蓮如れんにょしょうにん一代いちだい聞書ききがき ほん

 

(1)

一 ^じゅうむら*道徳どうとく*明応めいおうねんしょうがつ一日ついたちぜんへまゐりたるに、 *蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 道徳どうとくはいくつになるぞ。 道徳どうとく*念仏ねんぶつもうさるべし。 *りき念仏ねんぶつといふは、 念仏ねんぶつおほくもうしてぶつにまゐらせ、 このもうしたるどくにてぶつのたすけたまはんずるやうにおもうてとなふるなり。

*りきといふは、 弥陀みだ*たのむ*一念いちねんのおこるとき、 *やがておんたすけにあづかるなり。 そののち念仏ねんぶつもうすは、 おんたすけありたるありがたさありがたさとおもふこころをよろこびて、 *南無なも弥陀みだぶつ南無なも弥陀みだぶつもうすばかりなり。 さればりきとはのちからといふこころなり。 この一念いちねんりんじゅうまでとほりておうじょうするなりとおおそうろふなり。

(2)

一 ^あさのおん*つとめに、 「*いつつの思議しぎをとくなかに」 (*高僧和讃) より 「じん十方じっぽう無礙むげこうは *みょうのやみをてらしつつ 一念いちねんかんするひとを かならず*めつにいたらしむ」 (高僧和讃)そうろだんのこころを*法談ほうだんのとき、 「こうみょうへんじょう十方じっぽうかい(*観経)もんのこころと、 また 「*つきかげのいたらぬさとはなけれども ながむるひとのこころにぞすむ」 とあるうたをひきよせ法談ほうだんそうろふ。

なかなかありがたさもうすばかりなくそうろふ。 上様うえさま (蓮如) 御立おたちのおんあとにて、 北殿きたどのさま (*実如)おおせに、 *ぜん法談ほうだんこん法談ほうだんとをひきあはせておおそうろふ、 ありがたさありがたさ*是非ぜひにおよばずと*じょうそうらひて、 落涙らくるいおんこと、 かぎりなきおんことにそうろふ。

(3)

一 ^おんつとめのとき*じゅんさんおんわすれあり。 *みなみ殿どのおんかへりありて、 おおせに、 しょうにん (*親鸞) おんすすめの ¬さん¼、 あまりにあまりにしゅしょうにて、 *あげばをわすれたりとおおそうらひき。 ありがたきおんすすめをしんじておうじょうするひとすくなしとじゅっかいなり。

(4)

一 ^*ねんしょういちといふことしらずともうそうろふとき、 おおせに、 おもひうちにあればいろほかにあらはるるとあり。 さればしんをえたるたいはすなはち南無なも弥陀みだぶつなりとこころうれば、 くちこころもひとつなり。

(5)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 *本尊ほんぞんけやぶれ、 *聖教しょうぎょうはよみやぶれと、 ついおおせられそうろふ。

(6)

一 ^おおせに、 *南無なもといふは*みょうなり、 みょうといふは弥陀みだ一念いちねんたのみまゐらするこころなり。 また*発願ほつがんこうといふは、 たのむ*にやがて大善だいぜんだいどくをあたへたまふなり。 そのたいすなはち南無なも弥陀みだぶつなりとおおそうらひき。

(7)

一 ^加賀かが*がんしょう*覚善かくぜんまたろうとにたいして、 *信心しんじんといふは弥陀みだ一念いちねんおんたすけそうらへとたのむとき、 やがておんたすけあるすがたを南無なも弥陀みだぶつもうすなり。 そうじて*つみはいかほどあるとも、 一念いちねん*信力しんりきにてしうしなひたまふなり。

されば 「*無始むしらい*輪転りんでん*六道ろくどう*妄業もうごう一念いちねん南無なも弥陀みだぶつみょうする*ぶっしょうみょう願力がんりきにほろぼされて、 *はんひっきょう真因しんいんはじめてきざすところをさすなり」 (*真要鈔・本) といふおんことばをきたまひておおそうらひき。 さればこのこころをおん**あそばされて、 がんしょうにくだされけり。

(8)

一 ^かわ*きょうけん伊勢いせ*空賢くうけんとにたいして、 おおせに、 南無なもといふはみょう、 このこころはおんたすけそうらへとたのむなり。 このみょうのこころ*やがて発願ほつがんこうのこころをかんずるなりとおおせられそうろふなり。

(9)

一 ^*りきがんぎょうをひさしくにたもちながら*よしなき*りきしゅうしん*ほだされて、 むなしく*てんしけるなり(*安心決定鈔・末意)そうろふを、 *ぞんぜずそうろふよしもうしあげそうろふところに、 おおせに、 ききわけてえしんぜぬもののことなりとおおせられそうらひき。

(10)

一 ^弥陀みだだい、 かの*じょうもつしゅじょうのむねのうちにみちみちたる(安心決定鈔・本意) といへることしんそうろふと、 *ふくでんもうしあげられそうろふ。 おおせに、 *仏心ぶっしん*れんむねにこそひらくべけれ、 はらにあるべきや。 「弥陀みだ身心しんしんどく*法界ほうかいしゅじょうのうち、 こころのそこにりみつ」 (安心決定鈔・本) ともあり。 しかれば、 ただ*りょうしんちゅうをさしてのことなりとおおそうらひき。 ありがたきよしそうろふなり。

(11)

一 ^じゅうがつじゅう八日はちにち*たいにのたまはく、 「*しょうしんさん」 をよみて、 ぶつにもしょうにん (親鸞) にも*まゐらせんとおもふか、 あさましや。 しゅうにはつとめをもしてこうするなり。 *いちりゅうにはりき信心しんじんをよくしれとおぼしめして、 しょうにんさんにそのこころを*あそばされたり。 ことに*しちこうねんごろなるおんしゃくのこころを、 さん*ききつくるやうにあそばされて、 そのおんをよくよくぞんして、 あらたふとやと念仏ねんぶつするは、 *仏恩ぶっとんおんことをしょうにんぜんにてよろこびまうすこころなりと、 くれぐれおおせられそうらひき。

(12)

一 ^聖教しょうぎょうをよくおぼえたりとも、 りき安心あんじん*しかとけつじょうなくはいたづらごとなり。 弥陀みだをたのむところにておうじょうけつじょうしんじて、 ふたごころなくりんじゅうまでとほりそうらはばおうじょうすべきなり。

(13)

一 ^*明応めいおう三年さんねんじゅう一月いちがつ*報恩ほうおんこうじゅうよっ*あかつき八時やつどきにおいて、 しょうにんぜん ˆにˇ 参拝さんぱいもうしてそうろふに、 すこしねぶりそうろふうちに、 ゆめともうつつともわかず、 *空善くうぜんおがみまうしそうろふやうは、 *厨子ずしのうしろよりわたをつみひろげたるやうなるうちより上様うえさま (蓮如) あらはれおんであるとおがみまうすところに、 相好そうごう*開山かいさんしょうにん (親鸞) にてぞおはします。 あら思議しぎやとおもひ、 *やがて厨子ずしのうちをおがみまうせば、 しょうにん御座ござなし。

さては開山かいさんしょうにん上様うえさまげんじましまして、 いちりゅう再興さいこうにて御座ござそうろふともうしいだすべきとぞんずるところに、 *きょうもんぼう*讃嘆さんだんに、 しょうにんりゅう、 「たとへば木石ぼくせきえんをまちてしょうじ、 りゃくやすりをすりてたまをなすがごとし」 と、 ¬御式おんしき¼ (*報恩講私記) のうへを讃嘆さんだんあるとおぼえてゆめさめてそうろふ。 さては開山かいさんしょうにん再誕さいたんと、 それより信仰しんこうもうすことにそうらひき。

(14)

一 ^*きょうするひと、 まづ信心しんじんをよくけつじょうして、 そのうへにて聖教しょうぎょうをよみかたらば、 きくひともしんをとるべし。

(15)

一 ^おおせに、 弥陀みだをたのみておんたすけをけつじょうして、 おんたすけのありがたさよとよろこぶこころあれば、 そのうれしさに念仏ねんぶつもうすばかりなり。 すなはち*仏恩ぶっとん報謝ほうしゃなり。

(16)

一 ^*おお近松ちかまつ殿どのたいしましましておおせられそうろふ。 信心しんじんをよくけつじょうして、 ひとにもとらせよとおおせられそうらひき。

(17)

一 ^じゅうがつむゆ*とん殿どの*こうにてそうろふあひだ、 いつ大勢おおぜいぜんへまゐりそうろふに、 おおせに、 こんはなにごとにひとおほくきたりたるぞと。 *じゅんせいもうされそうろふは、 まことにこのあひだの*ちょうもんもうし、 ありがたさの御礼おんれいのため、 またみょうにちこうにて御座ござそうろふ。 おんにかかりまうすべしかのあひだ、 歳末さいまつ御礼おんれいのためならんともうしあげられけり。 そのときおおせに、 *やく歳末さいまつれいかな、 歳末さいまつれいには信心しんじんをとりてれいにせよとおおそうらひき。

(18)

一 ^おおせに、 ときどき*だいすることあるとき、 おうじょうすまじきかとうたがひなげくものあるべし。 しかれども、 もはや弥陀みだ如来にょらいをひとたびたのみまゐらせておうじょうけつじょうののちなれば、 だいおほくなることのあさましや。 かかるだいおほくなるものなれども、 おんたすけは*じょうなり。 ありがたやありがたやとよろこぶこころを、 *りきだいぎょう催促さいそくなりともうすとおおせられそうろふなり。

(19)

一 ^おんたすけありたることのありがたさよと念仏ねんぶつもうすべくそうろふや、 またおんたすけあらうずることのありがたさよと念仏ねんぶつもうすべくそうろふやと、 もうしあげそうろふとき、 おおせに、 いづれもよし。 ただし*正定しょうじょうじゅのかたはおんたすけありたるとよろこぶこころ、 めつのさとりのかたはおんたすけあらうずることのありがたさよともうすこころなり。 いづれもぶつることをよろこぶこころ、 よしとおおそうろふなり。

(20)

一 ^*明応めいおうねんしょうがつじゅう三日さんにちとん殿どのよりじょうらくありて、 おおせに、 当年とうねんよりいよいよ信心しんじんなきひとにはおんあひあるまじきと、 かたくおおそうろふなり。 安心あんじんのとほりいよいよおおせきかせられて、 また*誓願せいがんのうをさせられけり

がつじゅう七日しちにちにやがてとん殿どのこうありて、 三月さんがつじゅう七日しちにち*さかい殿どのよりじょうらくありて、 じゅう八日はちにちおおせられそうろふ。 「しんきょうにんしん(*礼讃) のこころをおおせきかせられんがために、 *のぼくだ*辛労しんろうなれども、 おんであるところは、 しんをとりよろこぶよしもうすほどに、 うれしくてまたのぼりたりとおおせられそうらひき。

(21)

一 ^がつここぬおおせられそうろふ。 安心あんじんをとりてものをいはばよし。 ようないことをばいふまじきなり。 一心いっしんのところをばよくひとにもいへと、 空善くうぜんじょうなり。

(22)

一 ^おなじきじゅうにちさかい殿どのこうあり。

(23)

一 ^七月しちがつ二十はつじょうらくにて、 そのおおせられそうろふ。 「*じょくあくのわれらこそ 金剛こんごう信心しんじんばかりにて ながく*しょうをすてはてて ねんじょうにいたるなれ」 (高僧和讃)このつぎをも法談ほうだんありて、 このしゅさんのこころをいひてきかせんとてのぼりたりとおおそうろふなり。 さて 「ねんじょうにいたるなり」、 「ながくしょうをへだてける」、 さてさてあら*おもしろやおもしろやと、 くれぐれじょうありけり。

(24)

一 ^のたまはく、 「*南旡なも」 のしょうにん (親鸞)りゅうにかぎりてあそばしけり。 「南旡なも弥陀みだぶつ」 を*でいにてうつさせられて、 しきけさせられておおせられけるは、 *不可ふか思議しぎこうぶつ*無礙むげこうぶつもこの南無なも弥陀みだぶつをほめたまふ*徳号とくごうなり。 しかれば南無なも弥陀みだぶつほんとすべしとおおせられそうろふなり。

(25)

一 ^十方じっぽうりょう諸仏しょぶつの *証誠しょうじょう*ねんのみことにて りき*だいだいしんの かなはぬほどはしりぬべし」 (*正像末和讃)さんのこころをちょうもんもうしたきと*じゅんせいもうしあげられけり。 おおせに、 諸仏しょぶつ弥陀みだせらるるを*のうとしたまへり。 「*のなかに*あまのこころをすてよかし *うしのつのはさもあらばあれ」 と。 これは開山かいさん (親鸞)御歌おんうたなり。 さればかたちはいらぬこと、 一心いっしんほんとすべしとなり。 にも 「かうべをそるといへどもこころをそらず」 といふことがあるとおおせられそうろふ。

(26)

一 ^*とり部野べのをおもひやるこそあはれなれ ゆかりのひとのあととおもへば」。 これもしょうにん御歌おんうたなり。

(27)

一 ^明応めいおうねんがつ二十はつ開山かいさん (親鸞)*えいさま空善くうぜん*めんあり。 なかなかありがたさもうすにかぎりなきことなり。

(28)

一 ^おなじきじゅう一月いちがつ報恩ほうおんこうじゅうにちに、 開山かいさんの ¬でん¼ (*御伝鈔)しょうにん (親鸞)ぜんにて上様うえさま (蓮如) *あそばされて、 いろいろ法談ほうだんそうろふ。 なかなかありがたさもうすばかりなくそうろふ。

(29)

一 ^*明応めいおう六年ろくねんがつじゅう六日ろくにちじょうらくにて、 その開山かいさんしょうにん*えいしょうほん、 あつがみ一枚いちまいにつつませ、 *みづからのふでにて御座ござそうろふとて、 上様うえさまおんおんひろげそうらひて、 みなおがませたまへり。 このしょうほん、 まことに*宿しゅくぜんなくては拝見はいけんもうさぬことなりとおおせられそうろふ。

(30)

一 ^のたまはく、 「諸仏しょぶつ三業さんごうしょうごんして ひっきょうびょうどうなることは しゅじょう*おうしん口意くいを せんがためとのべたまふ」 (高僧和讃) といふは、 諸仏しょぶつ弥陀みだしてしゅじょうをたすけらるることよとおおせられそうろふ。

(31)

一 ^一念いちねん信心しんじんをえてのちの相続そうぞくといふは、 さらにべつのことにあらず、 はじめほっするところの安心あんじん相続そうぞくせられてたふとくなる一念いちねんのこころのとほるを、 *憶念おくねんしんつねに」 とも 「仏恩ぶっとん報謝ほうしゃ」 ともいふなり。 いよいよみょう一念いちねんほっすること肝要かんようなりとおおそうろふなり。

(32)

一 ^のたまはく、 ちょうせき、 「しょうしんさん」 にて念仏ねんぶつもうすは、 おうじょう*たねになるべきかなるまじきかと、 おのおのぼうおんたづねあり。 みなもうされけるは、 おうじょうのたねになるべしともうしたるひともあり、 おうじょうのたねにはなるまじきといふひともありけるとき、 おおせに、 いづれもわろし、 「しょうしんさん」 は、 しゅじょう弥陀みだ如来にょらい一念いちねんにたのみまゐらせて、 しょうたすかりまうせとのことわりをあそばされたり。 よくききわけてしんをとりて、 ありがたやありがたやとしょうにん (親鸞)ぜんにてよろこぶことなりと、 くれぐれおおそうろふなり。

(33)

一 ^南無なも弥陀みだぶつろくを、 しゅうには大善だいぜんだいどくにてあるあひだ、 となへてこのどく諸仏しょぶつさつ諸天しょてんにまゐらせて、 そのどくをわがものがほにするなり。 *いちりゅうにはさなし。 このろくみょうごうわがものにてありてこそ、 となへてぶつさつにまゐらすべけれ。 一念いちねん一心いっしんしょうたすけたまへとたのめば、 *やがておんたすけにあづかることのありがたさありがたさともうすばかりなりとおおそうろふなり。

(34)

一 ^*かわのくにあさ*後室こうしつおんいとまごひにとてまゐりそうろふに、 とん殿どのこう*あしたのことなれば、 ことのほかのおん*りみだしにて御座ござそうろふに、 おおせに、 みょうごうをただとなへてぶつにまゐらするこころにてはゆめゆめなし。 弥陀みだをしかとおんたすけそうらへとたのみまゐらすれば、 やがてぶつおんたすけにあづかるを南無なも弥陀みだぶつもうすなり。 しかれば、 おんたすけにあづかりたることのありがたさよありがたさよと、 こころにおもひまゐらするを、 くちいだして南無なも弥陀みだぶつ南無なも弥陀みだぶつもうすを、 仏恩ぶっとんほうずるとはもうすことなりとおおそうらひき。

(35)

一 ^じゅんせいもうしあげられそうろふ。 *一念いちねんぽっのところにて、 つみみなしょうめつして正定しょうじょうじゅ退たいくらいさだまると、 *ふみにあそばされたり。 しかるにつみはいのちのあるあひだ、 つみもあるべしとおおそうろふ。 ふみべつにきこえまうしそうろふやと、 もうしあげそうろふとき、 おおせに、 一念いちねんのところにてつみみなえてとあるは、 一念いちねん信力しんりきにておうじょうさだまるときは、 つみはさはりともならず、 されば*ぶんなり。 いのち*しゃにあらんかぎりは、 つみきざるなり。 じゅんせいは、 はやさとりてつみはなきかや。

聖教しょうぎょうには 「一念いちねんのところにてつみえて」 とあるなりとおおせられそうろふ。 つみのあるなしの沙汰さたをせんよりは、 信心しんじんりたるからざるかの沙汰さたをいくたびもいくたびもよし。 つみえておんたすけあらんとも、 つみえずしておんたすけあるべしとも、 弥陀みだおんはからひなり、 われとしてはからふべからず。 ただ信心しんじん肝要かんようなりと、 くれぐれおおせられそうろふなり。

(36)

一 ^*真実しんじつ信心しんじん称名しょうみょうは *弥陀みだこうほうなれば *こうとなづけてぞ りきしょうねんきらはるる」 (正像末和讃) といふは、 弥陀みだのかたより、 *たのむこころも、 たふとやありがたやと念仏ねんぶつもうすこころも、 みなあたへたまふゆゑに、 とやせんかくやせんとはからうて念仏ねんぶつもうすは、 りきなればきらふなりとおおそうろふなり。

(37)

一 ^*しょうしょうとは、 極楽ごくらくしょう*三界さんがいをへめぐるこころにてあらざれば、 極楽ごくらくしょうしょうしょうといふなり。

(38)

一 ^こうといふは、 弥陀みだ如来にょらいの、 しゅじょうおんたすけをいふなりとおおせられそうろふなり。

(39)

一 ^おおせに、 一念いちねんぽっおうじょうけつじょうなり。 つみしてたすけたまはんとも、 つみさずしてたすけたまはんとも、 弥陀みだ如来にょらいおんはからひなり。 つみ沙汰さたやくなり。 たのむしゅじょうほんたすけたまふことなりとおおせられそうろふなり。

(40)

一 ^おおせに、 *をすてて*おのおのとどうするをばしょうにん (親鸞)おおせにも、 *かい信心しんじんひとはみなきょうだいおおせられたれば、 われもそのおんことばのごとくなり。 またどうをもしてあらば、 しんなることをもへかし、 しんをよくとれかしとねがふばかりなりとおおせられそうろふなり。

(41)

一 ^*愛欲あいよく広海こうかい沈没ちんもつし、 *みょう大山たいせん迷惑めいわくして、 じょうじゅかずることをよろこばず、 *しんしょうしょうちかづくことをたのしまず」 (信巻・末)もう沙汰さたに、 *しんのあつかひどもにて、 おうじょうせんずるか、 すまじきなんどとたがひにもうしあひけるを、 ものごしにきこしめされて、 愛欲あいよくみょうもみな煩悩ぼんのうなり、 されば*のあつかひをするは雑修ざっしゅなりとおおそうろふなり。 ただしんずるほかはべつのことなしとおおせられそうろふ。

