◎聞書

(1)

◎

一 ¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ の上じょうにいはく、

◎

一 ¬往生要集¼上云、

「天台てんだいの ¬十じゅう疑ぎ¼ にいふがごとし。 阿弥陀あみだ仏ぶつ、 別べつに大だい悲ひの四し十じゅう八願はちがんましまして、 衆しゅ生じょうを接しょう引いんしたまふ。 またかの仏ぶつの光こう明みょうあまねく法界ほっかいの念仏ねんぶつ衆しゅ生じょうを照てらして、 摂せっ取しゅして捨すてず。 十方じっぽうにおのおの恒ごう河が沙しゃ諸仏しょぶつ、 舌したを舒のべて三千さんぜん界かいに覆おおひて、 一切いっさい衆しゅ生じょう、 阿弥陀あみだ仏ぶつを念ねんじて、 仏ぶつの大だい悲ひ本願ほんがん力りきに乗じょうじて、 決けつ定じょうして極楽ごくらく世せ界かいに生しょうずることを得えることを証成しょうじょうしたまふ。

「▲如↢天台¬十疑ニ¼云ガ↡。阿弥陀仏別ニ有マシテ↢大悲ノ四十八願↡、接↢引シタマフ衆生ヲ↡。又彼ノ仏ノ光明遍ク照シテ↢法界ノ念仏衆生ヲ↡、摂取シテ不ズ↠捨。十方ニ各 ノ恒河沙諸仏、舒テ↠舌ヲ覆テ↢三千界ニ↡、証↧成シタマフ一切衆生念ジテ↢阿弥陀仏ヲ↡、乗ジテ↢仏ノ大悲本願力ニ↡、決定シテ得ルコトヲ↞生ルコト↢極楽世界ニ↡。

また ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ にのたまはく、 末まつ後ごの法滅ほうめつの時ときに、 ひとりこの経きょうを留とどめて百ひゃく年ねん世よにあらしめて、 衆しゅ生じょうを接しょう引いんし、 かの国こく土どに生しょうぜしめむ。 ゆゑに知しりぬ、 阿弥陀あみだ仏ぶつはこの世せ界かいの極悪ごくあくの衆しゅ生じょうと、 ひとへに因縁いんねんまします。 以上」

-◆又¬無量寿経ニ¼云ハク、末後ノ法滅之時ニ、特リ留メテ↢此ノ経ヲ↡百年在ラシメテ↠世ニ、接↢引衆生ヲ↡、生ゼシメム↢彼ノ国土ニ↡。故ニ知ヌ、阿弥陀仏ハ与ト↢此世界ノ極悪ノ衆生↡、偏ニ有マス↢因縁↡。已上」

(2)

一 ¬要よう集しゅう¼ の中ちゅうにいはく、 「問とふ。 いふところの弥陀みだの一身いっしんはすなはち一切いっさいの仏身ぶっしんなりといふことは、 なんの証しょう拠こかあるや。 答こたふ。 天台てんだい大だい師しのいはく、 阿弥陀あみだ仏ぶつを念ねんじたてまつればすなはちこれ一切いっさいの仏ぶつを念ねんずるなり。 ゆゑに ¬華け厳ごん経ぎょう¼ にのたまはく、 一切いっさいの諸仏しょぶつの身しんはすなはちこれ一仏いちぶつの身しんなり。 一心いっしんなり、 一いち智慧ちえなり。 力りき・無畏むいもまたしかなり。 以上」

一 ¬要集¼中云、「▲問。所ノ↠言フ弥陀ノ一身ハ即一切ノ仏身也ト云コト者ハ、有ヤ↢何ノ証拠カ↡。◆答。天台大師ノ云ハク、念ジタテマツレバ↢阿弥陀仏ヲ↡即是念ル也↢一切ノ仏ヲ↡。故ニ¬花厳経ニ¼云ハク、◆一切ノ諸仏ノ身ハ即是 レ一仏ノ身也。一心也、一智慧也。力・無畏モ亦然也。已上」

(3)

一 ¬要よう集しゅう¼ の上じょう末まつの注ちゅう書しょにいはく、

一 ¬要集¼上末 十六丁半 注書ニ云ハク、

「わたくしにいはく、 一切いっさいの仏ぶつとは、 これ弥陀みだの分身ぶんしんなり。 あるいはこれ十方じっぽう一切いっさいの諸仏しょぶつなり。」 乃至

「▲私云、一切ノ仏ト者ハ、是 レ弥陀ノ分身也。或ハ是 レ十方一切ノ諸仏。」 乃至

(4)

一 ¬要よう集しゅう¼ の下げにいはく、 「問とふ。 阿弥陀あみだ仏ぶつの極楽ごくらく浄じょう土どはこれなんの身しんなんの土どぞや。 答こたふ。 天台てんだいのいはく、 応身おうじんの仏ぶつ、 同どう居ご土どなり。 遠おん法ほっ師しのいはく、 これ応身おうじん応おう土どなり。 綽しゃく法ほっ師しのいはく、 これ報仏ほうぶつ報ほう土どなりと。 古こ旧きゅう等らの相伝そうでんに、 みな化土けど化け身しんといふ。 これ大だいナル失しつとなす。 ¬大だい乗じょう同どう性しょう経きょう¼ にのたまはく、 浄じょう土どの中なかの成じょう仏ぶつするものはことごとく報身ほうじんなり。 穢土えどの中なかに成じょう仏ぶつするものはことごとくこれ化け身しんなりと。

一 ¬要集¼下云、 大文第十 「▲問。阿弥陀仏ノ極楽浄土ハ是 レ何ノ身何ノ土ゾ耶ヤ。◆答。天臺ノ云ハク、応身ノ仏、同居土也。◆遠法師ノ云ハク、是 レ応身応土也。◆綽法師ノ云ハク、是 レ報仏報土也ト。古旧等ノ相伝ニ、皆云フ↢化土化身ト↡。此 レ為ス↢大ナル失ト↡。¬大乗同性経ニ¼云ハク、浄土ノ中ノ成仏スル者 ノハ悉ク報身。穢土ノ中ニ成仏スル者 ノハ悉ク是 レ化身也ト。

またかの ¬経きょう¼ にのたまはく、 阿弥陀あみだ如来にょらい・蓮れん華げ開かい敷ふ星しょう王おう如来にょらい・竜りゅう主しゅ如来にょらい・宝徳ほうとく如来にょらい等とうの、 もろもろの如来にょらいの清浄しょうじょう仏刹ぶっせつにして現げんに得道とくどうしたまへるもの、 まさに得道とくどうしたまへるごときもの、 かくのごとき一切いっさいみなこれ報身ほうじんの仏ぶつなりと。 何なに者ものか如来にょらいの化け身しんとならば、 なほ今日こんにちの踊歩ゆぶ健ごん如来にょらい・魔ま恐怖くふ如来にょらい等とうのごときなり。 以上 ¬安楽集¼」

-◆又彼ノ¬経ニ¼云ハク、阿弥陀如来・蓮花開敷星王如来・竜主如来・宝徳如来等ノ、諸ノ如来ノ清浄仏刹ニシテ現ニ得道シタマヘル者 ノ、如キ↢当ニ得道シタマヘル↡者、如↠是一切皆是 レ報身ノ仏也ト。何 ニ者 ノカ如来ノ化身トナラバ、由ナホ如キ也↢今日ノ踊歩健如来・魔恐怖如来等ノ↡。 已上¬安楽集¼」

(5)

またいはく、 「問とふ。 たとひ報ほう土どにあらずも、 惑業わくごう重おもきものはあに浄じょう土どを得えんや。 答こたふ。 天台てんだいのいはく、 無む量りょう寿じゅ国こくは果か報ほう殊しゅ勝しょうなりといへども、 臨りん終じゅうの時ときに懴さん悔げ念仏ねんぶつすれば、 業ごっ障しょうすなはち転てんじてすなはち往おう生じょうを得う。 惑染わくぜんを具ぐせりといへども、 願力がんりき心しんに持たもちてまた居こすることを得うるなりと。」

又云、「▲問。設ヒ非モ↢報土ニ↡、惑業重キ者 ノハ豈ニ得ムヤ↢浄土ヲ↡。◆答。天臺ノ云ク、无量寿国ハ雖モ↢果報殊勝也ト↡、臨終之時ニ懴悔念仏スレバ、業障便チ転ジテ即チ得↢往生ヲ↡。雖モ↠具セリト↢惑染ヲ↡、願力持テ↠心ニ亦得ル↠居スルコトヲ也ト。」

(6)

「また ¬十じゅう疑ぎ¼ に釈しゃくしていはく、 三種さんしゅの道どう理りをもつて軽重きょうじゅうを校量きょうりょうするに不ふ定じょうなり。 時じ節せつの久く近ごん・多た少しょうには在あらず。 いはく、 なにをか三とする。 一には心しんに在あり、 二には縁えんに在あり、 三には決けつ定じょうに在あり。 心しんに在ありとは、 罪つみを造つくる時ときは虚こ妄もう顛倒てんどうの心しんより生しょうず。 念仏ねんぶつの心しんは、 善ぜん知ぢ識しきに従したがひて阿弥陀あみだ仏ぶつの真実しんじつ功く徳どくの名みょう号ごうを説とくを聞きく心しんより生しょうず。 一は虚こ、 一は実じつなり。 あにあひ比ひすることを得えんや。」

-「▲又¬十疑ニ¼釈シテ云ハク、以テ↢三種ノ道理ヲ↡校↢量スルニ軽重ヲ↡不定也。不↠在ラ↢時節ノ久近・多少ニハ↡。云ク、何ヲカ為ル↠三ト。一者在リ↠心ニ、二者在リ↠縁ニ、三者在リ↢決定ニ↡。◆在ト↠心ニ者ハ、造ル↠罪ヲ之時ハ従↢ヨ自リ虚妄顛倒ノ心↡生ズ。念仏ノ心者ハ、従テ↢善知識ニ↡聞ク↠説クヲ↢阿弥陀仏ノ真実功徳ノ名号ヲ↡心ヨリ生ズ。一ハ虚、一ハ実也。豈ニ得ムヤ↢相 ヒ比スルコトヲ↡。」

(7)

「在ざい決けつ定じょうとは、 罪つみを造つくる時ときには有う間心けんしん・有後うごの心しんをもつてすとなり。 念仏ねんぶつの時ときには無む間心けんしん・無後むご心しんをもつてす。」

-「▲在決定ト者ハ、造ル↠罪ヲ之時ニハ以テスト↢有間心・有後ノ心ヲ↡也。念仏之時ニハ以テス↢无間心・无後心ヲ↡。」 乃至

(8)

一 大文だいもん第三だいさんに、 (要集巻上) 「西方さいほうの証しょう拠こを明あかさば、 二あり。 一は十方じっぽうに対たいす。 二は兜と率そつに対たいす。 初はじめに十方じっぽうに対たいすとは、 問とはく。 十方じっぽうに浄じょう土どあり。 なんぞただ極楽ごくらくに生しょうぜんとのみ願がんずるや。 答こたふ。 天台てんだい大だい師しいはく、 諸しょ経きょう論ろんに、 処々しょしょにただ衆しゅ生じょうを勧すすめてひとへに阿弥陀あみだ仏ぶつを念ねんじ、 西方さいほうの極楽ごくらく世せ界かいを求もとめしめたり。 ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼・¬観かん経ぎょう¼・¬往おう生じょう論ろん¼ 等とうの数すう十じゅう余部よぶの経きょう論ろんの文もんに、 慇懃おんごんに指し授じゅして西方さいほうに生しょうずることを勧すすめたり。 これをもつてひとへに念ねんずるなりと。 以上」

一 大文第三 (要集巻上)、「▲明サ↢西方ノ証拠ヲ↡者バ、有↠二。一ハ対↢十方ニ↡。二ハ対↢兜率ニ↡。◆初ニ対スト↢十方ニ↡者ハ、◆問ハク。十方ニ有↢浄土↡。何ゾ唯タヾ願ズル↠生ムトノミ↢極楽ニ↡耶ヤ。◆答。天臺大師云、諸経論ニ、処々ニ唯勧メテ↢衆生ヲ↡偏ニ念ジ↢阿弥陀仏ヲ↡、令タリ↠求メ↢西方ノ極楽世界ヲ↡。¬无量寿経¼・¬観経¼・¬往生論¼等ノ数十余部ノ経論ノ文ニ、慇懃ニ指授シテ勧タリ↠生コトヲ↢西方ニ↡。是ヲ以テ偏ニ念ル也ト。已上」

(9)

一 ¬要よう集しゅう¼ の下げにいはく、 「問とふ。 不ふ信しんのものいかなる罪報ざいほうを得う。 答こたふ。 ¬称しょう揚よう諸仏しょぶつ功く徳どく経きょう¼ の下げ巻かんにのたまはく、「それ阿弥陀あみだ仏ぶつの名みょう号ごうの功く徳どくを讃嘆さんだんし称しょう揚ようするを信しんぜずして、 謗ほう毀きすることあらむものは、 五劫こうの中なかにまさに地じ獄ごくに堕だして、 つぶさにもろもろの苦くを受うくべし。」 以上

一 ¬要集¼下云、「▲問。不信之ノ者得↢何ナル罪報ヲ↡。◆答フ。¬称揚諸仏功徳経ノ¼下巻ニ云ク、「其 レ有ラム↧不シテ↠信ゼ↤讃↢嘆シ称↣揚スルヲ阿弥陀仏ノ名号ノ功徳ヲ↡、而謗↥毀スルコト者 ノハ、五劫之ノ中ニ当ニシ↧堕シテ↢地獄ニ↡、具ニ受ク↦衆ノ苦ヲ↥。」 已上

(10)

またいはく、 (要集巻中) 「あるいはかの仏ぶつこの三身さんしん一体いったいの身しんを応現おうげんしたまふなり。 かの一身いっしんにおいて所見しょけん不ふ同どうなり。 あるいは丈じょう六ろく、 あるいは八はっ尺しゃく、 あるいは広大こうだい身しんなり。 所現しょげんみな金色こんじきなり。 利り益やくするところおのおの無む量りょうなり。 一切いっさい諸仏しょぶつとその事じ同一どういつなり。 化身」 乃至

又云、「▲或応↢現シタマフ彼仏是三身一体之身ヲ↡也。◆於テ↢彼一身ニ↡所見不同也。或丈六、或八尺、或広大身。所現皆金色也。所↢利益↡各无量也。与↢一切諸仏↡其事同一也。化身」 乃至

(11)

またいはく、 (要集巻中) 「行住ぎょうじゅう坐臥ざが、 語ご黙もく作々ささ。」 乃至

又云、「▲行住坐臥、語黙作々。」 乃至

(12)

一 ¬要よう集しゅう¼ の中ちゅうに、 「¬仏蔵ぶつぞう経きょう¼ の 「念仏ねんぶつ品ぼん」 にのたまはく、 所しょ有うなしと見みるを名なづけて念仏ねんぶつとなす、 諸法しょほう実相じっそうを見みるを名なづけて念仏ねんぶつとなす。 分別ふんべつあることなく、 取とることなく捨すつることなき、 これを真しんの念仏ねんぶつとす。 以上」

一 ¬要集¼中 末、「▲¬仏蔵経ノ¼「念仏品ニ」云、見ヲ↠无シト↢所有↡名テ為ス↢念仏ト↡、見ヲ↢諸法実相ヲ↡名テ為ス↢念仏ト↡。无ク↠有ルコト↢分別↡、无↠取无キ↠捨コト、是ヲ真ノ念仏トス。已上」

(13)

一 ¬要よう集しゅう¼ の下げ本ほんに、 「迦か才ざいのいはく、 衆しゅ生じょう行ぎょうを起おこすにすでに千殊せんじゅあれば、 往おう生じょうして土どを見みこともまた万別まんべつあるなり。」

一 ¬要集¼下本、「▲迦才云、「衆生起スニ↠行ヲ既ニ有レバ↢千殊↡、往生シテ見コトモ↠土ヲ亦有ル↢万別↡也。」

(14)

一 ¬要よう集しゅう¼ の下げ本ほんに、 「¬十じゅう二に仏ぶつ名みょう経きょう¼ の偈げにのたまはく、 もし人ひと仏ぶつ名みょうを持たもてば衆しゅ魔まおよび波は旬じゅん、 行住ぎょうじゅう坐臥ざがの処ところに、 その便たよりを得うることあたはず。」

一 ¬要集¼下本、「▲¬十二仏名経¼偈云、若人持テバ↢仏名ヲ↡衆魔及波旬、行住坐臥ノ処、不ズ↠能ハ↠得コト↢其ノ便 リヲ↡。」

(15)

一 ¬要よう集しゅう¼ の下げ末まつに、

一 ¬要集¼下末 十二丁、

「一切いっさいの万法まんぽうはみな自じ力りき・他た力りき、 自じ摂しょう・他た摂しょうにあり。 千開せんかい万閉まんぺい、 無む量りょう無む辺へんなり。 あに有礙うげの識さとりをもつてかの無礙むげの法ほうを疑うたがふことを得えむや。 また五不ごふ思議しぎの中なかには仏法ぶっぽうもつとも不可ふか思議しぎなり。 あに三界さんがいの繋け業ごうをもつて重おもしとなして、 かの少しょう時じ念法ねんぽうを疑うたがひて軽かろしとせんや。 以上略抄 」

「▲一切ノ万法ハ皆有リ↢自力・他力、自摂・他摂ニ↡。千開万閉、無量无辺也。豈ニ得エム↧以テ↢有礙之ノ識サトリヲ↡疑フコト↦彼ノ无礙之ノ法ヲ↥乎ヤ。又五不思議ノ中ニハ仏法最モ不可思議也。豈ニ以テ↢三界ノ繋業ヲ↡為シテ↠重シト、疑テ↢彼ノ少時念法ヲ↡為ムヤ↠軽シト。已上略抄」

(16)

一 ¬要よう集しゅう¼ の上じょう末まつにいはく、

一 ¬要集¼上末云、

「¬涅ね槃はん経ぎょう¼ の三十二にのたまはく、 善男ぜんなん子し、 もし人ひとありて問とはく、 この種しゅ子しの中なかには果かありや、 果かなきや。 さだめて答こたへていふべし、 または有ありまたは無なしと。 なにをもつてのゆゑに。 子たねを離はなれてほかに果かを生しょうずることあたはず。 このゆゑにありと名なづく。 子たねいまだ牙くきを出いださず。 このゆゑになしと名なづく。 この義ぎをもつてのゆゑに、 亦やく有う亦やく無むなり。

「▲¬涅槃経¼卅二ニ云ク、善男子、若シ有テ↠人問ハク、是ノ種子ノ中ニハ有ヤ↠果、无↠果耶ヤ。応シ↢定テ答テ言フ↡、亦ハ有亦ハ無ト。何ヲ以ノ故ニ。離テ↠子タネヲ之外ニ不ズ↠能ハ↠生ズルコト↠果ヲ。是ノ故ニ名ク↠有ト。子未ズ ダ↠出↠牙クキヲ。是ノ故ニ名ク↠无ト。以ノ↢是ノ義ヲ↡故ニ、亦有亦无也。

ゆゑはなんとなれば、 時じ節せつは異いあれどもその体たいこれ一いちなり。 衆しゅ生じょうの仏ぶっ性しょうもまたかくのごとし。 もし衆しゅ生じょうの中なかに別べつに仏ぶっ性しょうありといはば、 この義ぎしからず。 なにをもつてのゆゑに。 衆しゅ生じょうはすなはち仏ぶっ性しょうなり、 仏ぶっ性しょうすなはち衆しゅ生じょうなり。 ただちに時異じいをもつて浄じょう・不ふ浄じょうあり。 善男ぜんなん子し、 もし有あるといはば人ひと問とひていわく、 この子たねはよく果かを生しょうずやいなや、 この果かよく子たねを生しょうずやいなやと。 さだめて答こたへていふべし、 または生しょうじ、 または生しょうぜずと。以上」

-◆所以者ハ何レバ、時節ハ有レドモ↠異其体是一也。衆生ノ仏性モ亦復如↠是。若シ言ハ↣衆生ノ中ニ別ニ有ト↢仏性↡者、是義不↠然。何ヲ以ノ故ニ。衆生ハ即仏性也、仏性即衆生也。直ニ以↢時異ヲ↡有↢浄・不浄↡。◆善男子、若有ルトイハヾ人問テ言ク、是ノ子タネハ能ク生ズヤ↠果ヲ不ヤ、是ノ果能生ズヤ↠子ヲ不ヤト。応シ↢定テ答テ言↡、亦ハ生ジ、亦ハ不ト↠生ゼ。已上」

(17)

