1429◎一いち0005枚まい起き請しょう文もん

*源空げんくう述じゅつ

 

◎○もろこし (中国)・わが朝ちょうに、 もろもろ​の智ち者しゃ達たちの*沙汰さたし​まうさ​るる*観念かんねんの念ねんにも​あらず。 また、 学文がくもんを​して*念ねんの心こころを悟さとり​て申もうす念仏ねんぶつにも​あらず。 ただ往おう生じょう極楽ごくらくの​ため​には南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつと申もうし​て、 疑うたがいなく往おう生じょうする​ぞ​と*思おもひとり​て申もうす​ほか​には別べつの子し細さい候そうらは​ず。

◇ただし三心さんしん・四し修しゅと申もうす​こと​の候そうろふ​は、 みな決けつ定じょうし​て南無なも阿あ弥陀みだ仏ぶつにて往おう生じょうする​ぞ​と思おもふ​うち​に篭こもり候そうろふ​なり。

◇*この​ほか​に​おくふかき​こと​を存ぞんぜ​ば、 二に尊そんの​あはれみ​に​はづれ、 本願ほんがんに​もれ候そうろふ​べし。 念仏ねんぶつを信しんぜ​ん人ひとは、 たとひ*一代いちだいの法ほうを​よくよく学がくす​とも、 *一文いちもん不知ふちの愚ぐ鈍どんの身みに​なし​て、 *尼あま入にゅう道どうの無智むちの​ともがら​に​おなじく​して、 智ち者しゃの​ふるまひ​を​せず​して、 ただ一向いっこうに念仏ねんぶつす​べし。 *為証以両手印

 浄じょう土ど宗しゅうの安心あんじん・起き行ぎょう、 この一いっ紙しに至し極ごくせ​り。 源空げんくうが所存しょぞん、 この​ほか​に​まつたく別べつ義ぎを存ぞんぜ1430ず。 滅めつ後ごの邪じゃ義ぎを​ふせが​んがため​に、 所存しょぞんを記しるし​をはり​ぬ。

  *建けん暦りゃく二に年ねん正しょう月がつ二に十じゅう三日さんにち

源空げんくう (花押)

 

底本は京都府金戒光明寺蔵伝源空聖人自筆本ˆ浄聖全と同一ˇ。
観念の念 観念の念仏、 すなわち阿弥陀仏の相好そうごう功く徳どくを観ずること。 口称念仏に対する。
念の心を悟りて 念仏の功徳や意味を詳しく知って。
思ひとりて 思いさだめて。
このほかに… 念仏して往生すると信じること以外に、 奥深いことを存知するなら。
一代の法 釈尊が一生の間に説いた教法。
尼入道 尼とは女性の出家者を指すが、 ここでは在俗生活のまま髪をおろして仏門に入った女性をいう。 入道は在俗生活のまま剃髪して仏門に入った男性をいう。
為証以両手印 大事の証文であるから両手の印を押したという意。 原本には本文の上に両手の印が押してある。