二十二(577)、 一百四十五箇条問答 一

▲一いっ百ぴゃく四し十じゅう五ご箇か条じょう問答もんどう 第だい二に十じゅう二に

一

一 ふるき堂塔どうとうを修しゅう理りして候そうははんをば、 供く養ようし候そうろうべきか。

答こたう。 かならず供く養ようすべしといふ事ことも候そうらはず。 又また供く養ようして候そうらはんも、 あしき事ことにも候そうらはず。 功く徳どくにて候そうらへば、 又また供く養ようせねばとてつみのえ、 あしき事ことにては候そうらはず。

二

一 ほとけの開眼かいげんと供く養ようとは、 一ひとつ事ことにて候そうろうか。

答こたう。 開眼かいげんと供く養ようとは、 別べつの事ことにて0578候そうろうべきを、 おなじ事ことにしあひて候そうろう也なり。 開眼かいげんと申もうすは、 本体ほんたいは仏ぶっ師しがまなこをいれ、 ひらきまいらせ候そうろうを申もうし候そうろう也なり。 これをば、 事じの開眼かいげんと申もうし候そうろう也なり。 つぎに僧そうの仏眼ぶつげんの真言しんごんをもてまなこをひらき、 大日だいにちの真言しんごんをもてほとけの一切いっさいの功く徳どくを成じょう就じゅし候そうろうをば、 理りの開眼かいげんと申もうし候そうろう也なり。 つぎに供く養ようといふは、 ほとけに花け香こう・仏ぶつ供ぐ・御おんあかしなんどをもまいらせ、 さらぬたからをもまいらせ候そうろうを、 供く養ようとは申もうし候そうろう也なり。

三

一 この真如しんにょ観かんはし候そうろうべき事ことにて候そうろうか。

答こたう。 これは恵え心しんのと申もうして候そうらへども、 わろき物ものにて候そうろう也なり。 おほかた真如しんにょ観かんをば、 われら衆しゅ生じょうはえせぬ事ことにて候そうろうぞ、 往おう生じょうのためにもおもはれぬことにて候そうらへば、 无む益やくに候そうろう。

四

一 又またこれに計け算さんして候そうろうところは、 何事なにごともむなしと観かんぜよと申もうして候そうろう。 空観くうかんと申もうし候そうろうは、 これにて候そうろうな。 されば観かんじ候そうろうべきやうは、 たとへばこの世よのことを執着しゅうじゃくして思おもふまじきとおしへて候そうろうと見みへて候そうらへば、 おほやう御ごらんのためにまいらせ候そうろう。

答こたう。 これはみな理り観かんとて、 かなはぬ事ことにて候そうろう也なり。 僧そうのとしごろならひたるだにもえせず、 まして女にょう房ぼうなんどのつやつや案あ内ないもしらざらんは、 いかにもかなふまじく候そうろう也なり。 御おんたづねまでも无む益やくに候そうろう。

五

この七仏しちぶつの名みょう号ごうとなふべき様ようとして、 人ひとのたびて候そうろうまゝに信しんじ候そうらへば、 つみはう0579せ候そうろうべきか。 なに事ごともそれよりおほせ御おん候そうろう事ことは、 たのもしく候そうらひて、 かやうに申もうし候そうろう。

答こたう。 これさなくとも候そうらいなん。 念仏ねんぶつにこれらのつみのうせ候そうろうまじくはこそ候そうらはめ。

六

一 一文いちもんの師しをもおろかに申もうし候そうらへば、 習ならひたる物ものの冥みょう加がなしと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 師しの事ことはおろかならず候そうろう。 恩おんのなかにふかき事こと、 これにすぎ候そうらはず。

七

一 心こころを一ひとつにして、 心こころよくなをり候そうらはずとも、 何事なにごとをおこなひ候そうらはずとも、 念仏ねんぶつばかりにて浄じょう土どへはまいり候そうろうべきか。

答こたう。 心こころのみだるゝは、 これ凡ぼん夫ぶの習ならひにて、 ちからおよばぬ事ことにて候そうろう。 たゞ心こころを一ひとつにして、 よく御おん念仏ねんぶつせさせ給たまひ候そうらはゞ、 そのつみを滅めっして往おう生じょうせさせ給たまふべき也なり。 その妄念もうねんよりもおもきつみも、 念仏ねんぶつだにし候そうらへば、 うせ候そうろう也なり。

八

一 経きょうの陀羅だら尼には、 潅かん頂じょうの僧そうにうけ候そうろうべきか。

答こたう。 ¬法華ほけ経きょう¼ のはくるしからず、 潅かん頂じょうの僧そうのうけさする陀羅だら尼には別べつの事こと、 それはおぼしめしよるな。

九

一 ¬普ふ賢げん経ぎょう¼ (観普賢経意) に、 「ほとけの母ははを念ねんずべし」 と申もうし候そうろうは。

答こたう。 いざおぼへず。

一〇

一 百ひゃく日にちのうちの赤あか子ごの不ふ浄じょうかゝりたるは、 物ものまうでにはゞかりありと申もうしたるは。

答こたう。 百ひゃく日にちのうちのあか子ごの不ふ浄じょうくるしからず。 なにもきたなき物もののゝつきて候そうらはんは0580、 きたなくこそ候そうらへ。 赤あか子ごにかぎるまじ。

