安楽集 巻下
釈*道綽撰
◎第四大門
【28】第四大門のなかに三番の*料簡あり。 第一に中国 (印度) の*三蔵法師ならびに此土 (中国) の*大徳等みなともに聖教を詳審し、 歎じて浄土に帰するにより、 いまもつて勧めてよらしむ。 第二にこの ¬経¼ (観経) の*宗および余の大乗諸部によるに、 *凡聖の修入多く念仏三昧を明かして、 もつて*要門となす。 第三に問答解釈して、 念仏者の種々の功能利益を得ること不可思議なることを顕す。
三蔵法師 経・律・論の三蔵に精通した僧。 訳経の高僧の尊称として用いられる例が多い。
大徳 大いなる徳行のある者。 高僧。
宗 経典に説かれた法義の最も肝要なことがら。
◎第四大門中有↢三番料簡↡。第一依↧中国三蔵法師并此土大徳等、皆共詳↢審聖教↡歎↦帰浄土↥、今以勧依。第二*拠↧此経宗及余大乗諸部凡聖修入、多明↢念仏三昧↡以為↦要門↥。第三問答解釈顕↧念仏者得↢種種功能利益↡不可思議↥。
◎ 原漢文の底本は本派本願寺蔵版。 高野山宝寿院蔵天永三年写本、 龍谷大学蔵宝永元年刊本、 龍谷大学蔵鎌倉時代刊本 (下巻のみ)、 龍谷大学蔵正平二年写本、 大派依用十行本と対校されている。
拠ab明c以為d 返り点は聖教全書まま。 「aのb、 cを明かして以てdとなすに拠る」
◎第四大門 ○念仏大徳所行
【29】第一に中国および此土の大徳の所行によるとは、
第一依↢中国及以此土大徳所行↡者、
・ 六師相承
余 (道綽) は*五翳にして面牆なり。 あにいづくんぞみづからたやすくせんや。 ただおもんみれば遊歴し披き勘ふるに、 敬ふに*師承あり。 ▼なんとなれば、 いはく、 中国の大乗法師流支三蔵 (*菩提流支) あり。 次に大徳の*名利を*呵避するあり、 すなはち*恵寵法師あり。 次に大徳の尋常に*敷演するごとに聖僧の来聴を感ずるあり、 すなはち*道場法師あり。 次に大徳の光を和らげて孤り栖みて、 二国 (梁・魏) 慕仰するあり、 すなはち*曇鸞法師あり。 次に大徳の禅観に独り秀でたるあり、 すなはち*大海禅師あり。 次に大徳の聡慧にして戒を守るあり、 すなはち*斉朝の上統あり。
五翳にして面牆なり 五翳は日月の光をおおいかくす五種のもの。 煙・雲・塵・霧・羅睺阿修羅王 (日食・月食を起す阿修羅王)。 面牆は顔をかきねに向けていること。 ともに無知の身という意。 道綽禅師が自らをへりくだっていった言葉。
師承 師より教えを相承すること。
呵避 しりぞけさけること。
敷演 教えを説きのべること。 説法すること。
斉朝の上統 統は大統 (僧官の名)。 北斉の大統の地位にあった法上法師のことか。
餘五翳*面↠牆、豈寧自輒。但*以↢遊歴披勘↡敬↠有↢師承↡。何者、謂中国大乗法師流支三蔵。次有↣大徳呵↢避名利↡、則有↢慧寵法師↡。次有↢大徳尋常敷演毎感↢聖僧来聴↡、則有↢道場法師↡。次有↢大徳和↠光孤栖二国慕仰↡、則有↢曇鸞法師↡。次有↢大徳禅観独秀↡、則有↢大海禅師↡。次有↢大徳聡慧守↟戒、則有↢斉朝上統↡。
面牆 返り点は聖教全書まま。 「牆に面するがごとし」
以a敬有b 返り点は聖教全書まま。 「aをもってbありと敬ふ」
しかるに前の六大徳は、 *ならびにこれ*二諦の神鏡、 これすなはち仏法の綱維なり。 志行、 倫を殊にして古今に実に希なり。 みなともに大乗を詳審し、 歎じて浄土に帰す。 すなはちこれ無上の要門なり。
然前六大徳並是二諦神鏡、斯乃仏法綱維。志行殊↠倫古今実希。皆共詳↢審大乗↡歎↢帰浄土↡。乃是無上要門也。
問ひていはく、 すでに歎じて浄土に帰す、 すなはちこれ要門なりといはば、 いまだ知らず、 これらの諸徳臨終の時、 みな*霊験ありやいなや。
霊験 不可思議な現象。 めでたいしるし。
問曰。既云↧歎↢帰浄土↡乃是要門↥者、未↠知、此等諸徳臨終時皆有↢霊験↡已不。
・ 俗王下問
答へていはく、 みなあり、 虚しからず。 曇鸞法師のごときは、 *康存の日つねに浄土を修す。 またつねに*世俗の君子ありて、 来りて法師を呵していはく、 「十方仏国みな浄土たり、 法師なんぞすなはち独り意を西に注むる。 あに偏見の生にあらずや」 と。 法師対へていはく、 「われすでに凡夫にして、 智慧浅短なり。 いまだ*地位に入らざれば、 念力すべからく均しくすべけんや。 草を置きて牛を引くに、 つねにすべからく心を*槽櫪に繋ぐべきがごとし。 あにほしいままにして、 まつたく帰するところなきことを得んや」 と。