(42)

一 ^*ゆふさり、 *案内あんないをももうさず、 ひとびとおほくまゐりたるを、 *美濃みの殿どの*まかりいでそうらへと、 あらあらとおんもうしのところに、 おおせに、 さやうにいはんことばにて、 *一念いちねんのことをいひてきかせてせかしと。 東西とうざいはしりまはりていひたきことなりとおおせられそうろふとき、 きょうもんぼうなみだながし、 あやまりてそうろふとて讃嘆さんだんありけり。 皆々みなみな落涙らくるいもうすことかぎりなかりけり。

(43)

一 ^明応めいおう六年ろくねんじゅう一月いちがつ報恩ほうおんこうじょうらくなくそうろふあひだ、 *ほうきょうぼうおん使つかひとして、 当年とうねん*在国ざいこくにて御座ござそうろふあひだ、 *こうをなにと沙汰さたあるべきやと、 たづねおんもうそうろふに、 当年とうねんよりはゆうべ*つどき、 あさつどきをかぎりに、 みな退散たいさんあるべしとの*ふみをつくらせて、 かくのごとくめさるべきよしじょうあり。 *どうよる宿とまりしゅうもその*頭人とうにんばかりとじょうなり。 また上様うえさま (蓮如)なぬこうのうちをとん殿どのにてみっおんつとめありて、 じゅうよっには*大坂おおざか殿どのこうにて御勤行おつとめなり。

(44)

一 ^おなじき七年しちねんなつよりまた*れいにて御座ござそうろふあひだ、 がつなぬおんいとまごひに*しょうにんおんまゐりありたきとおおせられて、 じょうらくにて、 *やがておおせに、 信心しんじんなきひとにはあふまじきぞ。 しんをうるものにはしてもみたくそうろふ、 ふべしとおおせなりとうんぬん

(45)

一 ^いまひといにしえをたづぬべし。 またふるひといにしえをよくつたふべし。 ものがたりするものなり。 しるしたるものはせずそうろふ。

(46)

一 ^あか*どうしゅうもうされそうろふ。 一日いちにち*たしなみにはあさつとめにかかさじとたしなむべし。 一月ひとつきのたしなみにはちかきところ*開山かいさんさま (親鸞)御座ござそうろふところへまゐるべしとたしなめ、 一年いちねんのたしなみには*ほんへまゐるべしとたしなむべしうんぬん。 これを*円如えんにょさまきこしめしおよばれ、 よくもうしたるとおおせられそうろふ。

(47)

一 ^わがこころにまかせずしてこころめよ。 仏法ぶっぽうこころのつまるものかとおもへば、 信心しんじんおんなぐさみそうろふとおおせられそうろふ。

(48)

一 ^ほうきょうぼうじゅうまで存命ぞんめいそうろふ。 このとしまでちょうもんもうそうらへども、 これまでとぞんたることなし、 あきたりもなきことなりともうされそうろふ。

(49)

一 ^*山科やましなにて法談ほうだん御座ござそうろふとき、 あまりにありがたきじょうどもなりとて、 これをわすれまうしてはとぞんじ、 しきをたちどう六人ろくにんよりて*談合だんごうそうらへば、 面々めんめんにききかへられそうろふ。 そのうちににんはちがひそうろふ。 だいのことにてそうろふともうすことなり。 きまどひあるものなり。

(50)

一 ^蓮如れんにょしょうにん御時おんとき*こころざしのしゅうぜんにおほくそうろふとき、 このうちにしんをえたるものいくたりあるべきぞ、 ひとふたかあるべきか、 などじょうそうろふとき、 おのおのきもをつぶしそうろふともうされそうろふよしにそうろふ。

(51)

一 ^ほうきょうもうされそうろふ。 讃嘆さんだんのときなにもおなじやうにきかで、 ちょうもん*かどをきけともうされそうろふ。 *せんあるところをきけとなり。

(52)

一 ^憶念おくねん称名しょうみょういさみありて」 (報恩講私記) とは、 称名しょうみょう*いさみの念仏ねんぶつなり。 しんのうへはうれしくいさみてもう念仏ねんぶつなり。

(53)

一 ^ふみのこと、 聖教しょうぎょうみちがへもあり、 こころえもゆかぬところもあり。 ふみみちがへもあるまじきとおおせられそうろふ。 慈悲じひのきはまりなり。 これをききながらこころえのゆかぬは*宿しゅくぜんなり。

(54)

一 ^いちりゅうおんこと、 このとしまでちょうもんもうそうろうて、 おんことばをうけたまはそうらへども、 ただこころおんことばのごとくならずと、 ほうきょうもうされそうろふ。

(55)

一 ^*実如じつにょしょうにん*さいさいおおせられそうろふ。 仏法ぶっぽうのこと、 わがこころにまかせずたしなめとじょうなり。 こころにまかせては、 *さてなり。 すなはちこころにまかせずたしなむこころりきなり。

(56)

一 ^いちりゅううけたまわりわけたるひとはあれども、 きうるひとはまれなりといへり。 しんをうるまれなりといへるこころなり。

(57)

一 ^蓮如れんにょしょうにんじょうには、 仏法ぶっぽうのことをいふに、 けんのことに*とりなすひとのみなり。 それを*退屈たいくつせずして、 また仏法ぶっぽうのことにとりなせとおおせられそうろふなり。

(58)

一 ^たれのともがらも、 われはわろきとおもふもの、 ひととしてもあるべからず。 これ*しかしながら、 しょうにん (親鸞)*ばつをかうぶりたるすがたなり。 これによりてひとづつもしんちゅうをひるがへさずは、 ながき ˆはˇ *ないにふかくしずむべきものなり。 これといふもなにごとぞなれば、 真実しんじつ仏法ぶっぽうのそこをしらざるゆゑなり。

(59)

一 ^みなひとのまことのしんはさらになし ものしりがほのぜいにてこそ」。 *近松ちかまつ殿どの*さかいこうのとき、 *なげしに*おしておかせられそうろふ。 あとにてこのこころをおもひいだしそうらへとじょうなり。 *光応こうおう殿どのしんなり。 「ものしりがほ」 とは、 われはこころえたりとおもふがこのこころなり。

(60)

一 ^ほうきょうぼう安心あんじんのとほりばかり讃嘆さんだんするひとなり。 「ごん南無なもしゃ(*玄義分)しゃくをば、 いつもはづさずひとなり。 それさへ、 *さしよせてもうせと、 蓮如れんにょしょうにんじょうそうろふなり。 ことばすくなに安心あんじんのとほりもうせとじょうなり。

(61)

一 ^*ぜんしゅうもうされそうろふ。 *こころざしもうそうろふとき、 わがものがほにもちてまゐるははづかしきよしもうされそうろふ。 なにとしたることにてそうろふやともうそうらへば、 これはみな*ゆうのものにてあるを、 わがもののやうにもちてまゐるともうされそうろふ。 ただ上様うえさま (蓮如) のもの、 とりつぎそうろふことにてそうろふを、 *わがものがほにぞんずるかもうされそうろふ。

(62)

一 ^*つのくにぐん主計かずえもうひとあり。 ひまなく念仏ねんぶつもうすあひだ、 ひげをるときらぬことなし。 わすれて念仏ねんぶつもうすなり。 ひとくちはたらかねば念仏ねんぶつもすこしのあひだももうされぬかと、 こころもとなきよしにそうろふ。

(63)

一 ^*仏法ぶっぽうしゃもうされそうろふ。 わかきとき仏法ぶっぽうはたしなめとそうろふ。 としよればぎょうもかなはず、 ねぶたくもあるなり。 ただわかきときたしなめとそうろふ。

(64)

一 ^しゅじょうをしつらひたまふ。 「*しつらふ」 といふは、 しゅじょうのこころをそのままおきて、 よきこころをおんくはへそうらひて、 *よくめされそうろふ。 しゅじょうのこころをみなとりかへて、 ぶっばかりにて、 べつおんみたてそうろふことにてはなくそうろふ。

(65)

一 ^わがさいほど*便びんなることなし。 それをかんせぬはあさましきことなり。 宿しゅくぜんなくはちからなし。 わがをひとつかんせぬものがあるべきか。

(66)

一 ^きょうもんぼうのいはれそうろふ。 しんはなくて*まぎれまはると、 ごくがちかくなる。 まぎれまはるがあらはればごくがちかくなるなり。 *うちみはしんしんみえずそうろふ。 とほくいのちをもたずして、 今日きょうばかりとおもへと、 ふる*こころざしのひともうされそうろふ。

(67)

一 ^いち*ちかひいちのちかひなり。 いちのたしなみがいちのたしなみなり。 そのゆゑは、 そのままいのちをはればいちのちかひになるによりてなり。

(68)

一 ^今日きょうばかりおもふこころをわするなよ *さなきはいとどのぞみおほきに」 *覚如かくにょさま御歌おんうた

(69)

一 ^*りゅうには、 みょうごうよりはぞうぞうよりは木像もくぞうといふなり。 *とうりゅうには、 木像もくぞうよりはぞうぞうよりはみょうごうといふなり。

(70)

一 ^*ほん北殿きたどのにて、 ほうきょうぼうたいして蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 われはなにごとをも*とうをかがみおぼしめし、 とおあるものをひとつにするやうに、 かろがろとのやがてかなふやうに沙汰さたそうろふ。 これをひとかんがへぬとおおせられそうろふ。 ふみとうをも近年きんねんおんことばすくなに*あそばされそうろふ。 いまはものをくうちにも退屈たいくつし、 ものきおとすあひだ、 肝要かんようのことをやがてしりそうろふやうにあそばされそうろふのよしおおせられそうろふ。

(71)

一 ^法印ほういん*兼縁けんえんようしょうとき*二俣ふたまたにてあまた*みょうごうもうそうろとき信心しんじんやある、 おのおのおおせられそうろふ。 信心しんじんˆそのˇ たいみょうごうにてそうろふ。 いまおもひあはせそうろふとのそうろふ。

(72)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 *さかい日向ひゅうがさんじゅう万貫まんがんちたれども、 にたるがぶつにはそうろふまじ。 大和やまと*了妙りょうみょうかたびらひとつをもかねそうらへども、 このたびぶつるべきよと、 おおせられそうろふよしにそうろふ。

(73)

一 ^蓮如れんにょしょうにんきゅうほう*ほっしょうもうされそうろふは、 一念いちねんしょうおんたすけそうらへと弥陀みだをたのみたてまつりそうろふばかりにておうじょういちじょうぞんそうろふ。 *かやうにておんそうろふかともうされそうらへば、 あるひとわきより、 それはいつものことにてそうろふ。 べつのこと、 しんなることなどもうされそうらはでともうされそうらへば、 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 それぞとよ、 わろきとは。 めづらしきことをきたくおもひしりたくおもふなり。 しんのうへにてはいくたびもしんちゅうのおもむき、 かやうにもうさるべきことなるよしおおせられそうろふ。

(74)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 一向いっこう*しんのよしもうさるるひとはよくそうろふ。 ことばにて安心あんじんのとほりもうそうらひて、 くちにはおなじごとくにて、 *まぎれてむなしくなるべきひとかなしくおぼそうろふよしおおせられそうろふなり。

(75)

一 ^しょうにん (親鸞)いちりゅう弥陀みだ如来にょらいじょうなり。 さればふみには 「弥陀みだ如来にょらいおおせられけるやうは」 とあそばされそうろふ。

(76)

一 ^蓮如れんにょしょうにんほうきょうたいせられおおせられそうろふ。 いまこの弥陀みだをたのめといふことをおんおしそうろひとをしりたるかとおおせられそうろふ。 じゅんせいぞんぜずともうされそうろふ。 いまおんをしへそうろひとをいふべし。 *鍛冶かじばんしょうなどもものををしふるに*ものいだすものなり。 いちだいのことなり。 なんぞものをまゐらせよ。 いふべきとおおせられそうろときじゅんせい*なかなか*なにたるものなりともしんじょういたすべきともうされそうろふ。 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 このことををしふるひと弥陀みだ如来にょらいにてそうろふ。 弥陀みだ如来にょらいのわれをたのめとのおんをしへにてそうろふよしおおせられそうろふ。

(77)

一 ^ほうきょうぼう蓮如れんにょしょうにんもうされそうろふ。 *あそばされそうろみょうごうけまうしそうろふが、 六体ろくたいぶつになりまうしそうろふ。 思議しぎなることともうされそうらへば、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) そのときおおせられそうろふ。 それは思議しぎにてもなきなり。 ぶつぶつおんそうろふは思議しぎにてもなくそうろふ。 あくぼん弥陀みだをたのむ一念いちねんにてぶつるこそ思議しぎよとおおせられそうろふなり。

(78)

一 ^*ちょうせき如来にょらいしょうにん (親鸞)*ゆうにてそうろふあひだ、 *みょうのかたをふかくぞんずべきよし、 折々おりおり前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふよしにそうろふ。

(79)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 「*むとはしるとも、 むとしらすな」 といふことがあるぞ。 さいたいぎょちょうぶくし、 ざいしょうなりといひて、 さのみおもひのままにはあるまじきよしおおせられそうろふ。

(80)

一 ^仏法ぶっぽうには無我むがおおせられそうろふ。 われとおもふことはいささかあるまじきことなり。 われはわろしとおもふひとなし。 これしょうにん (親鸞)ばつなりと、 おんことばそうろふ。 りきおんすすめにてそうろふ。 ゆめゆめわれといふことはあるまじくそうろふ。 無我むがといふこと、 ぜんじゅうしょうにん (実如) もたびたびおおせられそうろふ。

(81)

一 ^ごろしれるところを*ぜんしきにあひてへば*徳分あるなり」 (*浄土見聞集・意)。 しれるところをへば徳分とくぶんあるといへるがしゅしょうのことばなりと、 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 らざるところをはばいかほどしゅしょうなることあるべきとおおせられそうろふ。

(82)

一 ^ちょうもんもうすもたいりゃくわがためとはおもはず、 ややもすれば*法文ほうもんひとつをもききおぼえて、 ひと*うりごころあるとのおおせごとにてそうろふ。

(83)

一 ^一心いっしんにたのみたてまつるは、 如来にょらいのよく*しろしめすなり。 弥陀みだのただしろしめすやうにしんちゅうをもつべし。 みょう*おそろしくぞんずべきことにてそうろふとのそうろふ。

(84)

一 ^ぜんじゅうしょうにん (実如) おおせられそうろふ。 前々ぜんぜんじゅう (蓮如) より相続そうぞく*べつなきなり。 ただ弥陀みだたのむ一念いちねんよりほかはべつなくそうろふ。 これよりほかぞんなくそうろふ。 いかやうの誓言せいごんもあるべきよしおおせられそうろふ。

(85)

一 ^おなじくおおせられそうろふ。 *ぼんおうじょう、 ただたのむ一念いちねんにてぶつらぬことあらば、 いかなる誓言せいごんをもおおせらるべき。 しょう南無なも弥陀みだぶつなり。 十方じっぽう諸仏しょぶつしょうにんにてそうろふ。

(86)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 ものをいへいへとおおせられそうろふ。 ものもうさぬものはおそろしきとおおせられそうろふ。 *しんしんともに、 ただものをいへとおおせられそうろふ。 ものもうせば心底しんていもきこえ、 またひとにもなおさるるなり。 ただものもうせとおおせられそうろふ。

(87)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 仏法ぶっぽうは、 つとめの*ふしはかせもしらでよくするとおもふなり。 つとめのふしわろきよしをおおせられ、 きょうもんぼうをいつも*とりつめおおせられつるよしにそうろふ。 それにつきて蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 *一向いっこうにわろきひとちがひなどといふこともなし。 ただわろきまでなり。 わろしともおおせごともなきなり。 ほうをもこころにかけ、 ちとこころえもあるうへのちがひが、 ことのほかのちがひなりとおおせられそうろふよしにそうろふ。

(88)

一 ^ひとのこころえのとほりもうされけるに、 わがこころはただかごみずそうろふやうに、 仏法ぶっぽうしきにてはありがたくもたふとくもぞんそうろふが、 *やがてもとのしんちゅうになされそうろふと、 もうされそうろふところに、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 そのかごみずにつけよ、 わがをばほう*ひてておくべきよしおおせられそうろふよしにそうろふ。 ばんしんなきによりてわろきなり。 ぜんしきのわろきとおおせらるるは、 しんのなきことを*くせごととおおせられそうろふことにそうろふ。

(89)

一 ^聖教しょうぎょう拝見はいけんもうすも、 *うかうかとおがみまうすはそのせんなし。 蓮如れんにょしょうにんは、 ただ聖教しょうぎょうをば*くれくれとおおせられそうろふ。 またひゃっぺんこれをみれば*義理ぎりおのづからるともうすこともあれば、 こころをとどむべきことなり 聖教しょうぎょう*めんのごとくこころうべし。 そのうへにて*でん*ごうはあるべきなり。 *わたくしにしてしゃくすることしかるべからざることなり。

(90)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 りき信心しんじんりき信心しんじんとみれば、 あやまりなきよしおおせられそうろふ。

(91)

一 ^わればかりとおもひ、 *独覚どくかくしんなること、 あさましきことなり。 しんあらばぶつ慈悲じひをうけとりまうすうへは、 わればかりとおもふことはあるまじくそうろふ。 *触光そくこうにゅうなんがん (第三十三願) そうろふときは、 こころもやはらぐべきことなり。 されば*縁覚えんがく独覚どくかくのさとりなるがゆゑに、 ぶつらざるなり。

(92)

一 ^いっ一言いちごんもうすものは、 われとおもひてものもうすなり。 しんのうへはわれはわろしとおもひ、 また報謝ほうしゃおもひ、 ありがたさのあまりをひとにももうすことなるべし。

(93)

一 ^しんもなくて、 ひとしんをとられよとられよともうすは、 われはものをもたずしてひとものをとらすべきといふのこころなり。 ひと*しょういんあるべからずと、 ぜんじゅうしょうにん (蓮如) もうさるとじゅんせいおおせられそうらひき。 「しんきょうにんしん(礼讃)そうろときは、 まづわが信心しんじんけつじょうして、 ひとにもおしへて仏恩ぶっとんになるとのことにそうろふ。 しん安心あんじんけつじょうしておしふるは、 すなはち 「*だいでん普化ぷけ(礼讃)どうなるよし、 おなじくおおせられそうろふ。

(94)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 聖教しょうぎょうよみの聖教しょうぎょうよまずあり、 聖教しょうぎょうよまずのしょうぎょうよみあり。 いちもんをもしらねども、 ひと聖教しょうぎょうをよませちょうもんさせてしんをとらするは、 聖教しょうぎょうよまずの聖教しょうぎょうよみなり。 聖教しょうぎょうをばよめども、 真実しんじつによみもせずほうもなきは、 聖教しょうぎょうよみの聖教しょうぎょうよまずなりとおおせられそうろふ。

  *しんきょうにんしんどうなりとおおせられそうろふこと。

(95)

一 ^聖教しょうぎょうよみの、 仏法ぶっぽうもうしたてたることはなくそうろふ。 *あまにゅうどうのたぐひのたふとやありがたやともうされそうろふをききては、 ひとしんをとると、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふよしにそうろふ。 なにもしらねども、 ぶつ*加備かびりきのゆゑにあまにゅうどうなどのよろこばるるをききては、 ひとしんをとるなり。 聖教しょうぎょうをよめども、 *みょうもんがさきにたちてこころにはほうなきゆゑに、 ひと信用しんようなきなり。

(96)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 とうりゅうには、 *総体そうたい*けんわろし。 仏法ぶっぽうのうへよりなにごともあひはたらくべきことなるよしおおせられそうろふとうんぬん

(97)