一一

一 念仏ねんぶつの百ひゃく万遍まんべん、 百ひゃく度ど申もうしてかならず往おう生じょうすと申もうして候そうろうに、 いのちみじかくてはいかゞし候そうろうべき。

答こたう。 これもひが事ごとに候そうろう。 百ひゃく度ど申もうしてもし候そうろう、 十じゅう念ねん申もうしてもし候そうろう、 又また一念いちねんにてもし候そうろう。

一二

一 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ 十じゅう万まん巻かんよみ候そうろうべしと申もうして候そうろうは、 いかに。

答こたう。 これもよみつべからんにとりての事ことに候そうろう。 たゞつとめをたかくつみ候そうらはんれうにて候そうろう。

一三

一 日ひの所しょ作さは、 かならずかずをきわめ候そうらはずとも、 よまれんにしたがひてよみ、 念仏ねんぶつも申もうし候そうろうべきか。

答こたう。 かずをさだめ候そうらはねば懈け怠だいになり候そうらへば、 かずをさだめたるがよき事ことにて候そうろう。

一四

一 にら・き・ひる・しゝをくひて、 かうせ候そうらはずとも、 つねに念仏ねんぶつは申もうし候そうろうべきやらん。

答こたう。 念仏ねんぶつはなにゝもさはらぬ事ことにて候そうろう。

一五

一 六斎ろくさいに時ときをし候そうらはんには、 かねて精しょう進じんをし、 いかけをし、 きよき物ものをきてし候そうろうべきか。

答こたう。 かならずさ候そうらはずとも候そうらいなん。

一六

一 一いち七日しちにち・二に七日しちにちなんど服薬ぶくやくし候そうらはんに、 六斎ろくさいの日ひにあたりて候そうらはんをば、 いかゞし候そうろうべき。

答こたう。 それちからおよばぬ事ことにて候そうろう。 さればとて罪つみにては候そうろうまじ。

0581一七

一 六斎ろくさいは一いっ生しょうすべく候そうろうか、 なんねんすべく候そうろうぞ。

答こたう。 それも御おん心こころによるべき事ことにて候そうろう。 いくらすべしと申もうす事ことは候そうらはず。

一八

一 念仏ねんぶつをば、 日ひの所しょ作さにいくらばかりあてゝか申もうし候そうろうべき。

答こたう。 念仏ねんぶつのかずは、 一万いちまん遍べんをはじめにて、 二に万まん・三万さんまん・五ご万まん・六万ろくまん、 乃ない至し十じゅう万まんまで申もうし候そうろう也なり。 このなかに御おん心こころにまかせておぼしめし候そうらはん程ほどを、 申もうさせおはしますべし。

一九

一 ¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ をば、 一日いちにちになん巻かんばかりあてゝかよみ候そうろうべき。

答こたう。 「¬阿あ弥陀みだ経きょう¼ は、 ちかひて一いっ生しょう中ちゅうに十じゅう万まん巻かんをだにもよみまいらせ候そうらいぬれば、 決けつ定じょうして往おう生じょうす」 (観念法門意) と、 善導ぜんどう和か尚しょうのおほせられて候そうろう也なり。 毎日まいにちに十じゅう五ご巻かんづゝよめば、 二に十じゅう年ねんに十じゅう万まん巻かんにみち候そうろう也なり。 三さん十巻じっかんづゝよめば、 十じゅう年ねんにみち候そうろう也なり。

二〇

一 五ご色しきのいとは、 ほとけには、 ひだりにとおほせ候そうらいき。 わがてには、 いづれのかたにていかゞひき候そうろうべき。

答こたう。 左右さうの手てにてひかせ給たまふべし。

二一

一 仏ぶつのなをもかき、 貴たっとき事ことをもかきて候そうろうを、 あだにせじとてやき候そうろうは罪つみのうるに、 誦文じゅもんをしてやくと申もうし候そうろうは、 いかゞ候そうろうべき。

答こたう。 さる反故ほごやき候そうらはんに、 何なに条じょうの誦文じゅもんか候そうろうべき。 おほかたは法文ほうもんをばうやまふ事ことにて候そうらへば、 もしやかんなんどせられ候そうらはゞ、 きよきところにてやかせ給たまふべし。

0582二二

一 戒かいうけ候そうろう時とき、 和か尚しょうとなり給たまへ、 阿あ闍じゃ梨りとなり給たまへと申もうす事ことの候そうろう、 心こころえ候そうらはず。 なにといふ事ことにて候そうろうぞ。

答こたう。 和か尚しょうと申もうし候そうろうは、 戒かいうくる時ときに法門ほうもんならひたる師しを申もうし候そうろう也なり。 阿あ闍じゃ梨りと申もうし候そうろうは、 まさしく戒かいをさづくる師しにて候そうろう也なり。 これをば羯かつ磨ま阿あ闍じゃ梨りと申もうし候そうろう也なり。