康存の日 存命の日々。 生前。
世俗の君子 東魏の孝静帝 (在位534-550) か。
槽櫪 飼葉おけ。
答曰。皆有、不↠虚。如↢曇鸞法師↡康存之日常修↢浄土↡。亦毎有↢世俗君子↡来呵↢法師↡曰。十方仏国皆為↢浄土↡、法師何乃独意注↠西、豈非↢偏見生↡也。法師対曰。吾既凡夫智慧浅短。未↠入↢地位↡、念力須↠均。如↢似置↠艸引↠牛恒須↟繋↢心槽櫪↡。豈得↢縦放全無↟所↠帰。
また*難者紛紜たりといへども、 法師独り決せり。 ここをもつて一切*道俗を問ふことなく、 ただ法師と一面あひ遇ふものは、 もしいまだ正信を生ぜざるには、 勧めて信を生ぜしめ、 もしすでに正信を生ぜるものには、 みな勧めて浄国に帰せしむ。 このゆゑに法師命終の時に臨みて、 寺の傍らの左右の道俗、 みな*幡華の院に映ずるを見、 ことごとく*異香・音楽迎接して往生を遂げたまへるを聞く。
難者紛紜たり 論難する者がさまざまにあったという意。
幡華 幢幡 (はたぼこ) と天華。
異香 きわめて珍しい妙なる香り。
雖↢復難者紛紜↡而法師独決。是以無↠問↢一切道俗↡但与↢法師↡一面相遇者、若未↠生↢正信↡勧令↠生↠信、若已生↢正信↡者皆勧帰↢浄国↡。是故法師臨↢命終時↡、寺傍左右道俗皆見↢*幡花映↟院、尽*聞↢異香↡、音楽迎接遂↢往生↡也。
幡 他本では 「幡」。
聞a 返り点は聖教全書まま。 「aを聞ぎ」
余の*大徳命終の時に臨みて、 みな*徴祥あり。 もしつぶさに往生の相を談ぜんと欲せば、 ならびに不可思議なり。
大徳 大いなる徳行のある者。 高僧。
徴祥 めでたいしるし。
余之大徳臨↢命終時↡皆有↢徴祥↡。若欲↣具談↢往生之相↡、並不可思議也。
◎第四大門 ○諸経所明念仏
【30】第二に*此彼の諸経に多く*念仏三昧を明かして宗となすことを明かすとは、
此彼の諸経 ¬観経¼ および他の諸大乗経。
第二明↧此彼諸経多明↢念仏三昧↡為↞宗者、
なかにつきて八番あり。 初めの二は一相三昧を明かし、 後の六は縁につき相によりて念仏三昧を明かす。
就↠中有↢八番↡。初二明↢一相三昧↡、後六就↠縁依↠相明↢念仏三昧↡。
1. 一相三昧
第一に ¬*華首経¼ (意) によるに、 「仏、 堅意菩薩に告げたまはく、 ª三昧に二種あり。 一には一相三昧あり、 二には衆相三昧あり。 一相三昧とは、 菩薩あり、 その世界にその如来ましまして現にましまして法を説きたまふと聞き、 菩薩この仏の相を取るに、 もつて現じて前にまします。 もしは道場に坐し、 もしは*法輪を転じ、 大衆*囲繞す。 かくのごとき相を取る。 *諸根を収摂して心*馳散せず、 もつぱら一仏を念じてこの縁を捨てず。 かくのごとき菩薩は、 如来の相および世界の相において無相を了達し、 つねにかくのごとく観じ、 かくのごとく行じて、 この縁を離れず。 この時に仏像すなはち現じて前にましまして、 ために法を説きたまふ。 菩薩その時深く*恭敬を生じて、 この法を聴受し、 もしは深、 もしは浅、 *うたた尊重を加ふ。 菩薩この三昧に住して、 諸法はみな*可壊の相なりと説くを聞く。 聞きをはりて受持して、 三昧より起ちてよく*四衆のためにこの法を演説すº と。 仏、 堅意に告げたまはく、 ªこれを菩薩の一相三昧門に入ると名づくº」 と。
馳散 散乱すること。
e可壊の相 無常のありさま。
第一依↢¬花首経¼↡「仏告↢堅意菩薩↡。三昧有↢二種↡。一者有↢一相三昧↡、二者有↢衆相三昧↡。一相三昧者、有↢菩薩↡、聞↧其世界有↢其如来↡現在説法↥。菩薩取↢是仏相↡、*以↧現在↠前若坐↢道場↡若転↢法輪↡大衆囲繞↥取↢如↠是相↡。収↢摂諸根↡心不↢馳散↡、専念↢一仏↡不↠捨↢是縁↡。如↠是菩薩、於↢如来相及世界相↡了↢達無相↡、常如↠是観如↠是行不↠離↢是縁↡。是時仏像即現在↠前而為説↠法。菩薩爾時生↢恭敬↡聴↢受是法↡、若若浅、転加↢尊重↡。菩薩住↢是三昧↡聞↠説↢諸法皆可壊相↡。聞已受持従↢三昧↡起能為↢四衆↡演↢説是法↡。仏告↢堅意↡。是名↣菩薩入↢一相三昧門↡。」
以…囲繞 返り点は聖教全書まま。 「…囲繞するを以て」
2. 一行三昧
