0369仏説ぶっせつだいじょうりょう寿じゅしょうごんきょう かん

西天さいてんやくきょう三蔵さんぞうちょうさんたいこうろくきょう明教うきょうだいしん法賢ほっけんしょうやく

 

二 Ⅳ 十方往覲

【20】またつぎなん東方とうぼうごう沙数しゃしゅ仏刹ぶっせつ一々いちいちせつのなかに、 りょうしゅさつ摩訶まかさつおよびりょうしゅしょうもんしゅありて、 もろもろのこう幢幡どうばん宝蓋ほうがいをもつて、 ゆうして極楽ごくらくかいりょう寿仏じゅぶつようせり。

復次阿難、東方恒河沙数仏刹一一、有リテ↢無量無数菩薩摩訶薩及無量無数声聞之衆↡、以↢諸香花・幢幡・宝蓋↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界無量寿仏↡。

南方なんぽうごう沙数しゃしゅ仏刹ぶっせつ一々いちいちせつのなかにも、 またりょうしゅさつ摩訶まかさつおよびりょうしゅしょうもんしゅありて、 もろもろのこう幢幡どうばん宝蓋ほうがいをもつて、 ゆうして極楽ごくらくかいりょう寿仏じゅぶつようせり。

南方恒河沙数仏刹一一ニモ、亦有リテ↢無量無数菩薩摩訶薩及無量無数声聞之衆↡、以↢諸香花・幢幡・宝蓋↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界無量寿仏↡。

西方さいほうごう沙数しゃしゅかい一々いちいち仏刹ぶっせつにも、 またりょうしゅさつ摩訶まかさつおよびりょうしゅしょうもんしゅありて、 もろもろのこう幢幡どうばん宝蓋ほうがいをもつて、 ゆうして極楽ごくらくかいりょう寿仏じゅぶつようせり。

西方恒河沙数世界一一仏刹ニモ、亦有リテ↢無量無数菩薩摩訶薩及無量無数声聞之衆↡、以↢諸香花・幢幡・宝蓋↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界無量寿仏↡。

北方ほっぽうごう沙数しゃしゅ仏刹ぶっせつ一々いちいち仏刹ぶっせつにも、 またりょうしゅさつ摩訶まかさつおよびりょうしゅしょうもんしゅありて、 もろもろのこう幢幡どうばん宝蓋ほうがいをもつて、 ゆうして極楽ごくらくかいりょう寿仏じゅぶつようせり。

北方恒河沙数仏刹一一仏刹ニモ、亦有リテ↢無量無数菩薩摩訶薩及無量無数声聞之衆↡、以↢諸香花・幢幡・宝蓋↡、持用シテ供↢養セリ極楽世界無量寿仏↡。

ゆいじょうもまたかくのごとし。 おのおの仏足ぶっそくらいし、 ぶつどくしょうごんしょうさんすと。

四維・上下亦復如↠是クノ。各↢仏足↡、称↢讃スト仏土功徳荘厳↡。

・往覲偈

【21】そのときそんすなはちじゅきてのたまはく、

時世尊即キテ↠頌

 東方とうぼうかいごうしゃの 一々いちいちくにのなかのしゅりょう

0370東方世界恒河沙一一無数量

 さつしょうもんしょうしんおこし おのおのこう宝蓋ほうがいとうをもつて

菩薩・声聞発↢勝心↢香花・宝蓋等

 してしょうごん仏刹ぶっせつのなかにいたりて 如来にょらいりょう寿じゅようしたてまつる

シテリテ↢荘厳仏刹供↢養シタテマツル如来無量寿

 そなへをはりて礼足らいそくして さいじょう希有けうだい福田ふくでんしょうさん

リテ礼足シテ而称↢讃最上希有大福田

 かくのごとく西さいなんおよび北方ほっぽう・ ゆいじょう恒沙ごうじゃかい

↠是クノ西・南及北方・四維・上下恒沙界

 しょうもんさつかずもまたしかなり みなこうをもつてよう

声聞・菩薩亦然ナリ皆以↢香花↡伸↢供養

 礼足らいそくせんにょうしてきょうあいいだく また如来にょらい宿しゅくがんふかくして

礼足旋繞シテ↢敬愛復讃↧如来宿願深クシテ

 どく積集しゃくじゅうしてあまねく りょうへん極楽ごくらくこくしょうごんしたまふをさん

積↢シテ功徳↡普荘↦厳シタマフヲ無量無辺極楽国

 諸仏しょぶつ国界こっかい厳飾ごんじきなりといへども 如来にょらい宝刹ほうせつちゅうにはくらべがたし

諸仏国界雖↢厳飾ナリト↠比↢如来宝刹中ニハ

 またてんをもつてぶつようするに はなくうさんじて傘蓋さんがいとなる

 復以↢天花↡供↢養スルニ花散ジテ↢虚空↡為↢傘蓋

 じゅうこうりょうひとしくひゃくじゅんなり 色相しきそうしょうごんならびあることなし

 縦広量等シク百由旬ナリ色相荘厳無↠有ルコト↠比

 あまねく如来にょらい宝刹ほうせつちゅうおおひて たがひにあひきょうしてかんしょう

 徧ヒテ↢如来宝刹中相慶慰シテ↢歓喜

 かつて過去かこひゃく千劫せんごうにおいて りょうのもろもろの善根ぜんごん積集しゃくじゅう

 曽↢過去百千劫積↢集無量善根

 かのりんさんて いまだつ清浄しょうじょうくにいたれり

 捨↢彼輪廻三有今至レリ↢解脱清浄

 そのときかのぶつりょう寿じゅ ほうさつこころどうして

0371時彼仏無量寿化↢導シテ他方菩薩

 ひそかに神通じんずうもちいて大光だいこうす そのひかりかの面門めんもんよりづること

ヰテ↢神通↡化↢大光光従↢彼面門↡出ヅルコト

 さんじゅう六億ろくおく那由なゆにして あまねくてい千仏せんぶつくにらす

三十六億那由他ニシテ↢倶胝千仏

 かくのごときの人天にんでんをあまねくらしをはりて すなはち如来にょらいちょうけいちゅう

キノ↠是クノ人天リテ↢如来頂髻中

 時会じえ一切いっさいのもろもろのしゅじょう 仏光ぶっこう未曽みぞなるをきょうたん

時会一切衆生敬↢歎仏光未曽有ナルヲ

 おのおのともだいしんおこす ねがはくは塵労じんろうでてがんのぼらんと

各各倶↢菩提心クハデテ↢塵労↡登ラムト↢彼岸

【22】そのときそんこのきをはりたまふに、 ちゅうかんざいさつありて、 すなはちよりちてがっしょうし、 ぶつかひてこのごんをなせり。 そん、 なんの因縁いんねんをもつてかりょう寿仏じゅぶつその面門めんもんよりりょうこうはなちて諸仏しょぶつくにらしたまふや。 ややねがはくはそん方便ほうべんしてせつしたまへ。 もろもろのしゅじょうおよびほうさつをして、 このきをはりて、 希有けうしんしょうじ、 ぶつだいにおいてぎょうしゅして退たいくらいらしめんと。

