◎十住毘婆娑論 第五

聖者龍樹造る 後秦の亀茲国の三蔵鳩摩羅什訳す

  易行品 第九

 

【1】 ^問うていう。 この不退の菩薩が*初しょ地じに入るまでの修行のありさまは、 さき (阿惟越致相品) に説いたとおりである。 ^*不ふ退たいの位くらいに至るについては、 多くの*難なん行ぎょうを行じ、 久しい間かかってようやくこれを得ることができるので、 ^あるいは*声しょう聞もん・*縁覚えんがくの地位に退堕することがある。 もしそうなれば、 これは大きな損失であり、 災患さいげんである。 ^¬助道じょどう法ほう¼ (菩提資糧論) の中に説くとおりである。

^もし声聞の地位や 縁覚の地位に堕ちるならば

これを菩薩の死と名づける そうなれば一切の利り益やくを失う

^たとい地獄に堕ちても かような畏れを生じないが

もし*二に乗じょうの地位に堕ちるならば すなわち大きな畏れとなる

^なんとなれば地獄の中に堕ちても ついには仏果に至ることはできるが

もし二乗の地位に堕ちるならば ついに仏になる道をさまたげるからである

^仏みずから経の中に こういうことを説かれてある

寿命を惜しむような人は 首を斬られることを大いに畏れる

^菩薩もまたこのとおり もし声聞の地位や

縁覚の地位に堕ちるならば 大きな畏れを生ずるであろう

 ^こういうわけであるから、 もし諸仏の説きたもう中に、 *易い行ぎょう道どうですみやかに不退の地位に至ることのできる方法があるならば、 どうか、 わたしのためにこれを説かれよ。

【2】 ^答えていう。 そなたのいうようなことは、 *根こん機きの劣った弱い者のいうことで大きな志ではなく、 これは雄々しく堅固な志を持つ者のことばではない。 ^なぜかというと、 もし人が願いを起こし無上*仏ぶっ果かを求めようと欲して、 まだ不退の位を得ないならば、 その間は身命を惜しまず昼夜精しょう進じんして、 頭に付いた火を払い消すようにせねばならぬ。 ^¬助道¼ (菩提資糧論) の中に説くとおりである。

^菩薩がまだ不退の位に 至ることができない間は

いつも勤め励んで ちょうど頭の火を払うようにせねばならぬ

^重い任務を負うて 仏果を求めるのであるから

常に勤め励んで *懈け怠だいの心を起こしてはならぬ

^声聞や縁覚の果を 求めるような者は

ただ自己の利を成就するためにさえ いつも勤め励まねばならぬ

^まして*菩ぼ提だいを求めて みずからさとり人をも済さい度どするためには

この二乗の人よりも 億倍して精進せねばならぬ

 ^*大だい乗じょうを行ずる者には、 仏は次のように説かれてある。「*発願ほつがんして仏果を求めることは*三千さんぜん大千だいせん世せ界かいをもち挙げるよりも重い」と。 ^そなたが不退の位を得る法ははなはだむずかしく、 久しい間かかってようやく得ることができる。 もしすみやかに不退の位に至ることのできる易行の道があろうかというならば、 ^これはすなわち根機の劣った弱い者の言葉で、 すぐれた人、 堅固な志を持つ者のいうことではない。

 ^しかしながら、 そなたが、 もし必ずこの方法を聞きたいと思うならば、 今まさにこれを説くであろう。

【3】 ^仏法には量り知れない多くの門戸がある。 ^たとえば世間の道路に難しい道と易しい道とがあって、 陸路を歩いて行くのは苦しいが、 水路を船に乗って渡るのは楽しいようなものである。 ^菩薩の道もまたそのようである。 あるいはいろいろな行を積んで行くものもあり、 あるいは*信しん方便ほうべんの易い行ぎょうをもって速すみやかに不退転の位に至るものもある。

【4】 ^*偈げをもって説くとおりである。

^東方の善徳ぜんとく仏 南方の栴檀せんだん徳とく仏

西方の無む量明りょうみょう仏 北方の相徳そうとく仏

^東南の無憂むう徳とく仏 西南の宝ほう施せ仏

西北の華け徳とく仏 東北の三さん乗行じょうぎょう仏

^下方の明みょう徳とく仏 上方の広衆こうしゅ徳とく仏

これらの仏たちは いま現に十方におられる

^もし人がすみやかに 不退の位に至ろうと思うなら

よろしく恭く敬ぎょうの心をもって 仏の*名みょう号ごうを信じて称とのうべきである

【5】 ^もし菩薩がこの身において不退転の地位に至り、 ついに無上の仏果を成就しようと思うならば、 よろしくこの十方の仏たちを信じてその名号を称うべきである。 ^¬*宝月ほうがつ童どう子じ所問しょもん経ぎょう¼ の阿あ惟ゆい越おっ致ち品ぼんの中に説かれているとおりである。