第二に ¬*文殊般若¼ (意) によりて*一行三昧を明かさば、 「時に*文殊師利、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊いかなるをか名づけて一行三昧となすº と。 仏のたまはく、 ª一行三昧とは、 もし善男子・善女人*空閑の処にありて、 もろもろの乱意を捨て、 仏の*方所に随ひて端身正向にして、 *相貌を取らず、 心を一仏に繋けてもつぱら名字を称して念ずること休息なくは、 すなはちこの念のうちによく過・現・未来の三世の諸仏を見たてまつるべし。 なにをもつてのゆゑに。 一仏を念ずる功徳無量無辺にして、 すなはち無量の諸仏の功徳と無二なればなり。 これを菩薩の一行三昧と名づくº」 と。
空閑の処 静かなところ。
第二依↢¬文殊般若¼↡明↢一行三昧↡者、「時文殊師利、白↠仏言。世尊、云何名為↢一行三昧↡。仏言。一行三昧者、若善男子・善女人*応↧在↢空間処↡捨↢諸乱意↡随↢仏方所↡端身正向不↠取↢相貌↡、繋↢心一仏↡専称↢名字↡念無↦休息↥。即是念中能見↢過・現・未来三世諸仏↡。何以故、念↢*是仏↡功徳、無量無辺即与↢無量諸仏功徳↡無二。是名↢菩薩一行三昧↡。」
応…無a 返り点は聖教全書まま。 「aなかるべし」
是 天永三年写本・寛永元年刊本・正平二年写本では 「一」。
3. 諸仏常見
第三に▼¬*涅槃経¼ によるに、 仏のたまはく、 「もし人ただよく心を至してつねに念仏三昧を修すれば、 十方諸仏つねにこの人を見そなはすこと、 現に前にましますがごとし」 と。
第三依↢¬涅槃経¼↡仏言。若人但能至↠心常修↢念仏三昧↡者、十方諸仏恒見↢此人↡如↢現在↟前。
▼このゆゑに ¬涅槃経¼ (意) にのたまはく、 「仏、 *迦葉菩薩に告げたまはく、 ªもし善男子・善女人ありてつねによく心を至しもつぱら念仏するものは、 もしは山林にもあれ、 もしは*聚落にもあれ、 もしは昼、 もしは夜、 もしは坐、 もしは臥に、 諸仏世尊つねにこの人を見そなはすこと、 目の前に現ずるがごとし。 つねにこの人と住して施を受けたまふº」 と。
聚落 集落。
是故¬涅槃経¼云。「仏告↢迦葉菩薩↡。若有↢善男子・善女人↡、常能至↠心専念仏者、若在↢山林↡若在↢聚落↡、若昼若夜、若坐若臥、諸仏世尊常見↢此人↡如↠現↢目前↡。恒与↢此人↡而住受↠施。」
4. 始終両益
第四に ¬*観経¼ および余の諸部によるに、 所修の万行ただよく*回願してみな生ぜざるはなし。 ▼しかるに念仏の一門、 もつて要路となす。 なんとなれば、 聖教を*審量するに始終の両益あればなり。
回願 回向発願。 善根をふりむけて往生を願うこと。
審量 詳しく調べること。
第四依↢¬観経¼及余諸部↡、所修万行但能迴願莫↠不↢皆生↡。然念仏一*行将為↢要路↡。何者審↢量聖教↡有↢始終両益↡。
行 他書では 「門」。
・ 始益
もし善を生じ行を起さんと欲すれば、 すなはちあまねく*諸度を該ぬ。 もし悪を滅して災を消すれば、 すなはち総じて諸障を治す。 ゆゑに下に ¬経¼ (*同・意) にのたまはく、 ▼「▲念仏の衆生を*摂取して捨てたまはず、 ▲寿尽きてかならず生ず」 と。 これを*始益と名づく。
始益 現生の利益。
若欲↢生↠善起↟行則暜該↢諸度↡。若滅↠悪消↠災則総治↢諸鄣↡。故下¬経¼云。「念仏衆生摂取不↠捨、寿尽必生。」此名↢始益↡。
・ 終益
*終益といふは、 ¬*観音授記経¼ (意) によるにのたまはく、 「阿弥陀仏、 世に住したまふこと長久にして*兆載永劫なるも、 また*滅度したまふことあり。 *般涅槃の時、 ただ*観音・*勢至のみありて、 *安楽を*住持して*十方を接引したまふ。 その仏の滅度また住世の時節と等同なり。 しかるにかの国の衆生は一切、 仏を*覩見したてまつるものあることなし。 ただ*一向にもつぱら阿弥陀仏を念じて往生するもののみありて、 つねに弥陀現にましまして滅したまはざるを見る」 と。 これすなはちこれその*終時の益なり。
終益 当来の利益。
般涅槃 仏の入滅のこと。
十方を接引したまふ 十方の衆生を導かれる。
終時の益 終益に同じ。
言↢終益↡者、依↢¬観音授記経¼↡云。「阿弥陀仏住↠世長久兆載永劫、亦有↢滅度↡。般涅槃時、唯有↢観音・勢至↡住↢持安楽↡接↢引十方↡。其仏滅度亦与↢住世時節↡等同。然彼国衆生、一切無↠有↧覩↢見仏↡者↥。唯有↧一向専↢念阿弥陀仏↡往生者↥、常見↢弥陀現在不↟滅。」此即是其終時益也。
修するところの*余行、 *回向してみな生ずるも、 世尊の滅度に覩ると覩ざるとあり。 後代を勧めて審量して遠益に沾さしむ。
