏ぶつに従したがひて王おう宮ぐにしてこの因縁いんねんを見みて、 事じ了おわりて山やまに還かえり、 伝つたへて耆ぎ闍しゃの大衆だいしゅに向むかひて上かみのごとき事じを説とくに、 はじめてこの文もんあり。 またこれ時ときに仏ぶつ語ごなきにあらず、 知しるべし。

~但タダ中間チウゲンノ夫人ノ懴悔・請シヤウ問・放ハウ光・現国等ハ、乃チ是 レ阿難従シタガヒテ↠仏ニ王宮ニシテ見テ↢此コノ因縁ヲ↡、事コト了オハリテ還カヘリテ↠山ニ、伝ツタヘテ向ヒテ↢耆闍ノ大衆ニ↡説クニ↢如キノ↠上ノ事ジヲ↡、始ハジメテ有リ↢此ノ文↡。亦非ズ↣是 レ無キニ↢時ニ仏語ゴ↡†也、応ベシ↠知ル。△

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅲ)釈文

・告命許説

^▲「爾時にじ世せ尊そん告ごう韋い提だい」 といふ以下いげは、 まさしく*告ごう命みょう許こ説せつを明あかす。

言フ↢「爾時ニジ世尊告ガウ韋提ト」↡已下ハ、▲正シク明ス↢告命許コユルス説ヲ↡也ナリ。

・去此不遠

^「▲阿あ弥陀みだ仏ぶつ不ふ遠おん」 といふは、 まさしく*境きょうを標ひょうしてもつて心しんを住とどむることを明あかす。 すなはちその三さんあり。

言フ↢「阿弥陀仏不フ遠オント」↡者ハ、▲正シク明ス↢標ヘウシテ↠境ヲ以テ†住トドムルコトヲ↟心ヲ。即チ有リ↢其ノ三↡。

^一いちには*分斉ぶんざい遠とおからず。 これより十じゅう万億まんおくの刹せつを超ちょう過かして、 すなはちこれ弥陀みだの国くになることを明あかす。

▲一ニハ明ス↧分斉ブンザイ不ズ↠遠トヲカラ、従ヨリ↠此 レ超テウコヘ↢過クワスグ シテ十万億ノ†刹ヲ↡、即チ是 レ弥陀之ノ国クニナルコトヲ↥。

^二にには*道どう里りはるかなりといへども、 去ゆく時とき一念いちねんにすなはち到いたることを明あかす。

~二ニハ明ス↢▼道里リ雖モ↠遥ハルカナリト、†去ク時一念ニ即チ到イタルコトヲ↡。

^三さんには韋い提だい等とうおよび未み来らい有う縁えんの衆しゅ生じょう、 心しんを注とどめて観念かんねんすれば*定境じょうきょう相応そうおうして、 行ぎょう人にん自じ然ねんにつねに見みることを明あかす。

~三ニハ明ス↢韋提等†及ビ未来有縁ノ衆生、注トドメテ↠心ヲ観念スレバ、定境相応シテ、行人自然ニ常ニ見ミルコトヲ↡。

^この三さん義ぎあるがゆゑに不ふ遠おんといふ。

~有ルガ↢斯コノ三ノ義ギ↡故ニ云フ↢不フ遠オント↡也ナリ。△

・浄業成

^▲「汝当にょとう繋け念ねん」 といふ以下いげは、 まさしく凡惑ぼんわく障さわり深ふかくして、 心しん多おおく散動さんどうす。 もしたちまちに*攀縁へんえんを捨すてずは、 *浄境じょうきょう現げんずることを得うるに由よしなきことを明あかす。 これすなはちまさしく安心あんじん住行じゅうぎょうを教おしふ。 もしこの法ほうによるを名なづけて 「▲*浄じょう0489業ごう成じょうず」 となす。

▼言フ↢「汝ニヨ当タウ繋ケ念ト」↡已下ハ、▼正シク明ス↧凡惑ボムワク障サハリ深クシテ心多ク散動サンドウス、若シ不ズハ↣†頓チニ捨ステ↢攀ヘム縁ヲ↡、浄境無ナキコトヲ↞由ヨシ↠得ルニ↠現ゲンズルコトヲ。此 レ即チ正シク教フ↢安心住行ヲ↡。若シ依ヨルヲ‡↢此ノ法ニ↡名ケテ為ス‡↢浄業成ズト↡也ナリ。

・自開散善

^▲「我が今こん為い汝にょ」 といふ以下いげは、 これ機き縁えんいまだ具ぐせず、 ひとへに*定じょう門もんを説とくべからず、 仏ぶつさらに機きを観かんじて、 みづから三福さんぷくの行ぎょうを開ひらきたまふことを明あかす。

言フ↢「我ガ今コム為汝ニヨト」↡已下ハ、▲此 レ明ス↧機キ縁†未ダ↠具セ、不ズ↠可カラ↣偏ヒトヘニ説ク↢定門ヲ↡、仏更ニ観ジテ↠機キヲ、自ラ†開キタマフコトヲ↦三福之ノ行ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)釈挙機勧修文
              (ⅰ)科節

^三さんに ▲「亦やく令りょう来らい世せ」 よ0381り下しも 「極楽ごくらく国こく土ど」 に至いたるこのかたは、 まさしく機きを挙あげて修しゅを勧すすめ、 益やくを得うることを明あかす。

三ニ従リ↢「亦ヤク令未来世ト云」↡下至ル↢「極楽国土ニ」↡已コノ来タハ、▲正シク明ス↢挙アゲテ↠機キヲ†勧メ↠修ヲ、得ルコトヲ↟益ヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^これ夫ぶ人にんの請しょうずるところ、 利り益やくいよいよ深ふかくして、 未み来らいに及およぶまで回え心しんすればみな到いたることを明あかす。

~此明ス↧夫人ノ所 ロ↠請ズル、利益弥イヨイヨ深フカクシテ、及ブマデ↢未来ニ↡廻心†スレバ皆 ナ到イタルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)釈勧修三福文
              (ⅰ)科節

^四しに ▲「欲よく生しょう彼ひ国こく者しゃ」 より下しも 「名みょう為い浄じょう業ごう」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく勧すすめて三福さんぷくの行ぎょうを修しゅせしむることを明あかす。

四ニ従リ↢「欲ヨク生彼国者シヤ」↡下至ル↢「名為浄業ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↣†勧メテ修セシムルコトヲ↢三福之ノ0711行ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^◆これ▼一切いっさい衆しゅ生じょうの機きに二に種しゅあり。 一いちには*定じょう、 二にには*散さんなり。 もし定行じょうぎょうによれば、 すなはち*生しょうを摂せっするに尽つきず。 ここをもつて如来にょらい (釈尊) 方便ほうべんして三福さんぷくを顕開けんかいして、 もつて散動さんどうの根こん機きに応おうじたまふことを明あかす。

~此 レ†明ス↧一切衆生ノ機キニ有リ↢二種↡、一ニ者定、二ニ者散ナリ†、▼若シ依ヨレバ↢定行ニ↡、即チ摂セフスルニ↠生ヲ不ズ↠尽ツキ†、是ヲ以テ如来方便ベンシテ顕↢開シテ三福ヲ↡、以テ応ジタマフコトヲ↦散動ドウノ根コン機キニ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

・所帰

^「▲欲よく生しょう彼ひ国こく」 といふは所しょ帰きを標ひょう指しす。

▲言フ↢「欲生彼国ト」↡者ハ標ヘウ↢指シスル所シヨ帰クヰヲ↡也ナリ。

・行門

^「▲当修とうしゅ三福さんぷく」 といふは総そうじて行ぎょう門もんを標ひょうす。 いかんが三さんと名なづくる。

~言フ↢「当修タウシユ三福ト」↡者ハ総ソウジテ†標ス↢行門ヲ↡也。云何ガ名クル↠三ト。

・行門 ・世福

^「▲一者いっしゃ孝きょう養よう父母ぶも」、 すなはちその四しあり。

~「一者孝養父母」、即チ有リ↢其ノ四↡。

・行門 ・世福 ・孝養父母

^一いちに 「▲孝きょう養よう父母ぶも」 といふは、 これ一切いっさいの凡ぼん夫ぶみな縁えんによりて生しょうずることを明あかす。

~一ニ言フ↢「孝養父母ト」↡者ハ、此 レハ明ス↢一切ノ凡夫皆藉ヨリテ↠縁ニ而生ズルコトヲ↡。

^いかんが縁えんによる。 あるいは*化け生しょうあり、 あるいは湿しっ生しょうあり、 あるいは卵らん生しょうあり、 あるいは胎たい生しょうあり。 この四し生しょうのなかにおのおのにまた四し生しょうあり。 *経きょうに広ひろく説ときたまふがごとし。

~云何ガ藉ヨル↠縁ニ。或イハ有リ↢化生↡、或イハ有リ↢湿シツウルヲス生↡、或イハ有リ↢卵ランカイコ生↡、或イハ有リ↢胎ハラマル生↡。此ノ四シ生ノ中ニ各各ニニ復有リ↢四生↡。如シ↢経ニ広ク説ト†キタマフガ↡。

^ただこれあひよりて生しょうずればすなはち父母ぶもあり。 すでに父母ぶもあればすなはち大恩だいおんあり。 もし父ちちなくは*能のう生しょうの因いんすなはち闕かけ、 もし母ははなくは*所しょ生しょうの縁えんすなはち乖そむきなん。 もし二に人にんともになくはすなはち託たく生しょうの地ところを失うしなはん。 かならずすべからく父母ぶもの縁えん0382具ぐして、 まさに受身じゅしんの処ことわりあるべし。

~但シ是 レハ相 ヒ因ヨリテ而シカモ生ズレバ、即チ有リ↢父母↡。既スデニ有レバ↢父母↡即チ有リ↢大恩↡。▼若シ†無クハ↠父者能生之ノ因イン即チ闕カケ‡、若シ†無クハ↠母者所生之ノ縁即チ乖ソムキナム。若シ二人倶トモニ無ナクハ即チ失ウシナ†ハム↢託タク生之ノ地トコロヲ↡。要カナラズ須スベカラベ  クシ↣父母ノ縁エン具グシテ、方マサニ有ル↢受ジユ身之ノ処コトワリ↡。

^すでに身みを受うけんと欲ほっするに、 みづからの*業識ごっしきをもつて内因ないいんとなし、 父母ぶもの精しょう血けつをもつて外げ縁えんとなして、 因縁いんねん和わ合ごうするがゆゑにこの身みあり。 この義ぎをもつてのゆゑに父母ぶもの恩おん重おもし。

~◆既ニ欲ホスルニ↠受ウケムト↠身ミヲ、以テ↢自ラノ業識ヲ↡為シ↢内因ナイイント↡、以テ↢父母ノ精セイ血クヱツヲ↡為シテ↢外縁ト↡、因縁和合スルガ故ニ有リ↢此ノ身↡。以テノ↢斯コノ義ヲ↡故ニ父母ノ恩オン重オモシ。

^母はは懐胎かいたいしをはりて十と月つきを経ふるまで、 *行住ぎょうじゅう坐臥ざがにつねに苦く悩のうを生しょうず。 また0490産さんの時ときの死しの難なんを憂うれふ。 もし生しょうじをはりぬれば、 三年さんねんを経ふるまでつねに屎しに眠ねむり尿にょうに臥ふす。 *床じょう被び・衣え服ぶくみなまた不ふ浄じょうなり。

~◆母ハワ懐クワイハラミ胎タイシハラム已オハリテ†経ルマデ↢於十月ヲ↡、行住坐臥ニ常ニ生シヤウズ↢苦ク悩ナウヲ↡。復憂ウレフ↢産サンノ時ノ死ノ難ナンヲ↡。若シ生ジ已リヌレバ、†経ルマデ↢於三年ヲ↡†恒常 ツネ ニ眠ネムリ↠屎シニ臥フス↠尿ネウニ。†床被・衣服皆 ナ亦マタ不浄ナリ。

^その長ちょう大だいに及およびて婦めを愛あいし児こを親したしみて、 父母ぶもの処ところにおいてかへりて憎疾ぞうしつを生しょうじ、 恩おん孝きょうを行ぎょうぜざるものはすなはち畜ちく生しょうと異ことなることなし。

~◆及オヨビテ↢其ノ長大ニ↡愛アイシ↠婦メヲ親シタシミテ↠児コヲ、於オイテ↢父母ノ処トコロニ↡†反リテ生ジテ↢憎ゾウ*疾シチヲ↡、不ザル↠行ゼ↢恩孝オンカウヲ↡者ハ即チ与ト↢畜生↡無†シ↠異コトナルコト也。△

^また父母ぶもは世せ間けんの*福田ふくでんの極きわみなり。 仏ぶつはすなはちこれ*出しゅっ世せの福田ふくでんの極きわみなり。

▲又▼父母者ハ世間ノ福田之ノ†極 ミ也ナリ。仏者ハ即チ是 レ出世ノ福田之ノ†極 ミ也。

^しかるに仏ぶつ在ざい世せの時とき、 時じ年ねん*飢き倹けんせるに遇値あひて、 人ひとみな餓死がしして白骨はっこつ*縦じゅう横おうなり。 もろもろの比丘びく等とう*乞食こつじきするに得えがたし。 時ときに世せ尊そん、 比丘びく等とうの去さりぬる後のちを待まちて、 独ひとりみづから城しろに入いりて乞食こつじきしたまふ。 旦あしたより中ひるに至いたるまで門々もんもんに喚よび乞こひたまへども、 食じきを与あたふるものなし。 仏ぶつまた鉢はちを空むなしくして帰かえりたまふ。

