にゅうしゅつもんじゅ

*禿とく*親鸞しんらんさく

 

【1】  *しんさつ (天親) は、 *だいじょう*しゅ多羅たら真実しんじつどくによりて、

大乗修多羅 親鸞聖人は ¬銘文¼ で浄土三部経のこととする。

親菩薩依↢大乗   修多羅真実功徳↡

一心いっしんじん十方じっぽう*不可ふかこう如来にょらい*みょうせしめたまへり。

不可思議光如来 →不可ふかこう

一心帰↢命尽十方   不可思議光如来↡

無礙むげこうみょうだい慈悲じひなり。 このこうみょうはすなはち諸仏しょぶつなり。

无光明大慈悲   斯光朙即諸仏智

かのかいかんずるに辺際へんざいなし、 きょうせること広大こうだいにしてくうのごとし。

観↢彼世界↡无↢辺際↡ 究竟広大如↢虚空↡

いつつには*仏法ぶっぽう思議しぎなり。 このなかのぶつ思議しぎに、

仏法不思議 仏法力不可思議のこと。 思議しぎの一。

五者仏灋不思議   此中仏土不思議

しゅ思議しぎりきまします。 これは安楽あんらくとくしめすなり。

有↢二種不思議力↡  斯示↢安養之至徳↡

ひとつには業力ごうりき、 いはく*法蔵ほうぞう*大願だいがん業力ごうりきじょうじゅせられたり。

一者業力謂法蔵   大願業力所↢成就↡

ふたつにはしょうがく弥陀みだ法王ほうおう善力ぜんりきしょうせられたり。

二者正覚阿弥陀   法王善力所↢摂持↡

*女人にょにん根欠こんけつ*じょうしゅ安楽あんらくじょうせつながしょうぜず。

女人根欠… →補註14
二乗の種… 底本には 「二乗の種に」 とある。 二乗はしょうもん縁覚えんがくの小乗、 種は心のこと。 浄土では自利のみを求める小乗の心は決して起きないという意。

