二十二(577)、 一百四十五箇条問答 一

いっぴゃくじゅうじょう問答もんどう だいじゅう

一 ふるき堂塔どうとうしゅうしてそうははんをば、 ようそうろうべきか。

こたう。 かならずようすべしといふことそうらはず。 またようしてそうらはんも、 あしきことにもそうらはず。 どくにてそうらへば、 またようせねばとてつみのえ、 あしきことにてはそうらはず。

一 ほとけの開眼かいげんようとは、 ひとことにてそうろうか。

こたう開眼かいげんようとは、 べつことにて0578そうろうべきを、 おなじことにしあひてそうろうなり開眼かいげんもうすは、 本体ほんたいぶっがまなこをいれ、 ひらきまいらせそうろうもうしそうろうなり。 これをば、 開眼かいげんもうしそうろうなり。 つぎにそう仏眼ぶつげん真言しんごんをもてまなこをひらき、 大日だいにち真言しんごんをもてほとけの一切いっさいどくじょうじゅそうろうをば、 開眼かいげんもうしそうろうなり。 つぎにようといふは、 ほとけにこうぶつおんあかしなんどをもまいらせ、 さらぬたからをもまいらせそうろうを、 ようとはもうしそうろうなり

一 この真如しんにょかんはしそうろうべきことにてそうろうか。

こたう。 これはしんのともうしそうらへども、 わろきものにてそうろうなり。 おほかた真如しんにょかんをば、 われらしゅじょうはえせぬことにてそうろうぞ、 おうじょうのためにもおもはれぬことにてそうらへば、 やくそうろう

一 またこれにさんしてそうろうところは、 何事なにごともむなしとかんぜよともうしそうろう空観くうかんもうしそうろうは、 これにてそうろうな。 さればかんそうろうべきやうは、 たとへばこののことを執着しゅうじゃくしておもふまじきとおしへてそうろうへてそうらへば、 おほやうらんのためにまいらせそうろう

こたう。 これはみなかんとて、 かなはぬことにてそうろうなりそうのとしごろならひたるだにもえせず、 ましてにょうぼうなんどのつやつやないもしらざらんは、 いかにもかなふまじくそうろうなりおんたづねまでもやくそうろう

この七仏しちぶつみょうごうとなふべきようとして、 ひとのたびてそうろうまゝにしんそうらへば、 つみはう0579そうろうべきか。 なにごともそれよりおほせおんそうろうことは、 たのもしくそうらひて、 かやうにもうしそうろう

こたう。 これさなくともそうらいなん。 念仏ねんぶつにこれらのつみのうせそうろうまじくはこそそうらはめ。

一 一文いちもんをもおろかにもうしそうらへば、 ならひたるものみょうなしともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたうことはおろかならずそうろうおんのなかにふかきこと、 これにすぎそうらはず。

一 こころひとつにして、 こころよくなをりそうらはずとも、 何事なにごとをおこなひそうらはずとも、 念仏ねんぶつばかりにてじょうへはまいりそうろうべきか。

こたうこころのみだるゝは、 これぼんならひにて、 ちからおよばぬことにてそうろう。 たゞこころひとつにして、 よくおん念仏ねんぶつせさせたまそうらはゞ、 そのつみをめっしておうじょうせさせたまふべきなり。 その妄念もうねんよりもおもきつみも、 念仏ねんぶつだにしそうらへば、 うせそうろうなり