二三

一 時ときし候そうろうは功く徳どくにて候そうろうやらん。 かならずゝべき事ことにて候そうろうやらん。

答こたう。 時ときは功く徳どくうる事ことにて候そうろう也なり。 六斎ろくさいの御時おんときぞ、 さも候そうらひぬべき。 又また御おん大だい事じにて御おんやまひなんどもおこらせおはしましぬべく候そうらはゞ、 さなくとも、 たゞ御おん念仏ねんぶつだにもよくよく候そうらはゞ、 それにて生しょう死じをはなれ、 浄じょう土どにも往おう生じょうせさせおはしまさんずる事ことは、 これによるべく候そうろう。

二四

一 臨りん終じゅうのをり、 阿あ弥陀みだの定じょう印いんなんどをならひて、 ひかへ候そうろうやらん。 たゞさ候そうらはずとも、 左右さうの手てにてひかへ候そうろうやらん。

答こたう。 かならず定じょう印いんをむすぶべきにて候そうらはず、 たゞ合がっ掌しょうを本体ほんたいにて、 そのなかにひかへられ候そうろうべし。

二五

一 ちかくてかならずしも見みまいらせ候そうらはねども、 とをらかにてひかへ候そうろうやらん。

答こたう。 とをくもちかくも、 便びん宜ぎによるべく候そうろう。 いかなるもくるしみ候そうらはず。

二六

一 かならずほとけを見み、 いとをひかへ候そうらはずとも、 われ申もうさずとも人ひとの申もうさん念ねん0583仏ぶつをきゝても、 死しに候そうらはゞ浄じょう土どには往おう生じょうし候そうろうべきやらん。

答こたう。 かならずいとをひくといふ事こと候そうらはず。 ほとけにむかひまひらせねども、 念仏ねんぶつだにもすれば往おう生じょうし候そうろう也なり、 又またきゝてもし候そうろう。 それはよくよく信心しんじんふかくての事ことに候そうろう。

二七

一 ながく生しょう死じをはなれ三界さんがいにむまれじとおもひ候そうろうに、 極楽ごくらくの衆しゅ生じょうとなりても、 又またその縁えんつきぬればこの世よにむまると申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。 たとひ国王こくおうともなり、 天てん上じょうにもむまれよ、 たゞ三界さんがいをわかれんとおもひ候そうろうに、 いかにつとめおこなひてか、 返かえり候そうらはざるべき。

答こたう。 これもろもろのひが事ごとにて候そうろう。 極楽ごくらくへひとたびむまれ候そうらいぬれば、 ながくこの世よに返かえる事こと候そうらはず、 みなほとけになる事ことにて候そうろう也なり。 たゞし人ひとをみちびかんためには、 ことさらに返かえる事ことも候そうろう。 されども生しょう死じにめぐる人ひとにては候そうらはず。 三界さんがいをはなれ極楽ごくらくに往おう生じょうするには、 念仏ねんぶつにすぎたる事ことは候そうらはぬ也なり。 よくよく御おん念仏ねんぶつの候そうろうべき也なり。

二八

一 女にょう房ぼうの聴ちょう聞もんし候そうろうに、 戒かいをたもたせ候そうろうをやぶり候そうらはんずればとて、 たもつとも申もうし候そうらはぬは、 いかゞ候そうろうべき。 たゞ聴ちょう聞もんのにわにては、 一いち時じもたもつと申もうし候そうろうがめでたき事ことと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 これはくるしく候そうらはず。 たとひのちにやぶれども、 その時ときたもたんとおもふ心こころにてたもつと申もうすは、 よき事ことにて候そうろう。

0584二九

一 仏ぶつの薄はくをおして、 又また供く養ようし候そうろうか。

答こたう。 さ候そうらはずとも。

三〇

一 所しょ作さをかきて人ひとにし入いれさせ候そうろうは、 いかゞ候そうろうべき。

答こたう。 さなくとも候そうらひなむ。

三一

一 巻かん経きょうを草そう子しにたゝむは、 罪つみと申もうし候そうろうはいかゞ候そうろうべき。

答こたう。 つみえぬ事ことにて候そうろう。

三二

一 ほとけに具ぐする経きょうを、 とりはなちて人ひとにもたぶは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 ひろむるは功く徳どくにて候そうろう。

三三

一 一いち部ぶとある経きょう、 一巻いっかんづゝとりはなちてよまんは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 つみにても候そうらはず。