~然シカルニ仏在世ノ時、遇↢値 ア ヒテ時年飢キカツヘ倹ケンウヘセルニ↡、人皆 ナ餓ガウヘ死シシニシテ白ハクシロキ骨コツホネ 縦ジユタタサマ 横ワウナリヨコサマ 。諸ノ比丘等乞コツコフ食ジキスルニ難ガタシ↠得エ0712。†於テ↠時ニ世尊待チテ↢比丘等ノ去サ†リヌル後ノチヲ↡、独ヒトリ自ラ入イリテ↠†城ニ乞食コツジキシタマフ。従リ↠旦アシタ至ルマデ↠中ヒルニ門門ニ†喚ビ乞コヒタマヘドモ、無シ↢与アタフル↠食ヲ者モノ↡。仏ノ†還タ空ムナシクシテ↠鉢ハチヲ而帰カヘリタマフ。

^明日あくるひまた去ゆきて、 また得えたまはず。 後のちの日ひまた去ゆきたまふに、 また得えたまはず。

~明日アクルヒ復去ユキテ、†又還 マタ 不ズ↠得タマハ。†後ノ日復去ユキタマフニ、又亦不ズ↠得タマハ。

^たちまちに一いちの比丘びくありて、 道みちに逢あひて仏ぶつを見みたてまつるに、 顔色げんしき常つねよりも異ことにして飢き相そうましますに似にたり。

~忽タチマチニ有リテ↢一ノ比丘↡、道ニ逢アヒテ見タテマツルニ↠仏ヲ、顔ゲンカオ 色シキシヨク異コトニシテ↠常ツネヨリモ似ニタリ↠†有スニ↢飢キウヘ相↡。

^すなはち仏ぶつに問とひたてまつりてまうさく0383、 「世せ尊そんいますでに食じきしをはりたまへりや」 と。

~即チ問ヒタテマツリテ↠仏ニ†言ク、世尊今 マ已ニ食ジキシ竟オハリタマヘリ也ヤト。

^仏ぶつのたまはく、 「比丘びく、 われ三日さんにちを経へてよりこのかた、 乞食こつじきするに一いち匙じをも得えず。 われいま飢虚きこにして力ちからなし、 よくなんぢとともに語かたらんや」 と。

~仏ノ言ノ下ハク、比丘、我 レ経ヘテヨリ↢三日ヲ↡已来タ、乞コツコフ食ジキスルニ不ズ↠得↢†一匙ヲモ↡。我 レ今 マ飢虚ケコニシテ無シ↠力 ラ、能ク共トモニ↠汝ナンヂト†語ラムヤト。

^比丘びく仏ぶつ語ごを聞ききをはりて、 悲ひ涙るいしてみづから勝たふることあたはず。 すなはちみづから念言ねんごんすらく、 「仏ぶつはこれ無む上じょうの福田ふくでん、 衆しゅ生じょうの*覆護ふごなり。 われこの*三さん衣え売ばい却きゃくして、 一鉢ひとはちの飯いいを買かひ取とりて仏ぶつに奉ぶ上じょうせん、 いままさしくこれ時ときなり」 と。

~比丘聞キキ↢仏語ヲ↡已リテ、悲ヒ涙ルイシテナミダ 不ズ↠能ハ↢自ラ†勝タフルコト↡。即チ自ラ念言ゴンスラク、仏ハ是 レ無上ノ福田、衆生ノ覆フクオオフ護ゴナリマモル 。†我此ノ三衣†売却シテ、買カヒ↢取トリテ一鉢ノ†飯ヲ↡奉ブ↢上ジヤウ タテマツル †セム於仏ニ↡。今 マ正シク†是ノ時也ナリト。

^この念ねんをなしをはりてすなはち一鉢ひとはちの飯いいを買かひ得えて、 すみやかにもつて仏ぶつにたてまつる。

~作ナシ↢是ノ念ヲ↡已リテ即チ買カヒ↢得テ一鉢ノ飯ヲ↡、急スミヤカニ将モテ上タテマツル↠仏ニ。

^仏ぶつ知しろしめして、 ことさらに問とひてのたまはく、 「比丘びく、 時じ年ねん飢き倹けんにして人ひとみな餓死がしす。 なんぢいまいづれの処ところにしてかこの一鉢ひとはちの純じゅん色しきの飯いいを得えて来きたれる」 と。

~仏知シロシメシテ而シカモ故コトサラニ問ヒテ言ク、比丘、時ジ年ネン飢ケ倹ケンニシテ人皆 ナ餓死ガシス。汝 ヂ今 マ何イヅレノ処トコロニシテカ得テ↢此ノ一鉢ノ純ジユン色シキノ†飯ヲ↡来キタレル‡ト。

^比丘びく前さきのごとくつぶさに世せ尊そんにまうす。 仏ぶつまたのたまはく、 「比丘びくの三さん衣えはすなはちこれ三さん世ぜの諸仏しょぶつの*幢相どうそうなり。 この衣え因縁いんねんきはめて尊とうとく、 きはめて重おもく、 きはめて恩おんあり。 なんぢいまこの飯いいを易かへ得えてわれに与あたふることは、 大おおきになんぢ0491が好心こうしんを領りょうすれども、 われこの飯いいを消しょうせず」 と。

~比丘如ク↠前ノ具ツブサニ白ス↢世尊ニ↡。仏又†言ク、比丘ノ三衣者ハ即チ是三世ノ諸仏之ノ幢ドウ相ナリ。此ノ†衣因縁極テ尊タムトク極テ重オモクシ極テ恩アリ。汝 ヂ今 マ易カヘ↢得エテ此ノ†飯ヲ↡与アタフルコト↠我ニ者ハ、大キニ領リヤウスレドモ↢汝ナンヂガ好心カウシムヲ↡、我 レ†不ト↠消セ↢此ノ飯ヲ↡也。

^比丘びくかさねて仏ぶつにまうしてまうさく、 「仏ぶつはこれ三界さんがいの福田ふくでん、 聖しょうのなかの極ごくなるに、 なほ消しょうせずといはば、 仏ぶつを除のぞきて以外いげはたれかよく消しょうせんや」 と。

~比丘重カサネテ白シテ↠仏ニ言ク、仏ハ是三界ノ福田、聖ノ中之ノ†極ナルニ、†尚†言ノ下ハバ↠†不ト↠消セ者、除キテ↠仏ヲ已外ハ誰タレカ能ク†消セム也ヤト。

^仏ぶつのたまはく、 「比丘びく、 なんぢ父母ぶもありやいなや」 と0384。 答こたへてまうさく、 「あり」 と。 「なんぢもつて父母ぶもに供く養ようし去され」 と。

~仏ノ言ク、比丘、汝 ヂ有リヤ↢父母↡已不 イナ ヤト。答ヘテ言ク、有リト。汝 ヂ将モテ供ク↢養シテ父母ニ↡去サレト。

^比丘びくまうさく、 「仏ぶつなほ消しょうせずとのたまふ、 わが父母ぶもあによく消しょうせんや」 と。

~比丘言ク、仏尚ナホ云ノ下フ↠†不ト↠消セ、我ガ父母豈アニ能ク†消セム也ヤト。

^仏ぶつのたまはく、 「消しょうすることを得う。 なにをもつてのゆゑに。 父母ぶもよくなんぢが身みを生しょうぜり。 なんぢにおいて大だい重じゅう恩おんあり。 これがために消しょうすることを得う」 と。

~仏言ク、†得↠†消スルコトヲ。何ヲ以テノ故ニ。父母能ク生ゼリ↢汝ナンヂガ身ヲ↡。於オイテ↠汝ナムヂニ有リ↢大重恩ヂウオン↡。為ニ↠此コレガ†得ト↠†消スルコトヲ。

^仏ぶつまた比丘びくに問とひたまはく、 「なんぢが父母ぶも、 仏ぶつを信しんずる心しんありやいなや」 と。 比丘びくまうさく、 「すべて信心しんじんなし」 と。

~仏又問ヒタマハク↢比丘ニ↡、汝ガ父母有リヤ↢信0713ズル↠仏ヲ心↡不イナヤト。比丘言ク、都スベテ無シト↢信心↡。

^仏ぶつのたまはく、 「いま信しんずる心しんあるべし。 なんぢの飯いいを与あたふるを見みて大おおきに歓かん喜ぎを生しょうじて、 これによりてすなはち信心しんじんを発おこさん。 先まづ教おしへて三さん帰依きえを受うけしめよ。 すなはちよくこの食じきを消しょうせん」 と。

~仏言ク、今有ルベシ↢†信ズル心↡。見テ↢汝ノガ与アタ†フルヲ↟†飯ヲ大ニ生ジテ↢歓喜ヲ↡、因ヨリテ↠此 レニ即チ発サム↢信心ヲ↡。先ヅ教ヘテ受ウケシメヨ↢三帰依エヲ↡。即チ能ク†消セムト↢此ノ食ジキヲ↡也。

^時ときに比丘びくすでに仏ぶつの教おしえを受うけて*愍仰みんごうして去さりぬ。

~時ニ比丘既ニ受ウケテ↢†仏ノ教ヲ↡愍仰ミンガウシテ而去サリヌ。

^この義ぎをもつてのゆゑに、 大おおきにすべからく父母ぶもに孝きょう養ようすべし。

~以テノ↢此ノ義ヲ↡故ニ、大ニ須ベ クシ↣孝ケウ↢養ス父母ニ↡。

^また*仏ぶつ母も*摩耶まや、 仏ぶつを生しょうじて七日しちにちを経へをはりてすなはち死しして、 忉とう利り天てんに生しょうず。 仏ぶつ後のちに成じょう道どうしたまひて、 四し月がつ十じゅう五ご日にちに至いたりてすなはち忉とう利り天てんに向むかひ、 一いち夏げ母ははのために説法せっぽうしたまふ。 十と月つき懐胎かいたいの恩おんを報ほうぜんがためなり。 仏ぶつすらなほみづから恩おんを収おさめて父母ぶもに孝きょう養ようしたまふ、 いかにいはんや凡ぼん夫ぶにして孝きょう養ようせざらんや。

~又▼仏ブチ母モ摩耶マヤ生ジテ↠仏ヲ経ヘ↢七日ヲ↡已ハリテ即チ死シシテ、生ズ↢忉利天ニ↡。仏†後ニ成道シタマヒテ、至リテ↢四月十五日ニ↡即チ向ヒテ↢忉利天ニ↡、一夏ゲナツ為ニ↠母ノ説法シタマフ。為タメナリ↠報ホウゼムガ↢十月懐クワイ胎之ノ恩オンヲ↡。仏スラ尚ナヲ自ラ収オサメテ↠恩ヲ孝↢養シタマフ父母ニ↡、何ニ況イハムヤ凡夫ニシテ而不ザラムヤ↢孝養セ↡。

^ゆゑに知しりぬ、 父母ぶもの恩おん深ふかくしてきはめて重おもし。

~◆故ニ知リヌ、父母ノ恩オム深フカクシテ†極テ重シ也。△

・行門 ・世福 ・奉事師長

^「▲奉事ぶじ師し長ちょう」 とは、 これ礼節らいせつを教きょう示じして学識がくしき、 徳とくを成じょうじ、 *因いん行ぎょう虧かくる0385ことなくすなはち成じょう仏ぶつに至いたるは、 これなほ師しの善ぜん友ぬ力りきなり。 この大恩だいおんもつともすべからく敬重きょうじゅうすべきことを明あかす。

「奉事ブジ師長ト」者ハ、▲此 レ明ス↧▼教↢示ジシテ礼節レイセツヲ↡学識ガクシキ†成ジ↠徳ヲ、因イン行無ナク↠虧カクルコト†乃チ至ルハ↢成仏ニ↡、此猶ナホ師シ之ノ善友ウノ力チカラ也ナリ、此之大恩最モトモ須スベカラベ  クキコトヲ↦敬キヤウ重ヂウス↥。

^しかるに父母ぶもおよび師し長ちょうは名なづけて*敬上きょうじょうの行ぎょうとなす。

~‡然ルニ父母及ビ師シ長†者名ケテ為ス↢敬上ノ行ト↡也。

・行門 ・世福 ・慈心不殺

^「▲慈じ心しん不ふ殺せつ」 といふは、 これ一切いっさい衆しゅ生じょうみな命いのちをもつて本ほんとなすことを明あかす。

▲言フ↢「慈ジ心不殺セツト」↡者ハ、此 レ明ス↢一切衆生皆 ナ以テ↠命 チヲ為スコトヲルコトヲ↟本ト。

^もし悪縁あくえんを見みて、 怖おそれ走はしり蔵かくれ避さくるは、 ただ命いのちを護まもらんがためなり。

~若シ見テ↢悪縁ヲ↡怖オソレ走ハシリ蔵カクレ†避クル者ハ、但タダ為タメ↠護マボラムガ↠命ヲ也。

^¬経きょう¼ (涅槃経・意) にのたまはく、 「一切いっさいのもろもろの衆しゅ生じょう、 寿じゅ命みょうを愛あいせざるはなし。 殺ころすことなかれ、 杖じょうを行ぎょう0492ずることなかれ。 おのれを*怒いかるに喩さとしをなすべし」 と。 すなはち証しょうとなす。

~¬経ニ¼云ク、「▼一切ノ諸ノ衆生無ナシ↠†不ルハ↠愛セ↢寿命ヲ↡。勿ナカレ↠殺コロスコト、勿レ↠行ズルコト↠杖ジヤウヲ。*怒イカルニ↠己オノレヲ可ベシト↠為ナス↠†喩 シヲ。」即チ為ス↠†証ヲ也。△

・行門 ・世福 ・修十善業

^「▲修しゅ十じゅう善業ぜんごう」 といふは、 これ十じゅう悪あくのなかに殺業せつごうもつとも悪あくなることを明あかす。

言フ↢「修シユ十善業ト」↡者ハ、▲此明ス↢十悪之ノ中ニ殺業セツゴフ最モトモ悪ナルコトヲ↡。

^ゆゑにこれを列つらねて初はじめに在おく。 *十じゅう善ぜんのなかには長命じょうみょうもつとも善ぜんなり。 ゆゑにこれをもつて相そう対たいす。 以下いげの九く悪あく九く善ぜんは、 下しもの九く品ぼんのなかに至いたりて、 次つぎに広ひろく述のぶべし。

