0797おうじょうようしゅう かんじょう *尽第じんだい門半もんはん

天台てんだい*しゅりょうごんいん沙門しゃもん*源信げんしんせん


  顕法難易
    嘆宗勧帰

【1】 ^それおうじょう極楽ごくらく教行きょうぎょうは、 じょく末代まつだい目足もくそくなり。 *道俗どうぞくせん、 たれかせざるものあらん。

1013往生極楽之教行、濁世末代之目足也。道俗貴賎、誰ラム↠帰アラム

一 Ⅰ 揀非示難

^ただし*顕密けんみつきょうぼう、 そのもんいちにあらず。 *事理じり業因ごういん、 そのぎょうこれおおし。 利智りちしょうじんひとは、 いまだかたしとなさず。 *がごときがんのもの、 あにあへてせんや。

顕密教法、其文非↠一。事理業因、其是多。利智精進之人、未↠為↠難シト。如↠豫頑魯之者、豈ムヤ矣。

叙撰述相
    標製示用

^このゆゑに、 念仏ねんぶつ一門いちもんによりて、 いささかきょうろん要文ようもんあつむ。 これをひらきこれをしゅするに、 さとりやすくぎょうじやすし。

リテ↢念仏↡、聊↢経論要文↡。披↠之スルニ↠之、易↠覚↠行

一 Ⅱ 挙示章門

^べてじゅうもんあり。 わかちて三巻さんかんとなす。 いちえん穢土えどごんじょうさん極楽ごくらくしょうしょうしゅ念仏ねんぶつ助念じょねん方法ほうほうろくべつ念仏ねんぶつしち念仏ねんぶつやくはち念仏ねんぶつしょうおうじょう諸業しょごうじゅう問答もんどうりょうけんなり。

↢十門↡。分チテ↢三巻↡。一スル穢土、二スル浄土、三極楽証拠、四シクスル念仏、五助念方法、六別時念仏、七念仏利益、八念仏証拠、九往生諸業、十問答料簡ナリ

一 Ⅱ 結示所為

^これを座右ざうきて、 廃忘はいもう*そなへん。

キテ↢之↡、備ヘム↢於癈忘↡矣。

正宗
  厭離穢土
    総弁標章

【2】 ^大文だいもん第一だいいちに、 えん穢土えどといふは、 それ三界さんがいやすきことなし、 もつともえんすべし。 いまそのそうかすに、 べて七種しちしゅあり。 いちごく餓鬼がきさんちくしょうしゅにんろくてんしち総結そうけつなり。

大文第一厭離穢土トイフ者、三界↠安キコト、最↢厭離↡。今明スニ↢其↡、総↢七種↡。一地獄、二餓鬼、三畜生、四阿修羅、五人、六天、七総結ナリ

二 Ⅰ 別釈広顕
      地獄

07983】 ^第一だいいちごくに、 またわかちてはちとなす。 いち等活とうかつこくじょうさん衆合しゅごうきょうかんだいきょうかんろくしょうねつしちだいしょうねつはちけんなり。

第一地獄亦分チテ↠八。一等活、二黒縄、三衆合、四叫喚、五大叫喚、六焦熱、七大焦熱、八無間ナリ

二 Ⅰ ⅱ a 等活

【4】 ^はじめに等活とうかつごくといふは、 このえんだいした一千いっせんじゅんにあり。 *じゅうこう一万いちまんじゅんなり。

1014等活地獄トイフ者、在↢於此閻浮提之下一千由旬↡。縦広一万由旬ナリ

^このなかの罪人ざいにん、 たがひにつねに害心がいしんいだけり。 もしたまたまあひれば、 りょうしゃ鹿ししへるがごとくして、 おのおのてつつめをもつてたがひにつかく。 にくすでにきて、 ただ残骨ざんこつのみあり。

罪人、互キテ↢害心相見テハ、如クシテ↢猟者ヘルガ鹿カセギ、各↢鉄↡而互。血シシキテ、唯有↢残ノミ↡。

^あるいは獄卒ごくそつてつつえてつぼうりて、 こうべよりあしいたるまで、 あまねくみなくに、 身体しんたいさいすること、 なほ*沙揣しゃせんのごとし。

イハ獄卒、手リテ↢鉄杖・鉄↡、従↠頭至ルマデニ↠足皆打身体破砕スルコト猶如↢沙揣↡。

^あるいはきはめてかたなをもつて分々ぶんぶんにくくこと、 *ちゅうしゃ魚肉ぎょにくほふるがごとし。

イハ↢極↡分々クコト↠肉、如↣廚者ルガ↢魚↡。

^りょうふうきたりてくに、 いでよみがえることもとのごとし。 *欻然こつねんとしてまたきて、 さきのごとくく。

涼風来リテクニギテヨミガヘルコトクシテモト欻然トシテ復起キテ、如↠前↠苦

^あるいはいはく、 くうちゅうこえありていはく、 「このもろもろのじょう、 またひとしくよみがえるべし、 またひとしくよみがえるべし」 と。 あるいはいはく、 獄卒ごくそつてつひしをもつてちて、 となへて 「活活かつかつ」 といふ。 かくのごとき、 つぶさにじゅつすべからず。

イハ、空リテ↠声云、此有情可↠還↢等シク↡、シト↠還↢等シク↡。或イハ、獄卒以↢鉄ヒシ↡打チテ↠地、唱ヘテ↢活々↡。如↠是クノ苦、不↠可カラ↢具↡。

^じょう、 ¬*智度ちどろん¼・¬*瑜伽ゆがろん¼・¬*しょきょうようしゅう¼ によりて、 これをせんす。

已上依リテ↢¬智度論¼・¬瑜伽論¼・¬諸経要集¼↡、撰↠之

^*人間にんげんじゅうねんをもつて天王てんのうてん一日いちにちいちとなして、 その寿じゅひゃくさいなり。 天王てんのうてん寿じゅをもつてこのごくいちにち0799いちとなして、 その寿じゅひゃくさいなり。 せっしょうせるもの、 このなかにつ。 じょう寿じゅりょうは ¬しゃ¼ (*倶舎論) による。 *業因ごういんは ¬*しょうぼうねんぎょう¼ による。 しもろくもこれにおなじ。

↢人間五十年↡為シテ↢四天王天一日一夜寿五百歳ナリ。以↢四天王天寿↡為↢此地獄一日一夜↡、其寿五百歳ナリ。殺生セル之者堕↢此↡。已上寿量↢¬倶舎¼↡。業因↢¬正法念経¼↡。下↠之

^¬*優婆うばそくかいきょう¼ には、 はじめのてん (四天王天)一年いちねんをもつてはじめのごく (等活地獄)にちとなせり。 下去げここれになぞらへよ。

¬優婆塞戒経ニハ¼、以↢初一年↡為↢初地獄日夜↡。下去ヘヨ↠之

 ^このごく*もんのほかに、 またじゅうろく*眷属けんぞく*別処べっしょあり。

地獄四門之外復有↢十六眷属別処↡。

・屎泥処

^いちでいしょ。 いはく、 きはめてあつでいあり。 そのあじはひ、 もつともにがし。 金剛こんごうくちばしあるむし、 そのなかにじゅうまんせり。 ざいにん、 なかにありてこのねっらふ。 もろもろのむしじゅしゅうして、 いちきおらふ。 かわやぶりてにくらひ、 ほねりてずいふ。

屎泥処。謂↢極屎泥↡。其味最。金剛アル虫充↢満セリ↡。罪人在リテ↠中↢此熱屎↡。諸虫聚集シテ一時ヒテ↠皮クラ↠肉リテ↠骨↠髄

^むかし鹿ししころとりころせるもの、 このなかにつ。

昔殺鹿シシセル↠鳥之者、堕↢此↡。

・刀輪処

^刀輪とうりんしょ。 いはく、 てつかべ*しゅうそうして、 たかじゅうじゅんなり。 みょう*ねんとして、 つねにそのなかにてり。 人間にんげんはこれにくらぶればゆきのごとし。 わづかにそのるるに、 くだくること芥子けしのごとし。 また熱鉄ねつてつあめふらすこと、 なほさかりなるあめのごとし。 また刀林とうりんあり。 そのつるぎはきはめてし。 また*もろありて、 あめのごとくしてくだる。 もろもろのまじはりいたりて、 堪忍かんにんすべからず。

刀輪処。謂壁周帀シテ十由旬ナリ。猛火熾然トシテテリ↢其↡。人間之火ブレバ↠此↠雪。纔ルルニ↢其↡、砕クルコト↢芥子↡。又雨コト↢熱鉄↡猶如1015↢盛ナル↡。復有↢刀林↡。其ツルギ。復ルコト、如クシテ↠雨而下。衆苦交リテ不↠可カラ↢堪忍↡。

^むかしものむさぼりてせっしょうせるもの、 このなかにつ。

昔貪↠物セル之者、堕↢此↡。

・瓮熟処

^さんおうじゅくしょ。 いはく、 罪人ざいにんりててつ*もたいのなかにれて、 せんじゅくすることまめ0800のごとし。

熟処。謂リテ↢罪人↡入レテ↢鉄モタヒ↡、煎スルコト↠豆

^むかしせっしょうしてらへるもの、 このなかにつ。

昔殺シテヘル者、堕↢此↡。

・多苦処

^多苦たくしょ。 いはく、 このごくじゅう千億せんおくしゅりょう*どくあり。 つぶさにくべからず。

多苦処。謂地獄↢十千億種无量楚毒↡。不↠可カラ↢具↡。

^むかしなわをもつてひとしばり、 つえをもつてひとち、 ひとりてとおみちかしめ、 けわしきところよりひとおとし、 けむりふすべてひとなやまし、 しょうおそれしむ。 かくのごときの、 種々しゅじゅひとなやませるもの、 みなこのなかにつ。

昔以↠縄↠人、以↠杖↠人、駆リテ↠人↠行↢於遠↡、従↢嶮シキ処↡落↠人フスベテ↠煙マシ↠人、令オド↢小児↠是クノ種々マセル↠人之者、皆堕↢此↡。

・闇冥処

^あんみょうしょ。 いはく、 黒闇こくあんところにありて、 つねにあんのためにかる。 大力だいりきみょうふう金剛こんごうせんきて、 あわり、 あわくだくこと、 なほいさごらすがごとし。 熱風ねっぷうかるるに、 かたなくがごとし。

闇冥処。謂リテ↢黒闇↡、常↢闇火↡所↠焼。大力猛風吹キテ↢金剛山↡、クコト、猶如↠散スガ↠沙。熱風ルニ↠吹、如↢利クガ↡。

^むかしひつじくちはなふさぎ、 かわらのなかにかめきてころせるもの、 このなかにつ。

フサ↢羊口・鼻↡、二カハラ之中キテ↠亀セル者、堕↢此↡。

・不喜処

^ろく不喜ふきしょ。 いはく、 おおきなるえんありてちゅうぼんじょうす。 熱炎ねつえんくちばしあるとり狗犬いぬ*かんの、 そのこえ極悪ごくあくにしてはなはだ怖畏ふいすべし。 つねにきたりて*食噉じきだんす。 *骨肉こつにく狼藉ろうぜきたり。 金剛こんごうくちばしあるむしほねのなかに往来おうらいして、 そのずいらふ。

不喜処。謂リテ↢大ナル火炎↡昼夜焚焼。熱炎アル鳥・狗犬 イヌ ・野干、其声極悪ニシテ↢怖畏リテ食噉。骨肉狼藉。金剛アル虫骨往来シテ、而シテラフ↢其↡。

^むかしかいき、 つづみち、 おそるべきこえをなして鳥獣ちょうじゅう殺害せつがいせるもの、 このなかにつ。

昔吹↠貝↠鼓、作シテ↢可↡殺↢害セル鳥獣之者、堕↢此↡。

・極苦処

^しちごくしょ。 いはく、 嶮岸けんがんしたにありて、 つねにてっのためにかる。

極苦処。謂リテ↢嶮岸↡、常↢鉄火↡所↠焼

^むかし*放逸ほういつにしてせっしょうせるもの、 このなかにつ。

昔放逸ニシテ殺生セル之者、堕↢此↡。

^じょう、 ¬しょうぼうねんぎょう¼ による。 *自余じよしょ、 ¬きょう¼ (同) のなかに説かず。

已上依↢¬正法念経¼↡。自余九処、¬経¼中不↠

二 Ⅰ ⅱ a 黒縄

08015】 ^こくじょうごくといふは、 等活とうかつしたにあり。 じゅうこうさきおなじ。

黒縄地獄トイフ者、在↢等活↡。縦広同↠前

^獄卒ごくそつ罪人ざいにんりて熱鉄ねつてつせて、 熱鉄ねつてつなわをもつてじゅうおう*すみうちて、 熱鉄ねつてつおのをもつてなわしたがひてく。 あるいはのこぎりをもつてき、 あるいはかたなをもつてほふりて、 ひゃく千段せんだんになして処々しょしょ散在さんざいす。 また熱鉄ねつてつなわけて、 まじよこたふることしゅなり。 罪人ざいにんりてそのなかにれしむるに、 悪風あくふうにわかきて、 その*きょうらくして、 にくき、 ほねこがして、 どくきわまりなし。

獄卒執リテ↢罪人↡臥セテ↢熱鉄↡、以↢熱鉄↡縦横スミウチテ↠身、以↢熱鉄↡随ヒテ↠縄。或イハ↠鋸、或イハ↠刀リテ、作シテ↢百千段1016↡処々散在。又懸ケテ↢熱鉄↡、交ルコト無数ニシテリテ↢罪人↡令ルニ↠入↢其悪風アラキテ、交↢絡シテ↡、焼↠肉、焦シテ↠骨、楚毒無↠極

^じょう、 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬智度ちどろん¼。

已上¬瑜伽¼・¬智度論¼

^また左右さうおおきなる鉄山てっせんあり。 やまうえにおのおのてつはたぼこて、 はたぼこはしてつなわり、 なわしたおお*熱鑊ねつかくあり。 罪人ざいにんりて、 てつやまはしめなわうえよりかしめ、 はるかにてつかなえおとしてくだることきわまりなし。 ¬*観仏かんぶつ三昧ざんまいきょう¼

又左右↢大ナル鉄山↡。山タリ↢鉄ハシレリ↢鉄↢熱鑊↡。駆リテ↢罪人↡、令↧負セテ↢鉄↡従↢縄上↡行↥、遥シテ↢鉄カナヘ↡摧ルコト↠極¬観仏三昧経¼

^等活とうかつごくおよびじゅうろく別処べっしょの、 一切いっさいのもろもろのじゅうばいしてかさねてく。 獄卒ごくそつ罪人ざいにんしゃくしていはく、

等活地獄及十六別処、一切十倍シテネテ。獄卒呵↢シテ罪人↡云

^しんはこれ第一だいいちあだなり。 このあだをもつともあくとなす。
このあだよくひとしばりて、 おくりて*えんところいたらしむ。

是第一ナリ↠悪
怨能リテ↠人リテラシム↢閻羅

^なんぢひとごくかれて、 悪業あくごうのためにじきせらる。
さいきょうだいとう親属しんぞくすくふことあたはず」 と。 乃至広説

汝独地獄カレテ↢悪業↡所↠食
妻子兄弟等↠能↠救フコト 乃至広説

^のち0802ごくは、 おのおの、 前々ぜんぜん一切いっさいごくのあらゆるもろもろのをもつてじゅうばいしておもくること、 れいしてこれをりぬべし。 じょう、 ¬しょうぼうねんぎょう¼

地獄、各↢前々一切地獄↡十倍シテクルコト↢例シテリヌ↟之已上¬正法念経¼意

^人間にんげんいっぴゃくさいをもつてとうてん一日いちにちいちとなして、 その寿じゅいっ千歳せんざいなり。 とうてん寿じゅをもつて一日いちにちとなして、 このごく寿じゅいっ千歳せんざいなり。

↢人間一百歳↡為↢忉利天一日一夜↡、其寿一千歳ナリ↢忉利天寿↡為↢一日夜↡、地獄寿一千歳ナリ

^せっしょう*ちゅうとうせるもの、 このなかにつ。

殺生・偸盗セル之者、堕↢此↡。

・等喚受苦処

 ^また*しょあり。 等喚とうかんじゅしょづく。 いはく、 けわしききしりょうじゅんなるにきて、 熱炎ねつえんこくじょうをもつて束縛そくばくして、 けをはりて、 しかしてのちにこれをして、 てつかたなねつうえおとす。 てつほのおきばあるいぬ*噉食だんじきするところなり。 一切いっさい*身分しんぶん分々ぶんぶんぶんす。 こえとなへてかんすれども、 すくふものあることなし。

復有↢異処↡。名↢等喚受苦処↡。謂キテサカシキ無量由旬ナルニ↡、熱炎黒縄ヲモテ束縛シテ、繋リテ、然シテシテ↠之、堕↢利、熱地之上↡。鉄アル狗之所ナリ↢噉食スル↡。一切身分、分々分離。唱ヘテ↠声吼喚スレドモ、無↠有ルコト↢救者↡。

^むかし説法せっぽうせしに悪見あくけんろんによりてし、 一切いっさいじつにして、 一切いっさいかえりみず、 きしげてせつせるもの、 このなかにつ。

昔説法セシニリテシ↢悪見↡、一切不、不↠顧↢一切↡、投ゲテ↠岸ヨリセル者、堕↢此↡。

・畏鷲処

^またしょあり。 鷲処じゅしょづく。 あるほん*この四字しじなし。 いはく、 獄卒ごくそつつえいからかしてきゅうち、 ちゅうにつねにはしらしめ、 えん鉄刀てっとうり、 ゆみき、 はなち、 しりえしたがひてはしひ、 くだち、 これをる。

復有↢異処↡。↢畏鷲処↡。本无↢此四字↡獄卒怒レルヲシテ、昼夜↢火炎鉄刀↡、挽↠弓ハナ↠箭、随ヒテ↠後ヒテクダ、射↠之

^むかしものとんぜしがゆゑにひところし、 ひとしばりてじきうばひしもの、 ここにつ。 ¬しょうぼうねんぎょう¼ 略抄りゃくしょう

1017シガ↠物↠人、縛リテ↠人ヒシ↠食之者、堕↡。¬正法念経¼略抄

二 Ⅰ ⅱ a 衆合

08036】 ^さん衆合しゅごうごくといふは、 こくじょうしたにあり。 じゅうこうさきおなじ。

衆合地獄トイフ者、在↢黒縄↡。縦広同↠前

^おお鉄山てっせんありて、 両々りょうりょうあひむかへり。 *牛頭ごず*馬頭めずとうのもろもろの獄卒ごくそつ*じょうりて、 ˆ罪人ざいにんをˇ りてやまのあひだにらしむ。 このときふたつやまきたりてあわす。 身体しんたいくだくだけ、 ながれてつ。

リテ↢鉄山↡、両々相対ヒテ牛頭・馬頭等獄卒、手リテ↢器↡、駆リテ↠入↢山↡。是フタツ山迫リテ。身体摧、血流レテ↠地

^あるいはてつやまありてそらよりちて、 罪人ざいにんつに、 くだくること沙揣しゃせんのごとし。 あるいはいわうえきていわおをもつてこれをす。 あるいはてつうすれててつきねをもつてく。

イハリテ↢鉄山↡従シテ↠空而落チテ、打↢於罪人クルコト↢沙揣↡。或イハキテ↢石↡以↠巌↠之。或イハレテ↢鉄↡以↢鉄

^極悪ごくあくごく、 ならびに熱鉄ねつてつ獅子ししろうとうのもろもろのけだものからすわしとうとりきおきたりて食噉じきだんす。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)。

極悪獄鬼并熱鉄師子・虎・狼等獣、烏・鷲等鳥、競リテ食噉¬瑜伽¼・¬大論¼

^また鉄炎てつえんくちばしあるわし、 その*はらわたりをはりてはしきて、 これを噉食だんじきす。

又鉄炎鷲、取↢其↡已リテキテハシ↡而噉↢食↡。

^かしこにおおきなるかわあり。 なかにてっありて、 みなことごとくゆ。 獄卒ごくそつ罪人ざいにんとらへて、 かのかわのなかにげて、 てっうえおとす。

↢大ナル河↡。中↢鉄鉤↡皆悉。獄卒トラヘテ↢罪人↡、ゲテ↢彼↡、堕↢鉄鉤↡。

^またかのかわのなかにあつしゃくどうしるありて、 かの罪人ざいにんただよはす。 あるいはのはじめてづるがごときものあり。 沈没ちんもつせること、 おもいしのごときものあり。 げて、 てんかひて号哭ごうこくするものあり。 ともにあひちかづきてしかも号哭ごうこくするものあり。

又彼赤銅アリテハス↢彼罪人↡。或イハ↧身如↢日ヅルガ↡者↥。有↧身沈没セルコト↢重↡者↥。有↢挙ゲテ↠手ヒテ↠天而号哭スル者↡。有↢共相近ヅキテ号哭スル者↡。

^ひさしくだいけて、 しゅもなく、 もなし。

シクケテ↢大苦↡、↠主、無↠救

・刀葉林

^また獄卒ごくそつごくにんりて*刀葉とうようりんく。 かのはしるに、 0804*たんじょうにして*厳飾ごんじきにょあり。 かくのごとくをはりて、 すなはちかののぼれば、 ようかたなのごとくして、 その身肉しんにくく。 つぎにはそのすじく。 かくのごとく一切いっさいところりをはりて、 のぼることををはりて、 かのにょれば、 またにあり。

又復獄卒取リテ↢地獄↡置↢刀葉林↡。見ルニ↢彼ハシ↡有↢好ニシテ厳飾婦女↡↠是クノ見已リテ、即レバ↢彼↡、樹クシテ↠刀↢其身肉↡。次ニハ↢其↡。如↠是クノ↢割一切↡已リテ、得↠上ルコトヲ↠樹リテ、見レバ↢彼婦女↡復在↢於地↡。

^よくこびたるまなこをもつて、 かみざま罪人ざいにんて、 かくのごときごんをなさく、 「なんぢをおも因縁いんねんをもつて、 われこのところいたれり。 なんぢ、 いまなんがゆゑぞ、 きたりてわれにちかづかざる。 なんぞわれをいだかざる」 と。

↢欲↡、上↢罪人↡、作サク↢如↠是クノ↡、念↠汝因縁ヲモテ、我到レリ↢此↡。汝、今何不↠来ヅキテ↠我。何ルト↠抱↠我

^罪人ざいにんをはりて、 *欲心よくしんじょうにして、 だいにまたくだれば、 刀葉とうようかみかひて、 きこと剃刀たいとうのごとくして、 さきのごとくあまねく一切いっさい身分しんぶんく。 すでにいたりをはりぬれば、 しかもかのにょはまたはしにあり。 罪人ざいにんをはりて、 またのぼる。

罪人見已リテ、欲心熾盛ニシテ、次第復下レバ、刀葉向ヒテ↠上キコトクシテ↢剃刀↡、如シテ↠前1018↢一切身分↡。既↠地リヌレバ、而婦女復在↢樹ハシ↡。罪人見已リテシテ復上↠樹

^かくのごとくりょうひゃく千億せんおくさいしんたぶらかされて、 かのごくのなかに、 かくのごとくてんぎょうし、 かくのごとくかるること、 邪欲じゃよくいんとなす。 ないひろく。

シテ↠是クノ無量百千億歳、自心タブ、彼地獄シテ、如↠是クノ転行、如↠是クノルコト↠焼邪欲為↠因。乃至

^獄卒ごくそつ罪人ざいにんしゃくして、 きていはく、

獄卒呵↢シテ罪人↡、説キテ↠偈

^異人ことひとあくをなして、 異人ことひとほうくるにあらず。
みづからのごうをもつてみづからしゅじょうみなかくのごとし」 と。 ¬しょうぼうねんぎょう¼。

↣異人作シテ↠悪異人受クルニ↢苦
ラノヲモテ得↠果衆生皆如↠是クノ ¬正法念経¼

^にん0805げんひゃくさいをもつて夜摩やまてん一日いちにちとなして、 その寿じゅ千歳せんざいなり。 かのてん寿じゅをもつてこのごく一日いちにちとなして、 その寿じゅ千歳せんざいなり。 せっしょうちゅうとう*邪婬じゃいんのもの、 このなかにつ。

↢人間二百歳↡為↢夜摩天一日夜↡、其寿二千歳ナリ↢彼寿↡為一日夜↡、寿二千歳ナリ。殺生・偸盗・邪婬之者、堕↢此↡。

 ^このだいごくにまたじゅうろく別処べっしょあり。

大地獄復有↢十六別処↡。

・悪見処

^いはく、 一処いっしょあり。 悪見あくけんしょづく。 児子にしりて、 めてじゃぎょうして、 号哭ごうこくせしめたるもの、 ここにちてく。

↢一処↡。名↢悪見処↡。取リテ↢他児子↡、強メテ邪行シテメタル↢号哭↡者、堕チテ↠此↠苦

^いはく、 罪人ざいにんみづからの児子にしれば、 ごくのなかにあり。 獄卒ごくそつ、 もしはてつつえをもつて、 もしはてつきりをもつて、 その ˆ児子にしのˇ おんのなかをす。 もしはてっをもつて、 そのおんのなかにくぎうつ。 すでにみづからののかくのごとき苦事くじて、 愛心あいしんをもつてかなしみいきたゆること堪忍かんにんすべからず。 この愛心あいしんは、 しょうにおいていふに、 じゅうろくぶんのなかにそのいちにもおよばず。

罪人見レバ児子↡、在↢地獄↡。獄卒、若シハ↢鉄↡、若シハ↢鉄↡、刺↢其↡。若シハ↢鉄↡、クギウ↢其↡。既↠是クノ苦事↡、愛心ヲモテイキタユルコト不↠可カラ↢堪忍↡。此愛心、於テイフニ↢火焼↡十六分不↠及↢其ニモ↡。

^かのひと、 かくのごとくしんめられをはりてまたしんく。 いはく、 めんしたき、 あつあかがねしるりて、 その糞門ふんもんそそぐ。 その身内しんないるに、 その*じゅくぞうだいしょう*ちょうとうく。 だいきをはりて、 したにありてづ。 つぶさに身心しんしんくること、 りょうひゃくせんねんのなかにまず。

人如シテ↠是クノメサレリテ復受↢身苦↡。謂頭面リテ↠下リテ↢熱モテ↡、潅↢其糞門↡。入ルニ↢其身内↡、焼↢其熟蔵・大小↡。次第リテ、在リテ↠下而出。具クルコト↢身心↡、無量百千年不↠止

・多苦悩処

^また別処べっしょあり。 のうしょづく。 いはく、 おとこの、 おとこにおいてじゃぎょうぎょうぜるもの、 ここにちてく。

又有↢別処↡。名↢多苦悩↡。謂↠男ゼル↢邪行↡者、堕チテ↠此↠苦

^0806はく、 もとなんるに、 一切いっさい身分しんぶん、 みなことごとく熱炎ねつえんあり。 きたりてそのいだくに、 一切いっさい身分しんぶん、 みなことごとくさんしぬ。 しをはりてまたよみがえり、 きはめて怖畏ふいをなして、 はしのがれてるに、 けわしききしよりち、 ほのおくちばしあるからすほのおくちかんありて、 これを噉食だんじきす。

ルニ↢本男子↡、一切身分皆悉熱炎ニシテリテクニ↢其↡、一切身分皆悉解散シヌ。死リテヨミガヘ、極シテ↢怖畏↡、走ノガレテ而去ルニ、堕1019ツレバ↢於嶮シキヨリ↡、有リテ↢炎アル烏、炎野干↡而噉↢食↡。

・忍苦処

^また別処べっしょあり。 にんしょづく。 にょれるもの、 ここにちてく。

復有↢別処↡。名↢忍苦処↡。レル↢他婦女↡者、堕チテ↠此

^いはく、 獄卒ごくそつこれをはしけて、 めんしたにあり、 あしうえにあり。 したおおきなるほのおきて一切いっさいく。 つくせばまたしょうじぬ。 しょうかんしてくちひらけば、 くちよりりて、 そのしんはい*生熟しょうじゅくぞうとうく。 きょうくがごとし。 じょう、 ¬しょうぼうねんぎょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

獄卒懸ケテ↢之ハシ↡、頭面↠下、足↢於上キテナル↡焼↢一切↡。焼セバ復生ジヌ。唱喚シテケバ↠口、火従↠口入リテ、焼↢其心・肺・生熟蔵等↡。余↢経クガ↡。已上¬正法念経ヨリ¼略↢抄

二 Ⅰ ⅱ a 叫喚

【7】 ^きょうかんごくといふは、 衆合しゅごうしたにあり。 じゅうこうさきおなじ。

叫喚地獄トイフ者、在↢衆合↡。縦広同↠前

^獄卒ごくそつこうべなることこがねのごとし。 まなこのなかよりづ。 あかいろころもたり。 あしちょうだいにして、 はしることかぜのごとし。 くちよりあくしょういだして罪人ざいにんる。 罪人ざいにん*こうして、 *こうべたたきて、 あわれみをもとむ。 「ねがはくは*みんれて、 すこ放捨ほうしゃせられよ」 と。 このごんありといへども、 いよいよしんす。 ¬大論だいろん¼ (大智度論)。

獄卒頭黄ナルコト↠金。眼ヨリ火出。著タリアカ↡。手足長大ニシテルコト↠風。口ヨリシテ↢悪声↡而射↢罪人↡。罪人惶怖シテ、叩キテ↠頭↠哀。願クハレテ↢慈愍↡小レヨト↢放捨↡。雖↠有リト↢此言↡、弥↢瞋怒↡。¬大論¼

^あるいはてつぼうをもつてこうべちて熱鉄ねつてつよりしてはしらしめ、 あるいは*熱熬ねつごう0807きて反覆ほんぷくしてこれをあぶる。 あるいは熱鑊ねっかくげてこれをる。 あるいはりてみょうえんてつむろる。 あるいはかなはしをもつてくちひらきて*洋銅ようどうそそぎて、 *ぞうしょうらんしてしもよりただちにいだす。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)。

イハ↢鉄↡打チテ↠頭リシテ↢熱鉄地↡令↠走イハキテ↢熱熬↡反覆シテ↠之。或イハゲテ↢熱鑊↡而煎↢煮↡。或イハリテ↢猛炎↡。或イハカナキテ↠口而潅ギテ↢洋銅↡、焼↢爛シテ五蔵↡従↠下直¬瑜伽¼・¬大論¼

^罪人ざいにんきて、 *えんにんしょうこんしていはく、

罪人説キテ↠偈、傷↢恨シテ閻羅人↡言

^「なんぢ、 なんぞしんなき、 またなんぞ寂静じゃくじょうならざる。
われはこれしんうつわなり。 われにおいてなんぞなき」 と。

汝何↢悲心↡復何↢寂静ナラ
是悲心モノナリ↠我キト↠悲

^ときえんにん罪人ざいにんこたへていはく、

閻羅人答ヘテ↢罪人↡曰

^「すでに*あいあみのためにたぶらかされて、 あくぜんごうをなして、
いま悪業あくごうほうく。 なんがゆゑぞわれをいかうらむるや」 と。

↢愛タブサレテシテ↢悪不善
今受↢悪業↢恨ムルヤト

^またいはく、

又云

^「なんぢもと悪業あくごうをなして、 *よくのためにたぶらかされき。
かのときになんぞいずして、 いまゆること、 なんのおよぶところかあらん」 と。 ¬しょうぼうねんぎょう¼。

汝本作シテ↢悪業↢欲痴↡所タブ
シテ↠悔今悔ユルコトカアラム↠及 ¬正法念経¼

^人間にんげんひゃくさいをもつて率天そつてん一日いちにちとなして、 その寿じゅ千歳せんざいなり。 率天そつてん寿じゅをもつてこのごく一日いちにちとなして、 寿じゅ千歳せんざいなり。

↢人間四百歳↡為都卒天一日夜↡、其寿四千歳ナリ都卒寿↡為獄一日夜寿四千歳ナリ

^せつとういん飲酒おんじゅのもの、 こ0808のなかにつ。

殺・盗・婬・飲酒者、堕↢此↡。

 ^またじゅうろく別処べっしょあり。

復有1020↢十六別処↡。

・火末虫処

^そのなかに一処いっしょあり。 まつちゅうづく。 むかしさけりしに、 みずくわせるもの、 このなかにつ。

↢一処↡。名↢火末虫↡。昔売リシニ↠酒、加セル↡者、堕↢此↡。

^*ひゃくびょうせり。 *風黄ふうおうりょうぞうに、 おのおのひゃくいちやまいあり。 がっしてひゃくあり。 そのいちやまいちからは、 一日いちにちにおいてよく*だいしゅうのそこばくのひとをしてみなせしむ。 またよりむしでて、 そのにくこつずいやぶりて飲食おんじきす。

セリ↢四百四病↡。風黄冷雑、各↢百一病↡。合シテ↢四百四↡、於↢一日夜↡能↢四大若干ソコバクヲシテ皆死↡。又自ヨリ虫出デテ、破リテ↢其皮・肉・骨・髄↡飲食

・雲火霧処

^また別処べっしょあり。 うん火霧かむづく。 むかしさけをもつてひとあたへて、 はしめをはりて、 *調じょうして、 これをろうして、 かれをしてしゅうせしめたるもの、 ここにちてく。

復有↢別処↡。名↢雲火↡。昔以↠酒ヘテ↠人、令↠酔リテ、調戯シテシテ↠之、令メタル↢彼ヲシテ羞恥之者、堕チテ↠苦

^いはく、 ごくてることあつひゃく*ちゅうなり。 獄卒ごくそつ罪人ざいにんとらへてのなかにかしめて、 あしよりこうべいたるまで一切いっさいようしょうせしむ。 あしぐればかえりてしょうじぬ。 かくのごとくりょうひゃく千歳せんざいあたふることまず。 きょうもんのごとし。

獄火テルコト二百肘ナリ。獄卒ヘテ↢罪人↡令メテ↠行↢火↡、従↠足至ルマデニ↠頭一切洋消セシム。挙グレバリテジヌ。如↠是クノ無量百千歳、与フルコト↠苦不↠止。余↢経↡。

^また獄卒ごくそつ罪人ざいにんしゃくして、 きていはく、

又獄卒呵↢シテ罪人↡、説キテ↠偈

^ぶつみもとにしてをなし、 *しゅっやぶり、
だつくことのごとくするは、 いはゆるさけ一法いっぽうなり」 と。 ¬しょうぼうねんぎょう¼。

↢仏↠痴ヤブ↢世出世
クコト↢解脱↡如クスルハ↠火所謂一法ナリ ¬正法念経¼

二 Ⅰ ⅱ a 大叫喚

08098】 ^だいきょうかんごくといふは、 きょうかんしたにあり。 じゅうこうさきおなじ。 そうまたおなじ。 ただしさきごく、 およびもろもろのじゅうろく別処べっしょ一切いっさいのもろもろのじゅうばいしておもく。

大叫喚地獄トイフ者、在↢叫喚↡。縦広同↠前。苦相亦同。但地獄、及十六別処一切十倍シテ

^人間にんげんはっぴゃくさいをもつて楽天らくてん一日いちにちとなして、 その寿じゅはっ千歳せんざいなり。 かのてん寿じゅをもつてこのごく一日いちにちとなして、 その寿じゅはっ千歳せんざいなり。

↢人間八百歳↡為↢化楽天一日夜↡、寿八千歳ナリ。以↢彼寿↡為↢此一日夜↡、其寿八千歳ナリ

^せつとういん飲酒おんじゅ*もうのもの、 このなかにつ。

殺・盗・婬・飲酒・妄語者、堕↢此↡。

^獄卒ごくそつ罪人ざいにんしゃくして、 きていはく、

卒呵↢シテ罪人↡、説キテ↠偈

^もう第一だいいちなり。 なほよく大海だいかいをすらきてん。
いはんやもうにんくこと、 草木そうもくたきぎくがごとし」 と。

妄語第一ナリ尚能キテム↢大海ヲスラ
クコトヲヤ↢妄語シト↠焼クガ↢草木薪

 ^また*じゅうろく別処べっしょあり。

復有↢十六別処↡。

・受鋒苦処

^そのなかの一処いっしょじゅ鋒苦ふくづく。 熱鉄ねつてつはりぜつをともにして、 啼哭ていこくすることあたはず。

一処↢受鋒苦↡。熱鉄針、口舌シテ、不↠能↢啼哭スルコト↡。

・受無辺苦処

^また別処べっしょあり。 じゅへんづく。 獄卒ごくそつ熱鉄ねつてつかなはしをもつてそのしたいだす。 きをはりぬればまたしょうじ、 しょうじぬればすなはちまたく。 まなこくこともまたしかなり。 またかたなをもつてそのけずる。 かたなはなはだうすきこと、 たいとうのごとし。

復有↢別処↡。名↢受無辺苦↡。獄卒以↢熱鉄カナ↡抜↢出↡。抜リヌレバ復生ジヌレバ復抜。抜クコトモ亦然ナリ。復以↠刀↢其1021↡。刀甚キコト↢剃頭刀↡。

^かくのごときるいのもろもろのくること、 みなこれもうほうなり。 きょうくがごとし。 ¬しょうぼうねんぎょう¼ 略抄りゃくしょう

クルコト↢如↠是クノ異類↡、皆是妄語之果報也。余↢経クガ↡。¬正法念経¼略抄

二 Ⅰ ⅱ a 焦熱

08109】 ^ろくしょうねつごくといふは、 だいきょうかんしたにあり。 じゅうこうさきおなじ。

焦熱地獄トイフ者、在↢大叫喚之下↡。縦広同↠前

^獄卒ごくそつ罪人ざいにんとらへて熱鉄ねつてつうえせ、 あるいはあおむけ、 あるいはうつぶせて、 こうべよりあしいたるまで、 おおきなる熱鉄ねつてつぼうをもつて、 あるいはち、 あるいはきて、 *肉摶にくだんのごとくならしむ。 あるいは極熱ごくねつおおきなる*鉄熬てつごううえきて、 みょうえんをもつてこれをあぶる。 左右さうにこれをてんじて、 ひょうしょうはくす。

獄卒ヘテ↢罪人↡臥↢熱鉄↡、或イハイハウツブセテ、従↠頭至ルマデ↠足、以↢大ナル熱鉄↡、或イハイハキテ、令↠如クナラ↢肉摶↡。或イハキテ↢極熱ナル鉄熬↡、猛炎ヲモテ↠之。左右ジテ↠之、表裏焼薄

^あるいはおおきなるてつくじりをもつてしもよりこれをつらぬき、 こうべとおしていだし、 反覆ほんぷくしてこれをあぶり、 かのじょうをして諸根しょこんもう、 およびくちのなかにことごとくみなほのおおこらしむ。 あるいは熱鑊ねっかくれ、 あるいはてつ*ろうくに、 てつ猛盛みょうじょうにして骨髄こつずいとおす。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)。

イハ↢大ナルクジリ↡従↠下貫↠之、徹シテ↠頭而出、反覆↠之↢彼有情ヲシテ諸根・毛孔、及以 オヨビ 皆炎起↡。或イハ↢熱鑊↡、或イハキテ↢鉄↡、鉄火猛盛ニシテ↢於骨髄↡。¬瑜伽¼・¬大論¼

^もしこのごくまめばかりのをもつてえんだいかば、 いちきなん。 いはんや罪人ざいにんやわらかなること*しょうのごとし。 じょうぼんじょうせんに、 あにしのぶべけんや。 このごくにんは、 さきごくのぞること、 なほ雪霜せっそうのごとし。 ¬しょうぼうねんぎょう¼。

↢此バカリ之火↡置カバ↢閻浮提↡、一時キナム。況罪人之身カナルコト↢生蘇↡。長時焚焼スルコト、豈ケム↠忍哉。此地獄、望↢見ルコト地獄之火↡、猶如トオモヘリ雪霜↡。¬正法念経¼

^人間にんげんせんろっぴゃくさいをもつて*他化たけてん一日いちにちとなして、 その寿じゅまんろく千歳せんざいなり。 他化たけてん寿じゅをもつてにちとなして、 このごく寿じゅまたしかなり。

↢人間千六百歳↡為↢他化天一日夜↡、其寿万六千歳ナリ他化天寿↡為↢日夜↡、寿亦然ナリ

^せつとういん飲酒おんじゅもう邪見じゃけんのもの、 このなかにつ。

殺・盗・婬・飲酒・妄語・邪見之者、堕↢此↡。

 ^0811もんのほかにまたじゅうろく別処べっしょあり。

四門之外復有↢十六別処↡。

・分荼離迦処

^そのなかに一処いっしょあり。 *ふん荼離だりづく。 いはく、 かの罪人ざいにん一切いっさい身分しんぶんに、 芥子けしばかりもえんなきところなし。 ごくにん、 かくのごとくきていはく、 「なんぢ、 くすみやかにきたれ。 なんぢ、 くすみやかにきたれ。 ここにふん荼離だりいけあり。 みずありてみつべし、 はやしじゅんえいあり」 と。

↢一処↡。名↢分荼離迦↡。謂罪人一切身分、無↧芥子バカリ↢火炎↡処↥。異地獄人如↠是クノキテ汝、疾。汝、疾。此↢分荼離迦池↡。有リテ↠水可↠飲ミツ、林リト↢潤影↡。

^したがひてはしおもむくに、 みちほとりあなあり。 なかにさかりなるてり。 罪人ざいにんりをはるに、 一切いっさい身分しんぶんみなことごとくきぬ。 けをはればまたしょうじ、 しょうじをはればまたく。

ヒテ而走クニ、道ホトリ↠坑テタ↢中サカリナル↡。罪人入1022ルニ、一切身分皆悉キヌ。焼レバ復生レバ復焼

^渇欲かつよくまずして、 すなはち前進すすみてりぬ。 すでにかのところれば、 ふん荼離だりほのおゆること、 高大こうだいなることひゃくじゅんなり。 かのしょうしゃせられて、 してまたよみがえる。

渇欲不シテ↠息、便前進 スス ミテリヌ。既レバ↢彼↡、分荼離迦ナルコト五百由旬ナリ。彼焼炙セラレテ、死シテ而復活

^もしひと、 みづから餓死がししててんうまるることをることをのぞみ、 またにんおしへて邪見じゃけんじゅうせしめたるもの、 このなかにつ。

人自餓死シテ↠得コトヲ↠生ルルコトヲ↠天、復教ヘテ↢他人↡令メタル↠住↢邪見↡者、堕↢此↡。

・闇火風処

^また別処べっしょあり。 あんふうづく。 いはく、 かの罪人ざいにん悪風あくふうかれて、 くうのなかにありて、 *しょところなし。 車輪しゃりんのごとくてんじて、 るべからず。 かくのごとくてんじをはるに、 *刀風とうふうしょうじて、 くだくこといさごのごとくして、 十方じっぽう分散ふんさんす。 さんじをはればまたしょうじ、 しょうじをはればまたさんず。 つねにかくのごとし。

復有↢別処↡。名↢闇火風↡。謂罪人悪風↠吹、在リテ↢虚空↡、無↢所依処↡。如車輪↡疾ジテ、身不↠可カラ↠見。如↠是クノルニ、異刀風生ジテ、砕クコト↠身クシテ↠沙、分↢散十方↡。散レバ復生レバ復散恒常 ツネ ↠是クノ

^もしひと、 かくのごときけんをなさく、 「一切いっさい諸法しょほうに、 じょうじょう0812とあり。 じょうといふはなり。 じょうといふはだいなり」 と。 かの邪見じゃけんにん、 かくのごときく。 きょうくがごとし。 ¬しょうぼうねんぎょう¼。

人作サク↢如↠是クノ↡、一切諸法↢常無常↡。无常トイフ者身ナリ。常トイフ者四大ナリト。彼邪見人、受↢如↠是クノ↡。余↢経クガ↡。¬正法念経¼

二 Ⅰ ⅱ a 大焦熱

【10】^しちだいしょうねつごくといふは、 しょうねつしたにあり。 じゅうこうさきおなじ。 そうまたおなじ。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)

大焦熱地獄トイフ者、在↢焦熱↡。縦広同↠前。苦相亦同¬瑜伽¼・¬大論¼

^ただしさきろくごく根本こんぽん別処べっしょとの一切いっさいのもろもろのじゅうばいしてつぶさにく。 つぶさにくべからず。 その寿じゅ*はんちゅうこうなり。

地獄根本別処トノ一切十倍シテルコト不↠可カラ↢具↡。其寿、半中劫ナリ

^せつとういん飲酒おんじゅもう邪見じゃけん、 ならびにじょうかいけがせるもの、 このなかにつ。

殺・盗・婬・飲酒・妄語・邪見并セル↢浄戒之者、堕↢此↡。

^この悪業あくごうにんは、 *ちゅうにしてだいごくそうる。

悪業、先↢中有↡見↢大地獄↡。

^えんにんありて、 おもてみにくかたちあり。 あしきはめてあつくして、 もどろかし、 ひじいからかせり。 罪人ざいにんこれをて、 きはめておおきに*もうす。 そのこえらいのごとし。 罪人ざいにんこれをきて恐怖くふさらにす。

↢閻羅人↡ミニク状↡。手足極モドロカ↠身、怒ラカセリ。罪人見↠之、極恾怖。其声如↢雷吼↡。罪人聞キテ↠之恐怖更

^そのかたなり、 ふくはなはだだいにして、 黒雲こくうんいろのごとし。 まなこほのおともしびのごとく、 まがれるきばほこのさきのごとくし。 ひじみなながく、 揺動ようどうしていきおひをなすに、 一切いっさい身分しんぶん、 みなことごとく粗起そきす。 かくのごとき種々しゅじゅづべき形状ぎょうじょうをもつて、 かた罪人ざいにんのどしばる。

レリ↢利肚甚ニシテ、如↢黒雲↡。眼↠灯マガレルホコサキノゴトクナリ。臂・手皆長揺動シテスニ↠勢、一切身分皆悉麁起。如↠是クノ種々形状アリシバ↢罪人↡。

^かくのごとくしてること、 ろくじゅうはっぴゃくせんじゅんかい洲城しゅうじょうぎて、 うみへんにあり。 またくことさんじゅうろくおくじゅんにして、 *漸々ぜんぜんしもかふことじゅうおくじゅん0813なり。 一切いっさいかぜのなかには、 *業風ごうふう第一だいいちなり。 かくのごとき業風ごうふう悪業あくごうにんりて、 かのところいたらしむ。

クシテ↠是クノルコト、過ギテ↢六十八百1023千由旬地海洲城↡、在↢海外辺復行クコト卅六億由旬シテ、漸々フコト↠下十億由旬ナリ。一切ニハ風第一ナリ。如↠是クノ業風↢悪業↡去リテ、到ラシム↢彼↡。

^すでにかしこにいたりをはりぬれば、 *えん魔羅まらおう種々しゅじゅしゃくす。 しゃくすでにおわれば、 悪業あくごうなわをもつてしばりて、 いだしてごくかはしむ。

↠彼リヌレバ閻魔羅王種々。呵責既リテ、悪業ナハヲモテリテ、出シテ↢地獄↡。

^とおだいしょうねつごくのあまねくおおきなるほのおゆるをる。 またごく罪人ざいにん啼哭ていこくこえく。 かなしみうれへ、 はくして、 りょうく。 かくのごとくりょうひゃくせん万億まんおくしゅ年歳ねんさい啼哭ていこくこえきて、 じゅうばいしてはくし、 しんおどろ怖畏ふいす。

↢大燋熱地獄ナルユルヲ↡。又聞↢地獄罪人啼哭之声ヅルタマシヒアリ、受↢無量↡。如シテ↠是クノ無量百千万億無数年歳、聞キテ↢啼哭↡、十倍シテ恐魄心驚怖畏

^えんにん、 これをしゃくしていはく、

閻羅人呵↢シテ↡言

^「なんぢごくこえくに、 すでにかくのごとく怖畏ふいす。
いかにいはんやごくにしてかるることは、 れたる薪草しんそうくがごとし。

汝聞クニ↢地獄↠是クノ怖畏
地獄ニシテコトハ↠焼クガ↢乾レタル薪草

^くはこれくにあらず。 悪業あくごうすなはちこれくなり。
くはすなはちめっすべし。 ごうくをばめっすべからず」 と。

クハ↢是焼クニ悪業乃是焼クナリ
クハシツクヲバ↠可カラ

^かくのごとくねんごろにしゃくしをはりて、 ごくかふに、 おおきなる*じゅあり。 そのじゅあがれることたかひゃくじゅんなり。 そのりょう寛広かんこうなることひゃくじゅんなり。 ほのおゆることじょうなるは、 かのひとしょ悪業あくごう勢力せいりきなり。 きゅうにそのげて、 かのじゅおとすこと、 おおきなるやまきしよりしてさかしききしくが0814ごとし。 じょう、 ¬しょうぼうねんぎょう¼ よりこれをしゅ略抄りゃくしょうす。

↠是クノネンゴロリテ↢地獄↡、有↢大ナル火聚↡。其ホムラレルコト五百由旬ナリ。其量寛広ナルコト二百由旬ナリ。炎ユルコト熾盛レル悪業勢力ナリゲテ↢其↡堕スコト↢彼火聚↡、如↣大ナルシテクガサガシキ↡。已上¬正法念経ヨリ¼取↢意略↣抄

 ^このだいしょうねつごくもんのほかに、 じゅうろく別処べっしょあり。

大焦熱地獄四門之外↢十六別処↡。

・皆悉炎燃処

^そのなかに一処いっしょあり。 一切いっさいひまなく、 ないくうまで、 みなことごとく炎燃えんねんして、 はりあなばかりも炎燃えんねんせざるところなし。 罪人ざいにんのなかにこえおこしてとなさけぶ。 りょう億歳おくさい、 つねにくことまず。

↢一処↡。一切無ヒマ、乃至虚空マデ皆悉炎燃シテ、无↧針バカリ↢炎燃↡処↥。罪人火シテシテ↠声、唱サケ。无量億歳クコト不↠止

^清浄しょうじょう優婆夷うばいおかせるもの、 このなかにつ。

セル↢清浄優婆夷之者、堕↢此↡。

・普受一切苦悩処

^また別処べっしょあり。 じゅ一切いっさいのうづく。 いはく、 炎刀えんとうをもつて一切いっさいかわきて、 そのにくをばおかさず。 すでにそのかわぎ、 とあひつらねてねつきて、 をもつてこれをき、 熱鉄ねつてつけるをもつてその身体しんたいそそぐ。 かくのごとくりょう億歳おくさいだいく。

復有↢別処↡。名↢普受一切苦悩↡。謂炎刀ヲモテ↢割キテ一切↡、不↠侵↢其ヲバ↡。既↢其↡、与↠身相連ネテキテ↡、以↠火↠之、以↢熱鉄↡潅↢其1024↡。如シテ↠是クノ無量億歳受↢大苦↡也。

^*比丘びくの、 さけをもつてかいにょこしらたぶらかして、 そのしんやぶりをはりて、 しかしてのちに、 ともにぎょうじ、 あるいは財物ざいもつあたへたるもの、 このなかにつ。

比丘↠酒コシラタブカシ持戒婦女↡、ヤブ↢其↡已リテ、然シテ、或イハヘタル↢財物之者、堕↢此↡。

^きょうくがごとし。 ¬しょうぼうねんぎょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

クガ↡。¬正法念経ヨリ¼略↢抄

二 Ⅰ ⅱ a 阿鼻

【11】^はち阿鼻あびごくといふは、 だいしょうねつしたにあり。 欲界よくかい最底さいていところなり。

阿鼻地獄トイフ者、在↢大焦熱之下↡。欲界最底之処ナリ

^罪人ざいにん、 かしこに趣向しゅこうするときに、 ちゅうくらいにして、 啼哭ていこくして、 きていはく、

罪人趣↢向スル↡時、先中有ニシテ、啼哭シテキテ↠偈

^一切いっさいはただえんなり。 くうへんしてちゅうげんもなし。
ほうおよび*ゆいかいにもむなしきところなし。

一切唯火炎ナリシテオホゾラ↢中間
四方及四維地界ニモ↢空シキ処↡

^0815一切いっさい界処かいしょには、 悪人あくにんみな*遍満へんまんせり。
われいまするところなくして、 どくにして同伴どうはんなし。

一切界処ニハ悪人皆遍満セリ
我今無クシテ↠所↠帰スル孤独ニシテ↢同伴↡

^悪処あくしょやみのなかにありて、 おおきなるえんじゅりぬ。
われくうのなかにして、 にちがつしょうず」 と。

リテ↢悪処リヌ↢大ナル火炎ホムラ
我於↢虚空↠見↢日月

^ときえんにんしんしんをもつてこたへていはく、

閻羅人以↢瞋怒↡答ヘテ

^「あるいは*増劫ぞうこうあるいは*減劫げんこうに、 だいなんぢがく。
にんすでにあくをなしてき。 いまなにをもつてかゆることをなす。

イハ増劫或イハ減劫大火焼↢汝
痴人已シテキ↠悪今何テカ↠悔ユルコトヲ

^これてんしゅ*健達けんだつりゅうのするにもあらず。
*ごうばくするところなり。 ひとのよくなんぢをすくふものなし。

↢是天・修羅・健達婆・竜・鬼ノスルニモ
ナリ↢繋縛スルケム↢人トシテコト↟汝

^大海だいかいのなかに、 ただ*一掬いっきくみずらんがごとし。
この一掬いっきくのごとし、 のち大海だいかいのごとし」 と。

↧於大海ラムガ↦一掬
↢一掬シト↢大海

^すでにしゃくしをはれば、 ごくかふ。 かしこをることまんせんじゅんにして、 かのごく啼哭ていこくこえきて、 じゅうばいして悶絶もんぜつす。 めんしたにあり、 あしうえにありて、 千年せんねんて、 みなしもかひてく。 ¬しょうぼうねんぎょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

