一念いちねんねん*もん

 

釈一念証文
  標挙

【1】 ^*一念いちねん*ひがごととおもふまじきこと

釈文
    釈往生礼讃文

 ^*恒願ごうがん*一切いっさいりんじゅ しょうえん勝境しょうきょうしつ現前げんぜん(*礼讃) といふは、

^ごう」 はつねにといふ、 「がん」 はねがふといふなり。 いまつねにといふは、 たえぬこころなり、 をりにしたがうて、 ときどきもねがへといふなり。 いまつねにといふは、 じょうにはあらず。 じょうといふは、 つねなること、 ひまなかれといふこころなり。 ときとしてたえず、 ところとしてへだてずきらはぬをじょうといふなり。

^一切いっさいりんじゅ」 といふは、 *極楽ごくらくをねがふよろづの*しゅじょう*いのちをはらんときまでといふことばなり。

^*しょうえん勝境しょうきょう」 といふは、 ぶつをもみたてまつり、 ひかりをもみ、 *きょうをもかぎ、 *ぜんしきのすすめにもあはんとおもへとなり。

^しつ現前げんぜん」 といふは、 さまざまのめでたきことども、 めのまへにあらはれたまへとねがへとなり。

一 Ⅱ 釈本願成就文
      挙文

【2】 ^¬*りょう寿じゅきょう¼ (下) のなかに、 あるいは 「*しょしゅじょう もんみょうごう 信心しんじんかん ない一念いちねん しんこう がんしょうこく 即得そくとくおうじょう じゅ退転たいてん」 ときたまへり。

一 Ⅱ ⅱ 随釈
        所有衆生

^しょしゅじょう」 といふは、 十方じっぽうのよろづのしゅじょうもうすこころなり。

一 Ⅱ ⅱ b 聞其名号

^もんみょうごう」 といふは、 *本願ほんがん*みょうごうをきくとのたまへるなり。 きくといふは、 本願ほんがんをききてうたがふこころなきを 「*もん」 といふなり。 またきくといふは、 信心しんじんをあらはすのりなり。

一 Ⅱ ⅱ b 信心二句

^信心しんじんかんない一念いちねん」 といふは、 「*信心しんじん」 は如来にょらいおんちかひをききてうたがふこころのなきなり。 ^**かん」 といふは、 「かん」 はをよろこばしむるなり、 「」 はこころによろこばしむるなり、 うべきことを*えてんずかねてさきよりよろこぶこころなり。 ^*ない」 は、 おほきをもすくなきをも、 ひさしきをもちかきを 、 さきをものちをも、 みなかねをさむることばなり。 ^*一念いちねん」 といふは信心しんじんをうるときのきはまりをあらはすことばなり。

一 Ⅱ ⅱ b 至心回向

^しんこう」 といふは、 ^*しん」 は真実しんじつといふことばなり、 *真実しんじつ弥陀みだ如来にょらいおんこころなり。 ^*こう」 は本願ほんがんみょうごうをもつて十方じっぽうしゅじょうにあたへたまふのりなり。

一 Ⅱ ⅱ b 願生彼国

^がんしょうこく」 といふは、 「*がんしょう」 はよろづのしゅじょう本願ほんがん*ほううまれんとねがへとなり。こく」 はかのくにといふ、 *安楽あんらくこくををしへたまへるなり。

一 Ⅱ ⅱ b 即得二句
          (一)随文正釈
            (Ⅰ)直釈

^*即得そくとくおうじょう」 といふは、 「そく」 はすなはちといふ、 ときをへず、 をもへだてぬなり。 ^また 「そくはつくといふ、 そのくらいさだまりつくといふことばなり。 ^*とく」 はうべきことをえたりといふ。 ^*真実しんじつ信心しんじんをうれば、 すなはち*無礙むげこうぶつおんこころのうちに*摂取せっしゅしててたまはざるなり。 ^せつはをさめたまふ、 しゅはむかへとるともうすなり。 をさめとりたまふとき、 すなはち、 とき・をもへだてず、 *正定しょうじょうじゅくらいにつきさだまるを 「おうじょう」 とはのたまへるなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)引証
              (ⅰ)正引
                (a)列文
                  (イ)必至滅度願文
                    [一]大経

【3】 ^しかれば、 ひっめつ誓願せいがん (第十一願) を ¬*だいきょう¼ (上)きたまはく、 「せつ得仏とくぶつ こくちゅう人天にんでん じゅじょうじゅ ひっめつしゃ しゅしょうがく」 とがんじたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(イ)[二]寿会

^また ¬きょう¼ (如来会・上) にのたまはく、 「にゃくじょうぶつ こくちゅうじょう にゃくけつじょう じょうとうしょうがく しょうだいはんしゃ しゅだい」 とちかひたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(a)(ロ)必至滅度成就文

^このがんじょうじゅを、 しゃ如来にょらいきたまはく、 「其有ごうしゅじょう しょうこくしゃ 皆悉かいしつじゅ 正定しょうじょうじゅ しょしゃ 仏国ぶっこくちゅう しょ邪聚じゃじゅ ぎゅうじょうじゅ(大経・下) とのたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)和読
                  (イ)因願
                    [一]大経

^これらのもんのこころは、 「たとひわれぶつたらんに、 くにのうちの*人天にんでん*じょうじゅにもじゅうして、 かならず*めついたらずは、 ぶつらじ」 とちかひたまへるこころなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(イ)[二]寿会

^またのたまはく、 「もしわれぶつらんに、 くにのうちの*じょう、 もしけつじょうして*とうしょうがくりて*だいはんしょうせずは、 ぶつらじ」 とちかひたまへるなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)成就

