みょうしょう ほん

 

【1】 ひそかにおもんみれば、 *人身にんじんうけがたくぶっきょうあひがたし。 しかるにいま、 *へんしゅうなれども人身にんじんをうけ、 *末代まつだいなれどもぶっきょうにあへり。 *しょうをはなれて*ぶっにいたらんこと、 いままさしくこれときなり。 このたびつとめずして、 もし*さんにかへりなば、 まことにたからやまりて、 をむなしくしてかへらんがごとし。 なかんづくに、 *じょうのかなしみはまなこのまへにみてり、 ひとりとしてもたれかのがるべき。 *三悪さんまくきょうはあしのしたにあり、 仏法ぶっぽうぎょうぜずはいかでかまぬかれん。 みなひとこころをおなじくして、 ねんごろに*仏道ぶつどうをもとむべし。

【2】 しかるに*仏道ぶつどうにおいてさまざまのもんあり。 いはゆる*けんぎょう*みっきょう*だいじょう*小乗しょうじょう*ごんきょう*じっきょう*きょう*ろん、 その*はっしゅうしゅうにわかれ、 その千差せんじゃ万別まんべつなり。 いづれも*しゃ一仏いちぶつせつなれば、 やくみな甚深じんじんなり。 せつのごとくぎょうぜばともにしょうづべし、 きょうのごとくしゅせばことごとく*だいべし。

ただし、 とき*末法あっぽうにおよび、 **こんになりて、 かの*しょぎょうにおいては、 そのぎょうじょうじゅしてぶっをえんことはなはだかたし。 いはゆる*しゃくそんめつにおいて、 *しょう像末ぞうまつさんあり。 そのうち*しょうぼう千年せんねんのあひだはきょうぎょうしょうつともにそくしき、 *像法ぞうぼう千年せんねんのあひだは教行きょうぎょうありといへどもしょうのひとなし、 末法あっぽう万年まんねんのあひだはきょうのみありて行証ぎょうしょうはなし。

いまはすなはち末法あっぽうのはじめなれば、 ただしょしゅうきょうもんはあれども、 まことにぎょうをたてしょうをうるひとはまれなるべし。 されば智慧ちえをみがきて*煩悩ぼんのうだんぜんこともかなひがたく、 こころをしづめて*ぜんじょうしゅせんこともありがたし。

【3】 ここに*念仏ねんぶつおうじょう一門いちもん末代まつだい相応そうおう要法ようぼうけつじょう*おうじょう*しょういんなり。 このもんにとりて、 また*専修せんじゅ*雑修ざっしゅもんあり。

専修せんじゅといふは、 ただ弥陀みだ一仏いちぶつがんし、 ひとすぢに*称名しょうみょう念仏ねんぶつ*いちぎょうをつとめて他事たじをまじへざるなり。

雑修ざっしゅといふは、 おなじく念仏ねんぶつもうせども、 かねてぶつさつをもねんじ、 また一切いっさいぎょうごうをもくはふるなり。

このふたつのなかには、 専修せんじゅをもつてけつじょうおうじょうごうとす。 そのゆゑは弥陀みだ*本願ほんがんぎょうなるがゆゑに、 *しゃくそんぞくほうなるがゆゑに、 *諸仏しょぶつ証誠しょうじょうぎょうなるがゆゑなり。

おほよそ弥陀みだ如来にょらい*さん諸仏しょぶつ*ほんなれば、 *おんじつじょうぶつにてましませども、 *しゅじょうおうじょうけつじょうせんがために、 しばらく*法蔵ほうぞう比丘びくとなのりて、 その*しょうがくじょうじたまへり。

かの*こうゆいのむかし、 *ぼんおうじょうのたねをえらびさだめられしとき、 *布施ふせ*かい*忍辱にんにく*しょうじんとうのもろもろのわづらはしきぎょうをばえらびすてて、 称名しょうみょう念仏ねんぶついちぎょうをもつてその本願ほんがんとしたまひき。 「念仏ねんぶつぎょうじゃもしおうじょうせずは、 われもしょうがくらじ」 とちかひたまひしに、 そのがんすでにじょうじゅして、 じょうぶつよりこのかたいまに十劫じっこうなり。

如来にょらいしょうがくすでにじょうじたまへり、 しゅじょうおうじょうなんぞうたがはんや。

これによりてしゃくそんはこのほうをえらびて*なん*ぞくし、 諸仏しょぶつしたをのべてこれを*証誠しょうじょうしたまへり。

かるがゆゑに*一向いっこう*みょうごうしょうするひとは、 *そんおんこころにかなひ、 諸仏しょぶつほんじゅんずるがゆゑにおうじょうけつじょうなり。

しょぎょうはしからず。 弥陀みだ*せんじゃく本願ほんがんにあらず、 しゃくそんぞくきょうにあらず、 諸仏しょぶつ証誠しょうじょうほうにあらざるがゆゑなり。

【4】 されば*善導ぜんどうしょうの ¬*おうじょう礼讃らいさん¼ のなかに、 くはしくぎょう得失とくしつをあげられたり。

まづ専修せんじゅとくをほめていはく、 「もしよくかみのごとく念々ねんねん相続そうぞくして、 *ひつみょうとするものは、 じゅうはすなはちじゅうながらうまれ、 ひゃくはすなはちひゃくながらうまる。 なにをもつてのゆゑに。 *雑縁ぞうえんなくしてしょうねんるがゆゑに、 ぶつ本願ほんがん相応そうおうするがゆゑに、 きょうせざるがゆゑに、 ぶつずいじゅんするがゆゑに」 といへり。