余行 念仏以外のさまざまな行業。
所↠修余行、迴向皆生、世尊滅度有↢覩不↟覩。勧↢後代↡審量使↠沾↢遠益↡也。
5. 得生正行
第五に ¬*般舟経¼ (意) によるにのたまはく、 「時に跋陀和菩薩あり、 この国土に阿弥陀仏ましますと聞きて、 しばしば念を係く。 この念によるがゆゑに阿弥陀仏を見たてまつる。 すでに仏を見たてまつりをはりて、 すなはち従ひて啓問すらく、 ªまさにいかなる法を行じてか、 かの国に生ずることを得べきº と。 その時阿弥陀仏、 この菩薩に語りてのたまはく、 ªわが国に来生せんと欲せば、 つねにわが名を念じて休息あることなかれ。 かくのごとくして、 わが国土に来生することを得ん。 まさに仏身の*三十二相ことごとくみな具足して、 光明徹照し*端正無比なるを念ずべしº」 と。
第五依↢¬般舟経¼↡云。「時有↢跋陀和菩薩↡、於↢此国土↡聞↠有↢阿弥陀仏↡数数係↠念。因↢是念↡故見↢阿弥陀仏↡。既見↠仏已即従啓問。当↧行↢何法↡得↞生↢彼国↡。爾時阿弥陀仏、語↢是菩薩↡言。欲↣来↢生我国↡者常念↢我名↡莫↠有↢休息↡。如↠是得↣来↢生我国土↡。当↠念↢仏身、三十二相悉皆具足、光明徹照端正無比↡。」
6. 三番解釈
第六に ▼¬*大智度論¼ (意) によるに三番の解釈あり。
第六依↢¬大智度論¼↡有↢三番解釈↡。
▼「第一に仏はこれ無上法王にして、 菩薩は法臣たり。 尊ぶところ重くするところはただ仏世尊なり。 このゆゑにまさにつねに念仏すべし。
「第一仏是無上法王、菩薩為↢法臣↡。所↠尊所↠重唯仏世尊。是故応↢当常念仏↡也。
▼第二にもろもろの菩薩ありてみづからいはく、 ªわれ*曠劫よりこのかた、 世尊の長養を蒙ることを得たり。 われらが*法身・*智身・*大慈悲身、 *禅定・*智慧、 無量の*行願、 仏によりて成ずることを得たり。 報恩のためのゆゑに、 つねに仏に近づかんと願ず。 また大臣、 王の恩寵を蒙りて、 つねにその主を念ふがごとしº と。
智身 智慧を体得した身。
大慈悲身 大慈悲を行ずる身。
行願 自利利他の完成を願うこと (四弘誓願・十大願等) と、 その実践修行 (四摂・六度等) のこと。
第二有↢諸菩薩↡自云。我従↢曠劫↡以来得↠蒙↣世尊長↢養我等法身・智身・大慈悲身↡。禅定・智慧、無量行願、由↠仏得↠成。為↢報恩↡故常願↠近↠仏。亦如↧大臣蒙↢王恩寵↡常念↦其主↥。
▼第三にもろもろの菩薩ありてまたこの言をなさく、 ªわれ*因地において、 *悪知識に遇ひて*般若を誹謗して悪道に堕して、 無量劫を経たり。 余行を修すといへども、 いまだ出づることを得ることあたはず。 後に一時に*善知識の辺によるに、 われを教へて念仏三昧を行ぜしむ。 その時にすなはちよく諸障を*併せ遣り、 まさに解脱を得たり。 この大益あるがゆゑに、 願じて仏を離れずº」 と。
因地 因位の時、 すなわち修行の段階のこと。
般若 ここでは仏法の意。
併せ遣り すべて除き。
第三有↢諸菩薩↡復作↢是言↡。我於↢因地↡遇↢悪知識↡誹↢謗般若↡堕↢於悪道↡、経↢無量劫↡雖↠修↢余行↡未↠能↠得↠出。後於↢一時↡依↢善知識辺↡、教↠我行↢念仏三昧↡。其時即能併↢遣諸鄣↡方得↢解脱↡。有↢斯大益↡故願不↠離↠仏。」
7. 必見諸仏
第七に ¬*華厳経¼ によるにのたまはく、
「むしろ無量劫において、 つぶさに一切の苦を受くとも、
つひに、 如来に遠ざかりて自在力を覩たてまつらざることなからん」 と。
第七依↢¬華厳経¼↡云。「寧於↢無量劫↡具受↢一切苦↡終不↧遠↢如来↡不↞覩↢自在力↡。」
またのたまはく (同)、
「念仏三昧はかならず仏を見たてまつり、 命終の後に仏前に生ず。
かの臨終を見ては念仏を勧め、 また尊像を示して*瞻敬せしめよ」 と。
瞻敬 仰ぎみて敬うこと。
又云。「念仏三昧必見↠仏、命終之後生↢仏前↡。見↢彼臨終↡勧↢念仏↡。又示↢尊像↡令↢瞻敬↡。」
また 「*善財童子、 善知識を求めて*功徳雲比丘の所に詣りてまうさく、 ª大師いかんが菩薩の道を修して*普賢の行に帰するやº と。
功徳雲比丘 ¬華厳経¼ 「入法界品」 に説かれる五十三人の善知識の第二。
普賢の行に帰す ここでの帰は帰入するの意。 →
普賢
又善財童子求↢善知識↡詣↢功徳雲比丘所↡白言。「大師云何修↢菩薩道↡帰↢暜賢行↡也。
