しゅうじしょう 執持鈔◎ 1巻。 覚如の著。 嘉暦元年 (1326)、 顕智の求めによって著された。 阿弥陀仏の名号を信受し、 かたく執持 (とりたもつ) する他力信心の要義を5カ条にわたって説いたもの。 初めの4カ条は親鸞の法語により、 続く1カ条は覚如みずからの意を述べて、 信心を正しくたもつことを勧めている。
まず第1条は、 平生業成の宗義について論じられている。 臨終来迎は臨終業成を説く諸行往生の行者においていうところであり、 第十九願のこころである。 これに対して、 第十八願の他力信心の行者は、 摂取不捨の利益にあずかって、 この世で正定聚に住するから、 臨終の来迎を期待しない旨が示されている。 第2条は、 往生浄土のためには信心が根本であって、 ただひとすじに阿弥陀仏にまかせまいらせるべきであるといい、 師教に随順すべきことを法然と親鸞の関係の上より論じている。 第3条は、 阿弥陀仏の浄土への往生は、 凡夫のはからいによるのではなく、 阿弥陀仏の大願業力のすぐれた因縁による旨を善導の釈文により説明している。 第4条は、 光明 (縁) 名号 (因) の因縁を信ずるという他力摂生の旨趣が述べられている。 第5条は、 信一念往生・平生業成という真宗教義の要義についての覚如の自督が説示されている。
古写本に本願寺蔵蓮如書写本、 新潟県浄興寺蔵永享2年書写本がある。