0132

標挙

0306ひっめつがん

*なん思議じぎおうじょう

 

題号

0307けんじょう真実しんじつしょう文類もんるい 四

禿とくしゃく*親鸞しんらんしゅう

往相の真証を明かす【真実証釈】
  正しく証果を明かす
    釈義
      果体を定む【果体出願】

【1】 ^つつしんで*真実しんじつしょうあらわさば、 すなはちこれ*利他りた円満えんまんみょう*じょうはんごくなり

0133↢真実、則是利他円満之妙位、无上涅槃之極果也。

一 Ⅰ ⅰ 出拠を指す

^すなはちこれひっめつがん (第十一願) よりでたり。

是出タリ↢必至滅度之願↡。

一 Ⅰ ⅰ 義意を述ぶ【証果徳相】

^またしょうだいはんがんづくるなり。

亦名↢証大涅槃之願↡也。

・挙因弁果

^しかるに*煩悩ぼんのうじょうじゅぼんしょうざいじょく群萌ぐんもう往相おうそうこう*しんぎょうれば、 そくのときにだいじょう正定しょうじょうじゅかずるなり。 正定しょうじょうじゅじゅうするがゆゑに、 かならずめついたる。

煩悩成就凡夫、生死罪濁ムラガル萌、キザスレバ↢往相回向心行↡、即ルナリ↢大乗正定聚之トモガラ カズ↡。住スルガ↢正定聚↡故↢滅度↡。

・転釈滅度

^かならずめついたるはすなはちこれ*じょうらくなり。 じょうらくはすなはちこれ*ひっきょうじゃくめつなり。 じゃくめつはすなはちこれじょうはんなり。 じょうはんはすなはちこれ無為むい法身ほっしんなり。 無為むい法身ほっしんはすなはちこれ実相じっそうなり。 実相じっそうはすなはちこれほっしょうなり。 ほっしょうはすなはちこれ真如しんにょなり。 真如しんにょはすなはちこれ一如いちにょなり。

ルハ↢滅度↡即是常楽ナリ。常楽是畢オハリ キワマル寂滅ナリ。寂滅是无上涅槃ナリ。无上涅槃是无為法身ナリ。无為法身是実相ナリ。実相是法性ナリ。法性是真如ナリ。真如是一如ナリ

・主伴同証

^しかれば、 弥陀みだ如来にょらい*にょよりらいしょうして、 *ほうおう種々しゅじゅしんしめげんじたまふなり

弥陀如来↠如来生シテシメ↢現ジタマフ報・応・化種種↡也。

一 Ⅰ 引文
      経説
        因願
          (一)¬大経¼

【2】 ^ひっめつ願文がんもん、 ¬*だいきょう¼ (上) にのたまはく、

必至滅度願文、¬大経¼言

^たとひわれぶつたらん0308に、 くにのうちの人天にんでんじょうじゅじゅうし、 かならずめついたらずは、 しょうがくらじ」 と。

我得タラム↠仏、国人天、↧住↢定聚↡、必↦滅度↥者、↠取↢正覚↡。」

一 Ⅰ ⅱ a イ (二)¬如来会¼

【3】 ^¬*りょう寿じゅ如来にょらい¼ (上) にのたまはく、

¬无量寿如来会¼言

^もしわれじょうぶつせんに、 くにのうちのじょう、 もしけつじょうしてとうしょうがくり、 だいはんしょうせずは、 だいらじ」 と。

「若我成仏セムニ、国有情、若ナサケゴヽロ↧決定シテ↢等正覚↡証0134↦大涅槃↥者、↠取↢菩提↡。」

一 Ⅰ ⅱ a 成就
          (一)¬大経¼二文

【4】 ^がん (第十一願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、

願成就文、¬経¼言

^それしゅじょうありて、 かのくにうまるれば、 みなことごとく正定しょうじょうじゅじゅうす。 ゆゑはいかん。 かの仏国ぶっこくのうちにはもろもろのじゃじゅおよびじょうじゅなければなり」 と。

↢衆生↡、生ルレ↢彼、皆悉↢於正定之聚↡。所以 ユエ 。彼仏国ニハレバナリト↢諸邪聚及不定聚↡。」

【5】 ^またのたまはく (大経・上)

又言

^かの仏こくは、 清浄しょうじょう安穏あんのんにしてみょうらくなり。 無為むいないおんどうちかし。

「彼仏国土、清浄安穏オダシニシテ微妙快タノシナリコヽロヨシチカ↢於无為泥洹之道↡。

^それもろもろのしょうもんさつてんにん智慧ちえこうみょうにして、 神通じんずう洞達どうだつせり。 ことごとくおなじく一類いちるいにして、 かたちじょうなし。 ただほういんじゅんするがゆゑに、 人天にんでんあり。 げんみょうたんじょうにしてえて希有けうなり。 容色ようしきみょうにして、 てんにあらずにんにあらず。 みなねん虚無こむしんごくたいけたるなり」 と。

声聞・菩薩・天・人、智慧高明ニシテ、神通洞ホガラカナリセリサトル コトゴトジク一類ニシテ↢異状↡カタチ。但因↢順スルガ余方↡故、有↢人天之名↡。顔カヲバセ カヲバセ ナヲシ タヾシニシテ↠世マレナリナリ。容カヲバセ色微妙コマカナリニシテ、非↠天↠人。皆受ケタルナリト↢自然虚无之身、无極之体↡。」

一 Ⅰ ⅱ a ロ (二)¬如来会¼

【6】 ^またのたまはく (如来会・下)

又言

^かのくにしゅじょう、 もしまさにうまれんもの、 みなことごとくじょうだいきょうし、 はんところいたらしめん。 なにをもつてのゆゑ0309に。 もしじゃじょうじゅおよびじょうじゅは、 *かのいんこんりゅうせることをりょうすることあたはざるがゆゑなり」 と。 以上抄要

「彼衆生、若レム、皆悉究↢キワメキワム无上菩提↡、ラシメム↢涅槃↡。何。若邪定聚及不定聚、不ルガ↠能↤了↣知スルコト建↢立セルコトヲナリト。」 已上抄要

一 Ⅰ ⅱ 師釈
        雁門(¬論註¼五文)
          (一)妙声功徳釈文

・正定現益

【7】 ^¬じょうろん¼ (*論註・下) にいはく、

¬浄土論¼曰

^ªしょうごん妙声みょうしょうどくじょうじゅとは、 偈に、 «^ぼんしょう深遠じんのん みょうもん十方じっぽう» といへるがゆゑにº (浄土論) と。

荘厳妙声功徳成就、偈ヘリ↢梵声サトリ深遠微妙聞十方ニト

^これいかんぞ思議しぎなるや。 きょうにのたまはく、 ªもしひとただかのこく清浄しょうじょう安楽あんらくなるをきて、 *剋念こくねんしてしょうぜんとがんぜんものと、 またおうじょうるものとは、 すなはち正定しょうじょうじゅº と。 これはこれ、 こくみょうぶつをなす。 いづくんぞ思議しぎすべきやと。

云何不思議ナルヤ。経ハク、若人但聞↢彼国土清浄安楽ナルヲ↡、剋念キザス シテゼムモノト↠生ゼム、亦得ルモノトハ↢往生↡、即↢正定聚。此是国土名字アザナ↢仏事↡。イヅクンゾヤト↢思議ハカラウ

一 Ⅰ ⅱ b イ (二)主功徳釈文

・滅度当益・果相

 ^ªしょうごんしゅどくじょうじゅとは、 偈に、 «^しょうがく弥陀みだ 法王ほうおうぜんじゅう» といへるがゆゑにº (浄土論) と。

荘厳主功徳成就、偈ヘリ↢正覚阿弥陀法王善住持ニト

^これいかんが思議しぎなるや。 しょうがく弥陀みだ不可ふか思議しぎにまします。 かの安楽あんらくじょうしょうがく弥陀みだ善力ぜんりきのためにじゅうせられたり。 いかんが思議しぎすることをべきや。

云何不思議ナルヤ。正覚阿弥陀、不可思議ニマシマス。彼安楽浄土↢正覚阿弥陀善力↡住0135セラレタリ。云何↠得↢思議スルコトヲ

^ªじゅうº は不異ふいめつづく、 ªº はさんしつづく。 きゅうやくをもつてしゅりて、 みずくにみだれず、 くにこがれず。 因縁いんねんてすなはちしょうずるがごとし。 なにをもつてのゆゑに。 きゅうやくちからなるがゆゑなり。

↢不異コトナリ不滅↡、持↢不散不失↡。如↧以↢不キウクチサルクスリリテタネ↡、クニ↠水ミダクニ↠火コガ、得↢因タネタスク ズルガ↥。何。不朽薬ナルガナリ

^もしひとひとたび安楽あんらくじょうしょうずれば、 のちときこころ三界さんがい0310うまれてしゅじょうきょうせんとがんじて、 じょういのちててがんしたがひてしょうて、 三界さんがいざっしょうのなかにうまるといへども、 じょうだいしゅひっきょうじてちず。 なにをもつてのゆゑに。 しょうがく弥陀みだのよくじゅうるをもつてのゆゑにと。

人一タビズレバ↢安楽浄土↡、後ジテ↧生↢三界↡教↦化セムト衆生↥、捨テヽ↢浄土↡随↠願↠生、雖↠生↢三界雑生↡、无上菩提種子、畢竟ジテキウ。何。以ルヲ↢正覚阿弥陀住持↡故ニト

一 Ⅰ ⅱ b イ (三)眷属功徳釈文

・滅度当益 ・果相

 ^ªしょうごん眷属けんぞくどくじょうじゅとは、 偈に、 «^如来にょらいじょうしゅ しょうがくしょう» といへるがゆゑにº (浄土論) と。

荘厳眷属功徳成就、偈ヘリ↢如来浄華衆正覚華化生ニト

^これいかんぞ思議しぎなるや。 おほよそこれざっしょうかいには、 もしはたいもしはらんもしは湿しつもしは眷属けんぞくそこばくなり。 らく万品まんぼんなり。 雑業ぞうごうをもつてのゆゑに。

云何不思議ナルヤ。凡是雑生世界ニハ、若シハ胎若ハラム シハ卵、カイゴシハ湿若ウルオウ シハ化、眷属若干ソコバクナリ。苦楽万品ナリ。以↢雑業↡故

^かの安楽あんらくこくこれ弥陀みだ如来にょらいしょうがくじょうしょうするところにあらざることなし。 同一どういつ念仏ねんぶつしてべつどうなきがゆゑに。 とおつうずるに、 それかいのうちみなきょうだいとするなり。 *眷属けんぞくりょうなり。 いづくんぞ思議しぎすべきや」 と。

安楽国土↠非ルコト↣是阿弥陀如来正覚サトル浄華之所↢化生スル↡。同一念仏シテキガ↢別道↡故。遠ズルニ四海之内↢兄弟↡也。眷属无量ナリイヅクンゾキヤ↢思議↡。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (四)大義門功徳釈文

・滅度当益 ・果相

【8】 ^またいはく (論註・下)

又言

^おうじょうねがふもの、 もとはすなはち三三さんざんほんなれども、 いまはいちしゅなし。 またじょういちなるがごとし。 いづくんぞ思議しぎすべきや」 と。

「願↢往生、本三三之品ナレドモ、今↢一二之シユ↡。コトナル亦如ジヤウ 食陵 一味ナルガ↡。イヅクンゾ↢思議↡。」

一 Ⅰ ⅱ b イ (五)清浄功徳釈文

・滅度当益 ・結

【9】 ^また ¬ろん¼ (論註・下) にいはく、

又¬論¼曰

^ªしょうごん清浄しょうじょうどくじょうじゅとは、 偈に、 «^かんかいそう しょう三界さんがいどう» といへるがゆゑにº (浄土論) と。

「荘厳清浄功徳成就 タマヘリ↢観彼世界相勝過三界道ニト

^これいかんぞ0311思議しぎなるや。 ぼんにん煩悩ぼんのうじょうじゅせるありて、 またかのじょうしょうずることをれば、 三界さんがいごうひっきょうじてかず。 すなはちこれ煩悩ぼんのうだんぜずしてはんぶん。 いづくんぞ思議しぎすべきや」 と。 以上抄要