^仏が宝月に告げたもう。「東方ここを去ること無量無辺不可思議*恒ごう河が沙しゃの仏土を過ぎたところに、 ^無憂むうと名づける世界がある。 ^その地は、 平坦であって*七宝しっぽうでできており、 *紫磨しま金こんの糸筋で縦横に道の境を区切っている。 宝樹がならんで荘しょう厳ごんとなり、 ^*地じ獄ごく・*畜ちく生しょう・*餓鬼がき・*阿あ修しゅ羅ら道およびいろいろの難処 (*八難はちなん処しょなど) がない。 ^浄らかで穢けがれがなく、 沙礫しゃれき・瓦が石せき・山陵やま・お阜か・深坑しんこう・幽壑たにがない。 天より常に華を雨ふらしてその地に布しいている。 ^今その世界に仏がおられる。 善徳*如来にょらい・*応おう供ぐ・正しょう遍へん知ち・明行みょうぎょう足そく・善逝ぜんぜい・世せ間けん解げ・無む上じょう士し・調じょう御ご丈じょう夫ぶ・天人てんにん師し・仏ぶつ・世せ尊そんと申しあげる。 ^大菩薩衆が恭敬してとり囲んでいる。 ^おすがたの色はかがやく大金山こんぜんのようであり、 珍しい宝の大きなあつまりのようである。 ^多くの*大だい衆しゅのために広く正しょう法ぼうを説きのべておられる。 ^その初めも中も後もよくととのい、 言葉は適切で、 義理をきわめ、 説かれるところは大乗ばかりで雑まじりけがなく、 清浄しょうじょうの徳をそなえ、 諸法のありのままにかなってあやまりがない。 何故なぜあやまりがないというのかといえば、 *地ち・水すい・火か・風ふうをあやまらず、 *欲界よくかい・色界しきかい・無む色しき界かいをあやまらず、 *色しき・受じゅ・想そう・行ぎょう・識しきをあやまらず、 それらのとおりに説かれるからである。

^宝月よ、 この仏が成仏せられてから六十億*劫こうを過ぎた。 またその仏の国は昼夜の別がない。 ただこの*閻えん浮ぶ提だいの日月年数をもってかの劫数を説くのである。 ^その仏の*光こう明みょうはいつも世界を照らし、 ^一たびの説法において無量無辺千万億*阿あ僧そう祇ぎの*衆しゅ生じょうをして*無む生しょう法忍ぼうにんに住せしめ、 この人数に倍して※初忍しょにん・第二・第三忍に住せしめる。 ^宝月よ、 その仏の*本願ほんがん力りきのゆえに、 もし他方の衆生が先の仏のみもとでいろいろの*善根ぜんごんを植えたならば、 この仏はただ光明をもってその身に触れて、 すなわち無生法忍を得させたもうのである。

^宝月よ、 もし善ぜん男なん子し・善ぜん女人にょにんでこの仏名を聞いてよく信受する者は、 すなわち不退の位を得る。 ^ほかの九方の仏の事もみなまたこのとおりである。」

 ^今まさに諸仏の名号および国土の名号を解説しよう。

^善徳とはその徳が淳じゅん善ぜんでただ安楽のみがある。 *諸天しょてん・*竜りゅう神じんの福徳があるいは衆生を悩ますようなのと異なる。

^栴檀徳とは、 南方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに歓かん喜ぎと名づける世界があって、 仏を栴檀徳という。 いま現にましまして法を説いておられる。 たとえば*栴檀せんだんが香って清涼しょうりょうなようである。 かの仏の名号が遠く聞えることは、 香りが流れるように、 衆生の*三毒さんどくの火熱を除いて清涼ならしめる。

^無量明仏とは、 西方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに善ぜん解げと名づける世界があって、 仏を無量明という。 いま現にましまして法を説いておられる。 その仏の身光および智慧は明らかに照らして無量無辺である。

