(600)二十四、 諸人伝説の詞 一

諸人しょにん伝説でんせつことば だいじゅう 御歌おんうた

二十四、 諸人伝説の詞 一

りゅうかんりっのいはく、 法然ほうねんしょうにんのゝたまはく、 源空げんくう念仏ねんぶつのほかに、 毎日まいにちに ¬弥陀みだきょう¼ を三巻さんかんよみそうらいき。 一巻いっかんとう一巻いっかん一巻いっかんくんなり。 しかるを、 この ¬きょう¼ にせんずるところ、 たゞ念仏ねんぶつもうせとこそとかれてそうらへば、 いまは一巻いっかんもよみそうらはず、 一向いっこう念仏ねんぶつもうしそうろうなりと。

りゅうかん 毎日まいにちに ¬弥陀みだきょう¼ じゅうはちかんよまれきすなはちこころえて、 やがて ¬弥陀みだきょう¼ をさしをきて念仏ねんぶつ三万さんまんべんもうしきと。 ¬しんぎょうしゅう¼ よりいでたり云云

0601二十四、 諸人伝説の詞 二

乗願しょうにんのいはく、 あるひとといていはく、 色相しきそうかんは ¬かんぎょう¼ のせつなり。 たとひ称名しょうみょうぎょうにんなりといふとも、 これをかんずべくそうろうか、 いかん。

しょうにんこたえてのたまはく、 源空げんくうもはじめはさるいたづらことをしたりき。 いまはしからず、 但信たんしん称名しょうみょうなりと。 ¬じゅ手印しゅいん決答けっとう¼ よりいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 三

またひとをかざらずしておうじょうごう相続そうぞくすれば、 ねん三心さんしんそくするなり。 たとへば、 あしのしげきいけにじゅう五夜ごやつきのやどりたるは、 よそにてはつきやどりたりともへねども、 よくよくたちよりてれば、 あしまをわけてやどるなり妄念もうねんのあしはしげゝれども、 三心さんしんつきはやどるなり。 これはしょうにんのつねにたとへにおほせられしことなりと。 かの ¬じゅうはち問答もんどう¼ よりいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 四

あるときまたたまはく、 あはれこのたびしおほせばやなと。

そのときじょうがんもうさく、 しょうにんだにもかやうにじょうげなるおほせのそうらはんには、 ましてそのひとはいかゞそうろうべきと。

そのときしょうにん、 うちわらひてのたまはく、 蓮台れんだいにのらんまでは、 いかでかこのおもひはたえそうろうべきと。 ¬閑亨かんてい問答もんどうしゅう¼ よりいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 五

信空しょうにんのいはく、 あるときしょうにんたまはく、 じょうにんおほしといへども、 みなだいしんをすゝめて、 観察かんざつしょうとす。 たゞ善導ぜんどういっのみだいしんなくして、 観察かんざつをもてしょう0602みょう助業じょごうはんず。 当世とうせいひと善導ぜんどうこころによらずは、 たやすくおうじょうをうべからず。 曇鸞どんらんどうしゃくかんとう、 みなそうじょうにんなりといへども、 においては、 いまだかならずしもいちじゅんならず、 よくよくこれを分別ふんべつすべし。 このむねをわきまへずは、 おうじょうなんにおいてぞんしがたきものなりと。

二十四、 諸人伝説の詞 六

あるときといていはく、 智慧ちえのもしおうじょうようとなるべくは、 しょうじきにおほせをかぶりて修学しゅがくをいとなむべし。 またたゞ称名しょうみょうそくあるべからずは、 そのむねをぞんずべくそうろう。 たゞいまのおほせを如来にょらい金言きんげんぞんずべくそうろう

こたえていはく、 おうじょうごうは、 これ称名しょうみょうといふことしゃくもんぶんみょうなり有智うち无智むちをきらはずといふことまた顕然けんねんなり。 しかれば、 おうじょうのためには称名しょうみょうたりぬとす。

学問がくもんをこのまんとおもはんよりは、 たゞ一向いっこう念仏ねんぶつしておうじょうをとぐべし。 弥陀みだ観音かんのんせいにあひたてまつらんとき、 いづれの法文ほうもんたっせざらん。 かのくにのしょうごんちゅうちょう甚深じんじん法門ほうもんをとくなり