一 きょう陀羅だらは、 かんじょうそうにうけそうろうべきか。

こたう。 ¬法華ほけきょう¼ のはくるしからず、 かんじょうそうのうけさする陀羅だらべつこと、 それはおぼしめしよるな。

一 ¬げんぎょう¼ (観普賢経意) に、 「ほとけのははねんずべし」 ともうしそうろうは。

こたう。 いざおぼへず。

一〇

一 ひゃくにちのうちのあかじょうかゝりたるは、 ものまうでにはゞかりありともうしたるは。

こたうひゃくにちのうちのあかじょうくるしからず。 なにもきたなきもののゝつきてそうらはんは0580、 きたなくこそそうらへ。 あかにかぎるまじ。

一一

一 念仏ねんぶつひゃく万遍まんべんひゃくもうしてかならずおうじょうすともうしそうろうに、 いのちみじかくてはいかゞしそうろうべき。

こたう。 これもひがごとそうろうひゃくもうしてもしそうろうじゅうねんもうしてもしそうろうまた一念いちねんにてもしそうろう

一二

一 ¬弥陀みだきょう¼ じゅうまんかんよみそうろうべしともうしそうろうは、 いかに。

こたう。 これもよみつべからんにとりてのことそうろう。 たゞつとめをたかくつみそうらはんれうにてそうろう

一三

一 ひのしょは、 かならずかずをきわめそうらはずとも、 よまれんにしたがひてよみ、 念仏ねんぶつもうしそうろうべきか。

こたう。 かずをさだめそうらはねばだいになりそうらへば、 かずをさだめたるがよきことにてそうろう

一四

一 にら・き・ひる・しゝをくひて、 かうせそうらはずとも、 つねに念仏ねんぶつもうしそうろうべきやらん。

こたう念仏ねんぶつはなにゝもさはらぬことにてそうろう

一五

一 六斎ろくさいときをしそうらはんには、 かねてしょうじんをし、 いかけをし、 きよきものをきてしそうろうべきか。

こたう。 かならずさそうらはずともそうらいなん。

一六

一 いち七日しちにち七日しちにちなんど服薬ぶくやくそうらはんに、 六斎ろくさいにあたりてそうらはんをば、 いかゞしそうろうべき。

こたう。 それちからおよばぬことにてそうろう。 さればとてつみにてはそうろうまじ。

0581一七

一 六斎ろくさいいっしょうすべくそうろうか、 なんねんすべくそうろうぞ。

こたう。 それもおんこころによるべきことにてそうろう。 いくらすべしともうすことそうらはず。

一八

一 念仏ねんぶつをば、 ひのしょにいくらばかりあてゝかもうしそうろうべき。

こたう念仏ねんぶつのかずは、 一万いちまんべんをはじめにて、 まん三万さんまんまん六万ろくまんないじゅうまんまでもうしそうろうなり。 このなかにおんこころにまかせておぼしめしそうらはんほどを、 もうさせおはしますべし。

一九

一 ¬弥陀みだきょう¼ をば、 一日いちにちになんかんばかりあてゝかよみそうろうべき。

こたう。 「¬弥陀みだきょう¼ は、 ちかひていっしょうちゅうじゅうまんかんをだにもよみまいらせそうらいぬれば、 けつじょうしておうじょうす」 (観念法門意) と、 善導ぜんどうしょうのおほせられてそうろうなり毎日まいにちじゅうかんづゝよめば、 じゅうねんじゅうまんかんにみちそうろうなりさん十巻じっかんづゝよめば、 じゅうねんにみちそうろうなり

二〇

一 しきのいとは、 ほとけには、 ひだりにとおほせそうらいき。 わがてには、 いづれのかたにていかゞひきそうろうべき。

こたう左右さうにてひかせたまふべし。

二一

一 ぶつのなをもかき、 たっとことをもかきてそうろうを、 あだにせじとてやきそうろうつみのうるに、 誦文じゅもんをしてやくともうしそうろうは、 いかゞそうろうべき。

こたう。 さる反故ほごやきそうらはんに、 なにじょう誦文じゅもんそうろうべき。 おほかたは法文ほうもんをばうやまふことにてそうらへば、 もしやかんなんどせられそうらはゞ、 きよきところにてやかせたまふべし。

0582二二

一 かいうけそうろうときしょうとなりたまへ、 じゃとなりたまへともうすことそうろうこころそうらはず。 なにといふことにてそうろうぞ。

こたうしょうもうしそうろうは、 かいうくるとき法門ほうもんならひたるもうしそうろうなりじゃもうしそうろうは、 まさしくかいをさづくるにてそうろうなり。 これをばかつじゃもうしそうろうなり

二三

一 ときそうろうどくにてそうろうやらん。 かならずゝべきことにてそうろうやらん。

こたうときどくうることにてそうろうなり六斎ろくさい御時おんときぞ、 さもそうらひぬべき。 またおんだいにておんやまひなんどもおこらせおはしましぬべくそうらはゞ、 さなくとも、 たゞおん念仏ねんぶつだにもよくよくそうらはゞ、 それにてしょうをはなれ、 じょうにもおうじょうせさせおはしまさんずることは、 これによるべくそうろう