雑縁ぞうえんなくして*しょうねんるがゆゑに」 といふは、 *ぞうぎょう*雑善ぞうぜんをくはへざれば、 そのこころ散乱さんらんせずして一心いっしんしょうねんじゅうすとなり。

ぶつ本願ほんがん相応そうおうするがゆゑに」 といふは、 弥陀みだ本願ほんがんにかなふといふ。

きょうせざるがゆゑに」 といふは、 しゃくそんのをしへにたがはずとなり。

*ぶつずいじゅんするがゆゑに」 といふは、 諸仏しょぶつのみことにしたがふとなり。

 つぎに雑修ざっしゅしつをあげていはく、 「もしせんてて*雑業ぞうごうしゅせんとするものは、 ひゃくのときにまれにいちせんのときにまれに*さん

なにをもつてのゆゑに。 雑縁ぞうえん乱動らんどうしてしょうねんうしなふによるがゆゑに、 ぶつ本願ほんがん相応そうおうせざるによるがゆゑに、 きょうそうするがゆゑに、 ぶつじゅんぜざるがゆゑに、 *ねん相続そうぞくせざるがゆゑに、 *憶想おくそう間断けんだんするがゆゑに、 *がんいんじゅう真実しんじつならざるがゆゑに、 *とんしん諸見しょけん煩悩ぼんのうきたりて間断けんだんするがゆゑに、 *ざんしてとがをくゆることなきがゆゑに、

また相続そうぞくして*仏恩ぶっとん念報ねんぽうせざるがゆゑに、 しん*きょうまんしょうじて*ごうぎょうをなすといへども、 つねに*みょう相応そうおうするがゆゑに、 *にんみづからおおひて*どうぎょう*ぜんしき親近しんごんせざるがゆゑに、 ねがひて雑縁ぞうえんにちかづきて、 おうじょう正行しょうぎょう*しょうしょうするがゆゑに」 といへり。

雑修ざっしゅのひとは弥陀みだ本願ほんがんにそむき、 しゃ所説しょせつにたがひ、 諸仏しょぶつ証誠しょうじょうにかなはずときこえたり。

 なほかさねてぎょう得失とくしつはんじていはく、 「こころをもつぱらにしてなすものは、 じゅうはすなはちじゅうながらうまる。 ぞうしゅしてしんいたさざるものは、 せんのなかにひとりもなし」 といへり。

雑修ざっしゅのひとのおうじょうしがたきことをいふに、 はじめには、 しばらくひゃくのときにいちをゆるし、 せんのときにさんぐといへども、 のちにはつひに千人せんにんのなかにひとりもゆかずとさだむ。 *三昧さんまい発得ほっとくにん、 ことばをつくしてしゃくしたまへり。 もつともこれをあおぐべし。

【5】 おほよそ 「一向いっこう専念せんねんりょう寿じゅぶつ」 といへるは、 ¬*だいきょう¼ のじょうせつなり。 しょぎょうをまじふべからずとみえたり。

一向いっこうせんしょう弥陀みだぶつみょう(*散善義)はんずるは、 しょう (善導)しゃくなり。 念仏ねんぶつをつとむべしときこえたり。

このゆゑに*源空げんくうしょうにんこのむねををしへ、 *親鸞しんらんしょうにんそのおもむきをすすめたまふ。 *いちりゅうしゅうさらにわたくしなし。 まことにこのたびおうじょうをとげんとおもはんひとは、 かならず*一向いっこう専修せんじゅ念仏ねんぶつぎょうずべきなり。

 しかるに*うるはしく一向いっこう専修せんじゅになるひとはきはめてまれなり。 「かたきがなかかたし」 といへるは、 ¬きょう¼ (大経・下)もんなれば、 まことに*ことわりなるべし。

そのゆゑをあんずるに、 いづれのぎょうにても、 もとよりつとめきたれるぎょうをすてがたくおもひ、 ごろこうをいれつるぶつさつをさしおきがたくおもふなり。

これすなはち、 念仏ねんぶつぎょうずれば諸善しょぜんはそのなかにあることをしらず、 弥陀みだすれば諸仏しょぶつおんこころにかなふといふことをしんぜずして、 如来にょらいどくうたがひ、 念仏ねんぶつのちからをあやぶむがゆゑなり。

 おほよそかいぜんのつとめも*てんぎょう*誦呪じゅじゅぜんも、 そのもんりてぎょうぜんに、 いづれもやくむなしかるまじけれども、 それはみなしょうにんしゅぎょうなるがゆゑに、 ぼんにはじょうじがたし。

