じょうさんぎょうおうじょう文類もんるい

 

【1】 *だいきょうおうじょうといふは、 如来にょらいせんじゃく本願ほんがん*不可ふか思議しぎ願海がんかい、 これを*りきもうすなり。 これすなはち*念仏ねんぶつおうじょう願因がんいんによりて、 *ひっめつがんをうるなり。 *げんしょう*正定しょうじょうじゅくらいじゅうして、 かならず*真実しんじつほうにいたる。 これは弥陀みだ如来にょらい*往相おうそうこう真因しんいんなるがゆゑに、 *じょうはんのさとりをひらく。 これを ¬*だいきょう¼ の*しゅうとす。 このゆゑにだいきょうおうじょうもうす、 また*なんおうじょうもうすなり。

大経往生 ¬大経¼ に説かれる第十八願の教えにもとづいた往生のこと。 →さんおうじょう
不可思議の願海 本願がしゅじょうの思慮を超えたものであることを広大な海に喩えていう。
念仏往生の願因 念仏往生の願 (第十八願) に誓われている往生の因。 すなわち真実の行信をいう。
必至滅度の願果 必至滅度の願 (第十一願) に誓われている証果。 すなわち大はんのさとりをいう。
宗致 「むねとすとなり」 (左訓) 教典に説かれた法義の最も肝要なことがら。

【2】 この如来にょらい往相おうそうこうにつきて、 真実しんじつぎょうごうあり。 すなはち諸仏しょぶつ称名しょうみょうがん (第十七願) にあらはれたり。 称名しょうみょうがんは ¬だいりょう寿じゅきょう¼ (上) にのたまはく、 「たとひわれぶつんに、 十方じっぽうかいりょう諸仏しょぶつ、 ことごとく*しゃし、 わが*しょうせずは、 *しょうがくらじ」 と。

咨嗟 「よろづのほとけにほめらるるなり」 (左訓) 讃嘆の意で、 ほめたたえること。
 称揚の意で、 みょうごうをほめたたえること。

 称名しょうみょうしんぎょうがん (第十七・十八願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、 「十方じっぽう恒沙ごうじゃ諸仏しょぶつ如来にょらい、 みなともにりょう寿じゅぶつじんどく不可ふか思議しぎなるを讃嘆さんだんしたまふ。 あらゆるしゅじょう、 そのみょうごうきて信心しんじんかんして、 ない*一念いちねんせん。 *しんこうしたまへり。 かのくにうまれんとがんずれば、 すなはちおうじょう*退転たいてんじゅうせん。 ただ*ぎゃく*しょうぼう*ほうするをのぞく」 と。

一念 →一念いちねん
至心回向したまへり 通常は 「至心に回向して」 と読む。 親鸞聖人は如来回向の義をあらわすために、 このように読みかえた。

【3】 また真実しんじつ信心しんじんあり。 すなはち念仏ねんぶつおうじょうがん (第十八願) にあらはれたり。 しんぎょうがんは ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、 「たとひわれぶつたらんに、 十方じっぽうしゅじょうしんしんぎょうして、 わがくにうまれんとおもうて、 ないじゅうねんせん。 もしうまれずは、 しょうがくらじと。 ただぎゃくしょうぼうほうせんをのぞかん」 と。

 同本どうほんやくの ¬*りょう寿じゅ如来にょらい¼ (上) にのたまはく、 「もしわれ*じょうかくしょうとくせんとき、 ぶっ*せつのうちのもろもろのじょうるい、 わがきをはりて、 しょ善根ぜんごん心々しんしんこうして、 わがくにうまれんとがんじて、 ないじゅうねんせん。 もしうまれずは、 *だいらじと。 ただ*けん悪業あくごうつくり、 しょうぼうおよびもろもろのしょうにんほうせんをのぞかん」 と。

無上覚 この上ない仏のさとり。
 「くにといふ」 (左訓) 梵語クシェートラ (kşetra) の音写。国土・世界の意。
無間悪業 無間地獄 (阿鼻地獄) にちる悪しき業で、 ぎゃくざいをいう。