リテ↢地獄↡。去ルコト↠彼二万五千由旬シテ、聞キテ↢彼地獄啼哭之声↡、十倍シテ悶絶。頭面↠下、足リテ↢於上↡、逕↢二千年↡、皆向ヒテ↠下¬正法念経ヨリ¼略↢抄

^かの阿鼻あびじょうは、 じゅうこう八万はちまんじゅんにして、 しちじゅうてつしろ七層しちそうてつあみあり。 した0816じゅうはち*へだてありて、 刀林とうりんしゅうそうせり。

阿鼻城、縦広八万由旬ナリ七重アリ、七層アリ。下↢十八隔↡刀林周帀セリ

^すみあかがねいぬあり。 たけじゅうじゅんなり。 まなこいなずまのごとく、 きばつるぎのごとく、 刀山とうせんのごとく、 したてつのごとし。 一切いっさいもうよりみなみょういだし、 そのけむりしゅうあくにしてけんたとへなし。

四角↢四アカガネ狗↡。由旬ナリ。眼イナビカリ、牙↠剣、歯↢刀山↡、舌↢鉄↡。一切毛孔ヨリ皆出↢猛火煙臭悪ニシテ、世間↠喩

^じゅうはち獄卒ごくそつあり。 こうべせつのごとく、 くちしゃのごとし。 ろくじゅうまなこありて、 鉄丸てつがんほとばしらす。 まがれるきばは、 うえでたることたかじゅんきばはしよりながれて阿鼻あびじょうつ。 こうべうえはち牛頭ごずあり。 一々いちいち牛頭ごずじゅうはちつのありて、 一々いちいちつのはしよりみなみょういだす。

↢十八獄卒↡。頭↢羅刹↡、口↢夜叉↡。有↢六十四眼↡、ホトバシ1025↢散↡。カガマレルデタルコト四由旬ハシヨリ火流レテ↢阿鼻城↡。頭↢八頭↡。一々牛頭↢十八角↡一々ハシ皆出↢猛火↡。

^またしちじゅうしろのうちにしち*鉄幢てつどうあり。 どうはしよりくこと、 なほせんのごとし。 そのほのおながほとばしりて、 またしろのうちにつ。

又七重↢七鉄幢↡。幢ハシクコト、猶如↢沸泉↡。其炎流ホトバシリテ、亦満↢城↡。

^もんとじきみうえはちじゅうかなえあり。 *どうじゅつして、 またしろのうちにつ。

四門トジキミ↢八十釜↡。沸銅涌出シテ、亦満↢城↡。

^一々いちいちへだてのあひだに、 八万はちまんせん*鉄蟒てつもう大蛇だいじゃありて、 どくき、 きて、 しろのうちにてり。 そのへびゆること、 ひゃくせんいかずちのごとく、 だい鉄丸てつがんあめふらして、 またしろのうちにつ。

一々↢八万四千蟒・大蛇↡、吐↠毒キテ↠火、身満テリ↢城↡。其サケコト、如↢百千ラシテ↢大鉄丸↡、亦満↢城↡。

^ひゃくおくむしあり。 八万はちまんせんくちばしありて、 くちばしはしよりながれ、 あめのごとくしてくだる。 このむしくだときに、 ごくいよいよさかりにして、 あまねく八万はちまんせんじゅんらす。 また八万はちまん億千おくせんのなかのなるもの、 このなかにじゅうざいせり。 ¬観仏かんぶつ三昧ざんまいきょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

↢五百億虫↡。有↢八万四千嘴↡ハシ火流クシテ↠雨而下。此虫下、獄火弥ニシテ↢八万四千由旬↡。又八万億千ナル者、集在セリ↢此↡。¬観仏三昧経ヨリ¼略↢抄

^¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)だい0817にいはく、 「東方とうぼうひゃく*ぜん三熱さんねつ大鉄だいてつうえより、 みょうありて、 ほのおげてきたりて、 かのじょうす。 かわ穿うがちてにくり、 すじちてほねやぶり、 またそのずいとおりて、 くことそくのごとし。 かくのごとく、 こぞりてみなみょうえんとなりぬ。 東方とうぼうよりするがごとく、 南西なんざい北方ほっぽうもまたかくのごとし。

¬瑜¼第四、「従↢東方多百瑜繕那三熱大鉄地上↡有リテ↢猛熾火↡、騰ゲテ↠焔而来リテ、刺シテ↢彼有情穿チテ↠皮↠肉、断チテ↠筋↠骨復徹↢其↡、焼クコト↢脂燭↡。如スルニ↠是クノコゾリテ↠身皆成リヌ↢猛焔↡。如↠従リスルガ↢東方↡、南・西・北方亦復如↠是クノ

^この因縁いんねんによりて、 かのもろもろのじょうみょうえんぞうして、 ただじゅの、 ほうよりきたるをる。 えんぞうし、 けんきゃくあることなく、 所受しょじゅつうまたけんきゃくなし。 ただめられてさけこえきて、 しゅじょうありといふことをる。

リテ↢此因縁↡、彼有情与↢猛焔↡和雑シテ、唯↢火聚↡。↢四方↡来レル火焔和雑、無↠有ルコト↢間隙↡所受苦痛亦無↢間隙↡。唯聞キテ↢苦メラレテ之声↡、知↠有リトイフコトヲ↢衆生↡。

^またてつをもつて三熱さんねつてつはいてて、 これを*あおそろへ、 また熱鉄ねつてつうえきて、 大熱鉄だいねつてつやまのぼらしむ。 のぼりてはまたくだり、 くだりてはまたのぼる。

又以↢鉄↡盛↢満テテ三熱ハヒ↡而シテ。復置キテ↢熱鉄↡、令リテ↢大熱鉄↡、上リテハシテ復下、下リテハ而復上

^そのくちのなかより、 そのしたいだして、 ひゃくてつくぎをもつて、 これをりて、 皺しわひだなからしむること、 うしかわるがごとし。

↢其中↡抜↢出シテ↡、以↢百↡而張リテ↠之、令ムルコト↠无カラ↢皺ヒダ↡如↠張ルガ↢牛↡。

^またさらに熱鉄ねつてつうえあおむけせて、 熱鉄ねつてつかなはしをもつてくちはさみてひらかしめ、 三熱さんねつ鉄丸てつがんをもつてそのくちのなかにきて、 すなはちそのくちおよび咽喉いんこうき、 *ぞうとおしてしもよりいだす。

1026↢臥セテ熱鉄↡、以↢熱鉄ハサミハサミテ↠口↠開、以↢三熱鉄丸↡置キテ↢其↡、即↢其及以 オヨビ 咽喉↡、徹シテ↢於府蔵↡従シテ↠下而出

^また洋銅ようどうをもつてそのくちそそぎて、 のどおよびくちき、 ぞうとおしてしもよりすいす」 と。

又以↢洋銅↡而潅ギテ↢其↡、焼↢喉↡、徹シテ↢於府蔵↡従シテ↠下流レテスト。」

^じょう、 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論) に、 「*三熱さんねつ」 といふは、 「しょうねんごくしょうねんへんごく0818しょうねん」 なり。

已上¬瑜伽¼言、「三熱トイフ者、焼燃・極焼燃・遍極焼燃

^しちだいごくならびに別処べっしょ一切いっさいのもろもろのを、 もつて一分いちぶんとなすに、 阿鼻あびごくいっ千倍せんばいしてすぐれたり。 かくのごとくして、 阿鼻あびごくひとは、 だいしょうねつごく罪人ざいにんること、 *他化たけざい天処てんしょるがごとし。

大地獄アハセ別処一切コレヲモテ↢一分↡、阿鼻地獄一千倍シテレタリ。如↠是クノ阿鼻地獄之人、見ルコト↢大焦熱地獄罪人↡如↠見ルガ↢他化自在天処↡。

^*てんしょ*欲界よくかい六天ろくてんは、 ごくがば、 すなはちみなきなん。 なにをもつてのゆゑに。 ごくにんはきはめておおきにくさきをもつてのゆゑに。 ごくくさ、 なんがゆゑぞきたらざる。 大山だいせんありて、 いちしゅっせんづけ、 没山もっせんづく。 かのくさしゃせり。

四天下処、欲界六天ガバ↢地獄クサイ↡、即皆消キナム。何テノ。以テノ↢地獄キヲ↡故。地獄気、何↠来。有↢二大山↡、一↢出山↡↢没山↡。遮セリ↢彼↡。

^もしひと一切いっさいごくのあらゆるのうかば、 みなことごとくへざらん。 これをかばすなはちせん。 かくのごとくなるをもつて、 阿鼻あびだい獄処ごくしょをば、 千分せんぶんのなかにおいて一分いちぶんをもかず。 なにをもつてのゆゑに。 つくすべからず、 くことをべからず、 譬喩ひゆすべからざるをもつてなり。 もしひとありてき、 もしひとありてかば、 かくのごときひときてせん。 ¬しょうぼうねんぎょう¼ より、 しゅ略抄りゃくしょうす。

人聞キテ↢一切地獄所有苦悩↡、皆悉ラム。聞カバ↠此。如ナルヲモテ↠是クノ阿鼻大地獄処ヲバ↢千分↡不↠説↢一分↡。何テノ。不↠可カラ↢説↡、不↠可カラ↠得↠聴クコトヲ、不ルヲモテナリ↠可カラ↢譬喩↡。若リテ↠人リテ↠人聴カバ、如↠是クノ之人キテ↠血而死¬正法念経¼取意略抄

^この*けんごく寿じゅいちちゅうこうなり。 ¬しゃろん¼。

無間獄寿一中劫ナリ¬倶舎論¼

^ぎゃくざいつくり、 *いんほつし、 だいじょうほうし、 じゅうおかして、 むなしく*しんらへるもの、 このなかにつ。 ¬観仏かんぶつ三昧ざんまいきょう¼ による。

↢五逆罪↡、撥↢無因果↡、誹↢謗大乗↡、犯シテ↢四重↡、虚シクラヘル↢信施之者、堕↢此↡。¬観仏三昧経¼

 ^このけんごくもんのほかに、 またじゅうろく*眷属けんぞく別処べっしょあり。

無間獄四門之外亦有↢十六眷属別処↡。

・鉄野干食処

^そのなかの一処いっしょてつ0819かん食処じきしょづく。 いはく、 罪人ざいにんうえに、 えたることじゅうじゅんりょうなり。 もろもろのごくのなかに、 このもつともすぐれたり。 またてつかわらあめふらすこと、 さかりなるなつあめのごとく、 身体しんたいさいすること、 なほれたる*ほしじしのごとし。 ほのおきばあるかん、 つねにきたりて食噉じきだんし、 一切いっさいときにおいてくることまず。

一処↢鉄野干食処↡。謂罪人エタルコト十由旬量ナリ。諸地獄、此苦最レタリ。又雨コト↢鉄マロカシ↡如↢盛ナル身体破砕スルコト猶如↢乾レタルホシジシ↡。炎アル野干常リテ食噉↢一切↡受クルコト↠苦不↠止

^むかし仏像ぶつぞうき、 僧房そうぼうき、 そう臥具がぐきしもの、 このなかにつ。

1027↢仏像↡、焼↢僧房↡、焼ケル↢僧臥具之者、堕↢此↡。

・黒肚処

^また別処べっしょあり。 こくしょづく。 いはく、 かつきて、 みづからそのにくらふ。 らひをはればまたしょうじ、 しょうじをはればまたらふ。 こくへびありて、 かの罪人ざいにんまつひて、 はじめあしつめより漸々ぜんぜんらふ。 あるいはみょうれてぼんじょうし、 あるいは*鉄鑊てっかくきて煎煮せんしゃす。 りょう億歳おくさい、 かくのごときく。

復有↢別処↡。名↢黒肚処↡。謂飢渇焼キテ↠身、自↢其↡。食レバ復生レバ復食。有リテ↢黒蛇↡、マツヒテ↢彼罪人↡、始↢足ツメ↡漸漸。或イハレテ↢猛火↡焚焼セラルイハキテ↢鉄鑊↡煎煮。無量億歳受↢如クノ↡。

^むかしぶつ財物ざいもつりて食用じきゆうせるもの、 ここにつ。

昔取リテ↢仏財物↡食用セル之者、堕

・雨山聚処

^また別処べっしょあり。 山聚せんじゅしょづく。 いはく、 いちじゅんりょう鉄山てっせんうえよりくだりて、 かの罪人ざいにんつに、 くだくること沙揣しゃせんのごとし。 くだけをはればまたしょうじ、 しょうじをはればまたくだく。 またじゅういちほのおありて、 しゅうへんしてく。 また獄卒ごくそつかたなをもつてあまねく身分しんぶんきて、 極熱ごくねつびゃくろうしるをそのけるところる。 ひゃくびょうそくしてつねにあり。 じょうけて年歳ねんさいあることなし。

復有↢別処↡。名雨山聚処↡。謂一由旬量鉄山従シテ↠上而下リテ、打ツニ↢彼罪人↡、砕クルコト↢沙揣↡。砕レバ復生、生レバ復砕。又有リテ↢十一炎↡、周遍シテ↠身。又獄卒以↠刀キテ↢身分↡、極熱白鑞↢其ケル↡。四百四病具足シテ。長久ケテ↠苦、無↠有ルコト↢年歳↡。

^むかしびゃくぶつじきりて、 みづからじき0820してこれをあたへざるもの、 ここにつ。

昔取リテ↢辟支仏之食↡、自シテ↠与↠之者、堕↠此

・閻婆度処

^また別処べっしょあり。 えん婆度ばどしょづく。 あくちょうあり、 おおきなることぞうのごとし。 づけてえんといふ。 くちばしくしてほのおしょうぜり。 罪人ざいにんりて、 はるかにくうちゅうのぼりて、 東西とうざいぎょうし、 しかしてのちにこれをはなつに、 いしつるがごとくして、 くだけてひゃくぶんとなる。 くだけをはりてはまたがっし、 がっしをはればまたる。

復有↢別処↡。名↢閻婆度処↡。有↢悪鳥↡、身大ナルコト↠象。名ケテ↢閻婆↡。嘴利クシテゼリ↠炎。執リテ↢罪人↡遥リテ↢空↡東西遊行シテツニ↠之、如クシテ↢石ツルガツチ、砕ケテ↢百分↡。砕リテハ復合レバ復執

^またつるぎみちちて、 その足脚あしく。 あるいはほのおあるいぬありて、 きたりてそのむ。 じょうときだいのうく。

又利ツルギチテ↠道、割↢其足脚 アシ ↡。或イハリテ↢炎アル狗↡、来リテ↢其↡。於長久大苦悩↡。

^むかしひと*もちゐる ˆかわをˇ 決断けつだんして、 ひとをしてかつせしめたるもの、 ここにつ。 きょうくがごとし。 じょう ¬しょうぼうねんぎょう¼。

昔決↢断シテタシナミテ↠之メタル↢人ヲシテ渇死↡之者、堕↠此。余↢経クガ↡。已上¬正法念経¼

^¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)だいに、 つうじて八大はちだいごく近辺ごんぺん別処べっしょきていはく、 「^いはく、 かの一切いっさいのもろもろの*だい那落迦ならかに、 みなほうがんもんありて、 てつかき*にょうせり。 そのほうもんよりでをはりて、 その一々いちいちもんのほかに*しゅつおんけり。

¬瑜伽¼第四ジテキテ↢八大地獄近辺別処↡云、「謂一切大那落迦、皆有↢四方四岸四門↡牆囲遶セリ。従↢其四方四門↡出リテ、其一々ケリ↢四ヅル↡。

・煨

^いはく、 *とうわいありてひざひとし。 かのもろもろのじょうでて舎宅しゃたくもとめんとしてぎょうして、 ここにいたりぬ。 あしくだときには、 にくおよびけつ、 ならびにすなはちしょうらんしぬ。 あしぐればかえりてしょうず。

煨キニ↠膝有情デテメムトシテ↢舎1028↡遊行シテリヌ↠此。下ニハ、皮肉及血、消爛シヌ。挙グレバ↠足リテ

・屍糞泥

^いでこのとうわいひまなくして、 すなはち*死屍しし糞泥ふんでいあり。 このもろもろのじょう舎宅しゃたくもとめんがために、 かしこよりでをはりて0821漸々ぜんぜんぎょうして、 そのなかにりて、 首足しゅそくともにもっしぬ。

ギテ煨死屍糞泥↡。此有情、為↠求メムガ↢舎宅↡、従↠彼出リテ、漸々遊行シテ↢入リテ↡、首足シヌ

^また、 糞泥ふんでいのうちに、 おおくもろもろのむしあり。 じょう矩くたづく。 かわ穿うがちてにくり、 すじちてほねやぶり、 ずいりてらふ。

又屍糞泥↢諸虫↡。名↢嬢矩↡。穿チテ↠皮↠肉、断↠筋↠骨、取リテ↠髄而食

・刀剣刃路

^つぎ糞泥ふんでいひまなくして、 刀剣とうけんあり。 つるぎあおむけてみちとなす。 かのもろもろのじょう舎宅しゃたくもとめんがために、 かしこよりでをはりて、 ぎょうしてここにいたり、 あしくだときには、 にくきんけつことごとくみなただれぬ。 あしぐるときには、 またぶくすることもとのごとし。

屍糞泥↢利刀剣↡。仰↠刃↠路。彼有情為↠求メムガ↢舎宅↡、従↠彼出リテ、遊行シテ↠此ニハ、皮肉筋血悉皆消タダレヌ。挙グル↠足之時ニハ還復スルコトモト

・刃葉林

^つぎ刀剣とうけんじんひまなくして、 刃葉じんようりんあり。 かのもろもろのじょう舎宅しゃたくもとめんがために、 かしこよりでをはりて、 かのかげおもむきて、 わづかにそのしたするに、 ふうつひにおこりてつるぎらくし、 その一切いっさいせつ*しゃくぜつして、 すなはちたおれぬ。

刀剣刃路↢刃葉林↡。彼有情為↠求メムガ↢舎宅↡、従↠彼出リテ、往↢趣キテ↡、纔スルニ↢其↡、微風リテツルギ葉堕落斫↢截シテ一切支節↡、便レヌ↠地

^*こくいぬありて、 *せきたい*摣掣しゃせいして、 これを噉食だんじきす。

リテ↢黒黧狗↡、摣↢掣シテ脊・胎↡而噉↢食↡。

・鉄設柆末梨林

^この刃葉じんようりんよりひまなくして、 *てつりゅうまつりんあり。 かのもろもろのじょう舎宅しゃたくもとめんがために、 すなはちきたりてこれにおもむきて、 つひにそのうえのぼる。 まさにのぼりぬるときには、 一切いっさい*刺鋒しふ、 ことごとくかえりてしたかふ。 くだらんとほっするときには、 一切いっさい刺鋒しふ、 またかえりてうえかふ。 この因縁いんねんによりて、 そのして、 もろもろのせつへんす。

↢此刃葉林↡無↢鉄設柆末梨林↡。彼有情為↠求メムガ↢舎宅↡、便リテキテ↠之、遂↢其↡。当リヌル之時ニハ、一切刺鋒悉リテ↠下スル↠下ラムト之時ニハ、一切刺鋒復廻リテ↠上。由リテ↢此因縁↡、貫キテ↡遍↢諸支節↡。

^そのときに、 すなはちてつくちばしあるおおきなる0822からすありて、 かのこうべうえのぼり、 あるいはそのかたのぼりて、 *げんしょう*探啄たんたくして、 しかもこれを噉食だんじきす。

便リテ↢鉄アルナル烏↡、上↢彼↡、或イハリテカタ↡、探↢啄シテ眼精↡、而噉↢食↡。

・熱灰河

^てつりゅうまつりんよりひまなくして、 広大こうだいなるかわあり。 きてあつはいみず、 そのなかに*まんせり。 かのもろもろのじょう舎宅しゃたくたずもとめて、 かしこよりでをはりて、 きたりてこのなかにちぬ。 なほまめをもつてこれをおおきなるかなえきて、 たけさかりなるきて、 これを煎煮せんしゃするがごとし。 したがひてとうして、 *しゅうせんしてぶくす。

↢鉄設柆末梨林↡無↢広大河↡。沸キテ弥↢満セリ↡。彼有情ギテムトシ舎宅↡、従↠彼出リテ、来リテチヌ↢此↡。猶如↧以↠豆レテ↢之ナルカナヘ↡、キテ↢猛サカリナル↡、而シテ煎↢煮↡、随ヒテ↠湯シテ、周旋シテ廻復ルガ

^かわふたつきしに、 もろもろの獄卒ごくそつあり。 じょうさくおよびおおきなるあみりて、 行列ごうれつしてじゅうして、 かのじょうしゃしてづることをしめず。 あるいはなわをもつてけ、 あるいはあみをもつてすくふ。

フタツ1029↢諸獄卒↡。手リテ↢杖索及以 オヨビ ナル↡、行シテ而住シテ、遮シテ↢彼有情↡不↠令↠得↠出ヅルコトヲ。或イハ索羂イハ↠網シタミテ

^また、 広大こうだいなる熱鉄ねつてつうえきて、 かのじょうあおむけて、 これにひていはく、 ªなんぢら、 いま*なんの所須しょしゅをかほっするº と。 かくのごとくこたへていはく、 ªわれら、 いま*つひにかくすることなし。 しかも種々しゅじゅ飢苦きくのためにめらるº と。 ときにかの獄卒ごくそつ、 すなはちてつかなはしをもつてくちはさみてひらかしめて、 すなはち極熱ごくねつしょうねつ鉄丸てつがんをもつてそのくちのなかにく。 さきくがごとし。

復置キテ↢広大熱鉄↡、仰↢彼有情↡、而シテヒテ↠之、汝等、今者 イマ スルト↢何所須ヲカ↡。如↠是クノヘテ、我等、今者 イマ ↢覚知スルコト↡。然↢種々飢苦↡所。時獄卒、即↢鉄カナハサミテ↠口メテ↠開、便↢極熱↡置↢其↡。余↢前クガ↡。

^もしかれこたへて、 ªわれいまただかつのためにめらるº といへば、 そのときに、 獄卒ごくそつすなはち洋銅ようどうをもつてそのくちそそぐ。 この因縁いんねんによりてじょうく。

彼答ヘテヘバ↧我今唯↢渇苦↡所、爾獄卒便即洋銅↢其↡。由リテ↢是因縁↡長時↠苦

^ない*せん0823つくれるところの一切いっさいの、 よく*那落迦ならかかんじ、 あくぜんごういまだきざれば、 いまだこのなかをでず。 もしは刀剣とうけんじん、 もしは刃葉じんようりん、 もしはてつりゅうまつりん、 これをべていちとなす。 ゆゑにそのあり」 と。

乃至先世↠造レル、能ズル↢那落迦↡悪不善レバ↠尽、未シハ刀剣刃路、若シハ葉林、若シハ鉄設柆末梨林、総↠之↠一。故リト園↡。」

^じょうは ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論) ならびに ¬しゃ¼ (倶舎論) のこころなり。 一々いちいちごくもんのほかにおのおのこのおんあり。 がっしてじゅうろくづく。 ¬しょうぼうねんぎょう¼ の、 八大はちだいごくじゅうろく別処べっしょ*みょうそう各別かくべつなるにはどうぜず。

已上¬瑜伽¼并¬倶舎¼意一々地獄四門之外四園↡。合シテ↢十六↡。不↠同↢¬正法念経¼八大地獄十六別処名相各別ナルニハ

^また頞部陀あぶだとう*八寒はっかんごくあり。 つぶさに*きょうろんのごとし。 これをこうじゅつするにいとまあらず。

復有↢頞部陀等八寒地獄↡。具↢経論↡。不↠イトマアラ広↢述スルニ↡。

二 Ⅰ ⅱ 餓鬼

【12】^だい餓鬼がきどうかさば、 じゅうしょあり。 いちにはしたひゃくじゅんにあり。 *えん王界おうかいなり。 には人天にんでんのあひだにあり。 そのそうはなはだおおし。 いま少分しょうぶんかさん。

第二サバ↢餓鬼道↡者、住処↠二。一者在↢地下五百由旬↡。閻魔王界ナリ。二者在↢人天之間↡。其相甚。今明サム↢少分↡。

^あるいはたけいっしゃくなり。 あるいはしんりょうにんのごとし。 あるいはせんぜんのごとし。 あるいは*雪山せっせんのごとし。 ¬*大集だいじっきょう¼。

イハ長一尺ナリ。或イハ身量如↠人。或イハ千踰繕那↡。或イハ雪山¬大集経¼

・鑊身

^あるいはあり。 鑊身かくしんづく。 そのちょうだいにして、 にんぎたることりょうばいなり。 めんもくあることなく、 しゅそくはなほかなえあしのごとし。 ねっなかにちて、 そのぼんじょうす。

イハ↠鬼。名↢鑊身↡。其身長大ニシテ、過ギタルコト↠人両倍ナリ↠有ルコト↢面目↡手足猶如カナヘ↡。熱火満チテ↠中、焚↢焼↡。

^むかしざいとんじて*せつせるもの、 このほうく。

昔貪↠財屠殺セル之者、受↢此↡。

・食吐

^あるいはあり。 じきづく。 その広大こうだいにして、 たけはんじゅんなり。 つねにおうもとむるに、 たしなみてることあたはず。

イハ↠鬼。名↢食吐↡。其身広大ニシテ長半由旬ナリ。常ルニ↢嘔吐↡、タシナミテ不↠能↠得ルコト

^むかし0824、 あるいは*じょうの、 みづからじきらひてさいあたへず、 あるいはにんの、 みづかららひて夫子ふしあたへざるもの、 このほうく。

1030イハ丈夫クラヒテ↢美食↡不↠与↢妻子↡、或イハ婦人ヒテモノ↠与↢夫子↡、受↢此↡。

・食気

^あるいはあり。 じきづく。 にんの、 やまいによりて、 みずほとりはやしのなかに*まつりもうくるに、 このこうぎて、 もつてみづから*かつみょうす。

イハ↠鬼。名↢食気↡。世人リテ↠病、水辺、林シテクルニ↠祭ギテ香気↡、以

^むかしさいとうまえにしてひとじきらへるもの、 このほうく。

昔於↢妻子等↡独クラヘル↢美食之者、受↢此↡。

・食法

^あるいはあり。 食法じきほうづく。 嶮難けんなんところにしてそうしてじきもとむ。 いろ黒雲こくうんのごとく、 なみだながるることあめのごとし。 もしそういたりて、 ひと呪願しゅがん説法せっぽうすることあるときは、 これによりてちからかつみょうす。

イハ↠鬼。名↢食法↡。於↢嶮難↡馳走シテ↠食。色↢黒雲ルルコト↠雨。若リテ↢僧寺↡有↢人呪願説法スルコト↡之時、因リテ↠此↠力活命

^むかし*みょうとんぜしがために*じょう説法せっぽうせしもの、 このほうく。

昔為↠貪シガ↢名利↡不浄説法セシ之者、受↢此↡。

・食水

^あるいはあり。 食水じきすいづく。 かつき、 *周慞しゅうしょうしてみずもとむるに、 たしなみてることあたはず。 ながかみおもておおひ、 るところなし。 はしりてかわほとりおもむきて、 もしひとかわわたりて、 脚足あししたより遺落ゆいらくせるのこりのみずあれば、 速疾そくしつりて、 もつてみづからかつみょうす。

イハ↠鬼。名↢食水↡。飢渇焼↠身、周シテムルニ↠水タシナミテ不↠能↠得ルコト。長髪覆↠面、目無↠所↠見。走リテキテ↢河↡、若レルニ↠河脚足 アシ 之下遺落速疾リテ、以活命

^あるいはひとの、 みずすくひてもうぜる父母ぶもするに、 すなはちしょうぶんて、 いのちぞんりゅうすることを。 もしみづからみずれば、 みずまもるもろもろのつえをもつてす。

イハムスビテ↠水スルニ↢亡ゼル父母↡則↢少分↡、命得↢存立スルコトヲ↡。若レバ↠水、守↠水鬼、以↠杖撾打

^むかしさけるにみずくわへ、 あるいは*いんしずめ、 善法ぜんぽうしゅせざるもの、 このほうく。

ルニ↠酒↠水、或イハ↢蚓蛾↡、不↠修↢善法之者、受↢此↡。

・悕望

^あるいはあり。 もうづく。 にんの、 もう0825ぜる父母ぶものためにまつりもうくるときにのみ、 てこれをらふ。 をばことごとくじきすることあたはず。

イハ↠鬼。名悕望↡。世人↢亡ゼル父母↡設クル↠祀之時ニノミ、得而食↠之。余ヲバ不↠能↠食スルコト

^もしひといたわしくしてしょうもつたるを、 *誑惑おうわくしてもちゐるもの、 このほうく。

イタハシクシテ而得タルヲ↢少物↡誑シテヰル之者、受↢此↡。

^あるいはあり。 海渚かいしょのなかにうまれたり。 樹林じゅりんすいあることなく、 そのところはなはだあつし。 かのふゆをもつて人間にんげんなつくらぶるに、 えたること千倍せんばいなり。 ただあしたつゆをもつてみづからかつみょうす。 海渚かいしょじゅうすといへども、 うみるにきぬ。

イハ↠鬼。生レタリ↢海渚↡。無↠有ルコト↢樹林・河水↡処甚。以↢彼タクラブルニ↢人間↡、過エタルコト千倍ナリ。唯↢朝↡而自活命。雖↠住スト↢海渚↡、見ルニ↠海キヌ

^むかしみちひとの、 びょうごくせるに、 そのうるものあざむりて、 あたいあたふること薄少はくしょうなるもの、 このほうく。

昔行病苦疲極セルニ、欺↢取リテウルモノ↡、与フルコトアタヒ薄少ナル之者、受↢此↡。

^あるいはあり。 つねに*つかのあひだにいたりて、 *しょうらふに、 なほあきたることあたはず。

イハ↠鬼。常リテ↢塚↡、クラフニ↢焼↡、猶不↠能アキタルコト

^むかしぎょうごく典主てんしゅして、 ひと飲食おんじきれるもの、 このほうく。

昔典↢主シテ刑獄↡取レル↢人飲食之者、受↢此1031↡。

^あるいは餓鬼がきあり。 うまれてのなかにありて、 *逼迮ひっさくしてさるること賊木とくさむしのごとくして、 だいのうく。

イハ餓鬼↡。生レテリテ↢樹↡、逼迮シテコト↠身クシテ↢賊木虫↡、受↢大苦悩↡。

^むかしおんりょうり、 および衆僧しゅそう園林おんりんれるもの、 このほうく。 ¬しょうぼうねんぎょう¼。

昔伐↢陰涼↡、及レル↢衆僧園林↡之者、受↢此↡。¬正法念経¼

^あるいはまたあり。 こうべかみくだりて、 あまねく身体しんたいまつへり。 そのかみかたなのごとくして、 そのる。 あるいはへんじてとなりて、 ˆ身体しんたいをˇ しゅうそうしてぼんじょうす。

イハ復有↠鬼。頭クダリテマツヘリ↢身体↡。其髪如クシテ↠刀↢切↡。或イハジテリテ↠火、周帀シテ焚焼

^あるいはあり。 ちゅうにおのおのむ。 むにしたがひてこれをらふに、 なほつねにぼうす。 ¬*ろっ0826みつきょう¼。

イハ↠鬼。昼夜↢五↡。随ヒテ↠生ムニフニ↠之、猶常飢乏¬六波羅蜜経¼

^あるいはまたあり。 一切いっさいじきをみならふことあたはず。 ただみづからこうべのうりてらふ。

イハ復有↠鬼。一切之食皆不↠能クラフコト。唯自↠頭リテナヅキ而食

^あるいはあり。 くちよりづ。 飛蛾ひがの、 とうずるをもつて飲食おんじきとなす。

イハ↠鬼。火従↠口出。飛蛾ズルニ↠火↢飲食↡。

^あるいはあり。 ふんていのうけつうつわあらへるゆいらふ。 ¬大論だいろん¼ (大智度論)。

イハ↠鬼。食↢糞・涕・濃・血、洗↠器遺余↡。¬大論¼

^またほかのさわりによりてじきざるあり。 いはく、 かつつねにきゅうにして、 身体しんたいかつせり。 たまたまきよながれのぞみ、 はしりてかしこにかひおもむけば、 大力だいりきありて、 つえをもつてさかつ。 あるいはへんじてとなり、 あるいはことごとくかわきぬ。

又有↧依リテ↢外↡不↠得↠食鬼↥。謂飢渇常ニシテ、身体枯竭セリ。適↢清↡走リテケバ↡、有リテ↢大力鬼↡以↠杖サカ。或イハジテ↠火イハカワキヌ

^あるいはうちのさわりによりてじきざるあり。 いはく、 くちはりあなのごとく、 はら大山だいせんのごとくして、 たとひ飲食おんじきへどもこれをらふによしなし。

イハ↧依リテ↢内↡不↠得↠食鬼↥。謂↢針↡、腹クシテ↢大山↡、縦ヘドモ↢飲食↡無↠由↠クラフニ↠之

^あるいはないさわりなけれども、 しかももちゐることあたはざるあり。 いはく、 たまたましょうじきひて食噉じきだんすれば、 へんじて猛焔みょうえんとなりて、 きてづ。 ¬瑜伽ゆがろん¼。

イハ↧無ケレドモ↢内外障↡、而↠能↠用ヰルコト鬼↥。謂↢少食↡而シテ食噉スレバ者、変ジテリテ↢猛焔↡、焼キテ↠身而出¬瑜伽論¼

^人間にんげん一月いちがつをもつて一日いちにちとなしてがつねんをなし、 寿じゅひゃくさいなり。

↢人間一月↡為↢一日夜↡成↢月年↡、寿五百歳ナリ

^¬しょうぼうねんぎょう¼ (意) にのたまはく、 「*慳貪けんどんしっのもの、 餓鬼がきどうつ」 と。

¬正法念経¼云、「慳貪嫉妬之者、堕ツト↢餓鬼道↡。」

二 Ⅰ ⅱ 畜生

【13】^だいさんちくしょうどうかさば、 そのじゅうしょあり。 根本こんぽん大海だいかいじゅうし、 まつ人天にんでんぞうせり。

第三サバ↢畜生道↡者、其住処↠二。根本↢大海支末セリ↢人天↡。

^べっしてろんずれば、 さんじゅうおく種類しゅるいあり。 そうじてろんずれば、 さん0827でず。 いちちょうるいじゅうるいさんちゅうるいなり。

シテズレバ↢卅四億種類↡。ジテズレバ不↠出↠三。一者鳥類、二者獣類、三者虫類ナリ

^かくのごときたぐいごうにゃくあひがいす。 もしはおん、 もしはじき、 いまだかつてしばらくもやすらかならず。 ちゅうのうちに、 つねに*怖懼ふくいだけり。 いはんやまた、 もろもろのすいしょうたぐいすなどるもののためにがいせられ、 もろもろのりくぎょうたぐいは、 かりするもののためにがいせらる。

↠是クノ類、強弱相害。若シハ飲若シハ食、ムカシニモカラ↡。昼夜之中ケリ↢怖オソルルコトヲ↡。況復諸1032性之属スナド↡所↠害アリ之類カリス↡所↠害

^もしはぞう*らく*とうのごときは、 あるいはてっをもつてそののううがち、 あるいははなのなかに穿とおし、 あるいはくつわつらをもつてくびく。 につねにおもきものをひて、 もろもろの*じょうすいくわへらる。 ただすいそうねんじて、 るところなし。

キハ↢象・馬・牛・驢・駱駝・騾等↡、或イハヲモテウガ↢其ナヅキ↡、或イハ穿トホ↢鼻↡、或イハクツワヅラヲモテ↠首。身ヒテ↠重キモノヲ、加ヘラル↢諸杖捶↡。但念ジテ↢水・草↡、余↠所↠知

^また蚰蜒なめくじ鼠狼いたちとうは、 やみのなかにうまれてやみのなかにぬ。 蟣蝨しらみのみとうは、 人身にんじんによりてしょうじて、 かえりてにんによりてぬ。

蚰蜒ナメクジ・鼠狼等シテ而生レテシテ而死。蟣蝨・蚤等リテ↢人身↡生ジテリテリテ↠人

^またもろもろのりゅうしゅは、 三熱さんねつけてちゅうやすむことなし。 あるいはまた*蟒蛇もうじゃは、 そのちょうだいなれども、 聾騃ろうがいにしてあしなく、 *宛転えんでんふくぎょうして、 もろもろの小虫しょうちゅうのためにしょうじきせらる。

又諸竜衆ケテ↢三熱↡昼夜↠休ムコト。或イハ復蟒蛇身長大ニシテ、聾騃ニシテ↠足、宛転シテヲモテ↢諸小虫↡之所↢唼食↡。

^あるいはまたいちひゃくぶんのごときもの、 あるいはまどのなかのじんのごときもの、 あるいはじゅうじゅんのごときものあり。

イハ復有↧如モノ↢一百分↡、或イハモノ↢窓遊塵↡、或イハモノ↦十五由旬↥。

^かくのごときもろもろのちくしょうは、 あるいは*いちるあひだ、 あるいは*しちのあひだ、 あるいは一劫いっこうひゃくこうない千万せんまんおくこうりょうくるあり。 あるときにはもろもろのえんひて、 しば0828しば残害ざんがいせらる。 これらのもろもろのげてかぞふべからず。

↠是クノ畜生、或イハ一時アヒダ、或イハ七時項、或イハ↣一劫百劫乃至千万億劫クル↢无量↡。或ルトキニハヒテ↢諸違縁↡、数↢残害↡。此等苦、不↠可カラゲテ↡。

^愚痴ぐち*ざんにしていたづらにしんけて、 ものつぐのはざるもの、 このほうく。 じょう諸文しょもん*きょうろん散在さんざいせり。

愚痴・无慚ニシテケテ↢信↡、他ツグノ者、受↢此↡。已上諸文、散↢在セリ経論

二 Ⅰ ⅱ 阿修羅

【14】^だいしゅどうかさば、 あり。 根本こんぽんすぐれたるものは、 しゅせんきたかいそこじゅうせり。 支流しるれつなるものは、 だいしゅうのあひだの山巌せんがんのなかにあり。

第四サバ↢阿修羅道↡者、有二。根本レタル、住セリ↢須弥山北、巨海之底↡。支流ナル、在↢四大山巌之中↡。

^雲雷うんらいもしれば、 これ*てんつづみおもひて*怖畏ふい周章しゅうしょうして、 しんおおきに*戦悼せんとうす。 またつねに諸天しょてんのために侵害しんがいせられて、 あるいは身体しんたいやぶり、 あるいはそのめいようす。 また*日々にちにちさんに、 *苦具くぐおのづからきたりて逼害ひつがいす。 種々しゅじゅ憂苦うくげてくべからず。

雲雷若レバ、謂ヒテ↢是天↡怖畏周章シテ、心大戦悼。亦常↢諸天↡之所レテ↢侵害↡、或イハ↢身体↡、或イハ↢其↡。又日々三時苦具自リテ逼害。種々憂苦、不↠可カラゲテ↡。

二 Ⅰ ⅱ

【15】^だい人道にんどうかさば、 りゃくしてさんそうあり。 つまびらかに観察かんざつすべし。 いちにはじょうそうにはそうさんにはじょうそうなり。

第五サバ↢人道↡者、略シテ↢三相↡。応↢審カニ観察↡。一ニハ不浄相、二ニハ苦相、三ニハ无常ナリ

・不浄

【16】^いちじょうそうといふは、 おほよそにんしんのなかにさんびゃくろくじゅうほねありて、 節々ふしぶしあひささへたり。

1033不浄トイフ者、凡リテ↢三百六十之骨↡、節々相ササヘタリ

^いはく、 ゆびほねあしほねささへ、 あしほねつぶふしほねささへ、 つぶふしほねはぎほねささへ、 はぎほねひざほねささへ、 ひざほねももほねささへ、 ももほねしりげたほねささへ、 しりげたほねこしほねささへ、 こしほねせなかほねささへ、 せなかほね0829かたわらほねささへ、 またせなかほねうなじほねささへ、 うなじほねおとがいほねささへ、 おとがいほね牙歯きばささへ、 かみどくあり。

ササタリ↢足↡。足ササタリツブフシササタリハギササタリ↢膝ササタリモモササタリシリゲタササタリ↢腰ササタリササタリカタハラササタリウナジササタリ↢頷ササタリ↢牙歯↢髑髏↡。

^またうなじほねかたほねささへたり。 かたほねひじほねささへたり。 ひじほね*うでほねささへたり。 うでほねたなごころほねささへたり。 たなごころほねゆびほねささへたり。 かくのごとく展転てんでんしてだいじょうせり。 ¬だいきょう¼ (*涅槃経) のこころ

復項ササヘタリ↢肩↡。肩ササヘタリ↢臂↡。臂ササヘタリタブサ↡。タブサササヘタリ↢掌↡。掌ササヘタリ↢指↡。如↠是クノ展転シテ次第鎖成セリ¬大¼

^さんびゃくろくじゅうほねの、 あつまりてじょうぜるところなり。 やぶれたるいえのごとし。 もろもろのふしをもつてささたもち、 さいみゃくをもつて*しゅうそうして弥布みふせり。

「三百六十アツマリナリ↠成ゼル。如↢朽レタルイヘ↡。諸ヲモテセリ↢四細脈↡周帀シテ弥布セリ

^ひゃくぶんにく、 なほどろれるがごとく、 ろくみゃくあひつなぎ、 ひゃくすじまつへり。

五百分シシムラ、猶如↢泥レルガチノミチ相繋ケタリ五百マツヘリ

^しちひゃくさいみゃく、 もつて*編絡へんらくをなし、 じゅうろくあらみゃくめぐりてあひつらなれり。

七百細脈以↢編絡十六アラチノミチメグ相連レリ

^にくじょうあり。 なが*さん尋半じんはんなり。 うちにしてまつけっせり。 じゅうろくはらわた生熟しょうじゅくぞうめぐれり。

↢二肉縄↡。長三尋半ナリ。於↠内セリ。十六腸・胃、マツ↢生熟蔵↡。

^じゅうみゃく、 なほまどひまのごとし。 いっぴゃくしちかん、 あたかもさいせるうつわのごとし。

二十五気脈、猶如↢窓↡。一百七ヲコツリ、宛↢破セル↡。

^八万はちまんもうみだれたるくさおおへるがごとし。 *こん*しちきょうじょうにて盈満ようまんせり。

八万毛孔、如↢乱レタルヲモテヘルガ↡。五根・七竅不浄ニテ盈満セリ

^しちじゅうかわにてつつみ、 *ろくにてちょうようすること、 なほ祠火しかの、 呑受どんじゅしていとふことなきがごとし。

七重六味ヲモテ長養セリ猶如クシテルガ、呑受シテ↠厭フコト

^かくのごときは、 一切いっさいしゅうにして、 しょう*殨爛かいらんせり。 たれかまさにここにおいてあいじゅうきょうまんせん」 と。 ¬*ほうしゃくきょう¼ じゅうろく

↠是クノ之身一切臭穢ニシテ、自性殨爛セリ。誰↠此愛重憍慢セムト。」¬宝積経¼九十六(勤授長者会)

^あるいはいはく、 ひゃくししむら、 そのうえおおひ、 ひゃくすじ、 そのあひだ0830つらなれり。 三万さんまん六千ろくせんみゃくありて、 さんしょう、 なかにありてちゅうす。 じゅうまんもうありて、 もろもろのあせつねにづ。 じゅうじゅうかわ、 しかもそのうえつつめり。 じょうしんちゅう骨肉こつにくとうなり。

イハ、九百シシムラヘリ↢其九百筋連レリ↢其↡。↢三万六千之チノミチ三升之血在リテ↠中流注。有↢九十九万之毛孔↡汗常。九十九重之皮、而シテツツメリ↢其↡。已上身中骨肉等ナリ

^またはらのなかにぞうあり。 葉々ようようあひおおひて、 *靡々びびとしてしもざまかへり。 かたちれんのごとし。 きょうくうにして、 ないにあひつうじ、 おのおのじゅうじゅうあり。

又腹↢五蔵↡。葉々相覆ヒテ、靡々トシテヘリ↠下。状1034↢蓮華↡。孔竅空疎ニシテ内外相通フナリ↢九十重↡。

^肺臓はいぞううえにありて、 そのいろしろし。 肝臓かんぞうはそのいろあおし。 心臓しんぞうちゅうおうにありて、 そのいろあかし。 ぞうはそのいろなり。 腎臓じんぞうしもにありて、 そのいろくろし。

肺蔵↠上、其色白肝蔵色青。心蔵↢中央↡、其色赤。脾蔵色黄ナリ。腎蔵↠下、其色黒

^またろっあり。 いはく、 だいちょうをば伝送でんそうとなす。 またはいたり。 ながさん尋半じんはん、 そのいろしろし。

又有↢六府↡。謂大腸ヲバ↢伝送之府↡。亦↢肺府↡。長三尋半、其色白

^たんをば清浄しょうじょうとなす。 またかんたり。 そのいろあおし。

タムヲバ↢清浄之府↡。亦肝府↡。其色青

^小腸しょうちょうをばじゅじょうとなす。 またしんたり。 ながじゅうろくじん、 そのいろあかし。

小腸ヲバ↢受盛之府↡。亦↢心府↡。長十六尋、其色赤

^をば*こくとなす。 またたり。 さんしょうくそ、 なかにありて、 そのいろなり。

ヲバ↢五穀之府↡。亦↢脾↡。三升糞在↠中、其色黄ナリ

^膀胱ぼうこうをば津液しんえきとなす。 またじんたり。 いっ尿ゆばり、 なかにありて、 そのいろくろし。

膀胱ヲバ↢津液之府↡。亦↢腎府↡。一斗尿在↠中、其色黒

^さんしょうをばちゅうとくとなす。

三膲ヲバ↢中涜之府↡。

^かくのごときものじゅうおうぶんせり。 だいしょうちょう赤白しゃくびゃくいろまじへたり。 じゅうはちしゅうてんせること、 毒蛇どくじゃわだかまれるがごとし。 じょうふくちゅうぞうなり。

↠此物、縦横分布シテ大小二腸、赤白交ヘタリ↠色。十八周転セルコト、如↢毒蛇ワダカマレルガ↡。已上腹中府蔵ナリ

^またいただきよりあなうらいたるまで、 ずいよりかわえいたるまで、 八万はちまんむしあり。 こうべくちじゅうありて、 ぎょうそういちにあらず0831一々いちいちにまたまんさいちゅうありて、 あきのぎよりもちいさし。 ¬*ぜんぎょう¼・¬*だい禅門ぜんもん¼ とう

又従↠頂至ルマデアナウラ、従↠髄至リテカハヘ、有↢八万戸虫↡。四頭、四口、九十九アリ形相非↠一。一々復有↢九万細虫↡。小サシ↢於秋ノギヨリモ↡。¬禅経¼・¬次第禅門¼等

^¬ほうしゃくきょう¼ にのたまはく、 「はじめてはらづるときに、 七日しちにちて、 八万はちまんむしよりしょうじて、 じゅうおう食噉じきだんす。

¬宝積経¼云、「初ヅル↠胎↢於七日↡、八万戸虫従シテ↠身而生ジテ、縦横食噉

^二戸にこむしあり。 づけてほつとなす。 かみによりてじゅうして、 つねにそのかみじきす。

↢二戸虫↡。名↢舐髪↡。依リテ↢髪↡住、常↢其↡。

^二戸にこむしにょうげんづく。 まなこによりてじゅうして、 つねにまなこじきす。

二戸↢繞眼↡。依リテ↠眼、常↠眼

^四戸しこのうによりてのうじきす。

リテナヅキナヅキ

^いっ稲葉とうようづく。 みみによりてみみじきす。

一戸↢稲葉↡。依リテ↠耳↠耳

^いっぞうづく。 はなによりてはなじきす。

一戸↢蔵口↡。依リテ↠鼻↠鼻

^二戸にこを、 いちようじゃくづけ、 へんじゃくづく。 くちびるによりてくちびるじきす。

二戸、一↢遥擲↡、二↢遍擲↡。依リテ↠脣↠脣

^いっをばしんづく。 したによりてしたじきす。

一戸↢針口↡。依リテ↠舌↠舌

^ひゃくへんによりてへんじきす。 へんもまたしかなり。

五百リテ↢左辺↡食↢左辺↡。右辺亦然ナリ

^四戸しこ*しょうぞうじきし、 二戸にこ*じゅくぞうじきす。

四戸↢生蔵二戸↢熟蔵↡。

^四戸しこしょう便べんどうによりて、 尿ゆばりらひてじゅうし、 四戸しこ大便だいべんどうによりて、 くそらひてじゅうす。

四戸リテ↢小便↡、食ヒテ↠尿1035而住四戸リテ↢大便↡、食ヒテ↠糞而住

^ないいっこくづく。 あしによりてあしじきす。

乃至一戸↢黒頭↡。依リテ↠脚↠脚

^かくのごとき八万はちまん、 この依止えじして、 ちゅう食噉じきだんして、 をして熱悩ねつのうせしめて、 しんしゅうあらしむ。 しゅびょう現前げんぜんするにりょうとしてよくためにじょりょうするあることなし」 と。 だいじゅうしちでたり。 これを略抄りゃくしょうす。

↠是クノ八万、依↢止シテ↡昼夜食噉シテ、令メテ↢身ヲシテ熱悩↡、心ラシム↢憂愁↡。衆病現前スルニシト↠有ルコト↢良医トシテ除療スル↡。」デタリ↢第五↡。略↢抄

^¬*僧伽そうぎゃきょう¼ にきてのたまはく、 「ひとまさになんとするときには、 もろもろの0832むし怖畏ふいして、 たがひにあひ噉食だんじきするに、 もろもろのつうく。 男女なんにょ眷属けんぞくだいのうをなす。 もろもろのむし、 あひじきす。 ただむしありて、 七日しちにちのあひだとうじょうす。 七日しちにちぎをはりて、 いちむしいのちきて、 いちむしはなほぞんぜり」 と。 じょうちゅう

¬僧伽経¼説キテ、「人将↠死ナムトニハ、諸虫怖畏シテ、互相噉食スルニ、受↢諸苦痛↡。男女眷属↢大悲悩↡。諸虫相食。唯有リテ↢二虫↡七日間闘諍。過↢七日↡已リテ、一命尽キテ、一猶存ゼリト。」已上虫蛆

^たとひじょうぜんしゅじきすれども、 宿しゅくるあひだにみなじょうとなりぬ。 たとへば、 ふんだいしょうともにくさきがごとく、 このもまたしかり。 しょうよりろういたるまで、 ただこれじょうなり。 海水かいすいかたむけてあらふとも、 じょうけつならしむべからず。 ほかには端厳たんごんそうほどこせりといへども、 うちにはただもろもろのじょうつつめること、 なほせるかめに、 しかもふんれたるがごとし。 ¬大論だいろん¼ (大智度論)・¬*かん¼ とうこころる。

スレドモ↢上饍衆味↡、逕↠宿之間皆為リヌ↢不浄↡。譬ヘバ↢糞穢大小倶キガ↡、此亦爾。従↠少至ルマデ↠老、唯是不浄ナリ。傾ケテ↢海水↡洗フトモ、不↠可カラ↠令↢浄潔ナラ↡。外ニハ↠施セリト↢端厳↡、内ニハツツ↢諸不浄猶如セルラム↢糞穢↡。↢¬大論¼・¬止観¼等

^ゆゑに *¬ぜんぎょう¼ のにのたまはく、

¬禅経¼偈

^くさくしてじょうなることをれども、 しゃはなほあいじゃくす。
ほかうるわしき顔色げんしきて、 うちじょうをばかんぜず」 と。 じょうたいじょうぐ。

「知レドモ↢身クシテ不浄ナルコトヲ愚者ナホ愛惜
ウルハシキ顔色↠観↢内不浄↡」 已上挙不浄

^いはんやまた命終みょうじゅうのちに、 つかのあひだに捐捨てられて、 いちにちない七日しちにちるに、 その*ぼうちょうして、 しき*しょうへんず。 くさただれ、 かわ穿げて、 膿血のうけつながづ。 *ちょうじゅ**きょうかんとう種々しゅじゅきんじゅう*掣しゃせいして食噉じきだんす。 きんじゅうらひをはりて、 じょう*潰爛かいらんせり。 りょうしゅちゅうありて、 くさところまじはりづ。 にく0833むべきこと、 にたるいぬよりもぎたり。

復命終之後捐↢捨テラレテ↡、経ルニ↢一二日乃至七日↡、其身膖脹シテ色変↢青瘀↡。臭穿ゲテ、膿血流。鵰・クマタカワシ・鵄トビ・梟・フクロフ野干 キツネ ・狗イヌ種々禽獣、掣シテ食噉。禽獣食リテ、不浄潰爛セリ。有↢无量種虫蛆↡シテトシテキコトニクギタリ↢於死ニタルヨリモ↡。