一 ¬要よう集しゅう¼ の下げにいはく、

一 ¬要集¼下云、

「一は旃檀せんだん樹じゅの出成しゅつじょうする時ときには、 よく四十由ゆ旬じゅんの伊い蘭らん林りんを変へんじてあまねくみな香こう美みならしむ。

「▲一ハ旃檀樹ノ出成スル時ニハ、能ク変ジテ↢四十由旬ノ伊蘭林ヲ↡普ク皆香美カウバシクナラシム。

二は師子ししの筋すぢを用もちいてもつて琴ことの絃おとすれば、 音おん声じょう一たび奏そうすれば、 一切いっさいの余よの絃おをばことごとくみな断だん壊えしぬ。

-◆二ハ用テ↢師子ノ筋スヂヲ↡以テ為スレバ↢琴ノ絃オ↡ト、音声一ビ奏スレバ、一切ノ余絃ヲバ悉ク皆断壊シヌ。

三は一斤こんの石いし汁じるよく千斤せんごんの銅あかがねを変へんじて金こがねとなす。

-◆三ハ一斤コンノ石汁ジル能ク変ジテ↢千斤ノ銅アカヾネヲ↡為ス↠金ト。

四は金剛こんごう堅けん固ごなりといへども、 羖羊 ひつじ の角つのをもつてこれを扣たたけば、 すなはち潅かん然ねんとして氷こおりのごとく泮とけぬ。 以上 滅罪譬 

-◆四ハ金剛雖モ↢堅固也ト↡、以テ↢羖羊 ヒツジ ノ角ツノヲ↡扣タタケバ↠之ヲ、則チ潅クワン然トシテ氷ノゴトク泮トケヌ。已上 滅罪譬 

五は雪山せっせんに草くさあり、 名なづけて忍辱にんにくとなす。 牛うしもし食じきすればすなはち醍だい醐ごを得う。

-◆五ハ雪山ニ有リ↠草、名テ為ス↢忍辱ト↡。牛若シ食スレ者バ即得↢醍醐ヲ↡。

六は沙しゃ河か薬やくにおいてただ見みることあるものは、 寿いのち無む量りょうなることを得う。 乃ない至し念ねんずるものは宿命しゅくみょう智ちを得う。

-◆六ハ於テ↢沙河薬ニ↡但有ル↠見コト者 ノハ、得ウ↢寿无量ナルコトヲ↡。乃至念ズル者 ノハ得ウ↢宿命智ヲ↡。

七は孔く雀じゃく雷いかづちの声こえを聞ききて有身 はら むことを得う。

-◆七ハ孔雀聞テ↢雷ノ声ヲ↡得ウ↢有身 ハラ ムコトヲ。

八は尸利しり沙しゃは昴ぼう星せいを見みてすなはち菓か実じつを出生しゅっしょうす。 以上生善喩 

-◆八ハ尸利沙ハ見テ↢昴バウ星ヲ↡則出↢生ス菓実ヲ↡。 已上生善喩 

九は住じゅう水すいの宝たからをもつてその身みに瓔珞ようらくしつれば深水じんすいの中なかに入いるに没しずみ溺おぼれず。

-◆九ハ以テ↢住水ノ宝ヲ↡瓔↢珞シツレバ其ノ身ニ↡入ルニ↢深水ノ中ニ↡而不↢没シヅミ溺オボレ↡。

十は沙しゃ礫りゃくはもつとも少ちいさしといへどもなほし水みずに浮うかぶことあたはず。 磐ばん石じゃく大だいなりといへども船ふねに寄いれつればよく浮うかぶ。 以上総譬

-◆十ハ沙礫ハ雖モ↢最モ少サシト↡尚シ不ズ↠能ハ↠浮ブコト↠水ニ。磐石雖モ↠大也ト寄イレツレバ↠船ニ能ク浮ブ。已上総譬

諸法しょほうの力用りきゆう、 思おもひがたきことかくのごとし。 念仏ねんぶつの功く力りき、 これに准なぞらへて疑うたがふことなかれ。」 云々

-◆諸法ノ力用、難キコト↠思ヒ如シ↠是ノ。念仏ノ功力、准テ↠之ニ莫レ↠疑フコト。」 云々

(18)

一 ¬要よう集しゅう¼ の中ちゅう巻かん大文だいもん第だい五ごにいはく、 「もし念珠ねんじゅを用もちいん時ときに、 浄じょう土どを求もとめむと欲おもはば木槵もくげん子しを用もちいよ。 功く徳どくを多おおくせんと欲おもはば菩ぼ提だい子しを用もちいよ。 乃ない至しあるひは水すい精しょう・蓮れん子し等とう。 云々 ¬念珠ねんじゅ功く徳どく経きょう¼ を見みよ

一 ¬要集¼中巻大文第五云、「▲若用ム↢念珠ヲ↡時ニ、欲ハヾ↠求ムト↢浄土ヲ↡用ヨ↢木槵子ヲ↡。欲ハヾ↠多ムト↢功徳ヲ↡用ヨ↢菩提子ヲ↡。乃至或ハ水精・蓮子等。 云々 見ヨ↢¬念珠功徳経ヲ¼↡」

(19)

一 ¬要よう集しゅう¼ の大文だいもん第だい二に (巻上) にいはく、 「地じ蔵ぞう菩ぼ薩さつは、 毎日まいにちの晨じん朝じょうに恒沙ごうじゃの定じょうに入いりて、 法界ほっかいに周しゅう遍へんして苦くの衆しゅ生じょうを抜ぬく。 所しょ有うの悲ひ願がん余よの大だい士じに超こえたり。 ¬十じゅう輪りん経ぎょう¼ の意こころ

一 ¬要集¼大文第二云、「▲地蔵菩薩ハ、毎日ノ晨朝ニ入テ↢恒沙ノ定ニ↡、周↢遍シテ法界ニ↡抜ヌク↢苦ノ衆生ヲ↡。所有ノ悲願超タリ↢余ノ大士ニ↡。¬十輪経¼意

かの ¬経きょう¼ の偈げにいはく、 一日いちにち地じ蔵ぞうの功く徳どく、 大だい名みょう聞もんを称しょうするは、 倶く胝てい劫こうの中なかに、 余よの智ち者しゃの徳とくを称しょうするに勝すぐれたり。 たとひ百ひゃく劫こうの中なかにその功く徳どくを讃説さんせつすとも、 なほ尽つくすことあたはず。 ゆゑにみなまさに供く養ようすべし。

-◆彼ノ¬経ノ¼偈ニ云、一日称ルハ↢地蔵ノ功徳、大名聞ヲ↡、勝タリ↣倶胝劫ノ中ニ、称スルニ↢余ノ智者ノ徳ヲ↡。◆仮使ヒ百劫ノ中ニ讃↢説トモ其ノ功徳ヲ↡、猶尚 ナホ 不ズ↠能ハ↠尽コト。故ニ皆当ニシ↢供養ス↡。

観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつのいはく、 衆しゅ生じょう苦くありて三たびわが名なを称しょうせんに、 往ゆきて救すくはずといはば正しょう覚がくを取とらじ。 ¬弘ぐ猛みょう海かい恵え経きょう¼ の意こころ

-◆観世音菩薩ノ言ク、衆生有テ↠苦三ビ称セムニ↢我名ヲ↡、不トイハ↢往テ救ハ↡者バ不↠取↢正覚ヲ↡。 ¬弘グ猛ミヤウ海恵経¼意

もし百ひゃく千せん倶く胝てい那庾多なゆたの諸仏しょぶつの名みょう号ごうを称しょう念ねんすることあらん。 またしばらくの時ときにわが名みょう号ごうにおいて心こころを至いたして称しょう念ねんすることあらん。 かの二功く徳どくは平びょう等どう平びょう等どうなり。 もろもろのわが名みょう号ごうを称しょう念ねんすることあるものは、 一切いっさいみな不ふ退転たいてん地じを得うるなり。 ¬十じゅう一面いちめん経ぎょう¼

-◆若有ラム↣称↢念スルコト百千倶胝那庾多ノ諸仏ノ名号ヲ↡。復有ラム↧暫クノ時ニ於テ↢我ガ名号ニ↡至シテ↠心ヲ称念スルコト↥。彼ノ二功徳ハ平等平等也。諸ノ有ル↣称↢念スルコト我ガ名号ヲ↡者 ノハ、一切皆得ル也↢不退転地ヲ↡。 ¬十一面経¼

衆しゅ生じょう名なを聞ききて苦くを離はなれて解げ脱だつを得えんと。 また地じ獄ごくに遊戯ゆげして、 大だい悲ひ代かわりて苦くを受うけん」 ¬請しょう観音かんのん経ぎょう¼ の偈げ 」

-◆衆生聞テ↠名ヲ離テ↠苦ヲ得ムト↢解脱ヲ↡。亦遊↢戯シテ地獄ニ↡、大悲代テ受ケム↠苦ヲ ¬請観音経¼偈」

(20)

一 ¬要よう集しゅう¼ の大文だいもん第八だいはち (巻下) にいはく、 「¬占察せんざつ経きょう¼ の下げ巻かんにのたまはく、 もし人ひと他た方ほう現在げんざいの浄じょう国こくに生しょうぜんと欲おもはば、 まさにかの世せ界かいの仏ぶつの名みょう字じに随したがひて、 専せん意い誦念じゅねんして一心いっしんにして不ふ乱らんにすべし。 上かみのごとく観察かんざつするものは、 決けつ定じょうしてかの仏ぶつの浄じょう国こくに生しょうずることを得う。 善根ぜんごん増ぞう長じょうして、 すみやかに不ふ退たいを成じょうぜん。 上かみの観察かんざつのごとくは、 地じ蔵ぞう菩ぼ薩さつの法身ほっしんおよび諸仏しょぶつの法身ほっしんの上うえにおのれ自じ身しんとを観かんずるなり。 平びょう等どう無二むに也なり、 不ふ生しょう不ふ滅めつなり、 常じょう楽らく我が浄じょうにして、 功く徳どく円満えんまんせりと。 またおのが身みは無む常じょうなり、 如幻にょげんなり、 厭いとふべきと等ら観かんずるなり。」

一 ¬要集¼大文第八云、「▲¬占察経ノ¼下巻ニ云ク、若人欲ハ↠生ムト↢他方現在浄国ニ↡者バ、応シ↧当ニ随テ↢彼ノ世界ノ仏之名字ニ↡、専意誦念シテ一心ニシテ不乱ニス↥。如↠上ノ観察スル者 ノハ、決定シテ得ウ↠生コトヲ↢彼ノ仏ノ浄国ニ↡。善根増長シテ、速ニ成ゼム↢不退ヲ↡。◆如ク↢上ノ観察ノ↡者ハ、観ズル也↠於ヲ↢地蔵菩薩ノ法身及ビ諸仏ノ法身上己自身ト↡。平等无二也、不生不滅也、常楽我浄ニシテ、功徳円満セリト。又観ズル↢己ガ身ハ无常也、如幻也、可キト↠厭フ等ラ↡也。」

(21)

一 ¬要よう集しゅう¼ の大文だいもん第だい十じゅう (巻下) にいはく、 「問とふ。 極楽ごくらく世せ界かいは去さることいくばくの処ところぞ。 答こたふ。 ¬経きょう¼ にのたまはく、 これより西方さいほう十じゅう万億まんおくの仏ぶつ土どを過すぎて極楽ごくらく世せ界かいあり。 ある ¬経きょう¼ にのたまはく、 これより西方さいほうにこの世せ界かいを去さること百ひゃきゅ千せん倶く胝てい那庾多なゆたの仏ぶつ土どを過すぎて仏ぶつの世せ界かいあり。 名なづけて極楽ごくらくといふ。

一 ¬要集ノ¼大文第十云、「▲問。極楽世界ハ去サルコト幾ノ処ゾ。◆答。¬経¼云ク、従↠此西方過テ↢十万億ノ仏土ヲ↡有リ↢極楽世界↡。◆有ル¬経ニ¼云、従↠是西方ニ去サルコト↢此ノ世界ヲ↡過スギテ↢百千倶胝那庾多ノ仏土ヲ↡有↢仏ノ世界↡。名テ曰フ↢極楽ト↡。

問とふ。 二経きょうなにゆゑぞ不ふ同どうなる。 答こたふ。 ¬論ろん¼ の智ち光こうの ¬疏しょ¼ の意こころにいはく、 倶く胝ていといふは、 ここには億おくとなすなり。 那庾多なゆたとは、 この間けんの欬がい数しゅに当あたれり。 世せ俗ぞくのいはく、 十千せんを万まんといふ。 十万まんを億おくといふ。 十億おくを兆ちょうといふ。 十兆ちょうを経けいといふ。 十経けいを欬がいといふ。 欬がいはなほこれ大数だいしゅなり。 百ひゃく千せん倶く胝ていはすなはち十万億まんおく也なり。 億おくに四位いあり。 一は十じゅう万まん、 二は百ひゃく万まん、 三は千万せんまん、 四は万々まんまんなり。 いま億おくといふはすなはちこれ万々まんまんなり。」 以上

-◆問。二経何故ゾ不同ナル。◆答。¬論ノ¼智光ノ¬疏ノ¼意ニ云ク、言↢倶胝↡者、此ニハ為ス↠億ト也。那庾多ト者ハ、当アタレリ↢此間ノ欬ガイ数シユニ↡也。世俗ノ言ク、十千ヲ曰↠万ト。十万ヲ曰↠億ト。十億ヲ曰フ↠兆テウト。十兆ヲ曰フ↠経ト。十経ヲ曰↠欬ガイト。欬ハ猶 ホ是 レ大数シユ也。百千倶胝ハ即十万億也。億ニ有リ↢四位↡。一者十万、二者百万、三者千万、四者万々也。今言フ↠億ト者ハ即是万々也。」 已上

(22)

またいはく、 「経きょう巻かんを誦じゅ持じし、 最さい後ごに守まもること一日いちにち一いち夜やするも、 その福ふく不可ふか計けなり。 おのづから阿あ惟ゆい越おっ致ちに致いたりぬ。 所願しょがんのものを得う。 以上

又云、「▲誦↢持シ経巻↡、最後ニ守ルコト一日一夜スルモ、其ノ福不可計也。自致ヌ↢阿惟越致ニ↡。所願者得ウ。 已上

問とふ。 もししかれば聞きくものは決けつ定じょうして信しんずべし。 なにゆゑぞ聞きくといへども信しん不ふ信しんある。 答こたふ。 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつの名みょう歓かん喜ぎし踊ゆ躍やくし、 身みの毛け起いよだつことをなし抜ばっ出しゅつのごとくせんものは、 みなことごとく宿しゅく世せの宿命しゅくみょうにすでに仏ぶつ事じをなせるものなり。 それ人ひとありて疑うたがひて信しんぜざらんものは、 みな悪道あくどうの中なかにより来きたりて、 殃おう悪あくいまだ尽つきざるなり。 これいまだ解げ脱だつを得えざるなり。」 以上

-◆問。若爾バ聞ク者 ノハ決定シテ応シ↠信ズ。何故ゾ雖モ↠聞ト有↢信不信↡。◆答。无量清浄仏ノ名ミヤウ歓喜シ踊ユ躍ヤクシ、身ノ毛為シ↠起イヨダツコトヲ如クセム↢抜出ノ↡者、皆悉宿世ノ宿命ニ已ニ作ナセルモノ也↢仏事ヲ↡。其有↠人疑ヒテ不ラム↠信ゼ者ハ、皆従リ↢悪道ノ中ニ↡来テ、殃アウ悪未ダルナリ↠尽キ。此未ダル也↠得↢解脱ヲ↡也。」 已上

(23)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の第だい二十四 (北本徳応品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼第二十四言、

「西方さいほうこの娑しゃ婆ば世せ界かいを去さること四十二恒ごう河が沙しゃ等とうの諸仏しょぶつの国こく土どを度わたりてかしこに世せ界かいあり、 名なづけて無む勝しょうといふ。 かの土どをなんがゆゑぞ名なづけて無む勝しょうといふ。 その土どの所しょ有うの厳麗ごんれいの事じ、 ことごとくみな平びょう等どうにして差別しゃべつあることなし。 なほし西方さいほう安楽あんらく世せ界かいのごとし。 また東方とうぼう満月まんがつ世せ界かいのごとし。」c

「▲西方去ルコト↢此ノ娑婆世界ヲ↡度テ↢二恒河沙等ノ諸仏ノ国土ヲ↡彼ニ有リ↢世界↡、名テ曰フ↢无勝ト↡。彼ノ土ヲ何ガ故ゾ名テ曰フ↢无勝ト↡。其ノ土ノ所有ノ厳麗之事、悉ク皆平等ニシテ无シ↠有コト↢差別↡。猶シ如シ西方安楽世界ノ↡。亦 タ如シ↢東方満月世界ノ↡。」 已上

(24)

一 ¬請しょう観かん世ぜ音おん菩ぼ薩さつ経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬請観世音菩薩経¼言、 一丁半

「その時ときに世せ尊そん長ちょう者じゃに告つげてのたまはく、 ここを去さること遠とおからず、 まさしく西方さいほうに立まします、 仏ぶつ世せ尊そんを無む量りょう寿じゅと有なづく。 かしこに菩ぼ薩さつあり、 観かん世ぜ音おんおよび大だい勢せい至しと名なづく。 つねに大だい悲ひの憐愍れんみんをもつて一切いっさいの苦く厄やくを救く済さいす。」 已上

「爾時ニ世尊告テ↢長者ニ↡言ハク、去コト↠此ヲ不↠遠カラ、正シク立マシマス↢西方ニ↡、有ナヅク↢仏世尊ヲ无量寿ト↡。彼ニ有リ↢菩薩↡、名ク↢観世音及ビ大勢至ト↡。恒ニ以テ↢大悲ノ憐愍ヲ↡一切ノ救↢済スクフ ス苦厄ヲ。」 已上

(25)

一 ¬無む量りょう寿じゅ観かん経ぎょう¼ にのたまはく、

一 ¬无量寿観経¼言、 二丁半

「その時ときに世せ尊そん韋い提だい希けに告つげたまはく、 なんぢいま知しれりやいなや。 阿弥陀あみだ仏ぶつここを去さること遠とおからず。 なんぢまさに繋け念ねんしてあきらかにかの国くにの浄じょう業ごう成じょうじたまへるひとを観かんずべし。」 乃至

「▲爾時ニ世尊告韋提希、汝今知不。阿弥陀仏去此不遠。汝当繋念諦観彼国浄業成者。」 乃至

(26)

一 ¬大だい宝ほう積しゃく経きょう¼ 巻かん十七 (如来会) にのたまはく、

一 ¬大宝積経¼巻十七言、 十五丁半

「その時とき阿あ難なん仏ぶつにまうしてまうさく、 世せ尊そん、 かの法処ほうしょ菩ぼ薩さつ菩ぼ提だいを成じょうぜるは、 過去かことやせん、 未み来らいとやせん、 今いま現在げんざい他た方ほう世せ界かいとやせん。 仏ぶつ阿あ難なんに告つげたまはく、 西方さいほうここを去さること十万じゅうまん億おくの仏刹ぶっせつにして、 かしこに世せ界かいあり。 いま現げんにましまして法ほうを説ときたまふ。 無む量りょうの菩ぼ薩さつおよび声しょう聞もん衆しゅ、 恭く敬ぎょうし囲い繞にょうせり。」 乃至

「▲爾時阿難白↠仏言、世尊、彼法処菩薩成↢菩提↡者、為セム↢過去ト耶ヤ↡、為↢未来耶↡、為↢今現在他方世界耶↡。◆仏告↢阿難↡、西方去↠此十万億仏刹、彼有↢世界↡。今現在説法。无量ノ菩薩及ビ声聞衆、恭敬囲繞。」 乃至

(27)

一 ¬般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ の上じょうに (行品) のたまはく、

一 ¬般舟三昧経¼上言、 八丁

「西方さいほうに阿弥陀あみだ仏ぶつ、 いま現げんにまします。 所聞しょもんに随したがひてまさに念ねんずべし。 この間けんを去さること千億せんおく万まんの仏刹ぶっせつなり、 その国くにを須しゅ摩ま提だいと名なづく。 在衆ざいしゅ菩ぼ薩さつ、 中ちゅう央おうにして経きょうを説とき、 一切いっさいつねに阿弥陀あみだ仏ぶつを念ねんぜり。」 乃至

「▲西方ニ阿弥陀仏、今 マ現ニ在ス。随テ↢所聞ニ↡当ニシ↠念ズ。去ルコト↢此ノ間ヲ↡千億万ノ仏刹也、其ノ国ヲ名ク↢須摩提ト↡。在衆菩薩中央説経一切常念阿弥陀仏。」 乃至

(28)

一 ¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬称讃浄土経¼言、

「その時とき世せ尊そん舎しゃ利子りしに告つげたまはく、 なんぢいま知しれりやいなや。 これより西方さいほう、 この世せ界かいを去さること百ひゃく千せん倶く胝てい那庾多なゆたの仏ぶつ土そを過すぎて仏ぶつ世せ界かいあり、 名なづけて極楽ごくらくといふ。 その中なかの世せ尊そんを無む量りょう寿じゅおよび無む量りょう光こう・如来にょらい・応おう・正しょう等覚とうがく、 十じゅう号ごう円満えんまんと名なづけたてまつる。 いま現在げんざいにかしこに安隠あんのん住じゅう持じして、 もろもろの有う情じょうのために甚深じんじん微み妙みょうの法ほうを宣説せんぜつしたまひて、 殊しゅ勝しょう利り益やく安楽あんらくを得えしめたまへり。」

「▲爾時世尊告タマハク↢舎利子ニ↡、汝今知レリヤ不ナヤ。◆於リ↠是 レ西方、去↢此ノ世界ヲ↡過テ↢百千倶胝那庾多ノ仏土ヲ↡有リ↢仏世界↡、名テ曰フ↢極楽ト↡。◆其ノ中ノ世尊ヲ名ケタテマツル↢无量寿及ビ无量光・如来・応・正等覚、十号円満ト↡。今現在ニ彼安隠住持シテ、為ニ↢諸ノ有情ノ↡宣↢説シタマヒテ甚深微妙之ノ法ヲ↡、令メタマヘリ↠得エ↢殊勝利益安楽ヲ↡。」

(29)

一 ¬小しょう阿弥陀あみだ経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬小阿弥陀経¼言、

「これより西方さいほうに十じゅう万億まんおく仏ぶつ土どを過すぎて世せ界かいあり、 名なづけて極楽ごくらくといふ。 その土どに仏ぶつまします、 阿弥陀あみだと号ごうす。 いま現げんにましまして法ほうを説ときたまふ。 舎しゃ利り弗ほつ、 かの土どをなんがゆゑぞ名なづけて極楽ごくらくとする。 その国くにの衆しゅ生じょう、 もろもろの苦くあることなし、 ただもろもろの楽らくを受うく。 ゆゑに極楽ごくらくと名なづく。」

「▲従↠是西方ニ過テ↢十万億仏土ヲ↡有↢世界↡、名テ曰↢極楽ト↡。◆其土ニ有↠仏、号↢阿弥陀↡。今現ニ在シテ説タマフ↠法ヲ。◆舎利弗、彼ノ土ヲ何ガ故ゾ名テ為スル↢極楽ト↡。其国ノ衆生、無シ↠有コト↢衆ノ苦↡、但タヾ受ク↢諸ノ楽ヲ↡。故ニ名ク↢極楽ト↡。」

(30)