われらも過去かこにはさんごうしゃ諸仏しょぶつのみもとにして、 *だいだいしんおこして仏道ぶつどうしゅせしかども、 *りきかなはずしていままで*てんぼんとなれり。 いまこのにてそのぎょうしゅせば、 ぎょうごうじょうぜずしてさだめてしょうでがたし。

されば善導ぜんどうしょうしゃく (散善義) に、 「わが*さいよりこのかた、 とともにどうがんおこしてあくだんじ、 さつどうぎょうじき。 はことごとくしんみょうしまず。 どうぎょうくらいにすすみて、 いんまどかにじゅくす。 しょうしょうせるもの*だいじんえたり。 しかるにわれらぼんない今日こんにちまで、 *ねんとしてろうす」 といへるはこのこころなり。

しかれば、 仏道ぶつどうしゅぎょうは、 よくよくきょうとの分限ぶんげんをはかりてこれをぎょうずべきなり。 すべからく末法あっぽう相応そうおう*ぎょうして、 けつじょうおうじょうののぞみをとぐべしとなり。

【6】 そもそも、 この念仏ねんぶつはたもちやすきばかりにてどくぎょうよりもれつならば、 おなじくつとめながらもその*いさみなかるべきに、 ぎょうじやすくしてどくしょぎょうにすぐれ、 しゅしやすくして*しょうぜんにすぐれたり。 弥陀みだ諸仏しょぶつほん念仏ねんぶつしょきょう肝心かんじんなるがゆゑなり。

これによりて、 ¬だいきょう¼ には一念いちねんをもつてだいじょうどくき、 ¬*小経しょうきょう¼ には念仏ねんぶつをもつて善根ぜんごん福徳ふくとく因縁いんねんとするむねをき、 ¬*かんぎょう¼ には念仏ねんぶつぎょうじゃをほめてにんちゅう*ふん陀利だりにたとへ、 ¬*般舟はんじゅきょう¼ には 「さん諸仏しょぶつみな弥陀みだ三昧ざんまいによりてしょうがくをなる」 (意)けり。

このゆゑに善導ぜんどうしょうしゃく (*定善義) にいはく、 「自余じよ衆善しゅぜん すいみょうぜん にゃく念仏ねんぶつしゃ ぜんきょう」 といへり。 こころは、 「自余じよのもろもろのぜんも、 これぜんづくといへども、 もし念仏ねんぶつにたくらぶれば、 まつたくならべたくらぶべきにあらず」 となり。

またいはく、 「念仏ねんぶつ三昧ざんまい のうちょうぜつ じつ雑善ぞうぜん とくるい(散善義) といへり。 こころは、 「*念仏ねんぶつ三昧ざんまいのうぜんえすぐれて、 まことに雑善ぞうぜんをもつてたぐひとすることをるにあらず」 となり。

 ただじょういっしゅうのみ念仏ねんぶつぎょうをたふとむにあらず。 しゅうこうまたおほく弥陀みだをほめたり。

天台てんだいだい (*智顗)しゃく (*摩訶止観) にいはく、 「若唱にゃくしょう弥陀みだ そくしょう十方じっぽうぶつ どくしょうとう 但専たんせん弥陀みだ 法門ほうもんしゅ」 といへり。 こころは、 「もし弥陀みだとなふれば、 すなはちこれ十方じっぽうぶつとなふるとどくまさにひとし。 ただもつぱら弥陀みだをもつて法門ほうもんあるじとす」 となり。

また*おんだいしゃく (*西方要決) にいはく、 「諸仏しょぶつがんぎょう じょうみょう 但能たんのう念号ねんごう ほう衆徳しゅとく」 といへり。 こころは、 「諸仏しょぶつがんぎょう、 このじょうず。 ただよくみなねんずれば、 *つぶさにもろもろのとくぬ」 となり。

おほよそしょしゅうにん念仏ねんぶつをほめ*西方さいほうをすすむること、 げてかぞふべからず。 しげきがゆゑにこれをりゃくす。 ゆめゆめ念仏ねんぶつどくをおとしめおもふことなかれ。

【7】 しかるにひとつねにおもへらく、 つたなきもののぎょうずるほうなれば念仏ねんぶつどくおとるべし、 たふときひとのしゅするきょうなればしょきょうまさるべしとおもへり。 そのしからず。 こんのもののすくはるべきほうなるがゆゑに、 ことにさいじょうほうとはしらるるなり。

ゆゑいかんとなれば、 くすりをもつてやまいするに、 かろきやまいをばかろきくすりをもつてつくろひ、 おもきやまいをばおもきくすりをもつていやす。 やまいをしりてくすりをほどこす、 これをりょうとなづく。 如来にょらいはすなはちりょうのごとし。 *かがみてほうあたへたまふ。

しかるに*じょうこんにはしょぎょうさずけ、 こんには念仏ねんぶつをすすむ。 これすなはち、 *かいぎょう*まつたく、 智慧ちえもあらんひとは、 たとへばやまいあさきひとのごとし。 かからんひとをばしょぎょうのちからにてもたすけつべし。 智慧ちえもなく*悪業あくごうふかきまつぼんは、 たとへばやまいおもきもののごとし。 これをば弥陀みだみょうごうのちからにあらずしてはすくふべきにあらず。 かるがゆゑに罪悪ざいあくしゅじょうのたすかるほうときくに、 ほうのちからのすぐれたるほどは、 ことにしらるるなり。