^かくのごとく*法蔵ほうぞうさつちかひたまへるを、 しゃ如来にょらい*じょくのわれらがためにきたまへるもんのこころは、 「それしゅじょうあつて、 *かのくにうまれんとするものは、 みなことごとく*正定しょうじょうじゅじゅうす。 ゆゑはいかんとなれば、 かの仏国ぶっこくのうちにはもろもろの*邪聚じゃじゅおよび*じょうじゅはなければなり」 とのたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)(ⅱ)結会
                (a)結合

^この*そんのりをみたてまつるに、 「すなはちおうじょうす」 とのたまへるは、 正定しょうじょうじゅくらいさだまるを 「*退転たいてんじゅうす」 とはのたまへるなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (一)(Ⅱ)(ⅱ)(b)会名

^このくらいさだまりぬれば、 かならずじょうだいはんにいたるべきとなるがゆゑに、 「とうしょうがくる」 ともき、 「*阿毘あびばっにいたる」 とも、 「*ゆいおっにいたる」 ともきたまふ。 「*そくにゅうひつじょう」 とももうすなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)引文助顕
            (Ⅰ)大経
              (ⅰ)標横超金剛心

【4】 ^この真実しんじつしんぎょう*りき*おうちょう*金剛こんごうしんなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅱ)正引釈
                (a)挙文

^しかれば、 念仏ねんぶつのひとをば ¬だいきょう¼ (下) には 「*にょろく」 ときたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)釈義
                  (イ)弁二種金剛心

^*ろくは、 *しゅ金剛こんごうしんさつなり。 しゅもうすはたたさまともうすことばなり。 これはしょうどう*りき*なんぎょうどうひとなり。 おうはよこさまにといふなり、 ちょうはこえてといふなり。 これは、 ぶつ*大願だいがん業力ごうりきふねじょうじぬれば、 *しょう大海だいかいをよこさまにこえて、 *真実しんじつほうきしにつくなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅰ)(ⅱ)(b)(ロ)正釈文義

^*にょろく」 ともうすは、 「」 はちかしといふ、 つぎにといふ。 ちかしといふは、 ろくだいはんにいたりたまふべきひとなり。 このゆゑに 「ろくのごとし」 とのたまへり。 念仏ねんぶつ信心しんじんひとだいはんにちかづくとなり。 つぎにといふは、 しゃぶつのつぎに、 *じゅうろくおく七千しちせんまんざいをへて*みょうがくくらいにいたりたまふべしとなり。

^にょ」 はごとしといふ。 ごとしといふは、 りきしんぎょうのひとは、 こののうちにて退たいくらいにのぼりて、 かならずだいはつはんのさとりをひらかんこと、 ろくのごとしとなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)浄土論
              (ⅰ)挙文

【5】 ^¬じょうろん¼ (*論註・下) にいはく、 「*きょうにのたまわく ªにゃくにん但聞たんもんこく 清浄しょうじょう安楽あんらく 剋念こくねんがんしょう 亦得やくとくおうじょう そくにゅう正定しょうじょうじゅº 此是しぜこくみょうぶつ あん思議しぎ」 とのたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅱ)和読

^このもんのこころは、 「ªもしひと、 ひとへにかのくに清浄しょうじょう安楽あんらくなるをきて、 *剋念こくねんしてうまれんとねがふひとと、 またすでに*おうじょうたるひとも、 すなはち正定しょうじょうじゅるなりº。 これはこれ、 かのくにみょうくに、 さだめて*ぶつをなす。 いづくんぞ*思議しぎすべきや」 とのたまへるなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅱ)(ⅲ)略釈

^安楽あんらくじょう*不可ふかしょう*不可ふかせつ*不可ふか思議しぎとくを、 もとめず、 しらざるに、 しんずるひとしむとしるべしとなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)浄土文
              (ⅰ)挙文

【6】 ^また*おうにっきゅうのいはく (*龍舒浄土文)、 「*念仏ねんぶつしゅじょう*便べんどうろく(意) といへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅲ)(ⅱ)釈義

^念仏ねんぶつしゅじょう」 は、 金剛こんごう信心しんじんをえたるひとなり。

^便べん」 はすなはちといふ、 たよりといふ。 信心しんじん*方便ほうべんによりて、 すなはち正定しょうじょうじゅくらいじゅうせしめたまふがゆゑにとなり。

^どう」 はおなじきなりといふ。 念仏ねんぶつひとじょうはんにいたること、 ろくにおなじきひとともうすなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)観経
              (ⅰ)挙文

【7】 ^また ¬きょう¼ (*観経) にのたまはく、 「*にゃく念仏ねんぶつしゃ とうにん にんちゅう ふん陀利だり」 とのたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅱ)釈義
                (a)直釈文義

^にゃく念仏ねんぶつしゃ」 ともうすは、 もし念仏ねんぶつせんひとともうすなり。

^とうにんにんちゅうふん陀利だり」 といふは、 まさにこのひとはこれ、 にんちゅう*ふん陀利だりなりとしるべしとなり。 これは如来にょらいのみことに、 ふん陀利だり念仏ねんぶつのひとにたとへたまへるなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)別挙五種嘉誉嘆
                  (イ)約能譬

^このはなは、 にんちゅう*上上じょうじょうなり、 こうなり、 *みょうこうなり、 *希有けうなり、 *さいしょうなりとほめたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅳ)(ⅱ)(b)(ロ)約所譬

*こうみょうしょう (*善導)おんしゃく (*散善義) には、 念仏ねんぶつひとをば、 上上じょうじょうにん好人こうにんみょうこうにん希有けうにんさいしょうにんとほめたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)観念法門
              (ⅰ)挙文

【8】 ^またげんしょうねんやくををしへたまふには、 「*たん専念せんねん 弥陀みだぶつしゅじょう ぶつ心光しんこう 常照じょうしょうにん しょうしゃ そうろん照摂しょうしょう 雑業ぞうごうぎょうじゃ やく げんしょうねん ぞうじょうえん(*観念法門) とのたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)(ⅱ)釈義
                (a)正釈