一 ¬大だい阿弥陀あみだ経きょう¼ の上じょうにのたまはく、

一 ¬大阿弥陀経¼上言、 十三丁

「仏ぶつ阿あ難なんに告つげたまはく、 阿弥陀あみだ作さ仏ぶつしてよりこのかた、 およそ十小しょう劫こうなり。 所しょ居ごの国こく土どを須しゅ摩ま題だいと名なづく。 まさしく西方さいほうにあり。 この閻えん浮ぶ提だい地じ界かい千億せんおく万まん須しゅ弥み山せんの仏国ぶっこくを去さる。 その国くにの地じはみな自じ然ねんの七宝しっぽうなり。 その一宝ぽうは白びゃく銀ごん、 二宝ほうは黄金おうごん、 三宝ぽうは水すい精しょう、 四宝ほうは琉璃るり、 五宝ほうは珊さん瑚ご、 六宝ぽうは琥こ珀はく、 七宝ぽうは車しゃ渠こなり。 これを七宝しっぽうとなす。」 乃至

「▲仏告↢阿難↡、阿弥陀作仏已来タ、凡ソ十小劫。◆所居国土名↢須摩題ト↡。正在↢西方↡。去↢是閻浮提地界千億万須弥山ノ仏国ヲ↡。◆其国地皆自然七宝也。其ノ一宝者ハ白銀、二宝者ハ黄金、三宝者水精、四宝者ハ琉璃、五宝者ハ珊瑚、六宝者ハ琥珀、七宝者ハ車渠也。是ヲ為ス↢七宝ト↡。」 乃至

(31)

またのたまはく、 「また春しゅん夏か秋しゅう冬とうあることなし、 また大寒だいかんなくまた大熱だいねつなし。 つねに和わ調じょう中ちゅう適ちやくにしてはなはだ快け善ぜん比ならびなし。」 乃至

又云、「▲亦無シ↠有ルコト↢春夏秋冬↡、亦無ク↢大寒↡亦 タ無シ↢大熱↡。常ニ和調中適チヤクニシテ甚ダ快善無シ↠比ナラビ。」 乃至

(32)

またのたまはく、 「仏ぶつ、 阿あ逸いつ菩ぼ薩さつに告つげたまはく、 阿弥陀あみだ仏ぶつの頂中ちょうちゅうの光こう明みょう極きわめて大だい明みょうなり。 その日月にちがつ星しょう辰しんみな虚こ空くうの中なかにありて住じゅう止しして、 また廻え転てんすべからず。 行ぎょうを運はこびてまた精しょう光こうあることなし、 その明みょうみな蔽おおはれてまた見みえず。 仏ぶつの光こう明みょう国くにの中なかを照てらしたまふに、 および他た方ほう仏国ぶっこくを焔えん照しょうしたまふに、 つねに大だい明みょうなり。 終おわりに冥くらきことあることなし。

又云、「▲仏告ハク↢阿逸菩薩ニ↡、阿弥陀仏ノ頂中ノ光明極メテ大明也。其ノ日月星辰皆 ナ在テ↢虚空ノ中ニ↡住止シテ、不ズ↠可ラ↢復 タ廻転ス↡。運テ↠行ヲ亦 タ無シ↠有ルコト↢精光↡、其ノ明皆 ナ蔽テ不ズ↢復 タ見ヘ↡。仏ノ光明照シタマフニ↢国ノ中ヲ↡、及ビ焔↢照シタマフニ他方仏国ヲ↡、常ニ大明也。終オハリニ無シ↠有ルコト↢冥クラキコト↡。

時ときにその国くにに一日いちにち・二に日にちあることなし、 また五ご日にち・十じゅう日にちなし、 また十じゅう五ご日にち・一月いちがつなし、 また五ご月がつ・十じゅう月がつ・五ご歳さい・十じゅう歳さいなし、 また百ひゃく歳さい・千歳せんざいなし、 また万歳まんざい・億万おくまん歳ざいなし、 百ひゃく千億せんおく万歳まんざいなし、 一劫いっこう・十劫じっこう・百ひゃく劫こう・千劫せんこうあることなし、 万劫まんごう・百ひゃく万劫まんごうなし、 千万せんまん劫ごうなくして、 百ひゃく億万おくまん劫ごうなり。

-時ニ◆其ノ国ニ無シ↠有ルコト↢一日・二日↡、亦 タ無シ↢五日・十日↡、亦 タ無シ↢十五日・一月↡、亦 タ無シ↢五月・十月・五歳・十歳↡、亦 タ無シ↢百歳・千歳↡、亦 タ無シ↢万歳・億万歳↡、無シ↢百千億万歳↡、無シ↠有コト↢一劫・十劫・百劫・千劫↡、無シ↢万劫・百万劫↡、無シテ↢千万劫↡、百億万劫也。

阿弥陀あみだ仏ぶつの光こう明みょうあきらかにして極きわめあることなし。 却きゃくの後のち無む数しゅ劫こう無む数しゅ劫こうにして、 重かさねてまた無む数しゅ劫こう無む数しゅ劫こう無む数しゅ劫こうにて、 無む央おう数しゅなり。 つひにまさに冥みょうするべき時ときあることなし。」 乃至

-◆阿弥陀仏ノ光明明ニシテ無シ↠有コト↠極 ハメ。却ノ後 チ無数劫無数劫ニシテ、重テ復 タ無数劫無数劫ニテ、無央数ナリ。終ツイニ無シ↠有ルコト↢当ニキ↠冥ル時 キ↡。」 乃至

(33)

一 ¬大だい無む量りょう寿じゅ経きょう¼ の上じょうにのたまはく、

一 ¬大无量寿経¼上言、 十五丁

「阿あ難なん、 仏ぶつにまうさく、 法蔵ほうぞう菩ぼ薩さつすでに成じょう仏ぶつして滅めつ度どを取とりたまへりとやせん、 いまだ成じょう仏ぶつしたまはずとやせん、 いま現げんにましますとやせむと。 仏ぶつ、 阿あ難なんに告つげたまはく、 法蔵ほうぞう菩ぼ薩さつ、 いますでに成じょう仏ぶつして現げんに西方さいほうにまします。 ここを去さること十じゅう万億まんおくの刹せつなり。 その仏ぶつの世せ界かいを名なづけて安楽あんらくといふ。

「▲阿難白サク↠仏ニ、法蔵菩薩為セム↣已 デニ成仏而シテ取リタマヘリトヤ↢滅度ヲ↡、為セム↠未ズ ダトヤ↢成仏シタマハ↡、為セムト↢今 マ現ニ在 マストヤ↡。◆仏告ハク↢阿難ニ↡、法蔵菩薩、今 マ已 デニ成仏シテ現在マス↢西方ニ↡。去ルコト↠此ヲ十万億ノ刹也。其ノ仏ノ世界ヲ名テ曰フ↢安楽ト↡。

阿あ難なん、 また問とひたてまつる、 その仏ぶつ成じょう道どうしたまひしよりこのかたいくばくの時ときを逕へたまへるとかせんと。 仏ぶつののたまはく、 成じょう仏ぶつよりこのかたおよそ十劫じっこうを歴へたまへり。 その仏国ぶっこく土どには、 自じ然ねんの七宝しっぽう、 金きん・銀ぎん・瑠璃るり・珊さん瑚ご・琥こ珀はく・硨しゃ磲こ・碼め碯のうを合ごう成じょうして地じとなせり。」 乃至

-◆阿難、又問タテマツル、其ノ仏成道シタマヒシヨリ已来タ為セムト↠逕ヘタマヘルトカ↢幾イクバクノ時ヲ↡。◆仏ノ言ハク、成仏ヨリ已来タ凡ソ歴ヘタマヘリ↢十劫ヲ↡。◆其ノ仏国土ニハ、自然ノ七宝、金・銀・瑠璃・珊瑚・琥珀・硨磲・碼碯ヲ合成シテ為セリ↠地ト。」 乃至

(34)

またのたまはく、 「またその国こく土どは須しゅ弥み山せんおよび金剛こんごう鉄てっ囲ち、 一切いっさいの諸山しょせんなし。 また大海だいかい・小しょう海かい・谿けい渠こ・井しょう谷こくなし。 仏ぶつ神力じんりきのゆゑに、 見みんと欲おもへばすなはち現げんず。 また地じ獄ごく・餓鬼がき・畜ちく生しょう、 諸難しょなんの趣しゅなし。 また四時しじ春秋しゅんじゅう冬とう夏げなし。 寒さむからず熱あつからず、 つねにおだやかに調じょう適ちゃくなり。」 乃至

又云、「▲又其国土ハ無シ↢須弥山及ビ金剛鉄囲、一切ノ諸山↡。亦無シ↢大海・小海・谿ケイヒロキタニ渠コミゾ・井シヤウヰ 谷コクタニ↡。仏神力ノ故ニ、欲ヘバ↠見ムト則現ズ。◆亦無シ↢地獄・餓鬼・畜生、諸難之趣↡。◆亦無シ↢四時春秋冬夏↡。不ズ↠寒サムカラ不ズ↠熱アツカラ、常ニ和カニ調適チヤク也。」 乃至

(35)

一 ¬大だい無む量りょう寿じゅ経きょう¼ の上じょうにのたまはく、

一 ¬大无量寿経¼上言、 第四願成就 二〇丁半

「ただ余よ方ほうに因いん順じゅんするがゆゑに、 天てん・人にんの名なあり。 顔げん貌みょう端たん正じょうにして世よに超こへて希有けうなり。 容色ようしき微み妙みょうにして、 天てんにあらず人にんにあらず。 みな自じ然ねん虚無こむの身しん、 無む極ごくの体たいを受うけたり。」 以上

「▲但因↢順スルガ余方ニ↡故ニ、有リ↢天・人之名↡。◆顔貌端正ニシテ超ヘテ↠世ニ希有也。容色微妙ニシテ、非ズ↠天ニ非ズ↠人ニ。皆 ナ受タリ↢自然虚無之ノ身、無極之ノ体タイヲ↡。」 已上

(36)

また上じょうにのたまはく、

又上言、 十六願成就 二〇丁

「三さん塗ず苦く難なんの名なあることなし、 ただ自じ然ねん快け楽らくの音こえあり。 このゆゑにその国くにを名なづけて安楽あんらくといふ。」 乃至

「▲無シ↠有ルコト↢三塗苦難之ノ名ナ↡、但タヾ有リ↢自然快楽之ノ音 ヘ↡。是故ニ其ノ国ヲ名テ曰フ↢安楽ト↡。」 乃至

(37)

同おなじき下げ巻かんにのたまはく、

同下巻言、 七丁

「菩ぼ薩さつの諸しょ波羅はら蜜みつを究く竟きょうし、 空くう・無む相そう・無む願がん三昧ざんっまい、 不ふ生しょう不ふ滅めつもろもろの三昧さんまい門もんを修しゅして、 声しょう聞もん・縁覚えんがくの地じを遠おん離りせり。」 乃至

「▲究↢竟シ菩薩ノ諸波羅蜜ヲ↡、修シテ↢空・無相・無願三昧、不生不滅諸ノ三昧門ヲ↡、遠↢離セリ声聞・縁覚之地ヲ↡。」 乃至

(38)

一 ¬金光こんこう明経みょうきょう¼ の巻かん二 「分別ふんべつ三身さんしん品ぼん」 にのたまはく、

一 ¬金光明経¼巻二「分別三身品」云、

「この法身ほっしんにおいてよく如来にょらい種々しゅじゅの事じ業ごうを顕あらはす。 善男ぜんなん子し、 これ身しんと因縁いんねんと境きょうと界かいと処しょと所しょと果か、 本ほんに依よる、 難なん思議じぎがゆゑに。 もしこの義ぎを了さとれば、 この身しんはすなはちこれ大だい乗じょうなり、 これ如来にょらい性しょうなり、 これ如来にょらい蔵ぞうなり。」 以上

「於テ↢此ノ法身ニ↡能ク顕ハス↢如来種種ノ事業ヲ↡。善男子、是身ト因縁ト境ト界ト処ト所ト果依ル↠於ニ↠本、難思議ガ故ニ。若シ了レバ↢此義ヲ↡、是身ハ即是 レ大乗也、是 レ如来性也、是 レ如来蔵也。」 已上

(39)

一 ¬金光こんこう明経みょうきょう¼ の巻かん三 「滅めつ業ごう障しょう品ぼん」 にのたまはく、

一 ¬金光明経¼巻三「滅業障品」云、

「法身ほっしんは一切いっさいの諸法しょほうを摂しょう蔵ぞうす。 一切いっさいの諸法しょほうには法身ほっしんを摂せっせず。」 以上

「法身ハ摂↢蔵ス一切ノ諸法ヲ↡。一切ノ諸法ニハ不ズ↠摂セ↢法身ヲ↡。」 已上

(40)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい二十一 「光こう明みょう遍へん照じょう高こう貴き徳王とくおう菩ぼ薩さつ品ぼん」 (北本) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第二十一「光明遍照高貴徳王菩薩品」云、

「光こう明みょうはすなはちこれ念仏ねんぶつなり、 念仏ねんぶつはこれを常住じょうじゅうと名なづく、 常住じょうじゅうの法ほうは因縁いんねんに従したがはず。」 以上

「光明者即是念仏也、念仏者ハ是ヲ名ク↢常住ト↡、常住之法ハ不ズ↠従 ガハ↢因縁ニ↡。」 已上

(41)

一 ¬十じゅう因いん¼ の第だい九 (往生拾因) にいはく、

一 ¬十因¼第九云、

「一心いっしんに阿弥陀あみだ仏ぶつを称しょう念ねんすれば、 法身ほっしん同体どうたいのゆゑに、 かならず往おう生じょうすることを得う。 ¬双巻そうかん経ぎょう¼ にのたまはく、 諸法しょほうの性しょうは一切いっさい空くう・無我むがなりと通達つうだつすれども、 もつぱら浄じょう仏ぶつ土どを求もとめて、 かならずかくのごとき刹せつを成じょうずと。 ¬起き信論しんろん¼ にいはく、 修しゅ多羅たらの説せつのごとし。 もし人ひと西方さいほう極楽ごくらく世せ界かいの阿弥陀あみだ仏ぶつを専念せんねんして所修しょしゅの善根ぜんごんを回え向こうして、 かの世せ界かいに生しょうぜんと願がん求ぐすればすなはち往おう生じょうすることを得え、 つねに仏ぶつを見みたてまつりて、 ゆゑにつひに退たいすることあることなし。 もしかの仏ぶつの真如しんにょ法身ほっしんを観かんじてつねに勤つとめ修しゅ習じゅうすれば畢ひっ竟きょうじて生しょうずることを得え、 定じょう聚じゅに住じゅうす。」 以上

「一心称↢念阿弥陀仏↡、法身同体故、必得↢往生↡。¬双巻経¼云、通↢達スレドモ諸法ノ性ハ一切空・無我也ト↡、専ラ求テ↢浄仏土ヲ↡、必成ズト↢如↠是刹ヲ↡。¬起信論ニ¼云ハク、如シ↢修多羅ノ説ノ↡。若人専↢念シテ西方極楽世界ノ阿弥陀仏ヲ↡所修ノ善根ヲ廻向シテ、願↣求スレバ生ト↢彼ノ世界ニ↡即得エ↢往生ヲ↡、常ニ見タテマツリテ↠仏ヲ、故ニ終ニ无シ↠有ルコト↠退コト。若シ観ジテ↢彼ノ仏ノ真如法身ヲ↡常ニ勤メ修習スレバ畢竟ジテ得エ↠生ヲ、住ス↢定聚ニ↡。」 已上

(42)

一 ¬大だい集じゅうの念仏ねんぶつ三昧ざんまい経きょう¼ の第だい七 (讃三昧相品) にのたまはく、

一 ¬大集ノ念仏三昧経ノ¼第七云、

「まさに知しるべし、 かくのごときの念仏ねんぶつ三昧ざんまいは、 すなはち総そうじて一切いっさいの諸法しょほうを摂せっすることをなす。 このゆゑにかの声しょう聞もん・縁覚えんがく、 二に乗じょうの境きょう界がいにあらず。 もし人ひとしばらくもこの法ほうを説とくを聞きかんもの、 この ひとは当来とうらいに決けつ定じょうして仏ぶつに成なるべし、 疑うたがひあることなかれ。」

「当ニシ知ル、如キノ↠是念仏三昧ハ、則為ナス↣総ソウジテ摂スルコトヲ↢一切ノ諸法ヲ↡。是故ニ非ズ↢彼声聞・縁覚、二乗ノ境界ニ↡。若人暫クモ聞カム↠説クヲ↢此ノ法ヲ↡者 ノ、是人ハ当ベ シ↢来ニ決定シテ成ル↟仏ニ、無レ↠有ルコト↠疑 ヒ也。」

(43)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい四 (北本如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第四言、

「善男ぜんなん子し、 今日こんにちより始はじめて声しょう聞もん弟子でしの食肉じきにくを聴ゆるさず。 もし檀越だんおつの信しん施せを受うけん時ときは、 この食じきは子し肉にくの想そうのごとしと観かんずべし。 迦か葉しょう菩ぼ薩さつまた仏ぶつにまうしてまうさく、 世せ尊そん、 いかんぞ如来にょらい食肉じきにくを聴ゆるしたまはざると。 善男ぜんなん子し、 それ食肉じきにくは大だい慈じの種たねを断だんずればなり。 迦か葉しょうまた如来にょらいにまうさく、 なんがゆゑぞ先さきに比丘びく三種さんしゅの浄じょう肉にくを食じきせんことを聴ゆるしたまふや。 迦か葉しょう、 この三種さんしゅの浄じょう肉にくは事じに随したがひて漸制ぜんせいす。 乃至 善男ぜんなん子し、 かの尼に犍けんの所見しょけんに同どうずべからず。 如来にょらい制せいしたまふところの一切いっさい禁戒きんかい、 おのおの意々いい異ことなることあるがゆゑに、 三種さんしゅの浄じょう肉にくを食じきすることを聴ゆるす。 異い想そうのゆゑに十種じっしゅの肉にくを断だんず。 異い想そうのゆゑに一切いっさいことごとく断だんず。 自死じしするものに及およぶ。 迦か葉しょう、 われ今日こんにちよりもろもろの弟子でしを制せいす、 また一切いっさいの肉にくを食じきすることを得えざれとなり。」

「善男子、従↢今日↡始テ不ズ↠聴ユルサ↢声聞弟子食肉↡。若シ受ケム↢檀越信施ヲ↡之時 キハ、応シ↠観ズ↣是ノ食ハ如シト↢子肉ノ想ノ↡。迦葉菩薩復白シテ↠仏言ク、世尊、云何ゾ如来不ザルト↠聴ユルシタマハ↢食肉ヲ↡。善男子、夫 レ食肉者ハ断ズレバ也↢大慈ノ種ヲ↡。迦葉又言マフサク↢如来ニ↡、何ガ故ゾ先ニ聴ユルシタマフヤ↣比丘食セムコトヲ↢三種ノ浄肉ヲ↡。迦葉、是ノ三種ノ浄肉ハ随テ↠事ニ漸制ス。乃至 善男子、不ズ↠応ラ↠同ズ↢彼ノ尼犍ケンノ所見ニ↡。如来所ノ↠制シタマフ一切禁戒、各有↠異↢意意↡故ニ、聴ユルス↠食コトヲ↢三種ノ浄肉ヲ↡。異想ノ故ニ断ズ↢十種ノ肉ヲ↡。異想ノ故ニ一切悉ク断ズ。及オヨブ↢自死スル者モノニ↡。迦葉、我従↢今日↡制ス↢諸ノ弟子ヲ↡、不レト也↠得エ↣復マタ食スルコトヲ↢一切ノ肉ヲ↡也。」

(44)

一 巻第かんだい三十一 「獅子吼ししく菩ぼ薩さつ品ぼん」 第だい十一の五 (北本) にのたまはく、

一 巻第三十一「獅子吼菩薩品」第十一之五言、

「また誓願せいがんを発おこして法ほうを説とき衆しゅ生じょうを度どせむと欲おもふがためのゆゑに、 あるいは麞しょう・鹿ろく・羆ひ・鴿こう・獼み猴こう・龍りゅう・金こん翅じ鳥ちょう・魚ぎょ・鼈べつ・兎と・蛇じゃ・牛ご・馬めの身しんとなる。

「復発シテ↢誓願ヲ↡為ノ↠欲フガ↣説キ↠法ヲ↡度ムト↢衆生ヲ↡故ニ、或ハ作ナル↢麞シヤウカモシヽ・鹿ロク・カノシヽ羆クマ・鴿ハト・獼猴サル ・龍・金翅鳥・魚・鼈ベチ・ウミノカメ兎ト・ウサギ蛇・牛・馬之身ト↡。」

(45)

一 第だい十八巻かん (北本梵行品)に、 「あるいはのたまはく、 如来にょらい、 比丘びく十種じっしゅの肉にくを食じきすることを聴ゆるさず。 何なん等らか十じゅうとする。 人にん・蛇じや・像ぞう・馬め・驢ろ・狗く・師子しし・猪ちょ・狐こ・獼み猴こうなり、 その余よはことごとく聴ゆるすと。 あるいはのたまはく、 一切いっさい聴ゆるさずと。」 乃至

一 第十八巻、「或言マハク、如来不ズ↠聴ユルサ↣比丘食コトヲ↢十種ノ肉ヲ↡。何ナン等ラカ為スル↠十ト。人ニン・蛇ジヤ・像ザウ・馬メ・驢ロ・狗ク・師子・猪チヨ・狐コ・獼猴ミゴ也、其ノ余ハ悉ク聴ユルスト。或ハ言ク、一切不ズト聴ユルサ。」 乃至