されば ¬*せんじゃくしゅう¼ のなかに、 「極悪ごくあくさいひとのために、 しかも極善ごくぜんさいじょうほうく。 れいせば、 かの*みょう淵源えんげんやまい*ちゅうどうぞうくすりにあらざればすなはちすることあたはざるがごとし。 いまこの*ぎゃく重病じゅうびょう淵源えんげんなり。 またこの念仏ねんぶつ*霊薬れいやくぞうなり。 このくすりにあらずは、 なんぞこのやまいせん」 といへるは、 このこころなり。

 そもそも、 弥陀みだ如来にょらいやくのことにすぐれたまへることは、 煩悩ぼんのうそくぼん*かいほううまるるがゆゑなり。

善導ぜんどうしょうしゃく (*法事讃・下) にいはく、 「一切いっさいぶつかいごんじょう ぼん乱想らんそうなんしょう 如来にょらいべっ西方さいほうこく じゅうちょうじゅう万億まんおく」 といへり。 こころは、 「一切いっさいぶつはみな*いつくしくきよけれども、 ぼん*乱想らんそうおそらくはうまれがたし。 如来にょらいべっして西方さいほうこくをさしたまふ。 これよりじゅうまんおくぎたり」 となり。

ことに*しゅく*ほうしょうじょうもたへにしてすぐれたり。 *密厳みつごん*ぞう宝刹ほうせつもきよくしてめでたけれども、 乱想らんそうぼんはかげをもささず、 *ばくのわれらはのぞみをたてり。

しかるに弥陀みだ如来にょらい本願ほんがんは、 じゅうあくぎゃくもみなせっして、 きらはるるものもなく、 すてらるるものもなし。 *あんにょうじょう*謗法ほうぼう*闡提せんだいもおなじくうまれて、 もるるひともなく、 のこるひともなし。 諸仏しょぶつじょうにきらはれたる*しょう女人にょにんは、 かたじけなく*もんみょうおうじょうやくにあづかり、 *けんほのおにまつはるべきぎゃく罪人ざいにんは、 すでに*滅罪めつざいとくしょうしょうをあらはす。

さればちょうがんともなづけ、 *不共ふぐしょうともごうす。 かかるしゅしょうほうなるがゆゑに、 これをぎょうずれば諸仏しょぶつさつようにあづかり、 これをしゅすれば諸天しょてん善神ぜんじん加護かごをかうぶる。 ただねがふべきは西方さいほう*じょうぎょうずべきは念仏ねんぶついちぎょうなり。

 

みょうしょう ほん

 

みょうしょう まつ

 

【8】 うていはく、 念仏ねんぶつぎょうじゃ*神明しんめいつこうまつらんこと、 いかがはんべるべき。

 こたへていはく、 りゅう所談しょだんはしらず、 親鸞しんらんしょうにんかんのごときは、 これをいましめられたり。

いはゆる ¬*教行きょうぎょうしょう文類もんるい¼ のろく (化身土巻)しょきょうもんきて、 仏法ぶっぽうせんものは、 その*天神てんじん地祇じぎつこうまつるべからざるむねはんぜられたり。 こののごときは念仏ねんぶつぎょうじゃにかぎらず、 そうじて仏法ぶっぽうぎょうぶつ弟子でしにつらならんともがらは、 これにつこふべからずとみえたり。

しかれども、 ひとみなしからず、 さだめてぞんずるところあるか。 それを是非ぜひするにはあらず。 しょうにん (親鸞)*いちりゅうにおきては、 もつともその所判しょはんをまもるべきものをや。

おほよそ神明しんめいにつきて*権社ごんしゃ*実社じっしゃどうありといへどもないしょうはしらず、 まづ*どうのおもてはみなこれ*りんほう、 なほまた*じゅうしゅどうのうちなり。 仏道ぶつどうぎょうぜんもの、 これをこととすべからず。

ただしこれにつかへずとも、 もつぱらかの神慮しんりょにはかなふべきなり。 これすなはち*こう同塵どうじん*結縁けちえんのはじめ*八相はっそうじょうどう*もつのをはりなるゆゑに、 *すいしゃくほんは、 *しかしながらしゅじょうえんむすびてつひに仏道ぶつどうらしめんがためなれば、 真実しんじつ念仏ねんぶつぎょうじゃになりてこのたびしょうをはなれば、 神明しんめいことによろこびをいだき、 *権現ごんげんさだめてみをふくみたまふべし。 一切いっさい*じん*みょうどう念仏ねんぶつのひとをようすといへるはこのゆゑなり。

【9】 うていはく、 念仏ねんぶつぎょうじゃは、 諸仏しょぶつさつようにもあづかり、 諸天しょてん善神ぜんじん加護かごをもかうぶるべしといふは、 じょうおうじょうせしめんがためにただ*信心しんじんしゅしたまふか、 また*こんじょうたいをもまもりてもろもろの所願しょがんをもじょうじゅせしめたまふか。 あきらかにこれをきかんとおもふ。