^このもんのこころは、 「たん専念せんねん弥陀みだぶつしゅじょう」 といふは、 ひとすぢに弥陀みだぶつしんじたてまつるともうことなり。

^ぶつ心光しんこう」 ともうすは、 「」 はかれともうす。 「*ぶつ心光しんこう」 ともうすは、 無礙むげこうぶつおんこころともうすなり。

^常照じょうしょうにん」 といふは、 「じょう」 はつねなること、 ひまなくたえずといふなり。 「しょう」 はてらすといふ。 ときをきらはず、 ところをへだてず、 ひまなく*真実しんじつ信心しんじんのひとをばつねにてらしまもりたまふなり。 かの*仏心ぶっしんにつねにひまなくまもりたまへば、 弥陀みだぶつをば*だんこうぶつもうすなり。 ^*にん」 といふは、 「」 はたいすることばなり。 真実しんじつしんぎょうのひとをばにんもうす。 *虚仮こけわくのものをばにんといふ。 にんといふは、 ひとにあらずときらひ、 わるきものといふなり。 にんはよきひとともうす。

^しょうしゃ」 ともうすは、 「しょう」 はをさめとるといふ。 ^」 はところをへだてず、 ときをわかず、 ひとをきらはず、 信心しんじんあるひとをばひまなくまもりたまふとなり。 まもるといふは、 *がくけんのともがらにやぶられず*べつべつぎょうのものに*さへられずてん*じゅんにをかされず、 *あく悪神あくじんなやますことなしとなり。 ^しゃ」 といふは、 信心しんじんのひとを、 *智慧ちえこうぶつおんこころにをさめまもりて、 心光しんこうのうちに、 ときとしててたまはずとしらしめんともうのりなり。

^そうろん照摂しょうしょう雑業ぞうごうぎょうじゃ」 といふは、 「そう」 はみなといふなり。 「ろん」 はいはずといふこころなり。 照摂しょうしょう」 はてらしをさむと。 「雑業ぞうごう」 といふは、 もろもろの善業ぜんごうなり。 *ぞうぎょうしゅし、 *雑修ざっしゅをこのむものをば、 すべてみなてらしをさむといはずと、 まもらずとのたまへるなり。 これすなはち本願ほんがんぎょうじゃにあらざるゆゑに、 摂取せっしゅやくにあづからざるなりとしるべしとなり。 このにてまもらずとなり。

^やくげんしょうねん」 といふは、 このにてまもらせたまふとなり。 本願ほんがん業力ごうりきは、 信心しんじんのひとの*強縁ごうえんなるがゆゑに、 *ぞうじょうえんもうすなり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅴ)(ⅱ)(b)引経結嘆

^信心しんじんをうるをよろこぶひとをば、 ¬きょう¼ (*華厳経・*入法界品) には 「*諸仏しょぶつとひとしきひと」 (意)きたまへり。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅵ)往生要集
              (ⅰ)挙文

【9】 ^*しゅりょうごんいん*源信げんしんしょうのたまはく、 「やくざい 摂取せっしゅちゅう 煩悩ぼんのうしょうげん すい能見のうけん だいけん 常照じょうしょうしん(*往生要集・中) と。

一 Ⅱ ⅱ b ヘ (二)(Ⅵ)(ⅱ)和読

^このもんのこころは、 「われまたかの*摂取せっしゅのなかにあれども、 *煩悩ぼんのうまなこを*さへて、 みたてまつるにあたはずといへども、 だい*ものうきことなくして、 つねにわがらしたまふ」 とのたまへるなり。

一 Ⅱ 釈付属流通文

【10】 (註:この段は 「*其有ごう得聞とくもん ぶつみょうごう かんやく ない一念いちねん とうにん どくだい そくそく じょうどく(大経・下) の釈。)

 ^其有ごう得聞とくもんぶつみょうごう(大経・下) といふは、 本願ほんがんみょうごうしんずべしと、 *しゃくそんきたまへるのりなり。

^かんやくない一念いちねん」 といふは、 *かん」 は、 うべきことをえてんずと、 さきだちてかねてよろこぶこころなり^」 はてんにをどるといふ、 「やく」 はにをどるといふ。 よろこぶこころのきはまりなきかたちなり。 きょうらくするありさまをあらはすなり。 きょうはうべきことをえてのちによろこぶこころなりらくはたのしむこころなり。 これは正定しょうじょうじゅくらいをうるかたちをあらはすなり。

^*ない」 は、 称名しょうみょう遍数へんじゅさだまりなきことをあらはす。 ^*一念いちねん」 はどくのきはまり、 一念いちねん万徳まんどくことごとくそなはる、 よろづのぜんみなをさまるなり。

^とうにん」 といふは、 信心しんじんのひとをあらはすのりなり。

^*とくだい」 といふは、 じょうはんをさとるゆゑに、 「そくそくじょうどく」 とものたまへるなり。 そく」 といふは、 すなはちといふ、 のりともうすことばなり。 ^如来にょらい本願ほんがんしんじて一念いちねんするに、 かならずもとめざるにじょうどくしめ、 しらざるに広大こうだいやくるなり。 *ねんにさまざまのさとりをすなはちひらく*法則ほうそくなり。 法則ほうそくといふは、 *はじめてぎょうじゃのはからひにあらず、 もとより不可ふか思議しぎやくにあづかること、 ねんのありさまともうすことをしらしむるを、 *法則ほうそくとはいふなり。 一念いちねん信心しんじんをうるひとのありさまのねんなることをあらはすを、 法則ほうそくとはもうすなり。

一 Ⅱ 追釈無邪定不定文

【11】 ^¬きょう¼ (大経・下) に 「*しょ邪聚じゃじゅぎゅうじょうじゅ」 といふは、 「」 はなしといふ。 「しょ」 はよろづのことといふことばなり。 「邪聚じゃじゅ」 といふは、 ぞうぎょう雑修ざっしゅまんぜんしょぎょうのひと、 ほうにはなければなりといふなり。 「ぎゅう」 はおよぶといふ。 ^じょうじゅ」 は、 りき念仏ねんぶつわく念仏ねんぶつひとは、 ほうになしといふなり。 正定しょうじょうじゅひとのみ真実しんじつほううまるればなり。