時世尊説↢此↡已リタマフニ、会中リテ↢観自在菩薩↡、即↠座起チテ合掌、向ヒテ↠仏而作セリ↢是↡。世尊、以テカ↢何因縁↡無量寿仏於↢其面門↡放チテ↢無量光↡照シタマフヤ↢諸仏↡。唯願クハ世尊、方便シテ解説シタマヘ。令メムト↧諸衆生及他方菩薩ヲシテ、聞↢是↡已リテ、生↢希有↡、於↢仏菩提↡志楽趣求シテ↦不退↥。

【23】そのときそんかんざいさつげてのたまはく、 なんぢいまあきらかにけ、 われなんぢがためにかん。 かのぶつ如来にょらい過去かこりょうへんそうこうまえにおいてさつたりしときだい誓言せいごんおこしたまへり。 われらいにおいてしょうがくじょうぜんとき、 もし十方じっぽうかいりょうしゅじょうありて、 わがみょうごうきて、 あるいはちょうらい憶念おくねんし、 あるいはしょうさん帰依きえし、 あるいはこうようとうをせん。 かくのごときのしゅじょう、 すみやかにわがくにしょうじて、 このこうみょうれば、 すなはちだつん。 もししょさつこのこうみょうれば、 すなはちじゅて、 退たいくらいしょうし、 づからこうおよびもろもろの供具くぐして、 十方じっぽうかいへんじょうせつき、 諸仏しょぶつようしてぶつをなしどく増益ぞうやくし、 しゅのあひだをて、 またほんかえり、 もろもろのらくく。 このゆゑにこうみょうしかうしてぶっちょうるなり。

時世尊告ゲテ↢観自在菩薩↡言、汝今諦、吾為↠汝カム。彼仏如来於↢過去無量無辺阿僧祇劫↡為リシ↢菩薩↡時、発シタマヘリ↢大誓言↡。我於↢未来↡成ゼム↢正覚↡時、若リテ↢十方世界無量衆生↡、聞キテ↢我名号↡、或イハ頂礼憶念、或イハ称讃帰依、或イハ香花供養等ヲセム。如キノ↠是クノ衆生、速ジテ↢我↡、見レバ↢此光明↡、即↢解脱↡。若諸菩薩0372レバ↢此光明↡、即↢受記↡、証↢不退↡、手ヅカラシテ↢香花及供具↡、往↢十方界無辺浄刹↡、供↢養シテ諸仏↡而作↢仏事↡増↢益功徳↡、経↢須臾↡、復還↢本土↡、受↢諸快楽↡。是光明而シテルナリ↢仏頂↡。

二 Ⅳ 道樹楽音荘厳

【24】またつぎなんりょう寿仏じゅぶつおうしょう等覚とうがくしょだいじゅは、 たか一千いっせんろっぴゃくじゅん、 よもにけるようはっぴゃくじゅんさいることひゃくじゅんにして、 花菓けかようしてりょうひゃくせん珍宝ちんぽういろをなせり。 そのじゅじょうにおいて、 また月光がっこう摩尼まにほうたいしゃく摩尼まにほうにょ摩尼まにほうかい摩尼まにほうだいろくほうしゃしつたいほう愛宝あいほう瓔珞ようらくだいろくほう瓔珞ようらく真珠しんじゅ瓔珞ようらくしょう真珠しんじゅ瓔珞ようらくおよび金銀こんごん宝網ほうもうとうをもつて、 種々しゅじゅしょうごんせり。

復次阿難、無量寿仏・応・正等覚所有菩提之樹、高一千六百由旬、ヨモケル枝葉八百由旬、根入ルコト↢土際↡五百由旬ニシテ、花菓敷栄シテセリ↢無量百千珍宝之色↡。於↢其樹上↡、復以↢月光摩尼宝・帝釈摩尼宝・如意摩尼宝・持海摩尼宝・大緑宝・莎悉帝迦宝・愛宝瓔珞・大緑宝瓔珞・紅真珠瓔珞・青真珠瓔珞及金銀宝網等↡、種種荘厳セリ

【25】またつぎなんしんごとに香風こうふうおのづからこりてこの宝樹ほうじゅく。 じゅあひ触とうそくしてみょうこえいだし、 そのこえあまねくりょうかいきこゆ。

復次阿難、毎↢於辰時↡香風自リテ↢此宝樹↡。樹相触シテ↢微妙↡、其声普↢無量世界↡。

しゅじょうけばそのみみやまいなく、 ないのく多羅たらさんみゃくさんだいじょうじゅす。 もししゅじょうありてこのじゅれば、 すなはちじょうぶついたるまでそのちゅうげんにおいてまなこやまいしょうぜず。 もししゅじょうありてじゅこうがば、 すなはちじょうぶついたるまでそのちゅうげんにおいてはなやまいしょうぜず。 もししゅじょうありてじゅこのみじきすれば、 すなはちじょうぶついたるまでそのちゅうげんにおいてしたまたやまいなし。 もししゅじょうありてじゅひかりらさるれば、 すなはちじょうぶついたるまでそのちゅうげんにおいてまたやまいなし。 もししゅじょうありてじゅ観想かんそうすれば、 すなはちじょうぶついたるまでそのちゅうげんにおいてこころ清浄しょうじょうなることをて、 とんとう煩悩ぼんのうやまいおんすと。

衆生聞ケバ者無↢其耳病↡、乃至成↢就阿耨多羅三藐三菩提↡。若リテ↢衆生↡見レバ↢此↡者、乃ルマデ↢成仏↡於↢其中間↡不↠生↢眼病↡。若リテ↢衆生↡ゲバ↢樹↡者、乃ルマデ↢成仏↡於↢其中間↡不↠生↢鼻病↡。若リテ↢衆生↡食スレバ↢樹↡者、乃ルマデ↢成仏↡於↢其中間↡舌亦無↠病。若リテ↢衆生↡樹サルレバ者、乃ルマデ↢成仏↡於↢其中間↡身亦無↠病。若リテ↢衆生↡観↢想スレバ↡者、乃ルマデ↢成仏↡於↢其中間↡心得0373↢清浄ナルコトヲ↡、遠↢離スト貪等煩悩之病↡。

