三(43)、阿弥陀経釈

▲阿あ弥陀みだ経釈きょうしゃく 第三だいさん

黒谷くろだに作さく

まさにこの ¬経きょう¼ を釈しゃくすに､ 略りゃくして五意ごいあり｡ 一いちには↓所しょ依えの教きょうを辨べんず､ 二にには↓かさねて二に行ぎょうを釈しゃくす､ 三さんには↓経きょうの来らい意い､ 四しには↓釈名しゃくみょう､ 五ごには↓入にゅう文もん解げ釈しゃくなり｡

将^ニ釈^ニ↢此¬経¼↡､略有↢五意↡｡一^ニハ辨↢所依^ノ教↡､二^ニハ重^テ釈↢二行↡､三^ニハ経^ノ来意､四^ニハ釈名､五^ニハ入文解釈也｡

・辨所依教

一いちに↑所しょ依えの教きょうを辨べんずとは､ すなはちこれ決けつ定じょう往おう生じょう極楽ごくらく所しょ依えの教きょうなり ^云_々｡ それ説とくところの往おう生じょう極楽ごくらくの旨むね､ 経きょう論ろんその数かずはなはだ多おおくして､ 勝しょう計げすべからず｡ しばらくそのなかに要ようを取とりて詮せんを抽ちゅうするに､ ｢三さん部ぶ経きょう｣ に過すぐることなし｡ いはく ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼・¬観かん経ぎょう¼・¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ なり｡ なにをもつてこれを知しるとならば､ 略りゃくして六文ろくもんあり｡ 一いちには↓善導ぜんどうの疏文しょもん､ 二にには↓天台てんだいの ¬十じゅう疑ぎ¼ の文もん､ 三さんは↓慈じ恩おんの ¬要決ようけつ¼ の文もん､ 四しは↓迦か才ざいの ¬浄じょう土ど論ろん¼ の文もん､ 五ごは↓智ち景きょうの疏文しょもん､ 六ろくは↓恵え心しんの ¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ の文もんなり｡

一0044^ニ辨↢所依^ノ教^ヲ↡者､即是 レ決定往生極楽所依^ノ教也 ^云_云｡夫 レ所^ノ↠説往生極楽之旨 ネ､経論其^ノ数甚多^クシテ､不↠可↢勝計↡｡且其^ノ中^ニ取↠要^ヲ抽^ルニ↠詮^ヲ､無↠過^コト↢｢三部経^ニ｣↡｡謂^ク¬無量寿経¼･¬観経¼･¬阿弥陀経¼也｡以↠何知↠之者､略^シテ有↢六文↡｡一^ニハ善導^ノ疏文､二^ニハ天臺¬十疑¼^ノ文､三^ハ慈恩^ノ¬要決¼文､四^ハ迦才^ノ¬浄土論¼文､五^ハ智景^ノ疏文､六^ハ恵心^ノ¬往生要集¼文也｡

一いちに↑善導ぜんどうの疏文しょもんとは､ 善導ぜんどう (散善義) 専修せんじゅ正行しょうぎょうを釈しゃくする文もんにいはく､ ｢▲一心いっしんにもつぱら ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼・¬観かん経ぎょう¼・¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ 等とうを読誦どくじゅすべし｣ と ^云_々｡ 今いまこの文もんによる､ 西方さいほうの学者がくしゃ､ ただもつぱらこの ¬経きょう¼ を読誦どくじゅすべし ^云_々｡

一^ニ善導^ノ疏文者､善導釈↢専修正行^ヲ↡文^ニ云^ク､｢一心^ニ専^ラ可↣読↢誦¬無量寿経¼･¬観経¼･¬阿弥陀経¼等^ヲ↡｡｣^云_云 今依↢此文^ニ↡､西方^ノ学者､唯専^ラ可↣読↢誦此¬経¼↡ ^云_云｡

二にに↑天台てんだいの ¬十じゅう疑ぎ¼ の文もんとは､ かの ¬十じゅう疑ぎ¼ のなかに､ 第だい四しの疑ぎに ｢問とひていはく､ 浄じょう土どこれ同どうなり､ 十方じっぽう浄じょう土どを求もとむべし｡ なんぞひとへに弥陀みだを念ねんずるや｡ 答こたへていはく､ 凡ぼん夫ぶは智ちなし､ あへてみづからもつぱらにせず､ もつぱら仏ぶつ語ごを用もちゆ｡ ゆゑにひとへに阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんず｡ いかんが仏ぶつ語ごを用もちいる｡ ▲釈しゃ迦か大だい師し一代いちだいの説法せっぽう､ 処々しょしょの聖教しょうぎょうに､ ただ衆しゅ生じょうを勧すすめて専心せんしんにひとへに阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじて､ 西方さいほう極楽ごくらく世せ界かいに生しょうずることを求もとめしむ｡ ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼・¬観かん経ぎょう¼・¬往おう生じょう論ろん¼ 等とうのごとし｡ 数しゅ十じゅう余部よぶの経きょう論ろん等とうの文もん､ 慇懃おんごんに指し授じゅして西方さいほう浄じょう土どに生しょうぜよと勧すすむ｡ ゆゑにこれをもつてひとへに念ねんず｡

二^ニ天臺^ノ¬十疑¼文^ト者､彼¬十疑^ノ¼中^ニ､第四疑^ニ｢問曰､浄土是 レ同^ナリ､求^ベシ↢十方浄土^ヲ↡｡何^ゾ偏^ニ念^ズルヤ↢弥陀^ヲ↡｡答曰､凡夫^ハ無↠智､不↢敢^テ自^ラ専↡､専^ラ用^ユ↢仏語^ヲ↡｡故^ニ偏^ニ念↢阿弥陀仏↡｡云何用^ル↢仏語↡｡釈迦大師一代^ノ説法､処処^ノ聖教^ニ､唯勧^テ↢衆生^ヲ↡専心^ニ偏^ニ念^ジテ↢阿弥陀仏↡､求^シム↠生^コトヲ↢西方極楽世界^ニ↡｡如^シ↢¬無量寿経¼･¬観経¼･¬往生論¼等^ノ↡｡数十余部経論等^ノ文､慇懃^ニ指授^シテ勧^ム↠生^ト↢西方浄土^ニ↡｡故^ニ是^ヲ以^テ偏^ニ念也｡

▲また阿あ弥陀みだ仏ぶつに別べっして大だい悲ひの四し十じゅう八願はちがんありて､ 衆しゅ生じょうを接しょう引いんしたまふ｡ また ¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく､ 阿あ弥陀みだ仏ぶつに八万はちまん四し千せんの相そうあり､ 一々いちいちの相そうに八万はちまん四し千せんの好こうあり｡ 一々いちいちの好こうより八万はちまん四し千せんの光こう明みょうを放はなちたまふ｡ 一々いちいちの光こう明みょうあまねく法界ほうかいを照てらして､ 念仏ねんぶつの衆しゅ生じょうを摂取せっしゅして捨すてたまはず｡ もし念ねんずることあれば､ 機き感かん相応そうおうして決けつ定じょうして生しょうずることを得う｣ と ^云_々｡ 今いまこの文もんによる､ 学者がくしゃ・行ぎょう者じゃ､ 三さん経ぎょう一論いちろんを学がくすべし ^云_々｡

又阿弥陀仏^ニ別^シテ有↢大悲四十八願↡､接↢引^タマフ衆生^ヲ↡｡又¬観経^ニ¼云､阿弥陀仏^ニ有↢八万四千相↡､一一^ノ相^ニ有↢八万四千^ノ好↡｡一一^ノ好^ヨリ放^タマフ↢八万四千光明^ヲ↡｡一一^ノ光明遍^ク照^シテ↢法界↡､念仏^ノ衆生^ヲ摂取0045^シテ不↠捨｡若有^レ↠念^コト者､機感相応^シテ決定^シテ得↠生｡｣^云_云 今依↢此文↡､学者･行者可↠学↢三経一論↡ ^云_云｡

三さんに↑慈じ愍みんの ¬要決ようけつ¼ の文もんとは､ かの ¬要決ようけつ¼ (西方要決) に長じょう時じ等とうの四し修しゅを釈しゃくするなか､ 恭く敬ぎょう修しゅを釈しゃくしていはく､ ｢▲二にには恭く敬ぎょう修しゅ｡ この修しゅに五ごあり｡