結示

 ^このもんどもは、 これ一念いちねんしょうもんなり。 おもふほどはあらはしまうさず。 これにておしはからせたまふべきなり。

釈多念証文
  標挙

【12】^ねんをひがごととおもふまじきこと

釈文
    本願乃至十念

 ^*本願ほんがんもんに、 「*ないじゅうねん」 とちかひたまへり。 すでに*じゅうねんちかひたまへるにてしるべし、 一念いちねんにかぎらずといふことを。 いはんや*ないちかひたまへり。 *称名しょうみょう遍数へんじゅさだまらずといふことを。 この誓願せいがんは、 すなはちおうぎょうのみちをあらはし、 だいだいのきはまりなきことをしめしたまふなり。

二 Ⅱ 阿弥陀経
      正釈文

【13】 ^¬*弥陀みだきょう¼ (意) に、 「一日いちにちない七日しちにちみょうごうをとなふべし」 と、 しゃ如来にょらいきおきたまへるのりなり。

二 Ⅱ ⅱ 示説意
        約能説相
          (一)正明

^この ¬きょう¼ は*もんせつきょうもうす。 この ¬きょう¼ をきたまひしに、 如来にょらいひたてまつるひともなし。

二 Ⅱ ⅱ b イ (二)示由

^これすなはちしゃくそん*しゅっ本懐ほんがいをあらはさんとおぼしめすゆゑに、 もんせつもうすなり。

二 Ⅱ ⅱ b 約所説事
          (一)正明

^弥陀みだせんじゃく本願ほんがん十方じっぽう諸仏しょぶつ*証誠しょうじょう諸仏しょぶつ*しゅっかい*恒沙ごうじゃ如来にょらい*ねんは、 諸仏しょぶつ*しゃおんちかひ (第十七願) をあらはさんとなり。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)挙所顕願
            (Ⅰ)引文

【14】^諸仏しょぶつ称名しょうみょう誓願せいがん (第十七願)、 ¬だいきょう¼ (上) にのたまはく、 「せつ得仏とくぶつ 十方じっぽうかい りょう諸仏しょぶつ しつしゃ しょうみょうしゃ しゅしょうがく」 とがんじたまへり。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅱ)和読

^このがんのこころは、 「たとひわれぶつたらんに、 十方じっぽうかいりょう諸仏しょぶつ、 ことごとくしゃして、 わがしょうせずは、 ぶつらじ」 とちかひたまへるなり。

二 Ⅱ ⅱ b ロ (二)(Ⅲ)釈咨嗟示願意

^しゃ」 ともうすは、 よろづのぶつにほめられたてまつるともうことなり。

二 Ⅱ 散善義

【15】 (註:この段は 「*一心いっしん専念せんねん 弥陀みだみょうごう 行住ぎょうじゅう座臥ざが もんせつごん 念々ねんねんしゃしゃ みょう正定しょうじょうごう じゅん仏願ぶつがん(散善義) の釈。)

 ^一心いっしん専念せんねん」 といふは、 「一心いっしん」 は金剛こんごう信心しんじんなり。 ^専念せんねん」 は*一向いっこう専修せんじゅなり。 一向いっこうは、 ぜんにうつらず、 ぶつねんぜず。 専修せんじゅは、 本願ほんがんのみなをふたごころなくもつぱらしゅするなり。 しゅは、 こころのさだまらぬをつくろひなほし、 おこなふなり。 せんはもつぱらといふ、 いちといふなり。 もつぱらといふは、 ぜんぶつにうつるこころなきをいふなり。

^行住ぎょうじゅう座臥ざがもんせつごん」 といふは、 「ぎょう」 はあるくなり、 「じゅ」 は*たたるなり、 「」 はゐるなり、 「」 はふすなり。もん」 はとはずといふなり。 「」 はときなり、 *じゅうなり。 「せつ」 はときなり、 じゅうがつ四季しきなり。 「」 はひさしき、 「ごん」 はちかしとなり。 ときをえらばざればじょうのときをへだてず、 よろづのことをきらはざればもんといふなり。

^みょう正定しょうじょうごうじゅん仏願ぶつがん」 といふは、 *ぜいしんずるを、 *ほう業因ごういんさだまるを、 正定しょうじょうごうとなづくといふ、 ぶつがんにしたがふがゆゑにともうもんなり。

二 Ⅱ 異学別解名
     

【16】^一念いちねんねんのあらそひをなすひとをば、 *がくべつのひとともうすなり。

二 Ⅱ ⅳ

^がくといふは、 しょうどう*どうにおもむきて、 ぎょうしゅし、 ぶつねんず、 吉日きちにちりょうしんをえらび、 *占相せんそうさいをこのむものなり。 これはどうなり、 これらはひとへに*りきをたのむものなり。

^べつは、 念仏ねんぶつをしながらりきをたのまぬなり。 ^べつといふは、 ひとつなることをふたつにわかちなすことばなり。 ^はさとるといふ、 とくといふことばなり。 念仏ねんぶつをしながらりきにさとりなすなり。 かるがゆゑにべつといふなり。

^また*助業じょごうをこのむもの、 これすなはちりきをはげむひとなり。 りきといふは、 わがをたのみ、 わがこころをたのむ、 わがちからをはげみ、 わがさまざまの善根ぜんごんをたのむひとなり。

二 Ⅱ 法事讃
      上尽等二句

【17】 (註:この段は 「*じょうじんいちぎょうじゅうねん 三念さんねんねんぶつ来迎らいこう じき弥陀みだぜいじゅう 致使ちしぼんねんそくしょう(*法事讃・下) の釈。)