ぶつなんげたまはく、 かくのごとく仏刹ぶっせつ花菓けか樹木じゅもく、 もろもろのしゅじょうのためにしかうしてぶつをなすは、 みなこれかのぶつ過去かこ大願だいがんしょうじゅしたまふところなり。

仏告ゲタマハク↢阿難↡、如↠是クノ仏刹花菓樹木、与↢諸衆生↡而シテスハ↢仏事↡、皆是彼過去大願之所ナリ↢摂受シタマフ↡。

二 Ⅳ 一生補処

【26】またつぎなん、 かの仏刹ぶっせつちゅうのあらゆる現在げんざいおよびらいしょうずる一切いっさいさつ摩訶まかさつをして、 いっしょうのく多羅たらさんみゃくさんだいしむるに、 もしさつありて、 宿しゅくがんをもつてのゆゑに、 しょうかいりて師子ししをなしじょうやくせむとせば、 われこころしたがひてぶつをなさしむ。

復次阿難、彼仏刹中所有現在及未来ズル一切菩薩摩訶薩ヲシテ、一生ムルニ↠得↢阿耨多羅三藐三菩提↡、若リテ↢菩薩↡、以テノ↢宿願↡故、入リテ↢生死界↡作↢師子吼↡利↢益セムトセバ有情↡、我令↣随ヒテ↠意而作↢仏事↡。

二 Ⅳ 菩薩功徳

【27】またつぎなん、 かの仏刹ぶっせつちゅう一切いっさいさつおよびしょしょうもんは、 身相しんそう端厳たんごんに、 円光えんこうじょうにして、 しゅうしょう耀ようすることひゃくせんじゅんなり。

復次阿難、彼仏刹中一切菩薩及諸声聞、身相端厳、円光熾盛ニシテ、周廻照耀スルコト百千由旬ナリ

ふたりのさつあり、 身光しんこうとお三千さんぜん大千だいせんかいらすと。

↢二菩薩↡、身光遠スト↢三千大千世界↡。

なんまうしてまうさく、 このさつだい身光しんこうあるは、 そのいかんと。

阿難白シテ、此二菩薩ルハ↢大身光↡、其名云何

ぶつなんげたまはく、 さつとは、 ひとりをばかんざいづけ、 ふたりをばだいしょうじんづく。 げんにこのかいしてだいらくをなし、 命終みょうじゅうのちまさにかのくにしょうずべし。

仏告ゲタマハク↢阿難↡、二菩薩者、一ヲバ↢観自在↡、二ヲバ↢大精進↡。シテ↢此↡作↢大利楽↡、命終之後当↠生↢彼↡。

【28】またつぎなん、 かの仏刹ぶっせつちゅう一切いっさいさつようみょうにゅうにして、 相好そうごうそくせり。

復次阿難、彼仏刹中一切菩薩容貌柔和ニシテ、相好具足セリ

ぜんじょう智慧ちえ通達つうだつ無礙むげにして、 神通じんずうとく円満えんまんせざることなし。

禅定・智慧、通達無礙ニシテ、神通・威徳、無↠不ルコト↢円満↡。

ふか法門ほうもんりて、 しょうにん

リテ↢法門↡、得↢無生忍↡。

諸仏しょぶつぞうきょう明了みょうりょう諸根しょこん調じょうぶくし、 身心しんしんにゅうなんにして、 寂静じゃくじょうだいじょうはんあんじゅうし、 ふかしょうりて、 またじゅうなし。

諸仏秘蔵究竟明了調↢伏諸根↡、身心柔軟ニシテ安↢住寂静大乗涅↡、リテ↢正慧↡、無↢復余習↡。

ぶつしょぎょう七覚しちかくしょうどうによりてしゅぎょうして、 げんしんらしぞくたっす。

リテ↢仏所行七覚聖道↡修行シテ五眼照↠真↠俗

弁才べんざいそうざい無礙むげなり。 よくけんへん方便ほうべんし、 いふところじょうたいにしてふか義味ぎみり、 もろもろのじょうしてしょうぼう演説えんぜつし、 三界さんがいびょうどうにしてもろもろの分別ふんべつはなれ、 そう無為むいいん無果むかしゅしゃばくだつにして顛倒てんどうおんす。

弁才総持自在無礙ナリ。善↢世間無辺方便↡、所↠言誠諦ニシテ↢義味↡、度シテ↢諸有情↡演↢説正法↡、三界0374平等ニシテ↢諸分別↡、無相・無為・無因・無果・無取・無捨・無縛・無脱ニシテ遠↢離顛倒↡。

