ゆいしんしょう 唯信鈔◎ 1巻。 法然の門弟である聖覚の著。 法然より相承する念仏往生の要義を述べて、 表題の示す通りただ信心を専修念仏の肝要とすることを明らかにしたもの。
前半では、 まず仏道には聖道門と浄土門の二門があり、 浄土門こそが末法の世の衆生にかなう法門であると選びとり、 その浄土門にまた諸行をはげんで往生を願う諸行往生と、 称名念仏して往生を願う念仏往生とがあるが、 自力の諸行では往生をとげがたい旨を示して他力の念仏往生こそ仏の本願にかなうことが述べられる。 さらにこの念仏往生について専修と雑修とがあることを示して、 阿弥陀仏の本願を信じ、 ただ念仏一行をつとめる三心具足の専修のすぐれていることを明らかにし、 念仏には信心を要とすることが述べられる。
また後半には①臨終念仏と尋常念仏、 ②阿弥陀仏の願力と先世の罪業、 ③五逆と宿善、 ④一念と多念の4項についての不審をあげて、 明解に答えている。 すなわち前半は正しい法義を示す顕正の段、 後半は誤った法義を批判する破邪の段である。
親鸞は関東在住の頃から本書を尊重し、 帰洛後も ¬御消息¼ 第17通に 「よくよく ¬唯信鈔¼・¬後世物語¼ なんどを御覧あるべく候ふ」 などと述べて、 本書を門弟たちに書き写して与え、 読むことを勧めた。 また、 本書の意義を明らかにする ¬唯信鈔文意¼ を著している。
古写本に、 高田派専修寺蔵文暦2年親鸞真跡本 (平仮名本)、 高田派専修寺蔵親鸞真跡本 (信証本)、 本願寺派本願寺蔵親鸞真跡本などがある。