【4】 また*真実しんじつしょうあり。 すなはちひっめつがん (第十一願) にあらはれたり。 *しょうがん、 ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、 「たとひわれぶつたらんに、 くにのうちの人天にんでん*じょうじゅじゅうし、 かならず*めついたらずは、 しょうがくらじ」 と。

真実証果 「まことのさとりをいふなり」 (左訓) →補註2
証果 「まことのほとけとなるなり」 (左訓)

 同本どうほんやくの ¬りょう寿じゅ如来にょらい¼ (上) にのたまはく、 「もしわれじょうぶつせんに、 くにのうちのじょう、 もしけつじょうして*とうしょうがくだいはんしょうせずは、 だいらじ」 と。

等正覚 →とうしょうがく

 ¬りょう寿じゅ如来にょらい¼ (下) にのたまはく、 「ほう仏国ぶっこくしょしゅじょうりょう寿じゅ如来にょらいみょうごうきてよく一念いちねんじょうしんおこして*かんあいぎょうせん。 あらゆる善根ぜんごんこうしてりょう寿じゅこくうまれんとがんぜば、 がんしたごうてみなうまれて、 退転たいてんない*じょうしょうとうだいんと。 *けんしょうぼうほうし、 およびしょうじゃほうぜんをばのぞかん」 と。

歓喜…回向して 「信巻」 では如来回向の義をあらわして 「歓喜せしめ、 諸有の善根回向したまへるを愛楽して」 と読んでいる。

 ひっめつしょうだいはんがん (第十一願) じょうじゅもん、 ¬だいきょう¼ (下) にのたまはく、 「それしゅじょうあつて、 かのくにうまれんもの、 みなことごとく*正定しょうじょうじゅじゅうせん。 ゆゑはいかんとなれば、 かの仏国ぶっこくのうちにはもろもろの*邪聚じゃじゅおよび*じょうじゅはなければなり」。

邪聚 「自力のもろもろの善人なり」 (左訓) →じゃじょうじゅ
不定聚 「自力の念仏者なり」 (左訓) →じょうじゅ

 また ¬如来にょらい¼ (下) にのたまはく、 「かのくにしゅじょうと、 もしまさにうまれんものは、 みなことごとくじょうだいきょうし、 はんところいたらん。 なにをもつてのゆゑに。 もしじゃじょうじゅおよびじょうじゅは、 *かのいんこんりゅうせることを*りょうすることあたはざるがゆゑなり」 と。 以上抄要

かの因を… 阿弥陀仏が浄土往生の因をたてたこと。

【5】 この真実しんじつ称名しょうみょう真実しんじつしんぎょうをえたるひとは、 すなはち正定しょうじょうじゅくらいじゅうせしめんとちかひたまへるなり。 この正定しょうじょうじゅじゅうするを、 とうしょうるとものたまへるなり。 とうしょうがくもうすは、 すなはち*しょ*ろくさつとおなじくらいとなるときたまへり。 しかれば、 ¬だいきょう¼ (下) には 「*にょろく」 とのたまへり。

次如弥勒 「いで弥勒のごとしとなり」 (左訓) →補註6

 ¬じょうろん¼ (*論註・下) にいはく、 「ª*しょうごん妙声みょうしょうどくじょうじゅは、 に «*ぼんしょう深遠じんのん みょうもん十方じっぽう» とのたまへるがゆゑにº と。 これいかんぞ思議しぎなるや。 ¬きょう¼ にのたまはく、 ªもしひと、 ただかのこく清浄しょうじょう安楽あんらくなるをきて、 *剋念こくねんしてうまれんとがんずると、 またおうじょうると、 すなはち正定しょうじょうじゅるº。 これはこれ、 こくみょう*ぶつをなす。 いづくんぞ思議しぎすべきや。 ª*しょうごん眷属けんぞくどくじょうじゅは、 に «*如来にょらいじょうしゅ しょうがくしょう》とのたまへるがゆゑにº と。 これいかんぞ思議しぎなるや。 おほよそこれざっしょうかいは、 もしはたいもしはらんもしは湿しつもしは眷属けんぞく*そこばくなり。 らく万品まんぼんなり。 雑業ぞうごうをもつてのゆゑに。 かの安楽あんらくこくは、 これ弥陀みだ如来にょらいしょうがくじょうしょうするところにあらざることなし。 同一どういつ念仏ねんぶつしてべつどうなきがゆゑに。 とおつうずるにそれ*かいのうちみなきょうだいとするなり。 眷属けんぞくりょうなり。 いづくんぞ思議しぎすべきや」。