けんにしてどうぜざることしゅせんのごとし。

堅固ニシテルコト↠動↢須弥山↡。

智慧ちえ明了みょうりょうなること日月にちがつほがらかなるがごとし。

智慧明了ナルコト↢日月ナルガ↡。

広大こうだいなることうみのごとくにしてどくほういだす。

広大ナルコトクニシテ↠海↢功徳↡。

じょうなることのごとくにして煩悩ぼんのうたきぎく。

熾盛ナルコトクニシテ↠火↢煩悩↡。

忍辱にんにくなることのごとくにして一切いっさいびょうどうなり。

忍辱ナルコトクニシテ↠地一切平等ナリ

清浄しょうじょうなることみずのごとくにしてもろもろのじんあらふ。

清浄ナルコトクニシテ↠水↢諸塵垢↡。

くうへんなるがごとし、 一切いっさいへられざるがゆゑに。

↢虚空無辺ナルガ↡、不ルガ↠障ヘラレ↢一切↡故

れんみずよりづるがごとし、 一切いっさいぜんはなるるがゆゑに。

↢蓮花ヅルガ↟水ヨリ、離ルルガ↢一切↡故

雷震らいしんひびくがごとし、 法音ほうおんいだすがゆゑに。

↢雷震クガ↡、出スガ↢法音↡故

くも靉靆あいたいするがごとし、 ほうくだすがゆゑに。

↢雲靉靆ルルガ↡、降スガ↢法雨↡故

かぜじゅうごかすがごとし、 だいおこすがゆゑに。

↢風スガ↟樹、発スガ↢菩提↡故

おうこえのごとし、 しゅぎゅうことなるがゆゑに。

↢牛王↡、異ナルガ↢衆牛↡故

りゅうぞうのごとし、 はかるべきことかたきがゆゑに。

↢竜象↡、難キガ↠可キコト↠測

りょうくがごとし、 るにしつなきがゆゑに。

↢良馬クガ↡、乗ルニキガ↠失故

師子ししするがごとし、 怖畏ふいはなるるがゆゑに。

↢師子スルガ↡、離ルルガ↢怖畏↡故

尼拘にくじゅのごとし、 おおかげだいなるがゆゑに。

↢尼拘樹↡、覆ナルガ

しゅせんのごとし、 八風はっぷうどうぜざるがゆゑに。

↢須弥山↡、八風ルガ↠動

金剛こんごうしょのごとし、 邪山じゃせんするがゆゑに。

↢金剛↡、破ルガ↢邪山↡故

梵王ぼんのうのごとし、 梵衆ぼんしゅしょうずるがゆゑに。

↢梵王↡、生ズルガ↢梵衆↡故

こんちょうのごとし、 どくりゅうじきするがゆゑに。

↢金翅鳥↡、食スルガ↢毒竜↡故

くうちゅうとりのごとし、 じゅうしょなきがゆゑに。

↢空中↡、無キガ↢住処↡故

慈氏じしのごとし、 法界ほうかいかんずることひとしきがゆゑに。

↢慈氏↡、観ズルコト↢法界↡等シキガ

かくのごときのさつ仏刹ぶっせつ徧満へんまんしてほうき、 法幢ほうどうて、 ほうち、 法灯ほうとうともし、 とがはなれて清浄しょうじょうにして、 めいなくしつなし。 しゅちゅうよりまん瓔珞ようらくこう末香まっこう一切いっさい供具くぐすいしょうし、 してひゃくせんてい那由なゆ仏刹ぶっせつきて諸仏しょぶつようし、 またしゅちゅうよりべつほういだして、 くうちゅうさんずるに、 して宝蓋ほうがいとなること、 ひろじゅうじゅん、 あるいはじゅうじゅんないひゃくせんじゅんにして、 もろもろの仏刹ぶっせつへんす。 しゅのあひだをて、 本国ほんごく還来げんらいして、 あいじゃくしゅしゃにして、 身心しんしん寂静じゃくじょうなりと。

キノ↠是クノ菩薩徧↢満シテ仏刹↡吹↢法螺↡、↢法幢↡、撃↢法鼓↡、トモ↢法灯↡、離レテ↠過清浄ニシテ、無↠迷無↠失。手中ヨリ出↢生花鬘・瓔珞・塗香・粖香、一切供具↡、持シテキテ↢百千倶胝那由他仏刹↡供↢養諸仏↡、復於↢手中↡別シテ↢宝花↡、散ズルニ↢虚空中↡、化シテルコト↢宝蓋↡、広十由旬、或イハ二十由旬、乃至百千由旬ニシテ、徧↢諸仏刹↡。経↢須臾↡、還↢来シテ本国↡、無愛・無著・無取・無捨ニシテ、身心寂静ナリト

【29】ぶつなんげたまはく、 このしょさつはわがじょくところにはあることなし。 ひゃくせんていこうくともくすことあたはずと。

0375ゲタマハク↢阿難↡、此諸菩薩土五濁之所ニハ↠有ルコト。経↢百千倶胝劫↡説クトモ↠能↠尽スコト

釈迦指勧
    霊山現土

【30】ぶつなんげたまはく、 わがいまの此土しどのあらゆるさつ摩訶まかさつは、 すでにかつてりょう諸仏しょぶつようし、 もろもろの徳本とくほんえたり。 命終みょうじゅうのち、 みな極楽ごくらくかいしょうずることをん。 なん、 なんぢちてがっしょうし、 西にしめんしてちょうらいせよと。

仏告ゲタマハク↢阿難↡、吾此土所有菩薩摩訶薩、已供↢養無量諸仏↡、植エタリ↢衆徳本↡。命終之後、皆得↠生ズルコトヲ↢於極楽世界↡。阿難、汝起チテ合掌、面シテ↠西頂礼セヨト

そのときなん、 すなはちよりちてがっしょうし、 西にしめんしてちょうらいするあひだに、 忽然こつねんとして極楽ごくらくかいりょう寿仏じゅぶつることをたり。 容顔ようげん広大こうだいにして色相しきそう端厳たんごんなること黄金おうごんぜんのごとし。 また十方じっぽうかい諸仏しょぶつ如来にょらいりょう寿仏じゅぶつ種々しゅじゅどくしょうよう讃歎さんだんしたまふをけり。

時阿難、即↠座起チテ合掌、面シテ↠西頂礼スル之間忽然トシテタリ↠見ルコトヲ↢極楽世界無量寿仏↡。容顔広大ニシテ色相端厳ナルコト↢黄金山↡。又聞ケリ↤十方世界諸仏如来称↢揚讃↣歎シタマフヲ無量寿仏種種功徳↡。

なんまうしてまうさく、 かのぶつじょうせつ未曽有みぞうたり。 われまたかのしょうぜんとがんぎょうすと。 そんげてのたまはく、 そのなかにしょうずるもの、 さつ摩訶まかさつもすでにかつてりょう諸仏しょぶつ親近しんごんしてもろもろの徳本とくほんえたり。 なんぢかしこにしょうぜんとほっせば、 まさに一心いっしん帰依きえ瞻仰せんごうすべしと。

阿難白シテ、彼浄刹得タリ↢未曽有↡。我亦願↣楽ストゼムト↢於彼↡。世尊告ゲテ、其ズルニ者、菩薩摩訶薩親↢近シテ無量諸仏↡植エタリ↢衆徳本↡。汝欲セバ↠生ゼムト↠彼、応シト↢一心帰依瞻仰↡。

このをなすときりょう寿仏じゅぶつしゅしょうのなかよりりょうひかりはなちて、 東方とうぼうひゃくせんてい那由なゆ仏刹ぶっせつらしたまふ。 ここにおいてかいのあらゆる黒山こくせん雪山せっせん金山こんぜん宝山ほうせん目真もくしんりんせん摩訶まか目真もくしんりんせんしゅせんてっせんだいてっせん大海だいかいこう叢林そうりん樹木じゅもくおよび天人てんにん殿でん一切いっさいきょうがいしょうけんせざることなし。

↢是↡時、無量寿仏於↢手掌中↡放チテ↢無量↡、照シタマフ于東方百千倶胝那由他仏刹↡。於↠此世界所有黒山・雪山・金山・宝山・目真隣陀山・摩訶目真隣陀山・須弥山・鉄囲山・大鉄囲山・大海・江河・叢林・樹木及天人宮殿一切境界、無↠不ルコト↢照見↡。