 ^じょうじんいちぎょう」 といふは、 「じょう」 はかみといふ、 すすむといふ、 のぼるといふ、 いのちをはらんまでといふ。 ^じん」 はつくるまでといふ。 ^ぎょう」 はかたちといふ、 あらはすといふ。 念仏ねんぶつせんこといのちをはらんまでとなり。

^じゅうねん三念さんねんねんのものもむかへたまふ」 (意) といふは、 念仏ねんぶつ遍数へんじゅによらざることをあらはすなり。

二 Ⅱ ⅴ 直為等一句
        正釈

^じき弥陀みだぜいじゅう」 といふは、 「じき」 はただしきなり、 如来にょらい*直説じきせつといふなり。 諸仏しょぶつでたまふほんもうすを直説じきせつといふなり。 ^*」 はなすといふ、 もちゐるといふ、 さだまるといふ、 かれといふ、  れといふ、 あふといふ。 あふといふは、 かたちといふこころなり^じゅう」 はかさなるといふ、 おもしといふ、 あつしといふ。 誓願せいがんみょうごう、 これをもちゐさだめなしたまふことかさなれりとおもふべきことをしらせんとな 

二 Ⅱ ⅴ b 引証
          (一)略釈文義
            (Ⅰ)挙文

【18】^しかれば、 ¬だいきょう¼ (上) には、 「*如来にょらいしょ こうしゅつ於世おせ よくじょう群萌ぐんもう 恵以えい真実しんじつ之利しり」 とのたまへり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (一)(Ⅱ)釈義

^このもんのこころは、 「如来にょらい」 ともうすは諸仏しょぶつもうすなり。 「しょ」 はゆゑといふことばなり。 ^こうしゅつ於世おせ」 といふは、 ぶつでたまふともうすなり。

^よく」 はおぼしめすともうすなり。 「じょう」 はすくふといふ。 ^*群萌ぐんもう」 はよろづのしゅじょうといふ。 「」 はめぐむともうす。 ^真実しんじつ之利しり」 ともうすは弥陀みだ誓願せいがんもうすなり。

^しかれば、 諸仏しょぶつ世々よよでたまふゆゑは、 弥陀みだ願力がんりききて、 よろづのしゅじょうめぐすくはんとおぼしめすを、 本懐ほんがいとせんとしたまふがゆゑに、 真実しんじつ之利しりとはもうすなり。 しかれば、 これを諸仏しょぶつしゅっ直説じきせつもうすなり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)広釈真利
            (Ⅰ)諸善仮門
              (ⅰ)総標

^おほよそ*八万はちまんせん法門ほうもんは、 みなこれじょう方便ほうべんぜんなり。 これを*要門ようもんといふ、 これを*もんとなづけたり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅱ)示体

^この要門ようもんもんといふは、 すなはち ¬*りょう寿じゅぶつかんぎょう¼ いちきたまへる*じょうぜん*散善さんぜんこれなり。 じょうぜんじゅう三観さんがんなり、 散善さんぜん*三福さんぷく*ぼん*諸善しょぜんなり。 これみなじょう方便ほうべん要門ようもんなり、 これをもんともいふ。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅰ)(ⅲ)釈成

^この要門ようもんもんより、 もろもろのしゅじょうをすすめ*こしらへて、 *本願ほんがんいちじょうえんにゅう無礙むげ真実しんじつ*どくだい宝海ほうかいにをしへすすめれたまふがゆゑに、 よろづのりき善業ぜんごうをば方便ほうべんもんもうすなり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)本願真実
              (ⅰ)正釈
                (a)総釈

^いまいちじょうもうすは、 本願ほんがんなり。 えんにゅうもうすは、 よろづのどく善根ぜんごんみちみちて、 かくることなし、 ざいなるこころなり。 無礙むげもうすは、 煩悩ぼんのう悪業あくごうにさへられず、 やぶられぬをいふなり。 真実しんじつどくもうすはみょうごうなり。 *一実いちじつ*真如しんにょみょう円満えんまんせるがゆゑに、 だい宝海ほうかいにたとへたまふなり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)別釈
                  (イ)釈真実宝海

^一実いちじつ真如しんにょもうすはじょうだいはんなり。 はんすなはち*ほっしょうなり、 ほっしょうすなはち如来にょらいなり。 宝海ほうかいもうすは、 よろづのしゅじょうをきらはず、 さはりなくへだてず、 みちびきたまふを、 大海だいかいみずのへだてなきにたとへたまへるなり。

^*この一如いちにょ宝海ほうかいよりかたちをあらはして、 *法蔵ほうぞうさつとなのりたまひて、 無礙むげのちかひをおこしたまふをたねとして、 弥陀みだぶつとなりたまふがゆゑに、 *報身ほうじん如来にょらいもうすなり。 これをじん十方じっぽう*無礙むげこうぶつとなづけたてまつれるなり。 この如来にょらい*南無なも不可ふか思議しぎ光仏こうぶつとももうすなり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅰ)(b)(ロ)示全性修起

^この如来にょらいを、 *方便ほうべん法身ほっしんとはもうすなり。 方便ほうべんもうすは、 かたちをあらはし、 なをしめして、 しゅじょうにしらしめたまふをもうすなり。 すなはち弥陀みだぶつなり。 この如来にょらいこうみょうなり、 こうみょう智慧ちえなり、 *智慧ちえはひかりのかたちなり智慧ちえまたかたちなければ*不可ふか思議しぎ光仏こうぶつもうすなり。 この如来にょらい*十方じっぽうじんかいにみちみちたまへるがゆゑに、 *へん光仏こうぶつもうす。 しかれば、 しんさつ (*天親)*じん十方じっぽう無礙むげこう如来にょらいとなづけたてまつりたまへり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)引証
                (a)挙文

【19】 ^¬*じょうろん¼ にいはく、 「観仏かんぶつ本願ほんがんりき ぐうしゃ のうりょうそくまんぞく どくだい宝海ほうかい」 とのたまへり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(b)和読

