0797◎▼往おう生じょう▼要よう▼集しゅう ▼巻かん上じょう *尽第じんだい四し門半もんはん

天台てんだい*首しゅ楞りょう厳ごん院いん沙門しゃもん*源信げんしん撰せん

一 序
  Ⅰ 顕法難易
    ⅰ 嘆宗勧帰

【1】 ◎^▼それ往おう生じょう極楽ごくらくの教行きょうぎょうは、 ▼濁じょく世せ末代まつだいの目足もくそくなり。 *道俗どうぞく貴き賎せん、 たれか帰きせざるものあらん。

◎▼夫1013レ▼往生極楽之教行ハ、濁世*末代之目足也。道俗貴賎、誰カ不ラム↠帰セ者アラム。

一 Ⅰ ⅱ 揀非示難

^ただし▼*顕密けんみつの教きょう法ぼう、 その文もん、 一いちにあらず。 *事理じりの業因ごういん、 その行ぎょうこれ多おおし。 利智りち精しょう進じんの人ひとは、 いまだ難かたしとなさず。 *予よがごとき頑がん魯ろのもの、 あにあへてせんや。

◆但シ顕密ノ教法、其ノ文非ズ↠一ニ。事理ノ業因、其ノ行*是多シ。利智精進之人ハ、未ダ↠為サ↠難シト。如キ↠豫ガ頑魯之者、豈ニ敢タヘムヤ矣。

一 Ⅱ 叙撰述相
    ⅰ 標製示用

^▼このゆゑに、 ▼念仏ねんぶつの一門いちもんによりて、 いささか経きょう論ろんの要文ようもんを集あつむ。 これを披ひらきこれを修しゅするに、 覚さとりやすく行ぎょうじやすし。

◆是ノ故ニ▼依リテ↢念仏ノ一ノ門ニ↡、聊ニ集ス↢経論ノ要文ヲ↡。▼披キ↠之ヲ修スルニ↠之ヲ、易ク↠覚シ易シ↠行ジ。

一 Ⅱ ⅱ 挙示章門

^総すべて十じゅう門もんあり。 分わかちて三巻さんかんとなす。 一いちは▽厭えん離り穢土えど、 二には▽欣ごん求ぐ浄じょう土ど、 三さんは▽極楽ごくらく証しょう拠こ、 四しは▽正しょう修しゅ念仏ねんぶつ、 五ごは▽助念じょねん方法ほうほう、 六ろくは▽別べつ時じ念仏ねんぶつ、 七しちは▽念仏ねんぶつ利り益やく、 八はちは▽念仏ねんぶつ証しょう拠こ、 九くは▽往おう生じょう諸業しょごう、 十じゅうは▽問答もんどう料りょう簡けんなり。

▼総テ有リ↢十門↡。分チテ為ス↢三巻ト↡。▼一ハ厭↢離スル穢土ヲ↡、二ハ欣↢求スル浄土ヲ↡、三ハ極楽ノ証拠、四ハ正シク修スル↢念仏ヲ↡、五ハ助念ノ方法、六ハ別時ノ念仏、七ハ念仏ノ利益、八ハ念仏ノ証拠、九ハ往生ノ諸業、十ハ問答料簡ナリ。

一 Ⅱ ⅲ 結示所為

^▼これを座右ざうに置おきて、 廃忘はいもうに*備そなへん。

置キテ↢之ヲ座ノ右ニ↡、備ヘムヘヨ↢於*癈忘ニ↡矣。▼

二 正宗
  Ⅰ 厭離穢土
    ⅰ 総弁標章

【2】 ^大文だいもん第一だいいちに、 △厭えん離り穢土えどといふは、 それ三界さんがいは安やすきことなし、 もつとも厭えん離りすべし。 いまその相そうを明あかすに、 総すべて七種しちしゅあり。 一いちは▽地じ獄ごく、 二には▽餓鬼がき、 三さんは▽畜ちく生しょう、 四しは▽阿あ修しゅ羅ら、 五ごは▽人にん、 六ろくは▽天てん、 七しちは▽総結そうけつなり。

▼大文第一ニ▼厭離穢土トイフ者、*夫レ三界ハ無シ↠安キコト、最モ可シ↢厭離ス↡。今明スニ↢其ノ相ヲ↡、総テ有リ↢七種↡。▼一ハ地獄、二ハ餓鬼、三ハ畜生、四ハ阿修羅、五ハ人、六ハ天、七ハ総結ナリ。

二 Ⅰ ⅱ 別釈広顕
      a 地獄

【07983】 ^第一だいいちの△地じ獄ごくに、 また分わかちて八はちとなす。 一いちは▽等活とうかつ、 二には▽黒こく縄じょう、 三さんは▽衆合しゅごう、 四しは▽叫きょう喚かん、 五ごは▽大だい叫きょう喚かん、 六ろくは▽焦しょう熱ねつ、 七しちは▽大だい焦しょう熱ねつ、 八はちは▽無む間けんなり。

第一ノ地獄ニ亦分チテ為ス↠八ト。▼一ハ等活、二ハ黒縄、三ハ衆合、四ハ叫喚、五ハ大叫喚、六ハ焦熱、七ハ大焦熱、八ハ無間ナリ。

二 Ⅰ ⅱ a イ 等活

【4】 ^初はじめに△等活とうかつ地じ獄ごくといふは、 この閻えん浮ぶ提だいの下した、 一千いっせん由ゆ旬じゅんにあり。 *縦じゅう広こう一万いちまん由ゆ旬じゅんなり。

初1014ニ等活地獄トイフ者、在リ↢於此ノ閻浮提之下一千由旬ニ↡。縦*広一万由旬ナリ。

^このなかの罪人ざいにん、 たがひにつねに害心がいしんを懐いだけり。 もしたまたまあひ見みれば、 猟りょう者しゃの鹿ししに逢あへるがごとくして、 おのおの鉄てつの爪つめをもつてたがひに掴つかみ裂さく。 血ち肉にくすでに尽つきて、 ただ残骨ざんこつのみあり。

此ノ中ノ罪人、互ニ常ニ懐キテ↢害心ヲ↡、若シ適マ相見テハ、如クシテ↢猟者ノ逢ヘルガ↟鹿カセギニ、各 ノ以テ↢鉄ノ爪ヲ↡而互ニ掴カキ裂ク。血肉シシ既ニ尽キテ、唯有リ↢残ノ骨ノミ↡。

^あるいは獄卒ごくそつ、 手てに鉄てつの杖つえ・鉄てつの棒ぼうを執とりて、 頭こうべより足あしに至いたるまで、 あまねくみな打うち築つくに、 身体しんたい破は砕さいすること、 なほ*沙揣しゃせんのごとし。

或イハ獄卒、手ニ執リテ↢鉄ノ杖・鉄ノ*捧ヲ↡、従リ↠頭至ルマデニ↠足ニ遍ク皆打チ築ツクニ。身体破砕スルコト*猶如シ↢沙揣ノ↡。

^あるいはきはめて利とき刀かたなをもつて分々ぶんぶんに肉にくを割さくこと、 *廚ちゅう者しゃの魚肉ぎょにくを屠ほふるがごとし。

或イハ以テ↢極テ利キ刀ヲ↡分々ニ割クコト↠肉ヲ、如シ↣廚者ノ屠ルガ↢魚ノ肉ヲ↡。

^涼りょう風ふう来きたりて吹ふくに、 尋ついで活よみがえること故もとのごとし。 *欻然こつねんとしてまた起おきて、 前さきのごとく苦くを受うく。

涼風来リテ吹クニ、尋ツギテ活ヨミガヘルコト如クシテ↠故モトノ。欻然トシテ復起キテ、如ク↠前ノ受ク↠苦ヲ。

^あるいはいはく、 空くう中ちゅうに声こえありていはく、 「このもろもろの有う情じょう、 また等ひとしく活よみがえるべし、 また等ひとしく活よみがえるべし」 と。 あるいはいはく、 獄卒ごくそつ、 鉄てつの叉ひしをもつて地じを打うちて、 唱となへて 「活活かつかつ」 といふ。 かくのごとき等らの苦く、 つぶさに述じゅつすべからず。

或イハ云ク、空ノ中ニ有リテ↠声云ク、此ノ諸ノ有情可シ↠還ル↢等シク活ニ↡、*可シト↠還ル↢等シク活ニ↡。或イハ云ク、獄卒以テ↢鉄ノ叉ヒシヲ↡打チテ↠地ヲ、唱ヘテ云フ↢活々ト↡。如キ↠是クノ等ノ苦、不↠可カラ↢具ニ述ス↡。

^以い上じょう、 ¬*智度ちど論ろん¼・¬*瑜伽ゆが論ろん¼・¬*諸しょ経きょう要よう集しゅう¼ によりて、 これを撰せんす。

已上依リテ↢¬智度論¼・¬瑜伽論¼・¬諸経要集ニ¼↡、撰ス↠之ヲ

^*人間にんげんの五ご十じゅう年ねんをもつて四し天王てんのう天てんの一日いちにち一いち夜やとなして、 その寿じゅ五ご百ひゃく歳さいなり。 四し天王てんのう天てんの寿じゅをもつてこの地じ獄ごくの一いち日にち0799一いち夜やとなして、 その寿じゅ五ご百ひゃく歳さいなり。 殺せっ生しょうせるもの、 このなかに堕おつ。 以い上じょうの寿じゅ量りょうは ¬倶く舎しゃ¼ (*倶舎論) による。 *業因ごういんは ¬*正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ による。 下しもの六ろくもこれに同おなじ。

以テ↢人間ノ五十年ヲ↡為シテ↢四天王天ノ一日一夜ト↡。*其ノ寿五百歳ナリ。以テ↢四天王天ノ寿ヲ↡為シテ↢此ノ地獄ノ一日一夜ト↡、其ノ寿五百歳ナリ。殺生セル之者堕ツ↢此ノ中ニ↡。已上ノ寿量ハ依ル↢¬倶舎ニ¼↡。業因ハ依ル↢¬正法念経ニ¼↡。下ノ*六モ同ジ↠之ニ

^¬*優婆うば塞そく戒かい経きょう¼ には、 初はじめの天てん (四天王天) の一年いちねんをもつて初はじめの地じ獄ごく (等活地獄) の日にち夜やとなせり。 下去げここれに准なぞらへよ。

¬優婆塞戒経ニハ¼、以テ↢初ノ天ノ一年ヲ↡為セリ↢初ノ地獄ノ日夜ト↡。下去*准ヘヨ↠之ニ。

 ^この地じ獄ごくの*四し門もんのほかに、 また十じゅう六ろくの*眷属けんぞくの*別処べっしょあり。

此ノ地獄ノ四門之外ニ復有リ↢十六ノ眷属ノ別処↡。

・屎泥処

^一いちは屎し泥でい処しょ。 いはく、 きはめて熱あつき屎し泥でいあり。 その味あじはひ、 もつとも苦にがし。 金剛こんごうの嘴くちばしある虫むし、 そのなかに充じゅう満まんせり。 罪ざい人にん、 なかにありてこの熱ねっ屎しを食くらふ。 もろもろの虫むし、 聚じゅ集しゅうして、 一いち時じに競きおひ食くらふ。 皮かわを破やぶりて肉にくを噉くらひ、 骨ほねを折おりて髄ずいを唼すふ。

一ハ屎泥処。謂ク有リ↢極テ熱キ屎泥↡。其ノ味最モ苦シ。金剛ノ嘴アル虫充↢満セリ其ノ中ニ↡。罪人在リテ↠中ニ食フ↢此ノ熱屎ヲ↡。諸ノ虫聚集シテ一時ニ競ヒ食ヒテ、破リ↠皮ヲ噉クラヒ↠肉ヲ、*折リテ↠骨ヲ唼スフ↠髄ヲ。

^昔むかし、 鹿ししを殺ころし鳥とりを殺ころせるもの、 このなかに堕おつ。

昔殺シ↠鹿シシヲ殺セル↠鳥ヲ之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・刀輪処

^二には刀輪とうりん処しょ。 いはく、 鉄てつの壁かべ、 *周しゅう帀そうして、 高たかさ十じゅう由ゆ旬じゅんなり。 猛みょう火か*熾し然ねんとして、 つねにそのなかに満みてり。 人間にんげんの火ひはこれに比くらぶれば雪ゆきのごとし。 わづかにその身みに触ふるるに、 砕くだくること芥子けしのごとし。 また熱鉄ねつてつを雨あめふらすこと、 なほ盛さかりなる雨あめのごとし。 また刀林とうりんあり。 その刃つるぎはきはめて利とし。 また*両もろ刃はありて、 雨あめのごとくして下くだる。 もろもろの苦く、 交まじはり至いたりて、 堪忍かんにんすべからず。

二ハ刀輪処。謂ク鉄ノ壁周帀シテ高サ十由旬ナリ。猛火熾然トシテ常ニ満テリ↢其ノ中ニ↡。人間之火ハ比ブレバ↠此ニ*如シ↠雪ノ。纔ニ触ルルニ↢其ノ身ニ↡、砕クルコト*如シ↢芥子ノ↡。又雨ルコト↢熱鉄ヲ↡猶如1015シ↢盛ナル雨ノ↡。復有リ↢刀林↡。其ノ刃ツルギハ極テ利シト。復*有リテ↠雨ルコト↠刃ヲ、如クシテ↠雨ノ而下ル。衆ノ苦交リ至リテ不↠可カラ↢堪忍ス↡。

^昔むかし、 物ものを貪むさぼりて殺せっ生しょうせるもの、 このなかに堕おつ。

昔貪リテ↠物ヲ殺セル↠*生ヲ*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・瓮熟処

^三さんは瓮おう熟じゅく処しょ。 いはく、 罪人ざいにんを執とりて鉄てつの*瓮もたいのなかに入いれて、 煎せん熟じゅくすること豆まめ0800のごとし。

三ハ*瓫*熟処。謂ク執リテ↢罪人ヲ↡入レテ↢鉄ノ*瓮モタヒノ中ニ↡、煎*熟スルコト如シ↠豆ノ。

^昔むかし、 殺せっ生しょうして煮にて食くらへるもの、 このなかに堕おつ。

昔殺シテ↠生ヲ煮テ食ヘル*之*者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・多苦処

^四しは多苦たく処しょ。 いはく、 この地じ獄ごくに十じゅう千億せんおく種しゅの無む量りょうの*楚そ毒どくあり。 つぶさに説とくべからず。

四ハ多苦処。謂ク此ノ地獄ニ有リ↢十千億種ノ无量ノ楚毒↡。不↠可カラ↢具ニ説ク↡。

^昔むかし、 縄なわをもつて人ひとを縛しばり、 杖つえをもつて人ひとを打うち、 人ひとを駆かりて遠とおき路みちを行ゆかしめ、 嶮けわしき処ところより人ひとを落おとし、 煙けむりを薫ふすべて人ひとを悩なやまし、 小しょう児にを怖おそれしむ。 かくのごとき等らの、 種々しゅじゅに人ひとを悩なやませるもの、 みなこのなかに堕おつ。

昔以テ↠縄ヲ縛リ↠人ヲ、以テ↠杖ヲ打チ↠人ヲ、駆リテ↠人ヲ令メ↠行カ↢於遠キ路ヲ↡、従リ↢嶮シキ処↡落シ↠人ヲ、薫フスベテ↠煙ヲ悩マシ↠人ヲ、令メ↠怖オドサ↢小児ヲ↡、如キ↠是クノ等ノ種々ニ悩マセル↠人ヲ*之者、皆堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・闇冥処

^五ごは闇あん冥みょう処しょ。 いはく、 黒闇こくあんの処ところにありて、 つねに闇あん火かのために焼やかる。 大力だいりきの猛みょう風ふう、 金剛こんごう山せんを吹ふきて、 合あわせ磨すり、 合あわせ砕くだくこと、 なほ沙いさごの散ちらすがごとし。 熱風ねっぷうに吹ふかるるに、 利とき刀かたなの割さくがごとし。

五ハ闇冥処。謂ク在リテ↢黒闇ノ処ニ↡、常ニ為ニ↢闇火ノ↡所↠焼カ。大力ノ猛風吹キテ↢金剛山ヲ↡、*合セ磨リ、*合セ砕クコト、猶如シ↠散スガ↠沙ノ。熱風ニ所ルニ↠吹カ、如シ↢利キ刀ノ割クガ↡。

^昔むかし、 羊ひつじの口くち・鼻はなを唵ふさぎ、 二にの塼かわらのなかに亀かめを置おきて押おし殺ころせるもの、 このなかに堕おつ。

*昔唵フサギ↢羊ノ口・鼻ヲ↡、二ノ塼カハラ之中ニ置キテ↠亀ヲ押シ殺セル者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・不喜処

^六ろくは不喜ふき処しょ。 いはく、 大おおきなる火か炎えんありて昼ちゅう夜やに焚ぼん焼じょうす。 熱炎ねつえんの嘴くちばしある鳥とり・狗犬いぬ・*野や干かんの、 その声こえ極悪ごくあくにしてはなはだ怖畏ふいすべし。 つねに来きたりて*食噉じきだんす。 *骨肉こつにく狼藉ろうぜきたり。 金剛こんごうの嘴くちばしある虫むし、 骨ほねのなかに往来おうらいして、 その髄ずいを食くらふ。

六ハ不喜処。謂ク有リテ↢大ナル火炎↡昼夜ニ焚焼ス。熱炎ノ嘴アル鳥・狗犬 イヌ ・野干ノ、其ノ声極悪ニシテ甚ダ可キ↢怖畏ス↡、常ニ来リテ食噉ス。骨肉狼藉ナリ。金剛ノ嘴アル虫骨ノ中ニ往来シテ、而シテ食ラフ↢其ノ髄ヲ↡。

^昔むかし、 貝かいを吹ふき、 鼓つづみを打うち、 畏おそるべき声こえをなして鳥獣ちょうじゅうを殺害せつがいせるもの、 このなかに堕おつ。

昔吹キ↠貝ヲ打チ↠鼓ヲ、作シテ↢可↠畏ノ声ヲ↡殺↢害セル鳥獣ヲ↡*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・極苦処

^七しちは極ごく苦く処しょ。 いはく、 嶮岸けんがんの下したにありて、 つねに鉄てっ火かのために焼やかる。

七ハ極苦処。謂ク在リテ↢嶮岸ノ下ニ↡、常ニ為ニ↢鉄火ノ↡所↠焼カ。

^昔むかし、 *放逸ほういつにして殺せっ生しょうせるもの、 このなかに堕おつ。

昔放逸ニシテ殺生セル*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

^以い上じょう、 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ による。 *自余じよの九く処しょ、 ¬経きょう¼ (同) のなかに説かず。

已上依ル↢¬正法*念経ニ¼↡。自余ノ九処、¬経ノ¼中ニ不↠*説カ

二 Ⅰ ⅱ a ロ 黒縄

【08015】 ^二にに△黒こく縄じょう地じ獄ごくといふは、 等活とうかつの下したにあり。 縦じゅう広こう、 前さきに同おなじ。

二ニ黒縄地獄トイフ者、在リ↢等活ノ下ニ↡。縦広同ジ↠前ニ。

^獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを執とりて熱鉄ねつてつの地じに臥ふせて、 熱鉄ねつてつの縄なわをもつて縦じゅう横おうに身みに*拼すみうちて、 熱鉄ねつてつの斧おのをもつて縄なわに随したがひて切きり割さく。 あるいは鋸のこぎりをもつて解とき、 あるいは刀かたなをもつて屠ほふりて、 百ひゃく千段せんだんになして処々しょしょに散在さんざいす。 また熱鉄ねつてつの縄なわを懸かけて、 交まじへ横よこたふること無む数しゅなり。 罪人ざいにんを駆かりてそのなかに入いれしむるに、 悪風あくふう暴にわかに吹ふきて、 その身みに*交きょう絡らくして、 肉にくを焼やき、 骨ほねを焦こがして、 楚そ毒どく極きわまりなし。

獄卒執リテ↢罪人ヲ↡臥セテ↢熱鉄ノ*地ニ↡、以テ↢熱鉄ノ縄ヲ↡縦横ニ拼スミウチテ↠身ニ、以テ↢熱鉄ノ斧ヲ↡随ヒテ↠縄ニ切リ割ク。或イハ以テ↠鋸ヲ解キ、或イハ以テ↠刀ヲ屠リテ、作シテ↢百千段1016ニ↡処々ニ散在ス。又懸ケテ↢熱鉄ノ縄ヲ↡、交ヘ*横スルコト無数ニシテ、駆リテ↢罪人ヲ↡令ムルニ↠入レ↢其ノ中ニ↡。悪風暴アラク*吹キテ、交↢絡シテ其ノ身ヲ↡、焼キ↠肉ヲ、焦シテ↠骨ヲ、楚毒無シ↠極リ。

^以い上じょう、 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬智度ちど論ろん¼。

已上¬瑜*伽¼・¬智度論¼

^また左右さうに大おおきなる鉄山てっせんあり。 山やまの上うえにおのおの鉄てつの幢はたぼこを建たて、 幢はたぼこの頭はしに鉄てつの縄なわを張はり、 縄なわの下したに多おおく*熱鑊ねつかくあり。 罪人ざいにんを駆かりて、 鉄てつの山やまを負おはしめ縄なわの上うえより行ゆかしめ、 はるかに鉄てつの鑊かなえに落おとして摧くだき煮にること極きわまりなし。 ¬*観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ 意い。

又左右ニ有リ↢大ナル鉄山↡。山ノ上ニ各 ノ建テタリ↢鉄ノ幢ヲ↡。幢ノ頭ハシニ張レリ↢鉄ノ縄ヲ↡。縄ノ下ニ多ク有リ↢熱鑊↡。駆リテ↢罪人ヲ↡、令メテ↧負ハセテ↢鉄ノ山ヲ↡従リ↢縄ノ上↡行カ↥、遥ニ落シテ↢鉄ノ鑊カナヘニ↡摧キ煮ルコト無シ↠極リ。¬観仏三昧経¼*意

^等活とうかつ地じ獄ごくおよび十じゅう六ろくの別処べっしょの、 一切いっさいのもろもろの苦くを十じゅう倍ばいしてかさねて受うく。 獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを呵か責しゃくしていはく、

等活*地獄及ビ十六ノ*別処ノ、一切ノ諸ノ苦ヲ十倍シテ重ネテ受ク。獄卒呵↢*責シテ罪人ヲ↡云ク、

^「心しんはこれ第一だいいちの怨あだなり。 この怨あだをもつとも悪あくとなす。
この怨あだよく人ひとを縛しばりて、 送おくりて*閻えん羅らの処ところに到いたらしむ。

心ハ是第一ノ怨ナリ此ノ怨ヲ最モ為ス↠悪ト
此ノ怨能ク縛リテ↠人ヲ送リテ到ラシム↢閻羅ノ処ニ↡

^なんぢ独ひとり地じ獄ごくに焼やかれて、 悪業あくごうのために食じきせらる。
妻さい子し・兄きょう弟だい等とうの親属しんぞくも救すくふことあたはず」 と。 乃至広説

汝独リ地獄ニ焼カレテ為ニ↢悪業ノ↡所ル↠食セ
妻子兄弟等ノ*親*属モ不ト↠能ハ↠救フコト 乃至広説

^後のち0802の五ごの地じ獄ごくは、 おのおの、 前々ぜんぜんの一切いっさいの地じ獄ごくのあらゆるもろもろの苦くをもつて十じゅう倍ばいして重おもく受うくること、 例れいしてこれを知しりぬべし。 以い上じょう、 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ 意い。

後ノ五ノ地獄ハ、各 ノ以テ↢前々ノ一切ノ地獄ノ所*有ノ諸ノ苦ヲ↡十倍シテ重ク受クルコト、*応シ↢例シテ知リヌ↟之ヲ。已上¬正法念経¼意

^人間にんげんの一いっ百ぴゃく歳さいをもつて忉とう利り天てんの一日いちにち一いち夜やとなして、 その寿じゅ一いっ千歳せんざいなり。 忉とう利り天てんの寿じゅをもつて一日いちにち夜やとなして、 この地じ獄ごくの寿じゅ一いっ千歳せんざいなり。

以テ↢人間ノ一百歳ヲ↡為シテ↢忉利天ノ一日*一夜ト↡、其ノ寿一千歳ナリ、以テ↢忉利天ノ寿ヲ↡為シテ↢一日夜ト↡、*此ノ地獄ノ寿一千歳ナリ。

^殺せっ生しょう・*偸ちゅう盗とうせるもの、 このなかに堕おつ。

殺生・偸盗セル*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・等喚受苦処

 ^また*異い処しょあり。 等喚とうかん受じゅ苦く処しょと名なづく。 いはく、 嶮けわしき岸きしの無む量りょう由ゆ旬じゅんなるに挙あげ在おきて、 熱炎ねつえんの黒こく縄じょうをもつて束縛そくばくして、 繋かけをはりて、 しかして後のちにこれを推おして、 利とき鉄てつの刀かたなの熱ねつ地じの上うえに堕おとす。 鉄てつの炎ほのおの牙きばある狗いぬの*噉食だんじきするところなり。 一切いっさいの*身分しんぶん、 分々ぶんぶんに分ぶん離りす。 声こえを唱となへて吼く喚かんすれども、 救すくふものあることなし。

復有リ↢異処↡。名ク↢等喚受苦処ト↡。謂ク挙ゲ↢在オキテ*嶮サカシキ岸ノ無量由旬ナルニ↡、熱炎ノ黒縄ヲモテ束縛シテ、繋ケ已リテ、然シテ後ニ推シテ↠之ヲ、堕ス↢利キ鉄ノ刀ノ、熱地之上ニ↡。鉄ノ炎ノ牙アル狗之所ナリ↢噉食スル↡。一切ノ身分、分々ニ分離ス。唱ヘテ↠声ヲ吼喚スレドモ、無シ↠有ルコト↢救フ者↡。

^昔むかし、 説法せっぽうせしに悪見あくけんの論ろんによりてし、 一切いっさい不ふ実じつにして、 一切いっさいを顧かえりみず、 岸きしに投なげて自じ殺せつせるもの、 このなかに堕おつ。

昔説法セシニ依リテシ↢悪見ノ論ニ↡、一切不ズ↠実ニ、不↠顧ミ↢一切ヲ↡、投ゲテ↠岸ヨリ自ラ殺セル者、堕ツ↢此ノ*中ニ↡。

・畏鷲処

^また異い処しょあり。 畏い鷲処じゅしょと名なづく。 ある本ほん、 *この四字しじなし。 いはく、 獄卒ごくそつ杖つえを怒いからかして急きゅうに打うち、 昼ちゅう夜やにつねに走はしらしめ、 手てに火か炎えんの鉄刀てっとうを執とり、 弓ゆみを挽ひき、 箭やを弩はなち、 後しりえに随したがひて走はしり逐おひ、 斫くだき打うち、 これを射いる。

復有リ↢異処↡。*名ク↢畏*鷲処ト↡。*或ル本无シ↢此ノ四字↡ 謂ク獄卒怒レル杖ヲシテ急ニ打チテ、昼夜ニ常ニ走ル。手ニ執リ↢火炎ノ鉄刀ヲ↡、挽キ↠弓ヲ、弩ハナチ↠箭ヲ、随ヒテ↠後ニ走リ*逐オヒテ、斫クダキ*打チ、射ル↠之ヲ。

^昔むかし、 物ものを貪とんぜしがゆゑに人ひとを殺ころし、 人ひとを縛しばりて食じきを奪うばひしもの、 ここに堕おつ。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ 略抄りゃくしょう。

昔1017貪セシガ↠物ヲ故ニ殺シ↠人ヲ、縛リテ↠人ヲ奪ヒシ↠食ヲ*之者、堕ツ↢*此ニ↡。¬正法念経¼略抄

二 Ⅰ ⅱ a ハ 衆合

【08036】 ^三さんに△衆合しゅごう地じ獄ごくといふは、 黒こく縄じょうの下したにあり。 縦じゅう広こう、 前さきに同おなじ。

三ニ衆合地獄トイフ者、在リ↢黒縄ノ下ニ↡。縦広同ジ↠前ニ。

^多おおく鉄山てっせんありて、 両々りょうりょうあひ対むかへり。 *牛頭ごず・*馬頭めず等とうのもろもろの獄卒ごくそつ、 手てに*器き仗じょうを執とりて、 ˆ罪人ざいにんをˇ 駆かりて山やまのあひだに入いらしむ。 この時ときに両ふたつの山やま、 迫せめ来きたりて合あわせ押おす。 身体しんたい摧くだけ砕くだけ、 血ち流ながれて地じに満みつ。

多ク有リテ↢鉄山↡、*両々相対ヒテ、牛頭・馬頭等ノ諸ノ*獄卒、手ニ執リテ↢器*仗ヲ↡、駆リテ令ム↠入ラ↢山ノ間ニ↡。是ノ時ニ両フタツノ山迫メ来リテ合セ押ス。身体摧ケ砕ケ、血流レテ満ツ↠地ニ。

^あるいは鉄てつの山やまありて空そらより落おちて、 罪人ざいにんを打うつに、 砕くだくること沙揣しゃせんのごとし。 あるいは石いわの上うえに置おきて巌いわおをもつてこれを押おす。 あるいは鉄てつの臼うすに入いれて鉄てつの杵きねをもつて擣つく。

或イハ有リテ↢鉄ノ山↡従リシテ↠空而落チテ、打ツニ↢於罪人ヲ↡。砕クルコト如シ↢沙揣ノ↡。或イハ置キテ↢石ノ上ニ↡以テ↠巌ヲ押ス↠之ヲ。或イハ入レテ↢鉄ノ臼ニ↡以テ↢鉄ノ杵ヲ↡擣ツク。

^極悪ごくあくの獄ごく鬼き、 ならびに熱鉄ねつてつの獅子しし・虎こ・狼ろう等とうのもろもろの獣けだもの、 烏からす・鷲わし等とうの鳥とり、 競きおひ来きたりて食噉じきだんす。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)。

極悪ノ獄鬼并ニ熱鉄ノ師子・虎・狼等ノ諸ノ獣、烏・鷲等ノ鳥、競ヒ来リテ食噉ス。¬瑜*伽¼・¬大論¼

^また鉄炎てつえんの嘴くちばしある鷲わし、 その*腸はらわたを取とりをはりて樹きの頭はしに掛かけ在おきて、 これを噉食だんじきす。

又鉄炎ノ嘴ノ鷲、取リ↢其ノ*腹ヲ↡已リテ掛ケ↢在オキテ樹ノ頭ハシニ↡而噉↢食ス之ヲ↡。

^かしこに大おおきなる河かわあり。 なかに鉄てっ鉤くありて、 みなことごとく火ひに燃もゆ。 獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを執とらへて、 かの河かわのなかに擲なげて、 鉄てっ鉤くの上うえに堕おとす。

彼ニ有リ↢大ナル*河↡。中ニ有リテ↢鉄ノ鉤↡。皆悉ク火ニ燃ユ。獄卒執トラヘテ↢罪人ヲ↡、擲ナゲテ↢彼ノ河ノ中ニ↡、堕ス↢鉄鉤ノ上ニ↡。

^またかの河かわのなかに熱あつき赤しゃく銅どうの汁しるありて、 かの罪人ざいにんを漂ただよはす。 あるいは身み、 日ひのはじめて出いづるがごときものあり。 身み沈没ちんもつせること、 重おもき石いしのごときものあり。 手てを挙あげて、 天てんに向むかひて号哭ごうこくするものあり。 ともにあひ近ちかづきてしかも号哭ごうこくするものあり。

又彼ノ*河ノ*中ニ熱キ赤銅ノ汁アリテ、*漂ハス↢彼ノ罪人ヲ↡。或イハ有リ↧身如キ↢日ノ初テ出ヅルガ↡者↥。有リ↧身沈没セルコト如キ↢重キ石ノ↡者↥。有リ↢挙ゲテ↠手ヲ向ヒテ↠天ニ而号哭スル者↡。有リ↢共ニ相近ヅキテ而モ号哭スル者↡。

^久ひさしく大だい苦くを受うけて、 主しゅもなく、 救くもなし。

久シク受ケテ↢大苦ヲ↡、*無ク↠主モ、無シ↠救モ。

・刀葉林

^また獄卒ごくそつ、 地じ獄ごくの人にんを取とりて*刀葉とうよう林りんに置おく。 かの樹きの頭はしを見みるに、 好よ0804き*端たん正じょうにして*厳飾ごんじきの婦ふ女にょあり。 かくのごとく見みをはりて、 すなはちかの樹きに上のぼれば、 樹きの葉ようは刀かたなのごとくして、 その身肉しんにくを割さく。 次つぎにはその筋すじを割さく。 かくのごとく一切いっさいの処ところを劈さき割わりをはりて、 樹きに上のぼることを得えをはりて、 かの婦ふ女にょを見みれば、 また地じにあり。

又復獄卒取リテ↢地獄ノ人ヲ↡置ク↢刀葉林ニ↡。見ルニ↢彼ノ樹ノ頭ハシヲ↡有リト↢好キ端*政ニシテ厳飾ノ婦女↡、如ク↠是クノ見已リテ、即チ上レバ↢彼ノ樹ニ↡、樹ノ葉ハ如クシテ↠刀ノ割ク↢其ノ身肉ヲ↡。次ニハ割ク↢其ノ筋ヲ↡。如ク↠是クノ劈サキ↢割リ一切ノ処ヲ↡已リテ、得↠上ルコトヲ↠樹ニ已リテ、見レバ↢彼ノ婦女ヲ↡復在リ↢於地ニ↡。

^欲よくの媚こびたる眼まなこをもつて、 上かみざまに罪人ざいにんを看みて、 かくのごとき言ごんをなさく、 「なんぢを念おもふ因縁いんねんをもつて、 われこの処ところに到いたれり。 なんぢ、 いまなんがゆゑぞ、 来きたりてわれに近ちかづかざる。 なんぞわれを抱いだかざる」 と。

以テ↢欲ノ媚ノ眼ヲ↡、上ニ看テ↢罪人ヲ↡、作サク↢如キ↠是クノ言ヲ↡、念フ↠汝ヲ因縁ヲモテ、我到レリ↢此ノ処ニ↡。汝、今何ガ故ゾ不↠来ラ↠近ヅキテ↠我ニ。何ゾ不ルト↠抱カ↠我ヲ。

^罪人ざいにん見みをはりて、 *欲心よくしん熾し盛じょうにして、 次し第だいにまた下くだれば、 刀葉とうよう、 上かみに向むかひて、 利ときこと剃刀たいとうのごとくして、 前さきのごとくあまねく一切いっさいの身分しんぶんを割さく。 すでに地じに到いたりをはりぬれば、 しかもかの婦ふ女にょはまた樹きの頭はしにあり。 罪人ざいにん見みをはりて、 また樹きに上のぼる。

罪人見已リテ、欲心熾盛ニシテ、次第ニ復下レバ、刀葉向ヒテ↠上ニ利キコト如クシテ↢剃刀ノ↡、如クシテ↠前ノ遍ク割1018ク↢一切ノ身分ヲ↡。既ニ到リ↠地ニ已リヌレバ、而モ彼ノ婦女ハ復在リ↢樹ノ頭ハシニ↡。罪人見已リテ而シテ復上ル↠樹ニ。

^かくのごとく無む量りょう百ひゃく千億せんおく歳さい、 自じ心しんに誑たぶらかされて、 かの地じ獄ごくのなかに、 かくのごとく転てん行ぎょうし、 かくのごとく焼やかるること、 邪欲じゃよくを因いんとなす。 乃ない至し、 広ひろく説とく。

如クシテ↠是クノ無量百千億歳、自心ニ所テ↠誑タブロカサ、彼ノ地獄ノ中ニシテ、如ク↠是クノ転行シ、如ク↠是クノ被ルコト↠焼カ邪欲ヲ為ス↠因ト。乃至*広ク説ク。

^獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを呵か責しゃくして、 偈げを説ときていはく、

獄卒呵↢*責シテ罪人ヲ↡、説キテ↠偈ヲ曰ク、

^「異人ことひと、 悪あくをなして、 異人ことひと、 苦くの報ほうを受うくるにあらず。
みづからの業ごうをもつてみづから果かを得う。 衆しゅ生じょうみなかくのごとし」 と。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼。

非ズ↣異人作シテ↠悪ヲ異人受クルニ↢苦ノ報ヲ↡
自ラノ業ヲモテ自ラ得↠果ヲ衆生皆如シト↠是クノ ¬正法念経¼

^人にん0805間げんの二に百ひゃく歳さいをもつて夜摩やま天てんの一日いちにち夜やとなして、 その寿じゅ二に千歳せんざいなり。 かの天てんの寿じゅをもつてこの獄ごくの一日いちにち夜やとなして、 その寿じゅ二に千歳せんざいなり。 殺せっ生しょう・偸ちゅう盗とう・*邪婬じゃいんのもの、 このなかに堕おつ。

以テ↢人間ノ二百歳ヲ↡為シテ↢夜摩天ノ一日夜ト↡、其ノ寿二千歳ナリ、以テ↢彼ノ天ノ寿ヲ↡為シテ↢*此ノ獄ノ一日夜ト↡、*其ノ寿二千歳ナリ。殺生・偸盗・邪婬*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

 ^この大だい地じ獄ごくにまた十じゅう六ろくの別処べっしょあり。

此ノ大地獄ニ復有リ↢十六ノ別処↡。

・悪見処

^いはく、 一処いっしょあり。 悪見あくけん処しょと名なづく。 他たの児子にしを取とりて、 強しひ逼せめて邪じゃ行ぎょうして、 号哭ごうこくせしめたるもの、 ここに堕おちて苦くを受うく。

謂ク有リ↢一処↡。名ク↢悪見処ト↡。取リテ↢他ノ児子ヲ↡、強ヒ逼メテ邪行シテ令メタル↢号哭セ↡者、堕チテ↠此ニ受ク↠苦ヲ。

^いはく、 罪人ざいにんみづからの児子にしを見みれば、 地じ獄ごくのなかにあり。 獄卒ごくそつ、 もしは鉄てつの杖つえをもつて、 もしは鉄てつの錐きりをもつて、 その ˆ児子にしのˇ 陰おんのなかを刺さす。 もしは鉄てっ鉤くをもつて、 その陰おんのなかに釘くぎうつ。 すでにみづからの子このかくのごとき苦事くじを見みて、 愛心あいしんをもつて悲かなしみ絶いきたゆること堪忍かんにんすべからず。 この愛心あいしんの苦くは、 火か焼しょうの苦くにおいていふに、 十じゅう六ろく分ぶんのなかにその一いちにも及およばず。

謂ク罪人見レバ↢自ソノ児子ヲ↡、在リ↢地獄ノ中ニ↡。獄卒、若シハ以テ↢鉄ノ杖ヲ↡、若シハ以テ↢鉄ノ錐ヲ↡、刺ス↢其ノ陰ノ中ヲ↡。若シハ以テ↢鉄ノ鉤ヲ↡、釘クギウツ↢其ノ陰ノ中ニ↡。既ニ見テ↢自ソノ子ノ如キ↠是クノ苦事ヲ↡、愛心ヲモテ悲シビ絶イキタユルコト不↠可カラ↢堪忍ス↡。此ノ愛心ノ苦ハ、於テイフニ↢火焼ノ苦ニ↡十六分ノ中ニ不↠及バ↢其ノ一ニモ↡。

^かの人ひと、 かくのごとく心しんの苦くに逼せめられをはりてまた身しん苦くを受うく。 いはく、 頭ず面めんを下したに在おき、 熱あつき銅あかがねの汁しるを盛もりて、 その糞門ふんもんに潅そそぐ。 その身内しんないに入いるに、 その*熟じゅく臓ぞう・大だい小しょう*腸ちょう等とうを焼やく。 次し第だいに焼やきをはりて、 下したにありて出いづ。 つぶさに身心しんしんの二にの苦くを受うくること、 無む量りょう百ひゃく千せん年ねんのなかに止やまず。

彼ノ人如クシテ↠是クノ心ノ苦ニ逼メサレ已リテ復受ク↢身苦ヲ↡。謂ク頭面ハ在リテ↠下ニ盛リテ↢熱キ銅ノ汁ヲモテ↡、潅グ↢其ノ糞門ニ↡。入ルニ↢其ノ身内ニ↡、焼ク↢其ノ熟蔵・大小*腹等ヲ↡。次第ニ焼キ已リテ、在リテ↠下ニ而出ヅ。具ニ受クルコト↢身心ノ二ノ苦ヲ↡、無量百千年ノ中ニ不↠止マ。

・多苦悩処

^また別処べっしょあり。 多た苦く悩のう処しょと名なづく。 いはく、 男おとこの、 男おとこにおいて邪じゃ行ぎょうを行ぎょうぜるもの、 ここに堕おちて苦くを受うく。

又有リ↢別処↡。名ク↢多苦悩*処ト↡。謂ク男ノ於テ↠男ニ行ゼル↢邪行ヲ↡者、堕チテ↠此ニ受ク↠苦ヲ。

^い0806はく、 本もとの男なん子しを見みるに、 一切いっさいの身分しんぶん、 みなことごとく熱炎ねつえんあり。 来きたりてその身みを抱いだくに、 一切いっさいの身分しんぶん、 みなことごとく解げ散さんしぬ。 死ししをはりてまた活よみがえり、 きはめて怖畏ふいをなして、 走はしり避のがれて去さるに、 嶮けわしき岸きしより堕おち、 炎ほのおの嘴くちばしある烏からす、 炎ほのおの口くちの野や干かんありて、 これを噉食だんじきす。

謂ク見ルニ↢本ノ男子ヲ↡、一切ノ身分皆悉ク熱炎ニシテ、来リテ抱クニ↢其ノ身ヲ↡、一切ノ身分皆悉ク解散シヌ。死ニ已リテ復活ヨミガヘリテ、極テ生ナシテ↢怖畏ヲ↡、走リ避ノガレテ而去ルニ、堕1019ツレバ↢於嶮シキ岸ヨリ↡、有リテ↢炎ノ嘴アル烏、炎ノ口ノ野干↡而噉↢食ス之ヲ↡。

・忍苦処

^また別処べっしょあり。 忍にん苦く処しょと名なづく。 他たの婦ふ女にょを取とれるもの、 ここに堕おちて苦くを受うく。

復有リ↢別処↡。名ク↢忍苦処ト↡。*取レル↢他ノ婦女ヲ↡者、堕チテ↠此ニ受ク↠*苦ヲ。

^いはく、 獄卒ごくそつこれを樹きの頭はしに懸かけて、 頭ず面めんは下したにあり、 足あしは上うえにあり。 下したに大おおきなる炎ほのおを燃たきて一切いっさいの身みを焼やく。 焼やき尽つくせばまた生しょうじぬ。 唱しょう喚かんして口くちを開ひらけば、 火ひ口くちより入いりて、 その心しん・肺はい・*生熟しょうじゅく臓ぞう等とうを焼やく。 余よは経きょうに説とくがごとし。 以い上じょう、 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

謂ク獄卒懸ケテ↢之ヲ樹ノ頭ハシニ↡、頭面ハ在リ↠下ニ、足ハ在リ↢於上ニ↡、下ニ燃タキテ↢*大ナル炎ヲ↡焼ク↢一切ノ*身ヲ↡。焼キ尽セバ復生ジヌ。唱喚シテ開ケバ↠口ヲ、火従リ↠口入リテ、焼ク↢其ノ心・肺・生熟蔵等ヲ↡。余ハ如シ↢経ニ説クガ↡。已上¬正法念経ヨリ¼略↢抄ス之ヲ↡

二 Ⅰ ⅱ a ニ 叫喚

【7】 ^四しに△叫きょう喚かん地じ獄ごくといふは、 衆合しゅごうの下したにあり。 縦じゅう広こう、 前さきに同おなじ。

四ニ叫喚地獄トイフ者、在リ↢衆合ノ下ニ↡。縦広同ジ↠前ニ。

^獄卒ごくそつの頭こうべ、 黄きなること金こがねのごとし。 眼まなこのなかより火ひ出いづ。 赭あかき色いろの衣ころもを着きたり。 手て・足あし、 長ちょう大だいにして、 疾とく走はしること風かぜのごとし。 口くちより悪あく声しょうを出いだして罪人ざいにんを射いる。 罪人ざいにん*惶こう怖ふして、 *頭こうべを叩たたきて、 哀あわれみを求もとむ。 「願ねがはくは*慈じ愍みんを垂たれて、 少すこし放捨ほうしゃせられよ」 と。 この言ごんありといへども、 いよいよ瞋しん怒ぬを増ます。 ¬大論だいろん¼ (大智度論)。

獄卒ノ、頭黄ナルコト如シ↠金ノ。眼ノ中ヨリ火出ヅ。著タリ↢赭アカキ色ノ衣ヲ↡。手足長大ニシテ疾ク走ルコト如シ↠風ノ。口ヨリ出シテ↢悪声ヲ↡而射ル↢罪人ヲ↡。罪人惶怖シテ、叩キテ↠頭ヲ求ム↠哀ビヲ。願クハ垂レテ↢慈愍ヲ↡小シ見ラレヨト↢放捨セ↡。雖モ↠有リト↢此ノ言↡、弥ヨ増ス↢瞋怒ヲ↡。¬大論¼

^あるいは鉄てつの棒ぼうをもつて頭こうべを打うちて熱鉄ねつてつの地じよりして走はしらしめ、 あるいは*熱熬ねつごうに0807置おきて反覆ほんぷくしてこれを炙あぶる。 あるいは熱鑊ねっかくに擲なげてこれを煎いり煮にる。 あるいは駆かりて猛みょう炎えんの鉄てつの室むろに入いる。 あるいは鉗かなはしをもつて口くちを開ひらきて*洋銅ようどうを潅そそぎて、 *五ご臓ぞうを焼しょう爛らんして下しもよりただちに出いだす。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)。

或イハ以テ↢鉄ノ*捧ヲ↡打チテ↠頭ヲ従リシテ↢熱鉄ノ地↡令ム↠走ラ。或イハ置キテ↢熱熬ニ↡反覆シテ炙ル↠之ヲ。或イハ擲ナゲテ↢熱鑊ニ↡而煎リ↢煮ル之ヲ↡。或イハ駆リテ入ル↢猛炎ノ鉄ノ室ニ↡。或イハ以テ↠鉗カナバシヲ開キテ↠口ヲ而潅ギテ↢洋銅ヲ↡、焼↢爛シテ五蔵ヲ↡従リ↠下直ニ出ス。¬瑜*伽¼・¬大論¼

^罪人ざいにん偈げを説ときて、 *閻えん羅ら人にんを傷しょう恨こんしていはく、

罪人説キテ↠偈ヲ、傷↢恨シテ閻羅人ヲ↡言ク、

^「なんぢ、 なんぞ悲ひ心しんなき、 またなんぞ寂静じゃくじょうならざる。
われはこれ悲ひ心しんの器うつわなり。 われにおいてなんぞ悲ひなき」 と。

汝何ゾ無キ↢悲心↡復何ゾ不ル↢寂静ナラ↡
我ハ是悲心ノ器モノナリ於テ↠我ニ何ゾ無キト↠悲

^時ときに閻えん羅ら人にん、 罪人ざいにんに答こたへていはく、

時ニ閻羅人答ヘテ↢罪人ニ↡曰ク、

^「すでに*愛あいの羂あみのために誑たぶらかされて、 悪あく・不ふ善ぜんの業ごうをなして、
いま悪業あくごうの報ほうを受うく。 なんがゆゑぞわれを瞋いかり恨うらむるや」 と。

已ニ為ニ↢愛ノ羂ノ↡誑タブロカサレテ作シテ↢悪不善ノ業ヲ↡
今受ク↢悪業ノ報ヲ↡何ガ故ゾ瞋リ↢恨ムルヤト我ヲ↡

^またいはく、

又云ク

^「なんぢ本もと悪業あくごうをなして、 *欲よく痴ちのために誑たぶらかされき。
かの時ときになんぞ悔くいずして、 いま悔くゆること、 なんの及およぶところかあらん」 と。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼。

汝本作シテ↢悪業ヲ↡為ニ↢欲痴ノ↡所キ↠誑タブロカサ
彼ノ時ニ何ゾ不シテ↠悔イ今悔ユルコト何ノ所カアラム↠及ブ ¬正法念経¼

^人間にんげんの四し百ひゃく歳さいをもつて兜と率天そつてんの一日いちにち夜やとなして、 その寿じゅ四し千歳せんざいなり。 兜と率天そつてんの寿じゅをもつてこの獄ごくの一日いちにち夜やとなして、 寿じゅ四し千歳せんざいなり。

以テ↢人間ノ四百歳ヲ↡為シテ↢*都卒天ノ一日夜ト↡、其ノ*寿四千歳ナリ、以テ↢*都卒*天ノ寿ヲ↡為シテ↢*此ノ獄ノ一日夜ト↡*而*寿四千歳ナリ。

^殺せつ・盗とう・婬いん・飲酒おんじゅのもの、 こ0808のなかに堕おつ。

殺・盗・婬・*飲酒ノ者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

 ^また十じゅう六ろくの別処べっしょあり。

復有1020リ↢十六ノ別処↡。

・火末虫処

^そのなかに一処いっしょあり。 火か末まつ虫ちゅうと名なづく。 昔むかし、 酒さけを売うりしに、 水みずを加くわへ益ませるもの、 このなかに堕おつ。

其ノ中ニ有リ↢一処↡。名ク↢火*末虫ト↡。昔売リシニ↠酒ヲ、加ヘ↢益マセル水ヲ↡者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

^*四し百ひゃく四し病びょうを具ぐせり。 *風黄ふうおう冷りょう雑ぞうに、 おのおの百ひゃく一いちの病やまいあり。 合がっして四し百ひゃく四しあり。 その一いちの病やまいの力ちからは、 一日いちにち夜やにおいてよく*四し大だい洲しゅうのそこばくの人ひとをしてみな死しせしむ。 また身みより虫むし出いでて、 その皮ひ・肉にく・骨こつ・髄ずいを破やぶりて飲食おんじきす。

具セリ↢四百四病ヲ↡。風黄冷雑ニ、各 ノ有リ↢百一ノ病↡。合シテ有リ↢四百*四↡ 其ノ一ノ病ノ力ハ、於テ↢一日夜ニ↡能ク令ム↢四大*洲ノ若干ソコバクノ人ヲシテ皆死セ↡。又自身ヨリ虫出デテ、破リテ↢其ノ皮・肉・骨・髄ヲ↡飲食ス。

・雲火霧処

^また別処べっしょあり。 雲うん火霧かむと名なづく。 昔むかし、 酒さけをもつて人ひとに与あたへて、 酔よはしめをはりて、 *調じょう戯げして、 これを弄ろうして、 かれをして羞しゅう恥ちせしめたるもの、 ここに堕おちて苦くを受うく。

復有リ↢別処↡。名ク↢雲火*霧ト↡。昔以テ↠酒ヲ与ヘテ↠人ニ、令メ↠酔ハ已リテ、調戯シテ*弄シテ↠之ヲ、令メタル↢彼ヲシテ羞恥セ↡*之者、堕チテ↠*此ニ受ク↠苦ヲ。

^いはく、 獄ごく火かの満みてること厚あつさ二に百ひゃく*肘ちゅうなり。 獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを捉とらへて火ひのなかに行ゆかしめて、 足あしより頭こうべに至いたるまで一切いっさい洋よう消しょうせしむ。 足あしを挙あぐれば還かえりて生しょうじぬ。 かくのごとく無む量りょう百ひゃく千歳せんざい、 苦くを与あたふること止やまず。 余よは経きょうの文もんのごとし。

謂ク獄火ノ満テルコト厚サ二百肘ナリ。獄卒*捉ヘテ↢罪人ヲ↡令メテ↠行カ↢火ノ中ニ↡、従リ↠足至ルマデニ↠頭ニ一切洋消セシム。挙グレバ↠*足ヲ還リテ生ジヌ。如ク↠是クノ無量百千歳、与フルコト↠苦ヲ不↠止マ。余ハ如シ↢経ノ文ノ↡。

^また獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを呵か嘖しゃくして、 偈げを説ときていはく、

又獄卒呵↢*嘖シテ罪人ヲ↡、説キテ↠偈ヲ云ク、

^「仏ぶつの所みもとにして痴ちをなし、 *世せ・出しゅっ世せの事じを壊やぶり、
解げ脱だつを焼やくこと火ひのごとくするは、 いはゆる酒さけの一法いっぽうなり」 と。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼。

於テ↢仏ノ所ニ↡生ナシ↠痴ヲ壊ヤブリ↢世出世ノ事ヲ↡
焼クコト↢解脱ヲ↡如クスルハ↠火ノ所謂ル酒ノ一法ナリト ¬正法念経¼

二 Ⅰ ⅱ a ホ 大叫喚

【08098】 ^五ごに△大だい叫きょう喚かん地じ獄ごくといふは、 叫きょう喚かんの下したにあり。 縦じゅう広こう、 前さきに同おなじ。 苦くの相そうまた同おなじ。 ただし前さきの四しの地じ獄ごく、 およびもろもろの十じゅう六ろくの別処べっしょの一切いっさいのもろもろの苦くを十じゅう倍ばいして重おもく受うく。

五ニ大叫喚地獄トイフ者、在リ↢叫喚ノ下ニ↡。縦広同ジ↠前ニ。苦ノ相亦同ジ。但シ前ノ四ノ地獄、及ビ諸ノ十六ノ別処ノ一切ノ諸ノ苦ヲ十倍シテ重ク受ク。

^人間にんげんの八はっ百ぴゃく歳さいをもつて化け楽天らくてんの一日いちにち夜やとなして、 その寿じゅ八はっ千歳せんざいなり。 かの天てんの寿じゅをもつてこの獄ごくの一日いちにち夜やとなして、 その寿じゅ八はっ千歳せんざいなり。

以テ↢人間ノ八百歳ヲ↡為シテ↢化楽天ノ一日夜ト↡、*其ノ寿八千歳ナリ。以テ↢彼ノ天ノ寿ヲ↡為シテ↢此ノ獄ノ一日夜ト↡、其ノ寿八千歳ナリ。

^殺せつ・盗とう・婬いん・飲酒おんじゅ・*妄もう語ごのもの、 このなかに堕おつ。

殺・盗・婬・飲酒・妄語ノ者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

^獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを呵か嘖しゃくして、 偈げを説ときていはく、

獄*卒呵↢*嘖シテ罪人ヲ↡、説キテ↠偈ヲ*云ク、

^「妄もう語ごは第一だいいちの火ひなり。 なほよく大海だいかいをすら焼やきてん。
いはんや妄もう語ごの人にんを焼やくこと、 草木そうもく薪たきぎを焼やくがごとし」 と。 云々

妄語ハ第一ノ火ナリ尚能ク焼キテム↢大海ヲスラ↡
況ヤ焼クコトヲヤ↢妄語ノ人ヲ↡如シト↠焼クガ↢草木薪ヲ↡ *云々

 ^また*十じゅう六ろくの別処べっしょあり。

復有リ↢十六ノ別処↡。

・受鋒苦処

^そのなかの一処いっしょを受じゅ鋒苦ふくと名なづく。 熱鉄ねつてつの利とき針はり、 口く舌ぜつをともに刺さして、 啼哭ていこくすることあたはず。

其ノ中ノ一処ヲバ名ク↢受鋒苦ト↡。熱鉄ノ利キ針、口舌ヲ倶ニ刺シテ、不↠能ハ↢啼哭スルコト↡。

・受無辺苦処

^また別処べっしょあり。 受じゅ無む辺へん苦くと名なづく。 獄卒ごくそつ、 熱鉄ねつてつの鉗かなはしをもつてその舌したを抜ぬき出いだす。 抜ぬきをはりぬればまた生しょうじ、 生しょうじぬればすなはちまた抜ぬく。 眼まなこを抜ぬくこともまたしかなり。 また刀かたなをもつてその身みを削けずる。 刀かたなはなはだ薄うすく利ときこと、 剃たい頭ず刀とうのごとし。

復有リ↢別処↡。名ク↢受無辺苦ト↡。獄卒以テ↢熱鉄ノ鉗カナバシヲ↡抜キ↢出ス其ノ舌ヲ↡。抜キ已リヌレバ復生ズ。生ジヌレバ則チ復抜ク。抜クコトモ↠*眼ヲ亦然ナリ。復以テ↠刀ヲ削ル↢其1021ノ身ヲ↡。刀甚ダ薄ク利キコト如シ↢剃頭刀ノ↡。

^かくのごとき等らの異い類るいのもろもろの苦くを受うくること、 みなこれ妄もう語ごの果か報ほうなり。 余よは経きょうに説とくがごとし。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ 略抄りゃくしょう。

受クルコト↢如キ↠是クノ等ノ異類ノ諸ノ苦ヲ↡、皆是妄語之果報也。余ハ如シ↢経ニ説クガ↡。¬正法念経¼略抄

二 Ⅰ ⅱ a ヘ 焦熱

【08109】 ^六ろくに△焦しょう熱ねつ地じ獄ごくといふは、 大だい叫きょう喚かんの下したにあり。 縦じゅう広こう、 前さきに同おなじ。

六ニ焦熱地獄トイフ者、在リ↢大叫喚之下ニ↡。縦広同ジ↠前ニ。

^獄卒ごくそつ、 罪人ざいにんを捉とらへて熱鉄ねつてつの地じの上うえに臥ふせ、 あるいは仰あおむけ、 あるいは覆うつぶせて、 頭こうべより足あしに至いたるまで、 大おおきなる熱鉄ねつてつの棒ぼうをもつて、 あるいは打うち、 あるいは築つきて、 *肉摶にくだんのごとくならしむ。 あるいは極熱ごくねつの大おおきなる*鉄熬てつごうの上うえに置おきて、 猛みょう炎えんをもつてこれを炙あぶる。 左右さうにこれを転てんじて、 表ひょう裏り焼しょう薄はくす。

獄卒*捉ヘテ↢罪人ヲ↡臥セテ↢熱鉄ノ地ノ上ニ↡、或イハ仰ゲ或イハ覆ウツブセテ、従リ↠頭至ルマデニ↠足ニ、以テ↢大ナル熱鉄ノ*捧ヲ↡、或イハ打チ或イハ築キテ、令ム↠如クナラ↢肉摶ノ↡。或イハ置キテ↢極熱ノ大ナル鉄熬ノ上ニ↡、猛炎ヲモテ炙ヤク↠之ヲ。左右ニ転ジテ↠之ヲ、表裏焼薄ス。

^あるいは大おおきなる鉄てつの串くじりをもつて下しもよりこれを貫つらぬき、 頭こうべを徹とおして出いだし、 反覆ほんぷくしてこれを炙あぶり、 かの有う情じょうをして諸根しょこん・毛もう孔く、 および口くちのなかにことごとくみな炎ほのお起おこらしむ。 あるいは熱鑊ねっかくに入いれ、 あるいは鉄てつの*楼ろうに置おくに、 鉄てつ火か猛盛みょうじょうにして骨髄こつずいを徹とおす。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)。

或イハ以テ↢大ナル鉄ノ串クジリヲ↡従リ↠下貫キテ↠之ヲ、徹シテ↠頭ヲ而出シテ、反覆シテ炙ヤク↠之ヲ。令ム↢彼ノ有情ヲシテ諸根・毛孔、及以 オヨビ 口ノ中ニ悉ク皆炎起ラ↡。或イハ入レ↢熱鑊ニ↡、或イハ置キテ↢鉄ノ楼ニ↡、鉄火猛盛ニシテ徹ス↢於骨髄ヲ↡。¬瑜*伽¼・¬大論¼

^もしこの獄ごくの豆まめばかりの火ひをもつて閻えん浮ぶ提だいに置おかば、 一いち時じに焚やけ尽つきなん。 いはんや罪人ざいにんの身みは軟やわらかなること*生しょう蘇そのごとし。 長じょう時じに焚ぼん焼じょうせんに、 あに忍しのぶべけんや。 この地じ獄ごくの人にんは、 前さきの五ごの地じ獄ごくの火ひを望のぞみ見みること、 なほ雪霜せっそうのごとし。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼。

若シ以テ↢此ノ獄ノ豆許バカリ之火ヲ↡置カバ↢閻浮提ニ↡、一時ニ焚ケ尽キナム。況ヤ罪人之身ハ軟カナルコト如シ↢生蘇ノ↡。長時ニ焚焼スルコト、豈ニ可ケム↠忍ブ哉。此ノ地獄ノ人ハ、望ミ↢見ルコト前ノ五ノ地獄之火ヲ↡、猶如シトオモヘリ↢*雪霜ノ↡。¬正法念経¼

^人間にんげんの千せん六ろっ百ぴゃく歳さいをもつて*他化たけ天てんの一日いちにち夜やとなして、 その寿じゅ万まん六ろく千歳せんざいなり。 他化たけ天てんの寿じゅをもつて日にち夜やとなして、 この獄ごくの寿じゅまたしかなり。

以テ↢人間ノ千六百歳ヲ↡為シテ↢他化天ノ一日夜ト↡、其ノ寿万六千歳ナリ、以テ↢*他化天ノ寿ヲ↡為シテ↢日夜ト↡、*此ノ獄ノ寿亦然ナリ。

^殺せつ・盗とう・婬いん・飲酒おんじゅ・妄もう語ご・邪見じゃけんのもの、 このなかに堕おつ。

殺・盗・婬・飲酒・妄語・邪見之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

 ^0811四し門もんのほかにまた十じゅう六ろくの別処べっしょあり。

四門之外ニ復有リ↢十六ノ別処↡。

・分荼離迦処

^そのなかに一処いっしょあり。 *分ふん荼離だり迦かと名なづく。 いはく、 かの罪人ざいにんの一切いっさいの身分しんぶんに、 芥子けしばかりも火か炎えんなき処ところなし。 異いの地じ獄ごくの人にん、 かくのごとく説ときていはく、 「なんぢ、 疾とくすみやかに来きたれ。 なんぢ、 疾とくすみやかに来きたれ。 ここに分ふん荼離だり迦かの池いけあり。 水みずありて飲のみつべし、 林はやしに潤じゅん影えいあり」 と。

其ノ中ニ有リ↢一処↡。名ク↢分荼離迦ト↡。謂ク彼ノ罪人ノ一切ノ身分ニ、無シ↧芥子許バカリモ無キ↢火*炎↡処↥。異ノ地獄ノ人如ク↠是クノ説キテ*言ク、*汝、疾ク速ニ来レ。汝、疾ク速ニ来レ。此ニ有リ↢分荼離迦ノ池↡。有リテ↠水可シ↠飲ミツ、林ニ有リト↢潤影↡。

^随したがひて走はしり趣おもむくに、 道みちの上ほとりに坑あなあり。 なかに熾さかりなる火ひ満みてり。 罪人ざいにん入いりをはるに、 一切いっさいの身分しんぶんみなことごとく焼やけ尽つきぬ。 焼やけをはればまた生しょうじ、 生しょうじをはればまた焼やく。

随ヒテ而走リテ趣クニ、道ノ上ホトリニ有リ↠坑、満テタリ↢中ニ熾サカリナル火ヲ↡。罪人入1022リ已ルニ、一切ノ身分皆悉ク焼ケ尽キヌ。焼キ已レバ復生ジヌ。生ジ已レバ復焼ク。

^渇欲かつよく息やまずして、 すなはち前進すすみて入いりぬ。 すでにかの処ところに入いれば、 分ふん荼離だり迦かの炎ほのおの燃もゆること、 高大こうだいなること五ご百ひゃく由ゆ旬じゅんなり。 かの火ひに焼しょう炙しゃせられて、 死ししてまた活よみがえる。

渇欲不シテ↠息マ、便チ前進 スス ミテ入リヌ。既ニ入レバ↢彼ノ処ニ↡、分荼離迦ノ炎ノ燃ノ高*大ナルコト五百由旬ナリ。彼ノ火ニ焼炙セラレテ、死シテ而復活ス。

^もし人ひと、 みづから餓死がしして天てんに生うまるることを得うることを望のぞみ、 また他た人にんを教おしへて邪見じゃけんに住じゅうせしめたるもの、 このなかに堕おつ。

若シ人自ラ餓死シテ望ミ↠得ムコトヲ↠生ルルコトヲ↠天ニ、復教ヘテ↢他人ヲ↡令メタル↠住セ↢邪見ニ↡者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・闇火風処

^また別処べっしょあり。 闇あん火か風ふうと名なづく。 いはく、 かの罪人ざいにん、 悪風あくふうに吹ふかれて、 虚こ空くうのなかにありて、 *所しょ依えの処ところなし。 車輪しゃりんのごとく疾とく転てんじて、 身み見みるべからず。 かくのごとく転てんじをはるに、 異いの*刀風とうふう生しょうじて、 身みを砕くだくこと沙いさごのごとくして、 十方じっぽうに分散ふんさんす。 散さんじをはればまた生しょうじ、 生しょうじをはればまた散さんず。 つねにかくのごとし。

復有リ↢別処↡。名ク↢闇火風ト↡。謂ク彼ノ罪人悪風ニ所テ↠吹カ、在リテ↢虚空ノ中ニ↡、無シ↢所依ノ処↡。如ク↢*車輪ノ↡疾ク転ジテ、身不↠可カラ↠見ル。如ク↠是クノ転ジ已ルニ、異ノ刀風生ジテ、砕クコト↠身ヲ如クシテ↠沙ノ、分↢散ス十方ニ↡。散ジ已レバ復生ジヌ。生ジ已レバ復散ズ。恒常 ツネ ニ如シ↠是クノ。

^もし人ひと、 かくのごとき見けんをなさく、 「一切いっさいの諸法しょほうに、 常じょうと無む常じょう0812とあり。 無む常じょうといふは身みなり。 常じょうといふは四し大だいなり」 と。 かの邪見じゃけんの人にん、 かくのごとき苦くを受うく。 余よは経きょうに説とくがごとし。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼。

若シ人作サク↢如キ↠是クノ見ヲ↡、一切ノ諸法ニ有リ↢常ト無常ト↡。无常トイフ者身ナリ。常トイフ者四大ナリト。彼ノ邪見ノ人、受ク↢如キ↠是クノ苦ヲ↡。余ハ如シ↢経ニ説クガ↡。¬正法念経¼

二 Ⅰ ⅱ a ト 大焦熱

【10】^七しちに△大だい焦しょう熱ねつ地じ獄ごくといふは、 焦しょう熱ねつの下したにあり。 縦じゅう広こう、 前さきに同おなじ。 苦くの相そうまた同おなじ。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)・¬大論だいろん¼ (大智度論)。

七ニ大焦熱地獄トイフ者、在リ↢焦熱ノ下ニ↡。縦広同ジ↠前ニ。苦ノ相亦同ジ。*¬瑜伽¼・¬大論¼

^ただし前さきの六ろくの地じ獄ごくの根本こんぽんと別処べっしょとの一切いっさいのもろもろの苦くを十じゅう倍ばいしてつぶさに受うく。 つぶさに説とくべからず。 その寿じゅ、 *半はん中ちゅう劫こうなり。

但シ前ノ六ノ地獄ノ根本ト別処トノ一切ノ諸ノ苦ヲ十倍シテ具ニ受クルコト、不↠可カラ↢具ニ説ク↡。其ノ寿、半中劫ナリ。

^殺せつ・盗とう・婬いん・飲酒おんじゅ・妄もう語ご・邪見じゃけん、 ならびに浄じょう戒かいの尼にを汚けがせるもの、 このなかに堕おつ。

殺・盗・婬・飲酒・妄語・邪見并ニ*汚セル↢浄戒ノ尼ヲ↡*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

^この悪業あくごうの人にんは、 先まづ*中ちゅう有うにして大だい地じ獄ごくの相そうを見みる。

此ノ悪業ノ人ハ、先ヅ於テ↢中有ニ↡見ル↢大地獄ノ相ヲ↡。

^閻えん羅ら人にんありて、 面おもてに悪みにくき状かたちあり。 手て・足あしきはめて熱あつくして、 身みを捩もどろかし、 肱ひじを怒いからかせり。 罪人ざいにんこれを見みて、 きはめて大おおきに*恾もう怖ふす。 その声こえ、 雷らい吼くのごとし。 罪人ざいにんこれを聞ききて恐怖くふさらに増ます。

有リテ↢閻羅人↡。面ニ有リ↢悪ミニクキ状↡。手足極テ熱シ。捩モドロカシ↠身ヲ、怒ラカセリ↠*肱ヲ。罪人見テ↠之ヲ、極テ大ニ恾怖ス。其ノ声如シ↢雷吼ノ↡。罪人聞キテ↠之ヲ恐怖更ニ増ス。

^その手てに利とき刀かたなを執とり、 腹ふく肚とはなはだ大だいにして、 黒雲こくうんの色いろのごとし。 眼まなこの炎ほのおは灯ともしびのごとく、 鉤まがれる牙きば、 鋒ほこのさきのごとく利とし。 臂ひじ・手てみな長ながく、 揺動ようどうして勢いきおひをなすに、 一切いっさいの身分しんぶん、 みなことごとく粗起そきす。 かくのごとき種々しゅじゅの畏おづべき形状ぎょうじょうをもつて、 堅かたく罪人ざいにんの咽のどを繋しばる。

其ノ手ニ執レリ↢利キ刀ヲ↡。腹*肚甚ダ大ニシテ、如シ↢黒雲ノ色ノ↡。眼ノ炎ハ如シ↠灯ノ、鉤マガレル牙*鋒ホコノサキノゴトク利ナリ。臂・手皆長シ。揺動シテ作スニ↠勢ヲ、一切ノ身分皆悉ク麁起ス。如キ↠是クノ種々ノ可キ↠畏オヅ形状アリ。堅ク繋シバル↢罪人ノ咽ヲ↡。

^かくのごとくして将いて去さること、 六ろく十じゅう八はっ百ぴゃく千せん由ゆ旬じゅんの地じ海かい洲城しゅうじょうを過すぎて、 海うみの外げ辺へんにあり。 また行ゆくこと三さん十じゅう六ろく億おく由ゆ旬じゅんにして、 *漸々ぜんぜんに下しもに向むかふこと十じゅう億おく由ゆ旬じゅん0813なり。 一切いっさいの風かぜのなかには、 *業風ごうふう第一だいいちなり。 かくのごとき業風ごうふう、 悪業あくごうの人にんを将いて去さりて、 かの処ところに到いたらしむ。

如クシテ↠是クノ将ヰテ去ルコト、過ギテ↢六十八百1023千由旬ノ地海洲城ヲ↡、在リテ↢海ノ外辺ニ↡。復行クコト卅六億由旬ニシテ、漸々ニ向フコト↠下ニ十億由旬ナリ。一切ノ風ノ中ニハ業ノ風第一ナリ。如キ↠是クノ業風将ヰテ↢悪業ノ人ヲ↡去リテ、到ラシム↢彼ノ処ニ↡。

^すでにかしこに到いたりをはりぬれば、 *閻えん魔羅まら王おう、 種々しゅじゅに呵か責しゃくす。 呵か責しゃくすでに已おわれば、 悪業あくごうの羂なわをもつて縛しばりて、 出いだして地じ獄ごくに向むかはしむ。

既ニ到リ↠彼ニ已リヌレバ閻魔*羅王種々ニ呵*責ス。呵*責既ニ已リテ、悪業ノ羂ナハヲモテ縛リテ、出シテ向フ↢地獄ニ↡。

^遠とおく大だい焦しょう熱ねつ地じ獄ごくのあまねく大おおきなる炎ほのおの燃もゆるを見みる。 また地じ獄ごくの罪人ざいにんの啼哭ていこくの声こえを聞きく。 悲かなしみ愁うれへ、 恐く魄はくして、 無む量りょうの苦くを受うく。 かくのごとく無む量りょう百ひゃく千せん万億まんおく無む数しゅの年歳ねんさい、 啼哭ていこくの声こえを聞ききて、 十じゅう倍ばいして恐く魄はくし、 心しん驚おどろき怖畏ふいす。

遠ク見ル↢大*燋熱地獄ノ普ク大ナル炎ノ燃モユルヲ↡。又聞キ↢地獄ノ罪人ノ啼哭之声ヲ↡、悲シビ愁ヘ恐ヅル魄タマシヒアリテ、受ク↢無量ノ苦ヲ↡。如クシテ↠是クノ無量百千*万億無数ノ年歳、聞キテ↢啼哭ノ声ヲ↡、十倍シテ恐魄シテ心驚キ怖畏ス。

^閻えん羅ら人にん、 これを呵か責しゃくしていはく、

閻羅人呵↢*責シテ之ヲ↡言ク、

^「なんぢ地じ獄ごくの声こえを聞きくに、 すでにかくのごとく怖畏ふいす。
いかにいはんや地じ獄ごくにして焼やかるることは、 乾かれたる薪草しんそうを焼やくがごとし。

汝聞クニ↢地獄ノ声ヲ↡已ニ如ク↠是クノ怖畏ス
何ニ況ヤ地獄ニシテ焼クコトハ如シ↠焼クガ↢乾レタル薪草ヲ↡

^火ひの焼やくはこれ焼やくにあらず。 悪業あくごうすなはちこれ焼やくなり。
火ひの焼やくはすなはち滅めっすべし。 業ごうの焼やくをば滅めっすべからず」 と。 云々

火ノ焼クハ非ズ↢是焼クニ↡悪業乃チ是焼クナリ
火ノ焼クハ則チ可シ↠滅ケシツ業ノ焼クヲバ不ト↠可カラ↠滅ケス。云々

^かくのごとくねんごろに呵か責しゃくしをはりて、 将いて地じ獄ごくに向むかふに、 大おおきなる*火か聚じゅあり。 その聚じゅ、 挙あがれること高たかさ五ご百ひゃく由ゆ旬じゅんなり。 その量りょう、 寛広かんこうなること二に百ひゃく由ゆ旬じゅんなり。 炎ほのおの燃もゆること熾し盛じょうなるは、 かの人ひとの所しょ作さの悪業あくごうの勢力せいりきなり。 急きゅうにその身みを擲なげて、 かの火か聚じゅに堕おとすこと、 大おおきなる山やまの岸きしより推おして険さかしき岸きしに在おくが0814ごとし。 以い上じょう、 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ よりこれを取しゅ意いし略抄りゃくしょうす。

如ク↠是クノ苦ネンゴロニ呵*責シ已リテ、将ヰテ向フルニ↢地獄ニ↡、有リ↢大ナル火聚↡。其ノ聚ホムラ挙レルコト高サ五百由旬ナリ。其ノ量寛広ナルコト二百由旬ナリ。炎ノ燃ユルコト熾盛ナリ。彼ノ人ノ所ノ↠作レル悪業ノ勢力ナリ、急カニ擲ナゲテ↢其ノ身ヲ↡堕スコト↢彼ノ火聚ニ↡、如シ↣大ナル山ノ岸ヲ推シテ在オクガ↢険サガシキ岸ニ↡。已上¬正法念経ヨリ¼*取↢意シ略↣抄ス*之ヲ↡

 ^この大だい焦しょう熱ねつ地じ獄ごくの四し門もんのほかに、 十じゅう六ろくの別処べっしょあり。

此ノ大焦熱地獄ノ四門之外ニ有リ↢十六ノ別処↡。

・皆悉炎燃処

^そのなかに一処いっしょあり。 一切いっさい間ひまなく、 乃ない至し虚こ空くうまで、 みなことごとく炎燃えんねんして、 針はりの孔あなばかりも炎燃えんねんせざる処ところなし。 罪人ざいにん、 火ひのなかに声こえを発おこして唱となへ喚さけぶ。 無む量りょう億歳おくさい、 つねに焼やくこと止やまず。

其ノ中ニ*有リ↢一処↡。一切無ク↠間ヒマ、乃至虚空マデニ皆悉ク炎燃シテ、无シ↧針ノ孔許バカリモ不ル↢炎燃セ↡処↥。罪人火ノ中ニシテ発シテ↠声ヲ、唱ヘ喚サケブ。无量億歳ニ常ニ焼クコト不↠止マ。

^清浄しょうじょうの優婆夷うばいを犯おかせるもの、 このなかに堕おつ。

犯セル↢清浄ノ優婆夷ヲ↡*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・普受一切苦悩処

^また別処べっしょあり。 普ふ受じゅ一切いっさい苦く悩のうと名なづく。 いはく、 炎刀えんとうをもつて一切いっさいの身みの皮かわを剥はぎ割さきて、 その肉にくをば侵おかさず。 すでにその皮かわを剥はぎ、 身みとあひ連つらねて熱ねつの地じに敷しき在おきて、 火ひをもつてこれを焼やき、 熱鉄ねつてつの沸わけるをもつてその身体しんたいに潅そそぐ。 かくのごとく無む量りょう億歳おくさい、 大だい苦くを受うく。

復有リ↢別処↡。名ク↢普受一切苦悩ト↡。謂ク炎刀ヲモテ剥ギ↢割キテ一切ノ身ノ皮ヲ↡、不↠侵サ↢其ノ肉ヲバ↡。既ニ剥ギテ↢其ノ皮ヲ↡、与↠身相連ネテ敷フセ↢在オキテ熱ノ地ニ↡、以テ↠火ヲ焼キ↠之ヲ、以テ↢熱鉄ノ沸ユヲ↡潅グ↢其ノ身1024体ニ↡。如クシテ↠是クノ無量*億歳受ク↢大苦ヲ↡也。

^*比丘びくの、 酒さけをもつて持じ戒かいの婦ふ女にょを誘こしらへ誑たぶらかして、 その心しんを壊やぶりをはりて、 しかして後のちに、 ともに行ぎょうじ、 あるいは財物ざいもつを与あたへたるもの、 このなかに堕おつ。

比丘ノ以テ↠酒ヲ誘コシラヘ↢誑タブロカシテ持戒ノ婦女ヲ↡、壊ヤブリ↢其ノ心ヲ↡已リテ、然シテ後ニ共ニ行ジ、或イハ与ヘタル↢財物ヲ↡*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