(46)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい三十三 (北本師子吼品) に、

一 ¬大般涅槃経¼巻第三十三、

「菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ、 飢き饉きんの世よにおいて餓うへたる衆しゅ生じょうを見みて、 亀き魚ぎょの身しん無む量りょう由ゆ旬じゅんとなりてまたこの願がんをなす。 願ねがはくはもろもろの衆しゅ生じょう、 わが肉にくを取とらん時とき、 取とるに随したがひ生しょうに随したがひてわが肉にくを食じきするによりて飢き渇かつの苦くを離はなれて、 一切いっさいことごとく阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいの心しんを発おこす。 菩ぼ薩さつ発願ほつがんす、 もしわれによることあらん。 飢き渇かつのものといへども、 未み来らいの世よにすみやかに二十五有うの飢き渇かつの患うれえを遠おん離りすることを得えん。 菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ、 かくのごとくの苦くを受うけて心しん退たいせざるものは、 まさに知しるべし、 必ひつ定じょうして阿あ耨のく多羅たら三さん藐みゃく三さん菩ぼ提だいを得えん。 また次つぎに菩ぼ薩さつ、 疫疾やくしつの世よにおいて病びょう苦くを見みるものは、 この思し惟ゆいをなす。 薬樹やくじゅ王おうのごとし。 もし病びょう者しゃありて根ねを取とり茎くきを取とり枝えだを取とり葉はを取とり華はなを取とり菓みを取とり皮かわを取とり膚はだを取とる、 ことごとく病やまい癒いゆることを得う。 願ねがはくはわがこの身みもまたかくのごとし。 もし病びょう者しゃありて声しょう聞もん身みに触ふれ、 血ち肉にく乃ない至し骨髄こつずいを服ぶく食じきせば、 病やまいことごとく除じょ癒ゆせん。 願ねがはくはもろもろの衆しゅ生じょう、 わが肉にくを食じきせん時とき、 悪心あくしんを生しょうぜずして子し肉にくを食じきするがごとくせよ。 われ病やまいを治じしおはりてつねに説法せっぽうのために、 願ねがはくはかれを信受しんじゅし思し惟ゆいし転てん教ぎょうせん。」 乃至

「菩薩摩訶薩、於テ↢飢ケ饉コムノ世ニ↡見テ↢餓ウヘタル衆生ヲ↡、作テ↢亀魚ノ身無量由旬ト↡復 タ作ス↢是ノ願ヲ↡。願クハ諸ノ衆生、取ラム↢我ガ肉ヲ↡時 キ、随ヒ↠取ニ随テ↠生ニ因ヨテ↠食スルニ↢我ガ肉ヲ↡離テ↢飢渇ノ苦クヲ↡、一切悉ク発ス↢阿耨多羅三藐三菩提ノ心ヲ↡。菩薩発願ス、若シ有ラム↠因ヨルコト↠我ニ。雖モ↢飢渇ノ者 ノト↡、未来之ノ世ニ速カニ得エム↣遠↢離スルコトヲ廿五有ノ飢渇之ノ患 ヘヲ。菩薩摩訶薩、受テ↢如ノ↠是ノ苦ヲ↡心不ル↠退セ者 ノハ、当ニシ知ル、必定シテ得ム↢阿耨多羅三藐三菩提ヲ↡。復 タ次ニ菩薩、於テ↢疫疾ヤクシチノ世ニ↡見↢病苦ヲ↡者ハ、作ナス↢是ノ思惟ヲ↡。如シ↢薬樹王ノ↡。若シ有テ↢病者↡取リ↠根ネヲ取リ↠茎クキヲ取リ↠枝エダヲ取リ↠葉ハヲ取リ↠華ハナヲ取リ↠菓ミヲ取リ↠皮カハヲ取ル↠膚ヲ、悉ク得ウ↠癒イユルコトヲ↠病。願ハ我ガ此ノ身モ亦復 タ如シ↠是ノ。若シ有テ↢病者↡声聞触フレ↠身ニ、服ブク↢食セバ血肉乃至骨髄ヲ↡、病 ヒ悉ク除癒ユセム イ ヤス。願ハ諸ノ衆生、食セム↢我ガ肉ヲ時 キ、不シテ生ゼ↢悪心ヲ↡如クセヨ↠食スルガ↢子肉ヲ↡。我 レ治シ↠病ヲ已テ常ニ為ニ↢説法ノ↡、願クハ彼ヲ信受シ思惟シ転教セム。」 乃至

(47)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい三十四 (北本迦葉品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第三十四言、

一法いっぽうの中なかにおいて二種しゅの説せつをなし、 一名みょうの法ほうにおいて無む量りょうの名なを説とく、 一義ぎの中なかにおいて無む量りょうの名なを説とき、 無む量りょうの義ぎにおいて無む量りょうの名なを説とく。」 以上

「於テ↢一法ノ中ニ↡作シ↢二種ノ説ヲ↡、於テ↢一名ノ法ニ↡説ク↢无量ノ名ヲ↡、於テ↢一義ノ中ニ↡説キ↢无量ノ名ヲ↡、於テ↢无量ノ義ニ↡説ク↢无量ノ名ヲ↡。」 已上

(48)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい二十一 (北本徳王品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第二十一言、

「また十じゅう一いち部ぶ経きょうあり、 毘び仏ぶつ略りゃくを除のぞく。 またかくのごときの深密じんみつの義ぎなし。 今日こんにちこの経きょうしかもこれを知しることを得う。 善男ぜんなん子し、 これを聞きかざるをしかもよく聞きくことを得うと名なづく。 聞ききおはりて利り益やくするものなり。 もしよくこの大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょうを聴ちょう受じゅして、 ことごとくよくつぶさに一切いっさい方等ほうどう大だい乗じょう経きょう典てんの甚深じんじんの義味ぎみを知しる。 たとへば男女なんにょ明浄みょうじょう鏡きょうにおいてその色像しきぞうを見みること了々りょうりょう分ぶん明みょうなるがごとし。」 以上

「復有リ↢十一部経↡、除ク↢毘仏略ヲ↡。亦 タ無シ↢如ノ↠是ノ深密之ノ義↡。今日此ノ経而モ得ウ↠知コトヲ↟之ヲ。善男子、是ヲ名ク↢不ヲ↠聞而モ能ク得ウト↠聞コトヲ。聞キキ已 ハテ利益スル者也。若シ能ク聴↢受シテ是ノ大般涅槃経ヲ↡、悉ク能ク具 サニ知ル↢一切方等大乗経典ノ甚深ノ義味ヲ↡。譬ヘバ如シ↧男女於テ↢明浄鏡ニ↡見ルコト↢其ノ色像ヲ↡了了分明ナルガ↥。」 已上

(49)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい二十五 (北本徳王品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第廿五言、

「もしよくこの十じゅう二部にぶ経きょうの甚深じんじんの義ぎを聴きくものを、 名なづけて聴ちょう法ほうとなす。 聴ちょう法ほうとは、 すなはちこれ大だい乗じょう方等ほうどう経きょう典てんなり。 方等ほうどう経きょうを聴きくを真しん聴ちょう法ほうと名なづく。 真しん聴ちょう法ほうとは、 すなはちこれ大だい涅ね槃はん経ぎょうを聴ちょう受じゅす。」 乃至

「若シ能ク聴ク↢是ノ十二部経ノ甚深ノ義ヲ↡者 ノヲ、名テ為ス↢聴法ト↡。聴法ト者ハ、則チ是 レ大乗方等経典也。聴クヲ↢方等経ヲ↡名ク↢真聴法ト↡。真聴法ト者ハ、即是 レ聴↢受ス大涅槃経ヲ↡。」 乃至

(50)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい九 (北本如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第九言、

「正しょう法ぼう滅めっせんと欲ほっせんに、 この経きょうまづまさにこの地じに没もっすべし。 まさに知しるべし、 正しょう法ぼうの裏り相そうなり。 乃至 正しょう法ぼう滅めっせんと欲ほっせんにまさに賓けいひんに至いたりて具ぐ足そくし無む欠けつにてひそかに地じの中なかに没もっすべし。 あるいは信者しんじゃあり、 不ふ信者しんじゃあらん。 かくのごときの大だい乗じょう方等ほうどう経きょう典てん、 甘かん露ろ法ほう味み、 ことごとく地じに没いらん。 この経きょう没もっしおはりて、 一切いっさい諸しょ余よの大だい乗じょう経きょう典てん、 みなことごとく滅没めつもつせん。」 以上

「正法欲セムニ↠滅セムト、是ノ経先マヅ当ニシ没ス↠於ニ↢此ノ地↡。当ニシ↠知ル、正法ノ裏相也。乃至 正法欲セムニ↠滅セムト当ニシ↧至テ↢賓ケイヒンニ↡具足シ無欠ニテ潜ヒソカニ没ス↦地ノ中ニ↥。或ハ有リ↢信者↡、有ラム↢不信者↡。如ノ↠是ノ大乗方等経典、甘露法味、悉ク没イラム↠於ニ↠地。是ノ経没シ已 ハテ、一切諸余ノ大乗経典、皆 ナ悉コトゴトク滅没セム。」 已上

(51)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい六 (北本巻七如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第六言、

「もし説ときて如来にょらい衆しゅ生じょうを度どせむと欲ほっすためのゆゑに方等ほうどう経きょうを説とたまふといふことあらば、 まさに知しるべし、 この人ひとは真しんにわが弟子でしなり。 もし方等ほうどう経きょうを受うけざることあらば、 まさに知しるべし、 この人ひとはわが弟子でしににあらず、 仏法ぶっぽうのために出しゅっ家けせざるなり。 すなはちこれ邪見じゃけん外げ道どうの弟子でしなり。」

「若シ有ラバ↫説テ言コト↪如来為 メノ↠欲ス↠度セムト↢衆生ヲ↡故ニ説タマフト↩方等経ヲ↨、当ニシ↠知ル、是ノ人ハ真ニ我弟子也。若シ有ラ↠不ルコト↠受↢方等経ヲ↡者バ、当シ知、是ノ人ハ非ズ↢我弟子ニ↡、不ル↧為ニ↢仏法ノ↡而出家セ↥也。即チ是邪見外道ノ弟子也。」

(52)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい二 「寿じゅ命みょう品ぼん」 の二 (北本) に、

一 ¬大般涅槃経¼巻第二「寿命品」之二、

「なんぢいままさに諸仏しょぶつの境きょう界がいを観かんずべし。 ことごとくみな無む常じょうなり。 諸しょ行ぎょうの性しょう相そうもまたかくのごとし。 すなはち純じゅん陀だのために偈げを説ときてのたまはく、

「汝 ヂ今当ニシ観ズ↢諸仏ノ境界ヲ↡。悉ク皆無常也。諸行ノ性相モ亦復 タ如↠是。即チ為ニ↢純陀ノ↡而説テ↠偈ヲ言タマハク、

一切いっさいのもろもろの世せ間けんに、 生しょうずるものはみな死しに帰きす。 寿じゅ命みょう無む量りょうなりといへども、 かならずまさに尽つくることあるべし。

一切ノ諸ノ世間ニ 生ズル者ハ皆帰ス↠死ニ 寿命雖モ↢无量也ト↡ 要必ズ当ニシ↠有ル↠尽ルコト

それ盛さかりなるものはかならず衰おとろふることあり、 合会あふものは別べつ離りあり。 壮そう年ねんなれどもひさしく停とヾまらず、 盛さかりなる色いろ病やまいに侵おかさる。

夫 レ盛サカリナルモノハ必ズ有リ衰ルコト 合会アフモノハ有リ↢別離↡ 壮シヤウ年ナレドモサカンナルトシ  不ズ↢久ク停トヾマラ↡ 盛サカリナル色 ロ病ニ所ル↠侵オカサ

命いのちは死しのために呑のまる、 法ほうとして常つねのものあることなし。 諸王しょおう自じ在ざいを得うれども、 勢力せいりき等双とうそうなけむ。

命ハ為ニ↠死ノ所ル↠呑ノマ 無シ↠有ルコト↢法トシテ常ノ者 ノ↡ 諸王得ウレドモウルコト ↢自在ヲ↡ 勢力無ケム↢等双↡

一切いっさいみな遷せん動どうす、 寿じゅ命みょうもまたかくのごとし。 衆しゅ苦く輪りん際きわなし、 流る転てんして休く息そくなけん。

一切皆遷センウツリ動スオゴク 寿命モ亦 タ如シ↠是ノ 衆苦輪無シ↠際キハ 流転シテ無ケム↢休息↡

三界さんがいみな無む常じょうなり、 諸しょ有う楽たのしみあることなし。 本ほん性しょうの相そうに近ちかづくことあれば、 一切いっさいみな空くう無むなり」 以上

三界皆 ナ無常也 諸有無シ↠有ルコト↠楽シミ 有レバ↠近チカヅクコト↢本性ノ相ニ↡ 一切皆 ナ空无也」 已上

(53)

一 ¬大だい円覚えんがく経きょう¼ の下げ巻かんにのたまはく、

一 ¬大円覚経¼下巻言、 (一丁半)

「善男ぜんなん子し、 無む上じょう妙みょう覚がくもろもろの十方じっぽうに遍へんじて如来にょらいを出生しゅっしょうす。 一切いっさいの法ほうと同体どうたい平びょう等どうなり。」 乃至

「善男子、无上妙覚遍ジテ↢諸ノ十方ニ↡出↢生ス如来ヲ↡。与↢一切ノ法↡同体平等也。」 乃至

(54)

一 ¬首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ の巻第かんだい十に、

一 ¬首楞厳経¼巻第十、

「もろもろの十方じっぽう十じゅう二にの衆しゅ生じょうを見み、 つひにその類たぐいを殫つくす。」 乃至

「見↢諸ノ十方十二ノ衆生ヲ↡畢殫ツクス↢其ノ類ヲ↡。」 乃至

(55)

一 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ の巻第かんだい三に、 (晋訳廬舎那仏品 )

一 ¬華厳経¼巻第三、

「一切いっさい十方じっぽう仏ぶつ世せ界かい。」

「一切十方仏世界。」

(56)

一 ¬大般だいはつ涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻第かんだい四 (北本如来性品) にのたまはく、

一 ¬大般涅槃経¼巻第四言、

「善男ぜんなん子し、 また菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつありて大だい涅ね槃はんに住じゅうして、 一切いっさいの十方じっぽう無む量りょうの諸仏しょぶつ世せ界かいを断たち取とりておのれが身みに内いれて、 その中なかの衆しゅ生じょうことごとく迫迮はくさくなし。」 云々 乃至

「善男子、復有テ↢菩薩摩訶薩↡住シテ↢大涅槃ニ↡、断チ↢取テ一切ノ十方無量ノ諸仏世界ヲ↡内イレテ↢己 レガ身ニ↡、其ノ中ノ衆生悉ク無シ↢迫迮ハクサク↡。」 云々 乃至

(57)

一 ¬法華ほけ経きょう¼ の一巻かん (序品) にのたまはく、

一 ¬法華経¼一巻云、 十五丁

「舎しゃ利り弗ほつ、 一切いっさいの十方じっぽうの諸仏しょぶつの法ほうもまたかくのごとし。」 乃至

「舎利弗、一切ノ十方ノ諸仏ノ法モ亦如↠是ノ。」 乃至

(58)

一 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ 第だい三十九 (晋訳巻三八離世間品) に、

一 ¬華厳経¼第三十九、

「疑ぎ心しんを起おこさず、 利り養ようを求もとめず、 また盗法とうほうの心しんを遠おん離りす。」 乃至

「不↠起↢疑心ヲ↡、不↠求↢利養ヲ↡、又復遠↢離ス盗法之心ヲ↡。」 乃至

(59)

一 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ 二帙ちつ十五巻かんの四 (晋訳巻一四十廻向品) に、

一 ¬華厳経¼二帙十五巻四、

「衆しゅ生じょうをしてともにとこしなへに不ふ思議しぎの深じん妙みょうの智ちを修しゅ習じゅうせしめむと欲ほっして、 あまねく一切いっさい衆しゅ生じょうのためのゆゑに、 不ふ思議しぎ劫こうのあひだ地じ獄ごくに住す。」

「欲↠令メムト↣衆生ヲシテ具トモニ修↢習セ住トコシナヘニ不思議ノ深妙ノ智ヲ↡
普アマネク為 メノ↢一切衆生ノ↡故ニ不思議劫ノアヒダ住ス↢地獄ニ↡。」

(60)

一 ¬大だい涅ね槃はん経ぎょう¼ の巻かん第だい三十一 「師子吼ししく菩ぼ薩さつ品ぼん」 (北本) にのたまはく、

一 ¬大涅槃経¼巻第三十一「師子吼菩薩品」言、

「菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつは地じ獄ごくの業ごうなけれども、 衆しゅ生じょうのためのゆゑに大だい誓願せいがんを発おこして地じ獄ごくの中なかに生しょうず。 善男ぜんなん子し、 住おう昔じゃくに寿いのち百ひゃく年ねんの時とき、 恒沙ごうじゃの衆しゅ生じょう地じ獄ごくの報ほうを受うく。 われこれを見みおはりてすなはち大願だいがんを発おこして地じ獄ごくの身みを受うく。 菩ぼ薩さつその時ときに実じつにこの業ごうなけれども、 衆しゅ生じょうのためのゆゑに地じ獄ごくの果かを受うく。 われその時ときにおいて、 地じ獄ごくの中なかにありて無む量りょう歳さいを経へて、 もろもろの罪人ざいにんのために十じゅう二部にぶ経きょうを広開こうかいし分別ふんべつす。 諸人しょにん聞ききおはりて悪あく果か報ほうを壊えして地じ獄ごくを空むなしからしむ、 一いっ闡提せんだいを除のぞく。 これを菩ぼ薩さつ摩訶まか薩さつ現げん生しょうにあらずこの悪業あくごうを受うくと名なづく。」 乃至

「菩薩摩訶薩ハ無ナケレドモ↢地獄ノ業↡、為ノ↢衆生ノ↡故ニ発シテ↢大誓願ヲ↡生ズ↢地獄ノ中ニ↡。善男子、住昔ニ寿百年ノ時、恒沙ノ衆生受ク↢地獄ノ報ヲ↡。我 レ見ミ↠是ヲ已テ即発シテ↢大願ヲ↡受ク↢地獄ノ身ヲ↡。菩薩爾ノ時ニ実ニ無ナケレドモ↢是ノ業↡、為ノ↢衆生ノ↡故ニ受ク↢地獄ノ果ヲ↡。我 レ於テ↢爾ノ時ニ↡、在テ↢地獄ノ中ニ↡経テ↢无量歳ヲ↡、為↢諸ノ罪人ノ↡広↢開シ分↣別ス十二部経ヲ↡。諸人聞キキ已テ壊テ↢悪果報ヲ↡令シム↢地獄空ムナシカラ↡、除ク↢一闡提ヲ↡。是ヲ名ク↧菩薩摩訶薩非ズ↢現生ニ↡受クト↦是ノ悪業ヲ↥。」 乃至

(61)

一 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ 巻第かんだい六十 (晋訳巻五九入法界品) にのたまはく、

一 ¬華厳経¼巻第六十言、 二丁半

「閻えん羅ら王おうのために大だい光こう明みょうを放はなち、 あまねく地じ獄ごくを照てらし一切いっさいの苦くを滅めっす。」 乃至

「為ニ↢閻羅王ノ↡放チ↢大光明ヲ↡、普ク照シ↢地獄ヲ↡滅ス↢一切ノ苦ヲ↡。」 乃至

(62)

一 ¬法華ほけ経きょう¼ の巻第かんだい二 (譬喩品) にのたまはく、

一 ¬法華経¼巻第二言、

「ただ水草すいそうを念ねんじて、 余よは知しるところなし。」 乃至

「但タヾ念テ↢水草ヲ↡ 余ハ無シ↠所  ロ↠知ル。」 乃至

(63)

一 ¬仏説ぶっせつ像法ぞうぼう決けつ疑ぎ経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬仏説像法決疑経¼言、

「十方じっぽうの諸仏しょぶつならびに諸しょ菩ぼ薩さつおよび声しょう聞もん衆しゅを供く養ようせんよりはしかず。 人ひとありて畜ちく生しょうに一口くの因食いんじきを施せせん、 その福ふくかれに勝すぐるること百ひゃく千万せんまん倍ばい無む量りょう無む辺へんなり。」 乃至

「供↢養セムヨリハ十方ノ諸仏ニ諸菩薩及ビ声聞衆ヲ↡不↠如。有テ↠人施セム↢畜生ニ一口ノ因食ヲ↡、其ノ福勝ルコト↠彼ニ百千万倍无量无辺也。」 乃至

(64)

一 ¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく、 欣ごん浄じょう縁えん

一 ¬観経¼言、 欣浄縁

「やや願ねがはくは世せ尊そん、 わがために広ひろく憂う悩のうなき処ところを説とたまへ。 われまさに往おう生じょうすべし。 閻えん浮ぶ提だいの濁じょく悪あく世せを楽ねがはず。 この濁じょく悪あくの処ところには地じ獄ごく・餓鬼がき・畜ちく生しょう盈よう満まんして、 不ふ善ぜんの聚ともがら多おおし。 願ねがはくはわれ未み来らいに悪あくの声こえを聞きかじ。 悪人あくにんを見みじ。 いま世せ尊そんに向むかひたてまつりて五ご体たいを地じに投なげて求ぐ哀あいし懴さん悔げす。 やや願ねがはくは仏日ぶつにち、 われに教おしへたまへ清浄しょうじょうの業処ごっしょを観みんことを。

「▲唯ヤヽ願ハ世尊、為ニ↠我ガ広ク説タマヘ↧無キ↢憂悩↡処ヲ↥。我当ニシ↢往生ス↡。不↠楽ハ↢閻浮提濁悪世ヲ↡也。◆此ノ濁悪ノ処ニハ地獄・餓鬼・畜生盈ヤウ満シテ、多シ↢不善ノ聚 ガラ↡。願ハ我 レ未来ニ不ジ↠聞カ↢悪ノ声ヲ↡。不ジ↠見↢悪人ヲ↡。◆今向タテマツリテ↢世尊ニ↡五体ヲ投テ↠地ニ求グ哀シ懴悔ス。◆唯ヤヽ願ハ仏日、教ヘタマヘ↠我ニ観ミムコトヲ↠於ヲ↢清浄ノ業処↡。

