0025七箇条制誡

 

あまねく門人もんにんごうする念仏ねんぶつしょうにんとうぐ。

普告号豫門人念仏上人等。

一 いまだいっもんをもうかがはず真言しんごんかんしたてまつり、 ぶつさつほうずることをちょうすべきこと

一 可停止未窺一句文奉破真言・止観、謗余仏・菩薩事。

みぎどうりゅうするにいたりては、 がくしょうるところなり、 にんきょうがいにあらず。 しかのみならずほうしょうぼうはすでに弥陀みだがんのぞけり。 そのほうまさにらくすべし。 あにあんいたりにあらずや。

右至立破道者、生之所経也、非愚人之境界。加之誹謗正法既除弥陀願。其報当堕那落。豈非痴暗之至哉。

一 無智むちをもつて有智うちひとたいし、 べつぎょうやからひてこのみてじょうろんいたすことをちょうすべきこと

一 可停止以無智身、対有智人、遇別行輩好致諍論事。

ひぎろんは、 これしゃなり、 さらににんぶんにあらず。 またじょうろんところにはもろもろの煩悩ぼんのうおこる。 しゃはこれをおんすることひゃくじゅんなり。 いはんや一向いっこう念仏ねんぶつぎょうにんにおいてをや。

右論義者、是智者之有也、更非愚人之分。又諍論之処諸煩悩起。智者遠離之百由旬也。況於一向念仏行人乎。

一 べつべつぎょうひとたいして、 愚痴ぐちへんじゅうこころをもつてまさに本業ほんごうくべしとしょうして、 あながちにこれを嫌喧けんけんすることをちょうすべきこと

一 可停止対別解・別行人、以愚痴偏執心称当毀置本業、強嫌喧之事。

みぎ修道しゅどうならひ、 ただおのおのぎょうつとめてあへてぎょうしゃせず。 ¬西方さいほう要決ようけつ¼ (意) にいはく、 「べつべつぎょうのものにはそうじてきょうしんおこすべし。 もしきょうまんしょうぜば、 つみることきわまりなし」 と。 なんぞこのせいそむかんや。 しかのみならず善導ぜんどうしょうこれをだいしたまふ。 いまだ祖師そしいましめらず、 あんのいよいよはなはだしきなり。

右修道之習、只各勤自行敢不遮余行。¬西方要決¼云、「別解・別行者総起敬心。若生軽慢、得罪無窮。」 何背此制哉。加之善導和尚大0026呵之。未知祖師之誡、愚闇之弥甚也。

一 念仏ねんぶつもんにおいて、 かいぎょうなしとごうしてもつぱら婬酒いんじゅ食肉じきにくすすめ、 たまたまりつまもるものをばぞうぎょうひとづけて、 弥陀みだ本願ほんがんたのむものは、 造罪ぞうざいおそるることなかれとくことをちょうすべきこと

一 可停止於念仏門、号無戒行専勧婬酒食肉、適守律儀者名雑行人、馮弥陀本願者、説勿恐造悪事。

みぎかいはこれ仏法ぶっぽうだいなり、 しゅぎょうまちまちなりといへどもおなじくこれをもつぱらにす。 これをもつて善導ぜんどうしょうは、 げて女人にょにんず。 この行状ぎょうじょうおもむき本律ほんりつせいじょうごうたぐひにもぎたり。 これにじゅんぜずは、 そうじては如来にょらいゆいきょうしっし、 べっしては祖師そしきゅうせきそむけり。 かたがたるところなきものか。

右戒是仏法大地也、衆行雖区同専之。是以善導和尚、挙目不見女人。此行状之趣、過本律制浄業之類。不順之者、総失如来之遺教、別背祖師之旧跡。旁無拠者歟。

一 いまだ是非ぜひべんぜざるにん聖教しょうぎょうはなせつにあらずして、 ほしいままにわたくしのじゅつしみだりにじょうろんくわだてて、 しゃわらはれにん迷乱めいらんすることをちょうすべきこと