三四

一 ほとけに厨子ずしをさしてすゑまいらせては、 供く養ようすべく候そうろうか。

答こたう。 一切いっさいあるまじ。

三五

一 不ふ軽きょうをおがむ事ことし候そうろうべきか。

答こたう。 このごろの人ひとの、 え心こころえぬ事ことにて候そうろう也なり。

三六

一 七歳しちさいの子こしにて、 いみなしと申もうし候そうろうはいかに。

答こたう。 仏ぶっ教きょうにはいみといふ事ことなし。 世せ俗ぞくに申もうしたらんやうに。

三七

一 仏ぶつににかはを具ぐし候そうろうが、 きたなく候そうろう。 いかゞし候そうろうべき。

答こたう。 ま事ことにきたなけれども、 具ぐせではかなふまじければ。

三八

一 尼あまの服薬ぶくやくし候そうろうは、 わろく候そうろうか。

答こたう。 やまひにくふはくるしからず、 たゞはあ0585し。

三九

一 父母ぶものさきに死しぬるは、 つみと申もうし候そうろうはいかに。

答こたう。 穢土えどのならひ、 前ぜん後ごちからなき事ことにて候そうろう。

四〇

一 いきてつくり候そうろう功く徳どくはよく候そうろうか。

答こたう。 めでたし。

四一

一 人ひとのまぼりをえて候そうらはんは、 供く養ようし候そうろうべきか。

答こたう。 せずともくるしからず。

四二

一 わゝくに物ものくるゝは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 つみにて候そうろう。

四三

一 経きょうをして供く養ようせずとも、 くるしからず候そうろうか。

答こたう。 たゞよむ。

四四

一 経きょう千せん部ぶよみては、 供く養ようし候そうろうべきか。

答こたう。 さも候そうろうまじ。

四五

一 懺さん悔げの事こと、 幡ばんや花け鬘まんなんどかざり候そうろうべきか。

答こたう。 されでも、 たゞ一心いっしんぞ大切たいせつに候そうろう。

四六

一 花け香こうをほとけにまいらせ候そうろう事こと。

答こたう。 あか月つきは供く養よう法ほうにかならずまいらせ候そうろう。 たゞは、 はなかめにさし、 ちらしても供く養ようすべし。 香こうはかならずたくべし。 便たよりあしくは、 なくとも。

四七

一 経きょうをば、 僧そうにうけ候そうろうべきか。

答こたう。 われとよみつべくは、 僧そうにうけずとも。

四八

一 聴ちょう聞もん・ものまうでは、 かならずし候そうろうべきか。

答こたう。 せずとも。 中々なかなかわろく候そうろう。 し0586づかにたゞ御おん念仏ねんぶつ候そうらへ。

四九

一 神かみに後世ごせ申もうし候そうろう事こと、 いかむ。

答こたう。 仏ぶつに申もうすにはすぐまじ。

五〇

一 説せっ教きょう師しは、 つみふかく候そうろうか。 又また妻めにならん物ものも、 つみふかしと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 本体ほんたいは功く徳どくうべく候そうろうに、 末まっ世せのはつみえつべし。 妻めにならんものは、 つみ。

五一

一 麝香じゃこう・丁ちょう子しをもち候そうろうは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 かをあつむるは、 つみ。

五二

一 妻め、 おとこに経きょうならふ事こと、 いかゞ候そうろうべき。

答こたう。 くるしからず。

五三

一 還俗げんぞくのものに目めを見みあはせずと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 さまでとかず、 ひが事ごと。

五四

一 還俗げんぞくを心こころならずして候そうらはんは、 いかに。

答こたう。 あさくや。

五五

一 神仏しんぶつへまいらんに、 三日みっか・一日いちにちの精しょう進じん、 いづれかよく候そうろう。

答こたう。 信しんを本ほんにす。 いくかと本説ほんせつなし、 三日みっかこそよく候そうらはめ。

五六

一 歌うたよむは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 あながちにえ候そうらはじ。 たゞし罪つみもえ、 功く徳どくにもなる。

五七

一 さけのむは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 ま事ことにはのむべくもなけれども、 この世よのな0587らひ。

五八

一 魚さかな・鳥とり・鹿しかは、 かはり候そうろうか。

答こたう。 たゞおなじこと。

五九

一 尼あまになりて百ひゃく日にち精しょう進じんは、 よく候そうろうか。

答こたう。 よし。

六〇

一 仏ぶつつくりて、 経きょうはかならず具ぐし候そうろうべきか。

答こたう。 かならず具ぐすべしとも候そうらはず、 又また具ぐしてもよし。

六一

一 功く徳どくは身みのたふるほどゝ申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 沙汰さたにおよび候そうらはず、 ちからのたふるほど。

六二

一 経きょうと仏ぶつと、 かならず一いち度どにすゑ候そうろうか。

答こたう。 さも候そうらはず、 ひとつゞつも。

六三

一 ¬錫杖しゃくじょう¼ はかならず誦じゅすべきか。

答こたう。 さなくとも、 そのいとまに念仏ねんぶつ一遍いっぺんも申もうすべし。 あま法ほう師しこそ、 ありく時ときむしのために誦じゅし候そうらへ。

六四

一 いみの日ひ、 物ものまうでし候そうろうはいかに。

答こたう。 くるしからず。 本ほん命日めいにちも。

六五

一 五ご逆ぎゃく・十じゅう悪あく、 一念いちねん・十じゅう念ねんにほろび候そうろうか。

答こたう。 うたがひなく候そうろう。

六六

一 臨りん終じゅうに善ぜん知ぢ識しきにあひ候そうらはずとも、 日ひごろの念仏ねんぶつにて往おう生じょうはし候そうろうべきか。

答こたう。 善ぜん知ぢ識しきにあはずとも、 臨りん終じゅうおもふ様ようならずとも、 念仏ねんぶつ申もうさば往おう生じょうすべし。

六七

一 誹ひ謗ほう正しょう法ぼうは五ご逆ぎゃくのつみにおほくまさりと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 これはい0588と人ひとのせぬ事ことにて候そうろう。