その時ときに世せ尊そん、 眉み間けんの光ひかりを放はなたまふ。 その光ひかり金色こんじきにしてあまねく十方じっぽう無む量りょうの世せ界かいを照てらして、 還かえりて仏ぶつの頂いただきに住じゅうして、 化けして金台こんだいとなりぬ。 須しゅ弥み山せんのごとし。 十方じっぽうの諸仏しょぶつ浄妙じょうみょうの国こく土ど、 みな中なかにおいて現げんず。 あるいは国こく土どあり、 七宝しっぽう合ごう成じょうせり。 また国こく土どあり、 もはらこれ蓮れん華げなり。 また国こく土どあり、 自じ在ざい天てん宮ぐのごとし。 また国こく土どあり、 玻瓈はり鏡きょうのごとし。 十方じっぽうの国こく土ど、 みな中なかにおいて現げんず。 かくのごときらの無む量りょう無む辺へんの諸仏しょぶつの国こく土どあり、 厳顕ごんけんにして観みつべし。 韋い提だい希けをして見みせしめたまふ。

-◆爾時ニ世尊放タマフ↢眉間ノ光ヲ↡。其ノ光 リ金色ニシテ徧ク照シテ↢十方无量ノ世界ヲ↡、還 ヘテ住シテ↢仏ノ頂ニ↡、化シテ為ナムヌ↢金台ト↡。如シ↢須弥山ノ↡。十方ノ諸仏浄妙ノ国土、皆 ナ於テ↠中ニ現ズ。◆或ハ有リ↢国土↡、七宝合成セリ。復有リ↢国土↡、純モハラ是 レ蓮華也。復有リ↢国土↡、如シ↢自在天宮ノ↡。復有リ↢国土↡、如シ↢玻瓈ハリ鏡ノ↡。十方ノ国土、皆 ナ於テ↠中ニ現ズ。有リ↢如キ↠是ノ等ノ无量无辺ノ諸仏ノ国土↡、厳顕ニシテ可シ↠観ミツ。令メタマフ↢韋提希ヲシテ見セ↡。

時ときに韋い提だい希け、 仏ぶつにまうしてまうさく、 世せ尊そん、 この諸しょ仏ぶつ土どは、 また清浄しょうじょうにしてみな光こう明みょうありといへども、 われいま極楽ごくらく世せ界かいの阿弥陀あみだ仏ぶつの所みもとに生しょうずることを楽ねがふ。 やや願ねがはくは世せ尊そん、 われに思し惟ゆいを教おしへたまへ、 われに正しょう受じゅを教おしへたまへと。」 以上

-◆時ニ韋提希白シテ↠仏ニ言サク、世尊、是ノ諸仏土ハ、雖モ↣復 タ清浄ニシテ皆有ト↢光明↡、◆我今 マ楽フ↠生コトヲ↢極楽世界ノ阿弥陀仏ノ所ミモトニ↡。◆唯ヤヽ願ハ世尊、教ヘ↢我ニ思惟ヲ↡、教ヘト↢我ニ正受ヲ↡。」 已上

(65)

一 ¬首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ の巻第かんだい五にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第五言、

「大だい勢せい至し法王ほうおう子じ、 その同倫どうりん五十二菩ぼ薩さつと、 すなはち座ざより起たちて仏足ぶっそくを頂ちょう礼らいし仏ぶつにまうしてまうさく、 われ往おう昔じゃくを憶おもふに、 恒ごう河が沙しゃ劫こうに仏ぶつの出しゅっ世せありき、 無む量りょう光こうと名なづく。 十二の如来にょらい、 一劫こうをあひ継つぎたまひて、 その最さい後ごの仏ぶつを超ちょう日月にちがっ光こうと名なづけたてまつりき。 かの仏ぶつわれに念仏ねんぶつ三昧ざんまいを教おしへき。 たとへば人ひとありて、 一ひとりはもはら憶おくすることをなし、 一人ひとりはもはら忘わすれんがごとし。 かくのごとき二人ふたりは、 もしは逢あひ逢あはず、 あるいは見み、 見みるにあらず。 二人ふたりあひ憶おもふ、 二ふたりの憶念おくねん深ふかきはかくのごとし。 乃ない至し生しょうより生しょうに至いたるに、 形かたちと影かげとを同おなじくしてあひ乖かい異いせず。 十方じっぽう如来にょらい衆しゅ生じょうを憐念みんねんしたまひき。 母ははの子こを憶おもふがごとし。 もし子こ逃にげ逝ゆけば、 憶おもふといへどもいかんせん。 子こもし母ははを憶おもふこと母ははの憶おもふがごとくなる時ときは、 母子もし生しょうを歴ふれどもあひ違い遠おんせず。 もし衆しゅ生じょうの心こころに仏ぶつを憶おくし念ねんずれば、 仏ぶつ、 現前げんぜんにも当来とうらいにも必ひつ定じょう仏ぶつを見みたてまつりて仏ぶつを去さること遠とおからず。 方便ほうべんを仮からおのずから心しん開ひらくことを得うること、 染香ぜんこう人にんの身みに香こう気けあり、 これすなはち名なづけて香光こうこう荘しょう厳ごんといふがごとし。 われもと因いん地じにして、 念仏ねんぶつ心しんをもつて無む生しょう忍にんに入いる。 いまこの界かいにおいて、 念仏ねんぶつの人ひとを摂せっして浄じょう土どに帰きす。仏ぶつ、 円通えんずうに問とはく、 われ選せん択じゃくなく、 すべて六根ろっこんを摂せっして浄じょう念ねんあひ継つぎて三さん摩地まじを得えたる。 これを第一だいいちとす。」 以上

「大勢至法王子、与ト↢其ノ同倫五十二菩薩↡、即従↠座起頂↢礼仏足ヲ↡而白↠仏言、我憶↢往昔↡、恒河沙劫ニ有キ↢仏出世↡、名ク↢无量光↡。十二ノ如来、相↢継ツギタマヒテ一劫ヲ↡、其ノ最後ノ仏ヲ名ケタテマツリキ↢超日月光ト↡。彼仏教ヘキ↢我ニ念仏三昧ヲ↡。譬ヘバ如↢有↠人一リハ専ハラ為ナシ↠憶、一人ハ専ラ忘レム↡。如↠是二人ハ、若逢不ズ↠逢ハ、或ハ見非ズ↠見。二人相憶、二ノ憶念深キハ如↠是。乃至従↠生至ルニ↠生、同クシテ↠於ヲ↢形ト影ト↡不↢相乖異↡。十方如来憐↢念シタマヒキ衆生ヲ↡。如シ↢母ノ憶↠子。若子逃ニゲ逝バ、雖↠憶フト何イカン為セム。子若憶コト↠母ヲ如クナル↢母ノ憶フ↡時ハ、母子歴レドモ↠生不ズ相違遠。若シ衆生ノ心ニ憶シ↠仏ヲ念ズレバ、仏現前ニモ当来ニモ必定見タテマツリテ↠仏ヲ去ルコト↠仏ヲ不↠遠。不ズシテ仮カラ↢方便ヲ↡自得ルコト↢心開コトヲ↡、如↧染香人ノ身ニ有リ↢香気↡、此則名テ曰フガ↦香光荘厳ト↥。我本因地ニシテ、以テ↢念仏心ヲ↡入↢无生忍ニ↡。今於↢此界ニ↡、摂シテ↢念仏ノ人ヲ↡帰ス↠於ニ↢浄土↡。仏問↢円通↡、我無ク↢選択↡、都スベテ摂シテ↢六根ヲ↡浄念相継ツギテ得タル↢三摩地ヲ↡。斯ヲ為↢第一ト↡。」 已上

(66)

一 ¬首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ の巻第かんだい七にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第七言、

「土ど梟きょうらの塊かたまりを附とりて児ことなし、 および破は鏡きょう鳥ちょう毒樹どくじゅの果かをもつて抱いだきてその子ことなすに、 子この父母ぶもと成なりぬ、 みなその食じきに遭あふがごとし。」

「如シ↧土梟等ノ附トリテ↠塊ヲ為↠児、及破鏡鳥以↢毒樹果ヲ↡抱イダヒテ為ナスニ↢其ノ子ト↡、子ノ成ナリヌ↢父母ト↡、皆遭アフガ↦其ノ食ニ↥。」

(67)

一 ¬首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ の巻第かんだい十にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第十言、

「十方じっぽうの草木そうもく、 みな称しょうして有う情じょうにして、 人ひとと異いなし。 草木そうもく人ひととなり、 人ひと死しして還かえりて十方じっぽうの草樹そうじゅと成なる。」 乃至

「十方ノ草木、皆称テ有情ニシテ、与↠人无シ↠異。草木為↠人ト、人死シテ還テ成ル↢十方ノ草樹ト↡。」 乃至

(68)

一 ¬首しゅ楞りょう厳ごん経ぎょう¼ の巻第かんだい四にのたまはく、

一 ¬首楞厳経¼巻第四言、

「すなはち殺貪せっとんをもつて本ほんとなす。 人ひと、 羊ひつじを食じきするをもつて、 羊ひつじ死しして人ひととなり、 人ひと、 死しして羊ひつじとなる。 かくのごとく乃ない至し十生しょうの類たぐい、 死々しし生々しょうじょうにたがひに来きたりてあひ噉くらふ。 悪業あくごうともに生しょうじて未み来らい際さいを窮きわむ。」 乃至

「則チ以テ↢殺貪ヲ↡為↠本ト。以テ↢人食スルヲ↟羊ヲ、羊死シテ為ナリ↠人ト、人死シテ為ナル羊ト。如↠是乃至十生之ノ類、死死生生ニ互タガヒニ来テ相 ヒ噉クラフ。悪業倶トモニ生ジテ窮キハム↢未来際ヲ↡。」 乃至

(69)

一 ¬般舟はんじゅ三昧ざんまい経きょう¼ の上じょう (行品) にのたまはく、

一 ¬般舟三昧経¼上言、

「阿弥陀あみだ仏ぶつ、 この菩ぼ薩さつに語かたりてのたまはく、 わが国くにに来らい生しょうせんと欲おもはば、 つねにわが名なを念ねんずべし。 しばしばつねにまさに守念しゅねんして休く息そくあることなかれ。 乃至 この念仏ねんぶつを用もちゐるがゆゑに、 まさに阿弥陀あみだ仏国ぶっこくに生しょうずることを得うべし。」 乃至

「阿弥陀仏語カタテ↢是ノ菩薩ニ↡バチダワボサツ言ハク、欲ハ↣来↢生セムト我国ニ↡者バ、常ニ念ズベシ↢我ガ名ヲ↡。数数シバシバ常ニ当ニ守念シテ莫レ↠有ルコト↢休ク息ソク↡ヤミヤムコト。乃至 用ルガ↢是ノ念仏ヲ↡故ニ、当ニシ↠得ウ↠生ズルコトヲ↢阿弥陀仏国ニ↡。」 乃至

(70)

またのたまはく、 「念仏ねんぶつを用もちゐるがゆゑに、 空くう三昧ざんまいを得う。 かくのごときを念仏ねんぶつとなす。

又云、「用ルガ↢念仏ヲ↡故ニ、得↢空三昧ヲ↡。如↠是為ス↢念仏ト↡。」

(71)

一 ¬秘ひ密みつ蔵ぞう経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬秘密蔵経¼言、

「諸仏しょぶつ出しゅっ世せの本懐ほんかいは、 阿弥陀あみだ仏ぶつの名みょう号ごうを説とかんがためなり。」

「諸仏出世ノ本懐ハ、阿弥陀仏ノ名号ヲ為 メ也↠説トカムガ。」

(72)

一 ¬無む量りょう清浄しょうじょう平びょう等覚どうがく経きょう¼ の巻かん上じょう (巻一意) にのたまはく、

一 ¬无量清浄平等覚経¼巻上言、

「四十八願がんに約対やくたいして、 二十四願がんを結得けっとくす。」

「約↢対シテ四十八願ニ↡、▲結↢得ス二十四願ヲ↡。」

(73)

一 必ひっ至し滅めつ度ど相そう文もん (平等覚経巻二) にのたまはく、 偈げこれあり

一 必至滅度相文云、 偈在之

「安楽あんらく国こくの世せ界かいの 無む量りょう光こう明みょう土どに至いたりて 無む数しゅの仏ぶつを供く養ようす」

(74)

「光こう明みょう中ちゅうの王おう、 諸仏しょぶつ中ちゅうの王おうなり」 (平等覚経巻一意 ) 云々

-「▲光明中王、諸仏中王也」 云々

(75)

一 ¬法華ほけ経きょう¼ (巻二 譬喩品) にのたまはく、 「無智むちの人ひとの中なかにして この経きょうを説とくことなかれ」

一 ¬法華経¼言、「無智人中 莫説此経」

(76)

一 ¬十じゅう往おう生じょう経きょう¼ (意) にのたまはく、

一 ¬十往生経¼言、

「無智むち無む信しんの人ひとの中なかにして、 この経きょうを説とくことなかれ。」 ¬安楽あんらく集しゅう¼ 下げ巻かんの末まつにあり

「▲无智无信ノ人ノ中ニシテ、莫レ↠説クコト↢是ノ経ヲ↡。」¬安楽集¼下巻ノ末ニアリ

(77)

一 ¬尼母びにも経きょう¼ (巻四) にのたまはく、 「大石だいせきをもつて仏ぶつを打うちたてまつる。 諸天しょてんすなはちこの石いしを接とりて他た山ざんに擲なげ著つく。 小しょう石せきありて破われたる来きたりて仏ぶつの足みあしを傷やぶる。」

一 ¬尼母経¼云、「以テ↢大石ヲ↡打ウチタテマツル↠仏ヲ。諸天即チ接トテ↢此ノ石ヲ↡擲ナゲ↢著ツク他山ニ↡。有テ↢小石↡破ワレタル来テ傷ヤブル↢仏ノ足ミアシヲ↡。」

(78)

一 ¬金剛こんごう宝戒ほうかい章しょう¼ の上じょうにいはく、

一 ¬金剛宝戒章¼上云、

「調じょう達だつ、 悪心あくしんを発おこしてすなはち臥長ふしたけ一丈じょう五尺しゃくの石いしを執とりて、 欽きん坡羅ぱら城じょうに臨のぞみて、 仏ぶつを打うつ。 時ときに欽きん坡羅ぱら夜や叉しゃ、 その石いしを受うけて他た山ざんに投なぐ。 その石いしの破われ、 つひに仏足ぶっそくを痛いたましむ。 血ちを出いだしてよりて調じょう達だつ地じ獄ごくに堕おつ。」

「調達発シテ↢悪心ヲ↡即執トテ↢臥長フシタケ一丈五尺ノ石ヲ↡、臨テ↢欽坡羅城ニ↡、打ウツ↠仏ヲ。于ニ↠時 キ欽坡羅夜叉、受テ↢其ノ石ヲ↡投グ↢他山ニ↡。其ノ石ノ破ワレ、遂ツイニ痛イタマシム↢仏足ヲ↡。出↠血仍調達堕↢地獄ニ↡。」

(79)

一 ¬金剛こんごう宝戒ほうかい章しょう¼ の下げにいはく、

一 ¬金剛宝戒章¼下云、

「¬経きょう¼ にのたまはく、 諸法しょほうは本もとよりこのかた、 つねにおのずから寂じゃく滅めつの相そうなり。 山せん河が・大だい地じ等とう、 本来ほんらい寂じゃく滅めつの心しんなり。 万法ばんぽう形かたちを示しめし色いろを顕あらはす、 これ草木そうもくの説法せっぽうなり。 色いろを見みて知しり齅かいで香かを悟さとる、 これ説法せっぽうを聴ちょう聞もんするなり。 口く音おんの説せつは、 下げ根こんのための説法せっぽうなり。 音こえを出いだし文もんを説とく、 これはこれ小しょう児にの啼なきを息やめむがためなり。 あへて大人だいにんのための説法せっぽうにはあらざるなり。 およそ真しんの説法せっぽうとは、 われは草木そうもくの説法せっぽうを聴きき、 草木そうもくはわが説法せっぽうを聞きく。 これ如来にょらいの知ち見けん、 学者がくしゃの前まへの説法せっぽうなり。」 乃至

「¬経ニ¼云ハク、諸法ハ従↠本来タ、常ニ自寂滅ノ相也。山河・大地等トウ、本来寂滅ノ心也。万法示シ↠形ヲ顕ハス↠色ヲ、是 レ草木之ノ説法也。見テ↠色ヲ知リ齅カイデ香ヲ悟ル、是 レ聴↢聞スル説法ヲ↡也。口音之ノ説者ハ、為 メノ↢下根ノ↡之説法也。出シ↠音ヲ説ク↠文ヲ、此 レハ是 レ為 メ↠息ヤメムガ↢小児之ノ啼ナキヲ↡也。敢ヘテ非ル↧為ノ↢大人ノ↡之説法ニハ↥也。凡ソ真ノ説法ト者ハ、吾 レハ聴キキ↢草木之ノ説法ヲ↡、草木ハ聞ク吾ワガ之説法ヲ↡。是 レ如来ノ知見、学者之ノ前 ヘ之ノ説法也。」 乃至

(80)

一 ¬念仏ねんぶつ縁えん起ぎ¼ の定じょうにいはく、

一 ¬念仏縁起¼定云、

「西山せいざんの頂いただきに虫むしあり、 八はっ珍ちんといふ。 生しょう死じを悲かなしみて終夜よもすがら鳴なく。 西海せいかいの底そこに魚うおあり、 冤と芸げいといふ。 無む常じょうを嘆なげきて終日ひねもすに懣いきづく。 魚ふ・虫ちゅうなほ厭えん離りの心こころあり、 いはんや人倫じんりんをや。」

「西山之ノ頂イタヾキニ有リ↠虫、云イフ八珍チント。悲ミテ↢生死ヲ↡終夜ヨモスガラ鳴ク。西海ノ底ソコニ有リ↠魚ウヲ、云フ↢冤芸ゲイト。嘆テ↢無常ヲ↡終日ヒネモスニ懣イキヅク。魚フ・虫猶ナホ有リ↢厭離ノ心 ロ↡、云何イハンヤ人倫ジンリンヲヤ。」

(81)

一 ¬教行きょうぎょう証しょう¼ の六 (化身土巻) にいはく、 「愚ぐ禿とく釈しゃくの鸞らん、 論主ろんじゅの解義げぎを仰あおぎ、 宗しゅう師しの勧かん化けによりて、 久ひさしく万まん行ぎょう諸善しょぜんの仮け門もんを出いでて、 永ながく双樹そうじゅ林りん下げの往おう生じょうを離はなる。 善本ぜんぽん徳本とくほんの真門しんもんに回え入にゅうして、 ひとへに難なん思じ往おう生じょうの心しんを発おこしき。 しかるにいままさに方便ほうべんの真門しんもんを出いでて選せん択じゃくの願海がんかいに転てん入にゅうせり。 すみやかに難なん思じ往おう生じょうの心しんを離はなれて難なん思議じぎ往おう生じょうを遂とげんと欲ほっす。 果か遂すいの誓ちかい、 まことに由ゆえあるかな。 ここに久ひさしく願海がんかいに入いりて深ふかく仏恩ぶっとんを知しれり。 至し徳とくを報謝ほうしゃのために、 真しん宗しゅうの簡要かんようを摭ひろふて恒ごう常じょうに不可ふか思議しぎ徳海とくかいを称しょう念ねんす。」 以上

一 ¬教行証¼六云、「▲愚禿釈ノ鸞、仰ギ↢論主ノ解義ヲ↡、依テ↢宗師ノ勧化ニ↡、久ク出デヽ↢万行諸善之ノ仮門ヲ↡、永ク離ル↢双樹林下之ノ往生ヲ↡。廻↢入シテ善本徳本ノ真門ニ↡、偏ニ発シキ↢難思往生之心ヲ↡。◆然ルニ今 マ将ニ出デヽ↢方便ノ真門ヲ↡転↢入セリ↢選択ノ願海ニ↡。速ニ離レテ↢難思往生ノ心ヲ↡欲ス↠遂ゲムト↢難思議往生ヲ↡。果遂之誓、良ニ有↠由哉カナ。◆爰ニ久入テ↢願海ニ↡深ク知レリ↢仏恩ヲ↡。為ニ↣報↢謝ノ至徳ヲ↡、摭ヒロフテ↢真宗ノ簡要ヲ↡恒常ニ称↢念ス不可思議徳海ヲ↡。」 已上

(82)

また (化身土巻) いはく、

又云、

「¬大論だいろん¼ に四依しえを釈しゃくしていはく、 涅ね槃はんに入いらむと欲ほっせし時とき、 もろもろの比丘びくに語かたりたまはく、 今日こんにちより法ほうに依よりて人にんに依よらざるべし、 義ぎに依よりて語ごに依よらざるべし、 智ちに依よりて識しきに依よらざるべし、 了りょう義ぎ経きょうに依よりて不ふ了りょう義ぎに依よらざるべし。

「▲¬大論ニ¼釈シテ↢四依ヲ↡云ク、◆欲セシ↠入ラムト↢涅槃ニ↡時 キ、語リタマハク↢諸ノ比丘ニ↡、従リ↢今日↡応シ↢依テ↠法ニ不ル↟依↠人ニ、応シ↢依テ↠義ニ不ル↟依↠語ニ、応シ↢依テ↠智ニ不ル↟依↠識ニ、応シ↧依ヨテ↢了義経ニ↡不ル↞依↢不了義ニ↡。

法ほうに依よらば、 十じゅう二部にぶあり、 この法ほうに随したがふべし、 人にんに随したがふべからず。

-◆依ラ↠ルト法ニ者バ、有リ↢十二部↡、応シ↠随フ↢此ノ法ニ↡、不ズ↠応ラ↠随フ↠人ニ。

義ぎに依よるとは、 義ぎの中なかに好こう悪あく・罪福ざいふく・虚こ実じつを諍あらそふことなし、 ゆゑに語ごはすでに義ぎを得えたり、 義ぎは語ごにあらざるなり。 人ひと指ゆびをもつて月つきを指おしふ、 もつてわれを示じ教きょうす、 指ゆびを看かん視しして月つきを視みざるがごとし。 人ひと語かたりていはん、 われ指ゆびをもつて月つきを指おしふ、 なんぢをしてこれを知しらしむ、 なんぢなんぞ指ゆびを看みてしかして月つきを視みざるやと。 これまたかくのごとし。 語ごは義ぎの指ゆびとす、 語ごは義ぎにあらざるなりと。 これをもつてのゆゑに、 語ごに依よるべからず。