この時比丘、 善財に告げていはく、 ªわれ世尊の智慧海のなかにおいてただ一法を知る。 いはく念仏三昧門なり。 なんとなれば、 この三昧門のなかにおいて、 ことごとくよく一切の諸仏およびその眷属、 厳浄の*仏刹を*覩見して、 よく衆生をして顛倒を遠離せしむ。 念仏三昧門は、 微細の境界のなかにおいて一切の仏の自在の境界を見、 *諸劫の不顛倒を得。 念仏三昧門はよく一切の仏刹を起すに、 よく壊するものなし。 あまねく諸仏を見たてまつりて、 *三世の不顛倒を得º と。
諸劫(三世)の不顛倒 常住 (消滅変化がなく永久に存在すること) の意。
是時比丘、告↢善財↡曰。我於↢世尊智慧海中↡唯知↢一法↡。謂念仏三昧門。何者於↢此三昧門中↡、悉能覩↢見一切諸仏及其眷属、厳浄仏刹↡、能令↣衆生遠↢離顛倒↡。念仏三昧門者於↢微細境界中↡、見↢一切仏自在境界↡得↢諸劫不顛倒↡。念仏三昧門者能起↢一切仏刹↡無↢能壊者↡。暜見↢諸仏↡得↢三世不顛倒↡。
▼時に功徳雲比丘、 善財に告げていはく、 ª仏法の深海は広大無辺なり。 わが知るところは、 ただこの一の念仏三昧門を得たるのみ。 余の妙境界は数量に出過して、 われいまだ知らざるところなりº」 (華厳経・意) と。
時功徳雲比丘告↢善財↡言。仏法海広大無辺。我所↠知者唯得↢此一念仏三昧門↡。余妙境界出↢過数量↡我所↠未↠知也。」
8. 往生諸行
第八に ¬*海竜王経¼ (意) によるに、 「時に海竜王、 仏にまうしてまうさく、 ª世尊、 弟子、 阿弥陀仏国に生ぜんと求む。 まさにいかなる行を修してか、 かの土に生ずることを得べきº と。 仏、 竜王に告げたまはく、 ªもしかの国に生ぜんと欲せば、 まさに八法を行ずべし。 なんらをか八となす。 一にはつねに諸仏を念ず。 二には如来を供養す。 三には世尊を*咨嗟す。 四には仏の形像を作りてもろもろの功徳を修す。 五には回して往生を願ず。 六には心*怯弱ならず。 七には一心に精進す。 八には仏の*正慧を求むº と。 仏、 竜王に告げたまはく、 ª一切衆生この八法を具すれば、 つねに仏を離れずº」 と。
咨嗟 讃嘆の意。 ほめたたえること。
正慧 正しい智慧。
第八依↢¬海竜王経¼↡、「時海竜王、白↠仏言。世尊、弟子求↠生↢阿弥陀仏国↡。当↧修↢何行↡得↞生↢彼土↡。仏告↢竜王↡。若欲↠生↢彼国↡者、当↠行↢八法↡。何等為↠八。一者常念↢諸仏↡。二者供↢養如来↡。三者咨↢嗟世尊↡。四者作↢仏形像↡修↢諸功徳↡。五者迴↢願往生↡。六者心不↢怯弱↡。七者一心精進。八者求↢仏正慧↡。仏告↢竜王↡。一切衆生具↢斯八法↡常不↠離↠仏也。」
問ひていはく、 八法を具せずとも、 仏前に生じ仏を離れざることを得やいなや。
問曰。不↠具↢八法↡、得↧生↢仏前↡不↞離↠仏不。
答へていはく、 生ずることを得ること疑はず。 なにをもつてか知ることを得る。 仏、 ¬*宝雲経¼ を説きたまひし時のごとし。 また*十行具足して浄土に生ずることを得て、 つねに仏を離れざることを明かしたまへり。 「時に除蓋障菩薩ありて仏にまうさく、 ª十行を具せずして生ずることを得やいなやº と。 仏のたまはく、 ª生ずることを得。 ただよく十行のなかに一行具足して闕くることなければ、 余の九行もことごとく清浄と名づく。 疑を致すことなかれº」 (意) と。
答曰。得↠生不↠疑。何以得↠知。如↧仏説↢¬宝雲経¼↡時↥、亦明↧十行具足得↠生↢浄土↡常不↞離↠仏。時有↢除葢障菩薩↡白↠仏。「不↠具↢十行↡得↠生已不。仏言。得↠生。但能十行之中一行具足無↠闕、余之九行悉名↢清浄↡。勿↠致↠疑也。」
また ¬*大樹緊陀羅王経¼ (意) にのたまはく、 「菩薩は四種の法を行じてつねに仏前を離れず。 なんらをか四となす。 一にはみづから善法を修し兼ねて衆生を勧めて、 みな往生して如来を見たてまつる意をなさしむ。 二にはみづから勧め他を勧めて正法を聞くことを楽はしむ。 三にはみづから勧め他を勧めて菩提心を発さしむ。 四には*一向に志をもつぱらにして念仏三昧を行ず。 この四の行を具すれば、 一切の生処つねに仏前にありて諸仏を離れず」 と。
又¬大樹緊那羅王経¼云。「菩薩行↢四種法↡常不↠離↢仏前↡。何等為↠四。一者自修↢善法↡兼勧↢衆生↡皆作↧往生見↢如来↡意↥。二者自勧勧↠他楽↠聞↢正法↡。三者自勧勧↠他発↢菩提心↡。四者一向専↠志行↢念仏三昧↡。具↢此四行↡、一切生処常在↢仏前↡不↠離↢諸仏↡。」