六八

一 死しにて候そうらはんものゝかみは、 そり候そうろうべきか。

答こたう。 かならずさるまじ。

六九

一 心こころに妄念もうねんのいかにも思おもはれ候そうろうは、 いかゞし候そうろうべき。

答こたう。 たゞよくよく念仏ねんぶつを申もうさせ給たまへ。

七〇

一 わがれうの臨りん終じゅうの物ものの具ぐ、 まづ人ひとにかし候そうろうは、 いかゞ候そうろうべき。

答こたう。 くるしからず。

七一

一 五ご色しきのいと、 うむ事こと。

答こたう。 おさなきものにうます。

七二

一 節ふしある楊よう枝じをばつかはず、 続帯ぞくたい・青帯あおおび・无む文もんの帯おびするはいむと申もうし候そうろうは。

答こたう。 くるしからず。

七三

一 服薬ぶくやくのわたは、 あらひ候そうらはざらんはいかゞ候そうろう。

答こたう。 くるしからず。

七四

一 よき物ものをき、 わろきところにゐて、 往おう生じょうねがひ候そうろうはいかゞ候そうろう。

答こたう。 くるしからず。 八斎はっさい戒かいの時ときこそ、 さは候そうらはめ。

七五

一 月つきのはゞかりの時とき、 経きょうよみ候そうろう、 いかゞ候そうろう。

答こたう。 くるしみあるべしと見みへず候そうろう。

七六

一 申もうし候そうろう事ことのかなひ候そうらはぬに経きょうよみ候そうろう、 いかゞ候そうろう。

答こたう。 うらむべからず。 縁えんにより、 信しんのありなしによりて、 利り生しょうはあり。 この世よ・のちの世よ、 仏ぶつをたのむには0589しかず。

七七

一 ひる・しゝは、 いづれも七日しちにちにて候そうろうか。 又またしゝのひたるは、 いみふかしと申もうし候そうろうは、 いかに。

答こたう。 ひるも香こううせなば、 はゞかりなし。 しゝのひたるによりて、 いみふかしという事ことは、 ひが事ごと。

七八

一 月つきのはゞかりのあひだ、 神かみのれうに、 経きょうはくるしく候そうろうまじか。

答こたう。 神かみやはゞかるらん、 仏法ぶっぽうにはいまず。 陰おん陽みょう師じにとはせ給たまへ。

七九

一 子こうみて、 仏神ぶつしんへまいる事こと、 百ひゃく日にちはゞかりと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 それも仏法ぶっぽうにいまず。

八〇

一 ¬法華ほけ経きょう¼ 一品いちぼんよみさして、 魚さかなくはずと申もうし候そうろうは、 いかに。

答こたう。 くるしからず。

八一

一 ずゞ・かけをびかけずして、 経きょうをうけ候そうろう事ことは、 いかに。

答こたう。 くるしからず。

八二

一 時ときにまめ・あづきの御ごれうくはずと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 くるしからず。

八三

一 ねてもさめても、 口くちあらはで念仏ねんぶつ申もうし候そうらはんは、 いかゞ候そうろうべき。

答こたう。 くるしからず。

八四

一 信しん施せをうくるは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 つとめしてくふ僧そうは、 くるしからず。 せ0590ねばふかし。

八五

一 神かみのあたりの物ものくふはくちなわと申もうし候そうろうは、 いかに。

答こたう。 禰宜ねぎ・神主かんぬしは、 ひとへにその身みになるにこそさらぬが、 すこしくはんはおもからじ。

八六

一 僧そうの物ものくひ候そうろうも、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 つみうるも候そうろう、 えぬも候そうろう。 仏ぶつのもの、 奉ほう加が結縁けちえんの物ものくふはつみ。

八七

一 大仏だいぶつ・天王てんのう寺じなんどの辺へんにゐて、 僧そうの物ものくひて、 後世ごせとらんとし候そうろう人ひとは、 つみか。

答こたう。 念仏ねんぶつだに申もうさば、 くるしからず。

八八

一 時ときするあした、 御ごれうあまたにむかふ、 いかゞ候そうろう。

答こたう。 くるしからず。

八九

一 時ときのつとめて、 みそうつ、 いかに。

答こたう。 くるしからず。

九〇

一 戒かいをたもちてのち、 精しょう進じんいくかゝし候そうろう。

答こたう。 いくかも御おん心こころ。

九一

一 聴ちょう聞もんは功く徳どくえ候そうろうか。

答こたう。 功く徳どくえ候そうろう。

九二

一 念仏ねんぶつを行ぎょうにしたる物ものが、 物ものまうでは、 いかに。

答こたう。 くるしからず。

九三

一 物ものまうでして、 経きょうを廻え向こうすべきに、 経きょうをばよまで念仏ねんぶつを廻え向こうする、 くるしからずと申もうし候そうろうは、 いかに。

答こたう。 くるしからず。

九四

一 わが心こころざゝぬ魚さかなは、 殺せっ生しょうにては候そうらはぬか。

答こたう。 それは殺せっ生しょうならず。

0591九五

一 服薬ぶくやくのずゞは、 あらひ候そうろうべきか。

答こたう。 あらひあらはず、 くるしからず。

九六

一 千手せんじゅ・薬やく師しは、 ものいませ給たまふと申もうす、 いかに。

答こたう。 さる事ことなし。

九七

一 六斎ろくさいに、 にら・ひる、 いかに。

答こたう。 めさゞらんはよく候そうろう。

九八

一 時ときのくひ物ものは、 きよくし候そうろうべきか。

答こたう。 れいの定じょう、 行ぎょう水ずいも候そうろうまじ、 かねて精しょう進じんも候そうろうまじ。 ひされも、 たゞのおりのにて候そうろうべし。 時ときの誦文じゅもんも女にょう房ぼうはせずとも、 たゞ念仏ねんぶつを申もうさせ給たまへ。 さしたる事ことありて時ときをかきたらば、 いつの日ひにてもせさせ給たまへ。