念仏ねんぶつおうじょうのむねをしらざらんほどは、 これをがくすべし。 もしこれをしりなば、 いくばくならざる智慧ちえをもとめて、 称名しょうみょうのいとまをさまたぐべからず。

二十四、 諸人伝説の詞 七

あるときといていはく、 人おほくさいをすゝむ。 このじょういかん。

こたえてのたまはく、 あまほうじきほうは、 もともしかるべしといへども、 当世とうせいすでにおとろへたり、 じき0603すでにげんじたり。 この分斉ぶんざいをもて一食いちじきせば、 こころひとへにじきをおもひて念仏ねんぶつしづかならじ。 ¬だいしんぎょう¼ にいはく、 「じきだいをさまたげず、 こころよくだいをさまたぐ」 といへり。 そのうゑは、 しんをあひはからふべきなりと。

二十四、 諸人伝説の詞 八

あるときといていはく、 おうじょうごうにおいてはおもひさだめおはりぬ。 たゞしいちのありさまをば、 いかやうにかぞんそうろうべき。

こたえてのたまはく、 そうほうは、 だいしょう戒律かいりつあり。 しかりといへども、 末法まっぽうそうこれにしたがはず。 源空げんくうこれをいましむれども、 たれのひとかこれにしたがふ。 たゞせんずるところは、 念仏ねんぶつ相続そうぞくするやうにあひはからふべし。 おうじょうのためには、 念仏ねんぶつすでにしょうごうなり。 かるがゆへにこのむねをまぼりて、 あひはげむべきなり。

二十四、 諸人伝説の詞 九

あるひとといていはく、 つねに廃悪はいあく修善しゅぜんのむねをぞんじて念仏ねんぶつすると、 つねに本願ほんがんのむねをおもひて念仏ねんぶつすると、 いづれかすぐれてそうろう

こたえてのたまはく、 廃悪はいあく修善しゅぜんはこれ諸仏しょぶつ通誡つうかいなりといへども、 当世とうせいのわれら、 ことごとくはいせり。 もしべっがんじょうぜずは、 しょうをはなれがたきものか。

二十四、 諸人伝説の詞 一〇

あるひとといていはく、 称名しょうみょうときこころをほとけの相好そうごうにかけんこと、 いかやうにかそうろうべき。

こたえてのたまはく、 しからず。 たゞ 「にゃくじょうぶつ十方じっぽうしゅじょうしょうみょうごう下至げしじっしょうにゃく0604しょうじゃしゅしょうがくぶつこん現在げんざいじょうぶつとう本誓ほんぜいじゅうがん不虚ふこしゅじょうしょうねん必得ひっとくおうじょう (礼讃) とおもふばかりなり。 われらが分斉ぶんざいをもてぶつ相好そうごうかんずとも、 さらに如来にょらいかんにはあらじ。 たゞふかく本願ほんがんをたのみて、 くちみょうごうをとなふる、 このいちだいのみりょうならざるぎょうなり

二十四、 諸人伝説の詞 一一

あるひとといていはく、 善導ぜんどう本願ほんがんもんしゃくたまうに、 「しんしんぎょうよくしょうこく (大経巻上) 安心あんじんりゃくたまこと、 なにごころかあるや。

こたえてのたまはく、 「しゅじょうしょうねん必得ひっとくおうじょう (礼讃) としりぬれば、 ねん三心さんしんそくするゆへに、 このことはりをあらはさんがためにりゃくたまへるなり

二十四、 諸人伝説の詞 一二

あるひとといていはく、 毎日まいにちしょに、 六万ろくまんじゅうまん数遍しゅへんをあてゝほうなると、 まん三万さんまん数遍しゅへんをあてゝ如法にょほうなると、 いづれをかしょうとすべき。