^相徳仏とは、 北方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに不可ふか動どうと名づける世界があって、 仏を相徳という。 いま現にましまして法を説いておられる。 その仏の福徳が高く顕れていることは、 あたかも幢はたぼこの相のようである。

^無憂徳とは、 東南方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに月がつ明みょうと名づける世界があって、 仏を無憂徳という。 いま現にましまして法を説いておられる。 その仏の不思議な徳は、 多くの天人たちをして憂いなからしめる。

^宝施仏とは西南方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに衆相しゅそうと名づける世界があって、 仏を宝施という。 いま現にましまして法を説いておられる。 その仏は*無漏むろの*五ご根こん・*五ご力りき・*七覚しちかく・*八はっ正しょう道どうなどの宝をもって常に衆生に施される。

^華徳仏とは、 西北方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに衆音しゅおんと名づける世界があって、 仏を華徳という。 いま現にましまして法を説いておられる。 その仏のおすがたは妙なる*蓮れん華げのようで、 その徳は無量である。

^三乗行仏とは、 東北方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに安隠あんのんと名づける世界があって、 仏を三乗行という。 いま現にましまして法を説いておられる。 その仏は常に声聞の行、 縁覚の行、 いろいろの菩薩の行を説かれる。 ある人がいうには、 *上中下の法を説いて精進させるから三乗行と申しあげるのであると。

^明徳仏とは、 下方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに広大こうだいと名づける世界があって、 仏を明徳という。 いま現にましまして法を説いておられる。 明とは身の光明、 *智慧ちえの光明、 宝樹の光明をいう。 この三種の光明をもって常に世間を照らすのである。

^広衆徳とは、 上方ここを去る無量無辺恒河沙等の仏土を過ぎたところに衆月しゅがつと名づける世界があって、 仏を広衆徳という。 いま現にましまして法を説いておられる。 その仏の弟子の福徳が広大であるから広衆徳というのである。