^ない白骨はっこつとなりをはれば、 せつ分散ふんさんして、 しゅそくどくおのおのしょにあり。 かぜき、 さらし、 あめそそぎ、 しもふうじて、 むこと歳年さいねんあれば、 色相しきそうへんし、 つひにきゅう砕末さいまつして、 じんとあひしぬ。 じょう*きょうじょうなり。 ¬*だい般若はんにゃ¼・¬かん¼ とうえたり。

乃至成↢白骨↡已レバ、支節分散シテ、手足・髑髏各↢異処↡。風吹、雨潅霜封ジテ、積リテリテ↢歳年↡色相変異腐朽砕末シテ与↢塵土↡相和シヌ已上究竟不浄ナリ。見タリ↢¬大般若¼・¬止観¼等

^まさにるべし。 このじゅうじょうなり。 所愛しょあい男女なんにょみなまたかくのごとし。 いづれの有智うちのものか、 さらに楽着ぎょうじゃくしょうぜんや。

↠知。此始終不浄ナリ。所愛男女皆亦如↠是1036クノイヅレ有智ゼムヤ↢楽著↡。

^ゆゑに ¬かん¼ にいはく、 「いまだこのそうざるときは、 *愛染あいぜんはなはだこわし。 もしこれををはれば、 欲心よくしんすべてむ。 はるかにしてもしのへざることは、 くそざればなほよくめしらへども、 たちまちにくさぎつれば、 すなはちおうするがごとし」 と。

¬止観¼云、「未シテ↠見↢此↡、愛染甚コハ。若見↠此レバ欲心都ミヌハルカニシテモルコトハ↢忍シト↧不ルトキニハ↠見↠糞猶能クラヘドモ↠飯、忽ギツレバ↢臭↡即便嘔吐スルガ↥。」

^またいはく (止観)、 「もしこのそうあらわしつれば、 またたかまゆあおまなこしろあかくちびるなりといへども、 一聚いちじゅくそに、 *をもつてそのうえおおへるがごとし。 またただれたるかばねに、 りて*繒綵ぞうさいせたらんがごとし。 なほまなこにすらず、 いはんやまさにちかづくべけんや。 *鹿ろくじょうやとひてがいすべし。 いはんやくちすいだきていんぎょうせんをや。 かくのごときそうは、 これ婬欲いんよくやまい*だい黄湯おうとうなり」 と。

又云、「若アラハシツレバ↢此↡、雖↢復高眉、アヲ眼、シロ歯、アカナリト↡、如↣一聚モテヘルガ↢其↡。亦如タダレタルリテセタラムガ↢繒↡。尚不↢眼ダモ見↡ケムヤ↢身↡。雇ヒテ↢鹿杖↡自害セリ。況クチスキテタハセム。如↠是クノ想者、是婬欲病之大黄湯ナリト。」

・苦

【17】^といふは、 このしょしょうときより、 つねにのうく。 ¬ほうしゃくきょう0834¼ にくがごとし。 「もしはなん、 もしはにょ、 たまたましょうじてつるに、 あるいはをもつてささげ、 あるいはころもをもつて承接じょうしょうし、 あるいはとうときに、 りょうねつかぜるるに、 だいのうくること、 うしなまぎにして、 墻壁かきかべれしむるがごとし」 と。

トイフ者、此↢初生時↡常↢苦悩↡。如↢¬宝積経¼説クガ↡。「若シハ男若シハ女、適ジテ↠地、或イハ↠手、或イハヲモテ承接イハ冬夏、冷熱風触ルルニクルコト↢大苦悩↡如シト↣生シクゲルルル↢於牆壁↡。」

^ちょうだいのちにまたのうおおし。 どうきょうかく、 「このけてしゅあり。 いはゆるげんぜつ咽喉いんこう牙歯げしきょうふくしゅそくに、 もろもろのやまいしょうずることあり。 かくのごときひゃくびょう、 その逼切ひっせつするを、 づけてうちとなす。

長大之後亦多↢苦悩↡。同ジキ¬経¼説カク、「受ケテ↢於此↡有↢二種苦↡。所謂眼・耳・鼻・舌・咽喉・牙歯・胸・腹・手・足↢諸ズルコト↠是クノ四百四病、逼↢切スルヲ↡名↢内↡。

^またほかあり。 いはゆる、 あるいは牢獄ろうごくにありて、 **たつせられ、 あるいはみみはなられ、 およびあしらる。 もろもろの*あくじん、 しかもその便たよりを。 またあぶはちとうどくちゅうのためにしょうじきせらる。 寒熱かんねつかつふうならびにいたりて、 種々しゅじゅのう、 その逼切ひっせつす。

復有↢外苦↡。所謂イハリテ↢牢獄↡撾打楚撻イハ↢耳鼻↡、及↢手足↡。諸悪鬼神而シテ得↢其便↡。復為↢蚊・虻・蜂等毒虫↡之所↢唼食↡。寒熱・飢渇・風雨リテ、種々苦悩逼↢切↡。

^このおんは、 一々いちいち*威儀いぎ*行住ぎょうじゅう坐臥ざが、 みなにあらずといふことなし。 もしじょうきて、 しばらくもそくせざれば、 これをづけて*外苦げくとなす。 じゅうおよびまたみななり」 と。

五陰、一々威儀、行住坐臥、無↠不ズトイフコト↢皆苦↡。若長時キテ↢暫クモ休息↡、是ケテ↡。住及坐臥亦復皆苦ナリト。」

^しょそうまなこまえつべし。 くことをつべからず。

諸余苦相↠見。不↠可カラ↠俟↠説クコト

・無常

【18】^さんじょうといふは、 ¬はんぎょう¼ にのたまはく、 「ひといのちとどまらざること0835やまみずよりもぎたり。 今日こんにちぞんぜりといへども、 くればまたたもちがたし。 いかんぞしんをほしいままにして、 悪法あくほうじゅうせしめんや」 と。

1037無常トイフ者、¬涅槃経¼云、「人ルコト↠停ギタリ↢於山ヨリモ↡。今日↠存ゼリト、明クレバ亦難↠保。云何ニシテ↠心、令メムヤト↠住↢悪法↡。」

^¬*しゅつようきょう¼ にのたまはく、

¬出曜経¼云

^「このすでにぐれば、 いのちすなはちげんしょうす。
しょうすいうおのごとし。 これなんのたのしみかあらん」 と。

「此日已グレバ命即減少
↢少水斯有ラムヤト↢何↡」

^¬*摩耶まやきょう¼ のにのたまはく、

¬摩耶経¼偈

^「たとへばせん陀羅だらの、 うしりてしょいたるに、
歩々ぶぶちかづくがごとく、 ひといのちもまたかくのごとし」 と。

「譬ヘバ旃陀羅リテ↠牛ルニ↢屠所
歩々クガ↦死亦如シト↠是クノ

^たとひちょう寿じゅごうありといへども、 つひにじょうまぬかれず。 たとひ富貴ふきほうかんぜりといへども、 かならず衰患すいげんあり。 ¬はんぎょう¼ のにのたまふがごとし。

↠有リト↢長寿業↡、終不↠免↢無常↡。設↠感ゼリト↢富貴↡、必↢衰患期↡。如↢¬涅槃経¼偈フガ↡。

^一切いっさいのもろもろのけんに、 しょうぜるものはみなす。
寿じゅみょうりょうなりといへども、 かならずじゅうじんすることあり。

「一切世間ゼル皆帰↠死
寿命雖↢无量ナリト要必 カナラ ↢終尽スルコト

^それさかりなるはかならずすいすることあり、 ごうするはべつあり。
壮年そうねんひさしくとどまらず、 さかりなるしきやまいおかさる。
^いのちのためにまれ、 ほうとしてじょうなるものあることなし」 と。

ナルハ↠衰スルコト合会スルハ↢別離↡
壮年不↢久シクナル所↠侵
↠死所↠呑シト↠有ルコト↢法トシテナル者↡」

^0836た ¬*罪業ざいごう応報おうほうきょう¼ のにのたまはく、

又¬罪業応報経¼偈

^水渚すいしょはつねにたず。 さかりなればひさしくえず。
でてしゅもっしぬ。 つきちをはりてまたけぬ。

「水渚不↢常ナレバ不↢久シクモセ
デテ須臾シヌリテ復欠ケヌ

^尊栄そんようこうなるものも、 じょうのすみやかなることこれにぎたり。
いままさにつとめてしょうじんして、 *じょうそんちょうらいすべし」 と。

尊栄高貴無常ナルコトギタリ↠是
今当シトメテ精進シテ頂↢礼無上↡」

^ただもろもろのぼんのみ、 この怖畏ふいあるにあらず。 *せんのぼり、 *つうたるもの、 またかくのごとし。 ¬*ほっ譬喩ひゆきょう¼ のにのたまふがごとし。

↣唯凡下ノミ↢此怖畏↡。登↠仙タル↠通者亦復如↠是クノ。如↢¬法句譬喩経¼偈フガ↡。

^*そらにもあらずうみのなかにもあらず。 せんじゃくのあひだにるにもあらず。
方処ほうしょとして、 だっしてけざるはあることなし」 と。

「非↠空ニモ↢海ニモ↠入ルニモ↢山石
シト↠有ルコト方処トシテ脱止シテルハ↟受↠死

^そらのぼり、 うみり、 いわおかくるる三人さんにん因縁いんねん、 ¬きょう¼ (同) にひろくがごとし。

ノボ↠空、入↠海、隠ルル↠巌之三人因縁、如↢¬経¼広クガ

^まさにるべし。 しょげんは、 あるいはまぬかるるものあるも、 じょういちはつひにのがるるところなし。 すべからくせつのごとくしゅぎょうして、 じょうらくごんすべし。

↠知。諸余苦患イハ↢免ルル者↡无常一事ルニ処↡。須↣如↠説修行シテ欣↢求常楽↡。

^¬かん¼ にいふがごとし。 「じょうせつ豪賢ごうげんをもえらばず。 ぜいにしてかたからず、 *恃怙じこすべきことかたし。 いかんぞ安然あんねんとしてひゃくさいもうせん。 ほう馳求ちぐして、 *ちょしゃく*聚斂じゅれんすれども、 聚斂じゅれんいまだらざるに、 *溘然こうねんとしてながきぬれば、 あ0837らゆるさんはいたづらにとなりぬ。 冥々みょうみょうとしてひとくに、 たれか是非ぜひとぶらはんや。

↢¬止観¼云フガ↡。「无常殺鬼不↠択↢豪賢ヲモ↡。危脆ニシテ不↠堅カラ、難↠可キコト↢恃怙↡。云何安然トシテ規↢望セム百歳↡。四方馳求シテ、貯積聚斂スレドモ、聚斂未ルニ↠足溘然トシテ1038キヌレバ、所有産貨リヌ↢他↡。冥々トシテクニ、誰ハムヤ↢是非↡。

^もしじょうの、 暴水ぼうすいみょうふう*掣電せいでんよりもぎたることをさとらんも、 せんかいくうに、 くるところなし。 かくのごとくかんじをはりて、 しんおおきに怖畏ふいして、 ねむりはむしろやすくせず、 じき*あまくせず、 ねんすくはんがごとくして、 もつて*しゅつようもとめよ」 と。

リナバ無常ナルコト↢於暴水・猛風・掣電ヨリモ↡、山海空市ケヌル↥、↠是クノリテ、心大怖畏シテ、眠不↠安クセムシロ、食不↠甘クセ↠哺、如クシテハラハムガ↢頭燃↡、以メヨト↢出要↡。」

^またいはく (止観)、 「たとへば、 かんみみきばうしなふまでは、 いつわねむりしてまぬかるることをのぞめども、 たちまちにこうべることをきては、 しんおおきに驚怖きょうふするがごとし。 しょうろうびょうひては、 なほきゅうなりとなさざらんも、 いるかせにせず。 いかんぞぢざることをん。 しんおこときに、 とうまんがごとし。 じん六欲ろくよく*貪染とんぜんするにいとまあらず」 と。 以上略抄

又云、「譬ヘバ↧野干フマデハ↢耳・尾・牙↡、詐リシテマヌカラムコトヲ、忽キテハ↠断ラムコトヲ↠頭、心大驚怖スルガ↥、遭テハ↢生・老・病↡、尚ランモ↠為↠急ナリト弗↠ユルガナライカン↠不ルコトヲ↠怖。怖心起↠履マムガ湯・火↡。五塵・六欲、不↠暇アラ↢貪染スル↡。」 略抄

^人道にんどうかくのごとし、 じつえんすべし。

人道如↠此↢厭離↡。

二 Ⅰ ⅱ

【19】^だいろく天道てんどうかさば、 さんあり。 いちには欲界よくかいには色界しきかいさんには色界しきかいなり。 そのそうすでにひろし。 つぶさにじゅつすべきことかたし。 しばらく一処いっしょげて、 もつてそのれいせん。

第六サバ↢天道↡者有↠三。一者欲界、二者色界、三者无色界ナリ。其相既。難↠可キコト↢具↡。且ゲテ↢一処↡、以セム↢其↡。

^かのとうてんのごときは、 らくきわまりなしといへども、 命終みょうじゅうときのぞみて*すいそうげんず。 いちこうべうえ*はなかずらたちまちにしぼむ。 てんじんじゃくせらる。 さんわきしたよりあせづ。 ふたつしばしばまじろぐ。 0838*ほんねがはず。 このそうげんずるときに、 天女てんにょ眷属けんぞくみなことごとくおんして、 これをつることくさのごとし。

キハ↢彼忉利天↡雖↢快楽無シト↟極、臨ミテ↢命終↡五衰相現。一カヅラ。二天衣塵垢↠著。三ヨリ汗出。四フタツマジロ。五不↠楽↢本居↡。是相現ズル、天女・眷属皆悉遠離シテ、棄ツルコト↠之↠草

^はやしのあひだに*えんして、 きゅうしてなげきていはく、 「このもろもろの天女てんにょをば、 われつねに憐愍れんみんしつ。 いかんぞ一旦いったんにわれをつることくさのごとくする。 われいまなくなし。 たれかわれをすくふものあらん。

偃↢臥シテ↡、悲泣シテキテ、此天女ヲバ我常憐愍シツ。云何一旦ツルコト↠我アル↠草。我今無↠依無↠怙。誰ハム↠我アラン

^*善見ぜんけんじょうは、 いまよりはまさにえなんとす。 たいしゃくほうちょうえつするによしなし。

善見宮城リハ↠今将↠絶エナムト。帝釈宝座、朝謁スルニ↠由。

^*しゅしょう殿でんのなかには、 なが瞻望せんもうつ。 *しゃくてん宝象ほうぞうには、 いづれのおなじくらん。

殊勝殿ニハ↢瞻望↡。釈天宝象ニハレノジク

^*衆車しゅしゃおんのなかには、 またよくることなからん。 *じゅうおんのうちには、 *かいちゅうながしつ。

衆車苑ニハ↢復能ルコト↡。麁渋苑ニハ介冑長シツ

^*雑林ぞうりんおんのなかには、 宴会えんかいするになし。 *かんおんのなかには、 遊止ゆしするになし。

雑林苑ニハ宴会スルニ↠日。歓喜苑ニハ遊止スルコト↠期。

^*こうじゅもとびゃくごく軟石なんせきには、 さらにするときなし。 *まん陀枳だきしゅしょうみずには、 沐浴もくよくせんによしなし。

劫波樹1039白玉軟石ニハ↢坐スル時↡。曼陀枳尼殊勝池沐浴セムニ由。

^*しゅかんはたちまちにじきすることをがたく、 *みょう音楽おんがくはにはかにちょうもんつ。

四種甘露タチマチ↠得↠食スルコトヲ五妙音楽ニハカ↢聴聞↡。

^かなしきかな、 このひとりこのかかれり。 ねがはくはみんれてわが寿じゅみょうすくひて、 さらにすこしきばしめば、 またたのしからざらんや。 かの*馬頭めずせんおくしょうかいせしむることなかれ」 と。 このごんをなすといへども、 あへてすくふものなし。 ¬ろっ波羅ぱらみつきょう¼。

シキ哉此身独カカレリ↢此↡。願クハレテ↢慈↡救ヒテ↢我寿命↡、更↢少↡、不ラム↢亦楽シカラ↡乎。勿レト↠令ムルコト↠堕↢彼馬頭山・沃焦↡。雖↠作スト↢是↡、無↢敢者↡。¬六波羅蜜経¼

^まさにるべし、 このごくよりもはなはだし。 ゆゑに ¬しょうぼうねんぎょう¼ の0839のたまはく、

↠知、此↢於地獄ヨリモ↡。故¬正法念経¼偈

^てんじょうより退たいせんとほっするときには、 しんだいのうしょうず。
ごくのもろもろのどくは、 じゅうろくにしていちにもおよばず」 と。

「天上ヨリスル↠退セムトニハ↢大苦悩
地獄苦毒十六ニシテ↠及↠一ニモ

^また大徳だいとくてんすでにうまれてのちには、 ふるてん眷属けんぞくは、 ててかれにしたがふ。 あるいはとくてんありて、 しんじゅんぜざるときには、 りていだし、 じゅうすることをることあたはざらしむ。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)。

又大徳天既レテ之後ニハ、旧眷属テテ而従↠彼。或イハリテ↢威徳天↡不↠順↠心ニハ、駆リテメテ↠宮、不↠能↠得ルコト↠住スルコトヲ¬瑜伽¼

^*欲天よくてんことごとくこのあり。 じょうかい (色界・無色界) のなかにはかくのごときなしといへども、 つひに退没たいもつあり。 ない*そう*阿鼻あびをばまぬかれず。 まさにるべし、 てんじょうまたたのしむべからず。 じょう天道てんどう

欲天悉↢此苦↡。上二界ニハ↠無シト↢如↠此クノ之事↡、終↢退没之苦↡。乃至非想マデニ不↠免↢阿鼻ヲバ↡。当↠知、天上亦不↠可カラ↠楽已上天道

二 Ⅰ ⅱ 総結

【20】^だいしちそうじて厭相えんそうけっせば、 いはく、 *いっきょう、 ひとへにくるし。 *耽荒たんこうすべきにあらず。 *やまあわきたらば、 のがるところなし。 しかも、 もろもろのしゅじょう貪愛とんないをもつてみづからおおひて、 ふかよくじゃくせり。 じょうにあらざるをじょうといひ、 らくにあらざるをらくといへり。 かの、 *ようあらまつげくがごとき、 なほいかんぞいとはざらん。 いはんやまた刀山とうせんとう、 やうやくまさにいたりなんとす。 いづれの有智うちのものか、 この宝玩ほうがんせんや。

第七ジテセバ↢厭相↡者、謂篋、偏。非↠可キニ↢耽荒↡。四山合ラバ↠所↢ノガ↡。而衆生↢貪愛↡自ツヒ、深セリ↢於五欲↡。非ザルヲ↠常↠常、非ザルヲ↠楽ヘリ↠楽。彼↢洗ヨウクガマツゲ、猶イカンラム。況復刀山・火湯、漸↠至リナムトイヅレ有智宝↢玩セム↡乎。

^ゆゑに *¬しょうぼうねんぎょう¼ のにのたまはく0840

¬正法念経¼偈

^しゃのつねにうれひをいだくこと、 なほごくのなかにとらはれたるにたり。
にんのつねに歓楽かんらくすること、 なほ*光音こうおんてんのごとし」 と。

「智者クコト↠憂ナホタリ↢獄メラレタルニ
愚人歓楽スルコト猶如シト↢光音天↡」

^¬ほうしゃくきょう¼ のにのたまはく、

¬宝積経¼偈

^種々しゅじゅ悪業あくごうをもつて財物ざいもつもとめて、 さい養育よういくしてかんすとおもへども、
命終みょうじゅうときのぞみて、 せまり、 さいもよくあひすくふものなし。

「種々悪業ヲモテ↢財物養↢育シテ妻子↡謂↢歓娯スト
↢命終苦逼ムレバ↠身妻子↢能相救者↡

^かのさん怖畏ふいのなかにおいては、 さいおよび親識しんしきず。
しゃ財宝ざいほうにんぞくしぬ。 くるに、 たれかよくともにしてわかつものあらん。

テハ↢彼三塗怖畏1040↠見↢妻子及
車馬財宝シヌ↢他人クルニ↠苦ニシテアラム

^父母ぶもきょうだいおよびさいぼう僮僕どうぼくならびに珍財ちんざいも、
してりぬれば、 いちとしてきたりあひしたしむものなし。 ただ*黒業こくごうのみありてつねに*随逐ずいちくせり。

父母兄弟及妻子朋友僮僕アハセ珍財
シテリヌレバ↢一リテ相親ヅクリテ↢黒業ノミ↡常セリ

^えんつねにかの罪人ざいにんぐ。 ªしょうざいもわがよくくわふることあることなし。
なんぢみづからつみつくりて、 いまみづからきたれり。 *業報ごうほうみづからまねく、 かわるものなし。

閻羅常↢彼罪人↠有ルコト↢少罪トシテ
汝自リテ↠罪今自レリ業報自↢代者↡

^0841父母ぶもさいもよくすくふことなし。 ただまさにしゅついん勤修ごんしゅすべしº と。
このゆゑに*枷鎖かさごうてて、 よくおんりて安楽あんらくもとむべし」 と。

父母妻子↢能フコト↣勤↢修出離
シト↧捨テテ伽鎖リテ↢遠離↡求↦安楽↥」

^また ¬大集だいじっきょう¼ のにのたまはく、

又¬大集経¼偈

^さい珍宝ちんぽうおよびおうも、 命終みょうじゅうときのぞみては、 したがはざるものなり。
ただ*かいとおよび**放逸ほういつと、 こん後世ごせ伴侶はんりょとなる」 と。

「妻子珍宝及王位↢命終↠随ナリ
不放逸今世後世ルト↢伴侶↡」

^かくのごとく*展転てんでんして、 あくつくりてけ、 いたづらにしょうじいたづらにして、 輪転りんでんきわなし。 ¬きょう¼ (*雑阿含経)にのたまふがごとし。

シテ↠是クノ展転シテ、作リテ↠悪↠苦シテ、輪転無↠際。如↢¬経¼偈フガ↡。

^一人いちにん一劫いっこうのなかにけたるところのもろもろの身骨しんこつを、
つねにみてはいせずは、 *布羅ふらせんのごとし」 と。

「一人一劫↠受ケタル身骨
ミテ↢腐敗ケム↢毘布羅山↡。」

^一劫いっこうすらなほしかなり。 いはんやりょうこうをや。 われらいまだかつてどうしゅせざるがゆゑに、 いたづらにへんこうたり。 いまもし勤修ごんしゅせずは、 らいもまたしかるべし。 かくのごとくりょうしょうのなかには、 人身にんじんることはなはだかたし。 たとひ人身にんじんたれども、 もろもろのこんすることまたかたし。 たとひ諸根しょこんすれども、 ぶっきょうふことまたかたし。 たとひぶっきょうふとも、 信心しんじんをなすことまたかたし。

一劫スラナリ。況无量劫ヲヤ。我等未ルガムカシニモ↟道、徒タリ↢无辺劫↡。今若↢勤修↡未来亦可↠然。如↠是クノ无量生死之ニハ、得ルコト↢人身↡甚。縦タレドモ↢人身↡、具スルコト↢諸↡亦難。縦スレドモ↢諸根↡、遇フコト↢仏教↡亦難。縦フトモ↢仏教↡、スコト↢信心↡亦難

^ゆゑに ¬だいきょう¼ (*涅槃経・意) にのたまはく、 「人趣にんしゅうまるるも0842のはつめうえつちのごとし。 さんつるものは十方じっぽうつちのごとし」 と。

¬大経¼云、「生ルル↢人趣↡者↢爪↡。堕ツル↢三途↡者シト↢十方↡。」

^¬*法華ほけきょう¼ のにのたまはく、

¬法花経¼

^りょうしゅこうにも、 このほうくことまたかたし。
よくこのほうくもの、 このひとまたかたし」 と。

「無量無数劫クコト↢是↡亦難
↢是↡者人亦復難シトイヘリ。」

^しかるをいま、 たまたまこれらのえんせり。 まさにるべし、 かいはなれてじょうおうじょうすべきこと、 ただこんじょうにのみあり。 しかるをわれら、 こうべ霜雪そうせついただきて、 しん俗塵ぞくじんめり。 いっしょうきぬといへども、 もうきず。 つひにびゃくにちもとして、 ひと*黄泉こうせんそこときひゃくぜん*洞然どうねんたるみょうのなかにちて、 てんばはりたたくといへども、 さらになんのやくかあらんや。

ルヲ今適セリ↢此等↡。当↠知、応キコト↧離レテ苦海↡往↦生浄土↥只在コノノミ↡。而ルヲ我等頭キテ↢霜雪↡、心メリ俗塵↡。一生↠尽キヌト悕望不↠尽。遂1041シテ↢白日↡、独ラム↢黄泉↡之時、堕チテ↢多百踰繕那洞然タル猛火↡、雖↢呼↠天クト↟地、更ラム↢何↡乎。

^ねがはくはもろもろのぎょうじゃえんしんしょうじて、 すみやかにしゅつようみちしたがふべし。 たからやまりてむなしくしてかえることなかれ。

クハ行者、疾ジテ↢厭離↡、速フベシ↢出要↡。莫↧入リテ↢宝↡空シクシテ↠手而帰ルコト↥。

 ^ふ、 なんらのそうをもつてか厭心えんしんをなすべき。

テカ↢何等↡応↢厭心↡。

^こたふ、 もしひろかんぜんとおもはば、 さき所説しょせつのごとし。 六道ろくどういんじょうとうなり。

ハバ↢広ゼムト↡、如↢前所説↡。六道因果、不浄・苦等ナリ

^あるいはまた*りゅうじゅさつの、 ぜん陀迦だかおう勧発かんぽつする (龍樹為王説法要偈) にいはく、

イハ復龍樹菩薩勧↢発スル禅陀迦王↡偈

^「このは、 じょう*あなよりながれて、 きわまりむことあることなきこと、 0843かいのごとし。
うすかわおおかくして清浄しょうじょうなるにたれども、 瓔珞ようらくりてみづからしょうごんせるがごとし。

「是不浄九ヨリキコト↠有ルコト↢窮ムコト↡若↢河海
皮覆シテ↢清浄ナルニ↧仮リテ↢瓔珞↡自荘厳セルガ

^もろもろの有智うちにんはすなはち分別ふんべつして、 その*おうなるをりてすなはちしゃす。
たとへば*しゃの、 みょうえんちかづきて、 はじめはしばらくよろこぶといへども、 のちにはすがごとし。

有智分別シテリテ↢其虚誑ナルヲ↡便棄捨
ヘバ↧疥者ヅキテ↢猛焔↢暫ブト↡後スガ↞苦

^貪欲とんよくそうもまたしかなり。 はじ楽着ぎょうじゃくすといへども、 つひにはうれおおし。
実相じっそうはみなじょうなりとる。 すなはちこれくう無我むがかんずるなり。

貪欲之亦復然ナリ↢楽著スト↡終ニハ↠患
レバ↢身皆不浄ナリ是観ズルナリ↢於空无我

^もしよくこのかんしゅじゅうするものは、 やくのなかにおいてもつともじょうなり。
*しきぞくおよびもんありといへども、 もしかいなければきんじゅうのごとし。

修↢習スル↡者↢利益↡最无上ナリ
↠有リト↢色族及多聞↡ケレバ↢戒智↡猶↢禽獣

^しゅうせんしょし、 聞見もんけんすくなしといへども、 よくかいしゅするを勝上しょうじょうづく。
*すい八法はっぽう、 よくまぬかるることなし。 もし除断じょだんすることあるは、 まことにともがらなし。

↧処↢醜賎↡少シト↦聞見↥スルヲ↢戒智↡名↢勝
利衰八法莫↢能ルルコトルハ↢除断スルコト↡真トモガラ

^0844もろもろの沙門しゃもん婆羅ばらもん父母ぶもさいおよび眷属けんぞくの、
かのこころのためにそのごんけて、 ひろぜんほうぎょうつくることなかれ。

ラバ沙門・婆羅門・父母・妻子及眷属
↧為↢彼↡受ケテ↢其ルコト↦不善非法

^たとひこれらがためにもろもろのとがおこせども、 らいだいはただく。
それ衆悪しゅあくつくれども、 ただちにむくいず。 刀剣とうけんのこもごもしょうかつするがごとくにはあらず。

↢此等↡起セドモ↢諸未来大苦ヲバ
ルトキハ↢衆悪↡不↢即↠如クニハ↢刀剣ヘテ傷割スルガ

^おわりにのぞみ、 つみあひはじめてともにげんじて、 のちごくりてもろもろのかかる。
*しんかいもんざん、 かくのごとき七ぽうしょうざいづく。

↠終罪相始ジテリテ↢地獄カカ↢諸
信・戒・施・聞・慧・慚・↠是クノ七法↢聖財

^真実しんじつにして無比むひ*牟尼むにせつなり。 けんのもろもろの珍宝ちんぽうちょうおつせり。
ることをりぬれば、 まずしといへどもめりとづくべし。 ざいあれどもよくおおきは、 これをびんづく。

ニシテ無比牟尼ナリ超↢越セリ世間珍宝
リヌレバ↠足ルコトヲ↠貧シト↠名↠富メリトレドモ↠財多ヲバ↠欲是1042↠貧

^もし財業ざいごうゆたかなれば、 もろもろのすこと、 りゅうかしらおおきは*酸毒さんどくすがごとし。
まさにかんずべし、 うまあじはひは毒薬どくやくのごとし。 智慧ちえみずをもつてそそぎてきよ0845らしめよ。

ルハ↢財業↡増スコト↢諸↣竜キハカシラスガ↢酸毒
↠観ウマ↢毒薬↢智↡灑ギテメヨ↠浄カラ

^このぞんぜんがためにじきすべしといへども、 しきとんじてきょうまんちょうずることなかれ。
もろもろの欲染よくぜんにおいてまさにいとふことをなして、 つとめてじょうはんどうもとむべし。

↠存ゼムガ↢此↡雖↠応↠食↧貪ジテ↢色味↡長ズルコト↦憍慢
↢諸欲染↡当↠厭フコトヲメテメヨ↢无上涅槃

^この調じょうして安穏あんのんならしめて、 しかしてのちによろしく斎戒さいかいしゅすべし。
いち分別ふんべつするに*五時ごじあり。 二時にじのなかにまさに眠息めんそくすべし。

調↢和シテ↡令メテ↢安ナラシテ↠修↢斎戒
一夜分別スルニ↢五時↡二時↢眠息

^しょちゅう後夜ごやにはしょうかんじて、 よろしくつとめて*もとめてむなしくぐすことなかれ。
たとへばしょうえん*ごうけるに、 みずをして*かんあらしむることあたはざるがごとく、

初・中・後夜ニハジテ↢生死メテメテ↠度↢空シクグスコト
ヘバ↧少塩ケルニ↢恒河ルガ↞能↠令ムルコト↣水ヲシテ↢鹹味↡

^さいあく衆善しゅぜんひぬれば、 しょうめつさんすること、 またかくのごとし。
梵天ぼんてんよくたのしみをくといへども、 かえりて*けんねん

微細之悪ヒヌレバ↢衆善消滅散壊スルコト亦如↠是クノ
↠受クト↢梵天離欲リテ↢無間熾然

^てんしてこうみょうせりといへども、 のちにはごく黒闇こくあんのなかにる。
いはゆる*こくじょうかつごくの、 しょうかつはくおよびけんなり。

↧居シテ↢天宮↡具セリト↦光明ニハ↢地獄黒闇
所謂縄・活地獄焼・割・剥・刺及无間ナリ

^0846このはちごくはつねにねんなり。 みなこれしゅじょう悪業あくごうほうなり。
もし図画ずえごんき、 あるいはきょうしょしたがひてみづから憶念おくねんし、

地獄熾然ナリ皆是衆生悪業ナリ
見↢図画↡聞↢他イハヒテ↢経書↡自憶念

^かくのごとくしてときにすらもつてしのびがたし。 いはんやまたおのがにみづから*経歴きょうりゃくせんをや。
もしまたひとありて一日いちにちのうちに、 さんびゃくほこをもつてそのさんも、

シテ↠是クノニスラ↠忍復己逕歴セムヲヤ
復有リテ↠人一日↢三百サム↢其

^阿鼻あびごく一念いちねんくらぶるに、 ひゃくせん万分まんぶんにしていちにもおよばず。
ちくしょうのなかにおいても、 りょうなり。 あるいは*ばくおよび鞭撻べんたつせらるることあり。

ブルニ↢阿毘獄一念百千万分ニシテ不↠↠一ニモ
テモ↢畜生↡苦无量ナリイハ↢繋縛鞭撻セラルルコト

^あるいはみょうしゅかくこつもうにくのために残害ざんがいせらるることをいたす。
餓鬼がきどうのなかのもまたしかなり。 もろもろの*所須しょしゅよくこころしたがはず、

イハ↢明珠・羽・角・牙・骨・毛・皮・肉↢残害セラルルコト
餓鬼道亦然ナリ所須欲不↠随↠意

^かつひっせられて寒熱かんねつくるしむ。 ぼうとう、 はなはだりょうなり。
尿にょうふんのもろもろのじょうすら、 ひゃく千万せんまんごうによくることなし。

飢渇レテ↠逼クルシ↢寒熱疲乏等苦甚无量ナリ
屎尿糞穢不浄百千万劫↢能ルコト

^たとひまたもとめてしょうぶんれども、 さらにあひ*劫奪こうだつして、 いで散失さんしつしぬ。
0847清冷しょうりょうあきつきにも焔熱えんねつうれへ、 おんはるにもうたたかんす。

復推メテレドモ↢少分劫奪シテギテ散失シヌ
ニモ↢焔熱温和ニモ寒苦

^もし園林おんりんおもむけば、 しゅき、 たとひしょういたれどもへんじてかつしぬ。
*罪業ざいごうえんのゆゑに、 寿じゅじょうおんにして、 ること一万いちまん千歳せんざいあり。

ケバ↢園林↡衆菓尽レバ清流↡変1043ジテ枯竭シヌ
寿長遠ニシテルコト↢一万五千歳↡

^もろもろのどくくるにむなしくくることなし。 みなこれ餓鬼がきほうなり。
煩悩ぼんのう*かわしゅじょうただよはし、 ふか怖畏ふいねんとなる。

クルニ↢衆楚毒↡无↢空シククルコト皆是餓鬼之果報ナリ
煩悩河漂↢衆生↢深怖畏熾然

^かくのごときもろもろの*塵労じんろうめっせんとおもはば、 真実しんじつだつ*たいしゅすべし。
もろもろのけん*みょうほうはなれて、 すなはち清浄しょうじょうどうところよ」 と。

ハバ↠滅セムト↢如↠是クノ塵労↠修↢真実解脱
レテ↢諸世間仮名ヨト↢清浄不動↡」

^じょうひゃくじゅうぎょうあり。 いまりゃくしてこれをしょうす。

已上有↢百十行偈↡。今略シテ

^もしりゃくぞんぜば、 *みょうさつの、 *らい和羅わらしょうとなへていふがごとし。

ゼバ↠略者、如↢馬鳴菩薩頼和羅ヘテフガ↡。

^有為うい諸法しょほうは、 げんのごとくのごとし。
三界さんがい獄縛ごくばくは、 いちとしてもたのしむべきことなし。

「有為諸法↢幻↢化
三界獄縛↢一トシテモキコト↟楽

^おう高顕こうけんにして、 勢力せいりきざいなれども、
じょうすでにいたりぬれば、 たれかぞんずることをるものあらん。

王位高勢力自在ナレドモ
無常既リヌレバ↠存ズルコトヲアラン

^0848くうちゅうくもの、 しゅ散滅さんめつするがごとし。
この虚偽こぎなること、 なほしょうのごとし。

↢空須臾散滅スルガ
虚偽ナルコト猶如↢芭蕉

^おんたりぞくたり、 親近しんごんすべからず。
*毒蛇どくじゃはこのごとし。 たれかまさに*あいぎょうすべき。

↠怨↠賊不↠可カラ↢親近
↢毒蛇↢愛楽

^このゆゑに諸仏しょぶつ、 つねにこのしたまふ」 (*付法蔵因縁伝) と。

諸仏シタマフト↢此↡」

^このなかにつぶさにじょうくうぶ。 くものどうさとる。

↢無常・苦・↡。聞者悟↠道

^あるいはまた堅牢けんろう比丘びくかべうえ (宝積経) にのたまはく、

イハ復堅牢比丘

^しょう断絶だんぜつせざるは、 貪欲とんよく嗜味しみなるがゆゑなり。
あだやしなひて*ちょうりて、 むなしくもろもろのしんく。

「生死コト↢断絶貪欲嗜味ナルガナリ
ヒテ↠怨↢丘塚シク↢諸辛苦

^くさきこと死屍しにかばねのごとし。 あなよりじょうながす。
かわやむしの、 ふんたのしむがごとく、 にしてとんずるもことなることなし。

キコト↢死屍ヨリ↢不浄
↢廁↟糞ニシテルモ↠身↠異ナルコト

^*憶想おくそうしてみだりに分別ふんべつする、 すなはちこれよくもとなり。
しゃ分別ふんべつせざれば、 よくすなはち断滅だんめつす。

憶想シテ分別スル是五欲ナリ
智者レバ↢分別五欲則断滅

^邪念じゃねんより*とんじゃくしょうじ、 とんじゃくより煩悩ぼんのうしょうず。
しょうねんにして貪欲とんよくなければ、 煩悩ぼんのうまたきぬ」 と。

邪念ヨリ↢貪著貪著ヨリ↢煩悩
正念ケレバ↢貪欲↡煩悩亦尽キヌト

^0849弥楼みるけんぶつめつに、 しょうぼうめっせしときに、 陀摩だま尸利しりさつ、 このもと仏法ぶっぽうせんし、 りょうしゅじょうやくせり。

過去弥楼犍駄仏滅後、正法滅セシ、陀摩尸利菩薩求↢得↡弘↢宣仏法↡、利↢益セリ無量衆生↡。

^あるいはまた ¬*仁王にんのうきょう¼ に*じょうあり。 つべし。

イハ復¬仁王経¼有↢四非常偈↡。可↠見

^もしごくりゃくねがはば、 ¬*金剛こんごうきょう¼ にのたまふがごとし。

ハバ↢極略↡者、如↢¬金剛経¼云フガ↡、

^一切いっさい有為ういほうは、 ゆめまぼろしあわかげとのごとし。
つゆのごとくまたいなずまのごとし。 かくのごときかんをなすべし」 と。

「一切有為↢夢トノ
↠露亦如↠電シト↠作1044↢如↠是クノ↡」

^あるいはまた ¬だいきょう¼ (涅槃経)にのたまはく、

イハ復¬大経¼偈

^*しょぎょうじょうなり。 これしょうめつほうなり。
しょうめつめっしをはりて、 じゃくめつなるをらくとなす」 と。

「諸行無常ナリ是生滅ナリ
生滅滅リテ寂滅ナルヲ↠楽

^*おんじょうどうすみに、 *頗梨はりかねあり。 かねのなかにまたこのく。 びょうそうきて、 のうすなはちのぞこりて、 清涼しょうりょうらくること、 *三禅さんぜんじょううまれなんとするがごとし。 いはんやまた、 *雪山せっせんだい全身ぜんしんててこのたり。

祇園寺无常堂↢頗梨鐘↡。鐘亦説↢此↡。病僧聞キテ↠音、苦悩即コリテルコト↢清涼↧入↢三禅ルガ↞生レナムト↢浄土復雪山大士、捨テテ於全身↡而得タリ↢此↡。

^ぎょうじゃよくねんして、 これを忽爾いるかせにすることをざれ。 せつのごとく観察かんざつして、 まさに*とんしんとう惑業わくごうはなるること、 獅子ししの、 ひとふがごとくにすべし。 どうやくぎょうをなして、 かたくななるいぬの、 つちくれふがごとくすべからず。

行者善思念シテ、不↠得↣忽↢爾イルカセニスルコトヲ↡。如↠説観察シテ、応↧離ルルコト↢貪・瞋・痴等或業↡、如クニス↦師子フガ↞人。不↠応↧作シテ↢外道無益苦行↡、如クスカタクナナルフガツチクレ

 ^0850ふ。 じょうじょう、 そのさとりやすし。 げん*法体ほったいあるをばるに、 なんぞきてくうとなす。

。不浄・苦・无常、其義易↠了。現ルニ↠有ルヲバ↢法体↡、何キテ↠空

^こたふ。 あに ¬きょう¼ (金剛経)かずや、 「げんのごとし」 と。 ゆゑにゆめきょうれいして、 まさにくうかんずべし。

。豈↢¬経¼説↡、「如シト↢夢・幻・化↡。」故シテ↢夢↡当↠観↢空↡。

^¬西域さいいき¼ (*大唐西域記) にいふがごとし。 「^*婆羅ばらねつこく*鹿林ろくりんひがしくことさんにして、 れたるいけあり。 むかしいちいんありて、 このいけほとりにしていおりむすあとへだてて、 ひろじゅつならひ、 じん究極きゅうきょくして、 よく*りゃくをしてたからとなし、 人畜にんちくをしてかたちへしむ。 ただしいまだ風雲ふううんりて*せんばいすることあたはず。 ひらき、 いにしえかんがへて、 さらにせんじゅつもとむ。

↢¬西域¼云フガ↡。「婆羅痆斯国施鹿林キテ二三里、有レタル池↡。昔有リテ↢一隠士↡、於↢此↡結↠蘆ヘダテテ↠迹、博伎術↡究↢極神理↡、能使↢瓦礫ヲシテ、人畜ヲシテ↠形。但↠能↢風雲スルコト↦仙↥。ヒラ↠図ヘテ↠古、更↢仙術↡。

^そのほうにいはく、 いち*れつめいじて、 ながかたなりてだんすみち、 いきへだごんちて、 ゆうべよりあしたおよばしむ。 せんもとむるものはちゅうだんし、 ながかたなり、 くち*じん0851じゅじゅし、 おさちょうほんじて、 *みょうせんのぼると。 つひにせんほうによりていちれつもとめて、 しばしば*ちょうくわへ、 ひそかに陰徳おんとくぎょうじき。

、命ジテ烈士↡、執リテ↢長↡立↡、ヘダ↠息チテ↠言、自ヨムベオヨバシムアシタ。求ムル↠仙、手↢長↡、口↢神呪↡、収↠視ジテ↠聴、遅明ルトイヘリ↠仙。遂リテ↢仙↡求メテ↢一烈士↡、数↢重貽↡、ヒソカジキ↢陰徳↡。

^いんのいはく、 ªねがはくは、 一夕いっせきおとせざらんのみº と。 れつのいはく、 ªすらなほせじ。 あにいたづらにいきへだてんをやº と。

隠士、願クハ一夕不ラムオト。烈士、死ヌルコトヲダモ尚不↠辞。豈ヘダテムヲヤト↠息

^ここにおいてだんじょうもうけ、 せんほうけ、 ほうによりてぎょうして、 してるるをつ。 くんのちにおのおのそのいとなみつかさどる。 いん神呪じんじゅじゅし、 れつ銛刀せんとうあんぜり。 ほとほとまさにけなんとするに、 たちまちにおとおこしてさけぶ。

↠是↢壇場↡、受↢仙↡、依リテ↠方行事シテ、坐シテ↢日ルルヲ↡。曛暮之後リテ↢其イトナミ隠士↢神1045↡、烈士ゼリ銛刀↡。殆ルニケナムト矣、忽シテオトヨバ

^ときいんひていはく、 ªおとすることなかれといましめつ。 なにをもつてかおどろさけぶº と。

隠士問ヒテ、誡メツレトオトスルコト。何テカヨバ

^れつのいはく、 ªめいけてのちぶんいたるに、 *惛然こんねんとしてゆめのごとくして、 へんさらにおこれり。

烈士、受ケテ↠命後至ルニ↢夜分↡、惛然トシテクシテ↠夢、変異更

^れば、 むかしつかへししゅ、 みづからきたりてしゃす。 厚恩こうおんになへることをかんじて、 しのびて*ほうせず。 かのひとしんして、 つひに殺害せつがいせられぬ。

ツカヘシミヅカリテ慰謝。感ジテ↠荷ヘルコトヲ↢厚恩↡、忍ビテ不↢報語↡。彼人震怒シテ、遂レヌ殺害↡。

^*ちゅういんしんけて、 かばねかえりみてたんしゃくす。 なほねがはくは、 ともものいはずしてもつて厚徳こうとくほうぜんと。

ケテ↢中陰↡、顧↠屍嘆惜。猶願クハトモ↠世シテモノイゼムト↢厚徳↡。

^つひにれば、 みなみいんだい婆羅ばらもんいえたくしょうす。 ないたいたいづるに、 つぶさにやくれども、 おんになとくになひてかつておといださず。

レバ詫↢生南印度大婆羅門乃至受↠胎ヅルニ↠胎、備レドモ↢苦↡、荷↠恩ヒテ↠徳不↠出オト

^ごうけ、 冠婚かんこんし、 おやうしなひ、 をなすにおよぶまで、 つねにさきおんおもひてしのびてかたらず。 *宗親そうしんしゃくぞくことごとく怪異けいす。

洎↢乎オヨブマデ↠業↠親スニ↟子、毎ジテ↢前↡忍ビテ而不↠語。宗親戚属咸怪異

^としろくじゅうゆうぎて、 わがつまかたりていはく、 «なんぢ、 ものいふべし。 もしかたらずは、 まさになんぢがころすべし» と。 われとき*惟念ゆいねんすらく、 «すでにしょうへだつ。 みづからかえりみるに、 衰老すいろうして、 ただこの*稚子ちしのみありと。 よりてそのつまとどめて、 殺害せつがいすることなからしめん» と。 つひにこのおとおこせるのみº と。

年過ギテ↢六十有五↡、我カタリテ、汝、可モノイ矣。若↠語者当シト↠殺↢汝↡。我時惟念スラク、已↢生世↡。自ルニ衰老タリ稚子ノミアリト。因リテメテ↢其↡、令メムトシテ↠無カラ↢殺害スルコトセルナラク↢此オト↡耳

^いんのいはく、 ªわがとがなり。 これなやませるのみº と。 れつおん0852かんじて、 のならざるをかなしみて、 ふんしてせり」 と。 以上略抄

隠士、我之過也。此魔ナヤマスナラク。烈士、感↠恩ミテ↢事ルヲ↟成、憤恚シテ而死。」 已上略抄

^ゆめきょう、 かくのごとし。 諸法しょほうもまたしかなり。 妄想もうぞうゆめ、 いまだめざれば、 くうにおいて、 いひてとなす。

境如↠是クノ。諸法亦然ナリ。妄想夢未レバ↠覚、於↠空↠有

^ゆゑに ¬*唯識ゆいしきろん¼ (意) にいはく、 「いまだしんさとりざるときは、 つねにゆめのなかにしょせり。 ゆゑにぶつきて、 しょうじょうとなしたまふ」 と。

¬唯識論¼云、「未シテ↠得↢真↡、常セリ↢夢↡。故仏説キテタマフト↢生死長夜↡。」

 ^ふ。 もしじょうくうとうかんをなさば、 あに小乗しょうじょう*調じょう自度じどことならんや。

。若サバ↢無常・苦・空等↡、豈ナラムヤ↢小乗自調・自度↡。

^こたふ。 このかん*しょうかぎらず。 またつうじてだいじょうにもあり。

。此不↠局↠小。亦通ジテ↢大乗↡。

^¬ほっ¼ にのたまふがごとし。

↢¬法華¼云フガ↡。

^だい慈悲じひしつとなす。 にゅう忍辱にんにくなり。
諸法しょほうくうとなす。 ここにしょしてためにほうけ」 と。

「大慈悲↠室柔和忍辱ナリ
諸法↠座シテ↠此↢説ケト↠法↡」

^諸法しょほうくうかん、 なほだい慈悲じひしんさまたげず、 いかにいはんやじょうとうさつがんもよおすをや。 このゆゑに ¬だい般若はんにゃ¼ とうきょうに、 *じょうとうかんをもつてまたさつほうとなす。 もしらんとおもはば、 さらにきょうもんめ。

諸法観尚不↠妨↢大慈悲心↡、何苦・無常等スヲ↢菩薩悲願乎。是¬大般若¼等、以↢不1046浄等↡亦為↢菩薩↡。若ハバ↠知ラムト者、更↢経↡。

 ^ふ。 かくのごとき観念かんねんは、 なんのやくかある。

。如↠是クノ観念↢何利益↡。

^こたふ。 もしつねにかくのごとくしん*調じょうぶくすれば、 よくはくにして、 ないりんじゅうにはしょうねんにしてみだれず、 あくしょ0853ちざるなり。

。若シテ↠是クノ調↢伏スレバ↡者、五欲微薄ニシテ、乃至臨終正念ニシテシテ↠乱、不ルナリ↠堕↢悪処↡。

^¬*だいしょうごんろん¼ の勧進かんじんねんにいふがごとし。

↢¬大荘厳論¼勧進繋念フガ↡。

^じょうねんにしてうれひなきときには、 *だいにしてしょうじんせず。
もろもろの*事務じむ貪営とんようして、 *かいぜんとをしゅせず。

「盛年ニシテ↠患ニハ懈怠ニシテ不↢精進
貪↢営事務不↠修↢施・戒・禅

^のためにまるるにのぞみて、 まさにいてぜんしゅすることをもとむ。
しゃ観察かんざつして、 よくおもい断除だんじょすべし。

ミテ↢為↠死ルニ↟呑イテ↠修セムコトヲ↠善
智者↣観察シテ断↢除五欲

^*しょうごんじゅうしんのものは、 じゅうこんなし。
しんすでにせんなれば、 錯乱さくらんおもいあることなし。

精勤習心終時↢悔恨↡
心意既ラニシテ↠有ルコト↢錯乱念↡

^しゃはつとめてしんれば、 おわりにのぞみてこころさんぜず。
じゅうしんせんならざれば、 おわりにのぞみてかならず散乱さんらんす」 と。

智者レバミテ↠終意不↠散
ルハ↢習心専↠終散乱スト

^また ¬ほうしゃくきょう¼ のじゅうしちにのたまはく、

又¬宝積経¼五十七

^「このかんずべし。 きんみゃくたがひに*てんにょうせり。
湿うるへるかわあひつつおおひて、 *ところ瘡門そうもんあり。

「応↠観↢於此筋脈タガヒ纏繞セリ
湿ヘル皮相ツツヒテ↢瘡門↡

^しゅうへんしてつねに尿にょうのもろもろのじょういつせり。
たとへばしゃ*せんとに、 もろもろの穀麦こくばくとうれるがごとく、

周遍シテ流↢溢セリ屎尿不浄
ヘバ↣舎↠篅レルガ↢諸穀麦等

^このもまたかくのごとし。 ぞうそのなかにてり。
0854ほねけん運動うんどうするに、 ぜいにして堅実けんじつにあらず。

亦如↠是クノ雑穢満テリ↢其
運↢動シテ機関危脆ニシテ↢堅実ナラ

^愚夫ぐふはつねにあいぎょうすれども、 しゃ*ぜんじゃくすることなし。
なみだつばきあせつねにながれ、 膿血のうけつつねにじゅうまんせり。

愚夫愛楽レドモ智者↢染著スルコト
ナミダ唾汗常ウミシル血恒充満セリ

^なるあぶら乳汁にゅうじゅうまじはり、 のうどくのなかにつ。
きょうかくには*痰癊たんおんながれ、 うちに生熟しょうじゅくぞうあり。

ナル↢乳汁ナヅキチテ↢髑髏
ヨリ痰癊流↢生熟蔵↡

^肪膏ぼうこうまくと、 ぞうのもろもろのふくとあり。
かくのごときしゅうらんとうの、 もろもろのじょうおなじくせり。

肪膏与↢皮膜↡五蔵腹胃トアリ
↠是クノ臭爛等不浄ジクセリ

^つみふかづべし。 これはすなはちこれおんなり。
しき耽欲たんよくにんは、 愚痴ぐちにしてつねにたもちてまもれども、

↠畏是怨家ナリ
ルコト耽欲愚痴ニシテチテ

^かくのごときしゅうは、 なほちたるじょうかくのごとし。
にち煩悩ぼんのうめられて、 せんしてしばらくもとどまることなし。

↠是クノ臭穢猶如↢朽チタル城廓
日夜煩悩レテ遷流シテシバラクモルコト

^しろほね墻壁かきかべにくをもつてでいとなし、
さい*とんしんところしたがひて枉飾おうじきせり。

城骨牆壁ニハ血肉ヲモテセリ↢塗泥
画彩貪・瞋・痴ヒテ↠処枉飾セリ

^にくむべし骨身こつしんしろにくあひ連合れんごうし、
つねに*あくしきないをもつてあひせんぜらる。

骨身血肉相連合1047セリ
↢悪知識内外

^0855*なん、 なんぢまさにるべし。 わが所説しょせつのごとく、
ちゅうつねに*ねんして、 よくきょうおもふことなかれ。

難陀汝当↠知↢我之所説
昼夜常繋念シテ↠思フコト↢於欲境

^もしおんせんとおもはば、 つねにかくのごときかんをなし、
だつところごんせば、 すみやかにしょううみえん」 と。

ハバ↢遠離セムト↡者↢如↠是クノ
勤↢求シテ解脱↢生死↡」

^しょやくは ¬大論だいろん¼ (大智度論)・¬かん¼ とうるべし。

諸余利益↠見↢¬大論¼・¬止観¼等↡。

欣求浄土
    叙意標章

【21】^大文だいもんだいに、 ごんじょうといふは、 極楽ごくらく*しょうどくりょうなりひゃくこう千劫せんごうくともつくすことあたはじ。 *算分さんぶんぶんもまたるところにあらず。 しかも ¬*ぐんろん¼ には三十さんじっしゅやくかし、 ¬*安国あんこくしょう¼ にはじゅうらくひょうせり。 すでにりぬ。 しょうようはただひとしんにあり。