~故ニ列ツラネテ↠之ヲ在オク↠初ハジメニ。▲十善之中ニハ長命最モトモ善ナリ。故ニ以テ↠之ヲ†相対ス也。已下ノ九悪九善者ハ、至リテ↢下ノ九品ノ中ニ↡、次ニ応ベシ↢広ク†述ブ↡。

^これ世せ善ぜんを明あかす。 また*慈下じげの行ぎょうと名なづく。

~此ハ明ス↢世セ善ヲ↡。又名ク↢慈ジ下ノ行ト↡也ナリ。

・行門 ・戒福 ・受持三帰

^二にに 「▲受じゅ持じ三さん帰き」 といふは、 これ世せ善ぜん軽きょう微みにして*感報かんぽう具つぶさならず。 *戒徳かいとく巍々ぎぎとしてよく菩ぼ提だいの果かを感かんずることを明あかす。

▲二ニ言フ↢「受持三帰ト」↡者ハ、此明ス↣世善軽キヤウ微ミニシテ感報カムポウ不ズ↠具ツブサナラ、戒徳巍巍グヰグヰトシテ能ク感カムズルコトヲ↢菩提之果ヲ↡。

^ただ衆しゅ生じょうの帰き信しん浅あさきより深ふかきに至いたる。 先まづ*三さん帰きを受うけしめ、 後のちに衆戒しゅかいを教おしふ。

~但シ衆生ノ帰信従ヨ0714リ↠浅アサキ至ル↠深キニ。先ヅ受ウケシメテ↢三帰ヲ↡、後ニ教 シフ↢衆戒ヲ↡。

・行門 ・戒福 ・ 具足衆戒

^「▲具ぐ足そく衆戒しゅかい」 といふは、 しかるに戒かいに多た種しゅあり。 あるいは*三さん帰き戒かい、 あるいは*五ご戒かい・*八戒はっかい・*十じゅう善戒ぜんかい・*二に百ひゃく五ご十じゅう戒かい・*五ご百ひゃく戒かい・*沙しゃ弥み戒かい、 あるいは菩ぼ薩さつの*三さん聚戒じゅかい、 *十じゅう無む尽じん戒かい等とうなり。 ゆゑに0386具ぐ足そく衆戒しゅかいと名なづく。

▲言フ↢「具足衆戒ト」↡者ハ、然ルニモ 戒ニ有リ↢多種↡。或イハ三帰戒、或イハ五戒・八戒・十善戒・二百五十戒・五百戒・沙弥戒、或イハ菩薩ノ三聚戒・十無尽戒等ナリ。故ニ名ク↢具足衆戒ト↡也ナリ。

^また一々いちいちの*戒品かいほんのなかにまた*少しょう分ぶん戒かい・多た分戒ぶんかい・全ぜん分戒ぶんかいあり。

~又一一ノ戒品ノ中ニ亦有†リ↢少分セウブン戒・多分ブン戒・全ゼン分戒↡也。

・行門 ・戒福 ・不犯威儀

^「▲不ふ犯ぼん威儀いぎ」 といふは、 これ身しん口意くい業ごう、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがによく一切いっさいの戒かいのために方便ほうべんの威儀いぎをなすことを明あかす。

▲言フ↢「不犯ボン威儀ト」↡者ハ、此明ス↧身口意業行住坐臥ニ能ク与タメニ↢一切ノ戒ノ↡作ナスコトヲ↦方便ノ威儀ヲ↥也。

^もしは軽重きょうじゅう粗そ細さいみなよく護持ごじして、 犯おかせばすなはち悔過けかす。 ゆゑに不ふ犯ぼん威儀いぎといふ。 これを戒善かいぜんと名なづく。

~若シハ軽キヤウ重ヂウ麁ソ細サイ皆 ナ能ク護持ゴヂシテ、†犯セバ即チ悔過クヱクワス。故ニ云フ↢不犯威儀ト↡。此ヲ名ク↢戒善ト↡也ナリ。

・行門 ・行福 ・発菩提心

^三さんに 「▲発ほつ↓菩ぼ提だい↓心しん」 といふは、 これ衆しゅ生じょうの*欣心ごんしん*大だいに趣おもむく。 浅あさく*小しょう因いんを発おこすべからず。 広ひろく*弘ぐ心しんを発おこすにあらざるよりは、 なんぞよく菩ぼ提だいとあひ会えすることを得えんといふことを明あかす。

▲三ニ▼言フ↢「発菩提心ト」↡者ハ、此 レ†明ス↧衆生ノ欣ゴン心趣オモム†ク↠大ニ、不↠可カラ↣浅アサク発ス↢小因インヲ↡、自ヨリハ↠非†ザル↣広ク発スニ↢弘心ヲ↡、何ゾ能ク得ムトイフコトヲ↦与ト↢菩提↡相 ヒ会エスルコトヲ↥。

^ただ願ねがはくはわが身み、 身みは虚こ空くうに同おなじく心しんは法界ほうかいに斉ひとしく、 衆しゅ生じょうの性しょうを尽つくさん。 われ身業しんごうをもつて恭く敬ぎょうし供く養ようし礼拝らいはいし、 *来らい去こを迎送こうそうして*運うん度どして尽つくさしめん。 またわれ口く業ごうをもつて讃歎さんだんし説法せっぽうして、 みなわが*化けを受うけて、 言ことばの下もとに*道どうを得うるもの、 尽つくさしめん。 またわれ意い業ごうをもつて入定にゅうじょう観察かんざつし、 身みは法界ほうかいに分身ぶんしんして機きに応おうじて0493度どして、 一いちとして尽つくさざるはなからん。

~◆唯タダ願クハ我ガ身、身ハ同ジク↢虚空ニ↡心ハ斉ヒトシク↢法界ニ↡、尽ツク†サム↢衆生ノ性シヤウヲ↡。我 レ以テ↢身業ヲ↡ 恭ツツシミ敬シウヤマテ 供マウク養シ礼拝 オガム シテ、迎カウムカヘ↢送オクルシテ来ライ去コヲ↡運ウンハコビ度ドシテ令シメム↠尽ツクサ。又我 レ以テ↢口業ヲ↡讃歎サンダンシ説法シテ、皆 ナ受ウケテ↢我ワガ化ヲ↡、言コトバノ†下ニ得ル↠道ヲ者ハ、令シメム↠尽サ。又我 レ以テ↢意業ヲ↡入定観察シテ、身ハ分ワケテ↢身ヲ法界ニ↡応ジテ↠機ニ而度ドシテ、無ナカラム↢†一トシテ†不ルハ↟尽サ。

^われこの願がんを発おこす。 運々うんうん増ぞう長じょうしてなほ虚こ空くうのごとく、 処しょとして遍へんせざるはなく、 行ぎょう流る無む尽じんにして*後ご際さいを徹てつ窮ぐし、 身みに*疲ひ倦けんなく心しんに*厭足えんそくなからん。

~◆我 レ発ス↢此ノ願ヲ↡。運運ウンウンニ増ゾウ長シテ猶ナホ如ク↢虚空ノ↡、無ナク↢処トシテ不ザル†ハ↟遍ヘンセ、行流ル無ム尽ジンニシテ徹テツ↢窮グシ後際サイヲ↡、身ニ無ク↢疲ヒツカレ倦クヱンモノウシ↡心ニ無ナカラム↢厭エムアクコト足ソク↡。

^また 「↑菩ぼ提だい」 といふはすなはちこれ仏ぶっ果かの名ななり。 また 「↑心しん」 といふはすなはちこれ衆しゅ生じょうの*能のう求ぐの心しんなり。 ゆゑに発ほつ菩ぼ提だい心しんといふ。

~◆又言フ↢菩提ト↡者ハ即チ是 レ仏果之ノ名ナナリ。又言フ↠心ト者ハ即チ是衆生ノ能ノウ求グ之ノ心ナリ。故ニ云フ↢発菩提心ト↡也ナリ。△

・行門 ・行福 ・深信因果

^*四しに 「▲深信じんしん因いん果が」 といふはすなはちその二にあり。

▲四ニ言フ↢「深ジム信因果ト」↡者ハ即チ有リ↢†其ノ二↡。

^一いち0387には世せ間けんの苦く楽らくの因いん果がを明あかす。 もし苦くの因いんを作つくればすなはち苦くの果かを感かんじ、 もし楽らくの因いんを作つくればすなはち楽らくの果かを感かんず。 *▲*印いんをもつて泥でいに印いんするに、 印いん壊こわれて文もん成じょうずるがごとし。 疑うたがふことを得えず。

~一ニハ明ス↢世間ケンノ苦ク楽ノ因果ヲ↡。若シ作ツクレバ↢苦クノ因インヲ↡即チ感カム†ジ↢苦クノ果クワヲ↡、若シ†作レバ↢楽ラクノ因ヲ↡即チ感カムズ↢楽ノ果ヲ↡。如↢似 ゴト シ以テ↠印インヲ印イン†スルニ↠泥デイニヲ、印イン0715†壊シテ文成ズルガ↡。†不↠得↠†疑フコトヲ也。

・行門 ・行福 ・読誦大乗

^「▲読誦どくじゅ大だい乗じょう」 といふは、 これ経教きょうきょうはこれを喩たとふるに鏡かがみのごとし。 しばしば読よみしばしば尋たずぬれば、 智慧ちえを開発かいほつす。 もし智慧ちえの眼まなこ開ひらけぬれば、 すなはちよく苦くを厭いとひて涅ね槃はん等とうを欣ごん楽ぎょうすることを明あかす。

~言フ↢「読誦ドクジユ大乗ト」↡者ハ、此 レ明ス↧経教ハ喩タトフルニ↠之ヲ如シ↠鏡カガミノ、数シバシバ読ヨミ数シバシバ尋タヅヌレバ、開↢発ス智慧ヲ↡、若シ智慧ノ眼マナコ開ヒラケヌレバ、即チ能ク厭イトヒテ↠苦クヲ欣ゴン↦楽ゲウスルコトヲ涅槃等ヲ↥也。

・行門 ・行福 ・勧進行者

^「▲勧進かんじん行ぎょう者じゃ」 といふは、 これ苦く法ほうは毒どくのごとく、 悪法あくほうは刀とうのごとし。 三さん有ぬに流る転てんして衆しゅ生じょうを損害そんがいす。 いますでに善ぜんは明鏡みょうきょうのごとく、 法ほうは甘かん露ろのごとし。 鏡かがみはすなはち正しょう道どうを照てらしてもつて真しんに帰きし、 甘かん露ろはすなはち法ほう雨うを注そそぎて竭つくることなく、 *含霊がんれいをして潤にんを受うけ、 等ひとしく法ほう流るに会えせしめんと欲ほっすることを明あかす。 この因縁いんねんのためのゆゑにすべからくあひ勧すすむべし。

~言フハ↢「勧進行*者ト」↡、此明ス↧苦ク法ハ如クシ↠毒ドクノ、悪法ハ如シ↠†刀ノ、流↢転シテ三有ニ↡損ソン↢害ガイス衆生ヲ↡、今既ニ善ハ如クシ↢明鏡キヤウノ↡、法ハ如シ↢甘アマキ露ツユノ↡、鏡カガミハ即チ照テラシテ↢正道ヲ↡以テ帰クヰシ↠真ニ、甘露ハ即チ注ソソギテ↢法雨ウヲ↡而無クシ↠†竭クルコト、欲スルコトヲ↞使シメムト↣含霊ガンレイヲシテ受ウケ↠†潤ヲ、等ヒトシク会エセ↢法流リウニ↡。為タメノ↢此ノ因縁ノ↡故ニ須スベカラベ  クシ↢相 ヒ勧ススム↡。△

・結行

^▲「如にょ此し三さん事じ」 といふ以下いげは、 総そうじて上かみの行ぎょうを結けつ成じょうす。

言イフ↢「如此シ三事ト」↡已下ハ、▲総ジテ結ケツ↢成ス上ノ行ヲ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)釈引聖励凡文
              (ⅰ)科節

^五ごに ▲「仏告ぶつごう韋い提だい」 より下しも 「正しょう因いん」 に至いたるこのかたは、 それ聖しょうを引ひきて凡ぼんを励はげますことを明あかす。

五ニ従リ↢「仏告韋提‡」↡下至ル↢「正因ニ」↡已来タハ、▲明ス↢†其引ヒキテ↠聖ヲ励ハゲマスコトヲ↟凡ボムヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^ただよく決けつ定じょうして心しんを注とどむれば、 かならず往ゆくこと疑うたがいなし。

~但タダ能ク決定アキラメシテ注トドムレバ↠心ヲ、必ズ往ユクコト無シ↠疑 ヒ。

二 Ⅱ ⅱ b ヘ (三)結

^上じょう来らい五句ごくの不ふ同どうありといへども、 広ひろく散善さんぜん顕けん行ぎょう縁えんを明あかしをはりぬ。

上来雖モ↠有リト↢五句クノ不同↡、広ク明シ↢散善顕行縁ヲ↡竟リヌ。

二 Ⅱ ⅱ b ト【定善示観縁】
          (一)標

【11】^七しちに↑定じょう善ぜん示じ観かん縁えんのなかにつきてすなはちその七しちあり。

▲七ニ就ツキテ↢定善示ジ観縁ノ中ニ↡即チ有リ↢其ノ†七↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)釈
            (Ⅰ)釈勅聴許説文
              (ⅰ)科節

^一いちに ▲「仏告ぶつごう阿あ難なん」 よ0388り下しも 「清浄しょうじょう業ごう」 に至いたるこのかたは、 まさしく*勅聴ちょくちょう許こ説せつを明あかす。