-◆依ルト↠義ニ者ハ、義ノ中ニ無シ↠諍コト↢好悪・罪福・虚実ヲ↡、故ニ語ハ已ニ得タリ↠義ヲ、義ハ非ル↠語ニ也 リ。如シ↧人以テ↠指ヲ指オシフ↠月ヲ以テ示ジ↢教ス我ヲ↡、看カン↢視シ指ヲ↡而シテ不ガ↞視ミ↠月ヲ。人語リテ言ハム、我以テ↠指ヲ指フ↠月ヲ令ム↢汝ヲシテ知ラ↟之ヲ、汝何ゾ看ミテ↠指ヲ而シテ不ルヤト↠視ミ↠月ヲ。此 レ亦如シ↠是ノ。語ハ為ス↢義ノ指ト↡、語ハ非ル↠義ニ也 リト。以ノ↠此ヲ故ニ、不ズ↠応ラ↠依ル↠語ニ。

智ちに依よるとは、 智ちはよく善悪ぜんあくを籌ちゅう量りょうし分別ふんべつす。 識しきはつねに楽らくを求もとむ、 正しょう要ように入いらず。 このゆゑに不ふ応おう依え識しきと言いへり。

-◆依ト↠智ニ者ハ、智ハ能ク籌チウ↢ハカラヒ量シハカリ分↣別ス善悪ヲ↡。識ハサトル常ニ求ム↠楽ヲ、不ズ↠入ラ↢正要ニ↡。是故ニ言ヘリ↢不応依識ト↡。

依え了りょう義ぎ経きょうとは、 一切いっさい智ち人にんいます、 仏ぶつ第一だいいちなり。 一切いっさい諸しょ経きょう書しょの中なかに仏法ぶっぽう第一だいいちなり。 一切いっさい衆しゅの中なかに比丘びく僧そう第一だいいちなり。 無む仏ぶつ世せの衆しゅ生じょうを、 仏ぶつ、 これを重じゅう罪ざいとしたまへり、 見仏けんぶつの善根ぜんごんを種うへざる人ひとなり。」 以上

-◆依了義経ト者ハ、有イマス↢一切智人↡仏第一也。一切諸経書ノ中ニ仏法第一也。一切衆ノ中ニ比丘僧第一也。◆无仏世ノ衆生ヲ、仏為シタマヘリ↢此ヲ重罪ト↡、不ル↠種ヘ↢見仏ノ善根ヲ↡人也。 已上

しかれば末代まつだいの道俗どうぞく、 よく四依しえを知しりて法ほうを修しゅすべきなりと。 しかるに正しょう真しんの教きょう意いに拠よりて古こ徳とくの伝説でんせつを披ひらく。 聖しょう道どう・浄じょう土どの真しん仮けを顕開けんかいして、 邪じゃ偽ぎ異い執しゅうの外げ教きょうを教きょう誡かいす。 如来にょらい涅ね槃はんの時じ代だいを勘決かんけつして正しょう像ぞう末法まっぽうの旨し際さいを開かい示じす。

-◆爾者バ末代道俗、善ク可キ↧知テ↢四依ヲ↡修ス↞法ヲ也ト。◆然ルニ拠ヨテ↢正真ノ教意ニ↡披ヒラク↢古徳ノ伝説ヲ↡。顕↢開シテ聖道・浄土ノ真仮ヲ↡、教↢誡カイスイマシム邪偽異執ノ外教ヲ↡。◆勘↢カンガヘ決シテサダム 如来涅槃之時代ヲ↡開↢示ス正像末法ノ旨際ヲ↡。

ここをもつて玄げん忠ちゅう寺じの綽しゃく和か尚しょうのいはく、 しかるに修道しゅどうの身しん、 相続そうぞくして絶たへずして、 一万劫まんごうを逕へてはじめて不ふ退たいの位くらいを証しょうす。 当今とうこんの凡ぼん夫ぶは現げんに信想しんそう軽きょう毛もうと名なづく。 また仮け名みょうといへり、 また不ふ定じょう聚じゅと名なづく、 また外げの凡ぼん夫ぶと名なづく。 いまだ火か宅たくを出いでず。

-◆是ヲ以テ玄忠寺ノ綽和尚ノ云ク、◆然ニ修道之身、相続シテ不シテ↠絶ヘ、逕テ↢一万劫ヲ↡始テ証ス↢不退ノ位ヲ↡。当今ノ凡夫ハ現ニ名ク↢信想軽毛ト↡。亦曰ヘリ↢仮名ト↡、亦名ク↢不定聚ト↡、亦名ク↢外ノ凡夫ト↡。未ズ ダ↠出↢火宅ヲ↡。

なにをもつて知しることを得えんと、 ¬菩ぼ薩さつ瓔珞ようらく経きょう¼ に拠よりて、 つぶさに入にゅう道どう行ぎょう位いを弁べんずるに、 法ほう爾になるがゆゑに難なん行ぎょう道どうと名なづく。 またいはく、 教きょう興こうの所しょ由ゆを明あかして、 時じに約やくし機きに被かぶらしめて浄じょう土どに勧かん帰きすることありては、 もし機きと教きょうと時じと乖そむけば、 修しゅしがたく入いりがたし。」 乃至

-◆何ヲ以テ得ムト↠知ルコトヲ、拠テ↢¬菩薩瓔珞経ニ¼↡、具ニ弁ベンズルニ↢入道行位ヲ↡、法爾ナルガ故ニ名ク↢難行道ト↡。◆又云ク、有テ↧明シテ↢教興ノオコリ所由ヲ↡、約ヨルシ↠時ニ被ラシメテ↠機ニ勧↦帰スルコト浄土ニ↥者ハ、若シ機ト教ト時ト乖ケバ、難ク↠修シ難シ↠入。」 乃至

(83)

一 親鸞しんらん上しょう人にん (化身土巻) いはく、

一 親鸞上人云、

「経きょう家けに拠よりて師し釈しゃくを披ひらくに、 雑ぞう行ぎょうの中なかの雑ぞう行ぎょう雑心ざっしん・雑ぞう行ぎょう専心せんしん・専せん行ぎょう雑心ざっしんあり。 また正行しょうぎょうの中なかの専修せんじゅ専心せんしん・専修せんじゅ雑心ざっしん・雑修ざっしゅ雑心ざっしんは、 これみな辺へん地じ・胎たい宮ぐ・懈け慢まん界がいの業因ごういんなり。 ゆゑに極楽ごくらくに生しょうずといへども三宝さんぼうを見みたてまつらず。 仏心ぶっしんの光こう明みょう、 余よの雑業ぞうごうの行ぎょう者じゃを照摂しょうしょうせざるなり。 仮け令りょうの誓願せいがんまことに由ゆえあるかな。 仮け門もんの教きょう、 忻ごん慕ぼの釈しゃく、 これいよいよ明あきらかなり。」

「▲拠テ↢経家ニ↡披ヒラクニ↢師釈ヲ↡、雑行之中ノ雑行雑心・雑行専心・専行雑心アリ。亦正行之中ノ専修専心・専修雑心・雑修雑心ハ、此 レ皆 ナ辺地・胎宮・懈慢界ノ業因也。故ニ雖モ↠生ト↢極楽ニ↡不ズ↠見タテマツラ↢三宝ヲ↡。仏心ノ光明、不ル↣照↢摂セ余ノ雑業ノ行者ヲ↡也。◆仮令之ノ誓願良マコトニ有ル↠由ユヘ哉 ナ。仮門之ノ教、忻ゴンネガイ慕之ボノシタフ 釈、是 レ弥イヨイヨ明カ也 リ。」

(84)

一 ¬観音かんのん悲華ひけ経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬観音悲華経¼言、

「むかし霊りょう山ぜんにましましては妙みょう法ほうと名なづけ、 いま西方さいほうにましましては弥陀みだとなづけ、

「昔 シ在マシマシテハ↢霊山ニ↡名ケ↢妙法ト↡今 マ在テハ↢西方ニ↡名ケ↢弥陀ト↡

濁じょく世せ末代まつだいにしては観音かんのんと名なづく。 三世ぜの利り益やくは同おなじく一体いったいなり。

濁世末代ニシテハ名ク↢観音ト↡三世ノ利益ハ同ジク一体也

一切いっさい如来にょらいの大だい慈悲じひは、 みな一体いったいの観かん世ぜ音おんに集あつむ。

一切如来ノ大慈悲ハ皆ミナ集アツム↢一体ノ観世音ニ↡

極楽ごくらくにしては称しょうして無む量りょう寿じゅとなし、 娑しゃ婆ばにしては観かん世ぜ音おんと示じ現げんす。」

極楽ニシテハ称シテ為シ↢無量寿ト↡娑婆ニシテハ示↢現ス観世音ト↡」

(85)

一 (智者大師別伝意 ) 「これ ¬妙みょう法ほっ華け¼ の本ほん迹じゃく二に門もんなり。 その理り甚遠じんのんにして、 解さとりがたくして入いりがたし。 しばらく置かたく論ろんぜざれ。 すなはち西方さいほうに詣もうでて仏ぶつに値あひたてまつりてみな悟さとる。」 文もんの意こころは、 ¬法ほっ華け¼ 四巻かんまで読よみて、 いま残のこり半はん部ぶは、 西方さいほうの弥陀みだに値あひたてまつりてみな悟さとるべしと仰おおせられき。

一 「是¬妙法花¼本迹ジヤク二門也。其理甚ダ遠シニシテ、難クシテ↠解サトリ難シ↠入リ。且シバラ シヤ ク置カタ チ ク不レ↠論ゼ。即チ詣マウデヽ↢西方ニ↡値アヒタテマツリテ↠仏ニ皆 ナ悟ル。」文ノ意ハ、¬法花¼四巻マデヨミテ、今ノコリ半部ハ、西方ノミダニアヒタテマツリテミナサトルベシトオホセラレキ

(86)

一 「この功く徳どくをもつて修しゅするところの善ぜんは、 所しょ生しょうの存亡そんもう等とうに回え向こうす。 願ねがはくはわれ修しゅするところの妙みょう法ほうの善ぜんは、 極楽ごくらくの弥陀みだ尊そんに回え向こうしたてまつる。」

一 「以テ↢此ノ功徳ヲ↡所ノ↠修スル善ハ、廻↢向ス所生ノ存亡ソンマウ等ニ↡。願ハ我 レ所ノ↠修スル妙法ノ善ハ、廻↢向シタテマツル極楽ノ弥陀尊ニ↡。」

(87)

一 ¬業報ごうほう差別しゃべつ経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬業報差別経¼言、

「高こう声しょう念仏ねんぶつ・読ど経きょうするに、 十種しゅの功く徳どくあり。 一にはよく睡眠ずいめんを遣のぞく、 二には天てん魔ま驚きょう怖ふす、 三には声こえ十方じっぽうに徧へんす、 四には三さん途ずの苦くを息やむ、 五には外ほかの声こえ入いらず、 六には心しんをして散ちらざらしむ、 七には勇ゆう猛みょう精しょう進じんなり、 八には諸仏しょぶつ歓かん喜ぎしたまふ、 九には三昧さんまい現前げんぜんす、 十にはさだめて浄じょう土どに生しょうず。」 以上抄出

「▲高声念仏・読経スルニ、キヤウヲヨムナリ有リ↢十種ノ功徳。一ニハ能ク遣ノゾク↢睡眠 ネブリ ヲ↡、二ニハ天魔驚オドロキ怖スオソル、三ニハ声 ヘ徧ヘンス↢十方ニ↡、四ニハ三途ノ息ヤム↠苦ヲ、五ニハ外ホカノ声 ヘ不ズ↠入ラ、六ニハ令シム↢心ヲシテ不ラ↟散チラ、七ニハ勇ユ猛精進也、八ニハ諸仏歓喜シタマフ、九ニハ三昧現前ス、十ニハ定メテ生ズ↢浄土ニ↡。」 已上抄出

(88)

一 憬きょう興ごう師しの (述文賛巻下) いはく、

一 憬キヤウ興ゴウ師ノ云イハク、

「仏ぶっ智ち 清浄しょうじょう法界ほうかい 不思議ふしぎ智ち 大だい円えん鏡きょう智ち 不可ふか称しょう智ち 平びょう等どう性しょう智ち 大だい乗じょう広こう智ち 妙みょう観かん察ざつ智ち 無む等とう無む倫りん最さい上じょう勝しょう智ち 成じょう所しょ作智さち」

「▲仏智 清浄法界 不思議智 大円ヱン鏡キヤウ智チ 不可称智 平等性智 大乗広智 妙観察智 无等无倫最上勝智 成所作智」

(89)

一 ¬華け厳ごん経ぎょう¼ にのたまはく、

一 ¬華厳経¼言、

「一たび一切いっさいのもろもろの神じん祇ぎを礼らいすれば、 蛇身じゃしんに五百たび生しょうずることを受うるなり。 現げん世ぜには福徳ふくとくさらに来きたらず、 後ご生しょうには地じ獄ごくに大だい苦くを受うるなり。」

「一ビ礼スレバ↢一切ノ諸ノ神祇ヲ↡、生ズルコトヲ↢受ウルナリ ウ クル 蛇身ニ五百度↡。現世ニハ福徳更ニ不ズ↠来ラ、後生ニハ地獄ニ受ウル也↢大苦ヲ↡。」

(90)

一 瞋しん恚に熾し盛じょう 蛇じゃ蝎かつ  愚痴ぐち熾し盛じょう 鷺さぎ  淫欲いんよく熾し盛じょう 鴿はと

一 瞋恚熾盛 蛇ジヤヘンビ 蝎カチムカデ  愚痴熾盛 鷺サギ  淫欲熾盛 鴿ハト

(91)

一 十二類るい生しょうは
一卵らん生しょう 二胎たい生しょう 三湿しっ生しょう 四化け生しょう 五有う色しき生しょう 六無む色しき生しょう 七有う相そう生しょう 八無む相そう生しょう 九非有ひう色しき生しょう 十非無ひむ色しき生しょう 十一非有ひう相そう生しょう 十二非無ひむ相そう生しょうなり

一 十二類生者
一卵生 二胎生 三湿生 四化生 五有色生 六无色生 七有相生 八無相生 九非有色生 十非无色生 十一非有相生 十二非无相生ナリ

(92)

一 摂しょう大だい乗じょうには七種しゅの生しょう死じを立たつ
一分段ぶんだん生しょう死じ (三界さんがいの果か報ほうなり) 二流る来らい生しょう死じ (迷真めいしんの始はじめなり) 三反ほん出しゅつ生しょう死じ (痴志ちしの始はじめなり) 四方便ほうべん生しょう死じ 五因縁いんねん生しょう死じ 六有後うご生しょう死じ 七無後むご生しょう死じ

一 摂大乗ニハ 立↢七種ノ生死ヲ↡
一分段生死 (三界果報也) 二流来生死 (迷真始也) 三反出生死 (痴志始也) 四方便生死 五因縁生死 六有後生死 七無後生死

(93)

¬大だい経きょう¼ の上じょうにのたまはく、

¬大経¼上言、 十二光仏

「無む量りょう寿じゅ仏ぶつを、 無む量りょう光こう仏ぶつ・無む辺へん光こう仏ぶつ・無礙むげ光こう仏ぶつ・無む対たい光こう仏ぶつ・焔王えんのう光こう仏ぶつ・清浄しょうじょう光こう仏ぶつ・歓かん喜ぎ光こう仏ぶつ・智慧ちえ光こう仏ぶつ・不ふ断だん光こう仏ぶつ・難なん思じ光こう仏ぶつ・無む称しょう光こう仏ぶつ・超ちょう日にち月光がっこう仏ぶつと号ごうす。」

「▲無量寿仏ヲ、号ス↢无量光仏・无辺光仏・无光仏・无対光仏・炎王光仏・清浄光仏・歓喜光仏・智慧光仏・不断光仏・難思光仏・无称光仏・超日月光仏ト↡。」

(94)

¬無む量りょう寿じゅ如来にょらい会え¼ (巻上) にのたまはく、

¬無量寿如来会¼言、 十五光

「阿あ難なん、 この義ぎをもつてのゆゑに、 無む量りょう寿じゅ仏ぶつにまた異い名みょうまします。 いはく無む量りょう光こう・無む辺へん光こう・無む著じゃく光こう・無碍むげ光こう・光こう照しょう王おう・端厳たんごん光こう・愛光あいこう・喜き光こう・可か観かん光こう・不ふ思議しぎ光こう・無む等とう光こう・不可ふか称量しょうりょう光こう・映蔽えいへい日光にっこう・映蔽えいへい月光がっこう・掩奪あんだつ日月にちがっ光こう。」 以上

「▲阿難、以↢是義↡故ニ、无量寿仏ニ復有マシマス↢異名↡。謂イハク无量光・无辺光・无著ヂヤクツク 光・クルフ 无光・光照王・端厳タンゴム光・愛光・喜光・可観光・不思議光・无等光・不可称量光・映蔽エイヘイ日光・映蔽月光・掩アンオヽウ奪ダチウバフ日月光。」 已上

(95)

一 四王おう生しょう八子しとは
一浄じょう飯ぼん王のう生しょう 一悉達しっだつ  二難なん陀だ     二白びゃく飯ぼん王のう生しょう 一調じょう達だつ 二阿あ難なん 
三斛飯こくぼん王のう生しょう  一摩訶まか男なん 二阿那あな律りつ    四甘かん露ろ飯ぼん王のう生しょう 一跋提ばつだい  二提沙だいしゃ

一 四王生八子者
一浄飯王生  一悉達  二難陀    二白飯王生  一調達  二阿難 
三斛飯王生  一摩訶男 二阿那律   四甘露飯王生 一跋バチ提  二提沙

(96)

一 仏ぶつ十大だい弟子でし
一舎しゃ利り弗ほつ 身しん子しと翻ほんず 智慧ちえ第一だいいち  二目連もくれん  採さい菽しゅくと翻ほんず 神通じんずう第一だいいち  三迦か葉しょう  飲光おんこうと翻ほんず 頭陀ずだ第一だいいち
四須しゅ菩ぼ提だい 空くう生しょうと翻ほんず 無む諍じょう第一だいいち  五富楼那ふるな 慈子じしと翻ほんず 説法せっぽう第一だいいち   六迦か旋延せんえん 扇せん縄じょうと翻ほんず 論ろん義ぎ第一だいいち
七阿那あな律りつ 無む貪とんと翻ほんず 天眼てんげん第一だいいち  八優波離うぱり 近ごん執しゅうと翻ほんず 持じ戒かい第一だいいち  九羅睺羅らごら 障しょう蔽へいと翻ほんず 密みつ行ぎょう第一だいいち
十阿あ難なん陀だ 慶きょう喜きと翻ほんず 多た聞もん第一だいいち

一 仏十大弟子
一舎利弗 翻ホン↢身子ト↡ 智慧第一  二目連  翻↢採サイ菽シユクト↡神通第一  三迦葉  翻↢飲オム光↡ 頭陀第一
四須菩提 翻↢空生ト↡ 无諍第一  五富楼那 翻↢慈子ト↡ 説法第一  六迦旋延 翻↢扇セン縄ジヨウ↡ 論義第一
七阿那律 翻↢無貪↡ 天眼第一  八優波離 翻↢近執↡ 持戒第一  九羅睺羅 翻↢障蔽ヘイト↡ 密行第一
十阿難陀 翻↢慶喜↡ 多聞第一

(97)

一 ¬善悪ぜんあく因いん果が経きょう¼ に説ときて (意) のたまはく、

一 ¬善悪因果経¼説言、 十二来

「六根ろっこん具ぐ足そくは持じ戒かいの中なかより来きたれり 諸根しょこん不具ふぐは破壊はえの中なかより来きたれり
端たん正じょうは忍辱にんにくの中なかより来きたれり   愚痴ぐちは不ふ孝きょうの中なかより来きたれり
福徳ふくとくは布施ふせの中なかより来きたれり    貧びん窮ぐは貪欲とんよくの中なかより来きたれり
下げ賎せんは憍きょう慢まんの中なかより来きたれり   高こう姓しょうは礼拝らいはいの中なかより来きたれり
盲聾もうろうは不ふ信しんの中なかより来きたれり    瘖おん瘂あは誹ひ謗ほうの中なかより来きたれり
短たん命みょうは敬生きょうしょうの中なかより来きたれり  長ちょう命みょうは慈悲じひの中なかより来きたれり。」

「六根具足者自↢持戒中↡来   諸根不具者自↢破壊中↡来
端正者ハ自↢忍辱ノ中↡来レリ    愚痴者自↢不孝中↡来
福徳者自↢布施中↡来      貧窮者自↢貪欲中↡来
下賎者自↢憍慢中↡来      高姓者自↢礼拝中↡来
盲聾者自↢不信中↡来      瘖瘂者自↢誹謗中↡来
短命者自↢敬生中↡来      長命者自↢慈悲中↡来。」

(98)

一 ¬大集だいじっ経きょう¼ にのたまはく、

一 ¬大集経¼言、 十来

「端たん正じょうは忍辱にんにくの中なかより来きたれり  貧びん窮ぐは慳貪けんどんの中なかより来きたれり
高こう性しょうは礼拝らいはいの中なかより来きたれり   下げ賎せんは憍きょう慢まんの中なかより来きたれり
瘖おん瘂あは誹ひ謗ほうの中なかより来きたれり   盲聾もうろうは不ふ信しんの中なかより来きたれり
長ちょう寿じゅは慈悲じひの中なかより来きたれり   短たん命みょうは敬生きょうしょうの中なかより来きたれり
諸根しょこん不具ふぐは破壊はえの中なかより来きたれり 六根ろっこん具ぐ足そくは持じ戒かいの中なかより来きたれり。」