一 可停止未辨是非痴人、離聖教非師説、恣述私義妄企諍論、被笑智者迷乱愚人事。

みぎ無智むち大天だいてん、 このちょう再誕さいたんしてみだりがはしくじゃじゅっす。 すでにじゅう六種ろくしゅどうどうず、 もつともこれをかなしむべし。

右無智大天、此朝再誕猥述邪義。既同九十六種異道、尤可悲之。

一 どんをもつてことにしょうどうこのみ、 しょうぼうらずして種々しゅじゅ邪法じゃほうきて、 無智むち道俗どうぞくきょうすることをちょうすべきこと

一 可停止以痴鈍身殊好唱導、不知正法説種々邪法、教化無智道俗事。

みぎさとりなくしてとなることは、 これ ¬梵網ぼんもう¼ の制戒せいかいなり。 こくあんたぐいおのがさいあらわさんとおもひ、 じょうきょうをもつて芸能げいのうとなし、 みょうむさぼ檀越だんおつのぞむ。 ほしいままに自由じゆ妄説もうせつじょうじて、 けんひと誑惑おうわくす。 誑報おうほうとがことにおもし。 これむしろ国賊こくぞくにあらずや。

右無解作師、是¬梵網¼之制戒也。黒闇之類欲顕己才、以浄土教為芸能、貪名利望檀越。恣成自由之妄説、誑惑世間人。誑報之過殊重。是寧非国賊乎。

一 みづからぶっきょうにあらざる邪法じゃほうきてしょうぼうとなし、 いつわりてはんせつなりとごうすることをちょうすべきこと

0027 可停止自説非仏教邪法為正法、偽号師範説事。

みぎおのおの一人いちにんせつといへども、 もるところ一身いっしん衆悪しゅあくたり。 弥陀みだきょうもんけがし、 しょうあくみょうぐ、 ぜんのはなはだしきことこれにぎたるはなきものなり。

右各雖一人説、所積為豫一身衆悪。汚弥陀教文、揚師匠之悪名、不善之甚無過之者也。

ぜんしちじょう甄録けんろくかくのごとし。 一分いちぶんきょうもんがくせん弟子でしは、 すこぶる旨趣しいしゅれ。 年来ねんらいあいだ念仏ねんぶつしゅするといへども、 聖教しょうぎょうずいじゅんしてあへて人心にんしんたがはず、 きこへをおどろかすことなかれ。 これによりていま三十さんじっねん無為ぶいなり。 日月にちがつわたりて近来きんらいいたりてこのじっねんより以後いご無智むちぜんやから時々じじ到来とうらいす。 ただ弥陀みだじょうごうしっするのみにあらず、 またしゃ遺法ゆいほう汚穢わえす。 なんぞきょうかいくわへざらんや。

以前七箇条甄録如斯。一分学教文弟子等者、頗知旨趣。年来之間雖修念仏、随順聖教敢不逆人心、無驚世聴。因茲于今三十箇年無為。渉日月而至近来此十箇年以後、無智不善輩時々到来。非啻失弥陀浄業、又汚穢釈迦遺法。何不加烱誡乎。

このしちじょううちとうのあひださいことおおし。 つぶさに注述ちゅうじゅつしがたし。 そうじてかくのごときらのほうは、 つつしみておかすべからず。 このうへなほ制法せいほうそむやからは、 これ門人もんにんにあらず、 眷属けんぞくなり。 さらに草庵そうあんきたるべからず。

此七箇条之内、不当之間巨細事等多。具難注述。総如此等之無方、慎不可犯。此上猶背制法輩者、是非豫門人、魔眷属也。更不可来草庵。

こん以後いご、 おのおのおよぶにしたがひて、 かならずこれをれらるるべし。 にんあひともなふことなかれ。 もししからずんば、 これおなこころひとなり。 かのとがすごときのものは、 同法どうほういかしょううらむことあたはず、 ごうとくことわり、 ただおのがこころにあるのみ。

自今以後、各随聞及、必可被触之。余人勿相伴。若不然者、是同意人也。彼過如作者、不能瞋同法恨師匠、自業自得之理、只在己心而已。

このゆゑに今日こんにちほうぎょうにんもよおして、 一室いっしつあつめてごうみょうす、 わづかに風聞ふうぶんありといへどもたしかにたれのひととがともらざれば、 沙汰さたによりてしゅうたんす。 年序ねんじょおくる、 もくすべきにあらず。 まづちからおよぶにしたがひて、 禁遏きんあつはかりごとをめぐらすところなり。 よりてそのおもむきろくして門葉もんようとうしめじょうくだんのごとし。