大文第二欣求浄土トイフ者、極楽依正功徳無量ナリ。百劫・千劫クトモ不↠能↠尽スコト。算分・喩分亦非↠所↠知。然¬群疑論ニハ¼明↢三十種↡、¬安国ニハ¼摽セリ↢二十四↡。既リヌ。称只在↢人↡。

^いまじゅうらくげてじょうさんずること、 なほ一毛いちもうをもつて大海だいかいしただらすがごとし。 いちにはしょうじゅ来迎らいこうらくにはれん初開しょかいらくさんには身相しんそう神通じんずうらくにはみょうきょうがいらくにはらく退たいらくろくにはいんじょう結縁けちえんらくしちにはしょうじゅ倶会くえらくはちには見仏けんぶつ聞法もんぼうらくには随心ずいしんぶつらくじゅうには増進ぞうしん仏道ぶつどうらくなり。

今挙ゲテ↢十↡而シテズルコト↢浄土↡、猶如クセム↣一毛之シタツル↢大海↡。一ニハ聖衆来迎楽、二ニハ蓮華初開楽、三ニハ身相神通楽、四ニハ五妙境界楽、五ニハ快楽无退楽、六ニハ引接結縁楽、七ニハ聖衆倶会楽、八ニハ見仏聞法楽、九ニハ随心供仏楽、十ニハ増進仏道楽也。

二 Ⅱ 解釈十楽
      聖衆来迎楽

【22】^第一だいいち*しょうじゅ来迎らいこうらくといふは、 おほよそ悪業あくごうにんは、 いのちくるときに、 *ふうる。 ゆゑに動熱どうねつしておおし。 ぜんぎょうにんは、 いのちくるときに、 *すい0856る。 ゆゑに緩慢かんまんとしてなし。 ^いかにいはんや念仏ねんぶつこうつもり、 *運心うんしんとしふかきものは、 命終みょうじゅうときのぞみてだいおのづからしょうず。

第一聖衆来迎トイフ者、凡悪業命尽クル、風・火先。故動熱シテ↠苦。善行命尽クル、地・水先。故緩縵トシテ↠苦。何念仏功積、運心年深之者、臨↢命終↡大喜自

^しかる所以ゆえんは、 弥陀みだ如来にょらい*本願ほんがんをもつてのゆゑに、 もろもろのさつひゃくせん比丘びくしゅと、 だいこうみょうはなちて、 *皓然ごうねんとしてまえにまします。 とき*だいかんおん*ひゃっぷくしょうごんみてべ、 たから蓮台れんだいささげてぎょうじゃまえいたりたまひ、 大勢だいせいさつりょうしょうじゅと、 どう讃嘆さんだんしてみてさずけていんじょうしたまふ。

所↢以然↡者、弥陀如来以テノ↢本願↡故、与↢諸菩薩、百千比丘衆↡、放チテ↢大光明↡、皓然トシテ↢目↡。時大悲観世音申↢百福荘厳↡、ササゲテ↢宝蓮台↡至リタマヒ↢行者大勢至菩薩与↢無量聖衆↡、同時讃嘆シテ↠手1048シタマフ

^このときぎょうじゃ、 まのあたりみづからこれをて、 しんちゅうかんし、 身心しんしん安楽あんらくなることぜんじょうるがごとし。

行者、目↠之歓喜身心安楽ニシテ↠入ルガ↢禅定↡。

^まさにるべし、 草菴そうあん瞑目めいもくのあひだはすなはちこれ*蓮台れんだいけっときなり。 すなはち弥陀みだぶつしりえしたがひ、 さつしゅのなかにありて、 一念いちねんのあひだに、 西方さいほう極楽ごくらくかいしょうずることを¬*かんぎょう¼・¬*びょう等覚どうがくきょう¼、 ならびに*でんとうこころによる。

↠知、草菴瞑目之間便是蓮台結跏之トキナリ。即↢弥陀仏↡、在リテ↢菩薩衆↡、一念之アヒダ得↠生ズルコトヲ↢西方極楽世界↡。↢¬観経¼・¬平等覚経¼并伝記等

^かのとうてんじょう億千おくせんざいらくも、 *だい梵王ぼんのう深禅じんぜんじょうらくも、 これらのもろもろのらくは、 いまだらくとなすにらず。 *輪転りんでんさいにしてさんまぬかれず。 しかもいま、 観音かんのんたなごころしょし、 たかられんたいたくして、 ながかいおつしてはじめてじょうおうじょうしぬ。 そのときかんしんごんをもつてぶべからず。

忉利天上億千歳、大梵王宮深禅定、此等、未↠足↠為↠楽。輪転無際ニシテ不↠免↢三途↡。而今処↢観音↡、託シテ↢宝花胎↡、永越↢過シテ苦海↡初往↢生シヌ浄土↡。爾歓喜心、不↠可カラ↢以↠言↡。

^りゅうじゅ (*易行品) にいはく、

龍樹

^もしひと命終みょうじゅうときに、 かのくにうまるることをるものは、
0857すなはちりょうとくす。 このゆゑにわれみょうしたてまつる」 と。

「若人命終↠生ルルコトヲ↢彼↡者
↢无量我帰命シタテマツルト

二 Ⅱ ⅱ 蓮華初開楽

【23】^だいれん初開しょかいらくといふは、 ぎょうじゃかのくにしょうじをはりて、 れんはじめてひらくるときに、 あらゆる歓楽かんらくさきばいせることひゃくせんなり。 なほ*盲者もうじゃの、 はじめてみょうげんたるがごとし。 またへんのたみの、 たちまちにおうれるがごとし。 みづからそのれば、 はすでに紫磨しま金色こんじきたいとなり、 またねんほうありて、 かんせん宝冠ほうかんしょうごんりょうなり。

第二蓮華初クルトイフ者、行者生↢彼↡已リテ、蓮花初クル、所有歓楽倍セルコト↠前百千ナリ。猶如↣盲者タルガ↢明眼↡。亦↣辺鄙ノタミレルガ↢王宮↡。自レバ↢其↡、身レリ↢紫磨金↡。亦有リテ↢自然宝衣↡、鐶・釧・宝冠、荘厳无量ナリ

^ぶつこうみょう清浄しょうじょうまなこさき宿習しゅくじゅうによりてもろもろの法音ほうおんく。 しきしょうれて、 みょうならずといふことなし。 *じんくうかいしょうごんは、 まなこうんまよひ、 *てんみょう法輪ほうりんおんじょうは、 き、 *宝刹ほうせつてり。 楼殿ろうでんりんひょうしょうようし、 がん鴛鴦えんおう遠近おんごんむらがりぶ。

↢仏光明↡得↢清浄↡、因リテ↢前宿習↡聞↢衆法音↡。触↠色レテ↠声↠不トイフコト↢奇妙ナラ↡。尽虚空界之荘厳眼迷↢雲路↡、転妙法輪之音声テリ↢宝刹↡。楼殿・林池表裏照曜セリカモ・雁カリ・鴛鴦ヲシ遠近

^あるいはしゅじょうの、 *あめのごとくして十方じっぽうかいよりしょうずるを、 あるいはしょうじゅの、 恒沙ごうじゃのごとくしてしゅぶつよりきたるをる。

イハ↧衆生クシテ↡従↢十方世界↡生ズルヲイハ↧聖衆クシテ↢恒沙↡従↢无数仏土↡来ルヲ↥。

^あるいは楼台ろうだいのぼりて十方じっぽうのぞむものあり。 あるいは殿でんりてくうじゅうするものあり。 あるいはくうちゅうじゅうしてきょうじゅほうくものあり。 あるいはくうちゅうじゅうしてぜん入定にゅうじょうするものあり。 うえはやしのあひだにも、 またかくのごとし。 処々しょしょにまたかわわたながれすすぎ、 がくそうはなさんじ、 楼殿ろうでん往来おうらいして、 如来にょらい*礼讃らいさんしたてまつるものあり0858

イハ↧登リテ↢楼台↡望↢十方↡者↥。或イハ↧乗ジテ↢宮殿↡住スル↢虚空↡者1049↥。或イハ↧住シテ↢空↡誦↠経↠法者↥。或イハ↧住シテ↢空↡坐禅入定スル者↥。地上、林ニモ亦復如↠是クノ。処々復有↧渉↠河↠流、奏↠楽↠花、往↢来シテ楼殿↡、礼↢讃シタテマツル如来↡之者↥。

^かくのごときりょうてんにんしょうじゅしんしたがひて遊戯ゆげす。 いはんやぶつさつ香雲こううんうん国界こくかいじゅうまんして、 つぶさにづくべからず。

↠是クノ无量天人聖衆随ヒテ↠心遊戯。況化仏・菩薩、香雲・花雲充↢満シテ国界↡、不↠可カラ↢具↡。

^またやうやくまなじりめぐらしてはるかにもつて瞻望せんもうすれば、 弥陀みだ如来にょらい*金山王こんぜんのうのごとくして宝蓮ほうれんうえし、 ほうちゅうおうしょしたまへり。 観音かんのんせい*威儀いぎそんじゅうにして、 またほうし、 ぶつ左右さうはべらひたまふ。 りょうしょうじゅ*ぎょうにょうせり。

又漸シテマナジリ瞻望スレバ、弥陀如来クシテ↢金山王↡坐↢宝蓮花↡、処シタマヘリ↢宝中央↡。観音・勢至威儀尊重ニシテ、亦坐↢宝花↡、侍ヒタマフ↢仏左右↡。无量聖衆恭敬囲繞セリ

^またほううえ宝樹ほうじゅ行列ごうれつし、 宝樹ほうじゅもとにおのおの一仏いちぶつさつましまして、 こうみょうをもつて*厳飾ごんじきし、 *流璃るりへんしたまへること、 あんのなかにおおきなる炬火こかともせるがごとし。

又宝宝樹行列セリ宝樹シテ↢一仏二菩薩↡、光明ヲモテ厳飾、遍シタマヘルコト流璃↡、如↣夜闇セルガ↢大ナル炬火↡。

^とき観音かんのんせいぎょうじゃまえらいして、 だいこえいだして種々しゅじゅ慰喩いゆしたまふ。 ぎょうじゃ蓮台れんだいよりりてたいげて、 めんをもつてきょうらいす。 すなはちさつしたがひて、 やうやくぶつみもといたりぬ。 七宝しっぽうはしひざまずきて万徳まんどく尊容そんようまばり、 *一実いちじつどうきて*げん願海がんかいる。 かんしてなみだあめふらし、 *渇仰かつごうしてほねとおる。

観音・勢至来↢至シテ行者↡、出シテ↢大悲↡種々慰喩シタマフ。行者従↢蓮台↡下リテ五体ゲテ↠地、頭面敬礼。即ヒテ↢菩薩↡漸リヌ↢仏↡。跪キテ↢七宝ハシ↡瞻↢万徳之尊容↡、聞キテ↢一実↡入↢普賢之願海↡。歓喜シテ↠涙、渇仰シテ↠骨

^はじめて仏界ぶっかいりて未曽有みぞうなることをつ。 ぎょうじゃむかししゃにしてわづかにきょうもんみしも、 いままさしくこのる。 かんしんいくばくぞや。 おおく ¬かんぎょう¼ とうこころによる。

リテ↢仏界↡得ルコトヲムカシニモ↡。行者昔於娑婆ニシテ↢教文今正シク↢此↡。歓喜心幾クゾ乎。↢¬観経¼等

^りゅうじゅ (易行品) にいはく、

龍樹

^もしひと善根ぜんごんゑたるに、 うたがへばすなはちはなひらけず。
0859信心しんじん清浄しょうじょうなるものは、 はなひらけてすなはちぶつたてまつる」 と。

「若人種↢善根ヘバ花不↠開
信心清浄ナル花開ケテタテマツルト↠仏

二 Ⅱ ⅱ 身相神通楽

【24】^だいさん*身相しんそう神通じんずうらくといふは、 かのしゅじょうはその真金しんこんいろなり。 ないともに清浄しょうじょうにして、 つねにこうみょうありて彼此ひしたがひにらす。 さんじゅうそうそくしてしょうごんせり。 たんじょうしゅみょうにしてけんたぐいなし。 もろもろのしょうもんしゅは、 身光しんこう*一尋いちじんなり。 さつこうみょうひゃくじゅんらす。 あるいはじゅうまんじゅんといふ。 *第六だいろくてんしゅをもつてかのしゅじょうくらぶるに、 なほ*乞丐こつがいの、 帝王たいおうほとりにあらんがごとし。

第三身相神通トイフ者、彼衆生身真金ナリ。内外倶清浄ニシテ、常リテ↢光明↡彼此互。卅二相具足シテ荘厳セリ。端正殊妙ニシテ世間↠比。諸声聞衆身光1050一尋ナリ。菩薩光明↢百由旬↡。或イハ↢十万由旬↡。以↢第六↡比ブルニ↢彼衆生↡、猶如↣乞丐ラムガ↢帝王↡。

^またかのもろもろのしゅじょうは、 みな*神通じんずうして、 *みょうゆうはかりがたくして、 しんしたがひてざいなり。 もし十方じっぽうかいしきんとおもへば、 あゆみをはこばずしてすなはち十方じっぽうかいこえかんとおもへば、 たずしてすなはちく。 りょう*宿命しゅくみょう今日こんにちくところのごとく、 六道ろくどうしゅじょうしんはあきらかなるかがみかたちるところのごとし。

又彼衆生皆具セリ↢五神通妙用難シテ、随ヒテ↠心自在ナリ。若ヘバ↠見ムト↢十方界↡、不シテ↠運↠歩ヘバ↠聞カムト↢十方界↡、不シテ↠起↠座。無量宿命之事↢今日所↟聞六道衆生之心↢明ナル↟見↠像

^*央数おうしゅ仏刹ぶっせつ*せきのごとく往来おうらいし、 おほよそよこさまひゃくせん万億まんおく那由なゆくににおいて、 たたさまひゃくせん万億まんおく那由なゆこうにおいて、 一念いちねんのうちに*ざい無礙むげなり。

无央数之仏刹只尺往来↡。↢百千万億那由他↡、竪↢百千万億那由他↡、一念之中自在無礙ナリ

^いま*このさかいしゅじょうは、 さんじゅうそうにおいて、 たれか一相いっそうをもたる、 神通じんずうにおいてたれか一通いっつうをもたる。 とうにちにあらずはもつてらすことなく、 ぎょうにあらずはもつていたることなし。 いっなりといへどもそのほかをず。 いちねん0860なりといへどもそののちらず。 *燓篭はんろういまだでずして、 したがひてさわりあり。

今此衆生↢卅二相↡誰タル↢一相ヲモ↢五神通↡誰タル↢一通ヲモ↡。非ズハ↢灯日↡无↢以スコトズハ↢行歩↡无↢以ルコト↡。雖↢一紙ナリト↡不↠見↢其↡。雖↢一念ナリト↡不↠知↢其↡。燓篭未シテ↠出、随ヒテ↠事↠礙。

^しかるをかのしゅじょうは、 一人いちにんもこのとくせずといふことあることなし。 ひゃく大劫だいこうのうちにおいて相好そうごうごうをもゑず。 *じょうりょのうちにおいて神通じんずういんをもしゅせざれども、 ただこれかの*任運にんうんしょうとくほうなり。 またたのしからざらんや。 おおく ¬*双巻そうかんぎょう¼ (大経)・¬びょう等覚どうがくきょう¼ とうによる。

ルヲ衆生↠有ルコト↢一人トイフコト↟具↢此↡。不↧於↢百大劫↡而種↦相好ヲモ↥。不レドモ↧於↢四静慮↡修↦神通ヲモ只是彼任運生得之果報ナリ。不ラム↢亦楽シカラ乎。↢¬双巻経¼・¬平等覚経¼等

^りゅうじゅ (易行品) にいはく、

龍樹

^人天にんでん身相しんそうおなじくして、 なほ金山こんぜんいただきのごとし。
しょしょうしょところなり。 このゆゑにめんをもつてらいす。

「人天身相同ジクシテ猶如↢金山
レタルヒトノ所帰ナリ頭面

^それかのくにうまるることあるは、 天眼てんげんつうして、
十方じっぽうならびに無礙むげなり。 聖中しょうちゅうそん稽首けいしゅしたてまつる。

ルハ↠生ルルコト↢彼シテ↢天眼耳通
十方無礙ナリ稽↢首シタテマツル聖中

^そのくにのもろもろのしゅじょうは、 神変じんぺんおよびしんつうあり。
また宿命しゅくみょうせり。 このゆゑにみょうらいしたてまつる」 と。

衆生神変及アリ
亦具セリ↢宿命智帰命マツルト

二 Ⅱ ⅱ 五妙境界楽

【25】^だい*みょうきょうがいらくといふは、 じゅうはちがんをもつてじょうしょうごんしたまへば、 一切いっさい万物まんもつきわごくみょうなり。 るところはことごとくこれ浄妙じょうみょういろにして、 くところはだつこえにあらずといふことなし。 こうそくきょう、 またかくのごとし。

第四五妙境界トイフ者、八ヲモテ荘厳、一切万物窮↠美極妙ナリ。所↠見1051是浄妙ナリ↠聞↠不ズトイフコト↢解脱↡。香・味・触境、亦復如↠是クノ

・地相

^いはく、 かのかい琉璃るりをもつてとなして、 こんじょうそのみち0861さかへり。 *坦然たんねん平正びょうしょうにしてこうあることなく、 *恢廓かいかく曠蕩こうとうにして辺際へんざいあることなし。 *晃耀こうようみょうにしてらい清浄しょうじょうなり。 もろもろのみょうをもつてあまねくそのき、 一切いっさいてんにん、 これをみてく。 じょうそう

世界琉璃↡為↠地、金縄サカヘリ↢其↡。坦然平正ニシテ↠有ルコト↢高下↡恢廓曠蕩ニシテ↠有ルコト↢辺際↡。晃耀微妙ニシテ奇麗清浄ナリ。以↢諸妙衣↡遍ケリ↢其一切天人践ミテ↠之而行已上地相

・宮殿

^衆宝しゅぼうこく一々いちいちさかいうえに、 ひゃくおく七宝しっぽうしょじょう殿でん*楼閣ろうかくあり。 こうしんしたがひ、 こうきょうおもいおうず。 もろもろのたからじょうにはみょうをもつてうえき、 しちじゅう*らんじゅんひゃくおく*どうありて、 たま瓔珞ようらくれ、 たから*幡蓋ばんがいけたり。 殿でんのうち、 ろううえには、 もろもろの天人てんにんありて、 つねに*がくをなして、 如来にょらいようしたてまつる。 じょう殿でん

衆宝国土一々サカヒ、有↢五百億七宝所成宮殿楼閣↡。高下随↠心、広狭応↠念。諸床座妙衣ヲモテケリ↠上七重欄楯、百億花幢アリ↢珠瓔珞↡、懸ケタリ↢宝幡蓋↡。殿ウチ、楼、有リテ↢諸天人↡常伎楽↡、歌↢シタテマツル如来↡。已上宮殿

・水相

^講堂こうどうしょうじゃ殿でん楼閣ろうかくない左右さうにもろもろのよくあり。 黄金おうごんいけそこにはびゃくごんいさごあり。 びゃくごんいけそこには黄金おうごんいさごあり。 すいしょういけそこには瑠璃るりいさごあり。 瑠璃るりいけそこにはすいしょういさごあり。 さん*はく*しゃ*のうびゃくごく*こん、 またかくのごとし。 はっどくみず、 そのなかにじゅうまんし、 宝沙ほうしゃ映徹ようてつして、 ふからさずといふことなし。

講堂・精舎・宮殿・楼閣内外左右↢諸浴池↡。黄金ニハ白銀アリ。白銀ニハ黄金アリ。水精ニハ瑠璃アリ瑠璃ニハ水精アリ。珊瑚・虎魄・・馬瑙・白玉・紫金、亦復如↠是クノ。八功徳水充↢満セリ宝沙映徹シテ↢深トイフコト↟照

^はっどく」 とは、 いちには澄浄ちょうじょうには清冷しょうりょうさんにはかんにはきょうなんには潤沢にんたくろくにはあんしちにはおんかつとうりょうげんのぞき、 はちにはみをはりて、 さだめてよく諸根しょこんだいちょうようし、 種々しゅじゅしゅしょう善根ぜんごん増益ぞうやくするなり。 ¬*しょうさんじょうきょう¼ にづ。

八功徳者、一ニハ浄、二ニハ清冷、三ニハ甘美、四ニハ軽軟、五ニハ潤沢、六ニハ安和、七ニハ飲時↢飢渇等无量過患↡、八ニハリテ、定メテ長↢養諸根・四大↡、増↢益ルナリ種々殊勝善根↡。↢¬称讃浄土¼

^へん*階道かいどう衆宝しゅぼうをもつてごうじょうし、 種々しゅじゅほういけのな0862かに弥覆みふせり。 しょうれんにはしょうこうあり。 黄蓮おうれんには黄光おうこうあり。 しゃくれんびゃくれんもおのおのそのひかりあり。 ふうきたりて、 はなひかり乱転らんでんす。 一々いちいちはなのなかにおのおのさつあり。 一々いちいちひかりのなかにもろもろのぶつまします。 *らん回流えるしてうたたあひそそそそぐ。 *あんじょうとしてやうやくきて、 おそからずからず。

四辺階道衆宝ヲモテ合成セリ種々宝花弥↢覆セリ↡。青蓮ニハ↢青光↡。黄蓮ニハ↢黄光↡。赤蓮・白蓮↢其光↡。微風吹リテ、花光乱転。一々↢菩薩↡。一々↢諸化仏↡。微瀾廻流シテ相潅。安詳トシテキテ、不↠遅カラ不↠疾カラ

^そのこえみょうにして仏法ぶっぽうにあらずといふことなし。 あるいはくう無我むが、 もろもろの波羅はらみつ演説えんぜつし、 あるいはじゅうりき無畏むい*不共ふぐ法音ほうおんすいす。 あるいはだい慈悲じひこえ、 あるいはしょうにんこえあり。 その所聞しょもんしたがひてかんすることりょうなり。 清浄しょうじょうじゃくめつ真実しんじつずいじゅんし、 さつしょうもん所行しょぎょうどうずいじゅんせり。

声微妙ニシテ↠不ズトイフコト↢仏法↡。或イハ演↢説苦・空・无我・諸波羅蜜イハ流↢出十力・无畏・不共法音↡。或イハ慈悲声、或イハ1052生忍アリ。随ヒテ↢其所聞↡歓喜スルコト无量ナリ。随↢順清浄・寂滅・真実之義↡、随↢順セリ菩薩・声聞所行之道↡。

^また、 がん鴛鴦えんおうしゅうかくじゃくおう*りょうびんとうひゃっぽうしきとり*ちゅうろく*和雅わげこえいだして、 念仏ねんぶつ念法ねんぽうねん比丘びくそう讃嘆さんだんし、 *こんりきしち提分だいぶん*えんちょうす。 さんなんあることなくして、 ただねんらくこえのみあり。

又鳧・雁・鴛鴦・ 鶖カシドリ・ 鷺シラサギ・鵝・鶴ツル・孔雀・鸚鵡・伽陵頻迦等百宝色鳥、昼夜六時シテ↢和雅↡、讃↢嘆念仏・念法・念比丘僧↡、演↢暢五根・五力・七菩提分↡。無クシテ↠有ルコト↢三途苦難之名↡、但有↢自然快楽之音ノミ↡。

^かのもろもろのさつおよびしょうもんしゅほうりて洗浴せんよくするときは、 浅深せんじんおもいしたがひ、 そのしんたがはず。 *しん*蕩除とうじょして、 清明しょうみょうちょうけつなり。

菩薩及声聞衆、入リテ↢於宝池↡洗浴スル之時、浅深随↠念不↠違↢其↡。蕩↢除シテ心垢↡、清明澄潔ナリ

^洗浴せんよくしをはれば、 おのおのみづからりて、 あるいはくうちゅうにあり、 あるいはじゅにありて、 きょうこうきょうじゅするものあり、 きょうきょうくものあり、 ぜんするものあり、 *経行きょうぎょうするものあ0863り。

洗浴已訖 オハ レバ、各々自リテ、或イハ↢空↡、或イハリテ↢樹↡有↢講↠経スル↠経者↡↢受↠経↠経者↡↢坐禅スル者↡↢経行スル者↡。

^そのなかに、 いまだしゅおんざるものはすなはちしゅおんない、 いまだ阿羅あらかんざるものは阿羅あらかん、 いまだ惟越ゆいおっざるものはすなはち惟越ゆいおっ。 みなことごとくどうかんせずといふことなし。

↠得↢須陀洹↡者得↢須陀洹乃至未↠得↢阿羅漢↡者得↢阿羅漢↠得↢阿惟越致↡者得↢阿惟越致↡。皆悉↠道↠不トイフコト↢歓喜↡。

^またきよかわあり。 そこ金沙こんしゃき、 浅深せんじん寒温かんおん、 つぶさにひとこのみにかなへり。 衆人しゅにんらんして、 おなじくひんあつまる。 じょう水相すいそう

復有↢清河↡。底ケリ↢金沙浅深寒温、ツブサカナヘリ↢人コノミ↡。衆人遊覧シテジクアツマ↢河浜↡。已上水相

・樹相

^いけほとりかわきしに、 *栴檀せんだんあり。 行々ごうごうあひあたり、 葉々ようようあひげり。 こんびゃくごんえださんはなしゃあり。 一宝いっぽう七宝しっぽう、 あるいはじゅん、 あるいはぞうの、 ようしょうごん*映飾ようじきせり。

畔河旃檀樹↡。行々相当、葉々相次ゲリ。紫金之葉、白銀之枝、珊瑚之花、車之実アリ。一宝・七宝、或イハ純或イハ、枝葉花菓荘厳映飾セリ

^やわらかなるかぜとききたりてもろもろの宝樹ほうじゅくに、 *もうすこどうじてみょうやうやくつ。 かぜしたがひてさんじ、 みずまじはりてかおりをながす。 いはんやみょうおんいだして*宮商きゅうしょうあひせること、 たとへばひゃくせんじゅがくどうにともになすがごとし。 くもの、 ねん*仏法ぶっぽうそうねんず。 かのだい六天ろくてん万種まんじゅ音楽おんがくも、 この一種いっしゅおんじょうにはしかず。

カナル風時リテクニ↢諸宝樹↡、羅網微ジテ妙花ヤウヤ。随ヒテ↠風カウバリテ↠水カヲリ。況シテ↢微妙↡宮商相和セルコト、譬ヘバ↢百千種同時セル↡。聞者自然↢仏・法・僧↡。彼第六天万種音楽、不↠如↢此1053一種音声ニハ↡。

^のあひだにはなしょうじ、 はなうえこのみあり。 みなこうみょうはなちて、 して*宝蓋ほうがいとなる。 一切いっさい*ぶつがいのなかに映現ようげんす。 ない十方じっぽうごんじょうぶつんとおもへば、 宝樹ほうじゅのあひだにおいて、 みなことごとくしょうけんす。 うえしちじゅう*宝網ほうもうあり。 宝網ほうもうのあひだにひゃくおくみょう殿でんあり。 殿でんのなか0864諸天しょてんどうあり。 瓔珞ようらく光耀こうようしてざいらくす。

ゼリ↠花↠菓。皆放チテ↢光明↡化シテ↢宝蓋↡。一切仏事映↢現↡。乃至欲ヘバ↠見ムト↢十方厳浄仏土↡、於↢宝樹↡皆悉照見。樹↢七重宝網↡。宝網↢五百億妙花宮殿↡。宮殿↢諸天童子↡。瓔珞光耀シテ自在遊楽

^かくのごとく七宝しっぽうのもろもろのかいしゅうへんせり。 みょう軟草なんそうまたところしたがひてあり、 にゅうなん香潔こうけつにして、 るるものらくをなす。 じょう樹相じゅそう

↠是クノ七宝樹周↢遍セリ世界↡。名花軟草亦随ヒテ↠処柔軟・香潔ニシテルル↠楽已上樹

・虚空

^衆宝しゅぼうもうくうまんして、 もろもろのほうりょうけて、 みょうほうおんぶ。 てんみょうしき繽粉ひんぷんとしてみだち、 ほう*ごん旋転せんでんしてらいす。 とりの、 そらびてくだるがごとくして、 諸仏しょぶつさんしたてまつる。 またりょうがっありてくう懸処げんしょせり。 たざるにおのづからりて、 みなみょうほうく。 じょうくう

衆宝羅網弥↢満セリ虚空ケテ↢諸宝鈴↡宣↢妙法↡。天花妙色繽紛トシテ宝衣・厳具旋転シテ来下。如クシテ↢鳥↠空ルガ↡供↢散シタテマツル於諸仏↡。又有リテ↢無量楽器↡懸↢処セリ虚空↡。不ルニ↠鼓リテ、皆説↢妙法↡。已上虚空

^またにょみょうこう*こう*末香まっこうりょうこう*芬馥ふんぷくとして、 かい遍満へんまんせり。 もしぐことあるものは、 塵労じんろうじゅうねんおこらず。 おほよそよりくういたるまで、 殿でんじゅ一切いっさい万物まんもつは、 みなりょう雑宝ざっぽうひゃくせんじゅこうをもつて、 ともにごうじょうせり。 そのかおり、 あまねく十方じっぽうかいくんず。 さつぐものみなぶつぎょうしゅす。

復如意妙香・塗香・末香、無量香芬馥シテ、遍↢満セリ於世界↡。若グコト、塵労垢習、自然不↠起。凡↠地至ルマデ↠空、宮殿・花樹、一切万物、皆以↢無量雑宝、百千種↡而共合成セリ。其香普↢十方世界↡。菩薩者皆修↢仏↡。

^またかのくにさつかん、 もろもろのしゅじょうとう、 もしじきせんとほっするときには、 七宝しっぽうつくえねん現前げんぜんし、 七宝しっぽうはちにはたえなるあじはひ、 なかにてり。 けんあじはひにるいせず、 またてんじょうあじはひにあらず。 こうなることたぐいなくして、 *てんこころしたがふ。 いろかおりをぐに、 身心しんしんしょうけつなり。 すなはちじきしをはるにおなじくして、 *色力しきりきぞうじょうす。 おわればり、 ときいた0865ればまたげんず。

復彼菩薩・羅漢・諸衆生等、若スル↠食セムトニハ、七宝之机自然現前、七宝之鉢ナル味満テリ↠中。不↠類↢世間之味↡、亦非↢天上之味↡。香ナルコトクシテ↠比、甜アマサスサ↠意。見↠色グニ↠香、身心清潔ナリ。即ジクシテ↢食ルニ↡、色力増長。事已レバ時至レバ復現

^またかのしゅじょうは、 ぶくんとおもへば、 おもいしたがひてすなはちいたる。 ぶつ所讃しょさんのごとき*ほうおうぜるみょうぶくねんにあり。 裁縫さいほうぜんかんじょくもとめず。

復彼衆生、欲ヘバ↠得ムト↢衣服↡随ヒテ↠念。如↢仏所讃↡応ゼル↠法妙服、自然↠身。不↠求↢裁タチヌヒ・染ソメツクロヒ・浣1054スヽギアラフコト

^またこうみょうしゅうへんしてにちがつ灯燭とうそくもちゐず。 りょうなん調じょうして、 春秋しゅんじゅうとうあることなし。 ねん徳風とくふうおんりょう調適じょうちゃくし、 しゅじょうるるに、 みならくること、 たとへば比丘びくの、 *滅尽めつじん三昧ざんまいたるがごとし。

又光明周遍シテ不↠用↢日月・灯燭↡。冷暖調和シテ、无↠有ルコト↢春秋冬夏↡。自然徳風、温冷調適セリルルニ↢衆生↡皆得ルコト↢快楽ヘバ↣比丘タルガ↢滅尽三昧↡。

^毎日まいにち*じんじょうに、 みょう吹散すいさんして、 ぶつ遍満へんまんし、 *きょうこう芬烈ふんれつして、 みょうにゅうなんなること*兜羅とら綿めんのごとしあしをもつてそのうえむに、 くだることすんしたがひてあしげをはりぬれば、 またぶくすることもとのごとし。 じんじょうぎをはれば、 そのはなもっす。 ふるはなすでにもっしぬれば、 さらにあたらしきはなあめふらす。 *ちゅう晡時ふじしょちゅう後夜ごや、 またかくのごとし。

毎日晨朝吹↢散シテ妙花↡、遍↢満仏土馨香芬烈シテ微妙柔軟ナルコト↢兜羅綿↡。足ヲモテムニ↢其↡、蹈コト四寸、随ヒテ↠足リヌレバ、還復スルコトモト。過↢晨朝↡已レバ、其花没↠地。旧花既シヌレバ、更↢新シキ↡。中時・晡時、初・中・後夜、亦復如↠是クノ

^これらのあらゆるみょうきょう見聞けんもん覚者かくしゃをして身心しんしんちゃくえつせしむといへども、 しかもじょうとんじゃくぞうじょうせず、 さらにりょうしゅしょうどくす。 おほよそ八方はっぽうじょう央数おうしゅ諸仏しょぶつくにのなかに、 極楽ごくらくかいしょどくもつとも第一だいいちたり。 ひゃくいちじゅうおく諸仏しょぶつじょうごんじょうなるみょうをもつて、 みなこのなかにしょうざいせり。

此等所有微妙五境、雖↠令ムト↢見聞覚者ヲシテ身心適悦↡、而不↣増↢長有情貪著↢无量殊勝功徳↡。凡八方上下无央数諸仏、極楽世界所有功徳最↢第一↡。以↢二百一十億諸仏浄土厳浄ナル妙事↡、皆摂↢在セリ↡。

^もしかくのごときこくそうかんずるものは、 りょう億劫おくこうごくじゅう悪業あくごうのぞきて、 命終みょうじゅうのちにかならずかのくにうまる。

ズル↢如↠是クノ国土↡者、除キテ↢无量億劫極重悪業↡、命終之後↢彼↡。

^*しゅの ¬かん0866ぎょう¼・¬*弥陀みだきょう¼・¬しょうさんじょうきょう¼・¬ほうしゃくきょう¼・¬びょう等覚どうがくきょう¼・¬*ゆいきょう¼ とうこころによりて、 これをしるす。

リテ↢二種¬観経¼・¬阿弥陀経¼・¬称讃浄土経¼・¬宝積経¼・¬平等覚経¼・¬思惟経¼等↡記↠之

^しん (*浄土論) にいはく、

世親

^かのかいそうかんずるに、 三界さんがいどうしょうせり。
きょうしてくうのごとし。 広大こうだいにして辺際へんざいなし。

「観ズルニ↢彼世界勝↢過セリ三界
究竟シテ↢虚空広大ニシテ↢辺際↡

^ほう千万せんまんじゅにして、 せん弥覆みふせり。
ふうよううごかすに、 きょうさくしてひかり乱転らんでんす。

宝花千万種ニシテ弥↢覆セリ池流泉
微風動スニ↢花葉交錯シテ光乱転

^殿でん・もろもろの楼閣ろうかくにして、 十方じっぽうること無礙むげなり。
雑樹ぞうじゅ光色こうしきあり。 宝欄ほうらんあまねくにょうせり。

宮殿楼閣↢十方↡无礙ナリ
雑樹光色アリ宝欄遍囲繞セリ

^りょうたからきょうらくして、 もうくうにあまねし。
種々しゅじゅすずひびききをおこして、 みょうほうおんく。

无量絞絡セル羅網遍セリ↢虚空
種々鈴発シテ↠響↢吐妙法

^しゅじょうがんぎょうするところ、 一切いっさいみな満足まんぞくす。
ゆゑにわれかの弥陀みだぶつくにうまれんとがんず」 と。

衆生所↢願楽スル一切皆満足
我願ズト↠生レムト↢彼阿弥陀仏↡」

二 Ⅱ ⅱ 快楽無退楽

【26】^だい*らく退たいらくといふは、 いまこのしゃかい耽玩たんがんすべきことなし。 輪王りんのう (転輪聖王)くらい*七宝しっぽうひさしからず。 てんじょうらくすいはやきたる。 ないちょうりんなし。 いはんやにんをや。 がんたがひ、 らくとともなり。 0867るものは、 いまだかならずしも寿じゅあらず。 寿じゅあるものは、 いまだかならずしもまず。 あるいはきのうみて、 きょうまずし。 あるいはあしたにはうまれて、 ゆうべにはぬ。

1055快楽無退トイフ者、今此娑婆世界↠可キコト↢耽玩↡。輪王之位七宝不↠久シカラ。天上之楽五衰早。乃至有輪廻無↠期。況世人乎。事与↠願違、楽与↠苦倶ナリ。富メル↢必ズシモ寿アラ↡。寿アル↢必ズシモ↡。或イハキノフミテケフ。或イハレテユフベニハ

^ゆゑに*きょうにのたまはく、 「しゅっそくにゅうそくたず、 にゅうそくしゅっそくたず。 ただまえたのしみりてかなしみきたるのみにあらず。 また命終みょうじゅうのぞみて、 つみしたがひてつ」 と。

¬経¼言、「出息不↠待↢入息↡、入息レト↠待↢出息↡。非↢唯眼リテルノミニ↡。亦臨ミテ↢命終↡随ヒテ↠罪ツト↠苦。」

^かの西方さいほうかいは、 らくくることぐうなり。

西方世界クルコト↠楽无窮ナリ

^人天にんでん交接きょうしょうして、 ふたつながらあひることを慈悲じひしんくんじて、 たがひにいっのごとし。 ともに琉璃るりうえ経行きょうぎょうし、 おなじく栴檀せんだんはやしのあひだに遊戯ゆげす。 殿でんより殿でんいたり、 りんよりりんいたる。

人天交接シテフタツナガラ得↢相見ルコトヲ↡。慈悲薫ジテ↠心、互↢一子↡。共経↢行琉璃↡、同ジク遊↢戯栴檀↡。従↢宮殿↡至↢宮殿↡、従↢林池↡至↢林池↡。

^もしじゃくならんとほっするときには、 風浪ふうろう絃管げんかん、 おのづからみみもとへだつ。 もしんとほっするときには、 せんせんけいこく、 なほまえげんず。 こうそくほうねんしたがひてまたしかなり。

スル↠寂ナラムトニハ、風・浪・絃コトフエ、自↢耳↡。若スル↠見ムトニハ、山・川・渓・谷尚現↢眼↡。香・味・触・法、随ヒテ↠念亦然ナリ

^あるいは*ていわたりてがくをなし、 あるいはくうのぼりて神通じんずうげんず。 あるいは*ほうだいしたがひて迎送こうそうし、 あるいはてんにんしょうじゅともなひてもつてらんす。

イハリテ↢飛梯↡作↢伎楽↡、或イハノボリテ↢虚空↡現↢神通↡。或イハヒテ↢他方大士↡而迎送、或イハヒテ↢天人聖衆↡以遊覧

^あるいはほうほとりいたりて、 *しんしょうひともんす。 「なんぢるやいなや。 このところ極楽ごくらくかいづけ、 このさかいしゅ弥陀みだぶつごうしたてまつる。 いままさに帰依きえすべし」 と。

イハリテ↢宝池↡、慰↢問新生↡。汝知ルヤ。是↢極楽世界シタテマツル↢弥陀仏↡。今当シト↢帰依↡。

^あるいはおなじくほうのなかにありて、 おのおの蓮台れんだいうえして、 たがひに宿命しゅくみょう0868く。 「われもと、 そのくににありて、 *しんおこ*どうもとめしとき、 そのきょうてんたもち、 そのかいぎょうまもり、 その善法ぜんぽうをなし、 その布施ふせしゅしき」 と。 おのおのこうせしところのどくかたらひ、 つぶさにらいしょうせるところの本末ほんまつぶ。

イハジクリテ↢宝池↡、各シテ↢蓮台↡、互↢宿命↡。我本在リテ↢其↡発↠心メシ↠道之時、持↢其経典↡、護↢其戒行↡、作↢其善法↡、修シキト↢其布施↡。各ラヒ↧所↢好憙セシ↡之功徳↥、具↧所↢来生セル↡之本末↥。

^あるいはともに十方じっぽう諸仏しょぶつ*しょう方便ほうべんかたらひ、 あるいはともにさんしゅじょうばっ因縁いんねんす。 しをはればえんひてあひり、 かたらひをはればねがいしたがひてともにく。

イハラヒ↢十方諸仏利生之方便↡、或イハ↢三有衆生抜苦之因縁↡。議リテヒテ↠縁而相去ラヒリテヒテ↠楽而共1056

^あるいはまた、 七宝しっぽうやま 七宝しっぽうやま七宝しっぽうとう七宝しっぽうぼう、 ¬*じゅうおうじょうきょう¼ にでたり。のぼり、 *はっいけみ、 じゃくねんとして宴黙えんもくし、 読誦どくじゅせつす。

イハ復登↢七宝↡、七宝山、七宝塔、七宝坊、出タリ↢¬十往生経¼↡ ↢八↡、寂然トシテ宴黙、読誦・解説

^かくのごとくらくすること、 相続そうぞくしてひまなし。 しょはこれ退たいなれば、 ながさん八難はちなんおそれをまぬかれ、 寿じゅもまたりょうなれば、 つひにしょうろうびょうなし。 *しん相応そうおうすれば愛別あいべつ離苦りくなく、 げんをもつてひとしくれば怨憎おんぞう会苦えくもなし。 *びゃくごうほうなれば求不ぐふとくなく、 金剛こんごうなればじょうおんもなし。

↠是クノ遊楽スルコト相続シテヒマ。処是不退ナリタリ↢三途・八難之畏寿亦无量↢生・老・病・死之苦↡。心事相応シテ↢愛別離苦↡慈眼ヲモテシク↢怨憎会↡。白業之報ナレバ↢求不得苦↡金剛之身ナレバ↢五盛陰↡。

^ひとたび七宝しっぽうしょうごんうてなたくしぬれば、 なが三界さんがいりんうみわかれぬ。 もし*別願べつがんあれば、 ほうしょうずといへども、 これざいしょうめつにして、 業報ごうほうしょうめつにはあらず。 なほらくすらなし。 いかにいはんやもろもろのをや。

タビシヌレバ↢七宝荘厳之台↡、長レヌ↢三界苦輪之海↡。若レバ↢別願↡、雖↠生ズト↢他方↡、是自在生滅ナリ↢業報生滅ニハ↡。尚无↢不苦・不楽之名スラ↡。何耶。

^りゅうじゅ (易行品) にいはく、

龍樹

^もしひと、 かのくにうまれぬれば、 つひに悪趣あくしゅおよび、
0869しゅとにちず。 われいまみょうしてらいす」 と。

「若人生レヌレバ↢彼不↠堕↢悪趣
及与 オヨビ 阿修羅トニ我今帰命シテスト

二 Ⅱ ⅱ 引接結縁楽

【27】^だいろく*いんじょう結縁けちえんらくといふは、 ひとにあるに、 もとむるところ、 こころのごとくならず。 しずかならんとおもへども、 かぜまず。 ようせんとおもへども、 おやたず。 *こころざし肝胆かんたんくといへども、 ちからすいしゅくへず。 君臣くんしんていさいぼう一切いっさい*恩所おんじょ一切いっさい*しき、 みなまたかくのごとし。

第六引接結縁トイフ者、人之在↠世不↠如クナラ↠意。樹欲ヘドモ↠静ナラムト而風不↠停。子欲ヘドモ↠養セムト而親不↠待。志雖クト↢肝胆↡力不↠堪↢水菽↡。君臣・師弟・妻子・朋友、一切恩所、一切知識、皆亦如↠是クノ

^むなしく*あいしんつからかして、 いよいよりんごうす。 いはんやまたごううつりて、 しょうじょあひへだてぬれば、 六趣ろくしゅしょういづれのところといふことをらず。 けだものやまとり、 たれかきゅうしんわきまへん。

シクツカラカシテ↢痴愛之心↡、弥↢輪廻之業↡。況復業果推リテ、生処相隔テヌレバ、六趣・四生不↠知↢何レノトイフコトヲ↡。野獣・山禽、誰ヘム↢旧親↡。

^¬*しんかんぎょう¼ のにのたまふがごとし。

↢¬心地観経¼偈フガ↡。

^にんのためにもろもろのつみつくりて、 さんざいしてながくれども、
男女なんにょしょうにあらずして神通じんずうなければ、 りんずしてほうずべきことかたし。

「世人為↠子リテ↢諸堕↢在シテ三途↡長レドモ↠苦
男女非シテ↠聖ケレバ↢神通↡シテ↠見↢輪廻↡難↠可キコト↠報

^じょうりんして六道ろくどうしょうずること、 なほ車輪しゃりんのごとくしてじゅうなし。
あるいは父母ぶもとなり男女なんにょとなり、 世々せせ生々しょうじょうにたがひにおんあり」 と。

有情輪廻シテズルコト↢六道猶如クシテ↢車輪↡无↢始終↡
イハ↢父母↡為↢男女世々生々リト↠恩。」

^もしひと極楽ごくらくしょうじぬれば、 智慧ちえ*こうみょうにして神通じんずう*洞達どうだつし、 世々せせ生々しょうじょう恩所おんじょしきをばしんしたがひていんじょうす。 天眼てんげんをもつてしょうじょてんをもつて言音ごんおんく。 宿しゅく0870みょうをもつてそのおんおくし、 しんをもつてそのしんさとる。 *じんきょうつうをもつて*随逐ずいちく変現へんげんし、 方便ほうべんりきをもつてきょうかいどうす。

人生ジヌレバ↢極楽↡、智恵高明シテ1057通洞達、世々生々恩所・知識ヲバヒテ↠心引接。以↢天眼↡見↢生処↡、以↢天耳↡聞↢言音↡。以↢宿命智↡憶↢其↡、以↢他心智↡了↢其↡。以↢神境通↡随逐変現、以↢方便力↡教誡示

^¬*びょうどうきょう¼ (一・三意) にのたまふがごとし。 「かのしゅじょうは、 みなみづからそのぜんじゅうらいせしところのしょうり、 および八方はっぽうじょうらい現在げんざいれり。 かの諸天しょてん人民にんみんけん蠕動ねんどうたぐいの、 しんねんずるところ、 にいはんとおもふところをる。 いづれのとしいづれのこうに、 まさにこのくにうまれてさつどうをなし、 阿羅あらかんべしといふことを、 みなあらかじめこれをる」 と。

↢¬平等経¼云フガ↡。「彼衆生、皆自↣其前世ヒテ来生セルニ、及レリ↢八方上下、去・来・現在之事↡。知↢彼諸天・人民、蠉飛・蠕動之類心意所↠念ズル、口↟欲↠言ハムトレノ歳何レノ、当シトイフコトヲ↧生レテ↢此↢菩薩↡、得↦阿羅漢↥皆アラカジルト↠之。」

^また ¬*ごんぎょう¼ の*げんがんにのたまはく、

又¬花厳経¼普賢

^ねがはくは、 われ、 命終みょうじゅうせんとほっするときのぞみて、 ことごとく一切いっさいのもろもろの*しょうのぞきて、
まのあたり、 かのぶつ弥陀みだたてまつりて、 すなはち*安楽あんらくせつおうじょうすることをん。

「願クハ我臨ミテ↧欲セム↢命終セムト↡時キテ↢一切障礙
マノアタリタテマツリテ↢彼仏阿弥陀↣往↢生スルコトヲ安楽刹

^われすでにかのくにおうじょうしをはれば、 現前げんぜんにこの大願だいがんじょうじゅし、
一切いっさい円満えんまんしてことごとくあますことなく、 一切いっさいしゅじょうかい*らくせん」 と。

我既往↢生↡已リテ現前成↢就セム大願
一切円満シテシテシテ↠余スコト利↢楽セムト一切衆生界↡」

^えんすらなほしかり。 いはんや*結縁けちえんをや。 *りゅうじゅにいはく、

无縁スラ尚爾。況結縁乎。龍樹

^0871無垢むくしょうごんひかり一念いちねんおよびいちに、
あまねく諸仏しょぶつらして、 もろもろのぐんじょうやくす」 と。

「無垢荘厳一念及一時
シテ↢諸仏利↢スト群生↡」

二 Ⅱ ⅱ 聖衆倶会楽

【28】^だいしち*しょうじゅ倶会くえらくといふは、 ¬きょう¼ (小経) にのたまふがごとし。 「しゅじょうくものは、 まさにがんおこして、 かのくにうまれんとがんずべし。 所以ゆえんはいかん。 かくのごときもろもろのじょうぜんにんと、 とも一処いっしょすることをればなり」 と。

第七聖衆倶会トイフ者、如↢¬経¼云フガ↡。「衆生カム、応↢発シテ↠願↟生ムト↢彼↡。所以者何。得レバナリト↧与↢如↠是クノ上善人↡倶スルコトヲ↦一処↥。」

・普賢菩薩

^かのもろもろのさつしょうじゅとくぎょうは、 不可ふか思議しぎなり。 *げんさつのいはく、 「もししゅじょうありて、 いまだ善根ぜんごんゑざるもの、 およびしょうぜんゑたるしょうもんさつは、 なほわがみょうくことをじ。 いはんやわがんや。 もししゅじょうありてわがくことをては、 *のくだいにおいてまた退転たいてんせじ。 ないゆめのうちに、 われをくものも、 またかくのごとし」 と。 ¬ごんぎょう¼ のこころ

菩薩聖衆、徳行不可思議ナリ。普賢菩薩、「若リテ↢衆生↡未ルモノ↠種↢善根↡、及エタル↢少善↡声聞・菩薩猶尚 ナホ 不↠得↠聞クコトヲ↢我名字↡。況ムヤ↢我↡。若リテ↢衆生↡得テハ↠聞クコトヲ↢我↡、於↢阿耨菩提1058↡不↢復退転↡。乃至夢シテモ、見↢聞カム↡者亦復如シト↠是クノ。」¬花厳経¼意

^またのたまはく、

又云

^「われつねにもろもろのしゅじょうずいじゅんして、 らい一切いっさいこうつくすまで、
つねにげん広大こうだいぎょうしゅし、 *じょうだいだい円満えんまんせんと。

「我常随↢順シテ衆生於未来一切
↢普賢広大円↢満セムト無上大菩提

^げん身相しんそうくうのごとし。 *しんによりてじゅうして、 こくにはあらず。
もろもろのしゅじょうしんほっするところにしたがひて、 しんげんして一切いっさいひとしく0872す。

普賢身相↢虚空リテ↠真而住シテ↢国土ニハ
ヒテ↢諸衆生示↢現シテ普身↡等シクス↢一切

^一切いっさいせつのなかの諸仏しょぶつみもとに、 種々しゅじゅ三昧さんまいをもつて神通じんずうげんず。
一々いちいち神通じんずうはことごとく十方じっぽうこくしゅうへんして、 のこすものなし。

一切諸仏種々三昧ヲモテ↢神通
一々神通周↢遍シテ十方国土↡無↢遺者↡

^一切いっさいせつ如来にょらいみもとのごとく、 かのせつじんのなかにもことごとくまたしかなり」 と。 どうきょう

↢一切如来ニモ亦然ナリト¬経¼偈

・文殊菩薩

^*文殊もんじゅ師利しりだいしょうそんをば、 さん諸仏しょぶつもつてははとなしたまふ。
十方じっぽう如来にょらいの、 はじめてしんおこすことは、 みなこれ文殊もんじゅきょうちからなり。

「文殊師利大聖尊ヲバ三世諸仏以タマフ↠母
十方如来スコトハ↠心皆是文殊教化ナリ

^一切いっさいかいのもろもろのじょうみなき、 しんおよび光相こうそう
ならびに随類ずいるいのもろもろのげんるは、 みな仏道ぶつどうじょうずること思議しぎしがたし」 と。 ¬しんかんぎょう¼ の

一切世界有情↠名見↢身及光相
ルハ↢随類化現皆成ズルコト↢仏道↡難シト↢思議↡」
¬心地観経¼

^もしただ ˆ文殊もんじゅ師利しりのˇ みなくものは、 じゅう億劫おくこうしょうつみのぞく。 もし礼拝らいはいようするものはつねに*ぶっうまる。 もしみょうしょうすること一日いちにち七日しちにちすれば、 文殊もんじゅかならずきたりたまふ。 もし*宿障しゅくしょうあるものは、 ゆめのうちにることをて、 しょ円満えんまんす。