一 ^おなじくおおせられそうろふ。 けんにて、 *時宜じぎしかるべきはよきひとなりといへども、 しんなくは*こころをおくべきなり。 *便たよりにもならぬなり。 たとひ*かたつぶれ、 こしをひきそうろふやうなるものなりとも、 信心しんじんあらんひとをばたのもしくおもふべきなりとおおせられそうろふ。

(98)

一 ^*きみおもふはわれをおもふなり。 ぜんしきおおせにしたがしんをとれば、 極楽ごくらくへまゐるものなり。

(99)

一 ^*おんごうよりひさしきぶつ弥陀みだぶつなり。 かり*果後かご方便ほうべんによりて誓願せいがんをまうけたまふことなり。

(100)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 弥陀みだをたのめるひとは、 南無なも弥陀みだぶつ*をばまるめたることなりとおおせられそうろふとうんぬん。 いよいよみょうぞんずべきのよしにそうろふ。

(101)

一 ^*たん法眼ほうげん 蓮応れんのう しょうととのへられ、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんぜん*こうそうらひしときおおせられそうろふ。 ころものえりをおんたたきありて、 南無なも弥陀みだぶつよとおおせられそうろふ。 またぜんじゅうしょうにん (実如)おんたたみをたたかれ、 南無なも弥陀みだぶつにもたれたるよしおおせられそうらひき。 南無なも弥陀みだぶつをばまるめたるとおおせられそうろふと*ごうもうそうろふ。

(102)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 仏法ぶっぽうのうへには、 ことごとにつきてそらおそろしきこととぞんそうろふべくそうろふ。 ただよろづにつきてだんあるまじきこととぞんそうらへのよし、 折々おりおりおおせられそうろふとうんぬん仏法ぶっぽうには明日あすもうすことあるまじくそうろふ。 仏法ぶっぽうのことはいそげいそげとおおせられそうろふなり。

(103)

一 ^おなじくおおせに、 今日きょうはあるまじきとおもへとおおせられそうろふ。 なにごともかきいそぎてもの沙汰さたそうろふよしにそうろふ。 ながながしたることをおんきらひのよしにそうろふ。 仏法ぶっぽうのうへには、 明日あすのことを今日きょうするやうにいそぎたること、 *しょうがんなり。

(104)

一 ^おなじくおおせにいはく、 しょうにん (親鸞)*えいもうすはだいのことなり。 むかし本尊ほんぞんよりほかは御座ござなきことなり。 しんなくはかならずばつこうむるべきよしおおせられそうろふ。

(105)

一 ^せつ到来とうらいといふこと、 用心ようじんをもしてそのうへにことできそうろふを、 せつ到来とうらいとはいふべし。 用心ようじんにてできそうろふをせつ到来とうらいとはいはぬことなり。 ちょうもんこころがけてのうへの宿しゅくぜん宿しゅくぜんともいふことなり。 ただ信心しんじんはきくにきはまることなるよしおおせのよしそうろふ。

(106)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん(蓮如) ほうきょうたいしておおせられそうろふ。 まきたてといふものりたるかと。 ほうきょうへんに、 まきたてともうすはいちたねをきて*をささぬものにそうろふともうされそうろふ。 おおせにいはく、 それぞ、 まきたてわろきなり。 ひとなおされまじきとおもこころなり。 しんちゅうをばもうしいだしてひとなおされそうらはでは、 こころなおることあるべからず。 まきたてにてはしんをとることあるべからずとおおせられそうろうんぬん

(107)

一 ^なにともしてひとなおされそうろふやうにしんちゅうつべし。 わがしんちゅうをばどうぎょうのなかへちいだしておくべし。 *としたるひとのいふことをばもちゐずしてかならず*ふくりゅうするなり。 あさましきことなり。 ただひとなおさるるやうにしんちゅうつべきそうろふ。

(108)

一 ^ひとの、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)もうされそうろふ。 一念いちねんところけつじょうにてそうろふ。 ややもすれば、 ぜんしきおんことばをおろそかにぞんそうろふよしもうされそうらへば、 おおせられそうろふは、 もつともしんのうへは*そうぎょうこころあるべきなり。 さりながら、 ぼんこころにては、 かやうのしんちゅうのおこらんとき勿体もったいなきこととおもひすつべしとおおせられしとうんぬん

(109)

一 ^蓮如れんにょしょうにん兼縁けんえんたいせられおおせられそうろふ。 たとひ*かわをきるいろめなりとも、 *なわびそ。 ただ弥陀みだをたのむ一念いちねんをよろこぶべきよしおおせられそうろふ。

(110)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 じょうろうにゃくによらず、 しょうだんにてしそんずべきのよしおおせられそうろふ。

(111)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) 御口おんくちのうちおんわずらそうろふに、 をりふしおんをふさがれ、 ああ、 とおおせられそうろふ。 ひとしんなきことをおもふことは、 をきりさくやうにかなしきよとおおせられそうろふよしにそうろふ。

(112)

一 ^おなじくおおせに、 われはひと*かがみ、 ひとにしたがひて仏法ぶっぽうおんかせそうろふよしおおせられそうろふ。 いかにもひとのすきたることなどもうさせられ、 うれしやとぞんそうろふところに、 また仏法ぶっぽうのことをおおせられそうろふ。 いろいろ方便ほうべんにて、 ひとほうおんかせそうらひつるよしにそうろふ。

(113)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 人々ひとびと仏法ぶっぽうしんじてわれによろこばせんとおもへり。 それはわろし。 しんをとればしん*しょうとくなり。 さりながら、 しんをとらば、 おんにもおんうけあるべきとおおせられそうろふ。 また、 きたくもなきことなりとも、 まことにしんをとるべきならば、 きこしめすべきよしおおせられそうろふ。

(114)

一 ^おなじくおおせに、 まことに一人いちにんなりともしんをとるべきならば、 てよ。 それはすたらぬとおおせられそうろふ。

(115)

一 ^あるときおおせられそうろふ。 もんこころなおすときこしめして、 *おいしわをのべそうろふとおおせられそうろふ。

(116)

一 ^あるもんしゅうおんたずそうろふ。 そなたのぼうこころなおりたるをうれしくぞんずるかとおんたずそうらへば、 もうされそうろふ。 まことにこころなおされ、 ほうこころにかけられそうろふ。 一段いちだんありがたくうれしくぞんそうろふよしもうされそうろふ。 そのときおおせられそうろふ。 われはなほうれしくおもふよとおおせられそうろふ。

(117)

一 ^をかしき*事態わざをもさせられ、 仏法ぶっぽう退屈たいくつつかまつそうろふもののこころをもくつろげ、 そのをもうしなはして、 またあたらしくほうおおせられそうろふ。 まことに*ぜんぎょう方便ほうべん、 ありがたきことなり。

(118)

一 ^*天王てんのう土塔つちとう前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) らんそうらひておおせられそうろふ。 あれほどのおほきひとどもごくへおつべしと、 *便びんおぼそうろふよしおおせられそうろふ。 またそのなかにもんひとぶつるべしとおおせられそうろふ。 これまたありがたきおおせにてそうろふ。

 

蓮如れんにょしょうにん一代いちだい*聞書ききがき ほん

 

蓮如れんにょしょうにん一代いちだい聞書ききがき まつ

 

(119)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (*蓮如) *法談ほうだん以後いご四五しごにん*きょうだいおおせられそうろふ。 四五しごにんしゅう*より*談合だんごうせよ。 かならずにんにんながら*ぎょうにきくものなるあひだ、 よくよく談合だんごうすべきのよしおおせられそうろふ。

(120)

一 ^*たとひなきことなりとも、 ひともうそうらはば、 *とう領掌りょうしょうすべし。 とうことばかえせば、 ふたたびいはざるなり。 ひとのいふことをばただふかく*用心ようじんすべきなり。 これにつきてあるひと、 あひたがひにあしきことをもうすべしと、 *契約けいやくそうらひしところに、 すなはち一人いちにんのあしきさまなることもうしければ、 われはさやうにぞんぜざれども、 ひともうすあひださやうにそうろもうす。 さればこの返答へんとうあしきとのことにそうろふ。 さなきことなりとも、 とうはさぞともうすべきことなり。

(121)

一 ^いっしゅうはんじょうもうすは、 ひとのおほくあつまり、 *のおほきなることにてはなくそうろふ。 一人いちにんなりとも、 ひとしんをとるが、 いっしゅうはんじょうそうろふ。 しかれば、 「*専修せんじゅ正行しょうぎょうはんじょう*遺弟ゆいてい*念力ねんりきよりじょうず」 (*報恩講私記) とあそばされおかれそうろふ。

(122)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 *ちょうもん*こころれまうさんとおもひとはあり、 しんをとらんずるとおもひとなし。 されば*極楽ごくらくはたのしむときて、 まゐらんとねがひのぞむひとぶつらず、 弥陀みだをたのむひとぶつるとおおせられそうろふ。

(123)

一 ^*聖教しょうぎょう*すきこしらへもちたるひとそんには、 *仏法ぶっぽうしゃいでくるものなり。 ひとたび仏法ぶっぽうをたしなみそうろひとは、 *おほやうなれどもおどろきやすきなり。

(124)

一 ^*ふみ如来にょらい*直説じきせつなりとぞんずべきのよしにそうろふ。 *かたちをみれば*法然ほうねんことばけば弥陀みだ直説じきせつといへり。

(125)

一 ^蓮如れんにょしょうにんびょうちゅうに、 *きょうもんに、 なんぞものをよめとおおせられそうろふとき、 ふみをよみまうすべきかともうされそうろふ。 さらばよみまうせとおおせられそうろふ。 三通さんつう二度にどづつ六遍ろっぺんよませられておおせられそうろふ。 わがつくりたるものなれども、 しゅしょうなるよとおおせられそうろふ。

(126)

一 ^*じゅんせいもうされしとうんぬんつねにはわがまへにてはいはずして、 *うしろごといふとて*ふくりゅうすることなり。 われはさやうにはぞんぜずそうろふ。 わがまへにてもうしにくくは、 かげにてなりともわがわろきことをもうされよ。 きてしんちゅうをなほすべきよしもうされそうろふ。

(127)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 仏法ぶっぽうのためとおぼそうらへば、 なにたる辛労しんろうをも辛労しんろうとはおぼされぬよしおおせられそうろふ。 おん*こころまめにて、 なにごとも沙汰さたそうろふよしなり。

(128)

一 ^ほうには*あらめなるがわろし。 *けんにはさいなるといへども仏法ぶっぽうにはさいこころをもち、 こまかにこころをはこぶべきよしおおせられそうろふ。

(129)

一 ^とほきはちかきどう、 ちかきはとほきどうあり。 灯台とうだいもとくらしとて、 仏法ぶっぽう*だんちょうもんもうは、 *ゆうあつくかうぶりて、 いつものこととおもひ、 ほうにおろそかなり。 とほくそうろひとは、 仏法ぶっぽうをききたく大切たいせつにもとむるこころありけり。 仏法ぶっぽう大切たいせつにもとむるよりきくものなり。

(130)

一 ^ひとつことをきて、 いつもめづらしく*はじめたるやうに、 しんのうへにはあるべきなり。 ただめずらしきことをききたくおもふなり。 ひとつことをいくたびちょうもんもうすとも、 めづらしくはじめたるやうにあるべきなり。

(131)

一 ^*どうしゅうは、 ただひとおんことばをいつもちょうもんもうすが、 はじめたるやうにありがたきよしもうされそうろふ。

(132)

一 ^念仏ねんぶつもうすも、 ひと*みょうもんげにおもはれんとおもひてたしなむが*たいなるよし、 あるひともうされそうろふ。 つねひとしんちゅうにかはりそうろふこと。

(133)

一 ^*どうぎょう*同侶どうりょをはぢて*みょうりょをおそれず。 ただ*みょうけんをおそろしくぞんずべきことなり。

(134)

一 ^たとひ*しょうたりとも*しげからんことをばちょうすべきよしそうろふ。 ましてけんちょうそうらはぬことしかるべからず。 いよいよぞうじょうすべきは信心しんじんにてそうろふ。

(135)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 仏法ぶっぽうには*まゐらせこころわろし。 これをしておんこころかなはんとおもこころなり。 仏法ぶっぽうのうへはなにごとも報謝ほうしゃぞんずべきなりとうんぬん

(136)

一 ^ひとには*げんぜっしん*六賊ろくぞくありて善心ぜんしんをうばふ。 これはしょぎょうのことなり。 念仏ねんぶつはしからず。 *ぶっこころをうるゆゑに、 *貪瞋とんじん煩悩ぼんのうをばぶつかたより*せつしたまふなり。 ゆゑに 「貪瞋とんじん煩悩ぼんのうちゅう のうしょう清浄しょうじょうがんおうじょうしん(*散善義) といへり。 「しょうしん」 には、 「にょ日光にっこううん うん之下しげみょうあん」 といへり。

(137)

一 ^いっ一言いちごんちょうもんするとも、 ただ*得手えてほうくなり。 ただよくきき、 しんちゅうのとほりをどうぎょうにあひ談合だんごうすべきことなりとうんぬん

(138)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 かみにもぶつにもれては、 ですべきことをあしにてするぞとおおせられける。 如来にょらいしょうにん (*親鸞)*ぜんしきにもれまうすほどおんこころやすくおもふなり。 れまうすほどいよいよ*渇仰かつごうこころをふかくはこぶべきこともつともなるよしおおせられそうろふ。

(139)

一 ^くちのはたらきとはするものなり。 *こころがよくなりがたきものなり。 *涯分がいぶんこころかたたしなみまうすべきことなりとうんぬん

(140)

一 ^しょうとうにいたるまで、 わがものおもみたたくること*あさましきことなり。 ことごとくしょうにん*ゆうもつにてそうろふあひだ、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんものなどおんあしにあたりそうらへば、 おんいただきそうろふよしうけたまわりおよびそうろふ。

(141)

一 ^*王法おうぼう*ひたいにあてよ、 仏法ぶっぽう内心ないしんにふかくたくわへよとのおおせにそうろふ。 *じんといふことも、 *端正ただしくあるべきことなるよしにそうろふ。

(142)

一 ^蓮如れんにょしょうにんじゃくねんのころ、 *迷惑めいわくのことにてそうらひし。 ただ*だいにて仏法ぶっぽう*おおせたてられんとおぼそうろ念力ねんりきひとつにてはんじょうそうろふ。 辛労しんろうゆゑにそうろふ。

(143)

一 ^病中びょうちゅう蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 だい仏法ぶっぽう是非ぜひとも*再興さいこうあらんとおぼそうろ念力ねんりきひとつにて、 かやうにいままでみなみなこころやすくあることは、 *このほう*みょうかなふによりてのことなりとさんありとうんぬん

(144)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) は、 むかし*こぶくめをめされそうろふ。 しろそでとておんこころやすくされそうろおんことも御座ござなくそうろふよしにそうろふ。 いろいろおんかなしかりけることども、 折々おりおりおんものがたそうろふ。 今々いまいまのものはさやうのことをうけたまわそうらひて、 みょうぞんずべきのよしくれぐれおおせられそうろふ。

(145)

一 ^よろづ迷惑めいわくにて、 あぶらをめされそうらはんにも*ようきゃくなく、 やうやうきょう*くろをすこしづつおんとりそうらひて、 聖教しょうぎょうなどらんそうろふよしにそうろふ。 また少々しょうしょうつきひかりにても聖教しょうぎょう*あそばされそうろふ。 御足おんあしをもたいがいみずにておんあらそうろふ。 また三日さんにちぜんまゐりそうらはぬこともそうろふよしうけたまわりおよびそうろふ。

(146)

一 ^ひとをも*かひがひしくしつかはれそうらはであるうへは、 幼童ようどう*むつきをもひとりおんあらそうろふなどとおおせられそうろふ。

(147)

一 ^*存如ぞんにょしょうにんしつかはれそうろ*ものを、 おんやとそうらひてしつかはれそうろふよしにそうろふ。 存如ぞんにょしょうにんひとにんしつかはれそうろふ。 *蓮如れんにょしょうにん隠居いんきょときも、 にんしつかはれそうろふ。 *とうようとてこころのままなること、 そらおそろしく、 もいたくかなしくぞんずべきことにてそうろふ。

(148)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 むかし仏前ぶつぜん*こうひとは、 もと*紙絹かみぎぬふくをさしそうろふ。 いまはしろそでにて、 *けっきがへをしょそうろふ。 これそのころは*きんにも迷惑めいわくにて、 しちをおかれてようにさせられそうろふと、 *きごとに沙汰さたそうろふ。

(149)

一 ^またおおせられそうろふ。 おんまずしくそうらひて、 きょうにてふる綿わたおんとりそうらひて、 おんひとひろげそうろふことあり。 またおんころもはかたのやぶれたるをめされそうろふ。 しろおんそで美濃みのぎぬのわろきをもとめ、 やうやうひとつめされそうろふよしおおせられそうろふ。 とうはかやうのことをもしりそうらはで、 あるべきやうにみなみなぞんそうろふほどに、 みょうにつきまうすべし。 いちだいなり。

(150)

一 ^どうぎょうぜんしきにはよくよくちかづくべし。 「親近しんごんせざるは雑修ざっしゅしつなり」 と ¬*礼讃らいさん¼ (意) にあらはせり。 あしきものにちかづけば、 それにはれじとおもへども、 あく*よりよりにあり。 ただ仏法ぶっぽうしゃにはれちかづくべきよしおおせられそうろふ。 *俗典ぞくてんにいはく、 「ひと善悪ぜんあくちかづきならふによる」 と、 また 「そのひとしらんとおもはば、 そのともをみよ」 といへり。 「善人ぜんにんてきとはなるとも、 悪人あくにんともとすることなかれ」 といふことあり。

(151)

一 ^*きればいよいよかたく、 あおげばいよいよたかし」 といふことあり。 ものをきりてみてかたきとしるなり。 本願ほんがんしんじてしゅしょうなるほどもしるなり。 信心しんじんおこりぬれば、 たふとくありがたく、 よろこびもぞうじょうあるなり。

(152)

一 ^ぼんにてしょうたすかることは、 ただやすきとばかりおもへり。 「なんちゅうなん(*大経・下) とあれば、 *かたくおこしがたきしんなれども、 ぶっよりやすくじょうじゅしたまふことなり。 「おうじょうほどのいちだいぼんのはからふべきにあらず」 (*執持鈔(2)) といへり。 ぜんじゅうしょうにん (実如) おおせに、 しょういちだいぞんずるひとには同心どうしんあるべきよしおおせられそうろふとうんぬん

(153)

一 ^仏説ぶっせつ*しんぼうあるべきよしきおきたまへり。 しんずるものばかりにてほうずるひとなくは、 きおきたまふこといかがともおもふべきに、 はやほうずるものあるうへは、 しんぜんにおいてはかならずおうじょうけつじょうとのおおせにそうろふ。

(154)

一 ^どうぎょうのまへにてはよろこぶものなり、 これ*みょうもんなり。 しんのうへはひとてよろこぶほうなり。

(155)

一 ^仏法ぶっぽうには*けんのひまをきてきくべし。 けんひまをあけてほうをきくべきやうにおもふこと、 あさましきことなり。 仏法ぶっぽうには明日あすといふことはあるまじきよしのおおせにそうろふ。 「たとひ*大千だいせんかいに *みてらんをもすぎゆきて ぶつ御名みなをきくひとは ながく退たいにかなふなり」 と、 ¬さん¼ (*浄土和讃)*あそばされそうろふ。

(156)

一 ^*ほうきょうもうされそうろふとうんぬんひとよりひ、 雑談ぞうだんありしなかばに、 あるひとふとしきたれそうろふ。 *しょうにんいかにとおおせければ、 いちだいきゅうようありとてたれけり。 そののち先日せんじつはいかにふとたれそうろふやとひければ、 もうされそうろふ。 仏法ぶっぽうものがたり約束やくそくもうしたるあひだ、 *あるもあられずしてまかりたちそうろふよしもうそうろふ。 ほうにはかやうにぞこころをかけそうろふべきことなるよしもうされそうろふ。

(157)