たとへばでてあきらかにけんらすがごとく、 またかくのごとし。 そのときちゅう苾芻びっしゅ苾芻びっしゅ優婆うばそく優婆うばてんりゅう薬叉やくしゃ乾闥けんだつしゅ迦楼かるきん那羅なら摩睺まご羅伽らかにんにんとう、 みな極楽ごくらくかい種々しゅじゅしょうごん、 およびりょう寿じゅ如来にょらいたてまつるにしょうもんさつにょうぎょうすること、 たとへばしゅ山王せんのう大海だいかいづるがごとし。

ヘバ↣日デテカニスガ↢世間↡、亦復如↠是クノ。爾時会中苾芻・苾芻尼・優婆塞・優婆夷・天・竜・薬叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅0376伽・人・非人等、皆見↢極楽世界種種荘厳↡、及タテマツルニ↢無量寿如来↡声聞・菩薩囲繞恭敬スルコト、譬ヘバ↣須弥山王ヅルガ于大海↡。

そのとき極楽ごくらくかい西方さいほうひゃくせんてい那由なゆくにぎたれども、 ぶつりきをもつて目前もくぜんたいするがごとし。 またかのるに、 清浄しょうじょう平正びょうしょうなること、 たとへば海面かいめんのごとくりょう山嶮せんげん草木そうもくぞうあることなし。 ただこれ衆宝しゅほうもつてしょうごんし、 しょうげんじゅうせり。

時極楽世界ギタレドモ↢於西方百千倶胝那由他↡、以↢仏威力↡如↠対スルガ↢目前↡。又見ルニ↢彼↡、清浄平正ナルコト、譬ヘバ↢海面↡無↠有ルコト↢丘陵・山嶮・草木・雑穢↡。唯是衆宝モテ荘厳、聖賢共住セリ

【31】またつぎなん、 またかのりょう寿仏じゅぶつともろもろのさつしょうもんしゅと、 またみなわがおよびしゃかいさつしょうもんにんてんしゅることをたりと。

復次阿難、又彼無量寿仏与↢諸菩薩・声聞之衆↡、亦皆得タリト↠見ルコトヲ↢我身及娑婆世界菩薩・声聞・人・天之衆↡。

二 Ⅴ 胎化得失

【32】そのときそん慈氏じしさつげてのたまはく、 なんぢ極楽ごくらくかいどくしょうごん殿でん楼閣ろうかく園林おんりん台観だいかんせんよくれりやいなや。 慈氏じし、 なんぢ欲界よくかい諸天しょてんよりかみしききょうてんいたるまで、 種々しゅじゅこうあめふらし、 仏刹ぶっせつ徧満へんまんしてしょうごんをなすをれりやいなや。

時世尊告ゲテ↢慈氏菩薩↡言、汝見レリヤ↢極楽世界功徳荘厳、宮殿・楼閣・園林・台観・流泉・浴池↡不。慈氏、汝見レリヤ↧欲界諸天ヨリ上至ルマデ↢色究竟天↡、雨ラシ↢種種香花↡、徧↢満シテ仏刹↡作スヲ↦荘厳↥不

なんぢさつしょうもん浄行じょうぎょうしゅのしかうしてぶっしょうをなしみょうほう演説えんぜつして、 一切いっさい仏刹ぶっせつみなこえくことをて、 らくるをれりやいなや。

汝見レリヤ↧菩薩・声聞浄行之衆シテ↢仏声↡演↢説シテ妙法↡、一切仏刹皆得↠聞クコトヲ↠声、獲ルヲ↦利楽↥不

なんぢひゃくせんていしゅじょうくうしょして殿でんしたがふをれりやいなやと。

汝見レリヤ↧百千倶胝衆生游↢処シテ虚空↡宮殿随フヲ↞身ヤト

慈氏じしさつぶつにまうしてまうさく、 そんぶつ所説しょせつのごとく一々いちいちにみなたりと。

慈氏菩薩、白シテ↠仏、世尊、如↢仏所説↡一一皆見タリト

慈氏じしまうしてまうさく、 いかんぞこのかい一類いちるいしゅじょう、 またぜんしゅすといへどもしょうずることをもとめざるやと。 ぶつ慈氏じしげたまはく、 これらのしゅじょう智慧ちえせんにして、 西方さいほう天界てんかいおよばずと分別ふんべつせり。 これをもつてらくにあらずとしてかしこにしょうぜんことをもとめざるなりと。 慈氏じしまうしてまうさく、 これらのしゅじょうもう分別ふんべつして仏刹ぶっせつもとめず、 なんぞりんまぬかれんと。

慈氏白シテ、云何一類衆生、雖↢亦修スト↟善而不ルヤト↠生ズルコトヲ。仏告ゲタマハク↢慈氏↡、此等衆生智慧微浅ニシテ、分↢別セリ西方↟及↢天界↡。是ズトシテ↠楽ルナリト↠求↠生ゼムコトヲ↠彼。慈氏白シテ、此等衆生虚妄分別シテ不↠求↢仏刹↡、何レムト↢輪廻↡。

ぶつ慈氏じしにのたまはく、 極楽ごくらくこくちゅうたいしょうありやいなやと。

仏言↢慈氏↡、極楽国中0377リヤ↢胎生↡不ヤト

慈氏じしまうしてまうさく、 いななり。

慈氏白シテ、不也。

そん、 そのなかにしょうずるものは、 たとへば欲界よくかい諸天しょてんひゃくじゅん殿でんしてざい遊戯ゆげするがごとし。 なんぞたいしょうあらん。

世尊、其ズル、譬ヘバ↧欲界諸天シテ↢五百由旬宮殿↡自在遊戯スルガ↥。何↢胎生↡。

そん、 このかいしゅじょうはなんのいんなんのえんありてたいしょうしょするやと。

世尊、此衆生因何アリテ而処スルヤト↢胎生↡。

ぶつ慈氏じしにのたまはく、 これらのしゅじょううるところの善根ぜんごんは、 そうはなるることあたはず、 ぶっもとめず、 みだりに分別ふんべつしょうじて、 ふからく人間にんげん福報ふくほうじゃくす。 このゆゑにたいしょうなり。

仏言↢慈氏↡、此等衆生↠種ウル善根、不↠能↠離ルルコト↠相、不↠求↢仏慧↡、妄ジテ↢分別↡、深↢世楽人間福報↡。胎生ナリ

もししゅじょうありて、 そう智慧ちえをもつて、 もろもろの徳本とくほんえ、 身心しんしん清浄しょうじょうにして、 分別ふんべつおんし、 じょうせつしょうぜんことをもとめて、 ぶつだいおもむかば、 このひと命終みょうじゅうせつのあひだに、 ぶつじょうにおいてほうれん身相しんそうそくせむ。 なんぞたいしょうあらん。