「端タン正ジヤウナル者モノハ忍辱ノ中ナカヨリ来キタレリ  貧窮者慳貪中来
高性者礼拝中来       下賎者憍慢中来
瘖オン 瘂コトヾモリ者誹謗中来      盲メシヰ 聾ミヽシヰ者不信中来
長寿者慈悲中来       短命者敬生中来
諸根不具破壊中来      六根具足持戒中来。」

(99)

一 ¬要よう集しゅう¼ の中ちゅう巻かん大文だいもん第だい五にいはく、

一 ¬要集¼中巻大文第五云、

「¬平びょう等覚どうがく経きょう¼ にのたまはく、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつ、 無む量りょう清浄しょうじょう仏ぶつとは、 これ阿弥陀あみだ仏ぶつなり。」

「▲¬平等覚経¼云、「无量清浄仏、无量清浄仏ト者ハ、是 レ阿弥陀仏也。」

(100)

一 茸きのこを服ぶくすべからざる事こと

一 不ル↠可ラ↠服ブクス↠茸キノコヲ事

 (101)

¬十住じゅうじゅう断結だんけつ経きょう¼ にのたまはく、

¬十住断結経¼言、

「釈しゃく尊そん茸きのこを食じきしたまひて、 七日にち悩なやんで説法せっぽう中なか絶たへたまふ。」文

「釈尊食タマヒテ↠茸キノコヲ、悩ナヤムデ↢七日↡説法中ナカ絶タヘタマフ。」文

 (102)

¬有う情じょう輪りん回ね経ぎょう¼ にのたまはく、

¬有情輪廻経¼言、

「茸きのこを食じきするゆゑに、 諸仏しょぶつの種しゅ子しを断だんじて無む上じょう道どうを得えず。」文

「食スル↠茸ヲ故ニ、断ジテ↢諸仏ノ種子ヲ↡不↠得↢无上道ヲ↡。」文

 (103)

大蔵だいぞう一蘭いちらんに ¬阿あしゅく経きょう¼ を引ひきてのたまはく、

大蔵一蘭ラムニ引テ↢¬阿シユク経ヲ¼↡言、

「茸きのこありと知しらせたらんものには、 同どう坐ざをすべからず。 いかにいはんやみずから食じきせんをや。」

「知シラセタラム↠有アリト↠茸キノコ者モノニハ、不↠可↢同坐ヲス↡。何ニ況ヤ食セムヲ↠自ミ 哉ヤ。」

 (104)

また ¬義軌ぎき¼ に秘ひ経きょうを引ひきてのたまはく、

又¬義軌クヰニ¼引テ↢秘経ヲ↡言ク、

「茸きのこを食じきするに十三の失とがあり。 一には大寝おおいねす、 二には癲狂てんおう、 三は頓とん死し、 四は鶴かく乱らん、 五は疾しっ病ぺい、 六は白びゃく癩らい、 七は失しつ念ねん、 八は闇目あんもく乃ない至し魔ま縁えん便たよりを得えて、 最さい後ごに無記むきにしてつひに地じ獄ごくに堕おつ。」文

「食スルニ↠茸ヲ有リ↢十三ノ失トガ↡。一ニハ大寝オホイネス、二ニハ癲狂テンワウ、三ハ頓トム死シ、四ハ鶴クワク乱ラン、五ハ疾シチニハカニ病、ヤマヒオコル六ハ白ビヤク癩ライ、七ハ失シチ念、八ハ闇目アムモクメクラクナル乃至魔縁得テ↠便タヨリヲ、最後ニ無記ニシテ遂ニ堕オツ↢地獄ニ↡。」文

(105)

一 問とふ。 善導ぜんどうといふ事こと、 経きょう文もんに見みへたりや。

一 問。善導云事、経文ニ見ミヘタリ耶ヤ。

 (106)

答こたふ。 ¬提だい謂い経きょう¼ にのたまはく、 「釈しゃ迦か如来にょらいの滅めつ後ご、 末まっ世せに善導ぜんどう世よに出いでて、 悪人あくにんを導みちびくべし。」

答。¬提ダイ謂イ経ニ¼言ハク、「釈迦如来ノ滅後、末世ニ善導出デヽ↠世ニ、可シ↠導ミチビク↢悪人ヲ↡。」

 (107)

また ¬遺ゆい教きょう経ぎょう¼ にも、 「善導ぜんどう」 といふ。

又¬遺ユイ教経ニモ¼、「善導ト」云。

(108)

一 「一見いっけんの輩ともがら、 ともに仏ぶっ果かを期ごすべし。」
     聖しょう徳とく太たい子し、 天王てんのう寺じの瓦かわらの銘文めいもんなり。

一 「一見ケン之輩トモガラ、共ニ期ゴスベシ仏果ヲ↡。」
     聖徳太子、天王寺瓦銘文也。

文永ぶんえい六年ねん 己巳、 この文もんは顕あらはれ給たまへり。 天王てんのう寺じにまします。

文永六年 己巳、此文ハ顕アラハレ給ヘリ。天王寺ニ坐マシマス。

(109)

一 御入滅日記事

釈迦如来、穆王壬申二月十五日
龍樹菩薩 十月十八日
天親菩薩 三月三日 御年八十
菩提留支 十一月四日 御年百五十六
羅什三蔵 八月廿日
曇鸞法師 七月七日 御年六十七
道綽禅師 四月廿七日 御年八十四
善導和尚 三月十四日或廿七日
懐感禅師 八月三十日
小康   十月三日
聖徳太子 二月廿二日 御年四十九
恵慈禅師 六月廿二日 太子ニ一年オトリテ
空也聖人 九月十一日 御年七十
源信和尚 六月十日
永観律師 十一月二日 御年七十九
源空上人 正月廿五日 御年八十
信空法師 九月九日
隆寛律師 六月十六日 御年八十
聖覚法印 三月五日 御年六十九
親鸞上人 十一月廿八日 御年九十
真仏法師 三月八日 御年五十

(110)

一 馬鳴菩薩 三月三日
  伝教大師 六月十四日 御年五十六
  弘法大師 三月廿一日
  慈覚大師 正月十四日 御年七十一
  行基菩薩 二月二日 御年八十

(111)

一 百丈ひゃくじょう禅ぜん師じの清しん規ぎの病びょう僧そうの段だんにのたまはく、

一 百丈禅師ノシンキノ病僧ノ段ニ云ハク、

「大だい事じいまだ発ほつ明みょうせずは、 弥陀みだの名みょう号ごうを勧すすむべし。」 云々

「大事未ズ ダ↢発明セ↡者ハ、可シ↠勧ム↢弥陀ノ名号ヲ↡。」 云々

(112)

一 ¬金剛こんごう頂ちょう瑜伽ゆが念珠ねんじゅ経きょう¼ (意) にのたまはく、

一 ¬金剛頂瑜伽念珠経¼言、

「念珠ねんじゅの数かずは、 一千八十、 一百八、 五十四、 二十七。」 とあげたり 

「念珠ノ数ハ、一千八十、一百八、五十四、二十七。」トアゲタリ 

(113)

一 ¬校量きょうりょう数じゅ珠ず功く徳どく経きょう¼ (意) にのたまはく、

一 ¬校量数珠功徳経¼言、

「念珠ねんじゅの数かずは、 百八、 五十四、 二十七、 十四」 と定さだめたり。

「念珠ノ数ハ、百八、五十四、廿七、十四」ト定タリ。

(114)

世よの常つねに、 数かずを種々しなじなになすは、 これらの文もんによりてか。 また数じゅ珠ずの体たいは、 もとより本ほん経ぎょうに背そむけり。 かの二経きょうには、 同おなじく金こがね・銀しろがね・銅あかがね・鉄くろがねの数じゅ珠ずをあげたり。 あるいは水すい精しょう・真珠しんじゅ等とうの数じゅ珠ずをあげ、 あるいは木槵むくろじ子のみ・蓮子はすのみ等とうの数じゅ珠ずをあげたり。 しかるを日本にっぽん国こくの風俗ふうぞくとして諸木しょもくをすて、 円まるになし平たいらになす。 この事こと、 まつたくかの二経きょうに挙あげざるところなり。 いはんや浄じょう土ど門もんには、 念珠ねんじゅの数取かずとりと定さだむ。 また数かずも体たいも心こころに任まかす心こころか。

ヨノ常ツネニ、カズヲ種々シナジナニナスハ、コレラノ文ニ依テ歟。又数珠ノ体ハ、本モトヨリ本経ニ背ソムケリ。彼カノ二経ニハ、同ジク金・銀・銅・鉄ノズヾヲアゲタリ。或ハ水精・真珠等ノズヾヲアゲ、或ハ木槵子・蓮子ハスノミ等ノズヾヲアゲタリ。シカルヲ日本国ノ風俗トシテ諸木ヲステ、円ニ成ナシ平ニ成ス。此ノ事、全ク彼カノ二経ニ挙アゲザル所トコロ也ナリ。況ヤ浄土門ニハ、念珠ノ数取ト定ム。又数モ体モ心ニ任ス心歟。

(115)

一 曇鸞どんらん、 四し論ろんの講説こうせつを捨すてたる事こと

一 曇鸞捨↢四論講説↡事

問とふ。 四し論ろんとはなにや。 答こたふ。 一には ¬百ひゃく論ろん¼、 二には ¬中ちゅう論ろん¼、 三には ¬十じゅう二に門もん論ろん¼、 四には ¬智度ちど論ろん¼、 これを四し論ろんと名なづくなり。

問。四論者何ヤ。答。一ニハ¬百論¼、二ニハ¬中論¼、三ニハ¬十二門論¼、四ニハ¬智度論¼、是ヲ名ク↢四論ト↡也。

(116)

一 大だい兎と牖まどを出いづる事こと

一 大兎出ル↠牖マドヲ事

枳哩枳きりき王おう夢ゆめにいはく、 大だい兎と窓まどを出いづるに、 一尾びのために礙さへらる。 云々 この由ゆえを見みて不ふ思議しぎなりと思おもひて、 迦か葉しょう仏ぶつの御み前まえに詣もうでてこの由ゆえを問とひたてまつる。 迦か葉しょう仏ぶつ答こたへていはく、 当とう時じの事ことにあらず。 末まっ世せに釈しゃ迦かといふ仏ぶつ世よに出いでたまはむ時とき、 五ご濁じょく増ぞうにして衆しゅ生じょうを化けすといへども生しょう死じを出いでがたきゆゑに、 かくのごとく見みるなり。 云々

枳哩枳キリキ王夢ユメニ云ハク、大兎出ルニ↠窓ヲ、為ニ↢一尾ノ↡所ラル礙サヘ。云々 此ノ由ヲ見テ不思議也ト思テ、迦葉仏之御前ヘニ詣デヽ奉ル↠問ヒ↢此ノ由ヲ↡。迦葉仏答テ云ハク、当タウ時ジノ事ニ非ズ。末世ニ釈迦ト云フ仏出デ↠世ニ給ハム時、五濁増ニ而雖モ↠化スト↢衆生ヲ↡難キ↠出デ↢生死↡故ニ、如ク↠此ノ見ル也。云々

(117)

¬仁王にんのう経ぎょう¼ (巻下嘱累品) にのたまはく、 「白びゃく衣え高こう座ざ、比丘びく地じ立りゅう。」

¬仁王経¼云ハク、「白ビヤク衣エ高カウ座ザザウボフノトキニハ、比丘ビク地チオトコハタカキ立リフ。」トコロニオル也

(118)

一 四し種しゅ蓮れん華げ 優う青 鉢は羅ら華け 狗く黄 物も頭づ華け 婆は赤 曇どん摩ま華け 芬ふん白 陀利だり華け

一 四種蓮華 優ウ青 鉢ハチ羅ラ華クヱ 狗ク黄 物モチ頭ヅ花クヱ 婆ハ赤 曇ドム摩マ華 芬フン白 陀利ダリ華

(119)

一 天竺てんじくに四し姓しょうあり

一 天竺ニ四姓アリ

刹せつ利り種しゅ姓しょう 王おうの姓しょうなり 婆羅ばら門もん種しゅ姓しょう 臣しん下かの姓しょうなり 毘び舎しゃ種しゅ姓しょう 商人あきびとの姓しょうなり 首しゅ陀だ種しゅ姓しょう 百姓ひゃくしょうの姓しょうなり

刹セチ利リ種シユ姓シヤウ 王ノ姓也 婆羅バラ門モン種姓 臣シン下カノ姓也 毘ビ舎シヤ種姓 商人アキビトノ姓也 首シユ陀ダ種姓 百姓ノ姓也

(120)

一 ¬律りっ宗しゅう新しん学がく名みょう句ぐ¼ (巻中意) にいはく、

一 ¬律宗新シン学ガク名ミヤウ句グニ¼云ハク、

「戒かい名みょうにいはく、 五ご種しゅの正しょう食じき、 一飯いい、 二乾飯ほしいい、 三麨こむぎ、 四魚うお、 五肉にく 音こえあるもの足あしあるものこれらをいます」

「戒カイ名ミヤウニ云イハク、五種シユノ正シヤウ食ジキ、一飯イヽ、二乾飯ホシイヽ、三麨コムギ、四魚ウヲ、五肉ニク 音コヱアルモノ足アルモノコレラヲイマス」

(121)

一 五ご辛しん、 みな七日しちにち七しち日にちといへり。 これは行ぎょうじなんとする事ことなりと 云々。

一 五辛、ミナ七日七日ト云ヘリ。是ハ行ギヤウオコナヒナムトスル事也ト 云々。

(122)

¬僧そう尼に令れい¼ にいはく、 「僧そう尼に五ご辛しんを食じきすれば、 三十日にち苦使つつしめ。」

¬僧尼令ニ¼云ハク、「僧ソウ尼ニ食スレ↢五辛ヲ↡者バ、三十日苦使ツヽシメ。」

(123)

一 五ご辛しん、 ¬報応ほうおう経きょう¼ にのたまはく、

一 五辛、¬報応経ニ¼云ハク、

「病やまいあらんとき、 伽が藍らんの外ほか白びやく衣え家けにありて服ふくするに、 四十九日にちを満みつと沐浴もくよくの後のちは許ゆるす。」 云々

「病ヤマヒ開、アラムトキ在アリテ↢伽ガ藍ランノ外ホカ白ビヤク衣エ家ケニ↡服已フクスルニ、満ミツト↢四十九日ヲ↡沐浴モクヨクノ後ノチハ許ユルス。」 云々

(124)

一 ¬毘奈耶びなや雑ぞう事じ¼ にいはく、

一 ¬毘奈耶ビナヤ雑ザフ事ジニ¼云イハク、

「蒜ひる七日にち夜や、 葱き三日にち夜や、 薤にら一日にち夜や。」

「蒜ヒル七日夜ヤ、葱キ三日夜、薤ニラ一日夜。」

(125)

一 五ご辛しん、 ¬梵網ぼんもう経きょう¼ にこれを説とく。

一 五辛シム、¬梵網ボムマウ経ニ¼説ク↠之ヲ。

「大だい一 蒜さん 慈じ二 葱そう 角かく三 葱そう 蘭らん四 葱そう 興こう五 蕖きょ。」

「大蒜ダイサンオオヒル 慈ジ葱ソウキ   角葱カクソウニラ  蘭葱ランソウアラヽギ 興カウ蕖キヨ クレノオモ。」

(126)

一 薬師十二夜叉大将軍
寅 宮羅クビラ大将  普賢菩薩
卯 伐析ダキ羅大将  薬師菩薩
辰 迷企メキ羅大将  文殊師利菩薩
巳 安アン底チ羅大将  地蔵菩薩
午 頞アン爾ニ羅大将  虚空蔵菩薩
未 珊サン底チ羅大将  摩利子天
申 因イン達ダ羅大将  観世音菩薩
酉 波夷ハイ羅大将  阿弥陀如来
戌 摩虎マコ羅大将  大勢至菩薩
亥 真シン達ダ羅大将  弥勒菩薩
子 招セウ杜ト羅大将  釈迦如来
丑 ビ羯キヤ羅大将  金剛寿菩薩

(127)

一 六地蔵
救勝地蔵  光味地蔵  獲散地蔵  牟尼ムニ地蔵  華供地蔵  諸龍地蔵

(128)

一 ¬小しょう阿弥陀あみだ経きょう¼ にのたまはく、「十劫じっこう」。」

一 ¬小阿弥陀経¼言、「▲十劫」。」

(129)

一 ¬称しょう讃さん浄じょう土ど経きょう¼ にのたまはく、 「十じゅう大劫だいこう」。」

一 ¬称讃浄土経¼言、「▲十大劫」。」

(130)

一 ¬大だい阿弥陀あみだ経きょう¼ (巻上) にのたまはく、 「十じゅう小しょう劫こう」。」

一 ¬大阿弥陀経¼言、「▲十小劫」。」

(131)

一 ¬大だい経きょう¼ (巻上) にのたまはく、 「十劫じっこう」。」

一 ¬大経¼言、「▲十劫」。」

(132)

¬注ちゅう十じゅう疑ぎ論ろん¼ にいはく、 「釈しゃ迦か大だい師し一代いちだいの説法せっぽう、 処々しょしょの聖教しょうぎょうに、 ただ衆しゅ生じょう心こころをもつぱらにしてひとへに阿弥陀あみだ仏ぶつを念ねんぜよと勧すすめたり。」

¬注十疑論¼云、「釈迦大師一代説法、処々ノ聖教ニ、唯タヾ勧メタリ↣衆生専ニシテ↠心ヲ偏ヘニ念ゼヨト↢阿弥陀仏ヲ↡。」

(133)

一 ¬涅ね槃はん経ぎょう¼ (北本巻一〇大衆所聞品意) にのたまはく、

一 ¬涅槃経¼言、

「金沙こんしゃ大だい河が、 直じき入にゅう西海さいかい」 といへり。
この文もんの心こころは、 一大千だいせん世せ界かいにある河かわは、 みなゆがうたれども、 この河かわばかり、 すぐに西にしの海うみへ流ながれ入いりたり。 摩耶まや夫ぶ人にんの御おん心こころをば、 この河かわに譬たとへて釈しゃくせられたり。 余よの河かわみなゆがうたり。 一切いっさいの女人にょにんは、 心こころゆがめるによりて、 この河かわに譬たとへずと知しるべし。

「金沙大河、直入西海」ト云ヘリ。
此文ノ心ハ、一大千世界ニアル河ハ、皆ミナユガウタレドモ、此ノ河バカリ、スグニ西ノ海ヘ流レ入リタリ。摩耶夫人ノ御心オバ、此ノ河ニ譬ヘテ釈セラレタリ。余ノ河 ハミナユガウタリ。一切ノ女人ハ、心 ロユガメルニ依リテ、此ノ河ニ譬ヘズト知ルベシ。

(134)

一 聖しょう徳とく太たい子し善光ぜんこう寺じの如来にょらいへ御ご書しょをたてまつる。 御おん使つかいは稲目いなめの宿すく祢ねの子し息そく、 甲斐かいの黒義くろよしなり。

一 聖徳太子奉ツル↢善光寺如来御書ヲ↡。御使ツカヒ稲目イナメノ宿祢之ノ子息、甲斐ノ黒義クロヨシ也。

「名みょう号ごうを称しょう揚ようすること七日しちにちおはりぬ。 これはこれ広大こうだいの恩おんを報ほうぜんがためなり。
仰あおぎ願ねがはくは本ほん師し弥陀みだ尊そん、 われを助たすけて済さい度どしてつねに護ご念ねんしたまへ。

「名号ヲ称揚スルコト七日已オハリヌ此 レハ斯 レ為 メ也↠報ゼムガ↢広大ノ恩ヲ↡
仰ギ願クハ本師弥陀尊助ケテ↠我ヲ済度シテ常ニ護念シタマヘ。

 如来にょらいの御ご返報へんぽうにいはく、

 如来御返報云、

一日いちにちの称しょう揚よう息留やむことなし。 いにいはんや七日しちにちの大だい功く徳どくをや。
われ衆しゅ生じょうを待まつこと心しんに間ひまなし。 なんぢよく済さい度どせよ、 ここに護まもらざらんや。

一日ノ称陽無シ↢息留ヤムコト何 カニ況ヤ七日ノ大功徳ヲヤ
我 レ待マツコト↢衆生ヲ↡心ニ無シ↠間ヒマ汝 ヂ能ク済度セヨ爰コヽニ不ムヤ↠護マモラ。

 命長みょうじょう七年しちねん 丙午 の歳とし」

 命長七年 丙午 歳」

(135)

尊善そんぜん無垢むく世せ界かいの尊音そんのん王仏おうぶつの本願ほんがんをたてたまひけるを、 法蔵ほうぞう菩ぼ薩さつは選せん択じゃくして浄じょう土どをたてたまへり。

尊善无垢世界ノ尊音王仏ノ本願ヲタテタマヒケルヲ、法蔵菩薩ハ選択シテ浄土ヲタテタマヘリ。

(136)

一 三さん有ぬとは、 本ほん有う・生しょう有う・死有しう。
本ほん有うといふは、 もとより六道ろくどう四し生しょうにまよふをいふなり。 いま生うまるるを生しょう有うといふ、 死しするを死有しうといふなり。

一 三有ト者ハ、本有・生有・死有。
本有トイフハ、本ヨリ六道四生ニマヨウヲイフ也。今イマムマルヽヲ生有トイフ、死シスルヲ死有ト云也。

(137)

一 四し重じゅうとは、 殺せつ・盗とう・婬いん・妄もう語ご。

一 四重ト者ハ、殺・盗・婬・妄語。

(138)

戒律かいりつ三種さんしゅ沙しゃ弥みとは
一駆烏くう沙しゃ弥み 七歳さいより十三歳さいに至いたる 二応法おうほう沙しゃ弥み 十四歳さいより十九歳さいに至いたる 三名みょう字じ沙しゃ弥み 二十歳さいより七十歳さいに至いたる

戒律三種沙弥者
一駆烏クウ沙弥 従七歳至↢十三歳↡也 二応法沙弥 従十四歳至↢十九歳↡也  三名字沙弥 従二十歳至↢七十歳↡也 

 

延えん慶きょう第だい二 己酉 初しょ秋しゅう上旬じょうじゅん 第六 これを書写しょしゃしおはりぬ

*延慶第二 己酉 初秋上旬 第六 書写之畢

(139)