^このもんのこころは、 「ぶつ本願ほんがんりき*かんずるに、 まうあうてむなしくすぐるひとなし。 よくすみやかにどくの大宝海ほうかい満足まんぞくせしむ」 とのたまへり。

二 Ⅱ ⅴ b ロ (二)(Ⅱ)(ⅱ)(c)釈義

^かん」 は願力がんりきをこころにうかべみるともうす、 またしるといふこころなり。 」 は*まうあふといふ、 まうあふともうすは本願ほんがんりきしんずるなり」 はなしといふ。 「」 はむなしくといふ。 「」 はすぐるといふ。 「しゃ」 はひとといふ。 むなしくすぐるひとなしといふは、 信心しんじんあらんひと、 むなしく*しょうにとどまることなしとなり。

^のう」 はよくといふ。 「りょう」 はせしむといふ、 よしといふ。 「そく」 はすみやかにといふ、 ときことといふなり。 「まん」 はみつといふ。 「そく」 はたりぬといふ。 「どく」 ともうすはみょうごうなり。 「だい宝海ほうかい」 はよろづの善根ぜんごんどくちきはまるをかいにたとへたまふ。 ^このどくをよくしんずるひとのこころのうちに、 すみやかにちたりぬとしらしめんとなり。 しかれば、 金剛こんごうしんのひとは、 しらず、 もとめざるに、 どく大宝だいほうそのにみちみつがゆゑに、 だい宝海ほうかいとたとへたるなり。

二 Ⅱ ⅴ 致使等一句
        挙文

【20】 (註:この段は 「じょうじんいちぎょうじゅうねん 三念さんねんねんぶつ来迎らいこう じき弥陀みだぜいじゅう 致使ちしぼんねんそくしょう(法事讃・下) の釈。)

 ^*使ぼんねんそくしょう」 といふは、

二 Ⅱ ⅴ c 別釈
          (一)総就一句釈

^」 はむねとすといふ。 むねとすといふは、 これをほんとすといふことばなり。 いたるといふ。 いたるといふは、 *じっぽうにいたるとなり。 「使」 はせしむといふ。 ^ぼん」 はすなはちわれらなり。 本願ほんがんりきしんぎょうするをむねとすべしとなり。 ^ねん」 は如来にょらいおんちかひをふたごころなくしんずるをいふなり。 ^そく」 はすなはちといふ、 ときをへず、 をへだてず、 正定しょうじょうじゅくらいさだまるを 「*そくしょう」 といふなり。 「しょう」 はうまるといふ。 これを 「ねんそくしょう」 ともうすなり。

^また 「そく」 はつくといふ。 つくといふは、 くらいにかならずのぼるべきといふなり。 ぞくのならひにも、 くにおうくらいにのぼるをばそくといふ。 といふはくらゐといふ。 これを*東宮とうぐうくらいゐるひとはかならずおうくらいにつくがごとく、 正定しょうじょうじゅくらいにつくは東宮とうぐうくらいのごとし。 おうにのぼるはそくといふ。 これはすなはちじょうだいはんにいたるをもうすなり。 信心しんじんのひとは正定しょうじょうじゅにいたりて、 かならずめついたるとちかひたまへるなり。 これを 「とす」 といふ。 むねとすともうすは、 はんのさとりをひらくをむねとすとなり。

二 Ⅱ ⅴ c ロ (二)別就凡夫釈
            (Ⅰ)正釈

^ぼん」 といふは、 *みょう煩悩ぼんのうわれらがにみちみちて、 よくもおほく、 いかり、 はらだち、 そねみ、 ねたむこころおほくひまなくして、 りんじゅう一念いちねんにいたるまで、 とどまらず、 きえず、 たえずと、 *すい二河にがのたとへにあらはれたり。 かかるあさましきわれら、 *願力がんりきびゃくどう一分いちぶんぶんやうやうづつあゆみゆけば、 無礙むげこうぶつのひかりのおんこころにをさめとりたまふがゆゑに、 かならず安楽あんらくじょうへいたれば、 弥陀みだ如来にょらいとおなじく、 かのしょうがくはな*しょうして*だいはつはんのさとりをひらかしむるをむねとせしむべしとなり。 これを 「致使ちしぼんねんそくしょう」 ともうすなり。

二 Ⅱ ⅴ c ロ (二)(Ⅱ)別釈一分二分

^二河にがのたとへに、 「一分いちぶんぶんゆく」 といふは、 一年いちねんねんすぎゆくにたとへたるなり。

二 Ⅱ ⅴ c 通結

^諸仏しょぶつしゅっ直説じきせつ如来にょらいじょうどうかいは、 ぼん弥陀みだ本願ほんがんねんぜしめてそくしょうするをむねとすべしとなり。

二 Ⅱ 往生礼讃
      前序文

【21】 (註:この段は 「*こんしん弥陀みだほんぜいがん ぎゅうしょうみょうごう下至げしじっしょういっしょうとう じょうとくおうじょう ない一念いちねん 無有むうしん(礼讃) の釈。)

 ^こんしん弥陀みだほんぜいがん ぎゅうしょうみょうごう」 といふは、 如来にょらいのちかひを*しんすともうすこころなり。

^しん」 といふは*金剛こんごうしんなり。 ^」 といふはしるといふ、 煩悩ぼんのう悪業あくごうしゅじょうをみちびきたまふとしるなり。 また 「」 といふはかんなり。 こころにうかべおもふをかんといふ、 こころにうかべしるを 「」 といふなり。

^ぎゅうしょうみょうごう」 といふは、 「ぎゅう」 はおよぶといふ。 およぶといふはかねたるこころなり。 ^しょう」 はなをとなふるとなり。 またしょうははかりといふこころなり。 はかりといふはもののほどをさだむることなり。 みょうごうしょうすること、 こえ一声ひとこえ、 きくひとうたがふこころ一念いちねんもなければ、 *じっぽううまるともうすこころなり。