リテ↢衆生↡、以↢無相智慧↡、植↢衆徳本↡、身心清浄ニシテ、遠↢離分別↡、求メテ↠生ゼムコトヲ↢浄刹↡、趣カバ↢仏菩提↡、是人命終刹那之間、於↢仏浄土↡坐↢宝蓮花↡身相具足セム。何ラム↢胎生↡。

慈氏じし、 なんぢ愚痴ぐちひとよ、 善根ぜんごんえず、 ただ世智せち聰弁そうべんをもつて、 みだりに分別ふんべつしょうじ、 邪心じゃしん増益ぞうやくす。 いかんぞしょう大難だいなんしゅつせん。 またしゅじょうありて、 善根ぜんごん三宝さんぼうようだい福田ふくでんとなるといへども、 取相しゅそう分別ふんべつし、 情執じょうしゅうじんじゅうにして、 りんづることをもとむとも、 つひにることあたはずと。

慈氏、汝見↢愚痴之人↡、不↠種↢善根↡、但以↢世智聰弁↡、妄↢分別↡、増↢益邪心↡。云何出↢離セム生死大難↡。復有リテ↢衆生↡、雖↧種↢善根↡供↢養三宝↡作ルト↦大福田↥、取相分別、情執深重ニシテ、求ムトモ↠出ヅルコトヲ↢輪廻↡、終↠能↠得ルコト

ぶつ慈氏じしげたまはく、 たとへばかんじょうくる刹帝せっていおうひとつの大獄だいごくきて、 その獄内ごくないにおいて、 殿堂でんどう楼閣ろうかくあんし、 こうらんそうじょうとう座具ざぐ、 みな珍宝ちんぽうをもつて厳飾ごんじきし、 もちゐるところのぶく飲食おんじきそくせずといふことなからんに、 そのときかんじょうおうたいちくしてごくちゅう禁閉きんぺいし、 また銭財ぜんざい珍宝ちんぽうかんひつはくあたへてこころほしいままにして受用じゅゆうせしめんがごとしと。

仏告ゲタマハク↢慈氏↡、譬ヘバシト↧受クル↢潅頂位↡刹帝利王、置キテ↢一大獄↡、於↢其獄内↡、安↢置殿堂・楼閣↡、鉤欄・窓牖・床榻・座具、皆以↢珍宝↡厳飾、所↠須ヰル衣服・飲食無カラムニ↠不トイフコト↢豊足↡、爾時潅頂王駆↢逐シテ太子↡禁↢閉獄中↡、復与ヘテ↢銭財・珍宝・羅紈・匹帛↡恣ニシテ↠意受用セシメムガ↥。

【33】ぶつ慈氏じしげたまはく、 こころにおいていかん。 かのたいらくんやいなやと。

仏告ゲタマハク↢慈氏↡、於↠意云何。彼太子得ムヤ↢快楽↡不ヤト

慈氏じしまうしてまうさく、 いななり。 そん、 かしこのなかに堂殿どうでん楼閣ろうかく飲食おんじきぶくぜんはく金宝こんぽうありてこころしたがひて受用じゅゆうすといへども、 牢獄ろうごくぢられ、 こころざいならざれば、 ただしゅつせんことをもとめんと。

慈氏白シテ、不也。世尊、彼↧有リテ↢堂殿・楼閣・飲食・衣服・銭帛・金宝↡随ヒテ↠意受用スト↥、身閉ヂラレ↢牢獄↡、心不レバ↢自在0378ナラ↡、唯求メムト↢出離セムコトヲ↡。

ぶつ慈氏じしげたまはく、 もしかんじょうおうそのとがゆるさざらんに、 かのもろもろの大臣だいじんちょうじゃ居士こじとうたいをして禁獄きんごくまぬかれしむべきやいなやと。 慈氏じしまうしてまうさく、 おうすでにゆるさざれば、 いかんぞづることをんと。

仏告ゲタマハク↢慈氏↡、若潅頂王不ラムニユル↢其↡、彼大臣・長者・居士等、可キヤ↠令↣太子ヲシテ↢禁獄↡不ヤト。慈氏白シテ、王既レバユル、云何ムト↠出ヅルコトヲ

ぶつのたまはく、 かくのごとしかくのごとし。 かのもろもろのしゅじょうまたふくしゅして三宝さんぼうようすといへども、 もう分別ふんべつして、 人天にんでんもとめば、 ほうときしょかい殿でん楼閣ろうかくぶく臥具がぐ飲食おんじき湯薬とうやく一切いっさいもちゐるところことごとくみなそくすれども、 しかもいまだ三界さんがいごくちゅうづることあたはず、 つねにりんしょしてざいならず。

仏言、如↠是クノ↠是クノ。彼衆生雖↣復修シテ↠福供↢養スト三宝↡、虚妄分別シテ、求メバ↢人天↡、得↠報之時、所居器界宮殿・楼閣・衣服・臥具・飲食・湯薬、一切所↠須ヰル皆豊足スレドモ、而↠能↠出ヅルコト↢三界獄中↡、常シテ↢輪廻↡而不↢自在ナラ↡。

たとひ父母ぶもさい男女なんにょ眷属けんぞく、 あひすくまぬかれしめんとほっすとも、 つひにづることあたはず、 邪見じゃけん業王ごうおうよくしゃすることなからん。

仮使 タトヒ 父母・妻子・男女・眷属、欲ストモ↢相救レシメムト↡、終不↠能↠出ヅルコト、邪見業王カラム↢能捨離スルコト↡。

もしもろもろのしゅじょうもう分別ふんべつだんじて、 もろもろの善本ぜんぽんえ、 そうじゃくならば、 まさに仏刹ぶっせつしょうじてながだつべしと。

衆生断ジテ↢妄分別↡、植↢諸善本↡、無相無著ナラバ、当シト↧生ジテ↢仏刹↡永得↦解脱↥。

二 Ⅴ 諸方来生

慈氏じしさつぶつにまうしてまうさく、 そん、 いまこのしゃかいおよびもろもろの仏刹ぶっせつに、 いくさつ摩訶まかさつありてか、 極楽ごくらくかいしょうずることをりょう寿仏じゅぶつたてまつり、 のく多羅たらさんみゃくさんだいじょうじゅすると。

慈氏菩薩、白シテ↠仏、世尊、今此娑婆世界及仏刹、有リテカ↢幾多菩薩摩訶薩↡、得↠生ズルコトヲ↢極楽世界↡、見タテマツリ↢無量寿仏↡、成↢就スルト阿耨多羅三藐三菩提↡。