荘厳妙声功徳成就 国土荘厳十七種の第十一荘厳。 浄土のすぐれた名は、 あまねく十方世界に聞えて、 すべての者を往生させる徳があるということを示す。
梵声悟深遠… 「梵声のさとり深遠にして微妙なり。 十方に聞ゆ」 梵声は清浄しょうじょうな仏の声のこと。
剋念して…入る ¬論註¼ の当分では 「剋念して生ぜんと願ずれば、 また往生を得て、 すなはち正定聚に入る」 と読む。 剋念願生する者が浄土に往生して正定聚に入る義であるが、 親鸞聖人は原文を読みかえて、 剋念願生する者 (此土) と浄土に往生した者 (彼土) との二種の正定聚があることを示した。 剋念は心を専注して一心になること。 ここでは信心の異名。
仏事 しゅじょう救済の仕事。
荘厳眷属功徳成就 国土荘厳十七種の第十三荘厳。 浄土の往生人はことごとく阿弥陀仏の正覚によって生れた清浄しょうじょうな者で優劣の差がないということ。 および一切世界の念仏者も平等の眷属であるということを示す。
如来浄華衆… 「如来浄華の衆は、 正覚の華より化生す」
そこばく 相当の数量。

 またのたまはく (論註・下)、 「おうじょうがんずるもの、 もとはすなはち*三三さんざんほんなれども、 いまはいちことなることなし。 また*じょういちなるがごとし。 いづくんぞ思議しぎすべきや」。

三三の品 ぼんのこと。

 また ¬ろん¼ (同・下) にいはく、 「ª*しょうごん清浄しょうじょうどくじょうじゅは、 に «*かんかいそう しょう三界さんがいどう» とのたまへるがゆゑにº と。 これいかんぞ思議しぎなるや。 ぼんにん煩悩ぼんのうじょうじゅせるあつて、 またかのじょうしょうるに、 三界さんがい*ごうひっきょうじてかず。 すなはちこれ煩悩ぼんのうだんぜずして*はんぶん。 いづくんぞ思議しぎすべきや」。 以上抄要

荘厳清浄功徳成就 国土荘厳十七種の第一荘厳。 浄土は三界さんがいを超越した清浄の世界であり、 煩悩のじゃくめつしたはんの世界であって、 そこに往生すればねんにさとりの智慧ちえが得られるということを示す。 じゅう種荘厳のすべてに通じる功徳とされる。
観彼世界相… 「かの世界の相を観ずるに、 三界の道に勝過せり」 (真仏土巻訓)
涅槃の分 涅槃の分斉ぶんざい。 涅槃のさとりそのもの。

【6】 この弥陀みだ如来にょらい*往相おうそうこう*せんじゃく本願ほんがんをみたてまつるなり。 これを*なんおうじょうもうす。 これをこころえて、 *りきには*なきをとすとしるべし。

【7】 ふたつに*還相げんそうこうといふは、 ¬*じょうろん¼ にいはく、 「本願ほんがんりきこうをもつてのゆゑに、 これを*しゅつだいもんづく」 といへり。 これは還相げんそうこうなり。 いっしょうしょがん (第二十二願) にあらはれたり。