三^ニ慈愍^ノ¬要決¼文^ト者､彼^ノ¬要決^ニ¼釈^スル↢長時等^ノ四修^ヲ↡中､釈↢恭敬修^ヲ↡云､｢二^ニハ者恭敬修｡此^ノ修^ニ有↠五｡

◆一いちに有う縁えんの聖しょう人にんを敬うやまふ｡ いはく行住ぎょうじゅう坐臥ざがに西方さいほうに背そむかず､ 涕て唾だ便べん利り､ 西方さいほうに向むかはず｡

一敬^フ↢有縁^ノ聖人^ヲ↡｡謂^ク行住坐臥^ニ不↠背↢西方↡､涕唾便利､不↠向↢西方↡也｡

◆二には有う縁えんの像ぞう教きょうを敬うやまふ｡ いはく西方さいほう弥陀みだの像変ぞうへんを造つくり､ 広ひろく作つくることあたはず｡ ただ一仏いちぶつ二に菩ぼ薩さつを作つくるもまた得えたり｡ 教きょうとは ¬弥陀みだ経きょう¼ 等とうを五ご色しきの袋ふくろに盛もりて､ みづからも読よみ他たにも教おしへよ｡ この経きょう像ぞうを室しつのなかに安あん置ちして､ 六ろく時じに礼讃らいさんして､ 華け香こうをもつて供く養ようし､ ことに尊そん重じゅうを生しょうずべし｡

二^ハ敬↢有縁像教↡｡謂^ク造^リ↢西方弥陀^ノ像変^ヲ↡､不↠能↢広作^コト↡｡但作^モ↢一仏二菩薩^ヲ↡亦得^タリ｡教^ト者¬弥陀経¼等^ヲ五色^ノ袋^ニ盛^テ､自^モ読^ミ教^ヨ↠他^ニモ｡此之経像^ヲ安↢置^シテ室^ノ中^ニ↡､六時^ニ礼讃^シテ､華香^ヲ以供養^シ､特コト^ニ生^ズベシ尊重^ヲ↡｡

◆三さんに有う縁えんの善ぜん知ぢ識しきを敬うやまふ｡ いはく浄じょう土どの教きょうを演のぶるもの､ 若じゃっ干かん由ゆ旬じゅんよりこのかたは､ 並ならびてすべからく敬重きょうじゅうし親近しんごん供く養ようすべし｡ 別学べつがくのものをば総そうじて敬きょう心しんを起おこせ｡ おのれと同おなじからざればただ深ふかく敬うやまふことを知しれ｡ もし軽きょう慢まんを生しょうぜば､ 罪つみを得うること窮きわまりなし｡ ゆゑにすべからく総そうじて敬うやまふべし｡ すなはち行障ぎょうしょうをば除のぞく｡

三^ニ敬↢有縁^ノ善知識^ヲ↡｡謂^ク演↢浄土^ノ教↡者､若干由旬^ヨリ已来^ハ､並^テ須^ク↢敬重^シ親近供養^ス↡｡別学之者^ヲバ総起↢敬心↡｡与↠己不^レバ↠同但知^レ↢深^ク敬^コトヲ↡也｡若生↢軽慢↡､得↠罪無↠窮｡故須↢総^ジテ敬^フ↡｡即除↢行障^ヲバ↡｡

◆四しに同縁どうえんの伴ともを敬うやまふ｡ いはく同どう修業しゅごうのものなり｡ みづから障さわり重おもくして独ひとり業ごう成ならずといへども､ かならず良りょう朋ほうによつてまさによく行ぎょうを作なす､ 危あやうきを扶たすけ厄やくを救すくふ｡ 助力じょりきしあひ資たすけ､ 同伴どうはん善縁ぜんえん深ふかくあひ保ほ重じゅうすべし｡

四^ニ敬↢同縁^ノ伴^ヲ↡｡謂^ク同修業^ノ者｡自雖↢障重^シテ独業不ズ^ト↟成､要^ズ籍ヨツ^テ↢良朋^ニ↡方能作↠行､扶タス^ケ↠危^キヲ救スク^フ↠厄｡助力相資､同伴善縁深^ク相保重^スベシ｡

◆五ごに三宝さんぼうを敬うやまふ｡ 同体どうたい・別相べっそうならびに深ふかく尊そん敬きょうすべし｡ つぶさに録ろくするにあたはず｣ と ^云_云｡

五^ニ敬↢三宝↡｡同体･別相並^ニ合↢深^ク尊敬↡｡不↠能↢具^ニ録↡｡｣^云_云

今いまの文もん､ 西方さいほうの行ぎょう者じゃもつぱら弥陀みだの像ぞうを敬うやまひ､ もつぱら ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ 等とうを読誦どくじゅすべし｡ このなかの ｢等とう｣ とは､ 意こころ ¬寿じゅ¼・¬観かん¼ 二に経きょうを指さす ^云_々｡ これをもつてこれを案あんずるに､ 慈じ恩おんの御お意こころ､ 往おう生じょう極楽ごくらくの業ごうには､ もつぱら弥陀みだを念ねんじ､ もつぱらこの ¬経きょう¼ を読誦どくじゅすべし ^云_々｡ ただしこの ¬要決ようけつ¼ の文もんに先達せんだつの諍あらそひあり ^云_々｡ 他た宗しゅうの章しょう疏しょ目録もくろくのなかに､ 多おおくは慈じ恩おんの御作ぎょさくなり ^云_々｡

今文､西方^ノ行者専^ラ敬↢弥陀^ノ像^ヲ↡､専可↣読↢誦¬阿弥陀経¼等^ヲ↡｡此^ノ中^ノ等^ト者､意指↢¬寿¼･¬観¼二経^ヲ↡ ^云_云｡以↠之案↠之､慈恩^ノ御意､往生極楽之業^ニハ､専^ラ念↢弥陀↡､専可↣読↢誦此¬経¼↡ ^云_云｡但此¬要決¼文有↢先達^ノ諍↡ ^云_云｡他宗^ノ章疏目録^ノ中^ニ､多^クハ慈恩御作 ^云_云｡

四しに↑迦か才ざいの ¬浄じょう土ど論ろん¼ とは､ かの ¬論ろん¼ のなかに▲十じゅう二に経きょう七論しちろんを引ひく､ 往おう生じょう極楽ごくらくの証しょうとなす｡ 十じゅう二に経きょうとは､ 一いちは ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼､ 二には ¬観かん無む量りょう寿じゅ経きょう¼､ 三さんは ¬小しょう阿あ弥陀みだ経きょう¼､ その次つぎに余よの往おう生じょう経きょうを引ひく ^云_々｡ 七論しちろんとは､ 一いちは ¬往おう生じょう論ろん¼､ 二には ¬起き信論しんろん¼､ その次つぎに余よ論ろんを引ひく ^云_々｡ 今いまこの文もんによる ^云_々｡

四0046^ニ迦才^ノ¬浄土論^ト¼者､彼¬論^ノ¼中^ニ引^ク↢十二経七論^ヲ↡､為^ス↢往生極楽^ノ証^ト↡｡十二経^ト者､一^ハ¬無量寿経¼､二^ハ¬観無量寿経¼､三¬小阿弥陀経¼､其^ノ次^ニ引↢余往生経↡ ^云_云｡七論者､一^ハ¬往生論¼､二^ハ¬起信論¼､其次^ニ引↢余論↡ ^云_云｡今依↢此文↡ ^云_云｡

五ごに↑智ち景きょうの疏文しょもんとは､ 意こころ迦か才ざいに同おなじ｡ 今いままた申もうすべからず ^云_々｡

五^ニ智景^ノ疏文者､意同^ジ↢迦才^ニ↡｡今亦不↠可↠申 ^云_云｡

六ろくに↑恵え心しんの ¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ の文もんとは､ かの ¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ のなかに､ また前さきの天台てんだいの ¬十じゅう疑ぎ¼・迦か才ざいの ¬浄じょう土ど論ろん¼ の文もんを引ひきて､ 往おう生じょう極楽ごくらくの証しょうとなす｡ これをもつてこれを案あんずるに､ 往おう生じょう極楽ごくらくの経きょう論ろん､ その数かずありといへども､ この ｢三さん部ぶ経きょう｣ をもつてその要ようとす ^云_々｡