二四

一 りんじゅうのをり、 弥陀みだじょういんなんどをならひて、 ひかへそうろうやらん。 たゞさそうらはずとも、 左右さうにてひかへそうろうやらん。

こたう。 かならずじょういんをむすぶべきにてそうらはず、 たゞがっしょう本体ほんたいにて、 そのなかにひかへられそうろうべし。

二五

一 ちかくてかならずしもまいらせそうらはねども、 とをらかにてひかへそうろうやらん。

こたう。 とをくもちかくも、 便びんによるべくそうろう。 いかなるもくるしみそうらはず。

二六

一 かならずほとけを、 いとをひかへそうらはずとも、 われもうさずともひともうさんねん0583ぶつをきゝても、 しにそうらはゞじょうにはおうじょうそうろうべきやらん。

こたう。 かならずいとをひくといふことそうらはず。 ほとけにむかひまひらせねども、 念仏ねんぶつだにもすればおうじょうそうろうなりまたきゝてもしそうろう。 それはよくよく信心しんじんふかくてのことそうろう

二七

一 ながくしょうをはなれ三界さんがいにむまれじとおもひそうろうに、 極楽ごくらくしゅじょうとなりても、 またそのえんつきぬればこのにむまるともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。 たとひ国王こくおうともなり、 てんじょうにもむまれよ、 たゞ三界さんがいをわかれんとおもひそうろうに、 いかにつとめおこなひてか、 かえそうらはざるべき。

こたう。 これもろもろのひがごとにてそうろう極楽ごくらくへひとたびむまれそうらいぬれば、 ながくこのかえことそうらはず、 みなほとけになることにてそうろうなり。 たゞしひとをみちびかんためには、 ことさらにかえことそうろう。 されどもしょうにめぐるひとにてはそうらはず。 三界さんがいをはなれ極楽ごくらくおうじょうするには、 念仏ねんぶつにすぎたることそうらはぬなり。 よくよくおん念仏ねんぶつそうろうべきなり

二八

一 にょうぼうちょうもんそうろうに、 かいをたもたせそうろうをやぶりそうらはんずればとて、 たもつとももうしそうらはぬは、 いかゞそうろうべき。 たゞちょうもんのにわにては、 いちもたもつともうしそうろうがめでたきこともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう。 これはくるしくそうらはず。 たとひのちにやぶれども、 そのときたもたんとおもふこころにてたもつともうすは、 よきことにてそうろう

