いちねんたねんもんい 一念多念文意 1巻。 親鸞の著。 ¬一念多念証文¼ ¬一多証文¼ ¬証文¼ などともいい、 専修念仏は一念多念のいずれにも偏執しない、 念仏往生の義であることを明らかにしたもの。
 法然門下におこった一念多念じょうろんに対して、 親鸞と同じ法然門下の隆寛は ¬一念多念分別事¼ を著して一念や多念に偏執してはならないことを諭した。 親鸞はその意をうけて本書を著し、 隆寛が証文として引用した経釈の要文、 および関連する諸文をあげて、 註釈を施している。 内容は2段にわけられ、 前段では 「一念をひがごととおもふまじき事」 として、 一念に関する要文を13文 (あるいは14文) 引用し、 また後段では 「多念をひがごととおもふまじき事」 として、 多念に関する要文8文を挙げて、 それぞれ証文としている。
 これらの証文のうち ¬一念多念分別事¼ からの証文は、 前段ではわずかに3文 (または4文) であり、 また後段では5文ほどである。 このことから本書が単なる ¬一念多念分別事¼ の註釈書ではないことが知られる。
 親鸞真跡本 (大谷派蔵) が現存する。