六^ニ恵心^ノ¬往生要集^ノ¼文者､彼^ノ¬往生要集^ノ¼中^ニ､亦引^テ↢前天臺^ノ¬十疑¼･迦才^ノ¬浄土論^ノ¼文^ヲ↡､為^ス↢往生極楽^ノ証^ト↡｡以↠之案↠之､往生極楽^ノ経論､雖↠有↢其^ノ数↡､以^テ↢此｢三部経^ヲ｣↡為↢其^ノ要^ト↡也 ^云_云｡

次つぎに天竺てんじくには天親てんじん・覚親かくしん､ 同おなじく ¬無む量りょう寿じゅ経きょう¼ によりて論ろんを作つくり自他じたの往おう生じょうを勧すすむ､ 振旦しんたんには恵え遠おん・曇巒どんらん､ あるいは ¬寿じゅ経きょう¼ によりあるいは ¬観かん経ぎょう¼ によりて､ 念仏ねんぶつし讃さんを造つくりおのおの往おう生じょう極楽ごくらくを遂とぐ｡ 西方さいほうの後学こうがく､ その跡あとを遂おふべし ^云_々｡ 次つぎに諸しょ宗しゅうおのおの所しょ依えの経きょう論ろんある由よし ^云_々｡

次^ニ天竺^ニハ天親･覚親､同依↢¬無量寿経¼↡作↠論勧↢自他往生↡､振旦^ニハ恵遠･曇巒､或^ハ依^リ↢¬寿経^ニ¼↡或^ハ依^テ↢¬観経^ニ¼↡､念仏^シ造↠讃^ヲ各遂^グ↢往生極楽^ヲ↡｡西方^ノ後学､可↠遂↢其跡^{ヲ 云}_云｡次^ニ諸宗各有↢所依^ノ経論↡之由 ^云_云｡

・重釈二行

↑かさねて二に行ぎょうを釈しゃくすとは､ これすなはち ¬往おう生じょう要よう集しゅう¼ によりて念仏ねんぶつ・諸しょ行ぎょうの行ぎょう相そうを決けっ釈ちゃくす､ しばらく諸しょ行ぎょうをば置おく､ 念仏ねんぶつの一いち行ぎょうにつきて､ かの ¬集しゅう¼ に十じゅう門もんを立たてて念仏ねんぶつ往おう生じょうを明あかす｡ そのなかの第一だいいち念仏ねんぶつ証しょう拠このなかに､ 念仏ねんぶつをもつて諸しょ行ぎょうに対たいするに､ 三番さんばんの問答もんどうあり｡

重釈^ト↢二行↡者､此即依^テ↢¬往生要集¼↡決↢釈^ス念仏･諸行^ノ行相^ヲ↡､且置↢諸行^ヲバ↡､付↢念仏一行^ニ↡､彼¬集^ニ¼立^テヽ↢十門^ヲ↡明^ス↢念仏往生^ヲ↡｡其中^ノ第一念仏証拠^ノ中^ニ､以^テ↢念仏^ヲ↡対↢諸行^ニ↡､有↢三番^ノ問答↡｡

第一だいいちの問とひ (要集巻下) にいはく､ ｢▲一切いっさいの善業ぜんごうみな利り益やくあり､ おのおの往おう生じょうを得う｡ なんがゆゑぞただ念仏ねんぶつの一門いちもんを勧すすむ｡ ◆答こたふ｡ 今いま念仏ねんぶつを勧すすむることは､ 余よの種々しゅじゅの妙行みょうぎょうを遮しゃすとにはあらず｡ ただこれ､ 男女なんにょ・貴き賎せん､ 行住ぎょうじゅう座臥ざがを簡えらばず､ 時じ処しょ所縁しょえんを論ろんぜず､ これを修しゅするに難かたからず､ 乃ない至し臨りん終じゅうに往おう生じょうを願がん求ぐするに､ その便びん宜ぎを得うること念仏ねんぶつにはしかず｡

第一^ノ問^ニ曰､｢一切^ノ善業皆有^リ↢利益↡､各得ウ↢往生^ヲ↡｡何^ガ故^ゾ唯勧↢念仏^ノ一門^ヲ↡｡答｡今勧^コトハ↢念仏↡､非↣是遮^トニハ↢余^ノ種種^ノ妙行↡｡只是､男女･貴賎､不↠簡↢行住座臥^ヲ↡､不↠論↢時処所縁↡､修^ルニ↠之不↠難､乃至臨終^ニ願0047↢求^スルニ往生^ヲ↡､得^ルコト↢其^ノ便宜^ヲ↡不↠如↢念仏^ニハ↡｡

◆ゆゑに ¬木槵もくげん経きょう¼ にのたまはく､ 難なん陀だ国こくの波は瑠璃るり王おう､ 使つかいをもつて仏ぶつにまうしてまうさく､ ただ願ねがはくは世せ尊そん､ 慈じ愍みんを垂たれて要法ようぼうを賜たまひ､ われをして日にち夜やにやすく修しゅ行ぎょうすることを得えしめよ､ 未み来らい世せのなかに衆しゅ苦くを遠おん離りせんと｡

故¬木槵経¼云､難陀国^ノ波瑠璃王使^以テ白↠仏言､唯願^ハ世尊､垂タレ^テ↢慈愍^ヲ↡賜↢要法↡､使↣我日夜^ニ易^ク得↢修行^コトヲ↡､未来世^ノ中^ニ遠↢離^セン衆苦↡｡

◆仏ぶつ大王だいおうに告つげたまはく､ もし煩悩ぼんのう・報ほう障しょうを滅めっせんと願がんずれば､ まさに木槵もくげん子し一いっ百ぴゃく八はちを貫つらぬきて､ もつてつねにみづから随したがへて､ もしは行ぎょうもしは住じゅう､ もしは坐臥ざが､ つねに心しんを至いたし分散ふんさんの意こころなく､ 仏陀みだ・達だつ磨ま・僧伽そうぎゃの名なを称となへて､ 一ひとつの木槵もくげん子しを過すぐ｡ もしは十じゅう､ もしは二に十じゅう､ もしは百ひゃく千せん､ 乃ない至し百ひゃく万まんせよ｡

仏告^ク↢大王^ニ↡､若願↠滅^ント↢煩悩･報障^ヲ↡者､当^ニ貫^テ↢木槵子一百八^ヲ↡､以^テ常^ニ自随^テ､若^ハ行若^ハ住､若^ハ坐臥､恒常^ニ至↠心無↢分散意↡､称↢仏陀･達磨･僧伽^ノ名^ヲ↡､過↢一^ノ木槵子↡｡若^ハ十､若^ハ二十､若^ハ百千､乃至百万｡

◆もしよく二に十じゅう万遍まんべんを満みち､ 身心しんしん乱みだれずもろもろの諂曲てんごくなくば､ 捨しゃ命みょうして第三だいさん炎えん摩ま天てんに生しょうずることを得え､ 衣え食じき自じ然ねんにしてつねに安楽あんらくを受うく｡

若能満↢二十万遍↡､身心不↠乱無↢諸諂曲↡者､捨命得↠生↢第三炎摩天↡､衣食自然^ニシテ常受↢安楽↡｡

◆もしまたよく一いっ百ぴゃく万遍まんべんを満みてば､ まさに百ひゃく八はちの結業けつごうを除断じょだんし､ 生しょう死じの流ながれを背そむき､ 涅ね槃はんの道どうに趣おもむき､ 無む上じょうの果かを獲うべし｣ と｡ ^略_鈔