女人根欠二乗種   安楽浄刹永不↠生

如来にょらいじょうのもろもろのしょうじゅは、 *法蔵ほうぞうしょうがくはなよりしょうす。

法蔵正覚の… 浄土のしょうじゃたちはみな、 法蔵菩薩が成就したさとりの華から生れるという意。

如来浄華諸聖衆   法蔵正覚華化生

しょはもとすなはち*三三さんざんほんなれども、 いまは*いちしゅなし。

三三の品 ぼんのこと。
一二の殊異なし 浄土には上品とか下品といった種別がないことを示す。

諸機本則三三品   今无↢一二之殊異↡

同一どういつ念仏ねんぶつしてべつみちなければなり、 なほ*じょういちなるがごとくなり。

同一念仏无↢別道↡  猶↢如淄澠一味↡也

かの如来にょらい本願ほんがんりきかんずるに、 ぼんもうおうてむなしくぐるものなし。

観↢彼如来本願力↡  凡愚遇无↢空過者↡

一心いっしん専念せんねんすれば、 すみやかに真実しんじつどくだい宝海ほうかい満足まんぞくせしむ。

一心専念速満↢足   真実功徳大宝海↡

*さつしゅもん入出にゅうしゅつして、 *自利じり*利他りたぎょうじょうじゅしたまへり。

菩薩は… ここでの菩薩は法蔵ほうぞう菩薩のこと。 入は自利、 出は利他にあたる。

菩薩入↢出五種門↡  自利利他行成就

不可ふか思議しぎちょうさいこうに、 ぜんしゅもんじょうじゅしたまへり。

不可思議兆載劫   漸次成↢就五種門↡

なんらをかづけて*ねんもんとすると。 らいさんがん観察かんざつとなり。

何等名為↢五念門↡  礼讃作願観察廻

いかんが礼拝らいはいする。 身業しんごうらいしたまひき。 弥陀みだぶつ*しょうへんの、

正遍知 梵語サムヤック・サンブッダ (samyak-saſbuddha) 漢訳で如来十号の一。 あまねく正しい智慧ちえのある方という意。

云何礼拝身業   阿弥陀仏正徧知

もろもろのぐんじょう*ぜんぎょう方便ほうべんして、 安楽あんらくこくしょうぜんこころをなさしめたまふがゆゑなり。

善巧方便 →方便ほうべん

善↢巧方↣便諸群生↡  為↧生↢安楽国↡意↥故

すなはちこれをにゅう第一だいいちもんづく、 またこれをづけて*近門ごんもんるとす。

即是名↠入↢第一門↡  亦是名為↠入↢近門↡

いかんが讃嘆さんだんする。 ごうさんじたまひき。 *みょうずいじゅんしてぶつみょうしょうせしめ、

名義 みょうごうの実義、 いわれ。

云何讃嘆口業讃   随↢順名義↡称↢仏名↡

如来にょらい*こうみょうそうによりて、 じつのごとくしゅ相応そうおうせんとおもふゆゑなり。

光明智相 光明の本質は智慧であり、 智慧のすがたは光明であることをいったもの。 智慧を本質とする光明が、 十方を照らしてしゅじょうの迷いを除く。

依↢如来光明智相↡  欲↧如↠実修相応↥故

すなはちこれ無礙むげこう如来にょらいの、 摂取せっしゅせんじゃく本願ほんがんなるがゆゑなり。

則斯无光如来   摂取選択本願故

これをづけてにゅうだいもんとす。 すなはち*だいしゅかずることをるなり。

大会衆の数に… 浄土で阿弥陀仏が説法する時の集会を広大会と名づけ、 それに参列し聞法もんぼうする大衆だいしゅを大会衆という。 ここでは信心の行者が、 現在 (この世) において正定しょうじょうじゅに入り、 阿弥陀仏の眷属けんぞくとなることをいう。