また ¬経¼ (大樹緊陀羅王経・意) にのたまはく、 「仏、 菩薩の行法を説きたまふに、 三十二の器あり。 なんとなれば、 *布施はこれ大富の器、 *忍辱はこれ*端正の器、 *持戒はこれ聖身の器、 五逆不孝はこれ*刀山・剣樹・鑊湯の器、 *発菩提心はこれ成仏の器、 つねによく念仏して浄土に往生するはこれ見仏の器なり」 と。 略して六門を挙げて余は述べず。 聖教すでにしかり。 行者生ぜんと願ぜば、 なんぞつねに念仏せざらんや。
刀山剣樹鑊湯 刀の山、剣の樹、熱鉄の湯。 地獄を指していう。
又¬経¼云。「仏説↢菩薩行法↡有↢三十二器↡。何者、布施是大富器、忍辱是端正器、持戒是聖身器、五逆不孝是刀山・剱樹・鑊湯器、発菩提心是成仏器、常能念仏往↢生浄土↡是見仏器。」略挙↢六門↡余者不↠述。聖教既爾、行者願↠生何不↢常念仏↡也。
また ¬*月灯三昧経¼ によるにのたまはく、
「仏の*相好および徳行を念じ、 よく*諸根をして乱動せざらしめ、
心に迷惑なく法と合して、 聞くことを得れば、 智を得ること大海のごとし。
智者この三昧に住して、 念を摂して行ずれば、 *経行のところにおいて、
経行 歩み行くこと。
よく千億のもろもろの如来を見たてまつり、 また無量恒沙の仏に値ひたてまつる」 と。
又依↢¬月灯三昧経¼↡云。「念↢仏相好及徳行↡能使↧諸根不↦乱動↥。心無↢迷惑↡与↠法合得↠聞得↠智如↢大海↡。智者住↢於是三昧↡摂↠念行、於↢経行所↡能見↢千億諸如来↡、亦値↢無量恒沙仏↡。」
◎第四大門 ○念仏三昧利益
【31】第三に問答解釈して、 念仏三昧に種々の利益あることを顕すに、 その五番あり。
第三問答解釈顕↣念仏三昧有↢種種利益↡有↢其五番↡。
1.一番問答
第一に問ひていはく、 いまつねに念仏三昧を修すといはば、 なほ余の三昧を行ぜざるや。
第一問曰。今云↣常修↢念仏三昧↡仍不↠行↢余三昧↡也。
答へていはく、 いま常念といへども、 また余の三昧を行ぜずとはいはず。 ただ念仏三昧を行ずること多きがゆゑなり。 ゆゑに常念といふ。 まつたく余の三昧を行ぜずといふにはあらず。
答曰。今言↢常念↡亦不↠言↠不↠行↢余三昧↡。但行↢念仏三昧↡多故。故言↢常念↡。非↠謂↢全不↟行↢余三昧↡也。
2.二番問答
第二に問ひていはく、 もしつねに念仏三昧を修することを勧めば、 余の三昧とよく*階降ありやいなや。
階降 優劣。
第二問曰。若勧↣常修↢念仏三昧↡、与↢余三昧↡能有↢階降↡以不。
答へていはく、 念仏三昧の*勝相は不可思議なり。 これいかんが知る。 ▼¬*摩訶衍¼ のなかに説きていふがごとし。 「もろもろの余の三昧、 三昧ならざるにはあらず。 なにをもつてのゆゑに。 あるいは三昧あり、 ただよく*貪を除きて*瞋痴を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく瞋を除きて痴貪を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく痴を除きて貪瞋を除くことあたはず。 あるいは三昧あり、 ただよく現在の障を除きて過去・未来の一切諸障を除くことあたはず。 もしよくつねに念仏三昧を修すれば、 現在・過去・未来を問ふことなく一切諸障ことごとくみな除こる」 と。
勝相 すぐれたありさま。
答曰。念仏三昧勝相不可思議。此云何知。如↢¬摩訶衍¼中説云↡。諸余三昧非↠不↢三昧↡。何以故。或有↢三昧↡、但能除↠貪不↠能↠除↢瞋・痴↡。或有↢三昧↡、但能除↠瞋不↠能↠除↢痴・貪↡。或有↢三昧↡、但能除↠痴不↠能↠除↢貪・瞋↡。或有↢三昧↡、但能除↢現在障↡不↠能↠除↢過去・未来一切諸障↡。若能常修↢念仏三昧↡無↠問↢現在・過去・未来一切諸障↡悉皆除也。」
3.三番問答
第三に問ひていはく、 念仏三昧すでによく障を除き福を得ること*功利大ならば、 いぶかし、 またよく行者を*資益して年を延べ寿を益せしむやいなや。
功利 功徳利益。
資益 たすけ利益すること。
第三問曰。念仏三昧既能除↠障得↠福功利大者、未審、亦能資↢益行者↡使↢延↠年益↟寿以不。