こたえてのたまはく、 ぼんのならひ、 まん三万さんまんをあつといふとも、 如法にょほうあるべからず。 たゞ数遍しゅへんのおほからんにしかず、 せんずるところ、 こころをして相続そうぞくせしめんがためなり。 かならずしもかずを沙汰さたするをようとするにはあらず、 たゞじょうねんのためなり数遍しゅへんをさだめざるはだい因縁いんねんなるがゆへに、 数遍しゅへんをすゝむるなり

二十四、 諸人伝説の詞 一三

あるひとといていはく、 しょうにん御房おんぼうもうさせたまう念仏ねんぶつは、 念念ねんねんごとにほとけのこころにあ0605ひかなひそうろうらんとおぼへそうろうしゃにてましませば、 くはしくみょうごうどくをもしろしめし、 あきらかに本願ほんがんのやうをもこころえあるがゆへにと。

こたえてのたまはく、 なんぢ本願ほんがんしんずること、 まだしかりけり。 弥陀みだ如来にょらい本願ほんがんみょうごうは、 こり・くさかり・なつみ・みづくみのたぐひごときのものゝないともにかけて一文いちもんつうなるが、 となふればかならずむまるなんとしんじて、 真実しんじつごんぎょうして、 つねに念仏ねんぶつもうすさいじょうとす。

もし智慧ちえをもてしょうをはなるべくは、 源空げんくうなんぞしょうどうもんをすてゝこのじょうもんにおもむくべき。 まさにしるべし、 しょうどうもんしゅぎょう智慧ちえをきわめてしょうをはなれ、 じょうもんしゅぎょう愚痴ぐちかえりて極楽ごくらくにむまると。 じょう信空しんくうしょうにん伝説でんせつなり、 ¬しんぎょうしゅう¼ よりいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 一四

信空しんくうしょうにんまたいはく、 せん法然ほうねんしょうにん、 あさゆふおしへられしことなり念仏ねんぶつもうすにはまたくようもなし、 たゞもうせば極楽ごくらくへむまるとしりて、 こころをいたしてもうせばまいることなり。 ものをしらぬうゑに道心どうしんもなく、 いたづらにそへなきもののゝいふことなり。 さいはんくちにて、 弥陀みだぶつ一念いちねんじゅうねんにてももうせかしとそうらひしことなり

またおうじょうのゝち、 三井みいでらじゅうしんぼうもうがくしょう、 ひじりにゆめのうちにとわれても、 弥陀みだぶつはまたくぜいもなくたゞもうことなりこたへられたりと。

大谷おおたにがっどうせらるとて、 おほく0606ひとなかにて説法せっぽうにせられそうらいきと。 ¬白川しらかわしょうそく¼ よりいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 一五

べんしょうにんのいはく、 しょうにんたまはく、 われはこれ帽子ぼしもきざるおとこなりじゅうあく法然ほうねんぼう念仏ねんぶつしておうじょうせんといひてゐたるなりまた愚痴ぐち法然ほうねんぼう念仏ねんぶつしておうじょうせんといふなり安房あわすけといふ一文いちもんつうおんみょうもう念仏ねんぶつと、 源空げんくう念仏ねんぶつと、 またくかわりめなしと。 ¬ものがたりしゅう¼ にいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 一六

あるときといていはく、 しょうにん念仏ねんぶつは、 しゃにてましませば、 われらがもう念仏ねんぶつにはまさりてぞおはしましそうろうらんとおもはれそうろうは、 ひがごとにてそうろうやらん。

そのときしょうにんしきあしくなりておほせられていはく、 さばかりもうこともちたまはぬことよ。 もしわれもう念仏ねんぶつようぜいありてもうしそうらはゞ、 毎日まいにち六万ろくまんべんのつとめむなしくなりてさん悪道まくどうにおちそうらはん。 またくさることそうらはずと、 まさしく誓言せいごんそうらいしかば、 それよりべんは、 いよいよ念仏ねんぶつ信心しんじんおもひさだめたりき。 どう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 一七

またひとごとに、 しょうにんのつねにのたまひしは、 いちじょうのほりをこへんとおもはんひとは、 いちじょうしゃくをこへんとはげむべし。 おうじょうせんひとは、 けつじょうしんをとりてあひはげむべきなり。 ゆるくしてはかなふべからずと。 どう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 一八