一 「獲ぎゃく」の字じは、 因いん位にのとき得うるを獲ぎゃくといふ。
「得とく」 の字じは、 果位かいの時ときに至いたりて得うるを得とくといふなり。
「名みょう」の字じは、 因いん位にの時ときの名なを名みょうといふ。
「号ごう」 の字じは、 果位かいの時ときの名なを号ごうといふ。

一 ▲「獲グヰヤク」ノ字ジハ、 因イン位ヰノトキウルヲ獲グヰヤクトイフ。
「得」 字ハ、 果位ノ時ニイタリテウルヲ得ト云也。
◆「名」字ハ、 因位ノ時ノナヲ名トイフ。
「号」 字ハ、 果位ノ時ノナヲ号ト云フ。

「自じ然ねん」 といふは、

「自じ」 はおのづからといふ、 行ぎょう者じゃのはからいにあらず。 しからしむといふ詞ことばなり。
「然ねん」 といふは、 しからしむといふ詞ことば、 行ぎょう者じゃのはからいにあらず、 如来にょらいの誓ちかいにてあるがゆへに。 「法ほう爾に」 といふは、 この如来にょらいの御おん誓ちかいなるがゆへに、 しからしむるを法ほう爾にといふ。 法ほう爾には、 この御おん誓ちかいなりけるゆへに、 すべて行ぎょう者じゃのはからひなきをもて、 この法ほうの徳とくのゆへにしからしむといふなり。 すべて、 人ひとのはじめてはからはざるなり。 このゆへに他た力りきには義ぎなきを義ぎとすと知しるべしとなり。 「自じ然ねん」 といふは、 もとよりしからしむといふ詞ことばなり。

◆「自然」 トイフハ、

「自」 ハオノヅカラトイフ、 行者ノハカライニアラズ。 シカラシムトイフコトバ也。
「然」 トイフハ、 シカラシムトイフコトバ、 行者ノハカライニアラズ、 如来ノチカヒニテアルガユヘニ。 ◆「法爾」 トイフハ、 コノ如来ノオムチカヒナルガユヘニ、 シカラシムルヲ法爾トイフ。 法爾ハ、 コノオムチカヒナリケルユヘニ、 スベテ行者ノハカラヒナキヲモテ、 コノ法ノトクノユヘニシカラシムトイフナリ。 スベテ、 人ノハジメテハカラハザルナリ。 コノユヘニ他力ニハ義ナキヲ義トストシルベシトナリ。 「自然」 トイフハ、 モトヨリシカラシムトイフコトバ也。

弥陀みだ仏ぶつの御おん誓ちかいの、 もとより行ぎょう者じゃのはからひにあらずして、 南無なも阿弥陀あみだとたのませて、 迎むかへんとはからはせたまひたるによりて、 行ぎょう者じゃの善よからむとも悪あしからむとも思おもはぬを、 自じ然ねんとはまふすぞと聞ききて候そうろう。 誓ちかいの様ようは、 無む上じょう仏ぶつにならしめむと誓ちかひたまへるなり。 無む上じょう仏ぶつとまふすは、 形かたちもなくまします。 形かたちのましまさぬゆへに、 自じ然ねんとはまふすなり。 形かたちましますと示しめすときには、 無む上じょう涅ね槃はんとはまふさず。 形かたちもましまさぬ様ようを知しらせむとて、 はじめて弥陀みだ仏ぶつとぞ聞ききならひて候そうろう。 弥陀みだ仏ぶつは自じ然ねんの様ようを知しらせむ料りょうなり。 この道どう理りを心こころ得えつる後のちには、 自じ然ねんのことはつねに沙汰さたすべきにはあらざるなり。 つねに自じ然ねんを沙汰さたせば、 義ぎなきを義ぎとすといふことは、 なほ義ぎのあるになるべし。 これは仏ぶっ智ちの不思議ふしぎにてあるなり。

◆弥陀仏ノ御チカヒノ、 モトヨリ行者ノハカラヒニアラズシテ、 南无阿弥陀トタノマセテ、 ムカヘントハカラハセタマヒタルニヨリテ、 行者ノヨカラムトモアシカラムトモオモハヌヲ、 自然トハマフスゾトキヽテ候。 ◆チカヒノヤウハ、 无上仏ニナラシメムトチカヒタマヘルナリ。 无上仏トマフスハ、 カタチモナクマシマス。 カタチノマシマサヌユヘニ、 自然トハマフスナリ。 カタチマシマストシメストキニハ、 无上涅槃トハマフサズ。 カタチモマシマサヌヤウヲシラセムトテ、 ハジメテ弥陀仏トゾキヽナラヒテ候。 ミダ仏ハ自然ノヤウヲシラセムレウナリ。 ◆コノ道理ヲコヽロエツルノチニハ、 自然ノコトハツネニサタスベキニハアラザルナリ。 ツネニ自然ヲサタセバ、 義ナキヲ義トストイフコトハ、 ナホ義ノアルニナルベシ。 コレハ仏智ノ不思議ニテアルナリ。

愚ぐ禿とく親鸞しんらん八十六歳さい

愚禿親鸞八十六歳

(140)

正しょう嘉か元年がんねん戊つちのえ午うま十二月がつ 日じつ、善法ぜんぽう坊ぼう僧そう都ずの御坊おんぼう、三さん条じょう富小路とみのこうじの御坊おんぼうにて、 聖しょう人にんに遇あいまいらせての聞書ききがき、 その時とき顕けん智ちこれを書かくなり。

◆*正嘉元年戊午十二月 日、善法坊僧都御坊、三条トミノコウヂノ御坊ニテ、 聖人ニアイマイラセテノキヽガキ、 ソノ時顕智コレヲカク也。

(141)

一 河内国かわちのくに若わか井いの郡こおり、 木本このもとの郷さと跡あと部べ河か原はら稲村いなむらの館たち、 これは守屋もりやの大臣おおおみの所在しょざい地ちなり。
天王てんのう寺じの亀かめ居いは、 もとはかの若わか井いの郡こおりにありけるを、 聖しょう徳とく太たい子しとらせたまひて天王てんのう寺じにはおかせたまふ。 はじめは赤しゃく龍りゅうを埋うづませたまひけるが、 あまりに悪あく龍りゅうにて、 打うち破やぶりて逃にげたりけるあひだ、 後のちに青しょう龍りゅうを埋うづませたまひけり。

一 河内国ワカヰノ郡コホリ、 木本コノモトノ郷サト跡アト部ベ河カ原ハライナムラノタチ、 コレハ守屋大臣ノ所在地也。
天王寺ノカメヰハ、 モトハ彼カノワカヰノ郡ニアリケルヲ、 聖徳太子トラセ給テ天王寺ニハオカセ給フ。 ハジメハ赤シヤク龍リウヲウヅマセ給ケルガ、 アマリニ悪龍ニテ、 打ウチ破ヤブリテ逃ニゲタリケルアヒダ、 後ノチニ青シヤウ龍リウヲ埋ウヅマセ給ケリ。

(142)

一 秦はたの川勝かわかつは住すみ吉よしの明みょう神じんの氏うじ子こなり。

一 秦ハタノ川勝カハカツハ住スミ吉ヨシノ明ミヤウ神ジンノ氏ウヂ子コ也ナリ。

(143)

一 守もり屋やが子し孫そん、 従類じゅるい二百七十三人にんは、 寺てらのながき奴卑ぬひと定さだめおはりぬ。 所しょ領りょうの田園でんおん、 十八万六千八百九十代しろを没もっ官かんして寺てらの分ぶんとす。 河内国かわちのくに弓削ゆげ・鞍くら作つくり・祖父間おおじま・衣き摺ずり・虵屮はくさ・足代あじろ・御み立たち・葦原あしはら等とうの八ヶ所しょの地ち、 都と集しゅうして十二万八千六百四十代しろ。 摂津国せっつのくに於勢おせ・模かた江え・鶏とび田た・熊凝くまこり等とうの散さん地ち、 都と集しゅうして五万八千二百五十代しろ。 三ヶ所しょ居宅きょたくならびに資し財ざい等とうを、 ことごとく寺てらの分ぶんとかぞへ納おさめおはりぬ。

一 守屋ガ子シ孫ソン、 従類ジユルイ二百七十三人ハ、 寺ノナガキ奴卑ヌヒト定サダメ畢オハヌ。 所領ノ田園デンオン、 十八万六千八百九十代ヲ没モチ官クワンシテ寺ノ分トス。 河内国弓削ユゲ・クラツクリ・オホヂマ・キズリ・ハクサ・アジロ・ミタチ・アシ原ハラ等トウノ八ケ所ノ地、 都ト集シフシテ十二万八千六百四十代。 摂津国オセ・カタエ・トビタ・クマコリ等トウノ散サン地チ、 都集シテ五万八千二百五十代。 三ケ所居宅キヨタクナラビニ資シ財ザイ等トウヲ、 コトゴトク寺ノ分トカゾヘ納 メ畢。

(144)

一 善光よしみつが本ほん在所ざいしょは、 信乃国しなののくにきふ・・の郷ごう伊奈いなの郡こおり、 かむ・・のみ・・さか・・のふもとに、 あさ・・うみ・・の里さとうてう・・・の村むらといふところなり。 かのところへ京きょうより如来にょらいを負おひたてまつりて、 三日日にっ中ちゅうに下げ著ちゃくす。 その後のち水内みのちの郡こおり中なか条じょうの芋いも井いの郷ごうに遷うつれり。 いまの善光ぜんこう寺じこれなり。

一 善光ガ本在所ハ、 信乃国キフノゴウイナノ郡、 カムノミサカノフモトニ、 アサウミノ里ウテウノ村トイフ所也。 カノ所ヘ京ヨリ如来ヲオヒタテマツリテ、 三日々中ニ下著ス。 ソノヽチ水内郡中条ノイモ井ノ郷ニ遷ウツレリ。 今ノ善光寺是コレ也。

(145)

(一期物語) 「一 ある時とき問とふ。 人ひと多おおく持じ斎さいを勧すすむ、 この条じょういかん。 答こたふ。 僧そう尼にの食じきの作さ法ほうはもつともしかるべきなり。 しかりといへども当世とうせいは機きすでに衰おとろへ、 食じきすでに滅めっす。 この分際ぶんざいをもつて一食いちじきせば、 心こころひとへに食じき事じを思おもひて念仏ねんぶつの心こころ静しずかならず。 ¬菩ぼ提だい心しん経ぎょう¼ にのたまはく、 食じき菩ぼ提だいを妨さまたげず。 以上 その上うえは自じ身しんをあひ計はからふべきなり。」 云々

「一 ▲或時問。人多ク勧ム↢持斎ヲ↡、此ノ条如何ン。答。僧尼ノ食ノ作法ハ无モ可キ↠然ル也。雖モ↠然ト当世ハ機已 デニ衰ヘ、食ジキ已 デニ滅ス。以テ↢此ノ分際ヲ↡一食セ者バ、心偏 ヘニ思テ↢食事ヲ↡念仏ノ心不↠静ナラ。¬菩提心経ニ¼云ハク、食不↠妨ゲ↢菩提ヲ↡。已上 其ノ上 ヘハ自身ヲ可キ↢相 ヒ計フ也。」 云々

(146)

(三心料簡事 ) 「一 法ほうに万ばん機きを摂せっする事こと。

「一 ▲法ニ摂スル↢万機ヲ↡事。

第だい十八の願がんに十方じっぽう衆しゅ生じょうといふ、 十方じっぽうに漏もれたる衆しゅ生じょうなし、 わが願がんの内うちに十方じっぽうを込こめんとなり。」

第十八ノ願ニ云↢十方衆生ト↡、無↧漏モレタル↢十方ニ↡之衆生↥、我ガ願ノ内ニ込メムト↢十方ヲ↡也。」

(147)

(三心料簡事 ) 「一 無智むちを本ほんとなす事こと。

「一 ▲無智ヲ為↠本ト事。

いはく、 聖しょう道どう門もんは智慧ちえを極きわめて生しょう死じを離はなれ、 浄じょう土ど門もんは愚痴ぐちに還かえりて極楽ごくらくに生うまる。 このゆへに聖しょう道どう門もんに趣おもむく時ときは、 智慧ちえを瑩みがき禁戒きんかいを守まもり、 心しん性しょうを浄きよむるをもつて宗しゅうとなす。 浄じょう土ど門もんに入いる日ひは、 智慧ちえを憑たのまず戒かい行ぎょうを護まもらず、 心しん器きをも調ととのへず、 ただいふに甲斐かいなき無智むちのものに成なりて、 本願ほんがん力りきを憑たのみて往おう生じょうを願ねがふなり。」 云々

云ク、聖道門ハ極メテ↢智慧ヲ↡離↢生死ヲ↡、浄土門ハ還 ヘテ↢愚痴ニ↡生↢極楽ニ↡。所以コノユヘニ趣オモムク↢聖道門ニ↡之時ハ、瑩ミガキ↢智慧ヲ↡守リ↢禁戒ヲ↡、以テ↠浄ムルヲ↢心性ヲ↡為ス↠宗ト。入ル↢浄土門ニ↡之日ハ、不ズ憑タノマ↢智慧ヲ↡不ズ↠護ラ↢戒行ヲ↡、不ズ↠調ヘ↢心器オモ↡、只云イフニ無キ↢甲斐↡成テ↢無智ノ者 ノニ↡、憑テ↢本願力ヲ↡願フ↢往生ヲ↡也。」 云々

(148)

(三心料簡事 ) 「一 本願ほんがん成じょう就じゅの事こと。

「一 ▲本願成就事。

念仏ねんぶつはわが所しょ作さなり、 往おう生じょうは仏ぶつの所しょ作さなり。 往おう生じょうは仏ぶつの御おん力ちからにてせしめたまふものを、 わが心こころにとかくせんと思おもふは自じ力りきなり。 ただすべからく称名しょうみょうにつきたる来迎らいこうを待まつべし。」 云々

念仏ハ我ガ所作也、往生ハ仏ノ所作也。往生ハ仏ノ御力 ラニテセシメ給フ物ヲ、我ガ心ニトカクセムト思フハ自力也。唯タヾ須ラクシ 待マツ↧付タル↢称名ニ↡之来迎ヲ↥。」 云々

(149)

(三心料簡事 ) 「一 ¬礼讃らいさん¼ の若にゃく能のう如にょ上じょう念々ねんねん相続そうぞくの事こと。

「一 ▲¬礼讃ノ¼若能如上念念相続ゾクノ事。

¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ には三心さんしん・五ご念ねん・四し修しゅを指さして如にょ上じょうといふなり。 これによりてこれをいはば、 三心さんしん・五ご念ねん・四し修しゅの中なかに正しょう助じょ二に行ぎょうを明あかす、 これを指さして念々ねんねん相続そうぞくといふなり。」 云々

¬往生要集ニハ¼指サシテ↢三心・五念・四修ヲ↡云フ↢如上ト↡也。依テ↠之ニ云イハバ之ヲ、三心・五念・四修ノ中ニ明ス↢正助二行ヲ↡、指シテ↠之ヲ云フ↢念々相続ト↡也。」 云々

(150)

一 問とひていはく、 極楽ごくらくに九く品ぼんの差別しゃべつのある事ことは、 弥陀みだの本願ほんがんの構かまへたるべく候そうろうか。 答こたへていはく、 極楽ごくらくの九く品ぼんは弥陀みだの本願ほんがんにあらず、 さらに四十八願がんの中なかにはなし。 これ釈しゃく尊そんの巧ぎょう言ごんなり。 もし善人ぜんにん・悪人あくにん一所いっしょに生うまると説とかば、 悪業あくごうのものは等慢とうまんの心こころを起おこすべきがゆゑに、 品ほん位いの差別しゃべつをあらしめて、 善人ぜんにんは上じょう品ぼんに進すすみ悪人あくにんは下げ品ぼんに下くだると説とくなり。 急いそぎまいりて見みるべし。 云々

一 ▲問云、極楽ニ有ル↢九品ノ差別ノ↡事ハ、可ク↠為タル↢弥陀ノ本願ノ構ヘ↡候歟。答云、極楽ノ九品者ハ非ズ↢弥陀ノ本願ニ↡、更 ラニ無シ↢四十八願ノ中ニハ↡。是 レ釈尊ノ巧言也。若シ説カバ↣善人・悪人生ト↢一所ニ↡者ハ、悪業ノ者 ノハ可↠起ス↢等慢ノ心ヲ↡故ニ、令テ↠有ラ↢品位ノ之差別ヲ↡、説ク↧善人ハ進ミ↢上品ニ↡悪人ハ下ルト↦下品ニ↥也。急イソギ参テ可↠見。 云々

(151)

一 法然ほうねん聖しょう人にんの ¬三昧さんまい発得ほっとく記き¼ に、

一 法然聖人¬三昧発得記¼、

「聖しょう人にん御ご存ぞん生しょうの時とき、 口く称しょう三昧ざんまいを発得ほっとくして、 つねに浄じょう土どの依え正しょうを見みたまふ。 自じ筆ひつをもつてこれを記しるしたまふ。 勢観せいかん房ぼうこれを伝つたふ。 聖しょう人にん往おう生じょうの後のち、 明みょう遍へん僧そう都ずこれを尋たずねて、 一見いっけんを加くわへて歓かん喜ぎの涙なみだを流ながして、 すなはち本所ほんじょに送おくららる。 当初そのかみいささかこの由よしを聞きき及およぶといへども、 いまだ本ほんを見みざればその旨むねを記しるせず。 後のちにかの記きを得えてこれを写うつす。 御ご生年せいねん六十六に当あたりて。 長承ちょうしょう二年ねん癸みずのと丑うしの年とし御ご誕たん生じょうなり」

「▲聖人御存生ノ之時、発↢得シテ口称三昧ヲ↡、常ニ見タマフ↢浄土ノ依正ヲ↡。以テ↢自筆ヲ↡記シタマフ↠之ヲ。勢観房伝フ↠之ヲ。聖人往生之後ノチ、明遍僧都尋テ↠之ヲ、加ヘテ↢一見ヲ↡流シテ↢歓喜ノ涙ヲ↡、即チ被ラル↠送ラ↢本所ニ↡。当初ソノカミ聊カ雖モ↣聞キキ↢及ブト此ノ由ヲ↡、未ザ ダレ↠見↠本ヲ者バ不ズ↠記セ↢其ノ旨ヲ↡。後ニ得テ↢彼ノ記ヲ↡写ス↠之ヲ。御生年当テ↢六十六ニ↡。 *長承二年癸丑年御誕生也」

(152)

一 問とひていはく、 自じ力りき他た力りきと申もうす事こと、 何様いかように心こころ得うべく候そうろうや。 答こたふ。 源空げんくうは殿でん上じょうへ参まいるべき機き量りょうにあらずといえども、 上かみより召めせば二度どまで殿でん上じょうへ参まいりたりき。 これわが参まいるべき式しきにはあらず、 上かみの御おん力ちからなり。 いかにいはんや阿弥陀あみだ仏ぶつの御おん力ちから、 称名しょうみょうの願がんに酬こたへて来迎らいこうしたまふ事こと、 なんの不ふ審しんかあらん。 自じ身しんの罪つみ重おもく、 無智むちのものなれば、 いかにして往おう生じょうを遂とげんと疑うたがふべからず。

一 ▲問云、自力他力ト申ス事、何様ニ可↠得↠心候乎ヤ。◆答。源空ハ雖モ↠非ズト↧可キ↠参ル↢殿上ヘ↡機量ニ↥、自リ↠上 ミ召セ者バ二度ドマデ参タリキ↢殿上ヘ↡。此 レ非ズ↢我ガ可キ↠参ル之式ニハ↡、上ノ御力 ラ也。何況ヤ阿弥陀仏ノ御力 ラ、酬コタヘテ↢称名ノ願ニ↡来迎カウシタマフ事、有ム↢何 ンノ不審カ↡。◆自身ノ罪重ク、無智ノ者ナレバ、云何ニシテ不ズ↠可ラ↠疑フ↠遂ゲムト↢往生ヲ↡。

(153)

(三心料簡事 ) 「一 善悪ぜんあくの機きの事こと。

「一 ▲善悪機事。

念仏ねんぶつ申もうさんものは、 ただ生うまれつきのままにて申もうすべし。 善人ぜんにんは善人ぜんにんながら、 悪人あくにんは悪人あくにんながら、 本ほんのままにて申もうすべし。 この念仏ねんぶつに入いるゆゑに、 はじめて持じ戒かい・破は戒かいなにくれといふべからず。 ただ本体ほんたいありのままにて申もうすべしと。」 云々

念仏申サム者ハ、只生付ノマヽニテ申ベシ。善人ハ乍ナガラ↢善人↡、悪人ハ乍 ラ↢悪人↡、本ノマヽニテ申ベシ。此ノ入ル↢念仏ニ↡之故ニ、始テ持戒・破戒ナニクレトイフベカラズ。只本体アリノマヽニテ申ベシト。」 云々

(154)

(三心料簡事 ) 「一 悪あくの機きを一人いちにん置おきてこの機きの往おう生じょうしけるは、 いはれたる道どう理りなりけりと知しるほどに習ならひたるを、 浄じょう土ど宗しゅう善よく学がくしたるとはいふなり。 この宗しゅうは、 悪人あくにんを手て本ほんとなして善人ぜんにんまで摂せっするなり。 聖しょう道どう門もんは善人ぜんにんを手て本ほんとなして悪人あくにんをも摂せっするなり。」 云々

「一 ▲悪ノ機ヲ一人置テ此ノ機ノ往生シケルハ、謂タル道理也ケリト知ル程ニ習タルヲ、浄土宗善ヨク学シタルトハ云也。此ノ宗ハ、悪人ヲ為シテ↢手本ト↡善人マデ摂スル也。聖道門ハ善人ヲ為シテ↢手本ト↡悪人ヲモ摂スル也。」 云々

 

已上了

 

延書は底本の訓点にしたがって有国が行った。 なお、 表記は現代仮名遣いとしている。
底本は高田派専修寺蔵顕智上人自筆本。