若復^タ能^ク満↢一百万遍↡者､当^ニ↧除↢断^シ百八^ノ結業^ヲ↡､背↢生死流^ヲ↡､趣↢涅槃道↡､獲↦無上果↥｡｣^略_鈔

感かん禅ぜん師じの意こころまたこれに同おなじ｡ 以い上じょう↓難なん易いの意こころ

感禅師^ノ意亦同^ジ↠之^ニ｡已上難易意也

次つぎにまたいはんや釈しゃく (要集巻下意) にいはく､ ｢▲もろもろの聖教しょうぎょうのなかに､ 多おおくの念仏ねんぶつをもつて往おう生じょうの業ごうとする文もんはなはだ多おおし｡ 略りゃくして十じゅう文もんを出いだす｡

次亦況^ヤ釈^ニ云､｢諸^ノ聖教^ノ中^ニ､多^ノ以^テ↢念仏^ヲ↡為↢往生^ノ業^ト↡文甚多^シ｡略出↢十文↡｡

◆一いちは ¬占察せんざつ経きょう¼ の下げ巻かんにのたまはく､ もし人ひと他た方ほうの現在げんざいの浄じょう国こくに生しょうぜんと欲ほっすれば､ まさにかの世せ界かいの仏ぶつの名みょう字じに随したがひ､ 意こころを専もっぱらにし誦念じゅねんして一心いっしん不ふ乱らんなるべし｡ 上かみのごとく観察かんざつすれば､ 決けつ定じょうしてかの仏ぶつの浄じょう国こくに生しょうずることを得う｡ 善根ぜんごん増ぞう長じょうして､ すみやかに不ふ退たいを成じょうずと ^云_々｡

一^ハ¬占セン察経^ノ¼下巻云､若人欲↠生↢他方現在浄国↡者､応↧当^ニ随↢彼世界^ノ仏之名字↡､専↠意誦念^シテ一心不乱↥｡如^ク↠上観察者､決定^シテ得↠生↢彼仏浄国↡｡善根増長^シテ､速^ニ成↢不退↡ ^云_云｡

▲二には ¬双巻そうかん経ぎょう¼ の三輩さんぱいの業ごう浅深せんじんありといへども､ しかも通つうじてみな一向いっこう専念せんねん無む量りょう寿じゅ仏ぶつといふ｡

二^ハ¬双巻経^ノ¼三輩之業雖↠有↢浅深↡､然^モ通^ジテ皆云↢一向専念無量寿仏↡｡

◆三さんは四し十じゅう八願はちがんのなかに念仏ねんぶつの一門いちもんにおいて別べっして一願いちがんを発おこしてのたまはく､ 乃ない至し十じゅう念ねん､ 若にゃく不ふ生しょう者じゃ､ 不ふ取しゅ正しょう覚がくと｡

三^ハ四十八願^ノ中^ニ於↢念仏一門↡別^シテ発↢一願↡云､乃至十念､若不生者､不取正覚｡

◆四しは ¬観かん経ぎょう¼ にのたまはく､ 極ごく重じゅう悪人あくにん無他むた方便ほうべん､ 唯ゆい称しょう弥陀みだ得とく生しょう極楽ごくらくと｡

四^ハ¬観経¼云､極重悪人無他方便､唯称弥陀得生極楽｡

◆五ごは同おなじき ¬経きょう¼ にのたまはく､ もし心しんを至いたして西方さいほうに生しょうぜんと欲ほっすれば､ まさに一ひとつの丈じょう六ろくの像ぞうの池ち水すいの上うえにましますを観かんずべしと｡

五^ハ同¬経¼云0048､若欲↣至^シテ↠心^ヲ生↢西方^ニ↡者､当^ニ_シ↠観↣於一丈六^ノ像^ノ在^スヲ↢池水^ノ上^ニ↡｡

◆六ろくは同おなじき ¬経きょう¼ にのたまはく､ 光こう明みょう遍へん照じょう､ 十方じっぽう世せ界かい､ 念仏ねんぶつ衆しゅ生じょう､ 摂取せっしゅ不ふ捨しゃと｡

六^ハ同¬経¼云､光明遍照､十方世界､念仏衆生､摂取不捨｡

◆七しちは ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ にのたまはく､ 小しょう善根ぜんごんの福徳ふくとく因縁いんねんをもつて､ かの国くにに生しょうずることを得うべからず｡ ◆舎しゃ利り弗ほつ､ もし善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにんありて､ 阿あ弥陀みだ仏ぶつを説とくを聞ききて､ 名みょう号ごうを執しゅう持じすること､ もしは一日いちにち乃ない至し七日しちにち一心いっしんにして乱みだれざれば､ その人ひと命終みょうじゅうの時ときに臨のぞみて､ 阿あ弥陀みだ仏ぶつもろもろの聖しょう衆じゅとその前まえに現げんじてまします､ この人ひと終おわる時ときに､ 心しん顛倒てんどうせずすなはち往おう生じょうを得うと ^云_々｡

七^ハ¬阿弥陀経¼云､不↠可↧以↢小善根福徳因縁↡､得↞生↢彼国↡｡舎利弗､若有↢善男子･善女人↡､聞^テ↠説↢阿弥陀仏↡､執シフ↢持^スルコト名号↡､若一日乃至七日一心^ニシテ不↠乱､其^ノ人臨↢命終^ノ時^ニ↡､阿弥陀仏与↢諸聖衆↡現^ジテ↢在^ス其前^ニ↡､是人終時､心不↢顛倒↡即得↢往生↡ ^云_云｡

◆八はちは ¬般舟はんじゅ経きょう¼ にのたまはく､ 阿あ弥陀みだ仏ぶつのたまはく､ わが国くにに来らい生しょうせんと欲ほっせば､ つねにわが名なを念ねんぜよ｡ しばしばつねに専念せんねんして休く息そくあることなかれ｡ わが国くにに来らい生しょうすることを得うと｡

八^ハ¬般舟経¼云､阿弥陀仏言^タマハク､欲↣来↢生我国↡者､常念↢我名↡｡数数常^ニ専念^シテ莫↠有↢休息↡｡得↣来↢生我国↡｡

◆九くは ¬鼓く音おん声じょう経きょう¼ にのたまはく､ もし四し衆しゅありてよくまさしくかの仏ぶつの名みょう号ごうを受じゅ持じし､ この功く徳どくをもつて､ 終おわらんと欲ほっする時ときに臨のぞみて､ 阿あ弥陀みだすなはち大衆だいしゅとこの人ひとの所ところに往ゆき､ それをして見みることを得えしめ､ 見みおはりて生しょうずることを得うと｡

九^ハ¬鼓音声経¼云､若有↢四衆↡能正受↢持^シ彼^ノ仏^ノ名号↡､以↢此功徳↡､臨↢欲↠終時↡､阿弥陀即与↢大衆↡往↢此人^ノ所↡､令↢其得↟見､見已得↠生｡

◆十じゅうに ¬往おう生じょう論ろん¼ に､ 仏ぶつの依え正しょうの功く徳どくを観念かんねんするをもつて往おう生じょうの業ごうとす｣ と ^云_々｡

十¬往生論¼､以↣観↢念^スルヲ仏^ノ依正功徳↡為↢往生^ノ業^ト↡｡｣^云_云

今いまこの文もんを案あんずるに､ もろもろの聖教しょうぎょうのなかに念仏ねんぶつ往おう生じょうの業ごう､ その文もんはなはだ多おおし｡ 布施ふせ等とうの諸しょ行ぎょうをもつて往おう生じょうの業ごうとすることは､ その文もんすなはち少すくなし ^云_々｡ これすなはち↓少しょう分ぶん・多た分ぶんの意こころなり｡ 今いま念仏ねんぶつ往おう生じょうを勧すすむるは､ 多た分ぶんの意いによる ^云_々

今案↢此文↡､諸^ノ聖教^ノ中^ニ念仏往生^ノ業､其^ノ文甚多^シ｡以^テ↢布施等^ノ諸行^ヲ↡為^コトハ↢往生^ノ業↡､其^ノ文即少^{シ 云}_云｡此即少分･多分^ノ意也｡今勧↢念仏往生↡者､依↢多分^ノ意^ニ↡ ^云_云｡