 こたへていはく、 かのぶつ*心光しんこう、 このひとをしょうしててずともいひ、 六方ろっぽう諸仏しょぶつ信心しんじん*ねんすともしゃくすれば、 信心しんじんをまもりたまふことはぶつほんなればもうすにおよばず。 しかれども、 まことの信心しんじんをうるひとは、 げんにもそのやくにあづかるなり。

いはゆる善導ぜんどうしょうの ¬*観念かんねん法門ぼうもん¼ に、 ¬*観仏かんぶつ三昧ざんまいきょう¼・¬*じゅうおうじょうきょう¼・¬*じょう三昧ざんまいきょう¼・¬*般舟はんじゅ三昧ざんまいきょう¼ とうしょきょうきて、 一心いっしん弥陀みだしておうじょうをねがふものには、 諸仏しょぶつさつかげのごとくにしたがひ、 諸天しょてん善神ぜんじんちゅうしゅして、 一切いっさいさいしょうおのづから*のぞこり、 もろもろのねがひかならずみつべきしゃくしたまへり。

 されば弥陀みだぶつは、 げん*しょうやくともにすぐれたまへるを、 *じょうさんきょうにはしょうやくばかりをけり、 きょうにはおほくげんやくをもあかせり。

かの ¬*金光こんこう明経みょうきょう¼ は*ちんこっみょうでんなり。 かるがゆゑに、 このきょうよりきいだすところのぶつさつをば、 こくぶつさつとす。 しかるに*正宗しょうしゅう*ほんのうち、 「寿じゅりょうほん」 をきたまへるは、 すなはち西方さいほう弥陀みだ如来にょらいなり。 これによりて弥陀みだぶつをば、 ことに*息災そくさい延命えんめいこくぶつとす。

*かの天竺てんじく (印度)*しゃこくといふくにあり。 そのくにしゅ疫癘えきれいおこりて、 ひとごとにのがるるものなかりしに、 月蓋がつがいちょうじゃしゃ如来にょらいにまゐりて、 「いかにしてかこのやまいをまぬかるべき」 ともうししかば、 「西方さいほう極楽ごくらくかい弥陀みだぶつねんじたてまつれ」 とおおせられけり。 さていえにかへりて、 をしへのごとくねんじたてまつりければ、 弥陀みだ*観音かんのん*せい三尊さんぞんちょうじゃいえきたりたまひしとき、 しゅ疫神やくじんまのあたりひとのにみえて、 すなはちこくでぬ。 ときにあたりて、 くにのうちのやまいことごとくすみやかにやみにき。

そのときげんじたまへりし三尊さんぞんぎょうそうを、 月蓋がつがいちょうじゃ*えんだんごんをもつて*うつしたてまつりけり。 そのぞうといふは、 いまの*善光ぜんこう如来にょらいこれなり。 *霊験れいげんまことにげんちょうなり。

またわがちょうには、 *嵯峨さが天皇てんのう御時おんときてんてり、 あめくだり、 やまいおこり、 いくさいできてこくおだやかならざりしに、 いづれのぎょうのちからにてかこのなんはとどまるべきと、 でんぎょうだい (*最澄)ちょくもんありしかば、 「*七難しちなんしょうめつほうには*南無なも弥陀みだぶつにしかず」 とぞもうされける。

おほよそ弥陀みだ*しょうにて、 わざはひをはらひなんをのぞきたるためし、 こくにも*ほんちょうにもそのあとこれおほし。 つぶさにしるすにいとまあらず。 さればくに災難さいなんしずめ、 *しょうをはらはんとおもはんにも、 みょうごうゆうにはしかざるなり。

 ただし、 これはただ念仏ねんぶつやく*現当げんとうをかねたることをあらはすなり。 しかりといへども、 *まめやかにじょうをもとめおうじょうをねがはんひとは、 この念仏ねんぶつをもつてげん*いのりとはおもふべからず。 ただひとすぢに*しゅつしょうのために念仏ねんぶつぎょうずれば、 はからざるにこんじょうとうともなるなり。

これによりて ¬*藁幹こうかんきょう¼ といへるきょうのなかに、 信心しんじんをもつてだいをもとむればげん*しつじょうじゅすべきことをいふとして、 ひとつのたとへをけることあり。 「たとへばひとありて、 たねをまきていねをもとめん。 まつたくわらをのぞまざれども、 いねいできぬればわらおのづからるがごとし」 といへり。 いねるものはかならずわらるがごとくに、 後世ごせをねがへばげんののぞみもかなふなり。 わらるものはいねざるがごとくに、 げん福報ふくほうをいのるものはかならずしもしょうぜんをばずとなり。

 *経釈きょうしゃくののぶるところかくのごとし。 ただし、 こんじょうをまもりたまふことは、 もとよりぶつほんにあらず。 かるがゆゑに、 *前業ぜんごうもしつよくは、 これをてんぜぬこともおのづからあるべし。 しょうぜんしめんことは、 もつぱら如来にょらい本懐ほんがいなり。 かるがゆゑに、 けんすべきごうなりとも、 それをばかならずてんずべし。