0584二九

一 ぶつはくをおして、 またようそうろうか。

こたう。 さそうらはずとも。

三〇

一 しょをかきてひとにしいれさせそうろうは、 いかゞそうろうべき。

こたう。 さなくともそうらひなむ。

三一

一 かんきょうそうにたゝむは、 つみもうしそうろうはいかゞそうろうべき。

こたう。 つみえぬことにてそうろう

三二

一 ほとけにするきょうを、 とりはなちてひとにもたぶは、 つみにてそうろうか。

こたう。 ひろむるはどくにてそうろう

三三

一 いちとあるきょう一巻いっかんづゝとりはなちてよまんは、 つみにてそうろうか。

こたう。 つみにてもそうらはず。

三四

一 ほとけに厨子ずしをさしてすゑまいらせては、 ようすべくそうろうか。

こたう一切いっさいあるまじ。

三五

一 きょうをおがむことそうろうべきか。

こたう。 このごろのひとの、 えこころえぬことにてそうろうなり

三六

一 七歳しちさいしにて、 いみなしともうしそうろうはいかに。

こたうぶっきょうにはいみといふことなし。 ぞくもうしたらんやうに。

三七

一 ぶつににかはをそうろうが、 きたなくそうろう。 いかゞしそうろうべき。

こたう。 まことにきたなけれども、 せではかなふまじければ。

三八

一 あま服薬ぶくやくそうろうは、 わろくそうろうか。

こたう。 やまひにくふはくるしからず、 たゞはあ0585し。

三九

一 父母ぶものさきにぬるは、 つみともうしそうろうはいかに。

こたう穢土えどのならひ、 ぜんちからなきことにてそうろう

四〇

一 いきてつくりそうろうどくはよくそうろうか。

こたう。 めでたし。

四一

一 ひとのまぼりをえてそうらはんは、 ようそうろうべきか。

こたう。 せずともくるしからず。

四二

一 わゝくにものくるゝは、 つみにてそうろうか。

こたう。 つみにてそうろう

四三

一 きょうをしてようせずとも、 くるしからずそうろうか。

こたう。 たゞよむ。

四四

一 きょうせんよみては、 ようそうろうべきか。

こたう。 さもそうろうまじ。

四五

一 さんことばんまんなんどかざりそうろうべきか。

こたう。 されでも、 たゞ一心いっしん大切たいせつそうろう

四六

一 こうをほとけにまいらせそうろうこと

こたう。 あかつきようほうにかならずまいらせそうろう。 たゞは、 はなかめにさし、 ちらしてもようすべし。 こうはかならずたくべし。 便たよりあしくは、 なくとも。

四七

一 きょうをば、 そうにうけそうろうべきか。

こたう。 われとよみつべくは、 そうにうけずとも。

四八

一 ちょうもん・ものまうでは、 かならずしそうろうべきか。

こたう。 せずとも。 中々なかなかわろくそうろう。 し0586づかにたゞおん念仏ねんぶつそうらへ。

四九

一 かみ後世ごせもうしそうろうこと、 いかむ。

こたうぶつもうすにはすぐまじ。

五〇

一 せっきょうは、 つみふかくそうろうか。 またにならんものも、 つみふかしともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう本体ほんたいどくうべくそうろうに、 まっのはつみえつべし。 にならんものは、 つみ。

五一

一 麝香じゃこうちょうをもちそうろうは、 つみにてそうろうか。

こたう。 かをあつむるは、 つみ。

五二

一 、 おとこにきょうならふこと、 いかゞそうろうべき。

こたう。 くるしからず。

五三

一 還俗げんぞくのものにあはせずともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう。 さまでとかず、 ひがごと

五四

一 還俗げんぞくこころならずしてそうらはんは、 いかに。

こたう。 あさくや。

五五

一 神仏しんぶつへまいらんに、 三日みっか一日いちにちしょうじん、 いづれかよくそうろう

こたうしんほんにす。 いくかと本説ほんせつなし、 三日みっかこそよくそうらはめ。

五六

一 うたよむは、 つみにてそうろうか。

こたう。 あながちにえそうらはじ。 たゞしつみもえ、 どくにもなる。

五七

一 さけのむは、 つみにてそうろうか。

こたう。 まことにはのむべくもなけれども、 こののな0587らひ。

五八

一 さかなとり鹿しかは、 かはりそうろうか。

こたう。 たゞおなじこと。

五九

一 あまになりてひゃくにちしょうじんは、 よくそうろうか。

こたう。 よし。

六〇

一 ぶつつくりて、 きょうはかならずそうろうべきか。

こたう。 かならずすべしともそうらはず、 またしてもよし。

六一

一 どくのたふるほどゝもうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう沙汰さたにおよびそうらはず、 ちからのたふるほど。

六二

一 きょうぶつと、 かならずいちにすゑそうろうか。

こたう。 さもそうらはず、 ひとつゞつも。

六三

一 ¬錫杖しゃくじょう¼ はかならずじゅすべきか。

こたう。 さなくとも、 そのいとまに念仏ねんぶつ一遍いっぺんもうすべし。 あまほうこそ、 ありくときむしのためにじゅそうらへ。

六四

一 いみのものまうでしそうろうはいかに。

こたう。 くるしからず。 ほん命日めいにちも。

六五

一 ぎゃくじゅうあく一念いちねんじゅうねんにほろびそうろうか。

こたう。 うたがひなくそうろう

六六

一 りんじゅうぜんしきにあひそうらはずとも、 ごろの念仏ねんぶつにておうじょうはしそうろうべきか。

こたうぜんしきにあはずとも、 りんじゅうおもふようならずとも、 念仏ねんぶつもうさばおうじょうすべし。

六七

一 ほうしょうぼうぎゃくのつみにおほくまさりともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう。 これはい0588ひとのせぬことにてそうろう