一ニ従リ↢「仏告阿難」↡下至ル↢「清浄業†ト」↡已来タハ、▲正シク明ス↢勅チヨク聴チヤウ キキ 許コユルス説ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅰ)(ⅱ)述意

^これ韋い提だい前さきに▲極楽ごくらくに生しょうぜんと願がんずることを請しょうじ、 また▲得とく生しょうの行ぎょうを請しょうずるに、 如にょ0494来らいすでに許ゆるしたまへり。 いまこの文もんにつきてまさしく*正しょう受じゅの方便ほうべんを開顕かいけんせんと欲ほっすることを明あかす。

~此 レ明ス↫韋提前サキニ請シヤウジ↠願ズルコトヲ↠†生ゼムト↢極楽ニ↡、又請ズルニ↢得生之ノ行ヲ↡、如来已スデニ許ユルシ†タマヘリ、今就ツキテ↢此ノ文ニ↡正シク欲スルコトヲ↪開↩顕セムト正受ジユ之ノ方便ヲ↨。

^これすなはち因縁いんねんの極要ごくようにして利り益やくする処ところ深ふかし。 曠劫こうごうにも聞きくこと希まれなり。 いまはじめて説とく。 この義ぎのためのゆゑに、 如来にょらい総そうじて*二に人にんに命めいぜしむることを致いたす。

~此 レ乃チ因縁ノ極要ゴクエウニシテナリ 利益スル処 ロ深シ。曠劫ニモ希マレナリ↠聞キク†コト。如今 イマ 始ハジメテ説トク。為ノ↢斯コノ義ノ↡故ニ、致ス↠使シムルコトヲ↣如来総ジテ命ミヤウゼ↢二人ニ↡。△

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅰ)(ⅲ)釈文

^「▲告ごう阿あ難なん」 といふは、 「われいま浄じょう土どの門もんを開説かいせつせんと欲ほっす。 なんぢよく伝でん持じして遺失ゆいしつせしむることなかれ」 となり。

▲言フ↢「告阿難ト」↡者ハ、我 レ今欲スフ↣開↢説セムト浄土之ノ門ヲ↡。汝 ヂ好ヨク伝デン持ヂシテ莫ナカレトナリ↠令シムルコト↢遺ヰ失シチセ↡。

^「▲告ごう韋い提だい」 といふは、 「なんぢはこれ請法しょうぼうの人ひとなり。 われいま説とかんと欲ほっす。 なんぢよく審つまびらかに聴きき、 思し量りょう*諦受たいじゅして、 *錯失さくしつせしむることなかれ」 となり。

▲言フ↢「告韋提ト」↡者ハ、汝ナンヂハ是 レ請法之ノ人ナリ。我 レ今欲スフ↠説カムト。汝 ヂ好ヨク†審カニ聴キキ、思シ量諦受タイジユシテ、莫ナカレトナリ↠令ムルコト↢錯シヤク失シチセ↡。

^「▲為い未み来らい世せ一切いっさい衆しゅ生じょう」 といふは、 ただ如来にょらい化けに臨のぞみたまふことは、 ひとへに*常じょう没もつの衆しゅ生じょうのためなり。 いますでに等ひとしく慈じ雲うんを布しきて、 あまねく*来潤らいにんを沾うるおさんと望欲もうよくす。

言フ↢「為ヰ未0716来世一切衆生ト」↡者ハ、▲但シ如来臨ノゾミタマフコトハ↠化クヱニ、偏ヒトヘニ為ナリ↢常没モツノシヅム衆生ノ↡。今既ニ等ヒトシク布シキテ↢慈ジ雲ウンヲ↡、望マウ↣ノゾミ欲ヨクス普ク沾ウルオサム†ト↢来潤ニンヲ↡。

^「▲為い煩悩ぼんのう賊害ぞくがい」 といふは、 これ凡ぼん夫ぶ障さわり重おもく、 妄愛もうあい迷まよひ深ふかくして、 三悪さんまくの*火か坑きょう闇くらくして人ひとの足そく下げにあることを謂おもはず。 縁えんに随したがひて行ぎょうを起おこして、 *進道しんどうの資し糧りょうとなさんと擬ぎするも、 なんぞそれ*六賊ろくぞく知ち聞もんし、 競きおひ来きたりて侵おかし奪うばふ。 いますでにこの法財ほうざいを失うしなふ、 なんぞ憂苦うくなきことを得えんやといふことを明あかす。

▼言フ↢「為ヰ煩悩賊ゾク害ト」↡者ハ、此†明ス↧凡夫ハ障サハリ重オモク、妄愛マウアヒ迷マドヒ深フカクシテ、不ズ↠謂オモハ↣三悪ノ火*坑キヤウ闇クラクシテ在アルコトヲ↢人之ノ†足下ニ↡、▼随ヒテ↠縁ニ起シテ↠行ヲ、擬ギスル†モ↠作ナサムト↢進道シンダウノ資シ糧リヤウ†ト↡、何ナンゾ其 レ六賊ゾク知チ聞モンシテ、競キオヒ来キタリテ侵シ シ奪ダツフ、今既ニ失ウシナフ↢此ノ法財ヲ↡、何ゾ得ム↠無ナキコトヲ↢憂苦ウク↡也トイフコトヲ↥。

^「▲説せつ清浄しょうじょう業ごう」 といふ0389は、 これ如来にょらい衆しゅ生じょうの罪つみを見みたまふをもつてのゆゑに、 ために懴さん悔げの方ほうを説とき、 相続そうぞくして断除だんじょせしめ、 *畢ひっ竟きょうじて永ながく清浄しょうじょうならしめんと欲ほっすることを明あかす。 また 「清浄しょうじょう」 といふは、 *下しもの観門かんもんによりて専心せんしんに念仏ねんぶつし、 想おもいを西方さいほうに注とどむれば、 念々ねんねんに罪つみ除のぞこるがゆゑに清浄しょうじょうなり。

▼言フ↢「説清浄業ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↫如来以テノ↠見タマフヲ↢衆生ノ罪ヲ↡故ニ、為ニ説キテ↢懴悔之ノ方ヲ↡、欲ホスルコトヲ↪令メ↢相続ゾクヲシテ断ダン除セ↡、畢ヒチ竟ジテ永ナガク令シメムト↩清浄ナラ↨。▼又言フ↢清浄ト↡者ハ、▼依ヨリテ↢下ノ観門ニ↡専心ニ念仏シ、注トドムレバ↢想オモヒヲ西方ニ↡、念念ニ罪ツミ除ノゾコルガ故ニ清浄也ナリ。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅱ)釈如来可問文

^二にに ▲「善哉ぜんざい」 より以下いげは、 まさしく夫ぶ人にんの問とい*聖しょう意いに当あたれることを明あかす。

二ニ従リ↢「善哉ザイト云」↡已下ハ、▲正シク明ス↣夫人ノ問ノ当アタレルコトヲ↢聖意イニ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)釈勧持勧説文
              (ⅰ)科節

^三さんに▲「阿あ難なん汝当にょとう受じゅ持じ」 より下しも 「宣説せんぜつ仏ぶつ語ご」 に至いたるこのかたは、 まさしく勧かん持じと勧説かんせつとを明あかす。

三ニ従リ↢「阿難汝当受持ヂト云」↡下至ル↢「宣セン説仏語ゴニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢勧持ト勧説トヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)(ⅱ)述意

^この法ほう深要じんようなり、 よくすべからく流布るふすべし。 これ如来にょらい▲前さきにはすなはち総そうじて告つげて安心あんじん聴ちょう受じゅせしむ。 この文もんはすなはち別べつして阿あ難なんに勅ちょくして、 受じゅ持じして忘わするることなく、 広ひろく多た人にんの処ところにして、 ために説ときて流る行ぎょうせしむることを明あかす。

~此ノ法深要ジムエウナリ、好ヨク須スベカラベ  クシ↢流布ルフス↡。此明ス↧如来前サキニハ則チ総ジテ告ツゲテ令シム↢安アン心聴チヤウ受ジユセ↡、此ノ文ハ則チ別ベチシテ勅シテ↢阿難ニ↡、受持シテ勿ナク↠忘ワスルルコト、広ク多人ニンノ処 ロニシテ、為ニ説トキテ流ル行セシムルコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅲ)(ⅲ)釈文

^「▲仏ぶつ語ご」 といふは、 これ如来にょらい曠こう0495劫ごうにすでに口くちの過とがを除のぞきたまひて、 言説ごんせつあるに随したがひて一切いっさい聞きくものの自じ然ねんに信しんを生しょうずることを明あかす。

▼言フ↢「仏語ト」↡者ハ、此 レ明ス↧如来曠クワウ劫ニ已スデニ除キタマヒテ↢口ノ過トガヲ↡、随ヒテ↠有ルニ↢言説↡一切聞キク者ノ自然ニ生ズルコトヲ↞信ヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)釈勧修得益文
              (ⅰ)科節

^四しに▲「如来にょらい今者こんしゃ」 より下しも 「得とく無む生しょう忍にん」▲ に至いたるこのかたは、 まさしく勧修かんしゅ得益とくやくの相そうを明あかす。

四ニ従リ↢「如来今者コムジヤト云」↡下至ル↢「得無生忍ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢勧クワン修シユ得益之ノ相ヲ↡。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらい、 夫ぶ人にんおよび*未み来らい等とうのために観かんの方便ほうべんを顕あらわして、 想おもいを西方さいほうに注とどめしめて、 娑しゃ婆ばを*捨厭しゃえんし極楽ごくらくを*貪欣とんごんせしめんと欲ほっすることを明あかす。

~此ハ明ス↫如来欲スルコトヲ↪為ニ↢夫人及ビ未来等ノ↡顕シテ↢観ノ方便ヲ↡、注トドメシメテ↢想オモヒヲ西方ニ↡、捨シヤステ↢厭エンシイトフ娑婆ヲ↡貪トム↩欣ゴムセシメムト極楽ヲ↨。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅳ)(ⅲ)釈文

^▲「以い仏力ぶつりき故こ」 といふ以下いげは、 これ衆しゅ生じょうの*業ごっ障しょう目めに触ふるるに*生しょう盲もうなれば、 掌たなごころを指さすに遠とおしと謂おもひ、 他た方ほう*竹ちくこんを隔へだつるにすなはち0390これを千せん里りに踰こゆとす。 あにいはんや凡ぼん夫ぶ分ぶん外げの諸仏しょぶつの境きょう内ない、 心しんに闚うかがはんや。 *聖しょう力りきの冥みょうに加かするにあらざるよりは、 かの国くになにによりてか覩みることを得えんといふことを明あかす。

言フ↢「以イ仏力故コト」↡已下ハ、▲此明ス↧衆生ノ業障シヤウ触フルルニ↠目メニ生盲マウナレバ、指サ†スニ↠掌タナゴコロヲ謂ヒフ↠遠トオシト、他タ方†隔ツルニ↢竹*ヲ↡即チ踰コユトス↢之ヲ千里リニ↡、豈アニ況ヤ凡夫0717†分外ノ諸仏ノ境キヤウ内ナイニ†闚ハムヤ↠心ニ、自ヨリハ↠非†ザル↢聖力ノ冥ミヤウニ加カスルニ↡、彼ノ国何ナニニ由ヨリテカ得エムトイフコトヲ↞覩ミルコトヲ。

^▲「如にょ執しゅう明鏡みょうきょう自じ見けん面像めんぞう」 といふ以下いげは、 これ夫ぶ人にんおよび衆しゅ生じょう等とう入にゅう観かんして心しんを住とどめ、 *神じんを凝こらして捨すてざれば、 *心しん境きょう相応そうおうしてことごとくみな顕現けんげんすることを明あかす。 境きょう現げんずる時ときに当あたりて、 鏡かがみのなかに物ものを見みるに異ことなることなきがごとし。

言フ↢「如ニヨ執シユ明鏡キヤウ自見面像メムザウト」↡已下ハ、▲此明ス↢夫人及ビ衆生等入ニウ観シテ†住メ↠心ヲ、凝コラシテ↠神ヲ不ザレバ↠捨ステ、心境キヤウ相応シテ悉ク皆 ナ顕ケン現スルコトヲ↡。当アタリテ↢†境現ズル時ニ↡、如↢似 ゴト シ鏡カガミノ中ニ見ルニ↠物ヲ無ナキガ↟†異ナルコト也。

・得忍相

^「▲心しん歓かん喜ぎ故こ得忍とくにん」 といふは、 これ阿あ弥陀みだ仏ぶっ国こくの清浄しょうじょうの光こう明みょう、 たちまちに眼前げんぜんに現げんず、 なんぞ*踊ゆ躍やくに勝たへん。 この喜きによるがゆゑに、 すなはち*無む生しょうの忍にんを得うることを明あかす。 また*喜き忍にんと名なづけ、 また*悟ご忍にんと名なづけ、 また*信忍しんにんと名なづく。 これすなはちはるかに談だんじていまだ*得処とくしょを標ひょうせず、 夫ぶ人にん等とうをして心しんにこの益やくを悕ねがはしめんと欲ほっす。 *勇ゆう猛みょう専せん精しょうにして心しんに〔仏ぶつを〕想おもひて見みる時とき、 まさに忍にんを悟さとるべし。 これ多おおくこれ*十信じっしんのなかの忍にんにして、 *解げ行ぎょう以い上じょうの忍にんにはあらず。