是故今日催四方行人、集一室告命、僅雖有風聞慥不知誰人失、拠于沙汰愁歎。送年序、非可黙止。先随力及、所廻禁遏之計也。仍録其趣示門葉等之状、如件。

0028げんきゅう元年がんねんじゅう一月いちがつ七日しちにち 沙門しゃもん源空げんくう

(花押)

信空 感聖 尊西 証空 源智 行西 聖蓮
見仏 導亘 導西 十人 寂西 宗慶 西縁
親蓮 幸西 住蓮 西意 仏心 源蓮 源雲 廿
欣蓮 生阿弥陀仏 欣西 西縁 安照 如進

導空 昌西 導也 遵西  義蓮 安蓮 導源
証阿弥陀仏 念西 行西 行首 尊浄 帰西
行空 四十 導感 西観 覚成 禅忍 学西
玄曜 澄西 大阿 西住 実光 五十 覚妙

西入 円智 導衆 尊仏 蓮恵 源海 蓮恵
安西 教芳 六十 念西 安西 詣西 神円
辯西 空仁 示蓮 念生 尊忍 参西 七十
仰善 忍西 好阿弥陀仏 鏡西 昌西 惟西
0029好西 禅寂 戒心 了西

同八日追加人々

僧尊蓮 八十 僧仙雲 僧顕願 僧仏真 僧西尊
僧良信 僧綽空 僧善蓮 蓮生 度阿弥陀仏
阿日 九十静西 成願 自阿弥陀仏 覚信
念空 正蓮 向西 親西 実蓮 観然 百人

蓮智 実念 長西 信西 寂明 行西 恵忍
円空 観阿弥陀仏 蓮慶 百十人 浄阿弥陀仏
観尊 具慶 蓮慶 蓮仏 進西 正念 持乗
覚辯 蓮定 百二十人 導匠 深心 往西 観尊

一円 実蓮 白毫 正観 有西 上信 百人
定阿弥陀仏 念仏 観阿弥陀仏 蓮仁 蓮酉
徳阿弥陀仏 自阿弥陀仏 持阿弥陀仏 西仏
空阿弥陀仏 百四十人

0030九日

覚勝 西仏 慶俊 信西 進西 源也 雲西
実念 心光 西源 百五十人 応念 惟阿 源西
行願 信恵 忍西 寂因 安西 仏心 心蓮
百六十人 観源 聖西 蓮寂 智円 参西 永尊

空寂 願蓮 証西 西念 百七十人 戒蓮 専念
法阿弥陀仏 西阿 西法 西念 西忍 幸酉
成蓮 実念 百八十人 西教(花押) 僧慶宴
沙門感善 有実 浄心 立西 唯阿弥陀仏
行西 向西

 

→Ⓐ[一]普
→Ⓐ
→Ⓑ人[之]
 Ⓐになし
→Ⓑ文[章]
→Ⓑ[是]学
→Ⓑ
→Ⓑ界[矣]
→Ⓐ
→Ⓑ陀[本]
→Ⓑ分[矣]
→Ⓐ仏[之]
別解 Ⓑになし
→Ⓐ
 Ⓐになし
自行 Ⓐになし
加…也」21字 Ⓐになし
 Ⓐになし
→Ⓑ
→Ⓑ
→Ⓐ
→Ⓐ
→Ⓑ師[者]
→Ⓑ
→Ⓐ
→Ⓐ
 Ⓑになし
→Ⓐ→Ⓑ
→Ⓐ迦[之]
→Ⓑ
之内→Ⓑ
→Ⓑ
→Ⓑ等[雖]
→ⒶⒷ
→Ⓑ法[之]
是非→Ⓑ非是
→Ⓑ
→Ⓐ
→Ⓑ西
→Ⓑ
→Ⓐ
延書は¬西方指南抄¼所収本・¬漢語灯録¼所収本の訓点を参考に有国が行った。
底本は◎京都府二尊院蔵元久元年書写本。 Ⓐ高田派専修寺蔵親鸞聖人本(¬西方指南抄¼所収本)、 Ⓑ大谷大学蔵江戸時代末期恵空本(¬漢語灯録¼所収本)と対校されている。