 だいだいがん (第二十二願) 、 ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、 「たとひわれぶつたらんに、 ほうぶつのもろもろのさつしゅ、 わがくにらいしょうすれば、 きょうしてかならず*いっしょうしょいたる。 その本願ほんがんざいしょしゅじょうのためのゆゑに、 *ぜいがいて、 徳本とくほんしゃくるいし、 一切いっさいだつし、 諸仏しょぶつくにあそびて、 さつぎょうしゅし、 十方じっぽう諸仏しょぶつ如来にょらいようし、 恒沙ごうじゃりょうしゅじょうかいしてじょうしょうしんどうりゅうせしめんをばのぞかんと。 *じょうりん超出ちょうしゅつし、 *しょぎょう現前げんぜんし、 *げんとくしゅじゅうせん。 もししからずは、 しょうがくらじ」 と。

弘誓の鎧 衆生さい誓願せいがんが堅固なことをよろいに喩える。
常倫…現前し 通常は 「常倫諸地の行を超出し、 現前に」 と読む。 常倫はつねなみ、 普通一般の意。
諸地の行 じゅうの菩薩が行う自利利他の修行。 →菩薩

 このがんは、 如来にょらい還相げんそうこうおんちかひなり。

【8】 如来にょらいしゅこうによりて、 真実しんじつしんぎょうをうるひとは、 かならず正定しょうじょうじゅくらいじゅうするがゆゑにりきもうすなり。 しかれば、 ¬*りょう寿じゅきょう優婆うば提舎だいしゃがんしょう¼ にいはく、 「いかんが*こうしたまへる。 一切いっさいのうしゅじょうてずして、 しんにつねに*がんすらく、 こう*しゅとしてだい心をじょうじゅすることを*たまへるがゆゑに」 とのたまへり。

回向したまへる 通常は 「回向する」 と読む。
作願 しゅじょう救済を願うこと。
首として 第一にして。 中心にして。
得たまへるがゆゑに 通常は 「得んとするがゆゑに」 と読む。

 これは ¬だいりょう寿じゅきょう¼ のしゅうとしたまへり。 これを*なんおうじょうもうすなり。

【9】 *かんぎょうおうじょうといふは、 しゅしょどくがん (第十九願) により、 しん発願ほつがんのちかひにいりて、 万善まんぜんしょぎょうぜんこうしてじょう*ごんせしむるなり。 しかれば、 ¬りょう寿じゅぶつかんぎょう¼ には、 *じょうぜん*散善さんぜん*三福さんぷく*ぼん諸善しょぜん、 あるいはりき称名しょうみょう念仏ねんぶつきて、 ぼんおうじょうをすすめたまへり。 これはりきのなかにりきしゅうとしたまへり。 このゆゑにかんぎょうおうじょうもうすは、 これみな方便ほうべん*化土けどおうじょうなり。 これを*双樹そうじゅりんおうじょうもうすなり。

観経往生 ¬観経¼ に説かれる諸行往生。 →さんおうじょう補註15
欣慕 ねがいしたうこと。

【10】しん発願ほつがんがん (第十九願)、 ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、 「たとひわれぶつんに、 十方じっぽうしゅじょう*だいしんおこし、 *もろもろのどくしゅして、 しん発願ほつがんしてわがくにうまれんとおもはん。 寿いのちおわらんときのぞまんに、 たとひ大衆だいしゅ*にょうしてそのひとまえげんぜずは、 しょうがくらじ」 と。

もろもろの功徳 定散の諸善のこと。 →じょうぜん散善さんぜん

 また、 ¬*悲華ひけきょう¼ 「*だいぼん」 にのたまはく、 「ねがはくは、 われ*のく多羅たらさんみゃくさんだいりをはらんに、 そのりょうへん*そう諸仏しょぶつかいしょしゅじょう、 もし*のく多羅たらさんみゃくさんだいしんおこし、 もろもろの善根ぜんごんしゅして、 わがかいうまれんとおもはば、 りんじゅうとき、 われまさに大衆だいしゅにょうしてそのひとまえげんずべし。 そのひと、 われをて、 すなはちわがまえにしてしんかんて、 われをるをもつてのゆゑに、 もろもろのしょうはなれてすなはちててわがかいらいしょうせしめん」 と。