^余よは経きょうに説とくがごとし。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

余ハ如シ↢*経ニ説クガ↡。¬正法念経ヨリ¼略↢抄ス*之ヲ↡

二 Ⅰ ⅱ a チ 阿鼻

【11】^八はちに△阿鼻あび地じ獄ごくといふは、 大だい焦しょう熱ねつの下したにあり。 欲界よくかいの最底さいていの処ところなり。

八ニ阿鼻地獄トイフ者、在リ↢大焦熱之下ニ↡。欲界ノ最底之処ナリ。

^罪人ざいにん、 かしこに趣向しゅこうする時ときに、 先まづ中ちゅう有うの位くらいにして、 啼哭ていこくして、 偈げを説ときていはく、

罪人趣↢向スル彼ニ↡時ニ、先ヅ中有ノ位ニシテ、啼哭シテ説キテ↠偈ヲ*言ク、

^「一切いっさいはただ火か炎えんなり。 空くうに遍へんして中ちゅう間げんもなし。
四し方ほうおよび*四し維ゆい、 地じ界かいにも空むなしきところなし。

一切ハ唯火炎ナリ遍シテ↠空オホゾラニ無シ↢中間モ↡
四方及ビ四維地界ニモ無シ↢空シキ処↡

^0815一切いっさいの地じ界処かいしょには、 悪人あくにんみな*遍満へんまんせり。
われいま帰きするところなくして、 孤こ独どくにして同伴どうはんなし。

一切ノ地*界処ニハ悪人皆遍満セリ
我今無クシテ↠所↠帰スル孤独ニシテ無シ↢同伴↡

^悪処あくしょの闇やみのなかにありて、 大おおきなる火か炎えんの聚じゅに入いりぬ。
われ虚こ空くうのなかにして、 日にち・月がつ・星しょうを見みず」 と。 以上

在リテ↢悪処ノ闇ノ中ニ↡入リヌ↢大ナル火炎ノ聚ホムラニ↡
我於テ↢虚空ノ中ニ↡不ト↠見エ↢日月*星ヲ↡ 已上

^時ときに閻えん羅ら人にん、 瞋しん怒ぬの心しんをもつて答こたへていはく、

時ニ閻羅人以テ↢瞋怒ノ心ヲ↡答ヘテ曰ク、

^「あるいは*増劫ぞうこうあるいは*減劫げんこうに、 大だい火かなんぢが身みを焼やく。
痴ち人にんすでに悪あくをなしてき。 いまなにをもつてか悔くゆることをなす。

或イハ増劫或イハ減劫ニ大火焼ク↢汝ガ身ヲ↡
痴人已ニ作シテキ↠悪ヲ今何ヲ用テカ生ナス↠悔ユルコトヲ

^これ天てん・修しゅ羅ら・*健達けんだつ婆ば・竜りゅう・鬼きのするにもあらず。
*業ごう羅らの繋け縛ばくするところなり。 人ひとのよくなんぢを救すくふものなし。

非ズ↢是天・修羅・健達婆・竜・鬼ノスルニモ↡
業*羅ノ所ナリ↢繋縛スル↡無ケム↢人トシテ能ク救フコト↟汝ヲ

^大海だいかいのなかに、 ただ*一掬いっきくの水みずを取とらんがごとし。
この苦くは一掬いっきくのごとし、 後のちの苦くは大海だいかいのごとし」 と。 以上

如シ↧於テ↢大海ノ中ニ↡唯シ取ラムガ↦一掬ノ水ヲ↥
此ノ苦ハ*如シ↢一掬ノ↡後ノ苦ハ如シト↢大海ノ↡ *已上

^すでに呵か責しゃくしをはれば、 将いて地じ獄ごくに向むかふ。 かしこを去さること二に万まん五ご千せん由ゆ旬じゅんにして、 かの地じ獄ごくの啼哭ていこくの声こえを聞ききて、 十じゅう倍ばいして悶絶もんぜつす。 頭ず面めんは下したにあり、 足あしは上うえにありて、 二に千年せんねんを経へて、 みな下しもに向むかひて行ゆく。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

既ニ呵*責シ已リテ、将ヰテ向フ↢地獄ニ↡。去レルコト↠彼ヲ二万五千由旬ニシテ、聞キテ↢彼ノ地獄ノ啼哭之声ヲ↡、十倍シテ悶絶ス。頭面ハ在リ↠下ニ、足ハ在リテ↢於上ニ↡、逕テ↢二千年ヲ↡、皆向ヒテ↠下ニ行ク。¬正法念経ヨリ¼略↢抄ス*之ヲ↡

^かの阿鼻あび城じょうは、 縦じゅう広こう八万はちまん由ゆ旬じゅんにして、 七しち重じゅうの鉄てつの城しろ、 七層しちそうの鉄てつの網あみあり。 下した0816に十じゅう八はちの*隔へだてありて、 刀林とうりん周しゅう帀そうせり。

彼ノ阿鼻城ハ、縦広八万由旬ナリ。七重ノ鉄ノ城アリ、七層ノ鉄ノ網アリ。下ニ有リテ↢十八ノ隔↡。刀林周帀セリ。

^四よ角すみに四しの銅あかがねの狗いぬあり。 身みの長たけ四し十じゅう由ゆ旬じゅんなり。 眼まなこは電いなずまのごとく、 牙きばは剣つるぎのごとく、 歯はは刀山とうせんのごとく、 舌したは鉄てつ刺しのごとし。 一切いっさいの毛もう孔くよりみな猛みょう火かを出いだし、 その煙けむり臭しゅう悪あくにして世せ間けんに喩たとへなし。

四角ニ*有リ↢四ノ銅アカガネノ狗↡。*身ノ長サ由旬ナリ。眼ハ如ク↠電イナビカリノ、牙ハ如ク↠剣ノ、歯ハ如ク↢刀山ノ↡、舌ハ如シ↢鉄*刺ノ↡。一切ノ毛孔ヨリ皆出ス↢猛火ヲ↡。其ノ煙臭悪ニシテ、世間ニ無シ↠喩ヒ。

^十じゅう八はちの獄卒ごくそつあり。 頭こうべは羅ら刹せつのごとく、 口くちは夜や叉しゃのごとし。 六ろく十じゅう四しの眼まなこありて、 鉄丸てつがんを迸ほとばしり散ちらす。 鉤まがれる牙きばは、 上うえに出いでたること高たかさ四し由ゆ旬じゅん、 牙きばの頭はしより火ひ流ながれて阿鼻あび城じょうに満みつ。 頭こうべの上うえに八はちの牛頭ごずあり。 一々いちいちの牛頭ごずに十じゅう八はちの角つのありて、 一々いちいちの角つのの頭はしよりみな猛みょう火かを出いだす。

有リ↢十八ノ獄卒↡。頭ハ如ク↢羅刹ノ↡、口ハ如シ↢夜叉ノ↡。有リテ↢六十四ノ眼↡、迸ホトバシ1025リ↢散ス鉄ノ丸ヲ↡。鉤カガマレル牙ハ上ニ出デタルコト高サ四由旬。牙ノ頭ハシヨリ火流レテ満ツ↢阿鼻城ニ↡。頭ノ上ニ有リ↢八ノ牛ノ頭↡。一々ノ牛頭ニ有リテ↢十八ノ角↡。一々ノ角ノ頭ハシニ皆出ス↢猛火ヲ↡。

^また七しち重じゅうの城しろのうちに七しちの*鉄幢てつどうあり。 幢どうの頭はしより火ひ涌わくこと、 なほ沸ひ泉せんのごとし。 その炎ほのお、 流ながれ迸ほとばしりて、 また城しろのうちに満みつ。

又七重ノ城ノ内ニ有リ↢七ノ鉄幢↡。幢ノ頭ハシニ火*湧クコト、猶如シ↢沸泉ノ↡。其ノ炎流レ迸ホトバシリテ、亦満ツ↢城ノ内ニ↡。

^四し門もんの閫とじきみの上うえに八はち十じゅうの釜かなえあり。 *沸ひ銅どう涌ゆ出じゅつして、 また城しろのうちに満みつ。

四門ノ閫トジキミノ上ニ有リ↢八十ノ釜↡。沸銅*涌出シテ、亦満ツ↢城ノ内ニ↡。

^一々いちいちの隔へだてのあひだに、 八万はちまん四し千せんの*鉄蟒てつもう・大蛇だいじゃありて、 毒どくを吐はき、 火ひを吐はきて、 身み城しろのうちに満みてり。 その蛇へびの哮ほえ吼ほゆること、 百ひゃく千せんの雷いかずちのごとく、 大だい鉄丸てつがんを雨あめふらして、 また城しろのうちに満みつ。

一々ノ隔ノ間ニ有リテ↢八万四千ノ鉄*蟒・大蛇↡、吐キ↠毒ヲ吐キテ↠火ヲ、身満テリ↢城ノ内ニ↡。其ノ蛇ノ哮ホエ吼サケブコト、如シ↢百千ノ雷ノ↡。雨ラシテ↢大鉄丸ヲ↡、亦満ツ↢城ノ内ニ↡。

^五ご百ひゃく億おくの虫むしあり。 八万はちまん四し千せんの嘴くちばしありて、 嘴くちばしの頭はしより火ひ流ながれ、 雨あめのごとくして下くだる。 この虫むし下くだる時ときに、 獄ごく火かいよいよ盛さかりにして、 あまねく八万はちまん四し千せん由ゆ旬じゅんを照てらす。 また八万はちまん億千おくせんの苦くのなかの苦くなるもの、 このなかに集じゅう在ざいせり。 ¬観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ よりこれを略抄りゃくしょうす。

有リ↢五百億ノ虫↡。有リテ↢八万四千ノ嘴↡。嘴ノ頭ハシニ火流ル。如クシテ↠雨ノ*而下ル。此ノ虫下ル時ニ、獄火弥ヨ盛ニシテ遍ク照ス↢八万四千由旬ヲ↡。又八万*億千ノ苦ノ中ノ苦ナル者、集在セリ↢此ノ中ニ↡。¬観*仏三昧経ヨリ¼略↢抄ス*之ヲ

^¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論) の第だい四し0817にいはく、 「東方とうぼうの多た百ひゃく*瑜ゆ繕ぜん那なの↓三熱さんねつの大鉄だいてつ地じの上うえより、 猛みょう熾しの火ひありて、 焔ほのおを騰あげて来きたりて、 かの有う情じょうを刺さす。 皮かわを穿うがちて肉にくに入いり、 筋すじを断たちて骨ほねを破やぶり、 またその髄ずいに徹とおりて、 焼やくこと脂し燭そくのごとし。 かくのごとく、 身みを挙こぞりてみな猛みょう焔えんとなりぬ。 東方とうぼうよりするがごとく、 南西なんざい北方ほっぽうもまたかくのごとし。

¬瑜*伽ノ¼第四ニ云ク、「従リ↢東方ノ多百*瑜繕那ノ三熱ノ大鉄地ノ上↡有リテ↢猛熾ノ火↡、騰ゲテ↠焔ヲ而来リテ、刺シテ↢彼ノ有情ヲ↡、穿チテ↠皮ヲ入リ↠肉ニ、断チテ↠筋ヲ破ル↠骨ヲ。復徹シテ↢其ノ髄ヲ↡、焼クコト如シ↢脂燭ノ↡。如クスルニ↠是クノ挙コゾリテ↠身ヲ皆成リヌ↢猛焔ト↡。如ク↠従リスルガ↢東方↡、南・西・北方モ亦復如シ↠是クノ。

^この因縁いんねんによりて、 かのもろもろの有う情じょう、 猛みょう焔えんと和わ雑ぞうして、 ただ火か聚じゅの、 四し方ほうより来きたるを見みる。 火か焔えん、 和わ雑ぞうし、 間けん隙きゃくあることなく、 所受しょじゅの苦く痛つうまた間けん隙きゃくなし。 ただ苦くに逼せめられて号なき叫さけぶ声こえを聞ききて、 衆しゅ生じょうありといふことを知しる。

由リテ↢此ノ因縁ニ↡、彼ノ諸ノ有情与↢猛焔↡和雑シテ、唯シ見ユ↢火聚ト↡。従リ↢四方↡来レル火焔和雑シテ、無シ↠有ルコト↢間隙↡。所受ノ苦痛亦無シ↢間隙↡。唯聞キテ↢苦ニ逼セメラレテ号ナキ叫ブ之声ヲ↡、知ル↠有リトイフコトヲ↢衆生↡。

^また鉄てつの箕みをもつて三熱さんねつの鉄てつの炭はいを盛もり満みてて、 これを*簸あおり揃そろへ、 また熱鉄ねつてつの地じの上うえに置おきて、 大熱鉄だいねつてつの山やまに登のぼらしむ。 上のぼりてはまた下くだり、 下くだりてはまた上のぼる。

又以テ↢鉄ノ箕ヲ↡盛リ↢満テテ三熱ノ鉄ノ炭ハヒヲ↡而シテ簸リ↢揃フ↠之ヲ↡。復置キテ↢熱鉄ノ地ノ上ニ↡、令ム↧登リテ↢大熱鉄ノ山ニ↡、上リテハ而シテ復下ス、下リテハ而復上ラ↥。

^その口くちのなかより、 その舌したを抜ぬき出いだして、 百ひゃくの鉄てつの釘くぎをもつて、 これを張はりて、 皺しわひだなからしむること、 牛うしの皮かわを張はるがごとし。

従リ↢其ノ口ノ中↡抜キ↢出シテ其ノ舌ヲ↡、以テ↢百ノ鉄ノ釘ヲ↡而張リテ↠之ヲ、令ムルコト↠无カラ↢皺ヒダ↡如シ↠張ルガ↢牛ノ皮ヲ↡。

^またさらに熱鉄ねつてつの地じの上うえに仰あおむけ臥ふせて、 熱鉄ねつてつの鉆かなはしをもつて口くちを鉆はさみて開ひらかしめ、 三熱さんねつの鉄丸てつがんをもつてその口くちのなかに置おきて、 すなはちその口くちおよび咽喉いんこうを焼やき、 *腑ふ臓ぞうを徹とおして下しもより出いだす。

復1026更ニ仰ゲ↢臥セテ熱鉄ノ地ノ上ニ↡、以テ↢熱鉄ノ*鉆ハサミヲ↡*鉆ハサミテ↠口ヲ令メテ↠開カ、以テ↢三熱ノ鉄丸ヲ↡置キテ↢其ノ口ノ中ニ↡、即チ焼キテ↢其ノ口及以 オヨビ 咽喉ヲ↡、徹シテ↢於府蔵ヲ↡従リシテ↠下而出ス。

^また洋銅ようどうをもつてその口くちに潅そそぎて、 喉のどおよび口くちを焼やき、 腑ふ臓ぞうを徹とおして下しもより流る出すいす」 と。

又以テ↢洋銅ヲ↡而潅ギテ↢其ノ口ニ↡、焼キテ↢喉ト及ビ口ヲ↡、徹シテ↢於府蔵ヲ↡従リシテ↠下流レテ出スト。」

^以い上じょう、 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論) に、 「↑*三熱さんねつ」 といふは、 「焼しょう燃ねん・極ごく焼しょう燃ねん・遍へん極ごく0818焼しょう燃ねん」 なり。

已上¬瑜伽ニ¼言ク↢、「三熱トイフ」↡者、焼燃・極焼燃・遍極焼燃*也

^七しちの大だい地じ獄ごくならびに別処べっしょの一切いっさいのもろもろの苦くを、 もつて一分いちぶんとなすに、 阿鼻あび地じ獄ごくは一いっ千倍せんばいして勝すぐれたり。 かくのごとくして、 阿鼻あび地じ獄ごくの人ひとは、 大だい焦しょう熱ねつ地じ獄ごくの罪人ざいにんを見みること、 *他化たけ自じ在ざい天処てんしょを見みるがごとし。

*七ノ大地獄并アハセテ及ビ別処ノ一切ノ諸ノ苦ヲ、以コレヲモテ為テ↢一分ト↡、阿鼻地獄ハ一千倍シテ勝レタリ。如キ↠是クノ阿鼻地獄之人ハ、見ルコト↢大焦熱地獄ノ罪人ヲ↡如シ↠見ルガ↢他化自在天処ヲ↡。

^*四し天てん下げ処しょ、 *欲界よくかい六天ろくてんは、 地じ獄ごくの気けを聞かがば、 すなはちみな消きえ尽つきなん。 なにをもつてのゆゑに。 地じ獄ごくの人にんはきはめて大おおきに臭くさきをもつてのゆゑに。 地じ獄ごくの臭くさき気け、 なんがゆゑぞ来きたらざる。 二にの大山だいせんありて、 一いちは出しゅっ山せんと名なづけ、 二にを没山もっせんと名なづく。 かの臭くさき気けを遮しゃせり。

四天下処、欲界六天ハ、聞カガバ↢地獄ノ気クサイケヲ↡、即チ皆消エ尽キナム。何ヲ以テノ故ニ。以テノ↢地獄ノ人ハ極テ*大ニ臭キヲ↡故ニ。地獄ノ臭キ気、何ガ故ゾ不ル↠来ラ。有リテ↢二ノ大山↡、一ハ名ク↢出山↡。二ヲバ名ク↢没山ト↡。遮セリ↢彼ノ臭キ気ヲ↡。

^もし人ひと、 一切いっさいの地じ獄ごくのあらゆる苦く悩のうを聞きかば、 みなことごとく堪たへざらん。 これを聞きかばすなはち死しせん。 かくのごとくなるをもつて、 阿鼻あび大だい地じ獄処ごくしょをば、 千分せんぶんのなかにおいて一分いちぶんをも説とかず。 なにをもつてのゆゑに。 説とき尽つくすべからず、 聴きくことを得うべからず、 譬喩ひゆすべからざるをもつてなり。 もし人ひとありて説とき、 もし人ひとありて聴きかば、 かくのごとき人ひとは血ちを吐はきて死しせん。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ より、 取しゅ意い略抄りゃくしょうす。

若シ人聞キテ↢一切ノ地獄ノ所有ノ苦悩ヲ↡、皆悉ク不ラム↠*堪セ。聞カバ↠此ヲ則チ死ナム。如クナルヲモテ↠是クノ阿鼻大地獄処ヲバ於テ↢千分ノ中ニ↡不↠説カ↢一分ヲダモ↡。何ヲ以テノ故ニ。不↠可カラ↢説キ尽ス↡、不↠可カラ↠得↠聴クコトヲ、不ルヲモテナリ↠可カラ↢譬喩ス↡。若シ有リテ↠人*説キ、*若シ有リテ↠人聴カバ、如キ↠是クノ之人ハ吐キテ↠血ヲ而死ナム。¬正法念経¼*取意略抄ス

^この*無む間けん獄ごくは寿じゅ一いち中ちゅう劫こうなり。 ¬倶く舎しゃ論ろん¼。

此ノ無間獄ハ寿一中劫ナリ。¬倶舎論¼

^五ご逆ぎゃく罪ざいを造つくり、 *因いん果がを撥ほつ無むし、 大だい乗じょうを誹ひ謗ほうし、 四し重じゅうを犯おかして、 虚むなしく*信しん施せを食くらへるもの、 このなかに堕おつ。 ¬観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ による。

造リ↢五逆罪ヲ↡、撥↢無シ因果ヲ↡、誹↢謗シ大乗ヲ↡、犯シテ↢四重ヲ↡、虚シク食ラヘル↢信施ヲ↡*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。*依ル¬観仏三昧経ニ¼

 ^この無む間けん獄ごくの四し門もんのほかに、 また十じゅう六ろくの*眷属けんぞくの別処べっしょあり。

此ノ無間獄ノ四門*之外ニ亦有リ↢十六ノ眷属別処↡。

・鉄野干食処

^そのなかの一処いっしょを鉄てつ0819野や干かん食処じきしょと名なづく。 いはく、 罪人ざいにんの身みの上うえに、 火ひの燃もえたること十じゅう由ゆ旬じゅん量りょうなり。 もろもろの地じ獄ごくのなかに、 この苦くもつとも勝すぐれたり。 また鉄てつの塼かわらを雨あめふらすこと、 盛さかりなる夏なつの雨あめのごとく、 身体しんたい破は砕さいすること、 なほ乾かれたる*脯ほしじしのごとし。 炎ほのおの牙きばある野や干かん、 つねに来きたりて食噉じきだんし、 一切いっさいの時ときにおいて苦くを受うくること止やまず。

其ノ中ニ一処ヲバ名ク↢鉄野干食処ト↡。謂ク罪人ノ身ノ上ニ火ノ燃エタルコト十由旬量ナリ。諸ノ地獄ノ中ニ、此ノ苦最モ勝レタリ。又雨ルコト↢鉄ノ塼マロカシヲ↡如シ↢盛ナル夏ノ雨ノ↡。身体破砕スルコト猶如シ↢乾レタル脯ホシジシノ↡。炎ノ牙アル野干常ニ来リテ食噉ス。於テ↢一切ノ時ニ↡受クルコト↠苦ヲ不↠止マ。

^昔むかし、 仏像ぶつぞうを焼やき、 僧房そうぼうを焼やき、 僧そうの臥具がぐを焼やきしもの、 このなかに堕おつ。

昔1027焼キ↢仏像ヲ↡、焼キ↢僧房ヲ↡、焼ケル↢僧ノ臥具ヲ↡*之者、堕ツ↢此ノ中ニ↡。

・黒肚処

^また別処べっしょあり。 黒こく肚と処しょと名なづく。 いはく、 飢き渇かつ身みを焼やきて、 みづからその肉にくを食くらふ。 食くらひをはればまた生しょうじ、 生しょうじをはればまた食くらふ。 黒こく肚との蛇へびありて、 かの罪人ざいにんを繞まつひて、 はじめ足あしの甲つめより漸々ぜんぜんに齧かみ食くらふ。 あるいは猛みょう火かに入いれて焚ぼん焼じょうし、 あるいは*鉄鑊てっかくに在おきて煎煮せんしゃす。 無む量りょう億歳おくさい、 かくのごとき苦くを受うく。

復有リ↢別処↡。名ク↢黒肚処ト↡。謂ク飢渇焼キテ↠身ヲ、自ラ食フ↢其ノ肉ヲ↡。食ヒ已レバ復生ズ。生ジ已レバ復食フ。有リテ↢黒*肚ノ蛇↡、繞マツヒテ↢彼ノ罪人ヲ↡、始テ従リ↢足ノ甲ツメ↡漸漸ニ齧カミ食フ。或イハ入レテ↢猛火ニ↡焚焼セラル。或イハ在オキテ↢鉄鑊ニ↡煎煮ス。無量億歳受ク↢如キ↠*是クノ苦ヲ↡。

^昔むかし、 仏ぶつの財物ざいもつを取とりて食用じきゆうせるもの、 ここに堕おつ。

昔取リテ↢仏ノ財物ヲ↡食用セル*之者、堕ツ↢*此ニ。

・雨山聚処

^また別処べっしょあり。 雨う山聚せんじゅ処しょと名なづく。 いはく、 一いち由ゆ旬じゅん量りょうの鉄山てっせん、 上うえより下くだりて、 かの罪人ざいにんを打うつに、 砕くだくること沙揣しゃせんのごとし。 砕くだけをはればまた生しょうじ、 生しょうじをはればまた砕くだく。 また十じゅう一いちの炎ほのおありて、 周しゅう遍へんして身みを焼やく。 また獄卒ごくそつ、 刀かたなをもつてあまねく身分しんぶんを割さきて、 極熱ごくねつの白びゃく鑞ろうの汁しるをその割さける処ところに入いる。 四し百ひゃく四し病びょう、 具ぐ足そくしてつねにあり。 長じょう久くに苦くを受うけて年歳ねんさいあることなし。

復有リ↢別処↡。名ク↢*雨山聚処ト↡。謂ク一由旬量ノ鉄山従リシテ↠上而下リテ、打ツニ↢彼ノ罪人ヲ↡、砕クルコト如シ↢沙揣ノ↡。砕ケ已レバ復生ジ、生ジ已レバ復砕ク。又有リテ↢十一ノ炎↡、周遍シテ焼ク↠身ヲ。又獄卒以テ↠刀ヲ遍ク割キテ↢身分ヲ↡、極熱ノ白鑞ノ汁ヲ入ル↢其ノ割ケル処ニ↡。四百四病具足シテ常ニ有リ。長久ニ受ケテ↠苦ヲ、無シ↠有ルコト↢年歳↡。

^昔むかし、 辟びゃく支し仏ぶつの食じきを取とりて、 みづから食じき0820してこれを与あたへざるもの、 ここに堕おつ。

昔取リテ↢辟支仏之食ヲ↡、自ラ食シテ不ル↠与ヘ↠之ヲ者、堕ツ↠此ニ。

・閻婆度処

^また別処べっしょあり。 閻えん婆度ばど処しょと名なづく。 悪あく鳥ちょうあり、 身み大おおきなること象ぞうのごとし。 名なづけて閻えん婆ばといふ。 嘴くちばし利とくして炎ほのおを生しょうぜり。 罪人ざいにんを執とりて、 はるかに空くう中ちゅうに上のぼりて、 東西とうざいに遊ゆ行ぎょうし、 しかして後のちにこれを放はなつに、 石いしの地じに堕おつるがごとくして、 砕くだけて百ひゃく分ぶんとなる。 砕くだけをはりてはまた合がっし、 合がっしをはればまた執とる。

復有リ↢別処↡。名ク↢閻*婆度処ト↡。有リ↢悪鳥↡、身大ナルコト如シ↠象ノ。名ケテ曰フ↢閻婆ト↡。嘴利クシテ*生ゼリ↠炎ヲ。執リテ↢罪人ヲ↡遥ニ上リテ↢空ノ中ニ↡東西ニ遊行ス。然シテ後ニ放ツニ↠之ヲ、如クシテ↢石ノ堕ツルガ↟地ツチニ、砕ケテ為ル↢百分ニ↡。砕ケ已リテハ復合フ。合シ已レバ復執ル。

^また利とき刃つるぎ道みちに満みちて、 その足脚あしを割さく。 あるいは炎ほのおの歯はある狗いぬありて、 来きたりてその身みを齧かむ。 長じょう久くの時ときに大だい苦く悩のうを受うく。

又利キ刃ツルギ満チテ↠道ニ、割ク↢其ノ足脚 アシ ヲ↡。或イハ有リテ↢炎ノ歯アル狗↡、来リテ齧カム↢其ノ身ヲ↡。於テ↢長久ノ時ニ↡受ク↢*大苦悩ヲ↡。

^昔むかし、 人ひとの*用もちゐる ˆ河かわをˇ 決断けつだんして、 人ひとをして渇かつ死しせしめたるもの、 ここに堕おつ。 余よは経きょうに説とくがごとし。 以い上じょう ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼。

昔決↢断シテ人ヲ↡*困タシナミテ↠之ヲ、*令メタル↢人ヲシテ渇死セ↡之者、堕ツ↠此ニ。余ハ如シ↢経ニ説クガ↡。已上¬正法念経¼

^¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論) の第だい四しに、 通つうじて八大はちだい地じ獄ごくの近辺ごんぺんの別処べっしょを説ときていはく、 「^いはく、 かの一切いっさいのもろもろの*大だい那落迦ならかに、 みな四し方ほうに四し岸がん・四し門もんありて、 鉄てつの墻かき、 *囲い繞にょうせり。 その四し方ほうの四し門もんより出いでをはりて、 その一々いちいちの門もんのほかに四しの*出しゅつ園おんを置おけり。

¬瑜伽ノ¼第四ニ通ジテ説キテ↢八大地獄ノ近辺ノ別処ヲ↡云ク、「謂ク彼ノ一切ノ諸ノ大那落迦ニ、皆有リテ↢四方ノ四岸ノ四門↡。鉄ノ牆囲遶セリ。従リ↢其ノ四方ノ四門↡出デ已リテ、其ノ一々ノ門ノ外ニ置ケリ↢四ノ出ヅル園ヲ↡。

・煨

^いはく、 *とう煨わいありて膝ひざに斉ひとし。 かのもろもろの有う情じょう、 出いでて舎宅しゃたくを求もとめんとして遊ゆ行ぎょうして、 ここに至いたりぬ。 足あしを下くだす時ときには、 皮ひ肉にくおよび血けつ、 ならびにすなはち消しょう爛らんしぬ。 足あしを挙あぐれば還かえりて生しょうず。

謂ク煨ノ斉シキニ↠膝ニ、彼ノ諸ノ有情*出デテ求メムトシテ↢舎1028宅ヲ↡遊行シテ至リヌ↠此ニ。下ス↠*足ヲ時ニハ、皮肉及ビ血、*並ニ即チ消爛シヌ。挙グレバ↠足ヲ還リテ生ズ。

・屍糞泥

^次ついでこのとう煨わいに間ひまなくして、 すなはち*死屍しし糞泥ふんでいあり。 このもろもろの有う情じょう、 舎宅しゃたくを求もとめんがために、 かしこより出いでをはりて0821、 漸々ぜんぜんに遊ゆ行ぎょうして、 そのなかに淊おち入いりて、 首足しゅそくともに没もっしぬ。

次ギテ此ノ煨ニ無間ニ即チ有リ↢*死屍糞泥↡。此ノ諸ノ有情、為ニ↠求メムガ↢舎宅ヲ↡、従リ↠彼出デ已リテ、漸々ニ遊行シテ、*淊オチ↢入リテ其ノ中ニ↡、首足*倶ニ没シヌ。

^また、 屍し糞泥ふんでいのうちに、 多おおくもろもろの虫むしあり。 嬢じょう矩くたと名なづく。 皮かわを穿うがちて肉にくに入いり、 筋すじを断たちて骨ほねを破やぶり、 髄ずいを取とりて食くらふ。

又屍糞泥ノ内ニ多ク有リ↢諸ノ虫↡。名ク↢嬢矩ト↡。穿チテ↠皮ヲ入リ↠肉ニ、断チテ↠筋ヲ破リテ↠骨ヲ、取リテ↠髄ヲ而食フ。

・刀剣刃路

^次つぎに屍し糞泥ふんでいに間ひまなくして、 利とき刀剣とうけんあり。 刃つるぎを仰あおむけて路みちとなす。 かのもろもろの有う情じょう、 舎宅しゃたくを求もとめんがために、 かしこより出いでをはりて、 遊ゆ行ぎょうしてここに至いたり、 足あしを下くだす時ときには、 皮ひ・肉にく・筋きん・血けつことごとくみな消きえ爛ただれぬ。 足あしを挙あぐる時ときには、 また復ぶくすること故もとのごとし。

次ニ屍糞泥ノ無間ニ有リ↢利キ刀剣↡。仰ゲテ↠刃ヲ為ス↠路ト。彼ノ諸ノ有情為ニ↠求メムガ↢舎宅ヲ↡、従リ↠彼出デ已リテ、遊行シテ至リテ↠此ニ下ス↠*足ヲ時ニハ、皮肉筋血悉ク皆消エ爛タダレヌ。挙グル↠足ヲ之時ニハ還復スルコト如シ↠故モトノ。

・刃葉林

^次つぎに刀剣とうけん刃じん路ろに間ひまなくして、 刃葉じんよう林りんあり。 かのもろもろの有う情じょう、 舎宅しゃたくを求もとめんがために、 かしこより出いでをはりて、 かの陰かげに往ゆき趣おもむきて、 わづかにその下したに坐ざするに、 微み風ふうつひに起おこりて刃つるぎの葉は堕だ落らくし、 その身みの一切いっさいの支し節せつを*斫しゃく截ぜつして、 すなはち地じに躄たおれぬ。

次ニ刀剣刃路ノ無間ニ有リ↢刃葉林↡。彼ノ諸ノ有情為ニ↠求メムガ↢舎宅ヲ↡、従リ↠彼出デ已リテ、往キ↢趣キテ彼ノ陰ニ↡、纔ニ坐スルニ↢其ノ下ニ↡、微風*遂ニ起リテ刃ツルギノ葉堕落ス。斫↢截シテ其ノ身ノ一切ノ支節ヲ↡、便*即チ躄タフレヌ↠地ニ。

^*黒こく黧りの狗いぬありて、 *脊せき・胎たいを*摣掣しゃせいして、 これを噉食だんじきす。

有リテ↢黒黧ノ狗↡、摣↢掣シテ脊・胎ヲ↡而噉↢食ス之ヲ↡。

・鉄設柆末梨林

^この刃葉じんよう林りんより間ひまなくして、 *鉄てつ設し柆りゅう末まつ梨り林りんあり。 かのもろもろの有う情じょう、 舎宅しゃたくを求もとめんがために、 すなはち来きたりてこれに趣おもむきて、 つひにその上うえに登のぼる。 まさに登のぼりぬる時ときには、 一切いっさいの*刺鋒しふ、 ことごとく回かえりて下したに向むかふ。 下くだらんと欲ほっする時ときには、 一切いっさいの刺鋒しふ、 また回かえりて上うえに向むかふ。 この因縁いんねんによりて、 その身みを貫ぬき刺さして、 もろもろの支し節せつに遍へんす。

従リ↢此ノ刃葉林↡無間ニ有リ↢鉄設柆*末梨林↡。彼ノ諸ノ有情為ニ↠求メムガ↢舎宅ヲ↡、便チ来リテ趣キテ↠之ニ、遂ニ登ル↢其ノ上ニ↡。当ニ登リヌル之時ニハ、一切ノ刺鋒悉ク廻リテ向フ↠下ニ。*欲スル↠下ラムト之時ニハ、一切ノ刺鋒復廻リテ向フ↠上ニ。由リテ↢此ノ因縁ニ↡、貫キ↢刺サキテ其ノ身ヲ↡遍ス↢諸ノ支節ニ↡。

^その時ときに、 すなはち鉄てつの嘴くちばしある大おおきなる0822烏からすありて、 かの頭こうべの上うえに上のぼり、 あるいはその髆かたに上のぼりて、 *眼げん精しょうを*探啄たんたくして、 しかもこれを噉食だんじきす。

爾ノ時ニ便チ有リテ↢鉄ノ嘴アル大ナル烏↡、上リ↢彼ノ頭ノ上ニ↡、或イハ上リテ↢*其ノ髆カタニ↡、探↢啄シテ眼精ヲ↡、而モ噉↢食ス之ヲ↡。

・熱灰河

^鉄てつ設し柆りゅう末まつ梨り林りんより間ひまなくして、 広大こうだいなる河かわあり。 沸わきて熱あつき灰はいの水みず、 そのなかに*弥み満まんせり。 かのもろもろの有う情じょう、 舎宅しゃたくを尋たずね求もとめて、 かしこより出いでをはりて、 来きたりてこのなかに堕おちぬ。 なほ豆まめをもつてこれを大おおきなる鑊かなえに置おきて、 猛たけく熾さかりなる火ひを燃たきて、 これを煎煮せんしゃするがごとし。 湯ゆに随したがひて騰とう湧ゆして、 *周しゅう旋せんして回え復ぶくす。

従リ↢鉄設柆末梨林↡無間ニ有リ↢広大ノ河↡。沸キテ↢熱キ灰ノ水↡弥↢満セリ其ノ中ニ↡。彼ノ諸ノ有情尋ツギテ求メムトシテ↢舎宅ヲ↡、従リ↠彼出デ已リテ、来リテ堕チヌ↢此ノ中ニ↡。猶如シ↧以テ↠豆ヲ置イレテ↢之ヲ大ナル鑊カナヘニ↡、燃タキテ↢猛ク熾サカリナル火ヲ↡、而シテ煎↢煮ス之ヲ↡、随ヒテ↠湯ニ騰*湧シテ、周旋シテ廻復スルガ↥。

^河かわの両ふたつの岸きしに、 もろもろの獄卒ごくそつあり。 手てに杖じょう索さくおよび大おおきなる網あみを執とりて、 行列ごうれつして住じゅうして、 かの有う情じょうを遮しゃして出いづることを得えしめず。 あるいは索なわをもつて羂かけ、 あるいは網あみをもつて漉すくふ。

於テ↢河ノ両フタツノ岸ニ↡有1029リ↢諸ノ獄卒↡。手ニ執リテ↢杖索及以 オヨビ 大ナル網ヲ↡、行*列シテ而住シテ、遮シテ↢彼ノ有情ヲ↡不↠令メ↠得↠出ヅルコトヲ。或イハ以テシ↢索羂ヲ↡或イハ以テ↠網ヲ漉シタミテ、

^また、 広大こうだいなる熱鉄ねつてつの地じの上うえに置おきて、 かの有う情じょうを仰あおむけて、 これに問とひていはく、 ªなんぢら、 いま*なんの所須しょしゅをか欲ほっするº と。 かくのごとく答こたへていはく、 ªわれら、 いま*つひに覚かく知ちすることなし。 しかも種々しゅじゅの飢苦きくのために逼せめらるº と。 時ときにかの獄卒ごくそつ、 すなはち鉄てつの鉆かなはしをもつて口くちを鉆はさみて開ひらかしめて、 すなはち極熱ごくねつの焼しょう熱ねつの鉄丸てつがんをもつてその口くちのなかに置おく。 余よは前さきに説とくがごとし。

復置キテ↢広大ノ熱鉄ノ地ノ上ニ↡、仰ゲテ↢彼ノ有情ヲ↡、而シテ問ヒテ↠之ニ言ク、汝等、今者 イマ 欲スルト↢何ノ所須ヲカ↡。如ク↠是クノ答ヘテ言ク、我等、今者 イマ 竟ニ無シ↢覚知スルコト↡。然モ為ニ↢種々ノ飢苦ノ↡所ト↠逼セメサ。時ニ彼ノ獄卒、即チ以テ↢鉄ノ*鉆カナバシヲ↡*鉆ハサミテ↠口ヲ令メテ↠開カ、便チ以テ↢極熱ノ焼*熱ノ鉄*丸ヲ↡置ク↢其ノ口ノ中ニ↡。余ハ如シ↢前ニ説クガ↡。

^もしかれ答こたへて、 ªわれいまただ渇かつ苦くのために逼せめらるº といへば、 その時ときに、 獄卒ごくそつすなはち洋銅ようどうをもつてその口くちに潅そそぐ。 この因縁いんねんによりて長じょう時じに苦くを受うく。

若シ彼答ヘテ言ヘバ↧我今唯シ為ニ↢渇苦ノ↡所ト↞逼セメサ、爾ノ時ニ獄卒便即チ洋銅ヲ以テ潅グ↢其ノ口ニ↡。由リテ↢是ノ因縁ニ↡長時ニ受ク↠苦ヲ。

^乃ない至し、 *先せん0823世ぜに造つくれるところの一切いっさいの、 よく*那落迦ならかを感かんじ、 悪あく・不ふ善ぜんの業ごういまだ尽つきざれば、 いまだこのなかを出いでず。 もしは刀剣とうけん刃じん路ろ、 もしは刃葉じんよう林りん、 もしは鉄てつ設し柆りゅう末まつ梨り林りん、 これを総すべて一いちとなす。 ゆゑに四しの園そのあり」 と。

乃至先世ノ所ノ↠造レル一*切ノ、能ク感ズル↢那落迦ヲ↡悪不善ノ業*未ダレバ↠尽キ、未ダ↠出デ。此ノ中ニ若シハ刀剣刃路、若シハ*刃*葉林、若シハ鉄設柆末梨林、総ジテ↠之ヲ為ス↠一ト。故ニ有リト↢*四ノ園↡。」

^以い上じょうは ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論) ならびに ¬倶く舎しゃ¼ (倶舎論) の意こころなり。 一々いちいちの地じ獄ごくの四し門もんのほかにおのおのこの四し園おんあり。 合がっして十じゅう六ろくと名なづく。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ の、 八大はちだい地じ獄ごくの十じゅう六ろくの別処べっしょの*名みょう相そうの各別かくべつなるには同どうぜず。

已上ハ¬瑜伽¼并ビニ¬倶舎ノ¼意ハ。一々ノ地獄ノ四門之外ニ各 ノ有リ↢*此ノ四園↡。合シテ*名ク↢十六ト↡。不↠同ゼ↢¬正法念経ノ¼八大地獄ノ十六ノ別処ノ名相ノ各別ナルニハ↡

^また頞部陀あぶだ等とうの*八寒はっかん地じ獄ごくあり。 つぶさに*経きょう論ろんのごとし。 これを広こう述じゅつするに遑いとまあらず。

復有リ↢頞部陀等ノ八寒地獄↡。具ニ如シ↢経論ノ↡。不↠遑イトマアラ↣*広↢述スルニ之ヲ↡。

二 Ⅰ ⅱ b 餓鬼

【12】^第だい二にに△餓鬼がき道どうを明あかさば、 住じゅう処しょに二にあり。 一いちには地じの下した五ご百ひゃく由ゆ旬じゅんにあり。 *閻えん魔ま王界おうかいなり。 二にには人天にんでんのあひだにあり。 その相そうはなはだ多おおし。 いま少分しょうぶんを明あかさん。

第二ニ明サバ↢餓鬼道ヲ↡者、住処ニ有リ↠二。一ニ者在リ↢地ノ下五百由旬ニ↡。閻魔王界ナリ。二ニ者在リ↢人天之間ニ↡。其ノ相甚ダ多シ。今明サム↢少分ヲ↡。

^あるいは身みの長たけ一いっ尺しゃくなり。 あるいは身しん量りょう、 人にんのごとし。 あるいは千せん踰ゆ繕ぜん那なのごとし。 あるいは*雪山せっせんのごとし。 ¬*大集だいじっ経きょう¼。

*或イハ身ノ長一尺ナリ。或イハ身量如シ↠人ノ。或イハ*如シ↢*千踰繕那ノ↡。或イハ如シ↢*雪山ノ。¬大集経¼

・鑊身

^あるいは鬼きあり。 鑊身かくしんと名なづく。 その身み長ちょう大だいにして、 人にんに過すぎたること両りょう倍ばいなり。 面めん・目もくあることなく、 手しゅ・足そくはなほ鑊かなえの脚あしのごとし。 熱ねっ火かなかに満みちて、 その身みを焚ぼん焼じょうす。

或イハ有リ↠鬼。名ク↢鑊身ト↡。其ノ身長大ニシテ、過ギタルコト↠人ニ両倍ナリ、無シ↠有ルコト↢面目↡。手足ハ猶如シ↢鑊カナヘノ脚ノ↡。熱火満チテ↠中ニ、焚↢焼ス其ノ身ヲ↡。

^昔むかし、 財ざいを貪とんじて*屠と殺せつせるもの、 この報ほうを受うく。

昔貪シテ↠財ヲ屠殺セル之者、受ク↢此ノ報ヲ↡。

・食吐

^あるいは鬼きあり。 食じき吐とと名なづく。 その身み広大こうだいにして、 長たけ半はん由ゆ旬じゅんなり。 つねに嘔おう吐とを求もとむるに、 困たしなみて得うることあたはず。

或イハ有リ↠鬼。名ク↢食吐ト↡。其ノ身広大ニシテ長半由旬ナリ。常ニ求ルニ↢嘔吐ヲ↡、困タシナミテ不↠能ハ↠得ルコト。

^昔むかし0824、 あるいは*丈じょう夫ぶの、 みづから美み食じきを噉くらひて妻さい子しに与あたへず、 あるいは婦ふ人にんの、 みづから食くらひて夫子ふしに与あたへざるもの、 この報ほうを受うく。

昔1030或イハ丈夫ノ自ラ噉クラヒテ↢美食ヲ↡不↠与ヘ↢妻子ニ↡、或イハ婦人ノ自ラ食ヒテ不ルモノ↠与ヘ↢夫子ニ↡、受ク↢此ノ報ヲ↡。

・食気

^あるいは鬼きあり。 食じき気けと名なづく。 世せ人にんの、 病やまいによりて、 水みずの辺ほとり、 林はやしのなかに*祭まつりを設もうくるに、 この香こう気けを臭かぎて、 もつてみづから*活かつ命みょうす。

或イハ有リ↠鬼。名ク↢食気ト↡。世人ノ依リテ↠病ニ、水ノ辺、林ノ中ニシテ設クルニ↠祭ヲ、*臭カギテ↢*此ノ香気ヲ↡、以テ自ラ活*命ス。

^昔むかし、 妻さい子し等とうの前まえにして独ひとり美み食じきを噉くらへるもの、 この報ほうを受うく。

昔於テ↢妻子等ノ前ニ↡独リ噉クラヘル↢美食ヲ↡*之者、受ク↢此ノ報ヲ↡。

・食法

^あるいは鬼きあり。 食法じきほうと名なづく。 嶮難けんなんの処ところにして馳ち走そうして食じきを求もとむ。 色いろは黒雲こくうんのごとく、 涙なみだの流ながるること雨あめのごとし。 もし僧そう寺じに至いたりて、 人ひとの呪願しゅがんし説法せっぽうすることある時ときは、 これによりて力ちからを得えて活かつ命みょうす。

或イハ有リ↠鬼。名ク↢食法ト↡。於テ↢嶮難ノ処ニ↡馳走シテ求ム↠食ヲ。色ハ如シ↢黒雲ノ↡。涙ノ流ルルコト如シ↠雨ノ。若シ至リテ↢僧寺ニ↡有ル↢人ノ呪願シ説法スルコト↡之時ニ、因リテ↠此ニ得テ↠力ヲ活命ス。

^昔むかし、 *名みょう利りを貪とんぜしがために*不ふ浄じょうに説法せっぽうせしもの、 この報ほうを受うく。

昔為ニ↠貪セシガ↢名利ヲ↡不浄ニ説法セシ之者、受ク↢此ノ報ヲ↡。

・食水

^あるいは鬼きあり。 食水じきすいと名なづく。 飢き渇かつ身みを焼やき、 *周慞しゅうしょうして水みずを求もとむるに、 困たしなみて得うることあたはず。 長ながき髪かみ面おもてを覆おおひ、 目め見みるところなし。 走はしりて河かわの辺ほとりに趣おもむきて、 もし人ひと、 河かわを渡わたりて、 脚足あしの下したより遺落ゆいらくせる余のこりの水みずあれば、 速疾そくしつに接とり取とりて、 もつてみづから活かつ命みょうす。

或イハ有リ↠鬼。名ク↢食水ト↡。飢渇焼キ↠身ヲ、周*慞シテ求ムルニ↠水ヲ、困タシナミテ不↠能ハ↠得ルコト。長キ髪覆ヒテ↠面ヲ、目無シ↠所↠見ル。走リテ趣キテ↢河ノ辺ニ↡、若シ人ノ渡レルニ↠河ヲ、脚足 アシ 之下ニ遺落ノ余ノ水ヲ速疾ニ接リ取リテ、以テ自ラ活命ス。

^あるいは人ひとの、 水みずを掬すくひて亡もうぜる父母ぶもに施せするに、 すなはち少しょう分ぶんを得えて、 命いのち、 存ぞん立りゅうすることを得う。 もしみづから水みずを取とれば、 水みずを守まもるもろもろの鬼き、 杖つえをもつて撾た打だす。

或イハ人ノ掬ムスビテ↠水ヲ施スルニ↢亡ゼル父母ニ↡則チ得テ↢少分ヲ↡、命得↢存立スルコトヲ↡。若シ自ラ取レバ↠水ヲ、守ル↠水ヲ諸ノ鬼、以テ↠杖ヲ撾打ス。

^昔むかし、 酒さけを沽うるに水みずを加くわへ、 あるいは*蚓いん・蛾がを沈しずめ、 善法ぜんぽうを修しゅせざるもの、 この報ほうを受うく。

昔沽ウルニ↠酒ヲ加ヘ↠水ヲ、或イハ沈メ↢蚓蛾ヲ↡、不ル↠修セ↢善法ヲ↡*之者、受ク↢此ノ報ヲ↡。

・悕望

^あるいは鬼きあり。 悕け望もうと名なづく。 世せ人にんの、 亡もう0825ぜる父母ぶものために祀まつりを設もうくる時ときにのみ、 得えてこれを食くらふ。 余よをばことごとく食じきすることあたはず。

或イハ有リ↠鬼。名ク↢*悕望ト↡。世人ノ為ニ↢亡ゼル父母ノ↡設クル↠祀ヲ之時ニノミ、得テ而食フ↠之ヲ。余ヲバ悉ク不↠能ハ↠食スルコト。

^もし人ひと、 労いたわしくして少しょう物もつを得えたるを、 *誑惑おうわくして取とり用もちゐるもの、 この報ほうを受うく。

若シ人労イタハシクシテ而得タルヲ↢少物ヲ↡誑*或シテ取リ用ヰル之者、受ク↢此ノ報ヲ↡。

^あるいは鬼きあり。 海渚かいしょのなかに生うまれたり。 樹林じゅりん・河か水すいあることなく、 その処ところはなはだ熱あつし。 かの冬ふゆの日ひをもつて人間にんげんの夏なつに比くらぶるに、 過すぎ踰こえたること千倍せんばいなり。 ただ朝あしたの露つゆをもつてみづから活かつ命みょうす。 海渚かいしょに住じゅうすといへども、 海うみを見みるに枯かれ竭つきぬ。

或イハ有リ↠鬼。生レタリ↢海渚ノ中ニ↡。無シ↠有ルコト↢樹林・河水↡。其ノ処甚ダ熱シ。以テ↢彼ノ冬ノ日ヲ↡比タクラブルニ↢人間ノ夏ニ↡、過ギ踰エタルコト千倍ナリ。唯シ以テ↢朝ノ露ヲ↡而自ラ活命ス。雖モ↠住スト↢海渚ニ↡、見ルニ↠海ヲ枯レ竭ツキヌ。

^昔むかし、 路みちを行ゆく人ひとの、 病びょう苦くに疲ひ極ごくせるに、 その賈うるものを欺あざむき取とりて、 直あたいを与あたふること薄少はくしょうなるもの、 この報ほうを受うく。

昔行ク↠*路ヲ人ノ病苦ニ疲極セルニ、欺キ↢取リテ其ノ*賈ウルモノヲ↡、与フルコト↠直アタヒヲ薄少ナル之者、受ク↢此ノ報ヲ↡。

^あるいは鬼きあり。 つねに*塚つかのあひだに至いたりて、 *焼しょう屍しの火ひを噉くらふに、 なほ足あきたることあたはず。

或イハ有リ↠鬼。常ニ至リテ↢塚ノ間ニ↡、噉クラフニ↢焼*屍ノ火ヲ↡、猶不↠能ハ↠足アキタルコト。

^昔むかし、 刑ぎょう獄ごくを典主てんしゅして、 人ひとの飲食おんじきを取とれるもの、 この報ほうを受うく。

昔典↢主シテ刑獄ヲ↡取レル↢人ノ飲食ヲ↡*之者、受ク↢此ノ報1031ヲ↡。

^あるいは餓鬼がきあり。 生うまれて樹きのなかにありて、 *逼迮ひっさくして身みを押おさるること賊木とくさ虫むしのごとくして、 大だい苦く悩のうを受うく。

或イハ有リ↢*餓鬼↡。生レテ在リテ↢樹ノ中ニ↡、逼迮シテ押スコト↠身ヲ如クシテ↢賊木虫ノ↡、受ク↢大苦悩ヲ↡。

^昔むかし、 陰おん涼りょうの樹きを伐きり、 および衆僧しゅそうの園林おんりんを伐きれるもの、 この報ほうを受うく。 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼。

昔伐リ↢陰涼ノ樹ヲ↡、及ビ伐レル↢衆僧ノ園林ヲ↡之者、受ク↢此ノ報ヲ↡。¬正法念経¼

^あるいはまた鬼きあり。 頭こうべの髪かみ、 垂たれ下くだりて、 あまねく身体しんたいを纏まつへり。 その髪かみ刀かたなのごとくして、 その身みを刺さし切きる。 あるいは変へんじて火ひとなりて、 ˆ身体しんたいをˇ 周しゅう帀そうして焚ぼん焼じょうす。

*或イハ復有リ↠鬼。頭ノ髪垂クダリ下リテ遍ク纏マツヘリ↢身体ヲ↡。其ノ髪如クシテ↠刀ノ刺シ↢切ル其ノ身ヲ↡。或イハ変ジテ作リテ↠火ト、周帀シテ焚焼ス。

^あるいは鬼きあり。 昼ちゅう夜やにおのおの五ごの子こを生うむ。 生うむに随したがひてこれを食くらふに、 なほつねに飢き乏ぼうす。 ¬*六ろっ波ぱ羅ら0826蜜みつ経きょう¼。

或イハ有リ↠鬼。昼夜ニ各 ノ生ム↢五ノ子ヲ↡。随ヒテ↠生ムニ食フニ↠之ヲ、猶常ニ飢乏ス。¬六波羅蜜経¼

^あるいはまた鬼きあり。 一切いっさいの食じきをみな噉くらふことあたはず。 ただみづから頭こうべを破わり脳のうを取とりて食くらふ。

*或イハ復有リ↠鬼。一切之食ヲ皆不↠能ハ↠噉クラフコト。唯自ラ破ワリテ↠頭ヲ取リテ↠脳ナヅキヲ而食フ。

^あるいは鬼きあり。 火ひ口くちより出いづ。 飛蛾ひがの、 火ひに投とうずるをもつて飲食おんじきとなす。

或イハ有リ↠鬼。火従リ↠口出ヅ。飛蛾ノ*投ズルヲ↠火ニ以テ為ス↢飲食↡。

^あるいは鬼きあり。 糞ふん・涕てい・膿のう・血けつ、 器うつわを洗あらへる遺ゆい余よを食くらふ。 ¬大論だいろん¼ (大智度論)。

或イハ有リ↠鬼。食フ↢糞・涕・濃・血、洗フ↠器ヲ遺余ヲ↡。¬大論¼

^またほかの障さわりによりて食じきを得えざる鬼きあり。 いはく、 飢き渇かつつねに急きゅうにして、 身体しんたい枯こ竭かつせり。 たまたま清きよき流ながれに望のぞみ、 走はしりてかしこに向むかひ赴おもむけば、 大力だいりきの鬼きありて、 杖つえをもつて逆さかへ打うつ。 あるいは変へんじて火ひとなり、 あるいはことごとく枯かれ涸かわきぬ。

又有リ↧依リテ↢外ノ障ニ↡不ル↠得↠食ヲ鬼↥。謂ク飢渇常ニ急ニシテ、身体枯竭セリ。適マ望ミテ↢清キ流ニ↡走リテ向ヒ↢*赴ケバ彼ニ↡、有リテ↢大力ノ鬼↡以テ↠杖ヲ*逆サカヘ打ツ。或イハ変ジテ作リヌ↠火ト。或イハ悉ク枯レ涸カワキヌ。

^あるいはうちの障さわりによりて食じきを得えざる鬼きあり。 いはく、 口くちは針はりの孔あなのごとく、 腹はらは大山だいせんのごとくして、 たとひ飲食おんじきに逢あへどもこれを噉くらふに由よしなし。

*或イハ有リ↧依リテ↢内ノ障ニ↡不ル↠得↠食ヲ鬼↥。謂ク口ハ如ク↢針ノ孔ノ↡、腹ハ如クシテ↢大山ノ↡、縦ヒ逢ヘドモ↢飲食ニ↡無シ↠由↠噉クラフニ↠之ヲ。

^あるいは内ない外げの障さわりなけれども、 しかも用もちゐることあたはざる鬼きあり。 いはく、 たまたま少しょう食じきに逢あひて食噉じきだんすれば、 変へんじて猛焔みょうえんとなりて、 身みを焼やきて出いづ。 ¬瑜伽ゆが論ろん¼。

或イハ*有リ↧無ケレドモ↢内外ノ障↡、而モ不ル↠能ハ↠用ヰルコト鬼↥。謂ク適マ逢ヒテ↢少食ニ↡而シテ食噉スレバ者、変ジテ作リテ↢猛焔ト↡、焼キテ↠身ヲ而出ヅ。¬瑜伽論¼

^人間にんげんの一月いちがつをもつて一日いちにち夜やとなして月がつ・年ねんをなし、 寿じゅ五ご百ひゃく歳さいなり。

以テ↢人間ノ一月ヲ↡為シテ↢一日夜ト↡成シテ↢月年ヲ↡、寿五百歳ナリ。

^¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ (意) にのたまはく、 「*慳貪けんどんと嫉しっ妬とのもの、 餓鬼がき道どうに堕おつ」 と。

¬正法念経ニ¼云ク、「慳貪ト嫉妬*之者、堕ツト↢餓鬼道ニ↡。」

二 Ⅰ ⅱ c 畜生

【13】^第だい三さんに△畜ちく生しょう道どうを明あかさば、 その住じゅう処しょに二にあり。 根本こんぽんは大海だいかいに住じゅうし、 支し末まつは人天にんでんに雑ぞうせり。

第三ニ明サバ↢畜生道ヲ↡者、其ノ住処ニ有リ↠二。根本ノハ住ス↢大海ニ↡。支末ノハ雑セリ↢人天ニ↡。

^別べっして論ろんずれば、 三さん十じゅう四し億おくの種類しゅるいあり。 総そうじて論ろんずれば、 三さんを0827出いでず。 一いちは鳥ちょう類るい、 二には獣じゅう類るい、 三さんは虫ちゅう類るいなり。

*別シテ論ズレバ有リ↢卅四億ノ種類↡。*総ジテ論ズレバ不↠出デ↠三ヲ。一者*鳥類、二者獣類、三者虫類ナリ。

^かくのごとき等らの類たぐい、 強ごう弱にゃくあひ害がいす。 もしは飲おん、 もしは食じき、 いまだかつてしばらくも安やすらかならず。 昼ちゅう夜やのうちに、 つねに*怖懼ふくを懐いだけり。 いはんやまた、 もろもろの水すい性しょうの属たぐいは漁すなどるもののために害がいせられ、 もろもろの陸りく行ぎょうの類たぐいは、 猟かりするもののために害がいせらる。

如キ↠是クノ等ノ類、強弱相害ス。若シハ飲若シハ食、*未ダ↢曽ムカシニモ暫クモ安カラ↡。昼夜之中ニ常ニ懐ケリ↢怖リ懼オソルルコトヲ↡。況ヤ復諸ノ水1032性之属ハ為ニ↢漁スナドル者ノ↡所ル↠害セ。諸ノ陸ニ行アリク之類ハ為ニ↢猟カリスル者ノ↡所ル↠害セ。

^もしは象ぞう・馬め・牛ご・*驢ろ・駱らく駝だ・*騾ら等とうのごときは、 あるいは鉄てっ鉤くをもつてその脳のうを斲うがち、 あるいは鼻はなのなかに穿とおし、 あるいは轡くつわつらをもつて首くびに繋かく。 身みにつねに重おもきものを負おひて、 もろもろの*杖じょう捶すいを加くわへらる。 ただ水すい・草そうを念ねんじて、 余よは知しるところなし。

若シハ如キハ↢象・馬・牛・驢・駱駝・騾等ノ↡、或イハ鉄ノ鉤ヲモテ斲ウガチ↢其ノ脳ナヅキヲ↡、或イハ穿トホシ↢鼻ノ中ニ↡、或イハ轡クツワヅラヲモテ繋ク↠首ニ。身ニ常ニ負ヒテ↠重キモノヲ、加ヘラル↢諸ノ杖捶ヲ↡。但念ジテ↢水・草ヲ↡、余ハ無シ↠所↠知ル。

^また蚰蜒なめくじ・鼠狼いたち等とうは、 闇やみのなかに生うまれて闇やみのなかに死しぬ。 蟣蝨しらみ・蚤のみ等とうは、 人身にんじんによりて生しょうじて、 還かえりて人にんによりて死しぬ。

又蚰蜒ナメクジ・鼠狼等ハ闇ノ中ニシテ而生レテ闇ノ中ニシテ*而死ヌ。蟣蝨・蚤等ハ依リテ↢人身ニ↡生ジテ還リテ依リテ↠人ニ死ヌ。

^またもろもろの竜りゅう衆しゅは、 三熱さんねつの苦くを受うけて昼ちゅう夜やに休やすむことなし。 あるいはまた*蟒蛇もうじゃは、 その身み長ちょう大だいなれども、 聾騃ろうがいにして足あしなく、 *宛転えんでん腹ふく行ぎょうして、 もろもろの小虫しょうちゅうのために唼しょう食じきせらる。

又諸ノ竜衆ハ受ケテ↢三熱ノ苦ヲ↡昼夜ニ无シ↠休ムコト。或イハ復蟒蛇ハ其ノ身長大ニシテ、聾騃ニシテ无ク↠足、宛転シテ腹ヲモテ行ク。為ニ↢諸ノ小虫ノ↡之所ル↢唼食セ↡。

^あるいはまた一いちの毛けの百ひゃく分ぶんのごときもの、 あるいは窓まどのなかの遊ゆ塵じんのごときもの、 あるいは十じゅう五ご由ゆ旬じゅんのごときものあり。

*或イハ復有リ↧如キモノ↢一ノ毛ノ百分ノ↡、或イハ如キモノ↢窓ノ中ノ遊塵ノ↡、或イハ如キモノ↦十*五由旬ノ↥。

^かくのごときもろもろの畜ちく生しょうは、 あるいは*一いち時じを経ふるあひだ、 あるいは*七しち時じのあひだ、 あるいは一劫いっこう・百ひゃく劫こう乃ない至し千万せんまん億おく劫こうに無む量りょうの苦くを受うくるあり。 あるときにはもろもろの違い縁えんに遇あひて、 しば0828しば残害ざんがいせらる。 これらのもろもろの苦く、 勝あげて計かぞふべからず。

如キ↠是クノ諸ノ畜生ハ、或イハ経ル↢*一時ヲ↡項アヒダ、或イハ七時ノ項、或イハ有リ↣一劫*百劫乃*至千万億劫ニ受クル↢无量ノ苦ヲ↡。或ルトキニハ遇ヒテ↢諸ノ違縁ニ↡、数バ被ル↢残害セ↡。此等ノ諸ノ苦、不↠可カラ↢勝アゲテ計フ↡。

^愚痴ぐち・*無む慚ざんにしていたづらに信しん施せを受うけて、 他たの物ものを償つぐのはざるもの、 この報ほうを受うく。 以い上じょう諸文しょもん、 *経きょう論ろんに散在さんざいせり。

愚痴・无慚ニシテ徒ニ受ケテ↢信ノ施ヲ↡、他ノ物ヲ不ル↠償ツグノハ者、受ク↢此ノ報ヲ↡。*已上諸文、散↢在セリ*経論ニ↡

二 Ⅰ ⅱ d 阿修羅

【14】^第だい四しに△阿あ修しゅ羅ら道どうを明あかさば、 二にあり。 根本こんぽんの勝すぐれたるものは、 須しゅ弥み山せんの北きた、 巨こ海かいの底そこに住じゅうせり。 支流しるの劣れつなるものは、 四し大だい洲しゅうのあひだの山巌せんがんのなかにあり。

第四ニ明サバ↢阿修羅道ヲ↡者、有リ↠*二。根本ノ勝レタル者ハ、住セリ↢須弥山ノ北、巨海之底ニ↡。支流ノ劣ナル者ハ、在リ↢四大*洲ノ間ノ山巌之中ニ↡。

^雲雷うんらいもし鳴なれば、 これ*天てんの鼓つづみと謂おもひて*怖畏ふい周章しゅうしょうして、 心しん大おおきに*戦悼せんとうす。 またつねに諸天しょてんのために侵害しんがいせられて、 あるいは身体しんたいを破やぶり、 あるいはその命めいを夭ようす。 また*日々にちにち三さん時じに、 *苦具くぐおのづから来きたりて逼害ひつがいす。 種々しゅじゅの憂苦うく、 勝あげて説とくべからず。

雲雷若シ鳴レバ、謂ヒテ↢是天ノ鼓ト↡怖畏周章シテ、心大ニ戦悼ス。亦常ニ為ニ↢諸天ノ↡之所レテ↢侵害セ↡、或イハ破リ↢身体ヲ↡、或イハ夭ス↢其ノ命ヲ↡。又日々三時ニ苦具自ラ来リテ逼害ス。種々ノ憂苦、不↠可カラ↢勝アゲテ説ク↡。

二 Ⅰ ⅱ e 人

【15】^第だい五ごに△人道にんどうを明あかさば、 略りゃくして三さんの相そうあり。 つまびらかに観察かんざつすべし。 ▼一いちには↓不ふ浄じょうの相そう、 二にには↓苦くの相そう、 三さんには↓無む常じょうの相そうなり。

第五ニ明サバ↢人道ヲ↡者、略シテ有リ↢三ノ相↡。応シ↢審カニ観察ス↡。一ニハ不浄ノ相、二ニハ苦ノ相、三ニハ无常ノ相ナリ。

・不浄

【16】^一いちに↑不ふ浄じょうの相そうといふは、 おほよそ人にんの身しんのなかに三さん百びゃく六ろく十じゅうの骨ほねありて、 節々ふしぶしあひ柱ささへたり。

一1033ニ不浄ノ*相トイフ者、凡ソ人ノ身ノ中ニ有リテ↢三百六十之骨↡、節々相柱ササヘタリ。

^いはく、 指ゆびの骨ほねは足あしの骨ほねを柱ささへ、 足あしの骨ほねは踝つぶふしの骨ほねを柱ささへ、 踝つぶふしの骨ほねははぎの骨ほねを柱ささへ、 はぎの骨ほねは膝ひざの骨ほねを柱ささへ、 膝ひざの骨ほねはももの骨ほねを柱ささへ、 ももの骨ほねは臗しりげたの骨ほねを柱ささへ、 臗しりげたの骨ほねは腰こしの骨ほねを柱ささへ、 腰こしの骨ほねは脊せなかの骨ほねを柱ささへ、 脊せなかの骨ほね0829は勒かたわらの骨ほねを柱ささへ、 また脊せなかの骨ほねは項うなじの骨ほねを柱ささへ、 項うなじの骨ほねは頷おとがいの骨ほねを柱ささへ、 頷おとがいの骨ほねは牙歯きばを柱ささへ、 上かみに髑どく髏ろあり。

謂ク指ノ骨ハ柱ササヘタリ↢足ノ骨ヲ↡。足ノ骨ハ柱ササヘタリ↢踝ツブフシノ骨ヲ↡。踝ノ骨ハ柱ササヘタリ↢ハギノ骨ヲ↡。ノ骨ハ柱ササヘタリ↢膝ノ骨ヲ↡。膝ノ骨ハ柱ササヘタリ↢モモノ骨ヲ↡。ノ骨ハ柱ササヘタリ↢臗シリゲタノ骨ヲ↡。臗ノ骨ハ柱ササヘタリ↢腰ノ骨ヲ↡。腰ノ骨ハ柱ササヘタリ↢*脊ノ骨ヲ↡。*脊ノ骨ハ柱ササヘタリ↢勒カタハラノ骨ヲ↡。復*脊ノ骨ハ柱ササヘタリ↢項ウナジノ骨ヲ↡。項ノ骨ハ柱ササヘタリ↢頷ノ骨ヲ↡。頷ノ骨ハ柱ササヘタリ↢牙歯ヲ↡。上ニ有リ↢髑髏↡。

^また項うなじの骨ほねは肩かたの骨ほねを柱ささへたり。 肩かたの骨ほねは臂ひじの骨ほねを柱ささへたり。 臂ひじの骨ほねは*腕うでの骨ほねを柱ささへたり。 腕うでの骨ほねは掌たなごころの骨ほねを柱ささへたり。 掌たなごころの骨ほねは指ゆびの骨ほねを柱ささへたり。 かくのごとく展転てんでんして次し第だいに鎖さ成じょうせり。 ¬大だい経きょう¼ (*涅槃経) の意こころ。

復項ノ骨ハ柱ササヘタリ↢肩ノ骨ヲ↡。肩ノ骨ハ柱ササヘタリ↢臂ノ骨ヲ↡。臂ノ骨ハ柱ササヘタリ↢*脘タブサノ骨ヲ↡。*脘タブサノ骨ハ柱ササヘタリ↢掌ノ骨ヲ↡。掌ノ骨ハ柱ササヘタリ↢指ノ骨ヲ↡。如ク↠是クノ展転シテ次第ニ鎖成セリ。¬大*経ノ¼*意

^「三さん百びゃく六ろく十じゅうの骨ほねの、 聚あつまりて成じょうぜるところなり。 朽くち壊やぶれたる舎いえのごとし。 もろもろの節ふしをもつて支ささえ持たもち、 四しの細さい脈みゃくをもつて*周しゅう帀そうして弥布みふせり。

「三百六十ノ骨ノ聚アツマリテ所ナリ↠成ゼル。如シ↢朽チ壊レタル舎イヘノ↡。諸ノ節ヲモテ支持セリ。以テ↢四ノ細脈ヲ↡周帀シテ弥布セリ。

^五ご百ひゃく分ぶんの肉にく、 なほ泥どろの塗ぬれるがごとく、 六ろくの脈みゃくあひ繋つなぎ、 五ご百ひゃくの筋すじ纏まつへり。

五百分ノ肉シシムラ、猶如シ↢泥ノ塗レルガ↡。六ノ脈チノミチ相繋ケタリ。五百ノ筋纏マツヘリ。

^七しち百ひゃくの細さい脈みゃく、 もつて*編絡へんらくをなし、 十じゅう六ろくの粗あらき脈みゃく、 鉤かけ帯めぐりてあひ連つらなれり。

七百ノ細脈以テ為リ↢編絡ト↡。十六ノ麁アラキ脈チノミチ鉤カケ帯メグラシテ相連レリ。

^二にの肉にく縄じょうあり。 長ながさ*三さん尋半じんはんなり。 うちにして纏まつひ結けっせり。 十じゅう六ろくの腸はらわた・胃い、 生熟しょうじゅく臓ぞうを繞めぐれり。

有リ↢二ノ肉縄↡。長サ三尋半ナリ。於テ↠内ニ纏ヒ結セリ。十六ノ腸・胃、繞マツヘリ↢生*熟蔵ヲ↡。

^二に十じゅう五ごの気け脈みゃく、 なほ窓まどの隙ひまのごとし。 一いっ百ぴゃく七しちの関かん、 あたかも破は砕さいせる器うつわのごとし。

二十五ノ気脈、猶如シ↢窓ノ隙ノ↡。一百七ノ関ヲコツリ、宛モ如シ↢破*砕セル器ノ↡。

^八万はちまんの毛もう孔く、 乱みだれたる草くさの覆おおへるがごとし。 *五ご根こん・*七しち竅きょうは不ふ浄じょうにて盈満ようまんせり。

八万ノ毛孔、如シ↢乱レタル草ヲモテ覆ヘルガ↡。五根・七竅ニ不浄ニテ盈満セリ。

^七しち重じゅうの皮かわにて裹つつみ、 *六ろく味みにて長ちょう養ようすること、 なほ祠火しかの、 呑受どんじゅして厭いとふことなきがごとし。

七重ノ皮ノ裹ニ六味ヲモテ長養セリ。猶如クシテ↠祠ルガ↠火ヲ、呑受シテ無シ↠厭フコト。

^かくのごとき身みは、 一切いっさい臭しゅう穢えにして、 自じ性しょう*殨爛かいらんせり。 たれかまさにここにおいて愛あい重じゅうし憍きょう慢まんせん」 と。 ¬*宝ほう積しゃく経きょう¼ 九く十じゅう六ろく。

如キ↠是クノ之身ハ一切臭穢ニシテ、自性*殨爛セリ。誰カ当ニ於テ↠此ニ愛重シ憍慢セムト。」¬宝積経¼九十六(勤授長者会)

^あるいはいはく、 九く百ひゃくの臠ししむら、 その上うえに覆おおひ、 九く百ひゃくの筋すじ、 そのあひだ0830に連つらなれり。 三万さんまん六千ろくせんの脈みゃくありて、 三さん升しょうの血ち、 なかにありて流る注ちゅうす。 九く十じゅう九く万まんの毛もう孔くありて、 もろもろの汗あせつねに出いづ。 九く十じゅう九く重じゅうの皮かわ、 しかもその上うえを裹つつめり。 以い上じょう、 身しん中ちゅうの骨肉こつにく等とうなり。

或イハ云ク、九百ノ臠シシムラ覆ヘリ↢其ノ上ニ↡。九百ノ筋連レリ↢其ノ間ニ↡。*有リテ↢三万六千之脈チノミチ↡。三升之血在リテ↠中ニ流注ス。有リテ↢九十九万之毛孔↡。諸ノ汗常ニ出ヅ。九十九重之皮、而シテ裹ツツメリ↢其ノ上ニ↡。已上身中ノ骨肉等ナリ

^また腹はらのなかに五ご臓ぞうあり。 葉々ようようあひ覆おおひて、 *靡々びびとして下しもざまに向むかへり。 状かたち、 蓮れん華げのごとし。 孔く竅きょうは空くう疎そにして、 内ない外げにあひ通つうじ、 おのおの九く十じゅう重じゅうあり。

又腹ノ中ニ有リ↢五蔵↡。葉々相覆ヒテ、靡々トシテ向ヘリ↠下ニ。状1034如シ↢蓮華ノ↡。孔竅ハ空疎ニシテ内外ニ相通フナリ。各 ノ有リ↢九十重↡。

^肺臓はいぞうは上うえにありて、 その色いろ白しろし。 肝臓かんぞうはその色いろ青あおし。 心臓しんぞうは中ちゅう央おうにありて、 その色いろ赤あかし。 脾ひ臓ぞうはその色いろ黄きなり。 腎臓じんぞうは下しもにありて、 その色いろ黒くろし。

肺蔵ハ在リテ↠上ニ、其ノ色白シ。*肝蔵ハ其ノ色青シ。心蔵ハ在リテ↢中央ニ↡、其ノ色赤シ。脾蔵ハ其ノ色黄ナリ。腎蔵ハ在リテ↠下ニ、其ノ色黒シ。

^また六ろっ腑ぷあり。 いはく、 大だい腸ちょうをば伝送でんそうの腑ふとなす。 また肺はい腑ふたり。 長ながさ三さん尋半じんはん、 その色いろ白しろし。

又有リ↢六*府↡。謂ク大腸ヲバ為ス↢伝送之府ト↡。亦ハ為リ↢肺府ト↡。長サ三尋半、其ノ色白シ。

^胆たんをば清浄しょうじょうの腑ふとなす。 また肝かん腑ぷたり。 その色いろ青あおし。

胆タムヲバ為ス↢清浄之府ト↡。亦ハ為リ↢*肝府ト↡。其ノ色青シ。

^小腸しょうちょうをば受じゅ盛じょうの腑ふとなす。 また心しん腑ぷたり。 長ながさ十じゅう六ろく尋じん、 その色いろ赤あかし。

小腸ヲバ為ス↢受盛之府ト↡。亦ハ為リ↢心府ト↡。長サ十六尋、其ノ色赤シ。

^胃いをば*五ご穀こくの腑ふとなす。 また脾ひの腑ふたり。 三さん升しょうの糞くそ、 なかにありて、 その色いろ黄きなり。

胃ヲバ為ス↢五穀之府ト↡。亦ハ為リ↢脾ノ府ト↡。三升ノ糞在リテ↠中ニ、其ノ色黄ナリ。

^膀胱ぼうこうをば津液しんえきの腑ふとなす。 また腎じん腑ぷたり。 一いっ斗との尿ゆばり、 なかにありて、 その色いろ黒くろし。

膀胱ヲバ為ス↢津液之府ト↡。亦ハ為リ↢腎府ト↡。一斗ノ尿在リテ↠中ニ、其ノ色黒シ。

^三さん膲しょうをば中ちゅう涜とくの腑ふとなす。

三膲ヲバ為ス↢中涜之府ト↡。

^かくのごとき等らの物もの、 縦じゅう横おうに分ぶん布ぷせり。 大だい小しょうの二に腸ちょう、 赤白しゃくびゃく、 色いろを交まじへたり。 十じゅう八はちに周しゅう転てんせること、 毒蛇どくじゃの蟠わだかまれるがごとし。 以い上じょう、 腹ふく中ちゅうの腑ふ臓ぞうなり。

如キ↠此ノ等ノ物、縦横ニ分布シテ、大小ノ二腸、赤白交ヘタリ↠色ヲ。十八ニ周転セルコト、如シ↢毒蛇ノ蟠ワダカマレルガ↡。已上*腹中ノ府蔵ナリ

^また頂いただきより趺あなうらに至いたるまで、 髄ずいより膚かわえに至いたるまで、 八万はちまん戸この虫むしあり。 四しの頭こうべ、 四しの口くち、 九く十じゅう九くの尾おありて、 形ぎょう相そう一いちにあらず0831。 一々いちいちの戸こにまた九く万まんの細さい虫ちゅうありて、 秋あきの毫のぎよりも小ちいさし。 ¬*禅ぜん経ぎょう¼・¬*次し第だい禅門ぜんもん¼ 等とう。

又従リ↠頂至ルマデ↠趺アナウラ、従リ↠髄至リテ↠膚カハヘニ、有リ↢八万戸ノ虫↡。四ノ頭、四ノ口、九十九ノ尾アリテ。形相非ズ↠一ニ。一々ノ戸ニ復有リテ↢九万ノ細虫↡。小サシ↢於秋ノ毫ノギヨリモ↡。¬禅経¼・¬次第禅門¼等

^¬宝ほう積しゃく経きょう¼ にのたまはく、 「はじめて胎はらを出いづる時ときに、 七日しちにちを経へて、 八万はちまん戸この虫むし、 身みより生しょうじて、 縦じゅう横おうに食噉じきだんす。

¬宝積経ニ¼云ク、「初テ出ヅル↠胎ヲ時ニ経テ↢於七日ヲ↡、八万戸ノ虫従リシテ↠身而生ジテ、縦横ニ食噉ス。

^二戸にこの虫むしあり。 名なづけて舐し髪ほつとなす。 髪かみの根ねによりて住じゅうして、 つねにその髪かみを食じきす。

有リ↢二戸ノ虫↡。名テ為ス↢舐髪ト↡。依リテ↢髪ノ根ニ↡住シテ、常ニ食ス↢其ノ髪ヲ↡。

^二戸にこの虫むしを繞にょう眼げんと名なづく。 眼まなこによりて住じゅうして、 つねに眼まなこを食じきす。

二戸ノ虫ヲバ名ク↢繞眼ト↡。依リテ↠眼ニ住シテ、常ニ食ス↠眼ヲ。

^四戸しこは脳のうによりて脳のうを食じきす。

四*戸ハ依リテ↠脳ナヅキニ食ス↠脳ナヅキヲ。

^一いっ戸こを稲葉とうようと名なづく。 耳みみによりて耳みみを食じきす。

一戸ヲバ名ク↢稲葉ト↡。依リテ↠耳ニ食ス↠耳ヲ。

^一いっ戸こを蔵ぞう口くと名なづく。 鼻はなによりて鼻はなを食じきす。

一戸ヲバ名ク↢蔵口ト↡。依リテ↠鼻ニ食ス↠鼻ヲ。

^二戸にこを、 一いちを遥よう擲じゃくと名なづけ、 二にを遍へん擲じゃくと名なづく。 唇くちびるによりて唇くちびるを食じきす。

二戸ヲバ、一ヲバ名ケ↢遥擲ト↡、二ヲバ名ク↢遍擲ト↡。依リテ↠脣ニ食ス↠脣ヲ。

^一いっ戸こをば針しん口くと名なづく。 舌したによりて舌したを食じきす。

一戸ヲバ名ク↢針口ト↡。依リテ↠舌ニ食ス↠舌ヲ。

^五ご百ひゃくの戸こは左さ辺へんによりて左さ辺へんを食じきす。 右う辺へんもまたしかなり。

五百ノ戸ハ依リテ↢左辺ニ↡食ス↢左辺ヲ↡。右辺モ亦然ナリ。

^四戸しこは*生しょう臓ぞうを食じきし、 二戸にこは*熟じゅく臓ぞうを食じきす。

四戸ハ食ス↢生蔵ヲ↡。二戸ハ食ス↢熟蔵ヲ↡。

^四戸しこは小しょう便べんの道どうによりて、 尿ゆばりを食くらひて住じゅうし、 四戸しこは大便だいべんの道どうによりて、 糞くそを食くらひて住じゅうす。

四戸ハ依リテ↢小便ノ道ニ↡、食ヒテ↠尿1035ヲ而住ス。四戸ハ依リテ↢大便ノ道ニ↡、食ヒテ↠糞ヲ而住ス。

^乃ない至し、 一いっ戸こを黒こく頭ずと名なづく。 脚あしによりて脚あしを食じきす。

乃至一戸ヲバ名ク↢黒頭ト↡。依リテ↠脚ニ食ス↠脚ヲ。

^かくのごとき八万はちまん、 この身みに依止えじして、 昼ちゅう夜やに食噉じきだんして、 身みをして熱悩ねつのうせしめて、 心しんに憂う愁しゅうあらしむ。 衆しゅ病びょう現前げんぜんするに良りょう医いとしてよくために除じょ療りょうするあることなし」 と。 第だい五ご十じゅう七しちに出いでたり。 これを略抄りゃくしょうす。