六八

一 しにそうらはんものゝかみは、 そりそうろうべきか。

こたう。 かならずさるまじ。

六九

一 こころ妄念もうねんのいかにもおもはれそうろうは、 いかゞしそうろうべき。

こたう。 たゞよくよく念仏ねんぶつもうさせたまへ。

七〇

一 わがれうのりんじゅうもの、 まづひとにかしそうろうは、 いかゞそうろうべき。

こたう。 くるしからず。

七一

一 しきのいと、 うむこと

こたう。 おさなきものにうます。

七二

一 ふしあるようをばつかはず、 続帯ぞくたい青帯あおおびもんおびするはいむともうしそうろうは。

こたう。 くるしからず。

七三

一 服薬ぶくやくのわたは、 あらひそうらはざらんはいかゞそうろう

こたう。 くるしからず。

七四

一 よきものをき、 わろきところにゐて、 おうじょうねがひそうろうはいかゞそうろう

こたう。 くるしからず。 八斎はっさいかいときこそ、 さはそうらはめ。

七五

一 つきのはゞかりのとききょうよみそうろう、 いかゞそうろう

こたう。 くるしみあるべしとへずそうろう

七六

一 もうしそうろうことのかなひそうらはぬにきょうよみそうろう、 いかゞそうろう

こたう。 うらむべからず。 えんにより、 しんのありなしによりて、 しょうはあり。 この・のちのぶつをたのむには0589しかず。

七七

一 ひる・しゝは、 いづれも七日しちにちにてそうろうか。 またしゝのひたるは、 いみふかしともうしそうろうは、 いかに。

こたう。 ひるもこううせなば、 はゞかりなし。 しゝのひたるによりて、 いみふかしということは、 ひがごと

七八

一 つきのはゞかりのあひだ、 かみのれうに、 きょうはくるしくそうろうまじか。

こたうかみやはゞかるらん、 仏法ぶっぽうにはいまず。 おんみょうにとはせたまへ。

七九

一 うみて、 仏神ぶつしんへまいることひゃくにちはゞかりともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう。 それも仏法ぶっぽうにいまず。

八〇

一 ¬法華ほけきょう¼ 一品いちぼんよみさして、 さかなくはずともうしそうろうは、 いかに。

こたう。 くるしからず。

八一

一 ずゞ・かけをびかけずして、 きょうをうけそうろうことは、 いかに。

こたう。 くるしからず。

八二

一 ときにまめ・あづきのれうくはずともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう。 くるしからず。

八三

一 ねてもさめても、 くちあらはで念仏ねんぶつもうしそうらはんは、 いかゞそうろうべき。

こたう。 くるしからず。

八四

一 しんをうくるは、 つみにてそうろうか。

こたう。 つとめしてくふそうは、 くるしからず。 せ0590ねばふかし。

八五

一 かみのあたりのものくふはくちなわともうしそうろうは、 いかに。

こたう禰宜ねぎ神主かんぬしは、 ひとへにそのになるにこそさらぬが、 すこしくはんはおもからじ。

八六

一 そうものくひそうろうも、 つみにてそうろうか。

こたう。 つみうるもそうろう、 えぬもそうろうぶつのもの、 ほう結縁けちえんものくふはつみ。

八七

一 大仏だいぶつ天王てんのうなんどのへんにゐて、 そうものくひて、 後世ごせとらんとしそうろうひとは、 つみか。

こたう念仏ねんぶつだにもうさば、 くるしからず。

八八

一 ときするあした、 れうあまたにむかふ、 いかゞそうろう

こたう。 くるしからず。

八九

一 ときのつとめて、 みそうつ、 いかに。

こたう。 くるしからず。

九〇

一 かいをたもちてのち、 しょうじんいくかゝしそうろう

こたう。 いくかもおんこころ

九一

一 ちょうもんどくそうろうか。

こたうどくそうろう

九二

一 念仏ねんぶつぎょうにしたるものが、 ものまうでは、 いかに。

こたう。 くるしからず。

九三

一 ものまうでして、 きょうこうすべきに、 きょうをばよまで念仏ねんぶつこうする、 くるしからずともうしそうろうは、 いかに。

こたう。 くるしからず。

九四

一 わがこころざゝぬさかなは、 せっしょうにてはそうらはぬか。

こたう。 それはせっしょうならず。

0591九五

一 服薬ぶくやくのずゞは、 あらひそうろうべきか。

こたう。 あらひあらはず、 くるしからず。

九六

一 千手せんじゅやくは、 ものいませたまふともうす、 いかに。

こたう。 さることなし。

九七

一 六斎ろくさいに、 にら・ひる、 いかに。

こたう。 めさゞらんはよくそうろう

九八

一 ときのくひものは、 きよくしそうろうべきか。

こたう。 れいのじょうぎょうずいそうろうまじ、 かねてしょうじんそうろうまじ。 ひされも、 たゞのおりのにてそうろうべし。 とき誦文じゅもんにょうぼうはせずとも、 たゞ念仏ねんぶつもうさせたまへ。 さしたることありてときをかきたらば、 いつのにてもせさせたまへ。