答へていはく、 かならず得るなり。 なんとなれば、 ¬*惟無三昧経¼ にのたまふがごとし。 「兄弟二人あり。 兄は因果を信ず。 弟は信心なし、 しかもよく*相法を解れり。 ちなみにその鏡のなかにみづから面上を見るに、 死相すでに現じて七日を過ぐさじ。 時に智者ありて往きて仏に問はしむ。 仏時に報へてのたまはく、 ª七日といふは虚ならず。 もしよく一心に念仏し戒を修せば、 あるいは難を度することを得んº と。 すなはち教によりて*繋念す。 時に六日に至りてすなはち二鬼あり、 来りて耳にその念仏の声を聞きてつひによく前進むことなし。 還りて*閻羅王に告ぐ。 閻羅王符を索む。 符すでに注していはく、 ª持戒・念仏の功徳によりて*第三炎天に生ずº」 と。
相法 人相を占う法。
繋念 係念、懸念とも書く。 想いを阿弥陀仏や浄土にかけること。 念仏すること。
答曰。必得。何者如↢¬惟無三昧経¼云↡。「有↢兄弟二人↡、兄信↢因果↡弟無↢信心↡、而能善解↢相法↡。因↢其鏡中↡自見↢面上↡死相已現不↠過↢七日↡。時有↢智者↡教往問↠仏。仏時報言。七日不↠虚、若能一心念仏修↠戒或得↠度↠難。尋即依↠教繋念。時至↢六日↡即有↢二鬼↡、来耳聞↢其念仏之声↡竟無↢能前進↡。還告↢閻羅王↡。閻羅王索↠符。已注云。由↢持戒念仏功徳↡生↢第三炎天↡。」
また ¬*譬喩経¼ のなかに、 「一の長者あり、 罪福を信ぜず、 年すでに五十、 たちまちに夜夢に見らく、 *殺鬼符を索め来りて、 これを取らんと欲して十日を過ぐさじと。 その人眠り覚めて*惶怖することつねにあらず。 明に至りて*相師を求覓めて夢を占はしむ。 師*卦兆を作りていはく、 ª殺鬼あり、 かならずあひ害せんと欲す、 十日を過ぐさじº と。 その人惶怖することつねに倍す。 仏に詣りて求請す。 仏時に報へてのたまはく、 ªもしこれを攘はんと欲せば、 いまより以去意をもつぱらにして念仏し、 戒を持ち、 香を焼き、 灯を燃し、 *繒幡蓋を懸け、 *三宝を*信向せば、 この死を勉るべしº と。 すなはちこの法によりて専心に信向す。 殺鬼、 門に到りて功徳を修するを見、 つひに害することあたはず。 鬼すなはち走げ去れり。 その人この功徳によりて寿百年を満てて、 死して天に生ずることを得たり。 また一の長者あり、 名づけて執持といふ。 戒を退して仏に還し、 現に悪鬼のこれを打つを被る」 と。
殺鬼 人の命を奪う悪鬼。
卦兆を作り 八卦などをたてて占うこと。
繒幡蓋 絹で作られたはたぼこと天蓋 (かさ)。
信向 信じ帰依すること。
又¬譬喩経¼中、「有↢一長者↡、不↠信↢罪福↡、年已五十。忽夜夢見、刹鬼索↠符来欲↠取↠之、不↠過↢十日↡。其人眠覚惶怖非↠常。至↠明求↢覓相師↡占↠夢。師作↢卦兆↡云。有↢刹鬼↡、必欲↢相害↡。不↠過↢十日↡、其人惶怖倍↠常詣↠仏求請。仏時報云。若欲↠攘↠此従↠今已去専↠意念↠仏持↠戒焼↠香然↠灯懸↢繒幡葢↡、信↢向三宝↡、可↠免↢此死↡。即依↢此法↡専↠心信向。刹鬼到↠門見↠修↢功徳↡、遂不↠能↠害。鬼即走去。其人縁↢斯功徳↡寿満↢百年↡死得↠生↠天。復有↢一長者↡、名曰↢執持↡。退↠戒還↠仏現被↢悪鬼打↟之。」
4.四番問答
第四に問ひていはく、 この念仏三昧はただよく諸障を*対治し、 ただ*世報のみを招くや、 またよく遠く*出世の*無上菩提を感ずやいなや。
対治 打ち破ること。
世報 世間の果報。 世俗的な利益。
第四問曰。此念仏三昧但能対↢治諸障↡唯招↢世報↡、亦能遠感↢出世無上菩提↡、以不。
答へていはく、 得るなり。 なんとなれば、 ¬*華厳経¼ の 「十地品」 にのたまふがごとし。 始め*初地よりすなはち*十地に至るまで一々の地のなかにおいて、 みな*入地の加行道と*地満の功徳利と*已不住道とを説きをはりて、 すなはちみな結してのたまはく、 「このもろもろの菩薩余行を修すといへども、 みな念仏・念法・念僧を離れず。 *上妙の楽具をもつて三宝を供養す」 (意) と。 この文証をもつて知ることを得。 もろもろの菩薩等、 すなはち*上地に至るまで、 つねに念仏・念法・念僧を学して、 まさによく無量の*行願を成就して功徳海を満つ。 いかにいはんや二乗・凡夫、 浄土に生ぜんと求めて念仏を学せざらんや。 なにをもつてのゆゑに。 この念仏三昧はすなはち一切の*四摂・*六度を具する*通の行、 *通の伴なるがゆゑなり。
入地の加行道 十地のそれぞれの位に入るための行。
地満の功徳利 十地のそれぞれの位を満たした時に得る功徳利益。
已不住道 初地から二地、 二地から三地へと進むありさま。
上妙の楽具 すぐれて妙なる楽器。
行願 自利利他の完成を願うこと (四弘誓願・十大願等) と、その実践修行 (四摂・六度等) のこと。