但聞↠名、除↢十二億劫生死之罪↡。若礼拝・供養スル↢仏家↡。若スルコト↢名字↡一日七日ルハ、文殊必リタマフ。若モノ↢宿障↡、夢↠見ルコトヲ、所求円満

^もしぎょうぞうるものは、 ひゃくせんこうのうちに悪道あくどうちず。 もししんぎょうずるものは、 すなはち文殊もんじゅたてまつることを。 もしみなじゅ読誦どくじゅ0873ることあるものは、 たとひ重障じゅうしょうあれども*阿鼻あび極悪ごくあくみょうちずして、 つねにほう清浄しょうじょうぶつうまる。 ¬*文殊もんじゅはつはんきょう¼ のこころ。 かのぎょうぞう、 ¬きょう¼ (同) にひろくがごとし。

↢形像↡者、百千劫不↠↢悪道↡。若ズル↢慈心↡者、即得↠見タテマツルコトヲ↢文殊↡。若↤受↢持読↣誦スルコト↡者、設レドモ↢重障↡不シテ↠堕↢阿鼻極悪猛火↡、常↢他方清浄仏土↡。¬文殊般涅槃経¼意。彼形像如↢¬経¼広クガ

^またひゃく千億せんおく那由なゆぶつやくしゅじょうは、 文殊もんじゅ師利しりの、 一劫いっこうのうちにおいてなせるところのやくにはおよばず。 ゆゑにもし文殊もんじゅ師利しりさつしょうするものは、 ふくはかのひゃく千億せんおく諸仏しょぶつみょうごうじゅするよりもおおし。 ¬ほうしゃくきょう¼ のこころ

又百千億那由他利益衆生、不↠及↧文殊師利↢一劫↡所↠作セル利益ニハ↥。故スル↢文殊師利菩薩↡者、福↣於受↢持スルヨリモ百千億諸仏名号↡。¬宝積経¼意

・弥勒菩薩

^*ろくさつどくりょうなり。 もしただみなくものは黒闇こくあんしょちず。 一念いちねんみなしょうするものは、 せんひゃくこうしょうつみじょきゃくす。 帰依きえすることあるものは、 *じょうどうにおいて退転たいてん¬*上生じょうしょうきょう¼ のこころ しょうさん礼拝らいはいするものは、 ひゃくせん万億まんおくそうこうしょうつみのぞく。 ¬*空蔵くうぞうきょう¼・¬*ぶつみょうきょう¼ のこころ

弥勒菩1059功徳無量ナリ。若但聞↠名不↠堕↢黒闇↡。一念スル↠名、除↢却千二百劫生死之罪↡。有↢帰依スルコト↡者、於↢無上道↡得↢不退転↡。¬上生経¼意 称讃・礼拝スル、除↢百千万億阿僧祇劫生死↡。¬虚空蔵経¼・¬仏名経¼

^りょう千万せんまんこうしゅせるところのがんぎょう
広大こうだいにして不可ふかりょうなり。 しょうようすともよくつくすことなからん」 と。

「無量千万劫↠修セル願智行
広大ニシテ不可量ナリストモムト↢能スコト↡」

^¬ごんぎょう¼ のじょうさんさつ、 つねに極楽ごくらくかいにまします。 ¬じゅうごんぎょう¼ にでたり。

¬花厳経¼偈。已上、三菩薩、常↢極楽世界↡。出デタリ↢¬四十花厳経¼↡

・地蔵菩薩

^ぞうさつは、 毎日まいにちじんじょう恒沙ごうじゃじょうりて、 法界ほうかいしゅうへんしてしゅじょうきたまふ。 しょがん*だいえたり。 ¬*じゅうりんぎょう¼ のこころ

地蔵菩薩、毎日晨朝リテ↢恒沙↡、周↢遍シテ法界↡抜キタマフ↢苦衆生↡。所有悲願超エタリ↢余大士↡。¬十輪経¼意

^かの ¬きょう¼ (十輪経)にのたまはく、

¬経¼偈

^0874一日いちにちぞうどくだいみょうもんしょうせんは、
ていこうのうちに、 しゃしょうするとくすぐれたり。

「一日セム↢地蔵功徳大名聞
レタリ↣倶低劫セムニハ↢余智者

^たとひひゃくこうのうちに、 そのどく讃説さんせつすとも、
なほつくすことあたはじ。 ゆゑにみなまさにようすべし」 と。

仮使百劫讃↢説ストモ功徳
猶尚 ナホ 不↠能↠尽スコト皆当シト↢供養↡」

・観音菩薩

^かんおんさつのいはく、 「しゅじょうありて、 たびわがしょうせんに、 きてすくはずといはば、 しょうがくらじ」 と。 ¬*みょうかいきょう¼。

観世音菩薩、「衆生有リテ↠苦三タビセムニ↢我↡、不トイハバ↢往キテ↡者不↠取↢正覚↡。」¬弘猛海慧経¼

^「もしひゃくせんてい那由なゆ諸仏しょぶつみょうごうしょうねんすることあらん。 またしばらくのときもわがみょうごうにおいて、 しんいたしてしょうねんすることあらん。 かのどくびょうどうびょうどうならん。 もろもろのわがみょうごうしょうねんすることあるものは、 一切いっさいみな退転たいてんてん」 と。 ¬*じゅういちめんぎょう¼ (意)。

「若ラム↣称↢念スルコト百千倶胝那庾多諸仏名号↡。復有ラム↧暫クノ↢我名号↡至シテ↠心称念スルコト↥。彼功徳平等平等ナラム。諸ラム↣称↢念スルコト名号↡者、一切皆得テムト↢不退転↡。」¬十一面経¼

^しゅじょうもしかば、 はなれてだつてん。
またごく遊戯ゆげして、 だいかわりてけん」 と。 ¬*しょう観音かんのんぎょう¼ の

「衆生カムハ↠名レテ↠苦テム↢解脱
亦遊↢戯シテ地獄大悲代リテケムト↠苦¬請観音経¼偈

^*ぜいふかきことうみのごとし。 こうとも思議しぎすまじ。
千億せんおくぶつつかへて、 だい清浄しょうじょうがんおこせり。

「弘誓キコト↠海トモ↠劫↢思議
ヘテ↢多千億セリ↢大清浄

^神通じんずうりきそくし、 ひろ方便ほうべんしゅして、
0875十方じっぽうのもろもろのこくに、 せつとしてげんぜずといふことなし。

具↢足神通力シテ↢智方便
十方国土↢刹トシテトイフコト↟現↠身

^念々ねんねんうたがいをなすことなかれ。 かんおん浄聖じょうしょうは、
のうやくにおいて、 よくために*依怙えことなりたまふ。

念々↠生スコト↠疑観世音浄聖
↢苦悩死厄リタマフ↢依怙

^一切いっさいどくして、 げんをもつてしゅじょうたまふ。
福聚ふくじゅうみりょうなり。 このゆゑにちょうらいしたてまつるべし」 と。 ¬法華ほけきょう¼。

シテ↢一切功徳慈眼ヲモテタマフ↢衆生
福聚海无量1060ナリシト↢頂礼シタテマツル↡」 ¬法華経¼

・勢至菩薩

^*大勢だいせいさつのいはく、 「われよくもろもろの悪趣あくしゅの、 未度みどしゅじょうするに堪任かんにんせり」 と。 ¬ほうしゃくきょう¼。

大勢至菩薩、「我能堪↣任セリト↢諸悪趣未度衆生↡。」¬宝積経¼

^智慧ちえひかりをもつて、 あまねく一切いっさいらして、 さんはなれしむるに、 じょうちからたり。 ゆゑにこのさつ大勢だいせいづく。 このさつかんずるものは、 しゅこうそうしょうつみのぞき、 胞胎ほうたいしょせずして、 つねに諸仏しょぶつ浄妙じょうみょうこくあそぶ」 と。 ¬かんぎょう¼ のこころ

「以↢智慧↡普↢一切↢三途↡得↦無上。故菩薩↢大勢至↡。観ズル↢此菩薩↡者、除↢无数劫阿僧祇生死之罪シテ↠処↢胞胎↡、常ブト↢諸仏浄妙国土↡。」¬観経¼意

^りょうへんしゅこうに、 ひろ願力がんりきしゅして弥陀みだたすけ、
つねに大衆だいしゅしょして法言ほうごんぶ。 しゅじょうくものはじょうげん

「無量无辺无数劫シテ↢願力↡助↢弥陀
シテ↢大衆↡宣↢法言衆生得↢浄眼

^神通じんずうをもつて十方じっぽうくにしゅうへんして、 あまねく一切いっさいしゅじょうまえげんず。
しゅじょうもしよくしんいたしてねんずれば、 みなことごとくみちびきて安楽あんらくいたらしむ」 と。 *りゅうじゅさん

神通モテ周↢遍シテ十方↢一切衆生
衆生若シテ↠心ズレバ皆悉キテムト↠至↢安楽↡」 龍樹

^0876たいはく、

又云

^*観音かんのんせいだい名称みょうしょうまします。 どく智慧ちえ、 ともにりょうなり。
慈悲じひそくしてけんすくひ、 あまねく一切いっさいしゅじょうかいあそびたまふ。
かくのごときすぐれたるひとは、 はなはだふことかたし。 一心いっしんぎょうしてめんをもつてらいしたてまつる」 と。

「観音・勢至大名称マシマス功徳智恵倶无量ナリ
具↢足シテ慈悲↡救↢世間ビタマフ↢一切衆生海
↠是クノレタル↠遇フコト一心恭敬シテ頭面シタテマツルト

^かくのごときいっしょうしょだいさつ、 そのかず恒沙ごうじゃのごとし。 色相しきそう端厳たんごんにして、 どくそくし、 つねに極楽ごくらくこくにましまして弥陀みだぶつにょうしたまへり。

↠是クノ一生補処大菩薩、其数如クシテ↢恒沙色相端厳ナリ功徳具足、常シテ↢極楽国↡囲↢繞シタマヘリ弥陀仏↡。

^またもろもろのしょうもんしゅ、 そのかずはかりがたし。 じん洞達どうだつし、 りきざいなり。 よくたなごころのなかに一切いっさいかいたもつ。 たとひだい目連もくれんのごときもの、 ひゃくせん万億まんおくりょうしゅにして、 そうこうに、 ことごとくともに、 かの*しょしょうもん*きょうせんに、 るところのかずはなほ一渧いったいのごとく、 そのらざるところは大海だいかいみずのごとし。

又諸声聞衆、其数難↠量。神智洞達威力自在ナリ。能於掌↢一切世界↡。設キモノ↢大目連↡、百千万億无量无数ニシテ、於↢阿僧祇↡悉計↢挍セムニ初会声聞↡、所↠知ラム数者猶如↢一渧↠不↠知ケム↢大海水↡。

^そのなかに、 *はつ泥洹ないおんしてるもの央数おうしゅなり。 あらたに阿羅あらかんるもの、 また央数おうしゅなり。 しかれどもすべて増減ぞうげんをなさず。 たとへば大海だいかいの、 *恒水ごうすいげんずといへども、 恒水ごうすいくわふといへども、 しかもぞうなくまたげんなきがごとし。 もろもろのさつしゅは、 またかみかずばいせり。

般泥洹シテ者無央数ナリ。新↢阿羅漢↡者亦無央数ナリ。而レドモ不↠為↢増減↡。譬ヘバ↧大海↠減ズト↢恒水↡、雖↠加フト↢恒水↡而↠増亦無キガ↞減。諸菩薩衆復倍セリ↢上↡。

^¬大論だいろん¼ (大智度論) にいふがごとし。 「弥陀みだぶつくにには、 0877さつそうおおしょうもんそうすくなし」 と。

↢¬大論¼云フガ↡。「弥陀1061ニハ、菩薩僧声聞僧シト。」

^かくのごときしょうじゅ、 そのくにじゅうまんせり。 たがひにはるかにあひ、 はるかにあひ瞻望せんもうし、 はるかにしょうきて、 同一どういつどうもとめて、 るいあることなし。 いかにいはんや、 また十方じっぽう恒沙ごうじゃぶつりょう塵数じんじゅさつしょうじゅ、 おのおの神通じんずうげんじて安楽あんらくこくいたりて、 尊顔そんげん*瞻仰せんごうしてぎょうようしたてまつる。

↠是クノ聖衆充↢満セリ↡。互相見、遥相瞻望キテ↢語声↡、同一ムルコト↠道↠有ルコト↢異類↡。何復十方恒沙无量塵数菩薩聖衆、各ジテ↢神通↡至リテ↢安楽国↡、瞻↢仰尊顔↡恭敬供養シタテマツル

^あるいはてんみょうもたらし、 あるいはみょうほうこうき、 あるいは*無価むげころもたてまつり、 あるいはてんがくそうし、 和雅わげおんおこして、 そんたんし、 きょうぼうちょうじゅし、 *どうせんす。

イハ↢天妙花↡、或イハ↢妙宝↡、或イハタテマツ↢無価↡、或イハ↢天妓楽シテ↢和雅↡、歌↢嘆世尊↡、聴↢受経法↡、宣↢布道化↡。

^かくのごとく往来おうらいすること、 ちゅうえず。 東方とうぼうれば、 西方さいほうよりきたり、 西方さいほうれば、 北方ほっぽうよりきたり、 北方ほっぽうれば、 南方なんぽうよりきたる。 ゆいじょうもたがひにまたかくのごとし。 かはるがはるあひ*かいすること、 なほさかりなるいちのごとし。

シテ↠是クノ往来スルコト昼夜不↠絶。東方レバ西方ヨリ西方レバ北方ヨリ北方レバ南方ヨリ四維・上下亦如↠是クノ更相カハルガハル開避スルコト猶如↢盛ナル↡。

^これらのだいは、 ひとたびそのみなくすら、 なほしょうえんにあらず。 いはんやひゃく千万せんまんごうにも、 たれかあひることをるものあらん。 しかもかのこくしゅじょうはつねに一処いっしょして、 たがひにごんまじへ、 問訊もんじんぎょうし、 親近しんごん承習じょうじゅうす。 またたのしからざらんや。 じょう、 ¬双巻そうかんぎょう¼ (大経)・¬かんぎょう¼・¬びょうどうきょう¼ とうこころ

此等大士タビコト↢其↡尚非↢少縁↡。況百千万劫ニモ↢相見ルコトヲ↡者アラン。然国土衆生シテ↢一処↡、互↢言語↡、問訊恭敬、親近承習。不ラム↢亦楽カラ↡乎。已上¬双巻経¼・¬観経¼・¬平等経¼等

^りゅうじゅ (易行品) にいはく、

龍樹

^かののもろもろのさつは、 もろもろの相好そうごうそくして、
0878みなみづからしょうごんせり。 われいまみょうしてらいす。

「彼菩薩具↢足シテ相好
皆自荘↢厳セリ我今帰命シテ

^三界さんがいごく超出ちょうしゅつして、 れんようのごとし。
しょうもんしゅりょうなり。 このゆゑに稽首けいしゅしてらいす」 と。

超↢出シテ三界↢蓮華葉
声聞衆无量ナリ稽首シテスト

^またいはく (十二礼)

^十方じっぽうよりきたるところのもろもろのぶっ神通じんずう顕現けんげんして安楽あんらくいたりて、
尊顔そんげん瞻仰せんごうしてつねにぎょうしたてまつる。 ゆゑにわれ弥陀みだぶつちょうらいす。
*ねがはくは、 もろもろのしゅじょうとともに安楽あんらくこくおうじょうせん」 と。

「十方ヨリ↠来仏子顕↢現シテ神通↡至リテ↢安楽
瞻↢仰シテ尊顔↡常恭敬シタテマツル我頂↢礼弥陀仏
クハ↢諸衆生往↢生セムト安楽国。」

二 Ⅱ ⅱ 見仏聞法楽

【29】^だいはち*見仏けんぶつ聞法もんぼうらくといふは、 いまこのしゃかいは、 ぶつほうくことはなはだかたし。

第八見仏聞法トイフ者、今此娑婆世界見↠仏クコト↠法

^師子吼ししくさつのいはく (心地観経)

師子吼菩薩

^「われらしゅひゃくせんごうに、 *四無しむりょうさんだつしゅして、
いま大聖だいしょう牟尼むにそん (釈尊)たてまつること、 なほ*めしひたるかめうきへるがごとし」 と。

「我等无数百千劫シテ↢四无量三解脱
今見タテマツルコト↢大聖牟尼尊1062シト↣盲ヒタルヘルガ↢浮木↡」

^また*儒童じゅどう全身ぜんしんててはじめてはんたり。 *じょうたいかんきてとお般若はんにゃもとめたり。 さつすらなほしかり、 いかにいはんやぼんをや。

又儒童テテ↢全身↡而シテタリ↢半偈↡。常啼キテ↢肝府↡而遠メタリ↢般若↡。菩薩スラ尚爾凡夫ヲヤ

^ぶつ (釈尊)*しゃにましますことじゅうねん、 かしこにおくいえあり。 三億さんおくぶつたてまつり、 さん0879おくはわづかにき、 その三億さんおくかず。 ざいすらなほしかり、 いかにいはんやめつをや。

仏在スコト↢舎衛↡廿五年、彼九億アリ三億タテマツリ↠仏、三億、其三億不↠見不↠聞。在世スラ尚爾、何滅後ヲヤ

^ゆゑに ¬ほっ¼ にのたまはく、

¬法花¼云

^「このもろもろのつみしゅじょうは、 悪業あくごう因縁いんねんをもつて、
そうこうぐれども、 三宝さんぼうみなをもかず」 と。

「是衆生↢悪業因縁
グレドモ↢阿僧祇↠聞↢三宝↡」

^しかるをかのくにしゅじょうは、 つねに弥陀みだぶつたてまつり、 つねにじんみょうほうく。 いはく、 ごんじょううえには提樹だいじゅあり、 ようもにき、 衆宝しゅぼうをもつてごうじょうせり。 うえにはたからもうおおひ、 えだのあひだにはたま瓔珞ようらくれたり。

ルヲ衆生タテマツリ↢弥陀↡、恒↢深妙↡。謂厳浄↢菩提樹↡枝葉モニ、衆宝ヲモテ合成セリ。樹ヘリ↢宝羅網エダレタリ↢珠瓔珞↡。

^かぜよううごかすに、 こえみょうほうべ、 そのこえ流布るふして諸仏しょぶつくにへんす。 そのくことあるものは*じん法忍ぼうにん退転たいてんじゅうし、 こんしょうてつなり。 いろかおりをぎ、 あじめ、 ひかりれ、 すがたえんずるも、 一切いっさいまたしかなり。 仏道ぶつどうじょうずるにいたるまで六根ろっこんしょうてつなり。

風動スニ↢枝葉↡、声演↢妙法声流布シテ↢諸仏↡。其↠聞クコト得↢深法忍↡、住↢不退転↡、耳根清徹。覩↢樹↡、↢樹↡、嘗↢樹↡、触↢樹↡、縁ズルモ↢樹↡、一切亦然ナリ。至ルマデ↠成ルニ↢仏道↡六根清徹

^じゅあり、 しょうごんりょうなり。 うえにはぶつましまし、 相好そうごうへんなり。 *しつたかあらわれて、 晴天せいてんみどりく、 *びゃくごうみぎめぐりて、 しゅうげつひかりてり。 しょうれんまなこたんくちびる*りょうびんこえ獅子ししそうむね仙鹿せんろくおうはぎ*千輻せんぷくりんあなうら、 かくのごとき八万はちまんせん相好そうごう紫磨しまこんしん纏絡てんらくし、 りょう塵数じんじゅこうみょうは、 億千おくせん日月にちがつあつめたるがごとし。

樹下↠座荘厳无量ナリ。座↠仏相好无辺ナリ。烏瑟高シテコマヤカナリ白毫右リテ光満テリ。青蓮之眼、丹菓之脣、迦陵頻之声、師子相之胸、仙鹿王之ハギ、千輻輪之アナウラ、如↠是クノ八万四千相好、纏↢絡セリ紫磨金無量塵数光明↠集メタルガ↢億千日月↡。

^ときありて、 七宝しっぽう講堂こうどうにま0880しましてみょうほうえんちょうしたまふに、 *梵音ぼんのんじんみょうにして、 しゅうしんえっしたまふ。 さつしょうもんてんにん大衆だいしゅ一心いっしんがっしょうして尊顔そんげん瞻仰せんごうしたてまつる。 そくに、 ねんふう七宝しっぽうじゅくに、 りょうみょうかぜしたがひてもにさんず。 一切いっさい諸天しょてん、 もろもろの音楽おんがくそうす。 このときあたりて、 *熙怡きいらくげていふべからず。

リテ↠時シテ↢七宝講堂↡演↢暢シタマフ妙法梵音深妙ニシテ、悦↢可シタマフ↡。菩薩・声聞・天・人・大衆、一心合掌シテ瞻↢仰シタテマツル尊顔↡。即時自然微風吹クニ↢七宝↡、無量妙花随ヒテ↠風モニ。一切諸天奏↢諸音楽↡。当リテ↢斯1063之時↡、熙怡快楽不↠可カラゲテ↡。

^あるいはまた広大こうだいしんげんじ、 あるいは*じょうろくはっしゃくしんげんじ、 あるいは宝樹ほうじゅもとにましまし、 あるいはほうほとりにまします。 しゅじょうもと宿命しゅくみょうにより、 どうときしんがんせしところにしたがひて、 だいしょうこころしたがひて、 ためにきょうぼうき、 それをしてかいし、 得道とくどうせしめたまふ。 かくのごとく種々しゅじゅしたがひて、 種々しゅじゅほうきたまふ。

イハ復現↢広大↡、或イハ↢丈六・八尺イハ↢宝樹イハ↢宝池↡。随ヒテ↣衆生宿命求道憙願セシ↡、大小随ヒテ↠意↢経法↡、令メタマフ↢其ヲシテ開解得道↡。如↠是クノヒテ↢種々↡、説キタマフ↢種々↡。

^また観音かんのんせいふたりさつ、 つねにぶつ左右さうほとりにありて、 坐侍ざじして*しょうろんす。 ぶつつねにこのふたりさつとともにたいして、 八方はっぽうじょう*らい現在げんざいしたまふ。

又観音・勢至フタリ菩薩常リテ↢仏左右↡、坐侍シテ政論。仏常与↢是フタリ菩薩↡共対坐シテ、議シタマフ↢八方上下、去・来・現在之事↡。

^あるときには、 東方とうぼう恒沙ごうじゃ仏国ぶっこくりょうしゅのもろもろのさつしゅ、 みなことごとくりょう寿じゅぶつみもと往詣おうげいして、 ぎょうようして、 もろもろのさつしょうもんしゅうまでにおよぼす。 南西なんざい北方ほっぽうゆいじょうもまたかくのごとし。 かのごんじょうみょうなん思議じぎなるをて、 よりてりょうしんおこして、 わがくにもまたしからんとがんず。

或時ニハ、東方恒沙仏国无量无数菩薩衆、皆悉往↢詣シテ無量寿仏↡、恭敬供養シテ、及ボス↢諸菩薩・声聞之衆マデニ↡。南・西・北方・四維・上下亦復如↠是クノ。見↢彼厳浄微妙難思議ナルヲ↡、因リテシテ↢无量↡、願↢我亦然ラムト↡。

^ときおうじて、 そんみかおうごかしてしょうし、 くち0881よりしゅひかりいだして、 あまねく十方じっぽうくにらしたまふ。 こうしんめぐること*三帀さんぞうしていただきる。 一切いっさいてん人衆にんしゅやくしてみなかんす。

ジテ↠時世尊動シテミカホ微笑、口シテ↢无数↡、遍シタマフ↢十方↡。廻光囲リテ↠身三帀シテ↠頂。一切天人衆踊躍シテ皆歓喜

^だいかんおんぶくととのへて ˆりょう寿じゅぶつにˇ 稽首けいしゅしてひたてまつる。 「ぶつ、 なんのえんありてかみたまふ。 やや、 しかなり。 ねがはくはきたまへ」 と。 とき*ぼんみこえいかずちのごとくして八音はっとんをもつてみょうこうべたまひ、 「まさにさつ*さずくべし」 と。

大士観世音整ヘテ↠服稽首シテヒタテマツル。仏、何アリテカミタマフ。唯然ナリ。願クハキタマヘト。時声、猶クシテ↠雷八音ヲモテベタマ↢妙響シト↠授↢菩薩↡。

^げてのたまはく、 「なんぢ、 あきらかにけ。 十方じっぽうよりきたれるしょう、 われことごとくかのねがいれり。 ごんじょう志求しぐし、 *けつけてまさにぶつるべし。 一切いっさいほうはなほげんきょうのごとしとかくりょうするも、 もろもろのみょうがん満足まんぞくして、 かならずかくのごときせつじょうぜん。 ほうでんようのごとしとるも、 さつどうきょうし、 もろもろのどくもとして、 けつけてまさにぶつるべし。 諸法しょほうしょう一切いっさいくう無我むがなりと通達つうだつするも、 もつぱらじょうぶつもとめて、 かならずかくのごときせつじょうぜん」 と。

ゲテナンヂ。十方ヨリレル正士、吾悉レリ↢彼↡。志↢求スルニ厳浄↡、受ケテ↠決↠作↠仏。覚↣了シテ一切猶如シト↢夢・幻・↡、満↢足シテ妙願↡、必ゼム↢如↠是クノ↡。知リテ↣法シト↢電・影↡、究↢竟菩薩↡、具シテ↢諸功徳↡、受ケテ↠決↠作↠仏。通↢達シテ諸法一切空无我ナリト↡、専ムル↢浄仏土↡、必ゼム↢如↠是クノ↡。

^いはんやまた、 すいちょう樹林じゅりんみなみょうほうぶ。 おほよそかんとほっするところをば、 ねんくことを。 かくのごとき法楽ほうらくは、 またいづれのところにかあらんや。 このなかはおおく ¬双巻そうかんぎょう¼ (大経)・¬びょうどうきょう¼ とうによれり。

復水・鳥・樹林皆演↢妙法↡。凡ヲバ↠欲スル↠聞カムト、自1064得↠聞クコトヲ。如↠是クノ法楽亦在ラム↢何レノニカ↡乎。レリ↢¬双巻経¼・¬平等経¼

^りゅうじゅさん (十二礼) にいはく、

龍樹

0882^こがねそことし、 たからまじはりたるいけしょうぜるはな善根ぜんごんじょうぜるところのみょうだいなり。
かのうえにおいて山王せんのうのごとし。 ゆゑにわれ弥陀みだぶつちょうらいしたてまつる。

「金トシゼル善根妙台
↢彼↡如↢山王我頂↢礼シタテマツル弥陀仏

^しょじょう無我むがとうなり。 また水月すいがつでんようのごとし。
しゅうのために*ほうみょうなきことをきたまふ。 ゆゑにわれ弥陀みだぶつちょうらいしたてまつる。
^ねがはくはもろもろのしゅじょうとともに安楽あんらくこくおうじょうせん」 と。

諸有无常・无我等ナリ亦如↢水月・電・影・露
↠衆キタマフ↣法コトヲ↢名字↡我頂↢礼シタテマツル弥陀仏
クハ↢諸衆生往↢生セムト安楽国↡」

二 Ⅱ ⅱ 随心供仏楽

【30】^だい*随心ずいしんぶつらくといふは、 かのしゅじょうは、 ちゅうろくに、 つねに種々しゅじゅてんちて、 りょう寿じゅぶつようしたてまつる。

第九随心供仏トイフ者、彼衆生、昼夜六時チテ↢種々天花↡、供↢養シタテマツル無量寿仏↡。

^また、 こころほう諸仏しょぶつようしたてまつらんとおもふことあれば、 すなはちすすみて*じょうして、 *あざへてぶつにまうす。 ぶつすなはちこれをゆるしたまふに、 みなおおきにかんして、 千億せんおくまんにん、 おのおのみづからひるがえび、 等輩とうはいあひひ、 ともにさんして、 八方はっぽうじょう央数おうしゅ諸仏しょぶつみもといたりて、 みなすすみてらいをなし、 ようぎょうしたてまつる。

又有ルハ↤意フコト↣供↢養シタテマツラムト他方諸仏↡、即ススミテ長跪シテアザヘテ↠手↠仏仏則ユルシタマフニ↠之皆大歓喜シテ、千億万人各、等輩相追倶共散飛シテ、到リテ↢八方上下無央数諸仏↡、皆ススミテリテ↠礼、供養恭敬シタテマツル

^かくのごとく毎日まいにちじんじょうに、 おのおの*こくをもつてもろもろのみょうれて、 ほうじゅう万億まんおくぶつようしたてまつる。 およびもろもろのぶくがく一切いっさい供具くぐこころ0883したがひて出生しゅっしょうして、 ようぎょうす。 すなはち*じきをもつて本国ほんごくかえいたりて、 飯食ぼんじき経行きょうぎょうして、 もろもろの法楽ほうらくく。

↠是クノ毎日晨朝、各↢衣裓↡盛↢衆妙花↡、供↢養シタテマツル十万億↡。及衣服・妓楽、一切供具、随ヒテ↠意出生シテ、供養恭敬。即↢食時↡還リテ本国↡、飯食経行↢諸法楽↡。

^あるいはいはく、 毎日まいにちさん諸仏しょぶつようしたてまつると。

イハ、毎日三時供↢養シタテマツルト諸仏↡。

^ぎょうじゃ、 いまゆいきょうしたがひて、 十方じっぽうぶつ種々しゅじゅどくくことをたり。 るにしたがひ、 くにしたがひて、 はるかにれんしょうず。 おのおのあひかたりていはく、 「われら、 いづれのときにか、 十方じっぽうじょうることを諸仏しょぶつさつふことをん」 と。 きょうもんむかふごとに、 *嗟嘆しゃたんせずといふことなし。

行者今従ヒテ↢遺教↡、得タリ↠聞クコトヲ↢十方仏土種々功徳↡。随↠見ルニヒテ↠聞クニ、遥↢恋慕↡。各カタリテ、我等何レノニカ得↠見ルコトヲ↢十方浄土↡、得ムト↠値フコトヲ↢諸仏・菩薩↡。毎↠対↢教文↡無↠不トイフコト↢嗟嘆↡。

^しかるを、 もしたまたま極楽ごくらくこくうまるることをば、 あるいはりきにより、 あるいは仏力ぶつりきけて、 あしたゆうべきたり、 しゅしゅかえらん。 あまねく十方じっぽう一切いっさい仏刹ぶっせついたりて、 まのあたり諸仏しょぶつつかへたてまつり、 もろもろのだいぐうし、 つねにしょうぼうき、 だいだいけん。

ルヲズルコトヲ↢極楽国↡、或イハ↢自力↡、或イハケテ↢仏力↡、朝ユフベ、須臾須臾ラム。遍リテ↢十方一切仏刹↡、マノアタリヘタテマツ↢諸仏↡、値1065↢遇大士↡、恒↢正法↡、受ケム↢大菩提↡。

^ない、 あまねく一切いっさい*塵刹じんせつりて、 もろもろのぶつをなし、 げんぎょうしゅせん。 またたのしからずや。 ¬弥陀みだきょう¼・¬びょう等覚どうがくきょう¼・¬双巻そうかんぎょう¼ (大経) のこころ

乃至普リテ↢一切塵刹↡、作↢諸仏事↡、修セム↢普賢↡。不↢亦楽カラ↡乎。¬阿弥陀経¼・¬平等覚経¼・¬双巻経¼意

^りゅうじゅ (易行品) にいはく、

龍樹

^かのだいさつは、 日々にちにちさんに、
十方じっぽうぶつようしたてまつる。 このゆゑに稽首けいしゅしてらいしたてまつる」 と。

「彼大菩薩日々於三時
供↢養シタテマツル十方稽首シテシタテマツルト

二 Ⅱ ⅱ 増進仏道楽

088431】^だいじゅう*増進ぞうしん仏道ぶつどうらくといふは、 いまこのしゃかいは、 どうしゅしてることはなはだかたし。 いかんとなれば、 くるものはつねにうれへ、 らくくるものはつねにじゃくす。 といひらくといひ、 だつおんす。 もしはしょうもしはちんりんにあらずといふことなし。

第十増進仏道トイフ者、今此娑婆世界↠道ルコト↠果云何トナレバ者受クル↠苦、受クル↠楽。苦、遠↢離解脱↡。若シハ昇若シハ沈、無↠非ズトイフコト↢輪廻↡。

^たまたま*発心ほっしんしてしゅぎょうするものありといへども、 またじょうじゅしがたし。 煩悩ぼんのううちもよおし、 悪縁あくえんほかきて、 あるいはじょうしんおこし、 あるいはさん悪道まくどうかえりぬ。 たとへば、 みずのなかのつきの、 なみしたがひてうごきやすく、 じんまえぐんの、 やいばのぞみてすなはちかえるがごとし。 ぎょちょうじがたく、 *あんじゅくすることすくなし。 かの*しん (舎利弗) とうの、 六十ろくじっこう退たいせるもののごとき、 これなり。

↠有リト↢発心シテ修行者↡亦難↢成就↡。煩悩内、悪縁外キテ、或イハ↢二乗↡、或イハリヌ↢三悪道↡。譬ヘバ↢水中之月ヒテ↠波↠動前之軍ミテ↠刃ルガ↡。魚子難↠長、菴菓少↠熟スルコト。如↢彼身子等六十劫退セル↡是也。

^ただしゃ如来にょらいりょうこうなんぎょうぎょうし、 こうみ、 とくかさねて、 さつどうもとめて、 いまだかつてそくしたまはず。 三千さんぜん大千だいせんかいかんずるに、 ない芥子けしばかりのごときも、 このさつしんみょうてたるところにあらざること、 あることなし。 しゅじょうのためのゆゑなり。 しかしてのちに、 すなはちだいどうじょうずることをたまへり。

釈迦如来於無量劫難行苦行、積↠功ネテ↠徳、求マフシ↢菩薩↡、未ムカシニモ止息シタマハ↡。観ルニ↢三千大千世界↡、乃至無↠有ルコト↧如キモ↢芥子バカリ↡、非ザル↦是菩薩テタル↢身命↡処↥。為↢衆生↡故シテタマヘリ↠成ルコトヲ↢菩提↡。

^そのしゅじょうはおのが*ぶんにあらず。 ぞうちからよわければ、 刀箭とうせん歿もっす。

衆生↢己智分↡。象ヨワクシテ、身歿↢刀箭↡。

^ゆゑにりゅうじゅさつのいはく (大智度論・意)、 「たとへばじゅうこおりに、 もし一人いちにんありていっしょう熱湯ねっとうをもつてこれにるれば、 とうこおりげんずるに0885れども、 あけいたれば、 すなはちのものよりもたかきがごとし。 ぼんのここにありて発心ほっしんして、 すくはんとするもまたかくのごとし。 貪瞋とんじんきょうじゅんおおきをもつてのゆゑに、 みづから煩悩ぼんのうおこして、 かへりて悪道あくどうしぬ」 と。

龍樹菩薩、「譬ヘバキニ里、如リテ↢一人↡以↢一升ケバ↠之、当時タレドモ↢氷減ズルニ↡、経↠夜レバ↠明クル、乃キガ↦於余ヨリモ↥。凡夫リテ↠此発心シテ、救ハムトスル↠苦亦復如↠是クノ。以テノ↢貪瞋境、順違多キヲ↡故、自シテ↢煩悩↡、返リテシヌト↢悪道↡。

^かの極楽ごくらくこくしゅじょうは、 おおくの因縁いんねんあるがゆゑに、 ひっきょうじて退たいせずして、 仏道ぶつどう増進ぞうしんす。 いちには、 ぶつがんりきつねにしょうするがゆゑに。 には、 ぶつひかりつねにらして提心だいしんぞうするがゆゑに。 さんには、 すいちょう樹林じゅりんふうりょうとうこえ、 つねに念仏ねんぶつ念法ねんぽう念僧ねんそうしんしょうぜしむるがゆゑに。 には、 もつぱらもろもろのさつを、 もつてぜんとなして、 ほか悪縁あくえんなく、 うち*じゅうわくぶくせるがゆゑに。 には、 寿じゅみょう永劫ようごうにして、 ぶつとともに斉等ざいとうにして、 仏道ぶつどうしゅじゅうするに、 しょうけんきゃくあることなきがゆゑに。

極楽国土衆生ルガ↢多クノ因縁↡故、畢1066ジテシテ↠退増↢進仏道↡。一ニハ悲願力常摂持スルガ。二ニハ光常シテスルガ↢菩提心↡故。三ニハ水・鳥・樹林・風鈴等声、常ムルガ↠生↢念仏・念法・念僧之心↡故。四ニハモハラ菩薩↢善友↡、外↢悪縁↡、内セルガ↢重↡故。五ニハ寿命永劫ニシテ、共↠仏斉等ニシテ、修↢習スルニ仏道↡、無キガ↠有ルコト↢生死之間隔↡故

^¬ごん¼ のにのたまはく、

¬花厳¼偈

^「もししゅじょうありてひとたびぶつたてまつれば、 かならずもろもろの*ごっしょうじょうじょせしむ」 と。

「若リテ↢衆生↡一タビルハ↠仏使ムト↣浄↢除業障↡」

^ひとたびたてまつるすら、 なほしかなり。 いかにいはんやつねにたてまつるをや。 この因縁いんねんによりて、 かのしゅじょうは、 あらゆる万物まんもつにおいて、 *しょしんなし。 らいしんしんくるところなし。 もろもろのしゅじょうにおいてだい心を0886ねん増進ぞうしんして、 しょうにんさとり、 きょうしてかならずいっしょうしょいたり、 ない、 すみやかに*じょうだいしょうす。

タビ、尚ナリ。何ヲヤ。由リテ↢此因縁↡彼衆生、於↢所有万物↡無↢我・我所心↡。去来進止心无↠所↠係クル。於↢諸衆生↡得↢大悲心↡、自然増進シテ、悟↢无生忍究竟シテ↢一生補処↡、乃至速↢无上菩提↡。

^しゅじょうのためのゆゑに、 八相はっそうげんし、 えんしたがひ、 ごんじょうこくにありて*みょう法輪ほうりんてんじ、 もろもろのしゅじょうす。 もろもろのしゅじょうをしてそのくにごんせしむること、 わが今日こんにち極楽ごくらくがんするがごとくす。 また十方じっぽうきてしゅじょう*いんじょうすること、 弥陀みだぶつだい本願ほんがんのごとくあらん。

↢衆生↡故示↢現八相↡、随↠縁リテ↢於厳浄国土↡転↢妙法輪↡、度↢諸衆生↡。令ムルコト↣諸衆生ヲシテ欣↢求↡、如クス↣我今日志↢願スルガ極楽↡。亦往キテ↢十方↡引↢接スルコト衆生↡、如クアラム↢弥陀仏大悲本願↡。

^かくのごときやく、 またたのしからずや。 いっ勤修ごんしゅは、 これしゅのあひだなり。 なんぞしゅててじょうもとめざらんや。 ねがはくはもろもろのぎょうじゃ、 ゆめおこたることなかれ。 おおくは ¬双巻そうかんぎょう¼ (大経)、 ならびに天台てんだい ¬*じゅう¼ とうこころによる。

↠是クノ利益不↢亦楽カラ↡乎。一世勤修是須臾ナリ。何ラム↧棄↢衆事↡求↦浄土↥哉。願クハ行者努力 ユメ ナカオコタルコト↢¬双巻経¼、并天台¬十疑¼等

^りゅうじゅ (十二礼) にいはく、

龍樹

^かのそんりょう方便ほうべんきょうには、 諸趣しょしゅあくしきとあることなし。
おうじょうしぬれば退たいせずしてだいいたる。 ゆゑにわれ、 弥陀みだぶつちょうらいしたてまつる。

「彼無量方便ニハ↠有ルコト↢諸趣悪知識
往生スルハシテ↠退↢菩提我頂↢礼シタテマツル弥陀仏

^われかのそんどくくに、 衆善しゅぜんへんなること海水かいすいのごとし。
しょぎゃく善根ぜんごん清浄しょうじょうなるものをもつて、 ねがはくはしゅじょうとともにかのくにうまれん。
^0887ねがはくはもろもろのしゅじょうとともに、 安楽あんらくこくおうじょうせん」 と。

我説クニ↢彼功徳衆善无辺ナルコト↢海水
所獲善根清浄ナルヲモテクハ↢衆生↡生ぜム↢彼
クハ↢諸衆生往↢生セムト安楽国↡」

極楽証拠

【32】^大文だいもんだいさんに、 *極楽ごくらくしょうかさば、 あり。 いち十方じっぽうたいす。 そつたいす。

1067文第三サバ極楽証拠↡者、有↠二。一↢十方↡。二↢兜率↡。

二 Ⅲ 対十方

【33】^はじめに十方じっぽうたいすとは、

セバ↢十方↡者、

^はく、 十方じっぽうじょうあり。 なんぞただ極楽ごくらくにのみしょうぜんとねがふや。

ハク、十方↢浄土↡。何↠生ぜムト↢極楽ノミ↡耶。

^こたふ。 天台てんだいだい (*智顗) のいはく (十疑論・意)、 「もろもろのきょうろん処々しょしょにただしゅじょうすすめてひとへに弥陀みだぶつねんじ、 西方さいほう極楽ごくらくかいもとめしめたまへり。 ¬りょう寿じゅきょう¼・¬かんぎょう¼・¬*おうじょうろん¼ (天親の浄土論) とうしゅじゅう余部よぶきょうろんもんに、 *慇懃おんごん*じゅして西方さいほうしょうずることをすすめたり。 ここをもつてひとへにねんず」 と。

。天台大師、「諸経論、処々唯勧メテ↢衆生↡偏↢阿弥陀仏↡、令メタマヘリ↠求↢西方極楽世界↡。¬無量寿経¼・¬観経¼・¬往生論¼等数十余部経論、慇懃指授シテメタリ↠生ゼムコトヲ↢西方↡。是ズト也。」

^だい (智顗)一切いっさいきょうろんえつしたまへること、 おほよそじゅうへんるべし、 べたまへるところ、 しんぜずはあるべからず。

大師披↢閲シタマヘルコト一切経論↡、凡十五遍。応↠知、所↠述ベタマヘル不↠可カラ↠不ハアル↠信

・ 十二経七論

^*ざい三巻さんがん ¬*じょうろん¼ に、 じゅうきょう七論しちろんけり。 いちには ¬*りょう寿じゅきょう¼、 には ¬*かんぎょう¼、 さんには ¬*しょう弥陀みだきょう¼、 には ¬*おんじょうきょう¼、 には ¬*しょうよう諸仏しょぶつどくきょう¼、 ろくには ¬*発覚ほっかくじょうしんぎょう¼、 しちには ¬*大集だいじっきょう¼、 はちには ¬*じゅうおうじょうきょう¼、 には ¬*やくきょう¼、 じゅうには ¬*般舟はんじゅ三昧ざんまいきょう¼、 じゅういちには ¬*だい弥陀みだきょう¼、 じゅうには ¬*りょう清浄しょうじょうびょう等覚どうがくきょう¼ なり。

迦才師三巻¬浄土論¼、引ケリ↢十二経七論↡。一ニハ¬無量寿経¼、二ニハ¬観経¼、三ニハ¬小阿弥陀経¼、四ニハ¬鼓音声経¼、五ニハ¬称揚諸仏功徳経¼、六ニハ¬発覚浄心経¼、七ニハ¬大集経¼、八ニハ¬十往生経¼、九ニハ¬薬師経¼、十ニハ¬般舟三昧経¼、十一ニハ¬大阿弥陀経¼、十二ニハ¬无量清浄平等覚経¼ナリ

^じょう、 ¬双巻そうかんりょう寿じゅきょう¼・¬清浄しょうじょうがくきょう¼・¬だい弥陀みだきょう¼ はどう0888ほんやくなり。

已上¬双巻无量寿経¼・¬清浄覚経¼・¬大阿弥陀経¼同本異

^いちには ¬*おうじょうろん¼、 には ¬*しんろん¼、 さんには ¬*十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼、 には一切いっさいきょうのなかの弥陀みだには ¬*宝性ほうしょうろん¼、 ろくにはりゅうじゅの ¬*じゅうらい¼ のしちには ¬*しょうだいじょうろん¼ の弥陀みだなり。 じょう*きょうこれにおなじ。

ニハ¬往生論¼、二ニハ¬起信論¼、三ニハ¬十住毘婆娑論¼、四ニハ一切経弥陀偈、五ニハ¬宝性論¼、六ニハ龍樹¬十二礼¼偈、七ニハ¬摂大乗論¼弥陀ナリ已上智憬師同↠之

^わたくしにくわへていはく、 ¬*法華ほけきょう¼ の 「*薬王やくおうぼん」、 ¬*じゅうごんぎょう¼ のげんがん、 ¬*目連もくれん所問しょもんぎょう¼・¬*三千さんぜんぶつみょうきょう¼・¬*無字むじほうきょうきょう¼・¬*千手せんじゅ陀羅尼だらにきょう¼・¬*じゅういちめんぎょう¼・¬*くうけんじゃく¼・¬*にょりん¼・¬*ずい¼・¬*そんしょう¼・¬*無垢むくじょうこう¼・¬*こうみょう¼・¬*弥陀みだ¼ とうのもろもろの*けん密教みっきょうのなかに、 もつぱら極楽ごくらくすすめたること、 しょうすべからず。 ゆゑにひとへにがんす。

ヘテ、¬法華経¼「薬王品」、¬四十花厳経¼普賢願、¬目連所問経¼・¬三千仏名経¼・¬無字宝篋経¼・¬千手陀羅尼経¼・¬十一面経¼・¬不空羂索¼・¬如意輪¼・¬随求¼・¬尊勝¼・¬無垢浄光¼・¬光明¼・¬阿弥陀¼等顕密教、専メタルコト↢極楽↡、不↠可カラ↢称計↡。故1068

 ^ふ。 ぶつののたまはく、 「諸仏しょぶつじょうじつ差別しゃべつなし」 と。 なんがゆゑぞ如来にょらいはひとへに西方さいほうさんじたまふ。

ラク、諸仏浄土シト↢差別↡。何如来ジタマフ↢西方↡。

^こたふ。 ¬*随願ずいがんおうじょうきょう¼ に、 ぶつ、 このうたがいけっしてのたまはく、 「しゃかいは、 ひととんじょくおおくして、 *信向しんこうのものはすくなく、 じゅうじゃのものはおおくしてしょうぼうしんぜず、 専一せんいつなることあたはざれば、 こころみだれてこころざしなし。 じつには差別しゃべつなけれども、 もろもろのしゅじょうをして専心せんしんにあることあらしむ。 このゆゑにかのこく讃嘆さんだんしたまふのみ。 もろもろのおうじょうにん、 ことごとくかのがんしたがひてずといふことなし」 と。

ラク¬随願往生経¼仏決シテ↢此↡言、「娑婆世界人多↢貪濁↡信向、習邪クシテ不↠信↢正法レバ↠能↢専一ニスルコト心乱レテ↠志。実ニハケレドモ↢差別↡、令↢諸衆生ヲシテ専心↟在ルコト。是讃↢嘆シタマフラク国土↡耳。諸往生人、悉ヒテ↢彼↡无シト↠不トイフコト↠獲↠果」。

^また ¬しんかんぎょう¼ にのたまはく、 「も0889ろもろの*ぶっとう、 まさにしんいたして一仏いちぶつおよびいちさつんともとむべし。 かくのごときをづけて*しゅっ法要ほうようとなす」 と。

又¬心地観経¼云、「諸仏子等応↢至シテ↠心↟見ムト↢一仏及一菩薩↡。如キヲ↠是クノケテ↢出世法要↡。」

^このゆゑに、 もつぱら一仏いちぶつくにもとめしむるなり。

メシムル↢一仏↡也。

 ^ふ。 そのしんをもつぱらにせんがために、 なんがゆゑぞなかにおいてただ極楽ごくらくをしもすすむる。

ハク↠専ニセムガ↢其↡、何↠中唯勧ムル↢極楽ヲシモ耶。

^こたふ。 たとひじょうすすむとも、 またこのなんらじ。 ぶつはかりがたし。 ただあおぎてしんずべし。 たとへば、 にんの、 きょうちてみづからづることあたはざらんに、 しきこれをすくふにいち方便ほうべんをもつてせば、 にんちからて、 いそぎてすみやかにづべし。 なんのいとまありてか、 じゅうおうじゅっけいろんぜんや。 ぎょうじゃもまたしかり。 ねんしょうずることなかれ。

ラクムトモ↢余浄土↡、亦不↠↢此↡。仏意難↠測。唯可↢仰ギテ↡。譬ヘバ痴人チテ↢火坑↡不ルガ↢自ヅルコト↡。知識救フニ↠之セム↢一方便痴人得ナバ↠力、応イソギテ↡。何ニカ縦横ゼムヤ↢余術計↡。行者亦爾。勿↠生ズルコト↢他念↡。

^¬目連もくれん所問しょもんぎょう¼ にのたまふがごとし。 「たとへば、 万川ばんせん長流ちょうりゅううかべる草木そうもくありて、 さきあとず、 あとさきず、 すべて大海だいかいあつまるがごとく、 けんもまたしかり。 ごうらくざいなることありといへども、 ことごとくしょうろうびょうまぬかるることをず。 ただぶっきょうしんぜざるによるに、 後世ごせひととなれども、 さらにはなはだしくこんぎゃくして、 千仏せんぶつこくしょうずることをることあたはず。

↢¬目連所問経¼云フガ↡。「譬ヘバ↧万川長流リテ↢浮ベル草木↡、前不↠顧↠後、後不↠顧↠前、都アツマルガ↦大海↥、世間亦爾。雖↠有リト↢豪貴・富楽・自在ナルコト↡、悉不↠得↠免ルルコトヲ↢生老病死↡。只由ルニ↠不ルニ↠信↢仏経↡、後世レドモ↠人シクシテ困劇シテ、不↠能↠得ルコト↠生ズルコトヲ↢千仏国土↡。

^このゆゑにわれく。 ªりょう寿じゅぶつくには、 きやすくりやすし。 しかるをひとしゅぎょうしておうじょうすること0890あたはずして、 かへりて*じゅうしゅ邪道じゃどうつかふº と。 われきて、 このひと*げんにんづけ、 *無耳むににんづく」 と。

我説無量寿仏↠往↠取。而ルヲ人不シテ↠能↢修行シテ往生スルコト↡、反リテツカ↢九十五種邪道↡。我説キテ↢無眼↡、名クトイヘリ↢無耳↡。」

^¬弥陀みだきょう¼ (意) にのたまはく、 「われこのるがゆゑに、 このごんく。 もししんずることあるものは、 まさにがんおこして、 かのこくうまるべし」 と。

¬阿弥陀経¼云、「我見↢是↡故、説↢是↡。若ラム↠信ズルコト1069、応シト↣発シテ↠願↢彼国土↡。」

^ぶついましめ、 慇懃おんごんなり。 ただあおぎてしんずべし。 いはんやまたえんなきにあらず。 なんぞひてこれをこばまん。

誡慇懃ナリ。唯応↢仰ギテ↡。況復非↠無キニ↢機縁↡。何ヒテ↠之

^天台てんだい (智顗) の ¬じゅう¼ (意) にいふがごとし。 「弥陀みだぶつべつだいじゅうはちがんましまして、 しゅじょう*しょういんしたまふ。 またかのぶつこうみょう、 あまねく法界ほうかい念仏ねんぶつしゅじょうらして、 *摂取せっしゅしててたまはず。 十方じっぽうかくごうしゃ諸仏しょぶつ*したべてさん千界ぜんかいおおひ、 一切いっさいしゅじょうの、 弥陀みだぶつねんじ、 ぶつだい本願ほんがんりきじょうじて、 けつじょうして極楽ごくらくかいうまるることをることを*証成しょうじょうしたまへり。

↢天台¬十疑¼云フガ↡。「阿弥陀仏別シテ↢大悲八願↡、接↢引シタマフ衆生↡。又彼光明遍シテ↢法界念仏衆生↡、摂取シテ不↠捨テタマハ。十方各恒河沙諸仏、舒ベテ↠舌↢三千界↡、証↧シタマヘリトイヘリ一切衆生↢阿弥陀仏↡、乗ジテ↢仏大悲本願力↡、決定シテルコトヲ↞生ズルコトヲ↢極楽世界↡。

^また ¬りょう寿じゅきょう¼ にのたまはく、 ª*まつ法滅ほうめつときに、 ことにこのきょうとどめて、 ひゃくねんにあらしめて、 しゅじょうしょういんして、 かのこくうまれしめんº と。 ゆゑにりぬ、 弥陀みだぶつと、 このかい極悪ごくあくしゅじょうとは、 ひとへに因縁いんねんありといふことを」 と。

又¬無量寿経¼云末後法滅之時、特メテ↢此↡百年在ラシメテ↠世、接↢引シテ衆生↡、生レシメムト↢彼国土↡。故リヌ、阿弥陀↢此世界極悪衆生↡、偏スト↢因縁↡。」

^*おん (窺基) のいはく (*西方要決)、 「末法まっぽう万年まんねんに、 きょうはことごとくめっして、 弥陀みだいっきょう*ものすることひとへにぞうせらん。 大聖だいしょう (釈尊) ことにとどめたまふこと0891ひゃくさいなり。 とき末法まっぽうることいち万年まんねんたば、 一切いっさいしょきょうはならびにしたがひて滅没めつもつせん。 しゃおんおもくして、 きょうとどめたまへることひゃくねんなり」 と。