九九

一 三年さんねんおがみのこと、 しそうろうべきか。

こたう。 さらずともそうらいなん。

一〇〇

一 ときのさばには、 あはせをそうろうべきか。 とき散飯さばをば、 おくのうゑにうちあげそうろうべきか、 かはらけにとりそうろうべきか、 わがひきれのさらにとりそうろうべきか。

こたう。 いづれもおんこころ

一〇一

一 おんなのものねたむことは、 つみにてそうろうか。

こたう世世せせおんなとなるほうにて、 ことにこころうきことなり

一〇二

一 しゅっそうらはねども、 おうじょうはしそうろうか。

こたうざいながらおうじょうするひとおほし。

一〇三

一 しきのいとを、 あまたにきりてひとにたばんは、 いかゞそうろうべき。

こたう。 きるべから0592ず。

一〇四

一 念仏ねんぶつもうしそうろうに、 はらのたつこころのさまざまにそうろう、 いかゞしそうろうべき。

こたう散乱さんらんこころ、 よにわろきことにてそうろう。 かまへて一心いっしんもうさせたまへ。

一〇五

一 かみつけながら、 おとこ・おんなのしにそうろうは、 いかに。

こたう。 かみによりそうらはず、 たゞ念仏ねんぶつへたり。

一〇六

一 あまの、 うみ、 おとこもつことは、 ぎゃくざいほどゝもうす、 まことにてそうろうか。

こたうぎゃくほどならねども、 おもくへてそうろう

一〇七

一 あまほう、 かみをおほす、 つみにてそうろうか。

こたうさん悪道まくどうごうにてそうろう

一〇八

一 きょうぶつなんどうりそうろうは、 つみにてそうろうか。

こたう。 つみふかくそうろう

一〇九

一 ひとをうりそうろうも、 つみにてそうろうか。

こたう。 それもつみにてそうろう

一一〇

一 しょうじんとき、 つめきらぬともうすまたおんなにかみそらせぬともうしそうろう、 いかに。

こたう。 みなひがごと

一一一

一 われもひとも、 さゑもんかく、 つみにてそうろうか。

こたう。 すごさゞらんには、 なにかつみにてそうろうべき。

一一二

一 さけのいみ、 七日しちにちもうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう。 さにてそうろう。 されども、 やまひに0593はゆるされてそうろう

一一三

一 ぎょちょうくひては、 いかけしてきょうはよみそうろうべきか。

こたう。 いかけしてよむ、 本体ほんたいにてそうろう。 せでよむは、 どくつみとゝもにそうろう。 たゞしいかけせでも、 よまぬよりは、 よむはよくそうろう

一一四

一 ・おとこ、 ひとつにてきょうよみそうらはんこと、 いかけしそうろうべきか。

こたう。 これもおなじこと本体ほんたいはいかけしてよむべくそうろう念仏ねんぶつはせでもくるしからず、 きょうはいかけしてよみそうろうべし。 毎日まいにちによみそうろうとも。

一一五

一 大根だいこんゆずは、 おこなひにはゞかりともうしそうろうは、 いかに。

こたう。 はゞかりなし。

一一六

一 あまになりたるかみ、 いかゞしそうろうべき。

こたうきょうりょうにすき、 もしはぶつのなかにこそはこめそうらへ。

一一七

一 あまほうの、 こんのきぬきそうろうはいかに。

こたう。 よにつみうることにてそうろう

一一八

一 ものまうでしそうらはんに、 男女なんにょかみあらひ、 せめてはいたゞきあらふともうしそうろうは、 まことそうろうか。

こたう。 いづれもさることそうらはず。

一一九

一 ぶつをうらむることは、 あるまじきことにてそうろうな。

こたう。 いかさまにも、 ぶつをうらむることなかれ。 しんあるもの大罪だいざいすらめっす、 しんなきものしょうざいだにもめっせず。 わがしんのな0594ことをはづべし。