如キ↠是クノ八万、依↢止シテ此ノ身ニ↡昼夜ニ食噉シテ、令メテ↢身ヲシテ熱悩セ↡、心ニ有ラシム↢憂愁↡。衆病現前スルニ無シト↠有ルコト↢良医トシテ能ク為ニ除療スル↡。」出デタリ↢第五*十*七ニ↡。略↢抄ス*之ヲ↡

^¬*僧伽そうぎゃた経きょう¼ に説ときてのたまはく、 「人ひとまさに死しなんとする時ときには、 もろもろの0832虫むし怖畏ふいして、 たがひにあひ噉食だんじきするに、 もろもろの苦く痛つうを受うく。 男女なんにょ眷属けんぞく、 大だい悲ひ悩のうをなす。 もろもろの虫むし、 あひ食じきす。 ただ二にの虫むしありて、 七日しちにちのあひだ闘とう諍じょうす。 七日しちにちを過すぎをはりて、 一いちの虫むしは命いのち尽つきて、 一いちの虫むしはなほ存ぞんぜり」 と。 以い上じょう、 虫ちゅう蛆そ。

¬僧伽経ニ¼説キテ*云ク、「人将ニル↠死ナムト時ニハ、諸ノ虫怖畏シテ、互ニ相噉食スルニ、受ク↢諸ノ苦痛ヲ↡。男女眷属生ナス↢大悲悩ヲ↡。諸ノ虫相食ス。唯有リテ↢二ノ虫↡七日ノ*間闘諍ス。過ギ↢七日ヲ↡已リテ、一ノ虫ハ命尽キテ、一ノ虫ハ猶存ゼリト。」已上虫蛆

^たとひ上じょう饍ぜんの衆しゅ味みを食じきすれども、 宿しゅくを経ふるあひだにみな不ふ浄じょうとなりぬ。 たとへば、 糞ふん穢えの大だい小しょうともに臭くさきがごとく、 この身みもまたしかり。 少しょうより老ろうに至いたるまで、 ただこれ不ふ浄じょうなり。 海水かいすいを傾かたむけて洗あらふとも、 浄じょう潔けつならしむべからず。 外ほかには端厳たんごんの相そうを施ほどこせりといへども、 内うちにはただもろもろの不ふ浄じょうを裹つつめること、 なほ画がせる瓶かめに、 しかも糞ふん穢えを盛いれたるがごとし。 ¬大論だいろん¼ (大智度論)・¬*止し観かん¼ 等とうの意こころを取とる。

*縦ヒ食スレドモ↢上饍ノ衆味ヲ↡、逕ル↠宿ヲ之間ニ皆為リヌ↢不浄ト↡。譬ヘバ如ク↢糞穢ノ大小倶ニ臭キガ↡、此ノ身モ亦爾リ。従リ↠少至ルマデ↠老ニ、唯シ是不浄ナリ。傾ケテ↢海水ヲ↡洗フトモ、不↠可カラ↠令ム↢浄潔ナラ↡。外ニハ雖モ↠施セリト↢端厳ノ相ヲ↡、内ニハ唯裹ツツメリ↢諸ノ不浄ヲ↡。猶如シ↣*画セル瓶ニ而モ盛ラムガ↢糞穢ヲ↡。*取ル↢¬大論¼・¬止観¼等ノ*意ヲ↡

^ゆゑに *¬禅ぜん経ぎょう¼ の偈げにのたまはく、

故ニ¬禅経ノ¼偈ニ云ク、

^「身みの臭くさくして不ふ浄じょうなることを知しれども、 愚ぐ者しゃはなほ愛あい惜じゃくす。
外ほかに好うるわしき顔色げんしきを視みて、 内うちの不ふ浄じょうをば観かんぜず」 と。 以い上じょう、 体たいの不ふ浄じょうを挙あぐ。

「知ルレドモ↢身ノ臭クシテ不浄ナルコトヲ↡愚者ハ故ナホ愛惜ス
外ニ視テ↢好ウルハシキ顔色ヲ↡不ト↠観ゼ↢内ノ不浄ヲバ↡」 已上挙グ↢*体ノ不浄ヲ↡

^いはんやまた命終みょうじゅうの後のちに、 塚つかのあひだに捐捨すてられて、 一いち・二に日にち、 乃ない至し七日しちにちを経ふるに、 その身み*膖ぼう脹ちょうして、 色しき*青しょう瘀おに変へんず。 臭くさり爛ただれ、 皮かわは穿うげて、 膿血のうけつ流ながれ出いづ。 *鵰ちょう・鷲じゅ・*鵄し・*梟きょう・野や干かん・狗く等とうの種々しゅじゅの禽きん獣じゅう、 *掣しゃせいして食噉じきだんす。 禽きん獣じゅう食くらひをはりて、 不ふ浄じょう*潰爛かいらんせり。 無む量りょう種しゅの虫ちゅう蛆そありて、 臭くさき処ところに雑まじはり出いづ。 悪にく0833むべきこと、 死しにたる狗いぬよりも過すぎたり。

況ヤ復命終之後ニ、捐↢捨ステラレテ*塚ノ間ニ↡、経ルニ↢一二日乃至七日ヲ↡、其ノ身膖脹シテ色変ズ↢青瘀ニ↡。臭リ爛レ皮ハ穿ウゲテ、膿血流レ出ヅ。鵰・クマタカ鷲ワシ・鵄トビ・梟・フクロフ野干 キツネ ・狗イヌ等ノ種々ノ禽獣、掣シテ食噉ス。禽獣食ヒ已リテ、不浄潰爛セリ。有リテ↢无量種ノ虫蛆↡。雑出シテ臭キ処トシテ可キコト↠悪ニクム過ギタリ↢於死ニタル狗ヨリモ↡。

^乃ない至し、 白骨はっこつとなりをはれば、 支し節せつ分散ふんさんして、 手しゅ・足そく・髑どく髏ろおのおの異い処しょにあり。 風かぜ吹ふき、 日ひ曝さらし、 雨あめ潅そそぎ、 霜しも封ふうじて、 積つむこと歳年さいねんあれば、 色相しきそう変へん異いし、 つひに腐ふ朽きゅう砕末さいまつして、 塵じん土どとあひ和わしぬ。 以い上じょう、 *究く竟きょう不ふ浄じょうなり。 ¬*大だい般若はんにゃ¼・¬止し観かん¼ 等とうに見みえたり。

乃至成リ↢白骨ト↡已レバ、支節分散シテ、手足・髑髏各 ノ在リ↢異処ニ↡。風吹キ日ニ曝シ、雨潅ギ霜封ジテ、積リテ有リテ↢歳年↡色相変異ス。遂ニ腐朽砕末シテ与↢塵土↡相和シヌ。已上究竟不浄ナリ。見エタリ↢¬大般若¼・¬止観¼等ニ↡

^まさに知しるべし。 この身みは始し終じゅう不ふ浄じょうなり。 所愛しょあいの男女なんにょみなまたかくのごとし。 いづれの有智うちのものか、 さらに楽着ぎょうじゃくを生しょうぜんや。

当ニシ↠知ル。此ノ身ハ始終不浄ナリ。所愛ノ男女皆亦如シ↠是1036クノ。誰イヅレノ有智ノ者カ更ニ生ゼムヤ↢楽著ヲ↡。

^ゆゑに ¬止し観かん¼ にいはく、 「いまだこの相そうを見みざるときは、 *愛染あいぜんはなはだ強こわし。 もしこれを見みをはれば、 欲心よくしんすべて罷やむ。 はるかにしても忍しのび耐たへざることは、 糞くそを見みざればなほよく飯めしを噉くらへども、 たちまちに臭くさき気けを聞かぎつれば、 すなはち嘔おう吐とするがごとし」 と。

故ニ¬止観ニ¼云ク、「未ダシテ↠見↢此ノ相ヲ↡、愛染甚ダ強コハシ。若シ見↠此ヲ已レバ欲心都テ罷ミヌ。懸ハルカニシテモ不ルコトハ↢忍ビ耐セ↡。如シト↧不ルトキニハ↠見↠糞ヲ猶能ク噉クラヘドモ↠飯ヲ、忽ニ聞カギツレバ↢臭キ気ヲ↡即便チ嘔吐スルガ↥。」

^またいはく (止観)、 「もしこの相そうを証あらわしつれば、 また高たかき眉まゆ、 翠あおき眼まなこ、 皓しろき歯は、 丹あかき唇くちびるなりといへども、 一聚いちじゅの屎くそに、 *粉こをもつてその上うえを覆おおへるがごとし。 また爛ただれたる屍かばねに、 仮かりて*繒綵ぞうさいを着きせたらんがごとし。 なほ眼まなこにすら見みず、 いはんやまさに身みに近ちかづくべけんや。 *鹿ろく杖じょうを雇やとひて自じ害がいすべし。 いはんや歍くちすひ抱いだきて婬いん楽ぎょうせんをや。 かくのごとき想そうは、 これ婬欲いんよくの病やまいの*大だい黄湯おうとうなり」 と。 以上

又云ク、「若シ証アラハシツレバ↢此ノ相ヲ↡、雖モ↢復高キ眉、翠アヲキ眼、皓シロキ歯、丹アカキ脣ナリト↡、如シ↣一聚ノ屎ニ粉ヲモテ覆ヘルガ↢其ノ上ニ↡。亦如シ↣爛タダレタル屍ニ仮リテ著セタラムガ↢繒*綵ヲ↡。尚シ不↢眼ニダモ見↡。況ヤ当ニケムヤ↢身ニ近ヅク↡。雇ヒテ↢鹿杖ヲ↡自害セリ。況ヤ歍クチスヒ抱キテ婬タハレ楽セムヲヤ。如キ↠是クノ想者、是婬欲ノ病之大黄湯ナリト。」*已上

・苦

【17】^二にに↑苦くといふは、 この身みは初しょ生しょうの時ときより、 つねに苦く悩のうを受うく。 ¬宝ほう積しゃく経きょう0834¼ に説とくがごとし。 「もしは男なん、 もしは女にょ、 たまたま生しょうじて地じに堕おつるに、 あるいは手てをもつて捧ささげ、 あるいは衣ころもをもつて承接じょうしょうし、 あるいは冬とう夏げの時ときに、 冷りょう熱ねつの風かぜ触ふるるに、 大だい苦く悩のうを受うくること、 牛うしを生なま剥はぎにして、 墻壁かきかべに触ふれしむるがごとし」 と。 取意

二ニ苦トイフ者、此ノ身ハ従リ↢初生ノ時↡常ニ受ク↢苦悩ヲ↡。如シ↢¬宝積経ニ¼説クガ↡。「若シハ男若シハ女、適マ生ジテ堕チ↠地ニ、或イハ以テ↠手ヲ捧ゲ、或イハ衣ヲモテ承接ス。或イハ冬夏ノ時ニ、冷熱ノ風触ルルニ受クルコト↢大苦悩ヲ↡如シト↣生シク剥ゲル牛ノ触ルルガ↢於牆壁ニ↡。」取意

^長ちょう大だいの後のちにまた苦く悩のう多おおし。 同どう経きょうに説とかく、 「この身みを受うけて二に種しゅの苦くあり。 いはゆる眼げん・耳に・鼻び・舌ぜつ・咽喉いんこう・牙歯げし・胸きょう・腹ふく・手しゅ・足そくに、 もろもろの病やまい、 生しょうずることあり。 かくのごとき四し百ひゃく四し病びょう、 その身みに逼切ひっせつするを、 名なづけて内うちの苦くとなす。

長大之後ニ亦多シ↢苦悩↡。同ジキ¬経ニ¼説カク、「受ケテ↢於此ノ身ヲ↡有リ↢二種ノ苦↡。所謂ル眼・耳・鼻・舌・咽喉・牙歯・胸・腹・手・足ニ有リテ↢諸ノ病↡生ズルコト、如キ↠是クノ四百四病、逼↢切スルヲ其ノ身ヲ↡名テ為ス↢内ノ苦ト↡。

^また外ほかの苦くあり。 いはゆる、 あるいは牢獄ろうごくにありて、 *撾た打だ*楚そ撻たつせられ、 あるいは耳みみ・鼻はなを劓きられ、 および手て・足あしを削きらる。 もろもろの*悪あく鬼き神じん、 しかもその便たよりを得う。 また蚊か・虻あぶ・蜂はち等とうの毒どく虫ちゅうのために唼しょう食じきせらる。 寒熱かんねつ・飢き渇かつ・風ふう雨うならびに至いたりて、 種々しゅじゅの苦く悩のう、 その身みに逼切ひっせつす。

復有リ↢外ノ苦↡。所謂ル或イハ在リテ↢牢獄ニ↡撾打楚撻ラル。或イハ劓キリ↢耳鼻ヲ↡、及ビ削キル↢手足ヲ↡。諸ノ悪鬼神而シテ得↢其ノ便ヲ↡。復為ニ↢蚊・虻・*蜂等ノ毒虫ノ↡之所ル↢唼食セ↡。*寒熱・飢渇・風雨*並ニ至リテ、種々ノ苦悩逼↢切ス其ノ身ヲ↡。

^この五ご陰おんの身みは、 一々いちいちの*威儀いぎ、 *行住ぎょうじゅう坐臥ざが、 みな苦くにあらずといふことなし。 もし長じょう時じに行ゆきて、 しばらくも休く息そくせざれば、 これを名なづけて*外苦げくとなす。 住じゅうおよび坐ざ・臥がまたみな苦くなり」 と。 略抄

此ノ五陰ノ身ハ、一々ノ威儀、行住坐臥、無シ↠不ズトイフコト↢皆苦ニ↡。若シ長時ニ行キテ不ル↢暫クモ休息セ↡、是ヲバ名ケテ為ス↢*行苦ト↡。住及ビ坐臥亦復皆苦ナリト。」略抄

^諸しょ余よの苦く相そうは眼まなこの前まえに見みつべし。 説とくことを俟まつべからず。

諸余ノ苦相ハ眼ノ前ニ可シ↠見ツ。不↠可カラ↠俟ツ↠説クコトヲ。

・無常

【18】^三さんに↑無む常じょうといふは、 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ にのたまはく、 「人ひとの命いのちは停とどまらざること0835、 山やまの水みずよりも過すぎたり。 今日こんにちは存ぞんぜりといへども、 明あくればまた保たもちがたし。 いかんぞ心しんをほしいままにして、 悪法あくほうに住じゅうせしめんや」 と。

三1037ニ無常トイフ者、¬涅槃経ニ¼云ク、「人ノ命ハ不ルコト↠停ラ過ギタリ↢於山ノ水ヨリモ↡。今日ハ雖モ↠存ゼリト、明クレバ亦難シ↠保チ。云何ゾ縦ニシテ↠心ヲ、令メムヤト↠住セ↢悪法ニ↡。」

^¬*出しゅつ曜よう経きょう¼ にのたまはく、

¬出曜経ニ¼云ク、

^「この日ひすでに過すぐれば、 命いのちすなはち減げん少しょうす。
少しょう水すいの魚うおのごとし。 これなんの楽たのしみかあらん」 と。

「此ノ日已ニ過グレバ命即チ*減少ス
如シ↢少水ノ魚ノ↡斯有ラムト↢何ノ楽カ↡」

^¬*摩耶まや経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬摩*耶経ノ¼偈ニ云ク、

^「たとへば旃せん陀羅だらの、 牛うしを駆かりて屠と所しょに至いたるに、
歩々ぶぶに死しの地じに近ちかづくがごとく、 人ひとの命いのちもまたかくのごとし」 と。 以上

「譬ヘバ如ク↧*旃陀羅ノ駆リテ↠牛ヲ至ルニ↢屠所ニ↡
歩々ニ近クガ↦死ノ地ニ↥人ノ命モ亦如シト↠是クノ」 已上

^たとひ長ちょう寿じゅの業ごうありといへども、 つひに無む常じょうを免まぬかれず。 たとひ富貴ふきの報ほうを感かんぜりといへども、 かならず衰患すいげんの期ごあり。 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の偈げにのたまふがごとし。

設ヒ雖モ↠有リト↢長寿ノ業↡、終ニ不↠免レ↢無常ヲ↡。設ヒ雖モ↠感ゼリト↢富貴ノ報ヲ↡、必ズ有リ↢衰患ノ期↡。如シ↢¬*涅槃経ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「一切いっさいのもろもろの世せ間けんに、 生しょうぜるものはみな死しに帰きす。
寿じゅ命みょう、 無む量りょうなりといへども、 かならず終じゅう尽じんすることあり。

「一切ノ諸ノ世間ニ生ゼル者ハ皆帰ス↠死ニ
寿命雖モ↢无量ナリト↡要必 カナラ ズ有リ↢終尽スルコト↡

^それ盛さかりなるはかならず衰すいすることあり、 合ごう会えするは別べつ離りあり。
壮年そうねんは久ひさしく停とどまらず、 盛さかりなる色しきは病やまいに侵おかさる。
^命いのちは死しのために呑のまれ、 法ほうとして常じょうなるものあることなし」 と。

夫レ盛ナルハ*必ズ有リ↠衰スルコト合会スルハ有リ↢別離↡
壮年ハ不↢久シク停ラ↡盛ナル色ハ病ニ所↠侵サ
命ハ為ニ↠死ノ所↠呑マ無シト↠有ルコト↢法トシテ常ナル者↡」

^ま0836た ¬*罪業ざいごう応報おうほう経きょう¼ の偈げにのたまはく、

又¬罪業応報経ノ¼偈ニ云ク、

^「水渚すいしょはつねに満みたず。 火ひの盛さかりなれば久ひさしく燃もえず。
日ひは出いでて須しゅ臾ゆに没もっしぬ。 月つきは満みちをはりてまた欠かけぬ。

「水渚ハ不↢常ニ満タ↡火ノ盛ナレバ不↢久シク燃エモセ↡
日ハ出デテ須臾ニ没シヌ月ハ満チ已リテ復欠ケヌ

^尊栄そんよう高こう貴きなるものも、 無む常じょうのすみやかなることこれに過すぎたり。
いままさにつとめて精しょう進じんして、 *無む上じょうの尊そんを頂ちょう礼らいすべし」 と。 以上

尊栄高貴ノ者モ無常ハ速ナルコト過ギタリ↠是ニ
*今当ニシト↣*勤メテ精進シテ頂↢礼ス無上ノ尊ヲ↡」 已上

^ただもろもろの凡ぼん下げのみ、 この怖畏ふいあるにあらず。 *仙せんに登のぼり、 *通つうを得えたるもの、 またかくのごとし。 ¬*法ほっ句く譬喩ひゆ経きょう¼ の偈げにのたまふがごとし。

非ズ↣唯シ諸ノ凡下ノ有ルノミニ↢此ノ怖畏↡。登リ↠仙ニ得タル↠通ヲ者亦復如シ↠是クノ。如シ↢¬法句譬喩経ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「*空そらにもあらず海うみのなかにもあらず。 山せん石じゃくのあひだに入いるにもあらず。
地じの方処ほうしょとして、 脱だっ止しして死しを受うけざるはあることなし」 と。

「非ズ↠空ニモ非ズ↢海ノ中ニモ↡非ズ↠入ルニモ↢山石ノ間ニ↡
無シト↠有ルコト↢*地ノ方処トシテ脱止シテ不ルハ↟受ケ↠死ヲ」

^空そらに騰のぼり、 海うみに入いり、 巌いわおに隠かくるる三人さんにんの因縁いんねん、 ¬経きょう¼ (同) に広ひろく説とくがごとし。

騰ノボリ↠空ト、入リ↠海ト、隠ルル↠巌ト*之三人ノ因縁、如シ↢¬経ニ¼広ク説クガ↡

^まさに知しるべし。 諸しょ余よの苦く患げんは、 あるいは免まぬかるるものあるも、 無む常じょうの一いち事じはつひに避のがるる処ところなし。 すべからく説せつのごとく修しゅ行ぎょうして、 常じょう楽らくの果かを欣ごん求ぐすべし。

当ニシ↠知ル。諸余ノ苦患ハ或イハ有リ↢免ルル者↡。无常ノ一事ハ終ニ無シ↢避サルニ処↡。須クシ↣如ク↠説ノ修行シテ欣↢求ス常楽ノ果ヲ↡。

^¬止し観かん¼ にいふがごとし。 「無む常じょうの殺せつ鬼きは豪賢ごうげんをも択えらばず。 危き脆ぜいにして堅かたからず、 *恃怙じこすべきこと難かたし。 いかんぞ安然あんねんとして百ひゃく歳さいを規き望もうせん。 四し方ほうに馳求ちぐして、 *貯ちょ積しゃく*聚斂じゅれんすれども、 聚斂じゅれんいまだ足たらざるに、 *溘然こうねんとして長ながく往ゆきぬれば、 あ0837らゆる産さん貨かはいたづらに他たの有うとなりぬ。 冥々みょうみょうとして独ひとり逝ゆくに、 たれか是非ぜひを訪とぶらはんや。

如シ↢¬止観ニ¼云フガ↡。「无常ノ殺鬼ハ不↠択バ↢豪賢ヲモ↡。危脆ニシテ不↠堅カラ、難シ↠可キコト↢恃怙トス↡。云何ゾ安然トシテ規↢望セム百歳ヲ↡。四方ニ馳求シテ、貯積聚斂スレドモ、聚斂未ダルニ↠足ラ溘然トシテ長ク往1038キヌレバ、所有ノ産貨ハ徒ニ為リヌ↢他ノ有ト↡。冥々トシテ独リ逝クニ、誰カ訪ハムヤ↢是非ヲ↡。

^もし無む常じょうの、 暴水ぼうすい・猛みょう風ふう・*掣電せいでんよりも過すぎたることを覚さとらんも、 山せん・海かい・空くう・市しに、 逃にげ避さくる処ところなし。 かくのごとく観かんじをはりて、 心しん大おおきに怖畏ふいして、 眠ねむりは席むしろを安やすくせず、 食じきは*哺ほを甘あまくせず、 頭ず燃ねんを救すくはんがごとくして、 もつて*出しゅつ要ようを求もとめよ」 と。

若シ覚リナバ↧無常ナルコトノ過ギテ↢於暴水・猛風・掣電ヨリモ↡、山海空市ニ無シト↦逃ゲ避ケヌル処↥、如ク↠是クノ観ジ已リテ、心大ニ怖畏シテ、眠ハ不↠安クセ↠席ムシロヲ、食ハ不↠甘クセ↠哺ヲ、如クシテ↠救ハラハムガ↢頭燃ヲ↡、以テ求メヨト↢出要ヲ↡。」

^またいはく (止観)、 「たとへば、 野や干かんの耳みみ・尾お・牙きばを失うしなふまでは、 詐いつわり眠ねむりして脱まぬかるることを望のぞめども、 たちまちに頭こうべを断きることを聞ききては、 心しん大おおきに驚怖きょうふするがごとし。 生しょう老ろう病びょうに遭あひては、 なほ急きゅうなりとなさざらんも、 死しの事じは奢いるかせにせず。 いかんぞ怖おぢざることを得えん。 怖ふ心しん起おこる時ときに、 湯とう火かを履ふまんがごとし。 五ご塵じん・六欲ろくよくも*貪染とんぜんするに暇いとまあらず」 と。 以上略抄

又云ク、「譬ヘバ如ク↧野干ノ失フマデハ↢耳・尾・牙ヲ↡、詐リ眠リシテ望ム↠脱マヌカラムコトヲ、忽ニ聞キテハ↠断ラムコトヲ↠頭ヲ、心大ニ驚怖スルガ↥、f遭フテハ↢生・老・病ニ↡、尚シ不ランモ↠為サ↠急ナリト。死ノ事ハ弗↠奢ユルガナラ。那イカンゾ得ム↠不ルコトヲ↠怖ヂ。怖心起ル時ニ如シ↠履マムガ↢*湯・火ヲ↡。五塵・六欲モ、不ト↠暇アラ↢貪染スルニ↡。」 已*上*略抄

^人道にんどうかくのごとし、 実じつに厭えん離りすべし。

人道如ク↠此ノ実ニ可シ↢厭離ス↡。

二 Ⅰ ⅱ f 天

【19】^第だい六ろくに△天道てんどうを明あかさば、 三さんあり。 一いちには欲界よくかい、 二にには色界しきかい、 三さんには無む色界しきかいなり。 その相そうすでに広ひろし。 つぶさに述じゅつすべきこと難かたし。 しばらく一処いっしょを挙あげて、 もつてその余よを例れいせん。

第六ニ明サバ↢天道ヲ↡者有リ↠三。一ニ者欲界、二ニ者色界、三ニ*者无色界ナリ。其ノ相既ニ広シ。難シ↠可キコト↢具ニ述ス↡。且ク挙ゲテ↢一処ヲ↡、以テ例セム↢其ノ余ヲ↡。

^かの忉とう利り天てんのごときは、 快け楽らく極きわまりなしといへども、 命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて*五ご衰すいの相そう現げんず。 一いちは頭こうべの上うえの*華はな鬘かずらたちまちに萎しぼむ。 二には天てん衣え、 塵じん垢くに着じゃくせらる。 三さんは腋わきの下したより汗あせ出いづ。 四しは両ふたつの目めしばしば眴まじろぐ。 五ご0838は*本ほん居こを楽ねがはず。 この相そう現げんずる時ときに、 天女てんにょ・眷属けんぞくみなことごとく遠おん離りして、 これを棄すつること草くさのごとし。

如キハ↢彼ノ忉利天ノ↡雖モ↢快楽無シト↟極リ、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡五衰ノ相現ズ。一ハ頭ノ上ノ花鬘カヅラ忽ニ萎ム。二ハ天衣塵垢ニ所ル↠著セ。三ハ腋ノ下ヨリ汗出ヅ。四ハ両フタツノ目*数バ眴マジログ。五ハ不↠楽ハ↢本居ヲ↡。是ノ相現ズル時ニ、天女・眷属皆悉ク遠離シテ、棄ツルコト↠之ヲ如シ↠草ノ。

^林はやしのあひだに*偃えん臥がして、 悲ひ泣きゅうして嘆なげきていはく、 「このもろもろの天女てんにょをば、 われつねに憐愍れんみんしつ。 いかんぞ一旦いったんにわれを棄すつること草くさのごとくする。 われいま依えなく怙こなし。 たれかわれを救すくふものあらん。

偃↢臥シテ林ノ間ニ↡、悲泣シテ嘆キテ曰ク、此ノ諸ノ天女ヲバ我常ニ憐愍シツ。云何ゾ一旦ニ棄ツルコト↠我ヲ如クアル↠草ノ。我今無ク↠依無シ↠怙。誰カ救ハム↠我ヲ者アラン。

^*善見ぜんけん宮く城じょうは、 いまよりはまさに絶たえなんとす。 帝たい釈しゃくの宝ほう座ざ、 朝ちょう謁えつするに由よしなし。

善見宮城ハ於リハ↠今将ニ↠絶エナムト。帝釈ノ宝座、朝謁スルニ無シ↠由。

^*殊しゅ勝しょう殿でんのなかには、 永ながく瞻望せんもうを断たつ。 *釈しゃく天てんの宝象ほうぞうには、 いづれの日ひか同おなじく乗のらん。

殊勝殿ノ中ニハ永ク断ツ↢瞻望ヲ↡。釈天ノ宝象ニハ何レノ日カ同ジク*乗ラム。

^*衆車しゅしゃ苑おんのなかには、 またよく見みることなからん。 *粗そ渋じゅう苑おんのうちには、 *介かい冑ちゅう長ながく辞じしつ。

衆車苑ノ中ニハ無ケム↢復能ク見ルコト↡。麁渋苑ノ内ニハ*介冑長ク辞シツ。

^*雑林ぞうりん苑おんのなかには、 宴会えんかいするに日ひなし。 *歓かん喜ぎ苑おんのなかには、 遊止ゆしするに期ごなし。

雑林苑ノ中ニハ宴会スルニ無シ↠日。歓喜苑ノ中ニハ遊止スルコト無シ↠期。

^*劫こう波は樹じゅの下もとの白びゃく玉ごくの軟石なんせきには、 さらに坐ざする時ときなし。 *曼まん陀枳だき尼にの殊しゅ勝しょう池ちの水みずには、 沐浴もくよくせんに由よしなし。

劫波樹1039ノ下ノ白玉ノ軟石ニハ更ニ無シ↢坐スル時↡。曼陀枳尼ノ殊勝池ノ水ニハ沐浴セムニ無シ↠*由。

^*四し種しゅの甘かん露ろはたちまちに食じきすることを得えがたく、 *五ご妙みょうの音楽おんがくはにはかに聴ちょう聞もんを絶たつ。

四種ノ甘露ハ卒タチマチニ難シ↠得↠食スルコトヲ。五妙ノ音楽ハ頓ニハカニ絶ツ↢聴聞ヲ↡。

^悲かなしきかな、 この身み独ひとりこの苦くに嬰かかれり。 願ねがはくは慈じ愍みんを垂たれてわが寿じゅ命みょうを救すくひて、 さらに少すこしき日ひを延のばしめば、 また楽たのしからざらんや。 かの*馬頭めずの山せん・沃おく焦しょうの海かいに堕だせしむることなかれ」 と。 この言ごんをなすといへども、 あへて救すくふものなし。 ¬六ろっ波羅ぱら蜜みつ経きょう¼。

悲シキ哉此ノ身独リ嬰カカレリ↢此ノ苦ニ↡。願クハ垂レテ↢慈*愍ヲ↡救ヒテ↢我ガ寿命ヲ↡、更ニ延ベバ↢少シノ日ヲ↡、不ラム↢亦楽シカラ↡乎。勿レト↠令ムルコト↠堕セ↢彼ノ馬頭ノ山・沃焦ノ海ニ↡。雖モ↠作スト↢是ノ言ヲ↡、無シ↢敢テ救フ者↡。¬六波羅蜜経¼

^まさに知しるべし、 この苦くは地じ獄ごくよりもはなはだし。 ゆゑに ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ の偈げに0839のたまはく、

当ニシ↠知ル、此ノ苦ハ甚シ↢於地獄ヨリモ↡。故ニ¬正法念経ノ¼偈ニ云ク、

^「天てん上じょうより退たいせんと欲ほっする時ときには、 心しんに大だい苦く悩のうを生しょうず。
地じ獄ごくのもろもろの苦く毒どくは、 十じゅう六ろくにして一いちにも及およばず」 と。 以上

「天上ヨリ欲スル↠退セムト時ニハ心ニ生ズ↢大苦悩ヲ↡
地獄ノ衆ノ苦毒ハ十六ニシテ不ト↠及バ↠一ニモ」 *已上

^また大徳だいとくの天てんすでに生うまれて後のちには、 旧ふるき天てんの眷属けんぞくは、 捨すててかれに従したがふ。 あるいは威い徳とくの天てんありて、 心しんに順じゅんぜざる時ときには、 駆かりて宮くを出いだし、 住じゅうすることを得うることあたはざらしむ。 ¬瑜伽ゆが¼ (瑜伽論)。

又大徳ノ天既ニ生レテ之後ニハ、旧キ天ノ眷属ハ捨テテ而従フ↠彼ニ。或イハ有リテ↢威徳ノ天↡不ル↠順ゼ↠心ニ時ニハ、駆リテ令メテ↠出サ↠宮ヲ、不ラ↠能ハ↠得ルコト↠住スルコトヲ。¬瑜伽¼

^*余よの五ごの欲天よくてんことごとくこの苦くあり。 上じょう二に界かい (色界・無色界) のなかにはかくのごとき事じなしといへども、 つひに退没たいもつの苦くあり。 乃ない至し、 *非ひ想そうも*阿鼻あびをば免まぬかれず。 まさに知しるべし、 天てん上じょうまた楽たのしむべからず。 以い上じょう、 天道てんどう。

余ノ五ノ欲天悉ク有リ↢此ノ苦↡。上二界ノ中ニハ雖モ↠無シト↢如キ↠此クノ*之事↡、終ニ有リ↢退没之苦↡。乃至*非想マデニ不↠免レ↢阿鼻ヲバ↡。当ニシ↠知ル、天上亦不↠可カラ↠楽シブ。*已上天道

二 Ⅰ ⅱ g 総結

【20】^第だい七しちに△総そうじて厭相えんそうを結けっせば、 いはく、 *一いっ篋きょう、 ひとへに苦くるし。 *耽荒たんこうすべきにあらず。 *四しの山やま合あわせ来きたらば、 避のがれ遁さるところなし。 しかも、 もろもろの衆しゅ生じょうは貪愛とんないをもつてみづから蔽おおひて、 深ふかく五ご欲よくに着じゃくせり。 常じょうにあらざるを常じょうといひ、 楽らくにあらざるを楽らくといへり。 かの、 *癰ようを洗あらひ睫まつげを置おくがごとき、 なほいかんぞ厭いとはざらん。 いはんやまた刀山とうせん・火か湯とう、 やうやくまさに至いたりなんとす。 いづれの有智うちのものか、 この身みを宝玩ほうがんせんや。

第七ニ▼総ジテ結セバ↢厭相ヲ↡者、謂ク一ノ篋、偏ニ苦シ。非ズ↠可キニ↢耽荒ス↡。四ノ山合セ来ラバ无シ↠所↢*避ノガレ遁サル↡。而モ諸ノ衆生ハ以テ↢貪愛ヲ↡自ラ*蔽ツヒエ、深ク著セリ↢於五欲ニ↡。非ザルヲ↠常ニ謂ヒ↠常ト、非ザルヲ↠楽ニ謂ヘリ↠楽ト。彼ノ如キ↢洗ヒ↠癰ヨウヲ置クガ↟睫マツゲヲ、猶盍イカンゾ*不ラム厭ハ。況ヤ復刀山・火湯、漸ク将ニ↠至リナムト。誰イヅレノ有智ノ者カ宝↢玩セム此ノ身ヲ↡乎。

^ゆゑに *¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ の偈げにのたまはく0840、

故ニ¬正法念経ノ¼偈ニ云ク、

^「智ち者しゃのつねに憂うれひを懐いだくこと、 なほ獄ごくのなかに囚とらはれたるに似にたり。
愚ぐ人にんのつねに歓楽かんらくすること、 なほ*光音こうおん天てんのごとし」 と。

「智者ハ常ニ懐クコト↠憂ヲ*如ナホ似タリ↢獄ノ中ニ囚コメラレタルニ↡
愚人ハ常ニ歓楽スルコト猶如シト↢光音天ノ↡」

^¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬宝積経ノ¼偈ニ云ク、

^「種々しゅじゅの悪業あくごうをもつて財物ざいもつを求もとめて、 妻さい子しを養育よういくして歓かん娯ごすと謂おもへども、
命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて、 苦く、 身みに逼せまり、 妻さい子しもよくあひ救すくふものなし。

「種々ノ悪業ヲモテ求ム↢財物ヲ↡養↢育シテ妻子ヲ↡謂フ↢歓娯スト↡
臨ム↢命終ニ↡時ニ苦逼ムレバ↠身ヲ妻子モ無シ↢能ク相救フ者↡

^かの三さん途ずの怖畏ふいのなかにおいては、 妻さい子しおよび親識しんしきを見みず。
車しゃ馬め・財宝ざいほうは他た人にんに属ぞくしぬ。 苦くを受うくるに、 たれかよくともにして分わかつものあらん。

於テハ↢彼ノ三塗ノ怖畏ノ中ニ↡不1040↠見↢妻子及ビ親*識ヲ↡
車馬財宝ハ属シヌ↢他人ニ↡受クルニハ↠苦ヲ誰カ能ク*共ニシテ分ツ者アラム

^父母ぶも・兄きょう弟だいおよび妻さい子し、 朋ぼう友う・僮僕どうぼくならびに珍財ちんざいも、
死しして去さりぬれば、 一いちとして来きたりあひ親したしむものなし。 ただ*黒業こくごうのみありてつねに*随逐ずいちくせり。 乃至

父母兄弟及ビ妻子朋友僮僕并アハセテ珍財モ
死シテ去リヌレバ无シ↢一モ来リテ相親ヅク↡唯シ有リテ↢黒業ノミ↡常ニ随*逐セリ 乃至

^閻えん羅らつねにかの罪人ざいにんに告つぐ。 ª少しょう罪ざいもわがよく加くわふることあることなし。
なんぢみづから罪つみを作つくりて、 いまみづから来きたれり。 *業報ごうほうみづから招まねく、 代かわるものなし。

閻羅常ニ告グ↢彼ノ罪人ニ↡無シ↠有ルコト↢少罪トシテ我ガ能ク加ルハ↡
汝自ラ作リテ↠罪ヲ今自ラ来レリ業報自ラ招ク無シ↢代ル者↡

^0841父母ぶも・妻さい子しもよく救すくふことなし。 ただまさに出しゅつ離りの因いんを勤修ごんしゅすべしº と。
このゆゑに*枷鎖かさの業ごうを捨すてて、 よく遠おん離りを知しりて安楽あんらくを求もとむべし」 と。

父母妻子モ無シ↢能ク救フコト↡唯シ当ニシト↣勤↢修ス出離ノ因ヲ↡
是ノ故ニ応シト↧捨テテ↢*伽鎖ノ業ヲ↡善ク知リテ↢遠離ヲ↡求ム↦安楽ヲ↥」

^また ¬大集だいじっ経きょう¼ の偈げにのたまはく、

又¬大集経ノ¼偈ニ云ク、

^「妻さい子し・珍宝ちんぽうおよび王おう位いも、 命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみては、 随したがはざるものなり。
ただ*戒かいとおよび*施せと*不ふ放逸ほういつと、 今こん世ぜ・後世ごせに伴侶はんりょとなる」 と。

「妻子珍宝及ビ王位モ臨ム↢命終ニ↡時ニ不ル↠随ハ者ナリ
唯シ戒ト及ビ施ト不放逸ト今世後世ニ為ルト↢伴侶ト↡」

^かくのごとく*展転てんでんして、 悪あくを作つくりて苦くを受うけ、 いたづらに生しょうじいたづらに死しして、 輪転りんでん際きわなし。 ¬経きょう¼ (*雑阿含経) の偈げにのたまふがごとし。

如クシテ↠是クノ展転シテ、作リテ↠悪ヲ受ク↠苦ヲ。徒ニ生ジ徒ニ死シテ、輪転無シ↠際。如シ↢¬経ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「▲一人いちにん一劫いっこうのなかに受うけたるところのもろもろの身骨しんこつを、
つねに積つみて腐ふ敗はいせずは、 *毘び布羅ふら山せんのごとし」 と。

「一人一劫ノ中ニ所ノ↠受ケタル諸ノ身骨ヲ
常ニ積ミテ不ハ↢腐敗セ↡如ケムト↢毘布羅山ノ↡。」

^一劫いっこうすらなほしかなり。 いはんや無む量りょう劫こうをや。 われらいまだかつて道どうを修しゅせざるがゆゑに、 いたづらに無む辺へん劫こうを歴へたり。 いまもし勤修ごんしゅせずは、 未み来らいもまたしかるべし。 かくのごとく無む量りょう生しょう死じのなかには、 人身にんじんを得うることはなはだ難かたし。 たとひ人身にんじんを得えたれども、 もろもろの根こんを具ぐすることまた難かたし。 たとひ諸根しょこんを具ぐすれども、 仏ぶっ教きょうに遇あふことまた難かたし。 たとひ仏ぶっ教きょうに遇あふとも、 信心しんじんをなすことまた難かたし。

一劫ノスラ尚シ爾ナリ。況ヤ无量劫ノヲヤ。我等未ダルガ↢曽ムカシニモ修セ↟道ヲ故ニ、徒ニ*歴タリ↢无辺劫ヲ↡。今若シ不ハ↢勤修セ↡未来モ亦可シ↠然ル。如ク↠是クノ无量生死之ノ中ニハ、得ルコト↢人身ヲ↡甚ダ難シ。縦ヒ得タレドモ↢人身ヲ↡、具スルコト↢諸ノ根ヲ↡亦難シ。縦ヒ具スレドモ↢諸根ヲ↡、遇フコト↢仏教ニ↡亦難シ。縦ヒ遇フトモ↢仏教ニ↡、生ナスコト↢信心ヲ↡亦難シ。

^ゆゑに ¬大だい経きょう¼ (*涅槃経・意) にのたまはく、 「人趣にんしゅに生うまるるも0842のは爪つめの上うえの土つちのごとし。 三さん途ずに堕おつるものは十方じっぽうの土つちのごとし」 と。

故ニ¬大経ニ¼云ク、「生ルル↢人趣ニ↡者ハ如シ↢爪ノ上ノ土ノ↡。堕ツル↢三途ニ↡者ハ如シト↢十方ノ*土ノ↡。」

^¬*法華ほけ経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬法花経ノ¼*偈ニ云ク、

^「無む量りょう無む数しゅ劫こうにも、 この法ほうを聞きくことまた難かたし。
よくこの法ほうを聴きくもの、 この人ひとまた難かたし」 と。

「無量無数劫ニモ聞クコト↢是ノ法ヲ↡亦難シ
能ク聴ク↢是ノ法ヲ↡者此ノ人亦復難シトイヘリ。」

^しかるをいま、 たまたまこれらの縁えんを具ぐせり。 まさに知しるべし、 苦く海かいを離はなれて浄じょう土どに往おう生じょうすべきこと、 ただ今こん生じょうにのみあり。 しかるをわれら、 頭こうべに霜雪そうせつを戴いただきて、 心しんは俗塵ぞくじんに染そめり。 一いっ生しょうは尽つきぬといへども、 悕け望もうは尽つきず。 つひに白びゃく日にちの下もとを辞じして、 独ひとり*黄泉こうせんの底そこに入いる時とき、 多た百ひゃく踰ゆ繕ぜん那なの*洞然どうねんたる猛みょう火かのなかに堕おちて、 天てんに呼よばはり地じを扣たたくといへども、 さらになんの益やくかあらんや。

而ルヲ今適マ具セリ↢此等ノ縁ヲ↡。当ニシ↠知ル、応キコト↧離レテ↢*苦海ヲ↡往↦生ス浄土ニ↥只在リ↢今コノ生ニノミ↡。而ルヲ我等頭ニ戴キテ↢霜雪ヲ↡、心ハ染メリ↢*俗塵ニ↡。一生ハ雖モ↠尽キヌト*悕望ハ不↠尽キ。遂1041ニ辞シテ↢白日ノ下ヲ↡、独リ入ラム↢黄泉ノ底ニ↡之時、堕チテ↢多百踰繕那ノ*洞然タル猛火ノ中ニ↡、雖モ↢呼バヒ↠天ヲ扣クト↟地ヲ、更ニ有ラム↢何ノ益カ↡乎。

^願ねがはくはもろもろの行ぎょう者じゃ、 疾とく厭えん離りの心しんを生しょうじて、 すみやかに出しゅつ要ようの路みちに随したがふべし。 ▼宝たからの山やまに入いりて手てを空むなしくして帰かえることなかれ。

願クハ諸ノ行者、疾ク生ジテ↢厭離ノ心ヲ↡、速ニ随フベシ↢出要ノ路ニ↡。莫レ↧入リテ↢宝ノ山ニ↡空シクシテ↠手ヲ而帰ルコト↥。

 ^問とふ、 なんらの相そうをもつてか厭心えんしんをなすべき。

問フ。以テカ↢何等ノ相ヲ↡応キ↠生ナス↢厭心ヲ↡。

^答こたふ、 もし広ひろく観かんぜんと欲おもはば、 前さきの所説しょせつのごとし。 六道ろくどうの因いん果が、 不ふ浄じょう・苦く等とうなり。

答フ。▼若シ欲ハバ↢広ク観ゼムト↡、如シ↢前ノ所説ノ↡。六道ノ因果、不浄・苦等ナリ。

^あるいはまた*龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつの、 禅ぜん陀迦だか王おうを勧発かんぽつする偈げ (龍樹為王説法要偈) にいはく、

或イハ復龍樹菩薩ノ勧↢発スル禅陀迦王ヲ↡偈ニ云ク、

^「この身みは、 不ふ浄じょう、 *九くの孔あなより流ながれて、 窮きわまり已やむことあることなきこと、 河が0843海かいのごとし。
薄うすき皮かわ、 覆おおひ蔽かくして清浄しょうじょうなるに似にたれども、 瓔珞ようらくを仮かりてみづから荘しょう厳ごんせるがごとし。

「是ノ身ハ不浄九ノ孔ヨリ流ル無キコト↠有ルコト↢窮メ已ムコト↡若シ↢河海ノ↡
薄キ皮覆ヒ蔽シテ似タリ↢清浄ナルニ↡猶シ↧仮リテ↢瓔珞ヲ↡自ラ荘厳セルガ↥

^もろもろの有智うちの人にんはすなはち分別ふんべつして、 その*虚こ誑おうなるを知しりてすなはち棄き捨しゃす。
たとへば*疥け者しゃの、 猛みょう焔えんに近ちかづきて、 初はじめはしばらく悦よろこぶといへども、 後のちには苦くを増ますがごとし。

諸ノ有智ノ人ハ乃チ分別シテ知リテ↢其ノ虚誑ナルヲ↡便チ棄捨ス
譬ヘバ如シ↧疥者ノ近ヅキテ↢猛焔ニ↡初ハ雖モ↢暫ク悦ブト↡後ニハ増スガ↞苦ヲ

^貪欲とんよくの想そうもまたしかなり。 始はじめ楽着ぎょうじゃくすといへども、 つひには患うれひ多おおし。
身みの実相じっそうはみな不ふ浄じょうなりと見みる。 すなはちこれ空くう・無我むがを観かんずるなり。

貪欲之*想モ亦復然ナリ始メ雖モ↢楽著スト↡終ニハ多シ↠患ヘ
見レバ↢身ノ実ノ相ヲ↡皆不浄ナリ即チ是観ズルナリ↢於空无我ヲ↡

^もしよくこの観かんを修しゅ習じゅうするものは、 利り益やくのなかにおいてもつとも無む上じょうなり。
*色しき・族ぞくおよび多た聞もんありといへども、 もし戒かい・智ちなければ禽きん獣じゅうのごとし。

若シ能ク修↢習スル斯ノ観ヲ↡者ハ於テ↢利益ノ中ニ↡最モ无上ナリ
雖モ↠有リト↢色族及ビ多聞↡若シ無ケレバ↢戒智↡猶シ↢禽獣ノ↡

^醜しゅう賎せんに処しょし、 聞見もんけん少すくなしといへども、 よく戒かい・智ちを修しゅするを勝上しょうじょうと名なづく。
*利り衰すいの八法はっぽう、 よく免まぬかるることなし。 もし除断じょだんすることあるは、 まことに匹ともがらなし。

雖モ↧処シ↢醜賎ニ↡少シト↦聞見↥能ク修スルヲバ↢戒智ヲ↡名ク↢勝*上ト↡
利衰ノ八法莫シ↢能ク免ルルコト↡若シ有ルハ↢除断スルコト↡真ニ无シ↠匹トモガラ

^0844もろもろの沙門しゃもん・婆羅ばら門もん・父母ぶも・妻さい子しおよび眷属けんぞくの、
かの意こころのためにその言ごんを受うけて、 広ひろく不ふ善ぜん・非ひ法ほうの行ぎょうを造つくることなかれ。

諸ノ有ラバ↢沙門・婆羅門・父母・妻子及ビ眷属ノ↡
莫レ↧為ニ↢彼ガ意ノ↡受ケテ↢其ノ言ヲ↡広ク造ルコト↦不善非法ノ行ヲ↥

^たとひこれらがためにもろもろの過とがを起おこせども、 未み来らいの大だい苦くはただ身みに受うく。
それ衆悪しゅあくを造つくれども、 ただちに報むくいず。 刀剣とうけんのこもごも傷しょう割かつするがごとくにはあらず。

設ヒ為ニ↢此等ガ↡起セドモ↢諸ノ過ヲ↡未来ノ大苦ヲバ唯シ身ニ受ク
夫レ造ルトキハ↢衆悪ヲ↡不↢即チ報セ↡非ズ↠如クニハ↢刀剣ヲ交ヘテ傷割スルガ↡

^終おわりに臨のぞみ、 罪つみあひはじめてともに現げんじて、 後のちに地じ獄ごくに入いりてもろもろの苦くに嬰かかる。
*信しん・戒かい・施せ・聞もん・慧え・慚ざん・愧き、 かくのごとき七法ぽうを聖しょう財ざいと名なづく。

臨ミ↠終ニ罪相始テ倶ニ現ジテ後ニ入リテ↢地獄ニ↡嬰カカル↢諸ノ苦ニ↡
信・戒・施・聞・慧・慚・*愧如キ↠是クノ七法ヲ名ク↢聖財ト↡

^真実しんじつにして無比むひの*牟尼むにの説せつなり。 世せ間けんのもろもろの珍宝ちんぽうに超ちょう越おつせり。
足たることを知しりぬれば、 貧まずしといへども富とめりと名なづくべし。 財ざいあれども欲よく多おおきは、 これを貧びんと名なづく。

真*実ニシテ無比ノ牟尼ノ説ナリ超↢越セリ世間ノ衆ノ珍宝ニ↡
知リヌレバ↠足ルコトヲ雖モ↠貧シト可シ↠名ク↠富メリト有レドモ↠財多キヲバ↠欲是ヲ名1042ク↠貧ト

^もし財業ざいごうに豊ゆたかなれば、 もろもろの苦くを増ますこと、 竜りゅうの首かしら多おおきは*酸毒さんどくを益ますがごとし。
まさに観かんずべし、 美うまき味あじはひは毒薬どくやくのごとし。 智慧ちえの水みずをもつて灑そそぎて浄きよか0845らしめよ。

若シ豊ナルハ↢財業ニ↡増スコト↢諸ノ苦ヲ↡如シ↣竜ノ多キハ↠首カシラ益スガ↢酸毒ヲ↡
当ニシ↠観ズ、美ウマキ味ハ如シ↢毒薬ノ↡以テ↢智*慧ノ水ヲ↡灑ギテ令メヨ↠浄カラ

^この身みを存ぞんぜんがために食じきすべしといへども、 色しき味みを貪とんじて憍きょう慢まんを長ちょうずることなかれ。
もろもろの欲染よくぜんにおいてまさに厭いとふことをなして、 つとめて無む上じょう涅ね槃はんの道どうを求もとむべし。

為ニ↠存ゼムガ↢此ノ身ヲ↡雖モ↠応キト↠食ス勿レ↧貪ジテ↢色味ヲ↡長ズルコト↦憍慢ヲ↥
於テ↢諸ノ欲染ニ↡当ニシ↠生ナス↠厭フコトヲ勤メテ求メヨ↢无上涅槃ノ道ヲ↡

^この身みを調じょう和わして安穏あんのんならしめて、 しかして後のちによろしく斎戒さいかいを修しゅすべし。
一いち夜やを分別ふんべつするに*五時ごじあり。 二時にじのなかにまさに眠息めんそくすべし。

調↢和シテ此ノ身ヲ↡令メテ↢安*穏ナラ↡然シテ後ニ宜ク応シ↠修ス↢斎戒ヲ↡
一夜ヲ分別スルニ有リ↢五時↡於テ↢二時ノ中ニ↡当ニシ↢眠息ス↡

^初しょ・中ちゅう・後夜ごやには生しょう死じを観かんじて、 よろしくつとめて*度どを求もとめて空むなしく過すぐすことなかれ。
たとへば少しょう塩えんを*恒ごう河がに置おけるに、 水みずをして*鹹かん味みあらしむることあたはざるがごとく、

初・中・後夜ニハ観ジテ↢生死ヲ↡宜ク勤メテ求メテ↠度ヲ勿レ↢空シク過グスコト↡
譬ヘバ如シ↧少塩ヲ置ケルニ↢恒河ニ↡不ルガ↞能ハ↠令ムルコト↣水ヲシテ有ラ↢鹹味↡

^微み細さいの悪あくは衆善しゅぜんに遇あひぬれば、 消しょう滅めつ散さん壊えすること、 またかくのごとし。
梵天ぼんてんの離り欲よくの娯たのしみを受うくといへども、 還かえりて*無む間けんの熾し然ねんの苦くに墜おつ。

微細之悪ハ遇ヒヌレバ↢衆善ニ↡消滅散壊スルコト亦如シ↠是クノ
雖モ↠受クト↢梵天ノ離欲ノ娯シビヲ↡還リテ*墜ツ↢無間ノ熾然ノ苦ニ↡

^天てん宮ぐに居こして光こう明みょうを具ぐせりといへども、 後のちには地じ獄ごくの黒闇こくあんのなかに入いる。
いはゆる*黒こく縄じょう・活かつ地じ獄ごくの、 焼しょう・割かつ・剥はく・刺しおよび無む間けんなり。

雖モ↧居シテ↢天宮ニ↡具セリト↦光明ヲ↥後ニハ入ル↢地獄ノ黒闇ノ中ニ↡
所謂ル黒*縄・活地獄ノ焼・割・*剥・刺及ビ无間ナリ

^0846この八はちの地じ獄ごくはつねに熾し然ねんなり。 みなこれ衆しゅ生じょうの悪業あくごうの報ほうなり。
もし図画ずえを見み、 他たの言ごんを聞きき、 あるいは経きょう書しょに随したがひてみづから憶念おくねんし、

是ノ八ノ地獄ハ常ニ熾然ナリ皆是衆生ノ悪業ノ報ナリ
若シ見↢図画ヲ↡聞キ↢他ノ言ヲ↡或イハ随ヒテ↢経書ニ↡自ラ憶念シ

^かくのごとくして知しる時ときにすらもつて忍しのびがたし。 いはんやまたおのが身みにみづから*経歴きょうりゃくせんをや。
もしまた人ひとありて一日いちにちのうちに、 三さん百びゃくの矛ほこをもつてその体みを鑚ささんも、

如クシテ↠是クノ知ル時ニスラ以テ難シ↠忍ビ況ヤ復己ガ身ニ自ラ逕歴セムヲヤ
若シ復有リテ↠人一日ノ中ニ以テ↢三百ノ矛ヲ↡鑚ササムモ↢其ノ体ヲ↡

^阿鼻あび獄ごくの一念いちねんの苦くに比くらぶるに、 百ひゃく千せん万分まんぶんにして一いちにも及およばず。
畜ちく生しょうのなかにおいても、 苦くは無む量りょうなり。 あるいは*繋け縛ばくおよび鞭撻べんたつせらるることあり。

比ブルニ↢阿*毘獄ノ一念ノ*苦ニ↡百千万分ニシテ不↠*及バ↠一ニモ↡
於テモ↢畜生ノ中ニ↡苦ハ无量ナリ或イハ有リ↢繋縛シ及ビ鞭撻セラルルコト↡

^あるいは明みょう珠しゅ・羽う・角かく・牙げ、 骨こつ・毛もう皮ひ・肉にくのために残害ざんがいせらるることを致いたす。
餓鬼がき道どうのなかの苦くもまたしかなり。 もろもろの*所須しょしゅの欲よく意こころに随したがはず、

或イハ為ニ↢明珠・羽・角・牙・骨・毛・皮・肉ノ↡*致ス↢残害セラルルコトヲ↡
餓鬼道ノ中ノ苦モ亦然ナリ諸ノ所須ノ欲不↠随ハ↠意ニ

^飢き渇かつに逼ひっせられて寒熱かんねつに困くるしむ。 疲ひ乏ぼう等とうの苦く、 はなはだ無む量りょうなり。
屎し尿にょう糞ふん穢えのもろもろの不ふ浄じょうすら、 百ひゃく千万せんまん劫ごうによく得うることなし。

飢渇ニ所レテ↠逼セ困クルシム↢寒熱ニ↡疲乏等ノ苦甚ダ无量ナリ
*屎尿糞穢ノ諸ノ不浄ヲ百千万劫ニ莫シ↢能ク得ルコト↡

^たとひまた推おし求もとめて少しょう分ぶんを得うれども、 さらにあひ*劫奪こうだつして、 尋ついで散失さんしつしぬ。
0847清冷しょうりょうの秋あきの月つきにも焔熱えんねつを患うれへ、 温おん和わの春はるの日ひにもうたた寒かん苦くす。

設ヒ復推シ求メテ得レドモ↢少分ヲ↡更ニ相*劫奪シテ尋ツギテ散失シヌ
清*冷ノ秋ノ月ニモ患フ↢焔熱ヲ↡温和ノ春ノ日ニモ*転タ寒苦ス

^もし園林おんりんに趣おもむけば、 衆しゅ菓か尽つき、 たとひ清しょう流るに至いたれども変へんじて枯こ竭かつしぬ。
*罪業ざいごうの縁えんのゆゑに、 寿じゅ、 長じょう遠おんにして、 経ふること一万いちまん五ご千歳せんざいあり。

若シ趣ケバ↢園林ニ↡衆菓尽キヌ設ヒ至レバ↢*清流ニ↡変1043ジテ枯竭シヌ
罪*業ノ縁ノ故ニ寿長遠ニシテ逕ルコト有リ↢一万五千歳↡

^もろもろの楚そ毒どくを受うくるに空むなしく欠かくることなし。 みなこれ餓鬼がきの果か報ほうなり。
煩悩ぼんのうの*駃とき河かわ、 衆しゅ生じょうを漂ただよはし、 深ふかき怖畏ふい、 熾し然ねんの苦くとなる。

受クルニ↢衆ノ楚毒ヲ↡无シ↢空シク欠クルコト↡皆是餓鬼之果報ナリ
煩悩ノ*駃キ*河漂ハス↢衆生ヲ↡為ス↢深キ怖畏熾然ノ苦ヲ↡

^かくのごときもろもろの*塵労じんろうを滅めっせんと欲おもはば、 真実しんじつの解げ脱だつの*諦たいを修しゅすべし。
もろもろの世せ間けんの*仮け名みょうの法ほうを離はなれて、 すなはち清浄しょうじょうの不ふ動どうの処ところを得えよ」 と。

欲ハバ↠滅セムト↢如キ↠是クノ諸ノ塵労ヲ↡応シ↠修ス↢真実ノ解脱ノ諦ヲ↡
離レテ↢諸ノ世間ノ仮名ノ法ヲ↡則チ得ヨト↢清浄ノ不動ノ処ヲ↡」

^以い上じょう、 百ひゃく十じゅう行ぎょうの偈げあり。 いま略りゃくしてこれを抄しょうす。

已上有リ↢百十行ノ偈↡。今略シテ抄ス↠*之ヲ

^もし略りゃくを存ぞんぜば、 *馬め鳴みょう菩ぼ薩さつの、 *頼らいた和羅わらの伎ぎ声しょうに唱となへていふがごとし。

▼若シ存ゼバ↠略ヲ者、如シ↢馬鳴菩薩ノ頼和羅ノ伎ノ声ニ唱ヘテ云フガ↡。

^「有為ういの諸法しょほうは、 幻げんのごとく化けのごとし。
三界さんがいの獄縛ごくばくは、 一いちとしても楽たのしむべきことなし。

「有為ノ諸法ハ如ク↢幻ノ如シ↢化ノ
三界ノ獄縛ハ无シ↢一トシテモ可キコト↟楽フ

^王おう位い高顕こうけんにして、 勢力せいりき自じ在ざいなれども、
無む常じょうすでに至いたりぬれば、 たれか存ぞんずることを得うるものあらん。

王位高ク顕シテ勢力自在ナレドモ
無常既ニ至リヌレバ誰カ得ル↠存ズルコトヲ者アラン

^0848空くう中ちゅうの雲くもの、 須しゅ臾ゆに散滅さんめつするがごとし。
この身みは虚偽こぎなること、 なほ芭ば蕉しょうのごとし。

如シ↢空ノ中ノ雲ノ須臾ニ散滅スルガ↡
是ノ身ハ虚偽ナルコト猶如シ↢芭蕉ノ↡

^怨おんたり賊ぞくたり、 親近しんごんすべからず。
*毒蛇どくじゃの篋はこのごとし。 たれかまさに*愛あい楽ぎょうすべき。

為リ↠怨*為リ↠賊不↠可カラ↢親近ス↡
如シ↢毒蛇ノ篋ノ↡誰カ当ニキ↢愛楽ス↡

^このゆゑに諸仏しょぶつ、 つねにこの身みを呵かしたまふ」 (*付法蔵因縁伝) と。 以上

是ノ故ニ諸仏常ニ呵シタマフト↢此ノ身ヲ↡」 已上

^このなかにつぶさに無む常じょう・苦く・空くうを演のぶ。 聞きくもの道どうを悟さとる。

此ノ中ニ具ニ演ブ↢無常・苦・*空ヲ↡。聞ク者悟ル↠道ヲ。

^あるいはまた堅牢けんろう比丘びくの壁かべの上うえの偈げ (宝積経) にのたまはく、

或イハ復堅牢比丘ノ壁ノ上ノ偈ニ云ク、

^「生しょう死じの断絶だんぜつせざるは、 貪欲とんよく嗜味しみなるがゆゑなり。
怨あだを養やしなひて*丘く塚ちょうに入いりて、 虚むなしくもろもろの辛しん苦くを受うく。

「生死ノ不ルコトハ↢断絶セ↡貪欲嗜味ナルガ故ナリ
養ヒテ↠怨ヲ入レテ↢丘塚ニ↡虚シク受ク↢諸ノ辛苦ヲ↡

^身みの臭くさきこと死屍しにかばねのごとし。 九くの孔あなより不ふ浄じょうを流ながす。
廁かわやの虫むしの、 糞ふんを楽たのしむがごとく、 愚ぐにして身みを貪とんずるも異ことなることなし。

身ハ臭キコト如シ↢死屍ノ↡九ノ孔ヨリ流ス↢不浄ヲ↡
如シ↢廁ノ虫ノ楽ブガ↟糞ヲ愚ニシテ貪スルモ↠身ヲ無シ↠異ナルコト

^*憶想おくそうして妄みだりに分別ふんべつする、 すなはちこれ五ご欲よくの本もとなり。
智ち者しゃは分別ふんべつせざれば、 五ご欲よくすなはち断滅だんめつす。

憶想シテ妄ニ分別スル*則チ是五欲ノ本ナリ
智者ハ不レバ↢分別セ↡五欲則チ断滅ス

^邪念じゃねんより*貪とん着じゃくを生しょうじ、 貪とん着じゃくより煩悩ぼんのうを生しょうず。
正しょう念ねんにして貪欲とんよくなければ、 余よの煩悩ぼんのうまた尽つきぬ」 と。 以上

邪念ヨリ生ズ↢貪著ヲ↡貪著ヨリ生ズ↢煩悩ヲ↡
正念ハ無ケレバ↢貪欲↡余ノ煩悩亦尽キヌト」 已上

^過か0849去この弥楼みる犍けん駄だ仏ぶつの滅めつ後ごに、 正しょう法ぼう滅めっせし時ときに、 陀摩だま尸利しり菩ぼ薩さつ、 この偈げを求もとめ得えて仏法ぶっぽうを弘ぐ宣せんし、 無む量りょうの衆しゅ生じょうを利り益やくせり。

過去ノ弥楼*犍駄仏ノ滅後ニ、正法滅セシ時ニ、陀摩尸利菩薩求メ↢得テ此ノ偈ヲ↡弘↢宣シ仏法ヲ↡、利↢益セリ無量ノ衆生ヲ↡。

^あるいはまた ¬*仁王にんのう経きょう¼ に*四し非ひ常じょうの偈げあり。 見みつべし。

或イハ復¬仁王経ニ¼有リ↢四非常ノ偈↡。可シ↠見ツ。

^もし極ごく略りゃくを楽ねがはば、 ¬*金剛こんごう経きょう¼ にのたまふがごとし。

▼若シ楽ハバ↢極略ヲ↡者、如シ↢¬金剛経ニ¼云フガ↡、

^「一切いっさい有為ういの法ほうは、 ▽夢ゆめと幻まぼろしと泡あわと影かげとのごとし。
露つゆのごとくまた電いなずまのごとし。 かくのごとき観かんをなすべし」 と。

「一切有為ノ法ハ如シ↢夢ト幻ト泡ト影トノ↡
如ク↠露ノ亦如シ↠電ノ応シト↠作1044ス↢如キ↠是クノ観ヲ↡」

^あるいはまた ¬大だい経きょう¼ (涅槃経) の偈げにのたまはく、

或イハ復¬大経ノ¼偈ニ云ク、

^「*諸しょ行ぎょうは無む常じょうなり。 これ生しょう滅めつの法ほうなり。
▽生しょう滅めつ滅めっしをはりて、 寂じゃく滅めつなるを楽らくとなす」 と。 以上

「諸行ハ無常ナリ是生滅ノ法ナリ
生滅滅シ已リテ寂滅ナルヲ為スト↠楽ト」 已上

^▽*祇ぎ園おん寺じの無む常じょう堂どうの四しの隅すみに、 *頗梨はりの鐘かねあり。 鐘かねの音ねのなかにまたこの偈げを説とく。 病びょう僧そう音ねを聞ききて、 苦く悩のうすなはち除のぞこりて、 清涼しょうりょうの楽らくを得うること、 *三禅さんぜんに入いり浄じょう土どに生うまれなんとするがごとし。 いはんやまた、 ▽*雪山せっせんの大だい士じ、 全身ぜんしんを捨すててこの偈げを得えたり。

祇園寺ノ无常堂ノ四ノ*隅ニ有リ↢頗梨ノ鐘↡。鐘ノ音ノ中ニ亦説ク↢此ノ偈ヲ↡。病僧聞キテ↠音ヲ、苦悩即チ除コリテ得ルコト↢清涼ノ楽ヲ↡。如キ↧入リ↢三禅ニ↡*垂スルガ↞生レナムト↢浄土ニ↡、況ヤ復雪山ノ大士、捨テテ↢*於全身ヲ↡而得タリ↢此ノ偈ヲ↡。

^行ぎょう者じゃよく思し念ねんして、 これを忽爾いるかせにすることを得えざれ。 説せつのごとく観察かんざつして、 まさに*貪とん・瞋しん・痴ち等とうの惑業わくごうを離はなるること、 獅子ししの、 人ひとを追おふがごとくにすべし。 外げ道どうの無む益やくの苦く行ぎょうをなして、 痴かたくななる狗いぬの、 塊つちくれを追おふがごとくすべからず。

行者善ク思念シテ、不レ↠得↣忽↢爾イルカセニスルコトヲ之ヲ↡。如ク↠説ノ観察シテ、応ニ当シ↧離ルルコト↢貪・瞋・痴等ノ*或業ヲ↡、如クニス↦師子ノ追フガ↞人ヲ。不↠応ラ↧作シテ↢外道ノ無益ノ苦行ヲ↡、如クス↦痴カタクナナル狗ノ追フガ↞塊ツチクレヲ。

 ^0850問とふ。 不ふ浄じょう・苦く・無む常じょう、 その義ぎ了さとりやすし。 現げんに*法体ほったいあるをば見みるに、 なんぞ説ときて空くうとなす。

問フ。不浄・苦・无常、其ノ義易シ↠了リ。現ニ見ルニ↠有ルヲバ↢法体↡、何ゾ説キテ為ル↠空ト。

^答こたふ。 あに ¬経きょう¼ (金剛経) に説とかずや、 「△夢む・幻げん・化けのごとし」 と。 ゆゑに夢ゆめの境きょうに例れいして、 まさに空くうの義ぎを観かんずべし。

答フ。豈ニ不ヤ↢¬経ニ¼説カ↡、「如シトハ↢夢・幻・化ノ↡。」故ニ例シテ↢夢ノ境ニ↡当ニシ↠観ズ↢空ノ義ヲ↡。

^¬西域さいいきの記き¼ (*大唐西域記) にいふがごとし。 「^*婆羅ばら痆ねつ斯し国こくの*施せ鹿林ろくりんの東ひがし、 行ゆくこと二に三さん里りにして、 涸かれたる池いけあり。 昔むかし、 一いちの隠いん士じありて、 この池いけの側ほとりにして廬いおりを結むすび迹あとを屏へだてて、 博ひろく伎ぎ術じゅつを習ならひ、 神じん理りを究極きゅうきょくして、 よく*瓦が礫りゃくをして宝たからとなし、 人畜にんちくをして形かたちを易かへしむ。 ただしいまだ風雲ふううんに馭のりて*仙せん駕がに陪ばいすることあたはず。 図づを閲ひらき、 古いにしえを考かんがへて、 さらに仙せん術じゅつを求もとむ。

如シ↢¬西域ノ記ニ¼云フガ↡。「*婆羅痆斯国ノ施鹿林ノ東ニ行キテ↢二三里ヲ↡、有リ↢涸カレタル池↡。昔有リテ↢一ノ隠士↡、於テ↢此ノ池ノ側ニ↡結ビ↠蘆ヲ屏ヘダテテ↠迹ヲ、博ク習ヒ↢*伎術ヲ↡究メ↢極メテ神理ヲ↡、能ク使メ↢瓦礫ヲシテ為サ↟宝ト、人畜ヲシテ易ヘキ↠形ヲ。但シ未ダ↠能ハ↧馭ノリテ↢風雲ニ↡*倍スルコト↦仙*賀ニ↥。閲ヒラキ↠図ヲ考ヘテ↠古ヲ、更ニ求ム↢仙術ヲ↡。

^その方ほうにいはく、 一いちの*烈れつ士じに命めいじて、 長ながき刀かたなを執とりて壇だんの隅すみに立たち、 息いきを屏へだて言ごんを絶たちて、 昏ゆうべより旦あしたに逮およばしむ。 仙せんを求もとむるものは中ちゅう壇だんに坐ざし、 手てに長ながき刀かたなを接とり、 口くちに*神じん0851呪じゅを誦じゅし、 視しを収おさめ聴ちょうを反ほんじて、 *遅ち明みょうに仙せんに登のぼると。 つひに仙せんの方ほうによりて一いちの烈れつ士じを求もとめて、 しばしば*重ちょう貽いを加くわへ、 潜ひそかに陰徳おんとくを行ぎょうじき。

其ノ方ニ曰ク、命ジテ↢*一ノ烈士ニ↡、執リテ↢長キ刀ヲ↡立チテ↢*壇ノ隅ニ↡、屏ヘダテ↠息ヲ絶チテ↠言ヲ、自リ↠昏ヨムベ逮オヨバシム↠旦アシタニ。求ムル↠仙ヲ者ハ中*壇ニ而モ坐シテ、手ニ接リ↢長キ刀ヲ↡、口ニ誦シ↢神呪ヲ↡、収メ↠視ヲ*反ジテ↠聴ヲ、遅明ニ登ルトイヘリ↠仙ニ。遂ニ依リテ↢仙ノ方ニ↡求メテ↢一ノ烈士ヲ↡、数バ加ヘ↢重貽ヲ↡、潜ヒソカニ行ジキ↢陰徳ヲ↡。

^隠いん士じのいはく、 ª願ねがはくは、 一夕いっせき、 声おとせざらんのみº と。 烈れつ士じのいはく、 ª死しすらなほ辞じせじ。 あにいたづらに息いきを屏へだてんをやº と。

隠士ノ曰ク、願クハ一夕不ラム↠声オトセ耳ト。烈士ノ曰ク、死ヌルコトヲダモ尚不↠辞セ。豈ニ徒ニ屏ヘダテムヲヤト↠息ヲ。

^ここにおいて壇だん場じょうを設もうけ、 仙せんの法ほうを受うけ、 方ほうによりて行ぎょう事じして、 坐ざして日ひの曛くるるを待まつ。 曛くん暮ぼの後のちにおのおのその務いとなみを司つかさどる。 隠いん士じは神呪じんじゅを誦じゅし、 烈れつ士じは銛刀せんとうを按あんぜり。 ほとほとまさに暁あけなんとするに、 たちまちに声おとを発おこして叫さけぶ。

於テ↠是ニ設ケテ↢壇場ヲ↡、受ケテ↢仙ノ法ヲ↡、依リテ↠方ニ行事シテ、坐シテ待ツ↢日ノ曛クルルヲ↡。曛暮之後ニ各 ノ司リテ↢其ノ務イトナミヲ↡、隠士ハ誦シ↢神1045呪ヲ↡、烈士ハ按ゼリ↢*銛刀ヲ↡。殆ト将ニルニ↠暁アケナムト矣、忽ニ発シテ↠声オトヲ叫ヨバフ。

^時ときに隠いん士じ問とひていはく、 ª子しに声おとすることなかれと誡いましめつ。 なにをもつてか驚おどろき叫さけぶº と。

時ニ隠士問ヒテ曰ク、誡メツ↠子ニ無レト↠声オトスルコト。何ヲ以テカ驚キ叫ヨバフト。

^烈れつ士じのいはく、 ª命めいを受うけて後のち、 夜や分ぶんに至いたるに、 *惛然こんねんとして夢ゆめのごとくして、 変へん異いさらに起おこれり。

烈士ノ曰ク、受ケテ↠命ヲ後至ルニ↢夜分ニ↡、惛然トシテ若クシテ↠夢ノ、変異更ニ起ル。

^見みれば、 昔むかし、 事つかへし主しゅ、 みづから来きたりて慰い謝しゃす。 厚恩こうおんを荷になへることを感かんじて、 忍しのびて*報ほう語ごせず。 かの人ひと震しん怒ぬして、 つひに殺害せつがいせられぬ。

見レバ昔事ツカヘシ主躬ミヅカラ来リテ慰謝ス。感ジテ↠荷ヘルコトヲ↢厚恩ヲ↡、忍ビテ不↢報語セ↡。彼ノ人震怒トシテ、遂ニ見ラレヌ↢*殺害セ↡。

^*中ちゅう陰いんの身しんを受うけて、 屍かばねを顧かえりみて嘆たん惜しゃくす。 なほ願ねがはくは、 世よを歴ふとも言ものいはずしてもつて厚徳こうとくを報ほうぜんと。

受ケテ↢中陰ノ身ヲ↡、顧テ↠屍ヲ嘆惜ス。猶願クハ*歴トモ↠世ヲ不シテ↠言モノイハ以テ報ゼムト↢厚徳ヲ↡。

^つひに見みれば、 南みなみ印いん度どの大だい婆羅ばら門もんの家いえに託たく生しょうす。 乃ない至し、 胎たいを受うけ胎たいを出いづるに、 つぶさに苦く厄やくを経ふれども、 恩おんを荷になひ徳とくを荷になひてかつて声おとを出いださず。

遂ニ見レバ*詫↢生シテ南印度ノ大婆羅門ノ家ニ↡、乃至受ケ↠胎ヲ出ヅルニ↠胎ヲ、備ニ経レドモ↢苦*厄ヲ↡、荷ヒ↠恩ヲ荷ヒテ↠徳ヲ嘗テ不↠出サ↠声オトヲ。

^業ごうを受うけ、 冠婚かんこんし、 親おやを喪うしなひ、 子こをなすに洎およぶまで、 つねに前さきの恩おんを念おもひて忍しのびて語かたらず。 *宗親そうしん戚しゃく属ぞくことごとく見みて怪異けいす。

*洎↢乎オヨブマデニ受ケテ↠業ヲ冠シ婚シ喪ヒ↠親ヲ生ナスニ↟子ヲ、毎ニ念ジテ↢前ノ恩ヲ↡忍ビテ而不↠語セ。宗親戚属咸ク見テ怪異ス。

^年とし六ろく十じゅう有ゆう五ごに過すぎて、 わが妻つま謂かたりていはく、 «なんぢ、 言ものいふべし。 もし語かたらずは、 まさになんぢが子こを殺ころすべし» と。 われ時ときに*惟念ゆいねんすらく、 «すでに生しょう世ぜを隔へだつ。 みづから顧かえりみるに、 衰老すいろうして、 ただこの*稚子ちしのみありと。 よりてその妻つまを止とどめて、 殺害せつがいすることなからしめん» と。 つひにこの声おとを発おこせるのみº と。

年過ギテ↢六十有五ニ↡、我ガ妻謂カタリテ曰ク、汝、可シ↠言モノイフ矣。若シ不ハ↠語セ者当ニシト↠殺ス↢汝ガ子ヲ↡。我時ニ惟念スラク、已ニ隔ツ↢生世ヲ↡。自ラ顧ルニ衰老シタリ。唯シ*此ノ稚子ノミアリト。因リテ止メテ↢其ノ妻ヲ↡、令メムトシテ↠無カラ↢殺害スルコト↡。遂ニ発セルナラク↢此ノ声オトヲ↡耳ト。

^隠いん士じのいはく、 ªわが過とがなり。 これ魔まの嬈なやませるのみº と。 烈れつ士じ、 恩おん0852を感かんじて、 事じのならざるを悲かなしみて、 憤ふん恚いして死しせり」 と。 以上略抄