一 ^*仏法ぶっぽうをあるじとし、 けん客人まろうどとせよといへり。 仏法ぶっぽうのうへよりは、 けんのことはときにしたがひあひはたらくべきことなりとうんぬん

(158)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)*みなみ殿どのにて、 *存覚ぞんかく*さくぶん聖教しょうぎょうちと*しんなるところそうろふを、 いかがとて、 *兼縁けんえん前々ぜんぜんじゅうしょうにんおんにかけられそうらへば、 おおせられそうろふ。 名人めいじんのせられそうろものをばそのままにてくことなり。 これがめいなりとおおせられそうろふなり。

(159)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにんへあるひともうされそうろふ。 *開山かいさん (親鸞)御時おんときのこともうされそうろふ。 これはいかやうの*さいにてそうろふともうされければ、 おおせられそうろふ。 われもしらぬことなり。 なにごともなにごともしらぬことをも、 開山かいさんのめされそうろふやうに沙汰さたそうろふとおおせられそうろふ。

(160)

一 ^*総体そうたいひとにはおとるまじきとおもこころあり。 このこころにてけんにはもの*しならふなり。 仏法ぶっぽうには無我むがにてそうろふうへは、 ひとにまけてしんをとるべきなり。 *をみて*じょうるこそ、 ぶつ慈悲じひよとおおせられそうろふ。

(161)

一 ^一心いっしんとは、 弥陀みだをたのめば如来にょらい*仏心ぶっしんとひとつになしたまふがゆゑに、 一心いっしんといへり。

(162)

一 ^あるひともうされそうろふとうんぬん。 われはみずむも、 仏法ぶっぽう*ゆうなれば、 みず一口ひとくちも、 如来にょらいしょうにん (親鸞)ゆうぞんそうろふよしもうされそうろふ。

(163)

一 ^蓮如れんにょしょうにん病中びょうちゅうおおせられそうろふ。 しんなにごともおぼそうろふことの、 りゆくほどのことはあれども、 らずといふことなし。 ひとしんなきことばかりかなしくおんなげきはおぼしのよしおおせられそうろふ。

(164)

一 ^おなじくおおせに、 なにごとをもおぼすままに沙汰さたあり。 しょうにんいちりゅうをも再興さいこうそうらひて、 本堂ほんどう影堂えいどうをもたてられ、 *じゅうをも*相続そうぞくありて*大坂おおざか殿どのこんりゅうありて隠居いんきょそうろふ。 しかれば、 われは 「こうげて退しりぞくはてんみちなり」 (*老子) といふこと、 それおんのうへなるべきよしおおせられそうろふと。

(165)

一 ^てきじんをともすを、 にてなきとはおもはず。 いかなるひとなりとも、 *おんことばのとほりをもうし、 おんことばをよみまうさば、 信仰しんこうし、 うけたまわるべきことなりと。

(166)

一 ^蓮如れんにょしょうにん折々おりおりおおせられそうろふ。 仏法ぶっぽうをばよくよくひとへ。 ものをばひとによくひまうせのよしおおせられそうろふ。 たれにひまうすべきよしうかがひまうしければ、 *仏法ぶっぽうだにもあらば、 じょうをいはずふべし。 仏法ぶっぽうはしりさうもなきものがるぞとおおせられそうろふとうんぬん

(167)

一 ^蓮如れんにょしょうにんもんのものをることをおんきらひそうろふ。 しゅしょうさうにみゆるとおおせにそうろふ。 また、 すみくろころもそうろふをおんきらひそうろふ。 すみくろころもて、 しょへまゐればおおせられそうろふ。 もんただしきしゅしょう御僧おんそうおんそうろふと、 おおせられそうらひて、 いやわれはしゅしょうにもなし。 ただ弥陀みだ本願ほんがんしゅしょうなるよしおおせられそうろふ。

(168)

一 ^大坂おおざか殿どのにて、 もんのあるおんそでをさせられ、 *御座ござのうへにけられておかれそうろふよしにそうろふ。

(169)

一 ^ぜんまゐりそうろときには、 おんがっしょうありて、 如来にょらいしょうにん (親鸞)ゆうにて*ふよとおおせられそうろふ。

(170)

一 ^ひとはあがりあがりて*おちばをしらぬなり。 ただつつしみてだんそらおそろしきことと、 まいにつけてこころをもつべきのよしおおせられそうろふ。

(171)

一 ^おうじょう一人いちにん*しのぎなり。 一人いちにん一人いちにん仏法ぶっぽうしんじてしょうをたすかることなり。 よそごとのやうにおもふことは、 *かつはわがをしらぬことなりと、 *円如えんにょおおそうらひき。

(172)

一 ^大坂おおざか殿どのにて、 あるひと前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)もうされそうろふ。 こんちょうあかつきよりいたるものにてそうろふがまゐられそうろふ。 *神変じんぺんなることなるよしもうされそうらへば*やがておおせられそうろふ。 しんだにあれば辛労しんろうとはおもはぬなり。 しんのうへは*仏恩ぶっとん報謝ほうしゃぞんそうらへば、 ろうとはおもはぬなりとおおせられしとうんぬん老者ろうしゃもうすは*がみ了宗りょうしゅうなりとうんぬん

(173)

一 ^みなみ殿どのにて人々ひとびとよりひ、 しんちゅうをなにかと*あつかひまうすところへ、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんおんそうらひておおせられそうろふ。 なにごとをいふぞ。 ただなにごとのあつかひもおもひすてて、 一心いっしん弥陀みだうたがいなくたのむばかりにて、 おうじょうぶつのかたよりさだめましますぞ。 そのしょう南無なも弥陀みだぶつよ。 このうへはなにごとをかあつかふべきぞとおおせられそうろふ。 もししんなどをもうすにも、 *多事たじをただ一言いちごんにてはらりとしんはれそうらひしとうんぬん

(174)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)、 「おどろかすかひこそなけれ*むらすずめ みみなれぬれば*なるこにぞのる」、 このうたおんきありて折々おりおりおおせられそうろふ。 ただひとはみなみみなれすずめなりとおおせられしとうんぬん

(175)

一 ^しんちゅうをあらためんとまではおもひとはあれども、 しんをとらんとおもひとはなきなりとおおせられそうろふ。

(176)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 方便ほうべんをわろしといふことはあるまじきなり。 方便ほうべんをもつて真実しんじつをあらはす*はいりゅうよくよくしるべし。 弥陀みだしゃぜんしき*ぜんぎょう方便ほうべんによりて、 真実しんじつしんをばうることなるよしおおせられそうろふとうんぬん

(177)

一 ^ふみはこれぼんおうじょうかがみなり。 ふみのうへに法門ほうもんあるべきやうにおもひとあり。 おおきなるあやまりなりとうんぬん

(178)

一 ^しんのうへは仏恩ぶっとん称名しょうみょう*退転たいてんあるまじきことなり。 あるいはこころよりたふとくありがたくぞんずるをば仏恩ぶっとんおもひ、 ただ念仏ねんぶつもうされそうろふをば、 それほどにおもはざること、 おおきなるあやまりなり。 おのづから念仏ねんぶつもうされそうろふこそ、 ぶっおんもよほし、 仏恩ぶっとん称名しょうみょうなれとおおせごとにそうろふ。

(179)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 しんのうへは、 たふとくおもひてもう念仏ねんぶつも、 またふともう念仏ねんぶつ*仏恩ぶっとんにそなはるなり。 しゅうにはおやのため、 またなにのためなんどとて念仏ねんぶつをつかふなり。 しょうにん (親鸞)いちりゅうには弥陀みだをたのむが念仏ねんぶつなり。 そのうへの称名しょうみょうは、 なにともあれ仏恩ぶっとんになるものなりとおおせられそうろうんぬん

(180)

一 ^あるひといはく、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)御時おんときみなみ殿どのとやらんにて、 ひとはちころそうろふに、 *おもひよらず念仏ねんぶつもうされそうろふ。 そのときなにとおもうて念仏ねんぶつをばもうしたるとおおせられそうらへば、 ただ*かわいやとぞんずるばかりにてもうそうろふともうされければ、 おおせられそうろふは、 しんのうへはなにともあれ、 念仏ねんぶつもうすは報謝ほうしゃぞんずべし。 みな仏恩ぶっとんになるとおおせられそうろふ。

(181)

一 ^みなみ殿どのにて、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)*のうれんをちあげられておんそうろふとて、 南無なも弥陀みだぶつ南無なも弥陀みだぶつおおせられそうらひて、 ほうきょうこのこころしりたるかとおおせられそうろふ。 なにともぞんぜずともうされそうらへば、 おおせられそうろふ。 これはわれはおんたすけそうろふ、 おんうれしやたふとやともうこころよとおおせられそうろうんぬん

(182)

一 ^蓮如れんにょしょうにんへ、 あるひと安心あんじんのとほりもうされそうろふ。 西国さいこくひと云々うんぬん 安心あんじん*一通ひととおりをもうされそうらへば、 おおせられそうろふ。 もうそうろふごとくのしんちゅうそうらはば、 それが*肝要かんようおおせられそうろふ。

(183)

一 ^おなじくおおせられそうろふ。 とうことばにては安心あんじんのとほりおなじやうにもうされそうらひし。 しかれば、 *しんじょうひとまぎれて、 おうじょうをしそんずべきことをかなしくおぼそうろふよしおおせられそうろふ。

(184)

一 ^しんのうへは*さのみわろきことはあるまじくそうろふ。 あるいはひとのいひそうろふなどとて、 あしきことなどはあるまじくそうろふ。 こんしょう*けっをきりて、 安楽あんらくしょうぜんとおもはんひと、 いかんとして*あしきさまなることをすべきやとおおせられそうろふ。

(185)

一 ^おおせにいはく、 仏法ぶっぽうをば*さしよせていへいへとおおせられそうろふ。 ほうきょうたいおおせられそうろふ。 信心しんじん安心あんじんといへば、 愚痴ぐちのものはもんもしらぬなり。 信心しんじん安心あんじんなどいへば、 べつのやうにもおもふなり。 ただぼんぶつることををしふべし。 しょうたすけたまへと弥陀みだをたのめといふべし。 なにたる愚痴ぐちしゅじょうなりとも、 きてしんをとるべし。 *とうりゅうには、 これよりほかの法門ほうもんはなきなりとおおせられそうろふ。

¬*安心あんじんけつじょう¼ (本) にいはく、 「じょう法門ほうもんは、 だいじゅうはちがんをよくよくこころうるのほかにはなきなり」 といへり。

しかれば、 *ふみには 「一心いっしん一向いっこうぶつたすけたまへともうさんしゅじょうをば、 たとひ罪業ざいごうじんじゅうなりとも、 かならず弥陀みだ如来にょらいはすくひましますべし。 これすなはちだいじゅうはち念仏ねんぶつおうじょう誓願せいがんこころなり」 といへり。

(186)

一 ^しんをとらぬによりてわろきぞ。 ただしんをとれとおおせられそうろふ。 ぜんしきのわろきとおおせられけるは、 しんのなきことをわろきとおおせらるるなり。 しかれば、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)、 あるひとを、 *ごんどうだんわろきとおおせられそうろふところに、 そのひともうされそうろふ。 なにごとも*ぎょのごとくとぞんそうろふともうされそうらへば、 おおせられそうろふ。 *ふつとわろきなり。 しんのなきはわろくはなきかとおおせられそうろふと 云々うんぬん

(187)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 なにたることをきこしめしても、 おんこころには*ゆめゆめかなはざるなりと。 一人いちにんなりともひとしんをとりたることをきこしめしたきと、 おんひとりごとにおおせられそうろふ。 いっしょうは、 ひとしんをとらせたくおぼされそうろふよしおおせられそうろふ。

(188)

一 ^しょうにん (親鸞)りゅうはたのむ一念いちねんのところ肝要かんようなり。 ゆゑに、 たのむといふことをば代々だいだいあそばしおかれそうらへども、 くはしくなにとたのめといふことをしらざりき。 しかれば、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんだいに、 ふみおんつくそうらひて、 「ぞうぎょうをすてて、 しょうたすけたまへと一心いっしん弥陀みだをたのめ」 と、 あきらかにしらせらそうろふ。 しかれば、 再興さいこうしょうにんにてましますものなり。

(189)

一 ^よきことをしたるがわろきことあり、 わろきことをしたるがよきことあり。 よきことをしても、 われはほうにつきてよきことをしたるとおもひ、 *われといふことあればわろきなり。 あしきことをしても、 しんちゅうをひるがへし本願ほんがんすれば、 わろきことをしたるがよきどうになるよしおおせられそうろふ。 しかれば、 蓮如しょうにんは、 まゐらせこころがわろきとおおせらるるとうんぬん

(190)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 おもひよらぬものがぶんぎてものいだそうらはば、 ひとさいあるべきとおもふべし。 わが*こころならひにひとよりものをいだせばうれしくおもふほどに、 なんぞようをいふべきときは、 ひとがさやうにするなりとおおせられそうろふ。

(191)

一 ^くさきむかひばかりみて、 あしもとをみねば、 *みかぶるべきなり。 ひとのうへばかりみて、 わがのうへのことを*たしなまずは、 いちだいたるべきとおおせられそうろふ。

(192)

一 ^ぜんしきおおせなりとも、 るまじなんどおもふは、 おおきなるあさましきことなり。 らざることなりとも、 おおせならばるべきとぞんずべし。 このぼんぶつるうへは、 *さてあるまじきとぞんずることあるべきか。 しかればどうしゅう*近江おうみうみひとしてうめよとおおそうろふとも、 *かしこまりたるともうすべくそうろふ。 おおせにてそうらはば、 らぬことあるべきかともうされそうろふ。

(193)

一 ^*いたりてかたきはいしなり、 いたりてやはらかなるはみずなり、 みずよくいし*穿うがつ、 *心源しんげんもしてっしなば*だい覚道かくどうなにごとかじょうぜざらん」 といへるふることばあり。 いかにしんなりとも、 ちょうもんこころれまうさば、 慈悲じひにてそうろふあひだ、 しんをうべきなり。 ただ仏法ぶっぽうちょうもんにきはまることなりとうんぬん

(194)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 しんけつじょうひとをみて、 あのごとくならではとおもへばなるぞとおおせられそうろふ。 あのごとくになりてこそと*おもひすつること、 あさましきことなり。 仏法ぶっぽうにはをすててのぞみもとむるこころより、 しんをばることなりとうんぬん

(195)

一 ^ひとのわろきことはよくよくみゆるなり。 わがのわろきことはおぼえざるものなり。 わがにしられてわろきことあらば、 よくよくわろければこそにしられそうろふとおもひて、 しんちゅうをあらたむべし。 ただひとのいふことをばよく信用しんようすべし。 わがわろきことは*おぼえざるものなるよしおおせられそうろふ。

(196)

一 ^けんものがたりあるしきにては、 *けっほうのことをいふこともあり。 さやうの*だん*ひとなみたるべし。 こころにはだんあるべからず。 あるいは*講談こうだん、 または仏法ぶっぽう*讃嘆さんだんなどいふとき一向いっこうものをいはざることおおきなるちがひなり。 仏法ぶっぽう讃嘆さんだんとあらんときは、 いかにもしんちゅうをのこさず、 あひたがひにしんしん談合だんごうもうすべきことなりとうんぬん

(197)

一 ^*かねがもり*ぜんじゅうに、 あるひともうされそうろふ。 *このあひだ、 *さこそ*徒然つれづれおんそうらひつらんともうしければ、 ぜんじゅうもうされそうろふ。 わがはちじゅうにあまるまで徒然つれづれといふことをしらず。 そのゆゑは、 弥陀みだおんのありがたきほどをぞんじ、 さん聖教しょうぎょうとう拝見はいけんもうそうらへば、 こころおもしろくも、 またたふときことじゅうまんするゆゑに、 徒然つれづれなることも*さらになくそうろふともうされそうろふよしにそうろふ。

(198)

一 ^ぜんじゅうもうされそうろふとて、 ぜんじゅうしょうにん (実如) おおせられそうろふ。 あるひとぜんじゅう宿しゅくしょそうろふところに、 くつをもそうらはぬに、 仏法ぶっぽうのこともうしかけられそうろふ。 またあるひともうされそうろふは、 くつをさへぬがれそうらはぬに、 いそぎかやうにはなにとておおそうろふぞと、 ひともうしければ、 ぜんじゅうもうされそうろふは、 づるいきるをまたぬうきなり。 もしくつをぬがれぬまにきょそうらはば、 いかがそうろふべきともうされそうろふ。 ただ仏法ぶっぽうのことをば、 さしいそもうすべきのよしおおせられそうろふ。

(199)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)ぜんじゅうのことをおおせられそうろふ。 いまだ*むら殿どのぼう、 その沙汰さたもなきとき、 *かみもりをとほりくにこうのとき、 輿こしよりおりられそうらひて、 むら殿どのかたをさして、 この*とほりにて仏法ぶっぽうがひらけまうすべしともうされそうらひし。 人々ひとびと、 これはとしよりてかやうのことをもうされそうろふなどもうしければ、 つひに*ぼうこんりゅうにてはんじょうそうろふ。 思議しぎのこととおおせられそうらひき。 またぜんじゅう法然ほうねんしんなりと、 *じょうひともうしつると、 おなじくおおせられそうらひき。 かのおうじょう八月はちがつ*じゅうにちにてそうろふ。

(200)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) *ひがしやま*おんそうらひて、 いづかたに御座ござそうろふとも、 ひとぞんぜずそうらひしに、 このぜんじゅうあなたこなたたずねまうされければ、 あるところにておんにかかられそうろふ。 *一段いちだん*迷惑めいわくていにてそうらひつるあひだ、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんにも*さだめてぜんじゅうかなしまれまうすべきとおぼされそうらへば、 ぜんじゅうおんにかかられ、 あらありがたや、 *はや仏法ぶっぽうはひらけまうすべきよともうされそうろふ。 つひにこのことば*ごうそうろふ。 ぜんじゅう思議しぎひとなりと、 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうらひしよし、 しょうにん (実如) おおせられそうらひき。

(201)

一 ^ぜんじゅうしょうにん (実如)先年せんねん*大永だいえいさん蓮如れんにょしょうにん*じゅうねん三月さんがつはじめごろ、 御夢おんゆめらんそうろふ。 どうじょうだんみなみかた前々ぜんぜんじゅうしょうにん御座ござそうらひて、 むらさきおんそでをめされそうろふ。 ぜんじゅうしょうにん (実如)たいしまゐらせられ、 おおせられそうろふ。 仏法ぶっぽう讃嘆さんだん談合だんごうにきはまる。 よくよく讃嘆さんだんすべきよしおおせられそうろふ。 まことに*そうともいふべきことなりとおおせられそうらひき。 しかればそのとし、 ことに讃嘆さんだん肝要かんようおおせられそうろふ。 それにつきておおせられそうろふは、 仏法ぶっぽうひとよろこほうなり。 ひとてさへたふときに、 ましてふたよりはばいかほどありがたかるべき。 仏法ぶっぽうをばただよりより談合だんごうもうせのよしおおせられそうろふなり。

(202)

一 ^しんちゅうあらたそうらはんともうひと、 なにをかまづあらたそうらはんともうされそうろふ。 よろづわろきことをあらためてと、 かやうにおおせられそうろふ。 *いろをたて、 きはをもうしいでてあらたむべきことなりとうんぬん。 なににてもあれ、 ひとなおさるるをききて、 われもなおるべきとおもうて、 わが*とがをもうしいださぬは、 なおらぬぞとおおせられそうろふとうんぬん

(203)

一 ^仏法ぶっぽう談合だんごうのときものもうさぬは、 しんのなきゆゑなり。 わがこころ*たくみあんじてもうすべきやうにおもへり。 よそなるものをたづねいだすやうなり。 こころにうれしきことはそのままなるものなり。 かんなればかんねつなればねつと、 そのままこころのとほりをいふなり。 仏法ぶっぽうしきにてものもうさぬことは、 しんのゆゑなりまただんといふこともしんのうへのことなるべし。 *細々さいさいどうぎょうより讃嘆さんだんもうさば、 だんはあるまじきのよしにそうろふ。