大施品 引用の文は 「大施品」 になく 「しょさつほんじゅぼん」 にある。

 しん発願ほつがんがん (第十九願) じょうじゅもん、 ¬だいきょう¼ (下) にのたまはく、 「ぶつなんげたまはく、 ª十方じっぽうかい諸天しょてん人民にんみん、 それしんいたしてかのくにうまれんとがんずることあらん。 おほよそ*三輩さんぱいあり。 そのじょうはいは、 いえよくてて*沙門しゃもんとなり、 だいしんおこして一向いっこうにもつぱらりょう寿じゅぶつねんじ、 もろもろのどくしゅしてかのくにうまれんとがんぜん。 これらのしゅじょう寿いのちおわらんときのぞみて、 りょう寿じゅぶつ、 もろもろの大衆だいしゅとそのひとまえげんぜん。 なん、 それしゅじょうあつて、 こんにおいてりょう寿じゅぶつたてまつらんとおもうて、 じょうだいしんおこどくしゅぎょうしてかのくにうまれんとがんずべし。º ぶつなんかたりたまはく、 ªそれちゅうはいは、 十方じっぽうかい諸天しょてん人民にんみん、 それしんいたしてかのくにうまれんとがんずることあらん。 ぎょうじて沙門しゃもんとなり、 おおきにどくしゅすることあたはずといへども、 まさにじょうだいしんおこして一向いっこうにもつぱらりょう寿じゅぶつねんじ、 しょうぜんしゅし、 *斎戒さいかい奉持ぶじし、 *塔像とうぞうりゅうし、 沙門しゃもん飯食ぼんじきせしめ、 *ぞうとうともし、 はなさんこうくべし。 これをもつてこうしてかのくにうまれんとがんぜん。 そのひとおわりにのぞみて、 つぶさに*真仏しんぶつのごとく、 もろもろの大衆だいしゅとそのひとまえげんぜん。º ぶつなんげたまはく、 ªそれはいは、 十方じっぽうかい諸天しょてん人民にんみん、 それしんいたしてかのくにうまれんとおもふことあらん。 たとひもろもろのどくをなすことあたはずとも、 まさにじょうだいしんおこして一向いっこうこころをもつぱらにして、 ないじゅうねんりょう寿じゅぶつねんじて、 そのくにうまれんとがんずべし。 もし深法じんぽうきてかんしんぎょうしてわくしょうぜず、 ない一念いちねん、 かのほとけねんじて、 じょうしんをもつてそのくにうまれんとがんぜん。 このひとおわりにのぞみて、 *ゆめにかのぶつたてまつり、 またおうじょうん。 どく智慧ちえいでちゅうはいのもののごとくならんとなりº」 と。 以上略抄

塔像 堂塔と仏像。
 仏殿にかける絹の天蓋てんがい (かさ)。
真仏 上輩の臨終に現れる仏を指す。
夢に ¬三経往生文類¼ (略本) では 「夢のごとくに」 と読んでいる。

 ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、 「たとひわれぶつたらんに、 くにのうちのさつないしょうどくのもの、 その*どうじょうじゅりょう光色こうしきあつて、 たかひゃくまんなるをけんすることあたはずは、 しょうがくらじ」 と。

 どうじょうじゅがん (第二十八願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・上) にのたまはく、 「またりょう寿じゅぶつ、 そのどうじょうじゅたかひゃくまんならん。 そのもとしゅうじゅう*じゅんならん。 ようよもきてじゅうまんならん。 一切いっさい衆宝しゅぼうねんごうじょうせり。 *月光がっこう摩尼まに*かい輪宝りんぽう衆宝しゅぼうおうたるをもつてして、 これをしょうごんせり。 えだのあひだに*しゅうそうして、 ほう*瓔珞ようらくれたり。 ひゃく千万せんまんじきにして種々しゅじゅへんす。 りょう光炎こうえんしょう耀ようきわまりなし。 ちんみょう宝網ほうもうそのうえ*羅覆らふせり。 一切いっさいみな*甚深じんじん法忍ほうにん*退転たいてんじゅうせん。 仏道ぶつどうるにいたるまで、 *六根ろっこんしょうてつにしてもろもろの悩患のうげんなけん」 と。 以上略出