隠士ノ曰ク、我ガ之過也。此魔ノ嬈ナヤマスナラク耳ト。烈士、感ジテ↠恩ヲ悲ミテ↢事ノ不ルヲ↟成ラ、憤恚シテ而死スト。」 已上略抄

^夢ゆめの境きょう、 かくのごとし。 諸法しょほうもまたしかなり。 妄想もうぞうの夢ゆめ、 いまだ覚さめざれば、 空くうにおいて、 いひて有うとなす。

夢ノ境如シ↠是クノ。諸法モ亦然ナリ。妄想ノ夢未ダレバ↠覚メ、於テ↠空ニ謂フテ為ス↠有ト。

^ゆゑに ¬*唯識ゆいしき論ろん¼ (意) にいはく、 「いまだ真しんの覚さとりを得えざるときは、 つねに夢ゆめのなかに処しょせり。 ゆゑに仏ぶつ説ときて、 生しょう死じの長じょう夜やとなしたまふ」 と。

故ニ¬唯識論ニ¼云ク、「未ダシテハ↠得↢真ノ覚ヲ↡、常ニ処セリ↢夢ノ中ニ↡。故ニ仏説キテ為シタマフト↢生死ノ長夜ト↡。」

 ^問とふ。 もし無む常じょう・苦く・空くう等とうの観かんをなさば、 あに小乗しょうじょうの*自じ調じょう・自度じどに異ことならんや。

問フ。若シ作サバ↢無常・苦・空等ノ観ヲ↡、豈ニ異ナラムヤ↢小乗ノ自調・自度ニ↡。

^答こたふ。 この観かんは*小しょうに局かぎらず。 また通つうじて大だい乗じょうにもあり。

答フ。此ノ観ハ不↠局ラ↠小ニ。亦通ジテ在リ↢大乗ニモ↡。

^¬法ほっ華け¼ にのたまふがごとし。

如シ↢¬法華ニ¼云フガ↡。

^「大だい慈悲じひを室しつとなす。 柔にゅう和わ忍辱にんにくは衣えなり。
諸法しょほうの空くうを座ざとなす。 ここに処しょしてために法ほうを説とけ」 と。 以上

「大慈悲ヲ為ス↠室ト柔和忍辱ハ衣ナリ
諸法ノ空ヲ為ス↠座ト処シテ↠此ニ為ニ説ケト↠法ヲ」 已上

^諸法しょほうの空くうの観かん、 なほ大だい慈悲じひ心しんを妨さまたげず、 いかにいはんや苦く・無む常じょう等とうは菩ぼ薩さつの悲ひ願がんを催もよおすをや。 このゆゑに ¬大だい般若はんにゃ¼ 等とうの経きょうに、 *不ふ浄じょう等とうの観かんをもつてまた菩ぼ薩さつの法ほうとなす。 もし知しらんと欲おもはば、 さらに経きょうの文もんを読よめ。

諸法ノ空ノ観尚シ不↠妨セ↢大慈悲心ヲ↡、何ニ況ヤ苦・無常等ハ催スヲ↢菩薩ノ悲願ヲ↡*乎。是ノ故ニ¬大般若¼等ノ経ニ、以テ↢不1046浄等ノ*観ヲ↡亦為ス↢菩薩ノ法ト↡。若シ欲ハバ↠知ラムト者、更ニ読メ↢経ノ文ヲ↡。

 ^問とふ。 かくのごとき観念かんねんは、 なんの利り益やくかある。

問フ。如キ↠是クノ観念ハ有ル↢何ノ利益カ↡。

^答こたふ。 もしつねにかくのごとく心しんを*調じょう伏ぶくすれば、 五ご欲よく微み薄はくにして、 乃ない至し、 臨りん終じゅうには正しょう念ねんにして乱みだれず、 悪あく処しょ0853に堕おちざるなり。

答フ。若シ常ニ如クシテ↠是クノ調↢伏スレバ心ヲ↡者、五欲微薄ニシテ、乃至臨終ニハ正念ニシテ不シテ↠乱レ、不ルナリ↠堕チ↢悪処ニ↡。

^¬*大だい荘しょう厳ごん論ろん¼ の勧進かんじん繋け念ねんの偈げにいふがごとし。

如シ↢¬大荘厳論ノ¼勧進繋念ノ偈ニ云フガ↡。

^「▲盛じょう年ねんにして患うれひなき時ときには、 *懈け怠だいにして精しょう進じんせず。
もろもろの*事務じむを貪営とんようして、 *施せと戒かいと禅ぜんとを修しゅせず。

「盛年ニシテ無キ↠患ヘ時ニハ懈怠ニシテ不↢精進セ↡
貪↢営テ衆ノ事務ヲ↡不↠修セ↢施ト・戒ト・禅トヲ↡

^死しのために呑のまるるに臨のぞみて、 まさに悔くいて善ぜんを修しゅすることを求もとむ。
智ち者しゃは観察かんざつして、 五ご欲よくの想おもいを断除だんじょすべし。

臨ミテ↢為ニ↠死ノ所ルニ↟呑マ方ニ悔イテ求ム↠修セムコトヲ↠善ヲ
智者ハ応シ↣観察シテ断↢除ス五欲ノ想ヲ↡

^*精しょう勤ごん習じゅう心しんのものは、 終じゅう時じに悔け恨こんなし。
心しん意いすでに専せん至しなれば、 錯乱さくらんの念おもいあることなし。

精勤習心ノ者ハ終時ニ无シ↢悔恨↡
心意既ニ専ラニ至シテ無シ↠有ルコト↢錯乱ノ念↡

^智ち者しゃはつとめて心しんを捉とれば、 終おわりに臨のぞみて意こころ散さんぜず。
習じゅう心しん専せん至しならざれば、 終おわりに臨のぞみてかならず散乱さんらんす」 と。 以上

智者ハ勤↢*捉スレバ心ヲ↡臨ミテ↠終ニ意不↠散ゼ
不ルハ↢習心専ニ至ラ↡臨ミテ↠終ニ必ズ散乱スト」 已上

^また ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の五ご十じゅう七しちの偈げにのたまはく、

又¬宝積経ノ¼五十七ノ偈ニ*云ク、

^「この身みを観かんずべし。 筋きん脈みゃくたがひに*纏てん繞にょうせり。
湿うるへる皮かわあひ裹つつみ覆おおひて、 *九くの処ところに瘡門そうもんあり。

「応シ↠観ズ↢於此ノ身ヲ↡筋脈更タガヒニ纏繞セリ
*湿ヘル皮相裹ツツミ覆ヒテ九ノ処ニ有リ↢瘡門↡

^周しゅう遍へんしてつねに屎し尿にょうのもろもろの不ふ浄じょうを流る溢いつせり。
たとへば舎しゃと*篅せんとに、 もろもろの穀麦こくばく等とうを盛もれるがごとく、

周遍シテ常ニ流↢溢セリ屎尿ノ諸ノ不浄ヲ↡
譬ヘバ如ク↣舎ト与ニ↠篅盛レルガ↢諸ノ穀麦等ヲ↡

^この身みもまたかくのごとし。 雑ぞう穢えそのなかに満みてり。
0854骨ほねの機き関けんを運動うんどうするに、 危き脆ぜいにして堅実けんじつにあらず。

此ノ身モ亦如シ↠是クノ雑穢満テリ↢其ノ中ニ↡
運↢動シテ骨ノ機関ヲ↡危脆ニシテ非↢堅実ナラ↡

^愚夫ぐふはつねに愛あい楽ぎょうすれども、 智ち者しゃは*染ぜん着じゃくすることなし。
洟なみだ・唾つばき・汗あせつねに流ながれ、 膿血のうけつつねに充じゅう満まんせり。

愚夫ハ常ニ愛楽スレドモ智者ハ无シ↢染著スルコト↡
洟ナミダ唾汗常ニ流レテ膿ウミシル血恒ニ充満セリ

^黄きなる脂あぶらは乳汁にゅうじゅうに雑まじはり、 脳のうは髑どく髏ろのなかに満みつ。
胸きょう鬲かくには*痰癊たんおん流ながれ、 うちに生熟しょうじゅく臓ぞうあり。

黄ナル脂ハ雑リテ↢乳汁ニ↡脳ナヅキハ満チテ↢髑髏ノ中ニ↡
胸*鬲ヨリ痰癊流レ内ニ有リ↢生熟蔵↡

^肪膏ぼうこうと皮ひ膜まくと、 五ご臓ぞうのもろもろの腹ふく胃いとあり。
かくのごとき臭しゅう爛らん等とうの、 もろもろの不ふ浄じょうと同おなじく居こせり。

肪膏ト与↢皮膜↡五蔵ノ諸ノ*腹胃トアリ
如キ↠是クノ臭爛等ノ諸ノ不浄ト同ジク居セリ

^罪つみの身みは深ふかく畏おづべし。 これはすなはちこれ怨おん家げなり。
無む識しき耽欲たんよくの人にんは、 愚痴ぐちにしてつねに保たもちて護まもれども、

罪ノ身ハ深ク可シ↠畏ヅ此ハ即チ是怨家ナリ
無ク↠識ルコト耽欲ノ人ハ愚痴ニシテ常ニ保チテ護ル

^かくのごとき臭しゅう穢えの身みは、 なほ朽くちたる城じょう廓かくのごとし。
日にち夜やに煩悩ぼんのうに逼せめられて、 遷せん流るしてしばらくも停とどまることなし。

如キ↠是クノ臭穢ノ身ハ猶如シ↢朽チタル城廓ノ↡
日夜ニ煩悩ニ逼セメサレテ遷流シテ無シ↢蹔シバラクモ停ルコト↡

^身みの城しろ、 骨ほねの墻壁かきかべ、 血ち肉にくをもつて塗ず泥でいとなし、
画え彩さいの*貪とん・瞋しん・痴ち、 処ところに随したがひて枉飾おうじきせり。

身ノ城骨ノ牆壁ニハ血肉ヲモテ作セリ↢塗泥ト↡
画彩ノ貪・瞋・痴随ヒテ↠処ニ而*枉飾セリ

^悪にくむべし骨身こつしんの城しろ、 血ち肉にくあひ連合れんごうし、
つねに*悪あく知ち識しきに内ない外げの苦くをもつてあひ煎せんぜらる。

可悪ノ骨身ノ城ハ血肉相連合1047セリ
常ニ被ル↢悪知識ヲ内外ノ苦ニ相ヒ煎セ↡

^0855*難なん陀だ、 なんぢまさに知しるべし。 わが所説しょせつのごとく、
昼ちゅう夜やつねに*繋け念ねんして、 欲よく境きょうを思おもふことなかれ。

難陀汝当ニシ↠知ル如ク↢我ガ之所説ノ↡
昼夜常ニ繋念シテ*勿レ↠思フコト↢於欲境ヲ↡

^もし遠おん離りせんと欲おもはば、 つねにかくのごとき観かんをなし、
解げ脱だつの処ところを勤ごん求ぐせば、 すみやかに生しょう死じの海うみを超こえん」 と。 以上

若シ欲ハバ↢遠離セムト↡者常ニ作セ↢如キ↠是クノ観ヲ↡
勤↢求シテ解脱ノ処ヲ↡速ニ超エヨト↢生死ノ海ヲ↡」 已上

^諸しょ余よの利り益やくは ¬大論だいろん¼ (大智度論)・¬止し観かん¼ 等とうを見みるべし。

諸余ノ利益ハ可シ↠見ル↢¬大論¼・¬止観¼等ヲ↡。

二 Ⅱ 欣求浄土
    ⅰ 叙意標章

【21】^大文だいもん第だい二にに、 △欣ごん求ぐ浄じょう土どといふは、 極楽ごくらくの*依え正しょうは功く徳どく無む量りょうなり。 百ひゃく劫こう・千劫せんごうに説とくとも尽つくすことあたはじ。 *算分さんぶん・喩ゆ分ぶんもまた知しるところにあらず。 しかも ¬*群ぐん疑ぎ論ろん¼ には三十さんじっ種しゅの益やくを明あかし、 ¬*安国あんこくの抄しょう¼ には二に十じゅう四しの楽らくを摽ひょうせり。 すでに知しりぬ。 称しょう揚ようはただ人ひとの心しんにあり。

大文第二ニ▼欣求浄土トイフ者、極楽ノ依正ハ功徳無量ナリ。百劫・千劫ニ説クトモ不↠能ハ↠尽スコト。算分・喩分モ亦非ズ↠所ニ↠知ル。然モ¬群疑論ニハ¼明シ↢三十種ノ益ヲ↡、¬安国ノ*抄ニハ¼摽セリ↢二十四ノ楽ヲ↡。既ニ知リヌ。称*楊ハ只在リ↢人ノ心ニ↡。

^▽いま十じゅうの楽らくを挙あげて浄じょう土どを讃さんずること、 なほ一毛いちもうをもつて大海だいかいを渧しただらすがごとし。 一いちには▽聖しょう衆じゅ来迎らいこうの楽らく、 二にには▽蓮れん華げ初開しょかいの楽らく、 三さんには▽身相しんそう神通じんずうの楽らく、 四しには▽五ご妙みょう境きょう界がいの楽らく、 五ごには▽快け楽らく無む退たいの楽らく、 六ろくには▽引いん接じょう結縁けちえんの楽らく、 七しちには▽聖しょう衆じゅ倶会くえの楽らく、 八はちには▽見仏けんぶつ聞法もんぼうの楽らく、 九くには▽随心ずいしん供く仏ぶつの楽らく、 十じゅうには▽増進ぞうしん仏道ぶつどうの楽らくなり。

今挙ゲテ↢十ノ楽ヲ↡而シテ讃ズルコト↢浄土ヲ↡、猶如クセム↣一毛ヲモテ之渧シタツルガ↢大海ヲ↡。▼一ニハ聖衆来迎ノ楽、二ニハ蓮華初開ノ楽、三ニハ身相神通ノ楽、四ニハ五妙境界ノ楽、五ニハ快楽无退ノ楽、六ニハ引接結縁ノ楽、七ニハ▼聖衆倶会ノ楽、八ニハ見仏聞法ノ楽、九ニハ随心供仏ノ楽、十ニハ増進仏道ノ楽也。

二 Ⅱ ⅱ 解釈十楽
      a 聖衆来迎楽

【22】^第一だいいちに△*聖しょう衆じゅ来迎らいこうの楽らくといふは、 おほよそ悪業あくごうの人にんは、 命いのち尽つくる時ときに、 *風ふう・火か先まづ去さる。 ゆゑに動熱どうねつして苦く多おおし。 善ぜん行ぎょうの人にんは、 命いのち尽つくる時ときに、 *地じ・水すい先ま0856づ去さる。 ゆゑに緩慢かんまんとして苦くなし。 ^いかにいはんや念仏ねんぶつの功こう積つもり、 *運心うんしん年とし深ふかきものは、 命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて大だい喜きおのづから生しょうず。

第一ニ聖衆来迎ノ楽トイフ者、凡ソ悪業ノ人ハ命尽クル時ニ、風・火先ヅ去ル。故ニ動熱シテ多シ↠苦。善行ノ人ハ命尽クル時ニ、地・水先ヅ去ル。故ニ緩縵トシテ無シ↠苦。何ニ況ヤ念仏ノ功積リ、運心年深キ之者ハ、臨ミテ↢命終ノ時ニ↡大喜自ラ生ズ。

^しかる所以ゆえんは、 弥陀みだ如来にょらい、 *本願ほんがんをもつてのゆゑに、 もろもろの菩ぼ薩さつ、 百ひゃく千せんの比丘びく衆しゅと、 大だい光こう明みょうを放はなちて、 *皓然ごうねんとして目めの前まえにまします。 時ときに*大だい悲ひ観かん世ぜ音おん、 *百ひゃっ福ぷく荘しょう厳ごんの手みてを申のべ、 宝たからの蓮台れんだいを擎ささげて行ぎょう者じゃの前まえに至いたりたまひ、 大勢だいせい至し菩ぼ薩さつ、 無む量りょうの聖しょう衆じゅと、 同どう時じに讃嘆さんだんして手みてを授さずけて引いん接じょうしたまふ。

所↢以然ル↡者、弥陀如来以テノ↢本願ヲ↡故ニ、与↢諸ノ菩薩、百千ノ比丘衆↡、放チテ↢大光明ヲ↡、皓然トシテ在ス↢目ノ前ニ↡。時ニ大悲観*世音申ベテ↢百福荘厳ノ手ヲ↡、擎ササゲテ↢宝ノ蓮台ヲ↡至リタマヒヌ↢行者ノ前ニ↡。大勢至菩薩与↢無量ノ聖衆↡、同時ニ讃嘆シテ授ケテ↠手ヲ引1048接シタマフ。

^この時ときに行ぎょう者じゃ、 まのあたりみづからこれを見みて、 心しん中ちゅうに歓かん喜ぎし、 身心しんしん安楽あんらくなること禅ぜん定じょうに入いるがごとし。

是ノ時ニ行者、目ニ自ラ見テ↠之ヲ心ノ中ニ歓喜ス。身心安楽ニシテ如シ↠入レルガ↢禅定ニ↡。

^まさに知しるべし、 草菴そうあんに瞑目めいもくのあひだはすなはちこれ*蓮台れんだい結けっ跏かの程ときなり。 すなはち弥陀みだ仏ぶつの後しりえに従したがひ、 菩ぼ薩さつ衆しゅのなかにありて、 一念いちねんのあひだに、 西方さいほうの極楽ごくらく世せ界かいに生しょうずることを得う。 ¬*観かん経ぎょう¼・¬*平びょう等覚どうがく経きょう¼、 ならびに*伝でん記き等とうの意こころによる。

当ニシ↠知ル、草菴ニ瞑目之間ハ便チ是蓮台結跏之程トキナリ。即チ従ヒ↢弥陀仏ノ後ニ↡、在リテ↢菩薩衆ノ中ニ↡、一念之*項アヒダニ得↠生ズルコトヲ↢西方ノ極楽世界ニ↡。依ル↢¬観経¼・¬平等覚経¼并ニ伝記等ノ意ニ↡

^かの忉とう利り天てん上じょうの億千おくせん歳ざいの楽らくも、 *大だい梵王ぼんのう宮ぐの深禅じんぜん定じょうの楽らくも、 これらのもろもろの楽らくは、 いまだ楽らくとなすに足たらず。 *輪転りんでん無む際さいにして三さん途ずを免まぬかれず。 しかもいま、 観音かんのんの掌たなごころに処しょし、 宝たからの蓮れん華げ胎たいに託たくして、 永ながく苦く海かいを越おつ過かしてはじめて浄じょう土どに往おう生じょうしぬ。 その時ときの歓かん喜ぎの心しん、 言ごんをもつて宣のぶべからず。

彼ノ忉利天上ノ億千歳ノ楽モ、大梵王宮ノ深禅定ノ楽モ、此等ノ諸ノ楽ハ、未ダ↠足ラ↠為ルニ↠楽ト。輪転無際ニシテ不↠免レ↢三途ヲ↡。而モ今処シ↢観音ノ掌ニ↡、託シテ↢宝ノ蓮*花胎ニ↡、永ク*越↢過シテ苦海ヲ↡初テ往↢生シヌ浄土ニ↡。爾ノ時ノ歓喜ノ心、不↠可カラ↢以テ↠言ヲ宣ブ↡。

^龍りゅう樹じゅの偈げ (*易行品) にいはく、

龍樹ノ偈ニ云ク、

^「▲もし人ひと、 命終みょうじゅうの時ときに、 かの国くにに生うまるることを得うるものは、
0857すなはち無む量りょうの徳とくを具ぐす。 このゆゑにわれ帰き命みょうしたてまつる」 と。

「若シ人命終ノ時ニ得ル↠生ルルコトヲ↢彼ノ国ニ↡者ハ
即チ具ス↢无量ノ徳ヲ↡是ノ故ニ我帰命シタテマツルト」

二 Ⅱ ⅱ b 蓮華初開楽

【23】^第だい二にに△蓮れん華げ初開しょかいの楽らくといふは、 行ぎょう者じゃかの国くにに生しょうじをはりて、 蓮れん華げはじめて開ひらくる時ときに、 あらゆる歓楽かんらく、 前さきに倍ばいせること百ひゃく千せんなり。 なほ*盲者もうじゃの、 はじめて明みょう眼げんを得えたるがごとし。 また辺へん鄙ぴのたみの、 たちまちに王おう宮ぐに入いれるがごとし。 みづからその身みを見みれば、 身みはすでに紫磨しま金色こんじきの体たいとなり、 また自じ然ねんの宝ほう衣えありて、 鐶かん・釧せん・宝冠ほうかん、 荘しょう厳ごん無む量りょうなり。

*第二ニ*蓮華初テ開クル楽トイフ者、行者生ジ↢彼ノ国ニ↡已リテ、蓮花初テ開クル時ニ、所有ル歓楽倍セルコト↠前ニ百千ナリ。猶如シ↣盲者ノ始テ得タルガ↢明眼ヲ↡。亦ハ如シ↣辺鄙ノタミノ忽ニ入レルガ↢王宮ニ↡。自ラ見レバ↢其ノ身ヲ↡、身ハ既ニ作レリ↢紫磨金ノ色ニ↡。体ニ亦有リテ↢自然ノ宝衣↡、*鐶・釧・宝冠、荘厳无量ナリ。

^仏ぶつの光こう明みょうを見みて清浄しょうじょうの眼まなこを得え、 前さきの宿習しゅくじゅうによりてもろもろの法音ほうおんを聞きく。 色しきに触ふれ声しょうに触ふれて、 奇き妙みょうならずといふことなし。 *尽じん虚こ空くう界かいの荘しょう厳ごんは、 眼まなこ、 雲うん路ろに迷まよひ、 *転てん妙みょう法輪ほうりんの音おん声じょうは、 聴きき、 *宝刹ほうせつに満みてり。 楼殿ろうでん・林りん池ちは表ひょう裏り照しょう曜ようし、 鳧ふ・雁がん・鴛鴦えんおうは遠近おんごんに群むらがり飛とぶ。

見テ↢仏ノ光明ヲ↡得↢清浄ノ眼ヲ↡、因リテ↢前ノ宿習ニ↡聞ク↢衆ノ法音ヲ↡。触レ↠色ニ触レテ↠声ニ无シ↠不トイフコト↢奇妙ナラ↡。尽虚空界之荘厳ハ眼迷ヒ↢雲路ニ↡、転妙法輪之音声ハ聴キ満テリ↢宝刹ニ↡。楼殿・林池ハ表裏照曜セリ。鳧カモ・雁カリ・鴛鴦ヲシハ遠近ニ群レ飛ブ。

^あるいは衆しゅ生じょうの、 *駃とき雨あめのごとくして十方じっぽう世せ界かいより生しょうずるを見み、 あるいは聖しょう衆じゅの、 恒沙ごうじゃのごとくして無む数しゅの仏ぶつ土どより来きたるを見みる。

或イハ見ル↧衆生ノ如クシテ↢*駃キ雨ノ↡従リ↢十方世界↡生ズルヲ↥。或イハ見ル↧聖衆ノ如クシテ↢恒沙ノ↡従リ↢无数ノ仏土↡来ルヲ↥。

^あるいは楼台ろうだいに登のぼりて十方じっぽうを望のぞむものあり。 あるいは宮く殿でんに乗のりて虚こ空くうに住じゅうするものあり。 あるいは空くう中ちゅうに住じゅうして経きょうを誦じゅし法ほうを説とくものあり。 あるいは空くう中ちゅうに住じゅうして坐ざ禅ぜん入定にゅうじょうするものあり。 地じの上うえ、 林はやしのあひだにも、 またかくのごとし。 処々しょしょにまた河かわを渉わたり流ながれに濯すすぎ、 楽がくを奏そうし華はなを散さんじ、 楼殿ろうでんに往来おうらいして、 如来にょらいを*礼讃らいさんしたてまつるものあり0858。

或イハ有リ↧登リテ↢楼台ニ↡望ム↢十方ヲ↡者↥。或イハ有リ↧乗ジテ↢宮殿ニ↡住スル↢虚空ニ↡者1049↥。或イハ有リ↧住シテ↢空ノ中ニ↡誦シ↠経ヲ説ク↠法ヲ者↥。或イハ有リ↧住シテ↢空ノ中ニ↡坐禅入定スル者↥。地ノ上、林ノ間ニモ亦復如シ↠是クノ。処々ニ復有リ↧渉リ↠河ヲ濯アミ↠流ヲ、奏シ↠楽ヲ散ジ↠花ヲ、往↢来シテ楼殿ニ↡、礼↢讃シタテマツル如来ヲ↡之者↥。

^かくのごとき無む量りょうの天てん・人にん聖しょう衆じゅ、 心しんに随したがひて遊戯ゆげす。 いはんや化け仏ぶつ・菩ぼ薩さつ、 香雲こううん・華け雲うん、 国界こくかいに充じゅう満まんして、 つぶさに名なづくべからず。

如キ↠是クノ无量ノ天人聖衆随ヒテ↠心ニ遊戯ス。況ヤ化仏・菩薩、香*雲・花雲充↢満シテ国界ニ↡、不↠可カラ↢具ニ名ク↡。

^またやうやく眸まなじりを回めぐらしてはるかにもつて瞻望せんもうすれば、 弥陀みだ如来にょらいは*金山王こんぜんのうのごとくして宝蓮ほうれん華げの上うえに坐ざし、 宝ほう池ちの中ちゅう央おうに処しょしたまへり。 観音かんのん・勢せい至しは*威儀いぎ尊そん重じゅうにして、 また宝ほう華けに坐ざし、 仏ぶつの左右さうに侍はべらひたまふ。 無む量りょうの聖しょう衆じゅ、 *恭く敬ぎょうし囲い繞にょうせり。

又漸ク廻シテ↠眸マナジリヲ遥ニ以テ瞻望スレバ、弥陀如来ハ如クシテ↢金山王ノ↡坐シテ↢宝蓮花ノ上ニ↡、処シタマヘリ↢宝*池ノ中央ニ↡。観音・勢至ハ威儀尊重ニシテ、亦坐シテ↢宝花ニ↡、侍ヒタマフ↢仏ノ左右ニ↡。无量ノ聖衆恭敬シ囲繞セリ。

^また宝ほう地じの上うえに宝樹ほうじゅ行列ごうれつし、 宝樹ほうじゅの下もとにおのおの一仏いちぶつ二に菩ぼ薩さつましまして、 光こう明みょうをもつて*厳飾ごんじきし、 *流璃るりの地じに遍へんしたまへること、 夜や闇あんのなかに大おおきなる炬火こかを燃ともせるがごとし。

又宝*地ノ上ニ宝樹行列セリ。宝樹ノ下ニ各 ノ有シテ↢一仏二菩薩↡、光明ヲモテ厳飾シテ、遍シタマヘルコト↢*流璃ノ地ニ↡、如シ↣夜闇ノ中ニ燃セルガ↢大ナル炬火ヲ↡。

^時ときに観音かんのん・勢せい至し、 行ぎょう者じゃの前まえに来らい至しして、 大だい悲ひの音こえを出いだして種々しゅじゅに慰喩いゆしたまふ。 行ぎょう者じゃ、 蓮台れんだいより下おりて五ご体たいを地じに投なげて、 頭ず面めんをもつて敬きょう礼らいす。 すなはち菩ぼ薩さつに随したがひて、 やうやく仏ぶつの所みもとに至いたりぬ。 七宝しっぽうの階はしに跪ひざまずきて万徳まんどくの尊容そんようを瞻まばり、 *一実いちじつの道どうを聞ききて*普ふ賢げんの願海がんかいに入いる。 歓かん喜ぎして涙なみだを雨あめふらし、 *渇仰かつごうして骨ほねに徹とおる。

時ニ観音・勢至来↢至シテ行者ノ前ニ↡、出シテ↢大悲ノ音ヲ↡種々ニ慰喩シタマフ。行者従リ↢蓮台↡下リテ五体ヲ投ゲテ↠地ニ、頭面ニ敬礼ス。即チ従ヒテ↢菩薩ニ↡漸ク至リヌ↢仏ノ所ニ↡。跪キテ↢七宝ノ階ハシニ↡瞻リ↢万徳之尊容ヲ↡、聞キテ↢一実ノ道ヲ↡入ル↢普賢之願海ニ↡。歓喜シテ雨リ↠涙ヲ、渇仰シテ徹ス↠骨ヲ。

^はじめて仏界ぶっかいに入いりて未曽有みぞうなることを得えつ。 行ぎょう者じゃ、 昔むかし、 娑しゃ婆ばにしてわづかに教きょう文もんを読よみしも、 いままさしくこの事じを見みる。 歓かん喜ぎの心しんいくばくぞや。 多おおく ¬観かん経ぎょう¼ 等とうの意こころによる。

始テ入リテ↢仏界ニ↡得ツ↠未ダルコトヲ↢曽ムカシニモ有ラ↡。行者昔於娑婆ニシテ纔ニ読ミキ↢教文ヲ↡。今正シク見ル↢此ノ事ヲ↡。歓喜ノ心幾クゾ乎。多ク依ル↢¬観経¼等ノ意ニ↡

^龍りゅう樹じゅの偈げ (易行品) にいはく、

龍樹ノ偈ニ*云ク、

^「▲もし人ひと、 善根ぜんごんを種うゑたるに、 疑うたがへばすなはち華はな開ひらけず。
0859信心しんじん清浄しょうじょうなるものは、 華はな開ひらけてすなはち仏ぶつを見みたてまつる」 と。

「若シ人種ヱテ↢善根ヲ↡疑ヘバ則チ花不↠開ケ
信心清浄ナル者ハ花開ケテ則チ見タテマツルト↠仏ヲ」

二 Ⅱ ⅱ c 身相神通楽

【24】^第だい三さんに△*身相しんそう神通じんずうの楽らくといふは、 かの土どの衆しゅ生じょうはその身み真金しんこんの色いろなり。 内ない外げともに清浄しょうじょうにして、 つねに光こう明みょうありて彼此ひしたがひに照てらす。 三さん十じゅう二に相そう具ぐ足そくして荘しょう厳ごんせり。 端たん正じょう殊しゅ妙みょうにして世せ間けんに比たぐいなし。 もろもろの声しょう聞もん衆しゅは、 身光しんこう*一尋いちじんなり。 菩ぼ薩さつの光こう明みょうは百ひゃく由ゆ旬じゅんを照てらす。 あるいは十じゅう万まん由ゆ旬じゅんといふ。 *第六だいろくの天てんの主しゅをもつてかの土どの衆しゅ生じょうに比くらぶるに、 なほ*乞丐こつがいの、 帝王たいおうの辺ほとりにあらんがごとし。

第三ニ身相神通ノ楽トイフ者、彼ノ土ノ衆生ハ其ノ身真金ノ色ナリ。内外倶ニ清浄ニシテ、常ニ有リテ↢光明↡彼此互ニ照ス。卅二相具足シテ荘厳セリ。端正殊妙ニシテ世間ニ无シ↠比。諸ノ声聞衆ハ身光1050一尋ナリ。菩薩ノ光明ハ照ス↢百由旬ヲ↡。或イハ云フ↢十万由旬ト↡。以テ↢第六ノ天ノ主ヲ↡比ブルニ↢彼ノ土ノ衆生ニ↡、猶如シ↣乞丐ノ在ラムガ↢帝王ノ辺ニ↡。

^またかのもろもろの衆しゅ生じょうは、 みな*五ご神通じんずうを具ぐして、 *妙みょう用ゆう測はかりがたくして、 心しんに随したがひて自じ在ざいなり。 もし十方じっぽう界かいの色しきを見みんと欲おもへば、 歩あゆみを運はこばずしてすなはち見み、 十方じっぽう界かいの声こえを聞きかんと欲おもへば、 座ざを起たたずしてすなはち聞きく。 無む量りょうの*宿命しゅくみょうの事じは今日こんにち聞きくところのごとく、 六道ろくどう衆しゅ生じょうの心しんはあきらかなる鏡かがみに像かたちを見みるところのごとし。

又彼ノ諸ノ衆生ハ皆具セリ↢五*神通ヲ↡。妙用難測ニシテ、随ヒテ↠心ニ自在ナリ。若シ欲ヘバ↠見ムト↢十方界ノ色ヲ↡、不シテ↠運バ↠歩ヲ即チ見ル。欲ヘバ↠聞カムト↢十方界ノ声ヲ↡、不シテ↠起タ↠座ヲ即チ聞ク。無量ノ宿命之事ハ如シ↢今日所ノ↟聞ク。六道衆生之心ハ如シ↢明ナル鏡ニ*所ノ↟見ル↠像ヲ。

^*無む央数おうしゅの仏刹ぶっせつに*只し尺せきのごとく往来おうらいし、 おほよそ横よこさまに百ひゃく千せん万億まんおく那由なゆ他たの国くににおいて、 竪たたさまに百ひゃく千せん万億まんおく那由なゆ他たの劫こうにおいて、 一念いちねんのうちに*自じ在ざい無礙むげなり。

无央数之仏刹ハ如シ↢*只尺ノ往来ノ↡。凡ソ横ニ於テ↢百千万億那由他ノ国ニ↡、竪ニ於テ↢百千万億那由他ノ劫ニ↡、一念之中ニ自在無礙ナリ。

^いま*この界さかいの衆しゅ生じょうは、 三さん十じゅう二に相そうにおいて、 たれか一相いっそうをも得えたる、 五ご神通じんずうにおいてたれか一通いっつうをも得えたる。 灯とう・日にちにあらずはもつて照てらすことなく、 行ぎょう歩ぶにあらずはもつて至いたることなし。 一いっ紙しなりといへどもそのほかを見みず。 一いち念ねん0860なりといへどもその後のちを知しらず。 *燓篭はんろういまだ出いでずして、 事じに随したがひて礙さわりあり。

今此ノ界ノ衆生ハ於テ↢卅二相ニ↡誰カ得タル↢一相ヲモ↡。於テ↢五神通ニ↡誰カ得タル↢一通ヲモ↡。非ズハ↢灯日ニ↡无シ↢以テ照スコト↡。非ズハ↢行歩ニ↡无シ↢以テ至ルコト↡。雖モ↢一紙ナリト↡不↠見↢其ノ外ヲ↡。雖モ↢一念ナリト↡不↠知ラ↢其ノ後ヲ↡。*燓篭未ダシテ↠出デ、随ヒテ↠事ニ有リ↠礙。

^しかるをかの土どの衆しゅ生じょうは、 一人いちにんもこの徳とくを具ぐせずといふことあることなし。 百ひゃく大劫だいこうのうちにおいて相好そうごうの業ごうをも種うゑず。 *四し静じょう慮りょのうちにおいて神通じんずうの因いんをも修しゅせざれども、 ただこれかの土どの*任運にんうん生しょう得とくの果か報ほうなり。 また楽たのしからざらんや。 多おおく ¬*双巻そうかん経ぎょう¼ (大経)・¬平びょう等覚どうがく経きょう¼ 等とうによる。

而ルヲ彼ノ土ノ衆生ハ無シ↠有ルコト↢一人モ不トイフコト↟具セ↢此ノ徳ヲ↡。不↧於テ↢百大劫ノ中ニ↡而種エ↦相好ノ業ヲモ↥。不レドモ↧於テ↢四静慮ノ*中ニ↡修セ↦神通ノ因ヲモ↥。只是彼ノ土ノ任運生得之果報ナリ。不ラム↢亦楽シカラ↡*乎。多ク依ル↢¬双巻経¼・¬平等覚経¼等ニ↡

^龍りゅう樹じゅの偈げ (易行品) にいはく、

龍樹ノ偈ニ云ク、

^「▲人天にんでんの身相しんそう同おなじくして、 なほ金山こんぜんの頂いただきのごとし。
諸しょ勝しょうの所しょ帰きの処ところなり。 このゆゑに頭ず面めんをもつて礼らいす。

「人天ノ身相同ジクシテ猶如シ↢金山ノ頂ノ↡
諸ノ勝レタルヒトノ所帰ノ処ナリ是ノ故ニ頭面ニ礼ス

^◆それかの国くにに生うまるることあるは、 天眼てんげん耳に通つうを具ぐして、
十方じっぽうならびに無礙むげなり。 聖中しょうちゅうの尊そんを稽首けいしゅしたてまつる。

其レ有ルハ↠生ルルコト↢彼ノ国ニ↡具シテ↢天眼耳通ヲ↡
十方*並ニ無礙ナリ稽↢首シタテマツル聖中ノ尊ヲ↡

^◆その国くにのもろもろの衆しゅ生じょうは、 神変じんぺんおよび心しんの通つうあり。
また宿命しゅくみょう智ちを具ぐせり。 このゆゑに帰き命みょうし礼らいしたてまつる」 と。

其ノ国ノ諸ノ衆生ハ神変及ビ*身ノ通アリ
亦具セリ↢宿命智ヲ↡是ノ故ニ帰命シテ礼シタテマツルト」

二 Ⅱ ⅱ d 五妙境界楽

【25】^第だい四しに△*五ご妙みょう境きょう界がいの楽らくといふは、 四し十じゅう八はちの願がんをもつて浄じょう土どを荘しょう厳ごんしたまへば、 一切いっさいの万物まんもつ、 美みを窮きわめ極ごく妙みょうなり。 見みるところはことごとくこれ浄妙じょうみょうの色いろにして、 聞きくところは解げ脱だつの声こえにあらずといふことなし。 香こう・味み・触そくの境きょう、 またかくのごとし。

第四ニ五妙境界ノ楽トイフ者、八願荘厳ノ浄*土、一切ノ万物窮メ↠美ヲ極妙ナリ。所ハ↠見ル悉1051ク是浄妙ノ色ナリ。所ハ↠聞ク無シ↠不ズトイフコト↢解脱ノ声ニ↡。香・味・触ノ境、亦復如シ↠是クノ。

・地相

^いはく、 かの世せ界かいは琉璃るりをもつて地じとなして、 金こん縄じょうその道みちを0861界さかへり。 *坦然たんねん平正びょうしょうにして高こう下げあることなく、 *恢廓かいかく曠蕩こうとうにして辺際へんざいあることなし。 *晃耀こうよう微み妙みょうにして奇き麗らい清浄しょうじょうなり。 もろもろの妙みょう衣えをもつてあまねくその地じに布しき、 一切いっさいの天てん・人にん、 これを践ふみて行ゆく。 以い上じょう、 地じ相そう。

謂ク彼ノ世界ハ以テ↢*琉璃ヲ↡為シテ↠地ト、金縄界サカヘリ↢其ノ道ヲ↡。*坦然平正ニシテ無シ↠有ルコト↢高下↡。*恢廓曠蕩ニシテ無シ↠有ルコト↢辺際↡。晃耀微妙ニシテ奇麗清浄ナリ。以テ↢諸ノ妙衣ヲ↡遍ク布ケリ↢其ノ地ニ↡。一切ノ*天人践ミテ↠之ヲ而行ク。已上地相

・宮殿

^衆宝しゅぼうの国こく土どの一々いちいちの界さかいの上うえに、 五ご百ひゃく億おくの七宝しっぽう所しょ成じょうの宮く殿でん・*楼閣ろうかくあり。 高こう下げ、 心しんに随したがひ、 広こう狭きょう、 念おもいに応おうず。 もろもろの宝たからの床じょう座ざには妙みょう衣えをもつて上うえに敷しき、 七しち重じゅうの*欄らん楯じゅん、 百ひゃく億おくの*華け幢どうありて、 珠たまの瓔珞ようらくを垂たれ、 宝たからの*幡蓋ばんがいを懸かけたり。 殿でんのうち、 楼ろうの上うえには、 もろもろの天人てんにんありて、 つねに*伎ぎ楽がくをなして、 如来にょらいを歌か詠ようしたてまつる。 以い上じょう、 宮く殿でん。

衆宝ノ国土ノ一々ノ界サカヒノ上ニ、有リ↢五百億ノ七宝所成ノ宮殿楼閣↡。高下随ヒ↠心ニ、広狭応ズ↠念ニ。諸ノ宝ノ床座ニハ妙衣ヲモテ敷ケリ↠上ニ。七重ノ欄楯、百億ノ花幢アリテ。垂レ↢珠ノ瓔珞ヲ↡、懸ケタリ↢宝ノ幡蓋ヲ↡。殿ノ裏ウチ、楼ノ上ニハ、有リテ↢諸ノ天人↡常ニ作リテ↢*伎楽ヲ↡、歌↢*詠シタテマツル如来ヲ↡。已上宮殿

・水相

^講堂こうどう・精しょう舎じゃ・宮く殿でん・楼閣ろうかくの内ない外げ左右さうにもろもろの浴よく池ちあり。 黄金おうごんの池いけの底そこには白びゃく銀ごんの沙いさごあり。 白びゃく銀ごんの池いけの底そこには黄金おうごんの沙いさごあり。 水すい精しょうの池いけの底そこには瑠璃るりの沙いさごあり。 瑠璃るりの池いけの底そこには水すい精しょうの沙いさごあり。 珊さん瑚ご・*虎こ魄はく・*車しゃこ・*馬め瑙のう・白びゃく玉ごく・*紫し金こん、 またかくのごとし。 ↓八はっ功く徳どくの水みず、 そのなかに充じゅう満まんし、 宝沙ほうしゃ映徹ようてつして、 深ふかく照てらさずといふことなし。

講堂・精舎・宮殿・楼閣ノ内外左右ニ有リ↢諸ノ浴池↡。黄金ノ池ノ底ニハ白銀ノ沙アリ。白銀ノ池ノ底ニハ黄金ノ沙アリ。水精ノ池ノ底ニハ*瑠璃ノ沙アリ。*瑠璃ノ池ノ底ニハ水精ノ沙アリ。珊瑚・*虎魄・*車*・*馬瑙・白玉・紫金、亦復如シ↠是クノ。八功徳ノ水充↢満セリ其ノ中ニ↡。宝沙映徹シテ無シ↢深ク不トイフコト↟照サ。

^「↑八はっ功く徳どく」 とは、 ▲一いちには澄浄ちょうじょう、 二にには清冷しょうりょう、 三さんには甘かん美み、 四しには軽きょう軟なん、 五ごには潤沢にんたく、 六ろくには安あん和わ、 七しちには飲おん時じに飢き渇かつ等とう無む量りょうの過か患げんを除のぞき、 八はちには飲のみをはりて、 さだめてよく諸根しょこん・四し大だいを長ちょう養ようし、 種々しゅじゅの殊しゅ勝しょうの善根ぜんごんを増益ぞうやくするなり。 ¬*称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ に出いづ。

八功徳ト者、一ニハ澄*浄、二ニハ清冷、三ニハ甘美、四ニハ軽軟、五ニハ潤沢、六ニハ安和、七ニハ飲時ニ除ク↢飢渇等无量ノ過患ヲ↡、八ニハ飲ミ已リテ、定メテ能ク長↢養シ諸根・四大ヲ↡、増↢益スルナリ種々ノ殊勝ノ善根ヲ↡。*出ヅ↢¬称*讃浄土*経ニ¼

^四し辺へんの*階道かいどうは衆宝しゅぼうをもつて合ごう成じょうし、 種々しゅじゅの宝ほう華けは池いけのな0862かに弥覆みふせり。 青しょう蓮れんには青しょう光こうあり。 黄蓮おうれんには黄光おうこうあり。 赤しゃく蓮れん・白びゃく蓮れんもおのおのその光ひかりあり。 微み風ふう吹ふき来きたりて、 華はなの光ひかり乱転らんでんす。 一々いちいちの華はなのなかにおのおの菩ぼ薩さつあり。 一々いちいちの光ひかりのなかにもろもろの化け仏ぶつまします。 *微み瀾らん、 回流えるしてうたたあひ潅そそぎ注そそぐ。 *安あん詳じょうとしてやうやく逝ゆきて、 遅おそからず疾とからず。

四辺ノ階道ハ衆宝ヲモテ合成セリ。種々ノ宝花ハ弥↢覆セリ池ノ中ニ↡。青蓮ニハ有リ↢青キ光↡。黄蓮ニハ有リ↢黄光↡。赤蓮・白蓮モ各 ノ有リ↢其ノ光↡。微風吹キ来リテ、花ノ光乱転ス。一々ノ花ノ中ニ各 ノ有リ↢菩薩↡。一々ノ光ノ中ニ有ス↢諸ノ化仏↡。微瀾廻流シテ転タ相潅ギ注グ。安詳トシテ徐ク逝キテ、不↠遅カラ不↠疾カラ。

^その声こえ微み妙みょうにして仏法ぶっぽうにあらずといふことなし。 あるいは苦く・空くう・無我むが、 もろもろの波羅はら蜜みつを演説えんぜつし、 あるいは十じゅう力りき・無畏むい・*不共ふぐの法音ほうおんを流る出すいす。 あるいは大だい慈悲じひの声こえ、 あるいは無む生しょう忍にんの声こえあり。 その所聞しょもんに随したがひて歓かん喜ぎすること無む量りょうなり。 清浄しょうじょう・寂じゃく滅めつ・真実しんじつの義ぎに随ずい順じゅんし、 菩ぼ薩さつ・声しょう聞もん所行しょぎょうの道どうに随ずい順じゅんせり。

其ノ声微妙ニシテ無シ↠不ズトイフコト↢仏法ニ↡。或イハ演↢説ス苦・空・无我・諸ノ波羅蜜ヲ↡。或イハ流↢出ス十力・无畏・不共ノ法音ヲ↡。或イハ大*慈悲ノ声、或イハ无1052生忍ノ声アリ。随ヒテ↢其ノ所聞ニ↡歓喜スルコト无量ナリ。随↢順シ清浄・寂滅・真実之義ニ↡、随↢順セリ菩薩・声聞所行之道ニ↡。

^また、 鳧ふ・雁がん・鴛鴦えんおう・鶖しゅう・鷺ろ・鵝が・鶴かく・孔く雀じゃく・鸚おう鵡む・*伽か陵りょう頻びん迦が等とうの百ひゃっ宝ぽう色しきの鳥とり、 *昼ちゅう夜や六ろく時じに*和雅わげの音こえを出いだして、 念仏ねんぶつ・念法ねんぽう・念ねん比丘びく僧そうを讃嘆さんだんし、 *五ご根こん・五ご力りき・七しち菩ぼ提分だいぶんを*演えん暢ちょうす。 三さん塗ず苦く難なんの名なあることなくして、 ただ自じ然ねん快け楽らくの音こえのみあり。

又鳧・雁・鴛鴦・ 鶖カシドリ・ 鷺シラサギ・鵝・鶴ツル・孔雀・鸚鵡・伽陵頻迦等ノ百宝色ノ鳥、昼夜六時ニ出シテ↢和雅ノ音ヲ↡、讃↢嘆シ念仏・念法・念比丘僧ヲ↡、演↢暢ス五根・五力・七菩提分ヲ↡。無クシテ↠有ルコト↢三途苦難之名↡、但有リ↢自然快楽之音ノミ↡。

^かのもろもろの菩ぼ薩さつおよび声しょう聞もん衆しゅ、 宝ほう池ちに入いりて洗浴せんよくする時ときは、 浅深せんじん、 念おもいに随したがひ、 その心しんに違たがはず。 *心しん垢くを*蕩除とうじょして、 清明しょうみょう澄ちょう潔けつなり。

彼ノ諸ノ菩薩及ビ声聞衆、入リテ↢於宝池ニ↡洗浴スル之時ニ、浅深随ヒテ↠念ニ不↠違ハ↢其ノ心ニ↡。蕩↢除シテ心垢ヲ↡、清明澄潔ナリ。

^洗浴せんよくしをはれば、 おのおのみづから去さりて、 あるいは空くう中ちゅうにあり、 あるいは樹じゅ下げにありて、 経きょうを講こうじ経きょうを誦じゅするものあり、 経きょうを受うけ経きょうを聴きくものあり、 坐ざ禅ぜんするものあり、 *経行きょうぎょうするものあ0863り。

洗浴シ已訖 オハ レバ、各々自ラ去リテ、或イハ在リ↢空ノ中ニ↡、或イハ在リテ↢樹ノ下ニ↡有リ↢講ジ↠経ヲ誦スル↠経ヲ者↡。有リ↢受ケ↠経ヲ聴ク↠経ヲ者↡。有リ↢坐禅スル者↡。有リ↢経行スル者↡。

^そのなかに、 いまだ須しゅ陀だ洹おんを得えざるものはすなはち須しゅ陀だ洹おんを得う、 乃ない至し、 いまだ阿羅あら漢かんを得えざるものは阿羅あら漢かんを得う、 いまだ阿あ惟越ゆいおっ致ちを得えざるものはすなはち阿あ惟越ゆいおっ致ちを得う。 みなことごとく道どうを得えて歓かん喜ぎせずといふことなし。

其ノ中ニ*未ダル↠得↢須陀洹ヲ↡者ハ則チ得↢須陀洹ヲ↡。乃至未ダル↠得↢阿羅漢ヲ↡者ハ得↢阿羅漢ヲ↡。未ダル↠得↢阿惟越致ヲ↡者ハ*則チ得↢阿惟越致ヲ↡。皆悉ク得テ↠道ヲ莫シ↠不トイフコト↢歓喜セ↡。

^また清きよき河かわあり。 底そこに金沙こんしゃを布しき、 浅深せんじん寒温かんおん、 つぶさに人ひとの好このみに従かなへり。 衆人しゅにん、 遊ゆ覧らんして、 同おなじく河か浜ひんに萃あつまる。 以い上じょう、 水相すいそう。

復有リ↢清キ河↡。底ニ布ケリ↢金沙ヲ↡。浅深寒温、曲ツブサニ*直従カナヘリ↢人ノ好コノミニ↡。衆人遊覧シテ同ジク萃アツマル↢河浜ニ↡。已上水相

・樹相

^池いけの畔ほとり、 河かわの岸きしに、 *栴檀せんだんの樹きあり。 行々ごうごうあひ当あたり、 葉々ようようあひ次つげり。 紫し金こんの葉は、 白びゃく銀ごんの枝えだ、 珊さん瑚ごの華はな、 車しゃこの実みあり。 一宝いっぽう・七宝しっぽう、 あるいは純じゅん、 あるいは雑ぞうの、 枝し・葉よう・華け・菓か、 荘しょう厳ごんし*映飾ようじきせり。

池ノ畔河ノ岸ニ有リ↢*旃檀ノ樹↡。行々相当リ、葉々相次ゲリ。紫金之葉、白銀之枝、珊瑚之花、車*之実アリ。一宝・七宝、或イハ純或イハ雑ノ、枝葉花菓荘厳シ映飾セリ。

^和やわらかなる風かぜ、 時ときに来きたりてもろもろの宝樹ほうじゅを吹ふくに、 *羅ら網もう微すこし動どうじて妙みょう華けやうやく落おつ。 風かぜに随したがひて馥かを散さんじ、 水みずに雑まじはりて芬かおりを流ながす。 いはんや微み妙みょうの音おんを出いだして*宮商きゅうしょうあひ和わせること、 たとへば百ひゃく千せん種じゅの楽がくを同どう時じにともになすがごとし。 聞きくもの、 自じ然ねんに*仏法ぶっぽう僧そうを念ねんず。 かの第だい六天ろくてんの万種まんじゅの音楽おんがくも、 この樹きの一種いっしゅの音おん声じょうにはしかず。

和カナル風時ニ来リテ吹クニ↢諸ノ宝樹ヲ↡、羅網微シ*動ジテ妙花徐ヤウヤク落ツ。随ヒテ↠風ニ散ジ馥カウバシ。雑リテ↠水ニ流ス↠芬カヲリヲ。況ヤ出シテ↢微妙ノ音ヲ↡宮商相和セルコト、譬ヘバ如シ↢百千種ノ楽ヲ同時ニ倶ニ作セルガ↡。聞ク者自然ニ念ズ↢仏・法・僧ヲ↡。彼ノ第六天ノ万種ノ音楽モ、不↠如カ↢此ノ樹1053ノ一種ノ音声ニハ↡。

^葉はのあひだに華はなを生しょうじ、 華はなの上うえに菓このみあり。 みな光こう明みょうを放はなちて、 化けして*宝蓋ほうがいとなる。 一切いっさいの*仏ぶつ事じ、 蓋がいのなかに映現ようげんす。 乃ない至し、 十方じっぽうの厳ごん浄じょうの仏ぶつ土どを見みんと欲おもへば、 宝樹ほうじゅのあひだにおいて、 みなことごとく照しょう見けんす。 樹きの上うえに七しち重じゅうの*宝網ほうもうあり。 宝網ほうもうのあひだに五ご百ひゃく億おくの妙みょう華けの宮く殿でんあり。 宮く殿でんのなか0864に諸天しょてんの童どう子じあり。 瓔珞ようらく光耀こうようして自じ在ざいに遊ゆ楽らくす。

葉ノ間ニ生ゼリ↠花ヲ。花ノ上ニ有リ↠菓。皆放チテ↢光明ヲ↡化シテ為ル↢宝蓋ト↡。一切ノ仏事映↢現ス蓋ノ中ニ↡。乃至欲ヘバ↠見ムト↢十方ノ厳浄ノ仏土ヲ↡、於テ↢宝樹ノ間ニ↡皆悉ク照見ス。樹ノ上ニ有リ↢七重ノ宝網↡。宝網ノ間ニ有リ↢五百億ノ妙花ノ宮殿↡。宮殿ノ中ニ有リ↢諸天ノ童子↡。瓔珞光耀シテ自在ニ遊楽ス。

^かくのごとく七宝しっぽうのもろもろの樹き、 世せ界かいに周しゅう遍へんせり。 名みょう華け・軟草なんそうまた処ところに随したがひてあり、 柔にゅう軟なん・香潔こうけつにして、 触ふるるもの楽らくをなす。 以い上じょう、 樹相じゅそう。

如ク↠是クノ七宝ノ諸ノ樹周↢遍セリ世界ニ↡。名花軟草亦随ヒテ↠処ニ有リ。柔軟・香潔ニシテ触ルル者生ナス↠楽ヲ。已上樹*相

・虚空

^衆宝しゅぼうの羅ら網もう、 虚こ空くうに弥み満まんして、 もろもろの宝ほう鈴りょうを懸かけて、 妙みょう法ほうの音おんを宣のぶ。 天てん華げ妙みょう色しきは繽粉ひんぷんとして乱みだれ墜おち、 宝ほう衣え・*厳ごん具ぐは旋転せんでんして来らい下げす。 鳥とりの、 空そらを飛とびて下くだるがごとくして、 諸仏しょぶつに供く散さんしたてまつる。 また無む量りょうの楽がっ器きありて虚こ空くうに懸処げんしょせり。 鼓うたざるにおのづから鳴なりて、 みな妙みょう法ほうを説とく。 以い上じょう、 虚こ空くう。

衆宝ノ羅網弥↢満セリ虚空ニ↡。懸ケテ↢諸ノ宝鈴ヲ↡宣ブ↢妙法ノ音ヲ↡。天花妙色ハ繽紛トシテ乱レ墜ツ。宝衣・厳具ハ旋転シテ来下ス。如クシテ↢鳥ノ飛ビテ↠空ヲ下ルガ↡供↢散シタテマツル於諸仏ニ↡。又有リテ↢無量ノ楽器↡懸↢処セリ虚空ニ↡。不ルニ↠鼓タ自ラ鳴リテ、皆説ク↢妙法ヲ↡。已上虚空

^また如にょ意いの妙みょう香こう・*塗ず香こう・*末香まっこう、 無む量りょうの香こう、 *芬馥ふんぷくとして、 世せ界かいに遍満へんまんせり。 もし聞かぐことあるものは、 塵労じんろう垢く習じゅう、 自じ然ねんに起おこらず。 おほよそ地じより空くうに至いたるまで、 宮く殿でん・華け樹じゅ、 一切いっさいの万物まんもつは、 みな無む量りょうの雑宝ざっぽう、 百ひゃく千せん種じゅの香こうをもつて、 ともに合ごう成じょうせり。 その香かおり、 あまねく十方じっぽう世せ界かいに薫くんず。 菩ぼ薩さつ、 聞かぐものみな仏ぶつの行ぎょうを修しゅす。

復如意ノ妙香・塗香・*末香、無量ノ香芬馥トシテ、遍↢満セリ於世界ニ↡。若シ有ル↠聞カグコト者ハ、塵労垢習、自然ニ不↠起ラ。凡ソ自リ↠地至ルマデニ↠空ニ、宮殿・花樹、一切ノ万物ハ、皆以テ↢無量ノ雑宝、百千種ノ香ヲ↡而共ニ合成セリ。其ノ香普ク薫ズ↢十方世界ニ↡。菩薩ノ聞グ者皆修ス↢仏ノ行ヲ↡。

^またかの国くにの菩ぼ薩さつ・羅ら漢かん、 もろもろの衆しゅ生じょう等とう、 もし食じきせんと欲ほっする時ときには、 七宝しっぽうの机つくえ、 自じ然ねんに現前げんぜんし、 七宝しっぽうの鉢はちには妙たえなる味あじはひ、 なかに満みてり。 世せ間けんの味あじはひに類るいせず、 また天てん上じょうの味あじはひにあらず。 香こう味みなること比たぐいなくして、 *甜てん酢そ、 意こころに随したがふ。 色いろを見み、 香かおりを聞かぐに、 身心しんしん清しょう潔けつなり。 すなはち食じきしをはるに同おなじくして、 *色力しきりき増ぞう長じょうす。 事じ已おわれば化けし去さり、 時とき至いた0865ればまた現げんず。

復彼ノ国ノ菩薩・羅漢・諸ノ衆生等、若シ欲スル↠食セムト時ニハ、七宝之机自然ニ現前シテ、七宝之鉢ニハ妙ナル味満テリ↠中ニ。不↠類セ↢世間之味ニ↡、亦非ズ↢天上之味ニ↡。香*味ナルコト無クシテ↠比、甜アマサ酢スサ随フ↠意ニ。見↠色ヲ聞グニ↠香ヲ、身心清潔ナリ。即チ同ジクシテ↢食シ已ルニ↡、色力増長ス。事已レバ化シテ去リヌ。時至レバ復現ズ。

^またかの土どの衆しゅ生じょうは、 衣え服ぶくを得えんと欲おもへば、 念おもいに随したがひてすなはち至いたる。 仏ぶつの所讃しょさんのごとき*法ほうに応おうぜる妙みょう服ぶく、 自じ然ねんに身みにあり。 裁縫さいほう・染ぜん治じ・浣かん濯じょくを求もとめず。

*復彼ノ土ノ衆生ハ、欲ヘバ↠得ムト↢衣服ヲ↡随ヒテ↠念ニ即チ至ル。如キ↢仏ノ所讃ノ↡応ゼル↠法ニ妙服、自然ニ在リ↠身ニ。不↠求メ↢裁タチ縫ヌヒ・染ソメ 治ツクロヒ・浣1054スヽギ 濯ヲ↡アラフコト。

^また光こう明みょう周しゅう遍へんして日にち・月がつ・灯燭とうそくを用もちゐず。 冷りょう暖なん調じょう和わして、 春秋しゅんじゅう冬とう夏げあることなし。 自じ然ねんの徳風とくふうは温おん冷りょう調適じょうちゃくし、 衆しゅ生じょうの身みに触ふるるに、 みな快け楽らくを得うること、 たとへば比丘びくの、 *滅尽めつじん三昧ざんまいを得えたるがごとし。

又光明周遍シテ不↠用ヰ↢日月・灯燭ヲ↡。冷暖調和ニシテ、无シ↠有ルコト↢春秋冬夏↡。自然ノ徳風ハ、温冷調適セリ。触ルルニ↢衆生ノ身ニ↡皆得ルコト↢快楽ヲ↡。譬ヘバ如シ↣比丘ノ得タルガ↢滅尽三昧ヲ↡。

^毎日まいにちの*晨じん朝じょうに、 妙みょう華けを吹散すいさんして、 仏ぶつ土どに遍満へんまんし、 *馨きょう香こう芬烈ふんれつして、 微み妙みょう柔にゅう軟なんなること*兜羅とら綿めんのごとし。 足あしをもつてその上うえを履ふむに、 蹈ふみ下くだること四し寸すん、 随したがひて足あしを挙あげをはりぬれば、 また復ぶくすること故もとのごとし。 晨じん朝じょうを過すぎをはれば、 その華はな地じに没もっす。 旧ふるき華はなすでに没もっしぬれば、 さらに新あたらしき華はなを雨あめふらす。 *中ちゅう時じ・晡時ふじ、 初しょ・中ちゅう・後夜ごや、 またかくのごとし。

毎日ノ晨朝ニ吹↢散シテ妙花ヲ↡、遍↢満ス仏土ニ↡。馨香芬烈シテ微妙柔軟ナルコト如シ↢兜羅綿ノ↡。足ヲモテ履ムニ↢其ノ上ヲ↡、蹈ミ下スコト四寸、随ヒテ挙ゲ↠足ヲ已リヌレバ、還復スルコト如シ↠故モトノ。過ギ↢晨朝ヲ↡已レバ、其ノ花没ス↠地ニ。旧キ花既ニ没シヌレバ、更ニ雨ル↢新シキ花ヲ↡。中時・晡時、初・中・後夜、亦復如シ↠是クノ。

^これらのあらゆる微み妙みょうの五ご境きょう、 見聞けんもん覚者かくしゃをして身心しんしん適ちゃく悦えつせしむといへども、 しかも有う情じょうの貪とん着じゃくを増ぞう長じょうせず、 さらに無む量りょうの殊しゅ勝しょうの功く徳どくを増ます。 おほよそ八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの国くにのなかに、 極楽ごくらく世せ界かいの所しょ有うの功く徳どくもつとも第一だいいちたり。 二に百ひゃく一いち十じゅう億おくの諸仏しょぶつの浄じょう土どの厳ごん浄じょうなる妙みょう事じをもつて、 みなこのなかに摂しょう在ざいせり。

此等ノ所有ノ微妙ノ五境、雖モ↠令ムト↢見聞覚者ヲシテ身心適悦セ↡、而モ不↣増↢長セ有情ノ貪著ヲ↡。更ニ増ス↢无量ノ殊勝ノ功徳ヲ↡。凡ソ八方上下ノ无央数ノ諸仏ノ国ノ中ニ、極楽世界ノ所有ノ功徳最モ為リ↢第一↡。以テ↢二百一十億ノ諸仏ノ浄土ノ厳浄ナル妙事ヲ↡、皆摂↢在セリ此ノ中ニ↡。

^もしかくのごとき国こく土どの相そうを観かんずるものは、 無む量りょう億劫おくこうの極ごく重じゅうの悪業あくごうを除のぞきて、 命終みょうじゅうの後のちにかならずかの国くにに生うまる。

*若シ観ズル↢如キ↠是クノ国土ノ相ヲ↡者ハ、除キテ↢无量億劫ノ極重ノ悪業ヲ↡、命終之後ニ必ズ生ル↢彼ノ国ニ↡。

^*二に種しゅの ¬観かん0866経ぎょう¼・¬*阿あ弥陀みだ経きょう¼・¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼・¬宝ほう積しゃく経きょう¼・¬平びょう等覚どうがく経きょう¼・¬*思し惟ゆい経きょう¼ 等とうの意こころによりて、 これを記しるす。

依リテ↢二種ノ¬観経¼・¬阿弥陀経¼・¬称讃浄土経¼・¬宝積経¼・¬平等覚経¼・¬思惟経¼等ノ意ニ↡記ス↠之ヲ

^世せ親しんの偈げ (*浄土論) にいはく、

世親ノ偈ニ云ク、

^「▲かの世せ界かいの相そうを観かんずるに、 三界さんがいの道どうに勝しょう過がせり。
◆究く竟きょうして虚こ空くうのごとし。 広大こうだいにして辺際へんざいなし。

「観ズルニ↢彼ノ世界ノ相ヲ↡勝↢過セリ三界ノ道ニ↡
究竟シテ如シ↢虚空ノ↡広大ニシテ无シ↢辺際↡

^▲宝ほう華け千万せんまん種じゅにして、 池ち・流る・泉せんに弥覆みふせり。
微み風ふう華け葉ようを動うごかすに、 交きょう錯さくして光ひかり乱転らんでんす。

宝花千万種ニシテ弥↢覆セリ池流泉ニ↡
微風動スニ↢花葉ヲ↡交錯シテ光乱転ス

^◆宮く殿でん・もろもろの楼閣ろうかくにして、 十方じっぽうを観みること無礙むげなり。
雑樹ぞうじゅに異いの光色こうしきあり。 宝欄ほうらんあまねく囲い繞にょうせり。

宮殿ノ諸ノ楼閣ハ観ルニ↢十方ヲ↡无礙ナリ
雑樹ハ異ノ光色アリ宝欄遍ク囲繞セリ

^◆無む量りょうの宝たから交きょう絡らくして、 羅ら網もう虚こ空くうにあまねし。
種々しゅじゅの鈴すず響ひびききを発おこして、 妙みょう法ほうの音おんを宣のべ吐はく。

无量ノ宝ノ絞絡セル羅網遍セリ↢虚空ニ↡
種々ノ鈴発シテ↠響ヲ宣ベ↢吐ク妙法ノ音ヲ↡

^▲衆しゅ生じょうの願がん楽ぎょうするところ、 一切いっさいみな満足まんぞくす。
◆ゆゑにわれかの阿あ弥陀みだ仏ぶつの国くにに生うまれんと願がんず」 と。

衆生ノ所↢願楽スル↡一切皆満足ス
故ニ我願ズト↠生レムト↢彼ノ阿弥陀仏ノ国ニ↡」

二 Ⅱ ⅱ e 快楽無退楽

【26】^第だい五ごに△*快け楽らく無む退たいの楽らくといふは、 いまこの娑しゃ婆ば世せ界かいは耽玩たんがんすべきことなし。 輪王りんのう (転輪聖王) の位くらいも*七宝しっぽう久ひさしからず。 天てん上じょうの楽らくも五ご衰すい早はやく来きたる。 乃ない至し、 有う頂ちょうも輪りん廻ね、 期ごなし。 いはんや余よの世せ人にんをや。 事じと願がんと違たがひ、 楽らくと苦くとともなり。 富とめ0867るものは、 いまだかならずしも寿じゅあらず。 寿じゅあるものは、 いまだかならずしも富とまず。 あるいは昨きのうは富とみて、 今きょうは貧まずし。 あるいは朝あしたには生うまれて、 暮ゆうべには死しぬ。

第1055五ニ快楽無退ノ楽トイフ者、今此ノ娑婆世界ハ无シ↠可キコト↢耽玩ス↡。輪王之位モ七宝不↠久シカラ。天上之楽モ五衰早ク来ル。乃至有*頂モ輪廻無シ↠期。況ヤ余ノ世人ヲ乎。事ト与↠願違ヒ、楽ト与↠苦倶ナリ。富メル者ハ未ダ↢必ズシモ寿アラ↡。寿アル者ハ未ダ↢必ズシモ富マ↡。或イハ昨キノフハ富ミテ今ケフハ貧シ。或イハ朝ニハ生レテ暮ユフベニハ死ヌ。

^ゆゑに*経きょうにのたまはく、 「出しゅっ息そくは入にゅう息そくを待またず、 入にゅう息そくは出しゅっ息そくを待またず。 ただ眼めの前まえに楽たのしみ去さりて哀かなしみ来きたるのみにあらず。 また命終みょうじゅうに臨のぞみて、 罪つみに随したがひて苦くに堕おつ」 と。

故ニ¬経ニ¼言ク、「出息ハ不↠待タ↢入息ヲ↡、入息ハ不レト↠待タ↢出息ヲ↡。非ズ↢唯眼ノ前ニ楽シビ去リテ哀シビ来ルノミニ↡。亦臨ミテ↢命終ニ↡随ヒテ↠罪ニ堕ツト↠苦ニ。」

^▼かの西方さいほう世せ界かいは、 楽らくを受うくること無む窮ぐうなり。

彼ノ西方世界ハ受クルコト↠楽ヲ无窮ナリ。

^◆人天にんでん交接きょうしょうして、 両ふたつながらあひ見みることを得う。 慈悲じひ、 心しんに薫くんじて、 たがひに一いっ子しのごとし。 ともに琉璃るりの地じの上うえに経行きょうぎょうし、 同おなじく栴檀せんだんの林はやしのあひだに遊戯ゆげす。 宮く殿でんより宮く殿でんに至いたり、 林りん池ちより林りん池ちに至いたる。

人天交接シテ両フタツナガラ得↢相見ルコトヲ↡。慈悲薫ジテ↠心ニ、互ニ如シ↢一子ノ↡。共ニ経↢行シ於*琉璃ノ地ノ上ニ↡、同ジク遊↢戯ス於*栴檀ノ林ノ間ニ↡。従リ↢宮殿↡至リ↢宮殿ニ↡、従リ↢林池↡至ル↢林池ニ↡。

^◆もし寂じゃくならんと欲ほっする時ときには、 風浪ふうろう、 絃管げんかん、 おのづから耳みみの下もとを隔へだつ。 もし見みんと欲ほっする時ときには、 山せん・川せん・渓けい・谷こく、 なほ眼めの前まえに現げんず。 香こう・味み・触そく・法ほう、 念ねんに随したがひてまたしかなり。

若シ欲スル↠寂ナラムト時ニハ、風・浪・絃コト・*管フエ、自ラ隔ツ↢耳ノ下ニ↡。若シ欲スル↠見ムト時ニハ、山・川・渓・谷尚現ズ↢眼ノ前ニ↡。香・味・触・法、随ヒテ↠念ニ亦然ナリ。

^◆あるいは*飛ひ梯ていを渡わたりて伎ぎ楽がくをなし、 あるいは虚こ空くうに騰のぼりて神通じんずうを現げんず。 あるいは*他た方ほうの大だい士じに従したがひて迎送こうそうし、 あるいは天てん・人にん聖しょう衆じゅに伴ともなひてもつて遊ゆ覧らんす。

或イハ渡リテ↢飛梯ヲ↡作リ↢伎楽ヲ↡、或イハ騰ノボリテ↢虚空ニ↡現ズ↢神通ヲ↡。或イハ従ヒテ↢他方ノ大士ニ↡而迎送シ、或イハ伴ヒテ↢天人聖衆ニ↡以テ遊覧ス。

^◆あるいは宝ほう池ちの辺ほとりに至いたりて、 *新しん生しょうの人ひとを慰い問もんす。 「なんぢ知しるやいなや。 この処ところを極楽ごくらく世せ界かいと名なづけ、 この界さかいの主しゅを弥陀みだ仏ぶつと号ごうしたてまつる。 いままさに帰依きえすべし」 と。

或イハ至リテ↢宝池ノ辺ニ↡、慰↢問ス新生ノ人ヲ↡。汝知ルヤ不ヤ。是ノ処ヲバ名ク↢極楽世界ト↡。是ノ界ノ主ヲバ号シタテマツル↢弥陀仏ト↡。今当ニシト↢帰依ス↡。

^◆あるいは同おなじく宝ほう池ちのなかにありて、 おのおの蓮台れんだいの上うえに坐ざして、 たがひに宿命しゅくみょうの事じを0868説とく。 「われ本もと、 その国くににありて、 *心しんを発おこし*道どうを求もとめし時とき、 その経きょう典てんを持たもち、 その戒かい行ぎょうを護まもり、 その善法ぜんぽうをなし、 その布施ふせを修しゅしき」 と。 おのおの好こう喜きせしところの功く徳どくを語かたらひ、 つぶさに来らい生しょうせるところの本末ほんまつを陳のぶ。

或イハ同ジク在リテ↢宝池ノ中ニ↡、各 ノ坐シテ↢蓮台ノ上ニ↡、互ニ説ク↢宿命ノ事ヲ↡。我本在リテ↢其ノ国ニ↡発シ↠心ヲ求メシ↠道ヲ之時、持チテ↢其ノ経典ヲ↡、護リ↢其ノ戒行ヲ↡、作シ↢其ノ善法ヲ↡、修シキト↢其ノ布施ヲ↡。各 ノ語ラヒ↧所↢好憙セシ↡之功徳ヲ↥、具ニ陳ズ↧所↢来生セル↡之本末ヲ↥。

^◆あるいはともに十方じっぽうの諸仏しょぶつの*利り生しょうの方便ほうべんを語かたらひ、 あるいはともに三さん有ぬの衆しゅ生じょうの抜ばっ苦くの因縁いんねんを議ぎす。 議ぎしをはれば縁えんを追おひてあひ去さり、 語かたらひをはれば楽ねがいに随したがひてともに往ゆく。

或イハ共ニ*語ラヒ↢十方ノ諸仏ノ利生之方便ヲ↡、或イハ共ニ議ス↢三有ノ衆生ノ抜苦之因縁ヲ↡。議シ已リテ追ヒテ↠縁ヲ而相去リ、*語ラヒ已リテ随ヒテ↠楽ニ而共1056ニ往ク。

^◆あるいはまた、 七宝しっぽうの山やま 七宝しっぽうの山やま、 七宝しっぽうの塔とう、 七宝しっぽうの坊ぼう、 ¬*十じゅう往おう生じょう経きょう¼ に出いでたり。 に登のぼり、 *八はっ功くの池いけに浴あみ、 寂じゃく然ねんとして宴黙えんもくし、 読誦どくじゅ・解げ説せつす。

或イハ復登リ↢七宝ノ山ニ↡、七宝ノ山、七宝ノ塔、七宝ノ坊、出タリ↢¬十往生経ニ¼↡ 浴アミ↢八*功ノ池ニ↡、寂然トシテ宴黙シ、読誦・解説ス。

^◆かくのごとく遊ゆ楽らくすること、 相続そうぞくして間ひまなし。 処しょはこれ不ふ退たいなれば、 永ながく三さん途ず・八難はちなんの畏おそれを免まぬかれ、 寿じゅもまた無む量りょうなれば、 つひに生しょう老ろう病びょう死しの苦くなし。 *心しん・事じ相応そうおうすれば愛別あいべつ離苦りくなく、 慈じ眼げんをもつて等ひとしく視みれば怨憎おんぞう会苦えくもなし。 *白びゃく業ごうの報ほうなれば求不ぐふ得とく苦くなく、 金剛こんごうの身みなれば五ご盛じょう陰おん苦くもなし。

如ク↠是クノ遊楽スルコト相続シテ無シ↠間ヒマ。処ハ是不退ナリ。永ク免レタリ↢三途・八難之畏ヲ↡。寿ハ亦无量ナリ。終ニ无シ↢生・老・病・死之苦↡。心事相応シテ无シ↢愛別離ノ苦↡。慈眼ヲモテ等シク視テ無シ↢怨憎会ノ苦モ↡。白業之報ナレバ無シ↢求不得ノ苦↡。金剛之身ナレバ無シ↢五盛陰ノ苦モ↡。

^◆一ひとたび七宝しっぽう荘しょう厳ごんの台うてなに託たくしぬれば、 長ながく三界さんがい苦く輪りんの海うみと別わかれぬ。 もし*別願べつがんあれば、 他た方ほうに生しょうずといへども、 これ自じ在ざいの生しょう滅めつにして、 業報ごうほうの生しょう滅めつにはあらず。 なほ不ふ苦く・不ふ楽らくの名なすらなし。 いかにいはんやもろもろの苦くをや。

一タビ託シヌレバ↢七宝荘厳之台ニ↡、長ク別レヌ↢三界苦輪之海ヲ↡。若シ有レバ↢別願↡、雖モ↠生ズト↢他方ニ↡、是自在ノ生滅ナリ。非ズ↢業報ノ生滅ニハ↡。尚无シ↢不苦・不楽之名スラ↡。何ニ況ヤ諸ノ苦ヲ耶。

^龍りゅう樹じゅの偈げ (易行品) にいはく、

龍樹ノ偈ニ云ク、

^「▲もし人ひと、 かの国くにに生うまれぬれば、 つひに悪趣あくしゅおよび、
0869阿あ修しゅ羅らとに堕おちず。 われいま帰き命みょうして礼らいす」 と。

「若シ人生レヌレバ↢彼ノ国ニ↡終ニ不↠堕チ↢悪趣
及与 オヨビ 阿修羅トニ↡我今帰命シテ礼スト」

二 Ⅱ ⅱ f 引接結縁楽

【27】^第だい六ろくに△*引いん接じょう結縁けちえんの楽らくといふは、 人ひとの世よにあるに、 求もとむるところ、 意こころのごとくならず。 樹き、 静しずかならんと欲おもへども、 風かぜ停やまず。 子こ、 養ようせんと欲おもへども、 親おや待またず。 *志こころざし、 肝胆かんたんを舂つくといへども、 力ちから水すい菽しゅくに堪たへず。 君臣くんしん・師し弟てい・妻さい子し・朋ぼう友う、 一切いっさいの*恩所おんじょ、 一切いっさいの*知ち識しき、 みなまたかくのごとし。

第六ニ引接結縁ノ楽トイフ者、人之在ルニ↠世ニ所↠求ムル不↠如クナラ↠意ノ。樹欲ヘドモ↠静ナラムト而風不↠停マ。子欲ヘドモ↠養セムト而親不↠待タ。志雖モ↠舂ツクト↢肝胆ヲ↡力不↠堪ヘ↢水菽ニ↡。君臣・師弟・妻子・朋友、一切ノ恩所、一切ノ知識、皆亦如シ↠是クノ。

^空むなしく*痴ち愛あいの心しんを労つからかして、 いよいよ輪りん廻ねの業ごうを増ます。 いはんやまた業ごう果か推おし遷うつりて、 生しょう処じょあひ隔へだてぬれば、 六趣ろくしゅ・四し生しょういづれの処ところといふことを知しらず。 野のの獣けだもの、 山やまの禽とり、 たれか旧きゅう親しんを弁わきまへん。

空シク労ツカラカシテ↢痴愛之心ヲ↡、弥ヨ増ス↢輪廻之業ヲ↡。況ヤ復業果推シ遷リテ、生処相隔テヌレバ、六趣・四生不↠知ラ↢何レノ処トイフコトヲ↡。野ノ獣・山ノ禽、誰カ*辨ヘム↢旧親ヲ↡。

^¬*心しん地じ観かん経ぎょう¼ の偈げにのたまふがごとし。

如シ↢¬心地観経ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「世せ人にん、 子このためにもろもろの罪つみを造つくりて、 三さん途ずに堕だ在ざいして長ながく苦くを受うくれども、
男女なんにょ聖しょうにあらずして神通じんずうなければ、 輪りん廻ねを見みずして報ほうずべきこと難かたし。

「世人為ニ↠子ノ造リテ↢諸ノ罪ヲ↡堕↢在シテ三途ニ↡長ク受クレドモ↠苦ヲ
男女非ズシテ↠聖ニ无ケレバ↢神通↡不シテ↠見↢輪廻ヲ↡難シ↠可キコト↠報ズ

^有う情じょう、 輪りん廻ねして六道ろくどうに生しょうずること、 なほ車輪しゃりんのごとくして始し終じゅうなし。
あるいは父母ぶもとなり男女なんにょとなり、 世々せせ生々しょうじょうにたがひに恩おんあり」 と。