九九

一 三年さんねんおがみの事こと、 し候そうろうべきか。

答こたう。 さらずとも候そうらいなん。

一〇〇

一 時ときのさばには、 あはせを具ぐし候そうろうべきか。 時ときの散飯さばをば、 屋おくのうゑにうちあげ候そうろうべきか、 かはらけにとり候そうろうべきか、 わがひきれのさらにとり候そうろうべきか。

答こたう。 いづれも御おん心こころ。

一〇一

一 女おんなのものねたむ事ことは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 世世せせに女おんなとなる果か報ほうにて、 ことに心こころうき事こと也なり。

一〇二

一 出しゅっ家けし候そうらはねども、 往おう生じょうはし候そうろうか。

答こたう。 在ざい家けながら往おう生じょうする人ひとおほし。

一〇三

一 五ご色しきのいとを、 あまたにきりて人ひとにたばんは、 いかゞ候そうろうべき。

答こたう。 きるべから0592ず。

一〇四

一 念仏ねんぶつを申もうし候そうろうに、 はらのたつ心こころのさまざまに候そうろう、 いかゞし候そうろうべき。

答こたう。 散乱さんらんの心こころ、 よにわろき事ことにて候そうろう。 かまへて一心いっしんに申もうさせ給たまへ。

一〇五

一 かみつけながら、 おとこ・おんなの死しに候そうろうは、 いかに。

答こたう。 かみにより候そうらはず、 たゞ念仏ねんぶつと見みへたり。

一〇六

一 尼あまの、 子こうみ、 おとこもつ事ことは、 五ご逆ぎゃく罪ざいほどゝ申もうす、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 五ご逆ぎゃくほどならねども、 おもく見みへて候そうろう。

一〇七

一 尼あま法ほう師し、 かみをおほす、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 三さん悪道まくどうの業ごうにて候そうろう。

一〇八

一 経きょう・仏ぶつなんどうり候そうろうは、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 つみふかく候そうろう。

一〇九

一 人ひとをうり候そうろうも、 つみにて候そうろうか。

答こたう。 それもつみにて候そうろう。

一一〇

一 精しょう進じんの時とき、 つめきらぬと申もうす、 又また女おんなにかみそらせぬと申もうし候そうろう、 いかに。

答こたう。 みなひが事ごと。

一一一

一 われも人ひとも、 さゑもんかく、 罪つみにて候そうろうか。

答こたう。 すごさゞらんには、 なにか罪つみにて候そうろうべき。

一一二

一 酒さけのいみ、 七日しちにちと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 さにて候そうろう。 されども、 やまひに0593はゆるされて候そうろう。

一一三

一 魚ぎょ鳥ちょうくひては、 いかけして経きょうはよみ候そうろうべきか。

答こたう。 いかけしてよむ、 本体ほんたいにて候そうろう。 せでよむは、 功く徳どくと罪つみとゝもに候そうろう。 たゞしいかけせでも、 よまぬよりは、 よむはよく候そうろう。

一一四

一 妻め・おとこ、 一ひとつにて経きょうよみ候そうらはん事こと、 いかけし候そうろうべきか。

答こたう。 これもおなじ事こと、 本体ほんたいはいかけしてよむべく候そうろう。 念仏ねんぶつはせでもくるしからず、 経きょうはいかけしてよみ候そうろうべし。 毎日まいにちによみ候そうろうとも。

一一五

一 大根だいこん・柚ゆずは、 おこなひにはゞかりと申もうし候そうろうは、 いかに。

答こたう。 はゞかりなし。

一一六

一 尼あまになりたるかみ、 いかゞし候そうろうべき。

答こたう。 経きょうの料りょう紙しにすき、 もしは仏ぶつのなかにこそはこめ候そうらへ。

一一七

一 尼あま法ほう師しの、 紺こんのきぬき候そうろうはいかに。

答こたう。 よに罪つみうる事ことにて候そうろう。

一一八

一 物ものまうでし候そうらはんに、 男女なんにょかみあらひ、 せめてはいたゞきあらふと申もうし候そうろうは、 ま事こと候そうろうか。

答こたう。 いづれもさる事こと候そうらはず。

一一九

一 仏ぶつをうらむる事ことは、 あるまじき事ことにて候そうろうな。

答こたう。 いかさまにも、 仏ぶつをうらむる事ことなかれ。 信しんある物ものは大罪だいざいすら滅めっす、 信しんなき物ものは小しょう罪ざいだにも滅めっせず。 わが信しんのな0594き事ことをはづべし。