二 Ⅱ ⅵ 巻末文

^また ¬弥陀みだ経¼ の 「七日しちにちもしは一日いちにちみょうごうをとなふべし」 となり。

結示
    別就当章結示

【22】^これはねんしょうもんなり。 おもふやうにはもうしあらはさねども、 これにて、 一念いちねんねんのあらそひあるまじきことは、 おしはからせたまふべし。

二 Ⅲ 通就一部結示

^*じょうしんしゅうのならひには、 *念仏ねんぶつおうじょうもうすなり、 まつたく一念いちねんおうじょうねんおうじょうもうすことなし、 これにてしらせたまふべし。

標号

 *南無なも弥陀みだぶつ

述由

 ^*ゐなかのひとびとの、 もんのこころもしらず、 あさましき*愚痴ぐちきはまりなきゆゑに、 やすくこころえさせんとて、 おなじことを、 とりかへしとりかへしきつけたり。 こころあらんひとは、 をかしくおもふべし、  ざけりをなすべし。 しかれども、 ひとのそしりをかへりみず、 ひとすぢにおろかなるひとびとを、 こころえやすからんとてしるせるなり。

 

年時撰号

   *康元こうげんさいひのとのみがつじゅう七日しちにち

       *禿とく*親鸞しんらんはちじゅうさいこれをく。

 