【34】ぶつ慈氏じしにのたまはく、 わがこのしゃかいに、 しちじゅうてい那由なゆさつ摩訶まかさつあり、 すでにかつてりょう諸仏しょぶつようし、 もろもろの徳本とくほんえ、 まさにかのくにしょうじてりょう寿仏じゅぶつ親近しんごんようしたてまつり、 のく多羅たらさんみゃくさんだいじょうじゅすべしと。

仏言↢慈氏↡、我娑婆世界、有↢七十二倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、已供↢養無量諸仏↡、植↢衆徳本↡、当シト↧生ジテ↢彼↡親↢近供↣養シタテマツリ無量寿仏↡、成↦就阿耨多羅三藐三菩提↥。

【35】またつぎなん難忍なんにん仏刹ぶっせつに、 じゅうはちてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

復次阿難、難忍仏刹、有リテ↢十八倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

宝蔵ほうぞう仏刹ぶっせつに、 じゅうてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

宝蔵仏刹、有リテ↢九十倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

こう仏刹ぶっせつに、 じゅうてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

火光仏刹、有0379リテ↢二十二倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

りょうこう仏刹ぶっせつに、 じゅうてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

無量光仏刹、有リテ↢二十五倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

とう仏刹ぶっせつに、 ろくじゅうてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

世灯仏刹、有リテ↢六十倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

りゅうじゅ仏刹ぶっせつに、 一千いっせんひゃくさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

竜樹仏刹、有リテ↢一千四百菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

無垢むくこう仏刹ぶっせつに、 じゅうてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

無垢光仏刹、有リテ↢二十五倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

師子しし仏刹ぶっせつに、 一千いっせんはっぴゃくさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

師子仏刹、有リテ↢一千八百菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

きっしょう仏刹ぶっせつに、 せんいっぴゃくてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

吉祥峰仏刹、有リテ↢二千一百倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

仁王にんのう仏刹ぶっせつに、 一千いっせんてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

仁王仏刹、有リテ↢一千倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

どう仏刹ぶっせつに、 いちていさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

花幢仏刹、有リテ↢一倶胝菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

こうみょうおう仏刹ぶっせつに、 じゅうていさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん。

光明王仏刹、有リテ↢十二倶胝菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡。

とく無畏むい仏刹ぶっせつに、 ろくじゅうてい那由なゆさつ摩訶まかさつありて、 かのこくしょうぜん、 ことごとくみなりょう寿仏じゅぶつ親近しんごんようしたてまつり、 ひさしからずししてまさにのく多羅たらさんみゃくさんだいじょうずべしと。

得無畏仏刹、有リテ↢六十九倶胝那由他菩薩摩訶薩↡、生ゼム↢彼国土↡、悉皆親↢近供↣養シタテマツリ無量寿仏↡、不シテ↠久シカラシト↠成↢阿耨多羅三藐三菩提↡。

ぶつ慈氏じしにのたまはく、 かくのごときのどくしょうごん極楽ごくらくこくは、 かの算数さんじゅりょうこうててくともくすことあたはず。

仏言↢慈氏↡、如キノ↠是クノ功徳荘厳極楽国土、満テテ↢彼算数無量之劫↡説クトモ不↠能↠尽スコト

【36】もし善男ぜんなん善女ぜんにょにんありて、 りょう寿仏じゅぶつみょうごうくことをて、 一念いちねん信心しんじんおこして、 帰依きえ瞻礼せんらいせん。 まさにるべし、 このひとはこれ小乗しょうじょうにあらず、 わがほうのなかにおいて第一だいいち弟子でしづくることをと。

リテ↢善男子・善女人↡、得↠聞クコトヲ↢無量寿仏名号↡、発シテ↢一念信心↡、帰依瞻礼セム。当↠知、此↢是小乗↡、於↢我↡得↠名クルコトヲ↢第一弟子↡。

ぶつ慈氏じしげたまはく、 もし苾芻びっしゅ苾芻びっしゅ優婆うばそく優婆うばてんりゅう薬叉やくしゃ乾闥けんだつしゅ迦楼かるきん那羅なら摩睺まご羅伽らかにんにんとうありて、 このきょうてんにおいて書写しょしゃようし、 じゅ読誦どくじゅして、 のために演説えんぜつし、 ないいっちゅうにおいてかのくにおよび仏身ぶっしんどくゆいせん。 このひと命終みょうじゅうしてすみやかにかしこにしょうずることをて、 のく多羅たらさんみゃくさんだいじょうじゅせん。

仏告ゲタマハク↢慈氏↡、若リテ↢苾芻・苾芻尼・優婆塞・優婆夷・天・竜・薬叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅0380・摩睺羅伽・人・非人等↡、於↢此経典↡書写供養、受持読誦シテ、為↠他演説、乃至於↢一昼夜↡思↢惟セム刹及仏身功徳↡。此人命終シテ↠生ズルコトヲ↠彼、成↢就セム阿耨多羅三藐三菩提↡。

流通分
  慈氏付属

【37】またつぎ慈氏じし、 いまこのきょうてん甚深じんじんみょうにして、 ひろしゅじょうす。 もししゅじょうありて、 このしょうぼうにおいて、 じゅ読誦どくじゅし、 書写しょしゃようせん。

復次慈氏、今此経典甚深微妙ニシテ、広↢衆生↡。若リテ↢衆生↡、於↢此正法↡、受持読誦、書写供養セム

かのひとりんじゅうに、 たとひ三千さんぜん大千だいせんかいのなかにてらんだいをも、 またよくちょうしてかのこくしょうぜん。

人臨終仮使 タトヒ 三千大千世界テラム↠中大火ヲモ、亦能超過シテゼム↢彼国土↡。

このひとすでにかつて過去かこぶつひてだいけ、 一切いっさい如来にょらいおなじくしょうさんせられ、 じょうだいこころしたがひてじょうじゅせんと。

人已ヒテ↢過去↢菩提↡、一切如来ジク↢称讃↡、無上菩提随ヒテ↠意成就セムト

ぶつ慈氏じしにのたまはく、 ぶっもうあひがたく、 しょうぼうきがたし。 如来にょらいしょぎょうまたしたがひてぎょうずべし。 このきょうてんにおいてだいしゅをなし、 もろもろのじょうのためにじょうやくして、 しゅじょうをしてしゅしょうごんごくちゅうざいせしむることなかれ。 もろもろのじょうをして福善ふくぜん種修しゅしゅせしめ、 じょうせつしょうぜんことをもとめしめよと。