有情輪廻シテ生ズルコト↢六道ニ↡猶如クシテ↢車輪ノ↡无シ↢始終↡
或イハ為リ↢父母ト↡為リ↢男女ト↡世々生々ニ互ニ有リト↠恩。」

^もし人ひと、 極楽ごくらくに生しょうじぬれば、 智慧ちえ*高こう明みょうにして神通じんずう*洞達どうだつし、 世々せせ生々しょうじょうの恩所おんじょ・知ち識しきをば心しんに随したがひて引いん接じょうす。 天眼てんげんをもつて生しょう処じょを見み、 天てん耳にをもつて言音ごんおんを聞きく。 宿しゅく0870命みょう智ちをもつてその恩おんを憶おくし、 他た心しん智ちをもつてその心しんを了さとる。 *神じん境きょう通つうをもつて*随逐ずいちくし変現へんげんし、 方便ほうべん力りきをもつて教きょう誡かい示じ道どうす。

若シ*人生ジヌレバ↢極楽ニ↡、智*恵高明ニシテ神1057通洞達シテ、世々生々ノ恩所・知識ヲバ随ヒテ↠心ニ引接ス。以テ↢天眼ヲ↡見↢生処ヲ↡、以↢テ天耳ヲ↡聞ク↢言音ヲ↡。以テ↢宿命智ヲ↡憶シ↢其ノ恩ヲ↡、以テ↢他心智ヲ↡了ル↢其ノ心ヲ↡。以テ↢神境通ヲ↡随逐シテ変現シ、以テ↢方便力ヲ↡教誡示*道ス。

^¬*平びょう等どう経きょう¼ (一・三意) にのたまふがごとし。 「かの土どの衆しゅ生じょうは、 ▲みなみづからその前ぜん世せに従じゅう来らいせしところの生しょうを知しり、 および八方はっぽう上じょう下げ、 去こ・来らい・現在げんざいの事じを知しれり。 ▲かの諸天しょてん・人民にんみん、 蠉けん飛ぴ・蠕動ねんどうの類たぐいの、 心しん意いに念ねんずるところ、 口くにいはんと欲おもふところを知しる。 いづれの歳としいづれの劫こうに、 まさにこの国くにに生うまれて菩ぼ薩さつの道どうをなし、 阿羅あら漢かんを得うべしといふことを、 みなあらかじめこれを知しる」 と。

如シ↢¬平等経ニ¼云フガ↡。「彼ノ土ノ衆生ハ、皆自ラ知リ↣其ノ前世ノ所ヲ従ヒテ↢来生セルニ↡、及ビ知レリ↢八方上下、去・来・現在之事ヲ↡。知リ↢彼ノ諸天・人民、蠉飛・蠕動之類ノ心意ニ所↠念ズル、口ニ所ヲ↟欲フ↠言ハムト、何レノ歳何レノ劫ニ、当ニシトイフコトヲ↧生レテ↢此ノ国ニ↡*作シ↢菩薩ノ道ヲ↡、得↦阿羅漢ヲ↥皆*預アラカジメ知ルト↠之ヲ。」

^また ¬*華け厳ごん経ぎょう¼ の*普ふ賢げんの願がんにのたまはく、

又¬花厳経ノ¼普賢ノ願ニ云ク、

^「願ねがはくは、 われ、 命終みょうじゅうせんと欲ほっする時ときに臨のぞみて、 ことごとく一切いっさいのもろもろの*障しょう礙げを除のぞきて、
まのあたり、 かの仏ぶつ、 阿あ弥陀みだを見みたてまつりて、 すなはち*安楽あんらく刹せつに往おう生じょうすることを得えん。

「願クハ我臨ミテ↧欲セム↢命終セムト↡時ニ↥尽ク除キテ↢一切ノ諸ノ障礙ヲ↡
面マノアタリ見タテマツリテ↢彼ノ仏阿弥陀ヲ↡即チ得ム↣往↢生スルコトヲ安楽刹ニ↡

^われすでにかの国くにに往おう生じょうしをはれば、 現前げんぜんにこの大願だいがんを成じょう就じゅし、
一切いっさい円満えんまんしてことごとく余あますことなく、 一切いっさい衆しゅ生じょう界かいを*利り楽らくせん」 と。

我既ニ往↢生シ彼ノ国ニ↡已リテ現前ニ成↢就セム此ノ大願ヲ↡
一切円満シテ尽シテ无クシテ↠余スコト利↢楽セムト一切衆生界ヲ↡」

^無む縁えんすらなほしかり。 いはんや*結縁けちえんをや。 *龍りゅう樹じゅの偈げにいはく、

无縁スラ尚爾リ。況ヤ結縁ヲ乎。龍樹ノ偈ニ云ク、

^0871「▲無垢むく荘しょう厳ごんの光ひかり、 一念いちねんおよび一いち時じに、
あまねく諸仏しょぶつの会えを照てらして、 もろもろの群ぐん生じょうを利り益やくす」 と。

「無垢荘厳ノ光一念及ビ一時ニ
普ク照シテ↢諸仏ノ会ヲ↡利↢*益スト諸ノ群生ヲ↡」

二 Ⅱ ⅱ g 聖衆倶会楽

【28】^第だい七しちに△*聖しょう衆じゅ倶会くえの楽らくといふは、 ¬経きょう¼ (小経) にのたまふがごとし。 「▲衆しゅ生じょう聞きくものは、 まさに願がんを発おこして、 かの国くにに生うまれんと願がんずべし。 ◆所以ゆえんはいかん。 かくのごときもろもろの上じょう善ぜんの人にんと、 倶ともに一処いっしょに会えすることを得うればなり」 と。 以上

第七ニ聖衆倶会ノ楽トイフ者、如シ↢¬経ニ¼云フガ↡。「衆生ノ聞カム者ハ、応ニ当シ↢発シテ↠願ヲ願ズ↟生レムト↢彼ノ国ニ↡。所以者何ン。得レバナリト↧与↢如キ↠是クノ諸ノ上善ノ人↡倶ニ会スルコトヲ↦一処ニ↥。」 已上

・普賢菩薩

^かのもろもろの菩ぼ薩さつ聖しょう衆じゅの徳とく行ぎょうは、 不可ふか思議しぎなり。 *普ふ賢げん菩ぼ薩さつのいはく、 「もし衆しゅ生じょうありて、 いまだ善根ぜんごんを種うゑざるもの、 および少しょう善ぜんを種うゑたる声しょう聞もん・菩ぼ薩さつは、 なほわが名みょう字じを聞きくことを得えじ。 いはんやわが身みを見みんや。 もし衆しゅ生じょうありてわが名なを聞きくことを得えては、 *阿あ耨のく菩ぼ提だいにおいてまた退転たいてんせじ。 乃ない至し、 夢ゆめのうちに、 われを見み、 聞きくものも、 またかくのごとし」 と。 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の意こころ。

彼ノ諸ノ菩薩聖衆ノ、徳行ハ不可思議ナリ。普賢菩薩ノ言ク、「若シ有リテ↢衆生↡未ダルモノ↠種エ↢善根ヲ↡、及ビ種エタル↢少善ヲ↡声聞・菩薩ハ、猶尚 ナホ 不↠得↠聞クコトヲ↢我ガ名字ヲ↡。況ヤ見ムヤ↢我ガ身ヲ↡。若シ有リテ↢衆生↡得テハ↠聞クコトヲ↢我ガ名ヲ↡、於テ↢阿耨菩提1058ニ↡不↢復退転セ↡。乃至夢ノ中ニシテモ、見↢聞カム*我ヲ↡者ハ亦復如シト↠是クノ。」¬花厳経ノ¼意

^またのたまはく、

又云ク、

^「われつねにもろもろの衆しゅ生じょうに随ずい順じゅんして、 未み来らいの一切いっさいの劫こうを尽つくすまで、
つねに普ふ賢げんの広大こうだいの行ぎょうを修しゅし、 *無む上じょう大だい菩ぼ提だいを円満えんまんせんと。

「我常ニ随↢順シテ諸ノ衆生ニ↡尽ク於未来ノ一切ノ劫ニ
恒ニ修シ↢普賢ノ広大ノ行ヲ↡円↢満セムト無上大菩提ヲ↡

^普ふ賢げんの身相しんそうは虚こ空くうのごとし。 *真しんによりて住じゅうして、 国こく土どにはあらず。
もろもろの衆しゅ生じょうの心しんの欲ほっするところに随したがひて、 普ふ身しんを示じ現げんして一切いっさいに等ひとしく0872す。

普賢ノ身相ハ如シ↢虚空ノ↡依リテ↠真ニ而住シテ非ズ↢国土ニハ↡
随ヒテ↢諸ノ衆生ノ心ノ所欲ニ↡示↢現シテ普身ヲ↡等シクス↢一切ニ↡

^一切いっさいの刹せつのなかの諸仏しょぶつの所みもとに、 種々しゅじゅの三昧さんまいをもつて神通じんずうを現げんず。
一々いちいちの神通じんずうはことごとく十方じっぽうの国こく土どに周しゅう遍へんして、 遺のこすものなし。

一切ノ刹ノ中ノ諸仏ノ所ニ種々ノ三昧ヲモテ現ズ↢神通ヲ↡
一々ノ神通ハ悉ク周↢遍シテ十方ノ国土ニ↡無シ↢遺ス者↡

^一切いっさいの刹せつの如来にょらいの所みもとのごとく、 かの刹せつの塵じんのなかにもことごとくまたしかなり」 と。 同どう経きょうの偈げ。

如ク↢一切ノ刹ノ如来ノ所ノ↡彼ノ刹ノ塵ノ中ニモ悉ク亦然ナリト」 同キ¬経ノ¼偈

・文殊菩薩

^「*文殊もんじゅ師利しり大だい聖しょう尊そんをば、 三さん世ぜの諸仏しょぶつもつて母ははとなしたまふ。
十方じっぽうの如来にょらいの、 はじめて心しんを発おこすことは、 みなこれ文殊もんじゅの教きょう化けの力ちからなり。

「文殊師利大聖尊ヲバ三世ノ諸仏以テ為シタマフ↠母ト
十方ノ如来ノ初テ発スコトハ↠心ヲ皆是文殊ノ教化ノ力ナリ

^一切いっさい世せ界かいのもろもろの有う情じょう、 名みなを聞きき、 身しんおよび光相こうそうを見み、
ならびに随類ずいるいのもろもろの化け現げんを見みるは、 みな仏道ぶつどうを成じょうずること思議しぎしがたし」 と。 ¬心しん地じ観かん経ぎょう¼ の偈げ。

一切世界ノ諸ノ有情聞キ↠名ヲ見↢身及ビ光相ヲ↡
并ニ見ルハ↢随類ノ諸ノ化現ヲ↡皆成ズルコト↢仏道ヲ↡難シト↢思議シ↡」
¬心地観経ノ¼*偈

^もしただ ˆ文殊もんじゅ師利しりのˇ 名みなを聞きくものは、 十じゅう二に億劫おくこうの生しょう死じの罪つみを除のぞく。 もし礼拝らいはい・供く養ようするものはつねに*仏ぶっ家けに生うまる。 もし名みょう字じを称しょうすること一日いちにち七日しちにちすれば、 文殊もんじゅかならず来きたりたまふ。 もし*宿障しゅくしょうあるものは、 夢ゆめのうちに見みることを得えて、 所しょ求ぐ円満えんまんす。

若シ但聞ク↠名ヲ者ハ、除ク↢十二億劫ノ生死之罪ヲ↡。若シ礼拝・供養スル者ハ恒ニ生ル↢仏家ニ↡。若シ称スルコト↢名字ヲ↡一日シ七日スルハ、文殊必ズ来リタマフ。若シ有ルモノハ↢宿障↡、夢ノ中ニ得テ↠見ルコトヲ、所求円満ス。

^もし形ぎょう像ぞうを見みるものは、 百ひゃく千せん劫こうのうちに悪道あくどうに堕おちず。 もし慈じ心しんを行ぎょうずるものは、 すなはち文殊もんじゅを見みたてまつることを得う。 もし名みなを受じゅ持じし読誦どくじゅす0873ることあるものは、 たとひ重障じゅうしょうあれども*阿鼻あびの極悪ごくあく猛みょう火かに堕おちずして、 つねに他た方ほうの清浄しょうじょうの仏ぶつ土どに生うまる。 ¬*文殊もんじゅ般はつ涅ね槃はん経きょう¼ の意こころ。 かの形ぎょう像ぞう、 ¬経きょう¼ (同) に広ひろく説とくがごとし。

若シ見ル↢形像ヲ↡者ハ、百千劫ノ中ニ不↠*堕チ↢悪道ニ↡。若シ行ズル↢慈心ヲ↡者ハ、即チ得↠見タテマツルコトヲ↢文殊ヲ↡。若シ有ル↤受↢持シ読↣誦スルコト名ヲ↡者ハ、設ヒ有レドモ↢重障↡不シテ↠堕チ↢阿鼻ノ極悪猛火ニ↡、常ニ生ル↢他方ノ清浄ノ仏土ニ↡。¬文殊般涅槃経ノ¼意。彼ノ形像如シ↢¬経ニ¼広ク説クガ↡

^また百ひゃく千億せんおく那由なゆ他たの仏ぶつの利り益やく衆しゅ生じょうは、 文殊もんじゅ師利しりの、 一劫いっこうのうちにおいてなせるところの利り益やくには及およばず。 ゆゑにもし文殊もんじゅ師利しり菩ぼ薩さつの名なを称しょうするものは、 福ふくはかの百ひゃく千億せんおくの諸仏しょぶつの名みょう号ごうを受じゅ持じするよりも多おおし。 ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の意こころ。

又百千億那由他ノ仏ノ利益衆生ハ、不↠及バ↧文殊師利ノ於テ↢一劫ノ中ニ↡所ノ↠作セル利益ニハ↥。故ニ若シ称スル↢文殊師利菩薩ノ名ヲ↡者ハ、福ハ多シ↣於受↢持スルヨリモ彼ノ百千億ノ諸仏ノ名号ヲ↡。¬宝積経ノ¼意

・弥勒菩薩

^*弥み勒ろく菩ぼ薩さつは功く徳どく無む量りょうなり。 もしただ名みなを聞きくものは黒闇こくあん処しょに堕おちず。 一念いちねんも名みなを称しょうするものは、 千せん二に百ひゃく劫こうの生しょう死じの罪つみを除じょ却きゃくす。 帰依きえすることあるものは、 *無む上じょう道どうにおいて不ふ退転たいてんを得う。 ¬*上生じょうしょう経きょう¼ の意こころ。 称しょう讃さん・礼拝らいはいするものは、 百ひゃく千せん万億まんおく阿あ僧そう祇ぎ劫こうの生しょう死じの罪つみを除のぞく。 ¬*虚こ空蔵くうぞう経きょう¼・¬*仏ぶつ名みょう経きょう¼ の意こころ。

弥勒菩1059薩ハ功徳無量ナリ。若シ但聞ク↠名ヲ者ハ不↠堕チ↢黒闇*処ニ↡。一念モ称スル↠名ヲ者ハ、除↢却ス千二百劫ノ生死之罪ヲ↡。有ル↢帰依スルコト↡者ハ、於テ↢無上道ニ↡得↢不退転ヲ↡。¬上生経ノ¼意 称讃・礼拝スル者ハ、除ク↢百千万億阿僧祇劫ノ生死ノ罪ヲ↡。¬虚空蔵*経¼・¬仏名経ノ¼*意

^「無む量りょう千万せんまん劫こうに修しゅせるところの願がん・智ち・行ぎょう、
広大こうだいにして不可ふか量りょうなり。 称しょう揚ようすともよく尽つくすことなからん」 と。

「無量千万劫ニ所ノ↠修セル願智行
広大ニシテ不可量ナリ称*揚ストモ莫ケムト↢能ク尽スコト↡」

^¬華け厳ごん経ぎょう¼ の偈げ。 以い上じょうの三さんの菩ぼ薩さつ、 つねに極楽ごくらく世せ界かいにまします。 ¬四し十じゅう華け厳ごん経ぎょう¼ に出いでたり。

¬花厳経ノ¼偈。已上ノ、三ノ菩薩、常ニ在ス↢極楽世界ニ↡。出デタリ↢¬四十花厳経ニ¼↡

・地蔵菩薩

^地じ蔵ぞう菩ぼ薩さつは、 毎日まいにちの晨じん朝じょうに恒沙ごうじゃの定じょうに入いりて、 法界ほうかいに周しゅう遍へんして苦くの衆しゅ生じょうを抜ぬきたまふ。 所しょ有うの悲ひ願がん、 余よの*大だい士じに超こえたり。 ¬*十じゅう輪りん経ぎょう¼ の意こころ。

▼地蔵菩薩ハ、毎日ノ晨朝ニ入リテ↢恒沙ノ定ニ↡、周↢遍シテ法界ニ↡抜キタマフ↢苦ノ衆生ヲ↡。所有ノ悲願超エタリ↢余ノ大士ニ↡。¬十輪経ノ¼意

^かの ¬経きょう¼ (十輪経) の偈げにのたまはく、

◆彼ノ¬経ノ¼偈ニ云ク、

^0874「一日いちにちも地じ蔵ぞうの功く徳どく、 大だい名みょう聞もんを称しょうせんは、
倶く胝てい劫こうのうちに、 余よの智ち者しゃを称しょうする徳とくに勝すぐれたり。

「一日モ称セムニハ↢地蔵ノ功徳大名聞ヲ↡
勝レタリ↣倶*低劫ノ中ニ称セムニハ↢余ノ智者ノ徳ヲ↡

^たとひ百ひゃく劫こうのうちに、 その功く徳どくを讃説さんせつすとも、
なほ尽つくすことあたはじ。 ゆゑにみなまさに供く養ようすべし」 と。 以上

◆仮使ヒ百劫ノ中ニ讃↢説ストモ其ノ功徳ヲ↡
猶尚 ナホ 不↠能ハ↠尽スコト故ニ皆当ニシト↢供養ス↡」 *已上

・観音菩薩

^観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつのいはく、 「衆しゅ生じょう、 苦くありて、 三みたびわが名なを称しょうせんに、 往ゆきて救すくはずといはば、 正しょう覚がくを取とらじ」 と。 ¬*弘ぐ猛みょう海かい慧え経きょう¼。

◆観世音菩薩ノ言ク、「衆生有リテ↠苦三タビ称セムニ↢我ガ名ヲ↡、不トイハバ↢往キテ救ハ↡者不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。」¬弘猛海慧経¼

^「もし百ひゃく千せん倶く胝てい那由なゆ他たの諸仏しょぶつの名みょう号ごうを称しょう念ねんすることあらん。 またしばらくの時ときもわが名みょう号ごうにおいて、 心しんを至いたして称しょう念ねんすることあらん。 かの二にの功く徳どくは平びょう等どう平びょう等どうならん。 もろもろのわが名みょう号ごうを称しょう念ねんすることあるものは、 一切いっさいみな不ふ退転たいてんの地じを得えてん」 と。 ¬*十じゅう一いち面めん経ぎょう¼ (意)。

◆若シ有ラム↣称↢念スルコト百千倶胝那庾多ノ諸仏ノ名号ヲ↡。復有ラム↧暫クノ時モ於テ↢我ガ名号ニ↡至シテ↠心ヲ称念スルコト↥。彼ノ二ノ功徳ハ平等平等ナラム。諸ノ有ラム↣称↢念スルコト我ガ名号ヲ↡者ハ、一切皆得テムト↢不退転ノ地ヲ↡。」¬十一*面経¼

^「衆しゅ生じょうもし名なを聞きかば、 苦くを離はなれて解げ脱だつを得えてん。
また地じ獄ごくに遊戯ゆげして、 大だい悲ひ代かわりて苦くを受うけん」 と。 ¬*請しょう観音かんのん経ぎょう¼ の偈げ。

「◆衆生ノ若シ聞カムハ↠名ヲ離レテ↠苦ヲ得テム↢解脱ヲ
亦遊↢戯シテ地獄ニ↡大悲代リテ受ケムト↠苦ヲ」 ¬請観音経ノ¼偈

^「*弘ぐ誓ぜいの深ふかきこと海うみのごとし。 劫こうを歴ふとも思議しぎすまじ。
多た千億せんおくの仏ぶつに侍つかへて、 大だい清浄しょうじょうの願がんを発おこせり。

「弘誓ノ深キコト如シ↠海ノ歴トモ↠劫ヲ不マジ↢思議ス
侍ヘテ↢多ノ千億ノ仏ニ↡発セリ↢大清浄ノ願ヲ↡

^神通じんずう力りきを具ぐ足そくし、 広ひろく智ちの方便ほうべんを修しゅして、
0875十方じっぽうのもろもろの国こく土どに、 刹せつとして身みを現げんぜずといふことなし。

具↢足シ神通力ヲ↡広ク修シテ↢智ノ方便ヲ↡
十方ノ諸ノ国土ニ無シ↢刹トシテ不トイフコト↟現ゼ↠身ヲ

^念々ねんねんに疑うたがいをなすことなかれ。 観かん世ぜ音おんの浄聖じょうしょうは、
苦く悩のう死し厄やくにおいて、 よくために*依怙えことなりたまふ。

念々ニ勿レ↠生スコト↠疑ヲ観世音ノ浄聖ハ
於テ↢苦悩死厄ニ↡能ク為ニ作リタマフ↢依怙ト↡

^一切いっさいの功く徳どくを具ぐして、 慈じ眼げんをもつて衆しゅ生じょうを視みたまふ。
福聚ふくじゅの海うみ無む量りょうなり。 このゆゑに頂ちょう礼らいしたてまつるべし」 と。 ¬法華ほけ経きょう¼。

具シテ↢一切ノ功徳ヲ↡慈眼ヲモテ視タマフ↢衆生ヲ↡
福聚ノ海无量1060ナリ是ノ故ニ応シト↢頂礼シタテマツル↡」 ¬法華*経¼

・勢至菩薩

^*大勢だいせい至し菩ぼ薩さつのいはく、 「われよくもろもろの悪趣あくしゅの、 未度みどの衆しゅ生じょうを度どするに堪任かんにんせり」 と。 ¬宝ほう積しゃく経きょう¼。

大勢至菩薩ノ曰ク、「我能ク堪↣任セリト度スルニ↢諸ノ悪趣ノ未度ノ衆生ヲ↡。」¬宝積経¼

^「▲智慧ちえの光ひかりをもつて、 あまねく一切いっさいを照てらして、 三さん塗ずを離はなれしむるに、 無む上じょうの力ちからを得えたり。 ゆゑにこの菩ぼ薩さつを大勢だいせい至しと名なづく。 ▲この菩ぼ薩さつを観かんずるものは、 無む数しゅ劫こう阿あ僧そう祇ぎの生しょう死じの罪つみを除のぞき、 胞胎ほうたいに処しょせずして、 つねに諸仏しょぶつの浄妙じょうみょう国こく土どに遊あそぶ」 と。 ¬観かん経ぎょう¼ の意こころ。

「以テ↢智慧ノ光ヲ↡普ク照ス↢一切ヲ↡。令ムルニ↧離レテ↢三途ヲ↡得↦無上ノ力ヲ↥。故ニ此ノ菩薩ヲ名ク↢大勢至ト↡。観ズル↢此ノ菩薩ヲ↡者ハ、除ク↢无数劫阿僧祇ノ生死之罪ヲ↡。不シテ↠処セ↢胞胎ニ↡、常ニ遊ブト↢諸仏ノ浄妙国土ニ↡。」¬観経ノ¼意

^「無む量りょう無む辺へん無む数しゅ劫こうに、 広ひろく願力がんりきを修しゅして弥陀みだを助たすけ、
つねに大衆だいしゅに処しょして法言ほうごんを宣のぶ。 衆しゅ生じょうの聞きくものは浄じょう眼げんを得う。

「無量无辺无数劫ニ広ク修シテ↢願力ヲ↡助ク↢弥陀ヲ↡
常ニ処シテ↢大衆ニ↡宣ブ↢法言ヲ↡衆生ノ聞ク者ハ得↢浄眼ヲ↡

^神通じんずうをもつて十方じっぽうの国くにに周しゅう遍へんして、 あまねく一切いっさい衆しゅ生じょうの前まえに現げんず。
衆しゅ生じょうもしよく心しんを至いたして念ねんずれば、 みなことごとく導みちびきて安楽あんらくに至いたらしむ」 と。 *龍りゅう樹じゅの讃さん。

神通ヲモテ周↢遍シテ十方ノ国ニ↡普ク現ズ↢一切衆生ノ前ニ↡
衆生若シ能ク至シテ↠心ヲ念ズレバ皆悉ク*導キテ令ムト↠至ラ↢安楽ニ↡」 龍樹ノ讃

^ま0876たいはく、

又云ク、

^「*観音かんのん・勢せい至しは大だい名称みょうしょうまします。 功く徳どく・智慧ちえ、 ともに無む量りょうなり。
慈悲じひを具ぐ足そくして世せ間けんを救すくひ、 あまねく一切いっさい衆しゅ生じょう海かいに遊あそびたまふ。
かくのごとき勝すぐれたる人ひとは、 はなはだ遇あふこと難かたし。 一心いっしんに恭く敬ぎょうして頭ず面めんをもつて礼らいしたてまつる」 と。 以上

「観音・勢至ハ大名称マシマス功徳智*恵倶ニ无量ナリ
具↢足シテ慈悲ヲ↡救ヒ↢世間ヲ↡遍ク遊ビタマフ↢一切衆生海ニ↡
如キ↠是クノ勝レタル人ハ甚ダ難シ↠遇フコト一心ニ恭敬シテ頭面ニ礼シタテマツルト」 已上

^かくのごとき一いっ生しょう補ふ処しょの大だい菩ぼ薩さつ、 その数かず恒沙ごうじゃのごとし。 色相しきそう端厳たんごんにして、 功く徳どく具ぐ足そくし、 つねに極楽ごくらく国こくにましまして弥陀みだ仏ぶつを囲い繞にょうしたまへり。

如キ↠是クノ一生補処ノ大菩薩、其ノ数如クシテ↢恒沙ノ↡、色相端厳ナリ。功徳具足シテ、常ニ在シテ↢極楽国ニ↡囲↢繞シタマヘリ弥陀仏ヲ↡。

^またもろもろの声しょう聞もん衆しゅ、 その数かず量はかりがたし。 神じん智ち洞達どうだつし、 威い力りき自じ在ざいなり。 よく掌たなごころのなかに一切いっさいの世せ界かいを持たもつ。 たとひ大だい目連もくれんのごときもの、 百ひゃく千せん万億まんおく無む量りょう無む数しゅにして、 阿あ僧そう祇ぎの劫こうに、 ことごとくともに、 かの*初しょ会えの声しょう聞もんを*計け校きょうせんに、 知しるところの数かずはなほ一渧いったいのごとく、 その知しらざるところは大海だいかいの水みずのごとし。

又諸ノ声聞衆、其ノ数難シ↠量リ。神智洞達シ威力自在ナリ。能ク於掌ノ中ニ持ツ↢一切ノ世界ヲ↡。設ヒ如キモノ↢大目連ノ↡、百千万億无量无数ニシテ、於テ↢阿僧祇ノ劫ニ↡悉ク*共ニ計↢挍セムニ彼ノ初会ノ声聞ヲ↡、所ノ↠知ラム数者猶如シ↢一渧ノ↡。其ノ所ハ↠不ル↠知ラ如ケム↢大海ノ水ノ↡。

^そのなかに、 *般はつ泥洹ないおんして去さるもの無む央数おうしゅなり。 新あらたに阿羅あら漢かんを得うるもの、 また無む央数おうしゅなり。 しかれどもすべて増減ぞうげんをなさず。 たとへば大海だいかいの、 *恒水ごうすいを減げんずといへども、 恒水ごうすいを加くわふといへども、 しかも増ぞうなくまた減げんなきがごとし。 もろもろの菩ぼ薩さつ衆しゅは、 また上かみの数かずに倍ばいせり。

其ノ中ニ般泥洹シテ去ル者無央数ナリ。新ニ得ル↢阿羅漢ヲ↡者亦無央数ナリ。而レドモ都テ不↠為サ↢増減ヲ↡。譬ヘバ如シ↧大海ノ雖モ↠減ズト↢恒水ヲ↡、雖モ↠加フト↢恒水ヲ↡而モ無ク↠増亦無キガ↞減。諸ノ菩薩衆ハ復倍セリ↢上ノ数ニ↡。

^¬大論だいろん¼ (大智度論) にいふがごとし。 「弥陀みだ仏ぶつの国くにには、 菩ぼ0877薩さつ僧そうは多おおく声しょう聞もん僧そうは少すくなし」 と。 以上

如シ↢¬大論ニ¼云フガ↡。「弥陀1061仏ノ国ニハ、菩薩僧ハ多ク声聞僧ハ少シト。」 已上

^かくのごとき聖しょう衆じゅ、 その国くにに充じゅう満まんせり。 たがひにはるかにあひ見み、 はるかにあひ瞻望せんもうし、 はるかに語ご声しょうを聞ききて、 同一どういつに道どうを求もとめて、 異い類るいあることなし。 いかにいはんや、 また十方じっぽう恒沙ごうじゃの仏ぶつ土どの無む量りょう塵数じんじゅの菩ぼ薩さつ聖しょう衆じゅ、 おのおの神通じんずうを現げんじて安楽あんらく国こくに至いたりて、 尊顔そんげんを*瞻仰せんごうして恭く敬ぎょうし供く養ようしたてまつる。

如キ↠是クノ聖衆充↢満セリ其ノ国ニ↡。互ニ*遥ニ相見、遥ニ相瞻望ス。遥ニ聞キテ↢語声ヲ↡、同一ニ求ムルコト↠道ヲ无シ↠有ルコト↢異類↡。何ニ況ヤ復十方*恒沙ノ仏*土ノ无量塵数ノ菩薩聖衆、各 ノ現ジテ↢神通ヲ↡至リテ↢安楽国ニ↡、瞻↢仰シテ尊顔ヲ↡恭敬シ供養シタテマツル。

^あるいは天てんの妙みょう華けを齎もたらし、 あるいは妙みょう宝ほうの香こうを焼たき、 あるいは*無価むげの衣ころもを献たてまつり、 あるいは天てんの妓ぎ楽がくを奏そうし、 和雅わげの音おんを発おこして、 世せ尊そんを歌か嘆たんし、 経きょう法ぼうを聴ちょう受じゅし、 *道どう化けを宣せん布ぷす。

或イハ齎トリ↢天ノ妙花ヲ↡、或イハ焼キ↢妙宝ノ香ヲ↡、或イハ献タテマツリ↢無価ノ衣ヲ↡、或イハ奏ス↢天ノ*妓楽ヲ↡。発シテ↢和雅ノ音ヲ↡、歌↢嘆シ世尊ヲ↡、聴↢受シ経法ヲ↡、宣↢布ス道化ヲ↡。

^かくのごとく往来おうらいすること、 昼ちゅう夜やに絶たえず。 東方とうぼうに去されば、 西方さいほうより来きたり、 西方さいほうに去されば、 北方ほっぽうより来きたり、 北方ほっぽうに去されば、 南方なんぽうより来きたる。 四し維ゆい・上じょう下げもたがひにまたかくのごとし。 かはるがはるあひ*開かい避ひすること、 なほ盛さかりなる市いちのごとし。

如クシテ↠是クノ往来スルコト昼夜ニ不↠絶エ。東方ノ去レバ西方ヨリ来ル。西方ノ去レバ北方ヨリ来ル。北方ノ去レバ南方ヨリ来ル。四維・上下モ互ニ亦如シ↠是クノ。更相カハルガハル開避スルコト猶如シ↢盛ナル市ノ↡。

^これらの大だい士じは、 一ひとたびその名みなを聞きくすら、 なほ少しょう縁えんにあらず。 いはんや百ひゃく千万せんまん劫ごうにも、 たれかあひ見みることを得うるものあらん。 しかもかの国こく土どの衆しゅ生じょうはつねに一処いっしょに会えして、 たがひに言ごん語ごを交まじへ、 問訊もんじんし恭く敬ぎょうし、 親近しんごんし承習じょうじゅうす。 また楽たのしからざらんや。 以い上じょう、 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経)・¬観かん経ぎょう¼・¬平びょう等どう経きょう¼ 等とうの意こころ。

此等ノ大士ハ一タビ聞クコト↢其ノ名ヲ↡尚非ズ↢少縁ニ↡。況ヤ百千万劫ニモ誰カ得ム↢相見ルコトヲ↡者アラン。然モ彼ノ国土ノ衆生ハ常ニ会シテ↢一処ニ↡、互ニ交ヘ↢言語ヲ↡、*問訊シ恭敬シ、親近シ承習ス。不ラム↢亦楽カラ↡乎。已上¬双巻経¼・¬*観経¼・¬平等経¼等ノ意

^龍りゅう樹じゅの偈げ (易行品) にいはく、

龍樹ノ偈ニ*云ク、

^「▲かの土どのもろもろの菩ぼ薩さつは、 もろもろの相好そうごうを具ぐ足そくして、
0878みなみづから身みを荘しょう厳ごんせり。 われいま帰き命みょうして礼らいす。

「彼ノ土ノ諸ノ菩薩ハ具↢足シテ諸ノ相好ヲ↡
皆自ラ荘↢厳セリ身ヲ↡我今帰命シテ礼ス

^▲三界さんがいの獄ごくを超出ちょうしゅつして、 目めは蓮れん華げ葉ようのごとし。
声しょう聞もん衆しゅ無む量りょうなり。 このゆゑに稽首けいしゅして礼らいす」 と。

超↢出シテ三界ノ獄ヲ↡目ハ如シ↢蓮華葉ノ↡
声聞衆无量ナリ是ノ故ニ稽首シテ礼スト」

^またいはく (十二礼)、

又云、

^「▲十方じっぽうより来きたるところのもろもろの仏ぶっ子し、 神通じんずうを顕現けんげんして安楽あんらくに至いたりて、
尊顔そんげんを瞻仰せんごうしてつねに恭く敬ぎょうしたてまつる。 ゆゑにわれ弥陀みだ仏ぶつを頂ちょう礼らいす。
*願ねがはくは、 もろもろの衆しゅ生じょうとともに安楽あんらく国こくに往おう生じょうせん」 と。

「十方ヨリ所ノ↠来ル諸ノ仏子顕↢現シテ神通ヲ↡至リテ↢安楽ニ↡
瞻↢仰シテ尊顔ヲ↡常ニ恭敬シタテマツル故ニ我頂↢礼ス弥陀仏ヲ↡
*願クハ共ニ↢諸ノ*衆生ト↡往↢生セムト安楽国ニ。」

二 Ⅱ ⅱ h 見仏聞法楽

【29】^第だい八はちに△*見仏けんぶつ聞法もんぼうの楽らくといふは、 いまこの娑しゃ婆ば世せ界かいは、 仏ぶつを見み、 法ほうを聞きくことはなはだ難かたし。

第八ニ見仏聞法ノ楽トイフ*者、今此ノ娑婆世界ハ見↠仏ヲ聞クコト↠法ヲ甚ダ難シ。

^師子吼ししく菩ぼ薩さつのいはく (心地観経)、

師子吼菩薩ノ言ク、

^「われら無む数しゅ百ひゃく千せん劫ごうに、 *四無しむ量りょう・三さん解げ脱だつを修しゅして、
いま大聖だいしょう牟尼むに尊そん (釈尊) を見みたてまつること、 なほ*盲めしひたる亀かめの浮うき木ぎに値あへるがごとし」 と。

「我等无数百千劫ニ修シテ↢四无量三解脱ヲ↡
今見タテマツルコト↢大聖牟尼尊ヲ↡▼猶1062如シト↣盲ヒタル亀ノ値ヘルガ↢浮木ニ↡」

^また△*儒童じゅどうは全身ぜんしんを捨すててはじめて△半はん偈げを得えたり。 *常じょう啼たいは肝かん腑ぷを割さきて遠とおく般若はんにゃを求もとめたり。 菩ぼ薩さつすらなほしかり、 いかにいはんや凡ぼん夫ぶをや。

又儒童ハ捨テテ↢全身ヲ↡而シテ始テ得タリ↢半偈ヲ↡。常啼ハ割キテ↢肝府ヲ↡而遠ク求メタリ↢般若ヲ↡。菩薩スラ尚爾リ。何ニ況ヤ凡夫ヲヤ。

^仏ぶつ (釈尊)、 *舎しゃ衛えにましますこと二に十じゅう五ご年ねん、 かしこに九く億おくの家いえあり。 三億さんおくは仏ぶつを見みたてまつり、 三さん0879億おくはわづかに聞きき、 その余よの三億さんおくは見みず聞きかず。 在ざい世せすらなほしかり、 いかにいはんや滅めつ後ごをや。

仏在スコト↢舎衛ニ↡廿五年、彼ノ九億ノ家アリ、三億ハ見タテマツリ↠仏ヲ、三億ハ纔ニ聞キ、其ノ余ノ三億ハ不↠見不↠聞カ。在世スラ尚爾リ、何ニ況ヤ滅後ヲヤ。

^ゆゑに ¬法ほっ華け¼ にのたまはく、

故ニ¬法花ニ¼云ク、

^「このもろもろの罪つみの衆しゅ生じょうは、 悪業あくごうの因縁いんねんをもつて、
阿あ僧そう祇ぎの劫こうを過すぐれども、 三宝さんぼうの名みなをも聞きかず」 と。

「是ノ諸ノ罪ノ衆生ハ以テ↢悪業ノ因縁ヲ↡
過グレドモ↢阿僧祇ノ劫ヲ↡不ト↠聞カ↢三宝ノ名ヲモ↡」

^しかるをかの国くにの衆しゅ生じょうは、 つねに弥陀みだ仏ぶつを見みたてまつり、 つねに深じん妙みょうの法ほうを聞きく。 いはく、 厳ごん浄じょうの地じの上うえには菩ぼ提樹だいじゅあり、 枝し葉よう四よもに布しき、 衆宝しゅぼうをもつて合ごう成じょうせり。 樹きの上うえには宝たからの羅ら網もうを覆おおひ、 条えだのあひだには珠たまの瓔珞ようらくを垂たれたり。

而ルヲ彼ノ国ノ衆生ハ常ニ見タテマツリ↢弥陀*仏ヲ↡、恒ニ聞ク↢深妙ノ法ヲ↡。謂ク厳浄ノ地ノ上ニハ有リ↢菩提樹↡。枝葉*四モニ布キ、衆宝ヲモテ合成セリ。樹ノ上ニハ覆ヘリ↢宝ノ羅網ヲ↡。条エダノ間ニハ垂レタリ↢珠ノ瓔珞ヲ↡。

^風かぜ、 枝し葉ようを動うごかすに、 声こえ妙みょう法ほうを演のべ、 その声こえ流布るふして諸仏しょぶつの国くにに遍へんす。 その聞きくことあるものは*深じん法忍ぼうにんを得え、 不ふ退転たいてんに住じゅうし、 耳に根こん清しょう徹てつなり。 樹きの色いろを覩み、 樹きの香かおりを聞かぎ、 樹きの味あじを嘗なめ、 樹きの光ひかりに触ふれ、 樹きの相すがたを縁えんずるも、 一切いっさいまたしかなり。 仏道ぶつどうを成じょうずるに至いたるまで六根ろっこん清しょう徹てつなり。

風動スニ↢枝葉ヲ↡、声演ブ↢妙法ヲ↡。其ノ声流布シテ遍ス↢諸仏ノ国ニ↡。其ノ有ル↠聞クコト者ハ得↢深法忍ヲ↡、住シ↢不退転ニ↡、耳根清徹ス。覩↢樹ノ色ヲ↡、聞カギ↢樹ノ香ヲ↡、嘗メ↢樹ノ味ヲ↡、触レ↢樹ノ光ニ↡、縁ズルモ↢樹ノ相ヲ↡、一切亦然ナリ。至ルマデ↠成ズルニ↢仏道ヲ↡六根清徹セリ。

^樹じゅ下げに座ざあり、 荘しょう厳ごん無む量りょうなり。 座ざの上うえには仏ぶつましまし、 相好そうごう無む辺へんなり。 *烏う瑟しつ高たかく顕あらわれて、 晴天せいてんの翠みどり濃こく、 *白びゃく毫ごう右みぎに旋めぐりて、 秋しゅう月げつの光ひかり満みてり。 青しょう蓮れんの眼まなこ、 丹たん菓かの唇くちびる、 *迦か陵りょう頻びんの声こえ、 獅子しし相そうの胸むね、 仙鹿せんろく王おうの腨はぎ、 *千輻せんぷく輪りんの趺あなうら、 かくのごとき八万はちまん四し千せんの相好そうごう、 紫磨しま金こんの身しんに纏絡てんらくし、 無む量りょう塵数じんじゅの光こう明みょうは、 億千おくせんの日月にちがつを集あつめたるがごとし。

樹下ニ有リ↠座。荘厳无量ナリ。座ノ上ニハ有ス↠仏。相好无辺ナリ。烏瑟高ク顕シテ晴ノ天ノ翠濃コマヤカナリ。白毫右ニ旋リテ秋ノ月ノ光満テリ。青蓮之眼、丹菓之脣、迦陵頻之声、師子相之胸、仙鹿王之*腨ハギ、千輻輪之趺アナウラ、如キ↠是クノ八万四千ノ相好、纏↢絡セリ紫磨金ノ身ニ↡。無量塵数ノ光明ハ如シ↠集メタルガ↢億千ノ日月ヲ↡。

^時ときありて、 七宝しっぽうの講堂こうどうにま0880しまして妙みょう法ほうを演えん暢ちょうしたまふに、 *梵音ぼんのん深じん妙みょうにして、 衆しゅうの心しんを悦えっ可かしたまふ。 菩ぼ薩さつ・声しょう聞もん・天てん・人にん大衆だいしゅ、 一心いっしんに合がっ掌しょうして尊顔そんげんを瞻仰せんごうしたてまつる。 即そく時じに、 自じ然ねんの微み風ふう、 七宝しっぽうの樹じゅを吹ふくに、 無む量りょうの妙みょう華け、 風かぜに随したがひて四よもに散さんず。 一切いっさいの諸天しょてん、 もろもろの音楽おんがくを奏そうす。 この時ときに当あたりて、 *熙怡きい快け楽らく、 勝あげていふべからず。

有リテ↠時*在シテ↢七宝ノ講堂ニ↡演↢暢シタマフニ妙法ヲ↡。梵音深妙ニシテ、悦↢可シタマフ衆ノ心ヲ↡。菩薩・声聞・天・人・大衆、一心ニ合掌シテ瞻↢仰シタテマツル尊顔ヲ↡。即時ニ自然ノ微風吹クニ↢七宝ノ樹ヲ↡、無量ノ妙花随ヒテ↠風ニ四モニ散ズ。一切ノ諸天奏ス↢諸ノ音楽ヲ↡。当リテ↢斯1063之時ニ↡、熙怡快楽不↠可カラ↢勝アゲテ言フ↡。

^あるいはまた広大こうだいの身しんを現げんじ、 あるいは*丈じょう六ろく・八はっ尺しゃくの身しんを現げんじ、 あるいは宝樹ほうじゅの下もとにましまし、 あるいは宝ほう池ちの上ほとりにまします。 衆しゅ生じょうの本もとの宿命しゅくみょうにより、 求ぐ道どうの時とき、 心しんに喜き願がんせしところに随したがひて、 大だい小しょう意こころに随したがひて、 ために経きょう法ぼうを説とき、 それをして疾とく開かい解げし、 得道とくどうせしめたまふ。 かくのごとく種々しゅじゅの機きに随したがひて、 種々しゅじゅの法ほうを説ときたまふ。

或イハ復現ジ↢広大ノ身ヲ↡、或イハ現ズ↢丈六・八尺ノ身ヲ↡。或イハ在ス↢宝樹ノ下ニ↡。或イハ在ス↢宝池ノ上ニ↡。随ヒテ↣衆生ノ本ノ宿命ノ求道ノ時ノ心ニ所ニ↢*憙願セシ↡、大小随ヒテ↠意ニ為ニ説キ↢経法ヲ↡、令メタマフ↢其ヲシテ疾ク開解シ得道セ↡。如ク↠是クノ随ヒテ↢種々ノ機ニ↡、説キタマフ↢種々ノ法ヲ↡。

^また観音かんのん・勢せい至しの両ふたりの菩ぼ薩さつ、 つねに仏ぶつの左右さうの辺ほとりにありて、 坐侍ざじして*政しょう論ろんす。 仏ぶつつねにこの両ふたりの菩ぼ薩さつとともに対たい坐ざして、 八方はっぽう上じょう下げ、 *去こ・来らい・現在げんざいの事じを議ぎしたまふ。

又観音・勢至ノ、両フタリノ菩薩常ニ在リテ↢仏ノ左右ノ辺ニ↡、坐侍シテ政論ス。仏常ニ与↢是ノ両フタリノ菩薩↡共ニ対坐シテ、議シタマフ↢八方上下、去・来・現在之事ヲ↡。

^▲ある時ときには、 東方とうぼうの恒沙ごうじゃの仏国ぶっこくの無む量りょう無む数しゅのもろもろの菩ぼ薩さつ衆しゅ、 みなことごとく無む量りょう寿じゅ仏ぶつの所みもとに往詣おうげいして、 恭く敬ぎょうし供く養ようして、 もろもろの菩ぼ薩さつ・声しょう聞もんの衆しゅうまでに及およぼす。 南西なんざい北方ほっぽう・四し維ゆい・上じょう下げもまたかくのごとし。 かの厳ごん浄じょうの土どの微み妙みょう難なん思議じぎなるを見みて、 よりて無む量りょうの心しんを発おこして、 わが国くにもまたしからんと願がんず。

或時ニハ、東方ノ恒沙ノ仏国ノ无量无数ノ諸ノ菩薩衆、皆悉ク往↢詣シテ無量寿仏ノ所ニ↡、恭敬シ供養シテ、及ボス↢諸ノ菩薩・声聞之衆マデニ↡。南・西・北方・四維・上下モ亦復如シ↠是クノ。見テ↢彼ノ厳浄ノ土ノ微妙難思議ナルヲ↡、因リテ発シテ↢无量ノ心ヲ↡、願ズ↢我ガ国モ亦然ラムト↡。

^時ときに応おうじて、 世せ尊そん、 容みかおを動うごかして微み笑しょうし、 口くち0881より無む数しゅの光ひかりを出いだして、 あまねく十方じっぽうの国くにを照てらしたまふ。 回え光こう、 身しんを囲めぐること*三帀さんぞうして頂いただきに入いる。 一切いっさいの天てん・人衆にんしゅ、 踊ゆ躍やくしてみな歓かん喜ぎす。

応ジテ↠時ニ世尊動シテ↠容ミカホヲ微笑シテ、口ニ出シテ↢无数ノ光ヲ↡、遍ク照シタマフ↢十方ノ国ヲ↡。廻光囲リテ↠身ヲ三帀シテ入ル↠頂ニ。一切ノ天人衆踊躍シテ皆歓喜ス。

^大だい士じ観かん世ぜ音おん、 服ぶくを整ととのへて ˆ無む量りょう寿じゅ仏ぶつにˇ 稽首けいしゅして問とひたてまつる。 「仏ぶつ、 なんの縁えんありてか笑えみたまふ。 やや、 しかなり。 願ねがはくは説ときたまへ」 と。 時ときに*梵ぼんの声みこえ、 雷いかずちのごとくして八音はっとんをもつて妙みょう響こうを暢のべたまひ、 「まさに菩ぼ薩さつに*記きを授さずくべし」 と。

大士観世音整ヘテ↠服ヲ稽首シテ問ヒタテマツル。仏、何ノ縁アリテカ笑ミタマフ。唯然ナリ。願クハ説キタマヘト。時ニ梵ノ声、猶クシテ↠雷ノ八音ヲモテ暢ベタマフ↢妙響ヲ↡。当ニシト↠授ク↢菩薩ニ記ヲ↡。

^告つげてのたまはく、 「なんぢ、 あきらかに聴きけ。 十方じっぽうより来きたれる正しょう士じ、 われことごとくかの願ねがいを知しれり。 厳ごん浄じょうの土どを志求しぐし、 *決けつを受うけてまさに仏ぶつに作なるべし。 一切いっさいの法ほうはなほ夢む・幻げん・響きょうのごとしと覚かく了りょうするも、 もろもろの妙みょう願がんを満足まんぞくして、 かならずかくのごとき刹せつを成じょうぜん。 法ほうは電でん・影ようのごとしと知しるも、 菩ぼ薩さつの道どうを究く竟きょうし、 もろもろの功く徳どくの本もとを具ぐして、 決けつを受うけてまさに仏ぶつに作なるべし。 諸法しょほうの性しょうは一切いっさい、 空くう・無我むがなりと通達つうだつするも、 もつぱら浄じょう仏ぶつ土どを求もとめて、 かならずかくのごとき刹せつを成じょうぜん」 と。 以上

告ゲテ言ク、仁ナンヂ諦ニ聴ケ。十方ヨリ来レル正士、吾悉ク知レリ↢彼ノ願ヲ↡。志↢求スルニ厳浄ノ土ヲ↡、受ケテ↠決ヲ当ニシ↠作ル↠仏ニ。覚↣了シテ一切ノ法ハ猶如シト↢夢・幻・*嚮ノ↡、満↢足シテ諸ノ妙願ヲ↡、必ズ成ゼムト↢如キ↠是クノ刹ヲ↡。知リテ↣法ハ如シト↢電・影ノ↡、究↢竟シ菩薩ノ道ヲ↡、具シテ↢諸ノ功徳ノ本ヲ↡、受ケテ↠決ヲ当ニシ↠作ル↠仏ニ。通↢達シテ諸法ノ性ハ一切空无我ナリト↡、専ラ求ムル↢浄仏土ヲ↡、必ズ成ゼムト↢如キ↠是クノ刹ヲ↡。 已上

^いはんやまた、 水すい・鳥ちょう・樹林じゅりんみな妙みょう法ほうを演のぶ。 おほよそ聞きかんと欲ほっするところをば、 自じ然ねんに聞きくことを得う。 かくのごとき法楽ほうらくは、 またいづれの処ところにかあらんや。 このなかは多おおく ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経)・¬平びょう等どう経きょう¼ 等とうによれり。

況ヤ復水・鳥・樹林皆演ブ↢妙法ヲ↡。凡ソ所ヲバ↠欲スル↠聞カムト、自1064然ニ得↠聞クコトヲ。如キ↠是クノ法楽ハ亦在ラム↢何レノ処ニカ↡乎。此ノ中ハ多ク依レリ↢¬双巻経¼・¬平*等経¼*等ニ↡

^龍りゅう樹じゅの讃さん (十二礼) にいはく、

龍樹ノ讃ニ曰ク、

0882^「▲金こがねを底そことし、 宝たから間まじはりたる池いけに生しょうぜる華はな、 善根ぜんごんの成じょうぜるところの妙みょう台だい座ざなり。
かの座ざの上うえにおいて山王せんのうのごとし。 ゆゑにわれ弥陀みだ仏ぶつを頂ちょう礼らいしたてまつる。

「金ノ底トシ宝ノ間ノ池ニ生ゼル花善根ノ所成ノ妙台ノ坐ニ
於テ↢彼ノ座ノ上ニ↡如シ↢山王ノ↡故ニ我頂↢礼シタテマツル弥陀仏ヲ↡

^▲諸しょ有うは無む常じょう・無我むが等とうなり。 また水月すいがつ・電でん・影よう・露ろのごとし。
衆しゅうのために*法ほうに名みょう字じなきことを説ときたまふ。 ゆゑにわれ弥陀みだ仏ぶつを頂ちょう礼らいしたてまつる。
^願ねがはくはもろもろの衆しゅ生じょうとともに安楽あんらく国こくに往おう生じょうせん」 と。

諸有ハ无常・无我等ナリ亦如シ↢水月・電・影・露ノ↡
為ニ↠衆ノ説キタマフ↣法ノ無コトヲ↢名字↡故ニ我頂↢礼シタテマツル弥陀仏ヲ↡
願クハ共ニ↢諸ノ衆生ト↡往↢生セムト安楽国ニ↡」

二 Ⅱ ⅱ i 随心供仏楽

【30】^第だい九くに△*随心ずいしん供く仏ぶつの楽らくといふは、 かの土どの衆しゅ生じょうは、 昼ちゅう夜や六ろく時じに、 つねに種々しゅじゅの天てん華げを持もちて、 無む量りょう寿じゅ仏ぶつを供く養ようしたてまつる。

第九ニ随心供仏ノ楽トイフ者、彼ノ土ノ衆生ハ、昼夜六時ニ常ニ持チテ↢種々ノ天花ヲ↡、供↢養シタテマツル無量寿仏ニ↡。

^また、 意こころに他た方ほうの諸仏しょぶつを供く養ようしたてまつらんと欲おもふことあれば、 すなはち前すすみて*長じょう跪きして、 *手てを叉あざへて仏ぶつにまうす。 仏ぶつすなはちこれを可ゆるしたまふに、 みな大おおきに歓かん喜ぎして、 千億せんおく万まんの人にん、 おのおのみづから翻ひるがえり飛とび、 等輩とうはいあひ追おひ、 ともに散さん飛ぴして、 八方はっぽう上じょう下げの無む央数おうしゅの諸仏しょぶつの所みもとに到いたりて、 みな前すすみて礼らいをなし、 供く養ようし恭く敬ぎょうしたてまつる。

又有ルハ↤意ニ欲フコト↣供↢養シタテマツラムト他方ノ諸仏ヲ↡、即チ前ススミテ長跪シテ、*叉アザヘテ↠手ヲ白ス↠仏ニ。*仏則チ可ユルシタマフニ↠之ヲ皆大ニ歓喜シテ、千億万ノ人各 ノ自ラ翻リ飛ビ、等輩相追ヒテ倶共ニ散飛シテ、到リテ↢八*方上下ノ無央数ノ諸仏ノ所ニ↡、皆前ススミテ作リテ↠礼ヲ、供養シ恭敬シタテマツル。

^かくのごとく毎日まいにち晨じん朝じょうに、 おのおの*衣え裓こくをもつてもろもろの妙みょう華けを盛いれて、 他た方ほうの十じゅう万億まんおくの仏ぶつに供く養ようしたてまつる。 およびもろもろの衣え服ぶく・妓ぎ楽がく、 一切いっさいの供具くぐ、 意こころ0883に随したがひて出生しゅっしょうして、 供く養ようし恭く敬ぎょうす。 すなはち*食じき時じをもつて本国ほんごくに還かえり到いたりて、 飯食ぼんじきし経行きょうぎょうして、 もろもろの法楽ほうらくを受うく。

如ク↠是クノ毎日晨朝ニ、各 ノ以テ↢衣裓ヲ↡盛リテ↢衆ノ妙花ヲ↡、供↢養シタテマツル他*方ノ十万億ノ仏ニ↡。及ビ諸ノ衣服・*妓楽、一切ノ供具、随ヒテ↠意ニ出生シテ、供養シ恭敬ス。即チ以テ↢食時ヲ↡還リテ到リテ↢本国ニ↡、飯食シ経行シテ受ク↢諸ノ法楽ヲ↡。

^あるいはいはく、 毎日まいにち三さん時じに諸仏しょぶつを供く養ようしたてまつると。

或イハ言ク、毎日ノ三時ニ供↢養シタテマツルト諸仏ヲ↡。

^行ぎょう者じゃ、 いま遺ゆい教きょうに従したがひて、 十方じっぽうの仏ぶつ土どの種々しゅじゅの功く徳どくを聞きくことを得えたり。 見みるに随したがひ、 聞きくに随したがひて、 はるかに恋れん慕ぼを生しょうず。 おのおのあひ謂かたりていはく、 「われら、 いづれの時ときにか、 十方じっぽうの浄じょう土どを見みることを得え、 諸仏しょぶつ・菩ぼ薩さつに値あふことを得えん」 と。 教きょう文もんに対むかふごとに、 *嗟嘆しゃたんせずといふことなし。

行者今従ヒテ↢遺教ニ↡、得タリ↠聞クコトヲ↢十方ノ仏土ノ種々ノ功徳ヲ↡。随ヒ↠見ルニ随ヒテ↠聞クニ、遥ニ生ズ↢恋慕ヲ↡。各 ノ*相謂カタリテ言ク、我等何レノ時ニカ得↠見ルコトヲ↢十方ノ浄土ヲ↡、得ムト↠値フコトヲ↢諸仏・菩薩ニ↡。毎ニ↠対フ↢教文ニ↡無シ↠不トイフコト↢嗟嘆セ↡。

^しかるを、 もしたまたま極楽ごくらく国こくに生うまるることを得えば、 あるいは自じ力りきにより、 あるいは仏力ぶつりきを承うけて、 朝あしたに往ゆき暮ゆうべに来きたり、 須しゅ臾ゆに去さり須しゅ臾ゆに還かえらん。 あまねく十方じっぽうの一切いっさいの仏刹ぶっせつに至いたりて、 まのあたり諸仏しょぶつに奉つかへたてまつり、 もろもろの大だい士じに値ち遇ぐうし、 つねに正しょう法ぼうを聞きき、 大だい菩ぼ提だいの記きを受うけん。

而ルヲ若シ適マ得バ↠*生ズルコトヲ↢極楽国ニ↡、或イハ由リ↢自力ニ↡、或イハ承ケテ↢仏力ヲ↡、朝ニ往キ*暮ユフベニ来リ、須臾ニ去リ須臾ニ還ラム。遍ク至リテ↢十方ノ一切ノ*仏刹ニ↡、面マノアタリ奉ヘタテマツリ↢諸仏ニ↡、値1065↢遇シ諸ノ大士ニ↡、恒ニ聞キ↢正法ヲ↡、受ケム↢大菩提ノ*記ヲ↡。

^乃ない至し、 あまねく一切いっさいの*塵刹じんせつに入いりて、 もろもろの仏ぶつ事じをなし、 普ふ賢げんの行ぎょうを修しゅせん。 また楽たのしからずや。 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼・¬平びょう等覚どうがく経きょう¼・¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経) の意こころ。

乃至普ク入リテ↢一切ノ塵刹ニ↡、作リ↢諸ノ仏事ヲ↡、修セム↢普賢ノ行ヲ↡。不↢亦楽カラ↡乎。¬阿弥陀経¼・¬平等覚経¼・¬双巻経ノ¼意

^龍りゅう樹じゅの偈げ (易行品) にいはく、

龍樹ノ偈ニ云ク、

^「▲かの土どの大だい菩ぼ薩さつは、 日々にちにち三さん時じに、
十方じっぽうの仏ぶつを供く養ようしたてまつる。 このゆゑに稽首けいしゅして礼らいしたてまつる」 と。

「彼ノ土ノ大菩薩ハ日々於テ↢三時ニ↡
供↢養シタテマツル十方ノ仏ヲ↡是ノ故ニ稽首シテ礼シタテマツルト」

二 Ⅱ ⅱ j 増進仏道楽

【088431】^第だい十じゅうに△*増進ぞうしん仏道ぶつどうの楽らくといふは、 いまこの娑しゃ婆ば世せ界かいは、 道どうを修しゅして果かを得うることはなはだ難かたし。 いかんとなれば、 苦くを受うくるものはつねに憂うれへ、 楽らくを受うくるものはつねに着じゃくす。 苦くといひ楽らくといひ、 解げ脱だつを遠おん離りす。 もしは昇しょうもしは沈ちん、 輪りん廻ねにあらずといふことなし。

第十ニ増進仏道ノ楽トイフ者、今此ノ娑婆世界ハ修シテ↠道ヲ得ルコト↠果ヲ甚ダ難シ。*云何トナレバ者受クル↠苦ヲ者ハ常ニ憂ヘ、受クル↠楽ヲ者ハ常ニ著ス。苦ト云ヒ楽ト云ヒ、遠↢離ス解脱ヲ↡。若シハ昇若シハ沈、無シ↠非ズトイフコト↢輪廻ニ↡。

^たまたま*発心ほっしんして修しゅ行ぎょうするものありといへども、 また成じょう就じゅしがたし。 煩悩ぼんのう内うちに催もよおし、 悪縁あくえん外ほかに牽ひきて、 あるいは二に乗じょうの心しんを発おこし、 あるいは三さん悪道まくどうに還かえりぬ。 たとへば、 水みずのなかの月つきの、 波なみに随したがひて動うごきやすく、 陣じんの前まえの軍ぐんの、 刃やいばに臨のぞみてすなはち還かえるがごとし。 魚ぎょ子し長ちょうじがたく、 *菴あん菓か熟じゅくすること少すくなし。 かの*身しん子し (舎利弗) 等とうの、 六十ろくじっ劫こうに退たいせるもののごとき、 これなり。

適マ雖モ↠有リト↢発心シテ修行ノ者↡亦難シ↢成就シ↡。煩悩内ニ催シ、悪縁外ニ牽キテ、或イハ発シ↢二乗ノ心ヲ↡、或イハ還リヌ↢三悪道ニ↡。譬ヘバ猶シ↢水ノ中之月ノ随ヒテ↠波ニ易ク↠動キ、*陳ノ前之軍ノ臨ミテ↠刃ニ則チ還ルガ↡。魚子難ク↠長ジ、菴菓少シ↠熟スルコト。如キ↢彼ノ身子等ノ六十劫ニ退セル者ノ↡是也。

^ただ釈しゃ迦か如来にょらい、 無む量りょう劫こうに難なん行ぎょう苦く行ぎょうし、 功こうを積つみ、 徳とくを累かさねて、 菩ぼ薩さつの道どうを求もとめて、 いまだかつて止し息そくしたまはず。 三千さんぜん大千だいせん世せ界かいを観かんずるに、 乃ない至し、 芥子けしばかりのごときも、 この菩ぼ薩さつの身しん命みょうを捨すてたる処ところにあらざること、 あることなし。 衆しゅ生じょうのためのゆゑなり。 しかして後のちに、 すなはち菩ぼ提だいの道どうを成じょうずることを得えたまへり。

唯シ釈迦如来於テ↢無量劫ニ↡難行苦行シ、積ミ↠功ヲ累ネテ↠徳ヲ、求メマフシテ↢菩薩ノ道ヲ↡、未ダ↢曽ムカシニモ止息シタマハ↡。観ズルニ↢三千大千世界ヲ↡、乃至無シ↠有ルコト↧如キモ↢芥子*許バカリノ↡、非ザルハ↦是ノ菩薩ノ捨テタル↢身命ヲ↡処ニ↥。為ノ↢衆生ノ↡故ニ、然シテ後ニ乃シ得タマヘリ↠成ズルコトヲ↢菩提ノ道ヲ↡。

^その余よの衆しゅ生じょうはおのが*智ち分ぶんにあらず。 象ぞうの子こは力ちから微よわければ、 身みは刀箭とうせんに歿もっす。

其ノ余ノ衆生ハ非ズ↢己ガ智分ニ↡。象ノ子ハ力微ヨワクシテ、身ハ*歿ス↢刀箭ニ↡。

^ゆゑに龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつのいはく (大智度論・意)、 「▲たとへば四し十じゅう里りの氷こおりに、 もし一人いちにんありて一いっ升しょうの熱湯ねっとうをもつてこれに投いるれば、 当とう時じは氷こおり減げんずるに似にた0885れども、 夜よを経へて明あけに至いたれば、 すなはち余よのものよりも高たかきがごとし。 ◆凡ぼん夫ぶのここにありて発心ほっしんして、 苦くを救すくはんとするもまたかくのごとし。 貪瞋とんじんの境きょう、 順じゅん違い多おおきをもつてのゆゑに、 みづから煩悩ぼんのうを起おこして、 かへりて悪道あくどうに堕だしぬ」 と。 以上

故ニ龍樹菩薩ノ云ク、「譬ヘバ如キニ↢里ノ氷ノ↡、如シ↧有リテ↢一ノ人↡以テ↢一升ノ熱キ湯ヲ↡投オケバ↠之ヲ、当時ニハ似タレドモ↢氷減ズルニ↡、経テ↠夜ヲ至レバ↠明クルニ、乃チ高キガ↦於余ノ者ヨリモ↥。凡夫ノ在リテ↠此ニ発心シテ、救ハムトスルニ↠苦ヲ亦復如シ↠是クノ。以テノ↢貪瞋ノ境、順違多キヲ↡故ニ、自ラ起シテ↢煩悩ヲ↡、返リテ堕シヌト↢悪道ニ↡。 已上

^かの極楽ごくらく国こく土どの衆しゅ生じょうは、 多おおくの因縁いんねんあるがゆゑに、 畢ひっ竟きょうじて退たいせずして、 仏道ぶつどうに増進ぞうしんす。 一いちには、 仏ぶつの悲ひ願がん力りきつねに摂しょう持じするがゆゑに。 二にには、 仏ぶつの光ひかりつねに照てらして菩ぼ提心だいしんを増ぞうするがゆゑに。 三さんには、 水すい・鳥ちょう・樹林じゅりん・風ふう鈴りょう等とうの声こえ、 つねに念仏ねんぶつ・念法ねんぽう・念僧ねんそうの心しんを生しょうぜしむるがゆゑに。 四しには、 もつぱらもろもろの菩ぼ薩さつを、 もつて善ぜん友ぬとなして、 外ほかに悪縁あくえんなく、 内うちに*重じゅう惑わくを伏ぶくせるがゆゑに。 五ごには、 寿じゅ命みょう永劫ようごうにして、 仏ぶつとともに斉等ざいとうにして、 仏道ぶつどうを修しゅ習じゅうするに、 生しょう死じの間けん隔きゃくあることなきがゆゑに。

彼ノ極楽国土ノ衆生ハ有ルガ↢多クノ因縁↡故ニ、畢1066竟ジテ不シテ↠退セ増↢進ス仏道ニ↡。一ニハ仏ノ悲願力常ニ摂持スルガ故ニ。二ニハ仏ノ光常ニ照シテ増スルガ↢菩提心ヲ↡故ニ。三ニハ水・鳥・樹林・風鈴等ノ声、常ニ令ムルガ↠生ゼ↢念仏・念法・念僧之心ヲ↡故ニ。四ニハ純モハラニ諸ノ菩薩ヲ以テ為シテ↢善友ト↡、外ニ無ク↢悪縁↡、内ニ伏セルガ↢重*或ヲ↡故ニ。五ニハ寿命永劫ニシテ、共ニ↠仏ト斉等ニシテ、修↢習スルニ仏道ヲ↡、無キガ↠有ルコト↢生死之間隔↡故ニ。

^¬華け厳ごん¼ の偈げにのたまはく、

¬花厳ノ¼偈ニ云ク、

^「もし衆しゅ生じょうありて一ひとたび仏ぶつを見みたてまつれば、 かならずもろもろの*業ごっ障しょうを浄じょう除じょせしむ」 と。

「若シ有リテ↢衆生↡一タビ見ルハ↠仏ヲ必ズ使ムト↣浄↢除セ諸ノ業障ヲ↡」

^一ひとたび見みたてまつるすら、 なほしかなり。 いかにいはんやつねに見みたてまつるをや。 この因縁いんねんによりて、 かの土どの衆しゅ生じょうは、 あらゆる万物まんもつにおいて、 *我が・我が所しょの心しんなし。 去こ来らい進しん止しに心しん係かくるところなし。 もろもろの衆しゅ生じょうにおいて大だい悲ひ心を得え0886、 自じ然ねんに増進ぞうしんして、 無む生しょう忍にんを悟さとり、 究く竟きょうしてかならず一いっ生しょう補ふ処しょに至いたり、 乃ない至し、 すみやかに*無む上じょう菩ぼ提だいを証しょうす。

一タビ見ル、尚シ爾ナリ。何ニ況ヤ常ニ見ムヲヤ。由リテ↢此ノ因縁ニ↡彼ノ土ノ衆生ハ、於テ↢所有ノ万物ニ↡無シ↢我・我所ノ心↡。去来進止ニ心无シ↠所↠係クル。於テ↢諸ノ衆生ニ↡得↢大悲心ヲ↡、自然ニ増進シテ、悟ル↢无生忍ヲ↡。究竟シテ必ズ至リ↢一生補処ニ↡、乃至速ニ証ス↢无上菩提ヲ↡。

^衆しゅ生じょうのためのゆゑに、 八相はっそうを示じ現げんし、 縁えんに随したがひ、 厳ごん浄じょうの国こく土どにありて*妙みょう法輪ほうりんを転てんじ、 もろもろの衆しゅ生じょうを度どす。 もろもろの衆しゅ生じょうをしてその国くにを欣ごん求ぐせしむること、 わが今日こんにち、 極楽ごくらくを志し願がんするがごとくす。 また十方じっぽうに往ゆきて衆しゅ生じょうを*引いん接じょうすること、 弥陀みだ仏ぶつの大だい悲ひの本願ほんがんのごとくあらん。

為ノ↢衆生ノ↡故ニ示↢現シ八相ヲ↡、随ヒテ↠縁ニ在リテ↢於厳浄ノ国土ニ↡転ジ↢妙法輪ヲ↡、度ス↢諸ノ衆生ヲ↡。令ムルコト↣諸ノ衆生ヲシテ欣↢求セ其ノ国ヲ↡、如クス↣我ガ今日志↢願スルガ極楽ヲ↡。亦往キテ↢十方ニ↡引↢接スルコト衆生ヲ↡、如クアラム↢弥陀仏ノ大悲ノ本願ノ↡。

^かくのごとき利り益やく、 また楽たのしからずや。 一いっ世せの勤修ごんしゅは、 これ須しゅ臾ゆのあひだなり。 なんぞ衆しゅ事じを棄すてて浄じょう土どを求もとめざらんや。 願ねがはくはもろもろの行ぎょう者じゃ、 ゆめ懈おこたることなかれ。 多おおくは ¬双巻そうかん経ぎょう¼ (大経)、 ならびに天台てんだい ¬*十じゅう疑ぎ¼ 等とうの意こころによる。

如キ↠是クノ利益不↢亦楽カラ↡乎。一世ノ勤修ハ是須臾ノ間ナリ。何ゾ不ラム↧棄テテ↢衆事ヲ↡求メ↦浄土ヲ↥哉。願クハ諸ノ行者努力 ユメ 匪ナカレ↠懈オコタルコト。多ク依ル↢¬双巻経¼、并ニ天台¬十疑¼等ノ意ニ↡

^龍りゅう樹じゅの偈げ (十二礼) にいはく、

龍樹ノ偈ニ云ク、

^「▲かの尊そんの無む量りょう方便ほうべんの境きょうには、 諸趣しょしゅと悪あく知ち識しきとあることなし。
往おう生じょうしぬれば退たいせずして菩ぼ提だいに至いたる。 ゆゑにわれ、 弥陀みだ仏ぶつを頂ちょう礼らいしたてまつる。

「彼ノ尊ノ無量ノ方便ノ境ニハ無シ↠有ルコト↢諸趣ト悪知識ト↡
往生スルハ不シテ↠退セ至ル↢菩提ニ↡故ニ我頂↢礼シタテマツル弥陀仏ヲ↡

^◆われかの尊そんの功く徳どくの事じを説とくに、 衆善しゅぜん無む辺へんなること海水かいすいのごとし。
所しょ獲ぎゃくの善根ぜんごん清浄しょうじょうなるものをもつて、 願ねがはくは衆しゅ生じょうとともにかの国くにに生うまれん。
^0887願ねがはくはもろもろの衆しゅ生じょうとともに、 安楽あんらく国こくに往おう生じょうせん」 と。

我説クニ↢彼ノ尊ノ功徳ノ事ヲ↡衆善无辺ナルコト如シ↢海水ノ↡
所獲ノ善根清浄ナル者ヲモテ願クハ共ニ↢衆生ト↡生レム↢彼ノ国ニ↡
願クハ共ニ↢諸ノ衆生ト↡往↢生セムト安楽国ニ↡」

二 Ⅲ 極楽証拠

【32】^大文だいもん第だい三さんに、 △*極楽ごくらく証しょう拠こを明あかさば、 二にあり。 一いちは▽十方じっぽうに対たいす。 二には▽兜と率そつに対たいす。

大1067文第三ニ▼明サバ↢▼*極楽ノ証拠ヲ↡者、有リ↠二。▼一ハ対ス↢十方ニ↡。二ハ対ス↢兜率ニ↡。

二 Ⅲ ⅰ ▼対十方

【33】^初はじめに△十方じっぽうに対たいすとは、

◆初ニ対セバ↢十方ニ↡者、

^問とはく、 十方じっぽうに浄じょう土どあり。 なんぞただ極楽ごくらくにのみ生しょうぜんと願ねがふや。

◆問ハク、十方ニ有リ↢浄土↡。何ゾ唯シ願フ↠生ゼムト↢極楽ニノミ↡耶。

^答こたふ。 天台てんだい大だい師し (*智顗) のいはく (十疑論・意)、 「もろもろの経きょう論ろん、 処々しょしょにただ衆しゅ生じょうを勧すすめてひとへに阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじ、 西方さいほうの極楽ごくらく世せ界かいを求もとめしめたまへり。 ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼・¬観かん経ぎょう¼・¬*往おう生じょう論ろん¼ (天親の浄土論) 等とうの数しゅ十じゅう余部よぶの経きょう論ろんの文もんに、 *慇懃おんごんに*指し授じゅして西方さいほうに生しょうずることを勧すすめたり。 ここをもつてひとへに念ねんず」 と。 以上

◆答フ。天台大師ノ云ク、「▼諸ノ経論、処々ニ唯勧メテ↢衆生ヲ↡偏ニ念ジ↢阿弥陀仏ヲ↡、令メタマヘリ↠求メ↢西方ノ極楽世界ヲ↡。¬無量寿経¼・¬観経¼・¬往生論¼等ノ数十余部ノ経論ノ文ニ、慇懃ニ指授シテ勧メタリ↠生ゼムコトヲ↢西方ニ↡。是ヲ以テ偏ニ念ズト也。」 已上

^大だい師し (智顗)、 一切いっさいの経きょう論ろんを披ひ閲えつしたまへること、 おほよそ十じゅう五ご遍へん。 知しるべし、 述のべたまへるところ、 信しんぜずはあるべからず。

大師披↢閲シタマヘルコト一切ノ経論ヲ↡、凡ソ十五遍。応シ↠知ル、所↠述ベタマヘル不↠可カラ↠不ハアル↠信ゼ。

・ 十二経七論

^*迦か才ざい師しの三巻さんがん ¬*浄じょう土ど論ろん¼ に、 十じゅう二に経きょう七論しちろんを引ひけり。 一いちには ¬*無む量りょう寿じゅ経きょう¼、 二にには ¬*観かん経ぎょう¼、 三さんには ¬*小しょう阿あ弥陀みだ経きょう¼、 四しには ¬*鼓く音おん声じょう経きょう¼、 五ごには ¬*称しょう揚よう諸仏しょぶつ功く徳どく経きょう¼、 六ろくには ¬*発覚ほっかく浄じょう心しん経ぎょう¼、 七しちには ¬*大集だいじっ経きょう¼、 八はちには ¬*十じゅう往おう生じょう経きょう¼、 九くには ¬*薬やく師し経きょう¼、 十じゅうには ¬*般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼、 十じゅう一いちには ¬*大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼、 十じゅう二にには ¬*無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等覚どうがく経きょう¼ なり。

迦才師ノ*三巻¬*浄土論¼ニ、▼引ケリ↢十二経七論ヲ↡。一ニハ¬無量寿経¼、二ニハ¬観経¼、三ニハ¬小阿弥陀経¼、四ニハ¬鼓音声経¼、五ニハ¬称*揚諸仏功徳経¼、六ニハ¬発覚浄心経¼、七ニハ¬大集経¼、八ニハ¬*十往生経¼、九ニハ¬薬師経¼、十ニハ¬般舟三昧経¼、十一ニハ¬大阿弥陀経¼、十二ニハ¬无量清浄平等覚経¼ナリ。

^以い上じょう、 ¬双巻そうかん無む量りょう寿じゅ経きょう¼・¬清浄しょうじょう覚がく経きょう¼・¬大だい阿あ弥陀みだ経きょう¼ は同どう0888本ほん異い訳やくなり。

已上¬双巻无量寿経¼・¬清浄覚経¼・¬大阿弥陀経ハ¼同本異*訳也

^一いちには ¬*往おう生じょう論ろん¼、 二にには ¬*起き信しん論ろん¼、 三さんには ¬*十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼、 四しには一切いっさい経きょうのなかの弥陀みだの偈げ、 五ごには ¬*宝性ほうしょう論ろん¼、 六ろくには龍りゅう樹じゅの ¬*十じゅう二に礼らい¼ の偈げ、 七しちには ¬*摂しょう大だい乗じょう論ろん¼ の弥陀みだの偈げなり。 以い上じょう、 *智ち憬きょう師しこれに同おなじ。

一ニハ¬往生論¼、二ニハ¬起信論¼、三ニハ¬十住毘婆*娑論¼、四ニハ一切経ノ中ノ弥陀ノ偈、五ニハ¬宝性論¼、六ニハ龍樹ノ¬十二礼ノ¼偈、七ニハ¬摂大乗論ノ¼弥陀ノ偈ナリ。已上智憬師同ジ↠之ニ

^わたくしに加くわへていはく、 ¬*法華ほけ経きょう¼ の 「*薬王やくおう品ぼん」、 ¬*四し十じゅう華け厳ごん経ぎょう¼ の普ふ賢げん願がん、 ¬*目連もくれん所問しょもん経ぎょう¼・¬*三千さんぜん仏ぶつ名みょう経きょう¼・¬*無字むじ宝ほう篋きょう経きょう¼・¬*千手せんじゅ陀羅尼だらに経きょう¼・¬*十じゅう一いち面めん経ぎょう¼・¬*不ふ空くう羂けん索じゃく¼・¬*如にょ意い輪りん¼・¬*随ずい求ぐ¼・¬*尊そん勝しょう¼・¬*無垢むく浄じょう光こう¼・¬*光こう明みょう¼・¬*阿あ弥陀みだ¼ 等とうのもろもろの*顕けん・密教みっきょうのなかに、 もつぱら極楽ごくらくを勧すすめたること、 称しょう計げすべからず。 ゆゑにひとへに願がん求ぐす。