^今この十方の仏は善徳仏を初めとし広衆徳仏を最後とする。 もし人が一心にその名号を称えるならば、 すなわち不退の位を得るであろう。

【6】 ^この偈に説くとおりである。

^もし 人あって この諸仏のみ名のいわれを聞き得たならば

すなわち無量の徳を得ることは 宝月のために説かれたとおりである

^わたしはこの諸仏を礼拝らいはいしたてまつる 今現に十方におられる

そのみ名を称える人は すなわち不退転を得る

^東方の無憂世界の 仏を善徳と申しあげる

おすがたは金山のようで み名の聞こえることほとりがない

^もし み名を聞く人は すなわち不退転を得る

わたしはいま合掌礼拝して 願わくは憂う悩のうを除かれることを

^南方の歓喜世界の 仏を栴檀徳と申しあげる

お顔の浄らかなこと満月のごとく 光明は量りあることがない

^よく多くの衆生の 三毒の熱悩を滅したもう

み名を聞けば不退を得る それゆえぬかずき礼らいしたてまつる

^西方の善世界の 仏を無量明と申しあげる

おん身の光も智慧も明らかで ほとりきわなく照らされる

^そのみ名を聞く人は すなわち不退転の位に至る

わたしは今ぬかずき礼したてまつる 願わくは生しょう死じをとこしえに断ちきることを

^北方の無動世界の 仏を相徳と申しあげる

身に多くの*相好そうごうをそなえて みずからを荘厳し

^多くの*魔まの怨敵をくだき 善く天・人たちを化け益やくされる

み名を聞けば不退を得る それゆえぬかずき礼したてまつる

^東南の月明世界に 無憂と申す仏がおられる

光明は日月にこえて 遇う者は憂悩を滅する

^いつも衆のために法を説き すべての心身の苦しみを除かれる

十方の諸仏は称讃せられる それゆえぬかずき礼したてまつる

^西南の衆相世界の 仏を宝施と申しあげる

常にいろいろの法宝をもって ひろく一切の者に施される

^諸天はぬかずき礼して その宝冠が仏の足下にある

わたしはいま五体をもって 宝世尊に*帰き命みょうし礼したてまつる

^西北の衆音世界の 仏を華徳と申しあげる

その世界に多くの宝樹があって 妙なる法音を説きのべる

^つねに七覚の華をもって 衆生を利益される

*白びゃく毫ごう相は月のようである わたしは今ぬかずき礼したてまつる

^東北の安隠世界は いろいろの宝でできている

仏を三乗行と申しあげる 無量の荘厳で身をかざり

^智慧の光は量りなく よく無明の闇を破り

衆生は憂い悩みがない それゆえぬかずき礼したてまつる

^上方の衆月世界は 衆宝で荘厳されてある

すぐれた徳をそなえた声聞衆や 菩薩たちの数は量り知られぬ

^これら聖しょう者じゃたちのかしらである仏を 広衆徳と申しあげる

悪魔たちの畏れるところである それゆえぬかずき礼したてまつる

^下方の広大世界の 仏を明徳と申しあげる

身相は妙であって *閻えん浮ぶ檀だん金山ごんぜんよりもすぐれている

^いつも智慧の日をもって いろいろの善根の華を開かせる

宝土ははなはだ広大である わたしは遥かにぬかずき礼したてまつる

^無数劫のいにしえに 海徳という仏がましました

いま現にましますこの仏たちは みなかの仏に従って願いを起こされた

^寿命は量りなく 光明はきわなく照らし

その国土ははなはだ清浄で み名を聞くならばかならず仏となろう

^それらの仏がいま現に十方にましまし *十じゅう力りきをまどかにそなえておられる

それゆえ人天中の最も尊い仏たちに ぬかずき礼したてまつる

【7】 ^問うていう。 ただこの十仏の名号を聞いて心に信ずれば不退転の位を得るのであるが、 さらにそのほかの仏や菩薩の名号によっても、 また不退転の位に至ることができるであろうか。

【8】 ^答えていう。 *阿弥陀あみだ仏ぶつなどの仏たちおよび多くの大菩薩たちのみ名を称えて一心に念ずれば、 また不退転を得ることは、 このとおりである。 阿弥陀仏などの仏たちもまた恭敬し礼拝してその名号を称うべきである。

【9】 ^今くわしく無む量りょう寿じゅ仏・^世自せじ在王ざいおう仏・師子しし意い仏・法ほう意い仏・梵相ぼんそう仏・世せ相そう仏・世せ妙みょう仏・慈悲じひ仏・世せ王おう仏・人王にんのう仏・^月徳がっとく仏・宝徳ほうとく仏・相徳そうとく仏・大相だいそう仏・殊蓋しゅがい仏・師子しし鬘まん仏・破無はむ明みょう仏・智華ちけ仏・多摩羅たまら跋ばつ栴檀せんだん香こう仏・持じ大だい功く徳どく仏・^雨う七宝しっぽう仏・超ちょう勇ゆう仏・離り瞋恨しんこん仏・大だい荘しょう厳ごん仏・無む相そう仏・宝蔵ほうぞう仏・徳とく頂ちょう仏・多伽羅たから香こう仏・栴檀せんだん香こう仏・蓮れん華げ香こう仏・^荘しょう厳ごん道どう路ろ仏・竜りゅう蓋がい仏・雨華うけ仏・散さん華げ仏・華け光こう明みょう仏・日音にちおん声じょう仏・蔽へい日月にちがつ仏・琉璃るり蔵ぞう仏・梵音ぼんのん仏・浄明じょうみょう仏・^金蔵こんぞう仏・須しゅ弥み頂ちょう仏・山王せんのう仏・音おん声じょう自じ在ざい仏・浄じょう眼げん仏・月がつ明みょう仏・如にょ須しゅ弥み山せん仏・日月にちがつ仏・得衆とくしゅ仏・華け王おう仏・^梵音ぼんのん説せつ仏・世せ主しゅ仏・師子しし行ぎょう仏・妙みょう法ほう意い師子吼ししく仏・珠宝しゅほう蓋がい珊さん瑚ご色しき仏・破痴はち愛闇あいあん仏・水月すいがつ仏・衆しゅう華げ仏・開かい智慧ちえ仏・持じ雑宝ぞうほう仏・^菩ぼ提だい仏・華け超出ちょうしゅつ仏・真しん瑠璃るり明みょう仏・蔽へい日にち明みょう仏・持じ大だい功く徳どく仏・得とく正しょう慧え仏・勇健ゆうごん仏・離り諂曲てんごく仏・除悪じょあく根栽こんさい仏・大香だいこう仏・^道歎どうたん仏・水香すいこう仏・海雲かいうん慧遊えゆ仏・徳とく頂ちょう華け仏・華け荘しょう厳ごん仏・日音にちおん声じょう仏・月がつ勝しょう仏・瑠璃るり仏・梵ぼん声じょう仏・光こう明みょう仏・^金蔵こんぞう仏・山せん頂ちょう仏・山王せんのう仏・音王おんのう仏・竜勝りゅうしょう仏・無む染ぜん仏・浄じょう面めん仏・月面がつめん仏・如須にょしゅ弥み仏・栴檀せんだん香こう仏・^威い勢せい仏・然灯ねんとう仏・難なん勝しょう仏・宝徳ほうとく仏・喜き音おん仏・光こう明みょう仏・竜勝りゅうしょう仏・離垢りく明みょう仏・師子しし仏・王王おうおう仏・^力りき勝しょう仏・華け園おん仏・無畏むい明みょう仏・香こう頂ちょう仏・普ふ賢げん仏・普華ふけ仏・宝相ほうそう仏を説こう。 ^これらの諸仏世尊は現に十方の清浄世界におられる。 みなその名を称え憶念おくねんせよ。