慈恩、「末法万年余経シテ、弥陀一教スルコト↠物セラム。大聖特メタマフコト百歳ナリ。時末法↡満テテ↢一万年↡、一切諸経ハム滅没。釈迦恩重クシテ、留メタマヘルコト↠教百年ナリト。」

^また*かんぜんのいはく (群疑論)、 「¬般舟はんじゅ三昧ざんまいきょう¼ にかく、 ªばつ陀和だわさつしゃ牟尼むにぶつしょうじてまうさく、 «らいしゅじょうは、 いかんしてか十方じっぽう諸仏しょぶつたてまつることをん» と。 ぶつおしへて、 弥陀みだねんぜしめたまふに、 すなはち十方じっぽう一切いっさいぶつたてまつるº と。 このぶつ、 ことにしゃしゅじょうえんあるをもつて、 づこのぶつにおいてしんをもつぱらにしてしょうねんすれば、 三昧さんまいじょうじやすきなり」 と。

又懐感禅師、「¬般舟三昧経¼説カク、跋陀和菩薩請ジテ↢釈迦牟尼仏↡言、未来衆生、云何シテカムト↠見タテマツルコトヲ↢十方諸仏↡。仏教ヘテ、令メタマヘリジテ↢阿弥↡即十方一切↥。以↧此仏特衆生ルヲ↞縁、先↢此↡専ニシテ称念スレバ、三昧易キナリト↠成。」

^また*観音かんのんせいは、 もとはこのにしてさつぎょうしゅして、 てんじてかのくにしょうじたまへり。 *宿しゅくえんふところ、 あに*おうなからんや。

又観音・勢至、本↢是↡修シテ↢菩薩↡、転ジテジタマヘリ↢彼↡。宿縁所↠追カラム↢機応↡耶。

二 Ⅲ 対兜率

【34】^だいそつたいすとは、

第二セバ↢兜率↡者、

^はく、 *げんじょう三蔵さんぞうのいはく、 「西方さいほう道俗どうぞくならびにろくごうをなす。 おなじく欲界よくかいにしてそのぎょうじょうじやすきがためなり。 だい小乗しょうじょう、 みなこのほうゆるす。 弥陀みだじょうは、 おそらくは*ぼんけがれてしゅぎょうじょうじがたからん。

ハク、玄奘三蔵、「西方道俗並↢弥勒↡。為ナリ↢同ジク欲界1070ニシテ行易キガ↟成。大小乗師皆許↢此↡。弥陀浄土、恐クハ鄙穢ニシテ修行難カラム↠成

^*ふるきょうろんのごときは、 *しちじょうさつぶんしたがひて*報仏ほうぶつじょうると。 *新論しんろんこころによらば、 さんさつ、 はじめて報仏ほうぶつじょうることをべし。

↢旧経論七地已上菩薩随ヒテ↠分ルト↢報仏浄土↡。依ラバ↢新論↡、三地菩薩始↠得↠見ルコトヲ↢報仏浄土↡。

^あにぼんぼん、 すなはちおうじょうすることをべけんや」 と。 天竺てんじく (印0892度) すでにしかり。 いまなんぞ極楽ごくらくすすむるや。

ケムヤ↣下品凡夫即得↢往生ズルコトヲ↡。」 天竺既。今何ムル↢極楽↡耶。

^こたふ。 *ちゅうごくへんしゅう、 そのところことなりといへども、 顕密けんみつきょうもんは、 そのこれおなじ。 いまくところのごときしょう、 すでにおおし。 いかんぞぶっきょうあきらかなるもんそむきて、 天竺てんじく風聞ふうもんしたがふべけんや。

。中国・辺州、其処雖↠異ナリト、顕密教門理是同。如↢今所↟引証拠既。寧ケム↧背キテ↢仏教之明カナル↡従↦天竺之風聞↥耶。

^いかにいはんや、 おんしょうじゃじょういんには、 びょうしゃをして西にしかへて、 ぶつ (阿弥陀仏)*じょうせつおもいをなさしめんや。 つぶさには、 しもりんじゅうぎょうのごとし。 あきらかにりぬ、 ぶつひとへに極楽ごくらくすすむるにあり。 *西域さいいき風俗ふうぞく、 あにこれにそむかんや。

、祇洹精舎無常院ニハ、令↧病者ヲシテヘテ↠西↦往↢仏浄刹↡想↥。具↢下臨終行儀↡。明カニリヌ仏意↠勧ムルニ↢極楽↡。西風俗豈カム↠之耶。

^またかんぜんの ¬ぐんろん¼ には、 極楽ごくらくそつにおいてじゅうしょうれつてたり。

懐感禅師¬群疑論¼於↢極楽・兜率↡立テタリ↢十二勝劣↡。

^いちには*しゅぶつさつべつなるがゆゑに。

「一ニハ化主、仏菩薩ナルガ

^にはじょう穢土えどべつ

ニハ浄穢土別。

^さんには女人にょにん有無うむ

ニハ女人有無。

^には寿じゅみょうちょうたん

ニハ寿命長短。

^には*ない有無うむそつは、 内院ないいん退たいせず、 いん退たいあり。 西方さいほうないなし、 また退たいなし。

ニハ内外有無。兜率内院不↠退、外院↠退。西↢内外↡。亦無↠退

^ろくにはすい有無うむ

ニハ五衰有無。

^しちには相好そうごう有無うむ

ニハ相好有無。

^はちにはつう有無うむ

ニハ五通有无。

^には善心ぜんしん不起ふき

ニハ不善心起不起。

^じゅうには滅罪めつざいしょう。 いはく、 ろくみなしょうするにはせんひゃくこうつみのぞく。 弥陀みだみなしょうするにははちじゅうおくこうつみめっす。

ニハ滅罪多少。謂スルニハ↢弥勒↡除↢千二百劫↡。称スルニハ↢弥陀↡滅↢八十億劫↡。

^じゅういちにはじゅ有無うむ

十一ニハ苦受有无。

^じゅうにはじゅしょうそつ男女なんにょひざしたふところのなかにあり。 西方さいほうはなのうち、 殿でんのなかにあり。

十二ニハ受生異。兜率↢男女下、懐↡。西方↢華ウチ、殿↡。

^しょしょうれつ、 そのかくのごとしといへども、 しかもならびにぶつすすめさんじたまへ0893り。 あひ是非ぜひすることなかれ」 (意) と。 じょう、 おほよそかいしょうれつ差別しゃべつつ。

↢二処劣其義如シト↟斯クノ、然ジタマヘリ。莫レト↢相是非スルコト↡。」已上凡↢二界勝劣差別

^おん (窺基)じゅうてたり。 さきはちかんぜん (懐感)しょりゅうでず。 ゆゑにさらにしょうせず。

慈恩テタリ↢十↡。前不↠出↢感禅師所立↡。故不↢更↡。

^そのだいにいはく (西方要決・意)、 「西方さいほうは、 ぶつ来迎らいこうしたまふ。 そつはしからず」 と。 かんは 「来迎らいこうおなじ」 (群疑論・意) といふ。

第九、「西方仏来迎シタマフ。兜率↠爾。」感師1071↢「来迎ジト」↡也。

^だいじゅうにいはく (西方要決・意)、 「西方さいほうは、 きょうろん慇懃おんごんすすめたまふこときはめておおし。 そつおおからず、 また慇懃おんごんにあらず」 と。

第十、「西方経論慇懃メタマフコト。兜率非↠多カラ、亦↢慇懃ナラ↡。」

^かん (懐感) またおうじょうなんにおいて、 じゅうどうはちてたり。 はちとは (群疑論・意)

感師又於↢往生難易↡、立テタリ↢十五義、八↡。八者、

^いちには本願ほんがん。 いはく、 弥陀みだには*いんじょうがんあり。 ろくにはがんなし。 がんなきは、 みづからおよぎてみずわたるがごとし。 がんあるは、 ふねりてみずあそぶがごとし。

「一ニハ本願異。謂弥陀↢引摂願↡。弥勒↠願。無キハ↠願若↢自オヨギテルガ↟水。有ルハ↠願若↢乗ジテ↠舟而遊ブガ↟水

^にはこうみょう。 いはく、 弥陀みだぶつひかりは、 念仏ねんぶつしゅじょうらして、 摂取せっしゅしててたまはず。 ろくはしからず。 ひかりらすは、 ちゅうにちあそびのごとく、 ひかりなきは、 やみのなかに来往らいおうするにたり。

ニハ光明異。謂弥陀仏シテ↢念仏衆生↡、摂取シテ不↠捨テタマハ。弥勒不↠爾。光ヲモテスハ↢昼日之遊キハ↠光似タリ↢暗来往スルニ↡。

^さんにはしゅ。 いはく、 しゅぶつ観音かんのんせい、 つねにぎょうじゃところいたりたまふ。 また ¬しょうさんじょうきょう¼ にのたまはく、 ª十方じっぽうじゅうごうしゃ諸仏しょぶつの、 *しょうじゅするところなりº と。 また ¬じゅうおうじょうきょう¼ にのたまはく、 ªぶつじゅうさつつかはして、 つねにぎょうにんしゅせしむº と。

ニハ守護異。謂無数化仏・観音・勢至、常リタマフ↢行者↡。又¬称讃浄土経¼云、十方十兢伽沙諸仏之所ナリト↢摂受スル↡。又¬十往生経¼云、仏遣シテ↢廿五菩薩↡常守↢護セシム行人↡。

^0894そつはしからず。 まもりあるは、 おおくのひとともにあそぶに、 強賊ごうぞくめらるることをぢざるがごとし。 まもりなきは、 ひと*嶮径けんけいあそぶに、 かならず暴客ぼうかくのためにおかさるるにたり。

兜率不↠爾。有ルハ↠護↢多クノ人共ブニ、不ルガ↢強賊コトヲ↟逼。無キハ↠護タリヒトリブニ↢嶮径↡、必↢暴客↡所ルニ↞侵

^には*舒舌じょぜつ。 いはく、 十方じっぽうぶつしたべて証成しょうじょうしたまふ。 そつはしからず。

ニハ舒舌異。謂十方仏舒ベテ↠舌シタマフ。兜率不↠爾

^にはしゅしょう。 いはく、 じゅさつ山海さんかいさつ*ぜいがんおこさく、 ªもしいちしゅじょうとして、 西方さいほううまるることきざることあらんに、 われもしらば、 しょうがくらじº と。

ニハ衆聖異。謂花聚菩薩・山海慧菩薩、発サク↢弘誓願↡、若リテ一衆生トシテズルコト西方↡不ラムニ↠尽、我若レバ、不↠取↢正覚↡。

^ろくには滅罪めつざいしょう

ニハ滅罪多少。

^しちにはじゅうあく。 いはく、 ぎゃくざいつくれるものも、 また西方さいほううまるることをそつはしからず。

ニハ重悪異。謂造レル↢五逆罪↡亦得↠生ズルコトヲ↢西方↡。兜率不↠爾

^はちにはきょうせつ。 いはく、 ¬りょう寿じゅきょう¼ にのたまはく、 ªよこさま悪趣あくしゅり、 悪趣あくしゅねんぢ、 どうのぼるに窮極ぐうごくなからん。 きやすくしてひとなしº と。 そつはしからず。

ニハ教説異。謂¬無量寿経¼云、横↢五悪趣↡、悪趣自然、昇道無窮ナリケレドモ↠往而無シト↠人。兜率不↠

^じゅうどうあらん。 なほしょうじがたしとくべからず。 いはんや、 はちもんあり。 しかるをすなはちきて、 きがたしといはんや。 ふ、 もろもろの学者がくしゃおよびきょうたずねて、 その*なんもんかんがみて、 ながくそのまどひをのぞくべし」 と。 じょう略抄りゃくしょう。 ただじゅうどう、 かの ¬ろん¼ (群疑論) をるべし。

十五アラム。猶不↠可カラ↠説↢於難シト↟生。況↢八門↡。而ルヲキテハムヤ↠難シト↠往。請、諸学者尋ネテ↢理及↡、鑑ミテ↢其難易↡、可1072シト↣永↢其マドヒ↡矣。」已上略抄。但十五義、可↠見↢彼¬論¼↡

 ^はく、 げんじょうつたふるところ、 せずはあるべからず。

ハク、玄奘所↠伝フル、不↠可カラ↠不ハアル↠会

^こたふ。 西域さいいきぎょうほうくら0895ければけっしがたきも、 いまこころみにしていはく、 かのぎょうじゃおお小乗しょうじょうにあり。

ラク西行法ソラ↠決今試シテ行者、多↢小乗↡。

^*相伝そうでんにいはく、 「じゅうこくだいじょうがくし、 じゅうこくだいしょう兼学けんがくす。 じゅういっこく小乗しょうじょうがくす」 と。

相伝、「十五国↢大乗↡、十五国大小兼学。一国スト↢小乗↡。」

^そつ上生じょうしょうすることをば、 だいしょうともにゆるせり。 ほうぶつくことをば、 だいゆるしてしょうゆるさず。 かれをばともにゆるせるがゆゑに、 ならびにそつといふか。

上↢生スルコトヲバ兜率↡大小共セリ。往クコトヲバ↢他方仏土↡大シテ不↠許。彼ヲバセルガ、並↢兜率↡。

^*りゅうとうさかりにだいじょうおこす。 かの西域さいいきぞうぎょうにはどうずべからず。 いかにいはんや、 しょきょうこうりゅうはかならずしもいちならず。 就中なかんずく念仏ねんぶつおしえは、 おお末代まつだいの、 きょうどうめっしてのちじょくあくしゅじょうす。 はかりみるに、 かのときには、 天竺てんじく (印度) にいまだこうじょうならざりしか。 もししからずは、 じょうそく*基師きし、 あにべつに ¬西方さいほう要決ようけつ¼ をしるして、 じゅうしょうれつてて、 自他じたすすむべけんや。

流沙以東盛↢大乗↡。不↠可カラ↠同↢彼西雑行ニハ↡。何、諸教興隆不↢必ズシモ一時ナラ↡。就キテ念仏之教↢末代経道滅シテ濁悪衆生↡。計也ハカリミル、彼ニハ天竺↢興盛ナラ↡歟。若↠爾者、上足基師豈ケム↧別シルシテ↢¬西方要決¼↡、立テテ↢十勝劣↡勧↦自他↥耶。

 ^ふ。 ¬しんかんぎょう¼ にのたまはく、 「われいまの弟子でしをばろくす。 *りゅうのなかにだつん」 と。 あに如来にょらい (釈尊) の、 そつ勧進すすめたまふにあらずや。

。¬心地観経¼云、「我今弟子ヲバ↢弥勒↡。竜花会シメヨ↢解脱↡。」豈↣如来勧↢進 スス メタマフニ兜率耶。

^こたふ。 これまたすることなし。 たれか、 *¬上生じょうしょう¼・¬しん¼ とうりょうさんきょうをば*しゃせん。 しかも極楽ごくらくもんの、 顕密けんみつ*且千しゃせんなるにはしかず。

。此亦无↠違スルコト。誰スル↢¬上生¼・¬心地¼等両三ヲバ↡。然↠如クニハ↢極楽之文顕密且千ナル↡。

^また ¬*だいきょう¼ の第三だいさん (意) にのたまはく、 「*当来とうらいに、 ほうめっせんとほっするときに、 まさに比丘びく比丘びくありて、 わがほうのなかにおいてしゅっをはり、 ひじ0896きてともにぎょうし、 しゅよりしゅいたりて、 わがほうのなかにおいて*ぼんぎょうをなすべし。

又¬大悲経¼第三、「於↢当来↡法セム↠滅セムト、当リテ↢比丘・比丘尼↡、於↢我↡得↢出家↡已、手キテ↢児↡而共遊行、従↢酒家↡至リテ酒家↡、於↢我↡作サム↢非梵行↡。

^ただしょうはこれ沙門しゃもんなれども、 沙門しゃもんぎょうけがしてみづから沙門しゃもんしょうし、 かたち沙門しゃもんて、 まさに袈裟けさじゃくすることあるべきものは、 この*賢劫げんごうにおいて、 ろくはじめとなし、 ないさいしゃぶつみもとにして*はつはんりて、 ゆいあることなからん。

但使 タダ 是沙門ニシテ、汚↢沙門↡、自↢沙門↡、形↢沙門↡当カラム↠有↣被↢著スルコト袈裟衣↡者、於↢此賢劫↡弥勒ハジメ、乃至最後遮仏ニシテルコト↢般涅槃↡、無ケム↠有ルコト↢遺余↡。

^なにをもつてのゆゑに。 かくのごとく一切いっさいのもろもろの沙門しゃもんのなかに、 ないひとたびもぶつみなしょうし、 ひとたびもしんをなすものは、 しょどくつひに*せつならざればなり」 と。

テノ。如↠是クノ一切沙門、乃至一タビモ↢仏↡、一タビモサム↠信、所作功徳終レバナリ↢虚設↡。

^¬しんかんぎょう¼ のこころ、 またかくのごとし。 ゆゑにかの ¬きょう¼ (同) に、 「りゅう」 とのたまひて 「そつ」 とはのたまはず。

¬心地1073観経¼意、亦如↠是クノ。故¬経¼云↢竜花↡不↠云覩率トハ↡。

^いまこれをあんずるに、 しゃくそんにゅうめつよりそん (弥勒)しゅっいたるまで、 *じゅうしちていろくじゅうひゃく千歳せんざいへだてたり。 ¬*しんしゃ¼ のこころ そのあひだのりんぎゃくいくばくぞ。 なんぞ、 しゅうえんゆうべ、 すなはち*蓮胎れんたいたくすることをねがはずして、 悠々ゆうゆうたるしょうとどまりて、 りゅういたることをせんや。

今案ズルニ↠之、従↢釈尊入滅↡至ルマデ↢慈尊出世↡、隔テタリ↢五十七倶胝六十百千歳↡。¬新婆¼輪廻劇苦幾処イクバク乎。何シテ↠願↣終焉之ユフベセムコトヲ↢蓮↡而期セム↧留マリテ↢悠々タル生死↡、至ラムコトヲ於竜花会↥耶。

^いかにいはんや、 もしたまたま極楽ごくらくうまれなば、 ちゅうに、 おもいしたがひてそつ往来おうらいし、 ないりゅうのなかに、 あらたに*対揚たいようしゅとなること、 なほ富貴ふきにしてきょうかえるがごとし。 いづれのひとか、 このごんぎょうせざらんや。

レナバ↢極楽↡者、昼夜ヒテ↠念往↢来覩率宮↡、乃至竜花会ラムコト↢対↡、猶如ケム↣富貴ニシテ而帰ルガ於故郷↡。イヅレラム↣欣↢楽↡耶。

^もし別縁べつえんあるものは、 *ほうもまた0897おほよそ*ぎょうしたがふべし。 *しゅうしょうずることなかれ。

ラム↢別縁↡者余方亦佳。凡↠随↢意楽↡。勿↠生ズルコト↢異執↡。

^ゆゑにかんほっ (懐感) のいはく (群疑論)、 「そつ志求しぐするものは、 西方さいほうぎょうにんそしることなかれ。 西方さいほううまれんとがんずるものは、 そつごうそしることなかれ。 おのおの*しょうよくしたがひて、 こころまかせて修学しゅがくせよ。 あひ是非ぜひすることなかれ。 なんぞただしょうしょうまれざるのみならん。 またすなはちさん輪転りんでんしなん」 と。

感法師、「志↢求セム兜率↡者、勿↠毀ルコト↢西方行人↡。願ゼム↠生レムト↢西方↡者、莫↠毀ルコト↢兜率之業↡。各ヒテ↢性欲↡任セテ↠情修学セヨ。莫↢相是非コト↡。何但不ルノミナラム↠生↢勝処↡。亦乃輪↢転シナムト三途↡。」

正修念仏
    総明

【35】^大文だいもんだいに、 *しょうしゅ念仏ねんぶつといふは、 これにまたあり。 しんさつの ¬おうじょうろん¼ (浄土論) にいふがごとし。 「念門ねんもんしゅしてぎょうじょうじゅしぬれば、 ひっきょうじて安楽あんらくこくうまれて、 かの弥陀みだぶつたてまつることをいちには礼拝らいはいもんには讃嘆さんだんもんさんにはがんもんには観察かんざつもんにはこうもんなり」 と。

大文第四正修念仏トイフ者、此亦有↠五。如世親菩薩¬往生論¼云フガ↡。「修スルコト↢五念門セルハ、畢竟ジテ得↧生レテ↢安楽国土↡見タテマツルコトヲ↦彼阿弥陀仏↥。一ニハ礼拝門、二ニハ讃嘆門、三ニハ作願門、四ニハ観察門、五ニハ廻向門ナリト。」

^このなかに、 がんこうもんは、 もろもろのぎょうごうにおいて、 つうじてこれをもちゐるべし。

作願・廻向二門、於↢諸行業↡応↣通↡。

二 Ⅳ 別釈
      礼拝門

【36】^はじめに礼拝らいはいもんといふは、 これすなはち三業さんごう相応そうおう身業しんごうなり。 一心いっしんみょうしてたいげて、 はるかに西方さいほう弥陀みだぶつらいするなり。 しょうをばろんぜず、 ただじょうしんもちゐよ。

礼拝トイフ者、是即三業相応之身業也。一心帰命シテ五体ゲテ↠地、遥スルナリ↢西方阿弥陀仏↡。不↠論↢多少ヲバ↡、但用↢誠心↡。

^あるいは ¬観仏かんぶつ三昧ざんまいきょう¼ のもんおもふべし。 「われいま、 一仏いちぶつらいするは、 すなはち一切いっさいぶつらいするなり。 もし一仏いちぶつゆいすれば、 すな0898はち一切いっさいぶつたてまつるなり。 一々いちいちぶつみまえいちぎょうじゃありて、 接足せっそくしてらいをなすは、 みなこれおのがしんなり」 と。

イハ↠念↢¬観仏三昧経¼文1074↡。「我今礼スル↢一仏↡、即ルナリ↢一切↡。若思↢惟スレバ一仏↡、即タテマツルナリ↢一切↡。一々リテ↢一行者↡、接足シテ↠礼皆是己ナリト。」

^わたくしにいはく、 「一切いっさいぶつ」 とは、 これ弥陀みだ分身ぶんしんなり。 あるいはこれ十方じっぽう一切いっさい諸仏しょぶつなり。

、一切仏者、是弥陀分身ナリ。或イハ是十方一切諸仏ナリ

^あるいはおもふべし。

イハ↠念

^*能礼のうらい所礼しょらいしょうくうじゃくなり。 しんしんたい無二むになり。
ねがはくはしゅじょうとともにどうたいして、 *じょうこころおこして*真際しんざいせん」 と。

「能礼所礼性空寂ナリ自身他身体無二ナリ
クハ↢衆生↡体↢解シテシテ↢無上↡帰セムト↢真際↡」

^あるいは ¬しんかんぎょう¼ のろくしゅどくによるべし。 「いちにはじょうだいどくでんなり。 にはじょうだい恩徳おんどくなり。 さんにはそくそくおよびそくしゅじょうのなかのそんたり。 にはきはめてぐうしがたきこと*どんのごとし。 にはひと三千さんぜん大千だいせんかいでたまふ。 ろくにはしゅっけん*どく円満えんまんして、 一切いっさいたり。 かくのごときろくしゅどくして、 つねによく一切いっさいしゅじょうやくしたまふ」 と。

イハ↠依↢¬心地観経¼六種功徳↡。「一ニハ無上大功徳田ナリ。二ニハ無上大恩徳イマス。三ニハ無足・二足及以 オヨビ 多足衆生タリ。四ニハキコト↢値遇↡如↢優曇花↡。五ニハデタマフ↢三千大千世界↡。六ニハ世・出世間功徳円満シテ、一切タリ。具シテ↢如↠此クノ六種功徳↡、常利↢益シタマフト一切衆生↡。」

^きょうもんは、 きはめてりゃくなり。 いますべからくごんくわへて、 もつてらいほうをなさん。

。今須ヘテ↠言、以サム↢礼↡。

^いちにはおもふべし。

ニハ↠念

^ひとたび 「南無なもぶつ」 としょうするものは、 みなすでに仏道ぶつどうじょうず。
ゆゑにわれ、 じょうどくでんみょうらいしたてまつる。

タビスルモノ↢南無仏皆已↢仏道
我帰シテシタテマツル無上功徳田

^にはおもふべし。

ニハ↠念

^0899げんをもつてしゅじょうそなはすこと、 びょうどうにしていっのごとし。
ゆゑにわれ、 極大ごくだい慈悲じひみょうらいしたてまつる。

慈眼ソナハス↢衆生平等ニシテ↢一子
我帰シテシタテマツル極大慈悲母

^さんにはおもふべし。

ニハ↠念

^十方じっぽうのもろもろのだい弥陀みだそんぎょうしたてまつる。
ゆゑにわれ、 じょうりょうぞくそんみょうらいしたてまつる。

十方大士恭↢敬シタテマツル弥陀尊
我帰シテシタテマツル無上両足

^にはおもふべし。

ニハ↠念

^ひとたびぶつみなくことをることは、 どんよりもぎたり。
ゆゑにわれ、 きはめてぐうしがたきものをみょうらいしたてまつる。

タビルコトハ↠聞クコトヲ↢仏ギタリ↢於優曇花
我帰シテシタテマツル↢値遇↡者

^にはおもふべし。

ニハ↠念

^*いっひゃくていさかいには、 そんならでたまはず。
ゆゑにわれ、 希有けうだい法王ほうおうみょうらいしたてまつる。

一百倶胝ニハ二尊不↢並デタマハ
我帰シテシタテマツル希有大法王

^ろくにはおもふべし。

ニハ↠念

^仏法ぶっぽうのもろもろの徳海とくかいは、 さんおなじく一体いったいなり。
ゆゑにわれ、 えんにゅう万徳まんどくそんみょうらいしたてまつる。

仏法徳海三世同一体ナリ
我帰シテシタテマツル円融万徳

^もしひろぎょうずることをねがはば、 りゅうじゅさつの ¬じゅうらい¼ によるべし。 また善導ぜんどうしょう0900の ¬*ろく礼法らいほう¼ あり。 つぶさにいだすべからず。

ハバ↢広ルコトヲ↡者、応↠依↢龍樹菩薩¬十二礼¼↡。又有↢善導和尚六時礼法↡。不↠可カラ↢具↡。

^たとひぎょうなくとも、 ただ礼拝らいはいによりてまたおうじょうすることを。 ¬*かん空蔵くうぞうさつぶつみょうきょう¼ にのたまふがごとし。 「弥陀みだぶつしんいたしてきょうらいすれば、 さん悪道まくどうはなれて、 のちにそのくにうまるることを」 と。

クトモ↢余行↡但依リテ↢礼拝1075↡亦得↢往生スルコトヲ↡。如↢¬観虚空蔵菩薩仏名経¼云フガ↡。「阿弥陀仏シテ↠心敬礼スレバ、得ルルコトヲ↢三悪道↡、後↢其↡。」

二 Ⅳ ⅱ 讃嘆門

【37】^だい讃嘆さんだんもんといふは、 これ三業さんごう相応そうおうごうなり。 *¬十住じゅうじゅうしゃ¼ のだいさんにいふがごとし。 「弥陀みだぶつ本願ほんがん、 かくのごとし。 ªもしひと、 われをねんじ、 しょうしてみづからすれば、 すなはちひつじょうりてのくだいº と。 このゆゑにつねに憶念おくねんすべし。

第二讃嘆トイフ者、是三業相応之口業也。如↢¬十住婆¼第三フガ↡。「阿弥陀仏本願如↠是クノ。若人念↠我シテ↠名ルハ、即ルト必定シテルニ↢阿耨菩提↡。是↢憶シテ↡。

^をもつて ˆ弥陀みだぶつをˇ しょうさんせん。

↠偈称讃

^りょうこうみょうあり。 しんしん金山こんぜんのごとし。
われいましん口意くいをもつて、 がっしょう稽首けいしゅらいしたてまつる。

無量光明慧マシマシテ↢真金山
我今身口意ヲモテ合掌稽首

^十方じっぽう現在げんざいぶつ種々しゅじゅ因縁いんねんをもつて、
かのぶつどくたんじたまふ。 われいまみょうらいしたてまつる。

十方現在↢種々因縁
ジタマフ↢彼功徳我今帰命

^ぶつみあしには千輻せんぷくりんありて、 にゅうなんにしてれんいろなり。
るものみなかんす。 めんをもつて仏足ぶっそくらいしたてまつる。

千輻輪アリテ柔軟ニシテ蓮花ナリ
者皆歓喜頭面↢仏足

^けんびゃくごうひかりは、 なほ清浄しょうじょうなるつきのごとし。
0901おもて光色こうしき増益ぞうやくす。 めんをもつて仏足ぶっそくらいしたてまつる。

眉間白毫猶如クシテ↢清浄
増↢益光色頭面↢仏足↡

^かのぶつ言説ごんせつしたまふところ、 もろもろの罪根ざいこんじょす。
ごんにしてやくするところおおし。 われいま稽首けいしゅしてらいしたてまつる。

↢言説キタマフ破↢除罪根
美言シテ↠所↠益スル我今稽首シテシタテマツル

^一切いっさい賢聖衆げんじょうしゅ、 およびもろもろの人天にんでんしゅ
ことごとくみなともにみょうす。 このゆゑにわれもまたらいしたてまつる。

一切賢聖衆人天衆
皆共帰命亦礼シタテマツル

^かの八道はちどうふねじょうじて、 よくなんかいす。
みづからし、 またかれをす。 われざいしゃらいしたてまつる。

ジテ↢彼八道シテ↢難度
亦度↠彼我礼シタテマツル↢自在者

^諸仏しょぶつりょうこうに、 そのどく讃揚さんようせんに、
なほつくすことあたはず。 清浄しょうじょうひとみょうしたてまつる。

諸仏無量劫讃↢揚シタマフトモ功徳
猶尚 ナホ 不↠能↠尽スコト帰↢命マツル清浄

^われいままたかくのごとく、 りょうとくしょうさんす。
このふく因縁いんねんをもつて、 ねがはくはぶつつねにわれをねんじたまへ。

我今亦如↠是クノ称↢讃無量
↢是因縁クハ仏常ジタマヘ↠我

^このふく因縁いんねんをもつて、 るところの上妙じょうみょうとく
ねがはくはもろもろのしゅじょうたぐいも、 みなまたことごとくまさにべし」 と。

↢此因縁↠獲上妙
クハ衆生皆亦悉シト↠得」

^かの ¬ろん¼ (易行品)さんじゅうあり。 いまりゃくしてよう*しょうす。

¬論¼有↢卅二偈↡。今略シテ

^あるいはまた ¬おうじょうろん¼ (天親の浄土論)*真言しんごんきょう仏讃ぶっさん*弥陀みだ別讃べっさんあり。 これらのもん0902一遍いっぺんへんいちぎょうぎょう、 ただじょうをもつてすべし。 しょうろんぜず。 たとひぎょうなくとも、 ただ讃嘆さんだんによりて、 またがんしたがひてかならずおうじょうすることをつべし。

イハ復¬往生論¼偈、真言教仏讃、阿弥陀別讃アリ此等文、一遍・多遍、一行・多行、但1076↢至誠ヲモテス↡。不↠論↢多少↡。設クトモ↢余行↡、唯依リテ↢讃歎↡、亦応↣随ヒテ↠願↢往生スルコトヲ↡。

^¬ほっ¼ のにのたまふがごとし。

↢¬法花¼偈フガ↡。

^「あるいはかんしんをもつて、 ばいして仏徳ぶっとくじゅし、
ないいちしょうおんをもつてせるも、 みなすでに仏道ぶつどうじょうぜり」 と。

「或イハ↢歓喜歌唄シテ↢仏徳
乃至一小音ヲモテセルモ皆已リト↢仏道↡」

^一音いっとんすでにしかり。 いかにいはんや、 つねにさんぜんをや。 ぶっなほしかり。 いかにいはんやおうじょうをや。 真言しんごん讃仏さんぶつやくはなはだふかし。 けんすることあたはず。

一音既。何ゼムヲヤ。仏果尚爾。何往生ヲヤ。真言讃仏利益甚。不↠能↢顕露スルコト↡。

二 Ⅳ ⅱ 作願門

【38】^だいさんがんもんといふは、 以下いげさんもんは、 これ三業さんごう相応そうおうごうなり。

第三作願門トイフ者、以下是三業相応之意業也。

^しゃくぜん (道綽) の ¬*安楽あんらくしゅう¼ (上) にいはく、 「¬だいきょう¼ にのたまはく、 ªおほよそじょうおうじょうせんとおもはば、 かならずすべからく提心だいしんおこすをもつてみなもととなすべしº と。 いかんとなれば、 だいといふはすなはちこれじょう仏道ぶつどうなり。

禅師¬安楽集¼云、「¬大経¼云、凡ハバ↣往↢生セムト浄土↡、要シト↧発スヲモテ↢菩提心↡為↞源。云何ナルカ菩提ナラバ者、乃是無上仏道之名也。

^もししんおこしてぶつらんとほっすれば、 このしん広大こうだいにして法界ほうかいへんしゅうせり。 このしんじょうおんにしてらいさいつくす。 このしんあまねくつぶさにじょうさわりはなる。 もしよくひとたびこのしんおこせば、 無始むししょう*りんかたむく。

↢発シテ↠心ラムト↟仏、此広大ニシテ遍↢周法界↡。此長遠ニシテ↢未来際↡。此ヘタリ↢二乗↡。若タビシツレ↢此↡、傾↢無始生死↡。

^¬*じょうろん¼ にいはく、 ª0903提心だいしんおこすといふは、 まさしくこれがん仏心ぶつしんなり。 がん仏心ぶつしんとは、 すなはちこれしゅじょうしんなり。 しゅじょうしんとは、 すなはちこれしゅじょうしょうじゅしてぶつこくしょうぜしむるしんなり。 いますでにじょうしょうぜんとがんず、 ゆゑにづすべからく提心だいしんおこすべしº」 と。

¬浄土論¼云、発ストイフ↢菩提心↡者、正シク是願ズルラムトナリ。願作仏者、即是度衆生ナリ。度衆生者、即是摂↢受シテ衆生↡生ゼシムル↢有仏国土↡心ナリ。今既↠生ぜムト↢浄土↡、故シト↠発↢菩提心↡也。」

^まさにるべし、 提心だいしんは、 これじょうだい綱要こうようなり。 ゆゑにいささかさんもんをもつてそのけっちゃくせん。 ぎょうじゃしげきをいとふことなかれ。 いちには提心だいしんぎょうそうかす。 にはやくかす。 さんにはりょうけんせん。

↠知、菩提心是浄土菩提之綱要ナリ。故↢三↡決↢セム↡。行者勿↠厭フコト↠繁キヲ。一ニハ↢菩提心行相↡。二ニハ↢利益↡。ニハ料簡セム

・行相

【39】^はじめにぎょうそうとは、 そうじてこれをいはばがん仏心ぶつしんなり。 また、 *じょうだい下化げけしゅじょうしんづく

行相者、総ジテ↢之願作仏。亦名↢上求菩提・下化衆生↡。

^べっしてこれをいはば*ぜいがんなり。 これにしゅあり。 いちには*えんがんなり。 これすなはち*しゅじょうえんなり。 あるいはまた*法縁ほうえんなり。 には*えんなり。 これ*えん慈悲じひなり。

シテ↢之1077弘誓願。此↢二種↡。一ニハ縁事四弘願ナリ。是即衆生縁ナリ。或イハ復法縁慈也。二ニハ縁理四弘ナリ是無縁慈悲也。

^えんといふは、

↢縁事四弘↡者、

^いちにはしゅじょうへん誓願せいがんねんずべし、 「一切いっさいしゅじょうにことごとくぶっしょうあり。 われみな*無余むよはんらしむべし」 と。 このしんはすなはちこれ*にょうやくじょうかいなり。 またこれ恩徳おんどくしんなり。 またこれ*縁因えんいんぶっしょうなり。 応身おうじんだいいんなり。

ニハ衆生無辺誓願度。応↠念、一切衆生↢仏性↡。我皆令ムベシト↠入↢無余涅槃↡。此是饒益有情戒ナリ。亦是恩徳ナリ。亦是縁因仏性ナリ。応身菩提ナリ

^には煩悩ぼんのうへん誓願せいがんだん。 これはこれ*しょうりつかいなり。 またこれ断徳だんとくしんなり。 またこれ*しょういんぶっ0904しょうなり。 法身ほっしんだいいんなり。

ニハ煩悩無辺誓願断。此是摂律儀戒ナリ。亦是断徳ナリ。亦是正因仏性ナリ。法身菩提ナリ

^さんには法門ほうもんじん誓願せいがん。 これはこれ*しょう善法ぜんぽうかいなり。 またこれとくしんなり。 またこれ*りょういんぶっしょうなり。 報身ほうじんだいいんなり。

ニハ法門無尽誓願知。此是摂善法戒ナリ。亦是智徳ナリ。亦是了因仏性ナリ。報身菩提ナリ

^にはじょうだい誓願せいがんしょう。 これはこれぶっだいがんするなり。 いはく、 さきさんぎょうがんそくするによりて、 三身さんしん円満えんまんだい証得しょうとくして、 かえりてまたひろ一切いっさいしゅじょうするなり。

ニハ無上菩提誓願証。此是願↢求スルナリ仏果菩提↡。謂リテ↣具↢足スルニ行願↡、証↢得シテ三身円満菩提↡、還リテ亦広スルナリ↢一切衆生↡。

^えんがんとは、 一切いっさい諸法しょほうは、 本来ほんらい寂静じゃくじょうなり。 にあらずにあらず、 じょうにあらずだんにあらず、 しょうぜずめっせず、 けがれずきよからず。 *一色いっしき一香いっこうも、 ちゅうどうにあらずといふことなし。 しょうそくはん煩悩ぼんのうそくだいなり。

縁理者、一切諸法本来寂静ナリ。非↠有↠無↠常↠断不↠生不↠滅垢不ナリ。一色一香↠非ズトイフコト↢中道↡。生死即涅槃ナリ煩悩即菩提ナリ

^一々いちいち*塵労じんろうもんほんずれば、 すなはちこれ八万はちまんせんしょ波羅はらみつなり。 みょうへんじてみょうとなる、 こおりけてみずとなるがごとし。 さらにとおものにあらず。 しょよりきたるにもあらず。 ただ一念いちねんしんにあまねくみなそくせること、 *にょしゅのごとし。 たからあるにもあらず、 たからなきにもあらず。 もし 「なし」 といはばすなはちもうなり。 もし 「あり」 といはばすなはち邪見じゃけんなり。 しんをもつてるべからず。 ごんをもつてべんずべからず。

ズレバ↢一々塵労門↡、即是八万四千諸波羅蜜ナリ。無明変ジテ↠明↢融カシ↠氷ルガ↟水。更↢遠↡。不↢余処ヨリ↡。但一念皆具足↢如意珠↡。非↠有ルニモ↠宝、非↠无キニモ↠宝。若ハバ↠無シト者即妄語ナリ。若ハバ↠有リト者即邪見ナリ。不↠可カラ↢以↠心↡。不↠可カラ↢以↠言↡。

^しゅじょう、 この思議しぎばくほうのなかにおいて、 しかもそうしてばくをなし、 だつほうのなかにおいて、 しかもだつもとむ。 このゆゑにあまねく法界ほうかい一切いっさいしゅじょうにおいて、 だい慈悲じひおこし、 *ぜいおこす。 これを*じゅんほっしん0905づく。 これさいじょう提心だいしんなり。 ¬かん¼ の第一だいいちるべし。

衆生於↢此不思議・不縛↡、而シテ思想シテ↠縛↢無脱↡、而↢於脱↡。是↢法界一切衆1078↡起↢大慈悲↡、興↢四弘誓↡。是↢順理発心↡。是最上菩提心ナリ↠見↢¬止観¼第一

^また ¬*やくきょう¼ にのたまはく、 「一切いっさいほうほうにあらずとり、 一切いっさいしゅじょうしゅじょうにあらずとる。 これをさつの、 *じょう提心だいしんおこすとづく」 と。

又¬思益経¼云、「知↢一切ズト↟法、知↣一切衆生ズト↢衆生↡。是クト↣菩薩スト↢無上菩提心↡。」

^また ¬*しょうごん提心だいしんぎょう¼ にのたまはく、 「提心だいしんとは、 にあらずぞうにあらず、 もんはなれたり。 だいはすなはちこれしんなり。 しんはすなはちこれしゅじょうなり。 もしよくかくのごとくするを、 これを、 さつだいしゅすとづく。

又¬荘厳菩提心経¼云、「菩提心者非↠有↠造レタリ↢於文字↡。菩提是心ナリ。心是衆生ナリ。若↠是クノスル、是菩薩スル菩提↡。

^だい過去かこらい現在げんざいにあらず。 かくのごとく、 しんしゅじょうと、 また過去かこらい現在げんざいにあらず。 よくかくのごとくするをづけてさつとなす。

菩提↢過去・未来・現在↡。如↠是クノ衆生亦非↢過去・未来・現在↡。能↠是クノスルヲケテ↢菩薩↡。

^しかもこのなかにおいて、 じつ*所得しょとくなし。 所得しょとくなきをもつてのゆゑに。 もし一切いっさいほうにおいて所得しょとくなくは、 これをだいづく。 *ぎょうしゅじょうのためのゆゑに、 だいありとく。

↡実↢所得↡。以テノ↠無キヲ↢所得↡故。若↢一切↡無↢所得↡、是↠得↢菩↡。為↢始行衆生↡故↠有リト↢菩提↡。

^しかもこのなかにおいて、 またしんもあることなく、 また造心ぞうしんのものもなし。 まただいもあることなく、 またぞうだいのものもなし。 またしゅじょうもあることなく、 またぞうしゅじょうのものもなし」 と。 乃至云々

↢是↡亦無↠有ルコト↠心亦無↢造心↡。亦無↠有ルコト↢菩提亦無↢造菩提↡。亦無↠有ルコト↢衆生亦無シト↢造衆生↡。」 乃至云々

^この*におのおのあり。

四弘↢二義↡。

^いちにはいはく、 はじめのがんしゅじょう*じゅうたいく。 のちがんしゅじょう*どうめつたいらくあたふ。

、初↢衆生苦・集二諦↡。後↢衆生道・滅二諦↡。

^にはいはく、 はじめのいちやくす。 のちさんやくす。 いはく、 しゅ0906じょうたいき、 しゅじょうたいらくあたふることは、 そうじてはじめのがんのなかにあり。 このがんきょう円満えんまんせんとおもふがために、 さらにしんやくしてのちさんがんおこす。

、初↠他。後↠自。謂↢衆生二諦↡、与フルコトハ↢衆生二諦↡、総ジテ↢初↡。為↠欲フガ↤究↢竟円↣満セムト↡、更シテ↢自身↡発↢後↡。

^¬だい般若はんにゃきょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「じょうせんがためにだいだいもとむ。 ゆゑにさつづく。 しかもじゃくせず。 ゆゑに*摩訶まかさつづく」 と。

↢¬大般若経¼云フガ↡。「為↠利セムガ↢有情↡求メム↢大菩提↡。故↢菩薩↡。而不↢依著↡。故クト↢摩訶薩↡。」

^またさきさんはこれいんにして、 これべつなり。 だいはこれにして、 これそうなり。

又前是因ナリ、是別ナリ。第四是果ナリ、是総ナリ

^おわりてのちは、 いふべし、

四弘已後↠云

^*自他じた法界ほうかいどうやく しょう極楽ごくらくじょう仏道ぶつどう」 と。

自他法界同利益共生極楽成仏道

^しんのなかにおもふべし、 「われとしゅじょうと、 ともに極楽ごくらくうまれて、 さき*がん円満えんまんきょうせん」 と。

↠念、我1079↢衆生↡共レテ↢極楽↡、円↢満究↣竟セムト四弘願↡。

^もし別願べつがんあるものは、 まえにこれをとなへよ。

ラム↢別願↡者四弘ヘヨ↠之

^もししんじょうなるは、 しょうどういんにあらず。 もししんかぎることあるは、 だいだいにあらず。 もしじょういたすことなくは、 そのちからこわからず。 このゆゑに、 かならず清浄しょうじょうにして深広じんこうなるまことしんもちゐよ。 しょうみょうとうのためにせざれ。 しかも仏眼ぶつげんらすところの*じん法界ほうかい一切いっさいしゅじょう一切いっさい煩悩ぼんのう一切いっさい法門ほうもん一切いっさい仏徳ぶっとくにおいて、 このしゅがんぎょうとをおこせ。

心不浄ナルハ↢正道↡。若ルハ↠限ルコト↢大菩提↡。若↠至スコト↠誠力不↠コハカラ。是清浄ニシテ深広ニシテ、不シテ↠為ニセ↢勝他・名利等↢仏眼無尽法界一切衆生、一切煩悩、一切法門、一切仏徳↡発四種之願也。

 ^ふ。 なんのほうのなかにおいてか、 じょうどうもとむる。

。於テカ↢何↡求ムル↢無上道↡。

^こたふ。 これに*どん0907しゅ差別しゃべつあり。

。此↢利・鈍差別↡。

^¬大論だいろん¼ (大智度論) にいふがごとし。 「おうじゃくのなかにこんしょうあり、 白石びゃくじゃくのなかにごんしょうあるがごとく、 かくのごとく一切いっさいけんほうのなかに、 みなはんしょうあり。 諸仏しょぶつげんじょうは、 智慧ちえ方便ほうべんかいぜんじょうをもつて引導いんどうして、 このはんほっしょうしめたまふ。

↢¬大論¼云フガ↡。「如↧黄石↢金性↡、白石ルガ↦銀性↥、如↠是クノ一切世間皆有↢涅槃性↡。諸仏・賢聖、以↢智恵・方便・持戒・禅定↡引導シテ、令メタマフ↠得↢是涅槃法性↡。

^こんのものは、 すなはちこの諸法しょほうはみなこれほっしょうなりとること、 たとへば、 神通じんずうにんの、 よくしゃくへんじてみなこんとなさしむるがごとし。 鈍根どんこんのものは、 方便ほうべん分別ふんべつしてこれをもとめて、 すなはちほっしょう。 たとへば、 おおきにいしして、 しかしてのちこんるがごとし」 と。

利根、即ルコト↢是諸法皆是法性ナリト↡、譬ヘバ↧神通ジテ↢瓦石↡皆使ムルガ↞為↠金。鈍根、方便・分別シテメテ↠之、乃得↢法性↡。譬ヘバシト↧大↢鼓シテ↡然シテルガ↞金。」

^またいはく (大智度論)、 「ぎょう頭陀ずだし、 *しょちゅう後夜ごや勤心ごんしん観禅かんぜんして、 くるしくしてどうるはしょうもんきょうなり。 諸法しょほうそうばく無解むげなりとかんじて、 しん清浄しょうじょうなることをるはさつきょうなり。 文殊もんじゅ師利しり*本縁ほんえんのごとし」 と。

又云、「苦行・頭陀、初・中・後夜懃心観禅シテネンゴロシテシテルハ↠道声聞教也。観ジテ↢諸法無縛無解ナリト↡、心得ルハ↢清浄ナルコトヲ↡菩薩教也。如シト↢文殊師利本縁↡。」

^すなはち、 ¬*ぎょうきょう¼ のこんさつきていはく (大智度論)

キテ↢¬無行経¼喜根菩薩↡云

^*婬欲いんよくはすなはちこれどうなり。 *もまたしかなり。
かくのごときさんのなかに、 りょう諸仏しょぶつどうあり。

「婬欲是道ナリ恚痴復然ナリ
↠此クノ三事無量諸仏アリ

^もしひとありて、 いんとおよびどうとを分別ふんべつするは、
このひと仏道ぶつどうること、 たとへばてんとのごとし」 と。

リテ↠人分↢別スルハ婬怒痴トヲ
ルコト↢仏道ヘバシト↢天↟地」

^0908くのごとくしちじゅうあり。

↠是クノ↢七十余偈↡。

^また*同論どうろんにいはく、 「一切いっさいほう*不可ふかとくなる、 これを仏道ぶつどうづく。 すなはちこれ諸法しょほう実相じっそうなり。 この不可ふかとくもまた不可ふかとくなり」 と。

又同、「一切不可得ナル、是↢仏道↡。即1080諸法実相ナリ。此不可得亦不可得ナリト。」

^またしょうさつぶつにまうしてまうさく (涅槃経)

又迦葉菩薩白シテ↠仏

^一切いっさい諸法しょほうのなかに、 ことごとく安楽あんらくしょうあり。
ただねがはくはだいそん、 わがために分別ふんべつしてきたまへ」 と。

「一切諸法↢安楽性↡
クハ大世尊↠我分別シテキタマヘト

^また ¬般若はんにゃきょう¼ にのたまはく、 「一切いっさいじょうはみな如来にょらいぞうなり。 げんさつ*たいへんせるがゆゑに」 と。

又¬般若経¼云、「一切有皆如来蔵ナリ。普賢菩薩自体遍セルガニト。」

^¬*ほっきょう¼ にのたまはく、

¬法句経¼云

^諸仏しょぶつ貪瞋とんじんによりて、 どうじょうしょしたまふ。
塵労じんろう諸仏しょぶつたねなり。 もとよりこのかた所動しょどうなし。

「諸仏リテ↢貪瞋シテシタマフ↢於道場
塵労諸仏ナリヨリ↢所動↡

^がいおよびよくを、 諸仏しょぶつ*しゅしょうとなす。
つねにこれをもつてしょうごんせり。 もとよりこのかた所動しょどうなし。

五蓋及五欲↢諸仏種性
↠是荘厳セリヨリ↢所動↡

^諸法しょほうはもとよりこのかた、 もなくまたもなし。
是非ぜひしょうじゃくめつせり。 もとよりこのかた所動しょどうなし」 と。

諸法↠本コノカ↠是亦無↠非
是非性寂滅セリヨリコノカシト↢所動↡」

^じょうもん、 これこんにん提心だいしんなるのみ。

已上四文、是利根菩提心ナル

 ^ふ。 煩悩ぼんのうだい、 もし一体いったいならば、 ただこころまかせて*惑業わくごうおこすべきや。

。煩悩・菩提若一体ナラバ者、唯↣任セテ↠意↢惑業↡耶。

^こた0909。 かくのごときをなす、 これをづけて*悪取あくしゅくうのものとなす。 もつぱらぶつ弟子でしにあらず。 いま*反質ほんぜつしていはく、 なんぢ、 もし煩悩ぼんのうそくだいなるがゆゑにねがひて煩悩ぼんのう悪業あくごうおこさば、 またしょうそくはんなるがゆゑにねがひてしょうみょうくべし。 なんがゆゑぞ、 せつ苦果くかにおいては、 なほへがたきことをいとひ、 永劫ようごういんにおいては、 みづからほしいままにつくることをねがふや。

↢如↠是クノ↡、名ケテ↠之↢悪取空↡。専↢仏弟子↡。今反質シテ、汝若煩悩即菩提ナルガヒテサバ↢煩悩・悪業↡、亦応↣生死即涅槃ナルガヒテ↢生死猛苦↡。何、於テハ↢刹那苦果↡猶厭↠難キコトヲ↠堪、於テハ↢永劫苦因↡欣ヒテラムヤ

^このゆゑに、 まさにるべし、 煩悩ぼんのうだいたいこれいちなりといへども、 *ゆうことなるがゆゑにぜんじょうどうなり。 みずこおりとのごとく、 またたねこのみとのごとし。 そのたいこれいちなれども、 ときしたがひてゆうことなるなり。 これによりて、 どうしゅするものは*ほんぶっしょうあらわせども、 どうしゅせざるものはつひにあらわすことなし。

↠知、煩悩菩提トハ体雖↢是一ナリト↡、時用異ナルガ染浄不同ナリ。如↢水↟氷、亦如↢種トノ↡。其体是一ナレドモ、随ヒテ↠時用異ナルナリ。由リテ↠此スル↠道↢本有仏性↡、不↠修↠道↠顕スコト↠理

^¬はんぎょう¼ のさんじゅうにのたまふがごとし。 「善男ぜんなん、 もしひとありてはく、 ªこのしゅのなかにありや、 なきやº と。 さだめてこたへていふべし、 ªまたはあり、 またはなしº と。 なにをもつてのゆゑに。 たねはなれてほかにしょうずることあたはず。 このゆゑに ªありº とづく。 たねいまだいださず。 このゆゑに ªなしº とづく。 このをもつてのゆゑに、 ªまたはあり、 またはなしº と。

↢¬涅槃経¼卅二フガ↡。「善男子、若リテ↠人、是種子リヤ↠果、無↠果耶。応↢定メテ↡、亦シト。何テノ。離レテタネ之外不↠能↠生ズルコト↠果。是↠有リトタネ↠出↠牙。是↠無シト。以テノ↢是↡故、亦ナリ

^所以ゆえんはいかん。 せつことなることあれども、 そのたいはこれいちなり。 しゅじょうぶっしょうもまたか0910くのごとし。 もししゅじょうのなかに、 べつぶっしょうありといはば、 このしからず。 なにをもつてのゆゑに。 しゅじょうすなはちぶっしょうなり、 ぶっしょうすなはちしゅじょうなり。 ただときことなるをもつて、 じょうじょうあり。