▲言フ↢「心歓喜故コ得忍ト」↡者ハ、此明ス↧阿弥陀仏ノ国ノ清浄†ノ光明、忽タチマチニ現ズ↢†眼前ニ↡、何ナンゾ勝タヘム↢踊ユ躍ヤクニ↡、▼因ヨルガ↢茲コノ†喜ニ↡故ニ、即チ得ルコトヲ↦無生之ノ忍ヲ↥。亦マタハ名†ケ↢喜キ忍ト↡、亦名†ケ↢悟ゴ忍ト↡、亦名ク↢信忍ト↡。此乃チ玄ハルカグヱンニ談ダン†カタラウジテ未ズ ダ↠標ヘウセアラハス↢得処シヨヲ↡、欲ホス↠令シメムト↣夫人等ヲシテ悕ネガハ↢心ニ此ノ益ヲ↡。勇ユ猛ミヤウタケシ専セン精シヤウニシテ心ニ想ヒテ見ミ†ル時、方マサニ応ベシ↠悟サトル↠忍ヲ。此多ク是十信ノ中ノ忍ニシテナリ 、非ズ↢解ゲ行已イ上ノ忍ニハ↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)釈仏力観成文
              (ⅰ)科節

^五ごに ▲「仏告ぶつごう韋い提だい」 より下しも 「令りょう汝にょ得見とくけん」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にんはこれ*凡ぼんにして*聖しょうにあらず。 聖しょうにあらざるによるがゆゑに、 仰あおぎておもんみれば聖しょう力りき冥みょうに加かして、 かの国くにはるかなりといへども覩みることを得うることを明あかす。

五ニ従リ↢「仏告韋提ト云」↡下至ル↢「令リヤウ汝ニヨ得見ニ」↡已来タハ、▲正シク明ス↢夫人ハ是凡ボムニシテ非ズ↠聖ニ、由ヨルガ↠非ザルニ↠聖ニ故ニ、仰アオギテ惟オモムミレバ聖力リキ冥ミヤウニ加カシテ、彼ノ国雖モ↠遥ハルカナリト得ルコトヲ↟覩ミルコトヲ。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらい、 衆しゅ生じょう惑まどひを置おきて、 *夫ぶ人にんはこれ聖しょうにして凡ぼんにあらずといひて0391疑うたがいを起おこすによるがゆゑにすなはちみづから*怯こう弱にゃくを生しょうじ、 しかるに韋い提だいは現げんにこれ菩ぼ薩さつにしてかりに凡身ぼんしんを示しめ0496す、 われら罪人ざいにん比ひ及ぎゅうするに由よしなしといふことを恐おそる。 この疑うたがいを断だんぜんがためのゆゑに 「▲汝にょ是ぜ凡ぼん夫ぶ」 とのたまふことを明あかす。

▲此明ス↪如来†恐ル↧衆生置オキテ↠惑マドヒヲ、謂↢言イヒテ夫人ハ是 レ聖ニシテ非ズト↟凡ニ由ヨルガ↠起オコスニ↠疑 ヒヲ故ニ即チ自ラ生†ジ↢怯カウ弱ニヤクヨハシ ヲ↡、然ルニモ ▼韋提ハ現ニ是 レ菩薩ニシテナリ 仮カリニ示シメス↢凡ボム身ヲ↡、我等ラ罪人ニ無シトイフコトヲ↞由ヨシ↢†比及スルニ↡、為ノ↠断ダムゼムガ↢此ノ疑 ヒヲ↡故ニ言フコトヲ↩汝ニヨ是凡夫ト↨也ナリ。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅴ)(ⅲ)釈文

・心想羸劣

^「▲心想しんそう羸劣るいれつ」 といふは、 これ凡ぼんなるによるがゆゑにかつて大だい志しなし。

言フ↢「心想羸劣ルイレツト」↡者ハ、▲由ヨルガ↢是 レ凡ボムナルニ↡故ニ曽カツテ無シ↢†大志↡也。

・未得天眼

^「▲未み得とく天眼てんげん」 といふは、 これ夫ぶ人にん肉眼にくげんの見みるところの遠近おんごんは言ごんをなすに足たらず、 いはんや浄じょう土どいよいよはるかなり、 いかんぞ見みるべきといふことを明あかす。

言フ↢「未ミ得天眼ト」↡者ハ、▲此 レ明ス↢夫人ノ肉ニク眼ノ所トコロノ↠見ル遠近オンゴンハ不ズ↠足タラ↠為スニルニ↠†言ヲ、況ヤ浄土弥イヨイヨ遥ハルカナリ、云何ゾ可ベキトイフコトヲ↟見ミル。

・異方便

^▲「諸仏しょぶつ如来にょらい有異うい方便ほうべん」 といふ以下いげは、 これもし心しんによりて見みるところの国こく土どの荘しょう厳ごんは、 なんぢ凡ぼんのよく*普ふ悉しつするにあらずと、 功こうを仏ぶつに帰きすることを明あかす。

言フ↢「諸仏如来有異ウイ方便ト」↡已下ハ、▲此 レ明ス↧若シ依リテ↠心ニ所 ロノ↠見ル国土ノ荘厳†者、非ズト↢汝ナンヂ凡ボムノ能ク†普悉スルニ↡、帰クヰスルコトヲ↦功コウヲ於仏ニ↥也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅵ)釈牒前起後文
              (ⅰ)科節

^六ろくに ▲「時じ韋い提だい白びゃく仏ぶつ」 より下しも 「見けん彼ひ国こく土ど」 に至いたるこのかたは、 それ夫ぶ人にんかさねて*前さきの恩おんを*牒でつし、 後のちの問といを生しょう起きせんと欲ほっする意こころを明あかす。

六ニ従リ↢「時韋提0718白仏ト云」↡下至ル↢「見彼国土ニ」↡已来タハ、▲明ス↧†其 レ夫人重カサネテ牒デフシテ↢前ノ恩オンヲ↡、欲スル↣生↢起キセムト後ノ問ヲ↡之意ヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅵ)(ⅱ)述意

^これ夫ぶ人にん仏ぶつ意いを領りょう解げするに、 上かみの光台こうだいの所見しょけんのごときは、 これすでによく向さきに見みたりと謂おもひき、 世せ尊そん開かい示じしたまふに、 はじめてこれ仏ぶつの方便ほうべんの恩おんなりと知しる。 もししからば、 仏ぶついまに世よにましませば、 衆しゅ生じょう念ねんを蒙こうむりて西方さいほうを見みることを得えしむべし。 仏ぶつもし涅ね槃はんしたまひて加備かびを蒙こうむらざるものは、 いかんが見みることを得えんやといふことを明あかす。

▼此明ス↧夫人領リヤウ↢解ゲスルニ仏意ヲ↡、如ゴトキハ↢上ノ光台ダイノ所見ノ↡、謂オモヒキ↢是 レ已ニ能ク向サキニ見†タリト↡、世尊開示ジシタマフニ始ハジメテ知†ル↢是 レ仏ノ方便之ノ恩ナリト↡、若シ爾†ラバ者、仏今ニ在セバ↠世ニ、衆生蒙リテ↠念ヲ可シ↠使ム↠得↠見ルコトヲ↢西方ヲ↡、仏若シ涅槃シタマヒテ不ル↠蒙ラ↢加備ヲ↡者ハ、云何ガ得ム↠見ルコトヲ也トイフコトヲ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)釈悲心為物文
              (ⅰ)科節

^七しちに ▲「若にゃく仏滅ぶつめつ後ご」 より下しも 「極楽ごくらく世せ界かい」 に至いたるこのかたは、 まさしく夫ぶ人にんの悲ひ心しん*物もの0392のためにすること、 おのが往おう生じょうに同おなじく、 永ながく娑しゃ婆ばを逝ゆきて、 長ながく安楽あんらくに遊あそばしめんといふことを明あかす。

七ニ従リ↢「†若仏滅後ト云」↡下至ル↢「極楽世界ニ」↡已来タハ、▼正シク明ス↧夫人ノ悲ヒ心シム為ニスルコト↠物 ノノ、同ジク↢†己ガ往生ニ↡、永ナガク逝ユキテ↢娑婆ヲ↡、長ナガク遊アソバシメムトイフコトヲ↦安楽ニ↥。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)(ⅱ)述意

^これ如来にょらい、 心しんに期ごしたまふ運うん度どは、 後ご際さいを徹てつ窮ぐしていまだ休やすまず。 ただ世よ代かわり時とき移うつりて、 群ぐん情じょう*浅促せんそくなるをもつてのゆゑに、 如来にょらいをして永よう生しょうの寿じゅを減げんじ、 *長じょう劫ごうを*泯みんじてもつて*人年にんねんに類るいし、 憍きょう慢まんを摂せっせんとしてもつて無む常じょうを示しめし、 剛強こうごうを化けせんとして同おなじく*磨ま滅めつに帰きせしむることを明あかす。 ゆゑに若にゃく仏滅ぶつめつ後ごといふ。

~此†明ス↫如来†期シタマフ↠心ニ運ウンハコブ度ドハ、徹テツ↢窮グシテ後ゴ際サイヲ↡而未ダ↠休ヤマ、†但以テノ↢世ヨ代カハリ時移ウツリテ、群グン情浅促センソクナルヲ↡故ニ、使シムルコトヲ↪如来ヲシテ減ゲンジ↢永ヰヤウ生之ノ†寿ヲ↡、†泯ジテ↢長劫ヲ↡以テ類ルイシ↢人年ニンネンニ↡、摂セムトシテ↢憍ケウオゴル慢マンヲ↡アナドル以テ示シメシ↢無常ヲ↡、化セムトシテ↢剛ガウコハク強ガウヲコハシ↡同ジク帰セ↩於磨滅ニ↨。故ニ云フ↢「若仏滅後ゴト」↡也。

二 Ⅱ ⅱ b ト (二)(Ⅶ)(ⅲ)釈文

^「▲諸衆しょしゅ生じょう」 といふは、 これ如来にょらい化けを息やめたまはば、 衆しゅ生じょう帰依きえするに処ところなし。 *蠢々しゅんしゅん周慞しゅうしょうして、 縦じゅう横おうに六道ろくどうに走はしることを明あかす。

~言フ↢「諸衆生ト」↡者ハ、此明ス↧如来息ヤメ†タマハバ↠化ヲ、衆生無†シ↠処トコロ↢帰依スルニ↡、蠢蠢シユンシユン周シユ慞シヤウシテ、縦ジユウ横ワウニ走ハシルコトヲ↦†於六道ニ↥。△

・濁悪不善

^「▲濁じょく悪あく不ふ善ぜん」 といふは、 これ五ご濁じょくを明あかす。 一いちには↓劫こう0497濁じょく、 二にには↓衆しゅ生濁じょうじょく、 三さんには↓見けん濁じょく、 四しには↓煩悩ぼんのう濁じょく、 五ごには↓命みょう濁じょくなり。

▲言フ↢「濁ジヨク悪不善ト」↡者ハ、▼此 レ明ス↢五濁ヲ↡也。一ニ者ハ劫濁、二ニ者衆生濁、三ニ者見濁、四ニ者煩悩濁、五ニ者命濁ナリ。

・劫濁

^「↑劫こう濁じょく」 といふは、 しるに劫こうは実じつにこれ濁じょくにあらず、 劫こう減げんずる時ときに当あたりて諸悪しょあく加か増ぞうす。

~言フ↢劫濁ト↡者ハ、然ルニモ 劫ハ実ジチニ非ズ↢是 レ濁ニ↡、当アタリテ↢†劫減ズル時ニ↡諸悪加増ゾウス也。

・衆生濁

^「↑衆しゅ生じょう濁じょく」 といふは、 劫こうもしはじめて成じょうずる時ときは衆しゅ生じょう純じゅん善ぜんなり、 劫こうもし末まつなる時ときは衆しゅ生じょうの十じゅう悪あくいよいよ盛さかりなり。

~言フ↢衆生濁ト↡者、劫若シ初 メテ成†ズルトキハ衆生純ジユンモハラ善ナリ、劫若シ†末ナル時ハ衆生ノ十悪弥イヨイヨ盛サカリ也ナリ。

・見濁

^「↑見けん濁じょく」 といふは、 自じ身しんの衆悪しゅあくは総そうじて変へんじて善ぜんとなし、 他たの上うえに非ひなきをば見みて是ぜならずとなす。

~言フ↢見濁ト↡者、自身ノ衆悪ハ†総ジテ変ヘンジテ為シス↠善ト、他タノ上 ヘニ無キヲバ↠非ヒ見ミテ為ス↠†不ト↠是ナラ也ナリ。

・煩悩濁

^「↑煩悩ぼんのう濁じょく」 といふは、 当今とうこんの劫末こうまつの衆しゅ生じょう悪あく性しょうにして親したしみがたし。 六根ろっこんに随対ずいたいして*貪瞋とんじん競きおひ起おこる。

~言フ↢煩悩濁ト↡者ハ、当今タウコムノ劫コウ*末マチノ衆生悪性ニシテ難ガタシ↠親シタシミ。随ズイ↢対タイシテ六根コンニ↡貪瞋トムジム競キヲヒ起オコル也。

・命濁

^「↑命濁みょうじょく」 といふは、 前さきの見けん・悩のうの二に濁じょくによりて多おおく殺害せつがいを行ぎょうじて、 慈いつくしみ恩養おんようすることなし。 すでに0393*断だん命みょうの苦く因いんを行ぎょうじ、 長じょう年ねんの果かを受うけんと欲ほっするも、 なにによりてか得うべき。

~言フ↢命濁ト↡者ハ、由ヨリテ↢前 キノ見・悩ナウノ二0719濁ニ↡多ク行ジテ↢殺セツ害ヲ↡、†無シ↢慈シミ恩養スルコト↡。既ニ行†ジ↢断ダン命之ノ苦クノ因ヲ↡、†欲スルモ↠受ウケムト↢長年之ノ果ヲ↡者、何ナニニ由ヨリテカ可ベキ↠得ウ也。