私ニ加ヘテ云ク、¬法華経ノ¼「薬王品」、¬四十花厳経ノ¼普賢願、¬目*連所問経¼・¬三千仏名経¼・¬無字宝篋経¼・¬千手陀羅尼経¼・¬十一面経¼・¬不空羂索¼・¬如意輪¼・¬随求¼・¬尊勝¼・¬無垢浄光¼・¬光明¼・¬阿弥陀¼等ノ諸ノ顕密教ノ中ニ、専ラ勧メタルコト↢極楽ヲ↡、不↠可カラ↢称計ス↡。故ニ偏ニ願1068求ス。

 ^問とふ。 仏ぶつののたまはく、 「諸仏しょぶつの浄じょう土どは実じつに差別しゃべつなし」 と。 なんがゆゑぞ如来にょらいはひとへに西方さいほうを讃さんじたまふ。

問フラク、仏ノ言ク、諸仏ノ浄土ハ*実ニ無シト↢差別↡。何ガ故ゾ如来ハ偏ニ讃ジタマフ↢西方ヲ↡。

^答こたふ。 ¬*随願ずいがん往おう生じょう経きょう¼ に、 仏ぶつ、 この疑うたがいを決けっしてのたまはく、 「娑しゃ婆ば世せ界かいは、 人ひと、 貪とん濁じょく多おおくして、 *信向しんこうのものは少すくなく、 習じゅう邪じゃのものは多おおくして正しょう法ぼうを信しんぜず、 専一せんいつなることあたはざれば、 心こころ乱みだれて志こころざしなし。 実じつには差別しゃべつなけれども、 もろもろの衆しゅ生じょうをして専心せんしんにあることあらしむ。 このゆゑにかの国こく土どを讃嘆さんだんしたまふのみ。 もろもろの往おう生じょう人にん、 ことごとくかの願がんに随したがひて果かを獲えずといふことなし」 と。

答フラク、¬随願往生経ニ¼仏決シテ↢此ノ疑ヲ↡言ク、「娑婆世界ハ人多シ↢貪濁↡。信向ノ者ハ少ク、習邪ノ者ハ多クシテ不↠信ゼ↢正法ヲ↡。不レバ↠能ハ↢専一ニスルコト↡。心乱レテ无シ↠志。実ニハ無ケレドモ↢差別↡、令ム↢諸ノ衆生ヲシテ専心ニ有ラ↟在ルコト。是ノ故ニ讃↢嘆シタマフラク彼ノ国土ヲ↡耳。諸ノ往生人、悉ク随ヒテ↢彼ノ願ニ↡无シト↠不トイフコト↠獲↠果ヲ」。

^また ¬心しん地じ観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「も0889ろもろの*仏ぶっ子し等とう、 まさに心しんを至いたして一仏いちぶつおよび一いち菩ぼ薩さつを見みんと求もとむべし。 かくのごときを名なづけて*出しゅっ世せの法要ほうようとなす」 と。 云々

又¬心地観経ニ¼云ク、「諸ノ仏子等応ニ当シ↢至シテ↠心ヲ求ム↟見ムト↢一仏及ビ*一菩薩ヲ↡。如キヲ↠是クノ名ケテ為スト↢出世ノ法要ト↡。」云々

^このゆゑに、 もつぱら一仏いちぶつの国くにを求もとめしむるなり。

是ノ故ニ専ラ求メシムル↢一仏ノ国ヲ↡也。

 ^問とふ。 その心しんをもつぱらにせんがために、 なんがゆゑぞ中なかにおいてただ極楽ごくらくをしも勧すすむる。

問ハク、為ニ↠専ニセムガ↢其ノ心ヲ↡、何ガ故ゾ於テ↠中ニ唯勧ムル↢極楽ヲシモ↡*耶。

^答こたふ。 たとひ余よの浄じょう土どを勧すすむとも、 またこの難なんを避さらじ。 仏ぶつ意い、 測はかりがたし。 ただ仰あおぎて信しんずべし。 たとへば、 痴ち人にんの、 火か坑きょうに堕おちてみづから出いづることあたはざらんに、 知ち識しきこれを救すくふに一いちの方便ほうべんをもつてせば、 痴ち人にん、 力ちからを得えて、 務いそぎてすみやかに出いづべし。 なんの暇いとまありてか、 縦じゅう横おうに余よの術じゅっ計けいを論ろんぜんや。 行ぎょう者じゃもまたしかり。 他た念ねんを生しょうずることなかれ。

答フラク、設ヒ勧ムトモ↢余ノ浄土ヲ↡、亦不↠避サラ↢此ノ難ヲ↡。仏意難シ↠測リ。唯可シ↢仰ギテ信ズ↡。譬ヘバ若シ↧痴人ノ*堕チテ↢火坑ニ↡不ルガ↞能ハ↢自ラ出ヅルコト↡。知識救フニ↠之ヲ以テセム↢一ノ方便ヲ↡。痴人得ナバ↠力ヲ、応シ↢務イソギテ速ニ出ヅ↡。何ノ暇ニカ縦横ニ論ゼムヤ↢余ノ術計ヲ↡。行者モ亦爾リ。勿レ↠生ズルコト↢他念ヲ↡。

^▲¬目連もくれん所問しょもん経ぎょう¼ にのたまふがごとし。 「たとへば、 万川ばんせんの長流ちょうりゅうに浮うかべる草木そうもくありて、 前さきは後あとを顧みず、 後あとは前さきを顧みず、 すべて大海だいかいに会あつまるがごとく、 世せ間けんもまたしかり。 豪ごう貴き・富ふ楽らく、 自じ在ざいなることありといへども、 ことごとく生しょう老ろう病びょう死しを免まぬかるることを得えず。 ただ仏ぶっ経きょうを信しんぜざるによるに、 後世ごせに人ひととなれども、 さらにはなはだしく困こん劇ぎゃくして、 千仏せんぶつの国こく土どに生しょうずることを得うることあたはず。

如シ↢¬目連所問経ニ¼云フガ↡。「譬ヘバ如ク↧万川ノ長流ニ有リテ↢浮ベル草木↡、前ハ不↠顧ミ↠後ヲ、後ハ不↠顧ミ↠前ヲ、都テ会アツマルガ↦大海ニ↥、世間モ亦爾リ。雖モ↠有リト↢豪貴・富楽・自在ナルコト↡、悉ク不↠得↠免ルルコトヲ↢生老病死ヲ↡。只由ルニ↠不ルニ↠信ゼ↢仏経ヲ↡、後世ニ為レドモ↠人ト更ニ甚シクシテ困劇シテ、不↠能ハ↠得ルコト↠生ズルコトヲ↢千仏ノ国土ニ↡。

^このゆゑにわれ説とく。 ª無む量りょう寿じゅ仏ぶつの国くには、 往ゆきやすく取とりやすし。 しかるを人ひと、 修しゅ行ぎょうして往おう生じょうすること0890あたはずして、 かへりて*九く十じゅう五ご種しゅの邪道じゃどうに事つかふº と。 われ説ときて、 この人ひとを*無む眼げんの人にんと名なづけ、 *無耳むにの人にんと名なづく」 と。 以上

是ノ故ニ我説ク、無量寿仏ノ国ハ易ク↠往キ易シ↠取リ。而ルヲ人不シテ↠能ハ↢修行シテ往生スルコト↡、反リテ事ツカフト↢九十五種ノ邪道ニ↡。我説キテ是ノ人ヲバ名ク↢無眼ノ人ト↡、名クトイヘリ↢無耳ノ人ト↡。」 *已上

^¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ (意) にのたまはく、 「▲われこの利りを見みるがゆゑに、 この言ごんを説とく。 もし信しんずることあるものは、 まさに願がんを発おこして、 かの国こく土どに生うまるべし」 と。 以上

¬阿弥陀経ニ¼云ク、「我見ルガ↢是ノ利ヲ↡故ニ、説ク↢是ノ言ヲ↡。若シ有ラム↠信ズルコト者1069ハ、応ニ当シト↣発シテ↠願ヲ生ル↢彼ノ国土ニ↡。」 已上

^仏ぶつの誡いましめ、 慇懃おんごんなり。 ただ仰あおぎて信しんずべし。 いはんやまた機き縁えんなきにあらず。 なんぞ強しひてこれを拒こばまん。

仏ノ誡慇懃ナリ。唯応シ↢仰ギテ信ズ↡。況ヤ復非ズ↠無キニ↢機縁↡。何ゾ強ヒテ拒マム↠之ヲ。

^天台てんだい (智顗) の ¬十じゅう疑ぎ¼ (意) にいふがごとし。 「阿あ弥陀みだ仏ぶつ、 別べつに大だい悲ひの四し十じゅう八はち願がんましまして、 衆しゅ生じょうを*接しょう引いんしたまふ。 またかの仏ぶつの光こう明みょう、 あまねく法界ほうかいの念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうを照てらして、 *摂取せっしゅして捨すてたまはず。 十方じっぽう各かく恒ごう河が沙しゃの諸仏しょぶつ、 *舌したを舒のべて三さん千界ぜんかいを覆おおひ、 一切いっさい衆しゅ生じょうの、 阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじ、 仏ぶつの大だい悲ひ本願ほんがん力りきに乗じょうじて、 決けつ定じょうして極楽ごくらく世せ界かいに生うまるることを得うることを*証成しょうじょうしたまへり。

▼如シ↢天台ノ¬十疑ニ¼云フガ↡。「▼阿弥陀仏別ニ有シテ↢大悲ノ八願↡、接↢引シタマフ衆生ヲ↡。又彼ノ仏ノ光明遍ク照シテ↢法界ノ念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不↠捨テタマハ。十方各恒河沙ノ諸仏、舒ベテ↠舌ヲ覆ヒテ↢三千界ヲ↡、証↧*成シタマヘリトイヘリ一切衆生ノ念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡、乗ジテ↢仏ノ大悲本願力ニ↡、決定シテ得ルコトヲ↞生ズルコトヲ↢極楽世界ニ↡。

^また ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ にのたまはく、 ª▲*末まつ後ご法滅ほうめつの時ときに、 ことにこの経きょうを留とどめて、 百ひゃく年ねん世よにあらしめて、 衆しゅ生じょうを接しょう引いんして、 かの国こく土どに生うまれしめんº と。 ゆゑに知しりぬ、 阿あ弥陀みだ仏ぶつと、 この世せ界かいの極悪ごくあくの衆しゅ生じょうとは、 ひとへに因縁いんねんありといふことを」 と。 以上

◆*又¬無量寿経ニ¼云ク、*末後法滅之時ニ、特ニ留メテ↢此ノ経ヲ↡百年在ラシメテ↠世ニ、接↢引シテ衆生ヲ↡、生レシメムト↢彼ノ国土ニ↡。故ニ知リヌ、阿弥陀*仏ト与ニ↢此ノ世界ノ極悪ノ衆生ノ↡、偏ニ有スト↢因縁↡。」 已上

^*慈じ恩おん (窺基) のいはく (*西方要決)、 「末法まっぽう万年まんねんに、 余よ経きょうはことごとく滅めっして、 弥陀みだの一いっ教きょうは*物ものを利りすることひとへに増ぞうせらん。 大聖だいしょう (釈尊) ことに留とどめたまふこと0891百ひゃく歳さいなり。 時ときに末法まっぽうを経へること一いち万年まんねんに満みたば、 一切いっさいの諸しょ経きょうはならびに従したがひて滅没めつもつせん。 釈しゃ迦かの恩おん重おもくして、 教きょうを留とどめたまへること百ひゃく年ねんなり」 と。 以上

慈恩ノ云ク、「*末法万年ニ余経ハ悉ク滅シテ、弥陀ノ一教ハ利スルコト↠物ヲ偏ニ増セラム。大聖特ニ留メタマフコト百歳ナリ。時ニ経テ↢*末法ヲ↡満テテ↢一万年ヲ↡、一切ノ諸経ハ並ニ従ハム↢滅没ニ↡。釈迦ノ恩重クシテ、留メタマヘルコト↠教ヲ百年ナリト。」 已上

^また*懐え感かん禅ぜん師じのいはく (群疑論)、 「¬般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ に説とかく、 ª跋ばつ陀和だわ菩ぼ薩さつ、 釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつを請しょうじてまうさく、 «未み来らいの衆しゅ生じょうは、 いかんしてか十方じっぽうの諸仏しょぶつを見みたてまつることを得えん» と。 仏ぶつ教おしへて、 阿あ弥陀みだを念ねんぜしめたまふに、 すなはち十方じっぽう一切いっさいの仏ぶつを見みたてまつるº と。 この仏ぶつ、 ことに娑しゃ婆ばの衆しゅ生じょうと縁えんあるをもつて、 先まづこの仏ぶつにおいて心しんをもつぱらにして称しょう念ねんすれば、 三昧さんまい成じょうじやすきなり」 と。 以上

又懐感禅師ノ云ク、「¬般舟三昧経ニ¼説カク、跋陀和菩薩請ジテ↢釈迦牟尼仏ヲ↡言ク、未来ノ衆生ハ、云何シテカ得ムト↠見タテマツルコトヲ↢十方ノ諸仏ヲ↡。仏教ヘテ、令メタマヘリ↧念ジテ↢阿弥*陀ヲ↡即チ見↦十方一切ノ仏ヲ↥。以テ↧此ノ仏特ニ与ニ↢娑*婆ノ衆生ノ↡有ルヲ↞縁、先ヅ於テ↢此ノ仏ニ↡専ニシテ心ヲ称念スレバ、三昧易キナリト↠成リ。」 已上

^また*観音かんのん・勢せい至しは、 ▲本もとはこの土どにして菩ぼ薩さつの行ぎょうを修しゅして、 転てんじてかの国くにに生しょうじたまへり。 *宿しゅく縁えんの追おふところ、 あに*機き応おうなからんや。

又観音・勢至ハ、本ハ於テ↢是ノ土ニ↡修シテ↢菩薩ノ行ヲ↡、転ジテ生ジタマヘリ↢彼ノ国ニ↡。宿縁ノ所↠追フ豈ニ無カラム↢機応↡耶。

二 Ⅲ ⅱ ▼対兜率

【34】^第だい二にに△兜と率そつに対たいすとは、

第二ニ対セバ↢兜率ニ↡者、

^問とはく、 *玄げん奘じょう三蔵さんぞうのいはく、 「西方さいほうの道俗どうぞくならびに弥み勒ろくの業ごうをなす。 同おなじく欲界よくかいにしてその行ぎょう成じょうじやすきがためなり。 大だい小乗しょうじょうの師し、 みなこの法ほうを許ゆるす。 弥陀みだの浄じょう土どは、 おそらくは*凡ぼん鄙ぴ穢けがれて修しゅ行ぎょう成じょうじがたからん。

問ハク、玄奘三蔵ノ云ク、「西方ノ道俗並ニ作ル↢弥勒ノ業ヲ↡。為ニナリ↢同ジク欲界1070ニシテ其ノ行易キガ↟成リ。大小乗ノ師皆許ス↢此ノ法ヲ↡。弥陀ノ浄土ハ、恐クハ凡ソ鄙穢ニシテ修行難カラム↠成リ。

^*旧ふるき経きょう論ろんのごときは、 *七しち地じ以い上じょうの菩ぼ薩さつ、 分ぶんに随したがひて*報仏ほうぶつの浄じょう土どを見みると。 *新論しんろんの意こころによらば、 三さん地じの菩ぼ薩さつ、 はじめて報仏ほうぶつの浄じょう土どを見みることを得うべし。

如シ↢旧キ経論ノ↡。七地已上ノ菩薩随ヒテ↠分ニ見ルト↢報仏ノ浄土ヲ↡。依ラバ↢新論ノ意ニ↡、三地ノ菩薩始テ可シ↠得↠見ルコトヲ↢報仏ノ浄土ヲ↡。

^あに下げ品ぼんの凡ぼん夫ぶ、 すなはち往おう生じょうすることを得うべけんや」 と。 以上 天竺てんじく (印0892度) すでにしかり。 いまなんぞ極楽ごくらくを勧すすむるや。

豈ニ容ベケムヤト↣下品ノ凡夫即チ得↢往生ズルコトヲ↡。」 已上 天竺既ニ爾リ。今何ゾ勧ムル↢極楽ヲ↡耶。

^答こたふ。 *中ちゅう国ごく・辺へん州しゅう、 その処ところ異ことなりといへども、 顕密けんみつの教きょう門もんは、 その理りこれ同おなじ。 いま引ひくところのごとき証しょう拠こ、 すでに多おおし。 いかんぞ仏ぶっ教きょうの明あきらかなる文もんに背そむきて、 天竺てんじくの風聞ふうもんに従したがふべけんや。

答フ。中国・辺*州、其ノ処雖モ↠異ナリト、顕密ノ教門ハ其ノ理是同ジ。如キ↢今所ノ↟引ク証拠既ニ多シ。寧ゾ可ケム↧背キテ↢仏教之明カナル文ヲ↡従フ↦天竺之風聞ニ↥耶。

^いかにいはんや、 祇ぎ園おん精しょう舎じゃの無む常じょう院いんには、 病びょう者しゃをして西にしに面むかへて、 仏ぶつ (阿弥陀仏) の*浄じょう刹せつに往ゆく想おもいをなさしめんや。 つぶさには、 ▽下しもの臨りん終じゅうの行ぎょう儀ぎのごとし。 あきらかに知しりぬ、 仏ぶつ意いひとへに極楽ごくらくを勧すすむるにあり。 *西域さいいきの風俗ふうぞく、 あにこれに乖そむかんや。

何ニ況ヤ、祇洹精舎ノ無常院ニハ、令ム↧病者ヲシテ面ヘテ↠西ニ作サ↦往ク↢仏ノ浄刹ニ↡想ヲ↥。具ニハ如シ↢下ノ臨終ノ行儀ノ↡。明カニ知リヌ仏意*偏ニ*在リ↠勧ムルニ↢極楽ヲ↡。西*域ノ風俗豈ニ乖カム↠之ニ耶。

^また懐え感かん禅ぜん師じの ¬群ぐん疑ぎ論ろん¼ には、 極楽ごくらく・兜と率そつにおいて十じゅう二にの勝しょう劣れつを立たてたり。

又*懐感禅師ノ¬*群疑論ニハ¼於テ↢極楽・兜率ニ↡立テタリ↢十二ノ勝劣ヲ↡。

^「一いちには*化け主しゅの仏ぶつと菩ぼ薩さつと別べつなるがゆゑに。

「一ニハ化主ノ、仏ト菩薩ト別ナルガ故ニ。

^二にには浄じょう・穢土えどの別べつ。

二ニハ浄穢土ノ別。

^三さんには女人にょにんの有無うむ。

三ニハ女人ノ有無。

^四しには寿じゅ命みょうの長ちょう短たん。

四ニハ寿命ノ長短。

^五ごには*内ない・外げの有無うむ。 兜と率そつは、 内院ないいんは退たいせず、 外げ院いんは退たいあり。 西方さいほうは内ない・外げなし、 また退たいなし。

五ニハ内外ノ有無。*兜率ハ内院ハ不↠退セ、外院ハ有リ↠退。西*方ハ*无シ↢内外↡。*亦無シ↠退

^六ろくには五ご衰すいの有無うむ。

六ニハ五衰ノ有無。

^七しちには相好そうごうの有無うむ。

七ニハ相好ノ有無。

^八はちには五ご通つうの有無うむ。

八ニハ五通ノ有无。

^九くには不ふ善心ぜんしんの起き・不起ふき。

九ニハ不善心ノ起不起。

^十じゅうには滅罪めつざいの多た少しょう。 いはく、 弥み勒ろくの名みなを称しょうするには千せん二に百ひゃく劫こうの罪つみを除のぞく。 弥陀みだの名みなを称しょうするには八はち十じゅう億おく劫こうの罪つみを滅めっす。

十ニハ滅罪ノ多少。謂ク称スルニハ↢弥勒ノ名ヲ↡除ク↢千二百劫ノ罪ヲ↡。称スルニハ↢弥陀ノ名ヲ↡滅ス↢八十億劫ノ罪ヲ↡。

^十じゅう一いちには苦く受じゅの有無うむ。

十一ニハ苦受ノ有无。

^十じゅう二にには受じゅ生しょうの異い。 兜と率そつは男女なんにょの膝ひざの下した、 懐ふところのなかにあり。 西方さいほうは華はなのうち、 殿でんのなかにあり。

十二ニハ受生ノ異。*兜率ハ在リ↢男女ノ膝ノ下、懐ノ中ニ↡。西方ハ在リ↢華ノ裏ウチ、殿ノ中ニ↡。

^二に処しょの勝しょう劣れつ、 その義ぎかくのごとしといへども、 しかもならびに仏ぶつは勧すすめめ讃さんじたまへ0893り。 あひ是非ぜひすることなかれ」 (意) と。 以い上じょう、 おほよそ二に界かい勝しょう劣れつ・差別しゃべつを立たつ。

雖モ↢二処ノ勝*劣其ノ義如シト↟斯クノ、然モ並ニ仏ハ勧メ讃ジタマヘリ。莫レト↢相是非スルコト↡。」已上凡ソ立ツ↢二界勝劣ノ差別ヲ↡

^慈じ恩おん (窺基) は十じゅうの異いを立たてたり。 前さきの八はちは感かん禅ぜん師じ (懐感) の所しょ立りゅうを出いでず。 ゆゑにさらに抄しょうせず。

慈恩ハ立テタリ↢十ノ異ヲ↡。前ノ八ハ不↠出デ↢感*禅師ノ所立ヲ↡。故ニ不↢更ニ抄セ↡。

^その第だい九くにいはく (西方要決・意)、 「西方さいほうは、 仏ぶつ、 来迎らいこうしたまふ。 兜と率そつはしからず」 と。 感かん師しは 「来迎らいこうは同おなじ」 (群疑論・意) といふ。

其ノ第九ニ云ク、「西方ニハ仏来迎シタマフ。兜率ハ不ト↠爾ラ。」感師ハ云1071フ↢「来迎ハ同ジト」↡也。

^第だい十じゅうにいはく (西方要決・意)、 「西方さいほうは、 経きょう論ろんに慇懃おんごんに勧すすめたまふこときはめて多おおし。 兜と率そつは多おおからず、 また慇懃おんごんにあらず」 と。 云々

第十ニ云ク、「西方ハ経論ニ慇懃ニ勧メタマフコト極テ多シ。兜率ハ非↠多カラ、亦ハ非ト↢慇懃ナラ↡。」云々

^感かん師し (懐感) また往おう生じょうの難なん易いにおいて、 十じゅう五ごの同どうの義ぎ、 八はちの異いの義ぎを立たてたり。 八はちの異いの義ぎとは (群疑論・意)、

感師又於テ↢往生ノ難易ニ↡、立テタリ↢十五ノ同ノ義、八ノ異ノ義ヲ↡。八ノ異ノ義ト者、

^「一いちには本願ほんがんの異い。 いはく、 弥陀みだには▲*引いん摂じょうの願がんあり。 弥み勒ろくには願がんなし。 願がんなきは、 みづから浮およぎて水みずを度わたるがごとし。 願がんあるは、 舟ふねに乗のりて水みずに遊あそぶがごとし。

「一ニハ本願ノ異。謂ク弥陀ニハ有リ↢引摂ノ願↡。弥勒ニハ無シ↠願。無キハ↠願若シ↢自ラ浮オヨギテ度ルガ↟水ヲ。有ルハ↠願若シ↢乗リテ↠舟ニ而遊ブガ↟水ニ。

^二にには光こう明みょうの異い。 いはく、 弥陀みだ仏ぶつの光ひかりは、 念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうを照てらして、 摂取せっしゅして捨すてたまはず。 弥み勒ろくはしからず。 光ひかりの照てらすは、 昼ちゅう日にちの遊あそびのごとく、 光ひかりなきは、 暗やみのなかに来往らいおうするに似にたり。

二ニハ光明ノ異。謂ク弥陀仏ハ光ハ照シテ↢念仏ノ衆生ヲ↡、摂取シテ不↠捨テタマハ。弥勒ハ不↠爾ラ。光ヲモテ照スハ如シ↢昼日之遊ノ↡。無キハ↠光似タリ↢暗ノ中ニ来往スルニ↡。

^三さんには守しゅ護ごの異い。 いはく、 無む数しゅの化け仏ぶつ・観音かんのん・勢せい至し、 つねに行ぎょう者じゃの所ところに至いたりたまふ。 また ¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ にのたまはく、 ª▲十方じっぽうの十じゅう恒ごう河が沙しゃの諸仏しょぶつの、 *摂しょう受じゅするところなりº と。 また ¬十じゅう往おう生じょう経きょう¼ にのたまはく、 ª▲仏ぶつ、 二に十じゅう五ごの菩ぼ薩さつを遣つかはして、 つねに行ぎょう人にんを守しゅ護ごせしむº と。

三ニハ守護ノ異。謂ク無数ノ化仏・観音・勢至、常ニ至リタマフ↢行者ノ所ニ↡。又¬称讃浄土経ニ¼云ク、十方ノ十兢伽沙ノ諸仏之所ナリト↢摂受スル↡。又¬十往生経ニ¼云ク、仏遣シテ↢廿五ノ菩薩ヲ↡常ニ守↢護セシムト行人ヲ↡。

^兜と0894率そつはしからず。 護まもりあるは、 多おおくの人ひとともに遊あそぶに、 強賊ごうぞくに逼せめらるることを畏おぢざるがごとし。 護まもりなきは、 孤ひとり*嶮径けんけいに遊あそぶに、 かならず暴客ぼうかくのために侵おかさるるに似にたり。

兜率ハ不↠爾ラ。有ルハ↠護リ若シ↢多クノ人共ニ遊ブニ、不ルガ↟畏オヂ↢強賊ニ所ムコトヲ↟逼サ。無キハ↠護リ似タリ↧孤ヒトリ遊ブニ↢嶮径ニ↡、必ズ為ニ↢暴客ノ↡所ルニ↞侵サ。

^四しには*舒舌じょぜつの異い。 いはく、 十方じっぽうの仏ぶつ、 舌したを舒のべて証成しょうじょうしたまふ。 兜と率そつはしからず。

四ニハ舒舌ノ異。謂ク十方ノ仏舒ベテ↠舌ヲ証*成シタマフ。兜率ハ不↠爾ラ。

^五ごには衆しゅ聖しょうの異い。 いはく、 華け聚じゅ菩ぼ薩さつ・山海さんかい慧え菩ぼ薩さつ、 *弘ぐ誓ぜい願がんを発おこさく、 ªもし一いち衆しゅ生じょうとして、 西方さいほうに生うまるること尽つきざることあらんに、 われもし先まづ去さらば、 正しょう覚がくを取とらじº と。

五ニハ衆聖ノ異。謂ク花聚菩薩・山海*慧菩薩、発サク↢弘誓願ヲ↡、若シ有リテ↣一衆生トシテモ生ルルコト↢西方ニ↡不ラムニ↠尽キ、我若シ先ヅ去ラバ、不ト↠取ラ↢正覚ヲ↡。

^六ろくには滅罪めつざいの多た少しょう。 同前

六ニハ滅罪ノ多少。*同前

^七しちには重じゅう悪あくの異い。 いはく、 五ご逆ぎゃく罪ざいを造つくれるものも、 また西方さいほうに生うまるることを得う。 兜と率そつはしからず。

七ニハ重悪ノ異。謂造レルハ↢五逆罪ヲ↡亦得↠生ズルコトヲ↢西方ニハ↡。兜率ハ不↠爾ラ。

^八はちには教きょう説せつの異い。 いはく、 ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ にのたまはく、 ª▲横よこさまに五ごの悪趣あくしゅを截きり、 悪趣あくしゅ自じ然ねんに閉とぢ、 道どうに昇のぼるに窮極ぐうごくなからん。 往ゆきやすくして人ひとなしº と。 兜と率そつはしからず。

八ニハ教説ノ異。謂ク¬無量寿経ニ¼云ク、横ニ截リ↢五ノ悪趣ヲ↡、悪趣自然ニ閉ヂテ、昇↠道無窮ナリ。極テ易ケレドモ↠往キ而無シト↠人。兜率ハ不↠*爾ラ。

^十じゅう五ごの同どうの義ぎあらん。 なほ生しょうじがたしと説とくべからず。 いはんや、 異いに八はちの門もんあり。 しかるをすなはち説ときて、 往ゆきがたしといはんや。 請こふ、 もろもろの学者がくしゃ、 理りおよび教きょうを尋たずねて、 その*難なん易いの二にの門もんを鑑かんがみて、 永ながくその惑まどひを除のぞくべし」 と。 以い上じょう略抄りゃくしょう。 ただ十じゅう五ごの同どうの義ぎ、 かの ¬論ろん¼ (群疑論) を見みるべし。

十五ノ同ノ義アラム。猶不↠可カラ↠説ク↢於難シト↟生ジ。況ヤ異ニ有リ↢八ノ門↡。而ルヲ乃チ説キテ言ハムヤ↠難シト↠往キ。請フ、諸ノ学者尋ネテ↢理及ビ教ヲ↡、鑑ミテ↢其ノ難易ノ二ノ門ヲ↡、可1072シト↣永ク除ク↢其ノ*或マドヒヲ↡矣。」已上略抄。但十五ノ同ノ義、可シ↠見ル↢彼ノ¬論ヲ¼↡

 ^問とはく、 玄げん奘じょうの伝つたふるところ、 会えせずはあるべからず。

問ハク、玄奘ノ所↠伝フル、不↠可カラ↠不ハアル↠会セ。

^答こたふ。 西域さいいきの行ぎょう法ほう、 暗くら0895ければ決けっしがたきも、 いま試こころみに会えしていはく、 かの土どの行ぎょう者じゃ、 多おおく小乗しょうじょうにあり。

答フラク、西*域ノ行法暗ソラニ以テ難シ↠決シ。今試ニ会シテ云ク、*彼ノ土ノ行者、多ク有リ↢小乗ニ↡。

^*相伝そうでんにいはく、 「十じゅう五ご国こくは大だい乗じょうを学がくし、 十じゅう五ご国こくは大だい小しょう兼学けんがくす。 四し十じゅう一いっ国こくは小乗しょうじょうを学がくす」 と。

*相伝ニ云ク、「十五国ハ学シ↢大乗ヲ↡、十五国ハ大小兼学ス。一国ハ学スト↢小乗ヲ↡。」

^兜と率そつに上生じょうしょうすることをば、 大だい小しょうともに許ゆるせり。 他た方ほうの仏ぶつ土どに往ゆくことをば、 大だいは許ゆるして小しょうは許ゆるさず。 かれをばともに許ゆるせるがゆゑに、 ならびに兜と率そつといふか。

上↢生スルコトヲバ兜率ニ↡大小共ニ許セリ。往クコトヲバ↢他方ノ仏土ニ↡大ハ許シテ小ハ不↠許サ。彼ヲバ共ニ許セルガ故ニ、並ニ云フカ↢兜率ト↡。

^*流りゅう沙さ以い東とう盛さかりに大だい乗じょうを興おこす。 かの西域さいいきの雑ぞう行ぎょうには同どうずべからず。 いかにいはんや、 諸しょ教きょうの興こう隆りゅうはかならずしも一いち時じならず。 就中なかんずく、 念仏ねんぶつの教おしえは、 多おおく末代まつだいの、 経きょう道どう滅めっして後のちの濁じょく悪あくの衆しゅ生じょうを利りす。 はかりみるに、 かの時ときには、 天竺てんじく (印度) にいまだ興こう盛じょうならざりしか。 もししからずは、 上じょう足そくの*基師きし、 あに別べつに ¬西方さいほう要決ようけつ¼ を著しるして、 十じゅうの勝しょう劣れつを立たてて、 自他じたを勧すすむべけんや。

流沙以東盛ニ興ス↢大乗ヲ↡。不↠可カラ↠同ズ↢彼ノ西*域ノ雑行ニハ↡。何ニ況ヤ、諸教ノ興隆ハ不↢必ズシモ一時ナラ↡。就キテ↠中ニ念仏之教ハ多ク利ス↢末代ノ経道滅シテ後ノ濁悪ノ衆生ヲ↡。*計也ハカリミルニ、彼ノ時ニハ天竺ニ未ダル↢興盛ナラ↡歟。若シ不ハ↠爾ラ者、上足ノ基師豈ニ容ベケム↧別ニ著シルシテ↢¬西方要決ヲ¼↡、立テテ↢十ノ勝劣ヲ↡勧ム↦自他ヲ↥耶。

 ^問とふ。 ¬心しん地じ観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 「われいまの弟子でしをば弥み勒ろくに付ふす。 *↓竜りゅう華げ会えのなかに解げ脱だつを得えん」 と。 あに如来にょらい (釈尊) の、 兜と率そつを勧進すすめたまふにあらずや。

問フ。¬心地観経ニ¼云ク、「我今ノ弟子ヲバ付ク↢弥勒ニ↡。竜花会ノ中ニ得シメヨト↢解脱ヲ↡。」豈ニ非ズ↣如来ノ勧↢進 スス メタマフニ兜率ヲ↡*耶。

^答こたふ。 これまた違いすることなし。 たれか、 *¬上生じょうしょう¼・¬心しん地じ¼ 等とうの両りょう三さんの経きょうをば*遮しゃせん。 しかも極楽ごくらくの文もんの、 顕密けんみつに*且千しゃせんなるにはしかず。

答フ。此亦无シ↠違スルコト。誰カハ遮スル↢¬上生¼・¬心地¼等ノ両三ノ経ヲバ↡。然モ不ズ↠如クニハ↢極楽之文ノ顕密ニ且千ナルガ↡。

^また ¬*大だい悲ひ経きょう¼ の第三だいさん (意) にのたまはく、 「*当来とうらいの世よに、 法ほうの滅めっせんと欲ほっする時ときに、 まさに比丘びく・比丘びく尼にありて、 わが法ほうのなかにおいて出しゅっ家けを得えをはり、 手てに児この臂ひじを0896牽ひきてともに遊ゆ行ぎょうし、 酒しゅ家けより酒しゅ家けに至いたりて、 わが法ほうのなかにおいて*非ひ梵ぼん行ぎょうをなすべし。 乃至

又¬大悲経ノ¼第三ニ云ク、「於テ↢当来ノ世ニ↡法ノ欲セム↠滅セムト時ニ、当ニ有リテ↢比丘・比丘尼↡、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡得↢出家ヲ↡已リテ、手ニ牽キテ↢児ノ臂ヲ↡而共ニ遊行シ、従リ↢酒家↡至リテ↢*酒家ニ↡、於テ↢我ガ法ノ中ニ↡作サム↢非梵行ヲ↡。乃至

^ただ性しょうはこれ沙門しゃもんなれども、 沙門しゃもんの行ぎょうを汚けがしてみづから沙門しゃもんと称しょうし、 形かたちは沙門しゃもんに似にて、 まさに袈裟けさ衣えを被ひ着じゃくすることあるべきものは、 この*賢劫げんごうにおいて、 弥み勒ろくを首はじめとなし、 乃ない至し、 最さい後ごの盧る遮しゃ仏ぶつの所みもとにして*般はつ涅ね槃はんに入いりて、 遺ゆい余よあることなからん。

但使 タダ シ性ハ是沙門ニシテ、汚シテ↢沙門ノ行ヲ↡、自ラ称シ↢沙門ト↡、形ハ似テ↢沙門ニ↡当カラム↠有ル↣被↢著スルコト袈裟衣ヲ↡者ハ、於テ↢此ノ賢劫ニ↡弥勒ヲ為テ↠首ハジメト、乃至最後ノ盧*遮仏ノ所ニシテ入ルコト↢般涅槃ニ↡、無ケム↠有ルコト↢遺余↡。

^なにをもつてのゆゑに。 かくのごとく一切いっさいのもろもろの沙門しゃもんのなかに、 乃ない至し、 一ひとたびも仏ぶつの名みなを称しょうし、 一ひとたびも信しんをなすものは、 所しょ作さの功く徳どくつひに*虚こ設せつならざればなり」 と。 以上

何ヲ以テノ故ニ。如ク↠是クノ一切ノ諸ノ沙門ノ中ニ、乃至一タビモ称シ↢仏ノ名ヲ↡、一タビモ生ナサム↠信ヲ者ハ、所作ノ功徳終ニ不レバナリト↢虚設セ↡。 已上

^¬心しん地じ観かん経ぎょう¼ の意こころ、 またかくのごとし。 ゆゑにかの ¬経きょう¼ (同) に、 「↑竜りゅう華げ」 とのたまひて 「兜と率そつ」 とはのたまはず。

¬心地1073観経ノ¼意、亦如シ↠是クノ。故ニ彼ノ¬経ニ¼云ヒテ↢竜花ト↡不↠云ハ↢*覩率トハ↡。

^いまこれを案あんずるに、 釈しゃく尊そんの入にゅう滅めつより慈じ尊そん (弥勒) の出しゅっ世せに至いたるまで、 *五ご十じゅう七しち倶く胝てい六ろく十じゅう百ひゃく千歳せんざいを隔へだてたり。 ¬*新しん婆ば沙しゃ¼ の意こころ。 そのあひだの輪りん廻ね、 劇ぎゃく苦くいくばくぞ。 なんぞ、 終しゅう焉えんの暮ゆうべ、 すなはち*蓮胎れんたいに託たくすることを願ねがはずして、 悠々ゆうゆうたる生しょう死じに留とどまりて、 竜りゅう華げ会えに至いたることを期ごせんや。

今案ズルニ↠之ヲ、従リ↢釈尊ノ入滅↡至ルマデニ↢慈尊ノ出世ニ↡、隔テタリ↢五十七倶胝六十百千歳ヲ↡。¬新婆*娑ノ¼*意 其ノ間ノ輪廻劇苦幾処イクバクゾ乎。何ゾ不シテ↠願ハ↣終焉之暮ユフベ即チ託セムコトヲ↢蓮*胎ニ↡而期セム↧留マリテ↢悠々タル生死ニ↡、至ラムコトヲ↦*於竜花会ニ↥耶。

^いかにいはんや、 もしたまたま極楽ごくらくに生うまれなば、 昼ちゅう夜やに、 念おもいに随したがひて兜と率そつ宮ぐに往来おうらいし、 乃ない至し、 竜りゅう華げ会えのなかに、 新あらたに*対揚たいようの首しゅとなること、 なほ富貴ふきにして故こ郷きょうに帰かえるがごとし。 いづれの人ひとか、 この事じを欣ごん楽ぎょうせざらんや。

何ニ況ヤ若シ適マ生レナバ↢極楽ニ↡者、昼夜ニ随ヒテ↠念ニ往↢来シ*覩率宮ニ↡、乃至竜花会ノ中ニ新ニ為ラムコト↢対*揚ノ首ト↡、猶如ケム↣富貴ニシテ而帰ルガ↢*於故郷ニ↡。誰イヅレノ人カ不ラム↣欣↢楽セ此ノ事ヲ↡耶。

^もし別縁べつえんあるものは、 *余よ方ほうもまた佳よし0897。 おほよそ*意い楽ぎょうに随したがふべし。 *異い執しゅうを生しょうずることなかれ。

若シ有ラム↢別縁↡者ハ余方モ亦佳シ。凡ソ可シ↠随フ↢意楽ニ↡。勿レ↠生ズルコト↢異執ヲ↡。

^ゆゑに感かん法ほっ師し (懐感) のいはく (群疑論)、 「兜と率そつを志求しぐするものは、 西方さいほうの行ぎょう人にんを毀そしることなかれ。 西方さいほうに生うまれんと願がんずるものは、 兜と率そつの業ごうを毀そしることなかれ。 おのおの*性しょう欲よくに随したがひて、 情こころに任まかせて修学しゅがくせよ。 あひ是非ぜひすることなかれ。 なんぞただ勝しょう処しょに生うまれざるのみならん。 またすなはち三さん途ずに輪転りんでんしなん」 と。 云々

故ニ感法師ノ云ク、「志↢求セム兜率ヲ↡者ハ、勿レ↠毀ルコト↢西方ノ行人ヲ↡。願ゼム↠生レムト↢西方ニ↡者ハ、莫レ↠毀ルコト↢兜率之業ヲ↡。各 ノ随ヒテ↢性欲ニ↡任セテ↠情ニ修学セヨ。莫レ↢相是非スルコト↡。何ゾ但不ルノミナラム↠生レ↢勝処ニ↡。亦乃チ輪↢転シナムト三途ニ↡。」云々

二 Ⅳ 正修念仏
    ⅰ 総明

【35】^大文だいもん第だい四しに、 △*正しょう修しゅ念仏ねんぶつといふは、 これにまた五ごあり。 世せ親しん菩ぼ薩さつの ¬往おう生じょう論ろん¼ (浄土論) にいふがごとし。 「▲五ご念門ねんもんを修しゅして行ぎょう成じょう就じゅしぬれば、 畢ひっ竟きょうじて安楽あんらく国こく土どに生うまれて、 かの阿あ弥陀みだ仏ぶつを見みたてまつることを得う。 ◆一いちには▽礼拝らいはい門もん、 二にには▽讃嘆さんだん門もん、 三さんには▽作さ願がん門もん、 四しには▽観察かんざつ門もん、 五ごには▽回え向こう門もんなり」 と。 云々

大文第四ニ▼正修念仏トイフ者、此ニ亦有リ↠五。如シ↢*世親菩薩ノ¬往生論ニ¼云フガ↡。「修スルコト↢五念門ノ行ヲ↡成*就セルハ、畢竟ジテ得↧生レテ↢安楽国土ニ↡見タテマツルコトヲ↦彼ノ阿弥陀仏ヲ↥。▼一ニハ礼拝門、二ニハ讃嘆門、三ニハ作願門、四ニハ観察門、五ニハ廻向門ナリト。」云々

^このなかに、 作さ願がん・回え向こうの二に門もんは、 もろもろの行ぎょう業ごうにおいて、 通つうじてこれを用もちゐるべし。

此ノ中ニ作願・廻向ノ二門ハ、於テ↢諸ノ行業ニ↡応シ↣通↢用ス之ヲ↡。

二 Ⅳ ⅱ 別釈
      a 礼拝門

【36】^初はじめに△礼拝らいはい門もんといふは、 これすなはち三業さんごう相応そうおうの身業しんごうなり。 一心いっしんに帰き命みょうして五ご体たいを地じに投なげて、 はるかに西方さいほうの阿あ弥陀みだ仏ぶつを礼らいするなり。 多た少しょうをば論ろんぜず、 ただ誠じょう心しんを用もちゐよ。

初ニ礼拝*門トイフ者、是即チ三業相応之身業也。一心ニ帰命シテ五体ヲ投ゲテ↠地ニ、遥ニ礼スルナリ↢西方ノ阿弥陀仏ヲ↡。不↠論ゼ↢多少ヲバ↡、但用ヰル↢誠心ヲ↡。

^あるいは ¬観仏かんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ の文もんを念おもふべし。 「われいま、 一仏いちぶつを礼らいするは、 すなはち一切いっさいの仏ぶつを礼らいするなり。 もし一仏いちぶつを思し惟ゆいすれば、 すな0898はち一切いっさいの仏ぶつを見みたてまつるなり。 一々いちいちの仏ぶつの前みまえに一いちの行ぎょう者じゃありて、 接足せっそくして礼らいをなすは、 みなこれおのが身しんなり」 と。

或イハ応シ↠念フ↢¬観仏三昧経ノ¼文1074ヲ↡。「我今礼スルニ↢一仏ヲ↡、即チ礼スルナリ↢一切ノ仏ヲ↡。若シ思↢惟スレバ一仏ヲ↡、即チ見タテマツルナリ↢一切ノ仏ヲ↡。一々ノ仏ノ前ニ有リテ↢一ノ行者↡、接足シテ為スハ↠礼ヲ。皆是己ガ身ナリト。」

^わたくしにいはく、 「一切いっさい仏ぶつ」 とは、 これ弥陀みだの分身ぶんしんなり。 あるいはこれ十方じっぽうの一切いっさいの諸仏しょぶつなり。

▼私ニ*云ク、一切仏ト者、是弥陀ノ分身ナリ。或イハ是十方ノ一切ノ諸仏ナリ

^あるいは念おもふべし。

或イハ応シ↠念フ。

^「*能礼のうらい・所礼しょらい、 性しょう空くう寂じゃくなり。 自じ身しん・他た身しん、 体たい無二むになり。
願ねがはくは衆しゅ生じょうとともに道どうを体たい解げして、 *無む上じょうの意こころを発おこして*真際しんざいに帰きせん」 と。

「能礼所礼性空寂ナリ自身他身体無二ナリ
願クハ共ニ↢衆生ト↡体↢解シテ道ヲ↡発シテ↢無上ノ意ヲ↡帰セムト↢真際ニ↡」

^あるいは ▼¬心しん地じ観かん経ぎょう¼ の六ろく種しゅの功く徳どくによるべし。 「▽一いちには無む上じょう大だい功く徳どく田でんなり。 ▽二にには無む上じょう大だい恩徳おんどくなり。 ▽三さんには無む足そく・二に足そくおよび多た足そくの衆しゅ生じょうのなかの尊そんたり。 ▽四しにはきはめて値ち遇ぐうしがたきこと*優う曇どん華げのごとし。 ▽五ごには独ひとり三千さんぜん大千だいせん世せ界かいに出いでたまふ。 ▽六ろくには世せ・出しゅっ世せ間けんの*功く徳どく円満えんまんして、 一切いっさいの義ぎの依えたり。 かくのごとき等らの六ろく種しゅの功く徳どくを具ぐして、 つねによく一切いっさい衆しゅ生じょうを利り益やくしたまふ」 と。 以上

或イハ応シ↠依ル↢¬心地観経ノ¼六種ノ功徳ニ↡。「一ニハ無上大功徳田ナリ。二ニハ無上大恩徳イマス。三ニハ無足・二足及以 オヨビ 多足ノ衆生ノ中ノ尊タリ。四ニハ極テ難キコト↢値遇シ↡如シ↢優曇花ノ↡。五ニハ独リ出デタマフ↢三千大千世界ニ↡。六ニハ世・出世間ノ功徳円満シテ、一切ノ義ノ依タリ。具シテ↢如キ↠此クノ等ノ六種ノ功徳ヲ↡、常ニ能ク利↢益シタマフト一切衆生ヲ↡。」 已上

^経きょうの文もんは、 きはめて略りゃくなり。 いますべからく言ごんを加くわへて、 もつて礼らいの法ほうをなさん。

経ノ文ハ極テ略セリ。今須ク加ヘテ↠言ヲ、以テ為サム↢礼ノ法ヲ↡。

^▼一いちには念おもふべし。

一ニハ応シ↠念フ。

^一ひとたび 「南無なも仏ぶつ」 と称しょうするものは、 みなすでに仏道ぶつどうを成じょうず。
ゆゑにわれ、 無む上じょう功く徳どく田でんを帰き命みょうし礼らいしたてまつる。

一タビ称スルモノハ↢南無仏ト↡皆已ニ成ル↢仏道ヲ↡
故ニ我帰命シテ礼シタテマツル↢無上功徳田ヲ↡

^◆二にには念おもふべし。

二ニハ応シ↠念フ。

^0899慈じ眼げんをもつて衆しゅ生じょうを視みそなはすこと、 平びょう等どうにして一いっ子しのごとし。
ゆゑにわれ、 極大ごくだい慈悲じひ母もを帰き命みょうし礼らいしたてまつる。

慈眼ニ視ソナハスニ↢衆生ヲ↡平等ニシテ如シ↢一子ノ↡
故ニ*我帰命シテ礼シタテマツル↢極大慈悲母ヲ↡

^◆三さんには念おもふべし。

三ニハ応シ↠念ズ。

^十方じっぽうのもろもろの大だい士じ、 弥陀みだ尊そんを恭く敬ぎょうしたてまつる。
ゆゑにわれ、 無む上じょう両りょう足ぞくの尊そんを帰き命みょうし礼らいしたてまつる。

十方ノ諸ノ大士恭↢敬シタテマツル弥陀尊ヲ↡
故ニ我帰命シテ礼シタテマツル↢無上両足ノ尊ヲ↡

^◆四しには念おもふべし。

四ニハ応シ↠念フ。

^一ひとたび仏ぶつの名みなを聞きくことを得うることは、 優う曇どん華げよりも過すぎたり。
ゆゑにわれ、 きはめて値ち遇ぐうしがたきものを帰き命みょうし礼らいしたてまつる。

一タビ得ルコトハ↠聞クコトヲ↢仏ノ名ヲ↡過ギタリ↢於優曇花ニ↡
故ニ我帰命シテ礼シタテマツル↧極テ難キ↢値遇シ↡者ヲ↥

^◆五ごには念おもふべし。

五ニハ応シ↠念フ。

^*一いっ百ひゃく倶く胝ていの界さかいには、 二に尊そん並ならび出いでたまはず。
ゆゑにわれ、 希有けうの大だい法王ほうおうを帰き命みょうし礼らいしたてまつる。

一百倶胝ノ界ニハ二尊不↢並ビ出デタマハ↡
故ニ我帰命シテ礼シタテマツル↢希有ノ大法王ヲ↡

^◆六ろくには念おもふべし。

六ニハ応シ↠念フ。

^仏法ぶっぽうのもろもろの徳海とくかいは、 三さん世ぜ同おなじく一体いったいなり。
ゆゑにわれ、 円えん融にゅう万徳まんどくの尊そんを帰き命みょうし礼らいしたてまつる。

仏法ノ衆ノ徳海ハ三世同ジク一体ナリ
故ニ我帰命シテ礼シタテマツル↢円融万徳ノ尊ヲ↡

^もし広ひろく行ぎょうずることを楽ねがはば、 龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつの ¬十じゅう二に礼らい¼ によるべし。 また善導ぜんどう和か尚しょう0900の ¬*六ろく時じの礼法らいほう¼ あり。 つぶさに出いだすべからず。

若シ楽ハバ↢広ク行スルコトヲ↡者、応シ↠依ル↢龍樹菩薩ノ¬十二礼ニ¼↡。又有リ↢善導和尚ノ六時ノ礼法↡。不↠可カラ↢具ニ出ス↡。

^たとひ余よ行ぎょうなくとも、 ただ礼拝らいはいによりてまた往おう生じょうすることを得う。 ¬*観かん虚こ空蔵くうぞう菩ぼ薩さつ仏ぶつ名みょう経きょう¼ にのたまふがごとし。 「阿あ弥陀みだ仏ぶつを心しんを至いたして敬きょう礼らいすれば、 三さん悪道まくどうを離はなれて、 後のちにその国くにに生うまるることを得う」 と。 以上

設ヒ無クトモ↢余行↡但依リテ↢礼拝1075ニ↡亦得↢往生スルコトヲ↡。如シ↢¬観虚空蔵菩薩仏名経ニ¼云フガ↡。「阿弥陀仏ヲ至シテ↠心ヲ敬礼スレバ、得テ↠離ルルコトヲ↢三悪道ヲ↡、後ニ生ルト↢其ノ国ニ↡。」 *已上

二 Ⅳ ⅱ b 讃嘆門

【37】^第だい二にに△讃嘆さんだん門もんといふは、 これ三業さんごう相応そうおうの口く業ごうなり。 *¬十住じゅうじゅう婆ば沙しゃ¼ の第だい三さんにいふがごとし。 「▲阿あ弥陀みだ仏ぶつの本願ほんがん、 かくのごとし。 ªもし人ひと、 われを念ねんじ、 名なを称しょうしてみづから帰きすれば、 すなはち必ひつ定じょうに入いりて阿あ耨のく菩ぼ提だいを得うº と。 ◆このゆゑにつねに憶念おくねんすべし。

第二ニ讃嘆*門トイフ者、是三業相応之口業也。如シ↢¬十住婆*娑ノ¼第三ニ云フガ↡。「阿弥陀仏ノ本願如シ↠是クノ。若シ人念ジ↠我ヲ称シテ↠名ヲ自ラ帰スルハ、即チ入ルト↣必定シテ得ルニ↢阿耨菩提ヲ↡。是ノ故ニ常ニ応シ↢憶シテ念ズ↡。

^◆偈げをもつて ˆ阿あ弥陀みだ仏ぶつをˇ 称しょう讃さんせん。

以テ↠偈ヲ称讃ス。

^◆無む量りょうの光こう明みょう慧えあり。 身しんは真しん金山こんぜんのごとし。
われいま身しん口意くいをもつて、 合がっ掌しょうし稽首けいしゅし礼らいしたてまつる。

無量ノ光明慧マシマシテ身ハ如シ↢真金山ノ↡
我今身口意ヲモテ合掌シテ稽首シ礼ス

^▲十方じっぽう現在げんざいの仏ぶつ、 種々しゅじゅの因縁いんねんをもつて、
かの仏ぶつの功く徳どくを嘆たんじたまふ。 われいま帰き命みょうし礼らいしたてまつる。

十方現在ノ仏以テ↢種々ノ因縁ヲ↡
嘆ジタマフ↢彼ノ仏ノ功徳ヲ↡我今帰命シテ礼ス

^▲仏ぶつの足みあしには千輻せんぷく輪りんありて、 柔にゅう軟なんにして蓮れん華げの色いろなり。
見みるものみな歓かん喜ぎす。 頭ず面めんをもつて仏足ぶっそくを礼らいしたてまつる。

仏ノ足ニハ千輻輪アリテ柔軟ニシテ蓮花ノ色ナリ
見ル者皆歓喜ス頭面ニ礼ス↢仏足ヲ↡

^◆眉み間けんの白びゃく毫ごうの光ひかりは、 なほ清浄しょうじょうなる月つきのごとし。
0901面おもての光色こうしきを増益ぞうやくす。 頭ず面めんをもつて仏足ぶっそくを礼らいしたてまつる。

眉間ノ白毫ノ光ハ猶如クシテ↢清浄ノ月ノ↡
増↢益ス面ノ光色ヲ↡頭面ニ礼ス↢仏足↡

^▲かの仏ぶつの言説ごんせつしたまふところ、 もろもろの罪根ざいこんを破は除じょす。
美み言ごんにして益やくするところ多おおし。 われいま稽首けいしゅして礼らいしたてまつる。

彼ノ仏ノ所ハ↢言説シタマフ↡破↢除ス諸ノ罪根ヲ↡
美言ニシテ多シ↠所↠益スル我今稽首シテ礼シタテマツル

^▲一切いっさいの賢聖衆げんじょうしゅ、 およびもろもろの人天にんでん衆しゅ、
ことごとくみなともに帰き命みょうす。 このゆゑにわれもまた礼らいしたてまつる。

一切ノ賢聖衆及ビ諸ノ人天衆
咸ク皆共ニ帰命ス是ノ故ニ我モ亦礼シタテマツル

^◆かの八道はちどうの船ふねに乗じょうじて、 よく難なん度ど海かいを度どす。
みづから度どし、 またかれを度どす。 われ自じ在ざい者しゃを礼らいしたてまつる。

乗ジテ↢彼ノ八道ノ船ニ↡能ク度シテ↢難度ノ海ヲ↡
自ラ度シ亦度ス↠彼ヲ我礼シタテマツル↢自在者ヲ↡

^◆諸仏しょぶつ、 無む量りょう劫こうに、 その功く徳どくを讃揚さんようせんに、
なほ尽つくすことあたはず。 清浄しょうじょうの人ひとを帰き命みょうしたてまつる。

諸仏無量劫ニ讃↢揚シタマフトモ其ノ功徳ヲ↡
猶尚 ナホ シ不↠能ハ↠尽スコト帰↢命シタテマツル清浄ノ人ニ↡

^◆われいままたかくのごとく、 無む量りょうの徳とくを称しょう讃さんす。
この福ふくの因縁いんねんをもつて、 願ねがはくは仏ぶつつねにわれを念ねんじたまへ。

我今亦如ク↠是クノ称↢讃ス無量ノ徳ヲ↡
以テ↢是ノ福ノ因縁ヲ↡願クハ仏常ニ念ジタマヘ↠我ヲ

^▲この福ふくの因縁いんねんをもつて、 獲えるところの上妙じょうみょうの徳とく、
願ねがはくはもろもろの衆しゅ生じょうの類たぐいも、 みなまたことごとくまさに得うべし」 と。

以テ↢此ノ福ノ因縁ヲ↡所ノ↠獲ル上妙ノ徳
願クハ諸ノ衆生ノ類モ皆亦悉ク当ニシト↠得」

^かの ¬論ろん¼ (易行品) に三さん十じゅう二にの偈げあり。 いま略りゃくして要ようを*抄しょうす。

彼ノ¬論ニ¼有リ↢卅二ノ偈↡。今略シテ*抄ス↠*要ヲ。

^あるいはまた ¬往おう生じょう論ろん¼ (天親の浄土論) の偈げ、 *真言しんごん教きょうの仏讃ぶっさん、 *阿あ弥陀みだの別讃べっさんあり。 これらの文もん0902、 一遍いっぺん・多た遍へん、 一いち行ぎょう・多た行ぎょう、 ただ至し誠じょうをもつてすべし。 多た少しょうを論ろんぜず。 たとひ余よ行ぎょうなくとも、 ただ讃嘆さんだんによりて、 また願がんに随したがひてかならず往おう生じょうすることを得えつべし。

或イハ復¬往生論ノ¼偈、真言教ノ仏讃、阿弥陀ノ別讃アリ、此等ノ文、一遍・多遍、一行・多行、但1076応シ↢至誠ヲモテス↡。不↠論ゼ↢多少ヲ↡。設ヒ無クトモ↢余行↡、唯依リテ↢讃歎ニ↡、亦応シ↣随ヒテ↠願ニ必ズ得ツ↢往生スルコトヲ↡。

^¬法ほっ華け¼ の偈げにのたまふがごとし。

如シ↢¬法花ノ¼偈ニ云フガ↡。

^「あるいは歓かん喜ぎの心しんをもつて、 歌か唄ばいして仏徳ぶっとくを頌じゅし、
乃ない至し一いちの小しょう音おんをもつてせるも、 みなすでに仏道ぶつどうを成じょうぜり」 と。

「或イハ以テ↢歓喜ノ心ヲ↡歌唄シテ頌シ↢仏徳ヲ↡
乃至一ノ小音ヲモテセルモ皆已ニ成レリト↢仏道ト↡」

^一音いっとんすでにしかり。 いかにいはんや、 つねに讃さんぜんをや。 仏ぶっ果かなほしかり。 いかにいはんや往おう生じょうをや。 真言しんごんの讃仏さんぶつ、 利り益やくはなはだ深ふかし。 顕けん露ろすることあたはず。

一音既ニ爾リ。何ニ況ヤ常ニ讃ゼムヲヤ。仏果尚爾リ。何ニ況ヤ往生ヲヤ。真言ノ讃仏利益甚ダ深シ。不↠能ハ↢顕露スルコト↡。

二 Ⅳ ⅱ c 作願門

【38】^第だい三さんに△作さ願がん門もんといふは、 以下いげの三さんの門もんは、 これ三業さんごう相応そうおうの意い業ごうなり。

第三ニ作願門トイフ者、以下ノ三ノ門ハ是三業相応之意業也。

^綽しゃく禅ぜん師じ (道綽) の ¬*安楽あんらく集しゅう¼ (上) にいはく、 「▲¬大だい経きょう¼ にのたまはく、 ªおほよそ浄じょう土どに往おう生じょうせんと欲おもはば、 かならずすべからく▽菩ぼ提心だいしんを発おこすをもつて源みなもととなすべしº と。 ◆いかんとなれば、 菩ぼ提だいといふはすなはちこれ無む上じょう仏道ぶつどうの名ななり。

綽*禅師ノ¬安楽集ニ¼云ク、「¬大経ニ¼云ク、凡ソ欲ハバ↣往↢生セムト浄土ニ↡、要ズ須クシト↧発スヲモテ↢菩提心ヲ↡為ス↞源ト。云何ナルカ菩提トナラバ者、乃チ是無上仏道之名也。

^◆もし心しんを発おこして仏ぶつに作ならんと欲ほっすれば、 この心しんは広大こうだいにして法界ほうかいに遍へん周しゅうせり。 この心しんは長じょう遠おんにして未み来らい際さいを尽つくす。 この心しんあまねくつぶさに二に乗じょうの障さわりを離はなる。 ◆もしよく一ひとたびこの心しんを発おこせば、 無始むし生しょう死じの*有う淪りんを傾かたむく。

若シ欲スル↢発シテ↠心ヲ作ラムト↟仏ニ者ハ、此ノ心ハ広大ニシテ*遍↢周ス法界ニ↡。此ノ心ハ長遠ニシテ尽ス↢未来際ヲ↡。此ノ心ハ普ク備ヘタリ。離ル↢二乗ノ障ヲ↡。若シ能ク一タビ発シツレバ↢此ノ心ヲ↡、傾クト↢無始生死ノ有*淪ヲ↡。

^▲¬*浄じょう土ど論ろん¼ にいはく、 ª菩ぼ0903提心だいしんを発おこすといふは、 まさしくこれ願がん作さ仏心ぶつしんなり。 願がん作さ仏心ぶつしんとは、 すなはちこれ度ど衆しゅ生じょう心しんなり。 度ど衆しゅ生じょう心しんとは、 すなはちこれ衆しゅ生じょうを摂しょう受じゅして有う仏ぶつの国こく土どに生しょうぜしむる心しんなり。 ◆いますでに浄じょう土どに生しょうぜんと願がんず、 ゆゑに先まづすべからく菩ぼ提心だいしんを発おこすべしº」 と。 以上

¬浄土論ニ¼云ク、発ストイフ↢菩提心ヲ↡者、正シク是願ズル↠作ラムト↠仏ニ心ナリ。願作仏ノ心ト者、即チ是度衆生ノ心ナリ。度衆生ノ心ト者、即チ是摂↢受シテ衆生ヲ↡生ゼシムル↢有仏ノ国土ニ↡心ナリ。今既ニ願ズ↠生ぜムト↢浄土ニ↡、故ニ先ヅ須クシト↠発ス↢菩提心ヲ↡也。」 已上

^まさに知しるべし、 菩ぼ提心だいしんは、 これ浄じょう土ど菩ぼ提だいの綱要こうようなり。 ゆゑにいささか三さんの門もんをもつてその義ぎを決けっ択ちゃくせん。 行ぎょう者じゃ、 繁しげきを厭いとふことなかれ。 一いちには菩ぼ提心だいしんの▽行ぎょう相そうを明あかす。 二にには▽利り益やくを明あかす。 三さんには▽料りょう簡けんせん。

当ニシ↠知ル、菩提心ハ是浄土菩提之綱要ナリ。故ニ聊ニ以テ↢三ノ門ヲ↡決↢*択セム其ノ義ヲ↡。行者勿レ↠厭フコト↠繁キヲ。一ニハ明ス↢菩提心ノ行相ヲ↡。二ニハ明ス↢利益ヲ↡。*三ニハ料簡セム。

・行相

【39】^初はじめに△行ぎょう相そうとは、 総そうじてこれをいはば願がん作さ仏心ぶつしんなり。 また、 *上じょう求ぐ菩ぼ提だい・下化げけ衆しゅ生じょうの心しんと名なづく。

初ニ行相ト者、総ジテハ謂フ↢之ヲ願作仏ノ心ト↡。亦名ク↢上求菩提・下化衆生ノ心ト↡。

^別べっしてこれをいはば▽*四し弘ぐ誓ぜい願がんなり。 これに二に種しゅあり。 一いちには↓*縁えん事じの四し弘ぐ願がんなり。 これすなはち*衆しゅ生じょう縁えんの慈じなり。 あるいはまた*法縁ほうえんの慈じなり。 二にには↓*縁えん理りの四し弘ぐなり。 これ*無む縁えんの慈悲じひなり。

別シテハ謂フ↢之ヲ四1077弘誓願ト↡。此ニ有リ↢二種↡。▼一ニハ縁事ノ四弘願ナリ。是即チ衆生縁ノ慈ナリ。或イハ復法縁ノ慈也。二ニハ縁理ノ四弘ナリ、是無縁ノ慈悲也。

^↑縁えん事じの四し弘ぐといふは、

言フ↢縁事ノ四弘ト↡者、

^一いちには▽衆しゅ生じょう無む辺へん誓願せいがん度ど。 念ねんずべし、 「一切いっさい衆しゅ生じょうにことごとく仏ぶっ性しょうあり。 われみな*無余むよ涅ね槃はんに入いらしむべし」 と。 この心しんはすなはちこれ*饒にょう益やく有う情じょう戒かいなり。 またこれ恩徳おんどくの心しんなり。 またこれ*縁因えんいん仏ぶっ性しょうなり。 応身おうじんの菩ぼ提だいの因いんなり。

一ニハ衆生無辺誓願度。応シ↠念ズ、一切衆生ハ悉ク有リ↢仏性↡。我皆令ムベシト↠入ラ↢無余涅槃ニ↡。此ノ心ハ即チ是饒益有情戒ナリ。亦是恩徳ノ心ナリ。亦是縁因仏性ナリ。応身ノ菩提ノ因ナリ。

^二にには▽煩悩ぼんのう無む辺へん誓願せいがん断だん。 これはこれ*摂しょう律りつ儀ぎ戒かいなり。 またこれ断徳だんとくの心しんなり。 またこれ*正しょう因いん仏ぶっ0904性しょうなり。 法身ほっしんの菩ぼ提だいの因いんなり。

二ニハ煩悩無辺誓願断。此ハ是摂律儀戒ナリ。亦是断徳ノ心ナリ。亦是正因仏性ナリ。法身ノ菩提ノ因ナリ。

^三さんには▽法門ほうもん無む尽じん誓願せいがん知ち。 これはこれ*摂しょう善法ぜんぽう戒かいなり。 またこれ智ち徳とくの心しんなり。 またこれ*了りょう因いん仏ぶっ性しょうなり。 報身ほうじんの菩ぼ提だいの因いんなり。

三ニハ法門無尽誓願知。此ハ是摂善法戒ナリ。亦是智徳ノ心ナリ。亦是了因仏性ナリ。報身ノ菩提ノ因ナリ。

^四しには▽無む上じょう菩ぼ提だい誓願せいがん証しょう。 これはこれ仏ぶっ果か菩ぼ提だいを願がん求ぐするなり。 いはく、 前さきの三さんの行ぎょう願がんを具ぐ足そくするによりて、 三身さんしん円満えんまんの菩ぼ提だいを証得しょうとくして、 還かえりてまた広ひろく一切いっさい衆しゅ生じょうを度どするなり。

四ニハ無上菩提誓願証。此ハ是願↢求スルナリ仏果ノ菩提ヲ↡。謂ク由リテ↣具↢足スルニ前ノ三ノ行願ヲ↡、証↢得シテ三身円満ノ菩提ヲ↡、還リテ亦広ク度スルナリ↢一切衆生ヲ↡。

^二にに↑縁えん理りの願がんとは、 一切いっさいの諸法しょほうは、 本来ほんらい寂静じゃくじょうなり。 有うにあらず無むにあらず、 常じょうにあらず断だんにあらず、 生しょうぜず滅めっせず、 垢けがれず浄きよからず。 *一色いっしき・一香いっこうも、 中ちゅう道どうにあらずといふことなし。 生しょう死じ即そく涅ね槃はん、 煩悩ぼんのう即そく菩ぼ提だいなり。

二ニ縁理ノ願ト者、一切ノ諸法ハ本来寂静ナリ。非ズ↠有ニ非ズ↠無ニ。非ズ↠常ニ非ズ↠断ニ。不↠生ゼ不↠滅セ。不垢不浄ナリ。一色一香モ无シ↠非ズトイフコト↢中道ニ↡。生死即涅槃ナリ。煩悩即菩提ナリ。

^一々いちいちの*塵労じんろう門もんを翻ほんずれば、 すなはちこれ八万はちまん四し千せんの諸しょ波羅はら蜜みつなり。 無む明みょう変へんじて明みょうとなる、 氷こおり融とけて水みずとなるがごとし。 さらに遠とおき物ものにあらず。 余よ処しょより来きたるにもあらず。 ただ一念いちねんの心しんにあまねくみな具ぐ足そくせること、 *如にょ意い珠しゅのごとし。 宝たからあるにもあらず、 宝たからなきにもあらず。 もし 「なし」 といはばすなはち妄もう語ごなり。 もし 「あり」 といはばすなはち邪見じゃけんなり。 心しんをもつて知しるべからず。 言ごんをもつて弁べんずべからず。

翻ズレバ↢一々ノ塵労門ヲ↡、即チ是八万四千ノ諸波羅蜜ナリ。無明変ジテ為ル↠明ト。如シ↢融カシテ↠氷ヲ成ルガ↟水ト。更ニ非ズ↢遠キ物ニ↡。不↢余処ヨリモ来ラ↡。但一念ノ心ニ普ク皆具足セリ。如シ↢如意珠ノ↡。非ズ↠有ルニモ↠宝、非ズ↠无キニモ↠宝。若シ謂ハバ↠無シト者即チ*妄語ナリ。若シ謂ハバ↠有リト者即チ邪見ナリ。不↠可カラ↢以テ↠心ヲ知ル↡。不↠可カラ↢以テ↠言ヲ辨ズ↡。

^衆しゅ生じょう、 この不ふ思議しぎ・不ふ縛ばくの法ほうのなかにおいて、 しかも思し想そうして縛ばくをなし、 無む脱だつの法ほうのなかにおいて、 しかも脱だつを求もとむ。 このゆゑにあまねく法界ほうかいの一切いっさい衆しゅ生じょうにおいて、 大だい慈悲じひを起おこし、 *四し弘ぐ誓ぜいを興おこす。 これを*順じゅん理りの発ほっ心しん0905と名なづく。 これ最さい上じょうの菩ぼ提心だいしんなり。 ¬止し観かん¼ の第一だいいちを見みるべし。

衆生於テ↢此ノ不思議・不縛ノ法ノ中ニ↡、而シテ思想シテ作ス↠縛ヲ。於テ↢無脱ノ法ノ中ニ↡、而モ求ム↢於脱ヲ↡。是ノ故ニ普ク於テ↢法界ノ一切衆1078生ニ↡起シテ↢大慈悲ヲ↡、興ス↢四弘誓ヲ↡。是ヲ名ク↢順理ノ発心ト↡。是最上ノ菩提心ナリ。可シ↠見ル↢¬止観ノ¼第一ヲ↡

^また ¬*思し益やく経きょう¼ にのたまはく、 「一切いっさいの法ほうは法ほうにあらずと知しり、 一切いっさいの衆しゅ生じょうは衆しゅ生じょうにあらずと知しる。 これを菩ぼ薩さつの、 *無む上じょう菩ぼ提心だいしんを発おこすと名なづく」 と。

又¬思益経ニ¼云ク、「知リ↢一切ノ法ハ非ズト↟法ニ、知ル↣一切ノ衆生ハ非ズト↢衆生ニ↡。是ヲ名クト↣菩薩ノ発スト↢無上菩提心ヲ↡。」

^また ¬*荘しょう厳ごん菩ぼ提心だいしん経ぎょう¼ にのたまはく、 「菩ぼ提心だいしんとは、 有うにあらず造ぞうにあらず、 文もん字じを離はなれたり。 菩ぼ提だいはすなはちこれ心しんなり。 心しんはすなはちこれ衆しゅ生じょうなり。 もしよくかくのごとく解げするを、 これを、 菩ぼ薩さつの菩ぼ提だいを修しゅすと名なづく。

又¬荘厳菩提心経ニ¼云ク、「菩提心ト者非ズ↠有ニ非ズ↠造ニ。離レタリ↢於文字ヲ↡。菩提ハ即チ是心ナリ。心ハ即チ是衆生ナリ。若シ能ク如ク↠是クノ解スルヲ、是ヲ名ク↢菩薩ノ修スル菩提ト↡。

^菩ぼ提だいは過去かこ・未み来らい・現在げんざいにあらず。 かくのごとく、 心しんと衆しゅ生じょうと、 また過去かこ・未み来らい・現在げんざいにあらず。 よくかくのごとく解げするを名なづけて菩ぼ薩さつとなす。

菩提ハ非ズ↢過去・未来・現在ニ↡。如ク↠是クノ心ト衆生ト亦非ズ↢過去・未来・現在ニ↡。能ク如ク↠是クノ解スルヲ名ケテ為ス↢菩薩ト↡。

^しかもこのなかにおいて、 実じつに*所得しょとくなし。 所得しょとくなきをもつてのゆゑに得う。 もし一切いっさいの法ほうにおいて所得しょとくなくは、 これを菩ぼ提だいを得うと名なづく。 *始し行ぎょうの衆しゅ生じょうのためのゆゑに、 菩ぼ提だいありと説とく。 乃至

然モ於テ↢*是ノ中ニ↡実ニ無シ↢所得↡。以テノ↠無キヲ↢所得↡故ニ得ス。若シ於テ↢一切ノ法ニ↡無シ↢所得↡、是ヲ名ク↠得ト↢菩*提ヲ↡。為ノ↢始行ノ衆生ノ↡故ニ説ク↠有リト↢菩提↡。乃至

^しかもこのなかにおいて、 また心しんもあることなく、 また造心ぞうしんのものもなし。 また菩ぼ提だいもあることなく、 また造ぞう菩ぼ提だいのものもなし。 また衆しゅ生じょうもあることなく、 また造ぞう衆しゅ生じょうのものもなし」 と。 乃至云々

然モ於テ↢是ノ中ニ↡亦無シ↠有ルコト↠心モ。亦無シ↢造心ノ者モ↡。亦無シ↠有ルコト↢菩提モ↡。亦無シ↢造菩提ノ者モ↡。亦無シ↠有ルコト↢衆生モ↡。亦無シト↢造衆生ノ者モ↡。」 *乃至*云々

^この*二にの四し弘ぐにおのおの二にの義ぎあり。

此ノ二ノ四弘ニ各 ノ有リ↢二ノ義↡。

^一いちにはいはく、 初はじめの二にの願がんは衆しゅ生じょうの*苦く・集じゅう二に諦たいの苦くを抜ぬく。 後のちの二にの願がんは衆しゅ生じょうに*道どう・滅めつ二に諦たいの楽らくを与あたふ。

一ニハ云ク、初ノ二ノ願ハ抜ク↢衆生ノ苦・集二諦ノ苦ヲ↡。後ノ二ノ願ハ与フ↢衆生ニ道・滅二諦ノ楽ヲ↡。

^二ににはいはく、 初はじめの一いちは他たに約やくす。 後のちの三さんは自じに約やくす。 いはく、 衆しゅ0906生じょうの二に諦たいの苦くを抜ぬき、 衆しゅ生じょうに二に諦たいの楽らくを与あたふることは、 総そうじて初はじめの願がんのなかにあり。 この願がんを究く竟きょう円満えんまんせんと欲おもふがために、 さらに自じ身しんに約やくして後のちの三さんの願がんを発おこす。

二ニハ云ク、初ノ一ハ約ス↠他ニ。後ノ三ハ約ス↠自ニ。謂ク抜キ↢衆生ノ二諦ノ苦ヲ↡、与フルコトハ↢衆生ニ二諦ノ楽ヲ↡、総ジテ在リ↢初ノ願ノ中ニ↡。為ニ↠欲フガ↤究↢竟円↣満セムト此ノ願ヲ↡、更ニ約シテ↢自身ニ↡発ス↢後ノ三ノ願ヲ↡。

^¬大だい般若はんにゃ経きょう¼ (意) にのたまふがごとし。 「有う情じょうを利りせんがために大だい菩ぼ提だいを求もとむ。 ゆゑに菩ぼ薩さつと名なづく。 しかも依え着じゃくせず。 ゆゑに*摩訶まか薩さつと名なづく」 と。 以上

如シ↢¬大般若経ニ¼云フガ↡。「為ニ↠利セムガ↢有情ヲ↡求ム↢大菩提ヲ↡。故ニ名ク↢菩薩ト↡。而モ不↢依著セ↡。故ニ名クト↢摩訶薩ト↡。」 已上

^また前さきの三さんはこれ因いんにして、 これ別べつなり。 第だい四しはこれ果かにして、 これ総そうなり。

又前ノ三ハ是因ナリ、是別ナリ。第四ハ是果ナリ、是総ナリ。

^四し弘ぐ已おわりて後のちは、 いふべし、

四弘已後ニハ可シ↠云フ、

^「*自他じた法界ほうかい同どう利り益やく 共ぐ生しょう極楽ごくらく成じょう仏道ぶつどう」 と。

自他法界同利益共生極楽成仏道ト

^心しんのなかに念おもふべし、 「われと衆しゅ生じょうと、 ともに極楽ごくらくに生うまれて、 前さきの*四し弘ぐ願がんを円満えんまん究く竟きょうせん」 と。

心ノ中ニ応シ↠念フ、我ト与1079↢衆生↡共ニ生レテ↢極楽ニ↡、円↢満*究↣竟セムト前ノ四弘願ヲ↡。

^もし別願べつがんあるものは、 四し弘ぐの前まえにこれを唱となへよ。

若シ有ラム↢別願↡者ハ四弘ノ前ニ唱ヘヨ↠之ヲ。

^もし心しん不ふ浄じょうなるは、 正しょう道どうの因いんにあらず。 もし心しんに限かぎることあるは、 大だい菩ぼ提だいにあらず。 もし誠じょうを至いたすことなくは、 その力ちから強こわからず。 このゆゑに、 かならず清浄しょうじょうにして深広じんこうなる誠まことの心しんを須もちゐよ。 勝しょう他た・名みょう利り等とうの事じのためにせざれ。 しかも仏眼ぶつげんの照てらすところの*無む尽じん法界ほうかいの一切いっさいの衆しゅ生じょう、 一切いっさいの煩悩ぼんのう、 一切いっさいの法門ほうもん、 一切いっさいの仏徳ぶっとくにおいて、 この四し種しゅの願がんと行ぎょうとを発おこせ。

若シ心不浄ナルハ非ズ↢正道ノ因ニ↡。若シ心ニ有ルハ↠限ルコト非ズ↢大菩提ニ↡。若シ無キハ↠至スコト↠誠ヲ其ノ力不↠強コハカラ。是ノ故ニ要ズ須クシ↧清浄ニシテ深広ノ誠ノ心ニシテ、不シテ↠為ニセ↢勝他・名利等ノ事ノ↡、而モ於テ↢仏眼ノ所照ノ無尽法界ノ一切ノ衆生、一切ノ煩悩、一切ノ法門、一切ノ仏徳ニ↡発ス↦此ノ四種之願ト行トヲ↥也。