1081以者何。時節レドモ↠異ナルコト是一ナリ。衆生仏性亦復如↠是クノ。若ハバ↣衆生リト↢仏性↡者、是義不↠然。何テノ。衆生即仏性ナリ、仏性即衆生ナリ。直以↢時ナルヲ↡有↢浄・不浄↡。

^善男ぜんなん、 もしあるがひていはく、 ªこのたねはよくをなすやいなや、 このはよくたねをなすやいなやº と。 さだめてこたへていふべし、 ªまたはしょうじ、 しょうぜずº」 と。

善男子、若ルガヒテ、是タネスヤ↠果、是スヤ↠子ヤト。応↢定メテヘテ↡、亦、不↠生。」

 ^ふ。 ぼん勤修ごんしゅするにへず。 なんぞむなしくがんおこさんや。

。凡夫不↠堪↢勤修スルニ↡。何シクサム↢弘願↡耶。

^こたふ。 たとひ勤修ごんしゅへずとも、 なほすべからく*がんおこすべし。 そのやくりょうなり。 ぜんかすがごとし。

。設トモ↠堪↢勤修↡、猶須↠発↢悲願↡。其益无量ナリ。如↢前後スガ↡。

^調じょうだつ (*提婆達多)ろく万蔵まんぞうきょうじゅせしも、 なほ*らくまぬかれず。 *どう一念いちねんがんおこして、 たちまちにそつうまるることをたり。

調達シテ↢六万蔵↡猶不↠免↢那落↡。慈童シテ↢一念悲願↡、忽タリ↠生ズルコトヲ↢兜率↡。

^すなはちりぬ。 しょうちん差別しゃべつしんにありて、 ぎょうにあらず。 いかにいはんや、 いづれのひとか、 いっしょうのうちに、 ひとたびも 「南無なもぶつ」 としょうせず、 一じきをもしゅじょうほどこさざるものあらん。 すべからくこれらのしょう善根ぜんごんをもつて、 みな四弘しぐがんぎょう摂入しょうにゅうすべし。 ゆゑにぎょうがん相応そうおうして、 もうがんとならじ。

リヌ。昇沈差別リテ↠心↠行。何イヅレ一生之中不↣一タビ↢南無仏↡、不ラム↣一食↢衆生↡。須↢此等微少善根↡、皆応↣摂↢入四弘願行↡。故行願相応シテ、不↠為↢虚妄↡。

^¬*優婆うばそくかいきょう¼ の第一だいいちにのたまふがごとし。 「もしひと一心いっしんしょう過咎かぐはん安楽あんらく観察かんざつすることあたはずは、 かくのごときひとは、 また*恵施えせかいもんなりといへども、 つ0911ひに*だつぶんほうることあたはず。 もしよくしょう過咎かぐ*厭患えんげんし、 ふかはんどく安楽あんらくとをば、 かくのごときひとは、 またしょうしょうかいしょうもんなりといへども、 すなはちよくだつぶんほうぎゃくとくせん」 と。

↢¬優婆塞戒経¼第一フガ↡。「若人不↠能↣一心観↢察スルコト生死過咎、涅槃安楽↡、如↠是クノ之人、雖↢復恵施・持戒・多聞ナリト↡、終不↠能↠得ルコト↢解脱分↡。若厭↢患生死過咎↡、深↢涅槃功徳安楽↡、如↠是クノ之人、雖↢復少施・少戒・少聞ナリト↡、即獲↢得解脱分↡。」

^じょうりょうにおいて、 りょうざいをもつてりょうにんほどこし、 りょうぶつみもとにして禁戒きんかいじゅし、 りょうりょうぶつみもとにしてじゅうきょうじゅ読誦どくじゅせるを、 づけてかいもんとなす。 *いちむぎをもつて、 いち乞人こつにんほどこし、 一日いちにちいち八戒はっかいじゅし、 いち句偈くげむを、 しょうかいもんづく。 ¬きょう¼ (優婆塞戒経) にひろくがごとし。

已上於↢无量世↡、以↢无量↡施↢无量↡、於↢无量仏↡受↢持禁戒↡、於↢无量世無量↡受↢持読↣誦セルヲ十二部経↡、名ケテ↢多施・戒・聞↡。以↢一把ムギ↡施↢一乞人↡、一日一夜受↢持↡、読ムヲ↢一四句偈↡、名↢少施・戒・聞↡。如↢¬経¼広クガ

^このゆゑに、 ぎょうじゃしたがひて用心ようじんすれば、 ない一善いちぜんをもむなしくぐすものなし。

行者随ヒテ↠事用心シテ、乃至一善ヲモ↢空シクグス者↡。

^¬だい般若はんにゃきょう¼ にのたまふがごとし。 「もしもろもろのさつの、 *じん般若はんにゃ波羅はらみっ*方便ほうべんぜんぎょうぎょうずるは、 一心いっしんいちぎょうとしてむなしくぐして、 *一切いっさいこうせざるものはあることなし」 と。

↢¬大般若経¼云フガ↡。「若菩薩ズルハ↢深般若波羅蜜多方便善巧↡、無シト↠有ルコト↧一心・一1082トシテシクグシテ而不↣廻↢向一切智↡者↥。」

 ^ふ。 いかんが用心ようじんする。

。云何用心スル

^こたふ。 ¬ほうしゃくきょう¼ のじゅうさんにのたまふがごとし。 「じきつものにはじきほどこせ、 一切いっさいちからそくせんがためのゆゑなり。 おんつものにはおんほどこせ、 *渇愛かつあいちからだんぜんがためのゆゑなり。 つものにはほどこせ、 じょうざんんがためのゆゑなり。

。如↢¬宝積経¼九十三フガ↡。「須ヰムニ↠食シテハ↠食、為↣具↢足セムガ一切智↡故ニセヨ。須ヰムニ↠飲シテハ↠飲、為↠断ゼムガ↢渇愛↡故ニセヨ。須ヰムニ↠衣シテハ↠衣、為↠得ムガ↢無上慚愧↡故ニセヨ

^しょほどこすは、 だいじゅ0912せんがためのゆゑなり。 とうみょうほどこすは、 仏眼ぶつげんみょうんがためのゆゑなり。 ぼくとうほどこすは、 だい智慧ちえんがためのゆゑなり。 くすりほどこすは、 しゅじょう*けっ使やまいのぞかんがためのゆゑなり。

シテ↢坐処↡為↠坐セムガ↢菩提樹下↡故ニセヨ。施シテ↢灯明↡為↠得ムガ↢仏眼↡故ニセヨ。施シテ↢紙墨等↡為↠得ムガ↢大智↡故ニセヨ。施シテ↠薬↠除カムガ↢衆生結使↡故ニセヨ

^かくのごとく、 ない、 あるいはみづからざいなくは、 まさにしんをなすべし。 りょうへん一切いっさいしゅじょうかいすることをんとほっせば、 ちからあるもちからなきも、 かみのごとく布施ふせすべし。 これわがぜんぎょうなり」 と。 じょう、 ¬きょう¼ (宝積経) のもんはなはだひろし。 いまりゃくしてこれをしょうす。 つべし。

↠是クノ乃至或イハクハ↠財、当↢心↡。欲↠得ムト↣開↢示スルコトヲ無量無辺一切衆生ニマレニマレ、如↠上布施是我善行ナリト。」已上¬経¼文甚。今略シテ↢抄↡。可↠見

^かくのごとくしたがひて、 つねに心願しんがんおこせ。 「ねがはくは、 このしゅじょうをしてすみやかにじょうどうじょうぜしめん。 ねがはくは、 われかくのごとく漸々ぜんぜん第一だいいちがんぎょうじょうじゅし、 *だん円満えんまんして、 すみやかにだいしょうし、 ひろしゅじょうせん」 と。 いち*あいおこし、 いち*ぎょうほどこし、 いち*ぜんどうぜんにも、 これにじゅんじてりぬべし。

↠是クノヒテ↠事↢心願↡。願クハメム↣此衆生ヲシテ↢无上道↡。願クハ我如シテ↠是クノ漸漸成↢就第一願行↡、円↢満檀度↡速↢菩提↡、広セムト↢衆生↡。発↢一愛語↡、施↢一利行↡、同ゼムニモ↢一善事↡、准ジテ↠此↠知リヌ

^もししばらくも一念いちねんあく制伏せいぶくするときには、 このねんをなすべし。 「ねがはくは、 われかくのごとく漸々ぜんぜんだいがんぎょうじょうじゅし、 もろもろの惑業わくごうだんじて、 すみやかにだいしょうし、 ひろしゅじょうせん」 と。

クモ制↢伏セム一念↡時ニハ、応↠作↢是↡。願クハ我如シテ↠是クノ漸漸成↢就第二願行↡、断↢諸惑業↡、速↢菩提↡広セムト↢衆生↡。

^もし一文いちもんいち読誦どくじゅしゅじゅうするときには、 このねんをなすべし。 「ねがはくは、 われかくのごとく漸々ぜんぜんだいさんがんぎょうじょうじゅし、 諸仏しょぶつほうがくしてすみやかにだいしょうし、 ひろしゅじょうせん」 と。

読↢誦修↣習セム一文・一義↡時ニハ、応↠作↢是↡。願クハ我如シテ↠是クノ漸漸成↢就第三願行↡、学↢諸仏↡、速↢菩提↡、広セムト↢衆生↡。

^一切いっさい0913れて、 つねに用心ようじんをなせ。 「われ今身こんじんより漸々ぜんぜん修学しゅがくして、 ない極楽ごくらくうまれてざい仏道ぶつどうがくし、 すみやかにだいしょうして、 きょうしてしょうせん」 と。

レテ↢一切↡常↢用心↡。我従↢今身↡漸漸修学シテ、乃至生ジテ↢極楽↡自在↢仏道↡、速シテ↢菩提↡、究竟シテセムト↠生

^もしつねにこのねんいだきて、 ちからしたがひてしゅぎょうするものは、 しただりのなりといへども、 やうやくだいなるうつわつがごとし。 このしんよくさい万善まんぜんたもちて、 らくせしめずして、 かならずだいいたる。

キテ↢此↡、随ヒテ↠力修行スル、如シタ↠微ナリトツガ↢大ナルモノ↡。此心能チテ巨細万善↡、不シテ↠令↢漏落↡必↢菩提↡。

^¬ごんぎょう¼ の 「*にゅう法界品ほっかいぼん」 にのたまふがごとし。 「たとへば、 金剛こんごうの、 よくだいたもちて墜没ついもつせしめざるがごとく、 だいしんもまたかくのごとし。 よくさつ一切いっさいがんぎょうたもちて、 墜落ついらくして三界さんがいもっせしめず」 と。

↢¬花厳経¼「入1083法界品」云フガ↡。「譬ヘバ↧金剛チテ↢大地↡不ルガ↞令↢墜没↡、菩提之心亦復如↠是クノ。能チテ↢菩薩一切願行↡、不↠令↣墜シテ↢於三界↡。」

 ^はく、 ぼん*じょう用心ようじんへず。 そのとき善根ぜんごん*唐捐とうえんなりとやせん。

、凡夫不↠堪↢常途用心↡。爾善根↢唐捐ナリトヤ↡耶。

^こたふ。 もしじょうしんをもつて、 しんおもくちにいはく、 「われ今日こんにちよりは、 ない一善いちぜんをもしん有漏うろほうのためにせず、 ことごとく極楽ごくらくのためにせん、 ことごとくだいのためにせん」 と。 このしんおこしつるのちには、 あらゆるもろもろのぜんは、 もしはかくし、 かくせざるも、 ねんじょうだい趣向しゅこうす。

。若至誠ニシテ、心、我従リハ↢今日↡、乃至一善ヲモ不↠為ニセ↢己身有漏果報↡、尽ニセム↢極楽↡、尽ニセム↢菩提↡。発シツル↢此↡後ニハ、所有、若シハルモ↠覚、自然趣↢向無上菩提↡。

^ひとたび*こう穿りつれば、 もろもろのみずおのづからにゅうして、 てんじてこういたり、 つひに大海だいかいするがごとし。 ぎょうじゃもまたしかり。 ひとたび発心ほっしんしつるのちには、 もろもろの善根ぜんごんみず0914ねん四弘しぐがんみぞにゅうして、 てんじて極楽ごくらくしょうじ、 つひにだい*薩婆さは若海にゃかいす。 いかにいはんや、 時々じじさきがん憶念おくねんせんをや。 つぶさにはしもこうもんのごとし。

↧一タビ穿リツレバ↢渠溝↡、諸水自流入シテジテ↢江河↡、遂スルガ↦大海↥。行者亦爾。一タビ発心シツルニハ、諸善根自然流↢入シテ四弘願↡、転ジテ↢極楽↡、遂↢菩提婆若海↡。何時々憶↢念セムヲヤ↡。具↢下廻向門↡。

 ^ふ。 ぼんちからなければ、 よくてんとしててがたし。 あるいはまた貧乏びんぼうなり。 なんの方便ほうべんをもつてか、 しんをして*じゅんぜしめん

。凡夫↠力ツルニキヲ↠捨。或イハ復貧乏ナリ。以↢何方便↡令メム↢心ヲシテ↟理

^こたふ。 ¬ほうしゃくきょう¼ にのたまはく、 「かくのごとく布施ふせせんに、 もしちからあることなくしてこれを*がくするにあたはず、 ざいつることあたはずは、 このさつはかくのごとくゆいすべし。 ªわれ、 いままさにつとめてしょうじんくわへ、 時々じじ漸々ぜんぜん慳貪けんどんりんしゃく*断除だんじょすべし。 われ、 まさにつとめてしょうじんくわへ、 時々じじ漸々ぜんぜんざいてて施与せよすることをがくして、 つねにわがしんをしてぞうじょう広大こうだいならしむべしº」 と。

。¬宝積経¼云、「如↠此クノ布施、若クシテ↠有ルコト↠力不↠能ルニ↠之、不↠能↠捨ツルコト↠財、是菩薩↢如↠是クノ思惟↡。我今当↧勤メテ↢精進↡、時々漸々断↦除慳貪・吝惜之垢↥。我当シト↧勤メテ↢精進↡、時々漸々シテ↢捨テテ↠財施与スルコトヲ↡、常↦我施心ヲシテ増長ナラ↥。」

^また ¬*いんきょう¼ のにのたまはく、

又¬因果経¼偈

^「もしびんにんありて、 ざい布施ふせすべきものなくは、
しゅするをときに、 しかも*ずいしんをなせ。
ずい福報ふくほうは、 ひとしくしてことなることなし」 と。

「若リテ↢貧窮人↡クハ↣財モノ↢布施
↢他セム↟施↢随
随喜之福報与↠施等シクシテシト↠異ナルコト

^¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃ¼ のにいはく、

¬十住毘婆¼偈

^0915「われ、 いまこれ*新学しんがくなり。 善根ぜんごんいまだじょうじゅせず。
しんいまだざいず。 ねがはくはのちにまさにあひあたふべし」 と。

「我今是新学ナリ善根未↢成就
心未↠得↢自在クハシト↢相与↡」

^ぎょうじゃ、 まさにかくのごとく用心ようじんすべし。

行者1084↢如↠是クノ用心↡。

 ^ふ。 このなかに、 えんじて提心だいしんおこすも、 またいんしんじて、 つとめてどうしゅぎょうすべきや。

。此、縁菩提心、亦可↧信↢因果↡勤メテ修↦行↥耶。

^こたふ。 、 かならずしかるべし。

。理必↠然

^¬浄名じょうみょうきょう¼ (*維摩経)にのたまふがごとし。

↢¬浄名経¼フガ↡。

^諸仏しょぶつくにと、 およびしゅじょうとのくうなることをかんずといへども、
しかもつねにじょうしゅし、 もろもろのぐんじょうきょうす」 と。

「雖↠観ズト↧諸仏↢衆生↡空ナルコトヲ
↢浄土教↢化スト群生↡」

^¬*ちゅうろん¼ のにいはく、

¬中論¼偈

^くうなりといへどもまただんぜず。 なりといへどもしかもじょうならず。
ごうほうとはしっせず。 これをぶつ所説しょせつづく」 と。

「雖↠空ナリト亦不↠断↠有ナリト不↠常ナラ
果報トハ不↠失クト↢仏所説↡」

^また ¬大論だいろん¼ (大智度論) にいはく、 「もし諸法しょほう皆空かいくうならばすなはちしゅじょうなし。 たれかすべきものあらん。 このときしん、 すなはちよわし。 あるいはときしゅじょうあわれむべきをもつてせば、 諸法しょほう空観くうかんにおいてよわし。 もし方便ほうべんりきつれば、 このほうにおいてひとしくして*偏党へんとうなし。 だいしんは、 諸法しょほう実相じっそうさまたげず。 諸法しょほう0916実相じっそうれども、 だいさまたげず。 かくのごとき方便ほうべんしょうずる、 このとき、 すなはちさつ*ほうり、 阿鞞あびばっじゅうすることを」 と。

又¬大論¼云、「若諸法皆空ナラバ↢衆生↡。誰↠度アラム。是悲心便。或時セバ↢衆生キヲ↟愍、於↢諸法↡弱。若ツレバ↢方便↡、於↢此二法↡等シクシテ↢偏党↡。大悲心アレドモ不↠妨↢諸法実相↡。得レドモ↢諸法実相↡不↠妨↢大悲↡。生ジテ↢如↠是クノ方便↡、是便↧入↢菩薩法位↡、住スルコトヲ↦阿鞞跋致地↥。」

 ^ふ。 もしへんしてをなさば、 そのとがいかんぞ。

。若スハ↠解、其過云何

^こたふ。 ¬*じょうきょう¼ のじょうかんに、 *空見くうけんかしてのたまはく、 「もしひとありて、 けんしゅうすることしゅせんおおきさのごとくせんをば、 われきょうせず、 また*毀呰きしせず。 *ぞうじょうまんにんの、 空見くうけん執着しゅうじゃくすることいち髦髪もうほつじゅうろくぶんになさんがごとくせんをば、 われ許可ゆるさず」 と。

。¬無上依経¼上巻、明シテ↢空見↡云、「若リテ↠人執スルコト↢我見↡如クセムヲバ↢須弥山キサノ↡、我不↢驚怖↡、亦不↢毀呰↡。増上慢、執↢著スルコト空見↡如クセムヲバ↣一髦髪サムガ↢十六分↡、我不許可 ユル ↡。」

^また ¬ちゅうろん¼ のだいにいはく、

又¬中論¼第二

^だいしょう (釈尊) の、 空法くうほうきたまふことは、 諸見しょけんはなれしめんがためのゆゑなり。
もしまたくうありとるは、 諸仏しょぶつせざるところなり」 と。

「大聖キタマフコトハ↢空法↠離レシメムガ↢諸見↡故ナリ
復見ルハ↠有リト↠空諸仏所ナリト↠不↠化

^¬*仏蔵ぶつぞうきょう¼ の 「念僧ねんそうぼん」 に、 *所得しょとくしゅうしてのたまはく、 「所得しょとくのものは、 *にん寿者じゅしゃみょうしゃありとき、 *しょほう憶念おくねん分別ふんべつして、 あるいは*だんじょうき、 あるいは*有作うさき、 あるいは*無作むさく。 わが清浄しょうじょうほう、 この因縁いんねんをもつて漸々ぜんぜん滅尽めつじんせん。 われ、 ひさしくしょうにありて、 もろもろののうけてじょうぜるところのだいをば、 このもろもろの悪人あくにん、 そのとき毀壊きえせん0917」 と。

¬仏蔵経¼「念僧品」、破シテ↢有所得↡云、「有所得、説↠有リト↢我・人・寿者・命者↡憶↢念分↣別シテ無所有↡、或イハ↢断・常↡、或イハ↢有作↡、或イハ↢無作↡。我清浄法、以↢是因縁↡漸々滅尽セム。我久シクリテ↢生死↡、受ケテ↢諸苦悩↡所↠成ゼル菩提ヲバ、是悪人爾1085毀壊セムト

^またどうきょうの 「*じょう戒品かいぼん」 にのたまはく、 「けん人見にんけんしゅじょうけんのものは、 おお邪見じゃけんつ。 断滅だんめつけんのものは、 おおどう。 なにをもつてのゆゑに。 これをばてやすきがゆゑに。 このゆゑにまさにるべし、 このひとはむしろみづからかたなをもつてしたくとも、 しゅうのなかにしてじょう説法せっぽうすべからず」 と。 所得しょとくしゅうづけてじょうとなす。

又同ジキ¬経¼「浄戒品」云、「我見・人見・衆生見、多↢邪見↡。断滅見、多得↠道。何テノ。是ヲバキガ↠捨。是↠知、是↢利↡割クトモ↠舌、不↠応カラニシテ不浄説法↡。」有所得執ケテ↢不浄

^¬大論だいろん¼ (大智度論)第一だいいちに、 ならべてしゅうとがかしていはく、 「たとへば、 ひとの、 せまみちくに、 一辺いっぺん深水じんすい一辺いっぺんだいにして、 へんともにするがごとし。 じゃくするも、 じゃくするも、 二事にじともにしっす」 と。

¬大論¼第一、並ベテシテ↢二執↡云、「譬ヘバ↧人クニ↡、一辺深水、一辺大火アラム、二辺ニオイテセムニセム↠有スルモノ↠无、二事倶ナリ。」

^このゆゑに、 ぎょうじゃ、 つねに諸法しょほう本来ほんらいくうじゃくなるをかんじ、 またつねに四弘しぐがんぎょうしゅじゅうせよ。 くうとによりてしゃぞうりゅうせんとするも、 ただ、 ただくうにしては、 つひにじょうずることあたはざるがごとし。 これはこれ諸法しょほう*三諦さんたい相即そうそくせるによるがゆゑなり。

行者常↢諸法本来空寂ナル↡、亦常修↢習ムコト四弘願行クセヨ↧依リテ↢空トニ↡造↦立ムガ宮舎↥。地唯、終ルガ↠能↠成ズルコト。此是由ルガ↢諸法三諦相即セルニ↡故ナリ

^¬ちゅうろん¼ のにいふがごとし。

¬中論¼偈フガ

^因縁いんねんしょしょうほうをば、 われすなはちこれくうなりとく。
またづけてみょうとなす。 またこれちゅうどうなり」 と。

「因縁所生ヲバ我説↢即是空ナリ
ケテ↢仮名是中道ナリト

^さらに ¬かん¼ をかんがへよ。

カンガヘ↢¬止観¼↡。

 ^0918ふ。 しゅうけんざいすでにおもくは、 えん提心だいしん、 あに*しょうあらんや。

。執有之見、罪過既縁事菩提心、豈ラム↢勝利↡耶。

^こたふ。 かたしゅうするときに、 しつすなはちしょうず。 いふところのえんとは、 かならずしもけんしゅうにあらず。 もししからずは、 けん得道とくどうたぐいなかるべし。 見空けんくうもまたしかり。 たとへば、 もちゐるに、 るればがいをなし、 れざればやくあるがごとし。 くうもまたしかり。

。堅↠有、過失乃。所↠言縁事イフ↢必ズシモ堅執↡。若↠爾イハ者、応↠無カル↢見有得道之類↡。見空亦爾。譬ヘバ↢用ヰルニ↠火ルレバ↠害、不レバ↠触ルガ↟益。空・有亦爾

・利益

【40】^やくかさば、 もしひとせつのごとくして提心だいしんおこさば、 たとひぎょうくとも、 がんしたがひてけつじょうして極楽ごくらくおうじょうしなん。 じょうぼんしょうたぐいこれなり。 かくのごときやくりょうなり。 いまりゃくして一端いったんしめさん。

サバ↢利益↡者、若人如クシテ↠説サバ↢菩提心↡、設ケタリトモ↢余↡、随ヒテ↠願決定シテ往↢生シナム↡。上品下生之類是也。如↠是クノ利益無量ナリ。今略シテサム↢一端↡。

^¬かん¼ にいはく、 「¬*ほうりょうきょう¼ にのたまはく、 ª比丘びくの、 比丘びくほうしゅせざるは、 *大千だいせんするところなし。 いはんや、 ひとようけんをや。 ろくじゅう比丘びくきゅうしてぶつにまうさく、 «われら、 たちまちにすとも、 ひとようくることあたはじ» と。 ぶつののたまはく、 «なんぢ、 ざんしんおこせり。 きかな、 きかな» と。

¬止観¼云、「¬宝梁経¼云、比丘ルハ↠修↢比丘↡、大千↢唾スル処↡。況ケム↢人供養↡。六十比丘1086悲泣シテサク↠仏、我等タチマチナム、不↠能↠受クルコト↢人供養↡。仏、汝起↢慚愧↡。善哉善哉

^いち比丘びくぶつにまうしてまうさく、 «なんらの比丘びくか、 よくようくる» と。 ぶつののたまはく、 «もし比丘びくしゅにありて、 そうごうしゅし、 そうたるもの、 このひとよくようく。 四果しかこうはこれそうしゅなり。 さんじゅうしちほんはこれそうごう0919なり。 四果しかはこれそうなり» と。

比丘白シテ↠仏、何等比丘クルト↢供養↡。仏、若↢比丘↡、修↢僧↡、得タル↢僧↡者、是人能↢供養↡。四果是僧ナリ。卅七品是僧ナリ。四果是僧ナリト

^比丘びく、 かさねてぶつにまうさく、 «もし*だいじょうしんおこすものは、 またいかんぞ» と。 ぶつののたまはく、 «もしだいじょうしんおこして一切いっさいもとむるは、 しゅせず、 ごうしゅせず、 ずとも、 よくようけてん» と。

比丘重ネテサク、若サム↢大乗↡者復云何ゾト。仏、若シテ↢大乗↡求ムルハ↢一切智↡、不↠堕↠数、不↠修↠業、不トモ↠得↠利、能ケテムト↢供養↡。

^比丘びくおどろきてひたてまつる。 «いかんが、 このひとよくようくる» と。 ぶつののたまはく、 «このひとけてもちゐてだいき、 *揣食たんじきくることしゅせんのごとくすとも、 またよくつひにしゅおんほうじてん»º と。 まさにるべし、 *小乗しょうじょうごくは、 *だいじょう初心しょしんおよばず」 と。 じょうしんす。

比丘驚キテヒテフニンゾクルト↢供養↡。仏、是人受ケテ↠衣ヰテ↢大地↡、受クルコト↢揣食↡若クストモ↢須弥山↡、亦能ジテムト↢施主之恩↡。当↠知、小乗之極果↠及↢大乗之初心↡。」已上消↢信施

 ^またいはく (摩訶止観)、 「¬*如来にょらい密蔵みつぞうきょう¼ にかく、 ªもしひとちち縁覚えんがくとなりしをがいし、 三宝さんぼうものぬすみ、 ははかんとなりしをけがし、 じつをもつてぶつそしり、 りょうぜつしてげんじょうへだて、 あっしてしょうにんののしり、 ほうのものをらんし、 *ぎゃく初業しょごういかりと、 かいにんものうばむさぼりと、 辺見へんけんとあらば、 これをじゅうあくのものとなす。

又云、「¬如来密蔵経¼説カク、若人父ルヲ↢縁覚↡而シテ、盗↢三宝↡、母ルヲ↢羅漢↡而シテ、不実ヲモテ↠仏、両舌シテヘダ賢聖↡、悪口シテ↢聖人↡、壊↢乱求法↡、五逆初業之瞋リシ、奪↢持戒之物↡貪リシ、辺見之痴セム↢十悪之者↡。

^もしよく、 如来にょらいの、 因縁いんねんほうにんしゅじょう*寿じゅみょうなく、 しょうなくめつなくぜんなくじゃくなく、 ほんしょう清浄しょうじょうなりときたまふことをり、 また一切いっさい法においてほんしょう清浄しょうじょうなりとりて、 解知げちしんにゅうせば、 われ、 このひとごくおよ0920びもろもろの悪道あくどう趣向しゅこうすとかず。

↧如来キタマフコトヲ↦因縁↢我・人・衆生・寿↡、无↠生無↠滅無染無↠著、本性清浄ナリト↥、又於↢一切法↡知リテ↢本性清浄ナリト↡、解知信入セバ者、我不↠説↣是趣↢向スト地獄及悪道↡。

^なにをもつてのゆゑに。 ほう*しゃくじゅなく、 ほう*じゅうのうなし。 一切いっさいほうは、 しょうぜずじゅうせず、 因縁いんねんごうしてしょうすることをしょうじをはれば、 かえりてめっしぬ。 もししんしょうじをはりてめっすれば、 一切いっさいけっ使もまたしょうじをはりてめっしぬ。 かくのごとくすれば、 犯処ぼんしょなし。 もしぼんありじゅうありといはば、 このことわりあることなし。

テノ。法↢積聚↡、法↢集悩↡。一切不↠生不↠住、因縁和合シテ而得↢生起スルコトヲ↡。生リテリテシヌ。若心生リテスレバ、一切結使亦生リテシヌ。如↠是クノルハ↢犯処↡。若1087↠犯有リトイハバ↠住、無↠有ルコト↢是コトワリ↡。

^ひゃくねん闇室あんしつに、 もしともしびともときには、 やみ、 «われはこれしつしゅなり。 ここにじゅうすることひさしく、 しかもあへてらじ» といふべからず。 ともしびもししょうじぬれば、 やみすなはちめっしぬるがごとしº と。 そのまたかくのごとし。 このきょうは、 つぶさにさき提心だいしんす」 と。 じょう、 かの ¬きょう¼ (如来秘密蔵経) のかんにあり。 「さき」 といふは、 *きょう提心だいしんす。

↧百年闇室↠灯ニハ、闇不↠可カラ↠言↣我是室ナリスルコト↠此、而アヘ灯若ジヌレバ、闇即シヌルガ義亦如トイヘリ↠是クノ。此スト↢前菩提心↡。」已上在↢彼¬経¼下巻↡。言↢前↡者、↢四教菩提心

^¬ごんぎょう¼ の 「にゅう法界ほっかいぼん(意) にのたまはく、 「たとへば、 *善見ぜんけん薬王やくおうの、 一切いっさいやまいめっするがごとく、 提心だいしんくすり一切いっさいしゅじょうのもろもろの煩悩ぼんのうやまいめっす。

¬花厳経¼「入法界品」云、「譬ヘバ↣善見薬王スルガ↢一切↡、菩提心↢一切衆生煩悩↡。

^たとへば、 ようちちがっして一きて、 獅子ししちちをもつてかのうつわのなかにるれば、 ちちしょうじんして、 ただちにぐることさわりなきがごとく、 如来にょらい師子しし提心だいしんちちを、 りょうこうめるところのもろもろのごう煩悩ぼんのうちちのなかにけば、 みなことごとくしょうじんして、 しょうもん縁覚えんがくほうのなかにじゅうせず」 と。

ヘバ↧牛・馬・羊シテキテ↢一器↡、以↢師子ルレバ↢彼ツキ↡、余消尽シテグルコトキガ↞礙、如来師子菩提心、著スレ↢無量劫↠積メル業煩悩↡、皆悉消尽シテ↠住↢声聞・縁覚↡。」

^¬だい0921般若はんにゃきょう¼ にのたまはく、 「もしもろもろのさつおお*よく相応そうおう非理ひり作意さいほっすといへども、 しかも一念いちねんじょうだい相応そうおうせるしんおこさば、 すなはちよくしゃくめつす」 と。 じょうさんもん滅罪めつざいやくなり。

¬大般若経¼云、「若菩薩雖↣多発↢起スト五欲相応非理作意↡、而サバ↢一念無上菩提相応セル之心↡、即折滅シヌ。」已上三文滅罪ナリ

^*にゅう法界ほっかいぼん」 にのたまはく、 「たとへば、 ひとありて、 *不可ふかやくつれば、 一切いっさい怨敵おんてきもその便たよりをざるがごとく、 さつ摩訶まかさつもまたかくのごとし。 提心だいしん不壊ふえ法薬ほうやくつれば、 一切いっさい煩悩ぼんのうしょ怨敵おんてきすることあたはざるところなり。

「入法界品」云、「譬ヘバ↧有リテ↠人得ツレバ↢不可壊薬↡、一切怨敵ルガ↞得↢其便↡、菩薩摩訶薩亦復如↠是クノ。得ツレバ↢菩提心不壊法薬↡、一切煩悩・諸魔・怨敵ナリ↠不↠能↠壊スコト

^たとへば、 ひとありて、 *じゅうすい宝珠ほうしゅて、 その*瓔珞ようらくとしつれば、 深水じんすいのなかにれども、 しかももつにゃくせざるがごとく、 提心だいしんじゅうすい宝珠ほうしゅつれば、 しょうかいれども、 しかも沈没ちんもつせず。

ヘバ↧有リテ↠人得↢住水宝珠↡瓔↢珞シツレバ↡、入レドモ↢深水↡而ルガ↦没溺↥、得ツレバ↢菩提心住水宝珠↡、入レドモ↢生死海↡而不↢沈没↡。

^たとへば、 金剛こんごうの、 ひゃくせんごうみずのなかにしょすれども、 しかも*らんせず、 またへんなきがごとくだいしんもまたかくのごとし。 りょうこうしょうのなかにしょすれども、 もろもろの煩悩ぼんのうごう断滅だんめつすることあたはず。 また損減そんげんなし」 と。

ヘバ↧金剛於百千劫スレドモ↢於水↡而不↢爛壊↡、亦無キガ↦変異↥、菩提之心亦復如↠是クノ。於↢無量劫↡処スレドモ↢生死↡、諸煩悩業不↠能↢断滅スルコト↡。亦無シト↢損減↡。」

^またどうきょう法幢ほうどうさつにのたまはく、

又同ジキ¬経¼法幢菩薩

^「もし智慧ちえあるひと一念いちねん*道心どうしんおこせば、
かならずじょうそんとなる。 つつしみてわくをなすことなかれ」 と。

「若リテ↢智1088一念セバ↢道心
↢無上尊ミテレトスコト↢疑↡」

^じょう、 つひにはいせずして、 かならずだいいたやくなり。

已上終シテ↢敗壊↡、必↢菩↡益ナリ

^0922た 「にゅう法界ほっかいぼん」 にのたまはく、 「たとへば、 *えん檀金だんごんの、 にょほうのぞきては一切いっさいたからすぐれたるがごとく、 だいしんえん檀金だんごんもまたかくのごとし。 一切いっさいのぞきてはもろもろのどくすぐれたり。

又「入法界品」云、「譬ヘバ↧閻浮檀金キテハ↢如意宝↡勝レタルガ↦一切↥、菩提之心閻浮檀金亦復如↠是クノキテハ↢一切智↡勝レタリ↢諸功徳↡。

^たとへば、 りょうびんちょうの、 かいのなかにあるときだい勢力せいりきありて、 とりおよばざるがごとく、 さつ摩訶まかさつもまたかくのごとし。 しょうかいにして、 提心だいしんおこせるに、 どく勢力せいりきは、 しょうもん縁覚えんがくおよぶことあたはざるところなり。

ヘバ↧迦楞毘伽鳥↡時リテ↢大勢力↡、余鳥不ルガ↞及、菩薩摩訶薩亦復如↠是クノ。於生死ニシテ↢菩提心↡功徳勢力、声聞・縁覚ナリ↠不↠能↠及ブコト

^たとへば、 *波利はりしっじゅはなをもつて、 一日いちにちころもくんじつれば、 *瞻蔔せんぷく*婆師華ばしけをもつて千歳せんざいくんずといへどもおよぶことあたはざるところなるがごとく、 提心だいしんはなもまたかくのごとし。 一日いちにちくんずるところのどく十方じっぽうぶつみもととおりて、 一切いっさいしょうもん縁覚えんがくの、 無漏むろをもつてもろもろのどくくんずること、 ひゃくせんごうにおいてせるも、 およぶことあたはざるところなり。

ヘバ↧波利質多樹一日熏ツレバ↠衣、瞻蔔花・婆師花ヲモテ↢千歳熏ズト↡所ナルガ↞不↠能↠及ブコト、菩提心亦復如↠是クノ。一日功徳香、徹シテ↢十方↡、一切声聞・縁覚↢無漏↡薫ゼル功徳、於テセル↢百千劫↡、所ナリ↠不↠能↠及ブコト

^たとへば、 金剛こんごうの、 やぶれてまったからずといへども、 一切いっさいのもろもろのたからの、 なほおよぶことあたはざるがごとく、 だいしんもまたかくのごとし。 すこだいなりといへども、 しょうもん縁覚えんがくのもろもろのどくたからの、 およぶことあたはざるところなり」 と。 じょう、 ¬きょう¼ (華厳経) のなかにひゃくたとへあり。 るべし。

ヘバ↧金剛↢破レテ↟全カラ、一切猶不ルガ↞能↠及ブコト、菩提之心亦復如↠是クノ。雖↢少懈怠ナリト↡、声聞・縁覚功徳ナリト↠不↠能↠及ブコト。」已上¬経¼中↢二百余喩↡。可↠見

^賢首げんじゅぼん」 のにのたまはく、

「賢首品」偈

^0923さつしょうにして最初さいしょ発心ほっしんするとき
一向いっこうだいもとむること、 けんにしてどうずべからず。

「菩薩於↢生死最初発心
一向ムル↢菩提堅固ニシテ不↠可カラ↠動

^かの一念いちねんどく深広じんこうにして岸際がんざいなし。
如来にょらい分別ふんべつしてきたまはんに、 こうきわむるもつくすことあたはじ」 と。

一念功徳深広ニシテ岸際↡
如来分別シテキタマフトモメテ↠劫↠能↠尽スコト

^ここにいふ 「発心ほっしん」 はぼんしょうつうず。 つぶさに ¬*けつ¼ をよ。

発心↢於凡・聖↡具↢¬弘決¼↡

^またどうきょうにのたまはく、

又同ジキ¬経¼偈

^一切いっさいしゅじょうしんをば、 ことごとく分別ふんべつしてりぬべし。
一切いっさいせつじんをば、 なほそのかずかぞへつべし。

「一切衆生ヲバ↢分別シテリヌ
一切刹微塵ヲバ尚可カゾヘツ↢其

^十方じっぽうくうかいをば、 一毛いちもうをもつてなほはかりつべし。
さつ*しょ発心ほっしんをば、 きょうしてはかるべからず」 と。

十方虚空界ヲバ一毛ヲモテ猶可↠量リツ
菩薩初発心ヲバ究竟シテ↠可カラ↠測

^また ¬*出生しゅっしょう提心だいしんぎょう¼ のにのたまはく、

又¬出生菩提心経¼偈

^「もしこの仏刹ぶっせつのもろもろのしゅじょうを、 信心しんじんおよびかいじゅうせしめたらん、
かのさいじょう*だい福聚ふくじゅのごときは、 道心どうしんじゅうろくぶんにはおよばじ。

「若仏刹衆生メタラム↠住↢信心及持戒
1089キハ↢彼最上大福聚不↠及↢道心十六分

^もしこの仏刹ぶっせつのもろもろのしゅじょうを、 信心しんじんじゅうほうにおいてぎょうぜしめん、
かのさいじょうだい福聚ふくじゅのごときは、 道心どうしんじゅうろくぶんにはおよばじ。

仏刹衆生メム↧住↢信心↡於↠法
キハ↢彼最上大福聚不↠及↢道心十六分ニハ

^0924もし諸仏しょぶつせつの、 ごうしゃのごとくならんに、 みなことごとくてらつくりてふくもとめんがゆゑにし、
またもろもろのとうつくることしゅのごとくせんも、 道心どうしんじゅうろくぶんにはおよばず。

諸仏恒河沙ノゴトクナラムニ皆悉リテ↠寺メムガ↠福ニシ
復造ルコト↢諸↡如クセム↢須弥不↠及↢道心十六分↡。

^かくのごときひとしょうぼうんも、 もしだいもとめてしゅじょうせば、
かれらしゅじょう最勝さいしょうなるものなり。 これるいなし。 いはんやうえあらんや。

↠是クノ人等↢勝法メテ↢菩提↡利ムハ↢衆生
彼等衆生最勝ラムニハケム↢比類スルコト↡況ラムヤ↠上

^このゆゑにこの諸法しょほうくことをては、 しゃはつねに*ぎょうほうしんをなし、
まさにへんだい福聚ふくじゅて、 すみやかにじょうどうしょうすることをべし」 と。

テハ↠聞クコトヲ↢此諸法智者↢楽法
シト↧得↢無辺大福聚得↞証スルコトヲ↢於無上道↡」

^¬ほうしゃくきょう¼ のにのたまはく、

¬宝積経¼偈

^提心だいしんどく、 もし*色方しきほうぶんあらば、
くうかいしゅうへんして、 よく容受ようじゅするものなからん」 と。

「菩提心功徳マシカ↢色方分↡
周↢遍ストモ虚空界カラマシ↢能容受スル者↡」

^提心だいしんには、 かくのごときしょうあり。 このゆゑにしょうさつ礼仏らいぶつ (涅槃経) にのたまはく、

菩提心↢如↠是クノ勝利↡。是迦葉菩礼仏

^発心ほっしん*ひっきょうとはふたべつなし。 かくのごときしんにおいてさきしんかたし。
みづからいまだすることをずして、 す。 このゆゑにわれしょほっ0925しんらいす」 と。

「発心畢竟トハ↠別↠是クノ二心心難
シテ↠得↠度スルコト↠他我礼スト↢初発心↡」

^また*弥伽みかだい*善財ぜんざいどうの、 すでに提心だいしんおこせることをきて、 すなはち獅子ししよりり、 だいこうみょうはなちてさん千界ぜんかいらし、 たいげて、 どう礼讃らいさんせり。 じょうそうじてしょうあらわす。

又弥伽大士聞キテ↣善財童子セルコトヲ↢菩提心↡、即↢師子座↡下、放チテ↢大光明↡照↢三千界↡、五体ゲテ↠地、礼↢讃セリ童子↡。已上総ジテ↢勝利

 ^ふ。 えん誓願せいがんもまたしょうありや。

。縁事誓願亦有↢勝利↡耶。

^こたふ。 えんにしかずといへども、 これまたしょうあり。

。雖↠不ズト↠如クハ↢縁理↡、此亦有↢勝利↡。

^なにをもつてかるとならば、 じょうぼんしょうごうにいはく (観経)、 「ただじょう道心どうしんおこす」 と。 第一だいいちさとるとはいはず。 ゆゑにりぬ、 ただこれ提心だいしんなり。 もししからずは、 かの中生ちゅうしょうごうべつなかるべし。 そのいち

テカルトナラバ者、上品下生、「但発スト↢無上道↡。」不↠云サトルトハ↢第一義↡。故リヌ唯是事菩提心ナリ。若↠爾イハ者、与↢彼中生業↡応↠無カル↠別。

^¬おうじょうろん¼ (天親の浄土論)提心だいしんかすに、 ただいへり、 「一切いっさいしゅじょうくをもつてのゆゑに。 一切いっさいしゅじょうをしてだいだいしむるをもつてのゆゑに。 しゅじょう摂取せっしゅしてかのこくうまれしめんをもつてのゆゑに」 と。 もしえんしんおうじょうちからなくは、 論主ろんじゅ (天親) あにえんしんしめさざらんや。 その

¬往生論¼明スニ↢菩提心↡、但云ヘリ、「以テノ↠抜クヲ↢一切衆生↡故テノ↠令ムルヲ↣一切衆生ヲシテ得↢大菩↡故テノ↧摂↢取シテ衆生↡生レシメムヲ↦彼1090↥故ニト。」縁事クハ↢往生力↡、論主豈ラムヤ↠示↢縁理↡。

^¬大論だいろん¼ (大智度論)だいにいはく、

¬大論¼第五

^「もししょ発心ほっしんときに、 まさにぶつるべしと誓願せいがんすれば、
すでにもろもろのけんぎたり。 まさにようくべし」 と。

「若初発心誓↢願スレバシト↟作↠仏
ギタリ↢諸世間ゼリトイヘリ↠受クルニ↢世供養↡」

^0926の ¬ろん¼ (大智度論) にもまた、 ただ 「がんぶつ」 といへり。 あきらけし、 提心だいしんもまたつひにしんすといふことを。 そのさん

¬論ニモ¼亦但云ヘリ↢「願作仏」↡。明ケシ、事菩提心亦畢ストイフコトヲ↢信施↡。

^¬かん¼ に、 ¬*密蔵みつぞうきょう¼ をきをはりていはく、 「*はじめの提心だいしん、 すでによく重々じゅうじゅうじゅうあくのぞく。 いはんや、 *だい第三だいさんだい提心だいしんをや」 と。 いふところの 「はじめ」 とは、 これ*三蔵さんぞうきょうの、 *界内かいないえんずる提心だいしんなり。 いかにいはんや、 ふか一切いっさいしゅじょうにことごとくぶっしょうありとしんじて、 あまねく自他じたともに仏道ぶつどうじょうぜんとがんぜんに、 あにつみめっすることなからんや。 その

¬止観¼引↢¬秘密蔵経¼↡已リテ、「初菩提心已↢重々十悪↡。況第二・第三・第四菩提心イヘリ。」↠言者、是三蔵教ズル↢界内↡菩提心也。何、深ジテ↣一切衆生リト↢仏性↡、普ゼムニ↣自他共ムト↢仏道↡、豈カラムヤ↠滅スルコト↠罪

^¬唯識ゆいしきろん¼ にいはく、 「だいじょうとのじつしゅうせずは、 みょうがんほっするによしなし」 と。 だいがんすらなほしゅうしておこる。 すなはちりぬ、 がんもまたしょうありといふことを。 その

¬唯識論¼云、「不↠執↢菩提有情トノ実有↡、无シトイヘリ↠由↣発↢起スルニ猛利悲願↡。」 大士悲願スラシテ↠有。則リヌ亦有リトイフコトヲ↢勝利↡。

^しもこうもんのごとし。

↢下廻向門↡。

 ^ふ。 しゅじょうにもとよりぶっしょうありとしんすることは、 あにえんにあらずや。

。信↣解セバ衆生ヨリリト↢仏性↡豈ズヤ↢縁理↡。

^こたふ。 これはこれ、 だいじょうごくどうしんするなり。 かならずしも第一だいいちくう相応そうおうかんにはあらず。

。此是、信↢解スルナリ大乗至極道理↡。非↢必ズシモ第一義空相応ニハ↡。

 ^ふ。 ¬じゅう¼ に ¬*ぞうじゅうろん¼ をきていはく、 「もしは安楽あんらくじょううまれんとねがひて、 すなはちおうじょうるものあり。 もしはひと無垢むくぶつみなきて、 すなは0927のくだいるものあり。 これはこれべついんなり。 まつたくぎょうあることなし」 と。

。¬十疑¼引キテ↢¬雑集論¼云、「若ルハズルコト↠生ゼム↢安楽浄土↡、即↢往生スルコトヲ↡者ナリ。若人聞ケバ↢無垢仏↡、即↢阿耨菩提↡者ナリトイフハ是別時ナリ。全シトイヘリ↠行アルコト。」

^おん (窺基) おなじくいはく (西方要決)、 「がんぎょうぜんするがゆゑに、 べつく。 ぶつねんずるに、 そくしょうせずといはんとにはあらず」 と。

慈恩同ジク、「願前後ナリ↢別時↡。非ズト↠謂ハムトニハ↣念ズルニ↠仏↢即生↡也。」

^あきらかにりぬ、 がんありてぎょうなきは、 これ*べつこころなり。 いかんぞ、 じょうぼんしょうにん、 ただだいがんによりてすなはちおうじょうすることをるや。

カニリヌ、有リテ↠願无キハ↠行、是別時ナリ。云何、上品下生之人、但由リテ↢菩提↡即↢往生スルコトヲ↡耶。

^こたふ。 だい提心だいしん*のう甚深じんじんなり。 りょうつみめっし、 りょうふくしょうず。 ゆゑにじょうもとむれば、 もとむるにしたがひてすなはち。 いふところのべつこころといふは、 ただしんのために極楽ごくらくがんするなり。 これ、 四弘しぐがん広大こうだい提心だいしんにはあらず。

。大菩提心功能甚深ナリ。滅↢无量↡生↢無量1091↡。故ルニ↢浄土↡、随ヒテ↠求ムルニ得。所↠言別時トイフ者、但為↢自身↡願↢求スルナリ極楽↡。非↢是四弘願広大菩提心ニハ↡。

 ^ふ。 だい提心だいしん、 もしこのちからあらば、 一切いっさいさつは、 しょ発心ほっしんよりけつじょうして悪趣あくしゅするものなかるべし。

。大菩提心若ラバ↢此力↡、一切菩薩↢初発心↡決定シテ↠无カル↧堕スル↢悪趣↡者↥。

^こたふ。 さつ、 いまだ退たいくらいいたらざるさきは、 *ぜんじょうしん*間雑けんぞうしておこる。 *前念ぜんねん衆罪しゅざいめっすといへども、 *ねんにさらに衆罪しゅざいつくる。 また、 提心だいしん浅深せんじんごうにゃくあり、 悪業あくごうごんじょうじょうあり。 このゆゑに、 *退たいにてはしょうちんじょうなり。 提心だいしん滅罪めつざいちからなきにはあらず。 しばらく*かんじゅつす。 るもの取捨しゅしゃせよ。

。菩薩未↠至↢不退↡前、染浄心間雑シテ而起。前念↠滅スト↢衆罪↡、後念↢衆罪↡。又菩提心↢浅深・強弱↡悪業↢久近・定不定↡。是退位昇沈不定ナルナリ。非↣菩提心キニハ↢滅罪力↡↢愚管↡。見者取捨セヨ

・料簡

【41】^さん*りょうけんとは、

料簡者、

^ふ、 「にゅう法界ほっかいぼん」 にのたまはく、 「たとへば、 金剛こんごうこん0928しょうよりしょうじて、 ほうよりしょうずるにあらざるがごとく、 提心だいしんたからもまたかくのごとし。 だいをもつてしゅじょう救護くごするしょうよりしょうじて、 ぜんよりしょうずるにあらず」 と。

「入法界品」云、「譬ヘバ↧金剛↢金性↡生ジテザルガ↦余宝ヨリズルニ↥、菩提心亦復如↠是クノ。大悲ヲモテスル衆生ヨリ、非ズトイヘリ↢余ヨリズルニ↡。」

^¬*しょうごんろん¼ のにいはく、

¬荘厳論¼偈

^つねにごくしょすといへども、 だいだいをばへず。
もし自利じりしんおこさば、 これだいだいさわりなり」 と。

「雖↣恒スト↢地獄不↠障↢大菩提ヲバ
↢自利是大菩提ナリト

^また ¬*じょうろん¼ のにいはく、

又¬丈夫論¼偈

^しんをもつて一人いちにんするは、 どくおおきなることのごとし。
おのがために一切いっさいするは、 ほうること芥子けしのごとし。

「悲心ヲモテスルハ↢一人功徳ナルコト↠地
↠己スルハ↢一切ルコト↠報↢芥子

^いち厄難やくなんにんすくふは、 一切いっさいにはすぐれたり。
もろもろのほしひかりありといへども、 いちつきひかりにはしかず」 と。

フハ↢一厄難レタリ↢余一切ニハ
↠有リト↠光↠如クハ↢一ヒカリ↡」

^あきらけし、 自利じりぎょうはこれ提心だいしん*しょにあらざれば、 ほうることまたすくなし。 いかんぞ、 ひとりすみやかに極楽ごくらくしょうぜんとがんずるや。

ケシ、自利↢是菩提心之所依ルコト↠報亦少。云何ズルヤ↣速ぜムト↢極楽↡。

^こたふ。 あにさきにいはずや、 極楽ごくらくがんずるものはかならず四弘しぐがんおこして、 がんしたがひて勤修ごんしゅせよとは。 これあに、 これだいしんぎょうにあらずや。

。豈↢前↡、願ゼム↢極楽シテ↢四弘願↡、随ヒテ↠願而勤修セヨトハ。此豈ズヤ↢是大悲心↡。

^*また、 極楽ごくらくがんすること、 これ自利じりしんにあらず。 しかる所以ゆえんは、 いまこのしゃかい*なんおおし。 かんのいまだうるお0929ざるに、 *かいちょうそうしぬ。 初心しょしんぎょうじゃ、 なんのいとまありてかどうしゅせん。 ゆゑにいまさつがんぎょう円満えんまんして、 ざい一切いっさいしゅじょうやくせんとおもふがために、 極楽ごくらくもとむるなり。 自利じりのためにはせず。

願↢求スルコト極楽↡、非↢是自利↡。所↢以然↡者、今此娑婆世界↢留難↡。甘露1092ルニウルホ、苦海朝宗シヌ。初心行者何ニカセム↠道。故今為↠欲フガ↧円↢満シテ菩薩願行↡、自在利↦益セムト一切衆生↥、先ムルナリ↢極楽↡。不↠為ニハセ↢自利↡。

^¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃ¼ にいふがごとし、 「みづからいまだすることをずは、 かれをすることあたはず。 ひとのみづから*でいもっせるがごとき、 なんぞよくにん*じょうさいせん。 また、 みずのためにただよはさるるもの、 おぼれたるものをすくふことあたはざるがごとし。 このゆゑにかく、 ªわれしをはりて、 まさにかれをすべしº」 と。

↢¬十住毘婆¼云フガ「自↠得↠度スルコト、不↠能↠度スルコト↠彼。如↣人セルガ↢於泥↡、何拯↢済セム余人↡。又如↢為↠水↠漂ハサ、不ルガ↟能↠済フコト↠溺ルル。是カク、我度リテシトイヘリ↠度↠彼。」