^しかるに濁じょくは*体たいこれ善ぜんにあらず。 いま略りゃくして五ご濁じょくの義ぎを指しめしをはりぬ。

~然ルニモ 濁者ハ体タイ非ズ↢†是善ニ↡。今 マ略リヤクシテ指シ↢五濁ノ義ヲ↡竟リヌ。

・五苦所逼

^「▲五苦ごく所逼しょひつ」 といふは、 八はっ苦くのなかに生しょう苦く・老ろう苦く・病びょう苦く・死苦しく・*愛別あいべつ苦くを取とりて、 これを五苦ごくと名なづく。 さらに三さん苦くを加くわふればすなはち八はっ苦くとなる。 一いちには*五ご陰おん盛じょう苦く、 二にには*求不ぐふ得とく苦く、 三さんには*怨憎おんぞう会苦えく、 総そうじて八はっ苦くと名なづく。

~言フ↢「五苦ク所逼ヒツト」↡者ハ、八苦ノ中ニ取トリテ↢生苦・老苦・病苦・死苦・愛アイ別ベチノワカレ苦ヲ↡クルシミ、此 レヲ名ク↢五苦ト↡也ナリ。更ニ加クハ†フレバ↢三苦ヲ↡即チ†成ル↢八苦ト↡。一ニ者ハ五陰オム盛ジヤウ苦ク、二ニ者求グ不得苦、三ニ者怨オンアダ 憎ゾウソネミ会エ苦、総ソウジテ名ク↢八苦クト↡也。

^▼この五ご濁じょく・五苦ごく・八はっ苦く等とうは六道ろくどうに通つうじて受うく、 いまだなきものあらず。 つねにこれを*逼悩ひつのうす。 もしこの苦くを受うけざるものは、 ▼すなはち*凡数ぼんじゅの摂しょうにあらず。

~此ノ五濁・五苦・八苦等ハ通ツウジテ↢六道ニ↡受ウク、未ズ ダ↠有ラ↢無ナキ者 ノ↡。常ニ逼ヒツ↢悩ナウス之ヲ↡。若シ不ザル↠受ウケ↢此ノ苦ヲ↡者 ノハ、即チ非ズ↢凡数ボムジユノ摂セフニオサム↡也。

^▲「云うん何が当見とうけん」 といふ以下いげは、 これ夫ぶ人にん*苦機くきを挙こ出すいして、 これらの*罪業ざいごうきはめて深ふかくして、 また仏ぶつを見みたてまつらず、 加備かびを蒙こうむらずは、 いかんがかの国くにを見みるべきといふことを明あかす。

~言フ↢「云ウン何ガ当タウ見ト」↡已下ハ、▼此明ス↧夫人†挙↢出シテ苦機クキヲ↡、此 レ等ラノ罪業極キワメテ深†クシテ、又不ズ↠見ミタテマツラ↠仏ヲ、不ズハ↠蒙カムラ↢加備カビヲ↡、云何†ガ見†ルベキトイフコトヲ↦於彼ノ国ヲ↥也。△

二 Ⅱ ⅱ b ト (三)結

^上じょう来らい七しち句くの不ふ同どうありといへども、 広ひろく定じょう善ぜん示じ観かん縁えんを明あかしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢七句ノ不同↡、広ク明シス↢定善示ジ観ノ縁ヲ↡竟リヌ。

二 Ⅲ 総結

【12】^初はじめには*証しょう信しん序じょを明あかし、 次つぎには*化け前ぜん序じょを明あかし、 後のちには*発ほっ起き序じょを明あかす。

▲初ハジメニハ明シ↢証信序ジヨヲ↡、次ニハ明シ↢化前序ヲ↡、後ニハ明ス↢発起序ヲ↡。

^上じょう来らい三序さんじょの不ふ同どうありといへども、 総そうじて序じょ0498分ぶんを明あかしをはりぬ。

上来ニ雖モ↠有リト↢三序ジヨノ不同↡、総ソウジテ明シ↢序分ヲ↡竟リヌ。

観かん経ぎょう序分じょぶん義ぎ 巻かん第だい二

 