【10】^阿弥陀仏の*本願ほんがんはこのとおりである。「もし人あってわたしを念じて名を称え帰依きえすれば、 そのとき必ひつ定じょう (*正定しょうじょう聚じゅ) に入って、 ついに無上仏果を得る」と。 ^こういうわけであるから常に憶念すべきである。

【11】^偈をもって阿弥陀仏をほめたたえよう。

^はかりない智慧の光明に かがやくおん身は黄金の山のよう

わたしはいま身しん口意くいをもって 合掌し ぬかずき礼拝したてまつる

^金色の妙なる光明は あまねくあらゆる世界にゆきわたり

機類に随ってその色を示す それゆえぬかずき礼したてまつる

^もし 人が命終って かの国に生まるることを得たならば

すなわち量りなき徳をそなえる それゆえわたしは帰命したてまつる

^人がよくこのみ仏の はかりなき功徳を念ずれば

そのとき不退の位に定まる それゆえわたしは常に念じたてまつる

^かの浄土の人が迷いの世界に出て たとい いろいろの苦を受けるとしても

悪地獄に堕ちることはない それゆえ帰命し礼したてまつる

^もし 人かの国に生まれたならば とこしえに*三さん悪趣まくしゅや

阿修羅に堕ちない わたしは今帰命し礼したてまつる

^人天の身相は同じくて あたかも金山の頂のようである

いろいろのすぐれた所を集めている それゆえぬかずき礼したてまつる

^かの国に生まれたならば *天眼てんげん通つうや*天てん耳に通つうをそなえて

十方にあまねくさえぎられる所がない 聖中の尊である如来にぬかずきたてまつる

^その国のすべての人々は *神足じんそく通つうおよび*他た心しん通つう

また*宿命しゅくみょう通つうをそなえている それゆえ帰命し礼したてまつる

^かの国に生まれた者は 我執がなくまたものに執ずることがなく

彼此差別の心を起こさぬ それゆえぬかずき礼したてまつる

^三界の迷いを出て 目は蓮華のはなびらのよう

そのような声聞衆が無量である それゆえぬかずき礼したてまつる

^かの国のすべての衆生は その性質が柔和で

自然に*十じゅう善ぜんを行ずる 聖者たちの王である弥陀にぬかずきたてまつる

^善根より智慧を生ずる そういう人が無数である

人天の中の最もすぐれた方である それゆえわたしは帰命したてまつる

^もし 人が仏になろうと願って 心に阿弥陀仏を念ずれば

その時に応じて身を現わしたもう それゆえわたしは帰命したてまつる

^かの仏の本願力によって 十方の菩薩たちも来って

かの仏を供養し尊い法を聴く それゆえわたしはぬかずきたてまつる

^かの土の菩薩たちは あらゆる相好をそなえて

みずから身をかざる わたしはいま帰命し礼したてまつる

^かの諸大菩薩は 日日にちにちに三回ずつ

十方の仏を供養する それゆえぬかずき礼したてまつる

^もし 善根を積んで生れようとする 疑心の行者であれば華は開けず

本願を信ずる心の清浄な者は 華が開けて仏を見たてまつる

^十方の世界に現にまします仏たちは いろいろないわれを説いて

かの仏の功徳をほめていられる ゆえにわたしは今帰命し礼したてまつる

^その国土はすべての荘厳がととのい かのすべての天宮よりもすぐれている

功徳ははなはだ深厚である それゆえ仏足を礼したてまつる

^仏のみ足には*千輻せんぷく輪りんの相があり 柔らかで蓮華の色がある

見るものはみな歓喜する ぬかずいて仏足を礼したてまつる

^眉間の白毫の光は あたかも浄らかな月のようで

お顔の輝きを増す ぬかずいて仏足を礼したてまつる

^*因いん位ににあって仏果を求められる時 多くの尊い行を修めたもうた

諸経に説かれてあるとおりである ぬかずき礼したてまつる

^かの仏の御説法は すべての罪根を除かれる

仏のよきお言葉は利益する所が多い わたしは今ぬかずき礼したてまつる

^このよきお言葉をもって いろいろの楽に執着しゅうじゃくする病を救いたもう