しかれば、 たとひもしこんじょうしょうはむなしきにたることありとも、 ゆめゆめおうじょう大益だいやくをばうたがふべからず。 いはんやげんにもそのやくむなしかるまじきことは聖教しょうぎょうせつなれば、 あおいでこれをしんずべし。 ただふかく信心しんじんをいたして一向いっこう念仏ねんぶつぎょうずべきなり。

【10】うていはく、 真実しんじつ信心しんじんをえてかならずおうじょうべしといふこと、 いまだそのこころをえず。 南無なも弥陀みだぶつといふは、 弥陀みだ本願ほんがんなるがゆゑにけつじょうおうじょう業因ごういんならば、 これを*くちにふれんもの、 みなおうじょうすべし、 なんぞわづらはしく信心しんじんすべしといふや。 また信心しんじんといふは、 いかやうなるこころをいふぞや。

 こたへていはく、 南無なも弥陀みだぶつといへる*ぎょうたいおうじょうしょうごうなり。 しかれども、 しんずるとしんぜざるとのどうあるがゆゑに、 おうじょうるとざるとの差別しゃべつあり。 かるがゆゑに、 ¬だいきょう¼ には*三信さんしんき、 ¬かんぎょう¼ には*三心さんしんしめし、 ¬しょうきょう¼ には*一心いっしんとあかせり。 これみな信心しんじんをあらはすことばなり。

このゆゑに、 源空げんくうしょうにんは、 「しょういえにはうたがいをもつて*しょとし、 はんのみやこにはしんをもつて*のうにゅうとす」 (選択集)はんじ、 親鸞しんらんしょうにんは、 「よく*一念いちねんあいしんおこせば、 煩悩ぼんのうだんぜずしてはん(正信偈)しゃくしたまへり。 りき信心しんじんじょうじゅして*ほうおうじょうべしといふこと、 すでにあきらかなり。 その信心しんじんといふは、 うたがいなきをもつてしんとす。 いはゆるぶつずいじゅんしてこれをうたがはず、 ただきょうをまもりてこれにせざるなり。

 おほよそ*無始むしよりこのかたしょうにめぐりて*六道ろくどう*しょうをすみかとせしに、 いまながきりんのきづなをきりて*無為むいじょうしょうぜんこと、 しゃ弥陀みだそんだいによらずといふことなく、 代々だいだい*そうじょう*祖師そし*先徳せんどく*ぜんしき*恩徳おんどくにあらずといふことなし。

そのゆゑは、 われらがありさまをおもふに、 *ごく*餓鬼がき*ちくしょう三悪さんまくをまぬかれんこと、 どうとしてはあるまじきことなり。 *じゅうあく*三毒さんどくにまつはれて、 とこしなへにりんしょういんをつみ、 *じん*六欲ろくよくこころにみて、 ほしいままに*さんてんごうをかさぬ*ひん七聚しちじゅ戒品かいほんひとつとしてこれをたもつことなく、 *ろく*しょうどくひとつとしてこころにもかけず。 あさゆうなにおこすところはみな*妄念もうねん、 とにもかくにもきざすところはことごとく悪業あくごうなり。 かかるざいしょうぼんにては、 にんちゅうてんじょうほうんこともなほかたかるべし。 いかにいはんやしゅっ*三界さんがいじょううまれんことは、 おもひよらぬことなり。

 ここに弥陀みだ如来にょらい*えん慈悲じひにもよほされ、 じんじゅう*がんおこして、 ことに罪悪ざいあくしょうぼんをたすけ、 ねんごろに称名しょうみょうおうじょうぎょうさずけたまへり。 これをぎょうじこれをしんずるものは、 ながく六道ろくどうしょういきでて、 *あまつさへ無為むい*無漏むろほううまれんことは、 *不可ふか思議しぎのさいはひなり。

しかるに弥陀みだ如来にょらいちょう本願ほんがんおこしたまふとも、 しゃ如来にょらいこれをきのべたまはずは、 *しゃしゅじょういかでかしゅつのみちをしらん。

されば ¬ほうさん¼ (下)しゃくに、 いんしゃぶつかい 弥陀みだみょうがん何時かじもん」 といへり。 こころは、 「しゃぶつのをしへにあらずは、 弥陀みだ*ようがんいづれのときにかきかん」 となり。

たとひまた、 しゃくそん西天 (印度)でて*さんみょうでんき、 *五祖ごそ東漢とうかん (中国)うまれて西方さいほうおうじょうををしへたまふとも、 源空げんくう親鸞しんらんこれをひろめたまふことなく、 だいそうじょうぜんしきこれをさずけたまはずは、 われらいかでかしょう根源こんげんをたたん。 まことに*連劫れんごう累劫るいこうをふとも、 その恩徳おんどくむくひがたきものなり。

これによりて善導ぜんどうしょうしゃく (観念法門・意) をうかがふに、 「にしほねくだきても、 仏法ぶっぽうおんをばほうずべし」 とみえたり。 これすなはち、 仏法ぶっぽうのためにはしんみょうをもすて財宝ざいほうをもしむべからざるこころなり。