次つぎにまた問とひて (要集巻下) いはく､ ｢▲余よ行ぎょうにいづくんぞ勧進かんじんの文もんなからんや｡｣ 問といの意こころは ^云_々｡ 次つぎに答こたへて (要集巻下) いはく､ ｢▲その余よの行ぎょう法ほうは､ ↓ちなみにかの法ほうの種々しゅじゅの功く能のうを明あかす｡ そのなかにおのづから往おう生じょうの事じを説とく｡ ただちに往おう生じょうの要ようを辨べんじたまふに､ 多おおく念仏ねんぶつといふがごとくにあらず｡ いかにいはんや仏ぶつみづから説ときて常じょう念ねん我が名みょうとのたまふをや｡ また↓仏ぶつの光こう明みょう余よ行ぎょうの人ひとを摂取せっしゅすと言いはず｡ ◆これ等らの文もん分ぶん明みょうなり｡ かさねて疑うたがいを生しょうずるべきか｡｣

次^ニ復問曰､｢余行寧無↢勧進^ノ文↡耶｡｣問意者 ^云_云｡次答曰､｢其余^ノ行法^ハ､因^ミニ明↢彼法種種功能↡｡其中^ニ自説↢往生^ノ事↡｡不↠如↧直^ニ辨^タマフニ↢往生之要↡､多^ク云↞念仏↥｡何況^ヤ仏自説^テ言↢常念我名↡乎｡亦不↠言^ハ↣仏^ノ光明摂↢取^スト余行^ノ人^ヲ↡｡此等^ノ文0049分明^ナリ｡可↢重生↠疑乎｡｣

今いまこの答こたえの文もんを案あんずるに､ 三さんの意こころあり｡ 一いちにはその余よの行ぎょう法ほう乃ない至し多おおくは念仏ねんぶつにありとは ^云_々｡ 二ににいかにいはんや仏ぶつみづからすでに常じょう念ねん我が名みょうとのたまはふをやとは ^云_々｡ 三さんに仏ぶつの光こう明みょう余よ行ぎょうの人ひとを摂取せっしゅすといはずとは ^云_々｡

今案↢此答^ノ文^ヲ↡､有↢三^ノ意｡一^ニハ其^ノ余行法乃至多^クハ有↢念仏^ニ↡者 ^云_云｡二^ニ何況^ヤ仏自既^ニ言↢常念我名↡乎者 ^云_云｡三^ニ不↠云↣仏^ノ光明摂↢取^スト余行^ノ人^ヲ者 ^云_云｡

第三だいさんに (要集巻下) ｢▲問とふ｡ 諸しょ経きょうの所説しょせつ機きに随したがひて万品まんぼんなり｡ なんぞ管見かんけんをもつて一文いちもんを執しゅうせんや｡｣ この問といの意こころは ^云_々｡ 次つぎに答こたへて (要集巻下意) いはく､ ｢▲馬め鳴みょう菩ぼ薩さつの ¬大だい乗じょう起き信論しんろん¼ にいはく､ 信心しんじん成じょう就じゅすべきこと難かたし､ 意こころ退たいするもの､ まさに知しるべし､ 如来にょらいに勝しょう方便ほうべんましまして信心しんじんを摂しょう護ごしたまふ｡ 随したがひて専心せんしん念仏ねんぶつの因縁いんねんをもつて､ 願がんに随したがひて他た方ほうの仏ぶつ土どに往おう生じょうす｡ ◆修しゅ多羅たらの説せつのごとし｡ もし人ひともつぱら阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじて､ 所しょ作さの善業ぜんごうを回え向こうして､ かの世せ界かいに生しょうぜんと願がん求ぐすれば､ すなはち往おう生じょうを得う｡ ^以_上 ◆あきらかに知しりぬ､ 契かい経きょうに多おおく念仏ねんぶつをもつて往おう生じょうの要ようとす｡ もししからずは､ 四依しえの菩ぼ薩さつ↓すなはち理り尽じんにあらず｣ と^云_々｡

第三^ニ｢問｡諸経^ノ所説随↠機万品^ナリ｡何^ゾ以↢管見↡執↢一文↡乎｡｣此問意者 ^云_云｡次^ニ答曰､｢馬鳴菩薩¬大乗起信論¼云､信心難↠可↢成就↡､意退者､当^ニ↠知､如来有↢勝方便↡摂↢護信心↡｡随^テ以↢専心念仏^ノ因縁^ヲ↡､随↠願往↢生他方仏土^ニ↡｡如↢修多羅^ノ説↡｡若人専念↢阿弥陀仏↡､所作善業廻向^シテ､願↣求^スレバ生↢彼世界^ニ↡､即得↢往生↡｡ ^已_上 明^ニ知契経^ニ多^ク以↢念仏↡為↢往生^ノ要↡｡若不↠爾者､四依^ノ菩薩即非↢理尽↡｡｣^云_云

↑すなはち理り尽じんにあらずとは､ 仏ぶつはあまねく機き縁えんに逗とうず､ 念仏ねんぶつ・諸しょ行ぎょうの往おう生じょうを説とくといへども､ いまだ委くわしく念仏ねんぶつ・諸しょ行ぎょうを分別ふんべつせず｡ 四依しえの論ろん師じ後のちに出しゅっ世せして､ 仏ぶつの正しょう意いを捜さがし往おう生じょうの業ごうを述のぶる日ひ､ 諸しょ行ぎょう往おう生じょうを出いださずして､ 念仏ねんぶつ往おう生じょうを出いだす｡ 今いま↓如来にょらい随ずい宜ぎの諸しょ行ぎょうを指さし置おきて､ 四依しえ理り尽じんの念仏ねんぶつの行ぎょうによると ^云_々｡

即非↢理尽↡者､仏^ハ者普逗↢機縁↡､雖↠説↢念仏･諸行^ノ往生^ヲ↡､未^ダ↣委^ク分↢別念仏･諸行↡｡四依^ノ論師後^ニ出世^シテ､捜↢仏^ノ正意↡述↢往生^ノ業^ヲ↡之日､不^シテ↠出↢諸行往生^ヲ↡､出^ス↢念仏往生^ヲ↡｡今指^シ↢置^テ如来随宜^ノ諸行^ヲ↡､依^ト↢四依理尽之念仏^ノ行^ニ↡ ^云_云｡

この三番さんばんの問答もんどうのなかに､ 問といは三さんといへども､ 答こたえの文もんを案あんずるにすべて六ろく義ぎあり｡ 一いちには↑難なん易いの義ぎ､ 二には↑多た分ぶん・少しょう分ぶんの義ぎ､ 三さんは↑因いん明みょう・直辨じきべんの義ぎ､ 四しは*本願ほんがん・非ひ本願ほんがんの義ぎ､ 五ごは↑光こう明みょう摂取せっしゅ・不ふ摂取せっしゅの義ぎ､ 六ろくは↑如来にょらい随ずい宜ぎ・四依しえ理り尽じんの義ぎなり｡ 一いちに難なん易いの義ぎとは ^云_々｡ 余よの五ごは次し第だいに釈しゃくすべし ^云_々｡

此^ノ三番^ノ問答^ノ中^ニ､問^ハ者雖↠三^ト､案^ルニ↢答文↡全有↢六義↡｡一^ニハ難易義､二^ハ多分･少分^ノ義､三^ハ因明･直辨^ノ義､四^ハ本願･非本願^ノ義､五^ハ光明摂取･不摂取^ノ義､六^ハ如来随宜･四依理尽^ノ義^ナリ｡一^ニ難易義^ト者 ^云_云｡余五次第^ニ可↠釈 ^云_云｡

念仏ねんぶつ・諸しょ行ぎょう相対そうたい決けっ択ちゃくの事じかくのごとし｡ もしこの意こころによらば､ 聴ちょう聞もん集しゅう来らいの人々ひとびと､ しばらく諸しょ行ぎょうを置おきて念仏ねんぶつを行ぎょうぜしめたまふべきか｡