此云何不思議ナルヤハカル  。有↢凡夫人煩悩成就セル↡、亦得レバ↠生ズルコトヲ↢彼浄土↡、三界ツナグ業畢竟ジテ不↠ケン。則是不シテ↠断↢煩悩↢涅槃分↡。イヅクンゾキヤ↢思議↡。」 已上抄要

一 Ⅰ ⅱ b 西河
          (一)¬安楽集¼

・仏徳平等力

【10】^¬*安楽あんらくしゅう¼ (下) にいはく、

¬安0136楽集¼云

^しかるに*ぶつ*神力じんりきまた斉等さいとうなるべし。 ただし*しゃ如来にょらいおのれがのうべずして、 ことさらにかのちょうぜるをあらわしたまふことは、 一切いっさいしゅじょうをしてひとしくせざることなからしめんとおぼしてなり。 このゆゑにしゃ処々しょしょたんせしめたまへり。 すべからくこのこころるべしとなり。

ルニ二仏神力応↢亦斉ヒトシナル↡。但釈迦如来シテ↡、コトサラシタマフコトハ↢彼ゼルヲ↡、オボシテナリ↠使メムト↢一切衆生ヲシテ↟不ルコト↢斉サイシク↡。是釈迦処処ホメセシメタマヘリスベカラシト↠知↢此↡也。

^このゆゑに曇鸞どんらんほっしょう西にしするがゆゑに、 ¬だいきょう¼ にへてさんしていはく (*讃阿弥陀仏偈)、 ª^安楽あんらくしょうもんさつしゅにんてん智慧ちえことごとく洞達どうだつせり。 身相しんそうしょうごんしゅなし。 ただほうじゅんずるがゆゑにつらぬ。 顔容げんようたんじょうにしてくらぶべきなし。 しょうみょうにしてにんてんにあらず。 虚無こむしんごくたいなり。 このゆゑにびょうどうりきちょうらいしたてまつるº」 と。

曇鸞法師正意、帰ルガ↠西ヘテ↢¬大経¼↡奉タテマツルシテ

安楽声聞・菩薩衆・人・天 智慧コトゴト洞達セリアキラカニサトル
身相荘厳无↢殊コトニ スグルトモ異↡但順ズルガ↢他方↡故ツラレチ↠名
カヲバセ カヲバセ ナヲシ タダシニシテ↠可クラヨシヨシニシテ↢人天
虚无之身 无極ナリ頂↢礼シタテマツルト平等力↡」

一 Ⅰ ⅱ b 終南(¬観経疏¼二文)(西方は涅槃界なることを明かす)
          (一)「玄義分」

・往生即成仏

【11】^こうみょう (善導) の ¬しょ¼ (*玄義分) にいはく、

光明寺

^がんといふは、 ¬だいきょう¼ のせつのごとし。 一切いっさい善悪ぜんあくぼんしょうずることをるは、 みな弥陀みだぶつ大願だいがん業力ごうりきじょうじてぞうじょうえんとせざることなしとなり。

↢弘願↢¬大経¼説↡。一切善悪凡夫、得↠生ズルコトヲ、莫シト↧皆乗ジテ↢阿弥陀仏大願業力↦増上縁↥也。

^またぶつみつじんなれば0312きょうもんをしてさとりがたし三賢さんげんじっしょうはかりてうかがふところにあらず。 いはんやわれ*しんきょうもうなり。 あへてしゅらんや。

又仏密意弘深ナレバ、教門ヲシテサト。三賢・十聖アラハカリテウカガイハン信外軽毛ナリアエムヤ↢旨趣↡。

^あおいでおもんみれば、 しゃはこのほうより発遣はっけんし、 弥陀みだはすなはちかのくにより来迎らいこう。 かしこにびここにつかはす。 あにかざるべけんや。

オモンミレバ、釈迦ヨリ発遣、弥陀ヨリ来迎スカハ、豈ケム↠不↠去

^ただねんごろにほうつかへて、 ひつみょうとして、 このしんててすなはちかのほっしょうじょうらくしょうすべし」 と。

唯可シトネンゴロツカヘテウケタマハリテ、畢命↠期、捨テヽ↢此穢身↡、即↦彼法性之常楽↥。」

一 Ⅰ ⅱ b ハ (二)「定善義」

・果徳具用

【12】^またいはく (*定善義)

又云

^西方さいほう*寂静じゃくじょう無為むいみやこには、 ひっきょうしょうようして有無うむはなれたり。 だいこころくんじて法界ほうかいあそぶ。 *分身ぶんしんしてものすることひとしくしてことなることなし。 ^あるいは神通じんずうげんじてほうき、 あるいは相好そうごうげんじて無余むよる。 変現へんげんしょうごんこころしたがひてづ。 ぐんじょうるものつみみなのぞこると。

「西方寂静无為ミヤコニハ畢竟逍ハルカニ シテハルカナリレタリ↢有无
大悲クンジテ↠心↢法界分身シテスルコト↠物クシテ↠殊ナルコト
↢神通↠法ジテ↢相好↡入↢无余
変現荘厳 随↠意群生見ツミ皆除コルト

^またさんじていはく、 ^きょらいきょうにはとどまるべからず曠劫こうごうよりこのかた六道ろくどうてんして、 ことごとくみなたり。 ^いたところたのしみなし。 ただしゅうたんこえく。 この生平しょうびょうへてのち、 かのはんみやこらん」 と。

又賛ジテ

帰去来 イザイナム 魔郷ニハカラトヾマ
曠劫ヨリ0137↢転シテ六道 ゴトタリ
↢余楽↡唯聞愁歎ナゲキ
ヘテ↢此↡後ラムト↢彼涅槃↡」

通じて四法を結す【四法結釈】

【13】^それしんしゅうきょうぎょうしんしょうあんずれば、 如来にょらいだいこうやくなり。

夫案ズレ↢真宗教行信証、如来大悲回向之利益ナリ

^ゆゑに、 もしはいん、 もしはいちとして弥陀みだ如来にょらい*清浄しょうじょう願心がんしんこうじょうじゅしたまへるところにあらざることあることなし。 いんじょうなるがゆゑに0313またじょうなりるべしとなり。

因若果、无↠有コト↤一事トシテザルコト↣阿弥陀如来清浄願心之所↢回向成就シタマヘル↡。因浄ナルガ、果亦浄也、応シトナリ↠知

還相の悲用を明かす【還相回向釈】
  正釈
    直明

【14】^ふたつに*還相げんそうこうといふは、 すなはちこれ*利他りたきょうやくなり

↢還相回向、則利他教化地マス タスクトモ也。

二 Ⅰ 出拠

^すなはちこれひっしょがん (第二十二願) よりでたり。 またいっしょうしょがんづく。 また還相げんそうこうがんづくべきなり。

是出タリ↢必至補処之願↡。亦名↢一生補処之願↡。亦可↠名↢還相回向之願↡也。

引文
    経説は註を指す

^¬ちゅうろん¼ (論註)あらわれたり。 ゆゑに願文がんもんいださず。 ¬ろんちゅう¼ をひらくべし。

タリ↢¬註論¼↡。故不↠出↢願文↡。可ヒラ↢¬論¼↡。

二 Ⅱ 広く師釈を引く
      略して別に還相回向あることを示す
        還相の義を挙ぐ(¬浄土論¼)

【15】^¬*じょうろん¼ にいはく、

¬浄土論¼曰

^しゅつだいもんとは、 だい慈悲じひをもつて一切いっさいのうしゅじょう観察かんざつして、 おうしんしめす。 しょうその煩悩ぼんのうはやしのなかににゅうして、 神通じんずう遊戯ゆげしてきょういたる。 本願ほんがんりきこうをもつてのゆゑに。 これをしゅつだいもんづく」 と。

「出第五門、以↢大慈悲↡観↢ミソナハシシテカヾム 一切苦悩衆生↡、↢応化↡。回↢入シテ生死ソノオン エン煩悩↡、遊↢シテタワブル 神通↡至↢教化地↡。以↢本願力回向↡故。是クト↢出第五門↡。」

二 Ⅱ ⅱ a 還相の名を出す(¬論註¼)

【16】^¬論註¼ (下) にいはく、

¬論註¼曰

^還相げんそうとは、 かのしょうじをはりて、 しゃ摩他また毘婆びばしゃ方便ほうべんりきじょうじゅすることをて、 しょうちゅうりんにゅうして、 一切いっさいしゅじょうきょうして、 ともに仏道ぶつどう*かへしむるなり。

「還相↢彼↡已、得シヤ摩他・毘婆舎那・方便力成就スルコトヲ↡、回↢入シテ生死チウシゲシ↡、教↢化シテ一切衆生↡、共ヘシムルナリ↢仏道↡。

^もしはおう、 もしはげん、 みなしゅじょういてしょうかいせんがためなり。 このゆゑに、 ªこうしゅとしてだいしんじょうじゅすることを*たまへるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり」 と。

往若還、皆ナリイテ↢衆生↡渡セムガ↦生死海↥。是 タマヘリト↧回向↠首タマヘル↣成↢就スルコトヲ大悲心↡故ニト↥。」

二 Ⅱ ⅱ 広く還相摂化の徳相を顕す(¬論註¼)
        摂化の徳相を顕す
          (一)願の大義を明かす(観察体相)
            (Ⅰ)一生補処を釈す

【17】^またいはく (論註・下)

0138

^ªすなはちかのぶつたてまつれば、 しょうじょう0314しんさつひっきょうじてびょうどう法身ほっしんとくしょうす。 じょうしんさつと、 じょうのもろもろのさつと、 ひっきょうじておなじくじゃくめつびょうどうるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

「即タテマツレバ↢彼↡、未証浄心菩薩、畢竟ジテ得↢証平等法身↡。↢浄心菩薩↡、↢上地菩薩↡、畢竟ジテジクルガ↢寂滅平等↡故ニトノタマヘリ

^ªびょうどう法身ほっしんº とは、 はちじょうほっしょうしょうじんさつなり。 ªじゃくめつびょうどうº とは、 すなはちこの法身ほっしんさつしょしょうじゃくめつびょうどうほうなり。 このじゃくめつびょうどうほうるをもつてのゆゑに、 づけてびょうどう法身ほっしんとす。 びょうどう法身ほっしんさつ所得しょとくなるをもつてのゆゑに、 づけてじゃくめつびょうどうほうとするなり。

平等法身、八地已上法性生身菩薩也。寂滅平等者、即法身菩薩所証寂滅平等之法也。以↠得↢此寂滅平等↡故、名↢平等法身↡。以↢平等法身菩薩所得ナルヲ↡故、名↢寂滅平等↡也。

^このさつほうしょう三昧ざんまい三昧さんまい神力じんりきをもつて、 よく一処いっしょ一念いちねんいちに、 十方じっぽうかいへんして、 種々しゅじゅ一切いっさい諸仏しょぶつおよび諸仏しょぶつだいしゅかいようす。 よくりょうかいぶっぽうそうましまさぬところにして、 種々しゅじゅげんし、 種々しゅじゅ一切いっさいしゅじょうきょうだつして、 つねにぶつをなす。 *はじめに往来おうらいおもいようおもいだつおもいなし。

