せんじゃくしゅう 選択集◎ ¬選択本願念仏集¼ のこと｡ １巻｡ 法然の著｡ 七祖聖教の一｡ 建久９年 (1198)､ 九条兼実の求めによって撰述されたもので､ 選択本願に立脚して称名一行の専修を主張し､ 浄土宗の独立を宣言した､ 浄土宗の立教開宗の書である｡ 冒頭に ｢選択本願念仏集｣ と題号をあげ､ 次いで ｢南無阿弥陀仏往生之業念仏為本(先)｣ と念仏往生の宗義を標示し､ 以下16章に分けて､ 称名念仏こそが､ 選択の行業である旨を述べている｡
各章ともに､ 理路整然とした論旨によって標章の文､ 引文､ 私釈の順で構成されている｡ 標章の文は､ その章で明らかにしようとする主題を簡潔に示し､ 引文では､ 標章の文を証明する経典や解釈の文を引き､ さらに私釈では､ ｢わたくしにいはく｣ として､ 法然自身の解義が明示されている｡ なかでも第一の ｢二門章｣､ 第二の ｢二行章｣､ 第三の ｢本願章｣ において､ 本書の要義が説かれている｡ すなわち､ ｢二門章｣ では､ 道綽によって一代仏教を聖道門と浄土門に分け､ 聖道門を廃し､ 浄土一宗の独立を宣言し､ そのよりどころを三経一論 (浄土三部経と ¬浄土論¼) と定め､ それが､ 曇鸞・道綽・善導などの師資相承によることを示す｡ ｢二行章｣ では､ 善導の ｢観経疏｣ (就行立信釈) などを受けて､ 五正行のなか､ 称名念仏こそ､ 仏願にかなった往生の正定業である旨を明かし､ かくて雑行はすてるべきである旨を示し､ ｢本願章｣ では､ 第十八願において､ 法蔵菩薩は一切の余行を選捨して､ 念仏一行を選取されたといい､ その理由は称名念仏こそが､ 最も勝れ､ また最も修め易い勝易の二徳をそなえた行法だからであると説くのである｡ この３章の意をまとめたものが本書の結論ともいうべき ｢三選の文｣ (結勧の文) であり､ それが初めの題号および標宗の文とも呼応しているのである｡
本書の書写はごく限られた門弟にのみ許された｡ 親鸞は元久２年 (1205) に書写を許され､ そのよろこびを ｢化身土巻△｣ に述べている｡ →聖浄二門､ 正雑二行｡