仏言↢慈氏↡、仏世↠値、正法↠聞。如来所行亦応↢随ヒテ↡。於↢此経典↡作↢大守護↡、為↢諸有情↡長夜利益シテ、莫↠令ムルコト↣衆生ヲシテ堕↢在五趣荘厳獄中↡。令メヨト↧諸有情ヲシテ種↢修セシメ福善↡、求↞生ゼムコトヲ↢浄刹↡。

流通偈

【38】そのときそんしかうしてじゅきてのたまはく、

時世尊而シテキテ↠頌

 もしおうじゃくふくしゅせざれば このしょうぼうにおいてくことあたはず

レバ↣往昔↢福慧↢此正法↡不↠能↠聞クコト

 すでにかつてもろもろの如来にょらいようせり このゆゑになんぢらこのけり

供↢養セリ如来汝等聞ケリ↢斯

 ききをはりてじゅしおよび書写しょしゃし 読誦どくじゅ讃演さんえんしてならびにようせよ

リテ受持書写読誦讃演シテ供養セヨ

 かくのごとく一心いっしんじょうほうもとむれば けつじょうして極楽ごくらくこくおうじょうせん

↠是クノ一心ムレバ↢浄決定シテ往↢生セム極楽国

 たとひだい三千さんぜんてらんも およびかのしょうごんせるもろもろの牢獄ろうごく

0381仮使 タトヒ 大火満テラムモ↢三千荘厳セル牢獄

 かくのごときの諸難しょなんことごとくよくえん みなこれ如来にょらいとくりきなり

キノ↠是クノ諸難悉エム皆是如来威徳力ナリ

 かのぶつらくのもろもろのどくは ただぶつぶつとのみすなはちよくりたまふ

利楽功徳唯仏ノミ↠仏乃リタマフ

 しょうもん縁覚えんがくけんちて その神力じんりきくすともよくはかることなけん↡

声聞・縁覚満チテ↢世間ストモ↢其神力↡莫ケム↢能ルコト

 たとひちょう寿じゅのもろもろのじょう いのちしゅていこうじゅうして

仮使 タトヒ 長寿有情命住シテ↢無数倶胝劫

 如来にょらいどくしんしょうさんせんに そのぎょう寿じゅくしてさんずともくることなけん

称↢讃セムニ如来功徳身シテ↢其形寿↡讃ズトモケム↠尽クルコト

 だいしょう法王ほうおう説法せっぽうしたまふところ 一切いっさいのもろもろのぐんじょうやくしたまふ

大聖法王所↢説法シタマフ利↢益シタマフ一切群生

 もしじゅぎょうするものあらば ぶつこのひとしんぜんなりときたまふと

ラバ↢受持恭敬スル者↡仏説キタマフト↢此人真善友ナリト

【39】そのときそんこのほうきたまふときじゅうてい那由なゆひとありて、 じんとおざかりはなれて法眼ほうげんじょうはっぴゃく苾芻びっしゅじんしてこころだつ天人てんにんしゅのなかにじゅうてい那由なゆひとありて、 阿那あなごんしょうし、 またじゅうていひとありて、 法忍ほうにん退たい、 またじゅうていひゃくせん那由なゆひとありて、 のく多羅たらさんみゃくさんだいしんおこし、 もろもろの善根ぜんごんえみな極楽ごくらくかいおうじょうして、 りょう寿仏じゅぶつたてまつらんとがんず。

時世尊説キタマフ↢此↡時、有リテ↢十二倶胝那由他人↡、遠ザカリ↠塵レテ↠垢得↢法眼浄↡、八百苾芻漏尽意解シテ得↢解脱↡、天人衆リテ↢二十二倶胝那由他人↡、証↢阿那含果↡、復有リテ↢二十五倶胝人↡、得↢法忍不退↡、復有リテ四十倶胝百千那由他人↡、発↢阿耨多羅三藐三菩提心↡、種↢諸善根↡皆願↧往↢生シテ極楽世界↡、見タテマツラムト↦無量寿仏↥。

また十方じっぽう仏刹ぶっせつのもしは現在げんざいしょうじおよびらいしょうじてりょう寿仏じゅぶつたてまつらんものあり。 おのおの八万はちまんてい那由なゆひとありて、 然灯ねんとうぶつて、 みょうおん如来にょらいづけて、 まさにのく多羅たらさんみゃくさんだいべし。 かのもろもろのじょうはみなこれりょう寿仏じゅぶつ宿しゅくがん因縁いんねんをもつて、 とも極楽ごくらくかいおうじょうすることを

復有↧十方仏刹シハ現在未来ジテタテマツラム↢無量寿仏↡者↥。各リテ↢八万倶胝那由他人↡、得↢然灯仏↡、名ケテ↢妙音如来0382↡、当↠得↢阿耨多羅三藐三菩提↡。彼有情皆是無量寿仏宿願因縁ヲモテ、倶得↣往↢生スルコトヲ極楽世界↡。

ぶつこのきたまふとき三千さんぜん大千だいせんかい六種ろくしゅ震動しんどうして、 もろもろのこうあめふらし、 もりてひざいたる。 また諸天しょてんありて、 くうのなかにおいてみょう音楽おんがくをなし、 ずいこえいだす。 ない色界しきかい諸天しょてんも、 ことごとくみなくことを未曽みぞなりとたんず。

仏説キタマフ↢是↡時、三千大千世界六種震動シテ、雨ラシ↢諸香花↡、積リテ于膝↡。復有リテ↢諸天↡、於↢虚空↡作↢妙音楽↡、出↢随喜↡。乃至色界諸天、悉皆得↠聞クコトヲ↢未曽有ナリト↡。

そのとき尊者そんじゃなんおよび慈氏じしさつとう、 ならびにてんりゅうはち一切いっさい大衆だいしゅぶつ所説しょせつきてみなおほきにかんし、 信受しんじゅぎょうせり。

時尊者阿難及慈氏菩薩等、并天・竜・八部一切大衆、聞キテ↢仏所説↡皆大歓喜、信受奉行セリ

 

仏説ぶっせつだいじょうりょう寿じゅしょうごんきょう かん

 

延書は底本の訓点に従って有国が行った(固有名詞の訓は保証できない)。
底本は◎高麗版(再雕本)¬大蔵経¼所収本、 Ⓐ金版¬大蔵経¼所収本、 Ⓑ宋版(思溪版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓒ元版(善寧寺版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓓ明版(万歴版)¬大蔵経¼所収本、 Ⓔ¬房山石経(遼金刻経)¼所収本 と対校。
西→Ⓓ[宋]西
訳経 Ⓓになし
 Ⓓになし
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→Ⓔ
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→ⒸⒹ Ⓑになし
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仏説 Ⓒになし