念仏･諸行相対決択^ノ事如↠此｡若依↢此^ノ意0050^ニ↡､聴聞集来^ノ人人､且^ク置↢諸行↡可^キカ↠令^タマフ↠行↢念仏^ヲ↡｡

・経来意

三さんに↑経きょうの来らい意いとは､ 上かみの ¬観かん経ぎょう¼ のなかに､ 始はじめには広ひろく諸しょ行ぎょうを説ときてあまねく機き縁えんに逗とうじ､ 後のちは諸しょ行ぎょうを廃はいす､ ただ念仏ねんぶつの一門いちもんなり｡ しかるになほかの ¬経きょう¼ の諸しょ行ぎょうの文もんは広ひろく､ 念仏ねんぶつの文もんは狭せまし｡ 初心しょしんの学者がくしゃ迷まよひやすく､ 是非ぜひ決けっしがたし｡ ゆゑに今いまこの ¬経きょう¼ 諸しょ行ぎょう往おう生じょうを廃はいし､ また次つぎに但たん念仏ねんぶつ往おう生じょうを明あかす｡ 念仏ねんぶつ行ぎょうにおいて､ 決けつ定じょうの心しんを生しょうぜんがためなり ^云_々｡

三経来意^ト者､上^ノ¬観経^ノ¼中^ニ､始^ニハ広^ク説^テ↢諸行^ヲ↡遍^ク逗↢機縁↡､後^ハ廃^ス↢諸行^ヲ↡､只念仏一門^ナリ｡然^ニ猶 ヲ彼¬経¼諸行^ノ文^ハ広^ク､念仏^ノ文^ハ狭^シ｡初心^ノ学者易^ク↠迷､是非難^シ↠決｡故^ニ今此¬経¼廃↢諸行往生^ヲ↡､復次^ニ明↢但念仏往生^ヲ↡｡於↢念仏行^ニ↡､為^ナリ↠生↢決定^ノ心↡ ^云_云｡

・釈名

四しに↑釈名しゃくみょうとは､ わたくしにいはく､ ある本ほんには釈名しゃくみょうの上かみに科か文もんあり委い細さいの釈しゃくなし｡ またただ四意しいあり｡ いはく一いちに来らい意い､ 二には専雑せんぞう､ 専せんにまた二に｡ 一いちは正定しょうじょう､ 二には助じょ行ぎょう｡ 三さんは釈名しゃくみょう､ 四しは入にゅう文もん解げ釈しゃく 云々うんぬん ｢▲仏ぶつ｣ とは娑しゃ婆ばの化け主しゅ､ 三身さんしん万徳まんどくの釈しゃく尊そんなり｡ ｢▲説せつ｣ とは娑しゃ婆ばの化儀けぎ､ 四し辨べん八音はっとんの声教しょうきょうなり｡ ｢▲阿あ弥陀みだ｣ とは極楽ごくらくの化け主しゅ､ 十方じっぽう諸仏しょぶつの所讃しょさんなり｡ 今いまは世せ尊そん､ 弥陀みだ引いん摂じょうの大だいなることを讃さんじ､ 極楽ごくらく境きょう界がいの妙たえなることを説とく､ 苦く界かいの衆しゅ生じょうに教おしへ､ 安楽あんらくの勝しょう果かを感かんず｡ ゆゑに仏ぶつの名みょう号ごうをもつて経きょうの別号べつごうとす､ 所しょ有うの衆徳しゅとくを摂せっし能のう化けの一身いっしんに帰きして､ ただ阿あ弥陀みだといふなり｡ ｢▲経きょう｣ とは ^云_々｡

四釈名^ト者､ 私云､或本^ニハ釈名^ノ上^ニ有↢科文↡無↢委細^ノ釈↡｡又但有↢四意↡｡謂^ク一来意､二^ハ専雑､専^ニ亦二｡一正定､二^ハ助行｡三^ハ釈名､四^ハ入文解釈 云云 ｢仏｣^トハ者娑婆之化主､三身万徳之釈尊^ナリ｡｢説｣^トハ者娑婆之化儀､四辨八音之声教｡｢阿弥陀^ト｣者極楽之化主､十方諸仏之所讃也｡今^ハ者世尊讃↢弥陀引摂之大↡､説↢極楽境界之妙^コトヲ↡､教↢苦界^ノ衆生^ニ↡､感↢安楽^ノ勝果↡｡故以↢仏^ノ名号^ヲ↡為↢経^ノ別号↡､摂↢所有之衆徳↡帰^シテ↢能化^ノ一身^ニ↡､但云↢阿弥陀↡也｡｢経｣者 ^云_云｡

・入文解釈

五ごに↑入にゅう文もん解げ釈しゃくとは､ 初はじめ ｢▲如にょ是ぜ我が聞もん｣ より ｢大衆だいしゅ倶く▲｣ に至いたるは､ これ↓序分じょぶん｡ ｢▲爾時にじ仏告ぶつごう｣ より ｢是為ぜい甚難じんなん▲｣ に至いたるを↓正宗しょうしゅうとす｡ ｢▲仏説ぶっせつ此し経きょう｣ 以下いげは↓流る通ずうと名なづく｡

五入文解釈者､初従↢｢如是我聞｣↡至↢｢大衆倶｣↡､是序分｡自↢｢爾時仏告｣↡至↢｢是為甚難｣↡為↢正宗↡｡｢仏説此経｣已下^ハ名↢流通↡｡

・入文解釈　序分

三段さんだんかくのごとし､ しばらく↑序分じょぶんをば置おく｡

三段如↠此､且置↢序分^ヲバ↡｡

・入文解釈　正宗分

↑正宗しょうしゅうに多おおくの文段もんだんあり､ 大おおいに分わかちて二にとす｡ 一いちは↓極楽ごくらく依え正しょう､ 二には↓念仏ねんぶつ往おう生じょう｡

正宗有↢多^ノ文段↡､大^ニ分^テ為↠二｡一^ハ者極楽依正､二^ハ念仏往生｡

・入文解釈　正宗分　極楽依正

一いちに↑極楽ごくらくの依え正しょうにつきてまた二にあり｡ 一いちは依え報ほう､ 二には正しょう報ぼう｡ 依え報ほうにつきて▲七重しちじゅうの羅ら網もうあり､ ▲七重しちじゅうの行樹ごうじゅあり､ また▲七宝しっぽうの池いけあり､ ▲黄金おうごんの大だい地じあり｡ 正しょう報ぼうにつきてまた▲仏ぶつあり､ ▲菩ぼ薩さつあり､ ▲声しょう聞もんあり､ ▲阿鞞あび跋ばっ致ちの衆しゅ生じょうあり､ また▲一いっ生しょう補ふ処しょの菩ぼ薩さつあり｡ これらの依え正しょうの功く徳どく前さきにすでに顕あらわしおはりぬ､ 重かさねて申もうし上あぐべからず｡

一^ニ付^テ↢極0051楽^ノ依正^ニ↡亦有↠二｡一依報､二^ハ正報｡付^テ↢依報↡有↢七重羅網↡､有↢七重^ノ行樹↡､亦有↢七宝池↡､有↢黄金大地↡｡付↢正報↡亦有↠仏､有↢菩薩↡､有↢声聞↡､有↢阿鞞跋致^ノ衆生↡､亦有↢一生補処^ノ菩薩↡｡此等^ノ依正^ノ功徳前^ニ已顕^シ了^ヌ､重不↠可↢申上↡｡

しばらくそのなかにつきて､ ｢▲多有たう一いっ生しょう補ふ処しょ｣ の文もんを､ 恵え心しんの僧そう都ず (要集巻上) これをもつて ｢▲聖しょう衆じゅ倶会くえの楽らく｣ と名なづく ^云_々｡ 聖しょう衆じゅとは誰たれぞや､ すなはちこれ普ふ賢げん・文殊もんじゅ・弥み勒ろく等とうこれなり｡

且^ク付^テ↢其^ノ中^ニ↡､｢多有一生補処^ノ｣文^ヲ､恵心^ノ僧都以↠此名↢｢聖衆倶会楽｣^云_云｡聖衆^ト者誰^ゾヤ哉､即是普賢･文殊･弥勒等是也｡

しかればすなはち普ふ賢げんは華け厳ごん法界ほっかい円融えんゆうの法門ほうもんを掌しょうす｡ たとひ賢首けんじゅ・清涼しょうりょうに遇あひたてまつらずといへども､ もし六相ろくそう・十じゅう玄げんの法門ほうもんを学がくせんと欲ほっせば､ 極楽ごくらくに往おう生じょうすべし｡ いはんや祖師そし智厳ちぎ大だい師し､ すでに浄じょう土どに往おう生じょうせんか ^云_々｡