一二〇

一 八専はっせんに、 物ものまうでせぬと申もうすは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 さる事こと候そうらはず。 いつならんからに、 仏ぶつの耳みみきかせ給たまはぬ事ことの、 なじか候そうろうべき。

一二一

一 灸きゅう治じの時とき、 物ものまうでせず、 そのおりのき物ものもすつると申もうし候そうろうは。

答こたう。 これ又またきはめたるひが事ごとにて候そうろう。 たゞ灸きゅう治じをいたはりて、 ありきなんどをせぬ事ことにてこそ候そうらへ。 灸きゅう治じのいみ、 ある事こと候そうらはず。

一二二

一 ひる・しゝくひて、 三年さんねんがうちに死しに候そうらへば往おう生じょうせずと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうやらむ。

答こたう。 これ又またきわめたるひが事ごとにて候そうろう。 臨りん終じゅうに五ご辛しんくひたる物ものをばよせずと申もうしたる事ことは候そうらへども、 三年さんねんまでいむ事ことは、 おほかた候そうらはぬ也なり。

一二三

一 厄やく病びょうやみて死しぬる物もの、 子こうみて死しぬる物ものは、 つみと申もうし候そうろうはいかに。

答こたう。 それも念仏ねんぶつせば往おう生じょうし候そうろう。

一二四

一 子この孝きょう養よう、 おやのするはうけずと申もうし候そうろう、 いかに。

答こたう。 ひが事ごとなり。

一二五

一 産さんのいみ、 いくかにて候そうろうぞ、 又またいみもいくかにて候そうろうぞ。

答こたう。 仏ぶっ教きょうには、 いみといふ事こと候そうらはず。 世せ間けんには、 産さんは七日しちにち、 又また三さん十じゅう日にちと申もうすげに候そうろう、 いみも五ご十じゅう日にちと申もうす。 御おん心こころに候そうろう。

0595一二六

一 没もつ後ごの仏ぶっ経きょうしをく事ことは、 一いち定じょうすべく候そうろうか。

答こたう。 一いち定じょうにて候そうろう、 すべく候そうろう。

一二七

一 所しょ作さかきてしいれ、 かねてかゝんずるを、 まづし候そうろうはいかに。

答こたう。 しいるゝはくるしからず、 かねては懈け怠だい也なり。

一二八

一 出しゅっ家けは、 わかきとおひたると、 いづれか功く徳どくにて候そうろう。

答こたう。 老おいては、 功く徳どくばかりえ候そうろう。 わかきは、 なをめでたく候そうろう。

一二九

一 仏ぶつに花はなまいらする誦文じゅもん、 十じっ波羅ぱら蜜みつ往おう生じょうすと申もうして候そうろう。 御ごらんのためにまいらせ候そうろう。

答こたう。 これせんなし、 念仏ねんぶつを申もうさせ給たまへ。

一三〇

一 いみの物ものの、 ものへまいり候そうろう事ことは、 あしく候そうろうか。

答こたう。 くるしからず。

一三一

一 物ものまうでして返かえさにわがもとへ返かえらぬ事ことはあし。 又また魚ぎょ鳥ちょうにやがてみだれ候そうろう事こと、 いかに。

答こたう。 熊くま野ののほかは、 くるしからず。

一三二

一 時ときのおりの誦文じゅもんは、 かくし候そうろうべしと申もうし候そうろう、 御ごらんのためにまいらせ候そうろう。

答こたう。 時ときのおりも、 たゞ念仏ねんぶつを申もうさせ給たまへ。 女にょう房ぼうは誦文じゅもんせずとも。

一三三

一 女にょう房ぼうの物ものねたみの事こと、 さればつみふかく候そうろうな。

答こたう。 たゞよくよく一心いっしんに念仏ねんぶつを申もうさせ給たまへ。

一三四

一 桐きりのはい、 かみにつくるは、 仏神ぶつしんに申もうす事ことのかなはぬと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう0596。 そら事ごとなり。

一三五

一 物ものへまいり候そうろう精しょう進じん、 三日みっかといふ日ひまいり候そうろうべきか、 四日よっかのつとめてか。

答こたう。 三日みっかのつとめてまいる。

一三六

一 物ものこもりて候そうろうに、 三日みっかとおもひ候そうらはんは四日よっかになしていで、 七日なのかとおもひて候そうらはんは八日ようかになしていで候そうろうべきか。

答こたう。 それは世よの人ひとのせんやうに。

一三七

一 ずゞには、 さくら・くりいむと申もうし候そうろうは、 いかに。

答こたう。 さる事こと候そうらはず。

一三八

一 法ほう師しのつみは、 ことにふかしと申もうし候そうろうは。

答こたう。 とりわき候そうらはず。

一三九

一 現げん世ぜをいのり候そうろうに、 しるしの候そうらはぬ人ひとはいかに候そうろうぞ。

答こたう。 現げん世ぜをいのるにしるしなしと申もうす事こと、 仏ぶつの御おんそら事ごとには候そうらはず。 わが心こころの説せつのごとくせぬによりて、 しるしなき事ことは候そうろう也なり。 されば、 よくするにはみなしるしは候そうろう也なり。 観音かんのんを念ねんずるにも、 一心いっしんにすればしるし候そうろう、 もし一心いっしんなければしるし候そうらはず。

