(561)二十、 十二問答

じゅう問答もんどう だいじゅう

二十、 十二問答 一

といていはくはっしゅうしゅうのほかにじょうしゅうをたつること自由じゆじょうかなと、 しゅうひともうしそうろうをば、 いかんがもうそうろうべき。

こたうしゅうをたつることぶつせつにあらず、 みづからこころざすところの経教きょうきょうにつきて、 おしふるをさとりきわめて、 しゅうをばはんずることなりしょしゅうならいみなもてかくのごとし。 いまじょうしゅうをたつることは、 じょうしょうきょうにつきて、 おうじょう極楽ごくらくをさとりきわめておはします先達せんだつの、 しゅうをばたてたまへるなりしゅうのおこりをしらざるものゝ、 ようことをばもうしそうろうなり

二十、 十二問答 二

といていはくほっ真言しんごんとうをばぞうぎょうにはいるべからずと人人ひとびともうしそうろうをば、 いかゞこたへそうろうべき。

こたうしん先徳せんどく一代いちだい聖教しょうぎょう要文ようもんをあつめておうじょうようしゅうをつくりたまへるなかじゅうもんをたつ。 そのだいおうじょう諸業しょごうもんに、 ほっ真言しんごんとうしょだいじょうきょうをいれたまへり。 しょ0562ぎょうぞうぎょうと、 ことばことにしてこころおなじ。 いまの難者なんじゃは、 しん先徳せんどくにまさるべからざるものなり

二十、 十二問答 三

といていはくぶつきょうにつきて善根ぜんごんしゅせんひとに、 結縁けちえんじょじょうそうらはんことぞうぎょうもうしそうろうべきか。

こたう。 わがこころ弥陀みだほとけの本願ほんがんじょうじ、 けつじょうおうじょうしんをとるうゑには、 善根ぜんごん結縁けちえんじょじょうせんことは、 またくぞうぎょうになるべからず、 わがおうじょう助業じょごうとなるべきなり善根ぜんごんずい讃嘆さんだんせよとしゃくたまへるをもて、 こころべきことなり

二十、 十二問答 四

といていはく極楽ごくらくぼん差別しゃべつそうろうことは、 弥陀みだほとけのかまへさせたまへることにてそうろうやらん。

こたう極楽ごくらくぼん弥陀みだ本願ほんがんにあらず、 じゅう八願はちがんなかにもなし。 これはしゃくそんぎょうごんなり善人ぜんにん悪人あくにん一所いっしょにむまるといはゞ、 悪業あくごうのものども慢心まんしんをおこすべきがゆへに、 ぼん差別しゃべつをあらせて、 善人ぜんにんじょうぼんにすゝみ、 悪人あくにんぼんにくだると、 ときたまへるなり。 いそぎまいりてみるべし。

二十、 十二問答 五

といていはくかいぎょうじゃ念仏ねんぶつ数遍しゅへんのすくなくそうらはんと、 かいぎょうにん念仏ねんぶつ数遍しゅへんのおほくそうらはんと、 おうじょうのゝちのくらい浅深せんじんいづれかすゝみそうろうべきや。

こたうてましますたたみをおさへてのたまはく、 このたたみのあるにとりてこそ、 やぶれたるかやぶれざるかといふことはあれ。 つやつやなからんたゝみをば、 なにとかろんずべき。

末法まっぽう0563ちゅうにはかいもなく、 かいもなし、 たゞみょう比丘びくばかり」 ありと、 でんぎょうだいの ¬末法まっぽうとうみょう¼ にかきたまへるうゑには、 なにとかいかい沙汰さたをばすべきぞ。 かゝるひらぼんのためにおこしたまへる本願ほんがんなればとて、 いそぎいそぎみょうごうしょうすべし。

二十、 十二問答 六

といていはく念仏ねんぶつぎょうじゃとう日別にちべつしょにおいて、 こゑをたてゝもうひとそうろうまたこころねんじてかずをとるひとそうろう、 いづれかよくそうろうべき。

こたう。 それはくちにてとなふるもみょうごうこころにてねんずるもみょうごうなれば、 いづれもおうじょうごうとはなるべし。 たゞしぶつ本願ほんがん称名しょうみょうがんなるがゆへに、 こえをたてゝとなふべきなり

このゆへに ¬きょう¼ (観経) には 「令声りょうしょうぜつそくじゅうねん」 とゝき、 しゃくには 「しょうみょうごう下至げしじっしょう (礼讃) とのたまへり。 みみにきこゆるほどは、 こうしょう念仏ねんぶつにとるなり。 さればとて、 げんをしらず、 こうしょうなるべきにはあらず、 たいこえいださんとおもふべきなり

二十、 十二問答 七

といていはく日別にちべつ念仏ねんぶつ数遍しゅへん相続そうぞくにいるほどはいかんがはからひそうろうべき。

こたう善導ぜんどうおんしゃくによるに、 一万いちまんじょう相続そうぞくにてそうろうべし。 たゞし一万いちまんべんをもいそぎもうして、 さてそのをくらさんことはあるべからず。 一万いちまんべんなりとも、 一日いちにちいちしょとすべきなりそうじては一食いちじきのあひだにたびばかりおもひいださんは、 よき相続そうぞくにてあるべし0564。 それはしゅじょうこんじょうどうなれば、 いちじゅんなるべからず。 こころざしだにふかければ、 ねん相続そうぞくはせらるゝなり