持海輪宝 極楽を飾る摩尼宝珠の別名。 海のように広大な徳を有する宝珠。 一説には、 しゅせんの頂上にある威華という名の如意宝珠のことで、 大海の水をよくたもつからこの名があるという。
周帀 めぐりまわること。 あまねくゆきわたること。
羅覆 「こめおほへり」 (左訓) 上から覆いめぐらすこと。
甚深の法忍 しょうぼうにんのこと。

 しゅりょうごんいん (源信) の ¬*ようしゅう¼ (下) に、 かんぜん (*懐感)しゃく (*群疑論)きていはく、 「ふ。 ¬*さつ処胎しょたいきょう¼ の*だいきたまへり。 ª西方さいほうこの*えんだいることじゅうおく那由なゆ*まんがいありと。 こころおこしゅじょう弥陀みだ仏国ぶっこくうまれんとおもふもの、 ふかまんこくじゃくして、 前進すすみて弥陀みだ仏国ぶっこくうまるることあたはず。 おく千万せんまんしゅうとき一人いちにんあつて、 よく弥陀みだ仏国ぶっこくしょうずº といへり。 このきょうをもつて*じゅんなんするに、 しょうべしや。 こたふ。 ¬ぐんろん¼ に善導ぜんどうしょう*さきもんきて、 このなんしゃくせり。 またみづから*じょじょうしていはく、 ªこのきょうもんにのたまはく、 «なにをもつてのゆゑに、 みなまんして*しゅうしんろうならざるによつてなり»。 ここにりぬ、 雑修ざっしゅのものはしゅうしんかたからざるのひととす。 かるがゆゑにまんこくしょうずるなり。 もし雑修ざっしゅせずして、 もつぱらこのごうぎょうずるは、 これすなはちしゅうしんろうにして、 さだめて極楽ごくらくこくしょうず。 また*ほうじょうしょうはきはめてすくなし。 *じょうのなかにしょうずるものはすくなからず。 かるがゆゑにきょう別説べつせつ、 まことにそうせざるなり」 と。 以上略出

第二 「西方…生ず」 の文は現行の ¬さつ処胎しょたいきょう¼ では第三 (巻三) にある。
准難 「なずらへなんずといふ」 (左訓) なぞらえて論難する。
前の文 ¬ぐんろん¼ 巻四の 「雑修ざっしゅのものは万に一も生ぜず、 専修せんじゅの人は千に一も失することなし」 という ¬礼讃らいさん¼ 取意の文を指す。
助成 補足して義を成立させること。
執心牢固 本願をとりたもつ心 (信心) がひとすじで堅固であること。
報の浄土 真実しんじつほうのこと。
化の浄土 方便化土けどのこと。

【11】これらのもんのこころにて、 *双樹そうじゅりんおうじょうもうすことを、 よくよくこころえたまふべし。

【12】*弥陀みだきょうおうじょうといふは、 じきしょ徳本とくほん誓願せいがん (第二十願) によりて*すいしゃ*真門しんもんにいり、 *善本ぜんぽん徳本とくほんみょうごうえらびて万善まんぜんしょぎょうしょうぜんをさしおく。 しかりといへども、 じょうさんりきぎょうにんは、 不可ふか思議しぎぶっわくして信受しんじゅせず。 如来にょらい尊号そんごうをおのれが善根ぜんごんとして、 みづからじょうこうして*すいのちかひをたのむ。 不可ふか思議しぎみょうごうしょうねんしながら、 *不可ふかしょう不可ふかせつ不可ふか思議しぎだい誓願せいがんうたがふ。 そのつみふかくおもくして、 七宝しっぽう牢獄ろうごくにいましめられて、 いのちひゃくさいのあひだ、 ざいなることあたはず、 *三宝さんぼうをみたてまつらず、 つかへたてまつることなしと、 如来にょらいきたまへり。 しかれども、 如来にょらい尊号そんごうしょうねんするゆゑに、 *たいにとどまる。 徳号とくごうによるがゆゑに**なんおうじょうもうすなり。 不可ふか思議しぎ誓願せいがんわくするつみによりて**なんおうじょうとはもうさずとるべきなり。