一二〇

一 八専はっせんに、 ものまうでせぬともうすは、 まことにてそうろうか。

こたう。 さることそうらはず。 いつならんからに、 ぶつみみきかせたまはぬことの、 なじかそうろうべき。

一二一

一 きゅうときものまうでせず、 そのおりのきものもすつるともうしそうろうは。

こたう。 これまたきはめたるひがごとにてそうろう。 たゞきゅうをいたはりて、 ありきなんどをせぬことにてこそそうらへ。 きゅうのいみ、 あることそうらはず。

一二二

一 ひる・しゝくひて、 三年さんねんがうちにしにそうらへばおうじょうせずともうしそうろうは、 まことにてそうろうやらむ。

こたう。 これまたきわめたるひがごとにてそうろうりんじゅうしんくひたるものをばよせずともうしたることそうらへども、 三年さんねんまでいむことは、 おほかたそうらはぬなり

一二三

一 やくびょうやみてぬるものうみてぬるものは、 つみともうしそうろうはいかに。

こたう。 それも念仏ねんぶつせばおうじょうそうろう

一二四

一 きょうよう、 おやのするはうけずともうしそうろう、 いかに。

こたう。 ひがごとなり。

一二五

一 さんのいみ、 いくかにてそうろうぞ、 またいみもいくかにてそうろうぞ。

こたうぶっきょうには、 いみといふことそうらはず。 けんには、 さん七日しちにちまたさんじゅうにちもうすげにそうろう、 いみもじゅうにちもうす。 おんこころそうろう

0595一二六

一 もつぶっきょうしをくことは、 いちじょうすべくそうろうか。

こたういちじょうにてそうろう、 すべくそうろう

一二七

一 しょかきてしいれ、 かねてかゝんずるを、 まづしそうろうはいかに。

こたう。 しいるゝはくるしからず、 かねてはだいなり

一二八

一 しゅっは、 わかきとおひたると、 いづれかどくにてそうろう

こたうおいては、 どくばかりえそうろう。 わかきは、 なをめでたくそうろう

一二九

一 ぶつはなまいらする誦文じゅもんじっ波羅ぱらみつおうじょうすともうしそうろうらんのためにまいらせそうろう

こたう。 これせんなし、 念仏ねんぶつもうさせたまへ。

一三〇

一 いみのものの、 ものへまいりそうろうことは、 あしくそうろうか。

こたう。 くるしからず。

一三一

一 ものまうでしてかえさにわがもとへかえらぬことはあし。 またぎょちょうにやがてみだれそうろうこと、 いかに。

こたうくまのほかは、 くるしからず。

一三二

一 ときのおりの誦文じゅもんは、 かくしそうろうべしともうしそうろうらんのためにまいらせそうろう

こたうときのおりも、 たゞ念仏ねんぶつもうさせたまへ。 にょうぼう誦文じゅもんせずとも。

一三三

一 にょうぼうものねたみのこと、 さればつみふかくそうろうな。

こたう。 たゞよくよく一心いっしん念仏ねんぶつもうさせたまへ。

一三四

一 きりのはい、 かみにつくるは、 仏神ぶつしんもうすことのかなはぬともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたう0596。 そらごとなり。

一三五

一 ものへまいりそうろうしょうじん三日みっかといふまいりそうろうべきか、 四日よっかのつとめてか。

こたう三日みっかのつとめてまいる。

一三六

一 ものこもりてそうろうに、 三日みっかとおもひそうらはんは四日よっかになしていで、 七日なのかとおもひてそうらはんは八日ようかになしていでそうろうべきか。

こたう。 それはひとのせんやうに。

一三七

一 ずゞには、 さくら・くりいむともうしそうろうは、 いかに。

こたう。 さることそうらはず。

一三八

一 ほうのつみは、 ことにふかしともうしそうろうは。

こたう。 とりわきそうらはず。

一三九

一 げんをいのりそうろうに、 しるしのそうらはぬひとはいかにそうろうぞ。

こたうげんをいのるにしるしなしともうすことぶつおんそらごとにはそうらはず。 わがこころせつのごとくせぬによりて、 しるしなきことそうろうなり。 されば、 よくするにはみなしるしはそうろうなり観音かんのんねんずるにも、 一心いっしんにすればしるしそうろう、 もし一心いっしんなければしるしそうらはず。