すでに済度し今なお済度しておられる それゆえぬかずき礼したてまつる

^人天の中の最も尊いお方である 諸天がぬかずき礼拝し

七宝の冠で仏のみ足をなでる それゆえわたしは帰命したてまつる

^すべての賢聖たち および多くの人天たちは

みなともに帰命される それゆえわたしもまた礼したてまつる

^かの*八道はちどうの船ふねをもって よくこえがたい迷いの世界を済度する

みずから仏となりあらゆる人を救われる ゆえにわたしは自在力の仏を礼したてまつる

^多くの仏たちが量り知られぬながい年時とき かの仏の功徳をほめたたえても

なおほめ尽くすことはできぬ ゆえに清浄なる徳を具そなえた仏を帰命したてまつる

^わたしも今このように かの仏のはかりない徳をほめたてまつる

この福徳の因縁をもって 願わくは み仏よ 常にわたしを護念せられることを

^わたしは今生と前世における あらゆる福徳によって

願わくは わたしは阿弥陀仏の浄土に生まれて 心いつも清浄なるを得たい

^この福徳の因縁をもって 獲たところの尊い功徳を

願わくは すべての衆生のたぐいにも みなまたことごとく得させたい

【12】^また、 過去の毘婆尸びばし仏・尸棄しき仏・毘び首しゅ婆ば伏ふく仏・拘楼くる珊提さんだい伽か仏・迦那迦かなか牟尼むに仏・迦か葉しょう仏・*釈しゃ迦か牟尼むに仏ぶつおよび未来世の*弥み勒ろく仏ぶつを念じ、 みな憶念し礼拝せよ。 偈をもって称讃しよう。

^毘婆尸世尊は 無憂むう道樹どうじゅの下で

すべての法を知る智慧と 微み妙みょうのもろもろの功徳を成就せられた

^まさしく世間を観じて その心は迷いを離れたもうた

わたしは今五体をもって 無む上じょう尊そんに帰命したてまつる

^尸棄仏世尊は 邠ふん他利たり道場樹の

下もとに坐されて 菩提を成就せられた

^おすがたの光は比べものがなく 輝く紫金山のようである

わたしは今みずから *三界さんがいの無上尊に帰命したてまつる

^毘首婆世尊は 娑しゃ羅ら樹の下に坐して

一切の妙なる智慧に おのずから通達することができたもうた

^すべての人天の中において 第一で比べものがない

それゆえわたしは 一切いっさい最さい勝しょう尊そんに帰命したてまつる

^迦求かぐ村そん大仏は 無上菩提を

さとられたのである 尸利しり沙しゃ樹の下で

^大智慧を成就し ながく生死をのがれたもうた

わたしはいま 第一だいいち無比むひ尊そんに帰命し礼したてまつる

^迦那かな含ごん牟尼むに 大聖無上尊は

優う曇どん鉢ば樹の下で 仏果を成就せられた

^すべての法に通達すること 量りなくほとりがない

それゆえわたしは 第一だいいち無む上じょう尊そんに帰命したてまつる

^迦葉仏世尊は おん眼が二つの蓮華のようである

弱拘にく楼陀るだ樹の下で 仏果を成就せられた

^三界に畏れるところなく 歩まれるすがたは象王のようである

わたしは今みずから 無む極ごく尊そんに帰命しぬかずきたてまつる

^釈迦牟尼仏は 阿あ輸しゅ陀だ樹の下で

魔の怨敵を降伏し 無上のさとりを成就せられた

^お顔は満月のごとく 浄らかで少しの汚れもましまさぬ

わたしはいま 勇ゆう猛みょう第一だいいち尊そんにぬかずき礼したてまつる

^当来の世に弥勒仏は 那伽なが樹の下に坐して

広大の心を成就せられ 自然に仏果を得たもう

^功徳ははなはだ堅く これよりすぐれた者はない

それゆえわたしはみずから 無比の妙法王に帰したてまつる

【13】^また、 徳とく勝しょう仏・普ふ明みょう仏・勝敵しょうちゃく仏・王相おうそう仏・相王そうおう仏・無む量りょう功く徳どく明みょう自じ在王ざいおう仏・薬王やくおう無礙むげ仏・宝ほう遊ゆ行ぎょう仏・宝ほう華け仏・安あん住じゅう仏・山王せんのう仏がおられる。 これらの仏たちをもまた*憶念おくねんし恭く敬ぎょうし礼拝すべきである。 偈をもって称讃しよう。