通の行 凡夫も聖者もすべてみな通じるところの行。
通の伴 いかなる行にも通じて伴う行。 四摂であれ六度であれ、 一切の行は、 念仏を離れてはないという意。
答曰。得。何者如↢¬華厳経¼十地品云↡。始従↢初地↡乃至十地於↢一一地中↡皆説↢入地加行道地満功徳利已不住道↡訖即皆結云。「是諸菩薩雖↠修↢余行↡皆不↠離↢念仏・念法・念僧↡。上玅楽具供↢養三宝↡。」以↢斯文証↡得↠知。諸菩薩等乃至上地常学↢念仏・念法・念僧↡方能成↢就無量行願↡満↢功徳海↡。何況二乗・凡夫求↠生↢浄土↡不↠学↢念仏↡也。何以故。此念仏三昧即具↢一切四摂・六度↡通行通伴故。
5.五番問答
第五に問ひていはく、 初地以上の菩薩は、 仏と同じく真如の理を証するをもつて仏家に生ずと名づく。 みづからよく仏と作りて衆生を*済運す。 なんぞさらに念仏三昧を学して仏を見たてまつらんと願ずるを須ゐんや。
第五問曰。初地已上菩薩与↠仏同証↢真如之理↡名↠生↢仏家↡。自能作↠仏済↢運衆生↡。何須↧更学↢念仏三昧↡願↞見↠仏也。
答へていはく、 その真如を論ずるに、 広大無辺にして虚空と等し。 その量知りがたし。 たとへば一の大きなる闇室に、 もし一灯・二灯を燃せば、 その明あまねしといへども、 なほ闇となすがごとし。 やうやく多灯に至れば、 大明と名づくといへども、 あに日光に及ばんや。 菩薩の所証の智は、 *地々あひ望むるにおのづから*階降ありといへども、 あに仏の日の明らかなるがごとくなるに比ぶることを得んや。
地々 十地の各地。
階降 優劣。
答曰。論↢其真如↡広大無辺与↢虚空↡等。其量難↠知。譬如↣一大闇室若然↢一灯・二灯↡。其明雖↠徧猶為↠闇也。漸至↢多灯↡雖↠名↢大明↡豈及↢日光↡。菩薩所証智雖↣地地相望自有↢階降↡、豈得↠比↣仏如↢日明↡也。
◎第五大門
【32】第五大門のなかに四番の*料簡あり。 第一にあまねく修道の*延促を明かして、 すみやかに不退を獲しめんと欲す。 第二に*此彼の禅観*比校して*往を勧む。 第三に此彼の浄穢二境、 また*漏・無漏と名づけて比校す。 第四に聖教を引きて証成し、 後代を勧めて信を生じ往くことを求めしむ。
延促 遅速。
此彼 此土 (穢土) と彼土 (浄土)。
往 往生浄土。
第五大門中有↢四番料簡↡。第一汎明↢修道延促↡欲↠令↣速獲↢不退↡。第二此彼禅観比挍勧↠往。第三此彼浄穢二境亦名↢漏・無漏↡比挍。第四引↢聖教↡証成勧↢後代↡生↠信求↠往。
◎第五大門 ○修道延促
【33】第一にあまねく修道の延促を明かすとは、 なかにつきて二あり。 一には修道の延促を明かし、 二には問答解釈す。
第一汎明↢修道延促↡者、就↠中有↠二。一明↢修道延促↡、二問答解釈。
一に延促を明かすとは、 ただ一切衆生苦を厭ひて楽を求め、 *縛を畏れて*解を求めざるはなし。 みな早く無上菩提を証せんと欲せば、 先づすべからく*菩提心を発すを首となすべし。 この心識りがたく、 起しがたし。 たとひこの心を発得すとも、 *経によるに、 つひに、 すべからく十種の行、 いはゆる*信・*進・*念・*戒・*定・*慧・*捨・護法・発願・回向を修して、 菩提に進詣すべし。 しかるに修道の身相続して絶えずして、 一万劫を経てはじめて不退の位を証す。 当今の凡夫は現に*信想軽毛と名づけ、 または*仮名といひ、 または*不定聚と名づけ、 または*外の凡夫と名づく。 いまだ*火宅を出でず。
経 ¬瓔珞経¼ および ¬仁王経¼ に十種の行が説かれている。
念 心に保持して忘れないこと。
信想軽毛 信心が薄いことは、 そよ風にも飛ぶ軽い毛のようなものであるという意。
仮名 名ばかりの菩薩。 菩薩の位の最初、 十信位を指す。
外の凡夫 少分の煩悩をも断じていないもの。 また十信位の菩薩 (外凡の位) とする説もある。 →
十信
一明↢延促↡者、但一切衆生莫↠不↢厭↠苦求↠楽畏↠縛求↟解。皆欲↣早証↢無上菩提↡者先須↧発↢菩提心↡為↞首。此心難↠識難↠起。縦令発↢得此心↡依↠経終須↧修↢十種行、謂信・進・念・戒・定・慧・捨・護法・発願・迴向↡進↦詣菩提↥。然修道之身相続不↠絶、逕↢一万劫↡始証↢不退位↡。当今凡夫現名↢信想軽毛↡、亦曰↢仮名↡、亦名↢不定聚↡、亦名↢外凡夫↡。未↠出↢火宅↡。
なにをもつてか知ることを得る。 ¬*菩薩瓔珞経¼ によりてつぶさに*入道行位を弁ずるに、 *法爾なるがゆゑに難行道と名づく。 またた