文意 「証文」 とする異本がある。
一念 →一念いちねん
恒願一切… 「つねに願はくは一切臨終の時、 勝縁・勝境ことごとく現前せん」
一切 「よろづのひとといふこころ」 (左訓)
いのちをはらんときまで 「恒願…」 の句は元来、 臨終迎接を願った文であるが、 親鸞聖人は 「臨終時」 を 「いのちをはらんときまで」 と読むことによって、 平生・臨終を通して摂取せっしゅしゃやくの顕現を願う意とした。
異香 「めでたき」 (左訓) 常にないたえなる香り。
諸有衆生… 「あらゆる衆生、 その名号を聞きて信心歓喜せんこと、 乃至一念せん。 至心に回向せしめたまへり。 かの国に生ぜんと願ぜば、 すなわち往生を得、 不退転に住せん」 (信巻訓)
歓喜といふは… 親鸞聖人は歓喜を必ず実現すると定まっていることがら (往生成仏の果) を待望してよろこぶ意とし、 慶(慶喜・慶楽) をすでにわが身の上に実現していることがら (現生で正定聚の位に入ること) をよろこぶ意とする。
えてんず きっと得るであろう。
 →ぎゃくとく
摂取して… →摂取せっしゅしゃ
正定聚 「往生すべき身とさだまるなり」 (左訓) →正定しょうじょうじゅ
等正覚 「まことのほとけになるべき身となれるなり」 (左訓) →とうしょうがく
大涅槃 「まことのほとけなり」 (左訓) →はん
かの国にうまれんと… 第十一願成就文の 「生彼国者」 は元来、 「かの国に生るれば」 と読まれるべきものであるが、 親鸞聖人はこれを 「かの国に生れんとするものは」 と読みかえて、 他力信心の行者が現生 (この世) で正定しょうじょうじゅの位に入ることを示した。
正定の聚に住す 「かならずほとけになるべき身となれるとなり」 (左訓) →正定しょうじょうじゅ
邪聚 「自力雑行雑修のひとなり」 (左訓) →じゃじょうじゅ
不定聚 「自力の念仏者なり」 (左訓) →じょうじゅ
不退転 「ほとけになるまでといふ」 (左訓) →退転たいてん
阿毘跋致 「ほとけになるべき身となるとなり」 (左訓) →阿毘あびばっ
即時入必定 「即の時に必定に入る」
次如弥勒 「念仏のひとは弥勒のごとくほとけになるべしとなり」 (左訓)
生死の大海 「六道にまどふを大海とたとふる。 大海はうみなり」 (左訓)
五十六億七千万歳 釈迦のにゅうめつから弥勒菩薩が成仏するまでの年数 (¬さつ処胎しょたいきょう¼ の説)。
妙覚 「まことのほとけなり」 (左訓) →みょうがく
経言 ¬大経¼ の第十八願文および ¬大阿弥陀経¼ ¬びょうどうがくきょう¼ 等の文を取意して引く。
剋念して ¬論註¼ の当分では 「克念して生ぜんと願ずれば、 また往生を得て、 すなわち正定聚に入る」 と読む。 剋念願生する者が浄土に往生して正定聚に入る義であるが、 親鸞聖人は原文を読みかえて、 剋念願生する者 (此土) と浄土に往生した者 (彼土) との二類の正定聚があることを示した。 剋念は心を専注して一心になること。 ここでは信心の異名。
思議すべきや 「おもひはかるべからずといふ。 こころもおよばず、 ことばもおよばれずとしるべしとなり」 (左訓)
不可称 「ことばもおよばずとなり」 (左訓)
不可説 「ときつくすべからずとなり」 (左訓)
念仏衆生… 「念仏の衆生はすなはち弥勒に同じ」 ¬りゅうじょじょうもん¼ の原文は 「一念往生便同弥勒」 となっている。
若念仏者… 「もし念仏するひとは、 まさに知るべし、 この人はこれ人中の分陀利華なり」 (信巻訓)
上上華 「すぐれたるはな」 (左訓)
妙好華 「めでたくよきすぐれたるはななりと」 (左訓)
希有華 「まれにありがたきはなとなり」 (左訓)
最勝華 「よろづのはなにすぐれたりとなり」 (左訓)
光明寺 「善導ぜんどうしょう御影みえどうの名なり」 (左訓) →こうみょう
但有専念… 「ただ阿弥陀仏を専念する衆生のみありて、 かの仏心の光、 つねにこの人を照らして摂護して捨てたまはず。 すべて余の雑業の行者を照らし摂むと論ぜず。 これまたこれ現生護念増上縁なり」 (信巻訓)
仏心光 大智大悲の仏心をもって念仏のしゅじょうをおさめとる摂取せっしゅの光明のこと。
是人 「是」 の字は ¬観念かんねん法門ぼうもん¼ の原文では単なる指示語であるが、 親鸞聖人はこれを 「非」 に対する語とみて、 真実しんぎょうの人を 「是人」 と讃嘆した。
虚仮疑惑 「むなしく、 かりなり、 うたがひまどふといふ」 (左訓)
異学意見 「ことごとをならひまなぶひとなり」 (左訓) →がくけんしゅう
別解別行 「念仏をしながら自力の心なるものなり」 (左訓) →べつべつぎょう
悪鬼悪神 仏法修行者をさまたげ、 しゅじょうを悩害するしゃせつなどのじん
増上縁 「すぐれたる強縁となり」 (左訓) →ぞうじょうえん
諸仏とひとしきひと →如来にょらいとひとし
摂取 「弥陀如来 (に) おさめとられまゐらせたりとしるべし」 (左訓) →摂取せっしゅ
さへて さえぎって。
ものうきことなくして 飽きることがない。 ここでは見捨てたもうことなくという意
其有得聞… 「それかの仏のみょうごうを聞くことを得て、 歓喜踊躍して乃至一念せんことあらん。 まさに知るべし、 この人は大利を得とす。 すなはちこれ無上のどくを具足するなり」 (行巻訓)
歓喜 「身をよろこばしむ、 心をよろこばしむとなり」 (左訓) →かん
一念 この一念について、 「行巻」 の釈と同じく行の一念と解する説、 後文に 「一念信心をうるひとの…」 とあることから、 信の一念と解する説とがある。
為得大利 「ほとけになるべきやくをうるなりとしるべしとなり」 (左訓)
法則 「ことのさだまりたるありさまといふこころなり」 (左訓)
無諸邪聚… 「もろもろの邪聚および不定聚なし」
本願の文 第十八願の文。
出世の素懐 「世に出でたまふとまうす。 もとのおんこころざしなり」 (左訓) 出世の本懐に同じ。
恒沙如来 「ほとけのおほくましますこと、 数きはまりなきことを恒河沙のいしにたとへまうすなり」 (左訓)
咨嗟 「ほめたてまつるとなり」 (左訓) →しゃ
一心専念… 「一心に弥陀のみょうごうを専念して、 行住座臥、 時節の久近を問はず、 念々に捨てざるをば、 これを正定しょうじょうの業と名づく、 かの仏願に順ずるがゆゑに」 (信巻訓)
たたる 立っている。
十二時 一昼夜を昼のたつうまひつじさると夜のとりいぬうしとらの十二の時点の分割したもの。
弘誓を… 「散善義」 では称名念仏を正定業というが、 念仏往生の弘誓 (本願) を信授したとき、 ほう往生の業因ごういんが定まるので、 ここでは信心を正定しょうじょうごうという。
報土の業因 本願に報いて完成された浄土に生れるべきたね (因種)。
異学別解 「ことごとをならひまなぶなり。 自力のひとなり」 (左訓) →がくけんしゅうべつべつぎょう
占相祭祀 「うら・さう・まつり・はらへなり」 (左訓) 占いをし、 吉凶の相をみること、 除災じょさいしょうふくの祭りやはらいをすること。
上一尽形… 「上一形を尽し、 十念・三念・五念に至るまで、 仏来迎らいこうしたまふ。 ただちに弥陀のぜい重なれるをもつて、 ぼん念ずればすなはち生ぜしむることを致す」 (化身土巻訓)
 「信巻」 には 「為」 の字訓として 「定」 (さだまる) 「用」 (もちゐる) 「彼」 (かれ) 「作」 (なす) 「是」 (これ) 「相」 (あふ) が示されている。
如来所以 「如来、 世に興出したまふゆゑは群萌を拯ひ、 恵むに真実の利をもってせんとおぼしてなり」 ¬大教¼ の原文は 「如来、 がいの大悲をもって三界さんがいを矜哀したまふ。 世に出興するゆゑは、 道教を光闡こうせんして、 群萌を救ひ恵むに真実の利をもってせんと欲してなり」 となっている。 「道教を光闡して」 の語を省略したのは、 道教を出世の本意ではない聖道教とみたためであろう。
八万四千の法門 八万四千は多数の意。 仏の説いた教法全体のことであるが、 親鸞聖人は本願 (第十八願) の法以外の自力方便の教えの意とする。
仮門 「かりなり、 まことならずとてなり」 (左訓) →もん
諸善 「よろづの善といふなり」 (左訓)
こしらへて 誘引して。 誘い導いて。
この一如宝海より… →補註1
智慧はひかりのかたちなり 「ひかりは智慧のかたちなり」 の意か。
観ずる 「みるなり、 しるこころなり」 (左訓) ここでは観を本願力を信知することの意とする。
まうあふ あいたてまつる。
致使凡夫… 「凡夫をして念ずれば、 すなはち生ぜしむることを致す」
即生 「すなはち生ると」 (左訓)
東宮 皇太子のこと。
水火二河のたとへ 善導ぜんどうだいの 「散善義」 にある臂喩。 水の河は貪欲とんよく、 火の河はしんに喩える。 →二河にがびゃくどう
願力の白道 水火二河の中間にある道で、 ぼんの信心が如来よりたまわったものであることを喩える。 →二河にがびゃくどう
今信知… 「いま弥陀のほんぜいがんは、 みょうごうを称すること下十声・一声に至るに及ぶまで、 さだめて往生を得と信知して、 すなはち一念に至るまで疑心あることなし」
実報土 「あんにょう浄土なり」 (左訓)
ゐなかの… ¬唯信鈔文意¼ にも同様の跋文がある。
康元二歳 1257年。