(204)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 一心いっしんけつじょうのうへ、 弥陀みだおんたすけありたりといふは、 *さとりのかたにしてわろし。 たのむところにてたすけたまひそうろふことは歴然れきぜんそうらへども、 おんたすけあらうずというてしかるべきのよしおおせられそうろうんぬん*一念いちねんみょうとき退たいくらいじゅうす。 これ退たい*密益みつやくなり、 これ*はんぶんなるよしおおせられそうろふとうんぬん

(205)

一 ^*徳大とくだい唯蓮ゆいれんぼう*摂取せっしゅしゃ*ことわりをしりたきと、 *うん弥陀みだ*せいありければ、 そうに、 弥陀みだ*いまのひとそでをとらへたまふに、 にげけれどもしかととらへてはなしたまはず。 摂取せっしゅといふは、 にぐるものをとらへておきたまふやうなることと、 ここにておもひつきたり。 これをごとおおせられそうろふ。

(206)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) 病中びょうちゅうに、 *けん*兼縁けんえんぜんこうして、 あるときたずねまうされそうろふ。 みょうといふことはなにとしたることにてそうろふともうせば、 おおせられそうろふ。 みょうかなふといふは、 弥陀みだをたのむことなるよしおおせられそうろふとうんぬん

(207)

一 ^ひと仏法ぶっぽうのことをもうしてよろこばれば、 われはそのよろこぶひとよりもなほたふとくおもふべきなり。 ぶっをつたへまうすによりて、 かやうにぞんぜられそうろふこととおもひて、 *ぶっ御方おんかたをありがたくぞんぜらるべしとのそうろふ。

(208)

一 ^ふみをよみてひとちょうもんさせんとも、 報謝ほうしゃぞんずべし。 いっ一言いちごん*しんのうへよりもうせばひと信用しんようもあり、 また報謝ほうしゃともなるなり。

(209)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 弥陀みだこうみょうは、 たとへばぬれたるものをほすに、 うへより*ひて、 したまでひるごとくなることなり。 これはちからなり。 けつじょうこころおこるは、 これすなはちりき*しょなり。 ざいしょうはことごとく弥陀みだおんしあることなるよしおおせられそうろふとうんぬん

(210)

一 ^信心しんじんじょうひとはたれによらず、 まづみればすなはちたふとくなりそうろふ。 これそのひとのたふときにあらず。 ぶっをえらるるがゆゑなれば、 弥陀みだぶっのありがたきほどをぞんずべきことなりとうんぬん

(211)

一 ^蓮如れんにょしょうにん病中びょうちゅうときおおせられそうろふ。 しんなにごともおぼしのこさるることなしと。 ただきょうだいのうち、 そのほかたれにもしんのなきをかなしくおぼそうろふ。 けんには*よみぢのさはりといふことあり。 われにおいてはおうじょうすともそれなし。 ただしんのなきこと、 これをなげかしくおぼそうろふとおおせられそうろふと。

(212)

一 ^蓮如れんにょしょうにん*あるいはひとしゅをもくだされ、 ものをもくだされて、 かやうのことどもありがたくぞんぜさせちかづけさせられそうらひて、 仏法ぶっぽうおんきかせそうろふ。 さればかやうにものくだされそうろふことも、 しんをとらせらるべきためとおぼせば、 報謝ほうしゃおぼそうろふよしおおせられそうろふとうんぬん

(213)

一 ^おなじくおおせにいはく、 *こころたとおもふはこころぬなり。 こころぬとおもふはこころたるなり。 弥陀みだおんたすけあるべきことのたふとさよとおもふが、 こころたるなり。 すこしもこころたるとおもふことはあるまじきことなりとおおせられそうろふ。 されば ¬*でんしょう¼ (4) にいはく、 「さればこののうへにたもつところの弥陀みだぶっ*つのらんよりほかは、 ぼんいかでかおうじょう*得分とくぶんあるべきや」 といへり。

(214)

一 ^*しゅう菅生すごう*がんしょう*ぼう聖教しょうぎょうをよまれそうろふをききて、 聖教しょうぎょうしゅしょうそうらへども、 *しんおんりなくそうろふあひだ、 たふとくもおんりなきともうされそうろふ。 このことを前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) きこしめし、 *れんをめしのぼせられ、 ぜんにてだん聖教しょうぎょうをもよませられ、 ほうのことをもおおせきかせられて、 *がんしょうおおせられそうろふ。 れん聖教しょうぎょうをもよみならはせ、 仏法ぶっぽうのことをもおおせきかせられそうろふよしおおせられそうらひて、 くにおんくだそうろふ。 そののち聖教しょうぎょうをよまれそうらへば、 いまこそしゅしょうそうらへとて、 ありがたがられそうろふよしにそうろふ。

(215)

一 ^蓮如れんにょしょうにんようしょうなるものには、 まづものをよめとおおせられそうろふ。 またそののちは、 いかによむとも*ふくせずは*せんあるべからざるよしおおせられそうろふ。 ちとものこころもつきそうらへば、 いかにものをよみしょうをよくよみしりたるとも、 *義理ぎりをわきまへてこそとおおせられそうろふ。 そののちは、 いかに*もんしゃくおぼえたりとも、 しんがなくは*いたづらごとよとおおせられそうろふ。

(216)

一 ^しんちゅうのとほり、 あるひとほうきょうぼうもうされそうろふ。 *おんことばのごとくは*かくつかまつそうらへども、 ただだん*沙汰さたにて、 あさましきことのみにそうろふともうされそうろふ。 そのときほうきょうぼうもうされそうろふ。 それはおんことばのごとくにてはなくそうろふ。 *勿体もったいなきもうされごとにそうろふ。 おんことばには、 だん沙汰さた*なせそとこそ、 あそばされそうらへともうされそうろふとうんぬん

(217)

一 ^ほうきょうぼうに、 あるひと*しんもうされそうろふ。 これほど仏法ぶっぽうおんこころをもれられそうろほうきょうぼう*こうしんなる、 いかがのそうろふよしもうされそうらへば、 ほうきょうぼうもうされそうろふ。 *しんさることなれども、 これほどちょうせきふみをよみそうろふに、 おどろきまうさぬしんちゅうが、 なにかほうきょう*もうぶんにてきいれそうろふべきともうされそうろふとうんぬん

(218)

一 ^*じゅんせいもうされそうろふ。 仏法ぶっぽうものがたりもうすに、 *かげにてもうそうろだんは、 なにたるわろきことをかもうすべきとぞんじ、 わきよりあせたりまうしそうろふ。 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) きこすところにてもうときは、 わろきことをば*やがておんなほしあるべきとぞんそうろふあひだ、 こころやすぞんそうらひて、 ものをももうされそうろふよしにそうろふ。

(219)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 しん一向いっこうしらぬとは*各別かくべつなり。 らぬことをもしんもうすこと、 いはれなくそうろふ。 もの分別ふんべつして、 あれはなにと、 これはいかがなどいふやうなることがしんにてそうろふ。 さいもしらずしてもうすことを、 しんもうしまぎらかしそうろふよしおおせられそうろふ。

(220)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 *ほんぼうをばしょうにん (親鸞) ぞんしょうときのやうにおぼされそうろふ。 しんは、 *留主るす*とう沙汰さたそうろふ。 しかれどもおんおんわすそうろふことはなくそうろふと、 *とき法談ほうだんおおせられそうらひき。 とき*受用じゅようそうろふあひだにも、 すこしもおんわすそうろふことは*おんりなきとおおせられそうろふ。

(221)

一 ^*善如ぜんにょしょうにん*しゃくにょしょうにんりょうだいのこと、 ぜんじゅうしょうにん (実如) おおせられそうろふこと、 りょうだい*威儀いぎほん沙汰さたそうらひしよしおおせられし。 しかれば、 いまにえいおんそうろふよしおおせられそうろふ。 袈裟げさごろもにてそうろふ。 しかれば、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん御時おんとき、 あまたりゅうにそむきそうろ本尊ほんぞん以下いげ*おん風呂ふろのたびごとにかせられそうろふ。 このふくえいをもかせらるべきにておんりいだしそうらひつるが、 いかがおぼそうらひつるやらん、 ひょう書付かきつけを 「よし・わろし」 と*あそばされて、 とりておかせられそうろふ。

このことをいまあんそうらへば、 *だいのうちさへかやうにおんちがそうろふ。 ましていはんや*われらしきのものはちがひたるべきあひだ、 いちだいぞんじつつしめよとのおんことにそうろふ。 いまおぼしあはせられそうろふよしおおせられそうろふなり。

また 「よし・わろし」 とあそばされそうろふこと、 わろしとばかりあそばしそうらへば、 先代せんだいおんことにてそうらへばとおぼし、 かやうにあそばされそうろふことにそうろふとおおせられそうろふ。 また前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)御時おんとき、 あまた*昵近じっきんのかたがたちがひまうすことそうろふ。 いよいよいちだい仏法ぶっぽうのことをば、 こころをとどめて細々さいさいひとこころまうすべきのよしおおせられそうろふ。

(222)

一 ^仏法ぶっぽうしゃのすこしのちがひをては、 *あのうへさへかやうにそうろふとおもひ、 わがをふかくたしなむべきことなり。 しかるを、 あのうへさへおんちがそうろふ、 ましてわれらは*ちがそうらはではとおもふこころ、 おほきなるあさましきことなりとうんぬん

(223)

一 ^仏恩ぶっとんたしなむとおおそうろふこと、 けんものたしなむなどといふやうなることにてはなし。 しんのうへにたふとくありがたくぞんじよろこびまうすすきだいもうとき、 かかる広大こうだいおんをわすれまうすことのあさましさよと、 ぶっにたちかへりて、 ありがたやたふとやとおもへば、 *おんもよほしにより念仏ねんぶつもうすなり。 たしなむとはこれなるよしのそうろふ。

(224)

一 ^仏法ぶっぽう*厭足えんそくなければ、 ほう思議しぎをきくといへり。 ぜんじゅうしょうにん (実如) おおせられそうろふ。 たとへばじょうにわがすきこのむことをばしりてもしりても、 なほよくしりたうおもふに、 ひとひ、 いくたびも*数奇すきたることをばきてもきても、 よくききたくおもふ。 仏法ぶっぽうのこともいくたびきてもあかぬことなり。 しりてもしりてもぞんじたきことなり。 ほうをば、 幾度いくたび幾度いくたびひとひきはめまうすべきことなるよしおおせられそうろふ。

(225)

一 ^*けんへつかふことは、 ぶつもの*いたづらにすることよと、 おそろしくおもふべし。 さりながら、 仏法ぶっぽうかたへはいかほどものれてもあかぬどうなり。 また報謝ほうしゃにもなるべしとうんぬん

(226)

一 ^ひと辛労しんろうもせでとくをとる*じょうぼんは、 弥陀みだをたのみてぶつるにすぎたることなしおおせられそうろふとうんぬん

(227)

一 ^みなひとごとによきことをいひもし、 はたらきもすることあれば、 *真俗しんぞくともにそれを、 わがよきものにはやなりて、 そのこころにておんといふことはうちわすれて、 *わがこころほんになるによりて、 *みょうにつきて、 けん仏法ぶっぽうともにしきこころがかならずかならずしゅつらいするなり。 いちだいなりとうんぬん

(228)

一 ^*さかいにて兼縁けんえん前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)*ふみおんもうそうろふ。 そのときおおせられそうろふ。 としもよりそうろふに、 *むつかしきことをもうそうろふ。 まづわろきことをいふよとおおせられそうろふ。 のちおおせられそうろふは、 ただ仏法ぶっぽうしんぜば、 いかほどなりともあそばしてしかるべきよしおおせられしとうんぬん

(229)

一 ^おなじくさかいぼうにて、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん夜更よふけて蝋燭ろうそくをともさせ、 みょうごうをあそばされそうろふ。 そのときおおせられそうろふ。 老体ろうたいにておんふるひ、 おんもかすみそうらへども、 みょうにちえっちゅうくだそうろふともうそうろふほどに、 かやうにあそばされそうろふ。 辛労しんろうをかへりみられずあそばされそうろふとおおせられそうろふ。 しかれば、 もんのために御身をばすてられそうろふ。 ひと辛労しんろうをもさせそうらはで、 ただしんをとらせたくおぼそうろふよしおおせられそうろふ。

(230)

一 ^*ちょうほう珍物ちんぶつ調ととの*経営けいえいをしてもてなせども、 じきせざればそのせんなし。 どうぎょうより讃嘆さんだんすれども、 しんをとるひとなければ、 珍物ちんぶつじきせざるとおなじことなりとうんぬん

(231)

一 ^ものにあくことはあれども、 ぶつることと弥陀みだおんよろこぶとは、 あきたることはなし。 くともせもせぬ*ちょうほうは、 南無なも弥陀みだぶつなり。 しかれば、 弥陀みだ広大こうだい慈悲じひしゅしょうなり。 しんあるひとるさへたふとし。 よくよくの慈悲じひなりとうんぬん

(232)

一 ^しんけつじょうひとは、 仏法ぶっぽうかたへは*をかろくもつべし。 仏法ぶっぽうおんをばおもくうやまふべしとうんぬん

(233)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 *宿しゅくぜんめでたしといふはわろし。 いちりゅうには*宿しゅくぜんありがたしともうすがよくそうろよしおおせられそうろふ。

(234)

一 ^しゅうにはほうにあひたるを宿しゅくえんといふ。 とうりゅうにはしんをとることを*宿しゅくぜんといふ。 信心しんじんをうること肝要かんようなり。 さればこのおんをしへには*ぐんをもらさぬゆゑに、 弥陀みだおしえをば*きょうともいふなり。

(235)

一 ^法門ほうもんをばもうすには、 とうりゅうのこころは信心しんじんいちもうひらてたる、 肝要かんようなりとうんぬん

(236)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 *仏法ぶっぽうしゃには*ほうりきにてるなり。 りきでなくはるべからずとおおせられそうろふ。 されば仏法ぶっぽうをば、 *がくしょうものしりは*いひたてず。 ただ*一文いちもん不知ふちも、 しんあるひとぶっくわへらるるゆゑに、 仏力ぶつりきにてそうろふあひだ、 ひとしんをとるなり。 このゆゑに聖教しょうぎょうよみとて、 しかもわれはとおもはんひとの、 仏法ぶっぽうをいひたてたることなしとおおせられそうろふことにそうろふ。 ただなにしらねども、 *信心しんじんじょうとくひとぶつよりいはせらるるあひだ、 ひとしんをとるとのおおせにそうろふ。

(237)

一 ^弥陀みだをたのめば南無なも弥陀みだぶつぬしるなり。 南無なも弥陀みだぶつぬしるといふは、 信心しんじんをうることなりとうんぬん。 また、 とうりゅう真実しんじつたからといふは南無なも弥陀みだぶつ、 これ一念いちねん信心しんじんなりとうんぬん

(238)

一 ^いちりゅうしんしゅうのうちにてほうをそしり、 わろさまにいふひとあり。 これをおもふに、 もんしゅうのことは*是非ぜひなし。 いっしゅうのうちにかやうのひともあるに、 われら宿しゅくぜんありてこのほうしんずるのたふとさよとおもふべしとうんぬん

(239)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) には、 なにたるものをもあはれみかはゆくおぼそうろふ。 だい罪人ざいにんとて*ひところそうろふこと、 一段いちだんおんかなしみそうろふ。 存命ぞんめいもあらばしんちゅうなおすべしとおおせられそうらひて、 *かんそうらひても、 しんちゅうをだにもなおそうらへば、 やがて*宥免ゆうめんそうろふとうんぬん

(240)

一 ^安芸あき**蓮崇れんそう*くにをくつがへし、 *くせごとにつきて、 *もんをはなされそうろふ。 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) 病中びょうちゅう*ないへまゐり、 おん詫言わびごともうそうらへども、 とりつぎそうろひとなくそうらひし。 その折節おりふし前々ぜんぜんじゅうしょうにんふとおおせられそうろふ。 安芸あき*なほさうとおもふよとおおせられそうろふ。 *きょうだい以下いげおんもうすには、 一度ひとたび仏法ぶっぽう*あだをなしまうすひとにてそうらへば、 いかがとおんもうそうらへば、 おおせられそうろふ。

それぞとよ、 あさましきことをいふぞとよ。 しんちゅうだになおらば、 なにたるものなりとも、 *おんもらしなきことにそうろふとおおせられそうらひて、 赦免しゃめんそうらひき。 そのときぜんへまゐり、 おんにかかられそうろとき感涙かんるいたたみにうかびそうろふとうんぬん。 しかうして*ちゅういんのうちに、 蓮崇れんそうないにて*すぎられそうろふ。

(241)

一 ^おうしゅういちりゅうのことをもうしまぎらかしそうろひとをきこしめして、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんおうしゅう*じょうゆうらんそうらひて、 もつてのほかふくりゅうそうらひて、 さてさて開山かいさんしょうにん (親鸞)りゅうもうしみだすことのあさましさよ、 にくさよとおおせられそうらひて、 おんをくひしめられて、 さてりきざみても*あくかよあくかよとおおせられそうろふとうんぬん仏法ぶっぽうもうしみだすものをば、 一段いちだんあさましきぞとおおせられそうろふとうんぬん

(242)

一 ^あん頂上ちょうじょうもうすべきは、 弥陀みだ如来にょらい*こうゆい本願ほんがんにすぎたることはなし。 このあんどう同心どうしんせば、 ぶつるべし。 同心どうしんとてべつになし。 *ほう一体いったいどうなりとうんぬん

(243)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 おんいっしょうがい沙汰さたそうろふこと、 みな仏法ぶっぽうにて、 方便ほうべん*調ちょうほうそうらひて、 ひとしんおんとらせあるべきおんことわりにてそうろふよしおおせられそうろうんぬん

(244)

一 ^おなじく病中びょうちゅうおおせられそうろふ。 いまわがいふことは*金言きんげんなり。 *かまへてかまへて、 よくこころよとおおせられそうろふ。 またえいのこと、 さんじゅういちにつづくることにてこそあれ。 これは法門ほうもんにてあるぞとおおせられそうろふとうんぬん

(245)

一 ^*しゃ三人さんにんしゃ一人いちにん」 とて、 なにごとも談合だんごうすれば面白おもしろきことあるぞと、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)ぜんじゅうしょうにん (実如)おんもうそうろふ。 これまた仏法ぶっぽうがたにはいよいよ肝要かんよう金言きんげんなりとうんぬん

(246)

一 ^蓮如れんにょしょうにん*じゅんせいたいおおせられそうろふ。 ほうきょうとわれとはきょうだいよとおおせられそうろふ。 ほうきょうもうされそうろふ。 これは*みょうもなきおんことともうされそうろふ。 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 しん*えつれば、 さきにうまるるものはあにあとうまるるものはおとうとよ。 ほうきょうとはきょうだいよとおおせられそうろふ。 「仏恩ぶっとん*一同いちどうにうれば、 信心しんじんいっのうへは*かいみなきょうだい(*論註・下意) といへり。

(247)

一 ^みなみ殿どの*山水さんすい*えんとこのうへにて、 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 ものおもひたるよりおおきにちがふといふは、 極楽ごくらくへまゐりてのことなるべし。 ここにてありがたやたふとやとおもふは、 *ものかずにてもなきなり。 かのしょうじてのかんは、 *ことのはもあるべからずとおおせられしと。

(248)

一 ^ひとはそらごともうさじとたしなむを、 *随分ずいぶんとこそおもへ。 こころいつわりあらじとたしなひとは、 *さのみおおくはなきものなり。 またよきことはならぬまでも、 けん仏法ぶっぽうともにこころにかけたしなみたきことなりとうんぬん

(249)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 ¬*安心あんじんけつじょうしょう¼ のこと、 じゅうねんがあひだらんそうらへども、 らんじあかぬとおおせられそうろふ。 また、 こがねをほりいだすやうなる聖教しょうぎょうなりとおおせられそうろふ。