菩薩↢報生三昧↡。以↢三昧神力↡、能一処・一念・一時、徧シテ↢十方世界↡、種種供↢養一切諸仏及諸仏大会衆海↡。能↧无量世界マシマサヌ↢仏法僧↡処↥、種種示現、種種教↢化度↣脱シテマヌカル 一切衆生↡、常↢仏事↡。↢往来オモヒ・供養想・度脱想↡。

^このゆゑにこのしんづけてびょうどう法身ほっしんとす。 このほうづけてじゃくめつびょうどうほうとす。

↢平等法身↡。此↢寂滅平等↡。

^ªしょうじょうしんさつº とは、 しょじょうしちげんのもろもろのさつなり。 このさつ、 またよくげんずること、 もしはひゃくもしはせん、 もしはまんもしはおく、 もしはひゃくせんまんおくぶつこくにしてぶつ施作せさす。 かならずこころをなして三昧さんまいりて、 いましよくしんせざるにあらず。 しんをもつてのゆゑに、 づけてしょうじょうしんとす。

未証浄心菩薩、初地已上七地以還菩薩也。此菩薩、亦能ズルコト↠身、若百若千、若万若億、若百千万億、无仏国土ニシテ施↢ホドコス ハヅストモ仏事↡。モトムシテ↠心リテ↢三昧↡、乃↠不ルニ↢作心↡。以↢作心↡故、名↢未証浄心↡。

^このさつあんらく0315じょうしょうじてすなはち弥陀みだぶつんとがんず。 弥陀みだぶつときじょうのもろもろのさつと、 ひっきょうじてしんひとしくほうひとしと。 *りゅうじゅさつ*ばんさつ (天親)ともがら、 かしこにしょうぜんとがんずるは、 まさにこのためなるべしならくのみと。

菩薩、願↧生↢安楽浄土↡即ムト↦阿弥陀仏↥。見↢阿弥陀仏↡時、↢上地菩薩↡、畢竟ジテヒトシクシト。龍樹菩薩・婆菩薩トモガラ、願ズル↠生ムト、当ナル↠此ナラクノミ

 ^うていはく、 ¬*じゅうきょう¼ をあんずるに、 さつ進趣しんしゅかいきゅう、 やうやくりょうくんあり。 おおくの劫数こうしゅ。 しかうしてのち、 いましこれを。 いかんぞ弥陀みだぶつたてまつるときひっきょうじてじょうのもろもろのさつと、 しんひとしくほうひとしきやと。

ウテ、案ズルニ↢¬十地経¼↡、菩薩スヽミオモムク カイシナワイ キウシナワイヤウヤ↢无量クンニホフ↢多劫数↡。シカフシテ後乃↠此。云何タテマツル↢阿弥0139陀仏↡時、畢竟ジテ↢上地菩薩↡、身等シク法等シキ

 ^こたへていはく、 ªひっきょうº はいまだすなはちひとしといふにはあらずとなりと。 ひっきょうじてこのひとしきことをしっせざるがゆゑに、 ªひとしº といふならくのみと。

ヘテ、畢竟アラズトフニハ↢即シト↡也。畢竟ジテルガ↠失↢此キコトヲ↡故、言↠等シトナラクノミ

 ^うていはく、 もしすなはちひとしからずは、 またなんぞさつといふことをん。 ただしょのぼれば、 もつてやうやく増進ぞうしんして、 ねんにまさにぶつひとしかるべし。 なんぞかりじょうさつひとしといふやと。

ウテ、若↢即カラ↡、復何↠言コトヲ↢菩薩↡。但ノボレバ↢初地↡、以増進シテ、自然↠仏等シカル↡。何カリフヤ↢上地菩薩↡等シト↥。

 ^こたへていはく、 さつしちのなかにしてだいじゃくめつれば、 かみ諸仏しょぶつもとむべきをず、 しもしゅじょうすべきをず。 仏道ぶつどうてて実際じっさいしょうせんとほっす。 そのときに、 もし十方じっぽう諸仏しょぶつ神力じんりきかんずは、 すなはちめつしてじょうなけん。 さつもし安楽あんらくおうじょうして弥陀みだぶつたてまつるに、 すなはちこのなんなけ0316ん。 このゆゑにすべからく ªひっきょうびょうどうº といふべし。

ヘテ、菩薩↢七地↡得レバ↢大寂滅↡、カミ↢諸仏キヲ↟求↠見↢衆生キヲ↟度。欲↧捨テヽ↢仏道↡証セムト↦於実サイキワ↥。↢十方諸仏神力加クワウスヽム↡、即便 ナハ 滅度シテ↢二乗↡无ケム↠異。菩薩、若往↢生シテ安楽↡見タテマツルニ↢阿弥陀仏↡、即ケム↢此難↡。是↠言↢畢竟平等↡。

^またつぎに ¬*りょう寿じゅきょう¼ (上) のなかに、 弥陀みだ如来にょらい本願ほんがん (第二十二願) にのたまはく、 ª^たとひわれぶつたらんに、 ほうぶつのもろもろのさつしゅ、 わがくにらいしょうして、 きょうしてかならずいっしょうしょいたらん。 その本願ほんがんざいしょしゅじょうのためのゆゑに、 ぜいよろいて、 徳本とくほんしゃくるいし、 一切いっさいだつせしめ、 諸仏しょぶつくにあそびて、 さつぎょうしゅし、 十方じっぽう諸仏しょぶつ如来にょらいようし、 恒沙ごうじゃりょうしゅじょうかいしてじょうしょうしんどうりゅうせしめんをばのぞ*じょうりん超出ちょうしゅつし、 しょぎょう現前げんぜんし、 げんとくしゅじゅうせん。 もししからずは、 しょうがくらじº と。

復次¬无量寿経¼中、阿弥陀如来本願我得ラムニ↠仏、他方仏土菩薩衆、来↢生シテ↡、究竟シテラム↢一生補処↡。除↧其本願自在化、為↢衆生↡故↢弘誓ヨロイ↡、積ツミ↢累カサヌ徳本↡、度↢脱セシメ一切↡、遊↢諸仏↡、修↢菩薩↡、供↢養十方諸仏如来↡、開↢化シテメグム 恒砂无量衆生↡使メムヲバ↞立↢无上正真之道↡。超↢出常倫トモガラ↡、諸地之行現前、修↢習セムナラフ 普賢之徳↡。若↠爾↠取↢正覚↡。

^この ¬きょう¼ をあんじて、 かのくにさつすいするに、 あるいはいちよりいちいたらざるべし。 じゅうかいといふは、 これしゃ如来にょらいえんだいにしてひとつのおうどうならくのみと。 ほうじょうは、 なんぞかならずしもかくのごとくせん。 しゅ思議しぎのなかに、 仏法ぶっぽうもつとも不可ふか思議しぎなり。 もしさつかならずいちよりいちいたりて、 ちょうおつなしといはば、 いまだあへてつまびらかならざるなり。

ジテ↢此¬経¼↡スイスルニ↢彼菩薩↡、或イハ↠不↧従↢一地↡至↦一地↥。言↢十地カイシナワイ、是釈迦如来↢閻浮提↡一応化道ナラクノミ。他方浄土、何ズシモクセム↠此クノ。五種不思議、仏法最サイ不可思議ナリ。若ハヾ菩薩必↢一地↡至↢一地↡、无↦超越之理↥コトワリ、未アエツマビラカナラ↡也0140

^たとへばあり、 づけて好堅こうけんといふ。 この*よりしょうじてひゃくさいならん。 いましつぶさに一日いちにちたけたかくなることひゃくじょうなるがごとし。 日々にちにちにかくのごとし。 ひゃくさいたけはかるに、 あにしゅしょう0317るいせんや。 まつ生長しょうちょうするをるに、 すんぎず。 かの好堅こうけんきて、 なんぞよく即日そくじつうたがはざらん。

↧有、名↢好ケン、地ヨリジテ百歳ナラムツブサ一日長高ナルコト百丈ナルガ↥。日日↠此ハカルニ↢百歳之タケ↡、アニセムタトウ シウナガシシヨウ マツ 。見↢松生長スルヲ↡、日不↠過↠寸。聞↢彼好堅↡、何ラム↠疑↢即日↡。

^ひとありて、 しゃ如来にょらいかんいっちょうしょうし、 しょう終朝しゅうちょうせいすとのたまへるをきて、 これしょうゆうみことにしてしょうじつせつにあらずとおもへり。 このろんきて、 またまさにしんぜざるべし。 それじょうことばは、 じょうにんみみらず。 これをしからずとおもへり。 またそれよろしかるべきなりと。

↠人聞↧釈迦如来証↢羅漢於一聴キクキテ↡、制トヾムストノタマヘルヲ↦无生シウ↥、オモヘリトル イウコシラフミコトニシテズト↢称実之説↡。聞↢此論事↡、亦当↠信非常之 トバ↠入↢常人之ミヽ↡。ヘリ↢之↟然。亦可シカル↡也

 ^ªりゃくして*はっきて、 如来にょらい自利じり利他りたどくしょうごんだいじょうじゅしたまへるをげんしたまへるなりと、 るべしº (浄土論) と。

シテ↢八句↡、示↢現シタマヘルナリト如来自利利他功徳荘厳、次第成就シタマヘルヲ↡、応↠知

^これはいかんがだいなるとならば、 さきじゅうしちは、 これしょうごんこくどくじょうじゅなり。 すでにこくそうんぬ、 *こくしゅるべし。 このゆゑにつぎぶつしょうごんどくかんず。

云何次第ナルトナラバ、前十七句荘厳国土功徳成就ナリスデ↢国土↡、応↠知↢国土之主↡。是↢仏荘厳功徳↡。

^かのぶつもししょうごんをなして、 いづれのところにしてかすると。 このゆゑにまづかんずべし。

仏若シテ↢荘厳↡、テカ↢何↡座スルト。是ズベシ↠座

^すでにんぬ、 すでによろしくしゅるべし。 このゆゑにつぎぶつ身業しんごうしょうごんしたまへるをかんず。

↠座、已ヨロシ↠知↢座主↡。是↣仏荘↢厳シタマヘルヲ身業↡。

^すでに身業しんごうんぬ、 いかなる声名しょうみょうかましますとるべし。 このゆゑにつぎぶつごうしょうごんしたまへるをかんず。

↢身業↡、応↠知マシマスト↢何ナル声名↡。是↣仏荘↢厳シタマヘルヲ口業↡。

^すでにみょうもんんぬ、 よろしくとくみょうのゆゑをるべし。 このゆゑにつぎぶつ心業しんごうしょうごんしたまへるをかんず。

↢名聞↡、↠知↢得名所以 ユヘ ↡。是↣仏荘↢厳シタマヘルヲ心業↡。

^すでに三業さんごうそくしたまへるをんぬ、 人天にんでんだいとな0318つてくるにへたるひとは、 これたれぞとるべし。 このゆゑにつぎ大衆だいしゅどくかんず。

↢三業具足シタマヘルヲ↡、応↠知↢人天大師ヘタル↠受ルニ↠化ヒト是誰ゾト↥。是↢大衆功徳↡。

^すでに大衆だいしゅりょうどくいますことをんぬ、 よろしくじょうしゅはたれぞとるべし。 このゆゑにつぎじょうしゅかんず。 じょうしゅはこれぶつなり。

↣大衆イマスコトヲ↢无量功徳↡、宜↠知↢上首ゾト↡。是↢上首↡。上首是仏ナリ

^すでにじょうしゅんぬ、 おそらくはちょうようおなじことを。 このゆゑにつぎしゅかんず。

上首オソラクハキコトヲ↢長↡。是↠主

^すでにこのしゅんぬ、 しゅいかなるぞうじょうかましますと。 このゆゑにつぎしょうごん虚作こさじゅうかんず。 はっだいじょうぜるなり。

↢是↡、主マシマストナルマサル スグルトモ↡。是↢荘厳不虚作住持↡。八句次第成ゼル也。

二 Ⅱ ⅱ b イ (一)(Ⅱ)自在摂化を釈す

 ^さつかんぜば、

↢菩薩

^ªいかんがさつしょうごんどくじょうじゅ観察かんざつする。 さつしょうごんどくじょうじゅ観察かんざつせば、 かのさつかんずるに、 しゅしょうしゅぎょうどくじょうじゅしたまへることありと、 るべしº (浄土論) と。