延書の底本は高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。
五門 五分。 浄じょう影よう寺じ慧え遠おん (523-592)・嘉祥かじょう大師吉蔵きちぞう (549-623) 等の諸師は ¬観経¼ に三分 (序分じょぶん・正宗しょうしゅう分ぶん・流る通ずう分ぶん) を立てて解釈するが、 善導ぜんどう大師は、 五分 (序分・正宗分・得益とくやく分・流通分・耆ぎ闍しゃ分) を立てて解釈する。
得益分 その経の教えによって利り益やくを得ることを示す部分。
王宮にまします一会 王宮会のこと。 仏が王舎城おうしゃじょう宮ぐで阿あ難なんと韋い提だい希けのために説法した会座。
一会 耆ぎ闍しゃ会えのこと。 阿難が耆ぎ闍しゃ崛山くっせんの大衆のために王宮会での仏の説法を再説した会座。 「散善義」 では耆闍分ともよぶ。
三分 善導大師は全四十五字の耆闍会 (耆闍分) にも序分・正宗分・流通分の三分があるとする。
正宗 正宗しょうしゅう分ぶんのこと。
勝を歎じて (¬観経¼ の教説が) すぐれていることを讃嘆さんだんして。
能説の人 教えを説く人。
能聴の人 教えを聞く人。
天法 天に生ずるための教え。 十じゅう善ぜんの法。
小 小乗しょうじょうの教え。
大 大だい乗じょうの教え。
歴々了然 きわめて明らかであること。
随心の起行 (衆しゅ生じょうが) その心にしたがって行をおこすこと。
各益の不同 (その行によって得る) 利り益やくはそれぞれ同じではないということ。
業果の法然 業因によって果報を得ることが道理として自然にあること。
可信を証誠せん 信ずべきことを証明しよう。
禁父の縁 阿あ闍じゃ世せが父の頻びん婆娑羅ばしゃら王を幽閉する因縁。
禁母の縁 阿闍世が母の韋い提だい希けを幽閉する因縁。
厭苦の縁 韋提希が苦悩の穢土えどを厭う因縁。
欣浄の縁 韋提希が浄土を願い求める因縁。
散善顕行縁 散善行を顕す序文。 親鸞聖人は 「散善は行を顕す縁なり」 (化身土文類訓) と読み、 「自力の散善は他力念仏を顕す縁」 と転意した。
定善示観縁 定善観を示す序文。 親鸞聖人は 「定善は観を示す縁なり」 (化身土文類訓) と読み、 「定善は他力の信心 (観) を示す縁」 と転意した。
二 「一」 の誤写と思われる。(有国)
起化の時 説法教化をおこす時。
純凡 凡ぼん夫ぶのみ (がいる場所)。
純聖 聖者のみ (がいる場所)。
逆 父王を殺すという逆罪。
耆闍 耆ぎ闍しゃ崛山くっせんのこと。
耆山 耆闍ぎしゃ崛山くっせんのこと。
二には… 以下、 「大比丘びく衆」 の大についていう。
総大 以下の七大の総句。
相大 すがたがすぐれていること。
衆大 僧衆が巧みに和合していること。
耆年大 長老の比丘であること。
数大 比丘の数が多いこと。
尊宿大 高徳の長老であること。
内有実徳大 内に尊い徳をそなえていること。
果証大 すぐれた証果を得ていること。
猶置 安置の意。 あるいは由致 (由序) の意か。
羅漢道 阿羅漢果。 →阿羅あら漢かん
舎利 舎しゃ利弗りほつのこと。
道果 阿羅漢果。 →阿羅あら漢かん
結集の家 経を結集けつじゅうした人。
簡び 区別して。
真門に入る 真実の教えである仏法に帰入すること。
気習 習じっ気けに同じ。
砕身の極 仏の恩徳は身を砕いてもなお報じがたいほど深いという意。
六種に振動す →六種ろくしゅ震動しんどう
邪網を掴裂し よこしまな教えの網を切り裂いて。
百姓 (王舎城中の) 人民。
王舎 王家の舎宅。
無憂の世界 いかなる憂いもない極楽世界。
霊儀を影現し 釈尊が十方の仏の尊いありさまを韋い提だい希けに示したことをいう。
三福の因 往生の因であるところの散善さんぜん三福さんぷくの行。
定門 定じょう善ぜんの法門。
九章の益 九く品ぼんの散善の利り益やく。
この地の往翻には 中国語の意訳では。
未生怨 出生以前より既に父に怨を懐いた者という意。
継祀 先祖の祭祀をうけつぐこと。 ここでは王位を相続する者の意。
心口をもつて 心に殺意をいだき、 口に命令を発して。
王において… 王に害を加えるであろう。
捨属 (生れてくる子に) 与えること。
平章 正しく明らかにすること。 ここでは適切な処置をとるという意。
声 風聞。 うわさ。
外人 王族以外の人々。
為人匈猛 性格が凶暴であること。
仏会 釈尊の説法の会座。
身通 神足通じんそくつうのこと。 →六ろく神通じんずう
他心 他心通たしんつうのこと。 →六ろく神通じんずう
跏趺正坐 結けっ跏か趺坐ふざに同じ。
空無礙の想 虚こ空くうを自由自在に行く想い。
摂取 おさめとること。
堪任するところなし (教団を率いてゆく) 能力がない。
罔極の恩 極まりない恩。
逆の響き 逆罪を犯したという噂。
人間 人の出入りするところ。
外人 他の人々。
蝋 蜜蝋のこと。 蜂蜜の巣を精製してつくった蝋。
漿 汁。
門家 守門の者。 門番のこと。
異計 特別なはかりごと。
宿縁業 過去の因縁いんねん。
酥 酥蜜のこと。 牛乳を精製してつくった乳酥に蜂蜜を加えたもの。
麨団 乾麨のこと。 炒った麦をひいた粉。 麦こがし。
朝心 王の心の意か。
別親 母方の親類。
門師 頻びん婆ば娑しゃ羅ら王家の師匠。
屈 屈請くっしょう。 尊い人の来臨を請うこと。
時節長遠 (戒をたもつべき) 時間が長いこと。
余の仏経 ¬受じゅ十じゅう善戒ぜんかい経きょう¼ などを指す。
持心極細極急 戒をたもつ心が細密で精励であること。
用心 (戒をたもつ) 心がまえ。
細 細密。
戒文 戒を説く律文。 ¬四し分律ぶんりつ¼ ¬五ご分律ぶんりつ¼ など。
仏子 持じ戒かいの人。 仏弟子。
今旦・明旦 今朝・明朝。
中 正午。
悪習 悪の余残の気分。
経 ¬受じゅ十じゅう善戒ぜんかい経きょう¼ などの経。
快鷹 空を早く飛ぶ鷹。
来業を資せんと擬す 来世の果報を招く業因の資糧にしたいと望む。
発遣 (富楼那ふるなを) 派遣すること。
二七有余 十四日余り。 ¬観経¼ には 「三七日」 とある。
三七 二十一日間。
意密の問 本心を隠した問いかけ。
万基の主 国を統治する者。 国王。
挙動… 行動が気ままであってはならない。
悪逆の声 悪逆を犯したという評判。
麨 乾麨のこと。 炒った麦をひいた粉。 麦こがし。
夫人の… 韋い提だい希け夫人が食物をもちこむことができたのは、 阿あ闍じゃ世せがあらかじめこれを禁じていなかったからである。
門制 宮殿の出入りについての制禁。
後の正行 行為そのもの。
沙門 目連もくれんと富楼那ふるなのこと。
慈母 韋い提だい希けのこと。
児 阿あ闍じゃ世せのこと。
八方 四方および四し維ゆい。 ここではすべての民衆のこと。
顔を犯して 遠慮しないという意。
家兄 阿あ闍じゃ世せのこと。
古今の書史歴帝の文記 古今の歴史書や歴代帝王の記録。
京邑神州 京邑は都、 神州は国土の美称。 ここでは王おう舎城しゃじょう、 摩竭陀まがだ国こくを指す。
無聞の地 たよりの聞えないようなところ。
剣を按ずる 剣のつかに手をおく。
却行而退 後向きに退くこと。
異計 (阿闍世を追放するための) 陰謀。
情地 心地。 気持ち。
相 大臣。
訝楽 憩いたのしむこと。
水泄すら通ぜず 水も漏らさないように厳重に警備するという意。
彼此 彼は釈尊、 此は韋い提だい希けと頻びん婆ば娑しゃ羅ら王を指す。
穢質の女身 →補註10
福因尠薄なり 過去の善根ぜんごんの因がとぼしい。
三たび致請 仏を懇請こんせいすること。 三度請をかさねることは仏を請ずるときの礼法。
ここ 耆闍崛山。
かしこ 王舎城おうしゃじょうの王宮。
未聞の益 いままでに聞いたことのないすぐれた利り益やく。
鉤帯 瓔珞のとめひも。
婉転 ころびたおれること。
身の威儀を正しくして 身だしなみをととのえて。
径路 (阿あ闍じゃ世せ王が逆罪をおこすに至った) 道筋。
甘心 甘んじて受けるの意か。 またここでの甘を厭の義と解する説もある。
by>と習じっ気けのこと。
所求 願い求めるところ。 阿弥陀仏の浄土。
別して… →韋い提だい別選べっせん
増上の勝因 この上なくすぐれた原因。
三本の悪果 地獄・餓鬼がき・畜ちく生しょうの三悪道の果報。
三の苦聚 三悪道さんまくどうのこと。
経にのたまはく… 引用は ¬華厳経¼ 等の諸経の取意の文か。
簡ばず 区別しない。
生処 往生すべき浄土。
得生の行 往生を得るための行業。
所現 金台に現れた十方仏国のありさま。
甘露 ここでは浄土の法門を甘露に喩える。 →甘かん露ろ
衆聖 数多くの聖者たち。 ここでは諸仏のこと。
指讃 阿弥陀仏の浄土を指し示してほめたたえること。
別行 阿弥陀仏の浄土に往生するための特別な行。
定の前方便 定じょう善ぜんに入るためのてだて。
四種の荘厳 定善十三観を依え報ほうと正しょう報ぼうに分け、 そのそれぞれに通と別とを分つので、 四種の荘しょう厳ごんとなる。
前境 所観の境としての依え正二報しょうにほうの荘厳相そうごんそう。
下の観門 定善十三観のこと。
威儀 ふるまい。 作法。
記を授く →授じゅ記き
第三の果 声聞乗しょうもんじょうの修道階位である四向四果のうちの阿那含果のこと。 →阿那あな含ごん
所求の行 阿弥陀仏の浄土に往生するための行。
告命許説 告命は仏が韋提希に告げること。 許説は仏が韋提希の願いをききいれて法を説くこと。
境 所観の境。 観想の対象となるところの浄土。
分斉遠からず ここでの分斉は程度の意。 十万億刹は二十万億刹、 三十万億刹等の距離に比べれば遠くないということ。
道里 (西方浄土への) みちのり。
定境相応して 定心と所観の境が合致して。
浄境 清浄しょうじょうなる境界であるところの浄土のありさま。
定門 定じょう善ぜんの法門。
定・散 定じょう善ぜんの機と散善さんぜんの機。
生を摂するに尽きず すべての衆しゅ生じょうをおさめとることはできない。
化生・湿生・卵生・胎生 →四し生しょう
経 ¬菩ぼ薩さつ処胎しょたい経きょう¼ 等の諸経を指す。
能生の因・所生の縁 父は子種を下すから子を能よく生ずる因といい、 母は子種をたもち育てるから子を生ずる所の縁であるという。
縦横 至るところにあること。
幢相 はたじるし。 袈裟は煩悩ぼんのうの敵を破るはたじるしに喩えられる。
仏母… 以下の説は ¬大だい方ほう便べん仏ぶつ報恩ほうおん経ぎょう¼ に出る。
敬上の行 上かみを敬う行為。
怒 異本には 「恕」 とある。
慈下の行 下しもを慈しむ行為。
戒徳巍々として 戒をたもつ徳はおごそかである。
少分戒… 少分戒は戒のうちのいくつかをたもつこと。 多分戒は戒の過半をたもつこと。 全分戒は戒のすべてをたもつこと。
大 大だい乗じょうのこと。
弘心 大乗のさとりを求める心。
来去を迎送して 来る者を迎え、 去る者を送って。
後際を徹窮し 未来永遠に。
四に 不要。 書写者の間違いか。(有国)
「二には出世の因果を明かす。」 に相当する文言が脱落していると思われる。(有国)
印を… 臘印を熱い泥土におすと臘印は壊れるが文字のみが残る。
勅聴許説 勅聴は仏が韋い提だい希けに聞くことを命じること。 許説は仏が韋提希の願いに応じて法を説くこと。
正受の方便 定じょう善ぜん観かんの方法。
二人 阿あ難なんと韋提希を指す。
来潤 未来の衆しゅ生じょう。 潤は法のうるおいを受くべき者の意。
進道の資糧 さとりの道をあゆむためのかて。
下の観門 定じょう善ぜん十三観。
未来 未来世の衆しゅ生じょう。
貪欣 ねがい求めること。
竹 竹の皮を薄く編んだものの意か。 異本には 「竹篾」 (竹の皮の意) とある。
心境相応して 観ずる心と観の対象とが完全に合致して。
無生の忍 無む生しょう法忍ぼうにんのこと。
得処 無生法忍を得るところ。 善導ぜんどう大師は韋い提だい希けが無生法忍を得るのは第七華座けざ観かんのはじめに住立じゅうりゅう空くう中ちゅう尊そんがあらわれるところにおいてであるとする。
勇猛専精 いさましく一筋にはげむこと。
十信の… 無生法忍は十信じっしん位の凡ぼん夫ぶの得る利り益やくであって、 十じゅう住じゅう・十行じゅうぎょう以上の高位の菩薩の得る利益ではないとするのが善導大師の理解である。
解行以上 (十信に続く) 十じゅう住じゅう・十行じゅうぎょう以上の位。
凡・聖 凡夫、 聖者。
夫人は… 浄じょう影よう寺じ慧え遠おん (523-592) 等の諸師が韋提希を高位の聖者としたことを受けていう。
普悉 あまねく知るの意か。
前の恩 仏の力によって光台のうちに十方諸仏の国土を見ることができたことを指す。
浅促 心が浅く寿命が短いという意。
泯じて 減らして。
人年 人間の寿命。
磨滅 死。
蠢々周慞して うごめきあわてて。
断命の苦因 苦の原因となる殺生せっしょう。
愛別苦 愛別あいべつ離苦りくのこと。
苦機 苦悩の機類。
底本は◎高田派専修寺蔵鎌倉時代刊本ˆただし訓は○浄聖全三巻の宗祖加点本と全同ではなく大幅に標準化されているため、 大きな相違は†、 小異および加を緑茶・減を灰で示したˇ。 Ⓐ大谷大学蔵鎌倉時代刊本、 Ⓑ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓒ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 ª全部対校º 辯→Ⓒ辨
末→Ⓑ未
即→Ⓒ即[此]
亡→Ⓑ立
螺→Ⓒ蠃
井→Ⓑ并
臘→Ⓒ蝋
致→Ⓒ倒
私→◎ⒶⒷ和
和→Ⓒ私
記→Ⓒ紀
乖→Ⓒ乗
閉→◎閑
慚→Ⓒ漸
教→Ⓒ殺
斯→Ⓒ此
疾→Ⓒ嫉
怒→Ⓒ恕
者→Ⓒ者[者]
坑→Ⓒ阬
→Ⓒ篾
末→Ⓑ未
周ヲハリテ→○周アマネシ
欲シテ↧…伝↦持セシメムト末代ニ↥、…勧ム↠学ヲ。→○欲シテ↧…伝デン↢持ジシテ末代ニ↡、…勧クワン学セムト↧、
随心ノ起行→○随テ↠心ニ起スニ↠行ヲ
不同→○不ズ同ジカラ
タル→○トシテ
キヲ↢錯失↡→○シ↢錯シヤクアヤマリ失シチ↡、
欲ス↩明シテ↧…、…、…承クルコトヲ↥、表セムト↝…→○欲ホス↠明サムト↧…、…、…承ウケテ、表ヘウスルコトヲ↞…
欲ス↪明シテ↧…、…従ヒテ↠仏ニ聞クトイフコトヲ↥、証↩誠セムト可信ヲ↨→○欲ホス↠明サムト↧…、…従ヨリ↠仏聞キイテ、証誠スルコト可ベキコトヲ↞信シンジツ