然^バ則^チ普賢^ハ者掌↢華厳法界円融^ノ法門^ヲ↡｡設^ヒ雖↠不↠奉↠遇↢賢首･清涼^ニ↡､若^シ欲↠学↢六相･十玄^ノ法門↡者､可↣往↢生極楽↡｡況^ヤ祖師智厳大師､既^ニ往↢生浄土↡乎 ^云_云｡

文殊もんじゅはすなはち三論さんろんの八はっ不ぷ中ちゅう道どう・二に諦たい､ 方等ほうどう般若はんにゃ波羅はら蜜みつの法門ほうもんを掌しょうす｡ たとひ興皇こうこう・嘉か祥じょうに値あひたてまつらずといへども､ 中ちゅう・百ひゃく門もんの観かんを学がくせんと欲ほっせば､ 極楽ごくらくに往おう生じょうすべし｡

文殊^ハ者即掌^ス↢三論^ノ八不中道･二諦､方等般若波羅蜜^ノ法門↡｡設雖↠不↠奉↠値↢興皇･嘉祥↡､欲↠学↢中･百門^ノ観↡者､可↣往↢生極楽↡｡

弥み勒ろくはすなはち法相ほっそうの祖師そしなり｡ たとひ玄げん奘じょう・慈じ恩おんに値あひたてまつらずといへども､ 五ご分ぶん十じっ支し､ 五位ごい百ひゃっ法ぽうの性しょう相ぞうの法門ほうもんを学がくせんと欲ほっせば､ また浄じょう土どに往おう生じょうすべし｡

弥勒^ハ即法相^ノ祖師也｡設^ヒ雖↠不↠奉↠値↢玄奘･慈恩^ニ↡､欲↠学↢五分十支､五位百法^ノ性相^ノ法門↡者､亦可↣往↢生浄土↡｡

また ¬楞りょう伽が経きょう¼ (魏訳巻九総品意･唐訳巻六偈頌品意) に説ときてのたまはく､ ｢南なん天竺てんじく国こくのなかに大徳だいとくの比丘びくあり､ 龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつと名なづく｡ よく有無うむの見けんを破はし､ 歓かん喜地ぎじを証しょう得とくし､ 極楽ごくらくに往おう生じょうす｣ と ^云_々｡ 今いまこの文もんによるに､ 龍りゅう樹じゅ菩ぼ薩さつ極楽ごくらく世せ界かいに在あり｡ これをもつてこれを案あんずるに､ 龍りゅう樹じゅはすなはち天台てんだい・三論さんろん・真言しんごんの祖師そしなり｡ もし円密えんみつ両宗りょうしゅうを学がくせんと欲ほっせば､ また極楽ごくらくに往おう生じょうすべし ^云_々｡

又¬楞伽経¼説^テ云､｢南天竺国^ノ中^ニ有↢大徳比丘↡､名↢龍樹菩薩↡｡能破↢有無^ノ見^ヲ↡､証↢得歓喜地↡､往↢生極楽↡｡｣^云_云 今依↢此文↡､龍樹菩薩在↢極楽世界↡｡以↠之案↠之､龍樹^ハ即天臺･三論･真言祖師也｡若欲↠学↢円密両宗↡者､亦可↣往↢生極楽↡ ^云_云｡

またただこれらの聖しょう衆じゅに会あふのみにあらず､ よくわれら無始むしよりこのかた父母ぶも・師し長ちょう・朋ぼう友う・知ち識しき・妻さい子し・眷属けんぞく前さきだちて去さるものあり､ なんぞまたあひ見みることあらざらんや｡ これをもつてこれを思おもふに､ 生々しょうしょう世々せせの父母ぶも・師し長ちょう・妻さい子し・眷属けんぞく・朋ぼう友う・知ち識しきとあひ見みんと欲ほっせば､ 極楽ごくらくに往おう生じょうすべきものなり ^云_々｡

又非↣啻タヾ会^ノミニ↢此等^ノ聖衆^ニ↡､能我等無始^ヨリ已0052来父母･師長･朋友･知識･妻子･眷属有↢前^ダテ去^ル者 ノ↡､盍_ザラン↣亦有↢相見↡哉｡以↠之思↠之､欲↣相↢見生生世世父母･師長･妻子･眷属･朋友･知識↡者､可↣往↢生極楽↡者也 ^云_云｡

・入文解釈　正宗分　念仏往生

二にに↑念仏ねんぶつ往おう生じょう､ これにまた二にあり｡ 一いちは↓念仏ねんぶつ往おう生じょう､ 二には↓引いん証しょう勧進かんじん｡

二^ニ念仏往生､是^ニ又有↠二｡一^ハ念仏往生､二^ハ引証勧進｡

・入文解釈　正宗分　念仏往生　念仏往生

↑念仏ねんぶつにつきてまた二にとなす｡ 一いちは↓修因しゅいん､ 二には*感かん果か｡

付↢念仏↡亦為↠二｡一^ハ修因､二^ハ感果｡

・入文解釈　正宗分　念仏往生　念仏往生　修因

一いちは↑修因しゅいんにつきてまた二にとす｡ 一いちは↓発願ほつがん､ 二には↓念仏ねんぶつ｡

一^ハ付↢修因^ニ↡亦為↠二｡一発願､二^ハ念仏｡

・入文解釈　正宗分　念仏往生　念仏往生　修因　発願

一いちに↑発願ほつがんとは､ 往おう生じょうの願がんを発おこすなり｡ 往おう生じょうの願がんを発おこすとは､ ¬経きょう¼ (小経) にのたまはく､ ｢▲衆しゅ生じょう聞きくものまさに発願ほつがんしてかの国くにに生しょうぜんと願がんずべし｡ ゆゑはいかん｡ かくのごときもろもろの上じょう善人ぜんにんとともに一処いっしょに会えすることを得うればなり｣ ^云_々｡ これすなはち往おう生じょうの願がんを発おこすなり｡

一^ニ発願^ト者､発^ナリ↢往生^ノ願^ヲ↡｡発↢往生願↡者､¬経¼云､｢衆生聞者応当↢発願願↟生↢彼国↡｡所以者何｡得↣与如是諸上善人倶会↢一処↡｡｣^云_云 是即発↢往生願↡也｡

・入文解釈　正宗分　念仏往生　念仏往生　修因　念仏

二にに↑念仏ねんぶつは､ また分わかちて二にとす｡ 一いちは↓小しょう善ぜんに簡えらぶ､ 二には↓まさしく念仏ねんぶつを修しゅす｡

二^ニ念仏者､復分^テ為↠二｡一^ハ簡↢小善↡､二^ハ正^ク修↢念仏↡｡

・入文解釈　正宗分　念仏往生　念仏往生　修因　念仏　簡小善

一いちは↑▲小しょう善ぜんに簡えらぶとは､ これすなはち往おう生じょうの因いんとするに足たらざるもろもろの小しょう善根ぜんごんなり｡ 大だい小しょうこれ相そう符ふの法ほうなり｡ 常性じょうしょうあることなし ^云_々｡ わたくしにいはく､ ある本ほんには大だい小しょうは▲上かみに引ひく ｢極楽ごくらく無為むい｣ (法事讃巻下) 等とうの文もん｡ ならびに ▲¬浄じょう土ど文もん¼ (龍舒浄土文) のなかに出いだす ｢専せん持じ｣ 等とう二に十じゅう一いち字じ｡ ¬選せん択じゃくに¼ 同おなじ 云々うんぬん しかるに大だい小しょうの義ぎは諸しょ師し異い説せつなり ^云_々｡ 今いま善導ぜんどうによる､ 雑善ぞうぜんをもつて名なづけて少しょう善ぜんとす ^云_々｡ 雑修ざっしゅの義ぎは前々ぜんぜんのごとし ^云_々｡