云何観↢ミソナハススルカヾム 菩薩荘厳功0141徳成就ナル↡。観↢察菩薩荘厳功徳成就、観ズルニ↢彼菩薩↡、有↢四種正修行功徳成就シタマヘルコト↡、応↠知

^真如しんにょはこれ諸法しょほうしょうたいなり。 *たいにょにしてぎょうずればすなはちこれぎょうなり。 ぎょうにしてぎょうずるを如実にょじつしゅぎょうづく。 たいはただ一如いちにょにしてをしてわかちてつとす。 このゆゑにぎょう*いちをもつてまさしくこれをぬ。

真如是諸法正体ナリ。体、如シテズレバ是不行ナリ。不行シテズルヲ、名↢如実修行↡。体唯一如シテハカラフヲシテ↠四。是四行、以↠一シク↠之

 ^ªなにものをかつとする。 ひとつには、 いちぶつにおいて動揺どうようせずして十方じっぽうへんす、 種々しゅじゅおうしてじつのごとくしゅぎょうしてつねにぶつをなす。 偈に、 «^安楽あんらくこく清浄しょうじょうにして、 つねに無垢むくりんてんず、 ぶつさつは、 しゅじゅうするが0319ごとし» といへるがゆゑに。 ^もろもろのしゅじょうでいひらくがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

ヲカ↠四。一↢一仏土↡身↢動オゴクエウウゴクシテ↢十方↡、種種応化シテ↠実修行シテ↢仏事↡。偈 ヘリ↧安楽国清浄ニシテ、常↢无垢↡、化仏・菩薩、日キノ↢須弥住持スルガ↡故。開クガ↢諸衆生ケガラハシ泥華↡故トノタマヘリ

^はちじょうさつは、 つねに三昧さんまいにありて、 三昧さんまいりきをもつて本処ほんじょどうぜずして、 よくあまねく十方じっぽういたりて、 諸仏しょぶつようし、 しゅじょうきょうす。

八地已上菩薩、常↢三昧↡、以↢三昧力↡身↠動↢本処シテ↢十方↡、供↢養諸仏↡、教↢化衆生↡。

^ª無垢むくりんº はぶつどくなり。 ぶつどくじっ煩悩ぼんのうあかましまさず。 ぶつ、 もろもろのさつのためにつねにこの法輪ほうりんてんず。 もろもろのだいさつ、 またよくこの法輪ほうりんをもつて、 一切いっさい開導かいどうしてざんそくなけん。 ゆゑに ªじょうてんº といふ。

无垢輪仏地功徳也。仏地功徳マシマサズ↢習気・煩悩垢↡。仏為↢諸菩薩↡常カブル↢此法輪↡。諸大菩薩、亦能↢此法輪↡、開↢導シテ一切↡无ケムザムシバラクヤミヤム↡。故↢常転↡。

^法身ほっしんのごとくして、 おうしんひかりもろもろのかいへんするなり。 ªº といはばいまだもつてどうかすにらざれば、 また ªにょしゅじゅうº といふなり。

法身↠日シテ応化身光徧スル↢諸世界↡也。ハヾ↠日レバ↣以スニ↢不動↡、復言↢如須弥住持↡也。

^ªでいº とは、 ¬きょう¼ (*維摩経) にのたまはく、 ª高原こうげんろくにはれんしょうぜず。 湿しゅうでいにいましれんしょうずº と。 これはぼん煩悩ぼんのうどろのなかにありて、 さつのために開導かいどうせられて、 よくぶつしょうがくはなしょうずるにたとふ。 まことにそれ三宝さんぼう紹隆しょうりゅうして、 つねにえざらしむと。

淤泥華、¬経¼言、高原陸地ニハ不↠生↢蓮華↡。イヤシク 湿ウルホフデイ↢蓮華↡。此↧凡夫在↢煩悩↡、為↢菩薩↡開導セラレテズルニ↦仏正覚↥。マコトシヨウ ツギ ↢隆タツシテ三宝↡、常使ムト↠不

 ^ªふたつには、 かのおうしん一切いっさいときぜんならずならず、 一心いっしん一念いちねんだいこうみょうはなちて、 ことごとくよくあまねく十方じっぽうかいいたりて、 しゅじょうきょうす。 種々しゅじゅ方便ほうべんし、 しゅぎょうしょして、 一切いっさいしゅじょう滅除めつじょするがゆゑに。 偈に、 «^無垢むくしょう0320ごんひかり一念いちねんおよびいちに、 あまねく諸仏しょぶつらして、 もろもろのぐんじょうやくす» といへるがゆゑにº (浄土論) と。

応化身、一切↠前ナラ↠後ナラ、一心一念↢大光明↡、悉↢十方世界↡、教↢化衆生↡。種種方便、修行所作シテ、滅↢除スルガ一切衆生↡故0142。偈ヘリ↧无垢荘厳、一念及一時、普↢諸仏アツマル↡、利↢益群生↡故

^かみに ªどうにしていたるº といへり。 あるいはいたるにぜんあるべし。 このゆゑに、 また 一念いちねんいちぜんº とのたまへるなり。

ヘリ↢不動シテルト↡。↣或↢前後↡。是復言ヘル↢一念一時无前无後↡也。

 ^ªつには、 かれ一切いっさいかいにおいて、 なくもろもろのぶつらす。 大衆だいしゅなく広大こうだいりょうにして、 諸仏しょぶつ如来にょらいどくようぎょう讃嘆さんだんす。 偈に、 «^てんがくみょうこうとうあめふりて、 諸仏しょぶつどくようさんずるに、 分別ぶんべつしんあることなし» といへるがゆゑにº (浄土論) と。

↢一切世界↡、无↠余アマル↢諸仏会↡。大衆无↠余広大无量ニシテ供↢養恭↣敬賛↤嘆諸仏如来功徳↡。偈ヘリ↧雨リテ↢天楽・華・衣・妙香等↡、供↢養ズル↣諸仏功徳↡、无↠有ルコト↢分別心↡故

^ªなくº とは、 あまねく一切いっさいかい一切いっさい諸仏しょぶつだいいたりて、 いちかいいちぶつとしていたらざることあることなきことをかすなり。

、明↧徧↢一切世界、一切諸仏大会↡、无キコトヲ↞有コト↢一世界・一仏会トシテルコト↟至也。

^*じょうこうのいはく、 ª^*法身ほっしんかたちなくしてかたちことにす。 ならびにいんおうず。 ことばなくして玄籍げんせきいよいよき、 みょうごんはかりごとなくしてどうじてすº と。 ^けだしこのこころなり。

デウコウハク、法身シテコトニス↠形ナラビ↢至インヒビキ↡。无 トバシテアラハスセキフミイヨイヨアマネシミヤウカソカナリ ハカリゴトボウ反 シテジテ↠事会ストカナフ ケダ意也。

 ^ªつには、 かれ十方じっぽう一切いっさいかい三宝さんぼうましまさぬところにおいて、 仏法ぶっぽう僧宝そうぼうどく大海だいかいじゅうしょうごんして、 あまねくしめして如実にょじつしゅぎょうさとらしむ。 偈に、 «^なんらのかいにか、 仏法ぶっぽうどくほうましまさざらん。 われねがはくはみなおうじょうして0321仏法ぶっぽうしめしてぶつのごとくせん» といへるがゆゑにº (浄土論) と。

↧十方一切世界マシマサヌ↢三宝↡処↥、住↢持荘↣厳シテ仏法僧宝功徳大海↡、徧シテ↠解↢如実修行↡。偈 タマヘルガ↧何等世界ニカサザラム↢仏法功徳宝↡我願クハ皆往生シテ↢仏法↡如セムト↞仏

^かみさんは、 あまねくいたるといふといへども、 みなこれぶつこくなり。 もしこのなくは、 すなはちこれ法身ほっしんところとしてほうならざることあらん。 じょうぜんところとしてぜんならざることあらん。 かんぎょう体相たいそうおわりぬ。

三句↠言↢徧↡、皆是有仏国土ナリ。若クハ↢此句↡、便是法身有ラム↢所トシテルコト↟法ナラ。上善有ラム↢所トシテルコト↟善ナラ。観行体相リヌ

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)願の由来を示す(浄入願心)
            (Ⅰ)願心荘厳を明かす

 ^以下いげはこれ、 解義げぎのなかのだいじゅうなり。 づけて浄入じょうにゅう願心がんしんとす。

已下是解義第四重ナリ。名↢浄入願心↡。

^浄入じょうにゅう願心がんしんとは、

浄入願心

^ªまたさき観察かんざつしょうごんぶつどくじょうじゅしょうごんぶつどくじょうじゅしょうごんさつどくじょうじゅとをきつ。 この三種さんしゅじょうじゅ願心がんしんしょうごんしたまへるなりと、 るべしº (浄土論) といへり。

サキキツ↢観察荘厳仏土功徳成就・荘厳仏功徳成就・荘厳菩薩功徳成就↡。此三種成就願心荘厳シタマヘルナリト、応シトイヘリ↠知

^ªおうº とは、 この三種さんしゅしょうごんじょうじゅは、 もとじゅうはちがんとう清浄しょうじょう願心がんしんしょうごんせるところなるによりて、 いんじょうなるがゆゑにじょうなり。 *いんなくしていんのあるにはあらずとるべしとなり。

応知、応シト↠知↧此三種荘厳成就、由四十八願等清浄願心之所ナルニ↢荘厳セル↡、因浄ナルガ0143果浄ナリズト↦无クシテ↠因他ルニハ↥也。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)(Ⅱ)広略相入を明かす

 ^ªりゃくして*にゅう一法いっぽっくがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

シテクガ↢入一法句↡故ニトノタマヘリ

^かみこくしょうごんじゅうななと、 如来にょらいしょうごんはっと、 さつしょうごん四句しくとをこうとす。 にゅう一法いっぽっりゃくとす。

国土荘厳十七句、如来荘厳八句、菩薩荘厳四句トヲ↠広。入一法句↠略

^なんがゆゑぞこうりゃくそうにゅうげんするとならば、 諸仏しょぶつさつしゅ法身ほっしんあり ひとつにはほっしょう法身ほっしんふたつには方便ほうべん法身ほっしんなり。 ほっしょう法身ほっしんによりて方便ほうべん法身ほっしんしょうず。 方便ほうべん法身ほっしんによりてほっしょう法身ほっしんいだす。 この法身ほっしんは、 にしてわか0322つべからず。 いつにしておなじかるべからず。 このゆゑにこうりゃくそうにゅうして、 ぬるにほうをもつてす。

示↢現スルトナラバ広略相入↡、諸仏・菩薩↢二種法身↡。一者法性法身、二者方便法身ナリ。由↢法性法身↡生↢方便法身↡。由↢方便法身↡出↢法性法身↡。此法身、異シテ不↠可カラ↠分、一シテ不↠可カラ↠同カル。是広略相入シテヌルニテス↢法↡。