^また ¬*ほっきょう¼ のくがごとし。

又如↢¬法句¼偈クガ↡。

^「もしよくみづからやすんじて、 善処ぜんしょにあらば、
しかしてのちにんやすんじて、 みづからとしょおなじくせよ」 と。

「若ジテ↠身↢於善処↡者
シテジテ↢余人ジクストイヘリ↢於所利↡」

^ゆゑに ¬じゅう¼ にいはく、 「じょううまれんともとむる所以ゆえん一切いっさいしゅじょうばつせんとおもふがゆゑなり。 すなはちみづから*そんすらく、 ªわれいまちからなし。 もしあく煩悩ぼんのうきょうのなかにあらば、 きょうこわきをもつてのゆゑに、 みづから*纏縛てんばくせられてさん*りんにゃくし、 ややもすれば数劫しゅこうん。 かくのごとく輪転りんでんして、 無始むしよりこのかたいまだかつてそくせず。 いづれのときにか、 よくしゅじょうすくふこと0930んº と。

¬十疑¼言、「所↢以ムル↟生ぜムト↢浄土↡、欲フガ↣救↢抜セムト一切衆生↡故ナリ。即思忖スラク、我今无↠力。若ラバ↢悪世、煩悩↡、以テノ↢境強キヲ↡故、自レテ↢纏縛↡淪↢溺三塗↡、ヤヤモスレ↢数劫↡。如シテ↠此クノ輪転シテ、無始ヨリ已来ムカシニモ休息↡。何レノニカ↠救フコトヲ↢衆生↡。

^これがために、 じょううまれて諸仏しょぶつ親近しんごんし、 しょうにんしょうして、 まさによくあくのなかにして、 しゅじょうすくはんことをもとむるなり」 と。

↠此ムルナリト↧生ジテ↢浄土↡親↢近諸仏↡、証シテ↢無生忍↡、方↢悪世↡救ハムコトヲ↦衆生↥。」

^*きょうろんもん、 つぶさに ¬じゅう¼ のごとし。 りぬべし、 念仏ねんぶつ修善しゅぜん*業因ごういんとなし、 おうじょう極楽ごくらくほうとなし、 しょうだいだいほうとなし、 やくしゅじょう本懐ほんがいとなす。 たとへば、 けんうればはなひらき、 はなによりてこのみむすび、 このみ*餐受さんじゅするがごとし。

経論文、具↢¬十疑¼↡也。応↠知リヌ、念仏修善↢業因往生極楽↢花報証大菩提↢果報利益衆生↢本懐↡。譬ヘバ↢世間ヱテ↠木↠花、因リテ↠花↠菓、得↠菓餐受スルガ↡。

 ^ふ。 念仏ねんぶつぎょうは、 四弘しぐのなかにおいて、 これいづれのぎょうしょうぞ。

。念仏之行↢四弘↡、是何レノ

^こたふ。 念仏ねんぶつ三昧ざんまいしゅするは、 これだいさんがんぎょうなり。 したがひて伏滅ぶくめつするところあるは、 これだいがんぎょうなり。 遠近おんごんりょうえんむすぶは、 これ第一だいいちがんぎょうなり。 こうとくかさぬるは、 だいがんじょうずるなり。 自余じよ衆善しゅぜんれいしてれ。 たざれ。

。修スルハ↢念仏三昧↡是第三ナリ。随ヒテルハ↠所↢伏滅スル↡是第二願行ナリ。遠近ブハ↢良縁↡是第一願行ナリ。積↠功ネテ↠徳ルナリ↢第四↡。自余衆善シテ。不↠俟

 ^ふ。 一心いっしんぶつねんぜば、 またおうじょうすべし。 なんぞかならず*きょうろんだいがんすすむるや。

。一心ズルニ↠仏、理亦往生シナム。何シモ経・論ムル↢菩1093↡。

^こたふ。 ¬*だいしょうごんろん¼ にいはく、 「仏国ぶっこくだいなれば、 ひとぎょうどくをもつてはじょうじゅすることあたはず。 かならず願力がんりきもちゐるべし。 うしちからありといへども、 くるまくにかならず御者ぎょしゃもちゐて、 よくいたるところあるがごとく、 ぶつこくきよむるもがんによりていんじょうす。 願力がんりきをもつてのゆゑに*ふくぞうじょう0931」 と。

。¬大荘厳論¼云、「仏国事大ナリジテハ功徳不↠能↢成就スルコト↡。要シモヰルベシ↢願力↡。如↧牛↠力アリト、挽クニ↠車ヰテ↢御者↡能ルガ↦所至↥、浄ムルコトハ↢仏国土↡由リテ↠願引成。以テノ↢願力↡故恵増長スト。」

^¬十住じゅうじゅう毘婆びばしゃろん¼ にいはく、 「一切いっさい諸法しょほうがん根本こんぽんとなす。 がんはなれてはすなはちじょうぜず。 このゆゑにがんおこす」 と。

¬十住毘婆娑論¼云、「一切諸法↢根本↡。離レテハ↠願不↠成。是ストイヘリ↠願。」

^またいはく (易行品)

又云

^もしひとぶつらんとがんじて、 しん弥陀みだねんずれば、
ときおうじてためにげんじたまふ。 このゆゑにわれみょうしたてまつる」 と。

「若人願ジテ↠作ラムト↠仏ズレバ↢阿弥陀
ジテ↠時ジタマフ↠身我帰命シタテマツルト

^だい提心だいしん、 すでにこのちからあり。 このゆゑにぎょうじゃかならずこのがんおこせ。

大菩提心既↢此力↡。是行者要↢此↡。

 ^ふ。 もしがんおこさざるものは、 つひにおうじょうせざるや。

。若↠発↠願、終↢往生↡耶。

^こたふ。 しょどうなり。 *あるがいはく、 「ぼんしょうにんはみな提心だいしんおこす。 そのちゅうぼんにんは、 もとこれ小乗しょうじょうなりといへども、 のち*大心だいしんおこしてかのくにしょうずることを。 かの*ほんじゅうによりてしばらく*しょうしょうす。 そのぼんにんは、 大心だいしん退たいせりといへども、 しかもその勢力せいりきなほありて、 しょうずることを」 と。 *おん (窺基) これにおなじ。

。諸師不同ナリ。有ルガ、「九品生皆発↢菩提心↡。其中品、本雖↢是小乗ナリト↡、後シテ↢大心↡得↠生ズルコトヲ↢彼↡。由リテ↢彼本習↡暫↢小果↡。其下品↠退セリト↢大心↡、而勢力猶在リテ↠生ズルコトヲ。」慈恩同↠之

^*あるがいはく、 「ちゅうぼんはただ*福分ふくぶんによりてしょうじ、 じょうぼん福分ふくぶん*道分どうぶんしてしょうず」 と。 道分どうぶん」 とは、 これ提心だいしんぎょうなり。

ルガ、「中・下品但由リテ↢福分↡生上品シテ↢福分・道分↡生ズト。」 道分者是菩提心行也。

 ^ふ。 提心だいしんしょ異解いげあるがごとく、 じょうねがしんもまたどうなりや。

。如↢菩提心諸師異解スル↡、欣↢浄土↡心亦不同ナリ耶。

^こたふ。 だい提心だいしんにはせつありといへども、 じょうねががんは、 ぼんにみなすべし0932

。大菩提心ニハ↠有リト↢異説↡、欣↢浄土↡之願九品皆応↠具

 ^ふ。 もしじょうごうがんによりてほうば、 ひとの、 あくつくりてごくねがはざるがごとき、 かれごくほうべからずや。

。若浄土業依リテ↠願↠報、如↢人ルガ、不レバ↠願↢地獄↡、彼不↠応カラ↠得↢地獄果報↡。

^こたふ。 つみほうりょうなれども、 じょうほうりょうなり。 二果にかすでにべつなり。 *いんなんぞ一例いちれいせんや。

。罪浄土。二果既ナリ。二因何一例セムヤ

^¬大論だいろん¼ (大智度論)だいはちにいふがごとし。 「罪福ざいふくにはじょうほうありといへども、 ただがんをなすものは、 しょうふくしゅすれども、 願力がんりきあるがゆゑにだいほう一切いっさいしゅじょうはみならくんとねがひて、 ねがふものはなし。 このゆゑにごくねがはず。 これをもつてのゆゑに、 ふくりょうほうあれども、 罪報ざいほうりょうなり」 と。

↢¬大論¼第八フガ↡。「罪福ニハ↠有リト↢定報↡、但作↠願、修スレドモ↢小福↡有ルガ↢願力↡故得↢大果報↡。一切衆生1094↠得ムト↠楽↢願↠苦↡。是不↠願↢地獄↡。以テノ↠是、福↢無量報↡罪報。」

 ^ふ。 なんらのほうをもつてか、 世々せせ*だいだいがんぞうじょうして忘失もうしつせざる。

。以テカ↢何等↡、世々増↢長シテ大菩提↡而不↢忘失↡。

^こたふ。 ¬十住じゅうじゅうしゃ¼ のだいさんにいはく、

。¬十住婆¼第三

^ないしんみょう転輪てんりんじょうおうくらいうしなはんも、
これにおいてなほもうし、 諂曲てんごくぎょうずべからず。

「乃至失ハム↢身命転輪聖王
↠此不↠応カラ妄語↢諂曲

^よくもろもろのけん一切いっさいしゅじょうたぐいをして、
もろもろのさつしゅにおいて、 ぎょうしんしょうぜしめよ。

↧諸世間一切衆生ヲシテ
↢諸菩薩衆シテ↦恭敬

^もしひとありて、 よくかくのごとき善法ぜんぽうぎょうずるは、
0933*じょうだいがんぞうじょうすることをん」 と。

リテ↠人能ズルハ↠是クノ之善法
世々↣増↢長スルコトヲ無上菩提↡」

^もんちゅうにまたじっしゅしつ提心だいしんほうあり。 るべし。

文中亦有↢二十種失菩提心法↡。可↠見

おうじょうようしゅう かんじょう

 

延書の底本は京都府青蓮院蔵承安元年書写本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし訓はかなり異なる。
尽第四門半 本書の巻上が大文第四の半ばまでであるという意。
事理の業因 具体的な相を観ずる事観と、 無相の真理そのものを観ずる理観。
予がごとき頑魯のもの 私 (源信) のようなかたくなで愚かな者。
備へん 底本 (青蓮院本) の左訓には 「備へよ」 とある。
業因 果をもたらす因となる行為。 ここでは地獄に堕ちる原因となる悪行をいう。
眷属 ここでは付属の意。
 底本 (青蓮院本) には 「雨」 とある。
 かめ。
骨肉狼藉たり 罪人の骨や肉があたりに散乱している。
自余の九処 泥処でいしょごくしょ以外の九つの別処。
 この段の典拠となっている ¬法苑珠林¼ 巻七の黒縄地獄の文では 「絣」 の字を用いている。
異処 別処に同じ。 大地獄に付属する特別の小地獄。
この四字 「名畏鷲処」 の四字。
 底本 (青蓮院本) には 「腹」 とある。
刀葉林 刀のように鋭くとがった葉をもつ木々。
欲心熾盛にして 愛欲の思いがはげしくさかんであり。
 底本 (青蓮院本) には 「腹」 とある。
頭を叩きて 頭を地につけてという意。
閻羅人 閻羅王の配下の獄卒 (地獄の鬼)。
 →愛欲あいよく
風黄冷雑 風病と火病 (黄) と水病 (冷) と地病 (雑)。
 長さの単位。 一肘は人のひじの長さ (約一尺六寸 ) に相当する。
十六の別処 ¬しょうぼうねんぎょう¼ では、 だいきょうかん地獄の別処を十八とする。
生蘇 若草。
分荼離迦 梵語プンダリーカ (puṇḍarīka) の音写。 びゃくれんのこと。
所依の処 つかまるところ。 寄るべ。
半中劫 一中劫の半分。 一中劫は二十小劫にあたる。 →こう
閻魔羅王 →えんおう
増劫・減劫 じょうじゅうくうの四劫のうちの住劫じゅうこうにおいて、 人間の寿命が百年に一歳ずつ増加して、 十歳より八万歳に至る期間を増劫といい、 百年に一歳ずつ減少して、 八万歳より十歳に至る期間を減劫げんこうという。
一掬の水 両手いっぱいの水。
 隔壁。 境界をへだてる仕切りの壁。
簸り 除き去ること。
三熱… 炎熱のはげしさを三段階に分けたもの。
他化自在天処 他化たけ自在天じざいてんのこと。
四天下処 てんのこと。 →だいしゅう
欲界六天 欲界に属するろくよくてん
無間獄 無間は梵語アヴィーチ (avīci) の漢訳。 阿鼻あびごくのこと。
因果を撥無し 因果の道理を否定して。
 乾肉。
 底本 (青蓮院本) には 「困」 とある。
大那落迦 那落迦は梵語ナラカ (naraka) の音写。 ごくのこと。
出園 外苑。
死屍糞泥 死体と糞の泥沼。
黒黧 黧は色あせて黄色気味を帯びた黒色。
脊胎 背中と腹。
鉄設柆末梨林 設柆末梨は梵語シャールマリー (śālmalī) の音写で、 とげの意。 鉄の刺の林。
周旋して回復す ぐるぐると回りめぐる。
なんの所須… どんな望みがあるのか。
つひに覚知… もはや何の感覚もない。
先世…出でず →補註6
経論 ¬はんぎょう¼ ¬だい智度ちどろん¼ ¬しゃろん¼ 等に八寒地獄が説かれている。
閻魔王界 えんおうの世界。
屠殺せるもの… →補註8
丈夫 主人。
祭を設くる もつを捧げて祈祷する。
不浄に説法せしもの 自己の名誉や利益のために教法を説いたもの。
蚓蛾 みみずと蛾。
 墓場。
焼屍の火 死骸を焼く火。 異本には 「焼火の屍」 とある。
 ろば。
 らば。
一時 約二時間。
七時 約十四時間。
経論 ¬しょうぼうねんぎょう¼ ¬ろっみつきょう¼ ¬法華ほけきょう¼ 等。
天の鼓 とうてんの善法堂にある太鼓。 帝釈天たいしゃくてんしゅと戦う時、 おのずから音を出すという。
怖畏周章して 恐れてあわてふためいて。
 底本 (青蓮院本) には 「脘」 とある。 次の 「腕」 も同じ。
周帀して弥布せり 回りめぐってくまなく分布している。
三尋半 尋は長さの単位。 一尋は八尺 (周尺) で約180センチメートル。
禅経の偈 鳩摩羅くまらじゅう訳 ¬ぜんようきょう¼ ではなく、 ¬法苑ほうおん珠林じゅりん¼ あるいは ¬しょきょうようしゅう¼ に引かれる ¬禅秘要経¼ 取意の文か。
 くまたか。
 とび。
 ふくろう。
究竟不浄 不浄の極致。
 脂粉。
鹿杖を… ¬じゅう誦律じゅりつ¼ 巻二にみえる伝説。 仏が不浄観を説くのを聞いて、 比丘びくたちがえんの心を懐き、 鹿杖梵士を雇って、 自らを殺させた。 その数は六十人に及んだという。
大黄湯 薬草の一種。
外苦 底本 (青蓮院本) には 「行苦」 とある。
無上の尊 この上なく尊くすぐれた方。 仏のこと。
仙に登り 仙人になって天に登ること。
空にもあらず… 五神通を具足した四人兄弟の婆羅ばらもんが、 各七日後に死期が迫ったのを知り、 これを免れようとして、 一人は海中、 一人はしゅせん、 一人はくう、 一人は市中に隠れることにしたが、 釈尊はその中の一人の死の報を聞いて、 生老しょうろう病死びょうしの四苦を免れることはできないと説き、 この偈をよんだという。
掣電 電光。
 口に食物をふくむこと。
五衰の相 天人五衰のこと。 諸天が死の直前に示す五種の衰亡の相。 五種の相については異説もある。
殊勝殿 善見ぜんけん宮城くじょう内の宮殿。
釈天 たいしゃくてんのこと。
衆車苑・粗渋苑・雑林苑・歓喜苑 善見宮城の外にある周千じゅんの庭園。
劫波樹 劫波は梵語カルパ (kalpa) の音写。 歓喜苑にあるという衣服や装身具などを出す樹。
曼陀枳尼 梵語マンダーキニー (Mandākinī) の音写。 語源的に解釈すると、 ゆるやかに流れるという意。 善見宮城にある池の名。
四種の甘露 諸天が用いる不死の効能がある仙酒・霊薬のことで、 青・黄・赤・白の四種があるという。
五妙の音楽 きゅうしょうかくの五音階にかなった天上のたえなる音楽。
馬頭の山沃焦の海 馬頭山は沙山しゃせんの奥にあるという山。 その形は馬の頭に似ているという。 沃焦は大海の底にあって水を吸うという石の名。 阿鼻あび地獄の火によってこの石は常に熱せられているという。 沃焦海はこの石がある海のこと。
余の五の欲天 六欲天ろくよくてんのうちの忉利天とうりてん以外の五つの天。
非想 しきかい最上層にあるそう非非ひひ想処天そうしょてん
一篋 一篋四蛇の喩えによっていう。 人間の身体がすいふうの四大の結合より成っていることを、 一つの箱に四蛇を収めたのに喩える。
四の山 生老しょうろう病死びょうし四苦しくを山に喩える。
癰を洗ひ… 癰 (はれもの) の膿を洗い流し、 眼に刺さったさかまつげを取り出しただけで、 楽になったと思っている。
正法念経の偈 ¬しょう法念ぼうねんぎょう¼ にこの文はない。 ¬増一ぞういつごんぎょう¼ に出る文。
枷鎖の業 くびかせやくさりで悪道にしばりつけるような行為。 悪業。
 かいのこと。
 布施ふせのこと。
疥者 疥は皮膚病の一種。
色族 才色と閥族。
利衰の八法 八風のこと。 人の心を動揺させる八種の状態。 利 (利得)・衰 (損失)・毀・誉・称・譏・苦・楽の八つ。
信戒施聞慧慚愧 七財。 仏道修行に必要な七種の財産。
五時 初夜・中夜・後夜ごやの夜の三時に、 日没にちもつじんじょうの二時を加えて五時としたものか。
 さとりの世界にわたること。
黒縄活地獄 こくじょうごく等活とうかつごく
所須の欲 求めるもの。
 異本には 「駛」 とある。
 真理。
頼和羅の伎声 頼和羅のことを歌った詩頌。 頼和羅とは、 梵語ラーシュトラパーラ (Rāṣṭrapāla) の音写。 古代中インドのクル国の長者の子と伝えられる。 ¬ぶんりつ¼ によれば、 少欲知足で物に貪着することがなく、 釈尊は弟子たちに、 彼のようにむさぼりを離れよと誡めたといわれる。
毒蛇の篋 いっきょうじゃの喩えによっていう。 人間の身体がすいふうの四大の結合により成っていることを、 一つの箱に四蛇を収めたのに喩えたもの。
丘塚 墓。
四非常の偈 ¬仁王にんのうきょう¼ 巻下にある無常・苦・くう・無我を説いた四言三十二句のじゅ。 四無常偈ともよばれる。
諸行は… この偈は 「無常偈」 また 「雪山せっせん」 とよばれ、 「いろは歌」 の原形といわれる。
祇園寺の無常堂 おんしょうじゃの西北の角にあったという無常院。 病者に安らかな臨終を迎えさせるための施設。
三禅に… →三禅さんぜんらく
雪山の大士 ¬はんぎょう¼ に説かれる釈尊の前生。 雪山童子ともいう。 帝釈天たいしゃくてんがこの童子を試そうとしてせつに身を変え、 「無常偈」 (雪山偈) の前二句を唱えたところ、 童子は後半の二句を聞くために自らの身を投げて羅刹に与えたという。
貪瞋痴等の惑業 貪欲とんよくしん愚痴ぐちなどの煩悩ぼんのうのこと。 →三毒さんどく
法体 もの。 存在。
施鹿林 鹿ろくおんのこと。
仙駕に陪する 仙人の車につき従う。 仙人の位に名を列ねること。
宗親戚属 兄弟や親族。
自調自度 自らの心を調え、 自分ひとりだけのだつをめざすこと。
 小乗の教え。
不浄等の観 不浄観などの観法。 不浄観は身や三界さんがいの不浄を観じて貪欲とんよくを離れる観法。 じょう心観しんかんの一。
事務を貪営して 俗事をいとなみ。
施と戒と禅 布施ふせかいぜんじょうのこと。
九の処… 両眼・両耳・両鼻孔・口・両便道の九つの穴。 瘡門そうもん九孔くくなどともいう。
 竹囲いの米倉。 あるいは竹製のざるの意か。
痰癊 痰はたん、 癊は胸の病。 ここでは、 たんの意。
貪瞋痴 貪欲とんよくしん愚痴ぐち。 →三毒さんどく
算分喩分 数量や比喩ひゆで表し示すこと。
安国の抄 以下は延寿えんじゅの ¬万善まんぜん同帰集どうきしゅう¼ に引く ¬安国あんこくしょう¼ の文によって十の楽を挙げる。
聖衆来迎の楽 浄土の菩薩衆が臨終に迎えに来るという楽しみ。 →来迎らいこう
風火 だいのうちの風大ふうだいだい
地水 だいのうちのだいすいだい
運心 (浄土に) 心を寄せること。
本願 ここでは、 来迎らいこういんじょうを誓った第十九願のこと。
大悲観世音 →かんおんさつ
百福荘厳 百の福徳によってかざられた手。 三十二相の一々は百福でかざられているという。
蓮台結跏 浄土のれんの台座にけっ趺坐ふざすること。
伝記 慶滋保胤よししげのやすたね (931頃-1002) の ¬ほんおうじょう極楽ごくらく¼ などを指すものか。
大梵王宮 色界しきかい初禅天しょぜんてんの主である大梵王の住する世界。
輪転無際にして かぎりなくりんを繰り返すことを回転する車輪に喩えていう。
盲者 →補註10
尽虚空界 際限のない広大な空間。
転妙法輪 妙法輪を転ずること。 すぐれた仏の教えを説くという意。
 異本には 「駛」 とある。
金山王 仏身を金山に喩えていう。
流璃 瑠璃。 青色の宝玉。
普賢の願海 普賢菩薩のたてた海のように広大な十種の誓願。
身相神通の楽 すぐれたそうごうと神通力が得られるという楽しみ。 →神通じんずう
一尋 尋は長さの単位。 両手を左右に広げた時の長さを一尋とする。
第六の天 他化たけ在天ざいてんのこと。
乞丐の… →補註8
只尺 咫尺。 きわめて近い距離。
自在無礙 (往来することが) 自由自在であること。
この界 しゃ世界を指す。
四静慮 静慮は梵語ドヤーナ (dhyāna) の漢訳。 ぜんじょうのこと。 色界しきかいの四禅定。 →ぜん
任運生得の果報 生れながらにおのずと得られた果報。
天眼耳通 天眼通・天耳通。 →六神通ろくじんずう
五妙境界の楽 げんぜつしんの五つの感覚器官の対象であるしきしょうこうそくの五境が清浄しょうじょうですぐれているという楽しみ。
坦然平正 どこまでも平らであるさま。
恢廓曠蕩 はてしなく広大であること。
虎魄 はくに同じ。
車 しゃに同じ。
馬瑙 のうに同じ。
不共 じゅうはち不共ふぐほうのこと。
宮商 きゅうしょうかくいん (五種の音階) を略していったもの。 →いん七声しちせい
色力 身体の力、 勢い。
法に応ぜる妙服 →応法おうほうみょうぶく
馨香芬烈 香気をつよく放っていること。
中時晡時 中時は日中、 晡時は日没にちもつ。 →ろく
二種の観経 ¬双観 (巻) 経¼ (¬無量寿経¼) と ¬観無量寿経¼ のこと。
快楽無退の楽 きよらかな快楽がつきないという楽しみ。
 経名不明。
他方の大士 他方世界より来至した菩薩たち。
新生の人 新たに往生した者。
 だいしんのこと。
八功の池 はっどくすいの浴池。
心事相応 心に思うことと現実とが一致していること。
引接結縁の楽 縁ある人々を浄土に導き寄せるという楽しみ。
志肝胆を… 懸命に努力しても、 水を飲み豆を食うという貧しい生活しかできない。
天眼・天耳 天眼通・天耳通のこと。 →六神通ろくじんずう
神境通 神足通のこと。
安楽刹 刹は梵語クシェートラ (kṣetra) の音写で、 国土の意。 安楽国のこと。 →安楽あんらく
龍樹の偈 実際には天親てんじん菩薩の ¬浄土論¼ の偈。
聖衆倶会の楽 浄土の菩薩衆に会えるという楽しみ。
無常大菩提 この上ない仏のさとり。
 真如しんにょのこと。
仏家 仏の浄土。
龍樹の讃 ざいの ¬浄土論¼ 巻中に引く 「さん観音かんのんせいさつ」。
観音勢至は… ざいの ¬浄土論¼ によってりゅうじゅ菩薩の讃を引く。
般泥洹 にゅうめつすること。
無価の衣 →無価むげ
道化を宣布す (阿弥陀仏の教えを十方世界のしゅじょうに) 説いて教化する。
願はくは…往生せん 異本にはこの文はない。
見仏聞法の楽 阿弥陀仏を見て、 その説法を聞くという楽しみ。
四無量三解脱 四無量しむりょうしんさんだつもんのこと。
盲ひたる亀の… もうぼくの喩え。 大海中に住む盲目の亀が、 百年に一度、 海上に頭を出し、 そこに流れてきた板のあなに出遇うことがきわめて困難であるということ。
儒童 雪山せっせんどうのこと。
迦陵頻 迦陵かりょう頻伽びんがのこと。
梵の声 仏のきよらかな声。
記を授く →じゅ
 に同じ。
法に名字なきこと すべては因縁いんねんによって生起して仮に存在するもので、 名称によって概念的にとらえられるような実体はないということ。
随心供仏の楽 心のままに仏をようすることができるという楽しみ。
食時をもつて 食事の時までにの意。
増進仏道の楽 おのずから仏道を進みゆくという楽しみ。
身子等の… →乞眼の因縁
智分 智慧ちえのかぎり。
我我所 我は自己自身、 我所は自己の所有するもの。
妙法輪を転じ この上なくすぐれた仏の教えを説き。 仏の説かれた教えは、 しゅじょう煩悩ぼんのうをうちくだき、 次々とひろまってゆくので、 これを車輪に喩えていう。
十往生経 底本 (青蓮院本) には 「十方往生経」 とある。 →十往生経じゅうおうじょうきょう
薬王品 「薬王やくおうさつ本事ほんじぼん」 第二十三。
光明 →こうみょう真言しんごんぎょう
顕密教 けんぎょう密教みっきょう
出世の法要 迷いの世界を離れ出る肝要な方法。
九十五種の邪道 →九十五くじゅうごしゅどう
無眼の人・無耳の人 →補註10
摂取して… →摂取せっしゅしゃ
三千界 三千大千さんぜんだいせんかいの略。
末後法滅の時 行と証が欠けて教えのみがのこる末法まっぽうの時代が一万年続いた後は、 その教えすらもなくなる法滅ほうめつの時代に入るという。 →三時さんじ
観音勢至は… 観音・勢至がしゃ世界で修行し、 浄土にしょうしたという説は、 ¬大経¼ (下) に見える。
玄奘三蔵のいはく… 以下に引用される文は道世どうせい編の ¬しょきょうようしゅう¼ 巻一および ¬法苑ほうおん珠林じゅりん¼ 巻十六に見える。
旧き経論 やく (げんじょう以前の翻訳) の経論のこと。 ここでは鳩摩羅くまらじゅう訳 ¬仁王にんのうきょう¼、 真諦しんだい訳の ¬摂大乗しょうだいじょうろん¼ 等を指す。
七地 ¬諸経要集¼ 本文は 「十地」 になっている。
新論 新訳 (玄奘以降の翻訳) の論のこと。 ここでは ¬瑜伽師地ゆがしじろん¼ ¬ぶつきょうろん¼ 等を指す。
中国 ここでの中国はインドの意。
内外 率天そつてん内院ないいんろくの住処 (弥勒浄土・兜率浄土)、 いんは天衆の住処。
引摂の願 第十九願のこと。
難易の二の門 難行道なんぎょうどう行道ぎょうどうのこと。
相伝にいはく… 最澄さいちょう (766または767-822) の ¬けん戒論かいろん¼ の取意の文。
流沙 中国西部からインドに至る間の砂漠。 現在のタクラマカン砂漠。
竜華会 ろく菩薩がさとりをひらいた後に行う三度の説法のこと。 →りゅうさん
上生心地 ¬上生じょうしょうきょう¼ と ¬しんかんぎょう¼。
 退け捨てること。
非梵行 梵は清浄しょうじょうの意。 清浄でない行為。
五十七倶胝六十百千歳 ろく菩薩出世の年数については経論の間に異説があるが、 五十六億七千万とする ¬*さつ処胎しょたいきょう¼ の説が一般的である。
対揚の首 聴衆の第一。
余方 極楽以外の国土 (を願うこと)。
異執 誤った執着の心。
能礼所礼… かく大師円仁えんにんの ¬ほっ常行じょうぎょう三昧ざんまい礼仏文らいぶつもん¼ の文といわれる。
無上の意 だいしんのこと。
真際 究極的な真実。
功徳…具して 親鸞聖人は 「功徳円満せり。 義つぶさにかくのごときらの六種の功徳による」 (行文類訓) と読まれた。
一百倶胝の界 三千大千さんぜんだいせんかいに同じ。
六時の礼法 ¬おうじょう礼讃らいさん¼ のこと。
観虚空蔵菩薩仏名経に… ¬かん空蔵くうぞうさつきょう¼ のことか。 ただし引用に該当する文ははい。
十住婆沙の第三 りゅうじゅ菩薩造の 「ぎょうぼん」 のこと。 なお、 現行の ¬十住じゅうじゅう毘婆びば娑論しゃろん¼ では、 「易行品」 は巻五にある。
抄す 諸本には次下に 「つぶさには別抄にあり」 とある。
真言教の仏讃 とう不空ふくう訳 ¬りょう寿じゅ如来にょらい観行かんぎょうよう¼ の中の 「阿弥陀如来根本陀羅尼だらに」 などを指す。
阿弥陀の別讃 曇鸞どんらん大師の ¬さん阿弥陀あみだぶつ¼、 善導ぜんどう大師の ¬おうじょう礼讃らいさん¼ 等を指すか。
有淪を傾く 迷いの世界である三界さんがいを離れるの意。
浄土論 曇鸞どんらん大師の ¬論註¼。
饒益有情戒 →三聚さんじゅじょうかい
縁因仏性 智慧ちえをおこす縁となるすべての善根ぜんごんどく
摂律儀戒 三聚さんじゅじょうかいの一。
正因仏性 すべての存在に本来そなわっている真如しんにょの理。
摂善法戒 三聚さんじゅじょうかいの一。
了因仏性 真如しんにょの理を照らしあらわす智慧ちえ天台てんだい宗では縁因仏性・正因仏性・了因仏性の三因仏性説を立てる。
一色一香も… すべてのものはことごとくちゅうどう実相じっそうの理のあらわれであるという意。 天台大師智顗ちぎの ¬摩訶まかかん¼ に見える語。
塵労門 塵労は心を疲れさせるものの意。 煩悩ぼんのうの異名。
四弘誓 四弘しぐ誓願ぜいがんのこと。
順理の発心 普遍的な真理と合致するだいしんをおこすこと。
所得なし 対象を認識しない。
始行の衆生 仏道修行を始めたばかりの者。
二の四弘 縁事・縁理の四弘しぐ誓願ぜいがん
苦集二諦 苦諦と集諦じったい。 →たい
道滅二諦 道諦と滅諦。 →たい
自他… 「自他法界同じく利益し、 ともに極楽に生じて仏道を成ぜん」
四弘願 四弘しぐ誓願ぜいがんのこと。
無尽法界 すべての存在世界。
初中後夜 初夜・中夜・後夜のこと。 →ろく
本縁 過去の因縁いんねん
婬欲 ここでは三毒さんどくの一の貪欲とんよくのこと。
同論にいはく… ¬だい智度ちどろん¼ からの引用とするが該当する文はない。
種性 さとりの種。
悪取空 空の道理を誤って理解し、 とらわれること。
本有 本来そなわっているという意。
悲願 慈悲の願。
慈童 ¬雑宝蔵ぞうほうぞうきょう¼ 巻一に説く釈尊の本生ほんしょう。 釈尊は過去世に長者の子、 慈童女として生れ、 すべての苦しみ悩む者を教え導こうと誓って、 死後、 そつに生れたという。
一把の麨 ひとにぎりの麨。 麨は炒った麦をひいた粉。 むぎこがし。
深般若波羅蜜多 深い智慧ちえの意。 →般若はんにゃ波羅はらみつ
方便善巧 たくみなてだて。
善事を同ぜん 四摂ししょうのうちのどうのこと。
常途 いつも。 不断。
渠溝 みぞ。
 底本 (青蓮院本) には 「覚」 とある。
新学 仏道修行を始めたばかりの者。
法位 退たいてんの位。
毀呰 ここでは非難するというほどの意。
有所得の執 一方に偏った誤った見解にとらわれること。
我人寿者命者 我は常住なる自我、 人は他と区別される主体、 寿者は生命を所有する個体、 命者は生命を持続してゆく個体。
無所有 所得しょとくに同じ。
断常 断滅と常住。
有作・無作 有作はすべての事物を作られたものとすること、 無作はねんにあるものとすること。
浄戒品 現行の ¬仏蔵経¼ では 「浄法品」。
四果の向・四果 →こう四果しか
大乗の心 大乗のだいしん
小乗の極果 阿羅漢果のこと。 →阿羅あらかん
大乗の初心 はじめて無上菩提心をおこすこと。 →提心だいしん
五逆の初業 五逆罪ごぎゃくざいを犯すもととなるというほどの意。
寿命 底本 (青蓮院本) には 「寿者」 とある。
四教の菩提心 天台てんだい宗ではぞうつうべつえんの四教にそれぞれ菩提心があると説く。
五欲相応の非理の作意 よくにもとづく、 道理にはずれた心のはたらき。
瓔珞 飾り。
大福聚 大いなるどくの集まり。
色方分 すがたかたち。
畢竟 究極的なさとり。
弥伽大士 善財童子が第五番目に訪れたぜんしき
三千界 三千大千さんぜんだいせんかいの略。
初めの菩提心 天台てんだい宗でいう四教 (ぞうつうべつえん) のうちの蔵教の菩提心。
第二第三第四の菩提心 順に通教つうぎょう別教べっきょう円教えんぎょうの各菩提心。
三蔵教 蔵教 (小乗教) のこと。
界内 ここでの界は三界さんがいの意。
別時の意 →べつ時意じい
染浄の二の心 煩悩ぼんのうのけがれに染まった心と清浄しょうじょうな心。
前念・後念 前の瞬間、 後の瞬間。
料簡 (菩提心に関する種々の問題を) 問答を設けて解釈し、 判断すること。
また 「又」 の字。 底本 (青蓮院本) には 「人」 とある。
苦海朝宗 苦しみが集まり満ちていることを、 多くの河川の水がすべて大海に集まることに喩えていう。
余の経論 ¬観経¼ および天親てんじん菩薩の ¬浄土論¼ のこと。
経論 ¬大経¼ および天親菩薩の ¬浄土論¼ のこと。
大荘厳論に… 引用は延寿えんじゅ (904-975) の ¬まんぜんどうしゅう¼ 巻中に引く ¬だいしょう厳論ごんろん¼ の文によったもの。
あるがいはく… 引用はじょう影寺ようじおん (523-592) の ¬かんぎょう義疏ぎしょ¼ に見える説。
あるがいはく… 善導ぜんどう大師の 「玄義分」 および ¬安養あんにょうしゅう¼ 所引の龍興りゅうこう ¬観無量寿経記¼ の文によったもの。
福分 世間的な福徳をもたらす五戒・十善などのぜんごん。 →かい十善じゅうぜん
道分 さとりの果をもたらす行業ぎょうごう
二因 往生浄土の業因と堕地獄の業因。
大菩提の願 この上ないさとりを求め願う心。 提心だいしんのこと。
無上菩提の願 大菩提の願に同じ。
底本は◎京都府青蓮院蔵承安元年書写本。 Ⓐ神奈川県最明寺蔵平安時代書写本、 Ⓑ大阪府出口順得氏蔵建保四年刊本(上巻本末)、 愛知県専光寺蔵建保四年刊本(中巻本末・下巻本末)、 Ⓒ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)建長五年刊本、 Ⓓ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓔ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 なお、 別の読み方がされている右訓は割愛した。
→ⒷⒸ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒷⒸⒹⒺ
 Ⓐになし
→Ⓔ
→Ⓔ
 Ⓐになし
可還等活 ⒷⒸⒹⒺになし
其寿五百歳 ◎等活五百歳人間当千六百廿万億才と註記
→ⒷⒸⒹⒺ六[亦]
→Ⓔ
→Ⓒ
→Ⓐ如[此]
→Ⓓ如[如]
 ⒹⒺになし
 Ⓓになし
 ⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸ
→Ⓔ
→ⒹⒺ
 Ⓓになし
→Ⓔ
→ⒹⒺ昔[大火炎]
 ⒹⒺになし
→Ⓐ説[之]
→Ⓐ地[上]
→Ⓓ
→Ⓓ
→ⒷⒸⒹⒺ伽[論]
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→Ⓐ地[地]
 ⒷⒸになし
→ⒷⒸ
→ⒹⒺ親[族眷]
→ⒶⒷⒸ
→ⒹⒺ有[之]
応例→ⒷⒸⒹⒺ例応
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
此地獄寿一千歳 ◎黑縄一千歳人間当一万二千九百六十万億才と註記
→Ⓓ
 ⒸⒹになし
名畏鷲処或本无此四字 Ⓐになし
→ⒷⒸ
或本无此四字 ⒷⒸⒹⒺになし
→◎
→Ⓓ
→ⒶⒹⒺ此[中]
両々→ⒹⒺ雨山
 Ⓐになし
→ⒹⒺ
→ⒹⒺ伽[論]
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒹⒺ
→ⒹⒺ中[有]
→ⒶⒷⒸⒹ
→Ⓐ無[生]
→Ⓔ
広説 ⒹⒺになし
→ⒷⒸⒹⒺ
→ⒷⒸⒺ
其寿二千歳 ◎衆合二千才人間當十万三千六百八十万億才と註記
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→Ⓐ
→Ⓓ
→ⒹⒺ
→ⒷⒸ身[分]
→ⒶⒷⒸ
寿四千 ⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹ
 ⒷⒸⒹⒺになし
→ⒹⒺ此[地]
→ⒷⒸ
寿四千歳 ◎叫喚四千才人間當八十二万九十四百八千万億才と註記
→Ⓐ飲[食]
→ⒷⒸⒺ
→Ⓐ四[病]
→ⒷⒹ
→Ⓐ
→Ⓓ
→Ⓐ此[中]
→ⒹⒺ
→ⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
其寿八千歳 ◎大叫喚八千才人間當六百六十三万五千八百四十万億才と註記
→ⒷⒸ卒[前]
→Ⓑ
云々 ⒷⒸⒹⒺになし
→ⒹⒺ[二]眼
→ⒹⒺ
雪霜→ⒶⒷⒸⒹⒺ霜雪
他化→Ⓓ化他
此獄寿 ◎焦熱万六千才人間當五千才三百八万六千七百廿万億才と註記
→Ⓒ
→Ⓐ言[云]
汝疾速来汝疾速来→ⒹⒺ汝々疾々速々来々
→ⒶⒹⒺ ⒷⒸになし
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
瑜伽大論→ⒶⒷⒸⒹⒺ大論瑜伽論
→Ⓐ
→Ⓑ
→◎Ⓐ(◎ハラと右傍註記)
鋒利→Ⓐ利鋒
 ⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹ
→ⒹⒺ
 Ⓐになし
取意略 Ⓐになし
取意 ⒷⒸⒹⒺになし
 ⒷⒸⒹⒺになし
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ億[千]
→ⒹⒺ経[中]
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→Ⓐ言[云]
→Ⓔ
 ⒹⒺになし
→Ⓔ
 Ⓓになし
已上 ⒸⒹⒺになし
 Ⓐになし
 ⒹⒺになし
→Ⓔ
 ◎ヲドルと右傍註記→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→◎ⒶⒹ
→ⒹⒺ
 Ⓐになし
→Ⓐ億[四]
仏三昧経→Ⓒ三昧経仏
→Ⓔ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
 ⒷⒸになし
→ⒶⒹⒺ[前]七
 ⒹⒺになし
→ⒶⒷⒹ
→ⒹⒺ[既]説
 ⒹⒺになし
取意 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
 ⒶⒹⒺになし
→Ⓐ之[人]
→Ⓐ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒷⒸⒹⒺ此[中]
→Ⓐ
→Ⓔ婆[叵]
→ⒷⒸ
 ⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ[河]令
→ⒷⒸ出[求]
→ⒶⒷⒸⒹⒺ足[之]
→ⒹⒺ
 ⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ足[之]
→Ⓔ
→Ⓐ即[梨]
→Ⓒ
欲下→Ⓐ
→Ⓐ其[体]
→Ⓐ
→ⒷⒸⒹ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓒ
→Ⓔ切[悪業]
→Ⓔ
 Ⓐになし
→Ⓒ
→Ⓓ
 ⒷⒸⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
23字 ⒷⒸになし
 ⒹⒺになし
千踰→Ⓐ廿瑜
 Ⓔになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
→ⒹⒺ命[者]
→Ⓐ→ⒹⒺ
→Ⓐ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒹⒺ
屍火→ⒹⒺ火屍
 ⒹⒺになし
 ⒹⒺになし
 ⒷⒸⒹⒺになし
→ⒹⒺ
→ⒷⒸⒺ→Ⓓ
 ⒹⒺになし
→Ⓓ或[有]
 Ⓐになし
→Ⓐ
→Ⓐ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓑ
 ⒹⒺになし
20字 ⒷⒸになし
→ⒹⒺ
19字→ⒷⒸ一中劫
百劫 ⒹⒺになし
→ⒹⒺ至[百]
已上諸文散在経論 ⒷⒸになし
→Ⓔ経[上]
→Ⓐ[一]二
→ⒹⒺ
 ⒸⒹⒺになし
→Ⓔ
→ⒶⒸⒹⒺ
→Ⓔ
 ⒶⒸⒹⒺになし
→Ⓔ
 Ⓒになし
→Ⓔ
 Ⓐになし
 Ⓐ止観九肝緑豆心如赤豆腎如烏豆脾如栗と下欄註記
→Ⓔ
→Ⓐ肝[臓]
→Ⓐ
→ⒸⒺ
→ⒹⒺ十[五]
→Ⓐ
 ⒸⒹⒺになし
 ⒶⒷⒸⒹになし
 ⒶⒷⒸⒹになし
→ⒸⒺ[又]縦
→ⒸⒹ
 Ⓒになし
→ⒹⒺ意[体]
→ⒹⒺ
→Ⓓ
→ⒶⒷⒸⒹ
已上 ⒹⒺになし
→Ⓒ
→Ⓓ
→ⒹⒺ
→ⒸⒹⒺ Ⓐになし
→Ⓐ
→Ⓐ
→ⒸⒹⒺ
涅槃→ⒶⒸⒹⒺ
必有→ⒹⒺ有必
今当→ⒸⒹⒺ当念
→ⒶⒹⒺ
→Ⓔ
 ⒶⒸⒹⒺになし
→Ⓐ
→Ⓐ上[取意]
略抄→ⒸⒹⒺ取意
 Ⓐになし
→Ⓒ数[数]
→Ⓓ
→Ⓔ
→Ⓓ
→ⒹⒺ
已上 ⒹⒺになし
 Ⓔになし
→ⒹⒺ
已上天道 Ⓐになし
避遁→Ⓐ遁避
→ⒶⒸⒹ
 ⒶⒸⒹⒺになし
→ⒹⒺ
→Ⓐ
→ⒹⒺ
→◎Ⓒ
→ⒶⒸⒹⒺ
→Ⓐ
 Ⓓになし
 ⒹⒺになし
→Ⓓ
→Ⓓ
→ⒶⒸⒹⒺ
洞然→Ⓔ銅燃
→Ⓐ
→Ⓔ
→ⒹⒺ愧[不放逸]
→Ⓔ
→Ⓒ
→ⒶⒹ
→ⒹⒺ
→ⒸⒹⒺ縄[等]
剥刺→ⒹⒺ刺剥
→Ⓒ→ⒹⒺ鼻地
→Ⓓ
→ⒹⒺ及[其]
→ⒹⒺ
屎尿→Ⓒ尿屎
→Ⓔ
→ⒶⒸⒹⒺ
→Ⓐ
→ⒹⒺ清[浄]
→Ⓐ業[因]
→Ⓐ河[駄]
 Ⓓになし
→ⒹⒺ空[無我]
→Ⓒ
→ⒶⒹ
→ⒹⒺ
→Ⓔ
 ⒹⒺになし
→ⒸⒹⒺ
→ⒹⒺ
→Ⓒ
→ⒸⒹⒺ
→ⒶⒸⒹⒺ
→Ⓔ
→ⒶⒹ→Ⓔ
→Ⓐ
→Ⓒ
→Ⓔ
殺害→Ⓔ害殺
→Ⓒ
→ⒶⒸⒹⒺ
→ⒶⒹⒺ
→Ⓐ
→Ⓔ
 Ⓐになし
→Ⓐ観[已上]
→Ⓔ
→Ⓔ
湿→Ⓔ
→ⒸⒹⒺ
→Ⓔ
→Ⓔ
→◎
→Ⓔ
→ⒶⒸⒹⒺ
 Ⓐになし
→Ⓔ
 ⒶⒸⒹⒺになし
 ◎と右傍註記
 ◎一念窓前期摂取衆光明十念紫扉侍聖衆来迎と上欄註記
 ◎以↠華表↠因以蓮表↠果華開蓮現ジテ因円果満ナリ華落蓮成ナリ法性元真蓮因又生↢種子↡法界帰↠一対↢陽光↡開対↢陰気↡ツボム因浄果明本願光影和合スルコトヲ可知と上欄註記
 ◎在↠ウデ云在↠ヒジと上欄註記
 ◎と右傍註記
 ⒹⒺになし
→Ⓐ
→Ⓔ
→Ⓐ→ⒸⒹⒺ
→ⒸⒹⒺ
 ⒸⒹになし
 ◎本止之と右傍註記 Ⓒになし
→ⒶⒸⒹⒺ
 ◎と右傍註記→ⒸⒹⒺ
→ⒶⒸⒹⒺ中[而]
 Ⓐになし
→Ⓔ
→Ⓔ
→Ⓔ
→ⒸⒹⒺ
→ⒶⒸⒹ
→Ⓐ
天人→ⒶⒸⒹⒺ人天
→ⒶⒹⒺ
→Ⓐ
→Ⓐ
虎魄→Ⓔ琥珀
→Ⓔ
→ⒶⒸⒺ
→ⒹⒺ
→Ⓐ
出称讃浄土経 ⒸⒹⒺになし
→Ⓐ
 ◎と下に註記
→Ⓐ慈[大]
→Ⓔ
 ⒶⒸⒹⒺになし
 ◎本無直字と右傍註記 ⒶⒸⒹⒺになし
→ⒸⒹ
→ⒶⒺ
 Ⓐになし
→ⒶⒸⒹⒺ
→Ⓒ→ⒹⒺ
→ⒶⒸⒹⒺ
→ⒸⒹⒺ
 Ⓐになし
→Ⓔ
→ⒷⒸⒹⒺ
→Ⓐ
 ◎と右傍註記
→Ⓐ
 ◎と右傍註記
→Ⓐ
→Ⓐ功[徳]
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 ◎と右傍註記
→ⒷⒸⒹⒺ
 Ⓓになし
→Ⓐ我[名]
→ⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
 ◎と右傍註記
 Ⓐになし
 Ⓐになし
→Ⓑ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
已上 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→Ⓓ
→Ⓐ経[偈]
 ◎と上欄註記
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 Ⓐになし
遥相見 ⒷⒸⒹⒺになし
→ⒷⒸⒹⒺ恒[河]
→Ⓔ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
観経 Ⓐになし
→Ⓔ
願共諸衆生往生安楽国 ⒷⒸⒹⒺになし
衆生往生 Ⓐになし
→Ⓐ者[謂]
 Ⓐになし
→Ⓓ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ在[於]
→Ⓐ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ等[覚]
→ⒷⒸⒹⒺ等[意]
→Ⓔ
 ⒷⒸⒹⒺになし
→◎
→Ⓔ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 ⒷⒸⒹⒺになし
→Ⓐ生[彼]
→ⒸⒹ
 Ⓐになし
→Ⓑ
 ⒶⒷⒸⒹになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
歿→Ⓐ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
極楽→Ⓐ西方
三巻浄土論 Ⓐになし
→◎
→Ⓐ
→◎Ⓐ十[方]
→Ⓑ訳[之]→ⒸⒹⒺ訳[也]
→ⒷⒸⒹⒺ
→Ⓔ
→Ⓑ
→Ⓐ
 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→ⒶⒷⒸⒹⒺ堕[於]
已上 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
→ⒷⒸⒹⒺ
→Ⓐ又[云]
→Ⓔ
 ⒷⒸⒹⒺになし
→Ⓐ陀[仏]
→Ⓐ婆[世界]
 Ⓐになし
 ⒸⒹⒺになし
→◎
 Ⓐになし
群疑論 Ⓐになし
兜率→Ⓐ都率(と右傍註記)→ⒸⒹ
→ⒸⒹⒺ方[悉]
无内外亦 ⒸⒹになし
→Ⓐ亦[皆悉] Ⓔになし
兜率 ◎と右傍註記→Ⓐ兜率天→ⒸⒹⒺ謂天
 Ⓐになし
 ⒶⒸⒹⒺになし
→Ⓔ
→Ⓐ
→ⒶⒸⒹⒺ
 Ⓐと右傍註記
→ⒶⒸⒹⒺ
→◎
彼土→ⒸⒹⒺ西域
相伝云 ⒸⒹⒺになし
→Ⓔ
 ⒶⒸⒹⒺになし
→Ⓐ
→Ⓐ遮[那]
→ⒶⒸⒹ→Ⓔ
→ⒸⒹⒺ
→Ⓔ
 Ⓐと右傍註記
 ⒶⒸⒹⒺになし
→ⒸⒹⒺ
世親菩薩 Ⓐになし
→Ⓐ
 ⒸⒹになし
→Ⓔ云[一仏]
 Ⓐになし
已上 ⒶⒸⒹⒺになし
 ⒸⒹになし
→ⒸⒹⒺ
→Ⓔ
→ⒶⒸⒹⒺ要[具在別抄(鈔)]
→Ⓐ
遍周→ⒸⒹⒺ周遍
→ⒸⒹⒺ
→Ⓐ
→Ⓔ三[総]
→◎ⒶⒹⒸ
→Ⓐ是[事]
→Ⓐ→Ⓓ
→Ⓓ
→Ⓐ
 ⒸⒹⒺになし
→ⒶⒸⒹⒺ
 ◎クダクと上欄註記
→ⒸⒹⒺ
復然 ◎如是ナリと右傍註記→ⒶⒸⒹⒺ如是
→ⒹⒺ
→ⒸⒹⒺ
 ◎五或イハ六イ本と下に註記
→Ⓐ
→Ⓐ
→ⒸⒹⒺ
→Ⓐ戒[禁]→ⒸⒹⒺ
→ⒶⒸⒹⒺ
→◎
 Ⓐになし
→Ⓐ
→ⒶⒸⒹⒺ
→ⒸⒹⒺ大[已上]
→Ⓐ喜[之]
→ⒶⒸⒹⒺ
 Ⓐになし
 ⒸⒹⒺになし
 Ⓐになし
髦髪→Ⓐ髪髦
→Ⓔ
→Ⓐ衆[生]
第一 ⒶⒸⒹⒺになし
→ⒶⒸⒹⒺ
 ⒸⒹⒺになし
→Ⓐ[第]二
→ⒶⒸⒹⒺ楽[如]
→Ⓐ仏[言]
→Ⓔ
→ⒸⒹ
之物→ⒶⒸⒹⒺ物之
→Ⓐ ⒸⒹⒺになし
→ⒶⒸⒹⒺ
 ◎と右傍註記→Ⓐ
→Ⓐ
 ◎「イ本」と右傍註記
ⒶⒸⒹⒺになし
→Ⓔ不[可]
→ⒸⒹⒺ
→ⒶⒸⒹⒺ
→ⒶⒸⒹⒺ
→Ⓐ提[之]
 Ⓐになし
一切 ⒸⒹⒺになし
→Ⓐ→ⒸⒹⒺ
28字 ⒸⒹⒺになし
→ⒹⒺ
→Ⓐ
→Ⓐ提[心]
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 Ⓐになし
→Ⓐ非是
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ多[諸]
→ⒹⒺ
→◎
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
 ⒶⒸⒹⒺになし
行随→◎随行
→ⒷⒸⒹⒺ
→ⒶⒷⒸⒹⒺ
報罪 Ⓐになし
→ⒷⒸⒹⒺ
→Ⓐ
→ⒷⒸⒹⒺ十[二]