弥陀経往生 ¬小経¼ に説かれる自力念仏の往生。 →さんおうじょう補註15
不果遂者 「はたしとげずはというなり」 (左訓)
善本徳本 自力の念仏のこと。 みょうごうにはいん法蔵ほうぞう菩薩の万善をおさめるから善本といい、 果位の阿弥陀仏の万徳を具するから徳本という。 自力念仏の人は名号の善根ぜんごん性にとらわれ、 多く称えて善根を積み、 救われようとするからとくにこの名を立てる。
果遂 「つひにはたすべしとなり」 (左訓)
難思往生 「自力の念仏者なり」 (左訓)
難思議往生 「本願他力の往生とまうす」 (左訓)

【13】じきしょ徳本とくほん願文がんもん、 ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、 「たとひわれぶつんに、 十方じっぽうしゅじょう、 わがみょうごうきて、 おもいをわがくにけて、 *もろもろの*徳本とくほんゑて、 しんいたこうしてわがくにうまれんとおもはん。 すいせずは、 しょうがくらじ」 と。

もろもろの徳本を植えて みょうごうを称えるという意

 同本どうほんやくの ¬りょう寿じゅ如来にょらい¼ (上) にのたまはく、 「もしわれじょうぶつせんに、 りょうこくのうちのしょしゅじょう、 わがかんをきて、 おのれが善根ぜんごんをもつて極楽ごくらくこうせん。 もしうまれずは、 だいらじ」 と。

 がん (第二十願) じょうじゅもん、 ¬きょう¼ (大経・下) にのたまはく、 「それたいしょうのもののしょするところの殿でん、 あるいはひゃくじゅん、 あるいはひゃくじゅんなり。 おのおのそのなかにして、 もろもろのらくくること、 *とうてんじょうのごとし。 またみなねんなり。 そのときに、 慈氏じしさつ (*弥勒)ぶつにまうしてまうさく、 ªそん、 なんのいんなんのえんにか、 かのくに人民にんみん*たいしょうしょうなるº と。 ぶつ慈氏じしげたまはく、 ªもししゅじょうあつて、 わくしんをもつてもろもろのどくしゅし、 かのくにうまれんとがんじて、 *ぶっ思議しぎ不可ふかしょうだいじょうこうとうりんさいじょうしょうさとらずして、 このしょにおいてわくしてしんぜず。 しかるになほ罪福ざいふくしんじて、 *善本ぜんぽんしゅじゅうして、 そのくにうまれんとがんぜん。 このもろもろのしゅじょう、 かの殿でんうまれて、 寿いのちひゃくさいならん。 つねにぶつたてまつらず、 きょうぼうかず、 さつしょうもんしょうじゅず。 このゆゑにかのこく、 これをたいしょうといふ。 ろくまさにるべし、 かのしょうのものは智慧ちえすぐれたるがゆゑに。 そのたいしょうのものはみな智慧ちえなしº。 ぶつろくげたまはく、 ªたとへば*転輪てんりんじょうおう七宝しっぽう牢獄ろうごくあり。 種々しゅじゅしょうごん*床帳じょうちょうちょうせつし、 もろもろの*繒幡ぞうばんけたらん。 もしもろもろのしょうおうつみおうたらん、 すなはちかのごくのうちにれて、 つなぐにこがねくさりをもつてせんがごとしº。 ぶつろくげたまはく、 ªこのもろもろのしゅじょう、 またまたかくのごとし。 ぶっわくするをもつてのゆゑに、 かのたいしょうず。 もしこのしゅじょう、 その*もとつみりて、 ふかくみづから*しゃくしてかのところはなれんともとめよ。 ろくまさにるべし、 それさつあつてわくしょうずるは、 *だいうしなふとすº」 と。

