ぐとくしょう 愚禿鈔 2巻。 親鸞の著。 上下2巻あることから ¬二巻鈔¼ ともいう。 上巻は、 仏教全体のなかでの浄土真実の教えの意義を、 親鸞独自の教相判釈によって示し、 下巻は、 とくに善導の ¬観経疏¼ の 「三心釈」 について、 その内容が整理されている。
 本書の成立は、 古写本の奥書によって、 一応親鸞晩年の撰述と考えられるが、 その内容から、 法然門下にあった時期の覚え書きを後に整理したものとする説もあり、 確定しがたい。 親鸞自身の解釈や説明は少なく、 ほとんど項目だけが列挙されているようにみえるが、 構想そのものには、 親鸞の独自の発揮がある。
 上巻の教判は 「二双四重」 と呼ばれ、 仏教を大乗小乗頓教漸教難行易行、 聖道・浄土、 権教実教等と分類した従来の説をうけながら、 竪超・横超、 竪出・横出という二双四重の対立概念で区分し、 本願他力の教えこそ、 「横超の一乗真実の教」 である旨を示す。 また上巻の前半では教法が、 後半ではその教法を受けるが分類されている。
 下巻では、 善導の 「三心釈」 を引用して、 三心真仮と、 行業の真仮分別等が詳細に示されている。 また 「二河の譬喩」 をめぐって、 詳細な解釈が施されている。
 古写本に京都常楽寺蔵存覚書写本、 高田派専修せんじゅ蔵顕智書写本などがある。