またしょうにんのゝたまはく、 念仏ねんぶつおうじょうもうことは、 もろこし・わがちょうの、 もろもろのしゃ0607ちの沙汰さたもうさるゝ観念かんねん念仏ねんぶつにもあらず。 また学問がくもんをして念仏ねんぶつこころをさとりとほしてもう念仏ねんぶつにもあらず。 たゞ極楽ごくらくおうじょうせんがために南無なも弥陀みだぶつもうして、 うたがひなくおうじょうするぞとおもひとりてもうすほかにべつことなし。

たゞし三心さんしんしゅぞなんどもうことそうろうは、 みな南無なも弥陀みだぶつけつじょうしておうじょうするぞとおもふうちにおさまれり。 たゞ南無なも弥陀みだぶつもうせば、 けつじょうしておうじょうすることなりとしんじとるべきなり

念仏ねんぶつしんぜんひとは、 たとひ一代いちだいのりをよくよくがくしきはめたるひとなりとも、 もんひとつもしらぬ愚痴ぐち鈍根どんこんかくになして、 あまにゅうどう无智むちのともがらにわがをおなじくなして、 しゃふるまひせずして、 たゞ一向いっこう南無なも弥陀みだぶつもうしてぞかなはんずると。 どう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 一九

またしょうにんのゝたまはく、 源空げんくうには、 三心さんしん南無なも弥陀みだぶつねん南無なも弥陀みだぶつしゅ南無なも弥陀みだぶつなりと。 ¬授手じゅしゅいん¼ にいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 二〇

またしょうにんかたりてのたまはく、 ひとはみな因縁いんねんありて道心どうしんをばおこすなり。 いはゆる父母ぶもきょうだいにわかれ、 さいぼうはなるゝとうなり。 しかるに源空げんくうは、 させる因縁いんねんもなくして、 ほう法然ほうねん道心どうしんをおこすがゆへに、 しょうをさづけて、 法然ほうねんとなづけたまひしなり

さればしゅつこころざしいたりてふかゝりしあひだ、 もろもろのきょうぼうしん0608じて、 もろもろのぎょうごうしゅす。 およそぶっきょうおほしといへども、 せんずるところ、 かいじょう三学さんがくをばすぎず。 いはゆる小乗しょうじょうかいじょうだいじょうかいじょうけんぎょうかいじょうみっきょうかいじょうなり。

しかるにわがこのは、 かいぎょうにおいて一戒いっかいをもたもたず、 ぜんじょうにおいてひとつもこれをえず、 智慧ちえにおいて断惑だんわくしょうしょうをえず。 これによてかいぎょうにんしゃくしていはく、 「尸羅しら清浄しょうじょうならざれば、 三昧さんまい現前げんぜんせず」 といへり。

またぼんこころは、 ものにしたがひてうつりやすし。 たとふるに、 さるのごとし。 まこと散乱さんらんしてうごきやすく、 一心いっしんしづまりがたし。

无漏むろしょう、 なにゝよりてかおこらんや。 もし无漏むろけんなくは、 いかでか悪業あくごう煩悩ぼんのうのきづなをたゝむや。

かなしきかなかなしきかな、 いかゞせんいかゞせん。 こゝにわがごときは、 すでにかいじょう三学さんがくのうつわものにあらず。

この三学さんがくのほかに、 わがこころ相応そうおうする法門ほうもんありや、 わがにたへたるしゅぎょうやあると、 よろづのしゃにもとめ、 もろもろの学者がくしゃにとぶらふしに、 おしふるひともなく、 しめすともがらもなし。

しかるあひだ、 なげきなげききょうぞうにいり、 かなしみかなしみ聖教しょうぎょうにむかひて、 てづからみづからひらきてしに、 善導ぜんどうしょうの ¬かんぎょうしょ¼ (散善義) にいはく、 「一心いっしん専念せんねん弥陀みだみょうごう行住ぎょうじゅう坐臥ざがもんせつごん0609念念ねんねんしゃしゃみょう正定しょうじょうごうじゅん仏願ぶつがん」 といふもんえてのち、 われらがごとくの无智むちは、 ひとへにこのもんをあふぎ、 もはらこのことはりをたのみて、 念念ねんねんしゃ称名しょうみょうしゅして、 けつじょうおうじょう業因ごういんにそなふべし。