このゆゑに ¬摩訶まかかん¼ (意) のなかには、 「一日いちにちにみたび恒沙ごうじゃしんみょうつとも、 なほいっちからほうずることあたはじ。 いはんやりょうけん荷負かぶしてひゃく千万せんまんこうすとも、 むしろ仏法ぶっぽうおんほうぜんや」 といへり。 恒沙ごうじゃしんみょうてても、 なほいっ法門ほうもんをきけるむくひにはおよばず。 まして*じゅんおうじょうきょうをうけて、 このたびしょうをはなるべきとなりなば、 いっしんみょうてんはもののかずなるべきにあらず。 しんみょうなほしむべからず。 いはんや財宝ざいほうをや。

このゆゑに*きんおう私訶しかだいぶつつかへ、 ぼんだつ珍宝ちんぽう比丘びくつかへし ˆにˇ 飲食おんじきぶく臥具がぐやく*四事しじようをのべき。 これみな念仏ねんぶつ三昧ざんまいほうをきかんがためなり。 おほよそ仏法ぶっぽうにあふことは、 *おぼろげのえんにてはかなはず、 *おろかなるこころざしにてはとげがたきことなり。

*大王だいおうみょうほうをもとめしきゅう千載せんざいにいたし、 *じょうたい般若はんにゃをききしひゃく*じゅんしろにいたる。 されば仏法ぶっぽうぎょうずるには、 いえをもすてよくをもすててしゅぎょうすべきに、 をもそむかず*みょうにも*まつはれながら、 *めでたきじょう仏法ぶっぽうをききて、 ながくりんきょうをはなれんことは、 ひとへにはからざるさいはひなり。 まことにこれ、 ほんしき恩徳おんどくにあらずといふことなし。 *ちからのへんにしたがひて、 いかでか報謝ほうしゃのこころざしを*ぬきいでざらんや。

¬*じょうごんきょう¼ のなかに、 ちょうつこうまつるにいつつのことあることをけり。 「ひとつにはきゅうをいたし、 ふたつにはらいきょうようす、 つにはそんじゅうちょうだいす、 つには教勅きょうちょくあれば敬順きょうじゅんしてたがふことなし、 いつつにはにしたがひてほうをきき、 よくたもちてわすれず」 といへり。

しかれば、 きくところのほうをよくたもち、 そのめいをすこしもそむかず、 こころざしをぬきいでてきゅうようをいたし、 まことをはげましてそんじゅうらいきょうすべきなり。

 これすなはち、 木像もくぞうものいはざればみづからぶっきょうをのべず、 きょうてんくちなければ*てづから法門ほうもんくことなし。 このゆゑに仏法ぶっぽうさずくるはんをもつて、 めつ如来にょらいとたのむべきがゆゑなり。 しかのみならず善導ぜんどうしょうは「どうぎょうぜんしき親近しんごんせよ」 (礼讃) とすすめ、 おんだいは、 「同縁どうえんのともをうやまへ」 (西方要決) とのべられたり。

そのゆゑは、 ぜんしきにちかづきてはつねに仏法ぶっぽうちょうもんし、 どうぎょうにむつびては信心しんじんをみがくべしといふこころなり。 わろからんことをばたがひにいさめ、 ひがまんことをばもろともにたすけて、 しょうにおもむかしめんがためなり。

かるがゆゑに、 のをしへをたもつはすなはちぶっきょうをたもつなり、 おんほうずるはすなはち仏恩ぶっとんほうずるなり。 どうぎょうのことばをもちゐては、 すなはち諸仏しょぶつのみことをしんずるおもひをなすべし。 りきの大信心しんじんをうるひとは、 そのないしょう如来にょらいにひとしきいはれあるがゆゑなり。

 

みょうしょう まつ

 

