かわほう

 

 まづ*さん悪道まくどうをはなれて*人間にんげんうまるること、 おほきなるよろこびなり。 はいやしくとも*ちくしょうにおとらんや。 いえはまづしくとも*餓鬼がきにまさるべし。 こころにおもふことかなはずとも*ごく*くらぶべからず。 きは*いとふたよりなり。 このゆゑに人間にんげんうまれたることをよろこぶべし。

*信心しんじんあさけれども*本願ほんがんふかきゆゑに、 *たのめばかならず*おうじょうす。 *念仏ねんぶつ*ものうけれども、 となふればさだめて*来迎らいこうにあづかる。 どく莫大ばくだいなるゆゑに、 本願ほんがんにあふことをよろこぶべし。

またいはく、 *妄念もうねんはもとより*ぼん*たいなり。 妄念もうねんのほかにべつこころはなきなり。 りんじゅうときまでは一向いっこう妄念もうねんぼんにてあるべきぞとこころえて念仏ねんぶつすれば、 来迎らいこうにあづかりて*蓮台れんだいじょうずるときこそ、 妄念もうねんをひるがへしてさとりのこころとはなれ。 妄念もうねんのうちよりもうしいだしたる念仏ねんぶつは、 にごりにまぬ*はちすのごとくにて、 けつじょうおうじょううたがいあるべからず。

くらぶべからず くらべものにならない。
いとふたより 世を厭うよい機縁。
たのめば →たのむ
ものうけれども 大儀で気が進まないけれども。
来迎にあづかる 臨終の時仏のお迎えをいただくという意。 ここでは仏の救いにあずかることをいう。
地体 本来の姿。 本性。
 れんのこと。