たゞ善導ぜんどうゆいきょうしんずるのみにあらず、 またあつく弥陀みだがんじゅんぜり。 「じゅん仏願ぶつがん」 のもんふかくたましゐにそみ、 こころにとゞめたるなり

そのゝち、 しん先徳せんどくの ¬おうじょうようしゅう¼ (巻中) もんをひらくに、 「おうじょうごう念仏ねんぶつほん」 といひ、 またしんの ¬みょうぎょうごう¼ のもんるに、 「おうじょうごう念仏ねんぶつせん」 といへり。

かくちょうそうしんそうにとひてのたまはく、 なんぢがしょぎょう念仏ねんぶつは、 これぎょうずとやせん、 これぎょうずとやせんと。

しんそうこたへてのたまはく、 こころまんきょうにさへぎる。 こゝをもて、 われたゞ称名しょうみょうぎょうずるなりおうじょうごうには称名しょうみょうもともたれり。 これによて、 いっしょうちゅう念仏ねんぶつそのかずをかんがへたるに、 じゅうていへんなりとのたまへり。

しかればすなはち源空げんくうは、 大唐だいとう善導ぜんどうしょうのおしへにしたがひ、 ほんちょうしん先徳せんどくのすゝめにまかせて、 称名しょうみょう念仏ねんぶつのつとめ、 じょうじつ六万ろくまんべんなり死期しごやうやくちかづくによて、 また一万いちまんべんをくわえて、 じょうじつ七万しちまんべんぎょうじゃなりと。 ¬てつせんじゃく¼ にいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 二一

ぜんしょうぼうのいはく、 しょうにんおほせられていはく、 今度このたびしょう念仏ねんぶつして来迎らいこうにあづからん0610うれしさよとおもひて、 やくかんこころのおこりたらんひとは、 ねん三心さんしんそくしたりとしるべし。 念仏ねんぶつもうしながら後世ごせをなげくほどひとは、 三心さんしん不具ふぐひとなり。 もしかんするこころいまだおこらずは、 漸漸ぜんぜんによろこびならふべし。 また念仏ねんぶつ相続そうぞくせられんひとは、 われ三心さんしんしたりとしるべし。 ¬念仏ねんぶつ問答もんどうしゅう¼ にいでたり

二十四、 諸人伝説の詞 二二

またいはく、 おうじょうとくはわがこころにうらなへ。 そのうらないようは、 念仏ねんぶつだにもひまなくもうされば、 おうじょうけつじょうとしれ。 もしそうにならば、 じゅんおうじょうはかなふまじとしれ。 このうらないをしてわがこころをはげまし、 三心さんしんするとせざるとをもしるべし。 どう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 二三

またいはく、 たとひ念仏ねんぶつせんものじゅうにんあらんがなかにんおうじょうあしくておうじょうせずとも、 われ一人ひとりけつじょうして念仏ねんぶつおうじょうせんとおもふべし。 どう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 二四

またいはく、 しん罪悪ざいあくをうたがひておうじょうじょうおもはんは、 おほきなるあやまりなり。 さればとて、 ふ­て½かゝりてわろからんとにはあらず。 本願ほんがんひろく、 思議しぎなるどうこころえんがためなり。 されば、 念仏ねんぶつおうじょうをふかくもかたくももうさんひとは、 つやつや本願ほんがんをしらざるひとこころうべし。

源空げんくうも、 けんきょう別当べっとうどもがくらいにてぞおうじょうはせんずる、 もとの法然ほうねんぼうにてはおうじょうはえせじ。 されば、 としご0611ろならひあつめたる智慧ちえは、 おうじょうのためにはようにもたつべからず。 されども、 ならひたりしかひには、 かくのごとくしりたれば、 はかりなきことなりどう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 二五