人身うけがたく 人間に生れることは極めてまれなことであり。
三悪の火坑 「地獄・餓鬼・畜生の火のあな」 (左訓) →きょう
釈尊付属の法 ¬観経¼ のずうぶんにおいて、 釈尊がなんに称名念仏を一経の結論として、 授け与えたことを指す。
諸仏証誠の行 ¬小経¼ において、 六方の諸仏が念仏の法の真実であることを証明したことを指す。
外の雑縁 外からのさまざまなさまたげ。 →雑縁ぞうえん
五三 少しばかりの意。
憶想 阿弥陀仏を思う心。
回願 こう発願ほつがん。 浄土に往生することを願うこと。
貪瞋諸見 貪欲とんよくしん邪見じゃけんのこと。
軽慢 みずから思いあがって、 他人をみくだしあなどること。
業行 仏道修行。
人我 しゅう。 自己にとらわれること。
三昧発得の人師 善導ぜんどうだいのこと。 善導大師は阿弥陀仏や浄土のありさまをまのあたり感見する三昧の境地を得た人であるから、 このようにいう。
一流の宗義… 浄土真宗の教義はこのような伝統によっていて、 私見は全く雑えていない。
うるはしく 立派に。 正しく。
ことわりなるべし もっともなことである。
転経 教典を読誦どくじゅすること。
誦呪 真言しんごん陀羅だらをとなえること。
大地微塵 三千世界の大地を砕いて微塵にした数。 無数の意。
虚然として むなしく。
いさみ 張りあい。 はげみ。
勝利 勝れたやく
般舟経 ¬般舟はんじゅ三昧ざんまいきょう¼ のこと。
つぶさに… あらゆる徳を全て合せ持つ。
上根の機 根はこんの意。 仏道を修める能力のすぐれた者。
戒行 戒を持つこと。
まつたく 完全であり。 欠けたところがなく。
無明淵源 無明は真如しんにょに背く無知のことで、 あらゆる迷いの根源であることをいう。
中道府蔵 中道真如にかなった法は仏法の最も大切なものであるから、 これを人の臓腑 (府蔵) に喩えていう。 中道第一の意。
霊薬 「よき薬のきはまりなり」 (左訓)
界外の報土 三界さんがいを超出した浄土、 すなわち真実しんじつほう
いつくしく おごそかで立派で。
阿閦 →しゅくぶつ
宝生 金剛界五智如来の一。 南方の月輪に住して平等性智の徳をあらわす。
密厳 密厳国。 大日如来の浄土のこと。 ¬だいじょう密厳みつごんぎょう¼ などに説く。
華蔵 れんぞうかいのこと。
滅罪得生 「罪を消して生るることを得る」 (左訓)
不共の利生 諸仏の救いにもれた女人・悪人を往生させる阿弥陀仏の本願の特異なはたらき。
示同のおもて 「ぼんに同じたまふおもてはという」 (左訓)
八相成道 「つひに仏道を成るは」 (左訓) →八相はっそうじょうどう
利物のをはり 「しゅじょうやくするをはりなりといふ」 (左訓) →もつ
しかしながら 要するに。
神祇 天地の神々。
冥道 冥界の神々。
今生の穢体 身体を指す。
のぞこり 除かれて。
鎮護国家 国の災厄を除き、 安泰にすること。
正宗 正宗分のこと。 経典の本論となる部分。
四品 「寿じゅりょうぼん」 「さん品」 「讃歎さんだん品」 「くう品」 の四つの章。
息災延命 わざわいを除き、 命をひきのばすこと。
かの天竺… 以下の因縁いんねんは ¬しょう観音かんのんぎょう¼ の説にもとづいたもの。
毘舎離国 毘舎離は梵語ヴァイシャーリー (Vaiśālī) の音写。 ガンジス河の支流ガンダキ河の東岸にあるベーサールがその旧址といわれる。
鋳うつし (三尊の姿を) そのまま鋳造するという意。
霊験 不思議な霊力のあらわれ。
嵯峨の天皇 (786-842。 在位809-823)。 書道にすぐれわが国三筆の一人。
七難… ¬七難しちなんしょうめつこくじゅ¼ に七難等の滅除に言及して、 「依正安穏にして念仏を修せん」 とある。
本朝 わが国
不祥 わざわい。 災難。
現当 現世と当来世。
まめやかに 心から。 真剣に。
藁幹喩経 ¬蘇婆そばどうしょうもんぎょう¼ のこと。 ¬藁幹喩経¼ という名称は同経に説かれる譬喩にもとづくもの。
前業 前世の行為。 →補註5
口にふれんものは 口に称える者は。
行体 行の当体。 衆生おうじょうの因となる行そのもののこと。
所止 迷いの境界にとどまるところの理由 (所以)。
能入 よく浄土に入ることのできる因のこと。
五篇七聚 比丘びく・比丘尼の戒の総称。 五篇は戒を罪の最も重いものから波羅はら僧残そうざん逸提いつだい提舎だいしゃ突吉ときの五種に類別する称目。 またこれにちゅう蘭遮らんじゃを加え (六聚)、 突吉羅を突吉羅 (悪作)・悪説に分類して七聚とする。
無縁の慈悲 平等にして無差別な仏の大慈悲。 →三縁さんえん
あまつさへ その上に。 そればかりか。
三部の妙典 じょうさんきょうのこと。
五祖 曇鸞どんらんだいどうしゃくぜん善導ぜんどう大師・ほっしょう禅師・しょうこうほっを指す。
連劫累劫をふとも 多数の劫を重ねても。
順次往生 現世の命が終って、 次にただちに浄土に生れること。
斯琴王の… ¬般舟はんじゅ三昧ざんまいきょう¼ の所説による。
おぼろげ 並大抵。
おろかなる 疎かな。 いいかげんな。
大王の妙法を… 釈尊が過去世において国王であった時、 妙法を聞くために私陀しだ仙人に先年の間仕えたことをいう。 ¬法華ほけきょう¼ 「提婆達多品」 の説。
常啼の般若を… 常啼菩薩が般若波羅蜜を求めて、 東方に五百じゅんの距離を旅し、 衆香しゅこうじょうどんかつ菩薩から教えを受けたことをいう。
まつはれながら 心をひかれながら。
めでたき すぐれた。 すばらしい。
ちからの堪へんに… 力の及ぶ限り。
ぬきいでざらんや 「ぬきいづ」 は他より卓越させる、 ぬきでるの意。
てづから みずから。 自分から。