^さつ、 もしこうりゃくそうにゅうらざれば、 すなはち自利じり利他りたするにあたはず。

菩薩若レバ↠知↢広略相入↡、則アタ↢自利利他スル↡。

 ^ª一法いっぽっとは、 いはく清浄しょうじょうなり。 清浄しょうじょうとは、 いはく真実しんじつ智慧ちえ無為むい法身ほっしんなるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

一法句、謂ハク清浄句ナリ。清浄句、謂真実智慧无為法身ナルガニトノタマヘリ

^このさん展転てんでんしてあひる。 なんのによりてかこれをづけてほうとする、 清浄しょうじょうをもつてのゆゑに。 なんのによりてかづけて清浄しょうじょうとする、 真実しんじつ智慧ちえ無為むい法身ほっしんをもつてのゆゑなり。

三句展転シテ相入。依テカ↢何↡名↠之↠法、以↢清浄↡故。依テカ↢何↡名↢清浄↡、以↢真実智慧无為法身ナリ

^真実しんじつ智慧ちえ実相じっそう智慧ちえなり。 実相じっそうそうなるがゆゑに、 しん無知むちなり。

真実智慧実相智慧也。実相无相ナルガ、真智无知也。

^無為むい法身ほっしんほっしょうしんなり。 ほっしょうじゃくめつなるがゆゑに法身ほっしんそうなり。

无為法身者法性身也。法性寂滅ナルガ法身无相也。

^そうのゆゑによくそうならざることなし。 このゆゑに*相好そうごうしょうごんすなはち法身ほっしんなり。

无相↠不ルコト↠相ナラ。是相好荘厳即法身也。

^無知むちのゆゑによくらざることなし。 このゆゑに一切いっさいしゅすなはち真実しんじつ智慧ちえなり。

无知↠不ルコト↠知。是一切種智即真実智慧也。

^真実しんじつをもつてして智慧ちえづくることは、 智慧ちえにあらず非作ひさにあらざることをかすなり。

↢真実シテナヅクルコトハ↢智慧↡、明↣智慧↠作ルコトヲ↢非作↡也。

^無為むいをもつてして法身ほっしんつることは、 法身ほっしんしきにあらずしきにあらざることをかすなり。

↢无為シテツルコトハ↢法身↡、明↣法身↠色ルコトヲ↢非色↡也。

^*にあらざれば、 あにのよくなるにあらざらんや。 けだしなき、 これをといふなり。 おのづからにして、 また0323あらざることをつことなきなり。 にあらずにあらず、 *ひゃったとへざるところなり。

ザレ↠非アニザラム↢非之能ナルニケダフタ↠非之↠是也。オノヅカニシテツコト↢復非ザルコトヲ↟是也。非↠是↠非、百非之ナリ↠不↠喩

^このゆゑに清浄しょうじょうといへり。 清浄しょうじょうとは、 いはく真実しんじつ智慧ちえ無為むい法身ほっしんなり。

ヘリ↢清浄句↡。清浄句、謂真実0144智慧无為法身也。

 ^ªこの清浄しょうじょうしゅあり、 るべしº (浄土論) といへり。

清浄↢二種↡、応シトイヘリ↠知

^かみてんにゅうのなかに、 一法いっぽうつうじて清浄しょうじょうる、 清浄しょうじょうつうじて法身ほっしんる、 いままさに清浄しょうじょうわかちてしゅいだすがゆゑなり。 ゆゑに ªるべしº といへり。

転入句、通ジテ↢一法↡入↢清浄↡、通ジテ↢清浄↡入↢法身今将↢清浄↡出↢二種ナリ。故ヘリ↠応シト↠知

 ^ªなんらかしゅひとつにはけん清浄しょうじょうふたつにはしゅじょうけん清浄しょうじょうなり。

何等二種。一者器世ウツワモノ間清浄、二者衆生世間清浄ナリ

^けん清浄しょうじょうとは、 さきくがごときのじゅうしちしゅしょうごんぶつどくじょうじゅ、 これをけん清浄しょうじょうづく。

器世間清浄、如キノ↡十七種荘厳仏土功徳成就、是↢器世間清浄↡。

^しゅじょうけん清浄しょうじょうとは、 さきくがごときのはっしゅしょうごんぶつどくじょうじゅと、 しゅしょうごんさつどくじょうじゅと、 これをしゅじょうけん清浄しょうじょうづく。

衆生世間清浄、如キノ↢向クガ↡八種荘厳仏功徳成就、四種荘厳菩薩功徳成就、是↢衆生世間清浄↡。

^かくのごときの一法いっぽっしゅ清浄しょうじょうせっすと、 るべしº (浄土論) とのたまへり。

↠是一法句スト↢二種清浄↡、応シトノタマヘリ↠知

^それしゅじょう別報べっぽうたいとす、 こく共報ぐうほうゆうとす。 体用たいゆういつならず。 このゆゑに ªるべしº。 ^しかるに*諸法しょほうしんをして無余むよきょうがいじょうず。 しゅじょうおよび、 またにしていつならざることをず。 すなはちをしてわかつにならず、 おなじく清浄しょうじょうなり。

衆生↢別報之体↡、国土↢共報之イフ↡。体用↠一ナラ所以コノユヘニ↠知。然諸法ヲシテ↢无余境界↡。衆生及器、復不↠得↢異ニシテコトヲ↟一ナラ。則ヲシテ↠異ナラ、同ジク清浄ナリ

^ゆうなり。 いはくかのじょうは、 これかの清浄しょうじょうしゅじょう0324受用じゅゆうするところなるがゆゑに、 づけてとす。 じょうじきじょうもちゐれば、 じょうなるをもつてのゆゑに、 じきまたじょうなり。 じょうじきじょうもちゐれば、 じきじょうなるがゆゑに、 またじょうなるがごとし。 かならずふたつともにいさぎよくして、 いましじょうしょうすることをしむ。 ここをもつてひとつの清浄しょうじょう、 かならずしゅせっす。

用也。謂浄土、是彼清浄衆生之所ナルガ↢受用スル↡故↠器。如↧浄食ヰレバ↢不浄↡、以↢器不浄ナルヲ↡故食亦不浄ナリ、不浄レバ↢浄器↡、食不浄ナルガ、器亦不浄ナルガ↥。要二倶イサギヨケチ クシテ、乃シム↠称スルコトヲ↠浄。是清浄名、必↢二種↡。

 ^うていはく、 しゅじょう清浄しょうじょうといへるは、 すなはちこれぶつさつとなり。 かのもろもろの人天にんでん、 この清浄しょうじょうかずることをんやいなやと。

ウテ、言ヘルハ↢衆生清浄↡、則是仏ナリ↢菩薩↡。彼人天、得ムヤ↠入コトヲ↢此清浄

 ^こたへていはく、 清浄しょうじょうづくることをるは、 じつ清浄しょうじょうにあらず。

ヘテ、得ルハ↠名ヅクルコトヲ↢清浄↡、非↢実清浄↡。

^たとへばしゅっしょうにんは、 煩悩ぼんのうぞくころすをもつてのゆゑにづけて比丘びくとす、 ぼんしゅっのものをまた比丘びくづくるがごとし。

↧出家聖人、以↠殺スヲ↢煩悩↡故↢比丘↡、凡夫出家亦名ルガ↦比丘↥。

^またかんじょうおうしょしょうときさんじゅうそうして、 すなはち*七宝しっぽうのためにぞくせらる。 いまだ転輪てんりんのうをなすことあたはずといへども、 また転輪てんりんのうづくるがごとし。 それかならず転輪てんりんのうたるべきをもつてのゆゑに。

又如クワンソヽグ頂王子初生之時、具シテ↢三十二相↡、即↢七宝↠属↠未↠能スコト↢転輪王0145↡、亦名ルガ↦転輪王↥。以ルベキヲ↢転輪王↡故

^かのもろもろの人天にんでんもまたまたかくのごとし。 みなだいじょう正定しょうじょうじゅりて、 ひっきょうじてまさに清浄しょうじょう法身ほっしんべし。 まさにべきをもつてのゆゑに、 清浄しょうじょうづくることをるなりと。

人天亦復如↠是。皆入↢大乗正定之聚↡、畢竟ジテ↢清浄法身↡。以↠当キヲ↠得故ルナリト↠名クルコトヲ↢清浄↡。

二 Ⅱ ⅱ b 摂化の始末を証す
          (一)
            (Ⅰ)因体を挙示す(善巧摂化)

 ^ぜんぎょうせっとは、

善巧摂化

^0325ª*かくのごときのさつは、 しゃ摩他また毘婆びばしゃこうりゃくしゅぎょうじょうじゅしてにゅうなんしんなりº (浄土論) とのたまへり。

↠是クノ菩薩、奢摩他・毘婆舎那、広略修行成就シテ軟心ヤハラカナリナリトノタマヘリ

^ªにゅうなんしんº とは、 いはくこうりゃくかんそうじゅんしゅぎょうして、 不二ふにしんじょうぜるなり。 たとへばみずをもつてかげるに、 しょうじょうとあひたすけてじょうじゅするがごとしとなり。

軟心、謂広略止観、相順修行シテ、成ゼル↢不二↡也。譬シト↧以↠水ルニカゲ、清シヅカナリタス成就スルガ↥也。

 ^ªじつのごとくこうりゃく諸法しょほうるº (浄土論) とのたまへり。

↠実トノタマヘリ↢広略諸法↡。

^ª如実にょじつº といふは、 実相じっそうのごとくしてるなり。 こうのなかのじゅうりゃくのなかのいっ実相じっそうにあらざることなきなり。

如実知イフ、如↢実相シテ也。広二十九句、略一句、莫↠非ルコト↢実相↡也。

 ^ªかくのごときぎょう方便ほうべんこうじょうじゅしたまへりº (浄土論) とのたまへり。

↠是成↢就シタマヘリトノタマヘリ巧方便回向↡。

^ªかくのごときº といふは、 ぜんこうりゃくみな実相じっそうなるがごときなり。 実相じっそうるをもつてのゆゑに、 すなはち三界さんがいしゅじょうもうそうるなり。 しゅじょうもうれば、 すなはち真実しんじつ慈悲じひしょうずるなり。 真実しんじつ法身ほっしんるは、 すなはち真実しんじつ帰依きえおこすなり。 慈悲じひ帰依きえぎょう方便ほうべんとは、 しもにあり。

トイフ↠是クノ、如↢前後広略皆実相ナルガ↡也。以↠知↢実相↡故↢三界衆生虚妄↡也。知レバ↢衆生虚妄↡、則ズル↢真実慈悲↡也。知ルハ↢真実法身↡、則↢真実帰依↡也。慈悲↢帰依巧方便トハ↡在↠下

 ^ªなにものかさつぎょう方便ほうべんこうさつぎょう方便ほうべんこうとは、 いはく、 *礼拝らいはいとうしゅしゅぎょうく、 しょしゅう一切いっさいどく善根ぜんごんは、 しんじゅうらくもとめず、 一切いっさいしゅじょうかんとおぼすがゆゑに、 *がんして一切いっさいしゅじょう摂取せっしゅして、 ともにおな0326くかの安楽あんらく仏国ぶっこくしょうぜしむ。 これをさつぎょう方便ほうべんこうじょうじゅづくº (浄土論) とのたまへり。

菩薩巧方便回向。菩薩巧方便回向、謂↢礼拝等五種修行↡、所集一切功徳善根↠求↢自身住持之楽↡、オボスガ↠抜ムト↢一切衆生↡故、作願シテ摂↢取シテ一切衆生↡、共ジクゼシム↢彼安楽仏国↡。是クトノタマヘリ↢菩薩巧方便回向成就↡。