(250)

一 ^大坂おおざか殿どのにておのおのへたいせられおおせられそうろふ。 このあひだもうししことは、 ¬安心あんじんけつじょうしょう¼ のかたはしをおおせられそうろふよしにそうろふ。 しかれば、 とうりゅうは ¬安心あんじんけつじょうしょう¼ の、 いよいよ肝要かんようなりとおおせられそうろふとうんぬん

(251)

一 ^ほうきょうもうされそうろふ。 *たふとむひとより、 たふとがるひとぞたふとかりけると。 前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 面白おもしろきことをいふよ。 たふとむてい*しゅしょうぶりするひとはたふとくもなし。 ただありがたやとたふとがるひとこそたふとけれ。 面白おもしろきことをいふよ、 もつとものことをもうされそうろふとのおおせごとにそうろふとうんぬん

(252)

一 ^*ぶんさんしょうがつじゅうにちよる兼縁けんえんゆめにいはく、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん兼縁けんえんおんといありておおせられそうろふやう、 *いたづらにあることあさましくおぼそうらへば、 けいかたがた、 せめて一巻いっかんきょうをも、 いち、 みなみなよりひてよみまうせとおおせられけりとうんぬん。 あまりにひとのむなしくつきおくそうろふことをかなしくおぼそうろふゆゑのそうろふ。

(253)

一 ^おなじくゆめにいはく、 同年どうねん*極月ごくげつじゅう八日はちにちよる前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)おん袈裟けさころもにてふすましょうをあけられおんそうろふあひだ、 法談ほうだんちょうもんもうすべきこころにてそうろふところに、 *ついたちしょうのやうなるものに、 ふみおんことばおんそうろふをよみまうすをらんじて、 それはなんぞとおんたずそうろふあひだ、 ふみにてそうろふよしもうそうらへば、 それこそ肝要かんよう信仰しんこうしてきけとおおせられけりとうんぬん

(254)

一 ^おなじくゆめにいはく、 *翌年よくねん極月ごくげつじゅうにち前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふやうは、 いえをばよくつくられて、 信心しんじんをよくとり念仏ねんぶつもうすべきよし、 かたくおおせられそうらひけりとうんぬん

(255)

一 ^おなじくゆめにいはく、 近年きんねん*大永だいえいさんしょうがつ一日ついたちゆめにいはく、 *むら殿どのみなみ殿どのにて前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせにいはく、 仏法ぶっぽうのこといろいろおおせられそうらひてのち田舎いなかには*ぞうぎょう*雑修ざっしゅあるを、 かたくもうしつくべしとおおせられそうろふとうんぬん

(256)

一 ^おなじくゆめにいはく、 *大永だいえいろくしょうがついつゆめ前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 いちだいにてそうろふ。 *いまぶんがよきときにてそうろふ。 ここをとりはづしてはいちだいおおせられそうろふ。 かしこまりたりとおんうけおんもうそうらへば、 ただそのかしこまりたるといふにてはなくそうろふまじくそうろ。 ただいちだいにてそうろふよしおおせられそうらひしとうんぬん

 つぎのゆめにいはく、 *蓮誓れんせいおおそうろふ。 *吉崎よしざき ˆにてˇ 前々ぜんぜんじゅうしょうにんとうりゅう肝要かんようのことをならひまうしそうろふ。 いちりゅうようなき聖教しょうぎょうやなんどをひろくみて、 りゅう*ひがざまにとりなしそうろふことそうろふ。 さいわひに肝要かんようそうろ聖教しょうぎょうそうろふ。 これがいちりゅう*ごくなりと、 吉崎よしざきにて前々ぜんぜんじゅうしょうにんならひまうしそうろふと、 蓮誓れんせいおおせられそうらひしとうんぬん

 わたくしにいはく、 ゆめとうをしるすこと、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんりたまへば、 いまはその一言いちごんをも大切たいせつぞんそうらへば、 かやうにゆめりておおそうろふことの金言きんげんなること、 まことのおおせともぞんずるまま、 これをしるすものなり。 まことにこれはそうとももうすべきことどもにてそうろふ。 総体そうたいゆめ妄想もうぞうなり、 さりながら、 *権者ごんじゃのうへには*ずいとてあることなり。 なほもつてかやうの金言きんげんのことばはしるすべしとうんぬん

(257)

一 ^仏恩ぶっとんがたふとくそうろふなどともうすはきにくくそうろふ、 *りょうなり。 仏恩ぶっとんをありがたくぞんずともうせば、 *莫大ばくだいきよくそうろふよしおおせられそうろふとうんぬんふみがともうすもりょうなり。 ふみちょうもんもうして、 ふみありがたしともうしてよきよしにそうろふ。 仏法ぶっぽうかたをばいかほどもそんきょうもうすべきこととうんぬん

(258)

一 ^仏法ぶっぽう讃嘆さんだんのとき、 どうぎょうをかたがたともうすは*平懐へいがいなり。 おん方々かたがたもうしてよきよしおおせごととうんぬん

(259)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 いえをつくりそうろふとも、 *つぶりだにぬれずは、 なにともかともつくるべし。 ばんぶんなることをおんきらひそうろふ。 しょうとうにいたるまでも、 よきものんとおもふはあさましきことなり。 みょうぞんじ、 ただ仏法ぶっぽうこころにかけよとおおせられそうろうんぬん

(260)

一 ^おなじくおおせられそうろふ。 いかやうのひとにてそうろふとも、 *仏法ぶっぽういえ奉公ほうこうもうそうらはば、 昨日きのうまではしゅうにてそうろふとも、 今日きょうははや仏法ぶっぽうゆうとこころうべくそうろふ。 たとひ*あきなひをするとも、 仏法ぶっぽうゆうこころべきとおおせられそうろふ。

(261)

一 ^おなじくおおせにいはく、 あめもふり、 また*炎天えんてんぶんは、 *つとめながながしくつかまつそうらはで、 はやくつかまつりて、 ひと*たたせそうろふがよくそうろふよしおおせられそうろふ。 これも慈悲じひにて、 人々ひとびとおんいたはりそうろふ。 だいだいおんあはれみにそうろふ。 つねづねのおおせには、 おんひとおんしたがひそうらひて、 仏法ぶっぽうおんすすめそうろふとおおせられそうろふ。 もんにてぎょのごとくならざること、 *なかなかあさましきことども、 なかなか*もうすもことおろかにそうろふとのそうろふ。

(262)

一 ^しょうぐん *義尚よしひさ よりのにて、 *しゅう一国いっこくいっもんはなさるべきとのにて、 *しゅうきょじゅうそうろきょうだいしゅうをもめしのぼせられそうろふ。 そのとき前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 しゅうしゅうもんはなすべきとおおせいだされそうろふこと、 おんをきらるるよりもかなしくおぼそうろふ。 なにごとをもしらざる*あまにゅうどうたぐいのことまでおぼさば、 なにとも迷惑めいわくこのことにきわまるよしおおせられそうろふ。 もん*やぶらるるともうすことは、 一段いちだんぜんしきおんうへにてもかなしくおぼそうろふことにそうろふ。

(263)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 もんしゅう*はじめてものをまゐらせそうろふを、 しゅういだそうろあしくそうろふ。 いち二度にど受用じゅようせしめそうらひて、 いだそうらひてしかるべきのよしおおせられそうろふ。 かくのごとくのさいぞんじもよらぬことにてそうろふ。 いよいよ仏法ぶっぽうゆうおんをおろそかにぞんずべきことにてはなくそうろふ。 おどろそうろふとのことにそうろふ。

(264)

一 ^ほうきょうぼう大坂おおざか殿どのくだられそうろふところに、 前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 *おうじょうそうろふとも、 じゅうねんくべしとおおせられそうろふところに、 なにかともうされ、 *おしかへし、 くべしとおおせられそうろふところ、 おうじょうありて一年いちねん存命ぞんめいそうろふところに、 ほうきょうにあるひとおおせられそうろふは、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふにあひまうしたるよ。 そのゆゑは、 一年いちねん存命ぞんめいそうろふは、 いのち前々ぜんぜんじゅうしょうにんよりおんあたへそうろふことにてそうろふとおおそうらへば、 まことに*さにておんそうろふとて、 をあはせ、 ありがたきよしをもうされそうろふ。 それよりのち前々ぜんぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふごとく、 じゅうねん存命ぞんめいそうろふ。 まことにみょうかなはれそうろふ。 思議しぎなるひとにてそうろふ。

(265)

一 ^まいようなることをつかまつそうろみょうなきよし、 *条々じょうじょう、 いつもおおせられそうろふよしにそうろふ。

(266)

一 ^蓮如れんにょしょうにん*ものをきこしめしそうろふにも、 如来にょらいしょうにん (親鸞)おんにてましましそうろふをおんわすれなしとおおせられそうろふ。 一口ひとくちきこしめしても、 おぼしいだされそうろふよしおおせられそうろふとうんぬん

(267)

一 ^ぜんらんじても、 *ひとはぬめしふことよとおぼそうろふとおおせられそうろふ。 ものをすぐにきこしめすことなし。 ただおんのたふときことをのみおぼそうろふとおおせられそうろふ。

(268)

一 ^*きょうろくねんじゅうがつじゅう八日はちにち兼縁けんえんゆめに、 蓮如れんにょしょうにんふみをあそばしくだされそうろふ。 そのおんことばに、 梅干うめぼしのたとへそうろふ。 梅干うめぼしのことをいへば、 みなひとくち一同いちどうし。 *いち安心あんじんはかやうにあるべきなり。 「同一どういつ念仏ねんぶつ別道べつどう(論註・下)こころにてそうらひつるやうにおぼえそうろうんぬん

(269)

一 ^仏法ぶっぽうかざるがゆゑにたしなそうらはずと、 *空善くうぜんもうされそうらへば、 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 それは、 このまぬはきらふにてはなきかとおおせられそうろふとうんぬん

(270)

一 ^*ほうひと仏法ぶっぽう*れいにするとおおせられそうろふ。 仏法ぶっぽう讃嘆さんだんあれば、 あらづまりや、 *くはてよかしとおもふは、 れいにするにてはなきかとおおせられそうろふとうんぬん

(271)

一 ^ぜんじゅう(実如) 病中びょうちゅう*しょうがつじゅうよっおおせられそうろふ。 前々ぜんぜんじゅう (蓮如)早々そうそうわれにいと、 ひだりおんにておんまねきそうろふ。 あらありがたやと、 くりかへしくりかへしおおせられそうらひて、 念仏ねんぶつおんもうそうろふほどに、 おのおの*おんこころたがひそうらひて、 かやうにもおおそうろふとぞんそうらへば、 そのにてはなくして、 おんまどろみそうろ御夢おんゆめらんぜられそうろふよしおおせられそうろふところにて、 みなみなあんそうらひき。 これまた*あらたなる御事おんことなりとうんぬん

(272)

一 ^おなじきじゅうにちけん兼縁けんえんたいせられおおせられそうろふ。 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) *御世みよゆずりあそばされてらいのことども、 種々しゅじゅおおせられそうろふ。 *一身いっしん安心あんじんのとほりおおせられ、 一念いちねん弥陀みだをたのみまうしておうじょういちじょうおぼされそうろふ。 それにつきて、 ぜんじゅうしょうにん (蓮如)おんにて、 今日までわれとおもこころをもちそうらはぬがうれしくそうろふとおおせられそうろふ。 まことにありがたくも、 またはおどろきいりまうしそうろふ。 われ、 ひと、 かやうにこころまうしてこそは、 りき信心しんじんけつじょうもうしたるにてはあるべくそうろふ。 いよいよいちだいおんことにそうろふ。

(273)

一 ^¬*嘆徳たんどくもん¼ に、 親鸞しんらんしょうにんもうせば、 その*おそれあるゆゑに、 祖師そししょうにんとよみそうろふ。 また開山かいさんしょうにんとよみまうすも、 おそれあるさいにておんそうろうんぬん

(274)

一 ^ただ 「しょうにん」 と*じきもうせば、 りょうなり。 「このしょうにん」 ともうすも、 りょうか。 「開山かいさん」 とは、 りゃくしてはもうすべきかとのことにそうろふ。 ただ 「開山かいさんしょうにん」 ともうしてよくそうろふとうんぬん

(275)

一 ^¬嘆徳たんどくもん¼ に、 「もっぜいたくす」 ともうすことを、 「もって」 をきてはよまずそうろふとうんぬん

(276)

一 ^蓮如れんにょしょうにんさかいぼう御座ござときけんおんまゐりそうろふ。 どうにおいてしょくのうへにふみをおかせられて、 一人いちにんにん 乃至 にんじゅうにん、 まゐられそうろ人々ひとびとたいし、 ふみをよませられそうろふ。 その蓮如れんにょしょうにんおん物語ものがたりのときおおせられそうろふ。 このあひだ面白おもしろきことをおもひいだしてそうろふ。 つねにふみ一人いちにんなりともきたらんひとにもよませてきかせば、 *えんひとしんをとるべし。 このあひだ面白おもしろきことをあんしいだしたると、 くれぐれおおせられそうろふ。 さてふみ肝要かんようおんことと、 いよいよしられそうろふとのこととおおせられそうろふなり。

(277)

一 ^こんじょうのことをこころるるほど、 仏法ぶっぽう心腹しんぷくれたきことにてそうろふと、 ひともうそうらへば、 けん*対様たいようしてもうすことは*大様おおようなり。 ただ仏法ぶっぽうをふかくよろこぶべしうんぬん。 またいはく、 一日いちにち一日いちにち仏法ぶっぽうはたしなみそうろふべし。 *いちとおもへば*たいなりと、 ひともうされそうろふ。 またいはく、 たいなるとおもふはそくなり。 ひととしていのちはいかほどもながくそうらひても、 あかずよろこぶべきことなりとうんぬん

(278)

一 ^*ぼうひとをさへかんせられそうろふに、 わがかんせられぬはあさましきことなりとうんぬん

(279)

一 ^どうしゅう前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)*ふみもうされそうらへば、 おおせられそうろふ。 ふみはとりおとしそうろふこともそうろふほどに、 ただこころしんをだにもとりそうらへば、 おとしそうらぬよしおおせられそうらひし。 またあくるとし、 あそばされて、 くだされそうろふ。

(280)

一 ^ほうきょうぼうもうされそうろふ。 仏法ぶっぽうをかたるに、 *こころざしひとをまへにおきてかたそうらへば、 ちからがありてもうしよきよしもうされそうろふ。

(281)

一 ^しんもなくてだい聖教しょうぎょうしょひとは、 をさなきものにつるぎたせそうろふやうにおぼそうろふ。 そのゆゑは、 つるぎちょうほうなれども、 をさなきものそうらへば、 怪我けがをするなり。 ちてよくそうろひとちょうほうになるなりとうんぬん

(282)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 ただいまなりとも、 われ、 ねといはば、 ぬるものはあるべくそうろふが、 しんをとるものはあるまじきとおおせられそうろふとうんぬん

(283)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん大坂おおざか殿どのにておのおのにたいせられておおせられそうろふ。 一念いちねんぼんおうじょうをとぐることは*秘事ひじでんにてはなきかとおおせられそうろふとうんぬん

(284)

一 ^*しん造作ぞうさくときほうきょうもうされそうろふ。 *なにも思議しぎに、 *ちょうぼうとうじょう御座ござそうろふよしもうされそうらへば、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 われはなほ思議しぎなることをる。 ぼんぶつそうろふことをりたるとおおせられそうろふと。

(285)

一 ^蓮如れんにょしょうにんぜんじゅう*おんかけをあそばされて、 くだされそうろふ。 そののちぜんじゅうおんたずそうろふ。 ぜんきつかはしそうろものをばなにとしたるとおおせられそうろふ。 ぜんじゅうもうされそうろふ。 *ひょう補絵ぼえつかまつそうらひて、 はこきまうしそうろふよしもうされそうろふ。 そのときおおせられそうろふ。 それは*わけもなきことをしたるよ。 だんかけておきて、 そのごとく*こころねなせよといふことでこそあれとおおせられそうろふ。

(286)

一 ^おなじくおおせにいはく、 *これのうちちょうもんもうは、 *とりはづしたらばぶつ*らんよおおせられそうろふとうんぬん。 ありがたきおおせにそうろふ。

(287)

一 ^おおせにいはく、 ぼうしゅたいせられおおせられそうろふ。 ぼうといふものは大罪だいざいにんなりとおおせられそうろふ。 そのときみなみな*迷惑めいわくもうされそうろふ。 さておおせられそうろふ。 つみがふかければこそ、 弥陀みだ如来にょらいおんたすけあれとおおせられそうろふとうんぬん

(288)

一 ^毎日まいにち毎日まいにちに、 ふみ金言きんげんちょうもんさせられそうろふことは、 たからおんたまわそうろふことにそうろふとうんぬん

(289)

一 ^開山かいさんしょうにん (親鸞)だい*たか だい *けんじょうらくときもうされそうろふ。 こん*すでにおんにかかるまじきとぞんそうろふところに、 思議しぎおんにかかりそうろふともうされそうらへば、 それはいかにとおおせられそうろふ。 ふな難風なんぷうにあひ、 *迷惑めいわくつかまつそうろふよしもうされそうろふ。 しょうにんおおせられそうろふ。 それならば、 ふねにはらるまじきものをとおおせられそうろふ。 そののち*おんことばすえにてそうろふとて、 いちふねられずそうろふ。 また*くさびらひまうされ、 おんおそくかかられそうらひしときも、 かくのごとくおおせられしとて、 いち受用じゅようなくそうらひしとうんぬん。 かやうにおおせをしんじ、 ちがへまうすまじきとぞんぜられそうろふこと、 まことにありがたきしゅしょうかくとのそうろふ。

(290)

一 ^あたたかなれば、 ねぶりさしそうろふ。 あさましきことなり。 そのかくにてをもすずしくもち、 ねぶりをさますべきなり。 ずいなれば、 仏法ぶっぽう*ほうともにおこたり、 *沙汰さただんあり。 このいちだいなりとうんぬん

(291)

一 ^しんをえたらば、 どうぎょうにあらくものもうすまじきなり、 こころやわらぐべきなり。 *触光そくこうにゅうなんがん (第三十三願) あり。 またしんなければ、 *になりてことばもあらく、 あらそひもかならずでくるものなり。 あさましあさまし、 よくよくこころうべしとうんぬん

(292)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)北国ほっこくのさるもんのことをおおせられそうろふ。 *なにとしてひさしくじょうらくなきぞとおおせられそうろふ。 *ぜんひともうされそうろふ。 さる御方おんかた*折檻せっかんそうろふともうされそうろふ。 そのときげんもつてのほかしくそうらひて、 おおせられそうろふ。 開山かいさんしょうにん (親鸞)もんをさやうにいふものはあるべからず。 おんひとりょうにはおぼさぬものを、 なにたるものがいふべきとも、 *とくとくのぼれといへとおおせられそうろふとうんぬん

(293)

一 ^*ぜんじゅうしょうにんおおせられそうろふ。 もんしゅうをあしくもうすこと、 ゆめゆめあるまじきなり。 開山かいさん (親鸞)おんどうぎょうおん同朋どうぼうおん*かしづきそうろふに、 りょうぞんずるはくせごとのよしおおせられそうろふ。

(294)

一 ^開山かいさんしょうにんいちだいきゃくじんもうすは、 もんしゅうのことなりとおおせられしとうんぬん

(295)

一 ^もんしゅうじょうらくそうらへば、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふ。 *寒天かんてんにはしゅとうのかんをよくさせられて、 *路次ろしさむさをもわすられそうろふやうにとおおせられそうろふ。 また炎天えんてんときは、 さけなどひやせとおおせられそうろふ。 おんことばをくはへられそうろふ。 また、 もんじょうらくそうろふを、 おそ*もうそうろふことくせごととおおせられそうろふ。 もんをまたせ、 おそく対面たいめんすることくせごとのよしおおせられそうろふとうんぬん

(296)