是名為↠入↢第二門↡  即獲↠入↢大会衆数↡

いかんががんする。 しんにつねにがんじたまひき。 一心いっしん専念せんねんしてかしこにうまれんとがんぜしむ。

云何作願心常願   一心専念願↠生↠彼

*れんぞうかいることをて、 じつのごとく*しゃ摩他またしゅせんとおもはしむ。

得↠入↢蓮華蔵世界↡  欲↧如↠実修↦奢摩他↥

これをづけてにゅう第三だいさんもんとす。 またこれをづけて*宅門たくもんるとす。

是名為↠入↢第三門↡  亦是名為↠入↢宅門↡

いかんが観察かんざつする。 智慧ちえをしてかんぜしめたまひき。 しょうねんにかしこをかんじて、 じつのごとく、

云何観察智慧観   正念観↠彼欲↧如↠実

*毘婆びばしゃしゅぎょうせしめんとおもふがゆゑに。 かのところいたることをれば、 すなはち、

修↦行婆舎那↥故  得↠到↢彼所↡則受↢用

種々しゅじゅりょうほうらく受用じゅゆうせしむ。 すなはちこれをにゅうだいもんづく。

種々无量法味楽↡   即是名↠入↢第四門↡

またこれをづけて*屋門おくもんるとす。 さつしゅぎょうじょうじゅとは、

亦是名為↠入↢屋門↡  菩薩修行成就者

しゅにゅうどくじょうじゅしたまへり、 自利じりぎょうじょうじゅしたまへりと、 るべし。

四種成↢就入功徳↡  自利行成就応↠知

だいしゅつどくじょうじゅしたまへり。 さつしゅつだいもんは、

第五成↢就出功徳↡  菩薩出第五門者

いかんがこうする。 しんがんしたまひき。 のう一切いっさいしゅてずして、

云何廻向心作願   不↠捨↢苦悩一切衆↡

こうはじめとして、 だいしんじょうじゅすることをたまへるがゆゑに、 どくほどこしたまふなり。

廻向為↠首得↣成↢就  大悲心↡故施↢功徳↡

かのうまれをはりて、 すみやかにしゃ摩他また毘婆びばしゃ

生↢彼土↡已速疾得↢  奢摩他婆舎那

*ぎょう方便ほうべんりきじょうじゅすることををはりて、 しょうその煩悩ぼんのうはやしりて、

功方便力成就↡已   入↢生死薗煩悩林↡

*おうしんしめし、 神通じんずうあそぶ、 *きょういたりてぐんじょうせしむ。

教化地 自在に衆生を教化しやくし救済する地位。 八地以上の菩薩の境地のこと。

示↢応化身↡遊↢神通↡ 至↢教化地↡利↢群生↡

すなはちこれをしゅつだいもんづく。 *園林おんりん遊戯ゆげもんるなり。

即是名↢出第五門↡  入↢薗林遊戯地門↡

本願ほんがんりきこうをもつてのゆゑに、 利他りたぎょうじょうじゅしたまへりと、 るべし。

以↢本願力廻向↡故  利他行成就応↠知

無礙むげこうぶつ*いんとき、 このぜいおこし、 このがんてたまふ。

因地 因位の時。 法蔵菩薩であった時。 →いん

无光仏因地時   発↢斯弘誓↡建↢此願↡

さつすでに智慧ちえしんじょうじ、 方便ほうべんしんしょうしんじょうじ、

菩薩已成↢智慧心↡  成↢方便心无鄣心↡

*みょうらくしょうしんしんじょうじゅして、 すみやかに*じょうどうじょうじゅすることをたまへるなり。

妙楽勝真心 行者が五念門を行じて得る自利利他円満の真実心で、 浄土の最勝の真実の徳 (妙楽勝真) にかなうだいしんのこと。 親鸞聖人はこれを法蔵菩薩によって成就された心とみなし、 他力信心の徳をあらわす名とする。
無上道 この上ない仏のさとり。