将ス ニルニ↢説法セムト↡→○将シ ニテ↠説キ下ハムト↠法ヲ
↢於時処ニ↡→○↠於ニ↢時処シヨ↡
↢於時処ヲ↡→○↠於オ↢時処↡
説法シタマフ。→○説キ下フコト↠法ヲ、
不↠増セ不↠減ゼ→○不セズ↠増不ゼズ↠減
者→○者イフハ
与ト↢二衆↡→○与トモニ↢二衆ト↡
起ス↢此ノ悪逆ヲ↡因縁ヲ→○起オコスコトヲ↢此ノ悪逆ノ因縁ヲ↡
トイフ者→○ノ者 ノハ
以レバ→○以テミレバ
弘ク益ス↢…↡→○弘ク↢益ス…↡
領シテ↢一処ニ↡→○領シテ一処ニシテ
非ザル↢外道ニ↡→○非ザル↢外道ナラ↡
スト者→○セ者バ
畏ルレバナリ↧…、不ルコトヲ↞収メ…。→○畏オソラクハ…、不ザルコトヲ↠収オサメ…、
令メテ↢自ラ近ヅカ↡、不↠聴シタマハ↢…→○令シム↢自ラ近チカヅケテ不ザラ↟聴ユルサ…
スト者→○セ者バ
尋↢思スルニ…↡→○尋ツイデ思オモフニ↢…↡
砕身之極→○砕クダク↠身ミヲ之極キワマリ
十方ヲ↡。無量ノ仏土→○十方ノ無量ノ仏土ヲ↡。
不↠可カラ↢思議ス↡→○不フ可思議ナリ
禁父ノ→○禁キンズル↠父ヲ
言フベシト↢…造ルト↟舎シヤヲ→○言イヘ…造ルト↠舎イヘヲ
明ス↧…/……故ラニ名クルコトヲ↦…↥→○明ス↧…/…故名 ナヅ ケタルコトヲ↦…↥
道→○噵
言フ…者→○言イハ…者バ
無憂→○無キ↠憂ウレヘ
所ヲ↟悞ル→○所ルルコトヲ↟悞アヤマタ
トイフ者→○ト者イ ハ
命終シ已リテ後→○命イノチ終オハリテ已イ後
捨命スル→○捨スツベキ↠命ヲ
困クルシム↠不ルニ↠…→○困タシナンデ不ズ↠…
捨命シテ→○捨ステヽ命ヲ
勅スル↢即チ赴ケト↡者→○勅チヨクニ即チ赴オモブカ者バ
所有ル→○所シヨ有ウノ
不ルヤ→○不ズ
遣ム↢人ヲシテ殺サ↟我ヲ→○遣ツカハシテ↠人ヲ殺セツス↠我ヲ
還タ→○還カヘリテ
遣メムト↢人ヲシテ殺サ↟王ヲ→○遣シテ↠人ヲ殺コロサム↠王ヲ
平章セム。相師→○平ビヤウ↢章シヤウセム相師シヲ、
落シテ在ラムニ↢…↡→○落オチテ在オカバ↢…↡
憂フルコト→○憂ウレヘ
因ル↧…起スガ↢…↡対シテ↢…↡顕↦発スルニ…↥。→○因ルガ↣…起スニ↢…↡対ムカヒテ↢…↡顕↢発ス…↡。
送↢向シテ…↡→○送オクリテ向ムカヘテ↢…↡
無シ↢人トシテ教フルモノ↡→○無シ↠人↠教フル
教フ↢…挙グルコトヲ↟身ヲ。→○教ヘテ…挙アゲテ↠身ヲ
似タリト↠動クニ想ヘ→○似ニタラシム↢動想ドウソウニ
至ル。上リ↠空ニ已リテ→○至リ↠上リ↠空ソラニ已オハリナバ
想ヒ↣…入ルト↢…↡、作セ↢…想ヲ↡→○想ヘ、…入ラシム↢…↡、作ナスコトヲ↢…想 ヒヲ↡
想ヘ↧…、…不ト↞…→○想ヘ、…、…不ザルコトヲ↠…
想ヘ↧…自在ナリ、…、…捉リ動スト…↥→○想ヘ、…自ジ在ナルコトヲ、…、…捉トリ↢動ウゴカスト…↡
>得ウ
不ル↠如クナラ→○不セザル↠如ク
索ム↣於徒衆…付↢嘱シタマヘト我ニ↡→○索モトメ↢於徒ト衆シユヲ↡…付フ↢嘱シタマヘト我ニ↡
将養シタマフ→○将マサニ養ヤシナヒ上ル
遣メテ↧夫人ヲシテ…生ゼ↥→○遣ツカハシテ↢夫人ヲ↡…生ゼシメテ
不実ナラバ→○不ズハ↠実ナラ
↢随順調達悪友之教ト↡→○↣随スト↢順調達悪友ウ之ノ教ニ↡
罔極→○罔ナキ↠極キワマリ
言フ↢父ト↡者→○言イハ↠父ブト者バ
者→○者 フハ
可カラ↣…禁ズ↢…↡…無ケレバナリ↢…↡→○可ベカラ↧…禁ジテ…↡…無カル↦…↥
理トシテ絶ツトモ↢…↡→○理オサメテ絶タヘタリ↢…↡
↢瓔珞ヲ↡孔ノ一頭→○↢瓔珞ノ孔アナノ一ノ頭ハシヲ↡
別体同心ニシテ→○別ベチナレドモ↠体タイハ同ジ↠心 ロ
刮リ→○刮ネブベキリ
奉↢請スルニ…↡→○奉トルニ↠請ジ↢…↡
受戒ニ→○受ルニ↠戒ヲ
乃チ有ルコト無量ナルニ→○乃スデニ有リ↢無ム量ニ
者→○者イハ
仏経ニ説キタマフガ→○仏経説ノ
極細極急ナリ→○極テ細コマカナリ極テ急キフナリ
行トノ細ナル→○行細サイナリト云
如ク↣諸仏ノ不ルガ↢殺生シタマハ↡→○如ク↢諸仏ノ↡不ズ↢殺生セ↡、
等→○等ヒトシク
為サ→○為セ
須ヰム↢…受クルヲ↟…→○須スベカラベ  クキ↢…受ウク↟…
望↢欲シテ積ムコト↠善ヲ増ス高キコトヲ↡擬ス↠資セムト↢来業ヲ↡→○望マウ↢欲ヨクス積シヤク善増高ゾウカウニシテ↡擬ギスルコトヲ↟資シセムコトヲ↢来業ライゴフニ↡
明ス↧…、愍↢念シタマフニ…↡、/…除カシメタマフコトヲ↦…↥。→○明ス↣…、愍ミン↢念シ玉フコトヲ…↡。/…除ク↢…↡。
説法シ、→○説ク↠法ヲ。
明ス↧…、…開ク↢…↡、…、…、…、…、致スコトヲ↞使ムルコトヲ↢…↡→○明ス↧…、…開クコトヲ↦…↥。…、…、…、…、致ス↠使ムルコトヲ↢…↡
明ス↧…、…、…、…応シ↠終ル也、…、…、…猶存在セリ耶トイフコトヲ↥→○明ス↢…、…、…、…応ベキコトヲ↟終ル也。…、…、…猶存在セリ耶ヤ
今者 イマ →○今者ハ
以レバ…主ナレバ→○以テナリ↢…主ヌシタルヲ↡
可カラ↢随宜ナル↡→○可↠随フ↠宜ニ
↢言ヒテ問フ↟死セリヤト→○↠言フ↢問ヒテ死セリヤト↡
明ス↧…、…、…、…存ズ、…非ズトイフコトヲ↦…過ニハ↥→○明ス↧…、…、…、…存ゾンズルコトヲ↥、…非ズ↢…過ニハ↡
問ヘバ↢…在リヤト↡者→○問フニ↢…在者アリヤト↡
明ス↧…、…説ク↠法ヲ、…、…、…、…、…不トイフコトヲ↞猶ラ→○明ス↧…、…説トクコトヲ↞法ヲ。…、…、…、…、…不ズ↠猶ヨラ
進食→○進ス↠食ヲ
起ス↢…逆ト…悪トヲ↡。→○起オコス↢…逆ヲ↡。…悪ト云ハ、
所為→○所 コロ↠為ナス
為ス↢賊ナリ賊之伴ナレバナリト↡也→○為ル↠賊ゾクト、賊ゾク之ノ伴トモガラナレバ也ナリ
恨ムニ↠不ルコトヲ↢…↡→○恨ウラムラクハ不ザルコト↢…↡
為ニ進ムルガ→○為タメノ↠進スヽムルガ
明ス↧闍世瞋リ↢母ノ進ムルコトヲ↟食ヲ、…致スコトヲ↞…→○明ス↣闍世ノ瞋イカリヲ↢母ノ進ムルヲ↟食ヲ、…致ス↠…
低タレ→○低ウナダレ
見テ↧…起シテ↢…↡…欲スルヲ↞殺サムト↢…↡→○見テ↣…起オコスヲ↢…↡…欲ホス↠殺セツセムト↢…↡
不↠忍ビ→○不ズシテ↠忍シノバ
当レリ→○当ニアタレリ
明ス↢…欲シテ↠…、望ムコトヲ↟…→○明ス↢…欲スルコトヲ↟…。望ム↠…
須ヰル↢…白スヲ↡→○須 ラベ クシ↢…白マウス↡
標スル→○標アラハス
良ヤヤ談ズルモ→○良リヤウ談ダンナリ
引ク↢古ノ異ナルヲ↟今ニ→○引キテ↠古ヲ異ス↠今ニ
将テ↠今ヲ→○将マサニ今
見バ↣王起シテ↠…損↢辱スルヲ…↡→○見ルニ↢王ノ起オコスヲ↟…損ソン↢辱ニクシテハヂシム…↡
↢万基ニ↡之主ナリ→○↢万バム基キ之ノ主ヲ↡
遣メム↢…ヲシテ為ラ↟…→○遣ツカハシテ↢…ヲ↡為タラシメムヤ↠…
不↠如カ↧…絶タムニハ↦…↥→○不ジ↠如シカ、…絶タヘテン↢…↡
按ズル↢手中ノ剣ヲ↡→○按オサヘテ↠手ヲ中アツル↠剣ツルギニ
不↠避ケ→○不ズシテ↠避サラ
害母→○害スル↠母ヲ
繋ケタル剣→○繋カクルコト↠剣ケンヲ
明ス↩…見↢…↡、…、恐レ↧…更ニ生ズルコトヲ↦…↥、致スコトヲ↝…→○明ス↣…見ミルコトヲ↢…↡。…、恐オソラクハ…生ゼムコトヲ↢…↡、致ス↠…
欲セバ↧得テ↢…↡為サムト↞…者→○欲オモハ↠得ヘムト↢…為スルコト↟…者バ
還帰スル→○還リテ帰オサムル
結ツナギ→○結ムスボラレ
水泄スラ→○水ミヅ泄モセツルコト
恐レタマフ↢…↡→○恐オソラクハ…
以テノ↢…↡故ニ→○以テ↢…↡故コトサラニ
遣メタマフ↢…セ↡也→○遣ツカハシテ…スル也ナリ
与↠我→○与タメニ↠我ガ
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於我ニ↥→○於ニ↞我 レ
跱シ、須臾シバラク→○跱ジタチ↢ヂヨシモトヲル須シユ臾ユニ↡
処コトワリ→○処トコロ
者→○ト者イフハ
明ス↫…、…、無シ↠有ルコト…、…、願ズルコトヲ↪…↩…↨→○明ス↧…、…、無ナキコトヲ↞有ルコト…。…、願フ↧…↦…↥
安心之地トコロ→○安アムズルニ↠心ヲ之地ヨリドコロ
聞キテ↣仏説キタマフヲ↢浄土ノ無生ナルヲ↡→○聞キキテ↢仏説ノ浄土ノ無生ヲ↡
挙↢出スル→○挙ヨリテ↢出ス
総ジテ→○総スベテ
明ス↧…未ダ↠…、…、飲ムトイフコトヲ↦…↥→○明ス↢…未ザ ダルヲ↟…、…、飲ノム↢…↡
ノ処→○処シヨ
已下ハ、三品ノ→○已下ノ三品ハ
↢閻浮ヲ↡、娑婆モ→○↢閻浮娑婆ヲ↡、
明ス↣…随フコトヲ↢心ノ差別ニ↡→○明ス↢…随フ↠心ニ差別シヤベチナルコトヲ↡
ナルハ→○ナリ
ケ→○ク
リ→○ル
スレドモ→○シテ
ヒテ↢…↡→○フ↢…↡。
ザル→○ズ
元→○元グヱン モト
不ハ→○不ザラマシカバ
然シテ→○然シカモ
者→○者イハ
ガ→○ノ
不ラム→○不ジ
ナルモ→○ナリ
頓チニ→○頓トムニ
非ズハ→○非ザレバ
不ルコトヲ→○不ズ
○ト
夜日ノゴトク→○夜日ニチ
得ル→○得エム
明ス↧…以テ↠…、…、…/…、…、…、…現ジ、…、…、…得シムルコトヲ↞…。→○明ス↢…以テ↟…。…、…/…、…。…。…現ズ。…。…。…得タリ↠…。
還来シテ→○還カヘシ来キタシテ
作ルニ→○作ナス
所有ル→○所シヨ有ウ
為ニ↠我ガ広ク説キタマヘト↢無憂之処ヲ↡→○為我広説無憂ウ之シ処シヨト
為ニ金台ニ→○為ナシテ↢金台ヲ↡
ズル→○ゼル
ス→○サン
眼前→○眼マナコノ前マヘ
ク…、→○シ…。
殊ナルコト→○殊シユコトナルコト
有ル→○有ウル
存ス→○存ゾンゼン
為ス↟優ト→○為タル↟優
明ス↧…四十八願ヨリス、…/…/…/…、致スコトヲ↞…→○明ス↢…四十八願ヲ↡。…/…/…/…、致ス↠…
因→○因コレ
ジ→○ズ
ナレバ→○ナリ
メタマフ→○ムル
前→○前サキノ
因リテ↢…思想…亡ズルニ↡→○因ヨリテ↢…思想ニ↡…亡マウジテ
前境→○前ノ境
ル→○リテ
明ス↭…以テ↪見タマフニ↧夫人ノ…、…請ズルヲ↦…↥、…、…顕スヲ↩…↨、…微笑シタマフコトヲ↬也→○明ス↪…以テ↧見下ニ↢夫人ヲ↡…、…請ズルヲ↦…↥、…、…顕スコトヲ↩…↨。…微笑シ下也ナリ
ケバ…、→○ク…。
ノミ→○ノ
去ク→○去サル
所以→○所以 ソヘ
出処→○出イデ処ドコロ
人→○人ニン
明ス↧…授クルコトヲ↦…↥→○明カニ…授サヅクルナリ↢…↡
明ス↧…見ル、…超↦証スルコトヲ…↥→○明ス↧…見ルコトヲ↥。…超コヘテ証ス↢…↡
↢…所ニ↟期スル→○↢…所期ゴニ↡
スルニ→○シテ
答フルコトヲ↣…選ブニ↢所求之行ヲ↡→○答フルコトヲ↧…選エラブ↢所シヨ求グヲ↡之行ニ↥
従リ↢上ノ耆闍ニ…訖ル↡→○従リ↢上 ミ耆ギ闍シヤ↡…訖オハリテ
ルマデ→○リテ
也→○也ヤ
住トドムル→○住ヂユスル
刹→○刹クニ
及ビ→○及ギウ
○バ
未ダ↠具セ→○未ザ ダレバ↠具ソナハラ
開キ→○開カイシ
勧メ↠修ヲ、得ルコトヲ↟益ヲ→○勧クワン修シユ得益スルコトヲ↡
スレバ→○シテ
勧メテ修セシムル→○勧修スル
明ス↧…有リ↢…↡…応ジタマフコトヲ↦…↥→○明ス↣…有アルコトヲ↢…↡…応ズ↢…↡
標ス→○標アラハス
キタマフ→○ク
無クハ…者→○無ク…者ハ
○ナン
ハム→○ヒテン
経ルマデ→○経ヘテ
恒常 ツネ ニ→○恒カウ常ジヤウ
床被・→○被キタル (床を抹消)
反リテ→○反オヨビテカヘリテ
シ…也→○キ…也ナリ
極ミ→○極キワマリ
於テ↠時ニ→○於ニ↠時
リヌル→○ル
城→○城ジヤウ
喚ビ→○喚ヨバヒ
還タ→○還カヘリテ
又還 マタ →○又還リ下ニ
後ノ日→○後日
有ス→○有イマス
言ク→○言マウス
一匙→○一匙ヒトカヒ
語ラム→○語ゴセン
勝タフル→○勝タユル
我→○我ガ
売却シテ→○売ウリ却サゲテ
飯→○飯ボン
セム…。→○セムコト…、
是ノ→○是 レ
○ゾ
言ク、比丘ノ→○言ハク↢比丘ニ、
衣→○衣コロモ
不ト↠消セ→○不ジ↠消ケサ
極ナルニ→○極キワマリナリ
尚→○尚ナヲシ
言ハバ…者→○言ノ下ハ…者バ
不ト↠消セ→○不ジト↠消サ
消セム→○消ケサン
不ト↠消セ→○不ジト↠消ケサ
消セム→○消ケサム
得→○得エテム
消スル→○消ス
得→○得エテン
信ズル心→○信心
フル→○ヘム
消セム→○消ケサン
仏ノ教→○仏教
後→○後ゴ
極テ重シ也→○極ゴク重ヂウ也ナリ
成ジ→○成ナス
乃チ至ルハ↢成仏ニ↡→○乃至成ナルマデ↠仏ニ
者→○ヲ者バ
避クル→○避サル
不ルハ→○不ズト云コト
喩→○喩サトリ
証ト→○証スト
相対ス→○相 ヒ対ス
述ブ→○述ジユツス
リ…也→○ル…也ナリ
犯セバ→○犯スレバ
明ス↧…、不↠…得ムトイフコトヲ↦…↥→○明ス↢…、不ザルコトヲ↟…得エム↧…↥
ク→○キテ
ザル→○ズ
サム…。→○シテ…、
下→○下シタ
一トシテ→○一ヒトリモ
不ルハ→○不ズト云コト
ハ→○コト
其ノ→○其 レ
ジ…、→○ズ…。
作レバ→○作ナセバ
スルニ→○スレバ
壊シ→○壊ヤブレ
不→○不ザレト
疑フコト→○疑 ヒ
刀→○刀ツルギ
竭クル→○竭ツカルヽ
潤→○潤ウルオイ
其→○其ノ
七→○七ツ
ト→○ニ
生ゼ→○生レ
タマヘリ→○テ
コト→○ニ
審カニ→○審アキラカニ
ト→○コトヲ
明ス↧…得ム↠…也トイフコトヲ↥→○明ス↧…得ウト云コトヲ↞…也
足下→○足アシノ下シタ
モ→○ニ
ト→○ヲ
スニ→○シテ
隔ツルニ↢竹ヲ↡→○隔ヘダタレルコト竹チクハクウスヤウナレドモ
分外ノ→○分ブンノ外ホカニシテ
闚ハムヤ↠心ニ→○闚ウカヾハシメムト↠心ヲ
住メ→○住ヂユセシメ
境現ズル→○境現ノ
異ナルコト→○異イ
ノ→○ニシテ
眼前→○眼マナコノ前
喜→○喜ヨロコビ
ジテ→○ズ
ル→○ム
恐ル↧…無シトイフコトヲ↞…→○恐オソラクハ…無シ↠…
ジ→○ゼム
比及スルニ→○比タクラビ及オヨブニ
大志→○大ノ志コヽロザシ
言→○言コト
者→○ナラ者バ
普悉スル→○普ク悉シチスル
其 レ→○其ノ
タリ→○ツ
ル→○リヌ
ラバ者→○ラ者バ
若→○若シ
己→○己オノレ
明ス↫…未ダ↠…、…使ムルコトヲ↪…帰セ↩於磨滅ニ↨→○明ス↧…未ザ ダルコトヲ↞…。…使シメ下↧…クヰセ↞於ニ↢磨マ滅メチ↡
期シタマフ↠心ニ→○期ゴ心シムノ
但以テノ↢…ナルヲ↡→○但タヾシ以オモムミレバ…ナルガ
寿→○寿イノチ
泯ジテ→○泯ヒタヽケテ
タマハバ→○テ
シ→○ク
↧…↦於六道ニ↥→○↧…↞於ニ↢六道↡
劫減ズル→○劫減ノ
ズルトキハ→○ズレバ
末→○末スエ Ⓒ未
不ト↠是ナラ→○不アラズト↠是ニ
無シ↢慈シミ恩養スルコト↡→○無ナシ↠慈ジ↢恩養ニ↡
欲スルモ…者→○欲オモハ…者バ
是→○是ゼ
フレバ→○ヘテ
成ル↢八苦ト↡→○成ジヤウズ↢八苦ヲ↡
挙↢出シテ→○挙アゲ↢出ス
クシテ→○シ
ガ→○シテカ
ル→○上ル