一 ^ばんにつきて、 よきことをおもひつくるはおんなり、 しきことだにおもてたるはおんなり。 つるもるも、 いづれもいづれもおんなりとうんぬん

(297)

一 ^前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如)もん*しんじょうもつをば、 おんころものしたにておんおがそうろふ。 またぶつものおぼそうらへば、 しんものまでも、 御足おんあしにあたりそうらへば、 おんいただきそうろふ。 もんしんじょうもつ、 すなはちしょうにん (親鸞) よりのおんあたへとおぼそうろふとおおせられそうろふとうんぬん

(298)

一 ^仏法ぶっぽうには、 よろず*かなしきにも、 *かなはぬにつけても、 なにごとにつけても、 しょうのたすかるべきことをおもへば、 よろこびおほきは仏恩ぶっとんなりとうんぬん

(299)

一 ^仏法ぶっぽうしゃになれちかづきて、 そんひとつもなし。 なにたるをかしきこと、 *きょうげんにも、 是非ぜひとも心底しんていには仏法ぶっぽうあるべしとおもふほどに、 わがかたとくおほきなりとうんぬん

(300)

一 ^蓮如れんにょしょうにんごん再誕さいたんといふこと、 そのしょうおほし。 まへにこれをしるせり。 えいに、 「*かたみにはろく御名みなをのこしおく なからんあとのかたみともなれ」 とそうろふ。 弥陀みだしんとしられそうろふこと歴然れきぜんたり。

(301)

一 ^蓮如れんにょしょうにん細々さいさい*きょうだいしゅう御足おんあし御見おみそうろふ。 おんわらぢのくひり、 *きらりとおんそうろふ。 かやうにきょう田舎いなかしん辛労しんろうそうらひて、 仏法ぶっぽうおおせひらかれそうろふよしおおせられそうらひしとうんぬん

(302)

一 ^おなじくおおせにいはく、 悪人あくにんのまねをすべきより、 信心しんじんけつじょうひとのまねをせよとおおせられそうろうんぬん

(303)

一 ^蓮如れんにょしょうにん病中びょうちゅう大坂おおざか殿どのよりじょうらくとき*明応めいおうはちがつじゅう八日はちにち*さんばのじょうけん ˆのˇ ところにて、 ぜんじゅうしょうにん (実如)たいおんもうしなされそうろふ。

いちりゅう肝要かんようをば、 ふみにくはしくあそばしとどめられそうろふあひだ、 いまはもうしまぎらかすものもあるまじくそうろふ。 このぶんをよくよくおんこころあり、 もんちゅうへもおおせつけられそうらへと遺言ゆいごんのよしにそうろふ。 しかれば、 ぜんじゅうしょうにん (実如)安心あんじんふみのごとく、 また諸国しょこくもんも、 ふみのごとくしんをえられよとの*しょうのために、 *はんをなされそうろふこととうんぬん

(304)

一 ^*存覚ぞんかく*だいせいしんなりとうんぬん。 しかるに ¬*六要ろくようしょう¼ には *三心さんしんくんそのほか、 「*勘得かんとくせず」 とあそばし、 「しょうにん (親鸞)*宏才こうさいあおぐべし」 とそうろふ。 *ごんにてそうらへども、 しょうにん*作分さくぶんをかくのごとくあそばしそうろふ。 まことにしょうはかりがたきむねをあらはし、 りきをすててりきあおほんにもかなひまうしそうろものをや。 かやうのことがめいにておんそうろふとうんぬん

(305)

一 ^¬*ちゅう¼ をおんあらはしそうろふこと、 しん*智解ちげおんあらはしそうらはんがためにてはなくそうろふ。 おんことば*ほうのため、 *ぎょうそうのためにてそうろふとうんぬん

(306)

一 ^存覚ぞんかくせいえいにいはく、 「いまははやひとゆめとなりにけり ゆきあまたのかりのやどやど」。 このことば蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふとうんぬん。 さてはしゃしんなり、 *往来おうらいしゃこころなりとうんぬん。 わがにかけてこころえば、 六道ろくどうりんめぐりめぐりて、 いまりんじゅうゆうべ、 さとりをひらくべしといふこころなりとうんぬん

(307)

一 ^*よう*いんとてあり。 さればようをうるはなははやくひらくなり、 いんとてかげはなおそくなり。 かやうに宿しゅくぜんそくあり。 されば*今当こんとうおうじょうあり。 弥陀みだこうみょうにあひて、 はやくひらくるひともあり、 おそひらくるひともあり。 とにかくに、 しんしんともに仏法ぶっぽうこころれてちょうもんもうすべきなりとうんぬん今当こんとうのこと、 前々ぜんぜんじゅうしょうにん (蓮如) おおせられそうろふとうんぬん昨日きのうあらはすひともあり、 今日きょうあらはすひともありとおおせられしうんぬん

(308)

一 ^蓮如れんにょしょうにんろうおんとほりそうらひて、 かみれのおちてそうらひつるをらんぜられ、 *仏法ぶっぽうりょうもの*あだにするかやとおおせられりょうおんにておんいただきそうろふとうんぬんそうじてかみれなんどのやうなるものをも、 仏物ぶつもつおぼおんもちそうらへば、 あだに沙汰さたなくそうろふのよし、 ぜんじゅうしょうにん (実如) おん物語ものがたそうらひき。

(309)

一 ^蓮如れんにょしょうにん近年きんねんおおせられそうろふ。 病中びょうちゅうおおせられそうろふこと、 なにごとも金言きんげんなり。 こころをとめてくべしとおおせられそうろふとうんぬん

(310)

一 ^病中びょうちゅうきょうもんをめしておおせられそうろふ。 おんには思議しぎなることあるを、 をとりなほしておおせらるべきとおおせられそうろふとうんぬん

(311)

一 ^蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 けん仏法ぶっぽうともに、 ひと*かろがろとしたるがよきとおおせられそうろふ。 もくしたるものをおんきらひそうろふ。 ものもうさぬがわろきとおおせられそうろふ。 また*おんものもうすをわろしとおおせられそうろふとうんぬん

(312)

一 ^おなじくおおせにいはく、 仏法ぶっぽう*たいとはたしなみによると、 ついおおせられそうろふ。 また法門ほうもんにわまつとは*いふに*あがると、 これもついおおせられそうろふとうんぬん

(313)

一 ^*兼縁けんえんさかいにて、 蓮如れんにょしょうにんぞんしょうとき*ずりぬの買得ばいとくありければ、 蓮如れんにょしょうにんおおせられそうろふ。 かやうのものはわがかたにもあるものを、 ようひごとよとおおせられそうろふ。 兼縁けんえん*もつにてとりまうしたるとこたへまうしそうろふところに、 おおせられそうろふ。 それはわがものかとおおせられそうろふ。 ことごとく仏物ぶつもつ如来にょらいしょうにん (親鸞)ゆうにもるることはあるまじくそうろふ。

(314)

一 ^蓮如れんにょしょうにん兼縁けんえんものくだされそうろふを、 みょうなきと退たいそうらひければ、 おおせられそうろふ。 つかはされそうろものをば、 ただりてしんをよくとれ。 しんなくはみょうなきとてぶつものけぬやうなるも、 それは*きょくもなきことなり。 *われするとおもふかとよ。 みなゆうなり。 なにごとかゆうにもるることやそうろふべきとおおせられそうろふとうんぬん

                           *実如じつにょ (御判)

蓮如れんにょしょうにん一代いちだい聞書ききがき まつ

 