^王舎おうしゃじょう所説しょせつの ¬りょう寿じゅきょう¼ をあんずるに、 三輩さんぱいしょうのなかに、 ぎょうれつありといへども、 みなじょうだいしんほっせざるはなけん。 このじょうだいしんは、 すなはちこれがんぶつしんなり。 がんぶつしんは、 すなはちこれしゅじょうしんなり。 しゅじょうしんは、 すなはちこれしゅじょう摂取せっしゅしてぶつこくしょうぜしむるしんなり。 このゆゑに、 かの安楽あんらくじょうしょうぜんとがんずるものは、 かならずじょうだいしんほっするなり。

ズルニ↢王舎城所説¬无量寿経¼↡、三輩生、雖↣行↢優マサル劣↡オトル、莫ケム↠不ルハ↠発无上菩提之心↡。无上菩提心是願作仏心ナリ。願作仏心是度衆生心ナリ。度衆生心是摂↢取シテ衆生↡生ゼシムル↢有仏0146↡心ナリ。是ズル↠生ゼム↢彼安楽浄土、要スル↢无上菩提心↡也。

^もしひとじょうだいしんほっせずして、 ただかのこくじゅらくけんなるをきて、 らくのためのゆゑにしょうぜんとがんずるは、 またまさにおうじょうざるべきなり。 このゆゑに、 ªしんじゅうらくもとめず、 一切いっさいしゅじょうかんとほっすがゆゑにº とのたまへり。

シテ↠発↢无上菩提心↡、但聞↢彼国土受楽无間ナルヲ↡、為↠楽ズルハ↠生ゼム、亦当↠不↢往生↡也。是ヘリ↧不↠求↢自身住持之楽↡、オボスガ↠抜カムト↢一切衆生↡故↥。

^ªじゅうらくº とは、 いはく、 かの安楽あんらくじょうは、 弥陀みだ如来にょらい本願ほんがんりきのためにじゅうせられて、 らくくることひまなきなり。

住持楽、謂安楽浄土、為↢阿弥陀如来本願力之↡所レテ↢住持↡、受クルコト↠楽也。

^おほよそ ªこうº のみょうしゃくせば、 いはく、 おのれがしょしゅう一切いっさいどくをもつて、 一切いっさいしゅじょう施与せよして、 ともに仏道ぶつどう*かへしめたまふなりと。

セバ↢回向名義↡、謂所集一切功徳↡、施↢与シテ一切衆生↡、共ヘシメタマフナリト↢仏道↡。

^ªぎょう方便ほうべんº とは、 いはく、 さつがんずらく、 おのれが智慧ちえをもつて一切いっさいしゅじょう煩悩ぼんのう草木そうもくかんと、 もしいちしゅじょうとしてじょうぶつせざることあらば、 われぶつになら0327じと。 しかるにしゅじょういまだことごとくじょうぶつせざるに、 さつすでにみづからじょうぶつせんは、 たとへばてんして、 一切いっさい草木そうもく (ちゃくはらのぞくなり) んできてつくさしめんとほっするに、 草木そうもくいまだきざるに、 てんすでにきんがごとし。 そののちにしてさきにするをもつてのゆゑに、 ぎょう方便ほうべんづく。

方便、謂菩薩願ズラク智慧↡焼カムト↢一切衆生煩悩草木↡、若ラバ↣一衆生トシテルコト↢成仏↡、我↠作↠仏。而ルニ衆生未ルニ ゴト成仏↡、菩薩已ミヅカ成仏セムハ、譬↩火テンウツシテ 聴念反 擿字 他暦反 排トル ツム オク タクスルニムデ聴歴反 一切草木↡焼令↦使メムト↥、草木未ルニ↠尽、火擿已キムガ↨。以↧後↢其シテニスルヲ↥故、名方便↡。

^このなかに ª方便ほうべんº といふは、 いはく*がんして一切いっさいしゅじょう摂取せっしゅして、 ともにおなじくかの安楽あんらく仏国ぶっこくしょうぜしむ。 かの仏国ぶっこくはすなはちこれひっきょうじょうぶつどうじょう方便ほうべんなり。

↢方便↡者、謂作願シテ摂↢取シテ一切衆生↡、共ジクシム↢彼安楽仏国↡。彼仏国是畢竟成仏道路、无上方便也。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅱ)菩提心の義を示す

・障菩提門

 ^しょうだいもんとは、

障菩提門

^ªさつかくのごとくよく*こうじょうじゅしたまへるをれば、 すなはちよく三種さんしゅだいもんそうほうおんするなり。 なんらか三種さんしゅ

菩薩如↠是レバ↢回向成就ツク ナルシタマヘルヲ↡、即遠↢離スルナリ三種菩提門相違タガフ↡。何三種。

^ひとつには智慧ちえもんによりて、 らくもとめず、 わがこころしんとんじゃくするをおんせるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

者依↢智慧門↡、↠求↡、遠↣離スルガ心貪↢著スルヲ自身↡故トノタマヘリ

^すすむをりて退しりぞくをまもるを ªº といふ。 くう無我むがるを ªº といふ。 によるがゆゑにらくもとめず、 によるがゆゑにわがこころしんとんじゃくするをおんせり。

スヽムヲマモルヲ退シリゾクヲ↠智。知ルヲ↢空无我↡曰↠慧。依↠智不↠求↢自楽↡、依↠慧0147↣離セリ心貪↢著スルヲ自身↡。

 ^ªふたつには慈悲じひもんによれり。 一切いっさいしゅじょういて、 *あんしゅじょうしんおんせるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

者依レリ↢慈悲門↡。抜イテ↢一切衆生↡、遠↢離セルガ无安衆生心↡故ニトノタマヘリ

^くを ªº といふ。 らくあたふるを0328 ªº といふ。 によるがゆゑに一切いっさいしゅじょうく。 によるがゆゑにあんしゅじょうしんおんせり。

↠苦↠慈アタフルヲ↠楽↠悲。依↠慈↢一切衆生↡。依ルガ↠悲遠↢離セリ无安衆生心↡。

 ^ªつには方便ほうべんもんによれり。 一切いっさいしゅじょう*憐愍れんみんしたまふこころなりしんようぎょうするこころおんせるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

者依レリ↢方便門↡。憐↢アハレミアハレムシタマフ一切衆生↡心ナリ。遠↧離セルガ供↢養恭↣敬スル自身↡心↥故ニトノタマヘリ

^しょうじきを ªほうº といふ。 おのれをほかにするを ª便べんº といふ。 しょうじきによるがゆゑに一切いっさいしゅじょう憐愍れんみんするこころしょうず。 おのれをほかにするによるがゆゑにしんようぎょうするこころおんせり。

正直↠方。外ホカニスオノレ↠便。依↢正直↡故↧憐↢愍スル一切衆生↡心↥。依↢外↡故遠↧離セリ供↢養恭↣敬スル自身↡心↥。

^ªこれを三種さんしゅだいもんそうほうおんすとづくº (浄土論) と。

↣遠↢離スト三種菩提門相違↡。

・順菩提門

 ^じゅんだいもんとは、

順菩提門

^ªさつはかくのごとき三種さんしゅだいもんそうほうおんして、 *三種さんしゅずいじゅんだいもんほう満足まんぞくすることをたまへるがゆゑに。 なんらか三種さんしゅ

菩薩遠↢離シテ↠是クノ三種菩提門相違↡、得タマヘルガ↢三種随順菩提門法満足スルコトヲ↡故。何三種。

^ひとつにはぜん清浄しょうじょうしんしんのためにもろもろのらくもとめざるをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

者无染清浄心。以テノ↠不ルヲ↧為↢自身↡求↦諸↥故トノタマヘリ

^だいはこれぜん清浄しょうじょうところなり。 もしのためにらくもとめば、 すなはちだいしなん。 このゆゑにぜん清浄しょうじょうしんは、 これだいもんじゅんずるなり。

菩提是无染清浄ナリ。若↠身メバ↠楽シナム↢菩提↡。是无染清浄心、是順ズルナリ↢菩提門↡。

 ^ªふたつにはあん清浄しょうじょうしん一切いっさいしゅじょうくをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

者安清浄心。以↠抜↢一切衆生↡故ニトノタマヘリ

^だいはこれ一切いっさいしゅじょう安穏あんのんする清浄しょうじょうところなり。 もししんしていっさい0329しゅじょうきてしょうはなれしめずは、 すなはちだいしなん。 このゆゑに一切いっさいしゅじょうくは、 これだいもんじゅんずるなりと。

菩提是安↢穏スル一切衆生↡清浄ナリ。若↧作心シテ↢一切衆生↡離レシメ↦生死↥、即便違シナム↢菩提↡。是クハ↢一切衆生↡、是順ズルナリト↢菩提門↡。

 ^ªつにはらく清浄しょうじょうしん一切いっさいしゅじょうをしてだいだいしむるをもつてのゆゑに、 しゅじょう摂取せっしゅしてかのこくしょうぜしむるをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

楽清浄心。以↠令ルヲ↣一切衆生ヲシテ得↢大菩提↡故、以↧摂↢取シテ衆生↡生シムルヲ↦彼国土↥故ニトノタマヘリ

^だいはこれひっきょうじょうらくところなり。 もし一切いっさいしゅじょうをしてひっきょうじょうらくしめずは、 すなはちだいしなん。 このひっきょうじょうらくはなにによりてかる、 だいじょうもんによるなり。 だいじょうもんとは、 いはくかの安楽あんらくぶっこくこれなり。 このゆゑにまた ªしゅじょう摂取せっしゅしてかのこくしょうぜしむるをもつてのゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

菩提是畢竟常楽ナリ。若↠令↣一切衆生ヲシテ↢畢竟常楽↡、則シナム↢菩提↡。此畢竟常楽テカ↠何而得、依ルナリ↢大乗門↡。大乗門者、謂安楽仏国土是也。是ノタマヘリ↩以↧摂↢取シテ衆生0148↡生シムルヲ↦彼国土↥故ニト↨。

^ªこれを三種さんしゅずいじゅんだいもんほう満足まんぞくせりとづくと、 るべしº (浄土論) と。

クト↢三種随順菩提門法、満足セリト↡、応シト↠知

・名義摂対

 ^みょう摂対せったいとは、

名義摂対

^ªさき智慧ちえ慈悲じひ方便ほうべん三種さんしゅもん般若はんにゃ摂取せっしゅす。 般若はんにゃ方便ほうべん摂取せっしゅすときつ、 るべしº (浄土論) とのたまへり。

サキキツ↧智慧・慈悲・方便三種摂↢取般若般若摂↦取スト方便↥、応シトノタマヘリ↠知

^ª般若はんにゃº とはにょたっするのなり。 ª方便ほうべんº とはごんつうずるのしょうなり。 にょたっすればすなはちしんぎょうじゃくめつなり。 ごんつうずれば、 すなはちつぶさに*しゅはぶく。 *はぶくの、 つぶさにおうじて無知むちなり。 じゃくめつ、 また無知むちにしてつぶさにはぶく。

般若者達スル↠如之慧メグム サトルナリ。方便者通ズル↠権カリ之智ナリナヅク 。達スレバ↠如心行寂滅ナリ。通ズレバ↠権、則ツブサビ ハブ↢衆機。省↠機之智ナリ、備无知ナリ。寂滅之慧、亦无知シテ

^0330しかればすなはち、 智慧ちえ方便ほうべんと、 あひえんじてどうじ、 あひえんじてじょうなり。 どうじょうしっせざることは智慧ちえこうなり。 じょうどうはいせざることは方便ほうべんちからなり。 このゆゑに智慧ちえ慈悲じひ方便ほうべんと、 般若はんにゃ摂取せっしゅす。 般若はんにゃ方便ほうべん摂取せっしゅす。