むかしのえんあつきひとは、 じょうごうすらなをてんず。 むかしもいまもえんあさきひとは、 ちりばかりのくるしみにだにも、 しるしなしともうしそうろうなり

ぶつをうらみおぼしめすべからず。 たゞこの・のちののために、 ぶつにつかへむには、 こころをいたし、 まことをはげむこと、 このもおもふことかなひ、 のちのじょうにむまるゝことにてそうろうなり。 しるしなくは、 わが0597こころをはづべし。

一四〇

  建仁けんにん元年がんねんじゅうがつじゅう四日よっか、 げざんにいりて、 とひまいらすること

一 りんじゅうときじょうのものゝそうろうには、 ぶつのむかへにわたらせたまひたるもかえらせたまふともうしそうろうは、 まことにてそうろうか。

こたうぶつのむかへにおはしますほどにては、 じょうのものありといふとも、 なじかはかえらせたまふべき。 ぶつはきよき・きたなきの沙汰さたなし。 みなされどもかんずれば、 きたなきもきよく、 きよきもきたなくしなす。 たゞ念仏ねんぶつぞよかるべき、 きよくとも念仏ねんぶつもうさゞらんにはやくなし。 ばんをすてゝ念仏ねんぶつもうすべし、 しょうのみおほかり。

一四一

  これは御文おんふみにてたづねもう

一 いえのうちのものゝ、 したしき・うときをきらはず、 おうじょうのためとおもひて、 くひもの・きものたばんは、 ぶつようせんとおなじことにてそうろうか。

こたう。 したしき・うときをえらばず、 おうじょうのためとおぼしめして、 ものたびおはしまさん、 めでたきどくにてそうろうおんつかひによくよくもうしそうらいぬ。

一四二

一 かいそう愚痴ぐちそうようせんもどくにてそうろうか。

こたうかいそう愚痴ぐちそうを、 すゑのにはぶつのごとくたとむべきにてそうろうなり。 このおんつかひにもうしそうらいぬ。 きこしめし0598そうらへ。

 このことばゝ、 しょうにんのまさしき御手みてなり。 あみだきょうのうらにおしたり。

一四三

  見参けんざんにいりてうけたまはること

一 毎日まいにちしょに、 六万ろくまんじゅうまん数遍しゅへんをずゞをくりてもうしそうらはんと、 まん三万さんまんをずゞをたしかにひとつづゝもうしそうらはんと、 いづれかよくそうろうべき。

こたうぼんのならひ、 まん三万さんまんあつとも、 如法にょほうにはかなひがたからん。 たゞ数遍しゅへんのおほからんにはすぐべからず、 みょうごう相続そうぞくせんためなり。 かならずしもかずをようとするにはあらず、 たゞつねに念仏ねんぶつせんがためなり。 かずをさだめぬはだい因縁いんねんなれば、 数遍しゅへんをすゝむるにてそうろう

一四四

一 真言しんごん弥陀みだようほうは、 正行しょうぎょうにてそうろうべきか。

こたう仏体ぶったいひとつにはにたれども、 そのこころどうなり。 真言しんごんきょう弥陀みだは、 これしん如来にょらい、 ほかをたづぬべからず。 このきょう弥陀みだは、 これ法蔵ほうぞう比丘びくじょうぶつなり西方さいほうにおはしますゆへに、 そのこころおほきにことなり。

一四五

一 つねにあくをとゞめ、 ぜんをつくるべきことをおもはへて念仏ねんぶつもうしそうらはんと、 たゞ本願ほんがんをたのむばかりにて念仏ねんぶつもうしそうらはんと、 いづれかよくそうろうべき。

こたう廃悪はいあく修善しゅぜんは、 しょ0599ぶつ通戒つうかいなり。 しかれども、 とうのわれらは、 みなそれにはそむきたるともなれば、 たゞひとへにべっがんのむねをふかくしんじて、 みょうごうをとなへさせたまはんにすぎそうろうまじ。 有智うち无智むちかいかいをきらはず、 弥陀みだほとけは来迎らいこうたまうことにてそうろうなりおんこころそうらへ。