一^ハ簡↢小善↡､小善者､是則不^ル↠足↠為↢往生^ノ因^ト↡諸^ノ小善根也｡大小是相符^ノ法也｡無↠有↢常性↡ ^云_云｡私云､或本^ニハ大小者上引｢極楽無為｣等文｡^ニ出↢¬浄土文^ノ¼中^ニ↡｢専持｣等二十一字｡同↢¬選択^ニ¼↡云云 而^ニ大小^ノ義^ハ諸師異説 ^云_云｡今依↢善導↡､以↢雑善↡名為↢少善↡ ^云_云｡雑修^ノ義如↢前前^ノ↡ ^云_云｡

・入文解釈　正宗分　念仏往生　念仏往生　修因　念仏　正修念仏

二にに↑正しょう修しゅ念仏ねんぶつとは､ これ一心いっしんにかの仏ぶつ名みょうを称しょう念ねんす､ これを名なづけて念仏ねんぶつとす ^云_々｡ ¬経きょう¼ (小経) にのたまはく､ ｢▲↓もし善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにんありて､ 阿あ弥陀みだ仏ぶつを説とくを聞ききて､ ↓名みょう号ごうを執しゅう持じすること､ ▽↓もしは一日いちにち ^乃_至 七日しちにち､ ↓一心いっしんにして乱みだれず｣ と｡ ^云_々 これすなはち専修せんじゅ正行しょうぎょう､ 念仏ねんぶつ三昧ざんまいの文もんなり｡ この文もんのなかに四意しいあり｡

二^ニ正修念仏者､是一心^ニ称↢念彼^ノ仏名↡､名↠之為↢念仏↡ ^云_云｡¬経¼云､｢若有^テ↢善男子･善女人↡､聞^テ↠説↢阿弥陀仏^ヲ↡､執↢持^スルコト名号^ヲ↡､若一日 ^乃_至 七日､一心不↠乱｡｣^云_云 是則専修正行､念仏三昧^ノ文也｡此文^ノ中^ニ有↢四意↡｡

一いちに ｢↑もし善男ぜんなん子し・善ぜん女人にょにんありて｣ とは､ これすなはち念仏ねんぶつの行ぎょう者じゃを明あかす｡ この文もんにつきて善人ぜんにんを挙あぐるに､ 意こころまた悪人あくにんを用もちゆ｡ 善導ぜんどう (観念法門) この文もんを釈しゃくしていはく､ ｢▲もしは仏ぶつの在ざい世せ､ もしは仏ぶつの滅めつ後ご一切いっさい造罪ぞうざいの凡ぼん夫ぶ､ ただよく回え心しんして阿あ弥陀みだ仏ぶつを念ねんじ､ 浄じょう土どに生しょうぜんと願がんずれば､ すなはち浄じょう土どに往おう生じょうすることを得う｣ と｡

一^ニ｢若有↢善男子･善女人↡｣者､是則明↢念仏^ノ行者↡｡付↢此文↡挙^ルニ↢善人↡､意亦用↢悪人↡｡善導釈↢此文↡云､｢若0053^ハ仏^ノ在世､若仏^ノ滅後一切造罪^ノ凡夫､但能廻心^シテ念↢阿弥陀仏↡､願↠生↢浄土↡､即得↣往↢生浄土↡｡｣

次つぎに ｢↑執しゅう持じ名みょう号ごう｣ とは､ これ正しょう修しゅ念仏ねんぶつなり ^云_々｡

次^ニ｢執持名号｣者､此正修念仏也 ^云_云｡

次つぎに ｢↑若にゃく一日いちにち乃ない至し七日しちにち｣ とは､ これすなはち↓念仏ねんぶつ三昧ざんまいを修しゅする時じ節せつの延促えんそくなり｡ 文もんはただ一日いちにち・七日しちにちを挙あぐといへども､ 意こころは一いっ生しょう乃ない至し十じっ声しょう・三さん声しょう・一いっ声しょう等とうの時じ節せつを兼かぬ｡ ゆゑに善導ぜんどう (観念法門) この文もんを釈しゃくしていはく､ ｢▲上じょう尽じん百ひゃく年ねん､ 下至げし七日しちにち・一日いちにち､ 十じっ声しょう・三さん声しょう・一いっ声しょう等とう､ 命いのち終おわらんと欲ほっする時とき､ 仏ぶつ聖しょう衆じゅとみづから来きたりて迎こう接しょうして､ 往おう生じょうを得う｣ と｡ ^云_云 これをもつてこれを案あんずるに､ 今いまこの ¬経きょう¼ の意こころ､ ただ善人ぜんにんの一日いちにち・七日しちにちの往おう生じょうを明あかすのみにあらず､ 兼かねてまた十じゅう悪あくの軽きょう罪ざい・破は戒かいの次じ罪ざい・五ご逆ぎゃくの重じゅう罪人ざいにんの往おう生じょうを明あかす ^云_々｡

次｢若一日乃至七日｣者､是則修↢念仏三昧↡時節^ノ延促ソク_ツヾマル也｡文^ハ但雖↠挙↢一日･七日↡､意兼↢一生乃至十声･三声･一声等時節^ヲ↡｡故善導釈↢此文↡云､｢上尽百年､下至七日･一日､十声･三声･一声等､命欲↠終時､仏与↢聖衆↡自来^テ迎接^シテ､得↢往生↡｡｣^云_云 以↠之案↠之､今此¬経^ノ¼意､但非↠明^ノミニ↢善人^ノ一日･七日往生↡､兼又明↢十悪軽罪･破戒^ノ次罪･五逆^ノ重罪人^ノ往生↡ ^云_云｡

次つぎに ｢↑一心いっしん不ふ乱らん｣ とは､ 念仏ねんぶつの時ときの心こころ散乱さんらんせず､ 至し誠じょうの信心しんじんもつぱら仏ぶつ名みょうを念ねんずるなり ^云_々｡ これすなはち往おう生じょうの修因しゅいんなり ^云_々｡

次｢一心不乱｣者､念仏^ノ時^ノ心不↢散乱↡､至誠信心専念↢仏名↡也 ^云_云｡是則往生^ノ修因也 ^云_云｡

次つぎに ｢▲其ご人にん臨りん命終みょうじゅう時じ､ 阿あ弥陀みだ仏ぶつ与よ諸しょ聖しょう衆じゅ現在げんざい其ご前ぜん｣ 等とうとは､ 文もんに二ふたつの意こころあり｡ 一いちは↓聖しょう衆じゅ来迎らいこう､ 二には↓行ぎょう者じゃの往おう生じょうなり｡

次^ニ｢其人臨命終時､阿弥陀仏与諸聖衆現在其前｣等^ト者､文^ニ有↢二^ノ意↡｡一^ハ聖衆来迎､二^ハ行者^ノ往生也｡

一いちに↑聖しょう衆じゅ来迎らいこうとは､ 念仏ねんぶつの行ぎょうやうやく成じょう就じゅし､ 往おう生じょうの期ごすでに至いたる時とき､ 弥陀みだ如来にょらいもろもろの聖しょう衆じゅとともに来きたりて､ 恭うやうやしく行ぎょう者じゃを迎むかへたまふなり｡ この来迎らいこうにつきて､ ¬観かん経ぎょう¼ (意) の文もんに九く品ぼんの迎こう摂しょうの相そうを説ときてのたまはく､ ｢上じょう品ぼん上生じょうしょうは▲無む数しゅの化け仏ぶつ仏ぶつとともに来きたる｡ 上じょう品ぼん中生ちゅうしょうは ^云_々｡ 乃ない至し下げ品ぼん下げ生しょうには▲ただ金こん蓮れん華げ来きたる｣ と｡ ^云_云 今いまこの ¬経きょう¼ の来迎らいこうは､ 九く品ぼんのなかにはこれなにか｡

一^ニ聖衆来迎^ト者､念仏^ノ行漸^ク成就^シ､往生^ノ期既^ニ至時､弥陀如来与↢諸聖衆↡倶来^テ､恭迎^タマフ↢行者↡也｡付↢此^ノ来迎^ニ↡､¬観経^ノ¼文^ニ説^テ↢九品迎摂^ノ相^ヲ↡云､｢上品上生者無数^ノ化仏与↠仏共^ニ来^ル｡上品中生 ^云_云｡乃至下品下生^ニハ但金蓮華来｡｣^云_云 今此¬経^ノ¼来迎者､九品^ノ中^ニハ是何哉｡