明応二年 1493年。 蓮如上人七十九歳。
つとめ 仏事勤行。
いつつの不思議 思議しぎのこと。
法談 法文のわけを説いて話をすること。 またその法座。
月かげの… 法然ほうねん上人の歌。 ¬ぞく千載せんざいしゅう¼ 所収。 月かげは月の光の意。
夜前 前夜。
是非におよばず 是非の判断を超えている。 いいようがない。
御掟 尊い人の仰せ。
順讃 →じゅんさん
あげば 調声する番。
覚善又四郎 底本に 「覚善と又四郎」 とあるのを改めた。 底本では二人の名のようにみえるが、 覚善も又四郎も同一人物の名である。 →覚善かくぜん
信力 信心のどく力。 信心のすぐれたはたらき。
妄業 迷う原因となるいつわりの行い。
仏智無生の妙願力 悟るための智慧ちえをそなえたすぐれた本願の力。 「妙願力」 を 「名願力」 とする異本もある。
涅槃畢竟の真因 この上ないさとりを得るまことの因種 (たね)。
かけ字 文字を書いた掛軸。
あそばされて ここではお書きになってという意。
やがて そのまま。
よしなき 役に立たない。
自力の執心 自力にとらわれる心。
ほだされて 束縛されて。
え存ぜず わからない。 理解できない。
常没 つねに迷いの世界に沈んでいること。
福田寺 福田寺のそうしゅん
まゐらせん (勤行のどくを) さしあげよう。
御一流 ここでは浄土真宗を指す。
あそばれたり ここではお書きになっているという意。
七高祖 しち高僧こうそうのこと。
ききつくる 聞いて知る。 聞いて理解する。
しかと たしかに。
明応三年 1494年。 蓮如上人八十歳。
あかつき八時 午前二時頃。
やがて すぐに。
讃嘆 ここでは法話、 法談の意。
大津近松殿 れんじゅん師のこと。
富田殿 せっとん教行きょうぎょうをいう。
下向 本願寺から地方へ行くこと。
聴聞 仏法をきくこと。 「行巻」 に 「ゆるされてきく、 信じてきく」 (左訓) とある。
無益 何の役にも立たないこと。 無意味。
他力大行の催促 阿弥陀仏の本願の働き。
明応五年 1496年。 蓮如上人八十二歳。
誓願寺 誓願寺のりょうゆう。 あるいは能の曲目 「誓願寺」 を指すか。。
上り下り 上洛と下向。
辛労なれども 骨折りだけれども。
おもしろや よろこばしいことよ。
南旡 親鸞聖人は南無の 「無」 の字は古字の 「旡」 を用いられた。
 金粉をにかわみずにときまぜた絵具。
 役目。 はたらき。
世のなかに… 以下は ¬くうぜん聞書ききがき¼ では別の条になっている。
あまのこころ 出家して尼になりたいという心。
妻うしのつのは… 牝牛の角は曲がっているけれども、 それはそれでよいという意。
御影 掛軸装の肖像。
御免 授与して安置を許すこと。
あそばされて ここではお読みになってという意。
明応六年 1497年。 蓮如上人八十三歳。
御影の正本 「あんじょうのえい」 のことか。
みづからの御筆にて… 御影像の上下にある讃文は親鸞聖人の御真筆であるという意。
虚誑 いつわり。
たね 因種。 原因。
後室 ここでは浅井氏の先代の夫人。
あした 朝。
取りみだし 忙しくすること。
無き分なり 無いのと同じである。
弥陀回向の法 阿弥陀仏よりしゅじょうに与えられる法。
たのむこころ 阿弥陀仏におまかせする信心のこと。
身をすてて 身分や地位の違いを問わず。
おのおの…をば ¬空善くうぜんききがき¼ には 「平座にてみなと同座するは」、 ¬蓮如上人御一期記¼ には 「平座にておのおのと同座するは」 とある。
愛欲の広海 愛執・恩愛が深いことを海に喩えていう。
名利の大山 名誉心や、 物質的欲望が大きいことを山に喩えていう。
真証 真実の証果。 この上ない仏のさとりの果。
不審のあつかひどもにて どう理解すればよいのか思い悩むという意。 思い悩むのは蓮如上人の弟子たち。
機のあつかひ 本願の教示をさしおいて、 機 (救われるものとしての自己) の善悪のみをあげつらうこと。
ゆふさり 夕暮時。
案内 とりつぎ。
美濃殿 きょうもん房の通称。
まかりいで候へ 退出しなさい。
一念のこと ここでは信心のいわれ。
在国 大坂に滞在すること。
御講 報恩ほうおんこうのこと。
六つどき 六時頃。
御文 明応六年十一月二十一日付の御文 (帖外)。
御堂の夜の宿衆 夜中御堂にとまって守護する人。
頭人 当番の人。
大坂殿 大坂の御坊。 後の石山いしやま本願ほんがん
違例 病気。
聖人 ここでは山科やましな本願寺の親鸞聖人の御影像。
たしなみ 心がけ。
御開山様… 親鸞聖人の御影像を安置している寺。
御本寺 御本山。
山科 山科やましな本願ほんがん。 蓮如上人が山城やましろ山科 (現在の教師山科区) に再興した本願寺。
談合 話し合うこと。
こころざしの衆 仏法に志の篤い人々。
かど 肝要。 要点。 かなめ。
詮あるところ 肝要。 要点。 かなめ。
いさみの念仏 喜びいさんで称える仏恩報謝の念仏のこと。
無宿善の機 宿善のない者。 仏の教えを聞く機縁が熟していない者。
さいさい たびたび。
さてなり 駄目である。
とりなす 引き寄せて受け取る。 みなす。
 擯罰ひんばつ。 叱責。 きらいしりぞけること。
泥梨 梵語ニラヤ (niraya) の音写。 ごくのこと。
近松殿・光応寺殿 れんじゅん師のこと。
 境殿のこと。 →さかい別院べついん
なげし 長押。 鴨居の上にわたす化粧材。
おして はりつけて。
さしよせて 短くまとめて。 簡潔にわかりやすくして。
善宗 下間しもつまこうしゅうのこと。 玄英げんえいの第三子。 善宗は法名。
こころざし こん
御用のもの 阿弥陀仏のおはたらきによって恵まれたもの。
わがものがほに存ずるか 文末の 「か」 を格助詞の 「が」 と解すれば、 「自分のものをさしあげるように思っているのが恥しい」 という意になる。 清音の場合には、 「自分のものと思っているのか、 恥しいことである」 という疑問・反語の意となる。
津国郡家の主計 せっ郡家 (現在の大阪府高槻市) の妙円寺の開基。
仏法者 仏法に深く帰依きえする人。
しつらふ 調えること。
よくめされ候ふ 立派になさることである。
不便 いとしい。
まぎれまはる 紛れ回る。 信心を得ていないのに、 得たような顔をしてごまかすこと。
うちみは ちょっとみると。
こころざしのひと 仏法に深く帰依きえする人。
ちかひ 「ちかい」 とする説と 「ちがい」 とする説とがある。 本文では 「たしなみ」 に対比されているので、 「違」 すなわち過失、 誤りの意であろう。
さなきは そうでないと。
他流 浄土真宗以外の宗派。
御本寺北殿 山科やましな本願寺の北殿。 蓮如上人隠居後、 実如じつにょ上人が住した。。
当機をかがみ… 相手のことをよく考え。
あそばされ候ふ ここではお書きになっているという意。
二俣 底本では 「役」。 現在の石川県金沢市二俣町にある本泉ほんせんを指す。
小名号… 小名号は六つ切の小型の名号のこと。 小名号をいただきたいという同行たちの申し出を兼縁 (れん) 師が取り次いだ。
堺の日向屋 和泉いずみ堺 (現在の大阪府堺市) の富豪。
大和の了妙 現在の奈良県橿原市八木町にある金台寺の開基。 尼僧。
かやうにて… これでよろしいでしょうか。
不信 信心を得ることができない。 疑いがはれない。
まぎれて… ごまかしたまま死んでしまうような人。
鍛冶番匠 鍛冶屋と大工。
 礼物。
なかなか もちろん。 いかにも。
なにたるものなりとも どんなものでも。
あそばされ候ふ御名号 (蓮如上人が) お書きになった六字の名号本尊。
朝夕 ここでは日々の食事の意。
御用 おはたらきによって恵まれたもの。。
冥加 仏祖の加護。
噛むとはしるとも… 噛みしめ味わうことを教えても、 鵜呑みにすることを教えてはならないという意。
徳分 得るところ。 ためになること。
法文 法義の文句。 法義のことわり。
うりごころ 人に法を説いてその見返りを期待する心。
しろしめす 知っていらっしゃる。 ご存じである。
おそろしく… 恐れ多いことだと心得なければならない。
別義 特別な教え。
凡夫往生 煩悩ぼんのうを断ち切ることができない者が、 阿弥陀仏の浄土に往き生れること。
信不信 信心を得た者と得ていない者。
節はかせ 声明しょうみょう (仏教の儀式音楽) の節の長短高低の定め。
とりつめ ここでの 「とりつむ」 は叱るの意。
一向にわろき人 (仏法を) 全く知らない人。
ひてておく 浸しておく。
くせごと 間違ったこと。 誤り。
うかうかと ぼんやりと。 心を留めずに。
くれくれ くり返しくり返し読め。
義理 筋道。 意味。
句面のごとく 文面にあらわれている通り。
師伝 師匠から伝授をうけること。
口業 ここではでんのこと。
私にして会釈すること 自分勝手に解釈すること。
独覚心 自分一人のさとりで満足するような心。
承引 承知すること。
大悲伝普化 如来の大悲を人々に広く伝えること。
自信教人信の… 第九五条の標示ととる説もある。
加備力 仏の慈悲によりしゅじょうやくを与える力。
総体 どんなことでも。
世間機 世俗的な心持ち。
時宜しかるべきは… 何でもうまくこなしてそつがない人を立派な人だというが、 という意。
心をおく 気をつける。
便り たより。
片目… →補註5
 主君。
果後の方便 おんの昔に成仏した阿弥陀仏が、 しゅじょうを救うためのてだてとして、 法蔵ほうぞう菩薩の発願ほつがん修行、 十劫じっこうの昔のじょうどうの相を示したことをいう。
身をばまるめたる その身を包まれている。
丹後法眼蓮応 下間しもつま頼玄らいげんのこと。 「蓮応」 は底本では 「蓮慈」。
伺候 参上すること。
符合 一致すること。 前条の内容と一致していることをいう。
賞翫 ほめること。
御影を申す 御影像の交付を本山に願い出ること。
手をささぬ 手を加えない。
下としたる人 目下の人。
崇仰 (ぜんしきを) あがめうやまうこと。
木の皮をきるいろめ 木の皮を編んで身にまとうような貧しい身なり。
なわびそ 悲しく思うな。 気落ちするな。
かがみ かんがみ。 よく考え。
勝徳 すぐれたどく
老の皺をのべ候ふ 非常によろこばしく気持ちの晴々とするさまをいう。
事態 能狂言のしぐさの意か。 「事能」 とする異本もある。
善巧方便 たくみな手だての意。 →方便ほうべん
天王寺土塔会 天王寺は四天王寺 (大阪市天王寺区) の略称。 同寺南大門の前に牛頭ごず天王てんのうをまつったやしろがあり、 毎年四月十五日にその祭礼が行われた。
不便 気の毒なこと。 心の痛むこと。
 底本の尾題は 「記」 の字を欠く。 末巻の首題も同じ。
御法談 法文のわけを説いて話をすること。 またその法座。
御兄弟 蓮如上人の子息たちのこと。
寄合ひ 村落などでの会合のこと。 講の別称としても用いられる。 ここでは法談のために集合すること。
談合 話し合うこと。
意巧に 各自の都合のよいように。 各自の好むように。
たとひなきことなりとも たとえ事実でないことであっても。
当座領掌すべし とりあえず受け入れるのがよい。
用心 ¬じつきゅう¼ では 「心用」 となっている。
契約 約束。
威のおほきなること 勢いが盛んなこと。
専修正行 もっぱら念仏の正行を修するという意で、 自力を離れてただ念仏する浄土真宗の宗義をいう。
遺弟 親鸞聖人滅後の門弟。
念力 信心の力。
心に…思ふ人 熱心であろうとする人。
すきこしらへもちたる人 すすんで求め持っている人。
仏法者 仏法に深く帰依きえする人。
おほやう 大まかなこと。 細かさがないこと。
直説 直接の説法。
形をみれば… ¬西方さいほうなんしょう¼ 中末の 「源空げんくうしょうにんにっ」 に大原談義の際に諸宗の大徳が法然ほうねん上人を敬いこのように感嘆したとある故事による。
後言 陰で悪口をいうこと。 陰口。
心まめにて 心まじめに。
あらめなる 大まかなこと。
世間には… 世間ではあまり細かすぎるのはよくないというがという意であろう。
不断 たえず。 いつも。
御用 阿弥陀仏のおはたらきによって恵まれたもの。 ここでは仏法を聴聞する縁を恵まれること。
初めたるやうに はじめて耳にするかのように。
名聞げに よい評判を求めているかのように。
大儀 骨の折れること。
同侶 ともに念仏する仲間。
冥慮 仏祖のおぼしめし。
冥見 仏祖がつねにしゅじょうをみていること
しげからんこと 冗長なこと。 繁雑なこと。
まゐらせ心 自分が積んだ善根ぜんごんどくを仏にさしむけようとする自力のこうしん
眼耳鼻舌身意 六根ろっこんのこと。
仏智の心 仏の智慧ちえを頂いた心、 すなわち信心。
貪瞋痴 貪欲とんよくしん愚痴ぐち
得手に 自分の都合のよいように。
心根 心の奥底。
涯分 自分の力の及ぶかぎり。
あさましき なげかわしい。
御用物 おはたらきによって恵まれたもの。
額にあてよ 表にかかげて守れ。
端正 「端々はしばし」 とする異本もある。
迷惑 困ること。 ここでは主として経済的な困窮をいう。
御代 自分の生涯。
仰せたてられん ここではひろめようというほどの意。
再興 再び興隆させること。
この法師 蓮如上人が自身のことを指していう。
冥加 仏祖の加護。
こぶくめ 綿入れの白衣。
用脚 金銭。
黒木 生木を蒸焼きにして黒くくすぶらしたもの。 たきぎとして用いた。
あそばされ候ふ ここでは書写されたという意。
かひがひしく 思いどおりに。
むつき おむつ。
小者 召使。 名は竹若といったという。
蓮如上人御隠居の時 蓮如上人は延徳元年 (1489) 八月二十八日、 七十五歳で実如じつにょ上人に本願寺住職を譲って南殿に隠居した。
伺候 参上すること。
紙絹に輻をさし 紙をもみ柔らげて柿渋を引いた紙子の着物の襟や袖に普通の布でへりをつけるという意。
結句 あげくのはて。 ついには。 とうとう。
禁裏 宮中。
引きごと 例をあげて説明すること。
よりよりに おりおり。 その時々。
俗典 世俗の書物。
きれば… ¬論語¼ かん篇に 「仰之弥高鑽之弥堅 (これを仰げばいよいよ高く、 これをればいよいよ堅し)」 とある。
堅く 「たやすく」 とする異本がある。
信謗 仏法を信ずる者とそしる者。
世間のひまを闕きて 世間の用事をさしおいてという意。
みてらん 満ちている。
あそばされ候ふ ここではお書きになっているという意。
上人 ここでは座に居合わせた目上の人、 長老格の人物。
あるもあられずして おるにおられず。
仏法を… ¬和語わご灯録とうろく¼ 巻二に 「煩悩ぼんのうをば心のまらうどとし、 念仏をば心のあるじとしつれば…」 とあるのにもとづいたものであろう。
御作分 つくられたもの。 御制作になったもの。
不審 疑問に思うこと。
子細 わけ。 いわれ。 意味。 事情。
総体 概して。 総じて。
しならふ 為習う。 しなれて上達する。
 ことわり。 道理。
 しゅう。 我情。
御用 おはたらきによって恵まれたもの。
住持 住職。 ここでは本願寺住職。
御相続ありて 実如じつにょ上人に本願寺住職を譲ったことを指す。
大坂殿 大坂の御坊。 後の大坂石山いしやま本願ほんがん
御ことば ここでは蓮如上人の教化のことば。
仏法だにもあらば 仏法を心得ている者でありさえすれば。
御座のうへに… ¬蓮如れんにょしょうにんおおせの条々じょうじょう¼ (25) には 「御座敷のさをにかけられて置かれ候ひしなり」 とあり、 小袖を居間のさおに掛けて置かれたということ。
衣食ふ 着物を着、 食事をいただくこと。
おちば… 落ちるところのあることを知らない。
しのぎ 事を成し遂げること。 成就すること。
かつは 同時に。 一方で。
田上の了宗 せっ (現在の大阪府) 田上に住んでいた人。 また、 加賀かが河北郡 (現在の石川県金沢市上田上、 下田上) 住んでいた人とする説もある。
あつかひ 話題にして語り合うこと。 あれこれ思いはからうこと。
多事 こみいった複雑な事がら。
村雀 群をなす雀。
なるこ 鳴子。 雀などをおどして追いはらうための仕掛け。
善巧方便 巧みな手だての意。 →方便ほうべん
退転 あともどりすること。 ここでは怠ることをいう。
仏恩にそなはる 仏恩を報謝したことになる。
思ひよらず 思いもよらず。
かわいや かわいそうなことだ。
のうれん れん
一通り あらまし。 一部始終。
肝要 最も大切なこと。 かなめ。
信治定 信心がけつじょうすること。 信心がたしかに定まること。
結句をきりて (迷いの世界の) 絆を断ち切ってというほどの意。
あしきさまなること 悪いと思われるようなこと。
さしよせて 短くまとめて。 簡潔にわかりやすくして。
御意 お心。 おぼしめし。
ふつと 全く。
われといふことあれば 自分こそがというしゅうの心があるなら。
こころならひ 心のならわし。 性癖。
踏みかぶる 踏みはずして水たまりや穴などに落ち込むこと。
たしなまずは 心がけなければ。
さてあるまじき そのようなことはあるはずがない。
近江の湖 琵琶湖。
畏まりたる 承諾の意。 かしこまりました。
至りて きわめて。
穿つ 穴をあける。 つらぬく。
心源 心の奥底。
菩提の覚道 仏のさとり。
思ひすつる (なれるはずがないと) あきらめる。
おぼえざる 気づかない。 わからない。
結句 かえって。
 とき。 場合。
人なみたるべし (われ先にものをいわないで) 人並みに振舞っておきなさい。
講談 仏法の講釈、 談義。
讃嘆 ここでは法話、 法談の意。
このあひだ この頃。
さこそ さぞかし。
徒然 することがなくて退屈なさま。
野村殿 山科やましな本願ほんがんのこと。 野村は現在の京都市山科区西野。
神無森 現在の京都市山科区小山神無森町。
とほり 道すじ。
御坊御建立 御坊の建立は、 文明十年 (1478) に始まる。 蓮如上人六十四歳。
世上 世の中。 世間。
二十五日 法然ほうねん上人の命日は一月二十五日。 なお、 ぜんじゅうは長亨二年 (1488)、 八十歳で没した。。
東山 ここでは京都東山の大谷おおたに本願ほんがんを指す。
御出で候ひて 出てゆかれまして。 寛正六年 (1465)、 えんりゃく衆徒が大谷本願寺を破却し、 蓮如上人は大谷より避難した。 蓮如上人五十一歳。
一段 大変に。 たいそう。
御迷惑の体 お困りの様子。
さだめて きっと。
はや すぐにも。
符合 ぴったりあうこと。
大永三 1523年。 蓮如上人没後二十四年。
二十五年 二十五回忌。
夢想 夢のおつげ。
いろをたてきはを立て 心の内をはっきりと表に出して。
とが 悪いところ。 あやまち。 罪。
たくみ案じて うまく考えて。 うまく思案して。
細々 しばしば。 たびたび。
さとりのかたにして 現在のこの身でさとりを開いたようで。
密益 行者の表面に明らかにあらわれないやく。 信心の徳としての利益をいう。 顕益に対する語。
涅槃分 涅槃は仏のさとり、 分は因分のこと。 仏のさとりに至ることに定まった位。
徳大寺の唯蓮坊 徳大寺は京都の桂川の西にある地名。 ¬蓮如れんにょしょうにんおおせの条々じょうじょう¼ には 「雲居寺の瞻西せんさい上人」 とある。 瞻西は平安後期の天台てんだいしゅうの僧侶。
ことわり いわれ。
雲居寺 京都東山にあった天台宗の寺。 さか東院とういんともいい洛東の大仏として有名であった。 現在の京都市東山区下河原町に旧跡がある。
祈誓 がん
いまの人 唯蓮坊のこと。
仏智の御方 仏の智慧ちえのおはたらき。
信のうへより 信心をいただいた上で。
ひて て。 乾いて。
御所作 おはたらき。
よみぢのさはり 死出の旅路のさまたげ。
あるいは ある時には。
心得た 人間の知解をもって理解できたと思っていることをいう。
つのらんよりほかは たよりとする以外。 おまかせする以外。
得分 やく
加州菅生 現在の石川県加賀市菅生。
坊主 蓮智を指す。
信が御入りなく… 信心がございませんので。
蓮智 加賀大聖寺荻生おぎゅう (現在の石川県加賀市大聖寺) の願成寺の住持。
願生 底本には 「願将」 とある。
復せずは 繰り返し読まなければ。
詮あるべからざる かいのあるはずがない。 益のあるはずがない。
義理 書かれている意味。
文釈 聖教の文やその解釈。
御詞 ここでは蓮如上人の教化の言葉。
無沙汰 なまけること。
勿体なき もってのほか。 ふとどきな。 不都合な。
なせそ してはいけない。
不審 疑問を問いただすこと。
尼公 法敬坊の母を指すのであろう。
不審 疑問に思うこと。
申し分にて 申すくらいのことで。 教えたくらいのことで。
かげにて 蓮如上人がいないところで。
各別なり 別のことである。
御本寺御坊 御本寺は山科やましなの本願寺、 御坊は大坂などの坊舎を指す。
御留主 主人が不在の時、 その家を守ること。
当座 しばらくの間。
受用 食べること。
御入りなき ございません。
威儀 ここでは外見をおごそかにすること。
御風呂 仏像や仏具を洗うのに用いる湯風呂。
あそばされて ここではお書きになってという意。
御代 御歴代の宗主。
われら式のもの わたしたちのようなもの。
昵近のかたがた 親しく仕えていた人々。
あのうへ あの方。
違ひ候はでは 間違えないはずがない。
御もよほし 仏のうながし。
厭足 あき足りること。
数奇たること 好きなこと。
世間へつかふ (仏のおかげで与えられたものを) 世間のことに使う。
いたづらにする むだにする。
上品 最上のこと。
真俗 仏法と世俗。
わがこころ本になる 自分の心を中心にする。
冥加につきて ここでは仏の加護から見放されてしまうという意。
御文を御申し候ふ ここでは御文を書いていただきたいとお願いしたという意。
むつかしき 難儀な。 わずらわしい。 めんどうな。
重宝の珍物 珍しい食べ物。
経営 接待のために奔走すること。 ここでは料理すること。
重宝 貴重な宝物。
身をかろくもつべし わが身を軽くして報謝に努めなければならないという意。
宿善めでたしといふ 「めでたし」 はすばらしいの意。 宿善をわがもののように思って、 すばらしいということ。
宿善ありがたしと申す 阿弥陀仏より信心を得るよい因縁いんねんを与えていただいてありがたいと感謝すること。
群機 ぼんしょうじゃ、 善人・悪人、 賢者・愚者、 老少、 男女等さまざまな人すべて。 あらゆる人々。
弘教 広大な教え。 すべての人々を救う教法。
仏法者 ここではみずから仏法を信じ、 他人をも教え導く人。
法の威力 仏法のすぐれた力。
学匠 学者。
いひたてず 述べ伝えて仏法を盛んにすることはないという意。
信心定得 信心をたしかにぎゃくとくすること。
是非なし とやかくいっても仕方がない。
人を殺し候ふこと ここでは死刑にすること。
勘気 とがめること。 勘当すること。 ここでは破門すること。
宥免 罪を許すこと。
蓮崇 底本に 「蓮宗」 とあるのを ¬じつきゅう¼ により改めた。 以下、 同様の措置をとった。
国をくつがへし ここでの国は加賀かが (現在の石川県南部) のこと。 文明六年 (1474)、 加賀守護のがし家に起った内紛に際し、 蓮崇が門徒の一揆を誘導した事件を指す。
くせごと 間違ったこと。 誤り。
御門徒をはなされ候ふ 破門となったという意。
御寺内へまゐり 明応八年 (1499) 三月、 山科やましな本願寺の蓮如上人の所へ赦免しゃめんを乞いに参上したことを指す。 蓮如上人八十五歳。
なほさう 許してやろう。
御兄弟以下 蓮如上人の子息たちなど寺内の人々。
あだ 害。
御もらしなき 阿弥陀仏の本願はしんの者をもらさず救うという意。
御中陰 死後四十九日間。
すぎられ候ふ 亡くなりました。 蓮崇れんそうは明応八年 (1499) 三月二十八日に死去した。
あくかよ 満足できようか。
調法 たくみな手だて。
金言 仏の口からでた法語。 まことの言葉。
かまへて 必ず。
愚者三人に智者一人 三人集まるとよい知恵が浮ぶという意。
冥加もなき 恐れ多い。 もったいない。
えつれば 得たなら。
一同 同じように。
山水 築山や泉水のある庭。
御縁 庭に面した縁側。
物の数にてもなき 大したことではない。 取り立てていうほどもない。
ことのはもあるべからず 言葉ではいい表すことができない。
随分 精一杯。 全力を尽くしていること。
たふとむ人より… 「たふとむ人」 は法義を尊んでいるようにふるまう人、 「たふとがる人」 は法義をただありがたくよろこんでいる人の意であろう。
殊勝ぶりする人 ありがたそうにふるまう人。
文亀三 1503年。 蓮如上人没後四年。
いたづらにあること むなしく暮していること。
極月 陰暦十二月の別称。
ついたち障子 衝立。
翌年 永正元年 (1504)。 蓮如上人没後五年。
大永三 1523年。 蓮如上人没後二十四年。
大永六 1526年。 蓮如上人没後二十七年。
今の時分がよき時 今がよい機会。
ひがざま 間違ったふう。
秘極 ここではきわめて大切なという意。
権者 仏・菩薩のしん。 ここでは蓮如上人を指す。
瑞夢 神秘で不思議な実夢。
莫大 非常に。
平懐 無作法。 底本に 「平外」 とあるのを改めた。
つぶりだにぬれずは 頭さえ雨に濡れなければという意。
仏法の家 浄土真宗の法義をよろこぶ家。
あきなひ 商売のことであるが、 ここではあらゆる職業をいう。
炎天 焼けつくような暑い夏の空。 夏。
つとめ 仏事勤行。
たたせ 参詣の人々を帰らせるのがよいといいう意。
なかなか 大変。
申すもことおろかに候ふ 言葉が足りないという意。
義尚 (1465-1489) 足利九代将軍。
加州一国の一揆 加州は加賀かが (現在の石川県南部) の別称。 長享二年 (1488) 六月九日、 加賀南半国の守護であったがし政親まさちかを高尾城に滅ぼした一向いっこういっのこと。
加州居住候ふ御兄弟衆 加賀を拠点としていた、 蓮如上人の次男れんじょう (兼鎮) 師、 三男蓮綱れんこう (兼祐) 師、 四男蓮誓れんせい (康兼) 師のこと。
やぶらるる 破門なさる。
はじめて物をまゐらせ候ふ 初物を納める。
御往生候ふとも… わたしが往生してもあなたはその後十年は生きるであろうという意。
おしかへし 繰り返し。
さにて御入り候ふ そのようでございます。
条々 逐一の箇条。 一つ一つ。
物をきこしめし候ふ 食物をいただく。
人の食はぬ飯 仏祖からいただく飯、 すなわち御仏飯のこと。
享禄二年 1529年。 蓮如上人没後三十年。
不法の人 仏法を信じない人。
違例にする 病気のようにきらう。
疾くはてよかし 早く終わればよい。
正月二十四日 年代は大永五年 (1525)。 実如じつにょ上人は同年二月二日にじゃくした。
御心たがひ お心が乱れ。
あらた 仏の霊験がはっきり現れるさま。 ここでは尊い、 不思議なというほどの意。
御世 ここでは本願寺住職のこと。
御一身 実如上人御自身。
嘆徳の文 存覚ぞんかく上人の ¬嘆徳たんどくもん¼ のこと。
恐れある (実名を口にすることになって) 恐れ多い。
直に じかに。 直接に。
有縁 仏法に縁のあること。
対様して 対等に並べて。
大様 粗雑。 大まか。
大儀 わずらわしいこと。 骨の折れること。
御文申され候へば 御文を書いていただきたいとお願いしたところという意。
志の人 仏法に志の篤い人。
秘事秘伝 深遠な教え。 深い教え。 ここでは秘事ひじぼうもんといわれる異義で用いられる秘事秘伝の語を逆手にとっている。
御普請御造作 普請・造作はともに建築すること。
なにも不思議に… 何もかも不思議なほど立派で、 ながめなども見事でございます。
御眺望 遠くながめること。 ながめ。
御かけ字 掛軸にするための法語。
表補絵 表装。
わけもなきこと わけのわからないこと。 無意味なこと。
心ね 心持ち。
これの内に居て聴聞申す身 蓮如上人の側近くにいて仕え、 いつも仏法を聴聞している者。
とりはづしたらば (役目、 仕事という思いを) 忘れたならという意か。 あるいは (教えの趣旨を) 取りそこなってもという意か。
成らんよ ここでの 「ん」 は推量の助動詞。 なるであろうことよ。
迷惑 困惑すること。 とまどうこと。
すでに もはや。 もう。
迷惑 難儀すること。 難渋すること。
御詞の末 仰せになったことの一つ。
茸に酔ひまうされ きのこの毒にあたって。
世法 世間のこと。
無沙汰油断 粗略で不注意なこと。
我になりて 自分中心の考え方になって。
なにとして どうして。
御前の人 (蓮如上人の) お側の者。
折檻 きびしく意見すること。 強くいさめること。
とくとく はやく。 さっそく。
前住上人 異本には 「前々住上人」 とある。 前々住上人とは蓮如上人のこと。
かしづき 「かしづく」 は心から大切にする、 敬愛するという意。
寒天 寒い日。 炎天に対す。
路次 道筋。 道中。 道すがら。
申し入れ ここでは取り次ぐこと。
進上物 贈物。 献上品。
かなしき 愛する者と別れる悲しみ (あいべつ)。
かなはぬ 求めて得られない苦しみ (とく)。
狂言 ここではばかげた言葉、 たわごとの意。
かたみには… ¬蓮如れんにょしょうにんとく¼ には 「形見には六字の御名をとどめおく なからん世にはたれも用ゐよ」 と出る。
御兄弟衆 蓮如上人の子息たち。
きらりと はっきりと。
明応八 1499年。 蓮如上人八十五歳。
さんばの浄賢 当時のさんば (さん) は大坂湾岸沿いの神崎川と中津川の三角州にあった。 浄賢は大坂じょう専坊せんぼうの住職。
御判 おう。 書判。
三心の字訓 本願に示される至心・信楽・欲生の三心の文字の解釈。
勘得 考え得ること。
宏才 博識。 博学。
御作分 つくられたもの。 御制作になったもの。 ここでは ¬教行信証¼ を指す。
 ¬六要ろくようしょう¼ のこと。
智解 学識。
褒美 ほめたたえること。
仰崇 崇め尊ぶこと。 敬い尊ぶこと。
往来娑婆 ¬安心あんじんけつじょうしょう¼ に 「往来娑婆八千遍」 とある。
陽気 万物に生命力や活力を与える精気。
陰気 万物の形成において、 消極面を代表する精気。
あだにする 粗末にする。 無駄にする。
かろがろ 重苦しくないさま。 軽快なさま。
微音に 小さな声で。
世体 世間のこと。
いふ 「言ふ」 と 「結ふ」 (縄などで縛り、 形を整えること) との掛詞。
あがる ここでは値うちが出るという意。
背摺布 麻布に山藍で模様をすりこんでつくったかたびら。
自物 自分のもの。 自身の所有するお金のこと。
曲もなきこと つまらないこと。 おもしろくないこと。 すげないこと。
われするとおもふかとよ 私が与えると思うのか。