^無む勝しょう世界の中に仏まします 徳勝と申しあげる

わたしは今仏及び法宝・僧宝に ぬかずき礼したてまつる

^随ずい意喜いき世界に仏まします 普明と申しあげる

わたしは今みずから 仏及び法宝・僧宝に帰命したてまつる

^普ふ賢げん世界の中に仏まします 勝敵と申しあげる

わたしは今仏及び法宝・僧宝に 帰命し礼したてまつる

^善ぜん浄集じょうじゅう世界に仏まします 王おう幢相どうそうと申しあげる

わたしは今仏及び法宝・僧宝に ぬかずき礼したてまつる

^離垢りく集しゅう世界に 無量功徳明仏がおられる

十方において自在にはたらきたもう それゆえぬかずき礼したてまつる

^不ふ誑おう世界の中に 無礙薬王仏がまします

わたしは今仏及び法宝・僧宝に ぬかずき礼したてまつる

^今こん集じゅう世界の中に仏まします 宝遊行と申しあげる

わたしは今仏及び法宝・僧宝に ぬかずき礼したてまつる

^美み音おん世界には 宝華安あん立りゅう山王せんのう仏がおられる

わたしは今仏及び法宝・僧宝に ぬかずき礼したてまつる

^今この仏たちは 東方の世界におられる

わたしは恭敬の心をもって 讃嘆し礼拝したてまつる

^願わくは この仏たち 深く慈悲を加えたもうて

わたしの前にすがたを現わし みなまのあたり見せしめられることを

【14】^また、 次に過去・未来・現在の諸仏をことごとく総じて念じ恭敬し礼拝せよ。 偈をもって称讃しよう。

^過去世の諸仏は 多くの魔の怨敵を降伏し

大智慧力をもって 広く衆生を利益された

^かの時の衆生たちは 心をこめてみな供養し

恭敬し称揚した それゆえぬかずき礼したてまつる

^現に十方の世界におられる 計りしられぬ仏たちは

その数 恒河の砂よりもこえて 無量無辺である

^すべての衆生をあわれみ 常に妙法を説いておられる

それゆえわたしは恭敬し 帰命しぬかずき礼したてまつる

^未来世の諸仏は おすがたは金山のごとく

光明は量りなく あらゆる相好をおのずから飾る

^世に出て衆生を済度せられ そして涅槃に入られるであろう

こういう仏たちを わたしはいまぬかずき礼したてまつる

【15】^また、 多くの大菩薩を憶念せよ。 ^善ぜん意い菩薩・善眼ぜんげん菩薩・聞月もんがつ菩薩・尸毘しび王おう菩薩・一切いっさい勝しょう菩薩・知ち大だい地じ菩薩・大薬だいやく菩薩・鳩く舎しゃ菩薩・阿離あり念ねん弥み菩薩・頂生ちょうしょう王おう菩薩・^喜き見けん菩薩・鬱うっ多羅たら菩薩・和和わわ檀だん菩薩・長ちょう寿王じゅおう菩薩・羼提せんだい菩薩・韋い藍らん菩薩・睒せん菩薩・月蓋がつがい菩薩・明みょう首しゅ菩薩・法首ほうしゅ菩薩・^法ほう利り菩薩・弥み勒ろく菩薩である。 ^また、 金剛こんごう蔵ぞう菩薩・金剛こんごう首しゅ菩薩・無垢むく蔵ぞう菩薩・無垢むく称しょう菩薩・除じょ疑ぎ菩薩・無垢むく徳とく菩薩・網もう明みょう菩薩・無む量明りょうみょう菩薩・^大だい明みょう菩薩・無む尽じん意い菩薩・意い王おう菩薩・無む辺へん意い菩薩・日音にっとん菩薩・月音がっとん菩薩・美み音おん菩薩・美み音おん声じょう菩薩・大だい音おん声じょう菩薩・堅けん精しょう進じん菩薩・^常じょう堅けん菩薩・堅発けんぽつ菩薩・堅荘けんそう菩薩・常じょう悲ひ菩薩・常じょう不ふ軽きょう菩薩・法ほう上じょう菩薩・法ほう意い菩薩・法ほう喜き菩薩・法首ほうしゅ菩薩・法ほう積しゃく菩薩・^発ほっ精しょう進じん菩薩・智慧ちえ菩薩・浄じょう威い徳とく菩薩・那羅なら延えん菩薩・善ぜん思し惟ゆい菩薩・法ほう思し惟ゆい菩薩・跋ばつ陀だ波羅はら菩薩・法益ほうやく菩薩・高徳こうとく菩薩・師子しし遊ゆ行ぎょう菩薩・^喜き根こん菩薩・上じょう宝月ほうがつ菩薩・不虚ふこ徳とく菩薩・竜りゅう徳とく菩薩・文殊もんじゅ師利しり菩薩・妙みょう音おん菩薩・雲音うんのん菩薩・勝しょう意い菩薩・照明しょうみょう菩薩・勇衆ゆうしゅ菩薩・^勝しょう衆しゅ菩薩・威儀いぎ菩薩・師子しし意い菩薩・上じょう意い菩薩・益やく意い菩薩・増益ぞうやく菩薩・宝ほう明みょう菩薩・慧え頂ちょう菩薩・楽ぎょう説せつ頂ちょう菩薩・有う徳とく菩薩・^観かん世自せじ在王ざいおう菩薩・陀羅尼だらに自じ在ざい王おう菩薩・大だい自じ在王ざいおう菩薩・無憂むう徳とく菩薩・不虚ふこ見けん菩薩・離り悪道あくどう菩薩・一切いっさい勇健ゆうごん菩薩・破は闇あん菩薩・功く徳宝どくほう菩薩・華威けい徳とく菩薩・^金こん瓔珞ようらく明みょう徳とく菩薩・離り諸しょ陰蓋おんがい菩薩・心しん無礙むげ菩薩・一切いっさい行浄ぎょうじょう菩薩・等見とうけん菩薩・不ふ等見とうけん菩薩・三昧さんまい遊戯ゆげ菩薩・法ほう自じ在ざい菩薩・法相ほうそう菩薩・明荘みょうしょう厳ごん菩薩・^大だい荘しょう厳ごん菩薩・宝ほう頂ちょう菩薩・宝ほう印手いんしゅ菩薩・常じょう挙こ手しゅ菩薩・常じょう下げ手しゅ菩薩・常じょう惨さん菩薩・常じょう喜き菩薩・喜き王おう菩薩・得とく弁才べんざい音おん声じょう菩薩・虚こ空くう雷音らいおん菩薩・^持じ宝ほう炬こ菩薩・勇ゆう施せ菩薩・帝網ていもう菩薩・馬め光こう菩薩・空くう無礙むげ菩薩・宝ほう勝しょう菩薩・天王てんのう菩薩・破魔はま菩薩・電徳でんとく菩薩・自じ在ざい菩薩・^頂ちょう相そう菩薩・出しゅっ過か菩薩・師子吼ししく菩薩・雲蔭うんのん菩薩・能のう勝しょう菩薩・山相せんそう幢王どうおう菩薩・香象こうぞう菩薩・大だい香象こうぞう菩薩・白びゃく香象こうぞう菩薩・常精じょうしょう進じん菩薩・^不休ふく息そく菩薩・妙生みょうしょう菩薩・華け荘しょう厳ごん菩薩・観かん世ぜ音おん菩薩・得とく大勢だいせい菩薩・水王すいおう菩薩・山王せんのう菩薩・帝網ていもう菩薩・宝ほう施せ菩薩・破魔はま菩薩・^荘しょう厳国ごんこく土ど菩薩・金髻こんけい菩薩・珠髻しゅけい菩薩などの多くの大菩薩がおられる。 ^みな憶念し恭敬し礼拝して不退の位を求めるべきである。

 

初忍・第二・第三忍 ¬無量寿経¼ に説く音響おんこう忍にん・柔順にゅうじゅん忍にん・無む生しょう法忍ぼうにんと見る説、 ¬仁王にんのう経きょう¼ に説く伏忍ぶくにん・信忍しんにん・順じゅん忍にん・無む生しょう忍にん・寂じゃく滅めつ忍にんの五忍の前三と見る説などがある。
上中下の法 菩薩・縁覚・声聞の教え。