成↢就妙楽勝真心↡  速得↣成↢就无上道↡

自利じり利他りたとのどくじょうずる、 すなはちこれをづけて入出にゅうしゅつもんとすとのたまへり。

成↢自利利他功徳↡  則是名為↢入出門↡

【2】  *婆藪ばそばんさつ (天親) の ¬ろん¼ (浄土論)*ほん*曇鸞どんらんしょうちゅうしたまへり。

本師 本宗の祖師。

婆藪盤頭菩薩論   本師曇鸞和尚註

願力がんりきじょうじゅねんづく、 ぶつをしていはばよろしく*利他りたといふべし。

利他・他利 「行巻」 192頁9行以下の本文および脚註参照。

願力成就名↢五念↡  仏而言宜↠言↢利他↡

しゅじょうをしていはば*他利たりといふべし。 まさにるべし、 いままさに仏力ぶつりきだんぜんとす。

衆生而言言↢他利↡  当↠知今将↠談↢仏力↡

如実にょじつしゅぎょう相応そうおうといふは、 みょう*こうみょうずいじゅんするなり。

光明 十方しゅじょうさわりなく救う尽十方無礙光のいわれ。 光明が名の義でもある。

如実修行相応者   随↣順名義与↢光明↡

この信心しんじんをもつて一心いっしんづく。 煩悩ぼんのうじょうじゅせるぼんにん

以↢斯信心↡名↢一心↡ 煩悩成就凡夫人

煩悩ぼんのうだんぜずして*はん、 すなはちこれ安楽あんらくねんとくなり。

不↠断↢煩悩↡得↢涅槃↡ 則斯安楽自然徳

*でいといふは、 ¬きょう¼ (*維摩経)いてのたまはく、 高原こうげんろくにははちすしょうぜず。

淤泥華 泥の中に咲く花。 蓮の花のこと。 →れん

淤泥華者¬経¼説言  高原陸地不↠生↠蓮

*湿しゅうでいれんしょうずと。 これはぼん煩悩ぼんのうでいのうちにありて、

卑湿の淤泥… 湿地の泥沼に蓮の花が咲くように衆生の煩悩ぼんのうの泥の中に如来こうの信心が生ずることを喩えたもの。

卑湿淤泥生↢蓮華↡  此喩↧凡夫在↢煩悩

ぶつしょうがくはなしょうずるにたとふるなり。 これは如来にょらいほんぜい

泥中↡生↦仏正覚華↥  斯示↢如来本弘誓

不可ふか思議しぎりきしめす。 すなはちこれ入出にゅうしゅつもんりきづくとのたまへり。

不可思議力↡即是   入出二門名↢他力↡

【3】  *どうしゃくしょうしゃくしていはく、 ¬*月蔵がつぞうきょう¼ にのたまはく、 わが末法まっぽうに、

月蔵経 ¬大集だいじっきょう¼ 「月蔵分」 のこと。

道綽和尚解釈曰   ¬大集経¼言我末法

ぎょうおこどうしゅせんに、 一切いっさいしゅう、 いまだ一人いちにんぎゃくとくするものあらじと。

起↠行修↠道一切衆  未↠有↢一人獲得者↡

ここにありてしんおこしてぎょうつるは、 すなはちこれしょうどうなり、 りきづく。

在↠此起↠心立↠行者  則此聖道名↢自力↡

当今とうこん末法まっぽうにしてこれじょくなり。 ただじょうのみありてつうにゅうすべしと。

当今末法是五濁   唯有↢浄土↡可↢通入↡

いまときあくおこ衆罪しゅざいつくる、 ごうじょうなること暴風ぼうふう*のごとし。

駛雨 にわかにふる大雨。

今時起↠悪造↢衆罪↡  恒常如↢暴風駛雨↡

ほんぜいがんみなしょうせしむるは、 これじょくあくしゅじょうのためなり。

本弘誓願令↠称↠名  是為↢穢濁悪衆生↡

ここをもつて諸仏しょぶつじょうすすめたまへり。 たとひいっしょう悪業あくごうつくれども、

是以諸仏勧↢浄土↡  縦令一生造↠悪者

三信さんしん相応そうおうすればこれ一心いっしんなり。 一心いっしんじゅんしんなれば如実にょじつづく。

三信相応是一心   一心淳心名↢如実↡

もししょうぜずは、 この*ことわりなけん。 かならず安楽あんらくこくおうじょうれば、

 道理。

若不↠生者无↢是処↡  必得↣往↢生安楽国↡

しょうすなはちこれだいはん、 すなはちぎょうどうなり、 りきづくと。

生死即是大涅槃   則易行道名↢他力↡

【4】  *善導ぜんどうしょう義解ぎげしていはく、 念仏ねんぶつじょうぶつする、 これしんしゅうなり。

善導和尚義解曰   念仏成仏是真宗

すなはちこれをづけていちじょうかいとす、 すなはちこれをまた*だいぞうづく。

菩提蔵 仏のさとりに至る道を説く教え。 さつぞうに同じ。

即是名為↢一乗海↡  即是亦名↢菩提蔵↡

すなはちこれ*えんぎょうのなかのえんぎょうなり、 すなはちこれとんぎょうのなかのとんぎょうなり。

円教 円満完全な教え。 仏教のうちで最も完全な教え。

即是円教中円教   即是頓教中頓教

しんしゅうもうあひがたし、 しんることかたし。 なんのなかのなん、 これにぎたるはなし。

真宗叵↠遇難↠得↠信  難中之難无↠過↠斯

しゃ諸仏しょぶつ、 これ真実しんじつ慈悲じひ父母ぶもなり。 種々しゅじゅ

釈迦諸仏是真実   慈悲父母以↢種種

ぜんぎょう方便ほうべんをもつて、 われらがじょう真実しんじつしんほっせしめたまふ。

善功方便↡令↣発↢起  我等无上真実信↡

煩悩ぼんのうそくせるぼんにんぶつ願力がんりきによりてしんぎゃくとくす。

具↢足煩悩↡凡夫人  由↢仏願力↡獲↢摂取↡

このひとはすなはち*凡数ぼんじゅしょうにあらず、 これはにんちゅうふん陀利だりなり。

凡数の摂 ぼんの仲間。

斯人即非↢凡数摂↡  是人中分陀利華

このしん*さいしょう希有けうにんなり、 このしん*みょうこう上上じょうじょうにんなり。

最勝希有人 この上なくすぐれたどくをそなえたきわめてまれな人。
妙好上上人 この上なくすぐれて好もしい人。 前項とともに真実信心の行者をほめたたえた言葉。

斯信最勝希有人   斯信妙好上上人

安楽あんらくいたれば、 かならずねんに、 すなはちほっしょうじょうらくしょうせしむとのたまへり。

到↢安楽土↡必自然  即証↢法性之常楽↡

にゅうしゅつもんじゅ

しちじゅうぎょう

*禿とくしゃく*親鸞しんらんさく