またいはく、 本願ほんがん念仏ねんぶつには、 ひとりだちをせさせてすけをさゝぬなりすけさすほどひとは、 極楽ごくらくへんにむまる。 すけともうすは、 智慧ちえをもすけにさし、 かいをもすけにさし、 道心どうしんをもすけにさし、 慈悲じひをもすけにさすなり。 それに善人ぜんにん善人ぜんにんながら念仏ねんぶつし、 悪人あくにん悪人あくにんながら念仏ねんぶつして、 たゞむまれつきのまゝにて念仏ねんぶつするひとを、 念仏ねんぶつにすけさゝぬとはもうなり

さりながらも、 あくをあらためて善人ぜんにんとなりて念仏ねんぶつせんひとは、 ほとけのこころにかなふべし。 かなはぬものゆへにと、 あらんかゝらんとおもひてけつじょうしんおこらぬひとは、 おうじょうじょうひとなるべし。 どう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 二六

またいはく、 ほうどうといふことあり。 ほのをはそらにのぼり、 みづはくだりさまにながる。 菓子かしなかにすきものあり、 あまきものあり。 これらはみなほうどうなり弥陀みだほとけの本願ほんがんは、 みょうごうをもて罪悪ざいあくしゅじょうをみちびかんとちかひ給たれば、 たゞ一向いっこう念仏ねんぶつだにももうせば、 ぶつ来迎らいこうほうどうにてそなはるべきなりどう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 二七

またいはく、 げんをすぐべきようは、 念仏ねんぶつもうされんようにすぐべし。 念仏ねんぶつのさまたげになりぬべくは、 なになりともよろづをいとひすてゝ、 これをとゞむべし。

いは0612く、 ひじりてもうされずは、 めをまうけてもうすべし。 をまうけてもうされずは、 ひじりにてもうすべし。 じゅうしょにてもうされずは、 ぎょうしてもうすべし。 ぎょうしてもうされずは、 いえにゐてもうすべし。 りきじきにてもうされずは、 他人にたすけられてもうすべし。 他人にたすけられてもうされずは、 りきじきにてもうすべし。 一人いちにんしてもうされずは、 同朋どうぼうとともにもうすべし。 ぎょうしてもうされずは、 一人いちにんろうしてもうすべし。

じきじゅうみつは、 念仏ねんぶつ助業じょごうなり。 これすなはち、 しん安穏あんのんにして念仏ねんぶつおうじょうをとげんがためには、 何事なにごともみな念仏ねんぶつ助業じょごうなりさんかえるべきことをするをだにもすてがたければ、 かへりみはぐゝむぞかし。 ましておうじょうほどだいをはげみて念仏ねんぶつもうさんをば、 いかにもいかにもはぐゝみたすくべし。

もし念仏ねんぶつ助業じょごうとおもはずしてとんするは、 さん悪道まくどうごうとなる。 極楽ごくらくおうじょう念仏ねんぶつもうさんがためにしんとんするは、 おうじょう助業じょごうとなるべきなりばんかくのごとしと。 どう ¬しゅう¼

二十四、 諸人伝説の詞 二八

しゃ道遍どうへんかたりていはく、 しょうにんおほせられていはく、 おうじょうのためには念仏ねんぶつ第一だいいちなり、 学問がくもんすべからず。 たゞし念仏ねんぶつおうじょうしんぜんほどは、 これをがくすべしと。 ¬しゅうようしゅう¼ にいでたり

付御歌

 御歌

 弥陀みだぶつと いふよりほかは つのくにの なにはのことも あしかりぬべし

 0613ちとせふる こまつのもとを すみかにて あみだほとけの むかへをぞまつ

 いけのみづ ひとこころに にたりけり にごりすむこと さだめなければ

 むまれては まづおもひてん ふるさとに ちぎりしともの ふかきまこと

 あみだぶつと もうすばかりを つとめにて じょうしょうごん るぞうれしき

 しばのとに あけくれかゝる しらくもを いつむらさきの いろとなさん

 つゆのは こゝかしこにて きへぬとも こゝろはおなじ はなのうてなぞ

 弥陀みだぶつと こゑとなへて まどろまん ながきめぶりに なりもこそすれ

 つきかげの いたらぬさとは なけれども ながむるひとの こゝろにぞすむ