 ^問とふ。 なんの法ほうのなかにおいてか、 無む上じょう道どうを求もとむる。

問フ。於テカ↢何ノ法ノ中ニ↡求ムル↢無上道ヲ↡。

^答こたふ。 これに*利り・鈍どんの二に0907種しゅの差別しゃべつあり。

答フ。此ニ有リ↢利・鈍ノ二*種ノ差別↡。

^¬大論だいろん¼ (大智度論) にいふがごとし。 「黄おう石じゃくのなかに金こんの性しょうあり、 白石びゃくじゃくのなかに銀ごんの性しょうあるがごとく、 かくのごとく一切いっさい世せ間けんの法ほうのなかに、 みな涅ね槃はんの性しょうあり。 諸仏しょぶつ・賢げん聖じょうは、 智慧ちえ・方便ほうべん・持じ戒かい・禅ぜん定じょうをもつて引導いんどうして、 この涅ね槃はんの法ほっ性しょうを得えしめたまふ。

如シ↢¬大論ニ¼云フガ↡。「如ク↧黄石ノ中ニ有リ↢金ノ性↡、白石ノ中ニ有ルガ↦銀ノ性↥、如ク↠是クノ一切世間ノ法ノ中ニ皆有リ↢涅槃ノ性↡。諸仏・賢聖ハ、以テ↢智*恵・方便・持戒・禅定ヲ↡引導シテ、令メタマフ↠得↢是ノ涅槃ノ法性ヲ↡。

^利り根こんのものは、 すなはちこの諸法しょほうはみなこれ法ほっ性しょうなりと知しること、 たとへば、 神通じんずうの人にんの、 よく瓦が石しゃくを変へんじてみな金こんとなさしむるがごとし。 鈍根どんこんのものは、 方便ほうべん・分別ふんべつしてこれを求もとめて、 すなはち法ほっ性しょうを得う。 たとへば、 大おおきに石いしを冶やし鼓こして、 しかして後のちに金こんを得うるがごとし」 と。 以上

利根ノ者ハ、即チ知ルコト↢是ノ諸法ハ皆是法性ナリト↡、譬ヘバ如シ↧神通ノ人ノ能ク変ジテ↢瓦石ヲ↡皆使ムルガ↞為サ↠金ト。鈍根ノ者ハ、方便・分別シテ求メテ↠之ヲ、乃チ得↢法性ヲ↡。譬ヘバ如シト↧大ニ*冶ヤシ↢鼓シテ石ヲ↡然シテ後ニ得ルガ↞金ヲ。」 已上

^またいはく (大智度論)、 「苦く行ぎょう・頭陀ずだし、 *初しょ・中ちゅう・後夜ごやに勤心ごんしんに観禅かんぜんして、 苦くるしくして道どうを得うるは声しょう聞もんの教きょうなり。 諸法しょほうの相そうは無む縛ばく無解むげなりと観かんじて、 心しん、 清浄しょうじょうなることを得うるは菩ぼ薩さつの教きょうなり。 文殊もんじゅ師利しりの*本縁ほんえんのごとし」 と。 以上

又云ク、「苦行・頭陀シテ、初・中・後夜ニ*懃心ニ観禅シテ、苦ネンゴロニシテ而シテ得ルハ↠道ヲ声聞ノ教也。観ジテ↢諸法ノ相ハ無縛無解ナリト↡、心得ルハ↢清浄ナルコトヲ↡菩薩ノ教也。如シト↢文殊師利ノ本縁ノ↡。」 已上

^すなはち、 ¬*無む行ぎょう経きょう¼ の喜き根こん菩ぼ薩さつの偈げを引ひきていはく (大智度論)、

即チ引キテ↢¬無行経ノ¼喜根菩薩ノ偈ヲ↡云ク、

^「*婬欲いんよくはすなはちこれ道どうなり。 *恚い・痴ちもまたしかなり。
かくのごとき三さん事じのなかに、 無む量りょうの諸仏しょぶつの道どうあり。

「婬欲ハ即チ是道ナリ恚痴モ亦*復然ナリ
如キ↠此クノ三事ノ中ニ無量ノ諸仏ノ道アリ

^もし人ひとありて、 婬いん・怒ぬ・痴ちとおよび道どうとを分別ふんべつするは、
この人ひとは仏道ぶつどうを去さること、 たとへば天てんと地じとのごとし」 と。

若シ有リテ↠人分↢別スルハ婬怒痴ト及ビ道トヲ↡
是ノ人ハ去ルコト↢仏道ヲ↡譬ヘバ如シト↢天ト与ノ↟地」

^か0908くのごとく七しち十じゅう余よの偈げあり。

如キ↠是クノ有リ↢七十余ノ偈↡。

^また*同論どうろんにいはく、 「一切いっさいの法ほうの*不可ふか得とくなる、 これを仏道ぶつどうと名なづく。 すなはちこれ諸法しょほうの実相じっそうなり。 この不可ふか得とくもまた不可ふか得とくなり」 と。 略抄

又同ジキ論ニ云ク、「一切ノ法ノ不可得ナル、是ヲ名ク↢仏道ト↡。即チ是1080諸法ノ実相ナリ。此ノ不可得モ亦不可得ナリト。」略抄

^また迦か葉しょう菩ぼ薩さつ、 仏ぶつにまうしてまうさく (涅槃経)、

又迦葉菩薩白シテ↠仏ニ言ク、

^「一切いっさい諸法しょほうのなかに、 ことごとく安楽あんらくの性しょうあり。
ただ願ねがはくは大だい世せ尊そん、 わがために分別ふんべつして説ときたまへ」 と。

「一切諸法ノ中ニ悉ク有リ↢安楽ノ性↡
唯シ願クハ大世尊為ニ↠我ガ分別シテ説キタマヘト」

^また ¬般若はんにゃ経きょう¼ にのたまはく、 「一切いっさい有う情じょうはみな如来にょらい蔵ぞうなり。 普ふ賢げん菩ぼ薩さつの*自じ体たい、 遍へんせるがゆゑに」 と。

又¬般若経ニ¼云ク、「一切有*情ハ皆如来蔵ナリ。普賢菩薩ノ自体遍セルガ故ニト。」

^¬*法ほっ句く経きょう¼ にのたまはく、

¬法句経ニ¼云ク、

^「諸仏しょぶつは貪瞋とんじんによりて、 道どう場じょうに処しょしたまふ。
塵労じんろうは諸仏しょぶつの種たねなり。 もとよりこのかた所動しょどうなし。

「諸仏ハ依リテ↢貪瞋ニ↡而シテ処シタマフ↢於道場ニ↡
塵労ハ諸仏ノ種ナリ本ヨリ来タ無シ↢所動↡

^五ご蓋がいおよび五ご欲よくを、 諸仏しょぶつの*種しゅ性しょうとなす。
つねにこれをもつて荘しょう厳ごんせり。 もとよりこのかた所動しょどうなし。

五蓋及ビ五欲ヲ為ス↢諸仏ノ種性ト↡
常ニ以テ↠是ヲ荘厳セリ本ヨリ来タ无シ↢所動↡

^諸法しょほうはもとよりこのかた、 是ぜもなくまた非ひもなし。
是非ぜひの性しょう、 寂じゃく滅めつせり。 もとよりこのかた所動しょどうなし」 と。

諸法ハ従リ↠本来コノカタ無ク↠是モ亦無シ↠非モ
是非ノ性寂滅セリ本ヨリ来コノカタ无シト↢所動↡」

^以い上じょう四文もん、 これ利り根こんの人にんの菩ぼ提心だいしんなるのみ。

已上*四文、是利根ノ人ノ菩提心ナル*耳

 ^問とふ。 煩悩ぼんのう・菩ぼ提だい、 もし一体いったいならば、 ただ意こころに任まかせて*惑業わくごうを起おこすべきや。

問フ。煩悩・菩提若シ一体ナラバ者、唯シ応シ↣任セテ↠意ニ起ス↢惑業ヲ↡耶。

^答こたふ0909。 かくのごとき解げをなす、 これを名なづけて*悪取あくしゅ空くうのものとなす。 もつぱら仏ぶつ弟子でしにあらず。 いま*反質ほんぜつしていはく、 なんぢ、 もし煩悩ぼんのう即そく菩ぼ提だいなるがゆゑに欣ねがひて煩悩ぼんのう・悪業あくごうを起おこさば、 また生しょう死じ即そく涅ね槃はんなるがゆゑに欣ねがひて生しょう死じの猛みょう苦くを受うくべし。 なんがゆゑぞ、 刹せつ那なの苦果くかにおいては、 なほ堪たへがたきことを厭いとひ、 永劫ようごうの苦く因いんにおいては、 みづからほしいままに作つくることを欣ねがふや。

答フ。生ナス↢如キ↠是クノ解ヲ↡、名ケテ↠之ヲ為ス↢悪取空ノ者ト↡。専ラ非ズ↢仏弟子ニ↡。今反質シテ云ク、汝若シ煩悩即菩提ナルガ故ニ欣ヒテ起サバ↢煩悩・悪業ヲ↡、亦応シ↣生死即涅槃ナルガ故ニ欣ヒテ受ク↢生死ノ猛苦ヲ↡。何ガ故ゾ、於テハ↢刹那ノ苦果ニ↡猶厭ヒ↠難キコトヲ↠堪ヘ、於テハ↢永劫ノ苦因ニ↡欣ヒテ自ラ恣ニ作ラムヤ。

^このゆゑに、 まさに知しるべし、 煩悩ぼんのう・菩ぼ提だい、 体たいこれ一いちなりといへども、 時じ・*用ゆう異ことなるがゆゑに染ぜん・浄じょう不ふ同どうなり。 水みずと氷こおりとのごとく、 また種たねと菓このみとのごとし。 その体たいこれ一いちなれども、 時ときに随したがひて用ゆう異ことなるなり。 これによりて、 道どうを修しゅするものは*本ほん有うの仏ぶっ性しょうを顕あらわせども、 道どうを修しゅせざるものはつひに理りを顕あらわすことなし。

是ノ故ニ当ニシ↠知ル、煩悩ト菩提トハ体雖モ↢是一ナリト↡、時用異ナルガ故ニ染浄不同ナリ。如ク↢水ト与ノ↟氷、亦如シ↢種ト菓トノ↡。其ノ体是一ナレドモ、随ヒテ↠時ニ用異ナルナリ。由リテ↠此ニ修スル↠道ヲ者ハ顕シ↢本有ノ仏性ヲ↡、不ル↠修セ↠道ヲ者ハ終ニ無シ↠顕スコト↠理ヲ。

^¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の三さん十じゅう二ににのたまふがごとし。 「善男ぜんなん子し、 もし人ひとありて問とはく、 ªこの種しゅ子しのなかに果かありや、 果かなきやº と。 さだめて答こたへていふべし、 ªまたはあり、 またはなしº と。 なにをもつてのゆゑに。 子たねを離はなれてほかに果かを生しょうずることあたはず。 このゆゑに ªありº と名なづく。 子たねいまだ芽めを出いださず。 このゆゑに ªなしº と名なづく。 この義ぎをもつてのゆゑに、 ªまたはあり、 またはなしº と。

▼如シ↢¬涅槃経ノ¼卅二ニ云フガ↡。「善男子、若シ有リテ↠人*問ハマク、是ノ種子ノ中ニ有リヤ↠果、無キ↠果耶ト。応シ↢定メテ答ジテ言フ↡、亦ハ有リ亦ハ無シト。何ヲ以テノ故ニ。離レテ↠子タネヲ之外ニ不↠能ハ↠生ズルコト↠果ヲ。是ノ故ニ名ク↠有リト。子タネ未ダ↠出サ↠牙ヲ。是ノ故ニ名ク↠無シト。以テノ↢是ノ義ヲ↡故ニ、亦有亦无ナリト。

^所以ゆえんはいかん。 時じ節せつは異ことなることあれども、 その体たいはこれ一いちなり。 衆しゅ生じょうの仏ぶっ性しょうもまたか0910くのごとし。 もし衆しゅ生じょうのなかに、 別べつに仏ぶっ性しょうありといはば、 この義ぎしからず。 なにをもつてのゆゑに。 衆しゅ生じょうすなはち仏ぶっ性しょうなり、 仏ぶっ性しょうすなはち衆しゅ生じょうなり。 ただ時ときの異ことなるをもつて、 浄じょう・不ふ浄じょうあり。

◆所1081以者何ン。時節ハ有レドモ↠異ナルコト其ノ体ハ是一ナリ。衆生ノ仏性モ亦復如シ↠是クノ。若シ言ハバ↣衆生ノ中ニ別ニ有リト↢仏性↡者、是ノ義不↠然ラ。何ヲ以テノ故ニ。衆生即チ仏性ナリ、仏性即チ衆生ナリ。直以テ↢時ノ異ナルヲ↡有リ↢浄・不浄↡。

^善男ぜんなん子し、 もしあるが問とひていはく、 ªこの子たねはよく果かをなすやいなや、 この果かはよく子たねをなすやいなやº と。 さだめて答こたへていふべし、 ªまたは生しょうじ、 生しょうぜずº」 と。 以上

◆善男子、若シ有ルガ問ヒテ言マク、是ノ子タネハ能ク生ナスヤ↠果ヲ不ヤ、是ノ果ハ能ク生ナスヤ↠子ヲ不ヤト。応シ↢定メテ答ヘテ*言フ↡、亦ハ生ズ、不ト↠生ゼ。」 已上

 ^問とふ。 凡ぼん夫ぶは勤修ごんしゅするに堪たへず。 なんぞ虚むなしく弘ぐ願がんを発おこさんや。

問フ。凡夫ハ不↠堪ヘ↢勤修スルニ↡。何ゾ虚シク発サム↢弘願ヲ↡耶。

^答こたふ。 たとひ勤修ごんしゅに堪たへずとも、 なほすべからく*悲ひ願がんを発おこすべし。 その益やく、 無む量りょうなり。 前ぜん後ごに明あかすがごとし。

答フ。設ヒ不トモ↠堪ヘ↢勤修ニ↡、猶須クシ↠発ス↢悲願ヲ↡。其ノ益无量ナリ。如シ↢前後ニ明スガ↡。

^調じょう達だつ (*提婆達多) は六ろく万蔵まんぞうの経きょうを誦じゅせしも、 なほ*那な落らくを免まぬかれず。 *慈じ童どうは一念いちねんの悲ひ願がんを発おこして、 たちまちに兜と率そつに生うまるることを得えたり。

調達ハ誦シテ↢六万蔵ノ経ヲ↡猶不↠免レ↢那落ヲ↡。慈童ハ発シテ↢一念ノ悲願ヲ↡、忽ニ得タリ↠生ルルコトヲ↢兜率ニ↡。

^すなはち知しりぬ。 昇しょう沈ちんの差別しゃべつは心しんにありて、 行ぎょうにあらず。 いかにいはんや、 いづれの人ひとか、 一いっ生しょうのうちに、 一ひとたびも 「南無なも仏ぶつ」 と称しょうせず、 一食じきをも衆しゅ生じょうに施ほどこさざるものあらん。 すべからくこれらの微み少しょうの善根ぜんごんをもつて、 みな四弘しぐの願がん行ぎょうに摂入しょうにゅうすべし。 ゆゑに行ぎょう願がん相応そうおうして、 虚こ妄もうの願がんとならじ。

則チ知リヌ。昇沈ノ差別ハ在リテ↠心ニ非ズ↠行ニハ。何ニ況ヤ誰イヅレノ人カ一生之中ニ不↣一タビモ称セ↢南無仏ト↡、不ラム↣一食ヲモ施セ↢衆生ニ↡。須ク以テ↢此等ノ微少ノ善根ヲ↡、皆応シ↣摂↢入ス四弘ノ願行ニ↡。故ニ行願相応シテ、不↠為ラ↢虚妄ノ願ト↡。

^¬*優婆うば塞そく戒かい経きょう¼ の第一だいいちにのたまふがごとし。 「もし人ひと、 一心いっしんに生しょう死じの過咎かぐ、 涅ね槃はんの安楽あんらくを観察かんざつすることあたはずは、 かくのごとき人ひとは、 また*恵施えせ・持じ戒かい・多た聞もんなりといへども、 つ0911ひに*解げ脱だつ分ぶんの法ほうを得うることあたはず。 もしよく生しょう死じの過咎かぐを*厭患えんげんし、 深ふかく涅ね槃はんの功く徳どくと安楽あんらくとを見みば、 かくのごとき人ひとは、 また少しょう施せ・少しょう戒かい・少しょう聞もんなりといへども、 すなはちよく解げ脱だつ分ぶんの法ほうを獲ぎゃく得とくせん」 と。

如シ↢¬優婆塞戒経ノ¼第一ニ云フガ↡。「若シ人不ルハ↠能ハ↣一心ニ観↢察スルコト生死ノ過咎、涅槃ノ安楽ヲ↡、如キ↠是クノ之人ハ、雖モ↢復*恵施・持戒・多聞ナリト↡、終ニ不↠能ハ↠得ルコト↢解脱分ノ法ヲ↡。若シ能ク厭↢患シ生死ノ過咎ヲ↡、深ク見ル↢涅槃ノ功徳ト安楽トヲ↡、如キ↠是クノ之人ハ、雖モ↢復少施・少戒・少聞ナリト↡、即チ能ク獲↢得スト解脱分ノ法ヲ↡。」

^以い上じょう、 無む量りょう世せにおいて、 無む量りょうの財ざいをもつて無む量りょうの人にんに施ほどこし、 無む量りょう仏ぶつの所みもとにして禁戒きんかいを受じゅ持じし、 無む量りょう世せに無む量りょうの仏ぶつの所みもとにして十じゅう二に部ぶ経きょうを受じゅ持じ・読誦どくじゅせるを、 名なづけて多たの施せ・戒かい・聞もんとなす。 *一いち把わの麨むぎをもつて、 一いちの乞人こつにんに施ほどこし、 一日いちにち一いち夜や、 八戒はっかいを受じゅ持じし、 一いちの四し句偈くげを読よむを、 少しょうの施せ・戒かい・聞もんと名なづく。 ¬経きょう¼ (優婆塞戒経) に広ひろく説とくがごとし。

已上於テ↢无量世ニ↡、以テ↢无量ノ財ヲ↡施シ↢无量ノ人ニ↡、於テ↢无量仏ノ所ニ↡受↢持シ禁戒ヲ↡、於テ↢无量世ニ無量ノ仏ノ所ニ↡受↢持読↣誦セルヲ十二部経ヲ↡、名ケテ為ス↢多ノ施・戒・聞ト↡。以テ↢一把ノ麨ムギヲ↡施シ↢一ノ乞人ニ↡、一日一夜受↢持シ八*戒ヲ↡、読ムヲ↢一ノ四句偈ヲ↡、名ク↢少ノ施・戒・聞ト↡。如シ↢¬経ニ¼広ク説クガ↡

^このゆゑに、 行ぎょう者じゃ、 事じに随したがひて用心ようじんすれば、 乃ない至し一善いちぜんをも空むなしく過すぐすものなし。

是ノ故ニ行者随ヒテ↠事ニ用心シテ、乃至一善ヲモ無シ↢空シク過グス者↡。

^¬大だい般若はんにゃ経きょう¼ にのたまふがごとし。 「もしもろもろの菩ぼ薩さつの、 *深じん般若はんにゃ波羅はら蜜みっ多たの*方便ほうべん善ぜん巧ぎょうを行ぎょうずるは、 一心いっしん・一いち行ぎょうとして空むなしく過すぐして、 *一切いっさい智ちに回え向こうせざるものはあることなし」 と。 以上

如シ↢¬大般若経ニ¼云フガ↡。「若シ諸ノ菩薩ノ行ズルハ↢深般若波羅蜜多ノ方便善巧ヲ↡、無シト↠有ルコト↧一心・一1082行トシテ空シク過グシテ而不ル↣廻↢向セ一切智ニ↡者ハ↥。」 已上

 ^問とふ。 いかんが用心ようじんする。

問フ。云何ガ用心トスル。

^答こたふ。 ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の九く十じゅう三さんにのたまふがごとし。 「食じきを須まつものには食じきを施ほどこせ、 一切いっさい智ちの力ちからを具ぐ足そくせんがためのゆゑなり。 飲おんを須まつものには飲おんを施ほどこせ、 *渇愛かつあいの力ちからを断だんぜんがためのゆゑなり。 衣えを須まつものには衣えを施ほどこせ、 無む上じょうの慚ざん愧ぎの衣えを得えんがためのゆゑなり。

答フ。如シ↢¬宝積経ノ¼九十三ニ云フガ↡。「須ヰムニ↠食ヲ施シテハ↠食ヲ、為ノ↣具↢足セムガ一切智ノ力ヲ↡故ニセヨ。須ヰムニ↠飲ヲ施シテハ↠飲ヲ、為ノ↠断ゼムガ↢渇愛ノ力ヲ↡故ニセヨ。須ヰムニ↠衣ヲ施シテハ↠衣ヲ、為ノ↠得ムガ↢無上ノ慚愧ノ衣ヲ↡故ニセヨ。

^坐ざ処しょを施ほどこすは、 菩ぼ提だい樹じゅ下げ0912に坐ざせんがためのゆゑなり。 灯とう明みょうを施ほどこすは、 仏眼ぶつげんの明みょうを得えんがためのゆゑなり。 紙し墨ぼく等とうを施ほどこすは、 大だい智慧ちえを得えんがためのゆゑなり。 薬くすりを施ほどこすは、 衆しゅ生じょうの*結けっ使しの病やまいを除のぞかんがためのゆゑなり。

施シテハ↢坐処ヲ↡為ノ↠坐セムガ↢菩提樹下ニ↡故ニセヨ。施シテハ↢灯明ヲ↡為ノ↠得ムガ↢仏眼ノ明ヲ↡故ニセヨ。施シテハ↢紙墨等ヲ↡為ノ↠得ムガ↢大智*恵ヲ↡故ニセヨ。施シテハ↠薬ヲ為ノ↠除カムガ↢衆生ノ結使ノ病ヲ↡故ニセヨ。

^かくのごとく、 乃ない至し、 あるいはみづから財ざいなくは、 まさに心しんの施せをなすべし。 無む量りょう無む辺へんの一切いっさい衆しゅ生じょうを開かい示じすることを得えんと欲ほっせば、 力ちからあるも力ちからなきも、 上かみのごとく布施ふせすべし。 これわが善ぜん行ぎょうなり」 と。 以い上じょう、 ¬経きょう¼ (宝積経) の文もんはなはだ広ひろし。 いま略りゃくしてこれを抄しょうす。 見みつべし。

如ク↠是クノ乃至或イハ自ラ無クハ↠財、当ニシ↠生ナス↢心ノ施ヲ↡。欲セヨ↠得ムト↣開↢示スルコトヲ無量無辺ノ一切衆生ニ↡。有力ニマレ无力ニマレ、如キ↠上ノ布施ハ。是我ガ善行ナリト。」已上¬経ノ¼文甚ダ広シ。今略シテ↢抄ス之ヲ↡。可シ↠見ツ

^かくのごとく事じに随したがひて、 つねに心願しんがんを発おこせ。 「願ねがはくは、 この衆しゅ生じょうをしてすみやかに無む上じょう道どうを成じょうぜしめん。 願ねがはくは、 われかくのごとく漸々ぜんぜんに△第一だいいちの願がん行ぎょうを成じょう就じゅし、 *檀だん度どを円満えんまんして、 すみやかに菩ぼ提だいを証しょうし、 広ひろく衆しゅ生じょうを度どせん」 と。 一いちの*愛あい語ごを発おこし、 一いちの*利り行ぎょうを施ほどこし、 一いちの*善ぜん事じを同どうぜんにも、 これに准じゅんじて知しりぬべし。

如ク↠是クノ随ヒテ↠事ニ常ニ発セ↢心願ヲ↡。願クハ令メム↣此ノ衆生ヲシテ速ニ成ラ↢无上道ヲ↡。願クハ我如クシテ↠是クノ漸漸ニ成↢就シ第一ノ願行ヲ↡、円↢満シテ檀度ヲ↡速ニ証シテ↢菩提ヲ↡、広ク度セムト↢衆生ヲ↡。発シ↢一ノ愛語ヲ↡、施シ↢一ノ利行ヲ↡、同ゼムニモ↢一ノ善事ヲ↡、准ジテ↠此ニ応シ↠知リヌ。

^もししばらくも一念いちねんの悪あくを制伏せいぶくする時ときには、 この念ねんをなすべし。 「願ねがはくは、 われかくのごとく漸々ぜんぜんに△第だい二にの願がん行ぎょうを成じょう就じゅし、 もろもろの惑業わくごうを断だんじて、 すみやかに菩ぼ提だいを証しょうし、 広ひろく衆しゅ生じょうを度どせん」 と。

若シ暫クモ制↢伏セム一念ノ悪ヲ↡時ニハ、応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡。願クハ我如クシテ↠是クノ漸漸ニ成↢就シテ第二ノ願行ヲ↡、断ジテ↢諸ノ惑業ヲ↡、速ニ証シ↢菩提ヲ↡広ク度セムト↢衆生ヲ↡。

^もし一文いちもん一いち義ぎを読誦どくじゅ修しゅ習じゅうする時ときには、 この念ねんをなすべし。 「願ねがはくは、 われかくのごとく漸々ぜんぜんに△第だい三さんの願がん行ぎょうを成じょう就じゅし、 諸仏しょぶつの法ほうを学がくしてすみやかに菩ぼ提だいを証しょうし、 広ひろく衆しゅ生じょうを度どせん」 と。

若シ読↢誦修↣習セム一文・一義ヲ↡時ニハ、応シ↠作ス↢是ノ念ヲ↡。願クハ我如クシテ↠是クノ漸漸ニ成↢就シテ第三ノ願行ヲ↡、学シテ↢諸仏ノ法ヲ↡、速ニ証シテ↢菩提ヲ↡、広ク度セムト↢衆生ヲ↡。

^一切いっさいの0913事じに触ふれて、 つねに用心ようじんをなせ。 「われ今身こんじんより漸々ぜんぜんに修学しゅがくして、 乃ない至し、 極楽ごくらくに生うまれて自じ在ざいに仏道ぶつどうを学がくし、 すみやかに△菩ぼ提だいを証しょうして、 究く竟きょうして生しょうを利りせん」 と。

触レテ↢一切ノ事ニ↡常ニ作セ↢用心ヲ↡。我従リ↢今身↡漸漸ニ修学シテ、乃至生レテ↢極楽ニ↡自在ニ学シ↢仏道ヲ↡、速ニ証シテ↢菩提ヲ↡、究竟シテ利セムト↠生ヲ。

^もしつねにこの念ねんを懐いだきて、 力ちからに随したがひて修しゅ行ぎょうするものは、 渧しただりの微みなりといへども、 やうやく大だいなる器うつわに盈みつがごとし。 この心しんよく巨こ細さいの万善まんぜんを持たもちて、 漏ろ落らくせしめずして、 かならず菩ぼ提だいに至いたる。

若シ常ニ懐キテ↢此ノ念ヲ↡、随ヒテ↠力ニ修行スル者ハ、如シ↣渧シタタリノ雖モ↠微ナリト漸ク盈ミツガ↢大ナル器モノニ↡。此ノ心能ク持チテ↢*巨細ノ万善ヲ↡、不シテ↠令メ↢漏落セ↡必ズ至ル↢菩提ニ↡。

^¬華け厳ごん経ぎょう¼ の 「*入にゅう法界品ほっかいぼん」 にのたまふがごとし。 「たとへば、 金剛こんごうの、 よく大だい地じを持たもちて墜没ついもつせしめざるがごとく、 菩ぼ提だいの心しんもまたかくのごとし。 よく菩ぼ薩さつの一切いっさいの願がん行ぎょうを持たもちて、 墜落ついらくして三界さんがいに没もっせしめず」 と。 云々

如シ↢¬花厳経ノ¼「入1083法界品ニ」云フガ↡。「譬ヘバ如ク↧金剛ノ能ク持チテ↢大地ヲ↡不ルガ↞令メ↢墜没セ↡、菩提之心モ亦復如シ↠是クノ。能ク持チテ↢菩薩ノ一切ノ願行ヲ↡、不ト↠令メ↣墜*落シテ没セ↢於三界ニ↡。」云々

 ^問とはく、 凡ぼん夫ぶは*常じょう途ずの用心ようじんに堪たへず。 その時ときの善根ぜんごんは*唐捐とうえんなりとやせん。

問ク、凡夫ハ不↠堪ヘ↢常途ノ用心ニ↡。爾ノ時ノ善根ハ為ム↢唐捐ナリトヤ↡耶。

^答こたふ。 もし至し誠じょう心しんをもつて、 心しんに念おもひ口くちにいはく、 「われ今日こんにちよりは、 乃ない至し一善いちぜんをも己こ身しんの有漏うろの果か報ほうのためにせず、 ことごとく極楽ごくらくのためにせん、 ことごとく菩ぼ提だいのためにせん」 と。 この心しんを発おこしつる後のちには、 あらゆるもろもろの善ぜんは、 もしは覚かくし、 覚かくせざるも、 自じ然ねんに無む上じょう菩ぼ提だいに趣向しゅこうす。

答フ。若シ至誠ノ心ニシテ、心ニ念ヒ口ニ言マク、我従リハ↢今日↡、乃至一善ヲモ不↠為ニセ↢己身ノ有漏ノ果報ノ↡、尽ク為ニセム↢極楽ノ↡、尽ク為ニセムト↢菩提ノ↡。発シツル↢此ノ心ヲ↡後ニハ、所有ノ諸ノ善ハ、若シハ覚シ不ルモ↠覚セ、自然ニ趣↢向ス無上菩提ニ↡。

^一ひとたび*渠こ溝こうを穿ほりつれば、 もろもろの水みずおのづから流る入にゅうして、 転てんじて江こう河がに至いたり、 つひに大海だいかいに会えするがごとし。 行ぎょう者じゃもまたしかり。 一ひとたび発心ほっしんしつる後のちには、 もろもろの善根ぜんごんの水みずも自じ0914然ねんに四弘しぐ願がんの渠みぞに流る入にゅうして、 転てんじて極楽ごくらくに生しょうじ、 つひに菩ぼ提だいの*薩婆さは若海にゃかいに会えす。 いかにいはんや、 時々じじに前さきの願がんを憶念おくねんせんをや。 つぶさには下しもの回え向こう門もんのごとし。

如シ↧一タビ穿ホリツレバ↢渠溝ヲ↡、諸ノ水自ラ流入シテ転ジテ至リ↢江河ニ↡、遂ニ会スルガ↦大海ニ↥。行者モ亦爾リ。一タビ発心シツル後ニハ、諸ノ善根ノ水モ自然ニ流↢入シテ四弘願ノ渠ニ↡、転ジテ生ジ↢極楽ニ↡、遂ニ会ス↢菩提ノ薩*婆若海ニ↡。何ニ況ヤ時々ニ憶↢念セムヲヤ前ノ願ヲ↡。具ニハ如シ↢下ノ廻向門ノ↡。

 ^問とふ。 凡ぼん夫ぶは力ちからなければ、 よく捨すてんとして捨すてがたし。 あるいはまた貧乏びんぼうなり。 なんの方便ほうべんをもつてか、 心しんをして*理りに順じゅんぜしめん。

問フ。凡夫ハ無シ↠力↢能ク捨ツルニ↟難キヲ↠捨テ。或イハ復貧乏ナリ。以テカ↢何ノ方便ヲ↡令メム↢心ヲシテ順ゼ↟理ニ。

^答こたふ。 ¬宝ほう積しゃく経きょう¼ にのたまはく、 「かくのごとく布施ふせせんに、 もし力ちからあることなくしてこれを*学がくするにあたはず、 財ざいを捨すつることあたはずは、 この菩ぼ薩さつはかくのごとく思し惟ゆいすべし。 ªわれ、 いままさにつとめて精しょう進じんを加くわへ、 時々じじ漸々ぜんぜんに慳貪けんどん・吝りん惜しゃくの*垢くを断除だんじょすべし。 われ、 まさにつとめて精しょう進じんを加くわへ、 時々じじ漸々ぜんぜんに財ざいを捨すてて施与せよすることを学がくして、 つねにわが施せ心しんをして増ぞう長じょうし広大こうだいならしむべしº」 と。

答フ。¬宝積経ニ¼云ク、「如キ↠此クノ布施ハ、若シ无クシテ↠有ルコト↠力不↠能ハ↠*覚ルニ↠之ヲ、不ハ↠能ハ↠捨ツルコト↠財ヲ、是ノ菩薩ハ応シ↢如ク↠是クノ思惟ス↡。我今当ニシ↧勤メテ加ヘテ↢精進ヲ↡、時々漸々ニ断↦除ス慳貪・吝惜之垢ヲ↥。我当ニシト↧勤メテ加ヘテ↢精進ヲ↡、時々漸々ニ学シテ↢捨テテ↠財ヲ施与スルコトヲ↡、常ニ令ム↦我ガ施心ヲシテ増長シ広*大ナラ↥。」

^また ¬*因いん果が経きょう¼ の偈げにのたまはく、

又¬因果経ノ¼偈ニ云ク、

^「もし貧びん窮ぐの人にんありて、 財ざいの布施ふせすべきものなくは、
他たの施せを修しゅするを見みる時ときに、 しかも*随ずい喜きの心しんをなせ。
随ずい喜きの福報ふくほうは、 施せと等ひとしくして異ことなることなし」 と。

「若シ有リテ↢貧窮ノ人↡無クハ↣財ノ可キモノ↢布施ス↡
見ム↢他ノ修セムヲ↟施ヲ時ニ而モ生ナセ↢随*喜ノ心ヲ↡
随喜之福報ハ与↠施等シクシテ無シト↠異ナルコト」

^¬十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ¼ の偈げにいはく、

¬十住毘婆*娑ノ¼偈ニ云ク、

^0915「われ、 いまこれ*新学しんがくなり。 善根ぜんごんいまだ成じょう就じゅせず。
心しんいまだ自じ在ざいを得えず。 願ねがはくは後のちにまさにあひ与あたふべし」 と。 以上

「我今是新学ナリ善根未ダ↢成就セ↡
心未ダ↠得↢自在ヲ↡願クハ*後ニ当ニシト↢相与フ↡」 已上

^行ぎょう者じゃ、 まさにかくのごとく用心ようじんすべし。

行者1084応ニ当シ↢如ク↠是クノ用心ス↡。

 ^問とふ。 このなかに、 理りを縁えんじて菩ぼ提心だいしんを発おこすも、 また因いん果がを信しんじて、 つとめて道どうを修しゅ行ぎょうすべきや。

問フ。此ノ中ニ、縁理ノ発菩提心ハ、亦可シ↧信ジテ↢因果ヲ↡勤メテ修↦行ス道ヲ↥耶。

^答こたふ。 理り、 かならずしかるべし。

答フ。理必ズ可シ↠然ル。

^¬浄名じょうみょう経きょう¼ (*維摩経) の偈げにのたまふがごとし。

如シ↢¬浄名経ノ¼*偈ニ云フガ↡。

^「▲諸仏しょぶつの国くにと、 および衆しゅ生じょうとの空くうなることを観かんずといへども、
しかもつねに浄じょう土どを修しゅし、 もろもろの群ぐん生じょうを教きょう化けす」 と。

「雖モ↠観ズト↧諸仏ノ国ト及ビ与ノ↢衆生↡空ナルコトヲ↥
*而モ常ニ修シ↢浄土ヲ↡教↢化スト諸ノ群生ヲ↡」

^¬*中ちゅう論ろん¼ の偈げにいはく、

¬中論ノ¼偈ニ云ク、

^「空くうなりといへどもまた断だんぜず。 有うなりといへどもしかも常じょうならず。
業ごうと果か報ほうとは失しっせず。 これを仏ぶつの所説しょせつと名なづく」 と。

「雖モ↠空ナリト亦不↠断ゼ雖モ↠有ナリト而モ不↠常ナラ
業ト果報トハ不↠失セ是ヲ名クト↢仏ノ所説ト↡」

^また ¬大論だいろん¼ (大智度論) にいはく、 「もし諸法しょほう皆空かいくうならばすなはち衆しゅ生じょうなし。 たれか度どすべきものあらん。 この時ときは悲ひ心しん、 すなはち弱よわし。 あるいは時ときに衆しゅ生じょうの愍あわれむべきをもつてせば、 諸法しょほうの空観くうかんにおいて弱よわし。 もし方便ほうべん力りきを得えつれば、 この二に法ほうにおいて等ひとしくして*偏党へんとうなし。 大だい悲ひ心しんは、 諸法しょほうの実相じっそうを妨さまたげず。 諸法しょほうの0916実相じっそうを得うれども、 大だい悲ひを妨さまたげず。 かくのごとき方便ほうべんを生しょうずる、 この時とき、 すなはち菩ぼ薩さつの*法ほう位いに入いり、 阿鞞あび跋ばっ致ち地じに住じゅうすることを得う」 と。 略抄

又¬大論ニ¼云ク、「若シ諸法皆空ナラバ則チ無シ↢衆生↡。誰カ可キ↠度ス者アラム。是ノ時ニ悲心便チ弱シ。或イハ時ニハ以テセバ↢衆生ノ可キヲ↟愍ブ、於テ↢諸法ノ空ノ観ニ↡弱シ。若シ得ツレバ↢方便ノ力ヲ↡、於テ↢此ノ二法ニ↡等シクシテ無シ↢偏党↡。大悲心アレドモ不↠妨セ↢諸法ノ実相ヲ↡。得レドモ↢諸法ノ実相ヲ↡不↠妨へ↢大悲ヲ↡。生ジテ↢如キ↠是クノ方便ヲ↡、是ノ時ニ便チ得ト↧入リ↢菩薩ノ法位ニ↡、住スルコトヲ↦阿鞞跋致地ニ↥。」略抄

 ^問とふ。 もし偏へんして解げをなさば、 その過とがいかんぞ。

問フ。若シ偏ニ生スハ↠解ヲ、其ノ過云何ゾ。

^答こたふ。 ¬*無む上じょう依え経きょう¼ の上じょう巻かんに、 *空見くうけんを明あかしてのたまはく、 「▲もし人ひとありて、 我が見けんを執しゅうすること須しゅ弥み山せんの大おおきさのごとくせんをば、 われ驚きょう怖ふせず、 また*毀呰きしせず。 *増ぞう上じょう慢まんの人にんの、 空見くうけんに執着しゅうじゃくすること一いち髦髪もうほつを十じゅう六ろく分ぶんになさんがごとくせんをば、 われ許可ゆるさず」 と。

答フ。¬無上依経ノ¼上巻ニ、明シテ↢空見ヲ↡云ク、「若シ有リテ↠人執スルコト↢我見ヲ↡如クセムヲバ↢須弥山ノ大キサノ↡、我不↢驚怖セ↡、亦不↢毀呰セ↡。増上慢ノ人ノ、執↢著スルコト空見ニ↡如クセムヲバ↣一*髦髪ヲ作サムガ↢十六分ニ↡、我不ト↢許可 ユル サ↡。」

^また ¬中ちゅう論ろん¼ の第だい二にの偈げにいはく、

又¬中論ノ¼第二ノ偈ニ云ク、

^「大だい聖しょう (釈尊) の、 空法くうほうを説ときたまふことは、 諸見しょけんを離はなれしめんがためのゆゑなり。
もしまた空くうありと見みるは、 諸仏しょぶつ化けせざるところなり」 と。

「大聖ノ説キタマフコトハ↢空法ヲ↡為ノ↠離レシメムガ↢諸見ヲ↡故ナリ
若シ復見ルハ↠有リト↠空諸仏所ナリト↠不ル↠化セ」

^¬*仏蔵ぶつぞう経きょう¼ の 「念僧ねんそう品ぼん」 に、 *有う所得しょとくの執しゅうを破はしてのたまはく、 「有う所得しょとくのものは、 *我が・人にん・寿者じゅしゃ・命みょう者しゃありと説とき、 *無む所しょ有うの法ほうを憶念おくねんし分別ふんべつして、 あるいは*断だん・常じょうと説とき、 あるいは*有作うさと説とき、 あるいは*無作むさと説とく。 わが清浄しょうじょうの法ほう、 この因縁いんねんをもつて漸々ぜんぜんに滅尽めつじんせん。 われ、 久ひさしく生しょう死じにありて、 もろもろの苦く悩のうを受うけて成じょうぜるところの菩ぼ提だいをば、 このもろもろの悪人あくにん、 その時ときに毀壊きえせん0917」 と。 略抄

¬仏蔵経ノ¼「念僧品ニ」、破シテ↢有所得ノ執ヲ↡云ク、「有ル↢所得↡者ハ、説ク↠有リト↢我・人・寿者・命者↡。憶↢念シ分↣別シテ無所有ノ法ヲ↡、或イハ説キ↢断・常ト↡、或イハ説キ↢有作ト↡、或イハ説ク↢無作ト↡。我ガ清浄ノ法、以テ↢是ノ因縁ヲ↡漸々ニ滅尽セム。我久シク在リテ↢生死ニ↡、受ケテ↢諸ノ苦悩ヲ↡所ノ↠成ゼル菩提ヲバ、是ノ諸ノ悪人爾ノ時1085ニ毀壊セムト。略抄

^また同どう経きょうの 「*浄じょう戒品かいぼん」 にのたまはく、 「我が見けん・人見にんけん・衆しゅ生じょう見けんのものは、 多おおく邪見じゃけんに堕おつ。 断滅だんめつ見けんのものは、 多おおく疾とく道どうを得う。 なにをもつてのゆゑに。 これをば捨すてやすきがゆゑに。 このゆゑにまさに知しるべし、 この人ひとはむしろみづから利とき刀かたなをもつて舌したを割さくとも、 衆しゅうのなかにして不ふ浄じょうに説法せっぽうすべからず」 と。 有う所得しょとく執しゅうを名なづけて不ふ浄じょうとなす。

又同ジキ¬経ノ¼「浄戒品ニ」云ク、「我見・人見・衆生見ノ者ハ、多ク堕ツ↢邪見ニ↡。断滅見ノ者ハ、多ク疾ク得↠道ヲ。何ヲ以テノ故ニ。是ヲバ易キガ↠捨テ故ニ。是ノ故ニ当ニシ↠知ル、是ノ人ハ寧ロ自ラ以テ↢利キ刀ヲ↡割クトモ↠舌ヲ、不ト↠応カラ↢*衆ノ中ニシテ不浄ニ説法ス↡。」有所得執ヲ名ケテ為ス↢不浄ト↡

^¬大論だいろん¼ (大智度論) の第一だいいちに、 並ならべて二に執しゅうの過とがを明あかしていはく、 「▲たとへば、 人ひとの、 狭せまき道みちを行ゆくに、 一辺いっぺんは深水じんすい、 一辺いっぺんは大だい火かにして、 二に辺へんともに死しするがごとし。 有うに着じゃくするも、 無むに着じゃくするも、 二事にじともに失しっす」 と。 以上

¬大論ノ¼*第一ニ、並ベテ明シテ↢二執ノ過ヲ↡云ク、「譬ヘバ如ク↧人ノ行クニ↢*狭キ道ヲ↡、一辺ハ深水、一辺ハ大火アラム、二辺ニオイテセムニ倶ニ死セムガ↥、著シ↠有ニ著スルモノ↠无ニ、二事倶ニ失ナリト。」 已上

^このゆゑに、 行ぎょう者じゃ、 つねに諸法しょほうの本来ほんらい空くう寂じゃくなるを観かんじ、 またつねに四弘しぐの願がん行ぎょうを修しゅ習じゅうせよ。 空くうと地じとによりて宮く舎しゃを造ぞう立りゅうせんとするも、 ただ地じ、 ただ空くうにしては、 つひに成じょうずることあたはざるがごとし。 これはこれ諸法しょほうの*三諦さんたい相即そうそくせるによるがゆゑなり。

是ノ故ニ行者常ニ観ジ↢諸法ノ本来空寂ナルヲ↡、亦常ニ修↢習セムコト四弘ノ願行ヲ↡、如クセヨ↧依リテ↢空ト地トニ↡造↦立セムガ宮舎ヲ↥。唯シ地唯シ空ニハ、終ニ不↠能ハ↠成ズルコト。此ハ是由ルガ↢諸法ノ三諦相即セルニ↡故ナリ。

^¬中ちゅう論ろん¼ の偈げにいふがごとし。

*如シ¬中論ノ¼偈ニ云フガ。

^「因縁いんねん所しょ生しょうの法ほうをば、 われすなはちこれ空くうなりと説とく。
また名なづけて仮け名みょうとなす。 またこれ中ちゅう道どうの義ぎなり」 と。 云々

「因縁所生ノ法ヲバ我説ク↢即チ是空ナリト↡
亦ハ名ケテ為ス↢仮名ト↡亦ハ是中道ノ義ナリト」 云々

^さらに ¬止し観かん¼ を撿かんがへよ。

更ニ撿カンガヘヨ↢¬止観ヲ¼↡。

 ^0918問とふ。 執しゅう有うの見けん、 罪ざい過かすでに重おもくは、 縁えん事じの菩ぼ提心だいしん、 あに*勝しょう利りあらんや。

問フ。執有之見、罪過既ニ重シ。縁事ノ菩提心、豈ニ有ラム↢勝利↡耶。

^答こたふ。 堅かたく有うを執しゅうする時ときに、 過か失しつすなはち生しょうず。 いふところの縁えん事じとは、 かならずしも堅けん執しゅうにあらず。 もししからずは、 見けん有う得道とくどうの類たぐいなかるべし。 見空けんくうもまたしかり。 たとへば、 火ひを用もちゐるに、 手て触ふるれば害がいをなし、 触ふれざれば益やくあるがごとし。 空くう有うもまたしかり。

答フ。堅ク執スル↠有ヲ時ニ、過失乃シ生ズ。所ノ↠言フ縁事トイフハ非ズ↢必ズシモ堅執ニ↡。若シ不ハ↠爾カイハ者、応シ↠無カル↢見有得道之類↡。見空モ亦爾リ。譬ヘバ如シ↢用ヰルニ↠火ヲ手ニ触ルレバ為ス↠害ヲ、不レバ↠触レ有ルガ↟益。空・有モ亦爾リ。

・利益

【40】^二にに△利り益やくを明あかさば、 もし人ひと、 説せつのごとくして菩ぼ提心だいしんを発おこさば、 たとひ余よの行ぎょうを少かくとも、 願がんに随したがひて決けつ定じょうして極楽ごくらくに往おう生じょうしなん。 ▲上じょう品ぼん下げ生しょうの類たぐいこれなり。 かくのごとき利り益やく、 無む量りょうなり。 いま略りゃくして一端いったんを示しめさん。

*二ニ明サバ↢利益ヲ↡者、若シ人如クシテ↠説ノ発サバ↢菩提心ヲ↡、設ヒ少カケタリトモ↢余ノ行ヲ↡、随ヒテ↠願ニ決定シテ往↢生シナム極*楽ニ↡。上品下生之類是也。如キ↠是クノ利益無量ナリ。今略シテ示サム↢一端ヲ↡。

^¬止し観かん¼ にいはく、 「¬*宝ほう梁りょう経きょう¼ にのたまはく、 ª比丘びくの、 比丘びくの法ほうを修しゅせざるは、 *大千だいせんに唾だする処ところなし。 いはんや、 人ひとの供く養ようを受うけんをや。 六ろく十じゅうの比丘びく、 悲ひ泣きゅうして仏ぶつにまうさく、 «われら、 たちまちに死しすとも、 人ひとの供く養ようを受うくることあたはじ» と。 仏ぶつののたまはく、 «なんぢ、 慚ざん愧ぎの心しんを起おこせり。 善よきかな、 善よきかな» と。

¬止観ニ¼云ク、「¬宝梁経ニ¼云ク、比丘ノ不ルハ↠修セ↢比丘ノ法ヲ↡、大千ニ無シ↢唾スル処↡。況ヤ受ケムヲヤ↢人ノ供養ヲ↡。六十ノ比丘1086悲泣シテ白サク↠仏ニ、我等乍タチマチニ死ナム、不ト↠能ハ↠受クルコト↢人ノ供養ヲ↡。仏ノ言ク、汝起ス↢慚愧ノ心ヲ↡。善哉善哉ト。

^一いちの比丘びく、 仏ぶつにまうしてまうさく、 «なんらの比丘びくか、 よく供く養ようを受うくる» と。 仏ぶつののたまはく、 «もし比丘びくの数しゅにありて、 僧そうの業ごうを修しゅし、 僧そうの利りを得えたるもの、 この人ひとよく供く養ようを受うく。 四果しかの向こうはこれ僧そうの数しゅなり。 三さん十じゅう七しち品ほんはこれ僧そうの業ごう0919なり。 四果しかはこれ僧そうの利りなり» と。

一ノ比丘白シテ↠仏ニ言ク、何等ノ比丘カ能ク受クルト↢供養ヲ↡。仏ノ言ク、若シ在リテ↢比丘ノ数ニ↡、修シ↢僧ノ業ヲ↡、得タル↢僧ノ利ヲ↡者、是ノ人能ク受ク↢供養ヲ↡。四果ノ向ハ是僧ノ数ナリ。卅七品ハ是僧ノ業ナリ。四果ハ是僧ノ利ナリト。

^比丘びく、 かさねて仏ぶつにまうさく、 «もし*大だい乗じょうの心しんを発おこすものは、 またいかんぞ» と。 仏ぶつののたまはく、 «もし大だい乗じょうの心しんを発おこして一切いっさい智ちを求もとむるは、 数しゅに堕だせず、 業ごうを修しゅせず、 利りを得えずとも、 よく供く養ようを受うけてん» と。

比丘重ネテ白サク↠*仏ニ、若シ発サム↢大乗ノ心ヲ↡者ハ復云何ゾト。仏ノ言ク、若シ発シテ↢大乗ノ心ヲ↡求ムルハ↢一切智ヲ↡、不↠堕セ↠数ニ、不↠修セ↠業ヲ、不トモ↠得↠利ヲ、能ク受ケテムト↢供養ヲ↡。

^比丘びく驚おどろきて問とひたてまつる。 «いかんが、 この人ひとよく供く養ようを受うくる» と。 仏ぶつののたまはく、 «この人ひと、 衣えを受うけて用もちゐて大だい地じに敷しき、 *揣食たんじきを受うくること須しゅ弥み山せんのごとくすとも、 またよくつひに施せ主しゅの恩おんを報ほうじてん»º と。 まさに知しるべし、 *小乗しょうじょうの極ごく果かは、 *大だい乗じょうの初心しょしんに及およばず」 と。 以い上じょう、 信しん施せを消けす。

比丘驚キテ問ヒテ云フニ、何ンゾ是ノ人ノ能ク受クルト↢供養ヲ↡。仏ノ言ク、是ノ人受ケテ↠衣ヲ用ヰテ敷キ↢大地ニ↡、受クルコト↢揣食ヲ↡若クストモ↢須弥山ノ↡、亦能ク畢ニ報ジテムト↢施主之恩ヲ↡。当ニシ↠知ル、小乗之極果ハ不ト↠及バ↢大乗之初心ニ↡。」已上消ス↢信施ヲ↡

 ^またいはく (摩訶止観)、 「¬*如来にょらい密蔵みつぞう経きょう¼ に説とかく、 ªもし人ひと、 父ちちの縁覚えんがくとなりしを害がいし、 三宝さんぼうの物ものを盗ぬすみ、 母ははの羅ら漢かんとなりしを汚けがし、 不ふ実じつの事じをもつて仏ぶつを謗そしり、 両りょう舌ぜつして賢げん聖じょうを間へだて、 悪あっ口くして聖しょう人にんを罵ののしり、 求ぐ法ほうのものを壊え乱らんし、 *五ご逆ぎゃくの初業しょごうの瞋いかりと、 持じ戒かいの人にんの物ものを奪うばふ貪むさぼりと、 辺見へんけんの痴ちとあらば、 これを十じゅう悪あくのものとなす。

又云ク、「¬如来密蔵経ニ¼説カク、若シ人父ガ為ルヲ↢縁覚↡而シテ害シ、盗ミ↢三宝ノ物ヲ↡、母ガ為ルヲ↢羅漢↡而シテ汚シ、不実ノ事ヲモテ謗リ↠仏ヲ、両舌シテ間ヘダテ↢*賢聖ヲ↡、悪口シテ罵リ↢聖人ヲ↡、*壊↢乱シ求法ノ者ヲ↡、五逆ノ初業之瞋リシ、奪フ↢持戒ノ人*之物ヲ↡貪リシ、辺見之痴セム。是ヲ為ス↢十悪*之者ト↡。

^もしよく、 如来にょらいの、 因縁いんねんの法ほうは我が・人にん・衆しゅ生じょう・*寿じゅ命みょうなく、 生しょうなく滅めつなく染ぜんなく着じゃくなく、 本ほん性しょう清浄しょうじょうなりと説ときたまふことを知しり、 また一切いっさい法において本ほん性しょう清浄しょうじょうなりと知しりて、 解知げちし信しん入にゅうせば、 われ、 この人ひとは地じ獄ごくおよ0920びもろもろの悪道あくどうに趣向しゅこうすと説とかず。

若シ能ク知リ↧如来ノ説キタマフコトヲ↦因縁ノ法ハ無シ↢我・人・衆生・寿*者↡、无ク↠生無ク↠滅無ク↠*染無シ↠著、本性清浄ナリト↥、又於テ↢一切法ニ↡知リテ↢本性清浄ナリト↡、解知シ信入セバ者、我不↠説カ↣是ノ人ハ趣↢向スト地獄及ビ諸ノ悪道ニ↡。

^なにをもつてのゆゑに。 法ほうは*積しゃく聚じゅなく、 法ほうは*集じゅう悩のうなし。 一切いっさいの法ほうは、 生しょうぜず住じゅうせず、 因縁いんねん和わ合ごうして生しょう起きすることを得う。 生しょうじをはれば、 還かえりて滅めっしぬ。 もし心しん、 生しょうじをはりて滅めっすれば、 一切いっさいの結けっ使しもまた生しょうじをはりて滅めっしぬ。 かくのごとく解げすれば、 犯処ぼんしょなし。 もし犯ぼんあり住じゅうありといはば、 この処ことわりあることなし。

何ヲ以テノ故ニ。法ハ無ク↢積聚↡、法ハ無シ↢集悩↡。一切ノ法ハ不↠生ゼ不↠住セ、因縁和合シテ而得↢生起スルコトヲ↡。生ジ已リテ還リテ滅シヌ。若シ心生ジ已リテ滅スレバ、一切ノ結使モ亦生ジ已リテ滅シヌ。如ク↠是クノ解スルハ無シ↢犯処↡。若シ有1087リ↠犯有リトイハバ↠住、無シ↠有ルコト↢是ノ処コトワリ↡。

^▲百ひゃく年ねんの闇室あんしつに、 もし灯ともしびを燃ともす時ときには、 闇やみ、 «われはこれ室しつの主しゅなり。 ここに住じゅうすること久ひさしく、 しかもあへて去さらじ» といふべからず。 灯ともしびもし生しょうじぬれば、 闇やみすなはち滅めっしぬるがごとしº と。 その義ぎまたかくのごとし。 この経きょうは、 つぶさに前さきの四しの菩ぼ提心だいしんを指さす」 と。 以い上じょう、 かの ¬経きょう¼ (如来秘密蔵経) の下げ巻かんにあり。 「前さきの四し」 といふは、 *四し教きょうの菩ぼ提心だいしんを指さす。

如ク↧百年ノ闇室ニ若シ燃ス↠灯ヲ時ニハ、闇不↠可カラ↠言フ↣我ハ是室ノ主ナリ、住スルコト↠此ニ久シク、而モ不ト↢肯アヘテ去ラ↡、灯若シ生ジヌレバ、闇即チ滅シヌルガ↥、其ノ義亦如シトイヘリ↠是クノ。此ノ経ニ具ニ指スト↢前ノ四ノ菩提心ヲ↡。」已上在リ↢彼ノ¬経ノ¼下巻ニ↡。言フ↢前ノ四ト↡者、*指ス↢四教ノ菩提心ヲ↡

^¬華け厳ごん経ぎょう¼ の 「入にゅう法界ほっかい品ぼん」 (意) にのたまはく、 「▼たとへば、 *善見ぜんけん薬王やくおうの、 一切いっさいの病やまいを滅めっするがごとく、 菩ぼ提心だいしんの薬くすりも一切いっさい衆しゅ生じょうのもろもろの煩悩ぼんのうの病やまいを滅めっす。

¬花厳経ノ¼「入法界品ニ」云ク、「譬ヘバ如ク↣善見薬王ノ滅スルガ↢一切ノ病ヲ↡、菩提心ノ*薬モ滅ス↢一切衆生ノ諸ノ煩悩ノ病ヲ↡。

^▲たとへば、 牛ご・馬め・羊ようの乳ちちを合がっして一器きに在おきて、 獅子ししの乳ちちをもつてかの器うつわのなかに投いるれば、 余よの乳ちちは消しょう尽じんして、 ただちに過すぐること礙さわりなきがごとく、 如来にょらい師子ししの菩ぼ提心だいしんの乳ちちを、 無む量りょう劫こうに積つめるところのもろもろの業ごう・煩悩ぼんのうの乳ちちのなかに着おけば、 みなことごとく消しょう尽じんして、 声しょう聞もん・縁覚えんがくの法ほうのなかに住じゅうせず」 と。

譬ヘバ如ク↧牛・馬・羊ノ乳ヲ合シテ在オキテ↢一器ニ↡、以テ↢師子ノ乳ヲ↡投イルレバ↢彼ノ器ツキノ中ニ↡、余ノ乳ハ消尽シテ直ニ過グルコト无キガ↞礙、如来師子ノ菩提心ノ乳ヲ、著スレバ↢無量劫ノ所ノ↠積メル諸ノ業煩悩ノ乳ノ中ニ↡、皆悉ク消尽シテ不ト↠住セ↢声聞・縁覚ノ法ノ中ニ↡。」

^¬大だい0921般若はんにゃ経きょう¼ にのたまはく、 「もしもろもろの菩ぼ薩さつ、 多おおく*五ご欲よく相応そうおうの非理ひりの作意さいを発ほっ起きすといへども、 しかも一念いちねん、 無む上じょうの菩ぼ提だいと相応そうおうせる心しんを起おこさば、 すなはちよく折しゃく滅めつす」 と。 以い上じょう三さんの文もん、 滅罪めつざいの益やくなり。

¬大般若経ニ¼云ク、「若シ諸ノ菩薩雖モ↣多ク発↢起スト五欲相応ノ非理ノ作意ヲ↡、而モ起サバ↢一念ノ無上ノ菩提ノ相応セル之心ヲ↡、即チ能ク折滅シヌト。」已上三ノ文滅罪ノ益ナリ

^▼「*入にゅう法界ほっかい品ぼん」 にのたまはく、 「たとへば、 人ひとありて、 *不可ふか壊え薬やくを得えつれば、 一切いっさいの怨敵おんてきもその便たよりを得えざるがごとく、 菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつもまたかくのごとし。 菩ぼ提心だいしんの不壊ふえの法薬ほうやくを得えつれば、 一切いっさいの煩悩ぼんのう・諸しょ魔ま・怨敵おんてきも壊えすることあたはざるところなり。

「入法界品ニ」云ク、「譬ヘバ如ク↧有リテ↠人得ツレバ↢不可壊薬ヲ↡、一切ノ怨敵モ不ルガ↞得↢其ノ便ヲ↡、菩薩摩訶薩モ亦復如シ↠是クノ。得ツレバ↢菩提心ノ*不壊ノ法薬ヲ↡、一切ノ煩悩・諸魔・怨敵モ所ナリ↠不ル↠能ハ↠壊スコト。

^▼たとへば、 人ひとありて、 *住じゅう水すい宝珠ほうしゅを得えて、 その身みに*瓔珞ようらくとしつれば、 深水じんすいのなかに入いれども、 しかも没もつ溺にゃくせざるがごとく、 菩ぼ提心だいしんの住じゅう水すい宝珠ほうしゅを得えつれば、 生しょう死じ海かいに入いれども、 しかも沈没ちんもつせず。

▼譬ヘバ如ク↧有リテ↠人得テ↢住水宝珠ヲ↡瓔↢珞トシツレバ其ノ身ニ↡、入レドモ↢深水ノ中ニ↡而モ不ルガ↦没溺セ↥、得ツレバ↢菩提心ノ住水宝珠ヲ↡、入レドモ↢生死海ニ↡而モ不↢沈没セ↡。

^◆たとへば、 金剛こんごうの、 百ひゃく千せん劫ごうに水みずのなかに処しょすれども、 しかも*爛らん壊えせず、 また変へん異いなきがごとく、 菩ぼ提だいの心しんもまたかくのごとし。 無む量りょう劫こうに生しょう死じのなかに処しょすれども、 もろもろの煩悩ぼんのう・業ごうも断滅だんめつすることあたはず。 また損減そんげんなし」 と。

譬ヘバ如ク↧金剛ノ於百千劫ニ処スレドモ↢於水ノ中ニ↡而モ不↢爛壊セ↡、亦無キガ↦変異↥、菩提之心モ亦復如シ↠是クノ。於テ↢無量劫ニ↡処スレドモ↢生死ノ中ニ↡、諸ノ煩悩業モ不↠能ハ↢断滅スルコト↡。亦無シト↢損*減↡。」

^また同どう経きょうの法幢ほうどう菩ぼ薩さつの偈げにのたまはく、

又同ジキ¬経ノ¼法幢菩薩ノ偈ニ云ク、

^「もし智慧ちえある人ひと、 一念いちねんも*道心どうしんを発おこせば、
かならず無む上じょう尊そんとなる。 つつしみて疑ぎ惑わくをなすことなかれ」 と。

「若シ有リテ↢智*恵ノ人1088↡一念モ発セバ↢道心ヲ↡
必ズ成ル↢無上尊ト↡慎ミテ莫レト↠生ナスコト↢疑*或ヲ↡」

^以い上じょう、 つひに敗はい壊えせずして、 かならず菩ぼ提だいに至いたる益やくなり。

已上終ニ不シテ↢敗壊セ↡、必ズ至ル↢菩*提ニ↡益ナリ↡

^ま0922た 「入にゅう法界ほっかい品ぼん」 にのたまはく、 「たとへば、 *閻えん浮ぶ檀金だんごんの、 如にょ意い宝ほうを除のぞきては一切いっさいの宝たからに勝すぐれたるがごとく、 菩ぼ提だいの心しんの閻えん浮ぶ檀金だんごんもまたかくのごとし。 一切いっさい智ちを除のぞきてはもろもろの功く徳どくに勝すぐれたり。

又「入法界品ニ」云ク、「譬ヘバ如ク↧閻浮檀金ノ除オキテハ↢如意宝ヲ↡勝レタルガ↦一切ノ宝ニ↥、菩提之心ノ閻浮檀金モ亦復如シ↠是クノ。除オキテハ↢一切智ヲ↡勝レタリ↢諸ノ功徳ニ↡。

^たとへば、 迦か陵りょう頻びん伽が鳥ちょうの、 かいのなかにある時ときに大だい勢力せいりきありて、 余よの鳥とり及およばざるがごとく、 菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつもまたかくのごとし。 生しょう死じのかいにして、 菩ぼ提心だいしんを発おこせるに、 功く徳どくの勢力せいりきは、 声しょう聞もん・縁覚えんがくの及およぶことあたはざるところなり。

譬ヘバ如ク↧迦*楞毘伽鳥ノ在ル↢カラノ中ニ↡時ニ有リテ↢大勢力↡、余ノ鳥不ルガ↞及バ、菩薩摩訶薩モ亦復如シ↠是クノ。於生死ノカラニシテ発ス↢菩提心ヲ↡功徳ノ勢力ニハ、声聞・縁覚ノ所ナリ↠不ル↠能ハ↠及ブコト。

^たとへば、 ▼*波利はり質しっ多た樹じゅの華はなをもつて、 一日いちにち衣ころもに熏くんじつれば、 *瞻蔔せんぷく華げ・*婆師華ばしけをもつて千歳せんざい熏くんずといへども及およぶことあたはざるところなるがごとく、 菩ぼ提心だいしんの華はなもまたかくのごとし。 一日いちにち熏くんずるところの功く徳どくの香か、 十方じっぽうの仏ぶつの所みもとに徹とおりて、 一切いっさいの声しょう聞もん・縁覚えんがくの、 無漏むろの智ちをもつてもろもろの功く徳どくを熏くんずること、 百ひゃく千せん劫ごうにおいてせるも、 及およぶことあたはざるところなり。

▼譬ヘバ如ク↧波利質多樹ノ花ノ一日熏ツレバ↠衣ニ、瞻蔔花・婆師花ヲモテ雖モ↢千歳熏ズト↡所ナルガ↞不ル↠能ハ↠及ブコト、▼菩提心ノ花モ亦復如シ↠是クノ。一日ノ所熏ノ功徳ノ香、徹リテ↢十方ノ仏ノ所ニ↡、*一切ノ声聞・縁覚ノ以テ↢無漏ノ智ヲ↡薫ゼル諸ノ功徳、於テセルモ↢百千劫ニ↡、所ナリ↠不ル↠能ハ↠及ブコト。

^たとへば、 金剛こんごうの、 破やぶれて全まったからずといへども、 一切いっさいのもろもろの宝たからの、 なほ及およぶことあたはざるがごとく、 菩ぼ提だいの心しんもまたかくのごとし。 少すこし懈け怠だいなりといへども、 声しょう聞もん・縁覚えんがくのもろもろの功く徳どくの宝たからの、 及およぶことあたはざるところなり」 と。 以い上じょう、 ¬経きょう¼ (華厳経) のなかに二に百ひゃく余よの喩たとへあり。 見みるべし。

譬ヘバ如ク↧金剛ノ雖モ↢破レテ不ト↟全カラ、一切ノ衆ノ宝ノ猶不ルガ↞能ハ↠及ブコト、菩提之心モ亦復如シ↠是クノ。雖モ↢少シ懈怠ナリト↡、声聞・縁覚ノ諸ノ功徳ノ宝ハ所ナリト↠不ル↠能ハ↠及ブコト。」已上¬経ノ¼中ニ有リ↢二百余ノ喩↡。可シ↠見ル

^「賢首げんじゅ品ぼん」 の偈げにのたまはく、

「賢首品ノ」偈ニ云ク、

^0923「菩ぼ薩さつ、 生しょう死じにして最初さいしょに発心ほっしんする時とき、
一向いっこうに菩ぼ提だいを求もとむること、 堅けん固ごにして動どうずべからず。

「菩薩於テ↢生死ノ↡最初ニ発心ノ時ニ↡
一向ニ求ムルニ↢菩提ヲ↡堅固ニシテ不↠可カラ↠動ズ

^かの一念いちねんの功く徳どく、 深広じんこうにして岸際がんざいなし。
如来にょらい、 分別ふんべつして説ときたまはんに、 劫こうを窮きわむるも尽つくすことあたはじ」 と。

彼ノ一念ノ功徳深広ニシテ无シ↢*岸際↡
如来分別シテ説キタマフトモ窮メテ↠劫ヲ不ト↠能ハ↠尽スコト」

^ここにいふ 「発心ほっしん」 は凡ぼん聖しょうに通つうず。 つぶさに ¬*弘ぐ決けつ¼ を見みよ。

此ニ言フ発心ハ通ズ↢於凡・聖ニ↡具ニ見ヨ↢¬弘決ヲ¼↡

^また同どう経きょうの偈げにのたまはく、

又同ジキ¬経ノ¼偈ニ云ク、

^「一切いっさい衆しゅ生じょうの心しんをば、 ことごとく分別ふんべつして知しりぬべし。
一切いっさい刹せつの微み塵じんをば、 なほその数かずを算かぞへつべし。

「一切衆生ノ心ヲバ悉ク可シ↢分別シテ知リヌ↡
一切刹ノ微塵ヲバ尚可シ↠算カゾヘツ↢其ノ数ヲ↡

^十方じっぽうの虚こ空くう界かいをば、 一毛いちもうをもつてなほ量はかりつべし。
菩ぼ薩さつの*初しょ発心ほっしんをば、 究く竟きょうして測はかるべからず」 と。

十方ノ虚空界ヲバ一毛ヲモテ猶可シ↠量リツ
菩薩ノ初発心ヲバ究竟シテ不ト↠可カラ↠測ル」

^また ¬*出生しゅっしょう菩ぼ提心だいしん経ぎょう¼ の偈げにのたまはく、

又¬出生菩提心経ノ¼偈ニ云ク、

^「もしこの仏刹ぶっせつのもろもろの衆しゅ生じょうを、 信心しんじんおよび持じ戒かいに住じゅうせしめたらん、
かの最さい上じょうの*大だい福聚ふくじゅのごときは、 道心どうしんの十じゅう六ろく分ぶんには及およばじ。

「若シ此ノ仏刹ノ諸ノ衆生ヲ令メタラム↠住セ↢信心及ビ持戒ニ↡
如1089キハ↢彼ノ最上ノ大福聚ノ↡不↠及バ↢道心ノ十六分ニハ↡

^もしこの仏刹ぶっせつのもろもろの衆しゅ生じょうを、 信心しんじんに住じゅうし法ほうにおいて行ぎょうぜしめん、
かの最さい上じょうの大だい福聚ふくじゅのごときは、 道心どうしんの十じゅう六ろく分ぶんには及およばじ。

*若シ此ノ仏刹ノ諸ノ衆生ヲ令メム↧住シ↢信心ニ↡於テ↠法ニ行ゼ↥
如キハ↢彼ノ最上ノ大福聚ノ↡不↠及バ↢道心ノ十六分ニハ↡

^0924もし諸仏しょぶつの刹せつの、 恒ごう河が沙しゃのごとくならんに、 みなことごとく寺てらを造つくりて福ふくを求もとめんがゆゑにし、
またもろもろの塔とうを造つくること須しゅ弥みのごとくせんも、 道心どうしんの十じゅう六ろく分ぶんには及およばず。 乃至

若シ諸仏ノ刹ノ恒河沙ノゴトクナラムニ皆悉ク造リテ↠寺ヲ求メムガ↠福ヲ故ニシ
復造ルコト↢諸ノ塔ヲ↡如クセムハ↢須弥ノ↡不↠及バ↢道心ノ十六分ニハ↡。乃至

^かくのごとき人ひと等らは勝しょう法ぼうを得えんも、 もし菩ぼ提だいを求もとめて衆しゅ生じょうを利りせば、
かれら衆しゅ生じょうの最勝さいしょうなるものなり。 これ比ひ類るいなし。 いはんや上うえあらんや。

如キ↠是クノ人等ハ*得ムモ↢勝法ヲ↡若シ求メテ↢菩提ヲ↡利セムハ↢衆生ヲ↡
彼等ノ衆生ノ最勝ナラム者モ此ニハ無ケム↢比類スルコト↡況ヤ有ラムヤ↠上

^このゆゑにこの諸法しょほうを聞きくことを得えては、 智ち者しゃはつねに*楽ぎょう法ほうの心しんをなし、
まさに無む辺へんの大だい福聚ふくじゅを得えて、 すみやかに無む上じょう道どうを証しょうすることを得うべし」 と。

是ノ故ニ得テハ↠聞クコトヲ↢此ノ諸法ヲ↡智者ハ常ニ生ナセ↢楽法ノ心ヲ↡
当ニシト↧得テ↢無辺ノ大福聚ヲ↡速ニ得↞証スルコトヲ↢於無上道ヲ↡」

^¬宝ほう積しゃく経きょう¼ の偈げにのたまはく、

¬宝積経ノ¼偈ニ云ク、

^「菩ぼ提心だいしんの功く徳どく、 もし*色方しきほう分ぶんあらば、
虚こ空くう界かいに周しゅう遍へんして、 よく容受ようじゅするものなからん」 と。 云々

「菩提心ノ功徳若シ有ラマシカバ↢色方分↡
周↢遍ストモ虚空界ニ↡無カラマシト↢能ク容受スル者↡」云々

^菩ぼ提心だいしんには、 かくのごとき勝しょう利りあり。 このゆゑに迦か葉しょう菩ぼ薩さつの礼仏らいぶつの偈げ (涅槃経) にのたまはく、

菩提心ニハ有リ↢如キ↠是クノ勝利↡。是ノ故ニ迦葉菩*薩ノ礼仏ノ偈ニ云ク、

^「発心ほっしんと*畢ひっ竟きょうとは二ふたつ別べつなし。 かくのごとき二に心しんにおいて前さきの心しん難かたし。
みづからいまだ度どすることを得えずして、 先まづ他たを度どす。 このゆゑにわれ初しょ発ほっ0925心しんを礼らいす」 と。

「発心ト畢竟トハ二ツ無シ↠別如キ↠是クノ二心ハ前ノ心難シ
自ラ未ダシテ↠得↠度スルコトヲ先ヅ度ス↠他ヲ是ノ故ニ我礼スト↢初発心ヲ↡」

^また*弥伽みか大だい士じ、 *善財ぜんざい童どう子じの、 すでに菩ぼ提心だいしんを発おこせることを聞ききて、 すなはち獅子ししの座ざより下おり、 大だい光こう明みょうを放はなちて三さん千界ぜんかいを照てらし、 五ご体たいを地じに投なげて、 童どう子じを礼讃らいさんせり。 以い上じょう、 総そうじて勝しょう利りを顕あらわす。

又弥伽大士聞キテ↣善財童子ノ已ニ発セルコトヲ↢菩提心ヲ↡、即チ従リ↢師子ノ座↡下リテ、放チテ↢大光明ヲ↡照シテ↢三千界ヲ↡、五体ヲ投ゲテ↠地ニ、礼↢讃セリ童子ヲ↡。已上総ジテ顕ス↢勝利ヲ↡

 ^問とふ。 縁えん事じの誓願せいがんもまた勝しょう利りありや。

問フ。縁事ノ誓願モ亦有リ↢勝利↡耶。

^答こたふ。 縁えん理りにしかずといへども、 これまた勝しょう利りあり。

答フ。雖モ↠不ズト↠如クハ↢縁理ノ↡、此亦有リ↢勝利↡。

^なにをもつてか知しるとならば、 上じょう品ぼん下げ生しょうの業ごうにいはく (観経)、 「▲ただ無む上じょう道心どうしんを発おこす」 と。 第一だいいち義ぎを解さとるとはいはず。 ゆゑに知しりぬ、 ただこれ事じの菩ぼ提心だいしんなり。 もししからずは、 かの▲中生ちゅうしょうの業ごうと別べつなかるべし。 その一いち。

何ヲ以テカ知ルトナラバ者、上品下生ノ業ニ云ク、「但発スト↢無上道ノ心ヲ↡。」不↠云ハ↠解サトルトハ↢第一義ヲ↡。故ニ知リヌ唯是事ノ菩提心ナリ。若シ不ハ↠爾カイハ者、与↢彼ノ中生ノ業↡応シ↠無カル↠別。其ノ一

^¬往おう生じょう論ろん¼ (天親の浄土論) に菩ぼ提心だいしんを明あかすに、 ただいへり、 「▲一切いっさい衆しゅ生じょうの苦くを抜ぬくをもつてのゆゑに。 ▲一切いっさい衆しゅ生じょうをして大だい菩ぼ提だいを得えしむるをもつてのゆゑに。 衆しゅ生じょうを摂取せっしゅしてかの国こく土どに生うまれしめんをもつてのゆゑに」 と。 云々 もし縁えん事じの心しんに往おう生じょうの力ちからなくは、 論主ろんじゅ (天親) あに縁えん理りの心しんを示しめさざらんや。 その二に。

¬往生論ニ¼明スニ↢菩提心ヲ↡、但云ヘリ、「以テノ↠抜クヲ↢一切衆生ノ苦ヲ↡故ニ、以テノ↠令ムルヲ↣一切衆生ヲシテ得↢大菩*提ヲ↡故ニ、以テノ↧摂↢取シテ衆生ヲ↡生レシメムヲ↦彼ノ国1090土ニ↥故ニト。」云々 若シ縁事ノ心ニ無クハ↢往生ノ力↡、論主豈ニ不ラムヤ↠示サ↢縁理ノ心ヲ↡。其ノ二

^¬大論だいろん¼ (大智度論) の第だい五ごの偈げにいはく、

¬大論ノ¼第五ノ偈ニ云ク、

^「もし初しょ発心ほっしんの時ときに、 まさに仏ぶつに作なるべしと誓願せいがんすれば、
すでにもろもろの世せ間けんに過すぎたり。 まさに世よの供く養ようを受うくべし」 と。 云々

「若シ初発心ノ時ニ誓↢願スレバ当ニシト↟作ル↠仏ニ
已ニ過ギタリ↢諸ノ世間ニ↡応ゼリトイヘリ↠受クルニ↢世ノ供養ヲ↡」 云々

^こ0926の ¬論ろん¼ (大智度論) にもまた、 ただ 「願がん作さ仏ぶつ」 といへり。 明あきらけし、 事じの菩ぼ提心だいしんもまたつひに信しん施せを消けすといふことを。 その三さん。

此ノ¬論ニモ¼亦但云ヘリ↢「願作仏ト」↡。明ケシ、事ノ菩提心モ亦畢ニ消ストイフコトヲ↢信施ヲ↡。其ノ三

^¬止し観かん¼ に、 ¬*秘ひ密蔵みつぞう経きょう¼ を引ひきをはりていはく、 「*初はじめの菩ぼ提心だいしん、 すでによく重々じゅうじゅうの十じゅう悪あくを除のぞく。 いはんや、 *第だい二に・第三だいさん・第だい四しの菩ぼ提心だいしんをや」 と。 云々 いふところの 「初はじめ」 とは、 これ*三蔵さんぞう教きょうの、 *界内かいないの事じを縁えんずる菩ぼ提心だいしんなり。 いかにいはんや、 深ふかく一切いっさい衆しゅ生じょうにことごとく仏ぶっ性しょうありと信しんじて、 あまねく自他じたともに仏道ぶつどうを成じょうぜんと願がんぜんに、 あに罪つみを滅めっすることなからんや。 その四し。

¬止観ニ¼引キ↢¬秘密蔵経ヲ¼↡已リテ云ク、「初ノ菩提心已ニ能ク除ク↢重々ノ十悪ヲ↡。況ヤ第二・第三・第四ノ菩提心ヲ耶トイヘリ。」云々 所ノ↠言フ初ト者、是三蔵教ノ縁ズル↢界内ノ事ヲ↡菩提心也。何ニ況ヤ、深ク信ジテ↣一切衆生ニ悉ク有リト↢仏性↡、普ク願ゼムニ↣自他共ニ成ラムト↢仏道ヲ↡、豈ニ無カラムヤ↠滅スルコト↠罪ヲ。其ノ四