智慧方便、相縁ナリシヅカ反。動不ルコトハ↠失↠静智慧之功也。静不ルコトハハイ↠動方便之力也。是智慧慈悲方便摂↢取般若↡。般若摂↢取方便↡。

^ªおうº とは、 いはく、 智慧ちえ方便ほうべんはこれさつ父母ぶもなり、 もし智慧ちえ方便ほうべんとによらずは、 さつ*法則ほうそくじょうじゅせざることをるべし。 なにをもつてのゆゑに。 もし智慧ちえなくしてしゅじょうのためにするときには、 すなはち顛倒てんどうせん。 もし方便ほうべんなくしてほっしょうかんずるときには、 すなはち実際じっさいしょうせん。 このゆゑにるべしと。

応知、謂↠知↧智慧方便是菩薩父母ナリ、若↠依↢智慧方便トニ↡、菩薩法則不コトヲ↦成就↥。何。若クシテ↢智慧↡為ニスル↢衆生ンバ、則オツセム↢顛タフレタフル↡。若シテ↢方便↡観ズル↢法性ンバ、則セム↢実際キワ↡。是シト↠知

 ^ªさきおんしんとんじゃくしんおんあんしゅじょうしんおんようぎょう身心しんしんきつ。 この三種さんしゅほうは、 しょうだいしんおんするなりと、 るべしº (浄土論) とのたまへり。

↢遠離我心貪著自身・遠離无安衆生心・遠離供養恭敬自身心↡。此三種、遠↢離スルナリト障菩提心↡、応シトノタマヘリ↠知

^諸法しょほうにおのおのしょうそうあり。 かぜはよくじょうふ。 つちはよくみずふ。 湿しつはよくふ。 *こくじゅうあく人天にんでんふ。 顛倒てんどうしょうもんふるがごとし。 このなかの*三種さんしゅだいふるしんおんせずと。

諸法↢障サウル相↡。如↧風↠静シヅカナリ↠水湿シフ↠火黒・十悪↢人天四顛タフレタフレフルガ↦声聞↥。此三種↧遠↦離フル↢菩提↡心↥。

^ªおうº とは、 もししょうんとおもはば、 まさにこの三種さんしゅしょうおんすべきなり。

応知、若ハヾ↠得ムト↢无障↡、当シト↣遠↢離三種障↡也。

 ^ªさきぜん清浄しょうじょうしんあん清浄しょうじょうしんらく清浄しょうじょうしんきつ。 この三種さんしゅしんりゃくして一処いっしょにして、 みょうらくしょう真心しんしん*じょうじゅしたまへりとるべしº (浄土論) との0331たまへり。

サキキツ↢无染清浄心・安清浄心・楽清浄心↡。此三種シテ一処ニシテ、成↢就シタマヘリト妙楽勝真心↡、応トノタマヘリ↠知

^らく三種さんしゅあり。 ひとつにはらく、 いはくしきしょしょうらくなり。 ふたつには内楽ないらく、 いはく初禅しょぜんぜん三禅さんぜんしきしょしょうらくなり。 つには法楽ほうがくらく、 いはく智慧ちえしょしょうらくなり。

↢三種↡。一者外楽、謂シキサトル0149ナリ。二者内楽、謂初禅・二禅・三禅意識所生ナリ。三者法楽 五角反魯各反智慧所生ナリ

^この智慧ちえしょしょうらくは、 ぶつどくあいするよりおこれり。 これはおんしんおんあんしゅじょうしんおんようしんと、 この三種さんしゅしん清浄しょうじょう増進ぞうしんして、 りゃくしてみょうらくしょう真心しんしんとす。

智慧所生↠愛スル↢仏功徳↡起レリ。是遠離我心遠離无安衆生心遠離自供養心、是三種心、清浄増進シテ、略シテ↢妙楽勝真心↡。

^みょうごんはそれこうなり。 このらくぶつえんじてしょうずるをもつてのゆゑに。 しょうごん三界さんがいのうちのらく勝出しょうしゅつせり。 しんごん虚偽こぎならず、 顛倒てんどうせざるなり。

ナリ。以↢此ジテ↠仏ズルヲ↡故。勝勝↢出セリ三界↡。真↢虚偽ナラ↡、不ルナリ↢顛倒↡。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (一)(Ⅲ)因徳を挙示す(願事成就)

 ^がんじょうじゅとは、

願事成就者、

^ªかくのごときさつ智慧ちえしん方便ほうべんしんしょうしんしょう真心しんしんをもつて、 よく清浄しょうじょうぶっこく*しょうぜしめたまへりとるべしº (浄土論) とのたまへり。

↠是クノ菩薩智慧心・方便心・无障心・勝真心ヲモテ、能シメタマヘリト↢清浄仏国土↡、応トノタマヘリ↠知

^ªおうº とは、 いはく、 このしゅ清浄しょうじょうどく、 よくかの清浄しょうじょうぶっこくしょうずることをしむ、 これえんをしてしょうずるにはあらずとるべしとなり。

応知、謂シト↠知↧此四種清浄功徳、能シム↠生ズルコト↢彼清浄仏国土↡、非ズト↦是他縁シテズルニハ↥也。

 ^ªこれをさつ摩訶まかさつしゅ法門ほうもんずいじゅんして、 しょこころしたがひてざい*じょうじゅしたまへりづく。 さき所説しょせつのごとき身業しんごうごうごうごう方便ほうべんごう法門ほうもんずいじゅんせるがゆゑにº (浄土論) とのたまへり。

↧菩薩摩訶薩、随↢順シテ五種法門↡、所作随↠意自在成就シタマヘリト↥。如↢向所説↡身業・口業・意業・智業・方便智業、随↢順セルガ法門↡故ニトノタマヘリ

^ªずいざいº とは、 いふこころは、 このしゅどくりき、 よく清浄しょうじょうぶつ*しょうぜしめてしゅつもつざいなるなり0332ª身業しんごうº とは礼拝らいはいなり。 ªごうº とは讃嘆さんだんなり。 ªごうº とはがんなり。 ªごうº とは観察かんざつなり。 ª方便ほうべんごうº とはこうなり。 このしゅごうごうせり、 すなはちこれおうじょうじょう法門ほうもんずいじゅんして、 ざいごうじょうじゅしたまへりとのたまへりと

随意自在イフコヽロ五種功徳力、能ゼシメテ↢清浄仏土↡、出没イルトモ自在ナル也。身業者礼オガム拝也。口業者讃嘆也。意業者作願也。智業者観察也。方便智業者回向也。ノタマヘリト↧此五種業和合セリ、則是随↢順シテ往生浄土法門↡、自在業成就シタマヘリト↥。

二 Ⅱ ⅱ b ロ(二)果(通じて上因に酬ゆるの果徳を明かす)(利行満足)

 ^ぎょう満足まんぞくとは、

利行満足

^ªまたしゅもんありて、 ぜんしゅどくじょうじゅしたまへりとるべし。 なにものかもんひとつには近門ごんもんふたつにはだいしゅもんつには宅門たくもんつには屋門おくもんいつつには園林おんりん遊戯ゆげもんなりº (浄土論) とのたまへり。

復有↢五種門↡、漸ヤウヤク成↢就シタマヘリト五種功徳↡、応↠知。何五門。一者近門、二者大会衆門、三者宅門、四者屋門、五オンソノ林遊タワブル地門ナリトノタマヘリ

^このしゅは、 入出にゅうしゅつだいそう*げんせしむ。

五種、示↢現セシム入出次第0150↡。

^にゅうそうのなかに、 はじめにじょういたるは、 これ近相ごんそうなり。 いはくだいじょう正定しょうじょうじゅるは、 のく多羅たらさんみゃくさんだいちかづくなり。 じょうりをはるは、 すなはち如来にょらいだいしゅかずるなり。 しゅうかずりをはりぬれば、 まさにしゅぎょう安心あんじんたくいたるべし。 たくりをはれば、 まさにしゅぎょうしょおくいたるべし。 しゅぎょうじょうじゅしをはりぬれば、 まさにきょういたるべし。 きょうはすなはちこれさつらくなり。

入相、初↢浄土↡、是近相ナリ。謂ルハ↢大乗正定聚↡、近ヅクナリ↢阿耨多羅三藐三菩提↡。入↢浄土↡已ルハ、便ルナリ↢如来大会衆↡。入↢衆↡已リヌレバ、当↠至↢修行安心之宅↡。入↠宅レバ、当↠至↢修行所ヰルイエイエ↡。 尤挙反 修行成就ヌレバ、当↠至↢教化地↡。教化地是菩薩タノシミナリ

^このゆゑにしゅつもん園林おんりん遊戯ゆげもんしょうすと。

出門イフスト↢園林遊戯地門↡。

 ^ªこのしゅもんは、 はじめのしゅもんにゅうどくじょうじゅしたまへりだいもんしゅつ0333どくじょうじゅしたまへりº (浄土論) とのたまへり。

五種、初四種成↢就シタマヘリ功徳↡、第五門成↢就シタマヘリトノタマヘリ功徳↡。

^この入出にゅうしゅつどくは、 なにものかこれや。

入出功徳、何

 ^しゃくすらく、

スラク

^ªにゅう第一だいいちもんといふは、 弥陀みだぶつ礼拝らいはいしてかのくに*しょうぜしめんがためにするをもつてのゆゑに、 安楽あんらくかいしょうずることを*しむ。 これをにゅう第一だいいちもんづくº (浄土論) と。

↢入第一門、以↧礼↢拝シテ阿弥陀仏↡為ニスルヲ↞生ゼシメムガ↢彼↡故シム↠生ズルコトヲ↢安楽世界↡。是↢第一門↡。

^ぶつらいして仏国ぶっこくしょうぜんとがんずるは、 これはじめのどくそうなりと。

シテ↠仏ズルハ↠生ゼム↢仏国↡、是初功徳ナリト

 ^ªにゅうだいもんとは、 弥陀みだぶつ讃嘆さんだんし、 みょうずいじゅんして如来にょらいみな*しょうせしめ如来にょらい*こうみょうそうによりてしゅぎょうせるをもつてのゆゑに、 だいしゅかずることをしむ。 これをにゅうだいもんづくº (浄土論) とのたまへり。

入第二門、以↧賛↢嘆阿弥陀仏↡、随↢順シテ名義↡称セシメ↢如来↡、依↢如来光明智相↡修行セルヲ↥故シム↠入コトヲ↢大会衆↡。是クトノタマヘリ↢入第二門↡。

^如来にょらいみょうによりて讃嘆さんだんする、 これだいどくそうなりと。

↢如来名義↡讃嘆スル、是第二功徳ナリト

 ^ªにゅう第三だいさんもんとは、 一心いっしん専念せんねんがんして、 かしこにしょうじてしゃ摩他また寂静じゃくじょう三昧ざんまいぎょうしゅするをもつてのゆゑに、 れんぞうかいることをしむ。 これをにゅう第三だいさんもんづくº (浄土論)

入第三門、以↣一心専念作願シテ、生ジテスル↢奢摩他寂静三昧↡故シム↠入コトヲ↢蓮華蔵世界↡。是↢入第三門↡。

^寂静じゃくじょうしゅせんためのゆゑに、 一心いっしんにかのくにしょうぜんとがんずる、 これ第三だいさんどくそうなりと。

↠修セム↢寂静止↡故一心ズル↠生ゼム↢彼↡、コレ第三功徳ナリト

 ^ªにゅうだいもんとは、 かのみょうしょうごん専念せんねん観察かんざつして、 毘婆びばしゃしゅせしむるをも0334つてのゆゑに、 かのところいたることをて、 種々しゅじゅほうらく受用じゅゆうせしむ。 これをにゅうだいもんづくº (浄土論) とのたまへり。