二十、 十二問答 八

といていはく、 ¬礼讃らいさん¼ の深心じんしんなかには 「じっしょういっしょう必得ひっとくおうじょうない一念いちねん无有むうしん」 としゃくたまへり、 また ¬しょ¼ (散善義) 深心じんしんなかには 「念念ねんねんしゃしゃみょう正定しょうじょうごう」 としゃくたまへり。 いづれかわがぶんにはおもひさだめそうろうべき。

こたう。 「じっしょういっしょう」 のしゃく念仏ねんぶつしんずるよう、 「念念ねんねんしゃしゃ」 のしゃく念仏ねんぶつぎょうずるようなり。 かるがゆへに、 しんをば一念いちねんにむまるとゝりて、 ぎょうをばいちぎょうにはげむべしとすゝめたまへるなりまたたいは、 「いっ発心ぽっしん已後いご誓畢せいひつしょう无有むう退転たいてんゆいじょう為期いご 散善義 しゃくほんとすべきなり

二十、 十二問答 九

といていはく本願ほんがん一念いちねんは、 じんじょうにもりんじゅうにもともにつうそうろうべきか。

こたう一念いちねんがんは、 いのちつゞまりてねんにおよばざるのためなりじんじょうつうずべくは、 「じょうじんいちぎょう」 のしゃくあるべからず。 このしゃくをもてこころうるに、 かならずしも一念いちねん本願ほんがんといふべからず。

念念ねんねんしゃしゃみょう正定しょうじょうごうじゅん仏願ぶつがん (散善義) しゃくたまへり。 このしゃくは、 数遍しゅへんつもらんも本願ほんがんとはきこへたるは、 たゞ本願ほんがんにあふそくどうなれば、 「じょうじんいちぎょう下至げし一念いちねん (散善義意) とおこしたまへる本願ほんがんなりこころべきなり。 かるがゆへに念仏ねんぶつおうじょうがんとこそ、 善導ぜんどうしゃくたまへ。

0565二十、 十二問答 十

といていはくりきりきことは、 いかんがこころそうろうべき。

こたう源空げんくう殿でんじょうへまいるべきりょうにてはなけれども、 かみよりめせば二度にどまでまいりたりき。 これはわがまいるべきしなにてはなけれども、 かみおんちからなり。 まして弥陀みだほとけのおんちからにて、 称名しょうみょうがんにこたへて来迎らいこうせさせたまはんことは、 なんのしんかあるべき。

わがつみおもくて无智むちなれば、 ぶつもいかにしてかすくひたまはんなんどおもはんものは、 つやつやぶつがんをもしらざるものなり。 かゝる罪人ざいにんどもを、 やすやすとたすけすくはんりょうに、 おこしたまへる本願ほんがんみょうごうをとなへながら、 ちりばかりもうたがふこころかあるまじきなり十方じっぽうしゅじょうのことばのなかに、 有智うち无智むちざいざい善人ぜんにん悪人あくにんかいかいなん女人にょにん三宝さんぼう滅尽めつじんのゝちのひゃくさいまでのしゅじょう、 みなこもるなり

かの三宝さんぼう滅尽めつじんとき念仏ねんぶつしゃと、 とう御房おんぼうたちとくらぶれば、 とう御房おんぼうたちぶつのごとし。 かのときひとのいのちはたゞ十歳じっさいなりかいじょう三学さんがく、 たゞをだにもきかず、 そうじていふばかりなきものどもの来迎らいこうにあづかるべきどうをしりながら、 わがのすてられまいらすべきようをば、 いかにしてかあんいだすべき。

たゞ極楽ごくらくのねがはしくもなく、 念仏ねんぶつもうされざらんことのみこそ、 おうじょうのさわりにてはあるべけれ。 かるがゆへにりき本願ほんがんともいひ、 ちょうがんともいふなり

0566二十、 十二問答 十一

といていはくじょうとう三心さんしんそうろうべきようをば、 いかんがおもひさだめそうろうべき。

こたう三心さんしんすることは、 たゞべつようなし。 弥陀みだほとけの本願ほんがんに、 わがみょうごうしょうねんせば、 かならず来迎らいこうせんとおほせられたれば、 けつじょうしていんじょうせられまいらせんずるぞとふかくしんじて、 こころねんじ口にしょうするにものうからず、 すでにおうじょうしたるこころちしてさい一念いちねんにいたるまでたゆまざるものは、 ねん三心さんしんそくするなり

またざいものどもはこれほどまでおもはざれども、 たゞ念仏ねんぶつもうもの極楽ごくらくにむまるなればとて、 つねに念仏ねんぶつをだにももうせば、 そらに三心さんしんそくするなり。 さればこそ、 いふにかひなきものどものなかにも、 じんみょうなるおうじょうをばすることにてあれ。

二十、 十二問答 十二

といていはくりんじゅう一念いちねんひゃくねんごうにすぐれたりともうすは、 平生へいぜい念仏ねんぶつなかに、 りんじゅう一念いちねんほどの念仏ねんぶつをばもうしいたしそうろうまじくそうろうやらん。

こたう三心さんしんそく念仏ねんぶつは、 をなじことなり。 そのゆへは、 ¬かんぎょう¼ にいはく、 「三心さんしんしゃひっしょうこく」 といへり。 「ひつのもんのあるゆへに、 りんじゅう一念いちねんとおなじことなり

この問答もんどうといをば、 ¬しんぎょうしゅう¼ にはぜんしょうぼうといといへり。 あるもんにはりゅうかんりっといといへり。 たづぬべし。