^¬唯識ゆいしき論ろん¼ にいはく、 「菩ぼ提だいと有う情じょうとの実じつ有うを執しゅうせずは、 猛みょう利りの悲ひ願がんを発ほっ起きするに由よしなし」 と。 以上 大だい士じの悲ひ願がんすらなほ有うを執しゅうして起おこる。 すなはち知しりぬ、 事じの願がんもまた勝しょう利りありといふことを。 その五ご。

¬唯識論ニ¼云ク、「不ハ↠執セ↢菩提ト有情トノ実有ヲ↡、无シトイヘリ↠由↣発↢起スルニ猛利ノ悲願ヲ↡。」 已上 大士ノ悲願スラ尚シ執シテ↠有ヲ起ル。則チ知リヌ事ノ願モ亦有リトイフコトヲ↢勝利↡。其ノ五

^余よは下しもの回え向こう門もんのごとし。

余ハ如シ↢下ノ廻向門ノ↡。

 ^問とふ。 衆しゅ生じょうにもとより仏ぶっ性しょうありと信しん解げすることは、 あに縁えん理りにあらずや。

問フ。信↣解セバ衆生ニ本ヨリ有リト↢仏性↡豈ニ非ズヤ↢縁理ニ↡。

^答こたふ。 これはこれ、 大だい乗じょう至し極ごくの道どう理りを信しん解げするなり。 かならずしも第一だいいち義ぎ空くう相応そうおうの観かん慧えにはあらず。

答フ。此ハ是、信↢解スルナリ大乗ノ至極ノ道理ヲ↡。非ズ↢必ズシモ第一義空相応ノ観*恵ニハ↡。

 ^問とふ。 ¬十じゅう疑ぎ¼ に ¬*雑ぞう集じゅう論ろん¼ を引ひきていはく、 「もしは安楽あんらく浄じょう土どに生うまれんと願ねがひて、 すなはち往おう生じょうを得うるものあり。 もしは人ひと、 無垢むく仏ぶつの名みなを聞ききて、 すなは0927ち阿あ耨のく菩ぼ提だいを得うるものあり。 これはこれ別べつ時じの因いんなり。 まつたく行ぎょうあることなし」 と。 以上

問フ。¬十疑ニ¼引キテ↢¬雑集論ヲ¼云ク、「若シハ有ルハ↠願ズルコト↠生ゼムト↢安楽浄土ニ↡、即チ得ル↢往生スルコトヲ↡者ナリ。若シハ人聞ケバ↢無垢仏ノ名ヲ↡、即チ得ル↢阿耨菩提ヲ↡者ナリトイフハ、此ハ是別時ノ因ナリ。全ク无シトイヘリ↠行アルコト。」 已上

^慈じ恩おん (窺基) 同おなじくいはく (西方要決)、 「願がんと行ぎょうと前ぜん後ごするがゆゑに、 別べつ時じと説とく。 仏ぶつを念ねんずるに、 即そく生しょうせずといはんとにはあらず」 と。 以上

慈恩同ジク云ク、「願ト行ト前後ナリ、故ニ説ク↢別時ヲ↡。非ズト↠謂ハムトニハ↣念ズルニ↠仏ヲ不ト↢即生セ↡也。」 已上

^あきらかに知しりぬ、 願がんありて行ぎょうなきは、 これ*別べつ時じの意こころなり。 いかんぞ、 △上じょう品ぼん下げ生しょうの人にん、 ただ菩ぼ提だいの願がんによりてすなはち往おう生じょうすることを得うるや。

明カニ知リヌ、有リテ↠願无キハ↠行、是別時ノ意ナリ。云何ゾ、上品下生之人、但由リテ↢菩提ノ願ニ↡即チ*得ル↢往生スルコトヲ↡耶。

^答こたふ。 大だい菩ぼ提心だいしんは*功く能のう甚深じんじんなり。 無む量りょうの罪つみを滅めっし、 無む量りょうの福ふくを生しょうず。 ゆゑに浄じょう土どを求もとむれば、 求もとむるに随したがひてすなはち得う。 いふところの別べつ時じの意こころといふは、 ただ自じ身しんのために極楽ごくらくを願がん求ぐするなり。 これ、 四弘しぐ願がんの広大こうだいの菩ぼ提心だいしんにはあらず。

答フ。大菩提心ノ功能甚深ナリ。滅シ↢无量ノ罪ヲ↡生ズ↢無量1091ノ福ヲ↡。故ニ求ムルニ↢浄土ヲ↡、随ヒテ↠求ムルニ即チ得。所ノ↠言フ別時ノ意トイフ者、但為ニ↢自身ノ↡願↢求スルナリ極楽ヲ↡。非ズ↢是四弘願ノ広大ノ菩提心ニハ↡。

 ^問とふ。 大だい菩ぼ提心だいしん、 もしこの力ちからあらば、 一切いっさいの菩ぼ薩さつは、 初しょ発心ほっしんより決けつ定じょうして悪趣あくしゅに堕だするものなかるべし。

問フ。大菩提心若シ有ラバ↢此ノ力↡、一切ノ菩薩ハ従リ↢初発心↡決定シテ応シ↠无カル↧堕スル↢悪趣ニ↡者↥。

^答こたふ。 菩ぼ薩さつ、 いまだ不ふ退たいの位くらいに至いたらざる前さきは、 *染ぜん・浄じょうの二にの心しん、 *間雑けんぞうして起おこる。 *前念ぜんねんに衆罪しゅざいを滅めっすといへども、 *後ご念ねんにさらに衆罪しゅざいを造つくる。 また、 菩ぼ提心だいしんに浅深せんじん・強ごう弱にゃくあり、 悪業あくごうに久く近ごん・定じょう不ふ定じょうあり。 このゆゑに、 *退たい位いにては昇しょう沈ちん不ふ定じょうなり。 菩ぼ提心だいしんに滅罪めつざいの力ちからなきにはあらず。 しばらく*愚ぐ管かんを述じゅつす。 見みるもの取捨しゅしゃせよ。

答フ。菩薩未ダル↠至ラ↢不退ノ位ニ↡前ハ、染浄ノ二ノ心間雑シテ而起ル。前念ニ雖モ↠滅スト↢衆罪ヲ↡、後念ニ更ニ造ル↢衆罪ヲ↡。又菩提心ニ有リ↢浅深・強弱↡。悪業ニ有リ↢久近・定不定↡。是ノ故ニ退位ノ昇沈不定ナルナリ。非ズ↣菩提心ニ無キニハ↢滅罪ノ力↡。且ク述ス↢愚管ヲ↡。見ム者取捨セヨ。

・料簡

【41】^三さんに△*料りょう簡けんとは、

三ニ料簡ト者、

^問とふ、 「入にゅう法界ほっかい品ぼん」 にのたまはく、 「たとへば、 金剛こんごうは金こん0928性しょうより生しょうじて、 余よ宝ほうより生しょうずるにあらざるがごとく、 菩ぼ提心だいしんの宝たからもまたかくのごとし。 大だい悲ひをもつて衆しゅ生じょうを救護くごする性しょうより生しょうじて、 余よの善ぜんより生しょうずるにあらず」 と。

問フ。「入法界品ニ」云ク、「譬ヘバ如ク↧金剛ノ従リ↢金性↡生ジテ非ザルガ↦余宝ヨリ生ズルニ↥、菩提心ノ宝モ亦復如シ↠是クノ。大悲ヲモテ救↢護スル衆生ノ↡性ヨリ生ズ、非ズトイヘリ↢余ノ善ヨリ生ズルニ↡。」

^¬*荘しょう厳ごん論ろん¼ の偈げにいはく、

¬荘厳論ノ¼偈ニ云ク、

^「つねに地じ獄ごくに処しょすといへども、 大だい菩ぼ提だいをば障さへず。
もし自利じりの心しんを起おこさば、 これ大だい菩ぼ提だいの障さわりなり」 と。

「▼雖モ↣恒ニ処スト↢地獄ニ↡不↠障ヘ↢大菩提ヲバ↡
若シ起ス↢自利ノ心ヲ↡是大菩提ノ障ナリト」

^また ¬*丈じょう夫ぶ論ろん¼ の偈げにいはく、

又¬丈夫論ノ¼偈ニ云ク、

^「悲ひ心しんをもつて一人いちにんに施せするは、 功く徳どくの大おおきなること地じのごとし。
おのがために一切いっさいに施せするは、 報ほうを得うること芥子けしのごとし。

「悲心ヲモテ施スルハ↢一人ニ↡功徳ノ大キナルコト如シ↠地ノ
為ニ↠己ガ施スルハ↢一切ニ↡得ルコト↠報ヲ如シ↢芥子ノ↡

^一いちの厄難やくなんの人にんを救すくふは、 余よの一切いっさいの施せには勝すぐれたり。
もろもろの星ほしに光ひかりありといへども、 一いちの月つきの明ひかりにはしかず」 と。 以上

救フハ↢一ノ厄難ノ人ヲ↡勝レタリ↢余ノ一切ノ施ニハ↡
衆ノ星ニ雖モ↠有リト↠光不ズト↠如クハ↢一ノ月ノ明ヒカリノ↡」 已上

^明あきらけし、 自利じりの行ぎょうはこれ菩ぼ提心だいしんの*所しょ依えにあらざれば、 報ほうを得うることまた少すくなし。 いかんぞ、 独ひとりすみやかに極楽ごくらくに生しょうぜんと願がんずるや。

明ケシ、自利ノ行ハ非ズ↢是菩提心之所依ニ↡。得ルコト↠報ヲ亦少シ。云何ゾ独リ願ズルヤ↣速ニ生ぜムト↢極楽ニ↡。

^答こたふ。 あに前さきにいはずや、 極楽ごくらくを願がんずるものはかならず四弘しぐ願がんを発おこして、 願がんに随したがひて勤修ごんしゅせよとは。 これあに、 これ大だい悲ひ心しんの行ぎょうにあらずや。

答フ。豈ニ不ヤ↢前ニ言ハ↡、願ゼム↢極楽ヲ↡*者ハ要ズ発シテ↢四弘願ヲ↡、随ヒテ↠願ニ而勤修セヨトハ。此豈ニ非ズヤ↢是大悲心ノ行ニ↡。

^*また、 極楽ごくらくを願がん求ぐすること、 これ自利じりの心しんにあらず。 しかる所以ゆえんは、 いまこの娑しゃ婆ば世せ界かいは*留る難なん多おおし。 甘かん露ろのいまだ沾うるおは0929ざるに、 *苦く海かい朝ちょう宗そうしぬ。 初心しょしんの行ぎょう者じゃ、 なんの暇いとまありてか道どうを修しゅせん。 ゆゑにいま菩ぼ薩さつの願がん行ぎょうを円満えんまんして、 自じ在ざいに一切いっさい衆しゅ生じょうを利り益やくせんと欲おもふがために、 先まづ極楽ごくらくを求もとむるなり。 自利じりのためにはせず。

*人願↢求スルコト極楽ヲ↡、非ズ↢是自利ノ心ニ↡。所↢以然ル↡者、今此ノ娑婆世界ハ*多シ↢留難↡。*甘露1092ノ未ダルニ↠沾ウルホハ、苦海朝宗シヌ。初心ノ行者何ノ暇ニカ修セム↠道ヲ。故ニ今為ニ↠欲フガ↧円↢満シテ菩薩ノ願行ヲ↡、自在ニ利↦益セムト一切衆生ヲ↥、先ヅ求ムルナリ↢極楽ヲ↡。不↠為ニハセ↢自利ノ↡。

^¬十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ¼ にいふがごとし、 「みづからいまだ度どすることを得えずは、 かれを度どすることあたはず。 人ひとのみづから*於お泥でいに没もっせるがごとき、 なんぞよく余よ人にんを*拯じょう済さいせん。 また、 水みずのために漂ただよはさるるもの、 溺おぼれたるものを済すくふことあたはざるがごとし。 このゆゑに説とかく、 ªわれ度どしをはりて、 まさにかれを度どすべしº」 と。

如シ↢¬十住*毘婆*娑ニ¼云フガ↡。「自ラ未ダハ↠得↠度スルコトヲ、不↠能ハ↠度スルコト↠彼ヲ。如キ↣人ノ自ラ没セルガ↢於泥ニ↡、何ゾ能ク拯↢済セム余人ヲ↡。又如シ↢為ニ↠水ノ所テ↠漂ハサ、不ルガ↟能ハ↠済フコト↠溺ルルヲ。是ノ故ニ説カク、我度シ已リテ当ニシトイヘリ↠度ス↠彼ヲ。」

^また ¬*法ほっ句く経きょう¼ の偈げに説とくがごとし。

又如シ↢¬法句*経ノ¼偈ニ説クガ↡。

^「もしよくみづから身みを安やすんじて、 善処ぜんしょにあらば、
しかして後のちに余よ人にんを安やすんじて、 みづからと所しょ利りを同おなじくせよ」 と。 以上

「若シ能ク自ラ安ジテ↠身ヲ在ル↢於善処ニ↡者
然シテ後ニ安ジテ↢余人ヲ↡自ラト同ジクストイヘリ↢於所利ヲ↡」 已上

^ゆゑに ¬十じゅう疑ぎ¼ にいはく、 「浄じょう土どに生うまれんと求もとむる所以ゆえんは一切いっさい衆しゅ生じょうの苦くを救く抜ばつせんと欲おもふがゆゑなり。 すなはちみづから*思し忖そんすらく、 ªわれいま力ちからなし。 もし悪あく世せ、 煩悩ぼんのうの境きょうのなかにあらば、 境きょう強こわきをもつてのゆゑに、 みづから*纏縛てんばくせられて三さん塗ずに*淪りん溺にゃくし、 ややもすれば数劫しゅこうを経へん。 かくのごとく輪転りんでんして、 無始むしよりこのかたいまだかつて休く息そくせず。 いづれの時ときにか、 よく衆しゅ生じょうの苦くを救すくふこと0930を得えんº と。

故ニ¬十疑ニ¼言ク、「所↢以ハ求ムル↟生レムト↢浄土ニ↡、欲フガ↣救↢抜セムト一切衆生ノ苦ヲ↡故ナリ。即チ自ラ思忖スラク、我今无シ↠力。若シ在ラバ↢悪世、煩悩ノ境ノ中ニ↡、以テノ↢境強キヲ↡故ニ、自ラ被レテ↢纏縛セ↡淪↢溺シテ三塗ニ↡、動ヤヤモスレバ経ン↢数劫ヲ↡。如クシテ↠此クノ輪転シテ、無始ヨリ已来タ未ダ↢曽ムカシニモ休息セ↡。何レノ時ニカ能ク得ムト↠救フコトヲ↢衆生ノ苦ヲ↡。

^これがために、 浄じょう土どに生うまれて諸仏しょぶつに親近しんごんし、 無む生しょう忍にんを証しょうして、 まさによく悪あく世せのなかにして、 衆しゅ生じょうの苦くを救すくはんことを求もとむるなり」 と。 以上

為ニ↠此ガ求ムルナリト↧生レテ↢浄土ニ↡親↢近シ諸仏ニ↡、証シテ↢無生忍ヲ↡、方ニ能ク於テ↢悪世ノ中ニ↡救ハムコトヲ↦衆生ノ苦ヲ↥。」 已上

^*余よの経きょう論ろんの文もん、 つぶさに ¬十じゅう疑ぎ¼ のごとし。 知しりぬべし、 念仏ねんぶつ・修善しゅぜんを*業因ごういんとなし、 往おう生じょう極楽ごくらくを華け報ほうとなし、 証しょう大だい菩ぼ提だいを果か報ほうとなし、 利り益やく衆しゅ生じょうを本懐ほんがいとなす。 たとへば、 世せ間けんに木きを植ううれば華はなを開ひらき、 華はなによりて菓このみを結むすび、 菓このみを得えて*餐受さんじゅするがごとし。

余ノ経論ノ文、具ニ如シ↢¬十疑ノ¼↡也。応シ↠知リヌ、念仏修善ヲ為シ↢業因ト↡。往生極楽ヲ為シ↢花報ト↡。証大菩提ヲ為シ↢果報ト↡。利益衆生ヲ為ス↢本懐ト↡。譬ヘバ如シ↢世間ニ植ヱテ↠木ヲ開キ↠花ヲ、因リテ↠花ニ結ビ↠菓ヲ、得テ↠菓ヲ餐受スルガ↡。

 ^問とふ。 念仏ねんぶつの行ぎょうは、 四弘しぐのなかにおいて、 これいづれの行ぎょうの摂しょうぞ。

問フ。念仏之行ハ於テ↢四弘ノ中ニ↡、是何レノ行ノ摂ゾ。

^答こたふ。 念仏ねんぶつ三昧ざんまいを修しゅするは、 これ△第だい三さんの願がん行ぎょうなり。 随したがひて伏滅ぶくめつするところあるは、 これ△第だい二にの願がん行ぎょうなり。 遠近おんごんに良りょう縁えんを結むすぶは、 これ△第一だいいちの願がん行ぎょうなり。 功こうを積つみ徳とくを累かさぬるは、 △第だい四しの願がんを成じょうずるなり。 自余じよの衆善しゅぜんは例れいして知しれ。 俟またざれ。

答フ。修スルハ↢念仏三昧ヲ↡是第三ノ願*行ナリ。随ヒテ有ルハ↠所↢伏滅スル↡是第二ノ願行ナリ。遠近ニ結ブハ↢良縁ヲ↡是第一ノ願行ナリ。積ミ↠功ヲ累ネテ↠徳ヲ成ズルナリ↢第四ノ願ヲ↡。自余ノ衆善ハ例シテ知レ。不レ↠俟タ。

 ^問とふ。 一心いっしんに仏ぶつを念ねんぜば、 理りまた往おう生じょうすべし。 なんぞかならず*経きょう論ろんに菩ぼ提だいの願がんを勧すすむるや。

問フ。一心ニ念ズルニ↠仏ヲ、理亦往生シナム。何ゾ要ズシモ経・論ニ勧ムルヤ↢菩1093提ノ願ヲ↡。

^答こたふ。 ¬*大だい荘しょう厳ごん論ろん¼ にいはく、 「仏国ぶっこくは事じ大だいなれば、 独ひとり行ぎょうの功く徳どくをもつては成じょう就じゅすることあたはず。 かならず願力がんりきを須もちゐるべし。 牛うしは力ちからありといへども、 車くるまを挽ひくにかならず御者ぎょしゃを須もちゐて、 よく至いたるところあるがごとく、 仏ぶつの国こく土どを浄きよむるも願がんによりて引いん成じょうす。 願力がんりきをもつてのゆゑに*福ふく慧え増ぞう長じょうす0931」 と。 以上

答フ。¬大荘厳論ニ¼云ク、「仏国ノ事大ナリ。独リ行ジテハ↢功徳ヲ↡不↠能ハ↢成就スルコト↡。要ズシモ須ヰルベシ↢願力ヲ↡。如ク↧牛ノ雖モ↠力アリト、挽クニ↠車ヲ要ズ須ヰテ↢御者ヲ↡能ク有ルガ↦所至↥、浄ムルコトハ↢仏ノ国土ヲ↡由リテ↠願ニ引成ス。以テノ↢願力ヲ↡故ニ福*恵増長スト。」 已上

^¬十住じゅうじゅう毘婆びば沙しゃ論ろん¼ にいはく、 「一切いっさいの諸法しょほうは願がんを根本こんぽんとなす。 願がんを離はなれてはすなはち成じょうぜず。 このゆゑに願がんを発おこす」 と。

¬十住毘婆*娑論ニ¼云ク、「一切ノ諸法ハ願ヲ為ス↢根本ト↡。離レテハ↠願ヲ則チ不↠成ラ。是ノ故ニ発ストイヘリ↠願ヲ。」

^またいはく (易行品)、

又云ク、

^「▲もし人ひと、 仏ぶつに作ならんと願がんじて、 心しんに阿あ弥陀みだを念ねんずれば、
時ときに応おうじてために身みを現げんじたまふ。 このゆゑにわれ帰き命みょうしたてまつる」 と。 以上

「若シ人願ジテ↠作ラムト↠仏ニ心ニ念ズレバ↢阿弥陀ヲ↡
応ジテ↠時ニ為ニ現ジタマフ↠身ヲ是ノ故ニ我帰命シタテマツルト」 已上

^大だい菩ぼ提心だいしん、 すでにこの力ちからあり。 このゆゑに行ぎょう者じゃかならずこの願がんを発おこせ。

大菩提心既ニ有リ↢此ノ力↡。是ノ故ニ行者要ズ発セ↢此ノ願ヲ↡。

 ^問とふ。 もし願がんを発おこさざるものは、 つひに往おう生じょうせざるや。

問フ。若シ不ル↠発サ↠願ヲ者ハ、終ニ不ル↢往生セ↡耶。

^答こたふ。 諸しょ師し不ふ同どうなり。 *あるがいはく、 「九く品ぼん生しょうの人にんはみな菩ぼ提心だいしんを発おこす。 その中ちゅう品ぼんの人にんは、 本もとこれ小乗しょうじょうなりといへども、 後のちに*大心だいしんを発おこしてかの国くにに生しょうずることを得う。 かの*本ほん習じゅうによりてしばらく*小しょう果かを証しょうす。 その下げ品ぼんの人にんは、 大心だいしんを退たいせりといへども、 しかもその勢力せいりきなほありて、 生しょうずることを得う」 と。 *慈じ恩おん (窺基) これに同おなじ。

答フ。諸師不同ナリ。有ルガ云ク、「九品生ノ人ハ皆発ス↢菩提心ヲ↡。其ノ中品ノ人ハ、本雖モ↢是小乗ナリト↡、後ニ発シテ↢大心ヲ↡得↠生ズルコトヲ↢彼ノ国ニ↡。由リテ↢彼ノ本習ニ↡暫ク証ス↢小果ヲ↡。其ノ下品ノ人ハ雖モ↠退セリト↢大心ヲ↡、而モ其ノ勢力猶在リテ得ト↠生ズルコトヲ。」慈恩同ジ↠之ニ

^*あるがいはく、 「中ちゅう・下げ品ぼんはただ*福分ふくぶんによりて生しょうじ、 上じょう品ぼんは福分ふくぶん・*道分どうぶんを具ぐして生しょうず」 と。 云々 「道分どうぶん」 とは、 これ菩ぼ提心だいしんの行ぎょうなり。

有ルガ云ク、「中・下品ハ但由リテ↢福分ニ↡生ズ。上品ハ具シテ↢福分・道分ヲ↡生ズト。」云々 道分ト者是菩提心ノ行也。

 ^問とふ。 菩ぼ提心だいしんに諸しょ師しの異解いげあるがごとく、 浄じょう土どを欣ねがふ心しんもまた不ふ同どうなりや。

問フ。如ク↢菩提心ノ諸師ノ異解スルガ↡、欣フ↢浄土ヲ↡心モ亦不同ナリ耶。

^答こたふ。 大だい菩ぼ提心だいしんには異い説せつありといへども、 浄じょう土どを欣ねがふ願がんは、 九く品ぼんにみな具ぐすべし0932。

答フ。大菩提心ニハ雖モ↠有リト↢異説↡、欣フ↢浄土ヲ↡之願ハ九品ニ皆応シ↠具ス。

 ^問とふ。 もし浄じょう土どの業ごう、 願がんによりて報ほうを得えば、 人ひとの、 悪あくを作つくりて地じ獄ごくを願ねがはざるがごとき、 かれ地じ獄ごくの果か報ほうを得うべからずや。

問フ。若シ浄土ノ業依リテ↠願ニ得バ↠報ヲ、如キ↢人ノ作ルガ↟悪ヲ、不レバ↠願ハ↢地獄ヲ↡、彼不ヤ↠応カラ↠得↢地獄ノ果報ヲ↡。

^答こたふ。 罪つみの報ほうは有う量りょうなれども、 浄じょう土どの報ほうは無む量りょうなり。 二果にかすでに別べつなり。 *二に因いんなんぞ一例いちれいせんや。

答フ。罪ノ報ハ有リ↠量リ。浄土ノ報ハ無シ↠量リ。二果既ニ別ナリ。二因何ゾ一例セムヤ。

^¬大論だいろん¼ (大智度論) の第だい八はちにいふがごとし。 「罪福ざいふくには定じょう報ほうありといへども、 ただ願がんをなすものは、 小しょう福ふくを修しゅすれども、 願力がんりきあるがゆゑに大だい果か報ほうを得う。 一切いっさい衆しゅ生じょうはみな楽らくを得えんと願ねがひて、 苦くを願ねがふものはなし。 このゆゑに地じ獄ごくを願ねがはず。 これをもつてのゆゑに、 福ふくは無む量りょうの報ほうあれども、 罪報ざいほうは有う量りょうなり」 と。 略抄

如シ↢¬大論ノ¼第八ニ云フガ↡。「罪福ニハ雖モ↠有リト↢定報↡、但作ス↠願ヲ者ハ、修スレドモ↢小福ヲ↡有ルガ↢願力↡故ニ得↢大果報ヲ↡。一切衆生ハ皆1094願ズ↠得ムト↠楽ヲ。無シ↢願フ↠苦ヲ者ハ↡。是ノ故ニ不↠願ハ↢地獄ヲ↡。以テノ↠是ヲ故ニ、福ハ有リ↢無量ノ*報↡。罪報ニハ有リト↠量リ。」略抄

 ^問とふ。 なんらの法ほうをもつてか、 世々せせに*大だい菩ぼ提だいの願がんを増ぞう長じょうして忘失もうしつせざる。

問フ。以テカ↢何等ノ法ヲ↡、世々ニ増↢長シテ大菩提ノ願ヲ↡而不ル↢忘失セ↡。

^答こたふ。 ¬十住じゅうじゅう婆ば沙しゃ¼ の第だい三さんの偈げにいはく、

答フ。¬十住婆*娑ノ¼第三ノ偈ニ云ク、

^「乃ない至し、 身しん命みょう、 転輪てんりん聖じょう王おうの位くらいを失うしなはんも、
これにおいてなほ妄もう語ごし、 諂曲てんごくを行ぎょうずべからず。

「乃至失ハムニ↢身命転輪聖王ノ位ヲ↡
於テ↠此ニ尚シ不↠応カラ↣*妄語シ行ズ↢諂曲ヲ↡

^よくもろもろの世せ間けんの一切いっさい衆しゅ生じょうの類たぐいをして、
もろもろの菩ぼ薩さつ衆しゅにおいて、 恭く敬ぎょうの心しんを生しょうぜしめよ。

能ク令ム↧諸ノ世間ノ一切衆生ノ類ヲシテ
於テ↢諸ノ菩薩衆ニ↡而シテ生ゼ↦恭敬ノ心ヲ↥

^もし人ひとありて、 よくかくのごとき善法ぜんぽうを行ぎょうずるは、
世せ0933々せに*無む上じょう菩ぼ提だいの願がんを増ぞう長じょうすることを得えん」 と。

若シ有リテ↠人能ク行ズルハ↢如キ↠是クノ之善法ヲ↡
世々ニ得ント↣増↢長スルコトヲ無上菩提ノ願ヲ↡」

^文もん中ちゅうにまた二に十じっ種しゅの失しつ菩ぼ提心だいしんの法ほうあり。 見みるべし。

文中ニ亦有リ↢二*十種ノ失菩提心ノ法↡。可シ↠見ル

往おう生じょう要よう集しゅう 巻かん上じょう

 

延書の底本は京都府青蓮院蔵承安元年書写本ˆ原漢文の底本と同一ˇ。 ただし訓はかなり異なり、 対校諸本によるか。
尽第四門半 本書の巻上が大文第四の半ばまでであるという意。
事理の業因 具体的な相を観ずる事観と、 無相の真理そのものを観ずる理観。
予がごとき頑魯のもの 私 (源信) のようなかたくなで愚かな者。
備へん 底本 (青蓮院本) の左訓には 「備へよ」 とある。
業因 果をもたらす因となる行為。 ここでは地獄に堕ちる原因となる悪行をいう。
四門 東西南北の門。
眷属 ここでは付属の意。
両 底本 (青蓮院本) には 「雨」 とある。
瓮 かめ。
骨肉狼藉たり 罪人の骨や肉があたりに散乱している。
自余の九処 屎し泥処でいしょ…極ごく苦く処しょ以外の九つの別処。
拼 この段の典拠となっている ¬法苑珠林¼ 巻七の黒縄地獄の文では 「絣」 の字を用いている。
異処 別処に同じ。 大地獄に付属する特別の小地獄。
この四字 「名畏鷲処」 の四字。
腸 底本 (青蓮院本) には 「腹」 とある。
刀葉林 刀のように鋭くとがった葉をもつ木々。
欲心熾盛にして 愛欲の思いがはげしくさかんであり。
腸 底本 (青蓮院本) には 「腹」 とある。
頭を叩きて 頭を地につけてという意。
閻羅人 閻羅王の配下の獄卒 (地獄の鬼)。
愛 →愛欲あいよく。
風黄冷雑 風病と火病 (黄) と水病 (冷) と地病 (雑)。
肘 長さの単位。 一肘は人のひじの長さ (約一尺六寸 ) に相当する。
十六の別処 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ では、 大だい叫きょう喚かん地獄の別処を十八とする。
生蘇 若草。
分荼離迦 梵語プンダリーカ (puṇḍarīka) の音写。 白びゃく蓮れん華げのこと。
所依の処 つかまるところ。 寄るべ。
半中劫 一中劫の半分。 一中劫は二十小劫にあたる。 →劫こう
閻魔羅王 →閻えん魔ま王おう
増劫・減劫 成じょう・住じゅう・壊え・空くうの四劫のうちの住劫じゅうこうにおいて、 人間の寿命が百年に一歳ずつ増加して、 十歳より八万歳に至る期間を増劫といい、 百年に一歳ずつ減少して、 八万歳より十歳に至る期間を減劫げんこうという。
一掬の水 両手いっぱいの水。
隔 隔壁。 境界をへだてる仕切りの壁。
簸り 除き去ること。
三熱… 炎熱のはげしさを三段階に分けたもの。
他化自在天処 他化たけ自在天じざいてんのこと。
四天下処 四し天てん下げのこと。 →四し大だい洲しゅう
欲界六天 欲界に属する六ろく欲よく天てん。
無間獄 無間は梵語アヴィーチ (avīci) の漢訳。 阿鼻あび地じ獄ごくのこと。
因果を撥無し 因果の道理を否定して。
脯 乾肉。
用 底本 (青蓮院本) には 「困」 とある。
大那落迦 那落迦は梵語ナラカ (naraka) の音写。 地じ獄ごくのこと。
出園 外苑。
死屍糞泥 死体と糞の泥沼。
黒黧 黧は色あせて黄色気味を帯びた黒色。
脊胎 背中と腹。
鉄設柆末梨林 設柆末梨は梵語シャールマリー (śālmalī) の音写で、 刺とげの意。 鉄の刺の林。
周旋して回復す ぐるぐると回りめぐる。
なんの所須… どんな望みがあるのか。
つひに覚知… もはや何の感覚もない。
先世…出でず →補註6
経論 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ ¬大だい智度ちど論ろん¼ ¬倶く舎しゃ論ろん¼ 等に八寒地獄が説かれている。
閻魔王界 閻えん魔ま王おうの世界。
屠殺せるもの… →補註8
丈夫 主人。
祭を設くる 供く物もつを捧げて祈祷する。
不浄に説法せしもの 自己の名誉や利益のために教法を説いたもの。
蚓蛾 みみずと蛾。
塚 墓場。
焼屍の火 死骸を焼く火。 異本には 「焼火の屍」 とある。
驢 ろば。
騾 らば。
一時 約二時間。
七時 約十四時間。
経論 ¬正しょう法ぼう念ねん経ぎょう¼ ¬六ろっ波ぱ羅ら蜜みつ経きょう¼ ¬法華ほけ経きょう¼ 等。
天の鼓 忉とう利り天てんの善法堂にある太鼓。 帝釈天たいしゃくてんが阿あ修しゅ羅らと戦う時、 おのずから音を出すという。
怖畏周章して 恐れてあわてふためいて。
腕 底本 (青蓮院本) には 「脘」 とある。 次の 「腕」 も同じ。
周帀して弥布せり 回りめぐってくまなく分布している。
三尋半 尋は長さの単位。 一尋は八尺 (周尺) で約180センチメートル。
禅経の偈 鳩摩羅くまら什じゅう訳 ¬禅ぜん秘ぴ要よう経きょう¼ ではなく、 ¬法苑ほうおん珠林じゅりん¼ あるいは ¬諸しょ経きょう要よう宗しゅう¼ に引かれる ¬禅秘要経¼ 取意の文か。
鵰 くまたか。
鵄 とび。
梟 ふくろう。
究竟不浄 不浄の極致。
粉 脂粉。
鹿杖を… ¬十じゅう誦律じゅりつ¼ 巻二にみえる伝説。 仏が不浄観を説くのを聞いて、 比丘びくたちが厭えん離りの心を懐き、 鹿杖梵士を雇って、 自らを殺させた。 その数は六十人に及んだという。
大黄湯 薬草の一種。
外苦 底本 (青蓮院本) には 「行苦」 とある。
無上の尊 この上なく尊くすぐれた方。 仏のこと。
仙に登り 仙人になって天に登ること。
空にもあらず… 五神通を具足した四人兄弟の婆羅ばら門もんが、 各七日後に死期が迫ったのを知り、 これを免れようとして、 一人は海中、 一人は須しゅ弥み山せん、 一人は虚こ空くう、 一人は市中に隠れることにしたが、 釈尊はその中の一人の死の報を聞いて、 生老しょうろう病死びょうしの四苦を免れることはできないと説き、 この偈をよんだという。
掣電 電光。
哺 口に食物をふくむこと。
五衰の相 天人五衰のこと。 諸天が死の直前に示す五種の衰亡の相。 五種の相については異説もある。
殊勝殿 善見ぜんけん宮城くじょう内の宮殿。
釈天 帝たい釈しゃく天てんのこと。
衆車苑・粗渋苑・雑林苑・歓喜苑 善見宮城の外にある周千由ゆ旬じゅんの庭園。
劫波樹 劫波は梵語カルパ (kalpa) の音写。 歓喜苑にあるという衣服や装身具などを出す樹。
曼陀枳尼 梵語マンダーキニー (Mandākinī) の音写。 語源的に解釈すると、 ゆるやかに流れるという意。 善見宮城にある池の名。
四種の甘露 諸天が用いる不死の効能がある仙酒・霊薬のことで、 青・黄・赤・白の四種があるという。
五妙の音楽 宮きゅう・商しょう・角かく・緻ち・羽うの五音階にかなった天上の妙たえなる音楽。
馬頭の山沃焦の海 馬頭山は伊い沙山しゃせんの奥にあるという山。 その形は馬の頭に似ているという。 沃焦は大海の底にあって水を吸うという石の名。 阿鼻あび地獄の火によってこの石は常に熱せられているという。 沃焦海はこの石がある海のこと。
余の五の欲天 六欲天ろくよくてんのうちの忉利天とうりてん以外の五つの天。
非想 無む色しき界かい最上層にある非ひ想そう非非ひひ想処天そうしょてん。
一篋 一篋四蛇の喩えによっていう。 人間の身体が地じ・水すい・火か・風ふうの四大の結合より成っていることを、 一つの箱に四蛇を収めたのに喩える。
四の山 生老しょうろう病死びょうしの四苦しくを山に喩える。
癰を洗ひ… 癰 (はれもの) の膿を洗い流し、 眼に刺さったさかまつげを取り出しただけで、 楽になったと思っている。
正法念経の偈 ¬正しょう法念ぼうねん経ぎょう¼ にこの文はない。 ¬増一ぞういつ阿あ含ごん経ぎょう¼ に出る文。
枷鎖の業 くびかせやくさりで悪道にしばりつけるような行為。 悪業。
戒 持じ戒かいのこと。
施 布施ふせのこと。
疥者 疥は皮膚病の一種。
色族 才色と閥族。
利衰の八法 八風のこと。 人の心を動揺させる八種の状態。 利 (利得)・衰 (損失)・毀・誉・称・譏・苦・楽の八つ。
信戒施聞慧慚愧 七財。 仏道修行に必要な七種の財産。
五時 初夜・中夜・後夜ごやの夜の三時に、 日没にちもつと晨じん朝じょうの二時を加えて五時としたものか。
度 さとりの世界にわたること。
黒縄活地獄 黒こく縄じょう地じ獄ごくと等活とうかつ地じ獄ごく。
所須の欲 求めるもの。
駃 異本には 「駛」 とある。
諦 真理。
頼和羅の伎声 頼和羅のことを歌った詩頌。 頼和羅とは、 梵語ラーシュトラパーラ (Rāṣṭrapāla) の音写。 古代中インドのクル国の長者の子と伝えられる。 ¬四し分ぶん律りつ¼ によれば、 少欲知足で物に貪着することがなく、 釈尊は弟子たちに、 彼のようにむさぼりを離れよと誡めたといわれる。
毒蛇の篋 一いっ篋きょう四し蛇じゃの喩えによっていう。 人間の身体が地じ・水すい・火か・風ふうの四大の結合により成っていることを、 一つの箱に四蛇を収めたのに喩えたもの。
丘塚 墓。
四非常の偈 ¬仁王にんのう経きょう¼ 巻下にある無常・苦・空くう・無我を説いた四言三十二句の偈げ頌じゅ。 四無常偈ともよばれる。
諸行は… この偈は 「無常偈」 また 「雪山せっせん偈げ」 とよばれ、 「いろは歌」 の原形といわれる。
祇園寺の無常堂 祇ぎ園おん精しょう舎じゃの西北の角にあったという無常院。 病者に安らかな臨終を迎えさせるための施設。
三禅に… →三禅さんぜんの楽らく
雪山の大士 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ に説かれる釈尊の前生。 雪山童子ともいう。 帝釈天たいしゃくてんがこの童子を試そうとして羅ら刹せつに身を変え、 「無常偈」 (雪山偈) の前二句を唱えたところ、 童子は後半の二句を聞くために自らの身を投げて羅刹に与えたという。
貪瞋痴等の惑業 貪欲とんよく・瞋しん恚に・愚痴ぐちなどの煩悩ぼんのうのこと。 →三毒さんどく
法体 もの。 存在。
施鹿林 鹿ろく野や苑おんのこと。
仙駕に陪する 仙人の車につき従う。 仙人の位に名を列ねること。
宗親戚属 兄弟や親族。
自調自度 自らの心を調え、 自分ひとりだけの解げ脱だつをめざすこと。
小 小乗の教え。
不浄等の観 不浄観などの観法。 不浄観は身や三界さんがいの不浄を観じて貪欲とんよくを離れる観法。 五ご停じょう心観しんかんの一。
事務を貪営して 俗事をいとなみ。
施と戒と禅 布施ふせ・持じ戒かい・禅ぜん定じょうのこと。
九の処… 両眼・両耳・両鼻孔・口・両便道の九つの穴。 九く瘡門そうもん、 九孔くくなどともいう。
篅 竹囲いの米倉。 あるいは竹製のざるの意か。
痰癊 痰はたん、 癊は胸の病。 ここでは、 たんの意。
貪瞋痴 貪欲とんよく・瞋しん恚に・愚痴ぐち。 →三毒さんどく
算分喩分 数量や比喩ひゆで表し示すこと。
安国の抄 以下は延寿えんじゅの ¬万善まんぜん同帰集どうきしゅう¼ に引く ¬安国あんこく鈔しょう¼ の文によって十の楽を挙げる。
聖衆来迎の楽 浄土の菩薩衆が臨終に迎えに来るという楽しみ。 →来迎らいこう
風火 四し大だいのうちの風大ふうだいと火か大だい。
地水 四し大だいのうちの地じ大だいと水すい大だい。
運心 (浄土に) 心を寄せること。
本願 ここでは、 来迎らいこう引いん接じょうを誓った第十九願のこと。
大悲観世音 →観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつ
百福荘厳 百の福徳によってかざられた手。 三十二相の一々は百福でかざられているという。
蓮台結跏 浄土の蓮れん華げの台座に結けっ跏か趺坐ふざすること。
伝記 慶滋保胤よししげのやすたね (931頃-1002) の ¬日に本ほん往おう生じょう極楽ごくらく記き¼ などを指すものか。
大梵王宮 色界しきかい初禅天しょぜんてんの主である大梵王の住する世界。
輪転無際にして かぎりなく輪りん廻ねを繰り返すことを回転する車輪に喩えていう。
盲者 →補註10
尽虚空界 際限のない広大な空間。
転妙法輪 妙法輪を転ずること。 すぐれた仏の教えを説くという意。
駃 異本には 「駛」 とある。
金山王 仏身を金山に喩えていう。
流璃 瑠璃。 青色の宝玉。
普賢の願海 普賢菩薩のたてた海のように広大な十種の誓願。
身相神通の楽 すぐれた相そう好ごうと神通力が得られるという楽しみ。 →神通じんずう
一尋 尋は長さの単位。 両手を左右に広げた時の長さを一尋とする。
第六の天 他化たけ自じ在天ざいてんのこと。
乞丐の… →補註8
只尺 咫尺。 きわめて近い距離。
自在無礙 (往来することが) 自由自在であること。
この界 娑しゃ婆ば世界を指す。
四静慮 静慮は梵語ドヤーナ (dhyāna) の漢訳。 禅ぜん定じょうのこと。 色界しきかいの四禅定。 →四し禅ぜん
任運生得の果報 生れながらにおのずと得られた果報。
天眼耳通 天眼通・天耳通。 →六神通ろくじんずう
五妙境界の楽 眼げん・耳に・鼻び・舌ぜつ・身しんの五つの感覚器官の対象である色しき・声しょう・香こう・味み・触そくの五境が清浄しょうじょうですぐれているという楽しみ。
坦然平正 どこまでも平らであるさま。
恢廓曠蕩 はてしなく広大であること。
虎魄 琥こ珀はくに同じ。
車 硨しゃ磲こに同じ。
馬瑙 碼め碯のうに同じ。
不共 十じゅう八はち不共ふぐ法ほうのこと。
宮商 宮きゅう・商しょう・角かく・緻ち・羽うの五ご音いん (五種の音階) を略していったもの。 →五ご音いん七声しちせい
色力 身体の力、 勢い。
法に応ぜる妙服 →応法おうほうの妙みょう服ぶく。
馨香芬烈 香気をつよく放っていること。
中時晡時 中時は日中、 晡時は日没にちもつ。 →六ろく時じ
二種の観経 ¬双観 (巻) 経¼ (¬無量寿経¼) と ¬観無量寿経¼ のこと。
快楽無退の楽 きよらかな快楽がつきないという楽しみ。
経 経名不明。
他方の大士 他方世界より来至した菩薩たち。
新生の人 新たに往生した者。
心 菩ぼ提だい心しんのこと。
八功の池 八はっ功く徳どく水すいの浴池。
心事相応 心に思うことと現実とが一致していること。
引接結縁の楽 縁ある人々を浄土に導き寄せるという楽しみ。
志肝胆を… 懸命に努力しても、 水を飲み豆を食うという貧しい生活しかできない。
天眼・天耳 天眼通・天耳通のこと。 →六神通ろくじんずう
神境通 神足通のこと。
安楽刹 刹は梵語クシェートラ (kṣetra) の音写で、 国土の意。 安楽国のこと。 →安楽あんらく
龍樹の偈 実際には天親てんじん菩薩の ¬浄土論¼ の偈。
聖衆倶会の楽 浄土の菩薩衆に会えるという楽しみ。
無常大菩提 この上ない仏のさとり。
真 真如しんにょのこと。
仏家 仏の浄土。
龍樹の讃 迦か才ざいの ¬浄土論¼ 巻中に引く 「讃さん観音かんのん勢せい至し二に菩ぼ薩さつ偈げ」。
観音勢至は… 迦か才ざいの ¬浄土論¼ によって龍りゅう樹じゅ菩薩の讃を引く。
般泥洹 入にゅう滅めつすること。
無価の衣 →無価むげ衣え
道化を宣布す (阿弥陀仏の教えを十方世界の衆しゅ生じょうに) 説いて教化する。
願はくは…往生せん 異本にはこの文はない。
見仏聞法の楽 阿弥陀仏を見て、 その説法を聞くという楽しみ。
四無量三解脱 四無量しむりょう心しんと三さん解げ脱だつ門もんのこと。
盲ひたる亀の… 盲もう亀き浮ふ木ぼくの喩え。 大海中に住む盲目の亀が、 百年に一度、 海上に頭を出し、 そこに流れてきた板のあなに出遇うことがきわめて困難であるということ。
儒童 雪山せっせん童どう子じのこと。
迦陵頻 迦陵かりょう頻伽びんがのこと。
梵の声 仏のきよらかな声。
記を授く →授じゅ記き
決 記きに同じ。
法に名字なきこと すべては因縁いんねんによって生起して仮に存在するもので、 名称によって概念的にとらえられるような実体はないということ。
随心供仏の楽 心のままに仏を供く養ようすることができるという楽しみ。
食時をもつて 食事の時までにの意。
増進仏道の楽 おのずから仏道を進みゆくという楽しみ。
身子等の… →乞眼の因縁
智分 智慧ちえのかぎり。
我我所 我は自己自身、 我所は自己の所有するもの。
妙法輪を転じ この上なくすぐれた仏の教えを説き。 仏の説かれた教えは、 衆しゅ生じょうの煩悩ぼんのうをうちくだき、 次々とひろまってゆくので、 これを車輪に喩えていう。
十往生経 底本 (青蓮院本) には 「十方往生経」 とある。 →十往生経じゅうおうじょうきょう
薬王品 「薬王やくおう菩ぼ薩さつ本事ほんじ品ぼん」 第二十三。
光明 →光こう明みょう真言しんごん経ぎょう。
顕密教 顕けん教ぎょうと密教みっきょう。
出世の法要 迷いの世界を離れ出る肝要な方法。
九十五種の邪道 →九十五くじゅうご種しゅの外げ道どう
無眼の人・無耳の人 →補註10
摂取して… →摂取せっしゅ不ふ捨しゃ
三千界 三千大千さんぜんだいせん世せ界かいの略。
末後法滅の時 行と証が欠けて教えのみがのこる末法まっぽうの時代が一万年続いた後は、 その教えすらもなくなる法滅ほうめつの時代に入るという。 →三時さんじ
観音勢至は… 観音・勢至が娑しゃ婆ば世界で修行し、 浄土に化け生しょうしたという説は、 ¬大経¼ (下) に見える。
玄奘三蔵のいはく… 以下に引用される文は道世どうせい編の ¬諸しょ経きょう要よう集しゅう¼ 巻一および ¬法苑ほうおん珠林じゅりん¼ 巻十六に見える。
旧き経論 旧く訳やく (玄げん奘じょう以前の翻訳) の経論のこと。 ここでは鳩摩羅くまら什じゅう訳 ¬仁王にんのう経きょう¼、 真諦しんだい訳の ¬摂大乗しょうだいじょう論ろん¼ 等を指す。
七地 ¬諸経要集¼ 本文は 「十地」 になっている。
新論 新訳 (玄奘以降の翻訳) の論のこと。 ここでは ¬瑜伽師地ゆがしじ論ろん¼ ¬仏ぶつ地じ経きょう論ろん¼ 等を指す。
中国 ここでの中国はインドの意。
内外 兜と率天そつてんの内院ないいんは弥み勒ろくの住処 (弥勒浄土・兜率浄土)、 外げ院いんは天衆の住処。
引摂の願 第十九願のこと。
難易の二の門 難行道なんぎょうどうと易い行道ぎょうどうのこと。
相伝にいはく… 最澄さいちょう (766または767-822) の ¬顕けん戒論かいろん¼ の取意の文。
流沙 中国西部からインドに至る間の砂漠。 現在のタクラマカン砂漠。
竜華会 弥み勒ろく菩薩がさとりをひらいた後に行う三度の説法のこと。 →竜りゅう華げ三さん会ね。
上生心地 ¬上生じょうしょう経きょう¼ と ¬心しん地じ観かん経ぎょう¼。
遮 退け捨てること。
非梵行 梵は清浄しょうじょうの意。 清浄でない行為。
五十七倶胝六十百千歳 弥み勒ろく菩薩出世の年数については経論の間に異説があるが、 五十六億七千万とする ¬*菩ぼ薩さつ処胎しょたい経きょう¼ の説が一般的である。
対揚の首 聴衆の第一。
余方 極楽以外の国土 (を願うこと)。
異執 誤った執着の心。
能礼所礼… 慈じ覚かく大師円仁えんにんの ¬法ほっ華け常行じょうぎょう三昧ざんまい礼仏文らいぶつもん¼ の文といわれる。
無上の意 菩ぼ提だい心しんのこと。
真際 究極的な真実。
功徳…具して 親鸞聖人は 「功徳円満せり。 義つぶさにかくのごときらの六種の功徳による」 (行文類訓) と読まれた。
一百倶胝の界 三千大千さんぜんだいせん世せ界かいに同じ。
六時の礼法 ¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ のこと。
観虚空蔵菩薩仏名経に… ¬観かん虚こ空蔵くうぞう菩ぼ薩さつ経きょう¼ のことか。 ただし引用に該当する文ははい。
十住婆沙の第三 龍りゅう樹じゅ菩薩造の 「易い行ぎょう品ぼん」 のこと。 なお、 現行の ¬十住じゅうじゅう毘婆びば娑論しゃろん¼ では、 「易行品」 は巻五にある。
抄す 諸本には次下に 「つぶさには別抄にあり」 とある。
真言教の仏讃 唐とうの不空ふくう訳 ¬無む量りょう寿じゅ如来にょらい観行かんぎょう供く養よう儀ぎ軌き¼ の中の 「阿弥陀如来根本陀羅尼だらに」 などを指す。
阿弥陀の別讃 曇鸞どんらん大師の ¬讃さん阿弥陀あみだ仏ぶつ偈げ¼、 善導ぜんどう大師の ¬往おう生じょう礼讃らいさん¼ 等を指すか。
有淪を傾く 迷いの世界である三界さんがいを離れるの意。
浄土論 曇鸞どんらん大師の ¬論註¼。
饒益有情戒 →三聚さんじゅ浄じょう戒かい
縁因仏性 智慧ちえをおこす縁となるすべての善根ぜんごん功く徳どく。
摂律儀戒 三聚さんじゅ浄じょう戒かいの一。
正因仏性 すべての存在に本来そなわっている真如しんにょの理。
摂善法戒 三聚さんじゅ浄じょう戒かいの一。
了因仏性 真如しんにょの理を照らしあらわす智慧ちえ。 天台てんだい宗では縁因仏性・正因仏性・了因仏性の三因仏性説を立てる。
一色一香も… すべてのものはことごとく中ちゅう道どう実相じっそうの理のあらわれであるという意。 天台大師智顗ちぎの ¬摩訶まか止し観かん¼ に見える語。
塵労門 塵労は心を疲れさせるものの意。 煩悩ぼんのうの異名。
四弘誓 四弘しぐ誓願ぜいがんのこと。
順理の発心 普遍的な真理と合致する菩ぼ提だい心しんをおこすこと。
所得なし 対象を認識しない。
始行の衆生 仏道修行を始めたばかりの者。
二の四弘 縁事・縁理の四弘しぐ誓願ぜいがん。
苦集二諦 苦諦と集諦じったい。 →四し諦たい
道滅二諦 道諦と滅諦。 →四し諦たい
自他… 「自他法界同じく利益し、 ともに極楽に生じて仏道を成ぜん」
四弘願 四弘しぐ誓願ぜいがんのこと。
無尽法界 すべての存在世界。
初中後夜 初夜・中夜・後夜のこと。 →六ろく時じ
本縁 過去の因縁いんねん。
婬欲 ここでは三毒さんどくの一の貪欲とんよくのこと。
同論にいはく… ¬大だい智度ちど論ろん¼ からの引用とするが該当する文はない。
種性 さとりの種。
悪取空 空の道理を誤って理解し、 とらわれること。
本有 本来そなわっているという意。
悲願 慈悲の願。
慈童 ¬雑宝蔵ぞうほうぞう経きょう¼ 巻一に説く釈尊の本生ほんしょう。 釈尊は過去世に長者の子、 慈童女として生れ、 すべての苦しみ悩む者を教え導こうと誓って、 死後、 兜と率そつに生れたという。
一把の麨 ひとにぎりの麨。 麨は炒った麦をひいた粉。 むぎこがし。
深般若波羅蜜多 深い智慧ちえの意。 →般若はんにゃ波羅はら蜜みつ
方便善巧 たくみなてだて。
善事を同ぜん 四摂ししょうのうちの同どう事じのこと。
常途 いつも。 不断。
渠溝 みぞ。
学 底本 (青蓮院本) には 「覚」 とある。
新学 仏道修行を始めたばかりの者。
法位 不ふ退たい転てんの位。
毀呰 ここでは非難するというほどの意。
有所得の執 一方に偏った誤った見解にとらわれること。
我人寿者命者 我は常住なる自我、 人は他と区別される主体、 寿者は生命を所有する個体、 命者は生命を持続してゆく個体。
無所有 無む所得しょとくに同じ。
断常 断滅と常住。
有作・無作 有作はすべての事物を作られたものとすること、 無作は自じ然ねんにあるものとすること。
浄戒品 現行の ¬仏蔵経¼ では 「浄法品」。
四果の向・四果 →四し向こう四果しか
大乗の心 大乗の菩ぼ提だい心しん。
小乗の極果 阿羅漢果のこと。 →阿羅あら漢かん
大乗の初心 はじめて無上菩提心をおこすこと。 →菩ぼ提心だいしん
五逆の初業 五逆罪ごぎゃくざいを犯すもととなるというほどの意。
寿命 底本 (青蓮院本) には 「寿者」 とある。
四教の菩提心 天台てんだい宗では蔵ぞう・通つう・別べつ・円えんの四教にそれぞれ菩提心があると説く。
五欲相応の非理の作意 五ご欲よくにもとづく、 道理にはずれた心のはたらき。
瓔珞 飾り。
大福聚 大いなる功く徳どくの集まり。
色方分 すがたかたち。
畢竟 究極的なさとり。
弥伽大士 善財童子が第五番目に訪れた善ぜん知ぢ識しき。
三千界 三千大千さんぜんだいせん世せ界かいの略。
初めの菩提心 天台てんだい宗でいう四教 (蔵ぞう・通つう・別べつ・円えん) のうちの蔵教の菩提心。
第二第三第四の菩提心 順に通教つうぎょう・別教べっきょう・円教えんぎょうの各菩提心。
三蔵教 蔵教 (小乗教) のこと。
界内 ここでの界は三界さんがいの意。
別時の意 →別べつ時意じい
染浄の二の心 煩悩ぼんのうのけがれに染まった心と清浄しょうじょうな心。
前念・後念 前の瞬間、 後の瞬間。
料簡 (菩提心に関する種々の問題を) 問答を設けて解釈し、 判断すること。
また 「又」 の字。 底本 (青蓮院本) には 「人」 とある。
苦海朝宗 苦しみが集まり満ちていることを、 多くの河川の水がすべて大海に集まることに喩えていう。
余の経論 ¬観経¼ および天親てんじん菩薩の ¬浄土論¼ のこと。
経論 ¬大経¼ および天親菩薩の ¬浄土論¼ のこと。
大荘厳論に… 引用は延寿えんじゅ (904-975) の ¬万まん善ぜん同どう帰き集しゅう¼ 巻中に引く ¬大だい荘しょう厳論ごんろん¼ の文によったもの。
あるがいはく… 引用は浄じょう影寺ようじ慧え遠おん (523-592) の ¬観かん経ぎょう義疏ぎしょ¼ に見える説。
あるがいはく… 善導ぜんどう大師の 「玄義分」 および ¬安養あんにょう集しゅう¼ 所引の龍興りゅうこう ¬観無量寿経記¼ の文によったもの。
福分 世間的な福徳をもたらす五戒・十善などの善ぜん根ごん。 →五ご戒かい、 十善じゅうぜん
道分 さとりの果をもたらす行業ぎょうごう。
二因 往生浄土の業因と堕地獄の業因。
大菩提の願 この上ないさとりを求め願う心。 菩ぼ提心だいしんのこと。
無上菩提の願 大菩提の願に同じ。
底本は◎京都府青蓮院蔵承安元年書写本。 Ⓐ神奈川県最明寺蔵平安時代書写本、 Ⓑ大阪府出口順得氏蔵建保四年刊本(上巻本末)、 愛知県専光寺蔵建保四年刊本(中巻本末・下巻本末)、 Ⓒ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)建長五年刊本、 Ⓓ龍谷大学蔵(写字台旧蔵)室町時代刊本、 Ⓔ本派本願寺蔵版¬七祖聖教¼所収本 と対校。 なお、 別の読み方がされている右訓は割愛した。
末→ⒷⒸ未
是→ⒶⒷⒸⒹⒺ惟
癈→ⒷⒸⒹⒺ廃
夫 Ⓐになし
広→Ⓔ横
捧→Ⓔ棒
猶 Ⓐになし
可還等活 ⒷⒸⒹⒺになし
其寿五百歳 ◎等活ノ五百歳人間ノ当千六百廿万億才と註記
六→ⒷⒸⒹⒺ六[亦]
准→Ⓔ準
折→Ⓒ析
如→Ⓐ如[此]
如→Ⓓ如[如]
有 ⒹⒺになし
生 Ⓓになし
之 ⒹⒺになし
瓫→ⒶⒷⒸ瓮
熟→Ⓔ熱
瓮→ⒹⒺ瓫
者 Ⓓになし
合→Ⓔ令
昔→ⒹⒺ昔[大火炎]
念 ⒹⒺになし
説→Ⓐ説[之]
地→Ⓐ地[上]
横→Ⓓ拡
吹→Ⓓ
伽→ⒷⒸⒹⒺ伽[論]
意 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
地→Ⓐ地[地]
別 ⒷⒸになし
責→ⒷⒸ嘖
親→ⒹⒺ親[族眷]
属→ⒶⒷⒸ眷
有→ⒹⒺ有[之]
応例→ⒷⒸⒹⒺ例応
一 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
此地獄寿一千歳 ◎黑縄一千歳人間ノ当一万二千九百六十万億才と註記
嶮→Ⓓ崳
中 ⒸⒹになし
名畏鷲処或本无此四字 Ⓐになし
鷲→ⒷⒸ熟
或本无此四字 ⒷⒸⒹⒺになし
逐→◎遂
打→Ⓓ折
此→ⒶⒹⒺ此[中]
両々→ⒹⒺ雨山
獄 Ⓐになし
仗→ⒹⒺ杖
伽→ⒹⒺ伽[論]
腹→ⒶⒷⒸⒹⒺ腸
河→ⒶⒷⒸⒹⒺ江
河→ⒹⒺ江
中→ⒹⒺ中[有]
漂→ⒶⒷⒸⒹ
無→Ⓐ無[生]
政→Ⓔ正
広説 ⒹⒺになし
責→ⒷⒸⒹⒺ嘖
此→ⒷⒸⒺ地
其寿二千歳 ◎衆合二千才人間ノ當十万三千六百八十万億才と註記
腹→ⒶⒷⒸⒹⒺ腸
処 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
取→Ⓐ耶
苦→Ⓓ若
大→ⒹⒺ火
身→ⒷⒸ身[分]
都→ⒶⒷⒸ覩
寿四千 ⒹⒺになし
都→ⒶⒷⒸⒹ覩
天 ⒷⒸⒹⒺになし
此→ⒹⒺ此[地]
而→ⒷⒸ其
寿四千歳 ◎叫喚四千才人間ノ當八十二万九十四百八千万億才と註記
飲→Ⓐ飲[食]
末→ⒷⒸⒺ未
四→Ⓐ四[病]
洲→ⒷⒹ州
霧→Ⓐ露
弄→Ⓓ捗
此→Ⓐ此[中]
捉→ⒹⒺ投
足→ⒷⒸⒹⒺ之
嘖→Ⓔ責
其寿八千歳 ◎大叫喚八千才人間ノ當六百六十三万五千八百四十万億才と註記
卒→ⒷⒸ卒[前]
云→Ⓑ言
云々 ⒷⒸⒹⒺになし
眼→ⒹⒺ[二]眼
捉→ⒹⒺ投
雪霜→ⒶⒷⒸⒹⒺ霜雪
他化→Ⓓ化他
此獄寿 ◎焦熱万六千才人間ノ當五千才三百八万六千七百廿万億才と註記
炎→Ⓒ炙
言→Ⓐ言[云]
汝疾速来汝疾速来→ⒹⒺ汝々疾々速々来々
大→ⒶⒹⒺ火 ⒷⒸになし
車 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
瑜伽大論→ⒶⒷⒸⒹⒺ大論瑜伽論
汚→Ⓐ
肱→Ⓑ肚
肚→◎Ⓐ肱(◎肚トイハラと右傍註記)
鋒利→Ⓐ利鋒
羅 ⒹⒺになし
責→ⒶⒷⒸⒹ嘖
燋→ⒹⒺ焦
万 Ⓐになし
取意略 Ⓐになし
取意 ⒷⒸⒹⒺになし
之 ⒷⒸⒹⒺになし
有 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
億→ⒶⒷⒸⒹⒺ億[千]
経→ⒹⒺ経[中]
之 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
言→Ⓐ言[云]
界→Ⓔ獄
星 ⒹⒺになし
羅→Ⓔ羂
如 Ⓓになし
已上 ⒸⒹⒺになし
有 Ⓐになし
身 ⒹⒺになし
刺→Ⓔ荊
湧 ◎踊イヲドルと右傍註記→ⒶⒷⒸⒹⒺ踊
湧→◎ⒶⒹ踊
蟒→ⒹⒺ蜂
而 Ⓐになし
億→Ⓐ億[四]
仏三昧経→Ⓒ三昧経仏
伽→Ⓔ珈
瑜→ⒶⒷⒸⒹⒺ踰
鉆→Ⓔ鈷
也 ⒷⒸになし
七→ⒶⒹⒺ[前]七
大 ⒹⒺになし
堪→ⒶⒷⒹ憶
説→ⒹⒺ[既]説
若 ⒹⒺになし
取意 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
依 ⒶⒹⒺになし
之→Ⓐ之[人]
肚→Ⓐ肱
是→ⒶⒷⒸⒹⒺ此
此→ⒷⒸⒹⒺ此[中]
雨→Ⓐ両
婆→Ⓔ婆[叵]
生→ⒷⒸ出
大 ⒹⒺになし
困→ⒶⒷⒸⒹⒺ用
令→Ⓔ[河]令
出→ⒷⒸ出[求]
足→ⒶⒷⒸⒹⒺ足[之]
並→ⒹⒺ并
死 ⒹⒺになし
淊→ⒶⒷⒸⒹⒺ陥
倶→Ⓔ頓
足→ⒶⒷⒸⒹⒺ足[之]
遂→Ⓔ逐
即→Ⓐ即[梨]
末→Ⓒ未
欲下→Ⓐ足
其→Ⓐ其[体]
湧→Ⓐ蕩
列→ⒷⒸⒹ烈
熱→ⒶⒷⒸⒹⒺ燃
丸→Ⓒ九
切→Ⓔ切[悪業]
未→Ⓔ末
刃 Ⓐになし
葉→Ⓒ業
四→Ⓓ回
此 ⒷⒸⒹⒺになし
名→ⒶⒷⒸⒹⒺ為
広 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
或…經23字 ⒷⒸになし
如 ⒹⒺになし
千踰→Ⓐ廿瑜
雪 Ⓔになし
臭→ⒶⒷⒸⒹⒺ嗅
此→Ⓔ其
命→ⒹⒺ命[者]
慞→Ⓐ章→ⒹⒺ障
悕→Ⓐ怖
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
路→ⒶⒷⒸⒹⒺ之
賈→ⒹⒺ売
屍火→ⒹⒺ火屍
餓 ⒹⒺになし
或 ⒹⒺになし
或 ⒷⒸⒹⒺになし
投→ⒹⒺ没
赴→ⒷⒸⒺ趣→Ⓓ起
逆 ⒹⒺになし
或→Ⓓ或[有]
有 Ⓐになし
別→Ⓐ総
総→Ⓐ略
鳥→ⒶⒷⒸⒹⒺ禽
未→Ⓑ末
而 ⒹⒺになし
或…旬20字 ⒷⒸになし
五→ⒹⒺ千
一…劫19字→ⒷⒸ一中劫
百劫 ⒹⒺになし
至→ⒹⒺ至[百]
已上諸文散在経論 ⒷⒸになし
経→Ⓔ経[上]
二→Ⓐ[一]二
洲→ⒹⒺ州
相 ⒸⒹⒺになし
脊→Ⓔ背
脘→ⒶⒸⒹⒺ腕
経→Ⓔ論
意 ⒶⒸⒹⒺになし
熟→Ⓔ熱
砕 Ⓒになし
殨→Ⓔ憒
有 Ⓐになし
肝 Ⓐ止観九肝緑豆心如赤豆腎如烏豆脾如栗云々と下欄註記
府→Ⓔ腑
肝→Ⓐ肝[臓]
腹→Ⓐ腸
戸→ⒸⒺ虫
十→ⒹⒺ十[五]
七→Ⓐ二
之 ⒸⒹⒺになし
云 ⒶⒷⒸⒹになし
間 ⒶⒷⒸⒹになし
縦→ⒸⒺ[又]縦
画→ⒸⒹ尽
取 Ⓒになし
意→ⒹⒺ意[体]
体→ⒹⒺ身
塚→Ⓓ家
綵→ⒶⒷⒸⒹ彩
已上 ⒹⒺになし
蜂→Ⓒ蛒
寒→Ⓓ塞
並→ⒹⒺ并
行→ⒸⒹⒺ外 Ⓐになし
減→Ⓐ咸
耶→Ⓐ那
旃→ⒸⒹⒺ栴
涅槃→ⒶⒸⒹⒺ大
必有→ⒹⒺ有必
今当→ⒸⒹⒺ当念
勤→ⒶⒹⒺ懃
地→Ⓔ他
之 ⒶⒸⒹⒺになし
湯→Ⓐ渇
上→Ⓐ上[取意]
略抄→ⒸⒹⒺ取意
者 Ⓐになし
数→Ⓒ数[数]
乗→Ⓓ垂
介→Ⓔ甲
由→Ⓓ申
愍→ⒹⒺ悲
已上 ⒹⒺになし
之 Ⓔになし
非→ⒹⒺ悲
已上天道 Ⓐになし
避遁→Ⓐ遁避
蔽→ⒶⒸⒹ弊
不 ⒶⒸⒹⒺになし
如→ⒹⒺ而
識→Ⓐ戚
共→ⒹⒺ苦
逐→◎Ⓒ遂
伽→ⒶⒸⒹⒺ枷
歴→Ⓐ経
土 Ⓓになし
偈 ⒹⒺになし
苦→Ⓓ若
俗→Ⓓ浴
悕→ⒶⒸⒹⒺ希
洞然→Ⓔ銅燃
想→Ⓐ相
上→Ⓔ土
愧→ⒹⒺ愧[不放逸]
実→Ⓔ宝
慧→Ⓒ恵
穏→ⒶⒹ隠
墜→ⒹⒺ堕
縄→ⒸⒹⒺ縄[等]
剥刺→ⒹⒺ刺剥
毘→Ⓒ鼻→ⒹⒺ鼻地
苦→Ⓓ若
及→ⒹⒺ及[其]
致→ⒹⒺ被
屎尿→Ⓒ尿屎
劫→Ⓔ勍
冷→ⒶⒸⒹⒺ涼
転→Ⓐ漸
清→ⒹⒺ清[浄]
業→Ⓐ業[因]
駃 ◎駛イと右傍註記 左トキ
河→Ⓐ河[駄]
為 Ⓓになし
空→ⒹⒺ空[無我]
則→Ⓒ即
犍→ⒶⒹ揵
隅→ⒹⒺ角
垂→Ⓔ乗
於 ⒹⒺになし
或→ⒸⒹⒺ惑
婆→ⒹⒺ波
伎→Ⓒ技
倍→ⒸⒹⒺ陪
賀→ⒶⒸⒹⒺ駕
一→Ⓔ二
壇→ⒶⒹ檀→Ⓔ擅
壇→Ⓐ檀
反→Ⓒ返
銛→Ⓔ鉛
殺害→Ⓔ害殺
歴→Ⓒ魔
詫→ⒶⒸⒹⒺ託
厄→ⒶⒹⒺ危
洎→Ⓐ泊
此→Ⓔ其
乎 Ⓐになし
観→Ⓐ観[已上]
捉→Ⓔ投
云→Ⓔ曰
湿→Ⓔ温
鬲→ⒸⒹⒺ膈
腹→Ⓔ腸
枉→Ⓔ荘
勿→◎忽
抄→Ⓔ鈔
楊→ⒶⒸⒹⒺ揚
世 Ⓐになし
項→Ⓔ頃
花 ⒶⒸⒹⒺになし
越 ◎超イと右傍註記
第 ◎一念窓前期摂取衆光明十念紫扉侍聖衆来迎と上欄註記
蓮 ◎以↠華表↠因ニ以蓮表↠果華開蓮現ジテ因円果満ナリ華落蓮成ナリ法性元真蓮因又生↢種子ヲ↡法界帰↠一対↢陽ノ光↡開対↢陰気↡ツボム因浄果明本願ノ光影和合スルコトヲ可知と上欄註記
鐶 ◎在↠腕ウデニ鐶ト云在↠臂ヒジニ釧ト云と上欄註記
駃 ◎駛イと右傍註記
雲 ⒹⒺになし
池→Ⓐ地
地→Ⓔ池
流→Ⓐ琉→ⒸⒹⒺ瑠
云→ⒸⒹⒺ曰
神 ⒸⒹになし
所 ◎イ本止之と右傍註記 Ⓒになし
只→ⒶⒸⒹⒺ咫
燓 ◎焚イと右傍註記→ⒸⒹⒺ焚
中→ⒶⒸⒹⒺ中[而]
乎 Ⓐになし
並→Ⓔ普
身→Ⓔ心
土→Ⓔ士
琉→ⒸⒹⒺ瑠
坦→ⒶⒸⒹ怛
恢→Ⓐ惔
天人→ⒶⒸⒹⒺ人天
伎→ⒶⒹⒺ妓
詠→Ⓐ嘆
瑠→Ⓐ琉
虎魄→Ⓔ琥珀
車→Ⓔ硨
→ⒶⒸⒺ磲
馬→ⒹⒺ瑪
浄→Ⓐ清
出称讃浄土経 ⒸⒹⒺになし
讃→Ⓐ嘆
経 ◎イ本と下に註記
慈→Ⓐ慈[大]
未→Ⓔ末
則 ⒶⒸⒹⒺになし
直 ◎イ本無直字と右傍註記 ⒶⒸⒹⒺになし
旃→ⒸⒹ栴
→ⒶⒺ渠
動 Ⓐになし
相→ⒶⒸⒹⒺ林
末→Ⓒ未→ⒹⒺ抹
味→ⒶⒸⒹⒺ美
復→ⒸⒹⒺ又
若 Ⓐになし
頂→Ⓔ項
琉→ⒷⒸⒹⒺ瑠
栴→Ⓐ旃
管 ◎菅イと右傍註記
語→Ⓐ話
語 ◎話イと右傍註記
→Ⓐ話
功→Ⓐ功[徳]
辨→ⒶⒷⒸⒹⒺ弁
人 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
恵→ⒶⒷⒸⒹⒺ慧
道→ⒶⒷⒸⒹⒺ導
作 ◎住イと右傍註記
預→ⒷⒸⒹⒺ予
益 Ⓓになし
我→Ⓐ我[名]
偈→ⒷⒸⒹⒺ意
堕→Ⓔ随
処 ◎家と右傍註記
経 Ⓐになし
意 Ⓐになし
揚→Ⓑ楊
低→ⒶⒷⒸⒹⒺ胝
已上 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
面→Ⓓ天
経→Ⓐ経[偈]
導 ◎遵イと上欄註記
恵→ⒶⒷⒸⒹⒺ慧
共 Ⓐになし
遥相見 ⒷⒸⒹⒺになし
恒→ⒷⒸⒹⒺ恒[河]
土→Ⓔ士
妓→ⒶⒷⒸⒹⒺ伎
問→Ⓔ間
観経 Ⓐになし
云→Ⓔ曰
願共諸衆生往生安楽国 ⒷⒸⒹⒺになし
衆生往生 Ⓐになし
者→Ⓐ者[謂]
仏 Ⓐになし
四→Ⓓ回
腨→ⒶⒷⒸⒹⒺ膞
在→ⒶⒷⒸⒹⒺ在[於]
憙→Ⓐ喜
嚮→ⒶⒷⒸⒹⒺ響
等→ⒶⒷⒸⒹⒺ等[覚]
等→ⒷⒸⒹⒺ等[意]
叉→Ⓔ又
仏 ⒷⒸⒹⒺになし
方→◎万
方→Ⓔ万
妓→ⒶⒷⒸⒹⒺ伎
相 ⒷⒸⒹⒺになし
生→Ⓐ生[彼]
暮→ⒸⒹ慕
仏 Ⓐになし
記→Ⓑ訛
云 ⒶⒷⒸⒹになし
陳→ⒶⒷⒸⒹⒺ陣
許→Ⓔ計
歿→Ⓐ没
或→ⒶⒷⒸⒹⒺ惑
極楽→Ⓐ西方
三巻浄土論 Ⓐになし
浄→◎諍
揚→Ⓐ楊
十→◎Ⓐ十[方]
訳→Ⓑ訳[之]→ⒸⒹⒺ訳[也]
娑→ⒷⒸⒹⒺ沙
連→Ⓔ蓮
実→Ⓑ真
一→Ⓐ二
耶 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
堕→ⒶⒷⒸⒹⒺ堕[於]
已上 ⒶⒷⒸⒹⒺになし
成→ⒷⒸⒹⒺ誠
又→Ⓐ又[云]
末→Ⓔ未
仏 ⒷⒸⒹⒺになし
陀→Ⓐ陀[仏]
婆→Ⓐ婆[世界]
州Ⓑ洲
偏 Ⓐになし
在 ⒸⒹⒺになし
域→◎城
懐 Ⓐになし
群疑論 Ⓐになし
兜率→Ⓐ都率(天イと右傍註記)→ⒸⒹ天
方→ⒸⒹⒺ方[悉]
无内外亦 ⒸⒹになし
亦→Ⓐ亦[皆悉] Ⓔになし
兜率 ◎天イと右傍註記→Ⓐ兜率天→ⒸⒹⒺ謂天
劣 Ⓐになし
禅 ⒶⒸⒹⒺになし
成→Ⓔ誠
慧→Ⓐ恵
同→ⒶⒸⒹⒺ如
爾 Ⓐ以と右傍註記
或→ⒶⒸⒹⒺ惑
域→◎城
彼土→ⒸⒹⒺ西域
相伝云 ⒸⒹⒺになし
計→Ⓔ許
耶 ⒶⒸⒹⒺになし
酒→Ⓐ須
遮→Ⓐ遮[那]
覩→ⒶⒸⒹ都→Ⓔ兜
娑→ⒸⒹⒺ沙
意→Ⓔ論
胎 Ⓐ台と右傍註記
於 ⒶⒸⒹⒺになし
揚→ⒸⒹⒺ楊
世親菩薩 Ⓐになし
就→Ⓐ熟
門 ⒸⒹになし
云→Ⓔ云[一仏]
我 Ⓐになし
已上 ⒶⒸⒹⒺになし
門 ⒸⒹになし
娑→ⒸⒹⒺ沙
抄→Ⓔ鈔
要→ⒶⒸⒹⒺ要[具在別抄(Ⓔ鈔)]
禅→Ⓐ法
遍周→ⒸⒹⒺ周遍
淪→ⒸⒹⒺ輪
択→Ⓐ釈
三→Ⓔ三[総]
妄→◎ⒶⒹⒸ忘
是→Ⓐ是[事]
提→Ⓐ薩→Ⓓ惿
云→Ⓓ至
究→Ⓐ竟
種 ⒸⒹⒺになし
恵→ⒶⒸⒹⒺ慧
冶 ◎治イクダクと上欄註記
懃→ⒸⒹⒺ勤
復然 ◎如是イナリと右傍註記→ⒶⒸⒹⒺ如是
情→ⒹⒺ性
四→ⒸⒹⒺ六
耳 ◎五或イハ六イ本と下に註記
問→Ⓐ間
言→Ⓐ云
恵→ⒸⒹⒺ慧
戒→Ⓐ戒[禁]→ⒸⒹⒺ禁
恵→ⒶⒸⒹⒺ慧
巨→◎臣
落 Ⓐになし
婆→Ⓐ波
覚→ⒶⒸⒹⒺ学
大→ⒸⒹⒺ大[已上]
喜→Ⓐ喜[之]
娑→ⒶⒸⒹⒺ沙
後 Ⓐになし
偈 ⒸⒹⒺになし
而 Ⓐになし
髦髪→Ⓐ髪髦
髦→Ⓔ髭
衆→Ⓐ衆[生]
第一 ⒶⒸⒹⒺになし
狭→ⒶⒸⒹⒺ陜
如 ⒸⒹⒺになし
二→Ⓐ[第]二
楽→ⒶⒸⒹⒺ楽[如]
仏→Ⓐ仏[言]
賢→Ⓔ堅
壊→ⒸⒹ懐
之物→ⒶⒸⒹⒺ物之
之→Ⓐ悪 ⒸⒹⒺになし
者→ⒶⒸⒹⒺ命
染 ◎浄イと右傍註記→Ⓐ浄
指→Ⓐ相
薬 ◎「イ本」と右傍註記
ⒶⒸⒹⒺになし
不→Ⓔ不[可]
減→ⒸⒹⒺ滅
恵→ⒶⒸⒹⒺ慧
或→ⒶⒸⒹⒺ惑
提→Ⓐ提[之]
楞 Ⓐになし
一切 ⒸⒹⒺになし
岸→Ⓐ崖→ⒸⒹⒺ涯
若…分28字 ⒸⒹⒺになし
得→ⒹⒺ復
薩→Ⓐ提
提→Ⓐ提[心]
恵→ⒶⒷⒸⒹⒺ慧
得 Ⓐになし
者→Ⓐ非是
人→ⒶⒷⒸⒹⒺ又
多→ⒶⒷⒸⒹⒺ多[諸]
甘→ⒹⒺ其
毘→◎略
娑→ⒶⒷⒸⒹⒺ沙
経 ⒶⒸⒹⒺになし
行随→◎随行
恵→ⒷⒸⒹⒺ慧
娑→ⒶⒷⒸⒹⒺ沙
報罪 Ⓐになし
娑→ⒷⒸⒹⒺ沙
妄→Ⓐ忘
十→ⒷⒸⒹⒺ十[二]