入第四門者、以↧専↢念観↣察シテ妙荘厳↡、修セシムルヲ↦毘婆舎那↥故↠到コトヲ↢彼↡、受↢用セシム種種法味↡。是トノタマヘリ↢入第四門↡。

^ª種々しゅじゅほうらくº とは、 毘婆びばしゃのなかに、 観仏かんぶつこく清浄しょうじょうしょうじゅしゅじょうだいじょうひっきょうじゅう虚作こさるいぎょう願取がんしゅぶつあり。 かくのごときらのりょうしょうごん仏道ぶつどうあるがゆゑに、 ª種々しゅじゅº とのたまへり。 これだいどくそうなりと。

種種法味、毘婆舎那、有↢観仏国土清浄味・摂受衆生大乗味・畢竟住持不虚作0151味・類事起行願取仏土味↡。有ルガ↢如↠是无量荘厳仏道味↡故ノタマヘリ↢種種↡。第四功徳ナリト

 ^ªしゅつだいもんとは、 だい慈悲じひをもつて一切いっさいのうしゅじょう観察かんざつして、 おうしんしめして、 しょうその煩悩ぼんのうはやしのなかににゅうして、 神通じんずう遊戯ゆげし、 きょういたる。 本願ほんがんりきこうをもつてのゆゑに。 これをしゅつだいもんづくº (浄土論) とのたまへり。

出第五門、以↢大慈悲↡観↢察カヾムシテ一切苦悩衆生↡、示シテ↢応化身↡、回↢入シテ生死、煩悩↡、遊↢戯神通↡、至↢教化地↡。以↢本願力回向↡故。是トノタマヘリ↢出第五門↡。

^ªおうしんしめすº といふは、 ¬法華ほけきょう¼ のもんげんるいのごときなり。

応化身イフ、如↢¬法華経¼普門示現之タグイ↡也。

^ª遊戯ゆげº にふたつのあり。 ひとつにはざいさつしゅじょうす。 たとへば獅子しし鹿しかつに、 しょはばからざるがごときは、 遊戯ゆげするがごとし。 ふたつにはしょなり。 さつしゅじょうかんずるに、 ひっきょうじて*所有あらゆるところなし。 りょうしゅじょうすといへども、 じついちしゅじょうとしてめつるものなし。 しゅじょうすとしめすこと遊戯ゆげするがごとし。

遊戯↢二義↡。一自在義。菩薩度↢衆生↡。譬ゴトキハ↢師子ツニ鹿シヽ、所為ルガハバカ、如↢似遊戯スルガ↡。二度无所度ナリ。菩薩観ズルニ↢衆生↡畢竟ジテ↠所↠有ユル。雖↠度スト↢无量衆生↡、実↧一衆生トシテ↢滅度↥。示スコト↠度スト↢衆生↡如↢似遊戯スルガ↡。

^ª本願ほんがんりきº といふは、 だいさつ法身ほっしんのなかにおいて、 つねに三昧さんまいにましまして、 種々しゅじゅしん種々しゅじゅ神通じんずう種々しゅじゅ説法せっぽうげんずることをしめすこ0335と、 みな本願ほんがんりきよりおこるをもつてなり。 たとへばしゅきんするものなしといへども、 しかもいんぎょくねんなるがごとし。 これをきょうだいどくそうづくとのたまへり」 と。 以上抄出

↢本願力↡者、示コト↧大菩薩於↢法身↡、常マシマ↢三昧ズルコトヲ↦種種身、種種神通、種種説法↥、皆以テナリ↢本願力ヨリルヲ↡。譬↧阿修羅↠无ウツスル↡、而音曲自然ナルガ↥。是クトノタマヘリ↢教化地第五功徳↡。」 已上抄出

総じて往還の義を結ぶ【往還結釈】

【18】^しかれば、 *だいしょう (釈尊)真言しんごん、 まことにんぬ、 だいはんしょうすることは願力がんりきこうによりてなり。 還相げんそうやく利他りたしょうあらわすなり。 ここをもつて論主ろんじゅ (天親)広大こうだい無礙むげ一心いっしんせんして、 あまねく雑染ぞうぜん*堪忍かんにん群萌ぐんもうかい しゅう (曇鸞)だい*往還おうげんこうけんして、 ねんごろに他利たり利他りたじんせんしたまへり。 あおいで奉持ぶじすべし、 ことにちょうだいすべしと。

大聖真言、誠スルコトハ↢大涅槃リテナリ↢願力回向↡。還相利益スナリ↢利他正意↡。是論主ノベ↢布シクシテ広大无一心↡、普徧 アマネ 開↢化雑染ソム堪忍カナフ ムラガルキザス↡宗師顕↢示シテ大悲往還回向↡、慇懃ネムゴロ弘↢宣シタマヘリ他利利他深義↡。仰↢奉ウケタマハル↡、コトトクシト↢頂戴イタヾク↡矣。

けんじょう真実しんじつしょう文類もんるい 四

 

延書の底本は本山蔵本(所謂清書本)ˆ原漢文の校訂本Ⓐˇ。
真実の証 →補註2
利他円満の妙位 他力より与えられたどくの欠けめのないすぐれた仏の位。
無上涅槃の極果 この上ない仏のさとりの果。
煩悩成就 あらゆる煩悩を欠くことなくそなえていること。
畢竟寂滅 煩悩を滅した究極的なさとりの境地。
報応化 報身ほうじん応身おうじんしんのこと。
かの因を… 阿弥陀仏が浄土往生の因をたてたことを明らかに信知することができないからという意。
剋念して…入る ¬論註¼ の当分では 「剋念して生ぜんと願ずれば、 また往生を得て、 すなはち正定聚に入る」 と読む。 剋念願生する者が浄土に往生して正定聚に入る義であるが、 親鸞聖人は原文を読みかえて、 剋念往生する者 (此土) と浄土に往生した者 (彼土) との二種の正定聚があることを示した。 剋念は心を専注して一心になること。 ここは信心の異名。
分身して 仮に身を分ちすがたを変えて。
還相の回向 →還相げんそうこう
向かへしむる・得たまへる 通常は 「向かふ」 「得んとする」 と読む。
初めに 通常は 「初めより」 と読む。
常倫に…現前し 通常は 「常倫諸地の行を超出し、 現前に」 と読む。 常倫はつねなみ、 普通一般の意。
地より…高くなること 通常は 「地に生ずるに百歳 (百囲) すなはち具せり。 一日に長ずること高さ」 と読む。
八句  ¬浄土論¼ に浄土のしょうごんどくについて、 三厳さんごんじゅうしゅしょうごんを説く中の仏八種荘厳のこと。
国土の主 浄土の主人、 阿弥陀仏のこと。
体如にして 通常は 「如を体して」 と読む。
一を…統ぬ 通常は 「一の正をもってこれをぶ」 と読む。
法身は…布き 通常は 「法身は像なくしてしゅぎょう並び応じ、 至韻は言なくして玄籍ひろく布けり」と読む。
因なくして…知るべしとなり 通常は 「無因と他因の有にはあらざるを知るべしとなり」 と読む。
入一法句 真如しんにょほっしょうにおさまり入ること。
真智は無知なり 真智はじっ、 如実智ともいい、 ふんべっのこと。 ものの本質のありのままが平等で不二であることをさとる智。 無知とはすべて因縁いんねんによって生じたものは実体がなくくうであるから、 対象的に知るということもないとの意。
相好荘厳… 仏のすがたも実体的にあるのではなく、 それがそのまま色も形もない絶対の真理そのものにかなっていること。
非にあらざれば…待つことなきなり ¬論註¼ の原文は 「非を非するは、 あに非を非するのよく是ならんや。 けだし非をみする、 これを是といふ。 みづから是にしてたいすることなきも、 また是にあらず」 とも読める。
諸法は…成ず 通常は 「諸法は心をもって成ず。 余の境界なし」 と読む。
七宝のために属せらる 通常は 「七宝の属するところとなる」 と読む。 →七宝しっぽう
かくのごときの菩薩 ¬論註¼ の当分では、 願生行者のことであるが、 親鸞聖人はげんそう (従果還因の相状) の菩薩のこととし、 その根源に法蔵ほうぞう菩薩の修行成就があることを示唆する。
不二の心 観ぜられる対象 (境) の徳すなわち実相じっそう (絶対の真理) と、 観ずる心とが境智不二となった心をいう。
礼拝等の五種の修行 念門ねんもんのこと。
作願して…生ぜしむ 通常は 「一切衆生を摂取して、 ともに同じくかの安楽仏国に生ぜんと作願するなり」 と読む。
向かへしめたまふなり 通常は 「向かふなり」 と読む。
回向…知れば 通常は 「回向を知りて成就すれば」 と読む。
無安衆生心 衆生を安らかにすることのない心。
憐愍したまふ心なり 通常は 「憐愍する心なり」 と読む。
三種の…ゆゑに 通常は 「三種の菩提門に随順する法の満足を得るがゆゑなり」 と読む。
衆機に省く・機に省く 衆機はすべてのしゅじょう、 省くは分かち与えるの意。 通常は 「衆機を省みる」 「機を省みる」 と読む。 省みるは省察する、 知るの意。
法則 「法すなわち」 とも読む。
五黒 あくのこと。
三種は…遠離せずと 通常は 「三種の不遠離は、 菩提を障ふる心なり」 と読む。
成就したまへり 通常は 「成就す」 と読む。
初禅二禅… 色界の四禅天のうちはじめの三には楽があるが、 第四禅天になると不苦不楽であるという。 →ぜん
生ぜしめたまへり 通常は 「生ず」 と読む。
成就したまへり 通常は 「成就す」 と読む。 いかに出る場合も同じ。
生ぜしめて 通常は 「生ずれば」 と読む。
示現せしむ 通常は 「示現す」 と読む。
生ぜしめんがためにする 通常は 「生ぜんとなすを」 と読む。
得しむ 通常は 「」 と読む。
称せしめ 通常は 「称し」 と読む。
所有なし 通常は 「しょなし」 と読む。
大聖の真言 上に引かれた ¬大経¼ 「如来会」 の教説を指す。
往還の回向 →往相おうそうこう還相げんそうこう
底本は◎真宗大谷派蔵親鸞聖人真筆本。 Ⓐ本派本願寺蔵鎌倉時代写本、 Ⓑ高田派専修寺蔵真仏上人書写本、 Ⓒ本派本願寺蔵存如上人授与本、 Ⓓ本派本願寺蔵版 と対校。
 Ⓐ「十一必至滅度願」と右傍註記
 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍註記
 Ⓑに無し
 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍にあり
 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍にあり
 Ⓐ「難思議往生成就」と右傍にあり
愁歎 ◎Ⓑ或本生死字也と上欄註記→Ⓐ歎愁生死→Ⓓ生死愁
 Ⓑ」と左傍註記
 Ⓐ「難思議往生成就」と左傍にあり
 Ⓐ「廿二一生補処之願還相廻向之願」と右傍註記
→Ⓐ
 ◎と上書訂記
上首 Ⓑに無し
 Ⓑエウと上欄註記 Ⓒイウと上欄註記
四行 Ⓑ「如大経説」と左傍に貼紙
→Ⓒ
言日不動 Ⓑ「日イマダタラザレドモアキラカナルヲモテフドウトイフイ本」と左傍註記
→Ⓒ
 Ⓒと下欄に貼紙
 Ⓒと上欄に貼紙
 ◎に無し
→Ⓓ Ⓒ「玉ニイハク他念切木杖ナリ広ニイハク火杖ナリ」と上欄註記
8字 ◎上欄註記 ⒶⒷⒸⒹに無し
→Ⓓ Ⓒ「玉ニイハク雉戟反投也棄也広イハク投也掻也振也」と下欄註記
ⒶⒷⒸⒹ
 Ⓑと上欄註記
鹿 ◎一字抹消し鹿と上欄註記