胎生化生 →たいしょう❷、 しょう
仏智不思議智… 阿弥陀仏の五智。 →しょ
床帳を張設し 坐臥する床を設け、 その上に幕 (帳) を張りめぐらして。
繒幡 うす絹でつくられたはたぼこ。
本の罪 仏智を疑惑した罪。
悔責 くいせめること。
大利 「涅槃のさとり」 (左訓)

 また ¬*りょう寿じゅ如来にょらい¼ (下) にのたまはく、 「ぶつろくげたまはく、 ªもししゅじょうあつて、 疑悔ぎけしたごうて善根ぜんごん積集しゃくじゅうして、 ぶっ*へん思議しぎ*とう*とく*広大こうだい希求けぐせんに、 みづからの善根ぜんごんにおいてしんしょうずることあたはず。 この因縁いんねんをもつて、 ひゃくさいにおいて殿でんのうちにじゅうすと。 いっ (弥勒)、 なんぢ*しゅしょうのものをそなはすに、 かのこうちからによるがゆゑに、 *かのしょうく。 れんのなかにおいて*けっ趺坐ふざす。 なんぢ*れつともがらそなはすに、 もろもろのどくしゅじゅうすることあたはざるがゆゑに、 *いんなくしてりょう寿じゅぶつ奉事ぶじせん。 このもろもろのひと、 みなむかし疑悔ぎけせんによつていたすところとするなりº と。 ぶつろくげたまはく、 ªかくのごとし、 かくのごとし。 もし疑悔ぎけしたごうて、 もろもろの善根ぜんごんゑて、 ぶっない広大こうだい希求けぐすることあらん。 みづからの善根ぜんごんにおいてしんしょうずることあたはず。 ぶつみなきて*信心しんじんおこすによるがゆゑに、 かのくにうまるといへども、 れんのうちにおいてしゅつげんすることをず。 かれらのしゅじょう*たいのうちにしょすること、 *園苑おんえん殿でんおもいのごとしº」。 乃至略出

普遍智 一切にあまねく満ちわたる智慧ちえ
無等智 並びなくすぐれた智慧。
威徳智 人間の思いをはるかに超えた、 すぐれた徳をそなえた智慧。
広大智 広く一切を知る智慧。
殊勝智のもの 化生の人は仏の諸智を得るから殊勝智 (ことにすぐれた智慧) の者という。 →しょう
かの化生…結跏趺坐す 「化身土巻」 では 「かの蓮華のなかに化生することを受けて結跏趺坐せん」 と読んでいる。 結跏趺坐は足の甲を左右のももの上に置く作法。
下劣の輩 胎生の人を指す。 →たいしょう
因なくして…奉事せん 明信仏智 (明らかに仏智の不思議を信じて疑いのないこと) の正因のないまま無量寿仏にお仕えすることになろう。 通常は 「って無量寿仏に奉事したてまつることなし」 と読む。
信心 ここでは自力の信のこと。
華胎 れんの胎内。
園苑 「うしろのその、 まへのその」 (左訓)

 こうみょう (善導)しゃく (*定善義) にいはく、 「はなふくんでいまだでず。 あるいは*辺界へんかいしょうじ、 あるいは*たいす」 と。

辺界 へんのこと。
宮胎 胎宮のこと。 →じょうたい

 *きょうごう (*述文賛) のいはく、 「ぶっうたがふによつて、 かのくにうまるといへども、 へんにあつて*しょうかぶらず。 もしたいしょうせば、 よろしくこれをおもつべし」 と。

聖化の事を被らず 阿弥陀仏の教化、 導きを受けることがない。

【14】これらの真文しんもんにて、 *なんおうじょうもうすことを、 よくよくこころえさせたまふべし。

  南無なも弥陀みだ仏 南無なも弥陀みだ仏 南無なも弥陀みだ

   *康元こうげんねん三月さんがつふつこれを書写しょしゃす。

康元二年 1257年。

                       禿とく親鸞しんらんはちじゅうさい