むかしの縁えんあつき人ひとは、 定じょう業ごうすらなを転てんず。 むかしもいまも縁えんあさき人ひとは、 ちりばかりのくるしみにだにも、 しるしなしと申もうして候そうろう也なり。

仏ぶつをうらみおぼしめすべからず。 たゞこの世よ・のちの世よのために、 仏ぶつにつかへむには、 心こころをいたし、 ま事ことをはげむ事こと、 この世よもおもふ事ことかなひ、 のちの世よも浄じょう土どにむまるゝ事ことにて候そうろう也なり。 しるしなくは、 わが0597心こころをはづべし。

一四〇

  建仁けんにん元年がんねん十じゅう二に月がつ十じゅう四日よっか、 げざんにいりて、 とひまいらする事こと

一 臨りん終じゅうの時とき、 不ふ浄じょうのものゝ候そうろうには、 仏ぶつのむかへにわたらせ給たまひたるも返かえらせ給たまふと申もうし候そうろうは、 ま事ことにて候そうろうか。

答こたう。 仏ぶつのむかへにおはしますほどにては、 不ふ浄じょうのものありといふとも、 なじかは返かえらせ給たまふべき。 仏ぶつはきよき・きたなきの沙汰さたなし。 みなされども観かんずれば、 きたなきもきよく、 きよきもきたなくしなす。 たゞ念仏ねんぶつぞよかるべき、 きよくとも念仏ねんぶつ申もうさゞらんには益やくなし。 万ばん事じをすてゝ念仏ねんぶつを申もうすべし、 証しょう拠このみおほかり。

一四一

  これは御文おんふみにてたづね申もうす

一 家いえのうちのものゝ、 したしき・うときをきらはず、 往おう生じょうのためとおもひて、 くひ物もの・き物ものたばんは、 仏ぶつに供く養ようせんとおなじ事ことにて候そうろうか。

答こたう。 したしき・うときをえらばず、 往おう生じょうのためとおぼしめして、 物ものたびおはしまさん、 めでたき功く徳どくにて候そうろう。 御おんつかひによくよく申もうし候そうらいぬ。

一四二

一 破は戒かいの僧そう・愚痴ぐちの僧そう、 供く養ようせんも功く徳どくにて候そうろうか。

答こたう。 破は戒かいの僧そう・愚痴ぐちの僧そうを、 すゑの世よには仏ぶつのごとくたとむべきにて候そうろう也なり。 この御おんつかひに申もうし候そうらいぬ。 きこしめし0598候そうらへ。

 この御おことばゝ、 上しょう人にんのまさしき御手みて也なり。 あみだ経きょうのうらにおしたり。

一四三

  見参けんざんにいりてうけ給たまはる事こと

○一 毎日まいにちの所しょ作さに、 六万ろくまん・十じゅう万まんの数遍しゅへんをずゞをくりて申もうし候そうらはんと、 二に万まん・三万さんまんをずゞをたしかにひとつづゝ申もうし候そうらはんと、 いづれかよく候そうろうべき。

答こたう。 凡ぼん夫ぶのならひ、 二に万まん・三万さんまんあつとも、 如法にょほうにはかなひがたからん。 たゞ数遍しゅへんのおほからんにはすぐべからず、 名みょう号ごうを相続そうぞくせんため也なり。 かならずしもかずを要ようとするにはあらず、 たゞつねに念仏ねんぶつせんがため也なり。 かずをさだめぬは懈け怠だいの因縁いんねんなれば、 数遍しゅへんをすゝむるにて候そうろう。

一四四

○一 真言しんごんの阿あ弥陀みだの供く養よう法ほうは、 正行しょうぎょうにて候そうろうべきか。

答こたう。 仏体ぶったいは一ひとつにはにたれども、 その心こころ不ふ同どうなり。 真言しんごん教きょうの弥陀みだは、 これ己こ心しんの如来にょらい、 ほかをたづぬべからず。 この教きょうの弥陀みだは、 これ法蔵ほうぞう比丘びくの成じょう仏ぶつ也なり。 西方さいほうにおはしますゆへに、 その心こころおほきにことなり。

一四五

○一 つねに悪あくをとゞめ、 善ぜんをつくるべき事ことをおもはへて念仏ねんぶつ申もうし候そうらはんと、 たゞ本願ほんがんをたのむばかりにて念仏ねんぶつを申もうし候そうらはんと、 いづれかよく候そうろうべき。

答こたう。 廃悪はいあく修善しゅぜんは、 諸しょ0599仏ぶつの通戒つうかいなり。 しかれども、 当とう時じのわれらは、 みなそれにはそむきたる身みともなれば、 たゞひとへに別べっ意ち弘ぐ願がんのむねをふかく信しんじて、 名みょう号ごうをとなへさせ給たまはんにすぎ候そうろうまじ。 有智うち・无智むち、 持じ戒かい・破は戒かいをきらはず、 阿あ弥陀みだほとけは来迎らいこうし給たまう事ことにて候そうろう也なり。 御おん心こころえ候そうらへ。▽